IS アンリミテッド・ストラトス
プロローグ
前書き
思い付きで書いた話
1
流れ込んでくる膨大な情報、驚き慌てふためく白衣の男女、そして歓声が上がるなか走り出す。
これから受け入れなければならない孤独や不安に押し潰されないように。
よくよく考えてみると、幼少期の些細な出来事、中学校での後半2年間が神様に仕組まれたと感じてもおかしくない。
それらのある出来事1つ1つがこのための伏線だったかのように思えた。
現在所属している高校を飛び出し、暗闇のなか大自然に一切の躊躇もなく飛び込む。
心の暗さと対照的に夜空は美しく眩き、心臓の鼓動とは正反対に周囲は恐ろしいほど静かである。
そんな中、ある一声が静寂を引き裂いた。
『やあやあ、君が二人目の男の子だね?』
突如として現れた気配に対して俺は咄嗟に距離をとる。悪意は感じられない。
月の光に照らされた瞬間、思わず体が硬直した。
篠ノ之 束、天才、天災であるが故にかなりぶっ飛んだ性格をしていて、キャラ作りで冷徹な部分を隠しているチートと呼ぶのに相応しい女性、そして自分で凡人たちに歩みより、夢と言う翼を折られた悲しい少女。
なにより、この世界の中心を生み出した張本人であり世界の歪みの元凶。
「沈黙ってことは肯定だよね、それに私の持ってる機械もきちんと作動しているし。いやはや、この私にも分からないことがあるなんてね~
で、何をそんなに身構えているのかな?」
取り敢えず、人格破綻者のモルモットにされる前にやらなければならないと感じた。
瞬間的に跳躍し、先程の倍の距離をとる。
彼女の言葉を信じるならば、天災は細胞レベルまでも可笑しいらしい、笑えないレベルで。
「別に獲って持ち帰って解剖するって訳じゃないんだけどな。
束さんは単純に君に恩返ししに来たんだよ。」
相変わらず掴みとれないふわふわした口調で依然として話をする天災を前にただ立ち尽くすことしかできない。
「束さんは君という個体に興味があるんだよ。
昔も、今も。
いっくんやちーちゃん、ほうきちゃん意外の人で初めて興味を持ったよ。
私と似ているようで似ていない。
ほうきちゃんを変えて、束さんが欲しくて仕方なかったものを簡単にてに入れさせてくれた
『冷徹』にして『非情』にして『最狂』と呼ばれていた君にね。」
2
俺の態度か、家の仕事の背景か、社会の女尊男卑の影響か、理由はともかくいじめではないにしろ俺としてはひたすら人の悪意を感じて生きていた。
しかし、友人がいないと言うわけでもなく、無視とかそういう程のものでもない。
ただ単に幼少期特有のあいつウザいな、だから少し嫌がらせしようぜ、というものに一番近かったかもしれない。
小さいながらにふと心の中に黒雲がよぎることが多々あった。
なんとなく興味本意でついていった姉が通っていた武術場。─剣術、空手、柔術、護身術、合気道等々様々な武術を取り扱っていた─その場所で、俺は『冷徹』にして『非情』にして『最狂』へ至る異質な才能に初めて気付いた。
しかし、『冷徹』にして『非情』にして『最狂』という中2めいた肩書きは、本当のところ否めない、皆が持っているであろう黒い感情が他の人より浅い場所にあって、どこかが悪い方向にが異なっていた。
異質な才能があったのは事実で冷徹というところまでは自負しているけれど、非情で狂っていることに関してはどうしても受け入れられなかった、本物の非情で狂った人物にならないで済んだのは本当の意味で周りの人達にめぐまれていたからに違いない。
最初に気付いたのは術場の先生、何かがおかしい口癖のように呟いていたと姉は言っていた。
何かがおかしい、その違和感は時間が経つにつれていつかは確信に変わる。
空手の組み手をしていたとき、相手の子が呟いた一言が確信に変わったらしい。
─何ではいらないんだよ
そう、見事なまでに、恐ろしいくらいに決定打がはいらない、当時相手を攻める気がなく、痛いのが怖くてひたすら守りに徹していたのは記憶に残ってはいる。
