アクセル・ワールド 〜赤龍帝の拳〜 (更新凍結中)


 

プロローグ

 
前書き
どうも。初めまして。コロモガエシです。アクセル・ワールドに最近、遅まきながらはまりまして、書いて見ました。くっそ亀更新です。それではどうぞ。 

 
『今から君に一つのアプリケーションを送信する。インストールするかどうかは考えて決めてくれ。』

『いいじゃねえの。あんたがどんな思惑かは知らねえが俺を退屈させないでくれるなら、幾らでもあんたの駒になってやるよ。』

『それが、君のアバターなのか?』

『さぁ、覚悟しろよ純色の六王。てめえらの嘘臭い正義ごときでこの俺を。赤龍帝を止められると思うなよ‼︎』

『あの日、お前に手を引いてもらえなかったらきっと俺はふさぎこんだまま、淋しく独りで死んでいただろう。だから、俺は必ず借りは返す。必ず戻ってくる。姫。』


チチチッと、頭に直接鳴り響く音に無理矢理叩き起こされ、俺は一昨日手に入れたばかりのベッドから這い出る。まだ覚醒していない頭のままキッチンに向かい冷蔵庫から缶コーヒーを一本取り出して一気に飲み干す。最近は朝ごはんは食べずこれですますことが多々ある。あまり健康にはよろしくないらしいのだが、そんなものは気にしない。どうせ自分しかいないのだから誰に咎められるわけでもない。

ーそう言えば、あの頃はよく言われてたなぁ。バランスだとか、行儀悪いとか…

ぼんやりと、昔のことを思い出してみる。昔と言ってもたった二年前のことだ。一人は小さい頃から一緒にいた、元気な幼馴染の女の子。彼女も確か今日から通う学校にいるはずだ。できるならば……………会いたいと言えば会いたいが、会いたくないかと聞かれたら半分半分だ。あいつに会うのはすごく…めんどくさい。そう。めんどくさい奴なのだ。まあ、そいつの話は置いといて。
もう一人は…黒かった。何がって言われると全体的に黒かった。だがそれ故に彼女は美しかった。俺を救ってくれた一つ年上の少女。強く気高く、そして何より…美しい。大事なことだから二回言いました。
彼女は何をしているのだろう。彼女になら会いたい。会うなと言われても会いたい。別に彼女に恋愛感情を持ってるわけではない。ただ、恩を仇で返すのは好きではない。それだけだ。

「っと、もう時間だ。」

手早く制服に着替え玄関近くに置いといたニューロリンカーを首元に取り付ける。

(ニューロリンカー=脳と量子無線接続し、映像や音声など、あらゆる五感をサポートする携帯端末である。)

エレベーターを降りて今日から通う学校に向かう。

彼はまだ知らない。この日を境にもう一度自分があの世界に踏み込むことに……

彼の名は…赤龍帝『ウェルシュドラゴン』こと、有田 一誠 
 

 
後書き
私立梅郷中学に転入した一誠は、ダイレクトリンク中に懐かしい幼馴染との再開を果たす。さらにもう一人の幼馴染も加わり、また三人で仲良くできると思った矢先、彼女が…黒の姫が一誠の前に姿を表す。
次回 『黒雪姫と赤龍帝』 

 

第一話 黒雪姫と赤龍帝

 
前書き
二話目です。今回は一巻の主要キャラはある程度出そうかと思っています。ちなみに主人公の名前はハイスクールD×DとAWの名前を足した物です。見た目はブラックブレットの里見連太郎を少し幼くした感じです。  

 
「えっと、転校生の有田一誠です。どうぞ、よろしくお願いします。」
そう言って、俺はぺこりと頭を下げる。うっわ、みんなこっち見てるよ。めんどくせえ…あれだろ?あいつ目つき悪いとか、気味悪いとか、そんな感じだろ?わかってんだよ。今更期待なんかしねえ。

なんて、一誠は超後ろ向きな思考に陥っていたが、現実は…

ーあの人かっこいいね!
ーあの鋭い目つきとかいいよね!
ー私狙っちゃおうかなー。

などと、大絶賛だった。だが男子には

ーけっ、あんな奴の何処がいいんだよ!
ーでも、あいつ転入試験ギリギリだったらしいぜ。
ーそれなら大丈夫か?
ー俺さ、朝あいつが塀を飛び越して来るの見たんだ。めっちゃ主人公っぽかった。
ーよく見るとイケメンだよな…
ーダメだ。勝てる気しねえ。

と、諦めと共に嫌われた。

さてと、中学生にもなるとアレだな。嫌われる事にも慣れた。
「ねえねえ!有田君って何かスポーツとかやってたの⁉︎」
「い、いや、なにも、」
「朝塀を飛び越えてきたって本当⁉︎」
「あ、ああ…時間なかったから…」
なんだよこれ…まさかこいつら俺の情報を引き出してイジメのネタに使おうとしてんのか⁉︎すごいな最近の若者は…

なんとかクラスメイトからの質問を流し切り、屋上まできていた。

「ってと、ここまで来れば大丈夫だろ…」

扉の影に隠れ、ネクタイを少し緩める。そして、魔法の言葉を一言。

「ダイレクトリンク」

現実の世界から切り離され俺は仮想世界へと足を踏み入れた。

「っよし。これでオッケーと。」

始めてここの学内ネットに入るが、思ったよりも普通だ。
因みに俺の学内アバターは、猫が人型になり、ベストを着て頭にはゴーグルを着けていると言ったものだ。先に言っておくが、俺は猫アレルギーだ。だが昔からこんなアバターを使っている。理由は、本当は猫が大好きだからである。あれ以上愛らしい生物がいるか?いや、いない。だが俺は猫アレルギー…だからこそ、俺は仮想世界では猫アバターを使うのだ。おっと、おかしいぞ?目から涙が…て、そんなことはどうでもよい。
とりあえず歩いた。ここがどんな所なのか。ここにはどんな人達がいるのか。それを知るために、歩く。

