国連宇宙軍奮闘記


 

プロローグ

 
前書き
にじふぁんで書いていたとき見た人いるかな? 

 
――西暦2199年5月10日――


西暦2199年、地球は今最後の時を迎えようとしていた。
8年前人類は歴史上初めて地球外知的生命体と接触。
友好関係を望んだ人類に対し彼らは一方的に戦争行為におよんだ。
21世紀の物理学者が唱えた警鐘が今、現実のものとなったのだ。
地球に侵略の手を伸ばす謎の異星人、『ガミラス』。
西暦2192年、地球に向けて灼熱に燃える巨大な岩石が地球へ向けて落下を始めた。
それは自然の物ではなく、地球生命の絶滅という意図を持った『ガミラス』から遊星爆弾による攻撃であった。
冥王星から撃ち込まれる遊星爆弾のため大気は汚染され、山からは緑が消え、青かった海は消えて荒涼とした赤い土地に変わり多くの生命が死に至った。
そしてついに地上から生命の灯火が消えたかに見えた。
だが、赤く乾いた地球でなお人々は地下に都市を築き上げ移り住み必死に生き延びながら、ガミラスへの抵抗を続けていたのである。
しかし、遊星爆弾による汚染の影響は地球全土に広がり、地下をも確実に犯し始めていたのだ。


――地球 国連軍司令部 司令室――


司令室に初老の男性が入ってくる。
「何か用ですかな、藤堂長官。」
藤堂長官と呼ばれたこちらもまた初老の男性が資料から目を離しながら答える。
「沖田君か、よく来た。」

着席を進められ座ると藤堂長官が話しだす。
「さて、君を呼び出したのは他でも無い、出撃だ。」
「敵の艦隊を迎撃ですか?」
首を振りながら答える。
「冥王星だ。」
「冥王星ですか。」
「ああ。」

太陽系第9惑星冥王星、そこには敵の前進基地が築かれ、そこから地球は遊星爆弾により情け容赦のない攻撃に曝されていた。

「作戦の意図をお聞きしたい。」
「遊星爆弾の発射基地の殲滅だ。」
「そのような表面上の理由ではありません!」
沖田提督が声を荒げる。
「分かっている筈です、冥王星に行った艦隊のその後を。」
「・・・。」

これまで何度か国連艦隊は冥王星の敵基地殲滅に乗り出していた。
しかし、そのどれもが文字道理の意味で殲滅させられていた。

「A-140号が最終段階を迎えた。」
「地球最後の人類脱出船ですか。」

人類は種の保存のため選ばれた人間を太陽系外に脱出させていた。

「宇宙に上がるのはいつ振りでしたかな?」
「A-127号以来だ。」

 敵の定期便により脱出船A-128号以降は地上で撃破されていた。

「なるほど、敵艦隊を誘い出し敵が艦隊を冥王星に引き上げている間に脱出船を発進させようという訳ですか。」
「・・・。」
「今度は太陽系脱出まで持ちますかな。」

宇宙に出られた脱出船もその殆どが天王星軌道以降で敵と戦い通信を絶った。

「A-140号は今までと違う。」
「拝見させてもらいましょう。」
藤堂長官が沖田提督に極秘と書かれた資料を手渡す。
「ふむ、超巨大艦に戦艦以上の装甲を施し武装は・・・ショックカノン!」
沖田提督が驚く。
「ああ、そうだ。」
「地上で開発中とは聞いていたが。」

ショックカノン、従来の荷電粒子砲では敵艦の装甲を貫通出来ないため開発された新型砲なのだが、発射に巨大なエネルギーが必要なため沖田提督の乗る『えいゆう』でも搭載が見限られた兵装である。

「機関部に大型対消滅エンジンを一基搭載しさらに小型の対消滅エンジンを二基搭載、これならショックカノンでも搭載可能でしょう。」

沖田提督も納得したような顔を見せる、が。

「これなら今までと大して変わりませんな。」
沖田提督が机に資料をおきながら言う。
「・・・少し待ちたまえ。」
藤堂長官が立ち上がり金庫からさらに資料を持ってくる。
「拝見します。」
手渡された資料を読む沖田提督だがだんだん顔の色が変わり、ぽつりと言う。
「・・・新型機関ですか。」
「敵艦に使われていたエンジンのデッドコピーだ。」
「この出力でデッドコピーですか!」

その資料には従来艦の対消滅エンジンが子供騙しに思えるような出力が記載されていた。

「このような出力のエンジン、よく隠しとうせましたな。」
「その数値は計算上だ。」
「・・・本当にこれほどの出力が出せるのですか?」
 沖田提督が怪しむ。
「確かに計算上だが、それに近い数値が出るはずだ。」
「実際にはいつ動かすのですか?」
「来週だ。」

「なるほど」
沖田提督が納得した顔を見せた。
「この新型機関を動かす時に敵の目を他に向けさせる、それが我が艦隊に課せられた使命ですか。」
「・・・済まない。」
藤堂長官が顔を下げる。
「藤堂中将。」
「何かね?」
 声をかけられ再び顔を上げる。
「国連残存艦隊は冥王星の敵基地破壊作戦に出撃します!」
「頼んだぞ、沖田少将。」


時に西暦2199年5月10日日本時間午後2時46分、地球最後の艦隊の出撃が決定された。
 
 

 
後書き
対消滅エンジンの設定は公式ではありません。
ご注意を。

 

 

最後の作戦会議

 
前書き
艦名は2199と違います。 

 
――2199年5月11日――
――地球 国連宇宙軍司令部 会議室――


「各員起立!」
沖田提督が部屋に入ってきたのを確認した近藤副長が全員に号令をかける。
「諸君、遠方からご苦労であった。」
 沖田提督が労いの言葉をかけつつ会議を始める。
「皆も知っての通り地球艦隊は出撃する。」
「遂に地球圏にも敵艦隊か。」
召集を受けた『さわかぜ』の艦長が呟く。
「いや違う。」
それに対し沖田提督が答えた。
「違うと言いますとどういう事でしょうか?」
予想されていた出撃に対し違うという事で疑問を感じた『くらま』艦長が質問をする。
「冥王星だ。」
「!!」