先生が驚いたのはその事実を知った後の俺の動きだったらしい。
先生曰く、体捌き、とっさの判断力、反射で避けた後の対応が普通でないとのこと。
このとき小学生2年生で詳しいことはあまり覚えていないが、このときはまだ天才少年だったのだ。
冷徹と呼ばれ始めたのは3年生の時、冷静に攻撃を避け続け一瞬の隙をついて決定打を決める、そういう戦い方を冷徹というのは至極当然で今思い返せばそう呼ばれていたのも納得がいく。
非情で最狂となったのはただ一回の過ちで、その一回の過ちは天狗になっていた俺にとってはなによりもいい薬であり、自分の中の黒いものの正体を認識した最初の出来事。
そして、その日から自分が興味あるもの(人や物事)意外には全く興味を示すことがなくなり、寧ろ拒絶し始めた。
3
なんやかんだで順調に成長していった結果、国立宝束中学校に進学することに決定した。
現在の通称『Is学園への一番の近道』今までの通称『日本最高峰校』、この学校は高水準での文武連動、もしくはどちらかに偏りのある者、砕いて言えばスーパーエリート、脳筋、変わり者の3つの人種が混在する場所である。
もちろん俺は脳筋タイプ、この学校では下の中をさまよっているため武に特化するしかないのだ。
最大の特徴は、アメリカンなスタイルの部活である。兼部ある程度オッケー、転部も同じくオッケー、だから熱い青春ドラマは余り繰り広げられることは滅多にないが結果が全てのこの場所ではやはりある程度の緊張感は存在する。
今までの武術専門だった俺は、サッカー、テニス、野球、等々様々な面白いことが見つかって非常に充実した毎日を送っている。
自由なこの学校だからこそ─そもそもここに入ったことで人生は大きく変わるのだが─オールマイティな経験を積み上げることが出来たのだ。
そして、最大の転機が訪れる。
俺が中学校2年生の時の話だ。
「…篠ノ之、箒、です。よろしくお願いします」
第一印象は『大和撫子』、一文字で表すのなら『和』そんなひとつしたの少女との出会いが何かを変えた。
見た感じ、人付き合いが苦手で集団から孤立する傾向があった。余り対人関係は得意ではないのかもしれない。
そう思って俺の滅茶苦茶余計なお節介で─この学校ではちゃんとした人間関係を築いてきたので─少しずつ周囲に溶け込むようになり、友人と買い物に行くようにまでなった。
何かと暴力的な態度を取ることが多かったが(俺が主に原因で)、それを自分の悪い癖であると自覚するようになり、次第にその傾向も薄れてきているようにも思える。
姉である束がISを発明して以来、家族はバラバラになっている状態らしい。。小学4年生の時から政府の重要人物保護プログラムにより日本各地を転々とさせられていてこの学校で8度目の転校とのこと。後に(もっとも保護(監視)が必要な)束が失踪してからは執拗な監視と聴取を繰り返されており、心身共に負担を受け続けてきた。
そこで政府の優しい方がメンタルケアのため日本一警備が厳重でルールが特殊かつ長期滞在を兼ね合い、IS学園に反強制的に入れさせるための処置らしい。
いい判断なのかどうかはわからないけれど、本人としては納得がいっているそうだ。
そうした過酷な生活の影響からか、カッとなって暴力的行動に出易く、力に溺れて自分や周りを見失うといったこともあり本人も気にしている。
不思議と彼女とは共通点が多く─力に溺れるとか─、本職も同じで話してみると気が合った。
終いには、本当の妹のように思ってしまったほどに。
─その結果の余計なお節介で怪我をすることが多かった。─
一番の変化は彼女自身のことで、比較すると怒られるのだが、姉が天災であるように彼女もそんなに頭は悪くない。寧ろいい方だ、女子必修のIS関連の学問を学ぶことによって認識も変化し、今では関係も良好だとのこと。
