WATCH DOGS 〜in RIDER WORLD〜


 

PHASE 1 その男、ビジランテ

 
前書き
これからまたしばらく、よろしくお願いいたします
今回は鎧武の世界のオリジナルライダー達のお話です 

 
沢芽市

そこは大企業ユグドラシルコーポレーションによって管理され
アーマードライダーと呼ばれる仮面ライダー達が
日夜インベス達と戦っている街


そして、市内の海岸に存在するユグドラシルスタジアム

様々なスポーツが行われる
巨大なスタジアムであるそこで、
今夜はプロ野球の試合が行われていた

そして、同時に
地下の一室ではギャング同士の取引が行われていた

…はずだった


今そこにいるのは
いくつかの屍体とネックウォーマーで顔を隠している男、
そしてその男に銃を向けられて怯えているもう一人の男だけであった

「俺の中では殺しってのは
あまり好みではないスタイルだったんだがなぁ…」

男は銃を向けたまま、呟いた

「ま、仕方ないか
今までも何回もあったし
これからも増えていくだろうしな」
「……た…頼む…殺さないでくれ…」

怯えた男が命乞いをする

「さて…どうしようかな
お前らはこの麻薬、どうするつもりだったんだ?」

そばにある大量の白い粉の入った袋を示す

「…る…」
「聞こえないな」
「売る…売るんだよ…」
「死者が出てることを知っててか?」
「そ…そうだよ!でもあいつらが悪いんだ!
俺たちはちゃんと使用量とか説明した!」
「関係ないな…こいつを使用したやつのせいで
この前は何が起こった!知ってるだろ!」
「…無差別殺人……」
「そうだ…その薬のせいで
何人もの犠牲者が出たんだ
それを知っててそう言っているのか?」

銃を頭に突きつける

「す、すすすすすまない!頼む!
こいつで稼いだ金は全部やる!
だから命だけは!」
「いくらだ」
「は…8000万…」
「…いい額だな、悪くない」
「じゃ…じゃあ!見逃してくれ「だが断る」
「…え?」
「断ると言ったんだ」
「そ…そんな…8000万だぞ…
納得するだろ普通…
そもそも…お前!あのビジランテだろ!
聞いてるぞ!金さえ渡せばどんな取引にも協力してくれるっt[ズドンッ]

引き金を引き、男の頭を撃ち抜く

「悪いが…人命を危険にさらす取引だけは
専門外なんだよ…」



彼の名は霧島 翔
ビジランテーーー自警団として生きる男

彼はポケットからスマホを取り出し、
今殺した男の顔を照らす
すると、画面には彼の様々な情報が出てきた

「…なるほど…確かに口座には8000万あるな」

翔が画面を操作する

「…たった今、お前の財産は0になり
俺の財産は8000万増えた…おっと、もう聞いてないか」

彼が起動しているシステムはctOSと呼ばれるもので
街中の携帯電話や信号機などの電子機器だけでなく
個人情報までを管理するものである
彼はこのシステムをハッキングして利用することで
犯罪や危険な取引を事前に探知して止めたり
依頼された人物を探したり、始末していた

「さて…後片付けをしないとな…[ガチャッ]

スマホをしまって周りを見回した時、
突然部屋の扉が開いた
驚き、とっさに振り返る

「よお、やってるかい?」

そこに現れたのは
普段から翔をサポートしている欧米系の男、
ジョルディであった

「お前か…驚かさないでくれ」
「わりぃわりぃ、にしてもやつら、
野球の試合中に取引とはねぇ…
確かにこんなとこに人は来ないだろうが…
楽しみを無駄にしてるな」
「また観戦してきたのか?」
「ああ、まあな」

ジョルディは屍体の一つに拾った銃を握らせ、そのまま
他の屍体を狙って
引き金を引かせた

「お見事」

弾が当たったのを確認すると、
そのまま銃と屍体を放置した

「何をしてる?」
「ギャング同士の抗争でこうなったかのように
演出してるだけさ。いつもやってることだろう?」
「なるほどな」




その場の整理が終わると、
ジョルディが話し始めた

「ところで今、上はどんな状況だと思う?」
「知るか、ずっとここにいたんだ
そんな話してないで、さっさと帰るぞ」
「待て待て慌てるな
現在時刻7:00、
今上は0-1で4回裏の1アウトランナー無し
まだまだ中盤だ」
「…それで?」
「警察を呼んだ」
「何ィ!?どうしてそんなことした!」
「まあ待て、何度も言うが慌てるな
おそらく今頃到着してるだろうよ」
「だろうな…」
「目的はこの状況を見せること
それに今混乱を起こせば
それに乗じて簡単に脱出出来る」
「混乱って…何する気だ?」
「お前のそれを使うんだよ」

ジョルディが、スマホを示す

「使ってどうする」
「そこは自分で考えてくれ
なんとかなるだろう」
「おい…」
「ま、たまにはこういう緊迫感も
いーじゃねーか
先に行ってるぜ
あとは頼む」

そう言ってジョルディは
部屋を出て行った

「おいおい…
混乱だって…?
そもそももう警察が来てるんだろ…?」

「チッ…
仕方ねぇ、いっちょおっ始めるか」

そう言って翔も
脱出を、目指して部屋を出た




 

 

PHASE 2 スタジアムからの脱出

部屋を出て、スタジアムの出口へと急ぐ
だが、その歩みはすぐに止められてしまった

「もう警察が…
なんでこんな時だけ仕事が早いんだ?」

翔が置いてあった台車の影から覗くと
二人組の警官が
倒れている男を揺すっているところだった

さきほどまでいた部屋に行く途中で
気絶させた男だ

しかし、見た感じ、その男はすでに生き絶えていた

「ジョルディのやつ、こいつらにもこうさくを施したのか
相変わらず恐ろしいやつだな」

二人組が死体を調べている間に
物音を立てないように気をつけて、
背後を通り、階段を上る
上った先の部屋に入ると、
先ほどよりも多い警官が
そこにはいた

「くそ…何人だ?」

翔のいた位置からは
部屋全体を確認することができなかった

仕方なく周りを見渡し、監視カメラを見つける

「ハッキングを学んどいてよかったよ、ほんと」

スマホを取り出し、カメラの方に向け、
画面を操作する

するとスマホに監視カメラの映像が映し出された
これなら、部屋の全体を見ることが出来る

(5人…この程度ならアレを使えばなんとかなるか)

翔はコートのポケットから
ルアーというものを取り出した

スマホからの遠隔操作で
音を鳴らし、人を揺動するための道具

簡単に作れるので
翔は何度もこの道具を使って
任務を成功させてきた


移動先とは真逆の方向に、
バレないようにそれを投げ込む

目的の場所に設置できたことを確認し、
翔は監視カメラの映像を確認しながら
ルアーを鳴らした

[あァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!]

部屋中に男の叫び声のようなものが響く

警官たちは何だ何だと
ルアーの方へ向かった

その隙に翔は扉をくぐり、何とかスタジアムの入り口近くの
土産屋に辿り着いた
片側はガラス張りになっており、
試合の様子が見える
どうやら同点に追いつき、
ノーアウト満塁という状況で強打者の打順のため
全体が盛り上がっているらしい

(いいね…地下で何があったかも知らずに
俺もそっち側にいたかったよ
………まあいい、ここまできたら
後は出口まで行けば………!?)

グッズが置いてある棚から顔を覗かせると
入り口の側に予想以上の数の警官がいるのが見えた

(おいおいマジかよ…
あれじゃルアーでも全員の気は引けねぇ…
そもそもこの歓声で音が聞こえるかどうか…)

翔は必死に考えたが、
打開策は見つからなかった

これ以上ここに留まれば
いつか見つかってしまう
仕方なく、翔は携帯を取り出し、
ある人物へと連絡した

プルルルル…ガチャ「もしもし、こちらBad boy1901」

電話から聞こえたのは
映画版20世紀少年のトモダチのような
声だった

「俺だ、ビジランテの翔だ」
「久しぶりだな、一体何のようだ?」

彼はctOSに精通している人物で
ハッキングのプロであった
翔は何度か彼からアドバイスをもらい、
それを自分の仕事に活かしていた

「スタジアムはわかるだろ?
今あそこにいるんだが、
色々と面倒な事になっててな
警察の目をくぐって
外に出たいんだが…」
「数が多すぎて出れない、と
大体わかった
…そうだな、近くに
コントロールパネルはないか?」

すぐに彼は察してくれたらしく
指示を出し始めた

「コントロールパネル…?
壁にあるやつか?」

周りを見渡すと
すぐ近くの壁に小さい扉がついており、
そこを開けると中に機械があった

「それだ
そこのドームはユグドラシルが建てたやつだからな
設備が最新の物になっていて
そこのパネルから繋がるコントロールルームで
スタジアム全体を管理できる
とりあえずハッキングして
コントロールルームにアクセスしろ」

言われた通りに
スマホでパネルに接続し、
管理コードを解いていった
コードはctOSに接続しているため
特に何もしなくても
勝手に解けていった

「…よし、繋がったぞ
どうすればいい?」
「簡単さ
スタジアム全体の電源を切れ」
「はぁ!?そんなんやったら
停電で野球の試合が止まるし、
大パニックになるだろ!」
「それでいいんだよ、
その隙に脱出すればいい
一応部屋に管理員はいるから
すぐに復旧するだろうから
試合も続行されるさ」
「大胆だな…まあいい、仕方ない」

画面の指示に従い、
スタジアムの電源を切る

バチンッという音と共に
スタジアムの電源が落ちていき、
会場は真っ暗となった

「キャーーーーーーーッ!!」
などという叫び声や怒号が上がり、
あっという間に大パニックになった
警官たちもいきなりの出来事に慌てており、
中には慌てすぎてぶつかり合う
警官たちもいた

(あー…そういえばジョルディの奴も混乱させろとか
言ってたな…すっかり忘れてたけど、こういうことか)

人々の様子を見ながら
翔はそんな事を考えた

(…よし!)