全員が驚きの声を上げる。
無理もない、と思いつつ話を続ける沖田提督。
「諸君も知っての通り遊星爆弾による被害は甚大である。」
「我々は地下都市を築き必死に生き延びてきたが、深刻なエネルギー不足に陥った。」
「これ以降はエネルギー不足により艦隊出撃は不可能となる。」
 エネルギーは無かった。
 いや、有るには有るがその残ったエネルギーは地下都市の維持と移民計画に回された。
 宇宙軍に残されたエネルギーはもう無かったのである。
「まさしく我々に残された最後のチャンスである。」
 沖田提督は一旦区切り全員を見回す。
「諸君の活躍に期待する。」


「あまりにも無茶です!」
 『あぶくま』の艦長が反対する。
「いくらエネルギーが無いとは言え自分からわざわざ死にに行くようなものです!」
『しまかぜ』の艦長が同意する。
「しかし出撃できなければ何もできまい!」
『きりしま』の艦長がそれに反論する。
艦長たちが口々に賛成や反対を口にする。


「沖田提督!」
「何かね?」
 『むらさめ』の艦長が質問し沖田提督が聞いた。
「出撃しなかった場合はどうなるのでしょうか?」
「!?」
艦長たちが驚く。
出撃しないという事は命令違反。
何の理由もなくできるものではない。
「ふむ、出撃しない場合は防衛計画が宇宙軍の地球圏防衛計画から陸軍の本土決戦計画に移行する、なお負けた場合も同様である。」
「!!」
再び艦長たちが驚く。
陸軍の本土決戦計画。
すなわち地球の下りてきた敵を殲滅する。
しかし実際は地下都市が敵の進行までの持つ保証はどこにもなく、かつエネルギー不足からあと2年持たないと言われている現状ではただ死を待つ計画と言えた。


「反対意見はあるか。」
近藤副長が艦長全員に聞く。
「・・・。」
宇宙軍に選択の余地はなかった。
「うむ、出撃は三日後の14日0600時である。」
「以上、解散!」
副官の号令で会議は終了した。


――地球 国連宇宙軍富士基地 第3ドック――


 そのドックには一隻の突撃艦が鎮座していた。
 M-21882式雪風型突撃艦『ゆきかぜ』
それが彼女の名前である。
前型であるM-21881式磯風型突撃艦に比べ対消滅エンジンは増強され全長は約20メートル伸び、そのエンジンパワーで前型を上回る装甲を身に着けた彼女がやってきたのは9週間前であった。
ボロボロになった彼女を物資とエネルギーが不足する中これほど綺麗に直ったのはドック長が優秀であるからに他ならないであろう。
ただ対消滅エンジンはパーツが無かったのだが…。

そんな彼女に一人の男性が近づいていた。
古代 守、階級は中佐。
この艦の艦長である。
古代が彼女を修理したドック長、真田志郎に話しかけた。
「どうだ、戦えるようになったか?」
「ん、ああ。」
真田は歯切れの悪そうに答えた。
「・・・そうか、3日後には出撃する。」
 古代と真田は同期だった。
 そして顔を見ればすぐに分かる仲だった。
真田の態度を見てすべてを分かった古代は話し始めた。
「冥王星戦線だ、ここで負けたら地球はもう後が無い。」

 それが真田と古代の最後の会話であった。
 
 

 
後書き
週一で更新中。 

 

地球最後の艦隊出撃

 
前書き
3回目にして更新を忘れかけた。 

 
――2199年5月14日――
――地球 国連軍中央病院――


「ん、ここは?」
真田はその日普段とは違う場所で目を覚ました。
記憶を辿ると確か自分は第3ドックに停泊している『ゆきかぜ』の機関部で対消滅エンジンの補修作業をしていた記憶にたどり着く。
それが何故かベットの上に寝かされていた。
「おー、起きおったか。」
 誰かに声をかけられたため起きようとすると白衣を着た男性に制止させられる。
「あー、まだ起きちゃいかん。」
目の前に来た男性に聞いてみる。
「あの、ここは?」
「中央病院じゃよ、お前さん疲労でひっくり返ったんじゃよ。」
「そうだったんですか。」
 ふと目線を横に向けると時計が14日の5時30分を指していた。
 5時30分?
 何かが引っ掛かり大慌てで記憶を辿る。
 そして思い出す、親友の出撃の時を。

 一気に起き上がる。
「だ、駄目です! まだ起き上がってはいけません!」
看護士に止められる。
先ほどの医者も大急ぎで戻ってくる。
「な、なんじゃ!」
「先生、親友が6時に出撃します。」
「駄目じゃ!今日は安静にせんと、お前さん特別訓練の受け取るんじゃろ!」
 前線に比べ後方はまだ、人間に余裕はあった。
 そのためドック長には35歳を超えたものが普通であった。
 いくら優秀でも28歳でドック長というのは若すぎた。
 しかし、突然特別訓練であると言われ第3ドックを任されたのである。
「今回は見送りはあきらめるんじゃ。」
医者が自分をベットへ寝かそうとする。
「それに今からじゃ第3ドックには間に合いませんよ。」
看護師も医者を手伝う。

 だが!

