ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者


 

プロローグ

 
前書き
もう一つの小説です!!よろしくお願いします!! 

 


「あなた・・・見てたのね?じゃあ・・・死んでくれない?」

その声がとある男子の耳に入ったとたんに腹に激痛が走り、跪いてしまった。その男子は慌てて右手で腹の痛みが走った場所に手を添えると急に右手が熱くなりそれが何なのか確かめた。そして見たのはの自分自身の血で赤く染まった右手だった・・・

~~~~~~~~~~~~

ガバッ!!!

「うわああああ!!!」

勢いよく起きるとそこはいつもと変わらない男子の部屋の風景だった。

「はあ・・・はあ・・・夢?」

体中から吹き出る汗を拭うと気持ちを落ち着かせた。

「何だかリアリティーがあった夢だったな・・・。不味い!!時間が押してる!!」

時計を見ると慌てて、制服に着替えた。今は午前7時30分。何時もなら慌てることはないが今日は学校に早く行かなくてはならなかったようだ。

~~~~~~~~~~~~

時は過ぎ、午前8時15分。

「おはよう。黒神君」

「おはようございます」

変な夢を見た男子。黒神(くろがみ)闇慈(あんじ)。16歳は去年から共学となった高校『駒王学園』の高校2年生となった。元女子校とあっただけあってこの学園には女子の比率が男子より多い。

「あ!リアスお姉様!!」

「今日も一段とお美しい!!」

周りの女子生徒達が黄色い声を挙げ、視線を送った先には長い赤髪をなびかせ、気品のある二大お姉様の一人『リアス・グレモリー』が歩いてきていた。彼女はその気品と頭の良さから先生達も大きく評価しているらしい。『才色兼備』と言う四字熟語が如何に合いそうな3年生だ。リアスは周りに挨拶をしながら校舎に入っていった。

「なあ。見たか?いっせい一誠」

「ああ。今日も一段と大きかったな!!松田!!」

「上から、99/58/90だったな」

「相変わらずお前はそういうのは得意だよな!!元浜!!流石『スリーサイズスカウター』だぜ!!」

「ふっ・・・もっと褒めてくれて良いぞ」

黒髪に少し茶色が入ったのが『兵藤(ひょうどう)一誠(いっせい)』。スポーツ刈りの『松田』。メガネをかけた『元浜』。この三人はとにかくエロい。そのためなら火の中水の中・・・そのせいで学校中の女子生徒達からは『変態三人組』と呼ばれているらしい。周りに女子が居なくなったことを確認すると闇慈は三人組に話しかけた。

「兵藤君。松田君。元浜君。」

「おっ。黒神。オッス」

「相変わらず君達は懲りないね。」

「それが俺たちの生きがいだぜ!!」

「まあ。とやかく言うつもりはないけど・・・ハメを外しすぎると後で後悔するよ?」

「分かってるって!!ハーレム王に俺はなるぜ!!」

「そういう黒神も自分の気持ちに正直になったほうが良いんじゃないか?」

「元浜君!!」

そう言うと三人組は自分の教室に戻っていった。


「僕も教室に戻るか・・・」

闇慈も教室に戻ることにしたが今日で普通の日常が消えることはまだ知る余地もなかった。
 

 

第一話 覚醒

兵藤一誠が女子と付き合っている。

この噂は三人組に注意した翌日、学園中の女子生徒達が噂していた。
彼女の名前は『天野(あまの) 夕麻(ゆうま)』。長めの黒髪が印象的なおとなしい女の子だった。闇慈がいうには昼休みの時も二人は一緒いて良いムードだった。
そして今日の授業も終わり、午後五時頃に学校を出て何時もの帰り道で帰っていた。そして公園の場所を通り過ぎようとした時・・・

ゾクッ!!

「っ!?何だ?今の感覚は?」

闇慈は一瞬だが体が重くなったように感じ、公園の周りが暗くなり、空間が少し歪んでいた。

「公園の中か?行ってみよう!!」

闇慈は公園の中に足を踏み入れた。そしてそこにいたのは出来たてのカップル、兵藤と天野だった。そして明らかにおかしいと思えたのは天野の雰囲気だった。闇慈は木の裏に身を隠し、様子をうかがった。

「ねえ・・・一誠君。お願いがあるの・・・」

「な、何かな?」

(何を頼むつもりかな?)

「・・・死んでくれないかな?」

・・・沈黙が走った。それもそうだろう。いきなり死ねと言われたのだから・・・

「・・・え? それって・・・あれ?ごめん、もう一度言ってくれない?」

「死んでくれないかな?」

そう言うと天野の服が張り裂け、小柄な少女から大人の女性へと変わってしまった。
そして一番印象的なのは彼女の背中にある大きな漆黒の翼。闇慈はこのとき思い出していた。見た目は興味本意で読んだ世界神話に登場した・・・

(・・・堕天使(だてんし)!?)

闇慈は目を疑った。それも無理の無い話だ世界神話はあくまで空想の話だ。現実に現れるとは思ってもいなかっただろう・・・

「楽しかったわ。子供のままごとに付き合えた感じだった」

天野はそう言うと右をかざすと、光で出来た投げ槍みたいな物が現れ、兵藤に向かって投げた。

ドスッ!!

いやな音が聞こえると光の槍が兵藤の腹を貫いていた。

「っ!!兵藤君!!」

闇慈は居ても立ってもいられなくなり、兵藤の元に駆け寄り、抱え上げたが・・・腹を見事に貫かれ即死していた。

「あなた・・・見てたのね?じゃあ・・・死んでくれない?」

「っ!!」

今度は闇慈に向かって光の槍が投げられた。闇慈は咄嗟に体をずらしたが、少し遅かったのか、右の横腹を掠めてしまい、少し血が流れ始めた。

「ぐっ・・・」

「人間の癖に避けるなんてやるじゃない。でも次で終わりね」

「天野さん。君は・・・堕天使なのか?」

「人間の癖によく知ってるじゃない。・・・良いわ。冥土の土産に教えておいてあげる。そう私は堕天使。堕天使レイナーレ。では、さようなら・・・」

天野・・・いや。レイナーレがまた光の槍を振りかざし僕に向かって投げた。闇慈は痛みのせいで動くことが出来ずにそのまま光の槍を受けてしまった。

「がはっ・・・(この状況はあの時の夢と同じ・・・まさか正夢になるなんて・・・ついてないな・・・)」

闇慈は痛みと出血に意識を刈り取られてしまった。

~~~~~~~~~~~~

僕はどうなったんだ・・・?あはは・・・これが地獄に落ちることなのかな?

――――輪廻に墜ちる若者よ・・・

何だ?声が聞こえる。

――――惨めに死したこと悔しいか?若者よ・・・

・・・悔しいです!!僕は守れなかった。友達の命や自分自身の命さえも・・・

――――ならばわれ我が汝と契約を交わし、もう一度『生』を与え、『力』を授けよう。

えっ!?

――――ただし。この力を受けた暁には汝は普通の人間ではなくなる。表は人間だが、裏は化け者と化してしまう。それでも良いか?

・・・下さい!!僕に・・・『守る』ための力を!!

――――・・・その心意気や良し!!では与えよう!!汝に死神の力・・・『万死ヲ刻ム』力を!!

そして闇慈の中に何かが入ってくるような感覚が走ると僕は再び意識が遠退いた。

~~~~~~~~~~~~

神器(セイクリッド・ギア)を体に宿した兵藤一誠を始末した後、同じ学園の生徒、黒神闇慈も始末することなってしまったけど問題はないはずだとレイナーレは考えていた。

「でもあの男も神器(セイクリット・ギア)を宿していたなんて、とんだ収穫だったわ。私も戻らなけれ・・・」

ゾクッ!!

レイナーレの背後から考えられない程の魔力を感じ、振り向くと始末した筈の黒神闇慈がゆっくりと立ち上がろうとしていた。そして槍が貫いた場所も見る見る塞がっていった。

「そんな・・・私の光の槍に貫かれた場所が治癒するなんて・・・ありえない!!」

「う・・・う・・・うおおおおお!!!」

「っ!!」

闇慈が大きな雄叫びを上げると彼の周りに黒い煙のようなものが体に巻き付いていき、その煙のせいで体が見えなくなった。

「何が起こって・・・まさか!!」

そして煙が弾けるように飛び去ると、闇慈の服装は全身を覆うようにボロ衣で出来た漆黒のマントを羽織り、髪も黒色から銀色へと変わっていた。

「・・・」

そして目を瞑ったままゆっくり右手を前に出すと飛び散った黒い光が集まり、人間なんか簡単に真っ二つに出来るほどの巨大な漆黒の『鎌』が現れた。そして右肩にその『鎌』を担いだ。

「・・・あんな状況で神器(セイクリット・ギア)が覚醒したというの!?」

「レイナーレ・・・だったか?」

「あなたは一体・・・何者なの!?」

「・・・俺か?俺は・・・」

そしてゆっくりと目を開けると真紅の瞳が私を捉えた途端、レイナーレはある感情に襲われた。

(これは『死』に対する恐怖!?そんな・・・堕天使である私が『死』に怯えるなんて!!)

「・・・死神だ。さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」
 
 

 
後書き
感想と指摘。よろしくお願いします!! 

 

第二話 会合


あの声が聞こえて、目覚めた時には闇慈は彼自身では無くなっていた。服はボロ衣で出来た漆黒のマント。右手には巨大な大鎌。その姿はまるで・・・

(死神だ・・・僕は死神になったのかな?)

(戦いの中で考え事などするものではないぞ!!)

(えっ!?あの声が!?)

(来るぞ!!)

「今度こそ死んで貰うわ!!」

声が聞こえたと同時にレイナーレが1本の光の槍をまた闇慈に投げてきた。しかし今度は何故か光の槍の動きがゆっくり見えて簡単に避けることが出来た。

(凄い・・・さっきは目で追えることが精一杯だったのに今は手に取るように見える。これが死神の力・・・)

「くそっ。なら・・・これはどうかしら!!」

レイナーレが両手を広げると彼女の背後には4~6本の光の槍が現れた。

(あれが一斉に放たれたら流石にやばいかも・・・)

(セイクリッド・ギアで応戦するのだ!!)

(セイクリッド・ギア?・・・この鎌の事ですか?)

(そうだ。この鎌は・・・我の鎌。ありとあらゆる物・・・万物の『生』を刈り取る鎌だ)

(まさかこの鎌の名前って・・・)

闇慈が考え事をしている間に光の槍が一斉に放たれた。

「(今はこの鎌の事を信じよう!!)うおおおお!!!」

闇慈は光の槍を一本一本正確に鎌で切り裂いて行った。切り裂かれた光の槍は真っ二つのまま消滅してしまった。

(すごい。手に馴染む。この鎌が力を貸してくれているのかな)

「これでもダメだなんて・・・もう魔力が・・・ここは引かせてもらうわ!!」

レイナーレは翼を羽ばたかせ消えていった。深追いはしない方が良いと思ったから追跡はやめにした。

(やっぱりこの鎌は・・・死神の鎌『デスサイズ・ヘル』・・・)

死神の鎌『デスサイズ・ヘル』・・・魂の管理者『死神』が所持していたとされる大鎌。
天使であろうと悪魔であろうとその鎌で切られたものを・・・再生させることはできない。その物の『魂』。言い換えれば『生』そのものを切り裂く鎌。

(・・・あの時に言っていた『万死ヲ刻ム』力ってこの事だったのかな?)

(そう言うことだ)

(さっきから僕の頭の中に話しかけている貴方はもしかして・・・死神様。本人ですか?)

(如何にも。我は死神。今後は『デス』と呼ぶが良い)

(デスさん。この服装と鎌はどうにかならないんですか?)

(元に戻るときはイメージすれば戻ることが出来る)

(イメージですね。分かりました)

闇慈は元の制服をイメージすると黒い光が闇慈を覆い、それが晴れると制服姿に戻っていて鎌も消えていた。

(あの。死神になるときはまたあの服装をイメージすれば良いのですか?)

(そう言うことになる)

(えっと。頭の中に話しかけないで現れたらどうなんですか?これ・・・凄く違和感があるんですが・・・)

(気持ちは分かるが今は出ることが出来ぬ・・・『悪魔』がいるぞ)

(えっ!?・・・視線?)

闇慈の後ろの茂みから音がすると出てきたのは駒王学園の二大お姉様の一人・・・

「貴女は・・・リアス先輩?(デスさんは悪魔が来るって言ってたけど・・・リアス先輩が悪魔!?)」

「ごきげんよう。黒神闇慈君?」

これが死神と化した闇慈とリアス・グレモリーとの初めての会合だった。 

 

第三話 会話


リアス・グレモリーは彼、黒神闇慈の力に興味と少しの恐怖を抱いていた。闇慈も兵藤一誠と同じ、体にセイクリッド・ギア神器を宿していたから。そして何よりあの戦い。彼の服装が変わり、真紅の瞳が開かれた時にはリアスも『死』の恐怖に襲われてしまい。そして闇慈の堕天使を退けるその力に興味を抱いた。その事を確かめるためにリアスは黒神闇慈に話しかけることにした。

「貴女は・・・リアス先輩?」

「ごきげんよう、黒神闇慈君?」

闇慈は正直内心ではあたふたしていた。駒王学園の二大お姉様の一人、リアス・グレモリーとこうやって話しているのだから・・・

「どうして僕の名前を?」

「私はあなた達に興味があったからよ」

リアスは真紅の髪と豊満な胸を揺らしながら僕に近づいて来た。闇慈は目のやり所に困っているようだった。

「・・・僕の体に宿っているセイクリッド・ギアの事ですか?」

「知っているようね。そう私は貴方の力がどれ程なのか知りたかったのよ」

「リアス先輩。もしかしてさっきの戦いからずっと見ていたんですか?」

「覗き見るつもりはなかったのだけど、ごめんなさいね」

しかし闇慈は安心していた。見られたのがリアスだけだと言うことを・・・。リアスは聞き分けの良い人だと聞いているから事情を話して聞かせれば分かってこの力の事を秘密にしておいてくれるはずだと思っていた。

「あのリアス先輩。僕に何か用があったんじゃないんですか?」

「率直に言うわよ?あなた。私の下僕にならない?」

「へっ?下僕?」

「言い方が悪かったわね。私の眷属(けんぞく)にならない?」

(デスさん。眷属って確か・・・従者みたいなものでしたよね?)

(その通りだ。彼女は見る限り上位の悪魔だ。すでに眷属を従えていてもおかしくはないはずだ)

「どうかしら?」

「一つ聞かせて下さい。リアス先輩は・・・『悪魔』なんですか?」

「ええ。私は悪魔。グレモリー家。次期当主よ」

「(きっぱり言い切ったな~~、この人。でもリアス先輩の事をあまり知らないからここは・・・)リアス先輩。少し時間を頂いても良いでしょうか?僕は今、この力のことで頭がいっぱいなので整理をつけてから先輩に返事をしたいんですけど」

「そうね。焦らないでゆっくり考えると良いわ。でも私たちは何時でも貴方を歓迎するわ」

(やっぱりリアス先輩は優しい人だね)

「今後は『アンジ』って呼んで良いかしら?」

「あ、はい」

「ありがとう、アンジ。次はこっちね・・・」

そう言うとリアスは体を兵藤の遺体に向けた。

「リアス先輩!?何をするつもり何ですか!?」

「この子を助けて私の眷属にするのよ」

「えっ!?でも彼はもう・・・」

リアスがポケットから取り出したのは赤い『チェスの駒』だった。

「リアス先輩。それは?」

「これは悪魔の駒『イービル・ピース』。眷属になるために必要な駒よ」

「まさか。これを使って兵藤君を悪魔にして生き返らせるつもりなのですか?」

「ええ。その通りよ」

リアスはチェスの『ポーン兵士』の駒一つを兵藤君の胸に置くと魔法陣を展開した。

「・・・あら。」

「どうしたんですか?リアス先輩」

「この子は駒一つじゃ足りないようね」

「それってどういう事ですか?」

「イービル・ピースは使用される者の力の大きさによって個数が決まるの。彼の場合はポーンにするにはポーンの駒。全部使わないといけないみたいね」

「ぜ、全部ですか!?それって兵藤君の力が凄く強いってことですよね?」

「そう言うことね」

リアスは残りの七個のポーンの駒を円形に並べると呪文のようなものを唱え始めた。そして言い終えるとポーンの駒が兵藤の体の中に入って行った。

「これで彼は悪魔になったんですか?」

「ええ。後はこの傷を治さないと・・・」

そう言うとリアスは兵藤の体と自分の周りに赤い魔法陣を展開した。

「彼は私が治療するわ」

「えっ?」

「あの槍で受けた傷は普通では治らないのよ。じゃあね、アンジ」

リアスは闇慈にウインクをするとその場から消えた。今のウインクで闇慈はドキッとしたのはここだけの話らしいだ。

「・・・僕も帰ろう。今日は色々なことが有り過ぎたよ」

闇慈は鞄を拾うと家に向かって歩き始めた。
 

 

第四話 登校


闇慈が死神の力を手にして一日が経って朝となった。朝食を終えるとリビングでゆっくりしていた。
あれから闇慈は家に帰るとデスに質問攻めを繰り返した。本当に死神になってしまったのかと言うこと。今後の生活に支障はないかと言うこと。リアスの眷属になるべきかと言うこと。
返答はそれぞれ、死神の力を手に入れただけで『死神』自体になったわ訳ではないみたいだった。と言うより闇慈は人間がそう簡単に死神になれるかとデスに怒られてしまったらしい。
次に迂闊に力を使いすぎなければ今後の生活には支障はないようだ。
最後に眷属になるかどうかは僕自身が決めて良いみたいだ。

(でもデスさんの姿を見たときは腰が抜けそうになりましたよ・・・)

(あれは我の失態だ。すまないことをした)

家に帰って両親が寝付いたことを確認するとデス出てきて貰ったが、その姿がまさに『死神』だった。闇慈と同じぐらいの身長で顔は骸骨でボロ衣のオーバーマントを羽織っていた・・・。喋るときは口が動くだけでカタカタと骨が鳴っていたらしい(笑)

(・・・我に対して失敬な事を考えていなかったか?)

(いえ!?何も考えていませんでしたよ!?)

(そうか・・・ならば良い)

「さてと・・・僕もそろそろ学校に行こうかな。行ってきます、母さん」

「いってらっしゃい、闇慈」

闇慈が鞄を持ってリビングを出ようとすると玄関のチャイムがなった。

「あら?誰かしら?」

「良いよ、母さん。僕が出る」

闇慈は靴を履き、玄関を開けると・・・

「おはよう、アンジ」

「オッス。黒神」

リアスと死んだはずの兵藤だった。

「おはようございます、先輩。おはよう、兵藤君」

「さあ。行きましょう」

「え、ええ。じゃあ母さん。迎えが来たから行ってきます」

闇慈は母に一言言うとリアス達と一緒に門を出た。闇慈は兵藤の事が気になったのか話しかけた。

「兵藤君。昨日の怪我は大丈夫?」

「まあ。何とかな・・・。それより俺たちはダチなんだから『イッセー』って呼んで良いぜ?」

「なら僕の事も『闇慈』って呼んで良いよ?」

「おう!闇慈!」

「これからもよろしくね?イッセー」

闇慈とイッセーは熱く握手を交わした。

「ふふ。男の友情ね」

闇慈達の光景を見て、リアスは微笑んでいた。

~~~~~~~~~~~~

「そんな・・・こんな事が・・・」

「何であいつらなんかに・・・?」

「リアスお姉様がけが汚れてしまうわ!!」

「黒神君は美形だからまだ分かるけど・・・何であんな下品な奴と!?」

学校に着いたのは良いけど、周りからの視線が痛いらしい。

「視線が痛いね・・・イッセー(小声)」

「まあ仕方のない事だと思うぜ?俺たちの隣には学園のアイドル、リアス・グレモリー先輩がいるんだからな・・・。むっふふふ(小声)」

(イッセー・・・目がエロくなってるよ・・・これは昨日何かあったのかな?)

闇慈は心の中で溜め息をついているとリアスが話かけてきた。

「後で使いを出すわ。放課後にまた会いましょう?アンジも興味があるならいらっしゃい」

「えっ!?僕もですか?(まあ。悪魔がどんなものか知る良い機会だな)」

そう言うとリアスは行ってしまった。

「あ・・・ちょ。リアス先輩!!」

「まあ。兎に角、放課後になったら迎えが来てくれると思うから待とう?イッセー」

「そうするか・・・」

闇慈たちが行こうとすると横から松田の鉄拳がイッセーの頬を捉えて吹き飛ばした。

「イッセー!!貴様!!モテナイ同盟はどうなった!?」

「まあ落ち着け松田。取り敢えず訳を聞かせて貰おうか?イッセー。昨日俺たち別れてから何があった?」

「イッセー。僕も気になるんだけど?教えてくれないかな?」

「むふふ。それはな・・・。闇慈。松田。元浜。」

一誠がゆっくり立ち上がるとこう言った。

「お前ら・・・生を見たことあるか?」

「「生?・・・はっ!?」」

「へっ?(何のことを言ってるんだろう?取り敢えず昼休みに詳しく聞けば良いか)」

松田と元浜は分かったみたいだったが闇慈には分からなかった。
 

 

第五話 今後

第五話 今後
今日の授業も終わり放課後となったがリアスの使いはまだ来なかった。話は変わるが闇慈が昼休みにリアスと昨日何があったのかと一誠に聞くと、光の槍で貫かれた傷を治すには『魔力』で治すしか方法はないらしくリアスが一誠に魔力を与えて傷を回復したが・・・一誠が目が覚めた時にリアスが横で寝ていたみたいだ・・・しかも全裸で・・・。これを聞いた時は闇慈は顔が真っ赤になってしまった。

「イッセーって・・・ラッキースケベだね」

「仕方ねえだろ!?あれはどう見ても不可抗力だぜ!!」

因みに闇慈と一誠は同じクラスで席も近かった。そして闇慈が一番気になったのは・・・『天野夕麻』の事に関する情報がこの学園から抹消されていたことだった。クラスの人たちにも聞いてみたがやっぱり知らないらしい。あの堕天使・・・レイナーレがやった事なのかもしれない。

「(いずれにせよ、僕の大切な友達を傷つけたことに変わりはないからな。今度会ったら、その魂・・・貰い受ける!!)それにしても遅いね・・・リアス先輩からの使い」

「だな。かなり時間が経ったけど来ねえじゃねえか」

闇慈と一誠が愚痴ってると突然女子達の黄色い声が上がった。

「「「キャー-!!!」」」

「やあ。」

教室に入って来たのは金髪の駒王学園の爽やか系のイケメン『木場(きば)祐斗(ゆうと)』だった。頭脳明晰で性格も良く女子生徒からの人気は凄まじい。

「イケメン王子か・・・死ねぇ」

(イッセーもイケメンだと思うけどな・・・その性格さえなければ)

「ちょっと失礼するよ?」

「どうぞどうぞ」

「汚い所ですけど、どうぞ」

木場は女子たちに了承を取ると闇慈とイッセーの方に歩いてきた。

「やあ。どうも」

「ああん?何だよ?」

「僕たちに何か用かな?木場君」

「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」

「っ!!じゃあお前が!?」

「僕に着いてきてくれるかい?後、君が黒神闇慈君だったよね?君はどうする?」

「僕も行く。よろしくね、木場君」

そして闇慈達が荷物を持ち始めると女子達は携帯やらカメラやら取り出した。

「木場君と黒神君が一緒に歩く所なんて貴重な光景よ!!写真!写真!!」

「でも木場君と黒神君がエロ兵藤と一緒に歩くなんて・・・」

「汚れてしまうわ木場君、黒神君」

(いや。朝もイッセーと一緒に登校して来たんだけど・・・)

闇慈と一誠は木場に連れられ、リアスのいる所に移動した。

~~~~~~~~~~~~

闇慈と一誠が辿り着いた場所は体育館裏にある小さな旧校舎。

「木場君。ここは?」

「ここは『オカルト研究部』の部室で、ここにリアス先輩がいるんだよ」

「ここが部室!?」

「さあ。入るよ」

部屋の中に入るとこれはまた独特の雰囲気があった。部屋の内装は北欧を思わせる装飾品を飾り、カーテンは完全に閉められ、明かりは電気の代わりに多くのロウソクが立てられ、火を灯していた。

(この部屋は暗いけど、中々僕好みの内装だな)

「あ!この娘は!?」

一誠はそんなことに目もくれず、ソファーで羊羹を食べている銀髪の女の子を見ていた。

「木場君。彼女は?」

「彼女は1年の『塔城(とうじょう)小猫(こねこ)』さんだよ」

「・・・」

小猫は羊羹を食べることを中断すると闇慈と一誠の方を向いた。

「こちらは『兵藤一誠』君と『黒神闇慈』君だよ」

「・・・(コクッ)」

小猫は挨拶代わりなのか頭を軽く下げた。

「これはどうも」

「よろしくね?小猫ちゃん」

小猫はまた羊羹を食べ始めた。

(小猫ちゃんの食べている姿を見てると何だか和むな。今度何かお菓子を作ってきて上げるか)

闇慈が自己紹介しているとシャワーの音が聞こえてきた。シャワーを浴びているのは声からしてリアスみたいだ。

(って部室にシャワーがあるの!?どうなっているんだこの部は・・・)

その音を聞いた一誠の目はまたあのエロい顔になっていた。何を想像してるのか・・・

「・・・いやらしい顔」

図星をつかれたのか小猫のその一言一誠は元の一誠に戻った。すると黒髪のポニーテールの女性が闇慈達に話しかけてきた。

「あらあら・・・貴方達が新しい部員さんですわね?初めまして、私は副部長の『姫島(ひめじま)朱乃(あけの)と申します。以後お見知りおきを。うふふ」

「お、俺は兵藤一誠です。こちらこそ初めまして」

「ご丁寧にありがとうございます。僕は黒神闇慈と言います。僕は入るかまだ決めてはいませんが今後よろしくお願いします」

この人は『姫島朱野』。リアスと同じ二大お姉様の一人らしい。自己紹介をしている内にリアスが出てきた。

「さあ。これで全員集まったわね」

闇慈達はそれぞれソファーに腰掛けると話が始まった。

~~~~~~~~~~~~

リアスの話を聞いて、分かったこと。
まず一つ目。オカルト研究部の部員は全員『悪魔』だと言うこと。その証拠に一誠を含めた僕以外の人に黒い羽のようなものがあった。
二つ目。天野夕麻・・・いや堕天使レイナーレは力を使い、一誠を殺害した後、自分の事を周りから抹消させたこと。ここは闇慈の推理通りだった。この話をした時の一誠の目はとても悲愴な目をしていた。
三つ目。一誠のセイクリッド・ギアはまだ覚醒していないこと。
そして最後の四つ目。現在は三竦みの状態になっていること。『悪魔』『堕天使』『天使』。そして肝心な『悪魔』について闇慈の意見は・・・

(悪魔が必ずしも悪い奴らとは限らないみたいだな。でもやっぱり僕は・・・)

「そうだわ。アンジ」

「あ、はい!!」

「貴方のセイクリッド・ギアを見せてもらえないかしら?」

「えっ!?闇慈。お前も持っていたのかよ!?」

「持ってないならここには居ないと思うけど?イッセー」

「そりゃそうだな」

「でもリアス先輩は見てましたよね?」

「ここにいる全員に見てもらいたいのよ」

「・・・分かりました」

闇慈はソファーから立つと空いたスペースに移動した。

「楽しみですわ」

「そうだね。堕天使を退けるほどの力がどれ程のものか見てみたいよ」

「・・・(コクコク)」

「では始めてちょうだい?アンジ」

「分かりました」

闇慈は目を閉じ、あの姿を想像した。

「来い・・・」

「「「・・・?」」」

「来いよ・・・」

そして黒い煙みたいな物が闇慈の周りを渦巻き始めた。そして闇慈は自分の胸に右手を添えた。

「俺は・・・ここに居る!!」

闇慈が叫ぶと煙が体全体を纏った。そして煙が晴れるとあの『死神』の姿になり、右肩にはデスサイズ・ヘルを担いでいた。そしてゆっくり真紅の瞳が開かれた。

「あらら・・・まあまあ」

「これほどの魔力を持っているなんて・・・それにその姿は」

「・・・死神。闇慈先輩。恐い・・・」

「これが・・・闇慈のセイクリッド・ギア」

「まさに死神ね・・・この魔力は私も『恐怖』するほどよ」

「・・・これで良いですか?」

「ええ。ありがとう、アンジ。それで返事は決まったかしら?」

「返事って何ですか?」

「私の眷属になるか、ならないかよ」

「・・・僕の返事は」
 

 

第六話 戦闘


「・・・ふう。これで最後だよな?」

「そうみたいだね。でも悪魔の仕事がこんな『なんでも屋』みたいで良いのかな?」

闇慈と一誠はリアスから仕事を頼まれ、それを今終えたところだ。何故このような事になったのかは数時間さかのぼる。

ーーー回想ーーー

「リアス先輩。すみません、やっぱり僕は人間として生きて行きたいです」

「そう・・・。残念ね」

リアスは肩を落としたが闇慈には考えがあった。

「・・・リアス先輩。僕は悪魔にはなりませんけど、オカルト研究部の部員にならないと言った訳ではないですよ?」

「どういうことだよ?闇慈?」

「簡単に言うと『イッセー達の助っ人になる』と言うことだよ」

「なるほどね。悪魔にはならずに駒王学園の生徒としてこのオカルト研究部の部員になってくれると言うことなんだね?闇慈君」

「そう言うこと。これなら僕は喜んでオカルト研究部のために力を貸しますけど。どうでしょうか?リアス先輩」

リアスは少し黙り込んで段々笑い顔になっていった。

「あはは!!まさかこんな事を考えていたなんて貴方は本当に面白い子ね?アンジ」

「それが僕と言う人間ですから」

そう言うとリアスは右手を闇慈に差し出した。

「ようこそ!オカルト研究部へ。私たちは貴方を歓迎するわ、アンジ!」

「こちらこそよろしくお願いします。リアス部長」

闇慈とリアスは握手を交わし、オカルト研究部の入部を認められた。

ーーー回想終了ーーー

結論から言うと、闇慈は眷属にはならずに学園生徒としてオカルト研究部に入部すると言う形にした。

「さあ。もう帰ろうぜ?流石に遅いからな」

「そうだね」

闇慈たちが進路を帰宅の方へと変えようとすると・・・

ゾクッ!!

あの時の感覚に襲われた。

(・・・デスさん。)

(ああ。来たぞ・・・堕天使が)

「ん?どうしたんだよ?闇慈」

「一誠。僕の背後に・・・。堕天使が来る」

「なんだって!?お、俺も戦うぜ!!」

「セイクリッド・ギアが覚醒していないイッセーが戦った所で何が出来る!?まずはセイグリッド・ギアを覚醒させることを考えるんだ!!」

「わ、分かった!!」

(来たぞ、闇慈)

デスの声が聞こえたと同時に二人の男女の堕天使が降り立った。

「これはどういうことかしら?何故貴様が生きている?」

女の堕天使が声を張り上げたが闇慈は威圧感はそんなに感じない。レイナーレよりは下級の堕天使なのかもしれない

「問題はない。ここでそこにいる人間諸共、始末すれば良いだけのこと」

男の堕天使は冷静みたいだ。

(二人ともそこそこ魔力は強そうですね?)

(気を抜いてはやられるぞ?)

「(分かってます)あの。そこの男の堕天使さん」

「何だ?小僧。人間に話す舌は持ち合わせてはいないが話くらいは聞いてやろう」

「レイナーレって堕天使を知っていますか?」

「レイナーレ様をご存じとは・・・っ!?まさか・・・貴様」

その言葉を聞いた闇慈は右手を自分の胸に置いた。

「来い・・・来いよ・・・俺は・・・ここにいる!!」

お決まりの台詞を言いながらセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを担いだ。

「貴様は・・・レイナーレ様を退けた・・・死神か!!」

「さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」

闇慈はデスサイズ・ヘルを両手で持つと男に向かって斬りかかった。男も右手に光の槍を持ち出した。

ガキン!! バキン!!

闇慈はまず男の力量を図るため力を抑えて戦っていた。そして鍔迫り合いの状況になると・・・

「やるな・・・流石はレイナーレ様を退けた事だけのことはある」

「光栄だな。堕天使に褒め称えられるなんて思ってもいなかった・・・」

「だが貴様は一つ間違いを犯したぞ?」

「何?」

「お前の仲間を放って置いて良いのか?」

「私はあの死に損ないをやる!!」

女の堕天使が一誠に向かって翼を羽ばたかせ、急接近した。

(しまった!!男だけに気を取られすぎた!!・・・ここはイッセーの可能性を信じるしかない!!)

闇慈が一誠の心配をした瞬間強い光が走り、襲いかかった女の堕天使が吹っ飛んでしまった。そして男から距離を取り、一誠を見てみると左手に巨大な真紅の『篭手』を身につけていた。

(イッセーのセイクリッド・ギアが覚醒した!!やったな!!イッセー)

(まさか・・・あの篭手は!!)

(どうかしましたか?デスさん)

(・・・いや。何でもない。今は目の前の敵に集中するのだ!!)

(はい!!次で終わらせます!!)

闇慈は一斉に魔力を解放し足に集中させ、一気に斬りかかった。魔力を足に集中させているため闇慈の素早さは格段に上がっていた。

「これ程までの魔力を・・・」

「はあああ!!!」

ザシュ!!

闇慈は男の両足を立てなくなる程に切り込んだ。

「ぐわっ!!まさか・・・これ程とは・・・ここは引かせて貰おう。・・・小僧、名を何と言う?」

「俺の名は黒神闇慈だ」

「・・・中々良い名だ。我が名は『ドーナシーク』。再び相見えないことを願おう!!」

そう言うと堕天使ドーナシークは暗闇へと消えて行った。その事を確認すると僕はセイグリッド・ギアを解除して一誠に駆け寄った。

「大丈夫?イッセー」

「ああ。何とか俺もセイグリッド・ギアを覚醒させることが出来たみたいだぜ!!」

「真紅の篭手か・・・取り敢えずリアス先輩にこの事を報告しに行こう」

「だな」

そして学校の部室に戻ったのは良いが・・・待っていたのはリアスのきついお説教だったらしい。

「・・・不幸だよ」
 

 

第七話 聖女


二人の堕天使との戦闘があった翌日。闇慈と一誠はいつも通り二人で学校に登校していた。

「はあ。リアス先輩。まだ怒ってるかな?」

「怒ってると思うぜ・・・?リアス先輩はこう言った事は滅茶苦茶厳しいからな~」

(やっぱりあの時。堕天使は倒すべきだったかな・・・。くそっ!!死神の力を手しておきながらなんて様だ!!)

(仕方のないことだ。お前は人間で優しすぎる。殺める事に反射的に抵抗が出たのかもしれん。それに過去のことに心を捕らわれるのはやめろ)

(・・・デスさん。僕はもう甘えを捨てます。敵対する奴は・・・殺します!!)

(それはそれで良い。だが、力の使い方を誤ると後悔するぞ?)

(はい!!)

「ん?どうしたんだよ?闇慈」

「いや。何でもない、ちょっと考え事をしていただけだよ」

因みにデスのことはオカルト研究部の部員には全く話していない。そして再び学校に向かって歩き始めると・・・

「きゃっ!!」

と軽い悲鳴が近くから聞こえた。闇慈たちは声のした方を見てみるとシスター服を着て、頭にヴェールをかぶった少女が倒れていた。そして何より・・・

「むっほー!」

「なっ!?」

シスター服のスカートが捲れ、中の下着が露出していた。闇慈は顔を赤面させ、慌てて目を左手を遮ったが一誠は相変わらずのエロい目で見ていた。

「・・・天誅!!」

闇慈は右手で拳骨を作ると一誠の頭上めがけて振り下ろした。闇慈の身長は一誠より高いから簡単なことだった。

「痛ってーー!!何するんだよ!!闇慈」

「イッセーがエロい目で見てたから天誅だよ。それより彼女を助けないと」

「そうだな。ここでフラグゲットしてやるぜ!!」

(フラグって何だろう?とにかく今は・・・)

闇慈と一誠は倒れた少女に近寄り話しかけた。

「あうぅ。どうして何も無い所で転んでしまうんでしょうか?」

「大丈夫っすか?」

一誠はシスターの少女に手を差し出した。

「あ、はい。ありがとうございます」

少女も一誠の手を取り立ち上がった瞬間、突風が起き彼女のヴェールが風に飛んでしまった。闇慈は咄嗟にそのヴェールを掴んだ。そしてその拍子に彼女の容姿が露わになった。緑色の瞳に、小柄な体格。そして何より金色の髪が風になびいていた。闇慈と一誠のこの子に対する第一印象は同じだった。

((・・・可愛い))

「あ・・・あの///」

「あ!・・・悪ぃ!!」

一誠は掴んでいた手を離すと少し離れた。今度は闇慈が彼女のヴェールを彼女の頭にかけてあげた。

「あ、ありがとうございます(英語)」

「へえ。外国人なのに日本語が上手いね?(日本語)」

闇慈は日本語でシスターの少女に話しかけたが少女は首を傾げてきた。

「あの・・・私は英語を話しているのですが?」

(へっ?どういう事だ?)

(我にも分からぬ。お前が死神の力を手にしたことに関係があるのかもしれぬ)

デスにも分からないままだった。

「あ・・・あの」

「あ!ごめん僕の勘違いだったよ。君は外国人みたいだね?そして大きなトランクも持ってるから観光旅行してるの?」

「いえ。私は今日からこの町の教会に赴任することになりました『アシーア・アルジェント』と言います。アシーアと呼んで下さい」

「アーシアか。俺は兵藤一誠。よろしくな」

「僕は黒神闇慈。よろしくね、アーシア」

「はい。よろしくお願いします。えっと・・・イッセーさん、アンジさん」

「どうしたの?アーシア」

闇慈はアーシアに問いかけた。

「・・・道に」

「道に?」

今度は一誠がアーシアに聞くと・・・

「実は・・・道に迷ってしまったんです。もし宜しければ教会まで案内してくれませんか?」

アーシアは両手の人差し指を擦り合わせながらモジモジしていた。闇慈と一誠はこの仕草が中々可愛かったように感じたらしい。

「イッセー。アーシアは困っているみたいだから案内してあげよう」

「だな。良いぜ、アーシア。この町の教会って言ったら多分、山の中にある教会だと思うから案内するぜ」

「ありがとうございます。優しい方々にお会いできて良かった。これも主のお導きです」

「じゃあ行こうか?」

闇慈は自分の鞄を左手に持ち替え、アーシアのトランクを右手に持った。

「あ!アンジさん。自分で持てます」

「このトランクは僕にとってはそんなに重くないけどアーシアにとってはかなり重かったと思う。それが原因でさっき転んだんじゃないの?」

「あうぅ・・・」

図星だったのかアーシアは俯いてしまった。

「頼ることも大切なことだと思うよ?アーシア」

「じゃあ行こうぜ!!」

闇慈達は教会を目指し足を進めた。
 

 

第八話 断絶


「二度と教会に近づいてはダメよ!!」

アーシアを教会に案内して学校に行き、昼休みに屋上でリアスにこのことを話すと闇慈は早速怒られてしまった。だが思わぬ収穫もあった。アーシアも体にセイクリッド・ギアを宿していることだった。
案内をしている途中、怪我をした男の子をアシーアが見つけると軽く励ますと右手を怪我の部分にかざすと緑の光が怪我の見る見る治していった。闇慈はデスに聞いてみると、あれもセイクリッド・ギアの力だと言うことだった。

「教会は『天使』や『堕天使』の拠点とも言って良いわ。何時、光の槍が飛んできてもおかしくないわよ。それに教会には『悪魔祓い(エクソシスト)』も居るのよ」

「悪魔祓い・・・。神の祝福を受けた人たちで悪魔を『無』に帰す力を持っている人たちですよね?」

「その通りよ。その事を知ってながらどうして教会に近づいたのかしら?アンジ」

「・・・すみません。困っているアーシアをやはり僕とイッセーは見過ごすことは出来ませんでした」

「・・・ごめんなさい。熱くなりすぎたわね。とにかく今後は気をつけてちょうだい」

そう言うとリアスは行ってしまった。闇慈はこの事を一誠にも伝える事にした。

~~~~~~~~~~~~

放課後。闇慈と一誠は部室で案内のチラシを整理していた。

「なあ、俺たちって先輩に怒られてばっかりだよな?」

「悪魔たちの事情は僕たちが思っている以上に複雑なのかもしれない。今後は迂闊な行動は慎もうイッセー。特に教会や天使や堕天使のことに関することにはね」

「だな。」

「部長はイッセー君と闇慈君を心配なさっているんですわ」

闇慈達が話していると二人が座っているソファーの後ろから朱乃がいきなり現れた。

「うわっ!?朱乃先輩!?何時から・・・」

「うふふ。今ですわ」

そう言ってるとリアスが部室に入ってきた。

「あら朱乃。もう帰ったと思ったのにどうしたの?」

「立った今、大公から連絡が・・・」

「大公から?」

すると朱乃は少し顔が険しくなった。

「この町で『はぐれ悪魔』が見つかったみたいですわ」

「っ!!」

「・・・」

リアスは少し驚いた様な顔をしていたが、闇慈は何か一人で考え事をしているような表情を浮かべていた。

~~~~~~~~~~~~

時間は過ぎ、周りはすっかり暗くなっていた。あの後闇慈はデスさんに『はぐれ悪魔』について色々尋ねた。
はぐれ悪魔は上位悪魔の下僕として悪魔になったがそれを裏切り、放浪している悪魔の事らしい。はぐれ悪魔は体も心も『悪』に染められてしまい、容赦なく生物を殺すらしい。
闇慈は自分自身の甘えを絶つために一人ではぐれ悪魔がいるとされる廃墟に来たと言うことだ。

(闇慈。はぐれと言えど奴らは嘗ての『悪魔』だ。気を抜くと殺されるぞ)

(分かっています、デスさん。僕はこの戦いで『甘え』を完全に絶ちます!!)

闇慈は覚悟を決し、廃墟の中に入った。中は真っ暗だが・・・

「(・・・血の臭いと邪気が凄まじい)出てきて下さい、はぐれ悪魔さん。エサが来ましたよ?」

「・・・ふふふ。自ら進んで私のエサになりにくるなんてねぇ」

気持ち悪い声が聞こえると上半身は女性の裸だが下半身は巨大なムカデのような体をして腹の部分には口のような物があった。

(なるほど。これが体も心も悪に染められたものの末路か・・・)

「さあ。どんな風にして食べてあげようかしら?いたぶってからにしようかしら・・・それともそのままいこうかしら」

「何でも良いですけど僕も抵抗させて貰いますよ?」

「あらぁ。人間の癖にいうじゃない。その自信がどこまで続くかしら~?」

「来い・・・」

「ん・・・?」

「来いよ・・・」

「まさか・・・貴様は」

「俺は・・・ここにいる!!」

闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを右肩に担いだ。

「まさか・・・セイクリッド・ギアを宿してるなんてねぇ。食べ応えがありそうだわ」

「・・・うるさい」

(闇慈。この周りに我が結界を張った。存分にやるが良い)

闇慈は真紅の目を見開き、足に魔力を溜め、一瞬で右の腕を斬り落とした。しかし・・・斬られた腕の根元からまた腕が復元した。

「少しはやるようね。でも私の体は復元させることが出来るの」

そう言うと腹部の口が開き、闇慈を丸呑みせんと噛み付いてきた。闇慈はどうと言ったことはなく避けることが出来たが疑問な点があった。

(デスさん。この鎌は万物の『生』を刈り取る鎌ですよね?何故あの腕は復活したんです?)

(お前は鎌の刃に魔力を集中させていないだろう?留めていない限りこの鎌はただの鎌だ)

(そう言うことは最初から言って下さい!!)

闇慈は魔力を鎌に注ぎ始めると鎌が段々軽くなって行った。そして今度こそと思い闇慈は再び右腕を斬り落としにかかった。

「バカな子ねぇ。そんなことしても無駄よ」

「それは斬られてから言うことだな・・・」

スバシュッ!!!

今度は手応えがあり、右腕を斬り落とすと同時にはぐれ悪魔の血が飛び散った。落ちた右腕は霧散してしまった。

「ぎゃああああああ!!!?」

はぐれ悪魔の悲鳴が廃墟中に響き渡った。

「貴様!!何をしたーーー!!!」

はぐれ悪魔の上半身は女性の体では無くなっていた。肌が緑に変わり、如何に『化け物』を思わせるような体になっていた。

「・・・貴様に教える義理はないが輪廻に落ちる土産として教えてやる。この鎌はありとあらゆる『生』を刈り取る。貴様の『復元』と言う名の『生』を刈り取らせて貰った」

闇慈は容赦なく今度は左腕も切り落とした。素早さも高めているため、目で追うことは出来ないだろう。

「わ、私の腕がーーー!!!い、痛いぃぃぃ!!!」

「今度は・・・そこだな」

闇慈はがら空きになった下半身の部分を横に薙ぎ払い、上半身との永遠の別れを告げさせた。

「・・・」

闇慈は真紅の瞳で丸腰となったはぐれ悪魔を見下した。辺りには鮮血が飛び散っていた。

「ひぃ・・・。お、お願い。た。助けて・・・」

「痛いか・・・?恐いか・・・?苦しいか・・・?それが死神が与える『死』につきそうものだ。その感情・・・忘れるな・・・」

闇慈はゆっくりデスサイズ・ヘルを振り上げると・・・そのまま縦に薙ぎ払った。はぐれ悪魔はそのまま霧散してしまった。闇慈はセイクリッド・ギアを解除したが・・・

「ぐっ・・・おえぇぇ!!!」

やっぱり刺激が強すぎたのか、嘔吐してしまった。

(大丈夫か!?闇慈)

(・・・何とか大丈夫です。あはは・・・やっぱり最初の内はきついですね。でも僕はもう迷いません!!)

(・・・強いのだな、闇慈)

(僕は強くありませんよ。さっきだってセイクリッド・ギアのお陰で倒せたんですから・・・この力が無かったら僕は今頃はぐれ悪魔の胃の中ですよ)

(我が強いと思ったのはお前の心だ、闇慈)

(ありがとうございます、デスさん。戻りましょう)

闇慈が入り口に足を向けると、入り口が開き、オカルト研究部の部員が達が入ってきた。
 

 

第九話 判明


闇慈がはぐれ悪魔を倒し帰ろうとすると闇慈以外のオカルト研究部の部員が入ってきた。

「うおっ!?何か周りに赤いものが飛び散ってるぞ!?」

「これは・・・血だね」

「・・・それに、はぐれ悪魔の気配もありません」

「あらあら・・・まあまあ」

みんな驚いているようだが、リアスは真剣な顔をしていた。

「・・・アンジ。貴方一人ではぐれ悪魔に戦いを挑んだの?」

「・・・はい」

「どうしてこんなことをしたのかしら?」

「僕自身にケジメをつけるためです。僕はもう迷わない。そして僕たちを消そうとする奴は・・・倒します!!」

「・・・それが貴方の覚悟なのね?アンジ」

「・・・はい!!」

リアスはしばらく僕の顔を見ると顔を緩めた。

「分かったわ。今回はその覚悟に免じて許してあげる」

「ありがとうございます」

「でもアンジ。よく一人で倒せたわね?大半のはぐれ悪魔は自分の体を再生させることが出来るの。私の計画では祐斗と小猫と朱乃で体力と魔力を奪った後、私が消し飛ばすつもりだったのよ?」

リアスは疑問に思ったのか僕に問いかけてきた。闇慈は再びセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを見せた。

「それはこの鎌のおかげですよ」

「そう言えばこの鎌・・・以前堕天使と戦った時に魔法を斬り裂いてたわよね?」

「まあ。魔法を斬り裂く鎌が存在していたなんて驚きですわ」

「確かに。弾き飛ばしたり防ぐことは出来ても、魔法そのものを消すことは普通は出来ません」

「・・・(コクコク)」

「なあ闇慈。前は聞かなかったんだけどよ。この鎌って名前はあんのか?」

一誠は闇慈に聞くと闇慈はすぐに答えた。

「勿論。これは死神の鎌・・・デスサイズ・ヘルだよ」

その事を聞いたリアスは驚きを隠せないほど表情を浮かべた。

「デスサイズ・ヘルですって!?」

「知ってるんですか?リアス先輩」

「神をも殺せる神器・・・神滅具(ロンギヌス)の一つよ。ありとあらゆる『生』を斬り裂き、『死』を導く鎌よ。文献でしか見たことがないから実際にみるのは初めてよ」

「なら試してみますか?僕に向かって魔力で出来た弾をぶつけに来て下さい。僕が斬り裂きますから」

「分かった。朱乃。頼むわ」

「はい。部長」

朱乃は右手に上にかざすとバスケットボール並の大きさの黄色い魔力で出来た球体が現れた。

「行きますわよ~?闇慈君」

「はい!!」

朱乃は闇慈に向かって黄色い球体を振り下ろした。闇慈は焦ることなく魔力を注ぎ込んだデスサイズ・ヘルを頭上で回転させ勢いをつけ、球体を横に一閃した。球体は真っ二つになった後、霧散してしまった。

「すげー!!本当に魔法を叩き斬りやがった!!」

「・・・恐いですけど。流石です、闇慈先輩」

「闇慈君とはあまり戦いたくないな」

闇慈はデスサイズ・ヘルを右肩に担ぐとリアスに尋ねた。

「これで信じてもらえますか?リアス先輩」

「ええ。確かに文献通りね。これは良い戦力を手に入れることが出来たようね」

闇慈はリアスの確認を取りセイクリッド・ギアを解除しようとすると・・・。いきなり目の前を魔力の弾が通り過ぎ、爆発が起こった。

「へっ!?」

誰が撃ったのかはすぐに分かった。

「あらあら。まだ元気そうですわね~~?」

朱乃は顔を赤らめ、次の魔力の弾を撃とうとしていた。

「えっ。ちょっ!!朱乃先輩!?もう終わりですよ!?リアス先輩!どういう事ですか!?」

「言い忘れてたけど。朱乃はああ見えて・・・ドSよ。あの状態になると自分が満足行くまで撃ち続けると思うわよ?」

「・・・と言うことは」

次から次へと闇慈に魔力の弾が雨のように降り注いだ。

「うわわわ!!!見てないで助けてよイッセー!!木場君!!小猫ちゃん!!」

「あはは。頑張れ・・・闇慈」

「頑張って、闇慈君」

「・・・頑張って下さい、闇慈先輩」

「えええええ!!?」

闇慈はその後リアスが止めてくれるまで10分間くらいは逃げ続け、無駄に疲れたらしい。
 

 

第十話 救出


あの地獄のような弾幕鬼ごっこから解放され、部室に戻ってきた。一誠はさっき対価を貰うためにまた出かけていった。

「はあ・・・酷い目に遭った・・・」

「ごめんなさいね?アンジ」

「リアス先輩・・・絶対知ってて朱乃先輩にやらせたでしょう?」

「さあ?それはどうかしら?」

(あなたって人は~~)

部室には一誠を除いた全員がいるが闇慈は何か落ち着かなかった。

(何だろう?この変な感じは・・・。何故こんなにそわそわするんだ?)

闇慈はついに居ても立ってもいられなくて立ち上がった。

「どうしたの?アンジ」

「何だか嫌な感じがします。僕の死神の力が何かを言っているみたいです。・・・ちょっとイッセーの元に行って来ます!!」

「あ!闇慈君!!」

「・・・」

闇慈はそのまま部室を飛び出すと夜遅くなので人はあまりいないと思い、セイクリッド・ギアを発動させ、足に魔力を集め、家の屋根を飛び越して行きイッセーが尋ねている筈の家に急いだ。

(無事で居てよ?イッセー)

そして一誠が尋ねている筈の家に着くと一番に気がついたのは・・・

(血のにおい。そしてこの家の周りに結界が張られている。まさか!!)

闇慈はそのまま玄関に入り、リビングに入ると言葉を失った。
一誠は両足を何かに撃ち抜かれた痕がありその場に倒れ伏していた。そして壁よりには服を切り裂かれ肌を半分以上露出させられ、体を弄ばれているアーシアがいた。そしてそれを楽しむ神父の服を着た男が一人。

「あらら?新客登場?これは歓迎しないといっけないようですねっ!!」

(・・・何?この変な喋り方は・・・。まあ分かることは一つか・・・こいつが)

「あ・・・闇慈?」

「ア・・・アンジさん?」

「何?俺様無視されてる?そん~な奴には俺様がお仕置きしちゃうわよ~」

「・・・お前がイッセーとアーシアをやったのか?」

「ああん?そ~でっすよっ!!私こと『フリード・セルゼン』がそこのクソ悪魔やら使えねえ部下をやったのでごぜぇます!!」

「・・・分かった。もう喋らなくて良い」

「何々?お前も悪魔に肩入れする人間?と言う訳で死んでちょ・・・」

バキン!!

闇慈はデスサイズ・ヘルを素早く手に取ると外道神父が持っていた銃の銃身と光の剣の柄の部分を斬り裂き、アシーアを解放すると外道神父の首元にデスサイズ・ヘルの刃を突きつけ、魔力を一気に解放し真紅の眼で威圧をかけ始めた。

「喋るなと言ったはずだ・・・」

「あら・・・あら~?これって俺様不味くない?・・・よ~し良い子だから大人しく・・・」

ドスッ!!

今度は外道神父を壁に突き飛ばし、首すれすれにデスサイズ・ヘルの刃を壁に突き刺した。

「次喋ったら首を落とすぞ・・・」

外道神父は汗を大量に流し、首を上下に動かした。

「良し。取り敢えず貴様は・・・」

「グボラっ!!」

鳩尾に魔力を溜めた右の鉄拳を打ち込み家具の山の中に吹き飛ばした。

「気絶していろ・・・イッセー。アーシア。大丈夫?」

闇慈はデスサイズ・ヘルを消すとイッセーとアーシアの元に寄り添った。

「ああ。助かったぜ、闇慈。いつつ」

「アーシアも無事で良かった」

「あ、はい。助けて下さって、ありがとうございます」

するとグレモリー家の赤い魔法陣が現れると中から木場。小猫。朱乃。リアスが出てきた。

「あらあら。もう終わってますの?」

「・・・闇慈先輩。早すぎです」

小猫は何故か不機嫌そうだ。

「ごめんごめん。今度生チョコを作ってきてあげるからそれで勘弁してくれないかな?小猫ちゃん」

「・・・物で釣られたような感じがしますけどそれで許します」

顔を膨らませながら怒っていたが明後日の方を向きながら許してくれた。

(許すんだ・・・でもそう言う所が小猫ちゃんの可愛い所なんだよな)

そう言っていると木場が何かに気づき顔が険しくなった。

「部長。堕天使の反応が・・・ここは滞在し続けるのは危険です」

「イッセーを傷つけた奴を消し飛ばしてあげたいけど仕方ないわね。朱乃。イッセーを回収した後に魔法陣を展開し、ホームに帰還するわよ」

「はい。部長」

しかし。リアスの顔が申し訳なさそうになり闇慈に話しかけた。

「ごめんなさいね、アンジ。魔法陣は悪魔とその眷属しかジャンプ出来ないの」

「分かりました。アーシアの事は僕が決めて良いですよね?」

「・・・分かったわ。イッセーを助けてくれたので認めましょう」

「ありがとうございます」

「闇慈。アーシアを頼むぜ」

ジャンプする瞬間、一誠が闇慈に頼んできた。

「これで貸し一つだからね?イッセー」

そう言うと一誠達は魔法陣に包まれ、その場から居なくなった。

「アーシア。僕はこれからここから逃げるけど君はまた教会に戻る?」

「私は・・・イッセーさんやアンジさんの元に行きます。教会にはもう戻りたくありません」

「分かった」

「・・・そうはさっせね~~よ~~」

さっき吹き飛ばした外道神父が闇慈に掴みかかったけど闇慈は再び鉄拳を打ち込み吹き飛ばした。

「(浅かったのかな?でも今は逃げないと)ごめんね?アーシア」

「えっ!?」

闇慈はアーシアを抱きかかえると窓を蹴破り、屋根を飛び越えて行った。

「きゃ~~!!!」

「悲鳴を上げてると舌を噛むよ!!」

そして闇慈は家に着く窓から闇慈の部屋に入るとデスに障害結界を張ってもらいこれで一安心した。

「ふう。大丈夫だった?」

「う~~。フラフラしますぅ」

・・・大丈夫でも無さそうだった。アーシアは目を回していた。取り敢えず今日はここで休んで貰おう。幸い両親はもう寝付いているみたいだった。闇慈はアーシアの服がほぼ壊滅状態だったことに気づくと闇慈は毛布を差し出し、体にくるませた。

「あのアンジさん。どうして教会の人はイッセーさんや私を狙うんですか?」

「・・・これは僕の推測だけど体にセイクリッド・ギアを宿しているからだと思うよ」

「セイクリッド・ギア?」

「僕のさっきの力みたいなものだよ。それにアーシアも持ってる」

「私も?・・・ひょっとして」

「そう。君が神から貰ったと言っていた『癒し』の力の事だよ。奴ら・・・特に堕天使はセイクリッド・ギアを集めて何かをしようとしている。これも僕の推測だけど」

「私はどうしたら良いのでしょうか?」

「取り敢えず。明日リアス先輩に相談しに行こう?そのためには早くここを発たないといけないから今日はもう休もう。ベッドはアーシアが使って良いから」

「あ、はい。分かりました」

アーシアは色々あったのかベッドに入るとそのまま寝込んでしまった。闇慈は見張りのためにそのまま起き続けることにした。

(デスさん。周りに何か反応はありますか?)

(我の結界を甘くみては困るぞ、闇慈。周りには悪魔祓いや堕天使の反応は全くない)

(でも取り敢えず今日は見張りを続けますね)

こうして長い夜はふけていった。
 

 

第十一話 友人


闇慈は夜が明ける前にアーシアを起こし学校へと急いだ。幸い部室の鍵は部員全員に渡されてあるため、鍵には困らなかった。そして部室の周りにもリアスの障害結界が張られているので堕天使や教会の人間に知られることはないだろう。そして部室に入ると周りのロウソクに火をつけ明るくした。

「良し。ここまでくればもう大丈夫だよ」

「アンジさん。昨日言ってた『リアス先輩』ってどんな方なんですか?」

「厳しいけど仲間を大切に思ってくれる先輩だよ。事情を話せばきっと理解してくれる筈だと思う」

闇慈はリアスは信じる。確かにアーシアは教会側の人間だけどあのような場所にいたら心が砕けてしまう。闇慈はそうなる前に一誠の事を大切に思ってくれるアーシアを助けてあげたい、そう思った。

「分かりました。私はアンジさんを信じてますからアンジさんが信用なさっているその方も信じます」

「ありがとう、アーシア」

~~~~~~~~~~~~

そしてしばらくすると他のオカルト研究部の部員達が集まって来た。しかし一誠の顔は痛々しい表情を浮かべていた。

「すみません、リアス先輩。勝手に教会の人間を連れ込んでしまって・・・」

「良いのよ、アンジ。イッセーからも彼女の事を聞かされたけど私も納得したから構わないわよ」

「は、初めまして。アーシア・アルジェントと言います」

「リアス・グレモリー。悪魔でグレモリー家の次期当主よ。よろしくね、アーシア」

取り敢えずリアスの許可は貰えたけどこれからどうするべきか闇慈は迷っていた。教会や堕天使達は絶対にアーシアを連れ戻しに来る筈。しかしやり方が如何にも過激すぎる・・・

(まさか。堕天使達が教会の人間を操っているのかな?でもいずれにせよ教会と一荒れ来ることは間違いないな)

「アーシア。良かった・・・無事で。いつつ」

「イッセーさん!?」

やっぱり昨日の傷が完全に癒えていないのか一誠は撃ち抜かれた所を手でおさえていた。

「私が傷を塞ぎましたけど・・・光の毒までは消すことが出来ませんでした」

「私が治します!!」

アーシアが撃たれた場所に手を添えるとあの時の様に緑の光が一誠の傷を照らし続けた。

「どうですか?イッセーさん」

「すげー!もう全然痛くねぇ!!ありがとな!アーシア!!」

「いえ。イッセーさんのお役に立てて嬉しいです」

闇慈とリアスはその力を興味深く見ていた。闇慈は一度見ているがその治癒の力は教会や堕天使が欲しがるのもよく分かった。

(これが・・・アーシアのセイクリッド・ギアの力)

(その治癒の力・・・私の眷属に欲しいわね。どうにかして悪魔に迎えれないかしら?)

しかし腑に落ちない点があった。

「アーシア。何故君は堕天使がいる教会につくことになったの?」

「・・・実はこの力のせい何です」

~~~~~~~~~~~~

アーシアは闇慈達に自分の過去を語ってくれた。
アーシアは体に宿していたセイクリッド・ギアの力を使い、多くの人を癒し、周りからは『聖女』と言われていたらしい。しかし彼女には心を許せる友人がいなかった。何時も周りは『聖女』と拝めていたがアーシアにとってはそれは良いことでもあったと同時に孤独感を感じていた。
しかし、ある出来事で周りの態度は一変することになってしまった。ある日、傷ついた男がアーシアのいる教会へと逃げ込んできた。心優しいアーシアはすぐにその男をセイクリッド・ギアの力で治療したがその男は『悪魔』だった。その事知った周りの人間は『聖女』から『魔女』と言い換え罵った。そして彼女は異端審問にかけられ、教会を追放されてしまった。そしてこの極東の地・・・日本で、堕天使が集めているはぐれ悪魔祓いがいるあの教会に入ったと言うことだった。
このことを話を聞いたアーシア以外の部員は申し訳なさそうにしていた。

(・・・やっぱりこの世で一番恐ろしいのは『悪魔』でも『堕天使』でもない。僕たち・・・『人間』なのかもしれない。都合に合わせて拝んだり、それが悪くなれば切り捨てる)

(しかし。全ての人間がそう言う訳でもないと思うが?闇慈)

しかしアーシアはこのことを恨んでいなかった。神が与えた試練だと自分に言い聞かせたみたいだ。闇慈はこの子の心の強さには恐れ入った。そしてアーシアには夢があった。『友人を作る』ことだった。さっきも言ったけど彼女には心を許せる友人がいない。

「この試練を乗り越えれば何時かきっと主が私にお導きを・・・」

だけどこの子は勘違いをしている。その事を闇慈が言おうとすると・・・

「それは違うと思うぜ?アーシア」

「イッセーさん!?」

(イッセー。何を言うつもりなんだろう?)

闇慈は一誠の声に耳を傾けた。

「俺はもうアーシアの事を友達って思ってたぜ?」

「でも・・・私は・・・」

「悪魔を癒したから何だってんだ!?俺にはそんなの関係ねえ!!俺にとってアーシアは心が広い優しい女の子だと思ってる」

「い・・・イッセーさん」

その事を聞いたアーシアは段々涙目になっていった。

「だからさ。俺と・・・友達にならないか?アーシア」

一誠はアーシアに近寄り、優しく問いかけた。そして闇慈の心の中ではっきり分かったことがあった。

(・・・イッセー。やっぱり君は最高だよ!!)

「僕もその友人に加えてくれないかな?」

「・・・私もアーシア先輩と仲良くなりたいです」

「あらあら。私も構いませんか?」

「私も今日初めてあったけどそれに加えてくれないかしら?」

みんなはアーシアの元に寄り添った。そしてアーシアは闇慈の方を見た。

「アンジさん」

「アーシア。君は不幸になりすぎた。だからもう・・・幸せになって良いんだよ」

闇慈はアーシアに語りかけると、アーシアは流れていた涙を拭うと・・・

「はい。みなさん。よろしくお願いします」

最高の笑顔でみんなに挨拶をかわした。こうしてまた闇慈に一人の仲間が加わった。
 

 

第十二話 憑依


闇慈たちは二組に分かれ、堕天使の本拠地であるあの教会を目指していた。木場と小猫と一誠とアーシアで一組。闇慈とリアスと朱乃で一組。一誠とアーシアには木場と小猫がいるから大丈夫だろう。やばくなれば闇慈が向かうことになった。

ーーー回想ーーー

「計画を繰り返すわよ?まずイッセー達が教会の中に入り込み、騒動を起こし、堕天使を引きずり出す。そしてその堕天使は私と朱乃とアンジで倒す。イッセー達は悪魔祓いの相手をしてちょうだい。数的には悪魔祓いの方が多いはずだから」

「あの部長!!」

「何かしら?イッセー」

「堕天使レイナーレは・・・俺にやらせて下さい!!俺自身にケジメをつけさせて下さい!!」

「・・・アンジ」

「はい」

「堕天使と掃討した後、イッセー達の援護に回りなさい」

「分かりました」

「良い?イッセー。無理はしないでちょうだい」

「はい!!ありがとうございます、部長!!」

ーーー回想終了ーーー

こう言った感じで作戦は決まり、それが決行され今闇慈達は教会の近くの山の中にいて周りにはリアスと朱乃だけだ。しかし朱乃は・・・巫女さんの服を着ていた

「さて・・・敵はどう動くかしら?」

しかし闇慈には分かっていた。すぐ近くに堕天使がいることを・・・。闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、マントを纏い、デスサイズ・ヘルを右肩に担いだ。

「あらあら?闇慈君。どうしました?」

「・・・隠れていないで出てきたらどうですか?堕天使さん」

闇慈が一本の巨木に向かって言うと三人の堕天使が翼を羽ばたかせ、出てきた。

「また会ったな。小僧。いや・・・黒神闇慈!」

「何だよドーナシーク。こんなへたれな奴の知り合いなの?」

ゴスロリのような服を着た堕天使が闇慈を侮辱したようみたいだが闇慈は気にしてはいないみたいようだった。

「ていうか。あいつ一人でレイナーレ様に挑んでるみたいだけど勝てるわけないし!だって元カノだもん!レイナーレ様にあいつの事聞かされたけどもう大爆笑!!」

「本当ね・・・あのお人好しの話はいつ聞いても腹が捩れる」

リアスは二人の女の堕天使の言葉に怒りを覚えた。

(決定ね・・・この二人は吹き飛ばしてあげる!!)

「レイナーレ様があの男を始末する前に我らが貴様達を葬ってくれる!!」

そう言うと三人の堕天使は光の槍を構えると一斉にリアスに向かって投げた。リアスは魔力の波動で弾き飛ばそうとしたが、その前に闇慈がデスサイズ・ヘルで斬り裂き、霧散させた。闇慈は何も言わなかったが何か雰囲気が違うようにリアスと朱乃は感じていた。

「あれ~?あいつやるじゃん。レイナーレ様の元カレより強いし、結構イケメンじゃん」

「気を抜くな。あいつはレイナーレ様を退けた奴だ」

「ほう。あいつが・・・。確かにあの役立たずよりは頼りになりそうね」

流石のリアスも耐えられなくなり魔力を撃とうすると・・・

































「それ以上、俺の友人を侮辱するな・・・殺すぞ」

「えっ!?」

「あら~?闇慈君?」

その言葉を発すると魔力が一気に闇慈の体から解放され始めた。

(何!?この魔力は・・・?何時ものアンジの魔力じゃない。今のアンジの魔力は・・・禍々しい・・・っ!!)

魔力の渦が闇慈の体を取り巻くと両腕と頬に禍々しいの黒いタトゥーが入り始め、デスサイズ・ヘルの刃も一枚刃から二枚刃に変わり、そして次の瞬間・・・

バサッ!!

闇慈の背中から大小の二対の四枚の漆黒の翼が生えた。その姿はまさに・・・

「死神・・・」

「まあ・・・これ程まで」

「・・・リアス先輩。朱乃先輩。こいつらは俺にやらせて下さい・・・こいつらだけは魂すら斬り裂いて・・・転生の輪廻から外してやります!!」

「・・・分かったわ。好きになさい。でも無理はしないように」

「分かりました」

「ええい!!ややこしい!!」

「待て!!早まるな!!」

ドーナシークが咎めたが女の堕天使が闇慈に向かって光の槍を手に突っ込んできた。

「・・・」

しかし闇慈はその名の通り、消えてしまった。

「消えた!?」

そして気づくと闇慈は突っ込んできた堕天使の後ろに立っていた。そして次瞬間・・・

ズバッ!!

「えっ・・・」

「何っ!?」

堕天使の四肢と漆黒の翼が一瞬で切り離されてしまった・・・

「ぎゃああああ!!!!」

斬り裂かれた堕天使は痛みに悲鳴をあげ、地面に倒れ伏した。そして闇慈そのまま丸腰となった堕天使にデスサイズ・ヘルを縦に振り降ろした。斬り裂かれた体はそのまま霧散してしまった。

「残り二人・・・」

「ひっ・・・」

ゴスロリの堕天使は圧倒的な強さに涙目になっていた。

「・・・恐いか?ならせめてもの慈悲だ。一瞬で終わらせてやる」

「い、いやあああ!!!」

ゴスロリの堕天使は終にその場から逃れようとして翼を羽ばたかせたがもう隣には・・・死神がいた。

「逃がさない・・・」

闇慈はそのままデスサイズ・ヘルを横に振ると首と体が永遠の別れを告げ、そのまま霧散してしまった。

「痛みはない・・・痛みすら感じない程疾く斬り裂いた」

「ここまでのようだな・・・」

「・・・ドーナシーク」

「ふっ・・・まさか貴様の様な小僧に敗れることになるとはな・・・。さあ、やれ!!」

「・・・」

闇慈はそのままさっきの堕天使同様に首を斬り裂いた。そしてそのまま霧散してしまった。残った物は沈黙だけだった。 

 

第十三話 抱擁


「はあ・・・はあ・・・」

デスが闇慈に取り憑き・・・いやこの場合は『憑依』と言ったほうが良いのかもしれない。その時間が終わると闇慈はセイクリッド・ギアを発動させた時の体と服に戻っていた。そして一気に疲れが闇慈を襲い、片膝をついた。

(デスさん。これ確かに強力ですけど・・・凄く疲れますね)

(当たり前だ。あの状態になったお前は普段より多くの魔力を消費するからな)

(あまり多用は出来ないってことですね・・・今後はこの力をあまり使わずに『憑依・死神』って呼びますね)

(・・・ふっ。悪くない名だ)

そして闇慈が立ち上がるとリアスと朱乃が話しかけてきた。

「アンジ。今の力は?私は初めてみるのだけど」

「何だか闇慈君ではないように感じましたわ?」

(・・・もう話しても良いですよね?デスさん)

(・・・好きにするが良い)

「では率直に言います。僕の体の中には死神がいます」

「えっ。死神の力があることは知ってるわよ?」

「いえ。力だけでなく・・・死神本人が僕の体の中にいるんです」

「あらあら。そんなことが・・・」

「何時もはデスサイズ・ヘルやマントだけですけど。さっきは僕に憑依し、力を爆発的に上げてくれたんです。でも憑依した後は魔力を著しく消費してしまうため凄く疲れます」

「そんなことが・・・死神を私たちの前に呼んでくれないかしら?」

「・・・少しなら良いと言っています」

そして闇慈の背中から黒い煙が出てきて、それが段々形を整えていくとデスが何時もの容姿で出てきた。リアスはデスの姿に少し後退するけどすぐに持ち直した。朱乃さんは何時ものようにポーカーフェイスだった。

「初お目にかかる、グレモリー家の娘よ。我は黒神闇慈の体に住まう死神だ。今後はデスと呼ぶが良い」

相変わらず口の骨がカタカタとなっている。

「ええ・・・私はリアス・グレモリー。よろしく頼むわね」

「うむ。それで・・・貴様は我に何を問う?」

デスがリアスに問うと、リアスは真剣な眼差しでデスを見ると・・・

「貴方はアンジの体に住んでいると言っていたけどアンジの体には何も影響はないのかしら?」

「闇慈からも聞いたであろう?我は闇慈の魔力を糧に生き、そして力を貸し与えているだけだ。命の関わることはない」

「・・・そう。それを聞いて安心したわ。あれがとう、デス」

「では失礼する」

デスはまた煙の戻ると闇慈の中へと入っていった。

「・・・悪い奴ではなさそうね?アンジ」

「はい。僕はデスさんのお陰で今こうやって生きているんですから。では僕はイッセー達の元に向かいますね」

そう言うと闇慈は教会に向かって走っていった。

「・・・」

「どうしました?部長」

「何でもないわ。私たちも急ぐわよ」

「分かりましたわ」

~~~~~~~~~~~~

視点は変わり、教会に移動する。教会の中では木場と小猫が悪魔祓い達と応戦していたが・・・流石に数の差が有り過ぎ段々押されていった。

「・・・祐斗先輩。少しこれは不味いかもしれません」

「確かにね。これはちょっとやばいかもしれないね、小猫さん」

二人の『魔力』はそう使われていなかったが・・・『体力』がほぼ限界に達しようとしていた。そしてまた一人の悪魔祓いが小猫に向かって光の剣を振り下ろしてきた。

「・・・っ!!」

小猫はその剣を避けると回し蹴りを放ち吹き飛ばした。
小猫の悪魔のクラスは『戦車(ルーク)』。パワーをモチーフとした戦闘を好むが体力が少ない小猫にとってこれは悪手だった。足がもつれ、その場に倒れ伏してしまいその隙を逃さんとばかり2~3人の悪魔祓いが光の剣を小猫に向かって突き刺そうとしていた。

「小猫さん!!」

木場はフォローに回りたいが悪魔祓いに道を阻まれ、助けに行くことが出来なかった。

「・・・っ!!」

小猫は直撃を覚悟したのか目を閉じた。


















しかし。その剣は小猫に届くことは無かった。小猫の横を何かが通り過ぎると、そこに小猫はいなかった。そして悪魔祓い達が見たのは教会の大きな柱の上に立ち、小猫を抱きかかえ・・・俗で言う『お姫様抱っこ』をしていて、そして大きな二枚の漆黒の翼で小猫を包むように守っている闇慈だった。そして木場はその見ていた残りの悪魔祓いを剣で切り裂いた。

~~~~~~~~~~~~

時間は少し遡り、闇慈は走って教会に向かっていたがいささか距離が離れすぎているのだろう・・・中々、教会に着かない。

(デスさん。あの翼って憑依した時にしか使えないんですか?)

(いや。普段でも具現させることは可能だが?)

(走るより飛んだ方が早いと思います。翼を具現させて下さい)

(承知した!!)

そして走っている闇慈の背中から先程の二枚の大きな翼。そして二枚の小さな翼が生えると闇慈は勢いを乗せそのまま飛び立った。そしてすぐに教会の入り口が見えてきたが・・・闇慈の目には小猫が悪魔祓いから斬られようとしているのが見えた。

(不味い!!)

闇慈はそのまま地面すれすれで滑空するとそのまま開いていた入り口に入ると小猫を抱きかかえ柱の上に立った。

「・・・(フルフル)」

小猫は覚悟していたとは言え猛毒である『光』で出来た剣を受ける恐怖が今に出てきたらしく。目を閉じたまま振るえ始めた。

「大丈夫だよ?小猫ちゃん」

「・・・えっ?」

小猫が目を開け、闇慈の姿を見ると自分の今の状況を確認し始めた。

「ごめんね?小猫ちゃん。咄嗟だったからこれしか助ける方法が無かったから・・・」

「・・・嫌じゃないです」

「えっ!?」

そう言うと小猫は自分の顔を闇慈の胸に埋めた。いきなりだったので闇慈も動揺しているようだった。

「こ、小猫ちゃん!?」

「闇慈先輩・・・温かい」

「・・・」

闇慈はそのまま小猫を優しく抱きしめた。

「無事で良かったよ。小猫ちゃん」

「・・・(コクッ)」

そして柱から降りると小猫を地面に降ろした。小猫は少し名残を惜しいように闇慈から降りた。

「遅かったね?闇慈君」

「少し手こずった。・・・イッセーとアーシアは?」

「・・・アンジさん?」

教会の隅から、アーシアの声がするとアーシアが柱の裏から出てきた。

「アーシア。無事だったんだね。と言うことはイッセーは・・・」

「・・・この教会の地下です。そこで一人の堕天使と戦っています」

「分かった。イッセーの元に急ごう!!アーシアは出来るだけ僕や木場君や小猫ちゃんの後ろにいるようにしてね?」

「あ、はい!!」

闇慈達は祭壇の裏にある入り口から地下へ入っていった。 

 

第十四話 終幕


闇慈達は階段を下りていき、広い場所にでると・・・

「レイナァァァレェェェ!!!」

「腐ったガキが気安くその名前を呼ぶんじゃないわよ!!汚れるじゃない!!」

一誠と堕天使レイナーレが戦っていた。しかし戦っている内に一誠の足に光の槍が突き刺さってしまい、片膝をついていてしまった。

「一誠君!!」

木場が一誠の援護に回ろうとしたが闇慈がそれを止めた。

「ダメだよ、木場君。これはイッセー自身の戦いなんだから邪魔しちゃ後でイッセーから怒られるよ」

しかしアーシアが闇慈に叫んだ。

「でも!!このままじゃイッセーさんは!!」

「確かにイッセーはやられているけど・・・イッセーの目はまだ諦めてないよ」

再び一誠を見ると鋭い眼光がレイナーレを捉えていた。

「・・・分かった。でも本当に危なくなったら助けに入るからね」

「分かった。(でもあの篭手・・・時間がかかるごとに魔力が倍増している?)」

(やはり・・・あの篭手は我と同じ・・・)

(えっ!?)

闇慈がデスの解釈を聞き損ねるととレイナーレが闇慈の方を向いた。

「あら。お前は私をコケにしてくれた奴じゃない。もう少し待ってて頂戴ね?もうすぐこの死に損ないを消してお前の相手をしてやるわ!!そしてそこの裏切りの小娘のセイクリッド・ギア『聖母の微笑【トワイライト・ヒーリング】』を頂くわ!!」

「・・・そんなことさせない」

小猫が闇慈の前に立ち身構えたが闇慈は小猫の真横に来た。

「・・・闇慈先輩」

「心配してくれてありがとう、小猫ちゃん。でも僕は大丈夫だよ」

「・・・分かりました」

小猫はアーシアの隣に来ると闇慈はレイナーレと向き合った。

「レイナーレだったか?俺を消そうとするのは構わないがお前はお前の言う『死に損ない』を舐めているとやられるぞ?」

「なに言ってるの?あのガキがもう立てるわけが・・・」

「うおおおおお!!!」

レイナーレの言葉を一誠の咆吼が遮り、ゆっくりと立ち上がった。その拍子に足の傷口から血が吹き出るが一誠はその痛みに耐えていた。そして篭手を着けている左腕を天にかざすと緑色の魔力が一気に溢れ始め、篭手に牙のようなものが生え、形が変わって行った。

「そんな・・・ありえない。それに何なのこの魔力!!これは・・・もう私より遙かに上・・・」

「神様がいねえのなら・・・悪魔だから・・・魔王様か!!どうかこいつを!!」

一誠の気迫が上昇するとコウモリのような悪魔の翼が生えた。

「一発殴らせて下さい!!」

「ひぃぃ。いやあああ!!!」

レイナーレは恐れをなし、逃げだそうとしたが一誠の足の速さのほうが上だったのか一誠の見日腕がレイナーレの右腕を掴んだ。

「うおおおお!!!」

「わ、私は至高の・・・!!!」

「ぶっ飛べ!!クソ天使!!!」

そして引き寄せる反動と魔力を込めた篭手の威力を乗せた一誠の鉄拳がレイナーレを捉え、彼女は壁に激突した。レイナーレは気絶したのかそのまま地面に倒れ伏してしまった。

「はあはあ・・・ザマあ見やがれ!!うっ・・・」

一誠は力を使い果たしたのかその場に倒れそうになるが木場と闇慈が一誠を両方から支えた。

「お疲れ様。一誠君」

「流石だね。堕天使を一人で倒すなんて」

そしてアーシアが一誠の傷を治し始め、それが終わる頃にはリアスと朱乃も闇慈達と合流を果たした。リアスは一誠の戦績を聞くと・・・

「良くやったわねイッセー。堕天使を一人で倒すなんて流石私のポーンね」

「あの部長。他の堕天使は?」

「それなら闇慈君が全部一人で倒してくれましたわ」

リアスの代わりに朱乃が答えた。闇慈が堕天使を倒すまでの過程を朱乃が一誠に話すと・・・

「闇慈。お前やっぱ・・・死神だな」

「今となっては最高の褒め言葉だよ、イッセー」

「・・・連れてきました」

闇慈と一誠が和んでいたが、小猫がレイナーレをリアスの前に投げ出すと二人は真剣な顔になった。

「初めまして、堕天使レイナーレ。私はリアス・グレモリー。グレモリー家、次期当主よ」

そしてリアスは一誠の左腕に着いている篭手を見て何かを納得したような顔をした。

「そう、そういうことなのね。堕天使レイナーレ。この子兵藤一誠の神器はただの龍の手ではないわ」

そう言ってリアスは一誠の神器について闇慈達に説明を始めた。

一誠の神器の名は赤龍帝の籠手『ブーステッド・ギア』
持ち主の力を十秒ごとに倍にしていき、魔王や神さえも一時的に上回ることが出来るといわれている。
デスサイズ・ヘルと同じくロンギヌスらしい。

「そうそう。ロンギヌスの使い手はこの中でもう一人いるわよ?堕天使レイナーレ」

「な、何!?・・・まさか」

「アンジ。彼女に教えてあげなさい」

闇慈は少し顔を歪ませるとデスサイズ・ヘルを取り出し渋々と説明を始めた。

「・・・貴様のような外道天使に教えてやるつもりは無かったが部長の命令だ。そして輪廻に墜ちる土産として聞いておくことだ。この鎌はロンギヌス…デスサイズ・ヘルだ」

「デ、デスサイズ・ヘルですって!?」

理解したことを確認すると闇慈はそのまま『憑依・死神』を発動させ、レイナーレを魔力と真紅の目で威圧し始めた。

「・・・貴様の罪は重い。その魂・・・貰い受ける!!」

闇慈がデスサイズ・ヘルを振り上げると・・・

「・・・助けて!一誠君!!」

レイナーレが堕天使から夕麻の姿に変わり、この期に及んで命乞いをしてきた。しかし一誠はその事にさらに顔をしかめた。

「お前・・・最後の最後まで・・・闇慈。部長」

「分かったわ」

「・・・言われるまでもないよ、イッセー」

闇慈とリアスも怒りに満ちあふれていた。

「ひっ・・・」

「「俺(私)の友達(下僕)に二度と近寄るな(らないで)・・・」」

まず闇慈がデスサイズ・ヘルで首をはね飛ばすとすぐにリアスが魔法を放ち、レイナーレを消し飛ばした。その事を確認すると闇慈は元の姿に戻った。

「初めて見たけどリアス先輩の魔法ってかなり強力だね。朱乃先輩と比べものにならない」

その疑問には木場が答えてくれた。

「部長は紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)って異名を持ってるよ」

「あはは・・・滅殺姫(ルイン・プリンセス)か」

闇慈はその二つ名に冷や汗を流した。そして気づいて見ると周りには多くの黒い羽が宙に舞っていた。その羽を見て一誠は複雑そうな顔をしていた。

(・・・イッセー。そうだよね。何だかんだ言っても元の彼女を倒したんだから・・・辛いよね)

こうして一つの事柄はここで終幕となった。
 

 

第十五話 歓迎


堕天使との問題が解決した翌日。部室にはアーシアを含めた闇慈。リアス。一誠がいた。そしてアーシアは駒王学園の制服を着ていた。普通は出来ないことだがリアスのお父さんがこの学園に携わってこう言った編入は容易なことらしい。アーシアの制服姿を見た闇慈と一誠は似合っていると褒めていたが、闇慈には疑問な点があった。

「あの・・・リアス先輩?一つ聞きたい事があるんですが?」

「何かしら?アンジ」

「何故アーシアが悪魔になってるんですか!?」

そう。アーシアは何故か悪魔になっていた。悪魔になった理由はアーシア本人が答えてくれた。

「えっと。リアス先輩からスカウトされたんです。アンジさん」

「本当にそれだけなの?アーシア」

その事を聞いたアーシアは顔を赤らめ、一誠の方を向いた。

「そ、それは・・・。悪魔になればイッセーさんともっと一緒に居られるとリアス先輩に聞いたのでお受けしました」

「(・・・なるほど。アーシアはイッセーにベタ惚れだからそれを利用したのか・・・)って・・・無茶苦茶じゃないですか!!しかも人をエサにしてるじゃないですか!!」

「あら、人聞きの悪い。私はそんなつもりは無かったのだけど?」

「あの!アンジさん。私は自分から言ったのですからリアス先輩は悪くありません!!」

(やっぱりこの人・・・僕が思っている以上の『悪魔』だな・・・いろんな意味で)

この時闇慈にはリアスの後ろで悪魔の羽を生やした裏のリアスがケタケタと笑っていたのが見えたらしい・・・

「あ、あの。部長」

「何かしら?イッセー」

今度は一誠がリアスに話しかけた。

「後、部長のポーンって何人増えるですか?ハーレムの夢もあるのにこれ以上ライバルが増えるのはどうかな・・・なんて」

「私のポーンはイッセー。貴方だけよ?」

「えっ!?それってどういう事ですか?」

その話の途中から闇慈が加わり一誠に説明し始めた。

「人間を悪魔に転生させるには力に応じた分の『悪魔の駒』が必要になるんだけど・・・イッセーの場合ポーンにするにはポーンの駒を全部を使用しないとダメだったんだ」

「それって俺の力が凄く強いってことだよな?」

「そう言うことになるわね。イッセー」

そう言うとリアスは座っていたソファーから立ち上がると一誠の背後に立ち、首元から腕を絡ませた。一誠と向き合った。闇慈はそれを普通に見ていたがアーシアはあたふたしていた。

「紅髪のルイン・プリンセス滅殺姫と赤龍帝の篭手・・・あか紅とあか赤で相性バッチリね」

「そ・・・そうっすね」

「最強のポーンを目指しなさい。貴方にはそれだけの力を備えている。強くおなりなさいイッセー」

そう言うとリアスは一誠の額に軽くキスをした。そして肝心な一誠は・・・

「うおおお!!!部長!!俺、頑張ります!!」

「と、貴方を可愛がるのはここまでにしないと新人の子に嫉妬されてしまうかもしれないから」

(いや。もう十分に嫉妬されてますよ・・・リアス先輩)

闇慈は心の中ではあきれの溜め息をついていた。

「い・・・イッセーさん・・・」

アーシアが目に軽く涙を浮かべながらフルフルと震えていた。

「あ、アーシア!!これはその・・・違うんだ!!」

「そうですよね・・・。リアス部長はお綺麗ですから好きになってしまいますよね・・・ダメダメ!!こんなことを思ってはいけません!!」

するとアーシアはその場で祈りを捧げようと両手を組んだ。

「ああ・・・主よ。どうか私のこの罪深き心をお許し・・・あうぅぅ!!?」

するとアーシアは突然頭を抱えてしまった。闇慈は突然だったからアーシアに問いかけた。

「アーシア!?どうしたの!?」

「きゅ・・・急に頭痛が・・・」

「当たり前よ。貴女は悪魔になったんだから、神に祈ろうとするとダメージを受けるに決まってるじゃない」

「あうぅ・・・そうでした。私は悪魔になっちゃったんでした」

「後悔してる?」

リアスがアーシアに問いかけたがアーシアは笑顔でその問いに答えた。

「いえ。どんな形でもこうやってイッセーさんと一緒にいられることが何よりの幸せです」

「・・・幸せ者だね?イッセー」

闇慈は冷やかすように一誠に話しかけた。

「まあな・・・って冷やかすなよ、闇慈!!ていうか闇慈が冗談言ったのって初めてじゃねえか!?何があったんだよ!?闇慈」

「この部に入って僕も変わったよ」

その後木場や小猫が集まると朱乃がケーキを持ってきてアーシアの歓迎会を開き、楽しい一時を過ごした。
 

 

番外1 日常


「・・・闇慈先輩」

「ん?どうしたの?小猫ちゃん」

アーシアがこの学園に入学して数日がたった。アーシアはその後一誠の家にホームステイすることとなった。そしてクラスも一誠達と同じクラスになり、クラスメイトと馴染んでいた。そして何も大きな問題が起こらずに部室で闇慈がくつろいでいると小猫が話しかけてきた。

「・・・闇慈先輩。約束をまだ果たして貰ってません」

「約束?(・・・ああ!!あの事か)」

第十話参照。

「・・・もしかして忘れましたか?」

「覚えてる!!覚えているからそんなに恐い顔にならないで!?小猫ちゃん」

小猫の顔は少し険しくなり、魔力が少しずつ漏れ始めた。闇慈はリアスから小猫は怪力の持ち主だと聞かせれたことを思い出すと急いで闇慈は小猫を落ち着かせた。

「生チョコの約束だよね。覚えてる。今日は流石に無理だから明日持ってきてあげるからそれで許して?」

「・・・約束ですよ?先輩。破ったら・・・」

「それ以上は言わないで?小猫ちゃん。じゃあ明日の昼休み迎えに行くね?」

「・・・(コクッ)」

闇慈は約束を胸に刻みつけ、家に着くと早速、簡易の生チョコを作り始めた。

~~~~~~~~~~~~

翌日。昼休みになると闇慈は弁当と昨日作った生チョコを入れたタッパを持ち小猫のいる教室に迎えに行った。

(流石に小猫ちゃんの教室で食べるのは無理があるから屋上に誘うかな)

そして教室に着き、ドアを開けると・・・

「あ!闇慈先輩!!」

「今日はどうしたんですか?」

教室にいる女子達が集まってきた。

(あれ?どうしてこんなに集まってくるの?祐斗じゃないのに・・・)

実は闇慈も祐斗と同じ位人気があるらしい。長身で心優しく成績も上位に入ってそしてなによりイケメンなのが理由らしい。その事を本人は知らないため少し動揺したようだ。

「えっと。塔城小猫さんはいるかな?」

「はい!小猫さんならあそこに」

一人の女子が指さした先には外を眺めながらぼんやりしている小猫がいた。

「ありがとう」

闇慈はその子に優しく微笑んだ。

「いえ。闇慈先輩のお役に立てて嬉しいです」

「では、失礼するね」

闇慈が了承をとると小猫の元にやって来た。

「・・・闇慈先輩。遅いです」

小猫は昼食も取れなかったのか少し不機嫌そうだった。

「ごめんごめん。じゃあ行こうか?」

「・・・(コクッ)」

闇慈と小猫が教室を出ようとすると・・・
「小猫さんって闇慈先輩と付き合ってるの?」
「二人ともお似合いだな~・・・でも羨ましいよ~」
などと周りの女子達は小声で話していたみたいだった。

~~~~~~~~~~~~

闇慈は小猫を連れ、誰も居ない屋上に来るとベンチに腰を下ろし、昼食を食べ始めた。小猫は売店のパンを口にし出した。

「・・・闇慈先輩。それって手作りですか?」

小猫は何かに気がついたのか闇慈に問いかけた。闇慈が食べていたのはサンドイッチだ。恐らく今日の朝作ったものらしい。

「うん。僕は料理が好きだからね」

「・・・意外です」

「よく言われるよ」

闇慈はそのままサンドイッチを再び食べ始めたが・・・

「・・・(ジーー)」

「・・・」

「・・・(ジー-)」

小猫がエサを欲しがる仔猫ような目でサンドイッチを見ていた。

「・・・欲しいの?」

「・・・(コクコク)」

闇慈はサンドイッチを一つ小猫に手渡すと、小猫は美味しそうに食べ始めた。

「美味しい?小猫ちゃん」

「はい。美味しいです」

そう言うと小猫は小さくではあったが笑みを浮かべた。闇慈はその事を見ると笑いがこぼれた。

「・・・どうしたんですか?闇慈先輩」

「いや。小猫ちゃんが笑った所を初めて見たからね。良い物が見れたよ」

「・・・」

小猫は顔を赤らめながら再びサンドイッチを食べ始めた。

「それじゃあデザートと行こうか?小猫ちゃん」

闇慈は持って来たタッパを取り出しフタを開けると小さな正方形の生チョコが10~12個ほど入っていた。

「・・・これも闇慈先輩が?」

「そうだよ。と言っても簡単な生チョコだけどね」

「・・・いただきます」

小猫は闇慈が持って来たつまようじで生チョコを刺し、食べた。すると小猫からまた笑みがこぼれた。

「どうかな?小猫ちゃん」

「・・・美味しいです」

「そう。良かった」

タッパに入っていた生チョコは一気に無くなってしまった。それだけ美味しかったのだろう。

「満足した?小猫ちゃん」

「・・・はい。あの・・・闇慈先輩」

「何?小猫ちゃん」

「・・・また作ってきてくれませんか?」

小猫は赤らめながら上目遣いで頼んできた。この時闇慈の心の中では・・・

(やっぱり小猫ちゃんは可愛いな。まあその笑顔が見れるのならお安いご用だけどね)

「・・・闇慈先輩?」

「良いよ。流石に毎日は無理だけど。週に一回は作ってきてあげる」

「・・・っ!!ありがとうございます、闇慈先輩」

その時の小猫の笑顔は本当に可愛かったと闇慈は思ったらしい。しかしその後、闇慈の料理の腕の良さがリアス達にも知れ渡り、部員全員にチョコを作るハメになったと言う。
 

 

第十六話 生徒会


小猫と闇慈の距離が近づいて数日後、特と言った問題は無かったがリアスの表情が暗く、放心している事が度々あった。。闇慈はこのことに気づいていたが口にはしなかった。

(何かあったのかな?リアス先輩)

(我にも分からぬ。ここはそっとしておくのが一番なのかもしれん)

そして今日の授業が終わり、何時ものように闇慈達がチラシ配りに行こうとするとリアスが話を持ち出した。

「イッセー。アーシア。チラシ配りは今週までで良いわ。そして貴方たちにはそれぞれの『使い魔』を持ってもらうわ」

「「使い魔・・・ですか?」」

二人はあまり理解していないようだった。するとリアス達はそれぞれの使い魔を召還させた。リアスはコウモリ。朱乃は子鬼。小猫は白い仔猫。祐斗は・・・

「ああ~~。お前のは見せなくていいぜ」

「つれないね」

一誠が遮った。続けてリアスが説明を始めた。

「悪魔とって基本的なのことよ。使い魔は主の手伝い、情報伝達、追跡にも使えるわ」

闇慈は気になったのか質問をすることにした。

「あの。リアス先輩」

「何かしら?アンジ」

「使い魔は悪魔だけが持つことが許されるんですか?出来れば人間である僕も持ちたいんですが」

「そうね・・・私もそこまでは分からないわ。事情を話せば『彼』なら分かってくれるかもしれないわね」

「彼って・・・」

そう言っていると入り口のドアにノックする音が聞こえた。朱乃が了承を取ると、黒髪の女子生徒を中心に6~8人の生徒が入って来た。闇慈はその人に見覚えがあった。

(この人は確か・・・生徒会長の『支取(しとり)蒼那(そうな)』先輩。どうして生徒会長がオカルト研究部に?)

「ごきげんよう、ソーナ。お揃いで今日はどうしたの?」

「お互い下僕が増えたことだし、挨拶を思ったから」

闇慈はソーナの言葉に再び疑問を抱えた。

「えっ?下僕って・・・まさか会長も?」

その疑問には朱乃が答えてくれた。

「彼女の真実の名は『ソーナ・シトリー』。上級悪魔シトリー家の次期当主様ですわ」

「悪魔ってリアス部長の家柄だけじゃなかったんですね」

一誠は驚きを隠せないようだった。ソーナは闇慈に目をやるとリアスに問いかけた。

「リアス。彼は?」

「そう言えば紹介してなかったわね。アンジ。ソーナに自己紹介を」

「あ、はい。初めましてこのオカルト研究部の部員で『黒神闇慈』と言います。今後どうぞお見知りおきを」

「ご丁寧にどうも。この部にいるってことは貴方も悪魔なのかしら?」

「いえ。僕は人間です。リアス先輩達が悪魔だってことは知っていますけど、おおやけ公に晒すつもりはありません。それに僕も『訳ありの人間』ですから(言えないよ。僕の体の中に死神が宿ってるなんて・・・)」

「そう。それなら良いわ」

そしてソーナ達も下僕に使い魔を持たせると言う話が出てきたが、使い魔を紹介させてくれる人は月に一度しか請け負って貰えないらしい。するとリアスが・・・

「ならここは悪魔同士。正々堂々の勝負をしましょう」

「勝負?まさか『レーティングゲーム』を?」

((レーティングゲームって何だろう?))

闇慈と一誠が疑問に思っているとリアスが言葉を続けた。

「まさか。まず許可が下りないわ」

「そうね。それに今のあなたには大切な体だから」

ソーナが何か皮肉な意味を込めた言葉を発すると、リアスの表情が一瞬だが強ばった。

(リアス先輩が一瞬だけど強ばった。これは何か大きな問題を抱えているようだな)

「・・・関係ないわ。そうねここは高校生らしくスポーツで決めましょう。何が良いかしら?」

そこにいる一同が考え始めた。そして何かをひらめいたのか闇慈がリアスに話しかけた。

「あの、リアス先輩」

「何かしら?アンジ」

「ドッジボールなんてどうでしょうか?シンプルだしアーシアにも出来ると思います」

「良いわね。オカルト研究部はそれで良いわ。生徒会はどうかしら?」

「それで良いわよ、リアス」

ソーナも了承し、明日の放課後に行われることとなった。
 

 

第十七話 契約


あの生徒会との会合があった2日後の夜中。リアス達は使い魔を紹介してくれる人の元に移動しようとしていた。
ドッジボールの結果はタイムオーバーでオカルト研究部の勝利となったが・・・

(あれはもはやドッジボールじゃないよ・・・)

悪魔の特性を生かしたり、ボールに魔力や強力なスピンをかけて相手に投げていた。あれは『戦争』といっても過言ではなかったようだ。闇慈も死神の力を少し引き出し戦っていた。

「さあ。行くわよ!!」

「ああ!!ちょっと待って下さい!!リアス先輩」

移動魔法陣を展開したリアスに闇慈が引き留めた。そしてセイグリッド・ギアを発動させるとデスサイズ・ヘルを一誠に手渡した。

「何でデスサイズ・ヘルを俺に持たせるんだ?闇慈」

「僕はみんなと違って魔法陣では転移できないからね。この漆黒の翼は僕自身をデスサイズ・ヘルの元へ飛ばすことが出来るってデスさんが教えてくれたんだ。だから一誠に持ってて欲しいんだ」

「分かったぜ」

因みにデスのことは部員全員に話した。出てきたときは一誠は腰を抜かし、祐斗は苦笑しながら話し、小猫は少し恐かったのかフルフルと震えながら闇慈の元から離れなかった。

「じゃあ先で待ってるわよ?アンジ」

「はい!!」

そう言うとリアス達、悪魔勢は魔法陣から転送された。そして少し時間が経つと闇慈も部室を出ると漆黒の四枚の翼を広げた。

(デスさん。ジャンプするにはどうしたら良いんですか?)

(デスサイズ・ヘルに呼びかけろ。そうすれば主であるお前を翼を通して転送してくれる筈だ)

(分かりました。……デスサイズ・ヘル)

闇慈は心の中でデスサイズ・ヘルに呼びかけると答えたのか闇慈の翼が闇慈を包むとそのまま飛び立った。

~~~~~~~~~~~~

そして闇慈が辿り着いたのは山の中だった。そして周りにはリアス達がいた。

「すげ~。本当に転移できたんだな。ほらこれ返すぜ」

そう言うと一誠は闇慈にデスサイズ・ヘルを手渡した。

「ありがとう、イッセー」

闇慈はデスサイズ・ヘルを受け取るとセイグリッド・ギアを解除し制服姿に戻った。そして初めて来たこの山は普通の山と違うように感じていた。

「しかし。ここなら何でも出てきそうな感じがするな」

「そ、そうですね」

一誠とアーシアは少し不安な声をあげていた。

「ここに使い魔を紹介してくれる人がいるんですか?」

「ええ。そろそろ来ても良い頃なんだけど」

闇慈とリアスが話していると・・・

「ゲットだぜぃ!!」

声が聞こえ、オカルト研究部の部員がその方を向くと上半身はランニング。下半身は短パン。そしてキャップを逆さにかぶった中年の男性が木の上に立っていた。

「だ、誰だ!!」

一誠はいきなりのことだったので身構えた。

「俺は使い魔マスターの『ザトージ』だぜぃ」

「えっ!?と言うことはこの人が使い魔を紹介してくれる人ですか?リアス先輩」

「ええ。その通りよ、アンジ」

リアスの説明に朱乃が付け足した。

「彼は使い魔に関してのプロフェッショナルなのですのよ」

「今宵も良い満月。使い魔ゲットには絶好日よりだぜぃ。さーてお前達はどんな使い魔をご所望だ?強いの?速いの?それとも毒持ちとか?」

それを聞いた一誠は顔をエロくして尋ねた。

「そうっすね。可愛いのとか居ないんすかね?女の子系とか」

それを聞いたザトージは左手の人差し指を振った。

「これだから素人は困るぜぃ。良いか?使い魔ってのは・・・」

「イッセー。興味本意だけで使い魔を決めるのは良くないと思うよ?自分の能力・力量に合わせた使い魔を選ばないと後々後悔することになると思うよ?可愛いのとか言うのはその後だと僕は思う」

闇慈が一誠に促すとザトージは頷いた。

「おお。分かってるじゃねえか。お前も使い魔を持ちたいのか?」

「あ、そうでした。ちょっと質問があります。ザトージさん」

~~~~~~~~~~~~

闇慈はザトージに事情を説明するとザトージはしばらく腕を組んで考えた。

「使い魔を持つには構わねえが約束があるぜぃ?」

「それは何ですか?ザトージさん」

「姿を変えて人に会わせるのは構わねえが本来の姿を人間に見られちゃいけねえ。これが約束だぜぃ?」

「分かりました」

「じゃあ行くとするぜぃ」

そうすると闇慈達はザトージに連れられ山の奥に入っていった。しかしこの時、闇慈を見ていた赤い二つの目に誰も気がつかなかった。

~~~~~~~~~~~~

使い魔散策が始まり、色々な使い魔を見たが三人ともピンと来なかった。そしてザトージが何かに気づき木の上を指さすと紫色の小さな愛嬌のあるドラゴンが休んでいた。

「あれは・・・ドラゴン!?」

闇慈は初めて見るドラゴンに少し興奮しているようだ。

「わあ。可愛いです」

「あれは蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)だな。青い雷撃を放つドラゴンの子どもだぜぃ」

「これはかなり上位クラスですね」

「私も見るのは初めてですわね」

使い魔を持っている祐斗やリアスもこのドラゴンを賞賛していた。

「ゲットするなら今だぜぃ?成熟したらゲットするのは無理だからな」

「一誠君は赤龍帝の力を持っていますから相性は良いと思いますわよ?」

朱乃の説明を聞いた一誠は決めたようだ。

「よし!!スプライト・ドラゴン!!君に決め・・・」

しかし。その決心も無くなることになる。指名した瞬間空から緑色のスライムのようなものが降ってきた。

「これは!?」

闇慈は咄嗟に降って来ている場所から離れたが、闇慈と一誠と祐斗以外の部員にはスライムがかかっていた。そして服が見る見る溶けていった・・・

「こ、こら!!///」

「あらあら、はしたないですわ///」

「ふ、服が///」

「ヌルヌル・・・キモ///」

闇慈はすぐに目を右手で遮ったが一誠はガン見していた。

「むっほー!!脳内保存!!脳内保存!!」

「ザトージさん!!このスライムみたいなものも生き物なんですか!?」

「こいつは布地を主食とするスライムだぜぃ?女性の衣類を溶かす以外に害はないんだが」

その事を聞いた一誠は欲望のままこのスライムを使い魔にすると言い出した。

「イッセー・・・僕の話全く聞いてなかったのかな?」

「・・・闇慈・・・先輩。助けて・・・下さい///」

「・・・イッセー。これはやっぱり却下だよ」

闇慈は小猫に恥ずかしい思いをさせたこのスライムを許すことができないらしく、魔力を一気に解放しその波動でスライムを吹き飛ばした。そして最後となったアシーアの服についたスライムを守ろうと一誠がアーシアを抱きしめた。しかしそのスライムと一誠を突然、雷撃が襲いスライムと一誠は黒こげになってしまった。雷撃を放ったのは先程のスプライト・ドラゴンのようだった。そしてアーシアの右肩に乗ると翼を閉じた。

「これは・・・どういう事なんですか?」

闇慈の疑問にザトージが答えた。

「そいつは敵と認識した奴にしか攻撃しないんだぜぃ?恐らく少年とスライムが金髪の美少女を襲ったと思ったんだぜぃ」

「とういうことは・・・つまりアーシアは」

スプライト・ドラゴンもアーシアに懐いたらしい。

「決まりだな。美少女。使い魔ゲットだぜぃ!!」

その後アーシアとスプライト・ドラゴンは契約を交わし、再びアーシアの胸元に飛び込んだ。

「あはは。くすぐったいです。ラッセー君」

「ラッセーか・・・もしかしてイッセーの名前も取ったのかな?アーシア」

「あ、はい。アンジさん」

「ふうん。まあ良いか。これからよろしくな?ラッセー」

一誠がラッセーに寄ると再び雷撃を放った・・・

「な、何で・・・」

「ああ。言うの忘れたがドラゴンは他の生物のオスが大嫌いなんだぜぃ」

「えっ!?」

闇慈もラッセーに挨拶を交わそうとしたが説明が遅かったのかすでにラッセーの近くにいた・・・。闇慈の姿を見たラッセーは一誠同様に雷撃を放とうとしていた。

(これは・・・感電覚悟かな?)

