光明の魔導師〜眩き妖精の物語〜


 

ちょっと長めのプロローグ







------------俺は、この生き方で正しかったんだろうか



刃が胸に突き刺さる。



------------俺は、結局何もできないままだったな




刃が喉笛を切り裂く。




------------嗚呼、畜生が。




倒れた所に、燃えた木材が降り注ぐ。




------------嗚呼、俺は死ぬんだな…



視界が暗転し、俺は静かに目を閉じた。





・・・・・・・・・・・・・・・・




「……ろ………きろ………」



うるせえ。俺は寝てんだよ、静かにしやがれ





「………きろ…………起………ろ………」



体を揺さぶるんじゃねえ。ああうるせえ。




「起きろと言っておろうがっっ!!!!!」




「ぬおおお!!うるせええええ!!誰だコラ!!!」



ってあれ?どこだここ?妙に真っ白だし。てか俺、さっき死んだだろ。ああそっか、あの世とか言うところか。地獄か天国か、じゃあ目の前のムキムキジジイは裁判官的な何かか。





「……俺、審判とかそーゆーのいいんで、天国でいいっすか?」



「一体お主の思考回路はどうなっておるんじゃ…」




目の前のムキムキジジイは頭を押さえてため息をつく。つかなんで上裸なんだよ。腰に巻いてんの上着だろ?多分。着ろよ。暑苦しいよ。



「で、あんたは一体誰だ?ついでにここはどこだ?俺は死んだはずだがどうなっている?」





「質問の多いやつじゃのう…まあそれも当然じゃろうて。仕方ない、まずワシは光皇神。この世界に"魔法"を作り出した者じゃ。そしてここはワシが地上の魔法を一括管理している空間、人間が天界と呼ぶところじゃ。」



ナニヲイッテイル?




「つまるところ、死にかけだった主の魂をいただいての、この空間へ持って来させて貰ったというわけじゃ。」




「オーケイ、信じられんが仮に、仮にだ。いいか?仮にだぞ。あんたがそのえーっと…光皇神とかいう魔法を作り出したヤツで、俺の魂をとっ捕まえて持ってきたとして、だ。」



そう。一番の疑問はそこなのだ。



「なんでそんなことを?」




「いい質問じゃな…」




すると目の前のジジイは険しい顔つきになり、腕を組んで説明を始める。いや、だから服……いいよいいよ、もういいよ。



「ワシのこの体はとうの昔に朽ち果てておる。今はほとんど残滓に近い。この体じゃと人間界に行くことはできんのじゃ。じゃがあくまでこれは予測じゃが、近々人間界で大きな動乱が起こる。不穏な空気も流れておるしの。」




そっから先はあんま説明を聞いていない。面倒くさいのである。黒魔法が〜とか、アカシャの書が〜とか出た辺りから考えるのを放棄した。が、そこでジジイはとんでもないワードを発しやがった。



「つまりそのゼレフがの、まだ生きておっての、」



「ちょっと待てジジイ、今ゼレフっつったか!?」




「そうじゃ。」




「ヤツは300年前近くの魔導師だ。生きてるわけがねえ。」




「いや、生きておるんじゃ。死に場所を求めての。」




ありえない…そう、ありえないのである。




「さて、ワシの話はこの辺にしよう。そろそろお主の話を聞かせてくれぬか?」



「俺の話だあ?」




「そうじゃ。覚えてる範囲でいいんじゃが。」





「なまえは……いかん、思い出せん。歳は確か17で死んだな。魔法は使わなかったというより使えなかった。孤児院の出だからロクに教わりもしなかったしな。村が変なやつらに襲われて、女の子を避難船に乗っけた少し後に、残りの住人探してる間に死んだかな。」




「ちなみにお主の死体は10箇所以上刺されて斬られて、最後は燃えた家屋の下敷きになっておったの。」




オーバーキルすぎんだろ。こえーよ。

あ、そういえば



「俺が助けて避難船乗っけた女の子は?無事か?」




「大丈夫じゃったよ。」



そうか……よかった………



「さて、先ほど説明した通り、ワシは人間界には行けん。そこでお主を呼び出したんじゃ。」



「そりゃまたなんで」




「手近に若くて魔法を使わない、純粋な魂がおったからじゃ」


「で、俺に何をさせたいんだ?いい加減話してくんねーか?」




「お主にはもう一度人間界に戻ってもらい、人間界の事を見守っていって欲しいのじゃ。」




「ほほう、話しが2、3段ぶっ飛んだが、つまり俺に生き返れと?」




「そうじゃ。イヤとは言わせんぞ。もうお主の体の構築はすでに始まっている。」



「さすが神、なんでもありだな」





「それもただの肉体ではない。ワシの残った肉体を全てお主の体の素材として使っておる。」




「あんたはどうなる?」




「なに、ワシはもう人間界には行けん。体をこのまま何もせずに朽ち果てさせるのも勿体無い。ワシは天界に居続ける。」




つまるところニートっすね、わかります。




「じゃが今回の件はあくまでもワシの都合。ワシが作り上げた魔法で危うくなった人間界の事を任せようと、輪廻の輪へと還元されるはずの魂をとっ捕まえてきてしまった。この老いぼれのワガママのために。」




すまなそうにうつむきながら、俺に語るジジイ……いや、神か。




「故に!」




急にでかい声出すな、こえーな!




「お主を信じ、お主にはワシの力そのものを与えよう!」





「ジジイのチカラ?」




「そうじゃ。この世界にある"魔法"、"呪法"や、それ以外のどれにも当てはまらん、正真正銘の神の力"界法"じゃ!人間では"神通力"と呼ぶ者もいるようじゃのう。」




「ほほう、そいつは太っ腹なこったな。だがあいにくと俺は魔法なんざ使ったこともねえし、ましてやそんな大仰なモン使いこなせるとは思わねえんだが」





「そのためにまずは一つ、ワシの肉体を素材として作ったお主の体がある。なに、粉々に吹き飛ばされない限りあの肉体は何度でも再生する。」





は?ゾンビかなんかかよ?





「それにワシが直接、お主にその力の使い方を指南しよう。この天界でな。」



こうして俺の、奇妙なやり直し人生が始まったのであった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






あれから、本当に色々な事があった。まずは体術を徹底的に叩き込まれた。血反吐吐くくらいに。ちくしょうなんで俺がって言いたかったがあのジジイ怖い。切れると蝶怖い。


武器の訓練もした。色々な武器を試してみたが、俺には少し長めのツインサーベルが一番しっくりきた。



その先はもう、魔法の練習だった。いや、界法か。本当に便利だな。ちなみにこれ、消費魔力がヤヴァイ。蝶ヤヴァイ。どれくらいヤヴァイかというと、小技一つが禁忌魔法級の消費魔力だったり。界法こえー。


だがこの問題は、現在人間界で生成中の俺の体ではクリアされるそうだ。というのも、ジジイの作り出した"太陽核"とやらを、魔力の精製機関の代わりに入れたらしい。通常の魔導師はこの精製機関に大気中のエーテルナノを無意識に取り込み、それを自分の魔力に変換して貯蔵しているらしいのだが俺は違う。体の中に常に魔力の太陽のような、莫大な魔力を恒久的に精製する機関"太陽核"が入っている。


そして最後に、俺はジジイにある事を頼んだ。



「おいジジイ、一つ頼みがある」




「なんじゃ」




「ジジイの持ってる魔導書、何冊か人間界に持ってっていいか?」





「それはならん。じゃが一応理由を聞こうか」




「俺のこの界法、多分目立ちすぎるんだよな。向こうだと。最初の方は恐らくそれでもいいが、目立ちすぎると面倒だしなにより動きづらい。そこで、ふつうの魔法を覚えて、いざって時の界法って感じにしてーんだ。」




「ふむ……なるほど………じゃが、書物を人間界へと持っていくことはならん。ルール違反じゃ。」





「ちぇー」





「じゃが持っていかなければいい。知識のみを頭にダウンロードしていくのは構わん。」




「てことは?」




「適当に2、3冊魔導書を持ってこい。ワシがお主の体の脳みそにダウンロードしてやろう。」





お、いいね。




「じゃあこれとこれで。」




そう言って取り出した書物。一つは「古代魔法:陣形速記」
現存するどの魔法よりも、どんなに優れた魔導師よりも正確に、素早く魔法陣を書く方法が記された本。


もう一つは
「禁忌魔法:魔法陣編」
人間界で何らかの理由で禁忌とされた魔法の、魔法陣が記された本である。



「またなんでこの本を?」





「禁忌魔法の書物を漁ってたんだがな、使えそうなのがこれしかなかった。つかなんで禁忌魔法の本とかしかねえんだ?」




「人間界で禁忌とされた魔法は神の元へ還る。まあゼレフが随分前に持って行きよって、向こうじゃロストマジックだのと言われておるそうじゃが」




悲しそうな顔をするジジイ。セキュリティガバガバすぎんだろ。



「さて、お主の体ももう準備完了じゃ。次天界で会った時には土産話でも聞かせてくれ。」




「俺、本当に大丈夫かな?」




「最強の力を与えた。最高の知識も与えた。残りの足りないものは人間界での経験じゃ。それが埋めてくれる。」




「そうか……」





「生きよ、転生者。フーガ・フォーマルハウトよ。」





「ありがとう。世話んなったな。今度こっち来るときは楽しい話を聞かせてやるからよ。」





「ああ、楽しみじゃなあ……」



お互い笑顔で、そして景色と意識が薄れていく--------------





X777年、転生者であるフーガ・フォーマルハウトの冒険が始まる

 
 

 
後書き
初めまして!分かりにくいところ、読み苦しいところなどあれば感想でジャンジャン言ってください!駄文、文章力皆無、めちゃくちゃ設定、亀更新ですが、よろしくお願いします! 

 

青い髪の少女との出会い







俺は森の中で目を覚ました。そういえばあのジジイが去り際に言ってたが、どうやらいまはX777年、俺が居た時代からちょうど100年とちょっとくらい。そして現在7歳だということだ。え?現在位置?教えてくれなかったよチクショウ。


さて、現在の状況をざっと説明しよう。まず森の中で起きました。前を見ました。でけー口のモンスターがよだれたらしてました。後ろみました。同じのがいました。周り見ました。同じのがいました。






囲まれてるよ、クソッタレ




「まだ慣れてねえんだよ!勘弁してくれよ!」




そう叫びながら頭ん中の魔導書から一個の魔法を引き抜き、陣形速記で形にする。人差し指と中指の二本を立て、横へ振っただけで、周囲に魔法陣が展開される。



「魔障波・弍式!」


突如俺の周囲から凄まじい衝撃波がうまれ-------ってちょっと、え?



ゴゴゴゴゴゴゴ……………




「…さすがの俺もこれは引くわ…」



モンスター達は見えないところまで吹き飛び、半径1キロ程が更地になっていた。え?俺のせい?


「しかし失敗だったなあ…魔力ほとんど込めてないのにあれって…さすが禁忌魔法ってところか。」



コントロール難しいなあ。ま、気長にやってくか。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・



10日ほど歩いたところだろうか。現在位置、森。



でかい、でかすぎる。ひろい、ひろすぎる。




「だめだ、体力……はまあそうでもないが精神的にキツイ。はやくなんか見えねえかな。」




そこからまた5時間ほど歩いたところだろうか。前になんか見えてきた。



「ありゃ街か?……いや、集落みてえなもんか、泊めてもらおうかな…」



それにしてもこの辺、浮遊してる魔力がやけに濃いな。



集落の門と思しきところで立ち、周りを見回すとちょうど同い年くらいの青い髪の少女がいた。



「こんにちは!」



少女は太陽のように明るい声で挨拶をしてきた。当然、俺も返す。



「こんにちは!森で迷っちゃったんだけど、ここってどこかな?」




「えっとね、『化け猫の宿(ケットシェルター)』ってゆうギルドで、村全体がギルドなの!」



なるほど。



「そうか、ありがとう。ところで村長さんはいらっしゃるかな?」




「うん!ついてきて!」




この時俺は知らなかった。この先に起こる出来事を。この少女に出会った時から、あの極彩色に彩られた日々がもう始まっていたんだということを。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ウェンディが言ってたのは君か。ワシはローバウル。なぶらこのギルドのマスターであり、なぶら村長でもある。」





「俺はフーガ・フォーマルハウト。訳あって両親はいない。今はあてのない旅をしている、魔導師だ。で、その途中で道に迷ってしまったんだが、2、3日ここで泊めてもらいたい。」




「フーガ君か。構わんよ。ゆっくりしていきなさい。宿に関してはここのすぐそこに空家がある。なぶらそこを使いなさい。」




「ローバウルさん、恩にきるぜ。ありがとう。」



「うむ。ウェンディ、この若者を空き家まで案内してあげなさい。」



「はい!フーガさん、こっちです!」



しかし気のせいか、俺の両親はいない発言の時、ウェンディちゃんの表情が軽く曇ったのは。いや、考えすぎか?



「フーガさんって、いくつなんですか?」


歳?