似すぎていた彼女の変わりように、俺は羨ましく思う反面、とても嬉しかった。
4
「やはり先輩は女性に凄く人気があるな!」
アパートから出る前日、段ボール積み重なった部屋で箒と談笑していた。
「それならお前だってスッゲェ人気じゃねえか、ほらこの間のやつ、瀬戸山だっけ?」
いやいや、私には心に決めた相手が、ハイハイ
いつもの下りを終えて、箒は思い出に浸りながら問いかけた。
「なぁ、先輩。初めて会ったときのことを覚えているか?」
「あぁ、もちろん。いきなり突っかかってき上がって…ビックリしたさ。」
「すまない、けれどビックリしたのは私だって同じだぞ。まさかあんなに怖い思いをするとは思わなかった。」
「ま、生憎俺は時代と違って男女平等だからな。」
「…先輩はもう少し女性に対して思いやりを持たないと、こんな時代なのだから。」
「こんな態度が取れるのってお前だけなんだぜ?」
若干頬を赤らめた妹分は、複雑な表情をしていた。
「さて、寮の門限はもう少ししかないけど・・・送ってやろうか?」
「…お願いします。」
寮まで送ると言ってもほとんどの目と鼻の先、最後の時間を噛み締めるように、歩調は二人とも遅かった。
「先輩、本当にありがとう。こんなこと言っては失礼かもしれないが、私にまともな兄ができたと思い本当に嬉しかった。」
「奇遇だな、俺も同じような奴がいてほっとしたよ。本当の妹みたいに思っていた。」
「何故だか知らないが、先輩とはまた近いうちに会う気がしてならないのだ。」
「お前の感は当たるからなぁ、でも今回は流石にな」
少し間が空いて、箒が微笑んで、最後はそれだけで充分だった。
「先輩にはまだまだお世話になると思う。だから、その…きちんとメールには返事をしてくれ。」
「あぁ次こそはテッペン獲れよ。」
「ん、もうここらで大丈夫だ、ではまた明日。」
「おう、お休み。」
軽く手を降って、踵を返しもと来た道を戻ろうとしたとき、
「大好きです、お兄ちゃん」
後ろを向くと、箒が一本とったりとばかりに右手を上から下に降り下ろすジェスチャーをする。。
…これがツンデレか。
背後から照らす光のせいで表情は見えなかったが、声は僅かに震えていた気がした。
そして、約1年後…
織斑 一夏という少年が誤ってIS学園の試験会場に入り、偶然、受験者用のISを男性でありながら起動させてしまう。
そして、男性でありながら特例的にIS学園へ入学させらことになり、全国的に男性のIS適正のチェックが小学生から大学生までは強制的に行われた。
それでも、自分が適正あるとか思わないよね。
現在高校1年生の俺はめでたく国家権力によって実質的な留年が決定した。
5
「と、まあそんなことはおいといて。
本物の一人目であり、ほうきちゃんのお願いもである君に選択肢を与えよう。
いや~束さんってホント寛大!
1.このまま政府のお世話になる。
2.束さんに身を預ける。
さあさあ、どっち~?」
どっちもどっちで選びたくない!
ババ抜きにJOKERが2枚ある気分だ。
が、背に腹は抱えきれない。
「篠ノ之博士、信じていいのかい?」
「ほうきちゃん直々のお願いを、ほうきちゃんが悲しむようなことをを束さんがすると思うのかな?」
しそうだから怖いんですよ、興味があるなら薬漬けとか解剖とか平気でやりそうだし…
箒曰く、篠ノ之 束という人物は、自分の興味のないことには無関心になる性格であり、それは人間の場合も例外ではなく、彼女が知る限り、身内と認識している者以外の人間には本当に興味ないという。
さらに身内と話す際にはまるで子供のように無邪気な態度らしいが、身内以外から話し掛けられると非常に冷淡な態度となり、明確に拒絶の意思を示す。
ここで重要なのが自分の興味のないことには無関心である人が話しかけてきやこと、身内と認識している人間から話しかけても明確な拒絶の意志がないこと。
自分で言うのもなんだが、天才同士何か引かれ会うことがあるのだろうか?
