緋弾のアリア 憧憬の銃士


 

Episode 0 - All of the beginning

 
前書き
サボってましたすみません。
と、とにかく最新作ですはい。 

 
「ねえ、お母さん。僕、お父さんに会いたい。」

「!?」

6歳の誕生日を迎えたばかりの息子、雪和にそう言われ、母紅楼寺 沙奈江(こうろうじ さなえ)は驚愕する。

「ねえ、お母さん。お父さんって何処にいるの?僕にお父さんはいないの?」

息子がそんな発言をする度に、気はドンドン重くなり、同時になぜそんなことを自分に言うのかという怒りも込み上げてきた。

「ねえ、お母___」

パチッ

気づくと、沙奈江は雪和の頬を叩いていた。

「お母....さん?」

「!」

雪和は涙を浮かべながら頬を抑え、こちらを見ている。

「お母さん......?」

「雪和......」

「ッ!」

沙奈江が手を差し伸べると、雪和は怖がり、階段を上がって二階に行ってしまった。

「ごめんなさい.....雪和.....」

最後に沙奈江はそう呟いた。

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数時間後____

「雪和?入るわよ?」

「........うん.....」

沙奈江は息子の許可を得、部屋に入る。

「ごめんね?雪和.....」

「もう怒ってない?」

「うん......ごめんね?」

「・・・」

「よぉし、美味しいもの作って仲直りしようか。何がいい?」

沙奈江がそう言うと、雪和は目を輝かせて大きな声で言った。

「お母さんの作ったハンバーグ!!」

「わかったわ。じゃあ、買い物行こうか。」

「うん!」

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「ハッンバーグ!ハッバーング!」

息子の嬉しそうな姿を見て、沙奈江は落ち着く。

「とびきり美味しいのつくってあげるからねぇー?」

「うん!」

そう言い、沙奈江は挽肉のパックを手に取った。

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「〜♪〜♪」

雪和は挽肉のパックが入った袋を持って鼻歌を唄っている。

「あ、そうだ。」

沙奈江は何かを思い出し、雪和に駆け寄る。

「ハンバーグ♪ハンバーグ♪」

「雪和。」

「?どうしたの?お母さん。」

「ちょっと、銀行よらなくちゃ行けないから、車で待っててくれる?」

「僕も一緒に行く!」

「____わかったわ。」

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ハンバーグ早く食べたいな〜

雪和はそんな事を考えつつ足をブラブラさせながらATMを操作している母を待っている。

パリンッ

「全員手をあげろ!!」

「「「「「!?」」」」」

1人の男が銀行に入り、そう叫ぶ。
後ろには数名の仲間がいた。
それに従い、全員黙って手を挙げる。
その理由は、その男達が握っていた物にあった。

_____AK-47.......

世界で最も人を殺した銃として名高い名銃だ。
男達は全員黒の目出し帽を被り、手袋を付けている。

「お前もだ!ガキッ!」

「グワッ」

状況が理解できず、手を挙げて居なかった雪和はノースリーブに肩にタトゥーの入った男に腹を蹴られる。
すると数m跳んだ。

「痛......い......」

「やめて!その子の手を出さないで!」

沙奈江が雪和を抱え込むように庇った。

「んだ?このアマ!ぶち殺して____「おい、目的はそうじゃねえだろ。」

後ろの落ち着いた男がそう言うと、男は銃を下げた。

「速く済ませてズラかるぞ。____金を用意しろ。出来るだけ沢山。今、持ってこれるも金額全てだ。そうすれば、お前らに危害は加えん。うちの馬鹿がそこのガキを蹴っちまったが、まあいいだろう。とにかく早く用意するんだ。警察を呼ぼうだなんて考えない事だ。意味わかるな?通報するな。」

