エセ秀才の生残りを目指した悪足掻き


 

憑依?転生?する人物は指定できない

 
前書き
はじめての作品のため、読みづらい点があると思いますがよろしくお願いします。 

 
第1話 憑依?転生?する人物は指定できない

 宇宙暦796年5月15日自由惑星同盟首都星ハイネセンのとある将官用宿舎で、一人の青年が歓喜と絶望を味わっていた。
 この日はハイネセン、いや自由惑星同盟の市民の大半がお祭り騒ぎに浮かれていた。なぜなら、「エルファシルの英雄」「アスターテの英雄」ヤン・ウェンリー少将がたった半個艦隊でしかも無傷でイゼルローン要塞を攻略したのだ。ソリヴィジョンではどのチャンネルでも若き英雄の比類なき功績を興奮して流し続けていた。

 いやね?最初は訳が分らなかったんですよ。朝起きたら、見知らぬ部屋で壁に埋め込まれたモニターからニュース映像として「ヤン・ウェンリー特集」なるものが流れているのだから。おもわず「知らない天j・・」と言いかけましたよ。
 最初は昨日までの3連休で銀河英雄伝説のDVDを一気見した後力尽きて寝落ちしたから夢でも見ているかな?と思ってたけど一向に醒める気配がない。その間にもモニターからはヤン少将のこれまでの功績が声高に流れ続けている。・・・もしや、ネットによくある転生ものあるいは憑依ものか?だとしたら、原作知識でヒャッホーできるか?・・・うん!できるに違いない!そのためにも一刻も早くヤン・ウェンリー(原作主人公)にコンタクトを取らなければ!
・・・・・・ええ、そんな風に考えていたときもありました。鏡で自分の顔を見るまでは。


なんで?なんで?よりにもよって、アンドリュー・フォークになっているだよぉぉぉ・・・・

 あれだよ、アンドリュー・フォークってさ、銀河英雄伝説の中でも1・2を争う嫌われキャラ(中の人にすら嫌われたキャラだよ!)で完全に噛ませ犬ポジションの人物だぜ。ヤンに一方的に敵愾心を燃やすくせに、出した作戦は楽観主義を通り越したアホ作戦で、自分のしでかしたことの尻拭いもできてないのに自分だけの正義感(ヒロイズム)に酔ってヤンの暗殺を目論んで、地球教に利用されポイ捨てされた救いようのない人間だよ。

・・・お、終った。終っちまったよ。俺こと安藤竜司(38)の銀河英雄伝説ライフはスタートと同時にそう思ったよ。

 

 

さあ、原作ブレイクだ!(ほんとにできるのかな?)

 
前書き
お気に入り評価ありがとうございます。 

 
第2話 さあ、原作ブレイクだ!(ほんとにできるのかな?)

 宇宙暦796年8月12日 自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦会議室
「・・・・・この遠征の戦略上の目的が奈辺にあるのかをうかがいたいと思う」ウランフ提督の発言を受けて、シトレ、ロボス両元帥が俺ことアンドリュー・フォーク(安藤竜司)に視線を向けた(お前が答えろ)。

(この会議だ、この会議から原作ブレイクをするんだ。出なければ死亡フラグまっしぐらだ。)
「大軍をもって帝国領土の奥深く進攻する。それだけで帝国人どもの心胆を寒かしめることができましょう」

「では、戦わずして退くわけか」

「それは高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」

「要するに、行き当たりばったりとういうことではないかな」ビュコック提督のチャチャだ。

(そのせりふをまっていました)
「その通りです。今次作戦においての明確な戦略的・戦術的目的は策定されておりません。必然行き当たりばったりになります」
ザワッ

「帝国領内に進攻する時機を、現時点に定めた理由をお聞きしたい」
(まさか選挙のためと言うとは思わないが(ヤン・ウェンリーの心の声))

「端的に申しますと、ヤン提督。貴方のせいです」
ザワワッ

「・・・どういうことかな?わたしのせいとは」

「ヤン提督、提督は何のためにイゼルローン要塞を攻略されましたか。攻略後どのような政治的、軍事的状況になると思われましたか」

「ッ、・・・同盟政府の外交手腕しだいだが、帝国との和平条約、少なくとも幾年かの停戦条約結べるだろうと思っていた」

「ではなぜ!そのことを主張されなかったのです!」

「え?」

「イゼルローン要塞を攻略した時点で、和平あるいは停戦を主張するべきだった。少なくとも前線指揮官の希望としてマスメディアに伝えることはできたはずです。あの時点でヤン提督以外の人物で和平あるいは停戦を訴えて説得力のある人物はいませんでした」

