ロックマンX~5つの希望~


 

第一話 アクセルSIDE1

 
前書き
X7始動。
アクセルSideから行きます。
 

 
星1つ見えぬ夜であった。
月はなく、代わりに輝いているのは高層ビルの照明であった。
青白い光が街を包み、ぼうっと浮かび上がるように見せている。
そのビル街を縦断せんと造られたハイウェイがある。
かつて史上最強のイレギュラーハンターが反乱を起こした時、壊滅的な被害を受け、今ではすっかり元通りの高速道路だ。
その道路の下には厳重な関門があった。






































序盤はレイ・トラップ。
次にランナーボム(爆破任務用レプリロイド)が控えている。
最後には堅固な扉が侵入者を阻んでいた。
誰も突破出来ないと思われる関門。
その入り口に1人の少年がいた。
漆黒のアーマーと胸部とヘッドパーツに大きなコアを宿していた。
少年はバレットを構え、前を見据えた。

「さようなら、レッド…絶対にハンターになってやる!!」

数秒後、夜の帳に銃声が響き渡った。






































手榴弾が炸裂する一瞬の間を走り抜けた。
爆弾の放たれた方向から敵の場所を見抜き、銃弾を放つ。
短い悲鳴がしたかと思うと、手榴弾の攻撃が手緩くなる。
少年の銃弾が確実に敵を撃破している証拠だ。
だが、敵の数は多い。

「数に物言わせて倒すつもり?無駄だよそんなの!!」

少年は不敵に笑う。
窮地に追いやられても屈しない意志、不敵な笑み。
敵の真っ只中に突っ込む度胸。
子供であるにも関わらず、並の戦士ではない。
破壊したレプリロイドが破片を落とす。
レプリロイドの精製情報の塊、DNAコアである。

「使わせてもらうよ!!」

コアを掴む。
少年の身体は発光し、次の瞬間ランナーボムへと姿を変えた。
ランナーボムは爆破任務用レプリロイド。
それゆえに高い耐久性と耐熱性を有している。

「これで爆弾なんかへっちゃらだね!!」






































猛火を潜り抜け、強固なる扉を破り、少年はハイウェイに辿り着いた。
ビルの照明に明らむ主幹道路だ。

「はあっ…はあっ……流石にここまで来れば…大丈夫かな…?」

流石に突き抜けるのはきつかった。
鼓動が速い。
乱れた息のまま、彼は辺りを見回し、歩き始める。
直後、後方で大きな“音”がした。
驚いて振り返った彼は、すぐさま前を向き、全速力で走りだした。

「(レッドが差し向けた刺客…!?)」

バレットを連射しながら、少年はそんなことを考えた。
かつては兄とも父とも慕った戦士。
彼はどこまでも自分を利用しようというのか。
ならば抗うだけだ。

「やっ!!」

銃弾を浴びせる。
メカニロイドの装甲はそれをたやすく弾いた。

「嘘!?」

メカニロイド、メガ・スコルピオがお返しだと言わんばかりに尻尾から赤い光弾を放った。

「くそ!!」

少年は地面に雪崩れ込むようにかわし、バレットを構えた。
スコルピオは咆哮を上げ、鋏を天に掲げている。
戦いに歓喜しているかのようだ。

「いい気にならないでよね?」

不敵に構えたが、同時に自身の不利を悟った。
ここはハイウェイ。
地上とは100mも離れている。
いくらレプリロイドでも落ちればただではすまない。
先程の赤い光弾が道路に穴を開けてしまっている。

「(ここはまずいな…。もっと安全な場所、この先に避難しなきゃ!!)」

ハイウェイの奥には確か地上に通じる道がある。
そこまで行けばまともに戦えるだろうて判断し、身を翻した。

「さあ、鬼ごっこの始まりだよ。」

恐怖はない。

“どんな時にも揺るがない心を持て”

昔慕った戦士の言葉だ。
メガ・スコルピオは少年の後を追い掛ける。
全力疾走しようとした時、朱色のアーマーを纏う、少年よりも年上だろう少女がいた。

「え!?お姉さんどいてどいてー!?」

名前を知らないために少年は少女をお姉さんと呼び、避難させようとする。

「え!?君、ちょっと待って!!」

「何やってるの!!そんな所でじっとしてると危ないよ!!早く逃げて!!」

「えっと…君、この事件の関係者かな?」

「事件?何言ってるの?」

脈絡のない会話にイライラが募る。
こうしている間にも敵は来るのであった。
測ったようなタイミングでスコルピオが出現した。

「こいつ!!最新型戦闘用メカニロイド、メガ・スコルピオ!!?どうしてこんなのが!?」

「やば…っ、じゃあ僕行くね!!お姉さんも早く逃げるんだよ!!」

「あ、君!!」

可変翼を展開し、空中に。
少女を避難させるためにスコルピオを牽制するつもりだったが、路上の少女に目を凝らすとその必要がないことに気づいた。

「はあああ…!!」

少女は武器をセイバーに可変させ、果敢にスコルピオに斬撃を見舞い、フルチャージショットを浴びせる。
高出力のセイバーとバスターの能力を併せ持つ複合武器を持つ存在は戦いに身を置く者なら誰もが知る所であった。
朱いアーマーと舞うような戦い方から朱き舞姫とも謳われる戦士。

「(あれがイレギュラーハンター・ルイン!!?)」

胸が熱くなった。
ずっと憧れていた戦士が目の前にいる。
彼女を追い掛けて先へ。
行き止まりに着く。

ルイン「えっと…事情を説明してもらえるかな?一体何がなんだか……」

困ったように笑う彼女に少年も思わず笑う。

「分かった。後で必ず話すよ。あいつを倒したら…僕は“アクセル”よろしくね。さあ、やっつけちゃおうよルイン!!」

ルイン「え?あ、うん。よろしくねアクセル」

アクセル「うん!!ルインは腕を壊して、僕が…」

ルイン「尻尾壊すんでしょ?任せて…」

セイバーによる一撃の元、スコルピオの両腕を両断した。

アクセル「まだまだ!!」

バレットを連射すると攻撃の術を奪われ敵は悲鳴を上げた。

ルイン「行くよ!!」

アクセルとシンクロすると同時にセイバーの光を巨大化させ、スコルピオに斬り掛かる。

アクセル「OK!!」

そしてアクセルもルインに続くようにバレットを超連射する。
ルインとアクセルの合体攻撃の前にスコルピオは断末魔の悲鳴を上げて爆散する。

ルイン「今の攻撃…名付けて“コンビネーションアサルト”っとこかな?」

アクセル「いいねそれ!!にしても流石。朱き舞姫の名は伊達じゃないよね。僕が思ってた通りだよ」

ルイン「アクセルだったね?君はこの事件…というか騒動の関係者…なのかな?」

視線を合わせて、優しく問い掛けるルインにアクセルは内心で綺麗な人だなと思いつつ口を開いた。

アクセル「あ~、うん。そうみたい。ルインは自警集団レッドアラートって知ってる?」

ルイン「…ジャパニーズ・ヤクザか何か?」

アクセル「違うよそれ絶対違うよ!!ハンターだけには任せておけないから自分達で倒そうって集団なんだけど……」

ルイン「ああ…あの自警集団ね…最近イレギュラーハンターの代わりに人々を守っている……君はレッドアラートの関係者なの?」

アクセル「そうだよ。元がつくけどね」

ルイン「…?どういうことか分からないけど、アクセル。悪いけどハンターベースまで来てくれないかな?事情聴取したいから…大丈夫、酷いことはしないから」

アクセル「あ、うん…僕もハンターベースに行こうとしてたから…」

ルイン「決まりだね」

ハンターベースに簡単な報告を送信すると、簡易転送装置でハンターベースに転送された。





































ルインとアクセルはハンターベースの通路を歩いていた。
アクセルは辺りを見回しながらルインについて来る。

アクセル「そういえばエックスはどうしちゃったの?ルインはエックスと一緒の任務が多いって聞いてたんだけど…」

ルイン「え?あ…すぐに分かるよ」

向かった視線先は見上げる程に高い真っ白の扉であった。
赤文字で“集中治療室”と書かれている。

アクセル「(医務室!?)」

それを見たアクセルが驚く。
ルインが室内の人物と短い言葉を交わすとドアが開いた。
そこから…。

ルイン「エックス…、大丈夫?」

エックス「ああ…大丈夫だ。君がアクセルなのか?」

身体に入った痛々しい傷を負いながらもそれを感じさせない表情でエックスはアクセルに声をかけたが、今のアクセルにはエックスの声は届かなかった。
アクセルが初めて見たエックスは大人びた雰囲気と少年の幼さが同居しており、瞳の色が自分と同じで嬉しかった。
しかし、歴戦のハンターが何故医務室に、という事実がアクセルを現実に引き戻した。

アクセル「エックス…!!何があったの?医務室なんて…何でそんな酷い怪我してるのさ!?」

その問いにエックスは微かに笑う事情を説明する。

エックス「バスターが壊れていたらしくてね…それでイレギュラーから攻撃を受けてこのザマだ」

アクセル「…大丈夫なの?」

エックス「…大丈夫だ。バスターさえ修理すれば今まで通り戦えるはず」

アクセルの口から出た言葉にエックスは大丈夫と答えた。
その声はとても力強く、自信に満ちていた。

ゼロ「おい」

今まで黙っていたゼロが口を開く。

ルイン「何?」

ゼロ「何?じゃない。そいつは今回の騒動の関係者だろう。何者だ?」

ルイン「あ、うん…この子はアクセル。元はレッドアラートの戦士で、最新型の戦闘用メカニロイド、メガ・スコルピオに追われていたの」

ルナ「メガ・スコルピオだって?何でレッドアラートがそんなもんを…」

アクセル「誰?」

エックス「彼女はルナ。つい最近正式にイレギュラーハンターとなった特A級ハンターだ。」

ルナ「よろしくなアクセル」

豪快に笑いながら言うと彼女はアクセルに問う。

ルナ「それにしても追われてるってのはどういうことだ?」

アクセル「…逃げ出して来たんだ。レッドが…レッドアラートが変わっちゃったんだ。昔は悪い奴にしか手を出さなかったのに、今はただの殺し屋集団…もう耐えられなかったんだ。」

悲しみと怒りで拳が震える。
握り締めた親指が痛くて、しかしアクセルはずっと拳を固くしていた。
こんな痛みで根を上げぬ程にアクセルの苦しみは大きかった。
その時、モニタがザッと音を出し、全員がモニタに視線を向ける。

エックス「何が起こった!?」

エイリア『発信源不明の通信よ。画像全モニタに出力するわ』

即座にエイリアから通信が入ると、砂嵐の画面に画像が映し出された。
右目に深い傷が走り、精悍で堂々とした戦士。
その男の名は誰もが知る所。

ルナ「レッドアラートのリーダー…」

アクセル「レッド!!」

忘れるはずがない。
兄とも父とも慕った戦士である。
彼は堂々とハンター達に宣告する。

レッド『聞こえているかハンター共、俺はレッド。ご存知の通り、レッドアラートのリーダーだ。わざわざ表に出て来たのは他でもない。逃げ出しやがった俺達の仲間が、事もあろうにお前らの所に転がり込みやがった。そう、そこにいるアクセルだ』

レッドはアクセルをぞっとする目で見て、少年の心中を見出だそうとした。
アクセルは毅と見据える。

アクセル「レッド、僕は帰らないよ。レッドとレッドアラートが変わった今、もう僕の居場所はない。僕は僕の心に従ってここに来たんだ。絶対に戻らない!!」

迷いなき眼で言い放った。
心は既に決まっている。

レッド『そうか。帰らない、か…ならばハンター対決ってのはどうだ?真のイレギュラーハンターを決めてみないか?最後まで生き残った方が勝ちだ。悪いがこっちは、今まで捕まえてきたイレギュラーを仲間として使わせてもらうぜ、文句は無しだ。俺達が負けたら、アクセルはお前らにくれてやる。当然だが、俺達が勝てば…』

エックス「ふざけるな!!彼の意思を無視した挙げ句、そんな理由で戦いを引き起こすつもりか!!?」

怒りの表情と共に全身から吹き荒れる闘気にアクセルは密かに戦慄する。

レッド『そんな理由か…』

彼は遠い目でぼそりと言う。
普段の彼をよく知るアクセルは普段とは違う彼に目を丸くした。

レッド『俺にとっちゃ、大事なことなんだがな…』

ゼロ「…?」

アクセルにはレッドの真意が分からない。
何故このような戦いを挑んだのか。
何故レッドアラートが変わってしまったのか。

レッド『とにかく、アクセルは意地でも取り返す…絶対にな!!』

レッドは一同を見遣ると、笑って通信を切った。

エイリア『早速動き出したようね。各地でイレギュラー発生!被害の出たエリアを調べてみるわ。』

即座にモニターに世界地図が映し出された。
被災地が赤くポイントされている。

アクセル「ごめん、僕のせいで…」

ゼロ「面倒なことになったな。ハンターも人手不足でまともに機能していない。奴らを止められる実力者も少ない…」

ルナ「だな、さて…どうするかねえ…」

アクセル「(人手不足!!)」

彼の頭に名案が閃く。

アクセル「そうだ、僕をイレギュラーハンターにしてよ!!ルインとのコンビネーションもバッチリだし、なんと言ってもレッドアラートのことなら任せてよ!!」

エックス「ルインとのコンビネーション?」

ゼロ「どういうことだ?」

ルイン「ああ、そういえば言ってなかったね。メガ・スコルピオは私とアクセルの2人掛かりで倒したんだ」

ルナ「へえ、ルインと2人掛かりとはいえよく倒せたな。特A級ハンターでも苦戦は免れないのに」

ルイン「うん、部隊制があった頃なら17部隊入りは確実だね」

第17番精鋭部隊は、このエックス、ゼロ、ルインが以前所属していた部隊だ。
読んで字の如く、腕利き揃いだった。
エックスは隊長を勤めた時期もある。
余談だが、ゼロは17を抜けた後、第0特殊部隊、通称忍び部隊の隊長になっていた。
ハンターの激減で部隊制が解体された今となっては、3人共“元”がつくが。

エックス「………」

エックスはアクセルを見定めるように見ると口を開いた。

エックス「そう、だな…彼はとてもいい目をしている。」

アクセル「エックス…!!」

エックス「だが、アクセル。ハンターというのは簡単に務まるような仕事じゃない。非常時にも最善の判断が出来る冷静さと敵に屈しない強さ。そして命をかけて人々を守る心が無ければ務まらない。君にそれがあるか?」

鋭い視線で言うエックスにアクセルも強い視線で返す。

アクセル「分からないよ…でも、僕はエックス達に憧れてここまで来たんだ。僕の罪滅ぼしのためにもイレギュラーハンターになりたいんだ!!」

アクセルの言葉に彼の強さを見出だしたエックスは溜め息を1つすると苦笑を見せた。

エックス「覚悟はあるか…分かった。シグナスに掛け合ってみる。ただし今はイレギュラーハンターにしようにも試験を受けさせる暇がないから保留の形にして民間協力者という立場になるけど、構わないな?」

アクセル「勿論!!エックスはバスターが直るまでゆっくり寝てていいよ!!」

無邪気に喜ぶ、アクセルにルインは苦笑しながらもエックスに歩み寄る。

ルイン「エックス…今は私達に任せてゆっくり休んで…今の君に必要なのは休養なんだから……」

エックス「…分かっているよルイン。君も気をつけてな」

ルイン「うん…」

ゼロ「…そろそろ行くぞ」

ルナ「はいはい。イチャイチャしてるバカップルは放って行こうぜ」

アクセル「え?え?エックスとルインって恋人同士って奴なの?」

ルナ「そうだぜ?周りを憚らずイチャイチャして甘ったるいオーラを撒き散らす。ある意味シグマウィルスやナイトメアウィルスよりも遥かに厄介なレプリロイド破壊砂糖製造機だ。耐性がないハンター達が何人も犠牲になっている。ブラックコーヒーは必需品だぜ…」

ゼロ「それからあいつはエイリアとも恋仲だ。ハンターベースの危険地帯は指令室とエックスの部屋だということを覚えておけ、耐性がつかないうちに近寄ると胸焼けを起こすか砂糖を吐くことになるぞ」

アクセル「うわあ、エックスって大人なんだね」

尊敬の視線をエックスに向けるアクセル。

ルナ「さあ、行こうぜ。お喋りの時間はここまでだ」

格納庫に向かうとダグラスがライドチェイサーを用意して待っていた。

ダグラス「来たか。準備は万端だ。いつでも行けるぞ」

ゼロ「分かった。俺はルインと共に行く。お前はルナと共に行け、ダグラス。こいつにもライドチェイサーを支給してやってくれ。俺達と同じタイプの奴だ」

ダグラス「分かった。待っていろ」

ダグラスがライドチェイサーをもう1台出しに向かう。

ゼロ「俺がしてやれるのはここまでだ。後はお前が何とかしろ…あいつはたった1人で戦いを潜り抜けてきた頃もあった。あいつに憧れるなら昔のあいつがやれたことくらいやってみせろ」

アクセル「…上等だよ。この戦いが終わったら僕がイレギュラーハンターになるのを認めてよ!!」

不敵な笑みを浮かべると漆黒のカラーのライドチェイサーに跨がり、ルナの紺色のライドチェイサーと共にミッションに向かう。 
 

 
後書き
アクセルSide終了。
次回はエックスSide 

 

第二話 エックスSIDE1

 
前書き
エックスSideです。 

 
イレギュラーは増加の一途を辿っていた。
コロニー破片落下事件により、イレギュラーハンターは組織解体・再編成され、極少ないハンターが働いているのみ。
イレギュラーの増加により拠点を放棄せざるを得なくなったルナもイレギュラーハンターとなり、エックス達の負担はかなり減ったが焼け石に水程度にしか緩和出来ていない。
レプリフォースは先の大戦で壊滅状態となっていた。
イレギュラーを倒せる巨大組織は今やまともに機能していない。
そんな中、バウンティハンターと呼ばれる非正規の戦闘集団が台頭してきた。
高額な賞金と引き換えにイレギュラーを撃破する。
元は裏社会で活動していた者達。
だが、ハンターや軍隊が弱体化した今となっては、非合法ながらイレギュラーを処分する彼らは民衆に支持される存在となっていった。
そのバウンティハンターの中で、特に注目される存在があった。

レッドアラート。

大鎌の戦士・レッドをリーダーとする戦士達は乱暴な手段ながらも人々を守っていた。
しかし…。

エイリア『ポイントRE7521でイレギュラー発生!!エックス、出動して!!』

エックス「了解した」

エイリアの指示の元、エックスは戦場に向かう。
いつもと変わらない戦いになるはずだった。
だがその出撃がエックスの運命を変えることになるとは誰も知る由もなかった。



































ポイントRE7521は中規模の都市である。
大都市のそれより背の低いビルが並んでいて、街の中央部には広場がある。
レプリロイドや人間の憩いの場は暴動が起きた今は閑散としていた。
ビルの狭間から煙が昇り、焼け焦げた空気が流れて来る。
エイリアの通信で示された場所はそんな所だった。

ビートブード「エックス隊長!!」

到着してすぐに、先に駆け付けていたビートブードがエックスを呼んだ。

エックス「ビートブード、市民の避難は?」

ビートブード「市民の避難は完了しています。負傷者はいますが全員隣町のシェルターにいます」

ルイン「エックス!!イレギュラーはこの先にいるよ!行こう!!」

エックス「分かった。ルイン、ビートブード。行くぞ」

ルイン「うん」

ビートブード「了解しました」

かつてあった17部隊の最強の戦士達が現場に急行しようとすると、その時腕にピリッと痛みを感じた。

エックス「(何だ?)」

ビートブード「隊長、どうしました?」

エックス「いや、何でもない。大丈夫だ」

振り返ったビートブードに答え、進む。
腕にはまだ違和感はあるものの、気に留める程ではない。
先を行くルインとビートブードを追い掛ける。



































イレギュラーはすぐに見つかった。
最新型巡回監視用メカニロイド、ガーディアン。
ちなみにガーディアンはコンビナートに出現する雑魚敵である。
ガーディアンは地面を叩き、エネルギー波を出して街を破壊している。

ルイン「行くよビートブード!!」

ビートブード「了解!!グラビティホールド!!」

ガーディアンに向けて重力波を放つ。
凄まじい威力を誇る重力波は、ガーディアンの動きを完全に止めた。

ルイン「はあっ!!」

セイバーによる斬撃を見舞い、装甲を破る。
露出した箇所にフルチャージショットを喰らわせようと腕を構えた瞬間。

エックス「っ!!?」

腕に雷で打たれたような衝撃が走る。
腕から電力が迸しり、エックスの腕を、青白い火花が包んでいる。
バチバチッと弾ける音がしてエックスは思わず腕を押さえた。
目の前が真っ暗になり、脳天から爪先を貫かれたような感じがする。
ガーディアンからエネルギー波が放たれ、回避もままならないエックスは直撃を受けた。

エックス「ぐあああああ!!」

ルイン「エックス!?」

ビートブード「隊長!!野郎、よくも…グラビティホールド…重力万倍!!」

エネルギー出力を限界まで引き出し、重力を万倍まで上げるとガーディアンは瞬く間に潰された。

ビートブード「隊長!!」

ルイン「エックス!!」

2人がエックスに駆け寄り、意識がないことに気づくと簡易転送装置でハンターベースに戻る。



































暗闇の中に誰かの声が聞こえた。
それらが朧げな意識を引っ張り上げる。

エックス「う…」

苦痛の呻きを上げて、目を開けるとぼやけた視界にライフセーバーとルイン、ビートブードの3人が自分を眺めていることに気づく。

ルイン「エックス!!」

ビートブード「隊長…気がついたんですね……」

2人は安堵の表情を浮かべた。
エックスは事態が把握出来ず、虚ろな表情で彼らを見た。

「あなたが倒れたと聞いて驚きましたが…どこにも異常はありませんでした。過労でしょう」

1人冷静なライフセーバーの説明により、今度こそ意識がはっきりした。
自分はガーディアンの攻撃を受けて気絶したのだと。

ビートブード「ゼロ隊長」

ゼロ「エックス。お前、倒れたんだってな」

青い瞳が針の如しだ。
低く押し殺した声にライフセーバーが穏やかに答える。

「何ともありませんよ。これから治療の説明をしたいのですが…」

ルイン「あ、うん。分かった」

そういえばイレギュラー処分の報告もしていなかったことを思い出し、立ち上がろうとするルインをビートブードが止める。

ビートブード「報告は俺がします。副隊長は隊長についていて下さい」

ルイン「ありがとうビートブード。」

ビートブードは報告のために医務室を出ていく。
ルインとゼロはライフセーバーを見つめる。
2人はライフセーバーの胸中を見抜いていた。
彼が穏やかなのは、事態が重いことを意味するからだ。

「…確かに外傷以外の異常はありませんでしたよ」

レントゲン写真を傍らのボードに張り付ける。

「腕部の回路、電圧は正常そのものです。しかしバスターに変形しないのです。原因は恐らく精神的な物かと」

ルイン「精神的…ですか?」

ゼロ「お前がそんなことを言うなんてな。」

「他に原因が思い当たらないのだから仕方ないでしょう」

声は何時にも増して冷静で、その静けさが逆にエックス達の不安を扇いだ。

エックス「…それで?いつ治るんだ?」

「分かりません。あなたの心がバスターを封じている。封印を解けるのはあなたしかいないんです。私にはどうすることも出来ません」

エックス「そんな…」

エックスは呆然となり、使えなくなった腕を見つめる。
空気が耐えられない程に重さを増す。
そこに危急の報せが割り込んできた。

エイリア『ルイン、聞こえる?ポイントAX54でイレギュラーが暴れているわ。至急現場に向かって!!』

ルイン「…了解。出撃します。心配しないでエックス。すぐに帰るから」

ルインが出ると同時にエックス、ゼロ、ライフセーバーの3人が残された。

エックス「ルイン…」

ゼロ「あいつなら大丈夫だ。それより腕は?」

エックス「腕は…」

腕に神経を集中させると激痛が走る。

「やはり“心”があなたを苦しめているのですね。あなたはゆっくり休んで下さい」

エックス「…ああ」

逆らいたいがそうせざるを得ないためスリープモードに切り替える。
彼はあっという間に眠りに落ちた。

「さて、せっかく医務室に来てくれたのですからあなたもメンテナンスを受けてもらいましょうか」

ゼロ「何?俺はエックスの見舞いに…」

「あなたはここ最近メンテナンスを受けていませんね。総監に報告しても?」

ゼロ「ぐっ…分かった」

観念したように言うゼロにライフセーバーはエックスを見遣る。
彼は気の遠くなるような痛みをどれだけ耐えて来たのだろうか?



































一方ルインは夜のハイウェイを見て一人ごちる。

ルイン「またここに来ることになるなんてね。一体何があったのかな?」

大きな道路のいたる所にはメカニロイドが配備され、破壊活動を行っていた。
このハイウェイは自分達の戦いの原点。
最初のシグマの反乱。
そう、全てはこの場所から始まった。
ルインは勢いよく跳躍する。



































エックスは夢を見ていた。
レプリロイドはスリープモードに入ると過去の記憶が掘り起こされたり入り交じったりしたものを見ることがある。
だから殆ど人間のものと変わらない。

シグマ『エックス、ルイン』

隊長だった頃のシグマが自分と新人時代のルインを呼び、街を見るように促す。

シグマ『これが、我々が守るべきものだ』

自分とルインに市街を見せてくれた。
人々の笑顔に溢れる、平和な街並み。

シグマ『これが、我々が守るべき街、人々、笑顔、命、心だ。』

エックス『はい、シグマ隊長』

ルイン『はい!!』

シグマ『私もただ1体のレプリロイドに過ぎぬ。いつかイレギュラーに敗れる日が来るかも知れん。だが、意志を継ぐ者がいれば、我々イレギュラーハンターは滅びぬ。エックス、ルイン。よく見ておくのだ…これが我々が守る物なのだということを……』

そう言っていた当の本人が、それまで一員として務めてきたイレギュラーハンターに反乱し、その日まで守ってきた街の平和を、破壊と殺戮で塗り潰そうとした。
自身の言葉にまで背いて。
自分のバスターに貫かれ倒れるまで、暴れ、企み、破壊して、イレギュラー・シグマは世の災厄となり続けた。



































気がつけば医務室のメンテナンスベッドにいた。
スリープモード前に見た風景が迫る。
確かに現実の世界だった。

「もう起きてしまったのですか?」

エックス「…ああ。懐かしい夢を見ていた……俺が寝ている間に何があった?」

「ルインが帰還しましたよ。今、総監に報告に行っています。何でもアクセルという少年を連れてきたとか」

エックス「アクセル?」

聞き返そうとした時、ルインから通信が入る。

ルイン『起きてるエックス?入っていいかな?』

「噂をすればですね」

エックス「待っててくれ。今開ける」

部屋のロックを解除すると、ルインを迎えようとした時。
エックスは目を丸くしてしばし立ち尽くした。
1人はルイン。
もう1人は見知らぬ少年。
恐らく彼がルインが連れてきたアクセルという少年なのだろう。

ルイン「エックス…、大丈夫?」

エックス「ああ…大丈夫だ。君がアクセルなのか?」

アクセル「エックス…!!何があったの?医務室なんて…何でそんな酷い怪我してるのさ!?」

その問いにエックスは微かに笑う事情を説明する。

エックス「バスターが壊れていたらしくてね…それでイレギュラーから攻撃を受けてこのザマだ」

アクセル「…大丈夫なの?」

エックス「…大丈夫だ。バスターさえ修理すれば今まで通り戦えるはず」

自分自身に言い聞かせるように言うエックス。

ゼロ「おい」

メンテナンスを終え、今まで黙っていたゼロが口を開く。

ルイン「何?」

ゼロ「何?じゃない。そいつは今回の騒動の関係者だろう。何者だ?」

ルイン「あ、うん…この子はアクセル。元はレッドアラートの戦士で、最新型の戦闘用メカニロイド、メガ・スコルピオに追われていたの」

ルナ「メガ・スコルピオだって?何でレッドアラートがそんなもんを…」

医務室にルナが入って来た。

アクセル「誰?」

エックス「彼女はルナ。つい最近正式にイレギュラーハンターとなった特A級ハンターだ。」

ルナ「よろしくなアクセル」

豪快に笑いながら言うと彼女はアクセルに問う。

ルナ「それにしても追われてるってのはどういうことだ?」

アクセル「…逃げ出して来たんだ。レッドが…レッドアラートが変わっちゃったんだ。昔は悪い奴にしか手を出さなかったのに、今はただの殺し屋集団…もう耐えられなかったんだ。」

悲しみと怒りで拳が震えている。
エックスはレッドアラートが狂暴化したのは知っている。
一般人も無差別に襲っていると。
殺戮を強いられた彼にエックスは何と声をかければいいのか分からなかった。
その時、モニタがザッと砂嵐を映した。

エックス「何が起こった!?」

エイリア『発信源不明の通信よ。画像全モニタに出力するわ』

即座にエイリアから通信が入ると、砂嵐の画面に画像が映し出された。
右目に深い傷が走り、精悍で堂々とした戦士。
その男の名は誰もが知る所。

ルナ「レッドアラートのリーダー…」

アクセル「レッド!!」

エックスはアクセルの叫びに驚愕した。

レッド『聞こえているかハンター共、俺はレッド。ご存知の通り、レッドアラートのリーダーだ。わざわざ表に出て来たのは他でもない。逃げ出しやがった俺達の仲間が、事もあろうにお前らの所に転がり込みやがった。そう、そこにいるアクセルだ』

エックスは思わずアクセルの方を見遣る。

アクセル「レッド、僕は帰らないよ。レッドとレッドアラートが変わった今、もう僕の居場所はない。僕は僕の心に従ってここに来たんだ。絶対に戻らない!!」

迷いなき眼で言い放った。
エックスはアクセルの言葉に胸を打たれた。
昔の自分にはなかった強い意志が彼にはある。

レッド『そうか。帰らない、か…ならばハンター対決ってのはどうだ?真のイレギュラーハンターを決めてみないか?最後まで生き残った方が勝ちだ。悪いがこっちは、今まで捕まえてきたイレギュラーを仲間として使わせてもらうぜ、文句は無しだ。俺達が負けたら、アクセルはお前らにくれてやる。当然だが、俺達が勝てば…』

その言葉にエックスは全身が沸騰するような怒りを感じた。
アクセルの意志を無視するだけでなく争いを引き起こそうとすることに。

エックス「ふざけるな!!彼の意思を無視した挙げ句、そんな理由で戦いを引き起こすつもりか!!?」

レッド『そんな理由か…』

彼は遠い目でぼそりと言う。

レッド『俺にとっちゃ、大事なことなんだがな…』

ゼロ「…?」

レッド『とにかく、アクセルは意地でも取り返す…絶対にな!!』

レッドは一同を見遣ると、笑って通信を切った。

エイリア『早速動き出したようね。各地でイレギュラー発生!被害の出たエリアを調べてみるわ。』

即座にモニターに世界地図が映し出された。
被災地が赤くポイントされている。

アクセル「ごめん、僕のせいで…」

エックス「(君のせいじゃない…)」

俯くアクセルにエックスは本心からそう思う。

ゼロ「面倒なことになったな。ハンターも人手不足でまともに機能していない。奴らを止められる実力者も少ない…」

ルナ「だな、さて…どうするかねえ…」

エックス「(バスターが使えないこんな状況では、みんなの足を引っ張ってしまう…)」

ハンターベースにある装備は低ランクのハンター達でも扱える出力しか持たない。
エックス専用の武器を作ってもらおうにも時間が圧倒的に足りない。
その時である。

アクセル「そうだ、僕をイレギュラーハンターにしてよ!!ルインとのコンビネーションもバッチリだし、なんと言ってもレッドアラートのことなら任せてよ!!」

エックス「ルインとのコンビネーション?」

ゼロ「どういうことだ?」

訳が分からず、エックスとゼロはルインを見遣る。

ルイン「ああ、そういえば言ってなかったね。メガ・スコルピオは私とアクセルの2人掛かりで倒したんだ」

ルナ「へえ、ルインと2人掛かりとはいえよく倒せたな。特A級ハンターでも苦戦は免れないのに」

ルイン「うん、部隊制があった頃なら17部隊入りは確実だね」

第17番精鋭部隊は、このエックス、ゼロ、ルインが以前所属していた部隊だ。
読んで字の如く、腕利き揃いだった。エックスは隊長を勤めた時期もある。
余談だが、ゼロは17を抜けた後、第0特殊部隊、通称忍び部隊の隊長になっていた。
ハンターの激減で部隊制が解体された今となっては、3人共“元”がつくが。

エックス「………」

エックスはアクセルを見定めるように見る。
実力は確かにある。
彼の何気ない動作から戦士としての隙のなさがある。

エックス「そう、だな…彼はとてもいい目をしている。」

アクセル「エックス…!!」

エックス「だが、アクセル。ハンターというのは簡単に務まるような仕事じゃない。非常時にも最善の判断が出来る冷静さと敵に屈しない強さ。そして命をかけて人々を守る心が無ければ務まらない。君にそれがあるか?」

同時にエックスは彼には欠けている物があると思った。
ハンターか否かを分かつ決定的な何かが。
鋭い視線で言うエックスにアクセルも強い視線で返す。

アクセル「分からないよ…でも、僕はエックス達に憧れてここまで来たんだ。僕の罪滅ぼしのためにもイレギュラーハンターになりたいんだ!!」

アクセルの言葉にエックスは溜め息を1つすると苦笑を見せた。

エックス「(分からない…か…アクセルはまだ子供だ。彼に足りない物があれば教えればいい。時間がかかっても少しずつ…)覚悟はあるか…分かった。シグナスに掛け合ってみる。ただし今はイレギュラーハンターにしようにも試験を受けさせる暇がないから保留の形にして民間協力者という立場になるけど、構わないな?」

アクセル「勿論!!エックスはバスターが直るまでゆっくり寝てていいよ!!」

無邪気に喜ぶ、アクセルにエックスは苦笑すると自分に歩み寄るルインに視線を遣る。

ルイン「エックス…今は私達に任せてゆっくり休んで…今の君に必要なのは休養なんだから……」

エックス「…分かっているよルイン。君も気をつけてな」

ルイン「うん…」

ゼロ「…そろそろ行くぞ」

ルナ「はいはい。イチャイチャしてるバカップルは放って行こうぜ」

アクセル「え?え?エックスとルインって恋人同士って奴なの?」

ルナ「そうだぜ?周りを憚らずイチャイチャして甘ったるいオーラを撒き散らす。ある意味シグマウィルスやナイトメアウィルスよりも遥かに厄介なレプリロイド破壊砂糖製造機だ。耐性がないハンター達が何人も犠牲になっている。ブラックコーヒーは必需品だぜ…」

ゼロ「それからあいつはエイリアとも恋仲だ。ハンターベースの危険地帯は指令室とエックスの部屋だということを覚えておけ、耐性がつかないうちに近寄ると胸焼けを起こすか砂糖を吐くことになるぞ」

アクセル「うわあ、エックスって大人なんだね」

尊敬の視線を自身に向けてくるアクセルにエックスは何となく恥ずかしい。
自分は普通にしているつもりなのだがそうではないようだ。

ルナ「さあ、行こうぜ。お喋りの時間はここまでだ」

格納庫に向かう4人に、エックスは無事を祈ることしか出来ない自身に憤る。 
 

 
後書き
エックスSide終了 

 

第三話 アクセルSIDE2

 
前書き
遂にX4のルインのデータを使える…。 

 
ライドチェイサーで夜の街を疾走する。
高速のチェイサーは真夜中の静かな空気を行く手を阻む壁となる。
その時、ルナの通信機に通信が来る。
2人は一時ライドチェイサーを停めた。

ルナ「こちらルナ」

アイリス『ごめんなさいルナ。えっと…彼は近くにいるかしら?』

アクセル「僕のこと?」

アクセルは身を乗り出した。
ルナの腕の通信機に、ぐっと顔を近づける。

アイリス『通信機は内蔵されてる?これからの任務のために、周波数を合わせて欲しいの。連絡が取れないと困るから?』

頷いたアクセルは、アイリスの指示通りに周波数を合わせた。
通信機を起動させると、すぐに音声が入る。

アイリス『……大丈夫そうね。そうそう、始めましてアクセル。私はアイリス。オペレーターとしてあなた達のサポートをするわ。よろしくね』

アクセル「うん。よろしく、アイリス」

名前を覚えていてもらえたのが嬉しかったのか、アクセルは通信機に向かって破顔した。
アイリスは笑みを浮かべた後、その明朗な声を一変させて、仕事仕様の真剣な声音になる。

アイリス『ところで、アクセルに聞きたいことがあるの』

アクセル「うん、何?」

アイリス『さっきのレッドアラートからの通信をいくら解析しても、発信源が割り出せなかったの。多分、特殊なステルスを使ってるのね……そこで、各地のイレギュラーを捕まえながら同時進行でアジトを探ろうと思うんだけど……アクセル、 大まかでいいから場所の説明を出来ないかしら?』

エイリアの問いにアクセルは、肩を落とした。

アクセル「実は、僕が抜け出してきたのは旧アジトなんだ。明日、新しいアジトに移るって言われて、慌てて抜け出したんだよ。新しいアジトは空中要塞だっていうの、 みんなは隠してたみたいだけど、薄々気付いてたから…」

アイリスも傍で聞いていたルナも、一瞬息を呑む。

アイリス『空中要塞……!?そんなものが……』

アクセル「多分、僕が逃げ出したからさっさと引っ越しちゃったんだね」

アクセルはあっけらかんとしていたが、ルナはその言葉の中に含みを感じた。
まるで、レッドアラートはアクセルが抜け出すことを予想し、そしてそれを阻止しようとしていたかのような言い回しだ。

アクセル「ごめんね、役に立てなくて……」

アイリス『……そういうことなら仕方ないわ。引き止めてごめんなさい。気をつけて2人共』

ルナ「了解」

アクセル「了解!!」

2人はライドチェイサーに再び跨がり、セントラルサーキットに向かう。

ルナ「ところでアクセル」

アクセル「ん?何」

ルナ「お前、レッドアラートのメンバーだろ?向こうの主力メンバーでここをバトルエリアにするような奴ってどんな奴なんだ?」

アクセル「イノブスキーに決まってる」

ルナ「イノブスキー?誰だそりゃ?」

アクセル「レッドアラート一の熱血漢。身体をバイクみたいな形に変えられて、もの凄いスピードを出すよ。攻撃はホイールとかも使うけど…基本突進」

ルナ「成程、猪突猛進の馬鹿か…にしてもセントラルサーキットに爆弾仕掛けるなんてイカれた野郎だ」

アクセル「何か問題があるの?」

ルナ「ああ、セントラルサーキットっていうのはな、シティ・アーベルにある1番大きな高速道路でな。避難や物資の流通にも使われてるんだ。破壊されたら民間人の避難も物資の補給もままならないし莫大な被害が出るんだ」

アクセル「ええ!?それって…」

ルナ「ああ、やばい…アクセル、お前ライドチェイサーの経験は?」

アクセル「えっと…ライドチェイサーってあんまり乗ったこと無いんだ。仕事でもたまにしか乗らないから」

ルナ「分かった。じゃあ爆弾は俺が回収すっから、お前は敵の撃破を任せた」

アクセル「OK」

流石にライドチェイサーの操縦経験の少ないアクセルに敵を撃破しつつ爆弾回収の作業をやらせるわけにはいかずライドチェイサーの扱いに慣れたルナが爆弾を回収し、アクセルが敵撃破の作業をする。
すると後方から何かが近付いてくる音がした。
振り返れば、猪を模した姿のレプリロイドが走ってくる。

アクセル「イノブスキー!!」

ルナ「え?」

バイクのような姿に変形したイノブスキーに、アクセルは笑いかけた。

アクセル「やあ、“総長”!!元気そうだね。あんたを狩りに来たよ!!」

イノブスキー「て、てめぇ!!レッドに拾われたくせにいぃ!!恩を仇で返そうってかあぁ!?それでも漢かっ?ああ!?」

大音量の怒鳴り声に、ルナは顔を顰める。
アクセルは肩を竦めた。

アクセル「そんなに鼻息荒くしなくても……それに、これはある意味、恩返しだと思ってるしね」

イノブスキー「ブヒイィィ!!何だとぉ!!?」

ルナ「うるせえな…お前が“ヘッド”か?」

イノブスキー「へ、ヘッド~!?そんな恥ずかしい名前で呼びやがって、総長と呼べ!!」

質問の答えになっていない。

ルナ「いや、どっちでも同じだろうがよ。イレギュラーハンターとして暴走族を認めるわけにゃあいかんのでねえ!!」

イノブスキー「ぼ、暴走族ぅ!?てめぇ…」

ルナ「アクセル…こいつロードアタッカーズの残党か?」

ルナがアクセルに問う。

イノブスキー「てっ、てめぇ!!あんな雑魚と俺のチームを一緒にしやがる気か!?許せねぇ!!」

アクセル「あれ、総長ってロードライダーズの方じゃなかったっけ?」

イノブスキー「ブヒイィィ!!てめぇら…重ね重ねっ!!」

2人は無視を決め込み、黙々と回収を続行する。

ルナ「回収完了だぜ!!」

アクセル「敵撃破完了!!」

イノブスキー「…上等だオラァ!!」

突然スピードを上げ、2人の遥か先へ行く。
追いかけるように進めば、道路が分かれ、中心に向かって少し窪んだ円形のフィールドが出来上がっていた。
その、中心にいるイノブスキーは、ライドチェイサーを降りてフィールドの端に立った2人を指差す。

イノブスキー「タイマンでぶちのめしてやるぜぇ!!まずはどいつだ!!?」

アクセル「僕が相手だ!!」

イノブスキー「上等だ!!」

神速で走り抜けるイノブスキー。
アクセルが感知した時にはイノブスキーは既にアクセルの目の前にいた。
元々厳つい彼の顔が一層強面になっている。
並の戦士なら硬直して動けないだろうがアクセルは並の戦士ではない。
回避はしたが反撃は出来ない。

イノブスキー「遅えよ!!」

以前の何倍もの速度で走り抜けながら怒鳴る。

ルナ「速いな…」

あまりの速度にルナは感嘆の声を上げた。

イノブスキー「その程度で倒せると思ってんのか!!?」

車輪が地を刔るように走るムービンホイール。
ばら撒かれた武器破壊は手間がかかる。

アクセル「ふん、それでも止めて見せるさ。僕の信念の名の下にね」

イノブスキー「信念だとお!?ガキがいっちょ前な口叩くんじゃねえ!!」

猛スピードでアクセルに突進する。

アクセル「(速い!!)」

電磁壁に押し付けられる。
背中の衝撃がアクセルの脳天から爪先まで貫いて目の前に火花を散らした。

アクセル「うわあっ!!」

ルナ「アクセル!!」

イノブスキー「これでも減らず口が叩けるか!!」

アクセル「っ…何度でも言ってやるよ!!僕はレッドを止めてみせる!!レッドが何を考えているのかは知らないけど、僕にはレッドのやっていることを認められない!!だからあんたを倒すよ!!」

イノブスキー「行くぜオラァァ!!」

イノブスキーが再び猛スピードでアクセルに体当たりを喰らわせようとする。

ルナ「アクセル、カウンターだ!!」

アクセル「っ!!」

ルナに言われ、イノブスキーの体当たりが当たる寸前でバレットの弾丸がイノブスキーの急所を突いた。

イノブスキー「ブヒィィ!!」

ルナ「あんなスピードじゃあ、急な方向転換は出来ないと思ったけどまさかのドンピシャか」

だがイノブスキーは止まらなかった。
過度な改造のせいで走り続けなければならない身体になっていたのだ。
狂った方向感覚は的外れな方向に電磁ロープを破壊して直進した。

アクセル「イノブスキー!?」

ルナ「何だあいつ!?力のコントロールが出来ないのか!!?」

2人はライドチェイサーを走らせるとイノブスキーを追い掛ける。
万が一、イノブスキーが都市部に出たら大変なことになる。

ルナ「アクセル!!ダブルチャージで奴のタイヤをぶち抜くぞ!!」

アクセル「分かった!!」

2人はライドチェイサーのバスターをチャージし、チャージショットをイノブスキーのタイヤに炸裂させた。
タイヤをぶち抜かれ、イノブスキーは錐揉み回転しながら壁に激突した。
しばらくして砂煙が無くなり、何とか生きているイノブスキーの姿が…。

アクセル「イノブスキー…」

ルナ「何とか生きてるか…連行するか。」

アクセル「処分しなくていいの?」

ルナ「イレギュラーハンターはイレギュラーの処分だけじゃなくて更正もするんだ。こいつの場合は改造を受けているような感じがしたからな。まずは修理して事情を…」

簡易転送装置を使おうとした瞬間、衝撃波がイノブスキーを両断した。

ルナ「なっ!!?」

アクセル「イノブスキー!?」

両断された仲間を見て、目を見開くアクセル。
衝撃波が放たれた方向を見遣ると、緑色の小型の翼を持つアーマーを身に纏う青年と紫のアーマーを身に纏う青年が立っていた。

ルナ「誰だ!?」

「奴から話を聞いて此処まで来たがその程度か。」

緑色のアーマーを纏った青年が言う。

「奴があの男の最後の“作品”か…」

紫のアーマーを纏った青年の言葉にルナはアクセルに問う。

ルナ「アクセル、あいつらもレッドアラートの仲間か?」

アクセル「し、知らない…見たこともないよあんな奴ら…」

「失望したぞ、お前のような未熟者があの男の最後の作品とはな」

ルナ「てめえらは何者なんだ!?」

「…我が名はウェントス。風の戦士」

「俺の名はテネブラエ。闇の戦士」

アクセル「ウェントス…?テネブラエ…?」

テネブラエ「ウェントス、これ以上の長居は無用だ」

ルナ「敵を前にして逃げるつもりか?」

ウェントス「我らが逃げるのではない。お前達を見逃してやると言っているのだ。」

テネブラエ「俺達の目的はお前の実力を見るため、戦うためではない。俺達の目的は達した、ここにいる理由はない。」

ルナ「ケッ!!眼中にないってか!?」

ウェントス「その通りだ。お前達などいつでも始末出来る。その命預けておこう。次に会う時まで、精々腕を磨くがいい」

2人は転送の光に包まれ、次の瞬間消えていた。

ルナ「野郎…」

アクセル「イノブスキー…」

ルナ「大丈夫かアクセル?」

アクセル「あ…うん」

ルナ「ハンターベースに戻るぞ治療を受けないとな」

アクセル「うん、もうクタクタだよ…」

簡易転送装置を使い、ハンターベースに帰還する2人。



































エックス「緑の翼を持ったアーマーのレプリロイド?」

多忙なシグナスに代わり、報告を受けたエックスが目を見開いた。

ルナ「ああ、それから紫のアーマーで仮面みたいなメットとマフラーみてえなもん着けてるレプリロイドがイノブスキーを破壊しやがった。2人共ルインみたいなジャケットタイプのアーマーだった」

エックス「…ルナ、アクセル。もしかしてそいつらはこういう姿をしていなかったか?エイリア、少し」

エイリア「?ええ」

エックスはデータディスクを挿入すると最初の大戦時代のルインが映し出された。
右からHXアーマー、FXアーマー、PXアーマー、LXアーマーを装着したルインが映し出された。

アクセル「あ、これあいつらにそっくり…」

HXアーマーとPXアーマーを指差すアクセルにエックスは少し顔を顰めた。

エックス「これはかつてのシグマの反乱の時にルインが使っていたアーマーだ。レプリフォース大戦の時にデータが盗まれてしまったんだが…多分その時のデータを使われている可能性が高い」

ルナ「レッドアラートの仲間じゃなさそうだし…何者だろうな?」

エックス「分からない…しかしこれだけは言える。敵はレッドアラートだけじゃない。恐らく別の勢力がいるんだろう…奴らは何が目的なのか…」

アクセル「…考えたってしょうがないよ。あいつらが誰であってもレッドアラートを止めなきゃいけないんだから」

エックス「…そうだな。シグナスには俺が伝えておく。次の任務まで休んでいてくれ。それからアクセル、君の部屋なんだが、急なことで部屋を用意出来なかったのでルナと同室になるんだが…」

ルナ「え?」

エックス「すまない…女の子だから異性と同室は辛いだろうが…」

ルナ「いや、俺は別に構わねえけどアクセルは?」

アクセル「僕も構わないけど…」

異性を意識しない年齢である2人には何故エックスが申し訳なさそうにしているのか分からないらしい。
2人は疑問符を上げながら退室した。



































通路を歩く2人。
ふとアクセルは伝えていないことがあるのを思い出した。

アクセル「そうだ。言ってなかったよね?僕がレッドアラートを抜け出した理由を」

ルナ「ん?」

少しだけ視線を送ったルナの目に映ったのは、白い光に包まれる彼。
次の瞬間、彼の姿は、少年ではなくなっていた。

アクセル「レプリロイドの姿や能力を、そっくりそのままコピー出来る」

居たのは緑色のレプリロイド。
機械的な声に交じって、少年特有の高い声も聞こえる。
もう1度白い光を放ち、ほぼ一瞬後に元の姿に戻った。

アクセル「…でも、完璧じゃないんだ。コピーショットを使っても、完全にコピー出来るのは、僕に似た大きさのレプリロイドじゃなきゃ駄目みたいなんだ。それ以上の大きさだと短い時間しかコピー出来ないみたい」

アクセルはルナの反応を見たが、ルナの表情は驚愕というより意外そうな表情である。

ルナ「へえ、驚いたぜ。まさか俺と同じコピー能力持ちとはな」

アクセル「へ?」

目を見開くアクセルにルナも白い光に包まれる。
次の瞬間、現れたのはイノブスキーである。

アクセル「え、ええ!?変身出来るの!?」

ルナ「驚いたか?コピー能力は俺も持ってるんだよ」

イノブスキーの声にルナの声が混じっている。
次の瞬間、ルナも元に戻る。

ルナ「でもな、俺のコピー能力も完璧じゃねえんだわ。コピーする奴の大きさは問わねえけど、能力はオリジナルよりどこか劣化しちまう。まあ、俺自身どうしてこんな能力があるのかさっぱりなんだ」

アクセル「どうして?」

ルナ「エックスにも話したけど俺、誰に造られたのかさっぱり分からないんだ。気づけば何もない荒野で倒れてて、世界を放浪していた時、たまたまジャンク屋を営んでいたじいさんに拾われて、この名前もじいさんがつけてくれたんだ。俺が拾われたのが月夜だったって単純な理由でさ、まあ気に入ってるからいいんだけどさ。だから俺の本当の名前を知る奴はどこにもいない」

アクセル「ご、ごめん…」

悪いことを聞いたとアクセルは謝罪する。

ルナ「気にしてねえよ。で?お前は?」

アクセル「あ、うん。実は僕も、どうしてこんな能力が使えるのか分かんないんだ……」

いきなり沈んだ声音になったことも訝しんだが、話の内容に引っかかりを覚えた。

ルナ「分からないって、お前も自分のことが分からないのかよ?」

正面から彼を見て尋ねると、いよいよ暗い表情になって俯いてしまう。

アクセル「……昔のことは覚えてないんだ、僕も。…レッドに拾われて、この能力のおかげで強敵を倒して来たんだ……。この名前もレッドがくれたんだ“アクセル”…“突き進む”って意味なんだってさ」

ルナ「そっか…お互いコピー能力持ちで記憶喪失か。奇妙な縁だな…よし、奇妙な縁ついでに部屋に着いたら新しい武器造ってやるよ。」



































ルナがアクセルを部屋に入れるとかなり広いスペースの部屋だ。
この部屋にはルナが拠点で使っていた機材を置いているために、自然と広くなってしまう。
武器開発などに使われるラボラトリーとしての機能を有している。

ルナ「ほわちゃあああ!!」

アクセル「うわっ!?」

ルナはドライバーなどの道具を持つと凄まじい勢いで組み立てていく。
あまりの凄業(すごわざ)にアクセルは恐る恐る話しかける。

アクセル「えっと…何の武器を造るの?」

ルナ「イノブスキーのムービンホイールだっけ?あれを元にした武器だよ。能力をコピー出来るんだろうけど、お前の場合、銃にした方が良さそうだ。よし出来た」

アクセル「早っ!?」

ルナが手渡したのは青を基調とした銃である。
銃口と思われる箇所には輪のような物がついている。

アクセル「ちょっとでかいね」

アサルトライフル並の大きさの銃をマジマジと見るアクセルにルナは苦笑した。

ルナ「奴の武器のでかさを考えると銃自体もでかくなる。その銃、スピンホイールはバレットと同じ感覚で撃てる。ここでの試射は勘弁な」

アクセル「うん。ありがとう」

ルナ「ところで持ち運びはどうする?」

アクセル「あ、大丈夫。変身の応用で武器を粒子化出来るから」

ルナ「お前も出来るのかよ」

こうして同じコピー能力を持つレプリロイドの2人は会話を弾ませていく。 
 

 
後書き
イノブスキー終了。
アクセルの特殊武器はX8のように銃器を扱う予定。

オリジナル特殊武器。

スピンホイール

前方に地を這うエネルギー状の光輪を発射する。
外見はロックマンゼクスアドベントの雑魚敵のチェンメランを銃にしたような形。
 

 

第四話 アクセルSIDE3

 
前書き
アクセルSide2の続きです 

 
アクセルとルナは休憩を取った後、指令室に来ていた。

アクセル「ゼロとルインはまだ帰って来ないの?」

アイリス「ゼロとルインはディープフォレストで戦っているわ。ここのレッドアラートのメンバーはソルジャー・ストンコング…」

アクセル「ストンコング…」

誇り高く、忠義に生きる戦士で、仲間からは尊敬の念を込めて哲人と呼ばれていた。
彼は強い。
2人の攻撃を防ぎながら、剣を繰り出していた。

アクセル「僕行ってくる!!」

エックス「アクセル!?」

アクセル「ゼロとルインが勝てば2人を迎えに。ストンコングが勝てば彼を倒す。どっちが勝つか分からないけど、とにかく行ってくるよ!!」

ルナ「待て待て、お前だけ行こうたって、そうは問屋が卸さねえ!!」

エイリア「危険よ2人共!!あそこは険しい道が続いていてあなたじゃ通り抜けられないかも」

アクセル「平気だよ。僕達にはこの力があるんだから」

2人はルインズマンに変身する。

アイリス「え!?」

ルナ「んじゃ、行ってくんぜー!!」

呆気に取られているエックス達をよそに2人は出て行ってしまう。

エイリア「あの能力は…相手の姿、能力をコピーする…ただの噂だと思っていたのに…」



































戦いはゼロとルインの勝利で終わる。
ゼロはストンコングを殺したセイバーを抜く。
抜くと同時に血液が上がり、セイバーが紅を纏う。
それを払うとセイバーをしまった。
ゼロとルインはストンコングの死顔を見つめる。
満足げな顔がせめてもの救いだったか…2人は直ぐにもと来た道へ向かう。
すると前方に2体のレプリロイドがいた。
道中で見たルインズマン。

ルイン「まだいたんだ」

2人がセイバーを構えた瞬間、ルインズマンの身体が光に包まれたかと思うと次の瞬間。

ゼロ「アクセル!?ルナ!?」

ルナ「よう、遅いんで迎えに来たぜ。」

ルイン「あ、うん…」

ゼロ「余計な世話だ。それより今の力は?」

ルナ「コピー能力さ。俺とアクセルにはレプリロイドの姿と能力をコピー出来るんだよ。といっても俺もアクセルも完璧じゃねえけどさ」

ゼロ「その力は一体なんなんだ?」

アクセル「驚いたでしょ?でも僕もルナと一緒でどうしてこんな能力があるのか分からないんだ」

ゼロ「分からない?」

ルナ「記憶喪失なんだとよ。」

ルイン「…そっか」

アクセル「でも僕はレッドに拾われて…仲間もいたから記憶なんか無くても平気だった。でもこの能力のせいで思いもよらないことが…」

その時である。

エイリア『ゼロ、アクセル、ルナ、ルイン、聞こえる?高度1万kmに所属不明の飛行空母を確認したわ!!直ちに撃退して!!』

ルナ「またかよ。息つく間もないぜ。」

ゼロ「話は後だ。出撃するぞ」

アクセル「ああ、待って。僕達が行くよ。空を戦場にするなんてきっとあいつだ。」

ルイン「あいつって?」

ルナ「お前らは他のバウンティハンターを任せたぜ。エイリア、今すぐ向かう!!」

アクセルはホバーで、ルナは飛行能力を持つレプリロイドに変身することで上空に。

ルイン「仲いいね、あの2人。」

ゼロ「同じ能力と年齢も近いからだろう。俺達も戻るぞ」

ルイン「うん」

2人もハンターベースに帰還する。



































エイリアの指示通りに動けば、青が刺々しいサイバースペースである。

アイリス『ゼロ?ここは…電波障害…』

ゼロ「チッ…殆ど聞こえん…」

ルイン『ソニア、ゼロのサポートを』

サイバーエルフ・ソニアを呼ぶ。

ソニア[何?ルインおかーさん]

ルイン『サイバースペースのゼロの案内を頼めるかな?この中はかなり複雑そうだから…』

ソニア[OK、ついて来てゼロ!!]

ゼロ「プログラム生命体は便利だ…」

ボソリと呟きながらゼロはソニアの案内の下、レッドアラートのメンバーの元に向かう。





































そして地上から1万km離れた場所にある飛行空母に辿り着いた2人。

エイリア『聞こえる2人共?ここからなら、相手も同士討ちを嫌って攻撃が緩くなるはずよ』

アクセル「(恐ろしいことを平気で言うねこの人)」

ルナ「(それがエイリアだからな。トランスオン!!)」

再びフライングマンに変身して次の戦闘機に移る。
アクセルも慌ててホバーで次の戦闘機に移る。

アクセル「何かいいなあ」

ルナ「何が?」

アクセル「だってルナのコピー能力は僕と違って制限時間ないじゃん」

ルナ「なあに言ってんだよ。能力がオリジナルより劣化するって言ってんだろ」

バスターを放ち、フライングマンを破壊する。

アクセル「そりゃそうだけどさ」

バレットを連射し、他のフライングマンを撃墜した。
飛行戦隊の難所をくぐり抜け、飛行戦艦に侵入しようとした時、鳥形レプリロイド、バーディが襲い掛かる。

ルナ「うお!?」

慌てて回避すると2人は同時にバレットを構えると連射する。
しかしバーディはそれを容易く回避すると辺りを飛び回る。

アクセル「参ったな…こんな飛び回れたら狙いが定められないよ。」

ルナ「…確かにな。なら避けられない攻撃をするまでだ!!」

バレットを構えるとホーミングショットのコネクションレーザーを使う。
ホーミングショットは射程範囲内にいる敵を追尾するため、確実に当たる。

ルナ「ホーミングショット、コネクションレーザー!!」

電撃のようなレーザーがバーディに直撃し、バーディの動きが僅かに鈍る。

ルナ「アクセル、今だ撃て!!」

アクセル「OK!!」

動きが鈍ったバーディにバレットの連射を浴びせるアクセル。
バーディは地上に落下していく。

ルナ「よっし、撃破♪」

アクセル「いいなあ、ルナのバレットはチャージだけじゃなくてそんなことまで出来るんだ。そうだ。ねえ僕のバレットもパワーアップ出来ないかな?」

ルナ「う~ん、俺とお前のバレットは構造に違いがありすぎるからなあ。俺のバレットは威力重視なのに対してお前のバレットは連射性を重視してるからな。それに無理に改造するとバレットがぶっ壊れちまうぞ?」

アクセル「え~!?」

ルナ「後で火力のある武器造ってやるから、それからお前に渡したスピンホイールは耐久性の高い敵に有効だから覚えとけ」

アクセル「分かったよ」

渋々といった感じで諦めるアクセルにルナは苦笑する。



































2人は甲板に出た瞬間。
アクセルの周囲に電磁檻が現れ、アクセルを捕らえた。

アクセル「っ!?」

ルナ「アクセル!!」

バレットを連射するが、電磁檻によって弾かれる。

ルナ「何だこりゃあ!?クラッキングも出来ねえ!!」

アクセル「この電磁檻は…まさか、らしくないじゃん、カラスティング。こんな所に引きこもって、あんたなら真っ先に飛んで来ると思ってたのに」

虚空に風を纏い、鴉型レプリロイドのウィンド・カラスティングが現れた。

カラスティング「戻って来る気はないんだな?」

アクセル「分かってるくせに…」

カラスティング「ふっ、お前らしいな…お前がエックス、ゼロ、ルインと並び称された特A級ハンター…ルナか」

ルナ「そうだよ。取り敢えず連行する前に聞かせてもらえるかね、てめえらの目的は何だ?アクセルを連れ戻すことだけが目的じゃねえんだろ?」

彼は静かな声で答える。

カラスティング「…見てみたかったのさ…」

ルナ「?」

思わず疑問符を浮かべるルナに、彼は続ける。

カラスティング「あいつが憧れたレプリロイド達を。そしてそいつらと肩を並べられる実力を持つお前にな。どれだけの価値があるか、試させてもらうぞ!!」

次の瞬間、カラスティングがナイフによる攻撃を仕掛けてきた。
ルナはバレットで受け止める。

ルナ「なるほどな、そのための電磁檻ね…。上等だ!!」

もう片方のバレットでカラスティングにレーザーを連射するが、カラスティングも直ぐさま飛翔することで回避する。
しかしルナは距離を計算するとホーミングショットを使う。

ルナ「ホーミングショット、コネクションレーザー!!」

電撃のようなレーザーをカラスティングに直撃させ、甲板に落とす。

カラスティング「っ、成る程、こいつは厄介だ」

ルナ「当たり前だ。俺が長年愛用していた武器だぜ!!トランスオン!!」

コピー能力で変身したのはレッドアラートのメンバー・イノブスキーである…。

カラスティング「コピー能力だと…!?」

ルナ「うらああああ!!」

凄まじい勢いでの体当たりをカラスティングに喰らわせ、弾き飛ばされたカラスティングに向けて…。

ルナ「ムービンホイール!!」

複数ばら撒かれた車輪がカラスティングを襲う。

カラスティング「…つああああ!!」

広範囲の強力な衝撃波が放たれ、ムービンホイールを破壊し、ルナに炸裂する。
咄嗟にルインズマンに変身し、衝撃波を防いだ。

カラスティング「(アクセルとは違い、変身に制約がないようだ。これは厄介だな)」

ルナ「(こいつ…同じレッドアラートの主力メンバーでもイノブスキーとは全く違う)」

カラスティング「はあ!!」

投げつけたブーメランがルナに襲い掛かる。
スライディングでかわし、バレットを連射しながら接近する。
カラスティングは誘導ミサイルを放ち、レーザー弾を相殺する。

ルナ「温いぜ。てめえの実力はまだまだそんなもんじゃねえだろ?」

カラスティング「当たり前だ」

黒翼を散らしながら上空に消えた。
その後の動作は早く、風を切って垂直に降下。
ルナの立ち位置を狙う。

ルナ「おっと!!」

カラスティングを引き付けて回避した。
着地後の隙を突き、リフレクトレーザーを放つ。
しかし、レーザーはカラスティングの放った衝撃波に掻き消された。

ルナ「チッ!!」

ルインズマンに変身する時間が足りないことを悟ったルナは咄嗟に両腕を交差して防御する。

カラスティング「流石だ。ダメージを最小限に抑えたのだな。だが、いつまで持つか?」

ルナ「野郎!!」

ホーミングショットを放とうとしたら射程外に離脱された。

アクセル「(やっぱりカラスティングは強いな…)」

カラスティングとはよく戦っていた。
まだ“仲間”が仲間だった頃、実戦形式の稽古をしていたが、“動きが把握出来ていない”と言われて完敗だったが。

ルナ「(カウンターをぶちまかすしかねえ。ギリギリまで奴を引き付けて…)」

次の瞬間がチャンスだ。
これを逃したら勝機はない。
高鳴る鼓動を感じながらカラスティングが超特急でルナに迫る。

カラスティング「勝負だ!!」

ルナ「上等だ!!」

風の壁と激しい闘気がぶつかり合う。
カラスティングとルナ、互いの力を輝かせた。
風の渦が発生した。
ルナのチャージレーザーがカラスティングの胸を撃ち、カラスティングは尚も力失せず、風の刃を放つ。
ルナはまともに喰らう。
両者反対方向に吹き飛んだ。
次の瞬間、ルナは立ち上がり、カラスティングの動力炉にバレットを向けた。

ルナ「勝負ありだな」

カラスティング「そのようだな」

自分が少しでも攻撃の意思を見せたら即座に動力炉を貫くだろう。
カラスティングは電磁檻に捕われているアクセルの方を見遣る。

カラスティング「…いい仲間と出会ったな、アクセル」

アクセル「カラスティング…」

彼は空を見上げた。
雲はいつの間にか流れ、青い空が広がっていた。

カラスティング「(もう思い残すことはない…)」

目を閉じたカラスティングの胸倉を彼女が掴む。

ルナ「まだまだ死ぬのは早いぜ?アクセルのライバルなんだからまだまだ生きないとな。」

ウインクをしながら言う彼女にカラスティングは呆気に取られ、少しの時間の経過の後に声を上げて笑う。
アクセルの電磁檻が無くなった。

ルナ「カラスティング、あんたを連行する」

カラスティング「分かった。好きにしろ」

アクセル「ところでカラスティング。あいつらのこと知ってる?」

カラスティング「?」

アクセルの問いに疑問符を浮かべるカラスティングにルナが口を開く。

ルナ「ジャケットタイプのアーマー着てるレプリロイドだよ。ウェントスやテネブラエとか言う。」

カラスティング「俺も詳しいことは分からんが、レッドが協力者だと言っていたくらいだ」

アクセル「そっか…」

「ウェントスとテネブラエに会ったか」

その時聞こえた声に全員が振り返ると、ジャケットタイプのアーマーを纏う橙色のアーマーの女性レプリロイドと青いアーマーの少年レプリロイドが立っていた。

ルナ「誰だてめえら!?」

「テネブラエから聞いて来てみたが、グラキエス、本当にお前と同じくらいのガキ共だな」

グラキエス「酷いやイグニス。君だってそう変わらないじゃないか」

グラキエスと呼ばれた少年は口を尖らせながらイグニスという女性に言う。

アクセル「何なんだよお前らは!?」

グラキエス「ウェントスかテネブラエから聞かなかったんだ?まあ、あの2人がそう親切なわけないしね。僕の名前はグラキエス…氷の戦士さ」

イグニス「私はイグニス…炎の戦士だ。あの男の最後の作品と聞いて来てみたが、この程度とはな」

ルナ「…お前、アクセルのこと知ってんのか?」

グラキエス「勿論、彼が何のために造られたのかもね」

アクセル「僕が何のために…?僕が何のために造られたのか知っているなら、あんた達を倒してでも聞かせてもらうよ!!」

グラキエス「ハハ、君は勇気あるねえ。だけどごめんね。今はまだ君と戦う気はないんだ。僕らにもやらなきゃいけない事があるからね」

イグニス「出来損ないの失敗作に過ぎないお前になど用はないということだ。お前達はここで海の藻屑となるのがお似合いさ!!」

ナックルバスターを抜き、バスターを床に叩きつけると甲板に亀裂が入り、飛行戦艦が堕ちていく。
イグニスとグラキエスが転送の光に包まれ、消えていく。

ルナ「エイリア!!戦艦が堕ちる!!早くハンターベースに転送してくれ!!」

3人もハンターベースに転送された。
ルインのデータを元にして造られた戦士達。
彼らは何者なのだろうか? 
 

 
後書き
オリキャラ

ウェントス CV:緑川光

ルインのHXアーマーを元にして造られた人間素体型レプリロイド。
飛行能力を持ち、武器の二刀流ダブルセイバーの他にも、竜巻や電撃を利用した攻撃も得意とする。
元の人間が剣術の達人のために近接戦闘において高い戦闘力を誇る。
モデルはゼクスアドベントのヘリオスのモデルH。
気障っぽい話し方だが、ヘリオスと違い、ポエムは使わない。
名前のウェントスはラテン語で風を意味する。

テネブラエ CV:堀川りょう

ルインのPXアーマーを元にして造られた人間素体型レプリロイド。
高いステルス性能と高速移動と分身能力による変幻自在な戦闘に特化している。
元の人間が暗殺などをしていた裏社会の人間のために、ルイン以上に能力を使いこなす。
クナイや十字手裏剣など忍者のような武器を扱う。
モデルはゼクスアドベントのシャルナクのモデルP。
シャルナクのように機械的な口調ではない。
名前のテネブラエはラテン語で闇を意味する。

イグニス CV:天野由梨

ルインのFXアーマーを元にして造られた人間素体型レプリロイド。
二丁の遠近両用の武器、ナックルバスターを使った肉弾戦を得意とする。
四天王の中でも一番パワーに優れている。
元の人間が軍人のために高い戦闘力を誇る。
モデルはゼクスアドベントのアトラスのモデルF。
名前のイグニスはラテン語で火を意味する。

グラキエス CV:大谷育江

ルインのLXアーマーを元にした人間素体型レプリロイド。
水中戦に特化した能力を持つ。
槍状の武器ハルバードや、氷や水流を自在に操り戦うことが出来る。
元の人間は水泳の天才だったらしく、それが水中戦闘の実力に反映されている。
四天王の中では性格は比較的温厚の部類に入る。
モデルはゼクスアドベントのテティスのモデルL。
名前のグラキエスはラテン語で氷を意味する。 

 

第五話 エックスSIDE2

 
前書き
エックスSideの続きです 

 
指令室に足を運んだエックス。
中にはエイリアとアイリスとシグナスがいる。
モニターにはレッドアラートの戦士達が映し出されていた。

エックス「シグナス、エイリア、アイリス…すまない。何も出来なくて……」

エイリア「あなたは悪くないわ」

彼女はエックスの言葉に必死に首を振った。

シグナス「エイリアの言う通りだ。」

エックス「………」

シグナスの堂々としながら、エックスを思いやる優しさに溢れていた。

シグナス「それよりもレッドアラートだ。奴らはここ最近、手口が凶悪化した。イレギュラーだけでなく一般人をも巻き込んでいる。」

エックス「ああ、人々のために戦っていた彼らがどうして…」

アイリス「エックス、私はこの事件に何か裏があると思えてならないの。何の根拠もないんだけどね」

エックス「…ああ、俺もそう思う」

エックス達はモニターを見遣るとゼロとルインの姿を見つめる。




































ゼロとルインがルナとアクセルと別れ、ディープフォレストに到着した時、既に夜は明けていた。
朝日が柔らかい光を投げ掛けて来る。
鳥の鳴き声、木漏れ日は薄布の如しで、触れればふわりとしそうだった。
全く平和な朝である。

ゼロ「(アクセルか…)」

屈託のない少年を思い浮かべる。
彼はエックスとルイン、そして自分に憧れているという。
ハンターになりたいとも言っていた。
偽りのない真っ直ぐな目で。

ゼロ「(エックスとルインならともかく、何故俺に憧れるんだ?)」

端正な顔に影がかかる。
自分は憧れられるような男ではない。
何故なら自分は全ての元凶なのだから。
思った矢先に全ての真実を知る男がいた。

ルイン「ライト博士!!」

ゼロ「Dr.ライトか」

かつて2人の天才科学者がいた。
1人はその能力を平和のために使い、もう1人は己の欲望のために使った。
偶然かそれとも運命なのか…。
彼らは互いに自分が最高と自負するロボットを造り上げた。
1人は“平和”。
もう1人は“破壊”。
それらを息子に託した。

ゼロ「あなたに言いたいことがある。何故あなたはエックスに力を押し付けた?あいつは誰よりも戦いが嫌いなのに…俺はあいつを…いや、ロックマンを倒すために造られた。世界を滅ぼすために生み出された…。俺達はあなた達の下らん競争のために造られたのか!!?」

ルイン「ゼロ!!」

ライト博士に食いかかるように迫るゼロをルインが止める。

ライト『それは違う。』

ライバルで、後に敵対した友の息子。
深い深い青の瞳は、邪悪な色を映してはいなかった。
今は人々のために戦う正義の戦士なのだ。

ライト『私はあの子が幸せに暮らせることを願っている。争いのない世界で…人々とレプリロイドが共存する世界こそが私が望んでやまない理想郷だ。今回エックスに渡すアーマーはこれじゃ』

ライト博士はカプセルの中心にぼんやりとした映像を出した。
かつて見たセカンドアーマーに何処か似ているアーマーだ。

ライト『このアーマーはかつてエックスが使用したセカンドアーマーをベースに飛行能力を高めた物じゃ。名付けて“グライドアーマー”。アームパーツはチャージショットの射程と威力を高め、2発のチャージショットに匹敵する威力の追尾弾を同時に放ち、命中率を飛躍的に高めた。ポディパーツは受けるダメージを半減させ、ダメージをエネルギーに変換し、ギガクラッシュを放てるようになる。このアーマーの最大の特徴はグライド飛行じゃ。かつてのフォースアーマーで培われた“ホバリング”機能を更に進化させ、エネルギー供給を別カートリッジに分割する事で、滞空時間の上昇、長時間の滑空が可能となるとエックスに伝えて欲しい。』

アーマープログラムを受け取るとライト博士は瞬く間に消えた。

ルイン「理想郷かあ…」

エックスも似たようなことを言っていた。
今は迷っている場合ではない。
今はここのボスを叩くことの方が先決だ。



































ディープフォレストの最奥に控えていた戦士。

ゼロ「できるな…」

姿を見ただけで、ゼロは相手の強さに気付く。
大きな背からは、強者の気を感じられる。

ストンコング「ゼロと言ったか、この世で最も優雅に舞う武神よ。我が名はストンコング。戦いの中にしか己を見出だせぬ。貴様と同じだ」

ゼロ「一緒にしないでもらおう。俺達は戦いが全てだとは思っていない。」

ルイン「ストンコング。あなたみたいな著名な哲学者が何故こんなことを…」

ストンコング「我が戦いは忠義が為。ここからは戦いの為の戦い。信念の剣を翳し、刃を持って語るがいい!!」

振り下ろされた一撃をゼロはかわすとルインがチャージセイバーで斬り掛かる。
真一文字に振られた一撃。
並のレプリロイドなら容易く破壊出来る一撃。
しかしそれは超硬石の盾に阻まれた。

ルイン「…っ、硬い。まさかこれ超硬度岩石!?」

ストンコング「我が盾はいかなる攻撃とて防ぐ。貴様らのそれとて同じ。」

ゼロ「調子に乗るな!!」

ゼロもセイバーで斬り掛かるが超硬石の剣で受け止められた。

ルイン「ゼロ!!」

ゼロ「力で押し切れ!!防御力がある分、攻撃に手が回らなくなるはずだ!!」

ルイン「うん!!」

脚部に力を回し、ストンコングを押し退けようとするが…。

ストンコング「これでも、か?」

逆に押し返される。
2人は足場の切れ目のすぐ側まで退いた。

ゼロ「(俺とルインの2人掛かりで力負けするとはな…)」

2人は間合いを取り、ルインがフルチャージショットを放つ。
巨大な砲撃がストンコングに迫る。

ストンコング「愚かなり!!」

吠えて巨岩を召喚した。
それはルインのフルチャージショットを弾いただけではなく。
2人に凄まじい勢いで迫る。

ゼロ「馬鹿な…一介の剣士にそんな真似が…」

ストンコング「我は力を手に入れた。戦いの為の力を!!その力を出し尽くし、強者を討ち取るのが我が生きる証!!貴様と同じく!!」

ゼロ「先程言ったはずだ。俺は戦いのために戦っているのではない。例えそのために造られたのだとしてもだ」

ゼロの振るった一撃が盾に当たるが、ゼロの手に痺れを残すだけで終わる。

ルイン「(私達には心がある。破壊の力を、守るために使うことが出来る。私達はそのために戦っている!!)ストンコング!!」

チャージセイバーを叩き込むが、弾かれた。

ストンコング[ルイン……ゼロと同じく戦場を美しく舞う舞姫よ。汝に問う。武力とは?戦いとは何か?]

ルイン「……自らの意志を、相手に強要する手段……」

エックスはそれが嫌で、でも戦いたくなくても戦うしかなくて。
他の方法を探しながら、戦って悩み続けてきた。

ストンコング「その通り!!ならば言葉は要らぬ!!信念の剣を翳し、刃をもって語るがいい!!どの道……」

ルイン「勝利の上にしか歴史は正当性を与えない…でしょ。私は私の道を行く。それだけだよ!!」

ゼロ「その通りだ。一気に行くぞ!!」

ルイン「シンクロシステム起動!!」

2人がシンクロを発動するとゼロとルインの能力が共有され、2人のセイバーの出力が段違いに上昇し、ビーム刃の長さも通常の数倍となる。

ゼロ、ルイン「「コンビネーションアサルト!!」」

凄まじい威力の斬撃はストンコングの盾と剣を両断し、ストンコングの身体に深い傷をつけた。

ゼロ「勝負あったな」

ストンコング「ば…馬鹿な…」

信じられぬという顔でストンコングは倒れた。



































こずえの先に空が見える。
空に高みを極めた太陽がある。
ストンコングは自然が悠然と存在している様を眺めた。
彼の喉元には剣先が突き付けられている。
この世で最も優雅に舞う武神と舞姫が己を見下ろしていた。

ストンコング「見事だ…」

ルイン「ストンコング。あなたを連行します。」

ストンコング「連行?愚かなことよ…我等は信念の剣を翳し、刃を持って語った。それでよい…。最も強き者達と剣交えたこの戦いが、我が生涯の誉れ…」

ゼロ「お前はこのままイレギュラーとして生涯を閉じるのを望むのか?」

ストンコング「戯れ言を…ルインが言っていたように勝利の上にしか歴史は正当性を与えぬ」

ゼロのセイバーがストンコングの胸を貫いた。



































エックスはストンコングの師をこの目にした。
戦場から遠く離れたハンターベースで。

エックス「(くそっ…)」

いつも誰かが犠牲となる。
傷つき、生命を奪う。
戦いは悲しみしか生み出さない。

エイリア「エックス…少し休んで。今のあなたに必要なのは休養なのよ…」

エイリアは優し過ぎるエックスを胸が締め付けられる思いで見た。

エックス「…ああ」

エイリア「そ、そう、それよりアクセルとルナのことなんだけど…」

エックス「え?アクセルとルナのあの能力のことか?」

2人が垣間見せた能力。
2人が輝いたかと思うと、全く別のレプリロイドとなっていた。

エイリア「ええ。あれはDNAデータを使って相手の姿と能力をコピーする能力なの。今は無くなってしまった研究所で研究されていたようだけど」

彼女は言葉を切ると、指令室の無機質な天井を見上げた。

エイリア「危険な能力だわ。強大な力は使い道次第で恐ろしい結果を招いてしまう。無限の可能性は同時に無限の危険性でもあるもの…」

エックス「そうだな…だが、大丈夫だ。あの2人なら、アクセルはまだ会って間もないが、ルナはそんな子じゃない。」

エイリア「そうね…」

苦笑しながらエックスは使えない腕を見つめる。

エックス「(どうして戦えないんだろう。こんな大切な時に…どうして戦えない…何も出来ないんだ…)」

彼の胸中が焦燥に掻きむしられた。 
 

 
後書き
ストンコング撃破。

グライドアーマーは最弱のアーマーと言われていますが、バスターの命中率では他のアーマーより高いんですよね。
チャージショットの追尾弾はガンガルンにも当たるし 

 

第六話 エックスSIDE3

 
前書き
エックスSIDE2の続き。 

 
エックスはデータ整理をしていた。
画面にはびっしりとプログラムが書かれている。
エイリアが作成した物だ。
本人曰く現在、ライフセーバーと共に働いているゲイトには劣るとのことだが、エックスは改めてエイリアの情報処理能力の高さを知る。
この仕事は働き詰めのエイリアとアイリスを見かねて、エックスが手伝っていた。
レッドアラートとの戦いが始まってからエイリアもアイリスも休みなく働いている。
いくら気丈な彼女達でも、顔、声、動作には疲労の色が浮かんでおり、見ているこちらが苦しかった。
エックスは2人の仕事のうち、簡単なものを手伝っているが、それでもオペレート専門ではないエックスにはキツイ。
プログラムに四苦八苦していた時、アイリスとエイリアが入って来た。

アイリス「ありがとうエックス。はい」

エックス「ああ、ありがとう2人共」

アイリスからコーヒーの入ったカップを受け取り、一口飲む。
コーヒーの心地好い苦みにエックスは表情を綻ばせる。

アイリス「本当にありがとうエックス。あなたが手伝ってくれたから久しぶりに仮眠が取れたわ」

エックス「オペレーターの仕事って大変なんだな。忙しくて目が回りそうだよ。特にこのデータ処理なんか」

画面一杯のプログラムを指して笑うエックス。

アイリス「あ、分かる?私も初めての時は戸惑ったわ」

エイリア「それに大変なのはあなただって…ごめんなさい」

言いかけて止めた。
己の軽率さを悔やむ顔となる。

エックス「いいんだ…気にしないで」

エイリアはエックスを見るが、顔に怒りの表情はなかった。

エックス「どうしてこんなことになったのか自分でも分からないんだ。ライフセーバーは“精神的なもの”だと言っていた。確かに俺は悩んでばかりの意気地無しだけど…俺は今まで戦って来れたのに…何で急に…俺は戦わなければいけないのに…戦いを止めなければいけないのに…」

エイリア「いいんじゃない?」

唐突にエイリアが言う。
明るく、優しさに満ちた瞳をしていた。

エックス「え…?」

驚きに目を見開くと、エイリアの優しく、凛とした表情が映し出された。

エイリア「あなたは最初の反乱から充分戦った。沢山傷ついた。今休んだって誰もあなたを責めないわ。だってゼロもルインもルナも…みんなあなたの気持ちを分かっているはずだから。戦うの、嫌なんでしょう?」

エックス「そりゃあ…出来れば戦いたくないよ」

ぎこちなく笑いながら言うエックスをエイリアとアイリスはジッと見つめる。

エックス「けど、目を閉じても戦いがなくなるわけじゃない。多くの人々が苦しみ、悲しんでいる。一刻も早く戦いを終わらせなければならないのに…っ!!」

アイリス「エックス…」

エックス「それが分かっているはずなのに…どうして戦えない…?もう迷わないって…ルインを失った時、誓ったはずなのに…っ!!」

触れていただけの手が、ギリギリと使えぬ腕を締める。
自身への怒りが肉体的な痛みとなってエックスを蝕む。

エイリア「エックス!!」

彼の自傷行為を止めようと身を起こした。

エックス「止めろ!!」

彼女の手がエックスの腕に触れる寸前、勢いよく振り払われた。

アイリス「エックス!?」

アイリスは思わず我が目を疑った。
あのエックスが人を拒絶したことに。
同時にエックスは我に帰った。
エイリアは顔を真っ青にして慄いていた。

エックス「エイリア…すまない…本当にすまない……」

何度も謝るエックス。
彼女は自分を心配してくれたというのに、その手を払いのけてしまったことに。
顔をくしゃくしゃにしてエイリアに何度も謝った。
その表情はエイリアとアイリスの方が心苦しくなるほどである。

アイリス「私…コーヒーの代わりにハーブティーを淹れてきますね」

心を落ち着かせるために代わりにハーブティーを淹れに向かうアイリス。
エイリアは俯くエックスの手にそっと自身の手を重ねた。

エイリア「エックス…気にしないで。私は大丈夫だから、もう自分を責めないで…。あなたはもう充分傷ついた。もういいのよ。それにあなたは何も出来ないわけじゃない。あなたがいてくれるから私は頑張れるの…あなたがあの時助けてくれたから今の私がいるの…だから……これ以上自分を責めないで…」

エックス「エイリア…でも、俺は…」

と言いかけて、何か閃いた表情を浮かべた。

エックス「いや…まだだ、まだ俺にも出来ることがあるはずだ……」

力がなくても出来ることはあるはずだ。
それを思い付いた。

エイリア「エックス…?」

彼を怖ず怖ずと見つめる。
エックスの瞳に光が射していた。
希望の光を。

エックス「…ありがとうエイリア。俺にも出来ることがあった。」

エイリア「え?」

エックス「今からライフセーバーの元に向かう」

ライフセーバーの元に向かうと聞いたエイリアは目を見開いたが、すぐにエックスの考えを理解した。
エックスはライフセーバーと共に救助活動に向かおうとしているのだ。

エイリア「そう、気をつけてエックス…」

エックス「ああ…本当にありがとう…エイリア…」

彼女を両腕で包み、少しの時間の経過の後、ライフセーバーの元に向かうエックス。

アイリス「エイリアさん?エックスは?」

エイリア「エックスならライフセーバーの元に向かったわ。きっと自分に出来ることをしに。」

アイリス「そうですか。あ、ハーブティー飲みますか?」

エイリア「あら、いい香り。頂くわ」

ハーブティーの入ったカップを受け取り一口飲もうとした時、ディープフォレストから帰ってきたゼロが指令室に入って来た。
次のミッション先が決まるまで暇を持て余してきたのだろう。

アイリス「ルインは?」

ゼロ「あいつなら仮眠を取っている…ハーブティーか?」

アイリス「ええ、ゼロもどう?」

ゼロ「次のミッションまで時間がある。頂くとするか。」

ハーブティーの入ったカップを受け取り、一口飲んだ。

ゼロ「やはりアイリスの淹れた物は美味いな」

アイリス「そ、そう?」

ゼロ「ああ、俺が言うんだ。間違いない」

そしてハーブティーを飲み終えたゼロはしばらくして、ミッションに向かう。









































サイバースペースの最奥で、スナイプ・アリクイックが、何もかも知っているかのような目でゼロを見つめていた。

アリクイック「ふぉふぉふぉ…よう来たのう。真の使命を忘れた者よ」

アリクイックの意味深な言葉にゼロの眉が動く。

アリクイック「幾重にもプロテクトされたお前のデータから垣間見えたのは…未来の記憶か過去の虚像か…」

ゼロ「ふん。何を見たかは知らんが、興味無いな。この場でお前を倒す。それが今の俺の使命だ!!」

セイバーに手をかけながらゼロが叫ぶ。

アリクイック「ふぉふぉふぉ…確かに迷いはないようじゃな」

ゼロ「老人の戯れ言に付き合っている暇はない。行くぞ!!」

飛び掛かったゼロにアリクイックは静かに嘲笑う。
アリクイックの能力は自身のダメージを武器精製に変換することである。
一定のダメージを負うごとに増強される。
最初は鎌鼬を繰り出す程度だったのが、アリ型爆弾、ホーミングミサイルを放つまでになる。
ゼロは攻撃のチャンスも与えられぬまま、攻撃を避けるのみだ。

アリクイック「ふぉふぉふぉ、どうしたゼロよ…わしを倒すのではなかったか?」

ゼロ「ああ、今すぐ倒してやる!!」

小馬鹿にしたようなアリクイックの物言いにゼロは怒りを高めていく。

アリクイック「威勢がよいのぉ、じゃが」

アリクイックは身体の周囲にレーザーポッドを召喚する。
ポッドは8つ。
特殊な金属で出来ているのか、ゼロのセイバーを持ってしても破壊出来ない。

アリクイック「この攻撃はかわせぬよ」

ポッドから一斉にレーザーが発射された。
白い光が雨の如く降り注ぎ、ゼロは成す術もなく被爆した。

ゼロ「くっ…」

アリクイック「紅き邪神よ。本来のボディと力があればわしを倒せただろうに。ふぉふぉふぉ…邪神は使命を奪われ、偽りの使命を背負わされる。人間達の都合を押し付けられた哀れな男よ…」

ゼロ「馬鹿馬鹿しい…」

震える足で立ち上がるゼロ。
迷いなき瞳で敵を貫いていく。

ゼロ「爺から与えられた下らん使命も、予測のつかない未来も必要ない。俺に必要なのは“今”だけだ。今ここで戦っているという事実が俺を支えてくれている!!お前の戯れ言など何の意味もない!!」

セイバーが煌めく。
破壊不可能のはずのレーザーポッドが破壊され、それはアリクイックすらも屈服させる。

アリクイック「流石じゃのぉ…遥か昔に造られた最初のレプリロイドよ」

アリクイックはアーカイブを検索して古きデータを検出する。
現在厳重に保管されているケイン博士の日記にはレプリロイドの始祖はエックスであると言われているが、真実は違う。
“ロックマン”というロボットが存在していた時代にゼロは密かに造られていた。
ロックマンを破壊するために生み出されたロボット。

アリクイック「言葉の続きじゃ。これより遠い未来。世界は偽りの蒼とその子らに支配される。創られた紛い物の理想郷、それを突き抜ける斜陽の如き鮮烈な紅き光。蒼と紅は再び戦う運命にある」

ゼロ「下らん…」

ゼロは突き付けたセイバーを離し、静かに口を開いた。

ゼロ「その戯れ言が未来となるかどうか、その老いぼれた目で見ているがいい」

アリクイックの戦闘用プログラムをセイバーで破壊すると強制的に連行した。 
 

 
後書き
アリクイック撃破。
エックスの武器ってエックスの感情に性能と威力が左右されるような気がするんですよね。
イレハンのラスボスのエックスといい。
フルチャージショットを通常弾のように連射とかラスボスのエックスは凄い。 

 

第七話 アクセルSIDE4

 
前書き
アクセルSIDE3の続き。 

 
アクセルが帰還した時、ルインは仮眠を終え、ゼロはもう帰っていた。
メンテナンスも終え、指令室でアイリスから渡されたハーブティーを飲んでいる。

アクセル「やあ、ゼロ。今回は早かったね」

ゼロ「ふん、口の減らない奴だ」

アイリス「まあまあ、はいアクセル、ルナ。あなた達にはホットミルク」

まだ子供の2人にはハーブティーは口に合わないだろうと判断して、砂糖をいれた甘いホットミルクを渡した。

アクセル「ありがと」

ルナ「ふう~…やっぱアイリスの作ったホットミルクは美味いな」

一口飲んで言うルナに、ルインは思わず苦笑した。

ルナ「そういや、エックスは?医務室か?」

ルイン「エックスなら出掛けてるよ~」

ハーブティーと茶菓子のクッキーを口にしながら答えるルイン。

アイリス「エックスなら…」

アイリスが答えを言い切る前にモニターに映像が映る。

エックス『こちらエックス。…?アクセルじゃないか。エイリアは?』

アクセル「エイリアなら食堂に行ったよ。ダグラスと話があるんだってさ」

エックス『そうか』

モニターに映るエックスの背後には大破したビルやボロボロの鉄材が無残な姿をさらしている。
アクセルはそれにいたく興味をそそられた。

アクセル「エックスは何してんの?」

エックス『レスキュー部隊で活動中、被災者の救助に当たってるんだ』

アクセル「はあ?」

素っ頓狂な声を上げる。
ハンターがレスキュー?
あれは基本的に非武装タイプのレプリロイドの仕事ではないか。

エックス『俺にも出来ることがある。そういうことだ。』

アクセル「戦えないのに何やってんのさ?怪我しないうちに帰ってきた方がいいんじゃない?今のエックスに何が出来るっていうの」

ルイン「アクセル!!何てことを言うの!!」

ルインが叱責するがアクセルの発言はある意味当然かもしれない。
戦えないハンターなど意味がない。
ハンターはイレギュラーを処分するために力を授かった。
その力がない今のエックスは…。
だがエックスから放たれた言葉はアクセルの胸を突くものであった。

エックス『アクセル、君が言っているのは“力の正義”か?』

静かでありながら厳しさを秘めた声で問い掛ける。

アクセル「え…?」

エックス『力があれば何でも出来ると考えることは、力こそ全てを支配するという意味だ。それは多くの犠牲を生み出してきた。あのシグマも同じことを考えていた。“自分達レプリロイドは優れた存在、人間など不必要だ”と』

アクセル「そんなつもりで言ったんじゃないよ!!シグマなんかと一緒にしないで!!あいつは悪い奴じゃないか!!」

エックス『………』

今度はエックスが黙る番であった。
2人が現実空間で一緒にいれば争いになっただろうか?
エックスとアクセルの視線は互いに厳しい。
アクセルには世界の“悪”に例えられたことが酷く耐えられなかった。
しかし数多くの戦いを制したエックスにはアクセルの視線など大したものではない。
アクセルから視線を外し、アイリスの姿を見つけると口を開く。

エックス『アイリス、レスキュー部隊の増援を頼む。これ以上被害を広げないためにも』

それだけ言うとエックスは通信を切った。

ルナ「あ~らら…エックスが怒っちまったなあ…アクセル?不満か?」

アクセル「だってシグマと同じなんて…」

ゼロ「お前の考えを極端に言えばの話だろう」

アイリス「アクセル、エックスは戦いが嫌いなの。力が必要だと認めていても、それが絶望にも希望にもなることを誰よりも知っているから…シグマの暴走を目の前で見たから尚更……あなたを認められないなんて言ってるわけじゃないわ。」

アクセル「…分かったよ。」

不承不承、頷くアクセルにアイリスは微笑むとクッキーを差し出す。
アクセルはドライブルーベリーとドライクランベリーが入ったクッキーをかじる。
焼きたてのクッキーの甘さにアクセルの機嫌も浮上する。

ゼロ「(ガキだな…)」

単純なアクセルにゼロはクッキーを口に運びながら、呆れたように心中で呟いた…。

アクセル「あ、そうそう、話の続き…」

唐突に話題を変えた。
アクセルが逃げ出した理由を4人に話す。

アクセル「僕の仲間、レッドアラートには、腕利きのレプリロイドばかり揃っていたんだ」

ゼロは彼らについては、エイリアとアイリスから少し聞いていた程度で詳しくは知らないので、そのまま口にする。

ゼロ「…レッドアラートの殆どが犯罪者で構成されていると聞いているが?」

アクセル「そっ、そんなことないよ!!基本的には、悪いことはしない主義!!……そりゃ時には悪いことした奴らもいるけど…」

反射的と言っていいほどの速度で、必死になって反論するが、後半は言い訳めいて小さくなった。

ゼロ「…それで?」

話が逸れたと先を促せば、アクセルは俯いてしまっていた。

アクセル「でも、本当に悪いことなんてすることはなかったのに……突然みんな変わってしまったんだ!!」

ルイン「変わった?…変わったってどういうこと?イレギュラー化とは違うの?」

アクセル「……違うと……思…うけど…」

ルナ「…突然ってのは、どういうことだ?」

話が逸れる前にルナがアクセルに聞き返す。

アクセル「レッドの言うことを聞かなくなって……イレギュラーハンターや罪もないレプリロイド達まで襲い出したんだ!!」

その時のことを思い出しているのか、彼は拳を握り締める。

アイリス「アクセル、彼らは突然変わったと言うけど、変わる前に何があったか教えてもらえないかしら?」

アクセル「ある日レッドから、コピーしたDNAデータを渡すように言われて……。それまでは一度もそんなこと言われたことなかったのに……」

彼の、意味深げな言い方に、ゼロは鋭く眼を細める。

ゼロ「……まさか?」

僅かに間を置いて尋ねた彼に、、アクセルは頷いた。

アクセル「そうなんだ…。それからしばらくして、みんながどんどんパワーアップし始めたんだ……」

ゼロはDNAデータについての知識はほとんどないが、会話の内容から“そのこと”を察するのは自然な流れだった。

ゼロ「……DNAデータを利用したのか?」

アクセル「多分ね…詳しいことは分からないよ。レッドは何も教えてくれなかったから……。でもこれだけは確かなこと、僕はいつの間にか利用されていたんだ!!この能力のせいで!!」

唇を噛み締め、きつく拳を握る。
肩は微かに震えている。

ルイン「…アクセル」

哀しみを大いに含んだ声に、何と言えばいいか判らず、複雑な心境で彼の名を呼ぶ。
聞こえていないわけはないのだが、気付いていないかのように彼は続けた。

アクセル「みんなは自分達のパワーアップのことばかり考え、僕はひたすらデータ集め。最初はみんなの為と思っていたんだけど………やり方がどんどん非道くなっていって、耐えきれず逃げ出したんだ……。……それと……」

ゼロ「…うん?それと…何だ」

言葉を止めたアクセルを、ゼロが優しく促せば、彼ははっとしたように首を振った。

アクセル「アハハッ……な、なんでもないよ!!」

笑って誤魔化す。
ゼロは少し訝しんだが、追及はしなかった。

ルナ「ところでアクセル」

アクセル「何?」

ルナ「DNAデータでパワーアップする技術は確かに存在するけど、それを知っているのは極一部のレプリロイド工学員くらいなんだ。レッドアラートにそういうことが出来る人材がいるとはとてもじゃねえが思えねえんだけどよ?」

アクセル「うん、そうなんだ。レッドアラートにはそんなことが出来る奴なんかいないんだ。」

ゼロ「…どういうことなんだ……?」

ルイン「一体レッドアラートで何が起こっているの…?」

ルナ「…こうしていても始まらねえよ。とにかく今は前に進むしかない。ほれ、アクセル」

アクセル「え?わっ!!?」

ルナがアクセルに手渡したのは黒を基調としたルナのバレットと同型の銃とハンドボウガンのような銃である。

ルナ「黒い銃がディフュージョンレーザー。ホーミング性能のある拡散レーザーが放てる。連射もバレット程じゃねえけど利く。そしてそのハンドボウガンみてえな銃はウィンドブーメラン。文字通り、ブーメランを発射する銃だ。ディフュージョンレーザーはアリクイック、ウィンドブーメランはカラスティングの能力を参考にしたんだけどストンコングの能力を参考にするのは無理だったから能力をコピーしてくれ」

アクセル「分かった。ありがとう」

礼を言うとアクセルはミッションに向かう。




































灼熱の溶岩が渦巻いているコンビナートで、アクセルとルインは走っていた。

アクセル「それにしても暑いね~…」

ルイン「そうだね。でもコンビナートだから仕方ないよ」

メットールを両断しながらルインが苦笑した。
2人はアクセルはホバーを、ルインはダブルジャンプを利用して突破していく。

ルイン「アクセル、ここのボスについて何か知らないかな?」

アクセル「…多分ハイエナード。炎の攻撃が得意で、分身も使えるんだ」

ルイン「分身?」

アクセル「うん…。本物と全く同じ戦闘能力を持ってて、見分けがつかないんだ」

ルイン「…何か、区別する方法はないかな?」

隣を走るルインに聞かれ、アクセルはと首を捻る。

アクセル「本体が大きなダメージを受けたら、分身もほんの少しだけ動きが止まるけど……区別はちょっと…」

ルイン「そっか…」

2人は転送用カプセルに入ると広い所に出た。



































アクセル「ここは…」

2人は用心して進むと肉食獣を模したレプリロイドが喘いでいた。

ルイン「あれがハイエナード?」

ハイエナード「ウゥ…くっ、苦しい…」

アクセル「そうだけど…」

目は麻薬中毒者のように血走り、呼吸には気管が詰まったような音が聞こえる。
しかし纏うオーラは得体が知れず不気味である。
ハイエナードがアクセルとルインに振り向いた。

ハイエナード「…お前達か?お前達が俺を苦しめているのか?…分かったぞ!お前達を八つ裂きにすれば苦しくなくなるっ!!そうだ!そうだろ!!?そうに違いない!!」

アクセル「…ハイエナード……待ってて。今、楽にしてあげるよ…」

真っ直ぐに構えられたバレット。
瞳には、声音とは裏腹に強い意志と覚悟が宿っている。

ルイン「来る!!」

3体のハイエナードがアクセルとルインに迫る。

ルイン「これがハイエナードの分身…どれが本体!!?」

セイバーの斬撃を浴びせるが、ハイエナードはのけ反るだけだ。

ルイン「アクセル!!分身は私に任せて!!多分本物はあのメカニロイドの上だよ!!」

アクセル「…お願い!!」

メカニロイドの脚部にディフュージョンレーザーを放ち、動きを止める。

ルイン「…はあっ!!」

それを見たルインは分身に斬撃を見舞い、1体の分身を両断した。
メカニロイドの上に移動するとハイエナードが分身を再び生み出す。
3人のタックルを喰らい、アクセルは墜落する寸前まで吹っ飛ばされた。
下はマグマ。
落ちれば即死。
メカニロイドの縁に必死にしがみついた。
目の先には焦点を失い、虚ろな表情のハイエナードがいた。
かつて共に戦った戦士が自分を失って苦しみながら戦っている。
ディフュージョンレーザーを構えると射程範囲内にいるハイエナードにホーミングレーザーが炸裂し、ハイエナードがのけ反る。
そして地上の分身を片付けたルインも加勢した。

アクセル「当たれ!!」

ウィンドブーメランを放ち、ハイエナードの左腕を両断した。
分身がルインに迫る。

ルイン「喰らえ…獄門剣!!」

相手に強烈なカウンターを喰らわせる必殺技を繰り出し、ハイエナードを粉砕した。
次にセイバーからバスターに切り替え、バスターを向ける。

ルイン「スナイプミサイル!!」

動き続ける分身達と本体に向かっていくホーミングミサイル。
ミサイルは直撃するが、致命傷には至らない。
ハイエナードの手から放たれた炎をダッシュで避け、再びアクセルとルインは狙いを定める。
足場がガクン、と動き、突然のことにアクセルとルインはよろけた。
隙の出来た少年に、ガゼルの背から発射されたいくつもの小型ミサイルが、頭上から降ってくる。
ルインはバスターをチャージしてフルチャージショットでミサイルを迎撃するが、分身達のタックルをまともに喰らい吹き飛んだ。

アクセル「危ない!!」

ホバーを使い、何とかルインと一緒にメカニロイドの上まで戻る。

ルイン「ありがとうアクセル」

アクセル「うん。一気に決めるよ!!」

ルイン「OK!!」

フルチャージショットを放つ。
巨大な砲撃はダメージを受けた分身を破壊し、ハイエナードに致命的なダメージを与える。

アクセル「さよなら…」

バレットのエネルギー弾がハイエナードの胸を貫いた。
ハイエナードは間もなく一際大きく叫び爆発した。
主を失ったガゼル型メカニロイドは機能を停止した。

アクセル「ハイエナード…」

胸が痛みを抱き締める。
友を殺した。
バレットを握り締める手が震える。
戦いが熾烈になるに連れて、自分はこの痛みを背負っていく。
アクセルはそう思った。
それでも。

アクセル「僕は戦い続ける。貫いてみせるよ。僕の心を」

ルイン「…それじゃあ帰ろうかアクセル?みんなが待っているよ」

アクセル「うん」

決意を新たにしたアクセルはルインと共にハンターベースに戻るのであった。 
 

 
後書き
ハイエナード撃破。

オリジナル特殊武器。

ディフュージョンレーザー

アリクイックから得た特殊武器。
形状はルナのバレットのブラックカラー。
ホーミング性能のあるレーザーが放てる。

ウィンドブーメラン

カラスティングから得た特殊武器。
形状はロックマンエグゼの雑魚敵ラウンダを銃の形にしたような形状。
どちらも性能は通常のスナイプミサイルやウィンドカッターに近いが連射が利く。 

 

第八話 アクセルSIDE5

 
前書き
アクセルSIDE4の続きです。
今更かもしれませんがゼロはエックスSIDEでもアクセルSIDEでも彼視点があります。 

 
トンネルベースには敵がひしめいていた。
敵のライドアーマーが無慈悲な攻撃を繰り出して来る。
地下兵器工場は堅固なセキュリティプログラムが機能しているらしい。
複数のコアを破壊しなければ進めない道が多々あった。

ルナ「ギガクラッシュ!!」

バレットを回転させながら凄まじい勢いで連射し、扉のコアを破壊した。

ゼロ「(いけどもいけども雑魚ばかり…うざったい。)」

ゼロは苦く思いながらセイバーを振るう。
脳裏にはアクセルの言葉が去来していた。

ゼロ「(改造か…下らぬ真似を…)」

苦虫を噛み潰したような表情になる。







































ルナと連携し、ライドアーマーの群れを叩き斬った先には四方をガラスで囲まれた空間がある。
“決戦の場”に挑むようにこちらを見るのは、ピンク色のカンガルー型ライドアーマーに乗った幼少の戦士。

ルナ「あいつがガンガルンね…」

ガンガルン「金髪とセイバー…それに紅いアーマー…ってことは、お前がゼロだなぁ!!」

それは恐怖ではなく、歓喜。

ガンガルン「流石に僕を抑えられるのは、Sクラスのハンターだけだって判断したんだなぁ!!でも、僕の方が遥かに強いぞぉ!!」

最近は特A級ハンター同士でも力に差が出始めて来ているために新たなランクが作られようとしていた。
それがガンガルンの言うSクラスである。

ゼロ「やれやれ…そんなオモチャを乗り回して、ガキ大将気分か?」

ガンガルン「ガ、ガキだってえ…!?許さないぞぉ!!」

不快も露わに呟いた彼に、やはりと言うべきかガンガルンは癇癪を起こす。
そんな子供を前にして、ゼロが舌打ちするのは禁じ得なかった。

ゼロ「チッ…これだからガキは苦手だぜ…」

再び降って来た拳をひらりとかわし、ライドアーマーの左足の関節を斬りつける。
ルナもバレットによる連射で間接を狙う。

ガンガルン「何だよお前ー!!」

ルナ「俺はルナ、ゼロと同じランクのハンターだ。」

ガンガルン「ゼロと同じ…?ってことは、お前も強いのかぁ!!そんなに強い奴が2人も来るなんて、やっぱり僕って凄いんだぁー!!」

ルナ「なわけねえだろ。2人の方が効率がいいからだ。覚えとけ糞ガキ」

ガンガルン「ま、またガキって言ったなぁ!!」

再び癇癪を起したガンガルンは、ルナばかり攻撃し始めた。

ゼロ「ガキと言われて血が上る。だからガキだと言うんだ。」

ガンガルンが簡単にルナの挑発に乗ったことに若干呆れながらもセイバーでライドアーマーを逆袈裟に斬る。
刻んだのはガンガルンの居場所を裂けた、ライドアーマーの肩口から腰にかけて。
頑強なはずのアーマーはナマスの如く刻まれ爆炎を上げた。

ルナ「終わった…わけないか」

ゼロ「だろうな」

彼女が1人ごちるが、ゼロも同感だったらしく同意してくれた。

ガンガルン「勝負はここからだよー!!」

ルナ「速い!!?」

ガンガルン「いち、にい、さーんっ!!」

ルナ「がはっ!!」

右、左、最後はアッパー。
腹部を激しい痛みが襲い、顎を打ち抜かれて電子頭脳が揺れる。

ゼロ「ルナ!!」

ルナ「だ、大丈夫大丈夫…おいガキ。この程度で俺様を倒せると思ってんのかい。ええ?臆病者」

ガンガルン「な…なんだとぉ…!!」

怒りのあまり、ぶるぶると震える。
当のルナは、口から零れた血を親指で拭った。

ガンガルン「馬鹿にするなぁっ!!」

地を蹴り、加速し、真正面から跳び掛かる。

ルナ「トランスオン!!」

彼女が変身したのはストンコング。

ガンガルン「え!!?」

超硬石の盾でガンガルンの一撃を容易く防いだ。

ルナ「更にトランスオン!!」

次に変身するのはカラスティング。
ビームナイフを握り、ビーム刃をガンガルンに投擲する。

ガンガルン「痛っ!!?こんのお!!」

プライドを傷付けられたガンガルンは仲間のコピーに再び突っ込むがゼロがルナとガンガルンの間に入る。

ゼロ「遊びは終わりだ。」

ルインがハイエナードとの戦いで使ったカウンター技、獄門剣がガンガルンに炸裂した。
獄門剣はカウンター技ゆえ、使う場面は限られて来るが、相手の勢いもプラスして繰り出されるためにその威力は凄まじい。
一撃でカタが着いた。

ガンガルン「うわあああー!!」

ガンガルンは悲鳴と血液を上げ、ドサッと尻餅をついた。
命に関わる程ではないが、戦えるほど浅い傷ではない。
ゼロはセイバーを片手に、ルナも変身を解除してバレットを握り締めて歩み寄る。

ゼロ「借り物の力で強くなって嬉しいか?」

ガンガルン「ひっ…」

尻餅をついたまま後退する。
先程の威勢は何処へやら。
泣き顔となって縮んでいる。

ルナ「(珍しく滅茶苦茶怒ってやがる…)」

普段は感情を露にしないゼロがこんなに怒っているのは珍しい。

ゼロ「そんなもので強くなって、力をひけらかして何が楽しい。お前は…お前達はその程度の戦士だったのか?」

ガンガルン「ひぇぇ…助けて…助けてよぉ!!」

ガンガルンは恐怖に顔をくしゃくしゃにして命乞いした。

ゼロ「お前のようなガキ、殺しても何の意味もない。」

ゼロは吐き捨てるように言う。
どこまでも冷たく、慈悲も欠片もない様子だった。

ルナ「…取り敢えず連行するし、ハンターベースで治療もする。その先はお前自身で進め。今度は自分の力で」

ルナはガンガルンを拘束するとハンターベースに転送する。
それを横目で見ていたゼロは昔のことを思い出していた。
イレギュラーを処分するのも躊躇う甘っちょろいハンターは、世界最強のハンターが反旗を翻した時、たった1人で立ち向かった。
傷つく度に強くなり、己の力で敵を倒していった。
力は心の中にある。
そうゼロは信じていた。
その“あいつ”が今、被災地で“あの男”と対峙していることをゼロは知らない。
エイリアから通信が入り、ルナとゼロが被災地へ向かうことになるのは間もなくのことである。 
 

 
後書き
ガンガルン撃破。

ルナの戦い方は倒したボスに変身して戦うことになります。 

 

第九話 エックスSIDE4

 
前書き
エックスSIDE3の続きです。 

 
エックスがレスキュー部隊で活動するようになってから数日経った。
被災者を救助し、ライフセーバーが応急処置を施していく。
被災者への処置があらかた終わったライフセーバーはエックスの方を見ていた。

エックス「瓦礫を向こうに運んで、後はビートブードはあっちのレスキューを手伝って欲しい。ヤンマークは…」

彼は指示を飛ばしていていた。
テキパキとした動作は流石は栄えある精鋭部隊の隊長である。
ヤンマークは基本的にゲイトの護衛をしているのだが、本人の意志でレスキュー部隊に加入している。

エックス「ヤンマーク。そっちを持ってくれ」

ヤンマーク「分かった」

2体の戦闘用レプリロイドの怪力で瓦礫は持ち上がった。
産廃処理用のトラックに放り投げる。

エックス「すまない助かった」

ヤンマーク「いや構わない。僕もこの惨状を見て黙って見ていることは出来ないからな」

エックス「そうか、じゃあビートブードを手伝ってやってくれないか?こっちはあらかた片付いたから」

ヤンマーク「分かった。あまり無理はするな」

羽を動かし、ビートブードの所に向かうヤンマークを見遣るエックスにライフセーバーが歩み寄る。

「お手を煩わせて申し訳ありません」

エックス「構わないさ。俺がしたくてやっていることだから、それと昨日は悪かった。手配に手間取ってしまって」

レスキューの増援を頼んだ時、エイリアに繋ぐはずが、運悪く彼女は席を外していた。
おまけにアクセルと険悪なムードになってしまったが…。

エックス「アクセルに辛く当たりすぎたな。どうも相性が悪いようだ」

「そんなことはありません。彼はあなたに似ていますよ。我先に敵に突っ込んでいくところなどは特に」

エックス「そうかな…俺はあんなに無鉄砲だったかな?いや、確かにそうかも。昔、シグマのやり方を認められなくて、たった1人で敵に挑んだ。まあ、ルインやゼロに助けられたんだけど…」

昔の自分はとても非力でルインとゼロに助けられてばかりだった。

エックス「似ているな…でも俺と彼とでは決定的な違いがある、彼は何の迷いもなく戦っている。自分の信念に従って戦うことが出来る。時々迷う俺とは“心”の在り方が違う」

「“心”…」

ライフセーバーは先日のことを思い出していた。




































『由々しき事態です』

指令室にはシグナスとエイリア、アイリスとゲイトがいた。

『エックスが戦闘不能なままではイレギュラーハンターは痛手を被る』

エイリアの表情が険しくなるが、同僚は気づかない。

『アクセルやルイン、ゼロやルナだけでは限界がある。一刻も早く治ってもらわねば。今の彼には何も出来ない。レスキュー部隊で補助を行うのがせいぜいでしょう。戦ってこその英雄なのに』

アイリス『あなたには心がないの!!?』

心優しい少女が遂にキレた。

エイリア『アイリス…』

アイリス『あなたは“戦ってこその英雄”と言うけれど、エックスが…エックス達が今までどんな気持ちで戦ってきたか分からないの!!?』

全員がアイリスの怒声に目を見開いた。

ゲイト『アイリス、落ち着くんだ。』

直ぐさま冷静さを取り戻したゲイトが宥めると、全員を見渡しながら口を開いた。

ゲイト『これは時間の経過でしか解決出来ないだろう。僕達に出来るのは、今まで通りに接してやるだけだ。』

シグナス『そうだな…』

エイリア『……』




































エックス「…ライフセーバー?」

「あ、いえ。何でもありません。それにしても酷いものです。レッドアラートのせいで街は目茶苦茶です。やはりバウンティハンターなどならず者。認めるべきではありませんね」

エックス「そう、だな…」

答えながらエックスは附に落ちなかった。
レッドの突然の宣戦布告。
レッドアラートの狂暴化。
自分の知らぬ何かがうごめいていると思った矢先。

「エックス隊長!!」

エックスについてきた部下が血相変えて飛んできた。

「大変です!!ラジオタワーから雷が昇っています!!」

エックス「何!!?」

エックスがラジオタワーの方を見遣ると確かに雷が昇っていた。

エックス「借りるぞ!!」

部下から金属製の剣と実弾のライフルを拝借するとラジオタワーに向かう。
長らく剣を使ってはいないが無いよりはマシだ。
ライフルも比較的に古い型だがまだまだ使える。
最近は実弾兵器を蔑ろにする傾向が多々あるが、まだまだ現役で使えるものだというのは実弾を主に戦うVAVAと戦った自分が身を持って知っている。
このハンターも実弾兵器の有用性に気づいているのだろう。
エネルギーの消費がゼロなのも実弾兵器の魅力だ。
途中で会った部下が携行していたバズーカも拝借してラジオタワーに向かう。




































ラジオタワーに辿り着いたエックスは道を阻むメカニロイドを見つけるとラジオタワーがレッドアラートに占拠されてしまったことを悟る。
メカニロイドが複数エックスに襲い掛かる。
エックスは剣を構え、一閃した。
それだけでメカニロイドは破壊された。

エックス「(いい剣だ…)」

かなり磨き込んであるのかメカニロイドの装甲すらものともしない凄まじい切れ味だ。
貸してくれたあのハンターには後でボーナスが出るようにしようと心に決めた。
近寄る敵には剣で、距離が離れた敵にはライフルの弾を喰らわせる。




































しばらくしてエックスはラジオタワーの頂上に辿り着いた。
そこには玉葱を模した恰幅の良い男である。
エックスが駆け付けた時には彼は雷の渦を纏い、苦しそうに立っていた。
顔面には脂汗が浮かんでいる。
男は侵入者に気づいたのか、エックスを見遣る。

「エックス…ダスな?」

エックス「お前は一体…」

と言いかけて分かった。
レッドアラートの戦士、トルネード・デボニオンだと。

デボニオン「頼みがあるダス。オラ達を…レッドを止めて欲しいダス…」

エックス「!?どういうことだ?」

デボニオン「センセイの…改造を受けて…オラ達は…」

エックス「センセイ…?センセイって何のことだ?」

エックスは状況を把握出来ぬまま、事態は最悪の展開を迎える。

デボニオン「止まれないダス…コントロール出来ないダス…お願いダス。自分でなくなる前に救ってほしいダスー!!」

デボニオンがエックスに襲い掛かる。

エックス「くっ!!」

ライフルを放つエックスだが、雷に阻まれ、攻撃が届かない。

エックス「何!!?」

驚愕すると同時にデボニオンがエックスに迫る。
渦から離れようともがくが、天高く突き上げられ、地面に叩き落とされた。

エックス「ぐっ…」

デボニオンは再びエックスに体当たりを仕掛ける。
バズーカの弾はここまで来るのに全て使ってしまった。
しかしライフルの弾では雷に弾かれるだろう。
しかし牽制のためにライフルの弾を連射する。
動きを止めたところを叩き斬る。
ライフルを撃ちながらエックスは剣を構えた。
その瞬間、皮型のアーマーが武器となり、それをまともに受けたエックスはライフルを手放してしまう。

エックス「しまった…」

これで武器は剣のみ。
ジリジリと迫るデボニオンを見ながらエックスはデボニオンを倒す方法を探す。

エックス「そうだ!!」

剣を構え、デボニオンに突進するエックス。
電撃が放たれる寸前で剣を投擲した。
貸してくれたハンターに心の中で謝罪しながら。
剣に雷が吸収された。
エックスは剣を避雷針にしたのである。

エックス「うおおおお!!」

皮型のアーマーを攻撃に使用したことで剥き出しとなったボディに拳を叩き込んだ。
自我を失い、改造の代償の下に戦うデボニオンは尚も電撃を放とうとする。
しかしエックスの一撃が効いたのか、それともデボニオンの自我が破壊衝動を打ち破ったのか…。
デボニオンは地響きを起こしながら倒れ伏した。

エックス「何とか倒せたか…」

エックスが呟いた直後、デボニオンの身体が光り輝き、次の瞬間、デボニオンの周囲に紅く輝く物が零れていた。

エックス「これはDNAデータか?何故デボニオンからこれが…?」

レプリロイドの精製情報の塊であるのと同時にアクセルとルナがコピーする際に必要な物。
デボニオンを連行し、エイリア達に頼んで調査してもらおう。
エックスはそう思い、ラジオタワーを後にした。




































~おまけ~

エックス達がロックマンロックマンをプレイ。

ルイン「ロックマンロックマンのイラストって可愛いねえ!!」

ルナ「ああ、こっちはXシリーズとは違って子供向けって感じだな」

アクセル「子供向けな描写だから子供にやらせても…」

カットマン撃破。

全員【………………】

木っ端微塵となるカットマンを見て全員が沈黙した。

エックス「兄は鬼子です…」

PSPを持つエックスの手は震えていた。

ゼロ「お前の兄貴は兄弟にも容赦無いな」

アイリス「これはこれで残酷な表現だわ…」

弟より兄ちゃんの方が戦いに躊躇いがないというか、ソフトな世界観というか…。 
 

 
後書き
デボニオン撃破。 

 

第十話 エックスSIDE5

 
前書き
エックスSIDE4の続き 

 
戦いを終えたエックスは直ぐさま司令部に戻った。
デボニオンから採取したDNAデータを渡す。
エイリアとアイリスは持ち前の情報処理能力であっという間にデータを解析していく。

エイリア「思った通りだわ…」

エイリアとアイリスがモニターを睨みながら呟いた。

アイリス「DNAデータを使って、レプリロイドの能力を強化していたようね。知っての通り、DNAデータはレプリロイドの精製情報が記録されているコアのこと、このコアからレプリロイドの技を習得するの。エックスならウェポンチェンジシステムで特殊武器、ゼロならラーニングシステムで必殺技、ルインならキャプチャリングシステムで武器に対応した武器と技を入手出来る。」

エイリア「けどそれは危険な技術だわ。DNAデータにはレプリロイドの人格プログラムもインプットされているの。武器取得くらいなら大丈夫だけど、DNAデータをパワーアップに使用するとなるとかなりの量が必要になる。過度に行うと下手をすれば人格が崩壊してしまい、廃人同然の状態になってしまうわ」

エックス「そんな…」

それを聞いたエックスが愕然となる。
DNAデータを用いてレプリロイドをパワーアップさせる禁断の方法。
DNAデータにそのようなことがあるのを知ったエックスは思わず顔を顰めた。

エイリア「でもおかしいわ。DNAデータを使ってパワーアップする方法を知っているのはゲイトのような極一部のレプリロイド工学員のはずなのに…」

エックス「どういうことなんだ…まさか…シグマか…!!?」

エックスはいよいよ、事件の裏に暗躍する邪悪なる者の存在を確信した。



































かつてのナイトメアウィルス事件での最終決戦。

シグマ『ぐはっ…今度もまた…お前達に敗れたが…私は死なん…何度でも蘇る』

死に際にシグマが発した言葉が脳裏を過ぎる。



































エックスは疑念を確信に高めつつ、再びレスキュー部隊として活動を開始した。
突然、通信が入る。

エックス「…?」

何かあったのだろうかと、すぐに回線を開く。

エックス「こちらエックス」

シグナスかエイリアかアイリスだろうと繋いだ相手は、余りにも意外過ぎる人物だった。

レッド『本当に繋がりやがった。流石だなじいさんは』

一度しか聞いたことのない、けれど印象が強く、覚えていた声。
信じられない心境で、その名を口にする。

エックス「レッド!!?」

レッド『ほう、俺のことを覚えていたか』

エックス「何故俺に通信を繋げられる?」

送信側は相手の受信コードを入力しない限り繋がらないはずだ。

レッド『こっちにはスペシャリストがいてね。お前と話がしたいと思ってな。一対一、サシでだ』

エックス「……そんなことに俺が乗ると思うか?」

レッド『だろうな、だが、レスキュー部隊の奴らの命がどうなるか分からねえぞ』

エックス「貴様…」

レッド『誰にも言わずに、これから指定する場所へ1人で来い。無線の電源と発信機は切っておけよ。さもねえと……ここにいる奴らの首が飛ぶぜ?文字通り』

エックス「……分かった」

ハッタリの可能性もあるが、そんな危ない賭けに出る訳にはいかない。
従うより他、無かった。
本来なら決して乗るべきではない話だが、多数の罪無き命が懸かっている。



































エックスが来たのは、かつてストーム・イーグリードが占拠したエアポート跡である。
周囲を、特に障害物などを警戒し、ゆっくりと進む。

エックス「っ!!」

殺気を感じ、急いで回避すると先程までエックスがいた場所に衝撃波が叩き込まれた。

レッド「あれを避けるとは流石だなエックス」

エックス「レッド…」

レッド「ゼロやアクセル達が出て来てるのにてめえだけ出て来ないから逃げ出したんじゃないかと思ったが、デボニオンとの戦いを見る限りそうではなかったようだから来てもらったぜ」

エックス「…俺に何の用だ?」

一体、どんな目的があって、自分との接触を望んだのか。

レッド「何、ちょいと交渉をと思ってな」

エックス「交渉だと?」

訝るエックスの顔が、次の瞬間驚愕に染まる。

レッド「この戦いを、止めねえか?」

エックス「は?」

驚きで何も言えなくなるエックスに、レッドは畳み掛ける。

レッド「簡単に止められるぜ、この戦いは。お前ら次第でな」

エックス「……お前達の方から仕掛けておいて、どういうつもりだ?」

どうにか言語能力を取り戻し、疑問を投げ掛ける。嫌な予感が走った。

レッド「大人しくアクセルを返せばいい」

エックス「……何だと?」

レッド「アクセルが戻ってくれば、俺達は何の文句もねえ…戦う理由がなくなる。第一、あいつがいたところで、お前らに何の得がある?返してくれるってんなら、今後の俺達の活動は控えめにしてやってもいいぜ。一般レプリロイドを巻き込まねえようにな」

エックス「…………」

レッド「さあ、どうする?」

エックスは暫く黙孝した後、口を開いた。

エックス「確かにアクセルをお前達に返せば戦いは終わる。」

レッド「だろう?」

エックス「だが、断る」

片方しかない目を見開いた。

レッド「……“断る”と、そう言ったか?」

エックス「ああ」

レッド「…理由を聞かせてもらおうじゃねえか」

鎌は肩に掛けたまま、しかし微かに殺気を放ちながらエックスを睨む。

エックス「確かに俺達にはお前達と戦う理由も、アクセルを守る理由もない。だが…俺は彼を助けたい。だからアクセルの意志を無視するようなやり方は許さない」

鋭い目つきでレッドを見据えるエックス。
その眼光はゼロにもひけを取らない。

レッド「……交渉決裂、だな」

決意に満ちた瞳を前に、何を言っても無駄だと判断する。
肩に担いでいた鎌をヒュッと振り、構え、エックスに斬り掛かる。

エックス「くっ!!」

辛うじてかわしたエックスだが、レッドは鎌を何度もエックスに向けて振るう。

レッド「アクセルは取り戻す。力付くでもな」

エックス「させない…子供に殺戮を強いるような組織に彼を返す訳にはいかない!!」

レッド「偉そうに…だからハンターは嫌いなんだよ!!」

衝撃波がエックスの頬に掠る。

エックス「っ…」

レッド「お前に俺達の何が分かる?」

エックス「…少なくともアクセルに殺戮を強いた挙げ句、無意味な戦いを起こしたことだけは分かる。」

レッド「お前にとっては無意味でも俺にとっては大事な死合いだ」

ワープし、エックスの背後に移動すると同時に斬り掛かるがエックスは屈んでかわすと、落ちていた鉄パイプでレッドに振るう。

レッド「おっと!!」

鎌の柄で鉄パイプを受けると弾き飛ばす。
エックスはこのままでは完全に分が悪いと分かってはいるが、バスターが使えない今、殴り掛かるしかない。

レッド「どうした?バスターは使わないのか?」

バスターを使おうとしないエックスにレッドが挑発する。
エックスは一か八かでバスターに変形させようとするが…。

エックス「ぐあああああっ!!」

前の時と同じように激痛に襲われた。

レッド「成る程、バスターが壊れてやがるのか。今まで出て来なかった理由が分かったぜ。戦えない身体で俺の相手をしようってのか?」

エックス「…っ、戦えなくても守ることは出来る。この命にかえても…!!」

レッド「“死んで花実は咲かない”って言うぜ?」

鉄パイプを左手で握り締めるエックスはレッドの攻撃を必死に受け流していく。

エックス「(前にも似たようなことがあった…死んだら何もならないと…どうして戦えない?今までだって、どんな時だって戦ってきたのに…どうして…)」

思考が命取りだった。
何度も繰り出された衝撃波を、遂に避けられずに喰らってしまった。
左肩から右脇腹にかけて長い裂傷が走る。
蒼いボディが深々と裂かれ、鮮血を噴き上がらせた。

レッド「他愛ねえな」

薄笑いしながらエックスに向かうレッド。
仰向けに倒れたエックスの双眸は閉じられている。
顔には苦痛の色が微かに浮かぶだけで、戦いで倒れた割には穏やかだった。

レッド「お前に怨みはねえが仕方ねえんだよ。俺達の仲間を元に戻すためにはな」

言い訳めいた言葉を口にしながら、レッドは大鎌の刃をもたげた瞬間。

ルナ「ホーミングショット、コネクションレーザー!!」

ゼロ「飛影刃!!」

レーザーと鎌鼬がレッドに襲い掛かる。
レッドはそれをかわすとレーザーと光の矢が放たれた方向を見遣る。

レッド「この攻撃は…!!?」

ルナ「エックスはやらせねえ!!」

ゼロ「お前の好きにはさせん」

イレギュラーハンターが誇る特A級の2人はそれぞれの武器を構えて敵を見据える。

レッド「チッ、ここは一先ず退くか」

不利を悟り、レッドはシュンと姿を消す。

ルナ「…ふう、ゼロ、エックスは?」

ゼロ「大丈夫だ。命に別状はない。ルナ、レスキュー隊を呼んでくれ、ライフセーバーに治療の手配をするように」

ルナ「おう」

2人はチラリとエックスの方を見遣ると、友は戦いで倒れたとは思えない程に穏やかな表情で眠っていた。





































~おまけ~

陶器のバターケースがコトリという音を立てて置かれる。
続くは真っ白な卵。
小麦粉、砂糖。
薄い微笑は曇ることもなく、ただうきうきと指を動かし沢山の物を並べてゆく。
アーマーを解除し、いつもはヘッドパーツで纏められる銀髪をお気に入りの水色のリボンで纏める。
三角巾もエプロンも装備完了し、臨戦態勢。

ルナ「よっし、何のケーキを作ろうかね?」

アクセル「チョコレートケーキ!!上に粉砂糖かける奴!!」

零れた彼女の呟きに対し、待ってましたとばかりに答えたのはもちろん彼。
キッチンに立つルナのすぐ側にある椅子に、腰掛けながら力いっぱい、身を乗り出して、言いたくて言いたくてたまらなかったのか、片手を限界まで伸ばしてびしりと挙手までして。
勢いあまってそのまま椅子を倒してしまいそうな態勢で。
珍しく、彼女を早く早くと急かすようにその応えを待っている。
それだけアクセルの口にした物はアクセルにとってかなり食べたいものなのかもしれない。
瞳からはワクワクが溢れ出してしまいそうで、まるで、子供そのもの。
普段ならルナも快諾したに違いない。

ルナ「……何でガトーショコラなんだよ?」

アクセル「……何だよその見るからに嫌そうな顔は?」

振り返った彼女の表情は、明らかに嫌そうだった。
眉間に皴を寄せて、目に見えて不平の意を表している。
けれど当然のことながら、この反応に彼が賛成を表明するわけもない。
こちらも軽くむくれた様子で反論を示す。
せっかく楽しみにしていたのに、さらりとかわされてしまったのだから。
しかも反撃つき。
ブーイングのように恨みがましげな視線を送ってみても、ちっとも彼女はこたえた風ではない。

ルナ「他のケーキはどうなんだ?ケーキ?他にも沢山あるぜ?」

アクセル「チョコレートケーキがいい」

ルナ「だから、他にも種類いっぱいあるだろが!!ロールケーキに、パウンドケーキに、シフォンケーキ」

アクセル「レアチーズ。ホットケーキもあるし、バターケーキもあるね」

ルナ「そうそう。ショートケーキ、フルーツケーキとか」

アクセル「バウムクーヘンも忘れないでね。ええと、それから…」

ルナ「ティラミス、ブラウニーとかな。ケーキは沢山あるぜ、さあ、何がいい?」

アクセル「粉砂糖がかかったチョコレートケーキ!!」

ルナ「どうしてそう頑ななんだよ!!」

アクセル「そっちこそ何でそんなに嫌がるのさ!!」

この後もしばらく、2人で口論を繰り広げて、結局アクセルが手伝いをするということで渋々彼女が折れた。
少しふくれたルナは嫌々ながらもしっかりチョコレートとバターを湯せんにかけている後ろで、希望の通ったアクセルが満面の笑みでにこにこしている。
しかしこのまま負けっぱなしでいるほど彼女は甘くはない。

ルナ「ほい、アクセル。これ頼む」

アクセル「卵白?ああ、メレンゲね」

渡されたボウルの中には卵白。
一緒に泡だて器もあるから、何をしろというのかは、言われなくても見るだけで予想はつく。
とてもご機嫌な彼はそのお手伝い要請を断るわけもなく、快く引き受けると、かき混ぜ始める。
小気味良い音を聞きながらルナはアクセルにくるりと背を向け、別の作業に取り掛かる。



































アクセル「…ねえ、ルナ?」

ルナ「ん?」

アクセル「まだ泡立てるの?」

ルナ「どれどれえ?」

彼女がアクセルの差し出したボウルを見る。

ルナ「ああ、まだまだだな」

アクセル「…腕が痛くなってきたよ…」

ルナ「ハンドミキサーはただいま修理中でーす」

アクセル「…僕が悪かったです……」

ルナ「よろしい♪」

いくら体力のある彼でも、長時間の慣れない動きで、すっかり手首の感覚がなくなってしまったらしい。
ルナは手慣れた手つきで卵白を泡立てる。
アクセルは椅子に座りながらルナを見遣る。
普段は男勝りで男口調だから気づきにくいが、こうしている時は…。

アクセル「(女の子…なんだよねえ…)」



































念願のガトーショコラは見事な焼き上がりで、待望な上に疲労もあったのだから、ひたすらに美味しかった。
でもあれだけ苦労して作ったにも関わらず、食べれば本当にあっという間である。
おやつの時間に精も根も使い果たしてしまったらしいアクセルは、どうにも物足りなげだった。
行儀悪く、口にフォークくわえたまんまぷらぷらさせているアクセルに、ルナは吹き出す。
けれど今度はからかいや意地悪を含んだものではなくて、深い優しさを含んだものだった。
ルナはフォークで自分の分のケーキを一切れ、アクセルの皿に置いた。 
 

 
後書き
次はアクセル編。 

 

第十一話 アクセルSIDE6

 
前書き
レッドアラートの最後のメンバーとの戦い。
 

 
アクセルは大いに慌てていた。
ハイエナードとの戦いから帰り、ルインに促されて傷が酷いからとメンテナンスを受けていたのが間違いだった。
自分が寝ている間にとんでもないことが起きていた。
エックスがイレギュラーに襲われたという。
アクセルは事の子細を知らなかったが、とにかく酷い有様らしい。
自動ドアをぶち破るように開けた。

アクセル「エックス!!?」

集中治療室にはベッドに寝かされているエックスの姿があった。
蒼いボディは肩から脇腹にかけて包帯が巻かれている。
幾重にも巻かれた包帯がエックスの怪我の深刻さを物語っている。

ダグラス「アクセル?」

アクセル「え?」

驚いて声のした方を見遣ると凄腕のメカニックがこちらを見ていた。

ダグラス「エックスの見舞いか?エックスなら大丈夫だ。ライフセーバーのお墨付きだ。」

アクセル「どうしてダグラスがここに?」

ダグラス「被災者が多くて手が回らないから様子見とけ…って、ライフセーバーに頼まれてさ」

アクセル「そう…」

アクセルは興奮の幾分収まった顔でエックスを見る。
まだ大人になりきれていない顔立ち。
微かに上下する胸。
横たえた四肢の、腕がひどく華奢に見えた。

アクセル「…今、気づいたんだけど」

ダグラス「ん?」

アクセル「エックスって、大きくないんだね。レッドアラートはデカイ奴もいたのに。エックスはこんな小さな身体で戦って来たんだ」

ダグラス「小さいならお前もそうだろ。ルインやルナだって小柄だし」

アクセル「そりゃそうだけどさ」

さらっと答えるダグラスにアクセルは口を尖らせる。

アクセル「確かにそうなんだけど…以外だったんだ」

再び眠るエックスを見つめる。
彼の表情は穏やかだった。
噂で聞いていた雄々しさも、初めて会った時の毅然とした雰囲気もない。

アクセル「僕はエックスのこんな顔見たことなかった。いつも張り詰めた顔してた」

こんな小さな身体にとてつもない重荷を背負って戦っていたのだエックスは。

“英雄”

“救世主”

2つの称号という名の枷。

アクセル「…とにかく、行ってくる!!早く戦いを終わらせないと!!」

ダグラス「おい、アクセル?」

ダグラスが呼び止めるのも聞かず、アクセルは走り去る。
1人取り残されたダグラスはしばらくして笑う。

ダグラス「本当にライフセーバーの言ってた通りエックスにそっくりだな…。ん?だったらゼロやルインにも似てるのか?」

いつも無茶ばかりしている3人を思い浮かべ、ダグラスは1人噴き出した。



































最後の敵はウオフライである。
最後の敵だけは自分だけで倒したいというアクセルに、ルイン達もアクセルの意志を尊重して、出撃させた。
メットールやランナーボム。
メガトータルなど、凄まじいまでの数の敵が、絨毯のように攻撃を仕掛けてくる。
アクセルは粒子化させておいた新しい武器を発現させる。

アクセル「ボルトストーム!!」

回転式拳銃型の銃で、リボルバーの装填部分にあたる部分がプロペラとなっている。
前方に真横の電磁竜巻がメガタートルを破壊し、更に武器を発現する。

アクセル「サークルボム!!」

バズーカ型(イレハンのOVAのハンターが使用する)の武器から爆弾を発射する。
爆弾は僅かな間を置いた後、サークルのような爆発を起こす。
ルナが作製した武器だが、ガンガルンの能力を参考にした武器は今だに出来ていない。
本人曰く大火力の武器らしいが…。

アクセル「無いものねだりしてもしょうがないっと!!」

爆弾を数発放ち、戦闘機を両翼を破壊した。
最後にボルトストームを喰らわせ、とどめを刺した。
バトルシップは混乱していた。
一般市民を避難させつつ攻略しなければならない。
パニックに陥った人々は泣いたり喚いたりと、酷い有様であり、宥めるのも一苦労である。
モタモタしていたら爆弾が飛ぶ。
かなりの人数で、無事誘導するのは骨が折れた。










































エックス『だが、アクセル。ハンターというのは簡単に務まるような仕事じゃない。非常時にも最善の判断が出来る冷静さと敵に屈しない強さ。そして命をかけて人々を守る心が無ければ務まらない。君にそれがあるか?』

かつてエックスが言った言葉が脳裏を過ぎる。






































アクセル「確かに大切だね…」

アクセルは笑う。
前方には雑魚の大群。
逆に返り討ちにし、シップを沈めた後、小島に移動する。
足場は戦えるだけの広さがあり、それが複数並んでいた。
真ん中の足場に戦士がいた。
スプラッシュ・ウオフライ。
蒼海の追跡者は皮肉に満ちた目をしていた。

ウオフライ「待ってたぜ…裏切り者!!」

アクセル「やぁ、卑怯者!!」

このやり取りは昔からの日常茶飯事。

ウオフライ「ケッ、痛め付けてやるぜ!?前からてめえのことは気に入らなかったんだよ!!」

アクセル「ふふっ、気が合うね。僕もだよ」

今回ばかりは殺気だっているが、一般人なら泡を食って逃げ出しそうな状況でアクセルは平気の平左だった。

ウオフライ「生意気な奴めぇ~…」

ウオフライはシャレが通じず、薙刀を手に間合いを詰める。

ウオフライ「ぶちのめしてやる!!」

アクセル「お断りだよ!!」

薙刀をかわしつつバレットで迎撃。
至近距離で喰らったウオフライはのけ反って顔を険しくした。

ウオフライ「調子に乗るな~」

今度は遠距離から水鉄砲を放ってきた。

アクセル「ハッ、誰が喰らうかっての!!」

超高速で発射された水は鋼鉄すらも真っ二つにする。
アクセルはギリギリで回避。
水しぶきの光を尻目に見た。
瞳孔を戻せば。

アクセル「ウオフライ!?何処に…」

ウオフライ「ここだ!!」

背後から斬られた。
首の付け根から腰にかけ、深い傷であった。

ウオフライ「ひゃはははは!!よく生きてたじゃねえか」

ウオフライは卑怯者の名に違わず、いやらしい笑みを浮かべた。
大体背後からの攻撃など、戦士にあるまじき行為である。

アクセル「さっすが卑怯者、やってくれるよ」

そう言うアクセルの表情は引き攣っていた。

ウオフライ「その減らず口を叩けなくしてやるよ」

ウオフライは海に潜り、音もなく遊泳した。
戦士特有の闘気も卑怯者の悪意すら感知出来ない。
理由はウオフライが優れた戦士だからだ。
アクセルはバレットを下ろし、ゆっくり目を閉じた。
至極危なかっしい立ち姿。
背後で、水音。
笑い声と、飛び出す気配。

アクセル「背後から来るの分かってんだよ」

サークルボムの爆発がウオフライを飲み込んだ。



































ウオフライはまだ生きていた。
サークルボムを喰らっても尚、生きていたのだ。
手加減はしていない。
やはりウオフライはただ者ではなかった。

アクセル「僕の勝ちだよ」

ウオフライ「は…生意気なガキだ」

ウオフライは笑うが、アクセルは笑わない。

アクセル「教えて、何がみんなを変えたの?どうしてみんな変わっちゃったの?DNAデータで改造したっていうけど、そんなこと出来るのはレッドアラートにはいないはずだよ?」