「古代は・・・冥王星に行きます。」
「!!」
医者と看護師が驚く。

医者が時計を見ながらポツリと呟く。
「・・・あの時計少し遅れているようじゃな。」
「え、時間は正しいですよ、佐渡先生。」
看護師が不思議そうに言う。
「原田君。」
佐渡と呼ばれた医者が原田と呼ばれた看護師に声をかける。
「はい。」
「第3ドックで儂の見ている真田君が過労で倒れたらしいので見に行ってくれんか。」
「!」
「あ、有り難う御座います!」
「さて暇だし酒でも飲むかの。」
「忙しくても飲んでいるじゃないですか。」
原田看護師に導かれ真田はその場を後にした。

佐渡先生は棚から一升瓶を出すとその酒をカルテにかける。
「ああ、酒をカルテの上にこぼしてもうた、まあまだ何も書いてある訳じゃないがの。」
佐渡先生は酒を飲みながら呟いた。


――地球 日本上空 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「後は『ゆきかぜ』だけです、沖田提督。」
「うむ。」
副官に言われつつ外を見る。
「まさか司令部がこれほどの航空隊を発進の援護に回してくれるとは思いませんでしたよ。」
「新型試作機までいますよ。」
 艦橋にいる人間が言う通りに各種航空機が艦隊の上空を回っていた。

――地球 日本上空 国連科学局所属 コスモゼロ――


『こちら加藤隊、異常無し!』
『こちら山本隊、こちらも異常無し!』
『こちら鶴見隊、異常ありません!』
『こちら篠原隊、異常なーし。』
『こちら山木隊、異常認めず!』
(各航空隊が異常が無いか神経を尖らせている。)
(発進中の艦隊ほど弱い物は無いから仕方は無いのだが。)
(まあこちらに接近中の敵艦など元からいないのだが、こんな時にこの艦隊が出撃する本当の理由を知っていると仕事に熱が入らないのな。)
(地球を逃げ出すための人柱の護衛か・・・。)
『試験隊! おい天野! 答えろ! おい!』
 どうやら俺の番だったらしい。
「こちら試験隊、長距離並び近距離レーダに異常無し、オクレ。」
『こちらも確認した、次回から早く応答するように。』
よりにもよって山南基地司令に直々に答えられた。
・・・後で怒られるな。



――地球 国連宇宙軍富士基地 第3ドック 『ゆきかぜ』艦橋――


「エネルギーケーブル、並び通信ケーブルカット!」
「エネルギーケーブル、並び通信ケーブルカットします!」
第3ドックでは発進準備が最終段階に来ていた。
「エンジン始動!」
「エンジン始動!」
古代の呼びかけに機関員が復唱する。
「機関部、異常は無いか?」
「ありません、ドック長に感謝したいですよ。」
 古代の問いに機関長が答える。
「残念だがドック長の真田は今病院だ。」
 親友は倒れるまで機関の調節をしたらしい。
 あいつらしいと言えばあいつらしいが。

「あれ?」
外を確認していた航海員が異変に気付く。
「どうした?」
古代が聞く。
「いえ、ドックに救急車が停車したんで。」
 外にいるドック員に何かあったのかハンドシグナルで尋ねる。
 するとすぐにドック員が何もないと返してきた。
「発進時の事故に対する備えでしょうか?」
 副官が意見を述べる。
 だが救急車から一人の男性が走ってきたのを見て納得した。
「あれ、真田技師長ですね。」
操舵主が言う。
「まったく、無茶をする。」
 だが嬉しそうに笑った。

――地球 国連宇宙軍富士基地 第3ドック 発進管制室――

「ドック長!」
「状況は!」
発進担当のドック員が驚きながら答える。
「はい、全ケーブルをカットしてあとは発進のみです。」
「遅かったか。」
もう話もできない状況になっていた。
「ドック長、艦橋を!」
真田が艦橋を見る。
古代がこっちを見て敬礼していた。
『ありがとう、行ってくる。』
そう言っている様な気がした。



――地球 日本上空 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「『ゆきかぜ』の発進を確認!」
レーダ員が言う。
「全艦の発進を確認しました、沖田提督。」
副官が沖田提督に言う。
「うむ、冥王星攻略作戦を開始する。」
一度区切り再び言う。
「全艦、冥王星に向け出撃!」
すぐに近藤副長が復唱する。
「全艦、冥王星に向け出撃!」

2199年5月14日日本時間午前6時00分、地球最後の艦隊が出撃した。
 
 

 
後書き
沖田艦長の声優だった納谷悟朗がお亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈り致します。 

 

辿り着くための選択

 
前書き
お気に入り登録、有り難う御座います。

お気に入り、コメント随時持募集中! 

 
――2199年5月15日 アステロイドベルト――
――国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』 作戦会議室――


「ふむ。」
沖田提督が資料を睨む。
資料には各艦の整備報告が記載されていた。
「これでは突撃戦は不可能ですね。」
副官の近藤大佐が同じ資料を見ながら言う。
 資料には対消滅エンジンの部品が不足し、最大出力は危険であると書かれた突撃艦が多数であった。
(機関部の部品不足はおそらくA-140号のせいだろうな。)
A-140には新型機関が搭載されていた。
その調整には手間がかかり、数多くの部品が捨てられていった。
その結果が多数の整備不良の艦であった。

突撃のできない突撃艦と戦力としては微妙の巡航艦、そして老朽戦艦で構築された艦隊。
それが今の地球の限界であった。
「突撃可能な艦は5隻か。」
「はい、巡航艦『あかし』、突撃艦『くろしお』『ひびき』『なみかぜ』『はたかぜ』の計5隻です。」
すぐさま近藤大佐が答える。
「5隻の艦長を呼び出してくれ。」
「はっ!」
沖田提督は決断した。


「何のご用でしょうか?」
今は珍しくなくなってきた女艦長である『ひびき』の艦長が質問する。
「うむ、こいつを見てくれ。」
「これは敵の哨戒網ですか?」
頭のよく回る『なみかぜ』の艦長がすぐに気付く。
「貴官らにはこれを撃破してもらいたい。」
「な、なぜです!」
納得できない『あかし』の艦長が叫ぶ。
「我々は冥王星に行ってはいけないのですか!」
突撃バカの『くろしお』の艦長がそれに続く。
「我が艦隊の突撃艦に突撃戦が可能なのは貴官らだけだからだ。」
それに対して沖田提督が答える。
「それなら尚の事我々を主力艦隊に!」
 それでも『くろしお』の艦長が食い下がる。
「逃げる哨戒艦を必ず仕留めるためには事が出来るのは突撃できる貴官らだけなのだ!」
沖田提督が反論を許さない口調で言い切る。

