凡人? 天才? それとも……。


 

はじめに 【設定】

 
前書き
キャラ設定の大切さを知るけふこのごろ 

 
 主人公 
 幸谷大地(こうやだいち) 高校一年 生年月日 5/28
 
 昔に引っ越したが、祖父の死を切っ掛けに戻ってくる。引っ越しした時は8歳の時である。
 凛とは、その時からのつき合いで、両親共々仲がいい! 三つ下の妹がいる。
 友達付き合いが非常に上手い。一人が苦手で、転校時もずっと友達ができるかを考えていた。
 どんな、人にも優しく接することにしている。心が広く、常に相手の事を考えようと努力している。
 ゲームは友達作りの切っ掛けに中学頃から始めたがその時に駄々はまり。
 しかし、ギャルゲーには手を出す勇気が無かったためやっていない。
 幼い頃にお父さんを交通事故で亡くしかけている。そのせいで事故が少しトラウマに……。
 勉強、運動は全て中の上程度、日課として、ストレッチとちょっとした筋トレをやっている。


 ヒロイン
 天海凛(あまみりん)   高校一年 生年月日 4/19

 大地とは腐れ縁。料理が得意でよく作るが偶に超絶不味くなるので家族から、
 寿命が縮むとよく言われる。一応、恋する高校生。クラスメイトに頼まれると断れない。
 お人好しの極み。そのせいで色々と問題が起こる。運動や勉強は大地よりもいい。家には猫がいる。
 両親は少し変わっていて、何処か惚けている。その血をバッチリ受け継いでるから、
 子供っぽくなることも度々。実は大地のお父さんが事故に遭う切っ掛けになっている。
 そのことを本人と大地は知らない。親同士の秘密ごとになっている。
 普段は隣のクラスの陽奈と一緒にいる。人をまとめる、弱い者を守る時は、名前の如く凛々しい。
 でも、大地と二人っきりになるとどうも素直になれない天の邪鬼。


 悪友
 桜沢快(さくらざわかい) 高校一年 生年月日 7/3
 
 大地とはゲーム好きということで仲良くなる。それから簡単にクリアできるためギャルゲーが
 下手くそな大地にバットエンド集めをやらしている。何事にも非協力的で、ギャルゲーばっかり
 学校の問題児で先生の悩みの種である。そのため、大地がよく先生に説教される。
 双子の妹がいるが、実は本当の双子ではないらしい。母親は早くに亡くし、父親は陽奈を
 養子にして間もなくでなくなっている。今は、叔母さんと陽奈と三人、一緒に暮らしている。
 外面では適当に生きているが内心は色々な事を考えている。ゲームをして、友達を作らない理由は
 ゲームは裏切らないからである。自分の判断で見定めた人にしか心を開かない。
 大地は裏表がないから接しやすい。


 ヒロインの友達
 桜沢陽奈(さくらざわひな)高校一年 生年月日 8/8

 物心つく前に母親が亡くなり、父親は幼い頃に殺される。思い過去の持ち、呪われた子と言われた。
 引取先が決まり難かった時に快の父が養子にする。その後、快の父も亡くなって、関わる人が死ぬ。 死神と言われた時期がある。そのせいで快と叔母さんと引っ越しして、こちらに来た。
 一時期は、自殺を試みるが全部快に止められる。その後、転校先の小学校で凛と出会う。
 そこにも噂は流れて避けられるようになったが、凛はそうなことお構いなしに喋りかけてくれた。
 その時初めて、快や叔母さん、家族以外の人に心を許した。そして、避けられることもなくなり
 クラスにとけ込むことができるようになっていった。しかし、避けられることがあったせいで
 快は自分の見定めた人以外を信じなくなり、人間不信になった。


 モブ眼鏡
 加藤清道(かとうきよみち)高校一年 生年月日 12/7
 
 凛、快、陽奈と一緒の中学。仲がよかった。勉強ができて、運動もまあまあ!
 頭の回転がはやく、色々な物事を想定する。人当たりもよくて優しい。
 陽奈と同じクラスでクラス委員を務めている。頼りになる男。
 
 
 モブ巫女
 神凪廻(かんなぎめぐる) 高校一年 生年月日 3/21

 お家が神社とかなんとか。巫女をしているらしい。家が神社だけあって交際などが許されてない。
 だが、栗生と付き合っている。日々、家族にばれないようにしている。弱気だけど
 自分の意見ははっきり言う。聞こえない方が多いけど。栗生と美沙とは中学からの仲
 凛と陽奈と快と美沙と同じ小学校で仲もよかった。高校が同じと言うことでよく喋る。


 モブからかい役
 葭原美沙(よしはらみさ) 高校一年 生年月日 9/29

 お調子者でよく、廻の彼氏の栗生と喧嘩している。廻のおもり役をしていると自負している。
 女子的には凄く親しみ安く、多くの人と話している。口が軽い。


 モブ彼氏
 百田栗生(ひゃくたくりゅう)高校一年 生年月日 4/2
 
 廻の彼氏をしている。因みに告白は栗生の方からである。まじめだからこそ美沙ともめる。
 光という。不思議な少年が従兄弟にいる。家庭は、何しているかは不明。
 少しばかり、謎の多い奴。

 
 少年
 幸谷光(こうやひかる) 不明
 
 栗生の従兄弟。以上。

 
 モブ夫A
 村西君(むらにしくん)
 
 大地のクラスのリア充。運動神経がいい。

 
 モブ夫B
 北原君(きたはらくん)

 大地のクラスの陸上部。


 モブ子
 江上さん(えがみさん)

 大地のクラスの弓道部。廻や美沙と仲がいい。

 
 モブ夫C
 富山君(とみやまくん)

 大地のクラスの柔道部。オタク。


 先輩
 
 教えない!


 以上が今考えている、キャラの設定です。
 
  
 

 
後書き
また増えたら、更新します! 

 

プロローグ 【部屋】

 
前書き
プロローグです!  

 





 ――もっと正しい選択肢を選んでいたらこんなバッドエンドには……!







 
 テレビの液晶画面には赤字で『ばっどえんど』とひらがなで書いてある。ただでも腹が立つバッドエ ンドなのにその文字がひらがなで余計に腹が立つ。
 
 俺、幸谷大地(こうや だいち)はある理由でゲームをしている。

「……なんだよ。このゲームは!?」

 絶対にと言っていいほどに挑発している。こんな、挑発的なゲーム作って何がしたいんだよ、このゲ ーム会社は!

 気が付くとテレビ画面にコンテェニューの文字が出ている。ゲームコントローラーを置いて、ゲーム 機本体の電源を切る。

「お疲れさま。ほい、コーラ」

 気の利く友達がコーラ入りのコップを渡してくれる。

「あぁ、ありがとう。さっきのでCG全部揃ったと思うよ」

 CGと言った単語で分かるかも知れないけど。俺のしていたゲームはあれでもギャルゲームだ。どう やったらあの展開に成るかわ聞かないでくれ。俺は人助けと言う立って前で俺にコーラをくれた少年 こと桜沢快(さくらざわ かい)のギャルゲームをしている。

「さすがは我が初めての親友。やるではないか」

「やめろよ。そのしゃべり方、気持ち悪い」

「ちぇっ。冷たいなぁ」

「それはどうも」

「なあ、大地? これでお前もギャルゲーの良さが分かっただろ? だから、Po5を買おうぜ」
 
「Po5って、あの高いゲーム機のことか?」

「じゃあ、Popでもいいからよぉ。買って一緒にギャルゲーやろうぜ」

 軽く溜め息を吐く。

 こいつと知り合ってから少ししか経たないけど、この台詞は飽きるほど聞いている。

「だから、俺はPopは持ってるけど、ギャルゲーはしないって、いつも言ってるだろ?」

 快は少々不満そうな顔をしていたが何とか納得してくれた。

「お前……。そっか……」

「なんだよ? 急に改めて」

「本当に、我が親友か?」

 イラッ。

「我が親友はそんな俺の生き方を全て否定するような、人間ではないぞよ」

 イラッ。イラッ。

「我が親友は断る時はいつも、べ、別にアンタのためにギャルゲーしたいとか思ってないんだからね! って、断っているぞよ」

 イラッ。イラッ。イラッ。イライライライライライライライライライライライライラッ!
 
「ンな断り方したことねぇよっ!!! なんだよ、そのツンデレ的断り方は!? 俺は金髪ですか?  でこ出してますか? 常日頃、強気ですか? 先ず、男のツンデレは吐き気するわっ!」

「えっ!?」

「なんでそんなにショック受けるんだよ?」

「お前ってツン――」

 快の言葉を遮るように頭を叩く。

「痛っ! 何すんだ、舌噛みかけたんだぞぉ」

「こんな茶番付き合ってられるか」

「ちぇっ。楽しかったのに」

 楽しいのはお前だけだよ。と心の中で思いながらコーラを飲む。コーラが渇いていたのどを潤し、炭 酸が刺激をくれる。思わずごくごくと飲み干す。

「良い、飲みっぷり。のど渇いたら言ってなっ。友達をお持て成しするのって、楽しいね」

 彼は何を言っているのだろう? お持て成しするのが楽しい!? 彼はお持て成しではなく、ただ単 に誰にも邪魔されずにからかうのが楽しいだけでは……。

「コーラのお代わりいるかぁ?」

「あぁ、お願いする」

 自分で入れようとコーラのペットボトルを見ると中身は無かった。

 ……流れで言ったけど、コーラのペットボトル空じゃね。

「なら、盗ってくるなぁ」

 悪友の快が不適な笑みを浮かべながら立ち去って行く。快が閉めるドアを見てからある違和感に気付 く。妙に快の部屋が女々しいというか、ギャルゲーが全く合わない感じで高校男児の部屋とは思えな いぐらい綺麗だ……。  
 
 まぁ、あれだな。きっと快は綺麗好きなんだ。――下に広がる水色のカーペット。そうだ、そうに決ま っている。――熊のぬいぐるみがタンスの上に …………あっ! 快に聞けばいいんだ。はぁ~、簡単 なこと――

 部屋のドアが開く。快が戻ってきたのだろう。

「快。この部屋。お前の部屋なのか? なんか、女々しいな――」

「「ッ!? ……誰?」」 

 ドアの目の前にいたのは快じゃなくて、ツインテールの少女だ。身長は140中盤ぐらいで目はくり っとしてて顔は整っている。そして何より……可愛い! って、そんなことよりも何故、女の子が? 考えろ! この状況が起きた元凶を……! って、分かるわけないよな。……ハッ!

「ねぇ? アンタ何してるの? ここ――」

「……そっか! これは夢か! 俺はいつの間に寝ていたんだ。まさか、こんなギャルゲー見たいなシ チュエーションに巡りあうなんて……これは、夢だ。きっと夢だ。絶対に夢だ。夢でありますよ   ね?」

 余りにも現実味のないシチュエーションに混乱し、ツインテールの少女に尋ねてしまう。すると――

「ごめん。部屋間違えたみたい」

 ツインテールの少女はとびっきりの笑顔でドアを閉める。

 ……今、明らか目が笑ってなかったような……。気のせいだよな。

『えぇぇぇぇえええっ! 今、絶対に誰か居たよね? 嘘ぉ、まさか……泥棒? こんな白昼堂々   と!? バカみたいだったし、下着とか盗んでクンカクンカしてないよねぇ! ああ、もう、最   悪!!!』

 ……なんだ? 今の??? 

 でも、自分一人で焦った挙げ句、夢、夢、夢。って、馬鹿なことしたな。ただの部屋間違いか……っ て、おい! あの反応から違うだろ……快の野郎、何考えてやがる。あいつ、一人暮らしって言っ  て……言ってなかったな。はめられた!

 さっきの快の不適な笑みが走馬燈のように思い出す。

 これはやばいな。逃げないと……殺される。って、しまった! ここは二 階だった!!! こうな ったら、窓から飛び降りるしか……。

 そして、再び部屋のドアが開く。
 
 

 
後書き
一気に登場人物がでてきましたねw

読んで貰ったら分かるようにこの物語は主人公こと、幸谷大地君の視点で進めて行きます!
たまに視点が変わるかもですがその時はしっかり、分かるように書きたいです。
指摘をドンドンしてください! 

後、このゲームの内容はそのうち分かりますので! 

 

第一話 【新学期】

 
前書き
三日坊主は恐ろしい!
一応、続きです。待っていてくれた人には感謝感激です!
本編です! 

 
 
 電車に揺られて、暗いトンネルを越える。光が差し込み、懐かしい景色が一面に広がる。その景色を見たその時に改めて故郷の地に戻ってきたことを実感する。

「車窓から見た景色と実際に見たら違うんだろうな。それに……あいつは元気にしているかな?」
 
 ガラス越しの景色を見ながらそっと呟く。
 
              ❇

 1月の末にあなたが寿命で亡くなり、叔母ちゃんが俺達、家族と暮らすことになった。そのため、今まであなたと叔母ちゃんが一緒に住んでいた家が空き家になって、お葬式後に家の片づけをしていると、家具や日常品が放置されていることに疑問を感じて、母さんに聞くと、新学期からあんたが一人暮らしするからに決まっているでしょ。と断言された。それから、本人の意思などお構いなしに話しは進んで行き。こっちに来るようになりました。どうか俺が立派に育って行くことを見守ってください。念仏とか唱えられないです。ごめん。

 仏前を拝む。死んだお爺ちゃんに経緯を伝える。そして、取り敢えず荷物を部屋に運び、お風呂に入って、布団を退き寝る準備をする。

 新しい生活が俺を待っている。その新しい生活の第一歩を飾るのは……高校生活だっ! 高校生活が故郷での新たな生活を充実させる鍵だと思っている。だって、普通では一生に一度しか訪れない、高校生活をエンジョイしてやる。中学の友達の連絡先は知っているし、相談に乗ってくれるとも言ってくれた。それに、『いつでも遊びに来いよ』とも言ってくれた。実に嬉しいことだ。でも、そんなことじゃ駄目だと思う。自分の高校生活ぐらい自分で充実させなければ。確かに友達が出来るかは心配だけど……知り合いがゼロからのスタートではない。少なくともあいつはいる。明日から学校だ。気合い入れて、行こう!

 気合いを入れて自分の部屋の電気を消して、布団に潜る。明日からの高校生活に対するワクワク感とちょっとした心配感を募らせながら。

 そんな覚悟を決めた矢先のことだった……

   ☆

 眠い……昨日電気を消してから全く寝付けなかった。欠伸をしながら学校までの道を歩く。

「この道に三年間お世話になるのか。四季の変わり目が楽しみだな」

 昔と変わったところを探しながら歩いていると学校の校門にまで歩いていた。校門を潜るとそこには一面の桜の木、桜の木に見とれながらも昇降口へ向かう。

 昇降口先にクラス分けの発表版に人がいっぱい群がって騒いでいる。多かれ少なかれ友達と一緒になれたり、なれなかったりと。そんなところだろ。

 はぁー。知り合いが多いのは良いなぁ。不意に溜め息を吐いてしまう。でも、俺にだって知り合いはいる。それにいないならば作ればいい。昨日に覚悟を決めたばかりだ! ポジティブに考えよう。そうなれば、まずはクラスに行くか。

 昇降口でスリッパに履き替えながら自分のクラスの教室へのルートを考える。スリッパに履き替え、校舎の三階にある一年B組の教室へ向かって階段を軽い足取りで駆け上がる。にぎやかなB組の教室の前でふっと思う。

(りん)の奴、何組だろうな。……まぁ、いいか。同じ学校だしそのうち会えるだろう」

 そろそろ、時間もやばいし初日遅刻は流石に悪い印象を与えるから不味い。人はどうしても見た目から入ってしまうから印象が悪いと友達が作れないことになりかねない。良い印象を持ってもらうためにも、早いところ教室に入ろう。

 一端、ドアノブに手を掛けて深呼吸する。心を落ち着かせて、教室のドアを開けると――

 頭の上に何かが落ちる。それとほぼ同時に教室にいたクラスメイト達が所々で笑い出す。笑い声は様々で、たったこれだけで個性のあるクラスだと思わされる。落ちた瞬間は、何がどうなっているのか分からなかったが周りの反応を見て、なんとなく分かった。

 無難にクラスにとけ込もう作戦失敗。(見知らぬバカと黒板消しにより)

 頭に乗った黒板消しを取り、周りを見渡す。不幸中の幸い、黒板消しは新調されていたため、チョークの粉が着くことはなかった。しかし、これ以上目立つわけにはいけないので、こんなガキみたいな事する奴は誰だ! 小学校までだぞ! と言うことも出来ず。ただ怒ってないように取り繕い、この犯人が正直に出てくるのを待つことが精一杯だ。案の定、俺の予想は当たった。笑うクラスメイトの間から一人の少女が顔を出す。

「ごめん。普通は引っかからないと思って」

 申し訳なさそう謝ってくる。

「いいよ、気付かなかった俺も悪いし」

 無論、苛々しているけど。イメージを悪くすることができないから、笑って誤魔化す。

 反省しているし、まあ、いいかな。さてと、俺の席は何処かな? あっ、あそこか。
 
 黒板にある掲示してある席順を見て、おおよその位置を確認する。

「ところで君? ここら辺で見ない顔だけど何処から来たの?」

 その少女は、どうやら近場の子だったようで、見ない顔の俺が気になるみたいだ。もちろん、良い人面をし意識している俺は、彼女の質問を無視する選択肢はなく、少し適当に答える。

「うん。まぁ、引っ越してきたから」

 その黒板消しの犯人の子は、ふ~ん、と言ってから黙り込む。

「って、ことは周りに知り合いいないんだ」

 グサッ。無邪気な一言が胸に刺さる。

 この子、結構酷いこと言うな……。雰囲気からして悪気はなさそうだけど。そりゃ、友達なんていなよ。どうせ、一人っきりのボッチだよ!

「あっ、ごめん。私、もしかしたら酷いこと言った?」

 表情で察したのか、その子は申し訳なさそうにして謝る。

「いや、別に大丈夫だよ……。気にしてないし……」

 精一杯、強がって見るけど、相手からしたら強がっているのは一目瞭然だ。

「それって、強がりでしょ? 転校って、友達できるか不安じゃないかな?」

 案の定、気付かれていたようだ。そして、少女は悪戯そうに笑う。

「私の友達も、転校前に泊まりに来た時にね。友達作れますように。って、何度も何度も念仏の要に唱えていたから」

 やっぱり、みんな、転校前はそう言うものだな。

「俺は、こういう体験は二回目だけど。なかなか簡単に慣れるものじゃなくて、どうも心配でな」
 すると、少女は俺の顔を見つめる。目と目が合い、視線を逸らしてしまう。

 女の子に顔をジッと見られるのこそ慣れてないから! 

