【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。


 

0001話『目を覚ましたら海の上』

 
前書き
艦これの新作二次小説になります。
Fateはどうした…?と思いますけど書き始めたのだから仕方がない。
これからよろしくお願いします。 

 
とある男性はパソコンを弄りながらとあるゲームに勤しんでいた。
そのゲーム名は『艦隊これくしょん』。略して艦これ。
2013年の新年度である4月にサービスを開始して瞬く間に人気が加速していったゲームである。
今ではただのオンラインゲームだけではなく、一時期は漫画、小説、アニメ、映画、アーケードゲーム、etc………。
上げていけばキリがないが活躍の場を広げていき、未だに新たな限定グッズが発売されればすぐにとはいかないが完売必須なほどの人気のコンテンツである。

男性………ここでは提督と呼称しておこう。
提督はいつものようにパソコンの前で任務を終わらせながらも多少ではあるが満足感を得ていた。
自慢でもなんでもないがこの提督は甲勲章を一つも持ってはいない丙提督だが、代わりに現在実装されている艦娘は全員その手に収めている。
そして6-5海域まで解放してあり、やりこみ専用の任務である六連装魚雷の工廠任務以外の出撃系任務は全部は一度クリアしてある。
そして次のイベントでも難易度によってまた甲勲章を諦めてしまうかもしれないが、それでも艦娘だけは必ず全員手に入れようと息巻いている。
それほどに艦娘を大事にしているのだ。
だが、それでもまだ未熟だった頃やうっかりミスで数人の艦娘を轟沈させてしまった事がある。
提督は轟沈した艦娘が誰だったか覚えているし忘れることは絶対にしないと決めている。それが己の罰なのだからと心に刻んで。
そんな提督はもう夜も更けて寝ようとしていた。

「…っと、その前に嫁艦の榛名を単艦放置しておかないとな」

提督はとある理由で二番目にケッコンカッコカリをした金剛型三番艦『榛名』を選択して秘書官にしてプラウザを閉じようとした。
だが次の瞬間にいきなりプラウザ画面から突然強烈な光が発せられて提督は思わず目を塞ぐ。
そして意識が暗転する。



………

……





次に俺が意識が戻ったのはなぜか見渡す限りが海、海、海。
俺はまだ寝ぼけているのだろうと思い頬を抓ってみた。
だけど、

「いひゃい…ん?」

これが現実なのだろうと自覚した次の瞬間に違和感に気づく。
声の音色が自身の物ではなくなっているのだ。
しかもこの声はどこかでというかいつも身近で聞いていた声なのであった。

「この声って…まさか、榛名の声?」

そう、俺の口から発せられた声は榛名の声だったのである。
それで混乱する俺にさらに困惑する出来事が起きる。
なにか腰あたりが重いなと思って見降ろしてみるとそこには艦娘でいう艤装が腰に密着しており、ふと気づけば艤装に所謂艦これで言う妖精さんの姿が見えたのだ。

「………」
「………」

しばし見つめあう俺と妖精さん。
先に口を開いたのは、

「ど、どうも…」
【どうもです】

俺からであった。
そしてすぐに返事を返されてさらに驚愕する。
意思疎通ができた!とか本物の妖精さんだ!とか考える前にこれはやっぱり夢だ!という結論にいたり俺は何度も頭を叩いた。
だが現実は時にして無慈悲だ。

【諦めてください。これは現実ですよ】

妖精さんに窘められてしまったために俺は素直に諦めた。
それで海の上で屈んだ姿勢になりながらも妖精さんに話しかける。

「うう…それで、俺はどうしてこんな事になっているんだ?」
【それが私にも分かりません。ですが、今分かっている事は貴方は今、戦艦榛名になっているという事実だけです】
「俺が、榛名に…?」
【はい。私は貴方が提督だという認識をしています。そしてこの榛名は貴方がケッコンカッコカリをした榛名で間違いありません】
「そ、そうなのか…?」
【はい。証拠に左薬指にケッコンカッコカリの為の指輪がされていますから】

それで俺は左手に目を向けるとそこには確かにケッコンカッコカリの指輪が嵌められていた。
そして海面に映った自身を見て納得をせざるを得なかった。
そこには確かに榛名の姿が映し出されていたのだから。

「…そっか。これってもしかしてよく二次小説とかでいう憑依転生って奴なのかな…?」
【おそらくそうなのでしょうね…】

妖精さんも知識はあるらしく諦めたように答えてくれた。
でも、だとするともしかして本物の榛名の意識は…!
そう思い至った瞬間には俺は顔から血の気が失せていく感覚を味わいながらも、

「ね、ねぇ妖精さん…。もしかして俺は榛名の事を殺して―――」
【いえ? 殺してなどはいませんよ】
「は…?」

いきなりの否定宣言に俺は変な声を出してしまった。

【いえ、確かに憑依してしまったのですから奪い取ったのは間違いないのですが、この体の中には提督と一緒にもう一つ魂が存在しています】
「つまり…?」
【おそらく今はなんらかの理由で眠ってしまっているのでしょうね】

それを聞いて俺は思わず海の上だけどへたり込んでしまった。
よかった。榛名を殺したわけじゃないんだな…。
その事実だけが俺に希望を与えてくれた。

それから俺は妖精さんに色々聞いた。

現状のこの榛名のスペックとか。
ここは問題なかった。

装備されていたのは最後に装備させたのままだとか。
幸い装備はしっかりとされていたのでもしもの事が起きても対応だけはできる。

ちなみに装備は、
《試製41㎝三連装砲(MAX)》
《試製35.6㎝三連装砲(☆4)》
《紫雲》
《一式徹甲弾》
そして増設に《QF 2ポンド8連装ポンポン砲》

並の戦力なら一掃はできずとも戦えるという事である。

そして今ここはどこなのかが重要だ。
だけど妖精さんは難しい顔をしながらも、

【現在どこにいるのかは分かりません。当分は近くの採掘場を見つける事を念頭に置いていきましょう】
「わかった…もう戻れない事は分かったからどうにかやっていくしかないんだよな」

諦めの境地である。
万能生物の妖精さんでも無理なものは無理なのだからどうしようもない。
いつか榛名も目を覚ましてくれる事を祈って俺は進んでいこう。

「それと、最後の質問だけどいいかな?」
【はい。なんなりと】
「この世界に俺の所有する艦娘達はいるのかな…?」
【現状はわかりません。連絡の取りようがありませんから】
「だよな」

それで一時たそがれる。
まぁ、一人じゃない事はわかっただけでもめっけものだ。

「それじゃ妖精さん。これからは一蓮托生で頑張っていこう。よろしくな」
【はい。よろしくお願いします】

それで俺と妖精さんの旅は始まった。

 
 

 
後書き
妖精さんの喋りかっこは【】で行かせていただきます。
いつまで続くか分かりませんがよろしくお願いします。 

 

0002話『介入』

 
前書き
勢いに任せて第二話を更新します。(ハーメルンでは昨日始めました) 

 

妖精さんが俺の肩の上に乗って海の上を走りながらも俺は不思議な感覚を味わっている。
海の上を滑るというのは摩訶不思議現象であり、解明したい出来事ナンバーワンである。

「妖精さん。艦娘って自然に海の上を歩けるものなの?」
【はい。最初は…つまり練度1の時は千鳥足のようなものですからいくらか訓練が必要ですが次第に慣れていくものだと思います】
「………」

それを聞いて俺は今までなんて酷い事をやっていたんだという気持ちになった。
ゲットした艦娘を図鑑を収める為にいきなり5-5………サーモン海域北方に突っ込んでいたのだから。
あのレ級にいきなり洗礼を浴びせられるとか鬼畜か!
誰だそんな事をしたのは! はい、俺です。すみませんでした…。
一人後悔をしながらもそれでも海を滑っていく行動はやめないのである。

「それで妖精さん。弾薬はともかく燃料ってあとどれくらいあるかな?」
【満タン状態でしたからこのまま戦闘を起こさなければ三日か四日は持つでしょう。気を付けてください。燃料がなくなったら…】
「当然機能停止してしまうんだよな?」
【はい。艤装が消えて海を泳ぐ事になってしまいますから…】
「それは怖いな…。早く陸地を探さないとな」
【こういう時に電探が装備されていればどうにかなったのでしょうが…】
「そこはごめん。こういう事態を想定していなかったから徹甲弾なんか装備させちゃっていたし…」

少し気落ちしていた妖精さんの頭を撫でて慰めながらもどうにかならないかという気持ちで前進する。
だけど電探は装備していないとしても感じ取れることはできる。
なんかこの先にいくと鈴谷風に言うとなんかヌメヌメするぅ!な展開が起きそうな気がしたのだ。
それで少し進路を変えてみた。

【良い判断です】
「ん…?」
【私は貴方をサポートする妖精ですから多少はソナー要員にもなれます。それで先ほど貴方が進路を変えなかったら深海棲艦…それも潜水種に遭遇していたと思いますから】
「なるほど。直感には従った方がいいね。戦艦は潜水艦に対しては無力だから」

今後、この直感をヌメヌメセンサーと呼ぼう。
我ながら酷いネームングセンスである。

それからさらに進んでいくと次第に日が落ちてきて夜になってきた。
まずいな…。さすがに夜戦だけはしたくない。
いざという時の一撃はとても重たいものなのだ。
それはサブ島沖海域で嫌というほど味わっている。
そんな時だった。
暗い中、一つの光が立ち上ったのだ。
これはもしかして照明弾…?
という事はこの先に艦娘、あるいは深海棲艦がいて夜戦を開始しているという事だろうか…?

「妖精さん、どうする…?」
【貴方の判断に任せます。それと今まで注意していませんでしたが口調を意識してください。変異種と思われたくはないでしょうし】
「つまり榛名のように振る舞えって事ね。できるかな?」
【なにも本物通りに振る舞う必要はないかと。ある程度砕けた感じで大丈夫だと思います】
「そっか。なら一人称だけ変えとけば大丈夫かな。いきなりの実践だけどなんとかやってみよう」
【サポートはお任せください】
「頼むね」

それで俺―――いや、私は照明弾が上がった方へと進んでいった。








榛名提督が進んでいった時にはすでに戦闘が開始されていた。
艦娘の戦力は駆逐艦、電を旗艦に同型艦である暁、雷、響の四人編成の単縦陣。
深海棲艦の勢力は戦艦ル級を旗艦に重巡リ級が二隻、軽巡ホ級一隻、駆逐ロ級二隻の水上打撃部隊。
明らかに戦力差がありこのままだと負けは必須である。
だがそれでも四人は諦めていなかった。

「暁お姉ちゃん! ここを切り抜けてなんとしてでも提督のもとへ帰るのです!」
「当り前よ、電! こんなところで足を止めるわけにはいかないのよ!」
「その通りだよ。なんとしても倒そう」
「雷に任せなさい! さっきの探照灯であらかた敵の位置は把握できたからやってやるんだから!」

四人は気合を込めて夜間砲撃戦を始めていく。
まず電が気合を込めながらも、

「命中させちゃいます!」

12.7㎝連装砲を構えて砲撃をした。
夜戦での一撃だ。それは深海棲艦の旗艦であるル級へと吸い込まれるように直撃した。

「や、やったのです!」

電が喜ぶがそれもつかの間にル級はまったくダメージを受けていなかった。
それを確認できた四人は驚愕する。
やはり装備が心もとなかったかという気持であったのだ。
そもそもこんな戦力と遭遇する事はないと思っていたために慢心した訳ではないが軽い初期装備しか積んでいなかったのだ。

「い、電! 私に任せ…キャッ!?」

また砲撃を撃ちこもうとして、だけど先に撃たれてしまい一気に暁は大破してしまったのだ。

「ううぅ…そんな!」

これで戦力は6対3になってしまった。

「やらせないよ!」

響が魚雷をしかけるがそれは駆逐ロ級を沈めただけで対してあちらの戦力を削っていなかった。
しかしそれでも次は雷が響と同じように魚雷を装填して放った。

「いっけー!」

雷の魚雷はまたしてもル級に突き刺さった。

「や、やた!」

しかしやはり装甲が硬いのか小破どまりで終わってしまった。
それで四人は少しばかり絶望の顔をする。
実を言うとこれで弾薬が尽きてしまっていたのだ。
反撃どころかもう攻撃すらできない。
後は深海棲艦になぶられて終わりなのかと諦めかけたところで、突如として重巡リ級の二体が轟沈したのだ。
何事かと思った矢先に、

「榛名! 夜戦に突入する!」

そこに第三者の声が響いたのであった。








私が到着した時には戦艦ル級が旗艦の水上打撃部隊編成が第六駆逐隊の四人を追い込んでいる光景を目にした。
見れば暁が大破していて他もおそらく弾薬が尽きているんだろう避けることに専念している。

「これはまずい展開だね。妖精さん、バックアップお願いできる?」
【任せてください】
「よし! まずは気づかれる前に一体か二体は沈めておこうか」

それで二番砲塔と四番砲塔に弾を装填して私は二番砲塔を、妖精さんが四番砲塔を操作してそれぞれ重巡リ級に斉射する。
それは見事に二体に突き刺さって悲鳴を上げながら重巡り級の二体は沈んだ。
そして、

「榛名! 夜戦に突入する!」

四人の前に滑走して滑り込んだ。

「あ、あなたは…?」
「今は詮索は無しね。敵じゃないから!」

私が安心させるように四人に笑顔を向ける。
すると四人は顔を赤くした。でも今はそれは置いておいて私はまだ残っている三体を睨む。
ル級は私を敵と定めたのだろう、砲撃を撃ってきた。
普通なら直撃コースだけどお生憎様だ。
その弾道はこの榛名のスペックなら見えている。
でも避けると後ろの四人に当たってしまう。
だから―――こうする。

「力を拳に込めて…放つ!」

そう、アニメで金剛が砲弾を殴ったのだから私にもできないことは無い。根拠はないけどね。
でも思惑は当たったようで砲弾は私の拳に当たった途端、どこかへと飛んで行ってしまった。
少し痛いけど我慢だ。
背後で雷が「すごい…」と言っている。
やっぱり常識外だったようだね。
まぁ、いい。

「一式徹甲弾装填! てぇッ!!」

放たれた徹甲弾は迷うことなくル級へと吸い込まれて着弾した瞬間に爆発炎上する。
旗艦が潰されたために残りの二体の動きが乱れるが逃がさないよ!

「続いて第二、第四砲塔装填! てぇッ!!」

残りの駆逐と軽巡もすぐに沈めた。
そして私の頭の中ではS勝利のファンファーレが鳴り響く。

「さて、と…」

それで私は背後へと振り向く。

「大丈夫だった…?」

四人は無言で何度も首を縦に振っていた。
さて、これからどうしようか…。

 
 

 
後書き
こんな感じにまずは介入していきます。


それではご意見・ご感想をお待ちしております。

ハーメルンとは今日から同時に更新していきます。 

 

0003話『居候』

 
前書き
更新します。 

 
今は先日の夜に助けた第六駆逐隊の面々を護衛しながらも彼女たちの鎮守府へと帰っている途中である。
結局はこのままではじり貧になってしまうので一時的に身を預けられる場所に移動することにしたのだ。
聞けば彼女達の鎮守府はまだ運営は開始してまだそんなに日数が立っていないという。
…しかし、そうなると照明弾という貴重な装備はどうやって手に入れたのだろうと思ってしまうな。
まぁ、ならばちょうどいいという事で厄介になろうと思っている。

「あ、あの…榛名さん」
「ん? なに、電ちゃん?」
「あんまり昨日は気が動転していて言えなかったのですが、私達を助けてくれてありがとうなのです」
「そう。大丈夫だよ。私もちょっととある理由で困っていたところだったから」
「どういう事だい?」

そこで響ちゃんが少し思案気に私に理由を聞いてきた。
うーん…どうしようか。本当の事を話しても信じてもらえないだろうし、もし信じてもらってもそれからが大変だし。
とりあえず嘘をついておこう。気が引けるけど。

「うん…。ちょっと記憶の欠損があって自分の鎮守府がどこかわからないんだ」
『え…』

それで大破して雷に肩を支えられながらの暁ちゃんも含めて私に同情の視線を向けてきた。
や、その視線は嘘をついている身としてはつらいからやめて。

「えっと、あの…大変ですね」
「あ、気にしないで。そこまで悲観はしていないから。いつか帰れればいいかなとは思っているし」
「それでも、辛いだろう? 見れば君の提督とは深い絆を結んでいるようだし」

響ちゃんが目ざとく私の薬指に気づいたらしい。
ごめん。私がその提督なんです。とは言えない…。つらいなぁ。

「わわっ! すごいのです!」
「いいなぁ…」

四人は揃って私の薬指をまじまじと眺めてはほっこりとした顔になっている。
いや、恥ずかしいね。
そんなこんなで海を滑っていきながらもようやく陸地が見えてきて、見れば目立つ建造物が見えてきた。
あれが…。

「あれが私達の鎮守府…。『第164号宿毛湾泊地』なのです」

宿毛湾泊地…。私の所属していたサーバーと同じ位置か。
縁があるようだね。
ということはここは高知県か。
と、そこでようやくあっちの提督から通信が入ったのであろう電ちゃんが少し泣きながら報告している。
話によるとこの子達は私達で言う1-4…南西諸島防衛線辺りをうろうろとして迷っていたらしい。
まぁ、見た感じあの深海棲艦もどれもノーマル個体ぽかったし場所としては妥当か。
それでも私がこなかったら全員いなくなっていただろうと思うと助けてよかったとは思うが。

「榛名さん。司令官さんは榛名さんの事を歓迎するって言っています」
「そう。ならよかったよ」
「はいなのです。それとうちには榛名さんと似たような感じの人が何人かいますから話してみるといいと思うのです。とっても強い人たちなのです!」
「私と同じ…? それって…」

つまり、どういうことだってばよ?いや、ネタを挟んでいる場合じゃない。
最初に思っていたまだ稼働してそこそこの鎮守府にある照明弾…。
そして照明弾を持ってくる艦娘と言えば…。
まぁ、考えてみるより行動あるのみだね。
そして私は鎮守府の母港に入れさせてもらう。
まずは提督に報告という事で全員艤装を消していた。
それで私も習って艤装を消してみた。よし、普通に消えてよかった。
そこで今まで黙っていた妖精さんが話しかけてきた。

【提督さん。もしかしたらここには仲間がいるかもしれませんよ】

私にしか聞こえない声で妖精さんは話しかけてきてくれた。
やっぱり。だとすると思い当たるのは…。
とにかく電ちゃん達に着いていく。
そして執務室に到着すると電ちゃんがノックをすると扉が開かれてそこから白い提督服を着た女性の人が姿を現す。

「電ちゃん! みんな! 無事だよね!?」

現れた提督?は電ちゃんに抱き着いて他の三人にも頭を撫でたりしている。
特に暁ちゃんの大破姿を見て、ひえーーー!と比叡のように声を上げている。
それでしばらく時間が過ぎて、

「あ、あの…司令官さん。榛名さんが困っているのです」

そこでようやく気づいてくれたのだろう電ちゃんが私の事を話に出してくれた。

「あ、そうだったね。ごめんね」
「いや、大丈夫だけど…」
「よかった。それじゃまずは自己紹介かな。私はここの鎮守府の提督の『久保(くぼ)祥子(しょうこ)』です。うちの子達を助けてくれてありがとう」
「いえ、こちらもたまたま見つけたので助けられてよかったです。あ、私は榛名です。よろしく」

それで久保提督と握手を交わす。

「…それにしても最近は鎮守府の場所が分からない艦娘の子達が多いのかな? あなたも含めてだけど」
「それってどういう?」
「うん。うちには六人くらい所属不明の艦娘がいるんだけど中々うち明かしてくれなくて…」

それってやっぱり、そう言う事なのかねぇ…?

「すみません。できればその艦娘の人達と会わせてもらっても構いませんか?」
「いいよー。今は宿舎にいると思う。全員部屋から出たがらないから多分今も一緒にいると思う」
「わかりました」
「私が案内するのです」
「お願いね。電ちゃん」
「それじゃ暁は入渠してこようか。雷は私のとこに、響は暁をドックへ連れて行って」
『はーい』

それで各自行動を起こす。

「それじゃ、榛名さん。着いてきてください」
「了解」

電ちゃんに案内されながらも宿舎へと案内されていった。
見れば宿舎にはまだ空きが結構あって思った通りまだ稼動したての鎮守府だと思わせる感じだ。
そしてとある部屋へと案内される。
電ちゃんがノックをした。
すると部屋の中から低い声で「………誰?」と言った言葉が聞こえてきた。
声の声量的にとても気落ちしているのが分かる声だ。

「電なのです。川内さん、ちょっと用があるのですがいいですか?」
『………出撃なの? それは前にも断ったはずだけど…』
「いえ。今回は会いたいと言った人がいますので連れてきました」
『会いたい人…? 誰…?』
『川内さん、気を付けた方がいいよ。きっと軍の奴らかもしれないから』
『うーちゃんが嘘を見抜くぴょん』
『ボクがもし何かあったらボッコボコにするよ』
『気を付けていきましょう』
『がってんだ』

少し中の様子が分かって、そして誰なのかも分かって嬉しい反面少し眩暈がした。

「榛名さん、この通り皆さんはこちらを警戒して心を開いてくれないのです。ですからまた今度で…」
「いや、大丈夫みたいだよ? 後は私に任せてくれないかな? 後で結果は報告するから」
「わかりました。それでは司令官さんのところに戻っていますね」

それで電ちゃんは私を置いて戻っていった。
さてと、話し合いとしますかね。

 
 

 
後書き
現在の本当の編成です。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0004話『再会』

 
前書き
余裕があり次第朝八時に更新していこうと思います。 

 


私はもう一度ノックをして中に話しかける。

「話したい事があるんだけど入っていいかな?」
『誰? 声的に榛名っぽいけど…』
「うん。今は榛名だけど多分あなた達の事を私は知っていると思うから」
『まぁ、そう言うんなら入んなよ』
「うん」

それで部屋に中に入ってみるとそこには思った通り、川内改二、皐月改二、江風改二、卯月、三日月、涼風の六人の姿があった。
なぜ彼女達六人なのかというと第二遠征艦隊のメンバーがこの六人だったからである。
そして暗い理由が分かった。
おそらく事情は私と同じで急にこの世界に落とされたのだろうと予測する。
窓もカーテンが閉められていて暗い雰囲気が感じられるほどだ。
彼女達は私と違って何日前からここにいるのだろうか?
そんな事を考えていると川内が話しかけてきた。

「…それで? 榛名はどうして私達なんかに話があるんだ?」
「うん。その前に一言…会えてよかったよ。六人とも」
『え…?』

それで全員がポカンとした顔になる。

「分からないかな…? まぁ、今は姿は榛名に変わっちゃったし分からないと思うけど、それじゃ私の…いや、俺の提督名でも言えば分かるかな?」

そして私は艦これのアカウント名を言った。
すると最初に皐月が涙目になりながら、

「司令官、なのかい…?」
「うん。そうだよ皐月」
「司令官ッ!!」

そして皐月が私に抱き着いてきた。
続いて卯月と三日月が近寄ってきて、

「嘘を言っていないぴょん? 本当なの?」
「本当なのですか…?」
「ああ。本当だとも」

そして二人も涙目になって私に抱き着いてきてくれた。

「かぁー…ったく、泣かせないでよ。本当に心細かったんだからさ。な、江風?」
「ああ。もう提督に会えないのかと本気で思っていたかンな」

涼風と江風は抱き着いてこないけどそれでも涙を流していた。
そして最後に川内が話しかけてきて、

「提督…だったらさ? 私になにか言う事はあるんじゃない?」
「え? えっと…」

それで少し考える。
そこでピンときたことがある。
川内の性分というか所謂夜戦バカゆえに、

「もしかして、ずっと遠征隊は嫌だったり…?」
「そうだよー! 私を夜戦に連れてってよさー!」
「あー、はいはい。今度機会があったらね」
「約束だからね!?」

それでなんとか六人と和解できたところでまた川内が代表して話しかけてきた。

「…ところでさ、提督はなんで榛名になってんの…?」
「うん。まぁそうだよな。分かる」

それで私の現状を教えた。
突然謎の光とともに気づいたら榛名になっていて本物の榛名は今は眠りについているとかなど。

「私達と大体同じ感じだね。私達も遠征を終えて帰ってきたところで謎の閃光とともに気づいたら見知らぬ海の上にいたからね」
「うんうん。ボクもびっくりしたよ」
「二日前に路頭に迷っていたところで電さん達に偶然出会ったのです」
「飢え死には嫌ぴょん…」

概ね皆も同じ感想だったらしい。
とにかく一つ分かった事がある。

「みんな、いいかい…? 一つ分かった事があるんだけど、多分他のみんなもどこにいるかは分からないけどこの世界に転移していると思うんだ」
『………』

それで真剣になって話を聞いてくれる六人に感謝をしながらも、

「それで当面の目標は散り散りになった皆を探し出す。そして拠点を構えてこの世界の情勢を知る事が第一だ」
「ン、確かに…」
「そうだね」
「いいと思います」
「辛い事もあると思う…。だけど一人じゃないという事はとっても嬉しい事だ。だから今は久保提督に協力しながらも頑張っていこう!」
『おー!』

それで現在七人になった私達は手を合わせて掛け声を上げた。
だけどそこでもう一人小さい手が乗せられる。

【私も忘れないでください。非力ながらもお手伝いします】

私の妖精さんが話に乗ってきてくれた。

「そうだな。これで七人…いや、八人で頑張っていこう」

こうして私達は一致団結してみんなを探すことになったのであった。









…場所は久保提督の執務室。

「榛名さんはうまく話ができたかしら…?」
「まぁ、大丈夫じゃないかな。多分」

雷の言葉に久保提督は合いの手を乗せてきっと大丈夫だろうと言っていた。
そんな時だった。
電話の音が鳴り久保提督は受話器を取って、

「はい。どちら様でしょうか…? こちらは第164号宿毛湾泊地ですが」
『久保少佐か。私は第2号宿毛湾泊地の大将である柳葉(やなぎば)一二三(ひふみ)だ』
「た、たたた大将ですが!? ど、どうされたのでしょうか…!?」

突然の大将からの電話に久保提督はきょどりながらも応答する。

『そんなに緊張をせんでいい。それより君に話したい事がある。よいかね…?』
「は、はい」
『君の鎮守府の近くに今は使われていない廃れた鎮守府跡があったと思うがご存知かね?』
「はい。存じております」
『ここ数日でその鎮守府跡地に最高の練度を誇っているだろう鎮守府が出現したのだ』
「出現した、ですか…?」
『ああ。遠目からの確認故に詳しく調べられないのだがとても広い…。
それはもう300隻以上は艦娘が収められるであろう母港(宿舎)に見事なつくりの航空基地も確認できた』

それを聞いて久保提督は「ばかなっ!」という感想を抱いた。
そんな施設があればすぐに気づくようなものだ。
かの最大練度を誇る横須賀鎮守府とて200隻が収まればいい方なのに。
私の運営は始まったばかりだから航空基地なんてそれこそあるわけもない。
誰がそこにいるんだ…?

「その、一ついいですか…?」
『なんだね?』
「その鎮守府に入る事は出来なかったのですか…?」
『ああ。調査に出した者たちが悉く高練度の艦娘達に追い返されてしまったそうだ』
「艦娘までいるんですか!?」
『うむ。帰ってきた者の証言によるとその艦娘達は『私達の仲間を、提督を返して!』…と、発言していたそうだ』
「打って出なかったのですか?」
『出ようとはした。だが門番ともいうべき存在が二人母港の前の港に陣取っていて無理だったのだ』
「まさか、その二人というのは…」
『うむ。大和型二隻の艦娘である大和と武蔵だ』
「そんな…」

この国には大和型を通常運用できるほど備蓄に余裕はないのだ。
建造できてもその高い防御性と攻撃力で深海棲艦との戦いでは練度1の状態でいの一番に投入されて多少削ったら捨て駒にされるほどに扱いも燃費も悪いと聞く。
そんな大型艦が二人も陣取っているとなると勝ち目はない。

「どうされるのですか…?」
『うむ。それでだが君に和平交渉を頼みたいと思っている』
「わ、私がですか!? まだまだ新米の域を出ないと自覚しているのですが…」
『それでも不穏分子ともし戦闘を起こしてこちらが大敗したら目も当てられない。君の肩には日本という国が背負わされていると思え』
「そ、そんな…」
『どんな方法でも構わん。敵ではないというアプローチができればよいのだ。彼女らが言う提督という存在がどこに行ってしまったのかも調査しないといけないしな』
「わかりました…その任、引き受けます」
『うむ。任せたぞ』

それで電話が切れる。
しばらく無言の久保提督とそれを聞いていた雷。
二人は手を合わせて同時に、

「「ど、どうしよう…!?」」

と、嘆きの声を上げた。

 
 

 
後書き
鎮守府ごと来てしまいました。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 では。 

 

0005話『会議』

 
前書き
更新します。 

 



私達がこれからの方針を話し合っている時だった。
急いでいるのだろう、電ちゃんが扉をノックしてきた。

『榛名さん! それに皆さん、お話の最中で悪いのですが来てもらってほしいのです!』
「どうしたの、電ちゃん?」
『はい。司令官さんが大事なお話があるそうで今は猫の手も借りたいとの事で!』
「わかった。すぐにいくね。執務室で大丈夫?」
『いえ、執務室の隣に会議室がありますのでそこまで来てください』
「わかった。すぐに向かわせてもらうね」
『はいなのです』

それで電ちゃんが遠ざかっていくのを確認して。

「うーん…何が起こったのかね?」
「とりあえず行こうよ提督。もしかしたら有益な情報かもしんないよ?」

川内にそう言われたのでとりあえず私達七人で会議室に行くことになった。

「なんかちょっとウズウズしてきたかもしンないぞ。なぁ提督?」

きひひッ!と笑みを零しながら江風が私にそう言ってくる。
あ、注意しとかないといけない事があるんだ。

「江風。それに皆もいいかな。今は私は榛名だから提督じゃなくて榛名って呼んでほしい。余計なもめ事は避けたいから…」
「了解だよ、司令官、じゃなくって榛名」
「了解です。榛名さん」
「了解ぴょん」
「がってんだ!」
「よし。それじゃ行こうか」

それで私達は執務室の隣にある会議室へと足を運ぶとそこには大破していたはずの暁ちゃんも一緒に全員いた。
おそらく高速修復材でも使ったか、それともまだ練度が低いからすぐに入渠が終わったのか。

「まずは集まってくれてありがとう。榛名さん、川内さん達とは話はしっかりと出来たようだね」
「はい。彼女達は私の仲間でした」
「そうなの…?」
「はい。それで久保提督、どうされましたか?」
「うん。ちょっと大事な話になっちゃってね」
「大事…?」
「うん。皆には大将との会話をプリントしたから配るね」

それで私達にも内容が記された紙が回ってきた。
だがその内容に私は、いや私達は驚愕の表情をした。

「てい…じゃなくって榛名! これって!?」

川内が声を上げて私を呼ぶ。
私もおそらく考えていることは一緒だろう。
この鎮守府はおそらく…。

「榛名さん? どうしたの? もしかして心当たりが…?」
「はい、まぁ…。なんというかここまでくるとご都合主義な展開だと思いまして」
「それはどういう…?」

久保提督が少し厳しめの目をして問いかけてくる。
そこには嘘は許さないと言った感じであった。
仮にも本物の提督なのだから普通の一般人だった私より威厳があるものだね。
まぁ、ちょうどいいし話しておこうか。

「久保提督。おそらくあなたが背負っている日本という重荷はすぐになくなると思います」
「えっ…? なんで…?」
「はい。その前に私達の隠していた素性を話しておいてもいいと思うんですよね。
うまくいけばあなた達とは友好関係を築けると思います」
「え? え?」
「一体どういう事だい…?」
「そうよ。説明して!」
「そうよ」
「なのです」

どうやら久保提督と第六駆逐隊の面々は混乱しているのか私達に遠慮がなくなっているようだ。
それで私は話す。
私の素性とこの突如として出現した鎮守府との関係性を。

「まず私は…そうですね。本物の金剛型戦艦三番艦である榛名ではありません。でも、それでも榛名なんです」
「榛名じゃないのに榛名だって…どういう事?」
「はい。私もどこまでが本当か嘘なのかも現状は分かっていないんですが、私はこの世界とは別の世界で川内達…彼女達の提督をしていたものです」
「ッ!? それって!」
「はい。そしてなぜかは分かりませんが私は榛名の体に宿ってこの世界に突然落とされてしまったのです」

あ、本物の榛名の魂もこの体に宿っているという説明をする。
そして川内達も私と同じように謎の光でこの世界に来たことを伝える。

「だからおそらく突如として現れたその鎮守府は私の鎮守府だと思うんです。出来すぎた話ですが多分間違っていないと思いますから」
「ふー…驚いた。あなたは提督だったのね」
「はい。驚きましたか?」
「うん。でもそうなると色々と話が繋がってくるんだよね。あ…そうだ。じゃあなたの事はどう呼べば?」
「今まで通り榛名で結構です。今はこんな成りですから」
「そう。それじゃ榛名提督と呼ばせてもらうわ。それじゃ早速だけどそれが本当なのだとしたら私としては首の皮一枚繋がったような状況だね」
「彼女達の説得は私達で行って構いませんか…? 私だからこそできると思うのです」
「うん。大丈夫だよ。全権は任せます。でも代わりに見届け人として私達も連れてってもらっても構わないかな? うまくいけば私とあなたは良き協力者になるんだから」
「そうですね。私がこの世界に来る前までの備蓄はまぁ十分でしたがこれからもそれを維持できるかは分かりませんから理解者は必要だと感じています」

それで話が纏まったのだろう。
電ちゃんが報告書を作成している隣で久保提督が実に興味津々な顔で私を見てきた。なんだ?