その問いにウオフライは渇いた笑みを浮かべた。

ウオフライ「センセイが俺達を改造しやがってね…てめえの持ってきたDNAデータを使えば、力を手に入れることが出来る」

アクセル「みんな充分強いじゃない!!そんな必要どこにあるの?」

ウオフライ「“成長”する力を持つてめえには分からねえよ。上には上がいるんだってことだよガキ。まあ、その結果がこのザマだ」

見れば回路が燃えだしている。

アクセル「過負荷…」

ウオフライ「借り物の力の代償って奴だ」

その時である。

『バトルシップ最終プロテクトが突破されました。これよりシップ内、全てのメカニロイドを自爆させます。』

アクセル「何だって!?」

ウオフライ「へ…大方、センセイの仕業だろうさ。使えない奴は切り捨てる…そういうことだろうよ」

パトルシップのメカニロイドが暴走を始める。
沈みかかった船からメカニロイドが這い出てきて、アクセルとウオフライに襲い掛かる。

アクセル「くっ…」

深手を負ったアクセルに大量の敵を相手取るのは無理があった。
しかしメカニロイドは容赦なく2人に襲い掛かる。

ウオフライ「アクセル…」

アクセル「喋っちゃ駄目だ!!何が何でも突き破ってみせる!!僕は絶対に諦めない!!」

ウオフライ「ガキが…一丁前に言うようになったな」

アクセル「いいから黙って…」

臥せっていたウオフライが立っていた。
燃え上がる胸部を押さえ、喘いでいる。
ウオフライはメカニロイドの大軍を見つめていた。

ウオフライ「確かに俺は卑怯者だがなあ…こんな汚え手ぇ使ってまでてめえを倒そうなんて思わねえよ。俺達を利用しやがったセンセイと違ってな」

ウオフライはメカニロイドの大軍に向かって走る。

アクセル「ウオフライ!!何を…」

ウオフライ「アクセル」

アクセルに向くの瞳は不敵で、意地悪くて自信に溢れていた。

ウオフライ「卑怯者にも卑怯者なりの意地ってもんがあんだよ。男だからなあ!!」

そう叫んで敵に突っ込む。
辺りが閃光に包まれた。
一瞬目が眩んで、何事かとおもった直後。
ウオフライは自爆して全ての敵を巻き添えにしたのだ。
残骸すら残らなかった。

アクセル「ウオフライーーーーーッ!!!!!!」

炎を前に絶叫が上がる。
みんな消える…。
敵も仲間も何もかも…。
仲間を止めた安堵も、戦いに買った喜びも全て。

アクセル「くそーーーーっ!!!!」

許せなかった。
レッドアラートを利用した悪しき者が。
アクセルは炎が吹き荒れる中で、その光をジッと睨んでいた。 
 

 
後書き
ウオフライ撃破。
何故かウオフライが漢になってしまった。 

 

第十二話 アクセルSIDE7

 
前書き
アクセルSIDE6の続き。
 

 
アクセルは廃墟となった街を歩いていた。
ハンターベースへの近道は酷く寂れ、傷心の彼の心情ピッタリであった。
灰色の地面に捨てられた建物、戦いの最中は真っ青だった空が今は雲に覆われていた。
とぼとぼと歩いていた時、子犬の姿があった。

アクセル「捨て犬…?」

おいでおいでをする。
子犬は丸い瞳を、心なしか潤んだ目をした少年に向けた。
だが、少し見つめた後、子犬は何処へと行ってしまう。

アクセル「…そっか、あいつも自分の道を歩いて行くんだね。どんなに辛くても、自分で全て決めていくんだ。僕と同じように…」

しばらくしてアクセルは心に喝を入れて、ハンターベースに戻る。





































帰還後、ハンターベースの屋上に行った。
空を見上げれば月も星も見えぬ暗い夜が映る。
見て何になるわけでもないが、アクセルは空を見上げていた。
屋上には先客がいた。
紺色の狙撃手の名を冠した女戦士。
彼女の隣に立ち、地上を見遣る。

アクセル「子犬は、どうしてるかな?」

ルナ「子犬?」

アクセルは独り言が聞かれていると知って狼狽する。

アクセル「う、うん…道端で見かけて…どっか行っちゃったけど。今頃どうしてるかなって…」

ルナ「大丈夫さ。きっとな」

自信を持って答える彼女にアクセルも笑みを浮かべた。



































朝、目が覚めるとハンターベースにはちょっとした騒ぎがあった。
聞けばエックスがいなくなったらしい。

ルナ「何処行ったのかねえ」

ゼロ「いなくなったのが早朝だったのが、幸いしたな。全員に知られたらどうなるか分からん」

アクセル「確かに」

この状況で冷静な意見を言えば、返って怒りを買いそうである。
エイリアは憔悴しきっている。

アイリス「ルインが探しに行ったんだけど、ルインも帰って来なくて…」

ルナ「信じて待つしかねえよ。俺達に出来るのはそんくらいさ。あいつが戦いを放り出すわけがない。だろ?ゼロ。」

ゼロ「ああ、あいつはいつも迷ってばかりいる意気地無しだが、逃げるようなことはしない」

アクセル「っ、みんな!!あれ見て!!」

アクセルが指差した先には…。

アイリス「バスターの光…」

天に向かって伸びる光にアイリスは喜色を浮かべた。
少しして、2つの影が見えた。
朝の日差しが強くなり、大地を優しく照らし出し、蒼と朱の影が大きくなる。
屋外で待っていた全員がざわめく。
ルインとエックスの表情は晴々としていた。
何か吹っ切れたような顔である。

エックス「みんな…心配かけてすまなかった。もう、大丈夫だよ」

全員が彼を取り囲む。
エックスはもみくちゃにされ、それでも幸せそうに笑っていた。



































おまけ

もしハンターズが子供の世話をすることになったら…。

ルイン「赤ちゃんって可愛いね♪」

エックス「ああ、本当だ。この子の笑顔を見ていると癒されるよ。未来の塊だ」

アイリス「可愛い盛りだものね♪」

赤ちゃんの頬に触れながらアイリスは満面の笑みを浮かべる。

アクセル「こんにちは!!アクセルお兄ちゃんだよ!!って、うわあ!!?」

目潰しを喰らいそうにアクセルは慌てて避ける。

エイリア「赤ちゃんってこういうところが怖いわよねえ…」

苦笑するエイリア。

ルナ「か、髪を引っ張んねえでくれ!!痛い痛い!!」

髪を引っ張られるルナ。

ゼロ「………」

ゼロが子供を見つめていると向こうも視線を向けた。

ゼロ「随分、肝の据わったガキだな…」

「ぁぅー」

ゼロ「う…っ…」

泣き出すのではないかと思い、表情を顰めるゼロ。
しかし子供は泣かず、ゼロを見つめる。
傍目からはとても奇妙なにらめっこである。

エックス「それにしてもルインは子供の世話が上手だな。いいお母さんになれるよ」

ルイン「そ、そうかな?でもエックスだっていいお父さんになれるよ~」

エックス「そう?ならいいんだけどな」

ルイン「もし子供が出来たらライト博士はおじいちゃんだね!!」

エックス「兄さんと姉さん達は叔父さんと叔母さんだな」





































そして会話を聞いていた女神は異空間でエックスの兄弟達に顔を向けた。

「だってさ君達」

ライト「おじいちゃんですか…DNAデータを使えばレプリロイドも子供が出来る時代ですから、孫を見る日が楽しみですよ」

ロック「叔父さん」

ブルース「叔父さんか…」

ロール「叔母さんかあ…」

ライトナンバーズ【叔父さん…】

「まあ、君達は全員十代前半くらいの設定年齢だし、叔父さん叔母さんはきついかなあ?」

ライトナンバーズ【………】

キュン…。

「って、何ときめいてんのお!!?」

動力炉を押さえるライトナンバーズ達に女神のツッコミが炸裂した。 
 

 
後書き
短いな…。
エックスSIDEでエックス復活を書きます。 

 

第十三話 エックスSIDE6

 
前書き
エックスSIDE5の続き。
タイトルを付けるなら“あなたと歩む未来” 

 
エックス…あなたと私がシグマ隊長の部屋で出会ったあの日から長い長い年月が過ぎました…。

あなたと共に与えられた任務をこなしていくうちに、私はいつの間にかあなたの背中を無意識に追っていた…。

前世の記憶をある程度残していた当時の私からすればあなたは憧れの人でした…。

どれだけ悩み、苦しみ、傷ついて、挫けそうになっても最後には必ず立ち上がってくれる強い人…。

エックス…私はいつも、あなたのそんな強さに憧れていました。

そしてレプリフォース大戦の時、あなたから想いを告げられ、それに応えたあの日から、私はずっとあなたを支えてきた…そう、思っていました…。

この事件で私はあなたを支えられてないことを思い知らされました…。

戦えない辛さを噛み締めるあなたを見ていることしか出来ませんでした…。

私は…あなたを支えるどころか、ずっとあなたに支えられ、守られていたのだということに気付かされました。

ディザイアの時も、イレギュラー化の再発を恐れていた時も、あなたに甘えっぱなしで…。

私はあなたが1人で苦しみ続けていたことにさえ気付けなかった…。

だから…私は…今度こそ…。








































緊急手術室のライトが消え、重苦しい沈黙が解かれたのは数時間後。
ゼロは静かに部屋に入る。
室内に足を踏み入れるとナノマシンの溶液の匂いがした。
銀色のトレーには物々しい手術道具が並べられていた。
これらはエックスの処置に使われた物ではなく、万が一手術が長引く場合の時に予備として置かれた物。
この準備万端な手術セットがエックスの重傷を物語っていた。
ゼロは冷静に、ライフセーバーに問い掛けた。

ゼロ「エックスの容態は?」

「ええ、命に別状はありません」

柔らかい笑みを浮かべるライフセーバー。
普段ならライフセーバーの笑みは信用ならない。
ハンターベースではライフセーバーが笑ったら注意しろという掟がある程である。
しかしこのライフセーバーは信用出来る。

「不思議ですよ。通常なら死んでいてもおかしくないというのに生きている。恐らくエックスの心が生かしているのでしょう」

ゼロ「お前がそんなことを言うなんてな」

他のライフセーバーはそのようなことは言わない。
しかしこのライフセーバーは柔和な笑みを浮かべながら言う。

「あなた方のせいですよ。あなた方は私の常識をいとも簡単に突き破ってしまう。だからこそこう思うんですよ」

そのような会話をしていると、エックスが目を覚ました。
ぼんやりとした瞳をゼロに向ける。

ゼロ「気がついたか?」

エックス「ここは…」

「動かないで下さい。あなたの傷は深い。今日1日、動かないで下さい」

エックス「1日?」

不満そうな声にライフセーバーは優しくも強い口調で言う。

「たった1日です。本当なら1週間は大人しくしてもらいたいのですから」

エックス「…分かった」

拗ねるエックス。
英雄やら救世主やら言われているエックスが、僅かに見せた年相応の姿。

ゼロ「ここは俺達が何とかするからお前はゆっくり休め」

エックス「ああ…」

「さあ、スリープモードに切り替えて下さい、よい眠りを」

エックスがスリープモードに入る。
しかし眠る間際、ジリジリと太陽が照り付けるような焦燥感が沸き上がるのだった。




































目が覚めたのは翌日の、太陽が頂を極めた頃だ。
エックスが大急ぎで現場に行くと、既にビートブードとルインが指示を出していた。

ビートブード「隊長、瓦礫の撤去はまだ完了していませんが、この調子ならこの地域は何とかなるでしょう」

エックス「分かった」

辺りを見回しながらエックスは思う。
これが戦いの結果。
悲しみしか生まない。
今まで何度も同じことを繰り返してきた。

エックス「(一体いつになったら…)」

そう思った時、甲高い声が聞こえた。

「いつになったら戦いは終わるの!!」

人間の女性の声。
服はボロボロで傷だらけだ。
戦いの悲惨さを雄弁に語る。

「いつになったら普通の生活が戻るの!!あんた達イレギュラーハンターがしっかりしていないから!!私達はただ静かに暮らしたいだけなのに!!」

女性を宥めているのはルインである。
同性だからと、フォロー役を買って出たのだが、女性は収まる気配を見せない。
エックスは頭を金づちで殴られたようなショックを受け、逃げるようにこの場を去った。
ルインはそれを見た。
他のレプリロイドは作業に忙殺され、気にする余裕がない。
女性をメンタルサポートも出来るライフセーバーに任せ、ルインはエックスを追い掛けた。
他のハンターがエックスがいなくなったのを通信で伝えたのは数時間後であった。








































ルインはエックスが向かった場所に心当たりがある。
恐らく今のエックスが行く場所。
全ての始まりの場所。
自分達の戦いが始まったあそこに向かったのだろう。








































最近は過去を思い出すことが多かった気がする。
エックスのバスターの故障、新たなる戦いの幕開け、アクセルとの出会い。
短い間に色々なことが起きた。
そしてそれらが自身の非力さに嘆いていたエックスをあの場所に向かわせたのだろう。
行き先はメガ・スコルピオが荒らし回ったハイウェイである。
既に日が落ち、辺りは真っ暗である。
道が途切れて出来た穴が底知れぬ闇に見えた。
暗い絶望の闇。
顔を覗かせれば、吸い込まれてしまいそうな錯覚すら覚える。
この世に絶望した者は自ら飛び降りそうな…そんな場所である。
そこにエックスはいた。

ルイン「エックス…」

彼女の声にエックスは振り向かなかった。
今にも消えそうな声で呟く。

エックス「昔と同じ…」

ルイン「え?」

今のエックスには彼女を顧みる余裕がなく、淡々と独り言のように呟く。

エックス「ここは…全然変わってない…俺が最初に戦った時と…復興も終わっていなくて…いや、何度元通りにしてもすぐ壊れるんだ。平和もすぐに無くなってしまう…俺がどれだけ戦っても、どれだけ多くのイレギュラーを倒してきても、平和はこの手からすり抜けてしまう…」

ルイン「エックス…」

エックス「ルイン…」

ルインはこちらに振り向いたエックスの表情を見る。
今まで見てきた毅然とした表情ではなく設定年齢の年相応の幼い表情。
それは昔の…。

ルイン「(昔のエックスだ…)」

泣きそうな表情なのに、静かな声がルインの耳に響く。

エックス「教えてくれ…いつになったら戦いは終わるんだ?いつになったら戦わなくて済むんだ…?みんな消える…穏やかな日常も何もかも…俺がやって来たことは無駄だったんじゃないのか…?」

ルイン「エックス…手を出して」

エックス「え…?」

ルインはエックスの手に触れ、1つずつエックスの指を折る。

ルイン「エックスは最初の反乱でシグマを止められず、シティ・アーベルはミサイルの直撃を受けました」

エックス「っ…」

ルイン「次にエックスは私とゼロがやられた後も頑張ってシグマを倒しましたが、シグマは蘇り、また戦いが始まりました。」

カウンターハンター事件…。

ルイン「次はシグマに操られたドップラー博士が起こした反乱で、シグマは倒せたものの、ドップラー博士を救うことは叶いませんでした…」

ドップラー博士の反乱…。

ルイン「レプリフォースとの戦いではシグマに利用され、多くのレプリフォースを撃ち、イレギュラー化したディザイアを倒しました。」

レプリフォース大戦…。

ルイン「コロニー落下事件ではシグマの策略により、地球に大きな被害を与えるきっかけを作ってしまいました。」

スペースコロニー・ユーラシア落下事件…。

エックス「…………」

ルインから聞かされるかつての過ちにエックスの表情が暗くなる。

ルイン「だけど、エックスはカウンターハンター事件でシグマに利用されていたゼロを助けました。ドップラー博士の反乱では、エックスは数多くの敵を救い、ドップラー博士の名誉を守りました。レプリフォース大戦でもエックスはディザイアの心を助けて、終わった後はレプリフォースの誇りを守りました。コロニー事件ではコロニーを破壊して、地球への被害を最小限まで抑えました。ナイトメアウィルス事件でも、ヤンマーク達を助けて、ゲイトもエイリアも助けてくれました。そしてレッドアラートから逃げ出したアクセルを受け入れました。そして自我を失う恐怖に怯えていたデボニオンを救ってあげました。ほら、エックスはこんなにいいことをしたんだよ?」

エックス「ルイン…」

ルイン「エックスのしてきたことを全て否定しちゃ駄目だよ……。私もエックスに…あなたに救われたんだよ?あなたがいなかったら私、どうなっていたか分からないんだよ。」

エックスは胸の中で何かが溶けていくような感じがした。

ルイン「あなたはどんな時も諦めなかった。諦めなかったから地球は、人類は、レプリロイドはまだ存在している。あなたの今までやってきたことは全て心の強さとなって、エックスの中に積み重ねられていくんだよ?苦しかったことも、辛かったことも、そして…嬉しかったこともエックスの糧になるの。」

ルインは優しくエックスの背中に腕を回し、抱き締めた。

ルイン「何も消えない。私はここにいるよ。私はもうあなたの側から消えない、いなくならない。絶対に」

エックスの胸に顔を埋めていたルインは顔を上げて、優しく微笑んだ。
まるで春の暖かい日差しのような笑顔だった。

ルイン「エックスは少しずつ前に進んでる。今は少し前に足を踏み出すのが怖くて立ち止まっているのかもしれないけど、少しずつ確実に進んでる。自分を信じてエックス」

エックス「自分を信じる…」

エックスは壊れた腕に視線を遣る。
ルインもエックスから少し離れ、腕を掌で包み込んだ。

ルイン「まだまだやれることは一杯あるよ。いつか振り返った時に今よりも“よかった”って思えることが沢山あるように…頑張ろう?一緒に…」

エックス「ルイン…」

ルイン「エックス…今は泣いてもいいよ。私が受け止めてあげる。エックスの辛い気持ちを全部」

エックス「でも…」

ルイン「いいの、辛い気持ちを全部吐き出しちゃおう。」

ルインがエックスを再び抱きしめるとエックスの瞳から涙が流れ始めた。

エックス「……っ、止まらない…っ…もう泣かないって決めたはずなのに…!!」

ルイン「泣いていいんだよ。涙が流せるのって…とても素敵なことだよ。」

エックスは涙を流し、大きく泣いた。
今まで堪えていた全てを吐き出すように。



































しばらくして、泣き止んだエックスは彼方を見つめていた。
破壊され、散らされたコンクリートは夜の闇に溶け込んでいる。
エックスは考える。
己の過去を。
戦いの日々を。
このハイウェイを進んだ時は、強大な敵に立ち向かう恐怖で押し潰されてしまいそうだった。
VAVAとの戦いに負けて、ゼロとルインに助けられ、非力さを噛み締めた。
再びこの道をチェバルで通った時、2人を失った張り裂けんばかりの悲しみがあった。
それでもこの道を駆けた。
避けえぬ戦いもあった。

カウンターハンター事件。

ドップラー博士の反乱。

レプリフォース大戦。

スペースコロニー・ユーラシア落下事件。

ナイトメアウィルス事件。

辛く悲しい戦いの日々だった。
しかし自分を支えてくれる仲間達がいた。
自分と共に歩んでくれる人がいる。
共に戦ってくれる親友がいる。
だから戦ってこれた。




































エックスとルインはハンターベースには戻らなかった。
空は白んできて、雲は黄金に染まる。
柔らかい光が2人を照らしている。

エックス「ルイン…」

ルイン「何?」

エックスの声にかつての悲痛な響きはない。

エックス「ここはあの時のままだな。俺がシグマと戦おうと誓った時と同じ。俺はこの道を真っすぐに進んでいった。迷ってばかりの意気地無しだった俺が初めて決めたことだ。」

淡々とした声に悲しさはない。
はっきりと、力のこもった声。

エックス「あの時…俺は人々を守ろうと戦ってきた。今もそれは変わらない。なのに戦えなかったのは、きっと取り戻した平和が壊れるのを恐れていたから。戦いが始まる度に“また”、“いつになったら”と考えていた。その心がバスターを封じていたんだ。」

ルイン「………」

エックス「…だけど」

過去との決着をつける時が来たのだ。

エックス「俺はその気持ちを越えていかなきゃいけない。このままじゃ駄目なんだ。だって俺は自分を信じたい。ここで誓った想いを失いたくない。この始まりの場所で、もう一度信じて進んでいきたい。この想いを…俺と俺を信じて支えてくれたみんなのために!!」

バスターを構え、今までとは比較にならないほどの光が収束していく。
今までよりも遥かに出力が増大したフルチャージショットが天へと昇っていく。
あれだけ痛みをもたらした封印がエックスの心によって解き放たれたのだ。

エックス「ルイン」

振り返る顔は強く、自信に満ち溢れ、どこまでも透き通っていた。

エックス「俺はもう大丈夫だ。もう迷わないよ。失った物を取り戻すための強さを手に入れたから。」

エックスの身体が光り輝き、純白のアーマーを身に纏う。
ゼロとルインが入手したエックスの新たなアーマー、グライドアーマーである。

ルイン「…お帰りなさいエックス」

エックス「ありがとう…ルイン。」

はにかむようにエックスは笑った。
しばらくしてハンターベースに戻ったエックスは仲間からもみくちゃにされ、それでも幸せそうに笑っていた。
































グライドアーマー

グライドアーマーはX7の時点ではノーマルエックスもエアダッシュが出来るために、グライド飛行やアイテム回収、ギガクラッシュを除けば基本能力の強化に留まっている感がある。
そのため歴代最弱の性能と言われているが、X4以降の何らかの能力に特化させた特化型アーマーとは違い、X4以前のバランス重視型アーマーに戻ったとも言える。
何らかの能力に特化させたためにどこか弱体化してしまう特化型アーマーよりは優れていると作者は思う。
セイバーを重視し過ぎて、使い勝手が悪いブレードアーマーとかがいい例では? 
 

 
後書き
エックス復活。
次回は…。 

 

第十四話 エックスSIDE7

 
前書き
エックス復活して…。 

 
アクセル「エイリア、解析終わったー?」

扉が開くのも待っていられないと言うように司令室に駆け込んできたアクセルに、エイリアは仕事中ではあるのだがその顔を綻ばせた。
エックスが復帰してから、ずっとこの調子だ。
よっぽど全員での任務が嬉しいらしい。
エイリアは、ふぅ、と一区切りつけて、オペレーターの顔に戻る。

エイリア「ごめんなさい、もう少し待ってもらえるかしら。まだ解析が不充分なの」

エイリアが喋り終わるか終わらないかで、ゼロとエックス達も司令室に入ってきた。
実はここに来る前は、5人でトレーニングルームに籠もっていた。
武器性能チェックに始まり、武器開発の説明、エックスのウォーミングアップと、その内容は豊富だ。

シグナス「調子はどうだ、エックス?」

エックス「悪くない……と思う」

シグナスの問いに、エックスは曖昧に苦笑する。
そんなエックスに、アクセルが身を乗り出した。

アクセル「悪くない、なんてもんじゃないじゃん!!殆どパーフェクトだったくせに」

ルナ「そう言うアクセルもな」

ゼロ「お前もそうだろう」

ルイン「ゼロもね。因みに私もパーフェクトだよ♪」

エックス「そうだな」

そんな5人のやりとりに、エイリアは思わずくすりと笑った。
まるでずっと一緒の仲間。
そうでなければ兄弟のようだ。
その後もしばらく続いている会話をBGMに、エイリアは再びコンピューターに向かった。









































トレーニングルームに再び来たエックス達はルナから新たな武器の説明を受けていた。

ルナ「まずはエックスから、レッドアラートの主力メンバーのDNAデータのバックアップデータ。バスターに組み込んでくれや」

エックス「ああ」

今まで戦いから抜けていたこともあり、DNAデータをバスター端子に組み込んでいく。

ガイアシールド

ボルトルネード

スプラッシュレーザー

サークルブレイズ

ムービンホイール

スナイプミサイル

ウィンドカッター

エクスプロージョン

8つのデータがバスター端子に組み込まれた。
ルインも同様に残りのデータを解析していく。

ルナ「んで、アクセルはこれだ」

アクセル「これが僕の新しい武器?」

まじまじと見詰める“それ”は、どこからどう見てもアクセルのバレット。
勿論別物。
だがその違いが判るのは使用者であるアクセルと、製作者本人の彼女だけだろう。

ルナ「そうだよ。お前のバレット、連射力は優れてるけど少し火力不足だからね。二丁拳銃にするなら同じ型の方が使い易いだろう?」

アクセル「でもルナ、火力不足なら、もっと別の武器にした方がよかったんじゃないの?」

ルナ「お前は両利きだろ?アクセルの場合そっちの方が効率いいし…そのバレット、随分大切にしてると見たけど?」

怪訝そうだった少年の顔が、きょとんとなった。
オリジナルのバレットは、記憶を失っている彼が唯一所持していた物だった。

ルナ「それと、オリジナルのバレットとの違いだけど。連射力、ショットの威力はほぼ同じで…」

アクセル「コピーショットは無理だった」

ルナ「当たり~☆アクセルのコピーチップと連動しているらしいのは分かったんだけどプロテクトが固すぎて俺でも解析出来ねえんだわ」

アクセル「なるほどね。」

ルナ「んで、これがギガランチャー。お前用の武器なんだけど…」

ルイン「両手で持つタイプだね。これじゃあ、バレットが持てないよ?」

ルナ「ああ、でも火力を追及すると、どうしてもサイズが大きくなっちまう。色々やってみたんだがねえ…」

ゼロ「これが限界だったわけか。」

ルナ「そういうこと。エックスと同じようにエクスプロージョンを放てるようにしようと考えたけど、連射性と射程を重視して、エクスプロージョンと同質のエネルギー弾を放てるようにしてみたんだ。威力はゼロの波断撃に匹敵するし、連射出来るから火力はかなりのもんだぜ。」

アクセル「凄いね、ありがとう!!」

ルナ「最後はこのアクアガトリング。名前の通り、水鉄砲をガトリング砲にしたような武器。威力はバレットより高いし、連射性能も高いからバレットの代わりに使うのもいい。んで、ゼロはこれだな。」

セイバーにチップを組み込ませるとセイバーが薙刀に変化する。

ルナ「Dグレイブ…水属性の薙刀。セイバーよりリーチが伸びるから、遠く離れた敵に有効。そして…」

次に薙刀が元のセイバーに戻り、セイバーが2つに分離し、分離したセイバーが小振りの双剣となる。

ルナ「Vハンガー。風属性の双剣。リーチは短くなるけど、セイバーや薙刀よりも小回りが利く。」

元のセイバーに戻すとゼロに返す。

ルナ「アクセルもゼロも微調整は自分で頼むな。」

アクセル「うん」

ゼロ「分かった。」

それぞれの武器をアクセルは粒子化、ゼロはバックパックに戻す。

エイリア『みんな、聞こえる?4つのエリアにイレギュラー反応。すぐに指令室に来て』

通信により、エックス達は指令室に向かう。




































指令室に着くとモニターに映るのは、ウェントス、イグニス、グラキエス、テネブラエの4人のレプリロイド。

エイリア「この4人のエリアは電波障害が酷くて、状況を知ることが出来ないし、ハッキングも出来ないの。だから…」

ルナ「ああ、このエリアには俺が行けってんだろ?」

エイリア「そうよ。ごめんなさい。あなたにばかり頼るようで」

ルナ「気にすんな。これも俺の仕事さ。さて、まずはこのエリアに行くか」

ルナが指差したのはかつてのシグマの反乱で、シグマについた元特A級ハンター、バーニン・ナウマンダーが占拠した工場地帯である。
そこにいるイグニスから撃破しようというのだろう。

シグナス「奴らが何者で何の目的があるのか知らないが、今は戦うしかない。」

エックス「みんな、今回は俺が行く。」

全員で行けば的になる。
実戦の空気を感じることも兼ねてエックスがルナと共に出撃することに。

エイリア「エックス、気をつけて」

エックス「ああ、行こうルナ。戦いを終わらせて平和を取り戻すために!!」

ルナ「おう!!」

グライドアーマーを身に纏い、エックスはルナと共に工場地帯に向かう。 
 

 
後書き
アクセルの武器説明。

サークルボム

バズーカ型の武器。
爆弾を前方に発射する武器。
性能はX8のブラストランチャーに近い。

ボルトストーム

回転式拳銃型の武器。
弾の装填部分がプロペラになっており、前方に電磁竜巻を発射する。
性能はストームトルネードの通常版。

ギガランチャー

X7のGランチャーのエクスプロージョンをオミットしたような物。

アクアガトリング

水の弾を連射するガトリング砲。
見た目はX8のアイスガトリング。 

 

第十五話 炎の戦士

エックスとルナはかつてのシグマの反乱で、バーニン・ナウマンダーに占拠された総合火力発電所に赴いていた。
ひたすら前へと進む。
守備隊らしきものがわらわらと現れてくるがそれらはバスターとレーザーにより残骸と化す。
ランナーボムがエックスに向けて爆弾を投げるが、グライドアーマーによってパワーアップしたフルチャージショットにより、複数のランナーボムが塵と化した。

ルナ「バスターの出力が以前とは比べものにならねえな。今まではルイン以下なのに。グライドアーマーになんか仕掛けでもあったのか?」

エックス「…迷いを振り切ったからさ」

その言葉だけで何となく悟ったルナは笑みを浮かべた。

ルナ「迷いを振り切った…か。それは大いに結構。頼りにしてるぜエックス」

エックス「ああ」

ルナから見たエックスの戦闘力は精神面に大きく左右されるようであり、迷いを振り切ったエックスはその高い潜在能力を余すことなく発揮している。

ルナ「にしても、ここは確か、最初のシグマの反乱で占拠された場所だよな?エックス、懐かしいんじゃねえか?」

エックス「そうだな、ここは俺が初めて特A級ハンターに勝利した場所でもあるから印象深いよ」

ルインと共闘したとはいえ、格上の相手であったナウマンダーを倒した記憶は今でも残っている。

エックス「ここは俺がライト博士と再会した場所でもあるから…。ボルトルネード!!」

ハイウェイが全ての戦いの始まりの場所ならここは強敵との戦いを決意した場所。
懐かしさを感じながらもメカニロイドにボルトルネードを繰り出し、薙ぎ払う。

ルナ「トランスオン!!ガンガルン!!」

ガンガルンに変身し、軽快なフットワークで攻撃を回避し、至近距離からエネルギー弾を放つ。
そして次々に襲い掛かるメカニロイドとランナーボムを返り討ちにし、最奥部に向かう。





































最奥部。
かつてナウマンダーを破壊した場所でイグニスが佇んでいた。

ルナ「よお、イグニス。また会ったな」

イグニス「やはり来たか同胞。それから最後のライトナンバーズ、ロックマンX。」

ルナ「同胞?」

イグニス「お前も私達とルインと同じように人間素体型だろう?お前からは私達と同じ反応を持っているから一目で分かったぞ」

エックス「ルナがルインと同じ?ならお前達も元は人間だと言うのか!!?」

イグニス「そうだ。力を得るために貧弱な人間の身体を捨て、レプリロイドに進化した。世界の歴史は戦いの歴史…人々は戦いの中にあってここまで進化して来れた。今、世界は新たに進化しようとしている。この戦いで死んだ者は進化についてこれなかった…ただそれだけの事だ」

エックス「違う」

イグニス「何?」

エックス「そんな物は進化じゃない。俺はそんな物は認めない!!」

ルナ「大体、犠牲のある進化なんかねえよ。てめえがしてんのはただの“暴走”だ。」

エックスとルナの反論にイグニスはナックルバスターに手を伸ばす。

イグニス「自分の力の意味も知らないお前達に何が分かる。お前達が正しいと言うのなら私に勝ってみせろ!!」

ナックルバスターを構え、エックスとルナに向けて放つ。

ルナ「こんなもん…」

回避しようとした時、弾道が変化し、虚を突かれたルナは直撃を受けた。

ルナ「っ!!な、何だ?いきなり弾道が…」

エックス「気をつけろ。奴がルインのアーマーを元にして造られたなら性能も準ずるはず。奴はナックルバスターによる遠近戦闘もこなせる万能タイプ。パワーも他の奴とは比較にならないはずだ!!」

イグニス「ほう?流石だなロックマンX!!流石は今までの戦いをくぐり抜けて来ただけのことはある!!」

イグニスが距離を詰める。
ダッシュからメガトンクラッシュを繰り出す。

エックス「なっ!!」

イグニス「私はこの力を限界まで極めている。オリジナルに出来なかったことも出来る。」

ギリギリでダッシュメガトンクラッシュを回避したエックスはフルチャージショットを放つ。
ショット本体はかわされたが、追尾弾がイグニスに襲い掛かる。

イグニス「せいやっ!!」

ダブルメガトンクラッシュの炎が追尾弾を相殺し、ナックルバスターショットを連射する。

エックス「スナイプミサイル!!」

ホーミングミサイルを放ち、イグニスに喰らわせるが、微動だにしない。

ルナ「トランスオン!!ストンコング!!」

ストンコングに変身し、盾でショットを防ぐ。

イグニス「中々頑丈だな。だがいかに超硬石と言えど…」

ナックルバスターを勢いよく盾に叩きつけ。

ルナ「なっ!!?」

イグニス「私には砂糖菓子のような物だ!!」

一撃でストンコングの盾を粉砕する。
超硬石の盾をいとも簡単に。

イグニス「喰らえ!!」

もう片方のナックルバスターをルナの胴体に叩きつけ、吹き飛ばす。

エックス「ルナ!!」

イグニス「お仲間の心配をしている暇があるのか!!?グラウンドブレイクボム!!」

ナックルバスターから複数の爆弾が発射され、床に落ちる。
変身が解けたルナを抱えてエックスは即座に壁蹴りとグライド飛行を駆使して上空へと避難する。

イグニス「流石だな。英雄の名は伊達ではないようだな。悪いが地に這いつくばってもらうぞ。ブラストボム!!」

巨大な火球を作り、こちらのいる側へ真横に発射し、壁に当たると無数の小さい弾に分裂した。

エックス「何!!?」

驚愕するエックスだが、バーニアを吹かして、弾を回避するがイグニスはナックルバスターを床に叩きつけ、大ジャンプをするとエックスの真上に移動し、もう片方のナックルバスターをエックスの背中に叩きつけ、叩き落とす。
そして床に転がっていた爆弾が大爆発を起こし、エックスとルナは爆発に飲まれた。
かに見えた。
咄嗟にエックスはチャージボルトルネードのバリアで爆発から身を守っていた。

イグニス「成る程、流石だな」
ルナ「助かったぜエックス」

エックス「ああ………」

再び睨み合う両者。

イグニス「お前程の強者を倒すのは惜しいが、私の邪魔をするのならば倒さなければならないんでな!!」

ルナ「トランスオン!!デボニオン!!ボルトルネード!!」

高速回転し、電磁竜巻を突っ込んでくるイグニスに直撃させた。

イグニス「ぐあああああ!!?」

今までどのような攻撃を受けても微動だにしなかったイグニスが絶叫した。

エックス「電撃が弱点なのか?ならボルトルネード!!」

エックスも電磁竜巻を放ち、イグニスに直撃させる。

イグニス「ぐっ…舐めるなあ!!」

ダッシュメガトンクラッシュでエックスを吹き飛ばし、ルナにはショットで牽制。

イグニス「ダブルブラストボム!!」

真横、斜め上に向けて放たれた火球が壁に当たると同時に無数の弾がエックスとルナに迫る。
エックスはルナを庇うように弾を全身に受ける。

ルナ「エックス!!?」

落下していくエックス。
イグニスはナックルバスターを構えて、落下していくエックスに向かう。

イグニス「とどめだ!!」

メガトンクラッシュがエックスを捉えた。

エックス「ぐっ!!」

あまりの威力に人工血液を吐いたが、次の瞬間、笑った。
エックスを中心に凄まじい光の波動がイグニスを襲う。
グライドアーマー最大の技、ギガクラッシュ。
セカンドアーマーに搭載されていたギガクラッシュ、その派生系のファルコンアーマーのスピアショットウェーブとは比較にならない破壊力にイグニスは沈んだ。

ルナ「す、凄え破壊力…」

あまりの破壊力にルナは呆然となりながら呟いた。
エックスはバスターをイグニスに向けるが、戸惑う。
彼女がロボット三原則に適応される元人間であるためか、撃つのに戸惑いを感じた。

イグニス「くっ…とどめを指さないのか?甘いな…いいだろう。ここは退いてやる。私を生かしておいた事、いつか後悔させてやる!!」

イグニスに去るのと同時にルナはイグニスのDNAスキャンが終了した。

ルナ「エックス…」

エックス「すまない…撃たなくてはいけないのに…」

ルナ「いや、仕方ねえさ。相手は元人間だしな…俺があいつらの同胞ね…」

エックス「気になるのか?」

ルナ「いや、別に。あいつらはあいつら。俺は俺。帰ろうぜエックス。少し疲れた。」

エックス「あ、ああ…」

2人は火力発電所を後にし、ハンターベースへ帰還するのであった。 
 

 
後書き
イグニス撃破。
イグニスのDNAスキャン完了。
 

 

第十六話 闇の戦士

 
前書き
イグニスを下し、次は…。 

 
火力発電所を攻略したエックス達。
次はゼロがルナと共に行動する。
2人が向かったのはかつてシグマに与した元特A級ハンター、ブーメル・クワンガーが占拠したタワーを登っていた。
エックスと同じように懐かしさを感じたゼロはセイバーを構えながら辺りを見渡した。
そんな2人も、歴戦の戦士。
敵の気配を感じれば、さっと顔つきが変わる。
奥から飛び出して襲ってくるメカニロイドやランナーボムを、次々と破壊していく。

ゼロ「それにしても、同じ奴ばかり使う連中だな」

ゼロの言うことも尤もである。
今回の戦いで配備されている敵の殆どはランナーボム。
いい加減に見飽きたらしい。

ルナ「らしくないじゃねえか、ゼロ。いつものお前さんなら“イレギュラーは叩き斬るだけだ”とか言いそうだけどよ」

ゼロ「………」



































そうこうしているうちに、1つの扉の前に辿り着いた。

ゼロ「ロックされているな…。しかも、相当頑丈そうだ」

近付いてもぴくりともしない扉を、ゼロが軽く叩く。

ルナ「解除するのがよさそうだなこりゃ…」

辺りを見回したルナは、壁面のパネルに目を留めた。
近付き慎重に操作する。

ゼロ「解けそうか?」

ゼロはこういう作業は苦手だ。ルナはハッキングも得意なので、順調に作業は進む。

ルナ「…ああ、これなら、何とかいけそうだ。少し待っててくれや」

カタカタとパネルを叩いていく。
数分後、ピーッという機械音が、扉とパネルの双方から鳴った。

ゼロ「早かったな」

ルナ「セキュリティが甘かったから…助かったよ」

セキュリティが甘いということは、来るなら来いということだ。
相手の余程の自信が窺える。

ルナ「…でも、ここで立ち止まるわけにはいかない。行こうぜ、ゼロ」

ゼロ「ああ」

エレベーターに乗り込み、タイヤ型のメカニロイドが複数降ってくる。

ゼロ「爆炎陣!!」

床に拳を叩きつけ、爆炎がメカニロイドを粉砕する。

ルナ「トランスオン!!イグニス!!」

イグニスに変身するとナックルバスターを構えて殴りかかる。
メカニロイドを粉砕すると次はエイプロイドとルインズマン。

ルナ「ゼロ!!」

ゼロ「分かっている!!」

セイバーに意識を向けるとセイバーの柄が伸びて、Dグレイブへと変形する。
ゼロはDグレイブを手前に引いた。

ゼロ「水裂閃!!」

目にも止まらぬ速度で繰り出す、水属性の突き。
スピードを加えるので威力は大幅に上がるが、勢いをつけなくてはいけない為に、隙が大きくなる。
一撃必殺か、サポートしてくれる仲間がいなければ危険な技。

ルナ「メガトンクラッシュボム!!」

至近距離でゼロに攻撃しようとしたルインズマンをナックルバスターによる打撃と爆弾による攻撃で粉砕する。
オリジナルのイグニスよりも能力はナックルバスターのチャージショットは炎から爆弾、ダッシュメガトンクラッシュ、ブラストボムが放てないなど劣化しているが強力な形態であることに変わりはない。
発射される爆弾には当然、爆発機能があるのだから、そこには必然的に炎に準じた性能を有する。
それに、準ずるとはいっても威力自体は炎より爆発の方が上だ。
雑魚を瞬く間に蹴散らしていき、ゼロとルナは頂上に辿り着いた。



































かつてクワンガーが破壊された場所に1人のレプリロイドが佇んでいた。

ゼロ「(こいつもできるな…)」

ゼロは静かに佇む背中から、相手の実力の程を感じた。
ストンコングと同等、いやそれ以上の力を。

テネブラエ「来たか…」

こちらに振り向いたテネブラエは凄まじい闘気を放ちながら仮面越しにゼロとルナを見据える
テネブラエ「俺はあのお方からお前達の破壊を命じられている。」

ゼロ「あのお方?」

テネブラエの言葉にゼロは訝しそうに顔を顰めた。

テネブラエ「あのお方の栄光を汚す者を1匹たりとも生かしてはおけん。ここで始末する!!」

言い切るのと同時にクナイを放ち、高速移動でルナの背後に回る。

ルナ「なっ!!?」

実体化させたクナイを構え、ルナの首を掻き切ろうとしたが、ゼロのセイバーで阻まれる。

ゼロ「はあっ!!」

テネブラエを弾き飛ばし、ルナを背後にやる。

ゼロ「大丈夫か?」

ルナ「あ、ああ…全然動きが見えなかった…。」

ゼロ「ルナ、奴の相手は俺がする。お前はバウンディングをコピーしてジッとしていろ」

動かず最後まで見ていろというゼロにルナはムスッとしながらも頷いた。
テネブラエはクナイを構えて、斬り込んできた。
ゼロはテネブラエの一撃を飛んでかわす。
そして着地と同時に、セイバーで斜めに斬りつける。
しかしテネブラエも簡単にはやられず、飛びのくことでセイバーから逃れたテネブラエに、続いて2度、3度と、ゼロの攻撃が襲う。
テネブラエはクナイをもう1本実体化させ、それらを受け流しながら、一定の間合いを取り機をうかがう。
ゼロの打ち込みをかわしたテネブラエは、大きく後ろに跳んで、距離を取る。

テネブラエ「曼陀羅手裏剣!!」

テネブラエの周囲にエネルギー体の攻防一体の手裏剣が複数出現した。
手裏剣の軌道が徐々に大きくなり、凄まじい勢いでゼロに迫っていく。

ゼロ「チッ!!」

それをかわしながらテネブラエに肉薄するが、テネブラエは高速移動でゼロから距離を取る。
そして天井にハンキングウェッジで身体を固定し、複数のクナイを投擲した。

ゼロ「波断撃!!」

衝撃波でクナイを弾き飛ばし、セイバーを大きく横薙ぎする。

ゼロ「飛影刃!!」

光の矢がテネブラエに迫るが、テネブラエは高速移動で回避した…ように見えたが、光の矢が突如方向を変えてテネブラエに迫る。

テネブラエ「ぐっ!!?」

直撃を受けたテネブラエがのけ反るが、すぐに持ち直し、クナイを投擲し、クナイで斬り掛かる。
ゼロのセイバーがテネブラエのクナイを受け止める。
素直な太刀筋ながら、鋭く重いテネブラエの一撃。
ゼロはこれまでに感じたことのない痺れが腕に伝わるのを感じた。
両者の刃が噛み合い、そのまま押し合いの形になる。
両者とも一歩も引かず、互いに睨みあう。
だが、ゼロの方が力が若干上だったらしく、ゼロのセイバーがじりじりとテネブラエのクナイを押していく。
気合と共にゼロのセイバーがテネブラエを薙ぎ払った。
テネブラエはすかさず飛びのき、ゼロの攻撃から逃れると、とんぼ返りに後ろへ大きく飛ぶ。

テネブラエ「ハッ!!」

気合と共にテネブラエの姿が3体に分離し、ゼロにクナイを投擲してくる。
ゼロは一瞬戸惑うが、数々の戦いの中で染み付いた勘と戦闘経験が本体がどれかを見切った。

ゼロ「そこだ!!」

左の分身をセイバーで斬り裂こうとするゼロ。
テネブラエは曼陀羅手裏剣を繰り出し、セイバーを弾き、逆にゼロにダメージを与えた。

ゼロ「チッ…」

咄嗟に利き腕ではない方の腕で防御したが、右腕がかなりのダメージを負った。

テネブラエ「ゼロと言ったか?随分と勿体ないことをしたものだな」

ゼロ「何がだ?イレギュラー」

テネブラエ「貴様がその気ならば、我々四天王の主になれたかもしれんていうことだ。あの方は貴様のことを気に入られていたからな」

ゼロ「イレギュラー共に担がれる気はない。安心しろ、あの方とやらも、お前の後を追わせてやる!!」

テネブラエ「そうはさせん。我が主には近付けさせん」

ゼロ「お前の言う主とやらはシグマだろう?何故奴にそこまで忠誠を誓う。」

テネブラエ「俺はかつて暗殺の請負人だったが、仲間に裏切られ死にかけたところを主に拾われ、生を受けた。一度失ったこの命、主のために使う。」

ゼロ「それが例え利用されていると知っていてもか?」

テネブラエ「愚問だ。今の俺の命はあの方のためにある」

テネブラエが絶え間無く攻撃を繰り出す。

ゼロ「(何とか奴の隙を…)」

テネブラエがゼロ目掛けてクナイを繰り出してくる。
ゼロは飛びのいて避けるが、すぐさまテネブラエは身体を反転させてクナイを手に駆けてくる。
ゼロの直前に迫ったテネブラエが、クナイで斬りつけてきた時、ゼロはセイバーでクナイを受け止めると見せかけて、素早く向きを変えて跳躍する。
テネブラエのクナイから逃れたゼロは、振り向こうと体勢を変えようとするテネブラエに隙が生じたのを見た。
その隙を逃がすゼロではなかった。
この一撃で決める。
ゼロはしゃがみこみ、テネブラエが振り向きざまに投擲したそのクナイをかわす。
そのままテネブラエをセイバーで横一文字に斬りつけた。
テネブラエはそれをかわすことも、後ろへ飛びのくこともできなかった。
セイバーがテネブラエの腹部を切り裂く。

テネブラエ「ぐっ…馬鹿な…!!?」

膝を着くテネブラエ。
ゼロはそれを静かに見遣る。

テネブラエ「(ダメージ危険域、これ以上の戦闘続行は不可能か…)撤退する…っ」

高速移動でこの場を去るテネブラエ。

ゼロ「ふう…」

ゼロが溜め息を吐くのと同時に、ルナもバウンディングへの変身を解除した。
テネブラエのDNAスキャンも完了し、2人はハンターベースに帰還する。 
 

 
後書き
テネブラエ撃破 

 

第十七話 氷の戦士

 
前書き
テネブラエを下し、今度は…。 

 
今回ルナと同行するのはルインである。
エックスとゼロの治療が済んでいないのもあるし、かつてオクトパルドに占拠されたこのエリアを昔攻略したのは彼女だからである。
久しぶりの水中戦にルインは表情を顰めた。
以前来た時は水中用のアーマーがあったから余裕があったが、今回の戦いでは水中用のアーマーがないのだ。
寧ろその水中用のアーマーの力を敵が使っている。
自分の力を敵に利用されるのは少しばかり気分が悪い。
自分が倒したイレギュラー達の気持ちが少しだけ分かった。
隣のルナはウオフライに変身して、進んでいる。
…少し羨ましいと思ったのは秘密だ。

ルイン「それにしても…」

ルナ「ん?」

ルインの呟きに反応したルナは振り向いた。

ルイン「この海も随分汚れちゃったね…」

以前、オクトパルドと戦うために向かった時は、まだシティ・アーベル等の大都市が健在だったため、大規模な海水浄化が行われており、大陸棚においてはかなりの透明度を誇っていたが、今では視認が不可能な程に汚れている。
かつては多くの生物で賑わったこの海も、過去の幾度にも渡る大戦の影響を受け、最早見る影もない死の海と化してしまった。
完全にではないが、そう言っても差し支えはない。
太古の昔から身体を進化させずに生きてきた海のギャング、サメ類でさえも今や希少動物と成り下がり、その頭数が毎年減り続けている。

ルイン「…………」

ルナ「…気持ちは分かるけど、感傷に浸ってる暇はないぜルイン?」

ルイン「うん…」

2人は海の更に奥まで向かう。




































メカニロイドを破壊しながら奥に向かうとかつてのコロニー破片落下事件による残骸が浮かんでいた。
その上には青いアーマーを身に纏う少年が佇んでいた。
ルナは変身を解除して少年を睨み据えた。

ルナ「よう、グラキエス。また会ったな」

グラキエス「へえ、嬉しいねえ。僕の名前、覚えてくれてたんだ。」

ルナ「あんなド派手な登場して、乗っていた戦艦をぶち壊されれば嫌でも覚えるさ」

グラキエス「だろうね。君が僕達の元になった人だね?」

ルイン「そのようだね…」

グラキエスの視線が四天王のオリジナルと言えるルインへ移る。

グラキエス「まさか、僕達と同じ人間素体型が2人も来てくれるなんて思わなかったよ。しかも僕達のオリジナルにね」

ルイン「………どうして君はシグマなんかに力を貸すの?」

今まで世界を破滅に導こうとしたシグマに従おうとするなど正気の沙汰とは思えない。

グラキエス「ふふ…そうだね、個人的に言わせてもらえば、僕はあの人に好印象を抱いちゃいないさ。死にかけの僕をレプリロイドにしてくれたことには感謝してるけどさ…」

ルイン「なら、どうして?イグニスやテネブラエのように何か理由があるの?」

グラキエス「理由ね…話すよりも見てもらった方が早いかもね。」

そう言うと同時にグラキエスは海に飛び込む。

グラキエス「おいでよ。君達に見せたい物があるんだ」

ルインとルナも海に飛び込んで、水中に。

グラキエス「君達に見せたいのはこの汚い海の底さ。僕が人間の頃、大規模な海水浄化が行われていたけど、戦いが始まって、終わったら終わったで海水浄化を後回しにして人間達は自分達のことばかり、分かるかい?結局人間達は自分のことしか考えないんだ。だから僕は人間でなくなったことに心底歓喜したね。」

ルナ「へえ…偉そう事言っても、やってる事はイレギュラーと同じじゃないかよ」

グラキエス「僕がイレギュラー?はは、面白いね、君は。僕達人間素体型は元が人間だからイレギュラー化はしないよ。僕達は自分の意志で人類に反旗を翻した。僕は薄汚い人間からレプリロイドに進化したんだ。そして僕は君達を倒して更に上を目指す…。さあ、始めようか!!」

ハルバードを構えるグラキエスに対してルインはセイバー、ルナはバレットを構える。

ルナ「当たれ!!」

リフレクトレーザーがグラキエスに迫るが彼はウォータージェットによる機動力でそれをたやすくかわす。

ルイン「波断撃!!」

セイバーを振るい、強烈な衝撃波を繰り出すが、これもかわされる。

グラキエス「無駄だよ!!アイススティッカー!!」

前方に氷塊を出し、それをハルバードで砕く。
氷の刃が2人に襲い掛かるが、ルナはコネクションレーザーで砕き、ルインはバスターを構えた。

ルイン「スナイプミサイル!!」

グラキエス「うわっ!!?」

追い掛けてくるミサイルにグラキエスは咄嗟にハルバードで受け止める。

ルナ「トランスオン!!ウオフライ!!」

ウオフライに変身すると薙刀を構えて突っ込む。

グラキエス「甘いよ」

身体を捻ってかわし、逆にハルバードによる斬撃を見舞う。

ルナ「痛っ!!?」

グラキエス「遅いなあ…もしかしてそれで最高速度?」

嘲笑するグラキエスだが、ウオフライのスピードが遅いのではない。
グラキエスの水中での移動スピードが早過ぎるのだ。

グラキエス「スラッシュハルバード!!」

2人に向けて巨大な氷の刃を放つ。

ルイン「サークルブレイズ!!」

かつて使用していたアーマーを元にした存在なら弱点は把握している。
ハイエナードの特殊武器を使い、グラキエスを狙う。

グラキエス「やば…っ!!」

弱点の炎が放たれ、慌てて回避行動を取る。

ルナ「うらあ!!」

薙刀を振り下ろすが、グラキエスはハルバードで弾き、底の方に向かう。

グラキエス「メイルストロム!!」

イソギンチャクのようなメカニロイドを数体召喚し、氷塊をを作った後、渦を発生させて巻き込もうとし、同時に氷塊が中心に巻き込まれるように降って来る。

ルイン「当たれ!!」

バスターから放たれたフルチャージショットがイソギンチャク型メカニロイドを1体破壊する。

グラキエス「やるね!!でも…」

ルイン「え!!?」

ハルバードによる斬撃を背後から喰らわせる。

ルナ「ルイン、大丈夫か!!?」

ルイン「だ、大丈夫だよ…」

グラキエス「流石だね、咄嗟に身体を捻って致命傷を避けるなんてさ。だけどその程度の力じゃあ僕の相手にはなれないよ。僕にとってこの水中はいわばホームグラウンドなんだからね」

ルナ「どうかな?炎が弱点ならこいつはどうだ?トランスオン!!イグニス!!」

グラキエス「っ!!イグニスだって!!?」

ルナ「メガトンクラッシュボム!!」

ナックルバスターから発射された爆弾。
イグニスへのコピーに呆気を取られたグラキエスは爆弾の直撃を受ける。

グラキエス「うあ…っ!!この…アイススティッカー!!」

氷塊を繰り出すが、今度はテネブラエに変身。
曼陀羅手裏剣で氷刃を防ぐ。

グラキエス「テネブラエもやられたのか…こりゃあ流石の僕も本気出さないとやばいかもね…」

ルナ「水中でもある程度早く動けるのも利点だよな。」

クナイを投擲しながらグラキエスとの距離を保ちながら隙を伺う。
ルナがコピーしたテネブラエは分身、高速移動が出来ず、曼陀羅手裏剣が自分の周囲にしか動けないバリアのような物に劣化している。
それでも…。

ルナ「こういう攻撃を防いでくれるから便利だよな。曼陀羅手裏剣追加っと」

防いだことで枚数が減った曼陀羅手裏剣を追加する。

グラキエス「君のコピー能力はオリジナルより大分劣化するようだね。オリジナルと同じ能力だったらと思うとヒヤヒヤするよ。流石の僕もテネブラエには勝てるかどうかは分からないからね」

巨大な氷の刃を発射し、クナイを弾き飛ばす。
グラキエスはハルバードをルナに振るおうとするが、ルインがダブルジャンプを駆使して、グラキエスとの間合いを詰める。

ルイン「私を忘れちゃ駄目だよ…てやあっ!!」

チャージセイバーを喰らわせ、グラキエスを吹き飛ばし、ルナの隣に立つ。

ルナ「ルイン!!」

ルイン「ありがと、ルナが彼の気を引き付けてくれたおかげで彼に一撃を入れられたよ。」

グラキエス「っ…やってくれたねえ……」

顔は笑ってはいるが目は笑っていない。
瞳には憤怒の色が見える。

ルイン「攻撃してみなよ。まあ、君にそんな勇気があるか分からないけれどね」

グラキエス「何だって…?言ってくれるじゃないか!!」

怒りに任せて突進してくるグラキエス。
ルインは不敵に微笑んだ。
セイバーを構え、グラキエスがハルバードを振り下ろす瞬間に…。

ルイン「獄門剣っ!!!!」

強烈なカウンターを喰らわせる。

グラキエス「うっ!!」

カウンターをまともに受けたグラキエスは底に叩きつけられる。

ルナ「これでとどめだ!!ダブルメガトンクラッシュ!!」

ナックルバスターによる打撃がグラキエスを捉えた。
まともに受けたグラキエスは膝をつく。

グラキエス「くっ…残念だよ。君達なら僕の言うことを分かってくれると思ったのに…僕は諦めないよ…あの男を利用してでも、この世界を変えてみせる!!」

そう言い残すと、グラキエスはこの場を離脱した。
グラキエスのDNAスキャンも完了し、ルインとルナもハンターベースに帰還する。



































~おまけ~

時間軸はX6

登場人物はエックス、ゼロ、ルイン、エイリア、シグナス、ルナ(一応アイゾック)。

アイゾック『今度こそ地球の存亡の危機に関わるであろう。そこで事態を重く見た我々はナイトメア現象の謎を解明すべく、疑いのある8つのエリアに調査員を送り込んだ。何せナイトメアはあの名を馳せたイレギュラーハンター・ゼロ…彼の亡霊が原因であるという情報もある…そして(以下略)』

エックス「な、何だって!!?勝手なことを…ふ、ふざけてる…ゼロのことをそんな…ふうに…」

ルイン「う~、あう~…」

赤面しながら黙り込むエックスとルイン。

ゼロ「え?な、何だ?何て言ったんだあの爺は?」

ゼロがルナとアイリスに問い掛けるが、2人は赤面した。

ルナ「え?お、おおおおおお俺にそんなこと聞くな馬鹿!!」

アイリス「ご、ごめんなさい…ゼロ…」

シグナス、エイリア「「……………」」

2人も俯いて、微かに赤面している。

ゼロ「お、おい…本当に何て言ったんだあの爺は!!?」

ルイン「そ、それはここじゃ言えないな~」

赤面しながら言うルインにゼロは叫ぶ。

ゼロ「公の場で言えないことを何言ったんだあの爺は!!?」

さあ、アイゾックはなんと言ったんでしょうか?(笑) 
 

 
後書き
グラキエス撃破。 

 

第十八話 風の戦士

 
前書き
イグニス、テネブラエ、グラキエス…四天王のうち三人を撃破したハンター側。 

 
ルナはアクセルと共に最後の四天王、ウェントスの元に向かっていた。
2人がいるのはかつてストーム・イーグリードが占拠したエアポート跡。
エックスとレッドが対峙した場所でもある。
2人はバレットを構えてランナーボムやメカニロイドの群れに突撃した。
アクセルは様々な銃器による多彩な攻撃。
ルナは様々な変身を繰り返しながらメカニロイドを破壊していく。
2人にとってはランナーボムやメカニロイドの群れは敵に値しない。
どれほどの数がいようとも、容易く薙ぎ払えるからだ。
エックス、ゼロ、ルイン、ルナ同様にアクセルも解析不能な部分が多い。
あのゲイトの頭脳を持ってしても解析出来ない部分が多いのだ。
ホバーを装備するために機動力を重視した軽量のアーマー。
防御力はそれに比例して低い部類に入るが、高い機動力とルナにはない変身能力を応用した回復能力が低い防御力を補っている。
しかし、アクセルの顔の傷はアクセルの回復能力を持ってしても治癒出来ないらしく、恐らく、そこに彼の正体が関わっているのだろうが。
唯一分かっているのは、新世代型レプリロイドの試作型ということくらいだろうか。

ルナ「しつけえんだよ!!」

ホーミングショットのコネクションレーザーが数体のメカニロイドを破壊し、アクセルもギガランチャーによるショットでランナーボムを粉砕した。

アクセル「雑魚ばっかり出してないでとっとと出て来たら!!?」

サークルボムが最後のメカニロイドを破壊した。

「そうか、ならば期待に応えなくてはな」

真上から聞こえてきた声に2人は顔を上げた。

ルナ「…ウェントス!!」

ウェントス「運命からは逃れられぬというわけか…やはり来たか。失敗作と同胞よ」

アクセル「あのさ?一々一々僕を失敗作って言うの止めてくんない?僕は僕…そしてあんたはイレギュラーさ」

不機嫌も隠さず、ウェントスを睨み据えるアクセルだが、ウェントスはそれに何の感情も抱かず2人を見据える。

ウェントス「愚かな…イレギュラー?そんな単純な問題ではない。理解出来ぬからと恐れ、恐れるから排除する…愚かな人間とその子飼いである貴様らイレギュラーハンターがいるからこの世界に争いが絶えぬのだ」

ルナ「何だと?」

バレットを握り締め、ウェントスを睨み据える。

ウェントス「そう……かつて、ある男が傭兵として所属していたその部隊は、他でもない、お前達イレギュラーハンターに、イレギュラーの烙印を押された。レプリフォース大戦……後の世の者はそう呼んだ。」

ウェントスがその言葉を口にした途端、ルナからは明らかな動揺が見て取れた。

アクセル「レプリフォース大戦…?」

過去の記憶が一切ないことを差し引いても、アクセルには知らないことが多すぎた。
そんなアクセルを置き去りに、話は進んでいく。

ウェントス「“勝てば官軍”……とでも言おうか…“正義”を名乗るのは思ったよりも簡単でな、勝てば良いだけだ。…貴様らにいいことを教えてやろう。かつてレプリフォースに所属していた傭兵…その名は、今はレッドアラートのリーダー・レッド。」

ルナ「は…!!?レッドアラートのリーダーがレプリフォースに所属してたってのか!!?」

ウェントス「そうだ。奴は貴様らイレギュラーハンターから命からがら逃げ延びた後、小規模ながら自警団を結成した。貴様らイレギュラーハンターなどいなくても平和を守れるということを思い知らせるためにな」

ウェントスが言う衝撃の事実にアクセルとルナは目を見開いた。

ウェントス「今までの戦争は愚者共がいたから起きたこと、愚者共の浅はかな選択が悲劇を起こしてきた。ならば、その選択は賢者に任せてみるべきだと思わないか?」

ルナ「…ケッ、天才様の考えることは分かんねえな、俺には邪魔する奴は死ねって言ってるようにしか聞こえねえがな」

ウェントス「…そう、私が目指す世界に平和を乱す愚か者の居場所はない。邪魔をするのならば、例え同胞だろうと斬る」

アクセル「愚か者ね…僕にはあんたが狂っているようにしか見えないけど…」

ウェントス「狂った…?ではお前は自分が何をしようとしているのか分かっているというのか?」

アクセル「…多分ね。どっちが悪くてどっちがいいかぐらいは分かるよ。」

ダブルバレットを構え、臨戦体勢となるアクセルにウェントスもダブルセイバーを構えた。

ウェントス「私にも分かるとも…狂っているのはこの世界だ。私はこの世界を変えてみせる!!行くぞ、イレギュラーハンター!愚者に…死を!!」

バーニアを吹かし、アクセルに向けて降下してくるウェントス。
ダブルセイバーの斬撃をダブルバレットで受け止める。

ルナ「アクセル!!」

ルナもバレットを構えてレーザーを放つ。

ウェントス「ふん」

バーニアを吹かし、一気に上昇することでかわす。

アクセル「逃がすもんか!!」

ホバーでウェントスを追い掛けるアクセル。

ウェントス「愚かな、そのような雛鳥のような動きで私に盾突くか!!舞い散れ!!プラズマサイクロン!!」

電撃を纏う竜巻を前方と後方に放つプラズマサイクロンH。

アクセル「うわっ!!?」

直撃を受けたアクセルが撃墜された。

ルナ「てめえ!!」

ウェントス「遅いな…」

ルナの射撃を尽く回避するウェントス。
バーニアを吹かし、縦横無尽に飛び回るウェントスの機動力はルナとアクセルの動体視力を上回っていた。
それはかつてエックスが使っていた空戦用アーマー、ファルコンアーマーに匹敵する程だ。
凄まじい速度で動き回り、一撃離脱を繰り返すウェントス。

ルナ「トランスオン!!カラスティング!!」

空戦が得意なカラスティングに変身し、ナイフを構えて突撃する。

ウェントス「ほう?コピー能力か。しかしオリジナルよりも劣化している出来損ないの模造品が私に勝てると思うか!!いでよ!!プラズマビット!!」

3本の電撃を発生させるビットをルナの周囲に複数召喚し、回転させてルナを迎撃する。
ビットがかなりの速度で回転する。

ルナ「うっ!!?」

ウェントス「本来ならすぐに終わるのだが、苦しみもがいて死ぬがいい!!」

アクセル「やばっ!!ディフュージョンレーザー!!」

ホーミング性能を持つレーザーを放ち、ウェントスに当てようとするがセイバーで掻き消される。

ウェントス「はあっ!!」

セイバーによる衝撃波が放たれ、ルナを吹き飛ばし、アクセルにはプラズマサイクロンで吹き飛ばす。

ウェントス「遅い…そして弱いな…貴様らは本当に私の同胞と奴の最後の作品か?それとも私が強すぎたのか?」

ルナ「(こ、こいつ、とんでもなく強い…!!今のままじゃ勝てねえ…なら…)」

ウェントス「プラズマサイクロン!!」

とどめとばかりに放たれたプラズマサイクロンHが2人に迫る。

ルナ「…トランスオン!!」

ルインから聞いていた各アーマーの弱点。
それを頼りに唯一、ウェントスを倒せる可能性を持つレプリロイドに変身した。
そして竜巻を簡単に消し飛ばしてしまった。

ウェントス「グラキエス…だと!!?」

同胞の中で唯一友人であった彼に変身したということはグラキエスはハンターに敗れたということだろう。

ウェントス「面白い、グラキエスとは一度本気で刃を交えてみたいと思っていた。劣化しているとはいえ、グラキエスの力を操る相手…面白くなってきたぞ!!」

ルナ「アクセル、離れてろ」

アクセル「…分かったよ」

実力差を痛感したアクセルは渋々とだが、離脱した。

ルナ「…始めるぜ?」

ウェントス「行くぞ!!」

バーニアを吹かし、瞬く間にルナに肉薄し、ダブルセイバーを振るうがハルバードで受け止める。
グラキエスに変身したルナはそのスピードについていくことが出来、見事に応戦してみせた。

ウェントス「プラズマサイクロン!!」

ルナ「アイススティッカー!!」

氷塊を生み出し、それをハルバードで粉砕し、氷の刃を放つ。
氷の刃は竜巻を消し、ウェントスに直撃する。

ウェントス「馬鹿な…!!?」

身体が凍結したウェントスは地面に落ちる。
直ぐさま氷を砕き、着地する。

ウェントス「成る程…流石はグラキエスと言ったところか…劣化した模造品がこの私とほぼ互角とはな。」

ウェントスとオリジナルのグラキエスの実力は単純な戦闘力では互角、属性の相性を考えれば向こうの方が上かもしれないが。
しかし現在の身体に慣れるための鍛練ではウェントスが勝った。
それは地上での戦いだったからだ。
水中戦に特化したグラキエスはどうしても地上では動きが鈍くなってしまう。
故に…。

ウェントス「水中であれば貴様の勝ちだったかもしれないがな!!」

衝撃波を繰り出す。
咄嗟に氷塊を出して防御するが、容易く砕かれた。

ウェントス「とどめだ!!」

再び衝撃波を繰り出す。
それは真っすぐにルナに迫る。

アクセル「ガイアシールド!!」

衝撃波とルナの間に入り、超硬石の盾で防ぐ。

ルナ「アクセル!!?」

アクセル「アクアガトリング!!」

水弾が凄まじい速度で連射されるが、ウェントスはそれを容易くかわしていく。

ウェントス「貴様のような失敗作が私の邪魔をするな!!プラズマビット!!」

ビットを複数召喚し、アクセルに攻撃する。
アクセルはローリングで回避し、ディフュージョンレーザーで攻撃する。

ウェントス「舐めるな!!」

セイバーでレーザーを掻き消し、アクセルに肉薄するが、バレットで受け流して、顎に蹴りを入れる。

ウェントス「なっ!?(どういうことだ?先程と動きが違う…まさか、覚醒しようとしているのか?いや…まだか…)」

ウェントスは冷や汗をかく、アクセルの異常とも言える成長速度に。

ウェントス「失敗作と言えど、あの男が遺した作品であることに変わりはないということか…!!」

ルナ「俺を忘れるなよ!!」

アイススティッカーを繰り出す。
ウェントスはプラズマサイクロンHで氷を吹き飛ばし、ルナに斬り掛かる。

アクセル「させるか!!スピンホイール!!」

ビーム刃が回転しながら発射され、ウェントスの翼を切り裂いた。

ウェントス「なっ!!?」

ルナ「トランスオン!!イグニス!!」

グラキエスからイグニスに変身するルナ。

ウェントス「愚かな、私に炎は…」

ルナ「効かないんだろ?分かってるさ!!メガトンクラッシュ!!」

オリジナルのルイン同様、ウェントス達の硬度と強靱さを兼ね備えるジャケット型アーマーは、如何なる力をもってしても貫通は望めない。
ルナとて敵の防御力は重々承知していた。
踏み込みと同時に螺旋回転させたメガトンクラッシュを捻じ込む。
中国拳法さながらの絶技。
四天王随一の豪腕が鳩尾に突き刺さり、打撃の衝撃は内部まで容赦なく抉る。

ウェントス「ぐっ…馬鹿な…!!?」

ウェントスは血反吐を吐きながら宙を舞う。
そして何とか着地するも膝を着いた。

ウェントス「この…私が、このような失敗作共に遅れを取るとは…!!人間共の子飼いの貴様らが正義を名乗るなど、私は認めない!!この世界は…私が変えてみせる!!」

そう言い残し、ウェントスは転送の光に包まれて消えた。
ウェントスのDNAスキャンも終了し、ルナとアクセルはハンターベースに帰還する。 
 

 
後書き
ウェントス撃破。 

 

第十九話 アクセルSIDE8

 
前書き
アクセルSIDEから行きます。 

 
通信音が鳴った。

エイリア『みんな、お待たせ。レッドアラートのアジトの場所が特定出来たわ。司令室に来て』

アクセル「エイリア……わかった」

短く返事をし、回線を閉じる。
手にしていたバレットの調整を終え、安全装置がかかっていることを確認する。

ルナ「……行くか?…アクセル……」

四天王への変身の慣熟訓練を終えたばかりのルナが問い掛ける。

アクセル「勿論。」

彼女には随分と世話になった。
彼女のおかげで前とは比較にならない力を手に入れることが出来たから。
2人は司令室に向かう。



































エイリア「ポイントRD18-66。そこがレッドアラートのアジトよ。…でもこれまで反応すらなかったのに急に見つかるなんて…まるで私達を誘っているみたいね」

自分の考えを率直に述べるオペレータに続き、シグナスも告げる。

シグナス「確かに何かあるかもしれないな。充分に気をつけてくれ…エックス、ゼロ、ルイン、ルナ。アクセルを頼んだぞ」

厳かな声に、エックスは力強く頷いた。

エックス「分かってる…さあ、みんな行こう。こんな争いは、早く終わらせてしまわなければ」

ルナ「いよいよクライマックスだな…腕が鳴るぜ…!!」

拳を鳴らしながら言うルナにルインは苦笑してしまう。

ルイン「もう、ルナったら、女の子なんだからそんな言葉遣いは駄目だよ?」

ルナ「…いいじゃねえかよ別に……」

言葉遣いを指摘されたルナは嫌そうに顔を顰めた。

ゼロ「今更言葉遣いを変えられても気色悪いだけだが?」

アイリス「ゼロ、女の子にそんなこと…」

ルナ「うっせーな!!」

アクセル「そう?僕はルナは今のままでいいと思うけど?」

ルナ「アクセル…俺の味方はお前だけだよ…」

戦士達はそれぞれの武器を握り締め、戦場に向かう。



































着いた先が本拠地に通じるハイウェイ、“パレスロード”。
大型機雷、高速移動メカニロイド、クラッシュローダーが進路を妨げて、序盤から激しい戦いとなる。

アクセル「容赦ないなあ、レッドは。」

ルナ「ああ、それより…」

ゼロ「何だ?」

ルナの呟きにゼロが振り返る。
因みに前衛はゼロとルイン。
中衛はルナとエックス。
後衛がアクセルとなっている。
因みにここではエイリアのナビゲートも受けることは出来ない。
理由はジャミングだ。
強いジャミングの影響で、通信機が使えなくなっているのだ。
だが、そんなことで任務はやめない。

ルナ「いや…アクセルが仲間になってから、全員で出撃したの初めてじゃね?」

ルイン「あ…言われてみればそうだね」

ルナ「やっぱ、傷ついた心を癒すには愛しい人からの愛ってか?ん?エックスく~ん?」

ゼロ「?」

アクセル「あ、それ僕も気になるな~?」

ルイン「あう…」

ニヤニヤと笑いながらエックスとルインを交互に見遣るルナとアクセル。
ルインは赤面し、エックスも俯いてしまう。

エックス「に、任務中だぞ。私語は慎んでくれ」

ルナ、アクセル「「は~い」」

ニヤニヤと笑みを浮かべたまま返事をする2人。
笑うのを止めて、アクセルはエックスに問い掛ける。

アクセル「エックス、久しぶりの大規模戦闘だけど大丈夫なの?それにパワーアップパーツは?」

エックスはグライドアーマーを装備している。
ルナ達から聞くと、ロボット工学の父とさえ言われた程のエックスの生みの親がエックスのためにアーマーを造ってくれるらしい。
エックスは苦笑しながら答えてくれた。

エックス「はは…そんな物はないよ」

アクセル「ええ!!?それじゃあ、そのアーマーでパワーアップしただけ!!?」

エックス「そうだ。でもパワーアップパーツは今の俺には必要ない。俺の強さは心の中にあるから、だから大丈夫だ」

アクセル「ふ、ふーん…」

ルイン「……」

アクセルは知らない。
エックスがどれだけの苦悩を持って、この答えを出したのかを。
エックスが何を思い、どのように戦ってきたのか、考えが及ばなかった。
だが、人の一生というものはその人にしか分からない。
親しい人や日常ですれ違う人にもそれぞれの物語がある。

ルナ「アクセル!!後ろから敵だぜ!!」

ウェントスに変身し巨大メカニロイド、モルボーラからの攻撃をかわす。

ルイン「あのメカニロイド…軍事用メカニロイドと比べても遜色はないね」

ゼロ「来るぞ!!」

モルボーラが突っ込んでくる。
狙いはアクセルだが、エックスが間に入る。

エックス「チャージショット!!」

エックスのフルチャージショットがモルボーラの突進を止める。

アクセル「あれが…エックスの力…」

ルナ「マジで強くなったなエックス。エックスのチャージショットはあんなとんでも威力じゃなかったのにな」

アクセル「そうなの?」

ルナ「ああ、グライドアーマーのパワーアップを差し引いてもな。」

真の意味で迷いを振り切ったエックスに恐れる物はもうない。

アクセル「(英雄…)」

数日前にベッドに横たわっていた彼はとても小さかった。
しかし今はどうか?
今のエックスは勇敢で気高くて、とても大きな背中をしていた。
エックスが仕掛けたのと同時に戦うゼロ、ルイン、ルナ。
たった4人でこの世界を守り続けてきた希望達。
彼等の背中はとても頼もしく、遠く見えた。
まだまだ彼等とは大きな隔たりがある。
壁を越え、彼等と肩を並べられる日はいつになるだろうか…?

エックス「アクセル!!先に行くんだ!!」

モルボーラにエクスプロージョンを喰らわせながらエックスが叫んだ。

アクセル「で、でも…」

ルイン「ここは私達が食い止めるから、ルナ、アクセルをお願い!!」

ゼロ「早く行け、お前はお前の決着をつけろ。どんな過去だろうとお前自身が乗り越えるんだ」

エックス「行くんだアクセル。君の信念に従って突き進むんだ!!」

ゼロとエックスの言葉にアクセルはハッとなる。
ルナと目配せし、2人はハイウェイを駆け抜けた。

アクセル「(待っててね、レッド…僕が止めてあげるから…)」



































クリムゾンパレスと呼ばれる宮殿にレッドはいた。
地の底には白い瘴気が漂って見えず、その場の不気味さを煽っていた。
縦、横には3つの足場。
それ以外は奈落の底への入口。

レッド「……どうした、遅かったな、待ちくたびれたぞ」

背を向けたまま、レッドは口を開いた。
足場の丁度対岸のような位置に、レッドとアクセルとルナは立っている。

アクセル「やあ、レッド。元気そうで何よりだよ」

アクセルは無邪気さと畏怖を感じさせる声で言いながらレッドを見つめた。
レッドは鋭い眼光で巨大な鎌を携え、荒々しいオーラを纏っていた。
アクセルは気づいた。
以前よりもレッドの力が増していることに。

レッド「“センセイ”のおかげでな。力が漲っているよ。…フッ、だけど、この有様だがな…」

レッドは天を仰ぐ。
仲間のため、心ならずも戦い、多くの仲間を失ってしまった。
過去を思い出せば、あいつが全ての元凶であった。

アクセル「…なるほどね…“センセイ”か……今日は一緒じゃないんだね」

若干声を低くするアクセル。

レッド「相変わらず、何処に居るのかは分からんな…。案外近くに居るんじゃないか?」

アクセル「そっか…じゃあ気をつけないとね…」

空気が、肌で感じられるほどピリピリと張り詰めていく。
そうしてレッドは振り返った。

レッド「…さて、長話してる場合じゃなかったな?そろそろ始めるとするか」

アクセル「そうだね…」

ルナ「アクセル」

アクセル「うん、ルナは下がってて」

ルナ「分かった。勝てよ」

ルナは最初の足場に戻る。
アクセルとレッドの戦士の誇りを懸けた戦いが始まる。
最初に仕掛けたのはアクセル。
アクセルの特殊武器の中で最も連射性能の高いアクアガトリングが放たれた。
凄まじい速度で放たれた水弾はレッドの肩のアーマーに裂傷を刻んだ。

レッド「ふん、ちっとはやるようになったな。今度はこちらから行くぜ!!」

鎌を振るう。
衝撃波を放つつもりだ。

アクセル「甘いよレッド!!」

衝撃波を跳躍してかわす。
ホバーを使い、次の足場へと移る。

レッド「よくかわしたな」

アクセル「!!?」

振り返るとレッドがいた。
分身である。
本体にダメージを与えることは出来ず、こちらはしっかりと攻撃を喰らう。
分身は刃を振り回し、アクセルを斬りつけた。

アクセル「痛っ…!!」

激痛に呻く。
急所でなかったのが幸いだが、長期戦になれば間違いなく影響する傷。
直ぐさま、変身能力の応用で自己修復。
傷は塞がるが受けたダメージは消えない。

レッド「どうした?そんなもんじゃないんだろう?」

アクセル「っ…当たり前じゃないか!!」

ウィンドブーメラン。
風属性のブーメランがレッドに直撃する。
レッドの低い呻きが聞こえた。
すぐに持ち直し、大鎌の嵐を繰り出す。
アクセルはホバーで射程外へと逃れ、サークルボムを構えた。

ルナ「(これがアクセル達の言葉か…)」

アクセルとレッドの戦いを見遣りながらルナは胸中で呟いた。

ルナ「(あいつらは戦いの中でしか互いの気持ちを伝えられないんだな。エックスなら力だけではいけないと言うかもしれねえ、でも力でないと伝えられないこともあるのもまた事実。全く不器用な連中共だよ……)」

アクセルはレッドの衝撃波をかわしながらレッドに肉薄する。

アクセル「(僕は迷わない。レッドを止める。それがレッドのために僕が出来ることだから!!)うおおおおお!!!!」

サークルボムが炸裂した。
爆発をまともに受けたレッドのボディが黒煙を上げた。

レッド「くっ…調子に乗るなよ!!」

勢いよく鎌が振り下ろされた。
間髪入れない攻撃ではあったがアクセルは辛うじてかわした。

アクセル「ふっ…死神の鎌か…それでどれだけのイレギュラーを倒したんだっけ?」

レッド「ふ…伊達に死神の二つ名は貰ってねえよ」

アクセル「だろうね。いつだってあんたは勝ち進んできた。」

戦いの中で、敵対しながらも互いに認めていた。
勇敢な戦士として。

アクセル「誰もあんたが負けたところなんて見たことないよね。これが始めてになるのかな?」

レッド「ふん…」

彼は鼻を鳴らし、紫の嵐を巻き起こした。
レッドが消えた瞬間、アクセルを竜巻が襲う。
風に煽られてアクセルの両足が宙に浮いた。

アクセル「うあっ…」

ブワッと吹き飛ばされた先は底無しの穴。
落ちたら死ぬ。
何とか石柱にアクセルは爪を立てて踏ん張る。

ルナ「アクセル!!」

アクセル「来ないで!!」

ルナ「っ!!」

駆け寄ろうとするルナを止め、高く飛び上がる。

アクセル「負けるもんか……僕は負けない、あんたのためにも!!」

ギガランチャーを構えて突撃する。
レッドも大鎌を構えて突撃した。

アクセル「やあああああ!!」

レッド「うおおおおおお!!」

ルナ「アクセルーーーーッ!!!!」

一閃---戦士の光が交錯した。

 
 

 
後書き
レッド戦終了。 

 

第二十話 アクセルSIDE9

 
前書き
アクセルSIDE8の続きです。 

 
ここに2人の戦士がいる。
バウンティハンターとした名を馳せた隻眼の戦士と彼を慕い続けた少年戦士。
互いを認めながら、彼等は戦う運命にあった。
そして…勝敗は決した。
膝をついているレッド。
致命傷はないようだが、動くことは出来そうにない。
銃口を向けるアクセルを、隻眼で見据えた。

レッド「…ハハッ……腕を上げたな……アクセル」

満足そうに呟いた時、エックス、ルイン、ゼロの3人が来た。

ルイン「アクセル、大丈夫!!?」

アクセル「大丈夫だよ。ルイン達はまだ来ないで!!」

エックス「?」

アクセル「前に教えてくれたよねレッド?残心を忘れるなってさ。」

レッドは薄く笑った。
アクセルは未だにバレットを下ろさない。
油断なくレッドを見据えていたが、突如宮殿が揺れて、ガラガラと破片が降る。

アクセル「え?」

ルナ「な、何だ?」

レッド「…あれが聞こえるだろう…ここは…長くは持たない……。俺に…万が一のことがあった時は……ここから下は……一緒に消えて…なくなるように……セットしておいたからな……」

途切れ途切れに言葉を紡ぐ彼。
アクセルは、眼を見開いた。
武器をしまい、差し出す。
ずっと、最初から銃を握ってきた、小さな左手を。

アクセル「嫌だ!レッドも行こう!!」

駆け寄ろうとして、後ろに引かれる。
振り返れば、ルナが、アクセルの右腕と左肩を掴んでいた。

アクセル「早く!まだ間に合う!!」

ルナ「駄目だ、急がねえと俺達も埋まっちまうぞ!!」

アクセル「でも、でも…っ」

落盤の響きが大きさを増していく。
絶体絶命。
しかしアクセルは手を伸ばすのを止めなかった。
小さな手で大切なものを掴もうとしている。

レッド「アクセル…その小娘の言う通りだ。先に行って待ってる…」

振り返った横顔は死への恐怖はなく、とても穏やかなものであった。
死神と恐れられた闘気も殺気もない。
あるのはアクセルへの深い優しさ。

レッド「いつでも来な…慌てなくてもいい…」

アクセル「レッド…」

レッド「小娘…」

ルナ「…………」

レッドの視線がルナに向けられる。
その表情はとても優しく、ルナはアクセルを捕まえながらも唇を噛み締めた。

レッド「アクセルを…頼んだ…」

アクセル「レッドオォォォォォォ!!!!」

アクセルの絶叫は天井に吸い込まれ、暗闇の中に消えていった。




































静寂が訪れ、辺りは無惨な有様。
掘り起こしても多分、何も出ないだろう。
出るとしたらレッドを思わせる残骸だけ。
涙を流すルインの肩に手を置き、エックスはゼロに視線を遣る。
ゼロもまた、どこか迷っているような顔をしている。
この先に居るであろう敵。
その正体に、エックスもゼロもルインもおおよその察しはついていた。
根拠などない、経験からの直感。
しかし、最も大切な存在を目の前で失った少年の心は、言葉では言い表せないほど深く傷付いているはず。
今の彼に、声をかけるということ自体憚られた。

アクセル「レッド…」

アクセルは悲しかった。
胸の奥から強い激情が胸を焦がす。
何故こんなことになってしまったのか?
何故死んでしまったのか?
胸が焼けるように熱いのに、声は出せず、喉に突っ掛かっている。
泣けば楽になれるかもしれない。
しかし戦士のプライドがそれを許さない。
どれほどの時間が経っただろうか。
ゼロは静かに口を開いた。

ゼロ「アクセル…俺には慰めの言葉すら見つからん…だが、俺達はここで立ち止まるわけにはいかない」

その言葉にルナはゼロに食いかかる。

ルナ「お前…っ、その言い方はないだろうがっ!!アクセルは…アクセルは目の前で育ての親を失ったんだぞ!!」

次にルナは俯いているエックスとルインを向く。

ルナ「今こんな状況で何が出来る!?どう考えたって一時撤退だろうがあ!!」

ルイン「………」

ルナ「何とか言えよおい!!」

叫ぶルナにエックスが彼女の肩に手を置いた。

エックス「…ルナ、大切な人を失うというのは身を斬られる程の苦しみだ…。それくらいは、俺にも分かる。」

ルイン「確かに今はアクセルを休ませてあげたい。レッドの残骸を回収して弔ってあげたい…でも、それで私達が満足しても意味がないんだよ。」

ゼロ「レッドアラートのリーダーであるレッドが倒れた今、クリムゾンパレスの頂上に向かうことは容易いだろう。いわばこれは俺達に訪れたチャンスでもある。」

ルナ「だ、だけどよ…」

アクセル「行こう」

ルナ「え…?」

アクセルを見遣ると儚い、けれど吹っ切れたような表情を見せていた。

アクセル「“センセイ”をやっつけなくちゃ…」

ルイン「…でも、少し休憩しようか……」

エックス「そう…だな」

3人は2人から少し離れた場所で休息を取る。
瓦礫の近くにいるのはアクセルと、アクセルとレッドの戦いを最後まで見届けたルナ。

ルナ「アクセル…本当にいいのか?せめて残骸の回収だけでも…」

アクセル「…いいんだ」

ルナ「アクセル…本当にいいのかよ…?レッドを…お前の大事な人をほったらかしにしていくんだぞ!!?」

アクセル「いいんだ…行かないと、“そんなことをしている暇があるならセンセイを倒して来い!!”ってレッドにどやされちゃうよ」

ふと、アクセルはルナの身体が小刻みに震えていることに気づいた。
顔を見るとルナが大粒の涙を流して泣いていた。

アクセル「何でルナが泣くのさ?」

ルナ「お前が…泣かないからだろ…!!」

勢いよく大して体格差がないアクセルを抱き締めた。

ルナ「お前…馬鹿だ…エックス達も馬鹿だけど、お前も劣らず馬鹿だ…」

アクセル「………」

ルナ「分かったよアクセル…そういうことなら、俺も最後まで付き合ってやるよ…黒幕なんか軽くぶっ潰してさ…」

アクセル「うん、ありがと」

アクセルが立ち上がろうとした瞬間、瓦礫から微かに紅い光が見えた。
2人は瓦礫をどかして、それを手に取る。

アクセル「これ…」

ルナ「レッドの…」

レッドのDNAデータ。
レプリロイドの精製情報…いや、レッドの心が詰まっているもの。

アクセル「…そっか、レッドも一緒に戦ってくれるんだね?レッドの心はいつも僕と一緒なんだ……」

ルナ「良かったなアクセル…」

自分のことのように喜んでくれるルナにアクセルも自然に笑みを浮かべた。

アクセル「みんな!!」

立ち向かおう。

エックス「アクセル?」

彼が与えてくれたあらゆる愛と僅かな願いを握り締めて。

ルイン「もういいの?」

アクセル「うん」

僕は行くよ、こんな心渇ききった楽園(せかい)の中。

アクセル「もう大丈夫だよ。さあ、黒幕のセンセイを倒そう!!(今までありがとうレッド…僕は…これからも生き続けるよ。精々待ちくたびれててよね?)」

“諦め”とか“最後(おわり)”に手を、伸ばしてしまったあなたの前に、せめて優しい光を見せて灯し続けてあげたいから。 
 

 
後書き
センセイ戦前 

 

第二十一話 アクセルSIDE10

宮殿の頂上で邪悪な気配がした
彼等はもう分かっている。
この事件の黒幕の気配だと。
5人は転送装置に駆け寄ろうとするが…。

ルナ「!!?」

衝撃波がルナの足元付近に炸裂した。

ウェントス「やはり来たか、イレギュラーハンター共」

グラキエス「まだ僕達との決着はついてないだろ?勝ち逃げなんかさせないよ」

イグニス「これ以上、先へは行かせない!!」

テネブラエ「あの方の覇道に立ち塞がる者は誰1人生かしはせん」

四天王が立ち塞がる。
ゼロは舌打ちするが、ルナとルインが前に出る。

ルイン「エックス、ゼロ、アクセル。ここは私達に任せて先を急いで!!」

ルナ「お前らは黒幕をぶっ潰せ!!」

チャージショットとリフレクトレーザーがウェントスとテネブラエに迫る。
2人はそれを回避したが、エックス達は転送装置に駆け寄り、転送された。

ウェントス「貴様ら…」

ルイン「あなた達が使ってるアーマー…それは元々私の力の一部、あなた達のオリジナルとして私が相手になるよ!!」

ルインとルナがバスターとバレットを構え、ウェントス達を睨み据えた。





































エックス達よりも前に出たアクセルは、両手のバレットを握ったまま声を発した。

アクセル「出て来なよ。いるのは分かってるんだよ、“センセイ”」

途端、高笑いと共に、階下からその男が飛び上がって来た。
黒いマントを撥ね除け、彼らを見下ろす。

シグマ「ご苦労だったな。ここまで来てくれるとはこちらから出向く手間が省けた。役立たず共は全てやられたようだしな」

“役立たず”。
そう言った男に、アクセルはギリッ、と奥歯を噛んだ。
エックスが、一歩踏み出す。

エックス「やはりお前だったのか……シグマ!!」

ゼロ「懲りない奴だな。どんなに細かく斬り刻んでも、また出て来やがる」

セイバーを抜き、ヒュッと空を裂いて構えるゼロ。
アクセルは“シグマ”という名を聞くと目を見開き、そして珍しくも鋭く細めた。
ライフルとレーザー砲を携えた姿はとても物々しく、彼が人間型とはにわかには認められなかった。
兵器そのものの姿。

シグマ「フン、何とでも言え。ワシは貴様らを倒し、世界の覇者となるまで、何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も!蘇ってやる!!」

アクセル「世界の覇者?裸の王様もいいところだね…今すぐ殺してあげるよ…!!」

ゾッとする声と共にバレットから銃弾が放たれた。

シグマ「甘いわ!!」

シグマは跳躍してかわし、ライフルを構え、アクセル達に向けて放った。
かわし損ねたアクセルが呻く。

ゼロ「アクセル!!」

シグマ「どうした小僧。ワシを倒すのではなかったか?」

アクセル「くっ…言われなくてもやってやるよ!!」

エックス「落ち着けアクセル。怒りに我を忘れればシグマの思う壷だ。攻撃を見極めて隙を叩くんだ」

アクセル「…分かったよ」

相手の攻撃を見切れと、自分自身に命じた。

エックス「(奴の出方を読むんだ。空中に飛んだら連射攻撃、地上ではバウンドショットを3発放つ。そして…)」

シンクロシステムを駆使し、エックスの声がアクセルの電子頭脳に響く。
シグマが部屋の隅に身を置いた時、紫色のレーザーが放たれた。

アクセル「(来たよ!!)」

ゼロ「(落ち着け、レーザーは屈めば当たらない。俺のセイバーでは届かない。エックス、アクセル。任せたぞ)」

エックス「(分かった)」

シンクロシステムを解除し、アクセルはシグマの体勢を崩す為にサークルボムを構え、放つ。

シグマ「ぬう!!?」

爆風を受けて体勢を崩したシグマ。
それを見て、一気に間合いを詰めたゼロはセイバーを薙刀に変形させ、一気に突き出した。

ゼロ「水裂閃!!」

強烈な突きはシグマの胴体に風穴を空けた。

エックス「エクスプロージョン!!」

エックスの持つ特殊武器の中でも桁外れの破壊力を誇るエクスプロージョンがシグマを飲み込んだ。

シグマ「お…己…!…だが…まだだ…まだ終わらんよ…!!」

その言葉を訝しる間もなく、部屋の外が光り出す。
それは内部にも入ってきて、3人は目を開けていられず両腕で顔を覆った。
シグマの哂い声と共に、覚えのある感覚が彼らを包んだ。



































ゼロ「宇宙…?」

アクセル「嘘!?どうして宇宙に!!?」

エックス「多分、シグマが真の姿を現すにはあの空間では狭いんだ。だから宇宙に転送した。」

少し間を置いた後、シグマがその巨体をさらけ出した。
10mはあろうか。
見上げれば首が攣りそうな体躯に頑強な拳を持ち、腹部にはレーザーの砲台がある。
ゼロは周りを見渡す。足場はそこまで広くない岩ばかりで、シグマの周囲を螺旋階段に近い形で浮かんでいる。
相手は恐らく、自在に動けるのだろう。
圧倒的不利に、思わず舌打ちが零れる。

エックス「アクセル、気をつけろ、落ちたら死ぬぞ」

アクセル「分かってるよ。心配しないで」

シグマ「ハーハハハハッ、ここからが本番だ!!」

耳障りな高笑いと共に紅い光弾が迫る。
アクセルはローリングで潜り抜け、アクアガトリングを放った。
するとシグマの姿が消えた。

アクセル「え!!?」

我が目を疑ったが、無論違う。
シグマは闇を飛び出し、拳を前に急接近する。

アクセル「うわっ!!?」

咄嗟に足場を移る。

エックス「アクセル、その足場は脆い。早く移らないと崩れ落ちるぞ!!」

アクセル「分かってるよ!!」

グライド飛行で次の足場に移るエックスの言葉に口を尖らせながら次の足場に移る。

ゼロ「(アクセル、エックス)」

シンクロシステムで再びに電子頭脳に声が響く。

ゼロ「(レーザーはホバーとグライディング(グライド飛行)でかわせばいい。俺はダブルジャンプでやり過ごすが…追尾式の弾はガイアシールドで跳ね返せ)」

アクセル「(よく分かるね?)」

的確なアドバイスにアクセルは脱帽の思いだ。

ゼロ「(一度見た攻撃は覚えている。それに奴とは嫌というほど戦っているから考えなどお見通しなんだよ)」

アクセル「(成る程ね)」

アクセルは納得した。
彼等は何度も死線を潜り抜けてきたんだと。

シグマ「小癪な奴らめ…」

シグマが呻いた。
ゼロのアドバイス通りに戦い、シグマに確実にダメージを与えていく。
攻撃が激しさを増す中、誰が彼の独白を聞いただろうか?
ゼロとアクセルがシグマと激戦を繰り広げる中、エックスは静かに佇み、シグマを見上げていた。

エックス「この戦いが最後だ…」

静かに闘志を燃やしながらエックスは呟く。

エックス「俺はいつも迷ってばかりだった。戦うことで本当に平和を取り戻せるのかと、ずっと考えていた。その迷いが怯えとなってバスターを封じてしまった…けれど俺はもう迷わない。貴様を倒し、平和を取り戻すんだ!!」

ゼロ「その通りだエックス」

アクセル「こんな奴、早くやっつけちゃおう!!」

3つの力が1つの閃光となる。
シンクロシステムによる連携攻撃、コンビネーションアサルト。
いや…。

アクセル「全エネルギー解放!!」

ゼロ「受けてみるがいい!!」

エックス「みんな、終わらせるぞ!!」

シグマ「馬鹿な…お前達の力は…ワシの想像を超えている…!!」

エックス、ゼロ、アクセル「「「ファイナルストラーーーーイクッ!!!!」」」

輝きがシグマを討ち滅ぼし、エックス達は再び、地上に転送されたのだった。 
 

 
後書き
シグマ撃破。
とどめはファイナルストライク。
一応、ドラマCDとはいえ、ロクゼロでも使えたからこの作品でも使えるということで。 

 

第二十二話 アクセルSIDE FINAL

 
前書き
アクセルSIDEの最終話。 

 
地上に戻ったアクセル達は見回すと見慣れない場所にいた。
壮麗なステンドグラスが斜陽を通していた。
淡い紅や黄色が無機質な床に映っていた。
そして荘厳な宮殿が崩壊を開始した。
突然のことにバランスを崩した3人の上から、天井の破片がパラパラと落ち始める。

ゼロ「何だっ…?建物が崩壊し出している…。」

エックス「考えるのは後だ!脱出しないと!!」

エックスの声に、アクセルは周りを見渡す。
出入口らしき大きな穴に駆け寄り、様子を窺う。

アクセル「こっち行けそうだよ、早く!!」

みんなに呼びかけたアクセルに、振り返ったエックスが息を呑む。
疑問に思う間もなく、彼をすっぽりと覆って差した影に振り向く。
そうして、常葉色の瞳を大きく見開いた。
ボロボロのマントを纏い、回路も露わな腕を伸ばしながら近づいて来る男。
死人を思わせる恐ろしい姿であった。

アクセル「うわああああ!!」

あまりの恐ろしさにアクセルは初めて恐怖した。
必死にバレットを乱射する。
だがシグマはバレットの攻撃などものともせず、笑いながらその大きな腕を振り上げた。

シグマ「フハハハハハッ!!」

殴られた彼の身体は容易く吹き飛ばされ、壁を突き破り見えなくなった。

エックス「アクセルー!!」



































アクセル「痛…っ、エックス、ゼロ…」

起き上がるアクセル。
アクセルは大量の瓦礫に生き埋めとなり、身動きがとれない。

アクセル「どうすれば…」

このままではエックスとゼロが危ない。
しかし特殊武器は使い物にならないし、かといって自力で抜け出すのは不可能。
しかしアクセルの傍らに、レッドが遺してくれた希望の光があった。

アクセル「レッド…」

レッド『アクセル、諦めるな。』

アクセル「え…?」

思わずアクセルは息を呑んだ。

レッド『お前ならきっと奴を倒せる…』

幻聴かもしれない。
しかしレッドの声が聞こえた。

レッド『突き進めよ…!!』

レッドの幻が浮かび、そして消えていく。
掌には希望の光。
ならばアクセルがすることはただ1つ。

アクセル「(使わせてもらうよ。レッドの力を…)」

アクセルの身体が光に包まれていく。
光が消えた時にはアクセルの姿はなく、レッドへと姿を変えていた。
そして瓦礫から脱出し、シグマと対峙しているエックスとゼロに向けて衝撃波を放った。

「見つけたぞ…ゼロ、エックス!!」

大鎌を手にした隻眼の死神。
驚きで声を失くした2人の前に、レッドは降り立つ。
セイバーを抜く間も与えずゼロを蹴り上げ、バスターを構えようとするエックスを鎌の背で殴り飛ばした。
そのまま、まるで守るようにシグマの前に立つ。
レッドの後ろで、奴は勝ち誇ったように笑った。

シグマ「フハハッ!いいぞレッド!!お前の力をよこせ……奴らに復讐だ!!」

シグマの身体から先端がギラギラと光るコネクターが伸び、レッドを包む。

「(かかった!!)」

コネクターは彼の身体に接続されていく。
そんな中、前触れなくレッドが呟いた。

「これなら……」

持ち上げた手に、握られているのは鎌ではなく。

「……どうかな?」

低い声に混じった、少年特有の高い声。
同時に突き付けられるバレット。
銃口から光が溢れ出し、シグマの顎から頭にかけて貫いた。
再び苦悶の叫びを上げたシグマは、壁を突き破り外に、高い空中へと放り出された。
レッドは身体を捻ってコネクターを引きちぎり、壁に背中を打ち付ける。
そのままずるずると崩れ落ちた。
光を放ち、収まれば、彼は彼本来の姿に戻っていた。

エックス「アクセル!!」

ゼロ「起きろ、アクセル」

エックス「大丈夫か?」

エックスが手を差し出しながら尋ねると、アクセルは俯き、微かに笑い声を零した。

アクセル「…上手くいったでしょ?エックス」

悪戯っぽい子供の声。
しかし、上げられた顔には、どこか儚い憂いを帯びた笑み。

アクセル「…僕のこと認めてくれた?」

翡翠の瞳をじっと見つめる。
エックスは一瞬だけ目を見開いたが次の瞬間、苦笑した。

エックス「…当たり前じゃないか」

苦笑と共に返された言葉にアクセルは笑みを深くした。
こうしている間にも宮殿が崩壊していく。

ゼロ「立てるなら急げアクセル。ルインとルナが負けるとは思えないが、万が一のこともある」

エックス「ああ」

アクセル「そっか…2人があいつらを抑えてるんだったね…」

あの2人が一度戦った相手に負けるとは思えないが、あの4人もシグマにも劣らない実力の持ち主だ。
人間素体型の特性である“成長”する能力を持っているため、下手をしたらシグマよりも厄介な相手だ。

エックス「行くぞアクセル」

アクセル「…うん」

アクセル達が2人の反応を頼りに探し、見つけた時には既にあの4人はいなかった。
宮殿の崩壊が始まった時点で、ルイン達も離脱したようだ。
急いで宮殿を後にしたアクセル達。




































ハンターベースに帰還したアクセルはメンテナンスを受けた後、部屋でバレットの調整などをして暇を潰していたが、次第に飽きてきたところを、エックスとルインが出掛けたのを見て、ルナと目配せした後、追い掛けることにした。
エックスとルインが向かったのはアクセルがメガ・スコルピオに追われていたハイウェイ。
アクセルは複雑そうに見ていたが。
2人が着いたのは、街を一望出来る場所。
そこでエックスとルインの会話を聞いた。

エックス「…覚えているだろうルイン?君がハンターになりたての頃、シグマ隊長が俺達にこの景色を見せてくれたことを……」

ルイン「勿論だよ。シグマ隊長が私とエックスに教えてくれた。これが私達が守る街、人々、笑顔、命、心だって…」

エックス「シグマ隊長も1体のレプリロイドに過ぎない。いつかイレギュラーに敗れる日が来るかも知れない。けど、意志を継ぐ者がいれば、イレギュラーハンターは滅びない。シグマ隊長は俺達にそう教えてくれた」

ルイン「これが私達の守るべき存在と教えてくれたよね…」

アクセルとルナは2人の会話に聞き耳を立てていた。
今のシグマを考えれば到底想像もつかない言葉だ。
恐らくはイレギュラーに堕ちる前のシグマなのだろう。

エックス「そこにいるんだろう?アクセル、ルナ?」

ルナ「ゲッ」

バレたと言いたげに顔を顰めたルナ。

ルイン「話し掛けてくれればいいのに」

ルナ「仕方ねえだろ?話しづらかったんだ。」

エックス「そうか。アクセル、ここはかつてシグマ隊長に大切なことを教えられた場所だ。」

アクセル「うん…」

エックス「イレギュラーハンターとなるなら、刻み込め、これが俺達の守るべき人々、笑顔、命、心なんだと」

エックスの言う通りアクセルは、ハイウェイから見える街並みを見た。

エックス「ここは、俺達の戦いの始まりの場所。」

ルイン「ここから私達の戦いが始まったんだよ」

ルナ「へえ…」

エックス「アクセル、君は弱き者達の剣となり盾となる覚悟があるか?」

かつてシグマに言われたようなことをアクセルに言うエックスにルインとルナは2人を見遣る。
アクセルは不敵な笑みを浮かべた。

アクセル「勿論」

その答えに満足した笑みを浮かべるエックス。

エックス「よし、ハンターベースに戻るぞ、これからみっちり鍛えてやる」

アクセル「うん!!」

ルナ「…俺達も帰るか」

ルイン「そうだね」

ハンターベースへ向かって走るエックスとアクセルに2人は苦笑して2人を追い掛けた。 
 

 
後書き
アクセルSIDE終了 

 

第二十三話 エックスSIDE8

 
前書き
エックスSIDE8 

 
最初から司令室にいたエックスは、他の仲間達の到着を待っていた。
そして全員が集まる。

エイリア「ポイントRD18-66。そこがレッドアラートのアジトよ。…でもこれまで反応すらなかったのに急に見つかるなんて…まるで私達を誘っているみたいね」

自分の考えを率直に述べるオペレータに続き、シグナスも告げる。

シグナス「確かに何かあるかもしれないな。充分に気をつけてくれ…エックス、ゼロ、ルイン、ルナ。アクセルを頼んだぞ」

厳かな声に、エックスは力強く頷いた。

エックス「分かってる…さあ、みんな行こう。こんな争いは、早く終わらせてしまわなければ」

ルナ「いよいよクライマックスだな…腕が鳴るぜ…!!」

拳を鳴らしながら言うルナにルインは苦笑してしまう。

ルイン「もう、ルナったら、女の子なんだからそんな言葉遣いは駄目だよ?」

ルナ「…いいじゃねえかよ別に……」

言葉遣いを指摘されたルナは嫌そうに顔を顰めた。

ゼロ「今更言葉遣いを変えられても気色悪いだけだが?」

アイリス「ゼロ、女の子にそんなこと…」

ルナ「うっせーな!!」

アクセル「そう?僕はルナは今のままでいいと思うけど?」

ルナ「アクセル…俺の味方はお前だけだよ…」

戦士達はそれぞれの武器を握り締め、戦場に向かう。

































着いた先が本拠地に通じるハイウェイ、“パレスロード”。
大型機雷、高速移動メカニロイド、クラッシュローダーが進路を妨げて、序盤から激しい戦いとなる。

アクセル「容赦ないなあ、レッドは。」

ルナ「ああ、それより…」

ゼロ「何だ?」

ルナの呟きにゼロが振り返る。
因みに前衛はゼロとルイン。
中衛はルナとエックス。
後衛がアクセルとなっている。
因みにここではエイリアのナビゲートも受けることはできない。
理由はジャミングだ。
強いジャミングの影響で、通信機が使えなくなっているのだ。
だが、そんなことで任務はやめない。

ルナ「いや…アクセルが仲間になってから、全員で出撃したの初めてじゃね?」

ルイン「あ…言われてみればそうだね」

ルナ「やっぱ、傷ついた心を癒すには愛しい人からの愛ってか?ん?エックスく~ん?」

ゼロ「?」

アクセル「あ、それ僕も気になるな~?」

ルイン「あう…」

ニヤニヤと笑いながらエックスとルインを交互に見遣るルナとアクセル。
ルインは赤面し、エックスも俯いてしまう。

エックス「に、任務中だぞ。私語は慎んでくれ」

ルナ、アクセル「「は~い」」

ニヤニヤと笑みを浮かべたまま返事をする2人。
笑うのを止めて、アクセルはエックスに問い掛ける。

アクセル「エックス、久しぶりの大規模戦闘だけど大丈夫なの?それにパワーアップパーツは?」

エックスはグライドアーマーを装備している。
父が自分に遺してくれたアーマーがあるのだから不安になる要素などない。

エックス「はは…そんな物はないよ」

アクセル「ええ!!?それじゃあ、そのアーマーでパワーアップしただけ!!?」

エックス「そうだ。でもパワーアップパーツは今の俺には必要ない。俺の強さは心の中にあるから、だから大丈夫だ」

アクセル「ふ、ふーん…」

ルイン「……」

ルナ「アクセル!!後ろから敵だぜ!!」

ウェントスに変身し巨大メカニロイド、モルボーラからの攻撃をかわす。

ルイン「あのメカニロイド…軍事用メカニロイドと比べても遜色はないね」

ゼロ「来るぞ!!」

モルボーラが突っ込んでくる。
狙いはアクセルだが、エックスが間に入る。

エックス「チャージショット!!」

エックスのフルチャージショットがモルボーラの突進を止める。

アクセル「あれが…エックスの力…」

ルナ「マジで強くなったなエックス。エックスのチャージショットはあんなとんでも威力じゃなかったのにな」

アクセル「そうなの?」

ルナ「ああ、グライドアーマーのパワーアップを差し引いてもな。」

エックス「アクセル!!先に行くんだ!!」

モルボーラにエクスプロージョンを喰らわせながらエックスが叫んだ。

アクセル「で、でも…」

ルイン「ここは私達が食い止めるから、ルナ、アクセルをお願い!!」

ゼロ「早く行け、お前はお前の決着をつけろ。どんな過去だろうとお前自身が乗り越えるんだ」

エックス「行くんだアクセル。君の信念に従って突き進むんだ!!」

ゼロとエックスの言葉にアクセルはハッとなる。
ルナと目配せし、2人はハイウェイを駆け抜けた。

ルイン「それにしても意外」

エックス「何がだ?」

ゼロ「ルナと一緒とはいえ、アクセルを先に行かせたことだ」

ゼロもルインと同意見だったらしく、エックスを見遣った。

エックス「心外だな、俺だって信頼してるんだよ。彼のことは」

ルイン「ふふ…だろうね、アクセルは昔のエックスにそっくりだもん」

ゼロ「ああ、無茶をするところは特にな」

エックス、ルイン「「それはゼロには言われたくない」」

見事に言い返されたゼロは苦虫を噛み潰したような顔をする。
モルボーラが突っ込んできた。

エックス「…ギガクラッシュ!!」

凄まじい威力を秘めた波動にモルボーラは飲み込まれ、完全に粉砕された。

ルイン「急ごう!!」

ゼロ「ああ」

モルボーラの撃破を確認するとエックス達も中に突入する。




































先には地獄の谷があった。
僅かな足場を踏み外せば、死に誘われる。
エックス達が辿り着いた時には既に勝負はついていた。

ルイン「アクセル、大丈夫!!?」

アクセル「大丈夫だよ。ルイン達はまだ来ないで!!」

エックス「?」

アクセル「前に教えてくれたよねレッド?残心を忘れるなってさ。」

レッドは薄く笑った。
アクセルは未だにバレットを下ろさない。
油断なくレッドを見据えていたが、突如宮殿が揺れて、ガラガラと破片が降る。

アクセル「え?」

ルナ「な、何だ?」

エックス「(何が起こった?)」

震動が激しさを増してエックスは驚愕する。

レッド「…あれが聞こえるだろう…ここは…長くは持たない……。俺に…万が一のことがあった時は……ここから下は……一緒に消えて…なくなるように……セットしておいたからな……」

エックス「(何だと…?)」

耳を疑うエックスにアクセルの叫び声が響く。

アクセル「嫌だ!レッドも行こう!!」

駆け寄ろうとして、アクセルは後ろに引かれる。
ルナが、アクセルの右腕と左肩を掴んでいた。

アクセル「早く!まだ間に合う!!」

ルナ「駄目だ、急がねえと俺達も埋まっちまうぞ!!」

アクセル「でも、でも…っ」

アクセルの声が焦りを強めていく。
元は仲間であった戦士が目の前で消える。
その確信がアクセルにはあった。

エックス「(また…誰かが死ぬ…)」

エックスが悲しみに顔を顰める中、アクセルは手を伸ばすのを止めなかった。
小さな手で大切なものを掴もうとしている。

レッド「アクセル…その小娘の言う通りだ。先に行って待ってる…」

振り返った横顔は死への恐怖はなく、とても穏やかなものであった。
死神と恐れられた闘気も殺気もない。
あるのはアクセルへの深い優しさのみ。

レッド「いつでも来な…慌てなくてもいい…」

アクセル「レッド…」

レッド「小娘…」

ルナ「…………」

レッドの視線がルナに向けられる。
その表情はとても優しく、ルナはアクセルを捕まえながらも唇を噛み締めた。

レッド「アクセルを…頼んだ…」

アクセル「レッドオォォォォォォ!!!!」

アクセルの絶叫は天井に吸い込まれ、暗闇の中に消えていった。



































静寂が訪れ、辺りは無惨な有様。
掘り起こしても多分、何も出ないだろう。
出るとしたらレッドを思わせる残骸だけ。

ルイン「アクセル…」

エックス「……」

涙を流すルインの肩に手を置きながら、エックスはアクセルの小さな背中を見る。
エックスはゼロに視線を遣る。
ゼロもまた、どこか迷っているような顔をしている。
この先に居るであろう敵。
その正体に、エックスもゼロもルインもおおよその察しはついていた。
根拠などない、経験からの直感。
しかし、最も大切な存在を目の前で失った少年の心は、言葉では言い表せないほど深く傷付いているはず。
今の彼に、声をかけるということ自体憚られた。
今のアクセルは悲しみに沈んでいるだろう。
自分を責めているかもしれない。
しかし、それでも…。

ゼロ「アクセル…俺には慰めの言葉すら見つからん…だが、俺達はここで立ち止まるわけにはいかない」

その言葉にルナはゼロに食いかかる。

ルナ「お前…っ、その言い方はないだろうがっ!!アクセルは…アクセルは目の前で育ての親を失ったんだぞ!!」

次にルナは俯いているエックスとルインを向く。

ルナ「今こんな状況で何が出来る!?どう考えたって一時撤退だろうがあ!!」

ルイン「………」

ルナ「何とか言えよおい!!」

叫ぶルナにエックスが彼女の肩に手を置いた。

エックス「…ルナ、大切な人を失うというのは身を斬られる程の苦しみだ…。それくらいは、俺にも分かる。」

ルイン「確かに今はアクセルを休ませてあげたい。レッドの残骸を回収して弔ってあげたい…でも、それで私達が満足しても意味がないんだよ。」

ゼロ「レッドアラートのリーダーであるレッドが倒れた今、クリムゾンパレスの頂上に向かうことは容易いだろう。いわばこれは俺達に訪れたチャンスでもある。」

ルナ「だ、だけどよ…」

アクセル「行こう」

ルナ「え…?」

アクセルを見遣ると儚い、けれど吹っ切れたような表情を見せていた。

アクセル「“センセイ”をやっつけなくちゃ…」

ルイン「…でも、少し休憩しようか……」

エックス「そう…だな」

3人は2人から少し離れた場所で休息を取る。





































ルイン「大丈夫かなアクセル……」

アクセルがそんなに弱いとは思ってはいない。
しかし、まだ十代前半の子供が育ての親の喪失に耐えられるかどうかは断じて否である。

エックス「さあ、どうだろうな…」

ルイン「なんかエックス冷たいよ?」

不安そうにエックスを見遣るルインだが、エックスは苦笑を浮かべて彼女の疑問に答えた。

エックス「彼ならきっと大丈夫だ。俺達に出来ることは彼を信じることだけだ。」

ルイン「そう…だ、ね…」

アクセル「みんな!!」

エックス「アクセル?」

ルイン「もういいの?」

アクセル「うん」

決意に満ちた表情でエックス達を見つめるアクセル。

アクセル「もう大丈夫だよ。さあ、黒幕のセンセイを倒そう!!」

エックス「(アクセル…その小さな手が、この先の戦いを制するか否かの鍵となるか…)」

エックスはアクセルを頼もしく感じると共に、戦いの元凶の打倒を強く誓う。 
 

 
後書き
エックスSIDE8終了。 

 

第二十四話 エックスSIDE9

 
前書き
エックスSIDE9 

 
宮殿の頂上で邪悪な気配がした。
彼等はもう分かっている。
この事件の黒幕の気配だと。
5人は転送装置に駆け寄ろうとするが…。

ルナ「!!?」

衝撃波がルナの足元付近に炸裂した。

ウェントス「やはり来たか、イレギュラーハンター共」

グラキエス「まだ僕達との決着はついてないだろ?勝ち逃げなんかさせないよ」

イグニス「これ以上、先へは行かせない!!」

テネブラエ「あの方の覇道に立ち塞がる者は誰1人生かしはせん」

四天王が立ち塞がる。

エックス「(まずいな…)」

奴との戦いを控えているというのにあまり体力を消耗したくはない。
ゼロは舌打ちするが、ルナとルインが前に出る。

ルイン「エックス、ゼロ、アクセル。ここは私達に任せて先を急いで!!」

ルナ「お前らは黒幕をぶっ潰せ!!」

チャージショットとリフレクトレーザーがウェントスとテネブラエに迫る。

エックス「(ルイン、任せた)」

ルイン「(分かってる、心配しないで)」

2人はそれを回避したが、エックス達は転送装置に駆け寄り、転送された。

ウェントス「貴様ら…」

ルイン「あなた達が使ってるアーマー…それは元々私の力の一部、あなた達のオリジナルとして私が相手になるよ!!」

ルインとルナがバスターとバレットを構え、ウェントス達を睨み据えた。



































転送されたエックスは今まで感じたことのある邪悪な気配がすることに気づいた。
今回の首謀者も奴だったようだ。

アクセル「出て来なよ。いるのはわかってるんだよ、“センセイ”」

途端、高笑いと共に、階下からその男が飛び上がって来た。
黒いマントを撥ね除け、彼らを見下ろす。

シグマ「ご苦労だったな。ここまで来てくれるとはこちらから出向く手間が省けた。役立たず共は全てやられたようだしな」

エックス「(シグマ…シグマ隊長……)」

見上げる巨体。
ライフルとレーザー砲を携えた姿はとても物々しく、彼が人間型とはにわかには認められなかった。
今まで何度も目にした姿ではあるが、ここまで機械的なのは初めてではないだろうか。
だが、最強のイレギュラーとしての威圧感と凶悪なオーラは健在であった。

エックス「やはりお前だったのか……シグマ!!」

ゼロ「懲りない奴だな。どんなに細かく斬り刻んでも、また出て来やがる」

セイバーを抜き、ヒュッと空を裂いて構えるゼロ。

シグマ「フン、何とでも言え。ワシは貴様らを倒し、世界の覇者となるまで、何度でも、何度でも、な・ん・ど・で・も!蘇ってやる!!」

アクセル「世界の覇者?裸の王様もいいところだね…今すぐ殺してあげるよ…!!」

ゾッとする声と共にバレットから銃弾が放たれた。

シグマ「甘いわ!!」

シグマは跳躍してかわし、ライフルを構え、アクセル達に向けて放った。
かわし損ねたアクセルが呻く。
脛から血が流れている。

ゼロ「アクセル!!」

シグマ「どうした小僧。ワシを倒すのではなかったか?」

アクセル「くっ…言われなくてもやってやるよ!!」

エックス「落ち着けアクセル。怒りに我を忘れればシグマの思う壷だ。攻撃を見極めて隙を叩くんだ」

落ち着くように促すとアクセルも頷いた。

アクセル「…分かったよ」

エックス「(奴の出方を読むんだ。空中に飛んだら連射攻撃、地上ではバウンドショットを3発放つ。そして…)」

エックスはシンクロシステムを駆使し、アクセルとゼロの電子頭脳に指示を出す。
シグマが部屋の隅に身を置いた時、紫色のレーザーが放たれた。

アクセル「(来たよ!!)」

ゼロ「(落ち着け、レーザーは屈めば当たらない。俺のセイバーでは届かない。エックス、アクセル。任せたぞ)」

エックス「(分かった)」

ダメージの危険のためにシンクロシステムを解除し、アクセルはシグマの体勢を崩す為にサークルボムを構え、放つ。

シグマ「ぬう!!?」

爆風を受けて体勢を崩したシグマ。
それを見て、一気に間合いを詰めたゼロはセイバーを薙刀に変形させ、一気に突き出した。

ゼロ「水裂閃!!」

強烈な突きはシグマの胴体に風穴を空けた。

エックス「エクスプロージョン!!」

エックスの持つ特殊武器の中でも桁外れの破壊力を誇るエクスプロージョンがシグマを飲み込んだ。

シグマ「お…己…!…だが…まだだ…まだ終わらんよ…!!」

その言葉を訝しる間もなく、部屋の外が光り出す。
それは内部にも入ってきて、3人は目を開けていられず両腕で顔を覆った。
シグマの哂い声と共に、覚えのある感覚が彼らを包んだ。



































ゼロ「宇宙…?」

アクセル「嘘!?どうして宇宙に!!?」

エックス「多分、シグマが真の姿を現すにはあの空間では狭いんだ。だから宇宙に転送した。」

いつもと同じだ。
倒したという希望の次は大きな驚愕が襲い掛かる。
少し間を置いた後、シグマがその巨体をさらけ出した。
10mはあろうか。
見上げれば首が攣りそうな体躯に頑強な拳を持ち、腹部にはレーザーの砲台がある。
ゼロは周りを見渡す。足場はそこまで広くない岩ばかりで、シグマの周囲を螺旋階段に近い形で浮かんでいる。
相手は恐らく、自在に動けるのだろう。
圧倒的不利に、思わず舌打ちが零れる。

エックス「アクセル、気をつけろ、落ちたら死ぬぞ」

アクセル「分かってるよ。心配しないで」

シグマ「ハーハハハハッ、ここからが本番だ!!」

耳障りな高笑いと共に紅い光弾が迫る。
エックスはグライド飛行で次の足場に移り、チャージショットを放った。
しかし、シグマの姿が消えた。

エックス「(消えた…)」

次の攻撃に備えると、シグマは闇を飛び出し、拳を前に急接近する。
狙いはアクセル。

エックス「!!?」

アクセル「うわっ!!?」

狙いを自分だと思っていたエックスはまさかアクセルが狙われるとは思わなかったために目を見開いたが、即座に指示を出す。

エックス「アクセル、その足場は脆い。早く移らないと崩れ落ちるぞ!!」

アクセル「分かってるよ!!」

エックスの言葉に口を尖らせながら次の足場に移る。

ゼロ「(アクセル、エックス)」

シンクロシステムで再びに電子頭脳に声が響く。

ゼロ「(レーザーはホバーとグライディング(グライド飛行)でかわせばいい。俺はダブルジャンプでやり過ごすが…追尾式の弾はガイアシールドで跳ね返せ)」

アクセル「(よく分かるね?)」

的確なアドバイスにアクセルは脱帽の思いだ。

ゼロ「(一度見た攻撃は覚えている。それに奴とは嫌というほど戦っているから考えなどお見通しなんだよ)」

アクセル「(成る程ね)」

シグマ「小癪な奴らめ…」

シグマが呻いた。
アクセルはゼロのアドバイス通りに戦い、シグマに確実にダメージを与えていく。
ゼロとアクセルがシグマと激戦を繰り広げる中、エックスは静かに佇み、シグマを見上げていた。

エックス「(シグマ…これで7度目か…あの人と戦うのは…最初は恐ろしくて仕方なかった。でも怒りで恐怖を抑え込んで戦った。2度目はゼロを利用した怒りを持って倒した。それからあの人は他人を欺き、弄んで来た。許せなかった。何の罪もない人を傷つけて…だから俺はみんなをあの人から守ろうと戦い続けた。)」

胸中で呟いていたエックスは静かにシグマを見ると口を開いた。

エックス「この戦いが最後だ…」

静かに闘志を燃やしながらエックスは呟く。

エックス「俺はいつも迷ってばかりだった。戦うことで本当に平和を取り戻せるのかと、ずっと考えていた。その迷いが怯えとなってバスターを封じてしまった…けれど俺はもう迷わない。貴様を倒し、平和を取り戻すんだ!!」

アクセル、ゼロ…そしてクリムゾンパレスで四天王と戦っているルインとルナと共に。

ゼロ「その通りだエックス」

アクセル「こんな奴、早くやっつけちゃおう!!」

3つの力が今、1つの閃光となる。
シンクロシステムによる連携攻撃、コンビネーションアサルト。
いや…。

アクセル「全エネルギー解放!!」

ゼロ「受けてみるがいい!!」

エックス「みんな、終わらせるぞ!!」

シグマ「馬鹿な…お前達の力は…ワシの想像を超えている…!!」

シグマは愕然とし、譫言を吐いた。

エックス、ゼロ、アクセル「「「ファイナルストラーーーーイクッ!!!!」」」

輝きがシグマを討ち滅ぼし、エックス達は再び、地上に転送されたのだった。 
 

 
後書き
エックスSIDE9終了。 

 

第二十五話 エックスSIDE FINAL

地上に戻ったエックス達は見回すと見慣れない場所にいた。
壮麗なステンドグラスが斜陽を通していた。
淡い紅や黄色が無機質な床に映っていた。
そして荘厳な宮殿が崩壊を開始した。
突然のことにバランスを崩した3人の上から、天井の破片がパラパラと落ち始める。

ゼロ「何だっ…?建物が崩壊し出している…。」

エックス「考えるのは後だ!脱出しないと!!」

アクセル「こっち行けそうだよ、早く!!」

呼びかけたアクセルに、振り返ったエックスが息を呑む。
影がアクセルに迫る。
影はボロボロのマントを纏い、回路も露わな腕を伸ばしながらアクセルに迫る。
死人さながらの恐ろしい姿で、エックスは思わず息を呑んだ。

エックス「(シグマ…)」

アクセル「うわああああ!!」

恐怖のあまりに絶叫したアクセルは必死にバレットを乱射する。
だがシグマはバレットの攻撃などものともせず、笑いながらその大きな腕を振り上げた。

シグマ「フハハハハハッ!!」

殴られた彼の身体は容易く吹き飛ばされ、壁を突き破り見えなくなった。

エックス「アクセルー!!」

エックスは叫んだが、同時に瓦礫が落ちていく。

エックス「シグマ…」

シグマ「私は…蘇る…姿を変えて、何度でも…!!」

機能停止が当然と思える深手にも関わらず、シグマは前進する。
凄まじい執念にエックスは背筋がゾクリとした。
応戦しようとしたエックス達の頭上からの衝撃波が、彼らの足元を撃つ。
見覚えのある攻撃に上の足場を仰げば、2人は双方とも大きく目を見開いた。

「見つけたぞ…ゼロ、エックス!!」

大鎌を手にした隻眼の死神。
驚きで声を失くした2人の前に、レッドは降り立つ。
セイバーを抜く間も与えずゼロを蹴り上げ、バスターを構えようとするエックスを鎌の背で殴り飛ばした。
そのまま、まるで守るようにシグマの前に立つ。
レッドの後ろで、奴は勝ち誇ったように笑った。

シグマ「フハハッ!いいぞレッド!!お前の力をよこせ……奴らに復讐だ!!」

シグマの身体から先端がギラギラと光るコネクターが伸び、レッドを包む。
コネクターは彼の身体に接続されていく。
そんな中、前触れなくレッドが呟いた。

「これなら……」

持ち上げた手に、握られているのは鎌ではなく。

「……どうかな?」

低い声に混じった、少年特有の高い声。
同時に突き付けられるバレット。
銃口から光が溢れ出し、シグマの顎から頭にかけて貫いた。
再び苦悶の叫びを上げたシグマは、壁を突き破り外に、高い空中へと放り出された。
レッドは身体を捻ってコネクターを引きちぎり、壁に背中を打ち付ける。
そのままずるずると崩れ落ちた。
光を放ち、収まれば、彼は彼本来の姿に戻っていた。

エックス「(そうか…レッドのDNAをコピーしていたのか……)」

叩きつけられ、動くのもままならぬアクセルにエックス達が駆け寄る。

エックス「アクセル!!」

ゼロ「起きろ、アクセル」

エックス「大丈夫か?」

エックスが手を差し出しながら尋ねると、アクセルは俯き、微かに笑い声を零した。

アクセル「…上手くいったでしょ?エックス」

悪戯っぽい子供の声。
しかし、上げられた顔には、どこか儚い憂いを帯びた笑み。

アクセル「…僕のこと認めてくれた?」

翡翠の瞳をじっと見つめる。
エックスは一瞬目を見開いたが次の瞬間、苦笑した。

エックス「…当たり前じゃないか」

苦笑と共に返された言葉にアクセルは笑みを深くした。
こうしている間にも宮殿が崩壊していく。

ゼロ「立てるなら急げアクセル。ルインとルナが負けるとは思えないが、万が一のこともある」

エックス「ああ」

アクセル「そっか…2人があいつらを抑えてるんだったね…」

2人が一度戦った相手に負けるとは思えないが、あの四人もシグマにも劣らない実力の持ち主だ。
人間素体型の特性である“成長”する能力を持っているため、下手をしたらシグマよりも厄介な相手だ。

エックス「行くぞアクセル」

アクセル「…うん」





































そして墓場を思わせるような場所でルインとルナは四天王を抑えていたが、震動が強くなっていくことに焦燥を覚えた。

ルナ「やべえな、ここはもう長く持たない。早く脱出しねえと…」

ルイン「うん、分かってるよ。やっぱり4対2っていうのは欲張り過ぎだったかな?」

ルナ「まずはエックス達と合流しなきゃな…」

ルイン「…その前に彼らが見逃してくれるならの話だけどね……」

ウェントス達に背を向けた瞬間、破壊されるのは目に見えている。

ルナ「(ルイン…俺が目潰しをするから目を閉じろ)」

ルイン「(…分かった)」

ルナ「…トランスオン!!」

光が空間を支配し、ウェントス達の視界を塞ぐ。
そしてウェントスに変身したルナはルインを抱えて脱出した。

ウェントス「チッ!!」

イグニス「逃したか…」

テネブラエ「このまま、ここにいるのはまずい。我々も脱出するぞ」

グラキエス「OK」

ウェントス達もクリムゾンパレスから脱出した。





































エックス達とルイン達は無事に合流し、ハンターベースへと帰還した。
メンテナンスが一段落して、エックスが解放されたのはしばらくしてからである。
戦いは熾烈を極め、以前のバスター不調も加えてライフセーバーに念入りにチェックされた。
エイリアは何度も大丈夫と尋ねてきて、彼女を宥めるのは苦労した。
そして自由に動けるようになり、エックスはハイウェイに向かうためにルインを誘った。
ルインも快く承諾してくれた…。
背後でついて来る存在に苦笑を浮かべながらエックスはルインと共に歩き出す。



































ハイウェイに着いたエックスとルインはかつてハンターの新人だった頃に見た景色を見て懐かしさを感じていた。

シグマ『エックス、ルイン。これが、我々が守るべきものだ。』

シグマが見せてくれた自分達が守るべきもの。

シグマ『これが、我々が守るべき街、人々、笑顔、命、心だ。』

エックス『はい、シグマ隊長』

ルイン『はい!!』

シグマ『私もただ1体のレプリロイドに過ぎぬ。いつかイレギュラーに敗れる日が来るかも知れん。だが、意志を継ぐ者がいれば、我々イレギュラーハンターは滅びぬ。エックス、ルイン。よく見ておくのだ…これが我々が守る物なのだということを……』



































ルイン「(何だか昔を思い出すね…もうシグマ隊長はいないけれど…)」

エックス「…覚えているだろうルイン?君がハンターになりたての頃、シグマ隊長が俺達にこの景色を見せてくれたことを……」

ルイン「勿論だよ。シグマ隊長が私とエックスに教えてくれた。これが私達が守る街、人々、笑顔、命、心だって…」

エックス「シグマ隊長も1体のレプリロイドに過ぎない。いつかイレギュラーに敗れる日が来るかも知れない。けど、意志を継ぐ者がいれば、イレギュラーハンターは滅びない。シグマ隊長は俺達にそう教えてくれた」

ルイン「これが私達の守るべき存在と教えてくれたよね…」

もう尊敬していたイレギュラーハンター・シグマはいないけれど。

エックス「そこにいるんだろう?アクセル、ルナ?」

ルナ「ゲッ」

バレたと言いたげに顔を顰めたルナ。

ルイン「話し掛けてくれればいいのに」

苦笑するルイン。

ルナ「仕方ねえだろ?話しづらかったんだ。」

エックス「そうか。アクセル、ここはかつてシグマ隊長に大切なことを教えられた場所だ。」

アクセル「うん…」

エックス「イレギュラーハンターとなるなら、刻み込め、これが俺達の守るべき人々、笑顔、命、心なんだと」

エックスの言う通りアクセルは、ハイウェイから見える街並みを見た。

エックス「ここは、俺達の戦いの始まりの場所。」

ルイン「ここから私達の戦いが始まったんだよ」

ルナ「へえ…」

エックス「アクセル、君は弱き者達の剣となり盾となる覚悟があるか?」

かつてシグマに言われたようなことをアクセルに言うエックスにルインとルナは2人を見遣る。
アクセルは不敵な笑みを浮かべた。

アクセル「勿論」

その答えに満足した笑みを浮かべるエックス。

エックス「よし、ハンターベースに戻るぞ、これからみっちり鍛えてやる」

アクセル「うん!!」

ルナ「…俺達も帰るか」

ルイン「そうだね」

ハンターベースへ向かって走るエックスとアクセルに2人は苦笑して2人を追い掛けた。 
 

 
後書き
エックスSIDE FINAL終了。
X7編終了。 

 

第二十六話 Cooking Panic

 
前書き
エックス達が調理します。 

 
イレギュラーハンターとなり、エックスにビシバシと扱かれ、クタクタとなっていたアクセルはテーブルに並ぶ料理を口に運んだ。

アクセル「うわ、美味しい。ルインって料理も出来るんだね、戦闘型なのに」

ルイン「あ、それエックスが作ったんだよ?」

アクセル「え…?」

信じられず、アクセルはこっそりと厨房を覗き込む。

エックス「圧力鍋の用意急げ!!君は食材を刻んで、君は…」

部下にテキパキと指示を飛ばすエプロン姿のエックスの姿があった。

アクセル「ねえ、ゼロ。第17番精鋭部隊って…お料理部隊だったっけ……?」

ゼロ「いや、イレギュラーハンターきっての戦闘の腕利きが集まる最強部隊なんだが…」

ゼロはフルーツジュースを一口飲む。
ちなみにこのフルーツジュースを作ったのはエックスではなくビートブードだったが、これがまた嘘のように美味い。
だがそれもフリルがついたピンク色のエプロンをつけたビートブードの視覚精神攻撃によって相殺されてしまい、結果、普通のフルーツジュースになってしまっていた。
実にもったいないと言えよう(失礼)。

ルイン「エックスのお兄ちゃんとお姉ちゃんは家庭用ロボットだからねえ」

アクセル「エックスってお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるの?」

ルイン「そうだよ。100年前に亡くなったんだけど…」

アイリス「エックスのお料理も美味しいけれど、ルインのも美味しいわよ?」

ルイン「アイリスには敵わないよ~」

ゼロ「俺はアイリスの料理が1番美味いと思うが?」

アイリス「ゼロ…」

見つめ合う両者。

ルナ「なあ」

全員【?】

ルナ「前々からやってみたいと思ってたんだ。一度全員、調理の技術を上げた方が良いと、思ってさ」

エイリア「簡単に言えば…全員の料理の腕を振る舞えってこと?」

ルナ「そういうこと。」

ゲイト「なるほど、確かにそれは興味深い」

何故かいるゲイトも頷きながら賛同する。

アクセル「ルナは料理出来るの?」

ルナ「当たり前、じいさん直伝の腕を見せてやる。」

ゼロ「(じいさん…女神か…女神直伝ということはまさに神懸かりか…)」

少し興味が沸いてきたゼロ。
全員が厨房に向かう。



































最初に出て来たのはゲイトである。
ゲイトが作ったらしい、料理らしき物。
赤紫色の何かが皿の上で踊っている。

ゼロ「何だこれは?」

ゲイト「ふっふっふっ…あらゆる栄養素とナイトメアウィルスを改良した物を合わせた特別の秘薬…げぶぅっ!?」

直後にゼロ(強化形態)、エックス(グライドアーマー&レイジングエクスチャージ)、ルイン(オーバードライブ)、ルナ(イグニス)、アクセルの鉄拳がゲイトを黙らせた。




































次に、ルナが厨房から出て来る。
ルナが大量の料理を運んで来た。
テーブルに1つ、また1つと並べられていく。

ルナ「イタリア料理のフルコースだぜ」

呆然とする一同。
開いた口がふさがらないとは正にこのことだ。
最初に復活したゼロが一口食べる。

ゼロ「美味いな…」

それを聞いて皆が次々口に運ぶ。
それぞれから美味しいと称讃の声が聞こえる。

ルナ「へへ~ん。俺はじいさんから料理を習ったんだ。このくらい当然だぜ」

えへんと、勝ち誇るルナ。
だがしかし。

ルイン「普通のハンターベースの食事にはフルコースは出ないよ…?」

ルインの言葉にルナも気づいてはっとなる。

ルナ「わりぃ、つい張り切って作っちまった」

落ち込むルナにアクセルは慌てる。

アクセル「別に責めてる訳じゃないんだしさ。そんな顔しないでよ。これスッゴく美味しいよ?」

アイリス「本当、凄く美味しいわ」

ゼロ「アクセルやアイリスが言うんだ、間違いない」

エックス「俺もこんな豪華な料理は初めて食べたよ」

シグナス「うむ、見事だ」

アクセル、アイリス、ゼロ、エックス、シグナスが言った。

ルナ「そうかな…」

エイリア「本当よ。だって凄く美味しいもの」

エイリアが断言すると、ルナの表情が喜びのそれに変わった。

ルナ「実はじいさん以外の人に食べてもらうの初めてなんだ、そう言ってもらえると嬉しい」




































次に出て来たのはゼロであった。

ゼロ「俺は、簡単な物しか作れんぞ…」

ゼロが出した料理はありふれたフルーツサンド。

アクセル「うわ、意外。ゼロって甘いもの駄目そうに見えたのに。」

ルイン「頂きま~す」

フルーツサンドを一口食べるルイン。
次第に満面の笑み。

エックス「クリームは甘さを控えているのかな?果物の酸味とよく合うな」

アイリス「美味しい。凄いわゼロ」

生クリームの控えめな甘さに果物の酸味が程良く効いて、更に甘さをしつこくない物にしていた。

ゼロ「こんなものでよかったらまた作ってやる。」



































次に出て来たのはアクセル。
出して来たのはチキンライスである。

ルナ「うめえや」

ゼロ「意外だな…」

チキンライスを一口食べて思わずルナは何の捻りも無い素直な感想を漏らす。
米がパラパラとほぐれており、ほど良くケチャップが絡んだケチャップライスとチキンは脂っこくなく香ばしい風味が広がる。

アクセル「驚いたでしょ?レッドアラートじゃあ、自分に出来ることは自分でやる方針だったからね」

だから割と何でも、一定のレベルまでは出来ると言ったアクセルの笑顔は、久々に見る少し大人びたそれだった。
ルインは何か慰めの言葉を言うべきか迷ったが、料理の感想を言う。

ルイン「これ凄く美味しいよ。一定のレベルなんてもんじゃないよ」

アクセル「へへ、まあね。次はルインだよ。頑張って」

ルイン「うん。任せて!!」

エックス「楽しみにしているよ」

厨房へと入っていくルインにエックス達は静かに待つ。



































ゼロ「遅いな…」

いくら手の込んだ料理でも遅すぎるような気がする。

ルイン「お待たせ~、ポークが見つからなくて時間かかっちゃった」

アクセル「いいよいいよ。ルインの家庭の味を食べたいし」

エイリア「美味しそうなロールキャベツね」

全員がロールキャベツを口に運んだ。

ぐちゃ…。

全員(ルイン除く)【(何だこれ…?)】

異様な歯ごたえに、全員の心が1つとなる。
ゴリッとしながらぐちゃっと。
それでいてふわっと、蕩けるような。
そんな味が口の中で広がる。
他の仲間も同じように、微妙な表情を浮かべていた。
ルナはゆっくりと……それでいてギラリとルインへ視線を移す。

ルナ「ルイン…何だこの歯ごたえは…?」

静かに、だが威圧感のあるその言葉に、思わずルインは怯む。
傍から見ればか弱い少女を睨む不良娘。
まったく持って危険爆発である。
ルインはルナの真意が分からず、ただおろおろと戸惑う。

ルイン「え?えと…何のこと?」

ルナ「何のこと?じゃない!!何だこの微妙MAXな歯ごたえはよ!!?キャベツは普通だ!!問題は肉だ!!ポークでもチキンでもないな!!一体何の肉を使った!!?変な物だったらプラズマサイクロン確定だ!!」

それでもロールキャベツを食べながら問い詰めるルナを、全員が止めに入る。
放つのがプラズマサイクロンだけなのは、一応彼女なりの気遣いだろうか?

ルイン「わ、私は確かにポークを使ったよ?信じてよ!!」

必死に言うルインに全員が頭を悩ませる。
嘘をつけない真っ直ぐな性格の彼女が嘘をついてるとは思わなかった。

ゼロ「なら、この微妙な歯ごたえは一体…?」

ゼロが呟いた直後にケイン博士がやってきた。

ルナ「あ、ケイン爺さん。どうしたんだ?」

ケイン「少しのう」

ケイン博士は厨房の冷蔵庫から肉の入った袋を取り出し、出ていこうとするが、ゼロに止められる。

ゼロ「待て爺、その肉は何だ?」

ルイン「あ、それロールキャベツに使った…」

ケイン「ん?ああ、この肉か?これはとある施設から送られた絶滅した生物のサンプルじゃよ」

ブハッ!!