「……2。篠ノ之博士信頼してますよ。」
「うんうん、信用しているって言わないのは賢明だね~、じゃあ行こうか『こーくん』!」
これがIS学園に入る前のエピローグ、次に始まるの本物の一人目である瀧 洸陽の物語だ。
後書き
とりあえずエピローグ終了。
時間を見つけて行けるとこまでいきたい!
性格変わった箒は、物語シリーズの神原 駿河の変態要素なくした感じです。
感想や疑問点あったらどんどんください。
お願いします。
設定
前書き
主な設定です。
明日、明後日には本編開始です。
主人公のプロフィール&主人公のIS
瀧 洸陽 ♂
16歳
IS高校生1年(国家権力によって強制的に入れさせられため)
183cm 78kg
エピローグではシリアスなキャラだったが、束の影響をしばらくの間受けてしまい、ヘラヘラとして掴み所がなくなった。
(けれど、本編開始間もなく道化の皮が剥がれる模様)
普通のときは紳士的な?好青年。
頭はよく切れ、咄嗟の判断力、状況分析、相手の呼吸等々恐ろしいくらいのセンスを見せる。
使用武術
御空みそら流剣術
刀を道具として時には囮にして闘う古流剣術
洸陽が幼き頃通っていた師匠の流派で一子相伝、師匠は自分の時で終わらすつもりだったが洸陽に武をもって心を制するのを教えるために伝授した。
登場は後々…
勉強は出来ないくもないがよくもない。
料理は出来るが、最低限出来るだけであって普通に美味しいものしか作れない。
得意料理?はTKGと焼肉。苦手な料理は10分以上時間を要する料理全般。
あとは質問あれば答えます。
IS
コアには意志があり洸陽とはよく話す。
名前は紅葉《クレハ》
金髪で見た目、声は幼い。
モデル:物語シリーズの忍ちゃん
洸陽がIS操縦者として成長するにつれ成長する。
元々、篠ノ之 束が宇宙に行くこと目指して作った機体だがISが世界で兵器として評価されたことと、篠ノ之 束、織斑 千冬をクレハが拒否したため不良娘として束保管されていた。
紅葉クレハ談
たまたましたかったことが洸陽と一致しただけとのこと。
最初に洸陽が思ったのは、紅葉クレハでどこまで速く飛べるか。
洸陽だけが動かせた。(今のところ)
機体性能は最速、宇宙に行くために造られたので操縦者保護能力に優れている。
尚、リミッターをいくつかつけないと競技用では使用できない。
単一能力:エナジードレイン(予定)
武器:メイン【千紫】せんし
大太刀、エネルギーを使って表面を超微振動させることが出来る、燃費もよく攻撃力も高い。
サブ【万紅】ばんこう
小太刀、4本収納している。
エネルギーを用いて長さを調節できる。燃費が悪いが使い方次第では大きな武器に。
サポートウェポン
【伸縮自在の糸】バンジーシルク
とあるピエロと親愛なる隣人から拝借…
とあるピエロと違って生命エネルギーから変換していないので作用、反作用の法則が成り立つ。
よくくっつきよく縮む。
つけるも外すも洸陽しだい◆
基本は相手にくっつけ、自分以外の何かにつけて使用することが多い。
メイド イン 束
後書き
質問、ご意見、賛否両論大歓迎です。
承認x資格=宣告
1
「ったく我慢せずにケガをしているんだったら素直に言え!」
「・・・・了解 」
「本当にわかっているのか?」
大きなため息をついて千冬は隣に立っている大柄な男を見上げる。瀧 洸陽、現在十六歳高校一年生身長は182cm体重はやや筋肉質な体形から察するに75キロは優に超えているだろう。顔立ちは悪くなく-むしろいい-どこか日本人離れしたルックスだ。人当たりがよさそうにニコニコしているが実際腹の底は全く見えないと千冬はおもった。
さらに驚くべきだったのがISに乗れることが判明してから篠ノ之 束に誘拐されたとされた空白の時間-日本政府は表向きは保護していると後悔していたが-実は行方不明、一週間前にひょっこりとIS学園前に現れ手厚く保護。