そう言い、その男は鞄を二つ置く。

「早くしろっ!」

「は、はい!!」

全員が動き出す。
すると____

ダンッ

「うっ」

一発の銃声が鳴り響いた。
雪和はその轟音に耐え切れず、耳を抑える。
撃ったのはあの落ち着いていた男だ。

奥で、眉間を撃ち抜かれた銀行員が倒れている。

「い、いやァァァァァ!!!」

すると、銀行は一気にパニック状態となった。

「黙れ!!」

男がそう叫ぶと、パニック状態に陥っていた全員が落ち着く。
そして男は続けた。

「通報するな、と言った筈だぞ?」

「ああもういい!こいつら全員殺して俺たちが直接ぶんどればいいさ!」

「おいやめ___」

ダダダダダダダダダッ

男は連射する。
カウンター内に居た銀行員はほとんどが死亡し、電話は破壊され、ガラスにはヒビが入り、ボロボロに落ちた。

「馬鹿野郎ッ!」

そう言い、タトゥーの入った男を落ち着いたあの男性が殴った。

「な、なにしやがる!」

「おい、もう時間がないぞ!サイレンの音が遠くで鳴ってる!」

「チッ!やってくれたな!」

「あぁ!!!計画が狂っちまった!!」

「金を詰め込め!出来るだけ多く!!急げ!」

「あ、ああ!」

男達は一斉の金を集め出す。

そして____

「今だ!」

一人の銀行員が一人の男を羽交い締めで押さえつけた。

「早く!銃を!」

「ああ!」

もう一人が銃を奪いにかかるが____

ダンッ

「グハッ」

もう一人に発砲され、男は倒れる。

「この野郎!」

「グッ」

羽交い締めされていた男は、後ろの男の顎に肘打ちを食らわす。
するとそのまま倒れた。
そして銃を下に向け___

ダダダダダダッ

連射した。

「どうする?こいつら、邪魔になるぜ。」

「殺すか......?」

「待て......」

男は一度止めたが__

「___止むおえんな。全員殺せ。せめてもの慈悲で一撃で仕留めてやれ。」

「了解っと。」

男が沙奈江に近づく。

「よぉ、子供想いのお母さんよ!」

そう言い、沙奈江の顔を蹴る。

「おい、今はそんな事してる暇h___「もうどうせ逃げれねえぜ。」

「_____わかっていたか。」

「ったりめえだろ。もう逃げられねえよ。」

「・・・」

「じゃあ、一度この女を犯していい思いしておくにが得策じゃねえか。」

「_____勝手にやってろ。」

その男は壁にもたれて座り込んでしまった。

「へへへ......」

数人の男が沙奈江に近寄る。

「お母さんを虐めるな!!」

「うおっ!?なんだこのガキッ!?」

雪和は男の足にしがみつく。
そして___

「はぐっ!!」

「痛ってええええええ!!」

思いっきりかんだ。

「このガキ!!」

「ぶはっ!」

雪和は思いっきり殴られ、数m飛び、動かなくなった。

「雪和!」

「おいおい、あんたは俺たちの相手してりゃいいんだよ!」

「チッこのガキッ!」

「グハッ」

男は更に雪和の腹に蹴りをいれた。

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その頃、街では強盗が入ったと言うことを聞き、一刻も早くその場から去ろうとする人達で一杯になっていた。

そこに、一人の男性が立っている。

身長は推定185cm。
黒い髪を靡かせ、アタッシュケースから伸びた紐を肩にかけている。

「なにか.....あったのか.....」

そうつぶやくと、男は現場へはしった。

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くらくら.....する.....
頭が痛い.....
吐き気もする......

でも....助けなきゃ......お母さん.....助けなきゃ......

必死に身体を動かそうとするが、雪和の意思は届かず、身体は全く動かない。

「!?」

唯一、視界が効いた。

目の前には、数名の男に強姦されている母親の無残な姿があった。

お母さん......

お母さん......

「......そろそろ殺すか。」

男は立ち上がり、AKを沙奈江に向ける。

「おいおい、もうちょい楽しもうぜ?」

「知るか、死体でやってろ。」

ダンッ

AK-47から放たれた7.62mmNATO弾は沙奈江の眉間を貫いた。

お母....さん.....?

死んじゃやだ......
死なないで.........