翔はパニックに陥っている人々の間をくぐり抜け、
何とかスタジアムの外に出た
そのまま、来るときに乗ってきたバイクへと向かう

「ありがとよ」
「礼はこの前の時と同じ5万でいいよ
金には困ってないからな」
「フッ…わかってる
じゃあな」
「あぁ」

電話を切り、バイクへと乗り込む
時刻は7:20分を指していた

「よかった…これなら約束に間に合う」

そう呟き、翔はバイクのエンジンをかけた 

 

PHASE 3 大切な人

翔はお気に入りのバイクsayonaraを走らせ、
フルーツパーラードルーパーズへと向かった

彼は前々からある人物とそこに行く約束をしていた

(にしてもこんな時間からパフェか…キツイな…)

そんなことを考えている内に
目的地へとたどり着いた

バイクを停めて周りを見渡す

(まだ…来てはいないか)

携帯を取り出そうとすると
一人の男が目に入った
帽子を深めに被ってはいるが
顔には見覚えがあった

(あいつ…確か高校の時の…
名前は…そうだ、真野だ、真野)

その男の名前は真野亮介
高校時代に翔と同じ学年にいた男だ
物静かなやつで
あまり関わったことはなかった

(さっきまでいたかな…)
「よ!」

突然後ろから声をかけられる
どうやら真野を見ているうちに近づかれていたらしい
驚いて振り向くと、
そこには約束をした相手がいた

「やっと来たか、夏希」
「ごめんごめん、ちょっと仕事が長引いちゃった」
「とにかく入るぞ」

店に入る時、チラッと真野がいた方を見る
だが、すでに彼の姿はなかった



「いらっしゃいませー!」

扉をくぐると
若い男の店員が来た

「2名様ですね?
こちらへどうぞー」

案内された席に座る
店員が離れると、すぐに夏希が
話しかけてきた

「ねえねえ!今の人、ビートライダーの人じゃない?」
「え?」

カウンターの辺りに向かった
店員の顔を見る
確かに、彼の顔には見覚えがあった

「確か…鎧武!チーム鎧武の鎧武!」
「そのまんまだな」

あまり興味はないといった感じで
翔はメニューに目を移す
ビートライダーズは一応正義のために戦っているようだが
一部はそうではないという噂もあった
特にこだわりはないので、
適当に一つのパフェを選んだ

「注文決まったか?」
「うん!絶対に食べたいなってのがあるの!」

店員を呼び、パフェとドリンクの注文をすませる
すぐに運ばれてきたジュースを飲みはじめると
再び夏希が話しかけてきた

「そういえばさ、知ってる?さっきスタジアムで
停電が起こったんだってー」
「え、あ、うん、らしいね、キイタキイタ」
「警察が調べたらしいけど
特に電気系統に異常はなかったらしいよ
あと、地下でも何かあったって話だけど…警察が
口封じをしているとかなんとか…
ギャング同士の抗争って話もある」

彼女の話を聞く限り、
警察は完全にジョルディの策略にはまっているようだ

そう思って安心したのも束の間、
夏希の口から信じられない言葉が飛び出した

「私は…最近噂のビジランテも関わってると思うんだけどな…」

それを聞いて、
翔はむせてしまった

「え、ちょっと!大丈夫?」
「ゲホッ…うん…もう直った
えっと…ビジランテ?そんなわけないろ
そもそも実在すんのか?(まあここにいるけど)」
「私も見たことあるわけじゃないから…
でもどんな人なんだろー!
きっとかっこよくて運動神経がすごい人だよね!
そうじゃないと
よく聞くような仕事できなさそうだし」

正体を知らない彼女にとってのビジランテは
自分とは別の誰かの事であった
そう思うと、自分の目の前でそんなことを言われて
変な気持ちになる

「おいおい…俺がいるだろう
そんなこと言うな
ビジランテなんて、ろくな奴じゃないさ(実際そう)」
「そんなことないよ!…多分」

しばらく会話を続けていると
注文したパフェがやってきた
二人はそれを食べ始め、20分後には完食し、店を出た

「それじゃあ、あっという間だったけど」
「うん、また来ようね!」
「ああ、いいさ
今日は…というより今日も、楽しかったぜ」
「毎回言うね〜、ま、私も楽しかったけど。それじゃ」
「送っていくぜ?」
「大丈夫大丈夫、ここから家まで近いから
それに明日は仕事早いとか言ってたじゃん?」
「あ…そうだったな…うん」

彼女の言う仕事はビジランテの事ではなく
表向きにやっているIT企業での事だった

「ばいばーい!」

手を振り返し、夏希を見送る
姿が視界から消えると、
翔はバイクにまたがった

「帰って早いとこ寝るか…」

そうつぶやいて、彼はエンジンをかけた


(あいつがいるから俺は戦える
あいつがいなくなってしまっては
俺には生きる意味がなくなる)

そんなことを考えながら………

 

 

PHASE4 不穏な影

夏希と別れてバイクを走らせて15分
翔はドルーパーズから一番近くにある
アジトへと向かっていた
彼は街中を仕事で巡るため、
いざという時の隠れ場所や宿泊場所を確保するために
色々なところのアパートの一室やコンテナの中に
普通に生活できるような設備を整えていた

アジトへあと少しの路地へ入ったとき、
目の前に男が飛び出してきた

「うおっ!?」

急ブレーキをかけ、
バイクを止める

男は黙ったまま
こちらを向いていた

「おい!ふざけんな!
死にたいのか!」

だが、男は無視して話し始めた

「君が…ビジランテの霧島君だね?」

それを聞いて
翔は腰の拳銃を取り出して構えた
そのことを知っているということは
一般人ではない

「何の用だ」
「仕事の依頼だよ
ビジランテを探す理由なんて
それくらいしかいないだろう?」
「どうかな。仕事柄、怨みを買うこともあるんでね」
「まあまあ落ち着け
ちゃんとそれ相応の金も用意してある
話を聞いてくれ」

男は両手を見せて武器を持っていないことを示すが
翔は拳銃を降ろさなかった
彼からは異様な雰囲気を感じる
今まで人からは感じたことはないようなものだ

「…お前、何者だ?」
「私の名前はガイ
それしか教えられないな」
「そうか…とりあえず聞こう」
「ありがたい…
アーマードライダーの事は知っているな?
仕事内容は単純だ
彼らについて調べてくれ」
「…例えば?」
「彼らの戦闘スタイルや
その力の原理を調べてくれればいい
我々の組織はその情報が必要なのだ」
「なるほど…
で、お前の組織の目的は?」
「悪いがそれは言えない
君はただ金を受け取って任務を遂行すればいい」

ガイの話と雰囲気がどうにも気に入らない翔は
拳銃をしまい、
バイクへと乗り直した

「悪いが断らせてもらおう
お前が何者か、そして組織の目的もわからない
そんな怪しい依頼、聞けるもんか
そもそもら奴らはこの街のために
インベスとかいう怪物と戦ってるのがほとんどだ
彼らに迷惑かけたくはない
じゃ、そういうことだ」

反応も聞かずに
翔はバイクを発進させた

あっという間にガイの姿は見えなくなる

(本当に何者だ…あの男
ガイとか言ってたが…
ジョルディに調べてもらうか)





走り去る翔を見つめ、
ガイはほくそ笑む

「ふっ…
お前が断るのは想定済みだよ…
だがな…残念な事に、
お前は依頼を受けざるを得なくなる…
覚悟しろよ…」

そう言って
ガイは暗闇の中へと姿を消した 

 

PHASE 5 誘拐

「この両手に持っている拳銃…
今から俺がどっちでてめえの脳天を打ち抜くか当ててみな」

翔は路地裏で
地面に座り込む
有名なギャングのメンバーと向かい合っていた
すぐ側には数人の遺体と
彼らがこれから取引先に持って行く予定だった麻薬が
入ったかばんがあった

「頼む…命だけは…」

男が懇願する
だが翔はそれを無視して
もう一度同じ質問を繰り返した

「ひ、ひと思いに…右でやってくれ…」
「NO」
「ひ、左…?」
「NO」
「両方…?」
「YES」
「もしかして、フルバーストですかーーッ!?」
「YES!YES!YES!」

そう言って翔は
弾がなくなるまで両方の拳銃で
男の頭を撃った




「あー…畜生…やりすぎたかな…」

翔はバイクに乗りながら
そう呟いた

「でもまぁ…最近あいつらの行動は酷すぎるし…
仕方ないっちゃあ仕方ないよな…」

翔が殺した男たちは
沢芽市で有名なギャングのチームの一つで
ここ最近は脅迫や殺人、強盗に誘拐がかなり目立っていた
恐らく、この前の野球場の件を受けて
上からその時の犯人をおびき出すために
暴れるよう命令されていたのだろう
もっとも、翔は証拠を残さず、
死体も見つかりにくいところに隠したが

[ピロロロロロロ…]

不意に携帯が鳴る
出ると夏希の声がした

「今すぐ家に来れる…?」
「なぜだ?寂しくなっちゃったか?」

笑いながら彼は返した

「違うの…いや違くはないけど…
なんだかつけられているような…」

それを聞いて彼の表情は
強張った

「いつからだ?」
「多分仕事が終わって家に帰り始めた時から
お願い、怖いの
早く来て」
「ああ、わかってる
すぐに向かう」

電話を切ると夏希の家に向け、
バイクをフルスロットルで走らせた





[ピンポーン]

彼女が住んでいるマンションにつくと、
すぐに部屋に向かい、チャイムを鳴らした
だが、返事がない

「おいおいおい…嘘だろ…?
出てくれよ…」

[ピンポーンピンポーンピンポーン]

チャイムを連打するが
それでも返事はない

ドアノブに手をかけてみる
すると鍵がかかっていなかった

「!?…夏希!」

ドアを開け、
中に駆け込む

だが、そこには夏希の姿はなかった

「夏希!夏希ッ!!」

部屋中を探すが
彼女の姿はどこにもない

「そんな…嘘だろ…」

翔は膝から床に崩れ落ちた

「どこにいるんだ…おい…」


[ピロロロロロロ…]
泣き出しそうになった時、
部屋の電話が鳴った

すぐに飛び起き、電話に出た

「もしもし!」
「やあ…霧島翔君…
3日ぶりかな…?」

電話の主は以前
依頼を持ちかけてきた怪しい男、
ガイだった

「てめえ…まさかてめえが…」
「その通り…夏希君の身柄は預からせてもらったよ…
どれ、ベランダから道を見てみるのだ」

「言われた通りにすると
マンションに黒い車が一台止まっており
傍に立つガイと車の窓から
気絶している夏希の姿が見えた

「なんのつもりだ!」

車の方へ向かおうとする

だが

「おっと、待ちたまえ
ベランダから動くな
こっちから顔が見えるようにするのだ
彼女がどうなっても知らないぞ?」
「ぐっ…」

仕方なく、再び
ベランダから顔を出す

「もう一度聞く、なんのつもりだ」
「君にあの依頼を引き受けてもらうためさ
こうでもしないと君は聞いてくれないだろう?」
「クソ野郎…絶対許さねえ…」
「おいおい落ち着け…ちゃんと
依頼を完了してくれたら
彼女は返す
OK?」
「OK!」