その発言に全員が噴き出し、ある者は口元に手をやり、ある者は顔色を悪くし、ある者は無言でセイバーを取り出す。

エックス「何でそんなものを厨房の冷蔵庫に…」

ケイン「保存場所がなかったからのう、まあ、もし食べられてもレプリロイドじゃから死にはせんだろうと思って…」

ゼロ「爺、お前ちょっと来い!!」

ケイン博士をずるずる引きずって行くゼロ。
そんな彼を黙って見送る仲間達。




































しばらく引きずって離れたゼロは、ケイン博士と共にその辺の物陰に隠れた。

ゼロ「せい、はっ、とう!!龍炎刃!!三日月斬!!旋墜斬!!爆炎陣ーーーーッ!!!!」

ケイン「ギャアアアア!!?わしが何をしたと言うんじゃあああああ!!!!?」

物凄く手加減(多分)した歴代の技をケイン博士に浴びせたゼロ。

ホーネック「ケイン博士、この書類…って、何やってんですかゼロ隊長!!?」

ゼロ「真の力を…ん?何だお前か!!ちょうどいい、ホーネック。お前も手伝え!!」

ホーネック「ええ!!マジっすか!!?」

ゼロ「手伝え!!でないと…」

ホーネック「は、はいぃぃ!!」





































何やら気になる轟音に、一同閉口。
数分後、ゼロが今まで見せた事のない素晴らしい笑顔で戻ってきた。
ちょっといつもよりアーマーが紅いのは、きっと気のせいだろう。

エックス「ゼ、ゼロ…ケイン博士は?」

ゼロ「ああ、ちょっと用があると、どこかへ行ったぞ」

ルナ「…どこかって……どこだよ?」

彼女の呟きに、ゼロは答えなかった。
寧ろ全員にとって、はっきりとした事実を言い渡されなかっただけマシだろう。
ただ誰もが、心の中で星になったであろうケイン博士にさよならを告げていた。






































アクセル「何だか途中でわけ分かんなくなっちゃったけどエックス、頼んだよ」

色んな意味で衝撃をもたらしたロールキャベツの味を忘れたいがためにアクセルが最終兵器エックスを始動させた。

エックス「あ、ああ…分かった」






































しばらくして厨房から出て来たエックス。
エックスの料理はグラタンだった。
マカロニとエビの入ったものだ。

アクセル「うわあ…美味しそう」

まずはルナがフォークを伸ばす。

ルナ「火も通ってるし、クリームソースの出来もいい。いい仕事だぜエックス」

褒めるルナ。
エックスは嬉しそうに笑う。









































そしてアイリス。
しばらく後、出て来た彼女の手に乗っていたのは…。

ゼロ「サラダか?」

アクセル「なんて言うかさ…ちょっとヘルシー過ぎない?」

厨房を覗けば、他にも野菜ばかりが使われている。

ルナ「アイリスって菜食主義だったのか…意外」

アイリス「野菜ばかりだけど、栄養バランスはいいと思うんだけど…」

結果。

1位エックス

2位ルナ

3位アクセル

という結果になった。





































アクセル「はあ…」

屋上で夜空を眺めていたアクセル。
グラタンとサラダである程度は相殺したが、まだロールキャベツの衝撃が残っているのを感じた。
雲1つない快晴だったためか、美しい月が見えた。

アクセル「月が綺麗だなー…」

らしくないことを言っているのは分かってはいる。
しかし何となくそう思った。

アクセル「…………」

月を…正確には月の光を見ていると何故か高揚感が沸き上がって来る。
何故かは知らないが、力が漲るような感覚を覚えた。





































ルナ「久しぶりに屋上に行きますかっと」

たまには夜空を眺めるのも悪くない思い、屋上に出たルナが見たのは。

ルナ「アクセル?」

アクセルの姿だったが、どこか違う。
いつもの漆黒のアーマーは純白で、ボディの赤いラインと髪の色は紫に、変化していた。
そしていつもの翡翠色の瞳は血を思わせる紅へと変わっていた。

ルナ「アクセル!!?」

アクセル「…何?ルナ?」

次の瞬間にはアクセルは普段の姿になっていた。

ルナ「え?あれ…?」

目を擦ってもアクセルは黒いアーマーのままだ。

アクセル「何?どうしたの?」

尋ねて来るアクセルにルナは急いで首を横に振った。

ルナ「い、いや…何でもない…」

疲れているのだと自身に言い聞かせて、ルナは夜空を見上げた。 
 

 
後書き
久々にギャグ書けましたよ。 

 

第二十七話 彼氏彼女の事情

 
前書き
エックス達の話。
一応X8には繋げます。
 

 
四月上旬の、生命の溌剌とした春の最中、イレギュラーハンター新人の配属式が行われた。
式にはハンターとして戦いに加わる戦闘型の者達。
救護班に加わる者達。
そしてハンターの支援に当たるオペレータとしてスタートを切る者がいる。

エックス「君達はこれから誇りあるイレギュラーハンターとして、今までの戦いで殉職した英雄達の意志を受け継ぐんだ。死んでいった英雄達のイレギュラーハンターとしての想いを。君達の先輩達が命を賭して、力及ぶ限りの全てを守り抜いてきた、強き想いを」

【はい!!】

英雄と謳われるエックスの言葉に新人達が頷いた。
新人の彼らは新たな人生を前に希望に満ちた表情をしていた。







































そして彼らのうち、エックス達のようなトップクラスのハンターをアシストする者達がいる。
ハンターベースの中核を担うオペレータ。
彼女らは配属式の後、先輩のエイリアとアイリスから直々にアドバイスを受けるのだった。
華やかな配属式に比べ、ささやかな会場ではあったが、2人のオペレータ・レイヤーとパレットは緊張の面持ちでエイリアとアイリスの訪れを待つ。
エイリアはアイリスと共に部屋の前に立つと大きく息をついた。
後輩に会うにあたって、決意を新たにするためである。
彼女は胸に抱いた熱き想いを彼女らに伝えようと式に臨む。








































配属式より1週間前である。
この日ハンターベースでは新たに配属される新人達を迎え入れようと、あちこちで整備をしていた。
ちなみにハンターベースで特に忙しいのはシグナスとエイリアである。
ダグラスとライフセーバーはやることはなく、エックス達もすることがないため寛いでいた。
エックスは早いうちにデスクワークを片付けた後、窓の外を眺めていた。
レッドアラートとの戦いが終わり、世界は少しずつ再生を始めた。
ハンターベース周辺に被害はなく、都市は人々で賑わっていた。

エックス「エイリア」

自動ドアが開くと同時にエイリアが入ってきた。
ルインと同じ長い金髪が陽光に輝いて美しい。
スラリとした身体は聡明な彼女をよりパリッとした雰囲気に見せた。
最近アーマーを新調したらしい。
エックスと同じ、腕がバスターに変形するゲイト作の戦闘用に。
ゲイトが作製したので性能は確かであろうが、エックスは戦う必要はないと言ったが、エイリアも譲りはしなかった。
エイリアは1週間後の配属式でスピーチを行うらしく、その原稿を纏めていた。
スピーチのお題は“オペレータの心得”である。
エックスも似たようなことをしなくてはいけないために、内心苦笑していた。

エックス「お疲れ様」

エイリア「ありがとう」

エイリアは疲れていたが、エックスの一言で笑顔となる。
最初の頃はかなりとっつきにくかった彼女は、今ではこんな柔らかい表情を浮かべている。
彼女の笑みに年上の女性の美しさを意識した。
一応製造年は自分が遥か先を行くが、二十代前半に設定された彼女の容姿は青年型のエックスには眩しく映る。

エックス「コーヒーを飲むかい?」

エイリア「頂くわ」

エックスはエイリアを隣の椅子に座らせるとコーヒーを入れた。
湯気立ち上るカップが2つ。
うち1つを取り、エイリアは目を細めた。

エックス「(後で砂糖とミルクを用意しておかないとな)」

ルインがここに来るだろうから、甘いカフェオレを作って待ってようと考えたエックスはエイリアの隣に座る。

エックス「スピーチの準備は終わったのか?何だか忙しそうに見えたけど…」

エイリア「何とか、色々考えたんだけど、もう話すこととか決めたし」

エックス「そうか」

コーヒーを飲むと苦くて柔らかい風味が口の中に広がる。
初めてコーヒーを飲んだ時は、この味に感動したっけ…と昔を思い出しながら天井を仰ぐ。
エイリアはカップを両手で包んだまま、寂しそうな顔をしていた。

エックス「どうした?」

エイリア「ん…」

彼女はふっと遠い目をする。
胸に痛みを抱いて、無理に隠している表情である。

エイリア「私も先輩になるんだなって。アイリスもいるけど後輩が2人もいて、上手くやっていけるのかなって…大丈夫かな、私」

エックス「……」

思わず沈黙してしまうエックス。
脳裏に隊長に就任したばかりの自分の姿が通り過ぎる。
大戦後、彼は精鋭部隊隊長に就いたわけだが、最初は不安で仕方なかった。
シグマを倒した功績があっても自信が持てなかった。
しかしあの頃はハンターも少なく、シグマの残党も多くいたから、悩んでいる暇もなかったのが実際だが…。
エックスが隊長としての自信を得たのは、2度目の大戦を制して友を取り戻した頃である。
そしてルインも帰ってきて、ようやく自分は1人ではないと実感出来たからエックスはここにいる。
そして…。

エックス「(君もいてくれたから…)」

彼女がルインと共に自分を支えてくれたから、今の自分がいる。

エックス「大丈夫だ。君ならやっていける。」

その力強い声にエイリアは息を呑んだ。

エイリア「エックス…」

エックス「俺は君を信じている…エイリアなら大丈夫だって、今までどんなことがあっても乗り越えてこれたじゃないか。自信を持って」

木漏れ日の優しい表情で言う。
エイリアは驚いてしばし、今度は力強い瞳をして頷くのであった。

エイリア「そうね…大丈夫よね、私」

エックス「それにエイリア。この前、君が言ってくれた言葉だけれど。」

エイリア「?」

エックス「俺も…君やルインがいるから頑張れるんだ」

エイリア「え…?」






































戦えなくなったエックスに言ってくれた彼女の言葉。

エイリア『エックス…気にしないで。私は大丈夫だから、もう自分を責めないで…。あなたはもう充分傷ついた。もういいのよ。それにあなたは何も出来ないわけじゃない。あなたがいてくれるから私は頑張れるの…あなたがあの時助けてくれたから今の私がいるの…だから……これ以上自分を責めないで…』

その言葉に救われた。
あの時、礼を言い忘れてしまったけれど。








































エックス「君もいたから俺は絶望から立ち上がれた。」

あの時のエイリアは壊れた腕にそっと触れて、優しく語りかけてくれた。
凄く嬉しかった。

エックス「俺は今でも迷ってばかりだ。昔も今も…でも俺には見守ってくれる人や共に戦ってくれる人だっている。1人じゃないと分かったから。」

エイリア「エックス…?」

彼女はエックスの顔を覗き見た。
顔が心なしか赤い。

エックス「君さえよければ、これからも俺の傍にいて欲しい。ずっと…」

エイリア「エックス…私は…」

2人の顔は赤い。
エイリアが言葉を紡ごうとした直後。

アクセル「ああ!!エックスとエイリアがいい感じだー!!」

お子様達が2人の間に割り込む。
アクセルとルナである。
突然の出現にエックスとエイリアは飛び上がった。

エックス「ア、アクセル…」

しどろもどろのエックスにアクセルとルナはニヤリとする。

アクセル「ルナ…これって…」

ルナ「だろーなあ…お熱いこって…」

アクセル「まあ、頑張ってよね2人共。暖かーく見守ってあげるからさあ」

ルナ「んじゃ、お2人さん。ご機嫌よーう」

ニヤニヤと笑いながら退散していく2人にエックスはとてつもなく不愉快な表情をしていた。

エイリア「アクセルとルナったら…」

エイリアは赤面しながら笑っていた。
怒りやら残念な気持ち、その他諸々な感情が複雑な表情であったが。

エックス「(配属式後の2人の訓練は普段の10倍にしよう…)」

そう心に固く誓うエックスであった。

エイリア「さてと…」

コーヒーを飲み終えたエイリアは爽やかに立ち上がる。

エイリア「私も行かなきゃ。ありがとうエックス。あなたのおかげで直ぐに終わりそう」

エイリアはエックスとルインにしか見せたことのない顔で笑う。

エックス「そうか」

エックスもエイリアとルインにしか見せない顔で笑った。
エックスもエイリアも自室へ戻っていく。
エックスはアクセルとルナの普段の10倍の訓練内容を思案した。











































エイリアはスピーチを纏めていた。
エックスに言われて気づいたことを打ち込んでいるのだ。
部屋は暗い。
パソコンを使うことの多い彼女は、自然光が映りこみするという理由でカーテンを引いている。
オペレータはハンターに情報を伝え、最善の結果をもたらすようにアシストする。
ハンターの視覚情報、戦地の情報、敵のデータを解析し、いかなる時も冷静に対処する。
そして…。











































しばらくしてゼロがエックスの部屋に入って来る。
紙袋を持参して。

エックス「あ、ゼロ。どうしたんだ?」

ゼロ「どうしたんだじゃない。晩飯食ってないのはお前だけだぞ。何をしてるんだ?」

エックス「ああ、配属式後のアクセルとルナの訓練内容さ」

ゼロ「どれ……っ!!?」

内容を目にしたゼロは思わず我が目を疑った。
アクセルとルナは特A級ハンターであるために訓練はかなりきついというのに、普段の訓練の10倍…下手したらそれ以上の内容である。

エックス「これだけやれば、彼らも少しは懲りるだろうねえ。」

ゼロ「(あいつらはまた何かしたのか…)」

これから降り懸かる災難を思うとゼロもアクセルとルナを哀れに思うが、自業自得と判断して、メモリーから訓練の内容を消し去った。
ゼロはエックスに向かって口を開いた。

ゼロ「訓練内容が纏まったところで1つ笑い話でもどうだエックス?」

エックス「え…?」

ゼロの突然の問い掛けに怪訝な顔で小首を傾げるエックス。
そんな彼に構わずゼロは続ける。

ゼロ「なあエックス。アルバート・W・ワイリーという名前知っているか?」

100年前、世界征服を企み自ら製作した数多くの戦闘ロボットを率いて、人類の英雄ロックマンと幾度も戦った悪の科学者の名前だ。
彼の野望は最終的にはロックマンに食い止められ、ワイリーナンバーズと言われる彼のロボット達も尽く滅びたと政府製作の公式資料には記されている。

エックス「そ…そりゃ知ってるけど。そのワイリーがどう…」

ゼロ「そのワイリーの爺が製作した戦闘用ロボット。ワイリーナンバーズがこの世界にまだ生き残っていたとしたらどうだ?」

エックス「え…?」

目を見開くエックス。

ゼロ「それも…お前の目の前にな」

エックス「ちょ…ま…待ってくれゼロ。一体何を言い出すんだ」

激しく狼狽するエックスの前でゼロははっきりと言い放つ。

ゼロ「俺は最後のワイリーナンバーズ。トーマス・ライトが晩年に製作した最後のライトナンバーズ…即ちお前とは前世紀からの宿命の敵同士だと言う事だ」

エックス「(何の冗談…)」

ゼロの目は笑ってなどいない。
真剣そのものだ。

ゼロ「昔、俺は時々老人の夢を見た。痩身の老人は俺に言う“あいつを倒せ”と。俺の製作者があの悪の天才科学者Dr・ワイリーであり、奴の言う“あいつ”とは即ち爺が生涯掛かって勝てなかった伝説の英雄ロックマンの後継者であるお前であると言う事実がな」

エックスに指を突きつけながら冷淡に言い放つゼロ。

エックス「嘘だ…」

声を震わせるエックス。

ゼロ「嘘じゃない。現に俺はかつてワイリーナンバーズとして殺戮を繰り返していた。世に悪名高き“紅いイレギュラー”。それは紛れもなくこの俺の事だ」

エックス「そ…そんな…違う…あのイレギュラーが君である訳が無い。俺にとってのゼロは…君以外に有り得ない…」

今この場においてエックスの言葉は何の根拠もない理想論である。
現実主義者たるゼロならば間違いなく一笑に付すだろう。
しかしそれでもエックスは、そう言うしかなかった。
もしゼロがイレギュラー…更にはワイリーナンバーズである事を認めてしまえば、まさしくロックマンの後継者として生まれた自分にとって、シグマ以上の最大の宿敵と言う事になってしまう。
互いに過去の記憶を失った者同士であったからこその親友関係であったというのか。
無二の親友同士であった彼らだが、一方はDr・ライトの生み出したロックマンの後継者であり、もう一方は最後のワイリーナンバーズ。
それがそれぞれ記憶を失い、友として生きてきたとは何と言う皮肉であろうか。
エックスの心中に絶望の影が色濃く覆っていく。
しかし…。

ゼロ「そうだな。俺もそのつもりだ」

ゼロのその言葉に顔を上げるエックス。

ゼロ「言ったろ?笑い話だってな。ライトと爺の争いはもう100年も前に決着してるんだ。今更俺達に一体何の関わりがある?大体、今の俺はオリジナルボディを失っているからな。爺の干渉はもう受けないし、今の俺が人格として固定されてるんだ。」

そう言ってゼロはエックスに向かって微笑を浮かべる。

エックス「…そうだよゼロ。別に100年前の因縁も宿命も今の俺達には関係ないじゃないか」

そんなゼロに対してエックスも満面の笑みで答えた。
しかしゼロはそんなエックスを制すように手を向けると更に続ける。

ゼロ「ただ俺はワイリーナンバーズであるということから目を背ける気は無い。それを踏まえた上で俺は今の自分として生きていく。」

エックス「そうか…」

ゼロ「零空間での戦いで俺は確かに覚醒したはずなんだ。それでも俺は消えなかった。お前達と共に過ごした記憶がある限り、俺は俺なんだ」

エックス「ゼロ…」

ゼロ「とにかく、飯を食ってしまえ、明日は召集があるんだからな」

エックス「ああ…」

ゼロは部屋から去っていき、エックスはパソコンの電源を切ると夜空を見上げた。










































1週間後、彼女は後輩オペレータの前でスピーチを披露する。
出かけざまエックスに“頑張って”と声をかけられ、にわかに頬が赤く染まる。
そしてそれに頷いて、彼女は笑った。
2人の後輩の前で彼女は言う。
オペレータは見守ることしか出来ないけれど、見守って支えるのが大切な使命なのだと。
そう語る彼女は、とても満ち足りた表情だったと、後に後輩の2人は言うのだった。









































~おまけ~

配属式後のハンターベースのトレーニングルームではアクセルとルナの叫び声が響いていた。

アクセル「わあああああ!!?」

ルナ「どわああああ!!?」

エックスのチャージショットをギリギリで回避したアクセルとルナ。
しかし今度は通常弾の連射が2人に容赦なく襲い掛かる。

アクセル「ぎゃああああ!!エックス、ごめんなさ~い!!」

ルナ「俺らが悪かったから…命だけは命だけは…!!」

ゼロ「(自業自得だな…)」

ルイン「(ご愁傷様…)」

エックス「エクスプロージョン!!」

桁外れの威力を誇るエネルギー弾が炸裂し、ハンターベースに凄まじい悲鳴と轟音が響き渡るのだった。 
 

 
後書き
エイリアがアーマー換装。
 

 

第二十八話 彼氏彼女の事情2

 
前書き
次はゼロとアイリス。 

 
ゼロ「アイリス、お前に見せたいものがある。だが、来る来ないはお前の自由だ」

ゼロが休暇を取ったアイリスに向けて言う。
今まではゆっくり休む間もなかったから気分転換のために誘ったのだろう。
しかし、ゼロが言う“見せたいもの”はガラパゴスのかなり険しい道にあり、おまけにゼロはアイリスが非戦闘型ということを忘れているのか、自分のペースでさっさと先を歩いていくので、アイリスはついていくのがやっとだった。
アイリスは途中、何度もゼロに少し休むように訴え、休み休み来た結果、目的のものがある場所に着いた頃にはもう夕暮れ時にさしかかっていた。

ゼロ「アイリス…このぐらいの距離ぐらい休みなしで歩けないのか?」

アイリス「私はあなたと違って非戦闘型なの!無茶言わないで!!」

戦闘型のゼロと非戦闘型のアイリスとでは体力に差がありすぎるのだ。

ゼロ「着いたぞ」

ゼロは、少し先の森が開けた場所を指差すと、再びさっさと歩き出す。
アイリスはそんなゼロに恨みがましい目を向けながらも、後を追った。
森が開けた場所に出て、その先にある景色を見た瞬間、アイリスは目を大きく見開いた。
アイリスはゼロへの不満も忘れて、目の前の雄大な景色をじっと見つめた。
岩棚の上から見下ろすガラパゴスの豊かな自然は、言葉では言い表せないほどの感動をアイリスに与えた。
目の下には、底も見えないほど深い谷が広がっているが、それすら気にならないほど、魅入られていた。

ゼロ「気に入ったか?」

アイリス「ええ、私こんな綺麗な景色を見たのは初めてよ」

ゼロ「そうか…ルインも似たようなことを言っていた」





































あれは確か…。
ルインがイレギュラーハンターになって間もない頃だ。
不慣れなイレギュラーとの戦闘でヘマをやらかして落ち込んだルインを元気付けてやるために…だったか。

ルイン『凄い…私こんな綺麗な景色見たことない。ありがとうゼロ!!』

ゼロ『こんな物でよければいつでも見せてやる』

あの頃はまだセイバーを持たず、バスターと体術を主体に戦っていた。
少し懐かしいと思う。
あの頃は楽しかった。
エックスと自分とルインの3人で任務に励み、共に騒ぎ、ケイン博士の悪戯を受け、共に報復したりと…。
遠い遠い懐かしい過去にゼロは少しだけ寂しく感じた。



































アイリス「ゼロ…?」

急に黙り込んでしまったゼロを覗き見たアイリス。
ゼロはハッとなり、アイリスの方を見遣ると微かに微笑んだ。

ゼロ「いや、何でもない。少し昔を思い出していた。」

シグマが反乱を起こす前にあったとても優しい過去。
再びあのような穏やかな気持ちでこの雄大な景色を、夕日を見れる日は来るだろうか?

ゼロ「アイリス…」

アイリス「何?ゼロ」

ゼロ「少しは息抜きになったか?」

アイリス「ええ、本当にありがとうゼロ。こんなに素敵な場所に連れてきてもらって、いくらお礼を言っても足りないくらいだわ。」

ゼロ「そうか、まあ…俺にはこれくらいしか出来ないからな」

ゼロは自分の手を見ながら、小さな声で言う。

ゼロ「戦闘用に造られた俺は、エイリア達や他の奴らのように、お前の傍にいてやることが出来ない。」

アイリス「ゼロ…。」

ゼロ「これからもカーネルの代わりにお前を守り続けるつもりだが、この手で物を壊すことは出来ても、物をつくることは出来ないからな…。」

寂しそうに言うゼロに、アイリスはなにも言えなかった。
しかし。

アイリス「でも、ゼロはこんなに綺麗な所に連れてきてくれたわ。それだけじゃ駄目なの?」

ゼロ「?」

アイリス「あなたがいなければ、スペースコロニー事件…いえ、もっともっと前から地球も人類もレプリロイドも滅んでいたわ。だからそんな悲しいことを言わないで。」

ゼロ「そうだな…ありがとうアイリス(俺は戦闘用のレプリロイドだ、それは変えられない事実。それなら俺は、アイリスやエックス達のためにやれることをやればいい。)」

アイリス「いいのよそんな…」

ゼロ「俺は俺に出来ることをやればいい。それでいいんだな…」

アイリス「そうよ、ゼロ…あなたがいてくれるだけでも私は凄く幸せだから…帰りましょう?ゼロ」

手を差し出して来るアイリスにゼロは自身の手を重ねた。
これからも変わることなく世界は回り続けるだろう。
明日にはもしかしたら逃げ出したくなるくらい緊迫するかもしれない。
しかし、そんな中にも得られた物が沢山ある。
だから自分はそういう物のために進み続けよう。
そしてしばらくしてハンターベースから通信が入る。
ゼロは通信に耳を澄ませたが、直ぐに戦士の表情に戻る。

ゼロ「分かった。出撃する」

内容はアイリスにも予想出来る。
ゼロは鋭い視線で言うのだった。

ゼロ「すまんアイリス。イレギュラーが発生した。」

アイリス「分かっているわ、気をつけて」

この先どのような困難が待ち受けていようと、アイリスはゼロの傍に。 

 

第二十九話 彼氏彼女の事情?

ルナ「遊園地?」

バレットの調整をしていたルナにアクセルが頷いた。

アクセル「うん、何でもヤコブの近くに創られたんだって」

ルナ「ヤコブに?ヤコブ計画の要付近に娯楽施設設けるなんて何考えてんだよ?」

アクセル「知らないよ。ルインがチケットくれたんだ。2人で遊びに行けって。ルインはデスクワークがあるから行けないし」

そう言って差し出したのは遊園地のチケット。

ルナ「エックスとアイリスは?」

アクセル「任務で行けない」

ルナ「…ゼロは?」

アクセル「ゼロがルインもアイリスもいないのに行くと思う?」

ルナ「思わねえ」

即答である。

アクセル「行く?行かない?」

ルナ「行く。遊園地初めてだし…」

アクセル「あれ?おじいさんと一緒に行かなかったの?」

ルナ「居候同然だったのに遊園地行きたいとか言えるか?」

アクセル「あ、そっか…まあ僕も似たようなもんだし…」

ルナ「レッドアラートの強面共が遊園地とか想像出来ねえもんな。糞餓鬼のガンガルンならまだしも」

アクセル「うん。僕もそう思う」

デボニオンやガンガルンならともかくストンコングやカラスティングが遊園地で騒ぐなど想像出来ない。
というかしたくない。

アクセル「それじゃあ、着替えて来るよ」

ルナ「ああ、俺も着替えたら直ぐに行くよ」

アクセルが部屋から出ていくのを見て、工具を片付けたルナもアーマーを解除しようとした時。

ルイン「ルナ!!」

ルナ「へ!!?」

いきなり部屋に現れたルインに私服を奪われた。

ルナ「ちょ、何すんだよ返せよ!!?」

ルイン「女の子なのに男の子の服ばかり着て、どうしてもっとお洒落しないの!!」

ルインが赤っぽいフリルのついたブラウスや薄桃色のミニスカートを突き出してきた。

ルナ「え~?やだよ、俺。こんなヒラヒラしたスカート」

ルイン「女の子なんだからスカートくらいしなきゃ」

ルナ「うわ、なにすんrftやめgyふじこlp…や、やめれええええ!!!!」













































アクセル達が着いた遊園地はヤコブ計画の要であるヤコブ付近に設けられた遊園地施設。
太陽光エネルギー、原子力エネルギー、火力発電が主となっている今に置いて、水力発電で全てを担っている。

アクセル「…大丈夫?」

ルナ「これが大丈夫に見えるか…?うう、スースーする…畜生…ルインの奴う…」

スカートを押さえながら少し内股で歩く彼女にアクセルは内心で同情した。

アクセル「でもそれ似合ってるよ」

ルナ「はあ?俺はこんなヒラヒラしたようなの嫌だ。ズボンの方が動きやすい…」

アクセル「…女の子だよね?」

ルナ「疑問形にすな。ジャンク屋稼業では女だと舐められるからこうなったんだ。」

アクセル「でも、勿体ないよ」

ルナ「何で?」

アクセル「僕はそういうの分かんないけどさ。ルナって可愛い女の子だと思うよ?みんなのために色々してあげてるしさ」

ルナ「可愛いって…」

赤面して頷く彼女にアクセルは少し驚いた。

アクセル「あれ?顔赤いけど…」

ルナ「か、可愛いとか言われ慣れてねえんだ。頼むから止めてくれ…」

アクセル「あ、うん。分かった」

ルナ「と、とにかく。折角遊園地に来たんだ…こうなったら徹底的に遊ぶぞおおおお!!」

アクセル「ま、待ってよ!!いきなりテンション上げすぎだよ!!」

アトラクションに向かって突っ込んでいくアクセルとルナ。






































アクセル「ヤッホー!!ジェットコースターはいいね!!」

ルナ「そうだな…って、ぎゃああああ!!?帽子が吹っ飛んだあああ!!」

ルインから借りた帽子が吹っ飛んだ。
すまんルイン、後で弁償するから。





































アクセル「次はコーヒーカップ!!」

ルナ「行っくぜえ!!」

勢いよく回すルナ。
数分後には吐き気を催しているアクセルとルナの姿が…。




































ルナ「うおおおおおお!!」

アクセル「何で…?確かにルナのテンションの上がりようは凄いけどさ…」

凄まじいスピードで通り過ぎていくルナの車。

アクセル「何で車にまで影響してるのさ…!!?」

アクセルの疑問に答えてくれそうな勇者は生憎ここにはいない。
エックスやゼロやルインなら何かツッコミをくれたかもしれないが…。




































アクセル「ルナ、次は何に乗る?」

ルナ「ん?そうだな、このフライングメットールってのはどうだ?絶叫系!!」

アクセル「いいね、それ」

ルナ「んじゃあ、行くぜ」

手を繋ぎながら走ろうとした瞬間。

アクセル「………」

ルナ「どした?」

彼女の手を見つめていたアクセルにルナも首を傾げる。

アクセル「ルナの手って小さいんだね」

その言葉にルナは顔を顰めた。

ルナ「何だよそれ?そりゃあ俺はルインよりも小柄な部類に入るけどよ」

アクセル「違うよ。あんなに凄い武器を造る手が僕よりも小さいことにちょっとね…」

エックスにも似たようなことを思った。
英雄と謳われた青年の小さい身体を。
彼女もこの小さい手で沢山の物を守ってきたのだろう。
彼女が正式にハンターに協力するようになったのはコロニー破片落下事件。
そしてハンターに加入したのはナイトメアウィルス事件後。
コロニー破片落下事件とナイトメアウィルス事件は彼女の協力もあって早期解決が出来たと言っても過言ではないのだ。

アクセル「早く…もっと強くならなきゃ…」

ルナ「お前は今でも充分強いだろ?」

アクセル「駄目だよ。今の僕じゃルインにも勝てないし」

戦闘経験値に差がありすぎるのか、アクセルの攻撃は尽く見切られ、敗北してしまう。

ルナ「そうか、まあ頑張れ。応援してっから」

アクセル「うん」

2人はそのまま次のアトラクションへと向かっていく。 
 

 
後書き
アクセルとルナ終了 

 

第三十話 ルミネ

 
前書き
ルナがある人物と出会います。 

 
イレギュラーハンターとなると、イレギュラーの始末が仕事だと思われがちだが、そうではない。
施設の警護などを任されることも多々あり、特に重要施設ともなると、トップクラスのハンターが向かうこともある。

ルナ「…こんなもんかね」

ヤコブの管理者直々の指名を受けたルナはヤコブの警備についているハンター達からの報告書を纏めると溜め息を吐いた。

ルナ「だりぃ…」

ハンターとして出撃することもなく、文書を扱うだけの職場に早くも辟易していた。

面倒くさい。

今の彼女の現在の心境をいうならば、この一言に全てが集約されるといっていい。
絶え間なく続く事務仕事。
書類の作成。
確認。
ヤコブ計画関係の重役との今後の方針についての話し合い。
ルナの戦闘能力の凄まじさはジャンク屋時代からのジャンクパーツ収集やイレギュラーが起こした事件で得た経験により、コピー能力を持つ新世代型レプリロイドのプロトタイプでありながらそこらの戦闘型の新世代型レプリロイドを遥かに凌駕している。
彼女のその事務の能力も決して低いわけではない。
話し合いも向こう側に警戒心を持たれないように話すこともでき、信頼関係もそれなりに築いているといっていい。
だがそれでもルナの本領は戦いやパーツや武器作成等にあり、事務能力が低くないとはいえ、人並み程度なのが精々だ。
時間の大部分をそちらの仕事にとられ、ストレスが溜まり、鬱憤晴らしにトレーニングするも、つまらなさを感じる日々。
率直にいって、彼女はこの数ヶ月の間繰り返される日々に、苛立ちを感じていた。
決して表情には出さなかったが。

いつもいつも与えられる事務仕事。
1つの決断の誤りが致命的な失敗をもたらすことがある。
必要なことだとは理解してはいても、それでも嫌なものは嫌なのだ。

ルナ「大体、事務仕事なんざ…俺より向いている奴なんかごまんといるだろ…気分転換に外に出るか…」

ルナは伸びをしながら外に出た。










































高く聳える建造物に、鉄の箱が昇っていった。
宇宙まで達する建造物は人類の希望を乗せ、瞬く間に運んでいく。
箱が走る様は酷く機械的で、“希望”や“夢”など、そんな陳腐な言葉は酷く不釣り合いだ。
乗せられた物が鉄の塊であるがために一層無機質に映る。

ヤコブ計画

繰り返されるレプリロイドの騒乱により地上は荒廃し、人類は月への移住計画を進めた。
この計画のため、“ヤコブ”と呼ばれる軌道エレベーターが建造され、高性能な新世代型レプリロイド達が月面作業のために宇宙に運ばれていった。

ルナ「……地球を捨てて月に行くのか……自分達の生まれ故郷を捨てて…」

舌打ちしながら再び施設に戻る。
報告書の提出をするのを忘れていたのだ。




































真新しい床が天井からの光を反射していた。
沢山のレプリロイドが忙しなく行き交う廊下を進んで、いくつかの角を曲がった先に目的の部屋…管理官の執務室がある。

ルナ「ルミネ管理官、入りますよ」

ルミネ「どうぞ」

部屋に入ると白と紫のレプリロイドがいて、ルナは一礼をすると報告書を渡す。

ルナ「今日の報告書です。」

ルミネ「ご苦労様です。ルナ、これから気分転換にヤコブの周辺を散策しに出掛けようとしていたところです。ご一緒しませんか?」

ルナ「は?あ、はい。私でよろしいのであれば……」

ルミネ「勿論ですよ。では行きましょうか」




































軌道エレベーター・ヤコブの管理官であるルミネ。
紫色の髪と白いアーマーが特徴的な新世代型レプリロイドだ。
その彼が、今まさに密林の地平線に沈もうとする夕日を見つめながら、金色の隻眼を柔和に細めている。
時々だが、彼とアクセルがダブる時がある。
性格は正反対。
アーマーの色も正反対。
しかしあの時見たアクセルとルミネはあまりにも酷似しすぎていたからかもしれない。

ルミネ「美しい夕焼けですね。執務室からの風景も素晴らしいですが、こうして地上から見上げる夕日も素晴らしい」

ルナ「え?あ、そうですね…」

今までルナの周りにはいないタイプのレプリロイドにルナはどう対応していいのか分からないのか、視線が泳いでいる。
ルミネの瞳にイタズラっぽい光が宿る。

ルミネ「ああ、そうだ。私のことはルミネと呼んでください。出来れば敬語も使わずに接してくだされば嬉しいのですが」

少し警戒してみれば案の定、にこにこと楽しそうに笑ってそんなことを言ってきた。

ルナ「は?な、何でですか?」

ルミネ「私としてはあなたと親密になりたいのです。」

ルナ「いや、でも上司ですから…」

ルミネ「では、上司命令です。敬語は止めて下さい」

ルミネの言葉にはどこか有無を言わせない迫力があった。

ルナ「……………分かったよルミネ…これでいいか?」

ルミネ「はい………、こちらでの勤務はもう慣れましたか?」

ルナ「ああ、最初は戸惑うこともあったけど何とかな」

やはりハンターベースとは勝手が違い過ぎて慣れるのは大分かかった。

ルミネ「それは良かったです。私としては、あなたにはこのままこの施設に居て頂きたいところですが」

ちらりと伺うような目線を投げられた。
つまり、それは…ハンターから移籍しないか、ということだろうか。

ルナ「それはイレギュラーハンターを辞めてここで働かないかってことか?」

ルミネ「ええ、そうでもあります。あなたは中々の逸材ですからね。ハンターに留め置くのは勿体無い。プロトタイプということを差し引いても…それに。」

ルミネは言葉を区切って、まっすぐルナを見つめてきた。
ルミネがじっとこちらを見ている。
どこか思考の奥を見透かされているような不思議な感覚になった。

ルミネ「新世代型の私達と人間から新世代型レプリロイドのプロトタイプとなったあなた。進化した者同士、分かり合えると思うのですが?」

ルナ「え?」

一瞬だけ空気が張り詰めて、なにか薄ら冷たいものに変わった気がした。

ルミネ「どうです?」

ルナ「い、いや…何で俺を…」

ルミネ「あなたが人間を元にした新世代型レプリロイドのプロトタイプというのは聞き及んでいます。もう1人の人間からレプリロイドとなったルインのことも。」

ルナ「そ、そうか…」

進化したとはどういう意味合いなのだろう。
違和感を感じる。
何かが根本的にずれているような、隠しようのない違和感。

ルミネ「何なら、もう1人の新世代型のプロトタイプ…アクセルと言いましたか?彼も一緒でも構いませんよ?彼も一応、進化した者ですから」

ルナ「……………」

戸惑って閉口する。
ルミネは一体何を言いたいんだろうか?
違和感を抑えて、何か言わなければならないと口を開くが言葉は出ない。

ルミネ「……すみません、困らせてしまいましたね。今までありがとうございました。」

ルミネが去っていく方向を見遣り、ルナは彼の背中を見ていることしか出来なかった。
そして軌道エレベーター下り4番コンテナにて事故が発生するのはもう間もなくであった。 
 

 
後書き
新世代型同士の邂逅。 

 

第三十一話 紺の狙撃手

 
前書き
暇なアクセルを書いてみました。 

 
エックス「………」

ゼロ「…………」

ルイン「…………」

アクセル「今頃、ルナは何してるのかなあ…」

ヤコブを警備していたアクセルのぼやきに全員の視線が集中する。

ルイン「アクセル、ルナのこと心配してるの?大丈夫だよ、ルナなら」

エックス「基本的に事務仕事だから危険なことはないはずだ。」

ゼロ「それからその言葉はもう10回は聞いた。何度同じことを言うつもりだ?」

アクセル「だって気になるじゃんか、軌道エレベーターの警備するのはいいけどさ。僕らは周りの見回りなのに、ルナはヤコブの管理局で事務仕事。何で一緒じゃないのさ?別にルナじゃなくてもいいじゃん」

ゼロ「向こうの希望だからな、聞き分けろ」

ルイン「まあ、何でルナなんだろうとは思うけどね」

アクセル「うん、ルナがいないと何か調子が出ないよ。何か違和感バリバリ」

エックス「…確かに」

いつもならルナも含めた5人で行動することが多い彼らにとっては、1人抜けているこの状況がなんともやりにくい。
今では自分達は5人でイレギュラーと死闘を繰り広げているのだから尚更。
関係ないが、他のハンター達の中には、彼らならマグマに突っ込んでも雪崩に巻き込まれて生き埋めになっても必ず脱出して無事生還するだろうという謎の確信を持っている者すら居るほどである。
特にアクセルに至ってはイレギュラーハンターの中で1番歳が近いために一緒にいることが多い。

アクセル「そういえば、今日で終わりだよねルナ」

エックス「ああ…っ!!」

何となくヤコブを見上げたエックスは、はっと息を呑んだ。
エレベーターを取り巻く輸送レールの上を滑っていくコンテナ、その1つが、爆発と共に落ちていく。
エックスはさっと落下地点を目算すると、直ぐさま駆け付けた。




































『下り4番コンテナに事故発生……周辺の係員は…』

ヤコブからオペレーターの声が響く。
現場に辿り着いたエックスは、その凄惨さに顔を顰めた。
コンテナは原形を留めておらず、激しく炎上している。
あの中には、月面作業から地上に戻ってきたレプリロイド達が乗っているはずだ。
エックスはキッと顔と気を引き締め、左腕の通信機をかざした。
ヤコブの係員も事故発生は把握しているが、いち早く現場に到着したエックスが指示する方が迅速に対応できる。

エックス「こちらエックス……軌道エレベーター、ヤコブ警備中に事故発生」

ヤコブの回線と接続し、整然と告げていく。

エックス「至急、救助用メカニロイドを……」

ガシャン、と。
炎が燃え盛る音が気になって体の向きを変えたその時、コンテナから聞こえた音。
勢いよく振り返ったエックスの瞳が、驚愕に染まった。
コンテナの割れ目にかけた手で広げた隙間から、そのレプリロイドが出てくる。
屈強な足でコンテナの破片を踏み付けたレプリロイドは、這い出るために折っていた腰を伸ばした。
その巨体を見上げ、エックスは声をなくす。
見間違えるはずもない、その顔。
ゆっくりと近付いてくるレプリロイドを見ていたエックスは、驚愕のあまりにバスターを構えることさえできなかった。
最初に出てきたレプリロイドも、それに付いて出てきたレプリロイドも、その次も。
コンテナから出てきた全てのレプリロイドが。

エックス「シ……シグマ……!!?」

史上最悪のイレギュラー、宿命の敵。
滅んだはずの、シグマ、だった。
何体ものシグマが、炎を背に不気味に揺らめいている。
その倍の数の目がギラギラと輝く。
立ち尽くしてしまうエックスの正面で、不意にシグマたちが動いた。
シグマ達の中心にいたのは、シグマではないレプリロイド。
現れたその姿に判断力を取り戻したエックスは、切り換えたままだったバスターを構えようと左手を引く。
瞬間、語りかけてきた涼やかな声は、エックスの動きを止めるに充分だった。

ルミネ「事故から身を守るために……」

声に違わず、紫の髪のレプリロイドが上げたその顔は美麗と言わずにいられないもの。
顔と共に上げられた瞳。
その優雅な動作の流れのまま、金色の瞳がエックスを見据える。

ルミネ「頑丈なシグマボディをコピーしていたのです」

静かでありながら天を貫くような声は、神秘ささえ漂う。
薄い笑みを携えて、紫の髪のレプリロイドは続けた。

ルミネ「私達、新世代型レプリロイドには完全な耐ウイルス性能がありますから……」

声に導かれるように、エックスと向かい合うように並んだシグマたちが光を放った。
思わず身構えるエックスの目の前で瞬時に縮む身体。
元に戻ったのだと理解するまでに時間はかからなかった。

ルミネ「シグマボディをコピーしても、何の問題もありません」

新世代型レプリロイドが持つ、コピー能力。
自分と同程度の大きさのレプリロイドでなければ姿のコピーは出来ないアクセルとは違い、ルナのコピー能力よりも完成度が高いそれ。
目の当たりにするのは初めてだった。
エックスはバスターを解除し、構えと警戒を解く。
白と紫を基調とした出で立ちのレプリロイドに、ほとんど無意識で問いかけていた。

エックス「君は……?」

薄い笑みを絶やすことのない唇が、ゆっくりと開く。

ルミネ「私は、ルミネ」

金色の瞳が、真っ直ぐにエックスを見つめた。

ルミネ「この軌道エレベーター、ヤコブの管理者です」

新世代型レプリロイド達を付き従わせ、 揺らめく炎とそびえ立つエレベーターを背に堂々たる態度で立つヤコブ管理官・ルミネに、エックスはしばらく言葉が出なかった。
半ば呆然としているエックスが喋るのを待っているのか、ルミネもなにも言わない。

『イレギュラーハンター、応答してください』

突如聞こえた声に、エックスは慌てて通信機をかざした。

エックス「……すみません。救助用メカニロイドは必要ありません。壊れたコンテナの処理を願います」

『了解しました。今後、通信の途中で切るようなことがないようにお願いします』

プツリと切られた通信にエックスが苦笑するより早く、誰かが駆け付ける足音。

ルナ「おい、大丈夫か?」

エックス「ルナ!!」

ヤコブで事務仕事をしていたはずのルナの登場にエックスは目を見開いた。

ルミネ「ルナですか。ええ、シグマボディをコピーしたことで、被害は大したことないようです」

ルナ「そうか…」

バレットを下ろすルナにルミネは微笑むとエックス達の方に視線を遣る。

ルミネ「ルナ、コンテナの処理は我々がしておきますので、あなたはハンターベースに戻られても結構です。今日までお勤めご苦労様です」

ルナ「ん?ああ」

ルミネ「いい返事を期待していますよ」

そう言うとルミネは去っていく。
ルナは溜め息を吐くと、エックスと共にこちらに向かっているゼロ達の元に向かうのだった。







































ハンターベースの自室に戻ったルナは物思いに耽っていた。

アクセル「ルナ、どうしたの?」

様子がおかしいルナに疑問符を浮かべながら、アクセルが問い掛ける。

ルナ「…なあ、アクセル。新世代型レプリロイドのことなんだけどな………」

コピー能力を持つ完全な新世代型レプリロイドが世に生み出され、人類の存亡を懸けた宇宙開発には新世代型レプリロイドが登用され、計画の要である軌道エレベーターには特に数多く集結している。
つい数年前まで、アクセルとルナしか持っていなかったコピー能力。
それを巡って全面戦争まで起こされたその能力は、今や珍しい物ではなくなった。

アクセル「何?どうしたの?」

ルナ「……」

アクセルが疑問符を浮かべながらルナの言葉を待つが、ルナ自身、ルミネから感じたあの違和感をどう表現すればいいのか分からなかった。
しばらくして……。

ルナ「ごめん……何でもない……」

アクセル「ええ?何それ?」

待っていたアクセルは不満そうな顔をしたが、止めたということは大したことではないだろうと、解釈して、武器のチェックをする。
ルナはルミネの“進化”という言葉の意味を考えた。 
 

 
後書き
X8のオープニングです 

 

第三十二話 Noah's Park

 
前書き
オープニングステージ。
原作とはかなり掛け離れます。
 

 
先日、コンテナが落下するという事件が発生したが、コンテナに収められたレプリロイド達は皆無事であり、直ぐに作業は再開された。
現在は順調に作業が進められている。
そう、全ては順調だった。
殊にハンターベースのオペレータは、今やハンターに匹敵する実力を身につけている。
バーチャルトレーニングルームでは、オペレータが稽古に励む姿が拝めるだろう。
ルナとエイリアは仮想エネミーを後1体にまで追い詰めていた。
都市の銃撃戦を想定した訓練である。
群生する高層ビルが光を反射し、南国とは違う、刺すような光を放つ。
アスファルトがひび割れ、殺伐とした快晴の中、エイリアは真っすぐにバスターを構えた。
バックアップはルナがしてくれている。
もし彼女が撃ち損ねたら、即座にレーザーがイレギュラーを撃ち抜くだろう。
イレギュラーは一瞬の油断も許されない敵なのだから…。
息を詰めたエイリアが放ったチャージショットはイレギュラーを貫き、破壊した。

ルナ「お見事」

拍手をしながらエイリアの健闘を褒めたたえる。
エネミーの消失と共にバーチャル空間が解除され、空間が殺風景な白に変わっていく。

エイリア「ちょっと緊張し過ぎたかしらね?」

息をついてバスターを下ろす。

エイリアバスター

エックスバスターを元に造られた同系統のエイリアの主武装である。
銃口は元に戻り、細く美しい指が現れた。
長い金髪をかきあげると、白い手と金色の対比が鮮やかである。

エイリア「まだ動きに隙が生じる。あなたやルインのように素早くは動けないわ」

ルナ「はは…でも、もうあんたは充分強いよ。ハンターとしてやっていけるくらいにはな。」

バレットを収めると、笑顔を浮かべる。
彼女の敵に踏み込む動作や、回避から攻撃に転じる動きも迅速である。
殊にチャージレーザーによる高い火力とバレットの高い連射性を活かした戦い方はアクセルやエックスを彷彿とさせる。

ルナ「そういや、エイリアは非武装タイプだったな?」

エイリア「え?」

ルナ「レイヤーとパレットは武器を携えて戦うけど、エイリアはバスターを装備している。ボディを改造しなきゃ出来ないこと…最初は自衛のためかなと思ったけど違うようだな。…エックスのためか?」

エイリア「………」

彼女の瞳は静かながら熱い、真剣なそれであった。

エイリア「ええ…エックスやルイン達の戦っている姿を見て、私も力になりたいと思ったの。私は彼をサポートすることは出来るけど、一緒に戦うことは出来ない。エックスの痛みを傍で感じながら、私はとても無力だった。でも、力さえあれば…ルインと一緒に彼を支えられると思ってね…」

ルナ「健気だねえ…」

実際口にしたし、そう思った。
恐らくはエックスのことをずっとルインとは違う視点で見守っていたからだろう。

ルナ「なれるさ、きっと。エイリアなら、こんなに頑張ってんだから」

エイリア「ありがとう。ルナにも素敵な人が現れるといいわね?」

ルナ「そりゃあ皮肉のつもりか?」

エイリア「さあ、どうかしら?あ、でもアクセルがいるものね」

ルナ「は?何でアクセルが……」

疑問符を浮かべながらエイリアに尋ねようとするが、それよりも前にアイリスからの通信が入る。

アイリス『ヤコブ周辺施設にてイレギュラー発生!地域のハンターは現場に急行して下さい!!』

警報とアイリスのアナウンスがけたたましく響く。
ルナは歴戦の戦士らしく、エイリアはベテランのオペレーターらしく、すぐさまそれぞれの持ち場についた。





































エックス達はこの日、ノアズパークにいた。
ガラパゴス諸島に位置する公園。
ヤコブ計画に携わる者が休息を取るこの施設でエックス達もまた、僅かな休日を過ごしている。
豊かな自然を持つ島は、熱帯の暑さを持ちながら同時に涼しくもあった。
滝から勢いよく落ちる水は爽快で、洞窟の中はとても冷え切っている。
洞窟は真っ暗というわけではなく、発光能力を持つバイオロイドの仄かな光に照らされて幻想的な光景を顕していた。
はしゃぐアクセルに苦笑するエックスと喧しそうにアクセルを見遣るゼロ。
そしてしばらくして、見慣れた姿を発見した。

ゼロ「ホーネック」

かつてはゼロの部下であったエクスプローズ・ホーネックはゼロ達の姿を認識すると、親しげな笑みを浮かべた。

ホーネック「エックス隊長にゼロ隊長、それにアクセルまで…隊長達は今日は休みなんですか?」

エックス「今日はね、明日からはまた警備だよ。」

ホーネック「そうですか…俺は午後からです。時間があるから少し気分転換に散策をしてたんです。」

アクセル「大変だね」

ゼロ「大変だじゃないだろう。お前、警備任務の報告書を出したのか?」

アクセル「あ゙…」

ゼロのツッコミにアクセルは冷や汗をかいた。
昨日の報告書をまだ出していないのである。
そしてエックスはゼロを呆れた視線で見遣る。

エックス「人に注意する前に自分はどうなんだいゼロ?俺は既に提出したけど」

ゼロ「…エックス」

エックス「自分の仕事くらい自分でしてくれ」

以前気軽に引き受けてルイン共々エライ目に遭った。
その教訓を活かしてゼロの頼みを拒否する。
愕然となる人、1名追加。
3人は愕然と憮然と苦笑いに包まれた。

エックス「(平和だな…)」

そう思った矢先、今世紀最後の戦争が起こるとは誰が予想出来ただろうか?
彼の心中を嘲笑うように大地を揺るがす轟音が鳴り響いた。

全員【!!?】

黒煙が上がり、パラパラと壁が崩れる音が聞こえた。
遠くからこれだけの音が聞こえたということは大きな爆発に違いないと確信し、エックスは即座に叫んだ。

エックス「急行するぞ!!ホーネック、君はハンターベースへの通報とこの人達の避難を!!」

ホーネック「了解しました!!」

エックスの指示にホーネックは力強く答えた。
こうして西暦21XX年最後の対戦が幕を開ける。
























そしてエックス達が急行してから4時間後…。
ルインとルナは今、ノアズパークを走っている。
すぐ後ろにはエイリア、パレット、レイヤーが追い掛けて来る。





































トレーニングルームから指令室に駆け込んだエイリア達の視界に飛び込んできたのは、ノアズパークを逃げ惑う人々と、誘導するハンター達の姿。
騒ぎは鎮まり、安全な場所に移される人々。
彼らの顔には恐怖がありありと浮かんでいた。
その表情がエイリア達の胸を締め付ける。

ホーネック『避難は完了しました』

ホーネックからの通信を受け、一先ず安堵した。
その後、同僚と後輩2人に凛とした声で言った。

エイリア「アイリス、レイヤー、パレット。エックス達をサポートするわ!!」

爆撃の原因を探りに行ったエックス達をサポートしようとするが、アイリスに阻まれた。

アイリス「駄目です、通信が繋がりません!!」

彼女の声が高く、荒んだように響く。
通信障害でもないのに、いくら呼び掛けても応答はなかった。

エイリア「そんな…」

こんな事態は今までなかった。
エイリアはいつも目にしているエックスが前触れもなく消え、安否の分からぬ状況に不安を覚えた。
何の心の準備もなしにエックスとの繋がりが切れる。
それは恐慌を起こしても不思議ではない恐怖であった。
いつも帰ってきてくれたから今度もという、身勝手な信心というか確信に支配されていた彼女は唐突に途切れた繋がりに愕然と沈黙する。

ルイン「…行ってくるね」

ルナ「現場に急行する。」

エイリア「私達も行くわ。アイリス、後をお願い」

アイリス「はい…ゼロ達をお願いします…」

エイリア達のように戦う力を持たないアイリスはゼロとエックス達の無事を祈りながら作業を続けた。

































そして現在、アイリスをオペレーターにして、ルイン達は出撃した。
爆煙を振り切り、ノアズパークを進む。
しばらく進むと天井が吹き飛んだ施設に辿り着いた。
そして扉をこじ開けると…。

ルイン「エックス!!ゼロ!!」

ルナ「しっかりしろ!!」

エックスとゼロは傷だらけで、ひび割れたコンクリートに打ち捨てられていた。
2人が駆け寄ろうとした時、見覚えのある影がルインの視界に入る。
毒々しい緑を基調とし、肩部にキャノン砲を装備した戦士。

ルイン「VAVA…!!?」

VAVA「久しぶりだなルイン……シグマの最初の反乱以来か……負け犬共のお迎えに来たのか?」

パレット「ルインさん、誰なんですかあれ!!?」

ルイン「かつてイレギュラーハンターの最強部隊、第17番精鋭部隊の隊員で…元特A級ハンター……かつてゼロと並び称されたイレギュラーハンター…そしてイレギュラーの中でシグマに次ぐ実力者……VAVA…私の先輩でもあるの」

圧倒的な火力を持って敵を粉砕する戦士。
高性能な新世代型レプリロイドが製造された現在においても戦闘型レプリロイドのとしてエックス達やイレギュラーの王であるシグマに引けを取らない最強クラスの戦士。

ルナ「てめえがエックスとゼロを…!!」

VAVA「ほう?俺と戦うつもりか?面白い…だが、お前達…特にルインとは先輩として久しぶりに遊んでやりたいのは山々だが、残念ながら俺にはまだ仕事が残っているでな…」

VAVAは挑発するように言いながら、建物の外へと顔を向ける。
遠くヤコブが見えるそこには、4体のレプリロイドに捕えられ、気を失っているのか目を閉じたレプリロイド。
白と紫を基調としたボディ、1度見たら忘れないであろうその中性的な顔立ち。

エイリア「あれは…」

パレット「あれはヤコブの管理官の…」

ルイン「…ルミネ?」

数日前に会った軌道エレベーター・ヤコブの管理官であるルミネだった。
呆然と呟くルイン達に、VAVAは面白そうに語る。

VAVA「ルミネは捕らえた。これで軌道エレベーターは俺達の手の内となるわけだな」

ルナ「ルミネ!!?それにてめえらは…」

ルミネを拘束している4体のレプリロイド達。

ウェントス「また貴様と相見えることになろうとはな、やはり運命からは逃れられぬというわけか…」

グラキエス「やあ、久しぶり。新世代型のプロトタイプと僕達のオリジナル」

ルナ「ウェントス、グラキエス、イグニス、それにテネブラエも!!?てめえら、レッドアラートの戦い以来何処に隠れてやがった!!?」

イグニス「答える必要はない。」

テネブラエ「我々の目的はヤコブ管理官・ルミネの捕獲。貴様らとの戦闘の必要性を感じない。」

ルナ「てめえらには無くても俺達にはあるんだよ!!!」

リフレクトレーザーが放たれるがテネブラエが曼陀羅手裏剣を繰り出し、それを弾く。

ルナ「何!!?」

ルイン「やっ!!」

ダブルジャンプでVAVAに肉薄し、セイバーを振るう。

VAVA「ククク…エックスとゼロもそうだったが、お前も昔と変わらないなルイン。」

容易く回避され、嘲笑と共に放たれたキャノン。
それを咄嗟にセイバーで弾き、距離を取る。

ルイン「そっちも相変わらずだね!!VAVA、ルミネを捕らえて何をする気なの!!?」

VAVA「これから始まるんだよ。新しい世界のための…古き世界の破滅の序曲がな…」

そう言って、この場を去ろうとするVAVAにルナが呼び止める。

ルナ「待て、お前ら…アクセルをどうした!!?」

VAVA「ククク…アクセルか……新世代型レプリロイドのプロトタイプ…奴もまた俺達の手の内にある。」

ルナ「何だと!!?」

アクセルが敵に捕われたということに目を見開く。

VAVA「じゃあな、ルイン。お前はエックスやゼロのように俺を失望させてくれるなよ」

そう言い残し、VAVAは背部のバーニアを吹かし、ウェントス達は転送の光に包まれ、消えていく。
悔しそうにそれを見つめるルナにエイリアは厳しい面持ちで言う。

エイリア「エックスとゼロを治療室へ、帰投しましょう」

エイリアの言葉に頷いて彼女達はハンターベースへ帰投するのであった。 
 

 
後書き
オープニングステージ終了。
エックス、ゼロ序盤離脱。
アクセルは敵に捕まりました。 

 

第三十三話 Stage Select

 
前書き
女性陣帰投。
 

 
ルイン達がハンターベースに帰投すると、メカニックのダグラス、医師のライフセーバーは息を呑み、科学者のゲイトは表情を顰めていた。
ハンターベースのモニターには、VAVA達に捕われた少年が映されている。
白と紫を基調としたアーマーを纏うルミネは、モニターの中で、ベースのハンター達を見定めるように正面を向いていた。
珍しい金色の瞳は知性的な輝きと美しさと、どこか冷たい、不可解な不気味さを感じさせた。

ゲイト「軌道エレベーター・ヤコブの管理官ルミネ…ヤコブ管理官である彼をさらったとなると、イレギュラー達は軌道エレベーターをコントロールするつもりなんだろうね」

ゲイトが不快そうに呟く。
人類が生き延びるための最後の手段“ヤコブ計画”。
それを担うルミネが敵の手中にあった。

アイリス「でも、何のためにそんなことを…」

ルイン「分からない。でもVAVAは、“新しい世界”を創るとか…」

今回は一体何を企んでいるというのだろうか、VAVAが残した言葉の不可解さ、犯人の真意も実力も明らかではなく、焦燥を禁じ得ない。
だが、指揮官たるシグナスは努めて冷静に振る舞う。

シグナス「“新たな世界”か…いずれにせよ、奴らを止めなければな」

指令室にはシグナスやゲイト。
ルイン、ルナ、エイリア、レイヤー、パレット、アイリスがいる。
ルイン達が食い入るようにモニターを見つめているとアイリスが何か気づいたのか、モニターに別の映像を映す。

アイリス「各地でイレギュラー反応!!8ヶ所で破壊活動が開始されました!!」

地図上に8つのポイントが灯り、イレギュラーの姿が映し出された。

アイリス「破壊活動地域、及びにイレギュラーの情報を入手しました。」

次々に映し出される情報に流石のシグナスも驚きを禁じ得ない。

《メタル・バレー》

アースロック・トリロビッチ

《ピッチ・ブラック》

ダークネイド・カマキール

《ドロップ・デッド》

バーン・コケコッカー

《ダイナスティ》

ギガボルト・ドクラーゲン

《セントラル・ホワイト》

アイスノー・イエティンガー

《トロイア・ベース》

オプティック・サンフラワード

《ブースターズ・フォレスト》

バンブー・パンデモニウム

《プリムローズ》

グラビテイト・アントニオン

8体のレプリロイドの大半はヤコブ計画に関係する新世代型レプリロイド達であった。

ルイン「何で彼らが…」

ルナ「んなこたあ、どうだっていい…!!こいつらはアクセルをさらったVAVAの仲間だ…ただのイレギュラーだ!!」

パレット「ルナ先輩…そうですよ…アクセルを助けなきゃ!!こうしてる間にも酷いことされてるかもしれない!!」

年齢がアクセルとルナと近いパレットは必然的に2人と親密になっていた。
友達を失いたくはないためにパレットも今すぐにでも出撃しそうな勢いである。

エイリア「落ち着いて2人共、今は策を練る時なのよ。エックスとゼロは意識不明でアクセルは敵に捕われた。イレギュラーが8体もいる。私達がエックス達の代わりにイレギュラーを退けなければならない…。ルイン達ばかりに戦わせるわけにはいかないもの…」

エイリアの言葉はルナとパレットに冷静さを取り戻させるのには充分であった。

ゲイト「さて…僕からの報告だが…」

空気が少しだけ和らいだのを感じたゲイトはすぐにエックスとゼロの容態について報告する。

ゲイト「エックスとゼロは新型のシグマウィルスに侵されていた。幸い治療が早かったから、僕が製作したワクチンプログラムを投与するだけでウィルスは除去出来た。」

ルイン「本当に?」

アイリス「良かった…」

安堵するルインとアイリス。
かつて世界を震撼させたナイトメアウィルス事件を起こした天才科学者。
いくらゼロのDNAデータがあるからと言って、ナイトメアウィルスを造り上げた彼に取って、ウィルスやワクチンは彼の土俵だ。

ゲイト「しかし2人受けたウィルスダメージはかなり深刻だ。少なく見積もっても2~3日は目を覚まさないだろうね」

2~3日。
それは人によっては短いと感じる時間ではあるが、戦争が勃発した現状でそれはかなりのハンデだ。
シグナスは憔悴をおくびにも出さなかったが、やはり瞳の奥には苦渋の選択をせざるを得ない暗い影が潜んでいた。
無言で向ける視線にはエイリア達が映っている。
エイリアは無言で頷くとエックスとゼロがいる治療室に向かった。






































エイリアは治療室に入ると、エックス達の寝顔を見た。
ゼロは彫像のように整った顔で寝顔にさえ鋭さを感じた。
凝視すれば、その気配だけで目を覚まし、斬りつけてくるのではないかと感じさせる容貌である。
逆にエックスの寝顔は、穏やかさを感じさせた。
肉体的に成長しえないレプリロイドの、精神面での成長によって大人びた寝顔。
普段は引き締まった表情ばかりのエックスも意識を失うことで力みが取れて、幼さを残した柔らかな寝顔であった。

ルナ「出撃が決まったぜ」

不安そうに治療室に入るルナ。
エイリアは彼女に振り返ると笑みを返した。
アクセルの身を案じている彼女はどこか不安定そうに見える。
生死も分からず、どこにいるのかも分からない。
それが彼女の不安に拍車をかけた。

エイリア「アクセルなら大丈夫よ」

エイリアは安心させるように微笑みながらそっとルナの頭に手を置いた。

ルナ「え?」

エイリア「アクセルは大丈夫。証拠も何もないけど、大丈夫だって信じているわ。勿論心配なのは本当。でも、アクセルが、例えさらわれたにせよ、呆気なく敵の思い通りにはならないはずよ?ただの思い込みだけど、そう思うわ。」

ルナ「…ああ」

エイリア「私達も戦うわ、私達は戦えるオペレータだもの。エックスとゼロ、アクセルやあなたやルインには及ばないけど…精一杯戦う。3人が戦えない今こそ、私達が彼らに代わって戦うわ」

ルナ「…ああ、一緒に戦おうぜ。エイリア…頼りにしてるぜ」

指令室に入るとルインもパレットもレイヤーも臨戦体勢だ。
纏う意志がそれを感じさせる。
そして今世紀最後の大戦が…彼女達の戦いが幕を開く。 
 

 
後書き
序盤は女性陣のみ。
エックス達は中盤からかな…? 

 

第三十四話 彼女達の戦い

 
前書き
まずはエイリアから。 

 
エイリアが向かったのは、砂色の土が剥き出しに広がる渓谷であった。

メタルバレー

宇宙開発には欠かせない貴重な鉱石が採掘される鉱山である。
そこでは作業用メカニロイドがイレギュラーと化し、採掘に携わる者達にも容赦なく暴走していた。
特にイエロー・ブロンテスというメカニロイドは聳えるような巨体を晒し、追われるエイリアの胸を不安で満たしていく。

エイリア「くっ…」

イエロー・ブロンテスが大地を踏み締めるのと同時に地面が揺れ、土がむせ返るような粉塵を上げる。
砂埃で周囲が霞み、よもや見えなくなるわけはないが、自分が砂埃に呑まれ、遠い世界に行ってしまうような錯覚を覚えた。エイリアは敵から逃れながら唇を噛む。

エイリア「(エックス…ルイン…)」

脳裏に戦場に向かうエックスとルインの後ろ姿が浮かぶ。

エイリア「(あなた達はいつもこんな不安の中で戦っていたの……?)」

S級ハンターのエックスとルインも常に自信に溢れて戦場に向かうわけではない。
エックスは寧ろ“戦いたくない”と躊躇う心を抑えながら出撃していた。
間近で見ていたから分かるのだ。
エックスの戦いを憎む気持ちと恐れを。
ハンターは死と隣り合わせという事実を今更ながらに感じ取る。
それはモニターで見るよりも遥かに違い、鮮血を直に浴びるに似た強烈な恐怖だった。
自分は今エックスと同じ立場にある。
恐怖を全身で感じながらも、信念のために、守るために戦うエックスに。
硝煙に満ちた空気を吸い、バスターを構えるエックスと同じ立場。

アイリス『エイリアさん!!』

ナビゲートを担うオペレーターのアイリスから通信が入る。

アイリス『イエロー・ブロンテスは頭部が弱点です。クレーンを利用して攻撃して下さい!!』

我に返るとエイリアは行き止まりに突き当たっていた。
見上げる土壁の上にはクレーンがある。
鉄の塊である腕は、ブロンテスの頭部を砕けるだけの強度を誇っていた。

エイリア「分かったわ!!」

壁を駆け上がり、クレーンを作動させる。
反対を向いていたアームが勢いよく振られ、ブロンテスの頭部を殴りつけた。

エイリア「やった…!!」

ブロンテスが僅かに黒煙を上げる。
まだ燻る程度の熱だが、敵に見られる変化はエイリアの士気を高めた。

エイリア「この調子でいくわよ!!」

壁を蹴り上がり、再度アームを作動させ、叩きつける。
敵は黒煙を噴き上げ、急停止すると、狂ったように来た道を戻っていった。

アイリス『イエロー・ブロンデスの内部に高エネルギー反応!!追いかけて下さい!!爆発する前に機能停止させないと!!急いで下さい!!』

エイリア「(爆発…追い掛けなきゃ…)」

追い掛ける背中がエックスとルインの姿を想起させる。
大きさも色も纏う気配もまるで違うけれどエイリアはエックスとルインの背中を追い掛けるように懸命に駆けていく。
エイリア「(エックス…ルイン…私、ようやくあなたと一緒に戦えるようになった)」

力を得て、戦う術を身につけた。
まだまだエックスやルインには遠く及ばない力だけれど。

エイリア「(あなた達には及ばないかもしれないけど、あなた達のすぐ傍で戦うことが出来る。エックス…あなたをルインと一緒に支えるために…)」

敵を追い掛けながら、エイリアは胸中で笑う。






































イエロー・ブロンテスを停止させ、扉の前に立つと強力なイレギュラー反応を感じ取った。
この先にいるのは、データによれば、アースロック・トリロビッチだ。
非常に高性能な新世代型レプリロイドは宇宙開発に関わる拠点を、強大な権力と共に委任されている。

エイリア「(ここで採掘されるメタルが、ヤコブ計画に必要なのよね…)」

いかに科学が進歩しようと、人は土を離れては生きられない。
連綿と受け継がれていく自然の力をエイリアは畏怖せずにはいられない。
この先に敵が潜んでいる。
エイリアは戦場への扉を開いた。
中に入ると蟲を模したレプリロイドがいる。
土色のアーマーに身を包んだ“三葉虫”型レプリロイドだ。
長い触角と丸みを持った矮躯は、蟲の中でも特に悪感情をもたらす害虫に似ており、エイリアは恐怖よりも嫌悪感を抱く。
蟲は性格の歪みを見事に反映させた瞳をエイリアに向け、不快な声色で言った。

トリロビッチ「あぁー?何だ何だ?てっきりハンター共が攻めてくると思ったが…なんだ女か。イレギュラーハンターも人材不足だな~!!」

相手が女というだけで見下す器の小さい男だ。
この程度の挑発には乗らない。
ルインならばこの程度の挑発など軽く受け流すだろうから。

エイリア「エイリアよ。エックス達に代わってあなたを倒すわ」

トリロビッチ「はんっ…能無しのイレギュラーハンターに代わってねえ、旧世代のポンコツの癖に、言うことだけは一丁前だよな!!」

地面から黄色い柱が出現する。
エイリアは倒れる柱を間一髪でかわすと、トリロビッチに向けて言い放つ。

エイリア「新世代とかそんなのはどうでもいいわ。私はあなたを止めてみせる!!」

バスターから放たれる通常弾。
トリロビッチのアーマーはそれを容易く防いだ。

トリロビッチ「生意気な~」

軽侮の笑みをし、トリロビッチは光弾のバウンドブラスターを放った。
壁や柱に当たったそれは直角に軌道を変えて飛び交う。
エイリアは長年の経験で洗練されたデータ分析によってかわし、最大までチャージしたフルチャージショットをトリロビッチにお見舞いする。

トリロビッチ「ぐああっ!!?」

エイリア「ご自慢のアーマーも、チャージショットの前じゃ形無しね」

美しい、悪戯っぽい笑みで言ってみせる。
彼女の高度な分析能力が力の差を埋めていく。
オペレーターとして活躍し、前線のエックス達を支えてきたエイリアの“力”だ。

エイリア「(私の力は…ちゃんとあなた達の役にたってるわよね…2人共)」

脳裏にエックスとルインの勇姿を描く。

トリロビッチ「ふ、ふん!いくらアーマーを破ったからって、お前なんかに俺は倒せないさ!!」

悔しげに叫ぶと、トリロビッチは大量のクリスタルウォールを出現させた。
フルチャージショットでも破壊出来ない頑丈な柱が、空間をみるみるうちに満たしていく。

エイリア「まだそんな力が残っているの!!?」

壁に追いやられ、退路を失う。

トリロビッチ「どうだ!これが新世代型レプリロイドの真の力だ!!進化した俺達の力が世界を変えていくのさ!!お前達ポンコツが生きる世界なんてないのさ!!」

エイリア「進化…?」

彼女の胸に、初めて怒りの感情が沸き起こった。

エイリア「あなたのそんな力が進化だというの!!?ふざけないで!!」

地面を踏み締める足に力を込め、一気に跳躍。
トリロビッチの懐に飛び込んだ彼女は零距離でのフルチャージショットを放った。
フルチャージショットはトリロビッチの強固なアーマーすら砕き、敵の内部機構を破壊した。

トリロビッチ「馬鹿な…お前如きに、やられるなんて…」

エイリア「“ポンコツ”にだって意地があるってことよ」

張り詰めた空気に一石投じるように、息切れした掠れ声がエイリアの口から零れた。
柱がパリンと割れて散らばった。
ガラスのように透き通った柱は、やがて消滅していく。
トリロビッチが機能停止寸前である証だ。

トリロビッチ「ポンコツが、身の程知らず…だなあ……」

言葉は侮蔑と嘲笑に満ちていた。
死ぬ間際でさえトリロビッチは態度を変えない。
その図太さは感心すら覚える。

トリロビッチ「お前達、旧世代の世界はもう終わりさ…どんなに足掻いたって…あんた達は、古い世界と一緒にオダブツだね…」

事切れた。
歪んだ瞳が瞳孔を開き、金属の手足がだらりと投げ出された。

エイリア「そんなこと…させないわ」

届くはずのない言葉を、エイリアははっきりと告げた。 
 

 
後書き
トリロビッチ撃破。 

 

第三十五話 アクセルの真実

 
前書き
月での出来事。 

 
戦場から彼方に離れた月、衛星ムーン。
古来から神秘的な光で賛美と畏怖を抱かせたその衛星で、実に険悪な空気に満ちたシーンを目にすることが出来る。
月面に建造された巨大な宮殿。
上質な白い石柱で建てられたそれは、イレギュラーの間では“シグマパレス”と呼ばれていた。
君臨する覇王に似て暗く、険しく、かつての最初の大戦で崩壊した要塞と同じ名を与えられた荘厳な城…。
その一室で王と少年が眼光鋭く向かい合っている。

「いい格好だなアクセル」

アクセル「シグマ…!!」

アクセルは壁に立たされていた。
手首を掲げられ、拘束されている。
身じろぎすると両手首に巻かれた鎖が音を立てた。
アクセルが瞳が憎悪に燃え、その熱い輝きがシグマに笑みをもたらした。

シグマ「クク…この戒めが憎いか…?お前が乞えば外してやらぬでもないぞ?」

アクセル「ふん…誰が、お前なんかに……」

アクセルは吐き捨てるように、普段の無邪気さからは想像出来ない低い声で脅すように言い返した。

アクセル「殺せよ。僕はお前に命乞いするほど堕ちちゃいないんだ…ぐっ!!」

首を絞められ、呻き声を上げる。
ギリギリと締め上げる音に比例して、アクセルの呻きがか細くなっていく。

シグマ「態度だけは立派だが…利口ではないようだなプロトタイプよ」

アクセル「っ…僕はアクセルだ…!!……プロトタイプなんかじゃない…」

アクセルの脳裏に苦い物が込み上げる。
それは新世代型レプリロイドを知った時に感じた、己のアイデンティティーが揺らぐ感覚。
決して表には出さなかったけれど。
アクセルはまだ、新世代型レプリロイドが反乱を起こしたことは知らない。
だが、不穏な出来事が起きていることは何となく理解出来た。
そしてそれが目の前の男が原因だということも。
シグマ…、レッドアラートを滅亡に追いやった憎き仇である。
先の大戦で倒したはずの男は生きていたのだ。
暗がりに映る赤いマントは血の色を連想させ、不気味であった。
アクセルが憧れるゼロの紅とは違い、汚らわしく、忌まわしく、悍ましい紅である。
悪しき紅を纏うシグマは、邪悪な笑みを浮かべると、アクセルね首を絞める手を開く。

シグマ「そうだな……お前はただのプロトタイプではないな……」

いきなり解かれた戒めに激しく咳き込む。
苦痛は徐々に和らいでいき、意識が遠退いて砂嵐がかかった視界は段々と明瞭さを取り戻していく。
まだ息は荒いままだ。
拘束し、生殺与奪の権利を得たシグマは、肩で喘ぐアクセルを冷たい笑みで見つめていた。

シグマ「そろそろ教えてやってもよいな……」

アクセル「……?」

シグマ「お前の出生の秘密と、課せられた使命を」

アクセル「……っ!!」

身を固めるアクセルの頭を鷲掴むシグマ。
足をばたつかせてもがくアクセルにシグマは笑いながら、手に込めた力を強める。
月の光を思わせる光の奔流が、宮殿の闇を照らした…。 

 

第三十六話 昔

 
前書き
時間軸はX2辺り。
少し息抜きで。 

 
エックスは自室で仮眠を取っていた。
シグマの残党がまだ活動しており、いつ休めるようになるかは分からないために休めるうちに休んでおくのだ。
傍らに愛しい人の形見を置いて。



































『…ス……クス……エックス?』

ふと聞こえた声に目を見開くと、エックスは思わず目を見開いた。

エックス『…ルイン?』

ルイン『おはよう、エックス』

満面の笑顔を浮かべて言うルインに自然とエックスの身体が動いてしまった。

エックス『治ったのかルイン!!』

ルイン『ひゃ!!?』

力強く抱きしめられたルインは思わず声を上げた。

『何をしてるんだお前は?』

エックス『痛っ!!?』

頭を叩かれたエックスは叩いた手の方に視線を遣ると…。

エックス『ゼロ!!?』

ゼロ『何だエックス?寝ぼけているのか?』

大破しているはずのゼロがここにいる。

エックス『え…あ、何で…?』

ゼロ『本当に寝ぼけてやがるな…今日は召集だぞ。早くしないとシグマ隊長に何か言われるぞ』

エックス『シグマ…隊長が?』

ルイン『どうしたの?エックス?』

首を傾げながら聞いてくるルインにエックスは笑顔を浮かべて首を横に振った。

エックス『何でもないよ』

エックス達はブリーフィングルームに向かい、本日の予定を聞いた。
後に部屋に備え付けられているデスクで今日の日にちをチェックするとシグマが反乱を起こした日であることに驚いた。
エックスはシグマを警戒していたが、シグマは何もしない。
それどころか正常そのもので、イレギュラー化の兆候は訪れなかった。




































エックス『…………』

エックスは自室のベッドで寝転んでいた。
最近はエックスの株が上昇している。
ゼロに負けるとも劣らない成績を叩き出し、第17番精鋭部隊のエースとして活躍を期待された。
昔と違ってイレギュラーに対してためらいがなくなった。
それを皆が喜ぶ。
容赦なくイレギュラーを叩き潰した時の同僚達の唖然とした顔ったらなかった。
シグマだけは表情を変えずに労いの言葉を言うと、去って行ったが…。
あいつも成長したんだとみんなが言う。
しかしルインは違った。
エックスは最初から強かったと。
それに同僚達が笑っていたが、彼女の優しさを久しぶりに感じていた。
結局シグマは反乱を起こさなかった。
ケイン博士は悪戯を仕掛けてきて、自分達に撃退され、ゼロはデスクワークをサボってシグマに注意される毎日。
え?エックスとルイン?
2人は基本的に真面目なので仕事をサボりません。

ルイン『エックス~』

紙袋を持ったルインがエックスの部屋に来る。

ルイン『たまには見晴らしのいい屋上でご飯にしようよ』

エックス『ああ、それもいいね』

2人で屋上に向かう。





































エックス、ルイン『『何でここにいるのゼロ?』』

ゼロ『寧ろそれは俺のセリフなんだがな』

何故か屋上にはシグマにデスクワークを命じられたはずのゼロがいた。

エックス『またサボっているのか?』

ルイン『もう、サボっちゃ駄目だよゼロ』

エックスが言い当てたので繋ぐように叱る。
大してゼロには効果がないようだ。

ゼロ『お前達は何しに来たんだ?』

ルイン『また話をはぐらかす。ご飯を食べに来たんだよ』

ゼロ『そうか』

エックス『シグマ隊長、ゼロを発見しました。』

反省しないゼロにエックスは最終兵器シグマを始動させた。
その後、ゼロは問答無用で連行された。

ルイン『全くもう、ゼロのデスクワーク嫌いには困ったもんだよね?』

エックス『やれば出来るのに何でやらないんだろうな?』

苦笑するエックス。
2人は紙袋から昼食を取り出すと食べ始めた。
あれから世界は平和だった。
時折イレギュラーは発生するけれど基本的に世界は平和であの大戦は起こらなかった。
こちらが現実ならいいのに…。
しかし違う。
これは夢だ。
自分が望んだ都合のよい夢。

エックス『ルイン』

ルイン『何?』

エックス『君は幸せか?』

ルイン『え?うん、平和でゼロやみんながいて、そしてエックスがいて、私凄く幸せだよ?』

エックス『そうか…』

エックスは彼女の手に触れた。
都合のよい夢は此処まで。
エックスは涙を流した。

エックス『ありがとうルイン、俺にこんな幸せをくれて。もう大丈夫だ。これで俺はまた頑張れる。君が目を覚ます時まで世界を平和に出来るように頑張るから』

夢なのに何を言ってるんだと自嘲するが、ルインは満面の笑みを浮かべた。

ルイン『うん、でも私はエックスだけに任せたりはしないよ?私もエックスの力に…支えになるから』






































身体を起こすと、エックスは辺りを見回し、深い溜め息を吐いた。

エックス「……ありがとうルイン。」

ルインの形見を携えて部屋を後にしようとした時、警報が鳴る。

『シティ・アーベル西17番地区にてイレギュラー反応!!エックス隊長は出撃して下さい!!』

エックス「…行くか!!」

格納庫に向かい、チェバルに跨がると紅のチェバルと朱のチェバルをチラリと見遣り、現場に急行した。 

 

第三十七話 先輩後輩

 
前書き
ルインとアクセル
息抜き話その2 

 
レッドアラートとの戦いを終えてから半年が過ぎた。

アクセル「あーあ。何で試験なんかあるのさー」

エックス「試験受けないとハンターランクも決められないだろ?」

ぼやく少年に苦笑しつつ、エックスが言う。

アクセル「そうだけど…」

ゼロ「文句を言うな。言ったとしてもどうにもならん。」

ルイン「とにかく明日の試験のためにゆっくり休んでね」

アクセル「うん」

レッドアラートの戦いから半年経っても、かつての仲間を忘れたわけではない。
しかし養い親の“突き進め”という言葉に従い、常に“自分らしく”振る舞わないといけない。

ルイン「アクセル、今は大丈夫?」

アクセル「ルイン?何?何か用?」

ルインはアクセルにとって憧れの先輩だ。
金色の髪を靡かせ、こちらに歩いてくるその姿は、容姿の愛らしさと身体のバランスの良さと相まって、好意を抱かなくても綺麗だと思う。
今日はいつもの朱いアーマーは装着しておらず、ブラウスとスカートと言った服装だ。

ルイン「この後一緒にご飯でも食べない?最近いいところが出来たんだよ。いつか一度行こうと思ってたんだ。」

アクセル「え?勿論いいけど、エックスは?」

ルイン「エックスから休むように言われてね。今までずっと仕事漬けだったし、半日休みがとれたんだ。その時くらいは息抜きしないと。」

アクセル「ふうん、いいよ。一緒に行こう」

ルイン「ありがとう、それじゃあ行こっか」

アクセルが着替えてくるの待って、2人は街に出た。



































ハンターベースからさほど離れていない場所にある小さな喫茶店。
クラシックがかけられコーヒーの香りがするそこは何となく気遅れしてしまう。

ルイン「こっちだよアクセル。」

ここに入るのは初めてだといっていたがルインは全く動じた様子はない。
悔しいがルインは自分よりも遥かに大人なのだ。
勧められて席に着くと、すぐにウエイターがやってくる。
空腹というわけではなかったが、取り敢えずショートケーキとカフェオレを注文した。
ちなみにルインの前には、既に大きなフルーツパフェが置かれている。

アクセル「(見てるだけで胸焼けしそう…)」

ショートケーキを口に運び、カフェオレで流し込む。
ルインはフルーツパフェを美味しそうに食べている。
普段は頼りになるルインもこういう時は普通の女の子である。

ルイン「ねえ、アクセル。さっきから思ってたんだけどね」

アクセル「……何?」

ルイン「ちょっと、痩せたんじゃない?」

じっとこちらを見ていたルインが、不意に真面目な顔をして、そんなことを言ってきた。

アクセル「そうかな。自分じゃ分かんないけど」

ルイン「痩せたよ。……それに、何となく顔色もよくないみたい」

アクセル「えー?別に体調は悪くないし元気だよ?」

忙しくても睡眠はちゃんととるし、食事だって三食きっちり食べてる。
だから、体調を崩したりする理由はないはず。
そう言ったら、ルインは困ったような顔をする。

ルイン「うん、身体は元気なんだろうけど。……でも、あの、こんなこと言っちゃうの、傷口を刔っちゃうみたいだし、本当はよくないかもしれないけど」

ルインはいつも言いたいことははっきり言うタイプだ。
それなのに妙に躊躇しているから、らしくないなと思いながら、アクセルは首を傾げて次の言葉を待った。
しばらくして、ルインが意を決したように顔をあげる。

ルイン「……あのね、アクセル。……あれから……レッドアラートとの戦いが終わってから、1回でも、泣いた?」

アクセル「……は?」

ルイン「私、アクセルが泣いているところを見たことないよ?」

アクセル「…泣く理由がないじゃない」

ルイン「レッドのこと寂しくないの?」

そう、ルインが聞いてきたけれど、寂しくないわけじゃない。
寂しくないわけがない。
ルインの言葉がどこか責めるような響きに感じたのは、自分の心がどこかで泣かない自分を責めているからかもしれない。

アクセル「泣かないよ。……だって僕は、自分の心に従ってレッドアラートから抜けてイレギュラーハンターを目指すんだ。ただでさえ迷惑かけてるのに、これ以上我が儘言えないよ」

ルイン「そんなの……そんなの間違ってるよ、アクセル!!」

アクセル「え……?」

普段はエックスと同じくらい温厚で滅多に声を荒げないルインが、怒ったような顔でアクセルを見ていた。

ルイン「寂しい時に寂しいって泣くのと、我が儘を言うのは似ているようで全然違うよ。みんなのためって分かってたって、大好きな人に会えないのは寂しいんだから、泣いたっていいじゃない。……ううん、せっかく泣けるのに、泣かないなんて損だよ。それにこのまま我慢ばかりしてたら、アクセルが壊れちゃいそうだよ……」

アクセル「……我慢なんてしてない…」

まるで、自分のことみたいに真剣になってくれるルイン。
ああ、こんなに優しい人だから英雄に、そしてエックスと隣に立てたんだなって、今更ながらに思った。

ルイン「泣いても、いいんだよ。アクセル」

繰り返して言われて、心の奥底で閉じ込めてた気持ちが動き出す。
本当は泣きたかった。
しかしそれを無理矢理押さえ込んでただけで。
ルインの言葉が後押しになって溢れてきた涙は、こらえようと思っても、後から後から流れてくる。

アクセル「ルイン……」

ルイン「何、アクセル?」

アクセル「レッドに…会いたい……」

ルイン「うん…」

子供みたいに泣きじゃくるアクセルの頭を、ルインは撫でてやった。
やっぱりルインは年上で、母親というわけではないけれど、優しくて、暖かい。
もし自分に姉がいればこんな感じなのだろうか?



































しばらくして泣き止んだアクセルはぬるくなったカフェオレを飲み干すと立ち上がった。

アクセル「ありがとう、少しすっきりした…」

ルイン「いいよ別に。エックスにしても君にしても、少しは甘えることを覚えないとね…明日の試験頑張って」

アクセル「うん」




































そして試験当日。

エックス「準備はいいか?」

アクセル「うん」

試験官のエックスの言葉に笑顔で、アクセルは答えた。

エックス「状況判断も採点対象に入ってるから、設定内容は教えられないが…」

アクセル「大丈夫だよ。」

エックスの説明に、迷うことなく返事をする。

エックス「…行くぞ、準備はいいか?」

アクセルは、ほんの少し目を見開いた。
両手のバレットを握り直し、不敵に、無邪気に、幸せそうに笑う。
いつも“彼”に返していた“あの答え”を、今度はこの青年に返す。

アクセル「いつでもOKさ」

これからは此処が、自分の居場所なのだと。 

 

第三十八話 彼女達の戦い2

帰投したエイリアを迎えたのはアイリス、パレット、シグナスであった。
パレットは今まで視線を注いでいたモニターから離し、笑いかけた。

パレット「お帰りなさい」

エイリア「ただいま」

エイリアは辺りを見回すが、レイヤーの姿はなかった。

アイリス「レイヤーはエイリアさんの無事を確認したら出撃してしまいました。時間がないし、エイリアさんの顔を見たら、名残惜しくなると言って…」

エイリア「そうなの…」

エイリアはかつての自分を思い出す。
先の大戦まで、自分はエックス達を見守り、迎える側であった。
傷ついた仲間を迎える時、喜びと悲しみが錯綜したのを覚えている。
殊にエックスは戦いを望まぬ性格故に、苦痛を堪えた表情を浮かべていることが多かった。
その彼を笑顔で迎え、労うことも、支える自分の大切な仕事だと思っていた。
笑顔で送り出すこともまた。
エックスはそんな彼女に笑顔で応えたが…。

エイリア「レイヤーはそういうの苦手なのかしら…」

パレットはそれを聞いて、キョトンとしたが、すぐに可笑しそうに笑った。

パレット「そんなわけないじゃないですか」

エイリア「え?」

パレットは本当に可笑しかったようで、しばらく笑い続けていた。
ようやく収まった笑みは、自信に満ち、見る者をハッとさせる笑みを浮かべた。

パレット「レイヤーだって、笑顔で迎えられたいに決まってますよ。無愛想なゼロさんだって、本当は嬉しいですよ、素っ気ないけど。辛い時とか、話したくない時とか、放っておいて欲しい時もあるかもしれませんよ?でも基本笑顔で“お帰りなさい”って言って欲しいに決まってます。…レイヤーが先輩に会わずに行っちゃったのは、出撃するのが辛いから。…先輩に“行ってきます”と言ってすぐに戦場なんて辛い…私もレイヤーも怖いです」

エイリア「……………」

パレット「でも、次はきっと先輩に挨拶してから、行くと思います。今度は大丈夫。私は帰ってきたレイヤーに“お帰りなさい”って言います」

パレットの笑顔はとても明るく、眩しい太陽を思わせた。
エイリアもパレットの笑顔に微笑を浮かべて頷いた。

エイリア「私もレイヤーに“お帰りなさい”って絶対に言うわ」




































当のレイヤーはダークネイド・カマキールと対峙していた。
刃の打ち合いは、既に何度も行われ、獲物の鋭い切っ先は健在だが、レイヤーは腰や肩に裂傷を負い、カマキールは足をレイピアで貫かれ、闇に紛れる機動力を失っていた。
両者は互いにタイミングをはかる。

カマキール「大したもんだなアンタ。」

カマキールが沈黙を破る。
それは、皮肉ではなく、本心から実力を認めた響きである。

レイヤー「イレギュラーに褒められても嬉しくありませんね」

カマキール「そうか?ははっ…」

再び沈黙が戻る。
しばらくしてカマキールが再度口を開いた。

カマキール「なあ、アンタの言うイレギュラーってのは何だ?」

戦場に似合わぬ穏やかな声でレイヤーに問う。

レイヤー「知れたこと…あなたのように残忍で人々に害をなすレプリロイドですよ」

カマキール「そうかい?俺はてっきり、あんたらに従わないレプリロイドだと思ってたぜ?」

レイヤーは思わず目を細めた。
“イレギュラー”…人間やレプリロイドに害をなす機械。
だが、その定義が綻びているのをレイヤーは知っている。
かつてのレプリフォースのように、一方的にイレギュラーの烙印を押された者がいる。
イレギュラーの定義も、正義の形すらも今となっては曖昧となっており、“イレギュラー”達の嘲笑の対象となった。

カマキール「あんたらには分からねえだろうな…俺達の存在理由を、俺達はこの世界を変えるために造られた。この歪んで、狂った世界をよ!!」

レイヤー「(狂った…)」

世界には沢山の矛盾がある。
レプリフォース大戦では互いに認め合ったゼロとカーネルが戦い、上司と部下の関係であったエックスとディザイアが戦った。
親子のような関係であったアクセルとレッドも殺し合った。
そういう視点からすれば確かにこの世界は狂っているのだろう。

レイヤー「(皆さんは悲しみを乗り越えて戦っている…世界を守るために…)狂っているのはあなたですカマキール」

カマキール「そう言うと思ったぜ」

カマキールが嘲笑い、再び鎌を構えた。

カマキール「どちらが正しいのか、次で決めようぜ…」

レイヤー「望むところです……」

戦いは最後の幕を迎えた。
次の一撃が最後となる。
息を詰め、静止した2人の空気が弓を引き絞るかのように緊張感を高めていく。
暗闇の空気が、ピタリと止まった一瞬、揺れ動いた。

レイヤー「たああああ!!」

カマキール「うおおおお!!」

互いの刃が急所目掛けて、宙を真っ二つに切り裂いた。
勇姿が交差し、暗闇に火花が散った。
反対方向に跳んだ2人は、直後に目を見開いた。
鮮血が上がる。
レイヤーは噴き上げた血に大きくよろめいた。
カマキールは笑っていた。
勝敗に目を細め、彼女に賛辞を送った。

カマキール「やるじゃねえか」

血を噴き上げてカマキールは絶命した。
闇が戻る。
漆黒の闇は、むせ返る血の匂いで一層濃くなった気がする。
失血により、眩暈がする身体を押して、レイヤーは死骸となったカマキールを見下ろした。
血染めの身は、闇に吸い込まれて消え入るよう。
彼女は冷たい死体に届かぬ声をかけた。

レイヤー「私達が不完全なのも、それ故に擦れ違い、争うことも知っている…しかし不完全だからこそ、手を取り合い、支え合うことが出来る。それが私達レプリロイドなのです」

彼女の声は漆黒の闇の中で響き渡る。 
 

 
後書き
カマキール撃破。
 

 

第三十九話 彼女達の戦い3

しばらくしてレイヤーは帰ってきた。
傷だらけではあったがちゃんと帰ってきた。
次にパレットが向かったのはドロップ・デッド。
プレート境界廃棄処理施設であった。
マグマを利用した処理施設は、ミッションを開始した直後から高温を肌で感じていた。
地熱が金属管を通って各所に届き、捨てられた残骸を尽く焼き尽くす。
一瞬で金属の塊を溶かす炎のまがまがしさは、地獄の業火を彷彿とさせた。
レプリロイドの墓場にここ以上に相応しい場所はないだろう。

パレット「やっぱり、嫌な気分だなあ…」

深い穴をトントンと降りていく。
軽やかなジャンプは華麗で、戦場の殺伐とした空気には馴染まなかった。
戦乱の世でなければ、彼女はきっと、もっと微笑ましい場所で踊っていただろう。
彼女の幼い外見も相俟って、余計に悲惨であった。

アイリス『後少しで終着点だから頑張ってパレット』

パレット「はい」

アイリスのナビゲートを受けながらパレットは少しずつ確実に先へ進んでいく。

アイリス『ターゲットのバーン・コケコッカーは耐熱性能に優れ、炎を操る能力に長けてるの。また、相手の攻撃を利用して自らの能力をパワーアップ出来るらしいの。パワーアップはクラッキングで解除出来るの。パレットの場合、ショットを連続で放てばクラッキング出来るから』

パレット「分かりました」

パレットはアイリスの指示に従いながら、奥へと進む。




































ボスは処理場最深部にて荒々しい姿を晒していた。
炎を纏い、こちらを睨み据える姿は恐怖を抱かせるが、パレットは毅然とした態度でコケコッカーを見つめる。

コケコッカー「誰だ…ここは子供の来るような場所じゃないぞ」

パレット「子供じゃないですよ。私にはパレットっていう名前があります」

コケコッカー「ふん…お前の相手などする気はないわ」

コケコッカーは演説するように両腕を広げた。

パレット「…………」

コケコッカー「…此処が何なのかは、お前には分からんだろう。ハンター共にイレギュラー呼ばわりされ、無念のうちに捨てられたレプリロイド達の墓さ!!」

マグマが身をもたげた。
イレギュラー達の無念の叫び声が、地獄の業火に変わったかのような灼熱。

パレット「知ってますよ。あなたはイレギュラーの復讐をするつもりなんですか?」

コケコッカー「そうだとも!!」

パレットの言葉にコケコッカーが目を見開きながら叫んだ。

コケコッカー「イレギュラー呼ばわりされ、無念のうちに死んでいった者達!俺はそいつらの仇を討つために立ち上がったのだ!!」

言下に空を駆けた。
炎を纏った足が、パレットの動力部を狙う。
パレットはギリギリだが、脇腹に熱を浴びながらも回避した。
コンマ1秒遅かったら、彼女は身体を貫かれていただろう。
それくらい鋭い蹴りであった。

アイリス『パレット!!コケコッカーをクラッキングして!!』

パレット「っ…」

眼前でコケコッカーの身体が炎を噴き上げていた。

フレイムエンチャント

自身の戦闘力を底上げする技。
銃弾を放ち、クラッキングによってパワーアップを食い止める。

コケコッカー「己…小娘が……メルトクリーパー!!」

コケコッカーは片足を上げると勢いよく振り下ろし、炎が地面を這って、パレットに迫る。
パレットは高くジャンプして、壁を蹴り上げ、ホバーの長い滞空能力を持って、雨のような銃弾を放った。

パレット「小娘だなんて、馬鹿にしないで下さい!!」

コケコッカー「事実を言ったまでだろうが!!」

怒れる鶏冠が、パレットを追尾するように飛ぶ。
高温の炎がパレットに直撃し、撃墜され、コケコッカーが追撃の蹴りを喰らわせ、吹き飛ばす。
その蹴りはかつてのイレギュラーハンターにして、レプリフォース大戦で裏切った第14番特殊部隊の隊長、マグマード・ドラグーンにとて匹敵するほどである。

パレット「痛…っ」

身体は痛みで震え、立つことさえままならない有様だが、戦意は衰えていない。
寧ろ、高まっていく。
友達を救いたいという想いが彼女の身体を突き動かす。







































ハンターとなる配属式を終え、オペレーターとして配属されることとなったパレットは先輩であるエイリアとアイリスに紹介してもらったのだ。
イレギュラーハンターが誇る最強の戦士達。
他のハンター達の中には、彼らならマグマに突っ込んでも雪崩に巻き込まれて生き埋めになっても必ず脱出して無事に生還するだろうという謎の確信を持っている者さえいるほどの実力者。

パレット『オペレーターのパレットです。よろしくお願いします!!』

アクセル『オペレーター?ああ、エイリア達が言ってた新しいオペレーターって君?』

パレット『はい、後レイヤーもいるんですけど…』

アクセル『ストップ、敬語は止めてくんない?僕はそういうの苦手で。歳だって近そうだしさ』

パレット『え?あ、うん』

アクセル『僕はアクセル。よろしくパレット』

パレット『こっちこそよろしくねアクセル!!』

ルナを除けば、年上ばかりのハンターベースで、同じ歳の頃のパレットは新鮮なのだろう。
パレットも人懐っこいアクセルを気に入ったようで、会ってすぐに仲良く話す2人はなんとも微笑ましい。
歳の近い2人が仲良くなるのに時間はかからなかった。



































その友達が敵の手の内にあり、酷いことをされているのではないかという不安が、そして敵への怒りが戦う力をくれた。

コケコッカー「この程度か!!お前の力はこの程度なのか!!」

パレット「違う!!私の力はこんなものじゃない!!あんたなんか、絶対に倒してやるんだから!!あんたを倒して…アクセルを助けるの…絶対に助けてあげるの!!」

パレットパレットから放たれたショットは、コケコッカーの急所に当たった。
パレットの武器のパレットバレットの一撃の威力はアクセル同様低いが、その分連射に優れ、怯んだ敵を一層追い込んだ。
勿論、コケコッカーも簡単にやられたりはしない。
反撃を試みるが、メルトクリーパーはパレットの一歩手前で止まる。
圧倒的な弾数が、コケコッカーを破ったのだ。
例えるなら、幕末の剣豪が西洋式の銃撃部隊に突撃するようなものだ。
彼は直立したまま、炎を上げて絶命した。

パレット「はあ…はあ…」

パレットはがむしゃらに銃弾を浴びせ、コケコッカーが倒れたのを見て、やっと勝利に気づいた。
その彼女に上空から現れた存在がいた。

VAVA「ふははは…オペレーターだと聞いてはいたが、中々やるじゃないか」

パレット「あんたは…」

元特A級ハンターにして、イレギュラーの最強の一角、VAVAであった。
彼はバイザーの下から満足げな笑みを浮かべていた。
楽しみが増えたことに喜びを感じているのだろう。

パレット「アクセルをどこにやったの!!?」

VAVA「坊やのことなら案ずることはない。いずれは奴の方から姿を現すだろうよ。」

パレット「返してよ…私の友達を返して!!」

一度は止んだ銃声が再び上がり、茹だるような空間に反響する。
銃弾をものともせず、VAVAは歩み寄り、パレットの目の前に立った。
パレットに恐怖はない。
敵への怒りと友達の帰還を願う気持ちが心を支え、VAVAを睨み据える。

VAVA「ククク…いい目をするじゃないか…最近のハンターにはエックス達以外ロクな奴がいないと思っていたが…確か、パレットと言ったな…?それからあの女共もいい目をしていた…今此処で殺すのは惜しいな…今日の所は退いてやろう。精々強くなる事だ。この俺の疼きを高まらせる程に!!」

その言葉を発した後、VAVAは去っていった。
次の瞬間、地響きが発生する。

アイリス『緊急事態よ!!火山の活動が戦いの影響でコントロール不能になったの!!転送可能な火口まで急いで!!』

アイリスの叫びを聞き、パレットはホバーで火口を目指して上昇する。
敵の手の内にいるアクセルの身を案じながら…。





































おまけ

エイプリルフールネタ。
時期ハズレにもほどがある…(汗)

アクセル「今日はエイプリルフールだね」

ルイン「エイプリルフール?」
首を傾げるルインにルナは笑いながら説明する。

ルナ「ん~と、簡単に説明すれば嘘をついても大抵は笑って許される日のことだ」

ゼロ「小さな嘘くらいならな」

ルイン「嘘をついてもいい日なんだ~、へえぇ~……あ、ちょうどいいところに…エックス~」

たまたま近くを通り掛かったエックスにルインが歩み寄る。

エックス「どうした、ルイン?」

ルイン「エックス、私…ゼロとお付き合いする!」

エックス「∑( Д)゜゜な、何だって!?ゼ、ゼ、ゼロオオオオオオ、君という人はあああああああ!!!!」

アルティメットアーマー装着。
バスターブレード発現。
エックス鬼化。

ゼロ「ま、待てエックス!!それは嘘…」

エックス「問答無用!!!」

ゼロ「チッ!!」

強化形態を発動して、逃走するゼロ。

エックス「待てっ!!」

逃走するゼロをバーニアを吹かしながら追跡するアルティメットアーマー装備のエックス。

シグナス「ルイン…つく嘘と相手は選ばないと色々洒落にならんぞ…(汗)」

ルイン「ごめんなさい………(汗)」

アクセル「ご、ごめんゼロ…僕のせいで…(汗)」

ルナ「エックスの奴、今日がエイプリルフールだって忘れてたな++(キラーン)」

アクセル「Σ(何で光るのさ…!!?)」 
 

 
後書き
今更ですけどX8編では女性陣が本格参戦しているためにアイリスがオペレーターしてます。
アイリスはエイリア、パレット、レイヤー三人の性能を持った万能タイプ。 

 

第四十話 目覚める記憶

 
前書き
アクセルの記憶を解放します。 

 
太平洋の真ん中に浮かぶ孤島。
今から約100年後にギガンティスと呼ばれることとなる場所に存在する研究施設は一体のレプリロイドによって、大混乱に陥っていた。
研究施設では銃声が鳴り響く。
警備兵が断末魔の叫びを上げながら崩れ落ちる。

『はっ、間抜けだね。すぐ近くにいるのにも気づかないなんてさ』

原因は白と紫を基調とした紅い瞳のレプリロイド。
頭部と胸部に蒼いコアを宿していた。

『さて…あんた達のDNAデータを貰うよ』

レプリロイドはDNAデータを回収すると警備兵の姿へと変わる。

『よし…』

直ぐさまその場を後にしたレプリロイド。







































『くそっ!!失敗作の分際で…生意気な真似を!!』

歯軋りする男の胸には“W”のマークがあった。
かつて世界を震撼させた悪の天才科学者、アルバート・W・ワイリーの意志を継ぐ者である。
ワイリーの消息が途絶え、“作品”の製造は大幅に遅れたが、何とかプロトタイプの製造に成功した。
研究所職員は、己に絶対の自信を持っていた。
ワイリーから授かった技術を更に昇華させ、自分こそが最強のレプリロイドを開発出来ると信じていた。
“あの英雄ロックマンを超えるロボットを造る”という名のある科学者が挑み、挫折した境地である。

『局長…』

『黙れ!!早く奴を捕らえろ!!警備兵で駄目ならハンター共に…』

『しかし、イレギュラーハンターに通報するわけには…』

部下の職員が答えたように、彼等の研究は表に出来ない物であった。
他者の能力をコピーする能力は、クローン技術が問題視されるのと同じように議論の最中であり、また彼等は限りなく成功作に近い“失敗作”の製造に到るまでに試作品に対して非人道的な実験を課しすぎていた。
イレギュラーハンターに通報などしたら逆に捕われるだろう。

『くそ…だったらバウンティハンターにでも頼め!!あんな連中、金でいくらでも靡くだろう!!己……』




































レプリロイドは、研究所の門を目指していた。
彼の目には境界となる門が、遥か彼方に映っている。
自由を求めて、少年は突き進む。

『あんなモルモットみたいな扱いで死んでたまるか…!!』

プロトタイプの扱いは過酷なもので、実験の内容は“どこまでやれば限界を迎えるか”が殆どであった。
レプリロイドの“限界”とはすなわち“死”を意味する。
研究員が設定する課題はあまりにも生命を軽んじた物ばかり。
実験動物以下の扱いから逃げるために少年は凄まじい機動で駆け抜ける。

『もうすぐだ…もうすぐ…』

門まで後少しというところで、少年の背中に鎌鼬が見舞われた。

『っ!!?』

胴を刻んだ風が背中を抜け、刺すような冷たさを齎す。
少年は身体から鮮血を噴き出しながら、地面に倒れた。
斬撃は動力炉から逸れていたが、相当の深手で思わず手からバレットが落ちた。

『あぁ…』

開いた目は前方の扉に注がれた。
越えれば自由だと思っていた門は無惨な瓦礫と化しており、代わりに1体のレプリロイドが立っている。
レプリロイドが大鎌を振るい、門を破壊したのだ。
長身で精悍な顔付きをした男で、双眸は鋭く、携えた大鎌と同質なものに感じられた。
そして戦場ではきっと映えるであろう、鮮やかな紅いボディ。
レッドアラートのリーダー、レッドである。

『手間取らせおって…』

背後からやってきた研究員が呟く。
忌ま忌ましげな顔は、イレギュラーに勝るとも劣らぬ容貌であった。

『残念だったな。お前の脱走劇もここまでだ』

『ぐっ…』

立ち上がろうにも力は尽きていた。
今は傷の痛みに耐えるので精一杯である。

『あの方がいればこんな失敗作など出来なかったというのに…』

研究員は髪を引っ張って起き上がらせる。
身体の痛みとその痛みが少年を苛む。

レッド『おい、相手は怪我人だぞ』

『はっ…貴様の知ったことではないわ。こいつは失敗作だ。私がどうしようと勝手だろう!!』

『や…めろ…』

『貴様…まだ偉そうな口を開くか!!お前は出来損ないの失敗作なんだよ。まだ完成していない出来損ないだ。そんなことも分からないのか、ええ!!?』

『ふざけるな!!僕をモルモットみたいに扱って!!勝手に生み出して勝手に殺して…何様のつもりなんだ!!』

頭突きが研究員の顔面に直撃した。
予期せぬ反撃を受けた研究員は無様にひっくり返った。

『はっ…ざまあないね…』

嘲笑うと、激痛に苛まれる身体を引きずりながら必死に出口に向かう。

『僕は自由になるんだ…こんな所で死んでたまるか…』

肉体を凌駕する精神力を前に、レッドは呆然となる。
彼は満身創痍の少年を前に微動だに出来なかった。
少年が脇を通り抜けようとした時、ようやく我に返った。

レッド『待て!!』

振り返った少年の顔は憎悪に満ちていた。
少年にはレッドが、自由を奪う元凶のように思われたからだ。
その身を翻すと一気にレッドに肉薄した。
肉弾戦は重量によるところが大きく、少年とレッドでは体格が違い過ぎる。
少年の力ではレッドを動かすことすら出来ないと思われたが、少年は小柄な身体からは信じられない程の力で、レッドを突き飛ばすと馬乗りになり、全身全霊の力でレッドの近くに落ちていた金属の破片を振り下ろした。
破片はレッドの右目を貫いた。

レッド『ぐあああああああ!!!!』

右目を貫かれ、激痛がレッドを襲い、咆哮が響き渡った。
子供の姿からは想像出来ない程の恐ろしい力だった。
レッドは死の危険すら感じた。
目を貫いた破片が、このままでは電子頭脳に達する。
レッドは咄嗟に、転がっていた破片で少年の顔面を斬りつけた。

『うわ…っ!!』

コアを破り、額から頬に達する深い傷。
怯んだ隙にもう一撃、逆方向に斬る。
そして少年は激痛に耐え切れず、意識を失った。
少しの間を置いて立ち上がったレッド。
次の瞬間、少年の身体が光り輝き、純白のボディが漆黒へと変わっていた。

レッド『何だ…?』

『チッ…失敗作が…不具合が生じたか。早くそれを渡せ』

研究員が近付いた時、レッドは大鎌を研究員に突き付けていた。

レッド『人をモルモット扱いたぁ…同じレプリロイドとして黙ってられねえな』

『な…?』

研究員は目を見開いた。

『わ、私は依頼主だぞ。こんな勝手がまかり通ると思うのか!!』

レッド『俺達、レプリロイドにも誇りってもんがある…。仮にも依頼主だからな。命だけは勘弁してやる』

少年を担ぐと、レッドは研究所を後にしようとする。

『イレギュラーが…』

研究員の呪詛にも似たような呟きにレッドは振り返る。
しかしその顔は哀れむように研究員を見ていた。

レッド『イレギュラー…か。俺からすればお前らの方がイレギュラーに見えるぜ?』

その後、レッドは少年をレッドアラートの基地をへ連れていき、手当てをするが、怪我の影響で記憶を失ってしまい、少年の本当の名前、“Accelertor”を捩った…アクセル…“突き進め”という意味を持つ名前を与えられた。
これがアクセルの封印されていた記憶である。 
 

 
後書き
アクセルの記憶解放。 

 

第四十一話 彼女達の戦い4

パレットが無事に帰還し、全員が司令室でミーティングを受けている。

ルイン「一般人及び、レプリロイドの避難はまだ完了していない…。出撃しようにも、彼らを巻き込んでしまう可能性が高い…危険すぎるね……」

シグナス「だが、このままではイレギュラーのメルトダウンを誘発する。今出る他はない」

エイリア「あなたはどう思う?レイヤー」

レイヤー「…危険は承知していますが……私も出撃するべきだと思います。機動力に長け、ホーミング弾を持つシリウスで攻め、ターゲットを叩くのが最善でしょう」

アイリス「そうね…」

アイリスは直ぐさまダグラスにライドチェイサー・シリウスの手配をするようにパネルを叩く。

アイリス「ターゲットはギガボルト・ドクラーゲン。飛行能力を持っているから、この中で1番有利に戦えるのはルインね」

ルナ「ルインか…ルインならセイバーやバスターが使えるから奴とまともにやり合えるかもな」

パレット「それにルインさんはエックスさんと同じくらいシリウスの操縦が上手ですし。セイバーやバスターだってエックスさんやゼロさんにも負けないですもんね」

ルインは遠近共にこなせるオールラウンダーだ。
この中で尤も、ギガボルト・ドクラーゲンとの戦いに向いている人物はいないだろう。

シグナス「分かった。ルイン、ダイナスティへの出撃を頼めるな?」

ルイン「はい。」

エイリア「ダイナスティへの転送準備を開始します。万が一の場合に備えて、ルナは転送室で待機を」

ルナ「了解」

アイリス「ダグラスさん。ダイナスティにはルインが出撃します。ルイン専用のシリウスの用意を」

ダグラス『おう、任せとけ』

レイヤー「パレット。私達はルインさんのサポートを」

パレット「はい!!」

彼女達は転送室に向かうルインを悲しみを耐える瞳で見送った。
高性能な新世代型レプリロイドが相手でも遅れを取ることはないだろうが、傷つかないはずがないから。



































ダイナスティは大企業が数多く進出する巨大都市であり、ネオンが派手な光を放ち、雑多に並ぶ高層ビルを照らしている。
街をひしめくビル群は遠目から見ると巨大な塊を思わせ、シリウスに乗っているルインに、自分はこれから塊に突撃するのではないだろうかと思わせた。

アイリス『ルイン、移動中のターゲットを探し出して…何度かショットを当てれば暴走を止められるはずよ。頑張って!!』

通信を受けたルインは目をつぶり、意識を集中する。
全身の感覚を研ぎ澄ませ、イレギュラーの位置を捉えようとする。

ルイン「…そこだっ!!」

カッ、と開いた瞳に、豆粒の如く小さな光が映る。
火花を散らしながら暴走するそれが、ギガボルト・ドクラーゲンであった。
彼は身体に溜め込んだエネルギーを使って、力の限り暴走する。

ルイン「…行かせないよ!!」

アクセルを吹かして、一気に接近すると同時にホーミングショットを放つ。
ホーミングショットが機関銃の如く炸裂する。
ドクラーゲンが直撃を受けて狂ったような笑い声を上げた。

ルイン「まともな反応すら出来ない程にイレギュラー化が進行しているんだ…新世代型はイレギュラー化しないなんて言葉はアテにならないね」

イレギュラーに対し、哀れに思いながらショットを連続で放っていく。
爆煙に意識を移した瞬間、ドクラーゲンの爆弾が席巻した。

ルイン「っ!!」

急停止し、爆煙がルインを無粋に包み込んだ。
直撃は避けられたが、炎の熱と黒煙をまともに浴びてしまう。

ルイン「よくも…」

アイリス『ルイン、落ち着いて』

ルイン「分かってるよ…喰らえ!!」

ちっとも落ち着いてないが、怒りのショットは敵を射抜き、みるみるうちに敵の機動力を削いでいく。
ドクラーゲンの身体から火が噴き始めた。

ルイン「後少しで追いつく………」

ターゲットを逃さぬように、慎重に追い掛けていた。
減速した敵は猛スピードで走り回っていたとは思えぬ程にふんわりと、捉えどころのない顔をしていた。
追いついたビルの屋上で上空を漂う敵を睨み据える。

ルイン「ギガボルト・ドクラーゲン…。メガロポリスのエネルギーを暴走させた狙いは何なの?」

ドクラーゲン「…………」

ルインの問いにドクラーゲンはただ呆けるだけ。
ルインはドクラーゲンの虚ろな表情を見て、悟ったような溜め息を吐いた。

ルイン「もう、何を言っても無駄なようだね」

ドクラーゲン「………俺のしていることは無駄じゃないよ」

海月型のビットが舞い降りる。
ルインはセイバーでバサリと、落ちてきた“ソレ”を斬り払った。

ルイン「無駄じゃないなら無意味だね。罪のない多くの人間やレプリロイドを犠牲にすることに何の意味があるというの?」

直ぐさまセイバーを振るう。
翡翠の輝きを放つセイバーは天を刺し、ドクラーゲンの足を僅かに斬った。
骨格のない足がゆらゆらと揺れる。

ドクラーゲン「あの方が新しい世界を創るためにエネルギーが必要だったんだよ」

触手が獲物であるルインを捕らえるように伸びる。
だが、電撃を帯びた両腕はセイバーで弾かれてしまう。
ドクラーゲンが初めて驚きに目を見開いた。

ルイン「残念。あなたの攻撃は私には効かない」

セイバーを手に静かに言う。
まるで明鏡止水の諺を体言したような姿であった。

ドクラーゲン「……………」

ギガボルト・ドクラーゲンは朱の舞姫と謳われる戦士を、初めて意志のある瞳で見つめていた。
漂うばかりの水海月が、船の碇に貫かれたような衝撃を受けた。
彼が意志を言語化出来たのなら、こう言っていただろう。
“こんな強い女性がいるなんて…”。

ドクラーゲン「でも、俺は止められないよ………」

身体が緋色の光を発し、強烈な電撃を放出した。
白く輝く火花は天の雷の光そのもの。
メガロポリスのエネルギーがそのままルイン目掛けて落ちていく。

ルイン「やばい…」

息を呑んだ瞬間、雷が枝分かれして地面に注がれる。
ルインは咄嗟にダッシュすることで、電撃をかわし、次の一撃もギリギリでかわす。

ルイン「放電が激しすぎる…なら…!!」

チャージセイバーを繰り出すが、セイバーと衝撃波は放電のバリアに阻まれてしまい、ドクラーゲンの身体に傷をつけることは出来なかった。
攻撃する間に、放電が頂点を迎え、必殺技が炸裂する。
電撃がルインの真上から降る。
咄嗟に構えたセイバーに白い火花、真昼の陽光の如く鮮やかに散った。
電撃で空が真っ白になる。
強烈な光にルインの姿が消え、上空からは跡形もなく消し飛んだように見えた。
ドクラーゲンは光の爆発を遠い目で見る。

ドクラーゲン「これで終わり…」

ルイン「終わりじゃないよ」

言い終わらぬうちに彼を紫の閃光が貫いた。

ドクラーゲン「……え…?」

胴を紫色の輝きを放つセイバーが貫いていた。
刃の先が彼の背中に生え、腹にはセイバーが深々と刺さっていた。

アルティメットセイバー

“究極”の名を関する剣がドクラーゲンを串刺しにしたのだ。
地上には血を思わせる紅いアーマーを身に纏うルインが身体から煙を上げながらも立っていた。

ドクラーゲン「……嘘…」

胴から火花を上げ、目の醒める光を上げて大破する。
後に残ったのは、爆発の黒煙のみであった。
対象を失ったセイバーが一直線に落ち、ルインが立っている地面に突き刺さる。
ルインはドクラーゲンが消えた空を真っ直ぐに見つめた。
吹き荒れる風が彼女の長い金髪を靡かせる。

ルイン「新しい世界は君達が創るものじゃない。この世界を必死に生きるみんなが創るの…それに…時代っていうのは、前のを壊して創るんじゃなくて…受け継いでいくものなんだよ…」

翡翠の輝きを宿す瞳を、人類の移住の地である夜空に浮かぶ月に注いでいた。 
 

 
後書き
ドクラーゲン撃破。
次はアクセルを覚醒させます。 

 

第四十二話 覚醒

ハンターベースの医務室ではゲイトがエックスとゼロの容態を見ていた。

エイリア「ゲイト…」

ゲイト「やあ、エイリア。お疲れ。」

エイリア「ええ、これ…差し入れよ」

エイリアがゲイトに手渡したのは、紙コップに入れられたコーヒーである。
甘い物は嫌いではないために疲れている彼には砂糖とミルクをいつもより少し多めに入れておいた。

ゲイト「すまないね…」

ゲイトは礼を言うとコーヒーを一口啜る。

エイリア「ごめんなさい…私も何か手伝えたらいいんだけど……」

ゲイト「構わないさ。君は僕とは比較にならないくらい多忙なんだから。多忙の君に手伝わせたら僕がエックスに殺されるよ」

エイリア「ふふ…」

ゲイトの冗談にエイリアも笑みを浮かべた。
こうしていると昔に戻ったような錯覚を覚えた。

ゲイト「それにしても…厄介なウィルスだったよ。最新型のシグマウィルス…自己進化、自己増殖、自己再生の能力を持つシグマウィルスのワクチンの作成には流石の僕も骨が折れたよ…」

エイリア「また…シグマの仕業なのかしら」

ゲイト「そうなんじゃないか?ご多分に漏れず、さ」

過去の戦いは全てシグマが元凶であった。
人類に反旗を翻した最初の大戦から全てが…エックス達の長い戦いが始まった。
今では世界を破壊するために蘇る邪悪なる覇王にして死神。
彼は人もレプリロイドも関係なく、全てを滅ぼそうとしている。

ゲイト「それよりももっと気になることが分かったんだ」

エイリア「え?」

ゲイト「今回改めてエックスとゼロを解析したんだけど…彼らの出生が遂に分かったんだよね。まあ、大体予想は着いてたけど」

不敵な表情を崩さぬ彼には珍しく、真剣な表情を浮かべていた。
自然にエイリアも気を引き締めた。

ゲイト「エックスとゼロは…彼らは100年前の天才科学者、Dr.ライトとDr.ワイリーの最後の作品なのさ」

エイリア「…………」

ゲイト「君はエックスからある程度は聞いていただろうけど。彼らのメモリーを調べていたら、僅かに残っていたんだ。制作者の情報がね。エックスにはDRN(Doctor Right Numbers)。ゼロにはDWN(Doctor Wily Numbers)と刻まれていた」

西暦20XX年に生きた科学者の名前だ。
化学技術が発展した現在でも、2人の名前はレプリロイド工学史に存在する。
2人が開発した技術は未だに解明出来ない部分が多い技術であった。
レプリロイド研究員だったエイリアも、2人の天才の存在を耳にしている。
それどころか、彼女は“禁断の地”に侵入したイレギュラーを処分したことがある。

Dr.ライトとDr.ワイリー。

2人はレプリロイド工学を究める者達にとって、遥か高みであり、また越えられぬ壁でもあった。
エックスとゼロは、その2人の最後にして、最高の作品であった。
2人は生まれながらに相争う宿命を課せられた。

ゲイト「思えば不思議な話だ…。本来なら殺し合うべき2人が、親友として互いを支え合っている……。2人の出生を考えれば…本来なら絶対に有り得ないことだ。」

ワイリーは世界を征服せんとした狂科学者だった。
ライトは友人であり、ライバルだった彼を止めるために、自らの息子、家庭用ロボット、“ロック”を戦闘用ロボットに改造した。
ゼロはロックマンを倒すために、最後のワイリーナンバーズとして造られた。
正義のロボット、“ロックマン”の称号はエックスに受け継がれている。
つまり、本来なら2人は戦う運命にあった。
しかし運命の悪戯か…2人は命を共にする親友となった。

エイリア「きっと…2人は宿命を乗り越えたのよ」

ゲイト「そうだね…それからエイリア。アクセルのことなんだが…」

エイリア「アクセルがどうしたの…?」

ゲイト「…新世代と旧世代の差はあれど、アクセルの内部機構とゼロの内部機構が酷似していたんだ…」

エイリア「え?」

ゲイト「これは、あくまでも推測なんだが……アクセルもワイリーナンバーズ……正真正銘、Dr.ワイリーの最後の作品ではないかと僕は考えている。」

エイリア「どういうこと?」

ゲイト「確信を持つようになったのはゼロとアクセルの内部機関と自己強化能力の共通点だよ」

エイリア「自己強化?」

ゲイト「エイリア、ゼロは戦う度に能力を強化することが出来る。その理由は何だい?」

エイリア「ラーニングシステムよね?DNAデータ等を解析することで自身の能力を強化する……」

ゲイト「アクセルのコピー能力も正にそれなんだ。アクセルはプロトタイプ故にコピーするためには倒したレプリロイドのDNAデータをコピーしなければならない。しかしそれを繰り返していくごとにアクセルの能力は強化されていく。こればかりは完全な新世代型にも同じプロトタイプのルナにもないアクセル固有の能力…。」









































月のシグマパレスの一室で室内に満ちていた光が消え、シグマは口を開く。

シグマ「かつて、世界を二分する2人の天才科学者がいた。1人はその頭脳を平和のために使い、もう1人は己の欲のために用いた……。奇しくも2人は最後に己の最高を自負するロボットをそれぞれ造り上げた……。」

詩を吟ずるように語ったのは、今から約100年も昔の伝説である。
2人の科学者が生きていた“過去の大戦”によって滅びた世界の話。
西暦20XX年の記録は過失か意図的にか、存在を闇に葬られた。
現時点でアクセルにもハッキリと分かっているのは、かつてのスペースコロニー・ユーラシアを破壊するのに使われたギガ粒子砲・エニグマがその100年前の大戦で造り出されたことくらいだ。
シグマはケイン博士の元で働いていた頃、朧げに伝説を聞いていた。
その後、カウンターハンターのサーゲスやスペースコロニー・ユーラシアの事件を進言した男によって伝説と英雄の秘密を知った。
善なる科学者に造られた蒼き英雄と、悪しき科学者によって生み出された紅き破壊神。

シグマ「そしてお前は、悪しき科学者の手によって、エックスと裏切り者のゼロを凌駕するために造られたのだ。2人を倒し、最強のレプリロイドとなるためにな」

アクセル「嘘だ!!」

悲鳴に似た叫びが、宮殿の壁を打ち、反響する。
アクセルの翡翠色の瞳が、悲痛な色に染まっていた。

アクセル「僕はエックスやゼロ達に憧れてハンターになったんだ!!2人を倒すために生まれたなんて、そんなの嘘だ!!」

シグマ「事実なのだよ、アクセル」

哀れみと愉悦が混じった面持ちで言う。

シグマ「お前の記憶が教えただろう。お前は2人を超えるために造られた。新世代型のレプリロイドなのだよ。」

アクセル「嘘だあああああああああ!!!!」

絶叫が、酷薄な空気を震わせたかのように思える。
だが冷たい空も、漆黒の闇も、決して晴れることはない。
アクセルの胸に芽生えた絶望は、彼の全身を暗く侵していく。

シグマ「お前はプロトタイプ…。だが、潜在能力は新世代型をも上回るのだ。新たに造られた者が、古くに造られた者に勝るとは限らん…。エックスやゼロ、ルインやルナという小娘、我が配下の四天王、VAVAもそうだ。お前は強い……。お前はエックスとゼロを倒し、DNAを手に入れるのだ。そうすれば最強のレプリロイドとなれる」

アクセル「嫌だ!!そんなことするもんか!!僕は…僕は……」

シグマ「お前がエックス達に憧れるのも、お前に課せられた使命のためなのだよ、アクセル。深い闇に覆われたメモリー領域……。その中に、確かに存在するだろう?創造主の望みが…」

アクセル「僕は僕だ!!そんな奴のことなんか知らない!!」

もし両腕が自由ならば、耳を塞いでいただろうが、拘束されていたためにそれも出来ずに、声を張り上げて否定するしか出来ない。
シグマは自身の使命に悩み苦しみアクセルを嘲笑うように口を開いた。

シグマ「聞き分けのない子供だ…流石はアルバート・W・ワイリーの最後の作品だ…頑固さは奴と似ている」

そう言ってアクセルの頭を鷲掴む。
シグマの手に宿る光が、青白い月の光を思わせた。
熱はなく、代わりに寒気がアクセルを襲う。

シグマ「本来のお前に戻してやろう…。感じるだろう?封印された力を、圧倒的な力の奔流を…」

アクセル「…あ……う………」

頭部を掴まれた痛みはない。
彼を苛むのは、光によって、秘められた圧倒的な力が急激に解放されていくことによる苦痛。
否…苦痛と呼べるかどうかも怪しい。
全身を駆け巡る力が、高揚感を与える。
全身が疼き、突き抜けるような気持ちになると同時に封じられていたもう1人の自分が目覚めようとしている。

アクセル「が…ああ……」

内なる自分が目覚めようとしている。
冷酷で残虐な人格が。
自身が忌み嫌う“イレギュラー”が目覚めようとしている。

『やっとだ…』

アクセル「(誰…?)」

頭に響いてきた声にアクセルが反応する。

『誰だって…?おかしなことを言うね…僕は…君だよ。ようやく“異物”の君から僕を取り戻すことが出来る…』

アクセル「(止めろ…止めて…)」

『元々君は最初から不要だった。よくも今まで異物の癖に僕の身体を使ってくれたね…とっとと消えなよ』

電子頭脳に響く声に反応するかのように視界が一気にぼやけていく。
すると力の奔流が急速に力を増していく。

シグマ「目覚めるがいい、アクセル…」

アクセル「嫌だ…」

“自分”が消えていく。
エックス達との記憶が消えていく。
レッドアラートとの記憶が引く波のように消えていき、レッドの頼もしい笑顔が消えていく。
脳裏に走馬灯のような映像。
血に塗れた陰惨な記憶。
口汚く罵る科学者。
施設を脱走する自分。
もっと昔、カプセルに収められ、悪しき科学者の呪詛の如き野望を語られる自分。
おもむろに開いた瞳は血を思わせるような色をしていた。
自分が消え、別の自分になる。
2人を殺すために生まれた自分に。
アクセルの意識が途切れた。 
 

 
後書き
アクセル覚醒。 

 

第四十三話 ルナ

 
前書き
少し出番が少ないルナを出します。 

 
ルナはハンターベースの自室のラボラトリーで、エイリア達の特殊武器を開発していた。
パレットはオペレーターとして多忙であるために、ルナが武器を開発していた。
何かしていないと、アクセルのことが心配で胸が張り裂けそうになるからである。

パレット「これが私の新しい武器ですか?」

少しの間、休憩でここに来たパレットがルナの手元にある複数の銃を見つめる。

ルナ「ああ…この、黒い銃はブラックアロー。射程は短いけど、敵を追尾するホーミング弾が撃てて、そっちの銃はバウンドブラスター。弾が壁に当たると反射する。んで、これがフレイムバーナー。簡単に言えば火炎放射機。そして最後にプラズマガン。射程が短いけど、攻撃範囲が広い近接戦に向いた銃。」

説明すると溜め息を吐きながら、椅子に座る。
パレットは慌てながら、レイヤーのレイピアを指差す。

パレット「ル、ルナ先輩。レイヤーの武器にも新しいのが追加されたんですよね?」

ルナ「ああ…Dグレイブ。長柄の薙刀で、レイヤーの特殊武器の中では最もリーチに優れている。それからKナックル。リーチはレイヤーの武器の中でも短いが、それを補って余りある攻撃力がある。次のBファンは攻撃よりも防御用の武器。特殊なビームシールドで敵の攻撃を防ぐことが出来る。最後の巨大なハンマー、Tブレイカーは攻撃範囲はレイピアよりも狭いけど、一撃の威力は凄いぜ。」

それだけ言うと黙り込んでしまう。
パレットはどうにかして、空気を和ませようとするが、ルナの落ち込みようは半端ではない。

パレット「(アクセルはルナ先輩の初めての友達だもんねえ……)」

友達で終わらせるには少し仲が良すぎる気がするけれども。

パレット「あ、もしかして…」

ルナ「ん?なんだ?」

パレット「っ!!」

心の中で呟いたつもりだったが、声に出してしまったらしい。

パレット「……女は度胸!!」

ルナ「は?」

訳の分からないことを言い出したパレットにルナは目を見開いた。

パレット「単刀直入に言います。ルナ先輩は…もしかしてアクセルのことが好きなんですか?」

ルナ「ああ」

パレット「ええ!!?あっさり肯定した!!あ、でもお似合いだなって思うし…」

ルナ「友達だからな」

それをルナが言った瞬間、パレットが盛大にずっこけた。

ルナ「どうしたパレット?脚部損傷か?」

パレット「ち・が・い・ま・す!!私が聞いてるのはアクセルのことを恋愛対象として見ているのかということです!!!!好きなんですか!!?念のため言いますけどLikeの好きじゃありませんよ!!Loveの方ですからね!!!!?」

ルナ「ラ、ラララ、ラブぅ!!?」

しばらくすると赤面して、目を見開く。
パレットはそれを見て、胸中でガッツポーズをした。

パレット「(よし、どうやらルナ先輩の方はアクセルに脈アリのようですね。前にアクセルにも聞いてみましたけど、アクセルはまだお子ちゃまだから、恋愛感情は分からないようだけど先輩に好意的。これは楽しま…じゃなくて応援しなきゃ)」

心の中で笑いながら計画を練り始めるパレット。
本人達にバレたらギガクラッシュかギガランチャーかコンビネーションアサルト、エックス達を巻き込んでのファイナルストライク決定である。

ルナ「お、おい…?」

赤面しながらオロオロするルナにパレットもルナも女の子なんだなと思う。

パレット「そういえば、ルナ先輩はご飯食べました?」

ルナ「あ…」

そういえば、しばらく何も食べていなかった。
えらく空腹なことに今更気づいた。

ルナ「そういや、飯を食ってなかったな。食堂に行くか…」

パレット「先輩、オムライス作って下さい。先輩のオムライス、オムレツがフワフワしてて凄い絶品ですもん!!」

ルナ「そうか?」

同い年の友達に褒められれば悪い気はしない。

パレット「男口調と私生活で大雑把なところを除けば、家事全般出来るからいいお嫁さんになれますね!!」

ルナ「お、お嫁…!!?」

赤面して硬直する。
普段は頼もしい彼女もこういうのに関しては初な女の子だ。

パレット「アクセルいいな~。私が男性型なら私が先輩をお嫁さんに貰いたいです!!」

ルナ「か、からかうんじゃねえ!!」

赤面しながら言うルナにパレットはからかうように笑う。

パレット「先輩、可愛い~」

ルナ「うっせーー!!可愛いって言うな!!」

彼女の絶叫が響き渡る。
ルナが出撃する数時間前の出来事。




































おまけ

ルナ「レイヤー、お前の武器の強化、終わったぜ」

レイヤー「すみません、ありがとうございますルナさん」

ルナ「そういや、お前の武器はゼロのセイバーにかなり構造が似ていたけど…元からそうなのか?」

レイヤー「いいえ、ナイトメアウィルス事件の後にレイピアを強化してもらったんです」

ルナ「へえ…」

アイリス「レイヤーさんはゼロのことが好きだものね」

レイヤー「っ!!」

ルナ「あ、茹で蛸になった」

アイリス「私はレイヤーさんが羨ましいわ。私はオペレートは出来るけれど、あなたのように戦うことは出来ないもの…」

レイヤー「アイリスさん…」

アイリス「レイヤーさん。戦いの時はゼロを支えてあげて」

レイヤー「はい…」

ルナ「仲いいなあ…」 

 

第四十四話 Right

 
前書き
少しシリアスになってきたんで、ギャグも書いてみます。
時期はパレットとレイヤーが配属されて間もない時。 

 
エイリアはイレギュラーの残党がいないか、主要都市の見回りをしていた。
エックス達がやっていたことも今は彼女達がやらなければならない。

エイリア「……ここも異常なし。よかった…」

緊張を解いて、構えていたバスターを下ろしながら溜め息を吐いた。

エイリア「それにしても、ここも酷いわね…」

新世代型レプリロイドの反乱により、主要都市はかなりの被害を受けている。
モニターで見ていても、やはり自分の目で見るのでは全く違う。

エイリア「……あら?」

ふと視線をずらすと、そこには見慣れないカプセルがあった。
いや、恐らくこのカプセルは…。

エイリア「私でも反応するかしら…?」

スペースコロニー・ユーラシア事件の時、かつてジャンク屋時代のルナが近付いた時に反応したことを考えれば可能性は0ではない。
敵の罠である可能性もあるために恐る恐る近寄ると、カプセルが起動し、エックス、ゼロ、ルインを長い間支え続けた、100年前に存在した天才科学者の1人、トーマス・ライト博士のホログラムがエイリアを優しく見据えていた。

ライト『君はエイリアだったね…スペースコロニーの事件からずっとエックスを支えてくれたことを感謝しているよ…ありがとう。』

エイリア「トーマス・ライト…博士……」

100年前にエックスの兄と言える最強の戦闘型ロボット、ロックマンを生み出し、世界の平和に多大な貢献をした偉大な人物。
今でも数多くの研究者が尊敬し、理想とする科学者。

エイリア「ライト博士……今、エックスは…」

ライト『…知っている。また争いが起きてしまったことも…エックスには争いのない平和な時を生きて欲しいのだが……』

エイリア「……」

悲しげに天を仰ぐライト博士にエイリアは何故かエックスの影が見えた。

ライト『すまない、今のわしには、エックスのアーマーを授けることしか出来ない。無力なわしを許してくれ……』

エイリア「いえ、そんなこと……ライト博士はエックスの力に、支えになっています。絶対に。」

ライト『…ありがとう。今回、エックスに授けるアーマーはニュートラルアーマーじゃ』

エイリア「ニュートラルアーマー…?」

ホログラムに映し出される灰色のアーマー。

ライト『ニュートラルアーマー自体には何の強化能力を持たない、全てのアーマーの基礎と言える物じゃ、しかし、これらの2種類のアーマーのパーツを組み合わせることでアーマーに能力を付加させる事が出来る。』

エイリア「つまり、今までのアーマーと違い、それぞれのパーツを装着することが出来るんですね」

ライト『そう、イカロスアーマーのイカロスパーツは戦闘力を重視している。ニュートラルアーマーをイカロスパーツで統一すれば、広範囲を攻撃するギガクラッシュが使える。次にヘルメスアーマーはのヘルメスパーツはイカロスアーマーのパーツとは違い、機動力を重視している。ニュートラルアーマーをヘルメスパーツで統一すれば、レイジングエクスチャージの簡易版と言える、全能力強化のエクスドライブが使える。それぞれのパーツの詳細はこのファイルに纏めておいた。エックスが目を覚ましたら、この2つのファイルを渡して欲しい』

エイリア「分かりました。アーマーファイルとパーツファイルを受け取りましょう」

ライト博士からニュートラルアーマーのアーマーファイルとイカロスパーツとヘルメスパーツのパーツファイルを受け取る。

ライト『エイリア、これからもルインと共にエックスを支えて欲しい。自分を見守ってくれる人がいることは、この上ない幸福なことなのだから…』

エイリア「はい。」

エイリアのハッキリとした返事にライト博士は安心したように笑いながら、電脳空間に戻るのだった。





























おまけ

食堂でハンターズとオペレーターズが食事を摂っていた時、椅子の上で、パレットは凍り付いていた。
その彼女の正面からは、アクセルが見つめ続けていた。
パレットの目の前には皿に盛られた料理が有るが、一部にやたらと残されている野菜が1種類。
鮮やかな朱色のそれを、パレットは明らかに避けていた。

アクセル「パレット…いい加減人参食べなよ」

レイヤー「まだ克服出来てなかったのねパレット…」

パレットの皿には人参がいくつも残っている。

パレット「だって…嫌いなものは嫌いだもん…アクセルだってピーマン嫌いじゃない」

アクセル「お生憎様、戦場を何度も駆け抜けていれば食べ物で苦手なんて言ってられないよ。嫌いな物でも細かく刻んだりとかして工夫さえすれば食べられるよ」

パレットの言葉に対して、あっけらかんとした答えにパレットは目を丸くする。

パレット「アクセル、ピーマン食べられるの…?」

アクセル「まあね、パレットも食べれるようにした方が良いよ?僕達レプリロイドも、オイルだけじゃなくて、食べ物の栄養素も必要不可欠なんだからさ」

パレット「うぅ…」

涙目のパレットにアクセルは溜め息を吐いた。








































食事が終わり、アクセルはパレット以外の全員を厨房に集める。
何とかしてパレットの好き嫌いを直そうとしているのだ。

エックス「そうだな…水につけて匂いをとるか?いや、すり潰してしまうか?それだけでも大分違うと思うけど…」

ルイン「う~ん、すりおろした人参をスープに入れてみたら?まずはそれくらいからでしょ」

ルナ「…やってみっか」

ルナはすりおろした人参をスープの隠し味のようにしてみた。

ゼロ「………人参の味は殆どしない……これなら大丈夫だろう」

この中で最も味覚が鋭いゼロが味見をしてみるが、人参の味は殆どしない。
これならどれだけ苦手でも食べられるはずだ。
今日は寒いために、紙コップにスープを入れるとパレットにスープを手渡す。
そしてパレットはスープを一口飲んだが…。

パレット「これ人参使ってますね!!?」

何故か人参を入れたことがバレてしまった。

エックス「…ああ、使ってるよ。殆ど味も残ってないのに…何でバレてしまったんだろうか……?」

別のやり方でやってみようとエックス達はそう決めた。







































エイリア「人参が苦手ねえ…だったら野菜ジュースはどうかしら?」

アイリス「野菜ジュースなら、人参の味なんか絶対にしないから、飲めるはずよね」

レイヤー「やってみる価値はあると思います」

ゼロ「…作ってみるか」




































しばらくして野菜ジュースが出来上がり、パレットに飲ませてみた。

パレット「人参の味が…」

ルナ「何でだよ!!野菜ジュースの色んな味に混じって分かんねえはずなのに何で分かる!!?」

パレット「私の味覚を甘くみないで下さい!!」

ルナ「えばるな!!このお子様舌が!!」



































アクセル「…これで駄目ならもうどうしようもないね。お菓子にしてみたらどうかな?」

ルイン「ケーキとかクッキーとかはどうかなあ?」

エックス「やってみようか」

そしてルインとエックスの共同作業によって作られたケーキはスポンジが僅かに人参の朱に染まっているが、匂いもかなり少ない。
クリームで隠してしまえば、微かな匂いも完全に途絶えた。
それを皆が待つ食堂へと持っていき、全員分に切り分け、皿に盛る。