「それは違う。シトレ元帥だっ
「シトレ元帥では無理です!シトレ元帥がいかに公正明大であっても、ロボス元帥の昇進を阻むための政治工作と取られてしまいます。主戦派の人物からはそもそも出てきません。『エルファシルの英雄』であるヤン提督が言って、初めて説得力を持つ主張なんです」
「しかし、ヤン提督。提督はイゼルローン攻略から今日に至るまで一度も、そうただの一度も『和平』、『停戦』のセリフを公にすることがなかった。一度でも口にされていれば、世論を形成し同盟市民の熱狂的出兵論に水を注すことができたし、今次遠征作戦が発動されることもなかった」
「すべては貴方の怠慢によるものです。提督の怠慢によって3000万もの将兵が死地に赴くことになったのです」

ビュコック提督が机をたたいて詰問する。
「フォーク准将、貴官今言った「死地に赴く」とはどういうことだ」

「今次遠征作戦は必ず失敗するからです」
「なっ
「戦には、古来より3つのものが必要とされています。ひとつ天の時、ふたつ地の利、みっつ人の和、しかし現在の同盟軍にはこの3つ全てがありません」
「にも拘らず、今次遠征計画が決定された理由、それはこちらをお聞きください」
そういって俺はICレコーダーをポケットから取り出し再生を始めた。

---------------------

「・・・・コンピューターに計測させたところ、ここ100日以内に帝国に対して画期的な軍事上の勝利を収めれば、支持率は最低でも15パーセント上昇することがほぼ確実なのだ」
「どれほど犠牲が多くとも、たとえ全市民が犠牲になろうともなすべきことがあります」

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「ふざけるな!我々は議員の人気取りのために出兵せねばならんというのか!」
「市民が死んででもしなければならないのが政権の維持なのか!」

等々、会議室には怒号が渦巻いています。
(まぁ、最高評議会の会議の一部を聞いてもらうための編集の際に発言の順番が入れ違ったことには他意はありませんよ。ええないと言ったら無いんです。)

ある程度怒号が治まったところを見計らって発言する。
「お聞き頂いたとおり、現政権は世論の後押しを期待して今次遠征計画を決定しました。ヤン提督、提督が「和平あるいは停戦を」と言っていたらこの世論の後押し無かったんです」

(おぉ!ヤンが落ち込んでいる。そうそう、責任を感じて死ぬまで同盟軍の面倒を見てくださいね!辞めるなんて許されませんよ! 俺の死亡フラグクラッシュのために!)





 

 

独段場(いいえ毒段場です)

 
前書き
かなりのご都合主義で進んでいきますのでご了承ください。 

 
第3話 独段場(いいえ毒段場です)

「先ほど述べました3つの理由について説明いたします。
 まず第1の天の時についてですが、純軍事的に先のイゼルローン要塞攻略から3ヶ月が過ぎており、帝国側が既に迎撃するための準備期間を与えていることから、進攻する機会を失ったといっていいでしょう。
 第2の地の利についてですが、帝国領土内の情報についてはイゼルローン要塞の管制コンピューターから各星系の航路は分りましたが、軍事的、特に艦隊戦においての情報についてはほとんど分っていません。
 第3の人の和についてですが、これが見事にありません!特に宇宙艦隊総司令部作戦参謀は自分達ができなかったイゼルローン攻略を、馬鹿にしていた作戦で成功させたヤン提督に対して敵対心丸出しでそれこそ帝国軍よりも敵視しています。
(おかげでヤンと会う事どころかコンタクトを取ることすらできなかったんだからな(涙))
 そして何より、帝国軍の指揮官はあのローエングラム伯です。彼はいわば軍事の天才です。諜報部に調べて頂きましたが、5年前に少尉任官してから1度を除きその昇進を全て戦場の武勲によってしています。しかも彼の所属する部隊は常に勝っています。そして分析班からの報告では「勝つためには例え味方に損害が出ても手段を選ばない」とのことです。そして「彼が迎撃における総指揮を取るならば焦土作戦を行うことも有りうる」と」

「バカな!民間人を犠牲にするだと!」
「ありえん!」

「なぜです?なぜありえないと言い切れるのですかボロディン提督」

「民間人を守るのが軍人の義務だろうが!そんなこともわからんのか!」

「それは同盟軍の理屈です」

「なにを
「帝国軍は!帝国軍は民間人を守りません!極論すれば帝国軍は皇帝だけを守るための軍隊です。民間人はその対象ではありません。だから、民間人を人間の盾とする焦土作戦についても抵抗が無いのです。そして純軍事的には焦土作戦は有効な作戦です」
「一方、我々同盟軍はその政治的スローガンから、それがどんなに卑劣な罠であろうとも困窮した民間人に物資を提供しなければなりません。その結果予測される援助物資は穀物だけでも1000万トン以上及びその輸送船が別途必要になります。」
「後方主任参謀キャゼルヌ少将閣下にお聞きしますが、これらの補給計画は可能でしょうか?」

「・・・不可能ではないが、かなり困難なものになる」

「進攻星域が増えればさらに要求が拡大しますが?」

「ムリだ!だいたい最初の要求ですらイゼルローンの食糧生産・貯蔵能力をはるかに超えているんだぞ!補給計画が確実に破綻する!」

「そうです!補給計画の破綻は敗戦に直結します。つまり、今次遠征計画は焦土作戦を取られたら、初期の段階で撤退しなければ、"大"敗北必至のアホ作戦です」

シトレ元帥が溜息をつきながら俺を睨み付けて聞いてきた
「・・・どういうことだねフォーク准将?私は君がこの作戦を私的なルート通じて最高評議会議長に持ち込んだと聞くが」