「つまり、主力艦隊は隠れて行動しなければいけない訳ですね?」
黙って聞いていた『はたかぜ』の艦長が聞く。
「ああ、そうだ。」
沖田提督が答えた。
「つまり、冥王星に着くまで主力艦隊は脇役。」
「?」
(つまり何が言いたいのだ?)と全員が考えた。
「つまり、我々が主役という事ですな!」
「!!」
『はたかぜ』の艦長が言い切った。

「主役が舞台に上がらない訳にはいかないな。」
 『なみかぜ』の艦長が言う。
「ついでにここ等辺で放棄された遊星爆弾警戒衛星も持っていくか!」
作戦を思いついた『あかし』の艦長が話す。
「敵にしてみたら哨戒網を再構築しているように見えるな、それ。」
『ひびき』の艦長が思ったことを言う。
「敵の哨戒艦が勝手に近づいて来るな!」
『くろしお』の艦長も言う。
「頼んだぞ、諸君。」
沖田提督が言うと全員が綺麗に敬礼した。


2199年5月17日 土星圏 国連宇宙軍突撃艦『くろしお』 艦橋


木星圏の哨戒艦を血祭りに上げた囮部隊は土星圏に展開していた。
「『あかし』より連絡『これより警戒衛星を作動される』です。」
通信士が報告する
「ここからなら天王星もレーダに映りますね。」
 副官が言う。
「ああ、敵は絶対につぶしに来るぞ、絶対に。」
「敵哨戒艦部隊がこちらに近づいて来る!」
レーダー員が報告する。
「よし、そいつらを血祭りに上げるぞ!」
「おおー!」
 士気は最高まで高まっていた。


木星圏 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』 艦橋


「データ来ました!」
こちらでも通信士が報告していた。
「予想以上の働きですね。」
近藤大佐が驚く。
「うむ、敵の哨戒艦は各個撃破されぬように数隻で固まって行動しているようだな。」
 沖田提督がレーダー情報を見ながら言う。
「これなら行けますね。」
近藤大佐も見ながら言う。
「全艦、冥王星に向け発進!」

地球最後の艦隊は敵に見つからずに冥王星まで駆け抜けようとしていた。
 
 

 
後書き
次回 冥王星の戦い!(前編)を予定。 

 

冥王星会戦(前編)

 
前書き
やっと第一話に追いついた。 

 
――2199年5月20日――


遂にここまで来た、それが地球残存艦隊の全員が思った事であろう。
 敵に見つかることなくこの冥王星まで来る事ができた、このことは奇跡と言って過言ではなかった。
 ただ敵に見つからなかったとは言え、出撃時は40隻を数えた地球残存艦隊であったが、アステロイドベルトまでに4隻が機関不調により引き返し、さらに囮艦隊として5隻を分離したため、今は31隻まで減っていたのだが…


――冥王星付近 国連宇宙軍・突撃艦『ゆきかぜ』艦橋――


「現在、冥王星軌道に20万キロの空間点。」
「戦闘配置!」
航海員の報告と同時に古代艦長が入ってくるのを確認した副官が戦闘配置を告げる。
「冥王星沖合に敵影無し!」
索敵員が報告する。
「凪いだ海です、怖い位だ。」
 状況は(嵐の前の静けさ)を思わせる静かさだった。
「発光信号送れ!」
 古代艦長の命令が静かに艦橋に響いた。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「先遣艦『ゆきかぜ』より発行信号“ワレ作戦宙域に突入セリ。”」
通信士官が声を上げる。
「両舷原則、黒15。」
 操舵主が『ゆきかぜ』の進路に続く様に進路を変更する。
「索敵班より“敵艦見ユ、艦影多数、右舷4時ヨリ近ヅク。”」
「電波管制解除、艦種識別。」
「電波管制解除!」
 索敵班の報告を受け電波管制の必要が無くなったと判断した近藤副長が命令し、それを乗員が復唱する。
「超弩級宇宙戦艦3、戦艦7、巡洋艦22、駆逐艦68!」
艦橋にレーダー士官の声が響く。

「…敵戦力はこちらの3倍以上か…。」
近藤大佐がつぶやく。
「副長、そのような言葉を口に出しては部下が不安がるぞ。」
沖田提督がそのつぶやきを注意する。
「は!すみません、沖田提督!」
(この状況では仕方はあるまいか…。)
「全艦戦闘配備。面舵30。砲雷撃戦用意!」
 沖田提督が手で謝罪を制止しつつ命令する。
「おもーかーじ!」
操舵主の復唱と同時に戦闘配備を知らせる警報音が艦内に鳴り響き、その音を聞いた乗員たちは素早く戦闘配備を整えていく。
「距離7500、相対速度変わらず。」
「敵戦艦より入電、“地球艦隊ニ告グ、直チニ降伏セヨ”…返信はどうします?」
 通信士が沖田提督を見ながらどうするかと聞く。
「“馬鹿め!”と言ってやれ。」
 沖田提督がそのままの姿勢で言う。
「は?」
 通信員は思わず聞き直す。
「“馬鹿め。”だ!」
 今度は沖田提督が振り向き、通信士を見ながら言った。
「はい! 地球艦隊より返信、“バカメ”」
内容を理解した通信士は嬉しそうな顔をして通信機に向き直り通信した。
「敵艦隊、通信妨害を開始!」
長距離通信機は妨害電波のため異音を発し始める、しかし通信士は満足そうだった。

「戦艦3、巡洋艦7、駆逐艦22隻が敵艦隊より分離、砲撃距離に入ります。」
「その程度で十分という訳か!」
「目にもの見せてやる!」
レーダー士官の報告に砲術員たちがいきり立つ。
「目標!敵戦艦、砲撃用意!」
 砲術士官が攻撃する艦を指示する。
「目標右プラス4、修正誤差22。」
「2番砲塔、誤差02!」
敵の砲撃が『えいゆう』のすぐそばを掠めていく。
「提督!」
 近藤大佐が砲撃の許可を求める。
「まだだ、この距離では当たらん、落ち着いて狙え。」
 沖田提督がその求めを却下しつつ砲術員に言う。
「敵艦隊、射程圏内に入った。」
「照準よろし!」
そして全ての数値が揃い砲撃可能を知らすランプが光った。
「全砲門開け、撃て!」
地球艦隊の砲撃が開始された。