「・・・闇慈先輩。危ない」

間に合わないと感じた闇慈は雷撃を覚悟した。しかし雷撃が放たれた瞬間、闇慈の体の周りに黒い無数の光が現れ、雷撃から闇慈を守った。

「何!?この光は?アンジ。貴方の死神の力なの?」

「いえ!!僕の力じゃないです!!」

「まさか!?こいつは!?」

ザトージだけが何なのか理解したようだ。そして光が闇慈の右肩に集まっていくとその姿が段々露わになっていった。体は鷲くらいの大きさ、そして漆黒の羽とクチバシを持った一匹の『(カラス)』が赤い目でラッセーを睨みながら闇慈の肩に止まっていた。そして一番印象があったのは・・・

「足が・・・三本!?ザトージさん!!もしかしてこの鴉は・・・」

「ああ。そいつは日本の伝説のカラス。八咫烏(ヤタガラス)だぜぃ」

「八咫烏。これも初めてみるわね」

「あらあら・・・まあまあ」

「伝説の鳥が闇慈君に寄ってくるなんて」

「・・・闇慈先輩。やっぱり規格外です」

オカルト研究部の部員たちも八咫烏に夢中のようだ。闇慈は左腕を八咫烏の前に差し出すと、そのまま左腕に飛び乗った。闇慈はそのまま翼や頭を撫でると気持ちよかったのか鳴き声をあげた。

「・・・僕と契約を交わしてくれる?」

闇慈が尋ねると八咫烏は一声鳴き同意してくれたようだ。八咫烏を地面に降ろすとアーシアの時と同じように魔法陣が展開された。

「ありがとう。・・・我、黒神闇慈の名において命ず!!汝、我の使い魔として契約に応じよ!!」

その魔法陣が消えると大きな翼を広げ、再び闇慈の右肩に乗り、甘えるように頭を闇慈の頬にすり寄ってきた。

「良かったな、少年。使い魔ゲットだぜぃ!!」

「はい。これからよろしくね?・・・こくう黒羽」

八咫烏・・・いや黒羽は名前をつけてもらって嬉しかったのか再び鳴き声をあげた。こうしてア-シアは蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)のラッセー。闇慈は八咫烏(ヤタガラス)の黒羽を使い魔として契約した。一誠には・・・

「どうして死んだ!?あの素晴らしい能力を是非とも我が手に!!」

「・・・スケベ、死すべし」

小猫からのきつい突っ込みだけだった。
 

 

第十八話 啖呵

闇慈が使い魔、黒羽を手にしてから2日がたった。リアスの表情は前にも増して暗くなっていた。そして今日も授業が終わり、闇慈と一誠とアーシアは部室に入ると、リアス。朱乃。祐斗の他に銀髪のメイド服を着た女性がいた。

(誰だろう?この人は?)

「グ、グレイフィアさん!?」

一誠が声を張り上げた。闇慈は一誠にこの人について尋ねることにした。

「一誠。この人を知ってるの?」

「あ・・・いや。まあ昨日知り合ったって言うか」

「??」

闇慈が一誠の話を聞いても分からないようだ。するとグレイフィアと名乗る女性が闇慈の元に近寄った。

「初めまして。私はグレモリー家に仕える『グレイフィア』と申します。どうぞお見知りおきを」

「ご丁寧にありがとうございます。僕は『黒神闇慈』と言います」

「あなたもお嬢様の眷属なのですか?」

「いえ。僕は人間です。と言っても訳ありの人間ですけどね。勿論皆さんが悪魔だってことを口外するつもりはありません」

「そうですか。ありがとうございます」

「これで全員そろったわね」

そう言うとリアスが立ち上がり、話しを持ち出そうとするとグレイフィアが尋ねた。

「お嬢様。私がお話しましょうか?」

しかしリアスがそれを止め説明しようとすると突然、闇慈達の背後に魔法陣が展開された。

(これは悪魔専用の転移魔法陣。グレモリー家の紋章でもない。一体どこの)

そしてその中から一人の金色の短髪の赤い服を着た青年が出てきた。

「ふう。人間界は久しぶりだ。会いに来たぜ?愛しのリアス」

男性が告白に近い言葉を吐くとリアスの表情が一気に強ばった。

(愛しの?・・・まさかこの人はリアス先輩の婚約者みたいなもの?でもリアス先輩の表情はあの時の表情だ)

~~~~~~~~~~~~

その後グレイフィアが現れた青年について色々と闇慈達に説明してくれた。現れた青年の名前は『ライザー・フェニックス』。上級悪魔『フェニックス家』の次期当主であり『グレモリー家』次期当主の婚約者だと言う。ここは闇慈の推理通りだった。しかしリアスはライザーと結婚する気は毛頭なかった。この結婚はリアスの意思ではなくリアスの父と兄の考えによるものだった。

(政略結婚か・・・そんなものに一体何の価値があるのやら)

闇慈は心の中でため息をついていた。闇慈にとって『結婚』とは大切なものだと思い続けてきた。よってこの結婚には疑問を抱いていた。そしてライザー自身にも疑問を抱いていた。リアスが拒み続けても強引に決めようとするその心に呆れていた。

(『フェニックス』か・・・『不死鳥』と気高く偉大な鳥の名を持っているのにこの男の行為はそれを汚してるよ)

(同感だな。強い血を入れ込もうとするその心意気は良いが、彼女の心を全く尊重していない・・・エゴな男だ)

「リアス。俺はお前の下僕を焼き尽くしても君を冥界へ連れ帰る」

闇慈はその言葉を聞くと『憑依・死神』を発動しようとしたが部室でもあったためそれを抑えた。そしてリアスとライザーの間で争いが起ころうとするとそれをグレイフィアが止めた。

「お納め下さい、お嬢様。ライザー様。私はサーゼクス様の命を受けこの場におります故、一切の遠慮は致しません」

「最強のクイーンを賞されるあなたにそんなことを言われると俺も流石に恐いよ」

ライザーはそんなことを言っていたが表情はそうとも至らなかった。グレイフィアはさらに言葉を繋げた。

「旦那様もこうなることを予想しておりました。よって最終手段を仰せつかっております」

「最終手段?どう言う事?グレイフィア」

「お嬢様が信念を貫き通したいのであれば、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をと」

その事を聞いたリアスは少し驚きの表情を表した。

「レーティングゲーム・・・何処かで聞いた言葉だ」

闇慈が疑問に思っていると祐斗が説明した。

「レーティングゲームは下僕悪魔を戦わせるチェスに似たようなものだよ、闇慈君」

その説明に朱乃が付け加えた。

「本来のレーティングゲームは成熟した悪魔同士が行うものですわ」

「えっ!?それってむちゃくちゃ不利じゃないですか!!」

一誠が驚愕の声をあげた。そして再びフェニックス家の紋章の魔法陣が現れるとライザーの下僕達が出てきた。そして駒も全て使用しているらしく結構な人数だったが・・・

(何で全員女性なの?・・・もしかしてこの男って女たらし?)

それを見た一誠が突然泣き出した。

「リアス。君の下僕が突然号泣してるんだが・・・」

ライザーもドン引きのようだった。

「彼の夢はハーレムなのよ」

「ふっ。なるほどね。ユーベルーナ」

リアスがライザーに説明すると彼はクイーンと思われる女性を自分の元に呼び出した。

(ん?何をするつもりなんだろう?・・・っ!!まさか!!)

闇慈は何かに気づいたのか小猫の目を両手で遮った。

「・・・闇慈先輩。見えません」

「小猫ちゃんは見ない方が良いよ・・・」

「・・・分かりました」

闇慈の声には少し殺気が含まれていた。ライザーはクイーンを呼びつけると一誠に見せつけるようにその女性にキスしたのだ。しかもディープだった・・・。そして一誠も堪忍袋の尾が切れたのかブーステッド・ギアを発動させるとライザーにケンカをふっかけた。

「・・・ミラ」

ライザーが呼ぶと棍を持った少女が一誠の前に立ちふさがった。一誠は少女と言うことがあるのか少し戸惑いを見せていた。そして油断している隙に少女が一瞬で一誠の腹に棍を決めようとしていた。

(不味い!!)

闇慈は軽く魔力を解放し足と手に溜め、一誠と少女との間に体を滑り込ませ、右手は棍を掴み、左手は一誠の頭めがけて拳骨を振り下ろした。そして魔力を溜めた右手でそのまま棍をへし折った。

「痛って~!!?」

「私の棍を!?」

少女も止めた事とへし折られた事に驚愕しているようだった。

「イッセー!!相手は悪魔なんだから気を抜くとやられるよ!!」

「っ!!悪ぃ・・・闇慈」

「君も引いてくれないかな?無駄な争いは避けたい」

「・・・」

その少女も同意したのか自分の元居た場所に戻った。

「ほう。ミラの一撃をあの距離から止めるか・・・お前は何者だ?リアスの下僕か?」

ライザーが闇慈に興味を示したのか話しかけた。

「・・・僕は人間でオカルト研究部の部員です。そして僕はリアス先輩の下僕ではありません」

「人間だと?おい、リアス。そこの出来損ないよりこの人間の方が役に立つんじゃないのか?」

「貴方に関係ないわ。それに私の下僕と部員を侮辱しないでちょうだい」

闇慈はグレイフィアに尋ねた。

「グレイフィアさん。レーティングゲームに人間を参加させることって出来ないんですか?」

「特例ではありますが、駒の人数が合わない場合、補充要員として参加できます。しかし治療は致しますが死亡した場合の責任は負いかねます。そして口外しないようにお願いします」

「十分です。リアス先輩」

「何かしら?アンジ」

「僕を部長の駒としてレーティングゲームに参加させて下さい!!」

その事を聞いたライザーは少し呆れ顔になった。

「おいおい、部員の少年。人間の貴様に何が出来る?参加した所でリアス達の足手まといになるだけだ、やめておけ」

「貴方に心配されるほど僕はヤワじゃないですよ。焼き鳥さん♪」

シーン・・・

「貴様・・・俺のこと何と言った?」

「や・き・と・りって言ったんですよ。貴方みたいな女たらしに不死鳥(フェニックス)を名乗る資格なんてありませんよ。焼き鳥で十分ですよ」

「ぶっ!!あはは!!闇慈!!それ傑作だぜ!!」

一誠もその事に大爆笑していた。

「き、貴様らぁぁぁ!!!リアス!!お前の下僕と部員にしつけがなっていないぞ!!」

「なら。後はレーティングゲームで勝敗をつけましょう?ライザー」

「良いだろう!!貴様ら!!今の言葉、忘れるな!!」

ライザー達は再び魔法陣を展開しその場から居なくなった。そしてグレイフィアもその場からいなくなっていた。

「あのリアス先輩・・・?」

闇慈がリアスに話しかけたが無言のままだった。

(不味い・・・これはマズったかな?)

「・・・ぷっ」

闇慈はリアスの言葉らしきもの聞きそびれてしまった。

「えっ?リアス・・・先輩?」

「あはは!!」

突然リアスの笑い声が部室を包んだ。

「あはは。闇慈。貴方って本当に面白い子ね。あのライザーに何な形で啖呵をきるなんて」

「あの・・・やっぱりダメでした?」

「そんなことないわ。ああ、久しぶりに笑ったわ。それと・・・本当に良いの?」

「へっ?何がですか?」

「レーティングゲームに参加するってことよ。私は是非お願いしたのだけど下手すれば貴方の命は無いのかもしれないのよ?」

リアスの言葉に小猫も付け加えた。

「・・・私も闇慈先輩に死んで欲しくありません」

そう言うと闇慈は小猫の頭を優しく撫でてあげた。

「・・・ん///」

「心配してくれてありがとう、小猫ちゃん」

そして再びリアスと向き合った。

「僕はゲームで死ぬつもりは毛頭ありません。それに僕自身もライザーに一泡吹かせてやりたいんです!!イッセーだってそう思うでしょ?」

「ああ!!今回は油断したけど絶対ぇあいつに俺の本当の力を見せつけてやるぜ!!」

リアスは少し考え込むと向き合った。

「そうね。でも今のままじゃ数で負けてしまうわ。レーティングゲームまでの期限は一週間。この間で出来るところまで強くなるわよ!!良いわね」

「「「「「はい!!」」」」」

(ライザー・・・今度貴様に会った時には・・・貴様に『死』を見せてやる!!) 

 

第十九話 修行


闇慈がライザーに啖呵を切った翌日。オカルト研究部はレーティングゲームに向けて合同合宿をリアスが提案した。学校には遠方調査ということで公欠になっていた。
そしてオカルト研究部の部員は山の中にある宿舎を目指していたが道中は坂ばかりだった。そして荷物も多く重かったため、闇慈は魔力を両足に集中させて歩いていた。

「はあ・・・はあ・・・」

「大丈夫?イッセー」

一誠は途中から息が切れたのか荒呼吸だった。闇慈はまだ余裕のようだった。

「お先に失礼するよ?一誠君」

祐斗もまだ余裕のようだった。そしてその後ろから・・・

「・・・お先に失礼します」

小猫が一誠や闇慈が背負っている数倍の大きさはある荷物を背負って一誠達を追い越した。

「あはは・・・流石小猫ちゃんだね」

「ま、参りました」

~~~~~~~~~~~~

数分後、別荘に到着し早速修行を開始することとなったが一誠だけは弱音を吐いていた。そして男性陣が部屋でジャージに着替えていると一誠が祐斗に話しかけた。

「なあ木場。お前前に教会で戦った時、堕天使や神父を憎んでるみたいなことを言ってたけどあれって・・・」

「一誠君もアーシアさんも部長に救われた。僕と小猫さんも似たようなものなのさ」

その説明に闇慈が付け加えた。

「だったら尚更リアス先輩のために今度のレーティングゲームに勝たないといけないね」

「「ああ(そうだね)」」

~~~~~~~~~~~~

着替えが終わるとそれぞれ修行を開始した。一誠は祐斗から剣術や戦闘の基礎を実戦を通して学び、アーシアはリアスと朱乃から魔力の応用のを習うこととなった。そして闇慈は・・・

「よろしく頼むね。小猫ちゃん」

「・・・私で良ければ闇慈先輩のために頑張ります」

小猫から格闘などの肉弾戦を習うことにした。闇慈はデスサイズ・ヘルの扱いに慣れ、魔力の応用も出来ているので唯一不安な『肉弾戦』の修行をすることをリアスに持ちかけると肉弾戦を主用する小猫に見てもらうこととなった。

「全力でかかってきてね?小猫ちゃん。そうじゃないと僕のためにならないから」

「・・・分かりました」

「じゃあ・・・行くぞ!!」

闇慈は足に魔力を集中させ、移動速度をあげ小猫に殴りかかったが全てギリギリの所でかわされてしまい、カウンターの蹴りが闇慈の背中に直撃した。

「ぐっ・・・やっぱり格闘と鎌の扱いは全然感覚が違う」

「・・・今度はこっちから行きます」

今度は小猫が闇慈に格闘を仕掛けた。今回は修行のため普通の人間の目をしていたため闇慈は防ぐのが精一杯だった。

(くっ・・・流石小猫ちゃんだな。一撃一撃が速く重く、そして鋭い!!)

「・・・えい」

「っ!!し、しまっ・・・ぐはっ!!」

闇慈は考え事していた隙を突かれ、小猫の突肩を腹に受けてしまい木に激突した。今更だが闇慈と小猫の身長の差は有り過ぎる。闇慈は180cm。小猫は138cm。普通の突肩なら背中か胸に当たるのだが、40cm近く差があるため小猫の突肩は闇慈の丁度鳩尾に入ることとなった。

「痛たた・・・くそっ!!油断した!!」

「・・・戦いの最中に考え事はダメです、闇慈先輩」

「そのことは今のでよく分かったよ」

「・・・打撃は体の中心線を狙って的確且つ抉りこむように打つのが基本です」

「分かった。よし!!行くぞ!!はあああ!!!」

闇慈が再び小猫に格闘を挑んだ。しかし今回は闇慈にも考えがあった。

(小猫ちゃんは全てを力でねじ伏せる『剛』の格闘術・・・なら僕は)

「・・・闇慈先輩。また考え事です。隙あり」

小猫は再び闇慈に突肩を闇慈の鳩尾に当てようとした。しかし・・・

「・・・えっ!?」

突肩が当たる瞬間、闇慈は体を後ろに反らし威力を無くすとそのまま小猫の両腕を掴み、素早く小猫の足を払い、転かすと・・・小猫の胸のあたりにしゃがむ勢いを乗せた掌底を体に当たる直前まで振り下ろした。

「全てを『無』に還す・・・『柔』の格闘術を習得する!!」

「・・・お見事です、闇慈先輩。でも甘いです」

「えっ?」

闇慈が自分の腹を見てみると小猫の膝が鳩尾に入っていた。

「・・・最後まで気を抜かないで下さい」

「あはは・・・ごめ、ん・・・」

「・・・闇慈先輩?」

闇慈は小猫に謝り終える前に気絶してしまい、小猫に覆い被さってしまった。

「・・・あ、闇慈先輩?少しやりずきました」

小猫は闇慈を優しく退けるとそのまま闇慈を抱き上げると木陰にもたれかかるように降ろした。

「・・・でもこのままでは闇慈先輩の体が不安定・・・仕方ないです」

小猫は自分自身が木にもたれ掛かり足を伸ばすように座ると闇慈の頭を自分の膝の上に乗せた。要するに『膝枕』である。

「・・・」

「・・・///」

小猫は闇慈の寝顔を見ていると段々自分の顔が赤くなっていった。結局が何故なのか小猫には分かるず終いだった。

~~~~~~~~~~~~

闇慈が目覚めたのは夕暮れだった。

「ごめんね?小猫ちゃん。僕のために」

「・・・いえ。闇慈先輩が元気ならそれで良いです」

「そろそろ宿舎に戻ろうか?」

「・・・はい」

そして小猫が立ち上がろうとすると立ち上がれなかった。

「小猫ちゃん!?」

「・・・どうやら足が痺れてしまったみたいです。闇慈先輩は先に宿舎に戻っていて下さい」

「それはできないよ。今まで僕の面倒を見てくたんだから今度は僕が小猫ちゃんの面倒を見る番だよ」

そう言うと闇慈は小猫に向かって自分の背中を差し出した。

「・・・闇慈先輩?」

「僕が宿舎まで負ぶってあげる。さあ」

時間が時間らしく小猫は闇慈の背中に身を委ねた。

(・・・小猫ちゃんて本当に軽いんだね。全然重くない)

闇慈はそんなことを思っている最中、小猫は表情には出てなかったがあたふたしていた。

(・・・背負って貰っているだけなのに何故こんなにドキドキするんでしょうか?///)

小猫は自分の顔を闇慈の背中に当てた。

(・・・闇慈先輩。やっぱり・・・温かいです。安心出来ます。このままでいたいです)

結局宿舎に着くまで闇慈は小猫を負ぶることとなった。
 

 

第二十話 夕食


「さてと・・・みんなの夕食を作りに厨房に行きますか」

午後5時。闇慈の料理の腕前を小猫から聞いていたリアスは夕食は闇慈が作ることを課した。

「まあ。僕自身は願ってもないだけどね」

闇慈が厨房の扉を開くと中は・・・

「あ、闇慈?」

「アンジさん?」

一誠とアーシアがいた。そして周りには皮の剥けたジャガイモやタマネギが多く散らばっていた。

「えっと・・・これはどうなってるの?」

「魔力の応用の練習として包丁を使わずに野菜の皮を剥くことだったんですが・・・」

「コツが分かった途端にちょっと調子に乗りすぎちまった・・・」

闇慈はタマネギとジャガイモの個数を数えたがそれぞれ十五~二十個近くある。

「・・・そうだね。何とかやってみるよ」

「えっ?お前が夕食を作るのか?闇慈」

「そう言うことだよ」

闇慈は散らばった皮を片づけると食材を確認しながら夕食を作り始めた。

~~~~~~~~~~~~

午後7時頃になり、オカルト研究部の部員たちは空腹になり食堂に入ると。

「す、すげぇ・・・」

「これ全部アンジさんが?」

「へえ。おいしそうだね」

「・・・闇慈先輩の手料理。楽しみです」

テーブルには、グラタン。ポテトサラダ。オニオンスープなどのジャガイモやタマネギを中心とした料理が並べられていた。

「今回はあのタマネギとジャガイモをどうにかしないといけなかったからこんなメニューになってしまってゴメンね?みんな」

その言葉に一誠とアーシアが応えた。

「そんな。アンジさんは悪くありません!!」

「そうだぜ。元は俺とアーシアで何とかしなきゃならなかったのに闇慈がやってくれたお陰で助かったんだぜ?」

「僕もそう思うな」

「・・・闇慈先輩が気に病む必要はないと思います」

二人の言葉に祐斗と小猫も付け加えると、リアスと朱乃も食堂に入ってきた。

「あら。良い匂いじゃない」

「小猫さんから聞いていましたけど本当に料理がお上手なんですね」

リアスと朱乃も闇慈の料理を賞賛しているようだ。

「ありがとうございます。では冷めないうちにどうぞ」

「そうね。じゃあみんな、席に着いて」

リアスが言うとそれぞれ自分の席に着き。

「「「「「いただきます」」」」」

感謝の気持ちを捧げ、夕食を食べ始めた。

「っ!!うめえ!!」

「はい。このスープもとても美味しいです」

「うん。味がしっかり染み込んでる」

「・・・(コクコク)」

「男性でこんな料理を作れる人は初めてね。とても美味しいわ」

「今度私にレシピを教えて下さいませんか?闇慈君」

闇慈以外の部員達は笑顔で大絶賛していた。そのことを聞いた闇慈はホッと胸を撫で下ろした。

(良かった。みんなの口に合ってて。でもこの時の笑顔はやっぱり格別だね!!作って良かった)

~~~~~~~~~~~~

食事が終了した所でリアスが話しを持ち出した。

「さて。食事も終わったことだしお風呂に入りましょうか?」

「お、お風呂っすか!?」

一誠がその言葉に反応し席を立ち上がった。

「あらイッセー。もしかして私たちの入浴を覗きたいの?なら一緒に入る?私は構わないわよ。朱乃はどう?」

「うふふ。殿方のお背中を流してみたいですわ」

「えーー!!?」

朱乃も了承したらしい。その事に一誠がさらに大きく反応した。

「アーシアだって愛しのイッセーなら大丈夫よね?」

「・・・(コクン)///」

アーシアは顔を赤くしながら頷いた。残るは小猫だけだったが・・・

「小猫は?」

「嫌です・・・」

即答だった・・・。

「じゃあナシね」

リアスのその一言に一誠は激しくズッ転けた。

「うふふ。残念でした」

(いや・・・リアス先輩。絶対分かってて聞いたでしょ!?相変わらずイッセーをからかうのが好きな先輩だね)

闇慈が心の中で溜め息をついていると、小猫が言葉を続けた。

「・・・でも」

「どうしたの?小猫」

リアスが再び小猫に尋ねた。顔を赤らめながら闇慈の方を向いた。

「・・・闇慈先輩とだったら・・・嫌じゃないです///」

「えっ!?」

闇慈は小猫の意外な言葉に驚きを隠させないようだった。

「あら、小猫がこんな事を言うなんて・・・アンジ。貴方はどうしたいの?」

「・・・闇慈先輩」

小猫が闇慈に甘えるような声を出したが闇慈は冷静に答えた。

「流石にそれは不味いと思います。だからごめんね?小猫ちゃん」

「・・・そうですか。残念です」

(良かった。理解が早くて助かるよ)

こうして修行の1日目が終了した。
 

 

第二十一話 秘技


小猫との修行が終わった翌日。今日は悪魔に関する勉強会となった。
リアスの話によると悪魔は先の大戦で数が激減してしまったようだ。そして悪魔の家柄に分かれることになったようだ。

(なるほど。ライザーがリアスと結婚したがるのはこう言う訳だったのか・・・)

「さて。ここで少し休憩にしましょうか?」

「私はお茶を淹れてきますわね」

「あ、私も手伝います」

朱乃が立ち上がり、お茶を淹れに行こうとするとアーシアを一誠が引き止めた。

「アーシア。昨日はゴメンな?」

「い、いえ///。イッセーさんのお役に立てて私は嬉しいです」

何故アーシアが赤くなっていたのか気になったのか闇慈が一誠に尋ねた。

「昨日何かあったの?イッセー。アーシア」

「えへへ。私とイッセーさんとの秘密です♪」

そう言うとアーシアは朱乃と一緒に部屋を出て行った。

(・・・まあ。二人の秘密を無理に聞こうとするのは野蛮だから聞かないでおこう)

その後アーシアの聖職者の知識も聞くこととなった。中でも『聖書』と『聖水』は悪魔にとって致命傷を与えるものだとリアスが説明を加えた。
それとアーシアが聖書を読もうとすると頭痛が走るらしい。それは仕方ないことだった。

「悪魔だからな」

「悪魔だもんね」

「・・・悪魔ですから」

「悪魔だもの」

「うふふ。悪魔ですわね」

「あうぅぅ。聖書が読めませ~~ん」

アーシアの天然には闇慈も苦笑していた。でも何点か思い付きがあった。

(レーティングゲームで使えないかな?リアス先輩達は悪魔だけど僕は表向きは人間だから持てると思うし)

(特に問題はない思うぞ、闇慈。死神にはそう言った物は通用しないから安心して良い)

(こっちは人数が少ない部分は知恵で補わないと・・・ですね)

こうして二日目は終了して行った。

~~~~~~~~~~~~

三日目は各々自由のスケジュールを立てて修行となった。

「さて。今日は自由にやって良いと言われたけど、どうしようかな」

今日の小猫は一誠に付くこととなった。するとデスが闇慈に呼びかけた。

(ならば。我が直々にお前に指導してやろう)

(えっ!?デスさんがですか!?)

(お前が良ければな)

(なら。よろしくお願いします!!)

そう言うとデスは闇慈の中から出てきて骸骨の両手にはデスサイズ・ヘルと同じ鎌が握られていた。それを確認すると闇慈もセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを取り出した。

「さあ・・・行くぞ!!闇慈」

「はい!!よろしくお願いします!!」

闇慈がデスに切りかかるとデスはそれを弾くと鎌の柄の先端を闇慈の腹に突き刺した

「ぐは・・・」

闇慈はそのまま地面に跪いてしまった。

「闇慈。お前は鎌の刃の部分しか使用していないだろう?鎌全体を利用すればお前はもっと強くなるぞ」

「いてて・・・さっきみたいな『柄殴り』ですね」

「そうだ。この鎌の柄を相手の延髄に打ち込むと容易に気絶させることも出来る。それらを上手く使っていけ」

「はい!!」

~~~~~~~~~~~~

その後デスのカウンターを何回も受けながら鎌の扱いがさらに上昇したようだ。

「ふむ。大分上手くなったな」

「あ、ありがとう・・・ございます・・・」

上手くなったのは良いが闇慈の体はほぼボロボロだった。

「では次のステップに進もう」

「デ、デスさん。少し休ませてください!!」

デスの訓練が始まって2時間は経過していた。

「もうそんなに経っていたのか。ならば少し休憩だ」

「分かりました」

闇慈はデスサイズ・ヘルを解除すると木陰に移動し、水で喉を潤した。

「はあ・・・はあ・・・どうしてデスさんはそんなに元気なんですか?」

「我には『疲労』と言う感情を持たないからな」

(何なんですか・・・死神って)

闇慈は心の中で溜め息をついていた。そして数十分後体力を回復した闇慈は再び修行を開始した。

「鎌の扱いはほぼ慣れたようだな。今度はお前に魔力を使った技を教えよう」

「魔力の技ってリアス先輩や朱乃先輩が使っていた技ですか?」

「百聞は一見に如かず。まず我が手本を見せよう」

そう言うとデスは持っていた鎌に自分の魔力を注ぎ込み、その鎌を距離がある一本の木に向かって振った。

「この何処が魔力を使った技なんですか?」

「よく見てみろ」

闇慈が再びその木を見てみると、木が根元の所からずれるとそのまま大きな音を立てて倒れた。

「えっ!?木がバターみたいに切れてる!?何をやったんですか!?デスさん」

「これは鎌に溜めた魔力を相手に向かって飛ばす技だ。切れ味は今ので分かったであろう?我はこの技を『飛翔刃(ひしょうじん)』と命名している」

「何か凄い技ですね。分かりました。頑張って習得します」

「これは一筋縄で習得するのは至難の技だぞ。心しておくが良い」

その後の修行はこの飛翔刃を習得するのに費やしたと言う。
 

 

第二十二話 開始


「そろそろだな」

今は午後11時。闇慈は自分の部屋でその時を待っていた。そう今日はライザーとのレーティングゲーム当日だった。
しかし闇慈の心情は不安に満ち溢れていた。ゲームと言えど純血の悪魔を相手に下手をすれば命を落としてしまうということに心が不安になっているみたいだ。

(大丈夫ですよね?僕たち)

(安心して良い。お前達は強くなった。後は己の力を信じて全力が出せるかどうかだ)

(・・・そうですね。そして奴に『死』を見せてやります)

闇慈とデスが話しているとグレイフィアからの通信が入った。

「時間になりましたのでレーティングゲーム会場へご案内します」

すると闇慈の足元に特殊な魔方陣が展開され、闇慈は部屋から居なくなっていた。

~~~~~~~~~~~~

そして気が付くと闇慈は駒王学園のオカルト研究部の部室にいた。周りには闇慈以外の部員も集まっているようだ。
朱乃は巫女服を着ていて、朱乃以外は学校の制服を着ていた。

「皆様。今回のフェニックス家とグレモリー家のレーティングゲームの審判はグレモリー家の使用人グレイフィアがいたします」

今回のゲームの審判はグレイフィアが執り行うみたいだ。そして闇慈には少し疑問な点があった。

(・・・どうして『魔王』本人がこのゲームを見に来ているんだ?)

そう。このゲームに冥界の魔王兼リアスの兄である『サーゼクス・ルシファー』が観戦しにきているらしい。苗字も魔王の名前から取って『グレモリー』から『ルシファー』に変わっていた。この事によりリアスがグレモリー家の次期当主にならなければならないことを招き、このようなことになったのだ。

(・・・元はと言えば兄であるあの人が魔王になったからリアス先輩はこんなことに)

闇慈は心の中でサーゼクスに対する怒りと疑問を抱えていた。

(でも今はゲームに集中しないと・・・ここでやられたら水の泡だ!!そしてリアス先輩に不幸が訪れる!!)

「皆さん。これを耳につけてください」

朱乃は部員に花の種のようなものを差し出した。闇慈はこれが何なのか尋ねた。

「これは何ですか?」

「これは通信機みたいなものよ、アンジ。ヘッドホンを着けるように耳につけなさい」

「分かりました」

闇慈たちは種のような通信機を耳につけた。そしてそれを着け終えたと同時にグレイフィアからの放送が入った。

「それではこれよりゲーム開始となります。なお、制限時間は人間界の夜明けまでといたします」

その放送が終わると学校のチャイムが鳴り響いた。恐らく開始のチャイムだろう。
リアス達の本陣は『部室』。そしてライザーの本陣は『生徒会室』となっている。このゲームはチェスとほぼ同じだった。例えば『ポーン』である一誠は敵本陣に入り込めば『プロモーション』というポーン独特の能力を発揮することが出来る。しかし闇慈は補充要員・・・言い換えれば『遊撃手』なのでそう言った能力は持つことは許されない。

「さあ。敵は不死身のフェニックス家の中でも有望視されている『ライザー・フェニックス』よ!!さあ消し飛ばしてあげましょう!!」

リアスの激励によって作戦が開始された。作戦はまず重要拠点の占拠。ここでの重要拠点は『体育館』だった。しかしリアスはそのこと利用し敵を倒していく戦法だった。組み合わせは一誠と小猫と闇慈。リアスとアーシア。祐斗と朱乃は一人でも大丈夫だった。

「じゃあ行こうか?イッセー。小猫ちゃん」

闇慈が二人にそう言うと小猫が闇慈に話しかけた。

「・・・闇慈先輩。大丈夫ですか?」

「僕は大丈夫だよ小猫ちゃん」

「・・・本当ですか?」

「小猫ちゃんは僕の事が信用できない?」

闇慈がそう聞くと小猫は首を横に振った。

「ありがとう、小猫ちゃん。それよりも小猫ちゃんはイッセーのことをよろしく頼むよ」

「おい!闇慈!それってなんだか俺が弱いみたいじゃねえか!!お前はどう言う目で俺を見てたんだよ!?」

「エロい奴・・・かな?」

「アンジーーー!!!」

「あはは。冗談だよ。でもイッセー・・・」

闇慈は笑っている顔から真剣な表情に変え、一誠に近寄った。

「ここでは冗談が言えるが・・・一歩出ればそこは『戦場』だ・・・気を抜いてると仲間まで危険な目に合わせる事になる・・・それは覚えておくことだ」

「わ、分かった」

一誠は闇慈の気迫に少し圧倒されながら頷いた。

「良し!!行こう!!」

そう言うと闇慈達は体育館を目指すべく暗闇の中に消えていった。
 

 

第二十三話 成果


ゲームが開始されて数十分が経った。闇慈達三人は体育館に到着し、裏口から内部に侵入し、ステージ袖の裏に身を隠した。しかし闇慈には疑問な点があった。

(妙だな・・・ここまで来るのに敵と全く会わなかった。黒羽も知らせてくれなかった)

闇慈はいざって時のために黒羽を光子状態にし、闇慈達の周りを見張らせていたが黒羽も見かけなかったらしい。因みに黒羽が光子状態になると気配を感じ取られることはない。体育館の中に入って初めて敵の気配を闇慈は感じ取ることが出来た。

(待ち伏せか・・・敵は・・・4人か)

「どうしたんだよ?闇慈。難しい顔をしてるぞ?」

「・・・闇慈先輩。イッセー先輩。敵の気配です」

小猫が話しているとアリーナ側の電灯が付いていった。

「そこにいるのは分かっているわ!グレモリーの下僕達!」

ライザーの下僕達も闇慈達の存在に気付いていたのか声をかけていた。

「こそこそしていても仕方ないみたいだね?イッセー。小猫ちゃん」

「だな」

「・・・みたいですね」

闇慈たちがステージ袖から姿を現し、見たのは4人の女の子だった。

「ルークさんに・・・やたらと元気なポーンさん。そして無謀な遊撃手の人間さんね」

「あ!!あの娘は!!」

一誠が驚きの声を上げて見ていたのは以前一誠の鳩尾に棍を叩き込もうとした和服の女の子がいた。

「ミラよ。属性はポーン」

「私はルークの雪蘭(シュラン)

「ポーンのイルで~す♪」

「同じくネルで~す♪」

チャイナ服を着た黒髪の女の子は『雪蘭(シュラン)』。和服を着た青髪の女の子は『ミラ』。そして体操服を着た緑色の髪の双子は『イル』と『ネル』らしい。中でも・・・

「あの雪蘭って娘の魔力はそこそこ強そうだね?小猫ちゃん」

「・・・はい。おそらくクイーンに近いでしょう」

「げっ!!マジかよ!!」

雪蘭は油断できない相手らしい。

「・・・あのルークは私がやります。闇慈先輩とイッセー先輩はポーンをよろしくお願いします。最悪の場合、逃げて時間を稼いでください」

「じゃあ僕はあの双子の相手をしようか。イッセーはリベンジしたいでしょ?」

「ああ。それに俺にも勝算はあるしな!!いくぜ!!ブーステッド・ギア!!スタンバイ!!」

『Boost!!』

一誠がセイグリッド・ギアを発動させると小猫も自分のグローブを引き締め戦闘体制に入った。闇慈もイルとネルの元に行くと格闘の構えを取った。デスサイズ・ヘルはライザー戦まで温存するつもりらしい。ポーン相手なら問題はなそう感じたのだろう。しかし『真紅の魔眼』と『魔力の応用』は使うらしい

「「お兄さんが私達の相手?カッコいいけどライザー様のためにバラバラになって♪」」

「ん?・・・『バラバラ』ってどういう・・・」

イルとネルが何か悪いことを考えていそうな小悪魔の笑顔を浮かべると持っていた大きなバッグの中からチェーンソウを取り出した。そして刃の部分が勢いよく回転し始めた。

「ちょっ!?僕が人間ってこと分かってるの!?」

「分かってるよ~♪」

「大人しく解体されて下さ~い♪」

「「バ~ラバラ♪バ~ラバラ♪」」

そう言うと二人は闇慈に向かってチェーンソウの刃を振り下ろしてきた。しかし闇慈は『真紅の魔眼』を発動させ、二人の斬撃を見切り二人から離れた。

「何で!?何で当たらないの!?」

「お兄さんってただの人間じゃないの!?」

「「今度こそバラバラに・・・」」

「いい加減にしろ・・・」

「「えっ!?」」

流石の心優しい闇慈も堪忍袋の尾が切れたのか性格が一変した。

「子供がそんな物騒なものを振り回すなんて感心しないな・・・ここは年上らしくおし置きする必要らしいな・・・」

「あ~~!!今私達のことを子ども扱いした~~!!」

「許せない!!バラバラにしてや・・・」

イルとネルが再び斬りかかろうとしたが目の前には闇慈が立っていた。

「「えっ!?」」

「遅い!!」

闇慈は両手に魔力を溜めチェーンソウの刃のない側面の部分に裏拳を当てると刃が柄の部分から落ちてしまい回転も止まった。

「痛ったた。やっぱり鉄は殴るものじゃないな」

「そんな・・・」

「ネル!!逃げよ・・・」

「させるとでも思っていたか?」

闇慈はすぐに水面蹴りで二人の足を払いこかすと『魔眼』と『魔力の解放』で二人を威圧し始めた。二人はそのせいで立とうにも立てないのだろう。

「さて・・・おし置きの時間だ・・・」

「「ひっ・・・」」

二人は何をされるのか不安になったのか涙顔になり嗚咽を出していた。

「な、何をするの?」

「もしかして私達・・・殺されちゃうの?」

「安心しろ・・・命を取る様なことはしない」

そう言うと闇慈は素早く二人を自分の膝の上に乗せた。

「これって・・・」

「もしかして・・・」

二人は何をされるのか脳裏に過った。そして次の瞬間・・・

バチーン!!と二つのいい音が体育館に響いた。

「「痛った~い!!!」」

そう二人が闇慈からされたのは『尻叩き』だった・・・。闇慈も少し魔力を右手に溜めていたためかなり威力があると思う・・・

「う~~。まさかお尻を叩かれるなんて・・・」

「痛いよう・・・」

そう言うと二人は闇慈から逃げようとしたが闇慈がそれを許さなかった。

「何逃げようとしているんだ?あと99発はうたないとな・・・まあ。お前達がある言葉を言ったら止めてやるが?」

「「ごめんなさ~~い!!」」

二人は何を言えば良いのか一瞬で分かり、闇慈に謝った。それを聞いた闇慈は二人を膝から降ろした。二人は余程痛かったのかその場に倒れてしまった。

「流石にこれ以上やると可愛そうだからここまでしておこうかな・・・さて小猫ちゃんとイッセーは・・・」

「喰らえ!!ドレスブレイク!!」

一誠の叫び声が聞こえるとミラの服が弾け飛び裸体がさらけ出してしまいミラは悲鳴を上げその場にうずくまってしまった。

「あははは!!見たか!!これが俺の必殺技『ドレス・ブレイク』だ。脳内で服を消し飛ばすイメージをし続けたんだよ!!魔力の才能を女の子を裸にするために使わせてもらったぜ!!」

「・・・イッセー。もしかしてこの前に厨房で転がってたあの野菜って・・・」

「ああ!!あれもドレス・ブレイクを編み出すきっかけだったぜ!!」

イッセーは誇らしげに語っていたが闇慈とルークを倒した小猫はドン引きだった。するとリアスから通信が入った。

『イッセー。アンジ。小猫。聞こえる?今すぐにそこから離れてちょうだい!!朱乃が魔法を放つわ!!』

『『『分かりました!!』』』

そう言うと小猫とイッセーは急いで体育館から出て、そして闇慈も出ようとしたが・・・

「待て!!お兄さん!!」

「よくもお尻を叩いてくれたね!!」

イルとネルが闇慈の両腕に掴み掛かってきた。

「えっ!?」

「「まだお兄さんに謝って貰ってないよ!!」」

「ちょっ!!不味いって!!ここにいたら・・・」

闇慈が言い切る前に巨大な雷が体育館を襲った。

~~~~~~~~~~~~

視点は変わりイッセーたちに移る。雷を打ったのは朱乃らしい。

「すげ~。体育館が一瞬で・・・」

「・・・朱乃先輩の通り名は『雷の巫女』。その力は知る人ぞ知る存在らしいです」

「うふふ///」

相変わらず顔を赤らめている朱乃だった。しかし一誠があることに気付いた。

「あれ?闇慈は?」

「・・・闇慈先輩?」

二人はあたりを見回してみたが闇慈の姿が無かった・・・

「まさか!?巻き込まれたのか!?」

「・・・そんな」

『イッセー。小猫。どうしたの?』

ここでリアスからの通信が入った。小猫は涙顔だったので一誠が変わりに答えた。

『闇慈が逃げ遅れてました、部長』

『そんな!?闇慈は元は人間なのよ!?あんな雷撃を喰らえば一溜まりも無いわ!!』

「・・・闇慈先輩」

小猫が涙声になった瞬間グレイフィアからの戦況の放送が流れた。

『ライザー様の[ルーク]一名。[ポーン]一名。戦闘不能』

「あれ?今闇慈の名前入って無かったよな?」

「・・・はい。私もそう聞こえました」

闇慈はどうなったのだろうか?と二人は疑問に感じていたらしい

~~~~~~~~~~~~

「はあ・・・はあ・・・死ぬかと思った」

闇慈は両脇に抱えていたイルとネルを降ろした。闇慈は雷が落ちる瞬間、二人を抱きかかえ、足に魔力を溜め一瞬で外に飛び出たためリタイアすることにはならなかった。

「さてと・・・どうしてあんなことをしたのかな?」

「だって子ども扱いされたもん!!」

「私達はちゃんと謝ったのにお兄さんは私達に謝ってないよ!!」

「・・・なら二人は自分が子供じゃないって言い切れるのかな?」

そういうと二人は黙ってしまった。それどころか泣き顔になっていった。

「私達はいつも子ども扱いされて・・・」

「今回のゲームでも力がないからサクリファイスの駒扱いだったし・・・」

「ちょっと待って?サクリファイスってどういう事?・・・もしかして君達は『囮役』だったの?」

そう言うと二人は軽く頷いた。ライザーはリアスより駒も揃えているため多少の犠牲を払ってでも倒そうとして、ポーンの中で唯一力の無いイルとネルとミラを文字通り、犠牲(サクリファイス)の駒にしたらしい。このことを聞いた闇慈はますますライザーを許せなくなっていった。

(決定だね・・・ライザーは何があっても倒す!!)

(同感だな。目的のために易々と下僕を犠牲に出来る奴は我も見過ごすわけにはいかんな・・・)

「教えてくれてありがとう、イルちゃん。ネルちゃん。それからさっきは子供扱いしてごめんね?君達は時が経てば魅力的な女性になると思うよ?」

「「本当?」」

「うん」

そして闇慈が一誠達の元に行こう立ち上がるとグレイフィアからの放送が入った。

『リアス様の[ルーク]一名。戦闘不能』

「えっ!?小猫ちゃんが・・・やられた!?」

闇慈には信じられないことだった。そしてそのことに対する怒りが込み上げてきた。

「ごめんね?仲間がやられたみたいだから、もう行くね?」

「でもまだ私達リタイアしてないよ?」

「僕は敵意の無い人と戦いたくはないからね・・・じゃあ」

闇慈はそのまま駆けていった。

「何だか不思議な人だったね?ネル」

「うん。優しかったり怖かったり。どっちが本物のお兄さんか分からなかったよ。でも・・・」

「「カッコ良かった///」」

イルとネルはそう呟いていた。
 

 

第二十四話 禁手


小猫がやられたと言う放送が入って数分がたった。その間にライザーのポーンが3人ほどリタイアしたらしい。しかし闇慈にはそういったことは関係なかった。闇慈の頭の中には小猫を倒した奴の事しかなかったからだ。

(くそっ!!何処だ!!小猫を倒した奴は!!)

闇慈は怒りで冷静さを失っていた。仲間を失ったのは闇慈にとって初めてなことだったので抑えきれないのだろう。しかしここでデスの喝が飛んできた。

(いい加減にしないか!!)

(っ!?デスさん?)

(そんな状態で見つけられるとても本気で思っているのか!?平常の心を忘れるなと我はお前に言い聞かせてきた筈だぞ!!)

(・・・)

デスの喝が闇慈の心に染みたのか闇慈は目を閉じ深く深呼吸した。

(そうでした。すみません、デスさん)

(初めて仲間を失ったその気持ちは分かる。しかしあの状態で戦いを挑んだとしても返り討ちになるだけだ)

(はい。まずは落ち着きを取り戻します)

数分後、闇慈は心を入れ替え、冷静に気配を感じていった。闇慈が今いる場所は旧校舎に近い林の中だった。

「・・・見つけた。この場所は・・・グランドか!!」

(闇慈。そろそろセイクリッド・ギアで戦ってみてはどうだ?)

(・・・そうですね。もうこの力を相手側に知られても良いと思います)

闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、マントを纏い、デスサイズ・ヘルを担いだ。

「良し!!行くぞ!!」

闇慈は漆黒の翼を具現させるとその場から飛び立とうとしたがデスが引き止めた。

(・・・闇慈。お前は敵に気付かれないように接近したくはないか?)

(えっ!?そんなことが出来るんですか!?)

(これはあまり多用してはならない技だが。禁手(バランス・ブレイカー)という技がある)

(バランス・ブレイカー?)

(それぞれのセイグリッド・ギアに存在する特有の力のことだ。しかしこの力はセイグリッド・ギアの力を高め、ある領域に至った者のみが発動させることが出来る)

(ある領域って何ですか?デスさん)

闇慈は気になったのかデスに問いかけた。

(お前はすでにその領域に達している。お前は『憑依・死神』を今では容易に使いこなせるであろう?それがセイグリッド・ギア『デスサイズ・ヘル』のバランス・ブレイカーを発動させるために必要な領域だ)

(なるほど。じゃあ教えてください!!バランス・ブレイカーを!!)

闇慈がデスにお願いした直後、グレイフィアからの放送が入った。

『リアス様の[クイーン]一名。[ナイト]一名。戦闘不能』

「なっ!?朱乃さんに祐斗が・・・やられた!?朱乃さんがやられるなんて・・・それに祐斗も・・・となると味方はもうリアス先輩とアーシアとイッセーだけか!!不味い!!デスさん!!早く僕にバランス・ブレイカーを教えてください!!」

(・・・分かった!!)

~~~~~~~~~~~~

視点は変わり、グランドに移動する。グランドでは一誠がクイーンを除くほかのライザーの駒と戦っていた。しかし数が多すぎ、何より悪魔になって日も浅い一誠にとってそれは無謀なことだった。

「ぐはっ!!」

一誠は顔の片面に仮面を付けた女性から吹き飛ばされ、倒れ付してしまった。

「いい加減。諦めたらどうなのかしら?」

倒れ付してしまった一誠に金髪のピンク色のドレスのような服を着た女の子が一誠に話しかけた。この女の子は『レイヴェル・フェニックス』。ライザーの[ビショップ]だが、苗字通りライザーの実の妹だ。

「俺は・・・まだ・・・諦めねえ!!」

一誠は痛みに堪えながら、ゆっくりと立ち上がった。

「ここで・・・倒れたら・・・やられた小猫ちゃんや木場や朱乃さんに申し訳が・・・立たないからな・・・それにリアス部長の顔に泥を塗るようなことはしたくねぇからな・・・」

しかし一誠の体はほぼ限界に達しようとしていた。正直に言うと立っているのがやっとらしい。

「それに・・・俺達はまだ・・・闇慈がいるからな・・・」

「アンジ?・・・あの無謀な人間さんね。人間なんていないに等しいですわ。もうお別れですわね・・・イザベラ」

「はい」

一誠を吹き飛ばした女性『イザベラ』が一誠に止めを刺そうと拳を一誠に顔に向かって振り下ろした。

「・・・っ!!イッセーさん!!」

リアスと一緒にいたアーシアが気付いたのか一誠の名前を叫んだ。

(悪ぃ・・・闇慈・・・)

一誠は覚悟を決めたのか目を閉じた。

「っ!!イッセー!!」

リアスも気付いたのか声を張り上げた。

「リザイン投降しろ!!リアス。ポーンとビショップ以外の駒を失ったお前に何が出来る?それにお前のポーンももう片付くらしいしな・・・」

「くっ・・・!!」

ライザーはけなす様にリアスに提案してきた。しかしその提案をある言葉が遮った。

「あっ!!リアス先輩!!あれを!!」

それはアーシアだった。アーシアは一誠を指差していた。リアスは指差した所を見るとのイザベラの拳は一誠には届いていなかった。一誠はいつになっても痛みがこないので目を開けてみるとイザベラの拳が『金縛り』にあったかのように一誠の前で止まっていた。

「何!?どうしたの!?イザベラ」

「分かりません!!拳に何かあたっているみたいな・・・ぐっ!?」

今度は何かで殴られたような音が聞こえ、イザベラは軽い悲鳴を挙げ、地面に倒れ付してしまった。そしてその瞬間、イザベラは緑の光に包まれ消滅してしまった。

「イザベラが!?」

『ライザー様の[ルーク]一名。戦闘不能』

「どうなっているの!?」

「レイヴェル様!!お下がり下さ・・・うっ!?」

そして次々とライザーの駒達は軽い悲鳴を上げながら消えていった。その場に残ったのは一誠とレイヴェルだけとなった。この事にライザーも信じられないという目でその光景をみていた。

「バカな・・・俺の下僕達が一瞬で!?くそっ!!ユーベルーナ!!あのポーンを吹き飛ばせ!!」

「はい!!ライザー様!!」

ユーベルーナが杖をかざし、爆弾のような球体を作ると一誠に向かって投合した。

「イッセーさん!!避けてください!!」

「なっ!!しまっ・・・」

一誠の反応が遅れたのか球体は一誠の目の前まで迫っていた。

飛翔刃(ひしょうじん)!!」

叫び声が聞こえると黒光りした三日月のようなものが球体を切り裂き、霧散させた。そして一誠より少し手前が少し歪むとセイクリッド・ギアを発動させた闇慈が立っていた。どうやら翼はここについた時に消したらしい。

「闇慈!!」

「ごめん、一誠。合流するのが遅れた!!」

「それはお前が無事なら良いって」

「ありがとう。一誠は少し休んでて?後は僕がやる!!」

「・・・分かった。でもあの焼き鳥野郎は一緒に倒そうぜ?」

「分かった」

そう言うと一誠は闇慈の邪魔にならないように離れていった。闇慈は一誠が離れたのを確認するとレイヴェルと向き合った。

「さてと・・・好き放題やってくれましたね・・・」

「お兄様の下僕をやったのは貴方ですの!?」

「はい。僕のセイクリッド・ギアのバランスブレイカー禁手・・・『不可避の悲劇』(インビジブル・トラジティ)を使って倒させて貰いました。まあ、やったことはこの鎌の柄を延髄に叩き込んだだけですけどね」

これが闇慈の禁手・・・インビジブル・トラジティ。これを発動させた闇慈は周りから気配を感じ取られることはない。言い換えれば、姿そのものを消すことが出来る。もちろんセンサーなどの探知機械も通用しない。その代わりこの禁手は生命力を糧に使用するため使いすぎると命に関わる。

「貴方も体にセイクリッド・ギアを宿していたなんて・・・」

「小猫ちゃんや祐斗や朱乃さんをやったのは誰ですか?」

「私だ」

そう言うとユーベルーナが闇慈の元に降り立った。

「・・・確か、ユーベルーナさんでしたか?・・・貴様が・・・小猫ちゃんを・・・」

「(雰囲気が変わった!?)レイヴェル様。お下がり下さい」

「分かったわ。ユーベルーナ」

しかしユーベルーナは闇慈の殺気と魔力漏れに驚きと少しの恐怖を感じていた。

「悪いが・・・一瞬で終わらせてもらうぞ!!」

「ほう。人間の貴様がライザー様のクイーンである私を倒すですって?」

そう言うとユーベルーナは再び空に飛び上がった。そこから爆発系の魔法を叩き出そうとしているのだろう

空中(ここ)ならその鎌も届かない。空も飛べない人間の貴方に勝算なんてあるのかしら?」

「(はあ。この人・・・本当にクイーンなの?油断しすぎでしょ)なら。この姿を見てまだ人間と言い切れるか!?」

闇慈は叫びと共に背中に漆黒の4枚の翼を具現させた。『憑依・死神』はまだ発動させていなかった。

「「なっ!?」」

この事にユーベルーナだけでなく近くにいたレイヴェルも驚きを隠せなかった。

「さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」
 

 

第二十五話 中盤


「はあああ!!!」

闇慈は翼を羽ばたかせ、ユーベルーナに斬りかかった。しかしユーベルーナは咄嗟に魔力で出来たシールドようなものを展開し、防いだ。鎌とシールドがぶつかり合い、しばらくの間火花を散らした後、闇慈がユーベルーナから離れた。

「防御が硬いな。流石はライザーのクイーンと言った所か・・・」

「今度はこちらの番ね・・・」

「っ!!」

ユーベルーナが杖をかざすと闇慈の周りに複数の小さな魔方陣が展開された。闇慈はその場から逃げたと同時にその魔方陣が爆発を起こした。

「なるほど。確かにあれを不意打ちにやられたら避けように避けられないな。魔法の展開の速さ・・・そして爆発させるまでの時間が極端に短い。どうやら『爆発系統』の魔法を好む様だな?」

「私はこの名を嫌っているが、私の二つ名は『爆発王妃(ボム・クイーン)』。そして初見で私の爆発をかわしたのは人間は貴方が初めてよ・・・」

「なら・・・初めて負ける人間は俺で構わないか?」

「私はライザー様の為にも負けることは許されない!!」

「でもこっちも負ける訳には行かないんだ!!」

闇慈は再びユーベルーナに斬りかかった。

「バカな人ね・・・そんなことやっても弾かれるだけですわ」

レイヴェルが高み見物しているような口調で闇慈を罵ったが闇慈は馬鹿では無かった。鎌の刃とシールドは触れた瞬間ユーべルーナのシールドが斬り裂かれ霧散してしまった。

「私のシールドが!?」

「そこだ!!」

闇慈は鎌を振り切った反動を乗せた回し蹴りをユーベルーナの横腹に叩き込み、地面に墜落させた。闇慈はゆっくり地面に着地すると翼を消し、ユーベルーナの元に近寄った。

「魔法を斬り裂くとは・・・その鎌はただの鎌じゃない?」

「まあ。魔法を斬り裂く鎌とでも言っておこうか(本当の名前はまだ出さないほうが良いだろう)。これで終わ・・・何をやっているだ?」

闇慈が見た光景はレイヴェルがユーベルーナに何かを飲ませている光景だった。それを飲み終えるとユーベルーナの傷は回復し、魔力も元通りになっていた。

「傷が回復した?それは何だ?」

「『フェニックスの涙』ですわ」

「フェニックスの涙・・・確か本で読んだ時に登場した『触れたものを癒すことが出来るもの』だったような・・・まさか。朱乃さんや祐斗もそれを使って?」

「その通りだ。これでお前を倒せる」

ユーベルーナは再び、杖を構え、魔方陣を展開し始めた。

「これは流石に本気を出さないとならないようだな」

「えっ!?まだ力を隠していましたの!?」

「日本のことわざにこうある。『能ある鷹は爪を隠す』・・・切り札は最後まで取っておくものだ!!いくぞ!!」

闇慈は魔力を一気に解放し『憑依・死神』を発動させた。

「な、何なの!?この魔力は!?」

「レイヴェル様!!お下がり下さい!!」

ユーベルーナがレイヴェルに言い切った瞬間・・・彼女の目の前には・・・死神がいた。足に魔力を集中させているのか闇慈の速さは格段に上がっていた。

「は、速・・・」

「うおおおお!!!」

闇慈は光速に近い速さでユーベルーナを斬り刻んで行った。そしてそれが終わるとユーベルーナは力尽きたように地面に倒れ付してしまった。

「申し訳ありません・・・ライザー様・・・」

ユーベルーナがそう言うと光に包まれ、消えてしまった。

『ライザー様の[クイーン]一名。戦闘不能』

「ユーベルーナが・・・こうもあっさりとやられるなんて・・・」

「はあ・・・はあ・・・残りは君と焼き鳥さんだけだな」

闇慈はデスサイズ・ヘルを右肩に担ぐとレイヴェルに近寄った。

「こ、来ないで下さい!!」

しかしレイヴェルの心の中には闇慈たちする恐怖に満ち溢れていた。それ故に足が動かずに、その場に倒れ付してしまった。

「・・・」

「ひっ・・・」

闇慈は丸腰のレイヴェルを『真紅の魔眼』で見下すように威圧をかけた。しかし闇慈はその威圧をすぐに解き、ライザーがいると思われる生徒会の校舎に体をむけた。

「あとは・・・あの焼き鳥か・・・」

「お待ち下さい!!」

校舎に行こうとした闇慈をレイヴェルが引き止めた。この時の闇慈は戦闘も無いため優しい性格に戻っていた。

「何かな?」

「どうして・・・止めを刺さないの?」

「僕は敵意の無い人と無駄に争いたくはないからね。僕が倒さないといけないのは・・・ライザーだけだよ」

「・・・」

「じゃあ。僕は行くね?えっと・・・レイヴェルさんだったかな」

その場を後にしようとした闇慈に再びレイヴェルが引きとめ、名前を尋ねた。

「あ、あの!!・・・貴方のお名前は?」

「僕は黒神闇慈。オカルト研究部の部員で『訳有の人間』だよ」

そういうと闇慈はレイヴェルに微笑んで別れを告げ、校舎に走っていった。

(不思議な方。怖かったけど優しい・・・そして笑顔が素敵な方でした///)

その時にレイヴェルの顔は少し赤かったらしい。
 

 

第二十六話 決着


レイヴェルと別れを告げ、闇慈は一誠を探していた。しかし一誠の姿は見当たらなかった。

(おかしい・・・イッセーが居ない・・・僕の予想は校舎の入り口で待ってると思ったんだけど)

闇慈が疑問に思っていると・・・

「イッセーーー!!!」

リアスの叫び声が闇慈の耳に届いた。

「っ!?今のはリアス先輩の叫び声!?まさかイッセー・・・一人でライザーに挑んだの!?あのバカイッセー!!」

闇慈は校舎の階段を駆け上がり、屋上に出た。そしてそこにはライザーと対峙している赤の全身甲冑を身に纏った一誠がいた。

(何だ?あの甲冑みたいな鎧は?)

(恐らくあれが赤龍帝の篭手『ブーステッド・ギア』のバランス・ブレイカーだろう)

(あれがイッセーのバランス・ブレイカー)

闇慈は一誠のバランス・ブレイカーを賞賛していたが時間切れなのか一誠はもとの制服の姿に戻ってしまった。それをチャンスにライザーが一誠の首元を掴み上げ、首を絞め始めた。

「が・・・は・・・」

「そろそろ眠って貰おうか?いや死んで貰おうか!!ゲーム中の死亡はルール上、事故として認められているからな!!」

「「イッセー(さん)!!!」」

そのことを聞いた闇慈は・・・

「イッセーから・・・離れろーーー!!クソ焼き鳥!!!」

魔力を足に注ぎ込んだ飛び蹴りをライザーの顔面に直撃させ、ライザーを吹き飛ばした。そのことを確認した闇慈はアーシアに一誠の治療を施すように指示した。

「アーシア。イッセーが動ける位までに傷を治してくれ。それまでの時間は俺が稼ぐ」

「分かりました・・・大丈夫ですか?イッセーさん!?」

「あはは・・・格好悪ぃ所を見せちまったな・・・闇慈」

「いや。良くやったよ。傷が癒えたら二人で倒そう!!」

「・・・作戦会議は終わったかい?」

闇慈が再びライザーを見てみると顔が見事に凹んでいたが、それが一瞬で回復した。

「なるほど。これが不死鳥(フェニックス)の力か・・・」

「人間の癖にユーベルーナを倒し、この俺に蹴りを当てるなんてな・・・」

「・・・今の俺なら貴様を躊躇無く斬れそうだ・・・なんせ俺の親友を殺そうとしたんだからな!!」

闇慈は怒りから魔力が漏れ始め、そのことに気付いたライザーは驚きを隠せないようだった。

「っ!!これは・・・魔力!?貴様・・・ただの人間じゃないな!?」

「だったらクイーンであるユーベルーナを倒せるわけないでしょう?さあ・・・始めようか!!」

闇慈は自分の右手を胸に置き、目を閉じた。そう久しぶりにやる『あれ』だ。

「来い・・・来いよ・・・俺は・・・ここにいる!!」

闇慈が体が煙で覆われ、それが晴れるとマントを身に纏い、デスサイズ・ヘルを右肩に担いでいた。

「・・・セイクリッド・ギアも所持していたのか」

「さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」

闇慈は手始めに飛翔刃を飛ばし、ライザーの右腕を切り落としたが、それも瞬時に回復してしまった。

(やっぱり。飛翔刃じゃ相手に致命的なダメージを与えられないか・・・)

「どうした?『死』を俺に見せてくれんじゃなかったのか?」

「やっぱりお前はアホだな。アーシア。イッセーはどうだ?」

「はい。怪我は一通り治しました」

「サンキュー。アシーア」

一誠はアーシアから怪我を治して貰うと闇慈の隣に来た。

「すまねえ!闇慈」

「気にするな。イッセー。今お前が持っている能力を全部、手短に教えてくれ」

「あ、ああ」

イッセーの説明を受け終えると闇慈はニヤリと笑みを浮べた。そして作戦の内容を一誠に伝えた。

「良し!!二人で倒すぞ!!」

「おう!!」

そう言うと一誠はライザーに殴りかかった。しかしライザーはこれを読んでいたのか巨大な炎の球体を作り、一誠に向かって投げつけた。

「消し炭になれぇぇ!!!」

「それはゴメンだな!!闇慈!!」

「任せろ!!うおおお!!!」

闇慈は一誠の前に出るとデスサイズ・ヘルでその球体を斬り裂こうとした。

「バカめ!!その炎は『不死』の炎だ!!斬れるわけがねえだろう!!」

「それはこの光景を見てから言え・・・」

闇慈は魔力を注ぎ込んだデスサイズ・ヘルで球体を横に一閃するとその炎は霧散してしまった。

「バ、バカな!?俺の・・・『不死』の炎が!?」

「今だ!!イッセー!!叩き込め!!」

「うおおおお!!!」

ライザーが動揺している隙に一誠は左の篭手をライザーの鳩尾に叩き込んだ。

「ふっ。無駄だ!!俺にそんなものが効く訳・・・ゴフッ!?」

何時もなら平然としているライザーだが、今回は違った。何故なら・・・

「やっぱり悪魔には『これ』は効果抜群みたいだな?イッセー」

「ああ!!」

一誠が左手から出したのは『十字架』だった。これは闇慈がアーシアからこの時のために借りていたものだった。

「バ、バカな。『十字架』は貴様にとってもダメージを与える筈・・・っ!!まさか・・・貴様!!」

「そう言う事だ。この左腕はもう俺(悪魔)の腕じゃねえ。赤龍帝の腕だ。だから十字架も意味をなさない」

「さあ!!どんどん行くぞ!!イッセー」

今度は闇慈がライザーの顔面向かって何かを投げた。そして・・・

「飛翔刃!!」

闇慈は飛翔刃でそれを真っ二つにすると中から『水』が出てきた。

「イッセー!!」

「ブーステッド・ギア・ギフト!!」

『Transfer!!』

その瞬間、『水』が虹色に輝き、それがライザーの顔にかかると顔から血が流れ始めた。これが一誠のもう一つの能力『ブーステッド・ギア・ギフト』だ。力を倍増させる特殊能力のようだ。だからライザーほどの上級悪魔でも『聖水』が効いたという訳だ。

「うがががぁぁ!?」

「リアス先輩が言っていた通りだな。『聖水』は肉体だけでなく『精神』にもダメージを与えるって。そろそろ決めるぞ!!イッセー!!今こそあの修行で学んだことを生かすんだ!!」

「おう!!」

「さ、させるか!!」

ライザーは最後の力を振り絞り、球体を作り、二人に投げつけたが、二人は難なく避けた。

「木場が言っていた!!視野を広げて相手と周囲も見ろと!!」

一誠は再び十字架と聖水を左腕にかけ力を倍増させた。

「朱乃さんが言っていた!!魔力は体全体覆うオーラから流れるように集める!!意識を集中させ、魔力の波動を感じれば良いと!!」

そして一誠は格闘の構えを取り、何時でも打撃を打てるようにした。

「小猫ちゃんが言っていた!!打撃は体の中心線を狙って的確且つ抉り込むように打つんだと!!」

それを見た闇慈もライザーに止めを刺そうとデスサイズ・ヘルに魔力を注ぎ始めた。

「ま、待て!!分かっているのか!?この婚約は悪魔の未来のために必要で大事なものなんだぞ!?お前らのような何も知らないガキ共がどうこうするような事じゃないだ!!」

ここでまず一誠が答えた。

「難しい事は分からねえ!!でもな、アーシアに傷を治して貰っているときに見たものがあるんだ!!部長が泣いていたんだ!!」

それに付け加え闇慈が答えた。

「貴様が婚約の話をだしてからな!!リアス先輩に変わったことがあるんだ!!リアス先輩の顔から笑顔が消えてしまったんだ!!」

そして二人は一瞬でライザーの距離を縮め、振りかぶった瞬間二人の声が重なった。

「「俺たちがてめえ(貴様)を殴る(斬る)理由はそれだけで十分だぁぁぁぁ!!!」

ゴスッ!!  ザシュッ!!

一誠がライザーの鳩尾を殴り、闇慈は胸元を斬り裂いた。そしてライザーはその場に倒れ付した。それを見ていたレイヴェルはライザーを庇うように前に出たが、一誠は『ブーステッド・ギア』を、闇慈は『デスサイズ・ヘル』を前にかざし、こう叫んだ。

「「文句があるなら俺たちの所に来い!!リアス・グレモリーの『兵士』と『死神』が相手になってやる!!」」

レイヴェルは二人の姿に顔を赤らめていた。そしてここでグレイフィアの放送が入った。

『リアス様の[ポーン]及び[遊撃手]。相手[キング]を撃破(テイク)。よってこのゲームはリアス様の勝利です』

「やったぞ!!イッセー」

闇慈が一誠に呼びかけると一誠は闇慈に握手してきた。

「サンキュー!!闇慈!!お前のおかげであの焼き鳥野郎を倒すことが出来たぜ!!」

「いや。僕はイッセーの補助をしたようなものだよ。あいつはイッセーが倒したんだよ!!」

その後、リアスとアーシアと合流し、このレーティングゲームは幕を閉じた。 

 

番外2 黒羽


「・・・良し。父さんと母さんはもう寝付いたみたいだな。・・・出ておいで、黒羽」

闇慈が使い魔『黒羽』を手にしたその夜、闇慈は黒羽の能力等を確認したいため両親が寝付いたのを確認するとベッドに腰を下ろし、黒羽を自分の部屋に呼び出した。

「ごめんね?こんな夜遅くに呼び出して」

闇慈は黒羽に謝ったが自分は気にしていないと言っているのか黒羽は一声鳴くと、闇慈の肩に乗り頬擦りしてきた。

「ありがとう。・・・さて黒羽に聞きたいことがあるんだけど・・・君の能力はあの時僕を守ってくれたみたいに、相手の攻撃を弾く事以外に何か出来る?」

闇慈は黒羽に問いかけたが・・・黒羽はカラス特有の鳴き声しか発することが出来ずに闇慈には分からずじまいだった。

「う~ん。伝えようとしていることは分かるんだけど・・・やっぱり分からないな・・・あっ!!そう言えば」

ここで闇慈はザトージの言葉を思い出した。

『姿を変えて人に会わせるのは構わねえ・・・』

「黒羽。君の今の姿の他に何かもう一つの姿はない?出来ればそっちで僕に話しかけてくれないかな?」

それを聞いた黒羽は闇慈の肩から降りると空いたスペースに移動した。そして黒羽の周りに黒い無数の光が集まっていき、それが黒羽を完全に包み込み、姿が見えなくなってしまった。

(どんな姿なんだろう?リアス先輩のコウモリのように人間になってくれると良いんだけどな)

闇慈は少し期待しながらその光景を見ていた。そして光が段々大きくなっていった。そして光が弾け飛んだ瞬間、闇慈の目はその姿に釘付けとなった。身長は闇慈より少し小さく160cm位か、黒髪で容姿も美しく歳はリアスと同じくらいで発育した形の良い乳房に黒い和服を着た女性が立っていた。

(これが・・・黒羽のもう一つの姿・・・)

「これでよろしいですか?主様」

その人の声も透き通っており美声を発して闇慈に問いかけた。

「えっと。本当に・・・黒羽・・・なの?」

闇慈は黒羽が女性でこんなに綺麗な人になるとは思ってもいなかったらしく少したじろいでいた。闇慈の問いかけに女性は軽く笑いながら闇慈に答えを返した。

「はい。今では貴方様に『黒羽』と言う名前を頂きました『八咫烏』です。今後どうぞお見知りおきを」

黒羽は正座を組むと礼儀正しく闇慈に挨拶を交わした。

「そんなに畏まらなくて良いよ?黒羽」

「そうはいきません。私は貴方様の使い魔。主には誠実に尽くす。それが私の心がけです」

(流石はアマテラス天照大神に遣えた伝説の烏。主を敬うその心は凄いね)

闇慈は黒羽に関心を抱きながら会話に戻った。

「分かった。黒羽がそこまで言うのならそのままで良いよ。でも『貴方様』って言うのはどうにかならない?僕はそんなに偉くないし・・・普通に名前で呼んでくれないかな?」

「分かりました。では今後は『闇慈様』とお呼びします」

「ありがとう、黒羽。じゃあ話に戻るけどさっきも聞いた通り、黒羽の能力は他にあるの?」

そう聞くと黒羽はゆっくりと立ち上がった。

(何をする気だろう?)

闇慈が疑問に思っていると黒羽の周りに黒い光が集まるとそのまま光と一緒に消えてしまった・・・

「き、消えた!?・・・気配も感じない。黒羽!?何処に居るの!?」

「うふふ。ここです。闇慈様」

「えっ!?」

黒羽の声が聞えると闇慈は背後から黒羽に抱きしめられた。その際に闇慈の背中に黒羽の胸が当たっていた・・・

「これが黒羽のもう一つの能力なの?」

「はい。私は自分自身の体を光子状態することが出来ます。そしてあの状態になった場合気配を他人から感じ取られることはありません」

「なるほど。索敵などには持って来いの能力だね。でも黒羽が見つけても僕が分からなかったら意味が無い・・・」

「その点は心配無用です。私は闇慈様の頭の中に呼びかけることが出来ます」

そう言うと黒羽は目を閉じ、何かを語りかけるように闇慈に呼びかけた。

(聞えますか?闇慈様)

(うん。良く聞える。黒羽は本当に良い力を持っているね)

(ありがとうございます)

頭の中の会話が終わると黒羽は再び目を開けた。因みに背中に抱きついたままだ・・・

「これが私の全ての能力です」

「良く分かったよ。それから・・・黒羽」

「何ですか?闇慈様」

「そろそろ離れてくれないかな?その・・・色々当たってるし」

闇慈は黒羽から胸を押し当てられ、心の中ではタジタジだった。しかし黒羽は離れずに闇慈に悪戯するように話しかけた。

「うふふ。どうしましょう?」

「なっ!?君は主に対して誠実ではなかったの!?」

「私はカラスですよ?悪戯もしてしまいます♪」

それを聞いた闇慈は黒羽の腕の中から素早くすり抜けると黒羽をベッドに押し倒し、その上から覆い被さった。身体能力は黒羽より死神の力を得た闇慈の方が上だった。

「あ、闇慈様?」

いきなりのことだったのか黒羽は何をされたのか分からなかった。そして自分の今の状況を確認した。

「さてと・・・主に逆らった罰を与えるよ?黒羽」

闇慈は笑っていたが・・・その奥からは怒りに似た何かがあった。

「あ・・・」

「どうしようかな?よし。君のその綺麗な体を悪戯してあげるね?・・・二度と逆らえないように・・・」

闇慈は右手を開いたり閉じたりして何をしようとしているのか黒羽に見せ付けた。

「お、お許し下さい!!闇慈様!!」

黒羽は怖くなったのか少し涙声になっていったが闇慈は気にせず続けた。

「ん~?最初に悪戯したのはだれだったかな?それじゃあ・・・いただきます」

「ひっ・・・」

闇慈は黒羽に向かってゆっくりと近づいた。黒羽は覚悟を決したのか目を閉じた。しかし何時になっても体を弄ばれる感覚に襲われることはなかった。

「・・・えっ」

「あはは。ゴメン!!嘘だよ。からかわれたからそのお返し。悪戯するつもりは毛頭ないよ?黒羽」

「・・・酷いです。いくらからかうといってもあんなことをしようとするなんて・・・」

黒羽は本当に怖かったのか両手で両目を隠し、嗚咽を出していた。これを見た闇慈は流石に罪悪感に襲われた。

(少しやり過ぎたかな?)

闇慈は黒羽から退き、腰を下ろすと、黒羽の頭を優しく撫でた。

「ゴメン、黒羽。あれは流石にやり過ぎだったね。黒羽のお願いを一つだけ叶えてあげるからそれで許してくれないかな?」

「・・・本当ですか?」

「うん」

「それなら・・・今日は闇慈様と添い寝させて下さい」

「そ、添い寝!?」

闇慈は意外な頼み事だったので少したじろいだ。

「それってからかい・・・なの?」

「からかいじゃありません!!」

「それで黒羽は許してくれるの?」

「はい」

闇慈は少し考えて了承した。

「分かった。今日だけだよ?」

闇慈は黒羽の隣に来るとベッドに寝そべり、毛布を自分と黒羽にかけた。

「おやすみ、黒羽」

「おやすみなさい、闇慈様」

闇慈は黒羽に背を向け意識を手放そうとしたが次の瞬間、黒羽が闇慈の背中に抱きついてきた。

(黒羽。また!?)