「ッ!?」

「おいおい、このガキ、まだ生きてやがんぞ。」

「おぉ、マジか。」

「知らん、殺しとけ。」

「無慈悲だねぇ、どうするよ?」

タトゥー男は、壁にもたれ座っている男に聞く。

「______勝手にしてろ。」

「へいへい。んじゃ、一思いに眉間を一発で。」

AKの銃口が雪和に向けられる。

すると____

パリンッ

「!?」

ダンッダンッダンッ

ガラスが割れ、3発の銃声が鳴り響いた。

「なんだぁ?」

「おいおい、少しはビビれよ。威嚇射撃だが。」

そこには、巨大な二つの拳銃を片手に一つずつ握った一人の男性が立っていた。
右手の銃は白銀に輝き、左手の銃は漆黒に輝いている。

「武偵だ。諦めろ。」

「武偵ッ!?」

「ビビんな!たかが一人だ。ぶち殺せ。どうせ俺たちも助からねえしな。」

ダダダダダダッ

弾丸が発砲されるが___

「どこ狙ってんだ.....」

その男性は体を少し逸らすだけで全ての弾を回避した。

「一々連射なんかしてっから、ライフングが削れてんだよ馬鹿共。」

すると、横で倒れている精液まみれの女性に目をやった。
眉間には風穴が開き、手はすぐそこで倒れている少年に向いている。

その少年____雪和もまた、沙奈江に手を伸ばしていた。

「母親か......」

「なめやがって!!」

再び発砲しようとするが___

ダンッ

巨大な拳銃から一発の弾丸が発射される。
巨大なスライドは後方へ大きく後退し、その隙間から黄金色に輝く薬莢が飛び出した。

「ぐあああああああっっ!!!脚が!足がぁ!!」

その弾丸はタトゥーの男の後ろにいた黒いベストを着た男の脚に直撃する。
足からは大量の違う噴き出し、今にも落ちそうな状態になっていた。

「おい坊主。」

雪和は必死に首をその男性に向ける。

「この人は.....お前の母親か.....?」

「そ......う......だか.....ら......」

「・・・」

「仇.....討って.......」

その男性は雪和のそばに落ちていた100円玉を拾い上げる。

「契約成立だ。」

「何言ってやがんだ!殺せ!」

再び発砲に入るが___


ダンッダンッダンッ

強盗が発砲する前に、その男性が数発発砲する。

「なん......だと......」

男達は一斉に倒れた。
見ると、全員眉間に風穴があいている。

「おいおい......武偵は人を殺せねえんじゃなかったのか?」

「ほぅ、仲間を助けず何やってんだと思ったら、こいつらの頭か。____まあいい。」

「質問に答えろ。」

「契約内容は______お前ら全員の射殺だ。」

ダンッ

再び一発の銃弾が発砲され、男の眉間を貫いた。

その男性が銃を上に向けると、大型のマガジンが重力に引かれ落下する。
そして新しいマガジンに変更し、安全装置(セーフティ)をかけて腰のホルスターにしまった。

そのまま携帯電話を取り出し救急車を呼び、生存者の確保に当たった。

「もう大丈夫だ。外に出ろ。」

「ありがとうございます......」

「ありがとう.....貴方は命の恩人だ。」

次々に生存者が出て行く。

「さて.....と。___坊主、立てるか?」

雪和は動けない。

「_____無理そうだな。しかも容態も結構ヤバい。_____救急車は待ってられないか。」

その男性は雪和を担ぎ、そとで下ろす。
そして外に置いてあったアタッシュケースを取り、中から医療箱を取り出した。

「____契約金は100円。これでお前の依頼は果たした。もう直ぐで救急車が来る。ここでお別れだ。じゃあな。」

その男性は立ち去ろうとするが____

キュッ

雪和は気絶しそうな状態でその男性の服を掴んだ。

「.....どういうつもりだ.....」

そして、雪和は何かを伝えようとして、気絶した。

「_____このまま放ってはおけないか......」

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「うっ......」

雪和は、病院で目を覚ます。


「やっと起きたか。」

側の椅子には、さっきの男性が座っていた。

「ありがとう.......」

「....依頼だ。感謝されるようなことじゃない。」

「でも.......」

「・・・」

暫しの沈黙の後、その男性が口を開いた。

「紅楼寺 雪和___それがお前の名だな。」

「どうして.....?」

「丸2日眠ってたんだ。調べるくらい出来る。」

「・・・」

「兄弟は居らず、祖父母もいない。そして親は______どちらもいない。親族はほぼ0。何処にもいない。つまり、孤児院に預けられても可笑しくない状態だ。」

「・・・」

「俺がお前を預かる。」

「え?」

「あんなとこにお前を預けたら、精神が崩壊する。それも確実にだ。だから、俺が預かる。」

「何を......」

北茅 俊一(きたがや しゅんいち)だ。よろしくな。」

そう言い、俊一は手を出す。

「・・・」

雪和はその手を無言で握り返す。

「お母さん......」

最後に、そう呟いた。

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3年後____

「俊一!」

「ん?どうした、雪和。」

「僕、俊一みたいになりたい!」

「俺みたいに?どういうことだ。」

俊一はそう言いながら笑う。

「なりてえのか?武偵に。」

「うん!」

「お前が武偵にね......」

俊一は雪和の身体を見る。

「小学4年生でまだ身長120cmがか?」

「ぶぅー!」

雪和は頬を膨らませて俊一を叩く。

「ハハハ、冗談だよ冗談。」

「俊一の馬鹿!」

「へいへい、馬鹿で結構。____で、本当に武偵になりてぇのか?」

「うん!」

「___わかったよ。お前を最高の武偵にしてやる。」

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「ハァッ!!」

雪和は俊一に殴りかかる。
それは受け流され、カウンターがくるが、雪和もそれを受け流し、そのままカウンター返しをした。

「違う。もっと鋭く、一撃で相手に致命傷を与えられるように打て。」

「う、うん。」

雪和はもう一度打つ。

俊一はそれを受け流した。

____凄いな、飲み込み早えぞこいつ。しかも手加減してるとはいえ、俺の一撃を3回目で受け流し始めた。
.....そうだ____いや、まだ早いな。

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2年後____

「ハァ!!」

雪和は俊一に向かってゴム製のナイフで斬りかかる。

「まだだ、先が曲がっている。真っ直ぐ突け。」

「セァ!!」

そして左手に持った2本目のナイフで再び斬りかかる。
2本目は木製だ。

「遅い。」

俊一はそれを軽く受け流す。
そのままカウンターをしようとするが。

「ッ!」

俊一は級に後ろに身体を逸らした。
すると、木製のナイフの刃が俊一の顔を掠めた。

「いい判断だ。だが、それは最後の手段であってそう簡単に使うものじゃない。」

スペツナズナイフ。
スイッチを押すことでバネの力により刀身を発射するという武器だ。

「ハァァ!!」

最後に斬るが、それは簡単に止められる。
そして___

「うわっ!?」

雪和の身体が宙を舞い、そのまま背中から落下した。

「くっ!」

再び雪和は立ち上がろうとするが、喉元には既に俊一がゴムナイフを突きつけていた。

「あの場合は受け身をとれ。でないとこうなる。」

そう言い、俊一は椅子にゴムナイフを置いた。

「TSCB?」

「ハァ.....誰かが勝手にそう言って広まっただけだ。これに名前はない。」

The Special Close Battle。略してTSCB。
俊一が独自に編み出した近接戦闘術だ。

1m〜5m以内での戦闘で優位に立つことができ、50もの格闘術をベースにすることで、様々な状況に臨機応変に対応できる。
武器はナイフに限られず、拳銃、銃剣や刀剣、槍を持った状態でも戦闘を行える技だ。

