ドーナツ大敵


 

第一章

               ドーナツ大敵
 小学五年生の秋本詩音は大きな黒く丸い目と丸めの顔にピンクの小さな唇とポニーテールにした黒髪が印象的な可愛い娘である。趣味はダンスでダンススクールにも通っている。
 その詩音のクラスメイトに谷田真理愛がいる、真理愛はやや茶色がかった髪の毛をショートにしていてアーモンド形の目で細い眉と猫を思わせる唇を持っている。背は二人共同じ位だ。
 真理愛はスイミングスクールに通っている、以前は太っていたが今はかなり痩せている。それで詩音は真理愛に尋ねた。
「痩せたのってスイミングスクールに通ってから?」
「あっ、違うの」 
 真理愛は詩音の問いに答えた。
「最近ドーナツ食べない様にしたの」
「そうだったの」
「実はうちは毎日おやつドーナツだったの」
 このことを言うのだった。
「お母さんが私が好きだっていうから」
「買って来てくれたのね」
「そうなの、けれどね」
 それがというのだ。
「ドーナツってカロリー高くて甘くて」
「ああ、揚げてるしお砂糖沢山使ってるし」
「小麦でね」
「物凄く太るわね」
「そうしたものだから」
 それでというのだ。
「私も太ってたしね」
「それでなの」
「私が痩せようかしらって言ったの」
「そうだったの」
「そうしたらね」
 真理愛は詩音にさらに話した、二人は今クラスで話しているのだ。
「この通りね」
「痩せたのね」
「そうなのよ」
「痩せたと思ったら」
「そう、ドーナツを食べなくなったら」
「そんなに痩せるのね」
 詩音は真理愛の話を聞いてこの時は本当かしらと思った、だが高校になって洋楽それも二次大戦後のアメリカのロックに興味を持ってだ。
 エルビス=プレスリーに興味を持って彼の曲を熱心に聴いて彼のことを調べているうちにあることを知ってだった。
 高校でも同じである真理愛にだ、一緒に昼食を食べている時に言った。 

 

第二章

「真理愛ちゃん小学校の時毎日ドーナツ食べるの止めたら痩せたわよね」
「ええ、今はたまに位よ」
 真理愛は痩せたままだ、二人共高校生に成長してその可愛さも身に着けている。
「お菓子は好きでドーナツもだけれどね」
「太らない様に注意してるのね」
「水泳しながらね」
「私もダンス続けてるしね」
「お互い運動してるわね、それでね」
 詩音は真理愛にあらためて話した。
「今私プレスリーの曲お気に入りでよく聴くけれど」
「ラブミーテンダーとか」
「そう、それであの人の若い頃の写真がこうで」
 自分のスマートフォンにプレスリーの画像を出して話した。
「晩年はね」
「また太ったわね」 
 真理愛は二つの画像を見比べて言った。
「これは」
「そうでしょ、何でもドーナツの食べ過ぎで」
「そうなったの」
「そうみたいよ」
「そうなのね」
「いや、プレスリー見てもね」
 詩音もその画像を観つつ話した。
「わかるわね」
「ドーナツは食べ過ぎると太るのね」
「この人はもう他のものは食べなくなって」
 そうしてというのだ。
「いつも傍にドーナツがある」
「そんな風でなの」
「ここまで太ったらしいわ」
「そうなのね」
「いや、ドーナツ私も好きで」
「美味しいのは事実ね」
「けれどカロリーが滅茶苦茶高いことはね」
 このことはというのだ。
「本当にね」
「用心が必要ね」
「そうよね」
 高校生になってよくわかったことだった、詩音は真理愛にこのことを話した。小学校の頃の彼女だけでなくプレスリーのことも調べてのことだ。
 詩音も真理愛もドーナツは好きだが食べるにあたって気をつけていった、ドーナツは確かに美味しい。しかしカロリーが高くそれがもたらすことも知ってのことである。


ドーナツ大敵   完


                    2023・8・16