「どうされました? なにやら嫌な視線を感じるのですが」
「いや、肩の荷が下りたとわかったら興味が湧いてきてね。あなたの鎮守府の規模ってどれくらいなのかなって…」
「そう言う話ですか。まぁ別に構いませんが…」

それから久保提督と色々な話をした。
話すたびに驚かれたのはまぁ別にいいだろう。
今までのイベント海域の攻略話なので花を咲かせた。
それはこの世界でも同じだったようで久保提督も同じように先輩の提督から聞かされた内容と同じらしい。
だとすると、この世界はゲームの世界と連動している現実の世界という訳かな…?
それと他にも大和が片方は練度1のままだが実は二人もいるという話をしたらとても羨ましがられた。
なんだ? この世界ってそんなに大型建造はできるほど資材がないのか?
いや、あっても大和型を通常運用できるほどの余裕もないのかもしれないな。
ちなみに資材の横流しはしないですからと言って初めに断っておいた。

 
 

 
後書き
提督、正体を明かしました。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 では。 

 

0006話『接触と過去への謝罪』

 
前書き
今回語る話はほぼノンフィクションです。 

 
それから私達は久保提督の所有しているいざという時に艦娘とともに戦場に出れるように配備されている指揮艦船へと乗り込んでその鎮守府へと向かっている。
いや、危ないだろうという感想はこの世界の常識では通用しないのだろうか?
いえ、確かに今まで不思議に思っていた事だけどゲーム上システム的に通常海域やイベント海域では出撃する位置が決められている。
だけど、そもそもその出撃位置まで()()()()()燃料も減らさずに移動していたのかという疑問に辿り着いた…。
やった事は無いけど艦これ改にはそれぞれエリア事に拠点防衛の基地が存在していたはずだけど、あれはあれで独立しているからこっちでも一緒とは限らない。
それはつまり出撃位置まで別の方法で移動していたわけで…。一つ疑問が解消されたような気分だ。
それはまぁ、いい。
それより、

「もし違った場合はまともに戦えるのが私だけっていうのが辛いよね」
「仕方ないじゃん。提督は私達には自前の装備以外はドラム缶と大発動艇しか載せてくんなかったんだから。
まぁそれでも自衛のための装備もあるから無力って訳でもないし」

まぁ、確かに。
無装備でも攻撃は当たれば喰らうからね。

「でも、今回は後ろに下がっていてね。大和と武蔵の二人相手にさすがにみんなは分が悪いから」
「それはわかってるんだけど、それでも司令官の役に立ちたいなぁ…」
「皐月姉さん、今は司令官の命令に従っておきましょう。いざという時に役立たずにはなりたくありませんから」

三日月がそう言って自身も戒めている。
ミカはすげーな…。
いや、ここでネタに走っても仕方がない。
それに確かに三日月の言い分も正しい。
三日月、そして卯月、涼風は練度がまだ低い方なので遠征で少しずつ上げていっている段階なのだ。

「皐月も三日月も心配性だぴょん。司令官の考えが合っていれば戦闘なんて起きないぴょん」
「そうだといいンだけどな…」
「どしたー江風? なにか不安でもあんの?」
「いや、涼風。誤解されちまったらそれまでじゃね? こっちは合わせても十人程度。
それに対してあちらは複数艦も含めると200人以上…。改二の江風達でも対抗されたら負けが見えてンからな」
「さすがだね、江風。うちの戦力をよく分かっている。もし説得が失敗したら合わせても練度70以上が150人以上はいるからやばいしね」

そんな時に私のそんな言葉を聞いていたのだろう、久保提督が顔を青ざめている。
どうしたんだろうか。

「ね、ねぇ榛名提督? あなたの艦娘達の練度って最高は誰なの?」
「うちの最高練度の子? 潜水艦の呂500…ローちゃんが155で実質のトップで続いて榛名が136かな?」
「そ、そんなに高いんだ…」
「うん。それもあるけどうちはちょっと潜水艦事情で母港が圧迫していてね。40人以上はいるかな? 潜水艦の子達は…」
「そ、そんなに…」
「うん。だからもし潜水艦の子達が一斉に仕掛けてきたら贔屓目に見なくても練度なんて関係なく私達はお陀仏だね」

私が笑いながらそう話すがあちらとしてはゾッとする話らしく苦笑いすらしていなかった。
むしろ第六駆逐隊の面々は震えてさえいた。

「提督…? 今から恐怖心を植え付けてどうすんのさー?」
「そうだね川内。今は彼女達を説得することを考えようか」

それで話をしている間にようやく到着したのだろう鎮守府が見えてきた。
確かに…。

「改めて分かるけど立派だよねー」

私がそう呟くと、川内達も頷いている。
現状の母港は上限MAXにしてあるからそれは立派な事だろうね。
と、そんな時だった。
突如として指揮艦船の前の海上になにかが着弾したのか轟音とともに水しぶきが上がる。

「ななな、なに!?」
「暁お姉ちゃん落ち着いてなのです!」
「し、沈まんさ!」
「い、雷に任せなさい!」

一気に第六駆逐隊の面々は混乱の様相を呈していた。

「は、榛名提督、これって…」
「…おそらく大和か武蔵が忠告の意味も含めて副砲辺りで威嚇射撃したかな? 正直怖いねー…燃費の意味でも」
「司令官。早くしないとまた撃ってくるよ?」
「そうだね、皐月。それじゃでようか」
『了解』

それで私達は艤装を顕現させて海上へと降りる。
見れば海上の向こうでは大和と武蔵が険しい表情をしながら、

「止まりなさい! これ以上近づくのであれば今度は威嚇では済ましませんよ!」
「そうだぞ!」

大和がそう宣言して武蔵がそれに続いている。
遠目に見ると鎮守府の敷地内にも艦娘達がほぼ全員鎮座していていつでも出れるようにしているのだろう、艤装を出している。
うーん…確かにこれは榛名ボディーである私じゃなかったら怖くなって逃げだしてもおかしくない光景だね。
あきらかにオーバーキル状態だ。

「は、榛名提督! 任せたわよ!」
「分かってますよー!」

やはりあの光景に恐怖を抱いたのだろう声が引き攣っている久保提督の言葉に手を上げて応えながら私は大きく息を吸って大声で宣言する。

「すぅー………大和! 武蔵! 落ち着け!! 私達は敵じゃないんだ!」
「な、なにを…」
「大和さーん! ボク達だよー! 分かるかーい?」
「なっ! まさか行方不明になっている第二艦隊の方々と榛名さんですか!?」
「そうだよー。だからその砲塔を下げてもらっても構わないかな?」

私がそう言う。
でも大和がなにか私に違和感を持ったのか、まだ砲塔を下げずに、

「貴女は…本当に榛名さんですか? 喋り方に違和感を覚えました」
「あちゃー…司令官、やっぱり分かる人には分かるみたいぴょん」
「そのようだね…。仕方ないけど」

それで仕方がなく大声で私の現状を話す。

「私は確かに榛名じゃないけど、同時に榛名でもあるんだ。理由を説明したい…どうにか陸地に上がらせてもらっても構わないか?」
「…でしたらなおの事信用なりません。あなたが榛名さんではないのでしたらなんなのですか?」
「信じてもらえるかわからないけどいいかな? 私は…いや、俺は君達の提督だ!」

そう宣言した瞬間に大和達の背後で控えている艦娘達から「えーーーー!?」という声が聞こえてきた。

「なっ!? そんな世迷い事を言って信じると思っているのですか!?」
「普通なら思わないだろう。だが信じてほしい。
君達も謎の光とともに鎮守府とともにこの世界に来たのだろう? 俺もいきなりの光とともに気付いたらいつの間にか榛名と一体化していたんだ」
「そ、そんな事が…」
「どうするのだ大和…? あの者が言っていることが本当なら私達は提督に刃向かっていることになるんだぞ?」
「どうするって…そんな事が本当にあるなんて…」

武蔵と大和のそんな困惑した言葉が聞こえてくる。
やっぱりそう簡単に信じてはもらえないだろうな。
なら、私の最終手段を使うしかないかな?

「それなら今から言う艦娘は前に出て来てもらっても構わないかな?」
「艦娘の指定、ですか…?」
「ああ。木曾、イムヤ、綾波、まるゆ…この四名を指定する。初期からいた古参の者達なら勘がいい者なら気づけるはずだ」

そう言った瞬間、古参組と最近の組で分かれたのだろう。ザワザワと騒ぎ出す艦娘達。
それは背後にいる川内達も気づいたのだろう。

「て、提督! そのメンバーって!?」
「頼む…。今はけじめをつけたいんだ。いつかは謝りたいと強く願っていた…。こんな機会を逃す俺じゃない」

それはあちらにも伝わったのだろう。
少し緊張をした顔つきをした四人が前に出てくる。
イムヤはケッコンカッコカリしているものとして六人の中から代表で出て来て、まるゆに関しては一人だけ改になっているのだろう代表で一人だけ出てきた。

「…俺に用ってなんだ?」
「綾波に御用でしょうか…?」
「イムヤに何か用…?」
「あ、あの…まるゆになにかご用でしょうか?」

四人が俺にそう問いかけてくる。
私は彼女達を前にして罪悪感に押しつぶされそうになりながらも心の中で榛名の姿でこんな事をしてしまう事を今は眠っているだろう榛名に謝罪した。
そして私はその場で土下座をした。
その私の思いがけない行動で川内達、そして鎮守府の艦娘達、久保提督達の息を呑む音が聞こえてきた様な気がした。
そんな状況でも私は土下座をしながらも大声で叫ぶ。

「…いつか君達にはこんな突発的な事が起こらない限りはありえないと思っていたが、もしこんな機会があったなら謝ろうと思っていた。
直接君達には関係ない事だけど俺はしっかりと覚えている…。
俺の未熟さ、そして至らなさで轟沈させてしまったかつてのもう一人の君たちの事を…」

その瞬間、ざわつきがより一層高まった。
そう、この四人は理由はそれぞれ違えど一度は私のミスで轟沈をさせてしまった艦娘達なのだ。

「これは俺の罪だ…。拭いきれるものではない。
だけど誓いたい。今後絶対に君達を轟沈させないと…。
そして信じてほしい…。俺は君達の提督なのだと…」
『………』

全員の声が聞こえなくなった。
だけどそこで今まで顔を伏せていた私に異変が起きる。
突然胸の動悸が早くなってなにかが体から抜け出すような、そんな奇妙な感覚。
でも決して不快なものではない。
これは………?
そしてふと私の頭に誰かの手が乗せられた。
誰の手だと思って思わず顔を上げるとそこには透明な体だけど榛名が微笑みを浮かべながら立っていた。

《提督…》
「榛名、なのか…?」
《はい…》

これはなにかの夢なのかと思ったけど鎮守府の方から金剛の声なのだろう「榛名ーー!?」という叫びが聞こえてきた。
それでこれは白昼夢なのではないと分かった。

《…提督、今までその事を謝りたかったんですよね。榛名は知っています》
「ああ…。一生消えない俺の罪だ」
《はい、確かに。でも、もういいのではないですか?
提督はしっかりと罪を…私達の辛い思い出も一緒に共有してくれている》

そして榛名は鎮守府の方へと体を向ける。

《皆さん、どうか信じてあげてください。この方は私達の提督です。榛名が言うんですから間違いありません!》

両手をグッとして榛名はみんなに叫んだ。
その瞬間だった。
鎮守府の方から何度も「提督ー!」や「司令官ー!」と言った俺を提督と認識してくれた叫び声が聞こえてきたのは。
それで嬉しくなって涙を流してしまった。
そんな涙がつたう私の頬を気付いた榛名は撫でながら、

《提督…。榛名はいつまでも提督と一緒にいます。だって、私と提督は一心同体なんですから…》

そして榛名は最上級の笑みを浮かべながら私の中へと再び入っていってしまった。

「榛名…ありがとう」

そして私達は歓迎されながらも鎮守府の港へと入れさせてもらえたのであった。

 
 

 
後書き
いやー、本当に会えるならもっと嫌悪の声が上がるかもしれませんね。死なせてますから。
どういう理由で沈めたのかも覚えていますからねー。

それと多分この話がピークでこの先はイベント話が起きるまでは日常とか内政話とかするかと…。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 では。 

 

0007話『歓迎』

 
前書き
更新します。 

 


久保祥子です。
先程の榛名提督の宣言は見ていて私は感動していた。
確かに轟沈させてしまった過去は消せないけど榛名提督はそれを一人ひとりしっかりと覚えていてあんな宣言までしちゃってちょっと情けない姿だったけどカッコいいとも思ってしまった。
その証拠に港に入れてもらった矢先に金剛さんに「ヘーイ! 提督ぅ! 榛名の体、大事にするんデスヨ!」と言われて抱き着かれている。
次には今の私ではおそらく入手は困難だろう、アメリカ海軍の戦艦であるアイオワさんが「あれが大和魂の集大成であるDOGEZAナノネ。感激したワ」と榛名提督の事を褒めていた。
他にも様々な艦娘の人達にあれこれ言われてそれでも榛名提督は笑顔を浮かべている。
きっと素直に迎え入れられたのだろう。
羨ましい光景だな…。
私も一度でも轟沈を経験してしまったら榛名提督のように後悔するんだろうな。いや、絶対する!
だからそれでも歓迎されている姿を見て嬉しい気持ちになる。
そんな時だった。
私の手を誰かが握ってきてくれた。
見れば私の初期艦である電ちゃんが握ってくれていた。

「司令官さん。司令官さんも榛名提督のような立派な提督になりましょうなのです」
「うん。そうだね! 私達もまだまだこれからだ! 頑張っていこう」
「ハラショーだよ、提督」
「雷はどこまでもついていくからね、司令官!」
「このレディに任せなさい!」

まだまだ私を含めて五人の弱小鎮守府だけど、絶対に榛名提督のような立派な提督になるんだ。
私はそう誓いを立てた。










みんなに揉まれながらもようやく落ち着きを見せてきたので私は久保提督のもとへと足を運んだ。

「久保提督…情けない所を見せたね」
「いえ、いいモノを見させていただきました。貴方のような人を模範にしていきたいです」
「そうか…。こちらとしては恥ずかしいやらなんやら…とにかくだ。これから長い付き合いになるだろうけどよろしく」
「はい。こちらこそ」

それで私は久保提督と改めて握手を交わす。

「…というわけで『ヒャッハー! 宴だー!』…って、ちょっとまて隼鷹!?」
「…提督~。ポーラ、一度提督と飲み比べしたかったんですよー」
「そうだな。今夜ばかりは本気で飲ませてもらおう!」
「提督…。お酌は私がしますね?」
「んっふふふー。14と飲み比べしよう! 提督!」

こ、この飲兵衛ども…ッ!(上から隼鷹、ポーラ、那智、千歳、伊14)
私が笑い上戸ですぐに酔ってしまい記憶が飛んでしまうほどの下戸だと知っての狼藉か!?

「い、いきなり頭が痛くなってきた…」
「た、大変ですね。榛名提督…」
「…久保提督。君も艦娘が集まってきたらいずれこうなる事を覚えておいた方がいいぞ?」
「はい。肝に銘じておきます…」
「とりあえず会議とやらは後日でいいかな? そちらも上との擦り合わせの時間が必要だろうし…」
「そうですね。それではまた後日に連絡を寄こしますね」

そう言って久保提督は指揮艦船に乗って先に帰っていった。
さて、それじゃ逝くか…。
その晩は盛大に宴が繰り広げられたのは言うまでもない………。











―――翌朝、私は酒が抜けきらずに頭痛がする頭を我慢しながら周りを見回す。
そこにはみんながみんな、宴会で酔いつぶれていたので目に毒のような光景が広がっていた(特にポーラ)。
男のままだったらこの空間には居た堪れなくて居られなかっただろうと思う。

そんな中でももう起きている者も数名いるようで何人か姿がない。
とりあえず今は頭痛が酷いので水を貰おうと動こうとして、スッと目の前に水の入ったコップが差しだされていた。

「どうぞ」

顔を上げてみれば鳳翔さんが木製のトレーで水を持ってきてくれたのだろう、笑みを浮かべながら差し出してくれていた。
それで感謝をしながら飲ませてもらった後、

「提督。昨晩はお疲れ様でした」
「いや、確かに疲れたけどあれが彼女達なりの歓迎だと思えば苦じゃないよ」
「ふふ。でしたら嬉しいですね」

鳳翔さんは笑みを零しながら「ちょっと着いてきてください」と言って私を自室へと案内してくれた。
何があるんだろうと思っていると、

「提督、もしよろしかったらお召し物をこれに着替えてみたらどうでしょうか?」
「これは…」

そう、鳳翔さんが差し出してきてくれたのは榛名の体のサイズで出来上がっている提督服であった。
これをすぐに用意してくれた鳳翔さんに感謝の念を感じながらも私は少しまだ服を脱いで肌を晒すのに抵抗を感じたが、これはもうしょうがない事だと思って一回裸になった後に提督服へと袖を通してみた。
しばらくして、鳳翔さんの前で着替えた姿を見せると、

「まぁ! ふふ。提督、とても似合っていますよ」
「ありがとうございます、鳳翔さん」
「いえ、お気に召したのならよかったです。それと…昨日は格好良かったですよ。
あそこまで言われてしまったら私達は提督の事をもう二度と憎めないではないですか」
「あれは私なりのけじめのつもりだったからな」
「木曾さん達も顔を赤らめていましたから反応は上々だったんでしょうね」
「だと、いいんですが…」

それで私は鳳翔さんに案内されながらも鎮守府内を散策していると前から私の初期艦である電が歩いてきた。
久保提督の電ちゃんとは使い分けないといけないな。
うちの方は普通に呼び捨てにするつもりだし。

「あ、電か」
「あ、お早うございます、司令官さん。ふふっ、その恰好お似合いなのです」
「ありがとう」
「でも、もう榛名さんは出てこないのでしょうか?」

少し落ち込んだ表情をする電。
そんな時だった。

《いえ? いつでも会えますよ》

そんな榛名の声が聞こえたと思うと今度はすんなりと透明な姿で榛名が姿を現した。

「榛名さん!」
《提督、電ちゃん。お早うございます》
「…あ、ああ。お早う榛名。しかしそんなにすぐに姿を出せるものなのか…?」
《はい。提督が呼びかけてくだされば榛名はいつでも出てこれます》
「そうか。それならよかった。これで金剛達にもいい返事ができそうだよ」
《はい。私はこうして実体がありませんから眺める事しかできませんが、話す事ならいつでもできます。ですからいつでもお呼びくださいね、提督》
「わかった。その時はよろしく頼むよ榛名」
《はい!》

そう言って榛名はまた姿を消した。

「榛名さん、よかったのです。…でも、少し羨ましいです。司令官さんといつでも一緒にいられるんですから…」
「…そうか。まぁそう言うな。これからは私はいつでもこの鎮守府にいられる。だから…」
「分かっているのです。我が儘を言って司令官さんに幻滅されたくありませんから」
「別に幻滅することは無いと思うけど…」
「女心は複雑なんですよ? 司令官さん」
「はい。肝に銘じておきます…」

そんな他愛もない、でも素晴らしい日常を毎日できるなんて元の世界に残してきた家族や友人には悪いと思うけど私はこの世界にこれてよかったと思う。


 
 

 
後書き
榛名はスタンドみたいになりましたね。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0008話『幕間 提督の話し合い』

 
前書き
更新します。
今回は少し独断と偏見の内容が含まれます。 

 
榛名提督が歓迎会という名の宴をしている頃、久保提督は柳葉大将へと電話で話をしていた。

「…―――という事がありまして、なんとか和平交渉はできそうです」
『そうか。それを聞いて安心した。
…しかし、異世界の提督で榛名に宿ってしまった、か。なかなか興味深い話だな…』
「はい。私も驚かされました。ですが悪い方ではないという事はしっかりと確認は取れました。
あんなに艦娘達の事を愛している提督も昨今では珍しいと思います」
『そうか…。それで色々と話を聞いたようだが、そのだな。大和型の練度はどれくらいかは聞いたかね?
私達の世界の常識では大和型は練度は十にも満たずにすり潰されることが多いからな…』

それで柳葉大将は少々声のトーンを落とす。
それは電話越しに聞いていた久保提督も分かったのだろう。
今のこの世界の情勢を嘆きながらも気持ちを入れ替えて、

「はい。聞き及んでいます」
『それで、どうなのだ…?』
「はい。大和、武蔵両名とも練度は90らしいです」
『なん、だと…? それは本当の事なのか…?』
「はい。あちらが嘘を言っていなければですが」
『それが本当なら大事だぞ、久保少佐。かの横須賀鎮守府の最高練度の艦娘は誰か聞き及んでいるかね?』
「い、いえ…聞いたことがありませんが、そこのところはどうなのですか?」
『はぁー…そうか』

柳葉大将は深い息を吐きながらも、

『ならば教えてあげよう。
必死に深海棲艦との戦いで海戦を潜り抜けて生き残ってきた武勲艦である戦艦長門はそれでも90だというらしい。
それ以外は激戦故に沈んでしまう事が多く、そこまで達したものはなかなかいないと聞く…。
過去に何度か99上限を超えて提督と絆を結んでさらに高みに進んだ艦娘も数人いるらしい。
だが、今は歳を取り提督業ができなくなった提督と一緒に引退して軍には所属しないで田舎で隠居しているという話だ』
「そうなのですか…。そうなると榛名提督は凄いのですね」
『凄い…? なにがだね?』
「はい。その大将の話を鵜呑みにするのならとても信じられませんが榛名提督の鎮守府の艦娘達は150人以上が練度が70を超えていて、さらには絆を結んで上限を突破した艦娘は約50人はいるとか…」

その久保提督の発言を聞いて受話器越しに息を呑む柳葉大将の声が聞こえてきたのを久保提督は感じた。
それほどに信じられないのだろうと久保提督は思った。
当然だ。
そこまで練度を上げるためにどれだけの年月と苦労と犠牲を払わなければいけないのか気が遠くなる話だ。

「あと、榛名提督が言うには自身よりもっと上級の提督が上にはたくさんいると聞きました。
なんの隠語か分かりませんがランカーや甲提督と呼ばれる提督達は絆を結ぶ結ばないにしても練度が上限に達しているのはざらではないという話です」
『まさか…。その榛名提督の世界の提督達は化け物か!?』
「まず普通ではないかと…」

二人は会話をしながらもかの世界では提督と呼ばれる集団は変態ぞろいなのだろうなという感想を抱いた。
実際は艦これというゲームはただのやりこみゲームだから資材が許す限りレベル上げをすればいいし、他にも廃課金者ならおそらくはそれくらい普通なのだろう。
だがこの世界では大破したら撤退すれば轟沈しないという概念はない。
大破ストッパーはあるにはあるが、当たりどころが悪ければ無傷状態からでも轟沈はありえるのだ。
そしてもし大破撤退できても帰りの航路で潜水艦に狙われるかもしれないからだ。
ここでゲームと現実のズレが起きている事などまだ気づいていない。
これはさて、まだこの世界の現実の常識を知らない榛名提督はどう感じるのか…。

『…まず話し合いが必要だろうな。あちらとこちらの常識がもしずれていたら榛名提督はきっと痛い目を見ることになる…』
「はい。それには私も同意します。榛名提督はこの世界の常識を多分ですがまるで知らない。だからゆえに現状は危険です」
『そしてそんな大勢力の鎮守府だからこそ闇の組織に狙われる可能性も視野に入れておいた方がいいだろう。
まだ今は情報は他の鎮守府には通達していないがこれが日本中に知れ渡れば大事になる事は間違いない。
この世界には榛名提督のように艦娘を愛している提督ばかりではない。
我々の窮地を助けてくれている艦娘をただの兵器として運用している所謂ブラック鎮守府とブラック提督という存在の噂があるという。
そんな輩どもにいざという時に協力しようと言われてそれを榛名提督が鵜呑みにして捨て駒などにされてしまったら異世界からという点も含めて我らは貴重で、そして大事な戦友を失うかもしれない』
「はい…」
『そして最悪な事態は榛名提督がもし暗殺や他にもやり様はいくらでもあるが殺されでもしてみろ…?
榛名提督が説得するまで大和型まで表に出て警戒していた艦娘達は一斉に我らに牙を向けるだろう』

久保提督はそれを想定してすぐに顔を青くしたのは言うまでもない。
断片的な情報からでも潜水艦の人数は40隻は超えているというから海の中から問答無用で魚雷で狙い撃たれたら確かに榛名提督の言うようにお陀仏だろう。
さらには確認はしなかったが他にも空母系の艦娘達もおそらく高練度だから空から空襲でもされたらそれこそ国の被害は甚大になってしまう。
それで久保提督は体を震わせながらも、

「…もし、よろしければ私が榛名提督にこの世界の常識を教える任を受けても構いませんでしょうか?
まだまだ提督としては新米の我が身ですが、これでも今年の海軍学校を男子を抜いて首席で卒業しましたから必ずお力になれると具申します」
『構わない。君の成績は私も知っているからな。安心できる。ただし、一回榛名提督との会談を設けようと思う。私も一回会わねば信用されないだろうからな』
「わかりました。早速明日か明後日にでも榛名提督のもとへと向かいましょう」
『うむ、そうだな』
「それに榛名提督が言うには燃料や弾薬と言った資材は十分にあるがそれでも数は有限だからいずれは枯渇してしまうだろうと言っていました。
そして他にもおそらく食料や水などの備蓄関係であちらの世界から着の身着のままで来てしまったのですから、ライフラインを確保するのも第一かと。
連絡をするだけで一々艦娘を派遣するなど非効率で原始的すぎますから」
『うむ…君は確かに優秀だな。そこまで考えているとは…。
あい分かった。
榛名提督と会談を設けた後は電気やガス、水と言った諸々の施設などを設ける工事でもするとしよう。
今頃はあちらもその問題に直面していると思うからな』
「おそらくは…」

久保提督と柳葉大将が想像しているのだろう二人して電話越しに唸っていた。









…二人の想像通りに翌朝、宴会の後始末をしながらも、

「…さて。ではこれからこの世界で暮らしていく上で大事な事がある」

私は今現状の鎮守府の状況を執務室で大淀に聞きながらも唸っていた。

「はい提督。現状は厳しいものがありますね。電気に関しては自家発電施設が存在しますが水やガス、他にも消耗品と言ったものがあらかた不足気味です」
「そうなんだよなぁ…昨夜は宴会とかやったけどあれですら厳しいものだったんだろう?」
「はい…それで主に駆逐艦の子達からトイレやお風呂などの施設がまともに使えなくて不満の声が上がっています」
「だろうな。これは早急に久保提督と話をしないとまずいかもしれないな」
「はい」

それで私と大淀は大きなため息を吐くのであった。

【工廠の妖精達と話し合って無断でライフラインを確保しましょうか? やろうとおもえば一日で整備できますが…】
「それだけはやめてください。せめて了承を得てからでお願いします」
「そうです。余計な火種を起こすのだけはやめてください」

妖精さんの発言は当然却下されたのは当然の事だった。

 
 

 
後書き
こうやってたまに提督達も絡ませていこうと思います。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0009話『会談準備』

 
前書き
更新します。
今回はうまく切れなかったので少し短めです。 

 
翌日の事であった。
執務室に吹雪、夕立、睦月のアニメ主役組三名が遊びに来ている時の事だった。

「司令官。駆逐艦を代表して報告しますがインフラ事情以外は概ね駆逐艦寮は大体問題はなさそうでしたよ」
「ありがとう、吹雪」
「いえ、ですが司令官の姿には驚かされましたね。まさか榛名さんと一体化しているなんて…」
「吹雪ちゃん、その話はもう宴会の時に十分聞いたっぽい」
「そうだけど、いまだに驚きだよ~」

三人がワイワイと騒いでいる時だった。
そこに二式大艇ちゃんで鎮守府周りを哨戒偵察してもらっている秋津洲が部屋に入ってきた。

「提督! 先日に一緒にいた久保提督って人が指揮艦船に乗ってやってきたかも!」
「そうか。話がもうついたのかな?」
「それと、それとは別にもう一隻指揮艦船が来てるよ。誰かな…?」

秋津洲のその発言を聞いて考え込む。
おそらく久保提督より上位の提督…おそらく元帥か大将クラスの人物がやってきたのだろうと思う。
自覚している事だけどうちの鎮守府はこの世界ではいつ起爆するか分からない爆弾のようなものだ。
だから久保提督達も慎重に人選をしたんだろうな。

「わかった。私も港に出てその二隻の船を歓迎する準備をする」

それで私は鎮守府内なら予備電力施設で使える電話で工廠へと電話をする。

『はいはい! なんでしょうか提督?』
「明石か。至急ですまないが工廠の妖精さん達を招集してもらって構わないか?
うまく話が通れば今日中にもインフラ整備に着工できるかもしれないから」
『わっかりました! すぐに集めておきますね』
「頼む」

それで明石との通話を切った後、次は大淀二人(誤字ではなく本当に二人いる)を呼ぶことにした。
二人とも同型だから軽巡寮で同じ部屋で暮らしている。
同じ思考で混乱するんじゃないかと最初は思ったが、この鎮守府ではもう普通に通用するから気にはしていないという。
それに交代制で任務娘として私に任務の案内をできるということで循環はいいと言う。
なんせうちは久保提督に伝えたように潜水艦は東部オリョール海海域を周回するために伊58、伊168、伊19、伊8はそれぞれ六名ずついるんだから今更である。
他にも同型の艦娘だけど千歳、千代田は軽空母と水上機母艦で二人ずついる。
さらには鈴谷もこの間、運営からの情報で軽空母になるかもという報告がありすぐに二人目を確保してあの体力を大幅に消耗した改二実装までの魔の十日間で練度1から88まで寝る間を惜しんで上げて、そのおかげか今では改二と航改二で使い分けている。
そしておそらくまだ明言はされていないが熊野も同じ仕様になるだろうから今現在二人目を余裕を持って練度上げ中だ。
コンバートで艦種が変化する可能性が少しでもありそうな艦娘は二人目を育てておいても戦力的な意味で損はないと思うし。
………もしかしたら加賀も戦艦にコンバートするかもしれないという話が信ぴょう性を増したのだから。
うちは一人一体だけ主義ではないのでそんなごった煮の状態だから双子とか数は多いと六つ子とか後一人称を変えるとかそういう変な設定を入れて楽しんでいるという。



―――閑話休題



とにかく、大淀の部屋に連絡を入れる。

『はい。なんでしょうか提督』
「これから久保提督ともう一人、誰だかは分からないが鎮守府内にやってくる。
だから会議の場を設けたいと思っているので準備をしてもらっても構わないか…?」
『わかりました。すぐにもう一人の私とともに準備を開始いたします』
「よろしく」
『はい、お任せください』

これでよしっと。
大淀とも通話を切って一息ついていると吹雪たち四人が目を見開いて固まっていた。

「…どうした?」
「い、いえ。司令官ってもとはただの一般人でしたよね? なのに手慣れているなぁっと思って…」
「そうっぽい」
「にゃしぃ…」
「そうかも」

四人の反応に私は少し頭が痛くなりながらも、

「これでも社会人経験はあるんでな。それにこのくらいはできないとダメだろう…?」
「で、ですよねー…」

それで吹雪達は納得したのかそれ以上は追及はしてこなかった。








それから私は港に出て久保提督達と対面していた。
久保提督の隣には当然電ちゃん。
そしてもう一人の少し歳をとっている上級の提督の隣には蒼龍がいた。
鉢巻きをしていることから改二にはなっているのだろう。
とにかく、