「本艦の砲撃、命中!」
よく狙った結果だろう、砲撃は初弾から命中した、しかし…
「くそ!敵の装甲に弾かれた!」
 その固い防御フィールドを前に国連艦隊の攻撃は弾かれた。
「上部甲板被弾!」
「『ゆうぎり』轟沈」
敵の砲撃も遂に国連残存艦隊を捉え始める。
「突撃艦『くらま』より入電!『ワレ、航行不能』」
突然艦に衝撃が伝わる。
「突撃艦『あさぎり』・・・、轟沈しました!!」


――冥王星付近 国連宇宙軍・巡航艦『あしがる』甲板・索敵班員室――


観測員は敵を目視で確認するため甲板に配置されていた。
装甲に守られていないそこに味方艦の残骸が飛び込んできた。
「しっかりしろ、怯むな!ボーズ!」
熟練の観測員は経験で避けることができた。
「お、おかあさ…」
 しかし20になったばかりの新人は避け切れなかった。
「チクショー!」
 熟練の観測員の叫び声が虚しく響いた。



――冥王星付近 国連宇宙軍・巡航艦『あしがる』艦橋――


「艦長、『しまかぜ』が!」
副長が声を上げる。
見ると『しまかぜ』が敵の攻撃を被弾した影響で徐々にこちらに近づいて来る!
「回避急げー!」
 艦長がすぐさま命令を出すが…
「ま、間に合わない!」
 操舵主が叫ぶ。
「うわー!」
 その瞬間『しまかぜ』が『たかつき』に激突した。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「『たかつき』、『しまかぜ』と激突!」
「『あぶくま』撃沈!」
「『いそなみ』被弾、戦列を離れる!」
 通信士が艦隊の被害状況を報告していると、『えいゆう』に敵の砲撃が命中する。
「うわ!」
衝撃で席から放り出された乗員が悲鳴を上げる。
「各部損傷知らせ!」
近藤大佐が被害を調べさせる。
「艦尾損傷、シアンガス発生!」
「右舷第3デッキ被弾、機関水力低下!」
「3番荷電粒子砲、動力停止!」
次々に損傷が伝えられる。
「ダメージコントロール、隔壁閉鎖並び動力回路修復、急げ!」
近藤大佐が必死に艦を立て直そうとした。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』右舷第4デッキ――


 右舷第3デッキが被弾した影響で艦内の固定されていない物が流されていた。
 固定されていない物とは移動式の補修材に破損した部品、そして人間だった。
 彼は被弾の衝撃で死ぬことは無かったため必死に流されまいとした。
「待ってくれー!」
 だがそんな彼の前で無情にも隔壁が閉じた。


――冥王星付近 国連宇宙軍・突撃艦『ゆきかぜ』艦橋――


“ワレ操舵不能、戦列を離れる!”
“こっちの主砲じゃ歯が立たない!”
“『あたご』がやられた。”
“う、うわー!”
 通信機から味方の悲鳴が聞こえる。
「敵は圧倒的なようです。」
 通信は敵に艦隊がボロボロにされていることを告げていた。
「待ち伏せを受けたのか、転舵反転!」
 状況を理解した古代艦長がすぐさま命令した。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』機関室――


「消火班急げ!」
 機関員の声が響く。
「頑張れ、出力を維持させるんだ、プラズマ漏れに気をつけろ!」
機関長の徳川が全員に言う。
「親父さん、こっちは何とかしたよ。」
 すぐそばのハッチから出てきた機関員の薮が報告する。
「だけど出力低下が止まらないよ、このままじゃエンジンが…」
「大丈夫だ。」
 藪が弱音をはこうとすると徳川機関長がそれを遮り問題が無いように言う。
「え!」
 思わず藪が驚きの声を上げる。
「この艦は沖田提督の乗艦だ、沈まんよ。」
「それに、儂らが沈めさせるものか!」
「さあ、ぼやく為じゃなくどうするべきかのために頭を使え。」


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「沖田提督、味方艦艇の損耗率60パーセントに到達しました!」
「うむ。」
 報告を受けた沖田提督がうなずく。
「沖田提督、このままでは…。」
近藤大佐が複雑そうな顔をしながら言った。
(奴等にはこの船では勝てない。)
 
 

 
後書き
ご意見、ご感想待ってます。 

 

冥王星会戦(中編)

 
前書き
今回戦闘シーンが無いような。 

 
――2199年5月20日――
――地球 国連宇宙軍司令部――


「1200、第1艦隊は冥王星の沖合28万キロの宙域にて会敵した模様、戦況はいまだ不明。」
 通信士官が報告する。
「ここまでは予定通りだな。」
 藤堂長官が報告を聞き、作戦の主目標の進捗状況を尋ねる。
「新型機関の起動実験の方はどうだ?」
「地球周辺に敵影無し!」
「間もなく実験開始です!」
「うむ。」
作戦は順調に進んでいた。