そう答えると同時に
彼は拳銃を取り出し、ガイに向かって撃つ
だが、あっさりと避けられてしまった

「おいおい…その距離じゃあ当たらないよ…
それじゃあ、君の働きに期待しているよ」

そう言うと、彼は車に乗り込み
どこかに走り去ってしまった


「クソが…」

残された翔は
彼女を守ることができなかった自分に対するものや
彼らに対する色々な怒りを
どこにもぶつけることも出来ず、
ただその場に立ち尽くしているしかなかった…

 

 

PHASE6 戦う手段

「調べてみたが
ガイという男の存在自体
確認できなかった」

ジョルディの言葉を
翔は黙って聞く

あれから3日、
夏希の居場所もガイの正体もつかめていなかった
わかっているのは奴から来た連絡用の
電話番号だけ
逆探知も試みたが
完璧にガードされており、失敗した

「そうか…
仕方ない…依頼通りにするか」

彼女の身の安全のために
仕方なく言いなりになることを決めた

それを聞いて、
ジョルディの隣で黙っていた
Bad boy1901…
ここに集まる際に聞き出した本名、リクが
パソコンをいじりながら話し出した

「それでなんだが…
一応アーマードライダーのやつらについても
調べておいた」
「本当か?…助かる」

彼は一つのファイルを開いた

「まあ、色々あるけど…
簡単に言うと
あの人たちが変身するためのベルトは
ユグドラシルが開発したものらしい
だからあの人達について調べるには
そこに行くのが一番だと思う
ただ…」
「ただ?」
「…多分向こうに潜入するとしたら
厳重な警備システムがあると思う
それに下手したらそのベルトを使う人と戦うかもしれない
いくら君でも…生身だと確実に負ける」

それを聞いて翔は考え込む
確かに、彼らの戦いは何度か見たことがあるが
今の自分では惨敗するのが目に見えていた


だが、彼は一つだけ
彼らと戦い、警備システムを突破できる方法があることを
思い出した

「一つだけ…
一つだけだが方法はある」
「なんだって?
どうする気だ?」
「1年前の件を話しただろ?」

この言葉で、ジョルディは
何のことか理解したようだが、
リクは何のことかわからないといった顔をした

「ああ、例のベルトね…
すっかり忘れてたよ
でもあれは破壊したんじゃ?」
「いや、あれは嘘だ
念のためある人に保管してもらっている」
「誰だ?」
「…武器商人、ココ・ヘクマティアル」
「何!?知り合いなのか!?
あのHCLIの!?」
「そうだ
すぐに連絡を取ってみる」




[ピロロロロロロ…]

「はい、もしもし?」
「お久しぶり、ミスヘクマティアル
日本の霧島翔だ」
「あら、久しぶりじゃない!
1年振りだっけ?」
「そうだな…っと
もう少し話したいが今は時間がない
そっちはどこにいる?」
「こっちはねー
今中国で取引してたところ
でも明日には日本に行くよ?」
「ちょうどいい
頼みがあるんだが…」
「わかってる
ベルトでしょ
船に積んである」
「ありがたい
明日、すくに取りに行く」
「OK、待ってるよ」

[ブツッ]


「これであいつらと戦える」
「すげえな、本当に知り合いなのか…
なんでだ?どこで接点があった?」
「単に武器を手に入れる時に会っただけさ
その時に色々誘われたんだけどね…
断ってこっちでビジランテやってるって感じ」
「へぇ…」

その後、彼は二人と別れ、
明日の為に早めに寝た

1年前の出来事を、
思い出しながら…




 
 

 
後書き
1年前の出来事というワードが出ましたが
この点については
スピンオフ的な作品で詳しく書く可能性があります
その時はそちらもどうぞ

今後もこの小説をよろしくお願いします 

 

PHASE7 変身

翌日

翔は事前に指定されていた港へとやってきていた
目の前には巨大な貨物船がある
そしてそこから若い女性が2人と屈強な男が5人、そして子供が1人降りてきた
四人の男が巨大な箱を運び、残りの1人はバイクを押してきていた

「久しぶり、翔」
「お久しぶりだ、ココ」
「ちゃんと預かっていたものは持って来たよ
ベルトとバイク…ところで、これを取りに来るなんて、
何かあったの?」
「ああ…まあ、ちょっとばかり厄介なことになっていてな」
「へぇ…一応私達でもこれについて調べたけど
ユグドラシルの北欧地方の研究所で作られたってことしか…」
「それ以外の詳細は不明、か…
あの日なぜこの街にあったのか、そんぐらいは知りたいんだがな…」
「そうね
これは…使い方次第ではかなり危険な物よ
気をつけてね」
「ああ」

翔は降ろされた箱を開けた
中には一つのベルトと、幾つかのメモリが入っている
それを確認すると、彼はスマホを取り出した
彼のスマホは、元々このベルトとセットで
扱うものであった
スマホ自体が力を得るためのキーなのだ

彼はベルトをつけ、スマホについている一つのボタンを押した

【Get ready】

同時にベルトの横のレバーを引っ張る
すると中心が回転し、ベルトのコアが現れた
そこにスマホをかざす

「変身」
【Battle system start】

翔の姿が光に包まれる
ところどころ、電子回路のようなものが浮かび上がり……


仮面ライダーバレルへと変身を遂げた


「いつ見てもその技術は凄いわ…
それ以外に見たことがない」
「そうでもないさ
ユグドラシルの連中はこういうのをポンポン作ってる」

彼はアーマードライダー達のことを思いながらそう言った
彼は腰に仕舞われているスマホを確認した

「…これ以上モタモタはしてられないな」

バレルは箱の横のバイク、シャドウエージェントに跨がった

「悪いココ、時間がない
もう行かせてもらう」
「OK
しばらくは日本にいるから、何かあったら連絡して」
「ああ、ありがとよ」

彼はバイクのエンジンを掛け、すぐに走り去っていった

「この世界にはまだまだ色んな兵器があるのね…」

彼の後ろ姿を見て、ココはそう呟いた





バイクを走らせているバレルの元に
一本の連絡が入った

「もしもし」
「俺だ、ジョルディだ
今どこにいる?」
「今はココたちと別れて
そのままゆぐタワーに向かっている
今日中に情報は盗み出す」
「そうか…プランは?」
「地下から侵入する
この街は埋立地で、
地下に何本もタワーから伸びている通路があるっての事が
調べているうちに分かった」
「そうか
俺たちにすることはあるか?」
「今のところは無い
リクにもそう伝えてくれ」
「わかった 健闘を祈る」

電話が切れる
間も無く、ユグドラシルタワーが見えてきた

…しかし
彼の側で走っていた車が
突然爆発した

「なんだ!?」

インベスだ
街に出没する奴らが
運悪くこのタイミングで現れたらしい
奴らは手当たり次第に暴れまわっていた

「面倒くせえ…けど仕方ねえ」

彼はバイクを止め、
インベスの元へと歩き出した

「1年ぶりの変身だ
ウォーミングアップとして
全員ぶっ潰してやる」 

 

PHASE 8 ウォーミングアップ

バレルの前には三体の初級インベスがいた

「なんだ、思ったよりも少ないじゃあないか
この程度ならすぐに片付くな」

向かってきた一体に蹴りとパンチのラッシュを食らわせる

怯んだところを腰に携帯している二丁の銃、
エボニーとアイボリーで撃つ

「喰らいなッ!」
「ギェェェェェアァァァ」

背後から迫ってきたもう一体の両目に銃を食らわせ、視力を奪う

「ギィィィィィ…」

何も見えなくなったインベスは倒れていた他の個体に躓いて転んだ

残る一体には銃ではなく
短剣、スラッシュダガーで対応した
この先起こりうる戦いのために
少しでもおおくのぶきに慣れておきたかった

そこまで苦戦することもなく
相手を攻撃する
そして取り出した爆破のタイミングを操作できる手榴弾ーーーークラッカーヴォレイを
口にねじ込み、倒れている他の二体のところへ押し出す

三体目も
倒れたことを確認し、
スマホの画面を叩く

瞬間、奴らは爆発し、
跡形もなく消え去った

「ふぅ…まあこんなもんだろ」

後ろを振り向いた彼は
もう一体インベスがいたことに気づく
だが、それはたった今倒した初級インベスとは違う

「ったく…急いでるってのに…」

彼の行く手に立っているインベス、ライオンインベスは
唸り声を上げて、バレルの元へと走ってきた

「…よし、お前にはとっておきをやってやる」

彼は一つのメモリを取り出し、
スマホに挿入した

【Charging】

その音声とともに
バイクから
サブマシンガンタイプの銃、ナイトホークが飛んできた

「行くぜ…」

彼はそれをフルバーストで撃った

喰らったライオンインベスが怯み、動きを緩めた
その瞬間、彼はそばに駆け寄り、
ナイトホークで相手を殴るように
上空に打ち上げた

「ギィエェ…」

彼は残った弾をインベスに向かって撃ち込み、
弾がなくなると、バックステップで後ろに下がりながら
それを投げ捨てた
そして上空にジャンプし…

【READY】

その音声とともに
パワーが込められた足を突き出し
ライダーキックを食らわせた

「グガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

断末魔を上げながら
インベスは爆発した

「よし、これでいいな
早いとこ急がねえと」

そう言って彼は
再びバイクにまたがり、ユグドラシルタワーへ向かった




その様子を街灯についた監視カメラから見ていた男がいた
「彼は見たことのないベルトを使っているな…
一体どこのだ?誰が作った?すごく興味深い…」

彼は立ち上がり、
ゲネシスドライバーとレモンエナジーロックシードを手に取った

「これは…面白いデータが取れそうだ…」

彼の名は戦極凌馬
アーマードライダー達が使用する
戦極ドライバーやゲネシスドライバーを
開発した男… 

 

PHASE 9 突入直前の乱入者

(見えてきたぞ…)

道の先に巨大なユグドラシルタワーが現れた

(一刻も早く…終わらせなければ…)

近づけば近づくほど
焦ってくる
途中何度か赤信号で阻まれそうになるが
スマホで信号機をハッキングすることで
強制的に青に変え、突破していく
もうタワーは目の前だった

だがその時、彼の後ろを通っていた車が
急にスピードを上げ、彼を追い越した
そして同じ車線に戻った瞬間にブレーキをかけた
こちらも慌てて急ブレーキをかけ、足で踏ん張る