「雪和。」

「ん?」

「そろそろ、銃を使ってみるか?」

「いいの?」

雪和は目を輝かせて聞く。

「あ、ああ。___取り敢えずこいつを。」

俊一は一つの拳銃を渡した。

「これは?」

「H&K USPだ。いい銃だぞ。」

「僕、俊一が使ってるのがいい。」

「俺の?ありゃ50口径だぞ。お前みたいなチビが扱えるもんじゃねえ。」

「僕はチビなんかじゃない!」

「じゃあ小6にもなって身長僅か130cmって点をどうにかしろ。あと、これ高かったんだぞ?」

「ぶぅ〜」

「俺の銃か......そうだ、じゃああれはどうだろうか。」

「?」

俊一は家の中にはいる。

「俊一?」

付いて行くと、倉庫で何かを探していた。

「どうしたの?」

「お、あったあった。」

そう言い、俊一は埃被った一つの箱を取り出す。

「それは?」

「お前にぴったりの銃がある。」

そう言い、俊一は先程模擬戦を行った練習場へ移動する。

「?」

こいつだ。

そして俊一が箱を開けると、二つの銃が入っていた。
一つは黒で、もう一つは白のカラーリングだ。

「俊一の使ってた奴?___じゃない.....」

「いいや、俺が使ってた奴だ。」

「え?こんなに小さかった?」

「ばーか。昔使ってた銃だよ。」

そう言い、その二つをとって雪和に渡す。

「IMI JERICHO945。別名ベビーイーグル。お前にぴったりの名前じゃねえか。」

「僕は赤ちゃんなんかじゃないもん!」

「はいはい、まあこいつ以外だったらあれくらいしかねえぞ?お前はまだ武偵じゃない。だから本部からお取り寄せ〜、なんてことも出来ねえんだよ。」

「・・・」

まあ、そんながっかりするな。こいつはマグナムも撃てるから。


「マグナム?」

「あぁ....まだそこら辺の説明してなかったな.....まあいい。取り敢えず、あともう少してめえがデカくなったら教えてやるよ。」

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1年後____

ダンッ

ダンッ

二つの拳銃から発射された45ACP弾は50m先の的を貫く。
弾は、的の中心の赤い円に見事収まっていた。

「凄えな.....どう撃ってんだ?雪和。」

「ハァ.....ハァ.....え?あ、う、うん。銃口と銃身の向き、あと角度を計算して....でも、この計算するととても疲れるんだ.....」

「またバテてんな......まあいい。つかそんなことやってたのか.....あぁ、それと今日、武偵中の入学式だろ?行かなくていいのか?」

「え?」

雪和は時計をみる。
針は、8:30を指していた。

「もうすぐ始まる!俊一なんで言ってくれなかったの?!もぉ〜遅刻だよぉ.....」

「なんてな。送ってやるよ、来い。」

「う、うん。」

「雪和.....もうすぐお別れだ.....」

「ん?なにかいった?」

「____なんでもねぇよ。いくぞ。」

「うん!」

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来年のある日____

「ふぅー.....俊一、ただいま。」

雪和は家に入ると、違和感に気づく。

靴がない......買い物かな?

____俊一が買い物?
ありえない......じゃあ、依頼?
いや、依頼の時はいつも連絡をして呉れるはず....


「俊一!」

雪和は家中を探し回った。
寝室にもトイレにもいない。

どこ.....俊一!

「!?」

リビングで、雪和は「それ」を見つけた。

中央の机に、Jericho945が二つ、机にのっている。
スライドは磨き上げられており、雪和の顔がうつっている。
まるで鏡だ。
それを挟み込みように、両端に45口径のバレルを装備した特殊スライドも置いてあった。
そして、その間にマガジンに抑えられた一枚の紙が置いてある。

『すまない、雪和。俺はこれ以上、お前と一緒にいることが出来ないんだ。今日でお別れだ。最後に話したかったか?


泣くなよ?お前は紅楼寺 雪和。紅と白。その二つの意味が名前に入った強い男だ》

「俊一......?」
『この銃はお前にやる。お前には武偵の才能がある。こいつでお前はお前の人生を生きろ。俺を忘れるんだ。』

「出来ないよ......そんなの......」

雪和は涙を流していた。

『多分泣いているだろうな。お前のことだ。簡単には忘れられないと思う。だが、忘れるんだ。忘れろ。』

「出来ない.....出来ない.....」

次第に肩がしゃくりあげてくる。

『その家は俺の物だ。どうしようとお前はなにもしなくて大丈夫だ。だから、いままで通り生活しろ。』

「そんなこと言われても.....」

『やれ、やるんだ。お前になら出来る。』

「出来ない......戻ってきて.....俊一.....」

『お前は、最強の武偵(ナンバーワン)である俺が育てた。強く生きろよ。





俺の息子。』


「!?」

その一文で、雪和は大泣きしてしまう。

そして、雪和は一晩中泣いた。泣き続け、俊一に言われた通りに強く生きることを決心した。

彼は、最強の武偵(ナンバーワン)の息子だ。 
 

 
後書き
なんでしょう、こう、自分の思ってた感じに書けませんね。 

 