「よくおいでになりましたね、久保提督。待っていました」
「そうですか。やっぱりインフラ関係ですか…?」
「まぁ、そこですよねやっぱり。ところでそちらの方は…」

私がそう問いかけるとその人物は待っていたのだろう一歩前に出て、

「私は第2号宿毛湾泊地の提督であり大将の柳葉一二三だ。
話は久保提督から聞いている。これからよろしく頼むよ、榛名提督」

やっぱり大将クラスか…。と思いながらも「よろしくお願いします」と言って私は握手をした。

「それにしても、提督の服装に着替えたんですね榛名提督」
「はい。榛名の恰好のままでは紛らわしいという話になりまして」
「そうなんですか」

そんな話をしながら私達は会議室へと足を運んでいった。


 
 

 
後書き
提督の皆さんは鈴谷は二人目を育てましたか…?
鈴谷改二が実装されて任務を確認せずに一気に航改二にまで上げてしまった人が多数いたらしいので怖い話ですよね。
せっかく二枚も改装設計図を使用して航改二にしたのに、改二での任務をするために改二に戻したら、今度は航改二にするのにまたさらに改装設計図が一枚必要という罠で…。

現在熊野も練度94で待機していてもう一人は61辺りですね。
第二次改装はイベント後だと思いますからイベント中に演習で88まで上げれると思いますね。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0010話『会談』

 
前書き
更新します。 

 



久保提督と柳葉大将さんを会議室へと案内している道中で、

「しかし、榛名提督…」
「はい。なんでしょうか?」
「君はこの世界に来てからまだそんなに日数が経っていないと伺うが、寂しいという気持ちにはならないのかね? もとの世界には家族などもいたのだろう?」

柳葉大将さんがそう言って私の事を心配してくれていた。
やはり大将という地位を持っているのだからこのくらいはお手の物なのだろう。

「はい。ですがもう戻れないのは分かっていますから大体は吹っ切れています。
それに艦娘達が一緒にいてくれますから寂しくはありませんよ」

そう言って私の隣を歩く大淀に目を向けた。
大淀はそれで笑顔になっていた。

「…そうか。いらぬ心配だったようだな」
「ですが心遣いだけは受け取っておきます」
「それならこちらも心が休まるよ」

そんな話をしながらも私達は会議室へと到着した。
そこで大淀が中を確認するために扉をノックする。

「私? 会議用の資料やその他の物は準備は出来ていますか…?」
『はい、私。大丈夫ですよ。もう入ってこられても大丈夫です』

そんな不思議なやりとりがされて久保提督と柳葉大将さんは少し目を丸くしていた。
そして、

「…榛名提督。その、なんだ? 今のやり取りはなんだね…?」
「あ、あはは。複雑な話なのですがうちには大淀が二人いまして…」
「そ、そうなのか…。しかし、大本営では丁重な扱いをされている大淀を二人も持つとは…」

それで柳葉大将さんはぶつぶつと考え出してしまっていた。
それで今は話しかけない方がいいと思って久保提督へとその辺を聞いてみると、

「はい。通常、鎮守府には大淀という艦娘は基本は任務を私達に伝えるだけの存在として派遣されるだけなのです。
…上級の提督になってくると戦闘でも運用できるという話ですが、それと同時に手続きが大変らしいんですよ。
大淀という艦娘は先ほど伝えた通り大本営から派遣されてくるだけですから、その個人での鎮守府に配属となると上の判断に迫られるそうで…」
「なるほど…」

それを聞いて納得した。
この世界では大淀という個体の艦娘はやはり大本営直轄なんだなと…。
二次創作世界では色々と黒幕だとか実は深海棲艦とも内通して繋がっているとか酷い言われようだからな。
それはともかく、

「それじゃこの世界でこれからやっていくにはやっぱり色々と任務とかの手続きが必要なんですか?」
「いえ、大淀という艦娘も派遣されない鎮守府もありますので任務や情報伝達などの手段は電文で送られてくる仕様が一般的です。
げんにうちには大淀はまだいませんし…。ですから本格的に協力関係になりましたら電文が送られてくる機械が大本営から送られてくるかと思います」
「そうですか。説明ありがとうございます」

久保提督とそんなやり取りをしていたら中の準備が整ったのだろう、大淀二人が並んでどうぞと言って私達は会議室へと入っていった。
私と対面する形で久保提督と柳葉大将さんが着席する形になり、

「…それでは会談を始めましょうか」
「そうだな。まずいいかね? この鎮守府だがインフラ整備などはどういった状況だね?」
「いきなり痛いところを突いてきますね。
はい、おそらくそちらが思っている通り電気、ガス、水…他にも消耗品などが確実に不足していますね。
電気に関しましては自家発電施設がありますからなんとか鎮守府内の電気関係のものは使えますが、やはり水とガスが使えない事によってトイレやお風呂施設と言った衛生面での分野が使えないのは難点です。
他にもまだ食料などは一か月は食せる分はありますが制限していかないとやり繰りできない程に切迫しています。
それによって今はまだ我慢できていますが、そろそろ艦娘達の不満は限界に近いものがありますね」

私がその事を伝えると「やはり…」と言った声が二人から聞こえてきた。

「あい分かった。その件に関してはこちらで大本営へと掛け合ってみよう。
すぐにとはいかないが返事がもらえればインフラ整備に着工できる準備はしよう。
他にも酒保なども最低限の準備はさせよう。引継ぎに関してはこの鎮守府には当然明石もいるのだろう?
できれば後でそれ関係で話がしたい。会わせてもらっても構わないか?」
「わかりました。後で明石に話をつけておきます。
…それと、そうですか。ありがたい話です。ありがとうございます」

これでインフラ関係は解決したことになる。
次は何が来ると思っていると、

「さて、では次だが君の世界とこちらの世界の任務内容が違いがないか確かめたいのだが、いいかな…?」
「わかりました。…大淀、頼む」
「はい提督」

それで大淀は今まで私がこなしてきた任務を簡易的にまとめた資料の束を柳葉大将さんに渡す。
柳葉大将はそれを凝視しながらも一枚、また一枚と捲っていく度にどんどんと驚きの表情になっていって最後まで捲り終えたのだろう。
少し疲れた表情をしながら、

「…確かに確認した。おそらく我らの世界とは概ね同じ内容だった」
「そうですか。よかったです」
「…しかし、つい最近大本営が発表した鈴谷改二と鈴谷航改二の任務ももうクリアしているとは驚きだ。
鈴谷航改二に第二次改装できる練度の要求は極めて高いものがある。
さらには大本営から賞与として貰えるだろういくつかの勲章で作成できる改装設計図もその数分必要になってくる。
君はその分を必要とされるものを全部揃えることが出来たという事だな?」
「はい」
「そうか…」

それで柳葉大将さんは少し考え込んで、そしてある事を私に要求してきた。

「この資料とは別にこの鎮守府に在籍している艦娘の練度表などはあるかね?
できればこの任務表と一緒に大本営へと提出させたいと思っているのだが…」
「わかりました。大淀、用意のほどは…?」
「抜かりはありません」

それで大淀は任務表とは別に艦娘練度表を柳葉大将へと渡した。
そして今度は一緒に見てもいいと思われたのだろう久保提督も一緒に中身を拝見している。
しばらくして私の鎮守府の艦娘達の練度も把握できたのだろう口をあんぐりと開けるという状態になっていた。

「…すごいな。こうして数字に現しただけでも分かる高練度の艦娘だらけだな」
「はい。驚きました」

二人はそれで少しの間、驚愕の顔が治らなかった。
しばししてその資料を後ろで黙って立っていた蒼龍へと渡していた。
でも蒼龍も興味を持ったのか練度表を覗いていたが顔には出さないが小声で「うわっ、すごい…」と呟いていたのは印象的だった。

「よし。では大方の物は手に入った。だからもう何日か我慢してもらっても構わないかね? いい返事ができるように努力はしよう」
「お願いします」
「それで他にはなにかあるかね…?」
「そうですね…」

それで後は細々とした話などをした後、最後に、

「さて、それでは最後に…榛名提督。
君の世界ではどうだったかは分からないがこの世界でもこの日本のために深海棲艦と戦い尽力してくれる覚悟はあるかね…?」
「はい。どこまでお力添えできるかわかりませんが、もう私はこの世界の住人として生きていくことを決めています。ですからよろしくお願いします」

そうして私と柳葉大将は握手を交わした。

「そして君はこの世界に来る前までは一般人だったと聞く。…その落ち着きようからにわかには信じられないがな。
よってこの世界での常識を学ぶ必要がある。君の世界の常識との認識のズレを治すためにしばらく久保少佐が君の教育係に抜擢された。
…なぁに、心配はいらない。まだ提督としては新米だがこれでも今年の海軍学校では首席で卒業した実力がある。きっと君の力になってくれるだろう」
「という訳です。当分の間ですがよろしくお願いしますね、榛名提督」
「ありがとうございます」

そうして会談は終わって柳葉提督は帰りに明石と少し話をした後に自身の鎮守府へと帰っていった。
久保提督も色々と準備があるようで少ししてから帰っていった。
私は二人が帰っていった後に、こんなに真面目に話をする機会はなかったので久しぶりに疲れてしまっていた…。

 
 

 
後書き
こんな感じに会談も終わり次回から本格的に動こうと思います。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0011話『ライフラインの復旧とお風呂』

 
前書き
更新します。 

 


大将達との会談の二日後にようやくライフラインの目途が立った。
明石と工廠妖精さん達が大将さんに指定してもらった場所から水、電力、ガスなどの必要なパイプを鎮守府に繋ぐ作業を現在急ピッチで行っている最中だ。
やっぱり妖精さんは万能の生き物らしくまずは水とガスを半日ですぐに繋いでしまい、その夜には電気も復旧して予備電源だけで少々暗かった鎮守府全域に明かりが灯された。
そしてその晩の事…、

「お水だー! お湯だー! アゲアゲですよ!!」

大潮がお湯が出たことに対して持ち前の明るさで騒いでいた。

「シオイ! 潜行します! ドッボーンッ!!」
「あ、シオイ! ずるいですって!」
「待つでち!」

潜水艦の艦娘達が勢いよく飛び込んでいた。
君たちはよく水の中に飛び込んでいたろう。いや、水ではなくお湯となるとまた違ってくるのだろうな。
そんなみんなの騒ぐ声が隣の大浴場から聞こえてくる中、私も提督専用の湯船でこの体になって初めてのお風呂となり別の意味で緊張をしていた。
そう、鳳翔さんとの一件で一回裸にはなったが、それでも胸にはさらしが巻いてあったしパンツも穿いていた。
だけど今から全裸になるだろう事を予測して顔が赤くなっているのは仕方がない事なのだ。
そしてそんな時に限って、

《あ、あの…提督。あんまり、見ないでくださいね?》
「あ、ああ…」

榛名が自身の体を見られるのを恥ずかしがって普通に出て来ていたのだ。
こういう時にこの体に宿ってしまった事を喜んでいいのか嘆いていいのか分からない事になってくる。
いざ脱ごうと思うがあまり勇気が湧いてこない。
そんな時だった。
提督専用の脱衣場に誰かが勢いよく入ってきたのは。

「ヘーイ! 提督ぅ! 榛名! お困りですカ!?」
「金剛!?」
《金剛姉様!?》
「司令、お困りでしたらこの霧島にお任せください」
「ひぇー! 司令? 榛名の体でエッチな事はしちゃだめですからね!?」

そこには金剛シスターズの姿があった。
それでこの後の展開を予想して顔が赤くなるのを自覚しながらも「どうして脱衣場に入ってきたんだ…?」と上ずった声で聴いてみると、

「どうせ提督の事デース! 素直にお風呂に入れないと予測したデース!」
「私の計算通りでしたね」
「いや、霧島。なんの計算ですかそれ…?」
「そ、そんな…比叡姉様にツッコミをされた…」

わーい!と騒ぐ金剛と、自身の発言にまさか比叡に突っ込まれるとは思わなかったのかがっくしと項垂れる霧島の姿があった。

「とにかく! 提督はまず女性の裸になれることが専決デスヨ! だから…比叡! 霧島! やっちゃいなさい!」
「わっかりましたー!」
「了解です、金剛姉様!」

金剛の指示で比叡と霧島が一気に私に詰め寄ってくる。
な、なにをする!?
そんなたいして抵抗もできずに私は一気に裸にされてしまいすぐに体にバスタオルを巻かれてしまっていた。
気付けば金剛達もすでにバスタオルを体に巻いていた。
い、いつの間に!? さっきまで私と同じで改造巫女服姿着ていたよね!?
これが女性の脱ぎ技テクニックというやつか…!?
そのまま四人でお風呂の中へと突入していくという…。
そんな背後で透明の榛名が《ううぅ…》と恥ずかしがっている声を上げていたのはどうすればいいのか私にも分からない…。

「さーて! それではさっさと提督の何日も入っていない汚れた体をウォッシュしてバスタイムデース!」
「わかりました。…司令…覚悟してくださいね?」

女性としては出してはいけない声を出しながら手をワキワキしながら比叡がにじり寄ってくる。
そんな光景をして羞恥心より先に恐怖の方が上回った私の気持ちは間違っていないと思う。
逃げ出そうとして…できずに先に霧島に腕を掴まれてしまう。

「おっと司令? 逃がしませんよ?」
「お願い、許してください…」
「ノウッ! ダメデース。提督ぅ、覚悟してくださいね!? 食らいついたらハナサナイネ!」

そう言って金剛が勢いよく私の体を濡れた手で触ってきた。
その瞬間、

「ーーーーーッッッ!?」

私の中で男の尊厳にも関わるだろう出してはいけない声を出してしまった。
すぐに両手で口を押えてたが時すでに遅く、金剛達三人の顔は赤くなっていてなぜか息も荒くなって様子がおかしくなっていた。

「ふ、ふふふ…提督ぅ? 私、どこかおかしくなってしまったようデース…」
「お姉様もですか…?」
「ぐふふ…司令、可愛いですよ…ジュルリ…」

金剛と霧島が顔を赤くさせながらも私の体を粘っこい目で見てきて比叡に関してはもうアウトーーー!だろうという笑い方と舌なめずりをしている。

「ヒッ!?」

恐怖から来る声を出して思わず体をギュッと抱きしめてしまったのは悪くない…。








―――そこから先の記憶はあんまりなかった…。
気付けば私は湯船の中に沈んでいた。
頭が回らずに少々ぼんやりとした意識の中でふと横を見れば三人ともどこかホッコリとした顔をしながらも透明な榛名に涙目ながらも説教を受けている光景があった。
本当に何があった…?
でも、思い出さない方が私の精神衛生上にもいいのだろう。きっと、多分、おそらく、めいびー…。



そんな事があってかもう自身の裸にもいつの間にか慣れてしまっていてお風呂から出る際には普通に着替えていたのであった。
ただ…。
金剛達に次も一緒に入りましょうね…?と言われて何故かは知らないが拒絶反応が出て体が少し震えてしまっていたのはどういう事か…?
しかもその光景をどこかで撮影していたのか次の朝には何日か前に発行を許可した青葉新聞が掲示板に掲載されていて見出しには、

『提督、お風呂で金剛姉妹たちと蜜月の体験をする』

というふざけた見出しに思わずグシャッとその新聞を握りつぶす。
その光景を目撃していたのだろう震えている艦娘が数名いるが今は気にしない。
そして、

「青葉ー! どこだーーーッ!!?」
《青葉さん、どこですか!?》

と、私と榛名は気持ちが重なって大声で叫んだ。


 
 

 
後書き
こういうのってTSの醍醐味ですよね。
女性の方が感度が高いっていう…。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0012話『久保提督による講座』

 
前書き
更新します。
今回はある意味説明回なのでつまらないものかもしれません。 

 

…この世界に来てから一週間くらいが経過した。
久保提督の話によればこの世界の年号は私が元いた世界と同じで今は2017年の4月らしい。
だが一つ違うところがあるのは艦隊これくしょんというゲームは2013年に開始したゲームだ。
だけど、この世界では約20年前から深海棲艦が出現し始めてこの世界のありとあらゆるシーレーンを破壊して人々から海への進出を奪ったという。
艦娘というのは深海棲艦と幾度にも戦い敗戦を繰り返していた人々の前に突如として現れた妖精さんによって作り出された。
作り出される艦娘は過去に…主に第二次世界大戦で活躍した戦船の魂を宿して建造されるらしい。
ここまでに関してはメタ知識を知っている私としては理解できる内容だった。
各鎮守府に工廠と入渠施設を作る事から始まって世界は艦娘を使用しながらもどうにか深海棲艦とこの20年でどうにか戦線を膠着状態にまで持ち込んで最低限の海の航路は確保できた。
だが作られる数に限りがある艦娘と違い深海棲艦はどこで建造されているのか分からずに倒しても倒してもまるでゴキブリのように沸いてきては戦いを挑んでくるという。
今ではどうにかそれで防いできた。
だけどこれも2013年からだと言う話だけど主に年に頻度としては四回くらい活発的になって起きる深海棲艦との大規模な戦いをなんとか深海棲艦の群れの所謂ボスを倒して撤退させて戦術的勝利をしているという。
これははたして私の世界が無意識にこの世界を観測してゲームとしたのか分からなくなってくる話だ…。
今の偽りな平和は様々な主に言えば艦娘の犠牲のもとに成り立っているという講習を受けていた。
考えてみれば当たり前な事だ。
莫大な費用をかけて作り出した現代兵器も深海棲艦の前ではまったく通用しないのに、艦娘の行う攻撃だけは通るという理不尽さだ。
ゆえに莫大な費用をかけて艦船を作るよりは艦娘一人を作る費用の方が莫大に燃費もコストもいい。
それだから今のこの世界では戦艦やイージス艦といった船は大体が沈んでしまっており、代わりに妖精さんの助けを借りて指揮は一人でできる指揮艦船が主に作られているという。
久保提督の話によるともうすぐ私の所へも大本営から電文を送る機械とともに一緒に指揮艦船が一隻届けられるという。


それとこの世界で知って驚いたことがこの世界では艦娘は大破ストッパーはあるにはあるが主に顔面に直撃だとか当たりどころが悪ければ無傷の状態からでも沈んでしまう事があるらしい。
それを聞いて思い出したのはアニメ艦これで如月が無傷の状態から攻撃を受けて沈んでしまったという出来事があった。
だからこの世界の現実というシビアな認識を再確認できた。
ゲームのように甘くはない。
今まで以上に気を引き締めて挑んでいかないといざという時に大切な艦娘達をまた沈めてしまいかねないから…。

「あ…久保提督、一ついいですか?」
「なんですか、榛名提督…?」
「はい。艦娘がもし轟沈して沈んでしまった場合、もう二度と戻ってこないんですか…?」

疑問点を私は聞いた。
そう、映画で判明した設定だけど艦娘は倒されたら深海棲艦となって人類の敵となる。
そしてその逆もまたあって深海棲艦を倒したら艦娘として再度生まれ変わるという…。
映画内では如月と加賀、そして特殊ケースの主人公の吹雪がそれに該当された。
なまじ中途半端に深海棲艦化して苦しんだ如月ならまだしも、一度は深海棲艦として敵となっていた記憶持ちの加賀というレアケースがある。
加賀が言うにはそういう深海棲艦としても記憶を持っている艦娘は名乗り出ないが何人もいるらしい。
それはゲームをやっていると分かる事だが、『駆逐棲姫』という姫級の深海棲艦は駆逐艦・春雨にとても酷似している。
他にも今までイベントで倒した深海棲艦に酷似した艦娘がドロップした例がたくさんある。
だからこの世界でもその設定は活かされているのではないかと思う。

「榛名提督は何を懸念にしているのか分かりませんが、基本的に艦娘は轟沈して沈んでしまえば二度とそれまでの艦娘としての記憶を持った個体は戻ってきません」
「そうですか…。わかりました」

久保提督はまだ轟沈経験がないから基本的にそう海軍学校で習ったという。
だから深海棲艦が艦娘化する現象にも遭遇したことがないのだろう。
そういった確証もまだないので私もこれからこの世界で実際に深海棲艦を倒してみないと分からない。

「…でも、そうですね。代わりと言ってはなんですが深海棲艦は艦娘の魂を捕らえているという噂があります」
「捕らえている…?」
「はい。所謂ドロップという現象ですが、深海棲艦の群れを倒すと稀に深海棲艦に捕らわれていた艦娘の魂が解放されて即座に体を構築して私達の前に姿を現すそうです」
「なるほど…」

その現象はゲームをしていれば嫌というほどに分かる現象だ。
それで何度も新艦娘の掘りを味あわされたからね…。

「わかりました」
「榛名提督は覚えがよくて助かります。伊達に提督をやっていたわけではないですね。
多分私の方が教えられることも多いのかと思いますし…」
「そんな…ただそう言う知識を持っていると言うだけですから本物の提督の証を持っている久保提督には知識面では劣ると思います」
「いやいや…」

と、そんなお互いのやり取りをしながらも、

「さて、それでは明日ほどには電文が届く機械と指揮艦船が届くと思いますのでこれで榛名提督は正式に日本海軍の軍人という事で登録がされます」
「わかりました」
「階級は柳葉大将が話し合ってくれて決定した特例の特務少佐の地位から始めてもらいますので少し私の方が先輩になりますね」
「そうですか、よろしくお願いします」
「はい」

それで今日の久保提督の講座は終了した。
 
 

 
後書き
こんな感じに世界観を作っていきます。

アーケードの大和と阿賀野型が素晴らしい…。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0013話『遅いお花見』

 
前書き
更新します。 

 
深海棲艦がこの世に蔓延っている世の中だ。
それこそゆったりとしていてはダメだと思う。
だけど、もう四月の後半…桜の葉も散って少しずつ緑に変わってきた今日この頃、鎮守府の敷地内にある桜の木の下でお花見が開催されていた。
なぜお花見なのかというと陽炎型駆逐艦十番艦の時津風が言い出したことである。

「しれー、お花見しよう?」
「お花見…?」
「うんお花見」
「しかし、もう桜も散ってしまっているだろう?」
「だけど桜だけがお花見じゃないでしょー? やろう…?」

私の肩に乗りながら時津風が猫撫で声でそんな事を言い出していたのだ。
それで一緒にいた雪風が、

「しれぇ! いいと思います! この世界に来てからというものしれぇはこの世界に慣れるために勉強三昧ですから息抜きも必要だと思いますっ!」

前歯をきらりと光らせながら愛嬌のある笑顔で雪風にそう言われてしまっては断りづらいものがあるな。

「…わかった。でもこの間に宴会をしたばっかりだから規模は少な目だぞ? まだ食糧の供給だって万全ではないんだから」
「わーい!」
「はいっ! わかりました!」

そんな二人の駄々もあって私達はこうして桜の下で鳳翔さんや間宮さん、伊良湖さん達の手作りの重箱をつついているという流れである。
そしてお花見と聞いて黙っていられるほどうちの艦娘達はおとなしくなかった。
みんながみんなしてお花見を楽しんでいた。
そんな中で赤城が加賀と一緒に私のもとへとやってきて、

「提督。お花見楽しんでいますか?」
「ああ、赤城。そういう二人も楽しんでいるか?」
「ええ、提督…。赤城さん、せっかくですから提督のそばに一緒にいませんか?」
「ふふ、加賀さんがそう言うのでしたら」

赤城は楽しそうに、加賀は少し頬を赤らめながらも私と一緒の席に着いた。

「…しかし、不思議なものです」
「なにがだ、赤城…?」
「はい。私達は今までゲームの中だけの所謂データの存在でした。提督も同様に艦これというゲームをしている一般人だったはずでした。ですが…」
「はい、赤城さん。どんな数奇な巡り合わせなのか私達はこの世界に来たと同時に実体をもって提督ともこうして自由にお話ができる………これにはさすがに気分が高揚します」

そう言って加賀は少なくない笑みを浮かべる。
驚いた。
赤城はともかく加賀ってこんなによく喋って感情豊かに笑う子だったんだな。
もっと物静かなイメージだったけどいい意味で見直さないといけないな。他の艦娘達も含めて。

「あ! 加賀さんに赤城さんを発見! ついでに提督さんも発見したよ、翔鶴姉!」
「そうね瑞鶴。提督の周りには今は加賀さん達だけみたいだから一緒に席に着きましょうか」

瑞鶴が指をさしながら翔鶴とともにこちらにやってきた。

「瑞鶴。秋月や朧、秋雲はいいのか…?」
「うん。あの三人もそれぞれ同じ隊のみんなと楽しんでいるみたいだから。
秋月なんて『瑞鶴さん、本当の食事って…美味しいんですね』って涙目になっていたし…」

…ああ、想像はなんなく出来る。
秋月は…いや、照月に初月もだけど、戦争末期の時代に生まれた艦船だから艦これの設定どおりに食に関しては並々ならぬ思いがあるのだろう。

「それより、加賀さん達がいいんですから私達も一緒の席でもいいよね? 提督さん」
「ああ、酒を多く絡めなければ歓迎するよ」
「ふふっ…最初の宴会の時に提督ってば酔ってずっと笑いっぱなしでしたからね」
「言わないでくれ翔鶴…。笑い上戸だってことは自覚していた事だし、それにみんなと楽しむことができたんだからあの時の醜態は忘れてくれ」
「はい。わかりました」

翔鶴は笑みを零しながら赤城の隣の席に着いた。
瑞鶴も加賀の隣に座る際、

「加賀さん? もっと詰めてくださいよ。座れないじゃない?」
「あら? 座る場所ならもっとあるじゃない…?」
「私に地面に直に座れっていうんですか…?」
「そこまで言ったつもりはないのだけれど…そう思わせてしまったのならごめんなさいね」
「むきー!!」

瑞鶴が口で速攻で負けて唸りを上げている。
うん。やっぱりこの二人はこんな関係か。
まぁ、それでも素直になれないのだろう加賀が、

「でも、早く座りなさい。いつまでも立っていたんじゃ足が痛くなるでしょう…」
「う、うん…」

と言って瑞鶴の手を引っ張っていた辺り、

「加賀も素直じゃないなぁ…」
「そうですね、提督」

鳳翔さんの作ってくれた料理を美味しそうに頬張りながらも楽しそうに赤城がそう小声で呟く。
それで散ってしまっていた桜を見上げながらも、

「榛名…」
《はい、なんでしょうか提督…?》

私の呼びかけにすぐに榛名が透明の姿で現れる。

「赤城もだけど…来年はもっとちゃんとしたお花見をみんなでしたいものだね」
《はい! 榛名もそう思います》
「提督。ですからこれからこの世界で頑張っていきましょうね」
「ああ」

そう榛名と赤城と話しながらも賑やかに行われているお花見の光景を楽しんでいる時だった。
駆逐艦達の集まりの方で『これからかくし芸大会を始めます! 一番はこの私白露がやりまーす!』というマイクを持った白露の姿が見えた。
でも、そこに何よりも早さを求める申し子である島風が、

「白露おっそーい!」

と言いながらもその場で連装砲ちゃん達と一緒に即席のダンスを踊りだし始めていて、他にもそれを酒の肴に酒飲み達が「いいぞー!」と言って場をさらに盛り上げていた。
そんな光景を目にして、

「………無くしたくないな」

私はそう誰にも聞こえない声で呟く。
だけどそんな呟きも榛名は聞き逃していなかったのか私の手に自身の手を乗せて実体はないのに温もりが感じ始めながら、

《…大丈夫ですよ。提督ならきっとこの光景も守れます》
「そうか…?」
《はい。榛名、信じていますから…提督ならきっと大丈夫だって》
「ありがとう、榛名」
《はい!》

そんな榛名に感謝しながらももう一度桜の木を見上げたのだった。
今日もとってもいいお花見日和だ。


 
 

 
後書き
少しでも瑞加賀の成分が入っていれば幸いです。

うちの艦娘達は自分たちがゲームのキャラクターで電子の存在だったという事をしっかりと認識しています。

ですからこの世界の艦娘達とは意識的には別物ですし、今後入手する新艦娘とは別物設定かもしれませんね。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0014話『鈴谷の悩み』

 
前書き
更新します。 

 
今日はまだ鎮守府全体を把握していないために任務を終わらせた後に鎮守府内を散策していた。
それで前方からとある艦娘が歩いていた。

「あ、提督じゃん。チーッス!」
「ち、チーッス…」

鈴谷だった。
女子高生のようなノリでなんとか返事を返すと「ノッテくれてありがと!」と言ってすぐさまに私の腕に絡んできながらも、鈴谷は私が暇をしているという事をすぐに察したのか、

「提督、暇そうじゃん? それならちょっと鈴谷に付き合ってよ」
「別にいいけど…どこにいくんだ?」
「うん。もう一人の私は今どうしているかなって…」
「もう一人の鈴谷か。そうだな、今頃弓道場で軽空母連中に鍛えられているんじゃないか…?」
「そうだと思う。あの子前から一緒にいた私と違ってこの鎮守府にいた期間はまだ短いじゃん? だから心細いんじゃないかなって…」
「そうだな…。よし、見に行ってくるか」
「話が分かるぅ! それじゃレッツゴー!」

それで鈴谷がリードしながらも弓道場へと足を運んでいくとそこでは面白い光景が繰り広げられていた。

「鈴谷! 式神式の艦載機の出し方を伝授させたるで?」
「ダメー! 瑞鳳が鈴谷に弓での艦載機の出し方を教えてあげるの!」
「あわわ…そんな一気に迫ってこないでよー!」

龍驤と瑞鳳が先輩風を吹かしたいらしく鈴谷の取り合いをしていた。
見ているだけなら面白い光景だけどこちらにいる鈴谷にとってはあんまり面白くなかったのだろう、

「はいはい! 龍驤先輩に瑞鳳も! 私が困ってるじゃん? 一旦落ち着こう!」

そう言って二人の間に入って仲裁していた。

「せやけどぉ…せっかくの新しい後輩なんやし…」
「うん。空母のイロハを色々と教えてあげたいの…」

二人はそれでシュンとなっていた。
そんな二人の頭に私は手を置く。
それで私がいることに気づいたのだろう。

「まぁ、そう焦るな二人とも。喧嘩なんかせずとも鈴谷は別に逃げはしないんだから。
同じ空母寮の仲間なんだから時間をかけて切磋琢磨していけばいいじゃないか?」

そう言って場を和ませようとした、のだけど、

「司令官、甘いで? そんな事を言っていたら鈴谷はすぐに逃げてしまうからな」
「うん。これだけは譲れないの。鈴谷、すぐにさぼっちゃうんだからまずはその根性を治さないといけないの」
「…そうなのか? 鈴谷?」

それで私は軽空母の方の鈴谷に言葉をかけると鈴谷は「うっ…」と少し怯えた顔になって、

「だってさぁ…私、この鎮守府にきてからそう日も置かずに重巡から航空巡洋艦になって一気に軽空母にまでなっちゃったじゃん?
だからっていうのもなんだけど、体の変化にまだ心がついていけなくて…それで急に弓の使い方を伝授するって言われてもマジ困るんだけどーって感じなの」
「私も苦労しているんだねぇ…」

それで航巡の方の鈴谷が慰めていた。
それに鈴谷の言い分も分かる。
航改二にするためだけに一気に育てたのも私が先見の明が甘かったのも関係しているから苦労させているわけだし。
だからそんな鈴谷に諭すように、

「…でもな、鈴谷。多分だけど次の大規模作戦ではお前の出番ももしかしたらあるかもしれない…。
だけどそんな中途半端な状態で戦闘には出したくない。それで君がもし沈んでしまったら私はまた後悔してしまう」
「提督…」
「だからさ、今はまだ少し慣れないかもしれないけど軽空母としての艤装の練習、頑張っていかないか…?
もしなにかあったらすぐに私に愚痴りに来ても構わないからさ。今のうちはまだ先輩たちに甘えられるいい機会だしな」
「ううー…わかったよぉ。鈴谷、もうちっと頑張ってみる」

少し肩を下げて気落ちしながらも、鈴谷はそう言ってくれた。
それでよし!っと私は鈴谷の頭を撫でてやると鈴谷は気持ちよさげに顔を綻ばせた。
だけどそこで別の視線を感じた。
なにかと思ったら龍驤と瑞鳳が少しふくらっ面になりながらも、

「提督ぅ! 瑞鳳の事も褒めてよぉ!」
「せやで? うちらも鈴谷の育成を頑張ってしているんやからご褒美くらいは必要だと思うんや」
「はいはい。二人ともありがとうな。えらいよ」

それで二人の頭も撫でてやると鈴谷と同じく二人とも笑みを浮かべて喜んでいた。

「それじゃ頑張ってくれ」

と言って私と鈴谷は弓道場を後にする。

「提督、やるじゃん! 私や龍驤先輩たちの扱いとかも手慣れている感じだし」
「みんなの性格は大体は把握しているからな。それでも乙女心だけはまだわからないけど…」
「それは提督がおいおい理解していくしかないんじゃない…? ね、榛名?」
《はい》