地球 A-140造船所・新型機関実験室


 A-140に搭載される新型機関の始動実験が間もなく始まろうとしていた。
「新型機関にエネルギーを30%注入、完了!」
 計器を見ていた科学者が目標に到達していたことを告げる。
「新型機関始動!」
 それを聞いた主任が機関の始動を指示する。
 それにより機関が始動されたのだが…
「おいおい、始動しないぞ?」
 新型機関はうんともすんとも言わなかった。
「エネルギーを追加注入して機関を動かせ。」
 主任がさらにエネルギーを注入して無理やり起動させようとする。
「新型機関にエネルギーをさらに10%注入します。」
 新型機関にエネルギーがさらに追加されるとやっと機関が動き出す、が…
「どうした!」
「機関出力安定しません!」
「なに!」
 今度は機関が不安定に動き出した。
「原因を調べろ!」
 主任が指示を飛ばすとすぐに各部署から報告をあがってきた。
「機関各所で異常加熱が発生しています!」
「エネルギー伝導菅で融解や断裂が起きかけています!」
「たったこれだけの始動で!?」
 主任が驚きの声を上げる。
「待ってください、機関出力安定していきます。」
「なんとか安定してきたのか?」
機関が安定して動き出したのだが…
「た、大変です、エネルギー残量が残り5%を切りました!」
「は、速すぎる!」
「機関停止します。」
こうして機関の始動実験が終了してしまったのだった。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「正体不明の移動物体発見! は、速い!!」
レーダー士官が驚いた声を上げる。
「ミサイルか!?」
 すぐさま近藤副長がレーダー士官に聞く。
「違います、現在のコースだと艦隊のすぐ側を通過します!」
「なに!」
 すぐに高速の移動物体が艦隊のそばを通り抜けていく。
「あれは惑星間航行速度をはるかに超えている。」
 沖田提督が驚きの声を上げる。
「所属不明の移動物体は現在海王星を通過中、現在のコースで火星最接近まで約4時間!」
 レーダー士官が計算した結果を報告する。
「沖田提督、どうしますか?」
 近藤副長が指示を求める。
「…国連宇宙軍司令部にこの事を報告しろ。」
沖田提督は少し悩んでから命令した。


――地球 国連宇宙軍司令部――


「『えいゆう』沖田提督より入電、“所属不明の移動物体、火星に向かう!”」
「レーダーに捕らえました、所属不明の移動物体は火星に落下中、墜落します!」
レーダー担当の士官が報告する。
「落下予想位置測定!」
すぐに別の士官が命令する。
「極冠の崖の側です。」
「誰か近くに観測員はいるか?」
藤堂長官が訪ねる。
「はい、訓練中の学生が二人います、藤堂長官。」
「誰だ。」
藤堂長官はすぐさま聞き返す。
それに対し一人が名簿をめくりながら答える。
「古代進と島大介です。」
「役に立ちそうか?」
藤堂長官は再び聞き返す。
「特殊任務用に特別訓練中です、まだ完全ではありませんが十分にこなせるはずです。」
藤堂長官は目をつぶった後すぐに言う。
「よし、連絡しろ。」
すぐさま国連宇宙軍司令部から火星に命令が送られた。


――火星 観測基地――


「おい、このメーターちょっと変だぞ。」
メーターを言いながら古代が言う。
「そんな筈は無い、俺がちゃんと調整したからな。」
島が起こりながらそれに反論していると突然地面が揺れる。
「うわ!」
「なんだ!」
通信機が空電と共に唸りだす。
『地球司令部より指令、火星観測所所属観測員の古代進、並びに島大介、墜落した飛行物体の正体を確認せよ! 繰り返す、墜落した飛行物体の正体を確認せよ!』
「きっと今のだぜ。」
 島が先ほどの揺れの原因を判断する。
「冥王星の付近で戦闘中なんだ、どっちかの船が落ちたんじゃないか?」
 古代が飛行物体の正体を予測した。
「しかし、それにしちゃあ海王星からは距離がありすぎるぜ!」
 島がその予測に反論する。
「とにかく、確認してみるしかないな。」
「ちょっと待て、震度計が震源地を計測してる。」
 古代がヘルメットを取って機体に向かおうとすると、島がそれを制止する。
「どれ、ここからなら偵察機を使えば30分ほどで行ける距離だ。」
 計器を覗き込んだ古代が大体の予測を立てた。
「よし、行くぞ!」
2人は機体に乗り込んでいった。


――火星 極冠上空 95式偵察機コックピット――


「おい、古代! あれだ! 敵でも地球のものでもないぞ。」
 墜落した残骸を発見した島が驚きの声を上げる。
「よし、降りるぞ!」
「地表は起伏が激しい、気をつけろ。」
 操縦している古代に地表の様子を見た島が注意し、それを聞きながら古代は慎重に機体を操った。


――火星 宇宙船墜落現場――


「脱出ポッドみたいだな。」
 彼らの目の前には巨大なカプセル状の物体が墜落していた。
「宇宙船自体はあそこに墜落しているな。」
 宇宙船は大気圏突入後地面に激突し大破し、黒煙を上げている。
「それにしてもこの脱出ポッド、こうして見る限り敵でもましてや地球の物でも無いぜ。」
 その脱出艇は見たことも無い形をしていた。
「ああ、そうだな。」
 古代も同意見らしい。
「おい、このハッチ少し開いている。」
 二人で脱出カプセルを調べていると、古代が少しだけ開いているハッチを見つけた。
「開けるぞ!」
「気を付けろよ!」
 古代がハッチに手をかけるとすぐにハッチは開き、その中には人が乗っていた。
「どうだ?」
 島が古代に尋ねる。
「だめだ、生命反応0。」
 中にいた人間はすでに亡くなっていた。
「女、だよな?」
「ああ、きれいな人だ。」
 中で亡くなっていたのはきれいな女性だった。
「おい古代、腕に何か持っているぞ。」
 その遺体を見ていた島が手に握られているカプセルを拾い上げた。
「なんだ? 通信カプセルか?」
 そのカプセルを簡単に調べると信号らしきものが発信されていた。
「よし、回収して帰ろう。」
 彼らは一通り調べると報告のために観測基地に帰投した。
 
 

 
後書き
次回で冥王星は終了。 

 

2199年までの国連艦隊 艦船紹介

 
前書き
以前に感想で艦名について突っ込まれたので改めて考え直してみました。 

 
――M21691式栄光型宇宙戦艦――
国連宇宙軍の宇宙戦艦。
一番艦の『えいこう』以外に同型艦の『えいかん』、『えいゆう』がいる。
固い装甲を武器にガミラス艦隊相手に戦ったが冥王星会戦時まで生き残ったのは『えいゆう』ただ一隻のみである。

スペック
全長:205メートル
機関:大型対消滅エンジン 一基
速力:22.5宇宙ノット(最大速力)
兵装:艦首51センチ電磁投射砲 1基
3連装35.6センチ荷電粒子砲 4基
   艦首魚雷発射管 8門
   甲板ミサイル発射管 16門
   単装パルスレーザー 16基