「ん?なんだ、あの人集り?」

ぼんやりと歩いていると、広場らしき場所に着いた。そこで、中央あたりに人が、と言うかアバターが集まっているのが見えたのだ。

「………やめておこう。関わるな。なんだか嫌な予感がする。」

自分の勘に従い素直にその場を去った。それが、運命の出会いになるとも知らずに…

「以外と普通だったな。」

ローカルネットから接続を切り、ポツリと呟く。都会の私立学校と言うからローカルネットには少し期待してたのだが。
まぁ、所詮はこんな物だろ。と、その場を立ち去ろうとした、その時だ。

「あれ?一誠?」

最悪の出会いがあった。

「げっ、千由里………」

「何よ⁉︎げって!」

今朝考えていた、会いたいような会いたくないような人物。

活発やイメージを与え、頭の左側には猫のヘアピンを着けてる少し背の小さい女の子。倉島千百合。俺の幼馴染みだ。



「で、一誠。いつこっちに帰ってきたのよ。」

「えっ〜と、ひぃふぅみぃ…ああ、三日ぐらい前かな。」

「なっ、なんで教えなかったのよ‼︎」

「いや、お前がどこにいるか知らなかったし。」

「メールしなさいよ!」

「だからメアド知らねえっての。」

面倒くさいのだ。彼女は。いろんな意味で。あーあ、もう一人の黒い彼女ならこんなんじゃないんだけど。

「とにかく!放課後は一緒に帰るわよ!タッくんもいるんだから!」

「はいはい…って、そっか。お前ら付き合い始めたんだったな。」

最後の方は聞こえなかったようだ。

放課後

「一誠!久しぶりじゃないか!」

「はいはい。久しぶりだなタク。」

黛拓武。背は俺よりも少し高く、正に爽やか少年という出で立ちをした剣道の防具を持った少年。千百合と同じく俺の子供の頃からの親友。

「で、どこに住んでるの?」

タクが、聞いてくる。

「えっと、二人と同じマンションだな。千百合の部屋の上の階。」

「ちょっと!なんでそれ知っててメアド知らないのよ!」

千百合がなんか言ってたが無視だ。

「そっか。それじゃあまた昔みたいにチーちゃんと、一誠と三人で。」

「ああ。そうだな。きっと。」

そうなることを願いたい。
その時、俺はタクの顔に少し影がさしたことにまだ気づいてなかった。
それから二時間ほどして、二人とは別れた。あの二人がいればなんとかイジメにも耐えることができるだろう。よかった。今までのように一人で孤立することはない。隣の席の女子に隣見れないとか、机に落書きとかされなくても大丈夫…だと信じたい。
(隣見れないのはかっこよすぎるからで
机に落書きは告白したら他の女子に消されて落書きみたいになっただけ。)

「さてと、それじゃあ俺も帰るかな。」

ベンチで音楽を聴き終わり立ち上がる。今日は久しい顔ぶれにも会えたことだし、これからは平和な学園生活が………………

「それにはまだ早いんじゃないか?」

訪れるのはまだ先のようだ。
綺麗な声に呼び止められ、ゆっくりと振り向く。この声はもう何度も聞いたことのある声だ。リアルでも、バーチャルでも、そして、あの世界でも。
俺を暗闇から救い出してくれた、美しい黒の王。

「久しぶりだな。黒雪姫。」

「ああ。一年ぶりかな?一誠君。」

我らがネガ・ネビュラスの王という名の俺の知る限り誰よりも。そして何よりも美しい黒の少女が、そこにはいた。  
 

 
後書き
自らの王と再開を果たした一誠。彼女に今の加速世界の現状を聞き、赤龍帝は、もう一度加速世界へと足を踏み入れる。しかし、そこにはかつて純色の六王すら退けた最強の赤龍帝もういなかった……
次回「赤龍帝の復活」 

 

第二話 赤龍帝の復活

 
前書き
二話目ですね。やっとアバター出せました。バトルは次回になると思います。感想ください! 

 

結局、あの後はあまり話さずに次の日、昼休みに二年の食堂で話すことになった。

「とは、言いましたが………」

この状況は非常にまずい…てか何で二年の食堂なんだよ。おかしいだろ。それ見ろ二年の女子生徒から敵意の眼差しが俺に突き刺さってるよ。

(実際にはイケメンが現れたことによる驚きと、お目当ての人物は誰なのかと詮索する眼差しだった。)

「ねえ、ここは二年のラウンジなんだけど、誰かお目当ての人でも?」

二年の女子生徒が聞いてくる。ずいっと、顔を寄せてくるため必然的にお互いの顔が近づいてしまうのだ。

「いや、えっと…その…」

俺は別に女に慣れてるわけではない。寧ろ苦手な方だ。だからつい、こんな風に挙動がおかしくなるのは、仕方ないだろう。
どうしたらいいかわからなかったその時だ。
パタンと、本を閉じる音がする。それは、なぜか厭に迫力があった。

「すまないな。彼は私の友人なんだ。離してもらえると助かる。」

奥の席で本を読んでいた黒い格好の少女。にっこりとしているが、その笑みはどこか暗く、そして怖い。

「そ、そうゆうことなんで〜それでは…」

俺が通ろうとすると、二年の生徒たちが一歩引く。俺はガリバーかって。

「どうも。黒雪姫先輩。」

「ああ。まずは座ったらどうだ?一誠くん?」

やめろ姫。その顔なんか怖い。俺泣いちゃうよ?
少しビビりながらも姫の向かい側の席に座り、彼女を見据える。すると姫はコードを取り出し、俺のニューロリンカーに接続、もとい直結しようとする。

「っておい!お前何やってんだ‼︎」

「なにって、こうした方が話しやすいだろう?」

「いや、そうゆう問題じゃ…」

直結とは、簡単に言えばニューロリンカー同士を接続して脳内で会話できるようにすること。だけではない。直結している間はお互いの個人情報ダダ漏れだ。故にこれはお互いに信頼しあった人でしかしない。具体的に言えばそう…恋人同士とか…
カチリと音がし、俺と姫のニューロリンカーがしっかりと接続された。
パッと一瞬警告タグが出たが、もちろん無視。