エックス「…今度はどうだろうか……?」

ルイン「多分大丈夫だと思うけど……」

エックスとルインの視線がパレットに突き刺さる。
パレットはその視線に気付かぬまま、フォークでケーキを食べやすいサイズに切り、口へ運んだ。
そこまでは良かった筈だった。

パレット「何でケーキに人参を入れるんですか!!?」

ルナ「これでも駄目なのかよ!!?」

ゼロ「…味覚が良すぎるのも考え物だな」



































その後も色々と手を尽くしたが、ことごとくパレットの舌はそれを見破り、身体が拒絶した。
一流の料理の腕前を持つエックスとルナでさえ匙を投げかけた。

アクセル「ねえ、他に何か良い方法は有る?僕はもう思いつかない…」

ゼロ「…無理だな」

エックス「…無理だね」

ルイン「…無理だよ」

ルナ「…無理」

アイリス「…無理だわ」

エイリア「…無理ね」

レイヤー「…無理ですね」

アクセル「だよねえ…あははは…」

結果、パレットの人参嫌いは克服出来なかった。 

 

第四十五話 異変

ルナはライドチェイサーに跨がり、クレバスを飛び越える。
途中の大型メカニロイドを破壊し、最後の直線を潜り抜けた。
視界が開ける。
吹雪の向こうに凄まじいエネルギー反応を感知した。
ルナは壁にライドチェイサーをぶつけ、堅固な壁を破壊した。
真っ白な雪原が広がっていた。

ルナ「………」

無言で降り立つと、雪原から敵が飛び出した。
見せ付けるように巨体を晒した“永久凍土の番人”、アイスノー・イエティンガー。

ルナ「お前がアイスノー・イエティンガーか」

ルナがバレットを構える。
僅かに震えているのは寒さのせいだけではなかった。

ルナ「(かなりのプレッシャー…こいつはマジでやらねえとやばいかな…?)」

イエティンガー「然り。我々の、あの方の理想を邪魔しないでもらおう」

ルナ「シグマの野郎は何を企んでやがる?」

イエティンガー「我が主の理想を阻むのならば、例え女子供(おんなこども)でも…滅殺するのみ!!」

ルナは目つきを鋭くする。
これ程までに強烈な威圧感を感じたのは久しぶりだ。
レッドアラートとの戦い以来は小規模な戦闘と事務作業を繰り返していた彼女には少しイエティンガーの身体が通常より大きく見えた。

ルナ「悪いが、俺も負けるわけにはいかねえ、譲れねえもんがあるからな」

イエティンガーに向けてリフレクトレーザーが放たれた。
レーザーの煌めきが冷気に触れ、冴え冴えとした光を映した。
イエティンガーは宙に浮くと、矢のような氷塊を撃ち出した。
氷塊がルナに冷たい切っ先を向ける。
ばら撒かれる瞬間、ルナは軌道を読み切って全てかわした。

イエティンガー「かわしたか…流石は我々の元となったレプリロイド。だが、これはどうだ?」

イエティンガーが消えた……のではなく、潜り、雪原の中を走った。
舞い上がる粉雪がルナに迫る。
ダッシュでかわすと、イエティンガーの氷龍昇を背後に見る。

ルナ「(パワーはイグニス並だ…)」

巨体が繰り出すアッパーは胸がすくほどに壮観であった。
あれをまともに喰らえば命はないと感じられた。
細かい雪が空中に散る。

イエティンガー「(思っていたよりも素早い)」

ルナ「トランスオン!!メルトクリーパー!!」

コケコッカーに変身し、前方に火炎を繰り出す。
あまりの高熱に雪が蒸発する。
イエティンガーは冷気を吐き出し、火炎を掻き消すと戦略を変え、今度は氷を纏い、突進してきた。

ルナ「なっ!!?」

左、右。
一撃目はかわせたが、すれ違いざまに掠った冷気が、ルナの足を凍りつかせ、彼女の自由を奪う。
そして突進を受けたルナが弓なりになる。

イエティンガー「もう一撃…」

ルナ「くそ…ったれ…!!」

バレットを自らの足に放つ。
出力は最低だが、足のアーマーが熱でひしゃげた。
即座に足の痛覚をシャットアウトすると滑り込むように突撃を回避した。

イエティンガー「大したものだ…」

ルナ「見くびんのも、大概にしやがれ…」

痛みに表情を歪めながら、イエティンガーを睨む。

イエティンガー「何故そこまで戦う。本来ならば同胞である我々が?」

平和主義である彼は、出来ることなら余計な犠牲を生みたくはなかった。
自分が倒すべき敵は、蒼の英雄と紅の破壊神と朱の舞姫である。

ルナ「……確かに俺も、無用な戦いは避けたいさ。でもさ、俺にも俺なりにちっぽけだけど信念がある。少なくても、逃げることは絶対にしない」

きっぱりと言い切る。
敵や死に対する恐怖など微塵もなかった。
紺色の狙撃手と世界で謳われた戦士の姿に彼は悟る。

イエティンガー「ならば、次の一撃で決着をつけるとしよう」

雪が舞い上がる。
その凄まじさは、敵の居場所を分からなくする。
地上ですらの感知も不可能となった。
加えてルナは片足の機動力を失っており、片足のみで逃げることは出来ない。
イエティンガーの一撃をまともに喰らい、命を果たす以外に術はない。

ルナ「…………」

彼女は目を閉じた。
覚悟を決めたような横顔。
死への恐怖も、負けることへの悔しさも存在しない。
とても静かな表情。
千切れるような冷気の中で、彼女の表情は、芸術的にさえ思えた。
祈りを捧げるように俯く。
イエティンガーは雪の中ゆえ、彼女が見える訳ではないが、優れた戦士の五感が、彼女の発する空気を感じた。
歴戦の戦士でさえもああも潔くは出来ないと、イエティンガーは密かに感服する。

イエティンガー「今、楽にしてやろう…」

氷龍昇を繰り出す瞬間、ルナが瞳を開いた。
火花が散り、ルナの身体が宙を舞った。
金属同士がぶつかり合う音も聞こえた。
氷龍昇をまともに喰らったのだ。
イエティンガーは手応えを感じた。踊るように宙に浮くルナを見て、彼女が死んだと思った。
散り際の桜に似ていると称賛した。
しかし彼女は生きていた。
受ける直前で片足の加速装置を回すことで後退し、ダメージを僅かながら軽くした。

ルナ「トランスオン!!サンダーダンサー!!」

ドクラーゲンに変身すると、電撃をイエティンガーに向けて放つ。
迸るエネルギーがイエティンガーに直撃した。

イエティンガー「馬鹿な…!!あの攻撃で生きているなど…!!」

驚愕、後に攻撃に転じようとするが、氷を電撃が溶かし、水へと変える。

イエティンガー「か、身体が…」

水は電気を通す。
つまり感電してしまう。
低温下での運用を前提にして造られた新世代型レプリロイドである彼は、最新型の超伝導部品が使われており、大電流が回路に流れやすい状態であった。
そこに、オリジナルより劣化するとはいえ、強烈な電撃をまともに受けたイエティンガーの身体が許容範囲を大きく超えた電流を浴び、全機能をショートさせる。

イエティンガー「我が攻撃が…敗北を招いた、か……!!」

ショートする音が聞こえたかと思うと、直後に爆発した。
巨躯が爆風を放って四散し、炎に覆われた残骸が吹き飛んでいく。
雪原に落ちた屍が無残に、巨人の跡形も残さずにばら撒かれた。
そして変身を維持出来なくなったルナは地面に落ちた。
ギリギリだが、見事に勝利した。 

 

第四十六話 鬼

 
前書き
イエティンガーを撃破したルナの前に現れたのは…。 

 
ルインは次の出撃に備えて武器の最終調整をしていた。
基本的な整備はダグラス達がしてくれているが、やはりこういうのは自分がやらなければならない。
一通りの調整を終えて一息つくと、レイヤーが話しかけてくる。

レイヤー「お疲れ様です、ルインさん……あの……」

自分の仕事に一段落がついたのかナビゲーター席を離れルインの傍に来たレイヤーが遠慮がちに声をかけてきた。
ルインスが向かい合う相手を武器からレイヤーに移して促すと、言い淀んでいたレイヤーが切り出す。

レイヤー「…最近、ルインさんが沈んでいるような気がして……」

ルイン「え?」

ポカンと目を見開きながらレイヤーを見つめる。

ルイン「心配してくれてるの?」

レイヤー「はい…オペレーターとしてハンターチームの状況は、あの……知っておいた方が、良いかと……」

ルイン「…………」

ルインはしばし悩むように目を閉じていたが、やがて口を開いた。

ルイン「あはは、後輩に心配かけるようじゃ、私もまだまだだね……うん、そうだね……エックスが意識不明で…いきなりこんなことになっちゃったから、多分…気が動転してたんだろうね…VAVAに…もしかしたら今回の事件の黒幕のシグマ…まるで昔に戻ったかのよう…」

レイヤー「あの、ルインさんはあのVAVAとは先輩後輩の仲だったと聞いているのですが?」

ルイン「うん。新人時代にとてもお世話になったの。私の力はあの人のおかげが大きい」

実際ルインのバスターによる戦闘はVAVAと同じだ。
中~遠距離用の装備を至近距離で使いこなすことは自身さえ破壊しかねない危険な戦法だが、ルインはそれを完全にこなしている。

ルイン「またVAVAと戦うってのは少し複雑だけどね。でも逃げるわけにはいかないよ。今度こそ全てに決着をつける」

ルインの纏う空気が歴戦の戦士に相応しいそれに変わり、レイヤーはしばらく言葉を無くしたが、少しの間を置いて軽い礼をする。

レイヤー「……話していただいてありがとうございましたルインさん」

ルイン「いや、レイヤーだってもう仲間なんだから……少しずつでも私達のことを知ってもらいたいんだ」

レイヤー「…………はい。お邪魔してすみませんでした。私も仕事に戻ります」

ルイン「うん」

ルインはレイヤーの後ろ姿を見遣るとトレーニングルームに向かう。







































雪の上に横たわるルナは、救援が来るまで待っていた。
勿論、DNAデータの回収も忘れずに。

ルナ「紙一重の差だな…」

雪が降る空を見上げながら呟いた。
生と死を分かつ、とてつもなく厚い紙一重だった。
呟いた途端、上空から凄まじい威圧感を感じた。

ルナ「…VAVA…!!?」

VAVA「久しぶりだな、小娘」

暗い黄緑のアーマーを纏い、キャノン砲を担いだ戦士。
彼は空に浮かびながら、倒れたルナを見下ろしている。

ルナ「妙なとこで会うな…てめえとは……アクセルをどうした…答えろ…」

叫ぼうとするが、身体を蝕む激痛がそれを許さない。
しかし、気力という名の力を持って、VAVAに立ち向かう。
VAVAはバイザーの下で笑みを浮かべながら彼女に言う。

VAVA「まあ、そう急ぐな…。直に会わせてやる。今、丁度目覚める頃だろう」

使命と本来の力を取り戻した漆黒の銃士が、もうすぐ覚醒する。
ルナはその事態を知る由もなく、眉を顰めながら詰問する。

ルナ「てめえの目的は……何なんだ……かつてお前を倒したエックス達への復讐か…?それとも戦いたいだけか…?もし、そうなら…血に飢えた殺戮者と変わらねえな…」

VAVA「殺戮者か…そうだな。血と硝煙を求め、現世という無限地獄をさ迷う鬼に違いないな。だが、それでいい。俺はそれでいい。それが“俺”なのだからな」

それだけ言うとVAVAは空へと消えた。

ルナ「待てよ!!アクセル…アクセルを返せよ!!」

力を振り絞って叫んだ時には既にVAVAはいなかった。
ルナは呆然と、空を仰ぐしかない。




































地上から遥か遠い月。
シグマパレスの一室で、アクセルが鎖に繋がられたまま眠っていた。
苦悶の色はない。
静かに、安らかに眠っていた。
しかし、アクセルのボディは普段の漆黒ではなく、純白のボディとなっていた。
そのボディはとても美しく、凄烈な色を放っていた。
ゆっくりと瞳が開かれていく。
普段のエックスとルインに似た翡翠の色ではなく、まるで血を思わせるような紅に代わっていた。

 

 

第四十七話 復活

ハンターベースの医務室といえば、酷く殺風景なレイアウトだが、不思議なことに、この部屋は暖かい雰囲気を醸し出していた。
窓際に添えた花のせいかもしれない。
サンダーソニアの花がさりげなく飾られているのが綺麗であった。
ルインが殺風景な雰囲気を緩和させようと、さしたものだ。
医務室にはエックスとゼロが眠っている。
搬送時は危篤状態だった彼らもゲイトの処置により、危険な状態は脱した。
眠っている2人。
しかし、しばらくしてエックスが目を覚ました。

エックス「ここは…医務室?」

ゼロ「ぐっ…」

エックスが呟いたのと同時にゼロも身体を動かす。
彼の眠りは浅くはなかったが、少しずつ意識を覚醒させていく。
ベッドから出ると、互いに安堵の笑みを浮かべたが、しばらくしてもう1人の戦士を思い出した。

ゼロ「アクセル…」

脳裏に浮かぶのは、くしゃくしゃの泣き顔をした戦士の姿。
















































ノアズパーク。
ホーネックと別れたエックス達は、森の最深部まで疾走した。
メカニロイドの鳥達の鳴き声が高く、戦場の戦士の怒号の如く激しい。
機械で造られた人工の島。
だが、動物の脳を継いだ機械達は、鋭敏な神経回路を以って、危険を察していた。
3人が駆ける前方には、イレギュラー化したメカニロイドがいる。

エックス『ゼロ』

巨大な鋏を持つイレギュラー、クラブズ-Yだ。
エックスがチャージショットで体勢を崩すと、ゼロが跳躍し、クラブズ-Yを一刀を以って斬殺した。

アクセル『流石!!』

アクセルが歓声を上げた。
紅の剣士は眼光そのままに先を見遣った。

ゼロ『この先に強力な反応がある。恐らく騒動の元凶だな』

アクセル『そうだね。急ごう!!』

奥を目指して走っていく。
その最中、アクセルはふと既視感を覚えた。
もう少し、もう少しと、走っていくのは初めてではないような気がする。
考える間に、最深部へ到達し、アクセルは物々しい施設の中に入っていく。
暗い通路を抜け、開いた扉の向こうを見る。

アクセル『…前にもこんなことが…』

瞬間に、空の一点がキラリと光った。

エックス『アクセル!!』

咄嗟に回避し、上空から光が降り注ぐ。
キャノン砲から放たれた高エネルギー弾であった。

アクセル『くっ…』

先刻踏み締めていた大地は罅割れ、黒く焼け焦げている。
破壊された床の罅割れから黒煙がたなびいていた。

エックス『誰だ!!?』

空を見上げると、逆光を浴びた人影が見えた。

『クククク…また会えたなエックス』

エックス『貴様は…VAVA!!』

忘れもしない。
かつてのシグマの反乱とドップラー博士の事件にて、破壊の限りを尽くした強敵。
3人は一斉に武器を構えた。
しかしアクセルには見たこともない相手である。

アクセル『(誰?)』

ゼロ『元特A級ハンター…今は俺達の敵…お尋ね者のイレギュラーだ』

そのやり取りにVAVAは不敵な笑みを浮かべた。

VAVA『再びお前達と見(まみ)える時を待ち侘びたぞ……あの時の借りを今ここで返してやろう…』

VAVAのキャノン砲が戦いの火蓋を切って捨てたように激しい音を立てた。

ゼロ『ふん…ふざけるなよイレギュラーめ』

高みから降り立ったVAVAにセイバーの斬撃を繰り出す。
袈裟懸けに振った剣は、VAVAの装甲に激しい火花を上げた。
しかしVAVAは苦痛にのけ反るどころか、嘲るような笑みを浮かべていた。

ゼロ『なっ!!?』

愕然となりながら、ゼロはVAVAを見つめる。
渾身の一撃は、VAVAを倒すどころか、毛ほどのダメージを与えることすら出来なかった。
見開いた瞳に、狂戦士が嘲笑う顔が映る。

VAVA『フッ…お前も変わらないなゼロ。』

キャノン砲からエネルギー弾を放つ。
至近距離でまともに攻撃を受けたゼロは弓なりにのけ反り、卒倒した。

エックス『ゼロ!!』

呼び掛けた直後、エックスも同じ運命を辿る。
追尾式のエネルギー弾がエックスの腹部をしたたかに撃った。

アクセル『エックス!!』

瞳に怒りを宿し、アクセルがバレットを構えた。
VAVAは攻撃を止め、余裕の表情でアクセルを見据えた。

VAVA『そうだ坊や…撃ってみるがいい』

あまりに余裕。
アクセルはハラワタが煮え繰り返った。

アクセル『馬鹿にして…後悔しても知らないからな!!』

銃声を響かせ、すかさず撃ち続ける。
真正面を向き、全く隙だらけの相手にアクセルは容赦なくショットを当てる。
鳴り続ける銃声にこちらが耳鳴りを起こしそうだ。
しかし、VAVAには傷1つ付かない。

アクセル『そんな…どうして…何で効かないの!!?』

VAVA『力が違いすぎるだけだ。俺とお前達との…な。』

言いながら、VAVAは攻撃を返す。
青白い砲弾が、アクセルの胸に炸裂し、倒れ伏した。

VAVA『フン…拍子抜けだな…あの時俺を倒した奴がこんなザマとは…それとも俺が強くなり過ぎたのか?』

近くに転がっているゼロを踏み付ける。
ヘッドパーツがミシリ、と嫌な音を立てた。

アクセル『止めろ!!』

痛みから覚めたアクセルが高く叫んだ。
VAVAはアクセルに視線を遣ると、ほくそ笑む。

VAVA『ふはは……、流石は新世代型の試作品だな』

アクセル『なんだと…!!?』

アクセルの胸を嫌悪感が満たす。
“試作品”、“プロトタイプ”と呼ばれるのは例え事実でも不愉快であった。
そうとも知らずVAVAは語り続けた。

VAVA『未完成品とはいえ、仮にも新世代型…。シグマウィルスは効かないようだな』

ようやく気付く。
エックスとゼロがたった一撃で倒れたままである理由に。

アクセル『シグマウィルス…?お前、エックスとゼロに何をしたんだ!!』

VAVA『何、簡単なことだ。俺の兵装にシグマウィルスを仕込んでいたんだよ。あらゆるレプリロイドをイレギュラー化させる最強のウィルスプログラム…お前でも知っているだろう?』

シグマウィルス。
そのせいで、多くのレプリロイドが犠牲となった。
エックスとゼロは他のレプリロイドとは比較にならないほどの対ウィルス性能を持つが、新世代型ではないために、全くの無傷というわけにはいかない。
アクセルは新世代型に備わった能力で、ウィルスを無効果することが出来た。

VAVA『ウィルスにはレプリロイドの能力を飛躍的に高める力がある…尤も、破壊の方向にだがな。しかし、この俺には相応しい力だ。そう思わないかゼロ?』

足元が動くと、苦痛に顔を歪めたゼロが、口元だけ皮肉げに笑っていた。

ゼロ『またシグマについたのか…相変わらずシグマの犬だな。』

VAVA『どうやらお前は忘れているようだなゼロ。俺は誰にも従わないことを』

VAVAがゼロの頭部を粉砕せんほどに足に力を込めた。

ゼロ『ぐっ!!』

アクセル『ゼロ!!』

VAVA『こいつだけの心配でいいのか?』

キャノン砲からエネルギー弾を放ち、エックスにぶつける。
エックスが苦痛に呻く声が聞こえた。

アクセル『エックス!!…止めて!止めてよ!!』

VAVA『いじらしいな坊や』

VAVAはゼロから足を離して、興味深そうにアクセルに見入った。
それはいじらしさに感動したわけではなく、健気な少年をどうやっていたぶろうかという、残虐な嗜好によるものであった。

VAVA『こいつらが傷つくのが辛いか?自分の痛みには耐えられても、こいつらが死ぬのは耐えられないか?』

アクセルの顔が蒼白になる。
職務上、常日頃意識しなければならない“死”が間近に迫っていることを知る。
しかも、自分が憧れる2人に。
答えずともアクセルの表情がハッキリと答えを代弁していた。
VAVAのバイザーで隠された表情が笑ったように見えた。

VAVA『ならば、取引をしようじゃないか』

アクセル『取引…!?』

VAVA『お前が俺の命令を聞くと誓えば、エックスとゼロを助けてやってもいいぞ』

エックス『止めろアクセル!!』

ゼロ『そいつの言うことを聞くな!!』

VAVA『まだ無駄口を叩けるようだな』

エックスとゼロが反射的に叫んだ瞬間に、エネルギー弾が2人に炸裂し、2人を壁に叩きつけた。

アクセル『分かった!!分かったから2人を殺さないで!!』

VAVA『いい判断だ坊や』

キャノン砲を下ろすと、そっとアクセルに歩み寄るとその手をアクセルの身体に翳す。
すると、アクセルの身体が光に包まれていく。

エックス『アクセル…行くな…』

転送の光。
行き先は恐らく敵の巣窟。
アクセルは泣き笑いの表情を浮かべていた。
それは2人が助かった安堵感と、捕われることへの屈辱であった。
イレギュラーを憎む彼は、イレギュラーの見本のような戦士の手中に収まることを、死を選ぶほどに恥だと思っている。
彼がイレギュラーに屈したのは2人を救うためだ。
そうでなければ、これほどまでにあっさりと受け入れるはずがない。

エックス『(行くな…行くんじゃない!!)』

声が苦痛によって出せないエックスが胸中で叫んだ。
ゼロも同じように、止めるように震える手を伸ばしていた。
普段素直じゃないくせに、こんな時だけ本心を見せる。
それが酷く悔しかった。
光は止み、虚空だけが残る。
消え失せる寸前に、“助けて”と言っているようなアクセルの顔が、馬鹿に鮮やかに刻まれていた。
これがノアズパークでの出来事の記憶であった。 
 

 
後書き
VAVAはX1のように序盤無敵です。 

 

第四十八話 アンノウン

メモリーに刻まれた“泣き顔”は、今もハッキリと残っている。
悲しみを隠し切れず、却って秘めたる感情を悟らせてしまう不器用な顔。

エックス「アクセルを助けなければ…!!」

時間は残されていない。
気絶してから一体どれだけの時間が流れたのか分からないが、今こうしているだけでもアクセルの未来は絶望へと追い込まれる。

エックス「行こうゼロ!!」

ゼロ「ああ」

2人が部屋を出ようとした時。

ゲイト「早く彼女を!!」

焦りの表情を浮かべたゲイトが部屋に入って来る。

エックス「ゲイト!?」

ゼロ「何があった?」

目を見開くエックスに代わり、ゼロが尋ねる。
ゲイトはようやくエックス達に気づいた。

ゲイト「ああ、気がついたのか。すまないがどいてくれ、怪我人だ」

エックス「ルナ!?」

重傷の彼女が担架に乗せられて運ばれてきた。

ルナ「へへ…悪い…ヘマやっちまった…」

ゲイト「全く、酷いもんだよ…長い間事務仕事しかしてなかったからかもしれない」

エックス「ルナ…」

ルナ「俺のことはいいから…司令室に」

ゼロ「…分かった」

彼女が苦痛を押して頼んでいる。
エックスもゼロも彼女が気掛かりではあったが、己がやるべきことを思い、司令室に向かった。








































エックス達が目覚める前にルインはトロイアベースにダイブしていた。
トロイアベースは新世代型レプリロイドを訓練するために造られたトレーニング施設である。
多くの新世代型レプリロイドがここで研修を受けて、月面へと旅立って行く。
人類が生き延びるために掲げた“ヤコブ計画”。
その成功のために造られた施設が、敵の巣窟の1つと化していた。
仮想空間は暗い色調に光が輝き、幻想的な雰囲気を作っている。
幾何学的な模様が空中に浮かび、時の移ろいに合わせて明滅している。
引き込まれてしまいそうな、不思議な光景だ。
光に惑わされずに訓練を行うのも、立派な訓練と思えてしまう。
ルインは第一のバーチャルプログラムを攻略し、通路を駆け抜けている。

アイリス『ルイン、これまでのデータから、今回のイレギュラーのパターンを解析したんだけど、気になる共通点を発見したの』

ルイン「共通点?」

ルインをナビゲートしながら、アイリスが静かな声で伝える。
彼女の声はとても透き通っていた。
例え伝える事実が重いものであっても、ルインはアイリスの言葉に耳を傾けた。

アイリス『コピーチップのパターンがシグマのDNAに似ているのよ。これが何を意味するのかは分からないけれど、気になるわね。』

ルイン「アイリス…」

アイリスの声が低い。
レプリフォースが滅びる原因を作り、兄を死なせるきっかけを作ったシグマに対する憎しみはエックス達にも劣らないだろう。

ルイン「大丈夫だよ。今までだって何とかなったじゃない。シグマを倒してアクセルを助ける。それで終わり」

アイリス『そうね…』

ルイン「さてと、さっさと終わらせよう。次はどんなプログラム?」

アイリス『えっと…空を飛ぶマメQを撃破して、それから…』








































バーチャルトレーニングの攻略は順調であった。
趣向を凝らした訓練が続いたが、ルインは落ち着いて高得点でクリアしていく。

ルイン「アクセルなら…楽しんでたろうな…」

顔を綻ばせた。
彼女の知る、やんちゃな少年はこういったゲームのようなミッションが大好きだった。
しばらくして、最深部に辿り着いた。
トロイアベースの最深部にいたのは、向日葵を模したレプリロイド。
ルインを見るなり奇声を上げた。

ルイン「あなたが、オプティック・サンフラワードだね?」

サンフラワード「イレギュラーハンター!?違う違う。あなたは誰?私は…」

ルイン「…どうやら完全にイレギュラー化したようだね」

オプティック・サンフラワードは、優秀な新世代型レプリロイドであった。
天才と狂人は紙一重というのか、今は完全なイレギュラーだった。

サンフラワード「違う違う。私は選ばれた存在。あなた達旧世代には理解出来まい」

ルイン「分かる気もないよ。旧世代だとか新世代だとかは関係ない。私はあなた達を倒して戦いを終わらせる。それだけ」

チャージショットを放つ。
不意打ちを喰らったサンフラワードが吹き飛ぶ。

ルイン「言っておくよ。今の私は機嫌が悪いの。あなた達のような奴らが仲間を傷つけるから。アクセルを返してもらう!!」

サンフラワード「アクセル…進化し損ねた子供…。」

ルイン「黙れ!!」

オーバードライブ。
一時的な潜在能力解放。
その圧倒的な力はサンフラワードのレーザーなどものともせずに攻撃を叩き込む。
レーザーは滑らかな床を焦がし、壁一面にレーザーの痕跡が刻まれていた。

ルイン「消えろ!!」

サンフラワードの攻撃をかわしながらチャージセイバーで両断する。

サンフラワード「旧世代に…敗れるとは……」

愕然と呟きながらサンフラワードは爆発した。
光属性のレプリロイドだけあって、放つ光の量も半端ではなかった。

ルイン「関係ないよ。旧世代も新世代も。大体何様のつもり?あなた達に世界のことを決める権利なんかない」

それだけ言うとルインは気配を感じた。
そこに視線を遣ると…。
見覚えがある姿。
小柄な少年のシルエット。
特徴のあるヘッドパーツに、尖った髪が微かに揺れ動いた。
光の具合で色彩は分からないが、間違いなく再会を願った仲間であった。

ルイン「アクセル!?」

光が邪魔だと思いながらも、ルインはアクセルに駆け寄ろうとする。
まだ爆発が続いていたために、触れることは出来なかったけれど、無事を確認したかった。
アクセルは無言で佇んでいる。
表情は光のせいでよく分からない。

ルイン「アクセル、無事に逃げ出せたんだね?よかった…」

光が完全に消えていて、もっと警戒していれば、アクセルの様子が普段と全く違うことに気づけていただろう。
純白のボディに、紅い瞳…。
瞳が、氷の如く冷たいことに。
銃声が響く。

ルイン「!?」

突然のことに、目を見開きながらも、ルインはセイバーで銃弾を弾き返す。
烈鏡断。
エイリアが倒した、アースロック・トリロビッチから入手した技。
これにより、セイバーでエネルギー弾を弾くことが可能となった。

アクセル「無事に決まってるじゃないか。僕は選ばれた新世代型なんだから…」

アクセルは…ルインの知らないアクセルという名の少年は、神の如き傲慢な笑みを浮かべながら言い放った。










































そして、治療を終えてベッドで横たわっていたルナは勢いよく起き上がる。

ルナ「なんだ…この胸騒ぎ…?」

高鳴り続ける動力炉付近を押さえながら、司令室にむかう。
司令室に入ると、モニターが突如異変を起こした。
アイリスが操る端末が、何の前触れもなく砂嵐を巻き起こした。

アイリス「これは…!?」

ルナ「え…これ…」

シグナス「どうした!!?」

驚愕の声を上げるアイリスと呆然となるルナにシグナスが詰問する。

アイリス「電波障害発生。ルインと通信が繋がりません…そしてエネルギーを感知しました。このエネルギー反応は…アクセル!?」 
 

 
後書き
ホワイトアクセル登場。
性格はコピーエックスを参考にしてみました。 

 

第四十九話 宿命

純白の輝きを纏うアクセルは、ルインの知るアクセルとは比較にならない程の機動力で襲い掛かる。
バレットの銃弾を弾こうにも、それが間に合わない程の弾が放たれ、ルインの装甲を削っていく。
今のアクセルの残虐さは相当なもので、かつての仲間に、容赦なく銃弾を浴びせていく。

ルイン「っ…」

アクセル「ふふ…」

膝をついたルインにアクセルは満足そうに笑うと、バレットを軽やかに収めた。

アクセル「サンフラワードを倒した時はやるなと思ったんだけど…大したことないね」

アクセルはこともあろうにサンフラワードの残骸を踏み砕いた。

ルイン「アクセル…」

無邪気な笑顔だ。
まるでルインがよく知るアクセルのようだ。
彼と共に過ごした記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。

ルイン「どうして…こんなことを…」

アクセル「ん?それは僕が使命に目覚めたからさ」

ルイン「使命…?」

明るい笑顔を浮かべながら、アクセルはキッパリと言い切る。

アクセル「エックスとゼロを倒す。それが僕の使命なんだ」

ルイン「そんな…馬鹿なことを言わないで!!」

アクセル「本当だよ」

アクセルの表情には、使命を背負った悲壮感も、達成を願う希望も見えない。
まるで今からピクニックに出掛けるような無邪気な表情を浮かべていた。

アクセル「まあ、僕も最初は知らなかったんだけどね。でもこうやってあの人から本来の力を引き出してもらった時、僕はハッキリと悟ったんだ。僕はエックスとゼロを…殺すために、そして全てを無にするために造り出されたんだよ」

ルイン「そんな…」

このままアクセルを生かしておいたら世界が滅ぼされてしまう。
エックスとゼロは確かに強いが、戦い方を知られているアクセルに勝てるかどうか疑問が残る。

アクセル「そうだ、2人は元気?」

ルイン「さあね…答える義理なんか…ない!!」

近寄ってくるアクセルにルインは凄まじい速度でセイバーを振るう。
並大抵の戦闘型レプリロイドでは回避不可能である一撃。

アクセル「うわっ!!?」

予想外の攻撃にアクセルは慌てて飛びのいた。
何とかギリギリで回避したことで胸部のコアに僅かな傷が入るだけで済んだ。

アクセル「危なかった…」

安堵の溜め息を吐きながら、アクセルは再びバレットを取り出す。
少しでも反応が遅れていたら真っ二つにされていた。
流石はエックスとゼロと並び称されたイレギュラーハンターだ。

ルイン「分かったよアクセル…あなたが、イレギュラーと化し、世界を無にしようというなら、イレギュラーハンターとしてあなたを討つ!!」

普段の彼女からは考えられないくらいの鋭い眼光をアクセルにぶつける。
高い戦闘力を持つ者のみが放てる威圧感にアクセルは上等な獲物に歓喜の表情を浮かべて舌なめずりする。

アクセル「成る程ね。今までは本気じゃなかったってわけ…安心したよ。こうもアッサリだとつまんないからさ」

アクセルがバレットを構えた。
ルインもまた、セイバーからバスターに変形させる。
一触即発。
そんな、ピリピリとした空気を感じさせた。
どちらかが動けば、戦闘が開始されるだろう。
ルインとアクセルもどちらも歴戦の戦士。
双方の殺気と緊張が高まっていく。
両者が引き金を引こうとした瞬間。
アクセルに向けて蒼いエネルギー弾…チャージショットが放たれた。

ルイン「え!!?」

アクセル「なっ!?」

ルインは予想外のことに目を見開き、アクセルは目を見開きながらも咄嗟に回避し、チャージショットが放たれた位置を見遣ると…。

ルイン「エックス!!ゼロ!!」

エックスとゼロの姿があった。
2人は鋭い視線で純白のボディのレプリロイド…変わり果てたアクセルを見つめている。
アクセルは一瞬、“見られてしまった”という表情を浮かべた。
しかし何故狼狽したかも分からず、殆ど無意識のうちに感情を処理すると、すぐに笑顔に戻っていた。

アクセル「やあ、エックス。それにゼロも。2人に会えて嬉しいよ」

エックスとゼロの2人は即座に今のアクセルの異常さを見抜く。
ルインはバスターを握り締める手に力を込めた。
常に冷静なゼロが、掠れた声でアクセルに問う。

ゼロ「アクセル…。まさかお前までイレギュラー化したのか……?」

アクセル「僕はプロトタイプだけど、新世代型はイレギュラー化しないよ。そんなことも分かんない?」

表情には出していないが、酷く動揺しているゼロを小馬鹿にしたような言い方である。

エックス「何故こんなことを…」

アクセル「もう決まっていたことなんだよ。僕が生まれた時からね。僕はエックスとゼロを殺すために生まれたんだ。ずっと忘れていたけどね。旧き英雄を超えることこそが、僕の使命なんだ。2人を倒して僕は完璧な存在になるんだ」

ルイン「完璧な存在なんて…馬鹿馬鹿しい…!!」

エックス「落ち着くんだルイン!!アクセルはシグマに操られているだけだ」

ゼロ「元凶はシグマに決まっている。」

アクセルの姿をしたイレギュラーを忌ま忌ましそうに見つめるルインにエックスが宥め、ゼロが元凶はシグマだと断言する。

アクセル「あーあ。ホントに頭固いんだから」

彼は溜め息を吐いて馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに肩を竦めた。
人を馬鹿にしたような態度はかつてのアクセルにも見られたが、憎らしいと感じたのはこれが初めてだ。
昔の微笑ましさはまるで存在しない。
アクセルは言い捨てて、自らを転送の光に包み込んだ。

エックス「アクセル!!」

アクセル「クライマックスはこれからだからさ。お楽しみは最後まで取っておくよ」

行き先はシグマのアジトだ。
直感だが、もう間違いないだろう。

アクセル「じゃあね!!」

エックス「待て!!」

呼び止めたエックスの目の前で姿が消えた。
伸ばした手が、虚空を掴んでいた。

エックス「……………」

虚しい腕を凝視するエックスに…。

ルイン「どうして…こうなっちゃったんだろう……」

エックスの隣のルインの悲しげな呟きが響き渡った。 

 

第五十話 出撃

 
前書き
第五十話の更新。
今日から3日間、風邪を拗らせたために休ませて頂きます 

 
エックス達がハンターベースに帰還すると、ルナは既に傷が完治してしており、継ぎ足された片足も何も問題なく機能していた。
事情を知った時の彼女の絶望に染まったような表情は見ていて痛々しい。

シグナス「ご苦労だった。エックス、ゼロ、ルイン」

イレギュラーハンター総監のシグナスが総監らしく重厚な声で3人を迎える。
彼もアクセルのことを聞いたのだろう。
皆の知らないアクセルとなり、銃を自分達に向けてきたことを。
シグナスも戸惑わないわけがない。
苦楽を共に過ごした仲間がイレギュラーと化したことに。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
司令官であるなら尚更だ。
シグナスは部下を統べる威厳に満ちた表情を浮かべ、口を開いた。

シグナス「ルイン達の活躍もあって、残りのイレギュラーは残り2体となった。だが油断は禁物だ。早速エックスとゼロに出撃してもらう。ゼロはレイヤーと共にミッションに当たれ、行き先はプリム・ローズだ」

ゼロ「了解」

レイヤー「分かりました」

シグナス「エックスはルインと共にブースター・フォレストに迎え、エイリアとパレット、アイリスはバックアップを。ルナはもう少し休むといい」

エックス「分かりました」

そしてエックスは視線をルインに遣ると、気づく。

エックス「(ルイン…?)」

彼女は悲痛な表情で俯いていた。
不安が胸中に渦巻き、苛まれているような表情。
エックスが声をかけようとした時、ゼロがレイヤーと共に転送準備に入っていた。

ゼロ「行くぞレイヤー。アイリス、バックアップを任せた」

アイリス「任せて…ゼロ、気をつけて」

ゼロ「ああ、エックスも気をつけろ。忌ま忌ましいが、新世代型レプリロイドの性能は伊達ではないらしい」

エックス「ゼロ…分かっている…(でも…アクセルは……新世代型の前に、俺達の仲間なんだぞ?)」

シンクロシステムで電子頭脳に言葉を伝えるエックスにゼロからもエックスの電子頭脳に言葉が伝わる。

ゼロ「(分かっている…だが、アクセルが俺達に銃を向けた時は、イレギュラーとして処分するしかない。それが…俺達イレギュラーハンターだ)」

転送の光がゼロとレイヤーを包み込んだ。
光が消えた時には2人の姿はない。

エックス「ゼロ…」

アイリス「エックス…」

悲しげな表情でエックスに歩み寄るアイリス。
彼女もアクセルをとても可愛がっていた。
アクセルとルナがイレギュラーハンターとなる前は当時は所謂年下のような存在だった為に、自分より年下のアクセルやルナを弟のように可愛がっていた。
それなのにいきなりアクセルがイレギュラー化して、自分達を攻撃してきたなど認めたくはないのだろう。

アイリス「大丈夫よ、エックス。アクセルはきっと正気に戻せるわ。諦めなければきっと…きっと大丈夫だから…」

自分に言い聞かせているようにも聞こえるアイリスの言葉にエックスも少しの間を置いて頷いた。

アイリス「エックス、ルインの傍に居てあげて。アクセルから攻撃を受けて、ルインはきっと傷ついてる」

エックス「ああ」

いくら身体の傷は治せても心の傷は消えないのだから。



























そしてプリム・ローズに転送された2人は、一気に通路を駆け抜ける。
プリム・ローズは、重力制御システムを実験する研究施設であり、サイバースペースに似た冷たい部屋に、金属質の巨大なブロックが置かれていた。

アイリス『ゼロ、レイヤー。聞こえる?この施設には、重力を制御する装置があるようなの。重力方向を変えると、周囲の物体にも影響が出るから気をつけて』

ゼロ「ブロックに押し潰されないように注意しろってわけか…面倒な仕掛けだ」

レイヤー「急ぎましょうゼロさん。」

ブロックが積まれた部屋の中で、2人はメカニロイドを破壊しながら会話をしている。

ゼロ「羅刹旋!!」

レイヤー「雷光閃!!」

空中にいるメカニロイドはゼロが空中での回転斬りで破壊し、レイヤーはレイピアに電撃を纏わせ、高速でメカニロイドを切り捨てた。
大した物だと、ゼロはレイヤーの剣術を評価する。
確かにナイトメアウィルス事件以来に時々何度か会い、柄にもなくいくらか指導をしたが元々非戦闘型であるにも関わらず、ナイトメアウィルスの大量発生地でゼロとルナと一緒だったとは言え、殆ど無傷で潜り抜けた実力はかなりの物だ。
新世代型レプリロイドとの戦いで、彼女の剣の腕は飛躍的に上がっていた。
メカニロイドを殲滅すると、ゼロとレイヤーはスイッチを作動させる。

レイヤー「スイッチによって、重力の制御システムが違うようですね」

厄介な仕掛けだとゼロは顔を顰めた。
彼は頭を使うミッションはあまり好まない。
戦っている方が遥かに気楽だ。
そして、傍らを走るレイヤーが、唇を噛み締めた。

ゼロ「レイヤー?」

彼女の急な変化にゼロは疑問の表情を浮かべ、彼女を見遣る。

レイヤー「…私は彼らを…許しません。こんな戦いを起こし、皆を傷つけたイレギュラーを…ゼロさんやエックスさん、ルインさん達だけじゃありません。エイリア先輩やパレットだって」

普段、感情を表に出さない彼女が怒りに震えていた。
ゼロの知らない彼女がそこにいる。

ゼロ「(俺達が寝ている間に。彼女達には辛い戦いを強いてしまった……。)」

海を思わせるアイスブルーの瞳が悔恨に滲む。
感傷が胸に沸き、前方の景色が一瞬遠いものに見えた。

ゼロ「そうだな。だが、焦りは禁物だ。焦りは判断力を低下させる。」

戦場において、過度の感情は逆効果となる。
それが分かっているからこその言葉。

レイヤー「分かっています。あくまで、冷静に。」

ゼロ「ああ」

2人はそれぞれの武器を握り締め、更に奥へと突き進む。





































駆け抜ける先に執着の扉があった。
扉の先の開けた空間には、こちらに背を向けたレプリロイドがいた。
一見隙だらけだが、背中から放たれるオーラは、迂闊に踏み込めば命がないと思わせる程の恐ろしさを抱いていた。

ゼロ「この反重力研究所の主任研究員、グラビテイト・アントニオンだな?」

ゼロが殺気を内包した声で問うと、レプリロイドは静かに振り返った。

アントニオン「ようこそ、このステージの終着点へ。歓迎しますよ」

知性を感じさせる穏やかな声。
反乱が起こる前は新世代型レプリロイドの中でも優れた研究者だったアントニオン。
ゼロはその片鱗を垣間見た気がする。
尤も、今は戦いを引き起こした憎むべきイレギュラーであることに変わりはない。

ゼロ「シグマが貴様を狂わせたのか?」

アントニオン「狂った…?究極の破壊者となれる可能性を持ち、あの方と同じ素質を持つあなたがそんなことを口にするなど嘆かわしい…。イレギュラーか否かといったレベルで、あの方を測るのは不可能です」

やはり狂っている。
アントニオンの言葉を聞いたゼロは自然とセイバーを握る手に力を込めた。

レイヤー「…私達に理解出来ることは、あなた達を止めなければならないということです」

凛と言い放つ。
気高い華のような構えに、美しい長髪が揺れた。

アントニオン「愚かな人だ…私の邪魔をするというのならば、排除するまでです!!」

瞬間、真四角のブロックが現れる。
キューブドロップ。
巨大な物体を投げつける技。
重量のあるそれは、ゼロとレイヤーの元に勢いよく落下する。
バン!!と弾ける音が小霊し、キューブが砕け散る。
粉々の破片の下には何もない。
2人は寸前で回避していた。

アントニオン「ふふ…」

動物の蟻がそうであるように、アントニオンは壁をよじ登り、天井に移ると、緑色の液体を撒いた。

レイヤー「ゼロさん!!」

ゼロ「しまった…っ!!」

フォーミックアシッド。
粘着質の液にゼロの足が取られる。
レイヤーは直ぐさま駆け付けると、レイピアで液を切り裂いた。

ゼロ「助かった」

見上げると、アントニオンが超越者の如きの顔で見下している。
新世代型レプリロイドとして、アントニオンは旧世代のレプリロイドをゴミのように見下ろしていた。

アントニオン「さっきの威勢はどうしたのです?このままでは私を倒せませんよ」

ゼロ「貴様…」

レイヤー「ゼロさん」

ふと我に返る。
彼の傍らでは、レイヤーが冷静にアントニオンの隙を伺う。
ゼロのアドバイスを彼女は忠実に守っている。

ゼロ「すまない。言った俺が忘れていた。」

伏せ目がちに笑うと鼓動を落ち着かせる。
アントニオンが地に降り立つと、両手を掲げて意識を集中させる。
次の瞬間、巨大なキューブが次々に出現した。

ゼロ「(なる程、これで確実に押し潰すつもりか…)」

落下速度はかなりのものだ。
僅かでもタイミングを外せば下敷きになるだろう。

ゼロ「(レイヤー!!)」

レイヤー「(分かっています!!)」

シンクロシステム起動。
全身の感覚を研ぎ澄ませ、キューブを回避していく。
1つずつ1つずつ、キューブを回避していき、キューブの砕け散る音を聞きながら、敵との間合いを詰めていく。
落ちてくるキューブの数は10を数えただろう。
地面に叩きつける音と振動が、キューブの恐ろしさを痛感させた。
死が一瞬で到来するものだと、嫌でも思い知らされる。
しかし、これを乗り越えられれば勝てる。

アントニオン「な…!!?」

思わずアントニオンは目を見開いた。

ゼロ「これで終わりか?やはり性能が高くても戦いに関しては素人だな」

先程の仕返しも兼ねて余裕の笑みを浮かべながら言い放つ。

アントニオン「キューブを全て回避したというのか!!?」

必殺技を放っている間のアントニオンは無防備であった。
彼は両腕を掲げたまま、間合いを詰めてくる戦士を見つめるしかない。
疾走する戦士達は、まるで演舞でも披露するかのように、引き締まった勇姿を見せ付けた。

ゼロ「行くぜ!!」

2人のリミッターが解放され、セイバーとレイピアの光刃が巨大化する。
2つの剣が哀れなる獲物に躍りかかる。
切り刻まれた身体は生死を問うまでもない。

アントニオン「(………愚かなる旧きレプリロイドよ)」

死の気配を感じながら、アントニオンは低く笑った。
声は出ず、従って2人に笑いは届かない。
レプリロイド…。
人を超える新たなる生命体。
進化した者。
彼は優れた生命体として、自分より劣る生命体を支えてきた。
せれは劣る種への哀れみであり、慈悲であった。
だがその心は愚かな人間がプログラムしたもの。
自分の都合がいいように。
自分はプログラムをされた思考を破った特別な存在。
特別な者のみが生きる世界を実現するという理想は見る見るうちに自分から遠ざかっていくが、彼に後悔はなかった。
生き残った者達が後に続く。

アントニオン「(そして旧き世界が崩壊するのを、恐怖に慄きながら迎えるがいい)」

壮絶な笑みを浮かべながらグラビテイト・アントニオンは果てた。

ゼロ「やったな…」

敵の残骸を見下ろしながら、ゼロが独り言のように呟く。
傍らでレイヤーも頷く。
残る新世代型レプリロイドのイレギュラーは後1人。 

 

第五十一話 贈り物

 
前書き
リハビリ兼ねて、少し過去話。
 

 
ルナはヘッドパーツを外して、自室のベッドで寝ていた。
彼女は寝る時に髪を纏めている。
普段は男勝りな性格ゆえに身嗜みにこだわらないタイプと思われがちだが、そのまま寝ると髪が絡まるために髪留めで纏めている。
この髪留めはアクセルから貰った物なのであった。





































ルナがヤコブに向かう前の出来事。
アクセルは今日がルナの誕生日だと言うのを知り、彼女に渡す物を考えていた。
しかし、男しかいないレッドアラートにいたアクセルに同い年の女の子が喜びそうな物が分かるわけがない。

アクセル『取り敢えず、エックス達に聞いてみよう』





































司令室に向かうと、エックス、ルインがいた。

エックス『アクセル?』

ルイン『どうしたの?』

悩んでいるように見えるアクセルにエックスとルインが疑問符を浮かべた。

アクセル『ねえ、ルナってどんなものを貰うと喜ぶかな?』

エックス『え?』

ルイン『ああ、今日はルナの誕生日だっけ…』

アクセル『そうなんだよ。でも僕、女の子にプレゼントなんかしたことないし…』

ルイン『ゼロには?』

アクセル『ゼロがこういうの分かると思う?』

ルイン『思わない』

アクセルに聞かれたルインがキッパリと言うとエックスが苦笑したのが見えた。
確かに女心にかなり疎いゼロが女の子が喜ぶプレゼントが分かるのかといえば、分からないだろう。
ハッキリ言って毎年のアイリスの誕生日プレゼントは本人の願いを叶えることで何とかアイリスの誕生日を乗り切っているくらいだ。

アクセル『ルイン、アドバイス頂戴?』

ルイン『そうだね…』

可愛い後輩のアクセルの頼みにルインは、口元に手をやると考える。
そして次に口を開く。

ルイン『気持ちが篭っていれば、いいと思うよ?くれるだけで嬉しいし、何よりその気持ちが貰えるだけで私の場合は満足だよ』

エックス『そうだな。無理に高価な物を買うより、自分のことを思ってくれる気持ちが大事なんだと思う。』

アクセル『気持ち…分かった。ありがとう』

ルイン『そうだ。ルナは戦闘型だから、あまり邪魔にならない物の方がいいと思うよ』

アクセル『うん。』

ルインのアドバイスに頷くと、急いで街に向かう。

ルイン『エックス、アクセル可愛いね』

エックス『アクセルとルナを見ていると心が穏やかになるよ。あの子達には人を元気にする力があるのかもしれない』

ルイン『子供だからねえ』

アクセルとルナが聞いていたら確実に抗議しそうなことを言うルインにエックスも苦笑しながら頷いた。



































エックス『ルナ』

ルナ『ん?よう、エックス。何か用か?』

エックス『何か用か?じゃないだろう?誕生日おめでとう。これ、俺達から』

ルナ『お、サンキュー。これケーキだろ?ありがとよ』

エックス『そうそう。アクセルが屋上にいるから行ってやってくれないか?きっとプレゼントをどうやって渡すかで悩んでるだろうから』

ルナ『ん?アクセルも俺に?分かった。後で行くよ』






































しばらくして、仕事を終えたルナはアクセルがいるであろう屋上に向かうのだった。
そして屋上では、アクセルがプレゼントを持ってうんうん悩んでいた。

アクセル『それにしても…ここからの夕日って綺麗だなぁ…』

柄にもないことを呟きながらアクセルが空を眺めていたら。

ルナ『アクセル?』

後ろから思いがけない声が聞こえた。

アクセル『ル、ルナ!!』

ルナ『よう』

軽くパニックになる頭を抑えて、アクセルはラッピングされたそれを隠すとルナに訳を尋ねた。

アクセル『えっと…どうしてここに…』

ルナ『エックスからここにアクセルがいるって聞いてな。来たってわけだ』

アクセル『エックス…』

自分がここにいることをバラしたエックスを怨みながら、ルナを見遣る。

ルナ『綺麗な夕日だな。コーヒー持ってくりゃよかった』

アクセル『うん…ルナ、これ誕生日プレゼント』

アクセルはピンクのリボンでラッピングされているプレゼントを渡す。

ルナ『サンキュー…開けていいか?』

アクセル『うん』

プレゼントを開けると、それは…。

ルナ『これ…』

アクセルからのプレゼントは紅色の髪留めだった。

アクセル『ほら…今まで使っていた髪留めがボロボロだって前に言ってたじゃない?』

ルナ『え?』

確かに前のミッションで言ったかもしれないが、それは何気ない一言だったし、アクセルが覚えているとは思わなかった。
何だか嬉しいような恥ずかしいような気分となり、髪留めを手に取るとアクセルに飛びついて、アクセルの背中に両腕をました。

アクセル「っ!!?」

いきなりのことにアクセルは身体を硬直させる。

ルナ『サンキューな…その、着けていいか?』

アクセル『あ、うん…』

普段戦場では不敵な笑みを浮かべてイレギュラーを容赦なく倒す彼が、目の前の少女に心を乱されている。
しかし不思議と悪い感じはしなかった。
ヘッドパーツを外し、今まで愛用していた髪留めを解き、外す。
髪留めで纏められていた銀髪、サラッと広がる。
そしてアクセルがくれた髪留めを手慣れた手つきで結んでいつものポニーテールにする。

ルナ『どうだ?』

アクセル『あ、うん。似合ってるよ凄く』

紅色の髪留めがとても彼女に似合っていた。
本当に良かった。
ちゃんと渡せて喜んでもらえた。
悩んだ甲斐があったみたいで。

ルナ『そうだ。エックス達から貰ったケーキ食おう』

アクセル『本当!?美味しいよねエックス達の作ったケーキ。』

自動販売機でココアを買うと、ケーキを頬張る。

ルナ『うめえ…』

アクセル『美味しい♪』

ココアを飲みながら、語り合う。
これがルナがヤコブに向かう前の出来事であった。















































ルナ「…ん……」

起き上がると、辺りを見回す。
どうやら夢を見ていたようだ。

ルナ「アクセル…」

髪留めに触れながらアクセルの名を呟くルナ。
しばらくして、立ち上がり、部屋を後にした。 

 

第五十二話 蒼と朱

 
前書き
最後のステージ。
ブースター・フォレストに向かおうとするエックスだが…。
 

 
エックスがルインと共にブースター・フォレストに向かおうとした時、彼女からの提案に、しばらく呆然としていた。

エックス「え…?」

ルイン「お願いエックス。ルナの傍にいてあげて欲しいの」

ルインはもう一度繰り返して、エックスの瞳を覗き込んだ。
彼女からの提案はこうだ。
“自分1人でブースター・フォレストに向かうからエックスはルナを頼む”と。

エックス「…どうしてそんなことを?」

ルイン「…ルナ…アクセルのイレギュラー化で凄く落ち込んでた。元々、イレギュラー化しないはずの新世代型レプリロイドがイレギュラー化したことによる不安に加えてアクセルまでイレギュラー化してしまったから…そのショックは図り知れない」

エックス「……」

確かに今まで、自信に満ちていたルナがあそこまで落ち込んでいたのは見たことがない。
ルインの言いたいことは分かったが、腑に落ちないことがある。
ルナはルインの親友で、ルナの気持ちはルインが誰よりも知っている。
新世代と旧世代の差はあっても、共に人間からレプリロイドとなった2人の絆はエックスとゼロと同じくらい誰にも断ち切れない程に。

ルイン「ルナの今の気持ちは私よりもエックスの方が分かるんじゃない?私も前にイレギュラー化して、エックス達と戦った。」

その言葉で思い出す。
かつて、ゲイトが起こしたナイトメアウィルス事件。
シグマにゲイトが殺されたと思った彼女はナイトメアウィルスを限界以上まで吸収し、異常なまでのパワーアップと引き換えにイレギュラーとなって自分達に刃を向けた。
あの時の状況と今の状況は限りなく似ている。

エックス「(もし、アクセルが俺達に銃を向けてきたら、俺はアクセルを撃つことが出来るのだろうか…)」

自分達の知るアクセルならば、シグマの都合のよい駒となって世界に害を為す存在となるより、破壊された方がマシだと思うだろう。
しかし、心が納得出来るかと言われれば納得出来ないだろう。

ルイン「エックス…ルナのことをお願い。アクセルのことは、エックスが1番よく知っているし…私はまだあのアクセルを受け入れる自信がまだないから…」

エックス「…………」

ルイン「ルナは今、凄く苦しんでる。助けてあげたいけど、私にはその自信がない…エックスならきっとルナを慰められるよ」

エックス「……分かった」

頷くまで、いくらか悩んだ。
エックスは自分にルナを慰める力などあるのか?
この時点で疑問に感じる。
ルナのことを誰よりも知るのは、共通点を持つルインとアクセルに他ならない。
何より、彼女を1人で出撃させるのが不安であった。
だからこそ、心配が自然と口をついた。

エックス「ルイン…どうか無事で…」

ルイン「…任せて」

互いに抱擁を交わし、2人は別々の場所に向かう。
エックスはルナの元へ、そしてルインはブースター・フォレストへ。









































そしてゼロとレイヤーが帰還し、アイリスが2人を迎えた。
レイヤーはゼロとアイリスに気を利かせ、部屋を後にした。

アイリス「ゼロ…アクセルのことだけど…」

ゼロ「なんだ?」

アイリス「何とか元のアクセルに戻せないのかしら…」

ゼロ「分からん。前にルインがイレギュラー化して元に戻ったという前例はあるが、あれはウィルスの過剰吸収が原因だったからな。アクセルの時とは似ているようで違う」

あの時のアクセルの言葉を信じるなら、アクセルもかつての自分と同じ“本来の自分”がいるのだ。
ウィルスで一時的に人格を上書きされたルインとは違う。
恐らくは記憶喪失のために新たに生まれた仮の人格なのだろう。

アイリス「…どうにもならないのかしら……また、大切な仲間がいなくなる…」

アイリスの脳裏に遠い昔、苦楽を共にしたレプリフォースの同志と、兄の姿が過ぎった。

ゼロ「…………」

ゼロもアイリスが今はもう完全に壊滅してしまったレプリフォースのことを思い出していることに気付いたために無言だ。

アイリス「ごめんなさい…。ゼロやみんなが戦ってくれているのに、こんな弱気な発言ばかりして…」

ゼロ「気にするな。お前は1人じゃない」

アイリス「ええ。独りぼっちはとても辛いものね。でも、私にはゼロやみんながいる。だから1人じゃないわよね…」

ゼロ「ああ」

アイリス「今のアクセルは独りぼっちなのよね…イレギュラーの人格に乗っ取られて、世界を傷つけようとしている…何とか助けてあげたい。戦えない私が言っても仕方ないけど…」

ゼロ「全ての元凶はシグマだ」

シグマがあのイレギュラーのアクセルの人格を引き出したのは、まず間違いないだろう。

ゼロ「今度こそ奴を倒す。そして奴との永い戦いもこれで終わりだ」

アイリス「ええ…私は一緒に戦うことは出来ないけれど。心はいつでもあなた達と一緒にいるわ。」

ゼロはアイリスの言葉に頷くと、壁に背を預けて目を閉じた。
次の戦いに備えるために。 

 

第五十三話 信念

ルインがブースター・フォレストに出撃すると、一気に駆け抜ける。
翡翠色の瞳は、獲物を狩る獣の如く鋭い。
遠距離の敵にはチャージショットで粉砕し、接近して来る敵にはセイバーで両断。
途中のライドアーマーがひしめく通路では、ルインは跳躍と壁蹴りを繰り返して搭乗者を倒し、稼動させる隙を与えない。
棘ひしめく道を飛び越えて、爆弾が積まれたコンテナを崩す。
エレベーターに乗り込むと、後はもうボスの下だ。
ゆっくりと上昇していく空間の中、ルインは深呼吸をする。
金属の壁で囲まれた空間が急に開けた。
エレベーターは屋外に繋がっていた。
バイオロイドの巨木が、枝を茂らせ、深緑の葉を広げている。
科学力を結集させてヤコブ関連の施設の中で、唯一、生命の営みを感じさせる場所であった。
バンブー・パンデモニウムはルインの気配を察すると、無表情のままこちらを振り返る。

パンデモニウム「君みたいな女の子がここまで来れるなんて、正直思っていなかったよ。流石はイレギュラーハンターの英雄かな…」

ルイン「……」

パンデモニウムの言葉にルインは無言で彼を睨むだけ。
返事を期待していなかったのか、あまり気にせず次の言葉を紡ぐ。

パンデモニウム「君は知っているかい?ロケットの元となったのは戦争に使われるミサイルだったんだよ。けどそうやって人類はそういった兵器を生み出して来たんだ」

ルイン「君のようなイレギュラーもね」

ハッキリと言い放つ。
鋭い眼光を目の前のイレギュラーにぶつけながら。
言われた本人は気にしていないのか、無表情のまま口を開く。

パンデモニウム「そうだね…でもそうやって人類は戦争の兵器を生み出し続けた。この世界は滅びたがっている」

ルイン「……ふふ」

パンデモニウムが言い終わるのと同時に笑みを漏らす。
見るものを戦慄させる凄絶な笑みを。

パンデモニウム「何がおかしいんだい?」

ルイン「別に。私1人で出撃してよかったって思っただけ。こんな私、エックスに見せたくないから」

パンデモニウム「エックス…旧き世界の英雄だね」

ルイン「私達レプリロイドは考えることが出来る。人間と同じように悩んだり、喜んだり、悲しんだり、人を愛することも出来る。あなたはただ考えることを放棄してるだけじゃないの?世界が自分の思う通りにならないから」

パンデモニウム「………」

彼女の言葉にパンデモニウムは何も答えない。

ルイン「確かに人とは違う考えを持って争うことだってあるよ。でも!!誰かを滅ぼしていいって考えだけは絶対に間違ってる!!あなた達の主張のせいでどれだけの人が無意味な犠牲に苦しめられたか分かっているの!!?」

パンデモニウム「それで君達は僕達を殺すんだね」

ルインはパンデモニウムの言葉に思わず息を飲んだ。
“正義”を司る者として、尤も向き合うことが苦しい矛盾であった。

パンデモニウム「それって、君達も僕達も同じじゃないのかい?」

どれだけのハンターがその矛盾に苦しんだのだろう。
エックスやゼロも自分もそうだった。
目を伏せた彼女に悟ったような声が耳に響く。

パンデモニウム「分かってる。それがこの世界の欺瞞なんだよ。だからこそこの世界は滅びなきゃならないんだ」

背中の砲から爆弾が発射された。
爆弾は一定時間後、頭上に降り注ぎ、爆発した。
爆炎が長い間滞空する。
容易ならぬ相手だとルインは悟る。

パンデモニウム「白黒つけるよ!!」

覚悟の台詞を放ち、ルインに腕を伸ばす。
捕まったら絞め殺されるのは確実だ。
ダッシュで距離を取り、チャージショットを喰らわせる。

パンデモニウム「ぐうっ…」

ルイン「まだまだ!!」

通常弾を連射し、少しずつダメージを与えていく。

パンデモニウム「まだ、終わらないよ…」

バンブースピア。
竹林が敵を覆い隠す。
頑丈な竹はチャージショットでも破壊出来ない。
ならば…。

ルイン「メルトクリーパー!!」

破壊出来ないなら、燃やしてしまえばいい。
炎により、竹が凄い勢いで燃えていく。

ルイン「あなたも炎が弱点じゃない?」

見れば、パンデモニウムが炎に包まれている。
巨体が燃え盛る様は、予想以上に圧巻だった。

パンデモニウム「そうだね…。炎は苦手なんだ」

苦笑したらしいが、炎を纏っての笑みは壮絶以外の何物でもなく、低い声が不気味さを引き立たせた。

パンデモニウム「決着をつけよう…」

突如、パンデモニウムが光を放った。
葉断突。
パンデモニウムの渾身の力を込めた一撃である。
衝撃波が渦を巻いて爪を包んでいる。
光が舞う瞬間、突風が吹いた。

ルイン「くっ…!!」

葉断突の波動に巻き込まれぬように射程範囲外に逃げようとする。
しかし輝く爪がルインの視界を席巻する。
凄まじい轟音が響き渡る。
光が収まると、そこにはルインの姿がない。

パンデモニウム「これで…」

ルイン「終わらない!!」

パンデモニウム「!!?」

真上から聞こえてきた声に反応し、上を見上げると燃え盛るセイバーを下に突き出しながら落下しているルイン。

ルイン「焔降刃!!」

燃え盛るセイバーがパンデモニウムに致命傷を与える。
炎がパンデモニウムの内部機関さえも破壊して。

パンデモニウム「…僕の負けか……」

数秒後、パンデモニウムが音を立てて崩れ落ちた。

ルイン「油断大敵だったね」

ゆっくりとパンデモニウムに歩み寄る。
敵はとても穏やかな表情を浮かべていた。
潔い態度だとルインは思う。
パンデモニウムは微笑んでいる。

パンデモニウム「世界は君達を選んだ。君達が正しかったんだ。」

ルイン「違うと思うよ」

パンデモニウムの言葉をルインは間髪入れずに否定した。

ルイン「たった1度の戦いだけで、自分の正義を証明するなんて出来ない。あなたが指摘した欺瞞も、多分その通りなんだと思う。」

彼女の言葉にパンデモニウムは驚いていたが、ルインは構わずに言葉を紡いだ。

ルイン「私達も迷いながら戦っている。時に間違えたり、道を踏み外してしまうかもしれない。でも、過ちから学ぶことだって出来るの。迷い…学びながら、少しずつ、前に進む。互いに助け合いながらね。それが私達が造られた理由」

パンデモニウム「…………」

命の灯火が消えていく。
反乱を起こした最後のイレギュラーは、ルインの言葉を胸に刻みながら果てた。
死顔は至極穏やかだった。
傷の痛みも、戦いの苦しみも、全て解き放たれたような表情であった。
ルインはパンデモニウムのDNAデータを回収すると、ハンターベースへ帰還するのであった。 
 

 
後書き
8ボス撃破 

 

第五十四話 覚悟

もし、現在ハンターベースの屋上に行けば、よく晴れた青空の下で、並んで立っている青年と少女を目にすることが出来る。
エックスとルナである。
屋上にいた彼女を見つけて今に至る。
鳥の囀りがよく聞こえる穏やかな昼下がりだ。
白い雲がたなびいて、エックスの視界の端から端まで、ゆっくりと流れていく。

エックス「怪我はもういいのか?」

ルナ「ん?ああ…大丈夫だよ。怪我ならとっくに治ってるから。やっぱりゲイトは凄いぜ。天才科学者の称号は伊達じゃない」

彼女の言う通り、彼女がイエティンガーから受けた傷は既に感知している。
まるで怪我をしていたことを感じさせないくらいだ。
ゲイトの技術力の賜物だろう。

エックス「そうか…」

しかしエックスはこの時ばかりはレプリロイドの高い自己治癒能力とゲイトの技術力を怨んだ。
だが、彼女にアクセルのことを伝えなければならない。

エックス「ルナ…アクセルはシグマに操られているだけだ。彼の意志で俺達を攻撃したわけじゃ…」

ルナ「分かってるよ…頭じゃ理解してるんだけど…」

アクセルがシグマによって操られ、自分達に攻撃してきた。
頭では理解していても、心はどうにもならない。

エックス「………」

ルナ「…イレギュラーハンターとして…アクセルを殺さないといけないのかな…?」

彼女の呟きにエックスの目元に皺が刻まれたが、少しの間を置いて口を開く。

エックス「彼が…あのまま、俺達に銃口を向けるのなら…戦うしかない」

ルナ「…だよな」

覚悟はしていたが、いざ言われると彼女の表情が悲しげに歪む。

エックス「仲間であっても……いや、仲間だからこそ引き金を引くのを躊躇ってはいけない。今のアクセルをあのままにしていたらどれだけの犠牲が生まれるか。俺はイレギュラーハンターとして、その現実から目を背けることは出来ない。それに…俺達の知るアクセルなら、イレギュラーでいることを望まないと思うんだ」

ルナ「……」

エックスの表情は、アクセルと戦う運命に対する悲壮感が色濃く出ていた。
しかしそれ以上の決意で強く引き締まっていた。

エックス「俺はアクセルの魂を救うために戦う。それがハンターとして俺に出来る彼に対しての手向けだ。」

ルナ「………」

空は徐々に明るさを失い、蒼い色を紅へと変えていく。
紅と紫の混じった夕焼けが凄烈な光を放ち、アクセルとの戦いへの感傷を否応なしに高めていく。

ゼロ「…エックス」

ゼロが屋上に姿を現す。
出撃を報せに来たのだ。

ゼロ「ヤコブの頂上にエネルギー反応を感知した……アクセルだ」

エックスは固く瞼を閉じ、ややあって頷いた。
司令室へと、足を踏み出す。

ルナ「待てよ!!」

振り返るとルナが強い眼差しを2人に注いでいた。

ルナ「お前らだけに任せられるかよ!!俺も一緒にアクセルと戦うぜ!!」

ゼロ「………!!」

ゼロは何か言おうとした時、エックスが制止する。
目を見開くゼロに、エックスが頷く。
ルナの瞳に迷いはなかった。
決意が満ち溢れ、吹っ切れていた。

エックス「(ならば俺も覚悟を決めなければ…)行こう、ルナ。アクセルの所に」

ルナ「おう!!」

そして、アクセルとの避けられぬ戦いが幕を開く。 

 

第五十五話 別れ

 
前書き
エックス達VSアクセル 

 
目まぐるしく変わる景色を引きずりながら、エレベーターは天へと昇っていく。
熱帯林の緑が遠ざかり、茂みから飛び出した鳥達が点を描いていた。
聖書に語られる“梯子”は、時速数千キロメートルの速度で上昇している。

アイリス『軌道エレベーター・ヤコブ。コントロールシステム、オールグリーン…いよいよ宇宙ね…頑張って!!』

アイリスの激励の言葉がエックス、ゼロ、ルイン、ルナの4人の闘志を奮い立たせる。

パレット『皆さん。負けないで下さいね?アクセルを助けて…』

ルイン「勿論。スクイーズボム!!」

敵の弾を、引力の性質を持つ重力弾で吸収する。

ゼロ「雑魚が…邪魔をするな天照覇!!」

拳を床に叩きつけたゼロに向かっていくメカニロイドが、光に飲まれて消える。

エックス「ドリフトダイヤモンド!!」

冷気弾が放たれ、イレギュラー達の動きを封じると、新たな強化アーマー、イカロスアーマーのレーザーチャージショットを喰らわせる。

ルナ「てめえらなんざ、足止めにもならねえよ!!」

カマキールに変身すると同時にガードロイドを真っ二つにする。
瞬く間に敵を殲滅したエックス達が上空を毅と睨んだ。
宇宙空間に突入したようだ。

アイリス『後少しで頂上よ。準備はいい?』

アイリスの通信と同時に、宇宙への扉が開いた。
そこには、純白のボディのレプリロイド。

エックス「アクセル…」

アクセル「やあ、エックス。それにゼロも…待ち遠しかったよ。ずっと待っていたんだ。ルインとルナだっけ?君達も来てくれるなんて嬉しいよ」

ルイン「アクセル…イレギュラーハンターとしてあなたをイレギュラーとして処分します」

ルインの厳然な言葉にアクセルは笑みを浮かべる。
宿敵である2人と別方向の進化を遂げた2人が自身に戦いを挑もうとしていることに歓喜する。

ルナ「よう。アクセル…遊びに来てやったぜ?此処まで来るのに散々雑魚の相手をさせられたんだから、それなりの待遇を期待してもいいよな?」

挑発的な笑みを浮かべて言うルナにアクセルも無邪気な笑みを返す。

アクセル「勿論だよ。最高のおもてなしをするさ」

バレットを構えるアクセルにルナもバレットを構えた。
同時に放たれた銃弾がぶつかり合い、相殺される。

エックス「アクセル!!」

イカロスアーマーを解除し、チャージ速度を早めるヘルメスアーマーのヘッドパーツ。
ダメージを軽減させるイカロスアーマーのボディパーツ。
バスターの出力を向上させ、一段階のチャージショットが放てるようになるイカロスアーマーのアームパーツ。
そして最後に機動力を大幅に向上させるヘルメスアーマーのフットパーツを装着すると、かつてのガイアアーマーと同等かそれ以上のチャージショットの嵐がアクセルを襲う。

アクセル「へえ…」

アクセルはそれをローリングとホバーを駆使して回避する。
標的を失ったチャージショットは宇宙の闇へと吸い込まれた。

エックス「(速い…かつてのアクセルとは比較にならない…)」

アクセルはエックス、ゼロ、ルイン、ルナとは違い、ホバーを装備している為に防御が低い代わりに機動力が高い。
本来の力を取り戻したアクセルはかつてのアクセルとは比較することすら馬鹿らしいと思えるくらい速い。

アクセル「やるねえ、それじゃあ始めようか!!」

銃声が戦いの火蓋を切って落とす。
銃弾はルインに向けて放たれる。
アクセルが火力不足が気になってルナに連射性能を引き上げてもらったのはつい最近のことだ。
火力自体を上げると、あまり認めたくはないがアクセルの握力では反動に耐えられないため、連射によってそれを補っていたのだ。
一撃一撃の威力は低いが、あの正確無比な射撃の連射を受けたら、いくら何でも危険だ。

ルイン「手加減しないよアクセル!!」

今のアクセルに手加減は不要と感じ、OXアーマーを纏うと同時にチャージショットを放つ。
アクセルは余裕の表情でチャージショットをかわした。

ゼロ「一気にカタを着ける!!」

ゼロも強化形態を発現させ、紅いアーマーを今のアクセルとは対象的な漆黒のアーマーを纏うと同時に、通常時とは比較にならない機動力でアクセルに肉薄する。
かつてのアクセルなら見切れなかったであろう一撃。
しかし…。
眩い火花が散る。
瞬きするコンマ数秒のうちに、ゼロの一撃はかわされ、逆に肩を撃たれていた。
“Z”の文字を刻んだプレートが、弧を描いて、乾いた音と共に地面に落ちた。

ゼロ「ぐっ……」

アクセル「思ってたよりも速いね。まあ、僕には遠く及ばないけど」

潜在能力を解放されたアクセルは元々高かった機動力が強化状態のゼロでも相手にならない程にまで強化されていた。
ゼロの傷は関節をイカれさせる程ではないため、表情を歪めるだけに留める。

エックス「レーザーチャージショット!!」

ルイン「ダブルチャージショット!!」

ルインとエックスがダブルチャージショットとレーザーチャージショットを繰り出すが、性能が以前とは比較にならないホバーで、回避され、アクセルのバレットが光を放つのと同時に形を変えた。

ルナ「何!!?」

アクセル「驚くことはないでしょ?コピー能力の応用。今の僕ならDNAデータさえあればこれくらい出来るよ。他人に頼らなくてもね!!バウンドブラスター!!」

バウンドブラスター。
トリロビッチのDNAデータにより、使用可能となった反射エネルギー弾が壁と床に反射し、ルナを撃墜する。

ルイン「ルナ!!よくも!!」

ルインがアルティメットセイバーを構えてアクセルに突進する。

アクセル「ルインのは確か、キャプチャリングシステムだっけ?」

渾身のチャージセイバーをかわすと同時にバレットをルインに向ける。
バレットが形を変え、かつてアクセルが使用したギガランチャーに酷似したバズーカに。
パンデモニウムのDNAデータにより、使用可能になったのだろう。

アクセル「エックスのウェポンチェンジシステムやゼロのラーニングシステムもそうだし、DNAデータを組み込むのも色々あるんだねえ…ブラストランチャー!!」

ブラストランチャーの手榴弾がルインに炸裂する。

ルイン「うっ!!」

まともに手榴弾の爆発を受けたルインは地面に叩き付けられた。

エックス「ルイン!!」

アクセル「他人のことを気にしてる場合?ブラックアロー!!」

ボウガンを思わせる銃を向けると追尾性能を持った矢がエックスの腕に掠る。

エックス「それは…」

レイヤーが倒したカマキールのDNAデータにより使用可能になったブラックアローだ。

ルイン「っ…」

痛みに顔を顰めるが、死は逃れている。
ゼロもルナもエックスもダメージから回復し、構えた。
流石は伝説のレプリロイドと別方向の進化を遂げたレプリロイド。
アクセルはエックス達の実力に本気で恐れ入った。

アクセル「ふふ。でもこんなんじゃ駄目だね」

ルナ「くそ…、スピードが桁外れ過ぎる…こんなんアリかよ…」

彼女は唇を噛み締めながら、アクセルを見つめる。
純白のボディが、ヤコブの照明に照らされて神秘的な光を晒していた。
吊り上がった瞳が鮮血の如く不気味で、美しいのに何処か汚れていた。

エックス「アクセル…」

アクセル「そう、あんた達を超えるために造られた、進化したレプリロイドなんだよ」

ゼロ「何が進化だ…」

吐き捨てるゼロにアクセルは笑みを更に深くした。

アクセル「昔々、とっても優秀な2人の科学者がいた。1人はいい人で、もう1人は悪い奴だった。僕は悪い科学者…アルバート・W・ワイリーの正真正銘、最後の作品なんだよ。一応ね」

その言葉にエックスとゼロは呼吸を止めてアクセルを見入る。

アクセル「今まで沢山の科学者があんた達を目指してきた。じいさんがいなくなってから僕の開発を進めていたあいつもロクでもない奴だったなあ。正確には僕はワイリーナンバーズと言うよりワイリーナンバーズの技術が使われたレプリロイドってのが正しいかも。あいつが色々弄ってたし。でもまあいいや、今となってはどうだっていいことだし」

彼は投げやりに話を終わらせるとバレットを握り締めた。

ルイン「アクセル…」

アクセル「今の僕の最優先事項はあんた達を倒すことだからさ」

ルナ「そんなこと…させるかよ…」

バレットを握り締めながら立ち上がるルナにアクセルも笑みを深めた。

アクセル「じゃあ、まず君から鉄屑にしてあげる。その後、エックス達を殺してあげるよ!!」

狂った笑い声が静寂の闇に昇っていく。
冷たい空気の温度を更に冷まし、凍りつかせてしまう程に。
冷え固まった空気の中に、乾いた哄笑が虚ろに小霊する。
しかし、笑いが急に途絶えて、アクセルが頭を抱えて呻き出した。

アクセル「…た…す、け……て…」

ルナ「え?」

先程とは打って変わって掠れた声が彼から漏れる。
鮮やかな紅い瞳が濁り、苦しげに息を繰り返した。

アクセル「助けて…」

顔がくしゃくしゃに歪んでいた。
浮かぶのは狂気ではなく、苦痛と恐怖であった。

ルナ「アクセル!!」

アクセル「怖いよ…こんなの嫌だよ…僕……ああ!!」

乾いた銃声が響き、銃弾がルナの頬を掠った。
気がつけば、残酷な彼に戻っていた。
瞳に狂気が宿る。

アクセル「やだなあ、隙だらけじゃない。そんなんじゃ僕を倒せないよ?」

エックス「アクセルお前!!………」

激昂したエックスがハッと硬直した。
彼の瞳に宿るものが、彼の胸中を雄弁に語っていた。
彼を支配するのは、苦痛と恐怖、絶望であった。

“殺して”

“助けて”

双眸が必死に彼の本心を叫んでいた。

アクセル「ほら早く…こんなチャンスないよ?これで撃てなかったら…ハンター失格だよ…?撃てないっての?撃てなきゃ殺しちゃうよ?ほら…」

もう1つ銃声。
今度はエックスに向けられていた。
震える銃口から発射された弾は、エックスから大分離れた場所に飛んでいく。
彼の中で2人のアクセルがせめぎ合い、彼の支配権を得ようとしているのが分かった。

ルイン「アクセル…」

アクセル「いいから早くって言ってるだろ?早くしてよ!!伝説のレプリロイドって称号は偽物なの!!?皆を守るって誓いは口だけ!!?」

エックス達は武器を構えたまま動けなかった。
アクセルの気持ちに応えなければ、そう思っていながら、エックスもルインも、ゼロでさえ最後の一撃を出せないでいた。
誓ったはずなのに身体が動かない。

エックス「(俺達は、たった一人の仲間さえ助けられないのか…!!?)」

アクセルの意識は限界であった。
もう1人のアクセルが、自我を侵していく。
貧血で気が遠くなるような感覚が、寒気と共にアクセルに襲い掛かる。
倒れるわけにはいかない。
倒れたら…残酷な自分に戻ってしまう。

アクセル「早く…」

パァン……!!

迷いを断つ真っ直ぐな音がアクセルの頭を撃ち抜いていた。
ルナが放った一撃は、頭のコアを割り、頭部を貫く。
隙間を通したような、針の穴に通すかのような鮮やかな一撃であった。

ルナ「…ごめん」

アクセルは呆然と彼女を見つめている。
数瞬の間を置き、アクセルの身体が、糸の切れた傀儡のように崩れ落ちた。

 
 

 
後書き
アクセル撃破。 

 

第五十六話 別れ2

倒れたアクセルにエックス達が駆け寄ったのは、それから間もなくであったが、命の灯火がもうじき尽きようとしているアクセルにとっては随分長い時間だと感じられた。

エックス「アクセル…」

呼び掛ける声の優しさに、アクセルは涙が出そうになる。
身体は言うことを利かなかった。
全身の力が抜けてしまっている。
丁度寝起きの怠さに似ているが、現実は正反対であった。
これは眠りにつく倦怠感。
眠りとはすなわち、“死”を意味している。
もう1人の自分は、まだ存在している。

アクセル「は、は……まだまだだね、エックス…」

口をつく言葉が皮肉にしかならない。
本来の自分は自分より遥かに残酷で皮肉屋であった。
彼の影響がまだアクセルに残っていた。

アクセル「あんたなんか、殺す価値もないよ…こんな…イレギュラーに、躊躇っちゃってさ…」

ルイン「……アクセル、喋らないで」

ルインが悲しみを湛えた声で言う。
アクセルは微笑む。
最期の最期なのに、名前を呼ばれて嬉しかった。
彼を呼ぶ者はもう1人いた。
彼を撃ち抜いたルナである。

ルナ「アクセル…ごめん…ごめんなさい…」

アクセル「ルナ…」

謝り続ける彼女にアクセルは、穏やかな眼差しで見つめる。

アクセル「やっと思い出した…。あの時、皆を忘れて…あんなに傷つけた。あんなに酷いことをした…ごめんね…皆、ごめん…」

アクセルの謝罪に首を振る、ルナに、アクセルは遠い目をする。
星がとても綺麗で冴え冴えとしていた。
氷のように冷たかった。
自分の身体が氷のように冷たくなっていくのを感じる。
目が霞み出す。
アイセンサーにノイズが生じて、砂嵐を広げていく。
遠ざかっていく目の前に、震えながら手を伸ばした。
手は、ルナの前に差し出された。
アクセルは笑いながら最期の言葉を紡ぐ。
もし再び目覚めることがあったら、その時はルナの名前を呼ぶ。
覚えている。
忘れたりなんかしない。
絶対に覚えている。
そう誓って。

アクセル「今度は忘れないよ…きっと……」

アクセルの手が、ぱたりと落ちた。

ルナ「アクセル!!」

ルイン「嘘…」

ゼロ「…………」

エックス「くそ…っ!!」

エックスが拳を地面に叩きつけた。
仲間を救えなかった己の無力さに腹が立った。
その時、エックス達の聴覚器に何故か酷く懐かしく感じられる声が届いた。

アイリス『エックス!!ルイン!!ゼロ!!ルナ!!状況は…アクセルは…?』

通信機越しに尋ねてくるアイリスに、ゼロは少しの間を置いて静かに答えた。

ゼロ「こちらゼロ…………アクセルは………俺達が処分した。」

アイリス『っ…そう』

一瞬息が詰まったような音がした後、アイリスは悲しみを堪えたように声を絞り出した。

アイリス『お疲れ様…皆』

ゼロ「アイリス、俺を含めた全員が負傷している。特にルインのダメージが酷い。ゲイトを含めたライフセーバーの手配をしていてくれ……」

淡々とアイリスに指示を出していくゼロだが、付き合いの長い自分達には分かる。
ゼロもまたアクセルを救うことが出来なかったことの自身の無力さに打ちひしがれていた。
無表情の中に押し込められた悲しみがシンクロシステムを使わずとも自分達に伝わってくるのが分かった。

アイリス『ええ、分かったわ。地上に着いたら直ぐに転送するから。地上に着いたら通信を入れて』

ハンターベースへ帰還するには、地上のある最下層まで降りなくてはならない。
地上に着いたら直ちに通信を入れるように伝えたアイリスは、転送の準備をして待っていると通信を切った。
アクセルを抱えて立ち上がったエックスとその隣のゼロ達は、どちらからともなく歩き出し、地上に戻る。








































エレベーターが、果てなくそびえる建造物を下っていく。
腕を組み壁に背を預けて立つゼロは、微かに漏れる機械音を聞いていた。

ゼロ「(紅の破壊神だの武神だの言われていても、俺には仲間を救う力すらない)」

アクセルと出会ってからの思い出が走馬灯のように過ぎていく。
“本当の自分”。
かつてゼロも自分が本来の自分に飲まれそうになったことがあり、最後のアクセルの恐怖が痛い程に分かった。
同時にそんなアクセルを救えなかった自分に腹が立つ。

ゼロ「(肝心な時に俺は無力だ)」

カーネルの時もそうだった。
あの時、自分が何かしら行動していたらカーネルは死なずに済んだかもしれないのに。

ルイン「(アクセル…)」

エックスの隣で、エックスに抱えられたアクセルを見つめる。
アクセルの死顔はとても穏やかでまるで眠っているように見えた。
しかしアクセルが目を覚ますことは…。

ルイン「…っ」

そこまで考えてルインは思わず唇を噛み締めた。
諦めては駄目だ。
昔、大破した自分とゼロだって助かったのだ。
アクセルもきっと助かる。
助かって欲しいと、ルインは心の底から祈った。

エックス「(また俺は仲間を守れなかった。)」

エックスも抱えていたアクセルに視線を遣り、悲しげな表情をする。
脳裏に最初のシグマの反乱の戦いで、大破したルインとゼロの姿が過ぎった。
いくら英雄だの何だの言われているが、大切な仲間を守ることも救うことも出来ない。
エックスはチラリと、ルナの方を見遣ると、隅の方で膝を抱えながら座っていた。
翡翠色の瞳から大粒の涙を流しながら息を殺しながら泣いていた。
普段の勇ましい彼女からは想像出来ないくらい痛々しい姿にエックス達は視線を逸らした。

ルイン「(お願い、アクセルを助けて…)」

ルインは祈るように瞳を閉じながら胸中で呟いた。























遠い世界。
白い光に埋め尽くされた世界にアクセルは佇んでいた。
彼は待っていた。
自分が慕ってやまない人を。
自分を拾い、育ててくれた…最初に名前を呼んでくれた人を。
人影がようやくアクセルを迎えにきた。

アクセル『レッド!!』

会いたいと願っていた願いは、最期に報われた。
レッドは笑いながらアクセルに手を伸ばし、アクセルはその手をしっかりと握り締めた。 

 

第五十七話 覇王

 
前書き
アクセルを処分したエックス達はハンターベースに戻る 

 
地上は夜の闇を深めていたが、ハンターベースの中では、真昼のような照明が室内を照らしていた。
イレギュラーの反乱が収束を迎えるにつれて、今度は復興の準備が慌ただしくなる。
破壊されたヤコブ関連施設を復旧させるために、作業用レプリロイドとメカニロイドが、続々とハンターベースから派遣される。
多数のレプリロイド達が行き交う中、この部屋だけはいやに静まり返っていた。
救急治療室。
大きな機械が置かれ、配線が絡まって床に伸びている部屋でゲイトはカプセルに収められたアクセルを見て口を開く。

ゲイト「アクセルを直せと言われても…メインメモリーを撃ち抜かれたら、新世代の自己治癒能力をもってしても不可能だと思うんだが…」

アクセルはあの後、ハンターベースの医務室に運ばれた。
既に機能停止しているが、亡骸を放っておくわけにもいかない。
それにかつて大破したレプリロイドが奇跡的に復活した前例もあるため、僅かな望みに縋って、運んできたのだ。

ルイン「ゼロや私はアクセルより酷い状態なのに直ったよ」

ゲイト「2人の場合はメモリーが無事だったからだろ?今回のは…無理だ。」

ルイン「お願い」

躊躇するゲイトに頼む。
有無を言わせぬ目だ。

ゲイト「やってはみる。けれど駄目元だと思った方がいい」

ライフセーバーが慌ただしく飛び込んで来る。
アクセルの修復のために、急遽呼び出されたのだ。
ゲイト達が無言で佇む中、医師達の足音だけがけたたましい。

ゲイトは今のアクセルを見て、無意識に呟いていた。

ゲイト「まるで棺のようだ…」

バシイ!!

彼は第一印象を率直に述べただけで、実際アクセルの現状は棺に収められた亡骸そのものだった。
しかし仲間の前で思わず言ってしまったのは紛れも無い失敗である。
ゲイトは素晴らしい平手をかまし、バタバタと出て行ったルインに唖然となる。

ゲイト「…流石、朱の舞姫と言われるだけのことはあるな……」

手加減なしの平手を受けて腫れ上がった頬を摩りながら、ゲイトは思わず溜め息を漏らす。




































ルインは途中ばったり、エックスとルナに出くわした。

エックス「ルイン」

ルインを見るエックスには暗い影が付き纏っている。
錯覚に決まっているが、エックスの周りだけ空気の重さが増したような気がした。
ルナはエックスよりも酷い。
まるで目に見えぬ黒い影が、彼女を押し潰してしまいそうだった。
ルインは、ゲイトの診断を伝えるべきかどうか悩んだが、口を開く。

ルイン「ゲイトは試してみるって…」

エックス「そうか……」

ルナ「…………」

エックスはルインの表情から修復が不可能だと悟ったのだろう。
暗い影を一段と深め、申し訳なさそうに俯いた。

エイリア「エックスとルインはミーティングに参加して」

パレット「先輩には私達がついてますから」

エックス「……分かった。頼む」

ルナをエイリアとパレットに任せてエックスとルインは司令室に向かう。









































司令室には、ゼロとレイヤー、アイリス、シグナスがいた。
壁に寄り掛かり腕を組むゼロは、触れたら両断されそうな険しい顔をしている。
エックスとルインは拒絶に満ちた重苦しい空気の中に静かに入っていく。
エックス達の視線がゼロとぶつかる。
ゼロはエックスとルインの様子から、アクセルにまつわる話を全て悟った。
シグナスもレイヤーもアイリスも同様に悟ったのだろう。
沈痛な表情を浮かべたが、その沈黙をシグナスが破る。

シグナス「シグマの居所は衛星ムーンだ。」

シグナスが今やイレギュラーの巣窟と成り果てた月をモニターに映しながら言う。

シグナス「ヤコブでの戦闘後に確認されたイレギュラーから解析した結果、シグマはゲートウェイを通過し、月に向かったと判明した。月面基地にイレギュラー反応が多数出現している。もう間違いない」

アイリス「現在基地を調査中ですが、電波障害が激しく、詳細は把握出来ません……」

アイリスが説明を続ける最中、唐突にモニターが点滅する。

アイリス「通信が割り込みます!!これは!?」

巨大なスクリーンに“Σ”の刻印が映し出され、水色の光が異常を告げる赤へと変わる。
癌細胞が正常な細胞を侵すように変えていく。
現れた忌まわしい男、シグマ。

エックス「シグマ!!」

シグマ『久しぶり、というべきかな、エックス』

何度も自分達を苦しめてきた宿敵。
何度倒しても蘇り、こうして立ちはだかってくる。
憎むべきイレギュラー。
怒りを顕わにするエックスに、シグマはやはり仰々しく口を開いた。

エックス「やはり貴様だったんだなシグマ…よくも…よくもアクセルを!!」

アクセルを操り、死なせる原因を作ったシグマに食ってかかるエックスをシグマは嘲笑う。

シグマ『お仲間の追悼の時間を設けてやったのだ…感謝してもらわんとな』

エックス「貴様ぁ!!」

ゼロ「俺を怒らせたことを後悔させてやる…」

凄まじい怒気を纏ったゼロがシグマに負けぬくらい低い声で言った。

シグマ『ククク…愚かな。貴様らの世界が崩れ始めているというのに!!』

ルイン「世界が…?」

シグマ『そう、最早地上に未来はない!!貴様達、旧き世界の宇宙開発は全て我が物だ!!旧き世界は、もうその役目を終えたのだ!!』

ゼロ「宇宙、だと……?」

ゼロはギリリと唇を噛み締めながら呟いた。
目の前にいるのがモニターに映ったシグマでなければすぐにでも叩き斬っている。
アクセルの仇が目の前に映っているというのにそれが出来ないのが腹立たしかった。

エックス「貴様…何を企んでいる!!?」

問い質そうとするエックスに嘲笑を浮かべるシグマ。

シグマ『企む?これは自然の摂理だ。進化だよ、エックス。進化した者が生き延び、流れに乗り遅れた者は死に絶える。古から受け継がれる理だよ!!ふはははは!!お前達はアクセルがどうだと言っているが、失敗作のプロトタイプの命などどうでもいいことだ!!お前達も後を追うことになるのだからな!!私自ら引導を渡してやろう。進化したレプリロイドの王としてな!!』

ルイン「シグマ…!!」

アイリス「ふざけないでよ…っ!!」

レイヤー「アイリス…さん?」

レイヤーは目を見開いてアイリスを見つめる。
普段は穏やかな頼れる先輩であるアイリスの表情が深い悲しみと憤怒に染まっていた。

アイリス「シグマ…あなたは私達からどれだけ大切な物を奪えば気が済むの…?何もかもあなたがいたからっ!!!!」

直ぐにでも護身用の拳銃を抜きかねない勢いでモニターに向かって叫ぶ。
エックス達はイレギュラーハンターの仲間を。
アイリスはレプリフォースの同志と兄を。
誇り高い戦士だった彼らはモニターに映る悪魔のせいで死んだのだ。

シグナス「落ち着け!!」

激しい怒りをぶつけるアイリスを制し、シグナスが淡々たる口調で言う。
それは感情を押し殺した、怒りが強く滲む声であった。
彼もまたシグマに苦楽を共にした仲間を奪われたのだ。
その怒りは永きに渡る因縁を持つエックス達には及ばないかもしれない。
しかしそれでも全ての元凶を睨み据えた。

シグナス「シグマ…私は貴様を進化した者とは断じて認めない。犠牲を払う進化などない。貴様のしていることはただの暴走だ。」

ゼロ「暴走と進化を履き違えた愚かなイレギュラー…」

エックス「イレギュラーハンターとして、俺はお前を許さない!!」

ルイン「あなたとの決着を…今度こそ着ける!!」

シグマ『ふふふふ、はははははは!!』

高笑いをするシグマの姿がメインモニターから消えた。
全員がモニターを睨んでいたが、次の瞬間に気持ちを切り替える。

ルイン「それにしても…ヤコブ計画が最初からシグマに狙われていたなんてね」

アイリス「でもそう考えると全ての辻褄が合うわ……宇宙開発が盛んになった背景と新世代型レプリロイドの開発は無関係ではないもの……」

ゼロ「そこへ来て、新世代型のイレギュラー化、か……いずれにしても、奴をこのまま放っておく訳にもいくまい」

アイリス「ええ、さっきの通信で逆探知に成功したわ。発信源はポイントRYH46。最大規模を誇る月面基地。そこにシグマがいるはずよ」

エックス「ああ、これで最後だ…シグマ…決着を着ける!!」

ルイン「今度こそ終わらせる!!シグマとの因縁を!!」

決意を胸にエックス達は表情を引き締めた。
エックス達とシグマの永きに渡る因縁も終わりを迎えようとしていた。 

 

第五十八話 四天王撃破

ヤコブ計画の重要拠点である月面基地はシグマパレスと呼ばれている。
人類の希望とされていた施設は今やイレギュラーの巣窟となっている。
エックス達が現れると、ガードロイドの大群がひしめいていた。
エックス、ゼロ、ルイン、ルナはそれぞれの武器を構えて突撃する。
エックス達はルナが出撃するのを止めようとしたが、本人が動いている方が何も考えずに済むというからシグナスが出撃を許可した。

ゼロ「邪魔をするなら…叩き斬るまでだ!!」

ゼロのセイバーがガードロイドに唸る。
ガードロイドはあっさりと真っ二つにされた。

ルナ「トランスオン!!アイスガトリング!!」

イエティンガーに変身し、アイスガトリングでガードロイドを複数凍りづけにする。

ルイン「羅刹旋!!」

空に浮かぶガードロイドにはルインが回転斬りを喰らわせ、迎撃する。

エックス「レーザーチャージショット!!」

高い貫通性能を持つ極太のレーザーのチャージショットがガードロイドに炸裂する。
狭い空間、もしくは相手が密集している場合、自身のチャージショットは充分な効果を発揮する。
ガードロイドを蹴散らして、一気にシグマパレスに突っ込もうとした瞬間。

ウェントス「プラズマサイクロン!!」

テネブラエ「十字手裏剣!!」

イグニス「メガトンクラッシュ!!」

グラキエス「フリージングドラゴン!!」

雷を纏う竜巻、十字型の大型手裏剣、巨大な火炎弾、氷の竜ががエックス達に迫る。

エックス「スクイーズボム!!」

咄嗟に繰り出したチャージスクイーズボムで竜巻、手裏剣、火炎弾、氷竜を何とか凌ぐ。

エックス「お前達は!!?」

グラキエス「やあ、久しぶり。ルインとルナはノアズパーク以来だね。また会えて嬉しいよ」

ルナ「俺はてめえらとは会いたくなかったけどよ」

エックス「貴様ら…よくもアクセルを!!」

イグニス「元々あのプロトタイプはお前達を殺すために造られた。私達は奴の使命を思い出させただけだ。」

テネブラエ「お前達の知る奴は、ただの異物。我々はそれをただ取り除いただけだ。」

ウェントス「だが、所詮は失敗作。やはり奴は出来損ないだということだな」

ゼロ「その口を閉ざせ。さもなくば斬る」

紅のアーマーを漆黒へと変え、金色の髪を冷たい輝きを放つ銀色に変化させる。

ルイン「失敗作失敗作って…アクセルを侮辱しないで。私はあなた達を絶対に許さない!!」

暁を思わせる朱色のアーマーから、血を思わせる紅色のアーマーを纏い、金色の髪も紅が混じった金髪に変わる。
エックスはバスター重視装備のニュートラルアーマーから機動力重視のヘルメスアーマーに切り換えるとバスターを構えた。

ルナ「てめえらがいなけりゃ…アクセルは…アクセルはあんなことにならなかった!!仇を討たせてもらう!!」

バレットを構えるとリフレクトレーザーが炸裂する。
ウェントスはそれをダブルセイバーで切り裂いた。

エックス「スプレッドチャージショット!!」

広範囲に拡散するチャージショットを放ち、テネブラエを狙うが、テネブラエは高速移動で回避。
イグニスはルインのチャージショットの連射をかわしながら、ダッシュメガトンクラッシュを繰り出す。
ルインもΩナックルを握り締め、チャージナックルを叩き込む。
Ωナックルとナックルバスターがぶつかり合い、凄まじい衝撃が互いに襲い掛かる。

ゼロ「雷迅拳!!」

Kナックルを装備し、強烈なアッパーをグラキエスに叩き込もうとするが、かわされる。

グラキエス「スラッシュハルバード!!」

ハルバードの先に作り出した大きな氷の刃をゼロに向かって飛ばしてくる。

ゼロ「この程度で!!大烈鎚!!」

ゼロはTブレイカーによる一撃で氷の刃を粉砕する。

エックス「スクイーズボム!!」
エックスはスクイーズボムでテネブラエのクナイを防ぐ。
テネブラエはクナイを構えて高速移動で肉薄するが、エックスがエクスドライブを発動し、それを回避する。

テネブラエ「!!?」

光学迷彩を併用して移動したというのに見切られてしまったことにテネブラエは動揺する。

エックス「レイジングエクスチャージ」

エクスドライブとレイジングエクスチャージの同時使用。
エックスのチャージショットで地に倒れ伏すテネブラエ。
エクスドライブはヘルメスアーマーの能力を飛躍的に高め、更にレイジングエクスチャージの併用により、更に能力が跳ね上がる。
エネルギーセンサーはどんなエネルギー反応も見逃さず、ダッシュの瞬発力はテネブラエの速度さえ凌ぐ。
精神と身体に掛かる負担は桁違いに重いが、エックスにはさしたる代償ではありはしない。
レイジングエクスチャージによってチャージ無しのスプレッドチャージショットがテネブラエを襲う。
咄嗟にテネブラエは曼陀羅手裏剣で防御しようとするが、スプレッドチャージショットが曼陀羅手裏剣を掻き消す。
スプレッドチャージショットがテネブラエに直撃した。

テネブラエ「ぐはっ!!?」

イグニス「テネブラエ!!?」

ルイン「戦闘中によそ見はいけないよ?アースクラッシュ!!」

エネルギーを収束させた拳をイグニスの腹部に叩き込むルイン。
アースクラッシュの拳をまともに受けたイグニスもテネブラエ同様吹き飛ぶ。

ルナ「トランスオン!!ドリフトダイヤモンド!!」

ルナもイエティンガーに変身すると、ドリフトダイヤモンドでウェントスの下半身を凍らせる。

ウェントス「しまった…!!」

ルナ「追撃の…氷龍昇!!」

身動きが取れないウェントスに氷属性の強烈なアッパーを喰らわせた。

ウェントス「がは…っ!!」

氷属性が弱点であるウェントスに効果は絶大で受け身も取れずに倒れる。

ゼロ「(弱点は以前と変わっていないのか…なら…)」

グラキエス「アイススティッカー!!」

氷の破片がゼロに迫るが、ダブルジャンプで回避すると、セイバーを下に構えた。

ゼロ「焔降刃!!」

炎を纏わせたセイバーの一撃をグラキエスに浴びせるゼロ。

グラキエス「っ!!」

弱点の炎を受けたグラキエスのボディに痛々しい傷が入る。
徐々に押されていく四天王。
エックス達はレッドアラートの戦いから大幅にパワーアップしていたし、あの時の戦いでは使わなかった強化形態も使っているため、当然と言える。

ルイン「雷光閃!!」

電撃を纏わせたセイバーによる高速の斬撃でイグニスを切り裂いた。
咄嗟にイグニスは身体を逸らしたために、致命傷を避けた。

ルナ「クリスタルウォール!!」

トリロビッチに変身したルナはクリスタルウォールを出現させ、バウンドブラスターを放った。
クリスタルウォールに反射するバウンドブラスター。
反射による軌道が読めず、ウェントスはバウンドブラスターを全弾を受け、撃墜された。

ウェントス「ば、馬鹿な…!!?」

膝をつく四天王。
エックス達は武器を構えてウェントス達を見下ろす。

ルナ「ここを通してもらうぜ」

ルナが通ろうとした時、真上から光弾が降り注ぐ。
エックス達は何とかギリギリで回避したが、ダメージにより動けなかったウェントス達は光弾の雨をまともに浴びる。

イグニス「な…何が…」

光弾はウェントス達の命こそ奪えなかったが、彼らに瀕死の重傷を負わせていた。
アーマーは砕け散り、至る箇所で火花が発生している。
内部損傷も激しいのか目が霞み、ノイズが絶え間なく鳴り響く。
全身が悲鳴を上げ、痙攣は一向に治まる気配を見せない。

グラキエス「がっ!!?」

ルイン「!!?」

グラキエスの胸から暗緑色の腕が生えていた。

VAVA「こいつらを倒せて嬉しいか?」

腕を引き抜き、絶命したグラキエスからDNAデータを抜き取るVAVA。
次にテネブラエに光弾を放ち、息の根を止め、DNAデータを抜き取る。

イグニス「ぐっ…VAVA…貴様…」

ウェントス「う、裏切るというのか…!!?」

VAVA「違うな。お前達が役に立ちそうにないから、俺が有効利用してやろうとしてるんだよ。俺の力の一部となってなあ!!」

ウェントスとイグニスの胸を穿ち、DNAデータを抜き取る。
VAVAの掌には四天王のDNAデータが。

ルナ「てめえ…仲間を…」

エックス「お前はシグマの仲間ではないのか…?」

VAVA「仲間?そんなもの俺にはない。今も…そして昔もな」

四天王のDNAデータを取り込む。
それはかつてレッドアラートの戦いで使われた非合法のパワーアップ。

VAVA「唯一確かなのは…エックス…お前達が俺の敵だってことだ!!」

四天王のDNAデータを吸収し、パワーアップしたVAVAがエックス達にキャノン砲を向けた。
こうしてエックス達とVAVAとの永きに渡る戦いも終わりを迎えようとしていた。 
 

 
後書き
四天王あっさり撃破されたような…。 

 

第五十九話 VAVA

 
前書き
VAVAの特殊武器はアクセルと共通ということで。 

 
四天王のDNAデータを取り込んで、パワーアップしたVAVAが右肩のキャノン砲を向ける。

VAVA「さあ、これで決めようじゃねえか…俺とお前達…どっちが最強に相応しいのかをよ!!」

キャノン砲から光弾が放たれた。
ゼロがセイバーで光弾を両断する。
VAVAが背部のバーニアを吹かして、エックスに肉薄すると、キャノン砲から火炎が吹き荒れる。

エックス「!!?」

VAVA「フレイムバーナー…あのアクセルとか言う坊やも使える奴だ」

ゼロ「コケコッカーのDNAデータを兵装に適合させたのか…」

VAVA「そうだ。お前らにも出来るんだ。俺にも出来て当然だろ?他にもあるぜ?」

キャノン砲から雷を纏った竜巻が放たれた。

ルナ「ウェントスのプラズマサイクロン…!!?」

VAVA「奴らのDNAデータも兵装に適合させた。雑魚の技の癖に中々使えるな」

つまりVAVAは1人で四天王とあの8体のイレギュラーの力を使えるというのだろう。
VAVAは最も自身と因縁のあるエックスとゼロを主に狙う。
レイガンをかわしながら、ルナはルインを見遣る。

ルナ「ルイン!!こいつは俺達に任せてお前はシグマを!!」

ルイン「え!!?」

思いもよらぬ言葉にルインは目を見開く。
ゼロもルインが自分達と比べれば攻撃が少ないことに気付き、ルインに先に行くよう促す。

ゼロ「奴は俺達に任せろ。お前はシグマを」

ルイン「でも…」

エックス「VAVAの狙いは俺達だ。」

ルナ「大丈夫、ちゃんと2人を援護してやるから。早く行け!!」

ルイン「…分かった!!」

ダッシュでこの場を後にし、シグマの元に向かうルイン。
VAVAはそれを静かにただ見つめているだけ。

VAVA「これで思う存分やり合えるか?アイスガトリング!!」

キャノン砲から氷弾が連射され、エックスがスクイーズボムで無効果する。
エックスがバスター重視装備のニュートラルアーマーに切り換え、チャージショットを連射する。

VAVA「チッ…」

舌打ちすると同時に距離を取る。
エックスはドップラーの反乱時に現れたVAVAの弱点が光属性のレイスプラッシャーであることを思い出したため、シャイニングレイを繰り出す。

VAVA「俺が弱点をそのままにしておくと思ったのか?阿呆が」

エックスの顔面に強烈な右ストレートを叩き込む。
まともに喰らい、吹き飛ぶエックス。
ルナがリフレクトレーザーを放つが、キャノン砲から曼陀羅手裏剣を放ち、それを弾く。
接近するゼロにフレイムバーナーを繰り出すが、ゼロはBファンで火炎を防ぎながらKナックルの一撃を叩き込む。

VAVA「っ…なる程、あの時よりマシになったじゃねえか」

あまりの重い一撃に流石のVAVAも顔を顰めるが、スパイラルマグナムを放つ。

ゼロ「っ!!」

貫通力の高い弾丸はBファンのシールドを貫く。
咄嗟に身体を捻ったことで、右肩のアーマーが少し刔れただけで済んだ。

ルナ「くそ!!」

コケコッカーに変身すると、炎を纏った飛び蹴りを繰り出すが、VAVAはプラズマガンで迎撃する。

エックス「くそ!!」

接近するエックスにVAVAは嘲笑いながらブラストランチャーを放つが、次の瞬間エックスの姿が消えたかと思うと、エックスは背後にいた。

VAVA「!!?」

エックス「ヘルメスアーマーの能力の1つ、インビジブルダッシュだ!!レーザーチャージショット!!」

ヘルメスアーマーからイカロスアーマーに切り換え、レーザーチャージショットをVAVAに直撃させた。

VAVA「ぐっ!!」

エックス「ギガクラッシュ!!」

エックスを中心に強力なエネルギー波が炸裂した。

VAVA「チィッ!!」

あまりの威力に舌打ちすると同時に上空に移動。
全身を発光させる。

ゼロ「!!?」

VAVA「消えろっ!!!ヘキサインボリュートーーーーッッ!!!!」

VAVAの全身から雷撃が放たれた。
ギカボルト・ドクラーゲンの必殺技のサンダーダンサーと似たような技。
しかし、出力はドクラーゲンより上のように感じられた。
その威力に3人は戦慄した。
雷撃が終わると砂煙が立ち上る。

VAVA「………」

VAVAは無言でキャノン砲を構える。
VAVAの特殊武器で最も威力の高いブラストランチャーを放とうとするが、砂煙からエネルギー弾が飛び出す。
VAVAは反射的にかわしたが、エネルギー弾は壁や天井に跳ね返り、VAVAの背中を撃つ。
下を見ると、新世代型随一の防御力を持つアースロック・トリロビッチに変身してダメージを軽減しているルナと、ヘルメスアーマーのエクスドライブで能力を底上げして脱出したエックスとエックスに助けられたゼロ。

VAVA「そうだ…そうこなくてはな!!」

フレイムバーナーがエックス達に迫る。

エックス「ドリフトダイヤモンド!!」

VAVAの火炎をエックスが極低温の冷気弾で応戦する。
火炎と冷気がぶつかり合い、水蒸気となる。
ゼロは感覚を研ぎ澄ませ、VAVAの位置を特定するのと同時に勢いよく跳躍した。

ゼロ「氷龍昇!!」

対空技の氷龍昇でVAVAを切り裂く。
今までと同じように大したダメージは与えないだろうと思っていたのだが…。

VAVA「ぐっ!!?」

斬られた箇所から徐々に凍りついていく。

エックス「効いた…」

ルナ「あれが弱点か!!」

動きが止まったVAVAにルナはショットを連射する。
まるでアクセルのように凄まじい連射のショットは全弾VAVAに命中する。

エックス「エクスドライブ…スプレッドチャージショット!!」

ヘルメスアーマーに切り換え、零距離でVAVAにエクスドライブで強化したスプレッドチャージショットを喰らわせる。
まともに受けたVAVAは吹き飛び、壁に叩きつけられた。

ゼロ「お前はまだやるんだろう?」

VAVA「当たり前だ…お前達を倒し…そして、ルインもシグマも倒す!!そして最強のレプリロイドとなる!!」

攻撃範囲の広いプラズマガンで牽制し、ホーミング弾を放つ。
ゼロはBファンでホーミング弾を受け止めながら前進し、Kナックルを装備する。

ゼロ「雷迅拳!!」

VAVA「ぐっ…おおおおおおおお!!!!」

強烈なアッパーがVAVAに炸裂するが、VAVAも負けじとブラストランチャーをゼロに喰らわせる。

ゼロ「ぐああああ!!」

強化形態“ブラックゼロ”は、攻撃力と機動力と引き替えに装甲を極限まで減らしたもの。
イレギュラーの中でも随一のパワーを秘めるパンデモニウムの特殊武器はゼロに痛烈なダメージを与える。
それだけではなく、フレイムバーナーとアイスガトリングを喰らわせ、レイガンで狙い撃つ。

ルナ「ゼロ!!」

VAVA「消えろっ!!」

キャノン砲から巨大な火炎弾が放たれた。
ルナはそれを回避するが、火炎弾は壁にぶつかるのと同時に分裂し、エックスとルナに当たる。

エックス「これは…!!?」

ルナ「イグニスのブラストボム…!!?」

VAVA「フリージングドラゴン!!」

キャノン砲から氷龍が放たれ、ルナを極低温の冷気で凍結させる。

エックス「ルナ!!」

VAVA「微塵に砕けろ!!」

ブラストランチャーを連射する。
エックスはメルトクリーパーで氷を溶かし、エクスドライブでルナを救出すると、ゼロを連れて壁際に移動させる。

ルナ「エックス…」

エックス「VAVAは俺が倒す。ルナはゼロと一緒に休んでいてくれ」

仲間を傷つけられた怒りもあり、エックスから放たれる威圧感は凄まじい。

エックス「言っておくがVAVA。お前を倒すのに時間を掛ける気はない。一気に行かせて貰うぞ」

それが身の程を弁えない大言壮語で無い事はVAVAの目から見ても一目瞭然だ。
数々の強敵との戦いを経て、ルーキーであった頃のエックスとは見違えるほどに強くなっている。

VAVA「面白い…見せてみろ。お前の力をな!!」

VAVAの特殊武器で最も連射性能の高いレイガンがエックスに向けて放たれた。

エックス「くっ!!」

エックスはインビジブルダッシュを駆使して回避し、かわしきれないレーザーはスクイーズボムで無効果する。
そのために動きが止まったのをVAVAは見逃さない。
鋭く繰り出された強烈な蹴りがエックスの腹部を抉っていった。

エックス「がはぁっっ!!」

幾度もVAVAには苦杯を舐めさせられているだけに、その戦闘スタイルは熟知しているつもりだが、しかし今のVAVAは四天王のDNAを取り込んだことにより、今までの敵とは比較にならないくらいに速い。
VAVAの攻撃に対してエックスが張るヤマは基本的に外れてはいないが、そのスピードが故に対応がし辛いのだ。

VAVA「バウンドブラスター!!」

しかしエックスとて負けてはいない。
バスター重視装備のニュートラルアーマーに切り換え、チャージショットを放つ。
チャージショットはバウンドブラスターを飲み込んで、VAVAに直撃する。

VAVA「っ…」

咄嗟にガードしたが、それでもかなりのダメージを喰らった。
恐らく身体に負担がかからない程度のレイジングエクスチャージを併用しているのだろう。
今のエックスには殆どチャージ無しで通常時のチャージショットが連続で撃てる。
それはもう通常弾と殆ど変わらない速度で。

VAVA「調子に乗るな!!」

キャノン砲からブラストボムを放つが、それすらチャージショットに飲まれ、VAVAは直撃を受ける。

エックス「………」

バスターを構えたまま、エックスは倒れたVAVAを見つめる。
少しの間を置いて、VAVAは立ち上がる。

VAVA「ウォーミングアップはこれで終わりだ。そろそろ本気で行かせてもらう!!」

エックスがチャージショットを放つが、VAVAはバーニアを吹かし、回避すると一気にエックスに肉薄すると顔面に拳を叩き込む。
思わず背後に仰け反るエックスにVAVAは追い討ちを掛けるように拳を乱打する。

エックス「ぐっ!!」

VAVAの拳を受け止め、腹部に膝蹴りを叩き込み、グリーンスピナーを喰らわせる。

VAVA「クックック…パンデモニウムのミサイルか。そのシステムの扱いにも慣れたようだな。あの時のメカニロイド1匹まともに処分出来なかった甘ちゃんがよくここまで…」

歓喜の笑みを浮かべるVAVAにエックスは口を開く。

エックス「この戦いで最後だ。俺とお前のな」

VAVA「そうだエックス…これが…」

互いのバスターとキャノン砲から光弾が放たれ、相殺し合う。

VAVA「俺達の最後の戦い!!」

エックス「決着をつけるぞVAVA!!」

VAVA「望むところだ!!」

VAVAがアイスガトリングを繰り出す。
エックスはメルトクリーパーで相殺し、クリスタルウォールをVAVAの目前に出現させる。

VAVA「邪魔だ!!」

スパイラルマグナムでクリスタルウォールを破壊する。
しかしエックスの姿はどこにもない。

エックス「だあああ!!」

インビジブルダッシュでVAVAの背後に回ると、タックルを喰らわせ、VAVAの体勢を崩す。

VAVA「ぐっ!!?」

エックス「レーザーチャージショット!!」

体勢を崩したVAVAに間髪入れずにレーザーチャージショットを喰らわせる。
しかしVAVAはレーザーから脱出すると、レイガンをエックスに喰らわせた。
レーザーチャージショットはしばらくエネルギーを放出しなければならないために、放出している間は完全に無防備となる。

エックス「うわあああああああああっっ!!!!」

レーザーチャージショットの硬直の隙を突かれたエックスはマシンガンのように乱射されるレーザーを全身に受け、絶叫するエックス。

VAVA「どうしたエックス!!お前の力を見せてみろ!!」

言われるまでもない。
VAVAだけじゃない。
エックスはこの後更にシグマパレス最深部に鎮座するシグマをも打ち倒さねばならないのだ。
こんな所で足止めを食っている場合ではない。

エックス「スクイーズボム!!」

VAVAがブラストランチャー、アイスガトリング、レイガンを放つが、エックスはチャージスクイーズボムで一斉に無効果。
チャージスクイーズボムの闇に紛れてエックスはVAVAに肉薄するとヘルメスアーマーに切り換え、スプレッドチャージショットを零距離で喰らわせた。

エックス「一気にカタをつける!!」

エクスドライブとレイジングエクスチャージの同時使用。
神々しい蒼い光を身に纏うエックス。
エクスドライブとレイジングエクスチャージで強化されたエックスの動きはもはやVAVAの目にすら映らない。
連続してVAVAを打ち据えるエックスの蹴りや拳はより鋭さを増している。
しかしVAVAもまた負けてなどいない。

VAVA「まだ…まだだ!!」

リミッターを解除し、エックスが拳を繰り出した隙を突き、カウンターで回し蹴りを繰り出し、ブラストランチャーで吹き飛ばす。

エックス「っ…負けてたまるか!!」

VAVA「俺は…俺は負けん!!」

互いに拳を繰り出し合う。
エクスドライブとレイジングエクスチャージで強化したエックスと四天王のDNAで強化し、全てのリミッターを外したVAVAの拳の威力は凄まじい。

エックス「(まずい…レイジングエクスチャージの限界が…)」

レイジングエクスチャージの過度の使用のために、エックスの身体が悲鳴を上げている。
しかしそれはVAVAも同じ。
四天王のDNAを取り込み、リミッターを解除して限界を超えた出力を引き出しているためにVAVAの身体も悲鳴を上げていた。
エックスの拳がVAVAの顔面に突き刺さる。
頭に、亀裂が走っている。
まるでガラス細工のように繊細になったその頭。
その中で、1つの記憶が渦巻いていた。
…認められたかった……。
世界がどうなろうと、自身の知ったことではない。
ただ、最強のレプリロイドとなることで、自身の存在が認められればよかった。
たったそれだけ。
意識が朦朧とする中、エックスが白と青を基調にしたアーマーから白と赤を基調としたアーマーに切り換えたのを見た。

エックス「…ギガクラッシュ!!!!」

凄まじいエネルギー波に飲まれたVAVA。
理性が、その強靭な四肢が、凄まじいエネルギー波により、消えていく。

VAVA「(俺の名は…VAVA…俺は…お…れ……は…)」

胸中で呟いた言葉は誰にも解されずに光に飲まれて消えた。 
 

 
後書き
VAVA撃破。
 

 

第六十話 Sigma

 
前書き
VAVAを撃破したエックス達。
一方、先にシグマの元に向かったルインは…。
 

 
エックスがVAVAを撃破した時、ルインはシグマの元へ向かっていた。

ルイン「たあああっ!!」

跳躍し、チャージセイバーでガードロイドを両断する。
シグマを模していたイレギュラーは、真っ二つになり、爆散した。
DNAを取り込んだとしても所詮は偽物のシグマだ。
本物のシグマにはまるで及ばない。
暗がりに炎の色が滲む。
ルインはイレギュラーを破壊しながら突き進む。
しばらくすると、シグマパレスの最深部に辿り着いた。
高台になった足場に飛び移り、これまでと打って変わって誰もいない通路を抜けた、その場所はまるで絨毯のように真っ直ぐ伸びた赤いライン。
目で数えられる階段の上にぼんやりと見える人物に目を見開いた。
よく知る男の、見たことのない姿があったからだ。

シグマ「また会えたな。ルイン…1つの世界の終焉に、他ならぬ貴様と立ち会えるとはな」

ルイン「…シグマ……」

灰色の金属が剥き出しのまま所々途切れ、その切断を緑色の光が繋いでいた。
今までのシグマにあった、メカニロイドと思わせた程のレッドアラートの戦いのシグマにもあった人工皮膚が存在せず、内部構造を露出させ、より地獄の住人に相応しい姿に成り果てた姿だった。

シグマ「エックスとゼロをウィルスで戦闘不能にし、あのプロトタイプも連れ去り、戦力が少ない絶望的な状況を覆し、貴様はここまで来た。流石は我が宿敵と言うべきか。」

人の表皮など始めから存在しないボディは、ロボットすらまともに造れなかった西暦二千年代の、前時代的なそれに感じられた。
胸部の紅いコアは生物の心臓のように明滅している。
動物じみたそれにルインは悍ましさを抱く。

シグマ「私はな、ルイン…。我々の出会いは、この時のため…新しい時代の幕を開けるための、必然であったと思うのだ。」

シグマから放たれるプレッシャーを感じながらルインは無言で耳を傾けている。

シグマ「そして、貴様らが振りかざす薄っぺらな正義とやらが、私にこの世界の過ちを気付かせてくれた…。それが全ての始まりだった。そうは思わないかね?」

ルイン「ふざけたことを言わないで」

忌ま忌ましそうにシグマを見据えるルインに対して、シグマは愉しげに瞳を輝かせた。

シグマ「クク…そういきり立つな。最早時間の針を戻すことは出来ん。全ては過ぎたことだ。今は未来しか興味を覚えぬ。世界が宇宙にその生きる道を見出だした時…、宇宙開発に携わった、高性能な新世代型レプリロイドは、我が意志を継ぐ子供達だったのだからな!!」

ルインはその言葉を理解出来なかった。
いや、したくなかったのかもしれない。

ルイン「宇宙開発に携わった新世代型レプリロイド達が、あなたの意志を継ぐ子供…!!?どういうこと!!?」

ルインの叫びにシグマは満足そうに頷き、口角を歪めた。

シグマ「頭のいい貴様ならもう分かっているのではないか?ヤコブ計画は新世代型レプリロイドの設計段階から既に我が手の内にあったということだ。あの2人のプロトタイプを除いた新世代型レプリロイドの全てのコピーチップには、我がデータが刻まれている!!お前達が築こうとしていた世界は、我々の世界なのだよ!!さあ、イレギュラーハンター・ルイン。我々と別方向の進化を遂げし者よ。旧き世界と共に滅ぶがいい!!」

シグマはルインの前に立ちはだかる。
数瞬を置いて、緑に光り輝くブレードがその力を惜しみなく解放した。

ルイン「……あれはまさか、Σブレード!!?」

イレギュラーハンター時代から最初のシグマの反乱まで使われていた高出力ビームサーベルであるΣブレード。
しかしそれはルインのアルティメットセイバーすら凌駕する大剣となり、それを握り締め、全身から凄まじい殺気がシグマから吹き荒れる。
今までの戦いでは余裕を見せていたシグマは最初から本気である。
永き因縁に決着をつけるために全力で宿敵であるルインを叩き潰しに向かう。

シグマ「全力で来い!!」

リング状のレーザーを放つ。
3つのリングが連なって迫って来る。
ダブルジャンプとエアダッシュを駆使してレーザーを回避する。
セイバーを構えて一瞬でシグマとの間合いを詰めた。

ルイン「喰らえ!!雷光閃!!」

シグマ「クク…そうでなければ面白くないわ!!」

ルインの雷光閃がかわされた。
シグマが空間転移で回避したのだ。
辺りを見回すがいない。
しかし、突如凄まじいエネルギー反応にそちらを向くと、額の銃口にエネルギーが収束していた。

シグマ「喰らうがいい!!ドゥームバスター!!」

ルイン「負けるか!!アースクラッシュ!!」

ドゥームバスターの巨大なエネルギー弾をアースクラッシュで相殺すると、煙に紛れて接近し、シグマにバスターの通常弾を数発喰らわせる。

シグマ「フッ、魅せてくれるではないかルイン!!」

直撃は受けたが、大したダメージにはなっていないようで、ニヤリと嘲笑いながらΣブレードを構える。

ルイン「ダブルチャージショット!!」

エックスのチャージショットに匹敵する威力のチャージショットが2発、シグマに迫るが、シグマはブレードを振るうことで、ダブルチャージショットを掻き消した。

ルイン「まだまだ!!」

ルインがセイバーを一閃。
セイバーショットがシグマに迫る。
シグマはそれを回避し、Σブレードを収めるとルインに殴り掛かる。
ルインもΩナックルで応戦する。

ルイン「たあっ!!やああああっ!!」

シグマ「そうだ。存分に足掻け!!長年に渡る貴様らとの決着…そう簡単に決したのでは面白くないのでな!!」

互いに拳を繰り出し一歩も引かずに殴り合う両者。

ルイン「シグマ…………シグマ…隊長……」

そんな最中、かつてのイレギュラーハンター時代のシグマの姿が脳裏を過ぎり、ぽつりとルインが呟く。

シグマ「愚か者め!!寝惚けるな!!」

シグマの拳がルインを鳩尾に炸裂しそのままルインを背後へと吹き飛ばす。

ルイン「う…っ」

シグマ「私はもはや人間共の犬に過ぎぬイレギュラーハンターの部隊長などではない。イレギュラーの王として世界に君臨する覇者なのだ!!」

シグマが振るうブレードをルインはセイバーで必死に受け止める。

ルイン「(ああ…やっぱり強いなぁ。この人は…)」

第17番精鋭部隊に配属されたハンター達にとってシグマは憧れであり続けてきた。
イレギュラーハンターという組織にあって誰よりも英雄と呼ぶに相応しかった人物。
統率力、戦闘力、作戦立案能力といった能力面で衆に抜きん出いるのは当然として、厳格ながらかつては優れた人格者でもあったシグマは、自分達にとっての理想形…。
エックスやゼロ、ルインにとってはかつてのシグマはまさに人生の手本とすべき存在であった。
それが今やイレギュラーの代名詞にまで名を貶め、幾度もエックスやルイン達の前に立ちはだかり続けてきた。

ルイン「…決着をつけましょう。シグマ…」

シグマ「そうだルイン!!これが我々の最後の戦い!!」

空間転移。
またドゥームバスターかと思ったが、シグマはルインの真上にいた。

シグマ「レイヴデヴァイド!!」

風を切って飛び降り、着地と同時に切り上げ、残像を持って振り下ろす。
鋸に似た線を描く攻撃がルインに迫る。
ルインは一撃、二撃、三撃目は何とか回避したが、最後の一撃を回避することは出来ず、胸から肩にかけて刔るような傷が走る。
反撃しようとした瞬間、シグマの姿はなく、目の前の空間が歪んだかとおもうと、身体が引き寄せられ、巨大な手に頭を鷲掴みにされる。

ルイン「シグマ…!!」

紛れも無くシグマである。
彼は苦痛に歪む少女の顔を見て、勝利を確信した。

シグマ「絶望せよ!!貴様らが守ろうとした世界が縋った計画も全て我が手の内だった!!貴様らに残されているのは絶望しかないわ!!滅べ、滅ぶがいい!!」

シグマの笑い声と呪詛のような言葉を聞きながらもルインは必死に脱出を試みる。
まだ彼女は諦めてはいない。
希望を捨ててはいない。

ルイン「っ…馬鹿なこと言わないで!!私達が諦めたら、あなたが喜ぶだけでしょ!!ヤコブ計画が最初からあなたの仕組んだ事だったとしても……私は、私達は最後まで諦めたりはしないっ!!私達がいる限り、あなたに都合のいいエンディングなんてない!!」

その時である。
蒼い閃光がシグマの顔面に直撃し、ルインはシグマの束縛から逃れた。

エックス「ルイン、無事か!!?」

ゼロ「ふん、間に合った、か…」

ルナ「危なかったな?」

ルイン「エックス!!ゼロとルナも…無事だったんだね…」

エックス「ああ、間に合ってよかった…さあ、行くぞシグマ!!」

シグマ「フン、エックス、ゼロ…どうやらお仲間が到着したか。無駄なことよ。次世代の王たる我が力の前には何もかも無力よ!!」

額の銃口に再びエネルギーが収束する。
再びドゥームバスターを繰り出すつもりなのだろう。

ルナ「おっと!!やらせるかよ!!」

リフレクトレーザーによるクラッキングがドゥームバスター発射のギリギリで止めた。

エックス「お前の好きにはさせない!!」

イカロスアーマー装備のエックスのレーザーチャージショットがシグマに炸裂する。
シグマのコアにピシリと僅かに罅が入った。

ルイン「コアが傷ついている…もう少し!!」

エックス達が連携し、シグマにダメージを与えていく。
シグマのボディは、あちこちで亀裂が生じていた。
シグマのオーラが一目瞭然なほどに弱っていた。

ゼロ「貴様の負けだシグマ」

雷光閃が走る。
白き稲妻がシグマの胸を突いた。
コアの罅割れがもうひとつ生じる。
罅がコア全体に広がり、シグマの身体は崩壊寸前の状態となる。

シグマ「舐めるな!!ドゥームバスター!!」

ゼロ「っ!!?気付かれないよう、チャージしていたのか!!?」

エックス「下がるんだ!!エクスドライブ!!レイジングエクスチャージ!!スプレッドチャージショット!!」

エクスドライブとレイジングエクスチャージを併用し、スプレッドチャージショットを繰り出して相殺する。

シグマ「燃え尽きるがいい!!」

紅い光線が放たれる。
その威力は凄まじく、凄まじい熱量だ。
ドゥームバスターとは違い、チャージが必要ないらしく、手数を活かした攻撃をしてくる。

ルイン「くっ、シグマの奴、一撃必殺じゃなくて、手数で攻めてきたよ!!」

エックス「今度はこちらに攻撃させる隙を与えないつもりか…!!」

ルナ「うおおおおおお!!」

トリロビッチに変身したルナはアーマーの防御力を活かして、シグマに突撃する。

エックス「ルナ!!?」

ゼロ「無謀だ!!よせ!!」

確かにルナは変身能力により、遠近問わぬ戦いが可能だが、彼女が得意とするのはエックスとアクセル同様射撃であり、接近戦を得意とするシグマと戦うには力不足が否めない。

シグマ「プロトタイプの小娘め…お望み通り葬ってくれるわ!!」

シグマがブレードを構え、振り下ろされるが、一瞬でトリロビッチからテネブラエに変身し、高速移動で背後を取り、四天王最強の剛力を誇るイグニスに変身してシグマを取り押さえた。

ルナ「捕まえたぜ!!」

シグマ「生意気なプロトタイプの小娘め…!!」

振り払おうとするシグマの身体を必死に押さえ付ける。

シグマ「離せ!!」

ルナ「ぐっ!!」

巨大なブレードで自分を斬ることを恐れているのだろう。
ルナを殴り、蹴り続ける。
ダメージにより、イグニスの変身が解除されてもルナはシグマを離さない。

ルイン「ルナ!!無茶だよ」

ルナ「痛く…ない…」

ゼロ「ルナ…?」

ポツリと零れた小声を辛うじて聞き取ったゼロは目を見開く。

ルナ「こんなの…痛くも痒くもない…」

エックス「え…?」

ルナ「アクセルが、ホタルニクスじいさんが、お前からされたことに比べればこんなの痛くも何ともない!!」

ルナにとって大切な人であるアクセルとホタルニクスが死ぬ原因を作った人物が目の前にいることが、ルナに限界を超えた力を与えた。
シグマは少しの間を置いてニヤリと嘲笑った。

シグマ「レーザー工学の権威、ホタルニクス…随分と懐かしい名が出てきたものよ。自身の作品が利用されるのを恐れて、自身の研究所に籠もっていた臆病者であったな」

ルナ「黙れ…!!てめえだけは絶対に許さねえ!!」

華奢な身体に似合わぬ力でシグマを取り押さえる。

シグマ「ぬっ!?」

ルナ「本当なら!!てめえを、何度粉微塵にしても気が済まねえんだっ!!」

アクセルを、ホタルニクスが死ぬ原因を作った張本人を、憎む心は何があっても変わらない。
これ程までに憎まれることをしたというのに、ホタルニクスのことをどうでも良さそうに扱い、アクセルのことを操り、利用するだけ利用して簡単に切り捨てたシグマに対する憎しみは募るばかりだ。

ルナ「何度でも粉々にぶっ壊したって足りないんだよ!!」

シグマ「黙れ小娘が!!」

シグマがルナの頬を殴るが、それでもシグマを離さない。

ルナ「こんなの痛くない…アクセルやじいさんの苦しみや悲しみに比べたら…っ…こんなの……返せ…返せよ…アクセルとじいさんを…俺の…私の友達を返せえええええっ!!!!!!」

涙を流しながら絶叫するルナにシグマはブレードを握り締めた。

シグマ「……プロトタイプ風情が!!」

シグマがブレードを振り上げる。
斬るのではなく突き立てて彼女を貫くつもりだ。

ルイン「やらせない!!!!」

ルナの激情に立ち尽くしてしまっていたエックスとゼロよりも先にルインがシグマとルナの間に入って、Σブレードにチャージセイバーを叩き込んでΣブレードを吹き飛ばす。
そのままルインもシグマを押さえ付ける。
戦闘型2体掛かりの力に今度は流石のシグマも動けない。

ルイン「エックス!!ゼロ!!早くシグマにとどめを!!」

ルナ「手加減なんかすんなよ!!2度と蘇らないようにしてくれ!!」

エックス「………」

ゼロ「エックス、Dr.ライトから教わった“アレ”はまだ使えるか?」

エックス「“アレ”か?ああ、大丈夫だ」

ゼロ「それを最大まで高めてシグマに放て。完全に奴を消滅させるにはそれしかない」

エックス「ああ…」

ゼロはセイバーを天に掲げた。
次の瞬間、掲げられたセイバーが、天井に届くほど伸びている。
膨大なエネルギーを注ぎ込むことで、セイバーの出力を限界まで引き出しているのだ。

エックス「はあああああ……!!」

エックスも両手を懐に構え、本来なら機械であるレプリロイドが持たないはずの氣が掌に収束されていく。
かつてライト博士から教わった凄まじい破壊力故に封印した必殺技が繰り出される。

ゼロ「これで終わりだシグマ!!」

エックス「お前との因縁も、何もかも!!」

エックスとゼロ。
100年前の2人の天才科学者によって造り出された最高傑作の2人から最大最強の一撃が繰り出された。

ゼロ「幻夢零!!」

エックス「波動拳!!」

ゼロの幻夢零とエックスの波動拳…厳密には波動拳の強化版の真空波動拳と呼ばれる2人の最強の技がシグマに炸裂した。
真空波動拳と幻夢零がシグマに命中する直前、左右のルインとルナがバッと身を離した。
2人は技の余波で吹き飛ばされたが、ダメージはないようだ。
シグマは愕然としながら胸中で口にしていた。
最期の言葉を。

シグマ「(まさか…私が倒れるなど…滅びるのは…奴ら…旧世代の…)」

胸中で言葉を発した後、イレギュラーの王は、断末魔の叫びを上げて爆発した。 
 

 
後書き
シグマ撃破。 

 

第六十一話 真実

 
前書き
ルミネ戦開始。 

 
何もない白い空間でアクセルはふと足を止めた。
振り返ると同時に首を傾げた。

レッド『どうした?アクセル。』

レッドには何も聞こえなかったらしい。
アクセルは丸い瞳で問う。

アクセル『音が聞こえなかった?爆発みたいな音』

レッド『いや?何も聞こえなかったが。…大体爆発なんてあるわけねえだろ?平和なんだからよ。俺達レッドアラートがいる限り、イレギュラーなんてのさばらねえよ』

アクセル『そうだね、レッド』






































星空の下で、松明が揺らめいている。
限りなく黒に近い空に星々が瞬き、月の宮殿を照らしている。
神秘的な光の中、シグマの屍が無粋に横たわっていた。
粉々の破片からは、生命がないことは明らかである。
エックス達は武器を構えたまま、破片の熱が急激に下がるのを見つめていた。
シグマの熱が完全に消失する。
エックス達はようやく息をついた。
その時である。
純白と紫を基調としたボディのレプリロイドが現れたのは。
女性と見まがう美貌は微かに笑っていた。

ルナ「ルミネ…」

エックス「よかった…無事だったんだな」

安堵したエックスが呼び掛ける。
ゼロもルインも緊張を緩めた。
だが、ルミネはそんな彼らを見て薄く笑い、冷めた声で呟いた。

ルミネ「無事…?勿論ですよ。皆さんもシグマを倒せて満足でしょう?おかげで計画も、ここまで順調ですよ」

ほくそ笑んだ呟きにエックス達が息を呑んだ。

ルナ「ルミネ…てめえはシグマに連れ去られて利用されたんじゃねえのか?」

ルミネ「利用…?違いますね…」

彼は瞳を細め、シグマの、恐らく頭部だった破片に足を乗せた。

ルミネ「彼は役目を果たしただけです」

軋んだ音が音量を増す。
ルミネは右足に力を込めると、一気に踏み潰した。
ルミネの目に冷たい狂気の光が宿る。

ルナ「役目だと…?」

ルミネ「そうです。私達、新世代型を目覚めさせ、世界を変えるという役目をね」

ルミネのうでが円を描くように振られ、八色の光が取り巻いていた。
光は美しく、中心にいる少年の容貌によく似ている。
天使を思わせる顔と肢体。
だが、纏うオーラはどこか禍々しい。
ルミネは神の如き傲慢な笑みを浮かべ、地に降り立つ。
細く白い腕を突き伸ばして、掌からエネルギーを放った。
地面から光が漏れ、透明な水晶壁が出現する。

ルイン「これはトリロビッチの必殺技か!!?」

ルミネ「そうです。これもコピー能力の応用ですよ。私はあなた方が倒したレプリロイドの技を全て使えるのです。例えば…」

ルミネが手を天に翳すと凄まじい冷気が手から放たれ、雪の結晶を降らせる。

ルナ「イエティンガーのスノー・アイゼン…」

ルミネ「私は新世代型レプリロイド…レプリロイドの能力を完璧にコピー出来るのです。アクセルやあなたのようなプロトタイプとは違うのですよ」

ルナ「っ!!」

即座に彼女のバレットが火を噴いたが、ルミネの身体に傷を付けることは叶わない。

ルミネ「効きませんね…だが、それでこそ、愚かなる者達に相応しい」

ルナ「てめえにアクセルの何が分かる…!!」

ルミネ「彼は失敗作でした。せっかくシグマの力で覚醒したというのに。あなた達に打ち負かされた」

ルナの言葉にルミネは歌うように答えると、彼は昔を思い出すように遠い目をした。

ルミネ「ああ、そういえば彼は必死に抵抗していましたね。私も捕らえられていたので、直接見たわけではありませんが、エックスとゼロと戦うことを心から拒んでいたようですよ」

ルナ「………」

その言葉に少女の目元が少しだけ歪んだ。
ルミネは彼女の反応に気分をよくしたのか、彼が信じてやまぬ存在理由を、演説でもするかのように手を振りかざしながら語る。

ルミネ「アクセルは使命を解さなかった失敗作だった。だが、私達完全なる新世代型は違う。旧き者を滅ぼし、新たな世界を創る。そのために私達は生まれたのです」

古来から翼を持つ者は空を我が物顔で飛び、地を這う者を見下ろしていた。
それは高みから平民を見下す貴族に似て優雅で、同時に傲慢である。
技術が発展し、月まで飛べるようになっても、例え古代から西暦21XX年という長い年月を経ても、心などはそう簡単には変わらない。
エックス達もまた上空のルミネに対して、屈辱的な気分になる。
今のルミネは万能をひけらかす神そのものであった。
宙に浮かぶ姿は、芸術品のような美しさで、見る者誰もが息を呑まずにはいられなかった。
しかしそれは称賛する類の美しさではなく、息を呑み、恐れる種類のものである。

ルイン「一体何なの…?あなたもイレギュラーなの!!?」

ルミネ「イレギュラー?」

戸惑いのまま叫ぶルインの問いにルミネが答えるのを、ゼロもエックスも待つ。
問われたルミネはとても心外そうに彼女を見据えた。

ルミネ「そんなものでない事は…私が正常そのものであることはあなたも分かっているのでは?私に攻撃が出来ないのは、それに気付いているからでしょう?」

ルイン「………」

ルインはルミネの言葉に沈黙した。
自身の躊躇いを見透かされている。
ここで自分がルミネを撃つことは本当に正しいのかと、迷い葛藤してしまう。
ルミネは静かに瞳を閉じると、まるで資料を読み上げるように言葉を紡いでいく。

ルミネ「あなた方も知っている通り。私達、新世代型レプリロイドのコピーチップには、一部のプロトタイプを除いて、数多くの旧世代型レプリロイドのデータを元にして造られました。その中には当然。あの最強のイレギュラーであるシグマやVAVAも含まれています。あらゆるレプリロイドを解析し、優れた能力を継承したのです。あなた方に分かるように言えば、我々は最強のイレギュラーたるシグマをも凌駕したのです」

全員が息を呑んだ。
それを見たルミネはエックス達を嘲笑う。
彼が視線を向けるのは旧世代の別方向の進化を遂げた者。

ルミネ「ルイン…あなたに私達が撃てますか?例え人間から進化した者といえど、新世代型のプロトタイプにも劣る人の道具に過ぎないあなたに…進化し、人とレプリロイドを超えた完璧な存在たる私達に何が出来ると?」