「本当だ! 目の下に隈がある。昨日、寝付けなかったの?」

「えっ、まあね。でも、知り合いがいない訳じゃないんだ」

 その子を探しているって言える勇気はないよな、俺……。それにこの子が知っているとは限らないし、ぼちぼち探すか。

「知り合いって、結構、他人行儀なんだね。普通は友達とか言うでしょ? それとも……コレかな?」
 
 少女は小指を立てて冗談っぽく言う。

「ないないない。確かに探しているのは女子だけど。俺とあいつはそう言う関係じゃなくて、只の幼なじみなんだ」

「そっか、その子はこのクラスにいる?」

 ざっとクラスを見渡すが凛らしき人物は見あたらない。と言うかクラスの女子がこっちを見てこそこそ喋っているのが気になった。

「いた? どんな子、どんな子?」

「あ、いや。いないみたい?」

 女子がこっち見てたとしても、俺のこと話してるわけない。被害妄想は止めよ。

「なんで疑問系。仲良しじゃないの?」


「ああ、それは、ずっと合っていなからな。まあ、分からないけど……、このクラスにはいない気がする。他のクラスかな。でも、この学校にいるはず」

 母さん情報だから間違ってないでしょ。面倒見てくれるように言ったって言ってたし。でも、少し不安だな。

「私、実は顔が広いから、分かるかも知れないよ。黒板消しの償いって言ったら、可笑しいかもだけど、人捜しに協力するよ」

「えっ? いいのかよ。初対面なのに」

「私、困っている人って見てられなくて。これもなにかの縁かも知れないからね」

「ありがとうな。親しくしてくれて」

 素直な気持ちを言葉にしてみる。言ってみると初対面の相手なのに少し恥ずかしい。

 すると少女は笑顔で手を差しだす。子どもっぽいけどいい人だな。と思いながら手を掴む。

 今、この子に聞いて、あいつに会えるかも知れない。この子とも友達になれそうだし、まさに一石二鳥だな。あっ、そう言えば自己紹介。

「ところで君の名前はなんて言うの? 私は、天海凛(あまみりん)。よろしくね」

「ああ、俺は、幸谷大地(こうやだいち)。幸せの谷でこうや。よろしくな」

 二人に沈黙が訪れる……。

(( 
 

 
後書き
何故、お互い黙り合ったのでしょうね(棒
今度は中途半端に終わらせたので、次は、早めに更新したいと思ってます!
誤字脱字、質問、わかりにくい表現などの指摘は宝物です。
感想、評価を待っています。よろしくお願い申し上げます。 

 

第二話 【クラス委員のご指名】

 
前書き
中途半端の続き。
キャラ崩壊起こしているかも。 

 
 驚きのあまり、思わず声に出してしまう。

「まさか! あんた、大地なの? って、いつまで握ってるのよ!」

 慌てて、凛の手を離す。

「わ、悪い……」

 まさか。たった一人の知り合いが同じクラスとはクヂ運に憑いている。と言うか凛の性格変わりすぎだろ? 真剣に気がつかなかった。だから、初対面な感じがしなかったのか。

 お互い同じようなことを考えているみたいで、凛もなにか言いたげな表情でこちらを見る。
 
 はぁ。と溜め息を吐き呆れた顔で凛を見る。

「おまっ――」

「なに引っ掛かるのよっ! バカァーッ!」

 言葉を遮り怒鳴られる。

 えぇーっ! 俺が悪いのか! 普通おかしいだろう。俺は被害者だっ!
 
 予想外の発言に呆気に取られて動揺する。

「いや、普通こんな事をしないだろう。普通!」

 それでも、自分の信じる言葉(正論)を言い返す。

「なに言っているのよ、大地。これは……あれだ! ……そうよ。この学校の暗黙の行事なのよっ」

 案外、正論が効いたらしく、凛はつい慌ててバカな事を言いだした。その御陰で動揺して焦っている自分に冷静さが戻っていく。それどころか意味不明過ぎて、思考回路が凍り付き停止まで追い込まれそうになるぐらい意味不明。自分がなに言っているかも意味不明。

 ……? 大丈夫かこいつ? でも、変わってないな。昔の俺はこんな凛が好きだったんだな。まあ、俺は昔から変わったし、凛も彼氏ぐらいはいるだろうな。それよりも……

「なんだよ。その暗黙の行事って?」

 …………沈黙。 こいつ全く考えなしに黒板消し置いたな。

「お前はなーっ。昔から後先考えなしに行動するから、これが俺だったからまだしも先せ――」
「それだ! 先生にね。この黒板消しを仕掛けたか? って、疑われた人がクラス委員よ」

 呆れて説教をしようとしたところを遮るように言った。……宣言された。

 呆れているのは俺だけでないようでクラスのみんなも同じ様な反応だ。ただ二人を除いて。

 そんなことも気付かずに凛は上機嫌で黒板消しを仕掛け直す。

「と、まあ。そう言うことだからみんなよろしくーっ」

 みんなはやれやれと言った感じで了解してくれた。とは言ってもクラスのみんなみんなが『OK』『分かったよ』と言うわけでなく。『実際はどうするの? クラス委員二人だったよ。多分』『具体的に教えろよな』などの意見が当たり前に出てくる。

「えーと……具体的にはシンプルに先生に、お前か? って、一番始めに聞かれた人が犯人になるってことで良いかなぁ? 二人にならなったクラス委員が指名で」

『分かった』『了解、了解』『その案で行くか』

 おかしいな。批判や反対の言葉がないだと。誰か来いよ。

『OK。なら早く座ろうよ、君たち。座っていた方が分かり難いし楽しそうだ』

 いやそんな所どうでもいいから、なにワクワクしているんだよ。凛に手がつけられなくなるぞ。

『凛! 私もそれに乗ったよ』

 乗るのは個人のことだからとやかく言えないけど。この後、大変だぞ。

『『『私たち(僕たち)クラス全員それに賛成』』』

 ……やばい。このクラス善人しかいないよ。こんなクラスだと知っていたらゆっくり寝られただろうな……畜生。……あれ? 

「なら、決まりね。仕掛けも出来ているし座りましょうか」

 俺の席の後ろの奴ゲームしてなかったか? よくもこの状況で出来るよな。

「なにぼーっとしているのよ。大地(だいち)も座るよ」

「お、おう」

 ちょうどその時だった。少し隙間が開いた教室のドアが開いた。そこから顔を出したのは先生らしき人物で、お年寄りから感じられる優しい雰囲気を纏った三十歳後半ぐらいの男性が入ってくる。もちろん仕掛けの黒板消しが頭に落ちるのは想像通り。

 あっ! 心の中で呟いてしまう。今、普通に引っかかったよな。

 ………ぷっ。あはははははははは。

 クラスのみんなが笑う。いきなりのことに先生が目を点にしている。そして、状況を飲み込むと俺と凛の方を見る。

 あはは、やばいな。いきなり目を付けられたかな? ここで『お前か』って、聞かれたら終わる。俺にクラス委員は務まらない! ふざけるな! そんなにこっち見るな。

「お前か? こんな事をしたのは? 古典的で懐かしいことを」

 詰んだー! 終わったー! 務まんねぇよ! うああ。

 と、凛に対して問いかける。

 えっ! もしかして、俺じゃない? ははっ、ふーう。変に焦ったーっ! 

 開始早々でいきなり言い出しっぺの凛がクラス委員をすることが決定した。

『『『クラス委員、決定いぃぃぃ!』』』

 突然クラスのみんな叫びだす。その光景に先生も目を点にさせる。

『ラッキー、俺クラス委員とかやりたくなかったんだよな!』

『やった。私もクラス委員みたいにみんなをまとめることが苦手だったから嬉しいな』

「仕方ない。クラス委員をします」

 そして、凛が渋々立候補する。ってか、自業自得だな。まぁ、俺には関係の無いことだし。

 イエーイ。パフパフ。とクラスメイトのテンションが上がる。みんなかなりクラス委員がやりたくなかったと見える。いや、よく見るとテンションが上がっているのは主に男子のクラスメイトだった。しかし、そんな盛り上がっているのに関わらずに黙々とゲームをしている男子のクラスメイトがいる。気になる。気になる。気になる。気になる。気になる。気になるぅー。
「なんだなんだ。この騒ぎは久し振りに賑やかなクラスやな。」

「後、一人男子で必要ね……大地。大地もやってよ」

 ゲーム。ゲーム。実は俺も結構ゲーム得意なんだよなぁ~。早くも友達出来るかな? 

「おーい、大地。無視? 無視すると頭叩くよ。それでも良い?」

 なんのゲームだろう? 大体のゲームは出来るけどやっぱり一番は――痛っ!

 突然、背後から凄い勢いで後頭部を叩かれる。頭を抑えて振り向く。
「凛。いきなりどうしたんだよ。人の頭叩きやがって」

「アンタが悪いんでしょ。人が忠告したのに無視するからこうなるのよ」

 いや、それでもあんまりだろ。叩くまでしなくても……

「天海、君とそこの幸谷? おーそうかそうか。君らがクラス委員やってくれるんか」

 凛の後ろから先生が俺と凛を交互に見て言う。

「はい。頑張りますのでよろしくお願いします」

 凛が勢いよく返事をする。

 もうやる気満々だよ。まあ、俺には関係ねぇな。

「何処行くのよ、大地」

 立ち去ろうとする俺を凛が呼び止める。

「アンタもクラス委員なのよ」

「そうだろ幸谷。クラス委員やってくれんのか?」

「……うん? ちょっと待ってください。おかしくないですか? 凛――天海がするのはともかく、なんで俺まで」

 先生に問いかけると先生の替わりに凛が即答した。

「決まったからよ」

「えっ! 俺がクラス委員に? 誰が決めたんだよ。もしかして先生?」

 無理無理無理、普通に無理。まだクラスにとけ込められるかも心配なのに。先ず、俺はこいつと違って顔も広くないし、友達いねぇよ。なんで先生は俺なんか……。 先のホッとした気持ちを返せーっ! 
「違うよ。私が決めた。一応、みんなと相談したし」

「お前かーっ! ……ってみんなと相談した? いつの間に」

「大地がにやにやしている時よ。そのせいで変な誤解が生まれるし」

 あぁ~。あの時か。ってか、にやにやって変な言い方するなよ。誤解が生まれし。って……ッ! おれはあのクラスメイトがなんのゲームしているか考えていただけなのに誤解?

「誤解ってどんな誤解だよ! 下手したら俺の高校生活がぁ――っ!」

 待て! 落ち着け俺。誤解って言ってもそう大層なことじゃないだろう。うん。そうだきっと妄想しているんだなぁー。とか変態としか思われてないし、別にそれだけで避けられてない。                   
そうに決まっている! 世の中全て変態。そうだよな! 神様よ。

「慌てたり、落ち込んだり、忙しい奴ね。誤解ならとっくに解けているよ」

 さらば、学校生活よ。多謝でな。凛、お前も避けたいなら避けてくれ! ……別に泣いてなんかいない。

「だから気持ち悪い顔でこっち見ないで。誤解は解けたって」

「……マジで? 本当に? 俺に誓えますか?」

「本当に。私がアンタのこと好きって言う誤解は解けているよ」

 ……絶対おかしい。その誤解はないだろ。何故そうなる。だが……。

「もう、俺は突っ込まないぜ。これ以上、下手なツッコミを晒したくないし。キリッ」

「アンタの頭、大丈夫? ちょっと昔と変わったね」

 そう言って凛は笑みを浮かべる。

 えっ! 何故かその時、凛は少し寂しそうな顔をしているように思えた。

「そうかそうか。誤解も解けているなら君もやってくれるな? クラス委員」

「アンタ。私もするんだからやってくれるよね?」

 私もって……半強制的じゃねぇか。仕方ねぇな。

「あ、はい。力不足かも知れませんけど。お願いします」

「そうかそうか。初日早々クラス委員が決まるとは良かった。よろしく頼む」

「「よろしくお願いします」」

「今日は入学式やから、今日は特になにもしなくていいぞ」

 クラス委員か……まぁ良い人ばかりのクラスだし、大丈夫か。

「大地。席に座るよ。HRが始まるみたいだし」

おう、と言って凛も俺も席に着く。席に着くと後ろのゲーム少年が机に俯けになっていた。

「これから、始業式前のHRを始めるぞ。時間がないし、すぐ終わらせような。まずは、私の名前は来島理行(きじままさゆき)と言います」

 来島先生は慣れない手つきで黒板に名前を書く。

 それか出席が取られて、体育館に入学式を迎えに行った。校長先生の長い話しに生徒会長の短めの話しを聞き。そして、追い打ちに学校の規則を聞かされ。俺の精神力は睡魔に負けそうだった。なんとか教室までたどり着き。机に俯せになる。

 畜生。どの学校でもそうなのだろうか? 校長先生はもっと手短に喋れないのか。あぁ~眠い。次のHRは関係を深める為にあるんだっけ。やばいもう寝る。でも、起きないと友達が出来なくなるかも。……急に眠気が……ちょっと……休憩……………。

 
 

 
後書き
今更ですけど、主人公の名前を大地にしたのは
僕がウルトラマンガイアが好きなので、ガイアから大地となりました!
幸谷の方は迷い猫にそう言う名字があったかあら!

指摘・評価・感想などお願いします。 

 

第三話 【嘘吐き】

 
前書き
休みって何すればいいかわからないですよね?

キャラ設定が曖昧になっているかも……。
時系列的にはプロローグの続きになります! 

 

「快! これはどういうこと。なんであたしの部屋に友達連れてきているの?」

「いや、俺の部屋汚かったしさぁ。仕方なしに」
 
 ……快? なに騒いでいるんだ? まだ意識が朦朧として――

「なら、部屋にあったあたしの下着は! もしかして……」

「それならタンスにしまったぁ。流石に出し放しだと不味いじゃん。何段目だっけなぁ?」

 ……誰か他に居るのか? 痛っ! 頭が――

「人の下着勝手にしまわないでぇ! それによく分かったね。もしかして……」

「上から順番に見て、下着あるところ見つけた。三段目だっけ?」

 ……女性? 誰だ? 凛じゃなさそうだし――

「……快? 俺。いつの間に寝ていたんだ? それに学校の初日のことを夢で見ていたような……っておい! 快これはどういう状況?」

 こっちが寝ている間に快が仲良く女子と喋っていやがる。それにいつ俺は寝たんだよ?

「おっ! 起きたかぁ。大丈夫かぁ? ごめんな。俺の妹が気絶さしたみたいでぇ」

 妹? 気絶? って、どういうこと? ……そうだ! 俺は快の家に遊びに来て、見知らぬ女子の部屋でギャルゲームした挙げ句。帰宅した女子に見つかり。部屋のドアが開いてから……そこから、思い出せねぇ。

「ごめんなさい。さっきはいきなり金棒で襲いかかって……」

 快の妹らしき人が丁寧に謝る。

 金棒? 襲う? そっか、だから記憶がないのか。

「いや。こちらこそ勝手に部屋にお邪魔して。すみません」

 快に騙されたとしても、それに気がつけなかった俺のミスなのでこちらも丁寧に謝る。

「あたしは、快の妹の陽奈(ひな)です」

「俺は、幸谷大地。幸せの谷でこうや」

「幸谷さんですか? 変態の癖に言い名前してます」

 今もの凄く心外な事を言われたような……。

「さぁ~。和解もしたことだから、ギャルゲーするかぁ」

 ゲーム機の電源を入れ、コントローラーを持って。余りのコントローラーを差し出す、快。

「「お前が一番反省しろー!」」

 差し出されたコントローラーを丁寧に置く。

 大体、誰のせいでこうなったと思っているんだ? このバカは……

「おっ! ツッコミも息ぴったりじゃん。お前ら似たもの同士かぁ?」

 いや違うだろ、普通。お前の頭は大丈夫か?

「……な訳がないでしょ、快。大体、反省している? 後で精神科行く?」

「そうかぁ。案外、二人三脚早いかもなぁ。大地と陽奈」

 妹の話を完全にスルーして変な話題に変える。

「大地って? この変態の人? じゃなくてこの人? どっかで聞いたような気が……」

 スルーされることに慣れているのか。快の話題に食いつくのはいいけど、さり気なく変態っ
て言ったよな?

「そこの変態だぁ。見たことないかぁ? 凛の幼なじみらしい」

「なんで知っているんだよ、お前は。言った覚えがないぞ、誰から仕入れた。後、勝手に変態にするな! この変態ゲーマー」

「ふ~ん。この変態が……この人が。凛の……」

 今も変態って言ったよね? 君の兄の方が変態なのに……。って、近っ!

 陽奈さんはそう言うと顔を近づけて俺の顔をジッと見る。髪からほんのり香るのはシャンプ
ーの香りかな? 安らかな気持ちに……ってこれじゃあ本当の変態だな、俺。

「あの、顔が近いです。なにか顔についていますか? そんなにジッと見られると困ります。いろんな意味で」

 本当にいろんな意味で困る、つい顔に見とれてしまいそうになるから!
 