一時は軽くパニックが起こったが無事に入学手続き、模擬戦を終えある程度の自由を与え学園最寄りのホテルにて軟禁していたが入学式当日いないことが判明しまたもパニック、エレベーター内で痛さのあまり悶絶している所を捕えられ少々遅れたが無事登校、そして今に至る。
ケガの原因は模擬戦での無理なIS操縦、荒業を力任せに操作しかのブリュンヒルデこと織斑 千冬の喉元にまで迫ったが奇しくもあと少し届かず、所々見られる擦り傷、打撲は十分に治療してもらったらしいが・・・・
「まさか、折れているとは思ってもいなくてね」
HAHAHAとアメリカンな感じで上機嫌に笑う洸陽を千冬はジト目で一瞥するとやはり痛そうにわき腹を抑えていた。
「そいえばちーちゃん、次はいつデートしてくれるのかな?」
「せめて千冬さんだ、いいかみんなの前では絶対織斑先生だぞ、そして試合のことをわざわざデートと言うなここはほぼ女子高だ、誰かにこの会話を聞かれてみろ」
全くめんどくさいと吐き捨てる千冬をよそに洸陽はにやりと笑う。
「男女が約束して日時と時間を決めて会うことをデートと言わずなんといえばいい・・・・・っのかな?」
「ちっ」
千冬は右手に持っていた出席簿(鈍器)を右側にいる洸陽めがけて振り抜く、ケガをしていない側を狙ったのは優しさだろうか、それとももう片方も折ってやるぞという威嚇だろうか、ともかく
「理不尽な指導は受けない主義でね♬」
その出席簿を振り抜く前に、何事もなかったかのように千冬の右手をつかんで攻撃を制するところ、洸陽が何か違うと思わせるのには十分だろう。
「そんなに俺と手をつなぎたいのかな?」
「ばかいえ、これが手をつないでいるように見えるか?見えたとしても繋いでるではなく掴まれている、だ。
全く、お前と接しているとペースが乱れる。」
─まぁ、悪い気はしないがな
軽く手を振り払い洸陽が手を放すと千冬は僅かに口角を上げてほほ笑んだ。
「瀧、お前には少々大変な環境に置かれるが私もできる限りサポートする、だから・・その、頑張れよ。」
「その代わりと言ってなんだが・・・でしょ?」
すべてを見透かしたかのように笑っているのを千冬は確認すると
「弟を、一夏を頼む。仲良くしろとまではいわない、ただ男同士困っていることがあったら手を貸してやってくれないか?姉としてのお願いだ」
頭を深々と下げ洸陽に懇願する。
「頭を上げなよちーちゃん、もちろんそのつもりだから・・・ 」
「・・・そうか、では頼んだぞ」
─貴女みたいに興味がわいたらね・・・・
洸陽はそんな感情を千冬に気づかれることはなく快諾した。
そんな心情も知らず千冬は少し満足そうな顔をして前を向いた。
2
ガタン、とずっこけたような音が響き渡り千冬はハァ、と大きくため息をつき洸陽は頭の上に?を思い浮かべ教室の前に立っていた。
「少しここで待っていてくれ、私が入ってこいと言ってから入ってくるんだぞ?」
オッケーとウィンクしたのを確認すると千冬はツカツカと教室へ入っていく。
三拍ほど置いたところでwカップで決勝ゴールを決めたとばかりの雄たけびや変態?まがい発言、もはや何を言っても聞かない獣のような雄たけびに洸陽は苦笑いを浮かべた。
ようやく静まると千冬から入ってこいと命令が飛んでくる
いささか理解しにくい状況、異様な雰囲気に若干引き気味に洸陽は思い切って教室に入っていった。
目の前は、女一色。
洸陽はとっさに朱に交われば赤くなるという言葉を思い出し、俺は絶対交わらないぞ、と謎の自己暗示をかけてみんなの前へ移動する。
「そして、遅くなったがもう一人クラスメイトを紹介する。」
さっさと言えとばかりに視線を飛ばしてくる千冬をよそに洸陽はどこか浮足立っていた。
─想像以上にいい匂いだ、香水臭くも無く、かといって強烈な甘いにおいがするわけではない、まさに魔境・・・・!これは思った以上に・・・・っとちーちゃんそんな鈍器を振り回そうとするのは止めようか
「え~瀧 洸陽、っす。好きなことは体を動かすこと、まぁスポーツとか武術とか。好きな食べ物は肉、・・・・以上、ほかに聞きたいことがあったら質問受け付けます」