「“さて、これなら誰にも邪魔されずに話せるな。”」

「“ああそうだな。まさかこんな強硬策に出るとは思わなかったがな…”」

周りを見てみろ。男女問わず俺に対して敵意の視線が集中攻撃しているではありませんか。

「“仕方ないだろう。あのままでは、君が他の女子にうつつを抜かしてしまうからね。”」

「“俺が、いつ、女子に、うつつを抜かした⁈”」

「“今だ!”」

意味がわからない!なんなんだよこいつ。

「“はいはい。どうも悪うござんしたね黒雪姫様。”」

こうゆう時は流すに限る。だが、俺はこの時忘れていたのだ。今俺が向かい合っているのは、かの黒雪姫なのだ。
つまり、なにが言いたいかと言うと…

「“またそうやって君は私が見てないところで女の子をたぶらかす。やはりこの一年間も何人もたぶらかしてたのではないか?”」

めんどくささが常人の三倍。昔からこうだ。機嫌が悪くなるとすぐに俺の交友関係のことでぐちぐち言い始める。

「“いいから話を始めろよ。黒雪姫様。”」

そう言うと、彼女はふくれっ面になりそっぽを向いた。

「“なんだよ…なんか言いたそうな顔だな?”」

「“その呼び方…やめてほしい”」

「“あ、ああ。そうか…じゃあ…副会長様?”」

昨日生徒会の副会長だって言ってたしな。だがまだふくれっ面は治らない。

「“先輩殿?”」

二年生だし。だがまだふくれっ面は治らない。

「“ロータス様?”」

一番のふくれっ面になった。なんで?
“あっちの世界”で有名な名前なのに…綺麗じゃん。ロータスって確か薔薇…だっけ?とりあえず花の名前だよな。結構好きなんだけど。

「“昔のように姫と呼んでくれ!”」

「“お、おお…了解。”」

まったく…大声だすなよ直結してんだから響くじゃねえか…

「“で、さっさと本題に入ってくれよ。別に予定はないが”」

ちなみに友達も千百合以外いない。故に一緒に御飯食べる男子など一人もいない。だから予定が入るなどあり得ない。あれ、おかしいな。涙が……

「“まったく。君は悲しいことを真顔でいうな。”」

うるせー。言いたくて言ってるわけじゃねえやい。

「“さてと。いい加減本題に入るとするか。一誠くん。”」

「“なに?ああ。わかった。そうゆうことな。”」

俺と姫は目を閉じ、こっちは何もせず、姫は加速の言葉を一つ。

「バーストリンク!」

バキィィィンと世界が割れる。目を開けると、そこは先ほどまでの普通の学生食堂ではなく、黄昏時の草原へと変貌していた。

「その姿を見るのも一年振りだな。ウェルシュドラゴン。」

振り返ると、そこには美しい黒揚羽のドレスを身につけた姫がいた。

「俺も、お前の姿見るの久しぶりだよ。」

かく言う俺も普通の格好ではない。
と言うか人間のものではない。
今の俺はこの世界のバトルアバターとなっている。レベルはとある事情で一。ここら辺はまたの機会に。
紅く紅い龍の鎧。全身には刺々しい装飾が施されており、背中からは紅い尻尾のような物が伸びている。
だが、その両腕には他とは違い何かが足りない印象を与えている。それもそうだ。今の俺には、アレを装備する資格などないのだから。

「にしても、こっちに来るのも久しぶりだな。」

こっち。つまりは加速世界。あり得ない話だが、俺と姫は、今ニューロリンカーにインストールされているアプリ。“ブレインバースト”によって脳内を千倍に加速させているのだ。え、説明が雑だって?ググれ。

「黄昏ステージとは、またレアな物をひいたな。」

「まあな。俺は喧嘩と運だけならここぞとばかりに力を発揮するからな。それ以外は皆無だけど……」

二人で夕日に照らされながらにこやかに談笑する。そんなことをしている内に俺のバトルアバターネームと姫のアバターネームの間にある千八百秒のタイマーが減っていく。

「っと、それよか早くしようぜ?そろそろ時間切れだろ。」

「む?そうだな。と言っても今は君のアバターを見たかっただけなのだがな。」

「そんなことのために呼び出したのかよ……」

少し呆れるぞ。バーストポイント無駄にして。

「それでは、放課後。君の復活戦としようか。」

「はいよ。お姫様。」



そして、放課後。

「さて、大丈夫か?一誠君。」

「当たり前だ。俺を誰だと思ってる?」

姫はふふと、笑う。まったく。居心地悪いようないいような…
それじゃ、行きますか!
校門から一歩踏み出し、あの世界へと飛び出す。

「バーストリンク!」

 
 

 
後書き
赤龍帝は大地に立つ。復活祝いの相手は旧世代のバイクを駆るドクロ型アバター。アッシュローラー。レベル1のドラゴンはレベル2のアッシュのバイク攻撃に防戦一方。
そこで編み出した彼の秘策とは⁈
次回「レベル9erの復活戦」
はがないと、デアラもかいてます!良かったら読んでください!
感想待ってます!(泣 

 

第三話 Level9erの復活戦

 
前書き
三話目ですね。学校での投稿です。
てか明後日模試だ‼︎
とか思いながらの投稿です!
バトル描写は自信なしです!
それではどうぞ 

 
俺は加速世界に降り立ち、対戦相手を決める。その中から一つ、気に入った名前をクリックする。アバターネームは、
『アッシュ・ローラー』。なかなか変わった名前だ。人のことは言えないがな。
さてと、それでは行きますか。

降り立ったのは腐敗した世界。世紀末ステージ。ここは正直あまり好きではない。だって臭えんだよ。焦げ臭い。こんなステージを好きになる奴なんて相当なもの好きか……

「ヘイヘーイ!俺様お気に入りの世紀末ステージとはメェェェェガラッキィィィィィィ!」

相当なファンキー系かのどちらかだ。
巻き舌の声がした方にギギギと音がしそうなくらいゆっくり向ける。そこにはスカルフェイスの、暴走族みたいなバイクに乗っている、なんと言うか……世紀末といった風貌のアバターがいた。彼がおそらくアッシュローラーなのだろう。

「そしてお前はぁぁぁぁぁぁ……」

ブルンブルンとバイクを鳴らし、俺に対して中指を立てた。恐らくこれがアニメだったらモザイクかかってるんだろうなぁ……

「メェェェェェガアンラッキィィィィィィ‼︎」

なんて呑気なこと言ってる場合じゃなかった‼︎アッシュローラーがバイクで突っ込んで来てる!