ルイン「…………」

ルインはバスターを構えたまま、硬直している。
本能で分かっているのだ。
彼はイレギュラーではないと。
自分の意志でこの世界に反逆しているのだと。

ルミネ「世界は変わったのです!!生命が、より進化した生命に取って変わられるのは自然の摂理です!!」

身体の向きを変えたルミネは、遥か彼方に小さく見える地球に向けて手を翳し、そしてルミネが翳した手は、地球を掌握するように閉じられた。

ルミネ「人類も旧きレプリロイドも共に不必要な存在…。大人しく、滅んでおしまいなさい!!」

ルインが、思い悩む心に押し潰されそうな苦しさに耐えきれずバスターを下ろしかけた時。
蒼い閃光、チャージショットがルミネに直撃した。

ルミネ「…っ!!?」

予想していなかった攻撃にルミネはのけ反った。
彼の右肩のアーマーは高出力のレーザーチャージショットにより刔られていた。
撃ったのはエックス。
激しい怒りを瞳に宿しながらルミネを見上げる。

エックス「ルミネ…お前はイレギュラーだ!!」

エックスが叫んだ時、全員がハッとなってエックスを見た。
ルミネは下等な旧世代型レプリロイド…否、それ以下の存在たる“ロボット”に傷をつけられたことに忌ま忌ましそうにエックスを見つめるが…徐々に顔に笑みを戻していく。

ルミネ「イレギュラー…そんな単純なことではない。レプリロイドの在り方が…生命の在り方が変わったのです……」

ルミネが笑みを浮かべた。
見るものを戦慄させるような笑みを。

ルミネ「新しい世界に。最早あなた方は必要ないのですよ…」

ルミネの全身を光が包む。
まるで地上から見る月の光のよう。

ルナ「ルミネ…」

ゼロ「滅べと言われて…大人しく滅んでやるつもりはない…!!」

ゼロの宣言と共に全員が武器を構えた。
空間が変わる。
宇宙では有り得ない夜明けの太陽。
その光を背に現れた天使。

ルミネ「来なさい。旧き者達よ」

21XX年の正真正銘最後の戦いが幕を開ける。








































ルミネが覚醒した頃、ハンターベースの研究室で異常が発生した。
血相を変えて走り回る医師をよそにゲイトは硬直してアクセルを見ている。
アクセルの身体から凄まじい光が放たれていた。

「アクセルからエネルギー反応を感知!!メインメモリが回復しています!!」

ゲイト「メモリが回復した…!?そんな馬鹿な!!」

ライフセーバーの言う通り、ゲイトの眼前で有り得ないそれは依然として続いている。
アクセルの光が強くなり、ゲイトは自分達が光に飲まれて消滅するなどという馬鹿な幻想を抱いた。
光が広がる。
全員が反射的に閉じた目を開けた時にはアクセルは既にいなかった。






































そして月ではエックス達がルミネと死闘を演じていた。
エックスはバスター重視装備のニュートラルアーマーに切り換え、インビジブルダッシュを使い、レーザーを回避すると、レーザーチャージショットを放つ。
しかし、レーザーチャージショットは高い貫通力をものともしないバリアで遮断された。

ゼロ「羅刹旋!!」

空中での回転斬りを繰り出すが、セイバーによる斬撃も遮断される。

ルミネ「効きませんよ」

余裕の声に全員が上を見上げると矢が一直線に降り注ぐ。

ルナ「ぐっ!!」

まともに受けたルナ達が苦痛の声を上げる。
しかしそれが、ルミネにとって心地好いコーラスになる。
戦士達の悲鳴は新たなる生命を迎え入れる賛美歌であった。

ルミネ「あなた方に、私を倒すことは出来ませんよ」

ルイン「黙っていれば勝手なことを…!!」

ルインが怒った時、美しい光の帯が彼女に向けて迫る。
一瞬その美しさに魅入る。

エックス「ルイン、逃げろ!!」

彼の叫びに我に返ってダッシュで回避する。
あまりの熱量にアーマーが僅かに熔解した。
直撃を受ければただではすまない。

ルナ「また来る!!」

再び天からエックス達に向かって光が降り注ぐ。

ルイン「今は避けて…隙を狙わなきゃ……」

しかし彼女の考えは甘い。
光が地面から突き出る。
かわしたはずの光を受けてルインは倒れた。

ゼロ「ルイン!!」

彼女に駆け寄ろうとしたゼロもレーザーを受けて倒れ伏す。

エックス「ゼロ!!がっ!!?」

インビジブルダッシュで避け続けていたエックスも遂に矢をふくらはぎに受け、倒れ込んだ。
震える手を支えに起き上がろうとしたエックスに引導を渡すかの如く光が降り注ぐ。

ルナ「エックス!!」

ルミネ「これで立っているのは、あなただけですよルナ」

ルナ「くっ…ルミネ…」

ルミネ「あなた方旧世代が、私達に勝てるはずはありません。私達はあなた方を超えた種族なのですから」

ルミネが言い切るのと同時に周囲の空間が暗転する。

ルミネ「優れた者は生き延び、劣った者は死に絶える。それが自然界の理です。あなた方は何も守れない、誰も救えない。来たるべき世界の前に滅びるのです。」

ルミネの言葉と共に周囲の空間が漆黒の色を高めていく。

ルミネ「ノアの洪水のように、全てを無に帰しましょう。それから私達は私達の楽園を創る。あなた方、旧き存在がいない理想郷を……パラダイスロスト!!!!」

黒き光がルナ達に迫る。
決して避けられない絶望の輝きが。




































そして何もない白い世界で、レッドの手を握っていたアクセルの手が不意に力を失って離れた。

レッド『どうしたアクセル?』

突然のことにレッドは隻眼を丸めて振り返った。

アクセル『ごめんレッド…僕、やり残したことがあるんだ…向こうで、だからまだレッドとは一緒には行けない……ごめん…』

叱られた子供のように、ギュッと目を閉じてレッドの返答を待つ。
しばらくして、レッドが口を開いた。

レッド『そうか、じゃあ行ってこい』

頼もしい笑顔を浮かべて、アクセルに言う。

アクセル『いいの…?』

レッド『言ったろ?“いつでも来な、慌てなくてもいい”ってな。待つさ、会うのは、ずっと先で』

アクセル『レッド…』

レッド『大事な女を泣かせるような甲斐性のない奴に育てたつもりはねえからな』

アクセル『な、何でレッドが知って…』

レッド『それくらい分かる。どれだけ一緒にいたと思ってやがる………行ってこい。大事な物なら何が何でも守り通せ。いいな』

アクセル『うん…ありがとう…行ってくるよ』

アクセルは向かう。
自分が帰るべき、あの世界へ。








































そして、向こうの世界では、“パラダイスロスト”と名付けられた黒き光はエックス達に迫る。
ルナが諦めかけた時。
純白の光が全員を包んだ。

ルナ「え!!?」

ルナは光の温かさに首を傾げ、ゆっくりと光の正体を伺う。
そして次の瞬間に目を見開いた。

ルナ「アクセル!!?」

身体は白く、瞳は紅いままだったが、ルナはアクセルが自身のよく知るアクセルであることに気づいた。
彼女がよく知る、会いたかった存在。
アクセルはルナを庇いながら頼りになる笑顔を向けた。

アクセル「待たせたね、遅れてごめん」

ルナ「アクセル…!!」

嬉しさのあまり涙を流す。
奇跡はそれだけではない。
意識を取り戻したエックス達が起き上がる。

エックス「アクセル…」

エックスもルインもゼロも笑みを浮かべて立ち上がる。
全員の身体から光が放たれた。
エックスはイカロスアーマーとヘルメスアーマーの長所を合わせ、かつてのアルティメットアーマーのデータを融合させた新アルティメットアーマーを身に纏う。
ゼロは再び強化形態になり、シグマの愛剣、Σブレードを拾う。
忌ま忌ましいが、自身の持つ武器より遥かに高性能なのは確かなのだ。
所有者がシグマからゼロとなったことで光刃の色が禍々しい緑ではなく、金色に変わっていた。
ルインも再びOXアーマーを身に纏う。
オーバードライブを発動し、アルティメットセイバーの出力も最大まで引き上げ、構える。

ルナ「アクセル…」

アクセル「さあ、ルナ。とっととあいつを倒して一緒に帰ろう!!」

ルナ「…うん!!」

ルミネ「愚かな…プロトタイプが1人増えたところで、私に叶うものか!!」

光の矢がエックス達に迫る。

エックス「散開!!」

ルイン「うん!!」

エックス達はダッシュを駆使して回避する。
そしてエックスはバスターをルミネに向ける。
ルミネは嘲笑を浮かべてバリアを張る。

エックス「喰らえ!!プラズマチャージショット!!」

アルティメットアーマーのプラズマチャージショットがバリアにぶつかる。
ショットはそのまま消滅するのではなく、プラズマがバリアに傷をつけていく。
プラズマチャージショットはそれ自体が強大な威力を誇る上に着弾点にプラズマを生じ追加ダメージを敵に与える特性がある。
バリアに無数の罅が入った。

ルイン「もう1発!!喰らえ!!」

オーバードライブと併用したチャージセイバーをバリアに叩き込むと、バリアが消滅した。

ルミネ「馬鹿な…!!?」

アクセル「スパイラルマグナム!!」

ルナ「メガトンクラッシュ!!」

アクセルはアントニオンの特殊武器による銃弾、ルナはVAVAとの戦いで回収したDNAでイグニスに変身すると、火炎弾を放つ。
銃弾はルミネの右側の翼を貫き、火炎弾はルミネの身体を焼いた。

ルミネ「馬鹿な…この私がプロトタイプ如きに…!!有り得ない!!」

ゼロ「そういう過信が敗北を招く」

背後から聞こえた声に、後ろを振り向くとブレードを構えたゼロがいた。

ゼロ「焔降刃!!」

焔を纏わせたブレードでルミネの背中に深く傷をつけ、叩き落とす。
そして追撃を仕掛ける。

ゼロ「葉断突!!」

強烈な突きを喰らわせ、吹き飛ばす。
翼が半壊する。
アクセル、エックスが武器を構えた。

アクセル「ブラストランチャー!!」

エックス「グリーンスピナー!!」

反撃する隙など与えないと言わんばかりに放たれた手榴弾とミサイルがルミネに直撃する。
爆風を受けて、吹き飛ぶルミネにルインとルナはシンクロシステムを発動。
強化した脚力でルミネに肉薄すると、ルインはセイバー、ルナはバレットを構えた。

ルイン「行くよルナ!!」

ルナ「ああ!!」

ルインがセイバー、ルナはバレットを構えた。

ルイン、ルナ「「コンビネーションアサルト!!!!」」

シンクロシステムにより、光刃が巨大化したアルティメットセイバーによる斬撃、出力が大幅に増大したバレットによる連射をルミネに叩き込んだ。

ルミネ「ぐああああ…っ!!わ、私は新世代…旧き世代に負けるわけには…」

ルイン「新世代ね…あなたがどうしてそんなことにこだわるのか理解出来ないけれど…」

ゼロ「アクセルやルナも、そして今、この瞬間にも地球で生まれている生命も新しい世代じゃないのか?」

エックス「世代というのは、前のを壊して進むのではなく……」

アクセル「受け継いでいくものでしょ?」

ルナ「じゃあな、ルミネ…」

ルナは自身のバレットをアクセルに投げ渡す。

アクセル「終わらせるよ…これで」

アクセルは自身のバレットを収め、ルナのバレットを構える。
二丁のバレットのエネルギーをチャージした。

紫、黒、白…。
3つの影がルミネに迫る。

エックス、ゼロ、アクセル「「「ファイナルストラーーーイクッッッ!!!!!!」」」

シンクロシステムによる強化で、出力が大幅に増したバスターによるプラズマチャージショット、バレットによるダブルチャージレーザー、ブレードによる斬撃がルミネを襲う。
光は漆黒の闇を貫き、遥か彼方へ。
光が道を拓き、未来を照らす。
生きる者全員で築く未来を。
ルミネは絶叫し、ファイナルストライクの光はルミネもろともパラダイスロストの黒き光を跡形もなく消滅させようとする。

ルミネ「(愚かな…私1人を倒したところで、最早流れは戻らないというのに)」

朧げな意識の中、不思議と自分と似た容姿のレプリロイドが視界に入る。
所詮は、プロトタイプ。
彼は自分とは違う世界の住人であることを思い知る。

ルミネ「(ふふ…あなた方は本当に何も見えていないのですね…)」

ルミネは可笑しくて、心の底から笑いたかった。
しかし身体に走る激痛がそれを許さない。
彼はふと、自分こそが世界を目覚めさせる踏み台であることに気づいた。
その役目はシグマが担ったと思っていたが、何のことはない。
自分も踏み台に過ぎなかった。
そう考えたら全てが可笑しくなった。
所詮は神のみぞ知る、ということなのだろう。
しかし、いつか来るだろう。
優れたレプリロイドが覚醒し、“楽園”を築く日が。
不完全なレプリロイドが生まれ、争いは続き、平和など永久に訪れないだろう。
その日々を自分の意志を継ぐ者が現れ、壊すだろう。
そしてレプリロイドだけの楽園を創る。
ルミネとエックス達の描く理想郷はまるで異なる。
だからこそ争い、敗れたのだが。

ルミネ「(まあ、いい…いずれ……分かる…滅びの刻が来るまで、精々…生き長らえるがいい…)」

ファイナルストライクの光に飲まれ、ルミネは完全に消滅した。
そして3人は着地する。

アクセル「…………」

ルナ「アクセル…」

アクセル「ルナ…」

2人の視線が交わる。
ルナの手がアクセルの頬に触れる。
とても暖かい。
そしてアクセルの胸に耳を近づけると、動力炉が動いている音がする。
アクセルが生きている。
それだけで涙が止まらない。
しかし、突如アクセルの身体が崩れ落ちる。

ルナ「アクセル!!?」

咄嗟に支えるルナ。
彼女はとても不安そうにアクセルを見る。
アクセルは疲れたような表情で笑う。

アクセル「少し頑張り過ぎちゃったようだね…」

ルイン「え?」

アクセル「力の使いすぎ…この力は僕の持つ力を限界まで引き上げるんだけど、かなり負担がかかるんだ…昔はずっとこんな身体だったけれど、レッドに拾われた時、防衛プログラムが働いた…使命を思い出した時に、思い出した。」

アクセルのコアが光り、白いボディが黒に変わる。
エックス達が普段目にするアクセルの姿。

ルナ「アクセル……お…れ………私…」

酷く小さく聞こえた単語。
それが本来のルナの口調なのだと気づき、アクセルは安心させるように微笑んだ。

アクセル「少し疲れただけだから、大丈夫…。でも、凄く眠いや…大丈夫…大丈夫…そんな心配しないで……ね…?約束する…から…」

ルナ「うん…約束……だよ…」

アクセルが伸ばした手をルナが握り締めるのと同時にアクセルは眠りに落ちた。
穏やかな寝息が聞こえ、全員が安堵の笑みを浮かべた。
そしてアイリスからの通信が入る。

アイリス『エックス、状況は?』

エックス「こちらエックス。状況は…アクセルが意識を失っているが、大丈夫だ。これより帰投します」

つい先刻まで激戦とは思えない穏やかな声。
こうして21XX年、最後の大戦は幕を下ろした。 
 

 
後書き
やっと終わった…。
こんなに書いたの久しぶりな気がする…。
 

 

最終話 天より他に知る者もなく

 
前書き
エピローグです。 

 
ルミネとの戦いから帰還したエックス達は、アクセルを含めて全員が集中治療室行きとなった。
特にエックスとゼロのダメージはルインとルナより酷く、特にゼロは全身に包帯を巻かれるハメになった。

ゲイト「やれやれ…もしかして君達より女性陣の方が強いんじゃない?しっかりして欲しいもんだね」

ゲイトが溜め息混じりに言うと、見舞いに来たエイリアとアイリス、レイヤー、パレットがクスクスと笑い、ゼロがギロリとゲイトを睨みつけ、エックスは苦笑していた。








































そしてアクセルとルナの部屋では、アクセルが寝ているベッドの隣でルナがアクセルがいつ起きてもいいように林檎を剥いていた。

アクセル「あ、ルナ……おはよう」

果物ナイフを思わず指に刺しそうになったけれども、何とか刺さずにすんだ。

ルナ「おはよう、アクセル。気分はどうだ?」

アクセル「うん、とても気分がいいよ。ここは僕達の部屋?」

ルナ「ああ」

アクセル「帰ってこれたんだ…」

ルナ「ああ、お帰り。本当によかったよ…」

アクセル「ルナ…」

大人びた微笑を浮かべるアクセルにルナは思わず、顔を赤らめる。
2人の間に穏やかな沈黙が降りる。
ただ2人で一緒にいるだけなのに、とても安らかで、でも少し心がざわざわしたりするが、とても心地好い。
その時、アクセルの腹が空腹を訴える。
無理もない。
ハンターベースに戻ってからも数日も寝ていたのだから。

アクセル「…あはは、ルナ。何か食べるものない?」

ルナ「こんなのでいいならあるぞ?」

切ったばかりの兎カットの林檎を手渡した。

アクセル「あ、兎林檎。器用だね」

ルナ「まあな。」

しばらくしてアクセルは林檎を全部食べた。
空腹を満たしたアクセルがご馳走様と言うと互いに笑い合うのだった。
それから3日が過ぎた。
穏やかな晴天が、世界を見守るように広がる。
ったな」





































研究室では、ゲイトは非常にやる気なさげな表情をしており、エイリアは苦笑している。
彼の視線は厚みのある書類に注がれている。
アクセルが消えた前後の分析データ。

ゲイト「メモリが復旧するなんて…反則だろう」

ソフト的にはともかく、中心に穴を空けたメモリが、物理的に回復するなんて有り得なかった。
ソフト的でさえ、ゼロやルインの例外を除けば皆無と言っていい。

エイリア「……奇跡が起きたのよ」

ゲイト「エイリア。君は奇跡なんて信じているのかい?」

エイリア「エックス達といれば自然と信じられるようになるわよゲイト。」

ゲイト「あれは奇跡じゃなくて目茶苦茶って言うんだよ」

不満そうに文句を言うゲイトの表情は言葉とは裏腹にとても優しげである。




































エックスとルインは少ない休憩時間を共に過ごしていた。
快晴の空の下、ハンターベースに設けられた公園を歩いている。

エックス「今回は…本当にありがとう。迷惑をかけてすまなかった」

ルイン「ううん…気にしないで」

エックスの謝罪にルインはやんわりと否定する。
仲間を支えるリーダーとして、辛い戦いを強いられたが、これまで微塵も表に出さなかった彼女。
エックスはそんなルインに対して複雑な表情を浮かべた。
彼女にこれ以上辛い思いはさせないと胸に誓う。

エックス「アクセルのこと…ルナには辛い思いをさせてしまった…」

ルイン「………」

エックス「俺はアクセルを撃てなくて、あの時は結局、ルナが彼を撃った。ああすることで彼女はアクセルを救ったんだ。引き金を引くのを躊躇うなと言いながら…情けない」

ルイン「エックス…」

エックス「でも…俺は思うんだ。あの時、ルナが撃ってくれたからアクセルは戻って来れたって、彼女の願い、彼を返してくれた。」

翡翠の目が、空を仰ぐ。
まるで大気圏の向こうにある戦場を見据えるように。
ルインはエックスと並び、空をじっと見つめる。

ルイン「エックス…」

エックス「何だ?」

ルイン「お疲れ様」

エックス「ああ…」

胸に飛び込んだルインにエックスは、優しく彼女を両腕で包み込んだ。






































ゼロ達が一行の中で1番変化がない。
今日も今日とてゼロはミッションに勤しみ、アイリスとレイヤーはオペレートを頑張っている。

レイヤー『ゼロさん、お気をつけて』

アイリス『無理をしないでね?』

ゼロ「ああ、分かっている」

淡々とした口調だが、2人は満足である。
レイヤーは出来ればまた共に戦いと思うが、それは望み過ぎだろう。

ゼロ「レイヤー、アイリス。指示をくれ」

アイリス『はい』

レイヤー『分かりました』

そしてゼロの唐突な一言により、レイヤーの思考がピタリと止まる。

ゼロ「アイリス、レイヤー。オペレート、感謝する」

レイヤー『!!?』

アイリス『ふふ…レイヤーったら…ありがとうゼロ』

茹蛸の如く真っ赤に、直後頭から湯気がポワンと浮いたのを見たアイリスはクスクスと笑った。

ゼロ「レイヤー…レイヤー?」

アイリス『レイヤー、ゼロが呼んでるわよ?』

からかうような口調で言うとレイヤーはあたふたとしながら口を開いた。

レイヤー『あ、いえ、そのっ!!ななな何でもありません!!』

それは傍から見てもとても滑稽であった。





































アクセルとルナは休暇を取っていた。
アクセルはまだ本調子ではないために、思い切って休みにしたのだ。
アクセルは大丈夫と言っていたが、ルナを筆頭にエックス、ルイン、ゼロ、エイリア、アイリス、レイヤー、パレット、シグナス、ゲイト達から即駄目出しを受けた。
結局全員に押し切られて2人仲良く休みとなったのだ。




































現在ルナはアクセルと共に外出していた。
2人の間の空気はとても優しい。
行き先はアクセルがお気に入りの場所として、仲間に内緒にしていた向日葵畑である。

ルナ「わあ…」

ルナが思わず魅入る。
アクセルは得意気に笑うと、やがで懐かしむように遠くを見つめた。

アクセル「まだレッドが生きていた頃…1度だけ連れてってもらったんだ。あの頃も今みたいに向日葵が咲いていてね。ハンターになっても、時々ここに来てたんだ。レッドとの思い出の場所だから…今までは僕が独り占めしてたんだ…初めて誰かをここに連れてきたんだ。此処に連れてきたのはルナが最初」

ルナ「え…?」

その言葉にルナは思わずドキリとした。
アクセルは思い出す。
自分が天国に行く間際の出来事を。

アクセル「あれから…レッドといたんだけど、やっぱり戻らなきゃって思い直したんだ。だって僕、まだまだルナや皆といたいから」

ルナ「…………」

アクセル「シグマに捕まって…色々あって君との記憶も1度は失ったけど、何とか思い出せたよ。忘れないって約束したからね」

ルナ「ああ…」

並んで向日葵畑を眺めるアクセルは、彼女がよく知るアクセルである。
しかし同時にアクセルの中に、大人びた雰囲気を感じていた。
アクセルは失われた記憶を取り戻したはず。
悪しき科学者達に造られた新世代型レプリロイド。
エックスとゼロを殺すという使命も。
アクセルがまた遠くに行ってしまうような気がして、ルナは思わずこう呟いていた。

ルナ「アクセル…お前は…」

アクセル「ルナ」

ルナ「?」

人差し指でルナの口を止めるアクセルに目を見開く。

アクセル「ルナの…本当の口調で話してくれない?」

ルナ「へ?」

アクセル「今までのは、本当の口調じゃなくて、本当は月で見せてくれたのが本当の口調でしょ?」

ルナ「え?あ、そ、それは…」

意識だったために気づいてなかったが、思い出すと一気に顔が熱くなる。
ジャンク屋になって以来全く使っていない自分の本来の口調。

アクセル「僕は…本当のルナと話したい」

アクセルの表情にからかいはない。
本心であることを悟り、ルナは赤面しながら頷いた。

ルナ「う、うん…分かったよアクセル」

アクセル「それで?何なの?」

アクセルが先程ルナが言おうとした言葉が気になり、彼女に尋ねる。

ルナ「アクセル…ずっと…ずっと一緒だよね?私の前から…いなくなったり…しない…よね?」

アクセルは一瞬、面食らったような顔をしたが、次の瞬間優しく微笑んだ。

アクセル「当たり前じゃない」

ルナ「…っ」

息を呑むほどに優しく、暖かい笑顔。
吸い込まれるように見つめていた彼女にアクセルの手がそっと差し出される。

アクセル「行こう」

ルナに向けてゆっくりと差し出されたアクセルの手。

ルナ「…うん」

ルナは自分より少し大きいアクセルのその手をしっかりと握り返す。

ルナ「…アクセル…大好きだよ」

アクセル「うん」

彼女は向日葵畑の見える丘を、アクセルに寄り添うように歩いて行った。








































ルミネのイレギュラー化を受け、政府はコピー能力を持つ新世代型レプリロイドの初期ロットを破棄。
コピーチップの製造を中断した。
しかし、宇宙開発のさらなる隆盛から高性能な新型レプリロイド開発の要請は尽きず…。
数年後、厳重なプロテクトを施し、コピーチップの製造を再開した。










      人間とロボット

相容れぬ二つの生命が平和に共存する世界

それは私が望んでやまない理想郷だ

      トーマス・ライト。

遥か遠い過去。
時の流れは川のように絶えねど、その営みは天より他に知る者もなく。 
 

 
後書き
今まで、ロックマンX小説を読んでくださりありがとうございました。
これでロックマンX小説は終わりになります。
コマンドミッションは…書くかどうか悩んでいますが…。
もしかしたら、これにコマンドミッションの話を追加するかも 

 

Another1 女神

 
前書き
やっぱりコマンドミッション書きたいので、再チャレンジです。 

 
不思議な異空間の中で、女神は目を閉じながら、かつての出来事を思い出していた。
ルインとルナを転生させてから約100年の年月が過ぎた。
2人共、大切な人を、仲間を見つけることが出来て幸せそうだ。

「平穏だねえ」

ライト「そうですな。新世代型レプリロイドの反乱以来、エックスがあまり戦わないで済んでいるので、わしも安心です。」

「うん。ルインちゃんもルナちゃんも彼氏がいて幸せそうだし…それは私的にも嬉しいんだけどねえ」

ライト「……何か問題でも?」

目の前にいる女神とは100年もの付き合いだが、彼女のハチャメチャな行動に振り回されることが多いライト博士はとてつもなく嫌な予感を感じていた。
どうやらその予感は的中していたようだ。

「うん、ぶっちゃけ暇なんだよ」

ライト「暇…ですか…」

「平和だから良いんだけどね。私的にはもっと刺激が欲しいの!!?私は神様だから成長とか変化しないからなあ。何か面白いことないかなあ」

ライト「女神殿が暇なら暇で…世界からすれば良いことなのでは…?」

「ぶ~、ライト博士は生真面目過ぎるよ~。流石エックス君やロック君やブルース君達のお父さんだね………そうだ!!私が人間に転生しちゃえばいいんだ!!!!」

ライト「はっ!!?」

「ライト博士!!私は今からゼロ君に会いに行くから!!私が人間に転生して天寿を全うするまで、私の仕事を代わりにしといて!!では、行っきまーす!!!!」

ライト博士「ちょ!!?待ってください女神殿!!」

ライト博士が止める間もなく、女神はエックス達がいる世界に向かった。

ライト「……そう言えばさっき女神殿はゼロに会いに行くと言っていたのう…」

これからゼロに降りかかる苦労を考えると、哀れに思えてしまうのは仕方のないことだろう。








































ゼロはハンターベースの自室にて休息を取っていた。
少ししたらエックスを誘ってトレーニングでもしようと考えた直後であった。

「ヤッホー☆ゼロく~ん♪」

ゼロ「!!?」

背後からいきなり聞こえた声にゼロは咄嗟にセイバーの柄に手をやってしまったが、背後にいる存在を見遣ると今度は別の意味で目を見開く羽目に。

「お久し~♪」

目の前にいる神々しいオーラを纏う女性がいた。
この目の前にいる女性こそ、自分のオリジナル・ボディを封印し、代わりのコピーボディを与えてくれた女神なのだ。

ゼロ「あんたは…女神か!!?何故あんたがハンターベースに!!?」

いきなりの女神の出現に普段の冷静さを失ったゼロが問い掛ける。

「まあまあ、ゼロ君。落ち着いて」

ゼロ「これが落ち着いていられるか!!何故女神のあんたが俺の部屋にいる!!?」

「至極尤もな質問だね。うん、理由はあるよ?滅茶苦茶重大な…」

ゼロ「何だ?…まさか、また大きな事件がこの世界に起きようとしているのか?まさか…シグマが蘇ったのか?」

女神の真剣そうな表情からこれはただ事ではないと感じた。

「うん、ぶっちゃけ暇だから遊びに来ました♪」

ゼロ「は?」

真剣な表情から一変して無邪気な表情で告げる女神にゼロは脱力しそうになった。

「だって~、最近トラブルがないから暇で暇で仕方なくてさ~だからこっちに来ました☆」

ゼロ「あんたは女神だろう!?駄目だろう、それでは!!?それにあんたがいなくなったら、誰があんたの役割を…」

「あ、それはライト博士に任せて来ました」

ゼロ「Dr.ライト…」

今頃、女神に押し付けられた仕事をこなしているであろうライト博士の姿が浮かんだ。
エックス同様、貧乏くじを引きやすい彼をゼロは心底哀れんだ。

「私がこの世界に来たのはね?私も1回だけ人間として生きてみたいな~って思ったんだよね」

ゼロ「人間に…?」

「うん、ハンターベースにだって人間はいるでしょう?」

ゼロ「あ、ああ…科学者とかな…」

「だから私もハンターベースで働こうかなって」

ゼロ「は!!?」

今、女神から聞き捨てならない発言が聞こえたために女神に問い詰めようとしたが、既に女神の姿が消えていた。









































ゼロ「………」

女神の爆弾発言から数日。
ゼロは一体どこから女神が出て来るのかを警戒していた。

エックス「ゼロ…どうしたんだ?まるでシグマと戦っている時と同じくらい警戒して?」

ゼロ「エックス…下手をしたらシグマより遥かにタチの悪い存在がハンターベースにいるかもしれないんだ」

エックス「え?それって…」

「どういう意味かな~?ゼロ君?」

ゼロ「なっ!?」

エックス「あ、アリア博士」

後ろを見遣ると、金髪碧眼で長い金髪をポニーテールにした十代前半くらいの白衣を着た女の子がゼロをじろりと睨んでいた。

ゼロ「(ま、まさか…このガキ…?)」

アリア「(ビンゴ~♪今日から女神じゃなくてアリアって呼んでね♪)」

ゼロ「ぐっ…」

エックス「ゼロ?どうしたんだ…?」

ゼロ「いや…これから騒がしくなりそうだと思っただけだ」

ゼロは遠い目で空を見上げながら呟いた。
アリアと名乗る女神もニヤニヤと笑いながら自室に向かう。 

 

Another2 ギガンティス

 
前書き
ギガンティス潜入前 

 
女神がアリアと言う名の少女に転生してから、瞬く間にイレギュラーハンターの間で話題になった。
今まで不可能だったエックス、ゼロ、ルイン、ルナ、アクセルの完璧なメンテナンスに加え、先日太平洋に落下した鉱石、フォースメタルの解析、そのエネルギーを使い、エネルギー不足等の解消など、彼女は人間としては凄まじい功績を挙げていく。
一部ではDr.ライトとDr.ワイリーの再来とまで言われている程だ。
そんな彼女の所にアクセルの姿があった。

アリア「おや?アクセル君にルナちゃんじゃない?何か用?」

アクセル「メンテナンスを受けに来たんだよ。今日から長期休暇を取ったからね…ちょっとした里帰り」

ルナ「俺も一緒に行くんだ。アクセルだけだと、少し心配だからさ」

アリア「ふんふん、確かアクセル君が生まれた研究所は確か、ギガンティスの近くだったね。確か、隕石落下の津波やら、研究所で造られたフォースメタル搭載型レプリロイドの製作に失敗して、そのイレギュラーによって研究員はみんな死んだんでしょ?今更そんなとこ行っても…」

アクセル「うん…ゼロからも言われたけど…やっぱり僕が生まれた場所だからさ」

ルナ「アクセル…」

アリア「そっか…じゃあメンテナンスを始める前にこれをあげるよ」

メンテナンスの準備に取り掛かる前に、アリアは六角形のケースに収められた1つの黒いフォースメタルをアクセルに差し出した。

アクセル「何これ?フォースメタル?」

アリア「うん。あの研究所を調査した時に発見されたの、高度な技術で精製されたフォースメタルだから浸食値が高すぎて誰も装備出来ないんだって。アクセル君は新世代型だから使えるんじゃない?」

アクセル「元新世代型レプリロイドのプロトタイブだよ…」

100年前に反乱を起こした新世代型レプリロイドは、プロトタイブのアクセル達を除いて姿を消した。
もうこの世界には新世代型レプリロイドはもう僅かしかいない。

アクセル「でも、ありがたく受け取っておくよ。あいつらをコケにした僕がこれを使えば、今頃地獄にいるあいつらが滅茶苦茶悔しがるだろうしね」

盛大な嫌がらせを思いついたと言いたげにニヤニヤと笑うアクセルにアリアもしきりに頷いてやった。

アリア「それじゃあ、メンテナンスを始めようか」

アクセル「うん、お願い」

しばらくは完璧なメンテナンスは受けられなくなるため、念入りにチェックしてもらった。

アリア「ああ、そうだ。フォースメタルには能力の強化の他にも、秘められた力を解放する力があるみたいなんだ。もしかしたら今のアクセル君も秘められた力を解放出来るんじゃないの~?」

アクセル「秘められた力…か…」

アクセルの脳裏に過ぎるのは、新世代型レプリロイドの反乱時に、シグマの力によって覚醒したアクセルの本来の姿と力。

アクセル「そんな強敵と出会わないことを願うよ」

精々イレギュラーがいたとしても野生化したメカニロイドくらいだ。
今更そんな物にやられるわけがない。

ルナ「早くメンテナンスしてくれよ」

アリア「はいはい。ギガンティスでゆっくりデートしていきなね~」

ルナ「デート…!!?ば、馬鹿!!」

サラリと言われた単語に赤面しながら叫ぶルナにニヤニヤが止まらない元女神様であった。







































そしてアクセルとルナが里帰りに行ってから数日後、ギガンティスで反乱組織リベリオンによる反乱が起きた。
極東司令塔責任者兼、連邦政府軍司令官、リディプス大佐から指令を受けたイレギュラーハンターのエックス、ルイン、ゼロ、シャドウの4人がギガンティスに潜入することになった。

リディプス「今回君達に与える任務は、人工島ギガンティスに侵入し、イレギュラー・イプシロン率いる反乱組織、リベリオンの活動を阻止することだ」

リディプス大佐の前に立ち並ぶ4人のハンター達の表情は歴戦の戦士のそれであった。

リディプス「諸君らより先に上陸したチームの反応は完全に消え、全滅したと考えられる。君達が最後の希望だ。この作戦に失敗すれば我々は、ギガンティス全土の無差別攻撃という非常手段を取らざるを得ない」

“無差別攻撃”

この単語にエックスが僅かに表情を揺るがせたことに気付いたのはエックスとは100年の付き合いであるゼロとルインのみであった。

リディプス「残念ながら、イプシロンの所在は不明だ。…ただ…ある廃墟に、気になるエネルギー反応を感知した。まずは、ギガンティスに潜入次第、そこを調べてもらいたい」

エックス「了解しました」

強行偵察チームのリーダーであるエックスがそう返す。
出撃前に準備を万端にしておかなければ。
シャドウは既にメンテナンスを受けていたらしく、シャドウと別れて、自分達の完璧なメンテナンスの出来るアリアの元に向かう。







































アリア「ふむふむ、ギガンティスへの潜入捜査ね~。イレギュラーハンター最強格のエックス君、ゼロ君、ルインちゃんを投入するなんてリディプス大佐もマジのようだね…」

事情を聞いたアリアは普段の雰囲気からでは想像出来ない真剣な表情をしていた。

エックス「アリア博士。俺達のメンテナンスを頼めますか?しばらく、完璧なメンテナンスは出来ないと思いますから」

アリア「OKOK。任せときなさいって。この私が完璧以上にしてあげるから、それよりまずエックス君とゼロ君はアーマーを新しくしないとね~」

エックス「アーマーをですか?」

アリア「うん、これから潜入するんでしょう?少数精鋭で行くんだから出来るだけ、敵に見つかる危険性を出来るだけ低くした方がいい」

ゼロ「Dr.アリア。俺は忍び部隊の元隊長なんだが?」

アリア「その全く忍んでませんと言ってるような真っ赤なアーマーで何言ってるの?君はエックス君やルインちゃんと比べて何を仕出かすか分からないんだから」

ゼロ「おい、それはどういう意味だ。」

エックス「そうですね、まずはゼロから」

ルイン「それじゃあ私達は待ってますね」

アリア「はいはーい。それじゃあ始めようか~」

エックスとルインがすぐさま部屋を出て行き、アリアも準備に取り掛かる。

ゼロ「俺を無視して、話を進めるな…」

メンテナンスベッドに横にされたゼロの呟きが虚しく響いた。







































数時間後。
アーマーを新調したエックスとゼロが出て来た。

ルイン「うわあ~エックスとゼロ、新しいアーマー似合うよ~」

エックスとゼロの新しいアーマーは今までのアーマーとは違い、ルインやルナに近いタイプの細身のアーマーだ。

アリア「ふう、エックス君はともかくゼロ君はかなり苦労したよ~。」

何せゼロの新型アーマーは平行世界の彼をモデルにした物だ。
大部分はエックスに似ているが、細かい所が違う。

アリア「それからこれ、私からのプレゼントだよ」

エックス、ゼロ、ルインに向けて投げ渡される蒼、紅、朱の3つのフォースメタル。

エックス「アリア博士、このフォースメタルは一体?」

エックスが蒼いフォースメタルを見つめながらアリアに尋ねる。

アリア「まずはエックス君のはXハート、ゼロ君のはZEROシフト、ルインちゃんのはRエレメント。Xハートは、エックス君のレイジングエクスチャージを参考にしてね、エックス君の回復力を高めて、ゼロ君のZEROシフトはダメージを軽減、弱い攻撃なら無力化してしまい、ルインちゃんのRエレメントは全ての属性防御能力を高めてくれる優れものだよ♪」

ルイン「凄い…ありがとうアリア博士!!」

アリア「ふふ~ん。実はまだまだおまけがあるのさ、細かいことはこのファイルに入れといたから読んでね~」

エックス「はい、ありがとうございます。何から何まで」

アリア「気にしない気にしない☆本来ならこういうのが得意そうなアクセル君やルナちゃんが適役のはずなんだけどね」

ゼロ「仕方がないだろう。里帰りなんだ。それも、自分の兄弟機達がいる…な」

ルイン「……………」

イレギュラーによって滅ぼされたアクセルにとって忌まわしき故郷。
アクセルはどんな気持ちで向かったのかはルインには分からない。

エックス「それではありがとうございましたアリア博士。それでは行きます」

アリア「気をつけてね~」

部屋を後にするエックス達だが、アリアはすぐさまアイリスに通信を繋ぐ。

アイリス『こちらアイリス。どうしましたか?アリア博士』

アリア「アイリスちゃん、暇?」

アイリス『え?まあ、予定はありませんけど?』

アリア「ならねえ…」

悪巧みを考えている子供の表情でアイリスに語りかけるアリアであった。 
 

 
後書き
ゼロのアーマーも最新。
エックスがコピーエックスならゼロもロクゼロ風 

 

Another3 潜入ギガンティス

 
前書き
ラグラノ研究所跡に潜入。
ここからオリジナルハイパーモード等が出てきます 

 
かつては何らかの研究施設だったであろう場所、ラグラノ廃墟。
4人のハンターは建物に入り、様子を窺う。

ゼロ「…お出迎えは無し、か…」

ゼロが呟いた隣で、エックスは左腕の通信機を起動させる。

エックス「…聞いてた通りだな」

映し出したディスプレイには砂嵐がかかっており、使えないと判断しすぐにしまう。

エックス「無線機は殆どアテに出来ない」

ゼロ「…それにしても…これだけの島に潜入するのがたったの4人とはな」

呆れたように言うゼロにルインも苦笑しながら言う。

ルイン「仕方ないじゃない。大規模な部隊だと目立って動きにくいし。それに4人じゃないよ。ソニアもいる」

ソニア[戦闘のサポートは任せてよ!!]

ゼロ「期待しないでいる。…少数精鋭ということか」

シャドウ「俺は、あんたらほど優れたハンターじゃないが、この島には詳しい」

そう、シャドウはギガンティス出身のレプリロイド。
この島のことは誰よりも詳しい。

エックス「ああ。案内は頼む、シャドウ」

シャドウ「よし、早速移動しよう。潜伏するのに丁度いい場所がある。」

エックス達が行動を開始しようとした瞬間、背後から放たれたエネルギー弾が中央の柱を破壊し、破壊された柱がエックス達に向かって倒れてくる。
咄嗟に回避するが、エックス、ルイン、ソニアの2人と1匹。
ゼロとシャドウの2人に離されてしまった。

エックス「ルイン、ソニア。怪我はないか?」

ソニア[お父さん、私は大丈夫だよ。お母さんも]

ルイン「うん。ゼロ!!シャドウ!!大丈夫!!?」

シャドウ「エックスとルインとサイバーエルフはそっちの階段から上がれ!!上で合流しよう!!」

エックス「分かった。罠かもしれない。気をつけろ!!シャドウ、君はゼロから目を離さないでくれ!!」

ゼロ「…どういう意味だ」

ルイン「シャドウ、ゼロが勝手な行動したらその時はお願いね」

ゼロ「ルイン…お前まで」

シャドウ「ああ、分かっている。こちらは任せておけ、行くぞゼロ」

向こうにいるエックス達もシャドウも行動を開始する。
ゼロは微妙そうな表情でシャドウを追い掛けた。








































そしてゼロとシャドウと合流するべく移動を開始したエックスとルイン。
エックスは最新型のアーマーにより出力が以前よりも大幅に向上しているのを感じていた。
野生化したメカニロイドと遭遇するも、エックスとルインの敵ではない。

エックス「ルイン、チャージショットで殲滅する。フォローを頼む」

ルイン「任せてよ!!」

エックスのエネルギーチャージが完了するまで、ルインが高い機動力を活かして、メカニロイドを翻弄していく。
そしてバスターのエネルギーチャージが完了。

エックス「チャージショット!!」

新型アーマーのチャージショットがメカニロイドを殲滅する。

ルイン「アリア博士の新型アーマー、良好みたいだね」

エックス「ああ、慣れるのに時間がかかると思っていたけど、これなら大丈夫そうだ」

最強のイレギュラーハンターであるエックスとルインの前では野生化したメカニロイドなど敵ではない。
そしてイーストブロック2Fで研究部屋らしき場所を見つけたエックス達。
そこには、大型のカプセルが4台置かれていた。

ルイン「ソニア、調べてくれるかな?」

ソニア[任せて]

ここの機器はまだ生きているため、サイバースペースにダイブするソニア。
しばらくしてサイバースペースから出て来る。

ソニア[この部屋じゃ、4体の戦闘型レプリロイドがカスタマイズされていたみたい。高機動山猫型レプリロイド、ワイルド・ジャンゴー。超重量装甲砲撃型レプリロイド、シルバー・ホーンド。高速演算処理人型レプリロイド、Dr.サイケ。強化軽量装甲飛行型レプリロイド、マッハ・ジェントラーの4体。]

ルイン「マッハ・ジェントラーって、政府に所属していた……」

ルインが呟いた直後、2人の通信機が鳴る。

ゼロ『エックス…ルイン…こちらでカスタマイズ用のカプセルを発見した。そっちはどうだ?』

ルイン「うん、こっちでもカスタマイズ用のカプセルを発見したよ。4体分ね」

ゼロ『そうか…この調子だと他にも何かありそうだな』

シャドウ『とにかく調査を進めよう。そちらも気をつけろ』

エックス「了解、行こう。ルイン、ソニア」

ルインとソニアは力強く頷くとイーストブロック3Fに向かう。







































イーストブロック2Fにもあった同じような部屋でも、2つのカプセルを発見。
調べている内に、エックス達の瞳が見開かれた。
即座に通信を繋いだ。

エックス「ゼロ、シャドウ!!」

ゼロ『どうしたエックス?』

エックスに対し、ゼロは冷静だ。

エックス「イーストブロック3Fの研究室で高性能型レプリロイドの改造カプセルを発見した…1体はスカーフェイスというレプリロイドと…もう1体はイプシロンだ!!」

ゼロ『何だと!?それは本当か!!?』

シャドウ『こちらにも高性能型レプリロイドのカスタマイズ用カプセルが2つあるぜ…戦闘型8体に高性能型4体となると…随分な大部隊だな。通りで先に上陸した連中が全滅する訳だな…』

ルイン「ゼロ、シャドウ。ここ…何かあるよ。気をつけて」

ゼロ『ああ…』

エックスとルインが部屋を出ようとした瞬間、モノアイのレプリロイドがいた。

「政府イレギュラーハンター発見!!排除行動を開始!!」

ゼロ『聞こえるか!!どうやら俺達の存在がバレてしまったようだな。リベリオン兵らしき物と遭遇した!!これより戦闘体勢に入る!!』

ソニア[調べるよ~、リベリオンが造った新型戦闘用レプリロイド、プレオン・チェイサー。右腕のスタンガンと、左手の機銃の攻撃には要注意!!プレオンは飛行能力を持たないから足を潰せば動けなくなるよ]

エックス「了解」

ルイン「今度は私の番だね」

ルインがセイバーを構える。
エックスがバスターをプレオン・チェイサーに向けるのと同時にショットを数発放つ。
両足と左腕の破壊をし、それを見たルインが両足の加速器を吹かして、三連撃を叩き込む。
それだけでプレオン・チェイサーは破壊された。

ルイン「ターゲット、完全撃破!!終わったね」

エックス「ああ」

ソニア[お疲れ~、何か使えそうなの持ってないかな~。あ、フォースメタルがあった。流石、リベリオンの主戦力レプリロイドだね…どうやら体力の上限を上げるタイプみたい。どっちも装備出来るよ]

エックス「なら、それはルインが装備するといい」

ルイン「え?いいの?」

エックス「構わないさ。ゼロの次にダメージを受けやすいんだ。こういうのは君が装備した砲がいい」

ルイン「ありがとう。なら遠慮なく」

フォースメタルを装備すると、少しばかり体力が上がったような感覚を覚えた。

エックス「ゼロは大丈夫かな?」

ルイン「大丈夫だよきっと。アリア博士に色々武器貰ってたし」

ルナが製作した武器をゼロの記憶データを元に再現したアリアに長い時間をかけて造った武器を簡単に再現されてしまったとルナが聞けば確実に頭を抱えるだろう。

ソニア[それにしても新型戦闘用レプリロイドのプレオンの1体を投入してくるなんて、敵も本気だね]

エックス「ああ、急いでゼロとシャドウと合流しなければ」

ルイン「急ごう!!」

ゼロとシャドウと合流すべく、エックスとルインは加速器を吹かして更に上の階に。









































イーストブロック4F。
暗い通路を進んだ奥に見つけた扉。
扉を開くと広い円形の、ホールにも似た場所に出た。
そこにいたのはゼロ。

ルイン「ゼロ!!」

ゼロ「随分と遅かったな。待ちくたびれたぞ」

エックス「これでも急いで来たんだけど…」

ルイン「シャドウは?」

ゼロ「あいつは先に行っている。俺達も追い掛け…」

ゼロが言葉を言い切る前に、壁が破壊され、そこから大型のカバを思わせるメカニロイドがいた。

ルイン「え…?」

ゼロ「何だこいつは…」

ソニア[こいつ、最新型の大型戦闘用メカニロイド。ヒポポブレッサーだよ。背部のシャークミサイルが強力だよ。あいつを倒すには頭を壊さないと。頭は格闘攻撃に弱いからゼロ達がセイバーで破壊して、破壊したらすぐに離脱してね]

ゼロ「了解、エックス。お前はあのデカブツのミサイルを破壊してくれ、俺とルインで頭部を破壊する」

エックス「分かった。気をつけてくれ」

エックスがバスターでシャークミサイルを粉砕すると、ゼロとルインがセイバーでヒポポブレッサーの頭部を攻撃する。
時折、機銃による銃撃、のし掛かり攻撃を繰り出してくるが。

ゼロ「効かんな!!」

ZEROシフトの特殊な防御フィールドは機銃程度なら無力化してしまう。
のし掛かりもそんな単純な攻撃をエックス達が受けることなど有り得ない。
エックスがシャークミサイルを破壊し、とうとうゼロとルインがセイバーでヒポポブレッサーの頭部を破壊した。

ソニア[……っ、みんな!!離れて!!]

頭部を破壊され、剥き出しになった砲門から放たれた超カバ粒子砲が不意を突かれたゼロとルインに直撃する。

ゼロ「くっ、ZEROシフトの防御フィールドを破るとはな…」

ルイン「っ…身体が痺れる…」

バインド状態になったルインを見て、エックスはすぐにケリをつけるべきだと判断し、切り札を使うべきだと判断した。

エックス「(力を貸してくれ…Xハート…)一気に行くぞ!!!」

エックスの全身から凄まじいエネルギーが吹き荒れ、エックスの身体が光に包まれた。

エックス「ハイパーモード・ファーストアーマー!!!!」

光が消え、エックスの姿は大きく変わっていた。
蒼いアーマーは純白のアーマーに変わり、より強いエネルギーを放っていた。

ゼロ「エックス…ファーストアーマーとは…随分と懐かしいアーマーだな」

ファーストアーマー

かつてのシグマの最初の反乱時に纏ったエックスの1番最初の強化アーマーだ。
ゼロからすればファーストアーマーはエックスの基本能力を向上させるのみで、2回目以降の大戦から纏っていたアーマーと比べれば劣っている感じが否めないが…。
再びヒポポブレッサーが超カバ粒子砲を放ち、エックスに喰らわせるが、エックスは両腕を交差させて防ぎきる。
ファーストアーマーは確かに2番目のセカンドアーマー等の強化アーマーと比べれば目立つ物はないが、実はアーマー自体の防御力はガイアアーマーの次に高いアーマーなのだ。
そして…。
ファーストアーマーは元々ダッシュ移動が使えなかったエックスにその能力を与えたフットパーツを持っている。
元々持っているエックスのダッシュ能力とファーストアーマーのフットパーツ機能の相乗効果で地面での移動の機動力なら歴代の強化アーマーを上回る性能になった。

エックス「喰らえ!!スパイラルチャージショット!!!!」

ファーストアーマーのバスターから放たれた拡散弾を束ねた一撃がヒポポブレッサーの砲門に炸裂した。
ファーストアーマーの最大出力チャージショットであるスパイラルクラッシュバスターは発射時により高威力の拡散弾と凄まじい衝撃波を放つためにより多くの敵を屠れるのだが、こんな廃墟では崩落してしまう可能性がある。
故に出力を抑えたスパイラルチャージショットを放ったのだ。
いくら出力を抑えても拡散弾の1発1発が通常のエックスのチャージショットに匹敵するそれはヒポポブレッサーを完全に粉砕した。

エックス「(やはりアリア博士の技術力は凄い…いくらフォースメタルの恩恵があったとしても完全にアーマーの性能を再現出来るなんて……)」

ルイン「久しぶりにファーストアーマー見たけど、スパイラルチャージショットはやっぱり強烈だね」

エックス「ああ、アリア博士の技術力には毎度脅かされるよ」

ソニアがルインにアンチロックを使ったのだろう。
バインド状態が解けている。
エックスもハイパーモード・ファーストアーマーを解除し、ゼロとルインの元に歩み寄る。

ゼロ「少し手こずったが、早くシャドウと合流するぞ」

エックス達は持参していたエネルギーパックを飲み干し、消費したエネルギーを補給する。
特にハイパーモードを発動したエックスはエネルギーパックを2本も消費してしまった。

エックス「(強力だけど、このエネルギー消費は考え物だな。後でアリア博士に頼んでみよう)」

ハイパーモードの欠点に気付いたエックスはゼロとルインに続いて最上階に向かうのだった。







































屋上に着くと、激しく降っていた雨は止んでいて、美しい満月が見えていた。
かつて前世紀で凄まじい戦いがあった月の光を受けながらシャドウは静かに佇んでいた。

エックス「シャドウ!!」

ルイン「良かった、無事だったんだね……」

仲間の無事に安堵するエックスとルインだが、シャドウはこちらを振り向かず、前を見据えている。
シャドウの視線を辿ると、そこには漆黒のマントを纏い、パイザー越しにこちらを見据えるレプリロイド。
ただ者ではないとエックス達は感じ取る。

ゼロ「…何者だ?」

背中のセイバーに手をやり、シャドウよりも一歩前へ出ながら問い掛ける。

ルイン「…リベリオン?」

ルインが紡いだ単語に、その男はゆっくりと口を開いた。

「いかにも…」

低い、厳然たる声。

「リベリオン総帥、イプシロンだ」

エックス「っ…」

反乱組織リベリオンの総帥が自分達の目の前に現れたことにエックスは目を見開く。

ゼロ「ほう、そのお偉い総帥様が、わざわざお出迎えか?」

イプシロン「君達のことは、よく聞いている。イレギュラーハンターの諸君。エックス…ゼロ…。君達は優秀なレプリロイドだ。どうだ…?我々の理想の為、共に戦うつもりはないかね?」

ゼロの挑むような口調に対してイプシロンはこちらを勧誘するように言う。
エックスはそれに驚くが、ゼロとルインは既にセイバーを握り締めていた。

ゼロ「ふざけるな!!」

ルイン「お断りします。私達は誇りあるイレギュラーハンターです!!どんな理想を掲げてもあなた達のしていることは間違っている!!」

ゼロ「それにどんな自信があるのか知らんが4対1だ。貴様に勝ち目があるとは到底思えんがな」

しかもこちらには対リベリオンのためのハイパーモードと言う切り札があるのだ。
ハイパーモードを持つエックス達3人を相手に勝てるはずがない。

イプシロン「ふむ、そうかな?」

ルイン「え…?」

首筋に熱を感じて目線だけ移すとシャドウがこちらに左腕のレーザーエッジを向けていた。

ゼロ「シャドウ…お前まさか…」

イプシロン「シャドウは我々の理想に共感してくれている。さあ、君達はどうするかね?」

ルイン「………」

ルインはシャドウにも気付かれないようにセイバーのエネルギーをチャージした。
ゼロもエックスもルインの考えに気付いたのか、切り札を使う用意をする。

ルイン「イプシロン…これが…」

ゼロ「…ハイパーモード・アクティブフォーム!!」

ゼロのアーマーが橙色に変化し、通常時とは桁外れの機動力でシャドウの胸を斬り裂いた。

シャドウ「ぐっ!!?」

ゼロ「ハンターの魂をイレギュラーに売り渡すとは失望したぞシャドウ!!」

ゼロナックルによる一撃を胸に叩き込むことでシャドウを壁に叩きつける。

エックス「ハイパーモード・ファーストアーマー!!スパイラルクラッシュバスター!!!!」

次にエックスがハイパーモード・ファーストアーマーを発動し、ファーストアーマーの最大出力チャージショットのスパイラルクラッシュバスターを放った。
並みのレプリロイドのなら塵にしてしまう破壊力だが…。

イプシロン「…………」

イプシロンは掌にエネルギーを纏わせるとスパイラルクラッシュバスターを片手で受け止めてしまう。
しかし本命は。

ルイン「これが私達の答えだ!!」

チャージセイバーを繰り出す。
いくらイプシロンが強かろうとこれは耐えられないと思ったルインだったが、何者かに腕を電磁ウィップで絡め取られてしまう。

ルイン「なっ!?」

「控えろ、総統の御前であるぞ」

先程までいなかったはずの女性型レプリロイドが、ルインを冷たく見下ろしていた。

エックス「っ!!ルイン、右だ!!」

ルイン「え!!?」

次の瞬間、何時の間にかいた1体のレプリロイドが大型のツインビームランスを取り出し、ルインに向けて投擲してきた。

エックス「ルイン!!」

エックスが即座にショットを放って、電磁ウィップを切断し、ゼロもバスターを構えて女性型レプリロイドに数発放つが、かわされた。

ルインは投擲されたツインビームランスを跳躍してかわすが、ゼロの攻撃を受けて倒れていたシャドウが背中のキャノン砲から重力弾を放ち、ルインの背中に喰らわせた。

ルイン「っ…!!?きゃあああああああああっっっ!!!!!!」

シャドウの重力弾を受けて、5階から勢いよく落下していくルイン。

エックス「ルイン!!」

ソニア[お母さん!!]

ゼロ「チッ!!」

即座に追い掛けようとするエックス達だが、目の前にレーザーが走り、足を止められた。
上空を見上げると、1体のレプリロイドがこちらを見下ろしていた。

エックス「く…」

ゼロ「………」

エックスとゼロがこちらを囲んでいく5体のレプリロイド。

イプシロン「仲間になれ、エックス、ゼロ。」

エックス「断る!!どれだけの理想を掲げようと、お前達のしていることはイレギュラーだ!!」

ゼロ「俺達は……誇りあるイレギュラーハンターだ。」

しかし、今の自分達では勝ち目が全くない。
ハイパーモードを発動しても、今の状態では逃げるしか出来ない。
エックスはバスターを構えると、鋭くシャドウを睨み据えた。

エックス「シャドウ…俺達はお前を許さない」

激しく傷つきながらもエックス達を嘲笑うシャドウにエックスは怒りを堪えながらバスターのエネルギーをチャージした。
イプシロン達もそれに応戦しようと身構えたが…。
エックスは地面にバスターを向けた。

エックス「スパイラルチャージショット!!!!」

地面に向けて放たれたスパイラルチャージショットは、爆風を巻き起こし、エックスとゼロは強化された機動力で即座にこの場を離脱した。

「チッ、逃がさないよ!!」

イプシロン「構わん。放っておけ、いずれ奴らの方から姿を現すだろう。諸君!!刻は来た。
我らリベリオンの理想を世界に示す刻だ!!」








































一方、ギガンティス付近の孤島にある研究所跡に来ていたアクセルとルナ。

アクセル「ここで昔、レッドに会ったんだ」

ルナ「ここで?」

研究所内部は既に片付けられており、兄弟達の残骸すらない。

アクセル「うん。多分あいつらに雇われたんだろうね。僕が脱走しようとした時にレッドに攻撃されて…まあ、僕もレッドの左目潰しちゃったんだけど…」

ルナ「な、何かレッドって、凄いね…」

自身の目を潰した相手を引き取って育てるなんて凄い。

アクセル「うん…本当にレッドには謝っても謝りきれないよ。さて、兄弟達への挨拶も済んだし…」

門の前に花束を置くと、ルナを見遣る。

ルナ「…そうだ、ギガンティスに行こうよ。みんなにお土産…」

アクセル「ああ、そうだね。買わないとアリアとかうるさいしね」

せっかくギガンティスの近くまで来たのだから何かお土産を買っていくことになり、アクセル達はライドチェイサーの置いてある場所に向かおうとした時であった。

ルナ「ん?…アクセル、あれは…」

アクセル「え…!!?」

アクセルは海岸に倒れている大破したレプリロイドのそばに走り寄るアクセルとルナ。
黒い軽量型のアーマーと、両腕に取り付けられた白い腕輪のような物が印象的だった。
アクセルはすぐさまレプリロイドの状態を調べる。
まだ微弱な反応を感じる。
まだ間に合うかも知れないと、ルナにハンターベースに通信を頼んだ。
アクセルは今のうちに出来る応急処置をすべく、サブタンクを用意したのだが…。

アクセル「ん?」

アクセルはこのレプリロイドに違和感を感じた。
本来あるべき物であるDNAデータとIDタグがない。
IDタグならまだしも、DNAデータまで奪われていた。
レプリロイドの身元等が分かるIDタグなら奪う価値はあるが、DNAデータまでないとなるとただ事ではない。
アクセルは嫌な予感を感じていた。

アクセル「(どいつもこいつも…どうして静かに暮らせないんだよ!!)」

大破したレプリロイドが転送されるのを見つめながら拳を握り締めるアクセル。

ルナ「アクセル…どうしたの?」

アクセル「いや…あのレプリロイド…IDタグやDNAデータが抜き取られてたんだよ。」

ルナ「DNAデータまで?」

アクセル「うん、何か嫌な予感がするよ。この辺りで…ギガンティスで何が起きてるんだか…調査する必要があるかもね」

ルナ「うん、ギガンティス。行ってみよう。もしかしたら犯人が見つかるかもしれないし」

アクセル「あは、ルナならそう言ってくれると信じてたよ。それじゃあ行こうか、ギガンティスに」

ルナ「OK」

ライドチェイサーに跨がり、超特急で研究所跡からギガンティス島に向かうアクセルとルナであった。 
 

 
後書き
エックスのオリジナルハイパーモードは歴代強化アーマーです。
ゼロはフォームチェンジ。
Xファイアとアルティメットアーマ、ブラックゼロ、アブソリュートゼロは出て来ません。

エックス達の装備

エックスの装備

Xバスター

Xブレード(アリアが再現)

Xハート

ルインの装備

ZXコンボジット

Rエレメント

LE100+

ゼロの装備(新型アーマーはロクゼロベース)

Zセイバー×2(もう1本はX6のルナ製)

バスターショット(再現品)

シールドブーメラン(再現品)

トリプルロッド(再現品)

チェーンロッド(再現品)

リコイルロッド×2(再現品)

ゼロナックル×2(X6に使用していた物)

ZEROシフト 

 

Another4 セントラルタワー

 
前書き
離脱したエックスとゼロは…。 

 
エックス達がギガンティスに来てから数日が過ぎていた。

ゼロ「くっ…」

痛みに顔を顰めながらも起き上がろうとするゼロを制する者がいた。

「待つんだゼロ」

聞き慣れない声にゼロは咄嗟に身構えたが、自分の隣に立つレプリロイドから殺気は感じられなかった。

ゼロ「…何者だ?」

「私はリベリオンに抵抗しているレジスタンスの一員だ。」

ゼロ「レジスタンス…」

リベリオンに抵抗していると言うのなら少なくとも敵ではないだろうと判断したゼロだが、警戒は解いていない。

「君達に何があったのかは知らないが、セントラルタワーの海岸付近で倒れていた君達が見つかった時は驚いた。君達の負っていたダメージは酷い物だった」

ゼロ「もう1人はエックスだな…」

隣のメンテナンスベッドで横になっているエックスを見て、安堵の息を吐いた。
しかし…。

ゼロ「1つ聞く…ルインは…」

ダメージ無しでハイパーモードを発動していた状態でさえダメージを受けていたことを考えると…。
ルインの生存は…。
レジスタンスのメンバーは首を振る。

「残念だが、君とエックス以外のレプリロイドはいなかった。エックスの傍にいるサイバーエルフを除けば」

ゼロ「そうか…それにしても何てザマだ…!!」

歯を軋ませながら悔しそうに呻くゼロ。
シャドウの裏切りにより、形勢逆転され、ルインは行方不明、ゼロとエックスはイプシロンを目の当たりにしながら敵前逃亡。
自らの力に強い誇りを持っていたゼロからすればとんでもない恥だ。

「取り敢えずゼロ。君も今は身体を休めておくんだ。ここならリベリオンは襲ってこない。ルインを探すにしても、まずは傷を癒さなくては」

ゼロ「……そうだな、少し世話になる。(今のままの俺ではイプシロンには勝てん…だが、今は勝てなくても俺はまだまだ強くなる!!女神が言うには俺のハイパーモードもエックス同様進化出来る可能性を秘めているんだ。絶対に奴を上回る力を付けてみせる…!!)」

ゼロはイプシロンを超えるためにハイパーモードを進化させることを決意した。
アリアが言うには、ゼロのハイパーモードは何らかの能力に特化する能力らしい。
アクティブフォームが機動力に特化した形態なら、攻撃や防御に特化した形態も存在するはずだ。
これから発現していくハイパーモードを使いこなせるようになればイプシロンにも勝てるようになるはず、今は力を蓄える時だとゼロは身体を休める。






































しばらくして、ようやく傷が癒えたエックスとゼロが部屋を後にした。

ゼロ「世話になったな」

エックス「助かったよ、ありがとう…」

ソニア[お世話になりました]

それぞれ礼を言うが、レジスタンスのメンバーは苦笑しながら首を横に振った。

「エックス達を見つけられたのは運が良かったからだ。私は大したことはしていないよ」

エックス「それでもありがとう。それじゃあ」

部屋を出て、通路に出ると2人と1匹の間に会話はなく。
黙々と先に進んでいく。

ソニア[お母さん…大丈夫かなあ?]

ゼロ「大丈夫だ。あいつは何度死んでも、必ず生き残っていた。今度も無事なはずだ。あいつを信じろ」

エックス「ソニア、ルインを信じよう。ルインの強さは君も知ってるだろう?」

ソニア[…うん]

ルインの生存を信じて、先に進むエックス達。








































情報を集めるために、近くにあった機器のサイバースペースにソニアにダイブしてもらい、情報を集めて貰った。

ゼロ「どうだ?」

ソニア[えっとね、リベリオンへの抵抗勢力のレジスタンスのリーダーで、ギガンティス総督府の責任者でもあるアル=シフォン長官がリベリオンに捕らえられちゃったらしいの。しかも、総督府であるセントラルタワーが占領されてしまったんだって。]

エックス「…そうか」

何とかレジスタンスの協力は得られないかと思っていたのだが、レジスタンスのリーダーが捕らえられてはどうしようもない。

ゼロ「仕方がないだろう。レジスタンスは元々一般レプリロイドだ。苦しい戦いを強いられるのも仕方がない」

エックス「ああ、せめてリディプス大佐と通信が出来れば…」

身を隠していたエックスとゼロの通信機が鳴る。
即座に通信を繋げるエックスとゼロ。
通信機のディスプレイにはエックス達の上官であるリディプス大佐が映っていた。

リディプス『……エックス…ゼロ。聞こえるか…』

エックス「リディプス大佐…シャドウが裏切りました…」

リディプス『何だと!!?』

ゼロ「俺達の作戦はリベリオンに筒抜けだった。ルインも…イプシロン達にやられてしまった」

リディプス『…エックス…ゼロ…お前達は……無事……』

声が途切れ、ディスプレイにノイズが走る。

エックス「…リディプス大佐?」

声をかけても返事は来ない。
ノイズだけだ。

ゼロ「…やはりギガンティスでの通信はアテに出来ないか…」

陰からホール内を見回すと、巨大なモニターが作動していた。

『ギガンティス国内に、連邦関係者が不法に侵入しました』

アナウンスが流れると同時に映像が映る。
エックス達はそれを見て目を見開いた。
映し出されたのはラグラノ廃墟での記録だ。

『繰り返します。不法侵入者です。該当するレプリロイドを見かけた者は、速やかに通報、または…』

エックス達はアナウンスを聞き終える前に、駆け出した。

ゼロ「リベリオンか…」

表情を険しくし、歯軋りするゼロに対してエックスも頷きながら駆け抜ける。
総督府がリベリオンに占領されてしまった今、エックス達を指名手配するのもリベリオンの思うのままに出来る。
エックス達は自分達の指名手配が完全に終わる前にこの場を去った。










































まずは、セントラルタワーを解放すべきだとエックス達は考えた。
今の状況では行動を起こそうにも、思うようには動けないだろう。
長い通路を抜けると広い場所に出た。

エックスとゼロは向こうにある扉を発見し、そちらに行こうと足を動かした時。

「待ちな」

声に反応して振り返るが、そこにいたのはガラの悪そうなレプリロイドだ。
エネルギー反応からして、一般レプリロイドだ。

「お前、エックスとゼロだろう?さっきニュースで言ってた。」

ガラの悪そうなレプリロイドに対してゼロは無視を決め込み、エックスは騒ぎを起こしたくないため、そのまま進もうとしたが。

「悪いが通報させてもらった」

ゼロ「何?」

エックス「貴様、リベリオンの!!?」

「イプシロンの仲間ってわけじゃないが、お前達も同じレプリロイドなら、我々の独立を勝ち取ろうという考えに…」

ゼロ「ふざけるな!!イレギュラーの理想など斬って捨てるまでだ!!」

リベリオンに協力するイレギュラーを両断せんとばかりにセイバーを構えたゼロだったが。

ソニア[危ない!!]

ゼロ「!!?」

「ぎゃあああああ!!?」

ソニアがゼロを咄嗟に引っ張ったことで、ゼロは真上から降ってきた爆発物に巻き込まれないで済んだ。
レプリロイドの残骸が辺りに散らばる。

エックス「誰だ!!?」

真上を見上げると、1体のレプリロイドがこちらを見下ろしていた。

「助けたなんて考えないでくれよ。」

飛び降り、エックス達から少し離れた場所へ軽やかに着地する。
黒い帽子に燕尾服のようなアーマーを纏った端整な顔の青年。
紫の髪と、僅かに見える真紅の瞳は、謎を秘めた綺麗な色を湛えている。
エックスとゼロは気配を感じられなかったこともあり、既にバスターとセイバーを構えていた。

「おっと、俺はリベリオンでもイレギュラーでもないぜ?あんたらの首を持ってけば、リベリオンが高く買ってくれそうだからな。特にサイバーエルフまでいるなんて好都合。希少なサイバーエルフは高値で売れるからな」

エックス「ふざけるな!!」

ふざけたことを言う青年にエックスの表情が険しくなる。

ゼロ「貴様…賞金稼ぎだな?」

「御名答。お尋ね者のハンターさん達。行くぜ!!」

いつの間にか手に収められていたカードがエックスに向けて放たれた。
カードは地面に着弾と同時に爆発した。

ゼロ「成る程、爆発物の正体はこれか…」

これはかなり厄介な武器だ。
カードが放たれた時に生じる乱流により、正確な軌道が分からない。

「そうそう、言い忘れてたな。俺は名前はスパイダーだ。よろしくな」

ゼロ「生憎イレギュラーの名など一々覚えている暇はない!!」

スパイダー「イレギュラーじゃないって言ったばかりじゃねえかよ」

苦笑しながらゼロのセイバーによる斬撃を尽く回避しながら言うスパイダー。

ゼロ「リベリオンに協力しておいてよく言う!!ダブルチャージショット!!」

予備セイバーをマガジンにしたバスターショットから放たれた巨大な2発の光弾がスパイダーに迫る。

スパイダー「残念!!カウンターカード!!」

カード型のバリアがダブルチャージショットのエネルギーを吸収して逆にスパイダーのエネルギーに変換される。

ゼロ「何!!?」

スパイダー「使わせてもらうぜあんたのエネルギー。フォーチュンカード…ストレートフラッシュ!!!!」

カードボムが広範囲に連続で放たれる。

エックス「ぐあっ!!?」

ゼロ「ぐっ!!」

ゼロのラーニングシステムによる解析でも今は完全な回避が出来ない。
ゼロが回避出来ないのでは、自分では回避出来ない。
ならば…。

エックス「回避を捨てるか…ハイパーモード・ファーストアーマー!!!!」

純白のアーマーを身に纏い、バスターをスパイダーに向けるエックス。

スパイダー「お?そいつが噂の最初のシグマとの戦いで使った強化アーマーかい?しかしあんたは俺を舐めてんのかい?一番性能の低いアーマーで俺を」

エックス「スパイラルチャージショット!!!!」

スパイダー「うおっ!!?」

いきなり放たれたスパイラルチャージショットにスパイダーは横に飛んでかわす。

エックス「スパイダーと言ったな。確かにファーストアーマーは他の強化アーマーのように目立つ物はないが…」

強化された加速器を吹かして、スパイダーに肉薄する。

スパイダー「っ!!やべえ!!」

エックス「数あるアーマーの中でも最も扱いやすいアーマーなんだ!!スパイラルクラッシュバスター!!!!」

衝撃波と共に繰り出された最大出力チャージショットのスパイラルクラッシュバスターがスパイダーに炸裂したが、スパイダーは咄嗟にバリアを展開して、ダメージを軽減させていた。

スパイダー「ふう…危ない危ない。少しでもバリアを張るのが遅れていたらスクラップになってたかもな…でも、同じ手は2度は通じないぜ?それとも他に奥の手でもあるのかい?」

エックス「くっ…」

エックスからしてみればファーストアーマーのスパイラルクラッシュバスターは今のエックスの最大火力であり、それで仕留められなかったのは痛い。

スパイダー「どうやらそれで終わりのようだな。なら…」

スパイダーが再びフォーチュンカードを繰り出そうとした時である。
警報がけたたましく鳴り響いたのは。

スパイダー「ああ、さっきの奴の通報か。邪魔が入ったな、勝負は預けておこう。精々捕まらずに賞金を上げてくれよイレギュラーハンターのお2人さん!!」

ゼロ「逃がすと思うかイレギュラー?」

ダメージから立ち直ったゼロがセイバーを構えてスパイダーを睨み据えながら立ち上がる。

スパイダー「確かに逃げるのは難しいな。普通なら…そらっ!!」

カードボムを放つが、今度はシールドブーメランを構えて防いだ。

ゼロ「目くらましのつもりか?その程度で…なっ!?」

シールドブーメランによる防御を解いた時点でスパイダーの姿は影も形もなかった。

スパイダー「これが俺のハイパーモード、トリックスターさ。電磁迷彩で姿を消せる。というわけでシーユーアゲインってね♪」

完全に気配も消えた。
いくらゼロでも気配を消し、姿も見えない相手を追うことは不可能。
完全に逃げられてしまった。

ゼロ「くそ…」

忌々しげにセイバーを握り締めるゼロ。
イプシロンに続いて2度も辛酸を舐めさせられるとは。

エックス「ゼロ、早くこの場を離脱しよう。いつリベリオン兵が来るか分からない。」

ゼロ「ああ…」

今の状態で強力なブレオンを相手にするのは無謀だと判断し、すぐさま向こうの扉に入った。








































扉を潜った先にあるのは、パイプが敷き詰められたような場所だった。
恐らくセントラルタワーの重要な場所のはずだ。
ここでなら敵も迂闊な攻撃は出来ないはず。
少しだけ進むペースを落とすと、エックスが口を開いた。

エックス「ゼロ」

ゼロ「何だ?」

エックス「今の俺達で…イプシロンに勝てる可能性は…」

ゼロ「無い」

ハッキリと言い切ったゼロに目を見開くが、エックス自身分かっていた事でもあるので反論しない。
いや、ハッキリ言って自分やゼロ、ルイン、アクセル、ルナが揃ってようやく戦えるかもしれないと思わせる程の力がイプシロンにはあった。
正直、あの時纏っていたのファーストアーマーではなくアルティメットアーマーでも戦えたかどうかも怪しい物だ。

ゼロ「今の俺達ではイプシロンには勝てん。ルインと合流し、イプシロンと戦える力を手に入れるまでは奴との戦いは避けるべきだ」

エックス「うん…」

不可能ではないはずだ。
エックスとルインには戦いの中で成長する力。
ゼロもラーニングシステムによる自己進化出来るのだ。
今は力を蓄える時だ。
考えているうちに扉の前に辿り着き、扉を潜って更に奥へと突き進む。











































しばらく進むと暗い通路の突き当たりで見つけた扉の向こうに誰かの気配を感じ、エックスとゼロはそれぞれ警戒しながら、中に入る。
そこに居たのは1人のレプリロイドだった。
下半身が失く、代わりにメカニロイドのホバーユニットを装備している。
青年は落ち着いた表情でエックスを見据え、ゆっくりと口を開いた。

「あなた方は、イレギュラーハンターのエックスとゼロですね。私はエール。レジスタンスの一員です」

敵意も戦意も無い声に、警戒を解くと武装解除した。

エックス「話を聞かせてくれるかな?」

エール「はい。ここまで来られたらもう御存知かもしれませんが、我々レジスタンスの中心人物、アル長官はリベリオンに捕らえられています」

エックス「それで、君はアル長官を助けに?」

エール「…はい。そう思って総督府へ…行こうとしたのですが………私1人の力では……とても……」

よく見ると、エールの身体には無数の傷があり、何度も1人でアル長官を救い出そうとリベリオン兵と戦い続けていたのだろう。
エックスとゼロは目の前の青年を見て、2人の心は決まった。

ゼロ「俺達もリベリオンを倒すために動いている。まずはレジスタンスのリーダーであるアル長官とやらを助け出して、話を聞いてみるのがよさそうだな…」

エックス「ああ、アル長官を救い出して、総督府を取り戻そう」

ゼロとエックスの言葉にエールは顔を上げた。

エール「ありがとうゼロ、エックス…!!力を貸してくれるというのですね」

次の瞬間、エックスとゼロはエールの行動に目を見開いた。
エールが、自らの胸に取りつけられている青い球体を、無理矢理外したのだ。

ゼロ「何を…」

エール「こ、このIDを…」

青白く光る球体をエックスに差し出す。

エール「これがあれば、総督府への出入りが…可能になります」

彼の言動に躊躇いを覚えながら、エックスは近付きそっと手を伸ばす。
突如背後に感じた気配。
振り返れば、エックスとゼロが通ってきた扉が開いた。
そこにはリベリオンのマークが刻まれたプレオン・チェイサーが数体が現れた。
エックスとゼロが武器を構えようとした瞬間、エールが2人の腕を掴んで背後の扉に向かって投げ飛ばすと、扉の向こうに入ったのを確認し、ロックをかけた。

ゼロ「エール!!何を!!?」

エール「時間がありません…ここは私に任せて、先に!!」

エックス「エール!!1人でどうする気だ!!?」

エール「どうか…どうかアル長官を…お願いします!!…ここから先は通さん!!」

エックス、ゼロ「「エール!!」」

エールのエネルギー反応が増大していき、何をする気なのかを悟ったエックスとゼロが同時に叫んだ直後、凄まじい衝撃が扉越しに響いてきた。

ゼロ「…………」

エックス「エール…」

しばらく立ち尽くしていた2人だったが、表情を引き締めたゼロが、先に進もうとする。

ゼロ「行くぞ、エックス。エールの犠牲を無駄にしないためにもな」

エックス「ああ、必ずアル長官を救い出そう」

自分達を助けてくれたエールの魂に応えるためにも。
エックスとゼロは先に進んだのだった。 

 

Another5 魂

 
前書き
セントラルタワー編そろそろ終わりそう 

 
エールのIDを手に入れたエックスとゼロはレジスタンスの装備品管理室に入り、扉を潜って先へと進む。
道中、メットール、ゼニーフォーラー、アインハンマー等のメカニロイドがいたが、エックスとゼロの100年間で培ってきた連携の前にあっさりと沈黙した。
しばらくメカニロイドを迎撃しながらセントラルタワーの通路を昇っていくともう1つの装備品管理室の前に辿り着く。
扉の前にレジスタンスの一員らしきレプリロイドがいた。

ゼロ「おい」

ゼロがレプリロイドに声をかけると、レプリロイドがこちらを振り返り、目を見開いた。

「エックスに…ゼロ…?ひょっとしてあの、伝説のS級のイレギュラーハンター?頼む!!この部屋に囚われている仲間を助けてくれ!!」

エックス「分かった。任せてくれ」

扉を潜り、プレオン・チェイサー2体がこちらに気付く前にゼロが距離を詰めていた。

ゼロ「零式突破!!」

トリプルロッドを抜き、凄まじい勢いで繰り出された突きが、プレオン・チェイサーを粉砕した。

「なっ!?エックスとゼロだと!!?」

エックス「チャージブレードだ!!」

腰のブレードを抜いて、チャージブレードを叩き込み、吹き飛んだプレオン・チェイサーにショットを連続で狙い撃ち破壊した。
エックスとゼロは他にリベリオン兵がいないことを確認してから扉を開けた。








































エックス達がプレオン・チェイサー達を倒した直後、それを見ていたレプリロイドがいた。
リベリオン幹部の1人にして高機動山猫型レプリロイド…ワイルド・ジャンゴー。

ジャンゴー「ふん、小賢しい!!だが、流石は伝説になったイレギュラーハンターなだけのことはあるニャ!!」

スパイダー「一般兵士くらいじゃ荷が重いか?」

ジャンゴー「ニャ!?スパイダー…お前なら奴らを倒せると言うのか!!?」

いつの間にかいたエックスとゼロと戦ったスパイダーに対して、ジャンゴーは不機嫌そうに尋ねる。

スパイダー「報酬は?」

ジャンゴー「ハッ!?金の話か!?良かろう!!貴様がエックスとゼロを止めたら欲しいだけくれてやろう!!いずれ我らリベリオンはレプリロイドの天下を取る!!そうなれば金など好きなように出来るわ!!」

笑いながら言うジャンゴーに対してスパイダーは静かに口を開く。

スパイダー「あんたらの天下に興味はないが…欲しいだけ貰えるってのは悪くない」

それだけ言うと、踵を返して部屋を後にした。










































そしてエックスとゼロの口から聞かされたエールの最期に、レジスタンスのメンバー達が目を見開いていた。

「そうか…エールが…奴はアル長官に拾われて以来、彼を親のように慕っていたからな…エックス、ゼロ。これを持って行ってくれ、アル長官が捕まっているデータバックアップ室の鍵だ」

カードキーをエックスに差し出すレジスタンスメンバー。

「頼む…アル長官を助けてくれ…そして、エールの仇を…」

ゼロ「無論だ」

その言葉にエックスとゼロは力強く頷いた。
亡きエールの魂に応えるためにも必ずアル長官を救うと心に誓う。

ゼロ「エックス、行くぞ」

エックス「ああ」

レジスタンスのメンバーが扱っていた武器を売ってくれたのだが、エックスとゼロの新型アーマーとそれに対応させた武器が高性能過ぎて装備出来ないために、属性を付加させるエレメントチップを3種類売ってくれた。
気のせいかやたらエレメントチップの値段が高かったが。
このチップにより、バスターとセイバー等に属性を持たせることが出来る。
セントラルタワーを占領しているのはリベリオン幹部のワイルド・ジャンゴー。
ジャンゴーは雷属性のレプリロイド。
ここのプレオンには雷属性を持つタイプもいるらしいので炎属性のエレメントチップが非常に役立つ。

エックス「喰らえ!!」

炎属性の超高温ショットとブレードによる攻撃は雷属性を持ったプレオン・スパークには有効で通常よりも早く片付いた。

ゼロ「チェーンロッド!!」

セイバーを勢いよく振るうと、柄の部分から鎖のような槍が発現し、ゼロを囲んでいたプレオン・チェイサー達を瞬く間に両断した。
こうして戦っているうちにエックス達はパネルのある扉を見つけた。
操作する前にIDを使わなければならないらしく、エールのIDを翳そうとした瞬間だった。

エックス「っ!!?」

IDを翳そうとしたエックスの真横の壁に見覚えのあるカードが突き刺さったのは。

スパイダー「大したご活躍だなエックス、ゼロ…おかげで良い稼ぎになりそうだ!!」

ゼロ「貴様は…」

エックス「賞金稼ぎ…!!」

スパイダー「スパイダーって呼んでくれ。あんたらが暴れまくったおかげで今やあんたらの首には法外な賞金がかけられてるんだ。あんたらの首…貰うぜ?」

ゼロ「やってみろ、イレギュラーめ。エックス、こいつは俺に任せて先に行け」

エックス「しかし、ゼロ…こいつは…」

ゼロ「最初の時と違って相手の手の内は大体把握した。それに俺にはあれがあるからな、前のようには行かない」

エックス「あ…」

そうだったゼロにはラーニングシステムがある。
それによってスパイダーのことをある程度把握出来たはずだ。

ゼロ「行け、エックス」

エックス「分かった!!」

スパイダー「ん?」

エックスの掌に納まっている球体を見たスパイダーの目が驚愕に見開かれた。

スパイダー「あのIDは…まさか…!!?」

ゼロ「何をぼんやりしている!!」

驚愕しているスパイダーに対してゼロはセイバーで横薙ぎするが、スパイダーはそれを跳躍してかわす。

スパイダー「あのIDはあいつの…あんたは後回しだ。今はエックスを追いかけさせて貰うぜ!!」

ゼロ「やれるものならやってみろイレギュラー!!」

バスターではカウンターカードのバリアで逆にスパイダーのエネルギーにされてしまうために、ゼロは接近戦を挑む。

スパイダー「成る程、バスターが通じないから接近戦を挑むのかい。けど、甘いぜ!!」

ゼロのセイバーの斬撃をかわしながら、カードボムを放つ。
先程なら回避出来なかったが…。

ゼロ「遅過ぎて欠伸が出るな」

スパイダー「何!!?」

カードボムの連射を容易く回避したゼロにスパイダーが目を見開いた。

ゼロ「イレギュラー…いや、スパイダー。お前の実力は大した物だ。並み居るレプリロイドの中でもS級ハンタークラスに相当する桁違いの戦闘力の持ち主。そいつは認めてやろう。だが、お前はあの時ミスを犯した。あの時お前は警報が鳴った時にとどめを刺さずに去った。それにより俺のラーニングシステムでお前の動きなどを完全に把握させてしまった。」

スパイダー「成る程、噂のラーニングシステムか…想像以上に厄介な代物だな…」

ゼロ「だが、お前との戦いで得られた物はそれだけじゃない。俺の新たなハイパーモードを見せてやろう。ハイパーモード・ライズフォーム」

ゼロのアーマーが灰色に変化していく。

スパイダー「おいおい、複数のハイパーモードなんてありかよ…フォーチュンカード…ストレート!!!!」

スパイダーのカードスリットからカードボムが連射されるが、ゼロはその軌道をラーニングシステムで把握するとそれを回避。
加速器を吹かしてスパイダーに肉薄した。
ゼロナックルがスパイダーの顔面に迫るが、スパイダーは顔を逸らしてかわそうとするが、即座にゼロの手がスパイダーの首を掴む。

スパイダー「ぐっ!!?」

ゼロ「このライズフォームはラーニングシステムの解析能力を向上させる形態でな。この形態なら通常よりも敵の行動を迅速に把握出来る。このようにな」

スパイダー「くっ!!」

ゼロの腹部に蹴りを入れ、何とか離れることに成功した。
しかし、まさかラーニングシステムによる強化と、新たなハイパーモードを得ていたことにより両者の実力差はひっくり返されていた。

スパイダー「今更、エックスを追っても追い付けないか…あんたに聞きたいことがある。」

ゼロ「?」

スパイダー「あのエックスが持っていたID…どこで手に入れた?」

ゼロ「イレギュラーである貴様には関係のないことだ」

スパイダー「関係?大有りだね。あのID…あいつの…エールの物だろう?下半身がないレプリロイドの」

ゼロ「何?」

何故スパイダーがエールのことを知っているのだろう?
スパイダーはスパイダーでゼロの反応を見て、エックスの持っていたIDがエールの物だと悟ったのだろう。
少しだけ目を閉じた後、口を開いた。

スパイダー「やっぱりそうか…エックスがエールのIDを持っているということは……あいつ…また怪我したのか?それとも………死んだ…のか?」

ゼロ「エールは…死んだ。俺達を先に進ませるためにIDを俺達に託して、リベリオン兵と戦って死んだ。アル長官を救い、リベリオンを打ち倒すという信念のためにな」

それを聞くとスパイダーの全身から戦闘意欲が失せていた。

スパイダー「そうか…はは…底抜けのお人好しのあいつらしいよな…。」

ゼロ「お前はエールと…」

スパイダー「悪いが、この仕事は降りるぜジャンゴーさんよ。」

ゼロが聞く前に監視カメラに向けて言い放つと、ジャンゴーの怒鳴り声が聞こえてきた。

ジャンゴー『ニャニャ!!賞金稼ぎめ!!勝手な真似を!!全警備兵出動!!奴ら全員始末しろニャ!!』

監視カメラからの怒鳴り声の命令に、複数のプレオン・チェイサーがこちらに向かってくる。

スパイダー「俺は確かにイレギュラーと言われても仕方ない賞金稼ぎなんかしているがね。友の魂に恥じる仕事だけは絶対にしない。」

踵を返し、ゼロに背中を向けながらスパイダーは言葉を続ける。

スパイダー「こっちは帰るついでに掃除していってやるから……さっさとアルさんとやらを助けに行くんだな!!」

ゼロ「おい、待てスパイダー!!お前はまさかエールの…」

ふと、壁に刺さったカードを見遣る。
ジャックのカードにはエールの絵があった。
もしかしたらスパイダーはエールの…。
いや、考えている暇はない。
早くエックスと合流しなければと、扉を潜る。








































そして先に進んだエックスもアル長官を監視していたプレオン・スパークを撃破し、アル長官を救出していた。

エックス「アル長官ですね?助けに来ました」

アル「ありがとう。…君は…?」

目の前にいる蒼いアーマーを身に纏う青年は、自分を慕ってくれていた青年と設定年齢はさほど変わらないだろう。
あの青年は無事だろうか?

エックス「俺はエックス。政府から派遣された、イレギュラーハンターです」

アル「君がエックス…!そうか…!!」

蒼き英雄エックスの名は、紅の破壊神ゼロ、朱き舞姫ルインと同じ、レプリロイドなら知らない者など存在しない。

アル「それで、レジスタンスは?私の仲間達は?」

エックス「ここまでに囚われていた何名かは救助しましたが、後は襲撃された際に散り散りになったようです。…それと……エールが自分を犠牲に……俺とゼロをここまで導いてくれました…」

アル「エール…彼が…!!?」

アルがエールの死に驚愕した時である。
モニターにジャンゴーの姿が映ったのは。

ジャンゴー『ふん!!アルよ!!リベリオンに協力しようという気はないようだニャ!!』

動物型レプリロイドの特徴の1つでもある独特な話し方をするジャンゴーの見下すような声色にアルはモニターに映るジャンゴーを睨み据えた。

アル「言ったはずだぞ!!例えバラバラに解体されたとしても、ネジの1本までお前達に抵抗するとな!!」

ジャンゴー『いずれ全レプリロイドを平定する我々に逆らうとは、どこまでも愚かな奴らよ!アル、エックス!!ふん、だが、もういい。貴様らと…』

ジャンゴーは一旦言葉を切り、画面の外から何かを引っ張り出した。
それを見たエックスが目を見開いた。

エックス「スパイダー!?どうしてスパイダーがジャンゴーに…?」

ゼロ「奴はリベリオンとの契約を破棄し、ジャンゴーに戦いを挑んだんだろう。エールのためにな」

エックス「ゼロ…どういうことなんだ?」

ゼロ「詳しいことは知らん。だが、恐らくスパイダーとエールは知り合いだったんだろう」

ジャンゴー『ついでにこの薄汚い裏切り者も合わせて、この建物ごと吹っ飛ばしてくれるニャ!!』

アル「まさか、自爆装置をっ!!?」

ジャンゴー『ネジの1本も残さず、消えてなくなるがいいニャ!!』

プツン、と音を立て、モニターの電源が落ちた。

アル「何ということを…っ!!」

エックス「長官!!自爆装置の解除方法は!!?」

エックスの問いで、アルはハッとなる。
目の前にいる伝説のイレギュラーハンター達なら…。

アル「そうだ!!ジャンゴーのいたモニタールームへ行けば、装置を止めることが出来る!!ここから通信でモニタールームへの道順を案内する!!装置を止めてきてくれ!!」

頷いたエックスとゼロは、通ってきた道を駆け戻った。







































セントラルタワー内の殆どのリベリオン兵はスパイダーが破壊したらしく、エックスとゼロは生き残ったリベリオン兵を薙ぎ払いつつ、モニタールームに向かう。
途中で複数のビットを従えたプレオンビットマスタがエックスとゼロに襲い掛かる。

ゼロ「ダブルチャージショット!!」

機銃を放とうとしたビットにダブルチャージショットを放ち、撃墜する。

ゼロ「エックス!!」

エックス「ああ!!チャージショットだ!!」

エネルギーチャージが完了したエックスがチャージショットを放つ。
プレオンビットマスタとビットは一瞬で全滅した。

ゼロ「くっ…間に合うか…!!?」

予想以上の敵の粘りに流石のゼロも焦りを隠せなかった。









































「ふむふむ、ここがモニタールームだねえ?」

ロングコートにサングラスをつけた怪しさ満点の少女がモニタールームの扉を見つめる。

「あ、あの…博士、何でこんな怪しい格好でギガンティスに?」

もう1人の少女が冷や汗を流しながら、こんな怪しさ満点の格好をしなければならない理由を尋ねる。

「ふふん♪ヒーローは正体不明だから格好いいの!!それじゃあ行くよ!!」

「は、はあ…」

扉を開くとリベリオン兵が驚愕したような表情をする。
プレオンシリーズに表情は無いけれど。

「非戦闘員に…人間の子供…?」

「そう!!ある時は正体不明な天才美少女!!ある時は天才科学者美少女!!そしてある時はああああ!!ロックオン!!」

懐から取り出したどこかエックスに似たような金属。

アリア「ライブメタルの発明者、アリア博士ってね!!そして隣にいるのはゼロ君の嫁にしてゼロ君の力の後継者、モデルZのアイリスちゃん!!」

アイリス「お、お嫁さんって…変なこと言わないで下さい!!ロックオン!!」

ゼロに似たような金属を使い、モデルZになり、赤面しながら、モデルZの専用武器であるエネルギーセイバーのZセイバーを構える。

アリア「あははー♪そおら、ダブルチャージショット!!」

プレオンチェイサー2体にダブルチャージショットを1発ずつ喰らわせるアリア。

アイリス「あの…アリア博士。私、剣の扱いなんて…」

アリア「大丈夫大丈夫!!モデルZにはアイリスちゃんのお兄さんの戦闘データが刻まれてるの。だからそのライブメタルはアイリスちゃん専用。今は感覚のままに戦ってれば大丈夫。」

アイリス「兄さんの…あなた達に恨みはないけれど、ごめんなさい!!」

加速器を吹かして、強烈な突きで動力炉を破壊するアイリス。

アリア「流石、究極のレプリロイドの片割れだね。もう1発、チャージショット!!」

チャージショットを最後の1体に喰らわせ、破壊すると、即座に自爆装置を停止させるために、端末を操作。
エックスとゼロがモニタールームに入ってきたのと、アリアとアイリスが自爆装置を止めたのはほぼ同時。

アリア「ヤッホー☆エックス君にゼロ君♪」

アイリス「あ、エックスにゼロ…」

エックス「アリア博士に…アイリス!!?その姿は一体!!?いや、それ以前にどうして2人がギガンティスに!!?」

アリア「ああ、これ?ライブメタルで一時的にレプリロイドに近い状態にしただけ。このライブメタルには一部だけどエックス君のデータが刻まれているのだ。アイリスちゃんのはゼロ君ね」

ゼロ「いつの間に…」

いつの間にデータを取られていたのか…、本当に油断も隙もない元女神様である。

アイリス「あ、私達がここにいるのはね?私達休暇で来たの。私はアリア博士の付き添い…。まさか行き先がギガンティスとは思わなかったけど」

苦笑しながら言うアイリスにエックスとゼロは脱力しそうになった。

アリア「君達、脱力するのはいいけど、大事なこと忘れてない?ジャンゴーは今、ヘリポートにいるよ」

モニターを指さすとジャンゴーは確かにヘリポートにいた。

エックス「はい、アイリス。これから俺達はリベリオン幹部のジャンゴーと戦う…君はアリア博士を」

アイリス「任せて」

アリアのことはアイリスに任せて、エックスとゼロはジャンゴーがいるヘリポートに向かう。 

 

Another6 セカンドアーマー

 
前書き
ジャンゴーとのバトル 

 
息を切らしながら、エックスとゼロがヘリポートに出るとジャンゴーが怒りに震えていた。

ジャンゴー「自爆装置を止めたニャ!!?小賢しいイレギュラーハンター共め!!」

エックス「ジャンゴー!!お前達は間違っている!!俺が…倒す!!」

ジャンゴー「温いニャ!!」

ジャンゴーはこちらを振り返るのと同時にこちらに爪による一撃をエックスに喰らわせ、エックスを吹き飛ばした。

ゼロ「エックス!!」

咄嗟に動いてエックスを受け止めるゼロ。

ジャンゴー「たかがイレギュラーハンターの2匹如き。この俺に敵うと思うてニャ?…ニャイン?」

ふと、足に何か当たったような感触に下を見ると、それはエールのIDだった。
ジャンゴーはそれを拾う。

ジャンゴー「ふん、これを鉤にして、建物に入り込んで来たと言うわけニャ」

IDを握り砕こうとした刹那。

1枚のカードがジャンゴーの顔面に炸裂したのは。

ジャンゴー「ニャ!!?」

ゼロ「あれは…」

カードボムが飛んできた方向を見遣ると、傷付いたスパイダーが足を引きずりながらゆっくりとこちらに出て来た。

エックス「スパイダー…」

スパイダー「ジャンゴー…そいつに…あいつの魂に、汚ねえ手で触らないで貰おう。そいつはあんたみたいな、可笑しな野郎が…っ……触って良いような物じゃないっっっ!!!!」

スパイダーの激情に促されるようにエックスとゼロも疲弊した身体に鞭打ち、力強く立ち上がった。

ゼロ「イレギュラー、ワイルド・ジャンゴー。イレギュラーハンターとして貴様を処分する!!!!」

ジャンゴーは雷属性のレプリロイドだ。
炎属性に弱いと判断し、炎のエレメントチップを起動、全ての武器を炎属性、ハイパーモードにライズフォームを発動した。

エックス「ゼロ、それは……」

ゼロ「新しい力だ。ラーニングシステムの解析能力を向上させる形態だ。」

セイバーとシールドブーメランを構えてジャンゴーの攻撃に備えるゼロ。
エックスもハイパーモード・ファーストアーマーを発動させる。

ジャンゴー「小賢しいニャ!!」

イナズマキャプチャーをゼロに向けて投擲。
ゼロもシールドブーメランを投擲する。
激突し、シールドブーメランが力負けするが、ゼロはシールドブーメランを腕に戻すと威力が弱まったキャプチャーをセイバーで払ったが…。

ジャンゴー「電閃ネイル!!」

凄まじいスピードでゼロに肉薄する。
まだ解析が済んでいないゼロに見切れるような速度ではなかったが、何とか身体を捻って直撃を避ける。
左の肩のアーマーが吹き飛んだが、まだ戦える。

エックス「スパイラルチャージショット!!」

スパイラルチャージショットをジャンゴーに叩き込む。

ジャンゴー「遅いニャ!!」

完全に不意を突いたはずなのに、それすらジャンゴーはかわした。

エックス「なら!!」

スパイラルクラッシュバスターならば避けられないと判断したエックスはバスターのチャージを開始するが。

ジャンゴー「エックス、お前の弱点を教えてやるニャ。お前はバスターの最大火力を発揮するのにチャージに時間が掛かりすぎるのがネックニャ!!」

エックス「がはあ!!?」

ブースターによるスピードを上乗せした体当たりを喰らわせて吹き飛ばす。

スパイダー「トリックスター!!」

ジャンゴー「ニャ!!?消えただと!!」

スパイダー「あんたに見せるのは初めてだな。これが俺のハイパーモード・トリックスターだ。あんたからは俺の姿は一切見えねえ。」

その上、一時的に攻撃力も向上するから一方的に攻撃し放題と言いたいが、エネルギーの消耗が激しいのと持続時間が短いのが欠点だ。」
それに最初のエックスとゼロとの戦いで消耗しているために、普段より持続時間が短い。

エックス「今のうちに…」

スパイダーの考えを察したエックスはスパイラルクラッシュバスターを放つためのエネルギーチャージを開始した。

スパイダー「そらそら、どうしたジャンゴーさんよ?そんなんじゃ当たらないぜ」

カードボムを放ちながら、エックスのエネルギーチャージ完了までの時間を稼ごうとするが、後少しのところでトリックスターが解除されてしまった。

スパイダー「っ!!?トリックスターが…」

ジャンゴー「そこかニャ!!」

電閃ネイルでスパイダーを八つ裂きにしようとした時、ゼロがジャンゴーの腕を掴んで、顔面に強烈な一打を喰らわせ、吹き飛ばした。

ジャンゴー「ニャにい!!?」

ゼロ「今だエックス!!」

エックス「スパイラルクラッシュ…」

ジャンゴー「ニャめるなよ!!ドメガサンダー!!」

ジャンゴーが懐から取り出したドメガサンダーと呼ばれるエレメントボムの雷がエックス達に降り注ぐ。
予想外の攻撃にエックス達は膝をついた。

ジャンゴー「ドメガサンダー。メガサンダーの強化改良型ニャ。最後に俺のとっておきをくれてやろう!!全エネルギー解放!!行くニャーーーッ!!!!」

全身から凄まじい放電現象が起き、勢いよく跳躍。
そして高速回転。
狙いはエックス。

ゼロ「エックス…早く…動け…」

エックス「駄目だ…身体が…」

バインド状態ではないが、ドメガサンダーの雷により、身体が痺れて動けない。

ジャンゴー「喰らうニャーーーッ!!ローリングアサルト!!!!」

高速回転をしながらエックスに急降下するジャンゴー。
エックスは急降下してくるジャンゴーを見つめながら歯噛みしていた。
3人掛かりでも勝てなかったという事実が、エックスに酷い無力感を味合わせた。
まるで最初のシグマの反乱の時のVAVAとの最初の戦いで味わったそれによく似ていた。

エックス「(ここまでなのか……?)」

エールの魂に応えることも出来ず、イプシロンを倒すことも出来ず、ルインを探すことも出来ず。

エックス「(いや……まだだ!!)」

ルインがこの場にいたら絶対に諦めたりはしないだろう。
今までだって自分より強い者達と戦って来たではないか。
VAVA、シグマ、ルミネと言った強者達と。

エックス「(振り絞るんだ自分の可能性を!!俺の…いや、俺達の力は!!)」

エックスの身に纏われているファーストアーマーが次第に変化していく。

エックス「ライト博士や兄さん達から受け継いだ力は!!こんな物じゃないっ!!ハイパーモード・セカンドアーマー!!!!」

ジャンゴー「ニャイン!!?」

セカンドアーマーを纏ったエックスのエネルギーの余波に弾き飛ばされたジャンゴーは地面に転がる。

スパイダー「ハイパーモードを進化させたのか!!?」

ゼロ「らしいな、セカンドアーマー…あれも懐かしい代物だぜ」

エックスが纏った2番目の強化アーマーであるセカンドアーマー。

ジャンゴー「セカンドアーマー…あの2回目の大戦で使われた骨董品の強化アーマー…そんな骨董品でフォースメタルで強化された俺に勝てる訳がニャい!!」

エックス「どうかな?ライト博士が開発し、アリア博士が完全再現したセカンドアーマーの力を見くびるなよジャンゴー!!」

ジャンゴー「ほざくニャ!!」

電閃ネイルで引き裂こうとするが、エックスは高速で動くジャンゴーを物ともせずにかわしてみせた。

ジャンゴー「ニャにい!!?ならばイナズマキャプチャー!!」

エックス「ダブルチャージショット!!」

既にチャージを終えていたエックスはイナズマキャプチャーのエネルギー反応をセカンドアーマーのエネルギートレイサーでキャッチし、イナズマキャプチャーをダブルチャージショットで粉砕した。

ジャンゴー「馬鹿ニャ!!?イナズマキャプチャーの軌道を見切るとは!!?」

エックス「はあああ…!!トリプルチャージ!!!!」

ブレードを抜き放ち、チャージブレードをジャンゴーに叩き込む。

ジャンゴー「ニャアアアア!!?」

ダブルチャージショットとチャージブレードの連続攻撃。
セカンドアーマーはエネルギートレイサーにより、相手や攻撃の位置を目に頼らずとも完全感知出来るために、攻撃の命中率や回避率が格段に上昇する。
ダブルチャージや例のアレもあるために歴代の強化アーマーの中でも非常に攻撃的な性能の強化アーマーなのだ。

ゼロ「スパイダー、俺に続け!!」

スパイダー「OK!!」

トリプルチャージにより、怯んだジャンゴーにアクティブフォームに切り換えたゼロとフォーチュンカードを発動したスパイダーがジャンゴーを狙う。

ゼロ「零式波動斬!!」

スパイダー「フォーチュンカード…ツーペア!!」

ゼロの技とスパイダーのカードがジャンゴーの全身に亀裂を入れた。
そして…。

エックス「これで終わりだジャンゴー!!砕け散れ!!ギガクラッシュ!!!!」

とどめにセカンドアーマー最大の必殺技ギガクラッシュがジャンゴーに炸裂した。
今までのダメージをエネルギーに変換し、広範囲に渡る拡散エネルギー波。

ジャンゴー「二゙ャアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

ギガクラッシュのエネルギー波は、ジャンゴーの身体を飲み込み、完全に消滅させた。

エックス「ふう…」

ハイパーモード・セカンドアーマーを解除し、ゼロもハイパーモード・アクティブフォームを解除する。
その時であった。
アリアとアイリスに守られたアル長官がヘリポートに来たのは。

アル「ジャンゴーを倒したんだな…エックス、ゼロ」

エックス「ええ、でもスパイダーの協力があったからこそです。」

アル「そうか…スパイダーさん。私からも礼を言おう。君は我々の仲間、エールのために戦ってくれた。」

アルの礼にスパイダーは何も返さず、静かに口を開いた。

スパイダー「あいつは…エールは…駆け出しの賞金稼ぎだった頃の俺の相棒だったんだ。俺の下らないミスで…あいつは敵にやられて…」

アル「そうか…」

エールを偶然拾った時、下半身が失われていた理由を今知ったアルは一瞬だけ遠い目をした後、口を開いた。

アル「しかし、君がここに居合わせたなんて、大した偶然じゃないか」

エックス「偶然…きっと、エールが俺達を引き合わせてくれたんです」

これは偶然ではない、何かの必然なのだと…そう信じたい。

アル「そうだな…」

アル長官も同じ気持ちなのだろう、真っ赤に染まった空を見上げた。
セントラルタワー解放完了。 

 

Another7 鋼鉄のマッシモ

 
前書き
ティアナ島編 

 
ジャンゴーを倒し、総督府を取り戻したエックスとゼロはアリアのメンテナンスを受け、モニタールームに集まっていた。

アリア「ふんふん、成る程ね~。シャドウの腐れ外道に裏切られてルインちゃんは行方不明。そしてエックス君とゼロ君は何とか逃げ出して今ここにって訳ね」

エックス「まあ…そうですね…」

今までの出来事をアリアとアイリスに聞かせていたエックスはアリアの言葉に苦笑していた。

アリア「よし、今すぐシャドウを探そう。私のルインちゃんを痛めつけた腐れ外道はバラバラに解体してメカニロイドのパーツにしてやる」

ゼロ「待て、行くな。」

本気でシャドウを探しに行きかねないアリアをゼロが止めた。

アイリス「ルイン…大丈夫かしら?」

ゼロ「大丈夫だ。あいつが今更あの程度で死ぬものか、あいつは何度死んでも確実に生き返るからな。俺達と同じで」

ソニア[そうだよ!!お母さんはお父さんやゼロやアクセルと同じで例え死んでも何度でも何度でもな・ん・ど・で・も確実に生き返る不死身のレプリロイドなんだからーーーっ!!!!]

スパイダー「なあ、アルさんよ。何度死んでも確実に生き返るってのはレプリロイドの範疇を確実に超えてると思うのは俺だけか?」

アル「う、うむ…」

スパイダーの問いに答えられないアル長官であった。









































アル「さて、どうにか基地を取り戻しはしたが…」

ゼロ「基地か…確かに大した設備ではあるが…」

スパイダー「俺達6人だけじゃ、宝の持ち腐れ状態じゃねえの?」

身も蓋もないスパイダーの言葉だが、事実なだけに誰も言い返せない。

アル「そうだ。だからここから北西にあるティアナ島にリベリオンに捕らわれたレジスタンスがいる。」

ゼロ「捕虜収容所…と言ったところか?」

アリア「そこにいるレジスタンスを助け出して、仲間に加えようって考えだね。」

アル「そうだ。特に助け出して欲しいのは、システムオペレータのナナだ。彼女がいればこの基地の機能を復活させることが出来る」

その言葉に待ったをかけるのはスパイダーだ。

スパイダー「ちょっと待った。オペレータならそこのお嬢さんがいるじゃないか。この子じゃ駄目なのかい?」

それに答えたのはアル長官ではなくアイリスだ。

アイリス「ギガンティスの端末は政府の物とは勝手が違うので、補助ならともかく…機能復活までは…」

エックス「アリア博士は?」

アリア「残念だけど私にも無理なんだよエックス君。確かに私は人間として規格外という自覚はあるけど、所詮は人間だしね。やっぱりここは専門家だよ専門家。ナナちゃんを助けないとね」

ソニア[レジスタンスとナナ救出作戦開始だね!!]

エックス「よし、行こう」

エックス達は転送システムに乗り込み、ティアナ島に向かう。








































ティアナ島に乗り込んだエックス達は慎重に通路を進んでいく。

スパイダー「それにしてもアルの奴、命令だけして俺達をこき使うつもりだぜ。それもタダで」

エックス「アルは戦略タイプのレプリロイドだからな」

アリア「うんうん、戦略タイプには戦略タイプの戦いがあり、戦闘タイプには戦闘タイプの戦いがあるってことだよ。」

アイリス「実戦はスパイダーさんの方が得意でしょう?」

ゼロ「大体、ただ働きが嫌ならハッキリと言えば…ん?」

本来この場にいていいはずのないアリアとアイリスの姿にゼロは思わず沈黙してしまった。

ゼロ「ちょっと待て…何でお前達が此処にいる!!?早くレジスタンスベースに帰れ!!」

アリア「え~?ちょっと待ってよゼロ君。今回は囚われたレジスタンスを救出しなきゃいけないんだから、人手は必要じゃない?」

エックス「ですがアリア博士にもしものことがあれば…」

アリア「大丈夫だよ。基本的にリベリオンは人間を攻撃しないらしいし。ほら、リベリオンが反乱起こした時、人間被害0じゃん」

ゼロ「運が良かっただけかもしれんだろ。」

アリア「どうかな?まあ、いざとなったらエックス君の力が私を守ってくれるよ」

ライブメタルを見せながら言うアリアに全員が閉口する。
ライブメタルは一部だけとは言え、エックスとゼロのデータが刻まれているだけあって強力なアイテムなのだ。
非戦闘員のアイリスでさえ相当な戦闘力を持つようになるのだから。

アイリス「大丈夫、自分の身は自分で守れるわ」

ゼロ「…分かった。ただし、危険と感じたら帰らせる。いいな?」

アリア「ゼロ君はアイリスちゃんだけ特別扱いして。まあ、仲良いのは良いことだよ。取り敢えずエックス君」

エックス「はい?」

アリア「ソニアちゃんが行方不明になっちゃってる件について」

エックス「え?」

その言葉にエックス達が辺りを見回すとソニアの姿が何処にもない。

スパイダー「もしかしてあのサイバーエルフ。迷子になっちまったんじゃねえの?」

ゼロ「よりにもよって敵地でか…」

頭痛を感じるゼロ。
こういうところは母親似かと呆れてしまう。








































ソニア[わ、わ、わ~!!!!]

「侵入者発見!!侵入者発見!!」

先に進んで見つかってしまいプレオンチェイサーに追いかけられている。

ソニア[あ!!?か、壁…どうしよう…]

[侵入者排除!!]

ソニア[こ、来ないでよ!!]

頭を庇いながら縮こまった瞬間であった。

「でりゃああああ!!」

「!!?」

プレオンチェイサーが背後の緑のアーマーを纏った大柄の青年が手に持ったビームランサーで横一文字に両断した。

[あ…]

「ふう…ふう…良かった、間に合って。大丈夫か?」

ソニア[あ、ありがとう]

優しげな口調で言う青年に安心し、礼を言う。

「いや、俺が見つけたのは本当に偶然だったんだよ」

青年がソニアを見つけたのは本当に偶然だった。
ある人物を助けに来たのはいいのだが、慣れない場所で右も左も分からない状況で途方に暮れていたところを偶然プレオンチェイサーに追いかけられていたソニアを発見したのだ。

ソニア[私、ソニア!!あなたは?]

「俺?俺は…マッシモだ!!鋼鉄のマッシモと呼んでくれ!!いや、マッシモでいい…かな?」

ソニア[私に聞かれても…うん、マッシモね。ありがとうマッシモ。ねえ、マッシモは何しにここに来たの?]

マッシモ「ここに…俺の知り合いが囚われているんだ。だから助けに来たんだ。と言ってもどうやって先に進めばいいのか分からないから全く成果は出てないんだけど…」

ソニア[もしかして、リベリオンと敵対してる?]

マッシモ「勿論だ。俺の知り合いを捕らえたのはリベリオンだ。そんな奴らに従う理由はない(怖いのもあるけど)」

ソニア[そっか…ならお父さん達と一緒に戦ってよ!!]

マッシモ「お父さん?」

エックス「ソニア!!」

騒動を聞きつけたエックス達が駆け寄った。

マッシモ「あれが君の父親かい?」

ソニア[そうだよ!!]

ゼロ「何をしてるんだお前は?」

ソニア[ごめんなさい、プレオンに追い掛けられて、マッシモが助けてくれたの]

エックス「マッシモ?」

エックス達の視線がマッシモに集中する。
集中する視線に思わずたじろぐマッシモ。

スパイダー「マッシモって、ギガンティスの勇者マッシモか?」

ゼロ「(ただ者ではなさそうだが、何だこの臆病そうな態度は?)」

優れた戦士の勘でマッシモの実力を見抜くゼロ。
確かに実力は勇者と呼ばれるに相応しいかもしれないが、この臆病そうな態度はなんだろう。

アリア「マッシモ君は何でここにいるのかな~?」

マッシモ「え?あ、ああ、決まっているだろうここに囚われている知り合いと仲間を助けるためだ!!」

アリア「成る程ね~、目的は同じなわけだ。エックス君、彼にも協力してもらおうよ。プレオンを一撃で倒せるようなレプリロイドなんて滅多にいないし」

エックス「えっと…俺は構いませんが?」

娘を助けてくれたマッシモはエックスにとって好人物に見えたのか、普通に受け入れている。

アリア「んじゃ、決まり~!!」

スパイダー「おい、いいのかよゼロ?」

ゼロ「エックス達が決めたのなら決定事項だ。諦めろ、それに今は人手が欲しい時だろ」

こうなったら何度言っても聞かないからゼロは既に諦めの境地に達している。









































そしてマッシモを仲間に加えた一行は先へと進む。

エックス「っ…みんな、敵だ!!」

プレオンチェイサーとガルプファーが出現する。
全員が武器を構えた。

マッシモ「俺に任せろ!!おりゃああああ!!」

プレオンチェイサーを容易く縦一文字に両断するマッシモ。

エックス「す、凄いパワーだ!!パワーならゼロに匹敵…ん?」

パワーが入りすぎたのか、床に亀裂が入り、浸水した。

アイリス「か、海水が!!」

アリア「エックス君、アイスショット!!早く!!」

エックス「は、はい!!」

エックスとアリアがアイスショットを放って海水を凍らせることで事なきを得た。

ゼロ「やはりここでは全力で戦えんな。」

スパイダー「だな、俺のカードボムはともかく、あんたらは光学兵器だからな。武器の出力落としとけよ」

エックス達は即座に武器の出力を落とす。
これで少なくとも穴が空くことはないはず。

マッシモ「………」

アリア「まあ、ここでの光学兵器の使用は禁物だと分かったんだし、結果オーライ。ね?」

マッシモ「フォローありがとう……」








































時折現れるメカニロイドやプレオンを返り討ちにしながらデプス4海底プリズン・メインゲートに入った一行は、警備であるドーベルワンとビッグモンキーを発見した。

アリア「うん、ここなら出力を最大にしながらでも大丈夫そう。ビッグモンキーは重装甲タイプだから……マッシモ君、何か一気に殲滅出来そうなのある?」

マッシモ「あ、ああ…あるには…あるけど…」

アリア「なら決まりだね、ビッグモンキーにそれをぶちかましてやりなさい。行っくよ!!」

アイリス「アリア博士!!」

ゼロ「あの馬鹿神が…」

アリアと共に警備兵に突撃するゼロ達。

エックス「俺達も続くぞ!!」

スパイダー「へいへい」

エックス達も警備兵に突撃していく。

マッシモ「よし…エネルギーチャージ開始!!行くぞお!!」

背部の翼にエネルギーが収束されていく。

アリア「ゼロ君、ビッグモンキーの体勢を!!」

ゼロ「零式波動斬!!」

セイバーを地面に突き立て、それによって生じた衝撃波でビッグモンキーの体勢を崩した。

アリア「今だよマッシモ君!!」

マッシモ「ベルセルクチャージ!!発射!!」

高出力のレーザーがビッグモンキーの装甲を貫いて、粉砕した。

スパイダー「ヒュ~♪大した威力じゃないか」

ベルセルクチャージの破壊力に思わず口笛を吹くスパイダー。

マッシモ「ふっはははは!!どうだ、師匠直伝の技は!!」

ゼロ「師匠?」

マッシモ「あ、いや…何でもない…」

ゼロが疑問符を浮かべていたが、即座に誤魔化すマッシモ。

アリア「それじゃあ、エックス君とマッシモ君とゼロ君とソニアちゃんがイーストブロック。私とスパイダー君とアイリスちゃんがウエストブロック。それぞれのブロックにいるレジスタンスのメンバーを助けるよ」

エックス「了解しました」

エックス達が二手に分かれて、囚われたレジスタンスの捕虜達を解放していく。







































そして解放したレジスタンスをソニアに任せて、エックス達はレジスタンスのメンバーを助けた際に得た情報を言う。

アリア「レジスタンスのメンバーに化けたドーベルワンの情報によると、ナナちゃんはもっと下のダークルームの方で強制労働させられてるらしいね。で、先に行くためのカードキーがこれ。エックス君、持ってて」

エックス「はい…」

アリアからカードキーを受け取り、エックス達はナナを救出するためにダークルームを目指す。








































そしてリフトで下の階に行くと、どんどん暗くなっていく。

アリア「うっわあ、暗~」

エックス「アリア博士。足元に気をつけて下さい」

アリア「大丈夫、ライブメタルの光が電灯代わりになるから」

スパイダー「これくらいで行動に支障が出るから人間は不便だよな」

エックス「スパイダー。それはアリア博士に対する侮辱か?」

ゼロ「落ち着けエックス。今は仲間割れを起こしている場合じゃないだろう…エックス、セカンドアーマーのエネルギートレイサーでナナの位置が分からないか?」

エックス「無理だ。サードアーマーのフィールドレーダーじゃないと」

セカンドアーマーのエネルギートレイサーは戦闘向きの物であり、広範囲のエネルギーを探知するとなるとサードアーマーでないと不可能だ。

アリア「なら、私がサードアーマーを引き出してあげようか?」

アイリス「え?」

ゼロ「出来るのか?」

アリア「当たり前~。Xハートを精製したのは私なんだよ?セカンドアーマーを引き出せた今のエックス君なら、Xハートの出力を上げても大丈夫だね。流石に完全版であるハイパーサードアーマーは無理だけど」

エックスからXハートを受け取り、Xハートの出力を上げ、サードアーマーを解放した。

ゼロ「頼んだぞエックス」

エックス「じゃあ、やってみよう。ハイパーモード・サードアーマー!!」

サードアーマーを身に纏うと、すぐさまサードアーマーのフィールドレーダーでこの収容所を把握していく。

エックス「みんな、ついて来てくれ」

マッシモ「大丈夫なのか?」

ゼロ「ああ、サードアーマーのフィールドレーダーの性能は半端じゃないからな。サードアーマーを装着している今のあいつに把握出来ない場所はない」

アリア「ライト博士がエックス君のために造ったプレゼントだからね~。半端な性能じゃないよ」

サードアーマーのフィールドレーダーの恩恵により、迷うことなくダークルームに辿り着くことが出来た。

アリア「あ、モニターで見たのとそっくり!!」

アイリス「あれがナナさんね!!」

「ん…?侵入者か!!?お前はマッシモ!!?死に損ないめ、こいつは渡さんぞ!!」

エックス「戦いが長引けば彼女を危険に曝すかもしれない!!サードアーマーのクロスチャージショットで蹴散らす!!みんな、時間を稼いでくれ!!」

セカンドアーマーのギガクラッシュではナナまで巻き込んでしまう可能性があるため、スパイラルクラッシュバスター以上に攻撃範囲が広いクロスチャージショットで殲滅しようと考えたのだ。

ゼロ「任せておけ、零式突破!!」

凍結弾の発射準備に入っていたプレオンポッドに強烈な突きを喰らわせる。
プレオンの重装甲では倒すまでには到らないが、凍結弾発射は阻止出来た。

マッシモ「あのタイプは確か凍結弾を発射するタイプだったっけ…?なら」

スパイダー「発射前に転ばせるんだよ!!フォーチュンカード…フラッシュ!!」

マッシモとスパイダーもプレオンポッドに攻撃を喰らわせて転倒させる。

アリア「ダブルチャージショット!!」

アイリス「チャージセイバー!!」

ロックオンしたアリアとアイリスはプレオンスパークを相手にしていた。

エックス「みんな、下がるんだ!!クロスチャージショット!!」

サードアーマーは時間差により、ダブルチャージショットとクロスチャージショットに分けることが出来る。
セカンドアーマーの物より威力は劣るが、手数を重視するならダブルチャージショット。
一撃の攻撃力を重視するならクロスチャージショットだ。
クロスチャージショットはプレオン達を簡単に殲滅した。

アリア「流石♪」

エックス「ふう…」

もうサードアーマー無しでも大丈夫だと判断して、ハイパーモード・サードアーマーを解除した。
エックス達は拘束されているレプリロイド…ナナの元に向かうのだった。 
 

 
後書き
セカンドアーマーとサードアーマーはRPG向きなアーマーな気がする。
特にサードアーマー。

サードアーマーはセカンドアーマーに比べれば弱い弱いと言われがちですけど、ダブルチャージとクロスチャージと使い分けられるし、ダブルチャージは少し間を置かないと効果ないけど、クロスチャージより削れる。
バスター縛りでは雑魚にはクロスチャージ。
ボスにはダブルチャージで挑んだ作者です。
サードアーマー…個人的にフォースアーマーの次に好きなアーマーです。 

 

Another8 後継者

 
前書き
シルバー・ホーンド撃破。 

 
見張りを倒したエックス達はナナの元に集まる。

エックス「システムオペレータのナナだね?俺はエックス。君を助けに来た」

アイリス「大丈夫ですか?今は拘束を外しますから」

アイリスがパネルを操作してナナの拘束を解除した。

ナナ「あなた達が侵入してきたのが分かったので、警備システムに細工して、警報が鳴らないようにしてたんです。」

アリア「ああ、成る程。通りで警備が杜撰過ぎるなと思ったよ。ありがとうねナナちゃん。」

ナナ「いえ…拘束されていた私にはこれくらいのことしか出来ませんでした…私…捕まって…従わないと捕虜の人達を殺すって…それで…」

ゼロ「イレギュラーめ…」

吐き捨てるように言うゼロに全員も不愉快そうに顔を顰めていた。

エックス「ナナ、もう大丈夫だ。安心してくれ、俺達がみんなを助ける」

アリア「女の敵を成敗してやらないとね。」

スパイダー「よし、それじゃあ行くとしようかい」

ナナ「私はここに残って、皆さんのサポートをします」

ゼロ「何?」

予想外の言葉に全員が目を見開いた。

ナナ「…許せないんです…私に皆さんのお手伝いをさせて下さい!!」

彼女の瞳に宿る深い怒り。
その気持ちは分かるため、アリアはエックスを見遣る。

アリア「誰か護衛を残さないといけないね。エックス君、私とアイリスちゃんと一緒に残って。ナナちゃんを守ってくれない?」

エックス「え?俺がですか?」

アリアとアイリス、そしてこの中でも最強の一角であるエックスがナナの護衛に抜粋された。

アリア「うん、エックス君ならもしものことがあっても直ぐに対応出来るし、サードアーマーのフィールドレーダーなら、ダークルームに誰が来るか分かるでしょ?もしもの時はナナちゃん連れてゼロ君達と合流」

サードアーマーのフィールドレーダーならここに誰がいつ来るのかが分かる。
それにもし、エックス達が倒せそうにない相手でもサードアーマーのフィールドレーダーを使えば合流は容易。
そう考えてのことだ。

エックス「成る程、分かりました。任せて下さい」

スパイダー「おお~、いいねえエックス。こんな美人達と一緒とは」

エックス「スパイダー、ふざけるのもいい加減にしろ」

茶化してくるスパイダーを睨み据えるエックス。
同時にここにルインとエイリアがいなくて良かったと思っていたり。

ゼロ「エックス、Dr.アリア、アイリス。ナナを任せたぞ。無理だけはするなよ」

エックス「分かっている」

マッシモ「あ…そうだ。ナナさん…ここにマッシモが…俺が捕まってるって記録はないかい?」

ソニア[マッシモ?]

ナナ「マッシモ…鋼鉄のマッシモね。確かに、10日前にマッシモが捕らえられて、最下層の独房に入れられたって記録があるわ。でも、リベリオンへの協力を拒み続けて、その5日後に処刑されたって記録されています」

マッシモ「死んだ…?」

愕然となるマッシモにスパイダーが不愉快そうに口を開いた。

スパイダー「はあ?誰だか知らねえが、人違いで殺されたってことか。奴ら酷えことしやがる。」

ナナ「私はここでリベリオンの情報を集めてみます。皆さんはシルバー・ホーンドの撃破をお願いします」

ゼロ「分かった。何かを発見したら通信する。」










































ゼロ達がダークルームから去った直後、サードアーマーの出力を限界まで抑えて、フィールドレーダーで警戒をしていた時である。

ナナ「すみません、我が儘を言ってしまって…」

エックス「…何がだい?」

フィールドレーダーで辺りの警戒をしつつ、ナナの声に耳を傾けた。

ナナ「私、本当に許せなかったんです。私の目の前で、仲間を殺したシルバー・ホーンドのことが…」

アイリス「ナナさん…」

ナナ「囚われてから、あなた達に救われるまでのことを…私は決してあの日々を忘れられない…許せない。」

アリア「うんうん、シルバー・ホーンドは私達女の敵だってことだよ。エックス君。シルバー・ホーンドと戦うことになったらクロスチャージショットをお見舞いしてやりなよ」

エックス「勿論です。俺も許せないですから…罪のないレプリロイドを自分達の欲を満足させるために殺すシルバー・ホーンドを…ナナ、安心してくれ。何があっても君は俺達が守る。守ってみせる。君はゼロ達のサポートを頼む。」

ナナ「はい!!」

端末を操作し、ナナは最下層を目指しているゼロ達のサポートをする。

エックス「……ん?」

アイリス「どうしたの?」

エックス「最下層の…多分、ナナの言っていた最下層の独房だろう。そこから微弱な反応がある…死にかけだな……」

痛ましげに表情を歪ませるエックスとアイリス。
この2人は特に心優しい性格のために、自分のことのように感じてしまう。

アリア「もしかしてそれって、マッシモ君と勘違いされたレプリロイドじゃないの?」

エックス「恐らくは」

ナナ「あの…マッシモさんのことなんですけど…」

スパイダーからの通信を受けて、扉のロックを解除するために端末を操作していたナナが口を開く。

エックス「え?」

アイリス「どういうことなんですか?」

ナナ「あの方、本物の鋼鉄のマッシモではないかもしれません。データベースにあった。マッシモさんの記録とはちょっと違うのです。何か事情があるのだと思って黙っていましたけど…」

エックス「そう言えば、あの時、ベルセルクチャージを放った後、“師匠直伝の技”と言っていたな。もしかしたら…後継機か何かだろうか?」

アリア「まあまあ、今言えることはマッシモ君は私達の仲間ってことだよ。マッシモ君の正体が何であれ…ね」

エックス「そうですね」










































一方、エックス達の話題となっていたマッシモは扉のロックが開くまでの間、最下層の独房にいる彼の元に来ていたのだが…。

マッシモ「あ…ああ…」

目の前に映る現実を直視出来ず、思わず後退するマッシモ。

「お前か…」

マッシモ「マッシモ師匠!!何てことだ…何て…」

あの強く気高い師が四肢をもがれ、死にかけの状態で磔にされていた。

「奴らの協力を拒み続けていたら…このザマだ。アーマーをお前に託しておいてよかった…」

マッシモ「違う!!俺はあなたみたいに強くない!!このアーマーを身に纏う資格があるのは…“鋼鉄のマッシモ”を名乗る資格があるのは…あなただけだ!!俺は…“マッシモ”にはなれない…っ!!」

「お前は…充分に…強い…それに気付いていないだけだ…お前は…マッシモに…それ以上になれる…だから…今は…その…アー、マーを…」








































そしてダークルームにてエックスが異変に気付いた。

エックス「最下層の独房にあった反応が消滅した…」

アイリス「………」

アリア「どうか安らかに…だね……」

ナナ「………」

沈痛そうな表情を浮かべるエックス達だが、エックスはサードアーマーの出力を高め、バスターのチャージを開始した。

アイリス「エックス?」

エックス「凄まじいエネルギー反応が近づいてくる…もしかしたら……」

アリア「シルバー・ホーンドのご登場だね」

全員が身構えた直後、ダークルームに大型レプリロイドの巨体が現れた。

ナナ「……っ」

シルバー・ホーンドの姿を見たナナが思わず身体を震わせた。

ホーンド「お前達か…人の庭で好き勝手しているのは…」

エックスは即座にホーンドの情報を引き出す。
あのジャンゴーと同じ、ラグラノ廃墟でカスタマイズされた1体だろう。

エックス「シルバー・ホーンド…あいつもリベリオン幹部か…」

ホーンド「言ったはずだ。余計な真似をしたら捕虜を殺すとな。しかし、捕虜は逃がされたからお前を痛めつけてやるとするか」

エックス「ふざけるな!!」

アリア「この腐れ外道!!」

ナナをアイリスに任せて、エックスとアリアが同時にダブルチャージショットを放った。
2人分のダブルチャージショット…名前を付けるならテトラチャージショットがホーンドに炸裂したが、ホーンドのボディには傷1つ付かない。

エックス「なっ!!?」

アリア「嘘!!?チャージショット4発だよ4発!!?威力なら間違いなく強烈の一言だよ!!?」

ホーンド「この程度の威力なら何度受けても痛くも痒くもないぞ?」

テトラチャージショットを受けても平然としているホーンドにエックスはナナを庇いつつ、思考を巡らせる。

エックス「(ダブルチャージショットが駄目ならクロスチャージショットかスパイラルクラッシュバスターで…いや、まずは…)」

フィールドレーダーを使い、ゼロ達の位置を探る。
最下層のアクアコロシアムと呼ばれる場所にゼロ達がいた。
フィールドレーダーでアクアコロシアムまでの道を把握すると、ナナを抱き上げ、アイリスとアリアに向かって叫ぶ。

エックス「アクアコロシアムという場所にいるゼロ達と合流する!!走るんだ!!」

アクアコロシアムに向けて走り出すエックス達。

ホーンド「逃がすか!!」

エックス「ハイパーモード・ファーストアーマー!!全エネルギー解放!!スパイラルクラッシュバスター!!!!」

陸での機動力に優れているファーストアーマーに換装すると、最大出力チャージショットのスパイラルクラッシュバスターを叩き込む。
攻撃範囲はクロスチャージショットには劣るが、使い勝手はクロスチャージショットよりも良く、単発の威力はダブルチャージショットよりもこちらの方が遥かに高い。

ホーンド「ぐおっ!!?」

スパイラルクラッシュバスターの直撃を受けたホーンドがたたらを踏んだ。

アリア「喰らえ!!クライオジェニック!!」

液体窒素の爆弾を放り投げるとホーンドの足が凍結した。

アイリス「クライオジェニックってああいう使い方も出来るのね…」

感心しながらもアイリスもゼロ達と合流すべく駆け抜ける。

ホーンド「逃がさん!!」

氷を砕くと、ホーンドもエックス達を追い掛ける。








































エックス達から通信を受けたゼロ達はアクアコロシアムと呼ばれる場所にいた。

ゼロ「エックス達からの通信によるともう間もなく来るだろう。」

スパイダー「ああ…マッシモ、行けるか?」

どこか調子が悪そうなマッシモを見遣りながら尋ねるスパイダー。

マッシモ「あ、ああ…」

師匠の死を目の当たりにし、少々不安定な状態だが、ランサーを握り締めるマッシモ。
徐々に近づいてくるエネルギー反応に全員が気を引き締めた。

ソニア[みんな!!来るよ!!]