「7歳だよ。」




「わたしの一個上ですね!」




ううむ、笑顔が可愛い。しかし割としっかりした子だな。親御さんの教えがいいんだろう。将来いい子に育つね。



「ここです!何かあったら言ってくださいね。」



おお、意外とひろいしランプもつくのか。




「ありがとう、ウェンディちゃん。」




さて、荷物の整理でもするかね……




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「さて、情報を整理するか。」


まず驚いたことは、大半の魔導師はギルドに入っている。これは知ってる。俺らの頃はまだ少なかったがギルドはあった。俺が驚いたのはその数だ。聞いた限りでも相当数ある。



「俺もどこかに所属しようとは思ってたが……そういやここもギルドとか言ってたな。」




後で聞いてみよう……



さらに情報を整理していく。自分の能力についてだ。禁忌魔法のあのクソ分厚い本の魔法は全て使えるらしい。だが界法の方は驚くことに、まだ俺も知らない能力がたくさんあるらしい。考えてみたがどんな能力なのかさっぱりわからん。後で考えよう…




・・・・・・・・・・・・・・・・・・




どうやら俺は寝てたようだ。この体もだいぶ馴染んできた。転生して2日は体の異常なスタミナのせいか歩き続けて寝ることができなかった。寝るという行為が無いとどうも人間というのは落ち着かないらしい。それが寝れるまではこの体をコントロールできるようになったという事だろう。



「あれ、もう朝か…ずいぶん寝てたんだな。」


とりあえず着替えるか。ん?玄関とこになんか置いてあるぞ?


手にとって見てみると



「至れり尽くせり、だな。」



着替えとおにぎりが置いてあった。そしてその上のメモには



『おはようございます!夕べはよくねむれましたか? ウェンディ』




「うう、ええ子や……」



ちなみに塩むすびだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「さて、ちょっくら行くか。」




ローバウルに、ギルドへ入ってもいいか聞くために外へ出た。すると横から不意にこえをかけられた。




「フーガさんおはようございます!」




「おお、ウェンディ。おはよう、おむすびありがとうな。美味しかったよ。」




そう言ってウェンディの頭を撫でる。
俺とウェンディの身長はほとんど変わらないが、自然と頭に手がいって撫でてしまったのは転生する前、孤児院にいた時からのクセだった。


しまった、と思いウェンディの方を見ると



「…ふぇ……?」


不思議そうな顔をしながらも、どこか気持ちよさそうにしていた。



「ああ、ごめんごめん。クセでつい、ね。そういえばローバウルさんはいるかな?」




「あ、はい!ギルドのみんなももうマスターのテントにいると思いますよ?」




「そうか、そいつは好都合だ。」




そう言ってテントの中に入ると、もう結構な人がいた。


俺はまっすぐにローバウルのところへ行くと、ローバウルの方から話がある、と言われた。




「話、ですか?」




「なぶら。君は昨日、魔導師と言っておったな?」



「ええ。」




「ワシから頼みごとがある。」




「何です?」



「ここから西へ歩いてすぐの洞窟に、何やらモンスターが住み着いたそうなんじゃ。じゃが、このギルドには戦うための魔導師はおらなんだ。そこで君の力を借りたい。なに、無理にとは言わん。」




「なら俺からも一つ頼みごとがあります。」




「頼みごと?」





ええ、と一呼吸おいて発言する。




「俺を、このギルドに入れてください。」




するとローバウルは一瞬驚いたような顔を見せ、その後大きく酒瓶をあおった後、


「喜んで!喜んで君を歓迎しよう!」




そう、言った。すると



「フーガさんがこのギルドに入るんですか!?」




ウェンディが身を乗り出して聞いてきたので、




「そうだな、よろしく頼む。」


と、返事を返した。するとウェンディは向日葵のような笑顔を浮かべ、




「ようこそ!化け猫の宿へ!!」




そう、言ったのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あれからギルドのメンバーに自己紹介して、家に帰り早速支度をした。まあ支度っつってもする事ないんだけどね。




「さーて、いっちょ行きますか!モンスター狩り!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



村から出て西へ歩く。さて、ここで問題が発生。



「なんでウェンディいるの?」




「え…えっと……その、フーガさんがどうしても心配だったから…」



泣きそうな声で言うウェンディ。まあいいか、



「なるほどね。まあ付いてくるくらいならいいよ。あ、あと俺のことは呼び捨てでいいよ。この歳でさん付けってのもあれだし。敬語もいいから普通に話してくれ。オーケイ?」




「はい、あ、えっと…うん!フーガ!」




嬉しそうで何よりだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・


3時間ほど歩いたところだろうか。




「嫌な予感がする。ウェンディ、木の陰に隠れているんだ。いいかい?決して音を立ててはいけない。」




「え?」



「いいから。ここから先は危険だ。」



そして視線を前へ向ける。




「やれやれ、今夜は焼き鳥か…」



俺の足元には、大きな黒い羽毛か一枚、落ちていた。


本当に嫌な感じだ。すると、前方に洞窟が見えてくる。



「ウェンディ、隠れてろよ?」


そう言って慎重に洞窟の方へ歩こうとするが、小枝を踏んで音を立ててしまった。



「やべ、気づかれたか!?」




その時、洞窟から巨大な何かが飛び立つ。ってでけーよ!見た感じ羽を広げたら7mってとこか。てか角、角がある。クチバシの中からは牙も見えるし。全部とんがってるよ。なにこれ、怖い。


「確かにモンスターっぽいな、ありゃ。ターゲットはあれでいいのか」




魔導書つかうか?いや、効果範囲的にウェンディを巻き込みかねん。ならしょうがあるまい。



「界法、つかうか。」



背中に魔力でブースターをつける。


キイン!と甲高い音と共に飛翔する。魔力を抑えて飛んだつもりだが、俺の体は物凄いスピードで怪鳥へと接近する。



「どっせえい!!!」



その勢いを殺さずに拳に魔力を集中させ、怪鳥をぶん殴り、




「そらぁ!!!」




打ち下ろしの拳を叩き込む。

俺の拳は金色に輝くオーラを纏っていた。そう、これこそが界法。魔法の起源に最も近い、エーテルナノを高密度に収縮した"特殊な光"の属性を"自由自在"に操る。



俺は体にオーラを纏い、魔力で作り出した腕を落下していく怪鳥に伸ばす。


どうもこの界法、性質を色々と変えるようだ。例えば空気中に魔力をばら撒き、その粒子を使い空中で浮くこともできれば、実態をもたせて腕にしたりナックルにしたり、さらに剣にしたりと、やりたい放題だ。



「串刺しだ!!」


魔力の腕を使い怪鳥を引き寄せ、自分の手には身の丈以上の輝く剣を出現させ、一気に怪鳥の体を貫く。


怪鳥は一瞬ビクリと痙攣したあと、動かなくなった。


俺は死体を抱え、ウェンディのところへ降りていく。




「よう、怪我はなかったか?」




「フーガ!すごかったね!」





「まあ、これが俺の魔法だからね。さて帰るぞ。」



今夜は美味しい鳥肉料理ができそうだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

村に戻ると、かなりの人数が出迎えてくれて、口々に労いの言葉をかけてくれた。



「すげえなあ!お前!」



「お疲れ様!怪我はなかったかい?」


「あのね、フーガってすごいんだよ!」



ウェンディもはしゃいで村の人達に何が起こったかを嬉々として説明してる。


「すいません、荷車かなんかないですか?これ重くて…」



実際は軽い。この体の身体能力からすれば紙と同じくらい軽い。だが邪魔くさいのである。



「おう!まってな!」



そう言って屈強そうな男が荷車を引いてくる。彼は確かバスクといったか。


「すいません、じゃあこれ、たのんます。」



そう言って俺はローバウルの元へ行く。




「マスター、初仕事こなしてきたぜ。」



「おお!無事じゃったか!」



「無傷だよ。むしろこんな簡単な依頼ならどんとこい。」




「がっはっは!頼もしいのう!そうじゃ、お主が使っている家はそのまま使っていいぞ。」




「そうか、ありがとう。じゃあ少し早いが俺は家に戻るぜ。」




「日が沈んだらここへ来い。皆お主と話したがっておる。」




「そうかい。じゃあ部屋で水浴びたらここへ来よう。丁度いいだろ?」




「そうじゃな。」



さて、家に戻りますかね……





 
 

 
後書き
二話目を投稿しました!本当に駄文で申し訳ありません。次回はフーガ君の設定を細かく書いていきたいと思います!辛口、甘口などありましたら遠慮なく、情け容赦なくお願いします!読んでくださった方々、感謝の気持ちでいっぱいです。次回からもよろしくお願いいたします。 

 

オリ主 設定

 
前書き
オリ主 フーガ君の設定です!挿絵追加しました。落書きですが汗 

 
フーガ・フォーマルハウト

【Fuga・Fomalhaut】




{{i3087()

フーガの体内にある太陽核より生み出される謎のエーテルナノ(よりもずっと強力な何か)を高密度に圧縮した"光皇"属性の魔力を自由自在に操る。この魔力は金色に発光する。魔力の見た目やぱっと見の性質が光属性や聖属性と酷似しているものの、実際には全くの別物。どの魔法よりも強大であり、正に「神の力」そのもの。

・光皇閃拳(こうおうせんけん)

高密度に圧縮した界法の魔力を拳に集約、高速の拳撃を繰り出す。


・光皇輝閃(こうおうきせん)

界法の魔力を集約、ビームを照射し対象を攻撃。ビームの太さは調節可能、主に掌から打ち出す。


・光皇具現(こうおうぐげん)

魔力の形を変え、金色に輝く武器を作る。刀、槍、薙刀、投げナイフ、弓矢など。伸縮可能、可変式で、切れ味は最高レベルで刃こぼれもしないため、汎用性は非常に高い。フーガは主に刀状にして戦う。


・光皇創腕(こうおうそうわん)

体から金色で半透明の腕を出現させる。最大4本まで具現可能。伸縮可能で、前述の光皇輝閃を打つことと、光皇具現で作り出した武器を持たせることも可能である。


・光皇護壁(こうおうごへき)

高密度の魔力バリアを張る。実はフーガが唯一苦手にしている界法である。


・光皇身閃(こうおうしんせん)

主に魔力をブースター代わりに使って高速移動できる技。フーガの体質上界法の魔力の粒子を常に体から発しているので、放出された空気中の粒子を使い空中で姿勢を安定させることも可能。
また自らの体を魔力と同化させ亜光速まで加速させることも可能。だが体のコントロールという面から、せいぜい音速の10倍ほどまでだ。フーガ本人はこれを「フルバーニアモード」と呼ぶ。こちらはジェラールの「ミーティア」に似ている。移動スピードを早くするという点では同じものの、そのスピードはジェラールのそれより遥かに速い。



《禁忌魔法(魔法陣のみ)》

脳内にダウンロードした禁書の魔法を全て使うことができる。どんなに複雑な魔法陣でも、速記魔法により一瞬で書き上げることが可能。


※上記の魔法はフーガの体内にある『太陽核』による無限の魔力があるから使える魔法。通常の人間は基本的に使うことができない。





 
 

 
後書き
技や能力は話が進むとともに増えていくと思います!なりは子供で中身はある程度大人っていうのがイメージ掴みづらかったので、イラストにしてみました!分かりづらい所などあれば感想にてお待ちしております^_^





3/2 編集


4/3挿絵追加 

 

出発





俺がこのギルドに入って半年くらいたった。すっかり馴染んで、今ではみんな家族のように接してくれる。特にウェンディはなぜか俺に懐いており、危険な仕事の時以外は四六時中べったりだ。みんなからは兄弟みたいだと言われる。



「フーガ、ちょっといいか?」



「どうしたマスター?」



「なぶら。この時期はニールディアーのツノ落ちの季節じゃ。森の中にツノが落ちてると思う。4本ほど拾ってきてくれんか?」


ニールディアーってあれか、この辺に住んでる鹿っぽいモンスターか。なんでもツノには強い解毒作用があり、ツノの粉末に薬草を加えた薬は万能の薬になるんだとか。



「了解した。4本だな?」



「もっと持ってきても良いぞ。あれはいくらあっても困らんからのう。」




「はいよ。じゃ、ちょっくら行ってくるわ。」



すると向こうからトテトテと走ってくる影が一つ。もしかしなくてもウェンディだな。



「フーガ!どこいくの?」



「ん、ちょっと森まで鹿のツノ取りにな。」



「私もいっていい?」



「マスター、いいか?」



「かまわんよ。気をつけて行って来なさい。」




「はい!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「おお、結構落ちてるもんだなぁ。」



以外とそこら辺に落っこっているので、わんさか取れる。ツノ拾いが楽しくなったのか、ウェンディは別のところで夢中になって拾っている。



「立派なツノばっかだな、こりゃいい薬ができそうだ……ん?」


不意に何かの匂いがした。






強い、血の匂いだ。


「……っ!」


すぐに警戒態勢を取る。すると向こうからウェンディの叫び声が聞こえた。



「ウェンディ!!」


まずいな、無事でいてくれよ…


〜ウェンディside〜


フーガと少し離れたところで、私はツノを拾っていた。


「ふふったくさん持ってったらフーガびっくりするかなぁ♪」


すると、不意に背後の茂みで音がなった。フーガかな、と思い後ろを向くと



「グルルルルルルルル………」



「ひっ!」



そこには血塗れの狼が!