闇慈はゆっくりと黒羽と向き合ったが黒羽はスヤスヤと寝息を立てていた。

(自然と抱きついていたのか・・・ヤレヤレ)

「闇慈・・・様。私の・・・大切な・・・主様」

(夢の中でも僕の事をみているのかな?・・・今日は特別だよ?黒羽)

闇慈はそのまま黒羽の頭を優しく抱き締め、意識を手放した。 

 

番外3 甘味


ライザーとのレーティングゲームが終わった数日後、特に大きな問題もなく普段どおりの生活を送っていた。ゲームでやられた小猫たちも元気になっていた。
変わったことがあるとすればリアスが一誠に惚れてしまったのか一誠の家にアーシア同様にホームステイすることとなったこと位だった。闇慈は学校の授業を終え、部室に向かった。そして部室に着き、部屋に入ると小猫が相変わらず甘いものをほお張っていた。

「あれ?小猫ちゃんだけ?他のみんなは?」

「・・・まだ来てません」

「そっか」

闇慈は荷物を置くと小猫と向かい側のソファーに座った。小猫は食べるのを一時中断し、闇慈と向き合った。

「・・・闇慈先輩。ありがとうございました」

「ん?いきなりどうしたの?小猫ちゃん」

「・・・リアス部長から聞きました。レーティングゲームの時、私の敵を闇慈先輩が取ってくれたって」

「ああ。それなら気にすることはないよ?小猫ちゃん」

「・・・先輩はしなくても私は気にします。何か私にして欲しいことってありますか?」

小猫は小猫なりにそれなりの覚悟があるようだった。

「そうだね・・・あっ!!そうだ!!忘れてた」

「・・・?」

闇慈は鞄から二枚のチケットを取り出し、小猫に見せた。そして説明を開始した。

――回想――

「はい。闇慈。これあなたにあげるわ」

ある日、闇慈は母から2枚のチケットを貰った。

「ん?『ワールドスイーツフェスティバル・無料参加試食券』?これって年に一回、世界中の有名スイーツを楽しんでもらうための大きなフェスティバルの参加券?何で母さんがこれを?」

「商店街の福引きで当たったのよ。だから闇慈にあげるわ」

「でも母さんだって行きたいんじゃ?」

「あなた。後輩の娘の良い雰囲気なんでしょ?名前は確か・・・塔城小猫さんだったかしら?」

そのことを聞いた闇慈は驚いたように母に尋ね返した。

「なっ!?どうして母さんがそれを知ってるの!?」

「同級生のイッセー君から色々聞いてるわよ」

(・・・イッセー。今度あったら拳骨100発だよ)

「だから行ってらっしゃい。その方が親としても嬉しいものよ」

闇慈の母は闇慈微笑むようにそう促すと闇慈は笑顔で頷いた。

「分かったよ、母さん。ありがとう」

闇慈はその二枚の券を受け取った。

――回想終了――

そして説明をし終えた闇慈には小猫の目はキラキラと輝いて見えたらしい。それもそうだろう甘いもの好きの小猫にとっては思ってもいなかったことなのだから。

「小猫ちゃん。次の日曜日にこのフェスティバルがあるんだけど、僕と一緒に行ってくれないかな?」

「・・・闇慈先輩となら行きます」

「ありがとう。開始は午後3時からだけど、フェスティバルの場所はかなり遠いから二人で電車に乗って行かないといけないから駅に午後2時に集合ってことで良いかな?」

「・・・はい(これは・・・闇慈先輩とデート?///)」

小猫は照れている表情を顔には出さなかったが心の中では火照っていた。何にせよ闇慈は小猫を誘うことが出来たようだ。

~~~~~~~~~~~~

当日。闇慈は少し早めに駅に到着し、小猫を待っていた。考えてみれば闇慈は女子とこう言ったことは初めてらしく。少し緊張しているみたいだ。

(ふう。やっぱり少し緊張するな・・・)

ここでデスが闇慈の頭の中に呼びかけ、冷やかしをかけた。

(何だ?お前ともあろうものが緊張しているのか?)

(それは緊張しますよ。こう言ったことは初めてなんですから!!それからデスさん。小猫ちゃんと回っている時は頭の中に呼びかけないで下さいね)

(ふっ。分かっている。我は無粋な真似はしたはないのでな・・・そういっている間にお前の『姫(プリンセス)』が到着するらしいぞ?)

(デスさん!!)

(冗談だ)

そう言うとデスは引っ込んでしまった。そして小猫を見た。白のワンピースを装った小猫が闇慈の元に寄ってきた。あまりに似合っていたため闇慈は小猫に釘付けとなった。

「・・・すみません、闇慈先輩。遅くなりました」

「大丈夫だよ?小猫ちゃん。僕も今来たところだから」

「・・・そうですか。よかったです」

「小猫ちゃんの服装。とても良く似合ってるよ」

「あ、ありがとうございます。先輩の服も・・・カッコイイと思います」

闇慈の服は黒を中心とした服装でだった。メンパン・Tシャツ。そしてその上から半袖のジャンバーを羽織っていた。

「ありがとう、じゃあ行こうか?」

「・・・はい」

闇慈と小猫は電車を乗り継ぎ、フェスティバルの会場へと到着したが、有名なフェスティバルでもあるのか会場内は人でいっぱいだった。

「やっぱり人が多いね?小猫ちゃん」

「・・・はい。下手をしたらはぐれてしまいそうです」

「そうだね。何か良い方法は・・・そうだ」

闇慈は自分の右手で小猫の左手を優しく包んだ。

「・・・あ、闇慈先輩」

小猫はいきなり手を握られたため少し驚いたようだ。

「あ!ゴメン!いきなり手を掴んで。これならはぐれる事もないと思うし、嫌?」

「・・・嫌じゃないです(闇慈先輩の手・・・とても暖かいです)」

小猫は闇慈の温もりに安堵したのか、穏やかな表情に戻った。

「なら、良かった。じゃあ今日は楽しもう?小猫ちゃん」

「・・・はい」

闇慈と小猫は会場内へと溶け込んで行った。

~~~~~~~~~~~~

闇慈と小猫は持っていた皿に食べる分だけスイーツを取ると長椅子に二人で並ぶように腰掛けると二人はスイーツを食べ始めた。

(流石世界の有名パティシエ達が開いている事はあるな。美味しい)

小猫に至っては無我夢中でスイーツを食べていた。そして次のスイーツを取りに行こうとした所を闇慈が引き止めた。

「あ!待って、小猫ちゃん」

「何ですか?せんぱ・・・」

小猫が言い切る前に闇慈は小猫の頬に付いていたクリームを右人差し指で掬い取ると・・・

ぺロッ

それを自分の口の中にしまい込んだ。

「はい。これで大丈夫だよ?小猫ちゃん」

「あ、ありがとうございます。先輩」

「気にしなくて良いよ?それに・・・」

闇慈は小猫の耳元に近寄り、優しく呟いた。

「君の味・・・ご馳走様♪」

「っ~~~!?」

それを聞いた小猫は顔を真っ赤にして、次のスイーツを取りに行った。

(う~ん・・・からかい過ぎたかな?後で謝っておこう)

~~~~~~~~~~~~

「・・・♪」

フェスティバルが終わり、闇慈と小猫は実家に帰っていた。小猫は世界中のスイーツを楽しめたため、かなりのご機嫌のようだ。というよりほとんどのスイーツを堪能していたようだ。

「あはは。ご機嫌だね?小猫ちゃん」

「・・・はい。世界中のお菓子を食べることが出来ましたから」

「僕も誘ったかいがあったよ」

そう話している間に分かれ道に来た。ここで闇慈と小猫は分かれるようだ。

「・・・今日は楽しかったです。ありがとうございました」

「気にしないで?小猫ちゃんが良かったらまた行こう」

「・・・はい」

「じゃあ。また明日、学校で会おう」

そう言うと闇慈は小猫と別れ、実家に足を向けた。しかしその途中に巡礼服を着た二人の人とすれ違った。顔をフードをかぶっていたため見えなかった。闇慈は何も感じなかったが・・・

「・・・ん?」

「どうしたの?」

「さっきの男。異様な力を感じた」

「悪魔?」

「分からない」

二人の巡礼者は闇慈の力に気付いたのかそう呟いていたそうだ。
 

 

第二十七話 噂

第二十七話 噂

「良しっ!!今日も授業が終わったぜ。闇慈。部活行こうぜ?」

「待ってよ、イッセー。まだ荷物の整理が終わってないよ」

闇慈と小猫の初デートがあって数日後、一誠はハッスルしていた。何でも今度駒王学園で行われる球技大会に優勝すべくオカルト研究部。特にリアスが熱を注ぎ込んでいた。一誠はその期待に答えるべく練習に張り切っていると言う訳だ。しかし祐斗がここ最近様子が変だと闇慈は感じていた。

「今日も部活か?お前ら」

教室を出ようとした二人をスポーツ刈りの松田が呼び止めた。

「ああ、球技大会に向けて練習中ですよ。俺ら」

「特にイッセーの頑張りようには僕も驚いてるよ」

闇慈が一誠のことを褒めているとメガネを描けた元浜が二人に話しかけた。

「そう言えば、イッセー。闇慈。お前らに最近、変な噂が広まっているから注意しろよ?」

「「変な噂?」」

一誠と闇慈は気になったのか元浜に問いかけた。

「まずイッセーな・・・」

・ ・ ・ ・ ・ ・

その内容を聞いた一誠と闇慈は驚愕した。簡潔に言うとまず一誠はリアスと朱乃とアシーアに鬼畜紛いの酷いことをしているという馬鹿げた噂。そして闇慈には紳士的イケメンとして有名な反面、学園のマスコットキャラとして人気の高い小猫に一誠と同様な事をしているというこれまた馬鹿げた噂が広まっているらしい。

「何だか・・・その噂を広めている人に無性に会ってみたくなってきね?イッセー」

「あ、ああ。くそっ。誰なんだ!?その変な噂を流している奴は!?」

「「まあ。俺たちが流しているんだけどな」」

「うんうん」

「・・・なるほどね」

そのことを聞いた一誠と闇慈はとりあえず噂の元凶を人目のない所に連れて行き、制裁という名のリンチにしかけたようだ。保健室に運び込まれた二人が発していたことは・・・

「「あ、悪魔と・・・し、死神が・・・いた」」

と呟いていたそうだ。因み噂は学園に広まっていたが闇慈の事に関する噂は信用されていなかった。しかし一誠のことに関する噂は一部で信用されていたらしく、その誤解を解くため闇慈は一誠に協力し、何とか誤解を解くことは出来たようだ。

「全く。酷い目に合ったぜ」

一誠は溜め息を付きながら愚痴っていた。

「まあ。これに懲りてイッセーも少しはそのエロさを自重したほうが良いと思うよ?」

「それは出来ないぜ!!俺にとってエロとは生きるための証!!それが無くなったら俺は俺じゃ無くなっちまうぜ!!」

イッセーは促した闇慈と面と面を向かって真剣な表情で向き合った。その真剣な瞳に闇慈は認めざるを得なかった。

「分かったよ、イッセー。今考えてみるとエロくないイッセーって想像できないね」

「だろう!?俺はどんなに言われようと自分の道を変えるつもりはないぜ!?闇慈!!そして・・・ハーレム王に・・・俺はなるぜ!!」

「あはは。それでこそイッセーって感じがするよ。頑張って?イッセー」

「おう!!」

そういうと二人は部室に向かって足を進めた。
 

 

第二十八話 聖剣


球技大会も終わり結果は一誠や闇慈たちの活躍により優勝することが出来た。そして球技大会が終わると同時に待っていたかのように雨が降り始めた。外は雨の音しかしない。そんな中・・・

パンッ・・・

オカルト研究部の部室で乾いた音が響いた。リアスが誰かを平手打ちした音のようだ。しかし叩かれたのはイッセーではなく・・・祐斗だった。優勝はしたが祐斗はオカルト研究部に貢献せずに放心状態だった。一誠や闇慈も協力するように祐斗に促したが、結局協力はせずに終わった。そのことにイッセーと闇慈は苛立ちを抱えていた。

「どう?これで少しは目は覚めたかしら・・・?」

リアスはかなり怒っているようだった。しかし祐斗の顔には反省の表情を浮かべていなかった。

「もう良いですか?球技大会も終わりました。球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の時間まで休ませてもらっていいですよね?少し疲れましたので普段の部活は休ませてください。昼間は申し訳ありませんでした。どうも調子が悪かったみたいです」

「木場。お前マジで最近変だぞ?」

「君には関係ないよ」

祐斗は一誠に作り笑顔で冷たく返した。闇慈はそのことに再び苛立ちを抱えてしまった。

「イッセーが心配しているのにそんな言い方はないと思うよ?祐斗」

「心配?誰が誰をだい?」

そのことを聞いた闇慈は祐斗の胸倉を掴みあげた。そのことに祐斗と闇慈以外の部員は驚きの表情を浮かべていた。心優しい闇慈はこんなことは滅多にしないが『仲間』のことを思っている気持ちを踏みにじる言動はどうしても許すことが出来なかった。そして少しドスの入った言葉で祐斗に話しかけた。

「祐斗。いい加減にしないと僕もキレるよ・・・?イッセーは祐斗のことを仲間だと思っているから心配しているのに君はその気持ちを踏みにじるつもり?」

「仲間か・・・」

そう言うと祐斗は闇慈の手を払いのけ、真剣な表情で闇慈と向き合った。

「闇慈君。僕はね、ここのところ基本的なことを思い出していたんだよ」

「基本的なこと?」

「僕がなんのために戦っているのかを・・・ね」

「リアス先輩のためじゃないの?」

「違う。僕は復讐のために生きている。聖剣エクスカリバー・・・。それを破壊するのが僕の戦う意味だ」

(エクスカリバー・・・だって!?)

この時に見た祐斗の表情が本当の祐斗の表情だと闇慈は感じていた。

~~~~~~~~~~~~

「聖剣計画か・・・」

部活が終わり、闇慈は実家に足を進めていた。あの後、祐斗が居なくなるとリアスから祐斗の出生を聞いた。祐斗は教会が開発していた人工エクスカリバーの実験台にされていたこと。実験台にされていたのは祐斗だけではなくかなりの人数がいたらしいのだが適合者が一人もおらず結局、外部にこの事を漏らせないために殺害されたらしい。祐斗はその生き残りという訳だ。

(それにしても伝説の剣が本当にこの世に存在していたなんて・・・)

闇慈はエクスカリバーが存在していたことに驚きを見せていたが、それよりももっと驚き・・・いや。許せないことがあった。

「全く。今の教会は腐ってるよ・・・人の命を何だと思っているんだ。自分が聖職者だからと言って何でも許される筈が無い!!こんなことが許されるのなら教会なんていらない!!いや・・・神なんていらない!!」

闇慈は教会や神を批判するようなことを呟いていたが、それは迂闊な行動だった。

「それは我々に対する侮辱と取って良いのだな?」

「えっ?」

闇慈が振り返ってみると巡礼服を着た二人の少女が立っていた。

(しまった。まさか聖職者がいたなんて・・・迂闊だった)

「ん?貴様はあの時の・・・」

青髪の少女は闇慈のことを覚えていたのか、そんなことを呟いていた。そして二人は剣を取り出した。

(何だ?あの剣・・・何だか異質な力を感じる)

「さあ。神を侮辱した罪を償ってもらおうか」

青髪の女剣士が闇慈に剣を振り下ろして来た。闇慈は『真紅の魔眼』を発動させ、斬撃を見切って距離を取った。

「貴様!!何だ?その眼は!?」

「ゼノヴィア。彼はもしかして異端者?」

「かもしれん。今ここで断罪しなければならない!!行くぞ、イリナ」

二人は剣を構え、再び闇慈に向かってきた。

(ここで戦えば無関係な人達を巻き込んでしまう!!ここは逃げよう!!・・・禁手。発動!!)

闇慈はバランス・ブレイカーを発動させ、姿を完全に消して、その場から離れた。

「っ!?消えた!?」

青髪の女剣士は突然消えたことに驚きを隠せないようだった。

「どうする?ゼノヴィア。あいつの気配。感じないよ?」

「仕方ない。引き上げよう」

二人は剣を消すとその場から居なくなった。

(・・・行ったか)

闇慈は二人の気配と姿が見えなくなると、バランス・ブレイカーを解除し姿を現した。

(・・・デスさん。あの剣・・・普通の剣じゃないと思うんですが?)

(お前も気付いたか・・・あれが恐らくリアス嬢が言っていたエクスカリバーだろう)

(あれが・・・本物の『欠片』から錬金術より生み出された複製のエクスカリバー。これはまた・・・一荒れきそうですね。とにかく今は家に帰りましょう)

闇慈はそう言うと家に足を進めた。 

 

第二十九話 憤慨


「あ・・・。貴女方は!?」

「むっ?貴様は!?」

「あっ。教会を侮辱した人!!」

闇慈が襲撃を受けた翌日の放課後。闇慈はいつも通りに部活に参加するため部室に向かった。しかし中に入ってそこで見たのは昨日、闇慈を襲った二人の巡礼者だった。

「何だよ闇慈。二人を知ってるのか?」

一誠は3人の反応に疑問を抱いたのか闇慈に問いかけた。

「まあ。昨日・・・ちょっとね」

「何?イッセー君。この人と知り合いなの?」

栗色の髪をした女の子が一誠に尋ねた。それに伴い闇慈は一誠と彼女の関係をリアスに尋ねた。

「リアス先輩。イッセーと彼女の関係って?」

「彼女の名前は『紫藤イリナ』。イッセーの幼馴染だそうよ」

「えっ!?イッセーの幼馴染!?」

悪魔の幼馴染が聖職者と言う何やら不思議な取り合わせだった。そしてその紹介に青髪の女の子も紹介をしてきた。

「私も名乗っておこう。私は『ゼノヴィア』だ」

「では僕も自己紹介を。僕は『黒神闇慈』です。先に言っておきますが僕は悪魔ではないですからね?といっても『訳有の人間』ですけどね」

「そうか。だが、貴様の教会を侮辱したことに変わりはないからな?」

ゼノヴィアと闇慈の自己紹介が終わったことを確認したイリナは本題に入った。

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

~~~~~~~~~~~~

ゼノヴィアが所持している剣は[破壊の聖剣]『エクスカリバー・ディストラクション』。そしてイリナが所持している剣は自由自在に形を変化出来る[擬態の聖剣]『エクスカリバー・ミミック』。それの他に5本のエクスカリバーが教会で保管。及び保護されていたが先日。[神の子を見張る者]『グリゴリ』と言う堕天使の組織がその内の三本が盗まれ、犯人はこの地(日本)に持ち運んだらしい。犯人は組織の幹部。堕天使『コカビエル』。古の戦いから生き残っているとされる上級堕天使の中でも強力な力を有している人物だった。

「私達の依頼。いや、注文とは私達と堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入してこない事。つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

「つまり。これから行う事に悪魔は関わるなって言ってるんですか?」

壁側に居た闇慈は朱乃が淹れてくれたお茶のコップを持ちながら尋ねた。闇慈は冷静だったが好き勝手な言い分に、リアスの目は冷たい怒りを宿す

「それからもう一つ。・・・もしかして貴女方は2人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪い返すつもりですか?幾らなんでも無謀過ぎます。下手したら死ぬことになりますよ?」

「そうよ」

「私もイリナと同意見だが、出来るだけ死にたくはないな」

「っ!!死ぬ覚悟でこの日本に来たというの?相変わらず、あなた逹の信仰は常軌を逸しているのね」

「我々の信仰をバカにしないでちょうだい、リアス・グレモリー。ね、ゼノヴィア」

「まぁね。それに教会は堕天使に利用されるぐらいなら、エクスカリバーが全て消滅しても構わないと決定した。私達の役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手からなくす事だ。そのためなら、私達は死んでもいいのさ。エクスカリバーに対抗出来るのはエクスカリバーだけだよ」

(・・・僕のデスサイズ・ヘルじゃダメですか?デスさん)

(偽りの剣に我が鎌が遅れを取るわけがなかろう!!)

(それもそうですね。でも、死んでも良い・・・これは気に入らないですね)

エクスカリバーを堕天使に利用されない為なら、自分達は死んでもいい。それが闇慈には気に入らないみたいだった。そして会話が終了した所でイリナとゼノヴィアは帰ろうとしたが、アーシアに視線を集中させた。

「聖女と呼ばれていた者が堕ちるところまで堕ちたものだな。まだ我らの神を信じているか?」

「ゼノヴィア。悪魔になった彼女が主を信仰している筈はないでしょう?」

アーシアは二人の言葉に体をビクッと振るわせた。しかし二人の言葉に反応したのはアーシアだけではなかった。一誠と闇慈だった。二人は好き勝手な言い様に軽く目を細めた。闇慈にいたっては持っているコップを軽く右手で圧迫し始めた。

「いや、その子から信仰の匂い・・・香りがする。抽象的な言い方かもしれないが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。それと同じものがその子から伝わってくるんだよ」

「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でも主を信じているのかしら?」

イリナの問いにアーシアは悲しそうな表情で答えた。

「・・・捨てきれないだけです。ずっと、信じてきたのですから・・・」

「そうか。それならば、今すぐ私達に斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださる筈だ」

ゼノヴィアはアーシアに近づいたがそれを一誠が遮った。

「アーシアに近づいたら、俺が許さない。あんた、アーシアを『魔女』だと言ったな?」

「そうだよ。少なくとも今の彼女は『魔女』と呼ばれるだけの存在ではあると思うが?」

ゼノヴィアの物言いに遂に一誠の堪忍袋の尾が切れた。

「ふざけるなっ!救いを求めていた彼女を誰一人助けなかったんだろう!?アーシアの優しさを理解出来ない連中なんか、ただのバカ野郎だ!友達になってくれる奴もいないなんて、そんなの間違っている!」

「『聖女』に友人が必要だと思うか?大切なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。他者に友情と愛情を求めた時、『聖女』は終わる。彼女は神からの愛だけがあれば生きていけた筈なんだ。最初からアーシア・アルジェントに『聖女』の資格は無かったのだろう」

ゼノヴィアが言い切った瞬間・・・

ガチャーン!!!

と何かが割れるような音が聞え、部屋に居た全員がその音源に首を向けた。それは闇慈だった。見てみると右手に持っていたコップが無くなり回りには破片が飛び散っていた。落としたかのように見えたが右手には赤い液体が流れていた。
そう、闇慈も怒りに耐えられなくなり持っていたコップを握りつぶしたのだった。

「ふざけことを抜かすのも大概にしろ・・・。貴様らが勝手に彼女に『聖女』と言う肩書きを背負わせ・・・それを今度は!!少し道を外しただけで『魔女』と言うレッテルを彼女に貼り付け、罵る!!」

闇慈の右手には夥しい血が流れていたが構わずに続ける。

「彼女は傷ついた者を癒しただけだ。こんな心清らかな・・・貞淑(ていしゅく)な女の子が何故こんなに苦しまなければならない!?何故神は彼女を救わなかった!?そんなことなら・・・神なんかいらない!!いや!!神なんざ糞喰らえだ!!」

「なっ!?その言葉は神そのものを侮辱する言葉よ!!」

「それは我々に対する挑戦と取っていいのだな?」

「ああ・・・」

「闇慈。お止め・・・っ!?」

リアスは闇慈を止めようとしたがリアスは今の闇慈の状態が堕天使達を倒した時と同じ位キレていたことが分かった。

「リアス先輩・・・止めないで下さい。こう言った石頭達は一度体で知った方が身の為なんですよ」

「それ以上愚弄するな!!表へ出ろ!!昨日出来なかった断罪を今ここで執り行う!!」

闇慈は言われるがままに外へ出た。
 

 

第三十話 恐怖


闇慈達は人が居なくなったグランドに移動した。闇慈はゼノヴィアとイリナから少し距離を置いたところで二人と向き合った。ここで祐斗が闇慈に話しかけた。

「闇慈君。僕もやるよ・・・」

祐斗も闇慈同様にキレていたが闇慈はこれを断った。

「いや。ここは僕一人にやらせてくれないかな?祐斗」

「どうして?相手は二人だよ?ならこっちも・・・」

「単刀直入に言うよ。今の祐斗じゃ絶対に返り討ちにされる」

祐斗は自分の力を否定されたかのような闇慈の言い様に少し顔をしかめた。

「・・・どうしてそう言い切れるの?」

「確かに祐斗は強いよ。でも今の状態じゃ本来の強さはでない」

「なら。その理由を教えてくれないかな?」

「それは自分で見つけないと祐斗のためにならない。だからここは僕がやる」

祐斗は諦めたのかリアスたち。観客の方に戻っていった。

「今度こそ、侮辱した罪を償ってもらうわ!!」

「二対一だからと言って卑怯とは言わせないぞ!!」

ゼノヴィアが自分の聖剣を地面に突き立てると轟音が轟き地面が抉れた。因みグランドの周りには結界が張られており、音やその風景が外に漏れることは無い

「クレーターが・・・出来た!?」

イッセーはあまりの破壊力に驚きの声を上げていた。

「我が聖剣は破壊の権化。本気を出せば砕けぬ物はない!!」

「真のエクスカリバーでなくともこの破壊力。七本全部を消滅させるのは修羅の道か・・・」

祐斗は苦虫を噛み締めるような表情を浮べていた。闇慈は飛んできた土を体から払い退けると・・・

「戦いは何時。どう変わるのか分からないからな。望むところだ。あとそれと・・・」

闇慈は『真紅の魔眼』と『魔力の解放』で二人を威圧し始めた。

「やるからには死ぬ気でかかってこい。でないと・・・死ぬぞ」

(この威圧感・・・今まで断罪してきた悪魔達より遥かに上か?)

「丁度良い。二人は『死』に対する恐怖を感じたことがないらしいな・・・?」

「何でそんなことが言い切れるのよ!?」

イリナは闇慈に尋ねた。

「簡単に命を投げ出すような奴は『死』の恐怖を感じたことがない奴らだ。だから・・・」

そう言うと闇慈の体に黒い煙が纏い、それが晴れるとセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを右肩に担いでいた。

「「っ!?」」

闇慈の初めて見る姿に二人は少し動揺したようだ。

「俺が貴様らに・・・『死』を見せてやる!!」

「その姿・・・貴様!!死神か!!」

「えっ!?あの魂の管理者の!?」

「イリナ!!一気に仕掛けるぞ!!」

「えっ。ええ!!」

二人はそれぞれの聖剣を持ち、闇慈に斬りかかった。闇慈は『魔眼』で斬撃を見切ったが、どうもイリナの自由自在に形や長さを変える聖剣には手を焼いていた。

「くっ。(あのイリナって娘の聖剣は厄介だな。まずはあの娘からやるか)」

闇慈は一旦距離を取り、足に魔力を溜め始めた。そして魔力が溜まるとその場から消えるようにイリナの背後を取った。

「何っ!?」

「は、速・・・」

「まずは・・・一人」

闇慈は魔力でできた球体をイリナの背中に押し付け、そしてそれを破裂させ、その反動でイリナを吹き飛ばした。

「きゃっ!?」

イリナは軽く吹き飛ぶと地面に倒れ付した。威力を軽減しているとは言え、生身の人間であるイリナは衝撃波で立てなかった。

「残りは・・・お前だけだ。ゼノヴィア」

「その力は危険すぎる!!我が最高の力を持って貴様を断罪する!!」

聖剣の力を全て注ぎ込んだ斬撃が闇慈に襲い掛かろうとしていた。しかし闇慈は避け様とせずにそのままその斬撃を受けた。その拍子に周りには巨大な砂塵が巻き起こった。

「・・・っ!!闇慈――!!」

一瞬のことだったのか観客達は呆然のしていたが一誠の言葉で我に返った。そして砂塵が晴れるとそこには肩で息をしているゼノヴィアと闇慈がセイクリッド・ギアを発動させた時に身に纏っているマントだけだった。

「闇慈!?返事をしなさい!!闇慈!!」

「・・・そんな。闇慈先輩」

リアスと小猫は悲痛の声を上げていた。

「これで最後だ・・・死神よ。安らかに眠れ・・・アーメン」

ゼノヴィアが祈りを捧げるように手を組んだが・・・これで終わりではなかった。祈りを終えた瞬間。ゼノヴィアの体が突然、吹き飛んだ。

「くっ!?」

ゼノヴィアは体勢を立て直すと彼女の背後からとてつもない殺気を感じ、背中を震わせた。
そして彼女の背後が歪むとマントを脱ぎ捨てた闇慈がゼノヴィアの首元にデスサイズ・ヘルの刃を突き付けていた。そして彼女が動揺している隙に水面蹴りでこかすと、仰向けとなったゼノヴィアに向かってデスサイズ・ヘルを振り上げた。

(っ!!殺される!!)

彼女が『死』に怯えたのか。または覚悟したのか目を閉じた。そしてデスサイズ・ヘルが振り下ろさせた。しかし刃はゼノヴィアを捉えてはおらずに彼女の顔の隣に突き刺さっていた。

「今回は・・・俺の勝ちだ」

闇慈はデスサイズ・ヘルを引き抜くとそのまま制服の姿に戻った。ゼノヴィアは納得がいかないのか闇慈に問いかけた。

「・・・何故殺さない?」

「・・・初めから僕の目的は貴女方を殺すことではなく。『死』と言うのがどう言う物なのか分かって欲しかったんです」

「『死』・・・ですって?」

衝撃が取れたのかイリナがゼノヴィアを心配するように駆け寄った。

「そう。簡単に死んでも良いなんていうのは単なるバカです。そして如何に生きようとするその心が『強さ』だと思いますから」

「生きようとする『心』か・・・」

ゼノヴィアが小さく呟いた。それを見た闇慈は軽く微笑み・・・

「もし僕の言葉に耳を傾けてくれたのなら、あとは貴女方で考えてみてください」

こうして戦いは闇慈の勝利で終わることとなった。
 

 

第三十一話 協力

ゼノヴィアとイリナとの戦いが終わって数日が経った。ある日、闇慈は一誠から呼び出しを受け、駒王学園の近くにあるファミレスに向かっていた。

(こんな時にどうしたんだろう?匙君も呼んでいるって言ってたけど・・・)

ここで紹介に入るが『匙』と言う人物はソーナ・シトリーの『ポーン』で一誠と仲が良い(?)らしい。紹介をしている間にどうやら闇慈は呼ばれたファミレスに到着したようだ。そして中に入り、周りを見渡してみると・・・

「美味い!日本の食事は美味いぞ!」

「うんうん!これが故郷の味よ!」

ゼノヴィアとイリナが食事をガツガツと食べている光景が目に入った。その席の向かい側には一誠。小猫。匙がいた。そのことを確認した闇慈はその席に移動した。

「お!闇慈!悪ぃな、急に来てもらったりしてよ」

「気にしないで?イッセー。まあ内容は何となく分かるけど・・・」

「何だよ?闇慈。お前も呼ばれたのか?」

匙は少し驚いたのか闇慈に問いかけた。

「まあね。そう言う匙君こそ。どうしてここに?」

「俺はこいつから無理やりつれてこられたんだ~~!!!俺は来たくなかったのに~~!!!」

匙は一誠を指差しながら答えた。

「・・・ご愁傷様、匙君。イッセー。本題に入らなくて良いの?」

「ああ。そうだった」

闇慈も席に着き、飲み物を注文すると一誠は本題に入った。

~~~~~~~~~~~~

一誠が闇慈を呼んだのは他でもない『エクスカリバーの破壊』に協力することだった。一誠は祐斗の過去を聞き、眷属として。仲間として見捨てることが出来ないらしく教会の二人や闇慈や匙に協力を求めたみたいだ。闇慈はすぐに承諾したが匙は今一つ納得が行かないみたいだった。
イリナは一誠達の協力を渋ったがゼノヴィアが『悪魔の力ではなく、ドラゴンや死神の力を借りてはいけないと上から言われていない』とイリナを促し、承諾させた。
そしてその後祐斗を呼び出し、今までの経緯を話すと・・・

「・・・話は分かったよ」

注文したコーヒーに口を付けながら祐斗は承認したがどこか遺憾な表情を見せていた。

「やっぱり。『聖剣計画』のことを根に持ってるの?木場君」

イリナが祐斗に尋ねたが・・・

「当たり前だよ」

と即答した。それにイリナが再び口を動かす。

「でもあの計画のお陰で聖剣の研究は伸びたわ。それで私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる人が誕生したの」

その事に祐斗が答えようとしていたが、闇慈が口を開いた

「でも。失敗だからと言って被験者を全員殺すことが許されるとは思えない・・・。僕はそう思うよ」

闇慈の答えにイリナが口を困らせていたがここでゼノヴィアが口を開いた。

「その事件は、私達の間でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人さ」

「堕天使側に?その者の名は?」

「・・・バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」


仇敵の名前を聞いた祐斗の目に決意みたいな物が生まれた。

「要するに堕天使を追っていけば、その男に辿りつくことが出来るってことみたいだね」

闇慈は話の要点をゼノヴィアに話すと彼女は軽く頷いた。ここまでの情報を提供してくれた二人に祐斗は自分の情報を出すことにした。

「僕も情報を提供した方が良いようだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際、神父を1人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね」

この場にいる全員が祐斗の言葉に驚愕した。

「その者はどんな奴だった?」

ゼノヴィアが祐斗に詰め寄った。

「相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

(何処かで聞いた名前だな・・・あ!思い出した!あの外道神父か)

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。13歳でエクソシストとなった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

「だが奴はあまりにやり過ぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。フリードには信仰心なんてものは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

イリナとゼノヴィアの返答に闇慈は少し首を傾げた。

「あの神父ってそんなに強かったんですね?僕と対峙した時はそんな感じはしませんでしたけど・・・」

「あなたはフリードと戦った事があるの?」

イリナの疑問に闇慈が答えた。

「ええ。その時はイッセーやアーシアに酷いことをしていたのでタコ殴りにしました」

「あはは・・・あの時の闇慈は容赦無かったからな・・・」

イッセーが思い出していたのか苦笑していた。その後話も纏まり教会の二人は帰っていった。

「・・・どうしてこんなことしたんだい?イッセー君」

「まあ。俺たちは眷属だし仲間だからよ。それにお前には何回も助けられているからな」

「それにこのまま祐斗を放って置いたら一人で解決しようとするから。その監視も兼ねてかな。祐斗が『はぐれ』とかになってしまったら先輩達もきっと悲しむと思うからね」

闇慈の付け足しに小猫が続けた。

「・・・祐斗先輩。私は先輩が居なくなるのは・・・寂しいです」

寂しい表情を浮べながら小猫が祐斗に近寄った。この時、闇慈の心の中で『何か』が反応した。

「・・・お手伝いします。・・・だから居なくならないで」

小猫の願望に、祐斗は困惑の表情を浮べていた。

(小猫ちゃんは祐斗に願って近寄っているだけなのに、何でこんなに体が反応する?・・・もしかして僕は祐斗に嫉妬してるのかな?)

祐斗は少し笑顔をこぼすと協力してエクスカリバーを破壊することを承諾してくれた。
蚊帳の外だった匙も祐斗の話してくれた過去の話を聞くと男涙を流しながら協力してくれることとなった。
こうしてエクスカリバー破壊団が結成された。
 

 

第三十二話 遭遇


それから数日経った放課後、闇慈たち5人はエクスカリバーの足を掴みたいと意気込んではいたが、手掛かりを掴めず時間だけが過ぎていく。

「ふぅ。今日も収穫なしか」

匙が気落ちするように言った。しかし小猫は何かを感じ取ったかのように顔をしかめた。

「・・・闇慈先輩」

そして光子状態になっていた黒羽からの念話が入った。

(闇慈様。悪魔祓い達が近づいています)

「(ありがとう、黒羽)分かってる。みんな!構えろ!来るぞ!!」

闇慈が叫んだ瞬間。闇慈たちの上空に人影が現れ、勢いよく落ちてきた。

「神父一団にご加護あれってね!!」

落ちてきた銀髪神父は剣を取り出すと闇慈に向かって振り下ろしてきたが、闇慈は素早くデスサイズ・ヘルを手に取るとその斬撃を防いだ。今ので闇慈に斬りかかった人物はよく分かった。

「フリード!!」

一誠が驚愕の声を上げる。それは前に闇慈がタコ殴りにした外道神父『フリード・セルゼン』だった。

「その声はイッセー君かい?これはまた奇妙な再会劇でござんすね~!!ドラゴンパワーは増大してるのかい?でもそろそろ殺して良い?」

フリードは右手に聖剣らしきものを手に取ると一誠に向かって斬りかかったが祐斗が[魔剣創造]『ソードバース』で『光』を喰らう魔剣[光喰剣]『ホーリーイレイザー』を作り出し、対応した。

「っ!!木場!!」

「こいつは僕に任せて!!」

「あ、ああ!!」

一誠は同意し、ブーステッド・ギアを発動させたが他のはぐれ悪魔祓いが一誠に向かって『光の剣』を振り下ろしてきた。

「貰った!!死ねぇぇぇ!!」

「しまっ・・・」

しかし闇慈がそうは問屋が卸さなかった。セイクリット・ギアを発動させた闇慈は斬りかかった悪魔祓いの首をデスサイズ・ヘルで斬りおとした。斬り裂かれた肉体と首は堕天使同様に霧散してしまった。

「ひぃ・・・」

その光景を見ていた他の悪魔祓い達が軽い悲鳴を上げた。

「さて・・・やるか?小猫」

「・・・はい。闇慈先輩」

そしてその場に居た悪魔祓いを小猫の手を借りて、全滅させた。一誠曰く、それは一方的なリンチと言っても過言ではなかったらしい・・・

「せめて痛みを知らずに輪廻に落ちろ・・・」

闇慈がそう静かに呟くとこう言った光景を見慣れていない匙は冷や汗を流した。

「兵藤。黒神ってやっぱり死神・・・なのか?」

「まあ。お前がそう思いたい気持ちはよく分かるぜ・・・」

イッセーは匙に共感していたがその間に一誠は小猫から持ち上げられていた。

「あ、あの~小猫さん?これは一体?」

その疑問には闇慈が答えた。

「祐斗が押されているみたいだから、イッセーのブーステッド・ギア・ギフトで祐斗の力を高めてあげようと小猫ちゃんと相談していたんだ」

「でも何で俺は持ち上げられてんだ?」

「こうした方が早いと思ってね。・・・小猫ちゃん。お願い」

「・・・はい。闇慈先輩。イッセー先輩・・・行きますよ?」

「ちょっと待て!?俺の脳裏には一つの事しか浮かんでこないんだけど!?」

「多分それが正解だよ。じゃあいってらっしゃい」

闇慈の掛け声と共に小猫は一誠を祐斗に向かって豪快に投げ飛ばした。幸いブーステッド・ギアを発動させ少し時間が経っているため強化は可能だろう。

「うおおおおお!!闇慈~~~!!!覚えてろよ~~!!」

一誠は投げ飛ばされ、祐斗のもとに飛んで行き力を譲渡出来たようだ。祐斗は貰った力でソード・バースで魔剣を大量に作り出し、フリードに飛ばした。

「うっは!これは面白サーカス芸だね!しか~し!!俺様のエクスカリバーは[天閃の聖剣]『エクスカリバー・ラピッドリィ』!速度だけなら負けないんだよッ!」

フリードの聖剣の切っ先がブレ出し、普通の人間になら目にも見えない速さで飛んでくる魔剣を全て破壊して行き、最後は祐斗が両手に持っていた魔剣を粉々にして、聖剣を振り下ろそうとした。

「祐斗!!」

「やらせるかよ!」

ここで匙が自身の手にトカゲの顔らしい物を見に纏うとその口から伸ばした舌でフリードを引っ張った。それと同時にトカゲの舌が淡い光を放ち、それが匙の方へ流れて行った。

「・・・これは!クッソ!俺っちの力を吸収するのかよ!」

「へっ!どうだ!これが俺のセイクリッド・ギア![黒い龍脈]『アブソーブション・ライン』だ!こいつに繋がれた以上、お前さんの力は神器に吸収され続ける!そう、ぶっ倒れるまでな!」

(なんて恐ろしいセイクリッド・ギアなんだ。見る限り聖剣でも切れないみたいだし・・・斬れるとしたら僕のデスサイズ・ヘル位かな?)

闇慈が一人で疑問に思っていると匙は祐斗に止めを刺すように促した。

「祐斗!今がチャンスだ!とりあえずフリードをブッ潰せ!エクスカリバーも危険だが、今はそいつの方が危険だからな!」

「・・・不本意だけど、ここで君を始末するのには同意する。奪われたエクスカリバーはあと二本ある。そちらの使い手に期待させてもらうよ」

しかしここで第三者の声が響いた。

「ほう、[魔剣創造]『ソード・バース』か。使い手の技量次第で無類の力を発揮するセイクリッド・ギアか」

闇慈達はその声の方を向くと神父の格好をした初老が立っていた。闇慈はふと、とある名前を思い出し老人に尋ねた。

「もしかして貴方は『バルパー・ガリレイ』ですか?」

「いかにも」

バルパーは闇慈の言葉に肯定する。

「何をしているんだ?フリード」

「じいさん。この訳の分からねぇトカゲくんのベロが邪魔で逃げられねぇんスよ!」

「聖なる因子を篭めろ。そうすれば切れ味も上がる」

説明を受けたフリードは切れ味の増した聖剣で舌を断ち切った。

「逃げさせてもらうぜ!次に会う時こそ、最高のバトルだ」

捨て台詞を吐くフリードだが、「逃がさん!」と言う声と共に新達の前にゼノヴィアとイリナが駆けつけていた

「やっほ。イッセーくん」

「イリナ!」

「フリード・セルゼン!バルパー・ガリレイ!神の名の下断罪してくれる!!」

ゼノヴィアがそう言うとフリードがしかめっ面をして言い返した。

「俺の前で憎ったらしい神の名を出すんじゃねえ!バルパーのじいさん!ここは引くぜ!!コカビエルの旦那に報告だ!!」

「致し方あるまい」

そう言うとフリードは閃光玉を地面にぶつけ視界を奪ったその隙に消えていた。

「追うぞ!イリナ」

「うん」

「僕も追わせて貰おう!逃がさないぞ!バルパー・ガリレイ!!」

その三人組はあっという間に消えてしまった。

「何やっているんだ!?あの三人は!?今、敵本拠地に入り込めば返り討ちにされるよ!!」

「闇慈。どうする?」

「これは幾らなんでも分が悪い。リアス部長とソーナ会長に協力してもらうしかないよ」

闇慈の提案に匙は否定の意を示した。

「それだけは勘弁してくれ!!このことがソーナ会長にばれたら俺は殺される!!お前の死神の力ならなんとかしてくれるよな!?」

匙は闇慈に寄り添ったが、しかめた顔になった。

「・・・どうやらその必要はないみたいだよ」

「「えっ!?」」

「こんな夜中に何をしているのかしら?」

「「ビクッ!!」」

一誠と匙が振り向くとリアスとソーナが仁王立ちで立ってた・・・その後説教を受け挙句の果てには『尻叩き』もあったそうだ。イッセーと闇慈の尻は死んだらしい・・・

「何で僕まで・・・」
 

 

第三十三話 番犬

リアスからの説教と罰を受けた闇慈は一旦家に帰ることにした。そして何事も無く夕食と入浴を済ませベッドに入った。

(結局。祐斗たちを追えなかったけど大丈夫かな?)

(あの少年も騎士の悪魔。そしてあの小娘共も聖剣を携えている。協力し合えば大事にはならないはず・・・)

デスの言葉に黒羽が続けた。

(今は彼らを信じて報告を待つしかありません、闇慈様)

(そうだね。今はあの三人を信じるしかないよね。僕もいざって時のためにもう休むね)

(分かった)

(分かりました)

そして闇慈はゆっくりと目を閉じ、意識を手放した。

~~~~~~~~~~~~

そしてその深夜・・・

ゾクッ・・・

「っ!!」

今まで感じたことの無い大きな『力』と『殺気』を感じ、闇慈は飛び起きた。

(この力は・・・以前戦った堕天使と似ている。でも力の大きさが天と地の差がある!!)

(恐らくあのグリゴリと言う組織を束ねている『コカビエル』と言う堕天使の力かもしれん。流石は古の大戦を生き抜いていただけのことはあるようだな?闇慈よ)

(ですね。・・・黒羽)

闇慈は光子状態の黒羽に何かを頼むように念話で呼びかけた。

(分かっています。散策ですね?)

(お願いできる?)

(闇慈様のお望みとあれば断る理由はありません。発見しだいお知らせします)

(ありがとう、黒羽)

~~~~~~~~~~~~

そして数分後。黒羽からの念話が再び入った。

(闇慈様。堕天使の姿を見つけることは出来ませんでしたが、学園に結界が張られていました。恐らくそこに居るかと思われます)

(ありがとう、黒羽。君はいざって時のために結界の外で待機していて?)

(分かりました)

闇慈は黒羽との念話を切るとセイクリッド・ギアを発動させ、部屋の窓から外に出た。そして翼を具現させ、学園へと急いだ。
そして翼を羽ばたかせること5分。闇慈は学園の校門に辿り付き、地面に着地した。そしてそこにいたのはソーナと匙だった。恐らくこの結界も中の光景が外に漏れないようにソーナ達が張っているのだろう。

「ソーナ会長。匙君」

「闇慈君?どうしてここに?」

「勿論。イッセーたちを助けるためです。彼らは中ですか?」

ここで匙がソーナの変わりに答えた。

「ああ。中でイッセーたちがグリゴリの連中と鉢合せの状態だ。俺とソーナ会長は外部に漏れないようにここで結界を張っているって訳だ」

「・・・行くのですか?闇慈君」

「はい。入り口を開けてください、ソーナ会長」

闇慈がソーナに頼むと校門の結界が一時的に解かれ、中に入れるようになった。

「気を付けてください。貴方がライザー・フェニックスを倒した力を持っていたとしても、コカビエルの力はライザーより遥かに上回ります」

「それだけ聞ければ十分です。では行ってきます」

「黒神。兵藤を頼むな?」

「イッセーの親友の頼みを僕が断れるわけがないよ・・・匙」

闇慈は匙に答えるとゆっくり学園内に入っていった。そして入り口は再び閉ざされてしまった。

(さて・・・まずはイッセー達と合流した方が良いな。何処に・・・)

きゃあああ!!!

「っ!?」

闇慈が考え事をしているとアーシアの声らしきものが聞えてきた。

(今の声はアーシア!?嫌な予感がする・・・行ってみよう。バランス・ブレイカー発動!!)

闇慈は禁手を発動させ、声の方に向かって翼を羽ばたかせた。そして次に空から見たものは祐斗を除いたオカルト研究部の部員達と二匹の体長8~10mはある三首の巨大な黒い犬・・・

(あれはまさか・・・『冥界の番犬・ケルベロス』!?どうしてこんな所に!?)

(恐らく堕天使の仕業だろう。古の大戦から生きているのなら番犬くらい持ち合わせているだろう)

デスが闇慈の疑問に答えていると一頭のケルベロスがアーシアと小猫を丸呑みにせんと中央の頭が大きな口を開け、迫った。

「アーシア!!小猫ちゃん!!」

一誠の叫びが木霊した。イッセーは助けに行きたいがもう一頭から道を阻まれていた。
それを見た闇慈は、満月と月光を背後に禁手を解除し翼を大きく広げ、落下する勢いを乗せ、魔力を篭めたデスサイズ・ヘルで噛み付こうとした中央の頭を切り落とした。そして切り落とされた大きな首は霧散してしまった。

グアアアアア!!!

ケルベロスは苦痛の痛みに悲鳴を上げた。中央の首からは黒い血がボタボタと流れていた。

「アンジさん!?」

「・・・闇慈先輩!?」

「ゴメン。助けにくるのが遅れた。さてと・・・」

闇慈は二人との話を一旦遮ると痛みにのた打ち回っているケルベロスと再び向き合った。

「二人を食べようとしたその罪を償って貰うぞ?ケルベロス!!これは俺のオリジナル!![闇の十字架]『ダークネス・クロス』!!」

魔力を再びデスサイズ・ヘルに溜めるとそれを素早く『十文字』に振った。そして黒い『十文字』の斬撃がケルベロスの体に突き刺さるとそのまま体を貫通し、体は切り崩されてしまった。挙句の果てにはその体は霧散してしまった。
これはデスから教わった『飛翔刃』の応用だ。この技は魔力をいつもより多く溜め込み、素早く振るため威力も貫通力も大幅に上がる。

「す、すごいです」

「・・・闇慈先輩。やっぱり規格外です」

アーシアと小猫も驚きの表情を表していた。しかし安心してはいられなかった。ケルベロスはもう一頭いるのだから・・・もう一頭のケルベロスはイッセーとリアスと朱乃が対峙していた。しかし地獄の番犬と言われるだけのことはあり、苦戦しているようだ。闇慈は足に魔力を溜め、ケルベロスとの距離を一瞬で縮め、がら空きの横腹にそのまま蹴りを叩き込んだ。

「せいや!!」

ギャイン!?

ケルベロスは突然の痛み悲鳴を上げると少し吹き飛んだ。それを確認した闇慈は一誠の元に寄った。

「大丈夫?イッセー」

「助かったぜ、闇慈。アーシアと小猫ちゃんは?」

「無事だよ。僕が助けた」

しかし会話はここまでだった。突然、耳の鼓膜が破れそうな程の咆哮が響き渡った。そして闇慈はケルベロスを見てみると元通り立ち上がっていた。そして蹴られた事に怒りを抱いているみたいだった。

「くそっ!!どうすんだよ!?」

一誠は困惑の声と表情を浮べた。

(あのケルベロスはかなり速い。恐らくダークネス・クロスもかわされてしまう・・・ん?)

ここで闇慈はイッセーを見た。そこで何かを思いついたのかデスサイズ・ヘルを消した。

「おい!!闇慈!!何やってんだよ!?」

それを見た一誠は驚きを示していた。
そしてケルベロスもこのチャンスを逃すまいと闇慈に向かって走り出した。しかし闇慈は冷静だった。闇慈は両手を胸元にかざし、集中するように目を閉じた。そして黒い小さな球体が手と手の間に出来上がった。これを見たイッセーは・・・

「闇慈・・・それってまさか」

「そう言う事。イッセーの技・・・使わせて貰うよ!!」

そして闇慈は球体をその場に滞在させると格闘の牙突の構えを取り、こう叫んだ・・・

「・・・全てを深淵なる闇に引きずり込め!![闇の咆哮]『ダークネス・ハウリング』!!」

闇慈はそのまま勢いを付けた右手の牙突を黒い球体に突き刺した。その球体が弾けると極太の黒いレーザーのようなものがケルベロスに襲い掛かった。その太さはケルベロスの体を容易に飲み込んでしまう程だった。そしてそのレーザーのようなものが消えるとその軌跡には何も存在していなかった・・・まるでその場所だけ削り取られたかのように・・・

「闇慈。今のって俺の『ドラゴン・ショット』だよな?」

「うん。イッセーのことを見ているとふと思いついたんだよ」

「お前。まさか初見であれだけの威力をだしたのか!?」

「魔力の応用は少し自信があるからね。でも成功して良かった」

(お前を敵に回したくねぇよ・・・)

一誠も闇慈の規格外の強さに冷や汗を流していた。その後リアス達とも合流し、堕天使たちの元に急いだ。
 

 

第三十四話 人心

闇慈達はケルベロスを倒した後、ゼノヴィアと祐斗とも合流を果たし、校舎の方に向かっていた。イリナはコカビエルにやられたらしく今はイッセーの家で療養しているらしい。そして校舎の生徒昇降口の近くに来ると二つの人影が見えた。その姿を見た祐斗は二人の名前を叫んだ。

「フリード・セルゼン!!バルパー・ガリレイ!!」

「来たか・・・聖剣計画の生き残りよ」

「今度こそ、同志たちの敵を討たせて貰うぞ!!」

祐斗は剣を具現させるとバルパーに向かって飛び出ようとしたが闇慈がそれを咎めた。

「邪魔しないで貰えるかな?闇慈君」

「やるのは構わないけど一つ彼に確認したいことがある。それまで待ってもらえるかな?」

闇慈は真剣な表情で祐斗を見た。祐斗はしばらく黙った後、軽く頷いた。

「ありがとう、祐斗」

闇慈は祐斗に礼を言うとバルパーに向かって丸腰のまま少し前に出た。

「アンジ!!」

リアスは少し驚いたのか闇慈を咎めた。しかし闇慈は油断してはいないようだ・・・ここでバルパーとの会話が始まった。

「どうした?この期に及んで命乞いか?」

「違う。貴様に一つ確認したいことがある・・・」

「ああん?確認なんてしなくて良いんだよ。ここで俺っちに斬られればその疑問もなくなるぜぇ?」

フリードは剣を持つと闇慈に向かって斬りかかろうとしたがバルパーが止めた。

「良いだろう。せめてもの慈悲だ。その疑問が晴れて地獄に落ちるのなら貴様も本望だろう。それで・・・わしに何を問う?」

「・・・貴様がかつて祐斗の仲間達を皆殺しにした『聖剣計画』。この殺しの理由は情報が漏れないためと言っていたが・・・本当は違うんじゃないのか?」

「えっ!?」

「っ!?」

教会関係のゼノヴィアと生き残りの祐斗が驚きの表情と声を上げた。

「ほう・・・何故そう思う?」

「腑に落ちない点がある。聖剣の情報が漏れないようにするのなら『催眠』などの『脳内情報処理』みたいなことも貴様らは容易にでき、無闇殺す必要は無かったはず。まあ貴様みたいな『皆殺しの大司教』と呼ばれている奴はすぐに殺すと思うけどな」

「・・・」

「しかし真の目的は被験者・・・いや。『聖剣使い』の体に存在していた『何か』じゃなかったのか?」

その言葉を聴くと聖剣使いのゼノヴィアがハッと何かに気付いた顔つきになった。

「そうか。読めたぞ。聖剣使いが祝福を受ける時体に入れられるものは・・・」

闇慈の推測を聞いたバルパーは静かに笑い声を上げた。

「フフフッ。人間の癖に頭がきれるじゃないか。そう。あの計画の真の目的は『聖なる因子を被験者から抽出し、結晶を作り上げる』ことだった。その成果がこれだ」

バルパーは懐から光っている水晶のようなものを取り出した。それを見た祐斗は声を張り上げた。

「同志たちを殺して、聖剣の適性因子だけを取り除いたのか!?」

「そうだ。この球体はその時のものだ。三つほどフリードたちに使ったがね。これは最後の一つだ」

バルパーは結晶をかざしながらそう言っていたが祐斗は特大の殺気を出しながら再び口を開いた。

「・・・バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命を弄んだんだ」

「ふん。それだけ言うのならば、この因子の結晶を貴様にくれてやる。環境が整えば、後で量産出来る段階まで研究はきている。まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。後は世界の各地で保管されている伝説の聖剣をかき集めようか。そして聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーを用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争を仕掛けてくれる。私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せ付けてやるのだよ」

バルパーは持っていた因子の結晶を放り投げた。祐斗は足元に行き着きついた結晶を拾うと哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに撫でた。そして祐斗の目から涙が流れる。すると結晶が淡く光り始め、徐々に広がっていき、校庭を包み込んだ。地面から光が浮いてきて形を成していく。まるで祐斗を囲うように、光が人の形に形成されていった

「これは・・・一体?」

闇慈が疑問に思っていると朱乃が分かったように口を開いた。

「きっと、この戦場に漂う様々な力が因子の球体から魂を解き放ったのです」

今この場には魔剣、聖剣、悪魔、堕天使、そして死神と言った強力な力が集合している。そして闇慈は形を成した光、あれは、聖剣計画の犠牲となった人達だと理解出来た。

「皆!僕は!僕は!!ずっと、ずっと思っていたんだ。僕が、僕だけが生きていて良いのかって。僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけが平和な暮らしを過ごして良いのかって・・・」

霊魂の少年の1人が微笑みながら、祐斗に何かを伝えているようだった。闇慈や一誠達には、何を喋っているか分からない。しかし朱乃は理解することが出来たのか代わりに話してくれた。

「・・・『自分達の事はもういい。キミだけでも生きてくれ』。彼らはそう言っているのです」

霊魂の言葉が伝わったのか、祐斗の目から涙が溢れてくる。そして魂の少年少女達が口をリズミカルに同調させてきた。


「・・・聖歌」

アーシアは何を歌っていたのか分かり、そう呟く。祐斗も涙を溢れさせながら聖歌を口ずさみ出した。少年少女達の魂が青白く輝き、祐斗を中心に眩しくなっていく。本来ならば聖歌を聴けば悪魔は苦しむのだが、祐斗達は一切苦しみを感じていなかった。寧ろ友を、同志を想う温かさを感じた。闇慈も友を思うその心に何時の間にか、涙を流していた。
そして祐斗の周りにいた魂が天に上り、ひとつの大きな光となって祐斗を包み込み、次の瞬間、神々しい光が闇夜を裂いた。恐らく祐斗のセイクリット・ギア『ソード・バース』が『境地』至ったのだろう。

「バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り、第二、第三の僕達が生を無視される」

「ふん。研究に犠牲は付き物だと昔から言うではないか。ただそれだけの事だぞ?」

「木場ぁぁぁ!!フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ叩けぇぇぇ!」

一誠が祐斗に向かって激励を送る。それにリアスが続ける。

「祐斗!やりなさい!自分で決着をつけるの!エクスカリバーを超えなさい!あなたはこのリアス・グレモリーの眷属なのだから!私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けはしないわ!」

「祐斗くん!信じてますわよ!」

「・・・祐斗先輩!」

「ファイトです!」

朱乃、小猫、アーシアも続け最後に闇慈が声を唸らせる。

「祐斗!!仲間から受け継いだ力・・・彼らの思いで奴らを・・・『過去』を断ち切れ!!そして『未来(あした)』を切り開くんだ!!」

闇慈達の言葉に祐斗は頷く。

「ハハハ!何泣いてんだよ?幽霊ちゃん達と戦場のど真ん中で楽しく歌っちゃってさ。ウザいったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大嫌いなんスよ。聞くだけで玉のお肌がガサついちゃう!もう嫌、もう限界!てめぇを切り刻んで気分を落ち着かせてもらいますよ!この四本統合させた無敵の聖剣ちゃんで!!」

祐斗が一歩出て、同志逹の魂に手を添える

「僕は剣になる。部長、仲間達の剣となる!今こそ僕の想いに応えてくれ!ソード・バース!!」

祐斗のセイクリット・ギアと魂が混ざり合い、剣を創っていく。それは魔の力と聖なる力の融合だった。そして神々しい輝きと禍々しいオーラを放ちながら、『騎士』の手元に一本の剣が完成された

「・・・禁手(バランス・ブレイカー)、[双覇の聖魔剣]『ソード・オブ・ビトレイヤー』。聖と魔を有する剣の力、その身で受け止めるといい」

祐斗は『騎士』特有のスピードで走り出し、斬撃を放ったがその斬撃をフリードは受け止める。しかしエクスカリバーを覆うオーラは聖魔剣によってかき消された。

「ゲッ!本家本元の聖剣を凌駕すんのか!?その駄剣が!?」

「それが真のエクスカリバーならば、勝てなかっただろうね。・・・でも、そのエクスカリバーでは、僕と同志逹の想いは絶てない!」

「チィ!伸びろォォォォォ!」

フリードは舌打ちをして後方に下がるとエクスカリバーを無軌道にうねらせる。これは四本のエクスカリバー・・・イリナから奪った[擬態の聖剣]『エクスカリバー・ミミック』、コカビエルが盗んだ[天閃の聖剣]『エクスカリバー・ラピッドリィ』、[夢幻の聖剣]『エクスカリバー・ナイトメア』、『透明の聖剣』[エクスカリバー・トランスペアレンシー]を融合させた聖剣らしくそれぞれの能力を使用する事が出来るようだった。今フリードが使っているのは『擬態の聖剣』の能力更に先端から枝分かれし、神速で降り注いでいるため『天閃の聖剣』の能力もプラスしているのだろう。しかし祐斗は四方八方から迫ってくる突きを全て防ぐ。

「なんでさ!なんで当たらねぇぇぇぇぇぇぇッ!無敵の聖剣様なんだろぉぉ!?昔から最強伝説を語り継がれてきたじゃないのかよぉぉぉぉ!なら!こいつも追加でいってみようかねぇぇっ!」

聖剣の先端が消えた。恐らく『透明の聖剣』の能力も付与してきたようだ。しかし祐斗は焦ることなく透明の斬撃をいなした。ここでゼノヴィアが横やりをフリードに当てて吹き飛ばすと、左手に聖剣を持ち、右手を宙に広げた。

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

空間が歪みだし、その中心にゼノヴィアが手を入れる。そして、次元の狭間から一本の剣を引きずり出した。

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!」

「デュランダル・・・だって!?」

闇慈はその名前に驚きを隠せないようだった。デュランダルとはエクスカリバーに並ぶほど有名な伝説の聖剣。斬れ味だけなら最強と言われていた。

「貴様!エクスカリバーの使い手ではなかったのか!?」

驚きを隠せないのは闇慈だけでなくバルパーもだった。

「残念。私は元々聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない」

「バカな!私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達してはいないぞ!?」

「それはそうだろう。ヴァチカンでも、人工的なデュランダル使いは創れていない。イリナや他の奴らと違って、私は天然だ。そしてデュランダルは想像を遥かに超える暴君でね。触れた物質を全て斬り刻む。使用者の言う事もロクに聞かないから、異空間へ閉じ込めておかないと危険極まりない聖剣だ」

「そんなのアリですかぁぁぁ!?ここに来てまさかのチョー展開!クソッタレのクソビッチが!そんな設定いらねぇんだよォォォォ!」

フリードが殺気をゼノヴィアに向け、枝分かれした透明の剣を放つ。

ガギィィィィン!

ゼノヴィアの一撃で、透明となっていたエクスカリバーが砕かれた。

「やはり、所詮は折れた聖剣。デュランダル相手にもならない」

「ところがぎっちょん!!」

「なに!?」

しかしもう一つの斬撃がゼノヴィアの背後に迫っていた。間に合わないと判断したゼノヴィアは防ぐことにしたが・・・

バキン!!

届くことは無かった。今の斬撃を切り裂いたのはセイクリット・ギアを発動させマントを身に纏い、デスサイズ・ヘルを手に取っていた闇慈だった。

「油断したらやられるぞ?ゼノヴィア」

「す、すまない。助かった」

「何でぇぇぇ!?何でそんな鎌ちゃんが俺っちのエクスカリバーを叩ききれんの!?」

「今になってもまだ気付かないのか?これはただの鎌じゃない。ロンギヌス……『デスサイズ・ヘル』だ。そんな偽りの聖剣に『死』を導く鎌が遅れる訳がないだろう」

「マジかよマジかよマジですかよ!伝説のエクスカリバーちゃんが木っ端微塵の四散霧散ッ!?これは酷い!かぁーっ!折れた物を再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか!?」

フリードの疑問に闇慈が答えた。恐らく輪廻落ちる土産として教えているのだろう。

「貴様の敗北は自分自身の未熟さと・・・」

殺気の弱まったフリードに祐斗が一気に詰め寄る。祐斗の聖魔剣はエクスカリバーを砕き・・・

「見ていてくれたかい?僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」

「人の『心』を理解できないその傲慢さだ!!」

砕いた勢いでフリードを斬り払った。
 

 

第三十五話 死闘

祐斗がフリードを倒してその場にしばらく沈黙が走った。そして祐斗が剣を構え、バルパーと向き合って沈黙を破った。

「バルパー・ガリレイ。覚悟を決めてもらう」

「・・・そうか!分かったぞ!聖と魔、それらをつかさどる存在のバランスが大きく崩れているとするなら説明がつく!つまり、魔王だけでなく神も・・・」

バルパーは聖魔剣の構造について考えを述べた瞬間・・・光の槍がバルパーの腹を貫いた。そして口から血を吐きだすとその場に倒れ付した。

「っ!?」

闇慈は光の槍が飛んで来た方を見ると五対十枚の羽を背中から生やしている堕天使がいた。

(この威圧感と魔力・・・間違いない。こいつが・・・堕天使コカビエル)

「お前は優秀だったよバルパー。だがな、俺はお前がいなくとも最初から一人でやれる」

そして宙に浮かぶコカビエルが嘲笑っていた。

「ハハハハ!カァーーーハッハッハッ!!」

哄笑を上げて地に降り立つ堕天使の幹部コカビエル。

「コカビエル!!」

一誠が怒声を上げる。恐らくイリナを倒したことを根に持っているのだろう。

「来たか・・・赤龍帝。どうした?怒声を上げている割には体が震えているぞ?」

無理も無い話だ。相手は先の大戦から生き残っている堕天使。悪魔になって日も浅い一誠にとっては震えるのも頷ける。そんな中彼はコカビエルに向かって怒声を発したことには敬意を表する所かもしれない。

「お、お前がイリナをやったんだろ!!?」

「あの教会の小娘か?俺に敵対した報いだ。それに力がないやつはああなって当然だ」

『Boost!!』

その事を聞いた一誠はブーステッド・ギアを身に付け、力を倍増させるとコカビエルに向かって『ドラゴン・ショット』を放った。しかしコカビエルは右手だけでそれを意図も簡単に払いのけるように弾き飛ばした。

「こんなものか・・・赤龍帝の力は」

「まだですわ!!雷よ!!」

朱乃が加勢するように天雷をコカビエルに向けて放った。しかし、彼女の雷はコカビエルの黒い翼の羽ばたき一つで消失した

「俺の邪魔をするか、バラキエルの力を宿すもの」

「私をあの者と一緒にするな!」

朱乃はらしくないように激しく反応し、再び雷の砲撃を放ったがすぐに二の舞にされてしまった。

(バラキエルって確か堕天使の名前。その力を宿す・・・まさか朱乃先輩って!?)

「ハハハ!全く愉快な眷属を持っているな?リアス・グレモリーよ!!赤龍帝、禁手に至った聖剣計画の成れ果て、どそしてバラキエルの力を宿す娘!お前も兄に負けず劣らずのゲテモノ好きのようだ!!」

闇慈は仲間をゲテモノ扱いしたコカビエルに苛立ちを覚えた。しかしリアスの怒りは闇慈の数倍はあった。

「兄の・・・我らが魔王への暴言は許さない!!何よりも私の下僕への侮辱は万死に値するわ!!」

「「はぁぁぁッ!!」」

今度はゼノヴィアがデュランダルで、祐斗が聖魔剣で斬りかかるが難なく防がれ拳を入れられ、二人は吹き飛ばされる。

「こんなものか。デュランダル。聖魔剣」

「・・・まだです」

今度は小猫がコカビエルに拳を打ち込もうとしたが羽が刃のように鋭くなると、容赦なく斬り付け、地面に叩き付けた。

「小猫ちゃん!!」

闇慈はすぐに駆け寄り、気を失った小猫の容態を確認したが傷は多く在ったが急所までには達していなかった。

(良かった。急所にまでには至ってないようだ)

「しかし仕えるべき主を亡くしてまで、お前達は神の信者と悪魔はよく戦う」

「・・・どういうこと?」

リアスが怪訝そうな口調で訊く。コカビエルは大笑いしながら話を続けた。

「フハハ、フハハハハハ!そうだったな!お前達下々まで真相は語られていなかった。ついでだ、教えてやるよ。先の三つ巴の戦争で四大魔王だけでなく神も死んだのさ」

「なん・・・ですって・・・」

「戦後残されたのは神を失った天使、魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外のほとんどを失った堕天使。疲弊状態どころではなかった。どこの勢力も人間に頼らねば種の存続ができなくなったのだ」

「うそだ・・・うそだ」

真実を突き付けられたゼノヴィアは力が抜けて項垂れる。アーシアもショックを受けたのか気を失い、倒れそうになったがイッセーがギリギリの所で受け止めた。

「アーシア!しっかりしろ!アーシア!」

「俺は戦争を始める!これを機に!!おまえたちの首を土産に!俺だけでもあの時の続きをしてやる!我らが堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも!!フフフッ・・・ハーッハハハハハ!!!」

コカビエルが一人で高笑い、自分の理想を語っていたが闇慈だけはその馬鹿げた理想に溜め息をついた。そしてダークネス・クロスをコカビエルに向かって飛ばしたが硬化された翼で弾き飛ばされた。

「そんな下らない理想を吐かないで貰おうか?耳が穢れる・・・」

「ほう。お前は何者だ?さっきから見ていたが貴様からは異様な力を感じる。そしてその鎌・・・」

コカビエルはデスサイズ・ヘルに興味を示していた。

「それは・・・デスサイズ・ヘルか?」

「ご名答。流石は古から生き残っている堕天使だな」

「フフフッ・・・まさかお前のような小僧が『万死ヲ刻ム』力を有していたとはな・・・だが!!貴様に俺は倒せん!!」

闇慈は翼を具現させ、デスサイズ・ヘルでコカビエルに斬りかかった。コカビエルは両手に光の剣を持ち、翼を硬化して闇慈を迎え撃った。闇慈は魔力を込めたデスサイズ・ヘルで光の剣を叩き斬り、コカビエルの体に一閃を叩き込もうとしたが鋼鉄の羽がそれを許さない。

「くっ・・・(長期戦になれば魔力切れを起こしてこっちが不利になる・・・一発で決めるしかない!!)」

闇慈は『真紅の魔眼』でそれを見切り、距離を取った。しかしコカビエルはそれをチャンスにさっきの剣とは比べ物にならないほどの巨大な光の剣を作り出した。

「消し飛ぶが良い!!」

(あれは流石に不味い!!)

コカビエルは叫びながら闇慈に向かって振り下ろした。闇慈は咄嗟に『憑依・死神』を発動させ、最大限に魔力をデスサイズ・ヘルに注ぎ込み光の剣とぶつけた。そしてデスサイズ・ヘルは剣を切り裂き、霧散させた。そしてそのままコカビエルと鍔迫り合いの状態になった。

「中々やる!!そこにいる出来損ない達よりは出来るようだな」

コカビエルの人を苛む言葉に闇慈は堪忍袋の尾が切れたのか怒声を張り上げた。

「いい加減にしろ!!貴様はそうやって、全ての他人を見下すのか!!」

「強者が弱者を見下して何が悪い?それが冥界の摂理だ!!そして絶対な力を持つ者が指導者に相応しい!!俺にはその資格があるんだよ!!」

「貴様が作ろうとしている世界は永遠に続く『絶望』と『混沌』に満ち溢れた世界だ!!歪んだ力で人々を支配し、作り上げた世界に一体何の価値がある!?寝言を言うなーーー!!!」

闇慈はそう叫ぶとコカビエルに魔力を込めた蹴りを横腹に叩き込み、弾き飛ばした。コカビエルは体勢を立て直し、翼を羽ばたかせたが顔は歪んでいた。恐らくさっきの蹴りが効いているのだろう。

「くっ・・・ならお前はそれ程の力を有しておきながら何故戦う!?」

「俺には守るべきもの守り、そして一方的な力で押さえつけられている者を救うために・・・俺は戦う」

闇慈の戦う理由を聞いたコカビエルは大声で笑いを飛ばした。

「フフフッ・・・ハーハハハハッ!!弱い者を守ってヒーロー気取りのつもりか!?この・・・偽善者が!!」

「偽善者で悪いか!!?貴様のような『命』と『心』を弄ぶような奴になるより遥かにマシだ!!」

コカビエルは光の剣を再び持ち闇慈に斬りかかった。今回はかなりのスピードがある。恐らく魔力で高めているのだろう。しかしこれが仇となった。闇慈はその斬撃を鎌で受けずに体を滑らせるようにかわし、コカビエルの背後を取った。そして勢いを付け過ぎたせいで一瞬の行動が限られてしまい、隙が出来た。この隙を闇慈は見逃さなかった。

「これ以上やると言うのなら俺が貴様に・・・『死』を見せてやる!!」

闇慈はそのままデスサイズ・ヘルでコカビエルの片翼を切り落とした。

「ぐわあああ!!!俺は、俺は、最強の堕天・・・」

「まだ分からないのかーーー!!!」

闇慈はデスサイズ・ヘルの先をコカビエルの背中に突き刺し、そのまま落下の勢いを乗せ、地面に叩きつけた。闇慈は一旦距離を取り、コカビエルから離れた。そして砂塵が晴れると体の至る所から血を流し、這い上がろうとしているコカビエルがいた。

「貴様!貴様!!よくも俺の翼を!!」

「何て汚い色をしているんだ貴様の翼は・・・黒羽のほうがよっぽど綺麗な『黒』だぞ」

そして闇慈は止めを刺そうとコカビエルに近づこうとしたが・・・

「・・・ふふふ。おもしろいな」

第三者らしき声が聞えると凄まじい重圧に襲われた。その場にいる全員がその方を向くと、背中には八枚の翼を羽ばたかせて、白い全身鎧を身に纏っている者がいた。
 

 

第三十六話 白龍


闇慈は突如現れた白い鎧を纏った者に興味を抱いた。

(何だ?あの鎧は?何だかイッセーのバランス・ブレイカーの時に身に纏っている鎧に似ているような)

「コカビエルごときだが、手傷負わずに退けるその力は非常に興味深いな」

「貴様は一体何者だ?」

闇慈は白い者に尋ねたが変わりにゼノヴィアが答えた。

「・・・[白い龍]『バニシング・ドラゴン』」

「バニシング・ドラゴン?イッセーの[赤い龍]『ウェルシュ・ドラゴン』と何か関係があるのか?ゼノヴィア」

「『赤』と『白』・・・文字通りあの二体の龍は、太古から敵対関係と言われている」

ゼノヴィアは闇慈の質問に答えていたがコカビエルは顔をしかめ舌打ちをした。

「ロンギヌスのひとつ、[白龍皇の光翼]『ディバイン・ディバイディング』。鎧と化していると言う事は、既にその姿はバランス・ブレイカー状態である、[白龍皇の鎧]『ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル』か・・・[赤龍帝の篭手]『ブーステッド・ギア』同様、忌々しい限りだ」

既に禁手状態と聞いた闇慈は敵味方分からないバニシング・ドラゴンに警戒を始め、身構えた。

「赤に惹かれたか。『白い龍』よ。邪魔立ては・・・」

コカビエルが言い切る前にもう闇慈が切り落とした逆の片翼が宙を舞い、鮮血が飛び出た。やったのは闇慈のように思えたがやったのは、白い龍のようだ。

(・・・速い!!『真紅の魔眼』で見ていたのに目で追えるのが精一杯だった。これが・・・バニシング・ドラゴンの力!!)

「まるでカラスの羽だ。薄汚い色をしている。『アザゼル』の羽はもっと薄暗く、常闇の様だったぞ?」

龍が引きちぎったであろう黒い翼を持ちながらコカビエルに向かってそう言う。闇慈は『アザゼル』の名前が出たときは表情を出さなかったが驚愕の心を抱いていた。

(アザゼル!?確か・・・世界神話で登場した堕天使達の中で最強の力を持っていた堕天使だったような)

「き、貴様!俺の翼を!!」

「どうせ堕ちた印だ。地より下の世界へ堕ちた者に羽なんて必要ないだろう?まだ飛ぶつもりなのか?」

「白い龍!!俺に逆らうのか!」

コカビエルは白い龍に怒りを示すと空に光の槍を無数に出現させる。白い龍は特に動じる事もなかったが・・・

「はあっ!!」

それより素早く闇慈がデスサイズ・ヘルでコカビエルの上半身を斬り付け、吹き飛ばした。

「ぐわっ!!」

闇慈はコカビエルを吹き飛ばし、気絶したのを確認すると白い龍と向き合った。

「これは俺の戦いだ。邪魔はしないでくれないか?白い龍」

闇慈は戦っている時の表情を崩さなかったが心の中では白い龍の力の大きさに少しの焦りを感じていた。

「ほう。この力を前にして動じないとはな。そしてその姿・・・死神か?面白い!俺と戦ってみるか?」

それを聞いた闇慈はデスサイズ・ヘルを下げると白い龍と向き合った。

「今はまだ無理だ。今の俺の力じゃ勝てない・・・。セイクリッド・ギアの力もとてつもない力を感じるからな・・・」

「洞察も中々のものだな。褒美として教えてやろう。我がセイクリッド・ギア『白龍皇の光翼』の能力は触れた者の力を十秒毎に半分にさせていく。相手の力は我が糧となる」

「イッセーのブーステッド・ギアは十秒毎に力を『倍増』・・・しかしディバイン・ディバイディングはその逆・・・『半減』か。そしてその力を自分のものにする・・・恐ろしいな、龍たちの力は」

「コカビエルを無理矢理にでも連れて帰るようアザゼルに言われてたんだが・・・お前のお陰で手間が省けた。感謝する、死神よ」

「光栄だな。白龍皇から感謝の言葉が出るなんて思いもしなかった」

「ふっ・・・お前は本当に面白い奴だ。お前と戦える日が楽しみだ」

白龍皇は軽く笑みをこぼしたように闇慈にそう言うとコカビエルを肩に担いだ。

「フリードも回収しなければならないか。聞き出さないといけない事もある。始末はその後か」

白龍皇は倒れているフリードを腕に抱え、光の翼を展開して空へ飛び立とうとしたが・・・

『無視か、白いの』

イッセーの籠手の宝玉の部分が光りだし、声が聞こえる。すると、白龍皇の鎧の宝玉も輝きだした。

『起きていたか、赤いの』

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういう事もある』

『しかし、白いの。以前の様な敵意が伝わってこないが?』

『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』

『お互い、戦い以外の興味対象があるという事か』

『そういう事だ。こちらは暫く独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

その名前を聞いた闇慈は白龍皇に尋ねた。

「アルビオン・・・それが貴様の名前か?」

「正確には、この鎧に宿る龍の名前だ。・・・お前の名は?」

ここで闇慈は性格を元に戻し、名前を名乗った。

「・・・僕は黒神闇慈。なってまだ日も浅い、未熟の死神です」

「中々良い名だ。また会おう。赤龍帝。そして・・・『黒衣の死神』よ」

そして白龍皇は白き閃光となって飛び立とうとすると、ここでイッセーが声を上げた。

「どういうことだよ!?何者なんだよ!?お前は!?」

その言葉に白龍皇は一言だけ一誠に放った。

「全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ俺の宿敵君」

そう言うと白龍皇は翼を広げ飛び立った。コカビエルが居なくなったことにより彼の魔方陣もなくなったようだ。それを確認した闇慈はセイクリッド・ギアを解除したが今まで感じたことのない疲労に襲われた。
それに基づき闇慈はそのまま仰向けに倒れそうになったが、小猫が倒れてきた闇慈の肩を掴んで優しく地面に寝かせてくれた。

「・・・お疲れ様でした。闇慈先輩」

「小猫ちゃん。怪我はもう大丈夫なの?」

「・・・はい。闇慈先輩が戦ってくれている間に朱乃先輩が治してくれました」

「大事に至らなくて本当に良かったよ」

闇慈は仰向けのまま右腕を上げ、膝を地面につけて心配してくれる小猫の頭を優しく撫でた。

「・・・ん///」

「さてと・・・こうしていたいけど祐斗の元に行かないと・・・。手伝ってくれる?小猫ちゃん」

「・・・勿論です」

闇慈は小猫の手を借りてゆっくり立ち上がると祐斗の元にやってきた。

「木場さん・・・また一緒に部活出来ますよね?」

意識を取り戻したアーシアが心配そうに祐斗に尋ねた。神が居ないことを知ってショックなのは明白だがそれでもアーシアは祐斗の事を心配しているようだ。大丈夫と答えようとした祐斗をリアスが呼んだ。

「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、私も誇れるわよ」

「・・・部長、僕は・・・部員の皆に。何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました。お詫びする言葉が見つかりません・・・」

そこに闇慈が祐斗に言葉をかける。

「それはこれからゆっくりとその『失敗』と『恩』を返して行けば良いと思うよ?祐斗。部長もそれで帳消しにしてくれますよね?」

「勿論よ。貴方は私の『騎士』。これまでの失敗はこれからに期待するわ、祐斗」

「部長・・・。僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属『騎士』として、あなたと仲間達を終生お守りします」

「うふふ。ありがとう。でも、それをイッセーの前で言ってはダメよ?」

見てみると、一誠が祐斗を嫉妬の眼差しで睨んでいた。

「俺だって、『騎士』になって部長を守りたかったんだぞ!でも、お前以外に部長の『騎士』を務まる奴がいないんだよ!責任持って、任務を完遂しろ!」

「うん、分かっているよ。イッセーくん」

祐斗はイッセーに頷いた。それを確認した闇慈は祐斗に右手を差し出した。

「これからもよろしくね?祐斗」

「こちらこそよろしく、闇慈君」

祐斗はその右手をしっかりと自分の右手で掴み、握手をかわした。

「さて」

ブゥゥゥン

突然、リアスの手が紅いオーラに包まれた。それには祐斗も疑問を抱いたようだ。

「あ、あの、何事でしょうか?」

「勝手な事をした罰よ、祐斗。お尻叩き千回ね」

「えっ!?」

「祐斗。覚悟した方が良いよ・・・あれ。僕とイッセーも受けたけど・・・死んだよ」

「あはは・・・なら痛そうだけど僕も罰を受けないとね」

祐斗が尻叩きをされている間、一誠はその様子を見て爆笑していたが、闇慈は痛々しい目でその光景を見ていた。こうしてこの一件はオカルト研究部達と教会の手によって終幕を迎えた。
 

 

番外4 姉妹


コカビエルとの一件が終わり数日が経った。変ったことがあるとすればゼノヴィアがリアスの『騎士(ナイト)』として悪魔に転生したことくらいだった。
教会関係者が悪魔に成り下がっていいのかと一誠は疑問を唱えていたがコカビエルから聞かされた『神は居ない』と言うことを彼女の上司に話したところを渋々だが認められたらしい。
イリナは怪我が完治するとバルパーの遺体とエクスカリバーの破片を回収した後、本教会に戻った。イリナ自身は悪魔になるつもりはないみたいだった。
そしてゼノヴィアは駒王学園にリアス先輩の手引きで入学し、オカルト研究部の部員となったが闇慈はまずアーシアに謝るように促した。ゼノヴィアは自分の今まで言動を許してほしいとアーシアに謝ったがアーシアは笑顔で許してくれた。そしてそれを確認した闇慈はゼノヴィアに『これからよろしく』の意味を込めた握手を求め、それを彼女と交わした。

(何がともあれ、無事に終わって良かったよ。でも・・・アルビオン。あの龍に対抗するにはまだまだ力が必要だな。それにあの龍が出て来たって事は何かまた大きな面倒事が起きそうだな・・・)

今日は日曜日で部屋でゆっくりしていた闇慈は疑問に思っていた。ここでデスが呼びかけた。

(確かに・・・今のアンジの力では奴には適わぬのが必然。再び修業をするのが良いかもしれん)

(また僕に修業を付けてくれますか?デスさん)

(良いだろう。しかし今は体を休めることが先決。万全の状態でやるのが一番効率がいいからな)

(分かりました)

闇慈とデスの会話が終わった所で闇慈の母がノックをした後に入ってきた。

「闇慈。お願いがあるのだけど良いかしら?」

「何?母さん」

「今晩の夕食の買い物に行ってくれないかしら?何を買って来たら良いのかはこのメモに書いてあるから」

「(たまには家の手伝いをするのも良いかな)分かった。行ってくるよ」

「ありがとう、闇慈。お釣りはあなたの小遣いにして良いわ」

闇慈は母からお金とメモを受け取ると出かけて行った。

~~~~~~~~~~~~

余談だが闇慈の家からいつも買い物に行っているスーパーにはかなりの距離があった。闇慈はいつもの道を歩いていたが修業の内容が気になったのかデスに話しかけた。

(デスさん。修業ってどんなことをするんですか?)

(そうだな。まずは『魔力量を増やすこと』だな。この先長期戦が続くだろう。我の鎌と技は多くの魔力を消費する為今のお前の魔力量を少なくとも倍増させる必要がある。そしてその後は『応用技』と・・・『自然を利用した技』を教えるつもりだ)

(自然を利用した?)

闇慈が問い返そうとすると・・・

「ああん?何だと!?このガキ!!」

「「だからあたしたちはガキじゃないもん!!」」

不良の声と何処かで聞いたことのある声が聞えてきた。その声をしたほうを見てみると3人くらいの不良達が二人の薄緑色の髪をしたペアルックの服を着た双子に絡んでいた。

「あれは・・・イルちゃんとネルちゃん?どうしてこんな所に?」

そう。絡まれていたのは以前ライザー戦の時に闇慈が戦ったポーンの『イル』と『ネル』だった。見る限り何かもめている様だった。

「貴方たちからぶつかって来て、誤りもしないなんてレディに対して失礼じゃないの!!」

「ガキがレディなんて言葉を使ってんじゃねえよ。いい加減にしねえと俺たちもキれるぞ?俺たちはガキだからって容赦しねえぞ!!」

「ふん!!貴方たちごときに遅れるなんてありえないよ!ねえ?ネル」

「そうだね、イル」

「このガキどもが~~~~!!!!」

散々イルとネルにコケにされた三人組みの内の一人が二人に殴りかかった。それを見ていた闇慈は素早く移動し、殴ろうとしていた方の腕を掴んだ。

「ぐっ!?何だ!?てめえ!!」

「「あっ・・・。あの時のお兄さん!!」」

「久しぶりだね?イルちゃん、ネルちゃん」

そう言うと闇慈は二人に殴りかかろうとした不良を残りの2人の元に突き飛ばした。

「てめえ・・・このガキ共の知り合いか?」

「そんな所です。でも貴方達も大人気ないですよ?話を聞く限りどう見ても貴方が悪いじゃないですか。二人に謝ればそれで解決。そうじゃないんですか?」

「俺に指図してんじゃねえーーー!!!」

先ほど突き飛ばされた不良は余程沸点が低いのか闇慈に殴りかかった。

「和解よりも血を・・・ですか」

闇慈は軽く溜め息を付くと不良のパンチを避けると空いた鳩尾に力を制限した正拳を打ち込んだ。不良は再び吹き飛ばされ地面に倒れ付した。

「い、いてぇ・・・」

「どうです?まだやりますか・・・?」

闇慈は少しドスをかけた声で残りの二人に問いかけた。

「「ひ、ひぃ!!す、すみませんでした!!」」

二人は闇慈の殺気に怯えたのか倒れたもう一人を起き上がらせるとその場から消えるように居なくなった。

「暴力で解決するのは、あまり好きじゃないな・・・」

「お兄さん!!凄~~い!!」

「流石ライザー様を倒した死神さん!!」

イルとネルは闇慈の元に寄り添った。

「さてと・・・イルちゃん、ネルちゃん。どうしてこっち人間界にいるの?」

「えっとね。ずっと冥界にいたら退屈になっちゃって人間界に行っても良いですかってレイヴェル様に聞いてみたの」

「えっ?ライザーに聞かなかったの?」

闇慈がイルとネルに問いかけると二人は顔を少し歪ませ、こう答えた。

「うん。実はあのゲームで負けて以来。ライザー様は引きこもりになっちゃったんだ。だからレイヴェル様に頼んたの。そしたらお館様に掛け合ってくれて今日だけ許可を貰えたの」

「なるほどね。二人はこれからどうするの?」

闇慈の問いかけに二人は顔を見合わせ、考え始めた。

「う~ん。何も決めてないね?ネル」

「どうしよう?イル。お兄さんは?」

「僕はこれから買い物。母さんから頼まれてね」

それを聞いた二人は再び顔を見合わせ、頷いた。

「その買い物。私達も手伝うよ♪」

「えっ?良いの?」

「うん♪さっきも助けて貰ったしね」

「じゃあお願いしようかな」

「「えへへ。決~まり♪じゃあ行こう」」

イルは闇慈の右手を、ネルは左手を掴むと勢いよく走り出した。

(全く。手のかかる姉妹だよ・・・でも嫌いじゃないけどね)

そう思っている間にスーパーに着いた。

「さてと何を買うのかな」

闇慈は貰ったメモを開き材料を確認した。それを見ていたイルとネルは・・・

「「私たちが取ってきてあげる。お兄さんはここで待ってて?」」

メモを闇慈から取ると買い物カゴを二つ取りそう言った。

「でもここは二人は初めてなんだよね?迷ったりしない?」

「もう!!お兄さんまで子供扱いする!!」

「もうイルとネルは子供じゃないもん!!」

「あはは。ゴメンゴメン。分かった。お願いするよ」

それを聞いたイルとネルは顔に笑顔を浮かべ、二人で奥に入っていった。

5分後・・・

「・・・そろそろかな」

闇慈が思っていると二人が買い物カゴに材料を入れて戻ってきた。

「ただいま~~お兄さん」

「お疲れ様。材料はあった?」

「うん・・・あったのはあったんだけど」

妹のネルが少し疑問の顔を浮べていた。

「何か問題でもあった?」

「材料の中に『豆腐』があったんだけど、『絹』と『木綿』があったんだよ。メモにもどっちか書いてなかったし、とりあえず二つとも持ってきたけど、どうしよう」

「なるほどね。ちょっとメモを見せてくれる?」

「うん。これだよ」

闇慈は姉のイルからメモを受け取り、内容を確認し始めた。

「たまご、牛肉、糸こんにゃく、白菜、えのき、春菊、豆腐・・・」

闇慈はこの材料から作ることが出来る料理を思い浮べた。

「・・・分かったよ♪」

「「えっ!?どっちか分かったの?お兄さん」」

「うん。これは多分『木綿』だね」

「どうして『木綿』なの?」

「この材料は多分『すき焼き』の材料だと思う。普通すき焼きには『木綿豆腐』を使うからね」

「へえ~。材料だけで分かっちゃうなんて流石お兄さん♪」

「それ程でもないよ。じゃあ会計してくるから二人はここで待ってて?」

「「は~い」」

その後闇慈は会計を済まし、二人の元にやって来た。お釣りを確認し闇慈は頷いた。

「じゃあ今日手伝ってくれたご褒美をあげようね」

「「えっ」」

~~~~~~~~~~~~

「「美味し~い♪」」

二人は闇慈に連れられ、クレープ屋に来てクレープを奢って貰った。

「ここのクレープは中々いけるんだよ。美味しい?」

「うん♪美味しいね、ネル」

「お兄さんを手伝って良かったね、イル」

二人は余程美味しかったのかあっという間に食べ終えてしまった。

「「美味しかった~」」

「あっ・・・二人とも頬にクリームが着いてるよ」

闇慈はポケットティッシュで二人のクリームを優しく拭き取った。

「「んっ・・・」」

「はい。取れたよ」

(ありがとう。何だかお兄さんが本当のお兄さん思えてきたよ、ネル)

(私もそう思ったよ、イル)

二人はそう闇慈には内緒で呟いていた。

~~~~~~~~~~~~

そしてイルとネルが帰る時間になり人気のない所に移動した。そして目の前にフェニックス家の移動魔法陣が展開された。

「「あ~あ。もう帰らなくちゃいけないの?」」

「ワガママ言っちゃ、子供のままだよ。ちゃんと受け入れないとレディ大人にはなれないよ?」

「「う~。は~い(あっ!そうだ!)」」

二人はこそこそと何か二人で打ち合わせをしているようだった。

(何をしてるんだろう?)

「お兄さん。ちょっと屈んでくれる?」

「へっ?どうして?」

「良いから良いから!」

闇慈は了承したのか軽く頷き、屈んだ。それを見たイルとネルは・・・

「「今日はありがとう♪・・・闇慈お兄ちゃん♪」」

チュッ・・・

闇慈の右頬にイルが、そして左頬にネルがキスをするとそのまま魔方陣の中に消えて行き、魔方陣も消えて行った。

「・・・」

闇慈は何をされたのか分からずにそのまま各頬を右手で確かめた。

(デスさん・・・今、何されました?)

(聞かずとも分かっているんじゃないか?)

(・・・やれやれ。本当に手のかかる・・・妹達だね)

闇慈はゆっくり立ち上がり家に向けて足を向けた。しかし振り返ると20代位の黒髪の美形の男性が立っていた。

(美形な人だな。祐斗より上のように感じる・・・でもこの力は!?)

『力』を見抜くことの出来る闇慈はその男性の巨大な力に咄嗟に身構えた。

「貴方は何者ですか?唯の人間じゃないでしょう?」

「一目見ただけで見破るなんてな。流石は『黒衣の死神』」

(っ!?その二つ名はアルビオンが名づけたものなのになんでこの人が?・・・まさか!!)

闇慈はアルビオンの言葉を思い出した。

ーーアザゼルに報告しなくてはならないーー

「貴方は堕天使の首領、『アザゼル』・・・ですか?」

「ご名答。そう身構えるな、今日は挨拶だけだ。近い内にまた会うことになるさ」

そう言うとアザゼルは6対12枚の黒い翼を広げた。

ーー冥界ーー

「今日は如何でした?二人とも」

「レイヴェル様。はい。とても楽しかったです♪」

「そう。それは良かったわ」

「それにお兄さんにも会えました♪」

「お兄さん?・・・もしかしてアンジ様!?」

「「アンジ・・・『様』?」」

「はっ・・・いえ何でもありませんわ!!///」
 

 

第三十七話 魔王


「全く。冗談じゃないわ!!」

闇慈がアザゼルと接触した翌日。このことを放課後の部室でリアスに話すと激怒した。この事を聞いた一誠はそれに続き、自分も対価を貰うために出て行ったときにアザゼルと会ったと話した。

「確かに悪魔、天使、堕天使三すくみのトップ会談がこの町で執り行われるとは言え、突然堕天使の総督が私の縄張りに侵入し、営業妨害していたなんて・・・(ゴゴゴゴ)」

(リアス先輩・・・何時に無く凄まじい殺気だよ)

仕方の無いことだった。リアスは自分の眷属を大切に可愛がる上級悪魔。自分の所有物を他人に扱われることを酷く嫌う性格なのだから。

「でも何でアザゼルは僕やイッセーに接触したんでしょうか?」

闇慈はそれが腑に落ちないなのかリアスに尋ねた。ここでイッセーが疑問に思っていたことを言う。

「多分俺の推測じゃ。俺たちのセイクリッド・ギアが目的なのかもしれないぜ?闇慈」

その推測に祐斗も付け足す。

「考えられるね。アザゼルはセイクリッド・ギアに非常に興味を抱いている人だと聞いているよ。ましてやロンギヌスとなると尚更だよ」

「しかしどうしたものかしら・・・。あちらの動きが分からない以上、こちらも動きづらいわ。相手は堕天使の総督・・・下手に接することは出来ないわね」

リアスは相手の行動を読み、作戦を考える策略派なために手に顎を乗せ考え込んでいた。しかしここで第三者の声が入ってきた。

「アザゼルは昔から、ああ言う男だよ、リアス」

闇慈達は声が聞えた方を見てみるとリアスと同じ紅髪の男性が微笑みながら立っていた。朱乃達、悪魔になって長い月日が経っているリアスの眷属たちはその場で跪いた。

「お、お、お兄様!!」

(っ!!この人が・・・リアス先輩のお兄さん・・・『サーゼクス・ルシファー』か)

闇慈は初めて会うサーゼクスに顔をしかめた。闇慈は『あの事』をまだ根に持っているみたいだった。

「アザゼルは先日のコカビエルのようなことはしないよ。今回は悪戯みたいなものかな。しかし、総督殿は予定よりも早い来日だったみたいだな。それから、くつろいでくれたまえ。今日はプライベートで来ている」

サーゼクスがリアスの眷属たちに促すとゆっくりと立ち上がった。

「お兄様。どうしてここに?」

「何を言っているんだ?授業参観が近いのだろう?私も参加しようと思っていてね。妹が勉学に励んでいる姿を見ておきたいと思ったのさ」

(この人って・・・ある意味、シスコン?)

闇慈が心の中で軽い溜め息をついているとサーゼクスと一緒に居たグレイフィアにリアスが尋ねた。

「グレイフィア。貴女ね?お兄様に教えたのは」

「はい。学園からのスケジュールは私の元に届きます。そして私はサーゼクス様のクイーンでもありますので、主にも報告しました」

グレイフィアの話にサーゼクスが続ける。

「報告を受けた私は魔王職が激務であろうと、休暇を入れてでも妹の授業参観に参加したかったのだよ。勿論、父上にも報告してある。それにこれはある意味仕事でもあるんだよ」

「どう言う事?お兄様」

「今度の会談はこの学園で執り行おうと思っていてね。その下見でもあるんだよ」

「っ!?ここで?本当に?」

「ああ。この学園には何かしらの縁があるようだ。私の妹、伝説の赤龍帝、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹が所属し、コカビエルと白龍皇が襲来してきた。これは偶然とは考えられない事象だ。様々な力が入り混じっている。そのうねりが強くなってるのが兵藤一誠くん・・・赤龍帝だと思うが?」

サーゼクスは一誠に目を向けた。一誠は魔王であるサーゼクスに見られ少し緊張しているみたいだ。

「そして彼、黒神闇慈・・・黒衣の死神もね」

「・・・」

今度は闇慈に視線を移したが、闇慈は何時変わらず態度を変えなかった。

「君の力は本当に興味深い。先の大戦の英雄・・・コカビエルを完膚ないまでに叩きのめしたのだからね。君は悪魔にはならないのかい?」

「・・・僕は悪魔にはなりません。貴方のような人が居る限りはね」

闇慈のサーゼクスに対する暴言に近いこと聞いたリアスは少し声を張り上げて言った。

「アンジ!!貴方、お兄様に何て事を!!」

「思ったことを言って何が悪いんですか?リアス先輩。僕は悪魔じゃない。それに僕はこの人のやったことをまだ許してはいませんよ」

「お兄様が一体何をやったと言うの!?」

「忘れたとは言わせませんよ!!部長!!」

闇慈の少し殺気の入った怒声に周りは少し緊張が走った。

「この人が魔王になったせいで部長がどれ程つらい思いをしたか。しかも、人生の中で最も大切なことを『ゲーム』で解決しようとしたこの人を僕は許すわけには行きません!!例えそれが魔王であろうと、部長の兄であろうと!!」

「アンジ・・・貴方」

「君の話はよく分かったよ、アンジくん」

そう言うとサーゼクスが闇慈に近寄った。

「あの件に関しては私も父上も深く反省している。君の言うとおり、力で解決しても何も解決しなかった。君の意見は正しいよ。本当に悪かった」

闇慈はしばらくサーゼクスの眼を見て、口を開いた。

「その言葉が嘘じゃないことを信じています。それから・・・」

闇慈はサーゼクスの足元に跪き、頭を下げた。

「今までの貴方を罵る言動。お許し下さい」

「君が怒るのも最もだ。頭を上げてくれ、アンジくん」

「ありがとうございます」

そう言うと闇慈はゆっくりと立ち上がった。

「しかし。魔王である私を前にして迷い無く自分の意見を言うとは、中々根性があるやつじゃないか」

「それが僕と言う人間ですから」

「ふふっ。私は君が気に入った。これからも妹のことをよろしく頼むよ。妹に遣える『死神』としてね」

サーゼクスは闇慈に握手を求めてきた。闇慈はそれに笑顔で答えた。

「はい!!」

その後、ゼノヴィアもサーゼクスと挨拶を交わし、サーゼクスとグレイフィアの宿泊はイッセーの家ですることとなった。
 

 

第三十八話 水泳


サーゼクスの訪問から一週間が過ぎた。一誠はあの後サーゼクスと一緒に街を見て回ったりしたとか・・・。そして分かった事はサーゼクスはそれ程、接しにくい性格ではないみたいだ。そしてこの一週間の間に闇慈はデスから修業を付けてもらい、力は格段に上がり、様々な技を覚えた。そして闇慈は一誠から質問を受けた。

「ブーステッド・ギアで部長のおっぱいを強化したらどうなるんだろう」

と。その時闇慈は顔を赤らめ、頬を掻きながら考えていたが結論は・・・

「部長に頼んでみたら?」

だった。それを聞いた一誠はすぐにリアスの元を訪ね頼んでみたが一発で断られたらしい。
そして今日、オカルト研究部はプールを掃除する日だった。その代わりにオカルト研究部は今日一日プールの貸し切りを許されていた。

「ふう。こんなものかな?」

「みたいだな。ああ、疲れたぜぇ・・・」

闇慈と一誠は水を抜いた広いプールのど真ん中でデッキブラシを右肩に担ぎながら、呟いていた。祐斗は用事があるらしく今日は来れなかったみたいだ。ここでリアスが部員に呼びかけた

「さあ。プール掃除もこれで終了よ。これからはプールに入って思いっきり楽しみましょう」

~~~~~~~~~~~~

一誠と闇慈は女性陣より早く水着に着替えて、プールサイドに来た。

「部長たちはまだ来てないみたいだね?イッセー」

「みたいだな。でも楽しみだぜ部長たちの水着姿・・・ムフフ」

一誠はリアスたちの水着姿を妄想しているのか、顔がエロくなった。因みにイッセーは赤の、闇慈は黒のハーフパンツ型の水着を着ていた。

(相変わらずだね、イッセー)

「「「「お待たせ(しました)」」」」

女性陣の声が聞え、一誠と闇慈は振り向いた。そこにはそれぞれの水着を着ていた女性部員達が立っていた。

「むっほーー!!!」

「・・・///」

イッセーは歓喜の叫びを上げていたが、闇慈は恥かしいのか目を逸らしてしまう。

「ほらイッセー。私の水着、どうかしら?」

「あらあら部長ったら、張り切ってますわ。うふふ、よほどイッセーくんに見せたかったんですわね。ところでイッセーくん、私の方もどうかしら?」

「イッセーさん。わ、私も着替えました」

比較的、布面積が少ない赤いビキニを着たリアスと同様に白いビキニを着た朱乃が一誠を誘惑?し始めたがスクール水着を着ていたアーシアもそれに負けじと加わっていった。

「あはは。モテモテだね、イッセー」

闇慈はその光景に苦笑していたがここで小猫が話しかけて来た。

「・・・どうですか?闇慈先輩」

「アーシアと同じスクール水着だね。中々似合っているし、可愛いと思うよ?」

「・・・あ、ありがとうございます。闇慈先輩も黒い水着がよく似合ってます」

「ありがとう、小猫ちゃん」

闇慈は小猫の頭を優しく撫でてやると小猫は顔を赤らめて俯いた。

「それじゃあ一緒に泳ごうか?小猫ちゃん」

「・・・あ、あの闇慈先輩」

「ん?どうしたの?」

「・・・実は私・・・私」

闇慈の提案に小猫はモジモジしながらその場を動こうとしなかった。闇慈はまさかと思い、小猫に尋ねた。

「小猫ちゃん。もしかして・・・泳げない?」

「・・・(コクッ)」

「なら僕と一緒に練習しようか?」

「・・・良いんですか?」

「勿論♪」

小猫の問いかけに闇慈は笑顔で了承した。

~~~~~~~~~~~~

小猫はプールに入ると闇慈の手を借り、まずはバタ足の練習から始めた。

「(ブクブク)プハッ。(ブクブク)プハッ。」

「いちに、いちに・・・良いよ小猫ちゃん。その調子」

小猫は泳げないながらも足をバタつかせ25Mを泳ぎきった。隣のラインでは小猫同様にアーシアも泳げないらしく、一誠から泳ぎを習っていた。

「うん。よく泳ぎきったね」

「・・・闇慈先輩のおかげです」

「僕は小猫ちゃんの手伝いをしたまでだよ。どうする?まだ続ける?」

「・・・はい」

「分かった。じゃあもう一回同じように泳ごうか?」

「(コクッ)」

そして再び泳ぎ始めた。しかし途中で思わぬアクシデントが起こった。

「(ブクブク)プハッ。(ブク・・・ブクッ!?)」

突然小猫がバタ足を止め、沈み始めた。これを見た闇慈は・・・

「(不味い!!足がつったのか!?)小猫ちゃん!!」

闇慈はすぐさま小猫を抱え上げ、抱っこの要領で抱き締めた。

「ケホッ・・・ケホッ」

「小猫ちゃん!!大丈夫!?」

「・・・闇慈先輩。怖かったです・・・」

「無事で良かった。練習は一旦中止して休もう。足の状態も確認したいしね」

「・・・はい」

闇慈は小猫を抱え上げたままプール内を移動し、プールサイドに敷いてあったビニールシートの上に小猫を優しく寝かせ、小猫のつった足をマッサージしながら確認し始めた。

(闇慈先輩ってマッサージが上手です。それに・・・先輩に触られているので凄く恥かしいです///)

「酷くはないけど、少し冷やす必要があるみたいだね。保健室に行って冷えたタオルを貰ってくるから小猫ちゃんは休んでて?」

「・・・すみません、闇慈先輩」

「気にしないで?」

闇慈は更衣室で一旦制服に大急ぎで着替え、保健室に向かった。しかしそこで校舎を見ている一人の銀髪の男子が目に入った。

(誰だろう?ここの生徒じゃない。でもこの力って!!)

闇慈が疑問に思っていると銀髪の男子も闇慈に気付いたのか闇慈の元に寄ってきた。

「やあ。ここはいい学校だね」

「そうですね。僕もここは大好きですよ。それで・・・」

闇慈は素早くデスサイズ・ヘルを取り出すと銀髪の男子の首元に突き付けた。

「こんな所に何のようですか?・・・白龍皇」

「流石は『黒衣の死神』。すぐに俺の正体を見破るなんてな。俺は『ヴァーリ』だ。よろしくな」

「・・・」

闇慈はその事を聞くとデスサイズ・ヘルをしまい、ヴァーリと向き合った。

「どうした?何故セイクリッド・ギアを消す?」

「今の貴方に敵意は感じられない。恐らく挨拶でもしにきたんですか?・・・赤龍帝に」

「まあ。そんなところだ」

「忠告しますけど僕の仲間に手を出すなのなら・・・貴様に『死』を見せる事になるかもな・・・」

闇慈は『真紅の魔眼』と『魔力の解放』でヴァーリを威圧し始めた。修行の成果もあり、覇気も格段に上がっていた。風が突然渦巻き、木々に傷が入り始めた。

「フフフッ。この気迫・・・初めてあった時とは比べ物にならない。お前は本当に面白い奴だよ」

そう言うとヴァーリは踵を返してその場から居なくなった。

(白龍皇・・・ヴァーリ。赤龍帝のライバルにして、二天龍の一角。でもそんなの関係ない!!仲間を守るために・・・僕は戦う!!)

闇慈は覇気をしまうと保健室に行き、道具を揃てもらい小猫の元に戻った。 

 

第三十九話 参観


「はあ・・・気が進まないな」

「私も同意見よ、アンジ」

闇慈とリアスと一誠とアーシアは同じ通学路を歩いていた。今日は授業参観の日となってしまった。闇慈の家からは父親は仕事で来れない為、母親が来ることとなった。そしてリアス家からはサーゼクスとその父親が来る事になったらしい。

「そう言えば。イッセーの家からは両親二人が来るの?」

「そんなとこだ。目的はアーシアなんだろうけどな」

「あはは・・・」

「イッセーさん。今日は頑張りましょうね?」

肩を落としていた一誠にアーシアは天使の微笑みのような笑顔を浮かべ、励ました。

「そ、そうだな。アーシアが頑張るってんなら、俺も頑張らねえとな!!」

そんなことを言っている間に学校に着き、それぞれの教室に移動した。と言っても闇慈たち三人組は同じクラスだった。教室に入るとゼノヴィアが一誠に話しかけた。

「イッセー。先日はあんな事を言って申し訳なかった」

「まあ・・・ああ言うのは早すぎだと俺も思うからな」

(先日?何のことだろう?)

疑問に思ったのか闇慈は一誠に尋ねた。

「イッセー。一体何の事?」

「だからこそ―――」

しかしその問いかけをイッセーが答える前にゼノヴィアがポケットから何かを取り出した。

(って・・・あれって!!)

「バカァァァァ!!こんな大衆を前にそんなものを取り出すなーーー!!!」

一誠は声を張り上げるとすぐに『それ』をゼノヴィアのポケットにしまわせた。そして一誠とゼノヴィアは二人で話をするために出て行った。

「一体何だったのでしょうか?アンジさん」

「アーシアは気にしない方が良いと思うよ・・・」

「??」

~~~~~~~~~~~~

そしてとうとう授業参観の時間帯になってしまった。授業内容は『英語』だった。勿論闇慈の母親も教室に着いていた。

(さてと・・・出来れば簡単な英語の授業だと良いな)

闇慈は心の中で呟いていた。しかし各生徒の机の上に置かれたのは・・・

「・・・?紙粘土?」

普通の紙粘土だった。ここで担当教師が説明を始めた。

「今渡した紙粘土で自分の好きな物を作ってください。何でも構いません。物体を使った英語のコミュニケーションも必要だと私は考えています。頑張ってください!!レッツトライ!!」

(・・・まあ。分からなくもないけど。こう言うのってあまり得意じゃないんだよね)

「あうう。難しいですぅ」

アーシアは自分なりに何かを作っているようだが中々うまく行かない様だった。それを見ていた一誠の両親は応援を始めた。

(ちょっと・・・イッセーのことを完璧に忘れてませんか?あの両親。っと今は自分のことに集中しないと・・・でも何を作ろうか?)