道路に濃いタイヤ痕が残ったが
なんとか止めることができた

車からは1人の男が降りてきた
すかさずエボニーを取り出し、
そいつに向かって構える

「おい!なんのつも…ん?お前…」

その男は、先日も見かけた
真野であった

「真野じゃあないか
随分と久しぶりだな」
(とは言ってもこの前見かけたがな…)
「君に用があるんだ!急用だ!
大事なことだ!」

真野はかなり慌てた様子で
話しかけてきた

「急用っつわれてもよ…
こっちだって急いでるんだ
じゃあな」

こんな奴よりも夏希の方が優先だ
そう思って銃をしまい、ハンドルを握る

「待ってくれ!浜風さんと連絡が取れないんだ!」
「なに?」

その名を聞いて彼は思わず
聞き返す

「浜風夏希さんだ!わかるだろ?」
「さあ…わからんな」
「嘘をつくな!この前一緒にいるのも見たぞ!
ドルーパーズで!」

(なんだ…こいつもあの時こっちに気づいてたのか…)

何も悟られないように
嘘をつこうとしたが無駄だった

「そうか…見たのか
で、連絡が取れないってのは?」

てっきりこいつと夏希は
高校卒業後、全く関わりがないはずだった
そもそも高校の時も二人は部活が同じってだけで
それ以外何もなかったはずだ

「それが…その…僕、高校の時から
ずっと彼女に相談とか乗ってもらってて…」

(なるほど、
確かにあいつは面倒見がいいやつだ
悩んでるやつはすぐに気づき、話を聞いてやったりもしただろう
だが高校からずっと相談とは…
こいつのメンタルはどうなっているんだ…)

「そうか
じゃあなんでわざわざ俺を追いかけた?
警察にでもいけばいい」
「いや…だって君…ほら…この前も彼女と会ってたし…
それに…」

そこで彼は口を噤む

「なんだ?言え
さっきも言ったが急いでるんだ」
「その…ビジランテでしょ?」

彼の言葉に衝撃を受ける

「…なんのことかな?」
「とぼけなくていいんだ
前に見たんだよ…
繁華街でギャングに因縁つけられて…
その時裏路地に逃げたんだけど
その時君が別のギャングを倒してるところを…」

失敗した
普段は顔を認識されないために
仕事中はマスクをつけているのだが…
おそらくその繁華街の時は
暗い路地裏での仕事で、対象も少ないから
誰にも見られないと思いつけていなかったのだ…
実際あのマスクは結構息苦しい

「…そうか」

正直それを知られていては何も言えない

「ねえ、何か知ってるんじゃないの?
教えてくれよ
もし彼女が何かに巻き込まれてるなら…
手伝わせてくれ」

彼の目は本気だ
だが、それでも一般人だ
巻き込むわけにはいかない

「ダメだ」
「頼む!」
「ダメだと言ったらダメだ、悪いな」
「お願いだ!役に立つ!頼む!」
「なんでそこまで…」
「僕は彼女に色々聞いてもらったんだ!
中には辛い話もある!
だがいつも聞いてもらってばかりで
何もお礼できていない!だから
こういう時くらい恩返しがしたいんだ!」

やはり彼の目は本気だ
だが何か少し違うようなものも感じる

「…仕方ない、いいだろう」

とりあえずそれなりにやる気はあるようだ

「本当か!ありが…」
「だが、条件付きだ
いいか、簡単だ
絶対に俺の言うことを聞け
これだけだ、OK?」
「OK」
「よし、それじゃあ何が起こったか話そう…」

事の経緯を彼に話し始める
彼は集中してそれを聞いた
















「アポロガイスト様」

例のビジランテを監視している戦闘員の1人が部屋に入ってくる

「なんだ?」
「報告です
霧島翔は仮面ライダーでした」
「なに?それは本当か?」
「はい、こちらが写真です」

受け取った写真を見て
彼は嗤う

「ほう…
このベルトは1年前に破壊したと聞いていたが…
やはり残っていたか
残骸が見つからない時点で察してはいたが」

戦闘員は黙って彼を見る

「…なるほど、つまり彼があの時の邪魔者だったということか…面白い」
「いかがいたしましょう」
「そうだな…我々に敵対するライダーが増えても困る
だが彼のビジランテとしての仕事は本物だ…
利用するだけして、その後に消えてもらおう」

彼は次元の穴を開いた

「どこへ向かうのですか?」
「ちょっと…彼を消すための準備をしてくる
すぐ終わるがな」


彼が開いた穴の先は…
ユグドラシルタワーの研究室であった
 

 

PHASE 10 潜入、ユグドラシル

「もしもし、聞こえるか」

電話で真野を呼び出す

「ああ、聞こえてるよ
今正面玄関のところにいる」
「OK、こっちも今マンホールから地下へ入った
これからリク…あー、お前以外の協力者から送られてきた
地図を元にタワーへ向かう
準備はいいな?」
「うん」
「よし、作戦開始だ」

翔が地下から侵入している間に
真野が責任者である男、呉島貴虎を呼び出し、
動きを止める、
そんな単純な作戦だ

真野は雑誌の取材などを仕事としているため、
今回もその一環として行くことにしていた
これは、もし翔の侵入が失敗した時に
少しでもアーマードライダーの情報を集められるように
することも兼ねている

だが、問題は
この作戦がついさっき決まったため
取材のアポを取っていないというところだ

もし取材できなかったら
そいつの注意を引けず
翔が失敗した時の保険も無くなってしまう

かなり二人の運任せの作戦になってしまった




「すいません」

受付に行き、そこの女性に声をかける

「こんにちは、本日はどういったご用件でしょうか」
「呉島貴虎という方に取材を行いたくて参りました」
「事前にそのことについてお話はしていますか?」
「あ…すいません、していません…」
「…わかりました、お名前と会社の名前を」
「真野亮介、朝日ジャーナルです」

女性が電話に手をかけ、番号を入力する

「もしもし、こちら正面玄関の受付です
朝日ジャーナルの真野亮介という方が
主任に取材をしたいと…」



「はい…はい、わかりました」

女性が電話を切る

「丁度、時間が空いていたそうです
今、担当の者が来て
ご案内いたします」
「ありがとうございます!」


やった
少々手こずると思っていたが
すんなりと行けてしまった
思わず笑みがこぼれそうになるが
なんとか抑える

「真野さんですね、ご案内いたします」

セキュリティオフィサーのような男がやってきて
エレベーターの方へと向かう

(さ…そっちも上手くやってくれよ…俺のためにだがな…)

彼は不敵な笑みを浮かべながら
エレベーターへ乗り込んだ






(そろそろいいか)

翔は下水道から続く地下道に入り、
そこからユグドラシルの建物内へ入った
扉はハッキングで
あっさりと開いた

スマホに表示された地図を元に進んでいく
だが、前から来るものを見て、
とっさに物陰へと隠れた

「ちっ…あれが警備システムの一つか」

彼が見つめる先には巨大なスイカみたいなロボが三体徘徊していた
事前に入っていた情報によると
あれはアーマードライダー達の装備の一つを
自動操縦で動かしているらしい

「あまり相手にしたくはないな…
となると…方法は…」

彼はスマホに彼らを写した
するとそのうちの一体から
弱い電波が漏れているのがわかった

「ラッキー、狙い通りだ」

画面を操作し、その一体にハッキングをする
すると他の二体に向けて攻撃を始めた
急な出来事に対応できず、一体が
倒れ、停止したもう一体も抵抗をするが
互いに向けた武器で相討ちとなる

「よし」

ロボ達の残骸を超え、
彼は次の部屋へと向かう
だが、わずかにエネルギーを残していた個体が、
こちらに向けてエネルギー弾を撃ってきた

「ッ!」

慢心からか、エネルギー弾に直撃してしまう

「この野郎…痛えじゃねーか…」

撃ってきたやつを見るが、
今ので限界だったらしく
今度こそ動かなくなっている

彼はそれを確認すると
改めて次の部屋へと向かった
 

 

PHASE 11 プロフェッサーは何故変身したのか

「やはり地下から潜入してきたか…」

警備システムを突破し、
その後も数々の防衛システムを突破しているライダーを見て
凌馬が呟く

「…やはり面白い奴だ
ここまでのハッキング技術は見たことがない
素晴らしいシステムだ」

凌馬は他の監視カメラの録画映像を開く

「問題はこっちだ
こいつの事を彼が知っていればいいのだが」

彼の再生した映像には
突如出現した、クラックとはまた別の空間の裂け目と
そこから現れた赤い仮面をかぶった人物であった






「ここが研究室か」

なんとかシステムを突破してここまでたどり着いた
この扉の向こうには
アーマードライダー達に関する情報がそれなりにあるはずだ
監視カメラをハッキングして
中に誰もいないのを確認する
そして扉を開き、中に侵入した

案の定、開発中のものと見られる物や
何かの資料などが
そこら中に置いてある
彼は一台のパソコンに近づき
スマホを繋いだ

「これでコピーして…
さっさとおさらばするかな」

画面にゲージが表示される
完了まで10分ほどかかりそうだ

(それにしても研究員はいないのか…?)

彼は周りを見渡す
だが、やはりどこにも研究員の姿が見つからない
どこかで会議でもしているのか、
それとも他にも研究室でもあるのだろうか

そう思いつつ、画面を見つめる

その時だ

突如背後になんらかの気配を感じ、
さっと飛び退く
そこにいたのは白い白衣を着た男だった

「やあ、君が噂のビジランテ、だね?」
「あんたは?」
「私は戦極凌馬…今君がデータを盗んでいる
戦極ドライバーと、このゲネシスドライバー、
そしてロックシードもろもろの開発者だ」

戦極は自らの腰につけたベルトを示しながら言った

「そこまで言っていいのか?
俺は泥棒だぞ?」
「少しばかり確かめたいことがあってね
まあ、まずは…自らの手でお手並み拝見と行こう」

そう言うと、
戦極はレモンを模した錠前のようなものを取り出した

「変身」

【レモンエナジー】

それを腰のベルトにつけ、横のグリップを押し込む
すると上からレモンのようなものが降ってきて展開し、
ライダーへの変身が完了した

【レモンエナジーアームズ】


「ちっ…」

まだ途中ではあるが、スマホをベルトに戻した
そして即座にエボニーとアイボリーを取り出し
レモンのライダーへと撃ち込む


が、彼は手に持っていた弓を剣のように使い、
それを全て弾いた

「悪いがここには大事なものが多い
君だって
データをまだ取りきれてないのに
壊れては困るだろう?」
「随分と余裕だな」
「まあね」

彼は逃げるようにその部屋を出て行った
すかさず後を追いかける





戦極を追いかけてたどり着いたのは先ほどまで
コンピューター制御された警備システムたちが
暴れていた場所だ
すでに片付けられているようで、
それらの痕跡は無くなっていた

「さて、思う存分戦うとしよう
因みに地下であれだけやっていたのに
あそこまで来れたのは全部私のお陰だ」
「ああ?何でそんなことした?」
「招待したんだよ、君とお話ししたかったからね」

弓から衝撃波のようなものを放ってきた
とっさに回避し、すかさず銃を撃ち込む

「ぐっ…やるじゃないか」

少しひるんだが、すぐに間合いを詰めてくる
今度は先ほどと同じように弓で斬撃を放ってくる

ガキンッ!ガキンッ!