「きゃああああぁぁぁあ!!」



怖い、怖いよ…フーガどこぉ?助けてよぉ………



〜ウェンディside out〜



声の聞こえた方向を頼りに行くと、そこには手負いの大きな狼に睨まれ怯えているウェンディがいた。



「このぉっ!!」



地面を強く蹴り、ウェンディを抱き上げ木の上に登る。さすがにここまでは来れねえだろ。


「大丈夫か?おっと、足を怪我してるな。どれ見せてみろ…」



幸い傷は浅かったが、爪で引っ掻かれた後がある。野生の獣に付けられた傷は浅くても酷くなる可能性が十分ある。これ豆知識な。



「フーガぁ…怖かったよ…」


「あーよしよし、もう大丈夫だ。もう大丈夫だぞ。」



ウェンディがぎゅっと抱き着いてくるので頭を撫でてやった。


「ちょっとここにいてくれ。さっきの犬っころを始末してくる。大丈夫だ、すぐ戻る。」



そう言ってウェンディを木の上に座らせ、怪我をした脚にハンカチを巻いてやった後、木から降りて狼の方を見た。


「さて犬っころよ。俺はこれでも動物は好きな方だからな。痛めつけるようなことは極力したくないんだ。だから俺らが村に戻るまでの間、大人しくしててくんねえか。」



そう言って、拘束用魔法陣を即座に組み上げる。



「なあに、半日くらいしたら解けるさ。しばらく大人しくしててくれ。」



そう言って優しく頭を撫でてやる。


さて、帰りますか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


帰り道、ウェンディをおんぶして、体の前にカゴを引っさげてその中にツノを入れて歩いていた。


「フーガ、お話ししたいことがあるの…」


と、唐突にウェンディが切り出す。



「なんだ?」



「私のね、お母さんはね、ドラゴンなんだ…」



「ドラゴン?」



伝説なんかに出てくるな。たしか大昔は龍と人間の戦争もあったとか。


「天竜グランディーネっていうの。私はそのお母さんから天空の滅竜魔法を教わったんだ。」


「そいつはすげえな。でも俺はウェンディの母親のドラゴンは見たことないぜ?」



「X777年、7月7日に…私のお母さんは…グランディーネはいなくなっちゃったの…」


「…っ!」



失言だったか。だがいなくなっただと?



「突然…朝起きたら……いなくなっちゃって……ずっと一緒だって、思って……たのに……っ」



おぶっているので顔は見えないが、ウェンディはおそらく泣いているのだろう。



「もっと…一緒にいて……わ、私、こん…なに…ひぐっ……魔法使えるように……なったよって…うぇっ……褒めて…貰いたかったって……うっ…ひっ」



「……寂しかったよな。」



「うん…」



「辛かったよな。」



「うん…」


「大丈夫だ。」


「……え?」



お前は一人じゃない、とは言えなかった。俺も孤児院にいた時、たしかに一人ではなかったが孤独感は常にあった。だからあえて、俺はこう言った。



「俺がいるさ。」



「フー…ガ?」



「そうだ。俺がお前を守る。何があっても俺たちは一緒だ。」



ウェンディの嗚咽が止まる。



「俺が、お前のお兄ちゃんだよ。」



絶対に守ってやる。孤独感なんて吹き飛ばしてやる。そう決意をして、言葉を発した。



「フーガがお兄ちゃんかぁ…」



「俺じゃ、不満か?」



「ううん。すごい嬉しい…フーガ……すぅ…」



「寝ちゃったか?」



〜ウェンディside〜


フーガが私のお兄ちゃんになってくれるっていって、とても嬉しかった。なんだろう、胸がドキドキして奥があったかくなる…こんな気持ち、初めてかも……
安心して、急に眠くなっちゃった…今日から私、フーガの妹だよね?じゃあ少し甘えてもいい…よね……



〜ウェンディside out〜





結局、村に着くまでウェンディは眠っていた。


「おーい!誰かウェンディ診てやってください!」


「どうしたのじゃ?」



「マスター、ウェンディが野生の獣に引っ掻かれた。幸い傷は浅いが菌が入ると危ない。ちょっくら診てやってくれ。」



「おお、よしよし。どれどれ……」



「じゃあツノはここに置いておく。俺は家に戻るよ。ウェンディを頼んだ。」



「分かった。任されよう。」



とはいえ、疲れたなぁ……




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



さらに一年が経った。今では俺とウェンディは同じ家に暮らしている。小さいが庭もあるいい家だ。あ、部屋は別々だぞ?さすがに。でもまあたまに、ウェンディが夜俺のベッドに潜り込んでくることはあるが。


そんなある日、ウェンディが卵を持って帰ってきた。森を散歩をしてたら見つけたんだとか。



「でっけえなぁ……つうかモンスターかなんかの卵じゃねえ?どうする?孵った瞬間食われたら。」



「大丈夫だよ!………そんな気がする……多分。」



最後の方はかなり小さい声だった。危なっかしいな、オイ。


つーか…


「卵、なんかピクピク動いてんぞ。そろそろ孵るんじゃねえ?」




「え?本当だ!がんばれ!がんばれ!」



卵にエールを送るウェンディ。うん、なんかシュール。



ピキピキピキ………パカッ!!



小気味いい音を立て孵化した卵から産まれたのは…



「フーガ!猫だよ!」



「よく見ろウェンディ。あれは猫のような何かだ。猫が飛ぶわけねえ。」



つーか猫は卵から孵らねえ。もうちょい猫らしく振る舞え。でもまあかわいいもんはかわいい。ウェンディはさっそくその猫(?)を抱き上げて撫でていた。



「ねえねえフーガ、この子の名前どうしようか?」



名前?ああ、もう飼うことは決定なのね。まあいいよ。特に問題もなさそうだし。



「そうだなあ…まあウェンディがつけてあげろよ。」



「そうだなあ……あ!シャルル!シャルルってどうかな?」



上品な名前だな。まあこの白猫にピッタリだ。




「いいんじゃないか?」



「よろしくね!シャルル!」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さらに5年以上の月日が経った。今ではウェンディは12歳、俺は13歳。すっかり大きくなった。シャルルも最初は俺たちとの間に壁を作っていたが次第に打ち解けていった。無愛想だがいいやつだ。ツンデレ乙っていったら引っ掻かれた事もあったな。痛かったよ。


今俺たちはローバウルの元に呼ばれている。なんでも重要な話があるとか。



「なぶら、2人ともよく聞いてほしい。」




「どうしたんですか?マスター。」



「俺は仕事終わってかなり疲れてるんだが後じゃダメか?」



「まあ待て。ここ最近闇ギルドの動きが活発になっておっての。いよいよ無視できんところまで来たのじゃ。」



「闇ギルド?んなもんでけーギルドの方にでも任せときゃいいじゃねえか。バラム同盟くらいだろ、俺らが気にしときゃいいのは。」



闇ギルドなんて物騒なもんより牛の乳搾りや森で歌ったりしてえんだよ。


「まさにそれじゃ。バラム同盟の一角の『六魔将軍(オラシオンセイス)』じゃが…』


「…え?あの、バラムなんとかって……」



完全に話についてこれてないウェンディ。まあ知らなくても支障はないんだけどな。



「その六魔将軍がどうしたって?」




「なぶら。ワシら化猫の宿が討つ事となったのじゃ!」



ほほう、どうやらマスターは酒の垂れ流しすぎで頭をやられたようだ。



「マスター、気付け薬なら奥の棚の2段目にあるぜ?」



俺が間違って酒飲んじまって酔い潰れた時にも役に立ったいい薬だ。味はアレだがな。



「まあ聞け。最近届いた情報じゃが、六魔将軍の動きがおかしくての。調べてみると奴らは"ニルヴァーナ"と呼ばれる魔法を探し求め、我が物にしようとしておる。」




「あの、ニルヴァーナって…」



と、ウェンディ。だがマスターは渋い表情を浮かべ首を横に振った。



「ワシも詳しくは知らんが、恐ろしい魔法じゃ。あれが闇ギルドへ渡ることは何としても阻止せねばならぬ。そこで妖精の尻尾、蛇姫の鱗、青い天馬、そしてワシら化猫の宿で連合を結成し、六魔を討つ。何としてもヤツらにニルヴァーナを渡してはならぬ。」




「えっと…それって……」



「なるほどな。で、俺とウェンディがここに呼ばれたっつーことは」




「その通りじゃ。それに妖精の尻尾には滅竜魔導師がいるらしいからの。ウェンディのドラゴンのことも分かるかもしれん。」




「本当ですか!!」



「出発は明朝。今日は家に帰って休め。」



「はい!」



「了解した。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



翌朝



「それじゃあマスター、行ってくるぜ。」



「行ってきます!」





「なぶら。気をつけて行って来なさい。」




村の入り口まで見送りに来てくれたマスターに挨拶をし、俺たちは村を出る。



「シャルル、ここから目的地までどれくらいだ?」




「そうね、そこまで遠くはないわ。歩いて2時間の所で馬車に乗るわ。」



「そうか。ならまだ歩くか。」


さて、無事に目的地へ辿り着けるかね?





 
 

 
後書き
読んでいただき、本当にありがとうございました!今回、終わり方が微妙で申し訳ありません!次回からニルヴァーナ編です。一気に時間経過を早めたのは単純に書く能力の無さです。読み苦しく本当にすみません。
ご意見、ご感想を書いてくれた皆様、本当にありがとうございました!
この作品に目を通してくださった時に、何かご意見、ご感想などありましたら情け容赦無く、感想欄に書き込んでください。どんな些細な事でも結構です!それでは、次回もよろしくお願いいたします。 

 

旅路は山あり谷あり闇ギルドあり?


歩き続けて2時間弱したところで、小さな街に出た。



「さて、じゃあこっからは別行動だ。お前らはそのまま馬車に、俺は別ルートで目的地まで向かう。」



「え!?どういう事?」


「そのままの意味だ。少し寄るところがある。」


嘘である。実は先ほどから闇ギルドの連中と思しき奴らが近くにいる。かなりの数だ。



「お前らは先に行ってろ。シャルル、ウェンディを頼むぞ。」



「ええ、わかったわ。でもあまりウェンディに心配かけるんじゃないわよ。」


「ああ。あまり時間はかけないさ。」


そう言って馬車乗り場とは別の方向へ歩き出す。ああ。時間はかけないよ。かける必要もない。



少ししたところで俺は建物の上に登り無事に馬車が走り出したのを見届けると、路地へと降り立つ。まだ昼時だというのに人っ子一人いない。この異常な状況、恐らく人払いの術式でも刻んだのだろう。ていうか対象はやっぱ俺か。
あーあ、めんどくせえ。



「先に俺を狙ってきたか…魔水晶に通信が入ってねえってことは向こうは大丈夫か。」




すると、あちらこちらから武装した人達が出てくる。どんだけ人数いんだよ。あーあ、囲まれちまった。



「……てめえら、六魔将軍の傘下の闇ギルドか?」



「そうだ。俺らは六魔将軍の傘下"黒の波《ブラックウェーブ》"だ。」



ギルド名ださっ



「この任務についた以上、殺す覚悟も殺される覚悟も出来てんだろ?」



六魔将軍に警告という意味も込めてここは派手に行こう。正規ギルドなめたら痛い目みるぞ、と。



「さあ殺し合おうぜ、闇ギルド諸君!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



その頃、集合場所では…



「これで3つのギルドが揃った。残るは化猫の宿の連中のみだ。」



「連中というか、2人と聞いてまあす。1人は遅れると、先ほど連絡の香り(パルファム)がありました。」



「2人だ!?こんな危ねえ作戦にたった2人だけをよこすのかよ!?」



「ちょっと、どんだけやばいやつが来るのよ…」



すると



「きゃあっ」


女の子の声とこけたのであろう音にみんなが驚いた。


「痛……あ、あの……遅れてごめんなさい……化猫の宿からきたウェンディです。よろしくお願いします…」



「女!?」




「子供!?」



「ウェンディ…」



全員が驚きの反応を見せた。


「これで全てのギルドが揃った。」



「いや、話進めるのかよ!」



「この大がかりな作戦に子供をよこすなんて…それに1人は遅刻ですって…?化猫の宿はどういうおつもりですの?」



「あら、それだけじゃないわよ。ケバいお姉さん。」



「シャルル!」



シャルルが入ってきてウェンディが声を上げる。



「ネコ!?」




「もしや遅刻の1人というのは…」



ジュラがシャルルに疑問の表情を浮かべるが、



「いいえ、違うわ。"彼"はもう少ししたら来るでしょうね。」



「む、そうか。」



「あ、あの……私、戦闘は全然できませんけど、皆さんの役に立つサポートの魔法いっぱい使えます…だから、仲間外れにしないでください〜」



涙目になってぐずってしまうウェンディ。



「もう!そんな弱気だからなめられるのよあんたは!全く、あいつがいないとすぐこうなんだから…」



そんなウェンディをシャルルが嗜める。



「すまんな、少々驚いたがそんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む。」



「うわぁ、本物のエルザさんだよ、シャルル。」



「思ってたよりいい女ね。」




そんな中、シャルルに熱い視線を送る猫がいた。
シャルルは興味なさそうにシカトするが、



「おいらの事知ってる?ネコマンダーのハッピー!」



またしてもシカト。



「てれてる…かわいい〜」



「相手にされてないように見えるけど。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



一方、俺は闇ギルドの連中をボコボコにした後、集合場所まで馬車で移動していた。え?間に合うのかって?遅刻は確実だな。こりゃ。だから急いでもしょうがない。どうせ遅れるなら俺は俺のペースで行く。それが俺流。なに、作戦なら大丈夫だろう。メンバーが多少遅刻したところで向こうには妖精女王《テイターニア》、火竜《サラマンダー》、何よりも聖十大魔導のジュラもいる。うちのような地方ギルドまで名が轟いている人物だ。相当のものなのだろう。それに他のギルドのメンバーも精鋭揃いのハズだ。



なんて思いながら馬車に乗っていると、




ドコォッ!!!!