二拍間を置きちらりと千冬を見るとなんてことをしやがるんだという目で見上げる。それまで静寂だった教室は一瞬にして甲高い声が響き、共鳴し、干渉しあった、とのこと枷が外れた女子を鎮めるにはおよそ三分ほどかかったそうだ。
一先ず落ち着いて昼休み、一夏と正反対にオープンな自己紹介をした洸陽はすべての休み時間質問攻めをされた、ようやくしたいことができたのは昼休みの少し前だった。
「やぁ、箒。久しぶりだね、君の感を俺はどうやら100%信じる羽目になりそうだ♪」
「これは先輩、なんというか私も驚きだ、まさかこのような形で再開するとは・・・」
少し遠くで一夏が入りずらそうにこちらを見ているのを洸陽は確認するとちょいちょいと手招きをして呼んだ。
「君が一夏君だね、箒からよく聞いていたよよろしくね。」
「!あ、ああ。こちらこそよろしくなえっと、」
「洸陽でいいよ、年もどうせひとつ位しか変わらないんだし」
「そっか、よろしくな洸陽!」
そういって洸陽は右手を差し出し握手を求める。
─定めといったところか
洸陽は一瞬ニコニコしていた表情をもとに戻して一夏をくまなく観察する。
満足したのかすぐにニコリと笑みをを浮かべてじゃあ、ご飯食べに行こうかと提案する、どうやらお気に召したようだ、と箒はホッと胸をなでおろした。
「そういえば箒、前みたいにお兄ちゃ「あぁぁぁぁなんのことだかさっぱりだ、一夏早くこんな先輩おいて昼食を摂るぞ!」
顔を真っ赤にし一夏を引きずっていく箒を洸陽は暫く見つめていた。
─あぁぁぁ、もう、先輩のバカ!こんなところでお兄ちゃんって呼べるわけないだろう!?でも、久しぶりだし・・あぁぁああ!私は何を考えているんだ!?
唇を尖らせて悶々としている箒を見て、全くイジリがいのある妹分だ。と洸陽は本当にいい笑顔でニヤニヤしていた。
「ではここまでで質問のある人・・・織斑くん?」
「先生、全部わかりません~」
戸惑う麻耶をよそに、洸陽の脳は急激に活性化した!
ただ、あんなふうになりたくないという一心で人とはどうにかなるものである。
「えっと・・・瀧君は大丈夫かな?」
「え、はい。もちろん全然大丈夫です、たまたまわからないことが偶然多くてちょっと戸惑っているけど、はいこのくらい偶々なんでほんっと大丈夫です。」
「それをわからないと言うんだけどな~・・・・」
偶然、たまたまは使いすぎると良くないらしい。
この教訓はしっかりと覚えていたほうがいいだろう。
3
クラス代表、委員長、理事、学校の始まりで必ずと言っていいほど決めなければならない役職、通常ならだるい、めんどくさいで大抵の人間がそう思い一部の人間が履歴書に書けるからとすすんでする役職、つまりはクラスのまとめ係。
だがIS学園では少しわけが違う、代表戦というものがあり名前の通りクラス代表が戦う行事がある、よって必然的にクラスの中で実戦経験を積むことができ最強のものが就くに相応しい役職。
「ああ、その前に再来週に行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
千冬の発言を聞き、教科書と睨めっこしていた洸陽はパッと頭を上げた。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席・・・・・・まあ、クラス長だな。ちなみに、クラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点でたいした差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
つまりはデータ収集係。
─要するにめんどくさいってことか♪ならば先手を打たないと。
「はい、織斑君を推薦します。」
─生贄になってくれよ
わざと一言一言ゆっくりと話し腹から声を出すことでより低い声を、通常ならこの態度で意見を通すと周りは有無を言わないのだが・・・・
「私は瀧君を推薦します。」
-やっぱり瀧君のほうが頼りがいありそう、お兄ちゃんって感じだしね
─でも織斑君は千冬さんの弟だよ?