Episode 1 - Armament Detective

 
前書き
申し訳ありません。
少し変更を加えさせて頂きます。
北茅 俊一の編み出したTSCBという近接戦闘術ですが、SCBという名前に変更させていただきます。
正式名称はthe Special Close Battleと、変わりませんのでご安心下さい。
申し訳ございませんでした。 

 
3年後、雪和は見事東京武偵高校に進学した。
あの日から、彼は日々鍛錬をし続け、戦いを学び、精神を強くし、性格を変え、己の腕を磨き続けてきた。
成績も優秀な上に高い戦闘力を有した彼は女性からの憧れの的だ。
しかし、そんな彼にも重大な問題があった。

「10cm.......だと......!?」

雪和は膝を着く。

「ん?どうした、雪和。目が死んでるぞ。」

「____坂上か.......」

雪和は顔を上げ、そうつぶやく。

坂上 智樹
東京武偵高校に入学し、コミュ力の低さにより授業初日から全く話せずにボッチだった雪和に初めに話しかけた人物だ。
雪和の唯一の友人である。
しかし、彼もコミュ障である。

「10cmなんだよ.......」

「股間の武器g___ブフォッ」

智樹が言いかけたところで雪和が智樹の脚を蹴り、転ばせる。

「いってえ、なにすんだ!」

「なにすんだじゃねえよ!なに下ネタ言ってんだこの屑!」

「ほぅ、この俺に喧嘩を売ろうというのかねおチビちゃ__」

シャキッ

気づくと、智樹の喉元にナイフが突きつけられていた。

「身長差があっても腕を伸ばせば喉に届くんだよ調子乗ってんじゃねえぞああ!?」

「す、すんません。」

「グッ......なんで......なんで10cmなんだよ......」

「いやだからさっきからなんなんだその数字は。10cmってなんのことだy__「小学6年生から高校一年生になるまでに伸びた俺の身長に決まってんだろ一々言わせんな!!!」

そういい、雪和は蹲ってしまった。

「そいつは悪かった......い、いまのお前の身長は......?」

「.....................140cmジャスト.........」

「ブッ」

それを聞いて智樹は吹き出す。

「ブハハハハハ、140、140って!!おかしい、おかしいだろ!ハハハハハ!!」

シャキッ

気付くと宏大は雪和にマウントを取られ、喉元にナイフを突きつけられていた。

「このまま喉を掻き切られたあと内臓をひきずりだされるのと、心臓を串刺しにされてから内臓をひきずりだされるの、どっちがいい?」

にっこり笑顔で雪和は問う。

「いや他の選択肢ないんですか!?」

そう、彼の問題。
それは身長。
身長140cm、体重44.8kg。

鍛え上げられた肉体と優秀な成績。
それと引き換えにかれは身長を犠牲にした。

女性受けがいいのも、『かっこいい』が理由では無く、『可愛い』がその正体である。

「ま、まあ落ち着け。な?も、もうチャイムが.....ってあれ?」

智樹は辺りを見回す。

「いない.....っていた!つか速ッ、速え!」

そこにはダッシュで教室に向かう雪和の姿があったという。

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「お〜い、生きてるかー?坂上」

「ぅ......ん......?雪和か......もう5限目?」

「ああ、しかも今日はランク付けの試験だ。とっとと行かねえと、Fランクにされるぞ。」

「まじか!早く行かねえと!!」

そう言い、坂上は勢いよく立ち上がる。

「じゃあ、いくか。」

「ああ!」

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「悪く思わないでくれよ?チビ助。」

現在、戦闘能力を確認する為にペイント弾を装填した銃による模擬戦闘を行っている。
雪和の相手は目の前に立つ身長約170cmの男だ。
体操服の名札に坂本と書いてある。

「だれがチビ助だ.......」

「ん?なんか言ったか?」

「内臓引きずり出すぞゴラ......」

「?」

雪和の声が聞こえないのか、坂本は首を傾げている。

「では、始め!」

椅子に座った教師がそう叫ぶと同時に一発の銃声が鳴り響く。

「えっ......?」

坂本は額に激痛と違和感を感じ、額に手を当てる。
額にベッタリとついた粘状の液体を掬い、その手を見ると、ピンク色の液体が付いていた。
雪和の方を見ると、H&K USPを構えている。

「そ.....そこまで!」

教師も戸惑いつつその声をあげる。

「ホルスター.....ドロー......?全く.....見えなかった.....」

「もういいか?」

雪和は教師に退室の許可を求める。

「あ、ああ.....」

その教師は力無く答えた。

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観戦していた周りの生徒がザワつき始める。

「まじか、雪和、あれなんだよ!」

智樹が興奮した様子で雪和を問い詰める。

「なにって.....ホルスタードロー。知ってるだろ?カウボーイとかがやる.....」

「そんなことを聞いてるんじゃない!なんだあの速さは!?何をした?!」

なにを興奮しているんだこいつは......俺が何をした?