鈴谷の問いかけに榛名はすぐに出てくる。
でも、

「なぁ、榛名。君っていつもどの程度私の行動を把握しているんだい…?」
《提督の行動なら考えていること以外はなんとなくですが把握できていますよ。
私と提督は心以外はもう完全に同化していますし…》
「そうだとするとなんか恥ずかしいな」
《提督も私の体であれこれできるんですからお相子ですよ。さっき、改二になって大人らしい体になった鈴谷さんに腕に抱き着かれていた時少し嬉しそうでしたし…》
「ばれていたか」
「提督、榛名の尻に敷かれちゃってるねぇ~」
「言うな…」

そんな話をしながらも私達はそれから色んな所へと顔をのぞかせたのであった。

 
 

 
後書き
まだうちの二人目の鈴谷は鎮守府に来てから一か月も経っていません。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0015話『最初の…』

 
前書き
更新します。 

 


とある演習が終わった日の事、雲龍が妹艦の天城と葛城に迫られていた。

「雲龍姉様、もうすぐ練度が99になりますね」
「うん、天城…」
「そうすれば提督と絆を結べるね!」
「うん、葛城。…これまで以上に強くもなれるし、少し、楽しみね…」

雲龍がマイペースに、だけどどこか嬉しそうにそんな話をしていて、それを迎えた私に葛城が近寄ってきて、

「提督!? 雲龍姉とも絆を結ぶつもりなんですよね?」
「あ、ああ。そのつもりだけど…」
「だったらなおの事言います。雲龍姉を泣かしたら承知しないんだからね!?」
「わかっているよ。大丈夫だ、葛城」
「だったらいいんです」

そう言って葛城は引き下がっていった。
まぁ、そうだよね。
本来大本営からもらえる指輪は一つだけ。
だけどもっと強くしてあげたいとか、経験値を貰えないのは勿体ないとか、他にも色々あるけどそんな感じで今では重婚していてケッコンカッコカリした艦娘の数は多いのがうちの現状であった。
そんな中で、執務室で任務の確認などをしている時だった。
扉がノックされて「入っていいよ」と言って招くと扉が開く。
そこには白露型二番艦の時雨の姿があった。

「…提督、ちょっといいかな?」
「どうした、時雨…? なにやら真剣な表情だが」
「うん。提督なら分かってくれると思って僕は今日ここに来たんだ」
「折りいった話か。話してごらん」
「うん。山城の事なんだけど…最近、といえばいいのかな? この世界に来てからどうにも調子が悪いみたいで…」
「山城が…?」
「うん。提督なら原因が分かるんじゃないかなと思って。扶桑に聞いても分からないらしくて…」
「ふむ…」

それで少し考え込む。
山城か…。そう言えば今朝考えた事であったがまだこの世界に来てから私の想いを彼女に伝えていない事に気づく。
それでなんとなく原因も解決できるんじゃないかと思い、

「わかった。なんとなくだけど原因は判明したから後で山城に話しかけてみるよ」
「本当かい!?」
「ああ。この世界でゲーム通りにではなく自由に感情が出せるようになったから山城は悩んでいるんだと思う。
私の思い違いじゃなければだけどな」

私のその言葉に時雨もなにかピンときたんだろう。

「…あ、そう言う事なんだね」
「時雨も気づいたか?」
「うん。これは提督じゃないと解決できない事だね。それじゃ山城の事、頼んでいいかな?」
「任せてくれ」

時雨とそう約束して私は本日の任務をすぐに終わらせて山城がいるであろう戦艦寮へと足を運んだ。
その際に扶桑が私が来ることを時雨に聞いたのだろう山城の部屋の前で待っていた。

「提督…。山城の事、よろしくお願いしますね…」
「ああ。わかったよ、扶桑」
「はい」

それで扶桑は笑顔を浮かべて自身の部屋へと戻っていった。
それと同時に榛名も姿を現す。

《提督、きっと山城さんは悩んでいるんだと思います。
最初のケッコンカッコカリの自分は本当に愛されているのかと…》
「ああ。だから今一度私は彼女に思いを伝えようと思う。辛かったら隠れていてもいいんだぞ、榛名?」
《いえ、大丈夫です。当時の事を思い出せば私は彼女に勝負に負けてしまったんですから》
「そうか」

それで私は山城の部屋の扉をノックする。
すると中から少し顔色が悪い山城が姿を現した。

「…提督? それに榛名も…なにかご用ですか?」
「ああ、山城。今日は君に今一度誓いたい事があってやってきたんだ」
「そうですか。まぁ、なんにもありませんが部屋に入ってください」
「ありがとう」

そして山城の部屋に入れてもらい椅子に腰かける。

「それで、ご用というのは…?」
「山城。最近君は調子が悪いそうじゃないか。時雨から聞いたよ」
「そうですか…。まったくあの子は」
「時雨の事を悪く思わないでくれ。君の事を心配しての相談だったんだから」
「わかっています」
「それで考えた末にまだ君にこの世界に来てから思いを伝えていない事を思い至ったものでな」
「提督の思いですか…?」
「うん。覚えているか…? まだ誰ともケッコンカッコカリしていなかった時に私は榛名と君の事をこうして口に出すと恥ずかしくなってくるけど…二人を好きになっていたんだ」
「提督…」
《提督…》

それで山城と榛名が同時に顔を赤くする。

「それでどちらに最初に指輪を贈るか迷った時に私はある事をした。
毎日朝と夜で旗艦を交換して演習を行って先に練度が達した方とケッコンするって」
「でも、私には扶桑姉様という心に決めた人が…」
「それはもう聞いたよ。でもいいんだ。それでも勝負に勝って最初に指輪を贈ったのは間違いなく君なんだから」
「………」

それで顔を赤くさせて無言で俯いてしまった山城。

「…なんで、こんな私を選んでくれたんですか? 榛名でもよかったでしょう? こんな不幸な私を選んでも何の得にもなりませんよ」
「不幸とかそんな事は関係なく好きになったんだ。山城が魅力的な女性だったから私も指輪を贈れたんだ」
「でも…」

まだなにかと理由付けをしようとする山城に榛名が話しかけた。

《山城さん。素直に提督の気持ちを受け取ってください。
そうじゃないと勝負に負けてしまった私が惨めじゃないですか》
「あ、榛名…そんなつもりは…」
《はい。わかっています。でも、私も提督の事が大好きです。ですから山城さんも素直になってもらいたいんです》

榛名も恥ずかしい事を言ってくれる。
一体化してしまっているからなんとなくだけど榛名の気持ちも流れ込んでくるから余計に恥ずかしいんだよな。

「…提督。私を最初に選んで後悔していないんですね?」
「ああ。それは断言できる」
「でしたら、でしたら…私の事も守ってくださいね?」
「うん。守るよ…約束する」
「ああ…安心しました」

そう言って山城はそこで初めて笑みを見せた。

「うん。やっぱり山城は笑顔を見せてると可愛いな」
「ばっ!? 調子に乗らないでください!…ああもう、こんな醜態を見せてしまうなんてやっぱり不幸だわ…」

そう言いながらももう山城からは気負いは感じられなかった。
それで一件落着して時雨にもその件で話したら「よかった」と笑顔を浮かべてくれたからよかった。


 
 

 
後書き
気になっていた人も何人かいたようですがうちの最初の嫁艦は山城です。

Twitterでよく練度上から六人で焼き肉に行くというお題がありますがギリギリ連れていけますね。

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0016話『暖が無くなる日』

 
前書き
更新します。 

 



五月も近くなり、もうそろそろ寒くもなくなってきた…むしろ暑くなってきた今日この頃。
この世界に来る前にすでに告知されていた中規模のイベントに関して資材を貯めているという感じの一日。
大淀がある事を教えてくれた。

「提督。あの、少しよろしいでしょうか…?」
「どうした? なにやら改まっているように聞こえるけど」
「はい。談話室に置いてあるあるものを仕舞おうと思っているんですが…」
「あるもの…?」
「はい。時期も時期なので炬燵です」
「あー…なるほど。それならもう春も過ぎたんだから仕舞えばいいじゃないか?」
「そうしたいのはやまやまなんですが、とある一部の艦娘達がまだ肌寒いと言って炬燵を仕舞うのを拒否していまして…」
「なるほど…まだ炬燵離れできないのか。…ちなみに誰だ?」

そして大淀に教えてもらった名前を聞いて予想通りという感想と、もう一方で意外な人物だなという二つの感想が頭に浮かんだ。
それで談話室へと足を運んでいくとそこにはまず予想通りの子達が炬燵で横になっていた。
そこには特型駆逐艦3番艦の初雪と睦月型駆逐艦11番艦の望月が炬燵に顔以外を沈めさせていた。

「こら、初雪に望月。そろそろ炬燵を仕舞う時だぞ」
「…んー、司令官? まだ、潜っていたいんだけど…」
「そうだよー。まだ寒い…」
「ダメだ。そろそろ五月になって雨も降りだしてくる頃だからいい天気のうちに干しておかないとカビが生えてしまうだろ。
また冬になったらすぐに出すように手配するからもう出ような」
「…わかった…」
「んー、わかったよ」

私の言い分を聞き入れてくれたのだろう二人はダルそうに、だけどのそのそと炬燵から這い出してきた。

「…さて、これで予想通りの二人はいいとして、問題はなぁ…」

それで私はそちらへと顔を向ける。
私の顔を追ってか初雪と望月もそちらへと振り向く。
そこには完全にタレパンダと化しているアイオワとサラトガ、ウォースパイトの連合組海外艦の姿があった。
…畳化が激しいんじゃないかな?
もともと海外は温かいから季節によって寒い日本だと気温の関係で体が合わないのだろう。
アイオワはともかくサラトガとウォースパイトは普段の気品さはどこにいったんだ?と言わざるを得ないような感じで炬燵に入っている表情も緩くなっていた。

「…司令官。…私達よりあっちの方が深刻だと思う…」
「望月も初雪の意見には賛成しておくよ…」
「そうだなぁ…」

それでも他の海外勢は特にいなかったのはまぁいいと思う。
ドイツ艦のみんなは規律に厳しいから数日前に大淀に仕舞うという話をしたら率先して片付けたっていうし。
まぁ、一部プリンツオイゲンが駄々をこねたというがビスマルクが説得をして泣く泣く這い出てきたという。
イタリア艦のみんなも特に反対はせずに済んだという。
やっぱりお姉さん気質のザラが中心になって五人を説得したという。
さすが第二次改装をしてさらにお姉さん度が磨きが増した大天使ザラエル…。
とにかく、

「アイオワにサラトガ、それにウォースパイトも初雪と望月を見習って炬燵から出たらどうだい?」
「うう…アドミラルはひどいネ。こんなグレートなものを仕舞うなんて…」
「はい。サラももう少し入っていたいです…。こんなものはアメリカにはありませんから」
「アドミラル…。酷いわ。どうして…? ホワイ…?」

三人のその切なそうな眼差しに少し負けそうになってしまう。
ただでさえ三人とも美人なのにそれで涙目で責めてくる視線を浴びせられるとなにかと来るものがある。
だけどここは心を鬼にして、

「それでももう仕舞わないとさっきも言ったようにこれからだんだんと雨が多く降るようになるんだから今のうちに干しておかないとまた冬が来たら使えなくなってしまうぞ。それでもいいのかい?」

そう言い聞かせる。
そしてようやく観念をしたのだろう。
三人ものそのそと炬燵から這い出してきた。

「これでよし…。それじゃまた冬に使えるように感謝を込めて炬燵布団を洗濯しようか」
『はーい』

それで今鎮守府にいる艦娘全員で冬の布団などを一斉に洗濯してしまおうという試みをしようという話にした。
鳳翔さんや龍鳳などといった家事清掃がうまい艦娘なども集めて盛大に行おう。
そう思って思い切ってアイオワ達が入っていた炬燵の布団を捲ってみた。
だけどそこで意外な人物がまだ炬燵の中にいた。

「…なんにゃ? 多摩の眠りを妨げるのは誰にゃ…?」
「多摩、お前も入っていたのか…」
「うん…。寒かったから入っていたにゃ」
「あれか? 猫は炬燵で丸くなるっていう…」
「多摩は猫じゃないにゃ…」

そんな言い訳をしていたがもういないよな…?
そんな思いを抱きながらも一応全部の炬燵を確認した。
もし酸欠になっていたらシャレにならないからな。

「多摩、お前の部屋の布団も干してしまおうな。乾かしてふかふかになった布団で眠ると温かいぞ?」
「…ん、頑張るにゃ!」
「その意気だ」

それを聞いていたのだろう初雪と望月もやる気を出していたからよかったよかった。
それで一日かけて冬物は大体は仕舞えたと思うからこれも環境の変化の一環だなと一人ごちた。


 
 

 
後書き
畳化というワードを今回は使ってみました。

艦これ発祥らしいですよね。

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0017話『礼号組、出撃!』

 
前書き
更新します。 

 



大淀と本日の任務を確認しているとある日に突如として足柄が執務室に舞い込んできた。
すわ何事かと思っていたら足柄は執務室の机を叩きながら少し興奮気味に、

「提督ッ! 今月の水上反撃部隊の任務、まだ終わらせていなかったわよね!?」
「あ、ああ。まだそういえばやっていなかったような…大淀、確認をいいか?」
「はい、わかりました」

それで大淀が任務表を確認していると、確認が済んだのか、

「はい。まだ今月の『「水上反撃部隊」、突入せよ!』は完了されていませんね。提督のハンコが押されていませんから」
「やっぱし! ね、提督? よかったら私達礼号組で出撃してきていいかしら!?」
「構わないけど………大丈夫か? 少し興奮気味だけど」
「もう全っ然大丈夫よ! だってこの世界に来てからまだ本格的に戦闘をしていないからどんなものなのか試せていないのよ。
定例通りなら来月には深海棲艦が活発になって攻めてくるでしょう? だから腕慣らしにこの世界の深海棲艦を屠ってくるわ!」
「そうか、わかった。確かにこの世界ともとの世界との基準も確認しないといけないとは思っていたからちょうどいいかもな。よし。足柄、見事勝利をしてきなさい」
「わかったわ! というわけで大淀を借りていくわね!」
「あっ! ちょっと足柄さん! 先にもう一人の私に引継ぎをさせてください!」

大淀の手を引っ張りながら足柄は「午後には出撃してくるわ!」と言って執務室を出ていった。
でも出ていく前に「後一人随伴艦は照月なー」と言っておいた。
するとすぐに「分かったわ!」という返事が聞こえてきたのでよかった。
しかしそんな光景を見て、

「…やっぱり足柄は飢えているなぁ」
《そうですね、提督》

と、私は思った。
榛名も出て来て同じように同意してくれたのでよかった。
そしてまぁ、そんなところも足柄の魅力なんだから仕方がないとも思っていた。










「…さて、提督の許可ももらったわ。朝霜、清霜、大淀、そして霞ちゃん! 礼号組、出撃よ!
今日は照月ちゃんも一緒に着いてきてくれるから安心していいわ!」

足柄が元気に集まった礼号組と照月を見て宣言していた。
そんな足柄を霞は呆れた顔をしながら、

「また私達をそっちのけにして勝手に決めちゃって…」

と、愚痴を零す。
そこに清霜が、

「まぁまぁ霞ちゃん、いいじゃない? 足柄さんの無茶ぶりはいつもの事でしょう?」
「そうだぜ! それにあたい達も久しぶりに暴れられるから楽しみだぜ!」

清霜に続くように朝霜が悪ガキのように「ニシシッ!」と笑みを浮かべる。
そんな中、一人置いてけぼりにされている照月はというと、

「わ、私でいいのかな…? ね、長10cm砲ちゃん…?」

長10cm砲ちゃんに問いかけるが喋れないのでただ腕をピコピコさせているだけだった。
でもやる気はあるようで何度も飛び跳ねていた。

「という訳で鋭気を養うためにお昼の食事はカツ定食よ!」
「あ、頭痛い…出撃前だからってゲン担ぎにしては重いでしょうに!」

霞が足柄を残念そうな目で見る。
しかしそこで大淀が話しかけてくる。

「まぁまぁ霞さん。いいではないですか。…それに出撃表で旗艦はやっぱりというべきか霞さんでしたよ?」
「はぁ!? 私なの!?」
「はい。礼号組で出撃するなら駆逐艦を旗艦にするならここはやはり霞さんではないとと思いまして」
「そ、そう…まぁそれなら頑張るわ」

霞は少し照れながらもそれを承諾した。
それから六人は昼食でカツ定食を注文して鋭気を養ってから港に出て出撃準備を終えた。

「それじゃ司令官? 出撃してくるわ。随時指示をお願いね?」
『わかった。勝利を期待しているよ』

提督と無線機で会話をしながらも霞は少し気分が高揚していた。

「(なんだかんだ文句言ったけど…この世界では本格的な戦闘…楽しみね)…それじゃ出撃!」

そして霞を旗艦に一同は沖ノ島沖へと出撃していった。
海上を滑走しながらも、

「さて、それじゃ大淀。索敵をお願い!」
「わかりました、霞さん!」

それで大淀が零式水上観測機を射出する。
それでしばらく時間が経過して、

「霞さん! 敵水雷戦隊を発見!」
「わかったわ! 単縦陣で海域へと突入して、各自砲撃戦の用意を!」
「「「了解!」」」

それで霞を先頭に単縦陣を組んで敵水雷戦隊と接触する。
それで敵編成を見て、

「(この編成はもとの世界と変わりないか…)それじゃ行くわよ!」
「「「おー!」」」

霞の掛け声とともにまず足が速い足柄が砲撃をする。
それは見事に敵駆逐艦へと直撃し、沈める。

「やるね、足柄の姉ちゃん! あたいも負けてらんないぜ!」
「そうだね、朝霜姉さん!」

続いて朝霜と清霜が砲撃を撃つ。

「い、いきます!」
「当てるわよ!」
「いきます!」

残りの三人も砲撃を撃ち、敵編成は旗艦が小破で残りは見事に沈めていた。

「すみません、撃ち漏らしました!」

照月がすまなそうにそう叫ぶ。

「いいわ! 雷撃戦で沈めるわよ! 全艦、魚雷の用意を!」

そして「てぇッ!」という合図をして一斉に魚雷を放ち、敵旗艦も沈めて無傷で勝利を収める。

「初戦から快調ね!」
「油断は禁物よ! 次はおそらく夜戦エリアだから!」

それで夜戦へと突入していく一同。
みんなは各々で敵砲撃を避けながらも砲撃を与えていくが、そこで照月が直撃を食らってしまい中破してしまう。

「ごめんなさい! 中破してしまいました!」
「わかったわ。戦闘終了後、司令官に指示を仰いでみるわ」

それで照月以外はなんとか朝霜も清霜もカスダメで済んで提督へと連絡を入れる。

「司令官。照月が被弾して中破したわ。どうする…?」
『照月の被弾具合はどうだ…?』

提督が少し慎重気な声を出して聞いてくる。
霞はこの世界で教わった講習を思い出していた。
この世界では辺りどころが悪ければ無傷でも轟沈の可能性があると。
最終的にものを言うのはやはり練度が十分なら継続可能なところだが、

「わ、私は大丈夫です。大破していなければいけます!」

照月のその言葉を聞いて霞は安心する。
照月はこれでも練度は90を越えているから十分に見極めは出来ているのだ。

「照月は大丈夫そうよ。司令官、指示を!」
『わかった。慎重に敵深部へと突入してそれを撃破してくれ』
「了解。いくわよ、みんな!」
「「「了解」」」

そして敵主力部隊と接触して霞以外が中破にされてしまうという状況だけど、

「まだよ! まだこの足柄はやれるんだから!」
「おうよ! あたいもまだいけるぜ!」
「うん! 清霜頑張る!」
「霞さん、私達の事は気にせずにいってください! 敵も後はタ級とル級二体だけですから!」
「照月も頑張ります!」
「わかったわ! 夜戦に突入するわ!」

そんな事で結果、霞以外は中破しながらも最後は飢えた狼の異名を持つ足柄がタ級を仕留めて戦闘が終了する。
そして提督へと報告する。

「司令官、敵主力部隊の無力化を確認」
『よくやった。任務達成だ。帰りの航路は十分注意して帰ってくるんだぞ』
「わかったわ。あなたもクズなりにいい指揮だったわよ」
『ありがとう』

提督から褒められて霞も提督を褒めているのか貶しているのか分からないが褒め返しながらも少し笑みを浮かべる。
それで帰還途中で足柄が霞に後ろから覆いかぶさりながらも、

「霞ちゃん、提督に褒められて嬉しそうだったじゃない…?」
「はぁ!? どこがよ。私は別に…」
「嘘はダメだよ霞ちゃん。笑っているの清霜見たんだから!」
「そうだぜ!」
「はい。霞さん、嬉しそうでしたね」
「照月もそう思います…」

みんなに見られていたのを霞は実感して顔を赤くさせながらも、

「ああ~もう!? いい加減にしなさいったら!!」

全員に顔が赤くなっているのを気付かれないために大声で叱咤の声を上げたのだった。

 
 

 
後書き
今回は先日にあった本当の出来事を字面に書き出しました。
本番前の練習ですね。

そして一人だけ無傷の霞ちゃん。
霞ちゃん改二を讃えよ!!

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0018話『畑仕事とハイパーズ』

 
前書き
更新します。 

 



最近、鎮守府内での余った敷地で私は野菜などの栽培をやっている。
親が余生の嗜み程度に始めた事なのだがそれが本格的にはまってしまい、私も暇な時があったら手伝う事があったくらいにはやった事がある。
そしてこんな世界だから食糧の自給率もやっぱり悪いらしくそんなに大食いはできない。
だから私はまずは農業などの知識を調べながらもまずはきゅうりとかトマトやらを栽培を始めている。
榛名の姿にツナギ姿はどうだろうか…?という感じになってしまうがそこは我慢してもらおう。
まぁ、まだ四月だから種まきをして育つのを待つくらいしかないのだけれどね。

農業体験もまぁいいものだよね。
たまに演習くらいしか出番がない武蔵とかが一緒に手伝ってくれたりしてる。
畑を耕すのはやっぱり力作業でそこで「私も手伝おう」と名乗り出てくれたのだ。
そんな耕すことをしながらも一息ついている時に来客がやってきた。

「あ、提督。やってるねー」
「お、北上か」
「うん。状況はどうなっているかなってね」
「まぁ、まだ始めたばかりだから何とも言えない状況だな」
「そっか。まぁ、収穫出来たら楽しみにしているよ。きゅうりは美味いからね」
「わかった」
「それより、榛名の姿でツナギってなんか少しいいもんだねー。榛名のイメージはまずないけど」
「そうなんだよな。まだ夏じゃないから日差しもそんなに苦じゃないけど夏でもなったら麦わら帽子だけで耐えられるか分からない」
「武蔵のように真っ黒に焼けちゃうかもねー」

そんな事を話していたら榛名が出てきた。
そして、

《提督? 夏はしっかりと紫外線の対策をしましょうね? こんがりと焼けてしまったらちょっと私も恥ずかしいです》
「そうか? 逆に健康的でいいと思うんだけどな」
《それでもです》
「わかったわかった」

私と榛名がそんなやり取りをしていると北上が実に不思議そうにじっと私達を見つめてきた。
なんだろうか…?

「なんか、提督と榛名って良い仲だよねー。
表現的にはいつも着かず離れずに一緒の部屋に同居しているようなもんでしょう?
だったら多少のいざこざですぐに仲が悪くなっちゃうもんじゃないかな…?」

北上のそんな例え話をされて私は少し考え込む。
確かにいい歳の男女が一緒にいれば価値観の違いで喧嘩でもしてしまうかもしれない。
それで私と榛名で考えてみる。
でも、すぐに答えは出たんだよな。
なぜかって榛名って甘える時は甘えて、怒る時は怒るけどすぐにお互いに気持ちが通じ合ったらすぐに仲直りをしてしまう。
榛名が一歩引いてしまうっていう事もあるけど、今のところは関係は良好だ。
なぜって思うけど榛名は私に歩を合わせてくれるからだ。
器量の良さがいいと思うんだけど、寛容なんだよな。

北上にそんな話をしてみると、少し納得した顔になって、

「確かに、榛名ってきまえ上手だよね。提督のしたい事は大体一緒になってやってるし」
《そ、そうでしょうか…? 私もしたくない事ははっきりと断っていますけど…》
「でも、大体許しちゃうでしょう? 提督もだけど榛名にさせたくない事は言わないし」
「当然だろ? 榛名に嫌われたくないし…」
《私こそ提督にもし嫌われてしまったらもう表に出てこれません…》
「そんなところだね。二人ともお互いに歩幅を合わせているから今のような調和が取れていると思うんだ」

そんな北上の結論に確かになるほどと納得をした私と榛名。
そんな時だった。

「北上さーん!」
「あ、大井っちの声が聞こえてきた。こっちだよー」

そこに北上を探していたのだろう大井がやってきた。

「探しましたよ北上さん。これから間宮で甘味でもいかがですか?」
「いいねー。あ、でももう少し待ってもらってもいいかな。提督が畑仕事を終わらせたら一緒にいこう?」
「いいですよ北上さん。………提督? 北上さんに迷惑かけていませんよね?」
「ああ、迷惑はかけている節はないよ」
「でしたらいいんです。あ、そのツナギ姿………榛名さんの姿ですけど似合っていますよ」
「ありがとう」

大井にもこの姿を褒めてもらいそれから今日の畑仕事を終わらせて今日はこのまま甘味処間宮に二人と一緒に行くことになった。
その際、

「ですが、提督は私達を兵器として見てくれないですから私としても嬉しいです」
「突然何を言い出すんだ、大井。確かに君達艦娘は言い方は悪いけど兵器だ。
だけど同時に人間と同じように一緒に生きているんだから兵器としてだけで見たら失礼だろう?」
「…そうですね。でも、久保提督にも習ったと思いますがこの世界の提督は私達艦娘を兵器としてだけで運用している鎮守府もあると聞きます。
ですから、私達を同等の目で見てくれる提督の存在はとてもありがたいんですよ?」

そして大井は小声で、「………そうでなければとっくに私はもうこの指輪は外しています………」と、ケッコンカッコカリの指輪を撫でた。
そんな大井の本音を聞けたようで少し嬉しい気持ちになりながらも、

「…ありがとう、大井。君の気持ちを無下にしないようにこれからも君達と対等になって頑張っていくよ」
「…ん。ありがとね、提督」
「わ、私も提督のそんなところが…その…」

北上の素直な感謝の言葉はしっかりと聞き入れて、少し小声になって照れてしまっている大井の声は今回は聞かなかったことにしておく。

「それと、提督。多分この世界での戦いももうすぐ来ると思うからさ。
だから存分に重雷装艦の私と大井っちの活躍に期待していてよ。
ハイパーズは最強なんだってこの世界でも教えてあげるんだ」
「わかった。使う時が来たら存分に期待しておこう」
「うん!」

それで北上は笑顔になった。
それと最後に間宮に入る前に阿武隈に遭遇して北上がやはりというべきか阿武隈の前髪を弄って阿武隈に怒られていた。

「も~! 提督、見ていないで北上さんを止めてくださいよー!?」

阿武隈。今回はオチ要員にしてしまいすまない…。

「聞いてますか~!?」

阿武隈の虚しい叫びだけが響いてきた。


 
 

 
後書き
阿武隈のオチ要員の安定度。

それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0019話『庭園と南雲機動部隊+お艦』

 
前書き
更新します。 

 



今日は4月28日。
ここで子日をお呼びしたいところだけど言わせてもらう。
今日は何の日? 良い庭の日だよ。
日本庭園って少し憧れるよねー。
うちの実家は普通の家だったからそんな庭なんてなかったから。

「榛名。この鎮守府には奥ゆかしい庭とかはないのか…?」
《庭ですか…? そうですね、確か空母寮にはあったと思います》
「あ、イメージがピッタリあったね。
鳳翔さんとか和服の艦娘が多いイメージだからね。空母の艦娘って…」

それで本日の任務を確認する。
最近はもっぱらボーキを貯める任務ばかりしているからな。
ゴーヤ達も南西諸島で定期的な任務以外は休ませているから最近は暇をしているのをよく見る。
なんでかって…ゴーヤ達が執務室にやってきて「今日もオリョクルはしないでちか…?」なんて、職業病も真っ青な事を言ってくるほどには暇を持て余しているらしい。
まぁ、確かにそれもそうか。
基本、最近の私は燃料と弾薬、それに高速修復材をカンストしてからかオリョクルは任務を終わらす目的以外ではしていない。
週初めに大量に発生する任務を終わらしたらそれで後は放置しているのだ。
だからろ号まで終わらないのが現状である。
それにオリョクルをやっても大体早くて六人体制を二回出撃交代で一周するくらいには任務は終わっているしね。
遅いときは三週くらいはしてしまうけど…。




――――閑話休題




なので今回は空母寮に遊び…もとい見学しに行こうと思い至った。
鈴谷の時にもいったけどあそこは他の艦娘寮とは違って和風な建物が多くあるのだ。
弓道場然り鳳翔という居酒屋然り。
よく二次創作で登場する居酒屋鳳翔が空母寮の近くにあったのにはさすがの私も思わず目を疑ったからな。
それで一度中に入れさせてもらうと中には酒好きの艦娘がやはり多くいて他には料理好きの萩風などといった子達が料理を習いに来ている風景も多く見られたのは鳳翔さんらしい。
大規模な作戦が終わった後にはよく夜な夜なここに集まって宴会をしていたという。
なにそれ。羨ましい。
と、居酒屋鳳翔の話はまた今度にして今は空母寮の見学っと。
それで空母寮に到着する。
そこには純和風のような佇まいの寮があった。

「あら? 提督、どうされたのですか?」

と、そこに早速と言えばいいのだが空母の母である鳳翔さんの姿があった。

「鳳翔さん。ちょうどよかった」
「はい…?」

それで私が空母寮の中を見学したいという話をすると鳳翔さんは少し顔を赤らめながら、

「…提督。さすがに女性の私生活の場を覗こうというのはどうかと…」
「いやいや! 違いますよ! さすがに部屋の中は見ませんから。ただ、空母の寮だから和風な感じなんだろうなという思いがありまして。
他にも空母ならではの嗜みとか見たいなって…」
「………」
「ダメ、ですか…?」

それで少し考え込んでいた鳳翔さんは「そうですね」と一言言って、

「ちょうどいいです。なんならじっくりと見学をしていってください。皆さんの色々な顔が見れますよ」

そう言って鳳翔さんは私の横に並んで案内をしてくれると言うのでありがたいと思ってご厚意に沿う事にした。
それから空母寮の中を見学している途中で緑と橙色の和服を着ている人物たちを発見。
あれは…、

「あ、飛龍さんに蒼龍さんですね」
「二人して何をしているんだ? 蒼龍が飛龍を膝枕しているようにも見えるけど…」
「ふふ。おそらく蒼龍さんが飛龍さんの耳掃除をしているのではないでしょうか…?」
「そうなんですか」

それで少し聞き耳を立ててみると、

「飛龍。どう? 気持ちいい…?」
「うん。そんな感じだよ蒼龍。気持ちいいよ。今度は反対の方を頼んでいいかな?」
「オッケイ。って…飛龍!? か、顔が私のお腹に埋まっちゃってるよ!? しかも気のせいか匂い嗅いでいるでしょう!?」
「そんばこごないぼ(そんなことないよ)…?」
「やだやだー! 飛龍のエッチ! そんなエッチな飛龍には私からも恥ずかしいお返しするよ!?」
「カモン…?」
「やっぱりやだー!」

そんな少し甘酸っぱいやり取りが聞こえてくる。
それで鳳翔さんの「おほんっ…」という掛け声とともに私は現実に戻ってきて、

「つ、次に参りましょうか提督…」
「そ、そうですね…」

飛龍と蒼龍の件は見なかった事にする私達だった。
背後から「提督!? もしかして聞いてた!?」という虚しい叫び声が聞こえてくるが今は聞こえなーい。
そして歩を進めていくとそこには先日も見た弓道場が見えた。

「ここが普段私達が稽古をしている弓道場です。最近になって鈴谷さんが新しく入ってきたので中々賑わっているんですよ?」
「うん。それは知っているよ。昨日に鈴谷がやっぱりというべきか執務室に来て愚痴を零していったから」

そう。やっぱり龍驤達の稽古が厳しいらしく鈴谷はすぐに根を上げてしまっていたのだ。
それで軽空母になる予定の熊野の部屋に逃げ込んだとか…。
もし熊野が空母寮に来たら鈴谷も少しは落ち着くのだろうね。

「そうなのですか。龍驤さん達には優しく教えてくださいと言ってあるんですけど…」
「まぁ、龍驤と瑞鳳は微妙な悩みを鈴谷に抱いていますからね。大っぴらには言えませんが龍驤は主に『この憎たらしいバルジめ!』と鈴谷を弄ってくるらしく…」
「…それに関しましては私も少し思いますけどね」