闇慈はしばらく右人差し指で自分のこめかみを突付きながら考えていた。ここで一誠を見てみると一誠は鼻血を出しながらリアスのミニチュアを作成しているようだった。

(イッセーはリアス先輩か・・・)

ここで闇慈は脳裏に小猫の事を思い浮べた。

『闇慈先輩♪』

何時も昼食の時に見ていたあの笑顔を思い浮かべながら紙粘土に手をかけた。そして小猫の制服姿の大まかな形を作ると制服の形や髪型などの細かい所をを魔力で削るなど、形を整えて行った。

「ひ、兵藤君・・・」

『『おおっ!』』

どうやら一誠は完成したらしく周りからは賞賛の声が上がっていった。闇慈も一旦手を止め見てみるとリアスそっくりの紙粘土のミニチュアが出来ていた。

(凄いね、イッセー。僕も頑張らないと)

闇慈はスパートをかけ、一気に小猫の制服姿のミニチュアを完成させた。

(上手く・・・出来たかな?)

ここでデスが感想を述べてきた。

(ふむ。中々、良い出来じゃないか。お前の姫、その物じゃないか)

(そ、そうでしょうか?)

闇慈が答えていると教師も闇慈の元にやって来た。

「黒神君・・・」

「あ、あの。完成はしたんですけど・・・どうでしょうか?」

「素晴らしい!!兵藤君と言い、黒神君と言い、君たちは凄い才能を持っていたようだ!!」

『『おおっ!!』』

闇慈の小猫の模型に周りも賞賛の声を上げた。周りからは・・・

「凄い!!小猫ちゃんにそっくり!!」

「小さくなったマスコットキャラの小猫ちゃん!!可愛い!!」

「でも兵藤のってリアス先輩だろう?てことは兵藤はーーー!!」

「そんな嘘よ・・・。エロ兵藤にお姉さまが!!」

「兵藤!!それを俺に五千で売ってくれ!!」

「黒神君!!それを私に七千で譲ってくれないかな?」

授業参観は何時の間にかリアスと小猫のミニチュアのオークションになっていた・・・

((これで本当に良いの(かよ)!?))

闇慈とイッセーは心の中で叫び声を上げていた。
 

 

第四十話 魔王少女


「よくできているわね」

授業参観が終わり昼休みになった。オカルト研究部の部員たちは部室に集まっていた。結局一誠と闇慈は自分たちが作ったそれぞれのミニチュアを譲らなかった。

「あらあら。本当に良くできていますわね。私も作って貰いたいですわ。再現してもらうためなら脱ぎますわよ?」

「マジっすか!?」

そう言うと一誠は、ぜひと答えそうになったがリアスとアーシアが両方の頬を引っ張った。

「ダメよ」

「ダメです」

その光景に闇慈は苦笑していた。そして闇慈が作った小猫のミニチュアも小猫自身に見せた。

「・・・先輩って何時も私の事を見ててくれたんですね」

「えっと・・・嫌だった?」

「・・・いえ。嬉しいです」

「そう。なら良かった」

ここで祐斗が気になったことを思い出し、部室を出ようとしたがリアスが気付き尋ねた。

「あら?どうしたの?祐斗」

「いえ。何やら魔女っ子が撮影をしていると聞いたものでして、ちょっと見に行ってみようかなと」

「「魔女っ子?」」

闇慈は小猫と顔を見合わせながら、首を傾げた。

~~~~~~~~~~~~

祐斗が聞いた廊下に着くとその一角で写真撮影が行われていた。その少女は如何に魔女っ子らしい服装をしていた。そしてスカートも極端に短く、その下の下着がチラチラと見えていた。その少女を一目見ようとリアスが人ごみを掻き分け、進んで行きその顔をみると驚いたような表情を浮べた。

(唯のコスプレをした人かなと思っていたけど・・・この力は)

闇慈はそのコスプレ少女の正体に気付いたのか、表情を一瞬だが強張った。そして生徒会委員である匙がこの騒ぎを鎮めるためにやってきた。

「ほらほら、解散解散。今日は公開授業なんだぜ?こんな所で騒ぎ起こすな」

匙の姿を見ていた闇慈は匙の仕事っぷりに感心していた。

「あんたもそんな格好をしないでくれ。それとも親御さんですか?そうだとしたら、場に合う衣装をちゃんと選んで貰わないと困ります」

「え~、だってこれが私の正装だもん☆」

匙の注意をコスプレ少女は軽く流し、聞く耳を持たなかった。そうしている間にソーナがサーゼクスともう一人の紅髪の男性を連れてやってきた。恐らく彼がリアスとサーゼクスの父親なのだろうと闇慈は感じていた。

「何事ですか?サジ、問題は簡潔に解決しなさいといつも言って━━━」

「あっ!ソーナちゃん、見つけた☆」

コスプレ少女は事もあろうかソーナの事を『ちゃん付け』で呼んでいた。それを見ていたサーゼクスはコスプレ少女に話しかけた。

「セラフォルーか。君も来ていたんだな」

(セラフォルー?・・・何処かで聞いた名前だ)

闇慈は疑問に思っていたがイッセーがリアスに問いかけたのか答えた。

「レヴィアタン様よ。あの方は現四大魔王のお一人・・・『セラフォルー・レヴィアタン』様よ。そしてソーナのお姉さまよ」

それを聞いた一誠は絶叫を張り上げた。それもそうだろう、コスプレ少女が魔王なのだから。

(あの人が『レヴィアタン』の名前を持つ人か・・・でも僕が見る限りではソーナ会長の方がお姉さんに見えるよ)

「セラフォルー様、お久しぶりです」

「あ!リアスちゃん!おひさ~☆ 元気にしてましたか?」

「は、はい。おかげさまで。今日はソーナの授業参観に?」

「うん☆ソーナちゃんったら酷いのよ。今日の事、黙ってたんだから!もう!お姉ちゃん、ショックで天界に攻め込もうとしちゃったんだから☆」

(そんな理由で戦いを引き起こそうとしたの!?この人!?とんでもない冗談を言う人だね・・・)

闇慈は心の中で溜め息を付いているとリアスが一誠に挨拶するように促した。

「イッセー。ご挨拶なさい」

「あ、はい!は、初めまして。兵藤一誠です。リアス部長のポーンをやってます。よろしくお願いします」

「はじめまして☆私、魔王のセラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」

セラフォルーは横ピースをすると、一誠をじろじろ見始めた。

「サーゼクスちゃん。この子が噂のドライグ君?」

「そうだよ。セラフォルー」

ここでセラフォルーは何かを思い出したかのようにリアスに尋ねた。

「そうだ☆リアスちゃん。ここには『黒衣の死神』さんがいるって聞いたんだけどそれって誰?」

「それは・・・アンジ。セラフォルーさまに自己紹介を」

それを聞いた闇慈は軽く答えるとセラフォルーの前に移動し、自己紹介を始めた。

「初めまして、黒神闇慈です。今貴女がおっしゃった通り、黒衣の死神を名乗っています。以後お見知りおきを」

「アンジ君だね、よろしく☆」

そう言うと一誠同様にジロジロと闇慈の身体を見始めた。

「あ、あの・・・何か?」

「ちょっとね☆先の大戦のコカビエルをボッコボコにした人がいるって聞いたからね☆どんな人か見てみたかったんだよ☆うんうん。背は高いし、カッコイイし、タイプかも☆」

「えっ!?」

「・・・っ!!」

セラフォルーの告白に近い言葉に闇慈は少し動揺したようだったが、小猫の反応は研究部の中で最も大きかったみたいだ。そしてどうやらセラフォルーは妹のソーナことが大好きらしいが、ソーナにとっては少しかなり滅入っているようだ。そして耐えられなくなりその場から逃げようすると・・・

「待ってソーナちゃん!お姉ちゃんを置いてどこに行くの!?」

「ついてこないでください!」

「いやぁぁぁん!お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇぇぇぇっ!ソーたぁぁぁぁん!」

「『たん』付けはお止めになってください!」

魔王姉妹の追いかけっこが始まった。

(何ともシュールな光景だよ・・・)

それを見ていた闇慈は苦笑しながら、それを見ていたらしい。そしてその後はそれぞれの教室に戻り、授業を受けた。
 

 

第四十一話 吸血鬼


「何だよ・・・これ」

「いや・・・僕に聞かれても分かんないよ、イッセー」

授業参観の翌日。オカルト研究部の部員たちは部室、つまり旧校舎の一階に来ていた。因みに何時も集まっている談話室は二階にある。そして今日、もう一人の『僧侶(ビショップ)』を紹介してくれるらしい。
しかし、ビショップがいるとさせる教室は、『開かずの教室』と言われているらしく。そして一番印象的だったのは・・・

「「『KEEP OUT』って・・・そんなに危ないの(かよ)・・・?」」

「そう言う意味ではないのだけど、自分から出るたり、他人に会いたがらないのよ」

「え?じゃあつまり『引きこもり』なんですか?」

闇慈の質問にリアスが続ける。

「そう言っても過言ではないわね。でもパソコンを通じて人間と契約し、対価を貰っているの。契約数では上位に入っている位よ」

「パソコンで契約を!?何だか何でもアリですね」

規格外な契約の取り方に闇慈は少し驚いているようだ。そしてリアスが教室の扉に掛かっている封印の魔法を解いた。

「さあ、入るわよ」

(いよいよリアス先輩のもう一人のビショップとご対面か・・・どんな人なんだろう?)

リアスが声をかけ、扉を開けると・・・

「イヤァァァァァァァ!」

「「っ!?」」

いきなりの大きな悲鳴が初めて見に来た四人は咄嗟に耳を塞いだ。

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

『な、な、何事なんですかぁぁぁぁ?』

『あらあら。封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。さあ、私達と一緒に出ましょう?』

『やですぅぅぅぅぅぅ!ここが良いですぅぅぅぅぅぅ!外に行きたくない!人に会いたくないぃぃぃぃっ!』

部屋の中で朱乃も優しく声をかけているようだがそれも全く意味を成していなかった。この異常なまでの反応に闇慈は冷や汗を流していた。

「これって流石に重症だと僕は思うよ」

「俺もそう思うぜ。ここにいても仕方ねえから入ってみようぜ?」

一誠の意見に残りの四人が同意し、中に入ってみると奥にリアスと朱乃がいて、更に『僧侶』らしき人物がいた。赤い目をした金髪の美少女が床に座り込んでいた。そして中の装飾はぬいぐるみなどで飾られていた。しかし・・・

「何で棺桶が置いてあるの?それに・・・」

闇慈はその『美少女』の本当の姿に気付いたのか驚きの表情を浮べた。

「おおっ!女の子!しかも外国の!!」

一誠は歓喜の声を上げていたが闇慈は現実をイッセーに話した。

「イッセー。ぱっと見では女の子だけど・・・この子。男の子だよ」

「へっ・・・?」

一誠は固まったり、何のことだか分かっていない様だったが、ここでリアスと朱乃が付け足した。

「アンジの言う通り。この子は男の子よ」

「女装趣味があるのですよ」

「えぇぇぇぇぇ!?」

「ヒィィィィィッ!ゴメンなさいゴメンなさぁぁぁぁぁい!」

一誠の絶叫と金髪美少女・・・もとい、金髪女装の絶叫が合わさった。一誠は頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ

「こんな残酷な話があって良いものか!?完全に美少女な姿なのに男だなんて!!と言う事はあれか!?つまりこいつにもチ・・・」

「イッセー。それ以上は禁句だよ」

闇慈は最後まで言いかけそうになった一誠を咎め、途中で終わらせた。

「それにしてもアンジ。見ただけでよくこの子を男の子だと分かったわね?」

「あまり自信はなかったんですけど、魔力の波動が女の子みたいだったので。でも君はどうしてそんな格好をしているの?」

闇慈は出来るだけやさしい声で金髪女装に話しかけた。

「だ、だ、だ、だって、女の子の服の方が可愛いもん」

「可愛いもん、とか言うなぁぁぁぁぁ!クソッ!野郎のクセにぃぃぃ!俺の夢を一瞬で散らしやがってぇぇぇぇぇっ!俺はなぁ、俺はなぁ!アーシアとお前のダブル金髪美少女『僧侶』を瞬間的にとはいえ夢見たんだぞ!?返せよぅ!俺の夢を返せよぅ!」

泣き叫ぶ一誠に闇慈と小猫は一緒にツッコミを入れた。

「「人の夢と書いて『儚い』と読むよ(みます)、イッセー(先輩)」」

「アンジィィィ!!小猫ちゃぁぁぁん!!洒落になってねぇからぁぁぁぁぁ!!」

「と、ところで、この方々は誰ですか?」

金髪女装がリアスに聞くとリアスは説明を開始した。

「あなたがここにいる間に増えた眷属よ。『兵士(ポーン)』の兵藤一誠、『騎士(ナイト)』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶(ビショップ)』のアーシア。そして眷属じゃない人間の『助っ人』の黒神闇慈よ」

4人は挨拶をするが、金髪女装は怖がるだけだった。

「お願いだから外に出ましょう?ね?もうあなたは封印されなくても良いのよ?」

「嫌ですぅぅぅ!!僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁ!!怖い!!お外怖い!!どうせ僕が出てっても迷惑をかけるだけだよぉぉぉ!!」

泣き叫んでいるが闇慈が声をかけた。

「君は男の子でしょ?こんな所に居ても何も変わらないよ?」

「変わらなく良いですぅぅぅ!!僕はここが一番なんですぅぅぅ!!」

我がままな言い様に闇慈は少し戸惑っていると、一誠が少し怒ったのかその子の腕を少し強引に引っ張った。

「部長が出ろって言ってるだろう!?」

「ちょっと、イッセー。強引だよ?」

「ヒィィィ!!!」

女装くんの絶叫と共に『何か』が部員たちを襲った。

「っ!!何だ?今の感覚は?・・・あれ?イッセー?小猫ちゃん?」

闇慈はどうと言うことは無かったが闇慈とリアス以外の部員が金縛りにあったかのようだった。言い換えれば『時間が止まっている』みたいだった。

「えぇぇぇ!?な、何でこの人は動けるんですかぁぁぁ!?」

「動ける?どういう事?」

(まさか、『停止世界の邪眼』か!?)

(えっ!?)

デスの言葉とこの状態に闇慈の疑問を持っていたがリアスがその疑問に答えた。

「その子は興奮すると、視界に映した全ての物体の時間を一定の間停止する事が出来る神器(セイクリッド・ギア)を持ってるの。でも、その子自身は神器を制御出来ないから、今まで封印されていたのよ。私は高い滅びの魔力のお陰で、恐らくアンジは死神の力・・・デスの加護かもしれないわね」

「時間停止の神器!?それってかなり反則じゃないですか!?この子は一体、何者なんですか?」

「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属『僧侶』。一応、駒王学園の一年生なの。・・・そして、転生前は人間と吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフよ」

「ヴァ、ヴァンパイアですって!?」

金髪女装・・・ギャスパーの出生と神器に驚きを隠せないようだった。
 

 

第四十二話 男女


「『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』?」

一誠の問いかけにリアスが答える。

「そう。それがギャスパーの持っているセイクリッド・ギアの名前。とても強力なの」

「さっきも聞いたんですけど、目に映ったものの時間を停止させるなんてやっぱり反則ですよ」

「俺も同感だぜ。時間を止められたら何にも出来ないじゃないですか!!」

「あら。イッセーの『ブーステッド・ギア』と、それにアンジの『デスサイズ・ヘル』だってかなり反則よ?」

「そうですか?」

ここで祐斗が割って入った。

「確かに、力を十秒毎に倍増させるブーステッド・ギアや・・・」

それ続け、小猫も続ける。

「・・・ありとあらゆる『生』を切り裂き、『死』を導く鎌。デスサイズ・ヘルもある意味反則です、闇慈先輩」

「でもデスサイズ・ヘルはその度に魔力を注ぎ込まなくちゃならないから、結構キツイよ?」

「・・・それでも反則です」

「そうかな?」

闇慈と小猫の討論が少し続くと一誠が話題を変えた。

「それでも、リアス部長。時間停止なんて強力なセイクリッド・ギアを持った奴をそう簡単に下僕に出来るんですか?ビショップって二つなのにどうして『悪魔の駒』を一つしか消費してないんですか?」

「確かに。時間停止みたいな強力な力はどう見ても一つじゃまかなえないと思います」

「それは『変異の駒(ミューテーション・ピース)』のお陰よ」

「ミューテーション・ピース?」

「イービル・ピースと何が違うんですか?」

疑問の声を発したイッセーと闇慈に、祐斗がリアスの代わりに『変異の駒』の説明を始める。

「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、1つで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒の事だよ」

「部長はその駒を有していたのです」

朱乃も説明に参加し、祐斗が更に続ける

「だいたい上位悪魔の10人に1人はひとつぐらい持っているよ。『悪魔の駒』のシステムを作り出した時に生まれたイレギュラー、バグの類らしんだけど、それも一興としてそのままにしたらしいんだ。ギャスパーくんはその駒を使った1人なんだよ」

「話を戻すけど、彼は類希な才能の持ち主で、無意識の内に神器の力が高まっていくみたいなの。そのせいか、日々力が増していってるわ。上の話では、将来的に『禁手(バランス・ブレイカー)』へ至る可能性もあるという話よ」

「うわあ・・・ただでさえ危険なセイクリッド・ギアなのに、それがさらに禁手に至ったりしたらほぼ最強なのでは?」

闇慈がゾッとしている態度でリアスに問いかけるとそれにリアスが答えた。

「そう、危うい状態なの。けれど、私の評価が認められたため、今ならギャスパーを制御出来るかもしれないと判断されたそうよ。私がイッセーと祐斗を『禁手』に至らせた事のお陰かしら」

一誠は未完成とは言え、『禁手』状態でライザー・フェニックスを倒した。祐斗も聖魔剣『ソード・オブ・ビトレイヤー』を発動させることが出来た。それらのお陰でリアスの評価がグンと上がり、その褒美がこれなのかもしれない。

「能力的には朱乃に次いで二番目なんじゃないかしら。ハーフとはいえ、由緒正しい吸血鬼の家柄だし、強力な神器も人間としての部分で手に入れている。吸血鬼の能力も有しているし、人間の魔法使いが扱える魔術にも秀でているわ。とてもじゃないけど、本来『僧侶』の駒1つで済みそうにないわね」

ギャスパーの能力の高さに闇慈は感心の声を発した。

「ギャスパーって本当に凄い眷属だったんですね」

「ヒィィィ!!ゴメンナサイですぅぅぅ!!」

「別に怒っている訳じゃないんだけど・・・。あ、でもリアス先輩。ヴァンパイアって太陽が苦手なのでは?」

「それなら心配はいらないわよ、アンジ。ギャスパーの親のヴァンパイア一族は『デイウォーカー』と言う、日中でも歩くことが出来る能力があるの。それに彼は人間の血も引いているから無闇に血を吸う必要もないの」

「ヒィィィ!!血はダメですぅぅぅ!!レバーも生臭いからダメですぅぅぅ!!」

何とも言えないギャスパーの性格に闇慈は、あははと苦笑するしかなかった。ここで毒舌の小猫のツッコミがギャスパーを襲った。

「・・・へたれヴァンパイア」

「うわぁぁぁん!!小猫ちゃんがイジメルぅぅぅ!!」

「まあまあ。好き嫌いは誰にでもあることだからそこまで言うのは可哀想だよ、小猫ちゃん」

と言うことからギャスパーの教育は今日初めて会った4人と小猫が引き受けるようになった。イッセーとゼノヴィアは脅しで言うことを聞かせようとしていた反面、闇慈は優しく接しようとしたが・・・

「うわぁぁぁん!!死神ぃぃぃ!!怖いですぅぅぅ!!」

リアスから闇慈の秘密を聞かされたギャスパーは頑なに闇慈を拒んだ・・・。

「僕って・・・そんなに怖いのかな?」

「・・・ドンマイです、闇慈先輩」
 

 

第四十三話 説得


「ほら走れ。『デイウォーカー』なら日中でも走れる筈だよ」

「ヒィィィ!!デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇ!!」

「・・・ギャーくん、ニンニクを食べれば健康になれる」

「いやぁぁぁん!!小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅ!!」

夕日が差し掛かる旧校舎近くでゼノヴィアがデュランダルを振り回しながら、ギャスパーを追いかけていた。何でも『体力作り』のためにギャスパーを走らせているらしい。そして闇慈は・・・

「ちょっと可哀想だけど、甘やかしちゃダメだよね。頑張れ~、ギャスパー」

闇慈は応援することしか出来なった。しかしここで身に覚えのある力が近づいてきた。

「よー、黒衣の死神。魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してる訳か」

闇慈に声をかけながら出てきたのは以前、遭遇した『アザゼル』だった。しかし、闇慈は冷静に接した。

「貴方は、アザゼルさん。浴衣で会いにくるなんて、フリーダムですね」

「何だ?警戒しねぇのか?俺はこれでも堕天使の総督なんだぜ?」

「今の貴方からは、敵意が感じられない。それに貴方はコカビエルみたいに悪い堕天使じゃないように思えますから」

「ハッハハッ!お前面白ぇ奴だな!堕天使のボスが現れたら誰だって警戒するのが妥当だぜ?」

「それにサーゼクスさんにも聞いていましたけど、貴方は戦いより、神器の方に興味を持っていると聞いていましたから。そこで一つ聞きたいことがあるんですけど」

「何だ?」

「貴方は神器に詳しいのなら対処方法も分かると思いまして。実は・・・」

闇慈はギャスパーの強すぎるセイクリッド・ギアについてアザゼルに話し、その力を弱めるためにはどうすれば良いのかをアザゼルに話した。

「簡単なこった。余分な力を吸収すれば良いんだよ」

「でも僕のデスサイズ・ヘルは下手をすればギャスパーの身体を傷つけてしまいます」

「もっと良く考えな。お前のダチには『吸収』の能力を持ったセイクリッド・ギアを持った奴は居ねえのかよ?」

「『吸収』・・・はっ!!そうだ!!サジの『アブソーブション・ライン』があった!!」

「ほう。[黒い龍脈『アブソーブション・ライン』]を身に付けている奴がいるのか、あれは五大龍王の一匹、[黒邪の龍王]『プリズン・ドラゴン』、ヴリトラの力を宿している神器だ。見に行ってみるか」

アザゼルがその場を後にしようとすると闇慈はアザゼルに礼を言った。

「ヒントをくれて、ありがとうございます!!」

「感謝されることじゃねえよ。あばよ」

そう言うとアザゼルはイッセーたちの元に向かった。そしてアザゼルが帰った後、闇慈はサジに頼み余分なギャスパーの力を吸収して貰い、力の調節を行った。しかしまだ制御が出来ないのか少し興奮すると力を発動させてしまい、イッセーたちを止めてしまった。

~~~~~~~~~~~~

しかしその後、大きな問題が起こった。一誠とギャスパーが対価を貰うために出かけて行ったが、ギャスパーがまた制御出来ずに時間を止めてしまい、もう嫌になったのか、また引きこもってしまった。
ここで一誠と闇慈がギャスパーの説得に入った。

「・・・怖いか?セイクリッド・ギアと俺たちが」

「まあ、それもそうだよね。いきなり現れてほぼ力ずくで言うことを聞かせていたからね」

『・・・』

「俺には最強のドラゴンの、そして闇慈には死神のセイクリッド・ギアを宿してる。お前みたいにヴァンパイアとか、木場みたいにすごい生き方をしてきた訳でもない、ごく普通の男子生徒だった」

「そして、僕たちは力を使うたびに自分が怖くなって行った。自分が自分じゃなくなるんじゃないのかって・・・。でも、それを受け入れて僕たちは前に進んで行こうと思ってる」

闇慈の囁きにギャスパーが扉越しに口を開いた。

『・・・どうしてですか?もしかしたら、大切な何かを失ってしまうのかもしれないのですよ?イ、イッセー先輩とアンジ先輩はどうしてそんなに・・・前向きになれるんですか?』

この問いかけにまずは一誠が答える。

「そうだな・・・まあ、俺はバカだから難しいことは分かんねえけど。ただ・・・俺は部長の涙を見たくない。俺は・・・もう二度と大切な人を悲しませたくないんだ」

それに闇慈が続ける。

「僕もイッセーと似たようなものだよ。僕は偶然、力が発動してしまってアタフタしていたけど、リアス先輩達は僕のことを温かく迎え入れてくれたんだ。この力は・・・守るために使いたい。心からそう思っているんだ」

闇慈が話していると扉がゆっくりと開き、ギャスパーが覗き見るように出てきた。

「それが、先輩たちに『強さ』なんですか?」

「そうだね。でも君の力も加われば、よりリアス先輩達を守ることが出来ると思う。だから力を貸してくれないかな?ギャスパー」

闇慈の言葉に続けて、一誠が言葉を発した。

「俺の血、飲むか?ドラゴンの血を飲めばセイクリッド・ギアの力を制御できるようになるかもしれないってアザゼルが言っていたからな」

そう言うと一誠は自分の腕を差し出したがギャスパーはこれ首を左右に振り、これを断った。

「僕は直接血を吸うことがとても怖いんです・・・ただでさえ強力な力なのにもし暴走してしまったらと思うと・・・僕は・・・僕は」

「でも俺はお前のセイクリッド・ギアは羨ましいぜ」

その言葉を聴いたギャスパーはハッとイッセーと向き合った。

「だって、時間止めたらやりたい放題じゃないか!!女子のスカートをめくったり~、如何わしいことし放題だぜ!!リアス部長のおっぱいをいじったり~、くぅぅぅ!!ヤバイぜ!!妄想が止まら・・・グベラっ!!」

一誠は妄想が大きくなっていくと同時に顔もエロくなって行った・・・。それをみた闇慈は魔力を込めた拳骨を頭上めがけて振り下ろした。その拍子にイッセーの頭は深く地面にめり込んだ・・・

「何すんだよ、闇慈!!俺じゃなかったら死ん・・・で・・・」

「イッセー・・・少し自重しようか?ここには後輩も居るんだからね?それとも・・・『死』を見てみたいのかな?」

闇慈の顔は笑っていたがそれとは裏腹に黒いオーラが闇慈を纏っていた・・・。

「す、すんません。俺が言い過ぎでした(ガクブル)」

一誠は闇慈の殺気にすぐに地面に顔を埋めて土下座して謝った。そのやり取りにギャスパーは少し可笑しかったのか、笑顔を零した。

「あ!今笑ったね、ギャスパー」

「えっ!?僕、今笑ってましたか!?」

「笑ってたぜ。どうだ?こんな俺たちだが、一緒に頑張っていかねえか?」

「勿論。君の事を決して見捨てたりはしない!!この魂に誓って約束するよ!!」

二人の提案にギャスパーは少し考え、コクンと頷き、同意してくれたのだった。 

 

第四十四話 会議


「・・・さて、行くわよ」

部室に集まったオカルト研究部員はリアスの言葉に頷く。今日は三大勢力が集まって会議が行われる日となり、会議は職員会議室で行われるらしく、既に各陣営のトップ達は新校舎の休憩室で待機しているみたいだ。そして学園も強力な結界に囲まれているので誰も中へ入れなくなり、会談が終わるまで外には出られない。

(僕は会議室の外で待機か・・・)

闇慈は何かのために会議室の入り口で待機することになった。そして部員たちは会議室に行こうとすると・・・

『ぶ、部長!み、皆さぁぁぁん!』

ギャスパーがダンボールの中から悲痛な声を上げる。時間停止のセイクリッド・ギアを未だに扱いきれないギャスパーが何らかのショックで邪魔をしたら大変な事になってしまうかもしれない・・・そんな訳で、彼は留守番をする事になった。

「ギャスパー、おとなしくしていろよ?部室に俺の携帯ゲーム機置いていくから。それで遊んでいて良いし、お菓子もあるから食べても良い。紙袋も置いていくから寂しくなったら存分にかぶれ」

「は、はい。イッセー先輩・・・」

「それに何かあったら僕に電話すると良いよ。僕は外で待機だから何時でも駆けつけるから・・・ね?」

「わ、分かりましたぁ。アンジ先輩」

ギャスパーは闇慈を怖がっていたがあの説得以来、闇慈を慕うようになり、普通に喋るようになった。安心したギャスパーを見て、部員たちは会議室に向かった。

~~~~~~~~~~~~

「じゃあ、アンジ。ここでお願いね?」

「分かりました。リアス先輩」

闇慈にリアスは見張りにお願いをすると扉をノックし「失礼します」の声をかけて、闇慈以外の部員は会議室に入っていた。
闇慈は一人、入り口に用意されてあったイスに腰掛け、見張りを開始した。

(トップの三会談か・・・)

(どうした?闇慈)

デスは闇慈が考え事をしていたのが気になったのか話しかけた。

(いえ。もし・・・もしですよ?今の悪魔や天使や堕天使達の考えに反論を持っている人がいるのなら、この機会を逃すのかなって思いまして)

(完全に居ないとは言い切れないだろう。確かにお前の言う通りだな。反和平派の連中もいるやもしれん。冥界の連中の中には『力こそすべて』と言う理論を持つ奴がいるのだからな)

(・・・)

~~~~~~~~~~~~

会議が始まり、かなりの時間が経った。それまでの間、何も起こらなかった。

(もうそろそろ終わりかな?)

闇慈がそう思っていると、音が響かないためにマナーモードにして、ポケットにしまっていた携帯から
音がなった。

「ん?誰から?」

ポケットから携帯を取り出し、発信者を見てみるとギャスパーだった。闇慈はまさかと思い、急いで電話に出た。

「ギャスパー!?どうしたの!?」

『ア、アンジ先輩!!た、助け・・・イヤァァァ!!』

「っ!!」

ギャスパーの悲鳴が携帯裏から響いた瞬間にあの感覚・・・そう『時間が止まったときの』感覚に襲われた。

(くそっ!!嫌な予感が的中した!!)

闇慈は携帯をしまうと部室に向かって走り始めた。

(闇慈!どう言う事だ?)

デスは『嫌な予感』と言うことが気になったのか尋ねると・・・

(反和平派がいるのなら当然僕たち・・・和平派の情報も知れ渡っているでしょう。何より・・・能力を)

(まさか・・・奴らは!!)

(そう言う事です。奴らはギャスパーが会議に参加できない事を知っていた。そしてその時間停止の能力を自分たちの侵略に利用したって事ですよ!!)

闇慈は全力で部室に向かい、辿りついた。

「ギャスパー!!ギャスパー!!」

闇慈は旧校舎を探して回ったが、ギャスパーの姿は無かった。そして再び外に出てみるとギャスパーの代わりに居たのは、黒いローブを身に纏い、空に浮いている魔術師みたいな連中だった。数は少なくとも30人くらいは居るだろう。

「飛んで火に居る夏の虫だな!!」

「覚悟してもらうぞ!!」

「この数で我々に敵うはずがない!!」

魔術師たちは闇慈に向かって閃光を放ったが・・・




























「・・・黙れ」

闇慈は小さくドスの効いた声を放つと、『魔力解放』の波動で全ての閃光を弾き飛ばした。闇慈は仲間を人質に取られた事に相当にキレているようだった・・・

「ば、バカな!?」

「魔力の波動だけで、私たちの魔法を弾いただと!?」

「やはりこの男は危険すぎる!!」

魔術師達は再び魔法を放とうとするが・・・

「一つ覚えのつもりか?嘗めるな・・・」

闇慈はカッと目を見開くと、『真紅の魔眼』が発動したが今回はそれだけで無かった。その瞳の上から上下逆となった五芒星(ごぼうせい)が刻み込ませた。その瞬間、それぞれの魔術師たちの下から黒いものが飛び出し、身体を貫いていった。

「ぐわぁぁぁ!?」

「ぎゃぁぁぁ!?」

「い、いやぁぁぁ!!」

魔術師達は次々と黒い『何か』に身体を貫かれ、地面に倒れ付した。貫いた所の殆どは中枢神経を貫いておりほぼ即死みたいだったが・・・

「い、痛い」

倒しきれていない奴もいたらしく、闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを持つとその魔術師に近寄った。

「どんな気分だ?『自分自身』やられる気分は?」

「じ、自分自身ですって・・・!?どう言う・・・意味・・・」

「その答えは輪廻の中で考えることだな」

闇慈はデスサイズ・ヘルで止めを刺し、霧散させた。

「・・・俺からの宿題だ」

周りに敵が居なくなったのを確認すると闇慈はイッセーたちが気になり、校舎に向かって走り出した。
 

 

第四十五話 旧魔王


闇慈が研究部員達の元に向かっている間、和平派は闇慈が倒した魔術師以外の連中と鉢合せの状態になっていた。そして時間が経って行き、会議室に突如現れた魔方陣を見て、サーゼクスは苦虫を噛み潰した様な表情をした

「・・・レヴィアタンの魔方陣」

しかしこの魔方陣はセラフォルーが何時も出している魔法陣とは異なっていた。ここで見覚えがあるのかゼノヴィアが声を発した。

「ヴァチカンの書物で見た事があるぞ。あれは旧魔王レヴィアタンの魔方陣だ」

そしてそこから一人の女性が出てきた。胸元が大きく開かれ、スリットも入ったドレスに身を包んでいる。一誠が好みのそうな女性だ。

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。これはどういう事だ?」

サーゼクスの問いにカテレア・レヴィアタンは挑戦的な笑みを浮かべて言う。

「旧魔王派の者達は殆どが『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力する事に決めました」

カオス・ブリケードとは、この世界の『平和』を忌み嫌う集団で、破壊と混乱を巻き起こそうとしている・・・簡単に言い換えれば『テロリスト』である。

「新旧魔王サイドの確執が本格的になった訳か。悪魔も大変だな」

アザゼルは他人事の様に笑うが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。

「カテレア、それは言葉通りと受け取っていいのだな?」

「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃も我々が受け持っております」

「クーデターか・・・カテレア、何故だ?」

「サーゼクス。今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私達はそう結論付けました」

「オーフィスの野郎はそこまで未来を見ているのか?そうとは思えないんだがな」

アザゼルの問いかけにカテレアは息を吐く。

「彼は力の象徴としての、力が集結するための役を担うだけです。彼の力を借りて一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。そして・・・新世界を私達が取り仕切るのです」

この時一誠は和平の何が気に食わないのか疑問を抱えていた。

「・・・天使、堕天使、悪魔の反逆者が集まって自分達だけの世界、自分達が支配する新しい地球を欲した訳か。それのまとめ役が『ウロボロス』オーフィス」

「カテレアちゃん!どうしてこんな!」

セラフォルーの叫びにカテレアは憎々しげな睨みを見せる。

「セラフォルー、私から『レヴィアタン』の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと!私は正統なるレヴィアタンの血を引いていたのです!私こそが魔王に相応しかった!」

「カテレアちゃん・・・。わ、私は!」

「セラフォルー、安心なさい。今日、この場であなたを殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります。そして、オーフィスには新世界の神となってもらいます。彼は象徴であれば良いだけ。あとの『システム』と法、理念は私達が構築する。ミカエル、アザゼル、そしてサーゼクス。あなた達の時代は終えて・・・」

「下らないな・・・」

カテレアの言葉を遮り、第三者の声が響く。そして勢いよく会議室の扉が破壊され、入ってきたのはマントを身に纏い、デスサイズ・ヘルを右肩に担いだ闇慈だった。初めて闇慈の死神の姿を目にするアザゼル、ミカエル、セラフォルーは闇慈をじっと見ていた。

「貴方は・・・黒衣の死神!!どうして貴方がここに!?私の部下たちが貴方を亡き者にした筈!!」

「俺はあんな連中に遅れを取るほど柔じゃない。それにあいつ等には・・・『自分自身』にやられてもらった。こんな風にな・・・」

闇慈は再び『真紅の魔眼』を発動させ、逆五芒星が刻み込ませると、闇慈の足元の『影』がゆっくりと出てくるとそのままカテレアの顔を掠め、壁に突き刺さった。初めて見る闇慈の技に一誠は疑問の声を上げた。

「な、何だよ!?アンジ。その技は!?」

「これが俺の新しい技・・・[影の支配者]『シャドゥ・ルーラー』だ。自分の視界に存在する『影』を自由自在に操ることが出来る」

「・・・成る程。『自分自身』にやられて貰ったと言うことは私の部下の影を支配して倒したと言うことですか」

「ご名答だ。話は変わるが貴様のさっきの言葉には下らないの一言だな。コカビエルにも言ったが、力で支配した世界に何の価値がある?そして他人の力を借りて、奪われたことに仕返しをする・・・まるで『子ども』だな。そんな奴が世界を管理する一角に入るだと?笑わせてくれるな。いや、寧ろ哀れに思えてくるな。それなら周りのことを良く考えているセラフォルー様の方がレヴィアタンの名前を持つ方が良いと思うがな。貴様はもう、どうしようもない奴だ・・・」

「アンジくん・・・」

セラフォルーは闇慈の言葉が嬉しかったみたいだ。しかし、闇慈がカテレアに対する哀れみの言葉を言った瞬間、魔力弾が闇慈に直撃した。カテレアが闇慈に撃ったらしい。魔力弾は破裂して、闇慈の周りには煙が立ち込めた。

「死神ごときが私に意見するなんて・・・あの世で後悔しなさい」

「アンジ!!なんてことを!!」

リアスが怒りの声を発するが、煙が晴れると何も無かったように闇慈が立っていた。

「どうして!?私の魔力弾は貴方を捉えた筈!!」

「それはこの『マント』のお陰だ。このマントは唯のマントじゃない。魔力を弾く能力がある・・・つまり、魔力を使った技は俺には効かない。名前は・・・そうだな、[AMCマント]。通称『アンチ・マジック・コーティング・マント』とでも言っておこうか」

「良いネーミングセンスしてんじゃねえか、黒衣の死神」

「アザゼルさん。僕には黒神闇慈って名前があります。出来ればそっちで呼んで下さい」

「くっ・・・やはりあなたは我々にとって危険因子の様ですね!ここで消えて貰います!!」

「世界を滅ぼそうとする貴様が言った口か?どう見ても貴様らの方がよっぽど危険なように思えるが?部長。あの人は俺がやります。部長はギャスパーを助けに行ってやって下さい」

「アンジ!?貴方本気で言ってるの!?彼女は旧魔王なのよ!?幾ら貴方がコカビエルを倒した力を持っているとしても一人では・・・」

リアスが闇慈に反論をしたがサーゼクスが言葉を発する。

「リアス。ここは彼に任せよう。私たちはここを守らなければならない」

それにミカエルが続ける。

「そうです。貴女の眷属が捕まっている以上、再び時間を止められてしまう可能性があります。ここは一刻も早く貴女の仲間を救出するべきです」

「お兄様。ミカエル様」

リアスがしばらく考え、闇慈に頼んだ。

「アンジ。ここは貴方に任せるわ。しかしこれだけは約束して頂戴!!死んじゃダメよ!!」

「勿論です!!」

それを聞くと闇慈とアザゼル以外はその場から居なくなり、それぞれの役目を開始した。そして三人は会議室から飛び出し、空に飛び上がった。

「さてと・・・覚悟して貰おうか?カテレア」

「貴方ごとに遅れてはレヴィアタンの名前が廃れてしまいます。貴方を倒し、私こそがレヴィアタンの名前を持つのに相応しいことを証明してあげましょう!!」

それを聞いたアザゼルはここでカテレアに言葉をかけた。

「やっぱりおまえは石頭だな。言葉が陳腐すぎるぜ。はっきり言って傍迷惑だぜ。レヴィアタンの末裔。お前の台詞。一番最初に死ぬ敵役のだぜ?」

「アザゼル!!貴方は何処までもわたしたちを侮辱する!!」

「思ったことを言っただけだ。・・・黒衣の死神。ここは協同戦と行こうぜ?」

「それは心強いな。でも好い加減、俺の事を名前で呼んでくれないか?」

「それはこの戦いで決めてやるよ」

「なら。尚更負けるわけにはいかないな!!」

闇慈とアザゼルが肩を並べ、闇慈はデスサイズ・ヘルを、アザゼルは光の槍を取り出し、身構えた。

「一人増えたことで何も変わりません。すぐに消してあげましょう!!」

「そんな減らず口が何時までも言いえると思うな!戦いを生み出す権化が!!貴様らのようなのが居るから、戦いが終わらないだ!!ここで俺が貴様に・・・『死』を見せてやる!!」
 

 

第四十六話 反逆


「はあああ!!!」

「くっ・・・」

闇慈とアザゼルは協同戦を張って、カテレアに戦いを持ちかけていた。戦闘隊形は闇慈が前衛で突っ込み、アザゼルが後衛で光の槍を次々と飛ばしていた。二人は初めて一緒に戦うのだが戦い慣れしている事が原因なのか息の合った戦闘を繰り広げていた。

「おらおら。死神ばっかに気にしてると俺の槍がお前を串刺しにするぜ?カテレア」

アザゼルはカテレアを嘲笑うかのように次々と光の槍を飛ばした。カテレアは魔力の波動でそれを弾き飛ばすが・・・

「俺の事も気にしないとデスサイズ・ヘルの錆になってしまうぞ?」

今度は魔力を篭めたデスサイズ・ヘルを振りかざしている闇慈がカテレアに斬りかかった。

「し、しまっ・・・」

「止めだぁぁぁ!!!」

闇慈は取ったと思ったが・・・ここで意外な人物からの横やりを受けた。

「はっ!!」

「何っ!?」

闇慈は咄嗟にカテレアの攻撃を中止すると、その横やりをデスサイズ・ヘルで受け止めた。闇慈は離れ、アザゼルと肩を並べるとその人物を確認した。

「・・・どう言うつもりだ?ヴァーリ」

その人物は白い鎧を身に纏った『白龍皇』こと『ヴァーリ』だった。闇慈は人を射殺せる程の鋭い眼光をヴァーリに当て、疑問を問いかけた。

「・・・チッ。ここで反旗するつもりか?ヴァーリ」

「そうだよ。アザゼル」

ヴァーリはアザゼルの言葉は軽く返したが、闇慈にはそれが怒りの引き金となった。

「ヴァーリ!!貴様はカオス・ブリゲートに寝返り、アザゼルや和平派を裏切るつもりか!?」

「裏切り?違うな。俺はあくまで『協力』のつもりだ、黒衣の死神」

「何故そんなことになったのか教えてくれないか?ヴァーリ。まあ粗方検討は付くけどな・・・『オーフィス』か?」

「アザゼル。誰だ?『オーフィス』と言う人物は?」

「カオス・ブリゲートのトップさ。神が恐れたドラゴン・・・[無限の龍神]『ウロボロス・ドラゴン』の力を宿し、最強の座に君臨している者だ」

「ウロボロス・・・だと・・・!?」

世界神話を趣味として読んでいる闇慈はその名前を聞いて驚愕の顔を示した。

「しかし。その人物とこの裏切りになんの関係がある?」

「スカウトされたのさ。アースガルズと戦ってみないか?・・・とね。俺には断る理由はない。自分の力を試してみたいと思っていたからな」

「例えそれが・・・世界を破滅に導くことになってもか!?」

「俺の存在意義は強い奴と戦うこと。それが出来るのなら俺は構わないさ」

「っ!!貴様と言う奴は!!」

闇慈は堪忍袋の尾が切れそうになったがアザゼルが抑えた。ここでギャスパーを連れた研究部の部員たちが戻ってきた。

「闇慈!!」

「イッセー!!ギャスパーを連れ戻すことが出来たんだな」

「ギャスパーが自分の血を受け入れたお陰だ」

「ぼ、僕はイッセー先輩のお陰で変わることが出来ましたぁ」

ギャスパーは一誠を見ながら笑みを零した。それを見た闇慈はホッと心を撫で下ろした。しかし感動の再会もここまでだった。ヴァーリが再び口を開いた。

「丁度良い。お前たちに俺のフルネームを教えてやる。俺は『ヴァーリ・ルシファー』だ」

それを聞いた闇慈を含めた和平派は驚愕の顔を示した。

「俺は死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者だ。しかし、両親は旧魔王の父。そして人間の母との間に生まれた混血児だ」

「だからセイクリッド・ギアを宿してのか!!」

「そう言う事だ、黒衣の死神。それから・・・」

ここでヴァーリはここで一誠に目を向けた。

「お前の事は調べさせて貰った、赤龍帝。お前の両親のこともな」

「だから何だってんだ!?」

「まさにつまらないの一言だな。こんな奴が俺のライバルなのかと思うと落胆よりも笑いが出てしまった。そこで俺は貴様を『復讐者』に変えてやるよ」

(復讐者?・・・何を言うつもりだ?)

闇慈が疑問に思っていたが、ここで想像を絶する言葉が出てきた。

「俺がお前に両親を殺してやるよ。そうすればお前は少しは身の上が上がって面白くなるだろう。どうせお前の両親は歳を取って、普通に死んでいく。大して変わりはないだろう?」

「貴様・・・ふざけるなぁぁぁ!!!」

闇慈はヴァーリの身勝手で外道的な言葉に堪忍袋の尾が完全に切れ、切りかかろうとしたが・・・

「殺すぞ・・・この野郎」

一誠の怒りは闇慈の数倍あった。

「確かに俺の両親はお前にとって軟弱な存在かもしれねえ。けどな・・・俺をここまで育ててくれた最高の両親なんだよ!!てめえの好き勝手で両親を殺されてたまるかぁぁぁぁぁ!!!」

『Welsh Dragon Over Booster!!!!』

イッセーの叫びと共に[赤龍帝の鎧]『ブーステッド・ギア・スケイルメイル』が発動し、イッセーはヴァーリに飛び掛った。

「イッセー・・・」

「黒衣の死神。ヴァーリは赤龍帝に任せるぞ!!俺たちはカテレアの相手をしなきゃなんねえからな」

「話は終わりましたか?私たちもこんな戦いを終わらせ、『オーディン』にも動いて貰わなくてはなりません」

(もうここまで来たら何も驚かないな・・・北欧神話の最高神か)

「おいおい。横合いからオーディンに奪わせるつもりか?あまり俺の楽しみを奪うなよ?・・・消すぞ」

アザゼルは持っていた光の槍の他に短剣を所持していたが、それがひかり始めた。

「それは・・・セイクリッド・ギアなのか?アザゼル」

「そう言うこった。と言っても人工神器だけどな・・・禁手化!!」

光がアザゼルを包み、それが晴れると黄金の鎧を身に纏い、右手には巨大な光の槍を持っているアザゼルがいた。

(何て力の大きさだ・・・今の僕でも勝てるかどうか)

闇慈はアザゼルの力に少し冷や汗を流した。

「まさかそれほどの力を有していたなんて・・・だとしても!!私は偉大なる真のレヴィアタンの血を引く者!カテレア・レヴィアタン!!忌々しい堕天使に負けはしない!!」

カテレアは青黒いオーラを身に纏いアザゼルに飛び掛った。そしてアザゼルも光の槍を持って対応したその刹那・・・カテレアから鮮血が飛び散った。

「ぐっ・・・ただではやられません!!」

カテレアは自身の腕を触手のように変えるとアザゼルの左腕に巻きつけた。そして何やら術式のようなものが表れた。

「あれは自爆用の術式!!」

リアスは驚愕の声を上げた。アザゼルは触手を離そうとしたが取れないようだった。

「この触手は私の命を糧に作ったもの。斬る事なんて不可能!!」

「お前は俺だけしか見えてないのか?」

「何を・・・!?」

カテレアが疑問の声を上げた瞬間・・・アザゼルとカテレアを繋いでいた触手が見事に真っ二つになった。闇慈は魔力を篭めたデスサイズ・ヘルで叩き斬ったのだ。

「そんな・・・私の触手が!!」

カテレアが声を張り上げた瞬間に、腹部にアザゼルの光の槍が・・・そして胸部から闇慈のデスサイズ・ヘルの刃が突き刺さり、カテレアはそのまま霧散してしまった。

「「チェックメイトだ」」

アザゼルと闇慈はそれぞれの得物をかざし、カツンとぶつけ合った。
 

 

第四十七話 終決

 
前書き
今回は後書きにお知らせがあります!!

では、どうぞ!! 

 

「すまねえな。お陰で助かったぜ」

「気にすることはない。困った時はお互い様だ、アザゼル」

「ふっ・・・そう言ってくれると心に染みるぜ、黒神闇慈」

アザゼルと闇慈が和んでいると、激突するような音が聞えてきた。そして闇慈が見てみると一誠は禁手のまま、左篭手から剣のようなものを伸ばして突っ込んでいたが、ヴァーリはそれを意図も簡単にかわしてしまう。
この剣は『アスカロン』。この剣は[龍殺し]『ドラゴン・スレイヤー』の力を持っており、和平会議が行われる2,3日前にミカエルが一誠と出会い、渡したものだった。しかし一誠に剣術の心得はなかったため突っ込むことしか出来なかった。

(あれじゃ簡単に避けられてしまう。イッセーは祐斗に剣を習ってなかったのかな?)

しかし一誠はそのアスカロンを篭手の中にしまった。

(っ!?何をするつもりなんだ?イッセーは)

「ドライグ!収納しているアスカロンに力を譲渡だ!!」

『承知!!』

『Transfer!!』

一誠の篭手に力が譲渡され、アスカロンを収納した籠手でヴァーリに鉄拳を打ち込んだ。ドラゴン・スレイヤーの威力が発揮され、『白龍皇の鎧』が呆気なく壊れ、ヴァーリは地面に叩きつけられた。

「これがドラゴン・スレイヤーの威力!?相手の鎧が紙みたいじゃねぇか!」

(なるほど!!アスカロンの力を剣ではなく、篭手に注ぎ込んだのか!!剣に慣れてないイッセーでも殴ることには技術は必要ない!!考えたね、イッセー)

しかし一誠が殴った白龍皇の鎧もすぐに修復されて行った。
ここで一誠の目に何かが入ったらしくその場に行き、何かを拾い上げた。それは白龍皇の胸元にはめられていた『宝玉』だった。破損した中に胸部も含まれていたが、宝玉もその修復と一緒に新たに作り出されていた。

(あれは白龍皇の宝玉?)

闇慈が疑問に思っていると一誠が何か思い付いたのか行動に出た。一誠はその宝玉を左手に持つと逆の右手に埋め込もうとしていた。

(なっ!?何をやっているんだ!?イッセーは!!あんな事をしたら反発するに決まってる!!)

闇慈の考えも空しく、一誠は右手に宝玉を埋め込んだ。そしてオーラが右半身を包み込んだ瞬間・・・

「うがああああああああああああああああああああああああ!!!」

一誠の悲鳴が学園中に響き渡る。

「ぬがああああああああああああああああああ!!!」

『ドライグよ、我らは相反する存在だ。それは自滅行為に他ならない。こんな事でお前は消滅するつもりなのか?』

『アルビオンよ!お前は相変わらず頭が固いものだ!我らは長きに亘り、人に宿り争い続けてきた!毎回毎回同じ事の繰り返しだった』

『そうだ、ドライグ。それが我らの運命。お互いの宿主が違ったとしても戦い方だけは同じだ。お前が力を上げ、私が力を奪う。神器をうまく使いこなした方がトドメを刺して終わりとなる。今までもこれからも』

『俺はこの宿主・・・兵藤一誠と出会って1つ学んだ!バカを貫き通せば可能になる事がある、とな!』

「俺の想いに応えろぉぉぉぉ!!!」

『Vanishing Dragon Power is taken!!』

一誠の右手が真っ白なオーラに包まれ、白い籠手が出現した。

「へっへへ・・・[白龍皇の籠手]『ディバイディング・ギア』ってところだな」

(イッセー・・・君って可能性の塊なの!?)

闇慈は一誠の可能性に驚愕の顔を浮べていた。それはヴァーリも同じことだった。

『あり得ん!こんな事はあり得ない!』

それにつられ、アルビオンが驚愕の声音を出す。しかしここでヴァーリが拍手をし、口を開く。

「面白い。なら、俺も少し本気を出そう!俺が勝ったら、キミの全てとキミの周りにある全ても白龍皇の力で半分にしてみせよう!」

『Half Dimension!』

宝玉から音声が流れ、まばゆいオーラに包まれたヴァーリが木々へ手を向ける。すると、木々が一瞬で半分の太さになってしまった

「何だ!?何が起こったんだ!?」

一誠は何が起こったのか分からずじまいだった。ここでアザゼルが口を開く。

「赤龍帝。お前にも分かりやすい様に説明しよう」

(・・・何か嫌な予感しかしない)

闇慈は心配な念を心に抱き、アザゼルの説明を聞いた。

「あの能力は周囲のものを半分にしていく。つまりリアス・グレモリーのバストも半分になるってことだよな?黒神闇慈」

「俺に振るな!!・・・しかし。アザゼルの言っていることも分かるな。見る限りあのオーラに当たったもの全てが半減されていた・・・つまりリアス先輩のも・・・って何を言わせるんだ!!」

「自分で答えてるだけじゃねえか」

闇慈は赤面させながらアザゼルに突っ込みをいれる。

「・・・」

イッセーは首だけを動かしてリアスへ視線を向ける。

・ ・ ・ ・ ・ ・

おっぱい が 半分 に なる?

部長 の おっぱい が 半分 に なる?

・ ・ ・ ・ ・ ・

「ふ・・・」

「イッセー?」

「ふざけんなァァァァ!!!」

一誠の怒りが爆発し、咆哮をあげる。

「貴様ぁぁぁ!部長のぉぉぉ!俺の部長のおっぱいを半分の大きさにするつもりかァァァァァァァアアアアアアアアアアア!!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

「許さねぇ!!絶対にてめぇだけは許さねぇ!!ぶっ倒してやる!!ぶっ壊してやる!!ヴァーリィィィィィィィィィィィィ!!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

「アッハッハッハッ!!なんだよそりゃ!?マジかよ!主さまの胸が小さくなるかもしれないって理由だけでドラゴンの力が跳ね上がりやがった」

「お前のせいだろう・・・アザゼル」

闇慈はアザゼルを細い目で見ていた。

「良いじゃねえか。結果的にパワーがアップしたんだからよ」

「まあ・・・そうだな」

一誠は神速に近いスピードでヴァーリに詰めより・・・

「これは部長のおっぱいの分!」

腹に右の鉄拳を入れた。

『Divide!!』

それと同時にディバイディング・ギアの力で、ヴァーリの力を半分にした。威力に耐えられずヴァーリは吐瀉物を口から吐き出した。

「朱乃のおっぱいの分!」

続いて顔面に鉄拳を打ち込み、兜を破壊する。

「これは成長中のアーシアのおっぱいの分!」

今度は背中に付いている噴射口を破壊した。

「ゼノヴィアのおっぱいの分!」

空中に蹴り上げ・・・

「そしてこれが・・・小猫のロリおっぱいの分だぁぁぁ!!!」

止めに猛スピードを乗せたタックルをかました。ヴァーリは地面に叩きつけられ、吐血した。しかしヴァーリは笑いながらゆっくりと立ち上がると、何やら呪文のようなものを唱え始めた。

「『我、目覚めるは、覇の理に・・・』」

『自重しろヴァーリ!!我が力に翻弄されるのがお前の本懐か!?』

アルビオンが怒りながらヴァーリを止めようとする。一誠は今のに飽きたらずにトドメの一撃を放とうとしたが、その間に三国志の鎧を着た男が入り込んできた。

(この男もカオス・ブリゲートの仲間か!?そして・・・この力は!?)

「ヴァーリ、迎えに来たぜぃ」

美猴(びこう)か。何をしに来た?」

「それは酷いんだぜぃ?相方がピンチだっつーから遠路はるばるこの島国まで来たってのによぅ?他の奴らが本部で騒いでるぜぃ?北の田舎アース神族と一戦交えるから任務に失敗したのなら、さっさと逃げ帰ってこいってよ?カテレアはミカエル、アザゼル、ルシファーの暗殺に失敗したんだろう?なら監察役のお前の役目も終わりだ。俺っちと一緒に帰ろうや」

「な、何だよ。お前は!!」

二人の話にイッセーが割って入った。その問いにはアザゼルが答えた。

「闘戦勝仏の末裔だ」

その言葉に闇慈は驚愕の顔を示し、声を発した。

「『闘戦勝仏』!?まさか・・・西遊記の『孫悟空』か!?」

「えええええええええええええええっ!?」

「正確には孫悟空の力を受け継いだ猿の妖怪だ。まさかお前までカオス・ブリゲードに入っているとは世も末だな」

「俺っちは仏になった初代と違うんだぜぃ。自由気ままに生きるのさ。俺っちは美猴。よろしくな、赤龍帝。そして黒衣の死神」

美猴は手元に棍を出現させ、地面に突き立てると、地面に黒い闇が広がり、ヴァーリと美猴を沈ませていく。恐らく闇に紛れて撤退しようとしているのだろう。それを見た一誠は逃がすまいと捕まえようとするが、禁手が終了し、疲労感に襲われた。
それを見た闇慈は代わりに二人を追おうとしたが、闇はすぐに晴れ、そこにヴァーリと美猴の姿は無かった。

西暦20××年7月・・・

天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織[神の子を見張る者]『グリゴリ』総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファー、三大勢力各代表のもと、和平協定が調印された。以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ・・・。

この和平協定は舞台になった駒王学園から名を採って「駒王協定」と称される事になった。

~~~~~~~~~~~~

「てな訳で、今日からこのオカルト研究部の顧問になる事になった。アザゼル先生と呼べ。もしくは総督でも良いぜ?」

駒王協定が成立し、数日が経ったある日。着崩したスーツ姿のアザゼルがオカルト研究部の部室にいた。リアスは額に手を当て、困惑しながら言う。

「・・・どうして、あなたがここに?」

「ハッ!セラフォルーの妹に頼んだら、この役職だ!まぁ、俺は知的でチョーイケメンだからな。女生徒でも食いまくってやるさ!」

「そんなことをしたらすぐに懲戒免職ですよ!?と言うより、そんなことをやっていたから堕天使になったんじゃないんですか!?」

「その通り。良く分かったな?黒神闇慈」

(当たってるんですか・・・)

闇慈はリアス同様に頭を抱えていた。アザゼルはふと朱乃を見ると・・・

「まだ俺たち・・・いや。バラキエルが憎いか?」

「許すつもりはありません。あの人のせいで母は死んだのですから」

「・・・そうか。でもな、あいつは悪魔に下ることを許していたぜ?それもリアス・グレモリーの眷属だったからだぜ?それ以外だったら、バラキエルは許しているか俺も分からなかったぜ?」

朱乃はその言葉に返すことも出来ずに、ただ複雑そうな表情を浮べていた。ここで視線が一誠に向けられた。

「赤龍帝・・・イッセーで良いか?イッセー。お前はハーレムを作るのが夢らしいな?」

「えっ!?そ、そうっスけど?」

「なら。俺がハーレムを教えてやろうか?これでも過去数百回に渡ってハーレムを築いてきた男だぜ?」

それを聞いた一誠は目が飛び出そうなくらい見開き驚愕の表情を浮べた。

「マ、マジっスかぁぁぁぁ!?」

「それにお前は童貞だろう?ついでに女の事も教えてやるよ。教えて欲しいか?」

「勿論ッス!!」

「ならこれから、童貞卒業ツアーにでも出かけるか。黒神・・・いや。アンジもついでに付いて来るか?」

「何でそこで僕に誘いをかけるんですか!?僕が行くわけ・・・」

闇慈が言い終わろうとするとアザゼルが右腕で闇慈の頭をヘッドロックの要領で引き寄せると、ヒソヒソと闇慈に語りかけた。

「お前だって興味があるんだろう?クールになるのはかまわねえけどな、そんなんばっかだと置いていかれるぞ?」

「そ、それは・・・」

闇慈が困惑していると小猫が話の内容が聞えていたのか、すぐにアザゼルと闇慈を引き離し、闇慈にくっ付いた。

「・・・アンジ先輩を誘惑しないで下さい、アザゼル先生」

「小猫ちゃん・・・」

「つれねえなぁ。んじゃ、イッセーと俺だけで行くとするか」

「ちょっと待ちなさい、アザゼル!!イッセーに変なことを吹き込まないでちょうだい!!」

リアスもイッセーを引き離し、自分の元に引き寄せた。

(はあ・・・とんでもない人が入ってきたな。前途多難だよ)

駒王学園 一学期 終業

駒王学園高等部 オカルト研究部

顧問教諭/アザゼル(堕天使総督)

部長/リアス・グレモリー(キング)三年生 残る駒 『ルーク』一個

副部長/姫島朱乃(クイーン)三年生

部員/塔城小猫(ルーク)一年生

木場祐斗(ナイト)二年生

ゼノヴィア(ナイト)二年生

アーシア・アルジェント(ビショップ)二年生

ギャスパー・ヴラディ(ビショップ)一年生

兵藤一誠(ポーン)二年生

黒神闇慈(助っ人)二年生
 
 

 
後書き

今回もこの小説を手にとっていただき、ありがとうございます。

次回からはしばらく『闇慈が別の世界に飛んでしまったら!?』と言うお試しの閑話を書こうと思っています。

もしそれらが好評だった場合は別の本で続きを投稿して行こうと思っています。

みなさんの声。よろしくお願いします!!

では!!失礼します!! 

 

閑話1 ゼロと死神

 
前書き
時間軸は三会談が行われる前に闇慈が行った修行期間中の話です。何処に飛ぶかは題名と内容でお楽しみ下さい!! 

 

「はあ・・・はあ・・・」

闇慈は白龍皇やカオス・ブリゲードに対抗すためにデスから修行を付けて貰っていた。今は夜中で自主練習を行っていた。

(くそっ・・・『シャドウ・ルーラー』の発動がまだ曖昧だ。必ず発動させるようにしないと)

闇慈は再び『真紅の魔眼』から逆五芒星を瞳に刻み込み、『影』を操ろうとしたが『影』が言うことを聞かず、逆に闇慈に襲い掛かってきた。闇慈はそれを避けると普通の眼に戻した。それに伴い疲労感が襲った。

「はあ・・・何がいけないんだ?もう一回!!」

もう一度挑戦しようとすると・・・目の前に緑色の鏡のようなものが現れた。

「何だ?これは?」

闇慈はその鏡に近づき、なんなのか確かめるように観察し始めた。そして何も異常はないと判断した闇慈は自分の右人差し指でその鏡のようなもの触れた瞬間・・・

ガバッ!!

「な、なにっ!?」

鏡のようなものが闇慈の右腕に喰らい付くかのように伸びてきた。闇慈はどうにかしてそれを外そうとしたが・・・

「くそっ!!取れない!!うわああぁぁ・・・」

闇慈の努力も空しく闇慈はそのまま鏡の中に吸い込まれていった。

~~~~~~~~~~~~

トリステイン魔法学校では二年生に進級するための『使い魔召還』の儀式が執り行われていた。

「これで全員ですか?」

教師のコルベールが生徒に確認をとるが・・・

「いえ。ミスター・コルベール」

ここで『サラマンダー』を召還した赤髪でグラマーな生徒『キュルケ』がコルベールに咎めをかけた。

「まだ、ミス・ヴァリエールが残っていますわ」

キュルケの視線がピンクブロンドの髪をした小柄な体格の生徒『ルイズ』に目を向けた。

「ではミス・ヴァリエール」

「は、はい」

ルイズは持っている杖をカタカタと震わせ始めた。それもそのはずだ。ルイズは今までに魔法を成功させたためしがなかったのだ。何時も何も反応しなかったり、爆発を起こすなど、成功率『ゼロ』だった。それにより周りからは『ゼロのルイズ』と罵りを受けていた。

(お願い・・・!!答えて!!)

ルイズは心に呼びかけながら、杖を回し、呪文を唱え始めた。

「宇宙の何処かにいる私の僕よ!!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!!我が導きに答え、我の前に姿を現せ!!」

何とも独特な詠唱だった。そしてその詠唱が終わると・・・

ドガァァァァン!!!

爆発が起きた。しかし今回はこれだけでは終わらなかった。煙が晴れるとそこには・・・

「・・・」

黒髪の長身の男子が気を失って横たわっていた。そのことに周りの生徒が驚いているようだったが、召還した本人が一番驚いているらしく眉毛をピクピクと震わせていた。

「こ、こんなのが神聖で美しく。そして強力な・・・」

ここでルイズはその男子をじろじろと見始めた。

(・・・でも結構キレイな顔をしてるわね)

~~~~~~~~~~~~

「ぐっ・・・」

闇慈は突然のことに気を失っていたらしく。ハッと目覚めた。

「ここは・・・」

「アンタ・・・誰?」

「えっ・・・」

闇慈が声のする方を見るとピンクブロンドの髪をした少女がいた。

「貴女は?」

「それはこっちの台詞。アンタは何者?」

「僕は・・・(見たところ外国の女の子だよね。なら)アンジ・クロガミ」

「そう。それでアンタはどこから来たの?」

「僕は・・・」

闇慈は答えようとするとしたが周りを見回してみると、周りには何やら様々の生物をそれぞれ持っている生徒が多く居た。そしてその生徒たちは闇慈を見たとたんに笑いを飛ばし始めた。

「さ、流石は『ゼロのルイズ』!!期待裏切らない結果だわ!!」

「おいおい。魔法が使えないからって平民を連れてきたんじゃないのか?」

(『ゼロのルイズ』?)

その言葉に疑問を持っていた闇慈だが『ゼロのルイズ』と呼ばれている少女が周りに言い訳を始めた。

「ちょっと失敗しただけよ!!ミスター・コルベール。もう一度召還させて下さい」

少女は髪の毛の面積が少ないコルベールと言う先生らしく人物に申し出たが・・・

「それは出来ません。この儀式は神聖なもの。やり直しなど出来ません」

断られてしまった。しかしさらに声を上げる。

「しかし。『平民』を使い魔にするなんて聞いたことがありません!!」

(僕のことを『平民』扱い・・・つまりここは昔の外国か何処かなの?)

「早くしなさい。じゃないと君は本当に退学になってしまいますぞ!!」

(退学?どう言う事だ?)

闇慈が疑問に思っていたが、少女は覚悟を決めたのか闇慈と向き合った。

「感謝しなさいよね・・・貴族にこんなことされるなんて一生無いんだから」

「えっ・・・」

そう言うと少女は闇慈と目線をあわせるように屈むと・・・

「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。五つ力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」

その少女は闇慈の顔に自分の顔を近づけ・・・

「えっ・・・ちょっ・・・ん」

「ん・・・」

口付けを交わした。闇慈は突然のことに眼を見開いていた。そしてゆっくりと離れた。それと同時に・・・

「ぐっ・・・!?」

闇慈の左手に痛みが走り、そしてそれが収まると左の手の甲にルーンが刻まれていた。

「ふむ。これでコントクラクト・サーバントは無事終了ですな。しかし見たことが無いルーンですな。スケッチさせてもらえませんか」

「ええ。どうぞ」

スケッチが終わると儀式は終了したのか、みんなは空を飛びながらその場を離れていった。

「あれって・・・魔法?」

「そうよ」

「僕たちは飛んで戻らなくて良いの?」

闇慈はルイズに尋ねたが、それを聞くと俯いてしまった。

「やりたくても出来ないのよ・・・」

「ルイズさん。もしかして『ゼロのルイズ』と言うのはもしかして・・・」

「そうよ!!」

そう言うとルイズは闇慈に鋭い目線を送った。

「私は何をやっても出来ない!!貴族なのに魔法も使えない!!そうやって・・・そうやって。周りからバカにされて、くやしくて」

そう言っている間にルイズは段々涙声になって行った。その事を聞いた闇慈はルイズに・・・

「空・・・飛んでみたい?」

「出来るわけないでしょう!?アンタに・・・平民に出来るわけがないでしょう!?」

「みんながいなくなるまで待ったら、奇跡を見せてあげる」

そう言うと闇慈は他の生徒が居なくなることを確認すると・・・

「もう良いかな。セイクリッド・ギア!!発動!!」

「な、何!?」

闇慈が煙で纏われると髪が黒髪から銀髪に変わり、ボロ衣のオーバーマントを羽織っている姿になった。

「な、な・・・」

ルイズはその姿に呆然としていたが、闇慈は構わずにルイズを抱きかかえた。

「ちょ、ちょっと何するのよ!?///」

「さあ・・・奇跡を見せてあげる」

そう言うと闇慈は大小4枚の漆黒の翼を具現させると、大空に向かって羽ばたいた。

「・・・」

ルイズは自分の今の状況を確認すると、段々笑顔になって行った。

「どうかな?はじめて空を飛んだ気分は?」

「な、なんとも言えないわね。こんな力があったのならみんなの前で出せばよかったのに///」

ルイズは闇慈のキレイな顔立ちによる笑顔で顔を赤らめながら、背けてしまう。

「でも。良い物でしょう?飛ぶことも」

「そ、そうね。確か・・・アンジだったわね。アンタ一体何者なの?」

「それはルイズさんの部屋に言ってから話すよ。部屋は何処?」

その後ルイズの案内で部屋にたどり着いた。

 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?

みなさんの声。是非聞かせて下さい!!

指摘は大いに結構ですが、誹謗中傷はやめてください。
 

 

閑話2 使い魔=死神


闇慈とルイズはフライト程ではないが、少しの浮遊時間を楽しむとルイズの部屋にやってきた。

「さあ。アンタが何者なのか、話してくれるわよね」

ルイズはイスに腰掛け、闇慈はその向かい側に私服姿でイスには座らずに、立ったまま向き合った。

「じゃあ、ルイズさんは・・・」

「もう『さん付け』しなくて良いわよ」

「そう?じゃあ、ルイズは『天使』や『悪魔』や『堕天使』って知ってる?」

「当然じゃない。魔法は使えなくてもそれ位は知ってるわよ」

「じゃあ『死神』は?」

「死神・・・確か『魂の管理者』で『死の象徴』だと聞いてるわ」

ルイズは顎を自分の片手に乗せ、考えていた。闇慈はここで自分の正体を話すか疑問に思った。

(・・・今更だけど、話すべきかな?話してルイズが怖がったり、拒んだりしないかな?でもあの姿も見せたし、言い逃れは出来ないよね)

「それで、それがどうしたのよ?」

「単刀直入に言うよ。僕は・・・『死神』だ」

「なん・・・ですって・・・」

ルイズは闇慈の言葉に驚きを隠せないようだった。

「アンジが死神って・・・でも私のイメージと全然違うわよ!?死神ってもっとこう・・・怖いものかと思ってたのに!!」

「この姿は普段の姿。そしてさっきの空を飛んでいる時の姿が死神の姿なんだよ。つまり、僕は自分の意思で変わることが出来るってこと」

「でも信じられないわ!!それに死神なら鎌みたいなものも持ってるはずでしょう!?」

ルイズの問いかけに、闇慈はデスサイズ・ヘルだけを取り出し、ルイズに見せた。

「これのことかな?これでも信じられないなら・・・」

闇慈はそのまま姿を消した。

「えっ・・・!?ど、何処にいるの!?」

「ここだよ」

ルイズがあわてて横をみると闇慈が何も無いように立っていた。

「これで信じてもらえるかな?」

「そ、そうね。これだけ見せてもらって信じないわけには行かないわね」

「ありがとう。じゃあ今度は僕が質問していいかな?僕はどうしてここに飛ばされたの?」

「アンジは私に召喚されたのよ、使い魔としてね」

「なるほど」

闇慈のあまりに無神経な反応にルイズは目を点としていた。

「あまり驚かないのね。普通なら誰でも驚くわよ?」

「まあ慣れているって言うか。僕も使い魔を持っているからね。出ておいで、黒羽」

闇慈が呼びかけると黒い光が集まって行き、それが段々形になっていくと闇慈の使い魔、[八咫烏]『ヤタガラス』の[黒羽]『コクウ』がカラスの姿で出てきた。しかしルイズも驚くことはなかった。

「あれ?驚かないんだね?」

「驚かないわよ。アンジが死神だったら、使い魔位持っている事は何となく分かってたわ」

「理解が早くて助かるよ。黒羽、ルイズに自己紹介して?」

「何言ってるの?鳥が自分で自己紹介なんて出来るわけ・・・」

「初めまして、ルイズ様」

「えっ・・・?」

黒羽はもう一つの姿。女性の人間になって、自己紹介をしようとしたが、ルイズは間抜けた声をあげ、黒羽を見た途端・・・

「えええええ!?」

ルイズの驚愕の声が部屋に響き渡った。

「ど、どどど、どうして!?今ここにアンジの鳥がいたわよね!?」

「彼女が僕の使い魔、黒羽だよ。彼女は自分の姿を人間に変える事も出来るんだ」

「驚かせて申し訳ありません、ルイズ様。闇慈様からも紹介があった通り、私は使い魔の『黒羽』と申します。どうぞお見知りおきを」

「え、ええ。よろしく」

「わざわざ、ゴメンね。黒羽」

「いえ。闇慈様の頼みでしたら何時でもお呼び下さい」

そう言うと黒羽はその場から消えるように居なくなった。

「アンジは使い魔から信頼されてるのね。うらやましいわ」

「そうでもないよ。話は変わるけど、どうやらここは僕のいた世界じゃないと思う」

「っ!?どう言う事?」

「魔法や使い魔は僕の元居た世界には存在していたけど、空を飛んでいる時に見たんだけど『月が二つ』あった。僕の世界には月は一つしか存在しない」

「信じられない話ね。でも信じてあげるわよ」

「ありがとう、ルイズ」

闇慈はルイズに優しく微笑むとルイズは顔を少し赤らめた。

「でも私に召喚されたからには使い魔として働いて貰うわよ」

「どんなことをすれば良いのかな?」

「基本的には家事ね。掃除・洗濯・雑用って所かしら」

「問題ないよ」

「そう。じゃあ今日はもう遅いから寝ましょう」

ルイズはパジャマに着替えようとしたが、自分の使い魔だが、男性で美形の闇慈がいることを気にしたのか、闇慈に着替えを見ないように促すと、闇慈は顔を少し赤らめ、後ろを向いた。
そして着替えが終わると、ルイズはベッドに入った。闇慈はベッドの隣に敷いてあった藁の寝床に座り、壁にもたれかかった。

「ごめんなさいね、アンジ。藁しかなくて」

「気にすることはないよ。でもちょっと寒いかな、毛布を一枚もらえる?」

そう言うと闇慈はルイズから毛布を貰うとそれを身体に包んで、再びもたれかかった。ここで明日の朝なにをすればいいか確認をとった。

「ルイズ。明日の朝の仕事はなにかある?」

「私の着替えを用意しておいて、そして起きるのが遅かったら私を起こして頂戴。着替えはそのクローゼットの中に入ってるわ。じゃあお休み、アンジ」

「了解。そしてお休みなさい・・・ご主人様」

「///」

そう言っている間に二人は意識を手放した。
 

 

閑話3 メイドと死神


闇慈がルイズに召喚された翌日。闇慈はルイズより早めに起床すると、ルイズから言われたとおり着替えを用意して、時間を待っていた。そして7時を廻り、流石に起こさないと遅れてしまう時間帯になった。闇慈はルイズの右肩を優しく叩き、ルイズを起こそうとした。

「ルイズ?そろそろ起きないと遅刻してしまうよ?」

その呼びかけにルイズは背伸びをしながら回りを確認すると・・・

「アンタ・・・誰?」

まだ寝ぼけているのか、目を擦りながら、そう呟いていた。

「僕はルイズの使い魔だよ。そして昨日、遅れそうになったら起こしてって頼んだでしょう?」

「・・・そうだったわね。昨日召喚したんだった」

ルイズが完全に目を覚まし、ベッドから降りたことを確認すると、着替えの制服を渡そうとしたが・・・

「アンジ。私に着せてちょうだい。下僕がいる場合、貴族は自分で服を着ないの!!ほら、早くしなさい!!」

「あはは・・・分かりました、ご主人様」

闇慈はルイズの我が儘っぷりに苦笑すると、闇慈は上半身の制服を丁寧にルイズに着せた。下半身の制服は流石に自分で着た様だった。そしてそれが終わると朝食に食堂に行こうとしたが闇慈が引き止めた。

「待って、ルイズ。寝癖がまだついてるよ。鏡台に座って?整えてあげる」

「そ、そう。中々、気が利くじゃない」

ルイズが鏡台の前に座ると、闇慈が鏡台のそばにあったクシを取って、ルイズのピンクブロンドの髪を整え始めた。ルイズは顔には出さなかったが、心の中ではタジタジしていた。自分の髪は自分で整えるか、屋敷に居る時はメイド。つまり『男性』から髪を整えて貰ったことがなかった。

「ルイズの髪って凄く綺麗でツヤツヤしてるよね」

「あ、当たり前じゃない。そんなことはどうでも良いから早く手を動かしなさい!!」

「はいはい」

(そう言えば、私の髪を褒めてくれた男性ってアンジが初めてよね?・・・ってなに意識してるの!?彼は私の使い魔それ以外なんでもないんだから!!)

ルイズが一人で考えている間に、調髪も終わり、食堂に移動することにした。

~~~~~~~~~~~~

食堂の入り口に辿りついたのは良いが、やはり使い魔を中に入れることは出来ないみたいだった。そこでルイズが厨房の人たちに頼み、厨房で闇慈の賄いを用意してくれることになった。