 『えいゆう』
 M21691式栄光型宇宙戦艦3番艦
識別番号BB―255。
冥王星会戦時は、地球残存艦隊の旗艦として艦隊司令沖田十三少将が乗艦、艦隊の指揮を執った。
『えいゆう』は2199年の時点で、唯一現存している栄光型宇宙戦艦であり、国連宇宙軍で唯一現存している宇宙戦艦でもある。

――M21701式金剛型宇宙巡航艦――
国連宇宙軍の巡洋艦。
同型艦が多数建造された。
2199年まで16隻が残存していたが、冥王星会戦時に参戦できたのは12隻、参戦したM21701式金剛型宇宙巡航艦のうち生き残れたのは『こんごう』『くらま』を除いて全て撃沈された。

スペック
全長:152メートル
機関:中型対消滅エンジン 1基
速力:33.0宇宙ノット(最大速力)
兵装:艦首36センチ電磁投射砲 1基
3連装15.2センチ荷電粒子砲 3基
   艦首魚雷発射管 4門
   甲板ミサイル発射管 16門
   単装パルスレーザー 8基


『まや』
M21701式金剛型宇宙巡航艦7番艦
識別番号CC-707。
2191年に発生したガミラスとの初遭遇時には艦長の島大佐指揮のもと国連宇宙軍連合艦隊の先遣艦を務めた。
しかしファーストコンタクトは失敗に終わり『まや』は撃沈され、ガミラス戦役における最初の戦没艦となった。


――M21881式磯風型突撃艦――
国連宇宙軍の駆逐艦。
同型艦が多数建造された。
高い機動力を武器にガミラス艦隊相手に戦ったが冥王星会戦に参加した16隻が全滅した。

スペック
全長:86メートル
機関:小型対消滅エンジン 1基
速力:35.5宇宙ノット(最大速力)
兵装:3連装12.7センチ荷電粒子砲 2基
   艦首魚雷発射管 3門
   甲板ミサイル発射管 4門
   単装パルスレーザー 4基


『はるかぜ』
M21881式磯風型突撃艦11番艦
識別番号DD-711。
冥王星会戦時は、第3突撃隊の旗艦として山口中佐が艦長として乗艦、最終局面に敵艦隊に突撃を敢行した。
ガミラス艦隊に打撃を与えるも撃沈された、だがしかし敵艦隊を再編成のため一旦後退させることに成功した。


――M21882式島風型突撃艦――
国連宇宙軍の駆逐艦。
2199年までに17隻が建造された。
2194年に改良されたM21881式磯風型突撃艦。
冥王星会戦時に参戦した3番艦『はかぜ』と17番艦『ゆきかぜ』の両艦は共に撃沈された。

スペック
全長:104メートル
機関:中型対消滅エンジン 1基
速力:40.6宇宙ノット(最大速力)
兵装:3連装12.7センチ荷電粒子砲 2基
   艦首魚雷発射管 3門
   甲板ミサイル発射管 4門
   単装パルスレーザー 4基


『ゆきかぜ』
 M21882式島風型突撃艦17番艦
 識別番号DD-117。
古代守が艦長を務める艦で、冥王星会戦では先遣艦を務めた。
『はるかぜ』の突撃で損害を浴び後退して再編成中の艦隊に突撃、ガミラス艦隊を混乱させ同士討ちによる戦果を記録するも撃沈された。
後にエンケラドスに沈む本艦をヤマト乗組員が発見している。
 
 

 
後書き
ガミラス艦隊版も作ろうかな? 

 

撤退作戦

――2199年5月28日――
――火星 観測基地――


『火星観測基地所属の古代、並びに島訓練生、応答せよ。』
「こちら火星観測基地、島大介です。」
 日付が変わった直後に入った通信を当直だった島が受けた。
『現時刻をもって火星観測基地は破棄、訓練生は採取したデータ、並びに試料を持ち移動してくる戦艦『えいゆう』に合流、地球に帰還せよ。』
「了解、合流して地球に帰還します。」
 通信の内容は撤退だった。
『戦艦『えいゆう』が火星軌道を通過するのは3時間後の0300だ、注意せよ。』
 地球からの通信は注意事項を述べるとすぐに切れた。


――火星付近 95式偵察機コックピット――


「こちら火星観測基地所属の訓練機、収容願います。」
『こちら戦艦『えいゆう』了解、収容ハッチ開放。』
 島が通信すると『えいゆう』はすぐに収容ハッチを開いた、が古代は周りを見渡している。
「おい古代、収容ハッチが開いたぞ、何かあったのか?」
 島が何か問題があったのかを尋ねる。
「艦隊は・・・兄さんの船はいったいどうしたんだ?」
 95式偵察機は『えいゆう』に収容された。


――月付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「航路はどうだ?」
沖田艦長が艦橋に入ると言う。
「あ、艦長、お体は大丈夫ですか?」
 乗員の一人が怪我をしている沖田艦長を気遣った。
「早いものですね、あれからもう一週間ですよ。」
 近藤副長が沖田艦長に言う。
「ちょうど20時間前に火星軌道を離れ、もう間もなく地球周回軌道に入るところです。」
 航海士が地図を確認すると沖田艦長に報告した。
「そうか。」
 ボロボロの『えいゆう』はもうすぐ地球に帰還する。

「艦長、艦長が休まれている間に火星軌道で火星観測所勤務の訓練生二人を回収しました。」
 近藤副長が思い出したように報告する。
「訓練生?」
「はい、観測所で特別訓練中だった学生、古代進と島大介の二名だそうです。」
 沖田艦長が聞き返すと近藤副長は資料を見ながら言った。
「古代?」
 沖田提督の疑問は警報と共に打ち消された。

「どうした!」
 近藤大佐がレーダー士官に叫ぶ。
「遊星爆弾2、型式NM-3、コリジョンコース、右舷通過する!」
 レーダー士官がすぐさま報告した。
「総員戦闘配備!」
 『えいゆう』の艦内に警報が響き渡る。
「残存する全兵装をもって迎撃します!」
 近藤大佐が沖田提督に許可を求める。
「うむ、許可する。」
「攻撃準備完了!」
「撃て!」
 沖田提督の許可得て、準備が完了したことを確認した近藤提督は叫んだ。