「そのとおりです。シトレ元帥、小官は二つの目的のために今次作戦計画を最高評議会議長に持ち込みました」

「二つの目的?」

「はい。ひとつは現政権が軍事についてどれだけ真摯に対応しているのかあるいは玩具にしているのかを計るため。ふたつめは現政権が軍事的問題点についてどれだけ理解しているのかを計るため」
「ひとつめの答えは先程の録音にあった通り。ふたつめの答えは叩き台としての素案を問題点の洗い出しもせずにそのまま決定案にしてしまったこと。以上のことにより現政権は信用に値しないと小官は考えます」

「・・・まさか貴官はクーデターを考えているのか!」

「いいえ。ビュコック提督、120パーセント失敗するクーデターなんて参加したくもありません」

「はぁ?」

「クーデターを成功させるためには市民の賛同が必要です。首謀者(リーダー)への信用・信頼と言い換えても良いでしょう。しかし現在の同盟軍に対する市民の信頼は地に落ちています」
「なぜなら、『エルファシルの奇跡』『ヴァンフリート4=2後方基地』『グランドカナル号事件』等、ボロディン提督がおっしゃた「民間人を守る」や「友軍の後方基地支援」すら疎かにしているのにも拘らず、軍上層部は誰一人処罰を受けていない。それどころか各事案毎に英雄を作り上げ宣伝し市民の目をそちらに逸らし続けてきた」
「後方部隊でも国防委員長付きの将官が、『軍服を汚した』と言って民間時の少女に対して脅迫し、周りで見ていた他の将官は誰一人止めもしない始末」
「この状況では例え同盟軍首脳部の誰かが『自由惑星同盟のために立ち上がった』と主張したところで市民は誰も信じてくれませんし、賛同もしないでしょう。それどころか反発されて半年と持たずに失敗するのが落ちです」

グリーンヒル大将が渋い声で問いかけてきた
「では、貴官はどうするべきだと言うのだね」

「『今次作戦の明確な戦略的・戦術的目的がない』と言うことは、どのタイミングで撤退しても良いと解釈し大規模な「威力偵察」と位置づけて焦土作戦を確認したところで撤退。現政権には退場して頂き、新政権には軍事的問題点の認識を新しい同盟軍上層部と共有してもらうために積極的にアプローチすべきと考えます」
「そしてヤン提督には同盟軍の“顔”になっていただきます」

「え?ちょっ、ちょっと待って
「ヤン提督!提督は『エルファシルの英雄』なのです。その真価を提督は理解されていない」

「真価?」

「そう、『軍上層部の意向に逆らってでも民間人を救った軍人』という価値です。これは他の諸提督にはないものです」
「地に落ちた同盟軍の信用を回復するには上層部を刷新し『エルファシルの英雄』であるヤン提督を前面に押し出していくしかありません」

ヤンは口をパクパクさせているが言葉になっていなかった。

****************

結局、作戦案としては『焦土作戦を警戒しつつ進攻し、焦土作戦を確認できしだい撤退する。ただし威力偵察として進攻ルート上の各星系の軍事的・地勢的情報の収集を密にする』となった。


(よっしゃー!!最大の死亡フラグを回避したぞーーー!)
(この2ヵ月半の苦労が実ったーーー!)

 

 

第4話 ネタばらし?・・・

第4話 ネタばらし?・・・

宇宙暦796年8月12日 自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部作戦参謀部 
 皆様、いかがお過ごしでしょう?私ことアンドリュー・フォークはただいま、胃に穴が開いております。病院のベットの枕は私の友達です。
・・・などと現実逃避をしても宇宙艦隊総司令部作戦参謀部にて針のムシロであることには変わりなく、しかも改善させるきっかけすらつかめない状態です。
 まぁ自業自得であることは自覚していますよ。
(だってねえ、『島○作』の世界風に言えば、社長(シトレ元帥)と副社長(ロボス元帥)の派閥争いの最中の社運をかけたプロジェクト会議で、
「副社長は行うべきこと行わなかった(民間人の護衛や後方基地守備の放棄)、一方社長は部下の管理ができていない(将兵のモラルハザートがひどい)」
「貴方達(社長、副社長)では市民の信用回復できないから退任しろ」
「新しい首脳陣としてヤン・ウェンリー(社長派の平取締役)を中心にしろ」
なんてことを、副社長(ロボス)の子飼いの部下である(フォーク)がぶち上げたようなものだから)
シトレから見れば、競争相手派閥の若造が自身の軍部経営の不備を論って退任要求してきた。
ロボスから見れば、子飼いの部下が恩知らずにも作戦行動のミスや指示ミスを論って退任要求してきた。
はっきり言って、敵だけを作って(二大巨頭及びその派閥)味方をなくしたとしか言いようのない事態。
 そして宇宙艦隊総司令部作戦参謀部はロボス派の総本部と言っても過言でなく、そのおかげで昨日まで俺もかなり自由にやらせてもらっていた。
にもかかわらず、『自派のボスを更迭させてライバル派閥の若造(ヤン)をトップに持って来い』なんて言った俺は他の参謀連中から見たら、とんでもない裏切り者だ。当然きつく当たることになる。