「あっ! ごめん。凛の幼なじみだからつい」

 慌てて近づけた顔を離し、またジッと顔を見つめる。

「お前らもしかして初対面だったかぁ? 同じ学校なのに」

 初対面な事が不思議なのか。快が不思議そうに呟いた。

 いや、不思議じゃないだろ普通。同じクラスならともかく、学校なら知らなくても……。

「えぇぇぇっ! 見たことない。こんな変態。……人」

 もの凄く吃驚した陽奈はそんなバカな。と言わんばかりに叫ぶ。

 そこまで驚く必要ないだろ。学校が一緒ってことで、うん? 同じ学校か……ってことは知り合いがふっ、増えたぁぁぁ! やばい嬉しいぜ。

「この変態が……人が同じ学校なんて――ってなんて顔しているの! もしかして……」

 陽奈は間違った方向に想像して焦りだす。

「違う、違う。この変態は知り合い増えて喜んでいるだけだ。変な想像する癖。直せよぉ、兄ちゃん悲しくなるからなぁ」

 快は陽奈の想像を間違った方向から正しく方向に修正する。今更だけど変態って言うのを止めろよ。
「うるさい。私のことだからお兄ちゃ……快は関係ない」

 仲良いな……。昔は凛とこんな感じで仲良く騒いでいたりしていたな。でもまぁ、今はただのクラスメイトだけどな……

「おっ。どうしたぁ、大地。寂しそうだぞ、陽奈の言葉が効いたかぁ?」

 ふざけた様子で快が心配してくれるから、からかっているのか心配しているのかよく分からない。

「いや、ちょっと昔のこと思い出してな……。まあ、気にするな」

「昔のことって、凛のこと? 昔から凛はあんな感じ?」

「こらこら、陽奈っ。お兄ちゃんは悲しいぞぉ……。少しは大地の気持ちを考えろぉ」

 興味津々に凛のことを聞く陽奈に対して快は悲しむ振りを適当にしながら言う。

「なんでよ。大体、さっきからお兄ちゃん、お兄ちゃんってアンタの方が少し生まれるのが早かっただけでしょ」

「双子でも俺の方が早いからお兄ちゃん。それ以外は認めん」

 快は強気で言い切ると陽奈はむぅーと頬を膨らます。

「へえー、お前ら双子だったのか。全然似てないな」

 率直な感想を言ってみると、快と陽奈では全く特徴が一致しない。まぁこれが男女の区別って奴か。

「よく言われるなぁ。大地、お前は俺の親友だぁ。似ていない真実を話そうじゃないか」

 ギャルゲーをしているときにしか見られないような真剣な表情で快は語ろうとする。真実を。

 ちょっと。と止めようとする陽奈に快は片手で待てと合図をとる。

「嘘偽りのない実話だ。来てくれ、大地」

 快が余りにも真剣なので一応、唾を飲みこんどく。ゴクッ。

「俺と陽奈は親が違うし、もちろん血も繋がらない他人だ。ある病院で俺と陽奈は偶々、同じ日に生まれた。しかも偶然にも俺の親父はと陽奈の親父は仲の良い親友だった」

 と言って、俺と大地みたいな感じな。と付け加えてニッと笑う。

「小一の時だ。少し肌寒いある日、男手一つで育てていた陽奈の親父さんが殺された。殺したのは通り魔だ。運が悪かったってみんな言ってたけな。動機は聞いた話によると実にシンプルで人生に躓いて憂鬱だったから人を殺して見たくなった。すぐにその通り魔は捕まって、懲役何年だけな? まあ良いか。数日後、通り魔はどうやったのか脱走した。その数時間後、通り魔は死体として見つかった。なにがあったかは不明」

 快は忌々しそうに言い捨てる。陽奈も表情が曇っているのを見るとこの現実離れしている話しも実話に思う他ならない。

「葬式で親父が無理言って、陽奈を預かることを決め。無理を通し陽奈を養子にした。こんな感じかなぁ」

 快が語り終えてから沈黙が訪れた。陽奈は途中から聞いていられなくなり話しの途中に部屋を出ていった。

「聞かせて悪かったな。こんな話し」

 申し訳なさそうに謝る快。

「聞きたくなかったよ。全くもって聞きたくなかったよ。こんな、こんな悲しい嘘を」

 快は、ばれたかぁ。とニッと満面の笑みで笑って

「気付いていたのかぁ。ちぇっ、ばれないと思ったのになぁ」

「気付くだろ普通に。今朝やったギャルゲーのプロローグ通りじゃねぇか」

 あっ、やっぱりぃ。と言って快はコーラを飲む。

 俺も快に注いでもらって炭酸が随分抜けたコーラを飲む。

「それにしてもお前の妹は随分演技がうまいな。演劇部かなにかに入っているのかよ」

「演劇部には入ってないなぁ。演技は昔から得意だしなぁ、陽奈は」

「あの演技力凄いな。本当に泣いていたと思った」

 あの泣き真似は長年嘘吐きの嘘を見破っている俺でさえも騙し欠けたのだから。

 快を見ると相変わらずギャルゲーをしている。

ギャルゲーってそんなに楽しいものか? ってか、飽きないところ凄いよな。飽きないなら俺も簡単なギャルゲーやってみようかな?

「いつもギャルゲーしかしない快君。ギャルゲーの何処が面白いんだ? 飽きないのか?」

 すると快は、はぁあ。と鼻で俺を笑う。なんだよ、そのお前はバカだなって目はーっ! 近くにあるコーラのペットボトルを持って殴りかろうとすると、しゃあない、教えてやるかぁ。と言ったのでペットボトルで殴るのを止める。

「一言で言うと、エンドが好きだから。あっ! もちろんLikeであってLoveじゃないからなぁ」

「へえー、そうなんだ。ならさ、あのゲームのエンドって何種類ぐらいあるんだ」

 見るかぁ。と言って快はコントローラーを使いCGをクリックする。

「まず、これだなぁ」

 それは、先に俺がしたバットエンドだ。

「これが二つ目だなぁ」

 それも、先に俺がした、BadEndだ。

「これは三つ目だぁ」

 それももちろん、先に俺がした、ばっどえんど。文字を変えれば気付かれないとでも? 考え方が甘いんだよ、バ――カッ! 

「ラストの自称ハッピーエンドだなぁ。このエンドも腹が立つけどなぁ」

 最後のハッピーエンドは主人公がヒロインと結婚し幸せな家庭を築く前に事故死するエンド。8月8日、日曜日。十六歳

 正直、どれのエンドも俺がしたエンドと一緒な気がするけど。

「こんなもんかなぁ。この駄作のゲームは全くヒットしなかったし、クリア出来た人も数十人だしなぁ」

 そう言ってから、快は無表情のまま黙々とギャルゲーを続けた。

「あっ! 一応、このゲーム全部少しだけエンドの内容違うからなぁ。気付けよぉ」

「えっ!」
 
 

 
後書き
次は、2月25日までに投稿したいと思っています。
内容は、鬼ごっこするかも! 
人を助けはまだまだ後かと思われる。しばらく、茶番(日常)が続きます。
どうか暖かい目で見守ってください。
感想、指摘、評価などあったらお願いします! 

 

第四話 【初心を忘れず】

 
前書き
色々あって早く更新できました。
前に言っていたように鬼ごっこ回です。

中途半端(再び)になりそうなので
できれば、早めに更新したいと思っておりまする! 

 


 クラス委員になって、ちょっとした時のHR。六限目のLHRでクラス別交流をするからなにがしたいか今の時間に決めろ。と来島先生命じられた俺と凛は今。

「今から六限目のLHRでになにがしたいか決めるから、意見があったら言って」

 凛が指揮って昼休み後のSHR(昼休みと五限目の間のHR)で六限目にする事を決める。

「なにか意見はない。それじゃないと大地が独断と偏見といたい妄想とで勝手に決めるよ。それでも良いの?」

 また、俺を巻き込む。って、クラス委員だし仕方ないか。

『幸谷君が勝手に決めると――なことになりそうだからちょっと嫌かな』

『わかる。わかる。なんせ、初日に黒板消しに引っかかる、ドジっ子だもんねー』

 凛が変なことを言うから! それに黒板消しのせいでドジっ子属性が! これもよく考えれば凛のせい。

「みんな、大地に決められるのは納得いかないでしょ? 納得いかない人は挙手!」

 クラスメイトの半分ぐらいが手を挙げる。凛は手を挙げた人を見渡す。

「村西、なにかやりたいことでもある?」

『ん? 俺はバスケがやりたい。格好良くシュートを相――』

「はい、バスケットボールね。大地、黒板に書いて。このまま意見が出ないとバスケにするよ」

 村西君の話を遮り、クラスメイトに再び問いかける。俺は、言われたとおりに黒板にバスケットボールと書く。

『なら、俺はサッカーしたいぜ』

 ちょうど書き終えたぐらいで次の意見が出る。また黒板に書く。

『運動音痴だから、カルタとか百人一首がしたいな』

「ギャルゲー」

『鬼ごっこにしようよ。鬼ごっこなら、運動音痴にでも隠れるって言う。必殺技もあるし』

 次々とやりたいことが出る。

 また、懐かしいことを鬼ごっことか小学校以来だな。黒板消しをドアに仕掛けるのもだけど。

「わかった。分かった。大地、ギャルゲー以外全部の案を書いて」

 了解。言われなくてもギャルゲーなんて書くか。サッカー、カルタ、百人一首、鬼ごっこ等々。

 黒板に書かれている種目に目を通してから凛は前に向く

「これから、やりたいのに一票上げて考える時間はないからすぐに上げてね」

 大地は、数えて黒板に記入して。と言って仕切り直す。

「まず、バスケットボールがしたい人」

 1、2、3、……6っとバスケが六人と。

「次にサッカーをしたい人。挙手」

 サッカーが1、2、3、……4っとサッカー四人。

「次、百人一首をしたい人は誰?」

 凛の無駄のない進行でSHRは進んでいく。結果はなんと僅差で鬼ごっこに決定。あら、以外。

「なら、鬼ごっこに決定ね。今日の六限目は……。来島先生、どこで出来ますか? 鬼ごっこ?」

 凛が質問すると来島先生が愛読書を止めて、校舎を使えって良いぞ。と言って愛読書戻る。

「分かりました。六限目は校舎内限定で鬼ごっこにするね。なにか質問はある?」

 校舎を限定ってことは他のクラスの邪魔にならないか? 三年生とか二年生は授業中するんじゃ……。

「おーそうやそうや。このクラス以外のクラスは入らんように」

 愛読書をしていた来島先生がそう言い残しって教室から出ていき、チャイムが校舎中に響く。来島先生と入れ替わりに陽奈が入ってくる。

「凛、ちょっと相談事があるんだけ?」

「陽奈、今から次のLHRにする鬼ごっこのルール説明するところなんだけど」

「鬼ごっこするの? また懐かしいことするんだ」

「ところで陽奈は凛になんの用事で来たんだよ? 急ぎの用だったら、俺がルール説明するし、連れてっていいぞ」

 どうせ、みんな一回はしたことあるだろうし鬼ごっこ。俺一人でもこれぐらいは大丈夫だろう。

「凛に用というか。このクラスの代表に用があるって言った方が正しいかな。実は、私たちのクラスがどっかのクラスとクラス対抗でなにかしたいって言ってるの」

 なるほど。だから、このクラスのクラス委員の凛に用事があったのか。

「対抗でするのはいいけど。このクラスはついさっき鬼ごっこって決まったからな。どうする、凛?」

「いいんじゃない。クラス対抗で鬼ごっこしても」

 凛は、悩む間もなく、即答する。そして、クラスのみんなに対抗で鬼ごっこをしてもいいかを聞く。

クラスメイトもあっさりOKをする。もちろん、快を除いて。

「私たちのクラスは別にいいって。鬼ごっこでいいよね? 二クラスの意見まとめるのは時間ないし」

 陽奈は少し考えるが、クラス対抗でできれば何でもいいでしょ、ウチのクラスは。と言って承諾。

「ルールは始まる直前までに考えるから」

「了解。あたしは決まったことクラスに言ってくる」

 陽奈が教室を立ち去る。

「ルールどうする? 考えるぐらい、俺も手伝うけど」

「当たり前でしょ? 大地もクラス委員なんだから」

 凛は自分の席に着き、ルーズリーフを出す。俺は近くの椅子を借りて座る。

「対抗だから普通の鬼ごっこだと、盛り上がりに欠けるというか、面白くないよな」

「なら、複数鬼をつけようか? それだとまだ、楽しめるかも」

 確かに、複数つけると盛り上がるような気はするけど。

 少し頭の中でイメージをしてみる。迫り来る人、鬼? と質問する俺。違う、今は村西。と答えるクラスメイト。

「なんか、それだと誰が鬼とか分かりにくいような」

「なら、どうすればいいの? なんか良い案があるのよね?」

「いや、それはまだ、思いつかないけど……」

 近くにギャルゲーらしきBGMが流れる。

「なんだよ、快。今はギャルゲーなんてしねぇぞ」

 快が喋りかけてくる前に言う。

「ちぇっ、冷たい奴だなぁ。やろうよぉ、ギャルゲー」

「今、鬼ごっこのルール設定中なんだよ」

「鬼ごっこするのかぁ? そんなこといつ決まったんだなぁ?」

 こいつ、さっきの時間何をしていたら聞き逃すんだ? って、ギャルゲーに決まってるか……。

「快はゲームして、聞いてなかったから。陽奈のクラスと一緒にクラス対抗でするつもり」

「それで、ルール設定を考えてるんだけど、いい設定が思いつかないんだよ」

 すると快は、ポケットから新しいゲーム機を出し、電源を入れて操作する。

「鬼ごっこのルールなんて、これをパクればいいだろぉ」

 快は俺と凛に、ゲームの画面を見せる。そこには鬼ごっこらしきもののルールが書いてある。

「なになに、ゲームは十分間で行います。次に二組に人を分けます。それから、逃げる方と追いかける方を決めます。十分間で一人でも逃げきれば、逃げる側の勝ち。逃げ切れなければ追いかける側の勝ち。さあ、ここで勝って一気にヒロインの好感度を上げよう! ○ボタンと方向キーのみで簡単にできる。スタミナゲージをしっかり見るのがポイント。気に入ったら現実でもチャレンジ」

 これ、本当にギャルゲーか? ミニゲームだと思うけどさ。

「このルールいいわね。快、この画面のままにして」

 凛は、快のゲーム機を机に置き、出していたルーズリーフにルールをまとめる。

 ふっと気になっていたことを思い出す。

「そう言えば、今日は三年生や二年生はいないのか? さっき、来島先生が校舎使っていいって言ったけど、二、三年が授業するなら使えないだろ?」

「今日は、二年は修学旅行の準備で学校にはいない。三年は、昨日の地域の掃除のボランティアで振替休日」

 凛が書きながら説明してくれる。

「なるほどな。今日、この学校は俺ら一年だけってことか」

   ☆

 そして、五限目の現代国語が終わり、待ちに待った六限目のLHRの時間。両クラスは、B組の教室に集まっている。

「今からのルールを説明するね。五分で終わらせるから。ルールは簡単、制限時間十分で二つのチームを構成して片方が鬼でもう一方が逃げ隠れする方ね。捕まった人は教室で待機」

 少し溜めて凛が、三回して勝利率の高いチームに来島先生とC組の高島先生からアイスが貰えるよ。名付けて、クラス対抗変則鬼ごっこ大会! といつも通り高らかに宣言する。

 おぉぉぉぉっ! と両クラスから歓声が沸き上がる。

 クラス代表同士のじゃんけんが始まる。B組の代表は俺で、C組の代表は陽奈だった。

「変態、絶対負けない!」

「おお、望むところだ。最初はグーじゃんけん、ぽん」

 俺がグーで、陽奈がチョキで一回目は俺達、B組が逃げることになった。

「ああ、もうなんで負けるの?」

 B組のみんなが勢いよく逃げ出す。C組は三十秒間後に追いかける。十秒じゃなく、三十秒にしたのは、運動音痴の人が隠れられるためという、凛の心配りらしい。先功、B組。後攻、C組。と言った形でクラス対抗変則鬼ごっこ大会は幕を開けた。 
 

 
後書き

鬼ごっこにしたのは、学校で鬼ごっこをしてみたいという妄想からこうなりました。
誤字、脱字、指摘、感想ありましたらお願いします!
日進月歩、成長できるようになりたい(願望) 

 

第五話【策士は策に溺れてくれ】

 
前書き
ヒーローは遅れて登場するんだZE☆

遅くなって申し訳御座いませぬ。
次こそは早め早めを心がけていきまする! 

 


「俺、体育嫌いなんだよなぁ。なあ、大地。俺とギャルゲーしないか?」
 B組(逃げ隠れする方)の俺は開始二分三十秒で廊下を隣で歩いている快が鬼ごっこに飽きたみたいでポケットから携帯ゲームを取り出して電源を入れながら言う。
「無理。俺は今凄く、リアルを楽しんでいるんだから」
 快の隣でかなり周りを警戒しながら歩く。
「別にクラスの人と親睦を深めるより。ギャルゲーした方が絶対楽しいってなぁ。どうせ、仲良くなったって無駄だなぁ」
「知らん。俺は今日こそ初日の黒板消しのミスを帳消ししてやる。ここでクラスに貢献して、勝利の美酒を味わうんだ」
 あの忌々しい黒板消しで悪くなった印象を挽回する絶好のチャンスをみすみすとギャルゲーのために見逃してたまるか。そんな意志が俺を駆り立てているんだよ。
「まだ、そんなこと考えているのかぁ。……鬼だぁ」
 快が指を指した方にはC組(現在、鬼の方)の加藤君がいる。快は鬼の加藤君を見つけるなり、鬼の加藤君の方へ猛ダッシュをしだす。少し戸惑って俺も快を追いかける。
「おい、快。なんで自ら鬼の方へ行くんだよ!」
 走りながら快に問いかける。ギャルゲーでやった、挟み撃ちだぁ。と一言返して快は廊下の真ん中で待ち伏せしている加藤君を華麗に抜き去る。なにっ! と快に気を取られた隙を衝いて加藤君を避けて俺もそのまま走り抜ける。
「おい、快。確かこの先から行ける場所は……」
 加藤君を抜いて走っていると階段が見えてくる。現在二階、比較的広い一階に行くか。我がクラスのある三階に上がるか? 
「快。どうする目の前に階段があるし、一端降りる?」
 登ったとしても、三階は逃げるルートが少ないため捕まる確率が上がる。
「……登るかなぁ」
 少し考えて決断を下す。俺も少し考える。
「了解。目的は三階か? でもいい隠れ場なんてなさそうだぞ」
 階段を一段抜かしで登っていく。後ろから、加藤君が携帯で誰かに『上に登った』と言っているのが聞こえた。三階を通り過ぎる。
「お前、どこいくつもりだ?」
 キープアウトテープを越えて、重い扉を開けて、屋上に行く。そして、扉を閉める。
「で、どうする? ここに逃げ場は無いぜ」
「ギャルゲーするに決まっているじゃんかぁ」
 即答して、携帯ゲーム機をポケットから取り出し、ギャルゲーをしだす。
「そんな、暢気なことやっても大丈夫なのかよ。屋上って見つかったら終わりだろ」
 廊下を全力並みで走ったせいで服装が乱れていたので乱れた服装を正しながら聞く。
「立ち入り禁止だし、ここに居るって気づかないだろぉ」
 ルール的に大丈夫か? まあ、反してはないけど。でも、ここで時間まで過ごすぐらいなら、タイムアップになるまで鬼ごっこを楽しまないと損だな。
「快。俺は今から降りて、鬼ごっこを楽しんでくるぜ」
 快は、俺を見ずに携帯ゲームの画面を見ながら、俺のことは言わないでくれよなぁ。と言っていたのを聞いたが、敢えてなにも言わずに階段への扉を開ける。
「分かった。同じチームだから言わねぇよ」
 嫌がらせは信頼関係が成り立ってないと友達を無くし兼ねないことを思い出して慌てて言う。
「分かっていた」
 冗談や嫌がらせ出来る仲だろう、俺達はなぁ。とにっこり笑っている快に、じゃあ。と言って階段を駆け下りる。