「ごめんね、ルイズ。僕のために」

「別に感謝されることじゃないわ。使い魔の管理は主人である私の義務なんだから」

「それでも、ありがとう・・・だよ」

「ふ、ふん。早く厨房に行きなさいよ」

「うん。じゃあまた後でね」

闇慈はルイズと一旦別れを告げると厨房に向かって歩き始めた。

~~~~~~~~~~~~

「おいしい朝食、ありがとうございました、マルトーさん」

「な~に。どうせ貴族の連中のあまりもんだ。気にするな」

闇慈は厨房で洋風の朝食を厨房の料理長の『マルトー』に食べさせてもらった。

「しかし。おめえさんも大変だなぁ。貴族の使い魔として召喚されるんだからよ」

「でもルイズはそんなに悪い娘ではないと思うので、それに人のために動くって何だかやる気が出るって言うか・・・」

「前向きな兄ちゃんだなぁ。でもそう言う心がけは大したもんだぜ」

ここで闇慈は食事を取らせてもらうことのお礼としてマルトーにこんなことを申し出た。

「そうだ。マルトーさん。僕にここの厨房の手伝いをさせて貰えませんか?」

「手伝いをか?それは願ってもねえ事だが。良いのか?」

「ルイズの許可も取ってきますから。是非お願いします!!」

闇慈は頭を下げて、マルトーに頼むと・・・

「よし!分かった!おめえのご主人の許可が下りたら、ここの手伝いをさせてやろう」

「ありがとうございます!!」

闇慈とマルトーが話していると、メイド服を着ている一人の黒髪の女の子が厨房に入ってきた。

「マルトーさん。注文の・・・この人は何方ですか?」

「シエスタ。丁度良かった。もしかしたらここの手伝いをして貰うことになるかもしれねえ奴だ」

「初めまして。僕はアンジ・クロガミ。ルイズの使い魔をやっている者です」

「ああ。貴方がミス・ヴァリエールの使い魔さんなんですね。私はここでご奉仕させてもらって『シエスタ』と言います。よろしくお願いします」

「その口調からすると僕の事は知れ渡っているみたいだね?」

「はい。平民が使い魔として召喚されたって学園中に噂になっていますよ、アンジさん」

「なるほどね。ここで手伝うことになったらよろしくね?シエスタ」

「はい!よろしくお願いします」

挨拶を交わすと闇慈はマルトーとシエスタに別れを告げ、ルイズとの待ち合わせの場所である食堂の入り口へと急いだ。そこに付くとルイズがもう食堂から出てきて、両手を腰に当て、まだかまだかと待っているようだった。

「ゴメン!ルイズ!遅くなったよ」

「遅い!!主人より遅れてどうするの!!」

「す、スミマセン!!」

闇慈はルイズのあまりの怒り様に言葉も敬語になり、頭を下げて謝った。

「・・・今度遅れたら、ご飯抜きにするわよ?」

「わ、分かったよ。そう言えば今日はルイズの授業はないの?」

「今日は二年生はお休み。召喚した使い魔とのコミュニケーションを取るために過ごす日よ」

「なるほどね・・・ん?」

「ギューー」

闇慈が何かに気付き、その方を向くと全長2mはある『サラマンダー』が闇慈の足元にいた。闇慈は一瞬何かと身構えたが大人しいことに気付くとしゃがみ込み、優しく頭を撫でてやった。

「君は、サラマンダー・・・かな。」

「ギューー」

「君のご主人様は何処にいるの?」

「あら。フレイムが初見の人に懐くなんて」

声がした方を見ると、赤髪でグラマーな生徒、キュルケが立っていた。

「ねえ、ルイズ。貴女、そこらへんにいる平民を連れてきたの?爆発で上手くごまかして」

「違うわよ!!それにアンジはただの平民じゃないわ!!彼は・・・」

ルイズが闇慈を『死神』だと言い切る前に、ルイズの口を慌てて塞ぎ、キュルケに背を向け、小さな声で話しを始めた。

「ちょ、ちょっと!!何するのよ!?」

「ゴメン、ルイズ。僕が死神ってことはしばらく内緒にしてもらえるかな?この事が公になれば大事になりかねない」

「・・・考えてみればそうね。分かったわ」

話が終わると再び、キュルケと向き合った。

「どうしたの?彼は何なの?」

「僕はただの平民ですよ。そしてこの子がサラマンダーだと言うのは本で読んだことがあって、それに当てはめただけですよ」

「そう。やっぱり『ゼロのルイズ』はお似合いよね?」

キュルケがルイズを再び、『ゼロ』と呼び始めたが、闇慈がここで質問する。

「貴女は今、ルイズの事を『ゼロのルイズ』と言いましたよね?」

「ええ。そう言ったわよ?」

「なら。これは何ですか?」

闇慈はルイズを自分の背後に周らせ、自分の左手に刻まれた使い魔の『ルーン』をキュルケに見せた。

「何って・・・使い魔のルーンじゃない。それがどうかしたの?」

「どんな形であれ、ルイズは僕を召喚し、契約を行った。それは・・・魔法を成功させたことじゃないんですか?」

「そ、それは・・・」

「彼女が魔法を成功させた事はこのルーンが何よりの証拠です。これでもう、ルイズのことは『ゼロのルイズ』じゃありませんよ?」

「アンジ・・・」

ルイズは闇慈の言葉が嬉しかったのか、少し顔を赤くし、闇慈の私服を軽く握っていた。

「・・・貴方ってそんな考え方をするのね。気に入ったかも。貴方の名前は?」

「アンジ・・・。アンジ・クロガミです」

「アンジ。変わった名前だけど、顔立ちも綺麗だし、気に入ったわ。何時かゆっくりお話しましょう?」

そう言うとキュルケはフレイムを連れてその場から立ち去った。

「ルイズ?大丈夫」

「ありがとう・・・」

「えっ・・・?」

「私の事庇ってくれたんでしょ?」

「まあ。そんな所かな?でも自分の意見を言っただけだよ?」

「そう。・・・って当然よね。ご主人が危なかったら使い魔として助けるのが当たり前だからね!!」

ルイズは掴んでいた闇慈の私服を離すと、開き直ったかのように向き合った。

「ボサッとしないで何か飲み物を持ってきなさい!!」

「は、はい!!(良かった。何時ものルイズに戻ってくれたみたいだ)」

闇慈はそのまま紅茶を貰いに厨房に行こうとしたが、中庭で何やらもめごとが起こっているようだった。闇慈はそこらに居た一人の生徒に何事か尋ねることにした。

「あの。何があったんですか?」

「メイドがギーシュの香水を拾ってそれを届けようとしたんだけどな。その香水が下級生に貰ったものらしいんだ。それが原因でそこいた下級生と同級生のモンモランシーとの二股がばれてしまったみたいだ。そしたらギーシュの奴、それをメイドのせいにし始めたんだよ」

闇慈は心の底から溜め息を付いていた。明らかにそれはギーシュと言う奴が悪いと闇慈は悟り、その現場に行って見ると、先ほどのシエスタが金髪でバラを持っている男子生徒に許しを得ようとしていた。

「全く・・・君はどうしてくれるんだい?お陰で二人のレディを傷つけることになってしまったじゃないか?」

「も、申し訳ありません!!」

「シエスタ」

ここで闇慈はシエスタに声をかけることにした。

「ア、 アンジさん?」

「何だい?君は?これは僕と彼女の問題だ。君は引っ込んでて貰おうか?」

「それは出来ない相談ですね」

闇慈は相手を思いやる心を忘れておらずに、ギーシュと言う男子にも敬語で話していた。

「話を聞く限り、どう見ても貴方が悪いように思えますけど?貴方は女子生徒二人を相手に出来るほど身分が良いんですか?」

「何を生意気な・・・ん?君は確か・・・ゼロのルイズの・・・」

ピクッ・・・

ギーシュがルイズのことをゼロ呼ばわりし始め、闇慈は少しこめかみを動かした。

「そうそう。君はあの『ゼロのルイズ』の使い魔じゃないか。やっぱりゼロのルイズの使い魔は礼儀がなっていない。平民が貴族に意見するなんて身の程を知った方が良いと思うね」

「平民と貴族とか言う前に、僕は一人の人間です。そんなことも理解できずに二人の女の子を相手にしようとしていたなんて・・・貴方の方が身の程を知った方が良いと思いますけど?」

「アンジ!!」

ここであまりに遅かったことを心配してきたのか、ルイズがやってきた。

「ここでご主人のご登場か。全く、君は本当にゼロだよ、ルイズ。使い魔の管理すら出来ない・・・」

「おい・・・」

「何か・・・!?」

ギーシュが闇慈を見てみると闇慈の眼の色が茶色から真紅のように真っ赤になっていた。それを見ていた生徒たちはある感情に襲われた。


『死』


それはルイズも例外ではなかった。

「それ以上。俺の主人を侮辱してみろ・・・」

(何なの・・・?これが・・・あの心優しいアンジなの!?)

一人称も『僕』から『俺』に変わっていて、口調もドスの効いた低い声になっていた。

「貴様に・・・『死』を見せるぞ?」

「ふ、ふん!!そこまで言うなら・・・決闘だ!!」

ギーシュは持っていたバラを闇慈に向け、決闘を申し込んだ。闇慈は少し考え・・・

「・・・良いだろう。力で解決するのはあまり好きじゃないが、受けて立つ!!」

「減らず口を・・・ベストリの広場で待っている」

ギーシュはマントを翻し、その場を後にした。それを見ていたシエスタは闇慈に近寄った。

「アンジさん。貴方。殺されてしまいます!!」

「心配してくれるんだね。ありがとう、シエスタ。でも僕も男だ。逃げるわけには行かないよ。すみません、ベストリの広場って何処ですか?」

闇慈が一人の生徒に尋ねるとその場所を教えてくれた。周りの生徒たちは興味を持ったのか、その広場に向かっているようだった。

「アンジ!!」

ここでルイズの声が闇慈の耳に届いた。そしてそのまま闇慈は引っ張られ、人気のない所まで連れてこられた。

「ル、ルイズ」

「アンタ!何してんのよ!今すぐにギーシュに謝るのよ!!」

「どうして?明らかにあのギーシュって男子が悪いじゃないか」

「アンタが死神かもしれないけど、ギーシュはお構いなしにアンタを潰しに来るはずよ!!」

それを聞いた闇慈は優しく微笑むとルイズに問いかけた。

「それって僕を心配してくれてるの?」

「そ、そそそ、そんな訳ないじゃない!!」

闇慈の言葉にルイズは顔を赤くしながら、全力でそれを否定する。しかしこれには闇慈の考えがあった。

「でも丁度良い機会だと思うよ?この決闘であの『ゼロのルイズ』が何を召喚したのか。みんなに示すことが出来ると思うよ?」

「でも・・・もしアンタになにかあったら」

「大丈夫。僕は戦いには慣れてるよ。それに間違って相手を殺したりしないよ」

ルイズは頭を抱えしばらく考えると・・・

「・・・分かったわ。でも怪我はしないで!!」

「了解!ご主人様!」

そう言うと闇慈は教えられた広場に向かって足を進めた。
 

 

閑話4 決闘と死神


「諸君!決闘だ!!」

ギーシュのその言葉は回りは熱狂に近い歓声を上げていた。闇慈は貴族たちもこんな事が好きなのかと心で疑問を抱いていた。

「ホント。楽しませてくれるわね」

そこにはキュルケの他に彼女と仲の良い青髪で無口な少女『タバサ』も来ていた。

「ねえ、タバサ。あなたはどっちが勝つと思う?」

「・・・興味ない」

と言って再び手に持っていた本を読み始めた。シエスタも闇慈の事が気になったのか、観戦に来ていた。ルイズも少し離れた所から闇慈を見守っていた。

「逃げずに来たのは褒めてやろう」

「あんなに啖呵を切っておいて逃げたら男じゃない。そして知ると良い。あのゼロのルイズが何を使い魔にしたのかを」

「ふん。なら始めようじゃないか!!」

そう言うと持っていたバラの花弁が一枚離れ、地面に落ちるとそこから人並みの大きさ『ゴーレム』が出てきた。

「僕は『青銅のギーシュ』。よって青銅のゴーレム・・・『ワルキューレ』がお相手しよう」

「あ~あ。ギーシュの奴。平民相手に何本気になっているだ?」

「あの平民・・・下手したら死ぬぞ」

周りのギャラリーはそんなことを呟いていたが、闇慈にはどうでも良いことだった。
そう思っている間にワルキューレが青銅の重さなど関係ないかのように素早く、闇慈の懐に入り込み、左のパンチを鳩尾に入れ込もうとした。しかし・・・

「遅い・・・」

闇慈はそのパンチを左手でずらすと、そのままワルキューレの後頭部を掴んで思いっきり、地面に叩きつけた。そのワルキューレはそのまま動かなくなり、コナゴナになった。

「こんなものか?」

「ふ、ふん。少しはやるみたいだね。ならこれはどうかな!?」

今度は一体だけでなく、六体のワルキューレを出現させると、闇慈の周りを取り囲んだ。

「さあ・・・行け!ワルキューレ達よ!!」

ギーシュの掛け声と共にワルキューレ達が一斉に闇慈に飛び掛った。しかし闇慈は動こうとしなかった。

「あ、危ない!!」

ルイズは叫び声も空しく、ワルキューレ達は闇慈に鉄拳を当てるかのように飛び掛り、それに伴って闇慈の姿が完全に見えなくなった。

「ア、ア、アンジー!!」

「アンジさん!!」

ルイズとシエスタの悲観の声が決闘場に木霊した。

「やれやれ。僕も大人気ないことをしたものだな。ルイズの使い魔君。聞えているなら、僕にこう言ったら許してやろう。ごめんなさ・・・」

ギーシュが言い切ろうとした瞬間、闇慈に掴みかかっていたワルキューレ達が一斉に吹き飛び、何かが空に飛び出した。そしてそこには闇慈の姿がなかった。

「何だ!?居ない!?」

「あの平民は何処に行ったんだ!?」

ギャラリーは闇慈を見失っていた。それはギーシュも例外では無かった。そしてここで羽ばたきの音が聞えてきた。そしてギャラリーはその羽ばたきの音源に釘付けとなった。

大空に羽ばたいていたのは、背中から大きな漆黒の翼を生やしていた銀髪の一人の人間。そしてボロ衣のマントを羽織り、真紅の眼でギーシュを見ていた。そしてとても印象があったのは人間なんか簡単に一刀両断出来るほどの漆黒の『大鎌』。そしてその人物はゆっくりと地面に降り立ち、その大鎌を右肩に担いだ。

「中々の陣形だったが、もう一つ足りなかったみたいだな」

「な、何だその姿は!?君は・・・平民ではなかったのか!?君は一体何者なんだ!?」

「俺か?俺は・・・死神だ!!」

その言葉に周りのギャラリーは騒然とし始めた。

「死神ですって!?」

「『魂の管理者』で『死の象徴』と言われている!?」

「その死神をあのゼロのルイズが召喚したの!?」

「ちょっと怖いけど・・・銀色の髪がなびいててカッコイイかも」

ギャラリーはそれぞれの感情を言葉に表しながら、呟いていた。

「そんなバカな!?ルイズが死神を使い魔になんて・・・僕は認めない!!」

そう言うとギーシュは再びワルキューレを召喚すると一斉に闇慈に突撃させたが、闇慈は一体一体、デスサイズ・ヘルを操り、手傷負わずに斬り裂いて行った。斬られたワルキューレ達はバラバラにはならずに、そのまま霧散してしまった。あまりの強さにギャラリーは闇慈に釘付けになり、キュルケとタバサもその姿に見とれていた。

「僕のワルキューレが・・・霧散してしまった。やはりその鎌も『死神の鎌』!!」

やられまいと再び召喚しようとするが、闇慈は一瞬でギーシュとの距離を縮め、首元にデスサイズ・ヘルの刃を突きつけ、真紅の眼でギーシュを威圧し始めた。それにギーシュは腰を抜かし・・・

「ま、参った・・・」

降参の声を上げた。それに伴い大きな歓声が広場に響き渡った。それを聞いた闇慈はデスサイズ・ヘルを消し、ギーシュと向き合った。

「君が死神だったなんて・・・」

「お前の敗因は自分の実力不足でもあるが、人を見下している間は自分の成長は止まる。覚えておくことだ」

「アンジ!!」

ここでルイズが一番先に闇慈に近寄った。ルイズは闇慈が怪我をしていないかと闇慈の身体をあちこちと見回していた。

「怪我・・・してないの?」

「勿論。ルイズはさっき言ったでしょ?『怪我しないで』って。それはちゃんと守ったでしょ?」

「そ、そうね」

そう言うと闇慈はもとの人間の姿に戻り、ルイズと一緒に部屋に戻ることにした。しかしその間にギャラリー・・・特に女子生徒の視線が闇慈にとってはきつかったみたいだ。
 
 

 
後書き
ギーシュが呆気ないように感じたかもしれませんが申し訳ありません!!

この話で閑話は終了したいと思います!!次回からは本編に戻ります!!

もし続きが見たいという事があれば、別の本で投稿して行きます!!

では、ありがとうございました!!
 

 

第四十八話 冥界

「冥界に帰る!?」

駒王学園の1学期が終了し、夏休みに入って数日が経った。一誠は自宅でリアスの言葉に驚きの声を上げた。祐斗や小猫も先ほどイッセーの家に着いたらしい。
そして余談だが、一誠の家は朱乃とゼノヴィアも住む事になり、ホームステイする人数があまりに多くなったためリアスが改装を施してくれたみたいだ。お陰で一誠の家は普通の住宅から豪邸へと大きく変わった。中には様々な施設まで施されているみたいだった。

「夏休みだし、故郷に帰るのよ。毎年のことなのよ」

しかし一誠はリアスから置いてけぼりにされると涙を流していたが、リアスは一誠の頬を摩りながら、一緒に連れて行くつもりだと一誠に言い聞かせた。

「俺も冥界に行くぜ」

「僕も冥界に行くことって出来ないんですか?」

その場に居る全員が声の発した方を向くとアザゼルと闇慈がテーブルに隅に置いてあったイスに座っていた。

「ふ、二人ともどこから入ってきたの!?」

リアスが二人に問いかけた。

「うん?普通に玄関から入ったぜ?」

「僕は途中でアザゼル先生と出会って、イッセーに家に行くって言ってたので一緒に来ただけですよ?」

「でも気配を全く感じませんでした」

禁手に至っている祐斗でさえ、入ってきたことに気付かなかったようだ。

「それはお前らの修行不足だ。まあ、アンジに至っては影が薄いからな。分からなくて当然だ」

「何か酷い言い様ですね!?アザゼル先生!!僕はそんなに影は薄くないですよ!?」

「それで・・・冥界に行ってのスケジュールだが・・・」

「人の話を聞いてください!!」

「・・・ドンマイです、闇慈先輩。先輩は死神だから仕方ないです」

「止め刺さないで・・・小猫ちゃん。そしてそれフォローになってないよ・・・」

~~~~~~~~~~~~

そして冥界に行く当日となった。服装はアザゼルを除いた生徒全員、制服だった。
闇慈の両親には研究部の遠征だと言い伝えてきた。そして闇慈が冥界に入れるかどうかは、問題ないようだ。本来ならば冥界に人間は入ることは出来ないが、死神になりつつある闇慈は冥界には入れるようだった。
今回の帰省には訳もあった。新人悪魔の紹介も兼ねているらしく、一誠の他にアーシア、ゼノヴィアも冥界に行かなくてはならないみたいだった。勿論二人は冥界に行くことを承諾してくれたみたいだった。

「さあ。行くわよ」

しかしやってきたのは最寄の駅だった。闇慈はこんな所に冥界への入り口があるのか?と疑問に思っていた。ここで駅のエレベーターに入り、リアスが何やらカードみたいなものを電子パネルかざすと、本来なら上に行くエレベーターが、下へと動き始めた。

「この駅の地下には、秘密の階層があるのよ」

「つまりそこが冥界の入り口ってことですか?」

「そう言う事よ、アンジ。さあ、3番ホームまで歩くわよ」

全員がエレベーターから降りると何やら人工的な空間に出た。初めて来た闇慈たちは人間界とは何か違うように感じていた。そして駅のホームに着くと斬新なデザインと形をした列車がホームで待っていた。そしてそれを堂々とリアスが説明する。

「グレモリー家所有の列車よ」

そしてリアスの先導に中へと入っていった。

~~~~~~~~~~~~

一誠は列車に揺られ、トランプなどで時間を潰していた。しかしその間に一誠の恋人候補達に詰め寄られ、一誠はタジタジとなっていた。
一方、闇慈は休みたいために少し離れた所で、ゆっくりと仮眠をとっていた。

「スースー・・・ん?」

闇慈は何やら違和感を感じ、少し眼を開けて何か見ていると、小猫が可愛い寝息を立てながら闇慈にもたれ掛かりながらスヤスヤと眠っていた。

「こ、こ、小猫ちゃん!?」

闇慈は一瞬戸惑ったが寝ている小猫を起こすのも悪いと思い、そのままにしておき、外の風景を楽しんだ。
冥界と言いつつも自然はあるようだった。そして大きく違っていたのは『空』が青ではなく、紫色をしていたことだった。

(色んな意味で僕はラッキーなのかもしれない。本で読んだことしかない場所に僕はこうやって立っている。この経験はこの先の人生においてどんなことに役に立つのかな?)

闇慈は一人哲学的なことを考えていると・・・

「ちょっとすみませんな。入国の手続きをしたいのですがよろしいですかな?」

闇慈が声のしたほうを向くと髭を生やした老人が車掌らしい帽子をとって尋ねてきた。それに基づき小猫も目を覚ましたようだ。

「貴方はこの列車の車掌さんなんですか?」

「ホッホッホ。初めまして、私はこの列車の車掌をしております『レイナルド』と申します」

「ご丁寧にありがとうございます。僕は『黒神闇慈』です。よろしくお願いします」

「なんと・・・貴方が『黒衣の死神』ですかな?」

「僕の事を知っているのですか?」

「知っているも何も、冥界では有名ですぞ?ライザー様や先の大戦の堕天使コカビエルを若いながらに倒した注目のまとですぞ」

闇慈はそれを聞くと頭を抱えてしまった。なるべく目立たないようにしていたが冥界の情報力を甘く見ていたようだった。

「まあまあ。有名になることは悪いことではないですぞ?まあ話はここまでとして入国手続きをしますぞ?」

そう言うとレイナルドは特殊な機械を闇慈と小猫の顔に当てると、承認の音らしきものがなった。

「これで手続きは終了ですぞ。では列車の旅を彼女さんとごゆるりと」

「えっ!?」

「・・・っ!?」

レイナルドはそのまま奥へと行ってしまったが、闇慈と小猫にとってはまだ時間が止まっているような感覚だった。そして顔を見合わせると恥かしくなったのか、お互いに顔をみることが出来なかったみたいだ。

~~~~~~~~~~~~

そして列車はグレモリーの本邸に到着した。アザゼルはそのまま、魔王達との面会があるのか列車に乗ったままだった。そしてアザゼルを除いた部員が列車から降りると・・・

『リアスお嬢様。お帰りなさいませ!!』

花火やら音楽など、リアスたちを迎えているようだった。小猫たちは慣れているみたいだったが、アーシアと一誠は場違いのように感じているのか、身を寄せ合っている。ゼノヴィアは一人呆然としていた。闇慈は少し驚いたようだったが、すぐに心を持ち直した。

「ヒィィィ。人がいっぱい・・・」

ギャスパーはまだ大人数に慣れていないのか、闇慈の背中の裏に隠れた。そしてメイドの中にグレイフィアの姿があった。

「お嬢様、お帰りなさいませ。道中、ご無事で何よりです。眷属の皆様も馬車へお乗り下さい。本邸へ移動します」

そう言うとリアス達は馬車に乗り移ると、移動を開始した。
 

 

第四十九話 執事

闇慈達がしばらく馬車に揺られていると、巨大な建造物・・・つまり「お城」が見えてきた。

「リアス先輩。あれがグレモリー家の本邸ですか?」

「違うわよ、闇慈。確かにあれも本邸だけど、まだまだ本邸はあるわよ?」

「何となく気付いていましたけど、改めて聞くと凄いですね」

「俺はスケールのでかさについて行けねえよ」

一誠は本邸がまだあることに驚いているようだったが、闇慈はそれとなく気付いていたらしいのでそれほど驚きはしなかったみたいだ。そうこう言っている間に馬車は城門の前に辿りついた。そしてリアス達は馬車から降りると敷かれていた赤いカーペットを包むように執事とメイドが並び、道を作った。そしてその道を部員たちが通っていると、一人の少年がリアスに向かって走ってきた。

「リアスお姉様!おかえりなさい!」

「ミリキャス!ただいま。大きくなったわね」

リアスとその少年は懐かしがる様に抱き合った。ここでこの少年が何者なのか気になったのか闇慈が尋ねた。

「リアス先輩。この子は?」

「この子は『ミリキャス・グレモリー』。お兄様・・・サーゼクス・ルシファー様の子供で、私の甥よ」

「この子がサーゼクス様の息子・・・。つまり、魔王候補と言う事ですか?」

「そう言うことになるわね。ミリキャス、彼は私達を助けてくれている死神よ。あいさつを」

「はい。ミリキャス・グレモリーです!初めまして!!」

「ご丁寧にありがとうございます。僕は黒神闇慈。どうぞお見知りおきを」

それを聞いたミリキャスは少し驚いた顔で闇慈を見た。

「お姉様。この人が『黒衣の死神』さんなの?」

「そうね。彼がライザーやコカビエルを倒した、黒衣の死神よ」

ミリキャスは闇慈を尊敬の眼で見始めた。何でも有名な悪魔や堕天使を完膚ないまでに叩きのめしたことがミリキャスの耳にも届いているらしく、その力に尊敬の念を持っているらしい。
そして城の玄関から入ると、中の装飾も素晴らしいものばかりだった。そしてグレイフィアの先導の元でそれぞれの部屋に案内して貰おうとすると・・・

「あら。帰ってきたのね?リアス」

女性の声が闇慈やイッセーたちの耳に届き、その方を向いた。
髪は亜麻色だがリアスに良く似ているようだった。ドレスを見事に着こなし、凛とした風格を漂わせていた。
一誠は相変わらずその女性の豊満な胸に目が行っていた。

(リアス先輩と良く似ているな。お姉さんかな?)

「お母様。ただいま戻りましたわ」

「・・・リアス先輩。今お母様って言いましたか?」

「ええ」

「「えええええ!!?」」

流石の闇慈もこれには驚きを隠せないらしく一誠と一緒に驚愕の声を張り上げた。

「ででで、でもリアス部長とそう歳は変わらない女の子じゃないですか!?」

一誠は目を飛び出さんとする程、目を見開きリアスに尋ね返した。

「あら。女の子なんてうれしいことをおっしゃいますのね」

「悪魔は歳を経てば、自分の魔力を使って外見を自由に変えることが出来るのよ。お母様は何時も私と同じ位の年格好で過ごされているのよ」

「本当に何でもアリですね・・・悪魔って」

闇慈は悪魔の能力に頭を抱えていた。

「リアス。彼らが『兵藤一誠』君と『黒神闇慈』君かしら?」

「僕達の事をご存知なんですか?」

「ええ。貴方たちの名前は冥界中に鳴り響いていますよ」

リアスのお母さんは微笑むと自己紹介を開始した。

「初めまして。私はリアスの母、『ヴェネラナ・グレモリー』ですわ。よろしく、兵藤一誠君、黒神闇慈君」

そしてヴェネラナは闇慈の姿を見ると・・・

「ではリアス。アンジ君をお借りするわよ?」

「へっ?どう言う事ですか?」

「それはお母様について行ったら分かるわ」

闇慈は何なのか分からず、ヴェネラナについていった。

~~~~~~~~~~~~

闇慈がヴェネラナに連れて行かれ数分後。ヴェネラナが再びリアスたちの元に戻って来た。そしてそこに闇慈の姿はなかった。

「お母様。アンジは?」

「初めて『着る』みたいだから少し時間が掛かっているみたいね」

その場にいるリアスとヴェネラナ以外の何なのか分からずに頭の上に?マークを浮べていた。そして闇慈の姿が見えたのか、一誠が闇慈に呼びかけ、近寄った。

「おい、闇慈。なにやって・・・」

一誠は途中で声を発さなくなった。
闇慈は制服姿から『黒執事服』に変わっており、両手にも手袋をしており、彼の右目には小さな片眼鏡をかけていた。そしてあまりに似合っていたため、その姿に回りは呆然としていた。

「中々似合ってるじゃない、アンジ」

「・・・闇慈先輩。似合いすぎです」

「あの・・・リアス先輩?この格好は?」

「貴方は冥界に入る際に『グレモリー家の執事』として登録しておいたから、その服装よ」

「ちょっと待ってください!!僕は何も聞いてませんよ!?」

ここでヴェネラナが闇慈を説得し始めた。

「まあまあ。ここは執事修行と言うことでダメでしょうか?」

「・・・まあ。僕も執事の仕事には興味があります。突然だったので少し驚いているだけですから、是非やらせて下さい」

「良かったわ。じゃあ明日から執事の勉強をしてもらいますわね」

「はい!!よろしくお願いします!!」

その後はそれぞれの部屋に案内され、それぞれの時間を過ごした。
 

 

第五十話 若手集会

闇慈たちがグレモリー家の本邸にやって来た翌日。闇慈と一誠はそれぞれの勉学に励んでいた。一誠は社交や悪魔の文字などをミリキャスと一緒にペンを走らせていた。
闇慈は見習い執事として熟練の執事たちから礼儀作法や紅茶の淹れ方など、執事の基本的なことを学んでいた。そして他の部員たちはリアスに連れられ、観光をやっているみたいだった。

「ふむ。君は中々、筋が良いな。礼儀作法もすぐに覚え、紅茶を淹れる際のポイントもすぐに習得してしまう」

「そんなことはありませんよ。唯僕は他人のために働き、そして笑顔を見せてもらいたい。それだけです」

「その心掛けは大したものだ。君は立派な執事になるぞ!」

「そのためにもご指導。よろしくお願いします!!」

「ふむ。では次のステップに進もう」

「はい!!」

そんなこんなで闇慈は執事の基礎を習得することが出来た。

~~~~~~~~~~~~

そしてリアスたちが観光から戻ってくるとすぐに魔王領に移動しなければならなかった。以前説明した新人悪魔の紹介らしい。
部員全員、駒王学園の制服に着替えると列車に乗り、魔王の領土を目指した。そして列車に揺られること3時間。列車は都市的な街に着いた。装飾などは人間界とは少し異なっていたが近代的で人間界と似通った文化を感じさせた。

「ここが冥界の首都なのかな?」

「ここは魔王領の都市の『ルシファード』。旧魔王ルシファー様がおられたとされる、冥界の旧首都なんだよ、闇慈君。そしてここからは地下鉄に乗り換えるよ。表から行くと騒ぎになるからね」

「・・・そのことは何となく予想が付くよ。リアス先輩の事だよね?祐斗」

「そう言う事だよ」

そして地下鉄のホームで電車が来るのを待っている間、リアスの周りからは男女問わない、黄色い声がホーム中に響き渡っていた。
そして余談だが『黒衣の死神』や『赤龍帝』の名前が冥界に響き渡っているの原因なのか声はかけられなかったが闇慈や一誠の事を見ている野次馬もいたそうだ。

~~~~~~~~~~~~

リアスたちは地下鉄を乗り継ぎ、地上に出ると大きなビルの前に出た。そしてその中に入るとリアスが注意点を何点か上げた。

「いい事?何があっても平常心でいること。何を言われても手を出さないこと。上にいるのは私たちにライバルよ、無様な姿は見せられないわ」

その言葉に全員が頷くとエレベーターに乗り、上階へ目指した。そして出入り口が開くとリアスが一人の男性が目に入ったのかその男性に声をかけた。

「サイラオーグ!」

そのサイラオーグもリアスに気付き、近づいてきた。黒髪の短髪でワイルド系のイケメンだった。筋肉質で武闘家を思わせるような体格をしていた。

「久しぶりだな、リアス」

「ええ。変わりないようで何よりよ。初めてのものもいるわね。彼は『サイラオーグ』。私の母方の従兄弟でもあるのよ」

「俺は『サイラオーグ・バアル』。バアル家の次期当主だ」

「バアル・・・確か魔王様の次に力を持つ『大王』の名前でしたよね?」

「そうよ、アンジ」

闇慈の名前を聞いたサイラオーグは闇慈に近づいてきた。

「お前がライザーや堕天使コカビエルを倒した『黒衣の死神』か?」

「はい。僕は黒神闇慈。貴方のおっしゃった通り、黒衣の死神を名乗っています。どうぞお見知りおきを」

闇慈は執事が挨拶するようにサイラオーグと挨拶を交わした。

「あまり強そうには見えねえが・・・その魔力のデカさ。どうやら本当らしいな、お前と戦える日が楽しみだぜ」

「それで、こんな通路で何をしてたの?」

リアスがサイラオーグに尋ねると少し呆れ顔になってリアスに答えた。

「くだらんから外に出てきただけだ」

「くだらない?中でケンカみたいなものが起きているんですか?サイラオーグさん」

闇慈の質問にサイラオーグが頷く。

「そんなとこだ。アガレスとアスタロトもすでに来ていてな。あげくに『ゼファードル』だ。着いて早々、ゼファードルとアガレスがやり始めたんだよ」

サイラオーグが言い切った瞬間・・・

ドガァァァァン!!!!

と会場内で何かが爆発するような音が響き渡った。闇慈は反応するや逸早く、会場の扉を開くと・・・

「ゼファードル、こんな所で戦いを始めても仕方なくてはなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」

眼鏡をかけ、青いローブを身に纏った闇慈と同い年位の女子と・・・

「ハッ!言ってろよクソアマッ!俺がせっかくそっちの個室で一発仕込んでやるって言ってやってんのによ!アガレスのお姉さんはガードが固くて嫌だね!へっ、だから未だに男も寄って来ずに処女やってんだろう!?ったく、魔王眷属の女どもはどいつもこいつも処女臭くて敵わないぜ!だからこそ、俺が開通式をしてやろうって言ってんのによ!」

下品な言葉を発している上半身裸でタトゥーが入った緑髪を逆立てているヤンキーな男性が一食触発の状態だった。

「彼らが貴方を外に出した原因ですか?サイラオーグさん」

「ここは時間が来るまで待機する広間だったんだがな。もっと言うなら、若手が集まって軽い挨拶を交わす所でもあった。ところが、若手同士で挨拶したらこれだ。血の気の多い連中を集めるんだ、問題の1つも出てくる。それも良しとする旧家や上級悪魔の古き悪魔達はどうしようもない」

サイラオーグが説明している間に、ヤンキーな男性の沸点があまりに低いのか魔力弾を女性に向かって放った。それを見た闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、ボロ衣の漆黒のマント・・・AMCマントを纏うと魔力弾と女性の間に身体を滑り込ませ、その魔力弾をAMCマントで弾いた。

「ああん?何だてめえは!?俺とそこのクソアマとのケンカに割って入ってくるんじゃねえよ!!」

ヤンキーは闇慈に殺気を込めた言葉を発していたが闇慈は構わずに、女性に話しかけた。

「大丈夫ですか?」

「な、何者ですか!?これは私とそこの凶子との問題です!!そこを退きなさい!!」

「それは出来ません。例え貴女が彼と対抗出来る力を持っているとしても、女性を傷つけさせるわけには行きませんから」

とことん女性には甘く優しい闇慈だが、ヤンキーは無視されたことが逆鱗に触れたのか今度はかなり大きめの魔力弾を作ると・・・

「俺を無視すんじゃねえ!!消し飛びな!!」

「あ、危ない!!」

闇慈に向かって放った。女子は悲観な声を上げたが闇慈はデスサイズ・ヘルを取り出すと・・・

「コカビエルの方が数倍マシだな・・・」

魔力を注ぎ、その魔力弾を横に一閃し、霧散させた。

「俺の魔力弾が!?・・・っ!?その姿。てめえ!!黒衣の死神か!!」

「えっ!?」

「ご名答だ。これ以上やると言うのなら一瞬で終わらせるぞ?」

「ほざいてろ!!さしずめライザーやコカビエルを倒したってのは出鱈目だろう?ここで俺がてめえを倒してやるぜ!!そしてそこのクソアマを犯し・・・」

闇慈は一瞬でヤンキーとの距離を縮め・・・

「黙れ。ゲスが・・・」

デスサイズ・ヘルの柄を鳩尾に叩き込み、壁に串刺しにした。ヤンキーは気絶したらしくそのまま壁にもたれかかった。

「おのれ!!」

「ゼファードル様をよくも!!」

「・・・」

ヤンキー達の眷属が闇慈に飛び掛ろうとしたが、闇慈は真紅の魔眼と魔力解放の覇気で眷属を威圧し、失神させた。それを見ていたサイラオーグが感嘆の声を上げる。

「流石だな。ゼファードルの眷属達を覇気と威圧だけで失神させやがった。これがコカビエルやカテレアを倒した死神の真の力か。さっきとは別人じゃねえか」

「アンジィィィ!!!」

しかしリアスの反応は凄く怒っていた・・・

「貴方なにしてるの!!問題は起こさないようにってあれをほど言ったじゃない!!」

「す、すみません、リアス先輩。でもケンカを止めたくて仕方なく」

「良いじゃねえか、リアス。お陰で俺が出なくて良かったんだからよ?」

「サイラオーグ!!貴方まで!!」

リアスが頭を抱えている間に闇慈は駒王学園の制服姿に戻ると女性の方を向いた。

「お怪我はありませんか?」

「え、ええ。貴方が本当に・・・黒衣の死神」

「こんな姿をしていましたからね、意外でしたか?」

その女性は首を横に振ると自己紹介をし始めた。

「私は『シーグヴァイラ・アガレス』。大公、アガレス家の次期当主です」

「ご丁寧にありがとうございます。僕は黒神闇慈。黒衣の死神を名乗っていますが、今はグレモリー家で執事見習いとしてやっています。どうぞお見知りおきを」

闇慈はサイラオーグ同様に執事の挨拶をすると跪き、彼女の右手に軽くキスをした。そして闇慈は一礼をするとリアスたちの元に戻っていった。

「ふふ。あの凶子よりよっぽど紳士的な方ですわね」

シーグヴァイラはその姿をじっと見ていた。
 

 

第五十一話 将来

一悶着あった後、サイラオーグはスタッフを呼び集めて、待合室の修復をさせた。そしてソーナやその眷属達とも合流をするとそれぞれ自己紹介をし、始まるまで席について待っていた。

(グレモリーがルシファー。シトリーがレヴィアタン。アスタロトがベルゼブブ。グラシャラボラスがアスモデウス。大王がバアル。大公がアガレス。今のこの場に六家がここ集っている。すごい組み合わせだ)

闇慈が考えていると一誠は緊張してきたのか表情を強張らせる。ここで匙が一誠に喝を入れる。

「おい、兵藤。間抜けな顔をみせるな」

「だってよ、上級悪魔の会合だぜ?緊張するじゃないかよ、皆強そうだし」

ここで闇慈も加わる。

「何言ってるの、イッセー。イッセーは赤龍帝なんだよ?もっとドンとしてた方が良いと思うよ?」

「黒神の言うとおりだぜ。眷族悪魔はこの場で堂々と振る舞わないといけないんだ。相手の悪魔たちは主を見て、下僕も見るからな。だからお前がそんなんじゃ、先輩にも失礼だぞ。ちったぁ自覚しろ。お前はグレモリーの眷属で、赤龍帝なんだぞ?」

匙が一誠に説教染みたことを言っていると使用人らしいが本会場の扉から出てきて、若手悪魔達と死神は中に案内された。若手悪魔たちを見下すように作られた高い所に置かれた席には悪魔のお偉いさんが座っており、もう1つ上の段にはサーゼクス、隣にはセラフォルーが座っていた。その隣にはベルゼブブとアスモデウスも座っていた。
そしてリアスを含めた若手悪魔6人が一歩前に出た。闇慈が気絶させたゼファードルも復活していたが、傷は完治していないのか顔を少し歪ませていた。

「よく集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するため、集まってもらった。これは一定周期ごとに行う若き悪魔を見定める会合でもある」

初老の男性悪魔が手を組みながら威厳の声で言い、ヒゲを生やした悪魔が・・・

「早速やってくれたようだが・・・」

と皮肉げに言った。闇慈は自分のやったことに後悔はなかったように顔を変えることはなかった。

「キミ達六名は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらおうと思う」

「我々もいずれカオス・ブリゲードとの戦に投入されるのですね?」

サーゼクスの言葉にサイラオーグが尋ね返したが・・・

「それはまだ分からない。だが、出来るだけ若い悪魔逹は投入したくはないと思っている」

「何故です?若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なお何も出来ないとなれば・・・」

「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし無謀だ。何よりも成長途中のキミ逹を戦場に送るのは避けたい。それに次世代の悪魔を失うのはあまりに大きいのだよ。理解して欲しい。キミ逹はキミ逹が思う以上に、我々にとって宝なのだよ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」

サーゼクスの言葉にサイラオーグは一応の納得をしたが、不満がありそうな顔をしていた。しかし闇慈は若手悪魔を心配するサーゼクスの言葉に感心を抱いた。

「最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」

サーゼクスの問いかけにはサイラオーグは一番最初に答えた。

「俺は魔王になるのが夢です」

一番早く。そして迷い無く言い切ったサイラオーグ。その目標にお偉いさん達も感嘆の息を漏らした。

「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」

「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」

そしてそれに続いてリアスも今後の目標を言う。

「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝する事が近い将来の目標ですわ」

リアスの目標を初めて聞いたイッセーは、リアスに使える眷族としてリアスを支援していくことを心に刻み込んだ。闇慈も出来れば『遊撃手』としてリアス達を守っていこうと思った。そして次々と若手悪魔達が夢や将来の目標を言って行き、最後のソーナは・・・

「冥界にレーティングゲームの学校を建てる事です」

「レーティングゲームを学ぶ所ならば、既にある筈だが?」

「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行く事が許されない学校の事です。私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔ての無い学舎です」

身分に囚われない誰もがレーティングゲームを学ぶ事の出来る学校を作る。その夢に闇慈、一誠はすばらしい夢だと感心し、匙は誇らしげにしていたが・・・

『ハハハハハハハハハッ!』

お偉いさん達の声が会場を支配し、嘲笑うかのように次々と口にし始めた。

「それは無理だ!」

「これは傑作だ!」

「なるほど!夢見る乙女と言うわけですな!」

「若いと言うのは良い!しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がその様な夢を語るとは。ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったと言うものだ」

闇慈は何故ソーナの夢がここまで馬鹿にされるのか疑問を抱くと、祐斗に尋ねた。

「祐斗。どうしてあの人たちはソーナ会長の夢をあそこまで否定するの?」

「今の冥界がいくら変わりつつあるとしても、上級と下級、転生悪魔、それらの差別はまだ存在する。それが当たり前だと未だに信じている者達も多いんだ」

闇慈はその事を聞くとかつて戦ったライザーのことを思い出していた。

(あいつらライザーと同じ、身分差別を食い物にしている石頭達か・・・)

闇慈は少し身分が高いことに付け上がっているその態度に段々怒りを抱え始めた。

「私は本気です」

セラフォルーもうんうんと力強く頷いていたが、お偉いさんは冷徹な言葉を口にする

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出だされるのが常。その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても変えて良いものと悪いものがあります。全く関係の無い、たかが下級悪魔に教えるなど・・・」

その一言に匙は黙っていられなくなった。

「黙って聞いてれば、なんでそんなに会長の・・・ソーナ様の夢をバカにするんスか!?こんなのおかしいっスよ!叶えられないなんて決まった事じゃないじゃないですか!俺達は本気なんスよ!」

「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の躾がなってませんな」

「・・・申し訳ございません。あとで言ってきかせます」

「会長!どうしてですか!この人達は会長の、俺達の夢をバカにしたんスよ!どうして黙っているんですか!?」

「サジ、お黙りなさい。この場はそういう態度を取る場所ではないのです。私は将来の目標を語っただけ。それだけの事なのです」

「夢は所詮、夢。叶うことと叶わぬことがありますぞ。ましてや下級悪魔如きがレーティングゲームを学ぶために行き来する学校など・・・」

「下らないな・・・」

「なんだと?」

お偉いさんの言葉を遮り、闇慈が声を上げた。
そして踵を翻すと出入り口の扉に向かって歩き始めた。祐斗はそれを引き止めるように尋ねる。

(すみません。今は執事の言い付けを破らせてもらいます)

「闇慈君!?どこに行くつもりなの!?」

「何処にって、グレモリーの本邸に戻るだけだよ。ここに居続けると下手したら、そこに居る石頭達に・・・『死』を見せる事になるかもしれないからね。大事になる前に引き取らせて貰うよ」

「貴様・・・今我らの事を『石頭』と言ったか?グレモリーの執事はしつけがなっていませんな」

お偉いさん達が闇慈の言葉に怒りの表情とドスの効いた声を出したが、闇慈は構わずに続ける。

「さっきから聞いていれば、他人を見下す、人の夢を侮辱する、伝統だとか誇りだとか古臭い考えを持ち出し自分がいかに正しいか他人に押し付け、意見を聞こうとしない。まあ自分の身分左右されなかったサイラオーグさんやリアス先輩の夢はとやかく言わなかったみたいですが、そんなことしか頭の中に入っていない人たちを『石頭』と呼ばずになんと呼べと良いんですか?いや。寧ろ将来のことが心配になってきましたね。お偉いさんがこんな人達じゃ、冥界の将来が気になって仕方ないですね」

「貴様ァ!執事の分際で我らを侮辱し、意見するつもりか!?」

お偉いさんの一人が耐え切れなくなったのか勢い良く立ち上がり、闇慈を指差しながら怒声を上げた。

「僕は自分の考えを述べただけです。それは貴方の勝手な解釈でしょう?結論から言うと僕は人を苛む人が居るところに居たくない。それだけです・・・そして」

闇慈が真紅の魔眼と魔力の覇気を立ち上がったお偉いさんに向けるとその人物もゼファードルの眷属同様に泡を吹きながら失神してしまった。

「っ!?」

他のお偉いさんは何が起こったのか分からないようだった。

「あまり俺を怒らせるなよ?長生きしたかったらな・・・」

闇慈が静かに呟き、扉に手をかけると・・・

「アンジ君の言う通りだよ!ならなら!うちのソーナちゃんがゲームで見事に勝っていけば文句も無いでしょう!?ゲームで好成績を残せば叶えられる物も多いのだから!」

セラフォルーが怒りながら提案してきた。

「もう!おじさま達はうちのソーナちゃんをよってたかっていじめるんだもの!私だって我慢の限界があるのよ!あんまりいじめると私がおじさま達をいじめちゃうんだから!」

セラフォルーの涙目でお偉いさんに物申した。お偉いさんたちは反応に困っていたが、ソーナは恥ずかしそうに顔を手で覆っていた。

(ありがとうございます、セラフォルー様)

闇慈がセラフォルーに笑顔を送っていると、セラフォルーもそれに気付いたのかピースで返してくれた。ここでサーゼクスがリアスとソーナに提案を出した。

「丁度良い。ではゲームをしよう。リアス、ソーナ、戦ってみないか?」

2人は顔を見合わせ、目をパチクリさせて驚くがサーゼクスは構わず続ける。

「元々、近日中にリアスのゲームをする予定だった。アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったものだからね。だからこそ丁度良い。リアスとソーナで1ゲーム執り行ってみようではないか。対戦の日取りは、人間界の時間で8月20日。それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。詳細は後日送信する」

サーゼクスの決定により、リアスとソーナ会長のレーティングゲームが開始される事になった。こうして若手集会はこれで終了となった。

~~~~~~~~~~~~

「アンジく~ん♪」

「セラフォルー様」

集会が終わり、一人で考え事をしているとセラフォルーが闇慈の元に寄ってきた。

「今日はありがとう♪ソーナたんのこと庇ってくれて嬉しかったよ♪」

「僕は自分の意見を述べただけです。気にしないで下さい。あと・・・ソーナ会長は?」

「大丈夫だよ。酷く言われていたみたいだけど、ソーナたんは何時も通りに戻ってたよ♪さっきだってせっかくお姉ちゃんが心配で来たのに『大衆の前であんな言い方は控えてください』って怒られちゃったんだよ?」

「あはは・・・」

闇慈はそのことに苦笑しか出来なかった。

「セラフォルー様。ソーナ会長に伝言をお願いできませんか?僕には時間がないので」

「良いよ♪何かな?」

「『誰にも他人の夢をけなす権利はありません。そして誰にも夢を見る権利があります。ソーナ会長は自分の信じた道・・・あの素晴らしい夢を追いかけ、そして叶えてください』と。では失礼します」

闇慈は執事挨拶をすると部員の元に戻っていた。

「アンジ君って本当に素敵な男性だね。本当に惚れちゃいそうだよ♪」

セラフォルーはその姿を笑顔で見送ると自分もその場から居なくなった。
 

 

第五十二話 温泉

「そうか、シトリー家と対決とはな」

若手集会からグレモリーの本邸に帰ってきたリアス達を迎えたのはアザゼルだった。そしてシトリー家とレーティングゲームをすることになったことを話すと修行の話を持ち出した。

「修業ですか?」

「当然だ。明日から開始予定。既に各自のトレーニングメニューは考えてある」

「でも良いんですか?僕達だけが堕天使総督のアドバイスを貰って」

闇慈は疑問の声を次々と挙げるがアザゼルは問題ないと言う顔をしながら・・・

「別に。俺はいろいろと悪魔側にデータを渡したつもりだぜ?それに天使側もバックアップ体制をしているって話だ。あとは若手悪魔連中のプライド次第。強くなりたい、種の存続を高めたいって心の底から思っているのなら脇目も振らずだろうよ。うちの副総督も各家にアドバイス与えてるぐらいだ。ハハハ!俺よりシェムハザのアドバイスの方が役立つかもな!」

と答えていた。

「まあいい。明日の朝、庭に集合。そこで各自の修業方法を教える。覚悟しろよ」

『はい!』

アザゼルの言葉に全員が重ねて返事をした。その直後にメイドのグレイフィアが現れ・・・

「皆様、温泉のご用意が出来ました」

と色んな意味の至福の言葉を発した。

~~~~~~~~~~~~

「旅ゆけば~♪」

とアザゼルが鼻歌を口にしながら温泉を楽しんでいた。闇慈達も温泉に満喫のようだ。アザゼルから聞いた話では、冥界屈指の名家グレモリーの私有温泉は名泉とも言えるらしい。

「流石地獄の温泉だね。人間界の温泉と違う。はあ・・・気持ち良いな」

闇慈は温泉にのんびりと浸っていたがある事に気付いた。

「・・・ってあれ?そう言えばギャスパーはまだ来てないの?」

闇慈の言葉に一誠が周りを見回してみると、入り口の辺りでウロウロしているのが目に入ると、仕方ないと言った一誠は一度、湯から上がり・・・

「おいおい。ほら、温泉なんだから入らなきゃダメだろう」

一誠がギャスパーを捕まえる。それにギャスパーは・・・

「キャッ!」

女の子みたいな可愛らしい悲鳴をあげた。しかも、タオルを胸の位置で巻いている。

「あ、あの、こっち見ないでください・・・」

「お、お前な!男なら胸の位置でバスタオル羽織るなよ!普段から女装してるからこっちも戸惑うって!」

「そ、そんな、イッセー先輩は僕の事をそんな目で見ていたのですか?身の危険を感じちゃいますぅぅぅっ!」

このままではヤバいと感じた一誠は、ギャスパーをお姫様抱っこで抱きかかえ、一気に温泉へ放り投げた。

「うわっと!?」

闇慈も流石にこれは驚いたのか声を上げる。

「いやぁぁぁん!あっついよぉぉぉ!溶けちゃうよぉぉぉ!イッセー先輩のエッチィィィ!」

ギャスパーの絶叫が木霊し、隣の女湯からクスクスと笑い声が聞こえてくる。

「ところでイッセー、アンジ」

再び温泉に浸かりに来たイッセーと闇慈の元にアザゼルがいやらしい顔で近づいてきた。

「お前らは女の胸を揉んだ事はあるのか?」

「ぶっ!?」

闇慈は意外な質問に顔を水面に打ち込んでしまった。

「なあなあ・・・どうなんだ?」

「は、はい!この右手で部長のおっぱいをもみっと!」

「・・・」

一誠は堂々と答えていたが、闇慈は顔を赤くして答えなかった。

「アンジはどうなんだ?」

「ぼ、僕がそんなことするわけないでしょう!?全く・・・」

「何だよ・・・イッセーはあるってのにお前はないのかよ?」

「当たり前じゃないですか!?」

「でもやってみたいって気持ちはあるんだろう?ん?ん?」

「そ、それは・・・」

「まさかお前・・・好きな女でもいるのか?」

「っ!!?」

図星だったのか、闇慈らしくない反応をすると、アザゼルがハッハ~ンと頷き、闇慈に近寄った。

「お前って恋愛に関しては本当に分かりやすいな。それで?誰なんだよ?」

「あれ?アザゼル先生は知らなかったんすか?闇慈の好きな子は、こねごばっ!!」

一誠が言い切る前に闇慈は魔力をためた拳骨を下ろし、湯船に沈めた。
そして大きなタンコブを作った一誠は湯船に死体の如く浮いていた。それを見ていたアザゼルは一誠を起こし・・・

「イッセー!!男なら、混浴だぜ!?」

と言い聞かせると腕を掴み、女湯の方へぶん投げた。そして柵を越えると・・・ゴツンと痛そうな音が女湯の方から聞こえた。そして様々な反応の女子達の声が聞こえてくるが・・・

「はあ・・・はあ・・・」

闇慈は気持ちを落ち着かせるのに精一杯だった。

「こねご?・・・まさかお前『塔城小猫』が好きなのか?」

ここまできたらもう隠しきれないと思い、アザゼルにさらけ出した。

「そうですよ。僕は小猫ちゃんが・・・好きです」

「あいつか・・・まあ良いんじゃねえか?でもあいつは少し他の悪魔たちと違うぜ?」

「どう言う事ですか?」

「お前知らなかったのか?あいつは『猫又(ねこまた)』の転生悪魔だぜ?」

「猫又って・・・確か妖怪の名前でしたよね?・・・って小猫ちゃんが妖怪!?」

闇慈はさっきの恥かしさなど何処に行ったのかと言わんばかりに真剣な顔になり、アザゼルに尋ねた。

「俺も詳しいことは分からねえ。しかしこれだけは覚えておいた方が良いぜ?」

「それは何ですか?」

「・・・セッ○スする時は必ず避妊しろ」

「なっ・・・!?」

アザゼルの言葉に闇慈はズルっとなりそうになった。

「アザゼル先生!!もっと真剣な・・・」

「俺は真剣だぜ・・・」

「っ!?」

さっきとは違う真剣なアザゼルの眼に闇慈は一瞬怯え、すぐに尋ね返した。

「どう言う・・・ことですか?」

「猫又はな、身体が成熟していないまま妊娠してしまうと、死ぬことがあるんだ」

「そんなことが・・・」

闇慈が顔を鎮めているとアザゼルはのぼせたのか湯船から立ち上がった。

「お前が小猫をいずれ抱く事になるかもしれねえが、これだけは覚えておけよ?じゃねえとお前・・・後悔するぜ?」

アザゼルはそのまま脱衣室に戻って行った。闇慈はしばらくそのまま何かを考えているようだった。

「アンジ先輩・・・」

ギャスパーは闇慈が心配になったのか声をかけた。

「ギャスパー。さっきの話・・・聞いてたの?」

「はいぃ。恥かしくて顔に桶をかぶっていましたけど聞こえましたぁ」

「(桶・・・かぶってたんだ)ギャスパーは小猫ちゃんが猫又って知ってた?」

「初耳でした。僕はずっと引き篭もってましたからぁ。ごめんなさいぃぃぃ」

「謝らなくていいよ。さてと・・・僕もそろそろ上がるね」

闇慈もその場から逃げるように脱衣室に戻って行った。
 

 

第五十三話 修行

翌朝、闇慈達は広い庭の一角に集まっていた。服装はアザゼルを含めた全員ジャージだ。資料やデータらしき物を持ったアザゼルが口を開く。

「先に言っておく。今から俺が言うものは将来的なものを見据えてのトレーニングメニューだ。すぐに効果が出る者もいるが、長期的に見なければならない者もいる。ただ、お前らは成長中の若手だ。方向性を見誤らなければ良い成長をするだろう。さて、まずはリアス。お前だ」

アザゼルが最初に呼んだのはリアスだった。

「お前は最初から才能、身体能力、魔力全てが高スペックの悪魔だ。このまま普通に暮らしていてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の候補となっているだろう。だが、将来よりも今強くなりたい、それがお前の望みだな?」

「ええ。負けたくないもの」

アザゼルの問いにリアスは力強く頷き、それを見たアザゼルはリアスのトレーニングメニューが記された紙を渡すが、リアスはその内容を見て首を傾げた。

「・・・これって、特別凄いトレーニングとは思えないのだけれど?」

「そりゃそうだ。基本的な基本的なトレーニング方法だからな。お前はそれで良いんだ。全てが総合的にまとまっているから基本的な練習だけで力が高められる」

「要するにキングとしての自覚を上げさせる特訓ですね?これは」

リアスの特訓メニューを見た闇慈が右手を顎に置きながら言うとアザゼルはそれを肯定する。内容は歴代のゲームにおける戦闘データや記録ファイルの情報を頭に叩き込むものだった。これによりゲーム内における戦況分析力を上げようと言うものらしい。

「次に朱乃」

「・・・はい」

朱乃は相変わらず不機嫌な様子だった。
闇慈は一誠から朱乃の父親は堕天使『バラキエル』そして母親は人間だったようだが、父親のせいで朱乃の母親は死ぬ事になったらしく、今では堕天使の力を忌み嫌うようになったと言うことを聞かされたみたいだ。
ましてや父が総督アザゼルの部下であるから、それ絡みでアザゼルを嫌うのももっとだった。

「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」

「っ!?」

流石の朱乃もストレートに言われたせいか顔をしかめる。

「お前のフェニックス家との一戦も、記録した映像で見せてもらったぜ。何だありゃ。本来のお前のスペックなら、敵のクイーンを苦もなく打倒出来た筈だ。何故、堕天使の力を振るわなかった?雷だけでは限界がある。光を雷に乗せ、『雷光』にしなければお前の本当の力は発揮出来ない」

(朱乃さんは堕天使の血を引いているから『光』の力を操ることも出来る。そして『光』は『雷』にも良く合うはず、それは悪魔にとっては効果抜群だ)

闇慈は朱乃の力を一人で解析している間に話を進めようとするが朱乃は顔をしかめる。

「・・・私は、あの様な力に頼らなくても」

「否定するな。自分を認めないでどうする?最後に頼れるのは己の体だけだぞ?ツラくとも苦しくとも自分を全て受け入れろ。お前の弱さはお前自身だ。決戦日までにそれを乗り越えてみせろ。じゃなければ、お前は今後の戦闘で邪魔になる。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」

アザゼルの言葉に朱乃は応えられなかった。その後もアザゼルは各トレーニングメニューを告げて行った。

祐斗はバランス・ブレイカーの維持時間向上と祐斗の師匠から剣術の復習と新たな技の習得。

ゼノヴィアはデュランダルに慣れることともう一つの聖剣を操れるようになる特訓。

ギャスパーはとにかく恐怖心を克服するためのプログラム。

アーシアはセイクリッド・ギアの回復範囲と回復力の向上。そして身体と魔力の増加。

「次は小猫」

「・・・はい」

小猫はこの日、何故か気合いの入った様子でいた。闇慈は張り切りすぎて怪我をしないかと少し心配気味になっていた。

「お前は申し分ない程、オフェンス、ディフェンス。ルークとしての素養を持っている。身体能力も問題ない。だが、リアスの眷属にはルークのお前よりもオフェンスが上の奴が多い」

「・・・分かっています」

ハッキリ言うアザゼルの言葉に小猫は悔しそうな表情を浮かべていた

「リアスの『眷属』でトップのオフェンスは木場とゼノヴィア。禁手の聖魔剣、聖剣デュランダル。まあ凶悪な武器が有していやがるからな。まあ『部員』で言うならばアンジがトップだけどな。ここで禁手のイッセーが入ると・・・」

「僕の場合は『助っ人』ですからね」

アザゼルの言う通り、闇慈、祐斗、ゼノヴィアのパワーはこの中でもズバ抜けている。祐斗は『ソード・オブ・ビトレイヤー』。ゼノヴィアは『デュランダル』。闇慈は『デスサイズ・ヘル』と強力な力を有している。

「小猫、お前も他の連中同様、基礎の向上をしておけ。その上で、お前が自ら封じているものを晒け出せ。朱乃と同じだ。自分を受け入れなければ大きな成長なんて出来やしねぇのさ」

「・・・」

アザゼルの言葉に小猫は一気に消失してしまった。
闇慈はアザゼルが昨日聞かせてくれた『事実』を思い出し『封じた力』と言うのは猫又の力だと言う事はすぐに気付いた。確かに猫又の力を発揮すれば力は格段に上がるはずだった。しかし小猫は今までそんなことをだそうともしなかった。

(小猫ちゃん・・・君は『過去』に何があったんだ?)

闇慈がそう思っていると一誠は元気付けようと小猫の頭を撫でようとしたが闇慈が止める。

「何するだよ!?アンジ」

「今小猫ちゃんを慰めても良い事はない。今はそっとしておこう」

闇慈は小猫に聞こえないように小さく呟くと一誠も分かってくれたのか、その手を引っ込める。

「さて、最後はイッセーとアンジだ。お前らは・・・ちょっと待ってろ。そろそろなんだが・・・」

空を見上げたアザゼル。一誠はそれに釣られるが、闇慈は何か強大な力を感じ取り、空を見上げると・・・

「ドラゴン!?」

「そうだ、イッセー。こいつはドラゴンだ」

「アザゼル、よくもまあ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」

「ハッ、ちゃんと魔王様直々の許可を貰って堂々と入国したぜ?文句でもあるのか、タンニーン」

それを聞いた闇慈がアザゼルに問いかける。

「アザゼル先生。まさかとは思いますけど・・・このドラゴンが僕達の?」

「あぁ。こいつがお前らの先生だ」

「「ええええええええっ!?」」

「ドラゴンとの修業は昔から実戦方式だ。目一杯鍛えてもらえ」

「そんなぁぁぁ・・・俺のハーレムの夢がぁぁぁ」

一誠はその時点で涙目になっていたが、闇慈はタンニーンに近づき・・・

「ドラゴンと戦うことが出来るなんて・・・僕はこれでもっと強くなれますか?」

「それはお前次第だ、黒衣の死神よ。安心しろ、手加減はしてやる」

「・・・いえ。僕の時は全力で掛かってきて下さい!!」

「貴様、正気か!?六龍王の一角、[魔龍聖]『ブレイズ・ミーティア・ドラゴン』であったこの『タンニーン』に全力で来いと言っているのか!?貴様、下手をしたら死ぬ事になるぞ!!」

「死との境地でしか見えないものがある・・・そしてそこには僕を強くする『何か』があると思うんです!!だからお願いします!!」

「・・・」

闇慈の曇りのない眼をじっとタンニーンは見ると・・・

「分かった。お前のその覚悟、気に入った!!」

「ありがとうございます!!」

「しかし。本当に危険とみなした時は我も加減をするぞ?」

「はい!!」

「話は纏まったみてえだな?じゃあ頑張れよ?」

「イッセー、気張りなさい!」

「部長―――!!!」

タンニーンは一誠と闇慈をムズッと手でそれぞれ掴むと山の中に飛んで行った。
果たして闇慈と一誠は無事に戻ること出来るのだろうか?
 

 

第五十四話 境地


ドゴオオオオオオオン!!!!

修行が開始されて数日。闇慈と一誠が連れてこられた山々には至る所に、クレーターや抉れた場所があった。そして今日も修行の山は轟音を轟かせていた。

「うわぁぁぁぁああんっ!」

一誠は泣き顔になりながら、タンニーンが飛ばしてくる火球を次々と避けていた。
しかし一誠が泣き顔になるのも分かる。タンニーンの火球ブレスは簡単にクレーターが出来てしまうほどのものだった。直撃したら跡形もないだろう・・・

「ほーら、赤龍帝の小僧。もっと素早く避けんと消し炭なるぞ?」

「せやっ!!」

闇慈が一誠を気にしている間にデスサイズ・ヘルでタンニーンの身体を斬り付けようとしたが・・・

ガキン!!

「これでもダメか!!龍の鱗は流石に硬すぎる!!」

弾かれてしまう。龍の鱗はそこらの甲冑よりはるかに硬く、生半端な攻撃では通用しない。闇慈はデスサイズ・ヘルに切れ味を地味に上げていったが、一向に斬れる気配がなかった。
そして闇慈は再びタンニーンと距離を取る。

「黒衣の死神は中々成長が早いな。我に攻撃する一瞬の隙をついてくる、そして我が火球を放つまでには距離を取っている。それに比べ、赤龍帝の小僧は逃げてばっかりか・・・」

タンニーンは岩陰に隠れていた一誠を見つけると、その岩に向かって火球ブレスを放ち、一誠を誘き出した。

「ひぃぃぃ!!死ぬ!!死ぬ!!死んじゃうよ!!」

「まったく、逃げ回ってばかりではいつまで経っても修業にならないだろう?ほら、少しは反撃してこい」

「無理っスよ!あんた強すぎだもん!もしかしてヴァーリより強いんじゃないの!?」

「まあ、パワーだけなら魔王級とはよく言われる」

「無理ィィィ!!魔王級のドラゴンって何!?ドラゴンってだけでもバケモノなのに、魔王級なんて相手に出来る訳ないでしょおおお!!」

「そこ死神は我に恐怖の顔を見せずに掛かってくるぞ?」

「怖くないわけじゃないが、恐怖に負けては成長は出来ない!!」

闇慈はタンニーンにそう返すと再びデスサイズ・ヘルを取り、斬りかかろうとすると・・・

「お~。やってんな。どうよ?」

アザゼルが顔出しに来た。

~~~~~~~~~~~~

「うみゃい!うみゃいよぉぉぉおおお!」

「イッセー。気持ちは分かるけどご飯粒が飛んでるよ?」

一誠と闇慈はリアス達が作ってきてくれた弁当にがっついていた。一誠に至ってはリアスが作ってくれたおにぎりが嬉しかったのか涙を流しながらバクバクと食べていた。
実はここ数日。食事もサバイバル環境下にあり、自給自足の日々が続いていた。しかし冥界に来て日の浅い二人にとって植物などの知識は持ち合わせていなかった。仕方ないので二人は近くにある川でとった魚を焼いて食べていた。

「ハハハハ。しかし数日見ない間に多少は良いツラになったな」

「ふざけんな!死ぬよ!俺死んじゃうよ!このドラゴンのおっさんメチャクチャ強いよ!ドラゴンの戦いを教えてくれるって言っても実力が開き過ぎてて話にならねぇぇぇぇっ!おっさん。全然手加減してくれねえんだもん!!俺、ドラゴンのおっさんに殺されちゃいますって!童貞のまま死にたくないっス!」

「イッセー。それは違うと思うよ・・・タンニーンが本気出したらすぐに消し炭だって・・・」

「なんでそんなことが言えるんだよ!?闇慈」

「この前イッセーが休んでいる間に、本気で相手をして貰ったんだけど・・・あれは死ぬかと思ったよ。火球が掠めただけで身体中の骨が折れそうな位の威力だったんだよ?」

「なんだよ・・・それ」

それを聞いた一誠はさらに顔を青くしてしまった。

「そのお陰で何度も死に掛けたけど、何だか『境地』が見えたような気がする」

そう言うと闇慈は立ち上がり、タンニーンに再び頼んだ。

「タンニーン。お願いします!!」

「では二人に危害が出ないように空で戦うとしよう」

そう言うと闇慈が死神の姿になると空に飛び立ち、タンニーンと向き合った。

「ではいくぞ!!」

そう言うとさっきとは比べ物にならない位の火球ブレスを闇慈に放った。闇慈はそれを避けるが・・・ミシミシと骨がきしむ様な音が聞こえた。

「ぐっ・・・(思い出せ・・・あの感覚を・・・『境地』を)」

闇慈は突然目を瞑った。それには一誠も驚いたようだった。

「何やってるだよ!?闇慈!?避けろ!!」

そう言っている間に闇慈の目の前には火球が迫っていた。

(僕は・・・『生きる』!!そして大切なものを・・・『守る』!!)

その瞬間、闇慈の心の中でピチャンと何かが弾けた。そしてカッと目を見開き・・・巨大な火球をデスサイズ・ヘルで一閃した。

「うおおおおおお!!!」

闇慈が振り切るとその火球は霧散してしまった。そして闇慈からは目に見える程の黒いオーラのような物を纏っていた。

「見事だ。死神よ」

「これは・・・一体?」

(ついに境地に達したか・・・闇慈よ)

ここで久しぶりにデスが闇慈に話しかける。

(デスさん。お久しぶりな気がします)

(気にするな。それよりお前は『明鏡止水の境地』に達することが出来たようだな)

(明鏡止水?)

(穢れのない清んだ心・・・それが明鏡止水。お前はこの境地に至った時は更なる力を得るぞ)

それを言うとデスは再び、引っ込んでしまった。そして闇慈は一誠の元に降りてきた。

「闇慈!!何だよそのオーラみたいなのは!?」

「これが僕の境地・・・明鏡止水の境地みたいだよ」

それにアザゼルが続ける。

「明鏡止水か・・・洒落た名前だな。でもお前はこれで強くなったと思うぜ?俺もあの火球を叩き斬った時は驚いたぜ?」

それを聞いた闇慈は少し笑みを零し、水筒のお茶で喉を潤した。ここで闇慈は気になったことを思い出し、アザゼルに尋ねる。

「アザゼル先生。あの時ヴァーリが何か呪文みたいなものを唱えようとしていたんですけど、あれって何なんですか?」

「あぁ、[覇龍]『ジャガーノート・ドライブ』の事か」

「[覇龍]『ジャガーノート・ドライブ』?[禁手]『バランス・ブレイカー』よりも上の状態ですか?」

「いや、バランス・ブレイカーの上は存在しない。セイクリッド・ギアの究極は禁手だ。だがな、魔物の類を封印してセイクリッド・ギアにしたものがいくつかあってな。それらには独自の制御が施されている。イッセーのブーステッド・ギアとヴァーリのディバイン・ディバイディングもその例だ」

「独自の制御・・・要するにジャガーノート・ドライブは『力の暴走』みたいなものですか?」

「そうだ。酷い位のな。本来、セイクリッド・ギアは強力に制御されていて、その状態から力を取り出して宿主が使えるようにしている。だが、赤龍帝と白龍皇の神器の場合はそれを強制的に一時解除し、封じられているパワーを解放する。それが『ジャガーノート・ドライブ』だ。一時的に神に匹敵する力を得られるが・・・リスクも大きい。寿命を大きく削り、理性を失う。言うなれば、力の亡者と化した者だけが使う呪われた戦い方だ。イッセー、お前は絶対に真似するな」

一誠はそのジャガーノート・ドライブの内容を聞くとブンブンと首を振り、同意した。

「よし。お前たちもオッケーみたいだな。あとは・・・小猫か」

「小猫?小猫ちゃんがどうかしたんですか!?」

闇慈はらしくないように慌ててアザゼルに尋ねる。

「落ち着け。命にどうこうするって程じゃねえ。焦っている・・・と言うよりも、自分の力に疑問を感じているようだ。俺が与えたトレーニングを過剰に取り組んでてな、今朝倒れた」

「なん・・・ですって!?」

闇慈は心が乱れたのか『明鏡止水』も消えていた。

「怪我はアーシアに治療してもらえるが、体力だけはそうはいかん。特にオーバーワークは確実に筋力などを痛めて逆効果だ。ゲームまでの期間が限られているのだから、それは危険だ」

(小猫ちゃん・・・君は何を焦っているんだ。焦りは何も良い物を生まない)

闇慈は苦虫を噛み締めたような顔をしたが、アザゼルは続ける。

「さて、行くか。アンジとイッセーを一度連れ返せと言われたんでな。一度グレモリーの別館に戻るぞ」

「へっ?先生、誰からの連れ戻し命令ですか?部長?」

「リアスの母上殿だ」

「「??」」

結局何なのか、分からずに二人はアザゼルに連れられ、別館に戻った。
 

 

第五十五話 過去


「はい。そこでターン・・・ステップのキレも良いわね。アンジ君はすぐに覚えてしまうわね」

「すげえな、闇慈は。すぐに覚えてしまうからよ」

「こう言うのは頭で覚えようとするんじゃなくて。身体で覚えるものだよ、イッセー」

山から一度グレモリーの別館に来た闇慈と一誠は、ヴェネラナとダンスの練習を行っていた。一誠と闇慈はダンスを全くやったことがないため覚えるのに一苦労しているようだった。そして休憩の時間になった時に闇慈は小猫の事が気になったのかヴェネラナに尋ねた。

「ヴェネラナさん。小猫ちゃんの容態は?」

「無理をしすぎて体力が著しく落ちていたけど、1日か2日。ゆっくりと体を休めれば回復するでしょう」

「小猫ちゃん。ここに来てから様子がおかしくなって凄く心配です」

一誠は小猫の正体を知らないのでそう呟いていたが、闇慈はなんとなく気付いていた。

「彼女は今、懸命に自分の存在と力に向き合っているのでしょう。難しい問題です。けれど、自分で答えを出さねば先には進めません」

「存在と力?」

「・・・ヴェネラナさん。小猫ちゃんの過去に何があったんですか?・・・猫又の過去に」

「猫又?それって何だよ?闇慈」

「アンジ君はご存知のようね。イッセー君はリアスの眷属になって間もなかったわね。そう、知らなくても当然ですね。少しお話をしましょう」

ここでヴェネラナは昔話を始めた。
それは二匹の姉妹猫の話だった。姉妹の猫はいつも一緒だった。寝る時も食べる時も遊ぶ時も。親と死別し、帰る家もなく、頼る者もなく、二匹の猫はお互いを頼りに懸命に一日一日を生きていった。
二匹はある日、とある悪魔に拾われた。姉の方が眷属になる事で妹も一緒に住めるようになり、やっとまともな生活を手に入れた二匹は幸せな時を過ごせると信じていた。
ところが事態は急変してしまった。姉猫は、力を得てから急速なまでに成長を遂げたそうだ。隠れていた才能が転生悪魔となった事で一気に溢れ出たらしい。その猫は元々妖術の類に秀でた種族で、魔力の才能にも開花し、挙げ句仙人のみが使えると言う『仙術』まで発動していた。
短期間で主をも超えてしまった姉猫は力に呑み込まれ、血と戦闘だけを求める邪悪な存在へと変貌していった。そしてとうとう力の増大が止まらない姉猫は遂に主である悪魔を殺害し、『はぐれ』と成り果てましまい、しかも『はぐれ』の中でも最大級に危険なものと化した。追撃部隊を悉く壊滅する程に・・・

(猫又がそれ程の妖怪だったなんて・・・その力に小猫ちゃんは恐れているのか。まるで死神に転生したばかりの僕を見ているようだな)

「しかし残った妹猫。悪魔達はそこに責任を追及しました。『この猫もいずれ暴走するかもしれない。今の内に始末した方が良い』と」

「っ!!」

「しかし処分される予定だったその猫を助けたのだサーゼクスでした。サーゼクスは妹猫にまで罪は無いと上級悪魔の面々を説得したのです。結局、サーゼクスが監視する事で事態は収拾しました」

しかし信頼していた姉に裏切られ、他の悪魔達に責め立てられた小さな妹猫の精神は崩壊寸前だったそうだ・・・

「サーゼクスは、笑顔と生きる意志を失った妹猫をリアスに預けたのです。妹猫はリアスと出会い、少しずつ少しずつ感情を取り戻していきました。そして、リアスはその猫に名前を与えたのです。・・・小猫、と」

(これが君の過去か。小猫ちゃん)

「つまり・・・小猫ちゃんは妖怪だったんですか?」

「そう、彼女は元妖怪。猫又をご存じ?猫の妖怪。その中でも最も強い種族、猫魈(ねこしょう)の生き残りです。妖術だけではなく、仙術をも使いこなす上級妖怪の一種なのです」

~~~~~~~~~~~~

ダンスの練習も終わり、闇慈と一誠は本邸に移動した。そして到着した途端リアスが迎え入れ、一誠を抱きしめた。闇慈はそんなことも目も暮れず真剣な表情で・・・

「リアス先輩。小猫は?」

それを聞いたリアスは険しい表情となって小猫の部屋に案内をした。そしてリアスの案内で中に入るとベッドの中で横になっている小猫と、その脇際で様子を伺っている朱乃がいた。
しかし今回の小猫は違った。小猫の頭から白い猫耳が生えていた。作り物でもない、本物の猫耳が。普段は隠していて、体力がなくなると出てきてしまうらしい。

「闇慈君、イッセー君、これは・・・」

「大丈夫です、朱乃さん。話はリアス先輩とヴェネラナさんから伺いました」

闇慈は朱乃にそう返すとベッドの隣に移動して小猫の様子を伺った。

「小猫ちゃん。身体は大丈夫?」

闇慈は小猫に優しく問いかけるが、小猫は・・・

「・・・何をしに来たんですか?闇慈先輩」

闇慈に見せた事のない不機嫌そうな声を上げた。闇慈は少し心に傷を負ったみたいだが表情は変えなかった。

「心配しているのに、その言い様はないんじゃないかな?」

闇慈が小猫を再び心配するが、小猫は答えない。そして闇慈は別題に入る。

「話はアザゼル先生とヴェネラナさんに聞いたよ。オーバーワークなんかしても良い事はない。小猫ちゃん・・・君は何を焦っているの?」

「・・・なりたい」

小猫はゆっくりと起き上がると涙目で闇慈を見ながら、こう言った。

「強くなりたいんです。祐斗先輩やゼノヴィア先輩、朱乃さん・・・そして、闇慈先輩やイッセー先輩のように心と体を強くしていきたいんです。ギャーくんも強くなって来てます。アーシア先輩のように回復の力もありません。・・・このままでは私は役立たずになってしまいます・・・ルークなのに、私が一番・・・弱いから・・・お役に立てないのはイヤです・・・」

確かに小猫を除いた全員は強くなって来ていた。祐斗は聖魔剣を手に入れ、ゼノヴィアはデュランダルを使える。朱乃は最強の駒、クイーンで、ギャスパーは時間を停められる。アーシアは回復能力が優れており、イッセーは伝説のドラゴンを身に宿している。闇慈は死神の力を手に入れ、歴代の悪魔や堕天使を倒し、明鏡止水も習得した。
小猫は溜まった涙をボロボロこぼしながら話を続ける。

「・・・けれど、うちに眠る力を・・・猫又の力は使いたくない。使えば私は・・・姉さまのように。もうイヤです・・・もうあんなのはイヤ」

初めて見せる小猫の泣き顔に闇慈は少し戸惑いを見せるが小猫に話す。

「でも小猫ちゃん。それは話が矛盾してるよ。それに『強さ』ってそんな簡単に身に付くものじゃないと思う。そして事実や現実も受け入れることも『強さ』に結び付くんじゃないかな?強さが手に入らないと言って挙句の果てに身体を無理に傷つけ強くなっても、それは本当の強さじゃない。唯の『付け焼き刃』だ」

「っ!!闇慈先輩は強いからそんなことが平気で言えるんです!!先輩に私の気持ちなんて分かる訳・・・」

小猫が言い切ろうとした瞬間・・・

パン!!

病室に乾いた音が響き渡る。それは闇慈が小猫の頬を右手ではたく音だった。

「闇慈!?」

「闇慈君!?」

イッセーと朱乃もその事に驚きを隠せないようだった。

「・・・えっ?」

はたかれた小猫本人も呆然としていた。そして闇慈の眼が真紅の魔眼になると・・・

「いい加減にしろ、塔城小猫。誰にだって強くなりたいと言う気持ちはある。嘗ての俺がそうだ。だが、焦りで己を見失うな!!確かに俺も怖かった。死神の力が強くなっていく内に本当の自分じゃなくなってしまうんじゃないかと。しかし・・・」

闇慈は死神の時の口調で小猫に言い聞かせる。そして魔眼を解除すると・・・

「その恐怖に打ち勝つ心をくれたのは君だよ、小猫ちゃん。そして君は一人じゃない。部員のみんなやグレモリー家の人達だっている・・・人を信じる心があれば恐れるものはなにもない。それを忘れたらダメだよ」

闇慈はそれだけを言い残すと病室から退室した。それを追うかのように一誠も出てくる。

「おい、闇慈。いくら間違っているとは言っても叩くのはダメだろう?小猫ちゃん。怖がってだぜ?」

「僕もやり過ぎたかなって思ってる。でも僕は小猫ちゃんには強くなってもらいたいんだ。付け焼き刃じゃなく、本当の強さをね。さて・・・僕もあんなに言ったんだからもっと強くならないとね」

闇慈は小猫のことを思って・・・いや。好きだからこそ本気で怒った。それは一誠も分かっていた。

「だな。色んな意味で」

一誠は闇慈の事をニヤニヤと笑いながら見ていた。闇慈は一誠が何を考えているのか分かったのか笑顔でこう言った。

「イッセー・・・先に謝っておくね?明日の修行で君に『死』を見せたらゴメンね?」

「何だよそれ!?それって死亡フラグ、ビンビンじゃねぇか!!」

そしてその言葉通りになりかけたことをここに記しておく。
 

 

第五十六話 祝宴


時は過ぎて行き8月16日。修行は昨日で終了していた。シトリー家のゲームは20日で、万全の状態で望む事を前提としていた。一誠は禁手に至らなかったが、体力やパワーは前よりも格段に上がっていた。
そして夕刻、一誠は駒王学園の制服に着て、そして闇慈はヴェネラナから貰った黒執事服を着ていた。今日は祝宴会があるらしくそのために待機していた。ここで聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「兵藤と黒神か?」

「匙君、どうしてここに?」

「会長がリアス先輩と一緒に会場入りするってんでついてきたんだ。で、会長はリアス先輩に会いに行っちまったし、仕方ないんで屋敷の中をウロウロしてたら、ここに出た」

匙は少し離れた席に座り、真剣な面持ちで言う。

「もうすぐゲームだな」

「そうだね」

「俺、鍛えたぜ?兵藤、黒神」

「俺達も鍛えた。ってか、山で毎日ドラゴンに追いかけられてた」

「そ、そうか。相変わらずハードな生き方してんな。まあ、俺も相当ハードなメニューこなしたけどな。話は変わるが先月、若手悪魔が集まった時のこと覚えているか?」

「あの若手集会のこと?」

「あれ、俺達は本気だ。俺は・・・せ、先生になるのが夢なんだ!」

「レーティングゲーム学校のか?」

一誠の問いに匙は紅潮しながらも真剣に話を進める。
ソーナは冥界にレーティングゲームの専門学校を設立しようとしており、悪魔なら身分格差関係なく受け入れる自由な学校にしたいと言う。誰でもレーティングゲームが出来るように、ソーナは人間界で猛勉強しているらしい。可能性がゼロに限りなく近くても、上級悪魔になれる事を信じてソーナと共に夢を叶えると匙は語ってくれた。

「素晴らしい心掛けだね、匙君。その夢が叶うと良いね」

「ああ、そのためにも今度お前達を倒さなきゃいけないんだけどな」

「あー、なるほど。ならダメだ。俺達が勝つさ!」

「いや、俺達だ。上にバカにされた以上、俺達は結果で見せなきゃいけない」

一誠と匙は眼は真剣なものの表情は笑いながら語っていた。

「イッセー、アンジ、お待たせ。あら、匙君も来ていたのね」

振り向くとドレスに着替えたリアス達がやって来た。朱乃も今日は西洋ドレスを装っていた。アーシア、ゼノヴィア、小猫の3人もドレスを着ていた。しかし・・・

「なんでお前までドレス姿なんだよ!」

男であるギャスパーも何故かドレスを着ていた。

「だ、だって、ドレス着たかったんだもん」

「もうギャスパーの女装癖はここまで来たら、もう称賛ものだよ」

闇慈がやれやれと言う表情を示していた。ソーナもリアス達より少し遅くに到着すると、一人の執事がやって来た。

「タンニーン様とそのご眷属の方々がいらっしゃいました」

庭に出てみると、タンニーンと同じサイズのドラゴンが十体もいた。

「来てやったぞ、兵藤一誠。黒神闇慈」

「うん!ありがとう、おっさん!」

「態々、ありがとうございます、タンニーン」

皆はタンニーンを含めたドラゴン達の背中に乗り、パーティ会場へと向かった。

~~~~~~~~~~~~

「あー、ちかれた」

「この人数に挨拶して回るのは、流石に堪えるよ・・・」

パーティ会場に着き、上級悪魔達との挨拶を終えた闇慈、一誠、アーシア、ギャスパーは隅っこの空いていたテーブルを囲みながら、イスに腰掛けた。慣れてないこともあるのか四人ともグッタリだった。ましてや『赤龍帝』や『黒衣の死神』の名前を持っている一誠と闇慈は注目の的だった。闇慈に至っては紳士的イケメンなので祐斗同様に、女性悪魔から手引きを受けた。

「じゃあ僕は何か飲み物を貰ってくるね」

闇慈は他の3人と一旦別れを告げると、様々なドリンクが置いてある所まで来た。

「さてと・・・何にしようかな」

「お久しぶりですわね。黒衣の死神さん」

闇慈はその声をする方を向くと金髪のツインロールが特徴のピンク色のドレスを装った少女が立っていた

「貴女は確か・・・ライザーの妹のレイヴェル・フェニックスさん」

「レーティングゲーム以来ですわね。相変わらずご活躍されているみたいですわね?」

立っていたのはリアスの元婚約者、ライザー・フェニックスの妹のレイヴェル・フェニックスだった。

「ライザーの事はイルちゃんとネルちゃんから聞きました。すみません・・・」

「貴方が気になさることはありませんわ。才能に頼って調子に乗っていましたから、お兄様にとって良い勉強になったはずですわ」

「(妹がそんな言い方して良いのかな?・・・まあ良いけど)それより貴女は今どうしているのですか?」

「それなら現在トレードを済ませて、今はお母さまの眷属と言う事になってますわ。お母さまが自分の持っていた未使用の駒と交換してくださったの。お母さまは眷属になりたい方を見つけたら、トレードしてくれるとおっしゃってくださいましたから、実質フリーのビショップですわ。お母さまはゲームしませんし」

ここで用語の説明に移る。『トレード』とはレーティングゲームのルールの1つで、キングである悪魔の間で自分の駒を交換出来る制度のことを言う。ただし同じ種類の駒である事が必須条件である。

「そんなことが出来たんですね。初耳です」

「あの、死神・・・」

「あのレイヴェルさん。僕のことは名前で呼んでくれませんか?その方が僕も嬉しいので」

「良いのですか!?」

レイヴェルはグイッと闇慈に近づき、目をキラキラさせながら尋ねた。闇慈は少し動揺したがコクッと頷き了承した。

「コ、コホン。では今後貴方の事は、アンジ様と呼ばせて貰いますわ。それと今後は敬語で話さなくていいですわ」

「敬語ではなくて良いのですか?」

「わたくし良いと言ったのだからいいのです!!」

「・・・分かった。じゃあこれからはよろしくね?レイヴェル」

「ふ、ふん」

そう言うとレイヴェルは顔を少し赤くしながら、その場を去って行った。今度はイッセーに挨拶をしに行ったのだと思う。

「何だかよく分からない娘だな・・・後はどうしようかな?」

闇慈が飲み物を飲み干し、グラスを置くとここで光子状態の黒羽から知らせが入る。実は闇慈は小猫のことが心配で仕方なかったのか黒羽に見張りをさせていた。

(闇慈様。小猫様が一人で会場を出て、森に向かいました)

(一人で森に?・・・嫌な予感がする!知らせてくれてありがとう、黒羽)

闇慈は入り口の監視に小猫の特徴を教え、何処に行ったか尋ねるとその方向を教えてくれた。闇慈は翼を広げるとその方向へ飛び立った。
 

 

第五十七話 自覚


闇慈は姿を消し、空の上から小猫を探していた。そして闇慈は小猫の気配を感じ、森の中に降りていくと、小猫が周りをキョロキョロと見回して何かを探しているような雰囲気だった。

(何をしているだ?小猫ちゃんは?しばらく様子を見るか・・・)

闇慈は姿を消したまま小猫の様子を木の裏から伺っていると・・・

「久しぶりじゃない?」

闇慈にとって聞き覚えの無い声が聞こえ、その方に視線を向けた。そこには黒い着物に身を包み、頭部に猫耳を生やした女性だった。

(・・・小猫ちゃんと同じ猫又の気配。間違いない、彼女が小猫ちゃんのお姉さんだな)

闇慈が理解している間に小猫は酷く驚いた様子で全身を震わせ、その女性の名前を叫んだ。

「っ!!黒歌(くろか)お姉様・・・!!」

「ハロー、白音(しろね)。お姉ちゃんよ」

そして黒歌の足元には黒い猫が擦り寄っていた。

「会場に紛れ込ませたこの黒猫一匹でここまで来てくれるなんて、お姉ちゃん感動しちゃうにゃ~」

「・・・姉さま。これはどういう事ですか?」

「怖い顔しないで。ちょっと野暮用なの。悪魔さん達がここで大きな催ししているって言うじゃない?だからぁ、ちょっと気になっちゃって。にゃん♪」

「ハハハハ!こいつ、もしかしてグレモリーの眷属かい?」

今度は闇慈にも聞き覚えのある声が響くと黒歌の隣にはヴァーリの仲間で孫悟空の末裔・・・美猴が立っていた。そして一本の木の裏に視線を向ける。

「気配を消しても無駄無駄。俺っちや黒歌みたいに仙術知ってると、気の流れの少しの変化だけでだいたい分かるんだよねぃ」

美猴に言われ、一誠とリアスが木陰から姿を現した。どうやら闇慈には気付いていないみたいだ。

(リアス先輩。それにイッセーも来ていたのか。それよりも美猴がここにいるってことは彼女もカオス・ブリゲードの仲間か?)

「・・・イッセー先輩、部長」

「美猴、誰、この子?」

「赤龍帝だ」

それを聞いた黒歌は目を丸くして、一誠を見る。

「本当にゃん?へぇ~。これがヴァーリを退けたおっぱい好きの現赤龍帝なのね」

「黒歌~、帰ろうや。どうせ俺っちらはあのパーティに参加出来ないんだし、無駄さね」

「そうね。帰ろうかしら。ただ、白音はいただくにゃん。あの時は連れていってあげられなかったからね♪」

黒歌が小猫を見て目を細め、それを見た小猫は身体をビクつかせていた。それを見た一誠は小猫の前に出て、それを庇う。

「この娘は俺達リアス・グレモリー眷属の仲間だ。連れて行かせる訳にはいかい」

「いやいや、勇ましいと思うけどねぃ。流石に俺っちと黒歌相手に出来んでしょ?今回はその娘もらえればソッコーで立ち去るんで、それで良しとしようやな?」

それを聞いた一誠とリアスは憤怒の表情で前に出る。闇慈も姿を消したまま怒りの表情を出してきた。

「ふざけんなよ!そんな事、誰がするか!」

「この子は私の眷属よ。指一本でも触れさせないわ」

「あらあらあらあら、何を言っているのかにゃ?『それ』は私の妹。私には可愛がる権利があるわ。上級悪魔さまにはあげないわよ」

場の空気が一変して、お互いに殺気を当てながら睨み合う。一触即発の空気を帯びてきたが、先に睨みを止めた黒歌が言う。

「めんどいから殺すにゃん♪」

その瞬間、言い表せない感覚が襲ってきた。

(何だ?今の感覚は?何だか周りの空気が変わったような)

闇慈が疑問に思っていたがリアスが何なのか分かると苦虫を噛んだ表情で黒歌に言う。

「・・・黒歌、あなた、仙術、妖術、魔力だけじゃなく、空間を操る術まで覚えたのね?」

「時間を操る術までは覚えられないけどねん。空間はそこそこ覚えたわ。結界術の要領があれば割かし楽だったり。この森一帯の空間を結界で覆って外界から遮断したにゃん。だから、ここでド派手な事をしても外には漏れないし、外から悪魔が入ってくる事もない。あなた達は私達にここでころころ殺されてグッバイにゃ♪」

「(もう良いかな?有力な情報も得たし)・・・そう簡単に行くと思っているのか?」

『っ!?』

その声にその場に居る全員が一瞬身構えた。そして闇慈が禁手を解除し、木の裏から出てくると小猫の元に寄ってきた。リアスと一誠は驚愕の表情を浮べていた。

「・・・闇慈先輩!?何時から!?」

「小猫ちゃんが君のお姉さんと出会う前から居たよ。少しでも情報を得ようと隠れていたんだよ。ごめんね?すぐに出てこなくて」

「・・・来てくれただけでも凄く嬉しいです」

「どうしてにゃ!?居たのなら気の乱れですぐに分かる筈にゃ」

「黒歌。こいつはカテレアやコカビエルを倒した黒衣の死神だぜぃ。死神なら姿を消す事位、容易だと思うぜぃ」

それを聞いた黒歌は闇慈も興味深そうに見ていた。

「あんたが死神さんかにゃ?中々美男子だにゃ~♪食べちゃいたいにゃ♪」

「俺を誘惑しようとしても無駄だ。俺には心に決めた大事な存在がいる。まあ・・・そいつに食われるのなら、俺も本望だがな」

「「闇慈!?」」

闇慈の意外な返答に一誠とリアスが驚愕の声をあげる。しかしここで・・・

「リアス譲と兵藤一誠がこの森に入ったと報告を受けて来てみれば、結界で封じられているとはな・・・」

「タンニーンのおっさん!」

空を見上げるとタンニーンが飛んでいた。どうやら結界が完全に張られる直前に入り込んだようだ。

「ドス黒いオーラだ。このパーティには相応しくない来客だな」

美猴が空のタンニーンを見て歓喜し始めた。

「おうおうおう!ありゃ、元龍王の『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンじゃないかぃ!まいったね!こりゃ、もう大問題だぜ黒歌!やるしかねぇって!」

「嬉しそうね、お猿さん。良いわ。龍王クラス以上の首2つと死神の首を持っていけば、オーフィスも黙るでしょうね」

美猴は足元に金色の雲・・・筋斗雲(きんとうん)を出現させ、タンニーンがいる空へ飛び出して行くと如意棒(にょいぼう)を手元に出して、タンニーンに攻撃を仕掛ける。タンニーンは巨体では考えられないほどの速度で回避し、大質量の火炎ブレスを美猴に浴びせていた。

『タンニーンめ、ブレスの威力を抑えているな』

「マジかよドライグ!あの威力で抑えてるのか!?」

「タンニーンが本気になったら、ここら一帯がすぐに焼け野原だよ、イッセー」

籠手に宿るドライグの言葉に驚くイッセーと冷静に判断してる闇慈。しかし美猴はまだ生きていた。

「アハハ!やるねぃ!元龍王!」

「ふん!何者かと思えば孫悟空か!このタンニーンの一撃を受けきるとは、なんとも楽しませてくれるわ!」

「美猴ってんだ!よろしくな、ドラゴンの大将!」

「ククク。猿ごときが言ってくれる。豚と妖仙はどうした?仲違いか?」

「八戒(はっかい)と悟浄(ごじょう)の末裔の事かぃ?ハハハ!俺っちの一族の奴らも含めて、皆保守派さね!どいつもこいつも現状に満足なのさ!けど、俺っちは楽しい事が大好きでねぃ!だからこそ、カオス・ブリゲードの誘いも喜んで受けて、ヴァーリと行動を共にしてたりしてんだよねぃ!」

「フン!白龍皇と何を企んでいる?噂では貴様達の部隊だけ別行動を許されていると言うではないか!オーフィスの『蛇』も与えられていない唯一のチームとも聞いた!」

「聞きたきゃ俺っちに勝ってみなよ!」

「言うか!猿めッ!ここは『あの世』と呼ばれし地獄こと冥界だ!貴様ら雑魚が後悔するには最高の場所だと知れッ!」

タンニーンと美猴が轟音を上げながら、空中で激闘を繰り広げ始めた。
しかしまだ黒歌が残っていた。妖艶な笑みを見せているが、全身からドス黒いオーラを滲み出している。しかし闇慈は気にもせずに、小猫を庇うように前に出る。

「にゃん♪白音は貴方に大分懐いているみたいにゃ?彼氏にゃ?」

「それは想像に任せる。だが、小猫ちゃんを貴様の元にやるわけにはいかないな。目の前で泣いていた妹を助けない姉の元に返すことは出来ない」

「だって、妖怪が他の妖怪を助ける訳ないじゃない。ただ、今回は手駒が欲しいから白音が欲しくなっただけ。あなたやそこの紅い髪のお姉さんより、私の方が白音の力を理解してあげられるわよ?」

黒歌の言葉に小猫は首を横に振り、涙声でそれを否定する。

「・・・イヤ・・・あんな力いらない・・・黒い力なんていらない・・・人を不幸にする力なんていらない・・・」

闇慈は何かを決心したような顔になると、身体を屈め、小猫と向き合った。

「・・・あ、闇慈先ぱ・・・っ!?」

闇慈は小猫が言い切る前に小猫を自分の胸元に引寄せ、そして抱き締めた。そして顔だけを黒歌に向け、こう言った。

「黒歌・・・貴様は何も理解していない。ここにいるのは『白音』と言う人じゃない。『塔城小猫』という無二の存在だ!!貴様がかつて捨てた『白音』は・・・死んだ!!そして彼女はこれから俺たちと様々な思い出を作り、リアス・グレモリーのルークとして生を歩んでいく!!それを邪魔立てするのなら、俺は貴様に・・・『死』を見せやる!!」

闇慈の言葉に胸の中で小猫は涙を流していた。闇慈はゆっくり立ち上がり、そして今度は小猫に言い聞かせた。

「塔城小猫!!俺たちは全力でお前を助ける!!だから・・・言え!!お前が本当に望んでいる事を!!白音ではなく・・・塔城小猫として望んでいることを!!」

闇慈の激励に小猫も涙を拭うと・・・

「・・・行きたくない!!私は塔城小猫。黒歌姉さま、あなたと一緒に行きたくない!私はリアス部長と一緒に生きる!そして・・・闇慈先輩と!!」

今までに無かった叫びで、小猫は絶縁とも言える宣言を黒歌に放った。それを聞いた黒歌は苦笑した後、冷笑を浮かべる。

「じゃあ、死ね」

黒歌の言葉と同時に黒い霧のようなものが出てきた。そして・・・

「・・・あっ」

「・・・これは」

一誠の隣にいたリアスと闇慈の傍に小猫がその場で膝をつき、苦しみの表情を浮べた。

「ふーん、赤龍帝と死神を宿しているから効かないのかしら?この霧はね、悪魔や妖怪にだけ効く毒霧にゃん。毒を薄くしたから、全身に回るのはもう少し苦しんでからよ。短時間では殺さないわ。じわじわっと殺してあげるにゃん♪」

「ど、毒霧!?」

一誠はどう対処して良いのか分からずにたじろいでいたが・・・

「ならこうするまでだ!!」

闇慈は明鏡止水を発動させ、黒いオーラを纏うとデスサイズ・ヘルを掲げ・・・

「照らし出せ!!」

先端を勢い良く地面に突き刺すと、その衝撃でオーラが周りを飛ぶとそのオーラに触れた霧が消えて行った。

「毒霧が!?何をしたのにゃ!?」

「早い話。毒を『無効化』させてもらった。これで毒霧はもう通用しないぞ?」

そう言うと闇慈は飛翔刃を飛ばし、黒歌を真っ二つにしたが、それは幻影だった。

「良い一撃ね。でも無駄無駄。幻術の要領で自分の分身ぐらい簡単に作れるわ」

そう言っている間に黒歌の幻影が次々と増えて行った。そして妖術で作った球体を次々と撃ってきた。

「イッセー!!俺が奴の気配を読んで本体を見つける!!それまで時間を稼いでくれ!!」

「分かった!ブーステッド・ギア!」

一誠の左腕に赤い篭手が出現するが、いつも鳴る筈の音声が聞こえず、宝玉も薄黒くなっていた。

「ブーステッド・ギアが動かねぇ!?」

「何だと!?」

「あらら、赤龍帝のセイクリッド・ギアは動かずじまい?でも、私は撃っちゃうにゃん♪」

黒歌の幻影の1つが、体内に留まっている毒で苦しんでいるリアスと小猫目掛けて魔力を放つ。闇慈はそれをAMCマントで素早く弾くと・・・

「くそっ!!シャドゥ・ルーラー・・・発動!!」

闇慈の視界の影を操り、無数の影で幻影を消していく。

「仕方ない。俺が相手をしているからイッセーは覚醒させることを優先しろ!!」

「面目ねえ」

そう言うと一誠はドライグと話すように篭手に集中していた。

「さてと・・・これで幻影も俺には通用しない。どうする?」

「ならとっておきを出して殺してあげるにゃ♪」

黒歌は両手を上にかざすと、二色で出来た巨大な球体が出来上がった。

「妖術と仙術をミックスさせた術にゃ♪これで死神さんもグッバイにゃ♪」

そして出来上がった球体を容赦なく闇慈に振り下ろした。昔の闇慈なら少しは慌てただろうが、今ではそんな素振りさえ見せなかった。

ピチャン・・・

闇慈は再び明鏡止水の境地に入り、そしてさらに憑依死神を発動させた。

「今は何の恐怖も感じない・・・。断ち切るまでだ!!」

闇慈は魔力を篭めたデスサイズ・ヘルでそれを一閃した。それは真っ二つになるとそのまま霧散してしまった。

「そんな!?かなりの妖力を練り込んだのよ!?」

「まだだ!!」

闇慈はデスサイズ・ヘルを消すと右手にオーラを纏い始めた。それを見た黒歌は離れようとするが・・・

「逃がさん!!」

「にゃ!?」

影を操り、黒歌の腰に巻きつけ、引きよせると・・・

「必殺必中!!ダークネス・フィスト!!」

「にゃ~ん!!」

黒歌の鳩尾に闇の鉄拳を打ち込み、木に激突させた。そして闇慈は警戒心を持ちながら黒歌に近寄った。

「・・・威力は軽減しておいたから、命に別状はない。しかし衝撃波でしばらく身体を動かす事は出来ないぞ」

「どうして・・・殺さないにゃ?」

「小猫が悲しむ。例え貴様が小猫を捨てたとしても、小猫にとっては家族だ」

「・・・甘い死神さんにゃ」

「何とでも言え。そしてお前は小猫に負けたんだぞ」

「どう言う意味にゃ?」

闇慈は自分の右手を見ながら、黒歌に説明する。

「さっきの格闘術の基本は小猫から習った。だから貴様は小猫に負けたんだ」

しかしそれを聞いた黒歌はどうという事もなかった。そして闇慈の顔をじっと見だした。

「何だ?」

「さっきの一撃・・・中々良かったにゃ~。もう一回ぶってほしいにゃ♪」

「・・・はっ?」

黒歌の願望に闇慈はどう言っていいのか分からず、呆然としていた。
ここで一誠の声が周りに木霊する。

「おっさん!大変だ!右のおっぱいと左のおっぱい!どっちをつついたら良い!?」

闇慈は何をやっているんだ?と思い、見ていると乳房を晒け出したリアスと、それをつつこうとしている一誠の姿が目に入った。そして一誠は遂にリアスの乳房を突付くと・・・

『・・・至った。本当に至りやがったぞォォォ!』

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』

ブーステッド・ギアの宝玉に光が戻り、膨大な量のオーラが一誠の全身を包み、鎧と化した。

「バランス・ブレイカー、[赤龍帝の鎧]『ブーステッド・ギア・スケイルメイル』!!主のおっぱいを突付いてここに降臨・・・」

「遅いわ・・・」

ゴツン!!