(だって仕方ないじゃないか。俺の頭じゃあれ以上のことはできなかったんだから)
俺は自分の銀河英雄伝説ライフが始まってからを思い起こしていた。


****************

宇宙暦796年5月15日自由惑星同盟首都星ハイネセン
 鏡を見て絶望した俺は1時間ほどのたうち回っていたが、ふと気がついた。
『転生にしろ憑依にしろ、こんな非現実的なことが起こるなら、ネットで見た二次制作の作品の人物がいるのではないか?もしそうなら、その人物を探し出して丸投げしてしまおう。』と
幸い今日明日は非番日だ。個人端末でムリなら作戦参謀部の端末を利用しよう(職場端末の個人利用は倫理的には良くないがこちらと命がかかっているのだ!)
(平凡さま、嘆きの提督さん、ココアさま、痛艦公爵さま、皇○子殿下、皇女○下、等々誰かいないか!)
『結論、誰もいませんでした!残念!!』ってシャレにならんわ!
結局2日間かかって判った事は、原作の世界に俺と言う異分子がアンドリュー・フォークの中に入ったと言うことだった。

宇宙暦796年5月25日自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部作戦参謀部
 内心の落胆を隠して、アンドリュー・フォークとして仕事(軍務と言うべきかな)をしていて気づいたことがある。
『アンドリュー・フォークってメッチャ優秀!』
いや驚いたのなんのって、フォークって原作やアニメでは小物感丸出しの人物として描かれていたものだから侮っていたんだけど士官学校主席卒業は伊達じゃない。
軍官僚としての仕事をテキパキとしか表現の仕様のないくらい進めていけるのだ。
 こんな優秀な人物がまるで小物のように思えてしまう原作主人公(ヤン・ラインハルト)や主要人物はチートだと改めて思ったものである。
そんなチートキャラを相手に原作知識があるだけの俺が勝てるわけがない。
「やはり、チートであるラインハルトやその部下たちには、同じくチートであるヤンやビュコック・ウランフ達にお願いするしかない!」
そんな決意の元、原作ブレイクのために俺はさまざまな部署に連絡を入れていった。
(もちろん一番連絡をしたいヤン・ウェンリーには他の参謀連中が敵対視しているので作戦参謀部からはムリ、個人的伝手も無いためできなかったが(泣)・・・)

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宇宙暦796年8月11日自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部司令長官室
 ロボス宇宙艦隊司令長官は上機嫌だった。
なにせ今度の遠征作戦が成功すれば、ライバルだったシトレ元帥を追い落とし、念願だった統合作戦本部長になれるのだから。
そんな彼の元に目をかけているフォーク准将が「どうしても閣下に聞いて頂きたいことがござします。お時間を頂けないでしょうか?」とやけに追い詰められた表情で言ってきたのでなてなとは思いつつ快諾した。

(これからが本当の正念場だ、この(ロボス)を説得できなければ何も始まらない)
「元帥、お時間をいただきありがとうございます。早速ですが、今度の遠征作戦は大失敗に終わる可能性しかありません!」

ロボスはキョトンとした顔だったがみるみるうちに真っ赤になり鬼のような形相で怒鳴った。
「ふざけるな!馬鹿にしておるのか貴官は!大体この作戦はフォーク准将、貴官の発案だろうが!」

「その通りです。小官はあえて失敗する案を作りました。その理由をお聞きいただいた上で今一度ご判断ください。」

幾分、冷静さを取り戻したロボスに説明をしていった。
1、戦いのおいての三大要素が無いこと
2、焦土作戦を取られる可能性が大
3、同盟軍全体としてのモラルハザード及び同盟市民からの信用失墜
4、帝国辺境星域の特殊事情
5、自由惑星同盟の経済事情
6、自由惑星同盟と帝国における人口減少の推移とその危険性
特に4~6については、ロボスは初耳だったらしく何度もうなっていた。
識字率20パーセント以下(中等教育を受けていればエリート扱い)
基本手作業農法で大多数が蓄えが無い
同盟政府が発行した国債約十兆ディナール。をフェザーンに握られている
同盟主要機関企業の40パーセントがフェーザーン資本に乗っ取られている
人口が最盛期に比べて約十分の一になっており、連年の戦火によって毎年二百万人を越える戦死者が発生しており、軍を支える基盤としての社会が崩壊しつつあること
(まぁ、こんなことを聞かされたら将来の展望なんてのは吹っ飛ぶだろうよ)