   ☆

 クラス対抗変則鬼ごっこ大会もいよいよ大詰めの第三回戦。要するにラストの戦いになる。俺達、B組はC組の代表同士の一騎打ちじゃんけんで鬼、逃げ隠れする方を決するじゃんけんに勝利。じゃんけん連勝のB組は無論逃げ隠れする方を選んだ。一方、陽奈、加藤君が率いるC組は渋々と鬼になった。この時点で士気は下がり逃げ切れると思ったが、ここでみんなを捕まえたら、あたしたちの勝ち。アイスはもうすぐそこ。と言って陽奈が士気を高める。
「五分五分の戦いになるな……これは」
「それにしても元気だよなぁ、大地は。だからギャルゲーをしようよなぁ」
 相変わらずギャルゲーをしている快と喋った俺がバカだった。
「まあ、悪いな。俺はこういう奴だからなぁ」
「快は今、考えていたことを分かったのかよ。凄いな、快は」
 携帯ゲームの画面から目を離し、今の独り言なぁ。と言ってまた目を向ける。
 ははっ! 流石、快さん。一勝一敗のこの状況で有利なのは分かるけど……だからこそ、交流しようぜ。一年一緒に過ごす仲間だから。
「ここらで、逃げ切ってアイスを貰ってB組に勝利に貢献しようぜ」
「そうだなぁ。まぁ、俺はアイスなんてどうでもいいしなぁ。それに所詮交流会だし、ギャルゲーと一部の友達がいれば大満足だしなぁ」
 快、今。サラッと悲しいこと言ったよな。
「寂しいぜ。やっぱり、交流会とかでクラスメイトに株上げて友達作っておかないと……なんかお前みたいになりそうで嫌だ」
 友達いなくて、暇になり。暇つぶしにゲームをやっている学校生活なんて真っ平ごめんだ。
「嫌とか言うなよ。それこそ、悲しいし、寂しいぜよぉ」
 俺がなぁ。と付け足し、ギャルゲーに戻る。
「どうでもいいけど、二人とも最後ぐらいは勝利に貢献してよね」
「当たり前だ。クラスのみんなにアイスを!」
 本音は、黒板消しによって悪くなったイメージをよくするためだけど。
「随分、やる気だけど。また捕まるんじゃない?」
 一回目に捕まらなかったからって、いい気になりやがって。
「なら、お互いのアイスを賭けて。どっちが先に捕まるか勝負といこうじゃないか」
「望むところよ、大地の吠え面が目に浮かぶわ」
 睨み合う二人。すると、そんな俺達三人の元に陽奈、加藤君が来た。
「凛。B組には絶対にアイスは渡さないから」
 ここに来てC組がまた戦線布告をしに来た。てか、どんなにアイスが大事なんだよ。
「それはこっちの台詞よ。勝のは、B組。覚悟はできているよね?」
「覚悟ならとっくの昔に出来ているよなぁ? 大地君やぁ~」
 この快の奴、さっき話した黒板消しの日の決意のこと言っているな。
「なら良かった。これで本気を出せる、交流会だからって手を抜いていたけど……もうそんなことどうでも良い。勝ちに行く」
「陽奈が本気でやるなら、私も遠慮なんてしないから」
 一応、交流会なんだし、仲良くやれよな……はあ。……前言撤回、やってやろうじゃないか。
「それでも勝のは、あたしたちC組!」
「「いいぜ(わよ)。その喧嘩、勝ってやる」」
 俺は手を抜くかもしれないなぁ。と言ってトイレに向かう快に、やれよ! と一喝する。
「みんな、準備はいい? 紅白鬼合戦大会。ラスト戦、はじめぇぇぇええ!」
 凛の宣言と共に紅白鬼ごっこ大会(過去)現、紅白鬼合戦大会が始められる。鬼が三十秒間止まっているのでその間に距離をとり、出来るだけ離れる。
「――29、30。みんな。まずは体力のありそうな人を片っ端から狙うこと」

    ☆

そんな命令が何故か今一緒にいる。快の耳に入っていた。
「あっ! そうだ。大っち、ここに来る途中に凄いことを聞いたなぁ」
 急に声を出すから、一気に周りを警戒してしまった。
「な、なんだよ。その凄いことって?」
「まあ、俺には関係ないんだけどなぁ。C組の作戦では、運動が出来る人から狩るみたいだぞぉ」
 快はこれ以上ないくらいの満面の笑みで言う。
 何処まで、人の不幸が嬉しいんだよ。と思ったが快が余りにも嬉しそうだったので言う気をなくした。
「快、どこで仕入れたの、その情報を? てか、なんで知っている?」
「トイレに行っている間にお前と凛が勝手に陽奈とかと盛り上がって、紅白変則鬼ごっこ対戦を始めるから出遅れた。だからなぁ」
「分かった。出遅れてトイレから出たら勢いを増した紅組がお前を無視して走っていったとかそんな感じだろ?」
「流石ぁ、我が親友。良くお分かりで、詳しく言うと紅組みんなが口々に運動できる奴を狩る。付き合っている奴を狩る。リアルが充実している村西と幸谷を狩るって、言って村西の所に行ったからなぁ」
「待って! なんで俺まで……。リアル充実組に入った覚えはないぞ!」
 スマホのバイブが数回振動するのに気づき、快はスマホをポッケトから取り出す。内容を確認してから俺に見せる。
 なになに、宛は陽奈で、変態と行動していると思うから送る。村西は捕らえたから。と絵文字ありで送られている。
「おい、大地。村西君が捕まったみたいだなぁ。どうする? 鬼がこっちに流れて来るかも知れないなぁ」
「次は誰を狙ってるんだ? 順番的には……」
「次はきっとお前だぁ。まあ、俺には関係ないけどなぁ」
 また、スマホのバイブがする。今度は俺で、中身は凛からだ。陸上部の北原君に弓道部の江上さん等々の捕まった人の情報が入る。
「やばいぞ。大分、捕まってきている。そろそろ、逃げた方が……」
「見つけた! ゲーマーの桜沢君にクラス委員の幸谷君です。みんな、幸谷君を優先にしてついでに桜沢君も捕まえましょう」
 あれは、一回戦で華麗に快に抜かれた。加藤君だ! 
 俺をついでにして快に集中しろよ。快があの場にいなかったら、俺は捕まっているから。と内心焦りながら加藤君に背を向ける。
 すると快は、俺、関係ないからなぁ、捕まってもいいやぁ。と言って加藤君の方に走って行く。出遅れた俺は罠と分かりながら階段を目指す。
掛かったよ。と大声で加藤君が叫ぶと目の前に二人のC組が立ちふさがる。
 
    ☆
 
一方、快の方では楽に加藤君やその他のクラスメイトを抜き。前にある男子トイレからの奇襲を予想して、トイレのドアを足で押さえる。中からドアを叩く音がする。どうやら、成功したなぁ。と内心思う。さっきは大地に関係ないと言ったがどうしたものかぁ。一応、逃げ切って大地に貸し一つとしようかなぁ。
「さあ、これからどうするかなぁ」
 向こうの計画だときっとここで捕まえるつもりだろうからなぁ。また、屋上に逃げてギャルゲーしながら時間を潰すかなぁ。
屋上に向かうルートを考えようと快に油断大敵、その言葉が快の耳に入いる。
 その言葉の主を確認する為に後ろを向くとそこには陽奈が。どこから、現れたぁ。と思ったが、すぐに出所が分かった。出所は女子トイレだぁ。男子トイレがあるなら女子トイレも近くにあるのは当然である。男子トイレからの奇襲は予想済みだったが、女子トイレからの奇襲は考えたが女子はそんなことしないだろと高を括っていたのが反省すべき点だぁ。それに男子トイレに隠れている鬼がドアの内から音を立てたのも納得出来るしなぁ。普通、中にいることを教えずにいないのかと油断させるとトイレより周りに警戒心が強まり、そしてトイレへの警戒心が薄れたところを狙うからなぁ。逆に内からドアを叩くと周りよりトイレに警戒心が強まる。だから、トイレを気にしすぎて周りから来る。鬼に気付けなかった。まさか、ここまで読める奴がいるとはなぁ。
「やるなぁ、陽奈も。まさか女子トイレに隠れるとはなぁ」
「そう? お兄ちゃん……快のことだから女子トイレは警戒網から外すと思って」
 陽奈はそう言って、タッチする。これで捕まった。
「我が妹にしては、頭をつかったなぁ。これ、陽奈が考えたのかぁ?」
「加藤(かとう)清道(きよみち)が考えた。快君にはこれくらいの罠を張らないと、って」
 大人しく教室へ戻ってよ。と言って陽奈は廊下を走って行った。
 やられた。陽奈の情報に加藤の罠かぁ。大地は無事に逃げ切れるだろうかなぁ? まあ、俺が見込んだ親友だからなぁ。
 少しはクラスメイトに興味が出た様だったが、すぐに携帯ゲームを取り出しギャルゲーをし出す。

    ☆

一方、大地の方では。
「ふぅーっ。あの柔道部の体格のいい富山君がいてくれて良かった」
二人のクラスメイトを根性と『あっ! UFO』で抜き。階段を登って二階に行ったら追ってきた、加藤君たちも二階に行くことを予想していたみたいで、二階に別働隊が待ち伏せていた。かろうじて別働隊を避ける。避けるのは成功したが逃げ切れた訳じゃない! その時に目の前から紅組に追われていた白組の富山君が現れた。富山君は俺とその後ろにいる加藤君含む、紅組小隊を見て逃げ切れないと悟って俺の盾となってくれた。富山君の捨て身の守りのお陰様で後ろの紅組小隊が少し足止めされたのを確認してから富山君を追って相当疲れ果てた紅組のクラスメイトを余裕で抜き、そのまま三階の階段へ走り出す。三階の階段を登り、近くにある男子トイレに入り身を潜める。
「これから一人か、快がいれば話し相手にでもなったのに……。考えても仕方ない、後。七分三十秒間頑張るしかねぇよな。それに捕まったら、アイスが凛のものに」
 男子トイレから出るとすぐそこに三階の階段を二階に下る、紅組のクラスメイト数人がいた。
『後、残り七人でこっちには陸上部が三人もいる。アイスはすぐそこだな』
『……それに加藤たちが狙っていた二人の片割れは罠に引っかかった』
『でも、もう一方は悪運の強さが尋常じゃないって』
 他のB組の仲間も同じような手でやられているのか。足音を立てずにこのC組のクラスメイトから離れるか。
 その後、単体で行動している鬼としか出会わないと言う、悪運の尋常じゃない強さ。そして、現在ラスト三分にまで至る。
 後、何人ぐらい残っているかな? と考えながら二階へ上がる階段に差し掛かったところで階段を見るとそこには……加藤君! 
「また、加藤君かよーっ!」
 加藤君は舌打ちをして階段をテンポ良く下る。廊下を走り、単体の鬼を見つけては避け、見つけては避け。そんなことをしているとやる気が欠けていた鬼達までも『待てやぁーっ!』とか『やるね、君』などと言って追いかけてくる。一瞬、これでクラスメイトに認識してもらえる。やったー。などと悦楽に浸っている間もなく、C組のクラスメイトに追われる。
 鬼=スタミナ∞でなく疲れるものだ、疲れて歩き追うのを止めていく鬼の中。奴は諦めずに俺を追う姿をしっかりと確認した。そいつは次々と倒れていく鬼達の想いを受け取り、俺を追う。
だからと言って、俺も捕まる訳にはいかない。俺もB組のみんなの想いを背負ってこの廊下を走っているのだから。まあ、それよりも凛に負けたくない。と言う意地の方が強い。
「加藤君っ! 俺達が逃げ切って勝利は頂くぜ。そして、アイスは俺達、B組が貰うからな」
 加藤君から逃げながら後ろも見ずに叫ぶ。
「それは困ります。こっちらもそう易々とアイスを渡せない理由もありますからね」
 と言って加藤君と俺の戦いが始まった。しかし、持久戦は大地が不利になりつつあった。
 残り六十秒。生き残り俺と凛と神(かん)凪(なぎ)さんの三人になっていたらしい。神凪さんは運動が嫌いなのか何処かに隠れているらしい。半数の鬼は神凪さんを捜して、後半数は俺と凛を捕まえようとしている。
 加藤君、結構体力あるのかよ! 見た目で人は判断してはいけないってこういうことか! 
「もう、諦めたらどうでうすか? 僕が力尽きても、他の鬼が君たちを狙ってくるんですよ」
 加藤君は問いかけるように叫ぶ。俺は叫びたい気持ちを抑え、全力ダッシュをする。
 するとついに加藤君が追いかけるのを諦めて歩き出す。
 これは逃げ切った。と思った時、加藤君の後ろからC組の鬼を連れて陽奈が全力で追いかけてくる。
 俺は悟った。俺が最後の生き残りだと、B組の最後の希望だと、逃げ切れば……B組の英雄だと! なら、逃げ切るしかない。
「そして、凛からアイスを奪ってやる!」
「それは、まだ分からないわよ?」
 目の前から凛の声が聞こえる。凛の後ろにもC組の鬼が!
「なんで、前から来るんだよ!」
 挟み撃ちとか、無理だろ?
「知らないわよ! 大地がそっちから来るからでしょ?」
「仕方ないだろ、加藤君に追いかけられていたんだから!」
 加藤君……。もしかして、これを狙って今まで必死に追いかけていたのか?
 チラッと後ろの加藤君を見る。加藤君は笑っていた。どうやら、俺は加藤君の手のひらで踊らされていたようだ。
 さて、どうする。目の前には凛と鬼。引き返そうにも後ろには、陽奈とか。ここは二階の廊下で当たり前だけど一本道。多くの人を交わせるスペースもない。そして、あの数から逃げ切るほどの体力は残ってないんだよ。
「君は! 諦めるのかい? 折角、僕から逃げ切ったのに、君は諦めてしまう器なのですか?」
 この声は! 加藤君? そうだ! まだ、逃げ切れない訳じゃないはずだ。なにか手があるはず。この残り少ない体力で出来るなにかが。
「みんな、残り三十秒を余裕で切った。陸上部の人は本気で大地と凛を捕まえて」
 もう、考える時間がない。陸上部のクラスメイト中心に走ることを得意とするクラスメイトがすぐそこまで迫っている。
 逃げ切る手はないのか? クラスメイトから逃げ切る手を! 考えろ、きっと何処かにあるはずだ! この状況を覆す活路が。……っ! こうなったら、やるしかない。
 俺は近くの窓を開ける。
 心の準備をする暇はねぇ。すぐに飛ぶしかない。飛んだ後のことは、空中ででも考えるとするか。
「まさか、ここは二階ですよ? ケガをしてもいいんですか! 僕は、窓から逃げられないように一階を避けておいたのに!」
 加藤君が驚く。俺は二階から勢いよく飛び降りる。空中でバランスを取り、手を着くが無事にケガ無く着地。
 ふう、これで逃げ切っただろう。二階から飛び降りる奴なんて早々いないだろ。と、腰を上げる。
「大地、どいて!」
 二階から凛の叫び声が聞こえてくる。直後に凛が髪をなびかせ降ってくる。正確には、飛び降りてくる。凛は俺よりも綺麗に着地する。
「あ、あぶねぇな!」
 男子ならともかく、女子はいくら他の二階の窓に比べて低いからって飛び降りないだろ!
「お前、いくら切羽詰まったからって、二階から飛ぶなよ。心配するだろ」
「大地に言われたくないわよ! それに私だけ捕まって、アイス取られるのも尺に障るから」
 まあ、パンツは見えていたけどケガなくてよかった。それと着地は俺より見事だったけど……。
「案の定、二人が降りましたよ。みんさん、後は頼みました!」
 二階から加藤君が叫ぶ。すると校舎の影から、C組の連中が姿を現す。
「まさかと思うけど……。加藤君は俺達が降りることも予想していたと」
 なら、さっきの、まさか、ここは二階だぞ。の件は三文芝居だというのか? 加藤……。加藤の奴! 策士だな!
「そ、そう見たいね。これは非常に不味いわね」
 流石の凛もこの数には圧倒されているみたいだ。俺と凛を目掛けて走ってくるC組の人たち。
 この数は、逃げ切れる量ではない。背中を向けて走ったとしても今の俺の体力じゃ、どうにもならない。
「私は右行くから、大地は左へ! 二人中良く一緒にいても絶好の的になるだけだから!」
 直ぐさま、凛が対応する。この状況でも諦めてない凛は凄いよ。凛も体力的に限界なのに。
 俺は最後の力を振り絞って左に走る。取り敢えず、あの量を分断して凛の負担を減らす! しかし、C組の追っ手がもう触れることのできる位置に!
「逃げ切りたい!」
 切なる思いをつい口に出してしまう。
「……避ければいい……と思います」
 ……避ける? そうか! 避ければいいんだ! まだ、希望の光は消えてない。
『よし、捕まえた!』
 伸ばした手を払い、手の主を避ける。そして、雄叫びを上げる! クラスの女子はビクッとして一歩引く。その隙に男子の手を払いながら避ける。
『おい! 反則じゃないか!』
 叫ぶ男子クラスメイトの言葉を無視して目の前の鬼に集中する。
「反則じゃないよ。これは暴力でもないし、タッチされた訳じゃないですからね」
 二階から加藤君が叫ぶ。フェイントを掛けて最後の一人を抜く。
 抜けた、俺の勝ちだ! いや、B組の勝ちだ! これで俺は初日の黒板消しから生まれた、ドジっ子属性がなくな――
「凄いよ。大地君はみんなを抜ききるなんて! でも、終わりだ」
 目の前に加藤君が降りてくる。そして、道を塞ぐ。
「これも計算の内って訳か……! 最後の最後までしつこいね」
加藤君は無言で笑う。俺は諦めずに今出せる全力で加藤君を抜こうとした時に後ろから、終わりだ、変態。と言う陽奈の声が聞こえて肩をタッチされる。
 ……終わった。
 タイマーの音が陽奈のポケットから響く。
 すぐに凛の方を見たがどうやら捕まっているようだ。凛の周りには、陸上部の人たちがいた。加藤君は、俺より凛を優先して狩りに行ったようだ。
 
 

 
後書き


もう少しでまともな話しを書きたい。

指摘・感想・誤字脱字がありましたらすみませんでした。
 

 

第六話【春の訪れ?】

 
前書き
すみませんでしたの一言しかないです。
一か月に一本とか言ってすみません。第五話からもう七か月の
月日が経ってますよね……。
 

 