闇慈は鎧と化した一誠に今度は容赦ないダークネス・フィストで拳骨し、地面に陥没させたが・・・

「痛って~!!?いきなり何すんだ!?闇慈!!」

「おお・・・かなり本気のダークネス・フィストを打ち込んだが無傷だなんてな」

『相棒、おめでとう。しかし酷い。俺はそろそろ本格的に泣くぞ』

「ドンマイだな、ドライグ」

『うおおおおおん!!!』

二人と一匹が漫才みたいなものをしていると突然空間が裂け、その裂け目から背広を着たメガネの若い男が現れた。そして彼の手には極大なまでに強い聖なるオーラを放つ剣が握られている。その剣を見たタンニーンが叫ぶ。

「全員そいつに近づくな!手に持っている物が厄介だぞ!聖王剣コールブランド。またの名をカリバーン。地上最強の聖剣と呼ばれるコールブランドが白龍皇のもとに・・・」

メガネの若い男が握っているのは地上最強の聖剣。ここで男性が口を開く。

「そこまでです、美猴、黒歌。悪魔に気付かれました」

「二刀か、鞘に収めている方も聖剣だな?」

「こっちは最近発見された最後のエクスカリバーにして、八本中最強のエクスカリバー。『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』ですよ」

(行方不明になっていた。最後のエクスカリバーか?)

ここで一誠が疑問の声をあげる。

「良いのか?そんなこと話してもよ?」

「ええ。私もそちらの方々に大変興味がありましてね。赤龍帝殿、死神殿。聖魔剣使い、そしてデュランダル使い手によろしく言ってもらえませんか?お互い一の剣士として合間見えたいと。では行きましょうか?」

「ちょっと待って欲しいにゃ」

ここで美猴に背負われている黒歌が男性を引きとめた。ここで黒歌の視線が闇慈へと向く。

「死神さん。私たちと来ないかにゃ?来てくれたら色々してあげるにゃん♪」

「それは何とも魅力的な誘いだが・・・」

闇慈は傍に近寄っていた小猫を自分の元へと引き寄せた。

「俺には命に変えても守りたい、かけがえのないものがここにはある。悪いがその誘いは断らせて貰おう」

「・・・闇慈先輩」

「残念にゃ。でも何時か君を食べてあげるから覚悟しておくにゃ」

それだけを残し、カオス・ブリゲードの連中は再び、空間の中へと消えていった。この一件はここで終幕となり、森に居た人達は再び会場へと戻った。そして戻っている間、小猫は闇慈から離れる事は無かった。

~~~~~~~~~~~~

そしてその夜中。リアスたちはグレモリーの本邸に戻っていた。そして闇慈は一人自分の部屋で
ベッドに腰掛けていた。

「・・・よし。行こう」

闇慈は小猫に夜中に中庭に来て欲しいと頼まれた。闇慈は時間になり、夜中の廊下を歩いていると・・・

「アンジ・・・」

「っ!!リアス先輩」

リアスと遭遇した。

「リアス先輩。僕は・・・」

「何も言わないで良いわ。・・・小猫をよろしくね?」

リアスの瞳には闇慈に信頼を寄せているものがあった。
闇慈はコクッと頷くと中庭に急いだ。そして中庭に着くと午後のティータイムを楽しむために設けられたイスに小猫が座って待っていた。そして小猫は闇慈に気付いた。

「・・・闇慈先輩」

「遅くなってゴメンね?小猫ちゃん」

「・・・いえ。私も今来た所ですから、大丈夫です」

そう言うと二人はロングチェアーに腰掛けた。しばらく沈黙が走った後小猫が口を開く。

「・・・闇慈先輩。今日は本当にありがとうございました」

「気にしないで?『仲間』を助けるのに理由は必要ないよ」

「・・・仲間ですか」

「ん?小猫ちゃん?」

そう言うと小猫は闇慈を見ながら真剣な顔で尋ねた。

「・・・先輩にとって私はただの仲間で、ただ後輩なんですか?」

「それは・・・」

「先輩が私を助けてくれたのは!私が眷属だからですか!?」

段々小猫がヒートアップして行き、小猫の声も涙声になっていった。

「私の気持ちはどうなるんですか!?私は・・・私は!!」

「っ!!」

闇慈は小猫の涙と枯れていく声を聞いていく内に耐えられなくなり、小猫の肩を掴んだ。

「・・・あ」

そして小猫が次の言葉を発する前に小猫に優しくキスをした。小猫は目を見開いたが、すぐに閉じた。そしてゆっくりそれを離すと闇慈が続ける。

「ゴメン、小猫ちゃん。僕は君の気持ちを踏みにじる所だったよ」

「・・・あ、闇慈先輩」

「僕はもう隠さない。君に僕の気持ちを伝えるよ・・・僕は君が好きだ。かけがえのない存在だよ」

闇慈は勇気を振り絞り、小猫に告白した。それを聞いた小猫は涙を流し始めた。

「・・・やっと聞けました。初めて私を本気で思ってくれている言葉を聞く事が出来ました」

「小猫ちゃん・・・」

「・・・闇慈先輩。私も・・・先輩の事・・・大好きです」

「小猫ちゃん!!」

闇慈は小猫を離すまいとせんばかりに力一杯、抱き締めた。そして・・・

「・・・小猫ちゃん」

「・・・闇慈先輩」

見詰め合うと・・・

「「・・・ん」」

キスを交わした。今度は長く甘いキスをした。そして二人ゆっくり離れた。二人とも顔を赤面させていた。そしてその後は、恋人同士としての初めての夜を過ごした。
 
 

 
後書き

何だかイマイチな仕上がりなってしまいました(汗)

みなさんに質問なのですがこの暁ではR18の描写は書いても良いのでしょうか?

もし可能ならこの後にその描写を書こうと思います!!知っていらっしゃる方は教えてください!!お願いします!!

感想と指摘。よろしくお願いします!! 

 

第五十八話 余興

闇慈と小猫が恋人同士となり数日後、終にシトリー家との決戦の日がやってきた。当然、闇慈も『遊撃手』としてこのゲームに参加することになっていた。
そして魔方陣でジャンプして到着したのはレストランとも思える場所。ここでグレイフィアの放送が入る。

『我が主サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様の通われる学舎「駒王学園」の近隣に存在するデパートをゲームのフィールドとして異空間にご用意致しました。リアスさまの本陣が二階の東側、ソーナさまの本陣がが一階の西側となっておりますので、プロモーションする際は敵本陣まで赴きください』

今回のゲームの会場は駒王学園近くのデパートだった。
更に特別ルールとして、回復品である『フェニックスの涙』が両陣営に1つずつ支給されている。ゲーム開始前に30分の作戦タイムがある、バトルフィールドとなるデパートを破壊し尽くさないなど、ルール制限も付け加えられていた。
パワーがモチーフのリアスたちはかなりの痛手だった。さらに・・・

「ギャスパーの時間静止の力も封印されるなんて、私たちにとってこの戦況は圧倒的に不利ね」

「今回はバカみたいに力を発揮することは出来ないと見て良いでしょうね。特にゼノヴィアのデュランダルや、イッセーのブーステッド・ギアは『破壊』を中心とした力ですからね。今回は小猫ちゃんや祐斗が主体となるでしょうね」

「何か作戦はあるのかしら?アンジ」

リアスの質問に闇慈は顎を抱えながら考える。

「・・・作戦は思いつきませんが、このデパートの構造を知ることが重要だと考えます。この状況下の中で使えるものはちゃんと使えるようにしておいた方が良いと思います。そしてそれはソーナ会長も同じことを考えている筈です」

「そうね。ソーナは知略的に攻めて来るでしょう。ギャスパー、コウモリになってデパートの構造などを見てきて頂戴。そしてゲームが開始したら敵の動きを見張って、私たちに知らせる事、良いわね?」

「り、了解しましたぁ!!」

ギャスパーも今回はやる気を見せているようだった。

~~~~~~~~~~~~

そして開始5分前まで自由行動となった闇慈は一人、喫茶店で紅茶を飲んで、心を落ち着かせていた。デパート内はそのまま再現されているため、色々なものがそろっていた。

(この戦い・・・ライザーの時のようには行きそうにはないな。相手もどんな能力を持っているかまだ分からないし、それに相手は僕達の力を知り尽くしているのは必然。さて・・・どうしようかな?)

闇慈が一人で考えていると小猫が闇慈の隣に座ってきた。

「・・・どうしたんですか?闇慈先輩」

「あ、小猫ちゃん。今回のゲームはそう簡単に行きそうにないなって思っててね」

「・・・そうですね。闇慈先輩。私は猫又の力を使って戦います。だから・・・」

小猫が言い切る前に闇慈は小猫の頭を優しく撫で、小猫と向き合った。

「分かってる。今回は小猫ちゃんと一緒にいるから、安心して良いよ?」

「・・・ありがとうございます、闇慈先輩」

「そして・・・ヘルキャットを目指して行こう?」

「ヘル・・・キャット?」

「冥界猫。小猫ちゃんの二つ名に相応しいと思うよ?そして力の暴走や力を悪用しようとする奴らから僕は君を全力で守ってあげる」

その事を聞いた小猫は軽く笑みを零す。

「・・・やっぱり先輩は優しい人です」

「当たり前の事を言ったまでだよ。君は僕の・・・恋人だからね」

「・・・嬉しいです。私も先輩を守れる位強くなって見せます。何時かきっと」

それを聞いた闇慈は微笑むと小猫のでこに軽くキスをする。そのやり取りを朱乃と一誠が影でこっそりと見ていた一誠は血涙を流し、朱乃はあらあらと笑顔で見ていたらしい。
 
 

 
後書き
今回は短くしました。次回からはレーティングゲームの開始です!!

R-18シーンは別の小説で投稿していきます!!
これに18制限をかけてしまうと18未満の方が読めないのでこちらはRー15指定に戻します!!R-18シーンは別の小説でお楽しみ下さい!!

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 

 

第五十九話 開始


時間は刻々と過ぎて行き、ゲームの開始時刻となった。
その後のルールの追加として今回のゲームは短期決戦(ブリッツ)方式となった。制限時間は三時間。つまり時間を多くかけられるほど悠長にしている暇は無い。リアスが椅子から立ち上がり、気合いの入った表情で言う。

「指示はさっきの作戦通りよ。イッセーと小猫、祐斗とゼノヴィアで二手に分かれるわ。イッセー達が店内からの進行。祐斗達は立体駐車場を経由しての進行。ギャスパーは複数のコウモリに変化しての店内の監視と報告。進行具合によって、私と朱乃とアーシアがイッセー側のルートを通って進むわ」

全員が耳に種子型の通信機を付ける。そして作戦が決行されると闇慈も行動を開始した。
闇慈は『遊撃手』と言う事でそれぞれのサポートを任された。闇慈は禁手を発動させ、デパート内を巡回し始めた。

「さてと・・・敵はどう動く?」

『リアス様のビショップ一名、リタイヤ』

開始早々、リタイヤの放送が館内に響いた。

(ビショップ?アーシアは朱乃先輩と一緒に居たはず・・・だから、ギャスパーがやられたの!?幾らなんでも早すぎるよ・・・)

闇慈が心の中で溜め息を付きながら飛んでいると、争っている光景が目に入った。それは一誠と匙だった。そして匙の黒蛇のような物が、一誠の篭手に張り付いていた。恐らく修行の成果でアブソーブション・ラインが進化したのだろう、以前と形が異なっていた。

(匙君のアブソーブション・ラインがイッセーの篭手に張り付いている!!あれじゃ力を倍増しても吸い取られてしまう!!)

闇慈は急降下で勢いを付け、その反動を乗せたデスサイズ・ヘルの斬撃で黒蛇を叩き斬った。

「俺のラインが!?」

匙が動揺している間に闇慈は鳩尾に蹴りを叩き込み、一誠から離した。そして闇慈は禁手を解除し、一誠の隣に姿を現した。

「大丈夫か?イッセー」

「悪ぃ、闇慈。助かったぜ」

「援軍か・・・よりにもよって黒神がくるなんてな」

匙は闇慈が加わった事で苦虫を噛んだ様な表情を浮べていた。しかし一誠が闇慈に頼み込んだ。

「闇慈。サジとはサシで戦わせてくれ!!」

一誠の迷い無い眼光を見ると闇慈は頷いた。

「・・・分かった。お前の修行の成果、あいつに見せてやれ!!」

闇慈は小猫の元に急いだが、勝負はもう付いていたみたいだった。匙の後輩らしい女子が片膝をついていた。そして小猫は猫又の状態だった。

「・・・気をまとった拳であなたに打ち込みました。同時にあなたの体内に流れる気脈にもダメージを与えたため、もう魔力を練る事は出来ません。更に言うなら内部にもダメージは通ってます。・・・もう、あなたは動けません」

(内部破壊を極意とした小猫ちゃんの力・・・!!)

小猫が言い切った瞬間、後輩の体は緑の光に包まれ、消えてしまった。

「自分の力を受け入れたみたいだね?小猫ちゃん」

「・・・闇慈先輩のお陰です。そして私はヘルキャットを目指します!!」

その心意気を聞いた闇慈はコクッと頷きここは大丈夫だと感じ、駐車場を目指すために踵を返し、小猫に呼びかける。

「ここは小猫ちゃん達に任せるよ。僕は祐斗達の元に向かうから何かあったら通信機で連絡して?小猫ちゃん」

「分かりました。先輩・・・気をつけてください」

「小猫ちゃんもね」

闇慈はそのまま翼を具現させ、飛び立つとそのまま禁手を発動させて姿を消した。

~~~~~~~~~~~~

闇慈が駐車場を飛んでいるとゼノヴィアと祐斗がソーナの眷属と戦っているのが目に見えた。そしてゼノヴィアは『聖』のオーラを纏ったデュランダルと一誠から預かったアスカロンでオーラをソーナのクイーン、『真羅椿姫(しんらつばき)』に向かって放った。しかし椿姫は何やら『鏡』のようなものを取り出すと、聖のオーラが『鏡』に吸い込まれ、そしてそれが割れると逆の『魔』のオーラとなり、威力が倍となってゼノヴィアに襲い掛かった。ゼノヴィアは吹き飛び、鮮血が飛び散った。

(何だ!?あの鏡は?攻撃を反射させていた。・・・真羅先輩のセイクリッド・ギアはカウンター系統か?考えている場合じゃない!今は祐斗とゼノヴィアを助けないと!!)

日本刀を持ったソーナのナイト、『(めぐり)』がゼノヴィアに止めを刺そうとしたが、闇慈は禁手を解除し、横からデスサイズ・ヘルで受け流し、それを許さない。巡は闇慈に阻まれた事に驚くと、残りの二人の元に下がった。
闇慈も素早くゼノヴィアを回収すると隠れている祐斗の元にやって来た。

「ゴメン、祐斗。バックアップが遅れた」

「来てくれただけでもありがたいよ、闇慈君。ソーナ会長の狙いは僕たちだったみたいだ」

「聖剣は驚異だからね・・・読みが甘かったか。ゼノヴィアも戦える状態じゃない。そしてカウンターを使う人がいるみたいだね?祐斗」

「うん。椿姫先輩を含めた2人いるよ」

闇慈はしばらく考え、祐斗に隠れているように指示した。聖剣使いの一人がやられた今、祐斗は貴重な戦力。そう捉えたのだろう。闇慈は死神の姿でデスサイズ・ヘルを右肩に担ぎながら、ソーナ眷属の3人と向き合った。

「さてと・・・ゼノヴィアの敵を討たせてもらいますよ?真羅先輩方」

「黒神闇慈。厄介な敵が現れましたね。由良、巡。彼の力を侮っては行きません!!全力でいきますよ!!」

「「はいっ!」」

椿姫は長刀を構え、巡は日本刀を、そしてルークの由良は格闘の構えを取った。闇慈はそれを見ると『真紅の魔眼』で威圧し始める。

「さて・・・誰から『死』の恐怖を味わいたい?」

闇慈のドスの効いた声を聞いたソーナ眷属3人は冷汗をかき、少し後ずさりをしたが、すぐに心を持ち直した。闇慈は女性には優しいが仲間がやられた為、容赦しないみたいだった。
そして初めに動いたのは椿姫だった。長刀で闇慈に斬りかかったが、デスサイズ・ヘルでそれを防ぐ。

「かなり太刀筋が鋭い。だが、見切れないスピードでもない」

「私たちを忘れています!」

由良が格闘を仕掛けてきたが『魔眼』でそれを見切った矢先、巡が背後から斬りかかるがそれもデスサイズ・ヘルで防ぐ。
しばらくソーナ眷属3人の猛攻を防ぐと闇慈は一旦距離を取った。

「中々の連携ですね。攻撃する暇がなかった」

「貴方に褒められると嬉しいですね。このまま行きますよ!!」

椿姫の言葉に他の二人も頷くと闇慈に仕掛けようとしたが・・・

「だが・・・もう貴女達は動けません」

闇慈の言葉と同時に金縛りにあったかのように3人は動けなくなった。

「何が!?」

「動けない!!」

「あ、足が・・・!?」

由良、巡、椿姫の順に声を発し、足を見てみると自分自身の『影』が足首に絡みつき、足が動かせなかった。闇慈がシャドゥ・ルーラーで影を密かに操り、足に絡ませたのだった。

「俺が貴女達を見ている限り、シャドゥ・ルーラーの束縛から逃れられることは出来ない。ここから魔力を使った技で一掃出来るかもしれないが、椿姫先輩のカウンターが厄介だと思うが?」

「流石ですわね。私のセイクリッド・ギア[追憶の鏡]『ミラー・アリス』。鏡を割った攻撃を倍増させ、そのまま相手に跳ね返すセイクリッド・ギアです」

「それはさっきゼノヴィアをやっていた時に知っている。これで・・・止めだ」

闇慈は知っておきながら何故か飛翔刃を椿姫に放った。

「っ!?何故私に魔力の技を!?跳ね返します!!ミラー・アリス!!」

椿姫の叫びと共に巨大な鏡が出てきたが・・・その飛翔刃は鏡の前で消えてしまった。

「えっ!?」

そして闇慈も自分の視界から消えていた。そして・・・

「この瞬間を待っていたんだ!!」

「背後!?」

闇慈は椿姫の背後からダークネス・フィストを叩き込もうとしたが・・・

「やらせません!!」

「ぐっ!!」

ナイトの巡がそれを阻む。背後に移動した時にシャドゥ・ルーラーが一時的に解除されたことを巡は見逃さなかった。闇慈はすぐに距離を取る。

(あの隙を見逃さなかったか・・・)

「副会長!!ここは私達が食い止めます!!」

「会長の元に行って下さい!!」

「しかし!それでは貴女達が!!」

由良。巡の声に椿姫が声を上げ、批判するが・・・

「今ここで貴女を失えば私達が不利になります!!」

「私達で囮になります!!」

二人の意気込みに、頷くとその場を離脱した。闇慈はそれを追おうしたが二人がそれを阻む。

「「貴方の相手は私達です!!」」

「こっちにも時間がないからな・・・痛みを知らずに終わらせてやる」

闇慈は由良との距離を一瞬で縮めると黒いオーラを纏った右手で頭を掴んだ。そしてそのまま自分の魔力を由良の頭に注ぎ込み脳内に抑圧をかけ、眠らせた。それまでの動作、約1,5秒。そして由良は緑の光となって消えた。

「由良!!」

巡は由良が一瞬でやられたことが分かると闇慈の死神姿に恐怖を抱いた。闇慈はすぐに巡にターゲットを変えると、持っていた日本刀を動揺している間に叩き落した。そして動きを縛る。

「君は確か・・・巡だったな?君にはさっきのルークとは違った落とし方で落としてやる」

「ひぃ・・・な、何をするの?」

「君には『夢』を与えてやる・・・[催眠眼]『チャーム』!!」

闇慈の真紅の瞳には何時もの逆五芒星ではなく、木の輪廻模様が刻み込まれた。そしてそれを見た巡は眼の光が無くなり、表情が恍惚となった。そしてそのまま地面に倒れ込むと目を閉じ寝息を立て始め、由良同様に光に包まれ消えた。それを見ていた祐斗は闇慈の元に駆け寄った。

「闇慈君。彼女に何をしたの?」

「彼女は『夢』を見ている。自分の『欲望』の夢を」

「欲望の・・・夢?」

「早い話。催眠術みたいなものだ。じゃあ俺は行く。何かあったら連絡を」

「分かった気をつけてね?」

「ああ!!」

闇慈は翼を具現させるとそのまま飛び立った。まだ勝敗の行方は分からない。
 

 

第六十話 水芸と決着


「不味いですね。彼・・・黒神闇慈君がここまでやるなんて」

ソーナは屋上で眷属のナイトとルークをあっさり倒してしまうと言うその力に苦虫を噛むように表情を浮べていた。

「私も移動した方が良いかもしれない。ここもバレるのも時間の問題・・・」

「その必要はないですよ?ソーナ会長」

ソーナは声のした方を見ると闇慈が死神姿で扉にもたれ掛かりながら腕を組んでいた。そしてゆっくりとソーナに近寄った。

「どうしてここが?」

闇慈は近寄りながら自分の推理を口にし始めた。

「ソーナ会長・・・いや、キングの役割は駒達に指示を出す、言わば司令塔。戦闘があっているデパート内に姿を眩ませるのも良い戦法かもしれませんが、それだと巻き添えを喰らう事になるかもしれない。また本陣で指令を出している事も考えましたがイッセーの・・・ポーンのプロモーションの事を考えるとそれは悪手となる。ましてやロンギヌスを持っているポーンにはね」

闇慈の推理を聞いているソーナは驚いたのか表情は変えなかったが一筋の汗がこめかみを流れる。

「巻き添えを喰らわないで指令を出す絶好の場所・・・それは全てを見渡す事の出来る屋上(ここ)だと思いましてね。それにここは敵と遭遇しても逃げる方法も一通りではない。そしてこの少し広いスペースにより戦闘でも障害物の無い、全力に近い戦闘を行う事が出来る。どうですか?ソーナ会長」

「そこまで読んでいたなんて、流石ですね・・・黒神君」

「それともう一つ言って置きますけど・・・俺は『ルール』でやられるほど甘くは無いぞ」

闇慈は足を止め、声を厳しい口調に変えてソーナに声をかける。

「匙がアブソーブション・ラインを通してイッセーの魔力の他に、『血』を少しずつ抜いていた事は知っている。そして多くの血を失ったイッセーはリタイアせざるを得ない。・・・『力』で倒さずに『知識とルール』で倒そうとするその戦術には正直、恐怖心を抱いたが・・・」

闇慈はデスサイズ・ヘルを取り出すとその刃をソーナに向けた。

「倒された仲間のためにも俺は・・・貴様を倒す!!」

「・・・良いでしょう。ならば私も本気で相手をしましょう!!」

そう言うとソーナが水のオーラを操り始め、様々な形を成して行った。空を舞う『鷹』、地を這う『大蛇』、勇ましい『獅子』、群れを成す『狼』。

「さあ始めましょう!!私の水芸、とくと披露して上げましょう!!」

「これだけの水の(つわもの)を作り出すとは・・・相手にとって不足は無い!!さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」

闇慈は背中に翼を具現させ、ソーナに斬りかかった。しかしまずは『狼』達が闇慈に噛み付こうと飛び掛る。闇慈はそれを一体一体、噛み付きを避けながら斬り裂いて行った。

「これで最後だ・・・っ!!」

闇慈が最後の狼を斬り裂いた途端、一匹の『大蛇』が闇慈を丸呑みにせんと噛み付いてきた。闇慈はそれを飛んで回避すると今度は『鷹』が闇慈目掛けて風のように飛んで来ていた。

「ぐっ・・・」

反応が遅れたせいか、口ばしが闇慈の腕を掠める。そして少し血が飛び散った。闇慈が一旦地面に着くとこれを狙っていたかのように『獅子』が飛び掛った。

「これで終わりです!!」

「まだだ!!・・・ダークネス・ハウリング!!」

闇慈は飛び掛ってきた獅子に向かって、倒せる位まで魔力を即座に溜めたダークネス・ハウリングを放ち、獅子を消し去った。

「流石と言った所だな。俺の行動の一つ一つを先読みし、兵を操っている。・・・戦術ならリアスより上だな」

「この布陣を掻い潜るなんて、貴方も『黒衣の死神』を名乗っているだけのことはありますね」

「伊達にコカビエルやカテレアを倒した名を語ってはいない」

しかし闇慈にとってはこれはジリ貧だった。例え相手の水の魔物を倒しても次々と復活してしまう。そしてあの布陣を何回も避けられるものではなかった。

(ソーナ会長は辺りに散らばっている水からあの魔物達を無限に作り上げ、僕が倒した所で何回も復活する!!となるとやっぱりソーナ会長自身を倒すしか無い。しかしそれをあの魔物達が邪魔する・・・攻守ともに隙が無い。流石戦略的キング、ソーナ・シトリー)

闇慈はデスサイズ・ヘルを消し、身持ちを軽くすると明鏡止水を発動させ、黒いオーラを両手足に纏わせる。

「ここからは格闘で戦う」

「それは無謀です。私の魔物達は『水』で出来ています。デスサイズ・ヘルの時はその能力のお陰で倒す事は出来ましたが、ただの『物理攻撃』は効きません」

「・・・試してみるか?」

闇慈がニヤリと笑みを浮べると足に魔力を溜め、光速に近いスピードでまずは『狼』の群れから蹴散らす。明鏡止水のオーラを纏っている拳と蹴りが狼の体を突き抜けると魔力が『無効化』され、狼達は唯の水へと帰っていった。

「そんな・・・私の魔物達が」

異様な出来事にソーナは動揺していた。そして指令を忘れている隙に『鷹』と『大蛇』も無効化させた。そして最後に先ほどとはとは比べ物にならないほどの魔力を練りこみ、小さな黒い球体を作り・・・

「・・・全てを深淵なる闇に引きずり込め!!ダークネス・ハウリング!!」

右の正拳を球体に当て、破裂させると極太のレーザーが無効化した水と『獅子』を飲み込んだ。その衝撃はソーナ自身にも届き、吹き飛ぶと地面に倒れ付した。

「ぐっ!!まだ・・・あっ!!」

チャキ・・・・

ソーナが立ち上がろうとするとデスサイズ・ヘルの刃を首元に突き付けていた。そして突き付けている闇慈の姿と真紅の魔眼にソーナは『死』の恐怖を抱いた。

「ここまでだな?」

「参り・・・ました・・・」

『ソーナ・シトリー様の投了(リザイン)を確認しました。このゲームはリアス・グレモリー様の勝利です』
 

 

第六十一話 戦乙女


ソーナとのレーティングゲームが終了し、結果は闇慈のキングテイクによりリアスの勝利となったが、陣営はギャスパー、ゼノヴィア、アーシア、一誠と半数を取られてしまい、ゲームに圧倒的と言われていたグレモリー眷属は評価を下げてしまった。
特に開始早々ギャスパーを失った事と、赤龍帝の力を宿した一誠がやられた事に上は評価を下げられたみたいだ。勝利を収めたものの、腑に落ちない結果となってしまった。

(ギャスパーは僕のせいだな。無理に徘徊させてしまったことによってすぐにやられてしまった・・・)

闇慈は歯ぎしりをしながら一誠達がいるであろう、病室に足を運んでいた。そしてその途中、身に鎧を包んだ銀髪の女性が立っていた。

(誰だろう?グレモリーの従者ではなさそうだし・・・。でも気品のある綺麗な人だな)

闇慈が疑問に思っているとその女性が闇慈に近づき、挨拶をし始めた。

「はじめましてですね。黒衣の死神」

「あ、はい。はじめまして。僕の名前は知れ渡っているみたいですね。貴女みたな『綺麗』な方が僕に何かご用ですか?」

「き、綺麗ですか?私が?」

「はい」

闇慈は紳士スマイルでその女性を褒めると何故かその女性は俯き、体を震わせ始めた。

(あれ?僕・・・変な事、言ったかな?)

「うわぁぁぁん!その様な事は・・・生まれて初めて言われましたぁぁぁ!」

「えっ!?ちょっ!!僕何か変なことを言いましたか!?それよりも、貴女は?」

「・・・すみません。取り乱してしまいました。私はヴァルハラ神族にお仕えする[戦乙女]『ヴァルキリー』の『ロスヴァイセ』と申します」

「ご丁寧にありがとうございます。僕は黒神闇慈です。どうぞお見知りおきを」

「はい。では後程お会いしましょう」

ロスヴァイセと名乗った女性は一礼するとその場を後にした。

(ヴァルキリーのロスヴァイセさんか、綺麗な人だったな。でもそれよりもヴァルハラ・・・確か北欧神話の最高神『オーディン』の住む城だった筈)

頭の中を一度整理すると一誠達がいる病室に辿り着いた。そしてノックをすると病室に入った。その中には一誠とリアスが居た。

「イッセー。大丈夫?」

「大丈夫だぜ。血を抜かれたけど、すぐに輸血されて今ではピンピンしてるぜ?」

「なら良かったよ」

「結局。またアンジに助けられてしまったわね。ソーナはどうだったかしら?」

リアスが質問すると闇慈は顎を右手に乗せ、真剣な表情を浮べた。

「手強かったです。ソーナ会長はパワーで攻めると言うよりも、チェスのように自分の手駒を自由自在に操り、敵を翻弄しつつ倒す。明鏡止水の無効化が無かったら、さらに厳しい戦いになっていたでしょうね」

「お前って次々と新技を生み出すよな?でもお前にも見せてやりたかったよ。俺の新必殺技を」

「新必殺技?」

闇慈は一誠の言葉の意味に首を傾げると一誠は新必殺技の内容を話し始めた。
一誠の新必殺技[乳語翻訳]『パイリンガル』。女性の胸の声を聞くと言う色んな意味で危険な技である。闇慈がソーナの相手をしている間に一誠達は椿姫率いるシトリー眷属3人と対峙し『パイリンガル』でソーナの策を見破ったらしい。
闇慈はやはりかと思わせるように右手で頭を抱えていた。

「それって・・・ある意味凄い技だね?イッセー」

「だろう?だろう!?」

「でもイッセー、ゲーム時には封印よ」

「えぇぇぇぇぇ!?何でなんですかぁぁぁ!?」

「確かに相手の戦術や考えている事を読み取るのは凄い事だけど、女性限定だしね。それにそのままだと女性悪魔と戦えなくなってしまうよ?」

一誠はガクっと落胆してしまうが闇慈が・・・

「実戦では大いに使えると思うよ?」

と言った所、何とか持ち直したみたいだった。ここで一誠が口を開く。

「でも勝てて良かったぜ」

「そうだね。でもこっちもイッセーやアーシア、ゼノヴィア、ギャスパーと半分も取られてしまった。いくら強力な眷属がいても本番で力を発揮出来なくちゃ意味が無い。幾らゲームで勝ったとは言ってもまだ僕たちには見直すべき点が何点かあるよ。それに・・・」

闇慈は真剣な眼差しでさらに続ける。

「僕は眷属じゃない。だからいつ出場出来なくなるか分からない」

「ええ。でも、朱乃と小猫、2人がこの試合で自身の壁を越えてくれた。こんなにも喜ばしい事はないわ」

朱乃は『雷の巫女』から『雷光の巫女』に、小猫は猫又の力を解放した。曖昧な勝利となったがこれは本当に嬉しい事だった。闇慈も小猫の猫又の力を解放し、受け入れた事は安堵していたみたいだ。3人が微笑みあっていると・・・

コンコン・・・

と病室のドアがノックされ、一誠が返事をすると入ってきたのは帽子を被った白いヒゲを生やした隻眼の老人だった。

「じいさん、誰っスか?」

(隻眼の老人で、この力の強さ・・・それにさっきのロスヴァイセさんと言い、もしかしてこの人は・・・)

一誠は何者か分からずに普通に接していたが、闇慈は正体が誰なのかすぐに分かったみたいだった。

「わしは北の田舎ジジイじゃよ。赤龍帝。お前はもう少し修行が必要みたいじゃな。まあ、精進せい。そして・・・」

老人がヒゲを擦りながらイッセーを励ますと今度は闇慈の方を見た。

「黒衣の死神。お前の頭のキレと良い、戦術はわしも興味深いぞ?これからもその力を失わせるようなことがないように精進せい」

闇慈はその老人に執事挨拶を交わし、言葉を発する。

「まさか北欧神話の最高神にお褒めの言葉が頂けるなんて思いもしませんでしたよ?・・・『オーディン』様」

「ほっほっほ。一目見てわしの正体を見破るとは、この先が楽しみじゃな」

「僕は世界神話を愛読していますので貴方のことはよくご存知です」

闇慈とオーディンらしき老人は会話を進めているがリアスが隣から入る。

「オーディン様ですね?初めてお目にかかります。私、リアス・グレモリーですわ」

「なあ、闇慈。このじいさん誰?」

「北欧神話は知ってるよね?それに登場する最強最高神、オーディン様だよ」

その事に一誠は驚愕の表情を浮べる。北欧神の中で最強と謡われるオーディンが目の前にいることに驚いたのかもしれない。

「サーゼクスの妹じゃな。試合見ておったぞ。お主も精進じゃな。しかし、ううむ・・・デカいのぉ。観戦中、こればかり見とったぞい」

オーディンはリアスの胸をいやらしい目付きで見る。その様子に気付いた一誠は猛抗議しようとしたが、いつの間にか入室していた銀髪の女性がハリセンで・・・

スパーン!!

とオーディンを叩いた。そのスピードは闇慈も賞賛するものだったみたいだ。

「もう!ですから卑猥な目は禁止だと、あれ程申したではありませんか!これから大切な会談なのですから、北欧の主神としてしっかりしてください!」

「まったく、隙の無いヴァルキリーじゃて。わーっとるよ。これから天使、悪魔、堕天使、ギリシャのゼウス、須弥山(しゅみせん)の帝釈天(たいしゃくてん)とテロリスト対策の話し合いじゃったな」

オーディンが頭を擦りながら半眼で呟く中、闇慈はその女性を思い出していた。

「あれ?貴女は・・・ロスヴァイセさん?」

「またお会いしましたね」

「なんじゃお主、死神の小僧と会っておったのか?」

「はい。オーディン様をお待ちしていた際に」

それを聞いたオーディンはロスヴァイセにエロい顔で問いかけた。

「ほうほう。お主はこう言った好青年を好むのかのぅ?しかし、お主のような生真面目で堅い奴には無理じゃな。数年かかっても勇者の1人、2人出来んじゃろうて」

オーディンが嘆息しながら言うと、ロスヴァイセは瞳を潤ませながら叫んだ。

「ど、どうせ私は彼氏いない歴=年齢の戦乙女(ヴァルキリー)ですよ!好きで処女やってる訳じゃなぁぁぁいっ!私だって、か、彼氏が欲しいのにぃぃぃっ!うぅぅ!」

ロスヴァイセはオーディンの攻め言葉にとうとう膝を付き、泣き出してしまった。それを見た闇慈はお人好しの性格が出てしまったのかロスヴァイセの元に跪くと手を取った。

「え・・・?」

ロスヴァイセは泣くのやめると手を取った闇慈の顔を見た。

「大丈夫ですよ、ロスヴァイセさん。貴女は清楚可憐なヴァルキリー。だからもっと自分に自信を持って良いんです。それに・・・」

闇慈は再びあの紳士スマイルでロスヴァイセにこう言った。

「僕は、真面目な女性(ひと)は・・・嫌いじゃないですよ?」

それを聞いたロスヴァイセは闇慈の言葉が嬉しかったのか再び涙目になると・・・

「アンジさん・・・アンジさーーん!!」

「うわっと!?ロスヴァイセさん!?」

「うわぁぁぁん!!」

闇慈に飛び掛り、周りの人事関係なく、声を張り上げて泣いた。闇慈はしばらくの間、撫でるなどでロスヴァイセをあやした。

(やれやれ、あの生真面目ヴァルキリーにもようやく春の到来かのぅ?)

オーディンはそれをニヤニヤと見ていたそうだ。そしてオーディンとロスヴァイセはその病室を後にした。ここで一誠が闇慈に尋ねる

「なあ・・・闇慈」

「何?イッセー」

「お前・・・何時女を口説くの上手くなったんだ?」

さらにリアスが続ける。

「そうね。落ち込んでいる時にあんな事言われたら、誰だって落ちるわよ?」

「ちょっと待って!?僕は慰めているだけで、口説いているつもりはなかったよ?」

「「でもあれ・・・絶対に落ちたぜ(わよ)?」」

「えぇぇぇ!?」

「「ドンマイ」」

闇慈はorz状態に入ってしまったそうだ。

~~~~~~~~~~~~

(アンジさんかぁ・・・素敵な男性。私にも春が来た!!仲間にも自慢しないと!!)

ロスヴァイセは一誠とリアスの言う通りに落ちていた。
 

 

第六十二話 帰宅


レーティングゲームが終了し数日後、怪我が回復した部員たちは人間界に戻るべく身支度を整えていた。そして家に帰るとやらなければならないことがあった。

小猫のホームステイの許可を両親から得ることだ。

闇慈は小猫ととの関係をもっと良くしたいとリアスに尋ねた所、ホームステイの案を出した。小猫も顔を赤らめながら闇慈の家にホームステイがしたいと頼んだ。
そして身支度が整うと闇慈は荷物を持ち、まずは執事のイロハを教えてくれた熟練執事・・・リグナスの元にやってきた。リグナスは黒髪で少し髭を生やした中年の男性だが、ダンディで中々イケメン執事である。

「失礼します、リグナスさん」

「お、アンジじゃないか。もう人間界(むこう)に帰るのか?」

「はい。夏休みも終わりますし、それに・・・」

「お前の彼女さんの事か?」

図星を付かれた闇慈は顔を赤らめながら、「はい」と答える。それを見たリグナスはふっと笑うと・・・

「塔城小猫さんだったか?あの方は辛い思いをしてきたからな。お前ならその思いを取り除くことが出来ると思う」

「僕に出来るでしょうか?」

闇慈が疑問に思っているとリグナスがそれを答える。

「執事ってのは主にただ仕える者じゃない。その人達に仕え、幸福を与える者だ。お前にも教えた筈だが?」

「それは貴方が教えてくださったので覚えています。それに何か関係が?」

「それはまたここに来た時までの宿題とする。お前の答え・・・楽しみにしているぞ?」

そう言うとリグナスは仕事に戻っていった。闇慈も時間が迫ってきた事を確認すると急いでリアス達の元に急いだ。

~~~~~~~~~~~~

闇慈達はグレモリー家の家族や従者達に見送られ、再び来た時に乗った列車に乗った。
一誠は相変わらず小猫を除いた女子達に囲まれていた。
しかし闇慈はそんなことも目も暮れずにリグナスのあの言葉を考えていた。

(執事は主に幸福を与える者。それは知っているけど小猫ちゃんとの関わりにどう言った関係が?)

闇慈が1人でその答えを考えていると人の気配を感じ、闇慈がその方を向くと・・・

「ん?・・・あ、小猫ちゃん。どうしたの・・・」

「にゃ~ん♪」

猫耳と尻尾を生やした小猫が可愛らしい満面の笑顔を浮べながら立っていた。そしてチョコンと闇慈の膝の上に座った。

(これってもしかして・・・リアス先輩が言っていた猫又の副作用!?さっきまで出てなかったのに今頃出てくるなんて・・・でも)

「にゃんにゃん♪」

小猫は本当の子猫ように甘え声を出しながら頬擦りをしてくる。闇慈も子猫をあやす様に喉元や頭を撫でる。

「にゃふ♪」

(なに?この可愛い小動物は・・・?)

闇慈は小猫の一つ一つの反応で何かに目覚めそうな感覚に陥った。そして闇慈はその笑顔を見ていると彼も笑顔になっていった。

(小猫ちゃんは今とても『幸せ』なのかな?今まで見せた事無い笑顔を僕に見せてくれる・・・ん?幸せ?・・・・・・はっ!!)

闇慈はリグナスの言っていたことの意味が分かったのかハッとした表情を浮べた。小猫は気になったのか首を傾げるように闇慈を見た。

「にゃふ?」

「分かったよ。リグナスさんの言っていたことが。執事は主を思い、幸福を与える者。そして男性は女性の事を思い、幸せにする。・・・こんな簡単なことに気付かないなんて」

闇慈はそう呟くと小猫を優しく抱き締めた。

「ありがとう、小猫ちゃん。君のお陰で改めて気付く事が出来たよ」

「にゃん♪」

~~~~~~~~~~~~

そして列車は人間界の地下ホームに着いた。闇慈と一誠は背伸びをして体を伸ばしていた。しかし一誠がアーシアに振り返ってみると、アーシアは謎の優男に言い寄られていた。

「アーシア・アルジェント・・・。やっと会えた」

「あ、あの・・・」

「おいおいおい!アーシアに何の用だ!」

一誠はすぐに2人の間に割って入る。そして闇慈はその優男の顔を思い出していた。

「あれ?彼って現ベルゼブブが出た家の次期当主『ディオドラ・アスタロト』さん?」

その事を聞いた一誠は思い出したのか、ああ!!と声を上げる。
そしてアーシアは覚えの無いことを言っていたがディオドラの胸元にある大きな傷を見て思い出したのか目を見開く。
これではっきりした事は、ディオドラ・アスタロトは過去にアーシアが助けた悪魔でアーシアが教会を追放される切っ掛けとなった悪魔だった。

「アーシア、僕はキミを迎えに来た。会合の時、挨拶出来なくてゴメン。でも、僕とキミの出会いは運命だったんだと思う。僕の妻になって欲しい。僕はキミを愛しているんだ」

(なっ!!)

ディオドラ・アスタロトは闇慈達の目の前でアーシアに求婚した。
 

 

番外5 住居


「・・・と言うことなんだけど、小猫ちゃんをホームステイさせてくれないかな?」

闇慈達が冥界から人間界に帰ってきて数日後、闇慈は小猫のホームステイの話を持ちかけた。そして闇慈は小猫と一緒に闇慈の母親に頼みに来た。都合的な話になるが闇慈の父親は海外で単身赴任中だった。

「・・・お願いします!!」

闇慈の言葉の後に小猫が闇慈の母親に頭を下げる。

「話は分かったわ。・・・貴女が塔城小猫さんなのね?」

「・・・はい」

「貴女の事は闇慈から良く聞いてるわ。一度ちゃんと会ってみたかったのよ」

小猫は闇慈の母親の言葉に少し首を傾げた。

「・・・どう言う事ですか?」

「この子ったら何時も貴女の事を話してたわよ?そうね・・・話さなかった日はないっ程にね」

「か、母さん・・・」

闇慈は顔を真っ赤にしながら母親を咎めたが構わずに続ける。

「それにこの子ったら、今までに見せた事の無い位、幸せそうな表情をしてたわよ?」

「・・・そうなのですか?」

「ええ。これまでに闇慈を幸せにしてくれる女性(ひと)ってどんな人か見てみたかったのよ」

そう言うと母親は小猫に頭を下げて頼んできた。

「これからも闇慈の事。よろしくお願いしますね」

「・・・はい!」

「母さん・・・」

小猫はその言葉に強く答えていた。闇慈も自分を思ってくれている母親に感謝の念を抱いた。

「それと・・・ホームステイの件は大いに大歓迎よ。私も娘が増えるみたいで楽しそうね。私は優里、黒神優里よ、よろしくね?」

「ありがとう!母さん!!良かったね、小猫ちゃん!!」

「・・・はい!」

小猫も笑顔を浮べていた。そして母親・・・優里はさらに問いかけるが・・・

「個室の空きはまだあるのだけど、部屋はどうしようかしら?」

「闇慈先輩と同じ部屋でお願いします」

小猫は即答した。まあそれもそうだろう。闇慈と小猫は恋人同士になって、少しでも一緒に居たいと言う思いがあるのだから。

「そう。小猫ちゃんがそう言うのなら一緒にするけど。闇慈、小猫ちゃんと一緒の部屋になるからと言って変な事しちゃダメよ?」

「変な事って何!?変な事って!?母さんは僕がそんなに貪欲で変態に見えるの!?」

「男ってそんなものよ。貴方に良く似てるお父さんだってそうだったもの」

「僕と父さんを一緒にしないで!!」

闇慈と優里の漫才みたいな光景に小猫は軽く笑みを零していた。

~~~~~~~~~~~~

「ふう・・・」

小猫のホームステイが決まり、夏休みもまだあることなので小猫は闇慈の自宅で泊まる事になった。そして一日が終わり、闇慈は風呂でシャワーに当たりながらゆっくりしていた。

「何がともあれ、小猫ちゃんのホームステイが許可されて良かった。でも同じ部屋って言うのは少し緊張するかな。特に夜とか・・・って何変なことを考えているんだ!!僕は!!・・・あれ?でも僕と小猫ちゃんってもう・・・」

「・・・はい。闇慈先輩と私は一つになりましたから変なことじゃないです」

「だと良いけど・・・って!えっ!!?」

闇慈は慌てて背後を見てみるとタオルも巻いていない裸の小猫が顔を赤らめながら後ろから闇慈の背中に寄り添っていた。闇慈は背中の小猫の胸の感触に今にも理性が飛びそうな状況だった。

「こ、こ、小猫ちゃん!?どうしてここに?」

「・・・私のために先輩のお母さんに頼んでくれたそのお礼をしに来ました」

「そんなの当たり前のことをしたまでだよ?」

「それに・・・少し先輩と2人っきりで話がしたかったんです」

突然小猫が声を小さくし、頭を闇慈の背中に当てながらこう呟いた。

「本当の親の顔を知らない私には先輩が羨ましかった。あんな風に私も楽しく話がしたいって・・・」

それを聞いた闇慈は小猫を離すと肩を掴み、向き合った。

「小猫ちゃん。さっき母さんが言っていたでしょ?自分の娘が出来るから楽しみだって。ならこれからその思い出を作れば良い。君はもう1人じゃないんだから・・・ね?」

「闇慈・・・先輩!!」

そう言うと小猫は闇慈にキスをした。小猫は貪欲に闇慈の唇を求める。

「ちゅる・・・先輩!ん・・・先輩!!」

そして小猫が手を伸ばそうとしたがここで闇慈がそれを止める。

「おっと・・・小猫ちゃん。この後は部屋に行ってからにしようね?・・・野次馬も多いみたいだし」

闇慈はこの時脱衣所の出入り口に優里の気配を感じていた。闇慈は小猫に言い聞かせ、その場は我慢して貰ったが・・・その遅くは激しい夜になったそうだ。
 

 

第六十三話 転校生


小猫のホームステイが始まって数日後二学期が始まり、闇慈のクラスは賑わいを見せていた。
一誠は悪友の松田と元浜と一緒に何やら集まって夏休みの間に何かあったのかを話し合う、集会みたいなものを開いていた。
闇慈はその集会には入らなかったが聞き耳を立てていた。内容は夏休みの間に何人の男子が童貞を卒業したかと言うものだった。

(不味いな・・・。あの事がバレたらクラス全員の男子を敵に回すかもしれない・・・いや。マスコットキャラとして人気の高い小猫ちゃんと知ったら、学校全体になりかねないかも・・・)

闇慈は表には出さなかったが心の中で苦笑を浮べていた。因みに小猫と交わったことはリアスしか知らなかった。ここで一誠が闇慈に話しかける。

「なあ闇慈!お前はどう思う!?」

「えっ?何が?」

「お前はやっぱりエッチしてみたいって思うだろう?」

一誠の言葉と同時に松田と元浜も闇慈に詰め寄っていた。闇慈は少し間を空けると・・・

「・・・まあ。一応男子だからね。憧れたりはするよ」

と答える。一誠はそれを聞くとうんうんと頷き続ける。

「だろう?だからさ昼休みにある紳士の集まりにお前も参加しろよ」

「それは、断らせて貰おうかな。昼休みには小猫ちゃんと一緒に昼食を取る約束をしているからね」

「くぅぅぅ!!エッチは無くてもリア充してるってか!!もう良いぜ!お前なんか知らねえよ!こんちきしょう!!」

闇慈の返答に一誠は相変わらず血涙を流していた。松田と元浜も闇慈の言葉に一誠と同じ羽目になっていた。ここで一誠が爆弾を投下する。

「しかもお前、今は小猫ちゃんと一つ屋根の下だからな!羨ましいぜ!!」

「イッセー!それは!!」

「あ・・・やべっ」

一誠が慌てて口元を押さえたが遅かった。

『何っ!?』

その言葉に男女問わずに反応した。そして濁流のようにクラスメイトが闇慈に押し寄せてきた。

「黒神!どう言う事だよ!?」

「黒神君と小猫ちゃんが一緒に住んでるって本当なの!?」

「何でお前なんだよ!?イケメン死ねぇぇぇ!!」

「と言う事は黒神君と小猫ちゃんはもう・・・」

「ちょっと待って!そんなにいっぺんに言われても答えることなんか出来ないよ!!」

闇慈がクラスメイトの質問に答えることが出来ずにアタフタしていると担任の教師が入って来た。

~~~~~~~~~~~~

「えー、このような時期に珍しいかもしれませんが、このクラスに新たな仲間が増えます」

ホームルームが始まってまず最初に行われたのは転入生の紹介だった。

「じゃあ、入ってきなさい」
そして先生の呼びかけと共に入室してきたのは栗毛のツインテールの美少女だった。

『おおおおおおおおお!!!』

大半の男子は歓喜の声を上げるが、闇慈を初めに一誠、アーシア、ゼノヴィアにはその娘に見覚えがあった。首から下げている十字架を見て間違いないと感じた。

「紫藤イリナです。皆さん、どうぞよろしくお願いします!」

転校生の正体はエクスカリバー強奪事件の時にゼノヴィアと一緒に居た『紫藤イリナ』だった。

~~~~~~~~~~~~

「ちょっと来てくれ」

休み時間、一誠が男子や女子から質問攻めを受けているイリナの手を引き、闇慈、アーシア、ゼノヴィアと共に人気のない場所へ連れ出した。
ここで彼女の事を説明に入るが、紫藤イリナは一誠の幼馴染みで、幼少時に外国へ引っ越し、プロテスタント専属の聖剣使いになったらしい。以前のエクスカリバー強奪事件以来会っていなかったが、こんな形で再会するとは誰も思っていなかっただろう。

「おひさ~、イッセー君、アンジ君、それにゼノヴィアも!」

そしてガバッとイリナがゼノヴィアに抱きついた。

「ゼノヴィア!元気そうで良かった!立場上複雑だけど、素直に嬉しいわ!」

「ああ、久しぶりだね、イリナ。元気そうで何よりだよ。イリナが胸に下げた十字架がチクチクと地味なダメージを与えてくるのは天罰だろうか・・・」

元聖剣コンビの再会にゼノヴィアも笑みを見せていた。
しかし1人だけ顔をしかめている人が居た。それは闇慈だった。闇慈はイリナがアーシアを侮辱したことをまだ根に持っているらしく、さらに勝手に名前で呼ばれたことに少し苛立ちを覚えたようだ。

「紫藤さん・・・でしたね?神の事しか頭にない貴女がどうして悪魔の学び舎にいるんですか?そして僕は貴女から名前で呼ばれる程親しくはないですよ・・・」

闇慈の少し殺気立っている言葉にイリナは少し怯えているようだった。ここで一誠が闇慈に促す。

「お、おい、闇慈。そんな言い方って少し言い過ぎだと思うぜ?それにもう天使と悪魔はもう協力しあってるんだぜ?名前で呼ばれる位いいじゃねえか」

「確かに。でも僕は『仲間』の事に関することはどうしても見過ごす事が出来ない性格だから」

そして再びイリナを見る。

「紫藤さん。転校早々こんな事言われて嫌かと思いますけど、アーシアに謝ってもらえませんか?」

「・・・そうね。確かに私もあの時は言い過ぎたもんね」

そう言うとイリナはアーシアの方を向き、頭を下げる。

「ゴメンなさい、アーシアさん。私は貴女の心を侮辱してしまいました」

その言葉を聞くとアーシアはイリナの手を取り・・・

「これから、よろしくお願いしますね」

と笑顔を浮べながらイリナと挨拶を交わした。アーシアがイリナを許したのを聞くと闇慈は土下座をしてイリナに謝った。

「ゴメンなさい、紫藤さん。あんな事を平然と言ってしまって」

「ちょっと、頭を上げてよ!私が悪いんだから!」

イリナのアタフタしている行動を見て、闇慈は立ち上がり、イリナと向き合った。

「・・・なら、これでおあいこですね。僕の事は『アンジ』って呼んで下さい」

「うん。なら私のことも『イリナ』って呼んでよ、アンジ君」

その言葉に闇慈はイリナに右手を差し出す。

「分かった。これからよろしくね?イリナ」

「うん♪アンジ君」

さっきの緊迫した空気は何時の間にか無くなり、闇慈とイリナは握手を交わした。そしてそれを確認した一誠がイリナに尋ねる。

「なあ。どうして駒王学園(ここ)に転入したんだ?」

「ミカエル様の命により使いとしてここに転校してきたの。詳しくは放課後に。場所は噂の旧校舎で、ね?」

イリナはウィンクをしながら一誠に答えていた。
 

 

第六十四話 天使化


「紫藤イリナ。あなたの来校を歓迎するわ」

放課後、オカルト研究部メンバー全員を初め、アザゼル、そしてソーナが集まってイリナを迎え入れていた。

「はい!皆さん!初めまして・・・の方もいらっしゃれば、再びお会いした方のほうが多いですね。紫藤イリナと申します!教会・・・いえ、天使様の使者として駒王学園に馳せ参じました!」

イリナの自己紹介に部員全員が拍手を送る。その後はイリナが「主への感謝~」とか「ミカエル様は偉大で~」等と話し始め、皆は苦笑しながらも聞いていた。
ここで闇慈が疑問を浮べていた。

(イリナって神が死んでいる事は知っているのかな?もし知らなかったら教えてあげるべきなのかな?でも、それがショックで落胆しそうだし・・・)

闇慈が心の中で意見を噛み合わせていると、アザゼルが逸早くそのことを口にした。

「お前さん、聖書に記された神様が死んだ事は知ってるんだろう?」

それに一誠が突っ込みを入れる。

「先生ぃぃぃ!いきなりそれはいかんでしょう!!」

「アホか。ここに来たと言う事は、そういうのを込みで任務を受けてきた筈だ。いいか、この周辺の土地は三大勢力の協力圏内の中でも最大級に重要視されている場所の1つだ。ここに関係者が来ると言う事は、ある程度の知識を持って足を踏み入れている事になる」

「勿論です、堕天使の総督様。安心して、イッセーくん、私は主の消滅を既に認識しているの」

「イリナってタフなんだね。あれだけ神の事を信仰していたのにショックで倒れるんじゃないかって思ったよ?」

闇慈の言葉を聞いたイリナは涙を大量に流し始めた。

「ショックに決まっているじゃなぁぁぁい!心の支え!世界の中心!あらゆる物の父が死んでいたのよぉぉぉ!?全てを信じて今まで歩いてきた私なものだから、それはそれは大ショックでミカエル様から真実を知らされた時、あまりの衝撃で7日7晩寝込んでしまったわぁぁぁ!!あああ、主よ!!」

イリナはテーブルに突っ伏して大号泣し始めた。闇慈はこの時『口は災いの元』と言う言葉を大きく実感したみたいだ。

「分かります」「分かるよ」

信者のアーシアとゼノヴィアは共感し、3人で抱き合う。その光景は過去のわだかまりを消し去ってくれるようなものだった。
少し抱き合った後、力を読み取る事の出来る闇慈がイリナに質問する。

「イリナ。君は何時からそんな力を手に入れたの?初めて会った時とは比べ物にならない。そして君からはミカエルさんと同じような気配を感じるよ?」

その問いかけを聞いたイリナは立ち上がり、祈りのポーズをする。すると彼女の体が輝き、背中から白い翼が生えた。全員はその事に驚くが、アザゼルだけは顎に手をやりながら冷静に聞く。

「・・・紫藤イリナと言ったか。お前、天使化したのか?」

「天使化?そんな現象があるんですか?アザゼル先生」

闇慈がアザゼルに聞くとアザゼルは肩をすくめ、首を横に振る。

「いや、実際には今まで無かった。理論的なものは天界と冥界の科学者の間で話し合われてはいたが・・・」

「はい。ミカエル様の祝福を受けて、私は転生天使となりました。なんでもセラフの方々が悪魔や堕天使の用いていた技術を転用してそれを可能にしたと聞きました」

三大勢力はここまで伸展させることが出来たみたいだった。そして今この場に悪魔、天使、堕天使が揃っていた。更にイリナが話を続ける。

「四大セラフ、他のセラフメンバーを合わせた10名の方々は、それぞれA(エース)からクイーン、トランプに倣った配置で[御使い]『ブレイブ・セイント』と称した配下、12名を作る事にしたのです。カードで言うキングの役目が主となる天使様となります」

「なるほど。[悪魔の駒]『イービル・ピース』の天使バージョンって所かな。これって将来は悪魔と天使におけるレーティングゲームみたいなものが完成されるじゃ?」

闇慈の考えと推測にアザゼルは共感の意を示した。

「お、それ良い考えだな。それが実現したら面白い事になりそうだ。しかし実現するのは10年か・・・もしかしたら20年後になりそうだな」

そんなこんなで話が盛り上がっているとソーナが話を切り替える。

「その辺りの話はここまでにしておいて、今日は紫藤イリナさんの歓迎会としましょう」

そしてその後、他の生徒会のメンバーもオカルト研究部の部室に呼ばれ、イリナの歓迎会が執り行われた。
 

 

第六十五話 忠告


イリナとの再会と歓迎会が行われて数日後、闇慈と一誠は悪魔営業の依頼を深夜にこなし、自動販売機の前で飲み物を購入し、それを口にしながら休んでいた。

「上級悪魔か・・・」

一誠のらしくない呟きに闇慈は疑問を問いかける。

「どうしたの?イッセー」

「いや。上級悪魔について考えてたんだ。自分達以外の悪魔を見下してる様な態度が目立つから・・・」

「まあ、そうだろうね。それが冥界の摂理だってコカビエルも言っていたし・・・でも理不尽だ思うよ」

闇慈も転生悪魔や下級悪魔を上級悪魔が簡単に見下す事は疑問の念を抱いていた。現に若手集会の時にそれを体感しているのだから。

「それに・・・アーシアの事も気に掛けていてな」

「・・・イッセー。その話は出さないで貰えるかな?今、その話を聞かされると『あいつ』に対する殺意が込み上げてくる・・・」

実は今日の放課後、ディオドラがアーシアに会いに来ていた。そしてリアスにビショップ同士の『トレード』を申し込んだが、リアスはそれをきっぱりと断った。
結局交渉は破談となったがディオドラは諦めてはいないようだった。そして帰り際にアーシアの手にキスをしようとしたディオドラを一誠が遮った時に・・・

「放してくれないか?薄汚いドラゴン君に触れられるのはちょっとね」

と闇慈の目の前で一誠を侮辱した。その言葉で闇慈はディオドラに『死』を見せようとしたが、逸早くアーシアがディオドラの頬を叩き、闇慈の怒りを静めてくれた。

「イッセーを思っているアーシアの思いを無駄にしちゃダメだと思うよ?」

「だな!!そのためにも次のゲームは・・・っ!!」

話の途中で何かの気配を感じた闇慈と一誠はその場を飛び退き、身構える。暗闇から姿を現したのはラフな格好の男・・・カオス・ブリゲードの一員で孫悟空の末裔、美猴だった。

「お久。赤龍帝、黒衣の死神」

「美猴!なんでお前が!」

一誠は警戒をやめないが、殺意を感じていない闇慈は焦らずに美猴に尋ねる。

「どうして貴方がこんな所に?戦いに来た訳でもないのでしょう?」

「ま、相棒の付き添いでさ」

美猴が後ろに顔を向ける。そこから現れたのは白ワイシャツ姿の白龍皇ヴァーリだった。

「2ヶ月ぶりだ。兵藤一誠、黒神闇慈」

「ヴァーリ!!」

一誠は殺気を剥き出しにするほどに警戒を強めるが、美猴同様にヴァーリにも敵意を感じなかった。

「白龍皇まで・・・僕たちに何か用ですか?」

「たまたま近くを通りかかったから、挨拶をしに来ただけだ」

「どうせなら、ここでこの前の続きやるか?」

「随分と戦闘的じゃないか、兵藤一誠」

「こちとら将来の未来計画のためにお前が邪魔で仕方ないんだよ」

「上級悪魔になる事か?心配しなくてもキミなら数年もしない内に上級悪魔になれるんじゃないかな。っと今日はそういう事を言いに来たわけじゃない。レーティングゲームをするそうだな?ディオドラ・アスタロトには気をつけた方が良い」

ヴァーリの忠告に闇慈が疑問を問いかける。

「どう言う意味です?」

「記録映像は見たのだろう?アスタロト家と大公の姫君の一戦だ」

今日の放課後、次のレーティングゲームの対戦相手・・・ディオドラ・アスタロトの力を見極めるためにレーティングゲームの記録を見ていたのだが、ディオドラの力が異様に上がっていた。それを見ていたアザゼルとリアスは・・・

「ディオドラはあそこまで強い悪魔ではなかった」

と意見が一致していた。そしてその成長は短時間で出来るものでもないと感じさせていた。

「まぁ良いか。帰るぞ、美猴」

「待てよ。それだけを言いに俺達の元に来たのかよ?わざわざ?」

一誠の問いかけにヴァーリはフッと笑うと・・・

「さっきも言っただろ。近くに寄ったから、未来のライバル殿に忠言をしに来ただけさ」

「じゃあな。なぁヴァーリ。帰りに噂のラーメン屋寄っていこうや~」

ヴァーリは美猴を引き連れてその場を後にしようとしたが、ヴァーリは何かを思い出したのか闇慈の方を見直す。

「そうだ、忘れていた。黒衣の死神。お前にも黒歌から伝言があった」

「黒歌って小猫ちゃんのお姉さんの?彼女が僕に?」

「ああ。『今度会った時には白音と一緒に姉妹丼なんてどう?』との事だ。俺にはさっぱり意味が分からないが、伝えたぞ」

ヴァーリは伝言を伝えると美猴と一緒に暗闇に消えて行った。

「姉妹丼・・・?」

「お前ぇぇぇ!!!」

闇慈は意味が分からないのか首を傾げていると意味が分かった一誠は闇慈に飛び掛った。

「何でお前だけ・・・お前だけぇぇぇ!!!」

「イッセー!?顔が凄いことになってるよ!?それに『姉妹丼』ってどう言う意味なの!?」

「お前みたいなリア充野郎に教えるかよぉぉぉ!!!」

「??」

結局その場でその言葉の意味を知る事は出来なかった。その後自分で調べてみた闇慈は空いた口が塞がらなかったそうだ。

(後書き)

次回はテレビ出演です。そして闇慈が新たな武器を入手するイベントを書こうと思います!!

ヒントは「喋るな!!」です!!分かる人は分かると思います!!

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 
 

 
後書き

次回はテレビ出演です。そして闇慈が新たな武器を入手するイベントを書こうと思います!!

ヒントは「喋るな!!」です!!分かる人は分かると思います!!

感想・指摘。よろしくお願いします!! 

 

第六十六話 出演


「冥界テレビの出演?」

ヴァーリ達と接触し忠告を受けた翌日、闇慈は部室でリアスから次の休日に冥界のテレビに出演すると言う話を聞いた。

「ええ、そうよ。取材が入ったから、冥界のテレビ番組に私達が出るの。若手悪魔特集で出演よ」

「でも悪魔特集ですよね?僕は悪魔じゃなく、死神なのにどうして僕まで呼ばれているんですか?」

「ソーナとのレーティングゲームの時に遊撃手として出場したでしょう?その時の映像は冥界に放送されていて、その影響でファンが出来たらしいのよ。それでサプライズゲストとして出演して欲しいそうよ」

何とも急な誘いだったが闇慈は悪い気分ではなかった。闇慈はその出演に同意して当日まで待つ事にした。

~~~~~~~~~~~~

そしてテレビ収録当日。闇慈達は魔方陣で冥界に飛んだ先は都市部にある大きなビルの地下だった。そして待っていたプロデューサーに連れられ、エレベーターでビルの上層内に着くと、廊下の先から見知った顔が歩いて来た。

「サイラオーグ。あなたも来ていたのね」

「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」

「ええ。サイラオーグはもう終わったの?」

「これからだ。おそらくリアス達とは別のスタジオだろう。試合、見たぞ。お互い新人丸出し、素人臭さが抜けないものだな」

苦笑していたサイラオーグが闇慈と一誠に視線を向けると

「どんなにパワーが強大でもカタにハマれば負ける。相手は一瞬の隙を狙って全力で来る訳だからな。とりわけセイクリッド・ギアは未知の部分が多い。何が起こり、何を起こされるか分からない。ゲームは相性も大事だ。お前らとソーナ・シトリーの戦いは俺も改めて学ばせてもらった。だが、お前達とは理屈なしのパワー勝負をしたいものだよ」

サイラオーグの言葉に闇慈が返す。

「パワーの勝負も大事な事ですけどこんなことわざがあります。『柔よく剛を制す』。パワーだけが勝利へと導くわけではないと思いますよ?」

「ふっ。それもお前の戦いを見ていて良く分かっているさ」

そう言うとサイラオーグは闇慈と一誠の肩をポンっと叩き、去っていった。その手には何かの重みを感じていた。闇慈はサイラオーグと戦う日が楽しみになって来ていた。その後、スタジオらしき場所に案内され、スタッフが声をかけてくる。

「えーと、木場祐斗さんと姫島朱乃さん。いらっしゃいますか?」

「あ、僕です。僕が木場祐斗です」

「私が姫島朱乃ですわ」

2人が揃って手を上げるとスタッフは説明を開始する。何でも2人は人気が上昇中らしい。祐斗は女性悪魔、朱乃は男性悪魔からみたいだった。
そして一誠はソーナとの戦いで『乳龍帝』と称され、子供たちの間で人気爆発中らしい。一誠は驚きと喜びを抱いていたみたいだったが、ドライグは悲しかったのか涙を流していた。

「最後に黒神闇慈さんはいらっしゃいますか?」

「あ、はい。僕が黒神闇慈です」

「貴方も人気上昇中の御2人方同様に有名になっているので質問などが用意されています。そして貴方は多くの方々から『死神執事』と呼ばれているそうですよ」

「死神執事ですか。ならファンの方々にもちゃんと執事としてサービスをしないといけませんね」

「その心意気でお願いします!!では闇慈さんはサプライズゲストの部屋にご案内します」

~~~~~~~~~~~~

「ふう。疲れた・・・」

収録が終わり闇慈は一人部屋でゆっくりしていた。始終はリアスの話だったが途中から眷属達の質問に変わり、観客はそれぞれの反応を示していた。
祐斗は女性から黄色い声が、そして朱乃からは男性陣から「朱乃様―!!」と声をかけられていた。一誠はお客の子供達から「ちちりゅーてー!」「おっぱいドラゴン!」って声をかけられていた。
最後の一誠の質問が終わると闇慈がサプライズゲストとして登場した。服装も死神執事と言う事で執事服を着ていて、登場した際の執事挨拶した際の女性の反応は・・・

「死神執事さ~ん!!」

「私に笑顔を見せて~!!」

など凄まじかったそうだ。そして挙句の果てには死神姿にもなって観客達も大満足のようだった。

「何がともあれ無事に終了して良かったよ」

闇慈が一人でゆっくりしているとコンコンとノックが聞こえた。闇慈がそれに答えるとサーゼクスが入ってきた。

「失礼するよ?アンジくん」

「サーゼクスさん。どうして貴方がここに?」

「妹の収録があると聞いてね。来てみたんだよ」

そう言うと闇慈の向かい側の席に座り、話を出した。

「ソーナとのレーティングゲームは見事だったよ。君の戦いぶりは多くの人々に叫喚を与えたものだと言って良い」

「そんな。僕はまだまだですよ。こんなことで満足していては、成長が止まってしまいますよ」

サーゼクスはフッと笑みを零すと闇慈に尋ねた。

「アンジくん。君は『魔具』と言うものを知っているかね?」

「魔具?それは何なんですか?」

「太古の昔に悪魔のために作り出された武器のことさ。しかしその力が膨大なため、災害をもたらしてしまい封印されてしまったそうだ」

「そんな武器があるんですね。それらは今何処に?」

闇慈が興味を持った表情でサーゼクスに尋ねる。

「私も詳しい事は分からないが武器は複数あるらしい。そして一つの武器の封印されている場所が明らかになった。そしてそれを手に入れようとした悪魔たちは所有者として認められようと封印されている神殿に挑んだが帰ってきた者は誰一人としていない。私の言いたい事は分かるかね?」

「僕になら出来る。そう仰りたいんですか?」

「どうかね?その力を手にすれば君はもっと強くなる。それ相応の覚悟があるなら君に封印されている場所を教えよう」

サーゼクスは取引しているような事を言ってるが闇慈の答えは決まっていた。

「勿論。行きます!!」

「君ならそう言うと思っていたよ」

「所でその武器の名前って何て言うのですか?」

闇慈の問いかけにサーゼクスはゆっくりと立ち上がりこう答えた。

「『アグニ』と『ルドラ』だ」
 

 

第六十七話 火風


出演があった翌日。闇慈はサーゼクスが話してくれた、古に封印された悪魔にために作られ、悪魔が恐れる武器『魔具』がある神殿に一人で来ていた。その場所はルシファードからかなり離れた渓谷の中に存在していた。

「ここに魔具・・・アグニとルドラがあるのか。良し・・・行こう」

闇慈は覚悟を決して、神殿の中に入った。

~~~~~~~~~~~~

神殿の中には灯台が点っており暗くは無かった。そして内装も壁画など古代の文化を思わせる物を感じさせていた。しかし・・・

「そこらじゅうに遺骨やら遺体が転がっている・・・。恐らく魔具を手に入れようとした人達だな。でもどうしてやられたのかな?」

闇慈が一人で疑問に思っていると天井から何かの気配を感じ、その場を飛び退くと、『何か』が体中から刃を突き出し、落下する勢いを乗せ、闇慈を串刺しにしようとした。

「キャハハハ!!!」

「こいつは・・・はぐれ悪魔?それに体から刃が突き出している!?少し気持ち悪いな・・・っ!?」

そして気付くと闇慈の周りは、『何か』に取り囲まれていた。少なくとも10体はいるだろう。

「こいつらは魔具を守護する存在か?何れにせよ、こいつらは僕をここから生かして帰すつもりはないみたいだな。良いだろう!!」

そしてその内の2~3体が闇慈に飛び掛ったが、セイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルで斬り裂き、霧散させた。

「本番までのウォーミングアップと行こうか!!さあ来い・・・貴様らに『死』を見せてやる!!」

闇慈はデスサイズ・ヘルでその『何か』を次々と斬り裂いて行った。そして『何か』の攻撃は素早く避け、同士討ちをさせていた。その戦闘は数分で終了した。

「こんなものか・・・まだまだ足りないが良いウォーミングアップになったな」

闇慈は元の服装に戻るとさらに奥を目指して足を動かした。

~~~~~~~~~~~~

そして様々なトラップや戦闘を掻い潜り、闇慈は最深部と思われる場所に辿り着いた。その部屋はやけに広く、祭壇まで置いてあった。

「ふう。結構奥まで来たけど、ここが最深部かな?それにここの部屋だけ今まで通って来た部屋と少し違うような」

闇慈が一人で疑問に思っていると・・・

【兄者。久方の客人じゃ】

【客人じゃな。何年ぶり客人じゃ?】

【分からん。しかし客人はもてなさねばなるまい】

「っ!?」

部屋の置くにある人型より少し大きな偶像が突然しゃべりだし、闇慈は一瞬身構えた。

【もてなさねばなるまいな】

【しかし。どうやって】

【知らん。どうしてくれようか】

「あの・・・ちょっと?」

闇慈はそのやりとりにからかわれていると思い、少しずつ苛立ちを抱え始めた。

【兄者。あの若者は呟いているが?】

【ツブヤキ?ツブヤキとは?】

【ふむ。ツブヤキとは】

闇慈はその漫才染みたやりとりにとうとう怒り声を張り上げた。

「ああ、もう!!いい加減にしてください!!僕は貴方方の漫才を聞きに来た訳じゃないんです!!僕は魔具を手に入れるためにここに命懸けで来たんです!!そんな漫才は他所でやって下さい!!」

闇慈の言葉に偶像は反応したのかゆっくりと動き始めた。それに闇慈も驚きを隠せないようだった。

「偶像が動いた!?」

【汝が力を求める者か】

【兄者。この者の力を見極めようぞ】

【良かろう。力が欲しくば、我ら兄弟に勝ってみせよ!!】

「貴方方が門番と言うわけですか!!面白い!!来い・・・来いよ・・・俺は・・・ここに居る!!」

闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを担いだ。2体の偶像はそれぞれ、赤色と青色に染められた『青竜刀』のようなものを振りかざし闇慈に斬りかかった。闇慈はデスサイズ・ヘルでそれらをいなしていくが、挟み撃ちの攻撃に闇慈は攻撃するチャンスを貰えなかった。そして何より赤い青竜刀からは『炎』が。そして青い青竜刀からは『風』が出ていた。

(このままじゃ、やられてしまう!!なら!!)

闇慈は赤色の偶像の攻撃を受けずに、素早く横に避けた。そしてその斬撃は闇慈の背後に居た青色の偶像が受けてしまい、怯んだ。闇慈はその隙を逃さずに魔力を篭めたデスサイズ・ヘルで青色の偶像を斬り裂いた。青色の偶像は霧散し、青竜刀も離れ、地面に突き刺さった。

「これで一体・・・っ!?」

闇慈が見たものは赤色の偶像が青い青竜刀を拾い、持っていた赤い青竜刀と連結させていた。

「まさか・・・あの剣は双剣でもあり、両剣でもあるのか!?」

赤い偶像はその両剣を振り回し、闇慈に斬りかかった。闇慈はそれを防いでいくが炎と風が闇慈の体を傷つけて行く。

「ぐぅ・・・あの剣は厄介だ。なら偶像を破壊するしかない!!」

闇慈は偶像の斬撃をかわすとシャドゥ・ルーラーで影を操り動きを封じ込め、剣を弾き飛ばし、一瞬の隙を突いてデスサイズ・ヘルで残りの赤の偶像を霧散させた。そして連結していた青竜刀も離れ、地面に突き刺さった。

「何とか勝てたか。しかし魔具は一体何処にあるんだろう?ここではないみたいだし・・・戻ってみるか」

闇慈がその部屋を後にしようとすると・・・

【待て!!】

【待たれい!!】

とあの声が聞こえてきた。闇慈は慌てて振り向くが偶像の姿はなかった。

「どうなっているんだ?偶像もいないのに、あの声が・・・まさか!!」

闇慈は地面に突き刺さった青竜刀を見ると刀の柄の先端が顔のようなものになっていた。そしてそこから・・・

【【我々は長年待っていたのだ】】

と言葉を発していた。そう・・・言葉を発していたのは偶像ではなく、この剣なのだ。闇慈はその2本の青竜刀に近寄った。

【我らより強き者を】

【我らを操れる者を】

「もしかして・・・貴方方が『アグニ』と『ルドラ』!?」

【【如何にも】】

闇慈の問いかけにまずは赤い青竜刀が答える。

【我は炎魔剣・・・アグニ】

続いて青い青竜刀が答える。

【そして我は風魔剣・・・ルドラ】

「炎魔剣と風魔剣。だから炎と風が出てきていたのか」

【【我らを連れて行くが良い!!我ら兄弟、力になろう!!】】

アグニとルドラの言葉に闇慈は少し考え答えを出す。

「勿論です。そのために僕はここに来たのですから。しかし!一つだけ条件があります」

【なんじゃ?】

【言ってみろ】

疑問を問いかけるアグニとルドラに闇慈は交互に見ながら答えた。

「僕が許可した時以外は・・・しゃべ、らない!!」

【・・・良かろう】

【汝がそれを望むのなら】

それを聞いた闇慈はアグニとルドラを引き抜いた。その途端闇慈は今まで感じた事のない力に見舞われた。

「凄い・・・力が漲る!!」

闇慈はそれらを上空に掲げ、まずは両剣状態で剣舞をやってみた。そしてその間にも炎と風は現れていた。そして双剣に持ち替え、乱舞の如く剣を振るった。

「炎よ、吼えろ!!風よ、逆巻け!!」

【【やるな・・・】】

アグニとルドラの感嘆の声に闇慈は剣を持ち替えるとカツンとぶつけ合い・・・

「しゃべ・・・らない!!」

【【・・・】】

「それで良いです」

こうして闇慈は魔具アグニとルドラを手にする事が出来た。果たしてこの魔具は何時活躍するのだろうか。

 
 

 
後書き

闇慈が魔剣アグニとルドラを手にしました!!

元ネタは知っていたかもしれませんが『デビルメイクライ3』からです!!

他にも出す予定なので楽しみにしていてください!!

感想・指摘。よろしくお願いします!! 

 

第六十八話 罠


「そろそろ時間ね」

決戦当日、闇慈達はオカルト研究部の部室に集まっていた。アーシアはシスター服、ゼノヴィアは黒いボンテージ風の戦闘服、他の皆は駒王学園の夏服だった。闇慈もソーナの時同様に遊撃手としてディオドラとのゲームに参加するみたいだった。

(ディオドラ・アスタロト!!僕は貴様を絶対に許さない!!デスサイズ・ヘルの錆にするか・・・アグニとルドラで斬り刻んで、灰燼にしてやる!!)

アグニ&ルドラは何時でも取り出せるように黒羽に頼んで光子状態にして貰っていた。闇慈は怒りを心の中に宿し、ゲームの始まりを待っていた。そして中央の魔方陣に集まり、ゲーム会場へ飛んだ。

~~~~~~~~~~~~

そして部員たちが目を開けて見たものはギリシャ神話に登場しそうな神殿がありそうな石造りの様な場所で、背後には神殿の入り口があった。

「ここが今回のゲームのステージ?でもそれにしては広すぎじゃないですか?」

「確かにそうね。それに・・・おかしいわね」

闇慈の疑問にリアスが答え、さらに怪訝そうな表情を浮べる。他のメンバーも怪しげに思っていると魔法陣が現れるが・・・1つだけではなく、部員たちを囲うように無数の数が出現した。

「・・・アスタロトの紋様じゃない!」

祐斗が剣を構え、朱乃も手に雷を走らせる。

「魔方陣全て共通性はありませんわ。ただ!!」

「全部、悪魔。しかも記憶が確かなら、カオス・ブリゲードの旧魔王派に傾倒した者達よ!!」

魔方陣から大勢の悪魔が現れ、リアス達を激しく睨みつける。数は1000人は居るだろう。

「忌々しき偽りの魔王の血縁者、グレモリー。ここで散ってもらおう」

悪魔の1人がリアスに挑戦的な物言いをした瞬間、突然アーシアの悲鳴が聞こえた。闇慈が慌てて振り向いても、そこにアーシアはいないかった・・・

「イッセーさん!」

アーシアの声が聞こえた空の方を見るとアーシアを捕らえたディオドラがいた。

「やあ、リアス・グレモリー。そして赤龍帝。アーシア・アルジェントはいただくよ」

「アーシアを放せ!このクソ野郎!卑怯だぞ!つーか、どういうこった!ゲームをするんじゃないのかよ!?」

一誠の叫びにディオドラは醜悪な笑みを見せる。

「バカじゃないの?ゲームなんてしないさ。キミ達はここで彼ら・・・カオス・ブリゲードのエージェント達に殺されるんだよ」

「ディオドラ。あなた、カオス・ブリゲードに通じていたと言うの?最低だわ。しかもゲームまで汚すなんて万死に値する!何よりも私の可愛いアーシアを奪い去ろうとするなんて・・・!!」

ディオドラの言動にリアスは殺気とオーラを纏い始める。

「彼らと行動した方が、僕の好きな事を好きなだけ出来そうだと思ったものだからね。ま、最期の足掻きをしていてくれ。僕はその間にアーシアと契る。意味は分かるかな?赤龍帝、僕はアーシアを自分のものにするよ。追ってきたかったら、神殿の奥まで来てごらん。素敵なものが見られる筈だよ」

「なるほど。今までの言動で一つだけ分かったことがありますよ、ディオドラさん。まず一つは貴方が異様なパワーアップを見せてしましたがそれはカオス・ブリゲードと内通していたため。そしてもう一つは・・・」

闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、真紅の魔眼でディオドラに睨みながら殺気を篭めた言葉を発する。

「貴様は欲望の塊で、生きて行くに値しない俗物だ・・・!!イッセー!アスカロンをゼノヴィアに渡すんだ!!」

「おう!」

一誠はブーステッド・ギアを出し、先端から聖剣アスカロンを取り出してゼノヴィアに渡した。

「アーシアは私の友達だ!お前達の好きにはさせん!」

ゼノヴィアはアスカロンを手に持ち、アーシアを助けに行こうとしたがディオドラが魔力弾を放ち体勢を崩されてしまう。ゼノヴィアは聖なるオーラを弾き飛ばすがディオドラは意とも簡単に避けてしまう。今度は闇慈が翼を具現させ、アーシアを助けに行こうとするが、カオス・ブリゲードの連中がそれを拒む。

「退けぇぇぇ!!貴様等!!!」

闇慈はデスサイズ・ヘルで斬り裂いて行ったがディオドラに届く気配はなかった。

「イッセーさん!ゼノヴィアさん!アンジさん!イッ・・・」

助けを請うアーシアだったが無情にも空間が歪み、次第にアーシア、ディオドラはその中へと消えて行った。

「アーシアァァァ!!」

「イッセー!今は目の前の敵を倒す方が先だ!」

闇慈はアーシアを追おうしている一誠を引き止め、促す。一誠も頷いて囲っている悪魔との軍勢と対峙する。

(流石に数が多いな・・・デスサイズ・ヘルは多数相手には不向きだ。少し早いがアグニ&ルドラを出すか?)

デスサイズ・ヘルは大鎌なため、攻撃力は高いが大振りになってしまうため隙が大きい。つまり大人数を相手にするには少し不利があった。
闇慈はアグニ&ルドラを呼び出そうとすると・・・

「キャッ!」

「朱乃さん!?」

朱乃の声が聞こえ、その方を向くと隻眼の老人が朱乃のスカートを捲り、パンツを覗いていた。闇慈は老人に近づき・・・

「何をやっているだ!?」

と老人を朱乃から引き離すとその老人は以前ソーナとの戦いの後で会った・・・

「って・・・貴方は、オーディンさん!!」

北欧神話の最高神オーディンだった。

「オーディン様!どうしてここへ?」

「簡潔に言うなら、ゲームをカオス・ブリゲードに乗っ取られたんじゃよ。今、運営側と各勢力の面々が協力態勢で迎え撃っとる。ま、ディオドラ・アスタロトが裏で旧魔王派の手を引いていたのまでは判明しとる。先日の試合での急激なパワー向上もオーフィスに『蛇』でも貰い受けたのじゃろう。だがの、このままじゃとお主らが危険じゃろう?救援が必要だった訳じゃ。しかしの、このゲームフィールドごと強力な結界に覆われていてのぅ、そんじょそこらの力の持ち主では突破も破壊も難しい。特に破壊は厳しいのぅ。内部で結界を張っているものを停止させんとどうにもならんのじゃよ」

「じゃあオーディンさんはどうやってこの中に?」

「ミーミルの泉に片方の目を差し出した時、わしはこの手の魔術、魔力、その他の術式に関して詳しくなってのぅ。結界に関しても同様じゃ」

オーディンが左の隻眼を見せると、そこには水晶が埋め込まれ、目の奥に輝く魔術文字は神秘的な物でもあると同時に部員たちに寒気を与えた。

「相手は北欧の主神だ!討ち取れば名が揚がるぞ!」

旧魔王派の悪魔達が一斉に魔力の弾を撃ってきた。オーディンは杖を一度だけトンと地に突くと向かってきた無数の魔力弾が全て消滅した。

「本来ならば、わしの力があれば結界も打ち破れる筈なんじゃがここにいるだけで精一杯とは・・。はてさて、相手はどれ程の使い手か。ま、これをとりあえず渡すようアザゼルの小僧から言われてのぅ。まったく年寄りを使いに出すとは、あの若造はどうしてくれるものか・・・」

オーディンは部員達人数分の小型通信機を渡した。

「ほれ、ここはこのジジイに任せて神殿の方まで走れ。ジジイが戦場に立ってお主らを援護すると言っておるのじゃ。めっけもんだと思え」

オーディンが杖を闇慈達に向けると、薄く輝くオーラが闇慈達を纏った。

「それが神殿までお主らを守ってくれる。ほれほれ、走れ」

「でも、爺さん!一人で大丈夫なのかよ!」

一誠が心配を口にするが、オーディンは愉快そうに笑っていた。

「まだ十数年しか生きていない赤ん坊が、わしを心配するなぞ・・・」

オーディンの左手に槍が出現し・・・

「・・・グングニル」

悪魔達に向かって槍から極大のオーラが放出され、襲い掛かった。それによって数十人位が一気に吹き飛んでいた。一誠はその威力に我が目を疑っているようだった。

「なーに、ジジイもたまには運動しないと体が鈍るんでな。さーて、テロリストの悪魔ども。全力でかかってくるんじゃな。この老いぼれは想像を絶する程強いぞい」

オーディンが余裕をかましていると一体の悪魔が不意をついてオーディンに魔力弾を撃ってきた。

「危ねえ!じいさん!!」

一誠が声を張り上げるが、その魔力弾はオーディンに届かなかった。突然オーディンを守るかのように大きな火柱がたった。そしてそれが収まるとデスサイズ・ヘルを消して両手にアグニ&ルドラを持った闇慈が守護していたオーラから出て、オーディンの前に立っていた。

「油断していると神であろうと怪我をしますよ?」

「余計な事せずともわしは分かっておったわい」

「なら良かったです。部長、僕がオーディンさんに付き添います。すぐに片付けて戻りますから」

「大丈夫なの?アンジ」

「ええ。それにこの剣の試し斬りにもなりますしね」

そう言うと闇慈はアグニ&ルドラをリアスに見せた。

「それって・・・魔剣?」

「ええ。でもただの魔剣じゃないです。魔具、アグニとルドラです」

「アグニとルドラですって!?」

リアスが驚愕の声を上げる。一誠がリアスに尋ねる。

「この魔剣ってそんなに凄いんですか?」

それを祐斗が代わり説明する。

「魔具って言うのは太古の昔に封印された悪魔が恐れたと言われている武器だよ。この二本の剣は魔剣だけど、僕のソード・バースでも作る事の出来ない強力な剣だよ」

「説明ありがとう、祐斗。僕は大丈夫ですから行って下さい!!早くしないとアーシアの身も危ないです!!」

「・・・分かったわ!オーディン様!アンジ!ここをお願いします!」

リアス達は神殿の方へ走り出した。闇慈は再びアグニ&ルドラを構え、悪魔達と向き合った。

「わしの心配なぞしなくとも良かったものを・・・」

「年長者は敬え・・・貴方一人にこの人数を戦わせるのは僕の心が許さなかったみたいです」

「・・・ふっ。そこまで言うなら、わしは何も言わん。ならば始めるとするかのぅ!」

「はい!!」

オーディンは再び先ほどの槍を取り出した。

「この魔剣は、貴様等にとって悪夢そのもの。この力・・・その身で味わえ!!いくぞ!アグニ!ルドラ!」

【【御意!!】】
 

 

第六十九話 剣舞


闇慈は一誠達と一旦別れるとオーディンと共にカオス・ブリゲードの連中と対峙し始めた。アグニ&ルドラは双剣かつ両剣なので隙は少なく、持ち主の力の大きさによって威力の異なる炎と風によって闇慈はほぼ無傷の状態で悪魔達を倒して行った。
闇慈の力はそれ相応に大きいのか、出てくる炎と風はまるで『業火』と『嵐』のようだった。

「はあ!!」

「ぐわっ!!」

闇慈が一人の悪魔を双剣状態のアグニ&ルドラで斬り捨てるとそれを見ていた30人位の悪魔が一斉に闇慈に魔力弾を放つ!!