雪和は背を向けて歩き出す。

「待てよ雪和!」

その声で雪和は足を止め、智樹に向き直る。

「なんだ?坂上。」

「紅楼寺 雪和。お前は一体何者なんだ?!」

「____北茅 俊一(ナンバーワン)の息子だ。」

そう言い残し、雪和は再び歩き出した。

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数日後___

「よ、雪和。」

バス停へ向かう途中、雪和を見かけた智樹は、そのまま声をかける。

「ん?坂上か。」

「・・・」

智樹は雪和が肩から下げているアタッシュケースを見る。

「なあ、雪和。」

「なんだ?」

「なぜこいつをいつも肩から提げているんだ?」

そう言い、智樹がそのアタッシュケースに触れようとしたその時。

「触るな!」

そう叫び、智樹の手を弾く。

「雪和.....?」

「す、すまない。」

「いや、俺も悪かった.....それはなんなんだ?」

「____形見だよ。」

「北茅 俊一のか?」

「____詮索はしないでくれ。」

「.....悪かったな。」

「いや、大丈夫だ。____いこう。」

「そうだな......」

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「このように、数式は_____」

教師の話を聞き流しながら窓の外を眺めている。

俊一......彼を探すのなら、やはり強襲科(アサルト)ではなく探偵科《インケスタ》に入るべきだったな......
____いや、俺は俊一を探したいんじゃない。俊一の背中を追いたいんだ。
いつまでも......いつまでも......

「紅楼寺。」

教師に名を呼ばれ、雪和はそちらの方に顔を向ける。

「この問題の答えはなんだ?」

黒板をみると、(x+5)²と書かれている。

「x²+10x+25」

「正解だ。だが、ボーッとしてはいかんぞ。」

「・・・」

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「おい、坂上。起きろ、坂上。」

「ん......?雪和か......どうした......?」

「とっとと着替えろ。身体検査だろバカ。」

「ぇ......ん......・・・」

暫しの沈黙の後。

「だあああああ!!今日身体検査じゃねえか早く行かねえと!!」

「だからそうだつってんだろ。とっとと着替えろ。」

「おう!」

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雪和はストレッチをしながらすぐそこで何かの書類を眺めている2年の先輩をみる。
おそらく自分達の名簿だろう、と雪和は想定した。

「坂上。」

「ん?なんだ?」

「いくら見てもその壁は透けない。女子のブルマ姿を見るのは諦めろ。」

「なっ!?なぜバレた!?」

「さっきから仕切りの壁ガン見してんじゃねえか。しかも向こうは女子が身体検査を受けている。」

「・・・」

「整列しろ。」

2年の先輩が声をかけると雪和と智樹、そして他数名の男子が集まる。

「まずは身長測ってもらう。」

「雪和、いくつだ?」

「ん?122.7だな。」

「いや嘘つくんじゃねえよ!!」

「いやだって、俺の目にはそう映ってる。」

「自分の身長気にしてるからって他人の身長まで変更するのやめてもらえません?!」

「チッ」

「いやチッ、じゃないから!ね?!ね?!」

「177.8cm。死ねよ.....」

「いや最後のおかしいだろ!!」

「ケッ、とっとと測りやがれ蛆虫。」

「いや人間だよ!むしじゃないよ!」

「そこ、うるせえぞ。」

「は、はい.....」

「ほら、注意された。」

「いやあんたが悪いだろ今のは......」

雪和は身長計の台に乗る。

「140だろ?わかってんだよ。」

「ああ....ええっと、ん?」

「どうした?」

「141cmだぞ!よかったな!」

「マジで!」

「嘘。」

「内蔵引きずりますよ?」

「すんません.....」

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各自に身長に会った銃が配られる。

「まあ、なんだ。俺の身長が低いことはわかっている。だが......なんでG11なんだよ!」

「いやお前小せえし。それくらいしかもてねえだろ。」

「小さくて悪かったな!もっとあるだろカービンとか!」

「いやそれすら持てなさそうだからこうなってんだろ。黙って付いて来い。次は視力検査だ。」

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「右......?左......右斜め上.....いや、右だな......」

視力検査では銃のスコープを覗き、試験官がさした円の空いた部分を口に出して言うという形で行われる。
しかし、雪和はそこまで目が良くない。

「見えん......」

「紅楼寺 雪和、1.2、1.3と.......次。」

「右、下。上。右斜め上。左斜め下。下。上。」

「まじか......」

指された円を次々と言っていく智樹を見て雪和は感心する。

「坂上 智樹。2.5、2.8。目がいいな。」

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「グッ......これは.....キツい......」

「同感だ......」

雪和と智樹、他数名は全方位に回転する椅子に座っている。
既に2名が酔いによって瀕死になっており、雪和と智樹も中々マズイ状況に陥っていた。

「あと5分だ。」

「あ、ああ.....」

「了解した......」

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「ぐあ.....死ぬ.....これは酷い....」

「生きているか.....坂上?」

「あ、ああ......なんとかな......」

「てめえら大袈裟過ぎんだよ。あと少し休んだら、次は身体能力を見る。わかったな?」

「あ、ああ.......」

「大丈夫だ......問題.....ない......」

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「うーし、復活したみてえだな。全員、とっとと武器を持て。一人づつ俺のかかってこい。これは俺達のストレス発散も兼ねている。頑張れよ。」