俺の説明を聞き終えたロボスは一気に10歳以上も老け込んだように見えたが間髪をいれずに畳み掛けた
「閣下が統合作戦本部長になるために今次作戦を行うのでしたら、それは貴族の見得(プライド)を満足させるためだけに出兵してきた帝国となんら変わりのないものとなりましょう」
「同盟軍と帝国軍はこれまでの攻守を逆転した状態になるのです。『毎年のように進攻をして損害だけを出し得るものも無く撤退する』そんなことを同盟市民や政府が許すとは思えません」
「民力休養には20年、いえ少なくとも10年は必要となりましょう」
『今、今こそが閣下が後世『自由惑星同盟の終焉の引き金を引いた』と評価されるかどうかの分水嶺なのです」

3時間に及ぶ俺の熱弁?を浴び続けた結果、ロボス元帥陥落(笑)!

****************

「フォーク准将、司令長官がお呼びだ」
作戦主任参謀のコーネフ中将が舌打ちしながら蔑むように俺に伝えてきた

(まぁ、「顔も見たくないわ」って顔に出していわれてもなぁ)
「はっ!ありがとうございます」

宇宙暦796年8月12日自由惑星同盟首都星ハイネセン 宇宙艦隊総司令部司令長官室
 憑き物が落ちたような表情のロボスがしみじみとしたように言ってきた
「まさに貴官の言う通りの結果になったな。それで、確認し損ねたのだが後任人事について何か腹案があるのだろう?」

「はい。統合作戦本部長には第一艦隊司令官クルブスリー大将を、宇宙艦隊司令長官にはウランフ中将を、総参謀長にボロディン中将を、イゼルローン要塞司令官と駐留艦隊司令官をヤン中将に兼任させ、超光速通信(FTL)にて緊密に連絡を取り合って貰い、軍本部と最前線の心理的距離を縮めることに腐心していただきます」

ロボスはいかぶしげな顔をしながら尋ねてきた
「ウランフ中将を宇宙艦隊司令長官に?ビュコック提督ではいけない理由があるのかね?」

「はい。ビュコック提督はその戦歴、兵士からの人望も厚く申し分無いように思えますが、士官学校を出ていません。その点が他の諸提督に心理的ブレーキをかけてしまいます。その最たる例が「第三次ティアマト会戦においてホーランド中将の『先覚者的戦術』なる突出による壊滅的被害」です」
「ビュコック提督は一艦隊司令官としては比類なき人物ですが、将の将たる司令長官としては何かが足りない。その何かを持っているのは現状ロボス元帥とシトレ元帥です」
「しかし、今後20年のためにお二人には退場して頂かなくてはなりません。必然現艦隊司令官の内から後任を選ばざる得ないとなれば、ウランフ提督かボロディン提督が適任かと」

「・・・よかろう。後任人事については私からシトレ本部長に伝えよう」

「それと、小官を記録統計室に転任させていただきたいのです。『今日の作戦会議においてヤン提督に作戦の不備を指摘され、一言も反論できずに結局ヤン提督の主張する『無理をしない計画』に変更されたという噂を流布させた上で」

ロボスはあきれたように言ってきた
「それも『ヤン提督を同盟軍の“顔”にする』ためかね?」

「はい。どの道、先程の作戦会議のおける小官したことは組織人として許されないことですし、ヤン提督に注目させる良い機会です」
(本音はこれ以上チートキャラに関わりたくないです(切実))

「分った。ただし、貴官の転任は今次作戦後だ。せめて発案者として作戦終了まで付き合いたまえ。ご苦労だった」

「はっ!ありがとうございます」



(やった!やった!やったぁぁぁ!死亡フラグクラッシュ&生存フラグ構築だぁ!)
(ヨブさんにも捕虜交換の入れ知恵をしてあるからクーデターも防げるはず!)



その時、俺は死亡フラグが消えたと思って浮かれまくっていた。
まさかロボスが『楽隠居なんか絶っ対許すものか!』と思っていたとも知らず。







 
 

 
後書き
感想ありがとうございます。
励みになります。 

 

第5話 壮大なるピンポンダッシュ(笑)

第5話 壮大なるピンポンダッシュ(笑)

宇宙暦796年9月11日 惑星モールゲン
 帝国軍はもとより辺境伯、徴税官果ては警察官に至るまで貴族・官吏の人間全てが逃げ出しており、残されていたのは農民や鉱夫たち民間人だけであった。
彼らは一様に同盟軍の宣撫士官にこう詰め寄った
「政治的自由とやらよりも今日の晩飯を恵んでくれ、軍が赤ん坊のミルクまで取り上げて言っちまった。医薬品もひとつ残らずだ」

宣撫士官たちは驚愕しながらもこたえた
「も、もちろんだとも。すぐに用意させよう」
(まさか、本当に軍が逃げ出していたのか)
(総司令部の危惧していた焦土作戦をしかけてきたのか)
宣撫士官たちは笑顔を引きつらせながら、残された民間人に食料などと供出していった。