「この数はかわせまい!!」

「死ねぇ!!死神!!」

しかし闇慈は慌てる表情も見せずに2本の剣を連結させ、両剣状態にすると頭上で勢い良く回転させ・・・

「我が身を守れ・・・立て!火柱!!」

炎と風を発生させ、闇慈の周りに巨大な火柱を作り上げた。『風』は『火』を強めてくれるものなので火の強さも増していた。そして巨大な火柱は魔力弾を弾き飛ばし、悪魔達を自滅へと追いやった。

「さすがアグニとルドラ。魔具だけあって力が半端ないな」

【【当然の事。我ら兄弟を嘗めて貰っては困るぞ、主よ】】

アグニ&ルドラの自信に満ちた言葉に闇慈はフッと笑みを零した。

「本来なら喋るなって言いたい所だが、今は喋って良いぞ。なら・・・俺にお前たちの力をもっと見せてみろ!!」

闇慈の呼びかけにアグニ&ルドラは答えるかのように顔の目がカッと光る。そして闇慈は両剣状態から双剣状態に切り替えると頭上でアグニ&ルドラを交差させ、力を解放する。

「さあ・・・我が剣舞に酔い痴れろ!!」

闇慈は『魔力の解放』で足に魔力を留め、素早さを格段に上げるとカオス・ブリゲードの連中に突っ込み、舞うように斬りかかる。

「ほう・・・美しいのぅ。炎と風が舞っておるわ。これ程の剣舞が見られるとは長生きはするもんじゃのぅ」

その姿はオーディンも賞賛するものだった。

~~~~~~~~~~~~

そして闇慈とオーディンはカオス・ブリゲードの精鋭達を殲滅させた。

「こんなものか。まあ良い試し斬りになったな」

「やるのぅ。わし一人じゃったら後数十分は掛かったじゃろうて」

「相変わらず余裕ですね、オーディンさん」

「まだまだ若い者に負けるわけにはいかんて」

闇慈とオーディンはお互いに笑いあっていると闇慈は一旦アグニ&ルドラを消すと背中に翼を具現させた。

「じゃあ僕はリアス先輩たちの元に急ぎます」

「ふむ。恐らくこの先の神殿じゃろう。気をつけるのじゃぞ?」

「言われなくても分かっています!!」

闇慈はオーディンに別れを告げ、一誠達の下へ急いだ。

~~~~~~~~~~~~

闇慈は翼を羽ばたかせ、神殿に辿り着くと中に進入した。中では戦った後のような傷跡が内装に見受けられた。

(もうディオドラの眷属との戦いが始まっているのか・・・急ごう!!)

闇慈が急いで中の奥に入っていくと部員達が目に入った。

「あっ!!居た!!」

闇慈が急いで駆け寄ろうとすると・・・

「「うるさい!!」」

とリアスと朱乃の怒声が響くとリアスの『滅びの魔力』と朱乃の『雷光の魔力』が何かに襲い掛かった。闇慈は何事かと思い、一気に距離を縮めた。そしてそれに逸早く一誠が気付く。

「あ!闇慈!!大丈夫なのか!?」

「大丈夫だよ。オーディンさんの援助もあったし無傷だよ」

「・・・先輩。心配しました」

「心配をかけてゴメンね?小猫ちゃん」

闇慈は優しく小猫の頭を撫でて落ち着かせると今の現状を尋ねる。
何でもリアスと朱乃の一誠の取り合いの口論にディオドラのクイーンが横槍を入れると逆鱗に触れてしまったのか吹き飛ばされたと言う状況だった。闇慈はそのことに冷や汗を流し苦笑しながら・・・

「『触らぬ神に祟りなし』って奴だね」

と言う結論を述べた。そして闇慈達はさらに奥を目指して行った。
 

 

第七十話 灰塵


闇慈達がディオドラの残りの眷属・・・二人のナイトがいるであろう場所に足を踏み入れると、見覚えのある人物が立っていた。

「や、おひさ~」

「貴様は、フリード・セルゼン!!」

「このクソ神父!!まだ生きていたのか!?」

待っていたのはアーシアと出会った時とエクスカリバー強奪事件の時に敵対した白髪神父『フリード・セルゼン』だった。しかしフリードはエクスカリバー強奪事件の時に祐斗が倒した筈だった。

「まだ生きてたんだなって言ったっしょ?イエスイエスイエス、僕ちんしぶといからキッチリキッカリしっかりちゃっかり生きてござんすよ?」

「相変わらず、支離滅裂な言葉使いだな。まあ良い、ここにディオドラのナイトだ二人いた筈だ。そいつ等は何処に行った?」

闇慈がフリードに尋ねると口をもごもごし始め、ペッと何かを吐き出した。それは・・・人の指だった。

「俺さまが食ったよ」

「何言ってんだ?こいつ、食った・・・?」

一誠はフリードの言葉が理解出来なかったが、力を読み取ることの出来る闇慈と匂いで正体を見破る事の出来る小猫にはその意味が分かったのか、顔をしかめる。

「堕ちる所まで堕ちたか…フリード・セルゼン」

「・・・その人、人間を辞めてます。イッセー先輩」

フリードは口の端を吊り上げて人間とは思えない形相で哄笑をあげる。

「ヒャーハハハハハハハハハ!!!てめぇらに切り刻まれた後、ヴァーリのクソ野郎に回収されてなぁぁぁ!!腐れアザゼルにリストラ食らってよぉぉぉ!!」

そして嫌な音を立てながらフリードの肉体の各部分は不気味に盛り上がって行き、
角みたいなものが隆起し、腕や脚も膨れ上がる。

「行き場を無くした俺を拾ったのが、カオス・ブリゲードの連中さ!!奴ら!俺に力をくれるって言うから何事かと思えばよぉぉぉ!!きゃはははははは!!!合成獣(キメラ)だとよ!!ふはははははは!!!」


背中の片方にコウモリの様な翼、もう片方には巨大な腕が生えて、顔は原型を留めない程変形して凶暴な牙も生え、ドラゴンのような頭部になっていった。終にフリード・セルゼンは人間の面影を一切見せない一つの化け物となった。それを見ていた闇慈は嘆息を吐き出し、考えを口にする。

「貴様も貴様だが、カオス・ブリゲードの連中は何処まで外道なんだ?自分たちの夢の為なら『命』すら省みないと言うのか?」

「ヒャハハハハハハ!そんな考えなんか古臭いぜ?今は『力』こそ全てなんだからよぉぉぉ!!!

フリードは闇慈の考えを貶し、さらに言葉を続ける。

「ところで知ってたかい?ディオドラ・アスタロトの趣味をさ。これが素敵にイカレてて聞くだけで胸がドキドキだぜ!あのお坊っちゃん、大した趣味でさー、教会に通じた女が好みなんだって!そ、シスターとかそう言うのさ!」

((趣味がシスター?・・・まさか))

フリードの言葉に闇慈と一誠は一つの事柄が頭を過ぎる。

「しかも狙う相手は熱心な信者や教会の本部に馴染みが深い女ばかりだ。俺さまの言ってる事わかるー?さっきイッセーくん達がぶっ倒してきた眷属悪魔の女達は元信者ばかりなんだよ!自分の屋敷にかこっている女共もおんなじ!ぜーんぶ元は有名なシスターや各地の聖女さま方なんだぜ!ヒャハハハ!マジで趣味良いよなぁぁぁ!!悪魔のお坊ちゃんが教会の女を誘惑して手籠めにしてんだからよ!いやはや、だからこそ悪魔でもあるのか!熱心な聖女さまを言葉巧みに超絶上手い事やって堕とすんだからさ!まさに悪魔の囁きだ!」

「・・・なるほど。つまりアーシアが正教会から追放されたのは、ディオドラが自分の馬鹿げた趣味のために初めから仕組まれた伏線だったのか?」

フリードは闇慈の質問に答えるかのように哄笑をあげる。

「大当たり~。アーシアちゃんが教会から追放されるシナリオを書いたのは元をただせばディオドラ・アスタロトなんだぜ~?シナリオはこうだ。昔々あるところのある日、シスターとセッ◯スするのが大好きなとある悪魔のお坊っちゃんは、チョー好みの美少女聖女さまを見つけました。その日からエッチしたくてたまりません。でも、教会から連れ出すにはちょいと骨が折れそうと判断して、他の方法で彼女を自分のものにする作戦にしました」

『他の方法』と言う言葉に一誠の脳裏に一つの事が過ぎる。

「聖女さまはとてもとてもお優しい娘さんです。セイクリッド・ギアに詳しい者から『あの聖女さまは悪魔をも治すセイクリッド・ギアを持っているぞ』と言うアドバイスを貰いました。そこに目をつけた坊ちゃんは作戦を立てました。『ケガした僕を治すところを他の聖職者に見つかれば聖女さまは教会から追放されるかも☆』と!!傷痕が多少残ってもエッチ出来りゃバッチリOK!!それがお坊ちゃんの生きる道!!」

一誠を嘲笑うかのように、フリードはトドメとばかりに言い放った。

「信じていた教会から追放され、神を信じられなくなって人生を狂わされたら、簡単に僕のもとに来るだろう・・・と!ヒャハハハ!聖女さまの苦しみも坊ちゃんにとってみれば最高のスパイスなのさ!最底辺まで堕ちたところを掬い上げて犯す!心身共に犯す!それが坊ちゃんの最高最大のお楽しみなのでした!今までもそうして教会の女を犯して自分のものにしたのです!それはこれからも変わりません!坊ちゃん・・・ディオドラ・アスタロトくんは教会信者の女の子を抱くのが大好きな悪魔さんなのでした!ヒャハハハ!!」

一誠の心の底で、言い表せない程の憎悪が沸き上がった。その証拠に握りしめる拳からは血も噴き出していた。フリードを激しく睨み、一歩前へ出ようとしたが、闇慈が肩を掴み、それを止める。

「イッセー。その想いはディオドラにぶつけた方が良い」

「闇慈!お前はこれを黙っていろって言うのか!?」

一誠は闇慈の胸倉を掴もうとしたが、闇慈の瞳にも激しい憎悪を宿していた。

「ここで無駄な体力を使えば、本命の時に全力が出せなくなる。ここは耐えろ」

「闇慈君の言う通りだよ、イッセー君。ここは僕が行く。あの汚い口を止めてこよう」

迫力のある歩みで祐斗は前に出ようとするが闇慈が一旦止める。そしてアグニ&ルドラを呼び出すと祐斗に差し出す。

「祐斗。魔剣士の君ならこの剣を使いこなせる筈だ。これを僕の思いと取って、あいつにぶつけて欲しい!!」

「分かったよ、闇慈君。君の思い・・・確かに受け取ったよ」

「アグニ、ルドラ。主の僕が命じる!今はこの者の力となり、あの外道を灰燼と化せ!!」

【【承知。我が主よ】】

祐斗はアグニ&ルドラが喋った事に少し驚愕の声を上げる。

「闇慈君・・・今、剣が・・・」

「それは後で説明する」

祐斗は頷くと闇慈からアグニ&ルドラを受け取り、両手に持つと祐斗は魔具の力に漲られた。そしてゆっくりとフリードと向き合った。

「やあやあやあ!てめぇはあの時俺をぶった斬りやがった腐れナイトさんじゃ、あーりませんかぁぁぁ!!てめぇのお陰で俺はこんな素敵なモデルチェンジをしちゃいましたよ!でもよ!俺さまもだいぶ強くなったんだぜぇぇぇ?ディオドラのナイト2人をペロリと平らげましてね!そいつらの特性も得たんですよぉぉぉ!!無敵超絶モンスターのフリードくんをよろしくお願いしますぜぇ、色男さんよぉぉぉ!!」

祐斗はアグニ&ルドラを双剣状態で構えると冷淡な声で一言だけ言う。

「君はもういない方が良い・・・」

「調子くれてんじゃねぇぇぇぞぉぉぉ!!!」

憤怒の形相となったフリードは全身から生物的なフォルムの刃を幾重にも生やして祐斗に襲い掛かろうとしたが・・・

フッ・・・

と祐斗が視界から消えた。そして眼前にいたフリードはズバッと音を立て、無数に切り刻まれて四散した。切り口には、焦げた痕や鋭利なモノで斬り裂かれた痕があった。

「・・・んだよ、それ。強すぎんだろ」

頭部だけになったフリードは床に転がり大きな目をひくつかせていた。
ナイト独特に神速に魔具の力が上書きされた事によって勝負は一瞬で決まった。

「・・・ひひひ。ま、お前らじゃ、ディオドラの計画もその裏にいる奴らも倒せないさ。何よりもロンギヌス所持者の本当の恐ろしさをまだ知らねぇんだからよ。ひゃははは・・・」

「立て・・・火柱」

フリードが言い切る前に祐斗は火柱を作り、フリードを灰燼へと誘った。

「・・・続きは地獄の連中を相手に吼えていると良い」

【やるな・・・】

【我が主には劣るが、ここまで我ら兄弟を使いこなせる者が居たとは】

アグニとルドラが順番に賞賛する。そして祐斗は闇慈にアグニ&ルドラを返すと・・・

「闇慈君。この剣ってもしかして・・・」

「そう。この剣は意思を持っている」

【汝も中々の力の持ち主】

【望みと在れば、力を貸そう】

アグニ&ルドラの言葉に祐斗は微笑むと・・・

「是非。お願いするよ」

「おい!何やってんだ?次に行くぞ!!」

一誠の声がけに闇慈と祐斗はすぐに合流し、最深部を目指した。
 

 

第七十一話 処刑


闇慈達が辿り着いたのは神殿の最深部。そしてその部屋の置くには巨大な装置らしきもの置いてあった。その装置にはあちこちに宝玉が埋め込まれており、怪しげな紋様と文字が刻まれていた。そしてその装置の中央には・・・

「アーシアァァァアアア!」

アーシアが張り付けられていた。それを見た一誠は悲観の声を張り上げる。そしてその横からディオドラが姿を現す。

「やっと来たんだね」

それを見た一誠はバランス・ブレイカーを発動させ、カウントダウンを開始した。

「・・・イッセーさん?」

一誠の声に反応したのか、アーシアが顔を向けた。その顔は目元は腫れ上がっており、尋常じゃない量の涙を流したと思える程に目が赤くなっていた。闇慈はドスを効かせながらディオドラに尋ねた。

「ディオドラ・アスタロト。貴様・・・アーシアに事の詳細を話したな?」

「うん。全部アーシアに話したよ。ふふふ、キミ達にも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知った時のアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」

「・・・」

「本当は堕天使の女・・・レイナーレが彼女を殺し、僕の駒を与える予定だったんだ。しかし君達のせいで計画に大幅なズレが生じてしまったけど、結果的に僕の元にやって来た。これで彼女と楽しめるよ」

「黙れ・・・」

「分かった。もう喋るな。耳が穢れる・・・」

一誠の口から考えられない程の低い声が出た。そして闇慈も外道的な考えと仲間を傷つけたディオドラに殺気を出し始める。

「アーシアはまだ処女だよね?僕は処女から調教するのが好きだから、赤龍帝のお古は嫌だな。あ、でも、赤龍帝から寝取るのもまた楽しいかな?キミの名前を呼ぶアーシアを無理矢理抱くのも良いかもしれ・・・」

「黙れェェェェェェ!!!」

『Welsh Dragon Balance Breaker』

「喋るなぁぁぁぁぁぁ!!!」

一誠の中で怒りが弾け飛び、2分と経たずに完全なバランス・ブレイカーと化した。闇慈も怒りを爆発させ、魔力が漏れ始める。

「ディオドラァァァァァァ!てめぇだけは!絶対に許さねぇ!!」

「貴様はクズだ!!貴様のような奴は生きる価値もない!!ここで貴様に『死』を見せ、二度と転生出来ないように魂も斬り裂いてやる!!来い・・・来いよ・・・俺は・・・ここに居る!!」


闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを右肩に担ぐ。二人の殺気と魔力の波動で周りの装飾品に傷が入って行った。

「「ここは俺達にやらせて下さい!部長(リアス先輩)!!」」

「イッセー、アンジ。全員で倒すわ・・・と言いたいところだけれど、今のあなた達を止められそうもないわね。手加減してはダメよ」

「「勿論です!!」」

闇慈と一誠がリアスから了承を貰った一方でディオドラは楽しげに高笑い、全身からドス黒いオーラを出していた。

「アハハハハ!凄いね!これが赤龍帝と死神!!でも僕もパワーアップしているんだ!!オーフィスから貰った『蛇』でね!キミ達なんて瞬殺・・・」

一誠は背中の噴出口から火を噴かして。そして闇慈は魔力を足に留めて素早さを格段に上げ、瞬間的に距離を詰めると一誠はディオドラの腹に、そして闇慈は魔力を留めた足で顔面に空中回し蹴りを鋭く打ち込んだ。

ドゴォォォオオオン!!!

ディオドラは、くの字に曲がると壁に激突し、血と内容物を吐き出していた。顔からも夥しい血を流していた。

「瞬殺がなんだって?」

「くっ・・・こんなことで!僕は上級悪魔だ!現魔王ベルゼブブの血筋だぞ!!下級で下劣で下品な転生悪魔やただの死神に気高い血筋が負ける筈が無いだ!!!」

ディオドラが前に手を突き出すと無数の魔力弾が展開され、闇慈と一誠に向かって放った。
しかし闇慈には無意味だ。闇慈は魔力を弾くAMCマントでその魔力弾を弾く。一誠はタンニーンとの修行の成果が出たのか鎧に魔力弾が当たっていたが一誠は何ともないようだった。

「そんな・・・僕の攻撃が効いていない!?パワーアップした僕の攻撃が!?」

「そんな他人の頼りの、偽りの強さで俺達を止められるとでも思っているのか?」

闇慈が言い放った瞬間、二人は再び一瞬で詰め寄ったが今度は障壁を何枚も張った。

「これなら幾らパワーバカの赤龍帝でも届かないよ!!」

「バーカ。お前は俺しか見えてないのか?頼むぜ!闇慈!!」

「任せろ!!」

闇慈は魔力を溜めたデスサイズ・ヘルでその障壁を叩き斬った。その障壁が壊れるとそれを待っていたかのように一誠が鉄拳をディオドラに打ち込む。

「痛い・・・痛い。痛いよ!!」

「そんな傷に比べたら、アーシアが負った心の傷に比べれば月とスッポンだ!!簡単には殺さないぞ・・・死神が与える『死』には苦痛と恐怖を伴う!!そして龍を怒らせるとどうなるか、その身で味わえ!!イッセー!!」

「砕けろ!!」

闇慈が普通のデスサイズ・ヘルで、一誠は鉄拳と蹴りでディオドラの四肢を使い物にならなくした。

「うわぁぁああ!!!僕の・・・僕の手と足がぁぁぁ!!!」

「さあ・・・処刑の時間だ!!」

闇慈はディオドラを壁に投げ飛ばすと、壁に突き刺さった。そしてシャドゥ・ルーラーで影を操り、四肢の動きを封じ込め、『(はりつけ)』の状態にする。
そして闇慈は『ダークネス・ハウリング』。一誠は『ドラゴンショット』を放つ為に魔力を集め始めた。

「ま、待て!僕が悪かった!!君達の悪口も言わない!!そ、そうだ!!僕の計らいで君達を昇級させて上げよう!!だから頼む!!命だけは!!」

ディオドラの命乞いに二人は貸す耳すら持っていなかった。

「断る・・・。全てを深淵なる闇に引きずり込め!!!」

「てめえの敗因はシンプルだ、ディオドラ。てめえは俺達を・・・怒らせた!!!いっけぇぇぇ!!!」

「「ダークネス・ハウリング(ドラゴン・ショット)!!!」」

そして闇慈と一誠は留めた魔力に鉄拳を打ち込み、レーザーを発生させた。その2本の赤と黒のレーザーは渦巻き、ディオドラに襲い掛かった。

「ちくしょおおおぉぉぉ・・・」

レーザーはディオドラを用意に飲み込み、姿が見えなくなった。そしてそれが晴れると黒焦げになったディオドラが失神したまま地面に倒れ付した。
 

 

第七十二話 救出劇場


ディオドラを倒した一誠と闇慈は元の制服姿に戻ったが、闇慈は一誠に問いかけた。

「イッセー。どうして本気を出さなかったの?本気を出せばこんな奴なんか楽に消し飛ばす事が出来たと思うけど?」

「流石にこいつも魔王に血筋を持ってるからな、ここでこいつを殺したら部長や部長のお兄さんに迷惑が掛かると思ったからな。もう十分に殴り倒したさ。それにお前だって俺と同じ事を考えていたんじゃねえのか?」

一誠の問いかけに闇慈はフッと笑いを零す。

「イッセーも考えるようになったね。僕もイッセーと同じ考えだったよ。彼にはもう赤龍帝と死神の『恐怖』を植えつけることが出来たと思うから、それで十分だよ。さあ・・・早くアーシアを解放しよう!!」

「だな!!」

闇慈と一誠はコツンと拳をぶつけ合うと、アーシアが居る装置に向かった。他の部員たちはアーシアを装置から外そうとしたが・・・少しして祐斗の顔色が変わった。

「・・・手足の枷が外れない!?」

「何だって!?」

「クソッ!!外れねえ!?」

一誠はアーシアと装置が繋がっている枷を外そうとしたが、赤龍帝のパワーでも外れなかった。闇慈は最大限に魔力を注ぎ込んだデスサイズ・ヘルで壊そうとしたが弾かれる。

「そんな・・・デスサイズ・ヘルでも壊せないのか!?」

その時、ディオドラが気が付いたのか言葉少なく呟く。

「・・・無駄だよ。その装置は機能上一度しか使えないが、逆に一度使わないと停止出来ないようになっているんだ。アーシアの能力が発動しない限り停止しない」

「どういう事だ?」

一誠の問いかけに淡々と続ける。

「その装置はロンギヌス所有者が作り出した固有結界の1つ。このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。【絶霧】『ディメンション・ロスト』、結界系セイクリッド・ギアの最強。所有者を中心に無限に展開する霧。その中に入った全ての物体を封じる事も、異次元に送る事すら出来る。それがバランス・ブレイカーに至った時、所有者の好きな結界装置を霧から創り出せる能力に変化した。【霧の中の理想郷】『ディメンション・クリエイト』、創り出した結界は一度正式に発動しないと止める事は出来ない」

今度は闇慈が質問する。

「発動の条件と、この結界の能力は?」

「・・・発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は・・・枷に繋いだ者、つまりアーシアのセイクリッド・ギアの能力を増幅させてリバースすること」

それを聞いた闇慈はハッと気付き、さらに問いかける。

「その効果範囲は?」

「・・・このフィールドと、観戦室にいる者達だよ」

それを聞いた闇慈は声を張り上げる。

「不味い!!アーシアの能力は『回復』・・・その逆は『破壊』!!そして能力の高さは悪魔や堕天使を治癒させる程だから、下手をすれば僕達やトップ達は一瞬で壊滅してしまう!!!」

闇慈の考えに一誠が続ける。

「まさか・・・会長との一戦でそんな作戦が思い付かれたのか!」

「・・・いや、随分前からその可能性が出ていたようだよ。ただ、シトリーの者がそれを実際に行った事で計画は現実味を帯びたそうだ」

それを聞いたリアスが怒りで顔を歪めた。

「堕天使の組織に潜り込んだままの裏切り者がソーナにリバースを貸す事でデータを集め、利用していたかもしれないのね!」

「と言う事は・・・グラシャラボラスの不審死は愚か、ソーナ会長との戦いも、貴様も、全部カオス・ブリゲードが絡んでいたのか!!」

闇慈はディオドラの胸倉を掴み上げ、問いかけたがディオドラは答える気配は無かった。そしてディメンション・ロストはブーステッド・ギアやデスサイズ・ヘルより高ランクのロンギヌスで破壊する事は出来ないみたいだった。

「イッセーさん、私ごと・・・」

「バカな事言うんじゃねぇッ!次にそんな事言ったら怒るからな!アーシアでも許さない!」

「で、でも、このままでは、先生やミカエル様が私の力で・・・。そんな事になるくらいなら、私は・・・」

「俺は・・・俺は!!二度と、アーシアに悲しい思いをさせないって誓ったんだ!!だから絶対にそんな事をさせやしない!!俺が守る!!ああ、守るさ!!俺がアーシアを絶対に守ってやる!!」

アーシアの肩を抱き、泣きながら言う一誠にアーシアも感極まって涙を溢れさせるが、非情にも装置が動き出す。部員達はそれを見て焦り出し、攻撃を放つがやはりビクともしなかった。

(やはり唯の『物理破壊』は無理だな。現にブーステッド・ギアの力でさえ、破壊できないんだから!!落ち着け・・・考えろ・・・他に方法は・・・ん?)

闇慈は攻撃を止め、アーシアの四肢に繋がっている足枷を観察し始めた。

(足枷にアーシアの『服』が一緒に繋がっている・・・ん?服・・・破壊・・・はっ!!そうだ!!)

「おい!何やってんだ!?闇慈!!お前も攻撃しろ!!」

一誠は闇慈に向かって激を飛ばすが闇慈は一誠にある方法を伝えた。

「イッセー!!ドレス・ブレイクだ!!力を強めたドレス・ブレイクでアーシアの服を破壊しろ!!」

「こんな時にアーシアの服を破壊してどうしろって言うんだよ!?」

「良く見てみろ!!足枷にはアーシアの服が一緒に繋がれている!!僕の推理が正しければ服と一緒に足枷も破壊する事が出来るはずだ!!『物理破壊』には強い足枷でも『特殊破壊』の耐性は備えていない筈だ!!」

「そんなことが出来るのかよ!?」

今度は闇慈が一誠に向かって激を飛ばす。

「出来る、出来ないの問題じゃない!!やらなきゃならないだろう!?可能性は・・・ゼロじゃない!!」

「っ!!分かった!!アーシア、君の服を破壊する。だから少しの間我慢してくれ」

「はい。イッセーさんの為なら私・・・我慢します!!」

アーシアの了解を得ると一誠以外の部員達は一旦装置から離れる。巻き添えを喰らわないために。

「高まれ、俺の性欲!俺の煩悩!ドレス・ブレイクッ!バランス・ブレイカー・ブーストバージョン!!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

一誠の鎧の宝玉が赤く輝き、枷に触れている手に流れ込んでいった。そして一誠はアーシアの全裸を妄想しているのか鼻血を流しながら力を溜めて行き、そして・・・

「弾けろ!!!ドレス・ブレイク!!!」

一誠の叫び声と共に足枷が一気に破壊され、そのままアーシアのシスター服も破壊した。

(イッセー・・・君ってやっぱり可能性の塊だよ!!)

「で、出来た・・・!!」

「イッセーさん!」

アーシアは裸で一誠に抱き付いた。アーシアが装置から解放されたために、装置の動きも止まっていた。

「あらあら。大変ですわ」

朱乃は直ぐに魔力で新しいシスター服を作るとアーシアに着せた。そして再び一誠に抱き付く。

「信じてました・・・。イッセーさんが来てくれるって」

「当然だろう。でも、ゴメンな。ツラい事、聞いてしまったんだろう?」

「平気です。あの時はショックでしたが、私にはイッセーさんがいますから」

アーシアは笑顔で嬉しい事を一誠に言うとゼノヴィアも目元を潤ませ、アーシアと抱き合った。

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために・・・」

「アーシア。そろそろ私の事を家で部長と呼ぶのは止めても良いのよ?私を姉と思ってくれて良いのだから」

「っ!!はい!!リアスお姉さま!!」

今度はリアスとアーシアが抱き合った。ギャスパーは大泣きし、小猫が慰めるかのように頭を撫でた。次にアーシアは闇慈と向き合う。

「アンジさん。助けてくれてありがとうございます!!」

「本当に無事で良かったよ、アーシア。これからは一誠と一緒に楽しい思い出を作っていくと良いよ。そして君は一誠と僕が守ってあげるからね?でしょう?イッセー!!」

「ああ!!勿論だ!!さて、アーシア。帰ろうぜ」

「はい!と、その前にお祈りを」

アーシアは天に向かって何かを祈る。一誠が何を祈ったかを訊くと・・・

「内緒です」

と返されていた。その光景を闇慈はフッと笑うように見ていた。

「アーシアが助かってよかったね?小猫ちゃん」

「・・・はい。アーシア先輩が無事で何よりです。それと・・・先輩」

「ん?何かな?」

「もし私が誘拐されたら、助けに来てくれますか?」

闇慈は当たり前の質問にフゥと息つくと小猫に言い聞かせた。

「当たり前の事を聞かないで?小猫ちゃん。君が居なくなったら僕の存在意義が無くなってしまうよ。僕にとって気味は大切な存在・・・恋人だからね」

「嬉しいです」

闇慈と小猫が和んでいる間に笑顔で一誠のもとへ走り寄るアーシアだったが突如、まばゆい光の柱が発生し、光の柱が消え去ると・・・

「・・・アーシア?」

そこには誰もいなかった。

(後書き)

次回、一誠と『あれ』が発動します!!

それに伴いまさかの闇慈も!?

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 
 

 
後書き
次回、一誠と『あれ』が発動します!!

それに伴いまさかの闇慈も!?

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 

 

第七十三話 覇龍と・・・


ーーーーーーーーーーーー


主よ。お願いを聞いてくださいますか?


どうか、イッセーさんをずっとお守りください


そして・・・


どうか、これからもずっとイッセーさんと一緒に楽しく暮らせますように・・・


ーーーーーーーーーーーー

一瞬何が起こったのか、全員は理解出来ずに心此処に在らずの状態だった。そして第三者の声によってそれが打ち消される。

「ロンギヌスで創られしもの、ロンギヌスの攻撃で散る・・・か。霧使いめ、手を抜いていたな?計画の再構築が必要だ」

声の方を向くと軽鎧(ライト・アーマー)を身に付け、マントを羽織っていたが冷たいオーラを纏っていた。リアスがその男性に尋ねる。

「誰?」

「お初にお目にかかる。忌々しき偽りの魔王の娘よ。私の名はシャルバ・ベルゼブブ。旧偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く正統なる後継者だ。先程の偽りの血族とは違う。ディオドラ・アスタロト。この私が力を貸したと言うのにこの様とは。先日のアガレスとの試合でも無断でオーフィスの蛇を使い、計画を敵に予見させた。貴公はあまりに愚行が過ぎる」

「シャルバ!助けておくれ!キミと一緒なら赤龍帝を殺せるよ!旧魔王と現魔王が力を合わせれば・・・」

ディオドラが言い切る前にシャルバが手から光線のようなものを飛ばし、ディオドラを貫いた。そして『光』は悪魔にとって猛毒。貫かれたディオドラは無様に霧散してしまった。

「哀れな。あの娘のセイクリッド・ギアの力まで教えてやったのに、モノに出来ずじまい。たかが知れていると言うもの」

シャルバは嘲笑うかのように、それだけを吐き捨てた。

「さて・・・サーゼクスの妹君。貴公には死んでいただく。理由は当然。現魔王の血筋をすべて滅ぼすた・・・」

「黙れ・・・」

シャルバの声を遮り、闇慈が今まで出した事の無いドス黒いオーラを纏っていた。

「貴公は確か・・・カテレアを倒した黒衣の死神か?これは好都合。我々の妨げになる者は排除しなくてはならないからな」

「シャルバ・・・と言ったな?現魔王に恨みがあるなら何故直接決闘を申し込まない?」

「簡単なことだ。唯殺すのでは面白みが無い。まずは血筋と親族から殺し、絶望を与える事にしたのだよ」

シャルバの言葉にリアスがとうとう堪忍袋の緒が切れたのか怒声を張り上げる。

「外道!!アーシアを殺した罪!!絶対に許さないわ!!」

他の部員達が戦闘態勢に入っているが一誠は・・・

「アーシア?アーシア?」

フラフラと歩きながらアーシアを呼んでいた。

「アーシア?何処に行ったんだよ?ほら、帰るぞ?家に帰るんだ。父さんも母さんも待ってる。か、隠れていたら帰れないじゃないか。ハハハ、アーシアはお茶目さんだなぁ」

その光景は見ていられるような光景ではなかった。

「アーシア?帰ろう。もう誰もアーシアをいじめる奴はいないんだ。いたって、俺がぶん殴るさ!ほら、帰ろう。体育祭で一緒に二人三脚するんだから・・・」

小猫とギャスパーは嗚咽を漏らし、朱乃も顔を背けて涙を頬に伝わせていた。リアスは一誠を優しく抱き、何度も頬を撫でる。

「許さない・・・許さない!!斬る!!斬り殺してやる!!」

ゼノヴィアは叫び声を上げながらデュランダルとアスカロンでシャルバに斬りかかるが・・・

「無駄だ」

シャルバは魔法障壁を張り、斬撃を防ぐと魔力弾でゼノヴィアを吹き飛ばす。

「・・・私の・・・友達なんだ!!優しい友達なんだ・・・。そして誰よりも優しかったんだ!!どうして!!」

「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。全く持ってグレモリーの姫君は趣味が悪い。そこの赤い汚物。あの娘は次元の彼方に消えていった。すでにその身も消失している。・・・死んだと言う事だ」

「もう喋るな・・・貴様の言葉は聞き飽きた」

闇慈はゆっくりとデスサイズ・ヘルを構える。

「ほう・・・貴公は冷静のようだな?だがここまでだ」

「冷静?違うな・・・俺の心は、貴様を八つ裂きにしたいと言う殺意で一杯なんだぁぁぁ!!!シーャルバーーー!!!」

闇慈の叫びが神殿に響くと闇慈の魔力が渦巻き、周りの装飾品を吹き飛ばし始めた。それに伴い・・・

『リアス・グレモリー、今すぐこの場を離れろ。死にたくなければすぐに退去した方が良い』

赤龍帝・・・ドライグの声も響いた。そして一誠も異様なオーラを纏っていた。

『そこの悪魔よ。シャルバと言ったか?お前は・・・選択を間違えた』

ドライグが言い切った瞬間、神殿が大きく揺れ、一誠が血の様に赤いオーラを発し行った。それは最大級に危険なオーラだった。そして一誠の口から老若男女、複数入り交じった呪詛のごとき呪文が発せられる。

『我、目覚めるは・・・』
〈始まったよ〉〈始まったね〉

『覇の理を奪いし二天龍なり・・・』
〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉

『無限を嗤(わら)い、夢幻を憂(うれ)う・・・』
〈世界が求めるのは〉〈世界が否定するのは〉

『我、赤き龍の覇王と成りて――――』
〈いつだって、力でした〉〈いつだって、愛だった〉

(何度でもお前達は滅びを選択するのだな!!)

一誠の鎧が鋭角なフォルムを増していき、巨大な翼まで生え、両手両足から爪が伸び、兜からは角がいくつも形作られていく。その姿はドラゴンそのものだった。

「「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう」」」」」」」

『Juggernaut Drive!!!』

一誠の変身に伴い、今度は闇慈が呪文を唱え始める。

『我、新に刻むは全てを破壊せし心・・・』

『万物の生を糧に生きる、魂を喰らう者・・・』

『希望を絶望に、幸福を不幸に・・・』

『我、死の恐怖を身に纏い・・・』

「【彼の者に・・・混沌なる終焉を与えん!!】」

闇慈とデスの声が一緒に発すると、闇慈の頭に大きめのフードがかかると、鼻より上の部分が影で完全に見えなくなったが、真紅の魔眼が暗闇に光っていた。そして明鏡止水とは全く違う殺意に満ちたオーラを纏い、そして翼も4枚から6枚へと変わっていた。

「【Skeith of death】『スケイス・オブ・デス』!!!」

一誠と闇慈の周辺の装飾品、床、壁、柱、天井が赤と黒のオーラによって破壊されて行った。

「ぐぎゅああああああ!!!アーシアァァァァァァァァァ!!!」

「破壊・・・する。俺は・・・全てを破壊せし者。貴様の死を・・・絶望を見せてみろーーー!!!」

獣の叫びに似た声を発する一誠は四つん這いになって飛び出す。闇慈もデスサイズ・ヘルを掲げ、光速に近いスピードで斬りかかった。

「ぬうっ!!」

シャルバは一誠と闇慈に向かって魔力弾を撃ち込むが、一誠はそれを難なく避け、闇慈はAMCマントで弾く。そして一誠は右肩に喰らい付き、闇慈は魔力を篭めたデスサイズ・ヘルで左腕を肩から斬り落とした。

「ぐわっ!!!」

シャルバが斬り落とされた激痛に悶えている間に一誠は宝玉の一部から鋭い刃を作り出すと右腕を斬り落した。

「ば、化け物共め!これが【覇龍】『ジャガーノート・ドライブ』だと言うのか!?」

シャルバの言葉を闇慈は否定する。

「違うな・・・この力の名は・・・【死輝(しき)】。死の輝きを照らし出し・・・相手に死相を刻み込む力だ!!!」

「冗談ではない!!私の力はオーフィスによって前魔王にまで引き上げられていると言うだぞ!?データ上のブーステッド・ギアやデスサイズ・ヘルのスペックを逸脱しているではないか!!!」

シャルバが一人で解析をしていたが一誠と闇慈はそんなことも目も暮れずに一誠は魔導砲のようなものを胸部に展開し、闇慈は何かを放つように両手を前にかざし、オーラと魔力を溜め始めた。

「私はこんな所で死ぬわけには・・・っ!?」

シャルバが逃げようとしたが足が金縛りのように動かなくなっており、さらに上半身には地面から影が伸び、動きを完全に封じ込められていた。

「まさか・・・私の足を・・・時を止めたのか!?」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』

「彼の者に絶望を・・・苦痛を・・・恐怖を・・・そして、死を!!!」

【longinus・smasher『ロンギヌス・スマッシャー』!!!!】

【chaotic・despair『カオティック・デスピア』!!!!】

二人のオーラが一斉に発射されると祐斗はその膨大な威力に危機感を抱き・・・

「部長!!一時撤退しましょう!!この神殿から出るべきです!!」

「でも・・・イッセーが・・・」

「すみません!!」

祐斗がリアスが抱きかかえ、その場から出ようとするが小猫も闇慈が心配なのかその場を動こうとしなかった。

「小猫さんも急いで!!」

「・・・闇慈先輩」

小猫は祐斗に促されたのかその場を名残惜しそうに脱出した。

「バカな・・・神なる魔王の血筋である私が!?ヴァーリにも一泡吹かせたことが無いのだぞ!?べルゼブブはルシファーよりも偉大なのだ!!おのれ!!ドラゴンと死神如きがぁぁぁぁぁぁ!!!!」

シャルバは二人から発射された極太の赤と黒の二色の閃光に包まれ、神殿とともに光の中に消え去った。
 

 

第七十四話 仲介


祐斗達は一誠と闇慈の力の暴走の巻き添え喰らう事無く神殿を脱出したが神殿は二つの閃光が消えた瞬間に崩壊してしまった。

「イッセー!!」

「闇慈先輩!!」

リアスが一誠の、小猫が闇慈を心配する声を張り上げると二人は瓦礫の中から這い上がるように出てきた。一誠は天に向かって悲哀に包まれた咆哮をあげ、闇慈は真紅の魔眼をフードの中で光らせながらあちこちを見回していた。

「足りない・・・こんな絶望なんか・・・全然物足りないぞ!!!もっとだ・・・もっと絶望を見せてみろーー!!」

闇慈は何かに支配されるかのようにデスサイズ・ヘルで次々と瓦礫を破壊していく。それは唯の破壊者そのものだった。そんな時・・・

「困っているようだな?」

第三者の声が聞こえ、再び空間に裂け目が生じる。そこから出てきたのは白龍皇のヴァーリと孫悟空の美猴、そして背広を着た聖王剣コールブランドの所有者だった。部員達は戦闘態勢に入ろうとしたがヴァーリは手を前に出して戦闘の意思がないことを告げた。

「やるつもりはない。見に来ただけだ。赤龍帝の【覇龍】『ジャガーノート・ドライブ』を。と言っても、あの姿を見るに中途半端にジャガーノート・ドライブと化したようだ。ジャガーノート・ドライブの現象がこの強固な作りのバトルフィールドで起こったのは幸いだったな。人間界でこれになっていたら、都市部とその周辺が丸ごと消える騒ぎになっていたかもしれない」

「・・・この状態、元に戻るの?」

リアスがヴァーリに尋ねるがヴァーリは顎を抱えながら、考えを口にする。

「完全なジャガーノート・ドライブではないから戻る場合もあれば、このまま元に戻れず命を削り続けて死に至る場合もある。どちらにしても、この状態が長く続くのは兵藤一誠の生命を危険にさらす事になる。そして黒神闇慈の・・・死神の力の暴走・・・あれは俺も初めて見る。あれは俺も解決方法は分からない」

そんな話をしている中、美猴が見知った少女を抱えて歩み寄った。美猴から渡された少女はシャルバから消された筈のアーシアだった。

「アーシア!」

「アーシアちゃん!」

リアスと朱乃を始め、皆がアーシアのもとに集まり容態を確かめるが気絶しているようだが、呼吸も安定し、命に別状はないみたいだった。

「けど、どうして?」

「私たちがちょうどこの辺りの次元の狭間を探索してましてね。そうしたら、この少女が次元の狭間に飛んできたのですよ。ヴァーリが見覚えがあると言いまして、ここまで連れてきたのです。運が良かったですね。私達が偶然その場に居合わせなかったら、この少女は次元の狭間の『無』にあてられて消失していくところでした」

しかしアーシアが無事に戻ってきた事に変わりはなかった。ゼノヴィアはアーシアを大事そうに抱きかかえ、嬉し涙を流した。

「後はイッセーとアンジを元に戻す方法ね・・・アーシアの無事を伝えればあの状態を解除出来るかしら」

「危険だ、死ぬぞ。ま、俺は止めはしないが。そうだな・・・何か彼の深層心理を大きく揺さぶる現象が起これば何とかなりそうだが・・・」

ヴァーリの考えに横で頭をかきながら美猴が提案した。

「おっぱいでも見せれば良いんじゃね?」

「あの状態ではな。ドラゴンを鎮めるのはいつだって歌声だったが。赤龍帝と白龍皇の歌なんてものはない」

「あるわよぉぉぉぉ!」

声を上げ、飛んできたのは転生天使の紫藤イリナだった。イリナは何やら立体映像機器をリアスを渡した。イリナの話によると、サーゼクスとアザゼルが用意した秘密兵器らしい。

「よく分からないけれど、お兄さまとアザゼルが用意したのなら、効果が見込めるかもしれないわね」リアスがボタンを押す前に小猫が言い聞かせる。

「・・・みなさん。闇慈先輩は私に任せてくれませんか?」

「それこそ危険だ、猫又の転生悪魔よ。黒神闇慈の力は今の俺でさえ、抑えることが出来るか分からない程だ。下手したら死ぬ事になるぞ?」

ヴァーリの考えに祐斗が付け加える。

「彼の言う通りだよ、小猫さん。例え君が闇慈君のことを思っているかもしれないけど、一人じゃ無謀すぎるよ」

「・・・だからこそです。私は闇慈先輩が大好きだから止めてあげたい。お願いします!!」

小猫の曇りの無い目を見ているとそれは了承せざるを得なかったようだ。他のメンバーは一誠を元に戻す事に取り掛かったようだ。小猫は闇慈の元に近寄り、話を始める。

「・・・闇慈先輩」

「何だ?お前が・・・俺の渇きを・・・絶望を見せてくれるのか?」

闇慈は覇気と威圧感を放ちながら小猫の寄るが小猫は心を保ち、闇慈と向き合う。

「・・・闇慈先輩はこんな人じゃない。だから・・・戻ってきて下さい」

「和解でも・・・しようと言うの・・・か?・・・ふっ」

闇慈はけなすように鼻で笑うとデスサイズ・ヘルを振りかざし、小猫に向かって振り下ろす。小猫はバックステップでそれを避ける。

「俺は・・・話なんか望んじゃ・・・いない。和解よりも・・・血を俺は・・・望む・・・ふふふっ・・・はっはははは!!!」

闇慈の言葉に小猫は格闘の構えを取り、猫又の状態になった。

「止める!!私の闇慈先輩はそんなことは言わない!!返して貰います!!」

「やって・・・みろ!!」

闇慈はデスサイズ・ヘルで小猫に斬りかかる。小猫はそれを紙一重でかわして行き、『気』を纏った拳で闇慈にダメージを与えようとするが・・・それも避けられていく。

「流石、猫又。だが・・・技はもう・・・分かった。丁度良い・・・俺も拳でジワリジワリ・・・苦しめてやろう」

(無闇に攻撃をしたら先輩の体を傷付けてしまう!!どうしたら・・・そう言えば)

小猫はあることを思い出し、これに掛ける事にした。

「さあ・・・苦しめ!!」

闇慈が体を屈め、小猫の横腹に徒手を差し込もうとしたが、小猫はそれを避けずに闇慈の手を掴み、威力を軽減した後にワザと横腹に突き刺さした。

「くっ・・・」

小猫は痛みに顔を歪ませるが、闇慈に接近し動きを封じる。これが小猫の目的だった。

「貴様・・・何を?」

「戻ってきて下さい・・・闇慈先輩」

小猫は闇慈の顔に近づき、そしてキスをする。『深層心理を大きく揺さぶる現象』を起こす事で元に戻ると言う話を小猫は思い出し、この作戦を行ったみたいだ。
そして闇慈の心の中で何かが反応し、目を見開く。

(この温かさ・・・この感触・・・以前の同じものを・・・僕は・・・僕は!!)

闇慈の力が弱まって行き、セイクリッド・ギアが解除された制服姿に戻った。

「僕は・・・何を・・・!?」

「闇慈先輩・・・良かった・・・」

闇慈の安全を確認すると小猫はそのまま気を失い、地面に倒れ付した。

「こ、小猫・・・ちゃん?」

そして闇慈は自分の右手に着いている血と小猫の血を見て、一つの事が結びついた。

「まさか・・・僕が・・・小猫ちゃんを・・・う、う・・・」

闇慈は段々、小猫を・・・恋人を傷つけた罪悪感に襲われて行き・・・

「うわああああああああああああああ!!!!!」

バトルフィールドに闇慈の叫び声が鳴り響いた。

(後書き)

一誠の復活は原作通りなので省略しました!!ご了承下さい!!

そして運動会の前にオリジナルストーリーを進めたいと思います!!

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 
 

 
後書き

一誠の復活は原作通りなので省略しました!!ご了承下さい!!

そして運動会の前にオリジナルストーリーを進めたいと思います!!

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 

 

第七十五話 幻想

 
前書き

今回からはオリジナルストーリーですが僕の自己満足です!!

不快に思うかもしれませんがよろしくお願いします!!

そして内容はとあるゲーム内容を絡ませています!!

では!どうぞ!! 

 

ディオドラとの戦いが終わって数日後。一誠達は二週間後に行われる運動会に向かって日々練習に励んでいた。一誠もリアスと『おっぱいドラゴン』の歌のお陰で元の姿に戻る事が出来たが、一つだけ変わった事があった。

「おーい!闇慈!一緒にウォーミングアップしようぜ?」

授業が終わり、放課後の部活による運動会の練習に一誠は闇慈を誘うが・・・

「・・・あっ。ゴメン、イッセー。僕は一人で練習するよ。イッセーはアーシアと二人三脚の練習をした方がいいと思うよ?」

「あ!おい!闇慈!!」

そう言うと闇慈は一誠の誘いを断り、一人で練習していた。
そう、変わったことは闇慈の態度が激変してしまったことだった・・・。小猫は命に別状はなく闇慈が負わせた傷もアーシアのセイクリッド・ギアの力で完全に塞がって、傷跡も消えていた。
しかし闇慈が負った心の傷は消えることはなかった。

(もう僕は・・・人と関わる資格なんか無い・・・現に力に囚われて、最愛の人を傷つけている)

当然、小猫とも全く話していない。闇慈は話す所か顔もろくに見ていないと言う。小猫自身は気にしてはいなかったが、闇慈はそうとまでは行かなかったみたいだ。

(僕は・・・どうすれば良いんだ?小猫ちゃんにあんなに偉そうな事を言っておきながら自分が制御出来ていないじゃないか!!)

闇慈は一人で木に拳を打ち込み、悔しかったのか涙を流す。ここでデスが話しかける。

(あれは仕方ないのことだぞ?アンジよ。あれはデスサイズ・ヘルのジャガーノート・ドライブのようなもの、いきなり発動すれば百戦錬磨の者でさえも囚われてしまう程だ。自分を陥れるな!!)

(仮にそうだとしても僕は・・・小猫ちゃんを傷つけた。それは変わりません!!・・・っ!!すみません、デスさん。しばらく一人にしておいてくれませんか?)

(・・・分かった。しっかりと悩むことだ。それが若さと言うのものでもあるからな)

そう言うとデスは引っ込んでしまった。そして闇慈はその後の練習にも身が入らずに一人で家に帰宅した。闇慈は私服に着替え、ベッドに腰掛けた。そして頭を両手で抱えながらうな垂れる。

「このままで良いのか?でも・・・また暴走してしまったら・・・」

闇慈が一人で考えていると冥界からの通信が入る。それは闇慈に執事のイロハを教えてくれたリグナスだった。

「久しぶりだな?アンジ」

「お久しぶりです、リグナスさん。今日は如何されたのですか?」

「サーゼクス様からの命令だ。お前には一週間『紅魔館』と言う場所で執事修行をして貰う!!」

闇慈はリグナスの言葉に首を傾げる。

「こんな時期に執事修行?何が目的なのですか?」

「それは私にも分からん。今からお前の執事服を転送する。そして着替えなどの荷物を整えてたから私に連絡をくれ。紅魔館のある場所に転送する。そして学校や両親にはサーゼクス様が言い聞かせてくれるみたいだ」

「・・・分かりました」

それは闇慈にとっても好都合だった。自分の心を落ち着かせるための口実となり、しばらく小猫からも離れることが出来る。そう考えたのだろう。
通信を一旦切ると通信機の隣に闇慈の黒執事服が入っている箱が転送されて来た。そして直ぐに着替えなどの必要品を揃えると黒執事服に着替え、右目に片眼鏡をつける。そしてリグナスに通信を入れ、転送して貰った。

~~~~~~~~~~~~

「転送して貰ったのは良いけど・・・ここ何処?」

闇慈が転送して貰ったのはとある森の中。周りには木々しか生えておらず、館のようなものは見えなかった。そして第一に感じたのが・・・

(恐らくここは人間界じゃない・・・そして冥界でもない。空気の感覚が二つと大きく異なっている。となるとここは僕の知らない世界?)

闇慈はそんなことを気に掛けていたが兎に角、『紅魔館』と言う場所を目指し、歩き始めた。
しかし一向に着く気配が無かった。ましてや森から出られる気配すらなかった。と言うより・・・

(何故だろう?周りの風景が通って来た道と同じように見える。それに・・・風は感じるのに音だけが消えているような・・・僕は何かに惑わされているのかな?・・・確かめてみよう)

闇慈は一本の木にゆっくりと手を伸ばすと突き抜けてしまった。

(これはまさか・・・光の屈折による幻覚?こんなことが出来る人がいるのかな?と言うよりも・・・『人』なのかな?)

闇慈はその場で目を閉じ、気配を探った。そして何かに気付くとゆっくりと目を開けた。

「ここから少し離れた所に3つの気配を感じる。この気配は・・・人じゃない。三人寄れば文殊の知恵に三矢の教えとはよく言ったものだね。姿を消すか・・・禁手なら人を傷つけずに済むかな・・・禁手発動!!」

~~~~~~~~~~~~

「あら?」

「どうしたの?スター」

黄色の髪をした人間の子供並の大きさの妖精が黒髪でリボンに付けている妖精に尋ねる。

「さっきまで居た人の気配が突然消えてしまったわ」

「ふっふ~ん。多分恐れ入って逃げ出したに違いないわ」

両手を上に掲げ、光を操っている茶髪の妖精が誇らしげにしている。ここで茶髪の妖精が疑問を浮べる。

「でもサニー。これだけ距離が離れているなら別に音を消さなくても・・・」

「甘いわよ、ルナ。念には念を・・・そして石橋は叩いて砕くのよ!!」

サニーと呼ばれている妖精に第三者の声が響く。

「砕いたら渡れないよ?それを言うなら・・・『石橋を叩いて渡る』だよ」

「そうそう、それそれ・・・って私は誰と話してるの?ルナ?スター?」

「「私じゃないよ?」」

その瞬間、サニーの体が突然持ち上がり、宙に浮いた。

「うわわわわわわ!?」

「「サニー!?どうしたの!?」」

そして闇慈がゆっくりと禁手を解除して、姿を現す。

「君達かな?さっきから僕に悪戯をしていた、いたずらっ子達は?」

「うわわわ!?お、降ろしてぇぇぇ」

闇慈はゆっくりとサニーを降ろすと3人と向き合った。

「イタズラをするにしてもまずは相手を確かめないと押し置きされてしまうよ?」

「「「う~、ゴメンなさい」」」

素直に謝った妖精三人組を闇慈は笑顔でそれを許した。そして自己紹介を始める。

「素直でよろしい。じゃあまずは自己紹介からだね、僕は黒神闇慈。よろしくね?」

「私は『サニーミルク』よ」

「私は『ルナチャイルド』」

「そして私は『スターサファイア』です」

茶髪が『サニーミルク』。黄色髪が『ルナチャイルド』。黒髪が『スターサファイア』のようだ。そしてそれぞれ『光』・『音』・『動き』を自由に操ることが出来る【光の三妖精】と呼ばれているみたいだった。ここでスターが闇慈に問いかける。

「ところで黒神さんは・・・」

「名前で呼んで良いよ?僕も君達の事を上の名前で呼ばせてもらうから」

「ならアンジさんはどうしてここにいるんですか?」

「実は僕は別の世界から来たんだよ、スター。紅魔館の執事として一週間修行するためにね」

別世界と聞いてサニーが突っかかって来た。

「じゃあ幻想郷の外から来たの!?」

「まあそんな感じかな、サニー」

最後にルナが問いかける。

「アンジさんって姿が消せるのですか?」

「そうだね。僕の力で完全に姿を消す事が出来るよ、ルナ。スターの能力にも引っかかることはないよ」

あらかた自己紹介が終わると妖精三人組に闇慈が尋ねる。今の自分の状況を思いだしたのだろう。

「3人って紅魔館の場所って分かるかな?館に転送される筈だったのにこんな森のど真ん中に置いてけぼりされてて困っていたんだよ」

「じゃあ・・・アンジって迷子だったの?」

イタズラっ子のサニーはケラケラと笑いながら闇慈をバカにしていた。闇慈は頬をかきながら苦笑する。

「恥かしい話、そうだね。知っているなら案内してくれないかな?これでさっきのイタズラは無かったことにしてあげる」

そう言われると三人組みは話し合い、闇慈を紅魔館へ案内することになった。

(後書き)

絡ませているゲームは【東方】です!!

闇慈がどうやって心の傷を回復していくかは、今後にご期待下さい!!

感想・指摘。よろしくお願いします!! 
 

 
後書き

絡ませているのは【東方】です!!

闇慈がどうやって心の傷を回復していくかは、今後にご期待下さい!!

感想・指摘。よろしくお願いします!! 

 

第七十六話 面会


午後八時。闇慈はイタズラ好き三妖精に連れられ、大きな紅い館に辿り着いた。リアスの豪邸よりは劣るが中々の大きさのため闇慈は顎を抱えながら、それを賞賛していた。

「ここが紅魔館なのかな?」

「そうだよ。じゃあ私達はここでさよならするよ」

「そっか。ありがとう、サニー、ルナ、スター」

サニーがそう言うと闇慈は連れてきてくれた三人にお礼を言い、森に帰って行く姿を見送ると門に近寄った。そこには門にもたれ掛かりながら寝ている緑色の帽子とチャイナ服を着ている門番が目に入った。

「この人が紅魔館の門番かな?あの~すみません」

「ぐぅ~~、ぐぅ~~」

闇慈の問いかけにその門番は答える事はなくだたイビキをかきながら寝ていた。闇慈はアハハと苦笑し頬かきながら、仕方なく門を静かに開けた。

「起きないな・・・仕方ない。玄関で他の人と会うか・・・」

闇慈は荷物を持ちながら玄関のドアを叩き・・・

「すみませ~ん。誰かいらっしゃいませんか?」

と面会を求めるが反応がない。闇慈が来る事は向こうも知っている筈なのに出迎えてくれないのは少しおかしいと闇慈は考えていた。

「・・・失礼しま~す」

闇慈が玄関を開けて入って最初に見たのは中の装飾品達。西洋を思わせるその装飾品達はどれも高価なものだと言っても過言ではなさそうだった。

「それにしても・・・誰も出迎えてくれないなんておかしい・・・っ!?」

ヒュン!!

闇慈が言い切る前に何かが飛んで来る音が聞こえて闇慈はそれを素早く右の人差し指と中指で受け止める。それは一本のナイフだった。

「これは・・・ナイフ!?しかも狙っていた場所は急所の脳天!?どれだけ正確な投合なんだ」

「今の不意打ちの受け止めるなんて、流石ですね」

「っ!?」

声のした方を向くとメイド服を着た銀髪の女性が立っていた。そう言うとその女性は闇慈に近寄り挨拶をかわす。

(何だかこの人・・・グレイフィアさんに似ているな)

「申し訳ありません、お嬢様のご命令で貴方の力を試させてもらいました」

「・・・次は何で試すんですか?」

闇慈はナイフを彼女に返し、問い返すが彼女は首を横に振った。

「もう充分です。申し遅れました。私はこの紅魔館のメイド長、【十六夜(いざよい)咲夜(さくや)】と言います」

「ご丁寧にありがとうございます、僕の事はご存知かと思いますが、これから一週間ここでお世話になる黒神闇慈です。よろしくお願いします!!咲夜さん。それと普通に接して下さい。これからお世話になるのですから」

闇慈が咲夜に執事挨拶をかわし、敬語ではなくタメで話すように言い聞かせると・・・

「そう。ならこれからよろしく頼むわね?アンジ」

「はい!!ではまずは何をすれば良いでしょうか?」

「貴方の仕事は明日から。今日はもう休んで良いわ」

「そうですか。あっ・・・そう言えば門の所に立ち寝している女性も居たのですけど・・・彼女も紅魔館の従者ですか?」

門番が寝ていると言う事を聞いた咲夜はハアと溜め息をついて説明を始める。

「メイリンの事ね。彼女が紅魔館の門番・・・【(ホン) 美鈴(メイリン)】よ。全く・・・門番としての自覚があるのかしら?」

「あはは・・・」

そして闇慈は咲夜に連れられて執事用の小さな一人部屋に案内された。闇慈は執事服からジャージに着替えるとベッドに横になった。

(サーゼクスさんが僕に用意したこの修行・・・だたの執事修行じゃない気がする。ここは幻想郷って言ってたっけ?ここで何かを学んで来いって言ってるのかな?・・・今はまだ分かんないな。とりあえず明日のためにも早く寝ておこう)

闇慈は明日に備え、早めに休む事にした。そしてその夜中闇慈の部屋に忍び込んだ二つの紅い眼が光っていたそうだ。
 

 

第七十七話 吸血鬼


午前四時。闇慈は準備のために早く起きたが・・・

「うっ・・・何だが首筋に違和感が・・・」

闇慈が首元に手を当ててみると、血が少しついていた。

「これは僕の血!?でも昨日は・・・まさかこの館の主の正体って・・・まあ兎に角、着替えよう」

闇慈は首筋の血をふき取ると黒執事服に着替え、手袋と右目に片眼鏡をつけた。そして従者の準備室で咲夜を待っていた。そして三十分後、咲夜がメイド服を着て準備室にやって来た。

「おはようございます、咲夜さん」

「あら・・・早いわね」

「見習い執事が遅く起きるのはやっちゃいけないことですよ?咲夜さん」

「はあ・・・その言葉・・・メイリンに聞かせてやって欲しいわ」

「あはは・・・。じゃあ僕は何をやれば良いですか?」

闇慈が咲夜に尋ねると咲夜は顎を抱えながら、尋ね返した。

「貴方・・・料理は出来るかしら?」

「ええ。人並みには出来ますよ?」

「なら私の朝食作りを手伝って貰おうかしら?」

「はい!!」

その後闇慈は咲夜の朝食作りを手伝い、そして従者の軽食を闇慈に作って貰いそれを咲夜が試食したがかなりの出来栄えだったらしく闇慈の手際の良さと料理スキルの高さにはかなりの評価をしていたようだ。

~~~~~~~~~~~~

そして午前八時。朝食が終了し、闇慈は咲夜に連れられて主の顔合わせに向かっていた。朝食の時の闇慈は厨房で食器や調理道具などの洗物をしていたため、他の紅魔館の住人と顔合わせになることは無かった。
そして玉座のような場所に辿り着くとそこには一人の少女が座っていた。一見、唯の少女のように見えるが力を読み取る事の出来る闇慈は少し顔を厳しくした。

(この力の大きさ・・・この子がこの紅魔館の主で間違いなさそうだな。そして・・・正体は)

「咲夜。ご苦労様。貴女は少し下がっていなさい」

「はい。お嬢様」

少女が咲夜に言い聞かせると咲夜はその部屋から退出した。そして少女は闇慈と向き合い、話を始める。

「今日の朝食の味付けは貴方がやったって聞いたわ。中々私好みの味だったわ」

「ありがとうございます」

「紹介がまだだったわね。私は紅魔館の主【レミリア・スカーレット】。貴方の事はサーゼクスから聞いているわ。これから一週間、紅魔館のために働いて貰うわよ?」

「はい、よろしくお願いします。恐れながら一つ伺いますが・・・」

闇慈はレミリアに少し眼を細めながら、尋ねる。

「昨日の夜。僕の血を吸ったのは貴女で間違いないのですね?・・・吸血鬼様」

闇慈が『吸血鬼』と言う名前を出すとレミリアは威圧感を放ち始める。闇慈はどうと言ったことは無かったが、これほどまでの威圧を出せるレミリアに少し驚きを念を持った。

「出来れば普通に呼んで欲しいものね?でも貴方の意見は間違ってはいないわ」

レミリアはゆっくりと立ち上がると闇慈にゆっくりと近寄る。

「そう。私は昨日貴方の血を吸ったわ・・・貴方の『運命』を見るためにね」

「運命を見る・・・ですって?それが・・・お嬢様の能力なのですか?」

「ええ。それと貴方の今後の『運命』もね・・・それは・・・」

レミリアが言おうとしたが闇慈はそれを首を横に振り止める。

「その先は言わないで下さい、お嬢様」

「あら。どうしてかしら?」

闇慈はフッと軽く笑うとこう答えた。

「『運命』は他人から決めてもらう物じゃない。自分で見て、自分で切り開くもの・・・僕はそう考えていますから」

闇慈の返答にレミリアは少し呆然として少し笑みを零すと・・・

「貴方って面白いわね。そんな考えを持っているなんて思わなかったわ」

「それが僕と言う人間ですから。では仕事に戻ります」

闇慈はレミリアに執事挨拶を交わし、その玉座部屋を後にした。レミリアはそれを見送るとゆっくりと玉座に戻った。

「サーゼクス。貴方の執事は面白いわね。でも運命はそんなに単純じゃない・・・このままだとあの子の運命は・・・『破滅』よ」

レミリアは顔をしかめながらそう呟いていた。
 
 

 
後書き

レミリアの喋り方がイマイチ分かりませんでした!!申し訳ありません!!

感想・指摘。よろしくお願いします!! 

 

第七十八話 図書館


レミリアに挨拶を終えた後、闇慈は咲夜に連れられて紅魔館の地下にある大図書館に連れてこられた。その広さはそこらにある図書館とは月とスッポンだった。

「うわあ・・・かなり広いですね」

「まずはここで『小悪魔』と一緒に本の整理をして貰うわ。それが終わったら私の所に戻ってきて報告する事、良いわね?」

「分かりました。後それと・・・小悪魔?それが名前なのですか?」

「行けば分かるわ」

そう言うと咲夜は自分の仕事に戻って行ってしまった。闇慈はその小悪魔と会うために図書館の中に入って行った。そして歩いていくと頭から黒い耳のようなものを生やした赤髪の女性が本を手に持ちながら、整理を行っていた。
闇慈は彼女が小悪魔だと思い、話しかけた。

「あの・・・貴女が小悪魔さんですか?」

「はい。そうです。貴方が黒神闇慈さんですね。お待ちしてました」

「僕はどうすれば良いですか?」

「ではまずはここにある本を一冊一冊、確認して行き、痛んでいる場所やホコリを取って行ってください」

「分かりました」

闇慈はページを捲り、痛んでいる所や汚れている所などを探し、本のホコリを取って行った。
しかし二時間位経過したが・・・数が数なのか中々終わる気配がなかった。

「かなり量があるんですね?小悪魔さん」

「ええ。何時もは一人でやっていたのだけど、今回はアンジさんが手伝ってくれているので早く終わりそうですよ」

「これだけの量を一人でやっていたんですか!?他に手伝ってくれる人はいないんですか!?」

闇慈がそう言うと小悪魔は苦笑すると訳を言い聞かせる。

「ほら。これって地味な作業でしょう?妖精メイド達はこう言った地味な作業が苦手みたいなんですよ」

「あはは・・・僕は妖精の事は知りませんけど、そんな性格があったんですね。知っている事とすれば・・・イタズラ好きって事ですね。ここに来るまでに【光の三妖精】達からイタズラされて無駄に疲れましたからね」

「そうだったんですね。さあ・・・もう一頑張りです。終わらせてしまいましょう」

「はい!!」

~~~~~~~~~~~~

小悪魔の激励に応えたのか、本の整理を一気に終わらせた。そして闇慈が咲夜の元に行こうとすると紫色の髪をした少女が本を読んでいた。少女も闇慈に気付いたのか視線を送る。

「貴方は確か・・・今日から入った新しい執事だったわね?」

「と言うよりも執事修行のためですが。申し遅れました。僕は黒神闇慈です」

「私は『パチュリー・ノーレッジ』。この図書館の主でもあるわ」

闇慈はパチュリーの周りに散らばっている本を見て疑問を抱き、問いかける。

「パチュリー様は何時もここで本を読んでいらっしゃるのですか?」

「そうよ。殆ど外には出ずにここで本を読んでいるわ」

その事を聞いた闇慈は顎を抱え少し考えた後に・・・

「パチュリー様でしたね?少々お待ち下さい」

「え、ええ・・・」

闇慈は何を決心したのか咲夜の元に急いで戻り、本の整理が終了した事を報告した後、訳を話して咲夜の許可を得て厨房で何かを作り始めた。

ーーー三十分後ーーー

「お待たせしました。どうぞ」

闇慈が持ってきたのは紅茶と数十個の一口サイズのプチ・ショコラだった。

「紅茶は分かるのだけど・・・このお菓子も貴方が?」

「はい。咲夜さんにも試食してもらったので味は大丈夫です。召し上がって下さい」

「そう・・・なら頂くわ」

闇慈の笑顔に唆されたのかパチュリーは一つのプチ・ショコラを口にした。そして感想は・・・

「美味しい・・・甘すぎないで私に好みの味だわ」

「紅茶を好んでいると咲夜さんに聞いたので甘さを控え、紅茶と合うようにしてみました。お気に召したようなので良かったです。では僕は仕事に戻りますね」

「あ・・・待って!!また・・・作って貰えるかしら?」

パチュリーが闇慈に促すと闇慈は笑顔で答えた。

「勿論です」

そう言うと闇慈は図書館を後にし、次の仕事に取り掛かった。
 

 

第七十九話 天狗


本の整理が終わった闇慈は今度は咲夜から人里へ食材の買出しを頼まれた。闇慈は黒執事服のまま人里に降りて、頼まれた買出しを開始したが疑問に思ったことがあった。
人里たちは昔を思わせるような服装で洋服を着た人が全く居なかった。そして市場も江戸時代を思わせるような市場だった。そして周りの人間は闇慈の服装に目が行っていた。

(幻想郷は文明がそんなに栄えていないのかな?いや・・・でも紅魔館の住人達は洋服を着ていたし・・・どうなっているんだ?)

闇慈が疑問に思いながらも買出しを進めて行き、一通り終わると紅魔館に戻ろうとしたが・・・

「そこのお兄さーーん!!」

「ん?」

闇慈を呼び止める声が聞こえ、立ち止まり、声のした方を向くと屋根の上に洋服を着た右手にデジタルカメラを持った黒髪の女子が立っていた。そしてその格好は・・・

(あの娘の格好・・・何か『天狗』を思わせるような服装だな。て言うか・・・スカートの中の見えてるよ)

闇慈がやれやれと言わんばかりの表情を浮べているとその女子が闇慈の前に降り立った。

「貴方はもしかして紅魔館の執事、黒神闇慈さんですか?」

「え、ええ。と言うより修行の一環として一週間お世話になるだけですが・・・それよりも貴女は?」

「あやややや!!これは失礼しました。私は清く正しい、幻想郷の伝統ブン屋の【射命丸(しゃめいまる)(あや)】と言います」

「ブン屋って確か、新聞記者みたいなものでしたよね?と言うより、もう僕の名前を知っているんですね・・・流石ブン屋。それで僕に何か御用ですか?」

闇慈が文に問いかけると勿論と思わせるかのようにメモ帳とペンを持ち出した。

「ふっふっふっ・・・新聞記者がやることは一つですよ、アンジさん。紅魔館に来た珍しい男性執事の事・・・きっちり取材させて貰いますよ?まずは・・・」

「文様~~。ま、待ってくださ~~い!!」

文が闇慈に取材を開始しようとすると犬耳と尻尾のようなもの生やした、文と同じような服装の女子が走ってきた。

「相変わらず、椛は遅いですね」

「あ、文様が早すぎるんです!!文様は幻想郷一の俊足の天狗じゃないですか!!哨戒の私が本気で追いつけるわけないじゃないですか!!」

「文・・・さんでしたね?その人は?と言うより・・・白狼(はくろう)?」

闇慈が犬耳を生やした女子を『白狼』と言うと文はおおっと感嘆し、紹介を始める。

「凄いですね、アンジさん。初見の人は椛を『バカ犬』と間違えてしまうのに、白狼ってよく分かりましたね?彼女は【犬走(いぬばしり)(もみじ)】。私の・・・」

文の説明に椛が割って入る。

「ちょっと待ってください!!バカ犬!?私はバカ犬じゃないですよ!?」

「じゃあ何なんですか?椛さん」

闇慈の質問に椛ははっきりとこう答えた。

「『バカ狼』です!!」

「「『バカ』は良いの!?」」

椛の返答に闇慈と文は同時にツッコミを入れた。闇慈は一旦心を落ち着かせると文に尋ねた。

「哨戒ってことは見張りのような者ですよね?その彼女がうろついてて良いんですか?」

「今日は私の助手として来てもらっているのですよ、アンジさん」

「文様ったら酷いです。貴方がアンジさんですね、私は文様から紹介があった通り『白狼』の犬走椛です。お見知りおき下さい」

「ご丁寧にありがとうございます、椛さん。では最後に・・・文さんと椛さんは『天狗』なのですか?椛さんが『白狼天狗』・・・そして文さんが・・・」

闇慈は文の服装・言動と自分の知識を思い出し、答えを述べた。

「・・・『鴉天狗』ですか?」

見事に見抜いた文と椛は驚きを隠せないようだった。
椛は白狼と言う事を文から説明を受けて分かっていたかもしれないが、文自身の事は一切説明していなかった。それを洞察だけで見極めた闇慈の頭のキレには恐れ入ったみたいだ。

「アンジさん・・・貴方って本当に人間ですか!?そこまで見抜く事が出来るのは幻想郷で霊夢さん位でしたよ!?」

「僕はただ自分の考えを述べただけで確証はありませんでした。でも当ってて良かったです。では文さんの取材に協力しますよ。でも時間が限られていますので、手短にお願いしますね?」

闇慈の紳士笑顔に文と椛は一瞬、心奪われた表情を浮べたが、すぐに気を持ち直した。

「取材協力、感謝します!!では初めに・・・」

その後、闇慈は文の質問攻めに、一通り答えていた。
自己紹介。執事としての心掛け。そして自分が幻想郷の住人ではないことなど出来る限りの事は答えていた。
しかし、自分の正体が死神やその力の詳細などは隠していたようだ。そしてその後の文が発刊している『文文。新聞』に闇慈の事が書かれいたそうだ。

(後書き)

椛の扱いが微妙になってしまいしまいまいした。椛ファンの方々、申し訳ありません!!

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 
 

 
後書き

椛の扱いが微妙になってしまいしまいまいした。椛ファンの方々、申し訳ありません!!

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 

 

第八十話 妹


「何処にいるのかな?この屋敷の中をうろついているって言ってたけど・・・」

午後二時。昼食を済ませた闇慈は次の仕事を咲夜に聞いた。今度はレミリアの妹の面倒を見るように言いつけられたが妹の姿を見つける事が出来なかった。何でも屋敷の中をうろついているらしく初めて来た闇慈にとってそれは困難なことだった。
そして探している闇慈が廊下の扉を開けた途端、何かが天井から闇慈に襲い掛かってきた。

「っ!!」

闇慈はそれを素早く受け止めた。しかし受け止めたのレミリアに良く似た金髪の少女だった。そして背中には七色に光る翼のようなものが付いていた。

「へえ・・・フランの不意打ちを受け止めるなんて凄いね」

「もしかして・・・君がレミリアお嬢様の妹?」

闇慈はゆっくりその金髪少女を降ろすと尋ねた。その少女は笑顔で答えた。

「うん。私はレミリアお姉様の妹、【フランドール・スカーレット】。フランって呼んで良いよ」

「僕は知っていると思うけど、黒神闇慈。フランが言ってくれたように言うなら、アンジ・クロガミ。よろしくね?フラン」

「うん♪アンジお兄ちゃん」

その後闇慈はフランの部屋に案内され、室内で遊んだ。

~~~~~~~~~~~~

暫く遊んだ後、闇慈はフランを自分の膝の上に乗せて、物語を読み聞かせていた。しかしその途中から・・・

「すぅ~、すぅ~」

疲れたのか闇慈の膝の上で寝息を立てていた。闇慈はフッと少し笑顔を零すとゆっくり持ち抱え、フランのベッドに寝かせ、毛布を掛けた。そしてその寝顔を見ながら疑問を過ぎらせる。

(一見小さな女の子だけど・・・力の大きさはレミリアお嬢様より、はるかに上回っている。その事をお嬢様が知っていない訳が無い・・・大きすぎる力か・・・くっ!!)

闇慈は『あの事』を脳裏に過ぎらせると顔をしかめて、拳を握る。

(っ!!ダメだ。今は給仕中だ。心を縛っていては支障が出てしまう!!・・・おやすみ、フラン)

闇慈が出て行こうとするとフランが起きていたのか闇慈の手を取り、それを妨げた。

「お兄ちゃん。何処に行くの?」

「あ・・・ゴメン。起こしてしまったみたいだね、フラン」

闇慈は再びフランの元に寄り添い、イスに腰掛けた。

「大丈夫だよ。・・・お兄ちゃん」

「ん?どうしたの?フラン」

「さっき、怖い顔してた・・・何かあったの?」

フランが少し怯えた目で闇慈を見ていた。闇慈はフランの頭を優しく撫でて気持ちを落ちかせた。

「見てたんだね。ゴメン・・・怖かった?」

「うん・・・優しい闇慈お兄ちゃんがあんな顔するなんて思ってなかったから」

闇慈はこの時、この力の事を話すべきか迷っていた。
話した所で何か変わるのか・・・。何か良い事でもあるのか・・・。心の傷が塞がるのか・・・。
闇慈は少し考え、出した答えは秘密にすることにした。

「ゴメンね、フラン。僕にも悩みの一つや二つはあるんだ。でもそれは教えてあげる事は出来ないだ」

「え~~。知りたいよ!!」

フランがダダをこね出したので、闇慈はフランに言い聞かせる。

「フラン。君が秘密にしていたいこと無理やり聞いてくる人を君はどう思うかな?」

「う~ん・・・壊す♪」

「笑顔で怖い事言うんだね・・・フラン」

フランの返答に闇慈は苦笑しながら、続ける。

「でもそれって今フランがやっていることと同じだよ。僕にも知られたくない事がある。それをフランが今聞き出そうとしている。違う?」

「あ~う。そう・・・」

「自分にされて嫌な事を他人にはしない。これ・・・僕と約束できるかな?」

「は~い」

「良い子だ。ご褒美にオヤツを作ってきてあげるよ。何が良い?」

フランの素直な返答に闇慈は笑顔で答え、オヤツを作ると言い聞かせるとフランはパァと笑顔になった。

「ホント!?じゃあ、フラン。クッキーが食べたい♪」

「クッキーか・・・少し時間が掛かるけど、良い子で待っていられるかな?」

「うん♪」

それを聞いた闇慈は一旦厨房に戻ろうとするとフランが闇慈にこう言った。

「お兄ちゃん。お兄ちゃんに何があったのかは分からないけど、フランはお兄ちゃんの味方だからね♪」

フランの言葉に闇慈は笑顔で答えた。

「ありがとう、フラン」

その後、闇慈が焼いてきたクッキーと淹れて来た紅茶で小さなお茶会を開いた。クッキーの出来栄えはフランも満足するほどだったみたいだ。
 

 

第八十一話 過去


今日の給仕が終わり、闇慈は自分の部屋でゆっくりしていたが気に掛けている事が頭から離れなかった。

【フランの力をどうやって抑えたのかと言う事を・・・】

闇慈はフランに直接聞く事を考えたが、それがフランに傷を負わせることになってしまっては尚更自分の心に傷を負ってしまうため、それは控えた。そして出した結論はレミリア本人に聞き出すことだった。

「良し・・・行こう!!」

闇慈は覚悟を決してレミリアの居る部屋に移動し、ドアの前で立ち止まるとノックをした。

「誰かしら?」

「レミリアお嬢様・・・アンジです。お話があります」

「・・・入りなさい」

「失礼します」

闇慈が入るとレミリアがまるで待っていたかのように、寝間着姿でイスに座っていた。そして闇慈はゆっくりとイスに腰掛ける。

「貴方が来たのは何となく分かるわ・・・フランの事でしょう?力を読み取れる貴方なら疑問に思わない方がおかしいわね」

「力を読み取る事を知っていながら、僕にフランの面倒を見させたのは何か裏があるのですか?お嬢様」

闇慈は少し目を細めながら、レミリアに聞いたが彼女は特に悪気はないように答えた。

「まさか。人手が足りないから貴方に面倒を見させた・・・それだけの話よ」

「そうですか・・・なら本題に入ります。貴女はどうやってフランの力を抑えたのですか?貴方もフランの力が自分の力より遥かに上の事は知っている筈です」

「勿論。知ってたわよ。・・・私はフランを495年間、地下の部屋で過ごさせていたわ」

「っ!?」

闇慈は一瞬、顔を驚愕させたがその理由を考え始めた。そして出した答えは・・・

「フランの命を狙う者・・・悪魔祓い(エクソシスト)などから守るためですか?」

「流石ね。フランの力はあまりに膨大なため、それを排除しようとしてきた者が大勢やってきたわ。でも・・・半分正解で半分不正解よ」

レミリアは過去の事を思い出したのか顔を歪める。闇慈はそれを見ると申し訳ないと言う心を抱いたが、今回ばかりは引き下がる訳には行かなかった。

「後は・・・フランの力を恐れたから・・・ですか?」

「そうね・・・そうと言って良いわ。当時の私はフランの『運命』を見て、フランに恐怖してしまった。自分の大切な妹でありながら・・・」

「お嬢様・・・」

「私はフランに『悪い奴らから守ってあげるから地下室(ここ)で我慢して』と言い聞かせた。そして495年もの間、フランを外へは出さずに、幽閉してしまった・・・」

レミリアの言葉には一つ一つ、過去の後悔が現れているようだった。闇慈は真剣な表情でそれを聞いて行った。

「私達吸血鬼は紅い満月を見ると自分を制御できなくなってしまうの。そして紅い満月が昇った時に【博麗の巫女】・・・【博麗(はくれい)霊夢(れいむ)】がフランの静めてくれた。それからフランは外の世界に興味を持ったのよ」

レミリアは一通り話すと紅茶を口にして、溜め息を出す。

「これが私の過去・・・。そして私は力の制御なんかしてあげていないわ。私は・・・ただ逃げたのよ。運命に・・・恐怖に立ち向かう事も出来ずに・・・」

レミリアはその事に段々に苦虫を噛むような表情を浮かべ、軽くではあるが涙を流した。その顔は吸血鬼だと言う事を忘れてしまいそうな程の、一人の少女の顔だった。そして今までの罪悪感が彼女に襲い掛かり、その壁が壊れてしまったのだろう。闇慈はそれを懐に入れていたナプキンで優しく拭う。レミリアは少し赤面した後、元のカリスマ顔に戻った。

「それで・・・貴方は制御の事を聞きに来たのだけど・・・さしずめ、自分の力の制御に役立てるつもりだったのかしら?」

「違う・・・と言ったら嘘になります。僕はもう・・・あんな思いをしたくはない。そのためには少しでもヒントとなるものを探していたんです。でもやっぱり・・・こう言ったことは自分の力で見つけないといけないみたいですね。では失礼します、お嬢様」

闇慈はゆっくり席を立ち、ドアに向かったがここであることを思い出したのか振り返り、レミリアに向き合った。

「お嬢様。僕は未だに心を過去に囚われたままですが、一つだけ言えることがありますよ?例え貴女がやり方を間違っていたとしても、フランを想う心は変わらない。それは大切な事だと僕は考えます。そしてその心もフランは気付いている筈ですよ?何故なら・・・貴女のたった一人の妹なのですから」

闇慈はそれだけど言い残すと、部屋から出て行った。レミリアはフウと溜め息を付くと紅茶を再び口にして、空の月を眺める。

「たった16年しか生きていない人間にここまで励まされるなんて思ってもなかったわね。・・・黒神闇慈。貴方って本当に面白い奴よ。サーゼクス・・・貴方が羨ましいわ」

こうして闇慈の一日の給仕は終了した。
 

 

第八十二話 異変


それからと言うもの。闇慈はそれと言った問題も無く、執事修行をしていた。そして3日経ったある日の夜中・・・

「今日も何事も無くて良かった。フランやパチュリー様も僕の事を気に入ってくれたみたいだし・・・このまま何か問題でも起こらなければ良いけど・・・」

闇慈が玄関で掃除をしていると、ガタンと勢い良く玄関のドアが開くとメイリンが飛び込んできた。そして両手には何かを抱き抱えていた。

「メイリンさん?どうしたんですか?何時も寝ている貴女が顔色を変えて・・・」

「そんな事を言っている場合じゃないんです!!彼女が酷い怪我をしているんです!!パチュリー様か咲夜さんを呼んできて下さい!!」

「怪我!?・・・って君はサニーじゃないか!!」

メイリンが運び込んで来たのは闇慈にイタズラをした光の三妖精の一人、サニーミルクだった。全身には酷い傷があり、気を失っていた。

「分かりました!!直ぐに呼んできます!!」

~~~~~~~~~~~~

闇慈は逸早くパチュリーを呼びに行き、事情を説明すると運び込まれた病室に案内した。そしてパチュリーは治癒魔法をかけ、傷を塞いだ。それに伴いサニーの顔に血の気が戻り、寝息を立て始めた。

「パチュリー様、サニーは?」

「大丈夫よ、一命は取り留めたわ。でも気になる点があるわ・・・」

「気になる点?」

「彼女は妖精だってことは知っているわね?でも彼女から『魔力』や『妖力』を感じない・・・まるで何かに『吸い取れた』ように。元には戻ると思うけど不思議ね・・・」

その言葉に闇慈はハッとした顔になると傷を確認し始め、そこから微かに残っている力の残照を読み取った。

(・・・っ!!これはセイクリッド・ギアの力に酷似している!!でも何故僕の世界の物がこの幻想郷に!?もしこのセイクリッド・ギアを操っている奴が悪人なら不味い事になる!!セイクリッド・ギアに対抗できるのはセイクリッド・ギアだけ・・・フランを止めてくれた博麗の巫女も恐らく・・・くそっ!!)

「う・・・う、ん」

闇慈の考え事を遮るかのように、サニーが意識を取り戻す。闇慈はサニーに問いかける。

「サニー!サニー!」

「あ、アンジ・・・アンジ!みんなを・・・助けてよ!」

サニーは闇慈の姿を見ると飛びつき、涙を流し始めた。

「何があったの!?」

「私達が住んでいる森に妖怪みたいなのが入ってきたの・・・私達は弾幕とスペルカードで追い返そうとしたんだけど、妖怪はそれを振り払って、変な『手』みたいなので私達の魔力と妖力を吸い取っていったの・・・」

「魔力と妖力を吸収したですって?」

途中から入ってきたレミリアも疑問の声を上げる。力を吸収すると言う能力はこの幻想郷には存在していないからだろう。

「それに・・・スペルカードと弾幕が効かないと言うのはおかしいわね。気になるわ・・・咲夜。私達も行ってみるわよ」

「承知しました、お嬢様」

「アンジ。貴方はフランとメイリンで紅魔館の留守番をしておいてもらうわ」

その事にメイリンは猛抗議する。

「ですがレミリア様!相手は弾幕もスペルカードも効かない相手なのですよ!?どうやって・・・」

「私は紅魔館の主で吸血鬼よ。そう簡単にはやられないわ。それに霊夢も来ていると思うし、大丈夫よ。私は『家族』を残したまま死にはしないわ。行くわよ、咲夜」

「はい」

そう言うとレミリアと咲夜はそのまま出て行ってしまった。フランは心配になったのか闇慈に寄り添う。

「お兄ちゃん・・・お姉様、大丈夫かな?」

「お嬢様も吸血鬼、そう簡単にはやられないと思うよ」

この時、闇慈は別の答えを持っていたがフランを安心させるためにこう答えたが、心の中は心配で満ち溢れていた。

(やっぱり・・・僕も行くべきかな?でも今の僕が行った所で何になる?足手まといになるだけだ・・・)

闇慈が自己嫌悪に陥っている間にフランが・・・

「やっぱり・・・私も行ってくる!!」

「あ!!妹様!!」

メイリンを潜り抜け、レミリアの後を追った。

「不味い!メイリンさん!僕が後を追います!」

闇慈は慌てて外に飛び出したが、フランの姿が見えなかった。そして・・・

ドゴォォォォォン!!!