 閉会式っぽいものあり結果発表に移った。その時、俺と凛。C組の委員、加藤君ともう一人の子。両クラス委員二人と来島先生、高島先生だけは結果を知っている。と言っても殆どのクラスメイトが知っているだろう。
「結果発表をするね。結果は……」
 凛が結果発表する時、俺の心は心地よい気持ちだった。それは、反則ギリギリの行動をしても勝ちに行ったことをみんなは忌々しく思うよりも、その最後の最後まで諦めないことを評価してくれて、C組のクラスメイトが拍手をしてくれた。もちろん、教室に着いてからもB組のクラスメイトから拍手喝采を受けた。さらに結果が……。
「……結果は、B組の勝利! アイスはB組に提供したいと思います」
 クラスメイトたちが拍手喝采で盛り上がり、閉会式っぽいものは無事終わり。アイスやジュース、お菓子などが配られクラス交流会フィナーレが始まった。
アイスを持って、快の所に行くといつも通りギャルゲーをしていた。
「大地かぁ? 今、俺は忙しいから話しかけないなぁ」
 携帯ゲーム機の液晶画面を見ながら言う。
 おいおい、折角の交流会フィナーレでギャルゲーするなよ。と思ったが敢えて言わなかった。だって、それが快と言う男なのだから。
 快の隣にスペースを置いて座る。よく見るとこのアイス結構なお値段のカップ状のアイスだった。
 なるほど。だから、みんな燃えていた訳か。確かに学生じゃ食べにくい額だよな。と一人でみんながアイスを欲しがっていた訳を勝手に解釈していると、目の前にクラスメイトの加藤君がジュースを二つとお菓子を持ってくる。
「大地君の好みは分からないけど、これ結構、僕は好きなんだ」
 加藤君はそう言って近くに腰を下ろす。はい、どうぞ。とジュースを差し出す。あがとな。と言ってジュースを受け取る。
「大地君。君の連絡先、教えてくれないかい? あぁ、無論、強制はしないから」
 食べているちょっと高めの学生には手の出しにくいアイスを吐きそうになる。もちろん、気持ち悪いからじゃなく。唐突だったから驚いただけである。こういう経験がない訳じゃないけど、こういうのは慣れないものである。
「もちろん、大歓迎だよ。って、言うか、こちらこそお願いします!」
 慌ててポケットからスマホを出して頭を下げる。加藤君は、あはは。と苦笑しながら赤外線で連絡先を交換する。他のクラスメイトとも仲良くなれるなんて!
「それでは、これからよろしく、大地君」
「こちらこそ、よろしくな、加藤君」
 こっちに来て、三人目の友達が出来て少し嬉しい。これで向こうの心配してくれていた友達にもいい報告出来るぜ。
『クラス委員、連絡先交換しよう』とクラスの殆どの人が来る。あれ? 夢を見ているのかと頬を摘んでみるが頬が痛い、これは夢じゃないんだ! と驚き、加藤君の方を見ると、ニッこと笑ってくれた。
『早くしよう。後が五月蠅いから』
 やったー! と喜んでいたのはつかの間で、クラス委員って『桜沢君の連絡先知っている?』と快の連絡先を聞かれ、『天海の知っているよな? 仲いいから』『陽奈さんのも持っている?』と凛や快、陽奈の連絡先目当てかよ! それを知るために連絡先聞きに来たのかよ! かなり落ち込んだ。それでも諦めずに笑顔を作り、悪い、本人に聞かないと教えられないよ。と言って断る。大半のクラスメイトが一気にスマホのアドレス帳に登録されたスマホの画面を一通りに目を通し、嬉しくて、悲しいような複雑な気持ちのままスマホをポケットに入れる。
「大地君はモテモテだね」
 加藤君がからかうように言う。加藤君のからかい方は可愛いものだ。快に比べたら……。
「加藤君は興味ないの? 快や凛のやつ?」
 余り興味を示してなかったような気がするので確認がてら訪ねてみる。
「快君や天海さんかい? 僕は知っているよ。快君や天海さんと同じ中学校だからね。あっ! そうだ。忘れるところだった」
 加藤君は忘れそうになっていたなにかを思い出したようすで辺りを見渡す。
「どうした? 加藤君。急に周りを気にして?」
「僕としたことが頼まれていたことを忘れるなんて」
 一応、質問に答えてくれたみたいかな? 
 加藤君は一人の女子クラスメイトを見つけると。神凪さん! こっち。と言って一人の女子クラスメイトを呼ぶ。呼ばれた女子クラスメイトはあたふたとしながらこっちに来る。
「今日の紅白鬼ごっこ大戦のMVPの神凪さん」
 神凪さんが来ると賺さずに加藤君が神凪さんの紹介をする。
 あっ! 言い忘れていたけど、俺と凛が捕まって終わった。第三回戦の結果は白組の勝利だった。俺は勝手に自分が最後の希望と勘違いしていたみたいで、実は神凪さんは見つかってなかったのだ。翌々考えてみると最後の時に俺を追いかけて来ていた鬼も運動の出来そうなクラスメイトばっかりで女子クラスメイトあんまりいなかったような? 女子や運動が得意じゃないクラスメイトは神凪さんを捜していたのかな?
「どうしたんだよ? なんで神凪さんが?」
 もしかして、俺に気があるとか! 俺に人生初のモテ期到来か! 
「……迷惑かも知れないんですけど。……交換してもらえますか?」
「? 別にいいけど」
 キターのか? これは本格的に俺に気があるのかな? 加藤君が、大地君、にやけているよ。と耳元で忠告してくれた。俺は勘違いされないように慌てて無表情にする。
「……一応、言いますが。……私は付き合っていますから」
 加藤君が隣でクスクス笑う。笑う加藤君を睨むと、ごめんよ。と笑いながら謝る。
「い、今のことは誰にも言わないで下さい! 親にバレたら、彼が!」
 急に焦りだし、大地の首元を持って上下に強く揺らしながら懇願する。
「わ、分かった。い、言わないから、た、助けて」
 凄い勢いで首が上に行ったり、下に行ったりで気持ちが悪い……。
 見るに見かねて加藤君が神凪さんを止めて落ち着かせる。
「た、たうかった、かおうくん。ありかとな」
 自分でもなにを言っているか分からないけど礼を言う。
「大地君は少し休んで、神凪さんは落ち着いて誰にも言わないから」
 加藤君が一人で取り乱している神凪さんを落ち着かせようと努力する。私は悪い子だ、彼との約束を守れなかった。と泣きながら叫ぶ。なんだ? と、こっちを見るクラスメイト達に加藤君が、ちょっと色々あってね。と言って苦笑する。大丈夫? と聞く心優しくて、仲の良いクラスメイトにも神凪さんは、やくそぐが。と号泣する。
「五月蠅いなぁ。こっちはギャルゲーを楽しんでいるのに近くで泣くなよなぁ。誰にも言わないし、約束破ることだって偶にはあるものだぁ。気にするなぁ、それに誰もお前のこと興味ないってぇ、多分」
 ギャルゲーに集中出来なくなった快が神凪さんを諭すように言う。
「……本当ですか? ……本当に」
「本当だぁ。面倒くさいなぁ、大丈夫。彼も許してくれるし誰にも言わないよぉ。クラスメイトと彼を信じろよなぁ」
 クラスメイトやあの加藤君ですら手の焼いた神凪さんをすぐに諭し、落ち着かせる。
「……ありがどうございばす。……桜沢君」
 嗚咽を漏らしながら快に礼を言う。
「別に大丈夫だぁ。泣きやむまで休めよなぁ」
 快が言うと神凪さんは首を縦に振り、さっき、大丈夫と声を掛けてくれていた仲良しグループのクラスメイトと元いた場所に戻る。戻るのを確認してから快は、またギャルゲーをし出す。
 快め、なんでこんなに面倒見がいいのかは今度じっくり聞くとしよう。
「大地君、大丈夫かい?」
 一段落して加藤君が安否を問いかけてくれる。気持ち悪くて、今にも吐きそうだけど。意地を張って、別に問題な、うぅ、いっ。と答える。
「大地君、トイレ行こう。吐いた方が楽だよ」
 実は大げさな演技をしていただけで今はもう、結構ふざけられるぐらい回復していたりする。ピークの時は本当にリバースするところだった。
「本当に大丈夫。もう大分マシだから」
 ホント、ホント。ピークに比べたら余裕ですよ。
「なら、良かった。大地君、神凪さんの連絡先は僕と先いた葭原(よしはら)さんで交換しといたからね」
 葭原さんとはさっき神凪さんを元の場所に連れって行ってくれたクラスメイトかな? と勝手に解釈する。
「ついでに、葭原さんのも入っているから」
「了解」
「変態? 加藤清道? 凛見なかった?」
 ジュースを持った陽奈がこちらに来る。少し不安そうに周りを見渡している。
「俺は見てないけど。加藤君は見た?」
「そう言えば、さっきから見かけないね」
「……。加藤清道はありがとう」
 って、俺には礼はなしか! まあ、いいけどな。
 加藤君だけに礼を言って陽奈が女子仲間の方へ行く。
「凛のやつ、トイレでも行ったんじゃ。てか、なんで心配そうなんだ?」
 多少の疑問を抱きながら、アドレス帳を確認すると加藤君の言う通りに神凪さんと葭原さんの連絡先が増えていた。
 これでまた、友達が一気に増えた。今日という日があって良かった。神様ありがとう。僕は、僕は、あなたの御陰で幸せ――

    ☆
 
 

 
後書き
後六話ぐらい連続投稿しないと(使命感) 

 

第七話【懐かしきあの頃】

 
前書き
第六話続きです!
多分次から本編(?)にはいれるかな? 

 

 ――と思った俺がバカだったぁーっ! 
 現在、俺は男子トイレで一仕事を終えたのであった。なにがあったと言うと、一気に友達が増えたことを喜んでいた俺はこのまま、今日という日がいい思い出になると思っていた。だが、神様はそれを許してくれなかった。そして俺にとって、今日という日を嬉しいような、悲しいような日にしたのだった。
 俺がギャルゲーを一通りクリアした快と新しい友達の加藤君と加藤君おすすめのジュースを飲んでいた時のことだった。
 交流会フィナーレは最高潮に達していた。元々ノリの良いクラスだったし、馴染みやすかった。今日の交流会の御陰でクラスはさらに打ち解けあって、仲良しグループの輪も広がっていた。
 そんな、一つの仲良しグループがじゃんけんで負け人が勝った人たちの言うことを聞くと言うゲームをやっていた。高校生になって恥と言う言葉を知っている、その仲良しグループは変態的な命令は一切出さなかった。しかし、告白とか、好きな人を教えろ。などの幼稚な命令は冗談で出していた。
 そこに一人のクラスメイトが冗談半分で十回回って、その場で十秒ストップしてみてよ。と言う命令を出した。命令を出されたクラスメイトは命令通りに十回回って、その場にストップするが四秒ぐらいでその場から動く。これは無理。と言って座り込む。すると見ていたクラスメイトが、出来るだろ。と言ってチャレンジし出す。そして、ラスト二秒のところでその場から動く。これは無理、本当に無理。吐く。と言って座り込む。ラスト二秒だったし、頑張れば出来る。と言って三人目がチャレンジする。一人目にやったクラスメイトが、吐くな。と忠告して、二人目にやったクラスメイトも、ゴミ袋用意しとく。と言って万が一のためゴミ袋を用意する。
 そんな様子を見ていると急に昔のことを思い出いた。小学校の給食の時のことである。ある一人の友達がリバースした。その時のゲロが何故か今、鮮明に浮かび上がってくる。さっきから治まってきていた、あのモヤモヤが急に盛り返しって来る。これはやばい。と思って快や加藤君に、ちょっとトイレ。と言って全力で男子トイレを目指す。不幸中の幸い、男子トイレはB組の教室から案外近かった。そして、和式、洋式関係なしに適当に入って、リバースする。
 リバースが終わって、洗面台で手を洗い、口を濯いでB組へ向かう。
 最悪、今日は食欲ゼロだな。今日に限って夕食が大好きなグラタンだったりして。
 余計な心配をしながら鏡で自分の顔色をチェックしていると、近くの階段の方から人の声が聞こえる。なにをしているのかな? と興味本意で覗くと、階段の二階と三階の間にある踊り場に凛と見知らぬ学生がいた。
 凛な奴、あんなところでなにを?
『そろそろ、返事をしてくれてもいいんじゃないか。僕は君が欲しいんだよ』
「前々から断っています。それに今日、先輩は休みですよね」
 先輩? と言うことは年上か、様子から察するに告白か? でも、ちょっと雰囲気が違うような。
『休みを削ってまで来たのにそれは酷いよ』
「すみません。でも、あなたとは付き合えません」
 やっぱり、告白か? でも、なんにせよ。凛が付き合わない。っぽい、ならばそれで良し。って、なに勝手なこと言っているんだ、俺は。凛が付き合おうが付き合わないだろうと凛の勝手だし、もう昔に凛のことは諦めたはずなのに……。
「もういいですか? クラスに戻らないといけないので」
 会釈をして立ち去ろうとする。凛の細腕を先輩らしきものが掴む。
 あいつ、気安く凛に触れるんじゃねぇ! 
 付き合ってもいないのに嫉妬のせいからか怒りが込み上げてくる。
『もうちょっと。居てくれてもいいじゃないか?』
 凛は強引に先輩の腕を引き払い、睨み付ける。
『そんな、怖い顔をしないで。ほら、にっこり。君には笑顔が似合っているんだから。それに、僕の何処が嫌いなの?』
「嫌いというか、それ以前に。私、先輩以外の他に好きな人がいるんです。だから先輩とは付き合いません、絶対に」
 凛はそう言うと階段を登り出す。先輩の方はさっきまでの強気が嘘のように呆然と立ちつくしている。
 無様。って、人の不幸を喜んでいる場合じゃない。やばい! 上がってきた。どうしよ、どうしよう。そうだ!
「あれ、大地。なにしているの?」
「見りゃ、分かるだろ。トイレから出てきて手を洗っているんだよ」
 俺が考えた方法はトイレから出てきて偶々出会ったことにする事だった。
「ふーん、そっか」
 凛は差して興味なさそうに言うと、教室帰るわよ。と言って前を歩く。
「凛はなにをしていたんだよ」
 いや、めちゃくちゃ知っていますけど。
「別にジュース買いに行っていただけよ」
 凛は、誰かに聞いくことを予想していた様にポッケトから缶のレモンティーを出す。
 おい、準備周到過ぎるだろ。
「アンタって、向こうの学校で付き合っていたりした?」
 えっ、ちょっ、それを今聞く? うーん。事実を言えば付き合ったことはないけど、それをすんなり言うのはちょっとプライドが……。って、顔近い! 
「り、凛。急にどうしたんだよ。そんなことき、聞いて第一……」
 俺が向こうの学校行っている間に付き合ってなかったのかよ。とは怖くて聞けなかった。
「別に。どうせモテなかったんでしょ?」
 凛は少しばかり嬉しそうに言って顔を離す。
「はいはい、そういうことにしときますよ」
 投げやりな態度で言う。
「そう言うことってどど、どういうことよ。い、いたの? いなかったの?」
 教えるかよ。と言って凛を抜かす。ねぇ、いるの? いないの? どっちなのよ。と言って凛が追いかけてくる。
「ご想像にお任せしますよ、凛さん」
 なんだか、この懐かしいやり取りが楽しいと思もえた。
「なににやにやしているのよ。この変態」
「にやにやとかしてねぇよ。ちょっと、懐かしいなと思って」
 厚かましい? と聞き間違えて凛が聞いてくる。違う、懐かしい。と答える。
「なにが懐かしいのよ。アンタ、向こうの学校でのことでも思い出していたの?」
「違う、このやり取りが懐かしいんだよ」
 このやり取りね。と凛が顔を顰める。なんか文句あるのかよ? と聞く、別に。と愛想なく答える。
「アンタさ、転校する前の日のこと覚えている?」
 転校する前のことか。そう言えば、凛の家でお別れ会的なことしたんだっけ。
「覚えているよ。確か凛の家でお別れ会開いてくれたんだよな、小学校の友達数人と」
 凛と一緒に、会えなくなるの嫌っ! 一緒にいたいぃ! って、大泣きしていたっけな。
「一緒に泣いた時のことも覚えているの?」
「そりゃ、覚えているよ。今となってはなんで泣いてか、いまいち、覚えてないけど……」
 一緒にいたい。って、大泣きしたのは覚えているんだけど。なんで、一緒にいたいって言ってたんだけ?
「……そっか。覚えてないか」
 まただ。たまに見せる凛の憂い顔がいつも胸に刺さる。
「どうした、凛。大丈夫か?」
凛は慌てたようすで、えっ! 大丈夫もなにも、どうもしてないよ。と言って作り笑顔を作る。
「どこに異常が? 大地の目が腐っているんじゃないの」
 いつものようにバカにする。けど、やっぱり取り繕っていることが分かる。
「いや、気のせいみたいだったみたいだ。悪い」
 そう。と言って凛は前を向く。まるで自分の顔を見せないように……。って、これは考え過ぎだな、俺。
 
 
 

 
後書き
あ、文字数少ない……。
本当にすみません。 

 

第八話【夢はいいよね!】

 
前書き
続きです!  