不意に横からとてつもない衝撃を受けた。



「なんだなんだぁ!?」



外に出てみると、




「まーた囲まれちまったよ…厄日だな、今日は。」



闇ギルドと思われる奴らに囲まれてた。ここは既に樹海。作戦の地だ。こいつらが六魔将軍の傘下のギルドだとすると、六魔将軍はもうこの樹海に到達しているとみていい。



「あーあ、死んでやがらぁ…」




かわいそうに、馬車を動かしてた男は息を引き取っていた。

つーか六魔将軍がもうここに到達してんならモタモタはしてらんねえな。



「お前らも六魔将軍の兵隊か。クソッタレ。ああクソッタレ!数が多いいんだよクソ!」



奴らが一斉に襲いかかってくる。しゃあねえ、いっちょ本気でやるか。



「一撃で決めてやる、後悔すんなよ…」



強く地面を蹴って魔力を使い浮遊、腕を2振りして複雑な魔法陣を真下に向かい描く。



「禁忌魔法!天照・百式!!」


その直後、樹海が激震し、奴らがいた所は跡形もなく、吹き飛び巨大なクレーターが形成された。


「さて、集合場所に行くか。」


集合場所めがけて、魔力ブーストを使い飛んでいく。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



集合場所付近で人影が見えたので上空から見てみると、赤い髪の女が倒れておりその横で男2人が口論をしていた。何やら不穏な空気だ。ってあそこにいんのシャルルか。とりあえず降りるか。



シュタッ!と地面に着地すると、



「誰だ貴様は!」



「六魔将軍のヤツか!」



と警戒態勢を取られたのでとりあえず両手を挙げて抵抗の意思がないことを示す。



「遅れてすまん、俺は化猫の宿のフーガ・フォーマルハウトだ。つーか俺をあんなびっくり人間衆と一緒にするんじゃねえ。」



「お前が……」



「見た所フルメンバーかと思ったがウェンディがいないな、あいつどこいった?」



「ウェンディが六魔将軍に連れ去られちまった…」



桜髪の男が答える。
てか今なんて?ウェンディが連れ去られただと?



「おいあんた!それ本当か!」



「フーガ!一回落ち着きなさいよ!」



俺が掴みかかろうとした時、シャルルが俺の襟元を引っ張る。



「わ、悪い。つか、誰か状況を説明してくれ。」


「僕が説明するよ。」



すると茶髪のホスト風の男が答えた。



「集合場所が六魔将軍にバレていてね。僕たちは先ほど襲撃を受けた。ジュラさんと一夜さんは傷を負いエルザさんは敵の毒にやられてしまったんだ。」




「で、ウェンディが連れ去られたのよ。」



金髪の女が付け加える。




「あとハッピーもだ!!!」



「ハッピー?」



「俺の仲間だ。」



「オスネコよ。」




そうか、そんな事があったのか…



「ちなみにエルザだっけ?ウェンディがいれば解毒出来るぞ。」



「あの子が解毒の魔法を?」



「それだけじゃないわ。体力回復にキズを塞ぐことも痛み止めもできるのよ。」



と、シャルルが補足する。



「あの、私のアイデンティティーは…」



横のおっさんが脂汗を流すが見ないことにした。うん、見たくねえ。



「治療の魔法って、ロストマジックじゃなくって?」



「天空の巫女ってのになんか関係があるの?」




ケバい女と金髪の女が言う。



「ああ、あいつは天空の滅竜魔導士。天竜のウェンディだ。」




俺の放った言葉にみんなが驚く。



「ドラゴンズレイヤー!?」



「詳しい話はあと!今私たちに必要なのはウェンディよ!」



「と、なると」




「やることは一つ!」



「ウェンディを助けるんだ。」



「エルザのためにも!」




「ハッピーためにもね。」




「行くぞ!!」




「オオッ!!!!」




全員の気合とともに、ウェンディ奪還作戦が始まった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ちょっと!ちょいまち!」



俺はみんなを一回止める。




「ここに来る前、六魔将軍の傘下の闇ギルドと二回もぶつかった。奴らの傘下のギルドはほぼこちらに来てると見ていい。」




奴らにとってもニルヴァーナとやらは重要らしいからな。




「じゃあどうするのよ?」




「班を4つに分けよう。一つの班はエルザのとこで待機、残り3つの班でウェンディを探すんだ。」



「ならば早くせねばなるまい。」



と、ハゲのおっさん。うおっまぶしっ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



結局班分けはこうなった。

エルザのところへ残る班


金髪女改めルーシィ、ホスト一号改めヒビキ



班その1



桜髪改めナツ、半裸改めグレイ、そしてシャルルと俺。



班その2


キモいおっさん改めキモいおっさん。あ、一夜か。そしてホスト二号のイヴと三号のレン。



班その3



ハゲ男改めジュラ、糸目のリオンにスイーツ女のシェリー。


メンバー全員の名前も覚えたし、大丈夫かな。うむ、実に覚えやすい。



「よし、行くぞぉ!!」



と、ナツ。先にダッシュしていってしまった。



「待てこら!」



グレイも行ってしまった。無駄にはええなあんたら。



「よしシャルル、俺の肩にでも掴まってろ。」



そうしてシャルルを肩に乗せ、魔力を使い俺も追いつく。



「ところでさ、天空の滅竜魔法って何食うの?」



と、ナツ。



「あまり食ってるとこは見かけねえが一応空気を食うぞ。」




「うめえのか?」




「俺は知らんな。」



「それ、酸素と違うのか?」



グレイも突っ込む。



「そういえばフーガ、ウェンディの親って…」



ナツが聞いてくる。やっぱり気になるか。




「消えたんだと。ある日突然。天竜グランディーネっていうそうだ。」




「おい!それって7年前の7月7日じゃねえのか!?」




「覚えてねえが多分そうだっつってたな。」




するとナツは独り言をブツブツ呟く。っておい、前見ろ、枝が、




バキッ!!!



「んがっ!!」



そら、言わんこっちゃねえ。だがすぐに起き上がる。頑丈だな、おい。




「そうだ!ラクサスは!?」



「じーさん言ってたろ?あいつは滅竜魔法の魔水晶を埋め込んだだけだ。」




グレイが答えると、



「何よこれ!?」



そこには異常な光景が広がっていた。



「木が……」




「黒い……」



複数本の木が黒くなってた。真っ黒も真っ黒。



「ニルヴァーナの影響だってな、ザトー兄さん。」



「ぎゃほー、あまりの魔力に大地が死んでくってなぁ、ガトー兄さん。」



「誰だ!?」


グレイがそう叫ぶと、周りから人影が出てきた。なんでこうも囲まれるかね、今日は。おいら疲れちまったよ。



「ニルヴァーナの影響だって」



「さっき言ったぜ、ガトー兄さん。」



「そうかい、ザトー兄さん。」


「ち、ちょっと、囲まれてるじゃないのよ!」



「うほぉ!猿が2匹いんぞ!」



「胸毛をかくせよ、気持ち悪い。」



あー吐きそう。



「こ、こいつら妖精の尻尾の奴らですよ!」



おお、見事に猿っぽいのが参戦したぞ。



「六魔将軍傘下、『裸の包帯男《ネイキッドマミー》』」




「ぎゃほおっ!遊ぼうぜえ!」



あーあ、しかも戦る気満々ですがな。裸の包帯男ってそれってただの素っ裸と違うんかい。



「こいつぁ丁度いい。」



「うほほっ!丁度いいうほー!」



2人もすでに臨戦態勢だ。



「さてと、やりますかね。」



俺も掌に拳を打ち付ける。



「何言ってんのあんた達!?」



「拠点とやらの場所を吐かせてやる。」



「さっさと片付けんぞ。」



「全員沈めてやんぜ!」



すると向こうも戦闘態勢にはいる。



「なめやがってクソガキが…」




「六魔将軍傘下、裸の…」



「死んだぞてめーら。」




「何なのよあんた達…」



シャルルは頭を抱えて混乱してた。あ、木の上で待っててね?あぶねーから。





 
 

 
後書き
少し間が空いての投稿になってしまい申し訳ありませんm(._.)m 六魔将軍編突入です!とはいえものすごい展開早いですが……汗
分かりづらいこと、アドバイス等ありましたら感想ページで容赦なく、ぶっ叩くように書き込んでください!感想も読んだまま、感じたままをバンバン書き込んでください!お待ちしております\(^o^)/ 

 

予期せぬ邂逅







「まだまだぁ!火竜の翼撃!!」



「アイスメイク・ランス!!」



ナツとグレイが戦っている時、



「よっ!おっさん達!俺と遊んでくれねえ?」



「なんだ?てめーは。」




「ぎゃほおっ!このガキ俺たち2人に喧嘩売ってるぜ!ガトー兄さん!」




どうやらこの猿コンビ、何か勘違いをしているようだ。



なので、



「そいつぁ愉快だな、ザトー兄グボァっ!!」



ガトーとかいう奴が勢いよく吹っ飛び、10m程後ろの巨木へ激突。その衝撃で巨木が幹からへし折れた。



「ガトー兄さん!?」



突如吹き飛んだ相方に驚くアフロ。だが俺がやったことはいたって単純。間合いを詰めて"強めに"腹部を蹴り飛ばしただけだ。能力なんざ使っちゃいない。あーあ、ありゃアバラ数本は逝ったな。


「さて、六魔将軍の拠点の場所を吐いてもらおうか?」


俺は界法で大きめの手を出現させアフロの胴体を掴み、空中へ持ち上げる。



「ぎゃほ!答えるわけねえだろ!」



そうか、なら強めるか。



「ぎっ…!ぐぁっ!」



掴む力を徐々に強めていく。



「早く言えよ、死ぬぞコラ。」



さらに強める。



「ぎゃあああぁぁぁあ!!!」



叫ぶくれえならさっさと情報吐いてくんねえかな。こっちだってな、ウェンディとられて頭にきてんだよ。今までにねえくらいな。



「さっさと答えろコラ!内臓とんでもねえとこから出るぞ!!あぁ!?」



「分かった!言う!に、西の廃村だ!古代人の村の!」




「本当だろうな?」



「い、命にかけて本当だ!」



あっそ。



「ご苦労さん。」



そのままアフロを近くの木めがけてぶん投げる。かなりの速度で木に直撃した。まあ死んではないだろう。当たりどころが悪くなければの話だが。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


〜グレイside〜



闇ギルドの連中を片付けてる最中、フーガが親玉の二人に近づいていくのを見た。視線も自然とそちらへ行く。



とその時、フーガの神速の踏み込みからの低い回し蹴りがガトーという男の腹に突き刺さり、ガトーは10m近くの距離を吹き飛びでけえ木に背中を打ち付けた。するとその衝撃で、バキバキと音を立てながら木が倒れてきやがった。なんつう馬鹿げた威力してやがる!?


すると今度はザトーへ向かい、信じられないことをした。あいつの体が金色のオーラみてえなのを纏ったかと思うと、そこからどでかい手が出てきてザトーを掴みやがった。


その時、俺は今まで感じた事のない殺意を感じた。発生源はフーガ。闇ギルドの連中は怯えてどんどん逃げていく。俺もナツも、一歩も動けねえでいた。肌がピリピリするし、空気がいてえ。質量を持ってるかと錯覚するほどの殺意を撒き散らすフーガに、木の上に避難してたシャルルは涙目になって震えてやがる。あいつ、一体何者なんだ?

〜グレイside out〜


「さて、場所聞いたし行くか?ってあれ、なんでみんな引いてんの?」




グレイとシャルルは引いており、ナツはなんかウズウズしてる様な顔をしていた。



「おいフーガ!俺と勝負しろぉ!!」




は!?


「なぜに!?」



「おいナツ!今は作戦行動中だろうが!終わってからにしろ!」



と、グレイ。止めてくれたのは感謝するけど結局闘わなきゃいけないの?嫌っすよ俺。




そうして少し歩いて行くと、奴らの拠点と思われる所に到着した。


「ハッピー!!ウェンディー!!」



っておい、大声で叫ぶなよ。敵さん来るだろうが。すると奥の方からモヒカンのサングラス野郎が目にも留まらぬ速さでこちらへ向かってくる。って速え!?



「ぐぁっ!」



「ぐうっ!!」



「チィッ!」



ナツとグレイが攻撃を受ける。間一髪のところで俺は避けたが、相手は攻撃をやめない。こいつ、体術も相当いけると見た。


次々と攻撃を繰り出してくる相手。

上段飛び回し蹴り、中段後ろ回し蹴り、フェイントの左フックに本命の右ストレート。


俺は全て避け切ってるものの、相手のスピードは落ちるどころか上がるばかり。



「てめえ!ちょこまかと!」



「うっせえ!ちょっとはくたびれやがれ!」



なんでまた速くなるんだよ!