そう言って鳳翔さんは慎ましい胸を触っていた。
…藪蛇だったか。反省。
と、そんな弓道場にまるで弓を体現したかのような人物がいた。

「………」

狙うはただ一点のみ。
射法八節を綺麗に決めながらもその人…加賀は弓から矢を放った。
放たれた矢は綺麗に放射線を描きながらも的へと命中する。
当然矢は的の中心に刺さっており、隣で鳳翔さんが、「見事です」と言って褒めていた。
続いて加賀の隣では赤城も出て来て、

「加賀さん、負けませんよ…」

そう言って同じように矢を放つ。
加賀同様に真ん中へと矢は刺さる。

「皆中…お見事です、赤城さん」
「まだまだ加賀さんには負けられませんからね。提督も見ているのですから格好悪い所は見せられません」
「…え? 提督? 見ていらしたのですか…?」

それで加賀も気づいたのだろうこちらへと赤城とともに近寄ってくる。

「うん。二人とも見事な腕だよ。知識がない私でも感動した」
「そう言ってくださると嬉しいですね」
「はい。気分が高揚します」
「ふふ。提督、今日はいい日になりそうですね。二人の射法を見れたのですから」

鳳翔さんがそう言ってくる。
確かに。
二人の弓の腕を見れたのもいい体験かもしれない。

「…提督。おそらく私と赤城さんも次の作戦では終盤の所で五航戦の二人とともに投入されるのでしょう。
ですからうまく私達を使ってくださいね。必ず勝利をものにして見せますから」
「わかった…頼りにさせてもらうよ。赤城、加賀」
「「はい!」」

それで二人は軽く私に敬礼をしてきた。
本日は庭を見たいという思いで来たんだけどこんな景色も見られてとてもいい気分になった一日だった。
もちろん、そのあとに庭を案内してもらったけども。
とっても綺麗な庭があった事をここに記しておく。

 
 

 
後書き
庭なんてあまり関係なかった。
話題作りに利用させてもらいました。


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0020話『駆逐艦曙の回想』

 
前書き
更新します。 

 



私達がこの世界に来てから驚きの連日だという事に新鮮味を感じていた。
思えばあれはいつものようにクソ提督が毎日の任務で私達と画面越しで会っていた時の事だった。
私達の存在はシステムだと分かっていたのでクソ提督に命令されればなんでもやった。
何度も海域に出ては深海棲艦と戦って勝って練度も上がっていくというある意味ルーチン作業。
でも、その境界はある時にふとしたことで一気に壊れた。

鎮守府全体がいきなり発光をし出して何事かと思った矢先に目も塞いでしまうような輝きが私達を覆った…。
そして次に気づいた時にはまるで本物の風景のような景色が窓の外に広がっていたのだ。
さらに驚いたのは私達の体はデータではなく本物の体になっていた。
それでもう鎮守府に在籍している艦娘は私を含めて大パニック。
当然よね…。
何が起きたのか分からないけど自由に行動できることがこれだけの違いがあるなんて思わなかったから。
でも、少し時間が経過してみんなも一応の落ち着きを見せ始めてきた時に、

「曙! 榛名を見ましたカ!?」
「榛名さん…? どういう事? 一緒じゃなかったの?」
「イエス! 榛名が最後に行った場所は提督の執務室デス! でも執務室にもいなかったデース…」

それで騒ぎになる鎮守府内。
他にも川内さんなど第二遠征艦隊の面々も行方不明という話を聞きつけてどんどんみんなが不安に押しつぶされそうになってきた時にふとした時に港を見守っていた秋津洲から人がやってくるかも!という知らせを受ける。
それで向かってみると、数隻の船に艦娘だろう人達が私達の鎮守府に入ってこようとしていたのだ。
それで大騒ぎになり、だけど部外者をこの鎮守府に入れるわけにはいかないと、ある意味防衛本能が働いて私達はなんとか追い返した。
だけどそれからも何度か侵入しようと試みる輩が増えてきて、

「私と武蔵がこの鎮守府の砦になります」
「ああ。提督がいない今、この鎮守府は私達の手で守らねばならない」

大和さんと武蔵さんがそう言って港で一日中艤装を展開して見張りについた。
それからは隠し見てくる視線はあれど大和さん達の姿が抑止力になっていたのかそれ以降は侵入してこようという奴らはいなくなった。
そんなギスギスしだした中で、

「司令官に会いたい…」
「提督…」
「川内さん達は無事かな…?」

みんながみんな、不安に支配されてしまっていてこのままではやばいというそんなある日の事だった。
もう侵入してこないだろうと思っていた人間がまたやってきたのは。

「性懲りもなく…」
「大和、出るぞ…なにやら胸騒ぎがする…。鎮守府中にこのことを伝達しておいた方がいいだろう」
「武蔵がそこまで警戒するなんて…わかりました。曙さん、皆さんに敷地内に待機させておいてもらってもいいですか…?」
「わかりました」

それで通信を鳴らして全員を外に出していざ来るであろう人間を迎え撃つ準備を整えた。
まぁ、今まで大した戦力も寄越してこなかったから大和さんと武蔵さんだけでもなんとかなるだろうけど、私もなにかの胸騒ぎを感じていたのだ。
そしてやってきた一隻の船。
それに対して大和さんが副砲で威嚇射撃した。
普通ならこれですぐに撤退するものだろうと思ったけど今回だけは違った。
六、七人ほどの艦娘を投入してきたのだ。
ついに戦いになってしまうのだろうか…?と最初は思った。
でも少し様子が違っていて、やってきたのは行方不明になっていた榛名さんや川内さん達だったのだ。
最初は喜んだ。
でも、どこか榛名さんの喋り方が違うのを感じたのだろう、

「あれは榛名じゃないネ…」

金剛さんが警戒していた。
そしてその榛名さんに似ている人はここで私達に爆弾のような発言をしてきたのだ。

「俺は君たちの提督だ!」

その宣言を聞いて私は最初は「はぁ~?」という感想を抱いた。
それはみんなも同じだったようで疑惑の表情を榛名? 提督? どっちでもいいけど向けていた。
だけど話が進んでいく内に自身の事を提督と呼ぶあいつは私達と同じようにいきなりの光とともに榛名さんの体に宿ってしまったという。
そんな胡散臭い話が信じられるわけがない。
だけどあいつは私達を説得し続けた。
そこであいつは私達にとっても禁忌の話をしだした。
…そう、かつてクソ提督のせいで轟沈してしまった艦娘の名前を上げて前に出て来てくれという話をしだしたのだ。
確かに上げられた艦娘の名前は轟沈した人たちだったけど、でも、まだ信じられきれない。

「俺達に任せろ。いざとなれば吶喊してやるさ」

そう言って木曾さん達は前に出ていった。
そして次に起こった出来事に目を疑った。
あいつは突然土下座をしてきたのだ。
そこまでするなんて…。
でも、そこまでして信じてもらいたかったんだろうという気持ちになった。
さらに驚くべきは本物の榛名さんが姿を現して「この方は私達の提督です」と言ったのだ。
そこまで言われてしまってはもう信じるしかないではないか。
それで漣とかも「ご主人様ー!」と叫んでいて、

(ああ、やっとみんなが落ち着ける時が来たのね…)

と内心で安堵している私がいた。












そんな事もあってこの世界で生きていこうという話になり、今に至っている。
私は執務室に向かいながらも今度はどんな挨拶をしてやろうという気持ちにさせられて、でもいつも通りが一番だと自分で納得する。
執務室の扉の前で深呼吸をしながらも扉を開けて、

「用って何よ…? このクソ提督♪」

私は笑みを浮かべながらも、透明な榛名さんと話している提督に向かって言い放った。


 
 

 
後書き
今回は曙オンリー回でした。
提督だけではつまらないでしょうからたまには艦娘だけの話も絡めていけたらと思います。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0021話『町の人々の視線』

 
前書き
更新します。

追記。
町の人の暴力的な発言をカットし修正しておきました。 

 

高雄型三番艦の摩耶は同じく高雄型四番艦の鳥海とともに近くの町へと提督とともに買い出しに出ていた。
その際に摩耶が少し町を見てくると言って一人軽い軽食が入っている荷物を片手に持ちながらも町を散策していた。
だけど今まで気づかないふりをしていたがいい加減この視線に摩耶は耐えかねないものがあった。
それで摩耶は思い切って視線の主である町の店の一人の店主に声をかけた。

「…なぁ、おっちゃん。ちょっといいか…?」
「ひぃっ!? な、なんでしょうか艦娘様!!??」

その男性の態度に軽く声をかけただけだった摩耶は驚いた。
そして男性の口から飛び出してきた『艦娘様』という敬っているような言い方はなんなのか…。

「そんなに怯えないでくれよ。アタシ達は別に取って喰ったりしねぇからさ」
「そ、そうですか…」
「それだよ!」
「はい…?」
「その怯えた態度は一体何なんだ? おっちゃん以外にもそんなような雰囲気を周りから感じるしよ」
「そ、それは…」

それで言いあぐねているのか男性は口ごもったまま黙ってしまった。
そこにちょうどよく提督と鳥海が荷物を持ちながらやってきた。

「摩耶姉さん…? どうしたの?」
「喧嘩はよくないぞ摩耶」
「提督。それに鳥海…それがよぉ」

摩耶が二人に声をかけられて少し困ったように振り向く。
だけど同時に男性から覚えの表情は消えて少し、いやかなり睨みを提督に効かせていたのだ。
それに気づいたのだろう摩耶と鳥海は提督を守るように前に出る。










突然どうしたんだ? この男性の人、私が提督だと分かると態度が急変したぞ。
そして摩耶と鳥海が私の前に出て守るように警戒しながらも、

「…今度はなんだ? 提督に向ける視線が気に入らねぇな」
「何事か分かりませんが敵意を向けるのでしたらお覚悟をしてください」

それに対して男性は睨みを私に効かせながらも聞いてくる。

「なぁ、提督の嬢ちゃんよ。お前は艦娘様たちを無下に扱っているか…?」
「えっ…?」

その男性の言葉に少し頭が混乱した。
なんでそんな事を聞いてくるのだろうか。

「…無下に扱っていないかと聞いているんだ。答えてくれ…」

男性は少し懇願するようにそう聞いてきた。
そこから少しの悲しみの雰囲気を感じられた。
過去に艦娘と何かあったのだろうか…?
それで聞いてみることにした。

「…事情を聞かせてくれませんか? なぜ提督という存在にそんなに警戒するのかを…」
「いいだろう。少し着いてきな」

男性のその言葉とともに聞いていたのだろう町の店員の老若男女関係なく人が出て来て私達を囲むようにしてとある店へと案内された。
その異様な空気に私はさすがに今軽口を叩けるほど場の空気を読めないわけでもなく黙っている事しかできないでいた。
それで男性に案内されて一つの席に座らされてなにやら話し合いのような場が設けられた。

「さて、それじゃ少し話をしようか。嬢ちゃん、あんたは久保提督の事は知っているか?」
「はい。まぁこの世界では親交がある提督仲間という認識ですが」
「先日にその嬢ちゃんにも今と同じように囲んで話を聞いたわけだ」

それで想像する。
囲まれた久保提督と第六駆逐隊の面々はさぞ怖い思いをしたのだろうと。

「それはどういった…?」
「嬢ちゃんは俺たちが期待していい提督なのかをな」

男性のその言葉に次は女性の人が声を出してきた。

「そうよ。知っているでしょうけど、あなたはここいらでは有名人よ?
なんせ異世界から鎮守府の施設ごとこの世界に来たっていう話だからね」

その事は知っている。
大本営のその発表は日本を震撼させるには十分な出来事だったからだ。
当然、それを聞きつけてインフラ整備が整った次の日には色々な野次馬が鎮守府を外から眺めていたからな。
最近はあまり見なくなったけど最初の間は少し居心地が悪かったのを覚えている。

「そうですね…。あ、挨拶はしたと思うのですが…」
「確かに…集会を開いて演説していたのは見たよ。でもまだ俺達は嬢ちゃんの事を完全に信用していないんだ。
…知らないだろうから教えてやるよ。嬢ちゃんの鎮守府が転移してくる前の場所は廃れていたっていう話は聞いているか?」
「はい、聞いていますが…」
「その鎮守府にいた提督がそれはもう上から目線の奴だったんだよ。
艦娘様達を兵器としか運用せずに無理無茶を平然と要求して毎日必ず一人か二人は艦娘様が轟沈をしていた」

それを聞いて摩耶は「うぇ…」という顔になって嫌悪感を浮かべている。
鳥海は冷静になって男性の言葉をうまく咀嚼して聞いているのか黙っていたまんまだった。

「俺達にもこう言ってきた。
『俺が守ってやっているんだからお前たちは素直に従えばいい』とな」
「ひどいですね…」
「だろう? それで結局最終的には二年前に深海棲艦に鎮守府を襲撃されて一人、また一人と艦娘様達が死んでいく中でそのあほは何を思ったのか鎮守府を逃げ出してきやがった」
「………」

私は黙ってその言葉を聞いていたが、おそらくその提督の末路は…、

「それで今まで偉そうだったあいつは俺達に頭を下げて助けてくださいと命乞いをしてきたんだ。
失望したもんだね…俺達はこんな奴に今まで頭を下げていたのかと思ってな」
「そうよ! 情けないったらありゃしないさね」

それで当時を思い出しているのだろう町の人々は愚痴を零し始める。

「…それでそのバカは最終的には業務内容を大本営に知られたのだろう、艦娘への扱いなどとかいった色々な罪で捕まっていったさ。
それから二年間の間、誰も近辺に赴任してこないから怯えた暮らしをしていた。
だけど最近になって新しく久保提督が近くの鎮守府に来てようやく深海棲艦から怯えて暮らさずにすむのだろうと期待していた矢先に正体不明のあんたらがやってきた。
ここまで言えば、分かるだろう…?」
「…そうですね。私はまだあなた方から信用されていないのは分かりました。
それも踏まえて言わせてください。確かに私は過去に指示のミスを侵してしまい数人の艦娘を轟沈させてしまった事があります。
ですが決して私は艦娘のみんなを無下に扱ったりはしません。
それに提督の私自身も今は艦娘です。ですから艦娘のみんなを対等に扱い、そしていざとなったら一緒に出撃しましょう」

私がそこまで言い切ったのだろう、それを聞いていた摩耶と鳥海は、

「て、提督!? なに勝手な事決めてんだよ!?」
「そうです司令官さん! あなたは私達の提督です。ですから…」
「それでもだ」

私は鳥海の言葉を遮るように言葉を重ねる。

「…確かに提督は艦娘のみんなに指示を出すのが役目だろう。だけど一緒に戦わせてくれないか…?
私には正面切って深海棲艦と対峙する覚悟はまだないのかもしれない。見ろ…?」

それで私は震えている手をみんなに見せる。

「この通り私は臆病者だ。艦娘のように戦えるかもわからない。だけどそれでも皆と一緒に戦いたいんだ」
「ッ…提督、お前って奴は」
「司令官さん…」

それを聞いていたのだろう。町の人々は少し黙っていた後、

「…信じていいんだな、嬢ちゃん? 俺達は前のバカのせいで嘘の空気には敏感だからさ。
嬢ちゃんが言っている事は嘘じゃないって分かるんだよ。だから信じていいか?」
「信じてもらえるならとても嬉しいです」
「…わかった。なら俺はあんたを信じるぞ。この町も含めて守ってくれよな」

すると他の町の人達も男性に呼応して次々と信じると言ってくれた。
それでとても嬉しい気持ちになった。
そして一段落して帰り道になって、町の人達を驚かしたくなかったのだろう榛名が出て来て、

《提督…。先ほどの件ですが、言った事は責任が重いですよ?》
「わかっている。だからもし私も戦う場面に遭遇したら榛名、一緒になって戦ってくれるか…?」
《お任せください。提督の事は私が守りますから》
「あっ! 榛名、ずりーぞ! アタシだって守ってやるからな提督!」
「はい。私も司令官さんを守りますから無茶して前に出ないでくださいね?」

そんな約束をされてしまい、少し恥ずかしい気持ちになった。
鎮守府に帰った際もその議案が鳥海からみんなに伝わったのだろう、一波乱あったのは別の時に語ろうか。


 
 

 
後書き
ちょっと種を変えてイベント前ですがこの話を書いてみました。



それとイベント名が発表されましたね。
『出撃!北東方面 第五艦隊』という名前らしいです。

それにちなんで固定メンバーになるであろう艦娘。
那智、木曾、足柄、多摩、阿武隈、曙、潮、霞、不知火、初春、若葉、初霜。
この艦娘を育てておりますでしょうか…?
うちはなんとか全員70を越えてました。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0022話『心に傷を負った少女』

 
前書き
更新します。 

 


今日の買い物途中に町で起こった話を鎮守府へと帰ってきてから久保提督へと電話で話していた。
それで久保提督も覚えがあったらしく、

『あー…榛名提督も遭遇してしまったんですね』
「はい。場所が久保提督の鎮守府よりも近い分、期待をさらにされてしまいまして…」
『良い事だと思いますよ。町の人々の信頼を得るのも提督の仕事だと思っていますから。
…ですが、柳葉大将には聞いていましたが、その鎮守府はブラックな場所だったんですね』
「そうですね。それで少しばかり久保提督に相談があるんですが…」
『なんですか?』
「はい、それは―――…」

それで久保提督にある事を話すと少し驚かれた。








それから翌日になって私と久保提督はそれぞれ艦娘を一人護衛に付けて町へと視察も込めてまた来ていた。
私の護衛は朝潮、久保提督の護衛は雷がついていた。

「…ですが、いいのですか? そろそろ定期的に深海棲艦が活発になるこの時期に町に呑気に視察なんて来ていても…」
「それも含めての視察ですよ。おそらくですが町の人々はこの時期になると深海棲艦が攻めてきて怯えるようになっていると思うんです。
だから少しでも不安を取り除く、そして安心させるためにもこういった慈善の事もしていった方がいいと思うんです」
「なるほど…勉強になりますね」
「まぁ、私の勝手な考えですから久保提督の役に立てるか分かりませんが…もとは海軍軍人ではなく一般人だった私だからこその視点での意見ですから」

そんな事を話すと、

「司令官、多分ですがその考えはとてもいいモノだと朝潮は思います。
緊張してしまい視野を狭めてしまうよりもこうして市民と触れ合って適度にガス抜きをしていても罰は当たりません」
「ありがとうな、朝潮」

それで私は朝潮の頭を撫でてあげる。

「あ…司令官、子ども扱いはしないでください。これでも朝潮は改二丁になっていますからもう大人です」
「うんうん、そうだな。でも私にとっては愛娘のようなものだからな」
「愛娘…」

それで朝潮は顔を赤らめて黙り込んでしまった。
はて? どうしたのだろうか…?

「榛名提督って実は天然ですか…?」
「天然…? またどうして…」
「いえ、気づいていないのでしたらいいんです。特に悪影響はないようですから」
「そうね司令官。朝潮の顔を見ていれば分かるものね」

そう言って久保提督と雷は笑みを浮かべていた。
朝潮は黙り込んだままだしどうしたものかと思っていると、魚屋のおじさんが話しかけてきた。

「おう! 提督の姉ちゃん達、昨日ぶりだな。昨日は若いもんが色々と言っちまったが、俺達もあんたの事は期待しているから頑張りな!」
「はい。気にしていないので大丈夫ですよ」
「そうかい。それと漁に出る時は声をかけるがいいかい?」
「はい。護衛はお任せください」
「任せたぜ」

それで魚屋のおじさんが一匹袋に魚を入れて私と久保提督にお裾分けしてくれた。

「わっ! 大丈夫ですか?」
「なーに、気にすんな。あんた達のおかげでこれから漁は安心してできるんだから前払いと思っておきな」

それで久保提督とともに感謝の言葉を述べた後、私達は集会の場所へと向かっていた。

「…ですが、よかったのでしょうか?
榛名提督の鎮守府ならまだしも私の鎮守府にはまだそんなに艦娘が集まっていませんから船団護衛はまだできるほど練度もありませんし…」
「いいじゃないですか。これもこれから頑張っていけばどうにでもなります。
私の鎮守府だって最初は弱小だったんですから。ですから気にしても損だけですよ」
「そう、ですね…」

それで話が着いたところで、ふと前の道に一人の女の子が歩いてきた。
歳は十歳くらいでどうにも寂びれているような表情でどこか暗い雰囲気を連想させる。
その深い眼差しが私達を映したのを感じたのを次の瞬間にはその女の子は私に向かってきた。

「…ねぇ、お姉ちゃん達って提督の人…?」
「そうだけど、お嬢ちゃん。あなたのお名前は…?」
「…七海(ななみ)。七つの海って書いて七海」
「七海ちゃんか。それで、どうしたんだい…?」

七海ちゃんは私がそう聞くと少し目つきが険しくなった。
これはなにかあるなと予感めいたものを感じた。

「…深海棲艦を倒してほしいの」
「どうして…?」
「私のお母さんは二年前まで鎮守府で酒保で働いていたの…」

二年前…。それで思いつくのは昨日の話。
鎮守府で働いていたという過去形のセリフ…。
そこから導き出される答えは…。

「もしかして、君のお母さんは…」
「うん。深海棲艦の鎮守府への襲撃で死んじゃった…」

それで私と久保提督、朝潮と雷は少し苦虫を噛み潰した様な表情になる。
この子はその当時の無能だった提督のせいで亡くなったんだ。

「私のお母さんは死んじゃったのに…どうしてあいつは生き残っているの…?」

あいつというのは提督の事だろう。

「だから、私は将来提督になって深海棲艦を倒す仕事に就きたいと思っているの」
「それは…」

久保提督も分かったのだろう。
この子の心には憎しみの炎が滾っているのを。
でもこのままではいけない。
所詮他人事だから出せる手には限度がある。
だけどこの子の事を放っておけるほど私は薄情じゃない。
だから、

「七海ちゃん、一ついいかな…?」
「…なに?」

私は七海ちゃんの頭に手を乗せながらも、

「きっと、七海ちゃんはこのまま成長して海軍に入ったとしても、根拠はないけどその提督と同じようになってしまうと思う」
「なんでっ!?」

七海ちゃんは怒りを顕わにしながらも私に問いかけてくる。
だから教えてあげる。

「七海ちゃんの深海棲艦を倒したいという気持ちはわかる。
だけどね、それだけじゃきっと七海ちゃんは憎しみに身を任せて艦娘のみんなを深海棲艦を倒すための兵器として運用しちゃうかもしれない。
それはきっとその提督と同じことになってしまう」
「………」

七海ちゃんはそれで思い当たる節があるのだろう、唇を噛みしめながらも私の話を聞いてくれていた。

「深海棲艦への憎しみを消せって言っているわけじゃない。
だけど、それ以上に憎しみで行動しないでこの町のみんな、残された家族、友達…なんでもいい。
守れるものを一つでも見つけてほしい」
「守れるもの…」
「そう。守れるもの。七海ちゃんにも家族はまだいるんでしょう?
まずはその大事な人達を守れるように、そして七海ちゃんのようにこれ以上憎しみを抱く子を産みださないように頑張っていこう」

それで七海ちゃんの表情はどこか先ほどより険は消えていた。
代わりにある事を聞いてきた。

「…お姉ちゃんは大事な物ってあるの?」
「もちろんあるよ」

そう言って私は朝潮の頭に手を乗せる。

「この子達艦娘も私の大事な仲間で、そして家族だ」
「司令官…」
「だから私はこの子達と一緒に頑張っていける限りは道を踏み外さない。
そして同時に市民の人達も守れるような人物になりたいと思っている。
…こんな甘っちょろい志しは生ぬるいのかもしれない。
でも、それが今の私のやれる全力だから」

そこまで言って七海ちゃんはそこで初めて笑顔を浮かべて、

「お姉ちゃん、立派なんだね…。
私、そこまで全然考えれていなかった。深海棲艦への復讐の事しか考えてなかった。
でも、そうだよね! こんな事をしてもお母さんは喜ばないよね!」
「そうだよ」

それで七海ちゃんの頭をもう一度撫でながらも、

「だから、七海ちゃんも道を踏み外さないように頑張ろうか」
「うん!」

それで七海ちゃんはすっきりとした顔になりながらも腕を振って「また会おうね、提督のお姉ちゃん!」と言って家へと帰っていった。
それを見送りながらも、そこでやっと言葉を発せたのだろう、久保提督が口を開き、

「…感服しました。榛名提督の想いもしっかりと聞けて良かったです」
「うん。雷、感動したわ!」
「司令官…。朝潮、そこまで想われていてとても嬉しく感じました」
「そうか…。よかった」

それで久保提督と話し合って定期的に町へと顔出しをしようという事で話がついた。
とても有意義な一日だと感じれたのはよかったな。


 
 

 
後書き
昨日の話の続きです。
七海というオリキャラを出しました。これから町に来る際は絡めていこうかと。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0023話『春の作戦名、呼び出された第五艦隊』

 
前書き
更新します。 

 


「提督からの呼び出しか…。何事だろうな。しかし、この時期だからこそだな」


私、那智は本日は提督に執務室に呼び出された。
深海棲艦が攻めてくるだろう時期に呼び出しを食らうという事は、おそらくそう言う事なのだろうな。
少し気分がよくなってきたな。
すると執務室にいく道中でおそらく私と似た感じで呼び出されたのだろう奴を発見する。

「おい、足柄。こんなところでどうした…?」
「あ、那智姉さん。うん、提督に呼び出しをもらったんで向かっているところなのよ」
「なんだ、お前もか」
「そういう那智姉さんもなの?」
「ああ。だからおそらく今回の戦いは…」
「そうね、少し楽しみになってきたわ」

それで思う。
提督はこの世界に来てからよくやっているものだなと。
あの衝撃的だった再会を目にして私の目に狂いはなかったと思わされたからな。
普通ならあそこまでできるものなどいないだろうさ。
だから信じてもらうために土下座までした提督の事はとても良く思っている。
………榛名の体で土下座をした事については後に言及しておかないといけないだろうけどな…。
そしてもし提督がもとの性別のままだったのなら背中を預けてもいいと思えるほどには私は信頼を置いている。

「足柄…」
「なに、那智姉さん?」
「今回も勝ちに行くぞ」
「当然よ!」

そんな話を足柄としながらも執務室へと足を踏み入れる。
そこには思った通りの奴らが招集されていた。
多摩に木曾、そして第一水雷戦隊の長である阿武隈が執務室に集まっていた。

「お、来たか。足柄に那智」
「待たせたか…?」
「いや、他の三人も先ほど来たばかりだからちょうどいいよ」
「そうか。……で、提督? 私達五人を集めたという事は今回の作戦名は…」
「ああ。大本営から発令されてきた事だが、今回の作戦名は『出撃! 北東方面 第五艦隊!』だ」

提督の言葉を聞いて私は加賀ではないが気分が高揚するのを感じた。
志摩艦隊を再結成するのかという気持ちにさせられる。

「深海棲艦が北東方面へ集結しているという…だから今回はおそらく君たちの活躍があると思う。
また辛い戦いになるだろうが、今まで何度も勝ちを拾ってきた私達なら大丈夫だろう」
「ふっ…余裕だな提督」

私が不敵な笑みを浮かべながら提督にそう問う。
それに対して提督も少し苦笑を浮かべながらも、

「そうでもないさ。でも、ゲームと違って今回からは日本を守らないといけない。
だから君たちにとっては本懐だろうと思ってな」

さすが、私達の事を分かっているな提督。
そう、かつての戦船だった頃の敗戦の記憶。
それを繰り返すわけにはいかない。
だから私達はこうして人の形をとって戦ってきたのだ。

「…提督。今回も姉さん達と一緒に暴れさせてもらうぜ」
「うん。任せろにゃ…」
「期待をしている」

木曾と多摩もやる気のようで木曾は不敵に笑い、多摩は軽くジャブをしていた。

「提督。それじゃ第一水雷戦隊のみんなにはあたしが伝えておきますね」
「任せる。ちょうどよくというのも言葉が悪いが第一水雷戦隊所属の駆逐艦のみんなは練度は全員70以上で十分戦力になる。
だから阿武隈。みんなに作戦に向けて色々と指示を与えておいてくれ。期待しているとも伝えておいてくれ」
「わかりました! あたしに任せて!」

阿武隈もそれで承諾していた。
普段、頼りなさげな印象がある阿武隈だがいざ戦場に出れば本当に軽巡か?というほどの戦果を上げるのはもう鎮守府では知らない者はいない。
だからこそ頼りにさせてもらう。
そしてそんな阿武隈の鍛えた第一水雷戦隊も屈強な奴らばかりだ。期待できる。

「それじゃ提督! 私と那智姉さんにも期待しておいてね! 頑張っちゃうんだから!」
「ああ。異名を轟かせてきてくれ」
「あらやだ…。異名だなんて…」

足柄。そこで照れるところか…?
足柄の異名と言ったら『飢えた狼』だぞ?
まぁ、足柄がそれでいいのなら私も何も言わないが…。

「とにかく、おそらく今夜か明日には作戦が開始されるだろう。
それまで鋭気を養っておいてくれ」
「「「了解!」」」

それで私を含めた五人で提督に敬礼をする。
しかしそこでまだ軍隊形式に慣れていない提督は苦笑気味に、

「恥ずかしいから普段通りでいいぞ? 別に私は本物の軍の人間じゃないんだから…まぁ、今は特務少佐とか肩書きはあるだろうけどさ」
「それでも貴様は私達の提督だ。だから貴様以外には決して従わない。貴様だからこそ私達は安心して背中を預けられるんだ」

私が捲し立てるようにそう告げる。
それで提督も心が決まったのだろう。

「わかった! みんな、勝ちにいくぞ?」
「「「はい!」」」

それで執務室での話は終わり、私達はそれぞれの部屋へと向かっている途中で足柄が少し不安げに、

「…でも、やっぱり提督も心配でしょうね。今回から責任も背負わないといけないんだから」
「そうだな。だが私は心配してはいないぞ」
「どうして? 那智姉さん」
「確かに提督はまだ情けない所はあるだろうよ? だがそこを私達が支えてやればいいだけの話ではないか」

私は足柄にそう言い切ってやった。
すると、

「もう! 那智姉さんってばやっぱりイケメンね!」

そう言って足柄は私に抱き着いてきた。
それでポンポンと肩を叩いて安心させてやった。
まったくこいつは…。
いつも勝気な癖にこういう時に限って甘えてくるのだからな。
そんなところも可愛い妹であるがな。
さて、私も気合を入れるとしようか。

 
 

 
後書き
今回は那智視点で書いてみました。
早くて今夜からイベント開始ですね。楽しみです。

イベント開始時間によりますがもしかしたら一日開くかもしれませんがご容赦ください。
どういうイベント内容かによって分からずに話が書けない状態でしたので。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0024話『青葉のいつものアレ』

 
前書き
更新します。 

 




作戦名、『出撃!北東方面 第五艦隊!』と銘打たれた作戦が開始された。
次々と報告が大本営から送られてくるのを見て思う。

「…こうして大本営から情報が送られてくるのはそれだけ期待されているという事なのだろうか…?」
「そうですね。大本営もこちらの未知なる練度の鎮守府がどう出るのか様子を伺っていると思います」

私が大淀にそう聞くとそう返されてきて、やはり大本営の手のひらで踊らされている感が否めないのを感じた。
それよりも今は気になる事がある。
ゲームをやっていた時にも何度も気になっていた事だ。
イベントが始まると大淀という艦娘は私に様々な情報を伝えるためにその手には辞書が数冊は収まるだろう太さの資料を抱えている。
しかも片手で…。
だから気になったから聞いてみることにした。

「なぁ、大淀?」
「はい? なんでしょうか提督…?」

大淀はそう言って私の方へと顔を向けてくる。
その涼しい表情から別に無理をしているとは感じられなかった。
ますます気になったので聞いてみた。

「その大量の資料の山…重くないのか?」
「ああ…そうですよね。人間の人から見たら重そうですからね。
ですが私は艦娘です。普段は艤装なども扱わないといけませんのでこれくらいの資料の山なら持てないと任務娘をできませんから」
「そうか。無理をしていないならいいんだ。うん…」

大淀はそれで私が心配していると思ったのか少し頬を赤くさせながらも「ありがとうございます」と言ってくれた。
それから私は大淀とともに作戦や任務の確認をしている際に、

「だけど、最初の海域が大湊警備府からか。深海棲艦は着々と日本近海に侵入しているようだな」
「そうですね。まずは対潜作業で大湊警備府近海の潜水型深海棲艦を一掃するのでしょう」
「それと………新艦娘が六隻か…」
「はい」
「大丈夫だろうか…?」
「やるしかありませんよ」
「そうだな…」

それで大淀と一緒に溜息を吐く。
大本営は本当に憎い演出をしてくれる。
国を守ってくれ。代わりにそれで新しい艦娘は六隻を与えてやる。
…とか、そしてそのうち数隻が深海棲艦に魂を捕らわれているだろう艦娘もいるとか言ってくるのだから。
どうやってそう言う事を観測しているんだ…?
本当に深海棲艦と取引をしているのではないかと本気で疑ってくる。
そこになにやらカチャカチャとなにかを操作する音が聞こえてくる。
なんだ…?
まだ情報は流していないと思うのだが…。
そんな事を思っていると扉が開かれてそこには記者魂が滾っている青葉の姿があった。