「クッソが!」

毒づきながら走る。と言うか逃げる。
あれは恐らく強化外装だ。アバターの力を象徴した装備。逆に考えれば、あれがなければ本体のステータスはそこまでではないということだ。

「だったらバイクから突き落とせば…」

「オラオラー!逃げんじゃねぇ!」

うん、無理だ。あんなの止められるわけない!とにかく今は逃げろ!
アッシュローラーのバイクが俺を襲い、ギリギリでかわすがそれでもかする。
それによってウェルシュドラゴンのHPゲージが僅かに減る。

「この感じ久しぶりだな………」

場違いにも体に流れる痛みを懐かしむ。
この感覚は、俺だけのものだ。
マスクの中でニヤリと獰猛な笑みを浮かべる。

「よし、こいよ!世紀末ライダー!」

「上等だ、レッド野郎‼︎」

残念だけど俺のカラーは赤(レッド)じゃなくて緋色(ウェルシュ)だよ。

そう、内心で訂正しながら俺は逃げる。
向かう先は、屋内。これなら相手も追っては来れないはずだ。多分。
そんな希望的観測をした俺だったが、どうやら甘かったらしい。

「壁走りだと⁉︎」

ありえねえ‼︎とか思ったしまう反面。かっこいい‼︎と思ってしまう自分がいた。
いいなぁ。やってみたいなぁ。
とか、呑気なこと考えてたら…

「ぐっへえ‼︎」

直撃した!バイクが真正面からおれの体にあたり、衝撃が走る。まるで本当にバイクに轢かれたみたいだ。

「あ〜ヤッベェ…笑えねぇ……いや、逆に笑える。勝ち目あるのかよおい。」

フラフラとした足取りで、なんとか屋上まで辿り着く。HPバーもイエローないし殆どレッドゾーンだ。
ガクンと膝の力が抜ける。が、まだ膝は折らない。負けれないのだ。
あの人の…あの黒の姫の為にも。

「ヘイヘーイ‼︎ようやく観念しやがったかぁ⁉︎」

「観念はしないなぁ。覚悟はしたけど。」

フラリと立ち上がり拳を握る。そして、指をたて、くいっと引く。

「来いよ。目にもの見せてやる!」

それを皮切りにアッシュライダーは走り出す!
おそらくこれを食らえば敗北は必至。だが、逆に言えば一撃さて食らわなければ勝ち目はあるということだ。
ならばやはりあのバイクは止めなければならない。

さて困ったぞ。と、普通考える。
だが、この状況に陥った時点で、俺の勝利は確定している。

今さらながら、状況と言うか場所の説明をしておこう。
世紀末ステージの屋上。そこは普通のコンクリートで覆われているわけではない。そこは、数多くのタイルが敷き詰められており、それがちゃんと外せるようになっている。
さて、それでは何故今さらそんな説明をしたのかだが。それは、ここからのアッシュローラー攻略に必要だからだ。

アッシュローラーの強化外装であるあのバイクは前時代的な後輪可動式のバイクである。つまり、後輪さえ止めて仕舞えばあとはどうにでもなる。

なら引きつけろ。ギリギリまでアッシュローラーのバイクを止める手段はこれしかない。もう少し。あと4メートル。
まだだ。勝ちたいのなら耐えろ。あと2メートル。彼奴のために俺はここから這い上がらなければならないんだ!

「死ねャァァァァァ‼︎」

「ここだぁぁぁぁぁ‼︎」

アッシュローラーのバイクをギリギリで避け、その後輪の下にあるタイルをちゃぶ台返しの要領で持ち上げる。
普通なら、タイルの方がぶち破れる。
だが、角度や力加減を調整すれば………

「な、んだとぉぉぉぉぉぉ‼︎」

このように………

バイクはひっくり返る。故に、アッシュローラーのステータスは、激減する。事実。今の転倒でHPバーも少し減っている。

「くっ、この野郎!」

立ち上がりバイクを立てようとするも、そのバイクは、赤龍帝の脚で押さえ込まれる。

「さてと、世紀末ライダー。」

人差し指を親指で抑え、

「俺の番だ。」

バキリと鳴らす。
これは、全盛期。赤龍帝が領土戦に出向く前にしていた癖だ。

それはつまり。

必勝を誓うということ。

「吹っ飛べ!」

拳を握り、低く構える。
なんのひねりもない、単純な技。付属効果も大してなく、ただ一撃の威力を上げるレベル1の必殺技だ。

だが、だからこそ。

「龍拳(ドラゴンナックル)‼︎」

その拳は、アッシュローラーの体に深く深く、突き刺さる。

winner ウェルシュ・ドラゴン!


「いって!」

現実に戻るなり背中に衝撃が走る。
何ですかね。まさか新手のいじめですかね。とか思いながら後ろを振り返る。

「やったな、ウェルシュ・ドラゴン!一瞬だがヒヤリとしたぞ!」

「お前かよ!」

我らが黒の王こと黒雪姫様でした。

「?まぁいいさ。これで先ずは10ポイントだな。幸先はいいんじゃないか?」

姫がそういいながら歩きだす。

だが姫よ。お前は少し間違えてるぞ。

「いや、20ポイントだよ。あいつレベル2だった。」

そう言うと、彼女はキョトンとするが、すぐにさっきの様な笑顔を見せる。

「ふふ、はははは‼︎君は全く、本当に面白いな!流石だ‼︎」

何がですかね。姫様。

「それでは、復活戦祝いに何か美味しいものでも………」

姫がそう言おうとしたその時だ。

「一誠をどうするつもりですか⁉︎」

後ろから声が聞こえる。
俺は振り返る。その声には聞き覚えがあった。正直、この場にはいて欲しくない人物だ。

「千百合…………………」

さてさて、この場を表現するならばこんな一言がぴったりだろう。

『修羅場』

いや、そうでもないか?
 
