【腐】Happy Whiteday


 

注意事項

 本文という名の前書き。
 
 あてんしょんぷりーず

1. キャラ崩壊が半端ないです。
2. 山なし・落ちなし・意味なし
3. 残念な出来です。
4. 名前呼びです。詳しくは下記を参考にしてください。
5. 舞台はギルベルトの勤める高校。
6. ギルベルトは教師、菊さんはフラワーアレンジの仕事をしています。

 人名(参考程度に)

 ・日本 … 本田菊
 ・プロイセン … ギルベルト・バイルシュミット 
  ・イタリア … フェリシアーノ・ヴァルガス
                        ・・・ってところでしょうか。



                           それでもOKな方だけどうぞ!  

 

その1


「誰かいませんかー!」
「この時間は人が通らねぇんだよな…」
家庭科室に閉じ込められて数時間。
土曜日のせいか誰も来る様子がなく、俺たちは途方に暮れていた。
「何か方法ありませんかね…」
「今何時だ…?」
腕時計を見ると18時を過ぎている。
(もう少ししたら戸締りチェックのために警備員が各教室を回るから、最悪そんときに見つけてもらうしかねぇな…)
「あのさ」
菊に伝えようとした時、ふとあるものが目に留まる。
「なんでこんなに切り花があんだ?」
夕陽が差していた間は気付かなかったが、手元には薄い黄色の花がいくつも散らばっていた。
「ああそれ、授業であまったやつです」
ドアに向かっていた菊は、振りむきざたにそう言う。
「えらいたくさん、あまったんだな」
「皆さんが自由な発想でアレンジできるように、多目に用意したのです。そうそう、さっきあまったお花で、美術のフェリシアーノ先生にミニブーケをあげたんですよ」
「フェリシアーノ先生に? 何で?」
「ほら、ホワ…」
菊はハッとしたように言葉を切り、慌てて口を押さえる。
「そ、その…お兄さんのプレゼントにどうでしょうかって。ほら、お誕生日もうすぐですし」
「……」
(いま完全に『ホワイトデー』って言おうとしたよな。そして菊は、俺に気を遣ってそれを言わないようにしてる…ということは、冷蔵庫の奥に隠しておいた、俺様の力作ビーフシチューは見つかってないわけだ…)
内心ホッとしつつ、なんだか笑いそうになってしまう。
(菊のヤツ、口を押さえてやがった。嘘つくの下手過ぎんだろ…)
ついおかしくなってしまった俺は、掘り下げてつついてみようと思った。
「ホワ…なんだって?」
「え?」
「今『ホワ…』つったろ」
「い、言ってませんよ」
「いや、確かに聞いた」
「……」
「言ったよな?」
「それは…」
(…待てよ。今ホワイトデーのことを話題にしたら、俺からのサプライズ感が薄まっちまう。ちっ、追求したのは失敗だったぜ…)
「やっぱりフェリシアーノ先生と仲いいんだな…」
「え?」
「ミニブーケあげたんだろ?」
「ですからお兄さんに…」
「何で?」
「それはホ…」
また菊がハッとしたように口をつぐむ。
「会話がループしています…!」
(あせった顔もかわいいな…。しっかし俺様、根っからのいじめっ子だよな)
好きな子をいじめたくなる自分を戒め、話題を変えることに。
「それにしても綺麗な花だなー」
俺が切り花の方を見ると、背後で菊がため息をついた。
「呑気なこと言ってる場合じゃないですよ。私たち、ちゃんと見つけてもらえるんでしょうか」
菊にしては珍しく、不の感情が声に表れていた。
「講師に来てまさかこんなことになるなんて、夢にも思いませんでした…」
(ま、そりゃそうだろうな…)
俺は昼間見た、菊の授業の様子を思い出した。
 

 

その2

「あいつ、頑張ってんのかな…」
補習授業を終えた後。
俺はいつものように職員室に戻らず、家庭科室へと向かっていた。
(昨日からやたら緊張してたし。ちゃんと講師できてんのかよ…)
足早に家庭科室の前へとやって来る。
廊下の窓から、こっそり教室の中を覗いてみると――
「本田先生、花がバラバラになっちゃいます」
「ツルでうまくまとまらなければ、輪ゴムを使ってもいいですよ」
「せんせ―、これにはどんな色が合いますかね?」
「ちょっと色同士がぶつかっていますね…少し淡い色のお花を…」
(…何だよ、しっかりやってんじゃん。しかも生徒とも打ち解けてるし)
スムーズに授業を進めている菊を見て、少し驚いてしまう。
(でもそうだった。菊はこうやって誰とでも真っすぐ付き合うやつなんだよな)
微笑ましく思いながら、授業の様子を眺める。
と、その時、
「あれ、ギルベルト先生じゃないですか」
「……あ」
ドアの近くにいたモブ田先生と、目が合ってしまう。
「見つかったか…」
「きゃ~!」
俺に気付いた生徒たちが騒ぎ出しても、隠れることさえできず。
菊も呆気にとられたように俺を見ている。
「……」
(こっそり見るつもりだったんだけど…菊、すげーびっくりした顔してんな)
「どうかしたんですか? こんなところで」
苦い顔で頭をかく俺に、モブ田先生は声をかける。
「あ、いえ、その…補習授業が終わったので、どんなものかと様子を見に来まして」
「もしかしてフラワーアレンジに興味がおありとか?」
「まあその、はい」
その場をやり過ごそうと適当に返事をする。すると、教室から女子生徒が声をあげる。
「じゃあ先生も一緒にやろうよ!」
「私が教えてあげるからさ!」
「ずるーい!」
そんな言葉に便乗して、モブ田先生も俺に笑みを向けてくる。
「とてもわかりやすくて丁寧な授業ですよ。よろしければ見学していってくださいよ」
「で、では…」
この流れだ断るわけにもいかず、お邪魔することに。
 