相手の飛び蹴りの着地際、ギリギリのところに下段蹴りを食らわせる。だが相手もさるもの、体勢を崩されながらもそれに逆らわず反撃をしようとする。が、その時。突如俺の後ろから氷塊が恐ろしい勢いで飛んで来て相手の攻撃の手が止まった。



「フーガ!ここは俺に任せて速くウェンディを救出しろ!ナツとシャルルもだ!」



振り返ると、氷で出来たバズーカを持っているグレイがいた。



「任せても大丈夫だな?グレイ。」



「ああ、任せろ。」



「シャルル!羽出してくれ!」



と、ナツ。しかしシャルルは気絶してしまっていた。


「お前はこれで行ってこい!」



グレイが氷で出来た滑り台を作る。



するとナツとシャルルはものすごい勢いで下へ降りていった。
つーか去り際聞こえた悲鳴は間違いなくシャルルのだったな。目、覚ましてたのか。そりゃ怖えわな。


「それじゃあ頼んだ!」



グレイの背中に呼びかけると、グレイは片手を挙げて答えた。



そして俺も界法を使い飛んでいく。



ナツに追いつき、着地すると2秒後くらいにナツも着地した。あ、シャルルお疲れ様。


「うぷ……」



「って酔ったのかよ!」



吐くんじゃねえぞ!いいか、吐くんじゃねえぞ!!



すぐそこの洞穴から、微かに声が聞こえた。どうもナツを呼んでいるようだ。



「ハッピー!?今行くぞ!」



ナツがダッシュで入っていく。ハッピーって連れ去られた雄猫の方か、ならウェンディもいるはず!



「ウェンディ!!いるか!!」



洞穴に入ると、



「うっ……うぇっ……フーガぁ…ごめんなさい…でも…ひっ…わた、私…」



泣きじゃくるウェンディとナツと猫、そして上裸の青髪の男がいた。



「ウェンディをさらった六魔将軍の奴はてめえか!!」



この男、何か変だ。感じる魔力は常人のそれとは異なりあまりにも濃く、大きい。だがどこか不安定だ。でも関係ねえ。ぶん殴ってやる。と、足を踏み出した瞬間、


「ジェラァァアアァルゥゥゥ!!!」


「え?」



ナツが物凄い勢いで殴りかかる。が、



ボゴォ!!!!




魔力の塊をぶつけられてしまった。手の一振りであの威力か。それよりもナツの言っていたことが気になった。ジェラール……?


「相変わらずの魔力だな、ジェラール。」



後ろから男が現れ近づくが、



ガガガガガガ!!!!




「なに!?」



男のいた地面を陥落させてしまう。あまりのアレな状況に、俺は立ち尽くしてジェラールが去っていくのを見ているしかなかった。




そこで我に帰り、



「おいウェンディ、ジェラールってたしかお前の…」



と、振り向きながら聞くと、ウェンディが倒れていた。



「おい!ウェンディ!何があったんだ!」



「この子、天空魔法の使いすぎね。魔力切れよ。」




なるほど、大体分かったぞ。


「つまりウェンディはジェラールとやらを治療しちまったってことだな。それもえらく大変な治療を。」




「そうみたいね。でも一体なんで…」



「とりあえず行くぞ。エルザを助けるんだ。」



「あんにゃろぉ…」



「ナツ、今はエルザが優先だ。一旦戻るぞ。」




「けどよ…!」




「エルザがくたばったらどうにもなんねーだろう。だから一回戻るんだ。」



「わかった。ハッピー!行くぞ!」




「あいさー!」



「シャルル、俺に並んで飛んでくれ。さすがに意識のない人間運ぶのはつらいだろ。」




「あんたは?」



「ウェンディを負ぶって魔力で飛ぶ。」




「分かったわ。」




そうして洞穴から出て、俺とシャルルはナツに追いつく。



「おいフーガ」




「ん?」




「お前の魔法って何なんだ?さっきといい、今といい。」



難しい質問だな。




「さあ?俺にもよくわかんねーや。」



と、適当にはぐらかす。



「そういえばお前、歳はいくつだ?」



「もうちょいで14だな。」




ちなみに誕生日は適当に決めた。



「その割には口調といい何かこう、雰囲気といい歳離れしてんだよなぁ…」



と、ナツ。あんた占い師の才能あるよ。



「性分なんだ、気にしないでくれ。」



と、また適当にはぐらかした。



すると急速に近づく気配が一つ。



「っ!全員回避行動を取れ!」




「遅えよ!」



やっぱ六魔将軍のヤツか。あの早いやつ。



「ぐぁっ!」



「うわぁ!」



ナツとハッピーが叩き落とされ、なんとか俺は回避行動を取る。意識がない人間運んでる以上、戦闘も攻撃を受けることも禁物だ。ちなみに、




「きゃっ!」



シャルルは魔力の手でこちらに引き寄せ回避させた。



だがナツとハッピーが落ちてしまったので俺も一度着地をする。ハッピーは伸びてしまったようだ。




「ナツ!ハッピー抱えて走れ!」


俺はもう一度飛ぼうとするが、




「行かせねえっつってんだろ!」




敵もまたスピードを上げこちらに迫ってくる。



「アイスメイク・城壁"ランバート"!!」




巨大な氷の壁が出現し、敵はそれにぶち当たる。




「グレイ!」



「いいから行け…コイツァ俺がやるって言ったろ…」



「けど、今のでお前魔力が!」



ナツが言うがグレイが遮る。




「いいから行け!ここは死んでも通さねえ!行け!エルザんとこに!!!!」



「必ずエルザを助けるからな!」


とナツが去り際に叫ぶ。



「当たり前だ。」



グレイも答える。



「死ぬんじゃねえぞ。あんたにゃ帰りを待つ仲間がいる。」



俺も声をかけた。



「わーってるよ。ナツとエルザのこと、よろしく頼んだぞ。」



「ああ、任された。」



そう言ってその場を離脱する。


その間際、グレイと敵の会話が聞こえた。



「お前は永久に追いつけねえ。妖精の尻尾でも眺めてな。」




妖精の尻尾"フェアリーテイル"か、かっこいいじゃねえか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ジェラール…あの野郎…!」




「何があったんだ?」



確かウェンディはジェラールに昔助けられたとか。話聞く限りじゃ普通にいい奴だと思ったが。



(ナツくん!フーガくん!聞こえるかい!?)


頭の中でヒビキの声がする。初めてだがこれが念話って奴か。



「どこだ!?」



と、叫ぶナツ。



(静かに!敵の中に恐ろしく耳がいい奴がいる。僕たちの会話が筒抜けになっている可能性もある。だから頭に直接語りかけたんだ!)



「俺も聞こえてるぜ、ヒビキさんよ。」




(ウェンディちゃんは?)



「無事救出した。気絶しちゃあいるが今そっちに向かってる。」



(よかった!これからここまでの地図を頭の中にアップロードする。急いで来てくれ!)



ピコーン!


うお、頭の中に地図が。


「これなら早く着くな。案外近い。」



(急いでくれ。頼んだよ。)




そう言ってヒビキは念話を切った。




「さあって、行くか。」



「そうだな。エルザが待ってるんだ!」



ナツと目的地へ向かいひた走る。



すると、






ボゴォォォォォォオオン!!!!




「爆発音?」



確か、あの方向は。



「グレイ!?」



ナツが方向を変えようとするが、



「待て!ナツ。今はエルザが最優先だ。ここでまた散り散りになっちまったら合流できなくなるぞ!」



「風に乗って微かに火薬の匂いがした!ありゃグレイの魔法じゃねえ!!あいつが「ナツ!!」」




ナツの言葉を遮り




「あいつならきっと大丈夫だ。去り際に任せろと言っていた。なら信じて黙って任せよう。」




「……分かった。」



と、ナツはまた目的地へ向かい走り出す。頼むから無事でいてくれよ、グレイ。




 
 

 
後書き
視点変更を組み込んだのですが、読みにくかったでしょうか?ご意見、ご感想など、読んで少しでも何か感じたり読みにくい、ああした方がいいなどのアドバイスありましたら感想ページにてバンバン書き込んでください!それではまた次回もよろしくお願いいたします! 

 

その魔法、ニルヴァーナ。






10分ほどスピードを上げていったところで、ようやくエルザのところへ着いた。




「ついたー!!」



「なんとか、間に合ったか?」



「ナツ!」



「二人とも!大丈夫だったんだね!」


「ヒビキもルーシィも欠員してないところを見ると、ここも無事だったようだな。」



「それよりも早く、エルザさんを!」




「ああ、わかってら!」



そして気持ち強めにウェンディを揺する。



「おい!ウェンディ!頼む、起きてくれ!おい!」




するとウェンディがゆっくりと目を開け、俺らと目が合う。



「ひっ!」



何があったのかいきなり後ろへ後ずさり、頭を押さえた。



「ごめんなさい…私……」



「ウェンディ!俺だ、フーガだ。」



「フーガ…」



俺はウェンディの頭をワシャワシャと撫でた。



「よーし、もう大丈夫…もう大丈夫だから…」


そして今度はゆっくりとなでてやる。


「そうだ、ウェンディ。一つ頼みがある。」



するとナツが



「エルザが毒蛇にやられたんだ!!頼む!!助けてくれ!!」



と頼み込んだ。



「毒ですか?」




「六魔将軍と戦るにはこの人の力は必要不可欠だ。そんでもって治せるのはお前だけなんだ。頼めるか?」




と、ウェンディに聞いた。そうだ。これはウェンディにしかできない。



「お願い…エルザを助けて!」



ルーシィも頼む。



「も、もちろんです!やりますっ!」



と、ウェンディはやる気を出して治療を開始した。



「よかったぁ〜」


まだハッピーはだれていた。



「いつまでだれてんのよだらしない!」



っていや、シャルル、あんたもさっきまで…いや、いいよ。分かったから睨むなって。もう。



ウェンディの治療は数えるくらいしか見た事がないが、本当にすごいと思う。エルザの顔色がみるみるうちに良くなっていく。



「とりあえずこれで、エルザさんの体から毒は消えました。」



と、ウェンディはため息をつく。すると、



「ん」



エルザが小さく身じろぎをした。顔色も良いし変色してた部分もすっかり元どおりだな。



「おっしゃー!」


全員で安堵の息を漏らし、


「ルーシィ!ハイタッチだ!」




「よかった〜!」



ナツとルーシィがハイタッチをする。


「シャルル〜」



と、ハッピー。ははぁん、さてはシャルルに惚れたか?こいつ。頑張ってくれたまえ。



「一回だけよ!」



とハイタッチ。



「愛想がないなぁ、もうちょっとフレンドリーに行こうぜ。」



と、シャルルに声をかける。



「うるさいわね、余計なお世話よ。」



相変わらずのツンツンっぷり。たまにはデレろってんだ。



「ほれ、ハイタッチだ。」



「しょうがないわね。」



と、ハイタッチをする。そのまま俺はウェンディの方へ向きなおり、



「お疲れ様。よくやったな、ウェンディ。」



頭を撫でてやると、嬉しそうな顔をしながら



「うん…」



と返事をした。



「ウェンディ!ハイタッチだ!」




ナツがウェンディに手を差し出しハイタッチをした。



「フーガも、色々助けてくれてありがとな!」



俺の方にも手を出してきた。



「お互い様だ。こっちこそウェンディを助けてくれてありがとう。」




少し勢いをつけてナツの手を叩く。



「しばらくは目を覚まさないかもですけど、もう大丈夫です!」



と、ウェンディ。




「すごいね…本当に顔色が良くなってる。これが天空魔法…」



エルザに顔を近づけるヒビキ。おい、ちけーよ。キスでもかますつもりか。


「いいこと?これ以上ウェンディに天空魔法を使わせないでちょうだい。」


シャルルが大きめの声でみんなに言った。魔力の消費が激しいからな。これ。



「見ての通り、この魔法は魔力の消費量が多いんだ。」



俺も補足で説明する。確かにウェンディの魔力量は同年代の中じゃ突出してる。だが大人と比べると少ない事は少ない。俺みたいに魔力を無限に生み出す機関があるわけでもないしな。



「わ、私のことはいいの……それより…」



ウェンディが何か言いかけるが言葉を濁してしまう。ジェラールの事かな、多分。


「後はエルザさんが目覚めたら反撃の時だね。」



「打倒六魔将軍!!」



「ニルヴァーナは渡さねえぞ!」



などと各々が気合を入れたその時、






カッッ!!!!





突如、樹海の奥から黒い光の柱が天に向かって現れた。ありゃあもしかしなくてもニルヴァーナか。感知の能力はねえが、ありゃあヤバい。肌にべったりと張り付くような、嫌な魔力が出てやがる。



「黒い光!?」



「あれは…」




「ニルヴァーナ…」




「六魔将軍に先を越されたか!?」



俺も叫んだ。だとしたらやべーな。




「あの光…ジェラールがいる!!!!」



と、ナツ。まさか、ジェラールの狙いもニルヴァーナだったのか!