「衛星軌道抜けた、速度変わらず。」
「くそ!」
 遊星爆弾は迎撃のかいなく地球に落下していく。
「だめだ、今はもう防げない、我々には遊星爆弾を防ぐ力は無い。」
 沖田提督がボソッと言った声が艦橋内に響く。
「もう間もなく大気圏です。」
 静まり返った艦橋で航海士が報告した。
「減速開始します。」
 操舵士が艦を操る。

「いつ見ても嫌な光景だな。」
 乗組員の一人が呟いた。
(この醜い惑星が、我々の母なる地球の姿だとはな。)
(かつてガガーリンは『地球は青かった』と言った、その美しい地球が・・・。)
(見ておれ悪魔め、儂は命ある限り戦うぞ、決して絶望しない、最後の一人になっても儂は絶望しない。)
 沖田艦長は赤くなった地球を見て決意を新たにした。
 

 

悲しい帰還

――2199年5月28日――
――地球 日本上空 国連科学局所属 ホワイトタイガー改――


「損傷が酷い、これは修理が大変だぞ。」
彼の横ではボロボロになった『えいゆう』が地上に向かっていた。
「修理ができれば、だがな・・・。」
国連宇宙軍には修理するだけの力はもうなかった。


――地球 国連宇宙軍横須賀地下基地 大型艦ドック――


「このドックは昔水で一杯だったそうだ。」
 島が連絡通路を歩きながらドックが完成した当時の事を話している。
 が、上の空の古代を見かねて島が聞く。
「古代、どうした?兄さんのことか?」
「兄さんの船、『ゆきかぜ』が先に帰っていないかと思ったんだが・・・。」
 ドックにいる艦は『えいゆう』の一隻だけだった。
「きっとほかの基地に帰還したんじゃないか。」
 島はそういうも古代の顔はまだ暗い。
「そうだと良いんだが・・・。」
「とにかく司令部に言ったら細かい事も分かるだろ。」
 島はとにかく前に進もうとしている。
「どうせ司令部にはこの火星で採取した試料を届けないといけないんだし。」
 島は両手に抱えたトランクを見ながら言った。
「そうだな。」
 古代も同意する。
「よし、それならトランクを持つのを代われ。」
 島は手に持ったトランクを古代に手渡そうとする。
「島の担当は地下都市連絡列車までだぞ。」
 古代はそれを拒否しながら言う。
「結構重たいんだよ、このトランク。」
 島が愚痴を言い始める。
「ジャイケンで負けたんだ、諦めろ。」
 それをスパッと切ると古代は歩き出した。


――地球 地下都市連絡列車――


「汚染は地下1キロまで来ているな。」
 汚染計を見た古代が言う。
「このままのペースだとあと1年で人類は絶滅してしまうぞ。」
 肩で息をしていた島も汚染計を覗き込みながら言った。


地球 国連軍司令部 士官室
「高須大佐、火星観測基地所属の少尉二名をお連れしました。」
 案内していた兵士が言うと中にいる高須大佐が答えた。
「入れ。」
「は、失礼します。」
 古代たちは部屋に入った。
「こちらが火星で謎の宇宙船から採取したデータと試料です。」
 古代がトランクを開けながら言う。
「ふむ、これが報告に在った例の通信カプセルか?」
 士官がカプセルを手にしながら言う。
「はい、おそらくそうだと思われます。」
 島が高須大佐に答える。
「恐らくとは?」
 今度は古代が答える。
「は、火星観測基地の調査機器ではそれが限界でした。」
 もう一度報告書に目を通した高須大佐は古代たちに向きなおす。
「いや、よくやった、もう一人前だな、受け取りたまえ。」
「これは・・・中尉でありますか。」
高須大佐に手渡されたのは中尉の階級章だった。
「そうだ、このたびの火星での特別訓練、並びに謎の宇宙船の調査、国連軍はこれらの功績から貴官ら二名を中尉とする判断を下した。」
「は、有り難う御座います!」
 高須大佐に対して敬礼しながら答える。
「久しぶりの地球だろ、今日は二人ともゆっくり休め。」
「は!」
 高須大佐に言われて二人は士官室を後にした。


――地球 国連軍司令部 休憩室――


「「いたいた、おーい相原。」」
 古代と島が声をかけると相原が振り返った。
「あ、古代さんに島さんか、何か用?」
「いや、火星から帰ってきたから。」
その後世間話をした後古代が本題を切りだす。
「『ゆきかぜ』がどうなったかを調べられるか?」
「『ゆきかぜ』?」
相原が聞き返すと古代が答える。
「兄さんが乗っていたんだ。」
 ちょっと待ってというと相原が端末を操作しだす。
「『ゆきかぜ』は行方不明、古代守艦長以下26名はMIA・・・。」
MIA、すなわち戦闘中行方不明。
「おいどういう事だ、それ?」
「これしか書いてない。」
 古代が相原から端末をひったくる。
「・・・本当だ。」


――地球 地下鉄道――


「記録が無いならこれ以上は調べられないか。」
 島が言うと古代が答える。
「沖田提督に会って直に確かめる。」
「お、沖田提督に聞くってどうするんだ、どこにいるかもわからないんだぞ?」
 島が驚きながら言うと古代は冷静に言い返した。
「沖田提督は怪我をしていた、きっと司令部の病院区画に行ったんだ。」


――地球 国連軍病院 病室――

「沖田提督、兄の船はどうしたんでしょうか?」
「君は?」
「古代守の弟、古代進です。」
「古代君の!そうか…。」
「古代君は男だった。」
「え!」
「勇敢な男だった、しかし彼はもう戻ってこない。許してくれ。」
「兄さんが!」
「無駄死ににはさせん!」
「どうして兄さんを連れて帰ってくれなかったんですか、艦長」
「すまん。」
「古代、いつか宇宙に出てきっと敵を討とうぜ!」