ソニアが叫んだのと同時にエックス達とホーンドがアクアコロシアムに入ってきた。

スパイダー「へえ、こいつがシルバー・ホーンド…思っていたよりでかいな」

ゼロ「ふん、図体がでかい分斬り応えがある」

ホーンド「貴様ら…ここの捕虜共を出した挙げ句随分と好き勝手してくれたな…全員スクラップにしてくれる!!」

スパイダー「好き勝手ねえ、てめえが言えることかよ!!」

エックス「喰らえ!!」

ショットを数発喰らわせるが、ホーンドの重装甲には碌な傷が付かない。

ホーンド「そらっ!!」

巨大な拳を床に叩きつけると、極低温の衝撃波がエックスを襲う。

エックス「!!?」

咄嗟に有効範囲から逃れたエックスだが、アーマーの一部が凍結した。

ゼロ「エックス!!あいつはどうやら氷属性のようだな…」

アリア「なら簡単だよ。メガサンダーを喰らいな!!」

雷属性のエレメントボムをホーンドに投擲して炸裂させる。

ホーンド「ぐおおっ!!?このガキ!!」

エックス「させるか!!スパイラルチャージショット!!!!」

雷のエレメントチップで雷属性を持ったスパイラルチャージショットがホーンドの背中に炸裂した。

ゼロ「行くぞマッシモ!!」

マッシモ「お、おう!!」

ゼロとマッシモがセイバーとランサーを構えながらホーンドに接近する。

ゼロ「零式烈斬!!!!」

マッシモ「そらあああっ!!!!」

セイバーとランサーの斬撃がホーンドの身体を斬り裂く。

アイリス「サンダーミサイル!!発射!!」

小型ミサイルポッドから雷属性のミサイルがホーンドに炸裂。

スパイダー「フォーチュンカード…トライカード!!」

カードスリットから3属性のカードを放つ。
氷属性のカードは効かないが、炎属性と雷属性のカードがホーンドにダメージを与える。

ホーンド「このガキ共め!!タイダルウェーブ!!!!」

跳躍し、振動を起こしながら着地するとアクアコロシアムの水が大津波を起こす。

アリア「げっ!!?」

全員が大津波に飲まれる。
壁に叩きつけられるが、全身や武器、部屋全体が水浸しの状態になり、これでは雷のエレメント系武器が使えない。

ホーンド「まずはお前からだ!!踏みつぶしてやる!!」

ホーンドは倒れているナナを踏み潰そうとする。

エックス「止めろ!!」

ホーンド「どけ!!」

阻止しようとするエックスを弾き飛ばして、ホーンドがナナに迫るが…。

ゼロ「チェーンロッド!!」

ホーンド「!!?」

ゼロが繰り出したチェーンロッドの鎖が、ホーンドの身体を拘束した。

ゼロ「ダブルチャージショット!!」

バスターショットから放たれたダブルチャージショットがホーンドに炸裂するが、スパイラルクラッシュバスターでようやくダメージを与えられたホーンドの装甲にダメージは与えられない。
ホーンドはゼロを嘲笑うと、構わずナナの元に向かおうとするが。
ゼロが更に力を込めると、ホーンドの動きが更に鈍くなる。

ホーンド「ん…?馬鹿な、あんな小さい身体にどこにあんな力が…」

ゼロ「俺はイレギュラーハンターだ…俺の目の前で好き勝手にはさせんぞイレギュラー!!」

少しずつ少しずつ、ゼロの方に引っ張られていくホーンド。

ホーンド「ぐっ!!?」

ゼロ「フォームチェンジ…どんな条件で覚醒するのか知らんが…あの馬鹿神に好き勝手に身体を弄らせた分は働きやがれ!!!!」

叫んだ後、ゼロのアーマーが紫基調に変化していく。
ゼロのフォームチェンジの中でもパワーを重視した形態だ。

ホーンド「チィッ!!ドメガブリザード!!」

自分を容易く引きずり始めたゼロに危機感を感じたホーンドはエレメントボム・ドメガブリザードを使い、ゼロにダメージを与える。

ゼロ「ちっ!!」

ダメージを受け、思わずチェーンロッドを離してしまうが、構わずリコイルロッドを抜き、リコイルロッドのチャージアタックを喰らわせる。

ホーンド「があああ!!?」

パワーフォームのパワーを上乗せしたリコイルロッドはホーンドの巨体を大きく後退させた。

スパイダー「よし、ハイパーモード・トリックスター!!フォーチュンカード…ストレート!!!!」

ハイパーモードで攻撃力を底上げし、カードボムの連射を喰らわせる。

ホーンド「舐めるな!!アビスプレッシャー!!!!」

頭部の砲門から放たれた砲撃にサードアーマーに換装し、ディフェンスシールドを発生させたエックスとシールドブーメランを構えたゼロが盾になる。

エックス「ぐっ!!」

ゼロ「ぐあああああっ!!」

サードアーマーのディフェンスシールドもゼロのシールドブーメランもアビスプレッシャーの砲撃の威力をある程度緩和したが、エックスとゼロは吹き飛ばされてしまう。

スパイダー「今だマッシモ!!」

ホーンド「!!?」

マッシモ「うおおおお!!」

ランサーでホーンドの身体を切り裂き、深い裂傷を刻む。

マッシモ「はあ…はあ…」

ホーンド「くっ…ん?お前はマッシモ?いや、違うか。あの弱っちいマッシモならこの俺が処刑してやったからな」

マッシモ「…今、何て言った?マッシモが弱い?マッシモが弱いだとお!!?」

ホーンド「弱い弱い。話にならんよ。リベリオンへの協力を拒み続けるからこの俺が引き裂いてやったよプチプチとな…フハハハハハハハハハハ…ぐおっ!!?」

勢いよくホーンドの巨体が壁に叩きつけられた。
マッシモがホーンドを殴り飛ばしたのだ。

マッシモ「マッシモが弱い…?マッシモが弱いだと!!?ふざけるなぁっ!!!!」

激昂したマッシモがホーンドへと迫る。

マッシモ「鋼鉄のマッシモはお前のような、弱い者を力でねじ伏せるような奴に絶対に負けはしない!!」

ホーンド「面白い。まずはお前からバラバラにしてやる!!」

ホーンドの拳がマッシモに迫るが、咄嗟に屈んでかわし、逆にホーンドの胴体に拳を叩き込んだ。

ホーンド「がっ!!?」

マッシモ「どりゃああああ!!!!」

今までの臆病さが嘘のようにランサーを巧みに扱い、ホーンドを圧倒していく。

エックス「凄い…あれがマッシモの実力なのか…」

アリア「マッシモ君は勇者だよ。立派な」

元女神である彼女から見ても、マッシモは偽物ではない真の勇者だ。

マッシモ「ハイパーモード・ダイモニオン!!」

黄金のアーマーを身に纏うマッシモがハイパーモード・ダイモニオンを発動したことで、よりホーンドを追い詰めていく。

ホーンド「ば、馬鹿な。俺は選ばれたレプリロイドだ!!こんな…こんな奴に!!」

距離を取り、アビスプレッシャーを放とうとするホーンドだが。

マッシモ「その攻撃の弱点は!!」

放たれる直前で勢いよく跳躍し、がら空きになった背中にランサーの一閃を見舞う。

ホーンド「があああ!!?」

マッシモ「放つ際に、頭部を前方に向けなければならない。しかも威力故に反動が大きいために、身体を固定しなければならないために咄嗟の行動が出来ない。

ホーンド「ぐ、うう…」

マッシモ「お前はもう終わりだ…地獄で…お前が殺した師匠とレジスタンス達に詫びてこい!!エネルギーチャージ開始!!」

背部の翼に通常時とは比較にならないエネルギーが収束していく。

ホーンド「チャージなどさせるか!!」

ベルセルクチャージのエネルギーチャージを妨害しようとするホーンドだが。

アリア「残念、君とは違ってマッシモ君には援護してくれる仲間がいるんだよ!!ダブルチャージショット!!!!」

アイリス「チャージセイバー!!!!」

スパイダー「フォーチュンカード…ストレートフラッシュ!!!!」

ゼロ「零式…兜割!!!!」

エックス「クロスチャージショット!!!!」

マッシモを援護すべく、エックス達がホーンドにそれぞれの攻撃を叩き込む。
パワーフォームのゼロの零式兜割とサードアーマーのクロスチャージショットがホーンドを大きく後退、全身に裂傷を刻ませた。

マッシモ「パワー全開!!ベルセルクチャージ!!!!」

仲間の援護を受け、最大出力の高出力レーザーがホーンドを粉砕した。

ナナ「…………」

それを見ていたナナは思わず熱い物が込み上げてくるのを抑えられなかった。
ホーンドによって虐げられていた地獄のような日々。
それがようやく終わりを告げた。

アリア「やったねマッシモ君♪やっぱり君は勇者だよ…」

マッシモ「違うんだ…お嬢さん…俺は違う……昔、ある男がいた。」

ゼロ「マッシモ…?」

セイバーをバックパックに収めたゼロがマッシモに振り返る。

マッシモ「男は、戦闘型として生まれたにも関わらず、臆病で弱い自分が嫌で強くなりたいと…有名な戦士…マッシモの元を訪れた…マッシモはその力で弱い者の為に戦う英雄だった…俺は…俺は師匠に…あの人みたいになりたかった!!マッシモ師匠みたいに強くなりたかったんだ!!!!だが、師匠は死んでしまった……俺はどうすれば…」

スパイダー「まあ、あれだ。リベリオンみたいな連中がいる限り、勇者マッシモの弟子である鋼鉄のマッシモはその意志を継いで戦い続ける。そういうことだろうマッシモ?」

ゼロ「まだまだリベリオンの力は強大だ。リベリオンがその力で弱き者達を蹂躙し続けるのなら、お前は勇者マッシモの意志を継いでいかなければならない。」

エックス「鋼鉄のマッシモ。俺達と共に戦ってくれるか?」

シルバー・ホーンドを撃破したエックス達。
勇者マッシモの弟子、鋼鉄のマッシモが仲間になった。 

 

Another9 月と怪盗

 
前書き
シルバー・ホーンドを倒したエックス達。 

 
マッシモとナナを仲間に加え、レジスタンスのリベリオンに対抗する戦力も整いつつあった。
セントラルタワーのレプリロイド達も、レジスタンスがリベリオン幹部を2体も撃破したことで活気付いていた。

アリア「最近、セントラルタワーのレプリロイド達が活気付いてるね~」

ゼロ「今まで敗戦続きだったレジスタンスがリベリオン幹部を2体も撃破すれば当然のことだと思うがな」

アリア「そりゃあね、よし。エックス君達のフォースメタルのエネルギー調整をしてみたよ。これでハイパーモードの使用時間がもう少し持続出来るはず」

エックス「ありがとうございます。それにしてもお前達まで特別製のフォースメタルを持っているんだな」

マッシモ「ああ、俺のフォースメタルはマッシモ師匠から貰った“ザ・マッシモ”と言ってな。俺の戦闘スペックを底上げしてくれるんだ」

スパイダー「俺のフォースメタルは“ブラフ”って言ってな。相手の電子頭脳に干渉して、相手の視覚とかを誤魔化すことが出来る。」

エックス「へえ…」

スパイダー「昔、ギガンティスでは、高性能な戦闘型レプリロイドには特別製のフォースメタルが渡されるんだ。俺も造られた時にこいつを渡されたんだ。こいつの師匠も多分そうだろ。多分実験的な意味合いが強かったんだろうが」

アリア「外宇宙から飛来したハイパーモードや様々な奇跡を生む神秘の鉱石…ね…」

ソニア[宇宙には色んななのがあるんだね]

アリア「そりゃあそうだよ。200年前には外宇宙のロボットが地球に来たこともあるし。もしかしたら、またロボットが飛来してくるかもよ~?」

ゼロ「勘弁して欲しいな。これ以上の厄介事は御免被る。」

ゼロの言葉にエックスも少し同感と言わんばかりに苦笑していた。








































一方、里帰りからギガンティスに向かっていたアクセルとルナは妙な胸騒ぎを感じながらも、リベリオン幹部がいると思わしき施設を探していた。

ルナ「あ…」

アクセル「ルナ?」

突如、ライドチェイサーを停めたルナに疑問符を浮かべながら、アクセルもライドチェイサーを停めたが、ルナの視線の先を見遣ると、かなりの大規模の研究施設があった。

アクセル「どうしたの?」

ルナ「あそこ、多分。フォースメタルの研究者として有名なガウディル博士の研究所だよ!!」

顔を紅潮させながら言うルナにアクセルは…。

アクセル「もしかしてガウディル博士って人に会いたいの?」

ルナ「うん!!ギガンティス屈指の研究者だし!!色んなエネルギー理論のスペシャリスト!!一度会ってみたかったんだ!!ねえ、アクセル!!お願い、ガウディル博士に会わせて!!」

アクセル「仕方ないなあ、じゃあ僕はこの先にあるウルファトってとこで調査してるから。」

ルナ「うん!!行って来ます!!」

ライドチェイサーをガウディル研究所に向かわせるルナに苦笑しながらアクセルも目的の場所に向かう。








































そしてセントラルタワーのモニタールームでは、一同全員が集まっていた。

アリア「えっと、今回君達に与える任務はガウディル研究所にいるガウディル君もとい、ガウディル博士に会って、協力をしてくれるように頼んで欲しいんだよ」

エックス「ガウディル博士…ですか?」

アリア「うん、これがそのガウディル君」

モニターにガウディル博士の姿が映る。

ゼロ「カモノハシ?」

アリア「型のレプリロイドね。ガウディル君はギガンティス屈指の研究者で、あらゆるエネルギー理論のスペシャリストだったんだよ」

スパイダー「だったって…現在は?」

アリア「ん~、自分の研究成果の悪用を恐れて、今では政府との接触まで拒み続けてんの。だから…」

ゼロ「大量の侵入者排除のための仕掛けが施された研究所に俺達に行けということか?」

アリア「当たり~☆エックス君がいるんだから警備システム突破は楽でしょ?それにゼロ君は忍び部隊の隊長さんなんだからさ」

ゼロ「チッ…」

舌打ちすると、エックス達は転送システムに乗り込み、ガウディル研究所に向かうのだった。








































一方でガウディル研究所に正面から入ってきたルナ。

ルナ「すんませーん。アポイント取ってませんけどガウディル博士いますかー?」

声を出すが、当然反応はない。

ルナ「誰もいない…仕方ない…勝手に見学すっか☆」

帰るという選択肢は彼女には存在しないらしく、ガウディル研究所を無断で見学することにした。

ルナ「やっぱりこの研究所には色んな物があるよなあ…噂で聞いたけど、フォースメタルを精製出来るって言うフォースメタルジェネレータは特に見てみたい!!絶対に見せてもらうぞ!!」

先に進むと警備システムが作動し、レイダーキラーとキラーマンティスが出て来た。

ルナ「ん?ああ、警備システムか。俺の知的好奇心の邪魔をするなら…撃ち落とすまでだ!!リフレクトレーザー!!」

リフレクトレーザーがキラーマンティスの頭部を撃ち抜き、貫通したレーザーは壁に反射して、レイダーキラーとキラーマンティスを瞬く間に殲滅していく。

ルナ「リフレクトレーザーはこういう場所で真価を発揮出来んだぜ♪さあてさあて。フォースメタルジェネレータはどこにあんのかなあ?」

警備システムのメカニロイドを返り討ちにしながら、ルナはフォースメタルジェネレータを求めて、先に突き進む。
それがリベリオンやレジスタンス等の勢力を結果的に助けることになるのだった。








































エックス達もガウディル研究所に侵入したのだが、あまりの警備システムの手薄さに逆に違和感を感じていた。

エックス「妙だな、警備が手薄過ぎる」

スパイダー「思っていたより楽そうだ…と思えばいいのかねえ?」

ゼロ「いや、これを見ろ。」

ゼロが指差した先には、焼け焦げた跡のある壁。

マッシモ「かなりの高出力レーザーのようだな。しかも所々に焼け焦げた後がある。恐らく反射レーザーだな」

エックス「反射レーザー……もしかして、いや、まさかな……」

ギガンティス付近にあると言われている違法研究所へのアクセルの里帰りに付き合っているとは言え、彼女がここにいる訳がないと無理やり納得させた。

マッシモ「おい、あれを見ろ!!」

エックス「え?」

マッシモに叫ばれ、前方を見遣ると、ルナが仕留め損なったメカニロイド達がこちらに迫っていた。

ゼロ「どうやら俺達よりも先に侵入した奴が仕留め損なったようだな」

スパイダー「チッ、俺達は後片付けを押し付けられんのかよ!!」

エックス「言ってる場合じゃない!!早くメカニロイドを倒してガウディル博士に会わなければ!!」

ルナの仕留め損ねたメカニロイドの後始末をするような形ではあるが、エックス達は警備メカニロイドを迎撃し始めた。









































一方、エックス達とルナとは別方向を進んでいるレプリロイドがいた。

「それにしても、私の他にも客がいるなんてね。」

桃色のアーマーを身に纏う女性型レプリロイド。
彼女は警備システムを簡単に切り抜け、凄まじいスピードで先に進んでいく。

「もしかしたら、私の同業者かもしれない……これは急がないとね。先にお宝を奪われたらたまらないし」

女性型レプリロイドは走る速度を速める。








































更に一方で、ルナはテネブラエとグラキエスの変身を駆使しながら、ガウディル博士の仕掛けた警備システムを回避しつつ、フォースメタルジェネレータのある場所を探していた。

ルナ「お?あそこだな♪」

特別なエネルギー反応を発見したルナはフォースメタルジェネレータかもしれないと思い、満面の笑みを浮かべる。
ウェントスに変身して、一気にその部屋に向かうのだった。









































ガウディル「クワックワッ!!わ、わしの警備システムがこうも簡単に…シナモンが…フォースメタルジェネレータがああ…」

「ガウディル」

ガウディル「渡さん。シナモンはフォースメタルジェネレータは渡さんクワッ!!」

「ガウディル!!」

ガウディル「ん?サイケか!!何の用だクワッ!!今、それどころではないんじゃ!!あのままではシナモンが…」

ガウディルが背後を見遣ると、リベリオン幹部の1人である高速演算処理人型レプリロイドのDr.サイケがいた。

サイケ「ん?ああ、成る程。こそ泥にでも入られたか。通りで何時もより警備が手薄だったわけだな…ん、シナモンとは確か、フォースメタルジェネレータを搭載したレプリロイドだったな?」

ガウディル「クワッ!!?」

サイケ「やはりそうか…ということは私としてもまずい!!何としてもそのこそ泥より、フォースメタルジェネレータを確保しなければ!!ええい、どこだ!!どこの部屋にいる!!?ここか?この部屋か!!?」

サイケが勝手に端末を操作し、フォースメタルジェネレータを搭載したレプリロイドのいる部屋を探す途中。
ルナの他にも入っていた女性型レプリロイドも映る。

ガウディル「ま、また…侵入者が…」








































ルナ「ここだな?グラキエスのエネルギーサーチで反応のあった場所は。失礼しまーす」

部屋に入ると、1体の看護型レプリロイドが不思議そうにルナを見つめていた。

ルナ「あり?」

「えっと…誰ですか?」

見た感じ設定年齢はルナとアクセルと大して変わらないだろう。
看護型レプリロイドは疑問符を浮かべながら、尋ねるが…。

ルナ「人に名前を尋ねる時は自分からってのがマナーだぜって言いたいとこだけど、今回勝手に入ってきたの俺だからなあ。俺の名前はルナってんだ。よろしくな♪」

「はい。私はシナモンです」

シナモンと名乗る少女が満面の笑みでルナに歩み寄る。

ルナ「へえ~シナモンね。可愛い名前じゃんか。あんた、助手か何か?」

シナモン「はい、私博士のお手伝いをしてるんですよ」

ルナ「ほう!!若いのに大したもんだ。あんたさ、フォースメタルジェネレータってどこにあるのか知ってるかい?俺、ガウディル博士やフォースメタルジェネレータとか見たくて研究所に入ったんだよ。警備システムでエライ目に遭ったけどさ」

シナモン「博士なら博士の研究室にいますよ。それからフォースメタルジェネレータならここにありますよ?」

ルナ「マジ!!?どこどこ!!?」

瞳を輝かせながら近寄るルナに、笑みを浮かべながら自身に搭載されたフォースメタルジェネレータを見せてくれた。

シナモン「これがフォースメタルジェネレータです」

ルナ「これがフォースメタルジェネレータ…あんたの身体の中に仕込んでたのか…いくら何でもやりすぎな気がすんだけど……」

シナモン「博士は、自分の研究成果の悪用を嫌ってましたから……」

ルナ「そっか……ホタルニクス爺さんを思い出すな~…ところで後ろにいる奴出て来な」

シナモン「え?」

「あらら、バレちゃったか」

ルナとシナモンが背後を見遣ると、そこには桃色のアーマーの女性型レプリロイドがいた。

シナモン「お友達ですか?」

ルナ「いや、初対面」

シナモンの問いにあっさりと返すルナであった。

シナモン「あ、私シナモンです。初めまして」

「あ、初めまして、マリノです」

ルナ「挨拶返すとは律儀な不法侵入者だな」

マリノ「あんたが言えたことかい。あんたも私とやってること変わらないだろ。まさかS級ハンターが不法侵入とはね」

ルナ「まあ、確かに…ん?マリノ…マリノって確か…」

一応自覚はあったらしい。

シナモン「えっと、マリノさんは何をしに来たんですか?」

マリノ「あんたのフォースメタルジェネレータってお宝を頂きに来たんだけどさ…」

ルナ「まさかフォースメタルジェネレータがシナモンの身体に仕込んでたとは思わなかったと…あんた、怪盗マリノだろ?」

シナモン「怪盗って何ですか?」

ルナ「まあ、簡単に言うなら泥棒だな…普通の泥棒じゃねえけどな。」

シナモン「????」

疑問符を浮かべまくるシナモンにルナは苦笑する。

ルナ「怪盗マリノってのは、今の技術では治せないコンピューターウィルスのワクチンプログラムや新しい技術を貧しい国に存在するレプリロイドに無償でやってる義賊。」

シナモン「じゃあ良い人なんですか?」

ルナ「んー、人格的には良い奴でやってることはアレだから良い悪党か?」

何故かルナはマリノを見遣りながら言う。

マリノ「いや、私に言われても困るよ。それにしても参ったねえ。まさかフォースメタルジェネレータがこんな子に搭載されてたなんて…」

フォースメタルジェネレータを頂きに来たマリノだが、まさか、お目当てのフォースメタルジェネレータがシナモンに搭載されていたとは思わなかったのだろう。
物凄く困り顔だ。

ルナ「流石に人攫いは見逃せねえぞ?」

マリノ「私だって人攫いなんかしたかないよ。こうなったらフォースメタルジェネレータの設計図を奪うしか…」

どうにかしてフォースメタルジェネレータを手に入れたいマリノは設計図を頂くことにしようかて考えを決めた時であった。

シナモン「危ない!!」

ルナ「っ!!うらあ!!」

背後からの攻撃をレーザーで相殺するルナ。

サイケ「こそ泥かと思ったら、あのS級のイレギュラーハンタールナとはな。」

ルナ「おい、誰だよあいつ?シナモン、あんたの知り合いか?」

シナモン「いいえ」

ハッキリと断言するシナモン。
代わりに答えたのはマリノであった。

マリノ「Dr.サイケ。今ギガンティスで暴れ回っているリベリオン幹部の1人さ…。こいつはエライ大物に出会しちゃったね」

ルナ「リベリオン…あの反乱組織の幹部…そいつがシナモンに何の用だ?」

サイケ「ガウディルの奴が何度説得しても聞き分けがないものでな、そこの小娘を人質にすれば、奴も少しは従順になると思ってなあ…」

嫌みな笑みを浮かべながら言うサイケに、ルナはこめかみに青筋を浮かべた。

ルナ「ふざけんなこのイレギュラー!!イレギュラーハンターとして見過ごせねえな!!」

サイケ「ほざくな小娘!!イービルブラスター!!」

ルナ「ダブルリフレクトレーザー!!」

サイケのイービルブラスターとルナのダブルリフレクトレーザーがぶつかり合う。
威力はダブルリフレクトレーザーが上だったらしく、サイケは勢いよく吹き飛んだ。

ルナ「い、痛え…やっぱ俺の力じゃダブルリフレクトレーザーは反動デカ過ぎか…」

シナモン「だ、大丈夫ですか…?」

ルナ「ああ、ていうか…あんた逃げろよ…狙いあんたなんだから…」

マリノ「というか、あいつどんどん手下を出してきたね。こりゃ逃げないとヤバそうだ」

ルナとシナモンを抱えて走り出すマリノ。

ルナ「す、凄え…俺とシナモン抱えて…」

マリノ「これでも戦闘型…しかも格闘特化型だからね。あんたら軽量型を2人担ぐくらい訳ないさ。と言うわけで今回は見逃してくれよ?」

ルナ「はいはい、俺は何も見てませーん。偶然通りすがったマリノに助けられましたと。命救われて仇で返したくねえもん」

マリノ「そうこなきゃ♪」

ルナとシナモンを抱えたマリノは出口を目指して駆けるのであった。 
 

 
後書き
殆どオリジナルです。 

 

Another10 集まる力

 
前書き
サイケ戦 

 
マリノ達が必死にサイケから逃げている最中、警備用メカニロイドと警備システムを突破したエックス達は何とかガウディル博士の研究室に入った。
するとそこにはガウディル博士が拘束されていた。

エックス「ガウディル博士、これは一体?」

急いで駆け寄り、ガウディル博士の拘束を解きながら、エックスが尋ねるが、ガウディル博士は聞こえていないのかブツブツと呟いている。

ガウディル「シナモンが…サイケの奴め、やっぱり最初からシナモンが目当てじゃったのか~!!」

ゼロ「おい、落ち着け。分かるように説明しろ」

スパイダー「シナモンとかサイケとか何のことだ?リベリオンの奴らかい?」

ゼロとスパイダーの言葉に反応し、ようやくエックス達に気づけたのか、ガウディル博士は目を見開いた。

ガウディル「な、何じゃお前らは…」

エックス「俺はエックス…リベリオンに抵抗しているイレギュラーハンターです。アリア博士からの指示を受けて、あなたの協力を得るために来ました。」

ガウディル「Dr.アリアが…じゃが、知っておるじゃろ!!例えDr.アリアからの頼みでも、わしは盗人のイレギュラーハンターやリベリオンに協力する気はないクワッ!!」

ゼロ「盗人だと?」

盗人呼ばわりにゼロの眉間に皺が寄る。

マッシモ「盗人呼ばわりは言い過ぎじゃないですかね?そりゃあ、イレギュラーハンターが俺達みたいなのと一緒にいるのはおかしいかもしれないけど」

ガウディル「これを見るクワッ!!わしの研究所に無断で入った挙げ句滅茶苦茶にした犯人じゃ!!どこからどう見てもお前達の仲間じゃろうが!!」

ガウディル博士がモニターに監視カメラの映像を見せる。
エックスが疑問符を浮かべながらモニターを見ると、次の瞬間、目を見開いた。

エックス「ルナ!!?」

ゼロ「何だと!!?何故あいつがこの研究所にいる!!あいつは確かアクセルの里帰りに付き合っていたはずだ!!」

モニターの監視カメラの映像に映るルナは正面から入って無断で研究所内を動き回り、警備システムと警備用メカニロイドを迎撃しながら、無断で研究室に入ったりして資料を無断で読み、色々しながらガウディル博士の研究所を荒らして、シナモンの元に。

エックス「ルナ…」

ゼロ「何をしているんだあいつは…」

一部始終を見終えたエックスとゼロは絶え間ない頭痛に襲われ、深い溜め息をついた。

マッシモ「政府からの命令があったのか?」

エックス「いや、違う。恐らく好奇心を抑えきれずに研究所に入って、警備システムや警備用メカニロイドから攻撃を受けたから取り敢えず迎撃したんだろう。彼女も優秀な技術者だからな。こういう場所には目がないんだ。」

ゼロ「アクセルの里帰りに付き合っていたあいつがいるということは、アクセルもこの研究所にいるのか?」

エックス「それはない。アクセルがいたら確実に彼女を止めている。それ以前にアクセルはこういう研究所には興味はないし、研究所自体嫌いだからな…恐らく別行動をしているんだろう…良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らないな…すみませんガウディル博士。彼女には後で厳しく言っておきます。」

深い溜め息を吐いた後、ガウディル博士に深々と頭を下げるエックスに深い溜め息を吐きながら、スパイダーがガウディル博士に尋ねる。

スパイダー「まあ、エックス達の仲間のハチャメチャな行動は置いといて。今、大変なことになってんじゃないの?」

ガウディル「クワッ!!そうだった…シナモンが…シナモンがサイケに…リベリオンの奴らに奪われてしまう…」

エックス「詳しく聞かせてもらえますか?博士」

マッシモ「力になれると思いますぜ!!」

スパイダー「別に恩着せようなんて考えちゃいないよ。俺達はリベリオンの奴らにチョロチョロされるのが我慢出来ないんだ」

ゼロ「イレギュラーハンターとしてイレギュラーを放置出来んからな」

こうしてエックス達は、シナモンの救出、保護をすることになった。







































一方でサイケから逃げ続けているマリノ達は…。

マリノ「はあ…はあ…」

いくら軽量型とは言え、ルナとシナモンを抱えながら長距離を全力疾走して息切れしているマリノを見て、ルナが顔を潜めた。

ルナ「あんた無理し過ぎだよ。少し休んだ方が…」

どう見ても疲れているマリノを見て、休憩するように促すルナだが、目の前に警備用メカニロイドが立ち塞がる。

マリノ「おっと…ドジっちまったね…」

疲労で警備システムに引っ掛かってしまい、キラーマンティスとレイダーキラーがマリノとルナに迫る。

ルナ「うがああ…こんな時に…何なんだよ、この警備システムは!!まるで要塞じゃねえか!!こうなりゃ俺が…」

シナモン「あの…ルナさん。良かったらこれ、使ってください。“Lスナイパー”…エネルギー感知器と照準器の精度を高めるフォースメタルなんです」

シナモンが差し出すのは、紺色のフォースメタル。

ルナ「サンキュー!!」

シナモンからフォースメタルを受け取ると、即座に拡張スロットに差し込む。

ルナ「よし、これなら行ける!!トランス…いや、ハイパーモード・イグニス!!!!」

四天王の1人で、炎属性を持つイグニスに変身するルナ。
フォースメタルでコピー能力が強化されているのか、オリジナルと同等、それ以上に強化されていた。

シナモン「ルナさん?」

マリノ「あれは確か100年前に無くなったはずのコピー能力…?」

ルナ「エディットバスター!!」

二丁のナックルバスターから放たれる誘導エネルギー弾が連続で放たれ、レイダーキラーを爆砕する。
耐えきったキラーマンティスは射撃用のバリアを張る。

ルナ「甘いぜ。イグニスのパワーを見くびるなよ!!ダブルメガトンクラッシュ!!」

ナックルバスターを勢いよくキラーマンティスに叩き込む。
まともに喰らったキラーマンティスはバラバラになった。
警備用メカニロイドがいないことを確認してから、変身を解除した。

ルナ「フォースメタルって凄いな。俺の不完全なコピー能力を完全かそれ以上の物にまでパワーアップさせやがった…」

マリノ「あんた新世代型レプリロイドだったんだね。ていうか、まだ生き残ってたんだ」

ルナ「プロトタイプだけどな。プロトタイプだからコピー能力が不完全なんだ」

マリノ「不完全でも欲しいなコピー能力。仕事がしやすくなるしね」

ルナ「俺のコピーチップは駄目だぞ!!」

咄嗟に頭を押さえて、後退するルナに苦笑しながら後ろを見遣ると、サイケがこちらに追い付いてきた。

マリノ「チッ!!追い付いて来やがった。逃げるよ!!」

ルナ「おう!!」

加速器を吹かしながら逃げるルナとシナモンを抱き上げ、逃げるマリノ。
しばらく走り続けるが、とうとう行き止まりにぶつかる。

ルナ「くっ…行き止まりか…」

サイケ「ようやく追いついたぞ。手間取らせおって、さあ…その小娘を渡せ!!渡せば命だけは助けてやるぞ」

ルナ「冗談言うな。イレギュラーハンターとしてこういうのは見逃せないんだよ」

マリノ「私もあんたみたいなのは大嫌いでね。大人しく従う義理なんかない」

パレットとビームナイフを構えながら、戦闘体勢を取る2人を見て、サイケがプレオン達に指示を出そうとした瞬間。

ゼロ「ハイパーモード・アクティブフォーム!!零式波動斬!!!!」

エックス「ハイパーモード・ファーストアーマー!!スパイラルチャージショット!!!!」

ゼロとエックスが広範囲に有効な攻撃でプレオン達を殲滅すると、ルナ達の前に立つ。

ルナ「エックスにゼロ?何で此処にいるんだ?」

ゼロ「それはこちらの台詞なんだがな」

深い溜め息を吐くゼロに苦笑しながらエックスはルナを見遣る。
因みにスパイダーとマッシモはガウディル博士の護衛として残してきた。

エックス「ルナ、ガウディル博士の研究所に無断で入った挙げ句、滅茶苦茶にしたことで話がある」

ルナ「いいっ!!?」

嫌そうに顔を顰めるルナだが、サイケは苛ただしそうに叫ぶ。

サイケ「イレギュラーハンター共か…お前達には我らリベリオンがどれ程レプリロイドの技術を進歩させ得るか分からぬと言うのか!!」

エックス「争いのための技術など!!」

バスターを構えながら叫ぶエックスに対してサイケも構える。

サイケ「お前達と話していても時間の無駄だ!!この場で滅してくれる!!私自身の手でな!!イービル…」

ゼロ「させるか!!零式突破!!!!」

アクティブフォームで強化された機動力を活かしてサイケに肉薄し、強烈な突きを繰り出す。
サイケは咄嗟に身体を捻って、急所を外すが。

ルナ「逃がさねえぜ!!リフレクトレーザー!!」

リフレクトレーザーがサイケの左足を射抜き。

マリノ「次は私だよ。ていっ!!」

ビームナイフでサイケの胴体を斬りつけ。

エックス「スパイラルクラッシュバスター!!!!」

とどめとばかりに放たれたスパイラルクラッシュバスターが、サイケの頭部のみを残して粉砕した。

ルナ「何だ。戦ってみると弱いじゃん」

ゼロ「仕方ないだろう。いくらフォースメタルで強化されていても所詮は科学者だ」

シナモン「あ、皆さん。上を見てください!!」

全員【?】

シナモンに言われ、上を見上げると、サイケの頭部が、光学迷彩で隠されていた機動兵器と合体した。

サイケ「科学者を甘く見るなよ!!合体完了!!マッドノーチラス!!!!」

ルナ「が、合体しやがった!!?」

ゼロ「ふん、図体がデカくなっただけだ。斬り刻みがいがある。行くぞ!!」

加速器を吹かして、一気にマッドノーチラスに肉薄するゼロ。
エックスもバスターのエネルギーチャージを開始する。

ゼロ「零式昇竜斬!!」

ゼロの剣技の対空技がマッドノーチラスに炸裂するが、マッドノーチラスの装甲が僅かにヘコんだだけだ。

ゼロ「何だと!!?」

エックス「下がるんだゼロ!!スパイラルクラッシュバスター!!!!」

スパイラルクラッシュバスターをマッドノーチラスに放つが、結果は同じだ。

サイケ「その程度で進化した私に敵うと思うのか!!デスグラビティ!!!!」

重力弾を放ち、エックス達を吹き飛ばす。

エックス「ぐっ…」

ルナ「痛って~…くそ、何とか奴の弱点を…」

強化されたエネルギー感知器で、弱点を探す。
すると隔壁に覆われたコアを発見した。

ルナ「隔壁に覆われた場所にコアがある。何かそこが弱点ぽい!!」

マリノ「なら喰らいな!!マリノスタンプ!!!!」

隔壁に超スピードの飛び蹴りを叩き込むが、隔壁を僅かにヘコませただけだ。

サイケ「コア放熱開始!!」

コアを覆っていた隔壁が開くと、光線が放たれた。

ルナ「へっ!こんな単純な軌道で当たるかよ!!」

光線を回避すべく身を捻った瞬間光線が軌道を変えてルナに炸裂した。

ルナ「!!?誘導光線かよ…」

ゼロ「チッ!!コアに攻撃させないためか…」

エックス「くそ…」

エックスは考えた末にサードアーマーに換装する。
ヴァリアブルエアダッシュとディフェンスシールドで攻撃を凌ぎながら隔壁に攻撃を加え続けてコアを露出させるしかないと考えたのだ。

ルナ「ハイパーモード・ウェントス!!」

四天王随一の空中機動力を誇るウェントスに変身し、光線をかわしながら隔壁に三連撃と衝撃波を叩き込む。
しかし、貫通力が高いソニックブームを持ってしても隔壁を僅かに削っただけだ。

ルナ「ウェントスのソニックブームでも駄目なのかよ…」

エックス「トリプルチャージ!!!!」

ゼロ「零式乱舞(コマンドアーツ)!!!!」

エックスがクロスチャージショットとチャージブレードの連携、ゼロは零式烈斬、零式突破、零式昇竜斬、零式波動斬、零式兜割の乱舞技をマッドノーチラスに叩き込むが、やはりマッドノーチラスには大してダメージがない。

エックス「何とかコアに攻撃出来れば…しかし、隔壁が開いてから放熱までの時間が短すぎる…」

サイケ「ひょ~ひょっひょっ!!コア放熱開始!!」

隔壁が開き、誘導光線が放たれた。
全員が防御するが、誘導光線はエックス達を無視するかのように進み、光線はシナモンに。

シナモン「きゃああああ!!?」

ルナ「やべえ、シナモン!!」

ゼロ「チッ!!」

アクティブフォームの機動力で何とかシナモンの前に立ち、その身で光線を全弾受けてしまう。

ゼロ「ぐっ…」

相当なダメージを受けたゼロは膝をついてしまう。
またこれを受けたら終わりだ。

シナモン「エンジェリックエイド!!」

シナモンの掌から金色の光が放たれる。
ゼロの身体に触れる。

ゼロ「何を…」

シナモン「動かないで下さい!!怪我の治りが遅くなります!!」

シナモンに言われて、ゼロは自身の身体を見遣ると、確かに身体の傷が癒されていた。

ゼロ「すまん…」

シナモン「いえ、怪我を治すのが私の役目ですから」

笑みを浮かべながら言うシナモンにゼロも微笑を浮かべて立ち上がる。

ゼロ「感謝する。これでまた戦える」

全快したゼロがセイバーを構えた直後であった。
ゼロのアーマーが淡い光を放ち始めたのは。

ルナ「ゼロ、これ…」

ゼロ「どうやら新しいハイパーモードが覚醒したようだな。ハイパーモード・エナジーフォーム!!」

ゼロのアーマーが橙色から黄色を基調にした物になる。

エックス「ゼロ!!?」

ゼロ「すまん、エックス。心配かけたな」

エックス「その姿は…」

ゼロ「シナモンのおかげで目覚めた新しい形態だ。」

サイケ「新たなハイパーモードか…ハイパーモードを進化させるとはお前も興味深い。研究材料にしてやる!!マッドブラスター!!」

ゼロに有線ビーム砲から放たれた光線が直撃する。

ルナ「ゼロ!!…あれ?」

ゼロの受けたダメージが見る見るうちに回復していく。

ゼロ「これがエナジーフォームの能力だ。時間経過で傷を癒やしてくれる。つまり無限に回復し続けるわけだ。これでもまだ余裕を保てるか?Dr.サイケ?」

サイケ「ぐぬぬぬぬ!!ならばバラバラにしてくれるわ!!DNAデータさえ無事ならそれでよい!!コア放熱開始!!」

隔壁が開き、コアが露出した瞬間であった。

マリノ「今だ!!ハイパーモード・クイックシルバー!!!!」

桃色のアーマーが漆黒の物に変わり、余計な装甲を捨てることで長所の機動力を更に高めた。

マリノ「行くよ!!そらそらそらそらああああ!!!!」

アクティブフォームすら優に超える機動力で誘導光線を放つ前に攻撃を加え続ける。
超高速の連続攻撃を受け、コアに罅が入り始めた。

サイケ「い、いかん!!は、早く隔壁を…」

ゼロ「させるか!!」

ルナ「喰らいやがれ!!」

閉じようとする隔壁にリコイルロッドのチャージアタックとイグニスに変身したルナがメガトンクラッシュを隔壁に叩き込み、閉じようとしていた隔壁を吹き飛ばした。

ゼロ「今だエックス!!」

エックス「これで決める!!サードアーマー全リミッター解除!!!!」

サードアーマーが純白から金色に変化し、全ての潜在能力が解放された。
ヘッドパーツの潜在能力で見る見るうちに傷が癒されていく。

サイケ「ハイパーモードの二段強化だとお!!?」

エックス「クロスチャージショット!!!!」

クロスチャージショットを繰り出し、コアに叩き込む。
1発だけではない。
アームパーツの潜在能力で今まで受けていたダメージをエネルギーに変換し、クロスチャージショットの連射を可能にしたのだ。

サイケ「わ、私の最高傑作があああああ~~~!!!!」

全リミッター解除したサードアーマーのクロスチャージショットの連射を喰らい、マッドノーチラスは爆散した。 
 

 
後書き
ハイパーサードアーマー覚醒。
ハイパーサードアーマーはサードアーマーからのハイパーモードです。
ハイパーモードを重ねがけしてるようなもんだから持続時間が半減してしまう。 

 

Another11 仲間

 
前書き
Dr.サイケを撃破。
エックス達は新たな仲間を得る。 

 
Dr.サイケを撃破し、一息つくエックス達。
全員が安堵の息を吐いていた。

アリア「やあやあ、お疲れ様☆」

エックス「アリア博士」

ゼロ「何故ここにいる?」

ガウディル博士と共にスパイダーとマッシモに守られたアリアが満面の笑みでエックス達に歩み寄る。

アリア「ガウディル君に会いに来たの。やたら遅いから交渉失敗したのかなと思ったけど…リベリオン幹部撃破お疲れ様」

ガウディル「シナモン!!」

シナモンに駆け寄るガウディル博士。
怪我はないようで、安堵の笑みを零した後、エックスを見遣る。

ガウディル「エックス…礼を言う。じゃが、わしはあんたらにもリベリオンにも協力は出来ん。フォースメタルジェネレータを…シナモンを戦いに利用されるわけにはいかんのだクワッ!!」

エックス「ええ…おれも彼女を戦いに巻き込みたくはない…みんな、引き上げよう」

マッシモ「お、おい…アルには何て言うんだ…?」

ゼロ「適当な言い訳でも考えればいいだろう。俺達はリベリオンじゃない。本来無関係な一般人を巻き込むわけにはいかない」

シナモン「…皆さん…博士、私。皆さんと一緒に戦いたいです!!」

ガウディル「クワッ!!?シナモン、何を…」

シナモンの発言に驚くガウディル博士。

アリア「まあまあ、最後まで言わせてあげなよ」

シナモン「私、利用されるんじゃありません。自分で考えたんです。サイケみたいな人を…リベリオンを…放っておいちゃいけないって!!だから私、博士から貰ったこの力を役立てたいって…そう思ったんです!!」

ガウディル「…………」

呆然としながら、シナモンを見つめるガウディル博士。
いつもは聞き分けがよく大人しかった彼女が自分の意思を必死に伝えていた。

ゼロ「ふっ……はははははっ!!」

非常に珍しく声を上げて笑った彼。
エックス達は驚きで何も言えず、シナモンは不思議そうに見ていた。

ゼロ「今時こんな奴がいるとは……ふふっ…面白い奴だなお前は………」

未だに笑いの収まりきらない口元を片手で覆い、シナモンを見遣る。

アリア「シナモンちゃん、君は凄いね。あのゼロ君を爆笑させるなんて、100年間誰にも成し遂げられなかった偉業だよ」

シナモン「そうなんですか?」

ゼロ「まるで昔のエックス達を見てるようだ…おい、部外者の俺が言うのも何だが、彼女の意思を尊重してやったらどうだガウディル博士?」

ガウディル「う…うむ…しかし……」

アリア「父親なら可愛い娘の意思を尊重してあげなよガウディル君。シナモンの強さを君も見たでしょう?」

アリアに言われ、とうとう諦めたのかガウディル博士は深い溜め息を吐いた後、苦笑を浮かべた。

ガウディル「仕方ないクワ…」

シナモン「博士!!」

エックス「ガウディル博士…それじゃあ…」

ガウディル「ああ、エックス。シナモンの言う通りかもしれん。Dr.サイケはあれでも優秀な研究者じゃった。そんな彼を狂わせてしまうようなリベリオンは…放っておいてはいかんのじゃろうな…」

シナモン「博士…」

エックス「ありがとうガウディル博士!!これで心強い仲間が…また2人も増えた…」

ルナ「2人?3人だろ3人。だよなマリノ?」

マリノ「へっ!?私!!?何でさ、私は確かに共闘したけど、本当ならフォースメタルジェネレータを頂いておさらばしてたんだよ!!?」

まさか自分も数に入れられているとは思わなかったマリノは自分を指差しながら驚く。

シナモン「でもマリノさんは良い人ですよ。マリノさんは私とルナさんを助けてくれたんです」

マリノ「あ、あれは…成り行きみたいな感じで…」

アリア「ふむふむ。君がかの有名な怪盗マリノちゃんだね?今の時代では治せないコンピューターウィルスのワクチンプログラム等の新技術のみを盗んで、貧しい人々に無償でやっている義賊。」

マリノ「マリノ…ちゃん?」

ちゃん付けに顔を引きつらせるマリノだが、アリアから数枚のファイルを手渡される。

アリア「これ報酬代わり。これで私達の仲間になってくれないかな?今、問題になっているコンピューターウィルスのワクチンプログラム、フォースメタルジェネレータの設計図、それから……フォースメタルを応用した準無限エネルギー循環システム…システマ・アリアの設計図だよ……」

マリノ「え…?」

それを聞いてマリノの視線がファイルに釘付けになる。

エックス「アリア博士!!システマ・アリアは…」

アリア「いいんだよエックス君。全ての責任は私が負う。マリノちゃんならこれらを正しいことに使ってくれると信じてるから渡すんだよ。私はルナちゃんとシナモンちゃんを助けてくれたマリノちゃんを信じる」

データファイルをマリノに渡すアリア。
データファイルとアリアを交互に見て、苦笑を浮かべた後、深い溜め息を吐いた。

マリノ「あ~もう。こんな報酬を渡されて信頼なんかされたら逃げられないじゃないか…分かったよ。あんたらに雇われてやるさ。怪盗マリノ、あんたらの期待に応えてみせるよ」

悪戯そうな笑みを浮かべて言うマリノを見たマッシモが一言。

マッシモ「……美しい」

スパイダー「お?」

アリア「おや?おや?おやあ?」

マリノに見惚れているマッシモをニヤリと笑いながら見遣るスパイダーとアリア。

シナモン「よろしくお願いしますエックスさん!!」

マリノ「というわけでこれからよろしくな」

シナモンとマリノを交互に見遣りながら、エックスも笑みを浮かべながら頷いた。

エックス「ああ、よろしく。マリノ、シナモン……」

心強い仲間が増えたことにエックスはこれならリベリオンともまともに戦えると確信した。







































そして、ガウディル博士とシナモンがレジスタンスベースに行くために、必要な機材を運んでいた。
そして…。

スパイダー「おい、ゼロ…止めろよ」

ゼロ「無理だな、ああなったエックスは誰にも止められん」

エックス「君はどうしていつもこうなんだ。確かに君が好奇心旺盛なのは知っている。だが、人の研究所に無断で侵入した挙げ句、滅茶苦茶にするなんてどういう神経をしてるんだ」

ルナ「あうう……エックス達だって侵入したじゃんかあ」

正座しながら言い返すルナだが、エックスの説教は止まらない。

エックス「まあ、そこに関してはな…だけど、無断で部屋に入った挙げ句、中の資料を見るなんてどう考えても犯罪だぞ!!君がイレギュラーハンターじゃなかったら確実にイレギュラー認定されていた!!」

ルナ「うう…ごめん…ごめんってばあ…もうしないよ」

エックス「当たり前じゃないか…全く……」

スパイダー「おい、説教はその辺にして早く手伝えよ」

ルナ「……あれ?」

スパイダーを見た瞬間、どこかで見たような感覚を覚えたルナはスパイダーの顔をマジマジと見た。

スパイダー「ん~?どうしたお嬢さん?俺に見惚れたか?」

ルナ「ん~?あんた…俺とどっかで会わなかった…か?」

疑問符を浮かべながら尋ねるルナにスパイダーも疑問符を浮かべながら首を横に振る。

スパイダー「いや?俺もあんたとは初対面だぜ?大体あんた、ギガンティスに来て日が浅いんだろ?だったら会うわけねえし」

ルナ「だよなあ?でも不思議だな…あんたに初めて会った気がしない」

ゼロ「ギガンティスで動き回っていた時にスパイダーの同型機に会ったんだろう。レプリロイドは基本的に容姿が似ている奴が多いしな」

マッシモ「いや、スパイダーは俺やマリノさんと同じ特別なギガンティス製のレプリロイドのはずだ。だから、スパイダーに似たような容姿の奴は基本的にはいないぞ。兄弟機ならまだしも」

マリノ「じゃあ、あんたの言うスパイダーってのとそっくりな奴はスパイダーの兄弟機かもね。兄弟機でもその存在を知らない奴はいるらしいし」

ルナ「う~ん、そうかなあ?」

スパイダー「俺に兄弟機ねえ…そんなのいるとは思えねえが…」

ちょっとした疑問を残しながらもエックス達は準備を進めていくのであった。 
 

 
後書き
因みに前話のLスナイパーの効力はアサシンマインドとアイポイントの2つの能力です。 

 

Another12 最凶兵器 にゃんこグローブ

 
前書き
シナモン最凶武器、序盤で入手したことがあります。 

 
アリアとガウディル博士がモニタールームの通信機のブーストを上げている最中であった。

ゼロ「呼んだか?Dr.アリア」

アリア「あ、ごめんねゼロ君。マッシモ君とのトレーニング中に…」

ゼロ「構わない。それで何だ?」

アリア「シナモンちゃんと一緒にショッピングアーケードでお買い物に出掛けてくれないかな?」

ゼロ「買い物?」

アリア「うん、このパーツを買ってきて欲しいの。それから、シナモンちゃんにお礼に何か買ってあげなよ。エナジーフォームが覚醒したのシナモンちゃんのおかげなんだからさ」

ゼロ「別に構わんが?」

踵を返し、アリアに頼まれたパーツ類を購入するためにゼロはシナモンの元に行く。








































ゼロ「シナモン、いるか?」

シナモン「はい?何ですか?」

メンテナンスルームでルナとアイリスと話していたシナモンが振り返る。

ゼロ「Dr.アリアから買い出しを頼まれてな。お前も一緒に来てくれ。Dr.アリアからのご指名だ」

ルナ「おお~?何だゼロ?シナモンと買い物デートか!!?」

アイリス「えっっっ!!!!?」

ビクッとなるアイリス。
そしてバランスを崩して椅子から転倒。

シナモン「アイリスさん?」

ゼロ「どうしたアイリス?感覚機関の異常か?」

ルナ「おいこら鈍感もいい加減にしろよ。100年間一緒にいんのに何で進展しねえのかな……?」

疑問符を浮かべるゼロとシナモンにルナは深い溜め息を吐いた。

ルナ「ああ、アイリスは俺に任せとけ。お前らは買い出しに行ってこい」

そう促すとゼロとシナモンはショッピングアーケードに向かう。

アイリス「で、デート…?ま、まさかっ!!…ルナ!!ゼロとシナモンがあれでその…」

ルナ「何言いてえのかさっぱり分かんねえよ。ちゃんと言葉喋ろよ。それからアイリスの考えてることは絶対に違うと断言出来る。」

アイリス「な、なななななななななな何言ってるの!!?あ、あああああああああ当たり前じゃない!!!!」

ルナ「(本当に何考えてたんだか……)」

呆れるようにどもるアイリスを見つめるルナであった。








































今、エアシティのショッピングアーケードに行けばとてつもなく珍しい組み合わせが見られる。
伝説のイレギュラーハンターの1人であるS級ハンターゼロと可憐な容姿の看護型レプリロイドの少女、シナモンの組み合わせである。

シナモン「えっと、アリア博士から頼まれたパーツ類はこれで全部ですよね?」

ゼロ「ああ、後はお前の武器だ。」

シナモン「私の武器ですか?」

ゼロ「これからお前は俺達と共に出撃することになる。基本的に後方支援になるだろうが、万が一に備えて、護身用に持っておくべきだ。傷の治療の礼もある。使えそうなのを選べ」

スパイダー「(馬鹿かあいつは……)」

ルナ「(ゼロ…いくら何でもプレゼントを武器にすることはねえだろうが……)」

ハイパーモード・トリックスターを発動したスパイダーとハイパーモード・テネブラエを発動したルナが呆れたようにゼロを見ていた。
どこの世界に女の子への感謝のプレゼントに武器を買う男がいるのか…あそこにいた。
因みにスパイダーはルナから事情を聞いて興味本位で来たのだ。

シナモン「えっと…」

どの武器がいいのか頭を悩ませるシナモンに。

「お嬢さんお嬢さん。これなんて如何?」

シナモン「え?わああ!!可愛いです!!」

ゼロ「……」

ゼロは声がした方向を見遣ると思わず脱力した。
ニット帽にサングラス、口を覆うマスクにロングコートと言うあまりにも怪しさ爆発な格好をした人物がいた。

ゼロ「Dr.アリア。何をしている?」

アリア「ノンノン。私は素敵な行商人カキツバタだよ。」

しらを切るアリアに溜め息を吐きながらゼロは彼女が手にしている物体を見つめる。
まるで猫の前脚をデフォルメしたかのような、非常にファンシーな外見を持つ巨大なグローブであった。

アリア「ふっふっふっふ。驚いたかな?これが私の持つ技術を全て注ぎ込んだ最大最凶の武器!!その名も…“にゃんこ…グローーーーーブ”ッッッ!!!!!!」

ゼロ「ああ、色んな意味で驚いたぞ」

にゃんこグローブを見て頭痛がするのか頭を抱えながらゼロが言う。

アリア「…何か微妙に馬鹿にしてない?こう見えてもこのにゃんこグローブは実戦じゃびっくりするくらい強力な装備なんだからね」

ゼロ「まあそうだろうな」

そのにゃんこグローブが秘めている性能の程もゼロは理解している。
元女神であるアリアが技術の粋を集めて開発した兵器である。
ハンターベースの凄腕メカニックであるダグラスですら匙を投げたルナの武器でさえ簡単に完全再現し、エイリアでさえ不完全なレプリカアーマーしか出来なかったエックスの強化アーマーさえ、ハイパーモードという形でとは言え完全再現をやってのけたのだ。
生半可な性能ではないだろう。
自信たっぷりなアリアの態度からしても、そのにゃんこグローブは相当に強力な装備なのは間違いない。
しかし…恐らくはアリアの趣味なのだろう。
そのファンシー過ぎる外見には些か閉口せざるを得ない。

ゼロ「(と言うより、こんなヘンテコな武器にやられたイレギュラーは確実に浮かばれないだろうな)」

これを受けたら肉体的なダメージも相当そうだが、精神的なダメージもでかそうだ。

シナモン「ゼロさん。これ可愛いですね♪」

瞳を輝かせているシナモンにゼロは微妙そうな顔をした。

ゼロ「可愛い…か?」

シナモン「はい!!」

満面の笑顔を浮かべるシナモン。
そう言えばアイリスもルインもルナもエイリアもレイヤーもパレットもへんてこりんでちんちくりんな物が好きだったような気がする。
女性の感性は分からないと言いたげなゼロであった。

シナモン「ゼロさん。私これがいいです」

にゃんこグローブを手にするシナモン。

ゼロ「…いいのか?それで」

シナモン「はい!!」

ゼロ「分かった。いくらだ?」

アリア「50000ゼニー☆」

ゼロ「それだけか?」

てっきり法外な値段を出してくると思ったがそうではなかった。
値段は張るが、性能を考えると仕方ないとは思う。

シナモン「にゃんこグローブで~す!!!!」

にゃんこグローブを装着しながら、はしゃぐシナモンにゼロは近くにクレープを売っている店があったためにそちらに向かう。
少しして、2つのクレープのうち1つのクレープを差し出す。

ゼロ「食べろ。こういうのは好きそうに見えたが?」

クレープをシナモンに差し出すと見た目に反して甘味が好きなゼロはクレープを口にする。
レプリロイドにとって食事は娯楽の1つだ。
食べ物をエネルギーに変換することも出来るために、食事をするレプリロイドは多い。

シナモン「ゼロさん。これなんですか?」

クレープを見つめながらゼロに尋ねるシナモン。

ゼロ「クレープという菓子だ。知らないのか?いや…ガウディル博士と一緒にいたのならこういう店で扱うような菓子なんて食わないか…」

科学者レプリロイドは食事を疎かにする傾向がある。
エイリアやゲイトも適当に済ませて終わらせたりするくらいだ。

シナモン「菓子って何ですか?」

ゼロ「は?」

シナモンからしてみれば初めて聞く言葉だから聞いたのだろうが、ゼロは一瞬理解出来なかった。

ゼロ「シナモン…お前、菓子を知らないのか?」

シナモン「はい」

即答するシナモンに絶句するゼロ。
ゼロはすぐさま、ルインやアイリス達が好んで食べていた菓子類を出してみる。

ゼロ「クッキーやケーキは?アイスクリームはどうだ?」

シナモン「分かりません」

ゼロ「では、お前は研究所で何を食べていたんだ?」

シナモン「いつもエネルギーパックでした」

ゼロ「………」

この返答にゼロや会話を聞いていたアリアやスパイダーやルナも閉口するしかない。
黙り込んでしまったゼロにシナモンは不安そうに見つめる。

シナモン「あの…私、変なこと言いましたか?」

ゼロ「…シナモン、お前は造られてから何年経つ?」

シナモン「えっと、13年です」

ゼロ「まあ、長くもなく短くもないな…本当に食べ物を口にしたことがないのか?」

シナモン「はい。…おかしいですか?」

ゼロ「シナモン…悪いが、俺から見ても人生の半分は損していると断言出来るぞ。」

ゼロからしてもエネルギーパックだけの生活は味気なさすぎるのだ。
ゲイトでさえも自販機でハンバーガーなどを購入したりして簡単な食事をしていると言うのにだ。

ゼロ「これはエックス達に報告すべきだな…」

シナモンの食事事情を聞いて、流石にこれはないと判断したゼロ。
その判断にアリア達も親指を立てた程である。










































そしてモニタールームに戻ってきたゼロから今、席を外しているアルの代わりに報告書を受け取るエックスとナナ。

エックス「どうしたんだい?ゼロ?物凄く微妙な顔をしているけど?」

ナナ「シナモンに何か問題でもありましたか?」

ゼロ「…見れば分かる」

深い溜め息を吐きながらゼロから渡された報告書を首を傾げながら読むエックスとナナ。

エックス、ナナ「「…………っっっっ!!!!?」」

報告書を読んだエックス達の目が驚愕で見開かれた。

エックス「ガウディル博士!!何なんですかこれは!!」

ガウディル「クワッ!!?何のことじゃ?」

ナナ「何のことじゃありません!!朝、昼、夕食がエネルギーパックだけなんて!!栄養バランスが偏りすぎです!!私達レプリロイドにも様々な栄養素が必要不可欠なんですよ!!」

エックス「ちゃんとした食事を食べたことないなんて、シナモンが可哀想だと思わないんですか!!?」

ガウディル「ちょ、ま、待つんじゃ…大袈裟じゃろう。たかが食事で…」

ナナ「たかが食事!!?」

エックス「食事はレプリロイドにとっても大切なことです!!今日からシナモンの食事管理は俺達がします!!ガウディル博士には一切口出しさせませんからね!!」

ナナ「私達はシナモンの味方ですから!!」

今日からシナモンの食事管理はエックス達がすることになり、ガウディル博士はエックス達に何も言えなくなるのであった。 

 

Another13 アクセル

 
前書き
遂にアクセルと合流 

 
モニタールームで、エックス達が集まっていた。

ガウディル「通信機のブーストを上げてみたぞ。これで、通信妨害もちょっとはマシになるはずじゃ」

エックス「ナナ、アイリス。頼む」

リディプス大佐との通信を繋ぐようにナナと今やサブオペレータとなっているアイリスに指示する。

ナナ「接続しました。エックスどうぞ」

エックス「……大佐、リディプス大佐。聞こえますか?」

少しの間を置いて、リディプス大佐の姿がモニターに映る。

リディプス『エックス、無事か?』

エックス「はい。仲間も増え、ギガンティス付近にいたルナと合流でき、リベリオンに対抗する戦力も整いつつあります。これから独自にギガンティスA6ポイントのウルファト生産工場を調査しているアクセルと合流、そこにいるリベリオン幹部の撃破に向かおうと考えています」

リディプス『そうか、こちらにも運が向いてきたようだな…こちらにも良い報せがある。ギガンティスA6ポイントで、ルインらしき反応をキャッチした』

ルインの名前が出てきたことにエックスとゼロとアイリス、ルナとソニアが目を見開いた。

エックス「ルイン!?ルインが生きていたんですか!?」

ゼロ「あいつ…やはり生きていたか…」

アイリス「ルイン…良かった…」

ルナ「よっしゃあ!!アクセルだけじゃなくてルインとも合流出来るなんてラッキー!!」

ソニア[本当に!!?本当にお母さんの反応があったの!!?]

モニターにかじり付く勢いのソニア。

リディプス『A6ポイントで…一瞬…ルイン…確かだ…』

徐々にモニターにノイズが走り、音声も聞こえなくなる。

ルナ「よっしゃあ!!急いでアクセルとルインのいるウルファト生産工場に行こうぜ!!」

スパイダー「おいおい、何の騒ぎだこりゃあ?」

ゼロ「スパイダー、お前今までどこにいた?」

スパイダー「俺はその辺にいたぜ?そんなことより何かあったのか?」

エックス「ああ、ルインが…ルインが生きて、ウルファト生産工場にいるかもしれないんだ!!」

アル「それにしてもエックス、ゼロ、ルナと同じS級のイレギュラーハンターの仲間が2人も…もし仲間になってくれるのなら心強いな」

マッシモ「マリノさんにルナにシナモンに…どんどん仲間が増えていくな。ルインとアクセルにも会えるといいな」

エックス「ああ、ルイン…どうか無事で…」

ルインの身を案じるエックスにスパイダー達ギガンティスの面々は顔を合わせた。

マリノ「何か、仲間に対する態度にしちゃ変だね」

スパイダー「あんたもそう思うか?エックスはルインとどういう関係なのかね?」

マッシモ「ルインはエックスの後輩だって噂は聞いたことあるけど…」

シナモン「仲良しはいいことですよ?」

エックスとルインの詳しい関係を知らないギガンティスの面々の間に様々な推測が飛び交うが。

アリア「ああ、君達知らないんだね?ルインちゃんはエックス君の嫁だよ嫁。」

マリノ「嫁?」

アリア「うん」

マッシモ「お嫁さん?」

アリア「そうだよ」

スパイダー「奥さん?」

アリア「YES☆」

直後、モニタールームを揺るがすほどの大絶叫が響き渡る。

マッシモ「ええええええええっっっ!!!!?」

マリノ「よ、よ、嫁ええええ!!!!?」

スパイダー「おいおいマジか?」

シナモン「そうなんですか?」

ナナ「………………」

アリア「うん、いずれ私が2人に子供を造ってやる予定☆」

エックス「あ、アリア博士!!変なことを言わないで下さい!!俺とルインの関係は誠実なもので、まだそこまで…はっ!!?」

赤面しながら自ら墓穴を掘る形になるエックスに含み笑いを浮かべるマッシモ、スパイダー、マリノ。
吹き出しそうになるのを必死になって堪えているゼロ、アイリス、ルナ。

シナモン「結婚式見るの初めてなんです。エックスさんとルインさんの結婚式には絶対に行きますね!!」

アリア「うんうん、勿論。どんどん来て良いよ。HAHAHAHAHAHA!!!!」

エックス「~~~っ!!と、とにかく行くぞ!!!」

赤面しながら転送システムに乗り込むエックス。
それに続いていくゼロ達。

ナナ「…………」

アイリス「あ、あの……ナナさんお気を確かに…」

唖然とした表情のまま硬直しているナナの肩を揺するアイリス。

アイリス「(もしかしてナナさん…無意識にエックスに対して…?)」

アル「…さて、ナナが正気に戻るまで我々に出来ることをしよう」

アイリス「そうですね。あなたは駄目よ」

ソニア[ケチ~!!行きたい行きたい行きたい!!!!]








































ウルファト生産工場に侵入したエックス達だが、少し先に進んだ直後に警報が鳴る。

シナモン「あ…私達見つかっちゃったんでしょうか?」

マリノ「いや、違うね。」

ゼロ「いくら何でもタイミングが良すぎる。第一、ここには警備システムの類がない。」

ルナ「多分、俺達以外の侵入者。アクセルかルインのどっちかだな。もしくは他にも侵入者がいたか」

マリノ「まあ、今更後戻りは無しだよ。アクセルとか言う奴とエックスの嫁の顔も見てみたいしね♪」

スパイダー「それは同感♪こんな堅物を落とすなんてどんな美人なんだか…」

シナモン「きっとエックスさんみたいに優しい人ですよ!!ですよねルナさん?」

ルナ「まあ、ルインは優しいぜ?女の俺から見ても可愛いし、天然だから憎めないから性格はシナモンに近いかもな。おまけに戦闘型なのに家事洗濯何でも出来る。正にオールマイティー」

スパイダー「なるほど、それは益々興味が…」

エックス「いい加減にしろ!!は、早く行くぞ!!!」

赤面しながら怒鳴っても迫力が全くないことにエックスは気付いているのだろうか?
扉を潜ると広い場所に出た。

マッシモ「ん?この音は何だ?」

ゼロ「動くな!!」

ゼロが叫んだ後、周りが赤く染まり、警備用メカニロイドが動き出す。

ルナ「成る程、一定時間を過ぎると周りが赤くなって警備用メカニロイドが動くって仕組みか」

マッシモ「だが、それさえ分かれば怖くはないぞ!!は~っはっはっは…(動かなくて良かった)」

スパイダー「(お前ら)」

エックス「(シンクロシステム?何だ?)」

スパイダー「(マッシモとマリノだけ残して先に行こうぜ)」

シナモン「(え?どうしてですか?)」

スパイダー「(なあに、ちょっとしたお節介さ。)それじゃあ俺は先に行くぜ。ハイパーモード・トリックスター」

ハイパーモード・トリックスターを発動して、警備システムに引っかからないように先に進むスパイダー。

エックス「それでは先に行かせてもらう。マリノ、マッシモを頼んだ」

マリノ「へ?」

エックス「ステルスビームマフラー起動!!」

背部からステルスビームマフラーが伸び、その状態で先に進む。

ゼロ「俺はこう見えても0部隊の隊長なんでな。先に行かせてもらうぜ」

ルナ「シナモン、俺と一緒に行こうな」

シナモン「はい、2人っきりですね!!」

マリノとマッシモを置いて、先に進むエックス達。

マリノ「何だよ、自分達だけ先に行って…それにしてもエックスのあれは便利だね。どこで手に入れたのか後で聞こうっと」

マッシモ「(あれ?これってもしかして2人っきり?ええええ!!?)」

赤面しているのがアーマーによってバレないで済むから良かった。

マリノ「マッシモ、どうしたのさ。固まって」

マッシモ「あ、いや…その…何でもありません…」

マリノ「ふうん、そう言えばあんた、勇者マッシモの一番弟子らしいね。あんたは私みたいな泥棒といて平気なのかい?」

マッシモ「あ、い、いえ!!あ、あの…その…マリノさんが、心優しい人だというのは、今までのことで分かっています。そ、それに、マリノさんは私利私欲でそのようなことをしている訳でもないし…だから…その…あの……」

マッシモの態度を見ていて可笑しかったのか、マリノは吹き出しながらマッシモの手を掴む。

マッシモ「え!!?マ、マリノさん!!?」

マリノ「あんた、警備システムの潜り方なんか分からないだろ?私が進ませてやるよ」

マッシモ「あ、ありがとうございます……(マッシモ師匠…我が人生、一片の悔い無しとは正にこのことなんですね…)」

今は亡き師に言いながら幸せそうな表情でマリノと共に進む感涙したい気分のマッシモであった。








































ゼロ「遅いぞ」

先に進んでいたゼロ達はずっと待っていたのか、少し不機嫌そうだ。

マリノ「言うねえ、私らを置いてさっさと行った癖に」

スパイダー「……で?どうだったマッシモ。マリノと2人っきりの時間は?」

マッシモ「俺の今までの人生でこれほどまでに幸せだった瞬間はないと断言出来るよ……」

拳を握り締め、我が人生、一片の悔い無しと言いたげな表情で天井を見上げた。

ルナ「良かったな。さて、アクセルとルインはどこに行んのかなと」

エックス達は奥にある扉に向かう。









































ウルファト生産工場に侵入者が来たらしいとのことで、警備員や警備用メカニロイドが走り回る中、1体のレプリロイドはコンテナの影に身を潜めていた。

「参ったな……」

この施設のリベリオン幹部が倒されたらどうしようとかそう言う意味で言ったのではない。

「もう少し情報を手に入れたいと思っていたのに……ついてないな…仕方ない。おさらばするかな…おっと…」

この通路に入ってきた侵入者達だ。
気配を消し、侵入者達を見遣ると、見慣れた姿がいることに目を見開いた。

「エックス…ゼロ…それにルナまで…」

レプリロイドはコンテナから飛び出して、床に着地した。
ルナを除いたエックス達は武器を構えた。

「やあ、エックス。それにゼロも」

ゼロ「俺達のことも気付かれていたようだな」

エックス「ああ…」

全員が攻撃しようとした時。

ルナ「ストップストップ!!アクセルだろ?」

やはり彼女だけは気づいていた。
レプリロイドが光を放ち、その光から1体の少年レプリロイド…。

アクセル「久しぶりだね、エックス、ゼロ。」

ゼロ「アクセル!!?」

エックス「アクセルじゃないか!!」

スパイダー「へえ、あれがエックス達と同じ伝説のイレギュラーハンター、アクセルか…」

マリノ「へえ、ルナ以外にもコピー能力を持つレプリロイドがいたんだね!!」

シナモン「ルナさん、この人がアクセルさんなんですか?」

ルナ「ああ、そうだよ。黒い死神とか漆黒の銃士とか色々言われるくらい強いんだ」

アクセル「まあ、僕はイレギュラーには容赦ないからね。死神とか言われて当然くらいの自覚はあるよ」

スパイダー「だろうな、俺達賞金稼ぎでも要注意人物として恐れられているくらいだからな」

アクセルはイレギュラーハンターとなり猛スピードで特A級、S級のランクを手にした凄腕のハンター。
100年の時を経てもその噂はまだ絶えていない。

アクセル「あれ?あんた…」

スパイダー「何だ?」

アクセル「あんた僕とどっかで会った?」

スパイダー「前にルナにも言われたが残念ながら初対面だ。」

アクセル「え?じゃあ、僕の勘違いかな?」

ゼロ「そんなことより、アクセル。お前、もう用事は済んだのか?」

アクセル「まあね、兄弟達に挨拶は済ませてきた。花束も置いてきたし、休暇はこれで終わりにして、ハンター業務に戻るよ…ギガンティスの今の状況は大体把握してる。僕も協力するよ」

エックス「そうか、すまないアクセル。お前の協力は本当に助かる。ところで、アクセル。ここでルインを見かけなかったか?」

アクセル「ルイン?ルインってあのルインかい?」

エックス「ああ、俺達はここにお前とルインがいると聞いてここに来たんだ。」

アクセル「うーん、悪いけどルインは見てないね。もしかしたら、ルインは僕達とは別ルートで侵入したのかも…」

少し唸りながら言うとエックスは落胆していた。
そんなエックスの肩を軽く叩くアクセル。

アクセル「大丈夫だよルインなら、きっと今頃イレギュラーをバカスカ薙ぎ倒してるよ。僕も協力するから大丈夫さ」

エックス「ああ…」

アクセル「それにしても見慣れない人達がいるね。」

ルナ「それについては」

アクセルとルナが額をくっつけ、シンクロシステムで即座に自分の知る情報をアクセルに渡す。
少しして、アクセルとルナが額を離す。

アクセル「成る程ね、今まで大変だったねエックス、ゼロ。」

ルナ「でも、これからは大丈夫。アクセルに俺、エックスやゼロ、そして合流予定のルインがいれば鬼に金棒だぜ」

アクセル「えっと、黒いアーマーのがスパイダー、女の人がマリノさん、緑のアーマーの人がマッシモ。それで君が」

シナモン「シナモンです。初めましてアクセルさん。お友達になってください」

アクセル「うん、勿論だよ。よろしくねシナモン。」

握手を交わすアクセルとシナモンに微妙そうな表情を浮かべるルナ。
やはりシナモンは自分やアクセルと設定年齢が近いからかもしれない。

マリノ「あんたも新世代型?」

アクセル「そ、そうだけど?元が付くし、プロトタイプだけどね」

マリノ「ふ~ん…いいなあ、コピー能力。あると便利だし」

アクセル「コピーチップを移植すれば出来るようになると思うけど、あんまりオススメはしないよ?コピーすること前提で造られた僕達はまだしも、マリノさんみたいなタイプのレプリロイドが使ったら人格に変調が来すかも」

マリノ「げっ、それは困るね」

アクセル「実際プロトタイプには変身中、コピー元のレプリロイドの人格になってしまうなんてこともあったらしいからね。」

ルナ「まあ、諦めろよマリノ。コピー能力が無くてもあんたならやってけるさ」

マリノ「ちぇ」

渋々諦めるマリノに苦笑するエックス達。

アクセル「それにしてもエックス達も大変だったね。まあ、僕もいるし、ルインとも合流するから何とかなるでしょ」

エックス「そうだな、行くぞ!!!」

アクセル「リベリオン幹部のマッハ・ジェントラーの場所まで案内するよ。もしかしたらルインもそこに…」

ルナ「そっか、だったら急ごうぜ。手遅れにならねえうちによ!!」

扉を潜り、しばらく走ることになるエックス達。
そしてパーツ搬入のためのベルトコンベアのある場所に出ると、プレオンソルジャーとプレオンシールダー、プレオンナースとプレオンガンナーが立ち塞がる。

アクセル「あらら、どうやら雑魚のお出ましのようだね」

ルナ「アクセル、これを!!」

アクセル「これはDNAデータ?」

ルナ「アクセルと合流するなら持ってきた方がいいかなって…リベリオン幹部、ワイルド・ジャンゴー、シルバー・ホーンド、Dr.サイケ…正確にはマッドノーチラスのDNAデータ」

エックス「何時の間に…」

呟くが、止めはしない。
ルナよりもアクセルの方がコピー能力の扱いは上手い。
それにアクセルはDNAデータを解析する事に性能が上昇する能力があるのだ。
DNAデータの解析が終了したアクセルは、凄みのある笑みを浮かべながらバレットを構えた。

アクセル「さあ、楽しいパーティーの始まりだよ!!」

加速器を吹かし、プレオンの群れに突撃するアクセル。

シナモン「危ない!!」

シナモンからすればそれは無謀な行動に見えただろう。
しかしアクセルは背部の可変翼を展開。
ホバーで一気に上昇、プレオン達の背後を取る。

アクセル「乱れ撃ち!!」

背後からの乱れ撃ちを受けたプレオン達は次々と倒れていく。

ゼロ「チェーンロッド!!」

チェーンロッドを振るい、プレオン達を数体両断する。

エックス「ハイパーモード・サードアーマー!!クロスチャージショット!!!!」

ルナ「ハイパーモード・ウェントス!!プラズマサイクロン!!!!」

電撃を纏った竜巻がプレオン達を溶鉱炉に落としていく。
次々にプレオン達がその数を減らしていく。

スパイダー「ヒュ~♪やるねえ」

マリノ「流石、伝説のイレギュラーハンター達だね。ここは私達に任せて先に行きなエックス!!」

エックス「え?」

マリノ「プレオンシールダーとプレオンソルジャーにはバスターが効きにくい。ここは私らの出番ってこと」

スパイダー「まあ、相性の問題だな。マッシモ、いいとこ見せろよ」

マッシモ「おう!!」

プレオンシールダーがカウンターシールドのエネルギーを放ってくる。

スパイダー「残念!!カウンターバリアはこっちにもあるんだ。カウンターカード!!フォーチュンカード…デスハウス!!!!」

マリノ「行くよマッシモ!!」

マッシモ「はい!!」

マリノ「あんたらシナモンを任せたよ!!」

エックス「すまない!!」

エックス、ゼロ、ルナ、アクセル、シナモンがマリノ達にこの場を任せて先に進む。









































扉を潜り、次のパーツ配送ラインに出ると、またプレオン達が行く手を阻む。

ゼロ「チッ、仕方ない。ここは俺に任せろ。お前達は先に行け!!」

ルナ「1人だけ大暴れしようったってそうはいかねえんだな…悪いシナモン、力貸してくれ。流石にこの数は2人だけじゃキツい」

シナモン「はい!!ゼロさんが買ってくれたにゃんこグローブがあるから大丈夫です。え~い!!」

シナモンがにゃんこグローブを振るうと、そのグローブから発せられた衝撃波がプレオン数体を粉砕した。

ルナ「す、凄え…」

アクセル「な、何あれ…?」

ファンシーな見た目に似合わぬ凄まじい破壊力にアクセルは目を見開いた。

ゼロ「行ってこいエックス、アクセル」

エックス「ありがとう、ゼロ。」

アクセル「絶対にルインと合流するから!!」

シナモン「待ってください!!エンジェリックエイド!!」

癒しの光がアクセルを包み込み、僅かな傷を癒していく。
多分、プレオンに突撃する時に負った物だろう。

アクセル「ありがとう。助かったよ!!行こうエックス!!」

エックス「よし、行くぞアクセル!!」

先に進むエックスとアクセル。
プレオン達が追いかけようとするが、ゼロ達が立ちはだかる。
エックスとアクセルは無事にルインと合流し、このウルファト生産工場のリベリオン幹部、マッハ・ジェントラーを倒せるのだろうか? 
 

 
後書き
アクセルは攻撃面で優遇。
特効弾で攻撃するから。
因みにアクセルのフォースメタルのアクセラレータはスピード1.5倍上昇。 

 

Another14 朱の舞姫

 
前書き
ルイン合流 

 
貨物リフトのあるエリアに辿り着いたエックスとアクセル。
そこには警備員達が機能停止していた。

アクセル「うわあ、こりゃあ凄まじいね。あの壁の傷ってもしかしなくてもチャージセイバーじゃないの?」

エックス「チャージセイバー……多分、ルインだ。行くぞ!!!」

アクセル「了解!!」

貨物リフトに乗り込むエックスとアクセル。
ルインが無事であることを祈りながら…。








































そして、ウルファト生産工場の製造ラインモニタールーム前の通路でリベリオン幹部の1人であるマッハ・ジェントラーが指示を飛ばしていた。

ジェントラー「侵入者をここに入れるな!!食い止めるんだ!!」

『駄目です。突破されます…うわあああ!!』

部下の断末魔が上がり、次の瞬間に扉が吹き飛んだ。
翡翠色の輝きを放つエナジーセイバー。
しかしそれは状況に応じてバスターに変わることをジェントラーは知っている。
美しい金色の長髪を靡かせながらこちらに歩み寄る朱いアーマーを纏う女性型レプリロイド。
S級ハンタールイン。

ルイン「どうやらあなたがこの生産工場のリベリオン幹部らしいね、元政府軍、マッハ・ジェントラー。」

ジェントラー「ルイン、貴様だったとはな。シャドウの攻撃で転落して死んだと聞いていたが?」

ルイン「お生憎様。私はそう簡単に死ねない体質でね。エックス達と再会してイプシロンを倒すまでは簡単には死なないよ」

ジェントラー「威勢がいいな。だがな、貴様は総帥様の元までは辿り着けん。我が工場で暴れまわった報いを受けるがいいわ!!」

ルイン「そっちこそ、イレギュラーハンターでありながらイレギュラーに組した報いを受けろ!!ライジングファング!!!!」

ゼロの零式昇竜斬に似たような技で、ジェントラーを斬り裂こうとするが、ジェントラーはルインのセイバーを容易くかわした。

ルイン「(速い!!?)」

ジェントラー「私を今まで貴様が倒してきた雑魚共と一緒にしないでもらいたいな。リベリオン幹部としてフォースメタルで限界まで性能を高めているのでな。」

ルイン「そう、それは大したモンだね。今すぐ叩き落としてあげるよ!!ローリングスラッシュ!!!!」

空中回転斬りを繰り出すが、バーニアを吹かして、ローリングスラッシュの射程範囲から逃れる。

ルイン「(やっぱり速い…この空中機動力はファルコンアーマーとウェントス並かも)」

これは容易な相手ではない。
ウェントス並の機動力の相手に攻撃を当てるのは少し難しい。

ジェントラー「考え事をしている暇があるのか?」

ルイン「!!?」

そして次の瞬間、ルインの身体が不意に床を離れ宙に浮く。
見れば何時の間にかルインの背後に回ったジェントラーが彼女を羽交い絞めにして宙を飛翔していたのだ。

ジェントラー「喰らうがいい!!」

そのまま加速したジェントラーはその勢いのまま床に向かってルインの全身を叩きつける。

ルイン「ぐっ!!」

ジェントラー「スマッシュ!!」

倒れたルインに急降下タックルを喰らわせるジェントラー。
まともに喰らったルインは数回バウンドして、壁に叩きつけられる。

ルイン「くっ…」

勢いよく叩きつけられたルインは咳き込みながら、視線をジェントラーに遣る。

ジェントラー「ふん、もう終わりか、さっきの威勢はどうした?」

ルイン「くっ…この…」

受けたダメージが深刻で立ち上がれないルインを見てジェントラーは嘲笑を浮かべた。

ジェントラー「ふん、ではとどめを刺してやろう」

エックス「チャージショット!!!!」

アクセル「変身!!マッドノーチラス…マッドブラスター!!!!」

ジェントラー「ぬおおっ!!?」

チャージショットと誘導光線を喰らったジェントラーが吹き飛んだ。

ルイン「え…?」

自分を守るように立つ蒼いアーマーのレプリロイド。
誰よりも会いたかった存在が目の前にいた。

エックス「ルインは…彼女はやらせない!!」

ルイン「エックス…!!」

久しぶりに見聞きしたエックスの姿と声に、張り詰めていた糸が緩み、双眸から涙が溢れ出た。

アクセル「エックスだけじゃないよルイン!!」

ルイン「アクセルまで…!!」

エックスと並び立つアクセルはルインを見遣ると親指を立てて、安心させるように笑みを浮かべた。

ジェントラー「貴様ら…」

アクセル「S級ハンター3人を相手に勝てるかな?後少しもすればゼロとルナ達も…スパイダー達も来るだろうね。年貢の納め時だよイレギュラー!!」

ルイン「ルナも…勝てる…これなら!!マッハ・ジェントラー。あなたもここまでだ!!」

ジェントラー「己…!!」

ジェントラーがバーニアを吹かして、真上の通気口らしき場所に入り、脱出した。

アクセル「あらら、逃げられちゃった。」

飛行能力を持つアクセルなら通気口のシャッターを破壊して追い掛けられるが、単独で勝てそうにないために、今追うのは諦めた。

ルイン「エックス…」

エックス「ルイン…生きていたんだな…!!良かった…」

ルイン「エックス!!」

感極まったルインがエックスの胸に飛び込む。

ルイン「エックス…会いたかったよ…!!」

エックス「ルイン…良かった…君が無事で…っ!!」

飛び込んできた彼女の華奢な身体を抱き締めたエックス。
あの日、ラグラノ廃墟で転落した彼女の身をずっと案じていたためにこうして無事な彼女と再会出来たエックスの心中は容易に察することが出来る。
普段ならアクセルも久しぶりの再会ということでそっとしておいてあげるのだが、ここは敵地である。

アクセル「あのさ、お2人さん…久しぶりの再会で嬉しいのは分かるけどさ」

エックス「え?あ、す、すまない…」

ルイン「ご、ごめん…」

赤面しながら離れる2人。
シナモンがここにいなくて良かったと思うアクセルであった。
その直後である。
室内アナウンスが鳴り響いたのは。

『警告…警告…各位に通達します。ただいまからデュボアが起動します。繰り返します。ただいまからデュボアが起動します。起動エネルギー確保のため、施設機能が一部停止しますので、注意して下さい』

アクセル「デュボア?一体どうなってるんだろう?」

ルイン「多分、ジェントラーが何かしたんだよ。何をする気か分からない。急ごうエックス」

エックス「ああ、行こう!!」

デュボアのあるコンピュータールームに向かうエックス達。








































貨物リフトから降り、最初は通れなかった扉を潜って、そしてデュボアの存在するコンピュータールームに辿り着く。
そこには巨大な装置を前に大笑するジェントラーの姿が。

ジェントラー「来たか」

自信に満ち溢れた笑みを浮かべながら追いかけてきたエックス達を見遣る。

アクセル「もう逃げられない。観念しな!!」

エックス、ルイン、アクセルがそれぞれの武器を構えてジェントラーを睨み据えるが、ジェントラーは嘲笑を浮かべる。

ジェントラー「馬鹿め、観念するのは貴様等の方だ!!さあ、デュボアよ!!お前の力で、奴らを葬り去ってしまえ!!全てはリベリオンの理想のために!!リベリオン幹部、マッハ・ジェントラー参る!!出でよプレオン!!」

勢いよく飛翔するジェントラーがデュボアに命令を下すと、プレオンが数体出現する。

アクセル「なる程、デュボアってのはプレオン生産機みたいなもんか…そんなもんで僕達を倒せると思ってるのかな?流石は低レベルなイレギュラーだね!!」

ジェントラー「小僧、その発言。後悔しないことだ」

アクセル「エックスとルインはプレオンを、こいつは僕が!!」

ホバーでジェントラーに突撃するアクセル。

ジェントラー「ほう?貴様も飛行能力を持っていたとはな」

アクセル「あんたの専売特許だと思った?喰らいな!!革命弾!!!!」

バレットから特別製レプリロイドに特効がある特殊エネルギー弾を放つ。

ジェントラー「ぬう!!?」

革命弾が掠り、ジェントラーの身体が揺らぐ。

ジェントラー「掠っただけでこの破壊力…迂闊に喰らうことは出来んな」

アクセル「僕はやっぱりパワーはエックスやルナより下だからね。パワーを補うための特効弾さ…プレオンにはこいつだ!!プレオンキラー!!!!」

プレオン系に特効のあるエネルギー弾を連射し、1体1体を薙ぎ倒していく。

ルイン「凄いよアクセル!!」

アクセル「僕も遊びでギガンティスに来た訳じゃないからね。これくらいの対策はしているよ…それより来るよ!!」

デュボアから生産されていくプレオンは段々生産数が増えていく。

エックス「ハイパーモード・セカンドアーマー!!ギガクラッシュ!!!!」

ギガクラッシュでプレオンを一掃するが決定打にはならない。

ルイン「このお!!」

チャージセイバーで吹き飛ばすが、焼け石に水だ。

アクセル「はっ!!こんなメカニロイドみたいな奴らの力を借りないと戦えないわけ!!?」

ジェントラー「何とでも言うが良い。プレオンタンク!!放て!!」

プレオンタンクが液体をエックス達に浴びせる。
この液体は…。

ルイン「まさか…オイル!!?」

ジェントラー「地獄の豪華に焼かれて死ぬが良い!!ゲヘナフレイム!!」

ジェントラーの杖から放たれた巨大な火炎がエックス達を襲う。

エックス「くっ…」

咄嗟にサードアーマーに換装してディフェンスシールドを張るが、ある程度威力を緩和した程度だ。
負荷を減らすためにハイパーモードを解除する。

ルイン「エックス、大丈夫?アクセルは…アクセル?」

フォースメタルとエックスが張ったディフェンスシールドでダメージが少ないルイン。
辺りを見回すとアクセルの姿がない。
最悪の想像が脳裏を過ぎた直後。

アクセル「プレオンキラー…乱れ撃ち!!」

誰もいない場所からの特効弾の連射を受けたプレオン達が破壊されていく。

ジェントラー「なっ!!?馬鹿な、奴は奴はどこにいる!!?」

辺りを見回してもアクセルの姿はどこにもない。

アクセル「それは…あんたの後ろさ」

ジェントラー「な、何時の間に!!?」

ジェントラーを羽交い締めにすると、そのまま勢いよく落下してジェントラーを床に叩き付ける。

アクセル「光学迷彩ハイパーモード・ステルスモード。変身能力の応用さ。ようやく引きずりおろせたよ。飛んでいないあんたなんか怖くない。革命弾をたっぷり喰らいな!!」

特効弾をジェントラーに連射するアクセル。
特効弾が、ジェントラーの身体を容易く射抜いていく。

ジェントラー「ぐああああああああ!!!!?」

アクセル「今だ!!」

エックス「ルイン!!」

ルイン「OK!!」

エックス、ルイン「「チャージショット!!!!」」

2人のバスターから放たれたチャージショットがジェントラーに炸裂した。

ジェントラー「ば、馬鹿な…この私が…これが…伝説のイレギュラーハンターの力か…だが、私が死ねば、デュボアのコントロールが失われる。大量のプレオンを相手にして、無事に生き残れるかな…?」

それだけ言うとジェントラーは爆散し、直後に警報が鳴り、デュボアのコントロールが失われた。
大量のプレオン達が生産されていく。

アクセル「やばっ!!」

プレオン用の特効弾を放ち、撃破するが焼け石に水だ。
どんどんプレオンは生産されていくのだった。








































一方、ゼロ達もスパイダー達と合流してエックス達の元に向かおうとした直後、警報が鳴り、無数のプレオン達に襲われていたのだ。

ゼロ「零式波動斬!!!!」

ハイパーモード・エナジーフォームを発動したゼロの零式波動斬の衝撃波がプレオン達を吹き飛ばし。

マリノ「はっ!!ていっ!!とりゃっ!!」

ビームチャクラム装備のマリノの連続攻撃が1体のプレオンを破壊する。

マッシモ「マリノさん!!ゼロ!!下がるんだ!!ベルセルクチャージ!!!!」

高出力レーザーを放つが、数が減るどころか増えていく。

マリノ「あいつら…何体いるのさ…ゴキブリじゃないんだからさ…」

スパイダー「文句言う暇はないぜ…フォーチュンカード…デスハウス!!」

ルナ「ホーミングショット…コネクションレーザー!!」

シナモン「え~い!!!!」

全員がプレオン達を迎撃するが数が多すぎる。
プレオンガンナー達が一斉射撃を繰り出す。

ルナ「ぐっ!!」

咄嗟にルナがシナモンを庇い、代わりにルナが銃弾を受けることになる。
ゼロ達もまとも銃弾を喰らい、膝をついた。

ゼロ「っ、エナジーフォームが…くそ…ここまでか…」

頼みの綱のエナジーフォームもマッシモ達のハイパーモードも解除され、正に絶対絶命だ。

マッシモ「こんな所で…俺は…鋼鉄の…」

マリノ「畜生…」

スパイダー「やれやれ…こんなことになるとは…恨むぜエール…」

ルナ「悪いシナモン。お前だけでも逃がしたかったけど無理そうだ…」

シナモン「ルナさん…」

再びプレオンガンナー達からの一斉射撃。
全員が死を覚悟した瞬間であった。

マッシモ「………あれ?」

何時まで経っても痛みが来ないことにマッシモが閉じていた目を開くとシナモンの身体が光り輝き、自分達の周りにバリアが張られていた。

マリノ「シナモン…」

シナモン「ルナさん達は絶対に死なせません。私はルナさん達みたいに強くないし、武器がないと戦うことも出来ません。でも……」

スパイダー「………」

シナモン「皆さんを守りたいって気持ちは誰にも負けません!!ハイパーモード・アイアンメイデン!!」

シナモンのアーマーが漆黒に変わり、メイド服を思わせる物に変化した。

スパイダー「ん?おい、エネルギーが…」

ルナ「これもフォースメタルジェネレータの力の1つなのか?」

ゼロ「大した物だ。」

笑みを浮かべながら立ち上がるゼロ。
そうだ、諦めている場合ではない。
つい最近まで戦いとは無縁だった少女が勇気を振り絞って自分達を守ってくれている。
彼女の勇気に応えなければ。

ゼロ「誰も死なせはしない。誰1人な!!ハイパーモード・ディフェンスフォーム!!」

シナモンの勇気に呼応するように発現した新ハイパーモード・ディフェンスフォーム。
名前の通り防御特化型の形態だ。

マッシモ「新しいハイパーモードだ!!」

ゼロ「防御特化型…代償にセイバーの出力が低下しているようだな」

この形態時はセイバーは役に立たないと判断し、リコイルロッドを構える。

ルナ「シナモンの勇気が、奇跡を起こしたか…ヘタレてる場合じゃねえぞ!!こいつらぶっ潰してエックス達と合流だ!!」

全員【おう!!!!】











































そして、エックス達も疲労困憊でありながらも諦めてはいなかった。

アクセル「エックス、ルイン。まだやれる?」

ルイン「勿論、ここまで来たんだから、絶対に諦めない!!」

エックス「俺達は帰るんだ。レジスタンスベースに…仲間と、ルインと一緒に!!」

最早エネルギーの消耗など考えている場合ではない。
エックスが選択したのは、ハイパーモードを更に進化させることであった。

エックス「レイジングエクスチャージ!!!!」

レイジングエクスチャージでハイパーモードを進化させるという賭けに出た。
ハイパーモード・サードアーマーが発動し、徐々にサードアーマーが形状を変えていく。
かつてのレプリフォース大戦で猛威を振るい、スペースコロニー・ユーラシア事件でもレプリカであっても大きな活躍を果たしたエックスの力を最もバランス良く引き出して発揮する基本能力強化型の強化アーマーの中でも最強のアーマー。

エックス「ハイパーモード・フォースアーマー!!」

4番目の強化アーマーが纏われ、エックスは即座にエネルギーチャージしたバスターを向けた。

エックス「プラズマチャージショット!!!!」

バスターから巨大な光弾が放たれ、着弾点に複数のプラズマを残しながらプレオン達を飲み込んでいていく。
スパイラルクラッシュバスターとクロスチャージショット級の破壊力とプラズマによる追加ダメージ、通常時と変わらないチャージ時間、スパイラルクラッシュバスターと変わらない攻撃範囲等、正に凄まじい性能だ。

ルイン「こうなったら一気に殲滅する!!ハイパーモード・オーバードライブ!!」

ハイパーモード・オーバードライブを発動し、強化された身体能力で次々にプレオン達を屠っていく。

エックス「ストックチャージショット!!!!」

バスターから、4発のチャージショットが放たれた。
ギガアタックのストックチャージショットだ。
本来ならフォースアーマーのギガアタックはストックチャージショットではなくアルティメットアーマー同様、体当たりであるノヴァストライクだ。
アリアが再現したフォースアーマーはアルティメットアーマーとの差別化のためにそうしたのだろう。
ギガアタックに昇華されたストックチャージショットは1発1発の威力と貫通力がオリジナルよりも大幅に強化され、全弾命中すれば、プラズマチャージショットはおろか、ノヴァストライクさえも大幅に超える威力を叩き出す。

アクセル「エックス達が持ちこたえているうちに何とかしないと…デュボアはジェントラーでないと操作出来ない…なら僕があいつになれば!!変身、マッハ・ジェントラー!!」

ジェントラーに変身して、飛翔するとアクセルは即座にデュボアに指示を出す。

アクセル「デュボアよ、攻撃を中止せよ!!直ちに攻撃を中止するのだ!!」

アクセルが叫ぶと、少しの間を置いてデュボアとプレオン達の動きが停止した。

ルイン「止まった…」

アクセル「2人共、早くデュボアを!!」

デュボアの破壊は今のエックスとルインなら簡単に出来ると判断して2人に任せる。

エックス「プラズマチャージショット!!!!」

ルイン「チャージセイバー!!!!」

プラズマチャージショットと強化されたチャージセイバーを叩き込むと、デュボアは完全に破壊された。
デュボアが破壊されたことにより、メカニロイド同然のプレオン達は完全に停止した。

アクセル「よっと」

安全を確認したアクセルが床に軽やかに着地した。

アクセル「我ながらナイス判断。そう思うでしょ?エックス、ルイン…」

エックス「それにしても、本当に無事で良かったよ。ルイン……」

ルイン「うん、お互いにね。エックスも無事で良かった………離れ離れになっちゃって寂しかったよ…」

エックス「うん…その…俺もだよ……でも、もう大丈夫だ。これからはずっと一緒だ…もう寂しい思いはさせない」

ルイン「エックス…ありがとう……」

2人だけの世界に突入し、最早エックスとルインはアクセルの話など聞いていない。

アクセル「あ~あ、今まで離れ離れになっていた反動かな?ハンターベースにいた時より、ラブラブになってるよ……こりゃあギガンティスでの任務が終わったら結婚式確実かもねえ……」

因みにこの時代に置いてレプリロイドも結婚などは許されており、法律の上では人間のそれと同じような扱いを受けているのだ。
余談ながら言うまでも無いが人間とレプリロイド間の婚礼は禁止されているのであしからず。
いずれは平行世界の未来のように完全な平等世界になるのだろうが。
少なくとも、エックスの生みの親であり、ルインの養父になるライト博士が望んだ人間とロボットという、2つの相容れない生命が共存する世界が生まれるのはもしかしたらそう遠くないかもしれない。









































数十分後、エックスの元に来たゼロ達もしばらく待たされることになるのだった。

ゼロ「おい、いつまで見つめ合ってるんだあいつらは?」

ルナ「ハンターベースにいた時よりも遥かにラブラブになってやがるな」

アクセル「今まで離れ離れになってた反動でしょ」

マリノ「熱いねえ~」

シナモン「仲良しですね!!」

スパイダー「あの堅物もあんな顔するんだな」

マッシモ「……………羨ましい」

こうしてエックス達がレジスタンスベースに帰還したのは、デュボアを機能停止させてから2時間後であった。 
 

 
後書き
ルイン合流。
アクセル、シナモン、ゼロ、ルイン、エックスのハイパーモード発動とかも書けて良かった。
フォースアーマーのギガアタックもといアクショントリガーはノヴァストライクではなくストックチャージショットになっています。
ストックチャージショットはボス戦でガリガリ削れます。
当時はオートチャージ無いから、すぐにチャージショットが放てるのは便利でした。 

 

Another15 孫を強請る者

 
前書き
久しぶりライト博士登場 

 
デュボア停止から数時間後、ようやくレジスタンスベースに戻ってきたエックス達。
ルインの姿を確認したアイリスが駆け寄る。

アイリス「ルイン!!良かった…無事で…」

ルイン「アイリス、どうしてギガンティスに?」

まさかの親友の姿に目を見開くルイン。

アイリス「私だけじゃないわよルイン。ね?アリア博士?」

アリア「うん、いやあ無事で良かったよルインちゃん」

ルイン「アリア博士もギガンティスに来ていたんだ!!?」

アリア「まあね」

アイリス「私はアリア博士の付き添い…でもね、あなたの帰りをずっと待っていた子がいるのよ?」

ルイン「へ?」

ソニア[お母さーーーん!!]

ルイン「ふみゅ!!!!?」

ソニアが勢いよく飛んできて、ルインの顔に思い切りぶつかった。

ソニア[元気だった?怪我無い?会いたかったよーーーーっ!!!!!!]

ルイン「ソニア?」

そのまま両手を広げてルインの顔にがばっとしがみつく。
ルインはいきなりのことに、どうしたらいいか分からず戸惑い、ソニアはルインの顔に張り付いて泣いている。

ルイン「み、見えない…んだけど」

顔面を覆われた形になったルインはとりあえず感想を述べてみる。

ソニア[あ、ごめーん]

ようやくルインの様子に気づいたソニアは、ぱっと離れると笑う。

ルイン「えっと、これから一緒に行動することになりました。イレギュラーハンターのルインです」

アクセル「僕はアクセル。エックス達と同じS級ハンターだよ」

アル「君達の噂は聞いている。伝説のイレギュラーハンターが2人も仲間になってくれるとは心強い」

マッシモ「エックスにゼロにルイン、それにアクセルやルナのようなS級ハンターが5人揃うなんて滅多にないんだろうな」

マリノ「ある意味壮観だよねえ」

レプリロイドとして最高峰の実力の持ち主達が5人もいると流石に壮観だ。

スパイダー「それにしてもよ、エックスの彼女がこんなに可愛いとは思わなかったぜ」

ルイン「か、彼女…」

彼女という単語に赤面するルインを見てスパイダーは愉快そうな表情。
エックスの表情が不愉快そうに歪む。

スパイダー「お~、照れちゃって可愛」

ズドンッ!!

スパイダーの真横をショットが通り過ぎた。

エックス「ああ、すまないスパイダー。誤射だ(棒読み)」

全員【……………】

スパイダー「ご、誤射だと!!?嘘つけ!!明らかに殺る気満々だったじゃねえか!!」

エックス「気のせいだ」

アル「と、とにかく……厳しい任務を終えて疲れただろう。今日はゆっくり休んでくれ」

エックス「了解しました」

アリア「エックス君、ゼロ君はフォースメタルを預けてくれるかな?調整しときたいから」

ゼロ「分かった」

アリアにXハートとZEROシフトを渡し、エックス達はそれぞれの自室に向かうのだった。

アリア「さてと…私もフォースメタルの強化を始めるから後はお願い、それじゃあ失礼」

それだけ言うと、自室に向かうアリア。








































自室に入ると、アリアはパソコンを起動して、XハートとZEROシフトにコードを繋ぐとハイパーモードの進化具合を見る。

アリア「今、解放されているハイパーモードは…Xハートは、ファーストアーマー、セカンドアーマー、サードアーマー、ハイパーサードアーマー、フォースアーマー…と。うん、順調順調♪基本能力強化型のアーマーはグライドアーマー以外は解禁だね……残るアーマーはファルコン、ガイア、ブレード、グライド、アルティメットアーマー……か…アルティメットアーマー以外のアーマー…引き出しちゃおうかな…エックス君よりもゼロ君の進化の方が早いし…戦闘能力関連の進化はゼロ君の方が優れてるね…」

Xハートの調整を終えると、次はZEROシフトの調整に入る。

アリア「んーと、ゼロ君はアクティブ、ライズ、パワー、エナジー、ディフェンスフォームを発現させたと。残るフォームはイレイズ、エックス、プロト、アルティメット…やっぱりゼロ君の方が進化が早い。ゼロ君の成長も大したもんだね。ご褒美にイレイズを引き出してあげよう☆」

黙々とエックスとゼロの強化に励むアリアであった。








































翌日の朝、アリアはXハートとZEROシフトを2人に渡そうとモニタールームに向かおうとしたのだが、エックスの部屋の前でいつもの面子が集まっていたのだ。

アリア「何してんの君達?」

ルナ「うわっ!!?」

スパイダー「しっ!静かにしやがれ…静かに中を見てみろ…」

アリア「え?何何?おお~…」

シナモン「エックスさんとルインさんとソニアちゃんが一緒に寝てたんですよ」

アクセル「僕もエックスとは100年の付き合いだけど、あんな幸せそうな寝顔初めて見たよ。」

マリノ「あれ見ちゃったら起こすの野暮ってもんでしょ」

アリア「うんうん」

ゼロ「ルインと再会してから緊張が取れたようだ。今までは余裕が無かったからな」

マッシモ「良いことだな」

ゼロ「ああ、同感だ」

アリア「そう、これぞ愛の力」

ゼロ「はあ?」

ルナ「うんうん、ラブラブだねえ」

スパイダー「にしても、ゼロ…お前もそんな間の抜けた声出すんだな…くく…っ」

ゼロ「スパイダー、貴様は後で斬る」

シナモン「あ、エックスさん。おはようございます」

全員【え?】

エックス「…………ああ、おはようシナモン。それで?人の部屋の前で集まって何をしていたんだ?」

マッシモ「あ、いや…これはその…」

ゼロ「俺達のことは気にせず続けて良いぞ」

エックス「ゼロ…100年間一緒にいて君をこんなに殴りたいと思ったのは初めてだ」

マッシモ「お、おい…ゼロ、怒らせるな…その、エックス…俺達は…」

エックス「覚悟は出来てるな?」

バスターとブレードを構えるエックスにアクセル達は。

アクセル「ハイパーモード・ステルスモード!!」

スパイダー「ハイパーモード・トリックスター!!」

光学迷彩ハイパーモードを発動して姿を消すアクセルとスパイダー。

マッシモ「おい!!?」

ゼロ「ハイパーモード・アクティブフォーム!!」

マリノ「ハイパーモード・クイックシルバー!!」

ルナ「ハイパーモード・テネブラエ!!」

アリア「あははは!!女神ダッシュ!!」

シナモン「エックスさ~ん、ルインさんとソニアちゃんのご飯向こうで用意されてますから~」

ゼロとマリノ、ルナは機動力強化のハイパーモードを発動してシナモンを連れて逃走。
アリアは猛スピードで逃走。
結果的に残されたのはマッシモだけであった。

エックス「………」

マッシモ「その、エックス…話を聞いてくれ……」

エックス「マッシモ」

マッシモ「な、何だ?」

エックス「俺は今、心底怒っているぞ…」

バスターに凄まじい勢いでエネルギーがチャージされていく。

マッシモ「ぎゃああああ!!待て待て待て!!」

エックス「問答無用!!チャージショット!!!!」

セントラルタワーの通路で凄まじい轟音が響き渡ったのであった。








































マッシモに制裁を下したエックスはルインとソニアを伴って食事を摂ると屋上に向かう。
そこにはゼロ達と……。

エックス「ライト博士のデータ転送カプセル?」

久しぶりに見たライト博士のカプセルに歩み寄るとライト博士のホログラムが浮かぶ。

ライト『久しぶりじゃのうエックス』

エックス「はい、ライト博士も」

ソニア[お祖父ちゃんだ~]

ルイン「お久しぶりですライト博士」

ライト『ルインとソニアも元気そうで何よりじゃ。今回わしが来たのはアリア博士が開発したフォースメタル。Xハートの強化の為じゃ。このカプセルにXハートを入れれば、アルティメットアーマー、ヘルメスアーマーとイカロスアーマー以外の強化アーマーが解放される。』

アリア「イカロスアーマーとヘルメスアーマーは今の新型アーマーには合わないから無理だったんだよ。大体あれはニュートラルアーマーじゃないと使えないしね」

ライト『さあ、エックス。Xハートをカプセルに入れなさい』

エックス「は、はい…」

Xハートを取り出してカプセルに入れるとXハートが淡い光に包まれていき、次の瞬間、光が消えた。

ライト『さあ、エックス。Xハートを』

エックス「はい」

Xハートを手に取り、拡張スロットに差し込むと歴代のアーマーの殆どのアーマーが解禁されていた。

エックス「ありがとうございますライト博士」

ライト『いや、頑張るのじゃぞエックス。ここにいる仲間達とルインと共に。ところでエックス。お前に頼みたいことがあるのじゃ』

真剣な表情で言うライト博士にエックスも自然に表情を引き締めた。

エックス「何でしょうか?俺に出来ることなら何でもします」

ライト『っ、そうか!!やってくれるか!!ロックもブルース達も頼む前にこの世を去ってしまったからのう……』

エックス「はあ…?」

ライト『単刀直入に言おう。エックス、ルイン。わしに孫の顔を見せてくれ』

ルイン「はい?」

エックス「ま…ご…?」

その言葉を理解するにはかなりの時間を要したが、理解した瞬間、2人の顔は茹で蛸に。

アリア「ライト博士、グッジョブ!!」

親指を立てるアリア。

ルイン「ふええ!!?」

エックス「ラ、ライト博士!!何馬鹿なことを言ってるんですか!!大体孫ならソニアがいるじゃないですか!!」

ライト『孫は何人いてもいいんじゃ。流石に人ならざる身では孫を抱くことは叶わん。しかし、見て話すことは出来る。そしてその孫と戯れることが今のわしの平和以上の夢なのじゃよ。…エックスよ、お前はわしから奪うというのか!!?孫と戯れたいというささやかな夢をこのわしから!!?』

エックス「あ、あのその…」

ルイン「うう~」

ルナ「何かよ~、息子夫婦に孫を強請る祖父ちゃんみてえな構図だな」

ゼロ「Dr.ライトにも余裕が出来てきたと言うことだろう。少なくとも孫をみたいと言い切るくらいには」

アリア「さあて、エックス君とルインちゃんの子供の設計図作らないとな~」

強化ついでにライト博士からも子供を強請られるエックスとルインであった。 
 

 
後書き
稀代の天才科学者、トーマス・ライト博士が平和を願う科学者から孫を見たいというお祖父ちゃんになりました。 

 

Another16 影の終わり

 
前書き
あいつ撃破します 

 
モニタールームに集まったスパイダー以外のメンバー。
エックス達はモニターを見つめていた。

アイリス「通信、入ります。リディプス大佐です」

エックス「繋げてくれ」

少しの間を置いて、リディプス大佐の姿がモニターに映る。

リディプス『聞こえるかエックス?ルインは?ルインはどうだった?』

エックス「ルインは生きていました。合流して、今はレジスタンスベースに。」

ルイン「ご心配をおかけしました」

リディプス『そうか…では、お前達に調べて欲しい場所がある……』

しかし、途端に音声にノイズが入り始めた。

リディプス『…らしい情報が入った。リベリオンの…重要施設…これを見てくれ』

リディプス大佐の姿が消え、モニターに坑道のような物が映る。

リディプス『リベリオン…の…秘密研究所だ…奴ら…ここ…何か重大な…研究…』

ノイズが酷くなり、とうとう音声も聞こえなくなってしまった。

ルナ「くそ、どんだけ通信妨害酷えんだよ…」

アル「ナナ…あの建物の位置を割り出せるか?」

ナナ「はい、多少時間はかかりますが」

アル「ああ、頼む」

アリア「エックス君達は位置の割り出しが終わるまでの間、買い物にでも行ってきたら?」

ルイン「なら、エックス…エアシティに行こうよ。何か情報が手に入るかも」

エックス「そうだな…行こうかルイン」

エックスはルインと一緒にモニタールームを後にした。









































ルインを伴ってエアシティに向かうためにエアバス乗り場に向かおうとするエックスだが…。

エックス「ん?」

一瞬だが、光が見えた。

ルイン「どうしたのエックス?」

エックス「あ、さっき、そこに光が…」

ルイン「光…?」

エックスの目線を辿ると、スパイダーの姿があった。

ルイン「スパイダーだよエックス?」

首を傾げるルイン。
2人の視線に気付いたスパイダーもこちらを振り返る。

スパイダー「よう、お2人さん。どうかしたかい?」

エックス「あ、ああ。さっき、リディプス大佐から連絡があって」

ルイン「リベリオンの秘密研究所らしき物を発見したんだって、今はナナが場所を割り出している最中」

スパイダー「なる程、秘密研究所ね…是非連れて行って欲しいね」

エックス「ただ働きは嫌じゃなかったのか?」

スパイダー「リベリオンの奴らが何しようとしているのか気になるんだよ」

ルイン「そうだね…イプシロンは一体何を企んでいるのか………今考えても仕方ないね。買い物はまた今度にしよう」

エックス「ああ」

スパイダー「悪いねえ、デートの邪魔しちまって」

エックス「スパイダー…」

赤面しながら睨んでくるエックスをスパイダーは笑いながらこの場を去る。








































買い物を諦めてセントラルタワーを歩いて暇を潰し、再びモニタールームに向かうと、エックスとルイン以外全員集まっていた。

ナナ「画像解析出来ました。この建物があるのは恐らく…」

モニターに先ほどの画像の坑道がある建物が映し出される。

ナナ「ギガンティス南西、エアーズバレー周辺です!!」

ガウディル「ふうむ…規模からして、相当に大掛かりな研究をしておるようじゃな」

ルイン「秘密研究所か……やっぱりそれなりに守りが固いだろうね。」

ゼロ「だが、危険な分、得られる物も多いはずだ。」

エックス「ああ、だが大勢で行くのは危険だ。最初は少人数で向かった方がいい…アクセル、ルナ…一緒に来てくれるか?」

エックスが最初に潜入するメンバーとして選んだのはアクセルとルナだ。
この2人はコピー能力を持つために潜入捜査を誰よりも得意としている。

スパイダー「それじゃあ俺も連れて行ってくれるかい?俺もこういうのにうってつけだと思うがね」

エックス「分かった」

スパイダーもアクセル同様、光学迷彩を使えるために確かに潜入捜査に向いているだろう。
エックス、アクセル、ルナ、スパイダーの4人が転送システムに乗り込んでギミアラ採掘場に向かう。







































そして転送システムから出ると、ギミアラ採掘場の入り口に立つ。

ルナ「ここのどこかにリベリオンの秘密研究所があるんだな」

エックス「そうらしい、だがリベリオンが俺達を黙って行かせてくれるとは思えないが…」

スパイダー「守りが固けりゃ、それだけ重要な場所ってことさ…行こうぜ」

アクセル「うん、みんな…警備システムに引っかからないでよ」

この中で最も潜入捜査を得意とするアクセルが先頭に立って、先に進む。
その姿を見ていた者に気付かず。










































地下2階に降りると通路に岩が転がり、道を塞いでいる。

アクセル「こりゃあかなりの硬さだね。変身して壊しても良いけど、派手なことしたら見つかるだろうし」

ルナ「エックス、ガイアアーマーでぶっ壊せないか?」

エックス「いや、こんな所でハイパーモードになったら俺達の位置が敵にバレてしまう…仕方ない。ナナに通信をして、誰かに削岩機を…」

スパイダー「おいおい、それまで待ちぼうけ…ん?」

岩の向こうからエンジン音が聞こえ、耳を澄ませると、どんどん音が大きくなる。

ルナ「何か、やばくね?」

アクセル「うん、みんな…避けて!!」

全員が横に飛ぶと、赤い物体が岩を粉砕して飛び出してきた。

エックス「あれはラッシュローダーか?何だあのパワーは?」

スパイダー「いいモーター積んでんなあ」

エックス「感心している場合か!!」

ルナ「まあまあ、落ち着け落ち着け。いくら早くてもこいつからは逃げられないぜ。ホーミングショット…コネクションレーザー!!」

コネクションレーザーがラッシュローダーに炸裂し、爆散すると1つのパーツが転がる。
エックスが拾うと、ガウディル博士が通信を寄越してきた。

ガウディル『わしグワ!ガウディルグワ!!こんな所にブーストパーツがあるとは知らなかったグワ…それを装備すればダッシュの威力が向上するはずグワ…ただし』

アクセル「いいねそれ!!僕に着けさせてよエックス!!」

ガウディル『ア、アクセル!待つグワ!!駄目グワワッ!!普通のレプリロイドが着けると暴走する危険性があるグワ!!それを着けられるのは、新型アーマーを着けているエックスとゼロくらいグワ!!』

アクセル「ちぇ、いいなあエックス。そうだ、ダッシュの威力が向上したなら…」

ルナ「ハイパーモードにならなくても岩を砕けるはずだ。エックス~改造タイムだぜ」

エックス「…ゼロ」

ゼロ『俺は身体を弄られるのは嫌いなんでな、頼んだぞエックス』

親友からも見捨てられ、エックスはギガンティスで初めての大改造を受ける羽目になった。









































そしてブーストパーツを装備したエックスのハイパーダッシュで岩を粉砕しながら突き進むと、端末を発見し、それを操作すると更に下の階に行けるようになった。
エックス達はリフトのある場所に戻ると地下3階に降りると、エックスの表情が驚愕から激しい怒りのそれに変わる。

エックス「貴様っ!!シャドウ!!」

自分達を裏切った元イレギュラーハンターシャドウ。

シャドウ「久しぶりだなエックス。それにアクセルやルナのプロトタイプ共まで一緒とはな」

アクセル「やあ、シャドウ。可愛い後輩にまた会えて嬉しいよ。まさかイレギュラー化しちゃうとはねえ」

ルナ「シャドウ、裏切り者にはそれなりの報いを受けてもらうぜ」

それぞれが武器を構えると、シャドウも左腕のレーザーエッジを向ける。

シャドウ「ふん…お前達がここに来たということは超フォースメタルを嗅ぎつけたというわけだな。」

エックス「超フォースメタル?何のことだ!!?」

ルナ「普通のフォースメタルと違うのか?」

超フォースメタルと言われているだけあり、普通の物とは違う特別な物だろう。

シャドウ「惚けるなよ…我々リベリオンが開発している改良型フォースメタルは、我ら…いや、全レプリロイドの理想のために必要な物だ!!貴様ら政府の犬に、易々とは渡さんぞ!!」

スパイダー「理想?興味あるねえ、一体全体超フォースメタルって奴で、何が出来るんだい?」

シャドウ「能書きは良かろう…お前達の身体に教えてやる!!来い!!1人ずつバラしてやるぜ…!!」

ルナ「上等だ!!性根の腐った後輩にはヤキを入れてやらねえとな!!」

シャドウ「やれる物ならやってみろ!!出来損ないのプロトタイプ風情にそれが出来るならな!!」

レーザーエッジを構えてアクセルに突撃する。

アクセル「っ、速い!!」

バレットを交差させてレーザーエッジを受け止めるアクセル。

エックス「アクセル!!」

アクセル「大丈夫だよ、革命弾を喰らえ!!」

シャドウは自分達やリベリオン幹部と同じ特別製だ。
それなら特別製のレプリロイドに特効がある革命弾が通用するはずだが。

シャドウ「ふん…遅過ぎて欠伸が出るぜ」

革命弾を簡単にかわすシャドウ。
アクセルのバレットは非力さを補うために弾速、速射性、連射性を高めているのだ。
それを容易く回避するとは。

シャドウ「流石に射撃能力はエックス以上だ。しかし正確過ぎるためにかわすのは簡単だぜ…爆砕砲!!」

エックス「ハイパーモード・ファルコンアーマー!!」

ハイパーモード・ファルコンアーマーを発動し、空中に逃れるエックス。

スパイダー「空戦型のアーマーか?」

エックス「(シャドウには飛行能力がない。いくら射撃能力を持ち合わせていても、あのキャノン砲で攻撃出来る範囲は限られる。空中戦に持ち込めば…)スピアチャージショット!!!!」

歴代の強化アーマー屈指の貫通力と弾速を誇るスピアチャージショットがシャドウに放たれた。
しかし。

シャドウ「甘いっ!!」

レーザーエッジでスピアチャージショットを弾いた。

エックス「何!!?」

スピアチャージショットの弾速を見切ったばかりか弾いた。
これには流石のエックスも驚愕した。

シャドウ「今の俺に小細工は通用せんぞエックス」

エックス「くっ、ならガイアアーマー!!」

ファルコンアーマーからガイアアーマーに換装して床に着地。
着地すると床が陥没し、部屋全体を揺らす。

シャドウ「ぬっ!?」

スパイダー「何て重量だ…部屋全体が揺れやがった…」

アクセル「これがエックスのガイアアーマー?」

ルナ「ああ、パワーと防御力は歴代最強だ。その代わり…」

シャドウ「爆砕砲!!」

キャノン砲から再び重力弾が放たれる。
エックスは腕を防御フィールドを発動と同時に交差させ、余裕で耐え凌いだ。

シャドウ「何だと!!?」

エックス「ガイアチャージショット!!」

ガイアアーマーのチャージショットがシャドウに向けて放たれた。
その威力はまともに喰らえば凄まじいダメージを与えるが…。

シャドウ「いくら強力でも、そんな遅い攻撃が当たるか!!」

ガイアチャージショットをかわし、レーザーエッジで斬り掛かるが、エックスはレーザーエッジを腕で受け止める。

エックス「ガイアインパルス!!!!」

ガイアアーマーの出力を拳に乗せたストレートがシャドウに炸裂。
顔面に喰らったシャドウが吹き飛んだ。

シャドウ「ぐっ!!何て破壊力だ…だが、同じ手は通用せんぞ!!ガイアアーマーとやらの弱点も分かったことだしな!!」

高速で動いてエックスの背後に回ると、足払いをかけ、転倒させる。

シャドウ「そのガイアアーマーはとてつもない出力からお前を守る為に、相当頑丈に…しかも重く出来てるようだな。しかし裏を返せばさっきのファルコンアーマーとやらはおろか、通常時にすら敏捷性で劣るという事。事実、一度倒れてしまえば起き上がるのは楽じゃないだろう」

エックスの胸に足を乗せ、レーザーエッジを翳すシャドウ。

エックス「ぐっ…」

シャドウの言う通り、ガイアアーマーは歴代の強化アーマーの中で一番使い方が難しいアーマーだ。
一度は完全に使いこなせたが、今のエックスには100年間のブランクがある。

シャドウ「エックス、分かるだろう?俺は強くなった。これが超フォースメタルの力だ。俺はイプシロン様に忠誠を誓い、力を授かったのだ!!」

嘲笑いながらエックスを見下ろすシャドウだが、エックスはそれを睨み返す。

エックス「そんな力のために仲間を売ったのか!?何が理想だ!!お前達は力に溺れたイレギュラーだ!!」

シャドウ「イプシロン様をイレギュラー呼ばわりするのは許せんな…エックス、お前なら仲間にと思ったが、此処までだな。せめてもの情けだ。あの女の元まで送ってやる!!」

ルイン「そうはさせないよ!!」

突如天井が破壊され、そこからルインが現れ、シャドウにセイバーによる一撃を浴びせる。

シャドウ「ぐっ!!?貴様…生きていたのか…」

エックス「ルイン!!」

ルイン「ようやく会えたねシャドウ。君にたっぷりとお返ししてあげる!!第2ラウンド、行くよシャドウ!!」

シャドウ「ぐっ!!お前、あの高さから落ちて何故生きている!!」

ルイン「私がダブルジャンプを扱えるの忘れてた?ダブルジャンプで落下の衝撃を和らげたんだよ。まあ、それでも君から貰ったダメージや落下のダメージも酷かったからダメージが回復するまで身を隠してたんだよ」

シャドウ「くそ、なら今度は粉々にしてやる!!覚悟しろ!!」

キャノン砲のエネルギーチャージを開始するシャドウ。
大爆砕砲を放つつもりなのだろうが。

ルイン「甘い甘い!!ダッシュセイバー!!」

ダッシュで間合いを詰め、ダッシュの勢いを加算した斬撃を喰らわせる。

シャドウ「ぐっ!!」

ルイン「君のバトルスタイルは私達に近いからねえ。対策は簡単に思いつけるよ。大体おかしいと思わない?いくら超フォースメタルとやらで強化していても1人でエックス達を相手に出来たことに。エックス、もういいんじゃない?本気出して?」

エックス「ああ」

ガイアアーマーからフォースアーマーに切り換えたエックスがシャドウを睨み据えた。

アクセル「やっぱり100年間のブランクは大きいよね。特にガイアアーマーみたいに癖の強いアーマーは勘を取り戻すのに時間がかかるし」

ルナ「でもこれで負けてやる理由はねえだろ。やっちまえエックス!!」

エックス「ああ、プラズマチャージショット!!!!」

シャドウに向けて放たれたプラズマチャージショット。
シャドウはレーザーエッジで受け止めるが、プラズマが発生、シャドウにダメージを与えていく。

シャドウ「ぐおおお!!?」

エックス「噂で存在は知っていても各アーマーの特性までは知らないだろう?ファルコンアーマーとガイアアーマーは特に癖が強いアーマーなんだ。」

シャドウ「まさか、貴様…俺を練習台にしていたとでも言うのか!!?」

エックス「いや、実際危ない部分もあった。超フォースメタルとやらの強化が予想以上だったからな…ファルコンアーマー!!」

ビームスピアとXブレードの二刀流でシャドウを追い詰めていくシャドウ。
空中を自在に飛び回り、一撃離脱を基本とし、時にはスピアチャージショットまで放たれる。

シャドウ「ぐっ…くそおおお!!!!」

エックス「ガイアアーマー!!」

再びガイアアーマーに換装するとシャドウに向かっていく。

シャドウ「はっ!!馬鹿が、ガイアアーマーは俺には通用…」

エックス「ガイアチャージショット!!」

至近距離から放たれたガイアチャージショットを受け、シャドウは吹き飛ぶ。

エックス「ようやく思い出したよ。ガイアアーマーの特性を…ガイアアーマーは圧倒的な防御力を活かした接近戦で真価を発揮する。このようにな!!」

ガイアアーマーのチャージショットは、バスター重視装備のニュートラルアーマー並みにエネルギーチャージの所要時間が短い。
つまり速射性に置いては数あるチャージショットの中でも特に優れた装備なのだ。
しかも至近距離で放たれたとあってはネックである弾速の遅さ、射程距離はまず影響しない。
ガイアチャージショットを連発を受け、シャドウのアーマーが弾け飛ぶ。

シャドウ「(こ、殺される…な、何とか逃げなければ!!)」

爆砕砲を放つシャドウ。
ガイアショットを放って相殺するが…。

アクセル「エックス!!逃げられるよ!!」

エックス「しまった…」

爆煙に紛れて逃げようとするシャドウ。
咄嗟にブレードアーマーに換装しようとした時であった。

スパイダー「残念♪そうはいかないんだな。フォーチュンカード…ストレートフラッシュ!!!!」

シャドウ「ぐあああああっ!!!!?」

ハイパーモード・トリックスターを発動してシャドウの動きを見ていたスパイダーが広範囲にカードボムを連射、叩き落とす。

エックス「これで終わりだシャドウ!!ガイアショットブレイカー!!!!」

掌に収束させた超圧縮エネルギー球がシャドウに炸裂。
既にボロボロだったシャドウはガイアショットブレイカーを受けて消滅した。 
 

 
後書き
あのイベントはなし。

ファルコンアーマーとガイアアーマー登場。
歴代のアーマーでもぶっ飛んだ性能です。
その分癖が強い。
原作アルティメットアーマはファルコンアーマーとガイアアーマーを合わせたような感じがします。

 

 

Another17 阿修羅

 
前書き
エンシェンタス戦 

 
勘を取り戻し、ファルコンアーマーとガイアアーマーを使いこなして見事にシャドウを撃破した。
ここで一度全員を呼んだ。

マリノ「つまりここでは超フォースメタルっていうお宝を開発しているってのかい?」

ルナ「シャドウの話ではそうらしいぜ。」

スパイダー「リベリオンの理想とやらのために超フォースメタルが必要らしい」

ゼロ「そうか…それにしてもシャドウ…馬鹿な奴だ。超フォースメタルだか何だか知らないが…そんな物のためにハンターの魂を売るとはな…!!」

マッシモ「ゼロ、気にするなよ…。もう過ぎたことだ」

ゼロ「ああ…」

ルイン「取り敢えず、先に進もうよ。シャドウを倒したから、更に下の階に行けるようになったんじゃないかな?」

シナモン「いいえ、私達がこちらに来る時も表示されたのは3階までです」

アクセル「ええ?本当?じゃあ、端末探さないといけないの?面倒だな。ルイン、床を壊して先に進もうよ。もう潜入とか言ってる場合じゃないし」

ルイン「駄目だよ。もし、真下に秘密研究所があるなら、秘密研究所が滅茶苦茶になっちゃうし、下手したら危険物があるかもしれないじゃない」

アクセル「駄目か、仕方ないな。端末を探そう…それにしてもここはディグレイバーが多いね。サボってるのいるけど」

ルナ「あれは色違いのツルハシを持ってるからだよ。ディグレイバーは専用のツルハシがないとやる気が出ないんだ」

アクセル「それってイレギュラーじゃない…?」

エックス「ディグレイバーはそういうメカニロイドなんだ。仕方ないさ」

ゼロ「お前は甘いな。専用の道具がないくらいでサボるのなら、俺からすればイレギュラーだぞ」

そうして端末を探すエックス達。
しばらくしてマリノと一緒に端末を探していたシナモンから合図が出て、2人の反応を元に向かう。








































合流したエックス達はシナモンとマリノから話を聞いて脱力してしまった。

エックス「つまり端末を直すために必要なエレキパーツをこの採掘場にいるディグレイバーの1体に持って行かれてしまったと?」

マリノ「そうなんだよ。しかも顔は覚えてないらしいよ」

ゼロ「この採掘場にいるディグレイバーを全員調べろと言うのか?それなら損傷覚悟で床を破壊して下の階に行った方がまだマシだ」

「いやいや、この黄色いツルハシの持ち主がエレキパーツを持って行ったのは間違いない。頼む、ちょいと行って探してきてくれ!!」

エックス「はあ…」

「それにしても兄ちゃん。若いのに随分鍛えてんだな。いい身体してるぜ、この採掘場で働か」

エックス「遠慮します…」

マッシモ「またバラバラになって探そう」

スパイダー「そうだな、固まって探すよりずっと効率がいい。」

黄色いツルハシを受け取り、エレキパーツを持つディグレイバーをバラバラに散って探すエックス達。
黄色いツルハシのディグレイバーを発見したのは、数十分後であった。






































エレキパーツと偶然手に入れたトレードシートを持って監督レプリロイドの元に戻ってきたエックス達。

エックス「何とかエレキパーツと…ついでにトレードシートを回収出来たよ…」

監督レプリロイドにエレキパーツとトレードシートを差し出すエックス。

「おお!!見つけてきてくれたか!ありがとよ!!やっとこいつを直せるぜ!!しかもトレードシートまで…恩に切るぜ!!これで仕事が滞りなく出来る。…よし、修理して地下4階に行けるようにしておいたぜ」

エックス「ありがとう、行くぞみんな」

スパイダー「いよいよリベリオンの秘密研究所だな」

リフトのある場所に戻ると地下4階に降りる。











































地下4階に着くと高エネルギー反応が扉の奥からするのだが、ロックが掛かっており、開かない。

ゼロ「チッ、ルナ。ロックを解除出来ないか?」

ルナ「ん~、こいつは難しいな。どうやらこいつ、他の場所にロックを解除するための装置のようなのがあるみてえだ。そいつを破壊しない限り。奥には進めないな。」

アクセル「じゃあ、この横の扉にあるんじゃない?途中でそれらしいの無かったし」

アクセルが指差した扉を見遣ると全員が頷いた。








































扉を潜ると、そこにはファイアボーンとリキッドボーン、サンダーボーンが複数待ち構えていた。

ルナ「でかっ、ボーンシリーズかよ。やばいな、こいつら特殊液体金属だから攻撃が効きにくいんだよな。」

エックス「ハイパーモード・ファルコンアーマー!!スピアチャージショット!!!!」

貫通力の高いスピアチャージショットでコアを貫く。

ルナ「リキッドボーンにはこいつだ!!ハイパーモード・グラキエス!!フリージングドラゴン!!!!」

氷龍を召喚し、リキッドボーンに向かわせる。

マリノ「ちょ、何してんのさ!!?リキッドボーンは氷属性…」

スパイダー「いや、多分あれで合ってるぜ!!」

氷龍が喰らいついたリキッドボーン達は液体金属を凍らされ、動けなくなる。

マッシモ「なる程、リキッドボーンはボーンシリーズで一番水に近い液体金属を使っている。だから凍らせてしまえば動けなくなる訳か」

ルナ「当たり☆」

アクセル「なら後は一撃で倒そう。マッシモ、ベルセルクチャージの用意を」

マッシモ「任せとけ!!」

シナモン「バイタルスクラッチ!!」

マリノ「ハイパーダイブ!!」

ゼロ「零式波動斬!!」

ルイン「エナジーフィシャー!!」

エックス「フォースアーマー!!プラズマチャージショット!!」

スパイダー「フォーチュンカード…フラッシュ!!」

ルナ「ホーミングショット…コネクションレーザー!!」

シナモン達がボーンシリーズを一カ所に集め、それを見た2人が動いた。

アクセル「変身、シルバー・ホーンド!!アビスプレッシャー!!!!」

マッシモ「ベルセルクチャージ!!発射!!!!」

高出力エネルギー弾と高出力レーザーが一カ所に纏められたボーンシリーズに炸裂。
エックス達はホーンドに変身したアクセルの背後にいたから無事だった。

ルイン「これで扉が開くかな?」

ルナ「行ってみようぜ」

来た道を戻り、通路に出てロックされていた扉を見遣るとロックが解除されていた。

ゼロ「……行くぞ」

扉を潜るとそこにはギミアラ採掘場のリベリオン幹部らしきレプリロイドがいた。
今までのリベリオン幹部とは全く異質な阿修羅を思わせるレプリロイド。

「来たか…シャドウの奴では足止めにならなかったというわけだな…」

シナモン「液体金属…?」

ルナ「多分な、見たところファイアボーンみてえなもんか」

レプリロイドのボディを見つめながら呟くシナモンとルナ。

「総統から少しばかり超フォースメタルを貰ったとはいえ、所詮はイレギュラーハンターから寝返ったような奴だからな」

スパイダー「おい、ここはリベリオンの研究所じゃないのか?」

研究所にしては設備が何もないことに訝しむスパイダーをレプリロイドは嘲笑う。

「愚かな連中よ。お前達は罠に落ちたのだ。このエンシェンタス様のな」

スパイダー「罠だと?」

エンシェンタスの言葉に流石のスパイダーも声に焦りが混じる。

エンシェンタス「そう、ここには超フォースメタルなどありはしない。お前達間抜けなレジスタンスを釣るための偽情報さ!!」

突如背後の扉に電磁バリアとロックがかけられる。

ルナ「何!!?」

エンシェンタス「これでお前達は袋の鼠だ。この建物から俺以外のレプリロイドは決して転送出来ない!!」

ルイン「ふざけないで!!私達がそう簡単に鼠になると思う!!?」

エンシェンタス「俺の身に着けた超フォースメタルはシャドウの比ではないぞ?それでも戦うと言うのなら、相手になってやろう」

ゼロ「借り物の力でいい気になるなイレギュラー!!」

ルイン「あいつは炎属性…なら氷のエレメントチップ!!アイスセイバー!!」

氷属性を付加させたセイバーをエンシェンタスに喰らわせる。

エンシェンタス「ぬっ!!」

弱点属性を喰らったエンシェンタスが僅かに後退した。

アクセル「効いてる!!革命弾を喰らえ!!」

特効弾・革命弾を連射するアクセル。

マッシモ「よし!!そらあああ!!」

ランサーの一撃を見舞うマッシモ。

シナモン「アイスミサイル、発射!!」

ミサイルポッドから氷属性のミサイルを発射するが…。

エンシェンタス「ふふふ…」

アイスミサイルの直撃を受けながら不敵な笑みを浮かべるエンシェンタス。

エックス「どういうことだ?アイスミサイルが効いていない?」

スパイダー「簡単だ。こいつは液体金属の属性を変化させることが出来る特殊液体金属型レプリロイドなんだよ!!フォーチュンカード…チッ、ワンペア!!」

フォーチュンカードを発動するも、一番威力が低いワンペアが出た。

ゼロ「ならば話は早い。ハイパーモード・パワーフォーム!!零式突破!!!!」

雷のエレメントチップを発動し、雷属性の突きが繰り出された。

エンシェンタス「中々やるな…だが俺も本気を出した訳ではないぞ」

次は液体金属を雷属性に切り替えた。

ルナ「属性が変えられるからってそれがどうした!!無属性とかで攻撃すればいい話だぜ!!ハイパーモード・テネブラエ!!十字手裏剣!!!!」

マッシモ「俺も属性なんか関係ない!!」

マリノ「属性をコロコロ変えてもそれに対応した攻撃をするまでだよ!!ファイアコメットを喰らいな!!」

シナモン「バイタルスクラッチ!!えいっ!!」

アクセル「変身、マッハ・ジェントラー!!ゲヘナフレイム!!!!」

エックス「ハイパーモード・フォースアーマー!!プラズマチャージショット!!!!」

ルイン「チャージセイバー!!!!」

全員が一斉に攻撃を叩き込む。
因みに一見雷属性に見えるプラズマチャージショットは雷属性のエンシェンタスにダメージを与えられた。

エンシェンタス「成る程、そろそろ本気でやらねばならんな。覚悟しろ!!ハイパーーーー!!!!」

エンシェンタスの液体金属が炎属性に変わり、エネルギーが上昇していく。

エックス「っ!!?」

エンシェンタス「阿修羅ナックル!!!!」

エンシェンタスの6つの手から無数の超圧縮エネルギー弾が放たれた。
誘導性能を持っているのか全員に直撃する。

シナモン「痛っ…」

ルナ「ぐっ、これがあいつの本気か…サイケとかとは比較にならねえ…」

エンシェンタス「次は絶対零度を喰らうがいい、永久氷河!!!!」

アクセル「うわああああ!!?」

絶対零度の冷気をまともに受けるアクセル。

ルイン「アクセル!!」

エンシェンタス「次は貴様だ!!裁きの雷!!」

ルイン「うあっ!!?」

エンシェンタス「灼熱の火炎!!!!」

炎属性に切り替えたエンシェンタスが、全員に灼熱の業火を喰らわせる。
三大属性の大出力攻撃、まともに喰らったエックス達。

エンシェンタス「…むっ!!」

ハイパーモード・アイアンメイデンを発動したシナモンとディフェンスフォーム、ガイアアーマーに切り換えたゼロとエックスが突撃する。

ゼロ「トリプルロッド!!」

トリプルロッドによる零式突破を叩き込む。
三段階に伸びる機構を持つ槍による突きはエンシェンタスの巨体すら吹き飛ばす。

エンシェンタス「ぐっ!!阿修羅ナックル!!」

ゼロ「イレイズフォーム!!」

アーマーが赤紫基調に変わり、チェーンロッドで阿修羅ナックルを消滅させた。

エンシェンタス「何!!?」

ゼロ「ディフェンスフォームとは違うタイプの防御型形態だな。有り難い」

武器自体に防御能力を付加させてくれるこの形態はかなり有り難い。
寧ろディフェンスフォームよりも攻防一体のイレイズフォームの方がゼロの性格に合っているかもしれない。

エンシェンタス「ならばこれならどうだ!!ギガファイア!!」

ゼロ「ぐっ!!」

咄嗟にディフェンスフォームに切り換えるゼロ。
それを見たエンシェンタスが笑みを浮かべる。

エンシェンタス「やはりな、イレイズフォームとやらはエネルギー系統の攻撃には絶大な防御力を発揮するようだが、この類の物には無力のようだな」

ゼロ「ぐっ…だが、俺だけを見ていていいのか?」

エンシェンタス「何?」

エックス「ガイアチャージショット!!!!」

シナモン「バイタルスクラッチ!!」

ガイアチャージショットとバイタルスクラッチの往復ビンタがエンシェンタスに炸裂。

エンシェンタス「己!!永久氷河!!」

エックス「ぐっ!!」

シナモン「きゃあっ!!」

エンシェンタス「灼熱の火炎!!」

絶対零度で冷やされ、次は灼熱の業火が襲う。
絶対零度から灼熱の業火による温度差でガイアアーマーに亀裂が入る。

マリノ「この…いい加減にしな!!ミラージュダイブ!!!!」

実体を持つ分身を2体を生み出し、エンシェンタスに攻撃。
ハイパーモード・クイックシルバーも併用しているために相当なダメージを与える。

エンシェンタス「ぐっ、怪盗風情が!!阿修羅ナックル!!」

誘導エネルギー弾をマリノに向けて放つ。

マリノ「やばっ…」

マッシモ「マリノさん!!ぐおっ!!!!」

マリノ「マッシモ!!」

マリノを庇い、阿修羅ナックルのエネルギー弾を全弾その身に受け、倒れるマッシモ。
アーマーが弾け飛び、内部機関が露出する。

ルイン「このおおおお!!!!ハイパーモード・オーバードライブ!!チャージショット!!!!」

強化されたチャージショットを放ち、吹き飛んだエンシェンタスに通常弾の連射を浴びせる。

アクセル「倒れろ、倒れろ、倒れろ!!!!」

ルナ「でやああああああ!!!!」

アクセルとルナも加勢し、バレットを猛連射し、エンシェンタスのボディを射抜く。

スパイダー「そのまま続けろ!!頼むぜ…フォーチュンカード……よっしゃあ!!ロイヤルストレートフラッシュ!!受け取りな!!取って置きのカードを!!!!」

スパイダーのカードスリットから1枚のカードボムが放たれた。
全カードボムの威力が1枚のカードボムに集約されたような一撃がエンシェンタスに炸裂したのだった。 
 

 
後書き
多分、エンシェンタスってダブルやシーフォースと同じ液体金属だと個人的に思います 

 

Another18 スパイダー

 
前書き
スパイダー(ある意味)永久離脱 

 
スパイダーの最大の切り札であるロイヤルストレートフラッシュがエンシェンタスに炸裂した。
その威力は凄まじく、部屋全体を爆煙で満たされた。

スパイダー「(こいつでくたばってくれ…こいつが駄目ならマジで打つ手がねえ…)」

現時点で疲弊しているエックス達にこれ以上の威力のある攻撃は繰り出せない。
全員が息を呑んで爆煙が晴れるのを待つが…。

エンシェンタス「ぐっ…い、今のは危なかったぞ。流石の俺も死を覚悟した…総統から超フォースメタルを頂いていなければ…確実にスクラップになっていた……」

ルナ「スパイダーのロイヤルストレートフラッシュは…とんでもねえ威力だったぞ…化け物か…てめえは…だが、そのダメージじゃあまともに戦えねえだろ!!この俺がとどめを刺してやる!!」

比較的ダメージが軽いルナがエンシェンタスにバレットを向けるがエンシェンタスは焦るどころか笑みを浮かべる。

エンシェンタス「ふふ…確かに俺はボロボロだが、お前達の状況が絶望的なのは変わりがない!!」

即座にエンシェンタスは背後のパネルを操作すると、警報が鳴る。

ルイン「何をしたの!!?」

エンシェンタス「自爆装置を作動させたのだ。これで後5分後に建物が爆発する!!」

エックス「なっ!?サードアーマー・全リミッター解除!クロスチャージショット!!!!」

サードアーマーのリミッターを解除し、クロスチャージショットを連発するが、電磁バリアで守られた特殊合金の扉はビクともしない。

エンシェンタス「そんな物で扉が開くものか!!」

マッシモ「なら…俺がベルセルクチャージで…」

マリノ「馬鹿言うんじゃないよマッシモ!!そんな状態でベルセルクチャージでぶっ放したら…」

ただでさえ今のマッシモは直ぐに治療が必要な状態なのだ。
そんな状態で高出力レーザーのベルセルクチャージを放ったら確実に自壊してしまう。

マッシモ「し、しかし…」

アクセル「多分、この扉はビームコーティングが施されているよ。多分僕らに逃げられないように。エネルギー弾とかの類は通用しないよ」

シナモン「それじゃあどうするんですか!!?」

アクセル「待って、今考えてるんだ!!」

何とか脱出をと、アクセルが考えを巡らせるが一向に考えが浮かばない。
エンシェンタスがそれを見て嘲笑いながら口を開いた。

エンシェンタス「ふはははは…万策尽きたな…それではそろそろ転送させてもらうとしよう。さらばだ…」

その時、誰よりも早く動いた者がいた。

スパイダー「うおおおおおお!!!!」

エンシェンタス「っ!!?」

スパイダーが絶叫しながらエンシェンタスを捕まえ、扉に向かい始めた。

エンシェンタス「ぐっ、悪足掻きを!!」

エックス「スパイダー!!?何を…」

ハイパーサードアーマーのバスターエネルギーを使い切り、フォースアーマーに換装していたエックスが目を見開いた。

スパイダー「ハイパーサードアーマーのクロスチャージショットの連発でも壊れないご自慢の扉らしいが、レプリロイド2体分の爆発の衝撃なら、扉を吹っ飛ばせるんじゃないか!!?」

ルナ「え…?」

それを聞いたルナの表情が青ざめる。
確かにスパイダーとエンシェンタスは特別製の戦闘用レプリロイドだ。
その高い出力を得るために高出力の動力炉を搭載しているためにその爆発の威力は相当な物だ。

ルイン「スパイダー!!馬鹿なことをしないで!!止めて!!」

エンシェンタス「己…っ!!」

スパイダー「悪いが止めないよ。理屈じゃないんだ!!」

もがくエンシェンタスを押さえつけながらスパイダーはカードスリットから1枚のカードボムを取り出し、全員を見遣る。

エックス「スパイダー!!」

スパイダー「…後は頼んだぜ、エックス!!ゼロ!!みんな!!」

カードボムから閃光が放たれ、スパイダーとエンシェンタスが光に包まれた。








































光に包まれたスパイダーは、段々意識が薄れていくのを感じていた。
時折記憶が飛ぶことはあったが、今回ばかりは完全に駄目だろう。
今思えば、エールが怪我をしてからだろうか?
かつて駆け出しの賞金稼ぎ時代、今のように仕事もなく、今は廃墟となっているラグラノ研究所のような場所で用心棒のようなことをしていた時期があった。
そして自分はエールと共に…ある物を奪って、あの男からエールが自分を庇って怪我をし…それから…それから先の記憶が酷く曖昧なのだ。
あの日から自分の記憶が時折飛ぶようになり、気付いた時には別の場所にいたりした。
普通レプリロイドの記憶は余程電子頭脳に異常がない限り飛ぶことはないのだ。
もしエックス達に気付かれれば検査を受けろと言われたはずだ。

スパイダー「(冗談じゃないぜ…)」

あの日以来からスパイダーは身体を弄られるのを酷く嫌っていた。
昔はそうでなかったのに、今は“検査”という物に危機感を感じていた。
まるで自分の秘密を見られるような。

スパイダー「(そんな大層な悪事は働いてないつもりだったんだがね)」

記憶が飛んでいた間に何か仕出かしたのかもしれないなと、薄れる意識の中、スパイダーは僅かに微笑んだ。
エックス達に後を託しながら。












































レジスタンスベースに戻ってきた一同の表情は沈んでいた。
マッシモは即座にメンテナンスルーム行きとなり、医療班に連れて行かれた。

シナモン「スパイダーさん……」

エックス「シナモン…あいつがスパイダーが命を張ってくれなければ…俺達はここに戻ってくることは出来なかった…」

泣きじゃくるシナモンの肩に手を置きながらエックスは言う。
しかし彼の表情もまた悲しみに歪んでいた。

ゼロ「スパイダーは…あいつは俺達の為に命を投げ出してくれた。だから俺達はスパイダーの魂に応えなくてはいけない。」

ルイン「うん…悲しむことは何時でも出来る…今は…スパイダーの分まで戦わなきゃ……」

アル「ああ…そうだな。この仲間達でリベリオンを倒そうじゃないか…スパイダーの為にも……!!」

死んでいったレジスタンスの仲間、エール、そしてスパイダーの犠牲を無駄にしないためにも、戦わなくてはいけない。
エックス達の結束がより強くなった瞬間であった。











































そして、ギミアラ採掘場から少し離れた場所では。

「チッ…奴め、余計な真似をしおって…」

全身をマントで身を隠し、所々損傷しているレプリロイドが1つのDNAデータを睨みながら呟く。
レプリロイドはDNAデータを握り砕こうとしたが、少しの間を置いて取り止めた。

「まあいい…まだこれには使い道がある」

レプリロイドはDNAデータを握り締めながら静かにこの場を去った。












































一方、ハンターベースでは、エイリア達が休憩室にて雑談していた。

パレット「そう言えば、先輩達ニュース見ました?レジスタンスの主力メンバーでやられた人が出たらしいですよ」

エイリア「折角エックス達が合流したのに、残念ね…。今回犠牲になった1人は、レジスタンスでもかなり腕の立つレプリロイドだったらしいわ。元賞金稼ぎだったらしいけど…それにしても聞く限り、レジスタンスの主力メンバーには賞金稼ぎとか泥棒とか、素性の怪しいレプリロイドが多いわね。エックス達が上手くやっているのか心配だわ」