「ジェラール!?」



「ナツ、ジェラールってどういう事!?」



ナツはルーシィの質問に答えず、まっしぐらに光の方へ走っていった。



「私の……私のせいだ………」



「会わせるわけには行かねえんだ!エルザには!!!!あいつは俺が潰す!」



と叫びながら走って行ってしまった。



「ナツ君を追うんだ!」


「でもナツ、さっきジェラールって………」



「あ!」



「どうしたシャルル。」




「エルザがいない!!」




「は!?」



いつの間にか居なくなってる!周り見てもいねえしどんな速さですっ飛んでったんだよ。



「あ、あぁ……」



「なんなのよあの女!ウェンディに礼の一言も無しに!」



問題はそこじゃねえ、と言おうとしたが思い留まる。



「エルザ、ジェラールって名前聞いて…」



先ほどから頻繁にエルザとジェラールの話が出てくる。あの二人に一体何が?



「どうしよう、私のせいだ…私がジェラール治したせいで……ニルヴァーナ見つかっちゃって…エルザさんや…ナツさんも……」



なんかとてつもなく嫌な予感がする。ウェンディが危ない。そんな気が。


「いいか、ウェンディ、おまえのせいじゃ…」




ドンッ!!!!



いきなり、ヒビキによってウェンディが吹っ飛ばされた。




「あんた!いきなりなにすんのよ!!」



と、シャルル。俺の中の怒りのボルテージも一気にマックスに上がる。



「どういう事だ。返答次第じゃてめえの喉笛掻っ切るぞ!!」



俺はヒビキの首元を左手で掴み、右手に魔力でナイフを形成して喉元に突きつけた。殺気を撒き散らす。すぐそこでシャルルとルーシィの小さい悲鳴がきこえた。



「走りながら説明する。とにかくナツ君を追おう。」



俺はゆっくりとヒビキの首元から手を離し、


「納得できるような説明をしてくれるんだろうな。」



「こうなってしまった以上、話すしかないからね。」




「わかった。」



そう言って俺はウェンディを背負う。大丈夫かな。気絶しちまってるよ。



「よいせっと…」


そうして、先に走り出していたヒビキ達においつく。



「驚かしちゃってごめんね。でも気絶させただけだから。」


「その理由を聞きたいんだがな。」



「そうよ。納得できないわよ。確かにウェンディはすぐぐずるけど、だからってこんなやり方…」


シャルルも言う。



「仕方なかったんだ。本当の事を言うと、僕はニルヴァーナという魔法を知ってる。」



どういう事だ!?みんな知らないと思ってたが。



「ただ、その性質上誰にも言えなかった。この魔法は意識してしまうと危険なんだ。だから一夜さんも、イヴ君もレン君も知らない。」




「どういうこと?」




ルーシィが問いかける。




「これはとても恐ろしい魔法なんだ。"光"と"闇"を入れ替える、それがニルヴァーナだ。」



「光と」


「闇を」


「入れ替える!?」


ハッピー、シャルル、ルーシィがおどろく。ていうか、俺も驚いてる。



「しかしそれは最終段階。まず封印が解かれると黒い光が上がる。まさにあれだ。」



と、森の奥の光の柱に目を向ける。



「黒い光はまず、光と闇の狭間にいるものを逆にしてしまう。強烈な負の感情を持った光の者は闇に落ちてしまうんだ。」




「それで、ウェンディにあんな事を?」




「自責の念は負の感情にカテゴライズされるからね。あのままじゃウェンディちゃんは闇に落ちていたかもしれない。」


なるほどな。それを防いでくれたってわけか。



「そうか、すまなかったな、取り乱しちまって。ごめん。」




「いいんだ。急いでいたとはいえ乱暴にはしてしまったからね。」



「ちょっと待って!"怒り"は大丈夫なの!?ナツもヤバいんじゃ…」



「何とも言えない。その怒りが誰かのための怒りなら負の感情とは言えないからね。」



「どうしよう……意味がわからない。」




ハッピーは頭を抱えて唸っていた。




「あんたバカでしょ。」



ストレートだなあ、シャルルさんよ。



「つまりニルヴァーナの封印が解かれた時、善と悪とで心が動いてる奴は性格が変わるってこったな。」



と説明してやる。



「だから僕は黙っていたんだ。物事の善悪を考え始めると思いもよらない負の感情を生んでしまう。」



ヒビキが説明を続ける。



「あの人さえいなければ…辛い思いは誰のせい?なんで自分ばかり…それら全てがニルヴァーナによりジャッジされてしまうんだ。」


誰が考えて作ったのか知らねえが、おっそろしい魔法だな、おい。きっと天界でジジイが頭抱えて唸ってるぜ。久しぶりに会いてえなぁ。



「そのニルヴァーナが起動したらあたし達みんな悪人になっちゃうの?」



「それだと闇ギルドの連中はいい奴らになっちまうぞ。」



嫌だけどなあ、そんな世界。



「そういうことも可能だとは思う。でもニルヴァーナの恐ろしさは、それらを意図的にコントロールできてしまうんだ。」



「そんな!」



「例えば、ギルドに対してニルヴァーナが使われた場合、仲間同士の躊躇ない殺し合い…他ギルドとの理由ない戦争、そんな事が簡単に引き起こせる。一刻も早く止めなければ、光のギルドは全滅してしまう。」



その言葉に、全員が身震いする。いくら神の体と能力を手に入れたところで精神感応系の魔法、それもそこまで大きい魔法なんかには当然抗えない。脳みそに直接術式を書き込まない限り無理だろう。



「あれ!見て!!」



突如ルーシィが叫ぶ。指差した方向を見ていると、イカダの上でナツを氷の槍で刺し殺そうとしてるグレイの姿が。ってやべえじゃん!



「光皇輝閃!!!」



ビィィン!!!



金色のレーザーを放ち、槍の先端を消滅させた。



「なにしてんのよグレイ!!」




「であるからしてもしもし!!」



さっき出した星霊と一緒に追いついてきた。馬なのか人間なのかはっきりせい。



「ルー…シィ……」



と、ナツ。え、なんであんな苦しそうなの?



「邪魔すんなよルーシィ。」




「え!?何これ、グレイが闇に落ちちゃったの!?」



「なんでお前がここにいる?向こうで戦ってたはずだが?」



多分だがな。



「グレイから見たフーガ…化猫の宿所属、謎の魔法を使う…なんだ、これだけか。」



「なが…流れてる……揺れる…揺れてる……」




「ナツ!今助けるよ!」



ピューー!!!とハッピーが飛んでいくが、



キィィン!



グレイに凍らされてしまった。



「オスネコ!」



「ハッピーに何すんのよ!」



「ハッピー、空を飛ぶ。運べるのは1人、戦闘能力なし…か。」



まだブツブツと呟いている。



「てめえ、本当にグレイか?」



なんか怪しいな。



「ルーシィ、ギルドの新人、ルックスは好み、少し気がある…」



「はぁ?な、なによ…それ……」




照れるなよ、おい。




「見た目によらず純情、星霊を使う…ほう、星霊ね。面白い!」



いきなりグレイがルーシィへ攻撃するが。



「違うね。君はグレイ君じゃない。何者だ。」



ヒビキに阻まれた。



「あーあ、やっぱりか。」



面倒くさそうなのが出てきたな。




 
 

 
後書き
一度誤投稿してしまい申し訳ありません!ご意見、ご感想どしどしお待ちしております^_^ 

 

ニルヴァーナ、復活す。

 
前書き
こんにちは!知り合いから「読みづらい、何とかせよ」と言われたので試行錯誤した結果、六魔将軍編が終わり次第視点を常時三人称視点にします!申し訳ありません……
フーガの技については分かりやすいイラストを作成中です。話にちょくちょく盛り込みたいと思います。それでは、どうぞ! 

 
「あんた誰!?」



すると偽グレイが煙に包まれ



ルーシィへ変身した。



「あ、あたし!?」


「君、頭悪いだろ?ルーシィさんはここにいる。僕たちが騙されるはずがない。」



いや、何かくるな、クソ。さっきもグレイの魔法使ってたし身構えとくか。



「そう?あんたみたいな男は女に弱いでしょ?」



確かにヒビキなら女相手に本気で戦えない。俺だって全力じゃ戦えない。女殴るの嫌いだし。クソ、考えやがったな…っておい、シャツの裾掴んで何するつもりだ。おいよせ、おい-------



ポロンッ



「うふ♡」



「もしもしもしもしもしもし!」


「………………………!!!」


「きゃああぁぁぁぁあ!!!」


「おおおおおおおおお!!」



星霊と俺は叫び、ヒビキは声にならない叫びをあげている。くそッそう来たか!なんとも嬉しい誤算……じゃねえ!ちくしょう、的確な弱点をついてきやがる…!おっと、鼻から血が。


「ゆ…ゆれてる……」


と、ナツ。あんたは本当に辛そうだな。



「確かに…」



「ああ、眩しいぜ…」



「であるからしてもしもし…」



馬まで加わった。ふっ同志よ、桃源郷はここにある。そうだろ?俺らは麗しのおぱーいを見て、静かに手を振った。



「上手いこと言うな!あとあんたらも見るな!手を振るな!」



必死だな、ルーシィ。




「星霊サジタリウス、情報収集完了…っと」



あ?



「よろしくね、サジタリウス。」




ドスッ!!




「ヒビキ!?」



硬直していたヒビキにサジタリウスが攻撃をした。何故だ!?



「しっかりしろ!くそ、どうなってやがる!!」



ヒビキの背中からは決して少なくない量の血が出ていた。



「フーガ!シャルル!ウェンディを連れて逃げて!ここは私がやる!」



「無茶言うんじゃねえ!相手はあの六魔将軍の一角だぞ!俺も戦う!」



「お願い!ウェンディを守って!あんたしかいないの!」



「けどよ…!」



六魔将軍のヤツを相手に1人は無謀すぎる。



「任せて。ちゃっちゃとこいつ倒して追いつくから!」



「ルーシィ…」



するとルーシィはギルドの紋章が入った手で親指を立てる。



「大丈夫よ。星霊魔導士は約束を違えない。それになんてったって私はフェアリーテイルの魔導士だから!」




「任せて、いいんだな?」



「まっかせなさい!!」



グレイといいナツといいルーシィといい、フェアリーテイルの魔導士ってのは本当に勇敢だな。



「頼んだぞ!シャルル、行くぞ!」



そう言って俺はウェンディを抱えて駆け出す。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



〜ルーシィside〜



フーガ達行ったわね。全く、年下は年下らしく素直にお姉さんに頼りなさいっての。



「あんたが誰だか分からないけど、チンタラしてる暇はないのよ。行くわよ…」



そう、チンタラしてる暇なんてないんだから。


「開け。人馬宮の扉!」


え!?何で私の魔法を!?



「お呼びでありますか、もしもし…ってあれ?」



「そんな!どうして!」



「さあ、サジタリウス、やっちゃって。」



「いや、しかしそれがしは…」



ええい、こうなったら…



「強制閉門!!」



どうして!?閉門できない!



「無理よ、私が呼んだ星霊だもん。」



このままじゃまずい、そう思った時



「もういいゾ。ニルヴァーナは見つかったんだゾ。」



向こうの方からから変な格好の女が出てきた。



それと同時に私のコピーがもこもこと煙に包まれ、



「「ピーリッピーリッ!」」



ちいっさ!!なんか変な生き物に変わった。なんか星霊のニコラに似てるわね…



「はーい、ルーシィちゃん。エンジェルちゃん参上だゾ。」




「まさか、六魔将軍!?」



この女が?



「そうだゾ。そしてこの子達はジェミニ。容姿、思考、能力全てをコピーできる双子宮のジェミニ。私も星霊魔導士だゾ。」



星霊魔導士ですって!?それに相手は私の星霊を知ってる。でも私が知ってるのはこのコピーする星霊だけ。部が悪いわね……



「うお……おお……」



ナツも駄目そうね。ヒビキも戦闘不能だし、私がやるしかない!



「邪魔はさせないゾ。そしてあなたの鍵が欲しいの。ルーシィちゃん。」



渡すわけにはいかない。それに約束したのよ!



「上等!あんたは私が倒す!妖精の尻尾の名にかけて!!」



絶対、勝ってやる!!



〜ルーシィside out〜



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……あれ?私……」



背中のウェンディが目を覚ました。




「ウェンディ、目が覚めたか。良かった!」



確かに良かったが全然良くない。この感じ、闇ギルドがすぐそこまで来ている。幸い数はそこまでではないが、ざっと30はいると見て間違いない。



「詳しい話は後だ。シャルル、ウェンディを連れて離れたところへ避難しろ。今すぐだ。」



「なによ、何かあるの?」




「闇ギルドの連中だ。俺がいっきに片付けるまでちょいと避難しててくれ。」



巻き込みかねん。



「そんな!危ないよ、フーガ!」



と、ウェンディ。ありがたいな、心配してくれてるのか。でもな、



「この先、俺ら連合と六魔将軍との戦いはさらに激化する。そうなった時、お前の天空魔法が必要になる。お前を失うわけには行かないんだ。」



それに、とウェンディを降ろす。サムズアップをして



「ウェンディ、シャルル、お前らは俺の大事な妹であり、家族だ。それを守んのが兄貴だろ。大丈夫だ、俺は負けねえ。」



するとちょっと涙目になってるシャルルがウェンディを持ちながらこう言う。



「すぐに片付けるのよ。早く戻って来てちょうだい。」



「分かってんよ。心配すんな、俺は誰にも負けねえ。」



そうして飛び去っていくシャルル達を見送る。通信用魔水晶をもたせたし大丈夫だろう。そして闇ギルドの皆さんも到着する。


「てめえ…連合のヤツか!」




「コブラ様から連合のモンは皆殺しって言われてなぁ!」




コブラ?六魔将軍のヤツか?