 

 
後書き
赤龍拳の幼なじみと恩人。倉崎千百合と、黒雪姫は出会う。火花を散らす。修羅場確定?
次回。「現在の立ち位置」

感想、ご指摘、アドバイス。待ってます‼︎ 

 

第四話 現在の立ち位置

 
前書き
待ってましたという方も、待ってねえよ下手くそさっさとやめて自殺しろという方も、お待たせしました!
一カ月ほどでせうか?
何はともあれ、1巻目はやっと中盤です。どうぞ、ごゆっくり 

 
第四話 現在の立ち位置

火花が散るとは正にこのことだろうか?
学校の校門付近で一年の生徒と二年の生徒会副会長が睨み合っている。

「一誠をどうするつもりなんですか⁉︎」
「……どうするとは、なんのことかな?」

いやいやいや、なんのことかな?ではないだろう、お姫様!

「一誠をまるで晒し者みたいにして、一誠は目立つのとか好きじゃないんです!」

千百合のおかしな態度に少し驚きながらも、俺は彼女に話しかける。

「お、おい千百合?なんでそんなケンカ腰に……」
「一誠は黙ってて!」

ビクッとなり、俺は黙り込む。怖え。幼馴染み怖え…

「そう言う君は一誠くんのなんなんだ?なんだか随分と偉そうにしているが?」

姫が千百合を少しキツイ目で睨むが、どちらも一歩たりとも引かない。

「私は、一誠の幼馴染みです!」

はっきりと言い切った。自信満々の顔で。それに対して姫はというと……

「なら、私の方が優先順位は上だな。」

そう言いながら、俺の腕に絡み付く。
いや、なんでですかね?なんでそんなに自信満々なんですかね?

「私は、彼に告白して返事待ちという状態だからな。」

空気が凍る。千百合も、一瞬目を見張るが、すぐに俺へと鋭い視線を向ける。
待て、俺は悪くない!
この状況ならどこからどう見ても俺が悪いのだろうが、それでも俺は悪くない!

「本当なの?」
「え、いや、えっと……」

校門付近の視線が一点に集中する。その先は勿論俺たちだ。

「それでは、失礼させていただくよ。私たちはこれから放課後デートなのでね。」

そう言って姫は俺を引っ張る。千百合の目は未だ姫を睨みつけており、なにかを言おうとするが……

「構わないだろう?ただの“幼馴染み”の君には。」

そう冷たく言う。これには俺も唖然である。まさか姫がここまで冷たくするなんて。こんなの全盛期でも……あったな。
うん、あった。俺が単身白の王の領土に乗り込んだ時だ。アレから加速世界で一年近くこんな感じだった。
理由は分からなかったけど………

「では行こうか、一誠くん。」

そう言いながら、姫は俺を引っ張っていく。
その力は、まるで俺を拘束するかのように強かった。


「で、どーゆーつもりだよ姫。」
「どーゆーつもりとは?」

惚けるのでせうかこの姫様は……

「どうして千百合にあんな態度取ったのかって話だ。」

姫は素知らぬ顔でコーヒーを飲む。その顔は、美しいながらも、何処か冷たい。

「君は………」

かちゃりとカップを置き、俺を見る。

「彼女とは、それなりに親しいのか?」
「え、ああ。うん。千百合も言ってたけど、幼馴染みだし。」
「そうか……」
「…………て、おい。なに勝手に自己完結してんだよ。」

姫はもう一度コーヒーを飲む。

「説明をする前に、色々と話しておかなければならない事がある。」
「おおそうかそうか。だから俺の質問には意地でも答えないと。そーゆーアレですかね?」
「ふむ。まあ、取り方によってはね。」

あははははは〜、と、和やかな笑いが流れる。だがしかし!そんなんで俺の怒りを鎮められると思ったら……

「では、早速本題に入るとしよう。」

カチッ

直結されました。怒るに怒れねえじゃないですか…………

それから聞いたのは、これまでのこと。

俺がいなくなってから、姫がレッドライダーを殺したこと。

その後、皇居の四神に挑戦したことにより、俺たちの。もとい姫のレギオンは、全滅したこと。

その時、メンバーの一人は俺と同じく、レベルドレインを食らったこと。

そして、今の加速世界は、停滞状態にあるということ。

『馬鹿げてるな……』

ポツリと直結したまま、俺は言った。
その時、姫はいつものような余裕の笑みを浮かべた。

『君なら、そう言うと思ってたよ。』
『いや、そう言うしかないだろ……』

なにを言うと思ってたんだよ。それしか言うことないだろ。
こっちの気持ちを知ってか知らずか、姫はおもむろに口……なのか?それを開いた。

『私は、君に嫌われると思った……』

…………………なんで?
心底疑問だった。なぜ俺が姫を嫌うのだろう?

『その……ライダーとは、親友だったのだろう?』

ん?ああ。そういえばそうだったかも。

『確かに親友だったかもな。同じ赤系列だったし。』

でも、と人置き入れる。

『加速世界は……まあ、言いたかないけど、結局は弱肉強食の世界だろ?』

だから、ライダーが負けたのは当人の力不足。油断したかもしれないし、不意打ちだったかもしれない。
しかし、それは姫の所為ではない。

『俺だって、いつ消えるか分からない身なんだ。だから、その、うまく言えないけど、俺は君を責めることなんて出来ないし、するつもりもないよ。』

だって俺は……

と、先を言おうとしたがやめた。ここからはまだ言うべきではない。

『えっと、それで?なんか他にも話すことあるんだろ?』
『ん?ああ。そうだな。話を戻そう。』

姫はもう一度コーヒーを飲み、姿勢をただした。こうして見ると、やはり彼女は育ちのいいお嬢様というイメージが、強くなる。
重要そうな話なので、俺も一度オレンジジュースで、喉を潤す。