宇宙暦796年9月17日 イゼルローン要塞 遠征軍総司令部
 遠征艦隊指令官が全員スクーリーンに写っている。
全遠征艦隊と総司令部で今後の作戦方針を決定し速やかに実行するためだ。
グリーンヒル総参謀長が眉間にしわを寄せて報告した
「占領したモールゲン、ダンク、クラインゲルト、ハーフェン、そのいずれにも帝国軍・官吏は一人もいませんでした。またいずれの惑星も食料・医薬品が残らず帝国軍によって接収されており、現状我が軍から供出しております。特に最後に占領したハーフェンでは、『後2日遅れていたら大規模の暴動が発生し収拾がつかない恐れがあった』とのことです」
「フォーク准将が恐れていた通り、帝国軍は焦土作戦を行うつもりのようです」

(まぁ、艦隊速度を通常の六割にまで落として偵察と周辺宙域の調査に当てたから、進行速度が遅くなったのが原因だろうけどね)

「まさかな・・・」
「ほんとうにやるとは・・・」
「卑怯な!」

事前にその可能性が指摘されていたとはいえ本当に焦土作戦を取るとは思えなかった同盟軍の将官から呆れと憤懣の声が続いた。

(よし!ここでラインハルトへの反抗フラグを増やしておこう)
「広域通信での声明を進言したします」

「広域通信?」ホーウッド提督がいかぶしげな顔をした

「そうです。広域通信で帝国、同盟双方に聞かせるのです
1、『今日のパンすら取り上げられた住民に対し我々同盟軍は人道的見地から食料の供給を行った。住民は自ら同盟軍を頼ったわけではなく、止むに止まれずおこなったことである』
2、『しかし、これらの供給は一時的なものであり、同盟軍に彼らを助けるのに十全な食料はない』
3、『この先、住民の要求を答え続ければ、早晩軍の補給計画が破綻する。その場合、まことに遺憾ながら住民を見殺しにせざる得ない状況に追い込まれる可能性がある』と」

「バ、バカな・・」アップルトン提督の顔が蒼白になった
「民間人を見殺しなどと、同盟軍の大儀を否定することになる」ルフェーブル提督がうろたえた様に拒否反応を示した

「問題ありません。彼ら現地住民は一時的に保護しただけであくまで帝国民です。我々同盟軍が守らねばならない同盟市民ではありません。現地住民を助ける義務を負うのは帝国政府です。つまり彼らを食わせなければならないのは帝国政府です」
「そして同盟市民に帝国辺境の実情を、『同盟軍を解放軍として歓迎しているわけではない。辺境住民は食料にこそ価値を見出している』ことを伝えることにより撤退する理由のひとつにできます」
「同時に帝国軍いえ、ローエングラム伯に圧力をかけることができます」

「どういうことだ。ローエングラム伯に圧力をかけるとは?」ボロディン提督はラインハルトの名前が出てきたことに納得がいかないようだった

「ローエングラム伯は、先の会議で報告しました通り、5年で元帥に昇り詰めた戦場の天才です。しかも勝つための手段を選ばない」
「ですがそんな彼にも弱点があります。これも諜報部の功績ですが、帝国の宮廷・閣僚に彼の勢力が無いことがわかっています。」
「つまり、彼は勝っている間は黙認されていますが、一度失敗すればその地位、権力を引きずり落とそうとするものしかいなく、窮地に至った時救うどころか手助けするものもいません」
「この状況で、彼の取った作戦が『同盟軍ではなく帝国民を傷つけるものでしかなかった』となれば、帝国の宮廷・閣僚から彼を攻撃する絶好の機会になります。失脚を避けるために彼は早晩出撃を余儀なくされます」
「そして、我々同盟軍は彼が出陣した頃には当初の予定である威力偵察を終えて撤退いたしたます」

                       ・
                       ・
結局、広域通信で俺の提案した1と2はそのままに、3については使わず代わりに
『例え戦争をしていたとしても最低限守る信義というものがある。しかるに自国民を飢死にさせる作戦を実行するような人物には信じるに値するだろうか』をある意味さらにきついセリフになったものを繰り返し流し続けた。
(まぁ、下手に「食料ないよ」と言って暴動でも起こされたらシャレにならんし)
 そして同盟本国には
『二百万トン超の穀物、食用植物の種子、人造蛋白製造プラント、水耕プラント、それを運ぶ輸送船が必要になり、今後進攻星域が増えればさらに増加することが確実である』
と言う作戦の破綻をにおわせた要求を送った。

宇宙暦796年9月23日 イゼルローン要塞 遠征軍総司令部
 何故だか知らないけれど、同盟首都惑星のハイネセンで遠征決定の会議の内容が流出してしまい(しかもなぜか俺編集Ver(笑)が)、野党が議題にあげて議会が紛糾、世論も政権非難が激しくなっている
(ええ、理由なんか見当もつきません(キリッ)。録音データを何軒かのネットカフェの端末にコピーして消し忘れたとか、ICレコーダーのデータを消去せずに『面白データあります』って匿名オークションで落札されたとかしましたが(笑))
加えて遠征軍からの大規模な要求を知った、当初出兵に熱狂的な賛同していた民衆・マスコミが手のひらを返して政府を非難しだし始めている。