「1対30ちょいか、面白え…」


そう言って、気持ち多めに魔力を放出する。魔力切れなんてありえねえ。ああ、最高だ、この体は。



木々がざわつき大気が震え、小石が宙を舞う。俺の魔力に、森がざわめいている。




「気をつけろ…こいつ、相当やべえぞ!」



誰かがそう叫ぶ。気付くのおせえよ。



「時間がねえ。まとめてかかってこい!闇ギルドさんよォ!!」



蹂躙が始まった。




「「「「「おおおおォォォォォオオ!!!!」」」」」




一斉に襲いかかってくる。だが遅え!



「そらあ!!!」




魔力を使わない徒手空拳で、次々と敵をなぎ倒す。ジジイに体術を嫌っちゅうほど叩き込まれたからな!



「死ね!この化け物!」




敵の一人が剣を振り下ろしてくるが、地面を転がり背後に回る。敵からしたら消えたように見えたろう。




「てめえがな!光皇閃拳!!」




手が霞むほどの速さで繰り出された界法の拳撃は、絶大な威力を伴い相手を吹き飛ばす。



向こうの方から矢が飛んでくる。バリアを使うまでもねえ!



「フンッ」



矢を掴み、




「せあっ!!」




界法の魔力を惑わせ投擲する。ありえない速度の矢は、的確に相手の足を射抜いていた。



だが、まだ敵は来る。



「死んでも知らねえぞ!てめえらァ!!光皇具現!」


刀のシルエットを模った金色の魔力の塊を両手に持つ。両刃の剣ではなく、片刃の刀。それを二本。俺はそれがやりやすい。



敵陣に突っ込んでいき、舞うように、自由自在に敵を斬っていく。急所は外してあるので戦闘不能になる程度だが。



「残り10人!!」



そこで俺は急ブレーキをかけ、手を縦に振る。すると、一瞬で魔法陣が出来上がる。方向、よし。



「魔障波・壱式!!」



広範囲の弍式と違い、前方一方向を吹き飛ばす魔法。




ドッガアアァァァァアアア!!!!




闇ギルドの連中を散り散りに吹き飛ばした。



「化猫の宿だって魔導士のギルドだ。てめえらなんかにゃやられねえ。」



その時、突如地鳴りが起きる。




「なんだ?って、黒い光が白い光になってやがる!いつの間に!?」



戦ってる最中か!くそ、ウェンディ達が心配だ!



魔法を使いウェンディ達のところへ着いた頃には、地震はさらに大きくなっていた。まずいな、こりゃ。



「ウェンディ!無事だったか!」



「フーガ!大丈夫だったの!?」



「ケガはなさそうね、良かったわ。」



「話は後だ!シャルル、ウェンディをつかんで上に逃げろ!何かが来る!」



「分かったわ!」



「え…え??」



そして俺も飛ぶ。だが、飛んだと同時だった。




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!




「なんだよ……これァ…」



俺たちのいたところから、巨大な石の柱のようなものが出てきた。



そして一瞬遅れて、白い光の柱が爆発し、中から巨大な都市が出てきた。どうやらこの石の柱はあの都市の足か!!まるでタコみてえだ…


「1、2、3………全部で6本か。くそ、でけえな。」




「これが……ニルヴァーナ……」



しかもこの都市、ドシンドシンと動いてやがる。どこへ向かうつもりだ?



「とりあえずあそこへ降りましょう。みんなもいるかもしれないわ!」



「そうだな。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「しっかし、ニルヴァーナってのはこんな廃墟の塊だったんだな、知らなかったわ。」



「それにしても、どこに向かっているんだろう……?」



「とりあえず俺は中央の1番でかい廃墟へ行く。お前らはみんなを探して合流してくれ。あと、なんかあったら通信用魔水晶に連絡くれ。」




「でも、フーガ一人じゃ…」



「そうよ!」



「合流した時にけが人がいないとも限らない。そん時はお前の出番だ。そうだろう?」



と、ウェンディに笑いかける。




「分かった!」



「じゃあな、後で会おう。」



そう言って俺は宙へ浮き、中央の1番大きな廃墟へ向かっていった。さて、誰かいるといいんだが……




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「おい!フーガか!無事だったか!」



少し飛んでいると、後ろから声をかけられた。



「ナツか。それにハッピーも。あんたも無事で何よりだ。」



「あい!」



「お前はどこに行くんだ?」



と、ナツ。



「中央の廃墟だ。なんかいるかもしんねえ!」




「そうだな!行こう!!」



そしてハッピーはフルパワーで、俺もそれに合わせて飛んでいく。すると、



「見えた!」



ナツが叫んだ先を見てみると、確かに誰かいた。そしてその人影は高らかにこう叫んだ。




「進め!古代都市よ!我が闇を光とかえて!!!」




 
 

 
後書き
フーガのまともな戦闘シーンを書いてみました!………地味だ、地味すぎるぞ……!!私の文章力がない為ショボく感じますが、皆様の脳内でかっこいい戦闘シーンに変えていただければ幸いです。………はい、精進いたします。

感想、批評、意見など少しでもありましたらコメントに書きたい放題書いてください!そうしていただけると嬉しいです!それではまた次回。 

 

破壊の将、その名は『ゼロ』




塔の中心で叫んでいる色黒の男。





あいつ、やっぱり六魔将軍か!!



「俺が止めてやるアアァァァアア!!!!」



咆哮で床を破壊するナツ。



「コブラ!ヤツをここで暴れさせるな!!」



「おう!!!」



コブラ、と呼ばれた男はナツの方へ向かう。だが敵がナツだけだとは思わねえ事だ!!




「光皇輝閃!!!」




ビシュウウウウウ!!!!



レーザーを敵めがけて放った。



「くっ!誰だぁ!!」



だが敵もさる者。頭狙いをギリギリで避けて頰に擦り傷を作っただけだった。



「うぬは……!!??」



敵が俺に名前を尋ねてくる。



ならば、応えよう。



「俺の名はフーガ・フォーマルハウトォ!!今からてめえをぶっとばす!!!」



「自惚れるな!雑魚が!ダークカプリチオ!!!」



黒いレーザーが飛んでくるが、問題はない。



「光皇護壁!!!」



バリアを張り、防ぐ。



「貫通性の魔法を止めた…?」



近づいて一気にトドメをさしてやる!



「ダークロンド!!!」



ズドオオオ!!!



すると今度は黒い衝撃波を放ってきやがった!くそ、近づけねえ!




「ならこっちだってなあ!」



腕を二振り。俺の周りと敵の周りに魔法陣が展開される。




「天照・二十八式魔法陣!!!!」




ドゴオオオオ!!!!




破壊の衝撃波が敵を襲う。



「ダークカプリチオ!!」



だが、その中から攻撃が出てきた。



「光皇護壁!!」



危ねえ、くたばってなかったのか!!



「この魔法は禁忌魔法の筈……うぬは一体……!」



オオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアア!!!!!!




突如、耳をつんざくような咆哮が聞こえてくる。



「うるせぇーー!!!!」



「なんだ!?この声は!?」



俺も敵も思わず耳を塞ぐ。音のした方を見ると、ナツが敵を倒してた。



「ちんたらしてられねえな!!」




「なにっ!?」



「フル・バーニアモード!!!」




全身に界法の魔力を纏い、常人の目には止まらないような速さで動き、一瞬でブレインの背後へ回った。



「光皇閃拳!!」



ドギャッ!!



「ぐおあ!!!」




「光皇閃脚!!!」




蹴り上げでブレインを空中に打ち上げ、



「貴様!!」



一瞬でブレインのさらに上へと移動、



「もういっちょおお!!!」




ドガッ!!


「ぬおお!!」




拳で真下へ打ち下ろし、



ブレインの真下へ即座に移動、光皇創腕で4本の腕を顕現させ六本のビームを真上に竜巻のように撃つ!!



「光皇輝閃・六門!!」




ドガガガガガ!!!



「ぐおおおおお!!!」



ドサ、とボロボロになったブレインが落ちてきた。



「ぐっ………ガハッ…」





「ガキだと侮ってちゃ、痛い目みるぜ。」



とくに妖精の尻尾の奴らはな。



と、そこで通信用魔水晶に連絡が入る。


「おー、シャルルか。どうした?」



「フーガ!今どこにいるのよ!?」



向こうからは焦ったシャルルの声が。



「落ち着け、ど真ん中の建物で六魔将軍の1人を討ったとこだ。ナツもなんとか無事だ。あいつも1人倒した。」


「フーガ、よく聞いて!このニルヴァーナがこのまま進むと……私たちのギルド、化猫の宿があるの!!!」


なんだって!!!!???



「おいシャルル!一体どういうことだ!おい!」



「分からないわ!とりあえず私たちもそっちへ向かう。詳しい話はそこで!」



通信が切れた。クソ、どういうことだ!?



「フーガ!無事か!?……うぷっ」



「ナツ!今そっちに行く!」



ひとっ飛びでナツの所へ移動した。ナツもハッピーもボロボロだ。つーか乗り物に弱いらしいがこれ乗り物か?



「お前らも無事だったか。」


よかった、と言おうとしたところで、



「ナツ殿!フーガ殿!」



「お前らー!大丈夫か!!」



「おーい!二人ともー!」



向こうの方からジュラとグレイ、そしてルーシィが来る。



「なんとかな。ナツは揺れにやられてるらしいが。」



「ネコ殿も無事であったか。」



「ネコ殿!?」


ジュラ、さすがにそれは無理が…ってそうじゃねえ!



「みんな、よく聞いてくれ。目的はわからないし偶然かもしれない。だがこのニルヴァーナが進む方向には間違いなく俺たちのギルドがある!」


「「「何!?」」」


「みなさーん!!」


向こうの方からウェンディとシャルルが来た。いいタイミングだな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「じゃあその王の間ってのに行けばいいんだな?」




ジュラが言うにはそうらしい。


「そうだ。だがブレインは…?」



「ブレイン?」



はて?誰であろうか。


「顔に変な刺青入れてたおっさんだよ。」


と、グレイ。ああ、それなら



「そいつならさっきぶっ飛ばしたぞ。今頃あの建物の屋上で伸びてるんじゃねえ?」



と、中央の建物を指さす。



「あそこだ!あそこの中に王の間がある!」



ジュラが言う。なるほどな、だからブレインとやらはあそこにいたのか。


「おし!行くぞ!」



先ほどウェンディにトロイアをかけられ元気になったナツがダッシュをし、ハッピーもそれについていった。



「我らも行くとしよう。」


「待ちやがれ!ナツ!」


…………行くか。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「なあ、本当にここ、王の間か?」



俺の声が虚しく響く。なーんもありゃしねえ。



「まさか、ニルヴァーナは自動操縦か!?」


「ならどうやって止めんだよ。」



「壊しゃあいいんじゃね?」



「ナツ……やめてね?私たちまで巻き添えじゃない。」



口々に意見を交わす。壊すにゃ無理あんだろ、これ。



「もしかして、ジェラールなら何か知ってるかも!!」



「あ、ちょっとウェンディ!!」


ウェンディとシャルルが走って行ってしまう。



「おい!ウェンディ!!」



声をかけたが止まらない。



「悪い、俺もちょっとウェンディんとこ行ってくる!」


シャルルと2人だけじゃ危ない。



俺も王の間を飛び出し、ウェンディ達に追いつく。



「おい、お前らだけで飛び出すなよ!」



危ねえだろ、と言いかけたが言葉をその先発することができなかった。


偶然なんかじゃねえ。



ニルヴァーナは、



「あと少しで俺たちのギルドに着いちまう!」



「え!?」


「みんなに知らせてくる!悪い!!」



魔力ブーストを使い化猫の宿の方向へ飛ぶ。何だ、何が狙いなんだ…!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「みんな!!大変だぁ!!!!」