『端的に言えば、私はリアルアタックの恐れがある。』
『ブッフううううううううう‼︎』

思わず口に入っていたオレンジジュースを吐き出す。

リアルアタックとは、加速世界だけではなく、数多くのMMOゲームで起こり得る事件だ。VRの中ではなく、リアルでそのプレイヤーに襲撃されるということだ。

『ま、マジですか?』
『ああ。マジだ。』

いや、そこまで冷静に言われると、なんだか現実味が無いな……

『私は、あの日ライダーを殺してから二年間。グローバルネットには接続していない。』

これも驚きだった。グローバルネットには接続していない。イコール、ネット環境無しで生活しているということだ。
現代社会でそれは大変過ぎる。

『だが、私の身分上どうしても、グローバルネットに接続しなければならない場所がある。』
『……………学内ネットか?』
『ああ。迂闊だったよ。既に新入生の中から割り出していたとはいえ、油断するべきではなかった。』

いや、学内でくらい羽を休めてもいいだろう。と、言いかけたが、今や姫は加速世界のなかでも最悪の賞金首なのだ。
そんな事はおいそれと言えない。

『それで、対戦を挑まれたと…』
『ああ。』
『殺りあったのか?』
『いや、時間ギリギリまで逃げ切ったよ。』

流石は姫様。

『相手の名前は?』
『シアン・パイル。カラーは限りなく
青(ブルー)に近い蒼(シアン)』

それを聞き、俺は項垂れる。一番やりづらい相手だ。

『えっと…姫。その口ぶりだともうプレイヤーが誰か確かめたんだろ?』

そういうと、姫は少し驚いたような顔をした後、微笑む。

『相変わらずの勘の良さだな。時々予言かと思うよ。』

それ褒めてませんよね。ええわかってますよ。

『君が転校してくる前だ。全校集会の時に加速した。』

ふむふむ。

『そこでシアン・パイルの名を探したのだが…』

ふむふむ。

『シアン・パイルの名前はなかった。』

ふむふ…は?

『え、無かったの?』
『ああ。なかった。』

うーんと、考え込む。学内ネットに進入できるのならば梅郷中の生徒であることは確実。ならば対戦表に名前が出ないのはおかしい。
そこで、ふと他にもプレイヤーを見つける手段を思いだした。

『じゃあ、あれだ。ガイドカーソル。』

加速した時に、バーストリンカーを指し示すガイドカーソル。あれならば……

『ああ。私もそう思い試したさ。だがな一誠くん。その先に誰がいたと思う?』
「回りくどいのは嫌いだ。」

直結による念話ではなく、俺の声で言った。こういうのは嫌いだ。

『そうだな。そうしよう。その相手とは、君もよく知っている人だよ。』

姫は端末を操作し俺に一枚の生徒写真を見せてきた。

「は?」

茶髪のショートカット。

猫の髪飾り。

大きな目。

少し幼さのある童顔。

それは、俺の学校で同学年唯一の友達。

倉島千百合に他ならなかった。

 
 

 
後書き
驚愕の事実。千百合にバーストリンカー疑惑浮上。そして、起こる悲劇

「私は嫌なの!」

「なんで俺なんだよ!」

「私は君のことが……」

次回。心の声。 

 

第五話 心の声 前編

 
前書き
お待たせしました!一月ぶりの更新です!待ってましたの方も、待ってねえよ死ね!の方も、最新話です‼︎
この回は、前後編に分けることにしました。
それでは、どうぞ! 

 

俺はがたりと立ち上がる。信じられなかった。いや、信じたくなかったが正しいだろう。

『千百合が……バーストリンカー?』
『可能性があるということだ。』

姫は淡々と言う。まるで、用意されたプリントを読み上げるかのように。

『まあ座りたまえ。』

そう諭され、俺は席に座る。

『ありえねぇよ。あいつすごいゲームが下手なんだ。最初の検査で引っかかるに決まってる。』
『ふむ。だが、それすらも演技だとしたら?』

頭に来た。

『ああ、そうかいそうかい。わかったよわかりましたよ。』

席を立ち、コードを外す。

「だったら、俺があいつと直結して確かめてきてやるよ。」

******************

とは言いました。言いましたよ。でもね、ついさっき学校であんなことがあったのに、いきなり直結してくれなんて言えない。言えるわけない。

「勢いで来ちまったけど……ど〜すっかな〜」

現在、千百合の家の前にいる。正確には、千百合の家の玄関の前だ。
うろうろし過ぎてたら通報されるかもだし、かといってこのまま帰るのは意味がない。

だが、直結するのに正当な理由なんて思いつかない……

「いや、本当にどうしよう……」
「あれ?一誠?」

不意に名前を呼ばれ、振り向くと、そこには、千百合が居ましたとさ……いや、笑えねえよ。

「よ、よう、千百合…一時間振り?」
「…………何か用?」

やめてくれ〜。そんな悲しそうな目で見ないでくれ〜。

「えっと……その……なんと言うか…」

駄目だ。うまい言葉が見つからない。

「お、俺と直結してくれないか?言っておくが、変な意味ではないぞ⁉︎」

いや、そもそも直結してくれないかと言った時点で変な意味だ。



「コードは持ってきたの?」
「あ、悪い。忘れた。」
「もぉー!直結してって言ってくるならコードくらい持ってきてよね!」
「お、おお。すまん。」

現在、千百合の部屋でコードを探している。
まさかこんな簡単に部屋に入れるとは…
最近の若者は爛れてる……ではないか?
俺も同世代だし。

「はい、これつけて。」
「お、おう……って、これ短すぎるだろ!何センチですか⁉︎五十センチないだろ!」
「い、今はこれしかなかったの‼︎」
「お前……まさか、これでいつもタクムと……」
「してないよ!タッくんはいつも長いの持ってきてくれるし……」

あ、直結してるのは否定しないんだ。
確かに好き合ってるのならいいが、まだ中学生で直結って……いや、そういえば俺も姫としてた。

「と、とりあえず直結を……って、何やってんの?」
「何が?やるなら早くしてよ?」

いや、早くしろと言われても……なんでベットに寝転んでるんですかね?