「司令官! 青葉、聞いちゃいましたよ!」
「はぁ………どこでなにを聞いた? 話によってはお前を拘束しないといけないぞ?」
「そうですよ青葉さん。もしかして執務室に盗聴器でも仕掛けているんじゃないでしょうね?」
「や、嫌ですよ~…そんなに睨まないでください。ただ青葉は知的好奇心の赴くままに執務室の扉に心音計を取り付けて聞いていただけですよー」

うん。真っ黒だな。
それで私はおもむろに電話を取り出してある部屋へとかけようとする。

「し、司令官…? その受話器は何をするために…?」
「ん? 古鷹に電話をかけようと思ってな。青葉の口を塞ぐには古鷹の協力が一番だからな」
「待ってください!! ただの出来心ですから許してください!」
「本当だな…?」
「はい。この瞳にかけて。光っているでしょう?」

そう言ってどうやっているのか分からないが本当に目をキラキラと光らせている青葉を見て、

「はぁ………全員に伝えるまで口出し厳禁だぞ」
「はい、わかっていますよー」

本当だろうか…?
まぁ、いいか。言っても直さないだろうし。諦めよう。
そう私も開き直って、

「それじゃ教えてあげるが今回の新規艦娘は計六隻。
そのうち、四隻が三つのエリアからなる前段作戦で仲間になる」
「ほうほう…前段作戦で四隻ですか。大本営もよくもまー三つのエリアに四隻もぶち込みましたね」
「勘違いしないでほしいのは、ゲームと違って大本営は報酬艦はしっかりとくれるが深海棲艦が魂を捕らえているという所謂ドロップ艦も含まれる」
「なるほど…この世界ではドロップ艦はそういった()()()に則っているんですねー」
「そう言う事だ。まだ後段作戦は発令されていないが、前段作戦の内容だけは分かっている」
「ほう…それはどういった?」

青葉はメモを取りながらも私の話に耳を傾けている。
やはり一筋縄ではいかないようだな、この子は。
取材力が半端じゃない。

「まず現在分かっている作戦は計三つ。

第一作戦海域を『出撃!大湊警備府』。
第二作戦海域を『艦隊集結!単冠湾泊地へ』。
第三作戦海域を『艦隊抜錨!北方防備を強化せよ!』。

…これらからなる前段作戦で展開される」
「ふむふむ」
「第一、第二海域は通常艦隊で挑むそうだ。そして第三海域では連合艦隊を組むことになる。
今のところの作戦の内容は以上だ。詳しい内容はその都度教えていくとしよう」
「了解です!…ところで前段作戦で仲間になる艦娘はどなたかもご存じで…?」
「ああ、分かっている。まず大本営からの報酬艦だが第三海域を攻略した暁には特設航空母艦『春日丸』が加入となる」
「春日丸さんですかぁ…。翔鶴さん達五航戦組が喜びそうですねぇ」
「そうだな。そして残りの三隻は深海棲艦に魂を捕らわれているという。
どうやって判明しているのかは分からないが大本営の知らせによれば、

第二海域以降では占守型海防艦『国後』
第三海域以降では占守型海防艦『占守』、そして給油艦『神威』がドロップすると言われている。
私からの情報は以上だ」

それを聞いて全部メモできたのだろう青葉は満足そうな表情になり、

「司令官。この発表はいつ頃しますか?」
「この後に艦娘全員が集められる校庭で開こうと思う」
「そうですか。では青葉は青葉新聞を即座に作成しておきますね。少しでもお役に立ちたいと思います!」
「そうか。わかった。ただし変な事は書くなよ? そこがお前の悪い癖だ」
「きょーしゅくです」
「いや、褒めていないからな?」

そんなこんなで青葉は部屋を出ていった後に私は艦娘を校庭に集めて今回の情報を教えるのであった。


 
 

 
後書き
十二時を過ぎてやっと情報が出揃ったのでこうして文章に書き起こしました。
なんか山城改二がドロップする不具合とかさっそくE1で伊13がドロップしたとか騒がれているので出撃情報が出揃うまで様子見ようと思います。


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0025話『対潜水艦掃討、阿賀野の困惑』

 
前書き
更新します。 

 


作戦が開始されたため、まずは大湊警備府に寄港させてもらえるようにする事にした。
予想通りというべきか今現在北海道周辺海域には深海棲艦がわんさか出現していて現地の艦娘が掃討に当たっているという。
それで情報では対潜掃討を頼みたいという事で私はまず対潜できるメンバーを集めることにした。
だけど先制対潜できる艦娘は限られている。
暁などは練度は90に達しているがそれでもソナーと爆雷を装備しても先制対潜を出来る域には達していないのだ。
この後に控えている未知なる海域にも出せるメンバーは厳選しておきたい。
その為に私はいつも対潜海域では特攻番長を務めさせているメンバーを呼ぶことにした。
それぞれの部屋に電話をかけて招集する。
そしてやってきたメンバーは、

「提督さん、阿賀野に用…?」
「航空戦艦、伊勢。参上しました」
「お呼びでしょうか。提督さん」
「五十鈴が呼び出されたって事は先制対潜の海域よね?」
「提督さん、リベにご用…?」
「戦闘か! このあたいに任せな!」

上から順に阿賀野、伊勢、鹿島、五十鈴、リベッチオ、朝霜。
伊勢を抜いてうちでは頻繁に対潜戦闘をやらせているメンバーだ。

「みんな、集まってくれてありがとう。早速だが阿賀野を旗艦にして大湊警備府に向かってくれ」
「大湊ですか?」
「そうだ。今現在大湊警備府から単冠湾泊地にかけて潜水型の深海棲艦が活発に活動をしているという」
「ねぇねぇ? そのヒトカップワン泊地ってどういうとこなの…?」

そこでリベッチオが興味深そうに聞いてくる。
実際悪意はないのだろうが他の艦娘達はあまりいい顔をしていない。
そう、深海棲艦が出没するまではロシアに領土を奪われていた場所だったという。
昔の話を掘り起こすわけにはいかないので軽めに説明する。

「北海道ってところの近くにある泊地のことだよ。
まぁ、リベッチオは日本の艦娘じゃないから分からないと思うが、今の時期はまだ少し肌寒い所だから風邪には注意してくれ。
特にリベッチオは薄着の服装なんだから」
「うん、わかった! それじゃ行く前に少し厚着していくね!」

リベッチオは元気にそう答えていた。
深く聞かれないようで安心したというのもあるが、リベッチオの前向きさには感心しないとな。

「今回の作戦は大湊警備府から単冠湾泊地までの輸送ルートを確保して道中のおもに潜水型の深海棲艦を退治することになっている。
よってまず伊勢はスロットに試作製嵐を積めるだけ積んで、他のみんなは対潜装備を充実させておいてくれ。
そして先制対潜ができるように四式水中聴音機と三式水中探信、お呼び三式爆雷を交互に装備してくれ」
「「「了解」」」

それでそれぞれ準備に取り掛かる中、鹿島が前に出て来て、

「ふふっ、提督さん。私に期待しているんですね。練習巡洋艦でお役に立てるか分かりませんが鹿島、頑張らせてもらいますね」
「ああ。そうやって卑下する事ではない。鹿島も十分役に立てるから安心してくれ。今までの実績が証明しているからな」
「わかりました。鹿島、頑張ります! 終わったら褒めてくださいね?」

最後に鹿島はそう言って惚れ惚れするような笑顔を浮かべながら部屋を出ていった。
その後ろ姿を見送った後、そこに榛名が出て来て、

《むぅ………やっぱり鹿島さんは油断なりませんね》
「なにがだ、榛名…?」
《いえ、個人的な事なので気にしないでください提督。ただ女性として油断できないと思っただけですので…》

それで榛名は小声でぶつぶつとなにやら言っているのを私は聞き流すことにした。
本気で相談に乗ったら藪蛇になりそうだなと私のヌメヌメセンサーが告げていたからだ。










それからしばらくして装備の換装が整ったのだろう六人が港へと顔を出していた。

「それじゃ提督さん! 阿賀野が旗艦で頑張りますね!」
「阿賀野姉ぇ! 油断しないようにね!」
「そうよ。阿賀野姉ぇはただでさえ油断するところがあるんだから」
「ぴゃん! 気を付けてね!」
「大丈夫よー。阿賀野は最新鋭軽巡なんだからしっかりやれます!」

阿賀野型姉妹の三人が阿賀野に激励の言葉を上げていた。

「伊勢、鹿島、みんなのお守りを任せたぞ?」
「わかりました」
「お任せください、提督さん」

伊勢と鹿島に私はそう言ってお守りを任せた。
冷静な二人に任せるのは五十鈴や阿賀野などは熱くなったら突撃してしまうからだ。
リベッチオと朝霜も駆逐艦ゆえに少し考え無しになってしまうかもしれないからだ。

「それじゃ! 出撃ー!」

阿賀野の声とともに六人はまずは停泊地である大湊警備府へと向かっていった。










…それから半日くらいたって、大湊警備府に到着したという報告を阿賀野から受ける。

『それじゃ提督さん。深海棲艦を掃討してきますね』
「頼むぞ」
『きらりーん! 阿賀野達に任せて』

無線機でのやり取りでも阿賀野の元気の良さが伝わってくる。
このコンディションなら大丈夫かな?
それから何度か深海棲艦と遭遇しながらも輸送ルートを確保していっているという。
そして最新の報告で多少の損傷はあれど見事潜水棲姫を打倒したという報告を受ける。

『提督さん。阿賀野達、やったよ!』
「ああ。帰ってきたら褒めてやるから帰りの道中は気を付けるんだぞ」
『わかりました! あ、でも…ちょっと大湊警部府でいざこざがあったかな…?』
「なに? それはどういった…?」
『うん。気にならない程度なんだけど、他の鎮守府の艦娘達から感情的には嫉妬のような視線を感じたかな?』
「そうなのか…」
『うん。なんか一回朝霜がキレちゃって険悪な雰囲気になっちゃった事があったよ。阿賀野、あの雰囲気は嫌いだなー』
「そうか。まぁ、私達の存在は特殊だからな。みんなにも我慢してもらっといてくれ」
『うん。わかりました。それじゃ阿賀野達、帰還しますので一時通信を落としまーす』

それで阿賀野との通信が終了した後、考える。
やはり特殊ゆえに扱いに困っているようだ。
この作戦が終わったら他の提督達とも話し合いの場が必要かもしれないと、私は思った。


 
 

 
後書き
無事E-1を甲でクリアできました。
そして昨日、E-2で国後をゲットして乙でクリアしました。
次の話で国後について書こうかと思います。


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0026話『最初の輸送作戦と新たな艦娘』

 
前書き
更新します。 

 
二日目に入り、第二作戦海域への移行を確認した私はまずは輸送艦隊を編成しようとどの艦娘を使うか考えていた。
まだこの先でどうルートが固定される艦が使われるか分からない。
慎重に行かないとな。
だけど慎重に出過ぎて足元を疎かにするのも不味いと思い、考え着いた編成を招集した。
そして招集後、私の前には六人の艦娘達の姿があった。

まずは那智を旗艦として考えている。
そして次に古鷹型二番艦の重巡洋艦である加古。
多摩、不知火、曙に霞。
霞に関してはもしかしたらカミ車要員で使うかもしれないが、まだ荒潮に朝潮が残っているから、まぁ平気だろう。

「提督ー? このメンバーを集めたのはいいけどあたしじゃなくて足柄でもいいんじゃないか?」

加古がそんな事を言い出す。
そこに多摩が割り込んできて、

「まだ先が見えないんだから温存はしておいた方がいいにゃ」

「そうだな。多摩のいう通りだからだからまだ無駄撃ちはできないから今回は足柄は待機だ」
「でもさ、そう言ってもし使われなかったら足柄の奴、泣いちゃうんじゃないか…?」
「そこまで弱い奴じゃないだろう。那智はどう思う…?」

それで私は加古の意見を足柄の姉である那智に聞いてみた。

「ふむ。まぁ戦力温存の意味では効率的だ。だが使わずでは確かに足柄も落ち込むかもしれないな」
「そうだよな。でも最終局番で使うかもしれないし…」

それで思い出す。
過去のイベントで起こったクロスロード真拳という奴。
長門、酒匂、プリンツ・オイゲンの三人が敵をまるで神の如く倒していく事があった。
ゆえに今回も第五艦隊がなにかしらの特攻持ちかもしれないしな。

「このクズ司令官! うだうだ考えていないでこうして集めたんだからさっさと決断しなさいな!?」
「そうよ、クソ提督は考えるより先に行動でしょう?」

霞と曙が我慢ならなくなったのかそう叫んできた。
そうだな。

「霞、曙…心配してくれてありがとな。よし、もう今回のまず輸送作戦ではこのメンバーを使っていく。
この後に控えているボスを打倒するメンバーにも那智と霞は入ってもらうと思うからよろしくな」

私がそう告げると六人は分かったのか了解と言ってきた。
それで港に出る際に霞と曙に話しかける。

「…なによ? 司令官」
「なに? クソ提督」

二人が振り向いてきてそう言ってくる。
だけど私は二人に感謝しなければいけない。
だから、

「いつも二人には私が迷ったらすぐに道を示してくれるよな。だからありがとう」

そう言って私は二人の頭を撫でた。

「ふ、ふん…こんな問題はうだうだ考える性質じゃないでしょう? だからそれでいいのよ」
「そ、そうよ。私達がそれでうだつが上がらないあんたを叱ってやればいいんだから」

二人は照れ隠しに私に少しきつい言葉を言ってくるがそこはやはり素直ではないらしく二人とも顔を赤くさせているので、受け入れられているのでよかった。
と、そこで背後から裾を掴まれる感覚がしたので振り向くとそこには不知火がなにやらもの欲しそうに私を見つめて来ていた。

「…どうした、不知火?」
「司令官。不知火にはなにかないのでしょうか…?」
「なにかって…そうだな。だったら無事に帰ってきてくれ。そして冷静な不知火なら霞と曙のまとめ役にもなれるだろう」
「了解しました。不知火、頑張らせていただきます」

私に敬礼して少し笑みを浮かべながらも不知火も港へと出ていった。














提督にそう言われましたので不知火は曙と霞の二人を見守る方針で殿を務めていました。
最初の輸送で物資をドラム缶や大発動艇に積み込んで不知火たちは単冠湾泊地へと進んでいきます。
何度か駆逐棲姫と遭遇しましたがなんとか倒していきました。
それで駆逐棲姫を完全に無力化した時でした。
なにやら敵艦隊のあった場所から光が漏れだしてきて何事かと思った次の瞬間には、そこにはピンク色の髪をした少し小柄な少女が姿を現しました。
なるほど…。
これがこの世界で言うドロップという現象なのですね。
深海棲艦に捕らわれていた艦娘の魂が解放されたのでしょう。
そしてその少女は少しして目を覚ますと、

「私は占守型海防艦二番艦、国後よ…クナって呼んでほしいな」
「わかりました。国後、あなたを歓迎します。一度、鎮守府へと戻りましょうか。提督と顔合わせをしましょう」
「わかった」

それで新たにこの世界では初の仲間になる国後を引き連れて私達は輸送作戦を終えて、鎮守府へと帰る事にしました。
提督に褒めていただけるでしょうか? 楽しみです。















輸送艦隊が鎮守府へと帰ってきて新たに加入したのだろう艦娘を連れて来ていた。

「あなたが提督…?」
「ああ。そういう君の名は…?」
「私は占守型海防艦二番艦、国後よ…よろしくお願いします。提督…クナって呼んでほしいです」
「わかったよ、クナ。これからよろしく頼む」

そう言って私はクナと握手を交わしたのだった。
さて、次は輸送が終わったのでお決まりのボスを打倒する編成を考えないとな。
それで私はまた編成を考えるのであった。


 
 

 
後書き
国後との出会いを描きました。
まだキャラを掴めていないので簡素になりましたがこれから理解していこうと思います。
戦闘描写も書いた方がいいのですがなかなか難しいものですよね。
イベントを字面に書くという作業は。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0027話『重巡棲姫打倒、疲れる視線』

 
前書き
更新します。 

 



前日の輸送作戦が成功してこれから単冠湾泊地の近くに拠点を構えている重巡棲姫を打倒するためにメンバーを招集していた。
前日から引き続いて那智と霞がいる。
そして他の四人はまず戦艦枠で金剛を採用した。

「ヘイ、提督ぅ! 私の活躍、期待してオイテネ!」

そう言って金剛は私に抱き着いてくる。
私が榛名に憑依してしまってか金剛はよく頻繁に私をお茶会に招待してくれるのはありがたい。
ありがたいんだけど、他の子達から「金剛さん達だけずるい!」という苦情が来ているという。
それでも金剛はめげずに、

『いいですカ? 機会は待つより自分から作るデース!』

と言って、みんなに応援の言葉?を贈っていたり。

そして四人目は第五艦隊所属の木曾だ。

「…提督。俺をここで使っていいんだな?」
「ああ。だからしっかりと暴れてこい」
「わかった。俺に寄せられる期待には見事応えてやるぜ」

木曾はいつも通りイケメンオーラを出しながらマントをふわっと浮かばせて腕を構えていた。
木曾がカッコいいポーズをとっているところはいいとして、

「提督よ。わらわの活躍にも期待しておるのだぞ?」
「わかっているさ、初春」
「おほほ」

それで初春はセンスで煽りながら微笑みを浮かべているのであった。
そして最後になるのは制空権を確保するために今回は艦戦キャリア―という役目についた蒼龍の姿があった。

「…あの、提督? 制空権を維持するためなら私なんかより他にも使える子がいたと思うんですけど…例えば加賀さんとか」
「あのな、蒼龍。そんなに自信ない事を言うべきじゃないぞ。二航戦として胸を張って頑張ってくれ。
特に先遣隊の報告で今回から敵深海棲艦が新たな艦載機を使いだしたという。
だから蒼龍の力がどこまで通用するか試してみるのも一興だろう」
「…そうですね。そこまで言われたんならこの蒼龍、頑張りますね!」

気合も十分に蒼龍は腕をグッと組んで力をためていた。

「そして今回は北海道の基地から航空隊が発艦してくれる。
すでに私の所有する航空機もあちらに届いている頃だろう。安心して重巡棲姫を倒してくれ。
後から支援艦隊も派遣すると思う。その時になったら来てくれるだろう」
「了解した。それで旗艦は私と霞、どちらにするのだ…?」

那智がそう聞いてきたので今回は霞が旗艦になる事を伝えた。

「私が旗艦か…。任せなさい!」

霞も旗艦という事で責任が圧し掛かるだろうがそれもしっかりと制御して余裕の表情でいた。
これなら大丈夫だな。

「よし! それでは六人とも抜錨してくれ!」
「「「了解」」」

それで六人はまた大湊警備府へと向かっていった。
無事に帰ってくることを祈って…。












わらわ達が出発して、大湊警備府に着いた時に、阿賀野の言っていた事を思い出す光景があった。
ちと、そうじゃな…。
視線がつらいというべきか。

「ヘイ、初春。感じましたカ?」
「そうじゃのう…。ちと視線がつらいかの」

金剛に聞かれて素直に答える。
そう、艦娘だけの嫉妬の眼差しなら覚悟していた事なのだけれど、各々の提督達の視線が険しいモノじゃからな。

「はんっ…どうせ俺達の力をまだ信じ切れていないんだろうよ」

そう言って木曾は気持ちが幾分楽そうに構えていたが、それでも少しテンションが下がっているのは分かった。

「これは早々に重巡棲姫との決着をつけるべきじゃな」
「そうね。蒼龍、この視線の中は辛いものがあるわ」

そんな話をしながらも現地の提督達の説明を受けながらも私達は大湊警備府を出発して、重巡棲姫がりうであろうエリアへと向かっていった。
そして道中少しばかり手こずりながらもなんとか目標地点に到着すると、そこにはいつものように重巡棲姫が表情が少し固めながらも構えていた。

「よし! 蒼龍、いきます!!」

そう言って蒼龍が制空権を確保するために艦載機を発艦させていく。
だけどやはり新型の敵の艦載機…見た目は蝙蝠のような形でギョロっとした目をしていて少し気持ち悪いのう…。
制空権確保の争いは過酷を極めているようで少し蒼龍の表情はきつい。
だけどしばらくして、

「制空権確保! みんな、後は頼みました!」
「オー! 蒼龍ナイスデース! 皆さん、攻撃を開始しますよ!」
「ちょっ!? 私が旗艦!!」

霞が少し煩かったがそれで戦闘は開始されてしばらく経過し、

「コノ…ノコノコト…ヤクタタズドモガ…キエロ!!」

重巡棲姫が本気を出したらしく戦線も苦しくなってきて、それで蒼龍が一撃を食らって大破してしまう。
だが、なんとか夜戦にまで持ち込めてさすがというべきか最後は那智が決めてくれた。

「この一撃で、沈め…ッ!!」

那智の砲撃が重巡棲姫に突き刺さり、

「ヴェアアアアアーーーー!!?」

重巡棲姫の叫びが聞こえてきて次の瞬間には重巡棲姫は光となって消えてしまった。

「作戦終了だな」
「わかったわ。司令官? 重巡棲姫を打倒したわ」

霞が提督と無線で会話をしていて、

「よし…。それじゃ一回大湊警備府に戻って報告をした後、帰投しましょう。
またあの視線に晒されるけど我慢してね…?」

それでわらわ達は大湊警備府へと向かって報告をした後に鎮守府へと帰投していった。
精神的に疲れる戦であったのう…。


 
 

 
後書き
E2の話を書きました。
感想で少し反省しないといけない点がありましたので話に書き起こすまでネタバレは控えようと思います。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0028話『すぐれない羅針盤』

 
前書き
更新します。

追記

後から攻略を見直して南樺太の方も輸送エリアだという事がわかったのでかなり修正を入れました。 

 



重巡棲姫を倒したことで単冠湾(ヒトカップワン)泊地の防衛網が固まったという事でこれをさらに防備強化にあたるということで幌筵(パラムシル)泊地まで再度輸送作戦を行うという。
なので今度は輸送連合艦隊を組むことになった。
それでまず第一艦隊で選出したのは制空権確保のための最上に三隈の二人。
次に大発動艇が装備できる艦娘である大潮、皐月、江風の三名。
そして防空要員の照月を含めた第一輸送艦隊。

次に、その輸送艦隊を防衛するために組まれる第二艦隊。
これにはまず旗艦に阿武隈。
そして鳥海、摩耶。
最後に綾波、初月、雪風の駆逐艦の三人。
この六名を含めた第二防衛艦隊。

この十二名を編成して輸送連合艦隊として出発してもらう。
だけどそこで問題があった。
それは…、

『提督、聞こえるかい?』
「ああ、聞こえているよ最上」
『よかった。それなんだけどね…なんか羅針盤妖精さんの調子が悪いらしくて幌筵(パラムシル)泊地までの航路が計測できないそうなんだ』
「計測できないか…一応羅針盤は正常に動いているんだろう?」
『うん。妖精さんはちゃんと道は示してくれるよ』
「なら、進んだ先になにかあるのかもしれないな…最上、みんなに伝えてくれ。
とりあえず輸送は後回しにして航路の確保を優先にしてくれと。
おそらくだけどなにかしらのギミックが羅針盤妖精さんの力を阻害しているのだろう」
『わかった。それじゃ進める先を虱潰しになって当たってみるよ』
「苦労かけるな」
『いいよ、謝らないで。僕もたまにはこういった遠回りの事もしたいなと思っていたところだから』
「そうか。それじゃなにか発見したら報告してくれ」
『了解!』

それで私は最上と通信を切る。
ふむぅ、しかし…。
羅針盤が正常に稼働しないという事はやっぱりなにかしらのギミックを解除しないといけないという事か。
それで私は地図を広げてみる。
ただでさえ広い北海道周辺の海域だ。
なにかしらの解決策はあると思う。
羅針盤妖精さんの示した方角からするとおそらく行き着く先は樺太(からふと)島あたりかな…。
ゲーム的に考えれば樺太島周辺海域になにかしらのギミック解除の方法が見つかると思う。
エリアを虱潰しに周ればいい話だが無駄に資源を消費するのもいただけない。
そんな時だった。
旗艦の最上からまた通信が入ってきた。

『提督、いいかい…?』
「どうした、最上?」
『うん、樺太島の海域でなにかしらの輸送エリアを発見したんだけど、これがそのギミックという奴なのかな…?』
「でかした、最上。それでその場所を発見した後の羅針盤妖精さんの様子はどうだ…?」
『うん。まだ反応は芳しくないみたいで首を振っているよ。ただここ以外にもまだこういった場所はあるみたいだ』
「よし。最上、羅針盤妖精さんの指示に従って他の場所も当たってみてくれ」
『わかったよ。ただ奥に進むにつれて敵深海棲艦が少しずつ強くなっているみたいだから慎重になっていくね』
「そうか…。おそらくその深海棲艦も近づかせまいと襲ってくるんだろうから撃退した後にその輸送エリアへと足を踏み入れてくれ」
『わかったよ』

そしてもう一度最上と通信を切る。













提督の指示で樺太島周辺海域のギミックになるのだろう地点を捜索することになったボク達は色々と慣れない作業ながらも二つ目の輸送エリアを発見した。

「阿武隈さーん。周辺に深海棲艦が来ていないか見張っててね!」
「はい。この阿武隈に任せてください」

第二防衛艦隊のみんなに周辺を警備してもらいながらも輸送場へと足を踏み入れる。
やっぱりなにかしらのギミックはあるようだね。
それで手早く輸送を完了した。
それで羅針盤妖精さんに話を振ってみる。

「それで、どうかな? 羅針盤の調子はよくなった…?」
【まだみたい…だけど後一つ輸送エリアを発見すれば道が示されるかもしれない…】

そのまるで占い師みたいな言い方で少し笑みが零れる。
まるで宝探しをしているみたいな気分にさせられるな。

「もがみん。楽しそうですね」

そこに三隈が話しかけてきた。
うん。確かに楽しんでいるのかもしれない。
深海棲艦が攻め込んできているという緊張状態だというのにこうして輸送エリアを捜索している事をしているボク達は周りからどう見られるのだろうね。
でも、これも道を示すための作業なんだからしょうがないよね。

「うん、三隈。ただあと少ししたらこの創作も終わりそうだね」
「そうですね。…もう提督もけったいな注文をしてくださりますね」
「いいじゃないか。遠回りをしているからこそ視野も広げられるわけだし…。
それに輸送がてらここらに潜んでいる深海棲艦も退治できる。
これぞまさに一石二鳥ってね」
「はぁ………そのもがみんの前向きさも見習いたいものですわ」
「ははは! 三隈にそう言われると嬉しいよ。それじゃそろそろ最後の輸送エリアに向かおうか」
「そうですね」

っと、そこに大潮ちゃんから声が上がってきて、

「最上さーん! みんな少し気分が下がっていますのでアゲアゲでいきましょう!」
「そうだね。元気づけてくれてありがとう。それじゃいこうか」

それでボク達は最後の羅針盤が示してくれた場所へと海上を進んだ。
するとやっぱりと言うべきか先程よりもさらに強そうな艦隊が待ち構えていた。
だから、

「航空巡洋艦最上、出撃するよ!いっけー!!」

三隈と一緒に一気に晴嵐を発艦させて制空権を確保して先制攻撃をしつつ第二防衛艦隊の手助けもあって深海棲艦を殲滅するのであった。
そして到着したおそらく最後の輸送エリア。
ここに到着するのがギミックの解除の鍵だと思うんだよね。
それで素早く輸送を完了した。
それでもう一度羅針盤妖精さんに話しかけてみた。
すると期待通りの顔をして、

【おそらく成功です。幌筵泊地までのルートが解放されました】
「そっか。よかったよ」

羅針盤も正常に稼働したという事が分かった。
これで先に進める。
でも一回単冠湾泊地に帰投して補給と入渠を済ませようか。
無駄ってわけじゃないけど疲労がたまっているようだから、輸送する前に回復しとかないとね。
その事を隊のみんなに言って承諾してもらえたので単冠湾泊地へと寄港することになった。
ちょうどもう日が落ちて暗くなってきていたのでちょうどよかったしね。
阿賀野の言っていた視線も耐えないといけないしね。
はぁー…大変だね。

 
 

 
後書き
今回はE3のギミック解除の話を書きました。
簡単な作業でしたが艦娘の疲労がたまりましたね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0029話『ある提督の忠告』

 
前書き
更新します。 

 


先日の南樺太島での輸送エリアへの物資輸送を完了した最上達輸送連合艦隊は今度は幌筵(パラムシル)泊地までの輸送を行おうとしていた。
そして輸送を開始しようと港に出ていこうとした時に、ふと背後からとある提督が最上達に話しかけてきた。

「君達、少しいいかい…?」
「ん? なんですか…?」

それで最上が代表で前に出て返事を返す。
それでその提督は少し強張った顔をしながらも聞く。

「君たちは、異世界から来たという話は本当なのかい…?」
「そうですが、なんです…? もしかしてこの作戦に参加するのはダメだという事はないですよね…?」
「そうは言っていない。ただ、まだ上層部が君たちの事を…特に戦艦榛名に憑依してしまったという提督の事をまだ信じ切れていないのが現状なんだ」

その提督の発言に最上の後ろで聞いていた摩耶が少し睨みを効かせながら前に出て来て、

「あん? なんだ…? あたし達の提督が信じられないっていうのか?
うちの提督はな! この世界に突然来ちまって元の世界にいる親とか友人とかとももう会えなくなっちまった。
なのに、それを顔に出さないでこの世界で深海棲艦と戦っていくっていう覚悟を決めてんだ。
それがどれだけ苦しい決断か…あんたに分かるってのか?」

そう言って摩耶はその提督に言い切ってそれでも睨みは効かせたままだった。
その摩耶の過激な反応に驚かされたのだろう、その提督はしばし絶句のような表情をしていた。
だけど少しして持ち直したのか頭を下げてきた。

「すまない…決して君たちの提督を侮辱した訳じゃないんだ。
ただ、そう言ったまだ信じ切れていない人たちが中にはいるってことを覚えておいてほしい。
私としては赤の他人の世界なのに一緒に戦ってくれるという榛名提督には好感を持っている。
だから、決して敵だけじゃないって事も覚えておいてくれ」

そう言ってその提督はもう一回頭を下げてその場を離れていった。
それでしばらくして全員が復帰できたのか、

「摩耶の姐御、ありがとうございます。江風、もう少ししてたらキレてたかもしンないから」
「ボクもだよー。司令官を侮辱されたんだと思ったら少し怒りがこみ上げてきていたかもしれないから」

江風と皐月がそう言って上げそうになった拳を下げていた。

「ですが摩耶姉さん。あの提督の方の言っていた事もあながち嘘ではないと思います。
だから司令官さんがこの世界でしっかりとした地盤を築いていくにはまずは結果を出さないといけないんだと思います」
「難しいものですのね…」
「ああ…」

鳥海の分析による言い分で三隈と摩耶は頭を掻きながら唸っていた。

「とにかくこの輸送作戦を終わらせましょうか。こんなところで時間を食ってしまいましたら司令官さんにも悪いですし」
「そうですね! しれぇがこの世界で安心して暮らしていくためにも私達が頑張らないとです!」

綾波と雪風がそう言ってみんなを元気づけていた。

「そうだよね。ね、初月?」
「ああ。信じ切れていないのなら結果を出せばいい事だからな。照月姉さん」
「それじゃ今日も頑張っていきましょう!」
「はい! 大潮、頑張ります!」

照月、初月と続いて最後に阿武隈がそうまとめて大潮もそう答えて全員は幌筵(パラムシル)泊地への輸送を開始するのであった。












…それから道中警戒をしながらも幌筵(パラムシル)泊地へと何度か輸送を完了してその後に待ち受けている敵深海棲艦を倒している時だった。
不知火から聞いたこの世界でのドロップという現象に一行は立ち会っていた。
捕らわれていた艦娘の魂が解放された光が漏れだしてきて次第に人の形を形成していき、そこには白い髪をした小柄な少女が海の上に立っていた。
そして声を出す。

「占守型海防艦一番艦! 占守(しむしゅ)っす!」
「あ、もしかして国後のお姉ちゃん…?」

最上がそう聞く。

「あ、クナの事、知ってるっす?」
「うん。もう保護してあるよ」
「そうっすか! 嬉しいっす! 占守、早くクナに会いたいっす!」
「そっか。それじゃ一回ボク達の鎮守府に帰ろうか。きっと国後も待っているよ」
「はいっす!…あ、でも一つ頼みたいことがあるっすけどいいっす?」
「なに…?」
「うん。ここのエリアにもう一人魂が捕らわれている艦娘がいるっす…できれば彼女も助けてほしいっす…」