非合法なことをしていた元賞金稼ぎのアクセルや元ジャンク屋のルナ、イレギュラーハンターでも細かいことは気にしないタイプのルインはともかく、イレギュラーハンターの中でも堅物に部類されるエックスとゼロがイレギュラーすれすれの面子と上手くやっていけるのかと心配したが、どうやら今のところは大丈夫のようだ。

ダグラス「いやー参った参った」

頭を掻きながら現れたのは、ハンターベースの整備班のチーフメカニックであるダグラスである。

レイヤー「ダグラスさん、どうでしたか?アクセルとルナさんが保護した彼の容態は…?」

ダグラス「ん?なあに、もう大丈夫だ。何てったってこっちにはアリア博士と双璧を為す天才的工学博士のゲイト博士がいるんだからな」

少しして、休憩室に入ってきたゲイトもダグラスの言葉が聞こえていたのか苦笑を浮かべながら自販機にクレジットデータを入力して、昼食代わりのコーヒーとハンバーガーを購入する。

ゲイト「おいおいダグラス。あまり担がないでくれよ。それにしても驚いたな…」

購入したばかりのハンバーガーを口にし、コーヒーを啜りながらゲイトは呟く。

パレット「何がですか?」

ゲイトの呟きが聞こえていたパレットが疑問符を浮かべながらゲイトに尋ねる。

ゲイト「ああ、修理してみて分かったんだけど、ギガンティス製のレプリロイドの思考回路の思考パターンは正に人間そのものだ。」

エイリア「それってもしかして…」

ゲイト「ああ、エックスやアイリス、そして元人間のルインやルナみたいな思考回路を持つレプリロイドが造られているんだよ。ギガンティスでは、思考パターンが人間そのものだから純粋なイレギュラーも誕生しかねないね」

パレット「うひゃあ…それってエックスさん達みたいなレプリロイドがギガンティスには沢山いるってことですか?」

ゲイト「まあ、簡単に言えばそうなるね、いずれにしても、ギガンティスのレプリロイドは僕達よりもエックス達や人間に近い存在だということだよ。彼らの人間的思考回路が、今回の反乱の引き金になったのは間違いないと思う」

エイリア「そう…」

ゲイト「そうそう、エイリア。彼の身元は分かったかい?」

エイリア「ごめんなさい、まだ分かっていないの。IDタグかDNAコアがあれば簡単に割り出せるんだけど…」

レイヤー「IDタグはまだしもDNAコアまで抜き取られているなんて…これはどう考えても犯罪です」

ゲイト「ああ、ギガンティスでは何かが起こっている。厄介なことにならなければいいけどね」

ハンバーガーを食べ終え、コーヒーを飲み干すとゲイトは立ち上がる。

ゲイト「さて、僕は少し仮眠を取るとするよ。身元が割り出せたら教えて欲しい」

エイリア「分かったわ」

ゲイトはゴミを捨てると、仮眠を取るために自室に戻るのであった。 

 

Another19 痛み

 
前書き
スパイダーがいなくなり、意気消沈するエックス達。 

 
エックス達がエンシェンタス戦で負ったダメージをマッシモ以外が修理を終え、それぞれ身体を休めていた。

アル「…決して楽な戦いではないと覚悟はしていた。例え我が身が滅びようと私構わない…だが、仲間を失うのは辛いな…」

マッシモ「気紛れで、ちょっと謎めいていて変わったところのある奴だったけど…良い奴だったな、スパイダー…」

悲しげに言うアルやマッシモに同意するようにアクセルが頷いた。

アクセル「もう…死ぬのは悪い奴だけでいいのに…スパイダー、格好良かったね…」

シナモン「ギミアラ採掘場での戦いが終わってもいつも通りだと思っていたのに…こんなのって…」

ルナ「仕方ねえさ……戦いではいつ死が訪れるかは誰にも分からねえ…でもな…惜しい奴を亡くしちまった…」

マリノ「あ~あ~、もう…あんたらしんみりさせるんじゃないよ。これだからつるむのは嫌いなんだ。」

ルイン「マリノ」

その言い方を諫めようとしたルインだが、ゼロに止められる。

マリノ「それにしても…ちぇっ!!また私も助けられたって訳だ…こうなったら、とことんまでやるよ…リベリオンをぶっ潰してやる」

それだけ言うとマッシモが横たわるメンテナンスベッドの傍にある椅子に腰掛けた。

ゼロ「すまんエックス…俺は席を外させてもらう」

エックス「ああ…」

ゆっくりとした足取りでメンテナンスルームを出て行くゼロの背中はどこか寂しげだった。

ルイン「エックス…」

エックス「正直…まだ信じられないんだスパイダーのことを…スパイダーが…死んだことに…」

ルイン「うん…」

エックス「あいつはいつも軽くて、いつも人をからかって…俺とあいつは水と油みたいだったけど……でも、時々助けてくれる大切な仲間だった…助けてくれた借りを返すことも出来なくなった俺はどうすれば…あいつはもう…いないのに…」

拳を握り締め、脳裏を過ぎるのはスパイダーと共に過ごした日々。
時々スパイダーから、からかわれたりしたが、とても楽しかった。

ルイン「スパイダーのことを忘れないことじゃないかな…?」

エックス「忘れないこと…?」

ルイン「うん、私達がスパイダーの生き方、スパイダーなりの友情、スパイダーが私達に残してくれたことを忘れないこと…そして、スパイダーが繋げてくれた命で最後の最後まで生きて戦うことが、スパイダーの想いに報いる唯一の方法だと私は思うんだ。」

エックス「ああ…そうだな、スパイダーのためにも…戦わなければならないな…」

アリア「マッシモ君はもう少し安静ね…みんな、レプリロイドには死ぬという概念は存在しないと私は思うの」

シナモン「え?」

アクセル「どういうこと?」

アリアの言葉に全員が彼女を見遣る。
シナモンとアクセルは疑問符を浮かべていた。

アリア「壊れたり、機能停止してもその身体から新しいレプリロイドとして造り直されるから…例え別のレプリロイドになっても他のみんなのメモリー…記憶に、魂に残り続けるの……」

エックス「アリア…博士……?」

気のせいだろうか?
一瞬だけ彼女が自分達とは遠い世界の存在に見えてしまった。
全員も同じ気持ちなのだろう。
誰も声を発することは出来なかった。

アリア「だからね、スパイダー君もいなくなった訳じゃないよ。スパイダー君は君達のメモリーの中で生き続けているから………私、少し仮眠を取るから、マリノちゃん、少しの間だけマッシモ君の看病お願い…みんなも少し休んでね」

エックス「あ、はい…」

アリアに促され、エックス達はメンテナンスルームを後にした。
残されたマッシモとマリノはメンテナンスルームの窓から見える青空を見つめていた。

マリノ「スパイダーは私達のメモリーで生き続けているか…確かに無理に死んだことを受け入れるよりよかはマシかもね」

マッシモ「そうですね…でも、もし俺がもっともっと、もっともっと強かったら…マッシモ師匠みたいに強かったらあいつを救えたんでしょうか…?」

マリノ「馬鹿言うんじゃないよ。あの時誰にも何も出来なかった。あんた1人で背負い込むんじゃないよ」

マッシモ「…はい」

マリノ「そう言えば、あんたに礼を言ってなかったね…ありがとう助けてくれて」

マッシモ「え?」

首を傾げるマッシモに苦笑しながらマリノは説明する。

マリノ「ほら、エンシェンタスの攻撃から庇ってくれただろ?」

マッシモ「あ、いえ…別に礼を言われるようなことじゃあ……」

マリノ「言われるだけのことさ…あんたさ、いつも戦いになると私を庇ってくれるけど…どうして?」

マッシモ「え…?そ、それは…その…」

想いを寄せる人物からの問いに赤面するマッシモ。
アーマーで顔が隠れているから赤面していることには気付かれてないが。

マリノ「マッシモ?」

黙り込んでいるマッシモをマリノは不思議そうに見つめる。
マッシモは想いを伝えてしまおうかと思ったが、脳裏に師とスパイダーの死が過ぎった。
拳を握り締め、マッシモはマリノに頭を下げる。

マッシモ「すみませんマリノさん……今はまだ言えません…」

マリノ「今は…?」

マッシモ「はい…俺がこのアーマーを纏うのに…マッシモの名を名乗るのに本当に相応しい男になれたら…あなたに言います…すみませんが…それまで…待っていて下さい…」

頭を深く下げながら言うマッシモにマリノも苦笑しながら溜め息を吐きながら頷いた。

マリノ「分かったよ…待ってるよ。その時までね」

マッシモ「すみません……」

マリノ「でもさ、マッシモ」

マッシモ「?」

マリノ「あんたは私から見ても充分過ぎるほど強いよ」

それだけ言うと、飲み物を取りに行くマリノ。
マッシモは軽く頭を下げると再び空を見上げた。












































ヘリポートにて、ゼロは長い金髪が風で靡くのも気にせず空を見上げていた。

アイリス「ゼロ……」

ヘリポートにアイリスが来た。
彼女の栗色の髪も風で靡いていく。

ゼロ「アイリスか…」

振り返ったゼロの表情はとても悲しそうだった。
その表情を見たアイリスは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
ゼロは悲しげに微笑むと口を開いた。

ゼロ「アイリス…俺は今、リベリオンの奴らを手当たり次第に叩き斬ってやりたい気分だよ……」

アイリス「…………」

ゼロ「イレギュラーハンターを続けてきて、シグマとの戦い、新世代型レプリロイドの反乱、そして今までの戦いで俺は仲間を何度も失ってきた……その度に俺はそいつらの意志を継いで強くなることを誓ってきたんだ……」

アイリス「知ってる…あなたが兄さん達のことも一時も忘れたことなんてないことを…」

ゼロ「……俺も弱くなった物だな…昔はもっと簡単に割り切れたはずなのに…エックス達の甘さが移りすぎた…」

アイリス「ゼロ…あなたは最初から優しかったわ。ただ、それを表現出来なかっただけ…あなたが最初からとても優しい人だった」

ゼロ「…………」

アイリス「ゼロ…」

ゼロ「何だ?」

アイリス「もしあなたが挫けそうになるくらい辛い時…私はあなたの支えになれるかしら……?」

ゼロの頬に手を添えながら言うアイリスにゼロは微笑を浮かべる。

ゼロ「いや…アイリス…お前は笑っていてくれる方がいい…その方が…多分、支えになる…と思う…」

アイリス「ええ…私はライブメタルがないとあなたと一緒に戦うことも出来ないけれど…心は何時でもあなたの傍にいるから…」

直後である。
アイリスの指に雫が落ちたのは。

アイリス「…?…ゼロ…?あなた…」

ゼロ「…?」

その時…ゼロは己の目元に違和感を感じた。
何か液体のような物がとめどめなく溢れ出ていたのである。
それを見たアイリスは目を見開き、ゼロも驚愕する。
ゼロは人型レプリロイドには珍しく感情を表す機能として、涙を流す機能を搭載してはいない。

ゼロ「馬鹿な…涙だと…?」

ゼロは流れる涙に目を見開くが、アイリスはすぐさま原因に気付いた。
ゼロの身体に涙を流せる機能を搭載出来る人物は1人しかいない。

アイリス「ゼロ…きっとアリア博士よ…きっとこれは、アリア博士からのプレゼントよ」

ゼロ「チッ…余計なことを……」

強引に涙を拭き取るゼロに対してアイリスは微笑を浮かべた。

アイリス「いいじゃないゼロ…涙が流せるのは、とても素敵なことだから…」

ゼロ「アイリス…ありがとう……」

そう言ってアイリスの肩を抱き寄せるゼロ。
アイリス自身ゼロの求めに応じるまま、彼を出来る限り支えて行こうと固く心に誓った。 
 

 
後書き
何かようやくゼロとアイリスが進展したような気がする。 

 

Another20 白い死神

 
前書き
アクセルのもう1つのハイパーモード覚醒。 

 
エックス達は超フォースメタルのことをリディプス大佐に報告しようとしたのだが…。

エックス「くっ…駄目だ!!」

アリア「う~ん。リベリオンの通信妨害が酷くなったのかな?全く通じなくなっちゃったよ。」

アル「超フォースメタルとやらのことを大佐に報告したかったのだがな…」

ルイン「アリア博士、何とかならないんですか?」

アリア「流石の私も(今は)神様じゃないからねえ…無理な物は無理」

ルインの問いにアリアは申し訳なさそうに笑いながら言う。

アクセル「リベリオンとの決戦を控えて、リディプス大佐との連絡が断たれたのは厳しいね」

ルナ「ああ、未だにリベリオンの戦力は未知数なとこがあるからな。リディプス大佐の支援無しとなると…ちょいと厳しいかもしれねえ」

エックス「…何とか、奴らの妨害を止めることは出来ないかな?」

ナナ「通信妨害波の発信地点を絞り込みました…でも…」

ナナがモニターに通信妨害波の発信地点である場所を映すとアル長官が目を見開いた。

アル「あれはオノバン・デザート!!」

ルナ「どうしたんだよアル?オノバン・デザートってとこが何か問題でもあんのか?」

ナナ「ルナさん、オノバン・デザートはギガンティスの中でもとても危険な場所なんです」

疑問符を浮かべるルナにナナがそう言うと、ガウディル博士が説明を始める。

ガウディル「うむ、予測の出来ない流砂がいくつもあってな。あれに飲み込まれたらどんなレプリロイドも一巻の終わりじゃ!!リベリオンの奴らめ、とんだ場所に施設を作りおったもんじゃ!!」

アル「いくら何でもあそこに乗り込むのは…」

顔を顰めるアルにマッシモはランサーを握り締めながら叫ぶ。

マッシモ「行こう!!どんなに危険でも、もう俺達はやるしかない!!」

シナモン「はい、きっとスパイダーさんがいたらこう言うと思いますよ?“これ以上リベリオンの好き勝手はさせない”って」

ゼロ「その通りだ。それにこれから決戦に向けて危険じゃない任務なんて1つもない。そうだろう?」

ルイン「大丈夫です。必ず生きて帰りますから」

エックス「よし、行こう。」

アリア「ちょっと待った。流石に砂漠を行くとなると、そのままじゃヤバいよ。このローブを持ってって。」

アリアは全員分のローブを取りに行くとエックス達にそれを渡した。

マッシモ「これは何だい?アリア博士?」

マッシモが渡されたローブを見つめながら首を傾げる。

アリア「バナリア大砂漠の砂嵐から身を守るための物だよ。念のための装備だよ」

砂嵐はただの砂嵐ではなく、視界を奪うだけでなく、レプリロイドを麻痺させる等の機能を含む化学兵器である可能性もあるのだ。
出来るだけ砂嵐から身を守れというのだろう。

アイリス「気をつけてねみんな。バナリア大砂漠には施設へと繋がっているケーブルがあるらしいの。出来るだけケーブルの向きに沿って歩いてみて」

全員【了解!!】

転送システムに乗り込み、バナリア大砂漠に向かう。









































バナリア大砂漠に着いたエックス達だが…。

アクセル「痛っ!!?痛たたたたた!!痛い!!地味に痛い!!」

猛烈に吹き荒れる砂嵐をまともに喰らったアクセルが悲鳴を上げた。
全員が即座に顔を出来るだけ露出しないようにアリアから貰ったローブで身を守る。

ルイン「まさか、此処まで酷いなんてね…アリア博士からローブを貰っておいてよかった。」

砂漠での任務は多々あるが、ここまで砂嵐が酷い場所はなかった気がする。

ゼロ「これがアイリスの言っていた施設に繋がっているというケーブルか?」

ケーブルが伸びている装置を発見し、砂に埋もれているケーブルを見つめる。

ルナ「うがああ…何でこんな面倒臭い任務なんだ。」

エックス「とにかく、ケーブルの向きに沿って進んでみよう」

ルイン「うん。シナモン、はぐれないようにね?」

シナモン「はい」

ローブで砂嵐から身を守りながらゆっくりと確実に前に進んでいくエックス達。
少しでも離れてしまえば、誰かも分からなくなってしまうために固まりながら進む。








































……バナリア大砂漠に来て何時間過ぎただろうか?
全く変わらない景色に感覚も麻痺しかけてきた時であった。

ルナ「痛っ!!?」

少し前を歩いていたルナが何かにぶつかって尻餅をついた。

アクセル「大丈夫ルナ?あれ?これ、建物?」

ペタペタと触るアクセル。
歩く途中で散々見てきた装置とは違う感触に目を輝かせる。

マッシモ「本当だ。扉もあるぞ!!」

マッシモも喜色を浮かべながら扉に手をかけるが開かない。

マリノ「あらら、ロックが掛かってる。こりゃあ私じゃあ解除出来そうにないね」

ルナ「俺でも無理そうだな」

エックス「仕方がない。俺はこの辺りを見てくる。もしかしたら、何かあるかもしれない」

マッシモ「俺も行こう。1人で行くのは流石に危険だ」

ゼロ「マッシモの言う通りだ。せめて俺も連れていけ」

ルイン「私も行くよ。アクセル、ルナとマリノとシナモンをお願いね」

アクセル「分かったよ、任せといて。そっちも気をつけてね」

エックス、ルイン、ゼロ、マッシモの4人が辺りを見に行く。

アクセル「さてと」

入り口付近に腰掛けるアクセル達。
ようやく緊張の糸が解けたのか、砂嵐が入ってこないこともあり、全員がローブを脱いだ。

ルナ「ああ…やっと一息入れられるぜ」

エネルギーパックを取り出し、一口啜る。
全員が此処まで来るのに消費したエネルギーを補充する。

シナモン「エックスさん達…大丈夫でしょうか?」

ルナ「大丈夫だと思うけど…しかしこの砂漠、レーダーも何も使い物にならねえな。セカンドアーマーのエネルギートレイサーやサードアーマーのフィールドレーダーも使い物にならねえと思う…」

アクセル「大丈夫だよ。エックス達がそう簡単に死ぬもんか。スパイダーから貰った命を無駄になんかしないよ」

マリノ「そうだね、あいつらのことは気に入ってるからね…死んで貰ったら困るよ」

シナモン「はい…でも…嫌な予感がするんです…」

アクセル「シナモン…あまり縁起でもないこと…」

その時である。
僅かだけアクセルの耳に届いた悲鳴を。

アクセル「この声は…ルイン!?ま、まさか!!」

ルナ「アクセル!!?」

いきなり駆け出したアクセルをルナ達が追い掛ける。










































声が聞こえた場所に辿り着くと、そこには流砂と飛行型の女性レプリロイド。

「あら?お仲間?」

アクセル「あんた…エックス達をどうしたのさ?返答次第じゃタダじゃおかないよ?」

「エックス達?ああ、坊や達なら流砂に飲み込まれちゃったわよ?落としたのは私だけど」

シナモン「そ、そんな…エックスさん達まで…」

スパイダーに続いてエックス達まで死んでしまった。
そのことに力なく膝を着いてしまうシナモン。

マリノ「しっかりしなシナモン!!あいつらがそう簡単に死ぬわけ…」

ルナ「そ、そうだぜ…死ぬもんか…」

アクセル「あんたさ…覚悟は出来てるよね?」

「覚悟?何の覚悟かしら?」

アクセル「スクラップになる覚悟さ…!!」

殺気を放ちながら、バレットを構えるアクセルに女性は嘲笑を浮かべる。

「スクラップ?悪いけどそれになるのは坊や達よ。それから私の名前はフェラムよ」

アクセル「どうでもいいね。イレギュラーの名前なんか…マリノさん、ルナ…シナモン連れて離れて。」

ルナ「え?」

アクセル「こいつとまともにやり合えるのはホバーが使える僕だけだ。全員で戦えば楽かもしれないけど、視界も何も利かないこの場所じゃ、同士討ちになるかもしれないから」

マリノ「アクセル…」

アクセル「お願い」

マリノ「分かったよ。死ぬんじゃないよアクセル!!」

アクセル「死ぬ理由がないからね。あのイレギュラーをちゃちゃっとスクラップにするだけだしね…さあ、行くよ!!」

可変翼を展開して、空を舞うアクセル。

フェラム「私の動きについて来れるかしら坊や!!」

アクセル「坊やなんて言われる歳じゃないけどね。大体僕からすれば殆どみんな年下だよ。あんたもイプシロンもね…革命弾!!」

バレットから連射される特効弾。
フェラムは空中戦に特化したレプリロイド。
故に機動力を得るために装甲は薄いはずだ。

フェラム「ふふ、どこを狙っているのかしら?」

アクセル「え!!?」

特効弾がすり抜ける。
確かにフェラムに直撃させたはずなのに。

アクセル「まさか、半実体のエネルギー分身?」

フェラム「ご名答。私のクリムゾンシェードの正体に気付くなんて流石は伝説のイレギュラーハンターね。そおら!!」

電磁ウィップをアクセルの背中に叩きつける。

アクセル「うっ!?」

フェラム「まだまだ!!」

続いてアクセルの足に電磁ウィップを巻き付け、細い腕からは想像出来ない力でアクセルを何度も地面に叩き付ける。

アクセル「うわああああ…!!こ、このおっ!!」

バレットから放たれた銃撃はフェラムの電磁ウィップを切断するとハイパーモード・ステルスモードを発動する。
発動中は光学迷彩で姿を消し、攻撃性能も飛躍的に上昇するのだが…。

フェラム「そこよ!!テラブリザード!!」

アクセル「がっ!!?」

テラブリザードをまともに喰らい、地面に墜落するアクセル。

ルナ「アクセル!!」

フェラム「ふふ、馬鹿ね。こんな砂嵐が吹き荒れる場所で光学迷彩を使ってもバレるに決まっているじゃない」

アクセル「っ…しまった…」

頭に血が上り、こんな初歩的なミスをしてしまった。

フェラム「私を相手によく頑張ったわ坊や。今からエックス達の後を追わせてあげる」

アクセル「ぐっ…畜生…」

唇を噛み締めるアクセル。
こうまで一方的にやられるのは途轍もない屈辱だ。
しかし今の自分では勝てない…。
悔しさに砂を握り締めると、固い感触がした。
そちらに目を遣ると、大量のDNAデータがあった。
何故こんなにと疑問を感じるが、確かバナリア大砂漠には沢山のレジスタンスや砂漠環境に適応したレプリロイドの試作機などのレプリロイド達が死んだ場所だと噂で聞いた。
このDNAデータもそのレプリロイド達の物だとしたら…。

アクセル「(ごめん…力を貸して!!)」

大量のDNAデータを一気に解析し、基礎性能を飛躍的に向上させていく。
そしてもう1つのハイパーモードを発動した…。

アクセル「ハイパーモード・ホワイトアクセル…!!」

アーマーが今までの漆黒とは正反対の純白に変わり、赤いラインが紫になり、瞳の色が翡翠から血を思わせる紅へと変わる。

ルナ「あ、あれは…」

ルナの動力炉が音を立てるような感覚を覚える。
100年前の新世代型レプリロイドの反乱でシグマの力で覚醒した凶悪な力。
今のアクセルは自分の知るアクセルなのだろうかと不安になったが、すぐさま首を振る。
アクセルを信じる、それが自分に今出来る全てだ。

フェラム「複数のハイパーモードを坊やも持っていたのね。でも身体の色が変わったくらいで勝てるのかしら?」

アクセル「勿論勝てるさ…これからスクラップ予定のあんた如きくらいね…何故なら…」

口元を歪めながらアクセルは言う。
アクセルの全身から純白の輝きが放たれ、砂嵐の砂を蒸発させてしまう。

アクセル「(ヤバいね…少しでも気を抜いたらオーバーヒートしそう)」

一度に大量のDNAデータを解析して基礎性能の大幅向上とハイパーモード・ホワイトアクセルの併用でアクセルの身体に多大な付加が掛かっている。
しかし…。

アクセル「(でも…今は死人の力を借りて、そして大嫌いな奴らから貰った姿と力でも…エックス達の無念を晴らす時なんだ。元より手段を選んでいる余裕も無いし、負けることは許されない…!!)」

ギリッと歯を軋ませるアクセル。
鋭くフェラムを睨み据え、血を思わせる紅い瞳が更に凄みを増す。

アクセル「真の力を発揮した僕は、最強だからねえ…少なくともあんた如きを一方的に叩きのめせるくらいには……」

ニヤリと笑うアクセル。
変身能力で即座に全身の傷を癒やし、通常時とは比較にならない脚力でフェラムに肉薄する。

フェラム「なっ!?」

アクセル「そうそう、この姿になると、少しばかり好戦的になるんだ。そおら!!」

フェラムの足を掴み、強引に投げ飛ばして地面に叩き付ける。

フェラム「ぐっ!!」

アクセル「革命弾!!」

特効弾の連射がフェラムに放たれるが即座に飛翔、クリムゾンシェードを使う。

アクセル「クリムゾンシェード…そいつは少し厄介だね。地に這い蹲ってもらおうかな?変身、マッドノーチラス。デスグラビティ」

マッドノーチラスが放った重力弾の引力に引かれ、フェラムは重力弾の直撃を受けて地面に落下した。
しかしアクセルの攻撃は止まない。

アクセル「変身、ワイルド・ジャンゴー。ローリングアサルト」

次はジャンゴーに変身し、高速回転体当たりを喰らわせる。
しかも氷属性のフェラムにはジャンゴーの攻撃は威力が有りすぎた。

フェラム「あああああっ!!?」

アクセル「ゲヘナフレイム。裁きの雷。」

ジェントラー、エンシェンタスに連続で変身し、地獄の業火と裁きの轟雷が容赦なくフェラムを襲う。

シナモン「…………」

あまりの圧倒的な強さにシナモンは沈黙する。
隣のマリノも同じだ。
今までのアクセルは一度変身すると、少しの間変身が出来なくなっていたが、今のアクセルには全くそれが見られない。

フェラム「う…く…くう…」

アクセル「驚いたでしょ?この姿になるとね、通常時では無理だったコピー能力の連続使用が可能になるんだ。フォースメタルのアクセラレータのおかげで更に強化されてる。名付けてDNAアサルトってとこかな?どう?リベリオン幹部の…特にジャンゴーとエンシェンタスの攻撃は効いたでしょお?」

フェラム「こ、この!!」

電磁ウィップがアクセルの頬に炸裂した。

シナモン「アクセルさん!!」

アクセル「あ~、大丈夫大丈夫。これくらいなら直ぐに治せるし」

慌てるシナモンを手で制して、すぐさま変身能力で自己修復する。

アクセル「でもいい一撃だよ。流石は幹部だね♪」

フェラム「ば、化け物か…」

アクセル「化け物?ああ、そうだよ。あんたみたいな大馬鹿イレギュラーがいなきゃ、解き放たれなかったイレギュラー以上の化け物…死神だよ」

笑いながら言うアクセル。
しかしそれはどこか自分を嘲笑っているようにルナには見えた。

フェラム「く、来るな!!来るなああああ!!」

電磁ウィップを振るいながら後退するフェラム。
しかしアクセルは電磁ウィップの軌道を完全に見切っているのか1発たりとも当たりはしなかった。

アクセル「ちょっとちょっと。あんた一応幹部でしょ?幹部ともあろう者が敵前逃亡?情けないねえ…」

そんなフェラムの姿にアクセルは苦笑しながらも楽しげにその足取りを追って普通の速度で走り出す。
その気になればフェラムを捕まえることなど造作もないと言うのにだ。

アクセル「全く、そんなに怯えなくてもいいんじゃないの?そんなに怯えられたら流石の僕も傷つくなあ。そんな直ぐにはスクラップにしないであげるから大丈夫だよ♪」

フェラム「ひ…ひいい!!来るなああああ!!!!」

アクセル「それは無理な相談だね。僕はあんたを今すぐにでもスクラップにしてやりたいくらいなんだからさ、直ぐにスクラップにしないだけ有り難いと思ってよね。幹部なんだから少しは覚悟を決めたらどうなの?ジェントラーとかはもっと潔かったよ」

そんな逃げる彼女を喜々としてアクセルが追う。
少しスピードを上げようとした瞬間である。

シナモン「きゃあああああ!!?」

アクセル「え…?」

シナモンの悲鳴にアクセルがそちらを見遣ると、巨大なメカニロイドであるD-REX数体にルナ達が襲われていた。

アクセル「くそっ!!」

フェラムを無視して即座にシナモンとルナ達を助けに向かう。
フェラムは翼を広げて逃走したが、アクセルの興味は既にフェラムにはない。
アクセルはルナ達とD-REXの間に立つ。

アクセル「変身、シルバー・ホーンド!!アビスプレッシャー!!!!」

巨大なエネルギー弾が、D-REX達に炸裂し、生き残ったD-REXには。

アクセル「ビーストキラー!!!!」

ビースト系メカニロイドに特効がある特効弾がD-REXに炸裂し、爆砕した。

アクセル「はあ…はあ…」

荒い息を吐きながら通常時に戻るアクセルにルナが静かに歩み寄る。

ルナ「アクセル…大丈夫か…?」

あんな異常な力を発揮したアクセルの身体を案じるルナだが、アクセルは彼女を安心させるように呟いた。

アクセル「…うん、でもあいつを逃がしちゃった。エックス達の仇を……」

ルナ「大丈夫、今は休もう…な?」

アクセル「うん…」

施設の入り口に戻り、扉の前に立つと、扉が開いた。

アクセル「あれ?」

マリノ「扉が開いた?」

シナモン「あ…この反応…」

4つのエネルギー反応が此方に来ている。
シナモンの表情が明るくなる。

ルイン「みんな!!」

ルナ「ルイン!それにエックス達も…」

マッシモ「運が良かったんだ。砂漠の下の地下断層に出たんだ…。」

ゼロ「ともかくは助かったというわけだ。あの女はどうした?」

マリノ「ああ、フェラムって奴?あいつはアクセルがとんでもないハイパーモードを使ってボコボコにしてやったよ。」

ゼロ「そうか…」

アクセル「それにしても良かった…」

一気に疲労が押し寄せ、アクセルは壁に背中を押し付けながら座り込んだ。

エックス「すまない、心配をかけて…アクセルが回復するまで休憩しよう」

アクセルが回復するまで休憩を取ることにしたエックス達であった。









































一方、フェラムは悔しげに唇を噛み締めていた。
最初は優位に戦っていたのにもう1つのハイパーモードを発動させられた途端に逆転された。
圧倒的な力の前にただ怯えて逃げることしか出来なかったという事実はフェラムのプライドを激しく傷つけた。

フェラム「次は…こうはいかないよ」

激しく傷付いた身体に負荷をかけない速度で、フェラムはバナリア大砂漠を離れたのであった。 
 

 
後書き
ホワイトアクセル覚醒。
DNAアサルトはコマンドアーツに近い性能の物だと考えて下さい。
ステータス強化はパワー1.5倍、スピード2倍、属性耐性氷属性のブラックゼロの正反対

 

 

Another21 ボロック

 
前書き
ボロックとの戦闘です 

 
フェラムを撃退し、何とか合流したエックス達とアクセル達。

アクセル「いやあ、それにしても良かったよ。てっきり流砂に飲み込まれて死んだんじゃないかなって…あ~身体が怠い」

無理に無理を重ねたためか、未だに怠さが無くならないアクセル。

エックス「心配をかけたな…しかしアクセル、お前は大丈夫なのか?あの力はお前の身体に多大な負担をかけるはずだ」

アクセル「あ~、ハイパーモード自体はフォースメタルで緩和されてるんだけど、一気に大量のDNAデータを解析して基礎性能を急激向上させたのがいけなかったみたい。」

全身の感覚が異常に研ぎ澄まされ、違和感をヒシヒシと感じる。

シナモン「大丈夫ですかアクセルさん?」

エンジェリックエイドで回復し続けているシナモンがアクセルの身を案じる。

アクセル「うん…大分楽になった。もう、大丈夫。さあ行こう、みんな!!」

回復したアクセルが立ち上がるのを見ると全員が奥へと向かう。








































エックス達から施設内のことを聞いたアクセル、ルナ、マッシモ、マリノは通信妨害装置レーザーエネルギー制御室にいた。

アクセル「えっと、この反射板でレーザーを曲げて、あの装置に当てればいいんだよね?」

ルナ「ああ、そうすれば通信妨害装置のレーザーエネルギー動力炉にエネルギーが供給されて端末を動かせるようになるらしい」

マッシモ「施設内の通信なら出来るのが幸いだったな」

マリノ「えっと…この反射板はこうなって、んで…あそこは……」

4人が反射板を操作し、レーザーを反射板に当てると、反射板がレーザーを反射して、パネルにレーザーを当てる。

マリノ「よし、成功!!」

アクセル「こちらアクセル。レーザーエネルギーの供給に成功!!」

エックス『ああ、こちらでもそれを確認した。次は南西の部屋に…』

ルナ「……悪い、敵だ。警備用メカニロイドのトリニティキラーだ」

通信を切ると、全員が身構える。
トリニティキラーがメーザーを放ってきた。

マリノ「メーザーだ!!かわしな!!」

アクセル「危な…っ」

メーザーを反射板の陰に隠れてやり過ごすアクセル。
威力は大したことはないが、光学兵器の中でも弾速が早く、人工皮膚に当たると大変なことになる。

マッシモ「どうする?こうもメーザーを連発されたら攻撃出来ない」

アクセル「僕が変身してもいいんだけど、この部屋かなり狭いからな」

重装甲型のシルバー・ホーンドやマッドノーチラスは巨体の為にこの狭い部屋では動けないのだ。

ルナ「ここは俺の出番だな。」

バレットのエネルギーチャージを開始するルナ。

アクセル「え?ルナ…ま、まさか…」

ルナ「全員屈め!!リフレクトレーザー!!」

バレットから放たれたチャージレーザーが天井や壁を反射し、見る見るうちにトリニティキラー達を殲滅した。

マッシモ「す、凄い…殲滅したぞ!!」

ルナ「あはははは!!どうだリフレクトレーザーの威力…いいっ!!?」

反射板で跳ね返ったリフレクトレーザーとエネルギー供給用レーザーにより、アクセル達は危険な目に遭う。

マリノ「ちょ、危ない!!」

リフレクトレーザーが反射板に当たる度に反射板の向きが変わり、供給用レーザーの向きも変わるためにアクセル達は命の危険を感じたのであった。

アクセル「こんな反射板が沢山ある場所でリフレクトレーザー使ったら危険に決まってるじゃないかーーーーっ!!!!」

ルナ「ご、ごめん!!」

何とか無事に抜け出せたアクセル達はルナにリフレクトレーザー禁止令が出された。











































この後、スピードがあるアクセルとマリノが速攻で敵を片付けることでメカニロイドの攻撃から逃れた。
全てのエネルギー供給用レーザーをパネルに当てたアクセル達。

アクセル「よし、これで終了だね。エックス、レジスタンスベースとの通信は…」

エックスに通信を繋げ、レジスタンスベースとの通信が可能になったかと尋ねようとした瞬間。

『きょほほほ!!皆さんよくもやってくれましたね。よろしい…最上階へご案内しましょう。中央エレベーターから上がってきなさい…この私が直々にお相手してあげましょう。きょぉぉ~ほっほっほー!!』

奇妙な笑い声が施設内に響き渡り、アクセル達は顔を見合わせた。

アクセル「多分、今のがこの施設を守っているリベリオン幹部かな?」

ルナ「フェラムじゃなかったんだな…」

マリノ「ふん…上等だよ。返り討ちにしてやろうじゃないか!!」

中央エレベーターに向かい、上の階にいるエックス達と合流して最上階に向かう。








































「きょ~っほっほっほ!!死に損ないの皆様、ようこそ!!いや、しかし。流砂に飲み込まれたのに生きているとは悪運の強い方々ですな。いや、寧ろ。運が悪いのですかね?この私の前にやって来る羽目になったのですからね!!きょほほほほほ!!」

最上階に来た途端現れたのは、背部に巨大なジェットユニットと音叉のような物を装備した恰幅のよいレプリロイドだ。

ルナ「お喋りな野郎だな。何者だ?」

「これは紹介が遅れましたな。私はボロック。全レプリロイドの輝ける理想…リベリオンが幹部の1人にございます」

ルナ「下らねえ…とっとと通してもらうぜ」

ボロック「きょ~っほっほっほ!!そうはいきません!!ジャーン!!皆さんご存知ですね。これは超フォースメタル」

エックス「超フォースメタル!!?」

超フォースメタルを見た瞬間、エックス達の表情に焦りが浮かぶ。

ボロック「そうでーす。たったこれっぽっちの超フォースメタルですが…カチッとな」

ボロックが自身の拡張スロットに超フォースメタルを差し込むと、ボロックのエネルギーが急上昇する。

ボロック「きょ~っほっほっほ!!御覧下さいこのパワー!!きょ~っほっほっほ!!それではこのパワーで皆様方をボコボコにして差し上げますね!!出でよQビット!!」

天使を思わせるビットを召喚するボロック。

ルナ「ふざけんな!!返り討ちにしてやる!!リフレクトレーザー!!」

ボロック「きょほほほ…バトルラプソディ♪」

ボロックの歌が音叉によって強力な衝撃波となってリフレクトレーザーを弾いた。

ルナ「んなっ!!?」

ルイン「なら、チャージセイバー!!」

ボロック「ぐほおあ!!?や、やりますえ…しかあし!!」

ルイン「痛っ!!?」

再び衝撃波を放ってルインを吹き飛ばす。
歌声だから確実に喰らってしまう。

ボロック「きょ~っほっほっほ。ん?」

マリノ「そらそらそら!!」

シナモン「えーい!!」

マリノとシナモンの同時攻撃が炸裂する。

ボロック「ぐへええ!!な、何ですかその猫の前足をデフォルメしたようなファンシー過ぎるヘンテコな武器は…思わず唖然となってしまいました…」

ルナ「だろうな…」

にゃんこグローブのあまりの場違いすぎる見た目に誰もが初めて見ると唖然となってしまうだろう。
初見では大した武器ではないと思い、油断する敵が多い。
もしアリアがそこまで計算していたとしたら凄い。

アクセル「追撃行くよ。変身、エンシェンタス!!永久氷河!!!!」

絶対零度の冷気をボロックに喰らわせる。
ジェントラー同様、炎属性のボロックには効果は抜群だった。

ボロック「ぎょわあああああ!!?ぐぐぐ…こうなったら私の最大の技を見せて差し上げましょう!!私の美声に酔いしれるがいい!!」

ボロックは超フォースメタルのエネルギーを全開にすると、Qビットと共に歌い始めた。
全員が気を抜いた瞬間であった。

ルイン「あ、あれ?」

急に足から力が抜け、膝をついてしまう。

ゼロ「ルイン?…ぐっ!!?」

身体の不調を感じたゼロも膝をついてしまう。

マリノ「な、何だいこれ?急に身体から力が…」

シナモン「か、身体の機能が麻痺していきます…」

マッシモ「ま、まさか…この歌声は、相手の機能を徐々に停止させていく技なのか…?」

ボロック「そうでーす!!いくら強靱なアーマーを纏っていても、私には通用しません。何故なら私はこの美しい美声による内部破壊という戦いを得意としているのですから。きょ~っほっほっほ!!」

ルナ「や、やべえ…意識が…」

エックス「ぐっ…ハイパー、モード…グライドアーマー…!!ホーミングチャージショット!!」

2発の誘導エネルギー弾とチャージショットがQビットと背部の音叉に炸裂し、歌声の威力が急激に下がる。

ボロック「え?」

エックス「くっ…お前の歌声は背部の音叉とビットによって増幅させていたんだろう?つまりビットと音叉さえ破壊してしまえば、お前は殆どの攻撃手段を失う!!」

ボロック「きょ!!?ま、まさか私の能力の弱点を見抜くとは!!」

ゼロ「お前の戦い方を見ていれば気付かん奴などいない!!」

ゼロの尤もな発言と同時に全員がボロックに一斉攻撃を仕掛ける。

シナモン「バイタルスクラッチ!!」

ルイン「チャージセイバー!!」

ゼロ「零式乱舞!!」

マリノ「ハイパーダイブ!!」

アクセル「永久氷河!!」

ルナ「フリージングドラゴン!!」

マッシモ「ベルセルクチャージ!!」

エックス「これで終わりだ!!スパイラルクラッシュバスター!!」

全員がハイパーモードを使い、ボロックに向けて強烈な一撃を喰らわせる。
因みにゼロはパワーフォーム状態での零式乱舞である。

ボロック「うぎゃああああああああ!!!!」

全員の攻撃を喰らったボロックはゴロゴロと転がりながら装置に激突した。

ボロック「ぐっ…レジスタンス共め…ここまでやるとは…あ、ああ!!」

エックスの足元に落ちている超フォースメタルを見て、ボロックは慌てる。

ボロック「イプシロン様から頂戴した。大事なフォースメタルが…んしょ…んしょ…んしょ…」

ゼロ、ルイン「「…………………」」

無言でボロックの眼前にセイバーを翳す2人。

ボロック「ぎょ!!?ぬうう……止むを得ない!!ここはひとまず…撤退だーーーっ!!!!」

見た目から想像もつかないくらいの速さで転送システムに乗り込むボロック。
転送の光に包まれたボロックは次の瞬間消えた。

マッシモ「何だ…歌声にさえ気をつければ大したことない奴だったな」

アクセル「まあ、見た目的にも戦闘に向いてそうには見えなかったしね」

エックス「よし、とにかく。装置を止めることが出来たぞ。」

確認のためにレジスタンスベースに通信を入れるエックス。
無線機のディスプレイにはガウディル博士とアル長官の姿が鮮明に映る。

ガウディル『エックス!!やったのか!?通信妨害が消えたグワ!!』

エックス「ああ、ガウディル。装置は完全に破壊した。」

アル『やったなエックス!!』

通信妨害波発信装置を止められたことにアル長官は笑みを浮かべる。

エックス「ああ…それに…超フォースメタルらしき物が手には入った!!」

掌に簡単に納まるサイズなのにも関わらず、通常のフォースメタルよりも強いエネルギーを放っているフォースメタルをディスプレイに映るガウディル博士に見せる。

ガウディル『グワ!?超フォースメタル!?でかしたエックス!!そいつを分析すれば、奴らが何をしようとしているのか分かるに違いないグワ!!早く戻るんじゃエックス!!分析の用意をして待ってるグワ!!』

エックス「よし、レジスタンスベースに戻ろう!!」

通信を切ったエックスが全員に向けて言うと頷いた。
通信妨害波発信装置の停止だけでなく超フォースメタルを手に入れるという予想以上の結果を出したエックス達であった。 
 

 
後書き
ボロックは下手したらボスの中で最弱の可能性あり 

 

Another22 FM集積プラント

 
前書き
超フォースメタル入手したエックス達 

 
ボロックを撃破し、超フォースメタルを入手したエックス達はレジスタンスベースに戻り、解析準備をして待っていたアリア達に超フォースメタルを差し出す。

アル「超フォースメタルか…これがどんな物か解析出来れば、いよいよリベリオンの企みが明らかになるだろう。ありがとうエックス、みんな。ここまで来れたのは君達の働きがあればこそだ」

マリノ「それにしても何だよあのボロックって奴は…あんな簡単にお宝を落としていきやがった…何か企んでるのは見え見えだったけど…」

アクセル「でも、あのボロックっていう幹部面白かったね。あそこまでお間抜けな奴だとやる気が削がれて大変だったよ。でもあんな奴に限ってしつこかったりするんだよね…」

ゼロ「ボロック…ふざけた奴だったな…次に見つけたら叩き斬る」

シナモン「…………」

ルナ「どうした?シナモン?」

シナモン「あ、いえ…超フォースメタルのことなんです。私はフォースメタルの力で回復能力を持っているので、何となく分かるんです。超フォースメタルは危険だって、こんな物が悪い人達の手にあったら駄目です。」

ルナ「そう言や、シャドウもそうだったけど、超フォースメタルを装着した瞬間、あいつのエネルギーが飛躍的に増大したよな?あんなのを大量に造られたら、流石の俺達も苦しい戦いになるかもな…」

マッシモ「あんな小さな超フォースメタルであれほど強くなるとは思わなかったぜ。小さいのがあるということは大きいサイズの超フォースメタルもあるってことだよな…?」

ルイン「あ、あまりそういうの想像したくないな。僅かな量だったらしいシャドウでもあれほどパワーアップするなら、通常のフォースメタルサイズをリベリオン幹部クラスが装着するとなると…うん、そんなことないはず…あんな莫大なエネルギーに耐えられそうなレプリロイドがいるわけないし…」

シナモン「でも…どうしてリベリオンみたいに技術を悪い方に使おうとする人達がいるんでしょうか?きっと超フォースメタルだって、アリア博士のシステマ・アリアみたいな使い道があるはずなのに…」

エックス「シナモン…そうだな、超フォースメタルにも平和的な使い方があるはずなんだ。あんな小さな超フォースメタルであれほどのエネルギーがあるなら、正しい使い方をすればより地球を豊かに出来るはずだ。」

シナモン「エックスさん…はい、そうですね」

ルイン「とにかく、超フォースメタルの解析まで、まだまだ時間がかかるだろうし。メンテナンス受けておこうよ」

アリア「うん、そうして来て。何とか超フォースメタルの解析を明日までには終わらせとく。みんな、フォースメタルの調整もしとくから。さあ、ゆっくりシタマエ!!」

ゼロ「何だその口調は?」

エックス「凄く懐かしい感じがするな…」

アリアとガウディル博士に超フォースメタルの解析を任せ、エックス達はメンテナンスルームに向かう。








































全員がメンテナンスルームでメンテナンスを受け、ルナが今思い出したように口を開いた。

ルナ「そう言えば、エアシティでスパイダーを見かけた奴がいるって噂を聞いたんだけど」

ゼロ「スパイダーを見かけた?」

ギミアラ採掘場で死んだはずのスパイダーがエアシティで発見されたという噂があることにエックス達は目を見開く。

ルイン「ああ、あれ?私も気になってエアシティに行って聞いてみたんだけど、その噂はスパイダーに片思いしていた人が広めたんだって、スパイダーが死んでしまったって聞いて電子頭脳に異常が出たんだってさ」

マッシモ「そうか…その人はよっぽど好きだったんだな、スパイダーのことが……」

スパイダーの死によって電子頭脳に異常をきたし、妄想と現実の違いが分からなくなってしまった人物にマッシモは同情したように言う。

アクセル「それにしてもギガンティスのレプリロイドは不思議だよね。何か1人1人がエックスやルインやルナみたい。人間臭いって言うか…」

マリノ「そうかい?私らからすれば普通なんだけどね」

ルナ「まあ、最近技術も進歩してるから、エックスや元人間の俺らみたいな思考をする奴らも出てくるのかもな」

ルイン「いいことだよ。いずれ人間とレプリロイドが手を取り合って完全に平等に暮らせる世界が出来るよ」

エックス「ああ、ライト博士が望んだ世界がいつか…」









































翌日、超フォースメタルの解析が完了し、全員がモニタールームに集まる。

ガウディル「この超フォースメタルを解析した結果、こいつは通常のフォースメタルの1万倍違いエネルギーを持っておるグワ!!」

エックス「どういうことなんだ?」

ルナ「だから何だよ?浸食値とかが異様に高いとかか?」

アリア「うん。それもあるけど、こんな小さいサイズの超フォースメタルでも、通常のフォースメタルの1万倍のエネルギーがあるってことは、この超フォースメタルが爆発しようものなら、最低でもギガンティス全体を消し飛ばして塵にする程の破壊力を秘めてるってこと。」

マリノ「はあ!!?」

ルイン「ええ!!?」

アクセル「そんな小さいフォースメタルのエネルギー爆発でギガンティス全体があ!!?」

マッシモ「アリア博士!!そいつを絶対に落とさんで下さいよ!!」

全員が一斉に僅かに後退するが、アリアは豪快に笑いながら説明する。

アリア「あ~っはっはっは!!大丈夫大丈夫☆この超フォースメタルはかなり高性能なケースに収められていて、超フォースメタルのエネルギーは安定しているから大丈夫。強引にエネルギーの波長を狂わせたりすれば話は別だけどね」

ゼロ「脅かすな全く…」

アイリス「そ、それにしてもそれだけのフォースメタルを造れるなんて、リベリオンには本当に優れた技術力があるのね…」

溜め息を吐くゼロと苦笑しながらアリアの手にある超フォースメタルを見つめるアイリス。

ガウディル「とにかく、超フォースメタルを造るためには、膨大な量のフォースメタルが必要となるわけじゃな」

ルイン「ギガンティスで、超フォースメタルを造れそうな施設に心当たりはありませんか?ガウディル博士?」

ルインに尋ねられ、ガウディル博士は顎に手を遣りながら唸り始めた。

ガウディル「う~む、ギガンティスでそれだけ膨大な量のフォースメタルを扱える場所は…フォースメタル集積プラントのメルダ鉱石プラントグワ!!」

ゼロ「なら、そのメルダ鉱石プラントとやらに行ってみるか。これ以上、超フォースメタルを造らせないためにもな」

ルイン「そうだね、行こうよエックス」

エックス「ああ」

アリア「ほら、君達。フォースメタルだよ」

アリアがエックス達から預かっていた専用フォースメタルをエックス達に返す。

マッシモ「ありがとうアリア博士」

アリア「うん…実はね、超フォースメタルを使って君達のフォースメタルを強化してみたんだ。」

ルナ「は?」

アリア「これからの戦いはとても厳しい物になる。少しでも生存率を上げるために利用出来る物は何でも使う。みんな、生きて帰ってくるんだよ」

普段は明るいアリアの真剣な言葉と表情に、受け取ったフォースメタルがいつもより重く感じられた。

ゼロ「…俺達も死にたくはないからな。」

ルナ「大丈夫だって、全員で力を合わせりゃあどんな奴だって片付けられるさ」

ルイン「そうだよアリア博士」

アリア「あは、頼もしいね君達。頑張るんだよ」

エックス「それでは…出撃します」

アリア「ゼロ君、向こうに着いたら読んどいて」

ゼロ「ん?ああ」

ゼロはアリアからメモを受け取ると転送システムに乗り込み、メルダ鉱石プラントに向かうエックス達。











































暗闇の中に雄々しく聳え立つメルダ鉱石プラントに辿り着いたエックス達だが…。

ルナ「寒っ!!?」

ルイン「な、ななな何でこんなに…寒いの…」

シナモン「フォースメタルは精製時に凄い高熱を放ちますから、それを冷やすために、メルダ鉱石プラントは極低温になっているって博士が言ってました。」

アクセル「そういうのは事前に言って欲しいよね…アリア博士にフォースメタルを強化して貰っておいて良かったね。体感温度調節機を最大まで上げても全然エネルギーが減らないし。超フォースメタルのエネルギーって凄いよ…」

マッシモ「これならハイパーモードの持続時間も滅茶苦茶上がってるんだろうな。」

マリノ「いいねえ、思う存分暴れられるってもんさ」

ゼロ「さて」

折り畳まれているメモを開き、内容を読む。

マッシモ「今時、紙のメモなんて珍しいな」

全員がメモの内容を見る。
それは強化の際に解放されたハイパーモードのことに関してのことだ。
ハイパーモードのエックスフォームとプロトフォームのことだ。
エックスフォームはバスターショットとの相性を重視した形態らしい。
バスターショットの連射性能とチャージショットの威力が上がる形態で、一方のプロトフォームはパワーフォーム同様、攻撃に重点を置いた形態。
パワーフォームと違う点は純粋な攻撃力が通常時の2倍であるという点は変わらないのだが、防御力を犠牲にし、犠牲にした防御力を攻撃力に変換するために攻撃力はパワーフォームを遥かに上回るらしい。
その代わり防御力は通常時を遥かに下回るために、プロトフォームを使用する時は必ずシナモンと組むか、エナジーフォームかディフェンスフォームに切り換えるようにと書かれていた。

ルイン「エックスフォームはともかく、プロトフォームは使い辛そうだね」

ルナ「前のゼロが使っていた強化形態の強化版みたいなもんか。超火力紙装甲型の」

ゼロ「らしいな」

メモを折り畳み直す。

エックス「施設の中に入ってみよう」

扉が開き、エックスがハイパーモードの中で最も探索能力の高いサードアーマーを発動した。

ルイン「エックス、大丈夫?」

エックス「ああ、どうやら戦闘をしない限り、エネルギーはあまり減らないようだ。探索だけならこのままで行ける」

アクセル「よし、調査開始だよ!!」

施設内を突き進むエックス達。











































一方、エックス達との戦いで逃げ延び、メルダ鉱石プラントに来ていたボロックは、スカーフェイスからフェラムがメルダ鉱石プラントにあるメンテナンスルームにいる事情を聞いて、吹き出しそうになるのを堪えるので必死だった。

ボロック「では何です?フェラムは先走ったことをして、しくじった挙げ句、エックス達の仲間の…しかもたったの1人にあっさりと返り討ちに遭って、重傷を負い、メンテナンスルーム行きというわけですかスカーフェイス?」

スカーフェイスと呼ばれたレプリロイドはフェラムがいるメンテナンスルームを見つめながら頷く。

スカーフェイス「エックス達の仲間のアクセルにDNAデータを解析する度に基礎性能を向上させる能力があるとはフェラムも思わなかったのだろう。流石はかつては人類救済のために造り出された新世代型レプリロイドのプロトタイプと言うべきか…今回ばかりは相手が悪すぎたとしか言いようがない。フェラムは責められんよ」

ボロック「まあ、彼女のプライドは今頃ズタズタでしょうからね」

自分の力を過信していた分、返り討ちに遭い、敵前逃亡をしたという事実は彼女の傲慢なまでに高いプライドをさぞズタズタにしたことだろう。
日頃からフェラムに対していい感情を抱いていないボロックはもし目の前にアクセルがいたら感謝の言葉か拍手を送っていたかもしれない。

スカーフェイス「ボロック、私は総統の元に戻るが…フェラムと“アレ”のことは任せたぞ」

ボロック「分かっておりますとも。“アレ”の鍵はちゃんと持っています。後は時間まで逃げ延びればいいだけです」

スカーフェイス「うむ…全ては理想のためにだ…ボロック」

転送システムに向かうスカーフェイスの後ろを見遣りながら、ボロックは内心で歓喜していた。

ボロック「(やった!!やったぞ!!鬱陶しいスカーフェイスはこの場を去り、フェラムはアクセルとか言うプロトタイプとの戦いで戦闘不能!!“アレ”の中にある超フォースメタルは私の物だ!!!!)」

ボロックはスカーフェイスの反応がメルダ鉱石プラントから消えたのを見計らい、メンテナンスルームに入る。










































フェラム「くっ…畜生…あいつめ…」

メンテナンスベッドに横たわるフェラム。
アクセルから負わせられたダメージがまだ完全に癒えていないのだ。

ボロック「どうもフェラム。随分と手酷くやられたようですね?」

内心でフェラムを嘲笑いながら尋ねるボロック。

フェラム「ボロック!!ちぇっ、言っとくけどね。あの時は油断したけど今度はあいつには負けない…」

ボロック「リベンジしたい気持ちは分からなくはありませんがねフェラム。たった今から総統より緊急連絡でね。エックス達が我々の計画を嗅ぎ付け、このメルダ鉱石プラントにやってきているのですよ。それで、“アレ”の中にある超フォースメタルを回収して撤退することになったのだよ」

フェラム「撤退!!?」

ボロック「イプシロン様は超フォースメタルが奴らの手に渡るのだけは避けたいと。特にエックスには探索能力の高いアーマーがある。見つけられるのは時間の問題。だからフェラム…お前の鍵を渡してもらおう」

フェラム「待ってよ、鍵は私達のボディに埋め込まれていて、簡単には取り出せないようになっているでしょう!?スカーフェイスに確認を…」

満足に動かせない身体で、スカーフェイスに通信を繋ごうとするフェラムだが…。

ボロック「確認などいらん!!鍵を寄越せフェラム!!」

ボロックの腕が、鍵を埋め込まれているフェラムのボディを穿つ。

フェラム「がっ!!?う…ああああ…っ!!」

ボロック「さあ、鍵を貰うぞ!!!」

フェラムのボディから鍵を奪うと、気絶したフェラムを放置して、ボロックは超フォースメタルのある場所に向かうのだった。 
 

 
後書き
原作とは滅茶苦茶違います

プロトフォームは紅蓮剣装備ブラックゼロみたいなもんです。 

 

Another23 消える神の輝石

 
前書き
超フォースメタル消失。 

 
ボロックがフェラムのボディから鍵を抜き出し、超フォースメタルのある場所に向かおうとした時、エックス達はある場所の小窓付近にいた。

ゼロ「随分と厳重に守られているな。エックス、フィールドレーダーで分からないか?」

エックス「分かった。やってみよう」

意識をヘッドパーツに集中させるとあまりハッキリとは分からないが、巨大な筒状の物に見えた。

エックス「あまりハッキリとは見えないが、この形状は…ロケットか?いや、それにしては…」

ゼロ「エックス…サードアーマーの性能が落ちてるんじゃないのか?」

エックス「っ…し、仕方ないだろう!!サードアーマーのヘッドパーツは100年前の…ドップラー博士の反乱時の監視衛星との同期を前提にして造られてるんだ!!今の監視衛星とでは完全な同期が出来ないんだよ!!」

ルイン「し、知らなかった…そう言えばあの時は私、大破してたからなあ…今の技術力は200年前の…ライト博士やワイリー博士がいた頃に近付いてきているし、その技術力で造られた監視衛星とでは完全な同期は難しいよね」

シナモン「だったら、フィールドレーダーで見た内容をアリア博士達に画像で送ってみたらどうですか?解析出来るかもしれませんよ?」

ルナ「それだよシナモン!!偉いっ!!さあ、エックス。アリア博士に画像を送り出シタマエ!!」

アクセル「ルナ…」

エックス「アリア博士、ガウディル。聞こえますか?これより画像を送ります。画像解析を」

アリア『OK、任せなさい!!ガウディル君、解析準備』

ガウディル『分かったグワ』

画像解析が終わるまで、エックス達は少しの間だけ待つことになった。
しばらくして…。

エックス「どうですか?アリア博士、ガウディル。」

ガウディル『グワ!!?こ、これは!!』

ルイン「え?ガウディル博士、どうしたんですか?そんなに慌てて?」

アリア『慌てるよ、そこにある物を知ったらね…みんな、そこにあるのは弾頭に超フォースメタルを仕込んだミサイルだよ』

ゼロ「ミサイルだと!!?」

ルイン「博士、ミサイルが爆発したらどうなるんですか?」

アリア『う~ん。超フォースメタルのエネルギーが爆発の瞬間、一気に解放されて、少なくても北半球一帯のレプリロイドに影響が出るね』

ルナ「影響って?」

ガウディル『フォースメタルのジャミングの影響でイレギュラーの大量発生だグワ!!』

アクセル「イレギュラーの大量発生!!?」

アリア『エックス君達、何とか超フォースメタルをミサイルの弾頭から取り外して!!フィールドレーダーなら最短ルートで辿り着けるはずだよ!!』

エックス「了解!!」

フィールドレーダーの出力を最大まで引き上げ、ここからミサイル弾頭調整室までの最短ルートを導き出し、エックス達が通路を駆け抜けようとした瞬間である。

エックス「ん…?」

ゼロ「どうした?エックス」

エックス「今、フィールドレーダーが微弱なエネルギーを感知した…。近くにある…」

ゼロ「そんな物放っておけ。今はミサイル発射の阻止を優先すべきだ」

シナモン「で、でも…もしかしたら怪我をされてるかも…」

アクセル「でも、そっちに向かっている間にも、ミサイルが発射されるかもしれないし…仕方ない、シナモン。僕も行くよ、エックス達はミサイルをお願い」

マリノ「ああ、待ちな。私も行くよ」

マッシモ「マリノさんも行くのなら俺も行こう。これで4人。そっちも4人で丁度いいだろう?」

エックス「分かった。そっちも気をつけてくれ!!」

ミサイル弾頭調整室に向かって走り出すエックス達、微弱なエネルギー反応に向かって走り出すアクセル達。









































アクセル「ここは…メンテナンスルーム?」

扉を開くと、メンテナンスベッド等の医療設備があることからメンテナンスルームだと判断したアクセル。

マッシモ「ここか?微弱なエネルギー反応があったのは……」

シナモン「あ、あれは!!?」

マリノ「フェラム!!?」

メンテナンスベッドの横に倒れているフェラム。
ボディに風穴が空き、火花が出ている。

アクセル「おかしいな。僕から受けたダメージにしてはダメージが大きすぎる」

シナモン「大変です、手当てしないと!!」

アクセル「え?ちょ、本気?こいつ敵なんだけど…」

シナモン「怪我人に敵も味方もありません!!」

アクセル「う、わ、分かったよ。」

シナモンの迫力に圧倒され、アクセルはフェラムの治療を認める。
エンジェリックエイドにより、フェラムの傷が癒されていく。

フェラム「う…っ」

アクセル「目は覚めた?」

フェラム「っ!?あんたは…痛っ…」

身構えようとして激痛に顔を歪めるフェラムを見て、シナモンが制した。

シナモン「動かないで下さい。まだ完全に傷が塞がった訳じゃないんですから」

フェラム「あ、あんた…どうして私を…私はあんた達の敵……」

マリノ「怪我人に敵も味方もないんだってさ。生憎私達はシナモンに弱くてね」

マッシモ「シナモンは自分で言い出したことは決して曲げないからな。あんたも大人しくした方がいいぞ」

アクセル「それにそんな怪我じゃ、満足に身体を動かせるようになるまで時間がかかるでしょ。それにしてもあんた、何があったのさ?腹に穴空けて?」

フェラム「っ…そうだ…ボロック…あいつ、超フォースメタルを…」

マリノ「ボロック?あの丸い奴かい?」

フェラム「そうだ…あいつは…超フォースメタルを奪うつもりなんだ…私達の理想のために必要な…」

マッシモ「…理想?世界中のレプリロイドをイレギュラー化させるためがか?」

フェラム「イレギュラー化…?違う…私達は…リベリオンは…そんなこと望んでなんかいない…超フォースメタルは元々、通常のフォースメタルのように…レプリロイドの性能を高めるために生み出されたんだ…超フォースメタルのエネルギーでレプリロイドの性能を高めて…高性能なレプリロイドが増えれば…この世界は…」

アクセル「…そのためにイレギュラー化する危険性が高い手段を使うなんて僕には正しいこととは思えないな」

フェラム「ぐっ…」

シナモン「あ…」

マッシモ「大丈夫、気絶しただけだ。」

気絶したフェラムをメンテナンスベッドに横たわらせ、シナモンが治療を続ける。

アクセル「ボロック…あいつがフェラムを襲って、ミサイルの弾頭の鍵を奪った…一体何がどうなってんの?」

アクセルの呟きはメンテナンスルームの喧騒に消えた。








































一方エックス達も、フィールドレーダーで導き出した最短ルートを駆け抜け、広い部屋に出ると、バナリア大砂漠の施設で戦ったボロックの姿を見つけた。

ゼロ「おい!!」

ボロック「ぎょ!?ぎょぎょっ!?(なっ!?は、速い!!どうやらエックスのアーマーの性能を見くびりすぎていたか…)」

ルイン「あなたは…ボロック!!」

ボロック「こ、これはイレギュラーハンターの皆さん。お早いお着きでしたな。きょ~っほっほっほ!!」

ルナ「ふん、てめえらリベリオンが超フォースメタルで何を仕出かそうとしてんか…全て分かったぜ!!」

ゼロ「だが、貴様らの下らん計画はここで終わりだ。」

エックス「超フォースメタルは…ミサイルは絶対に発射させない!!」

ルイン「あなた達の企みは、私達イレギュラーハンターが必ず潰します。」

ボロック「きょ?素晴らしい!!ミサイルの弾頭についてもご存知なんですか?弾頭の鍵は私が持っているのですぞ。私の持っている2つの鍵を合わせないと、弾頭は開かないのですぞ?きょ~っほっほっほ!!」

ゼロ「そうか、なら簡単だ」

ルナ「てめえをぶっ潰して鍵を頂くとするよ」

ルイン「そして超フォースメタルを回収して終わり」

エックス「覚悟しろ!!」

ミサイルの弾頭の鍵を手に入れるためにエックス達がボロックに武器を向けるが…。

ボロック「果たして…出来ますかな~?出でよQビット!!」

再び天使を思わせるビットを召喚するが…。

ルイン「え?」

ボロック「きょ~っほっほっほ!!」

偽ボロック「「きょ~っほっほっほ!!」」

Qビットがボロックの姿となる。
姿形、データ反応も全てボロックと同じだ。

ルナ「Qビットに俺やアクセルみたいなコピー能力が…」

ボロック「まあ、そのような物です。私もまだやられるわけにはいかないので、さらばさらば!!」

脱兎の如く逃げ出すボロック。
偽ボロック達がエックス達の道を塞ぐように立ちはだかる。

ルイン「あ、逃げた!!」

ルナ「おい、ゴルア!!」

ゼロ「こいつらを片付けてボロックを追うぞ!!!」

エックス「ああ!!ハイパーモード・グライドアーマー!!ギガクラッシュ!!」

サードアーマーからグライドアーマーに換装し、ギガクラッシュで偽ボロック達を吹き飛ばす。

ルナ「ハイパーモード・ウェントス!!プラズマサイクロン!!」

ハイパーモード・ウェントスを発動、プラズマサイクロンで宙に上げる。

ゼロ「零式兜割!!」

ルイン「チャージセイバー!!」

最後に高火力アタッカーのゼロとルインがセイバーによる強烈な一撃を喰らわせる。

エックス「くそ、何とかボロックを捕まえよう。超フォースメタルを回収しなければ!!」

ルイン「うん!!」

エックスはファーストアーマーに換装すると、加速器を吹かす。
ゼロ達も加速器を吹かして、ボロックを追いかけた。









































一方、フェラムの治療を終えたアクセル達は気絶しているフェラムをそのままに、エックス達と合流すべく駆け出した。
エックス達とは違い、最短ルートは分からないために通常のルートを走り、広い場所に出た瞬間。

偽ボロック「きょ~っほっほっほ!!!!来た来た!!」

【侵入者だ~~っ!!】

アクセル「な、何これ…?」

マッシモ「ボ、ボロックが30体も…!!?」

シナモン「きっとボロックは兄弟が沢山なんですね!!30つ子です!!」

マリノ「いや、兄弟って言うか明らかに偽物だろ」

シナモンの天然発言にマリノの冷静なツッコミが炸裂した。

偽ボロック「ボロック様の時間稼ぎのために戦え~」

【戦え~】

大量の偽ボロックがアクセル達に迫る。

マリノ「うわっ!!?来た!!」

アクセル「気持ち悪…変身、シルバー・ホーンド!!アビスプレッシャー!!」

マッシモ「ベルセルクチャージ!!発射!!」

マッシモとホーンドに変身したアクセルの同時攻撃にかなりの数の偽ボロックが吹き飛ぶ。

シナモン「ボールみたいに飛んでいきます…」

マリノ「まあ、見た目がボールみたいな奴だからね…行くよシナモン!!」

ビームチャクラムを構えるマリノとにゃんこグローブを装備したシナモンも偽ボロックに向かうのだった。








































アクセル達が偽ボロック達の相手をしている時、エックス達は本物のボロックにようやく追いついた。

ボロック「きょ~っほっほっほ!!!!」

再び複数のQビットを召喚。
偽ボロックを造り出し、本物のボロックは奥に。

ルイン「ああっ!!?」

ルナ「野郎!!」

偽ボロック「ボロック様の邪魔はさせないぞ~」

ルイン「きゃあ!!?お、重い…!!」

偽ボロックがルインにのし掛かる。
見た目に見合う重量だった。

エックス「スピアチャージショット!!」

他のアーマーのチャージショットではルインを巻き込んでしまうと判断してファーストアーマーからファルコンアーマーに換装し、スピアチャージショットを放った。
本当ならパワー重視のガイアアーマーが良かったが、ルインを巻き込んでしまうためにファルコンアーマーに。

偽ボロック「ぎゃああああ!!?」

ゼロ「ハイパーモード・エックスフォーム!!」

ゼロのアーマーが蒼を基調とした物に変わり、バスターショットを構える。
エックスフォームはバスターショットの性能を高める形態だ。

ゼロ「ダブルチャージショット!!」

バスターショットから巨大な光弾が放たれ、偽ボロックは直撃し、粉砕した。
ゼロの装備はバスターショットを除けば、全部近~中距離の武装しかないが、元々ゼロは100年前のシグマの反乱前はバスターによる戦闘を得意としており、数々の大戦で練磨された近接戦闘技術も相まって遠近両面に隙の無い攻撃能力を誇っている。
距離を取られようが接近戦を挑まれようが、どちらもゼロにとっては格好のテリトリーだ。
ハイパーモード・フォームチェンジにより、ゼロの強さは更に増していた。

ルナ「数だけいればいいってもんじゃねえ!!寧ろ多ければ多い程に俺の武器の威力は跳ね上がるぜ!!ホーミングショット…コネクションレーザー!!」

標的がいればいるほど威力が上がる性質を持つコネクションレーザーは多人数との戦いで真価を発揮する。

ルイン「チャージショット!!」

ルインもZXコンポジットのバスターとセイバーのチャージアタックで確実に仕留めていく。

エックス「スピアショットウェーブ!!!!」

周囲に貫通弾を発生させ、偽ボロック達を薙ぎ払う。
スピアショットウェーブで偽ボロック達を薙ぎ払った時にはボロックのエネルギー反応は更に遠くに。
エックスはファーストアーマーに切り換えて、再び追い掛ける。
ルイン達もエックスに続くが…。






































そしてエックス達が偽ボロック達の足止めを喰らっている最中、ボロックはミサイルの弾頭を開いていた。

ボロック「きょ~っほっほっほ!!!!やった!!遂にやったぞ!!きょ~っほっほっほ!!!!」

弾頭に収められていた超フォースメタルは通常のフォースメタルくらいのサイズだ。
しかし、指で摘まめるくらいの大きさで通常のフォースメタルの1万倍のエネルギーを秘めていたことから、この超フォースメタルがどれ程凄まじいエネルギーを秘めているか分かると言うものだ。

ボロック「これだけの超フォースがあれが、エックス達はおろか、イプシロン以上の力を得ることが出来る。イプシロンめ、何がリベリオンだ!!何が全レプリロイドの理想だ!!そんな絵空事が何になる!?裏切っても、奪っても、最後に力を手にした者が勝つのだ!!きょ~っほっほっほ!!!!」

ボロックがイプシロンに対しての嘲笑を終え、超フォースメタルを手にしようとした瞬間だった。

「その通りだ。良いこと言うなあんた」

ボロック「きょ!!?お、おお前は…!!」

目の前にいるレプリロイドの姿を見て、ボロックは腰を抜かしてしまう。

「超フォースメタルはあんた…貴様には過ぎた力だ」

次の瞬間、ボロックの首が胴から離れていた。
レプリロイドはボロックの死骸を蹴飛ばした後、超フォースメタルを回収し、姿を消した。








































そして偽ボロック達を蹴散らし、アクセル達と合流して弾頭の元に辿り着いたエックス達だったが。

ゼロ「死んでる…」

ボロックの死骸を見遣りながらゼロが呟く。

アクセル「超フォースメタルも、持って行かれた後みたいだよ」

弾頭を覗いてきたアクセルが肩を落としながら言う。

エックス「一体、何が起こっているんだ?」

エックスがボロックの死骸や、超フォースメタルが収められていたミサイルの弾頭を見つめながら呟いたのだった。 
 

 
後書き
超フォースメタル消失。 

 

Another24 スカーフェイス

 
前書き
スカーフェイス戦 

 
ミサイルの弾頭にあったはずの超フォースメタルが消失し、レジスタンスペースに戻ったエックス達は、モニタールームにてリディプス大佐と通信をしていた。

リディプス『ふむ…その超フォースメタルという兵器がどこかに行ってしまったと?』

エックス「はい、大佐…超フォースメタルは、非常に危険な物です。放置出来ません」

指で摘まめるくらいの大きさの超フォースメタルでさえ、エックス達の想像以上のパワーアップをしたのだ。
もし超フォースメタルがその他のイレギュラーの手に渡ろうものなら背筋が凍る思いだ。

リディプス『…幸いにして、電波障害も無くなり、我が方からのサポートも可能になると思う。私自ら部隊を率いて、ギガンティスに乗り込むことも検討中だ。超フォースメタルは此方からも探ってみよう。エックスはリベリオンの本拠地を…』

リディプス大佐が言い切る前に基地に警報が鳴り響く。

エックス「何だ!?」

ナナ「基地に侵入者…敵襲です!!」

アリア「エックス君、みんな!!敵はサウススクエアに侵入しているの、急いで出撃して!!ハンターチーム、出撃せよ!!」

全員【了解!!】

エアバスに乗り込み、サウススクエアに向かうエックス達。









































サウススクエアに着いたエックス達はエアバスを降りると、そこにいた人影に武器を構えた。

エックス「お前は…」

スカーフェイス「リベリオン幹部が1人、スカーフェイス。貴様等に倒された同志の仇を取るため、そして超フォースメタルを取り返しに来た!!勝負しろエックス!!」

高出力のツインビームランスを構えるスカーフェイスにエックスもバスターを構えた。

エックス「超フォースメタルだと?」

スカーフェイスの言葉に違和感を感じたエックスが言う。

スカーフェイス「そうだ!あれは我らの理想のために無くてはならぬ物!!返して貰うぞ!!!」

ルナ「何を訳の分からねえことを!!ハイパーモード・イグニス!!メガトンクラッシュ!!」

ゼロ「ハイパーモード・アクティブフォーム!!零式烈斬!!」

マリノ「ハイパーモード・クイックシルバー!!マリノスタンプ!!」

ルイン「ハイパーモード・オーバードライブ!!ダッシュセイバー!!」

ルナ、ゼロ、マリノ、ルインの4人がハイパーモードを発動し、スカーフェイスに技を繰り出すが…。

スカーフェイス「…遅い!!」

4人の技は空振りに終わる。
スカーフェイスがゼロでさえ反応出来ない速度で動いたからだ。

マッシモ「なっ!?」

アクセル「速い!!?」

あまりの速さにマッシモだけでなくアクセルも目を見開く。

スカーフェイス「プラズマアレイ!!」

ツインビームランスからプラズマ弾が放たれる。
プラズマ弾は4人に直撃し、吹き飛ばした。

アクセル「ゼロ!!ルナ!!ルイン!!」

シナモン「マリノさん!!」

マッシモ「大丈夫か!!?」

3人が、ゼロ達に駆け寄ると、大量のプレオン達が出現し、エックスとアクセル達を分断した。

エックス「みんな!!」

スカーフェイス「安心しろ、邪魔さえしなければ手を出すなと命じている。」

エックス「何だと?」

スカーフェイス「…無用な犠牲は好まん」

エックス「え?」

今までのリベリオン幹部とはまるで違う発言にエックスは目を見開く。

スカーフェイス「…勝負!!」

エックス「っ、ハイパーモード・ファルコンアーマー!!」

凄まじい速さで向かってくるスカーフェイスにエックスは咄嗟にハイパーモード・ファルコンアーマーを発動し、ビームスピアで受け止める。

スカーフェイス「ほう、我が初撃を受け止めたか…」

エックス「何て機動力だ…だが、負けるわけには!!スピアチャージショット!!」

強化アーマーのチャージショットの中でも最速を誇るスピアチャージショットだが。

スカーフェイス「中々の速度だが、その程度では私を捉えることは出来ん!!」

スピアチャージショットを容易くかわし、ツインビームランスに刺突を繰り出してくる。
エックスはスピアとブレードで必死にスカーフェイスの速く重い攻撃を捌いていく。

エックス「(ファルコンアーマーの瞬間速度を優に超えている…なら、あのアーマーで行くしかないか…)」

総合的な機動力はファルコンアーマーには劣るが、瞬間的な速度は全強化アーマー最強のアレを。
セカンドアーマーのエネルギートレイサーでも、サードアーマーのクロスチャージショットでも、グライドアーマーのホーミングチャージショットでも捉えられない。
ギガクラッシュやスピアショットウェーブを繰り出したところで射程外に逃げられてしまう。
ファルコンアーマーのブースターを吹かし、空中に逃げると、ファルコンアーマーが変化する。

エックス「ブレードアーマー!!」

ナイトメアウィルス事件で入手した近接特化型の強化アーマーだ。
バスターからXブレードを上回る高出力ビームブレードを発現させた。

スカーフェイス「ブレードアーマー…見たところ接近戦に特化した強化アーマーのようだな…面白い!!」

凄まじい速度で突っ込んでくるスカーフェイス。

エックス「マッハダッシュ!!」

対するエックスもブレードアーマーの特徴の1つであるマッハダッシュでスカーフェイスの機動力に対抗する。
ブレードアーマーの瞬間加速力は凄まじく、今度はスカーフェイスの機動力に対抗出来た。

スカーフェイス「ほう、私の移動速度について来れるとはな……」

唯一露になっている左目が細くなる。
恐らく笑みを浮かべたのだろう。

エックス「俺は…負けられないんだ!!ディバートチャージショット!!」

マッハダッシュで動き回りながら、スカーフェイスにブレードアーマーのチャージショットであるディバートチャージショットを喰らわせる。
ブレードアーマーは接近戦に特化したアーマーのために、チャージショットの威力は歴代のアーマーの中では低いが、スカーフェイスにようやくダメージを与えることに成功した。

スカーフェイス「ぐっ!!この程度で!!」

エックス「うおおおお!!」

エックスのバスターブレードとスカーフェイスのツインビームランスの光刃がぶつかり合い、火花が散る。
エックスからしてみれば、ブレードアーマーは久しぶりに扱うが、剣自体は日頃の訓練で使っているために直ぐに完璧に扱えるようになる。

ルイン「エックス…」

加勢したいが、エックスとスカーフェイスのあまりの速さについて行けないために、ルインは不安そうにエックスを見つめる。

ルナ「大丈夫だ。エックスは今までどんな奴にだって勝ってきた…信じろよルイン…」

ルイン「うん…」

祈るようにエックスとスカーフェイスの戦いを見守るルイン。
そして、両者の戦いは終わりを迎えようとしていた。

スカーフェイス「はああああ!!」

エックス「ディバートブレード!!」

スカーフェイスの渾身の一撃とエックスのディバートブレードが激突し、両者共に吹き飛ばされ、同時に体勢を立て直した。

エックス「はあ…はあ…はあ…」

スカーフェイス「流石は伝説となったイレギュラーハンター・エックス…その噂に恥じぬ強さだ」

スカーフェイスはツインビームランスを収めると、エックスの実力を評価する。
エックスもバスターブレードを通常の腕に戻すとスカーフェイスに尋ねる。

エックス「お前達の言う理想とは何なんだ!?戦わなければ、手には入らない物なのか!?」

スカーフェイス「我々は…総統は…争いなど望んではいない!!レプリロイド同士が争い、人間を攻撃して一体何になると言うのだ?」

その言葉に尊敬していた師をリベリオンに殺されたマッシモが激昂する。

マッシモ「ふざけるな!!争いを生んで、マッシモ師匠を含めた沢山の犠牲を出したのはお前達だろう!!」

スカーフェイス「貴様があの勇者マッシモの弟子か、それは貴様らレジスタンスや連邦政府が我らの理想を阻むからだ!!邪魔さえしなければ手を出すなと、イプシロン総統に命じられている!!ここに来たのは私の独断だ。」

エックスは拳を握り締め、スカーフェイスに言う。
剣を交え、僅かなりともスカーフェイスのことを知ることが出来たから余計に聞きたかった。

エックス「戦ってみて分かった。お前は狂ったことに力を振るうようなレプリロイドではないはずだ。そんなお前が何故!?世界中のレプリロイドをイレギュラー化するような、超フォースメタルなんて恐ろしい兵器を!!?」

エックスの超フォースメタルを“兵器”と言うことにスカーフェイスは僅かに表情を変えた。

スカーフェイス「…兵器?確かに超フォースメタルは使いようによっては兵器としても使えよう。だがな、超フォースメタルは元々、レプリロイドの性能を高めるために生み出された物だ。これを使い、自らの能力を高めていく…。それは我々レプリロイドの…レプリロイドの数ある進化の形の1つだ!!」

エックス「…………」

スカーフェイス「レプリロイドは単なる機械か?違う、我々には意思がある!!我々には生命がある!!人の手による進化は、我々の進化か?」

スカーフェイスの口調は訴えるそれに変わっていた。
エックスはスカーフェイスの言いたいことが分かる。
レプリロイドは無機物ではあるが、ただの機械かと言われれば断じて否である。
人間と同じ心を持ち、人間の心臓に相当する動力炉、そして遺伝子に相当するDNAデータを持った地球に存在する1つの生命体なのだ。

エックス「だけど…だけどそれは…それは危険だ!!もしその進化の先にある物が…イレギュラーだったら…」

スカーフェイス「我々がイレギュラーか…そうでないのかは…後世の歴史だけが決められることだ。違うか!?」

エックス「………」

スカーフェイスの言葉にエックスが閉口する。
確かにイレギュラーかどうかは歴史だけが決められることだ。

スカーフェイス「……お喋りが過ぎたな。エックス、口惜しいが、貴様は強い。我らの理想を分かち合えんのが残念だよ。ここはひとまず退こう。だが、次に会った時は…必ず貴様を…」

スカーフェイスとプレオン達が転送の光に包まれ、次の瞬間消えた。
エックスはハイパーモードを解除して、ルイン達の元に歩み寄る。

エックス「みんな…大丈夫か?」

ルイン「うん…エックス、お疲れ様…スカーフェイス…強かったね」

4人掛かりで簡単にあしらわれてしまったためか、ルインの表情は優れない。

ルナ「くそ、この俺がああも簡単にあしらわれちまうとは…」

アクセル「スカーフェイス…フェラムとは桁違いの強さだった。」

ゼロ「流石はイプシロンの右腕か…」

不覚を取ったゼロも渋い表情だ。
サウススクエアを含めたエアシティにリベリオン兵が1体もいないことを確認してからエックス達はレジスタンスペースに戻っていった。 

 

Another25 決戦

 
前書き
スカーフェイス戦後 

 
スカーフェイスを何とか撤退させたエックス達は、翌日、スカーフェイスの転送先を割り出すことに成功し、全員がモニタールームに集まっていた。

アル「スカーフェイスの転送ルートを解析した結果、リベリオンの本拠地らしき場所を絞り込むことが出来たんだ。」

ルナ「本当か?」

ナナ「はい、ステルス転送なので、はっきりとは分からなかったのですが…。」

絞り込まれたリベリオンの本拠地らしき場所がモニターに映る。
それは…。

エックス「グラース氷河…?」
モニターに映るグラース氷河と呼ばれる島に、エックスは疑問符を浮かべながら呟く。

アル「ギガンティスではレプリロイドの性能テストのために、様々な環境が造られているのだが、オノバン・デザートと並んでギガンティスの過酷な環境と言っていい」

ルイン「それでも…」

エックス「ああ…行くしかない…みんな、これで最後だ。俺に力を貸してくれ!!」

エックスが拳を握り締め、全員を見回しながら叫ぶと、ルイン達も心強い笑みを浮かべて頷いた。

ゼロ「当たり前だ。もうあの時のような不覚は取らん」

アクセル「最終決戦なんだから、僕も出し惜しみなんかしないよ」

ルナ「おう、今の俺達に出せる全力全開で挑んでやるさ!!なあ、マッシモ!!」

マッシモ「あ、ああ…そうだな。マッシモ師匠の意志を継いで、俺は必ずリベリオンを…」

僅かに震える身体だが、マリノが背中をバンと叩いて頼もしい笑みを浮かべた。

マリノ「今度はスカーフェイスの時のようなヘマはしないよ。エックス、あんたも派手にやりな!!」

シナモン「私も回復能力で皆さんを全力でサポートします!!」

ルイン「行こうよ、エックス。大丈夫、全員で力を合わせれば何とかなるよ」

アリア「ルインちゃんの言う通り!!8人の勇気と力を合わせれば君達に勝てない敵はない!!君達にはフォースメタルの加護があるんだから…それにね、私も出来るだけの力を添えるつもり。最終決戦に備えて、ゼロ君にはアルティメットフォーム。そしてエックス君には最後の強化アーマーのアルティメットアーマーを解放したんだ。それもアルティメットアーマーは、従来の不完全版とニュートラルアルティメットアーマーの性能を融合させた究極完全版をね!!」

エックス「え!!?」

それにエックスは目を見開いた。
従来の不完全版のアルティメットアーマーとは恐らく、レプリフォース大戦からナイトメアウィルス事件までの物を言っているのだろう。
ニュートラルアルティメットアーマーは、新世代型レプリロイドの反乱時のルミネとの戦いで使用した物だ。
その2つの性能を併せたというのだろうか。

アリア「多分エックス君が考えていることで合ってるよ。ベースは従来の不完全版だけどね。ノヴァストライクには2種類のタイプがあるの、1つめは従来の不完全版アルティメットアーマー同様、通常程度の威力なら連発可能な連発型ノヴァストライク。2つめはニュートラルアルティメットアーマー同様、アーマーの持つエネルギーを全開にしてぶちかます一撃必殺型のノヴァストライク。一撃必殺型は一度使ったらニュートラルアルティメットアーマー同様しばらく使えなくなるデメリットがあるから、使うなら確実に当てるように…バスターブレードも今まで通り使えるよ。ただし、アルティメットアーマーは超フォースメタルのパワーに対抗するために全リミッターを解除していてエネルギーの消耗が半端じゃないから、ここぞと言う時に使ってね」

エックス「…分かりました」

従来の不完全のアルティメットアーマーをベースにして生み出された究極のハイパーモード。
Xハートを拡張スロットに差し込むと、エックスの全身を包み込んでいく眩い光。
やがてエックスの身体は濃紺のアーマー…レプリフォース大戦からナイトメアウィルス事件まで猛威を振るい続けた最大最強の強化アーマー、アルティメットアーマーに覆われていた。
アルティメットアーマーとニュートラルアルティメットアーマーの長所を併せ、アリア曰わく全てのリミッターを解除したと言うだけあって、アーマーを纏うだけで普段では信じられない…恐ろしいまでの力が全身に漲っていくのをエックスは敏感に感じていた。

ゼロ「ほう…」

目を見開くゼロ。
確かにエックスから従来の不完全型アルティメットアーマーやニュートラルアーマーをベースにしたニュートラルアルティメットアーマーとは比較にならないエネルギーを感じ取った。

アイリス「アリア博士?ゼロのアルティメットフォームはどのような物なんですか?」

ゼロ「あんたのことだ。生半可な性能ではないんだろう?」

アリア「勿論、ゼロ君の最強形態として生み出したからねえ。半端な性能じゃないよ。アルティメットフォームはプロトフォーム以外の長所を併せた形態だもの。パワーフォームのパワーやアクティブフォームの機動力やエナジーフォームの自己治癒能力とかの長所全部盛り。まあ、エックス君のアルティメットアーマー同様、エネルギーの消費が半端じゃないからいざという時まで使わないように。」

ゼロ「了解…」

エックス同様に、拡張スロットにZEROシフトを差し込むとゼロの全身を包み込んでいく眩い光。
ゼロのアーマーの色がワインレッドを基調とした物に変わり、髪やアーマーの一部分が白がかかった金色に変化していた。
ゼロも自身の究極のハイパーモードの力に戦慄を覚えたが、表情には出さない。
強力過ぎる反面、エネルギー消費が激しすぎるのだ。

アリア「やっぱり基本的にはアルティメットフォームは切り札で、基本は他のフォームで戦った方がいいよ。アルティメットフォームもプロトフォームには火力では敵わないし。」

ゼロ「そうだな…」

基本的には通常のハイパーモードの方がずっとエネルギー効率がいい。
これはプロトフォーム同様、いざという時の切り札だ。

アリア「みんな、気をつけて。死んだりしたら許さないから、ハンターチーム出動…と言いたいとこだけどエックス君とルインちゃん、先に本拠地に行っていてくれない?ゼロ君達に話しておきたいことがあるからさ」

エックス「?分かりました…」

ルイン「それじゃあ先に行って待ってるね」

転送システムに乗り込み、グラース氷河にある、グレイブ遺跡基地に向かう。

ルナ「何だよ?話って」

アリア「エックス君に聞かれたら猛抗議されそうだからね~。君達に指示を与えるよ、エックス君とルインちゃんをあまり消耗させず、確実にイプシロンの元に連れて行ってあげて」

マッシモ「エックスとルインを?」

シナモン「えっと、どうしてですか?」

アリア「いい、みんな?これからの戦いは全て、この主力メンバーで唯一イプシロンとガチで渡り合えそうなエックス君とエックス君の力を最大まで引き出せるパートナーのルインちゃんをいかに無傷に近い状態でイプシロンの前まで辿り着けさせるかに掛かってる。君達はそれに全ての力を注ぎ込むの。イプシロンは強い…それも異常とも言えるほどに。それに対抗するには超フォースメタルのエネルギーを得たXハート、究極のハイパーモードのアルティメットアーマー、エックス君の無限大の可能性が、対イプシロンの勝利の鍵となるんだよ。」

ゼロ「…………」

アリアの言葉にゼロは心の中で同意した。
エックスには自分以上の凄まじい力が眠っている。
未知の力を持つイプシロンに対抗するには、エックスでないと無理だろう。
そしてエックスの力を引き出すにはルインの存在が必要だ。

アリア「みんな、お願いね」

全員【了解】

ゼロ達も転送システムに乗り込み、グレイブ遺跡基地に向かうのだった。








































そして一足先にグレイブ遺跡基地に来ていたエックスとルインが振り返る。

ルイン「みんなが来たよエックス」

エックス「ああ、遅かったな」

ゼロ「Dr.アリアから指示を受けてな」

ルイン「指示?」

ゼロの言葉に首を傾げるルインに、マリノは苦笑しながら言う。

マリノ「あんたら2人が無茶しないように見張ってろってさ」

マッシモ「ほら、エックスとルイン、かなり緊張してるかもしれないってアリア博士が」

マッシモの言葉にルインは思わずむっとなる。

ルイン「何それ?私達緊張なんて…していなくはないけどさ……」

アクセル「じゃあ、駄目じゃん…」

エックス「はは…」

脱力するように肩を落としながら言うアクセル、そして苦笑を浮かべるエックスであった。

ゼロ「やれやれ…最後の戦いだと言うのに緊張感のない奴らだ…」

ルナ「とか何とか憎まれ口叩きながらも、結構こいつらのことを気に入ってる癖に~♪」

ニヤニヤしながらゼロを見遣りながら言うと、顰めっ面をしたゼロがルナの両頬を引っ張る。

ルナ「いふぇっ!!いふぇはら、ふぁなへ!!」

両頬を思いっ切り引っ張られ、涙目になりながら叫ぶルナ。

シナモン「ゼロさんは照れ屋さんなんですね!!私達もゼロさんのこと大好きですよ!!」

ゼロ「あ、ああ…」

シナモンの満面の笑顔に怒る気が失せたのか、ゼロはルナの両頬を引っ張っていた手を離す。

ルナ「うぅ~、痛えよお…」

アクセル「ゼロをからかうからそうなるんだよルナ」

涙目になりながら両頬をさするルナに苦笑を浮かべるアクセル。

アクセル「にしても、ここまでみんなが自然体なら何だか行けそうじゃない。」

マッシモ「ああ、ここまで自然体でいられるなら寧ろ頼もしく思えるよ」

マリノ「そうだね、っと…みんな、気を引き締めな。お客さんだよ!!」

マリノが指差した先には警備用のプレオン達。

ルナ「わおっ!!凄え出迎えだな!!」

アクセル「鬱陶しいよね」

エックス「っ!!」

エックスが迎撃しようとバスターを構えようとした時、マッシモが前に出る。

マッシモ「ジェットギロチンを喰らいやがれ!!」

大型のビームサイズを手に持ち、バーニアの勢いを加算した横薙ぎを繰り出した。
横薙ぎを喰らわせ、プレオンの数体を両断する。
アクセルがビームサイズ・ジェットギロチンを見て、目を見開いた。

アクセル「あ、マッシモ。それ新装備!!?」

マッシモ「ああ、アリア博士の造った武器、ジェットギロチンだ!!」

アクセル「なら、僕は…プレオンキラー乱れ撃ち!!」

バレットから特効弾を連射し、プレオン達に有効打を与えていく。

マリノ「次は私だよ!!ファイアステラ!!」

シナモン「バイタルスクラッチ!!」

ゼロ「零式波動斬!!」

ルナ「ホーミングショット…コネクションレーザー!!」

アクセルに続いて、マリノ、シナモン、ゼロ、ルナが続けて攻撃するとプレオン達が瞬く間に全滅した。

ルイン「あ…全部倒しちゃった…」

セイバーを構えたままのルインが呆然となりながら呟いた。

アクセル「悪いね、2人共。僕達暴れたくてウズウズしているからさ」

エックス「…………」

ゼロ「何をぼっとしている?さっさと行くぞ」

エックス「あ、ああ…そうだな…」

近くにある開いている扉を潜ると、妙な光景を目にする。
床に伸びている光に全員の視線が集中する。

ルナ「何だろうな?この光は?」

マッシモ「さあ…って、扉がロックされちまったぞ!!?」

マリノ「落ち着きなマッシモ!!たかが閉じ込められちまっただけだろ?」

ルイン「そうだね、全くどうしようもないって訳でもなさそうだよ?」

ルインが天井から床に伸びている光を見遣る。

ゼロ「ああ、あの光が怪しいな…調べてみるか」

アクセル「じゃあ、僕が調べてみるよ。」

シナモン「アクセルさん、気をつけて下さいね」

アクセル「うん…多分、触れても大丈夫そう…」

床に伸びている光に触れると、警報が鳴り、プレオンが出現する。

マッシモ「警備兵が出て来たぞ!!」

ゼロ「この程度、俺1人で充分だ!!カゲロウ発動!!」

ゼロが半実体のエネルギー分身を発生させる。

アクセル「それもしかしてフェラムのエネルギー分身のクリムゾンシェードを参考にした奴?」

ゼロ「そうだ。要領は双幻夢と似たような物だからな、会得は容易だった。ハイパーモード・プロトフォーム!!」

重火力紙装甲型の強化形態を発動し、カゲロウの併用で凄まじい破壊力を発揮した。

シナモン「凄いです!!」

マリノ「ひゃああ…重火力紙装甲型は伊達じゃないみたいだねえ…とんでもない威力だよ」

マッシモ「あ、扉のロックが解除されてるぞ」

ルナ「成る程、警備システムと連動していたのか…ん?光がまた伸びてる?」

再び天井から床に向かって光が伸びてきていた。

シナモン「もしかして、元に戻るんじゃないでしょうか!!?」

ルイン「エックス、みんな!!急ごう!!」

急いで脱出し、同じ仕組みの場所を攻略しながら突き進む。








































マッシモ「ベルセルクチャージ、発射!!!!」

アクセル「プレオンキラー乱れ撃ち!!変身、マッハ・ジェントラー!!ゲヘナフレイム!!!!」

ルナ「喰らいな!!ギガクラッシュ!!!!」

マリノ「はっ!!ていっ!!とりゃあああっ!!!!」

シナモン「え~い!!!!」

ゼロ「全員下がれ!!一刀両断!!幻夢零!!!!」

パワーフォーム状態での幻夢零が炸裂した。
エックスとルインを極力戦わせないように、ゼロ達はリベリオン兵を一気に殲滅させる。

ルイン「ねえ、エックス。みんな、何か変じゃない?」

エックス「あ、ああ…」

グレイブ遺跡基地に着いてから、あまり戦っていないエックスとルインは疑問符を浮かべる。

マッシモ「よし、片づいたぞ!次に進む…」

「ちょっと待った~!!」

全員【ん?】

聞き慣れない声に振り返ると、そこにいる存在に目を見開いた。
そこにいたのは…。

マッシモ「ガウディル博士の親戚か?」

ルナ「兄弟?」

シナモン「いいえ違います」

断言するシナモン。
答えたのは意外にもアクセルであった。

アクセル「あいつはダックビルモールってレプリロイドだよ。ウルファト生産工場にいたらしいけど、暑い場所だとテンション上がりすぎて、施設内で暴れ回るからジェントラーに他の場所に移されたらしいよ」

ゼロ「ダックビルモール…確か、ラグラノの改造ポッドにもあった名前だな」

ダックビルモール「お~う!!俺の名前がここまで知れ渡っていたとは光栄だ~!!ちなみにこれはメカニロイドのホール・ド・K君だ~!!」

ルナ「あ、そう…」

脱力しそうになるルナだが、油断は出来ないため、バレットを構えた。

ダックビルモール「イプシロン様からの命令だ~!!ここは通さねえ!!」

ハンマーとホール・ド・Kを構えるダックビルモール。
エックス達が武器を構えようとした瞬間、マッシモが前に出た。

マッシモ「あいつは俺に任せろ」

マリノ「マッシモ?」

マッシモ「装備を見たところ奴はパワー型だ。パワーなら絶対に俺は負けない…それに……こんな奴に時間はかけられないだろう?」

アクセル「確かに……でもマッシモ1人じゃあ……」

シナモン「せめて私も残ります!!回復を……」

シナモンが前を見遣りながら言うと、ダックビルモールの配下であろう、イプシロン、スカーフェイス、フェラム、ボロックの能力を持ったプレオンまでいる。

マッシモ「何、心配するな。俺は勇者であるマッシモ師匠の弟子、鋼鉄のマッシモなんだからな!!ベルセルクチャージ、発射!!!!」

前方に最大出力の高出力レーザーを放ち、前方に穴を開ける。

マッシモ「さあ、行くんだ!!イプシロンを倒してくれ!!」

ルナ「すまねえ!!」

ダックビルモール「お~っと、こっから先は通さねえぞ!!」

マッシモ「ハイパーモード・ダイモニオン!!うおりゃあああああ!!!!」

妨害しようとしたダックビルモールをハイパーモードで強化した右ストレートで殴り飛ばす。
ホーンドさえも吹き飛ばした一撃はダックビルモールの小柄な身体を勢いよく吹き飛ばした。

ダックビルモール「ガツーンときたぜ~…」

マッシモ「さっきの台詞をそのまま返してやるぞダックビルモール。ここから先は通さない!!鋼鉄のマッシモの名にかけてな!!」

ジェットギロチンを構えながら叫ぶマッシモ。
ホバーによる高速移動でプレオンの群れとダックビルモールに向かっていく。








































ルイン「エックス、マッシモ…大丈夫かな?少なくてもリベリオン幹部クラスなんじゃ…」

ゼロ「大丈夫だ。今のマッシモは強い。」

今のマッシモは初めて会った時のような臆病者ではない。
今は亡き師匠の意志を継いだ立派な勇者なのだから。

アクセル「そうだね…また広い場所に出たね…」

扉が開き、再び広い場所に出る。
そこには…。

「ステップ♪ステップ♪ランランラン♪あ~!!あなた達何を見てるのよ!!私の秘密レッスンを覗き見るなんて許さない!!」

アクセル「いや、見て欲しくないならこんなとこでしなけりゃいいじゃん」

ルナ「確かにな」

「きいぃ~!!ムカつくムカつく~!!このスーパーアイドル、ラフレシアン様の素敵な技の数々で…」

アクセル「ああ~、はいはい。じゃあ相手してあげるから掛かってきなよ」

ルナ「何かまともに付き合うの馬鹿らしくなってきたな。エックス、お前等は先行け。こんなナルシストアイドルは俺とアクセルだけで充分だよ」

ゼロ「分かった。行くぞエックス、ルイン」

シナモン「気をつけて下さいね!!」

マリノ「負けるんじゃないよ!!」

エックスとルインを引っ張って行くゼロ達を見て笑みを浮かべるアクセルとルナ。

アクセル「さあ、始めようか自称アイドル」

ルナ「ちゃっちゃと片付けてあげるよ。ね?アクセル?」

2人になった時だけ素の言葉遣いになるルナにアクセルも笑みを浮かべながら頷いた。












































そしてリボルバールームを突破し、最後の複数の端末を操作し、扉を開こうとした瞬間であった。

「滅殺波動拳!!」

ゼロ「っ、避けろ!!」

全員が咄嗟に身体を動かしたことで、凄まじい威力を秘めた一撃を回避した。

「ほう…避けたか…」

ゼロ「…出来るな」

ゼロは先程の一撃を放ったのは9本の尻尾を持った九尾の狐型レプリロイドだ。

マリノ「こ、こいつ…ナインテイルズ!!?」

ゼロ「知っているのか?」

マリノ「知ってるも何も…ギガンティス最強の格闘家さ!!鍛え上げた拳で数多くの敵を葬ってきた拳聖とも言われているんだよ!!」

シナモン「どうしてリベリオンに…」

ナインテイルズ「我の願いとイプシロンの理想が合致したに過ぎん。超フォースメタルの力で高性能なレプリロイドが増えれば我が拳を満足させる敵が現れるかもしれんと思ったが…」

ゼロを見遣り、不敵な笑みを浮かべるナインテイルズ。
ゼロはセイバーを構え、直ぐにナインテイルズの動きに対応出来るようにする。

ゼロ「……………」

ナインテイルズ「伝説のイレギュラーハンター、エックスとゼロ。ふふ…イレギュラーハンターの最強格とこんな場所で戦えるとは我も思わなかった…我の相手として不足はない!!」

ナインテイルズが凄まじい気を纏いながら構える。

ゼロ「エックス…ルイン…こいつは俺に任せておけ。お前はイプシロンを!!ハイパーモード・ライズフォーム!!!!」

ラーニングシステムの解析能力を高める形態になり、ナインテイルズに斬り掛かるゼロ。

ナインテイルズ「阿修羅閃空!!」

流れるような動きで、それを回避し、拳を構える。

マリノ「そうはさせないよ!!」

マリノがナインテイルズにファイアステラの強化版、ファイアコメットを投擲する。

ナインテイルズ「ぬっ!?」

ゼロ「零式烈斬!!」

マリノの攻撃を受け、ナインテイルズの胸に裂傷を刻む。

ゼロ「行け、エックス、ルイン。」

エックス「し、しかし…」

マリノ「いいからここは任せて先に行きな!!」

シナモン「ゼロさんとマリノさんは私が全力でサポートします!!」

ルイン「みんな……うん、ありがとう!!」

エックスと共にルインはイプシロンのいる玉座の間に。
こうして、エックスとルインはイプシロンの元に向かうことが出来た。 

 

Another26 解放

 
前書き
ダックビルモール、ラフレシアン、ナインテイルズ戦 

 
エックスとルインを先に行かせるために、グレイブ遺跡基地を守護する強敵達を相手取っていたマッシモ達。

ダックビルモール「今の一撃はガツーンときたぜ~…なら、俺様も本気で行くぞ!!ドメガファイア!!!!」

マッシモ「っ!!?」

あまりのことにマッシモは目を見開いた。
何故ならダックビルモールは何をトチ狂ったのか、自分にエレメントボム・ドメガファイアを炸裂させたのだ。

マッシモ「こ、ここまでイカレた奴だとは…」

自爆をするとはある意味とんでもない奴だとマッシモがジェットギロチンを下ろした瞬間であった。

ダックビルモール「火炎エネルギーチャージ!!!!」

マッシモ「何!!?」

爆炎からダックビルモールが飛び出してきた。
全身から炎を纏って飛び出してくる姿は不死鳥を彷彿とさせる。
カモノハシ型レプリロイドでなければ、完全に不死鳥に見えただろう。
ゲイト製の戦闘型レプリロイドのブレイズ・ヒートニックスを知るエックスがこの場にいたら不死鳥とはこんな間抜けな姿ではないとツッコミをくれただろうが。

ダックビルモール「マントル直撃~!!!!」

マッシモ「ぐおおおっ!!!!?」

巨大なハンマーを落下の勢いを加算して地面に叩きつけると、凄まじい衝撃波が発生し、マッシモを吹き飛ばす。

マッシモ「ぐうう…そ、そうか…ウルファト生産工場にいた特別製レプリロイドだ…普通の戦闘型とは違うか…」

すぐさま立ち上がり、ジェットギロチンを構えるマッシモ。

ダックビルモール「おうおう。俺のマントル直撃を喰らって生きてるとはやるじゃねえか。なら…ドリル特攻!!!!行っくぜ~!!ホール・ド・K君!!!!」

ドリル型メカニロイド、ホール・ド・Kで地面に潜るダックビルモールに目を見開くマッシモだが、即座に聴覚機関を限界まで澄ませ、音の発生源に向かって、もう1つの武器を振り下ろす。

マッシモ「クラッシュハンマー!!!!」

ダックビルモール「ぐええ!!!!?な、何で分かった…?」

マッシモ「ドリルの駆動音が聞こえたからだ」

ダックビルモール「んな~!!?そ、その弱点があったか…なら、マントル直撃~!!!!」

マッシモに突撃しながら、ハンマーを叩きつけようとするが、マッシモはクラッシュハンマーを勢いよく振りかぶり、ダックビルモールを吹き飛ばした。

マッシモ「その技はハンマーで地面を叩かなければ発動しないんだろう?なら、その前に攻撃すればいい」

ダックビルモール「マントル直撃の弱点まで!!?どうして分かったんだ~!!!!」

マッシモ「(こいつ…強いが…馬鹿だ…)」

戦闘力は途轍もないが、頭はどうしようもない馬鹿だと気付いたマッシモはジェットギロチンを構えた。

ダックビルモール「ならこれならどうだ~!!激震ハンマー!!!!」

マッシモ「むっ!!?」

ダックビルモールがハンマーを地面に叩き込むと、火柱がマッシモを包み込む。

ダックビルモール「はっは~!!どうだ~!!」

マッシモ「ふう…ハイパーモードを発動していなければヤバかったぜ…」

マッシモは主力メンバー内では物理防御力は高いが、一番属性攻撃に弱く、今までの攻撃や先程の攻撃はマッシモにとって致命傷になりうる威力だったが、ハイパーモード・ダイモニオンはマッシモの対属性防御力を大幅に向上させてくれるために、今のマッシモには弱点の攻撃が存在しないのだ。

ダックビルモール「な、なああ!!?」

マッシモ「ダックビルモール!!これで終わりだ!!ベルセルクチャージ、最大出力!!発射!!!!」

最大出力のベルセルクチャージが、ダックビルモールを飲み込む。
高出力レーザーを喰らったダックビルモールは残骸も残さず消し飛んだ。

マッシモ「ダックビルモール、お前も中々の強さだったが…鋼鉄のマッシモを相手にするにはパワーが足りん!!!!さて…」

こちらに向かってくるプレオンの群れにマッシモはエネルギーの消耗を抑えるためにハイパーモードを解除し、ジェットギロチンを構えた。








































マッシモがダックビルモールを倒し、後続の敵を迎撃している間、一方でラフレシアンと対峙しているアクセルとルナ。

アクセル「革命弾!!!!」

ルナ「リフレクトレーザー!!!!」

ラフレシアン「痛っ!!?こんのー!!!!?」

杖で殴りかかるが、アクセルとルナは高い機動力を活かして、攻撃を回避。

ルナ「杖を持っている癖に使い方が素人だね。あんたの製作者は電子頭脳に杖術さえインプットしてくれなかったの?ハイパーモード・テネブラエ!!十字手裏剣!!!!」

ラフレシアン「痛い痛い!!」

ハイパーモード・テネブラエを発動し、高速回転する十字手裏剣が、ラフレシアンの身体を斬り裂く。

アクセル「ハイパーモード・ステルスモード!!」

ラフレシアン「え!!?消えた!!?」

アクセル「革命弾乱れ撃ち!!」

光学迷彩ハイパーモード・ステルスモードを発動し、攻撃性能を向上させ、革命弾を乱れ撃ちする。

ラフレシアン「あああああ!!!!?」

ルナ「やった、これならイケる!!ハイパーモード・ウェントス!!プラズマサイクロン!!」

電撃を纏った竜巻がラフレシアンに炸裂する。

アクセル「駄目押しだ!!変身、シルバー・ホーンド!!アビスプレッシャー!!!!」

高出力エネルギー弾がラフレシアンに炸裂する。

ラフレシアン「きゃあああああ!!!!?」

ルナ「どうだ!!」

これだけ攻撃されたら普通のレプリロイドなら大破しているが、ラフレシアンのエネルギー反応は衰えていない。
いや、それどころか…。

アクセル「エネルギー反応が…増している…」

ラフレシアン「痛たた…やるわね、でもウォーミングアップはこれで終わりにするわ…サンバースト!!!!」

ラフレシアンの目つきが変わり、スカートのようなアーマーから拡散レーザーを上空へ放ち、アクセルとルナの頭上にレーザーの雨を降らす。

アクセル「うわっ!!?」

ルナ「アクセル!!」

ラフレシアン「たああああ!!!!」

今までとは比較にならないスピードにルナは目を見開く。
ラフレシアンは杖でルナの脳天に叩き込む。

ルナ「がっ!!?」

アクセル「ど、どうなってるんだ…?どうしてこんな急激に基礎性能が…まさか…」

ラフレシアン「そう、そのまさか!!私にはラーニングシステムが搭載されているの。つまり戦えば戦うほどに私は通常のレプリロイドとは比較にならない速度で強くなるのよ!!」

ルナ「ぐっ!!ゼロを見てれば分かるけどとんでもなく卑怯過ぎる性能な能力だね…これは早く何とかしないと、私達でも手がつけられなくなるよアクセル!!」

アクセル「くっ!何とか休む間もなく攻撃を当て続けられれば…革命弾!!」

ルナ「ハイパーモード・イグニス!!エディットバスター!!!!」

特効弾と誘導エネルギー弾が連続で放たれるが、ラフレシアンは特効弾を回避、誘導エネルギー弾を杖から放ったレーザーで相殺する。

アクセル「革命弾をかわした…?」

ルナ「エディットバスターを相殺した!!?ラーニングシステム…敵に回すとここまで厄介な代物だとは…」

しかもラフレシアンのラーニングシステムは、ゼロに搭載されているラーニングシステムにも全く引けを取らない。
恐らく超フォースメタルでラーニングシステムの性能を限界以上まで引き出しているのだろう。

アクセル「なら、これならどうだ!!変身、マッドノーチラス!!デスグラビティ!!!!」

ラフレシアン「きゃあああああ!!!!?」

敵は重力弾の引力によって引き寄せられるため、高い命中率を誇る攻撃。

アクセル「今だ!!」

ルナ「グラウンドブレイク!!!!」

イグニスの最大の必殺技をラフレシアンに繰り出すが…。

ラフレシアン「きゃははははははははっっっ!!!!引っ掛かったあっ!!!!」

ルナ「え!!?」

アクセル「こ、こいつ、違う!!?」

アクセルとルナが攻撃を喰らわせたのは、ラフレシアンに酷似したレプリロイド、ベラドンナーである。

ラフレシアン「私の影武者よ、そっくりでしょ?アイドルはね、人からの妬みを買いやすいから影武者の1人や2人用意しとく物なのよ。サンバースト!!」

再び拡散レーザーを上空へ放ち、頭上にレーザーの雨を降らすラフレシアン。

アクセル「い、何時の間に…すり替わってたんだ…」

ラフレシアン「特別製フォースメタル・ブラフ!!相手の電子頭脳干渉して、相手の視覚とかを誤魔化すことが出来る優れ物よ!!流石に1回しか使えないけどね…」

ルナ「こ、こいつ…強すぎる…ラーニングシステムでこのまま強くなられたら手に負えなくなる…」

アクセル「………仕方ないね。こいつを倒すには圧倒的な力でやるしかないみたいだ」

ルナ「え?」

アクセル「ハイパーモード・ホワイトアクセル!!!!」

もう1つのハイパーモード・ホワイトアクセルを発動。
そして全ての力を解放する。

ラフレシアン「う、嘘…超フォースメタルを超えるエネルギー値!!?」

アクセル「少し離れてて、結構派手になりそうだから」

ルナ「う、うん…アクセル、気をつけて…」

アクセル「悪いけど、一気に行かせてもらうよ」

足に力を入れ、一気に距離を詰める。
ラフレシアンは目を見開き、即座に後退しようとするが。

ラフレシアン「むぐっ!!?」

アクセルの手がラフレシアンの顔面を鷲掴み、零距離からの革命弾を連射を浴びせる。

アクセル「あんたに一言言っとくよ。僕がこの姿になったからにはあんたに勝ち目は微塵もない」

ラフレシアン「ぐっ!!」

杖から放ったレーザーがアクセルの肩を抉るが、変身能力の応用による自己修復で元に戻る。

アクセル「しかし、正直言ってあんたの強さには驚かされたよ。超フォースメタルによるラーニングシステムの強化…このまま進化を遂げていけばシグマやルミネさえも超える怪物になれただろうね。けど、今回は相手が悪すぎたね。僕はイレギュラーには容赦出来ないよ」

ラフレシアン「ふ、ふん!今のあんたにイレギュラーなんて言われたくないわね!!今のあんたから放たれている力はイレギュラーその物よ!!」

今のアクセルから放たれている力はイレギュラー特有の物だ。

アクセル「否定は出来ないね。僕がこんなにもイレギュラーを嫌悪するのは僕自身がイレギュラーだった反動なのかも…でも僕にも…イレギュラーとしての力を使ってでも守りたい物が出来たんだ。」

ルナ「アクセル…」

アクセル「行くよ。DNAアサルト。電閃ネイル!!」

ジャンゴーに変身し、ラフレシアンの脇腹を斬り裂く。

ラフレシアン「痛っ!!こ、この!!」

レーザーを放とうとするが、それよりもアクセルの変身が早かった。

アクセル「ゲヘナフレイム!!灼熱の火炎!!」

ジェントラー、エンシェンタスに立て続けに変身、強烈な業火でラフレシアンの身体を焼いていく。

ラフレシアン「べ、ベラドンナー!!出て来なさい!!」

ラフレシアンの声に応えるようにベラドンナーが数体出て来た。

ラフレシアン「ど、どう?こいつらは戦闘力は私には及ばないけど、全員リベリオン幹部クラスの実力を持ってるのよ!!」

アクセル「成る程、数を活かして僕の体力の消耗とあんたの自己進化を促そうって魂胆?中々良い手だね。相手が僕じゃなかったら」

ラフレシアン「っ!!だ、黙れ!!やっちゃいなさいベラドンナー!!」

数体のベラドンナーがアクセルに襲い掛かるが、それでもアクセルは余裕を崩さない。

アクセル「遅いよ。変身、マッドノーチラス。マッドカクテル」

マッドノーチラスに変身し、ベラドンナー達の電子頭脳を暴走させる。
暴走を始めたベラドンナーは同士討ちを始めた。

ラフレシアン「な、何をしているの!!?攻撃するのはあっち…」

アクセル「無駄だよ。あいつらの電子頭脳を暴走させたからね。さて…覚悟は出来てるかい?」

ラフレシアン「ーーーーっ!!!!サ、サンバースト!!」

恐怖に顔を歪めたラフレシアンがアクセルに拡散レーザーを喰らわせるが…。

アクセル「温いね…この程度、今の僕からすれば涼風同然。変身、阿修羅ナックル!!ローリングアサルト!!デスグラビティ!!」

ラフレシアン「ぎゃあああああああ!!!!?」

エンシェンタス、ジャンゴー、マッドノーチラスに変身し、ラフレシアンに凄まじい攻撃を喰らわせ、最後にホーンドに変身した。

アクセル「これで終わりだ。アビスプレッシャー!!!!」

ラフレシアンに向けて放たれた高出力エネルギー弾はラフレシアンと暴走して同士討ちを続けているベラドンナー達を巻き込んで全滅させた。

アクセル「う…ぐ…」

膝をつくアクセルにルナは直ぐに彼の身体を支える。
アクセルは負荷を抑えるためにハイパーモードを解除した。

ルナ「アクセル、お疲れ」

アクセル「うん……ゼロやエックス達は大丈夫かな…?」

ルナ「大丈夫だよゼロ達なら。今は少し…休んだ方がいいよ…」

アクセル「…そうする」

まずはダメージを回復することが第一だと、アクセルは身体を休める。







































そして、ナインテイルズと対峙しているゼロ達だが…。

シナモン「う…うう…」

マリノ「ち、畜生…!!」

ゼロ「き、貴様…化け物か…!!?」

全員がハイパーモードを発動しているのにも関わらず、ゼロ達はナインテイルズの猛攻の前に膝をついていた。

ナインテイルズ「ふふふ…我が拳を何度も受けて尚生きているとは、貴様らの実力は評価に値する。」

ゼロ「ふざけるな!!」

マリノ「調子に乗ってんじゃないよ!!」

強化された脚力でナインテイルズに肉薄すると、ゼロとマリノの拳が迫るが、ナインテイルズはそれを容易く受け止め、2人を壁に投げつけ、叩き付ける。

ゼロ「ぐっ!!ダブルチャージショット!!」

マリノ「ファイアコメット!!」

ゼロとマリノがすぐさま立ち上がり、ナインテイルズにダブルチャージショットとファイアコメットを繰り出すが…。

ナインテイルズ「下らん」

片手を振るうだけで、ダブルチャージショットとファイアコメットを弾き飛ばした。
次の瞬間、ゼロの背後に回ると、背中に拳打を叩き込む。

ゼロ「ぐはっ!!?」

マリノ「ゼロ!!」

ナインテイルズ「穿弓尾!!」

ナインテイルズが振るった尾が、マリノのエネルギーを吸収する。

ナインテイルズ「受けよ!!砕九!!」

それぞれの尾を槍の様に突き出し、マリノを吹き飛ばす。
あまりの威力に意識を失いかけた。

シナモン「マリノさん!!エンジェリック…」

ナインテイルズ「邪魔をするな小娘!!滅殺波動拳!!」

ナインテイルズの掌から放たれた閃光がシナモンを飲み込む。
咄嗟にバリアを張ったことで何とか耐え切れたが、喰らったダメージは大きく、倒れてしまう。

ナインテイルズ「とどめ!!」

ゼロ「させるか!!」

ゼロが割って入り、ナインテイルズに右ストレートを繰り出す。
ナインテイルズはそれを受け止めようとするが、それを見切って軌道をずらし、ナインテイルズにチャージナックルを喰らわせた。

ナインテイルズ「ぐおっ!!?」

まともに喰らったナインテイルズは仰け反る。

ナインテイルズ「(どういうことだ?先程とは桁外れの威力…パワーフォームではない…何だあれは?)」

今のゼロは重火力紙装甲型のプロトフォームになっているため、アーマーが暗緑色を基調としていた。

ゼロ「はあああああっ!!!!」

ナインテイルズ「(フン、また馬鹿の一つ覚えの拳打か。今更我にこの程度の攻撃が…)」

嘲笑うナインテイルズだが、ゼロの拳がナインテイルズの頬に掠る。

ナインテイルズ「(馬鹿な…我に攻撃を…)」

思わず愕然とするナインテイルズ。
彼の拳の鋭さが先程までとはまるで違うのだ。

ナインテイルズ「(これが…ゼロのラーニングシステムか。あれだけの手合わせで己の戦闘力を向上させるとは…)」

ゼロ「エックスフォーム!!」

プロトフォームからエックスフォームに切り換えると、バスターショットを構え、連射する。
エックスフォームはバスターの威力、連射性能を高めることが出来るために、遠距離から攻撃するにはうってつけの形態だ。

ナインテイルズ「己!!図に乗るな!!波動拳!!」

波動拳をゼロに向けて連射するナインテイルズだが、ゼロはエックスフォームからプロトフォームに切り換える。

ゼロ「ダブルチャージショット!!」

プロトフォームに切り換えたことでダブルチャージショット単発の威力も大幅に上がり、1発目は波動拳で相殺されたが、2発目はナインテイルズに直撃した。
吹き飛ばされたナインテイルズに好機と見たゼロは必殺技を繰り出す。

ゼロ「カゲロウ発動!!零式乱舞!!!!」

プロトフォームとカゲロウを併用した零式乱舞を叩き込む。

ナインテイルズ「ぐおおおおお!!!!?」

プロトフォームとカゲロウを併用した零式乱舞の破壊力は凄まじく、ようやくナインテイルズに有効打を与えられた。

ナインテイルズ「ぐっ…やるな…だが、勝負はまだまだこれからだ!!」

ゼロ「(くっ、プロトフォームとカゲロウを併用した零式乱舞すら致命傷にならんのか!!なら……)」

零式乱舞でも致命傷にならないなら零式乱舞を超える破壊力を持つ技は幻夢零しかない。
しかし、あれを繰り出すにはエネルギーのチャージが必要だ。
それをナインテイルズが待ってくれるはずがない。

ナインテイルズ「行くぞゼロ!!」

凄まじい勢いでゼロに迫るナインテイルズ。
すぐさまディフェンスフォームに切り換え、防御するとライズフォームに切り換えた。

ナインテイルズ「ラーニングシステムの性能を上げ、我が動きを完全に見切るつもりなのだろうが、そうはいかんぞ!!」

ナインテイルズも本気になったのか、ライズフォームで強化されたラーニングシステムでもナインテイルズには追い付けない。

ナインテイルズ「砕九!!!!」

ゼロ「ぐあああああ!!!!」

尾による連撃を受けたゼロは勢いよく吹き飛ばされる。

ナインテイルズ「天魔空刃脚!!」

吹き飛ばされたゼロを追撃するために、天高く飛翔し、急降下しながら蹴りを繰り出すが…。

ナインテイルズ「むっ!?」

ナインテイルズの蹴りはゼロを捉えたように見えたが、手応えがない。

マリノ「カゲロウ…?」

シナモン「あ…」

ゼロ「チェーンロッド!!」

ナインテイルズ「何!?」

鋭利な鎖がナインテイルズの身体を拘束すると、エックスフォームに切り換えていたゼロがバスターを連射する。

ナインテイルズ「小賢しい!!」

ゼロ「何!?」

ナインテイルズ「昇竜拳!!」

ゼロ「がふっ!!?」

鎖を強引に千切ると、ナインテイルズはゼロに強烈な一撃を見舞う。
まともに喰らったゼロは上空に打ち上げられる。

ナインテイルズ「さらばだゼロ!!貴様を倒した後は新世代型のプロトタイプとエックスだ!!」

滅殺波動拳を繰り出そうとするナインテイルズを見てマリノはこのままではと焦るが、自分の攻撃程度ではナインテイルズはビクともしないだろう。

シナモン「マリノさん…アリア博士に新しい武器を貰ってませんでした?」

マリノ「武器…?ああ、あの訳の分からない…あれかい?」

マリノが取り出したのはハリセンを模して造られた武器・リベンジハリセンである。
エックスの強化アーマーの必殺技、ギガアタックに似た機構を持つ武器。
見た目も間抜けなこのような物でどうしろと?