「じゃあ、俺が行こう。」

智樹がそう言い、M92Fにマガジンを挿入して出てきた。

「じゃあ、開始!」

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「負けました。」

「ああ、数十秒で終わったな。」

「雪和.....俺はもうダメだ.....幸運を......祈る......」

「うっせとっとと起きろ。」

「グハッ」

雪和は倒れている智樹の腹に踵落としをかます。

「し.....死ぬ......本当に.....死ぬ。」

「じゃあ、次は俺だな。」

「無視ですかぁ!?」

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「かかってこい。」

そう言い、その男は拳銃を構える。


「わーったよ。」

「ッ!?」

雪和は速攻で距離を詰め、そのまま顔にストレートをかます。

「グッ......!」

「やるじゃねえか.....ならこいつはどうだ!?」

二発目の拳を受け流し、関節技に入ろうとするが、雪和は投げられる前に側転で抜け出し、ついでに顔を蹴る。

「チッ」

「どうした?俺はまだ銃すら抜いていないぞ。」

「なめてんじゃねえぞ!」

そいつは一気に距離を詰め、パンチを繰り出すが、それは受け流される。
そして視界外からハンドガンで発砲する。
しかし、雪和はそれすらも読んでおり、簡単に回避すると、相手に背を向ける形になった。

「こいつで終わりd___!?」

そのまま反撃に出ようとした男が止まる。
その男の顔には、銃口が向けられていた。
雪和は戦闘中に全ての行動を計算し、最終的にこの形まで持っていくことに成功した。

腰の後ろで構えられたH&K USPの銃口は眉間に直撃するコースで向けられている。

「・・・」

そのまま雪和はUSPをレッグホルスターにしまい、そいつに背を向けた。

「凄え.....」

「あいつ本当に一年か?」

「上級生をあんなあっさりと......」

「本当は教師だったりしてな。」

雪和の功績に、周りはざわめき始める。

____次からはわざと負けよう。

雪和は硬く誓った。

「俺に構わず、続けてくれ。」

「・・・」

そいつは立ち上がり、再び下級生の相手をし始める。

「あそこは負けとくのが筋ってもんだろ?」

「ああ、今は後悔してる。わざと負けてりゃ良かった。」

「ん?おいあれ。」

智樹が突然向こう側を指す。

「ん?」

そこを見ると、金髪の女子と巨漢の男子が試合をしようとしていた。

「女子vs男子だぜ。どう思う?」

「どうって.......人数が足りなかったんだろ。」

「ちげえよ、どちらが勝つか、ってことだ。」

「・・・」

雪和は暫く考えた後、女子の方をさした。

「ん?どうして女子なんだ?」

「____あの男子、MOB感がぱないから。」

「?」

「覚悟しろよ。うおりゃああああ!!」

その大男は腕を上げて接近を試みる。

馬鹿だな。ありゃ腹が丸出しだ。
相手がナイフを持っていると想定すると、速攻で死ぬぞあいつ。

「フッ!」

「ッ!?」

突然、その金髪の女子は床に両腕をつき、そのまま両脚で大男の腹を蹴って、後方へ蹴り上げる。

「まじか.....あいつ本当に女子かよ。」

「やるな。」

「てっめえ!」

その大男は胸ぐらを掴むと同時に脚を掛けた。
それにより女子の方も倒れる。

成る程、どさくさに紛れて脚を掛ける作戦か。
野蛮で分かりやすくはあるが、実戦では使えるかもな俺は絶対使わないが。

「ッ!」

次の瞬間、その女子は大男の腕を掴んで後方に一回転し、関節技をかけた。

「SCB......?」

「ん?なんだって?」

おっと、声に出てたか。
それにしても、あれは関節技への反応が遅れた際のSCBの抜け出し方だ。
俊一はあれを取り入れたのか。

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「・・・」

「雪和。」

智樹が声をかけるが、雪和は反応しない。

「おーい、雪和くーん?」

「ん、え?あ、ああ、坂上か。どうした?」

やっと雪和が反応した。

「さっきからどうした?考え事か?」

「ん?いや、そうだな......」

「____それに、お前試験の時、後半手抜いてたろ。」

「?」

「ほら、絶対あそこで撃てば勝てるって所も撃たなかったし、殆ど銃口を額や心臓に向けただけだったじゃないか。何故だ?お前ならSくらい普通だろ。」

「アホか。俺は別に格付けされたいわけじゃない。Sランクと称されたところでどうでもいい。ただ周りに群がってくる連中が面倒なだけだ。それに____」

雪和は言葉を途中で切った後に再び口を開く。

「いやなんでもない。」

「いや絶対何かあるだろ____ん?」

智樹が話していると、前方に黒い背広を来た老人が立っているのが見えた。

「あの人は.....」

「じゃあな。」

「え?お、おい!雪和!_あいつ珍しく一緒に下校してくれたと思ったら....ん?」

愚痴っていると、雪和があの老人の所へ言っているところに智樹は気付いた。

「知り合いだったか.....?」