ニ丁の銃で防御するが、それで精一杯だった
ただのハンドガンだからか、
衝撃がモロでくる

「クソっ…!」

一旦離れてからスマホを弄り、
近接用の武器、スカルブレイカーを呼び寄せた
大型の斧のような武器で
所々に髑髏の模様がある

「オラァッ!」

豪快な一振りを
戦極にぶち当てる
弓で防御してはいたが、
それでも吹っ飛び、
壁へとぶつかった

トドメのためにスマホにメモリを差し込む

【Charging】

態勢を直した戦極へと近づき斧を二度振り下ろす

「ぐァッ…くッ…!」

衝撃波を打つが
斧でガードし再び振り下ろす

【Ready】

一旦離れてから斧を振る
すると髑髏状のエネルギーが現れ、戦極を拘束する

「ハァァァァァァァァァァァァッ!!」

二回転ほどしてから
そのまま勢いで斧を彼に叩きつける

「ダァァァァァァァァァァァァッ!!」



会心の一撃を当てられた戦極の変身が解け、
その場に倒れた

「ククククククク…」
「何笑ってんだ、負けたくせに」
「いや、君なら協力する価値があると思ってね」
「何?」

戦極が立ち上がり、歩き始めた

「付いて来い、見せたい映像がある」

彼の言葉に戸惑いつつも、
協力、という言葉に少しの期待をし、
彼の後を追いかけた













どこかの世界 どこかの城 円卓の間

三人の男が、そこに集まっていた

「で、どうだね…
そちらの世界の進展は?ドゥーム殿」

アポロガイストがテーブルの斜め前の席に座っている
ドクタードゥームへと話しかける

「まだ少ししか加わっていない
だが、望みの物を与えるという言葉を聞き、
ほとんどの者がいずれやってくるだろう
だから問題はない」
「気づかれてはいないか?」
「多分な」
「そうか…では、そちらはどうだね?ウェスカー殿」

今度は反対側に座っている男、
アルバート・ウェスカーへと声をかける

「こちらも問題はない
そもそもこちらの世界から提供するのは
大量のゾンビ共だ
奴らに意思はない
…一部を除いてな」
「そうか…よろしい」
「そちらはどうなんだ、アポロガイスト」

ドクタードゥームがアポロガイストへと問う

「こちらかね?
こちらはほとんどが既に我々に加担している
お陰で他の世界にも手を出すことができた」
「他の世界?どんな世界だ?」
「二つある
一つは帝具という特殊な武器が各地に散らばっている世界だ
そこで1人の男に出会い、強力な帝具を探させた
見つけるまでに時間はかからなかったがな
それを使って力を示したら
我々に迎え入れる、とだけ伝えておいた」
「なるほど…もう一つは?」
「死神たちが死んだ者達の魂を鎮めたり
暴れる悪霊を切り捨てる世界だ
といってもこちらはまだ、それが把握できたというだけだがな…」


そう言ってアポロガイストが立ち上がる
他の二人もそれに続く

「全ては我々の望みのため…
闇が包む世界のため…
そしてあの方のために…
あの方は我々の欲望を全て満たしてくれる」







「行くぞ…まずは我々、この闇の軍を強大な物にするのだ!」
 

 

PHASE 12 プロフェッサーの協力

「…さて、
改めてようこそ、私の研究室へ」

戦極に連れてこられた場所は最初の研究室であった

「…で、目的は何だ
何故俺を招き入れた」
「ちょっとした利害の一致ってヤツかな
まず聞かせてもらうが、何のために情報を盗もうとした?
それが聞きたい」

戦極の問いに、一瞬躊躇うが
直ぐに事の経緯を説明した



「…なるほど、
もしかしてその依頼主は
こんなやつじゃないかな」

そう言って彼が呼び出したモニターには
監視カメラの映像と思われるものが映っていた
そこではあの男、ガイが何かを手にしていた

「こいつだッ!こいつが俺にこんな依頼をしてきた!」
「フム、こいつの情報を知っているかと思ったが
まさか面識もあったとは」
「こいつは何をしている?
そしてあんたは何を俺にさせるつもりだ?」
「簡単さ
この映像で彼が立っているのはそこだ、行ってみてくれ」

彼が示したところには透明のガラスに囲われたボックスと
幾つかのロックシードが置かれていた

「これは…?」
「そいつは私が極秘に
開発していたロックシードだ
と言っても幾つかは封印しているがね
極秘だから知っているのは
私だけのはずだが…
どこからか漏れていたらしい」

そこにあったロックシードは
ドラゴンフルーツを模した物と
リンゴを模した物、
そしてドス黒い不気味な色のブドウのような物のロックシードであった

「本来ならそこにもう一つあったんだ
しかも特に危険なやつが」

彼が資料を投げ渡してきた
そこにはアウラウネロックシードという名前と
その図が載っていた

「ガイはこいつを盗んだと?」
「その通りだ
何のために使うか…まあ、良くないことだろうが
とにかくあまり派手に暴れられて
貴虎のやつに知られても困る」
「貴虎?ここの主任か
仲間じゃないのか?」
「彼は信頼できる男だが、
少し…何というか馬が合わなくてね
彼は戦闘用のロックシードの存在をあまり好んではいない」
「なぜだ?」
「詳しくは言えない
だが元々、ロックシードは戦闘のために開発されたものじゃないということだ」
「…お前の依頼は
そうなる前にそいつを奪い返してほしい、
そういう事だな?」
「ああ」
「見返りはなんだ」

その言葉に対し、
彼はベルトを指差した

「そいつを強化してやろう」
「え?」
「君のライダーシステムを強化してやると言ったんだ
安心しろ、この私のゲネシスドライバーと変身態のデュークにも
強化を施してある
同じようなことをするだけだ」
「だがこいつはあんたが開発したわけじゃない
システムもかなり違うはずだ」
「私を誰だと思っている
データさえ渡してくれれば簡単さ」

戦極の言葉に少しばかり考える
だが、答えは最初から決まっていたようなものだった

「OK、乗った」
「君ならそう言うと思っていたよ
では、そのスマホ…名前とかはないのか?」
「名前?
スマホに名前なんてつけないだろ」
「まったく、君にはユーモアというものがないな
君のライダー名は?」
「バレルだ
と言ってもベルトの名前から取っただけだが」
「では今からそいつの名前は
バレルハッカーだ
シンプルでいいだろう?私の趣味だ」
「ハァ…何でもいい
とにかく頼む」
「じゃ、そのバレルハッカーを渡してくれ」
「ほらよ」
「これでいい」

彼は直ぐにバレルハッカーとコンピュータを繋いだ

「今、そっちのデータをコピーすると同時に
こちらのデータを送信している」
「いいのか?」
「構わん
これもお互いの信頼関係のためだ
それにこのシステムがばれたところで
どうということはない」
「そうか…感謝する」
「では、これでデータは貰った
あとは開発するだけだ
数日程度かかるかもしれないが
パワーは保証する」
「ありがとう、本当に感謝する」
「いいんだ、お互いのためだ」
「それでは」

翔は戦極の研究室を後にした





「…よし、それでは
解析を始めるか…
あれがどこで何のために作られたのか
非常に興味深い
強化は…後回しだ、悪いな」















太平洋上空 個人ジェット機内

一人の男が新聞を読んでいる
その脚は側に倒れている殺し屋の顔を踏みつけている

「全く…こんな狭いところで襲ってくるなんて
お前は相当バカだな…侵入したことは褒めてやるがな
何処からの依頼だ?」

殺し屋は答えない
沈黙したままだ
どうやら気絶しているらしい

「…ま、見当はついているがな
どっかのテロリストだろ
それ以外に恨みを買われたことは…あるか」

側にいたコワモテの部下に指示を出し、
殺し屋の身体を運ばせる

「…にしても翔のやつ、
立派にビジランテやってるみたいだな」

彼が読んでいる紙面には
沢芽市に出没するビジランテについて書かれていた

「待ってろよ、翔
この俺が帰ってくるぜ…」

彼の隣の席には
ベルト…フォースドライバーと
一人の男についての資料と写真が
置いてあった 

 

PHASE 13 狂気のライダー

「もしもし、真野
そっちはどうだ?」

バイクに跨りながら電話をかける

「こっちはもう終わってる
いろいろな情報を入手した
そっちは?」
「こっちも完了だ
それに予想以上の収穫だ
今どこにいる?」
「一旦離れてショッピングモールの所」
「了解した、俺もいく」
「OK」

電話を切り、
バイクのエンジンをかけようとした瞬間どこからか
エネルギー弾のような物が撃ち込まれた

「ぐぉッ!?なんだ!?」

エネルギー弾が飛んできた方向を見ると、
そこには1人のアーマードライダーがいた

「誰だ…?」

先ほど入手した情報には
あんなライダーはいなかった

だが、問いには答えず
再び無双セイバーからエネルギー弾を撃ちながら
こちらへ向かってきた

「返答無しかよ…仕方ねえ!」

すかさずスマホ…バレルハッカーを取り出し、
ベルトに手をかける

【Get ready】

「変身!」

【Battle system start】

素早く変身を完了し、
スカルブレイカーを手に取り、走りこむ
謎のライダーは無双セイバーをしまうと、
今度は両手にムチのような物を持って
攻撃してきた

ヴァチンッ!ヴァチンッ!

ムチと斧がぶつかるたびに
鈍い音がなる
だがリーチも長く素早い相手の攻撃は
ついにスカルブレイカーでは
防ぎきれなくなってしまった

ヴァチンッ!