シナモン「アリア博士が言ってたじゃないですか!!一発逆転の武器だって!!」

マリノ「そ、そうだけど…ああもう、どうにでもなれ!!ハイパーモード・クイックシルバー!!」

ハイパーモードを発動し、滅殺波動拳を放とうとしているナインテイルズにリベンジハリセンを振るう。
ナインテイルズもマリノ程度の一撃と思ったのか防御すらもしない。
リベンジハリセンがナインテイルズに炸裂した。

ナインテイルズ「っ!!?がああああああ!!!!」

凄まじい衝撃が自身を襲い、勢いよく吹き飛ばされていくナインテイルズ。

マリノ「す、凄…っ」

マリノはリベンジハリセンの破壊力に目を見開いた。
リベンジハリセンは敵から受けたダメージをそのまま攻撃力に変換する能力を持っている。
今までナインテイルズから受けたダメージがリベンジハリセンに攻撃力として蓄積されていたのだ。

ゼロ「っ!!」

ゼロはすぐさまプロトフォームに切り換え、セイバーを頭上に掲げるとセイバーに全エネルギーを収束させた。

ナインテイルズ「ぐ…っ…!!」

起き上がり、セイバーに収束されていくエネルギーに戦慄を覚えたナインテイルズは滅殺波動拳を放ったが、ゼロのエネルギーチャージも完了していた。

ゼロ「一刀両断!!幻夢零!!!!」

幻夢零と滅殺波動拳がぶつかり合うが、リベンジハリセンによって相当のダメージを負ったナインテイルズの滅殺波動拳は本来の威力を出せず、幻夢零に力負けし、ナインテイルズは強烈な衝撃波に飲まれて消滅した。

ゼロ「ぐっ…」

ナインテイルズの消滅を見届けたゼロは力尽き、倒れた。
これで、イプシロンを守る守護者達は倒れたのだ。 

 

Another27 玉座

 
前書き
イプシロンの元に向かったエックスとルインは…。 

 
仲間達に背中を押された2人は、休むことなく通路を駆けていく。
ダックビルモールはマッシモが、ラフレシアンはアクセルとルナが、ナインテイルズはゼロとシナモンとマリノが押さえてくれた。
仲間達の想いに応えるためにも、自分達は負けられない。
玉座の間に着いた瞬間、2人は武器を構えていた。

ルイン「イプシロン!!」

エックス「貴様の企ては…リベリオンはもう終わりだ!!」

ルインがセイバーを、エックスがバスターを構えながらイプシロンを睨み据えた。
バスターとセイバーを突きつけられてもぴくりともしないイプシロンの表情は、バイザーの奥の瞳から、固い意思と決意を持ってエックスとルインを見据えていた。
あの時と同じように、最強のイレギュラーハンター達を前にしても恐れることなく、しかも他を圧倒するその威圧感は、まさに反乱軍を統べる覇者に相応しかった。

イプシロン「イレギュラーハンターか…」

エックスとルインを見据えながら、立ち上がるイプシロン。

イプシロン「…ミサイルの超フォースメタルを回収し、我らが“牙”を奪ったと考えているなら、それは間違いだぞ?」

ルイン「…どういうこと?」

イプシロンの言動にエックスとルインは疑問を抱いた。
イプシロンは、エックス達が超フォースメタルを回収したことに何の疑いも抱いていない。

エックス「(スカーフェイスも言っていたが、リベリオンが超フォースメタルを回収した訳ではないのなら、一体誰が…?)」

エックスが思考を巡らせようとした瞬間、イプシロンは身に纏ったマントで隠された動力炉部分に触れた。

イプシロン「超フォースメタルはまだここにある!!邪魔なお前達を排除し、次にこの我が身をミサイルの弾頭としよう!!」

エックス「な…っ!!?」

エックスとルインはイプシロンの発言に目を見開いた。
自らの身を滅ぼしてまで理想を実現しようとするのは正気の沙汰とも思えないが、理想に燃えるイプシロンの瞳は冷静であり真剣そのものだ。
止めなければと、エックスは無意識にハイパーモード・ファーストアーマーを発動していた。

エックス「そんなことはさせるものか!!スパイラルクラッシュバスター!!!!」

衝撃波と共に放たれたチャージショットは凄まじい勢いでイプシロンに向かっていく。
スパイラルクラッシュバスターがイプシロンに直撃するかと思われた瞬間、何者かが乱入した。
突然の乱入者に流石のイプシロンも目を見開いた。

イプシロン「スカーフェイス!?」

イプシロンの前に、スカーフェイスが両手と両足を広げて立ちはだかっている。
スパイラルクラッシュバスターをまともに喰らったにも関わらず、大してダメージを受けていない。

スカーフェイス「総統。この場はお任せください!!あ奴は…、エックスは、戦いの中で異常な速度で成長する力を持ちます。ここで戦っては、いかな総統といえ必ず勝てる保証はございません!!」

イプシロン「そこを退け、スカーフェイス!!この私が負けるというか!!」

スカーフェイス「総統さえご無事なら、リベリオンは滅びません!!」

スカーフェイスはイプシロンの憤りを前にしても引かなかった。
訴えるスカーフェイスの姿は、エックスやルインの目にもイプシロンを守ろうと必死に見えた。

スカーフェイス「イプシロン総統は我らリベリオンの理想そのものです!!どうか、ここは生き延びる道を…!!」

ルイン「逃がさないよイプシロン!!」

スカーフェイスの言葉を聞いた瞬間、ルインはセイバーにエネルギーをチャージしていた。
僅かでもイプシロンかスカーフェイスが動く素振りを見せたら斬り掛かりそうな勢いだ。

ルイン「あなた達の理想のために死んでいったレジスタンス達の仲間、そして私達の命を繋いでくれたスパイダーの想いに応えるためにも!!イプシロン!!スカーフェイス!!あなた達を倒す!!」

スカーフェイスはこちらにゆっくりと振り返った。
彼の左手にツインビームランスの柄が握られていた。
闘志と決意を漲らせ、スカーフェイスは再びエックスとルインの前に立ち塞がった。

スカーフェイス「総統をお護りするが我が信念…とくと見ろ!!」

迎え撃とうと身構えたルインの前に、咄嗟にエックスが前に出た。

エックス「俺にやらせてくれないか?ルイン」

ルイン「エックス?」

エックス「スカーフェイスとは前に一度戦った。奴の手もある程度把握出来た。」

ルインはエックスの瞳を見る。
決意に満ちた瞳を見て、長年エックスの傍にいたルインはこうなったエックスは止められないことを知っている。
ルインはセイバーを下ろすとエックスを見上げる。

ルイン「エックス」

エックス「ん?」

ルイン「…死んじゃ嫌だよ?」

エックス「…大丈夫、ありがとう」

エックスはファーストアーマーから唯一スカーフェイスの速度に対抗出来るブレードアーマーに切り換えた。
両者がバスターとツインビームランスを構えた。

スカーフェイス「エックス、最早我々に言葉など必要あるまい」

エックス「ああ」

互いに全身から凄まじいエネルギーを身に纏いながら、同時に武器を向けた。

スカーフェイス「受けよ!!プラズマボール!!」

エックス「ディバートチャージショット!!」

チャージショットとプラズマ弾がぶつかり合い、相殺された。

スカーフェイス「はあああああっ!!!!」

エックス「でやあああああっ!!!!」

バスターブレードとツインビームランスが何度もぶつかり合う。
しかし、剣技や純粋なパワーでスカーフェイスに劣るために、スカーフェイスの猛攻に徐々に追い詰められていくエックス。

エックス「ディバートチャージショット!!」

スカーフェイスのツインビームランスの刺突を屈んでかわし、至近距離からディバートチャージショットを放つ。

スカーフェイス「むっ!?」

ディバートチャージショットはプラズマチャージショット同様に着弾点にプラズマを生じ追加ダメージを敵に与える特性がある。
咄嗟にツインビームランスで受け止めたスカーフェイスは流石と言うべきだろうが、例え初撃を凌いだとてプラズマの追加効果でダメージは免れない。

エックス「喰らえ!!ディバートブレード!!」

ブレードアーマーのチャージブレードを繰り出すが、スカーフェイスはダメージに構わず、ツインビームランスでバスターブレードを受け止めた。

スカーフェイス「小賢しい真似を!!英雄の名が泣くぞ!!」

一瞬で姿を消したスカーフェイス。
エックスもマッハダッシュで離脱しようとするが僅かに遅かった。

スカーフェイス「せいっ!!」

エックスの背後に回ったスカーフェイスがツインビームランスを振るい、肩口から脇腹を斬り裂く。

エックス「ぐっ!!」

ルイン「強い…以前とはまるで違う超フォースメタルで能力を底上げしたの?」

イプシロン「…そうだ。スカーフェイス、フェラム、ボロックは三幹部として選ばれた際に超フォースメタルによる改造と少量の超フォースメタルを与えたのだ。」

ルイン「…逃げないの?スカーフェイスが時間を稼いでいるのに…」

イプシロン「逃げる気はない。我が理想を成し遂げるには貴様らは避けては通れぬ壁。それに…」

イプシロンはエックスとスカーフェイスの戦いを黙って見守る。
何があろうと絶対に手出しをしようとしない。
何故なら、イプシロンは腹心に絶対の信頼を置いているからだ。

ルイン「エックス…負けないで…」

祈るようにスカーフェイスの攻撃を捌いていくエックスを見つめるルイン。

スカーフェイス「プラズマランサー!!」

ツインビームランスに凄まじい雷を纏わせながら突っ込んで来るスカーフェイス。
エックスは咄嗟に屈み、マッハダッシュを繰り出す。

エックス「ドリルファング!!!!」

マッハダッシュをしながらドリル状になったブレードを突き出す。
炎のエレメントチップにより、炎属性を持ったこの技はスカーフェイスに有効なダメージを与える。

スカーフェイス「ぐおおおおお!!?」

エックス「ライジングスラッシュ!!!!」

跳躍しながらスカーフェイスの胴体を斬り裂く。

スカーフェイス「(強くなっている…私との戦いの中で恐るべき速度で…これが100年前、かつての最強のイレギュラーハンター・シグマが言っていたレプリロイドの始祖たるエックスの無限の可能性というわけか……)」

エックスの成長速度は最早異常だ。
今のエックスは超フォースメタルで強化したスカーフェイスの力を上回りつつある。

エックス「マッハダッシュ!!」

一気に距離を詰め、ディバートブレードを繰り出すエックス。
スカーフェイスもツインビームランスで受け止め、バスターブレードを弾く。
勢いよく弾かれたエックスは体勢を崩した。

スカーフェイス「終わりだ!!」

エックスの首を跳ねようと、ツインビームランスがエックスの首に迫るが…。

エックス「ガイアアーマー!!!!」

ブレードアーマーからガイアアーマーに切り換え、ツインビームランスを腕で受け止めるとスカーフェイスの腕を掴む。

スカーフェイス「ぐっ!!?」

逃れようとするスカーフェイスだが、ガイアアーマーのパワーには流石のスカーフェイスも逃れられない。

エックス「ガイアチャージショット!!!!」

スカーフェイス「ぐあああああああっ!!」

至近距離でガイアチャージショットを喰らい、吹き飛ぶスカーフェイスだが、体勢を立て直し、プラズマ弾を連射するが、ガイアアーマーの防御力を前では無力だ。
しかし鈍重なガイアアーマーではスカーフェイスを捉えることは難しいために再びブレードアーマーに換装する。

スカーフェイス「(このままでは…これだけは使いたくはなかった…やむを得ん!!)はあああああっ!!!!」

エックス「!!?」

スカーフェイス「受けてみよ!!超電磁ブレイカー!!!!」

ツインビームランスを高速回転させ、スカーフェイスの放った電磁波がマッハダッシュを使う暇すら与えずエックスを包み込むと、エックスのエネルギーがスカーフェイスに吸収されていく。

エックス「ぐっ!?こ、これは…俺のエネルギーを…!?」

身体を襲う虚脱感に、エックスは膝をつく。
早く離脱しなければともがくのだが、スカーフェイスの電磁波はそれを許さない。

スカーフェイス「いくら貴様でも超電磁ブレイカーの電磁波からは逃れられん。終わりだ、エックス」

エックス「ぐっ…!!」

迫り来るスカーフェイスに膝をつきながらも睨み据えるエックスだが、エネルギーを吸収され、バスターブレードの光刃も消失していく。

エックス「(ここまでなのか……)」

身体から力が抜けていき、最早立つこともままならない。
スカーフェイスとエックスの距離は徐々に縮まっていく。
諦めかけたその時である。

ルイン「エックスーーーーッッッ!!!!」

エックス「っ!!!!」

ハッとなり、視線を彼女に遣ると、今にも駆け寄りそうになるのを必死に耐えている彼女の姿があった。

ルイン「負けないで!!最後まで諦めたりしないで!!」

エックス「っ…そうだな…諦める訳には…いかない!!レイジングエクスチャージ!!!!」

エックスの全身から凄まじいエネルギーが迸る。
レイジングエクスチャージのエネルギーに超フォースメタルで強化したXハートが共鳴をお越し、更にレイジングエクスチャージの力を高めていく。

スカーフェイス「な、何!?」

イプシロン「スカーフェイスの超フォースメタルを超えるエネルギー値だと…?」

イプシロンが僅かに目を見開いた。
スカーフェイスに与えた超フォースメタルはボロックやフェラムよりも大きい物だ。
それを上回るエネルギーを発しているエックスに流石のイプシロンも驚きを隠せない。
エックスはバスターブレードを天に掲げると、レイジングエクスチャージで強化されたエネルギーがバスターブレードに収束されていく。

エックス「はあああああっ!!!!」

スカーフェイス「何という計り知れないエネルギー…」

超電磁ブレイカーの電磁波の影響を今でも受けているにも関わらず、エネルギーが減少するどころか増している。
これから繰り出すエックスの一撃は凄まじい威力を誇るものだろう。
このような場面で出す技だ。
生半可な威力ではない。
しかし避ければ確実にイプシロンも受ける。
スカーフェイスも超電磁ブレイカーを中断し、吸収したエネルギーも全てツインビームランスに収束させていく。

エックス「ギガブレード!!!!」

スカーフェイス「プラズマボール!!!!」

刀身から放たれる2発の衝撃波と全てのエネルギーが込められたプラズマ弾がぶつかり合い、大爆発を起こす。
そして…。

ルイン「あ…っ!!」

ルインは見た。
エックスの炎の属性を持った橙色に輝くバスターブレードの光刃がスカーフェイスの動力炉を貫いていた。
ギガブレードとプラズマボールが激突し、大爆発した瞬間にエックスはマッハダッシュでスカーフェイスに肉薄したのだ。
レイジングエクスチャージで極限まで強化されたマッハダッシュはスカーフェイスにすら反応出来なかったのだ。

スカーフェイス「我が力…及ばず…」

バスターブレードの光刃に貫かれたスカーフェイスは途切れ途切れに言った。 

 

Another28 イプシロン

 
前書き
イプシロン戦 

 
バスターブレードで動力炉を貫かれたスカーフェイス。
エックスはバスターブレードを抜くと通常の腕に戻してハイパーモードを解除した。

ルイン「勝ったの…?」

あまりにも速過ぎてエックスの勝利を実感出来なかったルイン。
スカーフェイスは貫かれた胸を押さえながら少しずつ後退していく。
膝をつかなかったのはせめてもの意地か。

スカーフェイス「我が力は…貴様に及ばなかったか…だが、イプシロン総統がいる限り…リベリオンは滅びん…リベリオンに…栄光あれ!!!!」

次の瞬間、スカーフェイスは爆散した。
エックスは目を逸らさず見届ける。
忠義に生き、主君であるイプシロンのために信念を貫いたスカーフェイスの生き様を。

イプシロン「お前の信念…しかと見届けた。…だがスカーフェイスよ。私はここから逃げる気はない!!何故ならこれは…我が理想を成すに避けて通れぬ道ゆえ。リベリオン総統イプシロン…参る!!」

エックスとルインの前に立つイプシロンの掌から超フォースメタルの光が放たれた。

ルイン「何てパワーなの…これがイプシロンの超フォースメタルの力…!?」

エックス「しかし、怯んでばかりはいられない!!行くぞルイン!!」

イプシロンから放たれる威圧感にエックスとルインは息を飲んだが、直ぐに2人はハイパーモードを発動させた。

エックス「ハイパーモード・ガイアアーマー!!」

ルイン「ここまで来たら出し惜しみなし、ハイパーモード・OXアーマー!!」

エックスはパワー重視のガイアアーマー、ルインはOXアーマーを発動し、拳を構えてイプシロンに突撃する。

エックス「ガイアインパルス!!」

ルイン「チャージナックル!!」

2人の拳がイプシロンに迫るが、イプシロンは動くそぶりすら見せない。
2人の拳がイプシロンに叩き込まれる寸前。

イプシロン「甘いわ!!」

イプシロンの周囲にエネルギーバリアが張られ、エックスとルインの拳を弾いた。

エックス「なっ!!?」

ルイン「バリア!?」

イプシロン「超フォースメタルが常時発する強大なエネルギーはそれ自体がバリアとなり、その程度の攻撃では突破することは不可能。」

エックス「馬鹿な…」

イプシロン「フェイタルアタック!!」

ルイン「ぐっ!?」

一瞬でルインの目の前に現れると、イプシロンは強烈な蹴りを繰り出し、ルインを吹き飛ばす。
咄嗟に防御したのにも関わらず吹き飛ばされてしまった。

エックス「ルイン!!ガイアチャージショット!!!!」

イプシロンに向けて、ガイアチャージショットを繰り出すが、超フォースメタルのエネルギーバリアに微細な罅を入れるだけで終わる。

イプシロン「ほう…超フォースメタルのエネルギーバリアに罅を入れるとは大した威力だ…。だが…」

エックス「っ!?」

イプシロン「メタクラッシュ!!!!」

イプシロンの掌から伸びる光の帯がエックスを拘束すると、超フォースメタルのエネルギーを拳に収束させた一撃を叩き込む。

エックス「がはっ!!?」

エックスの強化アーマーの中でも最高の防御力を誇り、凄まじい重量を持つガイアアーマー越しでさえ意識を失いそうになったエックス。

ルイン「この…滅閃光!!!!」

Ωナックルを地面に叩き込むと、放射状に貫通性能の高いエネルギー弾を炸裂させる。
しかし滅閃光の貫通力を持ってしてもイプシロンのバリアは貫けない。

ルイン「そんな…滅閃光も通用しないの!!?」

イプシロン「灼熱の業火を受けるがいい!!ドギガファイア!!!!」

ルイン「っ!!」

咄嗟に後ろに跳躍してドギガファイアを避ける。
凄まじい熱に戦慄する。
イプシロンのバリアが修復されていく。

エックス「ぐっ…レイジング…エクスチャージ…!!フォースアーマー!!プラズマチャージショット!!!!」

レイジングエクスチャージで自己治癒と能力強化をし、イプシロンにプラズマチャージショットを放つ。

イプシロン「むっ?」

プラズマチャージショットはバリアに阻まれたが、プラズマが発生し、修復途中のイプシロンのバリアに更に罅を入れていく。
レイジングエクスチャージで強化されたプラズマチャージショットで後少しと言ったところか。
修復速度を上回る勢いで休まず攻撃を与え続ける事が出来ればイプシロンに攻撃を当てる事も可能だ。
フォースアーマーはそれを可能にした強化アーマーだ。

エックス「全エネルギー解放!!ストックチャージショット!!!!」

フォースアーマーのギガアタックであるストックチャージショットだ。
ダメージをエネルギーに変換するストックチャージショットはオリジナルと違って気軽に扱える物ではないが、オリジナルよりも威力、貫通力共に優れたチャージショットを4発放てるのだ。
プラズマチャージショットの着弾点に発生したプラズマに向けてストックチャージショットを放つ。
傷付いたバリアではプラズマチャージショットとストックチャージショットの波状攻撃に耐える事は出来ないはずだ。

イプシロン「っ!!」

バリアは粉砕され、ストックチャージショットがイプシロンに炸裂する。

ルイン「今だ!!ダブルチャージウェーブ!!!!」

駄目押しとばかりにルインがダブルチャージショットとセイバーショットを繰り出す。
ストックチャージショットとダブルチャージウェーブが同時に直撃したのだ。
流石のイプシロンも…。

イプシロン「見事だ。超フォースメタルのバリアを破るとはな」

煙が晴れ、マントが焼け焦げ、イプシロンのボディが露わになる。
イプシロンのボディは完全ではなかった。
超フォースメタルのエネルギーがアーマーから漏れており、背部のユニットからは無数に伸びたコードの束がある。
まるで無理矢理接続を引き千切って出てきたかのような姿だった。

ルイン「未完成なのにあの強さなの…!?」

エックス「気をつけろ、奴の強さはまだ未知数だ」

フォースアーマーからファルコンアーマーに切り換えると、ビームスピアとブレードを構えた。

エックス「ソニックブーム!!」

イプシロン「温い!!」

衝撃波はイプシロンの掌によって掻き消された。
しかし、一瞬の隙を突いてルインがホルスターに収められたセイバーを2つ同時に抜き放った。

ルイン「ダブルチャージセイバー!!!!」

チャージセイバーの2連発。
負担は凄まじいが、高い威力を誇るチャージセイバーを同時撃ちし、イプシロンの胴体に傷をつける。

イプシロン「フェイタルアタック!!!!」

しかしイプシロンも負けてはおらず、追撃を繰り出そうとするルインに鋭い蹴りを繰り出し、吹き飛ばす。

エックス「スピアチャージショット!!!!」

フリームーブで空中に移動していたエックスがスピアチャージショットを放つ。
完全に不意を突いた一撃だ。
イプシロンにはスカーフェイス程のスピードはないと判断したのだが。

イプシロン「舐めて貰っては困る」

イプシロンは巨体からは信じ難い身のこなしでエックスの放つバスター攻撃でも最速の弾速を誇るスピアチャージショットを、簡単に回避して見せたのだ。

エックス「なっ!?」

イプシロン「ドギガサンダー!!!!」

広範囲に落ちる雷を受け、エックスは地面に墜落する。

ルイン「この…アースクラッシュ!!!!」

イプシロン「メタクラッシュ!!!!」

高エネルギーを纏った拳がぶつかり合うが、力負けしたのはルインの拳だ。
ルインの拳から腕にかけて亀裂が入っていく。

ルイン「ーーーーーーっ!!!!」

腕を押さえて声にならない悲鳴を上げるルイン。
ルインのアースクラッシュの威力は決して低くはない。
しかし超フォースメタルの力を持つイプシロンを前にしては力不足過ぎるのだ。

イプシロン「打ち砕いてくれる!!!!」

再びメタクラッシュを繰り出そうとするイプシロンだが、エックスがファルコンアーマーからブレードアーマーに換装して、マッハダッシュで間に割り込み、ディバートブレードでイプシロンを斬り裂いた。

エックス「喰らえ!!ギガブレー…」

イプシロン「させん!!」

至近距離でギガアタック・ギガブレードを繰り出そうとするが、イプシロンに腕を掴まれ、阻止されてしまう。

エックス「っ!!」

イプシロン「その技はブレードを振り下ろさねば放つ事が出来んのだろう。ならば、腕を掴んでしまえば使うことは出来ん。」

イプシロンがエックスの腕を握り潰そうと力を込める。

エックス「ぐああああっ!!ぐっ、ダブルチャージショット!!!!」

すぐさまセカンドアーマーに換装して、掴まれていない方の腕からチャージショットを放つ。

イプシロン「ぐっ…!!」

エックス「喰らえ!!」

もう1発、もう片方のバスターからチャージショットを放つ。
ダブルチャージショット自体はサードアーマーも可能だが、単発の威力、貫通力はセカンドアーマーの方が上だ。

エックス「はあ…っはあ…っ」

荒く息をしながらイプシロンに握り締められた腕をさする。
もし少しでもセカンドアーマーへの換装が遅れ、ダブルチャージショットを放っていなければ確実に潰されていた。

ルイン「エックス…」

エックス「ルイン…腕は大丈夫か?」

ルイン「大丈夫…と言いたいけど。ごめんなさい、あまり無茶は出来そうにないよ」

亀裂の入った腕を庇いながら立ち上がる。
イプシロンはダブルチャージショットをまともに喰らっても大して応えてはいない。

イプシロン「中々やるな…だが、超フォースメタルの真髄。お前達が真に味わうのはこれからだ」

エックス「何!?」

イプシロン「オメガフォース!!!!」

イプシロンは体内の超フォースメタルを暴走させ、更にパワーを上昇させていく。

エックス「そ…そんな…。イプシロンのエネルギーが上昇している。意図的に超フォースメタルを暴走させているのか…?」

イプシロン「受けるが良い。このイプシロン最大最強の一撃を!!ノヴァインパクト!!!!」

超フォースメタルのエネルギーを超圧縮させたエネルギー弾が2人に迫る。

エックス「くっ!!ガイアアーマー!!」

セカンドアーマーからガイアアーマーに換装して、防御フィールドの出力を最大にしながら展開して、ルインを守るように防御体勢を取るエックス。
しかし。

イプシロン「いかにそのガイアアーマーが鉄壁を誇ろうと、超フォースメタルの力を前にしては紙の楯同然」

イプシロンの放ったエネルギー弾の威力はエックスの予想を大きく凌駕していた。

エックス「ば…馬鹿な…っ!!?」

次の瞬間、エックスの表情が驚愕に歪む。
エネルギー弾の直撃は避けられたが、超重量を誇るガイアアーマーを纏うエックスをルイン諸とも余波のみで吹き飛ばしたのだ。

エックス「ぐあ…っ!!」

ルイン「く…っ!!」

床に叩きつけられたエックスとルインが呻く。

ルイン「何てパワーなの…あのシグマやルミネもここまでは…っ」

目の前にいるイプシロンはパワーにおいては、シグマやルミネを上回っていた。
気付けば超フォースメタルのエネルギーバリアも復活していた。

ルイン「バリアが復活して…っ」

エックス「くそ!!サードアーマー!!全リミッター解除!!ハイパーサードアーマー!!!!」

ガイアアーマーからサードアーマーに換装して、全ての潜在能力を解き放つ。
サードアーマーが黄金の輝きを放ち、凄まじいエネルギーを発する。

エックス「クロスチャージショット!!!!」

エックスはイプシロンにクロスチャージショットを連発する。
ハイパーサードアーマーはエネルギー消耗は激しいがそれに見合う性能を誇る。
ファーストアーマー同様ギガアタックは持たないが、受けたダメージ、吸収したエネルギーをバスターエネルギーに変換する機構を持っているために、強力なチャージショットをフォースアーマー以上に連発することが可能になるのだ。
出来ることならあまり使いたくはなかったが、イプシロンは純粋な戦闘力ならばシグマやルミネを遥かに超越する怪物なのだ。
力の出し惜しみをしている場合ではない。
ハイパーチャージのエネルギーが切れるまでクロスチャージショットを放つエックス。
そしてハイパーチャージのバスターエネルギーを使い切った直後。

エックス「チャージブレード!!!!」

クロスチャージショット後のチャージブレード。
かつてのカウンターハンター事件やドップラーの反乱時に猛威を振るったエックスのトリプルチャージである。
しかもハイパーチャージによるクロスチャージショットの連発後のチャージブレードは重装甲型でも破壊出来る程の威力を誇るのだが…。

エックス「馬鹿な……っ」

クロスチャージショットの連発とチャージブレードを受けても罅すら入らないバリアに思わずブレードを落としそうになった。

イプシロン「いかに貴様が圧倒的な火力を誇ろうと、今の超フォースメタルから発生するバリアの突破は至難の業。ドギガブリザード!!!!」

絶対零度の冷気がエックスに襲い掛かる。
咄嗟にディフェンスシールドを発生させたことでダメージを最小限に抑える。

ルイン「リミッター解除!!オーバードライブ!!チャージショット連射!!!!」

バスターショットから一段階チャージショットを連射する。
OXアーマーはオーバードライブを発動すれば一段階チャージショットを連発出来る。
しかし、クロスチャージショットの連発ですら罅を入れることが出来なかったバリアを破ることは出来ない。

イプシロン「フェイタルアタック!!!!」

エックス「ぐあっ!?」

ディフェンスシールドすら物ともしない強烈な蹴りを受けて吹き飛ぶエックス。

イプシロン「テラサンダー!!」

ルイン「あああああっ!!?」

ドギガサンダーを遥かに上回る雷撃を受けるルイン。

エックス「(く、くそ…何て強さだ…これでは例え万全な状態であっても…)」

エックスはスカーフェイスとの戦いで相当消耗したが、OXアーマーを発動したルインと組んでいるにも関わらず圧されているのだ。

エックス「く、くそ!!スピアチャージショット!!!!」

ファルコンアーマーに切り換え、スピアチャージショットをイプシロンに放つが、超フォースメタルのエネルギーバリアには歯が立たない。

ルイン「チャージセイバー!!!!」

片腕で繰り出すが、イプシロンのバリアに弾かれてしまう。
今のイプシロンには生半可な攻撃は通用しない。
ガイアアーマーでは咄嗟の回避が難しいし、ブレードアーマーの能力は完全に見切られている。
フォースアーマーのプラズマチャージショットとストックチャージショットの波状攻撃もハイパーサードアーマーのクロスチャージショットの連発とチャージブレードが効かないために通用するかどうか怪しい。

エックス「(くそ、出来ればもうレイジングエクスチャージを使いたくなかったが………どれ程負荷を掛けた所で最早同じか…)レイジングエクスチャージ!!!!」

ファルコンアーマーからハイパーサードアーマーに切り換え、ヘッドパーツの潜在能力とレイジングエクスチャージで身体の傷を癒やし、アルティメットアーマーに切り換えた。

エックス「行くぞイプシロン!!俺の全身全霊を持って、お前を倒す!!」

エックスの強化アーマーの中でも攻撃的なフォルムを持つ濃紺のアーマーを纏い、イプシロンを睨み据える。

イプシロン「ほう…流石は伝説のイレギュラーハンター。その名に恥じぬ姿だ」

エックス「アルティメットアーマー、出力全開!!ノヴァストライク!!!!」

全身から凄まじいエネルギーを放出すると、イプシロン目掛けて突進する。

イプシロン「ぬっ!!」

ノヴァストライクはバリアに弾かれたが、レイジングエクスチャージで威力が強化された一撃はバリア越しでもイプシロンに僅かな衝撃を与える。

イプシロン「超フォースメタルのバリア越しに衝撃を…だが、一度防いでしまえば…」

エックス「何発でも!!ノヴァストライク!!!!」

イプシロン「馬鹿な、連発だと!!?」

この戦いで初めて、イプシロンの目が驚愕で見開かれた。
弾かれたエックスはバーニアを吹かして体勢を立て直すと、再びノヴァストライクを繰り出す。

エックス「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

バリアを粉砕せんと、ノヴァストライクを連発するエックス。
流石にノヴァストライクの連発にはバリアも耐えきれなかったのか亀裂が入り始めた。

イプシロン「くっ!!」

エックス「ぐっ…!!うわああああああ!!!!」

ノヴァストライクとメタクラッシュがぶつかり合うが、力負けしたのはエックスだ。

イプシロン「っ…!!」

ノヴァストライクを相殺した方の腕に亀裂が入る。
しかし、腕に走る激痛に構わず、イプシロンはエックスに追撃を仕掛けようとしたが、エックスの他にも凄まじいエネルギー反応を感じ、そちらに目を向けると…。

エックス「放てルイン!!」

ルイン「喰らえイプシロン!!これが私の放てる最高の技だ!!裂光覇!!!!」

極限までエネルギーを収束させた拳を地面に叩きつけると、滅閃光を遥かに上回る威力と貫通力を持つ光がイプシロンに降り注ぐ。
バリアに亀裂が広がる。
ルインは損傷に構わず両腕にエネルギーを収束させた。

ルイン「ダブルアースクラッシュ!!!!」

両の拳から放たれたアースクラッシュがイプシロンのバリアを粉砕する。
反動からか、ルインの右腕が粉砕され、左腕に亀裂が入る。

イプシロン「馬鹿な!?」

ルイン「エックス!!!!」

エックス「ノヴァストライク!!!!行けええええええっっっ!!!!!!」

先程の連発型とは違い、アルティメットアーマーのエネルギーを全解放して繰り出す一撃必殺型のノヴァストライクを繰り出す。

イプシロン「ぐあああああああああっっっ!!!!」

流石のイプシロンも効いたらしく、勢い良く吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

エックス「はあ…はあ…」

イプシロン「(何と言う技だ。まともに受ければこれ程の威力とは…だが…)我は…負けぬ!!!!」

全身に走る激痛に耐えつつも無理矢理に立ち上がり、超フォースメタルのエネルギーを圧縮させる。

イプシロン「受けよ!!ノヴァインパクト!!!!」

超圧縮エネルギー弾がエックスに迫る。

エックス「(不味い、ノヴァストライクはまだ使えない。ガイアアーマーでは耐えられない…なら…)」

一か八か、エックスが換装したのはブレードアーマーでもガイアアーマーでもなく、ハイパーサードアーマーである。
エックスはハイパーサードアーマーのアームパーツの潜在能力で超フォースメタルの超圧縮エネルギー弾を吸収し、ハイパーチャージのバスターエネルギーをフルの状態に持って行く。

イプシロン「何だと!?」

エックス「使わせて貰うぞ!超フォースメタルのエネルギーを!!クロスチャージショット!!!!」

再びハイパーチャージのバスターエネルギーが切れるまでクロスチャージショットを連発するエックス。
バリアが消失し、ノヴァストライクを喰らって弱っているイプシロンにはかなりのダメージを与えられた。

エックス「これでとどめだイプシロン!!!!」

ハイパーサードアーマーのフットパーツの潜在能力を発揮し、エアダッシュを連続で使い、イプシロンに肉薄した。

ルイン「行けーーーっっっ!!!!」

エックス「俺の渾身の力を込めたチャージブレードだっ!!喰らええええええっっっ!!!!!!」

全てのエネルギーをブレードに収束させた一撃をイプシロンに喰らわせる。
チャージブレードはイプシロンの胴体に深い裂傷を刻んだ。

ゼロ「エックス!!ルイン!!」

アクセル「あ…っ」

マリノ「イプシロンが…」

エックスがイプシロンに致命傷を与えたのと同時にゼロ、アクセル、ルナ、マッシモ、マリノ、シナモンが到着した。

ルイン「みんな…無事だったんだね…」

マリノ「ああ、ナインテイルズも、ラフレシアンも、ダックビルモールも片付けたよ。」

シナモン「プレオンはマッシモさんが殆ど倒してくれました。残りはレジスタンスの皆さんが相手にしています。」

ルイン「そう…」

笑みを浮かべると、ルインはイプシロンを見遣る。

イプシロン「ぐっ…ナインテイルズ…ラフレシアン…ダックビルモールが敗れたか…見事だ…」

エックスやルイン、ゼロ達を前に、とうとうイプシロンは膝をつき、自身の敗北を認めたのである。
長きに渡るレジスタンスとリベリオンの戦いに終止符が打たれたのだ。 
 

 
後書き
ハイパーサードアーマーが大活躍。
エネルギー弾吸収してバスターエネルギーに変換出来るならエネルギー弾系統に関しては無敵ではないかと思う。 

 

Another29 イプシロンの最期

 
前書き
イプシロンを倒したエックス達 

 
レイジングエクスチャージとギガアタックの連続使用で身体が悲鳴を上げているエックスはハイパーモードを解除してイプシロンを見据えた。
超フォースメタルを暴走させた負荷により、イプシロンの内部機関は相当ダメージを受けており、しかも、イプシロンを修理出来る技術を持つ存在は、この場にはいない。
誰の目から見ても、このままではイプシロンは助からないということが明白だった。
エックスは負荷で今にも倒れそうになる身体を必死に支えながらバスターを構えた。

エックス「何故だ…?何故超フォースメタルのミサイルなんて危険な兵器を!!」

バスターを向けられたイプシロンは肩で息を吐きながら、エックス達を睨みつけた。

イプシロン「力だ…。力をつけなければ、誰も私達の主張になど耳を貸さん」

ルイン「そんな!?他に何か方法があったんじゃ…」

イプシロン「お前達連邦に“イレギュラー”扱いされた我々に、他にどんな方法があったというのだ!!」

ルイン「そ、それは…」

イプシロンの言葉にルインは閉口してしまう。
レプリロイドは一度イレギュラー認定を受けてしまうと、それを取り消すのは容易ではない。
例えイレギュラー化して正常に戻ったレプリロイドでも、しばらくの間は元イレギュラーのレッテルが付き纏う。
事実、イレギュラー化から正常に戻ったホーネック達、ゲイト、ヤンマーク達は信用を得るまで元イレギュラーとして扱われた。

イプシロン「私は動ける限り…お前達を…っ!!」

立ち上がったイプシロンはアーマーから火花を散らし、苦しそうに喘ぎながらも、攻撃しようとする。

ゼロ「撃て、エックス!!」

エックス「うおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」

ゼロの声が響き渡り、エックスのバスターから最後の一撃が放たれた。
それは、チャージブレードで刻まれた傷に吸い込まれるように炸裂したのだった。
目を開けられないくらい強い光が玉座の間に広がる。
光が晴れ、全てが見渡せるようになると地面に黄金の輝きを放つイプシロンの強大な力の動力源であり、心臓とも言える超フォースメタルがあった。

エックス「これが、イプシロンの超フォースメタル…」

エックスは床から超フォースメタルを拾い上げ、切ない思いと共に胸の上で握り締めた。

ルイン「本当に…他に方法がなかったのかな?」

エックスの思いを代弁するようにルインが呟いた。
ルインは酷く傷付いた片腕をゆっくりと動かし、超フォースメタルに触れる。
気のせいかもしれないが、少しだけ腕の痛みが和らいだ気がする。

エックス「ルイン…」

ルイン「勝ったのに…何だか…悲しいね…」

悲しげにエックスの掌に収まっている超フォースメタルを見つめるルイン。

ゼロ「だが、いくら御大層なことを言っても、リベリオンがしようとしたことはイレギュラーだった」

ゼロが、親友と後輩の肩に諭すように手を置いた。

ルナ「一歩間違えりゃ、奴らは世界を破滅させちまうところだったんだ。」

ゼロ「その通りだ。俺達は間違ってはいない」

ルイン「でも…」

何が正しいかどうかは後世の歴史だけが決められることだと、スカーフェイスが言っていたのを思い出した。

アクセル「理屈じゃないんだよ」

ルナ「アクセル?」

アクセル「誰にも分からないんだよ。何がどうしてイレギュラーになるかなんてさ……」

エックス「………」

アクセル「例え間違った道であったとしても僕はイレギュラーハンターとしてあり続けるよ。今まで倒してきたイレギュラー達からしたら単なる自己満足に過ぎないだろうけど、それでもイレギュラーハンターとして100年間ずっとイレギュラーと戦い続けて来たプライドがあるからね」

ルイン「…そっか。やっぱ凄いねアクセルは。私もそう言う風に思う事が出来たら良いんだけど」

どこか寂しげに微笑するルイン。
アクセルも苦笑しながら、イプシロンとスカーフェイスのDNAコアを回収した。
全員が、考え方はどうあれ、ギガンティスの未来とレプリロイドの未来のために戦い続けた戦士達に黙祷を捧げた。

マッシモ「…ん?」

足音に気付いて振り返るとマッシモは目を見開いた。
マッシモの様子に気付いたエックス達も後ろを振り返るとそこには…。

シナモン「あ、あの人は…」

緑色の軍服を思わせるアーマーを纏ったレプリロイドが、真っ直ぐエックス達の方へ歩いてくる。

エックス「リディプス大佐…!!」

それはエックスとゼロ、ルインの上司であり、3人をギガンティスへ送り出したリディプス大佐だった。

リディプス「超フォースメタルの反応をキャッチして来たのだが…」

ルイン「え?」

リディプス「超フォースメタルはどうなった?」

エックス「はい、イプシロンが所持していましたが…回収しました」

エックスは躊躇わずリディプス大佐にイプシロンの超フォースメタルを渡した。

リディプス「これが…」

リディプス大佐は暫く手の中にある超フォースメタルの黄金の輝きを見つめていた。
やがてリディプス大佐は改めてエックス達に向き直り、賞賛した。

リディプス「今作戦において、諸君らの働きは見事だった!!作戦を指揮出来たことを名誉に思うよ、エックス。レジスタンスの諸君も協力に感謝する」

そうしてリディプス大佐は敬礼し、5人のイレギュラーハンターとレジスタンスの協力者達に最大の敬意を表した。

エックス「ありがとうございます」

エックスも傷の痛みのせいか、リディプス大佐にゆっくりとだが敬礼した。

リディプス「それでは諸君、基地に戻っていたまえ」

リディプス大佐はエックス達の態度に満足したように頷くと、さっと踵を返した。

リディプス「すぐに迎えの飛行艇を来させよう」

これでギガンティスの戦い全てが終わったのだ。
エックスは複雑な表情を浮かべながらここから去っていくリディプス大佐の背中を見ていた。
いくら上司から賛辞を受けてもエックスの心は少しも晴れない。
シグナスや今は亡きケイン博士のようにエックスをよく知っている上司達なら、最後に慰めの言葉でもかけてくれたかもしれないが、付き合いが浅いリディプス大佐にそれを期待するべきではないだろう。

ルイン「エックス…お疲れ様」

エックスの隣で、損傷のせいでぎこちないが背中を優しく叩くルインにエックスも微笑を返す。

エックス「(しかし…ミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタルはどこに消えたんだろうか…?)」

イプシロンやスカーフェイスの発言から考えると、イプシロン達は自分達がミサイルの超フォースメタルを回収したと思いこんでいたようだ。
ならばミサイルの弾頭の超フォースメタルを回収したのがリベリオンではないのならば、一体誰が超フォースメタルを回収したのか?
それがエックスの最大の疑問であった。 

 

Another30 裏切り

 
前書き
リディプス裏切り 

 
エックス達とレジスタンスが無事に帰還した後、イプシロンを倒し、リベリオンを壊滅させたという報せは総督府からすぐにギガンティス全土に行き渡った。

アリア「本部に戻るのは3日後だよ」

エックス「え?」

アリア「エックス君達のダメージを調べた結果、アーマー、内部機関が酷い有り様でね。精密検査その他諸々で、本部に戻るのは3日後だとシグナス君達に伝えておいたから、リディプス大佐の飛行艇も3日後の早朝辺りに迎えに来るから、メンテナンスが終わったらギガンティスのみんなに挨拶でもしてきなよ。」

ルイン「アリア博士…」

アリアの気遣いにエックス達は笑みを浮かべる。

アリア「それじゃあみんな、メンテナンスをするからスリープモードに切り替えて」

全員【了解】

全員がスリープモードに切り替え、眠りについた。








































ガウディル「ふうむ、ルインとルナは人間素体型レプリロイドじゃと聞いてはいたがこれは凄いのお。人間の肉体の性質を持っておるためか、体内のナノマシンによる自己修復能力を飛躍的に高めておるんじゃな」

アリア「そういうこと。アクセル君やエックス君やゼロ君みたいな自己治癒能力を持たない2人にとっては必須なのかもね……」

今まで酷いダメージを受けても助かったのは戦闘型レプリロイドの頑強なボディもそうだが、レプリロイドと人間の回復力が合わさったからだとも言える。

ガウディル「ルインとルナもそうじゃが、エックスもゼロもアクセルも、遥か昔の未知の技術で人間に造られたレプリロイドなんじゃな。わしもまだまだ人間から学ばねばならないことが沢山あるグワ」

アリア「そりゃあ、エックス君はライト博士の最高傑作でレプリロイドの始祖だし、ゼロ君やアクセル君もワイリー博士の最高傑作だしね…アクセル君はワイリーナンバーズかどうかは微妙だけどね。まあ、人間で言う従兄弟みたいなもんかな?」

ガウディル「グワッ!!?ゼロとアクセルがあの200年前に存在したマッドサイエンティスト、アルバート・W・ワイリーの最高傑作!!!?」

アリア「声がでかい」

モデルXに変身して拳骨を喰らわせるアリアを見て、ゼロの様子を見ていたアイリスは吹き出した。

ガウディル「グワワ…ッ…す、すまん…そ、それにしても不思議な物じゃな。本来ならエックスとは敵同士であるゼロとアクセルがエックスの親友、後輩として互いに支え合っておるとは……」

アイリス「3人は宿命を乗り越えたんですよ。今の3人はルインとルナと一緒に世界を守り続ける存在なんですから」

アリア「そだね」

ガウディル「そうじゃな……生まれはともかく、ゼロとアクセルはこの世界に必要な存在なんじゃ…ともかく、何とかカタがついたグワな…。初めてエックス達と会った時、わしは争いごとに巻き込まれるのが何よりも嫌じゃった。じゃが、逃げ回るだけでは解決しないことがあるのを、知ったグワ…。わしの技術がエックス達の戦いに役立ったことを、今は素直に喜べるよ」

いつも頑固なガウディル博士が恥ずかしそうに言うのを見て、アリアとアイリスは互いに見遣ると笑みを浮かべた。








































3日後、精密検査を終え、レジスタンス達に別れを告げるとゼロ達はいつものそれぞれの場所に向かう。
エックスとルインもモニタールームに向かうとアル長官とナナがいた。

アル「改めて礼を言わせてくれエックス…リベリオンのやり方に疑問を持ち、レジスタンスとして戦ってきたが…正直言って、君の力が無ければここまで来ることは出来なかった…ありがとうエックス!!君は最高のイレギュラーハンターだ。エール、スパイダー、そして数多くの仲間達…。彼らが信じて、ついてきてくれたことが無駄にならないよう、私はこの地に平和を築かねばな…エックス、君にはきっとまた別の任務があるのだろう。君がこの地を去っても、ギガンティスに平和をもたらした英雄が、誰なのか…。皆、忘れることはないだろう。本当にありがとう、エックス」

アル長官の礼が終わったのを見計らい、ナナがエックスとルインに歩み寄る。

ナナ「終わりましたね、エックス、ルインさん…。もう転送は必要ないです。戦いに行くエックスの背中を見送ることが出来なくなるのは、嬉しいことなんだけど…。何だか、ちょっぴり寂しい気もします」

エックス「ナナ?」

ナナの様子が少しおかしいことに気付いたエックスだが、次のナナの発言に吹っ飛んでしまう。

ナナ「ルインさん。エックスと絶対に幸せになってください。私、お2人の結婚式には絶対に出席しますから」

ルイン「え!!?あ、いや…その…」

赤面するルインだが、ナナの真剣な表情に、恥ずかしそうに頷いた。

アル「そろそろヘリポートに向かった方がいい。迎えが来る頃だ」

エックス「あ、はい」

アル長官に促され、ヘリポートに向かうエックスとルイン。

ナナ「(エックス…ルインさんと幸せになってください)」

想い人と想い人の恋人の背中を見つめるナナ。
彼女の心はとても穏やかだった。








































ヘリポートに向かう途中、エックスとルインはアクセルとルナの姿を発見した。

ルナ「よう、エックス、ルイン。任務完了だな。俺が受けた任務じゃねえけど、少しくらいは俺の手柄にさせてくれよな?」

エックス「ああ、シグナス達にもそう言っておくよ」

ルイン「アクセルとルナも今回は本当にありがとうね。せっかくの休暇だったのに」

アクセル「気にしないでよ。さて…僕達はどうするかな…まだ休暇は残っているけど、一度本部に報告に帰る方がいいかな……」

ルイン「休暇が終わるまでギガンティスでゆっくりしたら?シナモンともお友達になれたのに」

アクセル「うーん…どうするかな…」

ギガンティスに休暇期間が終わるまで滞在するか、一度本部に戻るか頭を悩ませるアクセルにエックス達も笑みを浮かべた。
そして近くでアクセルとルナを微笑ましく見つめていたマッシモとエックス達の目が合う。
マッシモは笑みを浮かべると口を開いた。

マッシモ「今、このアーマーを託されたことを心の底から誇りに思うよ。俺はやり遂げたんだ。“鋼鉄のマッシモ”として!!エックス、ルイン。ありがとう…。君達が一緒に戦ってくれたから、ここまで来られたんだ。…さあ、お別れだ!!勝利を胸に、笑顔でサヨナラだ!!」

マッシモが言い切るとシナモンも此方に駆け寄ってきた。

シナモン「エックスさん…どうやらこれでお別れですね。私、変われましたか?みんなと一緒に戦って…うん、きっと変われた…私、強くなれました。エックスさん達のおかげで…これからも、私なりに頑張ってみます!!」

ルイン「うん、私も頑張るからね。」

マリノ「おーい、あんたら。迎えの飛行艇が来たよ」

エックス「ああ、ありがとう」

迎えの飛行艇が来たことを報せに来てくれたマリノにエックスが礼を言う。

マリノ「お別れだなエックス、ルイン。それなりに面白かったよ。次に会う時は、泥棒とイレギュラーハンターかな…?おっと、そんな怖い顔すんなよ。冗談だよ!!盗みはもうしないよ…ちょっとしか」

ルイン「もう、マリノ~」

エックスとルインは諦めたように笑いながら、ヘリポートに向かう。











































ヘリポート前の扉では一足先にゼロとアイリスが来ていた。

アイリス「終わったわねゼロ」

ゼロ「ああ、エックス達とは何度もチームを組んでやってきたが…今度の戦いは特別だった…仲間…か…」

普段より穏やかな声にアイリスも笑みを浮かべた。

エックス「ゼロ」

ルイン「アイリス、先に来てたんだ」

ゼロ「ああ、そろそろ引き上げだぞ。みんなに別れは済ませたか?」

エックス「ああ」

ゼロの問いに答え、そしてエックス達は扉を潜った。











































エックス達がヘリポートに出て、しばらくすると、飛行艇がやってきた。

アリア「おお~、盛大なお迎えで」

エックス「ええ、そうですね…」

ゼロ「どうしたエックス?まだ何かやり残したことでもあるのか?」

エックスの様子が少しおかしいことに気付いたゼロはエックスに尋ねる。

エックス「あ、いや…そういうわけじゃないんだ。ただ、ミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタルはどこに行ったんだろうって…」

ゼロ「確かに、イプシロンやスカーフェイスの口ぶりでは、リベリオンの奴らは弾頭に使う超フォースメタルを取り戻していないようだったな」

ゼロもそのことは気になっている様子だった。
2人の会話に気がついて、アクセルも話に加わった。

アクセル「まぁ、リベリオンが壊滅して政府軍が活動できるようになったから、リディプス大佐が探してくれるよ」

ルナ「後はお偉いさん達の仕事さ」

結局、本部に戻ることにしたアクセルとルナ。
ルナはそう言うと、上空に浮かぶ飛行艇を見つめた。
だからかもしれない、飛行艇の異変に気付けたのは。
飛行艇に手を振るアル長官に向かって機関砲が向けられたのだ。

ルナ「…危ねえっ!!」

加速器をフル加速させ、アル長官を押し倒すと、機関砲の弾丸がアル長官のいた場所に風穴を空けた。

アル「な…?」

マリノ「な、何だよこれは!?」

アリア「みんな、あれを見て!!」

アクセル「あれは…連邦軍主力メカニロイド、レッドホイール!?」

ゼロ「いかん、来るぞ!!」

レッドホイールが機銃を乱射する。
ゼロは咄嗟にアイリスとシナモン達を庇う。

アイリス「ゼロ!!」

ルイン「アイリス!!アリア博士!!アル長官やシナモン達を連れて、どこか遠くに!!早く!!」

ルナ「こいつらは俺らが片付けるからよ!!アル!!ギガンティス全域に避難勧告を出して、ギガンティスの近くにある違法研究所のある島に避難しろ!!マッシモ達、そいつらを頼んだ!!」

ナナ「わ、分かりました!!」

マッシモ「あ、ああ!!」

マッシモとマリノがナナ達を守るようにヘリポートを後にする。
それを見届けたエックス達は少しでもギガンティスの住民を避難させようと、メカニロイドを迎撃する。

アクセル「変身、ナインテイルズ!!滅殺波動拳!!」

ルナ「ハイパーモード・グラキエス!!フリージングドラゴン!!」

ゼロ「零式波動斬!!」

ルイン「チャージショット!!」

エックス「ハイパーモード・グライドアーマー!!ギガクラッシュ!!」

一斉攻撃でレッドホイールを殲滅するが、こちらを銃撃する飛行艇をどうにかしない限りいくらでも増援を出されるだろう。

ルイン「アクセル、何とか飛行艇を墜とせない?」

アクセル「無理だよ!!ホーンドもナインテイルズも飛べないし…」

ゼロ「ルナはどうだ?」

ルナ「無理だな。唯一出来そうなイグニスも空飛べねえし」

エックス「俺が行く!!サードアーマー!!全リミッター解除!!」

ルイン「ハイパーサードアーマー?そうか、ハイパーサードアーマーのダブルヴァリアブルエアダッシュなら!!」

エックス「クロスチャージショット!!」

ヴァリアブルエアダッシュを使い、飛行艇に接近するエックスを迎撃するようにミサイルが放たれたが、チャージショットの中でも広範囲を攻撃出来るクロスチャージショットで防がれる。

エックス「あそこだ!!スピアチャージショット!!」

フィールドレーダーで、飛行艇の動力炉の位置を見つけるとファルコンアーマーに換装して、スピアチャージショットを放った。
スピアチャージショットは飛行艇の装甲を容易く貫いて、動力炉を破壊した。

エックス「スピアショットウェーブ!!」

駄目押しとばかりに広範囲に貫通弾を発生させるファルコンアーマーのギカアタックを喰らわせる。
飛行艇から徐々に爆発が起き、少しずつ落下していく。

ルナ「やべえ!!」

ルナが叫んだ瞬間、飛行艇が爆散した。








































一方、違法研究所のある島にギリギリで避難したマッシモ達はセントラルタワーの真上が吹き飛んだことに膝をついた。

マッシモ「そ、そんな…エックス達が…」

アル「何ということだ…」

シナモン「エックスさん…ルナさん達も…うう…っ」

マリノ「シナモン…」

泣き崩れるシナモンにマリノが優しく肩に触れる。

ナナ「………」

ナナもシナモンを慰めながらも、涙を流れそうになるのを必死に堪えていた。
その時である、この場にいるメンバーの通信機が鳴ったのは。

ガウディル「こ、これは…衛星放送かグワ…?」

このタイミングで鳴ったことに嫌な予感を感じながらも繋げ、衛星放送の声を聞く。

リディプス『…こうして、リベリオンと結びつき、超フォースメタルを手にしようと企んだ裏切り者のエックス達、そして悪の科学者、アリア・グランスも掃討することが出来た!!諸君!!平和は守られたのだ!!我々、レプリロイドの平和は…』

衛星放送のリディプスの音声は全世界に告げていた。

マリノ「エックス達が裏切り者…!!?」

マッシモ「ふざけるなあっ!!」

アイリス「リディプス大佐…あなたという人は…っ!!」

アリア「あ、あの野郎…エックス君達に濡れ衣着せやがった…!!」

普段は滅多に怒ることがないアリアですら身体全体を震わせ、怒りに震えていた。

シナモン「そんな…酷いですよ!!エックスさんやアリア博士が裏切り者だなんて!!エックスさん達は今までギガンティスのために頑張ってきたのに…」

マリノ「お偉いさんにはそういうのは関係ないんだよ。自分の都合が悪くなったら例えそれが英雄だろうと、世界の問題解決に貢献した科学者でも簡単に切り捨てちまうんだ。」

アイリス「許せない…!!」

「全くだぜ、リディプスの野郎!!絶対に許さねえ!!」

「まさかリディプス大佐が僕達を裏切るなんてね」

「リディプスが、超フォースメタルを使って何かを企んでいるのは間違いない」

「こんな状況では、リディプスの元まで行って、簡単に話を聞けそうにないが…」

「でも、リディプス大佐を放っておけないよ!!行こうみんな!!」

マッシモ「ああ、分かってるさ!!エックス達の無念は…ん?」

「なあ、シナモン。何で泣いてんだ?」

シナモン「だってルナさん達が…あれ!?」

全員が振り返ると、少々のダメージは受けてはいるが、五体満足なエックス達の姿があった。

マッシモ「生きていたのか!?どうやってここまで来たんだ!?セントラルタワーの転送システムも吹っ飛んでしまったはず…」

エックス「ああ、飛んできたんだよ。俺にはサードアーマーのヴァリアブルエアダッシュとフォースアーマーのホバリングとファルコンアーマーのフリームーブ、アルティメットアーマーのジェットブースターとかの飛行手段があるから」

アクセル「僕にもホバーがあるし、万が一の時にはジェントラーとかマッドノーチラスやホーンドに変身すればいいし」

ルナ「俺はウェントスに変身すれば飛べるし、水中でもグラキエスなら速く移動出来るし」

ルイン「私はダブルジャンプとエアダッシュ、ダッシュダブルジャンプで来たよ」

ゼロ「羅刹旋か竜巻旋風脚を使えばどうとでもなる…あれくらいの距離、飛べるのは普通だろう」

ルイン「あれ?でもいつもより飛行距離長かったよゼロ」

アリア「ゼロ君、それ普通じゃないから」

余程のことでは動じないアリアですらツッコミを入れざるを得ない。

マリノ「あんたら全員とんでもない奴らだね。呆れて物が言えないよ」

ルイン「心配かけてごめんね。それじゃあ行こうよ」

アクセル「確か、この研究所の設備はまだ生きていたはず。ここの転送システムで極東司令部まで行こう。どこまでエネルギーがあるかは分からないけどね」

ルナ「おう、リディプスをぶん殴るぞ!!」

エックス「みんな、行くぞ」

生き延びたエックス達は研究所の転送システムを使って極東司令部に向かうことにしたのだった。 

 

Another31 デッドコピー

 
前書き
シリーズ恒例復活ボス…ルインとルナはどないしましょ?

 

 
違法研究所の転送システムによるステルス転送で極東司令部に辿り着いたエックス達はアクセルのハイパーモード・ステルスモードによって、気付かれず進むことが出来た。

マッシモ「研究所のエネルギーが何とか足りて助かったな。それにしてもリディプスの奴は何を考えているんだ!!」

シナモン「そうですよ!!エックスさん達もギガンティスのみんなも…」

マリノ「エックス、あのクソ野郎をとっちめてやろうじゃないか!!」

エックス「ああ、行くぞ」

アリア「私も行くぞーっ!!」

アイリス「今回は私も同行させて?」

ゼロ「どうせ止めても無駄だろう。行くぞ」

ライブメタルを握り締めているアリアとアイリスにゼロは苦笑をしながら先に進んだ。








































一方、シグナスはモニター越しにリディプスを睨んでいた。

シグナス「とんでもないことをしてくれたものだなリディプス」

リディプス『何がかね?私はリベリオンと手を結んだ裏切り者のエックス達と悪の科学者・アリア・グランスを処分したまでだ。』

罪悪感も何もない声に同席していたエイリア、ゲイトが不愉快そうにした。

シグナス「ほう?レプリロイドだけでなく人間の英雄でもあるエックス達と人間であり、最年少でありながら世界問題の解決に多大な貢献をしたアリア・グランス博士を連邦軍の艦で独断でギガンティスに襲撃、処分したことに対して政府から事情説明を求められている者の台詞とは思えんな」

皮肉を言うとリディプスの表情が変わる。

シグナス「まあいい。忠告をしておこう。エックス達を甘く見ないことだ。ゼロやルイン達がいるなら尚更だ。彼らはそう簡単に死ぬようなレプリロイドではない」

それだけ言うと、シグナスは通信とモニターを切ると、ゲイトとエイリアに向き直る。

シグナス「お前達…」

ゲイト「分かっているよシグナス…」

エイリア「任せて」

2人はそれだけ言うと部屋を後にした。









































司令部内部に入り、通路を駆け抜け、扉を潜ると…。

エックス「っ、こいつは!!」

ゼロ「リベリオン幹部、ワイルド・ジャンゴーか!!?」

ジャンゴー「ギ、ギニャアアアアアッ!!!!」

エックス「っ!!」

ジャンゴーはエックスを標的にしたのか電閃ネイルで引き裂こうとしてくる。

エックス「この技、間違いない。ジャンゴーだ!!」

ゼロ「ジャンゴーのデッドコピーか?」

アクセル「多分、僕やルナと同じコピー能力か何かでジャンゴーの能力を写し取ったんだな」

ルナ「チッ、シグマの野郎を思い出させるようなやり方だぜ!!」

ジャンゴー「ゴアアアアッ!!」

キャプチャーを投擲するが、エックスはショットを放って、弾き飛ばす。

ルイン「エックス!!」

エックス「大丈夫だ。一度戦った相手に負けたりはしない!!ハイパーモード・ブレードアーマー!!」

ハイパーモード・ブレードアーマーを発動し、ジャンゴーの攻撃をかわす。

エックス「マッハダッシュ!!」

バスターブレードを展開した状態でジャンゴーにマッハダッシュで肉薄する。
確かにジャンゴーは素早いがスカーフェイスに比べれば遥かに遅い。

ジャンゴー「!!?」

エックス「喰らえ!!ディバートブレード!!!!」

炎のエレメントチップにより、炎属性を持ったチャージブレードがジャンゴーに炸裂する。
まともに喰らったジャンゴーは勢いよく吹き飛ばされたが、痛覚がないためにすぐさま起き上がる。

ルナ「ボディだけを再生したデッドコピーだからな…痛みを感じないんだ。エックス、一撃でケリをつけろ!!」

エックス「分かっている。ガイアアーマー!!」

ブレードアーマーからガイアアーマーに切り換え、エックスはジャンゴーの攻撃に備えた。

ジャンゴー「ギニャアアアアアッ!!!!」

再び電閃ネイルで攻撃を仕掛けるが、エックスの強化アーマーの中でも桁外れな防御力を誇るガイアアーマーには傷1つ付かない。
ジャンゴーはそれを見て、必殺技であるローリングアサルトを繰り出そうとしたが、エックスはそれを狙っていたのだ。

エックス「これで終わりだ!!ガイアショットブレイカー!!!!」

急降下してくるジャンゴーにガイアアーマーのギガアタックであるガイアショットブレイカーが炸裂した。

ジャンゴー「ニャ、ニャ…ニ゙ャアアアアア!!!!」

ガイアショットブレイカーをまともに喰らったジャンゴーのデッドコピーは断末魔の叫びを上げながら消滅した。










































リディプス「何事だ?」

リディプスは極東司令部にいる自分の部下に尋ねた。

『何者かがビルに侵入した模様です!!』

極東司令部に配置されたリディプスの部下が伝えた。

リディプス「ふむ…。リベリオンの生き残りか?構わん、相手はどうせイレギュラーだ。逮捕の必要はない。発見次第、破壊せよ!!」

指示を出し、リディプスは窓を見遣ると、今から約100年前に起こった新世代型レプリロイドの反乱の原因の1つと言える、かつては“ヤコブ”と名付けられ、人類救済のために創られた軌道エレベーターを見つめる。

リディプス「もうすぐ、この私はシグマやかつての新世代型レプリロイドですら到達出来なかった高みに昇るのだ!!邪魔はさせん。フハハハハ…」

軌道エレベーターを見つめながらリディプスは不適に笑った。










































ルナ「それにしても、リベリオン幹部のデッドコピーが此処にあることと言い、何かでかい裏がありそうな感じだぜ」

ジャンゴーのデッドコピーを倒したことで扉のロックが解除され、エックス達は先に進むことが出来た。

エックス「とにかく、リディプスを捕まえよう。何を企んでいるにしても、奴の好きにはさせない…!!」

ルイン「うん…」

イレギュラーハンターであるために何度も通ったことのあるエックス、ゼロ、ルイン、ルナ、アクセルの案内があったために、迷わずに先を進むことが出来た。

アクセル「この扉を潜れば…あれ?ロックされてる?」

シナモン「本当ですね。私達のことがバレてセキュリティが強化されちゃったんでしょうか?」

アリア「どれどれ?んー、どっかにこれのパスコードがあるのかも」

ゼロ「いや、こんなシグマの真似事をするような奴の考えだ。恐らくはいるんだろうな」

マッシモ「何がだ?」

ルナ「こういう高性能型レプリロイドのデッドコピーを用意するような奴の腐った考え方なんてお見通しなんだよ。今までの経験からして、多分他にもデッドコピーがいるぜ。毎回恒例のデッドコピー祭りだ」

ルイン「恐らくはこれだろうね」

枝分かれした通路にある転生システム。
しかし前に来た時よりも2つも増えている。

マッシモ「よし、調べてみよう。もし、リベリオン幹部のデッドコピーがいたらそいつを倒す。」

アクセル「無理そうだったら直ぐに居残り組のエックス、アリア博士、アイリスに助けてもらう」

エックス「え?あ、いや、俺も一緒に行くぞ?」

ルイン「エックスは休んでいて」

加わろうとするエックスをルインが優しく制した。

エックス「ルイン…」

ルイン「ジャンゴーのデッドコピーとの戦いでガイアアーマーのギガアタックまで使ったんだから相当のエネルギーを消費したはずだよ?ここは私達に任せて」

エックス「…………」

それを言われてエックスは口を閉ざしてしまう。
ルインの言う通り、ジャンゴーとのデッドコピーとの戦いで相当のエネルギーを消費したのだ。
今の消耗したエックスよりも殆ど無傷のゼロ達の力の方が強大だ。

ゼロ「お前は無理をしすぎる。少しは休むんだな」

エックス、ルイン、ルナ、アクセル「「「「それはゼロだけには言われたくない」」」」

アリア「だよねえ、無茶ばかりするイレギュラーハンターの代表のゼロ君」

アイリス「確かにゼロも無茶するわね」

眉間に皺を寄せるゼロに対して全員が声を上げて笑った。

エックス「じゃあ、シナモンには?」

マリノ「私がシナモンについててやるから安心して休んでな」

エックス「……分かった。」

ゼロ達は6つの転送システムに乗り込み、転送された。

アリア「エックス君、これでも飲んでゆっくりしてれば?」

E缶を差し出すアリアに苦笑しながらエックスはそれを受け取るとE缶を飲み始めた。








































マッシモは転送システムから出ると通路を歩き、扉をこじ開けると…。

ホーンド「グ…グオオオオッ!!!!」

マッシモ「シルバー・ホーンドか…まさか俺の相手があいつのデッドコピーとは…俺はあれから強くなった!!覚悟しろシルバー・ホーンド!!」

師である勇者マッシモの仇、シルバー・ホーンドのデッドコピーにランサーを構えるマッシモ。










































一方でマリノとシナモンはサイケのマッドノーチラスのデッドコピーと対面していた。

サイケ「ヒャ…ヒャ~ッハッハッハッ!!!!」

マリノ「ふん、面白いじゃないか。デッドコピーとは言えまたあんたと会うとはね…Dr.サイケ!!もう一度地獄に送り返してやるよ!!」

シナモン「私だって…前みたいに守られるだけじゃないんだから!!」

チャクラムとグローブを構えてマッドノーチラスのデッドコピーに向かっていく。














































そしてアクセルはマッハ・ジェントラーのデッドコピーと対面していた。

ジェントラー「フッ…フハハハハハハッ!!!!」

アクセル「あいつのデッドコピーか…プレオン生産機がない状態でどこまで僕と戦えるかな!?」

あの時苦戦したのはデュボアがあったからだ。
デュボアがないのならばあの時よりパワーアップしているアクセルには負ける気は全くない。
バレットを構えてジェントラーのデッドコピーを睨み据えた。











































そしてゼロが対面したデッドコピーレプリロイドは…。

シャドウ「ハッ…ハ~ッハッハッハ!!!!」

ゼロ「貴様はシャドウか!?貴様までデッドコピーとして使われていたとはな…丁度良い。あの時の借りを俺だけ返していなかったからな。ここで返させてもらうぞ!!」

ラグラノ廃墟での借りを返すためにゼロはセイバーを握り締めた。







































そしてルインが対面したデッドコピーレプリロイドはエンシェンタスであった。

エンシェンタス「クッ…ワァッハッハッハ!!!!」

ルイン「あなたは…!!」

仲間のスパイダーを死に追いやった憎き存在に自然と武器を握る手に力が入る。

ルイン「成る程ね…ここであなたが出て来てくれたのは好都合。スパイダーの仇を討ってやる!!」

セイバーを構えながらエンシェンタスのデッドコピーを睨み据えるルイン。









































そして最後にルナが対面したデッドコピーレプリロイドは…。

ボロック「キョ…キョ~ッホッホッホ!!!!」

ルナ「てめえはボロックか!?ボロックのデッドコピーまで…どうやってこいつのデッドコピーを…まさかミサイルの弾頭の超フォースメタルを回収したのは…」

嫌な予感がしたルナは早く片付けねばと、ボロックのデッドコピーにバレットを構えるのであった。 

 

Another32 戦い

 
前書き
デッドコピー戦 

 
リベリオン幹部のデッドコピーとゼロ達の戦いが始まった。

マッシモ「行くぞ!!」

ホーンド「グオオオオッ!!!!」

マッシモとホーンドが同時に動き出し、ぶつかり合うと力比べを始める。

マッシモ「ぐ…おおおおっ!!!!」

ホーンド「グオアアアアッ!!!!」

しばらくは拮抗していたが、徐々にマッシモが押し始めた。

マッシモ「パワー全開!!どおりゃあああああっ!!!!」

腕に全パワーを回し、ホーンドの巨体を投げ飛ばす。

ホーンド「グオッ!!?」

マッシモ「どうだシルバー・ホーンドの偽物!!お前のオリジナル譲りのパワーも今の俺からすればこんなもんだ!!」

デッドコピーとは言え、以前は怒りでマッシモのパワーが上がっていた状態でハイパーモードを使うほどのパワーを誇ったホーンドを通常状態で投げ飛ばした今のマッシモはホーンドの実力を上回っていた。

ホーンド「グオオオオッ!!」

前屈みになり、頭部の砲門をマッシモに向け、アビスプレッシャーの発射準備に入るホーンド。
しかし、アビスプレッシャーの弱点を知っているマッシモは発射寸前に跳躍してホーンドのがら空きとなっている背中にランサーによる一撃を喰らわせる。

マッシモ「感情も何もないデッドコピーのせいかもしれんな。オリジナルと同じミスをするとは、お前に対しては手加減など必要ない。とどめだシルバー・ホーンド!!全リミッター解除!!」

翼に今までとは比較にならないエネルギーが収束されていく。

マッシモ「ベルセルクチャージ!!発射!!!!」

全リミッターを解除したベルセルクチャージの一撃がシルバー・ホーンドのデッドコピーを粉砕した。

マッシモ「鋼鉄のマッシモを相手にするにはパワーが足りん!!」

シルバー・ホーンドのデッドコピーに勝利したマッシモはランサーを天に掲げながら叫んだ。









































そしてマリノとシナモンもマッドノーチラスの攻撃を懸命に防いでいた。

マリノ「(隔壁を閉じている間、こいつには一切の攻撃が通用しない。隔壁が開かれるまでこいつの耐えきらないと話にならない)」

シナモン「マリノさん!!」

マリノ「シナモン、こいつに飛びっきりの一撃をかますから、回復頼むよ!!」

シナモン「はい!!エンジェリックエイド!!」

シナモンを庇いながら戦っているマリノをエンジェリックエイドで回復する。
マッドノーチラスのデッドコピーの戦闘力自体はオリジナルと同じだが、知性を省き、単純に姿と性能だけを再現したためか、単純な攻撃しかしない。
故にオリジナルなら常に気をつけていた弱点の露出も平気でする。

サイケ「ヒャ~ッハッハッハッ!!!!」

マリノ「チャ~ンス!!ハイパーモード・クイックシルバー!!リベンジハリセン!!!!」

今までのマッドノーチラスから受けた全てのダメージを一撃の攻撃力に変換するリベンジハリセンの一撃はマッドノーチラスの隔壁を吹き飛ばした。

マリノ「もうハイパーモードを使わなくても充分!!ミラージュダイブ!!」

シナモン「バイタルスクラッチ!!」

ハイパーモードを解除したマリノとシナモンが弱点が露出したマッドノーチラスを攻撃する間を与えないように攻撃していく。

サイケ「ワ、私ノ最高傑作ガ…」

感情のない声で呟くと、マッドノーチラスは爆散した。

シナモン「やった~!!」

マリノ「ざまあみな!!デッドコピー野郎!!」

互いに満面の笑みを浮かべながらハイタッチするマリノとシナモン。









































そしてマッハ・ジェントラーのデッドコピーと戦っているアクセル。

アクセル「丁度良いね、あのコピーを試すのには絶好の相手だよ!!変身、ナインテイルズ!!」

アクセルが変身したのはグレイブ遺跡基地でゼロ達が死闘の末に倒したナインテイルズである。

アクセル「さあて、掛かってきなよ」

ジェントラー「フハハハハハハッ!!!!」

高笑いしながら迫るジェントラーにアクセルは拳を握り締める。

アクセル「滅殺豪昇龍!!!!」

昇龍拳を連発する滅殺豪昇龍をジェントラーに叩き込み、壁に叩き付ける。

アクセル「あらら、加減を間違えたかな?」

あまりにも呆気なく吹き飛ばされたジェントラーを見て、アクセルは拳を見つめながら呟いた。

ジェントラー「ゲヘナフレイム!!!!」

アクセル「阿修羅閃空!!!!」

ジェントラーの火炎をかわし、そのまま接近すると、ナインテイルズの尾をジェントラーに突き刺す。

アクセル「穿弓尾!!!!」

そのままジェントラーのエネルギーを吸収、自身の物に変換すると拳打を数発叩き込む。

アクセル「喰らえ!!砕九!!!!」

ナインテイルズの必殺技である砕九を叩き込み、ジェントラーを粉砕した。

アクセル「使えるな…このレプリロイドの能力。」

ナインテイルズの能力の高さを再確認したアクセルは拳を握り締めた。









































そしてゼロもシャドウのデッドコピーを相手にしていた。

シャドウ「フハハハハハハッ!!!!」

背部のキャノン砲から重力弾を放つが、ゼロは跳躍してかわし、ダブルチャージショットを放つ。
シャドウのデッドコピーはそれをかわすが、ゼロが加速器を吹かしてゼロナックルのエネルギーをセイバーに回し、チャージセイバーを叩き込んだ。

シャドウ「エネルギー解放!!!!」

すぐさま起き上がったシャドウの全身から光が迸る。
エネルギーを一気に解放し、全てのエネルギーを攻撃に回すつもりだ。

ゼロ「所詮はデッドコピーか…メカニロイドとてんで変わらんな…シャドウ、お前は確か超フォースメタルの力欲しさにハンターを裏切ったんだったな?真の力を見せてやる!!ハイパーモード・アルティメットフォーム!!!!」

セイバーがより強烈な光を放ち、ゼロの身体が光り輝くと、アーマーがワインレッドを基調とした物となり、髪も白がかかった金色に変化していた。

シャドウ「!!?」

ゼロ「トリプルチャージ!!!!」

チャージ無しでダブルチャージショットとチャージセイバーを繰り出したゼロ。
アルティメットフォームはエネルギーの消耗は群を抜いて凄まじいが、プロトフォームを除いた全フォームの長所を併せ持った形態であり、エネルギーチャージが不要という驚異的な性能を誇る。

シャドウ「グアッ!!?」

ゼロ「リコイルロッド!!!!」

リコイルロッドのダブルチャージアタックを喰らわせ、吹き飛ばすとカゲロウを発動した。

ゼロ「乱れ斬り!!!!」

セイバーによる乱れ斬りをシャドウに見舞い、空中回転斬りを喰らわせる。

シャドウ「グオアアアアッ!!!!?」

ゼロ「俺の全力をこの一撃に込める!!チャージセイバー!!!!」

チャージセイバーによる一撃でシャドウを一刀両断する。

シャドウ「グ…ッ、クソオオオオオッ!!!!」

絶叫しながらシャドウのデッドコピーは爆散した。

ゼロ「雑魚が…」

吐き捨てながら、ゼロはセイバーをバックパックに戻し、ハイパーモードを解除した。








































そしてルインはエンシェンタスのデッドコピーと互角の勝負を演じていた。

エンシェンタス「阿修羅ナックル!!!!」

ルイン「くっ!!」

エンシェンタスの誘導エネルギー弾を防御する。
やはりエンシェンタスは他のリベリオン幹部より頭一つ抜けている。

エンシェンタス「ワァッハッハッハ!!!!」

高笑いしながら属性を切り替えるエンシェンタスに歯軋りしながらルインはハイパーモードを発動した。

ルイン「ハイパーモード・OXアーマー!!」

真紅のアーマーを身に纏い、専用エナジーセイバーであるアルティメットセイバーを引き抜く。

エンシェンタス「灼熱ノ火炎!!!!」

ルイン「アースクラッシュ!!!!」

エンシェンタスの放った火炎をアースクラッシュの衝撃波で受け流すとセイバーによる衝撃波を放つ空中回転斬りを繰り出す。

ルイン「アークブレード!!!!」

至近距離から繰り出したのもあり、殆どの衝撃波をまともに喰らうエンシェンタス。
しかし痛覚がないために即座に起き上がる。

ルイン「(あいつを倒すには一撃で仕留めるしかない。私の技でそれが出来そうなのはダブルアースクラッシュか裂光覇…ダブルアースクラッシュは反動が凄まじいからやっぱり裂光覇だね)」

左のΩナックルにエネルギーをチャージしながらセイバーを構えた。

エンシェンタス「裁キノ雷!!!!」

ルイン「っ!!」

ルインに向けて降り注ぐ雷を何とかかわし、ダッシュで距離を詰めるとセイバーに炎を纏わせる。

ルイン「龍炎刃!!!!」

エンシェンタス「グオアアアアッ!!!!?」

弱点属性の技を喰らい、吹き飛ぶエンシェンタス。
そしてΩナックルのエネルギーチャージが完了した。

ルイン「これで終わりだ!!裂光覇!!!!」

拳を地面に叩きつけ、エンシェンタスを天から降り注ぐ光が貫いていく。

エンシェンタス「バ…カ…ナ…」

感情のない声で呟くと、エンシェンタスのデッドコピーは爆散した。

ルイン「もう二度と蘇らないでよね…」

ルインはハイパーモードを解除して、通常状態に戻りながら言うのだった。








































そして最後に、ボロックのデッドコピーと戦っていたルナはバレットを連射するが、ボロックの歌で相殺されてしまう。

ルナ「こんな奴に時間はかけられねえ…一気に行かせて貰うぜ!!ハイパーモード・グラキエス!!」

グラキエスに変身すると、ハルバードを構える。
ボロックは炎属性であるためにグラキエスの氷属性は非常に有効だ。

ルナ「フリージングドラゴン!!!!」

氷龍を繰り出し、ボロックに放つが、ボロックは歌による衝撃波で相殺した。

ルナ「本命はこっちだ!!ホーミングショット…コネクションレーザー!!!!」

すぐさまハイパーモードを解除し、Qビットとボロックと背部の音叉をロックオンし、コネクションレーザーを放つ。
ボロックの厄介なところは、音による内部破壊。
Qビットと音叉さえ破壊してしまえばボロックの戦闘力は大幅にダウンする。

ルナ「ハイパーモード・グラキエス!!こいつでとどめ!!」

ハルバードでボロックの胴体を貫くと、貫かれた箇所から徐々に凍結していき、最後には完全に凍結した。

ルナ「弾けろ」

ハルバードに力を入れると凍結したボロックが粉々になる。
こうしてリベリオン幹部のデッドコピーは全滅した。 

 

Another33 デプスドラグーン

 
前書き
デプスドラグーン戦 

 
ゼロ達が転送システムに乗り込んでから30分が過ぎた。
流石に遅いと立ち上がった時、ルナを除いたマッシモ達が戻ってきた。

エックス「どうだった?」

マッシモ「俺が向かった先にはシルバー・ホーンドがいた。まあ、倒してやったがな!!」

胸を張りながら言うマッシモに、エックスは微笑を浮かべながらマリノ達を見遣る。
マリノとシナモンはエックスの視線に気付き、自分達が対峙した相手を告げる。

マリノ「私達はDr.サイケと戦ったよ。オリジナルに比べりゃあ格段に弱かったよ」

シナモン「しっかり倒してきました!!」

アクセル「僕はジェントラーと戦ったよ。まあ、大したことなかったね」

ゼロ「俺はシャドウのデッドコピーだった。」

エックス「シャドウのデッドコピーまで?いや、シャドウはリディプスの部下だったし、DNAデータを保管していてもおかしくはないか…」

ルイン「私はエンシェンタスを倒してきたよ。後はルナだけだね」

アイリス「大丈夫かしら?少なくともリベリオン幹部クラスなんでしょう?」

アクセル「大丈夫だよアイリス。デッドコピーなんかにルナが負ける訳ないじゃん」

シナモン「そうですよ、ルナさんは凄く強いんですから」

不安そうに呟いたアイリスにアクセルとシナモンがそう言うと、アリアも頷いた。

アリア「そうそう、ルナちゃんがそう簡単に負けるわけ…おっと、噂をすればだね」

ルナ「俺が最後か…」

アクセル「お疲れー、どうだった?」

ルナ「………ボロックのデッドコピーがいた」

アクセルの問いに少し間を置いて、ルナが言うと全員が目を見開いた。

エックス「ボロックのデッドコピーが?」

ルナ「ああ、姿形も能力も全て同じだった。間違いねえ」

アクセル「ボロックって、DNAコアも抜き取られてた…そしてそのボロックのデッドコピーがここにあるということは…」

ルナ「多分…ミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタルもリディプスの手にあると考えた方がいいな」

エックス「超フォースメタルが2つもリディプスの手にあるのか……」

たった1つの超フォースメタルでもイプシロンのような凄まじい戦闘力を誇ったのだ。
それが2つもリディプスの手にあるということにエックス達は戦慄を覚えた。

アリア「……あ、みんな。扉のロックが解除されたよ」

アイリス「やっぱりデッドコピーのDNAコアと扉のロックがリンクしていたのね」

ロックが解除された扉を見つめながらアイリスが言うと、ゼロが顔を顰めた。

ゼロ「ふざけたトレーニングだ。リディプスめ…」

扉を潜り、エレベーターで上の階に行くと、大管制室に通じる通路に出る。
そして奥にある扉を開くと、低空を浮遊する巨大な魚型のメカニロイドの背部に、タツノオトシゴを模したと思われる騎士型のボディが上半身として付加、一体となっており、連邦政府軍極東司令部に所属するデプスドラグーンがいた。

デプスドラグーン「ほう!!これはこれは…裏切り者が揃っておるではないか。超フォースメタルとやらを奪おうとして失敗し、リディプス大佐に排除されたはずのお主らが、ここへ何しにきた?」

マッシモ「あの人は…っ」

デプスドラグーンを見て、マッシモが目を見開いたが、エックスは前に出る。

エックス「そこをどいてくれ…俺達はリディプスに用があるんだ。関係ないお前と無駄な戦いはしたくない…」

出来れば同じイレギュラーハンターとは戦いたくないと思っているエックスが懇願するように言うが、デプスドラグーンは鼻を鳴らす。

デプスドラグーン「ふん、お主にその気はなくても、このわしにはあるのじゃよ!!伝説のS級ハンターの実力に非常に興味があってのう。いい機会じゃ、その実力…見せてみい!!」

エックス「やるしかないのか…!!?」

電流を纏い両手に槍と盾を構えるデプスドラグーンにマッシモが前に出る。

マッシモ「待って下さい、デプスドラグーン!!」

デプスドラグーン「む?お主はマッシモ…ではないな?その声…まさかマッシモの弟子か?」

マッシモ「はい、お久しぶりです。デプスドラグーン」

デプスドラグーン「ほう…」

戦友であるマッシモの弟子の姿を見て、デプスドラグーンは目を見開いた。
ギガンティスを去る前で最後に見たマッシモの弟子は戦いとは無縁そうな臆病者だったが、今のマッシモの堂々とした態度に驚いた。

シナモン「マッシモさん、お知り合いですか?」

マッシモ「ああ、かつてギガンティス建造時に深海ケーブルを設置するために派遣された海底用レプリロイドなんだ。そしてマッシモ師匠の唯一無二の友。」

デプスドラグーン「そうじゃな、ギガンティスで過ごした記憶が昨日のように駆け巡るわい…お主…そのアーマーと言い、その堂々とした態度。相当腕と胆力が上がったようじゃな?」

デプスドラグーンが笑みを浮かべながら、戦友の弟子を見つめる。
今回、リディプスがギガンティスに下した決定はデプスドラグーンからすれば残念で、出来ればギガンティスの最後を自身の目で見届けたかったが、それは叶わなかったが、これは戦友の弟子が来るのは予想外だった。

マッシモ「ありがとうございます」

デプスドラグーン「…マッシモの弟子よ…我が友、マッシモはどうしておる?」

弟子が生きているのなら、師匠の方も生きているのでは?という希望を持ってマッシモに問いかける。

マッシモ「マッシモ師匠は…リベリオンと戦い、最後の最後まで己の信念を貫き、リベリオンへの協力を拒み続け、殺されました…。」

デプスドラグーン「そうか…では、今やお主がマッシモ…二代目マッシモと言うわけか」

戦友の死に、デプスドラグーンの動力炉の辺りに痛みが走ったが、それを表情には出さない。

マッシモ「デプスドラグーン。俺達はイレギュラーではありません。リディプス大佐が、エックス達に濡れ衣を着せ、エックス達とギガンティスのレプリロイドを裏切ったのです」

デプスドラグーン「何じゃと?」

マッシモの言葉にデプスドラグーンが目を見開く。

アリア「可笑しいと思わない?例えイレギュラー化しても、人類、レプリロイドの英雄であるエックス君達が政府の命令も無しに処分されたことに。」

デプスドラグーン「むう…」

アリアに言われてデプスドラグーンは思わず唸る。
確かにアリアの言う通り、エックス、ゼロ、ルイン、ルナ、アクセルは極僅かなS級ハンターであり、人類、レプリロイドの英雄でもある。
そんな彼らが例えイレギュラー化したとしても、すぐに処分するだろうか?
それにアリアは数多くの世界問題の解決に貢献した科学者であり、何より人間だ。
基本的にレプリロイドは人間を傷つけることは許されないのだ。

デプスドラグーン「確かに、お主らの言うことにも一理あるかもしれんのう。最近のリディプス大佐はどこか可笑しかった。リベリオンのことで焦っているのかと思っておったが…」

マッシモ「なら…!!」

喜色を浮かべるマッシモにデプスドラグーンの槍が向けられる。

デプスドラグーン「じゃが、わしにもリディプス大佐には世話になった恩がある。マッシモよ、ここを通りたくば、わしを倒してからにせい!!我が友にしてお主の師に代わり、お主の実力を見定めてくれるわ!!」

デプスドラグーンが全ての力を解き放った。
ジャンゴーどころか、スカーフェイスに匹敵する程の雷を纏う。

マッシモ「分かりました。鋼鉄のマッシモ…二代目マッシモとして受けて立ちましょう!!」

対するマッシモもランサーを構える。
デプスドラグーンが槍を天に翳した瞬間、マッシモはホバーを最大まで吹かし、雷撃をかわした。

デプスドラグーン「ほう!!?」

マッシモ「どおりゃあああああ!!!!」

初撃をかわされたことに驚いたデプスドラグーンにマッシモのランサーが一閃した。

デプスドラグーン「甘いぞ!会心撃!!!!」

しかしデプスドラグーンは笑みを浮かべるとメカニロイドのホバーを吹かして体当たりを喰らわせる。

マッシモ「ぐっ!!うおおおおおっ!!!!」

多少後退するが、マッシモも負けじと抵抗する。

デプスドラグーン「ほっ!!会心撃を受け止めおったか!!じゃが…テラサンダー!!」

マッシモ「ぐあああああっ!!!!」

シナモン「マッシモさん!!」

マッシモ「ぐ、くうう…うおおおおおっ!!!!」

デプスドラグーンが繰り出した雷撃がマッシモに降り注ぐが、絶叫しながらも、マッシモはランサーを振るい、デプスドラグーンに傷を付ける。

デプスドラグーン「ぬうっ!!…効いたわい…まさかあの臆病だった小僧が此処まで成長するとはのう…じゃが、流石にこれは避け切れまい!!デスグラビティ!!!!」

メカニロイドの口から巨大な重力弾が放たれる。
重力弾の引力に引かれるマッシモだが、咄嗟にプロテクトランサーを取り出し、それを盾にする事で防ぐ。

デプスドラグーン「ほう、防いだか!!しかしこれは耐えられまい!!!!」

デプスドラグーンの全身から先程とは比較にならない程の雷が放たれる。

マッシモ「っ!!!!」

デプスドラグーン「受けよ!!雷帝陣!!!!」

マッシモに降り注ぐ制裁の雷。
咄嗟にプロテクトランサーを盾にするが、雷はプロテクトランサーの強固なプロテクターすら粉砕した。
そしてマッシモに直撃した。

ルイン「マッシモ!!」

マリノ「まさか、やられちまったのかい!?」

ゼロ「……いやっ!!」

一瞬だが、ゼロは見た。
マッシモのアーマーが変化したことに。

マッシモ「パワー全開!!行くぞおおおおおおっ!!!!」

ハイパーモード・ダイモニオンを発動したマッシモは全てのエネルギーを翼に収束させた。

デプスドラグーン「雷帝陣を耐えたと言うのか!!?」

マッシモ「ベルセルクチャージ!!発射!!!!」

驚愕しているデプスドラグーンに向けて放たれた高出力レーザーが炸裂。
出力を抑えたのか、デプスドラグーンを行動停止に留めた。

デプスドラグーン「ふ、ふふふ…やられたのう。見事じゃ…これから先のファイナルアプローチは、更に警戒が厳しくなる…しかし、お主らならきっと乗り越えられるじゃろう…わしのDNAデータを使えば扉のロックを解除出来る…」

それだけ言うと、デプスドラグーンは傷ついた身体を引き摺って去っていく。

アクセル「あ、ありがとう…」

アクセルはデプスドラグーンのDNAデータを解析し、基礎性能の強化と、デプスドラグーンへの変身が可能となった。

アリア「全く無茶し過ぎだよ。マッシモ君、治療するからスリープモードに移行して」

マッシモ「す、すみません。」

シナモンとアリアがマッシモの治療を開始した。
ここから先、リディプスの近くということで警戒が更に厳しくなるだろう。
ここらで体力を万全にした方がいいと判断したエックス達は少しばかりの休息を取ることにした。 

 

Another34 野望

 
前書き
リディプス戦 

 
デプスドラグーンを退け、殆ど万全の状態でリディプスの執務室に向かう。
最後の扉を潜ると、ギガンティスに向かう前にエックス達を迎えた時と変わらない眺めだった。
エックスとゼロとルインは、あの日と同じようにリディプスと向かい合っていた。
違っているのは、シャドウの代わりに今はアクセルとルナが2人の横にいて、5人とも上官に対して、尊敬や敬意はなく、敵意と怒りを表していることだった。

リディプス「ほう、エックス!!それにルイン達とレジスタンスの諸君。素晴らしい…生きていたのか」

リディプスは怒りに震えるエックス達を振り返りもせずに言った。
無警戒のようにリディプスはエックス達に背を向けていたが、まるで隙がない。

ルナ「何、ふざけたこと抜かしてやがる…」

今にもバレットを引き抜いて撃ち抜きたい衝動を抑えて、ルナはリディプスに向けて叫ぶ。

ルナ「俺達やギガンティスのみんなを裏切っておいて…てめえ、何様のつもりだ!!!!?」

リディプスは背後からのルナの罵倒を平然と背中で受け止め、含み笑いを漏らした。

リディプス「私が何か?そうだな…。“神”かな?かつてのシグマやルミネを含めた新世代型レプリロイドですら到達出来なかった。全レプリロイドの頂点に立つ者だ。」

ゼロ「な…っ!!?」

その発言には、流石のゼロも絶句するしかなかった。
アリアは鋭くリディプスを見据え、アイリスやシナモンは狂人を見るような目でリディプスの背中を見つめ、マッシモとマリノも目を見開いた。
一体、リディプスの頭の中では、どのような狂った妄想が繰り広げられているのだろうか。

ルイン「リディプス大佐…説明してもらえますか?私達は、あなたの命令でギガンティスに行きました。イプシロンを倒し、リベリオンを壊滅させ、反乱を防ぎました。それも全て罠だったんですか!!?」

怒りを必死に抑えながら尋ねるルインの質問に、リディプスは声を上げて笑った。

リディプス「ハッハッハッハッハッハッ…。そうだな、イプシロンを倒してくれたことには感謝せねばな。おかげで私は目的を果たせたわけだからな」

リディプスが高笑いするなど、以前では考えられないことだが、その笑い声は邪悪な響きがあった。

エックス「答えろ!!何を企んでいる!?」

エックスの怒りに満ちた声が執務室に響き渡った。
次の瞬間、リディプスが口を開いた。

リディプス「言ったろう。私は神になると」

ゼロ「ふざけるな…!!」

怒りで全身から抑えきれなくなったエネルギーが迸り始めていた。
今にもゼロはセイバーを抜きかねない状態だ。

リディプス「勇ましいな。イレギュラーハンターとレジスタンスの諸君。私をどうしようと言うのだね?」

受け入れ難いが、もはやリディプスの思考は異常だ。
エックスが右腕をバスターに変型させるとリディプスの背中に向けた。

エックス「リディプス!!お前は…、お前は……イレギュラーだ!!」

イレギュラーと宣告した瞬間、リディプスがエックス達を振り返ると、みるみるうちにリディプスの端正な顔が醜悪に歪んだ。

リディプス「私がイレギュラーか…愚かな。私からすればお前達の方がイレギュラーに見えるがな。まあいい、イレギュラーの烙印を押されて死ぬがよい!!」

背部のユニットから2本のサーベルを引き抜くと、リディプスは力を解放した。

アクセル「まさか、リディプス大佐がこんなふざけたことを考えていたなんて…」

アクセルがバレットを抜くと、複雑そうな表情でリディプスにバレットを向けた。
流石のアクセルも上官のイレギュラー化にショックを隠せないようだ。

ルナ「くそったれ!!俺達は何のためにリベリオンと戦い続けてきたんだよ!!?」

リディプス「ハハハハハハハ…!!全て私のためさ、イレギュラーハンターとレジスタンスの諸君!!新しい、神のため…!!」

リディプスの高笑いと共に連邦軍主力メカニロイド、レッドホイールが出現した。

アリア「神になるとか寝ぼけたことを言うな、この酔っ払い!!ダブルチャージショット!!!!」

レッドホイールに向けてダブルチャージショットを放つ。

アイリス「アリア博士、下がってください!!チャージセイバー!!!!」

アリアに攻撃を仕掛けようとしたレッドホイールをチャージセイバーで両断したアイリス。
それを見たリディプスが興味深そうにアリアとアイリスを見た。

リディプス「ライブメタルか…非戦闘型や脆弱な人間でさえも強大な戦闘力を持てるようになるアイテム…エックス達を処分した後でも残しておくか…」

アリア「残念、あんたなんかに利用されるなら死んだ方がマシだね!!」

バスターを連射しながらリディプスに向けて舌を出すアリアをアイリスが援護する。

アイリス「あなたの好きにはさせません!!」

セイバーを振るい、アリアに向かう銃弾を蒸発させる。

マリノ「マッシモ、シナモン。アリア達を援護するよ!!喰らいな!!」

レッドホイールに向けてアイスコメットを投擲するマリノ。
流石に連邦軍主力メカニロイドなだけはあり、一撃では倒せないが、アイスコメットを受けて凍結したレッドホイールにマッシモとシナモンが前に出る。

マッシモ「ギガンティスで殺されたレプリロイド達の仇だ!!」

シナモン「絶対に許しません!!」

アイスコメットで凍結したレッドホイールをマッシモとシナモンが破壊する。

マッシモ「エックス!!雑魚は俺達に任せろ!!エックス達はリディプスを!!」

エックス「すまない…ハイパーモード・フォースアーマー!!」

レッドホイールの相手をマッシモ達がしているうちにハイパーモード・フォースアーマーを発動して、リディプスに挑むエックス。
エネルギーチャージを終えたバスターをリディプスに向ける。

エックス「プラズマチャージショット!!!!」

リディプスに向けて巨大な光弾が放たれた。
まともに喰らえば相当のダメージは見込めるが…。

リディプス「甘いぞ!!!」

リディプスのサーベルから衝撃波が繰り出され、プラズマチャージショットが粉砕された。

エックス「なっ!?」

ルイン「エックス!!」

チャージセイバーでエックスに迫る衝撃波を相殺すると、今度はルナがハイパーモードを発動した。

ルナ「てめえだけは絶対に許さねえからな!!ハイパーモード・ウェントス!!」

ハイパーモードを発動し、ウェントスに変身すると、ダブルセイバーを抜き放ち、リディプスに迫る。

ルナ「はっ!!だあっ!!でやあっ!!」

リディプス「ふふふ…怒りで太刀筋が分かりやすいぞ」

ルナの繰り出す斬撃を容易く防いでいくリディプス。
何を思ったのか、ルナはウェントスからイグニスに変身するとナックルバスターを構えた。

ルナ「なら、これならどうだ!!エディットバスター!!!!」

ナックルバスターの銃口から放たれるエネルギー弾がリディプスに向かう。

リディプス「ふん、この程度の速度なら避けることなど造作もない……」

回避行動を取るリディプスだが、エネルギー弾が軌道を変え、リディプスに直撃する。

ルナ「よっしゃあ!!」

リディプス「何…!!?」

ルナ「エディットバスターは俺の思い通りに弾が動くんだよ!!だから基本的に回避は不可!!今だゼロ!!」

ゼロ「任せておけ!!ハイパーモード・アクティブフォーム!!零式乱舞!!!!」

機動力特化のハイパーモードであるアクティブフォームを発動し、零式の技をリディプスに叩き込む。

ゼロ「零式兜割!!!!」

リディプス「ぐあああああっ!!!!」

最後の一撃に回転斬りを喰らわせると、リディプスが勢いよく吹き飛ぶ。

エックス「今だ!!プラズマチャージショット!!」

先程は防がれてしまったが、吹き飛んでいる状態では防ぎようがないと判断したエックスは再びプラズマチャージショットを放ってリディプスに直撃させる。

ルイン「ハイパーモード・OXアーマー!!全リミッター解除!!オーバードライブ!!チャージショット連射!!!!」

プラズマチャージショットを喰らい、発生したプラズマによる追加ダメージを受けているリディプスにチャージショットの連射を喰らわせる。

リディプス「これしきのことで!!」

しかしリディプスも流石と言える。
プラズマチャージショットとチャージショットの連射の波状攻撃を受けているにも関わらず、動きが全く衰えていない。

アクセル「変身、エンシェンタス!!阿修羅ナックル!!!!」

しかしアクセルもエンシェンタスに変身し、誘導エネルギー弾を6発、リディプスに喰らわせた。

リディプス「己…新世代型のプロトタイプが…」

アクセル「プロトタイプで結構!!大体あんた1人で僕達に敵うと思ってる!?」

レッドホイールはマッシモ達が相手をしているために実質5対1だ。
確かにリディプスの実力は凄まじいが、イプシロンやスカーフェイスと比べれば見劣りするくらいの敵だ。

リディプス「くっ…ならば…」

突如リディプスの姿が消えた。
突然のことに目を見開くが、アクセルは原因に気付く。

アクセル「光学迷彩だ!!気をつけて!!」

エックス「光学迷彩か…ならば、セカンドアーマー!!」

フォースアーマーからセカンドアーマーに切り換えるとエネルギートレイサーでリディプスを探す。

エックス「ルイン、後ろだ!!」

ルイン「アースクラッシュ!!!!」

エネルギーを収束させた拳で直接リディプスを殴り飛ばす。

リディプス「ぐはっ!?何故だ…私の光学迷彩は完璧なはず……」

エックス「セカンドアーマーの能力の1つであるエネルギートレイサーはサードアーマーのフィールドレーダーのように広範囲を見渡すことは出来ないが、近距離のエネルギー感知に関しては他のエネルギー感知器を現時点でも遥かに上回るんだ。つまり姿を眩まそうがお前の位置は手に取るように分かる。」

セカンドアーマーからサードアーマーに切り換えると、エックスはバスターにエネルギーチャージを始めた。

リディプス「クロスチャージショットを放つつもりだろうが、チャージなどさせるか!!」

クロスチャージショットはエックスのチャージショットの中でも広範囲を攻撃出来る代物。
つまりこの狭い執務室では回避が出来ないのだ。
リディプスがサーベルを構え、エックスに斬り掛かろうとするが、ゼロとルインがリディプスのサーベルを受け止めた。

ゼロ「悪いが貴様の考えなどお見通しなんだよ」

ルイン「エックスはやらせない!!」

ゼロナックルとΩナックルのチャージアタックが同時にリディプスに炸裂した。

エックス「喰らえリディプス!!」

バスターから放たれたチャージショット。
しかし、2発目が放たれないことからリディプスは笑みを浮かべた。

リディプス「どうやら勝負を焦ったようだなエックス!!」

サーベルでチャージショットを掻き消すと、エックスの方を向いた瞬間。

エックス「引っかかったなリディプス……ダブルチャージショットだ!!!!」

もう1発、チャージショットを放ち、リディプスを吹き飛ばす。

リディプス「がは…っ、馬鹿な…クロスチャージショットではなくダブルチャージショットだと…!?」

てっきり威力の高いクロスチャージショットで来ると思っていたのだが、サードアーマーはチャージショットを放つタイミングによってクロスチャージショットとダブルチャージショットの二択を選択出来る。
一撃の威力はクロスチャージショットには劣るが、2発続けて放つ事で、相手に痛打を与えることが出来る。
一度放たれてしまえば例え初撃を防ぎきったところで、すぐさま襲い掛かってくる二撃目がほぼ確実に敵に炸裂するのだ。

アクセル「やった!!」

ルナ「とどめだエックス!!」

サードアーマーのリミッターを解除し、フットパーツの潜在能力によるダブルヴァリアブルエアダッシュで距離を詰めるとブレードを抜いた。

エックス「喰らえリディプス!!トリプルチャージ!!砕け散れ!!!!」

ハイパーサードアーマーのダブルヴァリアブルエアダッシュのスピードには流石のリディプスも反応出来ず、エックスのチャージブレードが炸裂した。 
 

 
後書き
リディプス1回戦勝利。 

 

Another35 欠陥

 
前書き
リディプスの正体。 

 
トリプルチャージを喰らったリディプスは膝をついていた。
最後の一撃であったチャージブレードもリディプスは咄嗟に回避したが、回避しきれず、いくらか喰らってしまった。

エックス「………」

アリア「ハイパーサードアーマーのダブルヴァリアブルエアダッシュからのチャージブレードをかわすなんて……流石は極東司令部の司令官…」

アイリス「でも、あのダメージなら……」

ゼロ「もう戦えないだろう」

リディプスは膝をつき、斬り裂かれた胸を押さえながら、身体中から火花を散らしていた。
そのボロボロの姿はゼロから見てもほぼ戦闘不能に思えた。

ルナ「くそったれ!!俺達は本当に何のために…イプシロンやリベリオンと戦ってきたんだ…一体何のために!!あんな辛い戦いを乗り越えてきたんだ!!!!」

やり切れない怒りを抱えながらリディプスに近寄り、バレットを向ける。

リディプス「先程も言ったが、全て私のためさ、イレギュラーハンターとレジスタンスの諸君。新しい…神のため…!!」

痛みに喘ぎながらも嘲笑を浮かべるリディプスにバレットを握る手に力が入る。

ルナ「畜生…っ!!こんな…こんな奴のために…スパイダーやセントラルタワーにいた市民のみんなは…!!」

神になるなどというふざけた野望のために、ギガンティスのレプリロイド達を裏切ったイレギュラー。
しかし、リディプスを処分しても失った仲間やセントラルタワーにいた市民が戻ってくるわけではない。

リディプス「ククク…ハハハハハ…ハァーッハッハッハッハッハッハッ…!!」

不意にリディプスは声を上げて笑い始めた。

ルナ「てめえ…何がおかしい!?」

鋭くリディプスを睨み据えるルナだが、リディプスは嘲笑を浮かべながら口を開いた。

リディプス「スパイダーか!!」

突然、リディプスの身体から青白い光が溢れ出した。
ルナは見慣れた光に目を見開いた。

ルナ「この光…それに…お前は…!?」

「スパイダーというのは、俺のことかいお嬢さん?」

スパイダーとなったリディプスは気障な口調でルナに言った。
悪戯っぽい笑顔も何もかも同じであった。

アイリス「ま、まさか…」

「その通り、正真正銘の“俺"さ!!」

カードスリットからカードボムを1枚抜き取り、ルナに向けて投擲した。

ルナ「うわあああああ!!!!」

まともに喰らってしまったルナは、勢いよく吹き飛ばされるが、ゼロが受け止めてくれた。

言葉を失い、その場に立ち尽くすエックス達の目の前で、スパイダーは再びリディプスの姿に変化した。

リディプス「全く、お前達の友情ごっこに付き合うのは反吐が出そうだったが…。我が目的のため、超フォースメタルのためだ!!」

アリア「その能力はアクセル君とルナちゃんと同じ…あんたも新世代型だったの!?」

アリアがバスターを構えながら言うとリディプスは嘲笑を浮かべる。

リディプス「お前らマヌケにはわからんと思うが、このコピー能力を超フォースメタルで強化すると、私は最高の存在に…。何者も達し得ない頂点に昇ることが出来るのだ!!」

その言葉を聞いたエックス達の間に戦慄が走った。
超フォースメタルと新世代型レプリロイドのコピー能力。
現在の脅威と100年前の脅威が1つになろうとしている。
しかし、ゼロはすぐさま冷静さを取り戻し、リディプスを睨み据えた。

ゼロ「リディプス…スパイダーは…オリジナルのスパイダーはどうした?返答次第では許さんぞ…」

リディプス「スパイダーか…奴には随分と助けられたな。かつて私はギガンティスのラグラノ研究所にいたことがあってな。そこで用心棒として雇われていた奴はラグラノ研究所で行われていたフォースメタルの研究とコピーチップの再開発の記録が入ったマスターチップを奴の仲間と共に盗んで逃げたのだが…」

リディプスの嘲笑が深くなる。
その嘲笑はオリジナルのスパイダーに向けられているのだろう。

ゼロ「……………」

リディプス「スパイダーは自分を庇って損傷した仲間を庇いながら私と戦い、死んだよ。アッサリとな、足手まといの仲間を見捨てて逃げれば生き延びられたものを、救いようのない馬鹿とは正に奴のことを言うのだろうな。ハァーッハッハッハッハッハッハッ…」

ゼロ「貴様…っ!!」

恐らく損傷した仲間と言うのはエールのことだろう。
仲間を思いやるスパイダーの心を踏みにじるリディプスにゼロは拳を握り締めた。

リディプス「とまあ、オリジナルのスパイダーなど最初からどこにもいなかったのだよ。仲間と信念を重んじる性格である賞金稼ぎのスパイダーの愚かな姿は正にお前達をコントロールするのにうってつけの存在だったのだよ」

シナモン「嘘です」

リディプス「む?」

アイリス「シナモン…?」

全員の視線がシナモンに集中した。

シナモン「私の知っているあのスパイダーさんは時々怖い時もあったけど、凄く優しい目をしていました」

リディプス「馬鹿な小娘だ。先程の話を聞いていたのか?」

シナモン「聞いてました。でもあなたが本当にスパイダーさんに変身していたならどうしてレジスタンスのみんなを勇気づけてたんですか?」

その言葉にハッとなるのはマッシモだった。

マッシモ「確かに、スパイダーは基本的に俺達と一緒のミッションだ。エックス達や俺達はともかく、他のレジスタンスメンバーにまで気をかける必要はない」

アクセル「確か、僕もエアシティに行った時、困っていた市民を助けていた。超フォースメタルを狙っていたあんたからすればする必要もないことだよね?」

リディプス「っ……」

マッシモ、アクセルの言葉にリディプスは不愉快そうに表情を歪めた。

アクセル「シナモン、スパイダーの変化はどれくらいの頻度だった?」

シナモン「えっと……あまり変わることはなかったです。本当に時々で……」

アクセル「成る程、リディプス大佐。僕はあんたのもう1つの正体に気付いたよ。あんた、僕とルナと同じ新世代型レプリロイドのプロトタイプでしょ?しかも変身すると人格までコピー元に上書きされる欠陥持ち」

ルイン「え!?」

リディプス「き、貴様…!!」

全員が目を見開いてリディプスを見つめる。
リディプスの表情が屈辱で歪んだ。

マリノ「どういうことだい?」

アクセル「前にマリノさんにも説明したよね?新世代型レプリロイドのプロトタイプには変身するとコピー元の人格に上書きされる奴がいるって、正にそれがリディプス大佐なんだよ。それならシナモンやマッシモが言っていた事とか、僕が見たものに対しての説明がつくんだよ。シナモンの言う通りなら時々はリディプス大佐の人格が浮上していたんだろうけど…」

マッシモ「えっと、それはつまり?」

アクセル「ようするに、僕達といたスパイダーは殆どリディプス大佐じゃなくてオリジナルのスパイダーの人格だったんだよ。リディプス大佐はリディプス大佐の人格が浮上した時くらいしか介入はしていない。」

アイリス「成る程、じゃあスパイダーとしては嘘ではなかったのね……」

アクセル「そういうこと」

エックス「スパイダーは…俺達を裏切ってはいなかった……リディプス!!!!」

視線をリディプスに遣ると、同時にエックスはバスターをリディプスに向けた。

エックス「俺はお前を許さない!!スパイダー達の仇を今ここで!!クロスチャージショット!!!!」

リディプス「チッ!!出でよレッドホイール!!!!」

咄嗟にレッドホイールを召喚し、クロスチャージショットの盾にするリディプス。
そしてこの場に大量のレッドホイールを召喚すると転送システムの方に駆けていく。

リディプス「いくら貴様らが足掻いたところで無駄だ!!全て…、全てが無駄に終わるのだよ!!」

転送システムに乗り込むと、リディプスの姿が消えた。
エックス達はしばらくの間、レッドホイールの相手をすることになるのだった。 

 

Another36 神

 
前書き
ゴッドリディプス戦 

 
リディプスが去り際に残していったレッドホイールの相手に時間を取られてしまったが、エックス達も転送システムに乗り込み、かつて“ヤコブ”と呼ばれていた軌道エレベーターは“バベル”と改修と同時に改名された内部にいた。
執務室の転送装置は、軌道エレベーター内部に通じていたのだ。

ルナ「畜生!!レッドホイールの相手で余計な時間を食っちまった!!早くしねえと超フォースメタルを利用されるか逃げられちまう!!」

エックス「落ち着くんだルナ!!どこに逃げようと必ず見つけてみせる。今はリディプスに超フォースメタルを使われないようにしないと!!」

マリノ「超フォースメタルをリディプスから掻っ払って、リディプスの泣きっ面を拝んでやるさ!!」

マッシモ「リディプスの泣きっ面か…それは見てみたいな…」

マリノ「だろう?」

マリノとマッシモの言葉に全員の緊張が解れていくのを感じた。

ゼロ「それにしても…」

アイリス「ゼロ?」

アリア「どうしたのゼロ君?」

ゼロの呟きが聞こえたアイリスとアリアがゼロの方を向くと、全員の視線がゼロに集中した。

ゼロ「いや…俺はもう新世代型レプリロイドのプロトタイプはアクセルとルナしかいないものだと思っていたんだが…。まだ存在していたとは…」

アクセル「うーん…プロトタイプの生き残りが認知されていないのは仕方ないと思うよ?僕もそうだったけど、新世代型レプリロイドのプロトタイプの製造は一部の研究所で秘密裏に行われていたんだ。僕達には実験動物以下な扱いをする実験を繰り返していたから余計に知られる訳にはいかないからね。」

アクセルの目つきが鋭くなる。
昔のことを思い出してしまったのだろうか?

シナモン「アクセルさん?」

アクセル「あ…いや、何でもないよ。急ごうか!!」

シナモンの視線に気づいたアクセルは笑みを浮かべて走る速度を速めた。
エックス達もアクセルを追うように走る速度を速める。
そして一本道の通路の先にあるエレベーター乗り場に辿り着き、それに乗り込んだ。
少しの間を置いて、エレベーターが上に動いていった。
そしてブルーアースロードに繋がる転送ルームに辿り着くと、そこにある転送システムに乗り込んでブルーアースロードに向かう。








































そして転送システムから出ると、ブルーアースロードの通路を駆ける。
全員のエネルギー感知器がリディプスらしき反応を捉えていた。
間違いなくこの先にリディプスがいる。
最深部から感じる強大なエネルギー。
寧ろ己の存在を隠すどころか誇示しているかのような傲然としたエネルギー反応は紛れもなくリディプスの物だ。
しかもリディプスの近くに強大なエネルギー反応が2つもある。

アリア「このエネルギー反応は…リディプスと…この2つのエネルギー反応は何?」

モデルXのエネルギー感知器も正常に働いているようで、アリアは顔を顰めている。

ゼロ「恐らくは超フォースメタルだ。イプシロンの超フォースメタルとミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタル…。やはりリディプスが回収していたか」

ルイン「うん…」

近付けば近付く程、凄まじい威圧感がエックス達を襲う。
しかしもう後には引けないため、エックス達はブルーアースロードの通路を一気に駆け抜けた。









































そして見渡す限り、黄金色に彩られた実験場のような場所でエックス達はリディプスと再会した。
リディプスは全ての外装を取り払ったような姿で、巨大な機械に植えつけられていた。
頭部にはアクセルの額のコアに酷似した物がある。

リディプス「神の御前だぞ。跪いたらどうだ?」

こちらを見下ろしながら言うリディプスに全員が目を険しくした。

エックス「リディプス。お前は超フォースメタルを手に入れるため、俺達を利用したんだな?」

リディプス「そうだ。イプシロンの奴が上手く隠していたのでね。君達のような優秀なレプリロイド達に働いてもらったのだ。」

エックスは眩しいドームの天井を見上げた。
そこには2つの超フォースメタルが、美しい黄金色に光り輝いていた。
左右の超フォースメタルは、色も形も大きさも全く同じだった。
あのどちらかがメルダ鉱石プラントのミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタルで、イプシロンの心臓であった超フォースメタルなのだろう。

エックス「…確かに、イプシロンの考えは危険だった。超フォースメタルを進化に使うことは、イレギュラーを生み出す可能性があった…だけど…!!」

エックスは無意識に拳を握り締めていた。
確かにイプシロンもレプリロイドの進化という願望に取り憑かれていた。
しかし、根本的にリディプスの抱いているものとは違っていた。

エックス「…だけど、お前のように、最初っからイレギュラーだったわけじゃない!!リディプス、お前は狂ってる!!」

怒りと共に腕をバスターに変形させ、リディプスに向けた。
しかしリディプスはそれを嘲笑うと、静かに口を開いた。

リディプス「フハハハハハハ…。そのイプシロンは君に言わなかったかね?イレギュラーかどうかは、歴史だけが決められることだと!!レプリロイドが、より高い能力を求め進化する…。それは自然なことだ。違うか?」

リディプスはこちらを睨み据えるエックス達を卑下すると、高らかに宣言した。

リディプス「私は宇宙にて、究極の進化を遂げるのだ!!」

エックス「宇宙!!?」

施設全体が激しく揺れ始め、エックス達は驚き、思わず周囲を見回した。

リディプス「ファッハッハッハッハッハハハ…!!驚くことはない。まだこれからだ…。君達は、神の奇跡を目にする、初めての者となるのだ…!!」

リディプスの変身能力と2つの超フォースメタルが共鳴を起こし、辺りは眩い光に包まれた。











































光が消失し、全員が目を見開いた瞬間、全員が目を見開いた。
目の前には機械と生物がごっちゃになったような、巨大な竜を思わせるような異様な物体となったリディプスがこちらを見下ろしていた。
リベリオンにも巨体を誇る敵はいたが、流石にこれほどの巨体は100年前のカイザーシグマとファイナルシグマWくらいであろうが、リディプスから発せられるエネルギーはその比ではない。
胴体から伸びた細長い首の先に、辛うじてリディプスだと分かる顔があった。
周りの壁が吹き飛ばされているが、モデルXの力で宇宙空間でも活動出来たアリアはリディプスを見上げながら睨み据えた。

アリア「成る程、コピーチップの完成度から察するに製造年数はアクセル君より遅いリディプスはルミネ達同様、旧世代…シグマを含めたレプリロイド達のデータがコピーチップに刻まれていた…。つまり…」

リディプス「正解だ。Dr.アリア。私の欠陥は変身するとコピー元のレプリロイドの人格になってしまうということを除けば、完璧な新世代型レプリロイドと比べても遜色のない能力を持っていた。超フォースメタルの力でそれは解消され、コピーチップに刻まれたレプリロイドのデータを超フォースメタルの力で解放すれば、かつての高性能レプリロイドを遥かに超越することが可能となる。今の私は全てを支配する者…、即ち神である!!」

凄まじい威圧感に身体が震えそうになるが、それを振り払うようにルナがダッシュした。

ルナ「ふざけんな!!寝言はこいつを喰らってからほざけ!!ハイパーモード・イグニス!!ダブルメガトンクラッシュ!!!!」

ハイパーモードでイグニスに変身するとナックルバスターのチャージアタックを喰らわせるが…。

リディプス「ふはははは!!その程度の攻撃では私に掠り傷1つ付けられんぞ!!!」

ルナ「なっ!?」

エックス「馬鹿な…ハイパーモード・フォースアーマー!!プラズマチャージショット!!!!」

イグニスのチャージアタックさえ傷1つ付かないことに目を見開くが、エックスはフォースアーマーを発動し、プラズマチャージショットを放つが、リディプスの全身を覆うバリアで弾かれる。

ルイン「あ、あれは!?イプシロンと同じ!?」

エックス「だが、強度が桁外れだ…」

リディプス「当然だ…私は超フォースメタルが2つもあるのだぞ。イプシロン如きと一緒にされては困る」

ゼロ「くそっ!!ここまで来てやられてたまるか!!ハイパーモード・パワーフォーム!!零式乱舞!!!!」

パワーフォームを発動してリディプスに斬り掛かるが、リディプスの超フォースメタルのバリアは貫けない。

アリア「一斉攻撃だよ!!」

アイリス「はい!!」

アリア達が一斉攻撃を仕掛けようとするが、リディプスはそれを嘲笑うように腕を振るうと、全員が薙ぎ飛ばされた。

シナモン「痛っ!!」

マッシモ「ぐっ!!ハイパーモード・ダイモニオン!!ベルセルクチャージ!!!!」

すぐさま起き上がり、ダイモニオンを発動すると、リディプスに向けて高出力レーザーを放つが、バリアで弾かれてしまう。

リディプス「デウス・エクス・マーキナー!!」

こちらに降り注ぐメテオに全員が目を見開いたが、エックスはフォースアーマーからグライドアーマーに切り換えた。

エックス「ギガクラッシュ!!!!」

ギガクラッシュを発動し、メテオを吹き飛ばす。
そしてバスターを構えるが、リディプスの両肩の2つの超フォースメタルが輝いた瞬間、エックス達を灼熱の業火が焼く。

マリノ「熱っ!?」

アイリス「超フォースメタルからも!?」

アクセル「こんの…変身、ナインテイルズ!!滅殺波動拳!!!!」

ナインテイルズに変身し、リディプスに滅殺波動拳を繰り出すが、ナインテイルズの技を持ってしても超フォースメタルのバリアは破れない。

リディプス「ギガンティス最強の格闘家、ナインテイルズか…しかしいくらナインテイルズであろうとも超フォースメタルのエネルギーバリアを破ることは出来ん。」

エックス「なら…ルイン!!」

ルイン「これを喰らっても、同じことを言える!!?ハイパーモード・OXアーマー!!裂光覇!!!!」

リディプスの頭上から光が無数の降り注ぐ。
しかし、超フォースメタルのバリアの前には裂光覇だけでは力不足である。
そこにエックスがエネルギーチャージを終えたバスターを向けた。

エックス「プラズマチャージショット!!!!」

再び放たれたプラズマチャージショットはバリアに弾かれてしまうが、着弾点にプラズマが発生し、バリアに追加攻撃を与える。

エックス「これならどうだ!!ストックチャージショット!!!!」

プラズマチャージショットの着弾点にストックチャージショットを放つ。
イプシロンのバリアさえ粉砕した攻撃だが、エックスはすぐさまフォースアーマーからサードアーマーに切り換えた。

エックス「全リミッター解除!!クロスチャージショット!!!!」

すぐさまハイパーサードアーマーのアームパーツの潜在能力を解放し、ハイパーチャージのバスターエネルギーが切れるまで、クロスチャージショットを連発する。
そして最後にハイパーサードアーマーからブレードアーマーに切り換え、ギガアタックを放つ。

エックス「ギガブレード!!!!」

巨大な衝撃波がリディプスに向かって炸裂した。

シナモン「やったんでしょうか…?」

ルナ「プラズマチャージショットにギガアタックのストックチャージショット全弾、ハイパーサードアーマーのクロスチャージショットの連発にブレードアーマーのギガアタックのギガブレードだ…これで駄目なら正真正銘の化け物だ……」

煙が晴れていくと、いくらか傷付いたリディプスの姿があった。

アイリス「やった!!倒せてはいないけど、バリアを破壊して、攻撃が効いてる!!」

マッシモ「よっしゃあ!!なら、一斉攻撃だ!!」

ルイン「うん!!」

アリア「喰らえ!!ダブルチャージショット!!!!」

リディプスの顔面に向けてダブルチャージショットが放たれたが、復活したバリアで弾かれた。

マリノ「なっ!?もう復活しちまったのかい!?」

エックス「馬鹿な……イプシロンでもそんなことは…」

リディプス「忘れているようだが、私はイプシロンとは違い、2つの超フォースメタルを持っているのだ。変身により、イプシロン以上の強靭な肉体と新世代型レプリロイドの耐イレギュラー化性能により負荷無しで超フォースメタルの持つ力を100%引き出しているのだ!!」

そしてリディプスの傷はみるみるうちに塞がってしまう。
超フォースメタルにより、強力な自己治癒能力も得てしまったのだ。

リディプス「消え去れ!!!!」

リディプスの掌から高出力レーザーが放たれた。

エックス「くっ!!!」

すぐさまブレードアーマーからハイパーサードアーマーに切り換え、アームパーツの潜在能力で高出力レーザーのエネルギーを吸収、ハイパーチャージのバスターエネルギーがフルの状態になる。

リディプス「ほう…だが、同じことは何度も出来まい!!」

リディプスの掌から高出力レーザーが連射される。

エックス「ぐわっ!!」

ハイパーサードアーマーのアームパーツによるエネルギー吸収が出来るのはハイパーチャージのバスターエネルギーが減っている時だけだ。
故に先程の一撃でハイパーチャージのバスターエネルギーがフルになってしまったために吸収が出来ない。
まともに喰らったエックスが吹き飛ばされる。

アクセル「この…木偶の坊!!」

憤怒の表情でリディプスにバレットを連射するが、威力が低いバレットのエネルギー弾では超フォースメタルのエネルギーバリアは貫けない。

マリノ「この野郎!!」

アイリス「たああああっ!!」

マリノとアイリスがビームチャクラムとセイバーで攻撃するが、バリアに傷すら付けられない。

リディプス「弱い、弱すぎる!!デウス・エクス・マーキナー!!!!」

再びルイン達に降り注ぐメテオ。

マッシモ「くそっ!!ベルセルクチャージ!!!!」

マッシモが前に出ると、メテオに向けて高出力レーザーを放つ。
いくつかはメテオを粉砕したが、残りのメテオが降り注いだ。

アクセル「うっ!!!

マリノ「うわああああ!!」

マッシモ「ぐおおおおっ!!!?」

シナモン「アクセルさん!!マリノさん!!マッシモさん!!」

メテオをまともに喰らった3人が吹き飛ばされた。

ルナ「ち、畜生…よくも!!ハイパーモード・グラキエス!!ダブルフリージングドラゴン!!!!」

巨大な氷龍を2体召喚し、リディプスに突撃させるが、両肩の超フォースメタルが光り輝き、再び灼熱の業火が発生し、氷龍を蒸発させた。

ルナ「あ…っ!?」

リディプス「コードブレーカー!!!!」

ルナ「がは…っ!!」

リディプスが薙ぎ払うように腕を振るうと、まともに喰らったルナは瓦礫に突っ込んでそのまま動かなくなった。

シナモン「ルナさん!!」

瓦礫に埋もれてしまったルナを助けようと駆け寄るシナモンであったが、リディプスはそんなシナモンに高出力レーザーを放った。

ルイン「きゃあああああっ!!!!」

シナモン「ルインさん!!?」

ゼロ「ルイン!!」

シナモンを庇って、代わりに高出力レーザーを背中にまともに喰らったルインはうつ伏せに倒れた。
更に超フォースメタルが光り輝き、アイリスに裁きの雷、アリアには絶対零度の冷気を浴びせた。

アイリス「ああっ!?」

アリア「そんな…」

まともに攻撃を受けた2人は崩れ落ちる。

ゼロ「くそ…っ、許さんぞリディプス!!ハイパーモード・プロトフォーム!!!!」

ハイパーモードの中でも最大の火力を誇るプロトフォームに切り換えるゼロ。
火力は凄まじいが、防御力が著しく下がるデメリットがあるが、リディプスのような相手ではアーマーなどあって無いような物だ。

ゼロ「(プロトフォームでの幻夢零…俺の最強の技を至近距離から叩き込んでやる…)」

セイバーに全エネルギーを収束させながら、リディプスに突撃する。

リディプス「愚かな、血迷ったか!!デウス・エクス・マーキナー!!」

再び降り注ぐメテオ。
ゼロは喰らっても構わないと言わんばかりに致命傷を避けながら接近した。

ゼロ「喰らえリディプス!!幻夢零!!!!」

リディプス「なっ!?ぐあああああああ!!!!」

幻夢零の衝撃波は、超フォースメタルのバリアとぶつかり合い、拮抗するが、バリアを粉砕しながらリディプスに炸裂した。

エックス「くっ…、やった…?」

何とかダメージから立ち直り、目を覚ましたエックス。

ゼロ「はあっ!!はあっ!!」

膝をつくゼロ。
いくら致命傷を避けたとは言え、防御力が低いプロトフォームで攻撃を受けたのだ。
アーマーの所々から火花が出ていた。
負荷を軽くするためにハイパーモードを解除した瞬間…。

リディプス「ふ、ふふふ…今のは少し焦ったぞ…」

ゼロ「な…っ!!?」

シナモン「そ、そんな…」

エックス「バリアとの激突で、幻夢零の威力が落ちていたのか…!?」

リディプス「この程度では私を倒すことなど不可能だ。」

シナモン「ゼロさん、今回復を…」

リディプス「余計な真似をするな!!」

シナモン「きゃあああああっ!!!!」

リディプスの高出力レーザーがシナモンに炸裂した。

ゼロ「シナモン!!」

エックス「く…っ!!よくも…」

ボロボロになりながらも立ち上がろうとするエックスを嘲笑うリディプス。

リディプス「ハハハハハ…なんと貧弱なことか!!分かるか?これが究極の力…神の力だ!!」

リディプスは細い首を伸ばして、背後の地球を見遣る。

リディプス「見よ、我が手にはこの星すらちっぽけだ。私は世界を統べる神となったのだ!!フハハハハハ、ハッハッハッハッハッハ!!!!」

エックス「くっ…!!お前の好きになど、させるものか!!」

ゼロ「このまま、やられてたまるか…!!」

エックスとゼロが起き上がり、バスターとセイバーをリディプスに向けた瞬間、リディプスの掌から放たれた高出力レーザーがエックスとゼロに炸裂した。

エックス「ぐあっ!!」

ゼロ「ぐっ!!」

リディプス「大人しくひれ伏しておれ!!」

再び地面に倒れたエックスとゼロ。
2つの超フォースメタルの恩恵により圧倒的な力を得たリディプスの猛攻により、エックス達は全員倒れてしまったのだった。 
 

 
後書き
リディプス第二形態序戦終了 

 

finalstory 終結

 
前書き
最終決戦 

 
2つの超フォースメタルの力を得たリディプスの圧倒的な力の前にエックス達は為す術なく倒れた。

リディプス「ふむ…静かになったな。伝説のイレギュラーハンター達すら圧倒する超フォースメタルのエネルギー…素晴らしい力だ…」

シナモン「っ…」

何とか意識を取り戻したシナモンは、周りを見渡し、エンジェリックエイドの発動体勢に入ろうとした瞬間。

リディプス「止めておけ、貴様のフォースメタルジェネレーターの力など、神の力の前ではあまりにも非力すぎる。尤も…超フォースメタルをフォースメタルジェネレーターで精製出来るのなら話は別だがな…フフ…その能力、私が使ってやっても良いぞ」

シナモンは痛みに震える身体を叱咤し、リディプスの巨体を見上げた。

シナモン「…私は…エックスさんや皆さんと一緒に戦うって決めた時から博士と約束していたんです…悪い人にフォースメタルジェネレーターは、死んでも渡さないって…っ!!」

リディプス「そうか、ならば望み通り死ね」

シナモンの息の根を止めんと、リディプスの掌から高出力レーザーが放たれた。

シナモン「ハイパーモード・アイアンメイデン!!」

リディプス「むっ!?」

アイアンメイデンを発動し、バリアを展開すると、完全には防げなかったが、何とかエンジェリックエイドを発動させることが出来た。

シナモン「みんな…お願い!!」

祈るようにフォースメタルジェネレーターの光が全員の傷を癒していく。

リディプス「ふん…雑魚を復活させたところで無駄なことを……」

ルナ「無駄かどうかはこいつを喰らいやがれ!!メガトンクラッシュ!!!!」

ルイン「アースクラッシュ!!!!」

ハイパーモードでイグニスに変身したルナと、OXアーマーを再び纏ったルインの同時攻撃が繰り出されたが、バリアで弾かれてしまう。

リディプス「貴様ら…」

シナモン「ルナさん!!ルインさん!!」

ルイン「大丈夫?シナモン?」

ルナ「悪い悪い。待たせちまったな…うわあっ!!?」

シナモンに気を取られていたルナがリディプスの豪腕に吹き飛ばされる。

シナモン「あ…!!」

ルイン「ルナ!!」

ルナ「うわ…!!……あれ…?」

誰かに受け止められたことに気付き、背後を見遣ると…。

フェラム「何やってんだよ…しっかりしな、それでもあんた、伝説のイレギュラーハンターかい?」

ルイン、ルナ「「フェラム!!?」」

シナモン「フェラムさん!?」

ルナを受け止めてくれたのは、リベリオン幹部の1人だったフェラムであった。

フェラム「傷の手当ての借りを返しに来たよ」

リディプス「ぬ…貴様はリベリオン幹部の…」

フェラム「さて…お嬢ちゃん達。色々すまなかったね…」

ルナ「え?」

フェラム「元はと言えば私達の撒いた種だ。リベリオンの生き残りである私の手でケリを付ける。」

フェラムは電磁ウィップを発現させ、リディプスを睨み据えながら言うと、ルナ達は目を見開いた。

ルナ「無茶だ!!いくらあんたが強くても、あいつは2つの超フォースメタルで強化した化け物だぞ!!せめて一緒に…」

無謀な戦いをしようとするフェラムを止めようとするが。

フェラム「無茶とかそういう問題じゃない!!総帥やスカーフェイスをこのまま汚名を着せたまま死なせておくわけにはいかないんだ!!私達は…リベリオンは…あんな化け物なんか望んでいなかったんだ!!」

電磁ウィップを握り締めながら、リディプスに向かって突撃するフェラム。

ルイン「ああっ!!」

ルナ「フェラム!!」

シナモン「フェラムさん!!止めて下さい!!」

リディプス「ふっ…イプシロンの犬が…神に逆らうとは愚かな!!」

フェラム「ぐっ!!」

凄まじいスピードで動いていたのにも関わらず、リディプスに見切られ、掴まれてしまう。

リディプス「握り潰してやろう…!!」

フェラム「う…あああ…!!」

フェラムを握り潰そうとリディプスが力を込めた瞬間。

「フォーチュンカード…ストレート!!!!」

何もない場所から無数のカードボムが出現し、バリアを無視して右肩の超フォースメタルとフェラムを掴んでいる腕に炸裂した。

リディプス「なっ!?」

ゼロ「あの攻撃は…」

リディプスの手からフェラムが落ちた。
そして何も無い空間から出現した1体のレプリロイドが右肩の超フォースメタル…ミサイルの弾頭に使われていた超フォースメタルを拾った。

リディプス「き、貴様…生きていたのか!?」

マリノ「スパイダー!?」

スパイダー「調子に乗ってんじゃねえぞ…クソ野郎が!!」

吐き捨てながらリディプスを睨み据えるスパイダー。

マッシモ「え!?どういうこと!?」

アクセル「あ、ほら。リディプスのあの姿はスパイダーのコピーだから…」

スパイダー「御名答だ坊や。俺はオリジナルのスパイダーだ。あのデカブツには相当世話になったぜ。まあ、この坊やとお嬢さんに見つけられたのが運の尽きだったな。」

スパイダーがアクセルとルナを見遣りながら言う。

ルナ「ああ!!あの研究所の海岸で倒れてたのはスパイダーだったのか!!」

アクセル「通りで見覚えがあると思ったよ」

アイリス「あの…あなたはどうやってここまで?」

超フォースメタルのエネルギーが解放された際に、軌道エレベーターの機能も停止しているはずだが。

スパイダー「何、イレギュラーハンターの総監さんと天才科学者さん達が俺をここに転送してくれたのさ」

エックス「シグナス達が…」

それを聞いたエックスは、ここにいないシグナス達に心の中で感謝した。

リディプス「己、シグナスめ……」

スパイダー「さっきのカードボムはな。天才科学者さんが造った特別製でな…今はもう無いが、超フォースメタルを1つ失ったから威力さえあればバリアを貫けるはずだぜ!!ただでさえあんな巨体だからな!!」

フェラムに超フォースメタルを渡すと、全員が構えた。

リディプス「小賢しい奴らが!!ディープインバクト!!!!」

アリア「避けて!!」

リディプスの一撃を回避すると、ゼロとアクセルがダッシュした。

ゼロ「行くぞアクセル!!」

アクセル「OK!!ハイパーモード・ホワイトアクセル!!変身、ナインテイルズ!!」

ゼロ「ハイパーモード・アルティメットフォーム!!カゲロウ、発動!!」

アクセルとゼロはハイパーモードでホワイトアクセルとアルティメットフォームを発動する。
その状態でアクセルはナインテイルズに変身し、ゼロはカゲロウを発動した。

アクセル「瞬獄殺!!!!」

ゼロ「零式兜割!!!!」

ナインテイルズの拳とゼロの回転斬りが左肩の超フォースメタルの支柱を粉砕した。

リディプス「何!?」

アイリス「やっぱり!!いくら超フォースメタルでも、1つだけでは今のリディプスの巨体を強力な攻撃から守るだけの強固なバリアは張れない!!」

アリア「よっし!!今だよマリノちゃん!!」

マリノ「任せな!!ハイパーモード・クイックシルバー!!」

クイックシルバーを発動し、リディプスよりも先に超フォースメタルを回収したマリノ。

マリノ「頂き♪マッシモ!!」

マッシモ「はい!!ハイパーモード・ダイモニオン!!ベルセルクチャージ!!!!」

ダイモニオンを発動したマッシモの最大出力の高出力レーザーがリディプスに炸裂した。

リディプス「ぐわあああああ!!!!」

超フォースメタルのバリアと自己治癒能力の恩恵を失い、まともに喰らったリディプスが、仰け反る。

スパイダー「フォーチュンカード…ロイヤルストレートフラッシュ!!受け取りな、最後のカードだ!!!!」

リディプス「がはあっ!!?」

全カードボムの威力を1枚に纏めた一撃がリディプスに炸裂し、追い討ちをかけるようにエックスが前に出た。

エックス「ハイパーモード・ハイパーサードアーマー!!喰らえ!!クロスチャージショット!!!!」

再びハイパーサードアーマーを発動し、クロスチャージショットの連発がリディプスに襲い掛かる。
2つの超フォースメタルを失い、バリアと自己治癒能力を失ったリディプスには今度は通じた。

リディプス「調子に…乗るなああああ!!」

エックス「一気にカタをつける!!アルティメットアーマー!!」

ハイパーサードアーマーからエックスの最強の強化アーマー、アルティメットアーマーに切り換える。

リディプス「コードブレーカー!!!!」

エックス「レイジングエクスチャージ!!!!」

カッとエックスが目を見開くと同時に、彼の全身が眩い金色のエネルギーに包まれていく。
それにより、リディプスの豪腕が弾かれた。

リディプス「何!?」

エックス「受けてみろ!!アルティメットアーマーの力を!!出力全開!!ノヴァストライク!!!!」

連発型のノヴァストライクを繰り出すエックス。
通常の威力のノヴァストライクなら連発が可能なのがアルティメットアーマーの特徴の1つだ。

リディプス「ぐわあああああ!!!!?」

ノヴァストライクの連発を受け、リディプスが絶叫する。

エックス「はあああああ……貫けええええええっ!!!!!!」

連発型から一撃必殺型のノヴァストライクに切り替え、リディプスに炸裂させた。
しかもレイジングエクスチャージと今まで受けたダメージも上乗せして繰り出した一撃だ。
その威力はリディプスの胸に風穴を開けた。

リディプス「ぐおおおお!!!!」

絶叫しながらエックスを掴むと握り潰そうとするが、ルインがダッシュダブルジャンプで接近すると、両拳をリディプスの腕に叩き付けた。

ルイン「ダブルアースクラッシュ!!!!」

ダブルアースクラッシュを直接腕に喰らったリディプスの腕が吹き飛んだ。

ルイン「痛…っ」

ダブルアースクラッシュの反動で、両腕に亀裂が入る。
エックスはバーニアを吹かして体勢を整えると、ルインを見遣る。
エックスの言いたいことが分かったのか、掌に全エネルギーを収束させ、エックスの肩に触れると、掌に収束されたエネルギーがエックスに流れ込んでいく。

エックス「ありがとうルイン。これで終わりだリディプス!!俺とルインの全ての力を込めた最後の一撃だ!!ノヴァ…ストラーーーーーイクッッッ!!!!」

リディプス「そ、そんな…認めん…認めんぞおおおおっ!!!!」

リディプスがエックスに高出力レーザーを放つが、エックスが纏うエネルギーによって砕かれてしまう。

エックス「終わりだあああああっ!!!!!!」

そしてエックスのノヴァストライクはリディプスの胴体を真っ二つにした。

リディプス「私が…、神の力が…!!嘘だ!!私が、私が負けるなど!!…ぐっ…ぐああああああっ!!!!」

ダメージにより、変身すら維持出来なくなったリディプスが光に包まれ、元の姿に戻り、仰向けに倒れていた。
全員がそれを見届けると、ハイパーモードを解除し、武器を下ろした。
スパイダーは動けないリディプスに歩み寄ると、リディプスに奪われていた自分のフォースメタルを回収した。

スパイダー「こいつは返して貰うぜ。人のフォースメタルを好き勝手に使いやがって…」

拡張スロットから代替え用の物を外し、スパイダー専用のフォースメタル・ブラフを拡張スロットに差し込んだ。

エックス「リディプス…」

リディプス「満足か?エックス…」

ルイン「リディプス…大佐。何があなたをイレギュラーにしたんですか?」

エックスに代わるようにルインは静かにリディプスに尋ねた。

リディプス「イレギュラーか…。友情ごっこに浸り、変わろうとしないお前達の方が、私にはイレギュラーに思えるね」

イレギュラーとイレギュラーハンター。
リディプスからすれば結局どちらも同じ存在でしかない。
命令でイレギュラーを破壊する彼らはリディプスからすれば同じだ。

ルナ「………あんたのコピーチップに刻まれたシグマのDNAデータがあんたを狂わせたのかよ…?」

かつてのルミネや新世代型のレプリロイド達のように…。

リディプス「ふふふ…シグマの…DNAデータか…愚かな連中だ…与えられた世界で、皆で仲良く…、いつまでも、これまで通り…。それだけがプリロイドの道だと思うか…?いつか…分かる…。我々自身の…手で…」

それだけ言うと、リディプスは機能停止し、二度と動かなくなった。
エックス達は武器を収め、静かに機能停止したリディプスを見つめていたのだった。








































しばらくして、大気圏に突入しそうなるため、エックス達は施設内部に入ろうとした瞬間、シグナスから通信が入った。

エックス「シグナス?」

シグナス『エックス、無事か?』

エックス「ああ、リディプスを倒し、超フォースメタルも回収出来た。そちらはどうなってるんだ?」

シグナス『ああ、こちらも何とかカタが付いた。今、エイリア達が準備をしている。だから安心して戻ってこい』

エックス「ああ、ありがとうシグナス。あ、それから…1つ頼みがあるんだ」

シグナス『頼み?』

エックス「ああ、反乱組織リベリオン及び、総統イプシロンのイレギュラー認定を保留して欲しい」

フェラム「っ!!」

エックスの言葉にフェラムは目を見開いた。

シグナス『…分かった。やってみよう』

エックス「ありがとうシグナス…すまないフェラム。俺にはこれぐらいのことしか出来ない」

フェラム「いや…いいんだ。ありがとう…」

フェラムは2つの超フォースメタルを抱き締めながら、礼を言った。

アクセル「さてと、僕達も地球に帰ろう。」

ルナ「だなあ、もうクタクタだぜ」

マリノ「出来れば超フォースメタルの欠片くらい欲しかったけど…」

アリア「なら、ボロックの使っていた欠片があるけど?」

ゼロ「まだ持っていたのか…さっさと捨てろ。欠片でも奪われて悪用でもされたらたまらん」

呆れたようにアリアから超フォースメタルの欠片を取り上げると宇宙空間に投げ捨てた。

アリア「あーーーっ!!!!?」

マリノ「ちぇっ」

宇宙の闇に消えていく超フォースメタルにアリアが絶叫、マリノが残念そうに舌打ちした。

フェラム「エックス、この2つの超フォースメタルは私の手で宇宙に捨てる…それでいい?」

エックス「ああ…超フォースメタルを捨てた後、一緒に地球に帰ろう。」

フェラム「………」

エックスの言葉にフェラムは目を見開いた。
曲がりなりにも敵だった自分を受け入れているエックスに一瞬だけイプシロンの姿が被る。

ゼロ「エックス、早くしろ。急がないとそろそろ大気圏に突入だ」

エックス「ああ」

エックスがゼロに振り返った瞬間、フェラムは電磁ウィップを発現させ、エックスを弾き飛ばした。

エックス「ぐっ!?」

ルナ「エックス!!あんた何を…あ…っ!?」

フェラム「安心して坊や達。この超フォースメタルは誰の手にも届かない場所に持って行くから…」

それだけ言うと、フェラムは翼を羽ばたかせ、この場から凄いスピードで離れていき、凄まじい衝撃と共に眩い閃光がエックス達の視界を支配した。
フェラムは超フォースメタルの波長を変化させ、爆発させたのだ。

エックス「フェラムーーーっ!!!!!!」

エックスの絶叫がこの場に響き渡った。








































そしてとうとう大気圏に突入し始め、マリノ達が施設の中に飛び降りる。
曲がりなりにも超フォースメタルのエネルギーにも耐えきったのだから大気圏突入の摩擦熱にも耐えられるはずだ。

スパイダー「…………」

スパイダーはリディプスの残骸からコピーチップとDNAコアを取り出す。

エックス「スパイダー、早く…あ」

スパイダー「ん?どうした?エックス?」

途中で言葉を止めたエックスを不思議に思ったのか、首を傾げるスパイダー。

エックス「ご、ごめん。俺達は君のことを知っているけど、君は初対面だってことを忘れてて…」

スパイダー「ああ、そのことか…構わねえよ。エックス、リディプスのDNAコアとコピーチップだ。証拠とかに使えるはずだ、一応持っとけ」

エックスにリディプスのDNAコアとコピーチップを渡すと、スパイダーも施設の中に飛び降りる。
エックスもDNAコアとコピーチップを懐に入れると、施設の中に飛び降りる。
そしてハッチを閉じると、地球に落下した。









































エックス達を入れた施設の残骸は偶然か、それとも必然か…。
アクセルの生まれ故郷である違法研究所の付近に落ちた。
エックス達はハッチを吹き飛ばして、外に出た。

ルナ「うわ…っ」

シナモン「眩しいです…っ」

朝日の輝きに目を手で庇うルナとシナモン。

マッシモ「やっと地球に帰って来れたな…」

マリノ「何言ってんだよ。まだ1日しか過ぎて無いじゃないか…」

安堵の息を吐きながら辺りを見回すマッシモとマリノ。

スパイダー「さあて、俺はこれからどうするかね…」

アクセル「賞金稼ぎ業を再開したら?」

スパイダー「いや、今更俺に来る仕事があるのか微妙なとこだな」

アリア「そこは大丈夫だよ。リディプスの奴、君の姿で大暴れして有名になってたから、君が生きてるって分かれば、ジャンジャン仕事が来るよ」

スパイダー「へえ、その辺はあの野郎に感謝だな」

エックス「あ、そうだ。スパイダー…これを」

スパイダー「ん?…っ!?こいつはエールの…!!」

エックスからエールのIDを受け取り、驚愕に目を見開いた。

ゼロ「エールは命を懸けて俺達を導いてくれた…感謝している……」

スパイダー「そうか……へへ、あいつらしいよな…エックス。こいつは俺が預かっていてもいいか?」

エックス「ああ」

スパイダーにエールのIDを渡すと、エックス達は島に向かう。









































ギガンティスから逃げ延びた者達は、エックス達の無事を案じていた。
そしてレジスタンスのメンバーの1人がある場所に顔を向けた瞬間。

「エックス達だ!!」

ナナ「え!?」

ガウディル「グワッ!?シナモン…それに…」

エックス達だけでなくスパイダーの姿まであることに目を見開いた。

アル「スパイダー…!!」

一瞬、視覚機能がおかしくなったのかと思ったが、全員の方を見遣ると全員が歓喜の表情を浮かべており、アル長官は現実なのだと分かった。

「スパイダーさんだ!!やっぱり生きていたんだ!!」

ガウディル「シナモーン!!」

シナモンに駆け寄ると顔をぐしゃぐしゃにして泣くガウディル博士。

ナナ「…エックス…エックスーーーっ!!!!」

堪えきれなくなり、エックスに駆け寄り、エックスの胸に顔を埋めたナナ。
エックスは一瞬、目を見開いたが、直ぐに優しく微笑んだ。

アリア「エックス君も罪な男だね~。ゼロ君と言い、エックス君と言い…あの2人はモテる最高傑作造ってくれちゃって……」

エックス達を見守るアリアの表情は慈愛に満ちていた。

西暦22XX年。
人工島ギガンティスにおけるレプリロイドの反乱は、イレギュラーハンターによる強行偵察チームの活躍により解決をみた。
連邦政府は、当反乱の首謀者を、イレギュラー=リディプスと認定。
反乱組織リベリオン総統イプシロンのイレギュラー判決は保留された。










































超フォースメタルの事件が終結し、更に100年の年月が過ぎた。
かつてイレギュラーハンター本部があった場所に1つの国家が誕生していた。

ネオ・アルカディア

エックス達が多大な苦労の末にようやく創り出した理想国家だ。

エックス「夢みたいだ…」

ルイン「え?」

エックス「本当に…人間とレプリロイドが平等に暮らせるヘブンを創れたんだ…」

ルイン「うん…長かったね…エックスがヘブンを創りたいって、スペースコロニー・ユーラシア事件から200年が過ぎた…」

エックス「アリア博士のおかげだ。彼女が僕達に力を貸してくれたから、僕達はここまで来れたんだ。」

100年の年月の間に、人間である彼女はこの世を去って(厳密には本来の存在に戻っただけ)しまったが、彼女の意志を継ぐ者…彼女の子孫はネオ・アルカディアで優秀な科学者として活躍している。

ゼロ「連れてきたぞ。シエル、入れ」

シエル「し、失礼します。エックス様、ルイン様」

かつて、エックス達と共に戦い、世界のために尽くしてきた天才科学者、アリア・グランスと瓜二つの容姿を持つ少女。
段々とアリアに似てくるシエルにエックス達は少し寂しく感じたが、すぐに笑顔になる。

エックス「そんなに固くならないでいいよシエル。あれはどうしてるかな?」

シエル「は、はい。エックス様とルイン様のDNAデータの解析は完璧です。DNAデータの接合が終了さえすれば…後、一月ほどで…」

エックス「そう…ありがとうシエル…くれぐれも焦らず、完璧に仕上げて欲しい」

シエル「はい。お任せください」

エックスの言葉に、シエルはぴしっと背伸びして頷いた。

エックス「ゼロ、彼女を送ってあげて欲しい」

シエル「え?あ、あの…」

ゼロ「分かった」

赤面するシエルだが、ゼロは気付かずに頷くと、シエルの手を握り、執務室を出て行く。

ルイン「シエル、ゼロのことが好きなんだね。」

エックス「うん、よく考えてみればゼロはアリア博士の子供達を大切にしていたからね。」

アリアの子孫達はゼロによく懐いていたのを思い出すエックス。

ルイン「エックス、あの子達の誕生が待ち遠しいのは分かるけど、あまりシエルを焦らせたら駄目だよ?」

エックス「分かってるけど…楽しみで仕方ないんだよ。」

時折、研究室に足を運んで見つめるのは、カプセルにいる製造途中のエックスに似た顔立ちの3体の少年型レプリロイドとルインに似た顔立ちの少女型レプリロイド。
まだエックスとルインのDNAデータの接合作業の途中ではあるが、確かにそこにいる2人の子供達。
彼らを造るために、色々理由を作ったりした。
ネオ・アルカディアを守るために、より世界を豊かにするために。
勿論それもあるのだけれど、やはり第1番に思うのは、子供達に会いたいからだったりする。
愛しい人のDNAを持つ子供達に会うためなら、エックスはどんなに大変な作業にも耐えられる。

ルイン「ふふふ…これからも一緒に頑張ろうね?“お父さん”?」

エックス「君も無理はしないようにね?“お母さん”?」

優しく穏やかで、どうしようもなく幸せな空気がそこにあった。 
 

 
後書き
コマンドミッション完結。 

 

誓い

 
前書き
ネオ・アルカディア誕生前 

 
超フォースメタルの騒動から数十年の年月が過ぎた。
アリアのプログラムのおかげでイレギュラー発生率が大幅に減少し、エックスの長年の夢である人間とレプリロイドが平等で平和に暮らせる理想郷を創ることに専念出来るようになった。
その拠点が、かつてのイレギュラーハンター本部のあった場所である。
エックスにとってここは自分の故郷であり、ルインと初めて会った地だからだ。

エックス「ふう…」

蒼いローブを纏ったエックスがネオ・アルカディアの本部の屋上で夜空を見上げていた。
満月の美しい月明かりにエックスは目を細めた。
同時にエックスの脳裏に今までのことが過ぎる。
イレギュラーハンターとしての人生…。
最強部隊、第17精鋭部隊に配属されながら、イレギュラーの処理に戸惑うなど、ハンターとしてあるまじき事をし、それ故に周囲から白い目で見られて孤立していた自分。
そんな自分の友達になってくれたのがゼロ…そしてルインだった。
いつも悩んでばかりいた自分を励まし、助けてくれた2人。
いつしかゼロとは深い絆で結ばれた親友となり、ルインには好意を抱き、彼女を守りたいとさえ思った。

ルイン「月明かりが綺麗だねエックス」

エックス「ルイン…」

朱いローブを纏ったルインがエックスに微笑みながら、隣に立った。
月明かりに照らされた彼女はとても美しかった。
エックスはルインを少しの間だけ見つめると、夜空を見上げていた。

エックス「あの時もこんな夜だった」

ルイン「え?」

エックス「最初のシグマとの戦いの後も…こんな夜だったんだ。ゼロとルインが大破して乗り手がいない…紅と朱の2台のチェバルが誰にも触られないまま放置されてて、僕はそれを横目で見ながら出掛けた…」

ルイン「うん…」

エックスの声に悲しみはない。
それは昔を懐かしむような声だった。
ルインはエックスに身体を寄せ、肩に頭をもたれさせた。

エックス「シティアーベルの機能は殆ど駄目になっていて、廃墟ばかり目立ってたけど、元の平和が戻ってきたって感じだった。束の間の平和ではあったけれど。でも最初の時は君やゼロがいなくなった喪失感が酷かった…。」

ルイン「ごめんなさい…」

エックスを独りにしてしまったことを後悔する。
あの時のVAVAとの戦いだって、あのような自殺行為をせずともゼロを救出して3人で力を合わせれば退却くらいは出来たはずなのだから。

エックス「あ、僕の方こそごめん…いきなりこんな話をして……でもあの時はこんなことになるなんて思わなかったな………」

ルイン「それって今のこの状況?それとも私との関係?」

エックス「う~ん、両方かな?あの時は僕が統治者になったり、君とお付き合い出来るようになるとは微塵も思ってなかったしね」

ルイン「そうなの?」

エックス「僕も第17精鋭部隊には入れたけど最初はB級だったのに対して君は特A級に一発合格するほどに優秀だったからね……君は気付いてなかったかもしれないけれど、僕やディザイア以外にも君のことを好きになったレプリロイドは沢山いたんだよ?」

ルイン「え!?嘘!?」

エックス「やっぱり気付いてなかったんだ…」

当然と言えば当然か。
アイリス曰わく、かつての分かり易すぎるらしい自分とディザイアの好意にすら気付かなかったのだから。

ルイン「そ、そんな…信じられない…」

エックス「君が鈍感で良かったって心底思うよ…もしそうじゃなかったら平静でいられたか分からないし」

実際にルインをからかったスパイダーにさえショットを放ったのだから。

ルイン「うう…申し訳ありませんでした」

エックス「はは…それにしても…ようやく僕は夢を実現出来るんだ。どれだけ時間がかかったんだろう…」

ルイン「えっと…単純計算でも100年は軽く突破してるね」

エックス「君には僕の夢の実現のために色々迷惑をかけてしまったね。君にもやりたいことは沢山あったはずなのに…」

自分の夢のためにルインは自分を支えてくれた。
100年以上の長い時をずっと…。

ルイン「いいんだよエックス。エックスの夢は私の夢。あなたの傍にいることが私の幸せなんだよ?」

エックス「ルイン…ありがとう…でも……100年はレプリロイドからしてもあまりにも長すぎる。僕は100年以上も君に付き合わせてしまった」

ルイン「もう、気にしなくてもいいのに。じゃあ、エックス。私の百数十年の埋め合わせをする案を考えて。今すぐに」

エックス「え?今すぐにかい?」

ルイン「うん。何か名案はないの?」

エックス「えっと……」

直ぐに埋め合わせの案を巡らせるエックス。
これは簡単なことではない。
何せ百数十年分の埋め合わせなのだから。
頭を悩ませるエックスにルインは苦笑しながら口を開いた。

ルイン「もう……エックス。私はもうヒントを出したよ?私の幸せは……」

エックス「僕の傍に……あ……」

ルイン「気付いて……くれた……?」

頬を染めながらルインはエックスを見つめる。
エックスもルインの言いたいことに気付き、赤面した。
ルインを鈍感だと言ったが、自分も鈍感だ。

エックス「ルイン……ネオ・アルカディアが完成しても…僕の傍にいてくれるかい?」

ルイン「勿論、私はずっとエックスと一緒にいるよ。仕事とプライベート…公私共にね…」

エックス「ありがとう」

ルイン「ひゃ…」

ルインは不意にぎゅうっと包まれる感覚に襲われた。
ふわりとエックスの両腕が背に回されていて、優しく抱き締められた。

エックス「ネオ・アルカディアが完成したら……結婚しようルイン。」

仲間達から散々、早く結婚しろだの、孫を見せてやれだの色々言われていたが、ようやくルインに伝えることが出来た。

ルイン「…謹んでお受け致します……ずっと待ってたんだよ…エックス」

エックス「ごめん…今まで待たせてしまって…例えこの先どんなことがあっても、僕達は一緒だよ。死が僕達を別つまで…ずっと…」

ルイン「………うん。でもエックスが死ぬ時も私の前で、私が死ぬ時もエックスの前。勝手に先に死んだりしたら許さないからね?」

エックス「ゼロもそうだけど、君はずっと昔に僕を置いて先に死んだことがある癖に、自分は駄目だなんてそれは少し不公平なんじゃないのかい?」

ルイン「うっ…そ、それは……」

言い返せないルインにエックスは苦笑しながら口を開いた。

エックス「冗談だよ。まあ、君の場合死んでもサイバーエルフになって生き残りそうだけれど」

ルイン「酷い!!エックスだって死んでもサイバーエルフになって生き残りそうだけどね!!」

頬を膨らませてそっぽを向くルイン。
彼女を抱き締める腕に少し力が入る。

エックス「うん……プロポーズ、少し言い換えよう。」

ルイン「え?」

エックス「例え死んでも、サイバーエルフになって君と一緒にいる。」

死んでも自分の傍にいてくれようとするエックスにルインも笑みを浮かべた。

ルイン「なら…私も…例え死んでもサイバーエルフになって…エックスの傍にいる…あなたを支える…」

エックス「ありがとう」

ルイン「愛してるよエックス……大好き」

エックス「俺もだよ…ルイン…」

月明かりに照らされた2人は、優しく暖かい空気を振りまいていた。
こうしてルイン達の永きに渡る戦いは終わりを告げた。 
 

 
後書き
ロックマンX小説完結。