あの妖精の森で大きな爆発音が聞こえた。闇慈は聞こえてきた方向へ急いで走り始めた。

~~~~~~~~~~~~

「夢想封印!!」

「マスタースパーク!!」

妖精の森の中では紅白の巫女服を着た女子と白黒の魔法使いを思わせる服装の女子がその妖怪らしい人物と戦っていた。そしてお互いの最高技を放つが・・・

「ひゃーははははは!!!効かねえんだよぉぉぉぉ!!!」

その妖怪は上半身は男性だが・・・下半身は百足のような体格をしていた。そして全長4Mはある完全な化け物だった。
そして化け物は体を紫色の棺のようなもので包むと、結界からの爆発と閃光のような二人の攻撃を守り、傷一つ負わなかった。

「げえ!?私達の最高技が!?」

「これでもダメなんて・・・正直キツイわね」

「無駄だぜぇぇぇ。お前達の技はセイクリッド・ギアじゃねえみたいだしな!!この俺様のセイクリッド・ギア【絶壁の棺】『アブソリュート・コフィン』は壊せねえよ!!!」

「なあ霊夢。さっきからセイクリッド・ギアって言ってるけど何なんだ?」

「私が聞きたい位よ」

巫女と魔法使いはそれぞれの意見を述べ合っていたが、化け物は容赦なく襲い掛かる。

「次は俺様だぜぇぇぇ!!!行けよ!!ファングゥゥゥ!!!」

化け物が叫ぶと下半身の百足の足、一本一本から黒い触手のようなものが飛び出した。

魔理沙(まりさ)。あれに捕まったら終わりよ!!色々と吸い尽くされてしまうわ!!」

「分かってるさ!霊夢(れいむ)!!あれ如きに遅れる私じゃないぜ!!」

霊夢と魔理沙はそれを避けていくが次の瞬間・・・

「ハッ!!!甘めぇな!!!」

二人は先程の紫色の棺に閉じ込められた。

「「なっ!?」」

「かかったな!!俺様の棺は自分を守るだけじゃねえ!!相手を閉じ込める事も出来んだぜぇぇぇ!!!さあ・・・俺のもう一つのセイクリッド・ギア【貪欲の牙】『グリーディ・ファング』でてめえらの力を吸い尽くしてやるぜ!!!行けよ!!ファング!!」

そして閉じ込められた二人に向かって先程の触手を伸ばしたが、途中で第三者の弾幕がそれを許さない。

「ああん?」

その化け物は一旦触手を戻すと撃ってきた方を向く。そこに居たのはレミリアと咲夜だった。

「霊夢、魔理沙。怪我は無いかしら?」

「「レミリア!!」」

「何だ?このガキは?てめえもこいつらの仲間か?」

「まあ・・・そんな所ね。貴方が妖精達の力を吸い取っていた者で間違いないわね?」

レミリアが力を解放しながら化け物に尋ねる。

「へえ・・・小さいなりして力はでけぇみたいだな?これは食いがいがありそうだぜ!!行けよ!!ファングゥゥゥ!!!」

「咲夜。貴方は霊夢と魔理沙を解放するために尽力を尽くしなさい!!」

「はい。お嬢様!!」

咲夜は霊夢と魔理沙を閉じ込めている棺を破壊しようとしたが、中々破壊する事が出来ない。そして化け物とレミリアは弾幕を張りながらお互いの力量を測っていた。
そしてその途中・・・

「お姉様!!フランも戦う!!」

フランが飛び出てて、レミリアの隣に並んだ。突然のことにレミリアは一瞬だが隙を作ってしまう。

「フラン!?どうして貴女がここに!?」

「戦いの最中に余所見してんじゃねえよ!!死ねぇぇぇ!!!」

「し、しまっ・・・」

化け物は大きめの魔力弾を作るとレミリアとフランに向かって放った。レミリアは間に合わないと悟ったのかフランを庇うように背を向ける。

(せめてフランだけでも・・・!!)

「お姉様!?」

「っ!!お嬢様!!」

咲夜は時を止める事が出来るが今回は遅かった・・・そして・・・

ドガアアアアアアン!!!

魔力弾は二人に直撃し、煙と砂塵が舞った。

「ひゃーはははははは!!!やっと殺してやったぜ!!!やっぱり最高だぜ!!殺しってやつはよぉぉぉぉ!!!」

「お、お嬢様ーーー!!!」

「そんな・・・」

「冗談だろ・・・?レミリアとフランが・・・死んだ!?」

咲夜は悲観な叫びを上げ、霊夢と魔理沙は受け入れがたい事に呆然としていた。そしてその砂塵が晴れてくると人影が段々と見えてきた。

「ああん?今ので死んでねえのかよ?」

化け物も少し驚いているようだったがその人影は二人とは別物だと言う事に気づくのは遅くなかった。砂塵が完全に晴れると人影の正体が露わになった。そして隠れていたブン屋はこう記している。

【風になびくは銀の髪、体に纏うは黒き(ころも)・・・】

「何モンだ?てめえは?」

「俺か?・・・俺は」

闇夜(あんや)に光るは真紅の(まなこ)、そして掲げるは漆黒の鎌!!】

「死神だ!!さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」
 

 

第八十三話 死滅


時間は少し遡り、闇慈はレミリアの元に向かったフランを探し始めた。だが闇慈の心はあの時のままだった。

(僕は・・・僕は・・・)

(いい加減に目覚めたらどうだ・・・アンジよ!!)

(・・・デスさん)

ここでデスの喝が飛んでくる。

(お前は根本的な事を忘れているぞ!!お前は何ために力を得た!?何ために我と契約を交わした!?お前の心はその程度だったのか!?そして・・・お前を想ってくれている者達の心を踏みにじるつもりか!?)

デスの一喝に闇慈はハッとした表情を浮かべ、走るのを一旦止めると今まで闇慈の事を見てきてくれた人たちの事を思い出した。

(アンジ!!)

(アンジさん!!)

「両親・・・部員の皆・・・冥界の人達・・・幻想郷の人達・・・そして・・・」

闇慈は心の中で最愛の人の笑顔を浮べる。

(そうだ・・・僕は『守る』ために力を欲した。そして犯した失敗はやり直せば良い・・・例えそれが、取り返しのつかない物だとしてもやり直しは出来る。大切なのは、前に進もうとする心と・・・人を想う心だ!!)

闇慈は目を閉じ、自分の中に存在するセイクリッド・ギアに呼びかける。

「今更だと思うけど・・・僕はもう迷わない!!もし・・・もう一度チャンスをくれると言うのなら、僕はそれに全力で答える!!だから・・・!!!」

闇慈はカッと目を見開き、叫ぶ!!

「応えてくれ!!僕の………セイクリッド・ギアーーーー!!!」

その覚悟の言葉が発せられると、闇慈の中のそれが応えたのか、闇慈の周りに力が渦巻き始める。

「来い・・・来いよ・・・俺は・・・ここに居る!!」

そして闇慈の服装は黒執事服からあの死神を思わせるボロ衣の漆黒のマントに変わり、眼も真紅に、そして髪も黒から銀色に染まった。最後にデスサイズ・ヘルを肩に担ぐ。

(終に迷いを断ち切ったか・・・アンジよ)

(デスさん。僕は・・・もう迷いません!!)

闇慈がデスに覚悟を決めたことを述べていると・・・

「お嬢様!!」

と咲夜の声が闇慈の耳に届いた。まさかと思い、闇慈はその場所に急ぐとレミリアがフランを庇うように魔力弾に背中を向けていた。闇慈はデスサイズ・ヘルを一旦消すと魔力弾とレミリアとの間に体を滑り込ませるとAMCマントでそれを受ける。
そして魔力弾が直撃すると砂塵が起こったが闇慈とその後ろの二人には害は無かった。

~~~~~~~~~~~~

「俺様に死を見せる?てめえが俺に勝てるとでも思ってんのか!?ああん!!?」

「如何にも落ちた奴が言いそうな台詞だな?・・・はぐれ悪魔」

闇慈は化け物の正体を見破ったのかそう言うと化け物・・・はぐれ悪魔をピクッと反応する。

「俺様がはぐれ悪魔だってことが分かって事は、てめえ・・・この世界の人間じゃねえな!?」

「さあ?どうかな?」

「アンジお兄ちゃん・・・なの?」

フランが初めて見る死神の姿に少しビクビクしながら尋ねた。

「そうだよ、フラン。この姿を見せるのは初めてだね。ゆっくり説明したいけど今は我慢してもらえるかな?後でフランの大好きなクッキーを焼いてあげるから・・・ね?」

「お兄ちゃんだ・・・私の知っているアンジお兄ちゃんだ!!」

闇慈が笑顔でそう言うとフランは闇慈に抱きつく。そしてレミリアに告げる。

「お嬢様。こいつは俺がやります。フランを連れて咲夜さんの元に行ってください。巻き添えを食らう可能性があります」

「どうやら自分の迷いを消す事が出来たみたいね。じゃあ任せるわ。それとこれは命令よ?」

「何ですか?」

「死ぬなんて許さないわ、必ず帰ってきなさい。貴方はもう私の家族と言っても良いのだから」

闇慈はレミリアの言葉に心打たれ、少し俯いた後に力強く頷いた。そしてレミリアはフランを連れて咲夜の元に飛んできた。

「お嬢様!妹様!お怪我は?」

「大丈夫よ。アンジが守ってくれたわ」

その事を聞くと咲夜はホッと胸を撫で下ろす。そして気になったのか霊夢と魔理沙がレミリアに尋ねる。

「なあレミリア。あいつって何者なんだ?」

「私の古い友人に仕える執事よ。そして・・・この幻想郷の住人じゃない」

「でも大丈夫なの?私と魔理沙でさえ、敵わなかった奴なのよ?」

「その点は心配無用よ、霊夢。私達はスペルカードと弾幕ごっこと言う概念に捕らわれ過ぎているけど・・・あの子は向こうの世界ではこう呼ばれていたわ」

闇慈が右手を前に出すと黒い光が集まって行き、デスサイズ・ヘルが現れると背中から6枚の漆黒の翼が生えた。

「「っ!?」」

「黒衣の死神・・・と」

「はん!!てめえ何モンか知らねえが、吸い尽くしてやるぜ!!行けよ!!ファング!!」

はぐれ悪魔は下半身の百足の足から無数の触手を飛ばし、闇慈の力を吸い取ろうとした。しかし闇慈はそれを紙一重でかわしていく。

「逃がさねえよ!!閉じ込めな!!アブソリュート・コフィン!!」

闇慈の逃げ先を読んで、紫の棺に閉じ込めようとしたが闇慈はそれを超反応でかわす。

「やるじゃねえか。初見でこの連携を避けたのはてめえが初めてたぜ!!」

「その二つの能力はセイクリッド・ギアか?差し詰め人間が所持していたものをお前が奪っただけだろう?」

「ああ、そうだぜ!!俺は下級悪魔だったが主を裏切って、人間界でセイクリッド・ギアを持った人間を襲って手に入れたもんだぜ!!」

はぐれ悪魔はそれだけでは終わらずに嘲笑うように続ける。

「死んで行く奴らの表情は良かったぜぇぇぇ?死ぬと言う恐怖に煽られながら目の光が消えていく・・・ひゃーはははは!!!思い出しただけで笑いが止まらねえなぁぁぁ!!!」

その言葉とともに人肌だった体の色が紫色へと変わって行き、心と体も『悪』に染まって行った。

「何でだよ・・・何でアイツは人殺しを楽しそうに喋ることが出来るんだよ!?」

「道が外れてしまった悪魔と言うものはそう言うものよ、魔理沙」

「お姉様・・・フラン。何だか怖い・・・私も破壊する能力を持っているけど・・・あんなに笑う事なんてフランには出来ない」

外道的な言葉に魔理沙が声を張り上げるがレミリアが言い聞かせる。フランも全てを破壊するという能力を持っているが、あそこまで外道的には出来ないらしく、怯えていた。

「言いたいことはそれだけか?はぐれ悪魔」

「何だと?」

「今の言動ではっきりした・・・貴様は生きていくに値しない奴だと」

「ほざけぇぇぇ!!そんな鎌しか持ってねえ奴が俺様に勝とうなんざ、甘過ぎんだよぉぉぉ!!!」

はぐれ悪魔は再び闇慈を閉じ込めようとしたが、闇慈はそれを避けずに棺の中に閉じ込められた。

「なっ!?何やってるの!?あいつ」

霊夢にはその行動が理解できなかった。はぐれ悪魔は触手を伸ばし始めた。

「何だ?何だぁぁぁ?でかい口叩いた割にはあっけねえな!おい!!もう良いぜ・・・死ねよ」

「ああ・・・貴様がな」

闇慈が呟いた瞬間、憑依死神を発動させ、魔力を溜めたデスサイズ・ヘルで棺を叩き斬った。その棺は破壊させるとそのまま霧散してしまった。

「なん・・・だと!?俺様の・・・棺が一撃で壊された!?」

「お嬢様!!どういうことなのですか!?私でさえあの棺は簡単に壊す事が出来なかったのに!!」

咲夜を初め、レミリア以外は驚愕に満ちた表情を浮べていた。そしてレミリアはゆっくり説明を開始した。

「セイクリッド・ギアと言うのは、ごく一部人間の体に存在する規格外の力のことを言うのだけど、あのはくれ悪魔が出していた触手と棺もセイクリッド・ギアの力よ。でも・・・彼の持つ力はそれより遥か上に存在するわ」

「あの厄介な触手や棺より高ランクなのか!?」

「ええ・・・使い手によっては神をも殺す事が出来る力、ロンギヌスの一つ・・・ありとあらゆる『生』を斬り裂き、『死』を導く鎌【デスサイズ・ヘル】よ。その力は【ノスフェラトゥ】・・・つまり【不死】すらも斬り裂き、殺す事の出来る程よ」

それを聞いたレミリア以外の人は空いた口が塞がらない程、驚愕していた。

「てめえの鎌が・・・デスサイズ・ヘルだと!?認めねえ!!そんなこと認められっかよーーー!!!」

はぐれ悪魔が触手を闇慈に向かって一斉に伸ばしたが、闇慈はそれを一本一本正確に斬り裂いて行った。そして当然その触手は『生』を失った事により、霧散してしまう。

「俺のファングが・・・」

「余所見をしている暇があるのか?はあっ!!」

ズバシュッ!!!

はぐれ悪魔が呆然となっている間に闇慈は下半身を斬り裂いた。周りには鮮血が飛び散り、下半身は霧散してしまう。

「ぎゃあああああ!!!」

はぐれ悪魔が痛みでのたうち周っている間に闇慈はシャドゥ・ルーラーで影を操り、動きを縛る。そして【ダークネス・ハウリング】を放つ為に、両手と六枚の翼を一点に集中させ、魔力を集め始めた。

「放せ!!放せってんだよぉぉぉ!!畜生がぁぁぁ!!!」

「これで止めだ!!全てを深淵なる闇に引きずり込め!!ダークネス・ハウリング!!!」

闇慈は出来上がった球体に正拳を打ち込み、黒い極太のレーザーをはぐれ悪魔に放った。飲み込まれたはぐれ悪魔はそのまま消滅してしまった。そしてそのことを確認した闇慈はこう呟いた。

「輪廻の中で貴様がやってきたことを、省みることだな」

こうして小さな異変は闇慈の心の決断によって終局を向かえ、平穏な日々に戻った。
 

 

第八十四話 白玉楼


はぐれ悪魔の一件以来、人里における闇慈の見方は大きく変わった。凶悪な魔物を退治した死神として闇慈の姿を見た人達は拝んでいたと言う。闇慈の戦いを陰で見ていた人間は少なかったがブン屋の文が新聞を発刊し、闇慈の噂は瞬く間に広がって行った。
闇慈はどう接したら良いのか分からずに、とりあえず普通に接するように人間たちに促した。

「あっという間に人気者になったわね?アンジ」

「あははは♪アンジお兄ちゃん。人気者~~」

「他人事みたいに言わないで下さい・・・お嬢様、フラン」

その事には闇慈も頭を抱えていた。
そして救ってくれた妖精達も闇慈に感謝していた。光の三妖精のルナとスターは魔力を吸い尽くされただけだったので闇慈がすぐに自分の魔力を注ぎこみどうと言うことはなかったが、サニーは怪我をしたため少し安静にする必要があったが命には別状はなかった。

「そう言えば今日は少し違った仕事をしてもらうって言ってましたけど、今日は何をすれば良いんですか?お嬢様」

「今日の仕事は紅魔館じゃなく、白玉楼(はくぎょくろう)と言う所に行って、そこで給仕をして貰うわ。簡単に言うなら『冥界』ね」

「冥界!?幻想郷にも冥界があったんですね。でも冥界にはどうやって行くんですか?」

「そろそろ迎えが来る筈よ」

レミリアと闇慈が話し合っていると咲夜が玉座の間に入ってきた。そして咲夜のとなりには白い髪で髪飾りを着け、二本の日本刀を持っている女子も入って来た。そして印象的だったのは彼女の周りを飛び交う、白いモノだった。

「お嬢様。お連れしました」

「ご苦労様、咲夜。来てくれたのね、妖夢(ようむ)

「ご無沙汰しています、レミリアさん」

妖夢と呼ばれている女子がレミリアと挨拶をかわすと闇慈と向き合った。

「初めまして、アンジさん。私は白玉楼の庭師、【魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)】と言います。どうぞお見知りおき下さい」

「ご丁寧にありがとうございます。白玉楼と言うことは貴女が迎えなのですか?」

「はい。今日一日、よろしくお願いしますね」

(真面目な娘だな、性格が僕と似ているから気が合いそうかもしれない)

笑顔で対応した妖夢を見た闇慈はそんなことを思っていた。

「後、妖夢さん。貴女の周りに飛んでいる『それ』は?」

「これはもう一つの私・・・私の魂です。私は半人半霊なんですよ、アンジさん」

彼女の周りを飛んでいたモノは彼女自身の魂だった。そして彼女の案内で冥界に足を運ぶ事になったが、この時妖夢の顔が少し赤くなっていることに闇慈は気付いたが尋ねはしなかった。

~~~~~~~~~~~~

「うわ・・・長い階段ですね」

冥界に入り、少し行った所に見上げるほどの長さと高さの階段が現れた。そしてその長さに闇慈は少し気が引いているみたいだった。

「初めての人はみんな言いますよ。でも登らないと白玉楼には着きませんよ?」

そう言うと妖夢は先に上り始めた。

「う~ん・・・仕方ない、歩くか」

闇慈は少し溜め息を付くと足に魔力を溜めて階段を登り始めた。
そして二十分位歩き、中盤の辺りに着くと妖夢の様子がおかしくなり始めた。息が切れ始め、体もフラフラしていた。

「妖夢さん、大丈夫ですか?何だかフラフラしてますよ?」

「だ、大丈夫です。昨日の疲れが取れてないみたいですので・・・(私が息切れしてる?それに・・・体がダルくなって、少し・・・目まいが・・・)」

妖夢が一人で考えている間に彼女の体は傾き、階段に激突しそうになった。

「っ!!妖夢さん!!」

闇慈は逸早く妖夢を受け止め、状態を確認した。顔を赤く、息も荒かった。闇慈は一つの事が頭に過ぎると妖夢のデコに右手を添える。

「うわっ!!凄い熱だ!!早く看病しないと!!とりあえず、この上の白玉楼まで運ぼう!!妖夢さんの話じゃ、幽々子(ゆゆこ)さんって人が居るはずだ!!」

闇慈は妖夢を背負うと急いで残りの階段を駆け上がった。そして最後の階段を登り切ると大きな和風の館が目に入り、入り口が開いていた。

「ここが白玉楼。急いで幽ヶ子さんを見つけないと!!」

闇慈は白玉楼の中に急いで入ると幽ヶ子と呼ばれる人物を探し始めた。そして中庭に入ると一人の幽霊を思わせる帽子が印象的な女性がくつろいでいた。闇慈はその女性に急いで話しかけた。

「貴女が【西行寺(さいぎょうじ)幽ヶ(ゆゆこ)】さんですか!?」

「どうして私の名前を?貴方は・・・もしかして今日ここに来てくれる紅魔館の?」

「はい!黒神闇慈です!それより妖夢さんが!!」

幽ヶ子は息が荒い妖夢を見ると少し表情が強張らせた。

「妖夢に何かあったの?」

「酷い熱を出して倒れてしまったんです!彼女を休ませたいのですが、どこにお連れしたら良いですか?」

「こっちに連れてきなさい」

「はい!」

闇慈は幽ヶ子に連れられて、部屋に案内された。

(後書き)

半人半霊って風邪を引くのか眉唾でしたが、引く事にしました(汗)

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 
 

 
後書き

半人半霊って風邪を引くのか眉唾でしたが、引く事にしました(汗)

感想・指摘。よろしくお願いします!! 

 

第八十五話 看病


闇慈は幽ヶ子に案内されて、妖夢の部屋に連れて行き、布団を敷くと横に寝かせた。妖夢の状態はただの風邪のようだが高熱のせいなのか息が荒い。

「幽ヶ子さん。薬はあるのですか?」

「今は切らしているのよね。アンジ君だったわね?私が薬を貰いに行って来るから妖夢の看病をお願いできるかしら?」

「はい!!それと幽ヶ子さん、台所を使わせてもらって良いですか?」

「ええ、構わないわ。じゃあお願いね?アンジくん」

そう言うと幽ヶ子は白玉楼から出て行ってしまった。闇慈はとりあえず知恵を振り絞り、対処法を導き出す。
まずは水を温め、湯気が出る位に高温にした。そしてそれを大きな桶に移し、部屋の隅に置いた。この処置は部屋の湿度を保ち、汗と咳きと痰を出やすくするためである。そして濡らした手ぬぐいでデコの上に置く。

(原始的なやり方だけど、今はこれしか方法がない。後は頻繁に脇の下を冷やし、汗が出たら拭き取り、衣を変えるだけだ)

「う・・・うん・・・」

闇慈が手順を思い返していると妖夢が意識を取り戻す。

「あ!妖夢さん。気が付きましたか?」

「あ、アンジさん?私は?」

「高熱が出て、階段の途中で倒れてしまったんですよ。そしてここは貴女の部屋です」

「すみません。ご迷惑をお掛けしました」

闇慈は妖夢の謝罪を首を横に振り、気にしていないと言う表情を浮べた。

「気にしないで下さい。今日は僕が白玉楼の世話をしますから、妖夢さんは休んでてください」

「で、でも・・・」

「風邪は早く直した方が良いですよ?何をすれば良いか・・・それだけを僕に伝えてくれればいいですから」

妖夢は自分の状況を見て、動ける状態ではない事が分かると闇慈に仕事の手順を教えていく。

~~~~~~~~~~~~

「ふう。これだけの量を一人で・・・しかも毎日やっているなんて、妖夢さんって凄いかも」

その後、妖夢から仕事を言われ一つ一つやって行ったが、その量は一人でやっていくには凄い量だった。
そして妖夢は帰ってきた幽ヶ子に薬を貰い、落ち着いたのか今は安眠している。そして時間は過ぎて行き夕刻となった。夕食は闇慈が作る事になったが妖夢からこんなことを言われた。

「何時もアンジさんが作っている量より多めに作って下さい」

と言われた。闇慈は頭に?マークを浮かべながら、和風の食事を作り始めた。

ーー夕食時ーー

「う~ん、美味しい♪妖夢には劣るけど良い味が出てるわ~」

闇慈は妖夢から言われた事の意味を理解することが出来た。幽ヶ子は外見に似合わずに食べる量が半端なかった。現に闇慈が多めに作った料理を平らげているのだから。しかし闇慈は驚愕よりも嬉しさがあった。

「僕の料理を笑顔でたくさん食べてくれるのは嬉しいですよ、幽ヶ子さん」

「貴方らしい優しい味がするわ。でも貴方は私が怖くないのかしら?」

「へっ?それってどう言う意味ですか?」

幽ヶ子は一旦箸を止めると闇慈に面と向き合った。

「私には死を操る程度の能力があるの」

「死を操る・・・ですか。それなら僕の貴女と似たようなものですよ」

「どう言う意味かしら?」

「僕は一見、人間に見えますけど・・・」

闇慈は少し離れると死神の姿になった。そのことは幽ヶ子も驚いているようだった。

「僕も死を操る・・・と言うより『死』そのものですよ?ある意味、貴女より恐ろしい存在ですよ、僕は」

「その姿・・・貴方は『死神』なのかしら?」

「はい。でも僕は無闇に命を奪ったりしません。そして僕は『守る』ために死神であるのですから」

闇慈の笑顔の返答に幽ヶ子も笑顔になるとこう答えた。

「貴方って死神なのに、らしくないのね。でも・・・そんな死神も嫌いじゃないわ」

「ありがとうございます、幽ヶ子さん」

闇慈は元の服装に戻り、再び食事の一時を楽しんだ。
そして食事が終わると妖夢のためにお粥を作り、部屋に持って行った。

「妖夢さん。気分はどうですか?」

「大分良くなりました。アンジさんの看病と幽ヶ子様が持って来て下さった薬のお陰です」

「なら良かったです。お粥を持ってきました、少しずつで良いので食べてください」

闇慈がゆっくり妖夢を起き上がらせると彼女の膝の上にお膳を置いた。

「お腹も少しすいていたので、頂きます」

「無理はしないで良いですからね?」

妖夢は少しずつお粥を口にしていって、時間は掛かったがどうやら全部食べることが出来たようだ。
そしてお膳を片付けると、それ程熱くないお湯を入れた桶と手ぬぐいを持ってきた。

「これで体から出た汗を拭いてください。汗は出すの良いけど、そのままにしておくと体を再び冷やしてしまう恐れがあるので、終わったらまた呼んでください」

「はい」

桶と手ぬぐいを置くと闇慈は扉を閉めて、外で待っていた。そして数分後・・・

「ア、アンジさん・・・」

と闇慈を呼ぶ声が聞こえ、終わったのかと思ったが終わるには少し早いみたいだった。

「妖夢さん?」

「あの・・・入ってきてください」

闇慈は首を傾げると部屋の中に入った。そしてそこには・・・

「なっ・・・!?」

上半身裸で闇慈に背を向けている妖夢がいた。流石に闇慈はこれは驚き、顔を赤くして行った。

「妖夢さん!?何を」

「背中を拭こうと思ったのですが・・・届かなくて、だからアンジさんにお願いしたいんです」

妖夢も顔を真っ赤にしながら闇慈に頼み込んだ。闇慈は覚悟を決し、手ぬぐいを持つと手を震わせながら妖夢の背中に手ぬぐいを当てる。

「ひゃっ!!」

「わあ!!ゴメンなさい!!」

「いえ・・・少しビックリしただけですので・・・続けてください」

闇慈は頷き、手ぬぐいを走らせる。しかし闇慈は彼女の白い肌に見とれてしまう。

(なんて白くて綺麗な肌なんだ・・・って何を考えているんだ!僕は!!早く終わらせてしまおう!!)

闇慈は煩悩を打ち破り、せっせと妖夢の汗を拭き取った。そしてそれを終えると直ぐに退出しようとした。

「じゃ、じゃあ僕はこれで・・・」

しかし慌てたのか後ろに置いてあった桶に後ろ足を引っ掛けてしまう。それを見た妖夢は・・・

「うわっとととと!?」

「あ、危ない!!」

闇慈の片手を持つと自分の元に引き寄せた。しかし勢いがあり過ぎたのか、闇慈はそのまま妖夢に覆いかぶさってしまう。

「「っ!!」」

突然の事に二人とも呆然とし見つめ合っていたが、ここで第三者の声が響く。

「あらあら」

その声の主は幽ヶ子だった。それを聞いた闇慈はハッと我に返り、飛び退く。そして幽ヶ子はうふふと笑っていた。

「妖夢ったら彼とそこまで進展していたのね?明日は御赤飯かしら?」

「「誤解ですーーー!!!」」

~~人間界~~

「・・・ん?何だか闇慈先輩の危機感を感じたような?」
 

 

第八十六話 帰還


今日で闇慈の執事修行は終わりを告げた。白玉楼の妖夢も闇慈の着きっきりの看病のお陰なのか翌日には元気なったみたいだった。そして闇慈は荷物をまとめ玄関へ足を運び、出入り口を開けると、そこには紅魔館の住人、白玉楼の住人、ブン屋、そして博麗の巫女とその連れが立っていた。

「何だか私の扱いだけ酷くないか!?」

「それは気にしちゃダメよ、魔理沙」

メタ発言はさて置き、まずはレミリアが紅魔館を代表して挨拶をする。

「今日までご苦労だったね、アンジ。こちら側としてはまだいて欲しい位だけど、仕方ないわね。貴方との時間はそんなに悪いものじゃなかったわ」

「ありがとうございます、お嬢様」

続いて白玉楼の妖夢が挨拶を交わす。

「貴方とはもっと知り合いたかったです。何時かこちらにいらした時は是非、白玉楼にいらしてください」

「はい!僕も妖夢さんからは色々と学びたいことがありますので、その時はよろしくお願いします!!」

最後にブン屋の文と霊夢が感謝を意を示した。

「アンタのお陰でこの前の異変も解決することが出来たし、一応お礼は言っておくわ。ありがとう」

「アンジさんのことをもっと取材したかったのですが・・・仕方ないですね。今度来た時にお願いします」

「霊夢さん、文さん」

闇慈はこの幻想郷に来て、本当に良かったと感じていた。この世界ではあらゆる人を迎え入れ、受け入れてくれる。その事が闇慈の迷いと大切な事を改めて気付かせてくれた。そのことには感謝してもしきれない程だった。

「僕はみなさんのお陰で自分の心を後悔と言う鎖から解き放つ事が出来ました。それは感謝しても感謝しきれないほどです。今まで本当にありがとうございました!!」

闇慈は幻想郷の住人たちに頭を下げる。そして幻想郷の住人達に見送られ、門を出ようとすると・・・

「闇慈ーーー!!!」

と呼ぶ声が聞こえた。その方を見ると闇慈の無二の親友が走って来た。そして闇慈の前で立ち止まる。

「イッセー!?どうして君が幻想郷(ここ)に!?」

「悪ぃな、お前が執事修行から帰ってくるって聞いてたから迎えに来てやったんだぜ?」

一誠の闇慈を・・・友を思う心に闇慈は本当に恵まれていることを実感していた。

「なるほどね。でもどうせなら小猫ちゃんの方が僕は良かったかな~。男が男を迎えにって少し気持ち悪くない?・・・もしかしてイッセーってそっち系だったの?」

「アンジーーー!!お前!!せっかく俺が迎えに来てやったってのにそんな言い方ってねえだろう!?」

「あはは。冗談だよ、イッセー。来てくれて嬉しいよ」

闇慈の笑顔を見ると一誠は少し真剣な表情で尋ねる。

「その表情から見て、元のお前に戻ったって見て良いんだよな?闇慈」

「うん。もうあの時の僕じゃないよ。心の鎖は完全に壊れたから安心していいよ、イッセー」

「なら良かったぜ。これでまた何時も通りに戻れるって訳だよな?」

「うん!!」

闇慈と一誠はそれぞれの右手でガシッと握手をした。そして一誠が闇慈に詰め寄る。

「なあなあ・・・闇慈」

「う、うん?どうしたのイッセー?(嫌な予感がするな~~)」

闇慈が嫌な予感が頭を過ぎた途端、一誠が幻想郷組みの方を指差しながら叫ぶ。

「お前ぇぇぇ!!まさかこんな美少女達に囲まれて執事生活送ってたのか!?おい!おい!!」

「相変わらず凄い顔になってるよ?イッセー」

一誠が血涙を流しながら、18禁を思わせるような顔で闇慈に迫る。闇慈は慣れっこなのか、やはりかと頭を抱えながら溜め息を付いていた。その様子をフランが見ていて闇慈に近寄る。

「ねえ、ねえ。この人はアンジお兄ちゃんのお友達なの?」

「そうだよ、フラン。彼は・・・」

闇慈がフランに紹介をしようとすると一誠が途中で割って入る。

「おーっと。自己紹介位は俺にやらせてくれ、闇慈。俺は兵藤一誠だ。よろしくな」

「イッセーお兄ちゃんだね。私はフランドール・スカーレット。フランって呼んで良いよ」

人懐っこいフランはさっそく一誠と挨拶を交わした。それを見ていたレミリアが闇慈に問いかける。

「彼は貴方の友人なのかしら?」

「ええ。友人と言うより親友です。僕の大切な仲間です。元は人間でしたけど・・・とある理由で今は眷属悪魔をやっていますね」

闇慈が誇らしげに一誠の説明をしていくが一つだけ注意点をあげる。

「でもイッセーは・・・とにかくエロいです」

「おいぃぃぃ!!!闇慈ーーー!!お前他人の前でとんでもない事を言うんじゃねえ!!」

「でも間違っちゃいないでしょ?普通に女性の服を破壊して裸にしたり、女性の胸に語りかけたり・・・」

「だあああ!!それ以上言うんじゃねぇぇぇ!!!」

すでに一誠のライフポイントは0に近かったが闇慈はドスドスと言葉を突き刺す。そしてそれを見ていた幻想郷の人達はその光景を笑うことしか出来なかった。
そして一誠が持ってきた小型転送装置で名残惜しいが人間界に戻ってきた。二度と会えない訳ではないので闇慈は一旦の別れと取っていた。
闇慈はすぐさま小猫が何処にいるか一誠に尋ね、家に居ることを聞くとすぐに自分の家に向かった。
そして荷物を玄関に置いたまま部屋に急いだ。そしてドアを開けると・・・

「小猫ちゃん」

「・・・っ!!」

小猫がベッドの上に座っていた。闇慈はゆっくり小猫に近寄り、視線を合わせる。

「小猫ちゃん。僕はやってはいけない失敗を犯してしまった。それは決して許される事じゃない」

「・・・」

「でも大切なのはそうじゃない。大切なのは相手を思う心なのだと僕は思った。心が良ければ何でも許されると言う訳じゃないけど・・・」

闇慈はゆっくり小猫の手を取り、笑顔で話しかける。

「僕はもう迷わない。そして誰よりも強い心を持っていく!!だから僕をまた君のそばに居させてもらえないかな?」

それを聞いた小猫は涙を流しながら闇慈に飛び掛った。それは今までの事なんか気にしていないと言う事を思わせるような抱擁だった。

「闇慈・・・先輩。お帰りなさい・・・闇慈先輩」

「ああ・・・ただいま、小猫ちゃん」

闇慈はこの温もりを忘れはしないだろう。そして改めて心に誓った。この最愛の人は何が合っても守ると!!
 

 

第八十七話 運動会

 
前書き

今回は都合主義的な展開があります!!ご注意下さい!!
 

 

闇慈が人間界に戻ってきて一週間後、そして体育祭当日となった。闇慈は何時も通りになり、この一週間の間に遅れていた練習を取り組んだ。
前半の部では徒競走などの全体競技が執り行われ、オカルト研究部の部員と闇慈はほとんどの種目をトップで終えていた。

「でも、僕達ってある意味せこいことやってるよね?」

「気にしちゃダメだぜ?闇慈。俺達は全力でこの体育祭に望んでるんだ。それで良いじゃねえか」

闇慈の疑問に一誠が答える。確か悪魔や死神の力は身体能力までも引き上げてしまうため、生身の人間と比べるのは月とスッポンだった。しかし一誠は全力でやると言う事に意味があると言う事を闇慈に言い聞かせた。

「確かに全力でやらないと僕自身にも言い訳がつかないし、周りに失礼だと思うな。じゃあ・・・僕は次の種目には出ることになってるから応援、よろしくね」

「おう!!」

闇慈が出場する種目は『借り物競争』だった。この種目は足の速さだけじゃなく、何を借りれば良いのか瞬発力や運も試される。この種目は一筋縄には行きそうになかった。

(さてと・・・借りるものが簡単な事を祈るよ)

そしていよいよ、闇慈の出番となった。相手の中には運動部の男子生徒が混じっていたため遅れると負けてしまう恐れもあった。

「位置について・・・よ~い!!」

スターターがピストルを上に向けると・・・

パーン!!

引き金を引き、スタートを切らせた。闇慈は逸早く借りるものが書かれた台に辿り着く。そして闇慈は一つの折りたたんだ紙を取り、その内容を確認した。しかしその内容を見た闇慈は目が点になった・・・

(な ん だ ・ ・ ・ こ れ ?)

【大切な人】

(ちょっと待って!!訳が分かんないよ!?それにこれって下手したらプライバシーの侵害じゃないの!?)

そこは作者による都合と言うもので勘弁してほしい by作者

(何か今変な声が聞こえたような気がするな・・・って不味い!他の人達も借り物に行っている!!・・・仕方が無い!!)

闇慈が急いで【大切な人】を借りる・・・もとい呼びかけるためにその人の元に急いだ。名前は言うまでもないだろう。

「小猫ちゃん!!君の力を貸して!!」

「・・・勿論です!!」

闇慈は小猫の手を取って一緒に走り始めた。しかし戸惑っていたせいもあったのか一番の生徒はもうゴールの手前まで迫っていた。そして闇慈と小猫の身長差もあるのか早く走ることが出来ない。

「闇慈先輩!このままじゃ1位を取られてしまいます!!」

「分かってる!!方法は無いわけじゃないけど・・・こんな大衆の前でやるのは・・・背に腹は変えられない!!先に謝っておく!ゴメン!小猫ちゃん!!」

「・・・えっ!?」

小猫の声と共に闇慈は小猫をお姫様だっこで抱え上げると、足に魔力を留め、神速並の速さで走った。そしてゴールテープ手前まで迫っていた一番の生徒をギリギリで追い抜き、テープを切った。
そして勢いを止めるために体勢を低くし、下半身に力を込めると周りには砂塵が巻き起こった。
何が起こったのかは部員達を除いた人達は分からなかったらしい。一番だった生徒も呆然としていた。そして・・・

ウワァァァァァァ!!!

と歓声が上がった。一段落すると闇慈は小猫をゆっくりと降ろした。

「ゴメンね?小猫ちゃん。いきなりあんな事やって・・・」

「・・・何だか先輩って積極的になりましたね?私もあんなことするなんて思ってもいませんでした」

顔を赤らめながら小猫は闇慈に言い聞かせるが闇慈も流石に悪いと思ったのか頭を下げる。
こうして闇慈の借り物競争は反則に近い力の解放によって一番を取る事が出来た。


 
 

 
後書き

ここで一旦切ります。

感想・指摘。よろしくお願いします!!
 

 

第八十八話 進展


闇慈の借り物競争が終わり、今度は一誠とアーシアが出場する『二人三脚』だった。二人は絶対に一位を取るために練習を欠かさない日は無かった。初めはドタバタしていたみたいだったが二人の信頼し合う心がそれを崩して行った。

「じゃあイッセー、アーシア。頑張ってね!!」

「おう!!お前が小猫ちゃんと一緒に一位を取ったみたいに俺達も絶対一位を取って見せるぜ!!」

「みなさんのご期待に答えるために全力でイッセーさんと頑張ります!!」

一誠とアーシアは意気込みを語ると、入場門の方へ駆けて行った。しかし闇慈は少し不安を抱えていた。

「大丈夫かな?あの二人」

「大丈夫よ、アンジ。あの二人には強い『絆』の力があるわ。あの二人を信じて応援しましょう?」

「うふふ。二人の仲の良さは少し妬いてしまいますわ」

リアスと朱乃の言葉に闇慈はコクッと頷いた。
闇慈も心の中でもあの二人の絆は柔じゃないと感じていた。そしてそれは大きな力の源でもあった。
そして二人三脚がスタートして、次は一誠とアーシアのペアがスタートラインに立った。そして・・・

「位置について・・・よ~い・・・」

スターターが声をかけ、ピストルを上空に掲げた。そしてそれに伴って一誠とアーシアも体勢を整え構える。

パンッ!!

ピストルの音と共にペアが一斉にスタートを切った。初めはどのペアも良い走り出しだったが・・・

「いくぜ!!アーシア!!」

「はい!!イッセーさん!!」

二人は体勢を低くし、同じ位置に合わせるとそのまま阿吽の呼吸を思わせるようにスピードを上げ始めた。そしてトップに躍り出た。

「「「「行っけぇぇぇぇ!!!!」」」」

部員達の掛け声と共に一誠とアーシアはそのままスピードを落とすことなくゴールテープを切った。

「やった!!」

「流石ね。私も鼻が高いわ」

~~~~~~~~~~~~

二人三脚も終わり、一誠とアーシアは退場したが、一誠が途中で倒れ掛かってしまいアーシアがそれを受け止める。恐らく前のジャガーノート・ドライブの影響が完全に消えていなかったのだろう。

「イッセーさん!?」

「あはは。体はまだ万全じゃなかったみたいだぜ・・・悪ぃな、アーシア」

それを見ていたリアスが二人に話しかける。

「アーシア。貴女が回復して上げなさい。体育館裏なら人気もないと思うわ」

「はい」

そしてアーシアが一誠を連れて体育館裏に行こうとすると一誠に聞こえないようにリアスがアーシアに呼びかける。

「アーシア。頑張りなさい」

「っ!!」

その事にアーシアは顔を真っ赤にしながら移動し、回復を開始した。そして数分後、完治とまでは至らなかったが残りのプログラムをこなせるまで回復がすむと一誠は勢い良く立ち上がった。

「良し!!これでまだ頑張れるぜ!!」

一誠が張り切っているとアーシアが一誠に呼びかける。

「あの・・・イッセーさん」

「ん?何だ?アーシ・・・」

一誠が振り返り、言葉を発する前にアーシアは背伸びをして一誠の唇に自分の唇を当てた。ようするにキスをした。一誠も何をされたのか呆然としていた。そしてアーシアはゆっくりと離れ、顔を真っ赤にしながら笑顔を見せる。

「イッセーさん。大好きです!!ずっとおそばにいますから」

それを聞いた一誠は我に返り、幸せそうな笑顔を浮べていた。

~~~~~~~~~~~~

「一誠とアーシアがいないと思ったら、少し無粋だったかな?」

闇慈は二人の姿を探していて、見つけるとちょうどキスをしている場面だったので、慌てて身を隠した。しかしその二人の姿は本当に微笑ましい程だった。

「良かったね、イッセー。そしておめでとう、アーシア」

「・・・何をやってるんですか?闇慈先輩」

二人を祝福していると小猫が闇慈を探しに来たのか、近寄る。闇慈は人差し指を自分の口に当て、静かにするようにと言うポーズを取った。

「少し声を落とそうか?小猫ちゃん。二人に気付かれてしまうよ?」

小猫は少し首を傾げ、原因を確認すると、なるほどと首を上下に振る。

「・・・先輩。ここは二人だけにしてあげるべきだと思います」

「そうだね。知らなかったとはいえ、僕も空気を読め無さ過ぎたよ。行こうか?小猫ちゃん。もうすぐお昼だしね」

「・・・闇慈先輩とお母さんの手作り料理。楽しみです(私も先輩達に負けないくらい、闇慈先輩と・・・そのためにはもっと)」

小猫は一誠とアーシアの仲の良さに少し嫉妬したのか心で決意を固めていた。
そして午後の競技も終了し、結果は闇慈達のクラスが居る団体の優勝で終わった。こうして体育祭も無事に終了し、一誠とアーシアの進展も深まった。
 

 

第八十九話 鑑賞会


体育祭を終えた数週間後、闇慈達は一誠の豪邸でとある冥界アニメを観賞していた。

『ふはははは!遂に貴様の最後だ!乳龍帝よ!』

『何を!この乳龍帝が貴様ら闇の軍団に負ける筈がない!行くぞ!バランス・ブレイク!!』

この作品は『乳龍帝おっぱいドラゴン』と言う特撮作品で、冥界で絶賛放送中の子供向けヒーロー番組らしい。その人気振りは視聴者率50%を超える程だった。

「・・・始まってすぐに冥界で大人気みたいです」

闇慈の膝の上で猫の尻尾をフリフリさせながら小猫が説明する。

「小猫ちゃんって案外、冥界のテレビに詳しいよね?でもこの番組ってグレモリー家の人達が仕切っているんでしょう?これは凄く稼ぐ事ができるんじゃ?」

「・・・そうですね。それに闇慈先輩も出てますよ?」

「へっ!?」

闇慈が疑問の声を上げるとアニメの方で進展があった。
悪役に向かってダークネス・クロスに似た斬撃が飛んできて、それが見事に命中し、火花を散らした。そこには闇慈の死神姿とそっくりな人物が漆黒の大鎌を振り切った姿があった。そして主人公が声を張り上げる。

『またしても現れたか!!黒衣の死神!!貴様の目的は何だ!?』

『俺はただ平和を愛する・・・それだけだ』

主人公の言葉をそれだけ返すと、死神は悪役に斬りかかる。

「・・・先輩の設定はリアルでも同じ死神です。誰よりも平和を愛し、平和のために戦っている人です。主人公とは一緒に戦っている場面が多いですが、主人公はおっぱいのために戦っているため、それが平和を脅かす事になるかもしれないと監視も兼ねているそうです」

小猫の説明が終わる頃には戦闘も終わり、死神が主人公に何か告げている場面だった。

『乳龍帝よ・・・貴様は自分の欲望のために戦っている。しかし道を外した時は容赦はしない!!覚えておく事だ!!』

それだけを残すと死神は消えて行った。主人公のとなりには彼のヒロインを思わせる女性が立っていた。その女性はリアスと酷似していた。

『おっぱいドラゴン・・・』

『分かっている、スイッチ姫。何れ奴とも戦う事になるだろう・・・しかし俺は負けない!!世界中のおっぱいのために!!』

主人公の決め台詞と共にそのアニメは終了した。ここで闇慈が自分の感想を述べ始める。

「まさか、僕まで出ているなんて思いもしなかったよ。何で僕まで?」

「お前は冥界テレビでも有名になったからな。それ乗じて入れてみたら案の定、女性達にも大うけってわけだ。お前には感謝してるぜ?アンジ」

「まあ・・・良いですけど。アザゼル先生って何気に後先の事をよく考えているんですね。でも・・・スイッチ姫って何ヶですか?」

闇慈が『スイッチ姫』と言う言葉に首を傾げていたが、それを聞いたリアスは顔を赤面していく。
何でも一誠のジャガーノート・ドライブを解除しようとした時にリアスの胸で・・・と言うより乳首を一誠が触った事で解除されたらしく、それを見ていた美猴が『スイッチ姫』と命名したと祐斗が説明してくれた。

「・・・もう、冥界を歩けないじゃない」

「あはは・・・」

頭を抱えているリアスを見た闇慈は苦笑しか出来なかった。
イリナは、はしゃぎながら変身ポーズを取りながら言ってくる。

「でもでも!幼馴染みがこうやって有名になるって鼻高々でもあるわよね。そういえばイッセー君って小さい頃は特撮ヒーローが大好きだったよね。私も付き合ってヒーローごっこしたわ」

「確かにやったなぁ。あの頃のイリナは男の子っぽくて、やんちゃばかりしてた記憶があるよ。それが今じゃ美少女さまなんだから、人間の成長って分からない」

「もう!イッセー君ったら、そんな風に口説くんだから!そ、そういう風にリアスさん達を口説いていったのね・・・?怖い潜在能力だわ!堕ちちゃう!!私、堕天使に堕ちちゃうーーー!!!」

イリナが叫び声を上げると共に翼が白と黒に点滅し始めた。何でも、これが天使が堕天使になる前兆みたいだった。しかしそれを見たアザゼルは豪快に笑う。

「ハハハハ、安心しろ。堕天歓迎だぜ。ミカエル直属の部下だ。VIP待遇で席を用意してやる」

「いやぁぁぁ!!堕天使のボスが私を勧誘してくるぅぅぅ!!ミカエル様、お助けくださぁぁぁい!!!」

イリナはミカエルに助けを求めるように祈りを捧げているがゼノヴィアとアーシアが助言を入れる。

「でもイッセーさんやアンジさん・・・部員の方々が有名になるなんて自慢です」

「そうだな。私達、眷属にも良い宣伝になるからな」

確かにそれは良い意味でもあった。『おっぱいドラゴン』が放送される事によってグレモリーの名は一気に世間に広まり、その主役や重要人物もその関係者が関わっている。これほど宣伝になることはなっただろう。
そう言っている間に朱乃が一誠の背中に抱きつく。それ乗じて彼女の豊満な胸も一誠の背中に押し当てられる。

「イッセー君?イリナちゃんを仲良くするのも良いですけれど、約束を果たしてもらわないと困りますわ」

「約束?・・・ああ。ディオドラ・アスタロトの戦いの前に言ったあの事ですか?」

「ええ。勿論、叶えてくれますわね?私とのデート♪もしかして・・・ウソだったの?」

目元を潤わせて、一誠に尋ねる。

(あれをやられたら断るに断れないな・・・)

闇慈はそう思っていた。肝心の一誠も闇慈と同じ考えを持っていた。

「う、ウソじゃないです!!」

「嬉しい!じゃあ、今度の休日、私とデートね。うふふ、イッセー君と初デート♪」

朱乃は嬉しそうな顔をしていたが、一誠が好きな他の女性陣は嫉妬の表情を浮べていた。そして何かを企んでいるようだった。

(そう言えば、僕と小猫ちゃんって付き合ってからデートをやっていなかったな・・・今までの事も兼ねて誘ってみようかな?)

闇慈がそう心に決めると膝の上の小猫に尋ねる。

「ねえ、小猫ちゃん」

「何ですか?先輩」

「次の休日。僕達も何処かに遊びに行かない?」

「・・・それってデ、デートに誘ってるんですか?」

小猫は顔を真っ赤にしながら尋ねる。それを笑顔で闇慈が答える。

「うん。ほら最近、二人っきりで遊びに行ったりなかったでしょう?だから、行かない?」

「・・・嬉しいです!!私も行きたいです!!闇慈先輩と」

「決まりだね♪」

二人のやり取りを見ている他のメンバー達は見ていると仲の良さに微笑ましくなっていたようだった。
 

 

第九十話 交遊

 
前書き
大変遅くなりました!!投稿を再開します!!大学も今は夏休みに入って大分暇になってきたので更新は頑張れそうです!!ではどうぞ!! 

 
観賞会が終わり数日後の日曜日、この日の小猫は少しソワソワしていた。
それもそうだろう。今日は小猫が待ちに待った闇慈とのデートの日だ。そして小猫一人、鏡と睨み合いながら自分の服装を気にかけていた。

「・・・闇慈先輩とのデート。変に思われたくないから気合を入れないと」

小猫の衣服類は闇慈の家に来る前にお世話になったリアスの家からほとんど持って来ていた。そのため小猫の周りにはワンピースやら可愛いTシャツやらが散らばっていた。
下着姿の小猫は次の服に手を伸ばそうとすると・・・

「小猫ちゃん。そろそろ良いか・・・な・・・」

「っ!?」

闇慈があまりに遅い小猫を気にかけたのか部屋に入ってきた。しかしこの時闇慈の頭の中には二つの事柄が渦巻いていた。
一つは「謝罪」、ノックもなしに女性の、ましてや恋人の下着姿を見てしまった事による謝らなければと思っていること。そしてもう一つは「幸運」、不可抗力とは言え、恋人になってもあまり見ない小猫の下着姿に少し幸運を感じているみたいだったが・・・

「・・・何時まで見てるんですか?闇慈先輩」

小猫の少し殺気が入っている言葉にハッと我に帰ると・・・

「ご、ごめん!小猫ちゃん」

慌てて部屋から出ていった。しかし当の小猫も表情には出さなかったがドキドキしていたみたいだ。

(闇慈先輩って少し大胆になった?でもこんな格好を見られたのは、少し恥ずかしい)

その恥ずかしさが今になって出てきたのか小猫の頬には小さな夕焼けが出てきていた。
一悶着あった数分後、服を着た小猫は闇慈を部屋に入れると彼の意見を聞きながら服装を選んでいった。最終的には白を中心とした服を選び、闇慈は黒を中心とした服を装っていた。

「良し、行こうか?小猫ちゃん」

「はい!」

小猫も先程の闇慈の失態をこのデートで帳消しにしてすることを約束したので、闇慈も小猫に楽しんでもらうために気合を入れたみたいだった。
そして出かける事を優里に言うためにリビングに赴いた。

「それじゃあ母さん、行ってくるよ」

「あら、そう。楽しんでいらっしゃい!」

「行ってきます、お母さん」

「小猫ちゃんも楽しんでいらっしゃい。闇慈、小猫ちゃんをちゃんとエスコートするのよ?」

「エスコートって、ダンスじゃないんだから。でも小猫ちゃんと楽しい時間を過ごしてくるよ」

優里の言葉に闇慈は頬を掻きながらはぐらかしていた。

~~~~~~~~~~~

「あそこのクレープ、中々いけてたでしょ?」

「・・・はい。あんなに美味しいクレープ売ってる所が近くにあったなんて知らなかったです」

デパートでウィンドウショッピングやゲームセンターなどで二人の楽しい時間を過ごし、闇慈の行きつけのクレープ屋に小猫を案内して、二人でクレープを味わっていた。

「ここは小猫ちゃんとどうしても行きたかったからね。誘って良かった」

「・・・私としてはここを知らなかった自分がちょっと悔しいです」

「あはは。小猫ちゃんは甘い物が大好きだからね。それじゃあ、次の所に行こうか?」

「はい!」

小猫は小さい笑顔で答えると座っていたベンチを立ち歩き出そうとすると・・・

「ほっほっほ。今は猫又の娘と交遊中かの?黒衣の死神よ」

「っ!?」

闇慈は【黒衣の死神】という言葉が耳に入ると小猫を自分の背後に回らせ、その音源の方に軽い殺気を放ちながらゆっくりと向き合う。
【黒衣の死神】と言う闇慈の二つ名は知れ渡っているが一誠みたいな親しい人物はほとんどが名前で呼んでくれるためこの二つ名で呼ぶということはカオス・ブリゲードみたいな敵対関係の人物が近くにいると言う事を感じ取り、闇慈は殺気を放っていたが・・・

「そう怖い顔をするでない、儂じゃよ」

そこにはラフな格好していた老人が立っていたがその人物はかつて闇慈達を救ってくれた・・・

「オーディン様!?失礼しました!!」

北欧の最高神オーディンだった。闇慈はオーディンと認識すると慌てて殺気をしまい、謝罪を行った。

「まあ、お主が殺気立つのも分かるわい。カオス・ブリゲードといつ戦争になるか分からんこの時期にお主の二つ名で呼んだ儂にも非はある」

「ありがとうございます。それでオーディン様はどうしてこんな所に?」

「それはな・・・」

オーディンの言葉を遮り、スーツ姿の女性がオーディンの後を追ってきたの少し息を切らし、話に割ってきた。闇慈はその女性に見覚えがあった。

「オ、オーディン様!こんな所にいらっしゃったんですね!!いきなり居なくなるから驚きましたよ!?神様なのですから、少しはキチンとして下さい!!」

「やれやれ。お主がおると一人でノンビリと過ごす事も出来ん。そんなに生真面目ではお前の後ろの奴にも愛想尽かされてしまうかも知れないぞ?」

「時と場所を考えてくださいと言っているのです!それに私は・・・えっ!?」

オーディンと向き合っている女性、ロスヴァイセは闇慈達の存在に全く気づいておらず自分のペースで会話を続けていたがオーディンの言葉で闇慈の存在に気づくと・・・

「ア、ア、ア、アンジさん!?」

「やっぱりロスヴァイセさん!お久しぶりです!」

「お、お、お久しぶりです・・・」

「・・・」

ロスヴァイセは闇慈に以前告白に近い慰めを受けて、それを勘違いしているため闇慈の前では生真面目な戦乙女(ヴァルキリー)も一人の乙女になっていた。しかしそんなやりとりを小猫は少し気にくわないのかジト目でそれを見ていた。

「お元気そうでなによりです!でも、愛想尽かされるってどう言う・・・」

「ア、アンジさんは気にしないで下さい!!・・・そんな事よりどうしてハイスクールの二人がこんな所にいるんですか?家に帰って勉強なさい勉強」

ロスヴァイセは自分の気持ちを知ろうとする闇慈の疑問をそらすために別の話題を振ろうとしたが
・・・

「勉強も大切ですけど、こう言った機会も大切だと思いますよ?これは言うなれば『休息』みたいなものですよ、ロスヴァイセさん。貴女も働き詰めなどで体が疲れた時、次の仕事の効率を上げるために休息を取る事と思いますよ?真面目な貴女なら尚更ね」

「せ、正解です。でもどうして分かったんですか?アンジさん」

「僕とロスヴァイセさんは性格が似ていますからね。僕も同じような事をやっているんですよ。『良く学び、良く遊べ』、これが学生の基盤です」

「ほっほっほ。これはこやつに一本取られたの?ロスヴァイセよ」

「うーー。アンジさんのおっしゃる通りです」

ロスヴァイセは闇慈の反論に言葉が思いつかず白旗をあげる。オーディンもその風景を楽しそうに見ていた。

「ならば儂達は赤龍帝の小僧の所に行くとするかのう。お主も後で小僧の家に来ると良い。今はその娘との時間を大切にせよ。往くぞ、ロスヴァイセよ」

「あ、はい!ではアンジさん。また後でお会いしましょう」

そう言うと二人はその場から居なくなり、闇慈はほとんど空気扱いだった小猫と向き合う。

「オーディンさんにロスヴァイセさん、北欧の二人がいきなり来るなんてまた何か起ころうとしてるのかな?小猫ちゃん・・・小猫ちゃん?」

闇慈は小猫に問いかけるが小猫は口を少しとがらせ、ジト目で闇慈を見ていた。

「闇慈先輩。さっきの女の人と仲が良いんですね」

「えっ?・・・もしかして小猫ちゃん・・・嫉妬してるの?」

「っ!?」

ボコッ!!

「ぐはっ!?」

闇慈の小猫の嫉妬かと言う疑問を問いかけると小猫は顔を赤らめ、正拳を闇慈の鳩尾に軽く叩き込んだ。闇慈はいきなりの事で判断が遅れたためモロに入ってしまい、片膝を付き、軽くうずくまった。

「馬鹿な事を聞かないで下さい。それと今まで私を除け者にした罰でさっきのクレープを先輩の奢りで買ってきて下さい!!」

「まあ、それは悪かったよ。了解、買ってくるよ。それと・・・」

闇慈はダメージが回復したのか立ち上がるとクレープ屋に行く前に小猫の耳元で囁く。

「君の嫉妬してる顔・・・中々可愛かったよ?」

「っーーー!?」

闇慈は小猫が飛びかかってくる前に急いでクレープ屋に向かっていた。そしてその後も二人だけの楽しい時間を過ごしたようだ。



 
 

 
後書き
感想と指摘。よろしくお願いします!! 

 

第九十一話 交流会

 
前書き
ではどうぞ!! 

 

オーディンとロスヴァイセの訪問があった数日後、闇慈達は冥界に赴いていた。
冥界で今大人気のアニメ『おっぱいドラゴン』のファン交流で握手会とサイン会をグレモリー家の主催で執り行われていた。
そして闇慈も・・・

「どうぞ。応援、いつもありがとうございます♪」

一誠・・・おっぱいドラゴンのライバル、死神タナトスのモデルとなっているため、この交流会に参加しており、主に子どもと女性悪魔に人気なので長蛇の列が出来ていた。因みに服装もタナトスの衣装である黒を基本とした服でボロ衣のマントを羽織っていた。
そして一人、また一人と冥界語のサインを書いた色紙と、紳士スマイルを合わせた握手をファンに送っていた。

「ありがとうございます!これは宝物にしますね!」

「タナトスって怖いけど、とても優しい・・・本当に貴方のような方と会えて幸せです!」

「お兄さんって死神さんなのにあまり怖くないね。でもそんなお兄さんが大好き!!」

など子どもや女性悪魔を中心に大人気だった。闇慈は大変ではあるが悪い気持ちは一切持っていなかった。むしろ声援に応えるために笑顔を絶やさずにファンに執事として、有名人としてサービスを配っていた。
そんな中・・・

「だぁぁぁ!?こらっ!部長のおっぱいを触っちゃダメだーー!!それは俺のなんだぞーー!!」

一誠の声が響き、何事かと次のファンに一言断りを入れて、一誠の元に駆け寄った。

「イッセー?なにがあったの?」

闇慈の疑問にリアスが少し顔を赤らめ、自分の胸を両腕で隠しながら説明を始める。

「私がスイッチ姫の役って事は知っているわよね?そしたら一人の子どもが私の胸を突っついたの」

「なるほど。それでイッセーが怒ってたって訳ですか。イッセー、今はファンの人達にちゃんとサービスしないと折角来て貰ったのに悪いよ?」

「う~~。部長!後で触らせてくださいね!?」

「分かったからそんな大きな声で言わないでちょうだい!私だって恥ずかしいんだから!!」

欲望に誠実な一誠は自分の欲望をぶつけるがリアスは流石に恥ずかしいのか困り果てた顔で一誠に言い聞かせる。その後闇慈達はイベントが終わるまで気を抜かずにファン達に笑顔を振舞った。

~~~~~~~~~~~

「ふう・・・流石にあの人数は答えるよ」

イベント終了後、闇慈は休憩室で休息をとっていた。人数が人数らしく流石の闇慈も堪えたみたいだった。

「あんな人数を相手にしたのは初めて冥界に行った時のパーティ以来かも」

第五十六話、参照。
そんな中、一人のスタッフがタオルと飲み物を持ってやって来た。その人物は・・・

「アンジ様、お疲れ様です」

「ありがとう、レイヴェル」

ライザー・フェニックスの妹、レイヴェル・フェニックスだった。
レイヴェルは子どもの事が大好きなのかこう言った、子どもに夢を与える仕事は進んで手伝っているらしい。闇慈の優しい笑顔に顔を赤らめると・・・

「私は子ども達に夢を与える仕事を手伝いたいって事で、べつに貴方達のためではありませんわ!!勘違いなさらないよう、お願いしますわ!!」

そっぽを向きながら答える。闇慈はあははと頬を掻きながら、再び尋ねる。

「レイヴェルって子どもが大好きなんだね」

「ええ。子どもは素直で可愛いですわ。だから夢をもって大きくなって欲しいので私はこの仕事を手伝うことにしたのです」

「僕も同じだよ。僕とレイヴェルって気が合ってるのかもね」

相変わらずの褒め上手な闇慈である。それがこの先にどう影響されるかはまだ知る余地もなかった。
闇慈の言葉に浸っていたレイヴェルだがある事を思い出したのか闇慈に一枚の手紙を渡す。

「これは?」

「サーゼクス・ルシファー様からの直々の御達筆ですわ。アンジ様にお渡しして欲しいとサーゼクス様から頼まれたものですわ。本来ならば直々にお渡ししたかったのでしょうが、業務などでどうしても抜けられなかったみたいですわ」

「サーゼクス様からの手紙・・・」

闇慈は手渡された手紙を見据え、少し表情を鋭くする。
サーゼクスが闇慈にこう言った事をやってくるのは【あの事】だという事に闇慈は頭に過ぎらせていた。

「どうやら私は見ない方が良さそうですわね。私は他の方々の所に行きますのでアンジ様はごゆっくりと手紙に目を通して下さい」

「ありがとう」

レイヴェルは闇慈の事を察したのか他のメンバーの所に行くと言う理由でその場から立ち去ってくれた。
そして闇慈は手紙の封を解き、その内容に目を通すとその手紙をテーブルに置き、準備を始めた。
その手紙の内容は・・・

【闇慈君。本来なら君に直にあって話すべきなのだろうが、どうしても暇を取る事が出来ずにこんな形で伝える事になってしまい、申し訳ない。では本題に入ろう。まずは『アグニ&ルドラ』を手に入れた事を心から祝福しよう。その力をどう使うかは君次第だ。しかし、さらに力をつけたいと言うなら、冥界の首都『ルシファード』の北にある瀑布【アクエリア】に向かうと良い。最近の調査でその巨大な滝の裏に古代遺跡があるとの報告があり、その遺跡は魔具が封印されているという事だ。そしてその封印されている魔具の名は・・・】

「【ネヴァン】・・・か」
 
 

 
後書き
次回は新たな武器を手に入れるために闇慈が挑戦する場面です!!

感想と指摘。よろしくお願いします!!

 

 

第九十二話 雷刃

 
前書き
書いてみてなんですけど、R17,9位かもしれません。ではどうぞ!!

追伸・日間ランキングに入りました!!ありがとうございました!! 

 
「ここが冥界でも有名な滝【アクエリア】か。それにしても【ネヴァン】か・・・たしかケルト神話に登場する三人の勝利の女神の一人の名前だったような」

闇慈はサーゼクスから手紙を受けるとすぐに準備をしてこの場所に赴いた。
この場所は、雄大で幻想的な巨大な滝が流れている所で冥界でも有名な場所だった。例えるなら現代のアメリカとカナダの国境にそびえる【ナイアガラ】のような場所だった。
しかし今回は闇慈一人ではなかった・・・

「・・・どうして小猫ちゃんが居るの?」

「それは勿論、先輩が心配だからです。魔具を手に入れるためにこのアクエリアの裏にある遺跡に行くのでしょう?私も先輩の役に立ちたいんです」

どこから嗅ぎ付けたのかは分からないが闇慈の隣には小猫が猫又の状態で尻尾を揺らしながら闇慈の隣に立っていた。本来なら闇慈は心強いと感じ、一緒に来てくれと頼むかもしれないが魔具の入手の試練は半端ではないものと以前のアグニ&ルドラの時に痛いほど味わったため、少し顔をしかめた。

「小猫ちゃん。これから行く所は半端じゃない強さを持つ、敵のいる所だ。もしかしたら君をカバー出来ないくらいかも知れない」

「それなら尚更一人で行かせる訳には行きません。先輩だけ傷つくのは見てられません。それに私だって強くなったんですよ?甘く見ないで下さい!!」

(しまった。余計に小猫ちゃんのやる気に火を付けちゃった・・・火に油だったな)

闇慈は恋人を思う気持ちで小猫に言い聞かせようとしたがそれが逆に小猫のやる気を付けてしまうと言う逆効果に変わってしまった。こうなってはどうしようもないと感じたのか闇慈は小猫に無謀なことはしないと約束させ、滝の裏側を通り、遺跡の中に入っていった。

~~~~~~~~~~~

「やっぱり小猫ちゃんと一緒だったら前より楽に来れたよ、ありがとう」

「どういたしまして。でも闇慈先輩も流石です」

遺跡の探索を初めて一時間後、闇慈と小猫は最深部と思われる場所に来ていた。
道中は敵や罠が張り巡らされていたが闇慈の全てを見通す【真紅の魔眼】と小猫の猫又としての優れた嗅覚を元に罠を掻い潜り、敵もお互いをカバーし合いながらあまり傷を負わずに倒していった。

「小猫ちゃんは近距離タイプのインファイター。だから僕が援護に回れば、小猫ちゃんも安心して自分の戦闘に集中できたみたいで良かったよ」

「闇慈先輩のシャドゥ・ルーラーで敵を縛り、私が敵の剄を付く。素晴らしい作戦でした、闇慈先輩」

「どういたしまして。そしてここが最深部みたいだ・・・っ!?」

闇慈の言葉を言葉を遮り、二人の背後から無数の蝙蝠(コウモリ)が飛んでくるとそれが一つに集まっていく。そしてその中から赤い髪で上半身が半裸の状態の女性が出てきた。
闇慈は慌てて右手で視界を遮っていたが、小猫に至っては自分にないあるものにジト目で見ていた。

「いらっしゃい、坊やに小娘ちゃん。久しぶりに人に会えた気がするわ」

その女性は半裸状態のまま二人に近づき、観察し始める。しかし闇慈が視界を遮ったままその女性に注意を促す。

「あ、あの。好い加減、そのはしたない姿をどうかしてくれませんか?目のやり所に困ると言うか、その・・・」

「あら・・・意外とウブなのね、坊や。うふふ、良いのよ?もっと見ても」

「っ!?闇慈先輩に色目を使わないで!!」

女性が闇慈に対して近寄り、色気を出してきた事に腹を立てたのか、小猫が突っ掛るが・・・

「貴女に興味はないわ、小娘ちゃん。それにそんな『貧相』な体じゃ、この坊やを満足させる事なんて到底無理な話ね」

(あ~、小猫ちゃんが一番気にしている事を・・・)

ブチッ!!

何かが切れるような事がすると小猫が女性に向かって、飛びかかろうとするがその女性が右手で小猫を指差すと複数の蝙蝠が小猫に向かって飛びかかり、小猫を遮る。

「これくらい!!」

「・・・っ!?小猫ちゃん!!その蝙蝠達から離れろ!!」

「遅いわ、弾けなさい・・・」

闇慈が蝙蝠達に集まっていく力を感じ取り、小猫に離れるように警告を射ったが女性の声が響くと・・・

バリバリバリ!!!

「ぎにゃあああ!?」

蝙蝠達から高圧電流が放出され、近くに居た小猫はモロに放電を喰らい、壁際まで服に焦げ跡を残しながら吹き飛んだ。

「小猫ちゃん!!!」

闇慈は女性を跳ね除け、小猫の元に近寄り、安否を確認する。

「大丈夫!?小猫ちゃん!?」

「すみ・・・ません、先輩。油断・・・しま・・・し、た。これ・・・から『氣』を使って・・・」

「無理に話さなくて良いよ、小猫ちゃん。君が無事ならそれで良い・・・黒羽」

「はい」

闇慈は和服姿の黒羽を呼び出し、小猫を守るように促す。

「黒羽。小猫ちゃんを君の光で守れ、そして魔力の譲渡で小猫ちゃんの集氣法の手伝いをしてやってくれ」

「分かりました」

闇慈の要望に答えた黒羽は小猫の周りに無数の黒い光を出現させ、結界のようなものを作り、小猫を守り、両手を小猫の胸にかざすと自分の魔力を小猫に与え始めた。それを見た闇慈はセイクリッド・ギアを発動させ、デスサイズ・ヘルを担ぐと女性と向き合う。

「本来なら女性と戦うのは気が滅入るが、今貴様は俺の逆鱗に触れる事をした・・・貴様には容赦しない!!」

「あらあら。怒らせちゃったみたい、良いわよ・・・来なさい、坊や。遊んであ・げ・る」

女性は艶の入った声で闇慈を挑発したが今の闇慈にはそんなものは一切通用しなかった。

「そんな余裕が続くと思うなよ?さあ・・・貴様に『死』を見せてやる!!」

闇慈は【真紅の魔眼】を見開くと女性に向かって斬りかかったが女性は蝙蝠を操り、闇慈の行く手を遮る。闇慈はデスサイズ・ヘルで蝙蝠を攻撃するのは先程の小猫の二の舞になる感じ、ダークネス・クロスで斬り裂いていったがキリがなかった。

「ちぃ・・・なら!!」

闇慈は魔眼に逆五芒星を刻み込み、シャドゥ・ルーラーを発動させると女性の体を影で縛り付けた。

「あ、あん♪激しいわね。坊やはこう言った事が好きなのかしら?」

女性はシャドゥ・ルーラーの拘束を喰らいながらも余裕の表情を浮かべていたが闇慈はそんな事も一切に気にかけず。

「腕が封じられていれば、蝙蝠を操る事は出来まい!!」

闇慈は魔力を足に止め、移動速度を上げると一瞬で距離を詰めるとデスサイズ・ヘルで斬り掛ろうとしたが・・・

「甘いわ、坊や」

「っ!?」

今度は女性から力が集まっていくのを感じ取ると六枚の翼を出現させ、すれ違いに上空に飛び上がると・・・

ドガガアアアアン!!!

女性に向かって巨大な落雷が起こった。あのまま闇慈が斬りかかっていたら落雷の餌食になっていただろう。

「危なかった・・・」

「良い感をしてるわね?坊や。でも、ぐっ!?」

女性が言葉を次の言葉を発しようとすると女性の体に十文字の傷跡が浮かび上がり、片膝をついた。

「・・・何をしたのかした?坊や」

女性が地面に落ち立つ闇慈を見て気づいたものは、闇慈の武器がデスサイズ・ヘルからアグニ&ルドラに変わっていた。先程のすれ違いの際に脳波を通して、黒羽にアグニ&ルドラを呼び出して貰い、十文字に斬り裂いていたのだった。
デスサイズ・ヘルは大鎌で攻撃力も高いが隙が大きい、しかし双剣と両剣であるアグニ&ルドラはスピードは早く隙も少ない、ああ行った奇襲にはもってこいの武器だった。

「一矢報いたってやつだ」

「やるわね。なら今度はこっちから行くわ・・・逃がさないわよ?」

そう言うと女性は両手を広げ、地面を滑るように闇慈に向かって来た。

(何をやってるんだ?あれじゃ的にして下さいって言ってるみたいだ)

【【マズイ!!あれは!!主よ!!すぐに奴から離れよ!!】】

「えっ!?」

アグニ&ルドラの言葉が耳に届くが目の前には女性が迫っていた。闇慈は逃げようとするが・・・

「っ!?これは!?」

自分の足が影のようなもので取られており、身動きが取れなかった。

「貴方ほど上手くはないけど、私も影を近距離なら操れるの・・・さあ、坊やの味・・・味見させて貰うわよ」

「なに!?・・・むぐっ!?」

「「なっ!?」」

「ん・・・ちゅ」

女性の行動に回復を続けている小猫と黒羽は目を見開いた。その女性は闇慈に口づけを行ったのだ。周りの男性から見ればそれは羨ましいと思える状態だが・・・

「これ・・・は、くっ!離せ!!」

持っていたルドラで二人との間に小さな竜巻を起こし、切り離した。そしてその口づけを受けた闇慈は片膝をついた。

「闇慈様!?」

「大丈夫だ、黒羽。今のは口づけを通して相手の生命力や魔力を奪う技だな?」

「そう。坊やの味、中々美味しかったわよ?」

その証拠に先ほど闇慈がつけた十文字の傷も消えていた。
そう言うと闇慈はシャドゥ・ルーラーを発動させ、自分を囲むように操り、まるで卵のような形を取った。

「あらあら。籠城のつもりかしら?でもそんなもの破壊してあげるわ」

そう言うと再び、蝙蝠を操りながら電撃を放ち、影の殻を破壊していった。そしてヒビが入り、影が砕けった瞬間、女性は再び口づけを行うとした。

「楽しかったわよ?坊や。せめて、私のキスでゆっくり逝きなさい」

「「闇慈先輩(様)!!!」」

小猫と黒羽の叫びが響き、殻が砕け散ると・・・

「えっ!?」

口づけを行おうとした女性は驚愕の顔を浮かべた。何故ならそこに闇慈の姿は無かったからだ・・・

「どういう事!?坊やはどこに!?」

「・・・悪いが」

闇慈の声が響き、女性が上を見上げた頃には遅かった。

「俺の勝ちだ!!」

落下の勢いを乗せたデスサイズ・ヘルの斬撃が女性を襲いかかり、女性はのぞけって倒れようとしたが、デスサイズ・ヘルを消した闇慈がそれを素早く受け止める。

「優しいのね・・・坊や」

しかしそのチャンスを逃すまいと口づけしようとしたが闇慈の右手には小さな魔力の球体が出来ており、それを指で弾くとまるで銃弾のように女性の腹を貫いた。

「言ったはずだ・・・俺は容赦しないと」

「・・・せめて最後のあれはなんなのか教えて貰えるかしら?」

そう言うと闇慈は説明を始めた。
あの時、影の殻は闇慈全体を覆っていたように思えたが、実は女性の視界に見える【半分】を展開していたに過ぎなかった。簡単に言うなら女性に闇慈が殻【全体】をかぶったように見せるためのフェイクだった。そして禁手を使い、姿を消し、何もない後ろから脱出し、殻を破壊して口づけを行うとしたその隙をついて上空から奇襲をかけたという事だ。

「貴様の敗因は俺の能力を全て知ろうとせずに、大技をかけようとしたことだ」

闇慈の説明に女性は軽くため息をつくと・・・

「これはやられたわ。でも気に入ったから力を貸してあげるわ」

その言葉に闇慈はハッとなり、その女性を見据える。

「もしかして・・・貴女が【ネヴァン】!?」

「そうよ。貴方の力があれば私をうまく使いこなせるはず。楽しみにしてるわよ?坊や」

そう言うと女性・・・ネヴァンの体は雷に包まれ、消えていった。そして闇慈の手に握られていたのは・・・

「エ、エレキギター!?これが魔具!?」

紫を中心とし、弦は雷で出来ているエレキギターだった。しかし闇慈は今までギターを弾いた事がないため少したじろいでいたがここでネヴァンの声がギターから響く。

【慌てないで、坊や。これは蝙蝠を操る為の指揮棒みたいなものよ。音の量で蝙蝠の数を調整して、後はどんな風に蝙蝠を操りたいかを想像すれば蝙蝠達が動いてくれるわよ。あと、ギターって言っているけれど、この魔具は鎌よ。貴方の大鎌には及ばないけどそれなりの力を秘めてるわ】

「な、なんか独特の魔具ですね。しかし雷を操れて、鎌にもなるって言うのは便利ですね。では・・・」

闇慈は慣れない手つきでギターの弦を高速で弾き、一定量の雷を纏った蝙蝠が集まると・・・

「落ちろ!落雷!!」

最後の弦の弾きで、蝙蝠達を一気に放電させ、巨大な落雷を発生させた。当然、闇慈はネヴァンの加護のお陰で無傷だ。

「これは自衛能力が強いかも、しかも蝙蝠を敵に飛ばしてダメージを与えることも出来るから【オールラウンドタイプ】の魔具か」

ネヴァンは近距離・中距離・遠距離。この三つのケースに対応しているが・・・

「しかし範囲が大きいため仲間を巻き込んでしまう可能性があるって事が、考えながら使わないといけないって訳か」

【ごめんなさいね、坊や。雷から守ることが出来るのは契約している貴方だけなの。そこは考えて私を使って頂戴】

「そこはこれから慣れていきますよ」

闇慈はネヴァンを片手に持ち替えると小猫と黒羽の元に近寄った。

「小猫ちゃん。大丈夫?」

「もう大丈夫です、先輩。傷は氣でほとんど直しましたし、魔力も黒羽さんから頂きましたので問題ないです」

「そっか・・・黒羽。ありがとね?小猫ちゃんを守ってくれて」

「いえいえ。私も役に立てたので嬉しいです。また呼んで下さいね」

そう言うと黒羽は光となってその場からいなくなった。闇慈は小猫の手を取り、優しく起き上がらせるとAMCマントを小猫にかける。先程の雷撃で服はほとんど焦げていたため、闇慈が気を聞かせてかけてあげたのだった。

「それじゃあ帰ろっか?小猫ちゃん」

「その前に闇慈先輩・・・屈んで貰えますか?」

小猫の言葉に首を傾げながらもゆっくりと屈む。

「これで良いの?小猫ちゃ・・・むぐっ!?」

「ん・・・ちゅっ」

闇慈が屈んだ瞬間、小猫がこの瞬間を待っていたかのように闇慈に飛びかかり、唇を奪う。その拍子に闇慈は小猫に押し倒される形になった。

「あ、あの・・・小猫さん?どうして僕は押し倒されているのでしょうか?」

「・・・先輩。さっきキスしてました」

「あっ!?でもそれは不可抗力で!!」

「問答無用です!!覚悟して下さい!!先輩にキスして良いのは・・・私だけなんですから!!」

そう言うと小猫は再び、闇慈の口を塞ぎ、味わう。
闇慈も悪い気はしていなかったみたいだったのか、そのまま口づけを味わう。

(私を差し置いて見せ付けてくれるわね、二人共・・・でも微笑ましいわね。今は目を瞑っててあげるわ)

その光景をネヴァンはフウとため息をつきながら魔具を通して見ていたみたいだった。






「房中術もしてあげますよ?」

「それはここでは無理かもね」

 
 

 
後書き
その後の風景が見たければ、感想と指摘と一緒にお願いします!!

最近ガンダムビルドファイターズにハマってて、それの小説が書きたいと思っている黒神です!!
でももし書き始めたらまた【万死】が疎かになってしまいそうなので、少し悩んでいます。
見てみたいと思う方は上と同様に感想とお願いします!! 

 

第九十三話 悪神

ネヴァンを入手して数週間経ったある日、オーディンの護衛任務として彼と研究部+イリナの乗る馬車の上空で死神姿の闇慈は念のために外で待機していた。しかし闇慈には気にかかった点があった。

(あの、デスさん。北欧神話に登場する神の事を考えていまして。まずは最高神である【オーディン】と雷神、または最強の戦神と言われた【トール】・・・ここまでは良いです、でも後もう一人・・・悪神と呼ばれた・・・)

(ロキか?)

(ええ。何だかこの名前を今口にすると何だか胸騒ぎがするんですよ)

(碌でもないことを言うな、闇慈よ。お前の勘は恐ろしい程当たるからな)

デスの闇慈の言葉に褒めているのか馬鹿にしているのか分からずに、呆れていたがその瞬間、馬車を引く馬、スレイプニルが止まり、何かに怯えているようだった。
闇慈はスレイプニルの視線の先にあるものを捉えた。黒を中心としたローブを纏っており、そのローブの形はオーディンの正装によく似ていた。その事に闇慈は一つの事を頭に過ぎらせ、その男性に近づく。

「恐れながらお聞きしますが、貴方は北欧の神、ロキ様ですか?」

「いっかにも!我は北欧の悪神、ロキだ!そう言うお前は最近冥界で注目の的になっている【黒衣の死神】、黒神闇慈だな?」

「たかが一端の死神が北欧の神に名前を覚えられるなど、光栄でございます」

闇慈とロキが自己紹介を行っていると馬車に乗っている他のメンバーが出てくるとロキの姿に年配陣が驚愕の表情を浮かべていた。

「しかしながら、先程の攻撃は貴方のもので間違いはないのですね?」

「ああ。我らが主神殿が、我らが神話体系を抜け出し、他の神話体系に接触するのは耐え難い苦痛でね。こうやって邪魔しに来たのだ!!」

ロキの我が勝手な言動に周りは怒りを覚え、殺気を出してきた。

「言ってくれるじゃねぇか!!ロキ!!」

「これは堕天使総督殿、本来なら堕天使や悪魔などに会いたくはなかったのだが・・・ここでオーディン共々、我が粛清を受けるが良い」

「しかしロキ様、貴方は今、私達・・・他の神話に接触していまずがそれでは話が矛盾しています」

「なに、接触した所で滅ぼせば何の問題もない事だ、黒衣の死神よ。私は和平というのがどうしても気にくわなくてね」

本来なら他の神話に介入する事は罪な事ではないが、自分の神話にプライドを持っている者も居り、他の神話と混ざる事を嫌うことが多い。
それは闇慈も冥界の連中を見てきたので何となくわかっていたが・・・

「ロキ様。貴方の仰りたい事は分からなくはありません。しかしそれが、他の神話を滅ぼすと言う理由には到底及ばないと思いますが?」

闇慈の言葉にロキは口角を上げると魔力の弾を闇慈に向かって素早く撃つが、闇慈はそれを難なくAMCマントで弾く。再びロキを見据えるとロキは鋭い視線を闇慈に送っていた。

「口を慎め!死神の若造が!!貴様にわかるか!?我等が神話が何年の時を生き、語り継いできたか!?そこに土足で踏み込まれた我らの気持ちが分かるものか!!」

「・・・」

「ロキ様!!これは越権行為です!!主神に牙をむくなど!!異論は公正の場で述べるべきです!!」

ロキの言葉に沈黙を続ける闇慈を遮り、鎧を纏ったロスヴァイセが闇慈の隣に来るとロキに異論を唱えるが・・・

「一介の戦乙女が私の邪魔をしないでくれたまえ。私はオーディンに訪ねているのだ。このような馬鹿げた事をまだ続けると言うのか?」

「そうじゃよ。お主と居るよりサーゼクスやアザゼルと居る方が万倍も楽しいわい。日本の神道も知りたくての。和議を果たしたらお互いに大使を招き、異文化交流をしようと思ってた所じゃよ」

オーディンの言葉にロキは苦笑を浮かべると・・・

「なんと愚かな事か・・・ここで黄昏(たそがれ)を行おうではないか!!」

「北欧神話の黄昏・・・ラグナロク!!ここで戦争を引き起こそうというのですか!?貴方は!!」

「もはや貴様達に語る事はない!!ここで黄昏の贄となり、新しい時代の幕開けをあの世で見ていると良い!!」

ロキの宣戦布告にゼノヴィアとイリナは先手必勝と取ったのか聖剣のオーラをロキにぶつけるが何事もなかったように立っていた。

「先手必勝と思ったのだが、効いていないか・・・流石は北欧の神」

「良い攻撃だが、まだまだだな。たかが悪魔や天使の攻撃なぞ、そよ風に等しい!!」

ロキが二人に右手をかざし、魔力を貯めているのを一誠は感じ取ると禁手を発動させ、赤い鎧を纏い、高速で鉄拳をロキに当てようとしたが・・・

「中々のスピードだ。だが神である私を捉えるのはまだ足りん!!」

今度は留めていた魔力を一誠に向かってビームのように放つが闇慈が魔力と一誠の間に体を滑り込ませ、憑依・死神を発動させた後、ダークネス・クロスを放つと魔力を切り裂きながらロキに襲いかり、煙を上げる。

「流石にこれでは致命傷は無しか・・・」

「死神の斬撃か・・・少し効いたぞ?」

煙が晴れるとマントが少し削れているが大した事は無いように立っていた。

「赤龍帝と黒衣の死神はおろか、堕天使総督、魔王の血筋すらも相手にするのは少し分が悪い。しかし面白い!!そんな貴様らに敬意を評し、私の息子を紹介しよう!!いでよ!!我が愛しき息子よ!!」

(ロキの息子・・・巨人アングルボザとロキとの間に生まれた子供は三人、その中で男性は・・・まさか!!)

ロキが天に向かって叫ぶと空間に歪みが生じると一頭の10Mはある巨大な灰色の【狼】が出てくると闇慈達を見据える。その瞬間凄まじいプレッシャーが闇慈達に襲いかかる。闇慈はその狼を知っているのか顔をしかめ、歯ぎしりをする。

「まさか、こんな所で出会うことになるとはな・・・」

「アンジ。何なんだよ?あの狼は!?すっげぇ威圧感を感じるぞ!?」

【相棒・・・やつは出来るだけ避けたほうが良い・・・危険すぎる!!】

「おっさんがここまで言うなんて!?」

一誠の左篭手の宝玉からドライグの声が聞こえると闇慈はその狼の正体を確信した。赤龍帝とまでいわれたドライグがここまで怯える存在・・・神をも殺すとされる牙を持つ狼、その名も・・・
















神喰狼(フェンリル)・・・か!!」








 
 

 
後書き
感想と指摘。よろしくお願いします!! 

 

第九十四話 油断

 
前書き
遅くなりました!! 

 

ロキが呼び出した神喰狼(フェンリル)が現れた事によった、周りの攻勢が逆転してしまった。フェンリルには神をも噛み殺す事が出来る牙を備えている。赤龍帝やら他の上位クラスの面子が恐れるのも無理はなかった。

「フェンリル!?何なんだよ!?あいつは」

「神をも殺せる牙を持っている狼、フェンリルだ!!イッセー!!あいつ噛まれたら一環の終わりだと思え!!いくら強力な竜の鎧を着ていると言っても、奴から見たら布切れと同じようなものだ!!」

闇慈は声を振るい立てるように一誠に説明する。
フェンリルの詳細を知っている闇慈はこめかみに汗を流しながら、苦虫をかんだ表情を浮かべていた。一誠に説明はしていたがそれは自分にでも同じ事が言えた。
神をも殺せると言う事は言い換えれば、【誰でも容易く殺せる】という事になる。

(奴は牙だけじゃない・・・俊敏さも伊達じゃない程を備えているだろう)

「本来ならば北欧の者以外に我がフェンリルの牙を使いたくないが・・・まあ、良いだろう。息子に北欧以外の血を覚えさせる良い機会だな」

ロキのその言葉に一誠と闇慈はハッと悪寒が遮った。

「魔王の血筋・・・それを舐めるのもフェンリルの糧になるだろう、やれ」

二人の予感は的中し、その瞬間フェンリルが遠吠えを発すると神速のスピードでリアスに飛びかかったがそれより先にフェンリルの目の前には一誠が拳を引き絞っていた。さらにフェンリルの体の周りには無数の蝙蝠達が群がっていた。

「これは!?」

ロキはフェンリルに群がる蝙蝠達に少し驚いているようだ。闇慈は持っていたデスサイズ・ヘルを消し、ネヴァンを取り出すと弦を高速で弾き蝙蝠達を操っていた。

「「部長に触るな(んじゃねぇ)ーーー!!」」

一誠は右のストレートをフェンリルに叩き込み、その瞬間闇慈は蝙蝠達を一斉に放電させ強力な電撃を浴びせた。打撃と電撃にひるんだフェンリルは目の前の一誠から距離をとった。それを確認した闇慈はネヴァンを担ぎ、一誠に近寄る。

「イッセー!大丈夫か!?」

「ああ。大丈夫だ・・・それよりも部長!大丈夫ですか!?」

「え、ええ。イッセーが守ってくれたから大丈夫よ。それとさっきの放電はアンジなの?」

「はい。この魔具ネヴァンのおかげです!この武器はですね・・・」

闇慈が二人にネヴァンの説明をしようとした途端・・・一誠が血を吐いた。そしてよく見るとバランス・ブレイカー状態の一誠の鎧の腹部が大きく抉れていた。
闇慈はまさかと思い、フェンリルと見ると片足の爪が血で染まっていた。

「あ・・・れ・・・・?俺は・・・」

一誠はそのまま力尽きるように倒れ付した。

「「イッセー!!」」

闇慈とリアスは悲痛の声を張り上げる。一誠の周りには彼の血が流れ出ていた。
闇慈は即座に馬車の中で待機しているアーシアに大声で促す。

「アーシア!君のセイクリッド・ギアでイッセーの傷を癒せ!このままだとイッセーは死んでしまうぞ!!」

「はい!!イッセーさんは死なせません!!」

アーシアは癒しの力をオーラに具現させ、それを一誠に向かって放とうとするが・・・

「そうはさせん。赤龍帝、貴様の力はやはり危険だ。これを逃すわけにはいかん、いけ!フェンリルよ!!」

ロキは一誠の力を恐れたのかこの機会を逃すまいとフェンリルに一誠を殺すように指示を出すが闇慈はネヴァンからデスサイズ・ヘルに変えると憑依死神と明鏡止水を同時に発動させ、フェンリルに斬りかかる。

「やらせるか!!」

闇慈は魔力を足に留め、神速の速さで斬りかかるがフェンリルはそれを交わすが、体の一部に切り傷が入る。フェンリルは声を上げなかったものの、歯をガチガチと食いしばり、痛みに耐えているようだ。

「これなら!!」

闇慈はロキを他の人が抑えてくれているこの機会にフェンリルを倒そうと再び切り掛ろうとするが・・・

ズキッ!!

「グッ!?」

闇慈の片足に激痛が走り、動きが鈍った。見てみると片足から血が流れ出ていた。一誠よりは軽いがそれでもかなりの量が出ていた。

(俺のデスサイズ・ヘルを避けた時か・・・ちぃ!!)

闇慈は六枚の翼を広げると動けない事をカバーするが目の前にはこの瞬間を待っていたかのようにフェンリルがもう片方の足を噛み付こうとしてた。しかし牙が当たる瞬間、咄嗟の動きでダークネス・クロスをフェンリルの鼻に放った。
フェンリルは捉えてた闇慈の片足を完全に噛み付く前にダークネス・クロスを避けるが・・・・闇慈は完全に防ぐ事は出来ずにフェンリルの牙の先端を片足に受けてしまった。
それに伴い先程とは比べようのない血がもう片方の足から流れ始めた。

「グ!!フェンリルに噛まれた足に痛みがないが・・・動かせない・・・あの軽い噛み付きだけで神経と筋肉が切れたのか・・・もう少し遅かったら俺の足は食われてたな・・・だが」

闇慈は傷口を抑えながら解析していたが、フェンリルの方もダークネス・クロスを完全に避けることが出来ずに鼻に切り傷を負っていた。
敏感な鼻を傷つけられた事によってフェンリルは痛みに悶えてた。闇慈は失血による意識放出と戦いながら、フェンリルを見据えていた。

(来るなよ・・・今来られたら俺は満足に戦えない)

闇慈は魔力で傷を少しずつ癒していたが焼け石に水だった。歯を食いしばり耐えていたが、突然フェンリルが居なくなった。見てみるとヴァーリや美猴がロキと対峙しており、分が悪いと感じたロキはオーディン達に会談の日に再び現れる事を告げるとそのまま居なくなった。
闇慈はそれを確認すると気が抜けたのか六枚の翼が消え、地面に激突しそうになったが小猫が受け止める。しかし小猫の表情は焦りに満ち溢れていた。

「闇慈先輩!しっかりして下さい!!」

「小猫ちゃん。ゴメン、油断しちゃった・・・悪いけど、少し休ませ・・・」

闇慈は失血に耐えられなくなったのかそのまま項垂れるように意識を手放してしまった。

「先輩・・・?闇慈先輩ーーー!!!」 
 

 
後書き
感想と指摘。よろしくお願いします!! 

 

第九十五話 夜這

「はっ・・・知らない天井だ」

闇慈は失血で意識が飛んでどの位時間が経っただろう。闇慈は意識を取り戻し、自分が今どのような状況にいるのか確認し始めた。

(どうやら僕は何処かに担ぎ込まれて、治療されたみたいだな・・・輸血もされてるみたいだし)

闇慈が寝ているベッドの隣には輸血パックが吊るされており、左腕にはチューブが伸びていた。治療と輸血により体力は回復していたが・・・

(フェンリルに噛まれた足が全く動かない・・・こればかりはすぐには治らないみたいだな)

闇慈が噛まれた足を動かそうとしたがピクリとも動かなかった。生身は人間の闇慈は一誠や他の部員メンバーに比べて治りは遅いのは明確なことだった。
周りは暗くなっており、夜中だったので闇慈は二度寝をしようとすると・・・

「あら、お目覚めにゃん?」

「!?」

闇慈は聞き覚えのある声が耳に入ると警戒心を一気出す。そして腕を伸ばし、ステンドライトをつけ、その姿を確認した。その声の主は闇慈の恋人小猫の姉で、テロ組織【カオス・ブリゲード】の一員である黒歌だった。

「貴女は、黒歌さん!?どうして貴女が・・・」

闇慈は体が動かないものの、隣に座っている黒歌に魔眼の鋭い視線と殺気を放つが黒歌はこれを止めるように促す。

「そんなにピリピリするのは体によくにゃいにゃ。それに今は私達と貴方達和平派は協力関係にあるのにゃん」

「なんだと!?そんなデタラメを言うな!!」

「デタラメではありません、闇慈様」

闇慈と黒歌の会話に割って入ってきたのは闇慈の使い魔八咫烏の黒羽だった。

「本当なのか?黒羽」

「説明すると長くなりますが・・・」

~~~~~~~~~~~~

黒羽に説明を受けた闇慈はしばらく黙り込む。
まずはカオス・ブリゲード全てが協力するのではなかった。カオス・ブリゲードは幾つかの面子に分けられている。今回はヴァーリを筆頭とした面子が手伝ってくれると言うより、純粋にロキとフェンリルと戦ってみたいだけで、和平派が協力しなくても勝手にやるということだった。
しかし和平派はヴァーリ以外のカオス・ブリゲードの面子からテロなどの攻撃を受けていたため、それに備えて戦力を分散させる事は困難だと言う事もあり、利害が一致をしてるヴァーリ達と一時的に協力を結んだという事だ。

「しかし。カオス・ブリゲードが内通してるって可能性もあるけど?」

「それはないにゃ。お互いに干渉しないと言うのがカオス・ブリゲードの決まりにゃ♪」

ヴァーリの性格上、他者の力を借りて物事を解決しようとする性格ではないと察していた事と、メンバー本人である黒歌が言うのであれば間違いはないだろう。

「貴女がここに居る事は分かりました。しかし小猫ちゃんは連れて行かせませんよ?」

「この状態でも強がりを言えるなんて、よっぽど自分の力に自信があるという訳ね。やっぱり貴方は私の好みにゃん♪」

そう言うと黒歌は立ち上がり、動けない闇慈に跨るように・・・まるで押し倒したかのような体制を取る。

「な、何を!?」

「いやー、こんなチャンスを見逃すなんて私には出来ないにゃん。それに最近色々忙しくてご無沙汰だったし・・・貴方でリフレッシュしようかにゃーって事にゃ。ほらほら♪」

そう言うと黒歌は乱れている黒い着物の肩をさらにはだけるようにずらし、豊満な胸をみせつけるように闇慈を誘惑する。闇慈はそれにウッと一瞬見とれてしまったが、恋人の小猫の事を思い出し、すぐに我に帰った。

「ちょっと!!僕が動けない事いい事に!!それにこんな所を小猫ちゃんに見られたりしたら・・・」

「あら。白音ならそこいるわよ?」

「え”っ!?」

闇慈は黒歌を退けようにも力が完全に回復しているわけではなく、尚且つ片足が動けない状態ではどうしようもなかった。しかしここで追い打ちをかけるように黒歌の声に反応した闇慈は黒歌で見えない彼女の背後を見ると小猫が俯き、ピクピクと肩を震わせていた。

「闇慈先輩が心配で来てみたら・・・闇慈先輩、黒歌お姉さま・・・これはどういう事?」

「ま、待って!小猫ちゃん!!誤解だ!!これには深い訳が・・・」

「彼ってまだ傷が癒えてないでしょう?だから私が房中術で治して上げようとしてたのにゃん。彼は傷の治癒、私は快楽・・・利害一致で問題ないにゃ♪」

爆弾発言をなんにも気にせずに言える黒歌に闇慈は少し引き気味だったが、小猫は無言のまま黒歌を闇慈から少し横に退けると空いたスペースに自分も乗り込む。

「・・・房中術なら私だって使えます」

「あら、白音までやる気なんて珍しいにゃん。なら二人で仲良く味わうとするにゃん」

「ちょっと待てーー!!僕の意見は!?」

闇慈はどうにか二人を退けようとするが黒歌が闇慈の首筋を軽く突いた。すると突然、体が金縛りにあったように動かなくなった。

「体が・・・動か・・・ない!?」

「大丈夫にゃ。神経を一時的に痺れさせる秘孔を突いたにゃ。これで逃げる事は出来ないにゃん♪」

闇慈は逃げようとしたが先手を打たれてしまい、どうする事も出来なくなり、唯一の頼みの小猫に頼むことにした。

「小猫ちゃん!!頼むから助けて!!」

「・・・最近闇慈先輩とデートはしましたが、こ・・・これはやってなかったので・・・体の衝動で・・・闇慈先輩が無性に欲しいです・・・それに先輩には早く治って欲しいですから」

「なっ!?」

「にゃふふ♪頼みの白音もこれじゃあ、元も子もないにゃん♪それじゃあ・・・」

そう言うと猫又姉妹は闇慈に近寄り・・・こう言った。

「「いただきます」」

「NOーーーー!!!」

二人から迫られる事にどうしようもなく闇慈の悲鳴は響き渡った。 
 

 
後書き
この後の描写がみたいと言うなら、書きますので感想と一言労いと一緒にお願いします!! 

 

お知らせ=書けました

どうも黒神です!!

九十五話の後の話が掛けましたのでR18の方に投稿しました!!
本編はもう少し時間がかかりそうなので気長にお待ち下さい。

しかしR18は難しい・・・内容も全然興奮しないかもしれませんがよろしくお願いします!!

追伸)何方か、闇慈の絵を書いて下さる方はいらっしゃらないでしょうか?
   イメージとしてはD・グレイマンの【アレン・ウォーカー】の髪を茶色にしたイメージですね。そし
   て死神の時は髪が銀になって、眼光が少し鋭くなるイメージです。何方かよろしくお願いします!