「うおァッ!」

ムチが胸へと直撃する
どうやら電流も纏っているらしく、
身体中がビリビリと痺れる

「クッソ…」

再び振るわれたムチが
今度は顔面に直撃する

「あァァァァァァァァ!!」

耐えきれず、身体が地面へと崩れる
辛うじて動く片腕でなんとかエボニーを取りだし、
ライダーへと向ける
が、それすらもムチで払われてしまう

「お前…何者だ!
何が目的だ!」

その言葉に対して
変声機を通したような声が答える

「俺の名は…仮面ライダーマッド…
いいかい?君はここで死ぬんだ…
この手で殺してやる
お前は邪魔だ!」
「何だよ!誰の命令だ!
邪魔って何の邪魔だよ!」
「黙れ!誰の命令でもない!
お前のせいで…俺は…!
何でお前なんかが…!」

マッドは腰のベルト…戦極ドライバーのブレードを倒した

【アルラウネ スカッシュ】

それを聞いた翔は
思わず驚きの声を上げる

「えっ!?アルラウネ…それって確か…」
「死ねィ!」
「ぐっ…!」

両腕のムチを振り上げた事によって出来た隙を逃さず、
なんとか腕を動かして咄嗟にクラッカーヴォレイを投げつける

油断していたマッドは避けきることが出来ずに
爆発で後方に吹っ飛ばされた

続けざまにクラッカーヴォレイを投げつけ、
その間にバイクまでなんとか向かい、跨る

「仕方ないが…一時撤退だ…!」

悔しさを残しながらも
急いでその場を離れる
最後に見えたのは
爆発の中でよろめきながらも立ち上がる
マッドの姿だった
 

 

PHASE 14 そして救出作戦へ

「悪いな…遅くなって」

合流場所にはなんとかたどり着くことができた
とは言ってもまだまだ体は痛むが

「ん…霧島!?大丈夫か!?」
「ああ、一応な
お前こそ何だか体調悪そうだが…
大丈夫か?」
「うん…ちょっとあの会社のお堅い雰囲気に押されてね」

真野の顔は青白くなっていた
それだけでここまでなるのか…?
いや、人によってはなるのだろう
前に情報を見ていた人の中には
緊張で卒倒する症状を持つ人がいるくらいだ

「それでこっちがインタビューとして
聞き出した情報だけど…」
「ああ、それがな、必要ない
内部の研究者とちょっとした協力関係を結ぶことが出来て
必要ない情報も大量に入った」
「…そうなの?
なんだよ、あんな場所行って損したよ…」
「悪いな
だがこれで夏希を助けられる」
「よし、じゃあ今すぐにその…
ガイって人に連絡して取引を…」
「いや、ダメだ」
「え?」
「確かに情報は手に入った
だがこれをそう簡単には渡したくない
アーマードライダーである彼らは
方法とか戦う相手は違っても
一応…自分で言うのもなんだが、
この街を守ってる
その情報をやつに渡したらどうすると思う?
少なくとも悪いことは確かだ」
「じゃあどうするんだ?」
「一度連絡はする
だがその時に少し先の日付を取引の日にしてもらう」
「それで?」
「逆探知さ、俺を誰だと思ってる
コンピューターを操って仕事をするビジランテだぞ」
「でもそう簡単に探知できるかなぁ?」
「何とかなるさ、安心しろ」
「…逆探知したら?」
「すぐにその場所へ行く
例え携帯からの連絡だったとしても
監視カメラの過去の映像を追いかければアジトをみつけられるさ…多分
そして後は夏希を救出して身を隠すだけ
出来るならばガイの野郎も再起不能にする」
「そう…じゃあ連絡は任せるよ
悪いけどまだ少し気分が悪くてね
もう帰ってもいいかな?」
「ああ、構わん
こっからは俺とジョルディ達だけでいいからな
ご協力、感謝する」
「そうか…まあ、また何かできることがあったら連絡してくれ」
「了解、じゃあな」
「じゃあ」




真野を見送った後、
すぐにこちらもアジトへと戻る

(痛みは…和らいでないな
クソ…それにしても何なんだあの野郎…)

マッドの事を考えながらバイクの置いてある場所へと向かう

だが、その時突如爆発音が鳴り響いた

「何なんだよ!またかよ!チクショウ!」

爆発したところを見ると
亀にロケットランチャーがついたような怪人と
骨を模したようなタイツを着た集団が暴れている

「おいおいおい…インベスじゃねえな…
強盗か…?いや、それならあの亀は何だ…?」

奴らはこちらを見つけると一斉に向かってきた
応戦するためにすぐにバレルハッカーを取り出す

「変身!」

変身完了してスカルブレイカーを手に取ると
こちらも奴らの方へと走り込んだ 

 

PHASE 15 軍人ライダー現る

「金剛様」

黒服のSPが
リモコンを操作し、
目の前のパネルにニュース映像を映した
そこには黒煙を所々からあげる
大きなショッピングモールの映像だった

「…これは?」
「たった今、沢芽市のショッピングモールが
襲われた、ということです
この映像は襲撃からおよそ20分後に
ヘリが上空から撮影したものだそうです」
「なるほど
内部の映像は?」
「現在監視カメラデータに侵入を…
どうやら、すでに完了しているようです
襲撃直後の映像を流します」

映像が切り替わり、
今度はショッピングモール内部の映像が映った

「ん?こいつは…」

そこに映っていたのは
ビジランテであり、高校時代からの友人
霧島翔であった

「…よし、今からここに行き、
事態を収めてくる」

フォースドライバーを手に取り、
ドアの方へと向かう

「ちょ、何やってるんですか!
ここは空ですよ!?
空港まであと少しだからお待ちく」
「いや、今すぐ行く
それに、こいつがあれば十分さ」

ベルトを腰に当て、
イグニッションキーと呼ばれるキーを取り出し
ベルトに差し込む

「変身」

【ネクストウォーリア ブート】

身体が光に包まれ、
アメリカ軍唯一の次世代兵士
仮面ライダージェネラルへと変身する

「そんじゃ、ちょっくら行ってくる
あ、あと到着したら
荷物は全部、家に届けといてくれ」

そう言い残すと
ドアを全開にし、そこから飛び出す

「イヤッホオオオオオオオオオウ!!」

300mほど降下したところで
背中のブースターを起動し、
ショッピングモールの方へと飛んだ






「畜生…」

バレルはショッピングモールの中で、
奴らに見つからないよう
身を潜めてた

「まさか…あの野郎の攻撃が
ここまで続くとは…」

マッドに攻撃された場所が
未だに痛み、敵を数体倒したところで
ほとんど戦えないような状態になっていた
何とか逃げ切るも
脱出するにはかなりきつい状態になってしまった

(戦えるっちゃ戦えるが
流石に数的にも出口までの距離的にもキツイな…)

そう思った時、
バイクの音がショッピングモール内に響いた
見ると、そこには…

「嘘だろ…!?何でここにいることがわかった…?
勘弁してくれよ…」

マッドが愛車「ラバーズチェイサー」に乗ったまま
ショッピングモールにいる

周りの奴らとは協力関係なのか
そこで争いは起きず、
同じようにこっちを探しているだけだった

「さて…どうすれば…ん?」

足元に何かが転がってきた
それを拾い上げ…すぐに投げ捨てた

「くそ!爆弾か!」

どうやら、あの全身黒タイツのやつに見つかっていたらしい
そこを出ると
すでに周りには奴らと
マッドが寄ってきていた

「あ、まずい」

何人かを倒すことは出来ても
他の奴にやられる
逃げ道もない
このままでは負ける
そう思った時
天井のガラスが割れ、
何かが飛び込んできた

「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン!!」

背中のブースターのようなもので飛行しているそいつは
マッドを掴むとそのまま壁へとぶつかり、めり込むように押し付けた

「なんだ…?」

そいつは立ち上がると、
今度は黒タイツの奴らに対して格闘戦を始めた

「オラ!この野郎!」

全員を片付けると
こちらの方へ駆け寄ってきた

「よう、久しぶりだな」

この声には聞き覚えがある
だが、誰かは思い出せない

「えと…誰だ?」
「おいおい、嘘だろ?
忘れちまったのかよ…
いや、この姿じゃわかんねえか」

そして両手を広げ
大げさな仕草で自分を指して言った

「金剛 蓮司、ただいまアメリカから沢芽市に帰還よォ!」

思い出した
このいかつい名前、
高校時代からの聞き覚えのある名前、
アメリカへテロリスト殲滅の目標を掲げていった男の名前

「蓮司か!久しぶりだな!
でもお前…何でここに?アメリカにいるんじゃなかったのか?」
「色々あってな
ちょっと戻ってきたのさ
それよりもあいつ、もう復帰してるぜ」

蓮司が示した先では
マッドが立ち上がりはじめていた

「あいつ、何度でもこっちに向かってくる気か…」
「面白い奴だ、お前は下がってろ」

蓮司がマッドの方へと向かう
手にはサバイバルナイフ状の武器…
ジェネラルダガーが握られていた


 

 

PHASE 16 マッドVSジェネラル

「ぐ…うう…あぁ…!」

マッドは胸を押さえながらフラフラとしている
どうやら相当苦しいようだ…何故かはわからないが

「おいおい、大丈夫か?
今楽にしてやるぜ」

バッとマッドに向かって飛びかかり、
ダガーを振り下ろす

「俺に…近寄るなァ!」

皮膚を貫く直前に
マッドが振るった無双セイバーがあたり、
バランスを崩す

「うおっとと…」
「ハァ…ハァ……
だいぶ落ち着いたぜ…」
「そうか、なら良い
弱ってるやつを倒しても面白くないしな」

無双セイバーを構えるマッドを前に
ジェネラルがカードを一枚取り出し、
ベルトに差し込んだ

【ジェネラルダガー カトラスモード】

音声が発されると共に
ジェネラルダガーの刀身からエネルギーが放出され、
カトラス状に伸びる

「さ…かかってこい、いつでもいいぞ」
「舐めるな…元々お前に用はないんだ
さっさと片付ける!」

剣と剣がぶつかり合い、火花が散る
両者とも何度か距離を置くが
すぐに間合いを詰める
鍔迫り合いになった時、
ジェネラルがマッドの腹に蹴りを入れ、バランスを崩したところをすぐに切りつけた

「ガァッ!」
「フム…最初はどんなやつかと少しばかり警戒したが…
今わかった、お前は戦いの素人、いや、ド素人だ
何てことはないな」
「なめやがって!」
「舐めるだと?フン、こっちは
何年も戦場で戦ってきたプロだ
だからこそなめてかかったりはしない…
人は追い詰められた時が一番危ないからな」




ピロロロロロロ…

ジェネラルの闘いを見物しているバレルに
電話がかかってきた
変身したまま直接出る
相手はジョルディだった

「どうした?何かあったか?」
「リクの野郎がいねえんだ!
あいつの部屋に行ったんだが
そこはもぬけの殻
あったのは酒の瓶と薬物かなんかの
ゴミだけだ
正直そういうのに手を出してるのは意外だったが…
とにかく、そっちでも探してくれ!」
「…了解した」
「ああ、あとこの薬の量から
あいつはかなりヤバイ状態かもしれない
気をつけろよ」

それだけ言い残し、電話が切れる

(薬物で苦しむ…まさか…
そもそもあいつに恨まれる覚えなんて…)

