森の中に消えた犬達 


 

第一章

               森の中に消えた犬達 
 エイミー=キャリーイギリスローゼット州出身で今はアメリカワシントン州バション島で働きつつ動物の保護活動にもあたっている彼女は赤髪に青い目で長身の持ち主である。顔にはソバカスがありそれがトレードマークになっている。
 その彼女にだ、ある日所属している保護団体から話があった。
「実は犬が二匹森の中で行方不明になったの」
「森の中ですか」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「今から何人かで森に入るけれど」
「私もですね」
「来てくれるかしら」
「わかりました、参加させて下さい」
 エイミーは一も二もなく頷いた、そうしてだった。
 同僚達と一緒に森に入った、そこで犬達の特徴と名前を聞いた。
「テイリーとフィービーですね」
「うん、ティリーは赤茶色で白いところもある毛で垂れ耳でね」
「フィービーは黒と茶と白だよ」
「二匹共結構大きいよ」
「そうした子だよ、どっちも雄だよ」
「わかりました」
 エイミーは同僚達の話を聞いてだった。
 自分の携帯に二匹の画像も送ってもらってそれぞれの外見も把握してだった。そのうえで。
 森の中を探した、やがてティリーを発見したと連絡があってそこに向かうと。
 他の同僚達もいた、その前にはティリーがいたが。
「ワンワンワン!」
「こっちに来い?」
「そんな感じだな」
「そうだな」
「ついて行きましょう」 
 エイミーもティリーの声と態度から彼が案内をしたいと理解してだった。
 同僚達に言ってだ、そしてだった。
 同僚達と共に彼について行った、そこで案内された場所は。
 森の中のもう使われていない大きな排水溝があった、そしてその中に。
「クゥ~~~ン」
「間違いない、フィービーだ」
「この子はフィービーだ」
「そこに落ちてか」
「出られなくなったんだな」
「そして」
 見ればティリーは。
 排水溝の上からフィービーを心配そうに見てそのうえでエイミー達を訴える目で見てきた、これでもう充分だった。
 スタッフ達は排水溝からフィービーを助け出した、失踪したと連絡があって一週間経っていて彼はその間飲み食いもままならずかなりやつれていたが何とか助かった。
 それからフィービーは少しの間入院して落ちた時に受けた傷の手当と栄養失調と脱水症状になっていたのでその治療を受けてから飼い主の家に帰ったが。
「ワン!」
「ワンワンワン!」
 二匹は再会すると嬉しそうに尻尾を振り合ってじゃれ会った、エイミーも他のスタッフ達もその二匹を見て笑顔になった。
 数年後エイミーは故郷のローゼット州に戻りここでも動物の保護活動のボランティアを働きつつ行っていたが。
 ここでも森の中で犬が失踪した事件が起こった、今度は。 

 

第二章

「森の中に栗鼠を追い掛けてですか」
「いなくなったんだ」
「名前はティーズル、コッカーズバニエルとテリアのハーフの黒い犬で雌だよ」
「クレアさんの家の犬だよ」
「これから失踪した森の中に入って探そう」
「わかりました」 
 この時も一も二もなくだった。
 エイミーは捜索活動に参加した、そしてだった。
 森の中を飼い主の一家と共に探した、一家は彼女が失踪した日夜の十時まで捜したというが見付からずエイミが所属する団体に依頼してきたのだ。それでエイミーはこの時一家の息子のジャック、くすんだ茶色髪と淡い緑の目を持つ少年の彼と一緒に森の中を捜していたが。
 不意に彼が大きな木の根の方を見てエイミーに言った。
「あそこに何か見えません?」
「あれは」
 見ればそれは。
 二つの目だった、暗闇の中にその目達が見えた。
 二人はその目が何かと気になって傍に寄ると。
「クゥ~~~ン・・・・・・」
「ティーズル!?暗い中で暗い毛だからわからなかったよ」 
 ジャックは驚いた声で言った。
「こんなところにいたんだ」
「では今から」
「はい、助けましょう」
 ティーズル、彼をというのだ。
 こう話してだ、そのうえで。
 彼を助けようとしたがここでだった。
「木が硬い」
「人の手では無理だ」
「根が邪魔なのに」
「これをどけるのが」
「それをどうするか」
「一体どうすべきか」
 スタッフ達は話した、それで。
 鋸を持って来てだ、それでだった。
 根を切ってだった、穴のィ入り口を大きくしてだった。
 ティーズルを救出した、一家は彼を抱き締めて喜んだが。
「いや、まさか」
「木の根の穴の中に入っていて」
「それで見付からなかったんだ」
「けれど見付かってよかった」
「助けられて」
 見ればティーズルは尻尾を振って喜んでいた、その彼を見てだった。エイミーは同僚達に笑って話した。
「よかったですね」
「全くですね」
「ティーズルが見付かって」
「そして助かって」
「本当によかったです」
「そう思います、それでは」
 そしてとだ、エイミーは言うのだった。
「帰りましょう」
「ええ、無事に終わりました」
「それならです」
「帰りましょう」
「そうしましょう」
 家族の再会を見つつ彼等と共に森を後にした、愛犬が見付かった森はもう憂いはなくなっていた。そこにあるのは喜びだけになっていた。


森の中に消えた犬達   完


                 2021・5・24