化猫の宿に焦った声が響く。



「何事じゃ?」



「敵が…ニルヴァーナがこっちへ向かってきてる!もうすぐそこだ!!」



「なにっ!?それは誠か!?」



「飲み干してからしゃべってくれ!!」



ドバーッと口から大量の酒が流れる。



「ニルヴァーナがここに…これは運命か…偶然なのか……」



「ウェンディ達は大丈夫か!?」



「いざって時は俺らじゃ何もできないし…」



「安心せい、光の魔力は生きている。なぶらおおきく輝いておる。」



ローバウルの声に、みんなが活気づく。



「「「おおー!!」」」



「でもこれって偶然じゃないよな。」



「俺たちの正体を知ってるものが…」




するとまたローバウルはさけをあおった。



「なぶら。」



「長い付き合いだが未だになぶらの意味がわからん……」



すると、一人の男が慌ててこういう。



「マスター!避難しようぜ!」



すると周りもざわつきだし、口々に避難しようと言う。



「このままだとやばいぞ!」





「ニルヴァーナは結界じゃ防ぎきれない!」




だが、ここでローバウルの喝が入る。



「馬鹿たれがぁ!!」



ギルドは一斉に静まった。



「あれを止めようとなぶら戦っているものがいる。勝利を信じるものは動く必要などない。」



ギルドのみんなは言葉を発することができずにいた。



「なんてな…………時が来たのかもしれん。わしらの罪を、清算する時がな…」



ローバウルは悲しそうな口調で、そう言った。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





一方その頃、ナツ達はクロドアと呼ばれる"杖"と戦っていた。



「こいつ……」




「杖のくせに……」




「いやらしいやつ……」



最後のはルーシィ。




「クックック……ん!?」




すると、いきなりクロドアが焦った表情を見せる。



「ミッドナイトがやられた……あの方が…くる!!」




そしてその表情は心底怯えた表情になる。



「なんだぁ?」



「あの方?」




「ブレインにはもう一つの人格があるが…あまりにも凶暴ゆえ6つの鍵で封印した。それが六魔将軍"オラシオンセイス"。その6つの鍵が効力を失うと……」




すると突如、奥の方から禍々しい魔力が発生した。



「お、おかえなさい!!マスターゼロ!!!」




地面に頭を擦り付け礼をするクロドア。間も無く奥の方からは静かな狂気を孕んだ声が聞こえてくる。それを聞くだけでナツ達は戦慄し、恐れおののいた。彼我の力の差に、その狂気に。




「ずいぶんハデにやられてるみてえだなぁ…クロドア。」



奥から足音が聞こえ、徐々に姿をあらわす。



「この体…この魔力……全てが懐かしい……」




奥から出てきたのは、同一人物とは思えない程に変貌したブレイン改め"ゼロ"。隠す気などさらさら無い濃密な殺気。やけに重く、暗い魔力。その視線はナツ達を敵としてみているのではなく、目の前のオモチャをどう壊すか…そんな狂気を孕んでいた。



「うちのギルドをずいぶん食い散らかしてくれたみてえだなぁ、ガキども!」



だがそこで、あたりを見回し少し残念そうな声を出した。



「あれ、あの金髪赤目の小僧がいねえなぁ……この体をズタボロにしてくれた礼をキッチリしなきゃいけねえんだが、まあいいか…」




そしてナツ達の方へ向き直り、




「まずはてめえらだ!!」



そう言って先ほど倒れてしまったジュラに攻撃をしかける。




「動けねえ相手に攻撃するのか!」



ゼロは当たり前、という風にこう返した。




「動けるかどうかは問題じゃねえ!形あるものを壊すのがおもしれーんだろうが!!」



「やめろ!」




ジュラを狙ったゼロの攻撃に、真っ先にグレイが反応する。




「アイスメイク・シールド!!!!」





ドギャッ!!!!




だが氷の盾はあっさりと砕かれてしまった。



「俺の盾が…!!こんな簡単に!?ぐあああっ!!!」



はじき飛ばされてしまうグレイ。



「てめぇ!!」




ナツがゼロに攻撃をしかける。完璧に隙をついた。そのはずなのに、




「遅えんだよ!!」



ドゴォッ!!!!



ナツよりも早く動いたゼロがカウンターで吹き飛ばしてしまった。



「……ひっ!」



ゼロと目があった瞬間、ルーシィは腰が抜けてしまう。それを見たゼロは面白くない、といった風に魔力をハッピーとルーシィへ殺到させた。



「うわああぁぁ!!」




「きゃああああ!」




10分も経っていない。ナツ達は完全にダウンしてしまった。




「さ、さすがマスターゼロ!あのガキどもをこうもあっさり……」




媚びへつらうようにクロドアが言うが、ゼロは再び手を挙げ大きく笑った。



「まだだよなぁ……まだ死んでねえよなぁ!!!!ガキどもお!!」




倒れて動けないナツ達に容赦なく攻撃をしかけた。




「マ、マスターゼロ!それ以上は!」




やりすぎだ、とクロドアが止めようとするもゼロは全く止まらない。徹底的に破壊してやる、そんな嗜虐的な笑みを浮かべていた。




「ぎゃははははは!!!」










 
 

 
後書き
お久しぶりです!少し間があいてしまいましたが、読んでくださった方々、本当にありがとうございます!更新ペースが落ちてしまい本当に申し訳ありません……!

六魔将軍編がとても短い……かといって長くしようとするとダラダラ感が出てしまうので絶賛苦悩中です…

ご意見、ご感想、どんな事でも構いません!一言だけでもいいので感想に書き込んでいただけると本当に嬉しいです!よろしくお願いします!ではまた次回お会いしましょう! 

 

大地の叫び "ニルヴァーナ"







「やべえな、こりゃ本格的にやべえ。」



何がやべえってもうすぐそこまで来てる。ニルヴァーナが。


魔力の充填も始まってる。



「おい!みんな!!今すぐここから逃げろ!ニルヴァーナが!!!!」




俺はありったけの声でギルドに向かい叫んだ。が、



「これが最初の一撃!!そこに形があるから無くすまで!!!ニルヴァーナ発射だあああ!!!!」



無慈悲な声が、木霊する。




同時、強大な魔力のビームが化猫の宿めがけて照射された。




「化猫の宿はやらせん!!!」




できるかどうかわからない。が、やるしかねえ!!




俺は右手を前に突き出し光皇護壁を出現させた、





「オオオオオオアアアァァァアア!!!!」



ダメだ!咄嗟に界法を組んだせいか不安定だ……




ドゴオオオオッ!!!!




直後、凄まじい衝撃波を残し、照射が終わる。俺の界法とニルヴァーナが相殺され、化猫の宿はなんとか守りきったようだ……が、



「持ってかれたか……」




〜ウェンディside〜



遺跡が振動したと同時、ギルドに向かって魔力が発射された。



「やめてええええええ!!!!」



どうして…私達のギルドを…!




「化猫の宿はやらせん!!」




声が。フーガの声が聞こえた。




「フーガ!!?」



無茶だよ!いくらフーガでもあれにぶつかっていくなんて!!



ドゴオオオオッ!!!!




衝撃波が止み、煙の向こうには無傷のギルドが見える。




「よかった……」




煙が晴れると、そこにはフーガがいた。



「っ!あれって……そんな……!」





フーガが呟いたのを、私は確かに聞いた。



「持ってかれたか…」




煙の先にいたフーガの、右肘から先が完全に消失していた。



〜ウェンディside out〜




痛え。頭がクラクラしやがる。



「自己再生は……可能だな。」




傷口の部分からパキパキと音がするので見てみると、骨がどんどん形成されていっていた。シュルシュルと筋繊維も絡みついていく。向こうの方でウェンディが物凄い驚いた表情をしていた。まあ無理もないだろうな、言ってなかったし。



「痛みもあんまり感じねえな、そういう仕様か?」



だがどうやらこの体、再生はできても血は作ってくれないようだ。



「やっべ、クラクラする…」


なんとか立つ事は出来たが貧血で目の前がチカチカする。



『みんな聞こえるかい!?誰か返事をしてくれ!』




頭の中に声が響いてきた。上空を見ると、天馬がよろよろと飛んでいた。



「俺だ、フーガだ。」


『フーガ君!大丈夫だったのかい!』



「なんとかね、右手は持ってかれたけど、修復は可能だ。」




『フーガ!!無事だったの!?ねえ!返事して!』




『あんたニルヴァーナ直撃してたでしょ!?いったい何があったの!?』




ウェンディとシャルルの声が念話を通じて入ってきた。耳がキーンってなるからやめて。




「防御魔法が不完全で防ぎきれなかった。ギルドは無事だ。俺の右手も再生中だ。つーか説明は後!急いでんだろ?」



『再生ってあんた…!』



「はいはい、詳しい説明は後な。で、ヒビキさんよ、どうかしたのか?」




『やっと見つけたんだ!ニルヴァーナの止め方を!!』




ついに見つけたか!いいタイミングだ!



『ニルヴァーナにある6本の足は大地の力を吸い上げ、それを中央のコアの魔水晶で動力にするんだ!』



「じゃあなんだ?中央のコアをぶち壊せばいいのか?」



簡単じゃねえか。




『いいや!足の付け根にある魔水晶と中央の魔水晶、全てを"同時に"壊さなければいけないんだ!』


「おいおい、同時にってどうやって…」



すると頭の中にゲージが現れた。



「20分?なるほど、これが…」



『そうだ。タイミングを計ってあげたいけどもう魔力がない。君たちならできると信じているよ。』




『無駄な事を…』



突如ノイズが入り、低く底冷えした声が響いてきた。




『誰だ!?』




「なんだ、死んでなかったのかブレイン。」



『てめえはあの時の金髪か。まあいい。俺はゼロ。六魔将軍のマスターだ。』




『六魔将軍のマスターだと!?』




『聞くがいい!魔導士たちよ!俺はこれより全てを破壊する!手始めにてめえらの仲間を3人破壊した。滅竜魔導士、氷の魔導士、星霊魔導士、それと猫もか。』




『そんな、ナツくんたちを…』



『6つの魔水晶とコアの魔水晶を破壊するとか言ったな!?俺は今そのどれか一つの前にいる!ハハハハ!俺がいる限り同時に破壊することは不可能だ!!』




ブツン、とゼロの念話が切れた。




『よくも仲間を……!!』




エルザの声が聞こえてきた。




『待って!今動ける魔導士が7人もいないわ!』



『わ、私破壊の魔法は使えません…』


確かにウェンディは使えないな。




『こっちは2人だ!』




右腕の方を見ると、あらかた修復は終えていた。皮膚はまだだが。




「手の修復は大体できた。俺もいけるぞ。」




『私がいるではないか。』



おお!おっさん!生きてたのか!




『まずい……念話が……』



「あと3人!誰かいねえのか!」




『グレイ、お前は誇り高きウルの弟子だ。こんな奴らに負けるんじゃない…』




リオンの声が聞こえる。




『私…ルーシィなんて大っ嫌い…ちょっとかわいいからって調子乗っちゃってさ……バカでドジで弱っちいくせに…でも死んだら嫌いになれませんわ…後味悪いから返事しなさいよ…』



シェリーもルーシィに呼びかける。



『ナツさん…』




『オスネコ…』



『ナツ……』




あんたらはこんなとこで倒れちゃいけねえ。だからさ、




「立ち上がれ!!妖精の尻尾!!」



『おう!!!!』



ナツの声が聞こえた。




『聞こえ……てる……』



『6つの魔水晶とコアを……同時に…壊す……』


続いてグレイも。



『運がいいやつはついでにゼロも殴れる……でしょ?』




ルーシィも続く。




『急がなきゃ……シャルル達のギルドがあるんだ………』




ハッピーもなんとか答えた。




『頭の中の地図に……番号を振った……全員どこへ行くか決めてくれ……』




そうだな、じゃあ



「俺はコアに行く。」



『1だ!!!』



『2!』



『3に行くわ!』




『私は4に行こう。ここから一番近いと香りが告げている。』



『教えているのは地図だ。』




いいツッコミだぜエルザさんよ。




『私は5に行こう。』




『では俺は、』




『お前は6だ。』




不意に誰かの声が聞こえた。誰だ?



ブツン!とヒビキの念話が切れてしまった。お疲れさん。後は俺らに任せな。




右手も回復したしな。




俺はひとっ飛びでウェンディ達のところへ行く。ジェラールとやらがいたが細かいことは気にしない。うん、後で事情を聞けばいい。




「フーガ!」




「心配かけてすまねえ。俺は今からコアへ行く。エルザ、それにジェラールだったか。ウェンディを頼んだ。」



「しかしフーガ、お前さっきの…」




「心配無用、むしろ暴れ足りないくらいだ。じゃ、行ってくる。」




と、強がっては見たものの、実際血が足りない。クラクラする。




「フーガ大丈夫なの?必ず帰ってこれる?」





「心配無用だっつってんだろ?大丈夫さ、問題はない。」




「コアは重要な部分だ。ゼロがいないにしてもなんらかの策を用意している可能性が高い。ノーガードではないだろう。」




と、エルザ。




「百も承知だ。今度こそ行く。」




そうして魔力を一気に開放した。




「フル・バーニアモード!!!」





ゴウッ!!!


全身が金色に輝き、魔力が吹き出した。




「ウェンディ達を頼んだ!」


そう言って中央の塔めがけ、他の人の目では到底見えない速度で飛んだ。




 
 

 
後書き
お久しぶりです!間があいてしまい本当に申し訳ございません!

今回のフーガの再生能力についてですが、イメージとしては鋼の錬金◯師のホム◯クルスのようなイメージです。(笑)


え?文字数が少ないって?……申し訳ないです。ここで切ったのには少し理由があります。次回、『ヤツ』が立ちふさがります。どうぞ、楽しみにお待ちください!

ご意見、ご感想等、とにかくジャンジャン寄せていただけるとありがたいです!今後の参考にさせていただきたいので『情け容赦ない』コメントをよろしくお願いします!

今回も読んでいただき、本当にありがとうございました!感謝の気持ちでいっぱいであります。それでは次回またお会いしましょう!