 
 
 
 私、他に好きな人いますから。
 駄目だ、すぐに思い出す。いくら好きな趣味やゲームに逃げても思い出す。別に凛が誰を好きになろうが凛の勝手だから、俺には関係ない。
 あれから一週間、この自己暗示をさっきから思い出すたびにしている。そのせいで凛とまともに喋ることすらままならない。
 昼過ぎ、食欲がなく、やることがないせいで直ぐに凛のことを考えてしまう。
 俺っていうことはないのかな? ないな……はぁ。これじゃ集中できない。
 気を紛らわすためにゲームをするものの、いつもなら五分で倒せるモンスターを十五分かってしまいスコアが伸びない。
 コントローラーを布団の上に投げ捨てる。それから仰向けになり天井を見る。
「もう、わからん!」
 自室だから、つい大声で叫んでしまう。
 こんな時に凛が、なに騒いでいるのよ。って、言って部屋のドアが開かないかな~っ! はあ、ギャルゲーのし過ぎだな。俺は一人暮らしだし、こんな妄想するなんて……はあ。やっぱり
「もう、わからん!」
 凛が誰のこと好きかも、俺は凛のことを諦め切れているのかも、分からなくなってきた。でも、分かっていることは凛が誰かに恋をしていることだ。
「もう、もう。わからぁーんっ!」
 とにかく叫ぶ。叫ばないと気が狂いそうだから叫ぶ。
「なに、騒いでいるのよ」
 部屋のドアが蹴られて勢いよく開く。開いた先にはエプロン姿でかつ髪の毛を括っている凛の姿が、手にはお盆を持っている。まるで、ギャルゲーの展開のようだ。
 凛? 一瞬、目を疑った。まさか妄想が現実になるとは……! これが引き寄せの法則の力か。って、そんなわけないか。これは夢だな、こんなギャルゲーじみた展開があるわけない。ない、ない、ない。布団、布団。相当、疲れているみたいだし、夢の中だけど寝よ。
 お休み。と夢の中の凛に言って布団に潜る。えっ! ちょ、ちょっと、大地? と戸惑う夢の中の凛。俺は寝ることを決意したので無視して深い眠りにつくはずだったのにこの夢はそうはそうさせてくれなかった。起きろぉーっ! と凛の踵落としが綺麗に入る。しばらく藻掻き苦しみながらなんとか目を覚ます。危うく、目を覚ますどころか気絶し欠ける威力だった。あっ! でも気絶したら夢から覚めたかもな。
「起きた? 朝ご飯作ったから、はい」
 はい。と言われましても、割り箸だけでなにを? それともこれを喰えと? 無理でしょ。
「起きたけど……。これ、なに?」
 割り箸を受け取って夢の中の凛に聞く。夢の中の凛は、割り箸と答えて部屋を見渡す。
「そうじゃなくて、割り箸だけ?」
「えっ! おかずあるでしょ。お盆の中に」
 そのお盆の中が空っぽって言うか、お皿やお茶碗しかないんですけど。
「いや、おかずなんて見あたらないから、ってか、茶碗類しかないから」
 すると、部屋を見渡すのを止めておかずのないお盆を覗き込む。
「ホントだ! おかず入れるのを忘れていたみたいね」
 態とらしく、大げさな反応をする凛。
「忘れるなよ。一番、大事なのに」
 ごめん。と言って、丁寧に俺の部屋のドアを開けてくれる。お盆を持ってドアを出ようとした時、ある違和感に気付いた。
「凛、お前は降りないのか?」
「あっ! ご飯とかはリビングにあるから」
 いや、俺は何処にあるかは適当に探すからいいとして、問題は夢の中の凛が部屋から出るか出ないかだ。
「凛はこれからなにをする気だよ」
夢の中の凛は部屋にあるノートパソコンを指して、そこのパソコンをチェックしようと―― と言い終わる前に手を引っ張って部屋から出してリビングまで連れてくる。
「急になにするのよ! 人のて、手を握って!」
 夢の中の凛は握っていた。手を振り解き、外方を向く。
「わ、悪い。ところで何処にあるんだ?」
 あっち。と外方を向いたまま指を指す。
 夢の中にしては長いな……。普通、夢と言えばすぐに過ぎるような気が……。待って! もしかしたら寝言とか言ってないよな。これが学校で寝ていて、寝言で、凛――。とか言ってないだろうな! ああ~、恥ずかしい。夢なら覚めてくれ。
「どうしたのよ。大地、顔真っ青じゃない? やっぱり、タバスコ入れすぎた?」
 タバスコ? ……そうか! この禍々しい卵焼きが、この夢を脱するキーアイテムか! 
 箸を器用に使い禍々しい卵焼きを口の中に放り込む。………………。
「からぁぁぁぁぁいぃぃぃぃいいい! みずぅぅぅぅうっ!」
「一気に食べるからじゃない! ちょっと、待っていて」
 凛がコップを持って、水を汲みに行く。
 これでも、覚めない夢なのか………………ちくしょう。


「まだ、痛い。口元ヒリヒリする」
「ご、ごめん。ちょっと、タバスコ入れすぎた。つい悪戯心で」
 急に謝られるとさっき、バカみたいに現実と夢の区別もつかなくて、キーアイテムだ。とか言って一気に食べた俺の立場が……。
「大丈夫、俺も調子乗りすぎたから」
「そ、それならいいけど」
 もう、このことは俺の黒歴史の一ページになるから話題変えよう。胸が痛い。
「タバスコの卵焼きは辛くて分からなかったけど、他の料理は美味しかった。ありがとう」
 って、のは嘘でタバスコ入りの卵焼きのせいで全く味が分からなかったんだよな。まあ、凛のことだし、うまいだろうから予想で言ってみたけど。
「べ、別に大地の為じゃないし、お母さんがどうしても、大地の様子見に行けって言ったから来ただけなんだからね!」
 お、おう。どうしたんだ、急に? もしかして癇に障ったか?
 どこが悪かった。やぱっり、嘘吐いたことか? と考えながら見ると凛は、疑われているのと勘違いして、なによ、その目は。と睨み付ける。
「わ、分かった。分かったから、落ち着け」
 疑ってないことを全身全霊でアピールをするとなんとか分かってくれた。
 凛の手料理を食べて、特に喋ることもなかったので食器を洗う。凛が途中に、あたし、洗うからパソコン。などと言っていたが無視した。
「……って、寝ているし」
 食器を洗い終わって来てみると凛はリビングのソファに横たわって寝ていた。
 食器を洗いながら、いきなり静かになったなと思ったらこういうことか。
 く~っ! と背筋を伸ばして縁側の方の庭を見る。
 今日はいい天気だし、さらに土曜日で学校は休み。偶には暢気に日向ごっこでもするか。っと、その前に洗濯物を干すか。一人暮らしてから、随分家庭的になったものだ。
 いつも通り洗濯物を干し終えて、お湯を沸かす。
「って、誰だよ。こんな、忙しい時に」
 凛に昼のお礼をしようとこの頃、やっと身に付いた手料理を作っているとスマホのバイブレーションが鳴る。スマホの画面を見ると、【桜沢快】と表示されている。なんのようだ。と思いながら通話に出る。
「えっ! 今から家に来いよなぁ。って、誘ってくれるのは嬉しいけど……。今はちょっとな」
 そっか。なんか用事でもあるのかぁ? と言って電話越しに聞いてくる。それに電話越しにもギャルゲーのバックグラウンドミュージックが聞こえてくる。
「ああ、ちょっとな。また、今度にでも誘ってくれ。じゃあ」
 分かったぜよぉ、また今度なぁ。と言ったのを聞いて通話を着る。理由を聞かずに分かってくれるところが流石、我が親友。
 スマホを食卓の上に置いて料理の仕上げにかかる。食卓に皿を並べたりして背伸びをする。
ふ~う、こんなものかな。自分的には大分、うまくいった気がする。
 暖かい内の方が美味しいはずなので凛を起こそうとリビングを見る。
「凛、起きろ。もう六時半ぐらいだぜ」
 後、ちょっと。まだ。と寝ぼけている。これは朝弱いタイプだな。と思いながら起こす。
「凛! 飯だ、飯。作ったから食べって帰るか?」
「……うん。食べるね」
 まだ、少し寝ぼけているようで口数が少ない。
 ちょっと、無理矢理過ぎたかな? でも、起きたんだしいいか。
「ご飯、これくらいでいいか?」
「……うん。ありがとう」
 おかしい、おかしい。キャラクター変わっていません?
「……この肉じゃが美味しいね」
 駄目だ。無理、耐えられません。ちょっと待て、落ち着け俺。小さい頃にもこんなことがあっただろ……多分。だから行ける! なにが行けるかは分からないけど大丈夫であれ。いや、あってください。……でもやっぱり可愛い、理性の壁が……。
「凛さん、ちょっといいか? 悪い、俺はもう耐えられないだから……だから……顔、洗ってきて」
 熱い内に食べさせようとしていたから、しっかりと起こせてないんだよな。
「……分かった。食べてからじゃ、ダメ?」
 凛は食べる手を止めて、上目遣いで見つめてくる。
 う、うぅ、ここに来ての上目遣いかよ。いや、別にいいけど。俺が耐えきれない気が……。
「分かった。食べてからでもいいぜ」
 ありがとう。と言って満面の笑みで笑う。
仕方ない、俺の忍耐力の見せ所って、奴だな。それに食べている内に目を覚ますだろ。
 結局、凛は俺が肉じゃがを二杯食べる終わる頃にはいつも通りに戻り、今度は私が食器洗うね。と言って食器を片付けてくれた。
「大地、肉じゃがとポテトサラダの残りはどうするの? 今思えば、ジャガイモのオンパレードじゃない?」
 思っていたより作ってしまっていた肉じゃがとポテトサラダをどうするか、凛が聞いてくる。
「明日に食べるよ。いつも一人分しか作らないから作りすぎた。サラダの方はサランラップして冷蔵庫の中にでもつっこんどいてくれ」
 凛は、そう。と言って食器を洗い始める。
「凛、俺は風呂行くから洗ったら勝手に帰ってくれてもいいぜ」
 そう言い残して風呂場に向かう。少し身勝手なことをしたと思ったのは、服を脱いだ後だったから、そのまま風呂に入った。
 
    ☆
 
 
 

 
後書き
さてと勝手ながら少し投稿遅くなった言い訳をします。
その1 今年の4月に大学生になりました。
その2 それを機にパソコンを変えました。
その3 やる気が消えました。
その4 すみませんでした。 

 

第九話【お祭り騒ぎ】

 
前書き

男女が一つ屋根の下! これは寝るところが問題になるのか! 

 

いい湯だったな、体ポッカポッカだぜ。今日はいい夢を見るといいな。
 風呂から上がり、髪の毛を乾かして柔軟もしてバッチリやることをしてテンションが高めですっかり凛が来ていることを忘れながら、リビングのドアを開けると。テレビを見ながらジュースを飲んでいる凛がいた。
「まだ、いたのかよ!」
 吃驚して、大声で叫んでしまう。
 近所迷惑だなと思って慌てて口を塞ぐ。
「し、仕方ないでしょ。お母さんが泊まってこいって、言うんだから」
 時計を見ると時間は十時を回っていた。確かに女の子一人で帰らせるにはちょっと不安でもある時間帯だ。……いや、普通に危ない時間帯だ。
 しまった。洗い物なんてさせなくて、そのまま送れば良かった。量多かったもんな。
「ちょっと、遅いけど今から送ろうか? 泊まるのは親父さんが怒るだろ? 送っていくよ」
 これも俺の判断ミスが原因だ。帰りたいのなら、送ってでも帰らしてあげるのが普通。
「いいわよ。風呂上がった後だし、体冷えるでしょ? お父さんもノリノリだったし……」
 いいのかよ。男女が一つの寝の下で寝泊まりするんですよ。って、言っても凛の親は変っているからな。昔からちょっとズレてたし。
「じゃあ、大地。お風呂借りるわよ」
 凛はその場から立って俺と入れ替わるように風呂へ行く。
 ちょっと待て! 着替えはどうするんだよ。服は貸せるとして下着は! 
「凛! 着替え、着替え。どうするんだよ」
 慌てて凛を呼び止める。凛は、なに。と怠そうに答える。
「着替えだよ、着替え。服は貸せるけど……下着は? 予備とかないだろ? 下着を穿かないとかはダメだ――」
「し、下着、下着って、バカじゃない。あるに決まってるでしょ! バカ――っ!」
 頬がヒリヒリする。痛い、平手打ちって、あんなにも威力のあるものだったのか。こっちは親切で聞いたのに。それに着替えならお父さんが持ってきてくれたって、その時に一緒に帰るって考えは思いつかなかったのかよ。この変わり者親子が! 
 こうして理不尽ことはあったがその後はないもなく二人とも就寝についた。幸いなことに俺の家は部屋が有り余っているかつ、いつでも親が泊まれるように布団なども一式そろっていた。寝床問題も勃発せずに済んだ。そして次の朝

 はっ! ……って、夢かよ。吃驚したー。
悪夢で目覚めると言う酷い起き方をしたので、何度か深呼吸をして落ち着ける。
 寝覚め悪っ。今、何時だろ? うーっ!
 背筋を伸ばして、大きな欠伸をする。目を擦ってから立ち上がって、閉まっているカーテンを開ける。
 眩しい。……そう言えば今日って何曜日だっけ? もしかして……
 急いでスマホの画面を見る。九時五十六分ともうすぐ十時だ。しかも日曜日! 
 うわー、遅刻する。やばい、学校何時からだ……って、日曜か。なら、もう一眠りしよう。
 布団の中に潜り込む。ドアが開き、母さんが部屋に入ってくる。
「大地、起きて。朝ご飯作ったから」
「母さん、まだ眠いから。朝ご飯いらないぜ、後少しだけ……」
「誰が母さんよ、バカ大地。早く起きて顔洗ってきなさい」
 あっ! そうだ。昨日、凛が泊まっていたんだ。それに俺は一人暮らしか。……眠い。
「布団に逃げない。そんなに夢に夢中なんですかー? それとも昔の彼女との思い出に浸ってるんですかー?」
 違う。と言って布団の中に逃げ込む。
「そう。なら、正直なパソコンさんに聞きましょうか?」
 もう、勝手にどうぞ。メール、履歴なり、画像なり、なんなり確認してください。
「と思ったけど、パソコンはまた抜き打ちでしないと意味ないし。ちょっと、朝からにしては刺激的だけど……」
 凛がエプロンをとって、近づいてくる。もしかして、と妄想するが現実は違う。凛は片足を天井に上げる。
「……踵落としでいいか」
 また踵落としか、これで気を失ってゆっくり寝られ――


「はい、朝食。良かったね、暖かい状態で食べられて」
 良くない、なにも良くない。いつも休みは朝食べないから、きつい。
「これも凛さんの踵落としの御陰さまです」
「皮肉をとやかく言われるのは納得できないわね。起きない大地が悪いんだから」
 ははは、なんも言い返せねぇよ。
「そう言えば、昨日ね。お風呂入っている時に思ったんだけどね」
 唐突に何をいいやがる。吃驚して口の中の物吐くところだったぞ。どうせ、湯船に髪の毛が沢山浮いていたとかだろ悪いな。
「お父さんが来た時に一緒に帰れば良かったなーと。それなら、全然危険じゃないし。車だから早く帰れるし。泊まる必要もなくなるよなーと」
「遅いよ! もっと早く気付よ!」
 普通、来た時に気づくだろう。と呆れていると、そんなに居て欲しくなかったの? と捻くれる。
「別にそう言う訳じゃなくて、そりゃ、俺だって凛が居る方が賑やかでいいし嬉しいよ。でも、これとそれはまた別じゃん」
 なに言っているんだよ、俺は。凛には他に好きな人がいるはずなのに……。
「そう。それはどうも、ありがとう」
 大分、恥ずかしかったので慌てて食器を重ねて手を合わす。
「ごちそうさま。じゃあ、寝るわ」
 凛にそう言って自室に立ち去ろうとすると、起きた時にいなかったら、スマホ見といてね。と言って凛は食器を片付ける。
「別に洗わなくていいぜ。起きたら洗うから」
「そう。嫌って言ったらどうする? 諦める?」
 もう、勝手にしていいぜ。と言ってリビングを立ち去る。


 結局、メールなしで電話も音沙汰なしと。まぁ、別に凛が勝手に帰ろうと知ったことじゃねぇしな。きっと、親父さんから呼び出されたんだって、うん。
「あれ? 外に洗濯物、干したかな?」
 よく見るとリビング、さっきよりも片づいてないか? あれぇ?
 ピーンポーンっと、チャイムの音がする。
「誰だよ、こんな忙しい時に……別に忙しくはねぇか」
 玄関のドアを開けるとそこには加藤君が立っていた。
「やあ、遊びに来たよ」
「どうしたの、加藤君? こんなところに? てか、どうして俺の家を?」
 加藤君は手に持ったビニール袋を差し出して、今日は誕生日パーティーするんですよね? と言って笑う。
 なんのことだ? と小首を傾げているとポケットのスマホが震える、誰からだ。
「ちょっと、ごめん」
 携帯電話の液晶を見るとまた【桜沢快】の文字が表記されている。
「なんだ、快?」
『変態っ! 今日は凛の誕生日だから今すぐ誕生日パーティーの準備しておいて、分かった』
 って、陽奈かよ。一応、連絡先とか知っているだろ。自分の携帯使えよ。
『聞いている、変態? 凛の誕生日だから準備しておいて、分かれ』
そっか! 今日は凛の誕生日じゃん。危なっ、忘れるとこだった。
「分かった。で、準備ってなにを?」
 プーッ、プーッ、プーッ。……って、切っているし。
「大地君、用事は終わったかい? 一応、陽奈さんに言われて来たんだけど、聞いてなかった?」
 待てよ、陽奈に呼ばれて来たってことは、なにを準備したらいいか知っているかも知れない! 
「加藤君、陽奈から準備のこと聞いた?」
「ごめんね、大地君。天海さんの誕生日パーティーを急遽開くから大地の家に集まって、って聞いた以外は」
 陽奈の奴、まあ、適当に準備でもするか。でも、飾り付けとかないしジュースとお菓子やケーキを買うだけでいいか。って、また快から電話だ。
「なんだよ、快。準備なら確りす――」
『おい、変態』
 また陽奈か。今度はなにを言いだけに電話をした。
『適当に準備をしたら、殺す』
「了解です」
 携帯電話を切る。
やばいな、加藤君と一緒に準備しても間に合うのか?
「僕で出来ることであれば手伝うよ、大地君」
「勿論、そのつもりだぜ。加藤君、これだけで買えるだけのジュースとお菓子を買ってきてくれる? 後、ケーキも」
 自分の財布から四千円を渡そうとすると、僕も半分は出すよ。と、言って二千円だけ受け取って、近所のスーパーへ行くと言って部屋を後にした。
「よし、俺も部屋の掃除をするか!」
 始めは、戻ってきてどうなることかと思ったけど……。なんとかやって行けそうだよ、父さん。
 玄関からピーンポーンとまたチャイムの音がする。
「もう、加藤君が帰ってきたのか?」
 それとも、陽奈が適当に呼んだ客かな? などと考えながら玄関に向かう。扉を開けるとそこには誰も居なかった。
「気のせいかな?」
 郵便かなと思い。一応、郵便ポストを確認すると一枚の手紙があった。気になって取ってみると、ゲームへの参加状と書いてあった。なんのゲームかな? と中身を見ようとしたら……
「あっ! 幸谷君。よっ」
「……こんにちは。お招きありがとうございます……です」
 一瞬、誰だと思ったら、葭原さんと神凪さんと誰?
 そこにいたのは、クラスメイトの葭原さんと神凪さんと同年齢ぐらいの男と中学生ぐらいの男の子だった。
「おい、何度もここ通ってた。しかも、何度もこの家って言った。なあ、光」
「あれれ? そうでしたっけ? 私は分かりませんわ」
「僕は流石に家を間違えたりしないですよ。葭原さん」
「そうだった? 気のせいだよ、栗生、光君」
 葭原さんは惚けた様子で誤魔化す。
「……言っていた……と思います」
 そうか、みんな俺の家知らないんだな。知っているとしたら桜沢兄妹と凛ぐらいか。
「えー、結局、私が悪者か。このイチャイチャカップル話し合わせたなー」
 この栗生って、人が前言っていた彼氏さんか、納得。家は入れるか? 入れるな。
「みんな入りなよ、ちょっと散らかっているけど」
 どうせ、陽奈がどうせなら大勢でとか言ってみんなを呼んだのだろう。
「私がお手伝いをしようじゃないか、まあ、使えるか分からなけどー」
「……私も手伝います……出来れば」
「どうする? 彼女は手伝うと言っていますが彼氏はどうします?」
 この感じ、葭原さんって、以外と快と話しが合いそうだな。
「手伝うに決まっているだろ! お邪魔するんだから」
 葭原さんに振り回されている栗生君が俺を見てなにかに気付いたように
「悪いな、初対面なのに」
「ただい――、お邪魔します!」
 光君を先頭に女子が家に入っていく。
「なんか、ごめんな。こんなに大勢で」
「別にいいよ。人数が多い方が盛り上がるし、俺は幸谷大地。よろしく」
「ありがとう。百田栗生だ、あいつは……俺の従兄弟で名は幸谷光だ」
 百田栗生、これでまた友達増えたぜ。やった。
「さあ、上がって。凛が来るまでに仕上げようぜ」
 
 

 
後書き
うーん。この先は本当に辛いな……。 

 

第十話【似た者同士】

 
前書き

続きパート2! 