宇宙暦796年10月12日 イゼルローン要塞 遠征軍総司令部
 首都惑星ハイネセンからFTLで新評議会議長ヨブ・トリューニヒトが遠征軍撤退の命令を伝えてきた。
それは、第13艦隊が帝国軍発見及び即時撤退を報告してきた30分後であった。



 

 

第6話 英雄誕生フラグクラッシュ

 
前書き
久しぶりの更新です。期間が開いてすみません。 

 
第6話 英雄誕生フラグクラッシュ

宇宙暦797年2月1日 自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部
モニターに広域通信でのライブ映像のヨブ・トリューニヒト最高評議会議長が映し出されていた。
この映像は、自由惑星同盟、イゼルローン要塞はもとより帝国にも流されている。
「まずは、勇戦むなしく敵中にて捕虜になった同盟兵士諸君に対して謝罪させて頂きたい」
「諸君らが降伏を甘受せざる得なくなった責任は軍上層部にあり延いては任命責任を負う最高評議会にある」
「諸君らにその責は無い!責任は全て最高評議会にある。最高評議会議長として諸君に謝罪する」
そう発言した次の瞬間、ヨブ・トリューニヒトは演説台の横で土下座をした。土下座したまま続けた
「同盟兵士諸君、誠に申し訳ない!」
5秒・・・10秒・・・20秒・・・トリューニヒトは無言のまま1分間頭を下げ続けた
土下座を解き演説台に戻りスピーチを再開した
「そして感謝する」
「同盟兵士諸君!善くぞ、善くぞ生きて帰ってきてくれた。ありがとう!本当にありがとう!」
今度は立ったまま最敬礼を行った

「帰還する帝国兵士諸君、諸君らが“無事家族と再開できる”ことを願うものである」
「最後に、いかなる思惑があろうとも“人道”をもって、彼らの帰還に協力してくれた『帝国軍』の対応に対しても感謝の意を表する。
自由惑星同盟最高評議会議長ヨブ・トリューニヒト」


軍令によって、同盟軍全体にこのライブ映像を見るよう通達があったため俺もロビーで見ていたが、周りが騒がしい
(まぁ、『美麗字句の名人』『主戦派の代弁者』と言われて、いまや最高権力者になったトリューニヒトが謝るとは誰も思ってなかっただろうし)
(土下座とか最敬礼とかやりすぎだろ!)
(でもこれで、原作にあった『ラインハルトを信望する精兵200万』をいくらかは崩せるだろう)
(遠征作戦前にトリューニヒトに入れ知恵した甲斐があった)


実際に2月5日にラインハルトのメッセージを聞いた帝国兵士は
「なんだ、寵姫の弟は言うことも叛徒の長の二番煎じか」
「しかも、悪いのは自分じゃなくって前任者(ミュッケンベルガー)だって言いたいんだろう」
「そして、俺たちの関心を金で買おうってか」
などという原作とは違った反応があちこちでおこり、
特にモールゲン、ダンク、クラインゲルト、ハーフェンの出身者がいる部隊では遠征作戦時の非難声明を聞いていたせいか
「家族を餓死に追いやっておいていまさら何を言うか!」
と激しい反発がおこっていた




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宇宙暦796年8月1日自由惑星同盟首都星ハイネセン 国防委員長執務室
 ヨブ・トリューニヒトは俺から提出された『帝国遠征侵攻作戦』なる資料を読み終えるとデスクに放り投げて言った
「君は本気でこの作戦案に賛成しろと言うのかね」

俺はいかにも心外そうな表情を作って尋ねる
「国防委員長はこの案に不満なのですか」

トリューニヒトは呆れたように言った
「当然だろう、これは受売りだが『勝つため戦略とは敵の戦力よりも多くの戦力を用意すること』だろう?」
「帝国はその正規艦隊だけで十八個艦隊、貴族の私兵艦隊がほぼ同数程度あると言う」
「それなのに攻略目的地もなければ、攻略星域の指定もない。そのくせ動員するのは八個艦隊3000万人だ」
「勝てる見込みの無い出兵に賛成できる道理がない」