─私は瀧君のほうが好みだな~
─なるほど、興奮した人たちには聞かないようだ
「では、候補者は織斑一夏……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
ガタンと勢いよく立ち上がる金髪女子。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
このとき誰もが思った、じゃあ自薦しろよ!と
ただそれができなかったのは彼女の高すぎるプライドのせいだろう。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! わたしくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
クラス全体にケンカを売るセシリアさすがの千冬も眉を顰め不機嫌であるようだ。
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そして、それはわたくしですわ!」
そんな空気も察せずにセシリアの演説は止まらない。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛・・・・・で」
─うるさい
何人かは気づいたであろう異様な雰囲気、戦闘経験のあるセシリアはこの空気を知っていた。
恐怖そのものそして今まで味わった中で一番恐ろしいもの。
目は口ほどのものをいう、洸陽から発せられた威圧感でセシリアは少し口を閉じたがここで止めてしまったら格好がつかないことに気づいてさらにつづけた。
そこで一夏が怒って立ち上がりそれはめんどくさい口論になってしまう。
「とりあえず、話を進めましょう。候補者は三人。それでいいですか?」
真耶が、その空気を何とかしようと、場を仕切り始める。
「さて、どうやって決めよう」
「実力が認められたらいいんだろう? 戦ってみたらどうだ?」
─貴女、今スッゴイ楽しそうな顔していたな!?
「いいでしょう、言われっぱなしっていうのも気に食いません。決闘ですわ!」
「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」
しかし、乗せられやすい二人は簡単にその意見に乗っかってしまい洸陽はもう多数決で負けたねと観念して現状を受け入れた。
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い───いえ、奴隷にしますわよ」
「へぇ、じゃあ俺が勝ったら君は俺のものになるのかな?」
「・・・・・っ」
威圧的な雰囲気を相変わらず漂わせている洸陽にセシリアは何も言い返さない、顔が赤いのは怒りから来るものだろうか、それとも羞恥の感情から来るものだろうか?
ここで反論しても口で言い負かされると判断したセシリアは押し黙った。
「ハンデはどのくらいつける?」
急に元気になるイギリス代表候補生
「あら、早速お願いかしら?」
「いやー、俺がどのくらいハンデをつけたらいいのかなーと」
周りの生徒は苦笑いというよりも明らかに見下した笑いが教室に充満する。
「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」
周りの生徒も苦笑いを浮かべる。
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
─確かに彼女たちの言っていることは正しい、男と女が戦争したらすぐに負けることも認める、ただ、俺が一対一で敗北が前提にされていることが気に食わない。
セシリアが得意げに何かを言っている、すでに洸陽の耳には届いていなかったが・・・
「セシリア・オルコット」
「な、なんですの?」
相変わらず、周囲の雰囲気が変わらないのを確認すると洸陽は感情のすべてを押し出し、教室の空気を支配した。
「なめているのかい?」
流石に、まずいとほかの生徒も感じたようで洸陽の気迫の前に笑いは消え、皆洸陽を直視できずに下を向いて静まる。
「いえ、起動時間を考慮しての、ハンデ「それとも、すごくなめているのかい?」
一瞬にして場が凍り付く、セシリアは息をするのも忘れ、ただ洸陽の目の奥にある何かを見つめていた。
「瀧。」
千冬の制止などにも全く耳を貸さずに洸陽はさらに続ける。
「君たちが言っていることは決して間違っていない、むしろ正しい、けれどセシリアそんなに俺のことを甘く見ていると「瀧!!」