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「すまないな、石澤さん。」

「いえ、私は俊一様に使えてる身。あのお方がぼっちゃまを預かると言うのであれば、ぼっちゃまの身の回りのお世話も、私がやるというのは当然の事です。」

「ぼっちゃまというのは止めてくれ。」

この人は石澤 光輝さん。
俊一に使えていた執事だ。

元々、俊一は格付けされるのが嫌いだった。
だから、ランクも最高位のRになる事を嫌っていたという。
『そんなもんで人の価値観決められんのはごめんだ。』と言っていた。

しかし、Sランクという物を蹴るという事は武偵という役職すらも破棄する事になる為、どうにでもできなかったらしい。
俺の前でそう愚痴ってた。
豪邸に住むのも嫌っていた為、普通の住居に暮らしていたが、ある人物がそれを良く思わず、せめて執事の一人くらいはつけろということで石澤さんが選ばれた。

彼は、俊一がいた頃から俺の身の回りの世話をしてくれている。
食事も作ってくれるし、必要な物も用意してくれる。
勉強でわからない点があれば教えてくれるそうだが、小学校の時点で俊一に高校の勉強までマスター出来るくらいには叩き込まれているため、それをしてもらったことは一度も無い。

そして彼をつけた『ある人』だが.....
それは俺にもわからない。
俊一は教えてくれなかった。

「ぼっちゃま、お乗りください。」

そう言い、石澤は車の扉を開ける。
リムジンとかではなく、黒色のワゴン車だ。

「ありがとう。」

そういい、雪和は車に乗り込んだ。

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数日後____

「おーい、坂上ー、おきろー。」

「ぅ......っく、ん?雪和....もう4限目終了か?」

「ああ、とっとと行くぞ。この前お前放ったらかしたら俺が怒られたんだから。」

「へへへ、そいつぁ、すまねえぜ。」

「誰だよ.......いこう。」

「ああ。」

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「今回もバンバン撃つだけだろ?あぁ.....面倒臭い。探偵科(インケスタ)志望すればよかった.....」

そう愚痴りながら、智樹は大型自動拳銃、H&K Mk23にマガジンを挿入する。

「そう言うな。腐ってもAランクだろ。行くぞ。」

「Aランクだけどさぁ......モテなかったじゃん......」

そう言い、智樹はへこむ。

「それに比べて雪和はいいよなぁ、モテモテで。」

「カッコいいとかが理由ならよかったな。残念ながら可愛いだ。」

「まーたまたそんな事言っちゃって。Sランクのお前がモテない訳ないだろ?」

「Aだ馬鹿。」

「いやわかってるがよ.......なんで手抜いたんだ、やっぱり納得いかない。」

「お前は納得しなくていいだろ。」

雪和は、ショルダーホルスターにH&K USPを入れる。

「ある。」

その疑問に、智樹は自信満々に答えた。

「な、なんだよ。」

「お前と連んでいる俺におこぼれがこない。」

「お、おう。」

雪和は若干引きながら上着を着た。

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「ん?そっちは射的場じゃないだろ。どこ行く気だ?」

雪和が違う道を行っている事に疑問を感じ、智樹は雪和に問う。

「お前が射的は飽きたって言うから依頼でも受けようかなと。」

「あぁ、成る程。それなら俺も行こう。」

「まあ、一日中寝てるお前は嫌でも依頼こなさないと駄目だろうな。」

「まあな。」

智樹は誇らし気に答える。

「で、何行くんだ?」

「ん?これでいいだろ。」

雪和は内容も見ずに取ったためわかっていない。
紙を広げて依頼内容を見る。

「えーっとなになに......集団強盗犯の逮捕依頼.....?」

強盗犯という文字に雪和は過剰に反応する。

「なんかあったのか?」

「いいや、なにも。で、内容が......近年多発している連続集団強盗犯の逮捕を依頼します。」

その一言で二人は悟った。

「「面倒臭い。」」

「よし、雪和それ戻してこい。」

「え?戻せたっけ?」

「?戻せるだろ。」

「いや、なんか戻したら駄目的なルール無かったか?」

「いやないだろう......ってなんかあった気がするな....」

そう考えていると、近くを二人の女子が通る。

「そうだ、雪和、あの子達に聞こう。」

「コミュ障の俺らがどうやって?」

急に現実を突きつけられ智樹は自身の性格に絶望する。

「盲点だった......」

「つまりこれは.....」

「行かなきゃならないやつだな......」

「まじかよ.....」

「そうだ、別に全員逮捕しなくてもいい。首謀者だけやれば!」

智樹が提案する。しかし。

「武偵憲章第8条、任務はその裏の裏まで完遂すべし......」

「二次被害の予想......」

「そうだ......」

「詰んだな。」

「ああ、積んだよ。」

雪和達は歩き出した。 
 

 
後書き
はい、8500字以上を目標にしているので投稿ペースは結構遅めです。