それで先ほどまでの明るいテンションが嘘のように占守は落ち込んでいた。
きっと顔見知りだったのだろう。
それで最上は顔を明るくして、

「大丈夫! きっとその子も助けるよ! だから安心して一回帰ろうか。これから占守の暮らすことになるボク達の鎮守府へ…」
「はいっす!」

それで最上達は輸送も完了していたので鎮守府へと帰る事にした。


…そして次の日の事だけど最上達はこのエリアの敵深海棲艦はまず後回しにしてそのもう一人の艦娘の救出を念頭に置いて捜索をしていた。
そして何度か輸送エリアの付近での深海棲艦を倒した時だった。
またしても発光現象が発生してまた魂が解放されたのだろうと思った。
そこにいたのはアイヌ民族の衣装を着ている女の子だった。
その子は目を開けると丁寧におじきをして、

「イアイライケレ。給油艦、神威でございます」
「よかったよ。なんとか助けることができてよかった。…ところでさっきのってどういう意味?」
「ありがとうって意味ですよ。助けてくれて感謝します」
「そっか。それじゃよろしく」

それで神威を連れて鎮守府へと帰るのであった。
そこでは国後が占守に会えて抱き着いている光景があったり、神威とゆかりのある艦娘が話をする光景があって救出できてよかったと提督は思うのであった。









「それで…最上が聞いたっていう話がさっきの事か?」
「うん。まだ提督の事を疑心暗鬼で見ている人が大半以上はいるみたいなんだ」
「そうか…」

それで少し悲しい気持ちになった。
今は人類同士で争っている事態ではないだろうに…。
内輪もめでもしも深海棲艦にその隙を突かれて敗北してしまったら目も当てられない。

「わかった。報告ありがとう最上。明日のエリアのボスを倒す編成にも最上を編成すると思うから頑張ってくれ」
「大丈夫だよ。提督がしっかりとボク達を労わってくれていることは分かるから。だからあまり根詰めないでね」
「すまない…」
「だからもう~…そう言う所が提督の悪い所だよ?」
「あ、そうか…。すま…じゃなくて、そうだな、ありがとう」
「うん。それでいいと思うよ。それじゃもう今日は休ませてもらうね」
「ああ。しっかりと疲労を取っておいてくれ」

それで最上との話を終えて、

「結果を出さないとな…」
《そうですが、さっきも最上さんが言われましたようにあまり考えすぎないでくださいね?
提督の考えていることは分かりませんが無理をしているのはわかりますから》
「ああ、ありがとう榛名」

榛名に励まされながらも執務室の窓から見える夜空の月を見上げた。


 
 

 
後書き
人間関係が少し複雑になってきました。結果と戦果を出さないとですね。

そして占守と神威を仲間にしました。
明日はE3のボスとの話を書きます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0030話『護衛棲姫との戦い』

 
前書き
更新します。 

 



前日の輸送作戦が完了したため、ついに前段作戦最後のエリアボスへと戦いを挑もうと思っている。
それで前日までの輸送艦隊編成を少し弄って決戦編成にする。

第一艦隊を旗艦を最上のまま運用する。
そして戦艦三隻。
霧島に比叡、そしてウォースパイト。
最後に軽空母の姉妹である千歳と千代田の二名。

第二艦隊もさほど変えてはいない。
ただ、初月を北上に変更した。

これで水上打撃部隊を組んで挑んでもらおうと思う。

「司令、この霧島にお任せください」
「はい。精一杯頑張りますね」
「アドミラル、このウォースパイトにお任せください」

戦艦組が元気に声出しをしてくれているので「頼むぞ」と言って期待の言葉を贈った。

「千歳お姉、頑張ろうね!」
「そうね、千代田。提督、私達の活躍にも期待してくださいね?」
「うん。制空権は確保できる装備にはしてあるから頼む。
なにせ相手は新種の空母型深海棲艦らしいからな。随伴艦もきっと空母を出してくるだろう」
「新種とかそんな事は関係ないよ提督。ただあたしが力を見せるんだから倒せない敵はいないよ」

北上が実に頼もしい事を言ってくれる。
こういう時の北上はいつもすごい活躍をするからな。
期待してもいいだろう。

「そうだな」
「北上さん、頑張りましょうね!」
「んー…阿武隈が第二艦隊の旗艦かー。いけるの…?」
「ムキー! 北上さん、いつも一緒に戦ってきたでしょうが! 少しは信用してくださいよ~!」
「わかったよー」
「本当ですかー?」

北上と阿武隈のそんなやり取りを聞き流しながらも、

「さて、みんな。この前段作戦が終了すれば続く後段作戦でなにかがきっと起こるだろう。
だから確実に新種の深海棲艦を倒してきてくれ」
「「「了解」」」
「それじゃ抜錨してくれ!」

それで私は水上打撃部隊のみんなを送り出した。
きっと激戦になるだろうからみんなの無事を祈っている。
特に私の中にいる榛名が出ていく霧島と比叡の事を心配してか、

《比叡お姉様に霧島…しっかりできればよいのですが》
「そうだな。でも立派な自慢の姉妹たちだろう? 信じてあげよう」
《はい》

それで私は執務室でいつでも戦闘指示がかけられても言い様に待機しているのであった。









阿武隈です。
提督が言っていた新種の深海棲艦………大本営からつけられたコードネームは『護衛棲姫』。
だけど最初にその護衛棲姫に遭遇した時はあたしは少し驚いた。
その小柄な体躯に額には一本角を生やしていて、だけどどこか鳳翔さんや赤城さんに通ずるなにかの似たような雰囲気を感じさせていたのだ。

「ネムッテ……イタノニ……ブスイナ…ヒトタチ……」

その護衛棲姫は眠っていたのだというけど、ならなんでこの重要な場所を任されたのか少し不思議に感じました。
でもその護衛棲姫の腕には新型の艦載機がまるで鳥のように乗っていて威圧感を一緒になって放っている。
そして提督の読み通りに随伴艦にも軽空母が何隻かいて千歳さんと千代田さんとの制空権の争いは過酷を極めているようでした。
長門さん達の決戦支援艦隊とか基地航空隊の攻撃で三分の一くらいは減らせたけどそれでも空母群はまだ健在だ。
そして同行戦になり、戦闘が開始され始める。

まず第一艦隊の皆さんが攻撃を始めていき、なんとか護衛棲姫以外は倒すことが出来た。
続いてあたし達の攻撃の番が回ってくる。
摩耶さんや鳥海さん、北上さん、綾波さんに雪風ちゃんが次々と攻撃していく。
それで本体を護衛している駆逐艦とかは殲滅できたのでそれで夜戦に突入できた。
あとはほぼ丸裸の状態の護衛棲姫だけを倒せば済む話なんだから決めます!
だけど私の雷撃はカスダメになってしまっていい所がなかったのは残念かも。
そしてやっぱりというか、当たり前というべきなのか北上さんが連撃を叩き込んで護衛棲姫を倒しちゃいました。
ううー…悔しい。

「阿武隈、あたしがやっぱり一番だねぇ」
「だからってあたしの前髪を一々弄らないでくださいよ~! もうやだー!」

やっぱり北上さんは意地悪です。
そんな事を思いながらも、提督へと連絡を入れる。

「提督? 護衛棲姫をなんとか倒しました」
『そうか。これで私達の前段作戦は終了だ。
また護衛棲姫が沸いてくる前に帰投してくれ。それは他の艦隊の仕事になるんだから』

そうなんですよねー。この世界ではまるでコピーされてるのかと思うくらい同じ個体が何度も出てくる。
それを各自の鎮守府の戦力が順番に倒していく感じだ。
だからあたし達が倒した護衛棲姫もそのたくさんいる内の一人に過ぎないのだ。
こんなんだからこちらが戦術的勝利を収めてもそれは一時しのぎにしかならないんですよね。
この全作戦が終わるまでは何度も深海棲艦は戦いを挑んでくるから厄介です。
…本当に深海棲艦ってどこで建造されているのか謎だらけです。

あ、それとは話は変わるんですけどあたし達が前段作戦は終了しましたから大本営から報酬として新しい艦娘さん。
たしか春日丸さんが合流するという話なんですよね。
だから楽しみー。


 
 

 
後書き
護衛棲姫を倒しました。

この世界での各鎮守府のやり取りなども記載しました。

淡々と書いていますが何度も倒すのに苦労しましたね。はい。
明日は一旦戦闘は終了して前段作戦で合流した艦娘とのやり取りを書こうかと…。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0031話『配属の春日丸』

 
前書き
更新します。 

 





私は春日丸………大本営で作戦を終えた提督のもとへと配属されるために数多く建造された艦娘、その一人だ。
だからというのもなんだけど、どういった提督に配属されるのかもまだ聞かされていないのが現状だ。
この世界で艦娘として顕現してからは先輩の大本営直轄の大淀さんにこの世界の提督の事を聞く。
話によれば提督は性格は千差万別…当然ですね。人間なんですから。
艦娘になる前の艦船だった頃の記憶でも色々な軍の人を見てきましたから分かります。

「いいですか春日丸さん。この世界の提督は基本は私達艦娘を大事に扱ってくれる人が大半です。
ですが中には深海棲艦に対しての恨み、憎しみに捕らわれて艦娘を深海棲艦を倒すだけの兵器としての運用もする提督もいると聞きます」

その大淀さんの話を聞いて少し怖くなりました。
もしそんな提督のもとへと行くことになったら艦船だった時代、ろくに活躍できなかった私は役立たずの烙印を押されてしまうかもしれない。
それで恐怖で体を抱きしめていた時でした。
大淀さんが安心した顔になって、

「ですが春日丸さん。安心してください」
「え?」
「あなたが配属される予定の鎮守府は少し特殊ですが提督は悪い人ではありませんから」

その大淀さんの言葉に少し戸惑う。
なんでそこまで言い切れるものなのかと。
それで話を聞いてみた。
その鎮守府の提督についての事を。

「ふふ、そうですね。できれば私もそんな羨ましい鎮守府に配属したいのですが、もうすでにそこには二人も私が配属されていますのでいけないんです。
あ、私の事はいいとしてですね、その鎮守府の提督と艦娘達は少し事情が異なっているんです」
「事情が異なる、ですか…?」
「はい。今でも大本営では扱いが困っているのですが、その提督はこことは違うこの世界に似た世界から鎮守府や艦娘達と一緒に転移してきた異世界人なのです」

異世界人…。
それを聞いて驚きました。
まさか異世界から来てしまった人たちがいるなんて。

「しかも驚きなのがですね。その提督は戦艦榛名にこの世界に来ると同時に憑依してしまったようで、今では戦える提督として期待されているんです」
「はぁ………」

異世界人のついでに艦娘に憑依…。
それだけ聞いただけでもうお腹が一杯になるような気分でした。
特殊という言葉が正しく当てはまりますね。

「ですから、そんな提督ですから当然艦娘達の事をこの世界では珍しく平等に扱い、そして平等に愛しているんですよ」
「そうなのですか…」
「はい。あちらの私に話を聞いた時はとても羨ましいと思いましたね」

そう言って大淀さんは笑みを浮かべていた。
おそらくそれが本心から来る笑みなのだろう事は分かった。

「…でしたら私も平等に扱ってくれるでしょうか…?」
「きっと大丈夫ですよ。だから気をしっかりと持って鎮守府に配属していってください」
「わかりました。春日丸、頑張らせていただきます」












そんな話を大淀さんとした翌日に私は大本営直轄の輸送車で厳重に警備されながらもその鎮守府へと連れて行ってもらいました。
少し時間が経過して車が到着したのだろう、止まったので降りてみるとそこには立派な建物が多く並ぶ鎮守府がありました。
ここに今日から私が配属されるのですね。
少し緊張しながらもゲートをくぐって鎮守府内へと入っていきます。

「それでは私達はこれで…どうかご武運を」
「ありがとうございました。頑張ります」

軍の人がそれで敬礼をしながらも鎮守府から遠ざかっていくのを確認した後に、これからどうやって執務室を探そうかと思ったところでした。
前方から少し背が小さいけど赤い和服に帽子を被っていて髪をツインテールにしている女の子が歩いてきました。
その方は私にはどこか懐かしい雰囲気を感じさせる人でした。
その人が私の前まで来ると、

「あんたが春日丸か…?」
「はい。私は春日丸です。それであなたは…?」
「わからんの? まぁええわ。でも久しぶりやな春日丸」
「えっ…?」

その女性の人は久しぶりと言った。
もしかして艦船の時代に縁があった方でしょうか。

「分からんのも無理はないわ。紹介やね。うちは龍驤や」
「龍驤さんですか!?」

それで私は嬉しくなって龍驤さんに抱き着いた。
龍驤さんはそれで驚きはしていたけど何度か背中をポンポンと叩いてくれて、

「第四航空戦隊以来やね。うちはすぐに沈んでしもうたけどキミも苦労したんやろ?
改装して名前も変わったらしいしな」
「はい…今は春日丸ですがこれから改装していけば大鷹という名前に変わると思います」
「そか…まぁええわ。それじゃともかく司令官のもとに案内したるわ。情報とかなんか聞いてるか?」
「はい。とてもいい人だと大淀さんに教わりました」
「ならええんわ。君の事もきっと大事にしてくれるよ。安心しいや」
「はい」

それで少し龍驤さんは嬉しそうに笑みを浮かべながらも執務室へと案内してくれました。
道中で色んな艦娘の人の姿が見えて、

「ここには多くの艦娘の方がいるのですね」
「まぁな。なんせうちは今現在大本営が発表している艦娘は全部揃っとるからな」
「すごい…でしたら翔鶴さんや他にも色々な方がいるんですか?」
「ああ、いるで。後で空母寮を案内する際に全員紹介したる。きっとみんなも喜ぶと思うよ」
「わかりました」

そして執務室へと案内されて、

「司令官! 新人が来たから案内してきたで!」
『わかった。入れてくれ』

中から女性の声が聞こえてきた。
それで龍驤さんに促されながらも中へと入る。
そこには優しそうな笑みを浮かべている人がいました。

「君が新しく配属される艦娘だね」
「はい。特設航空母艦の春日丸と申します。不束者ですが、勤めを果たしたいと思います」
「そうか。よろしく頼むよ、春日丸。もうあっちで聞いていると思うが私も今は艦娘だ。
だから平等に扱っていくと思う。だから不安とか感じることは無く安心してここで慣れていってくれ」
「わかりました」
「それじゃ龍驤。春日丸を空母寮へと案内してくれ」
「わかったで」

それで執務室を後にした私と龍驤さん。
空母寮に移動中に、

「な? あんな司令官だからうちやみんなも安心して戦闘ができるんや。
だからキミもここで活躍できるように強くなっていこうな」
「はい! 私にどこまでできるかわかりませんが頑張らせていただきます!」

そして空母寮へと到着して、そこで懐かしい人たちと再会できて嬉しい思いになりました。
これから頑張ってまいりましょう。

 
 

 
後書き
丸々春日丸でいれていました。
龍驤とは第四航空戦隊がらみで出してみました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0032話『大本営の意思』

 
前書き
更新します。 

 

大本営の幹部たちが部屋に集まってなにやら話し合いをしている。
それは今もっとも話題に上がるであろう異世界から来た提督とその艦娘達についての議論だ。

「それで、その提督の艦隊は前段作戦を突破したというのだね…?」
「うむ。それも艦娘一人も犠牲も出さずに、だ」
「そうか…その通っている名は榛名提督と言ったか? 彼女は期待できる人材なのかね…?」
「はい。なんでも現状我々では扱いが手に余る大和型を普通に運用できるほどには実力はあるようで…」
「むぅ…」

それで代表の人物が唸りを上げながらも、

「ならば榛名提督は現状は我が国に役立てる人材だと考えてもよいのだな?」
「はい。特に反骨心などと言った話はないようですから。それにこれをご覧ください」

とある役員は先日に柳葉提督が榛名提督達から受け取った艦娘練度表を今いる全員に渡す。
全員はその練度表を目にして驚きの表情を浮かべる。

「ばかなっ…現状今のこの世界の日本にある全鎮守府を入れても最高練度を誇る横須賀鎮守府にいる古参の艦娘である武勲艦の長門の練度を上回る艦娘だらけではないか…!」
「はい。榛名提督の艦娘は総じて練度が高いモノばかりなのです。まだ数十名の駆逐艦が練度は低いですがそれでも目を見張る者達ばかりです」
「なるほど…ならば前段作戦を軽く突破したのも頷けるというものだな」

それで代表は腕を組みながらも少し考えて、

「その榛名提督は現在は戦艦榛名に宿っているのだろう…?」
「はい。身体を共有しているという話です」
「つまり歳をとらない艦娘である榛名提督は轟沈しない限りはいつまでも提督としても、そして戦力としても期待できるほどであると考えてもよいのだな?」
「おそらくは…」

それで会議室の中にはどよめきが起こる。

「これは、いよいよをもってその榛名提督を厳重に保護を検討しないといけないかもしれないな。
有益な人材をむざむざと深海棲艦に倒されてはこちらとしてもなにかと都合が悪い。
なにせ、もう榛名提督の事は全国に知れ渡っているのだからな」
「そうですな」

それで大本営の幹部たちは情報伝達するのを早まったかという思いに駆られた。

「だがしかし、だからと言って提督業を手放せと命令をしたら簡単に応じるとは思えない。
最悪は艦娘達とともに反逆されても困る…。
だから今現状は使える手駒として考えていくのが普通なのだろうな…」
「はい。そうですが…現状の全国の提督達から見た榛名提督の評価をご存知ですか…?」

役員の言葉に代表は顔を顰めながらも、

「ああ、知っているよ。
なんでも無駄にプライドが高い提督達が榛名提督の事を疑った目で見てきたり妬んでいたりしているのだろう…?」
「はい。まだ信用も出来ないし背中を預けられないというのがほとんどの意見です」
「ふぅ…まったく困ったものだな。今は一つでも強い鎮守府が必要だというのに…。
勝手に内輪揉めを始めてしまったら深海棲艦はここぞという時に隙をついてくるぞ…?」
「はい。それで一つ考えがあるのですがよろしいですか、代表…?」
「なんだ? 言ってみたまえ」
「はい。榛名提督の事を信用してもらうためには今回の最終作戦では榛名提督自身が出撃するのもよいのではないでしょうか…?」

その役員の発言に代表は顔を顰めた。
当然だ。
今は艦娘として存在している榛名提督だがいざここでもし轟沈でもして鎮守府の運営がままならない事にまで至ったら残された艦娘達の牙の矛先は大本営の我々に向けられてしまうのだから。
だからその役員の発言を却下しようと思ったのだが、

「いいですか、代表。
ここで榛名提督が信用を得られなければいつまでも国が疑心暗鬼になってしまい運営がままならなくなっていまうのは必然です。
ならばここぞという場所で榛名提督の覚悟を見させてもらえれば他の提督達もおそらくは信用するでしょう」

その役員の言葉に代表は少し、いやかなり悩んでいるのは仕方がない事だ。
榛名提督は今は艦娘とはいえもとはただの人間だったのだ。
それでいざという時に人間という枠を超えた力を持ったからと言って深海棲艦と渡り合えるものなのかと…。
戦場に出て恐怖で棒立ちになってしまったらそれこそ信用など地に落ちてしまう。
しかし、逆転の発想ともいうべき今回の役員の提言は確かに効力を発揮すれば莫大な信用を足るに不足はない。

「…それは榛名提督には伝えるのかね?」
「伝えなければ話になりません。了承してくれるのを祈りましょう。国の存続のためにも」
「わかった…。至急柳葉大将に連絡を取って今回の話を榛名提督に伝えるように通達するのだ」
「了解しました」

それで役員たちは慌ただしく動き出し始める。
それを代表は静かに見守りながらも、

「(榛名提督…君には悪いが今回は君の覚悟を試させてもらうぞ)」

代表は心静かに榛名提督の無事を祈った。











大本営で話し合われた議題が柳葉大将へと伝わったのはそれからすぐの事だった。
贈られてきた電文を見て柳葉提督は思わず目を見開いた。
それで少し怒りを顕わにしながらも、しかし冷静に事を吟味して考えて、

「榛名提督が信用されるにはこれしかないというのか…やはり周りの目はきついものなのだろうな」

少しばかり落胆していた柳葉提督だったが、

「これを榛名提督に伝える任を儂に与えるとは、老骨を労わらないようだな。
だがそれも仕方あるまい。
まだ榛名提督はこれといって交友を持っているのは儂と久保少佐しかいないのだからな」

内心で柳葉提督は榛名提督の事を深く同情しながらもこの事を伝えるために電話を取った。













そして、その件を伝えられた榛名提督は、


「そうですか。分かりました…出来る限り尽力したいと思います」
『そうか。すまないな。儂の力が及ばずに…』
「いえ、柳葉大将が落ち込む事はありません。いずれは通らなければいけない道なのですから今回はいいテストケースなのでしょう」
『そう言ってもらえると心休まるが、大丈夫かね…? 榛名提督も思う所はあるのだろう』
「はい、まぁ。でも大本営が決めた方針に逆らうわけにはいきません。ならば後はやるだけです…」

そう言って私はある意味諦めの思いでその報告を受け止めた。
最後に柳葉大将は『無事に帰ってきなさい』と言って通話を終了した。

「提督…本気ですか?」

そこに話の内容を隣で聞いていた大淀が真剣な表情でそう聞いてきた。

「ああ。分かっていたさ。この作戦が始まってから向けられていた視線を払拭するには私が覚悟を見せないといけない事は」
「ですが、もし提督が轟沈されてしまったら残された私達はどうすれば…」

それで少し泣き顔になる大淀。
そんな大淀の頭に手を乗せながら、

「大丈夫…きっと帰ってくるよ。それに私は一人じゃない。みんながいる。
そして榛名も一緒になって戦ってくれる。それなら怖いモノなんてないさ」

そこに榛名が出て来て、

《はい。提督の事は榛名が必ずお守りします。たとえこの心が砕けようとも…》
「そんな悲しい事を言わないでくれ、榛名。みんなで無事に帰ってこよう」
《はい、提督…》

それで私は最終作戦で私自身が出撃することを決めたのだった。


 
 

 
後書き
いつもイベントでは最終作戦では榛名はいつも旗艦で出撃していますのでこの話を考え着きました。
大本営もちゃんと国の事や榛名提督の事を考えてくれる人たちです。はい。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0033話『占守島奪還作戦 -前編-』

 
前書き
更新します。 

 


前段作戦が終わって一息ついて翌日に春日丸がうちの鎮守府に配属された。
それで空母寮が賑わいを見せている次の日に柳葉大将から話された最終海域への私自身の出撃命令…。
大本営は私の為だと思っているのだろうけど、正直言って怖いの一言に尽きる。
でも、みんなが恐怖を押し殺して戦っているんだ。
だから私が後ろで指示だけ出していては示しがつかない。
提督という職は確かに艦娘に指示を出すだけのものになっているのかもしれない。
だけど同時に今は私自身が艦娘だ。
だから戦えるのなら一緒に戦いたいと思っている。
その話題は瞬く間に鎮守府中に広がったようで昨日は入れ替わりみんなが執務室に押しかけてくる光景が多かった。
みんなから感じられる感情は『心配』『不安』その他もろもろ…。
それをなんとか抑えるのに昨日は一日を使ってしまった。
みんなはなんとか私の言い分には従ってくれたけど納得はしていないと言ったところか。
当たり前のことだけど自分たちの主が自ら出撃すると言われれば、私が死んでしまうかもしれないという不安に駆られるのは当たり前だ。
そしてみんなが信用しているという自負を持っているのは私だけなのだ。
きっと私が死んでしまったら考えたくないけどみんなは解体を大本営に要求するだろう。
それほどにこの世界では私の存在は彼女達にとって大きいものだと思っている。
それでもんもんと難しい事を考えている時だった。

《…提督。眉間に皺が寄っていますよ?》
「榛名…。すまない」
《いえ、提督の事を考えれば仕方がありません。
大本営の命令とはいえ最終海域に出撃命令を出されるとは思いませんから》
「そうだな。それでみんなからも行かないでと昨日さんざん言われたけど、こればかりはどうしようもない事だ」
《はい。ですから艦娘代表として提督の身は私が必ず守ります。体の動きは私が指示しますのでご期待ください》
「ああ、頼む。私自身榛名の体を十二分に動かせる保証が今はないから榛名の補助があれば助かるというものだ」
《はい。榛名にお任せください》

それで二人で笑みを浮かべている時だった。
大淀が部屋に入ってきて、

「提督! 大本営から電文が届きました! 後段作戦が開始されたそうで現在占守島に敵陸上型深海棲艦が上陸をして占拠していると言います」
「そうか。だとすると陸上装備ができる艦娘を集めるとしようか」
「はい、わかりました」

それで私は艦娘早見表を開いてこの戦闘に適した艦娘を選別する。
しばらくして出す艦娘が決まったので執務室に呼ぶ事にした。
そして執務室に入ってきた艦娘達。

「提督よ。吾輩と筑摩を使うという事は陸上タイプの深海棲艦じゃな…?」
「利根姉さん、同時に制空権確保の役目もあると思いますよ」

まず入ってきたのが利根に筑摩の二人。
利根には旗艦を務めてもらう予定だ。

「ああ。利根には旗艦を務めてもらう。頼んだぞ」
「うむ! 吾輩に任せておけ! 見事役目を果たして見せるぞ!」
「もう…利根姉さんたら…提督、利根姉さんのお守りはこの筑摩にお任せください」
「ああ」

そして次は秋月。

「司令、この秋月にお任せください。長10cm砲ちゃんとともに敵艦載機を悉く落として見せます!」
「任せたぞ。今回の編成では秋月が唯一対空特化だからな」
「はい!」

そう言って秋月は私に敬礼をしてきた。
まだむず痒いものがあるな。敬礼ってものは…。

そして次は朝潮と荒潮の二人。

「司令官。この朝潮にお任せください!」
「うふふふ~。この荒潮に任せてねー」
「ああ。二人は特二式内火艇と大発動艇(八九式中戦車&陸戦隊) 、そしてWG42をそれぞれ交互に装備してくれ」
「わかりました! 荒潮? 突撃する際は呼吸を合わせていきますよ?」
「わかったわー」

よし、これで準備は整った。
そして最後になるのは今現在私の隣にいる大淀だ。

「大淀、いつも通り頼んだ」
「わかりました。いつも通り殲滅してきますね」

大淀はどこか楽しそうに装備するだろうWG42の二つ積みを予想してか笑っている。
ロケットお姉さんの異名が轟く時だな。

「この六名で占守島に拠点を構えている大本営のつけたコードネーム『北端上陸姫』を打倒してもらう」
「「「はい」」」
「道中は厳しいものがあるだろうと思うがボスまで行ければ後は圧倒的な火力で殲滅できるだろう。頼むぞ」

それで六人は出ていこうとするが、その前に行っておかないといけない事がある。

「あ、その前にそのエリアには『択捉(えとろふ)』という艦娘の魂が捕らわれているという…だからまずは彼女を救出してから北端上陸姫にとどめを刺してくれ」
「いつも通りじゃな、提督よ。ではまずは丙作戦か…?」
「ああ。本気を出しつつなるべく手加減してくれ」
「深海棲艦に手加減をするというのもなにか変なものだが、承知したぞ」
「すまないな。占守たちから彼女も救出してくれと頼まれているんでな」
「あいあい、わかったぞ」

利根はそれで笑みを浮かべながらも親指を立てて「行ってくる!」と言って出撃していった。










…まったく、提督も無茶な注文を吾輩達にしてくるものよの。
だが我々艦娘達を大事に思っているのだから願いにも応えたいという要望には全力で応えようと思う。
その為には、

「コリナイ………。コタチ……」

占守島に居座っている北端陸上姫には少々痛い目を味わってもらうぞ。

「筑摩! それに皆の衆! この利根に続け!」
「「「了解!」」」

それで吾輩と筑摩が制空権を確保しつつ秋月が艦載機を落として朝潮と荒潮、大淀がロケットを放って攻撃していく。

「クッ…イマイマシイ…」

それで北端上陸姫を倒す事十数回…。
すると何度目かの北端上陸姫が撤退をしたところで海面が発光しだす。
これがおそらくドロップ現象なのだな。

「助けてくれてありがとうございます。択捉型海防艦一番艦の択捉です。よろしくお願いします!」
「うむ! よろしく頼むぞ! しかし意外に今回は早く来るものなのだな」
「そうなのですか…?」
「うむ」

とりあえずこれで今回のドロップ艦は全員出揃った事になる。
これで最終海域まで本気を出せるというものだ。
それで一度鎮守府へと択捉を連れ帰って、それから作戦の難易度を上げていざ北端上陸姫にとどめを刺そうと思っていたのだが、

「あれ…? 利根姉さん、索敵が足りないみたいです…逸れてしまいましたね」
「なんじゃとッ!?」

丙作戦から乙作戦に上がった弊害で索敵不足になるとは…。
これは一度鎮守府に帰って装備の見直しじゃな…。



 
 

 
後書き
最後に利根姉さんにミスしてもらいました。
まさか難易度を上げたら逸れてしまうとは思いませんでした。
もうただの☆なし零観では索敵不足なんだな…。
零観を改修しないと…。

ちなみにE3は丙でやってしまいましたのでE4は乙でするしかなかったのです。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0034話『占守島奪還作戦 -後編-』

 
前書き
更新します。 

 



先日の占守島奪還作戦で丙作戦でやったら全部北端上陸姫へと向かったんだが…。
択捉を救出してこれでもう手加減はする必要はなくなった。
だけど、それで乙作戦に切り替えたら急に索敵不足で北端上陸姫のもとへとたどり着かなくなってしまった。
それで装備の点検を行うために明石のもとへとやってきていた。

「それで、明石。この編成で索敵不足で北端上陸姫のもとへと行かなくなってしまったんだけど…。
これはやはり零式水上観測機が改修が出来ていないための索敵の不足なのだろうか…?」
「そうですねぇ…多分そうだと思います。
利根さんには強風改と夜偵を積んでいて、筑摩さんには二式水戦改(熟練)と零式水上観測機を積んでいて逸れてしまったのなら改修不足が原因ですね」
「やっぱりか…しかしなぁ」

それで私は少し悩む。
今はもうネジが一個、二個くらいしかなく零観を回収できる余裕はないのだ。
だからどうしようかと悩んでいる時に、

「提督。ここは大淀にWG42の二つ持ちを諦めて紫雲を積んで出撃してもらったらどうですか…?」
「紫雲か。それを積めば確かに索敵は十分足りると思うがそれで北端上陸姫に与えるダメージが下がるのが問題だな」
「おそらく大丈夫だと思いますよ? 甲作戦ならまだしも乙作戦で挑むのですから時の運にもよりますがしっかりとダメージは通ると思います」
「そうか…? ならばその方針で行ってみるか」

それで私は大淀を工廠へと呼ぶ事にする。
しばらくして大淀が工廠へとやってくる。

「提督。なんでしょうか…?」
「ああ。詳しい説明は明石に聞いてもらうと思うが今回大淀の装備は主砲二基にWG42、そして紫雲を積んでもらう」
「索敵を補うための策ですね」
「ああ。その分多少攻撃力が下がってしまうが…いいか?」
「はい、大丈夫です。提督が決めた事なら従います」

大淀は曇りのない瞳で私にそう言ってきてくれた。
その心からの信頼が今は恥ずかしいが、しかし頼りにさせてもらおうか。

「よし。それでは大淀。至急この装備に換装して出撃準備に入ってくれ」
「わかりました。利根さん達にも換装が済み次第報告しますね」
「頼む」

それで大淀は明石に勧められながらも工廠の一区画にある改装室へと入っていった。
そして私は執務室へと戻る際に明石に話しかけられて、

「提督…? 分かっていると思いますがこの作戦が終わったら最終海域が解放されます。
それで提督は出撃することになりますが…」
「分かっている。だが今はその話は無しにしよう。今はこの作戦の成功が第一だからな」
「…わかりました。ですが提督には編成を行う際は必ず旗艦に入ってもらいますからね…?」
「うん、わかった。もし私が大破したらすぐに撤退できるようにする処置だろう…?」
「それもありますが、もう少し自身の事を労わってくださいね…?
例の話が出てからこの鎮守府の艦娘のほとんどは提督の事を心配しているんですから。
もちろん私もです。
ですから絶対に落ちないでくださいね…?」
「ああ、約束する」
「でしたらいいんですが…」

それでまだ明石がなにかを言いたそうにしていたが、私の覚悟ももう決まっているのもあってか、これ以上は追及はされなかった。
心配かけてすまないな、明石…。
必ず無事に全員帰ってこれるように頑張るとするよ。
心の中でそう思っている時だった。

「提督、改装が終わりました。大淀、いけます!」
「わかった。ではすぐにメンバーを集めて出撃してくれ」
「はい!」

それで大淀は出撃するために港へと向かっていった。













先日と同じ編成で、しかし私は紫雲を積んで多少攻撃力が落ちてしまっていますがそれでも戦力のかなめになります。
それを証明するためにこの戦い、必ず勝ちに行きます!
そんな提督の思いを形にするために私達は占守島エリアへと進んでいきました。
道中の敵深海棲艦を倒しながらも、先日逸れてしまった箇所へと到着しました。

「それでは大淀。吾輩達とともに索敵をするぞ?」
「はい、利根さん」

それで私は紫雲を飛ばす。
しばらくして索敵が完了したのか、

「利根姉さん! 索敵範囲内に北端上陸姫と随伴艦の深海棲艦群を発見!」
「よし! 索敵成功だな! いくぞ、皆の衆!」
「「「了解!」」」

利根さんの号令で私達は即座に単縦陣を組んで北端上陸姫へと攻撃を仕掛けていきました。
基地航空隊の攻撃、支援艦隊の攻撃が命中していき、まずは深海棲艦の護衛艦隊である取り巻きを沈める。
そして全部沈めた後に本体へと攻撃を仕掛けていく。

「ごめんなさい…。やられてしまったわぁ…」

そこに昼の状態で荒潮さんがル級の攻撃を受けて大破してしまい、夜戦の戦力が減ってしまった事に焦りを見せる皆さんですが、殿の私がまだほぼ無傷です。
ならばできないことはない!
あちらも残っているのは北端上陸姫とル級のみ。
ならば後はやるだけです!

