Labyrinth


 

第一章

                Labyrinth
 私の友人の趣味は迷路を解くことだ、学校でも時間があると迷路の本をわざわざ買ってそれで解いている。
 今の二限目の後の休み時間もそうしていて私は彼女の前の席に座って迷路を解くのを見ながら尋ねた。
「どんな調子?」
「難しいのを買ったからね」
 だからだと、友達は私に笑って答えた。
「やりがいがあるわ」
「それは何よりね」
「やっぱり迷路を解くことはね」
「頭の運動になって」
「しかも楽しいからね」
「いいのね」
「お年寄りにもお勧めよ」 
 笑ってこうも言ってきた。
「これはね」
「ああ、アルツハイマー防止ね」
「その為にもね」
「いいのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「皆やるきよ」
「あんたみたいになのね」
「幼稚園の頃からやっててね」
「高校生になってもなのね」
「こうしてやってるのよ」
「そうなのね」
「本のを解くのも好きだけれど」
 それだけではない、この娘の迷路好きは本物だ。
「ゲームでもね」
「RPGにダンジョンは付きものだから」
「よくやるわ、3Dタイプもね」
「本当に迷路好きね」
「だから頭使って苦労して先に進んで」
 迷ったりもしながらだ、RPGだと敵が出て来るし罠だってあるしその分だけややこしいことになる。
「それでなのね」
「そう、ゴールすることがね」
「好きなのよね」
「大好きよ、本当に皆でして」
 そうしてというのだ。
「頭の運動して頭をよくすればいいのよ」
「常に頭を動かしていると」
「そう、その分ね」
「頭がよくなるっていうわね」
「あんたもしてみたら?」
「私はいいわよ」
 部活の陸上部で身体を動かしたり本を読む方が好きだ、今は赤毛のアンを読んでそうして楽しんでいる。
「迷路はね」
「そうなのね」
「けれどあんたは相変わらずよね」
「今度はね」
「今度は?」
「テーマパークに行って」
 そうしてというのだ。
「迷路に行くわ」
「そういえば何か面白い迷路が出来たテーマパークあったわね」
 私達が住んでいる場所の近くにだ、近くといっても関東にいるともうテーマパークも何処でも電車ですぐだ。 

 

第二章

「それじゃあ」
「そう、そこに行って」
 それでというのだ。
「楽しんでくるわ」
「本当に迷路好きね」
「あんたも行く?」
「テーマパークは好きだけれど」
 私もそうした場所自体は嫌いじゃない、ただ迷路となるとだ。
「興味ないわ」
「そうなの」
「あんたが迷路に行くのなら」
 私はこのことは絶対だと思いつつ彼女に話した、今の言葉だと一緒に行くことが前提になっていることにも気付きながら。
「私はね」
「どうするの?」
「観覧車の方に行ってね」
「景色見て楽しむの」
「そうするわ」
 こう彼女自身に伝えた。
「そうするわ」
「ロマンチックね」
「一人で観覧車乗るのも好きだから」
 私自身としてはだ、友達や彼氏と一緒なのもいいけれど一人で静かに観覧車のゆっくり動く中で景色を観ることも嫌いじゃない。
「だからね」
「それでなのね」
「ええ、それもね」
 こう彼女に話した。
「嫌いじゃないわ」
「じゃあ私が迷路に行っている間に」
 一緒に行くという返事だった、彼女にしても。
「観覧車楽しんできてね」
「それじゃあね」
 二人で話してだ、そしてだった。
 私達は実際に二人で新しい迷路が出来たというテーマパークに行った、暫くは二人でお化け屋敷やバイキングやジェットコースターといったテーマパークの定番を楽しんでそれからだった。
 お昼のハンバーガーを食べてからだった、友達は私に行ってきた。
「これからいよいよね」
「迷路ね」
「行ってくるわね」
「じゃあ私はね」
「やっぱり迷路行かないのね」
「興味ないから」
 積極的に行こうと思わない、だからだ。
「別にいいわ」
「そうなのね」
「だからね」
 本当にそれでだった。
「それでいいわ」
「そうなのね」
「じゃあ観覧車行って来るから」
 私は彼女にあらためて話した。
「その間にね」
「ええ、迷路行って来るわね」
「それじゃあね」 
 こうした話をしてだった、私達は一旦別れてそうしてだった。 

 

第三章

 私は観覧車の方に行って彼女は迷路の方に行った、私は一人観覧車に乗って上に昇っていく景色を楽しんだ。
 テーマパークが一望出来る、私達が午前中遊んだお化け屋敷もバイキングも豆粒みたいだ、ジェットコースターが動いているのも小さく見える。
 その光景を見ながら私は彼女は今迷路の中を楽しんでいるのかしらと考えた、ぼんやりとだがそう考えた。
 そしてだった、観覧車が一周して降りると。
 私は迷路の方に行ったけれどまだ彼女は出ていなかった、待ち合わせ場所はそこにしたけれどまだだった。
 スマホで状況を聞こうと思ったけれどそれも野暮だと思ってしなかった、それで迷路の前のベンチに座って赤毛のアンを読んでいると。
 十分位して出て来た、それで私に言ってきた。
「待った?」
「十分位ね」
 本を読むことを止めて彼女に答えた。
「それ位だったわ」
「そうだったの」
「ええ、ただもっと早いと思っていたけれど」
「難しい迷路だったから」
 それでとだ、彼女は私に笑って答えた。
「だからね」
「ゴールに到着するまで遅れたのね」
「そうだったの」
「成程ね」
「その分楽しかったわ、じゃあ次は何処に行くの?」
「そうね、次はゆっくりした場所に行きましょう」
 友人は迷路の次はと私に笑顔で提案した。
「そうしましょう」
「じゃあメリーゴーランドに行く?」
 私は提案に提案で返した。
「そうする?」
「そうね、じゃあ次はね」
 友達も私の提案に頷いた、そのうえで私に言って来た。
「そっち行きましょう」
「それじゃあね」 
 二人で今度はメリーゴーランドに行った、迷路を楽しんだ友達はすっきりとした顔でテーマパークを楽しみ続けた、そうしてだった。
 二人で一緒にテーマパークを出た後で友達は私に本屋に寄ろうと言ってそれならと応じた私と一緒に本屋に入って迷路の本を買った、そんな彼女を見ていつも買っている雑誌を買った私はやっぱりと思って笑顔になって家に帰った。そして次の日また学校で迷路の本で楽しんでいる彼女を見てまた笑顔になった。


Labyrinth   完


               2018・11・4