 


「そこの夫婦、それはもうちょい右に!」
「これでどうだ?」
「OK。これで終わったよー」
 流石に四人増えるだけで違うな、あっと言う間に飾り付けが終わった。
「ありがとう。もう、休んでいていいよ」
 台所に行って冷たい飲み物を出そうとしたら、ちょうど玄関のドアの開く音が聞こえる。もう一個追加かな? と考えながら玄関に向かう。
「ただいま、大地君。ざっくりこのぐらいでいいかな?」
 予想通り、玄関には加藤君がいっぱいのビニール袋を二つ持っていた。
「ありがとう。はい、加藤君」
 加藤君は荷物を置いて一息ついてから、笑ってコップを受け取り冷たいお茶を飲む。
「そうだ、大地君。快君からもうすぐ着くって」
「了解、もう準備もバッチリだから問題ないよ」
「そうかぁ。それはよかったなぁ、下手したら、間に合ってなかったかもなぁ」
「みんなはリビングにいるのかい?」
「うん、みんないると思うよ」
 分かったと言って加藤君がリビングへ行く。
「もう、来ているのかぁ?」
「来ているよ。てか、勝手に家に入るなよ! 快! 一声ぐらい掛けろよ」
 先から隣で悠々とゲームをしている快に突っ込む。
「いやぁ、それには理由がありましてなぁ」
「ほーう。聞くだけ聞いてやるよ、その理由ってやつを」
「実は、抜き打ちでパソコンのチェックをしようかと思ってしてみたんだけどなぁ、目当ての物は見つからなかったなぁ」
 なるほど、抜き打ちチェックをしないといけないからこっそり入り込んだって訳か。
「いつ頃から、チェックを?」
「清道が買い出しに行って直ぐくらいからかなぁ」
 今回は凛に感謝しないといけないな。凛の御陰でうまく抜き打ちチェックを回避出来ましたよ。
「まあ、いいや。で、後何分で着くの?」
「五分ぐらいで着くかもなぁ」
 やっと、音出してゲーム出来るなぁと、言った感じでゲームの音を出す。
「悪い、快。五分間だけゲームを我慢してくれ」
 なんで? と首を傾げている快からゲームをそれはもう壊れるぐらいの勢いで取り上げる。
「五分間だけだ。ちょっとばかり説教をしてやるよ」
 奪ったゲームを力一杯握る。
「そ、そうだぁ。大地、今さっき連絡あって陽奈たち……も…う……着くってぇ……」
「お前は分かっているのか? いつも、いつも自由なことばっかりしやがって! クラスでなにかしようって、決まっても非協力的でゲームばっかりでそろそろ怠いんだよ! それで俺が、一緒にやるぞって言いに行ったら決まって、ギャルゲーを? って、返してきやがってよ。クラスにとけ込もうとか、もっと協力的になれよ! タダでさえ授業中にゲームしかやらない桜沢君をどうにかしなさい。って、授業の先生に叱られているのに! まず、担任に言えよ! 担任飛ばして、クラス委員ってどういう神経しているんだ! あの先生は!」
 ゲームを心配そうに見る快を睨み付ける。
「それは、悪かったよぉ。今度からは気を付けるからぁ、ゲームは悪くないだろぉ?」
「知るか」
 ゲームを壊す勢いでに力を入れる。嫌な音が鳴り出す。
「ゲームが! ……って、大丈夫かぁ?」
 急に玄関の扉が開き陽奈のドロップキックが俺を襲う。
「痛っ! 急になにするんだよ!」
「あっ! 間違えた」
 間違えた? なにを今更。
「なにを間違えたんだ?」
「本当は変態を褒めようと思っていたのに。どうしてだろう?」
 それは拒絶反応からでは……。
「どうでもいいか。今日はありがとう」
 と言って、手を差し伸べてくれる。悪いなと言い手を掴んだら、今度は急にビンタが飛んでくる! 勿論、直撃。
「ご、ごめん」
 本人も唖然としている、どうやらマジで無意識内にやってしまうらしい。悪気がなさそうなので、大丈夫。と言って、一人で立ち上がる。
「そうだぁ。凛の奴は? 一緒じゃないのかぁ?」
「本当だ。今日の主役さんはどこに?」
 辺りを見渡しても陽奈以外に人の気配はしない。
「今頃、家じゃない?」
「家? 家に忘れ物でもしたのかよ?」
「知らないわよ! それよりも確り出来ているんでしょうね?」
「もちろん。完璧だからなぁ」
 何を偉そうに言っているんだ、お前は何もしてないだろ。
「完璧に出来ているんだよね?」
「あはは、出来ていますよ、陽奈さん」
 この様子だと誇り一つあっても許されそうにないな。はあ、またやり直しか……。

    ☆

リビング全体を見渡す陽奈。いつ殴られるのかを警戒しながら陽奈の様子を窺う。
「結構、綺麗にできてるじゃない。文句なしよ」
 ひとまず、胸を撫で下ろす。
「それより、この子誰? 私、こんな子呼んだ覚えはないよ」
 陽奈は、加藤君やみんなと一緒にトランプをしている光君を見て言う。
「幸谷光君だって、百田君の従兄弟らしいよ。百田君の家の人、今日は遅くて一人にするのもアレだから、連れてきたって」
 陽奈はこちらを見る。そして、また光君を見る。
「百田栗生の従兄弟なのに変態と同じ名字なんだ」
 あれ、確かに陽奈の言うとおり、百田君の従兄弟なのに幸谷って、可笑しくはないけど幸谷という名字は少ないって親父が言っていたんだけどな。
「いいじゃんか、子ども一人ぐらい増えたってね。陽奈ぽんは嫌いかね子ども」
 トランプでもう上がっていた、葭原さんが陽奈をからかう。
「なに言ってるんだなぁ。我が妹は、そんなに器の小さい子に育ててねぇよぉ」
 珍しく快が陽奈を庇う。葭原さんは陽奈の後ろに回る。
「なら、お兄さんは、陽奈ぽんの器は大きくしても、胸も大きくしてあげなかったの?」
 陽奈の胸を揉もうとする葭原さん。
「……美砂。……光君がいるのにそれは」
 神凪さんが葭原さんの腕を掴んで止める。葭原さんは手を引き、加藤君と光君の喋っている二人を見る。
「あちゃあ。忘れてた……てへっ」
「相変わらず、惚けているな」
 百田くんが胡座をかき、精神統一をしながら呟く。
「廻、俺はお前と会うために生まれてきたんだ」
 葭原さんの台詞で、百田君の精神が乱れる。隣の神凪さんは顔が真っ赤だ。
「くさい台詞をよく言えるねぇ。私にゃ、恥ずかしくて無理、無理」
 うるせーな。と本日、十三回目の言い合いが始まる。初めは困惑したけれどなれればそうと言うことはない。
「今日はよく喧嘩するなぁ。あっ、またクリアしちゃったなぁ」
 この状態でも堂々とゲームをしている快が言う資格なんてねぇよ。と心の中で呟く。
「にしても、この子。不思議な感じがする?」
 加藤君と親しそうに喋っている。光君を不思議そうに陽奈が睨み付ける。
「この子も変態と一緒で見ていると腹が立つ」
 背中に寒気が走ったが気にしない。
玄関が開き、とうとう本日の主役のお帰りだ。
さて、ケーキにろうそくを立てて、火をつける準備でもしますか。
 
   ☆

 
 

 
後書き

もうすぐ書き溜めてるのが底を尽きそうです。 

 

第十一話【プレゼントするべ】

 
前書き
これが連続投稿のラストです。
サボった分を挽回できていないので今後も頑張りたいです。 

 

「「「ハッピーバースディ。凛」」」
 凛が暗闇の中、ケーキの上に灯った火を消す。
「電気つけて! 変態」
 陽奈に言われるまでもなく、つけるつもりだって。
 部屋の電気を入れる。電気が灯り少し眩しい。
「みんな、ありがとう。とても、嬉しい」
 楽しい時間はあっと言う間に過ぎて、加藤君。百田君、神凪さん、葭原さん、光君は帰っていった。
「今度も一緒にギャルゲな!」
 また、快は訳の分からないことを。
「少しは見直した、いつも変態から、役に立つ変態に変えてあげる」
 陽奈は玄関で靴を履きながら言う。履き終わると、じゃあね。と言ってドアを開ける。快もそれに続いて、快が片手で手を振り、もう一方でゲームをしながら出る。
「陽奈! 今日は計画してくれてありがとう」
 陽奈は足を止めたが振り返らず、また進み出す。
「夜道には気をつけて帰れよ。また、明日学校で」
 二人を見送ってから、部屋に戻る。まだ、食器やらの片づけが終わっていない。
「誕生日、祝ってくれてありがとう……」
 何処から片づけようかと迷っているとソファに座っている凛がお礼を言う。
「俺は場所を提供しただけでなにもやっていないに等しい」
「そっか。でも、ありがと」
 なんか歯切れが悪いな。気に入らなかったのか? でも、それならありがとうなんて言わないし。
 チャイムの音がする。俺は凛のことも気になったが、玄関に向かう。ドアを開けると百田君と光君がいる。
「どうしたの? 忘れ物?」
「いや、光が凛さんにプレゼント渡し忘れたから」
 光君を見ると手には凛へ渡す予定のプレゼントらしき包装された箱がある。
「俺は、廻や美砂と外で待っているから」
「分かった。栗生おじさん」
 百田君はそう言って外に出る。
「凛なら、リビングだし上がるか?」
 光君は首を横に振って断る。
「大地さん、凛姉ちゃんに渡しとい下さい。じゃあ、お母さんによろしくお願いします」
 光君からプレゼントを受け取る。
「お母さんって、俺の母さんでいいわけ?」
 なぜか、動揺する光君。変なこと言ったか、少し焦る。
「や、やだなー。僕はお母さんなんて一言も言ってないですよ」
 あれ、お母さんによろしくって? 聞き間違えかな?
「もしかして、聞き間違えた? そうだったら、ごめんね、光君」
「き、きっと、そうですよ。それでは、栗生おじさんたち待たしているので」
 頭を下げて、急いで玄関から出る光君。妙に忙しない感じだった。
 プレゼントを持ってリビングに戻る。
「……誰だった?」
 すぐさま凛に光君のプレゼントを渡す。
「光君がプレゼントだって、ほらよ」
 凛に渡す。凛は包装紙をはがし、箱の蓋を開けると中には
「ネックレスか? 二つ入っている」
「……ペアネックレス」
 チェーンの先に指輪見たいのが二つ交わるように着いている。それが二つ。
 光君のこんな物どこで買ったんだ?
 ふと、時計を見るとまた九時を回っていた。
 前みたいになると凛が可哀想だな。
「今日は家まで送って行くぞ。また、昨日みたいになるのは嫌だろ?」
 それからでも十分に片づける時間はあるしな。
「って、どうしたんだ。さっきから俯いて? そんなにプレゼントが嬉しかったか?」
 屈んで顔を覗き込んでみる。目と目が合う。凛の瞳が潤んでいる。
「凛、泣いているのか?」
 凛は慌てて涙を拭く。うっさい。と一言言ってまた俯く。
「……懐かしかったのよ。大勢の友達に祝ってもらうの……」
 そう言えば昔は、よく俺ら家族と凛の家族で誰かの誕生日が来たら、盛大に祝っていたな。
「良かったな。あんなに大勢で誕生日祝ってもらって」
「うん……。いい誕生日になった」
 そっか。よかったな、凛。俺も頑張った甲斐があったよ。
 少しの間が空く。
「……大地、私に一回しか誕生日プレゼントくれなかったね」
「確かに凛から色々もらったのは覚えているけど、あげたことはなかったかもな」
「一回、あったけどね。覚えてないか」
 一回あったことすら覚えてない、一回って酷い男だな、俺。
「覚えてないな。なにあげたんだ、俺は?」
「……秘密」
 そう言えば、今日も買ってきてないな。ずっと家の飾り付けとかしてたし完全に忘れていた。
「今日もあげてないな。明日の放課後買って来る」
「……ありがとう」
 凛の言った、ありがとう。がどことなく寂しそうに感じた。
 やかんのお湯が沸騰して蒸気が出る。俺は、火を止めに行く。棚に置いてあるミルクティーの粉をマグカップ二つに適量入れ、沸いたお湯を注ぎ込む。スプーンで混ぜて、ミルクティーを二つ作る。両手に持って、再び凛の方へ行く。ソファの前に一つを置き、凛の隣に座る。
「冷めない内に召し上がれ。ってな」
 凛がそっと一口飲む。
「……甘すぎるよ」
 そう文句を言って、また一口飲む。

    ☆

「さて、送るけど。どうする?」
 凛は泣きやむと、片付けを手伝ってくれた。その御陰で直ぐに終わったけれど、その分凛の帰る時間が遅くなって現在、十時前。
「取り敢えずは聞きたいこともあったから、お母さんに連絡してみる」
 凛の家と俺の家は言うほど離れていなく、比較的近くにあるから、送る事なんて朝飯前なのだが俺に気を遣って親に電話してくれるみたいだ。
 電話を終えて、凛が近くに来る。
「おじさんが迎えに来るって?」
 俺は個人的に送っていきたかった。その方が凛と少しでも一緒にいられると思ったから。
「迎えに来て貰えない」
「分かった。なら送るよ、俺も心配だから」
 凛は悪いけど、少し得した気分。
「それが。昨日の着替えがどうも一日分じゃなかったみたで、理由をお母さんに聞いたら当分帰ってくるな。って、言われた……」
「帰ってくるなって、じゃどうするんだよ?」
 つまりどういうことだ? 帰るなって、そしたら凛は何処で寝泊まりすることになるんだ?
「って! まさか! この家に住むのか?」
 凛は無言で頷く。
「私だって反対したけど、親が勝手に……。家の鍵閉めたからって」
「なんで、凛だって家の鍵持っているだろ?」
「私はいつも家には誰か居るから持ってないの!」
「なんで持ってないんだよ! 普通は持ってるだろ?」
 凛と同居みたいなのができるのは嬉しいけど、男と女が一つ屋根の下って言うのは不味い。確かに部屋は余っているけど。
「うっさい! こうなるなんて、想像してなかったのよ! バカーァッ!」
 完全に凛の機嫌を損ねてしまった。
「私、先にお風呂はいるから!」
 お風呂? まあ、沸いていると思うけど。
「下着どうするんだよ?」
「さっき、一日分じゃないって言ったでしょ!」
 痛い、またぶたれたよ。どうなるの、お爺さん! 教えてくれ!
 