「あの、せめて座ってもらえると……」
「私の部屋なんだから、どこにいてもいいでしょ?」

ごもっともで……いや、でもこの体勢は危ういだろう……これじゃ、まるで俺が千百合の寝込みを襲ってるみたいに……見えないか?流石に、見えないな。

「やるなら早くしてほしいんだけど。」
「わ、分かってますよ……」

この際だからもう仕方ない。諦めよう。
俺は、タクムに罪悪感を抱きながらも、千百合のニューロリンカーにコードを差し込む。

『えっと、聞こえるか?』
『聞こえるよ。』

この体勢はどうにかしたいが、仕方ない。最初に出た警告メッセージを退かして、BBのアプリを探す。
だが、このミッションはそれだけではダメなのである。俺はアプリを探しながら、千百合に謝罪しなければいけないのだ!そうしなければ、罪悪感で押し潰されそうだよ‼︎

『じ、じゃあ、さっきのことだけど…』
『うん……』

ゴクリと喉を鳴らす。
緊張なんてレベルじゃない。
大型エネミーと対峙する時だって、ここまで緊張なんてしやしない。

『俺と、姫…黒雪姫先輩は、付き合ってたりはしないから…』
『それじゃあ、なんで一誠はあの人の召使いみたいにしてるの?』

彼女は、目を潤ませながら、その目を逸らした。

『召使いなんて……俺は、そんな事してないよ。好きでやってることだし……』
『私は嫌なの‼︎』

その悲痛な叫びが、俺の頭に響いた。
再会してから、初めて聞いた千百合の悲しい叫び。

『なんで、お前はそんなにこだわる…俺なんかに…どうして……』
『じゃあ、どうして一誠は自分をそんなに嫌うの?』

何かが、心に突き刺さる。

『嫌いだよ……』

ああ、嫌いだ。
成績も良くない。
運は悪い。
顔も悪い。
性格も良いとは言えない。

そんな人間……

『嫌いに……決まってるだろ…!』

気づけば、俺はポロポロと涙を流していた。ここまで自分の悪いところを挙げられるとは、我ながら驚きだ。
当たり前だ。こんな人間を好いてくれる人など、いるわけがない。

親からも捨てられた俺なんて…………

その涙を千百合の指先が拭った。

『私は、優しい一誠が大好きだよ?』

思えば、彼女には何度も、こうやって背中を押された気がする。

『だから、自分に自信を持って?どうせなら、黒雪姫先輩と学校一のカップルになっちゃってよ。』

ダメだ。彼女には、逆らえない。姫とは違う。優しい力。俺は思わず、笑みを浮かべる。

『謝りに来たのに、慰められちまったな……』
『平気だよ。いつものことだし。』

大丈夫。千百合のニューロリンカーにBBのアプリはどこにもない。

ふと、あるファイルを閉じようとした時に、不自然な重さが引っかかった。

まさか……!

そう思い、そのファイルを念入りに調べた。そのまさかは、的中してしまった。

(これは……バックドアだ!) 
 

 
後書き
はいはいはい、ここでひとつアンケート!
一誠に言って欲しい台詞とかあれば!例えば
その幻想をぶち殺す!
など、オリジナルでも、なんでも、酷すぎなければ即採用します!
想像力の貧困な作者に力を‼︎ 

 

第六話 心の声 後編

 
前書き
一ヶ月以上も開けてしまい、大変申し訳ございませんでした‼︎いろいろ有ったんです。テストがあったり、追試があったり……とはいえ、最新話です‼︎最後が随分とグダリましたが、ご了承下さい。では、どうぞ。 

 


結局、あのバックドアは消さなかった。
いや、消せなかったが正しい表現だ。
あそこで消しては、俺がバーストリンカーだと疑われる。下手をすれば特定されるだろう。

それはそれとして………

「やべえ……死にてえ……」

現在、テンション絶賛急降下中である。

理由は……聞かないでくれ。単に俺がクソ野郎ってだけだ。
とにかく、千百合はバーストリンカーではなかった。それは確かなことだ。

だが、この事件の犯人は千百合のファイルにバックドアを仕掛け、それを通して学内ネットワークに進入している。

つまり、こちらからは仕掛けられないが、彼方からはいつでも仕掛けられる。
これは不利だ。不公平だ。

何か対策を練らなければ………

「やあ、おはよう!」

トンっと、後ろから背中を叩かれ、振り向く。もう突っ込んだりはしない。

「姫、少し加減をしてくれ。」
「むっ、そうか、すまなかった。」

姫と俺は並んで歩く。昨日見た夢のせいで少し目を合わせずらい。

「その、昨日はすまなかった。」
「へ?なにが?」

姫の突然の謝罪。まったく意味が分からなかった。

「えっと…なんの話?」
「ほら、昨日のことだ。」

昨日……あ、もしかしてあれか?

「千百合のことか?」
「ああ。あんな風に言ってしまって。」

別に気にしてはいない。本当に。姫だって自分の身を危惧してのことだ。
仕方ない仕方ない。

「それに、君にあんな無茶を言わせてしまって……」

…………おかしいな。そこだけは覚えてる。それはもうハッキリと。

「いくら君でも、直結して確かめるなんて無茶なことできないというのに…」
「いや…………その、したよ?」

沈黙が走る。

「したのか?」
「あ、ああ……」
「どこでだ?」
「千百合の家で……だけど……」
「家のどこだ?」
「あいつの部屋で………」

段々と、姫の歩くスピードが早くなる。
心なしか、目つきも鋭くなってる気がする。

「長さは?」
「え?」
「ケーブルの長さは?」
「さ、30㎝くらい?」

正直に答えると、先ほどよりも歩くのが早くなり、俺を置いていってしまった。

「なんだよ……あいつ……」

姫の不自然な行動に、俺はやはり戸惑いを隠せなかった。

時は流れて昼休み。千百合は他の友達と飯食ってて一年では見事なボッチ!
悲しくなんかないさ!慣れっこだもの‼︎
手早く、菓子パンとコーヒーを平らげる。そこから先は寝るだけ。

寂しくなんて無いさ!