そんな不穏なことを考えながら
彼はマッドの方へと
視線を移した



ジェネラルはダガーをもう一本取り出し、
同じようにカトラスモードへと変えた

「ダメ押しにもう一本だ」
「クソがァッ!」

マッドがムチを装備し、
ジェネラルへと振る

「…!まだ武器があったか」

ジャンプした直後だったためか、
一撃目は避けることができたが
二度目はそうは行かなかった

「グッ…少しばかり痺れるな…だがこの程度か」

背中のブースターを上手く駆使し、
素早く正確な動きで
マッドに近づいていく

そして攻撃範囲に入った時、斬りつけると同時に
カードをベルトに差し込む

【D.Dパフォーマンス スラッシュエクスプロージョン】

ザシュッ!ザシュッ!と音を立てながら
マッドを何度も何度も斬りつける
ある程度斬りつけたところで距離を取り、
取り出した手榴弾を投げつける
避けようとするマッドの前まで飛んだ時
それにカトラスを投げつけ
当たる直前に爆破させる
爆風で吹っ飛んだマッドは瓦礫に突っ込み、
動かなくなった

「…やっぱり素人だな、つまらん」

ジェネラルは変身解除をし、
ゆっくりとバレルの方へと歩いて行った

 

 

PHASE 17 男が追う者、男が負う物

「どうだい?次世代兵士、ジェネラルact2の戦いっぷりは」
「まあ、何つーか…すごいな」

途中から電話で話した事に気を取られてたせいで
実際はほとんど見ていない

「ところで…act2ってどういうことだ?
1もあるのか?」
「まあね
こいつは少しずつ進化していくってわけよ」

蓮司がベルトをポンと叩きながら言う

「今度はこっちの質問だ…お前、
あいつは何もんだ?正体はつかめているのか?」

蓮司の言葉に先ほどの会話を思い出す

「…いや、まだわからない
今から確認しようと思う」

まだ確証を得ていないから
軽く嘘をついて
マッドの方へと歩いていく

「待った
そいつはちょっと後回しにしてくれ」

蓮司に肩を掴まれ、引き止められる

「うぉっと…なんだよ」
「いや、ちょっとね
実はこっちに来てからまずお前に会いたかったんだよ
ビジランテであるお前に、聞きたいことがあってな」

その口ぶりから
少しばかり真面目な話であることを察した

「何だ?」
「俺はある男を追って、こっちにきたんだ
そいつは既に死んでる
…筈なんだが、どうやらこの辺で目撃されたらしくてな
一応オペレーターに捜索させてはいるが
中々見つからない
そこで、街中のことに詳しいであろうお前に
聞きたかったんだ」
「どんなやつだ?」
「こいつだ」

蓮司が資料のようなものを取り出した
その一枚目には男の写真と
「アレン・カーター」という名前が書かれていた

「知らんな、何者だ?」
「テロリストだ
二ヶ月前、俺は任務で部下を率いて
バルベルデという国でテロ組織の制圧を行った
途中までは良かったが…
そいつのせいで俺と副隊長以外の全員が死んだ」
「…たった一人でか?」
「ああ、そうだ
そしてちょっと…ブチ切れた俺がぶっ殺したんだが…
復活したのか、それとも殺しきれてなかったのか…
後者はないってくらいにはボロボロにしたはずだが…
そんで、そいつはそれから後、
今日から3週間前に突然現れ
副隊長を殺し、ある人物を意識不明の重体にした」
「ある人物?」
「そこはいいんだ
そしてまた姿を隠したが
先週こっちで目撃された…ってわけ
俺はこいつをまた地獄に送り返し、
ついでになぜ生き返ったかを調べる
そのために帰国したんだ」
「…そうか
こっちでも少し調べてみる
情報が入るかわからんがな…」

再びマッドの方へと歩きだす
だが、そこには既に奴の姿はなかった

「何ッ…!」

直後、二階の方からエネルギー弾の雨が降ってきた
物陰に隠れてその方向を確認すると
そこにはマッドとガイが立っていた

「あの野郎…!」
「おい!翔!
なんだあの太陽頭!」
「わからん!
俺もあいつのせいで酷い目にあってる!」
「そうか…ならあいつもぶっ倒しとくか?」
「出来るならな!だが今はダメだ!
人質を取られてる!」

エネルギー弾が途切れたタイミングを見計らい、
もう一度その方向を確認する


だが、既にガイの姿はない
マッドの後ろ姿が遠ざかっていくだけだった

「奴を追うぞ!」

蓮司の言葉に従い、
翔はマッドの向かった方向へと
駆け出した
 

 

PHASE 18 バイクチェイス 逃走者は誰か

「おい!待て!」

マッドを追いかけ外に出ると、
ちょうど奴が呼び出したバイクに乗ったところだった

「じゃあな霧島翔
そして復讐のライダー、金剛蓮司」
「復讐…ねぇ
なるほど、俺のことも調べがついてるってことね」

マッドがバイクを発進させたのと同じくらいに
こちらのバイクも到着した

「遅いぞ!」

若干冗談交じりの声で
蓮司が愛車イモータルブレイバーに話しかける

二人はバイクに跨りながら
同時に変身の構えを取る

【Get ready】

「「変身!」」

【Battle system start】
【Next warrior boot】

二人の変身が完了すると同時に
マシンのエンジンをスタートさせる
マッドは既に50mほど離れ、道路へと出ていた

「追いつけるか?」
「余裕」
「じゃ、競争だ
どっちが先に追いつけるか」
「いいね、面白い」
「行くぜ…3…2…」

蓮司がカウントダウンを始める

「1…GO!」

ブロロロロロロロロロッ!!

合図に合わせて
二人はアクセル全開でマシンを発進させた


同時に道路へ飛び出し、先を走るマッドを追う
バイクのスピードはほぼ同じのようであった

「ターゲット確認…と」

ジェネラルがバイクを走らせながらハンドガン型の武器、
ジャッジメントを取り出す

「そんなんであいつに届くのか?」

挑発するような口調で問う

「軍の力、なめんなよ?」

ジェネラルがジャッジメントを構える

「ブチ抜け!」

ドギャンッ!

発射されたエネルギー弾はマッドの背中へとヒットした

「グォァッ…」
「ストライク!見たか?しっかり当ててやったぜ」
「すげえなそれ…俺にも使わせろよ」

そう言ってバレルが手を伸ばす

「おっとそいつは無理だ
このベルトを含めた全部の武装は俺専用だ
他の奴には使えないよう設定されてる」
「またまた…ちょっと貸せよ」
「構わんが、奴との距離を詰めるなら今のうちだぜ?」

ジェネラルの示した方を見ると
マッドが撃たれた衝撃からか
バランスを崩し、少しだけ減速している

「ほらよ、お前が撃てないかどうか試してるうちに
俺は先に行かせてもらうぜ」

ジャッジメントを投げるとジェネラルはすぐに運転に集中した

「ふん…こいつらと戯れてろ」

マッドが片手を振ると
空中にヘルヘイムの森へとつながるクラックが開き
そこから何体ものインベスが飛び出し、道に立ちふさがる

「あいつクラックも開けられるのか!」

バレルがジャッジメントの引き金を引く

カチッカチッ…

「あ、あれ?本当に撃てねぇ…」
「あたりめーだ
わざわざ嘘なんかつくか
さっさとよこせ」

バレルからジャッジメントを奪い取り
ジェネラルは数体のインベスを
一気に撃ち抜く

「これで道が空いた
このまま進むぞ」
「おう!」

二人はスピードを緩めることなくマッドを追い続ける

「ちっ…インベス共も突破されたか」
「おい!マッド!てめえの正体…だいたい掴んでるぞ!」
「だいたいかよ…てかさっきわからないって…」

ジェネラルがそこまで行った時、
今度はエネルギー弾が飛んできた
見るとマッドが無双セイバーを連射している

「霧島翔!お前だけは確実に殺す!
だが今はその時じゃない!」
「なんだよ!負け惜しみか!
さっきまで散々殺そうとしてきたくせに!」
「うるせえな…こっちにも色々あんだよ」

三人の追いかけっこの舞台が
港のコンテナ置き場に変わった時、
バレルはジェネラルがバイクの上にいないことに気づいた

「…!?あいつどこに…」

周りを見渡しても見当たらない

「バイク…は自動操縦みたいだな
だがどこへ…」

どうやら異変にはマッドも気づいているようだった
バイクの運転をしながら周りをキョロキョロと見ている


次の瞬間、上空からやってきた何かが
マッドと並走し始めた

「な…!?」
「よぉ…探したかい?探したよ…なぁ!」

ブースターで並走飛行をするジェネラルが
マッドの顔面にパンチを食らわせた

「グフッッッ!」

吹っ飛んだマッドはその勢いで積み上げられたコンテナを倒し
海へと突っ込んだ

「あ〜らら…ちょっとやりすぎちゃったかな?
まあいいか…」

バレルがバイクを止め
マッドが落ちた辺りを確認するが
彼が浮いてくる様子はなかった






その二日後、翔に頼まれたジョルディの捜索により
近辺の浜辺にロックシードがはまったままの戦極ドライバー身につけた
リクの死体が打ち上げられているのが発見された 

 

PHASE 19 潜伏地を求めて

「まさかあいつが…裏切っていたとは」

話を聞いたジョルディが
頭を抱えながら言う

「残念ながらな
まあ、そこまで長い付き合いでもないから
いいだろ…」
「問題はそこじゃない気が…
それより遺体についてたあのベルトはどうした?
どっかに渡すとか言ってたが…」
「ベルトはユグドラシルの知り合いに
渡しておいた」
「ユグドラシル?何でまた?」
「ちょっとな…」

そう呟いた翔の手には
戦極に渡された
拡張用のメモリが2つあった

「で、どうする?
例の男に連絡は?」
「今からする
これ一回で場所をつかめれば
いいが…」

早速ガイに連絡を入れる

プルルルルルルルルルルルル…ガチャッ

相手が出る
それと同時に逆探知用の機器を起動させた

「私だ」
「言われた仕事は成し遂げた」
「ほう…思ったより早かったじゃあないか」
「そこで早速明日人質との交換をしたい
「明日?
今すぐじゃなくていいのか?」
「今の俺は沢芽市離れたところにいる
全力で急いでも着くのは明日だ」

適当な理由で
少しでも交渉の日時を先にする
それまでに相手のいる場所に突入しなければならない…

「…よかろう
ではまた明日、場所を連絡する」
「今すぐにはダメなのか?」
「ああ…私も今別の場所にいてね…」
「ダメか?」
「ダメだ」
「そうか…わかった」
「さらばだ
明日のためによく眠れよ…」

ブツッ



「どうだった…?」
「ダメだ、奴らの拠点はわからなかった
ただ…」

今の電話の内容を解析する
するとガイの話している向こう側から
とある声が聞こえた

「ガイ様…ミスタークインがお待ちです…」



「クイン…あのホテルの経営者か」

クインとは、
ここ数年の間に
海外から沢芽に一気に進出してきた
リゾート系の企業の経営者だ
その裏ではあまり表沙汰にはできない組織と繋がっているという
黒い噂もある

「おそらく、今ガイの野郎はここにいる
クインと話すためにな…
クインが何かしらの情報を握っている可能性がある
とりあえずここに向かうか」
「そうか…こちらも出来る限りサポートしよう
で、あのお前の連れはどうした?」
「隣の部屋だ
何だか調べることがあるとか…」







あの男は必ずこの街にいる…
だがどこだ?やつはどこにいる?