 

その3


 教室に入り、菊の横を通り過ぎる瞬間――

「……」
「……」
(チラッと俺の方見た。なんて思ってんのかな…)
「ギルベルト先生、私のお花見て!」
「ずるい! 私のも!」
俺が教室に入り女子生徒たちとの距離が近くなってから、さらに騒がしくなったきがした。
「へぇ、うまくできてるな」
菊を意識しつつ、生徒と会話する。
「色のバランスもいいし、家に飾ったら綺麗なんじゃないか?」
「いいでしょー。本田先生のアドバイス通りやったら、うまくできたんだ」
「…へぇ」
思わず菊の顔を見る。目が合うなり、ふい、と目線を逸らされてしまった。
「すごく優秀な先生なんだな」
(頬がかすかに赤くなった。照れてやがるな)

俺はこの状況を、次第に楽しみ始めていた。
(菊と職場恋愛したらこんな感じなんだろうな……。周りにばれないよう、こっそり目で会話したりして)
「みんな、本田さんに聞きたいことはないか」
俺の企みなど知る由もなく、モブ田先生が生徒たちに呼びかける。
「せっかく来てくださってるんだから、どんどん質問しなさい」
「じゃあしつもーん」
一人の生徒が手をあげる。
「本田先生は、どうしてフラワーアレンジの仕事を選んだんですか?」
「やっぱりお花が好きだということと…」
(質問に素早く的確に答えている。こいつって意外と教師に向いているのかも)
「作るときに気をつけてることってありますか」
「そうですね…そのお花が飾られる状況を想像して、作るようにしています。例えば誰かにプレゼントしたいと思ったら、相手の笑顔を思い浮かべてみるとか。花束をもらうと、やっぱり嬉しくないですか? 相手の喜ぶ顔を想像すると、アレンジもうまくいきますよ」
(目をキラキラさせやがって…そんなかわいい顔すんなっての。って、仕事中なのにこんなに見とれて。俺って職場恋愛に向かないな…)
俺は菊や生徒たちにバレないよう、こっそり苦笑いを浮かべた。
 

 

その4

「本当に誰も通りませんね…」
(花をもらったら嬉しい、か…。そう言われたらプレゼントしたくなる。そうだ、ここにある花で…)
菊に背を向け、あまっている花を使ってブーケを作ることに。
(相手の顔を想像するって言ってたな。菊の笑顔……? っ! むちゃくちゃかわいい)
菊をイメージしながら、花束を作っていく。
(でもどんな色を組み合わせればいいんだ? この画集でも参考にするか)
熱心に作っていくうちに、いつの間にか自分の口元に笑みが浮かんでいるのに気が付く。
(こんな自分、今まで考えられなかったな。誰かの笑顔を見たくて花束作るなんて…)
「もう、師匠?」
(……あ)
俺の行動に気付いたのか、菊が不満そうに声をかけてくる。
「さっきから何をされているんですか?」
(まずい)
あせった俺は、慌てて画集のページをめくる。
「ふむ。俺様、芸術のセンスも優れているみたいだな」
「そんなこと言っている場合じゃないのに…!」
菊はへなへなと腰を下ろし、膝を抱えて座り込む。
「ハァ…」
(おいおい、体育座りって、かわいすぎんだろうが…!)
ついじっと見ていたくなる気持ちを抑え、
「菊」
「はい……?」
振り返った菊に、俺は花束を差し出した。
「本田せんせ―に言われた通り作ってみたんですけど?」
「……!」
「授業であまった花で悪ぃけどさ」
「これ…私のために、ですか?」
「他の誰のためだよ?」
床に片膝をついて菊と目の高さを同じにする。だんだんと顔が熱くなるのがわかった。
「俺からのブーケ…受け取ってください」
菊は心底驚いている様子だったが、嬉しさがこみ上げてきたらしい。とびきりの笑顔に、俺はハッとしてしまった。
(なんだよそれ…俺が想像していた以上の笑顔じゃねぇか! …直視できねぇ…)
「ま、俺は花束渡すなんてガラじゃねぇけどさ」
あまりに照れくさくて、わざとやさぐれてみる。
「たまにはいいだろ?」
「……」
「あれ、そうでもないって?」
「違います…言葉にならないんです…」
一度俯いた菊だが、顔をパッとあげると涙ぐんだ笑顔で言った。
「師匠、ありがとうございます…!」
 
 

 
後書き
 ……で、結局なぜ家庭課室に閉じ込められたのかは誰も知らない。その後二人がどうなったのかも誰も知らない。日付変わるまでに間に合いそうになく、カットさせていただきました。il||li▄█▀█●il||li

 やっと終わったー! 
 モブ田先生…。悪いですか! 名前思いつかなかったんですよ!
                                              
 最後まで書ききった小説第2号でした。ここまでよんでくださったみなさん、ありがとうございました!!