俺は頭を下げて礼を言った
「ありがとうございます。国防委員長が正しい軍事的見地をお持ちで安心しました」

持論を反対されて礼を言われるとは思っていなかったらしく、トリューニヒトは鼻白んだ
「君はいったい何をしたいのかね」

「この『帝国遠征侵攻作戦』を使って政権交代し、軍部・世論の暴走をとめます」

トリューニヒトは目を細めて聞いてきた
「君には詳しく聞く必要があるようだ」


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俺は、原作知識から予想できること、ブレイクしていくことを語った
予測されることとして
1、現政権は『支持率上昇』と言う餌があれば軍事的根拠の無い『帝国遠征侵攻作戦』を採用する
2、『帝国遠征侵攻作戦』に対してラインハルトが焦土作戦で対応してくる可能性が高い
3、その結果同盟軍は供給したはずの食料を逆強奪し、辺境住民の恨みを買う
4、士気の低下、部隊の分散による各個撃破により壊滅的被害が予想される
5、『帝国遠征侵攻作戦』失敗により現政権が総退陣を余儀なくされる
6、この作戦に成否にかかわらず、帝国には皇位後継者を決定していないため現皇帝の死後の内乱は必至であり皇帝の余命は長く無いことが予想される
7、内乱時に備えてラインハルトは門閥貴族との差別化をするため平民の人気取りのために『捕虜交換』を提案してくることが予想される
8、帝国内乱時に同盟軍の介入を防ぐために『捕虜交換』を利用した謀略(クーデーター)をおこなってくることが予想される
等を挙げていきその対策として
1、『帝国遠征侵攻作戦』を内実「大規模威力偵察作戦」にして早期に撤兵して兵力の損失を最低限に抑える
2、『捕虜交換』には合意し、捕虜に対して政府の責任を認め謝罪する
3、これまでの政権との違い(民力回復に努め選挙のための出兵をさせない)を明確に打ち出していく
等と説明していった
トリューニヒトは対策の2、3、に対して・消極、懐疑的だったが
「ローエングラム伯は前任者の非を打ち鳴らし、自分こそが平民兵士の味方だと主張するでしょう」
「しかし、閣下はお立場が違う。前任者の非を問えないのであれば、政府として謝罪することにより『自分は悪くない』と言うローエングラム伯をイメージダウンさせることができます」
「主戦論者には、『出兵したらまた『焦土作戦』を採られその結果、同盟の財政に打撃を与え、帝国にいる無辜の住民に再び飢餓の苦しみを与えることになる。それは同盟政府としても人道的観点からも好ましいものではない』
と主張してしまえば彼らはそれ以上強くいってこれないでしょう」
等々と熱弁(笑)をふるい説得していった
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(ちなみこの時に、トリューニヒトに「憂国騎士団は地球教教徒でサイオキシン使っているよ(意訳)」と教えたら顔面蒼白になっていた(笑))
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そうして、トリューニヒトの同意を取り付けた俺は国防委員長執務室を出た時に警備兵の目の前で憤懣やるかたない表現をつくり
「国防委員長は分からず屋だ!私のこの作戦があれば大勝利間違い無しなのに!」と叫ぶ小芝居を演じつつ
最高評議会議長の秘書に会いに行った
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宇宙暦797年2月19日 惑星フェザーン
 遠くイゼルローン要塞で『捕虜交換式』がおこなわれているころ、俺は新任主席駐在武官として帝国高等弁務官レムシャイト伯ともう一つの捕虜交換いや『客人の帰還式』を終えた
実際には捕虜になったが外聞を気にして公式には『病気療養していた』門閥貴族に連なる貴族士官3000余名に秘密裏に「帝国にお帰りいただく」のだ
これによって帝国の貴族にパイプを作っておき内乱時にラインハルトに対するハラスメント攻撃をしやすくするためだ
勿論レムシャイト伯にも
「ローエングラム伯のメッセージではミュッケンベルガー元帥が無能であるかのように聞こえます。先達に対する畏敬の念は無いのでしょうか」
「飢餓作戦を行うような軍人が本当に約束を守るとは信じられません」
等とあたかも同盟政府がラインハルトを忌避しているかのように吹き込んだが、彼にとってラインハルトは『寵姫の弟』でしかなかったようでたいした反応は無かった


俺がフェザーンの主席駐在武官になったわけはロボスの遺命(笑)である。曰く
「フォーク准将は私に引導を渡しヤン・ウェンリーを次代の顔としている。それはいい」
「しかし許せないことに彼自身は楽隠居を画策している。軍官僚としては優秀な彼を是非とも扱き使ってほしい」
とクブルスリー新統合作戦本部長に直接嘆願したそうだ(クブルスリー大将から聞かされました)
クブルスリー統合作戦本部長から笑顔で
「ロボス元帥だけでなく、トリューニヒト議長からも「扱き使ってほしい」といわれているからね」
と言うありがたくない宣告を受けた俺は、遠征作戦後に『無謀な作戦を作成、推進めた』責任により一階級降格、記録統計室に左遷された職場を約三ヶ月で離れることになった
(ちなみに、遠征軍各司令官は「無謀な作戦にも拘らず、辺境住民の慰撫に努め同盟軍の瓦解を未然に防いだ」として昇進している)


宇宙暦797年10月19日 惑星フェザーン
 原作で言う『救国軍事会議のクーデター』は小規模のうちに終わり、『リップシュタット戦役』は未だにその終わりを見せなかった
この原因はグリーンヒル大将のクーデター不参加とグリューネワルト伯爵夫人暗殺という原作ブレイクにある