クラスメイトはのちに語る、洸陽と千冬がまるで龍と白虎が睨み合っているかのように見えたと。
「冗談ですよ織斑先生。オルコットハンデについては今日のディナーで話し合おうか?」
今までとは打って変わりただの優しい男性へと戻る、道化の皮を再びかぶり感情を中に圧しとどめた。
その後、セシリアはヘタヘタとその場に座り込み、他の女子たちも息をするのを忘れていたようで大きく息を吸い込んだ。
「・・・・・さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑と瀧、オルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」
ぱんっと手を打って千冬が場を纏め、何気ない日常は止まった針を動かした。
「瀧、お前の部屋のカギだ。」
「あれ?暫くは近くのホテルに泊まっている予定なんだけど?」
「大人の事情だ。着替えさえあれば十分だろ、ほら」
「俺をなんだと思っているんだい?」
「・・・まぁそれは置いといてだ」
「わかっているよ、それよりもこの後オルコットとディナーの約束をしているんだ、早く行かなきゃ♬」
「まさかその状態で本当に戦るつもりか!?棄権してもいいんだぞ・・・?」
「・・・ちーちゃん、俺は何も知らないくせに勝手に人を見下すような奴は嫌いなんだ、オルコットが今までどんな努力をしてきたかは知らないけど少なくとも右手の中指を見れば相当なことをやってきたってわかる、個人としては認めるけどあの態度だけは気に食わない・・・」
「質問に答えろ、その状態で本当に大丈夫なのか?」
「痛みならそれを超える覚悟で耐えればいい、そんなの至極当然だろ?」
-まぁ、治せるんだけど♬
「分かった、もう何も言わん」
「うん、じゃあ行ってくるよ 」
何事もなくすたすたと食堂へ向かう洸陽を見えなくなるまで見届けると千冬もその場を後にした。
4
好奇の視線、勧誘、黄色い歓声を会釈し、はたまた手を上げてなれたように交わし人だかりを颯爽と抜けていく。目指すのはイギリス代表候補生、お高くとまったお嬢様のもとへ。
「ご一緒してもいいかな?」
セシリアは身構えたままコクンとうなずく、すでにトレイを相席に置き座る気満々の相手に拒否の意思を示しても意味がないことを分かっていたからだ。
「おや、さっきは散々日本のことをバカにしていたのに夕食が和食とはね 」
安い挑発、すでに洸陽が他の男と明らかに違うと認識していたセシリアは無知な一夏とは違い未知な洸陽の前で好きを見せたらいけないと直感し、冷静に対処していた。
幾重にも重なる挑発にセシリアは青筋を浮かべ時には怒りそうになりながらなんとか耐えていた。
暫くすると洸陽も諦めたかのように大きく息をついてついに食事を摂り始める。
「手が進んでないけど・・・今日はあの日かい?」
「バカにしないでもらえませんか?これでも私は代表候補生、貴方の安い挑発に乗るとお思いで?」
ほう、と感心したような表情をして、洸陽はようやく諦めた。
そして、今まで被っていた道化の皮を外す、そもそも咄嗟に作ったキャラ作りはやはり疲れるもので明日から普通にしよう、と思う洸陽であった。
「さて、ハンデの話だけど」
ここでピクリとセシリアの体が反応した。
先程と打って変わり洸陽も臨戦態勢に入り二人の間は異様な空気に包まれる。それに伴って食堂全体もピンと緊張感が張り詰めた。
「言い出したのは私ですわ、吐いた唾は飲めないと言うことわざの通り先程した宣言も取り消すつもりはありませんわ。」
「じゃあ、死闘でもかい?」
洸陽が初めて放った殺気、今までの威圧感とは比べ物にならない筈なのにセシリアは恐怖を押し殺し、まっすぐ洸陽の目を見つめる。
─腹をくくったか、いい目ださっきまであんなに怯えていたのが嘘のようだ、流石は代表候補生♪
子猫が猛獣へ成った瞬間だった。
「ハンデはいらない」
セシリアは答えない。
「その上で君を完璧に叩き潰す。」
「望むところですわ。」
満足したように洸陽はほほ笑んで席を立つ。
ごちそうさまと言ってセシリアの視界に入るギリギリのところでふと立ち止まった。
「Don’t let me down俺をがっかりさせるなよ」
「Of courseもちろんですわ」
最後に何故あえて英語で言ったのかは洸陽しか知らない。
後書き
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