 

 
後書き
後半は文字数もダメダメだし、やばいな……。
全体を通して、誤字脱字などが多いかもしれません。
また機会があったら連続の奴を丁寧に修正したいと思っています。 

 

第十二話【はじまりのところ】

 
前書き
遅くなりました。すみません。
最近、家に猫が入ってきまして可愛かった。 

 
 第三話 遊技



 凛との同居を隠しながら生活していて数日が経った。そして今日は待ちに待った部活見学の日なのである! いやー、楽しみだ。最近、同居を始めてから例の悩み事を考える余裕がなくなったおかげで、ある面では気持ちが楽になった。さあ、どこに行こうかな?
 周りのみんなは各自の友達同士でどこに行こうか話し合っている。もう部活を決めている人はさっさと教室を出ている。
「快はどこへ行く?」
 周りの楽しげなみんなが少しうらやましくなり、これから帰る予定であろう快に話を振る。
「生徒会執行部に呼ばれているから生徒会の方へ行くかなぁ」
「そっか。快は生徒会に入る予定か。快にしては意外だな」
 ゲームを鞄にしまいながら、快がこちらを不思議そうに見る。そして教室の時計を見る。
「今日はバイトじゃないのかぁ? こんな時間までいると遅刻するって言ってなかったかぁ?」
 ああ、快が不思議そうに見ていたのに納得した。そういつもは授業が終わってすぐに教室か出るのは、他の誰でもない俺だからか。流石にバイトせずに一人暮らしはちょっとね。と言ってもバイト先は知り合いのお店なんだけどね。
「ふふふ、実は今日は休みもらえたんだ。店長がさ、学生の本分はお金稼ぎじゃないって」
 自慢げに話してみる。
「おお! それはよかったなぁ! ってことは今から暇なんだよなぁ? よっしゃ、ギャルゲしようぜ! 大地じゃないとできないことが山ほど溜まっててさぁ」
 反応が想像していた反応とあまりにも違っていて驚いてしまう。
「て、てか、快は生徒会に呼ばれているんだろ? それに部活見学をするために———」
「ああ、会長に呼ばれていたのを忘れってたなぁ。しまったしまった、それじゃ、行ってくるわぁ!」
 快は話を遮り、鞄を抱える。
「おい、人の話しは最後まで聞ぃ————!」
 結局、快は俺の話しを聞く耳持たないまま教室を出る。ため息が自然に零れる。

   ☆

 結局、一人で回ることになってしまった。加藤君を誘ってみたが加藤君も中学の先輩に誘われて陸上と水泳部にそれと茶華道部に、えっと美術部も! 取り敢えず、いろんなところに引っ張り凧の状態である。凜や陽奈も考えたが口が滑って陽奈に同居しているのが、ばれた後のことを考えてやめた。
 前は走り回っていた廊下も今じゃ文化部の呼び込みなどで賑わっている。
『ねぇ、そこの僕? 演劇なんかに興味ないかな?』
 演劇部の部室らしきものの前を通る際に演劇部員の先輩に声を掛けられる。更に演劇部の紹介文のチラシを渡される。勢いに負けて、頷いてしまう。先輩は、笑うと部室の中に案内してくれる。
『一名様ご招待!』
『『ようこそ、演劇部へ!』』
 演劇部の部室に入ると、そこは自分の想像よりもきれいに掃除してあった。正面にある大きな机。その上には劇で使うであろう台本と衣装デザインの書かれているイラスト本が置いてある。他にも建築で使用してそうな長い定規などがある。入って左側には黒板があり、そこには、ようこそと書かれている。右側には衣装の入っていそうな箱が積み重ねてあり、天井近くまで積み重ねてある。
『どう? いろいろ見慣れないものがあるでしょ』
 心を見透かされたのか、それとも顔に出ていたのか。どちらかわからないが先輩は顔を見ながら満足そうに言う。またも頷く。
『じゃあ、部室を案内するわね。先ず、これは私たちが獲得した全国での優秀賞! っていったものの一番じゃないんだけどね』
 などと、部室を案内されて最後に隣の空き教室で演技の練習風景を見学させられた。
『どうだった? 少しは興味を持ってくれたかな? ここの人ほとんどが高校から始めた人ばかりだから気負いなんてしなくていいんだよ』
 正直言って興味さえはあったものの実際自分がするといったら答えはNOだよな。それに全国クラスなら練習時間も相当だろうし、バイトを疎かにする可能性もあるしな……。でも、ここまで丁寧に案内にしてもらったのに断るのも……。どうすればいいんだろうな。
『うーん……。案内しておいて言うのもダメかもだけど。君はやめた方がいいかもしれないね』
 さっきからずっと笑っていた先輩が真剣な表情で考える。そして周りの人目を気に掛ける。
『ここだけの話しさ。ここの部長がさ、中学から狙っていた娘がいてアタックしたらしくて、振られたらしいの』
 耳元でこっそりと言う。えっ。と聞き返そうとすると先輩は後ろから来た、また別の人を見つけると勧誘を始めた。そんな先輩を見ながら本日二回目のため息を吐く。するとそれを横目で見ていた先輩が軽くウィンクをする。それを見てその場を後にする。
 それから文化部を回ることを止め、運動部をある程度回った後。お手洗いで手を洗おうとしたときにもらったチラシが2枚あったことに気が付いた。枚数を間違えて渡したなと思ったが違った。もらったチラシには、演劇部用とまた違う部活のチラシだった。
「あれ? こんな部活、パンフレットに載っていたかな?」
 確認のために生徒会からの部活紹介パンフレットを見る。一ページずつ丁寧に確認するが同じものはなかった。不思議になり、もう一度チラシを確認してみる。毎週金曜日に会議をするだけ! 時間がない人におすすめ。と書いてある。一応、今日も部活見学をしているらしい。気になり、チラシに掛かれている教室に向かう。


「ここだ! チラシの書いてある教室と教室番号は……。オッケー、当てる」
 にしても、不思議なところだ。3階の奥の方にある理科室の隣で今は物品倉庫として扱われているみたいだ。大きさは縦長6畳ほどに見える。ドアは教室のような引き戸とは違い、折れ戸だ。ドアガラスの淵には埃がある。如何にも使われていないように思わせる。しかし、取っ手の部分だけは埃が他に比べたらない。それに微かに扉の向こうにから人の気配が一人……。いや、二人かな? それぐらいする。それに向こうもこちらのことに感づいているみたいだ。
 躊躇したが取っ手に手を掛ける。取り敢えず押してみる。ガチャと鈍い音がして扉が開く。そして、目の前に映った光景は!
「やあ、君が幸谷大地君かな。お待ちしていましたよ、今度のゲームプレイヤー様」
 目の前には長机が並んでいる。周りには丸椅子がいくつかある。その中心的な位置に座っている眼鏡の胡散臭い人がいる。
 目の前にいる先輩らしき奴から窺えることはこいつ……。快と同じ穴の狢か!
「あははは、先輩もう幸谷君に警戒されていますよ。そんな中学二年生がかかる病気のようなことを言うからですよ。あはは」
 露骨に怪訝な表情をしたためと近くにいる女性の先輩に笑われる、阿呆な先輩。女性の先輩は背を向けているためこちらからは顔が見えない。でも、聞き覚えのある声な気がする。
「取り敢えず、帰っていいですか? 僕、このような厨二的な集団に興味なんてないんで」
「まあまあ、そんなこと言わないでよ、あはは。くすくす、幸谷君とはなにかの縁があるともって誘ったのにな」
 女性の先輩は、先輩を笑いながらこちらに向く。その瞬間目を見開く。
「なんで先輩が!? えっ、もしかしてこれを渡したのも先輩ですか? てか、なんですか? この秘密結社ごっこみたいな部活は! パンフレットにも載っていませんでしたし、非公式すぎますよ!」
 そこに立っていたのは、ついさっき俺に演劇部を案内してくれた人だった。
「一言で言うと……。ボランティア活動を目的としているわ。この阿呆で厨二な先輩的に言うと。無償の人助け、遊戯への干渉と言えば、幸谷君は喜んでくれるかな?」
 さり気なく罵倒されている先輩が少し涙目になっているのは、無視して。なんで、俺を阿呆な先輩と同じ扱いなのかが不満だ。
「全然、納得できないです。……特に俺も厨二病患者みたいに扱われていることです」
「ごめん、幸谷君はもうそう言うお年頃じゃなくて大人に背伸びしたいのかな? なら」
 先輩は胸元のボタンを一つずつ、見られているかを確認しながら外す。谷間が————。慌てて阿呆な先輩の方に助けを求める。が、さっき涙目を無視した成果、イヤホンに小説と完全に自分の世界に入っている。あれきっとラノベだ。
 なんてしているうちに女性の先輩はブラウスのボタンをすべて外し、上を脱ぎブラだけになる。目線を逸らしてはまた、無意識のうちに目線がその大きな胸に引き込まれそうになる。そんな人の葛藤をお構いなしに先輩が近づく。恐怖か、恥じらいか、それ以外の感情かわからないが目をつぶってしまう。
「……ぷっ。あはははは。幸谷君可愛い! 反応が初心すぎるよ。あははは、犯すわけがないのにね。あなたには可愛い凜ちゃんがいるものね」
 目を開けると先輩がブラウスを着なおしている。からかわれた……。この人苦手だ。これが藤原先輩に思った初めの印象だった。まあ、後々変わるのだが
「って言うか!? なんで先輩は俺のこともそうですけど、凜のことも知っているんですか?」
「それはこの僕が説明しよう! 先ず君は、今のゲームのメインプレイヤーなのさ!」
 ここぞとばかりに阿呆の先輩が意味深い眼鏡をくいっと中指で立てて、会話に入る。この先輩、さっきからわかっていて無視していたのか……。嫌な人これがこの黒米先輩に思った印象だ。これは今後でも良くも悪くも変わらなかった印象だった。
「ゲーム? プレイヤー? 本当に現実と非現実の区別がつかないんですか?」
「そう、あいつらは本当に現実との区別がついていない。それは僕よりも遥かにだ。命の重みを知ろうともしないし……。えっ?」
 そのあと、黒米先輩の、僕は違うぞ! みたいな哀れな弁解を無視した後。しっかりとした説明を受けた。ゲームのこと。プレイヤーのこと。この学校のこと。にわかに信じがたいことを聞かされたので、藤原先輩を見ると無言で頷いていたので動揺が隠せなかった。
 背景説明や自己紹介が終わり、今日は解散となった。その際に連絡先を交換したので今度の金曜日の会議の場所は追々連絡が来るらしい。解散直後から一人ずつ準備室を出て帰った。
 帰り道の足取りは重かった。俺の高校生活波乱万丈編が幕を切ったように思えた。途中気分が悪すぎて吐くかとさえ思った。暗い雰囲気を纏いながら玄関の扉を開ける。中に入ると台所から今日の夕飯の良い香りがする。そんなどうでもいい香りをお構いなしに自室に籠る。

 
 

 
後書き
書き溜めしないとやばいです。
1ヵ月1回投稿ですらできない現状……。

次回は12月3日になると思います。 

 

第十三話【彼と彼女】

 
前書き
ポケモンやりたい……。
今回も例のごとく誤字脱字があると思いますがよろしくです。 

 
   ☆

ため息が出る。ああもう、ため息ついたら幸せが逃げるのに……! でも、どうしたんだろう? 昨日は元気なかったな……。今朝は部活見学だあぁぁぁ! って、気合いっていたのにな。やっぱりいつもいるのはストレスになるのかな。だから昨日も誘ってくれなかったのかな。
「おはよう! 凜。……ってどうしたの? そんな顔して? もしかしてこのクラスのごみどもになにかされたの? 告白とか? されたなら断っときなさいよ。ここのクラスにはろくでもない男ばかりなんだから」
 陽奈の可愛らしい子顔が目の前に現れる。吃驚して悲鳴を上げる。それがショックだったみたで陽奈が落ち込む。
「ご、ごめん陽奈。ちょっと考え事していたら気が付かなくて……」
「またあいつのこと?」
 陽奈が大地の方を向いて言う。少し照れくさくて俯く。陽奈はそれが答えだとわかるとむっとする。
「また、そんなむっとした顔する。折角の可愛い顔が台無しになるよ」
 陽奈は大地のことがあまり好きではないみたいだ。なんでも最近、勝手に部屋に上がられたとかなんとか。私的には陽奈が大地の魅力に気づいて惚れられると、三角関係になるから。割と今のままでいいと思っている。それになにかと言って陽奈は相談に乗ってくれるし。
「で、同居中にでもなにかあったの? 裸を見られて怒って喧嘩したとか?」
 陽奈には同居していることを話している。流石に大親友の陽奈には秘密なんてできないからね。
「いや、それは住み始めた頃に何度かあったけど。今は違う問題なの」
「何度か!? ……まあいいわ。そんなことを問いただしていたらきりがないから。で、その違う問題とは?」
 なにか失礼なことを言われた気がするけどスルーして大地の方に指をさす。
「どうしたの? あの変態。いつもよりもキモイじゃない」
 大地は教室の窓から荒れそうな天候を見ている。一見、天気を気にしているようにも見えるが、親しき仲の人が見れば何かを悩んでいることは一目で分かる。
「昨日の夜からあんな感じなの……。ご飯も食べずにずっと部屋に籠っていたんだよ」
「よくそんな状態の奴が学校に来られたね」
「私も今日は学校休むと思っていたけど、朝になったら急に真剣な顔で俺が守るとか言って来てさ」
 本当にうれしかったから陽奈に惚気てみる。でも、あの時大地が手に持っていた紙が気になっていたりする。
「はいはい、朝からお熱いことですこと。これぐらい本人の前でもあんたが素直だったらよかったのにね!」
 むむー、それは言わないお約束なのに……。仕方ないよ、素直に気持ちを伝えるのにどれだけ勇気が必要なんてわからないよね。
「って、変態どうしたの? 昨日も凜にちょっかい出してないでしょうね?」
 気が付けば大地が私たちの近くに来ていた。顔を見ると妙に真剣な表情をしている。
「り、凜。そ、その今日からバイトの日は一緒に帰らないか……?」
 陽奈が口を開けて、目を見開いている。大地のセリフに驚いているのかな。という私も驚きを隠せない状態である。大地はそんな私たちの反応を見て、大地は頭を掻き毟った。もう一度私をチラッと見ると、一息ついて彼はこう言った。
「ええい、こうなれば自棄だ、正直に言う」
 そうつぶやくき、改まって私を見つめる。
「俺は、天海凜と付き合いたい。凜が俺のことを嫌いでも、苦手でも、俺と付き合ってほしい。たった1週間でもいいから! だからこれから一緒にいたい」
 大地は途中から必死になるあまり声のボリュームを抑えるのを忘れ、ほとんど叫んでいる。そのせいで教室にクラスメイトはこっちを気にしている。正直恥ずかしいよ……。でもそれ以上にうれしいな……
「うん。私でよかったら是非」
 満面の笑みで答える。周りのクラスメイトは唖然としている人やきゃあと言っている人やいろいろな反応している人がいる。隣の陽奈は、大地に対する怒りと私に対する嬉しさで複雑な表情をしている。当の大地ですら驚いる。本当に失礼な幼馴染だ……。これが私が初めて大地の前で素直になった瞬間というのに……。

   ☆

 その帰り道は何故かぎこちなくなった。私的にはすごく大地に抱き着きたかったのだが。付き合ったということはその日の放課後のうちに広まったみたいで、私の親衛隊(知らない間に出来ていたみたい)の少なき女性隊員たちが私に質問攻めしてきているのだ。そのせい大地とは変に距離が空くし、質問の内容では不快な思いをさせている。
「あの~。もう今日はここまででいいですか? 私今からバイトで急いでいるっでうけど」
 本日何度目になるかわからない断りを入れる。
『最後に一つだけお願いします。これだけは聞きたいです!』
 また来た。さっきから最後に、最後にと言っては次の質問をする。これを断ればいいのだが他人の押しに弱い私は決まって
「これが最後なら答えます」
 と言ってしまう……。これを見越していることも自覚しているのに
『なら、親衛隊の情報だと凜さんはこれで告白されるのは2回目となりますけど。どうして前の人は振ったのですか?』
 まさか! ここでこの質問!? 大地には隠してたのに……
「そ、それは……」
 前から大地に対して恋心を抱いていました! なんて惚気られないよ~。流石に大地に聞かれるのは恥ずかしいし……。どうしよう……。
「ごめんね、これ以上はもういいかな? 時間なんだ」
 大地がそう言って私の手を引っ張る。そして一礼してバイト先へと足を進める。
 後ろから、親衛隊が、まだ話が終わってないです。と言っているが無視をして早足で歩く。親衛隊と距離が空いてから大地が手を離した。
「あの悪い。強引に引っ張って来て」
 申し訳なさそうに言う。
「本当だよ。あれじゃまるで付き合って浮かれているバカップルみたいじゃない!」
 ああ、私のバカ。先まで抱き着きたがっていた癖に……。それに大地は困っていた私を助けてくれたのに、なんで素直になれないのよ……。
「だって、あいつらに構っていたら俺が聞きたいこと聞けなかったから」
 拗ねた口調で大地が言う。
「聞きたいこと? てか、それならこっちだって一杯あるわよ。昨日のこととか!」
 不意の質問返しに大地が狼狽する。そしてまた申し訳なさそうな表情をする。
「それのことを今は言えない……。で、でも————」
「いつかはきっと話したいと思っているでしょ?」
 大地が顔を上げる。大地の目を見て、
「いいよ! 秘密の一つや二つぐらい。大地が私を守ってくれるならそれで」
 きっと大地のことだから誰かのことで悩んでしょ。このお節介さんのことだし、それに他人のことを聞くのはその人にとっても嫌だしね。
「ところでさっきの質問って?」
 少し大地は話すのか、話さないかを迷っているのが窺えた。
「ああ、鬼ごっこの日に告白してきた演劇部の先輩からその後なんかされた?」
 やっぱり、さっきの質問でばれちゃってたか。まあばれてるなら隠す必要ないよね。
「演劇部の先輩かは知らないけど、琢也先輩からはあの後なにも連絡ないよ」
 大地の拳が小さくガッツポーズする。もしかして、私のことそんなに独占したいのかな。
 思わずにやけそうになるのを堪えるところが本当に素直じゃない。
「遅れると凜の母さん困らせることになるし、早いとこ行くか」
 そのまま大地は私の家へ行き、扉を開けて中に入る。すると中からお母さんの声が聞こえる。
「お帰り~。今日も頑張って働いてね」
 そのまま、服を着替えてエプロンをして私の家で経営しているカフェの手伝いをする。まあ大地の場合は給料が発生いているからバイトって形になるけどね。
 お母さんは黙っておこうかな? 付き合っていることを

   ☆

「こいつが新しい奴ですか? ぷっ、まじか在り得ねぇな。お前綺麗な字はかけまちゅか?」
「もう、あんたは本当に下品でうざいわね。少しはその悪臭漂う口をチャックしてもらえません?」
「ああん。お前喧嘩売ってるのか? それとも前に掛けに負けたことがそんなに悔しかったのかな?」
「お二人とも、新人の前で火花散らさないでください。折角今日は楽しみな賭けの日ですよ」
「けっ、いい子ちゃんぶりやがって。連勝はここでストップだ、今回の賭けでお前からその余裕を消してやるよ」
「そんなこと言って負けて新しい子を増やさないでよ。って言ってもあんたじゃね……」
「もうその辺にしてくれないか。さあ早く賭けをしよう」
 一人の言葉で周りは落ち着く。いい子ぶりっこの男が一つ咳をする。
「コホン。それでは賭けを始めます。今回のプレイヤーは二人です。一人は皆さんもご存じな環境委員長兼演劇部部長の山路琢也さまです」
 一人目を紹介したところで下品野郎が口を挿む。
「てか、こいつのために今回のゲーム行うんだろ。こいつが勝つに決まってんじゃん、俺はこいつに賭ける」
「あたしも琢也に賭けるわ。こいつの勝ちで決定でしょ、バカでもわかるわ」
 不快な女も下品な男に便乗する。
「コホン。お二人様は琢也さまでよろしいですか?」
 二人とも頷く。
「では、会長はどうなされますか?」
「そうですね。私も彼らと同じ琢也君に賭けるとします」
「実をいうと私も琢也さまに賭けようと思っているですが、これでは賭けが成立しませんね」
「大体、こっちに通じている人と新顔の一年じゃ、賭けをすることが無理あるわ」
「ぎゃははははは、ちがいねー」
「おっと、そういえば君に聞くのを忘れていましたね。君はどちらに賭けます?」
「そういえばいたのか? ぎゃははは。お前一年に賭けてとけろよ、それじゃねぇとつまんねぇじゃん」
「言われるまでもない。俺は一年に賭ける、これで賭けは成立だ」

 
 

 
後書き
やっと書けた。次には大地が鬱になっていた理由を詳しく書きますので!
今回はこんな程度で許してください。
次回は12月24日には書きたいです。