「すいませーん!有田一誠くんて居ますか?」

………無視したい。だが、これで行かなかったら余計面倒くさい。

「あの…俺ですけど……」
「おお、君が有田くん!結構イケメンだね!」

何を言ってるんだこの先輩。アレか。上げてから一気に落とす作戦か。やるな。

「それで…何の用ですか?」
「いやね、君があの黒雪姫先輩と付き合ってるって噂が流れててね。」

その言葉に一瞬、

ふざけんな‼︎‼︎‼︎
と、叫びそうになったが、自重した。
ここで必死になったら余計怪しまれるし、目立つ。
それはダメだ。

「そんな関係ではないですよ。」

目を逸らし、否定する。呆れたように。馬鹿馬鹿しい世迷言を言われたかのように。これが一番効果的だ。

「この前直結してたのは、あの先輩のニューロリンカーにウイルスが入って、それを俺が駆除するように頼まれただけで。」

うまい言い訳だと、自分でも少し思う。

「カフェでのだって、その一件でのお礼ですし、告白宣言だって、なんかの悪戯ですよ。今朝だって、話してたら急に怒り出しちゃうし……」
「今朝?と言うと、どんな話を?」

そこまで聞いてくるのかよ………

「別に、千百合……倉島の話をしたら、急に機嫌が悪くなるんですよ。」

そう言うと、新聞部の先輩は何かを考え始める。

「そうか……そういうことか…」
「あ、あの…何がですか?」

先輩は何か納得したようにうなづいた。

「いやね、私も半信半疑だったんだけどさ。これは本当みたいだね。」

何がですかね?

「それって、嫉妬なんじゃないかな?」



「んなわけねえよ。」

昼休み、トイレの個室に篭り頭を抱えていた。ありえない。ありえる訳がない。
あいつとは一年近く辛苦を共にしてきた。いわば、戦友のような物だ。同じレベル9erと言うのもあって、仲は良かったのだろう。
だが、それだけだ。今では俺のレベルは1という正に初心者まで成り下がった単なる雑魚プレイヤー。
今一緒にいるのだって、扱いやすいからとか、そんなものだ。

期待はしない。それで何度も裏切られた。
夢は見ない。破れた時のダメージがでかすぎるから。
現実を見る。その方が、楽だ。
だから、だからこそ……………

「無駄な期待は持たせないでくれ…」

俺は小さく、そう呟いた。自分に言い聞かせるように。

放課後になった。

正直、姫に会おうとは思えない。会いたくないのに。

「や、やあ一誠くん。奇遇だね。」

どうしてお前はそんな時に現れる。

「待ち伏せしてた奴がよく言うぜ…」

皮肉たっぷりに言う。だが、姫は全く意に返さない。

そして、俺と姫は並んで歩き始める。もちろん直結状態だ。昨日のことを話すと姫は信じられないと言った表情をする。皮肉気に言葉を並べていく。

「君は、やっぱり怒っているのか?」

姫が立ち止まり、直結ではなく、自分の言葉で俺を引き止めた。その目は困惑に満ちている。

「確かに、今朝の私は大人気なかったと思う!」

違うよ。

「でも、私だって人間だ!」

そんなことじゃないんだ。

「不完全な一人の人間の人間なんだ。」

もう、やめてくれ。

「苛立ったり不安になったりもしてしまう。君と、倉島くんを見ていたら……」
「やめろよ…」
「え……?な、なんで……」

終わりにしてしまおう。こんな、不完全な関係は。いい加減、裏切られるのは御免だ。

「結局、俺はお前の子でしかないんだよ。命令されて、従うのがルールだ。
いちいち、そんな感情的な演技されてもキツイんだよ。」

これで、もう絶望なんてしなくて済む。

「お前はただ、俺に命令していらなくなったら狩れば……」

その時だ。頬に鈍い痛みが走る。それは、姫による平手打ちだった。

「バカァ……」

顔をくしゃくしゃにして、その目からは絶え間なく涙を流している。

「バカァ…バカ…………」

何が起きたのか、さっぱり理解できない。ただ理解できるのは、

俺が彼女を泣かしてしまったということだけだった。

そして、突然轟音が鳴り響く。

俺たちは咄嗟に其方へと目を向けた。車だ。この時代には有り得ない、あってはならない現象に、お互いバーストリンクをする。

「いって!」

肉体から弾き出され俺は猫のアバターへ、姫は揚羽蝶のアバターへと変わる。

「このご時世で運転ミスなんてある訳……」

言葉を止めた。そこにいたのは、他校の制服を着たガラの悪い男だった。
だが、見覚えがある。

「知り合いか?」
「いや、知り合いというか……前に壊滅させた不良グループのリーダー…かも…」

よく憶えてないが、結局は単純な話である。

俺のせいだ。俺がいたから、狙われた。

「OK、姫はアウトしたら下がれよ。俺が盾になる。」
「……いや、私が前に出よう。」

アレを使う。と、そう言った。その一言で、何か分かってしまった。

「よせ、やめろ!お前がそんなことしちゃいけない‼︎」
「いいんだよ。それに、死に瀕した今なら、君にも私の言葉を信じてもらえるかもしれない。」

姫は俺に近づき、少し頬を赤めながら言った。

「一誠くん。私は、君が好きです。」

一瞬、時間が止まったような感覚に陥った。あの姫が、俺のことを、好き?

「な、んで俺なんだよ……どうして……俺なんかを……」

譫言のように姫に尋ねると、彼女は少し困ったように答える。

「なんで、か。強いて挙げるなら、強さかな?君に出会った日から、君の強さに惹かれたんだ。
「たった一人でも戦って、大切なものを守る為なら、いくらでも傷ついて。
「そんな優しい君がカッコよくて、
「抱きしめてあげたくなった。
「これが恋だって気がつくと、本当に嬉しくて。
「だから………………」

そっと、俺の唇に姫の唇が重ねられる。
キスされたのだと気がつくのに、二秒といらなかった。

「今は、君の為にこの命を使わせてくれ。」
 
 

 
後書き
重症を負った姫の傍に寄り添う一誠は、自分のやるべきことを自覚する。それは、シアン・パイルを倒すこと。

次回「決戦、悲しい真実」