手元にある地図に印をつけながら
蓮司は考える

やつは許さん…
この手で必ず裁いてやる…

ピロロロロロロ…

電話を取ると、
相手は任務のオペレーター、キャロルであった

「よぉ、キャ〜ロルン、久しぶりだな
何の用だ?」
「その呼び方、しばらくぶりですね
…そんなことより朗報です
アレンの目撃情報が出ました」
「何…?それは本当か!」
「はい ですが、相手が匿名で情報を提示してきたため、
罠の可能性も…」
「そんなことはどうだっていい!罠なら潰すだけだ!
どこに奴は現れた!」
「落ち着いてください
…彼が目撃されたのは、沢芽市にある
グランドベイホテル…です
そちらの時間で昨日の出来事だそうです」
「了解した!ありがとよキャロルン!」
「一応言っときますが私はキャロ[ガチャッ]…はぁ…」



「ついに手がかりを手に入れた…
絶対に逃がさんぞ…アレン…」 

 

PHASE 20 大富豪襲撃、開始

大通りを2台のバイクが
高速で駆け抜けていく

目の前にはすでに目的地である
ホテルがあった

「まさか…お前と目的地が被るとはな」
「ああ、正直こっちもビックリだよ」

ホテルの裏にバイクを停める

「んじゃ…俺は裏から
お前は表から…でいいな?」
「イエース…お互い頑張ろうぜ」
「俺が失敗するわけないだろ?」
「それをフラグって言うんだぜ?知ってたか?」
「うるせ」

エントランスの方へ蓮司が歩いていくのを見送り、
自分は横の関係者用の入り口から潜入した
ハッキングであっさりと電子ロックを解除し、
すぐに物陰へ隠れる

「さあて、久々にビジランテらしい仕事だ」

監視カメラを乗っ取り、周囲の状況を確認する

「…エレベーター前に警備1人か…
それとそこまで行くのに2人、と
どうやってこいつらを黙らせるかな」

彼らの近くには
特に音をならせるようなものはなかった

「あるのは従業員用の自販機だけか
自販機…フッ、天才だな俺は」

物陰から少し顔を出し、
自販機を直接ハッキングする
システムをいじられたそれは
大量の飲み物を一気に吐き出した

ガコンガコンという音に
見回りをしていた1人が
近づいてくる

「おっ…こいつはラッキー♪」

缶ジュースを一本取り出し、
蓋に手をかける
それを見て飛び出すが…
そいつは急に大声で他の仲間を呼び出した

(なッ…やばい!)

そう思ったがすでに遅い
とりあえずそいつにサマーソルトを食らわせ、
気絶させる
と同時に通路へ他の男達が来る
こちらの姿を見ると同時に拳銃を引き抜く

「そこで何をしているッ!」

一気に距離を詰め一人に対して手刀を当て、
もう一人には警棒で人体の急所を叩いていく

二人ともあっさりと倒れるが
どうやら面倒なことに
すでに他の警備へ緊急事態のシグナルを送ったらしく
徐々に大勢の声が聞こえてきた

「嘘だろ…なんでこうあっさりと計画が崩れるんだ!」

急いでエレベーターに駆け込み
最上階のボタンと閉のボタンを押す
ドアの隙間から駆けつけてきた警備隊達が
叫んでいるのが聞こえる
手には拳銃も見える
…がギリギリのところで
完全にしまってくれた
バンバンと扉を叩く音が下の方へと遠ざかる

(仕方ねぇ…
こっちの潜入はバレたが…
先ずは警備室だ)

今回の目的地、最上階のクインの部屋は
扉の所にあるものとと警備室から操作できる
二つのロックで閉じられている
扉の所のものはその場で解除できるが
警備室からの方は
あらかじめ解除しておかなければならなかった

(さて…向こうもそろそろこっちの動きに気づいているだろうな
対策を練らねば)


目的地のフロアに着き、
エレベーターの扉が開く
同時に翔も行動を開始した 

 

PHASE 21 悪霊の影を追って

正面玄関から入り、真っ直ぐフロントへと向かう
どうやら翔はすでに見つかっているらしく
チラチラと館内を駆け回る男たちの姿が見える
…が、今はこちらが優先だ
時間があれば助けてやる

「失礼、こういうものだ」

フロントの女性に
軍から支給されている証明書を見せる

「…どのようなご用件でしょうか」

新人なのかあっさりと信じてくれたらしい
まあ、それだけ楽だからありがたいが

「ある人物を探していてな
こいつ何だが…見覚えあるか?
ここに宿泊してると聞いた
アレン・カーターって奴なんだが」
「その方なら…少々お待ちください」

そう言って女性は側にあったパソコンを操作し始めた

「ところで…さっきから少し騒がしいが、
何かあったのか?」

あいつがどれだけ暴れているのか探りを入れてみる
しかし…

「すいません、私達も何も聞かされていなく
さっきから不安で…
恐らく警備員の方たちなら何か知っていると思いますが…」
「そうか…なるほどね」

どうやら対象を見つけたらしく、
女性が顔をこちらに向けた

「確かにこの方は宿泊していますね」
「部屋を教えてもらえないか?」
「そこに関しては…」
「こいつはとある事件の容疑者なんだ…
捜査の一環として俺は来たんだ
何としても捕らえなくてはいけない…」

捜査というのは嘘だ
俺は個人的な恨みを晴らすために来た
それでか思わず声に力がこもる
だがこれが効果的だったのか
またもやこの女は俺の言葉を信用してくれたようだ

「…かしこまりました
ですが念の為、部屋までは私が案内します」
「それでいいんだ、ありがとう、感謝する」

上手くいった
それにしてもセキュリティ甘々だな
まあ証明書を見せたってのもあるだろうが…
こんな簡単に人を信じる人をフロントに置いていいのか?
…もしかしたら優秀な奴らは
みんな翔の対処に向かってるのかもしれない
だとしたら丁度良かった
よくやった、と褒めてやろうか?

「こちらです」

彼女に導かれ、エレベーターの方へと向かう







「この部屋です」

彼女が鍵を開けようとする

「待った、俺が開けよう
奴が襲ってくるかもしれない」
「でも…」
「いいから、下がってな」

半ば強引に取った鍵で扉を開ける
中は真っ暗だった

「いないのか…?」

ドアの前に立つ彼女に問う

「いいえ、まだいらっしゃるはずですが…」

中を確認するため、電気をつける
瞬間、ベッドの陰から銃を持った何者かが立ち上がる

「!?、伏せろ!」

彼女を掴んで無理やり床に伏せる
ダァンッ!と、音が響く……


だが、幸い相手も目が慣れてなかったのか
弾はドアへとめり込んでいた

「逃げろ!」

彼女を逃し、相手と向き合う

「オラァッ!」

素早く相手の懐に駆け込み
片手で銃を払ってから
もう片方で腹にパンチを喰らわせる

が、それだけでは倒れず
相手も殴り返してきた

「ぐッ…めんどくせえな…」

顔はフードで隠れているが、
口元が笑っているのが見えている

「怖いかクソッタレ、当然だぜ…
この俺に勝てるもんか」
「試してみるか?ご存知の通り
俺だって元特殊部隊隊長だ」

二人が同時に拳を突き出す
両者顔面に当たった瞬間に
今度は脚をあげる
脚と脚がぶつかり、鈍い音がする

「とっととくたばりやがれ!」

どちらもパンチとキックを連打するが
決定打にはならない
やがてお互いの拳を避けようとした瞬間
クロスした腕がぶつかり、バランスを崩す

「ふざけやがってぇ!」

側に立っていた電気スタンドを持ち上げて振り下ろす
当然腕よりもリーチが長い攻撃に相手は避けきれず
ガァンッと顔面に直撃、ベッドに倒れこむ

「顔を見せろこのドグサレがァーーーッ!」

相手の上に乗って動けない状態にし、
さらに銃を突きつけてから
フードを剥ぎ取る

「てめえよく…も……………誰だお前は!?」

フードの下の顔はアレンではなく
見知らぬ男だった

「待ってくれ!待った!降参する!殺さないでくれ!
金で雇われたんだ!あんたを殺せばもっと貰えたんだ!」

「誰にだ!?アレン・カーターか!」

写真を顔の前に突きつける

「そうだ!そいつだ!2日ほど前に
報酬の金としばらくこの部屋で宿泊させてやるから
あんたを殺せと…」
「今はどこにいる…?」
「知らない!それ以来会ってないんだ!」
「クソッ!」

部屋の中を見渡す
が、ヒントになりそうなものはなかった

「わかった、もういい……」

銃をしまい、男から降りる

「ありがとう…ありがとう…」

男はだらしなく泣きながら
言い続ける

ちょうどその時、
ピロロロロロロ…と部屋の電話が鳴り響いた

男を監視しながら電話を取る

「…もしもし?」
「やあ…お久しぶりだね…蓮司君」
「貴様…!」

声の主は、アレン・カーターであった

「どうやら私が雇った男は倒してしまったようだね…
まあいい、元々期待してはいなかった」
「てめえ…今どこにいる?」
「安心しろ、それを教えるために電話したんだ
私が蘇ったのは…復讐のためだからね
既にあの時の副隊長を殺し…後は君だけだ」
「てめえはそのために…そのためだけに…「あいつ」の事を…!」
「……ああ、「彼女」のことか?
悪いねぇ、君はただ殺すだけじゃ足りないと思ったからね…
彼女がいつ死ぬかもわからないそのスリルはどうだい?」
「貴様ァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

怒りで受話器を握りつぶしそうになる

「言え!お前は今どこにいる!
今すぐぶっ殺してやる!」
「フフ…、そう怒るな
私は沢芽市郊外のグラーフ教会で待っているさ…」

そう言い残し、電話が切れる

「……俺が思う確かなことは…………アレン
次に貴様のツラを見たとき………プッツンするということだけだ…」