「皆の者! 夜戦へと突入するぞ! これで決着をつけるのじゃ!」
「「「了解!」」」

そして夜戦へと突入していき、利根さんがまずル級を叩きました。

「ヤラレテバカリデハ、ナイヨ…ッ!」

しかし反撃ともいうべき北端上陸姫は筑摩さんへと攻撃を仕掛けます。
でも筑摩さんは奇跡的に小破ですんで、

「やります!」

筑摩さんの攻撃で北端上陸姫の動きが鈍りました。

「皆さん、今です! 総攻撃を!」
「はい! 秋月、やります!!」
「朝潮、吶喊します!」

秋月さんと朝潮さんの攻撃が連続して命中し、北端上陸姫はほとんどボロボロの状態です。

「大淀! 決めるのじゃ!!」
「はい!!」

私は今出せる渾身の力を込めて攻撃を放ちました。
それは見事北端上陸姫を貫きました。

「シズカ………シズカナ、ジダイデ、キット……」

北端上陸姫はそんな、少し物悲しいセリフを言いながらも沈んでいきました…。
攻略できたというのに少し悲しいですね。
…とにかくこれで攻略は完了しました。
速やかに帰投しましょう。
これから提督自身の戦いが待っているのですから…。


 
 

 
後書き
これでE4攻略完了です。
今回は大淀メインで書いてみました。


ちなみに今回の各艦娘達の装備をまだ攻略できていないかなと思う提督のために掲載しておきます。

利根 SKC34 20.3㎝連装砲×2、強風改、九八式水上偵察機(夜偵)
筑摩 SKC34 20.3㎝連装砲×2、零式水上観測機、二式水戦改(熟練)
秋月 10㎝連装高角砲+高射装置☆MAX×2、13号対空電探改
朝潮 特二式内火艇☆MAX、大発動艇(八九式中戦車&陸戦隊)☆6、WG42
荒潮 特二式内火艇☆MAX、大発動艇(八九式中戦車&陸戦隊)☆6、WG42
大淀 20.3㎝(3号)連装砲、15.2連装砲改☆MAX、紫雲、WG42


巷では空母三隻、利根筑摩、潜水艦編成が流行っているらしいですが私は王道で挑みました。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0035話『前哨戦、出撃する空母機動艦隊』

 
前書き
更新します。 

 



先日の北端上陸姫を倒したことで占守島の奪還を成功出来た。
だけど時を置かずして北方水鬼という深海棲艦がまた占守島をその手に収めようと戦艦棲姫とともにオホーツク海に進行しているという。
それで迎撃部隊を組む事になった。
まずは前線にいるという戦艦棲姫を倒すために私は空母機動部隊を組む事にした。
私が出撃するのは最後の戦い…北方水鬼の時だ。覚悟を決めないとな…。
それで執務室に入ってくるメンバー。

第一艦隊の旗艦は妙高。
そして大鳳、瑞鶴、翔鶴の装甲空母の三人。
高火力のザラ。
そして対空特化の摩耶だ。

第二艦隊の旗艦は阿武隈。
そして重巡の第五艦隊所属の那智、足柄。
対空特化の秋月。
雷巡の北上。
最後に雪風だ。

戦艦を入れた方がいいとも考えたがまだ様子見でこの編成で挑んでみて手ごたえを感じたのなら最後までこの編成で行こうと思っている。
第一艦隊旗艦の妙高が前に出て、

「空母機動部隊旗艦の妙高、以下私を合わせて十二名、参りました」

妙高が礼儀正しく敬礼をしてきたので「楽にしてくれ」と言って全員の肩に入っている力を抜くことにした。
それで妙高達は苦笑いを浮かべながらも普段通りになった。

「さて、それではまずはこの空母機動部隊で戦艦棲姫を倒してもらいたいと思っている」
「その事なんだけど…」

そこで瑞鶴が何かを言いたげな表情で手を上げた。
それで発言を許すと瑞鶴はそれで少し不安げな表情になり、

「提督さんが最後のボスに行くことは無いんじゃないかな…?」
「なんでだ…?」
「だって、確かに提督さん=榛名はこの鎮守府では高練度だけど、戦うのは榛名じゃなくてあくまで提督さんの腕なんでしょ…?」
「そうだな…」
「だったら! それに大本営が言ってきたのはあくまで最終海域への出撃なんだから最後のボスまで提督さんが行く必要はないよ!!
今からでも遅くないから妙高さんと変わって戦艦棲姫を倒すだけでいいじゃん!!」

瑞鶴の心からの心配が今はとても嬉しいものだ。
だけどな…大本営が望んでいる戦果はそんな中途半端なものじゃないんだと思う。
あくまで戦艦棲姫は前哨戦にしかならない。
それを知ってか知らずか今日の電文でこう言われてきた。
『甲作戦で敵本隊を提督の手で撃滅せよ!』と…。
その事をみんなに伝えたら瑞鶴は分かりやすく怒った表情になり、

「なにそれ!? 大本営は提督さんにむざむざ死んで来いっていう命令でもしているつもりなの!?」
「瑞鶴、落ち着いて…」
「でもさ、翔鶴姉…」

翔鶴がなお食い下がる瑞鶴を窘めている。
きっと翔鶴も辛い気持ちなのだろうけどそれを耐えているのだ。

「瑞鶴。君の気持ちはとても嬉しく思う。だけどもう私は覚悟を決めているんだ。
それに榛名も私の手助けをしてくれるというし怖いモノなんてないと思っている」
「そうなんだ…榛名、聞いているんでしょう? ちょっと出てきて」
《はい》

それで榛名が透明な姿で出てきた。

「提督さんは、私達の提督さんなんだよ。だから一緒になんか絶対に逝かせないんだからね…?」
《はい。私も絶対に提督を逝かせたりしません。だから瑞鶴さん、信じてください》
「そう…榛名がそう言うんだったらもう信じたかんね?」

それで瑞鶴は普段通りの人好きのするような笑みを浮かべた。
そして場は落ち着いたので話を再開しようと思う。

「それでは話を再開する。瑞鶴、翔鶴、大鳳は敵深海棲艦を艦載機で圧倒してくれ」
「わかったよ提督さん」
「わかりました提督」
「はい。この大鳳にお任せください」

それで空母の三人は頷く。

「そして摩耶は対空特化にしてあるので敵艦載機を第二艦隊の秋月とともに撃ち落としてくれ」
「おう! 任せろ! 防空巡洋艦の腕の見せ所だ」
「微小ながらもこの秋月にお任せください。いいわね? 長10cm砲ちゃん?」

摩耶が元気に頷いている横で秋月が長10cm砲ちゃんに呼びかけていて、長10cm砲ちゃんも砲塔を何度も動かして応えていた。

「そして妙高とザラが敵前線を高火力で屠ってくれ」
「わかりました。この妙高にお任せください」
「はい。ザラは粘り強さがモットーですから必ず食らいつきます!」

妙高とザラも礼儀正しく答えていた。

「最後に第二艦隊は夜戦でとどめを刺してくれ」

私の発言に那智と足柄がまるで戦闘に飢えているような笑みを浮かべて、

「任せろ。提督、貴様の期待には応えてやるさ」
「ええ。やっと出番が巡ってきたんだからきっちりこなしてみせるわ」

そう答えた。
次に阿武隈と北上が、

「阿武隈、期待に応えますね」
「北上さんも今回は本気でいかせてもらうね」

最後に雪風が、

「しれぇが安心して出撃できるように見事敵深海棲艦を叩いてみせます!」

みんなが答えてくれたのを確認して、

「よし。では出撃してくれ。いい報告を期待している」
「「「了解」」」

それで全員は出撃していった。











「提督…? 道中は特に小破したものはいませんがどうしますか…?」
『油断せずに進んでくれ』
「わかりました」

出撃していった後に、提督に指示を仰ぎながら私、妙高は旗艦を任されながらもとある事を考えていました。
提督は笑顔で私達を送り出してくれましたがその実、きっと怖がっているのだと。
瑞鶴さんの発言で執務室の中の空気は少し悪くなり、私はそれで提督の事をしばし見ていたのですが、提督は普段通りに私達に笑顔を向けてくれましたが、私は見逃しませんでした。
提督の手は少しばかり震えていたのです。
それを見て、「ああ、やはり…」という感想を持ちました。
当然です。
私達艦娘は第二次世界大戦時の記憶も持っていますから戦う事に関しては怖くはありません。
それは一度は沈んだ過去がありますから感覚が麻痺しているものなのかもしれない。
ですが提督は本来こんな血生臭い戦いとは無縁の生活をしてきました。
それなのに、神様はどんな罰を与えたのか提督に艦娘の力を与えるなんて…。
そして大本営も大本営です。
たとえ提督の事を思っての行動だとしても提督に最終海域に出撃せよという無茶な命令はさすがに看破できないものがあります。
それでもし提督が沈んでしまったら私でしたら身が引き裂かれるような思いでもうきっと耐えられません。

「妙高姉さん…? どうしたの?」
「足柄…」

そこに私の様子がおかしい事を感覚的に悟ったのか足柄が話しかけてきました。
いけませんね…。足柄に悟られるほどに私は動揺を隠しきれていないようです。

「なんでもありませんよ、足柄。
それより全艦に通達します。そろそろ戦艦棲姫のいるエリアに到着します。
各自武装のチェックを!」
「「「了解」」」

そして索敵が済んだのか目の前には戦艦棲姫の姿があります。

「ナンドデモ……シズメテ……アゲル…」

戦艦棲姫がその余裕をしている笑みを私達に向けてきます。
だけど今、私達は虫の居所が悪いです。
ですからそちらが向かってくるのでしたらお覚悟ください。
それで私は少し残酷な感情に身を任せながらも、

「皆さん、殲滅の用意を!」

私の言葉に全員は分かっているかのように各自艦載機や連装砲を構えて攻撃を開始します。
そう、所詮前哨戦の戦い。
ですから提督の手を少しでも煩わせないためにも戦艦棲姫…あなたにはここで消えてもらいます。
それから私達の一方的な攻撃が深海棲艦群を襲い、戦艦棲姫も最後には第二艦隊の総攻撃を受けてすぐさま撃沈しました。

「提督…? 戦艦棲姫の殲滅を確認しました」
『そうか…。だけど妙高、少しいいか?』
「はい。なんでしょうか?」
『君たちは確かに兵器だけど同時に人間と同じように心も持っている。
だからそんな心を殺した様な戦い方は今後一切しないでくれ…』

ッ!? 提督は私達の事を見透かしていたようです。
それで少し恥ずかしくなりながらも、

「わ、わかりました…気をつけます」
『それならいいんだ。皆にも伝えてくれ。決して怒りを発散するような戦い方はしないでくれと…』
「わかりました」

それで提督との通信を切った後、みんなにその事を伝えると、

「やっぱりしれぇはしれぇです! とっても私達の事を考えてくれています…!」

雪風さんのその言葉に私達はどれほど救われた事か。
ですが、提督。そんな優しい提督だからこそ私達はいつまでも提督の事を心配していますからね?
それだけは分かってくださいね…?


 
 

 
後書き
後半は妙高さんを主に書いてみました。
冷静そうながらも心のうちは怒っていますっていう感じですね。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0036話『提督の心の行方』

 
前書き
更新します。 

 



妙高達から戦艦棲姫を撃破したという知らせを受けて少しばかりホッとしたと同時に急になにか寒気を感じている自分がいた。
最終作戦の半分は成功したのに素直に喜べない自分がいる。
それもこれも大本営の命令が原因であるのは明らかな事で…。
確かに私が率先して出撃すれば他の鎮守府の提督達の向けてきている視線や疑惑などは払拭できるほどだろうとは思う。
だけど、私自身の事を少しは考えて考慮してほしかった。
まだ通常海域で戦果を上げてそれを証明にすればいいという軽いモノなら少しは楽にできそうだけど、今回は相手が相手だ。
私も本気でやる覚悟をしないとこちらがやられてしまうのは必須な事で…。
そんな時に限って私の頭によぎるのはどこか寂しい表情を浮かべる榛名の顔。
榛名は以前にある事を言っていた。
私が聞き出した事でもあるのだけど、

『なぁ、榛名。お前は出撃できなくて寂しくないか…? 辛くないか…?』

私のふとした言葉に榛名の表情は固まっていた。
それでしばらくして榛名は体を震わせて、

《辛いです…金剛お姉様や他にもたくさんの仲間の皆さんが出撃しているというのに…私はなにもできずにただ皆さんの無事を祈る事しかできないのが…悔しいです》

榛名の本音から来るセリフに私は鈍器で頭を叩かれたような衝撃を受けた。
当たり前だったのだ。
榛名はうちでは最高練度に近い艦娘だった。
そしていつも限定イベントでは最終海域で旗艦を務めるうちの切り札だった。
だけど謎の光によって異世界に飛ばされた私がどういう訳か異物として榛名の中に入り込んでしまった。
そして榛名自身はそれ以降は私に完全に身体の自由を譲り渡してくれて今では精神体のような存在になってしまい、私は榛名の身体を奪ってしまった…。
負い目がないといえば百パーセント嘘になる。
榛名を榛名以外の意思で戦えない身体にしてしまったのだから…。
悔しがっている榛名の事をその場で抱きしめてあげられない自分が憎らしくもあった。

だからという訳ではないけど私は前からある事を考えていた。
榛名が戦えないのなら、榛名が役立てるように私自らが戦場に出るという事を…。
実際この世界に転移してきた時に妖精さんの助けもあったけど下級の深海棲艦とはなんとか戦えた。
だからって訳でもないけど自信がついたわけでもない。
そこまで過信しているわけもない。
私はあくまで中身はただの人間でしかないのだから。
榛名の練度は榛名自身のもので私が扱えるものではない。
せいぜい私が榛名の身体で戦闘をするものなら半分の力量も出せないだろう。
だから私が戦場に出れば役立たずになってしまうかもしれない。
だけど、それでも私は少しでも戦えるのならみんなと一緒に戦いたいと思っている。
だから今回の大本営の命令は願ったり叶ったりだったのかもしれない。
大本営自身は電文でこう言ってくれた。

『榛名提督…。君にはつらい戦いを強いると思う。
我々も君に無茶な注文を押し付けていると思っている。
だが、この世界の提督達の視線までは我々だけではすべて管理できない。
力不足を痛感させてもらったよ。
しかし、もし榛名提督がこの作戦を無事乗り切れたら我々も君に対しての疑惑の数々を払拭できるように尽力しよう。
君の努力が実を結ぶように提督達を説得して回る。
ふがいない我々だが君の、君達の勝利を祈っている。頑張ってくれ』

という内容が送られてきた時は少しばかり目頭が熱くなったのを感じた。
大本営にここまで言われてしまっては私ももう引き下がれないという思いを実感できた。
この内容を知っているのは電文を確認している大淀と私、そして榛名だけだ。
みんなにはこの作戦が終わったらこの内容を公開しようと思っている。
それで全員が大本営に感じているだろうしこりを取り除くことは全部は出来ないだろうけど、大本営の人達も人間だ。
だから手を出せる範囲も限られてくるのは仕方がない事だ。
だから話は戻ってくるけど私は戦う覚悟を決めた。



それで最終作戦の編成を発表する前に私はとある艦娘を執務室へと呼んだ。
彼女はしばらくして執務室へと顔を出してきた。
そこにはビッグ7の一角である長門の姿があった。

「提督よ。私だけを執務室に呼ぶのはなにか大事な用事か…?」
「ああ。長門、私が出撃している間だが提督代理としてこの鎮守府を管理してもらっていいか…?」
「わ、私がか…? しかし…」

そこで長門の表情は困惑に彩られる。

「わかっている。長門の気持ちも理解していると思うがあえて言わせてくれ。
もし私がいない間にこの鎮守府が襲撃にあう事があったら、いの一番に頼りになるのは連合艦隊旗艦の経験がある長門だけなんだ」
「……………」

それで長門は真剣な表情で無言で私の話を聞いてくれていた。
今はありがたいという思いを抱きながらも、

「だから頼りにさせてもらってもいいか…? こんな事を頼めるのは私の中で長門しか思いつかなかったんだ」

それで長門はしばらく黙り込んでいた後に、

「…わかった。提督よ、この長門に任せてくれ。鎮守府の守りはこの長門が引き受けた」
「頼んだぞ。私もきっと無事に帰ってくることを約束しよう」
「分かっているさ。提督ならみんなを悲しませることはしない人だと理解している。だから…榛名」

長門が榛名を呼んだ。
それで榛名が透明な姿で出てくる。

《はい。なんでしょうか、長門さん?》
「言いたいことは分かっているのだろう…? 提督の事は必ずお前が守るんだ」
《分かっています。そして提督を守るのは私だけではありません。妖精さん…?》

榛名が榛名の艤装に宿っている妖精さんを呼んだ。
すると机の上に妖精さんが実体化して、

《妖精さん。私とあなたで提督を守りましょう。私がカバーできない部分はお願いします》
【わかりました。お任せください。
この世界で一番提督との付き合いが長いのは私なんですよ?
ですから艤装の扱いは私がきっと補助します】

そう言って妖精さんも胸を叩いて私を手助けしてくれることを約束してくれた。

「頼もしいな…。普段、私達は無意識に妖精さんと意識を共有しているが、姿を現して尚且つ表立って協力はした事がない」

長門のそのセリフを聞いて驚いた。
妖精さんって普段から艦娘のみんなには見えているものではないのかと。
だけど、考えてみればそうだな。
艦娘と艤装は一心同体だ。
だから無意識化で艤装を操作できるのだろうと。
妖精さんが私の時は表立って出てきたのは私が頼りない証だ。
だから榛名と妖精さんには最大限手伝ってもらおう。

「ありがとうな。榛名、妖精さん…」
《いえ。提督を守るためならなんでもします!》
【はい。最大限力になります】

二人の返事に私は勇気が湧いてくる感覚をしだしていた。
今ならできない事などないんじゃないかという錯覚さえ感じる。

「…わかった。それでは最終作戦のために皆を執務室に呼ぼうか」
「ああ。鎮守府はこの長門に任せておけ。だから提督、派手に暴れてこい」
《榛名も頑張ります!》
【やってやりましょう】

三人の声を聞きながらも私は受話器を取るのであった。

 
 

 
後書き
今回は提督の内情と大本営の謝罪の意を書いてみました。
これで後は最終海域に出撃するだけです。

ちなみに長門は支援艦隊にいたのですが話の都合上、提督代理を務めてもらう事にしました。
他に務められる艦娘が思いつきませんでした…。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0037話『北方水姫討伐編成と油断』

 
前書き
更新します。 

 


長門に一時的に鎮守府の権利を譲り渡すことによって私と榛名は北方水姫討伐編成へと組み込まれることになる。
そして執務室にその編成のための艦娘達が集結する。

第二艦隊の旗艦は相変わらず阿武隈に務めてもらう事にしてある。
そして那智、木曾、北上、霞、そして最後に今回初めてこの作戦に使うヴェールヌイを入れた。

そして第一艦隊の編成の旗艦は私。
そこに大和、武蔵、アイオワの超パワー持ちの三名を入れる。
最後に千歳、千代田を入れる。

この二隊を組んで水上打撃部隊を組んでもらう。
まさに決戦部隊だ。

「提督…この大和と武蔵をイベントで初めて使ってくださるのですね。この大和、精一杯頑張らせていただきます」
「そうだな大和。私もイベントでは初舞台だ。気分が舞い上がってきたぞ」

大和と武蔵が初めて暴れられるのか喜んでいるように見える。
ごめんなぁ。いつも出すまでもなくて…。

「司令官…。どうして今回は私を使用するんだい?」
「うん。その事なんだけどきっとヴェールヌイには特攻がついていると思うんだ」

ヴェールヌイの発言に私はそう返す。
根拠はあるわけじゃないけど今回のボスは…、北方水姫はおそらく最後の報酬艦であるГангут(ガングート)に縁がある深海棲艦なんだと思う。
それでもしかしたらロシア艦として活躍したヴェールヌイにもあの長門達が活躍したクロスロード組による超火力のような事があるのかもしれないから。

「そうか…。わかった」

それで納得をしたわけじゃないんだろうけどヴェールヌイはそれで素直に言うことを聞いてくれた。

「Oh, yeah! アドミラル、私に任せておきなさい! しっかりと守ってあげるからネ!」

アイオワがそう言って強気の笑みを浮かべて私の手を握ってくれた。
握った瞬間にアイオワは少し驚いた顔をしながらも、

「やっぱりネ…。アドミラルの手はとても今力が入ってイマス。緊張しているのネ…」
「気付いたか…抜けているようでやっぱり目利きがいいな、アイオワは」
「Oh, yes! アドミラルの事ならなんとなく分かるワ。だって私達のアドミラルなんだからネ」

そのアイオワの発言に続くようにみんなが口々に私の事を守ると言ってくれているのでありがたいと思いながらも、

「さて、ありがとうみんな。それじゃこの編成で最後の敵…北方水姫を倒しに行こう。
足手まといになるかもしれないけど私も頑張らせてもらうよ」
「「「了解」」」

それで長門に鎮守府の守りを任せて私達は戦場へと向かって出撃した。












…オホーツク海に近づいていく内に分かった事なんだけど、分かっていたとはいえ、

「なんだろう…。やっぱり海が赤く染まっているんだな」

真っ赤な海にはさすがに驚きを隠せない私がその場にいた。
そこに阿武隈が近寄ってきて、

「提督は赤く染まった海は初めて見るんでしたね。
そうです。海が赤いという事は今は深海棲艦が海を荒らしているという証なんです」
「そうなのか…」

海の上を滑りながらも阿武隈の言った内容に少し考えさせられる。
通常海域も深部に至っては赤く染まっている。
そこにはかならずなにかしらの鬼、姫級の深海棲艦が根城を構えている。
それを倒すのが私達提督と艦娘の役目…。
だけど、

「分かっているとはいえ深海棲艦とは分かり合えないものなのかな…」
「しょうがないですよ。艦娘と人類…そして深海棲艦は今までずっと倒す倒されるを繰り返してきたんですから。
戦争と割り切るのも悲しいですが、人類が生き抜くためには深海棲艦を倒さないといけないんです」

阿武隈のそのドライな発言に、だけど私は無理やり納得するしかなかった。
こちらが説得をしようとしても深海棲艦は問答無用で襲い掛かってくるんだから。
そこに北上が割り込んできて、

「まー提督気楽に行こうよ。この世界で戦っていくっていうのはつまりそう言う事なんだから、今からそんなに気を張りつめていると先が持たないよ…?」
「そうだな…」

北上の言う事は確かな事だ。
今、迷いを起こしても結局は作戦を成功させるためには深海棲艦を倒さないといけない。
いい加減覚悟を決めて挑まないと足元をすくわれてしまいかねない。

「わかった。私も覚悟を決めよう」
《提督…。辛かったらすぐに言ってくださいね? 榛名、役立ちますから》
「ありがとう、榛名。もう大丈夫だ」

っと、そこに索敵を出していた千歳が近づいてきて、

「提督? そろそろ作戦海域に近づきます。潜水艦には気を付けてくださいね?」
「わかった」

今回はもう出し惜しみもしないで挑んである。
道中支援艦隊と決戦支援艦隊も出してあるし、基地航空隊も万全で今頃出番が来るまで待機しているだろう。
後は戦うだけだ。
そこに第二艦隊からソナーの知らせがあったらしく霞が声を上げる。

「司令官! 潜水艦よ! 陣形を決めて!!」
「わかった。全艦、第一警戒航行序列で挑んでくれ」
「「「了解!」」」

それで戦いの火蓋は切って落とされたのだった。









それからなんとか潜水艦の攻撃を切り抜けてみんなはダメージもほとんどなく戦闘を終えられた。
潜水艦の深海棲艦の私達を倒しきれずに虚しい声が聞こえてくるようで嫌な感じだった。
やっぱり水上打撃部隊だと潜水艦の攻撃にはめっぽう弱いからなんとか全員避けてくれるのを祈るばかりだからな。
それから続いて空襲戦が起こったがそれも対空機銃関連と千歳、千代田が頑張ってくれて切り抜けられた。
そして、

「提督! 敵深海棲艦のお出ましだ! いくぞ!!」
「わかった! 全艦、第四警戒航行序列で陣形を組んで迎え撃つぞ!」

そして敵深海棲艦の部隊と交戦を始める。
そんな事を繰り返しながらもなんとか初の試みで北方水姫がいるであろうエリアまで迫ってきていた。

「…提督。この先にボスがいます。お覚悟を…」
「分かっているさ、大和。全艦、第四警戒航行序列の陣形で挑むぞ!」
「「「了解」」」

そしてついに邂逅する北方水姫。

「コノワタシト…ヤルトイフノカ………! オモシロヒ!」

そこには少し目のやり場に困る格好をしている北方水姫の姿があった。
それでも裏腹に伝わってくる威圧感が私の肌をビリビリと撫でる。
これが姫の威厳か…ッ!

《提督…あまり見つめすぎないでくださいね?》
「わ、わかっている…」

榛名に少しジト目でそう言われながらも、私達は戦闘に突入する。

「戦艦大和! 押してまいる!!」
「いくぞぉ! 武蔵、突撃だ!!」
「さぁ、私の火力見せてあげるわ…Open fire!」

戦艦三人が次々と深海棲艦にダメージを与えていく中、

「(大丈夫だ…ここまで来たんだからもう後戻りはできない…)」

胸の動悸を必死に抑えながらも、

「榛名、妖精さん…やるぞ!」
《はい! 提督のお役に立ちます!》
【やりましょうか】

それで私は全砲塔を構えて砲撃をした。
それは重巡を沈めたようで「やった!」とガッツポーズをした次の瞬間だった。
誰かの「提督ッ!」という叫ぶ声が聞こえてきたのは、

「えっ…?」

気付けば目の前に砲弾が迫ってきていたのだ。
それは重巡に攻撃をして一度目を離した瞬間に北方水姫が私に向けて放ったものだった。

「嘘……」
《提督! 避けてください!!》

榛名の叫ぶ声が聞こえてくるが時遅く私は直撃を食らってしまった…。

 
 

 
後書き
最後に不穏な終わり方をしました。
次回に続きます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0038話『説教と倒しきれない敵』

 
前書き
更新します。 

 


…いや、先日は情けない姿を見せたなぁ。
北方水姫の直撃を受けた私は速攻大破してしまい、そのまま激痛にのたうち回りたい感情が…。
しかし榛名の姿でそんな無様な事をしたくないというまさに強烈な感情でなんとか押しとどまった。
そして、なんとか『私に構わず攻撃続行だ!』と指示出来たところは褒めてほしい。
そして第二艦隊の面々が夜戦へと突入していくのを見届けたのを皮切りに私はついに意識を手放した…。

そして次に意識を取り戻したのは入渠ドッグに強制的に入れられている時だった。
…いや~、参った。
みんなが入れ替わり立ち代わり私のとこへとやってくるのでまだ痛む身体を、しかしそれを大丈夫だとなんとか堪えて一息ついていた。
だけどそれから榛名が顔を出してきた。
その顔は泣き顔に彩られていた。

《提督!! どうして大破した後も痛むのを我慢していたのですか!?》
「どうしてって…そりゃ榛名の姿で無様を見せるわけにはいかなかっただろう…?」
《いいんです! 無様でもなんでも素直に提督の感情を出してもいいんです!!》
「しかし…」
《誰だって痛いものは痛いんです! 私だって初めてこの体で大破した時には涙を流しました!
だから提督も弱みを見せてもいいんです! そうじゃないと提督の事を守れなかった私が、馬鹿じゃないですか…》

そう言って榛名は涙をぽたぽたと流しだしている。
ああ…まただ。
泣いている榛名を抱きしめてあげられない自身が情けない。
榛名の事を悲しませたくないために私自らが出撃したのにこうして榛名を悲しませているなんて、なんて矛盾だ…。
私は私を殴りたくなってくる…。
なんでこんな時に限って榛名に触れることが出来ないのか…。
それで私はどうやって榛名の事を慰めようかと思った矢先に隣のドッグにいた人が話しかけてきた。

「はっはっは! 榛名、提督の見栄というものもわかってやらないか」

そこには私と同じく大破か中破をしたのだろう武蔵がゆっくりと入渠ドッグに浸かりながらも寛いでいる姿があった。

「武蔵…お前も大破していたのか…?」
「ああ。攻撃を仕切った後に残っていた戦艦棲姫に手痛い一撃を食らってしまってな…」
「そうか…。あ、戦局はどうなったんだ? 夜戦に入ったのを朦朧とした意識の中でかろうじて見届けたんだけど…」
「その件か…。なんとかA勝利はもぎ取れたという話さ」
「そうか…それならよかった」
「…さて、榛名。少しいいか…?」
《…はい、なんでしょうか武蔵さん…?》

そこで武蔵が少し目を細めて張りつめた空気になりながらも、

「提督はな。好きなお前の前でだらしない姿を見せたくないんだよ…。
今はもう女性になってしまっているがな。
その宿っている魂は男性のままだ。
だから格好悪くてもいい…男の子の意地って奴を提督は見せたんだ」
《男の子の意地、ですか…?》
「そうだ。私だってこうして直撃を受けたし身体が痛むさ。
それでも今までの経験で痛覚を誤魔化して戦ってこれている。
しかし、提督は今回初めて死ぬかもしれない一撃を受けたんだ。
普通なら耐えられるものではないさ。
だけど榛名にダメなところを見せたくないという男の意地が提督の精神を上回ったんだろうさ」

さすが私の見込んだ男だ、武蔵はそう言ってニヒルに笑みを浮かべていた。
その姿に格好いいなという感想を私は抱いた。
普段から男勝りなところがある武蔵だ。
それが口を開けばさらに格好いいとは反則だな。
それに人が隠していた恥ずかしい事を普通に話してくれるんだから敵わん。

《…ですが、榛名はそれでも提督には痛いときには痛い、悲しい時には悲しいって言ってもらいたいです》
「そうか。そこら辺はまぁ気持ちの問題なんだろうな」

それで武蔵は榛名に向けていた視線を私の方へと向けてきて、

「…だそうだ。提督、あまり榛名の事を悲しませてあげるなよ?
ただでさえ提督の負傷に鎮守府の奴らは大なり小なり揺さぶられたんだからな」
「わかっている…今後、こう言った事は起こさないとは言えないけど気を付けるよ」
「ならいいんだ。さて、それではそろそろ高速修復材を使うとしようか。
提督が目を覚ますまでこうしてくつろがせてもらったがもういいだろう。
提督もまだ本日の攻略は諦めていないのだろう…?」
「もちろんだ」

それで高速修復材を投入するためのボタンを押す。
そして流れてくる高速修復材を浴びて痛みが引いてくるのを確認しながらも、

「よし!」

それで榛名の衣装へと身に包み、

「いくとしようか、武蔵」
「ああ。気合を入れていくとしようか!」
《提督! 今度は我慢しないでいいんですからね!?》
「わかってるさ」

それで一度執務室に寄って中にいる長門と大淀に今回の出撃報告を伝えた後、

「提督よ。こう何度も言いたくはないが気を付けるのだぞ」
「長門さんのいう通りです。なるべく喰らわないようにしてくださいね?」
「わかった。頑張ってみる」

長門と大淀に小言を貰った後に私達はもう一度出撃していった。










それから何度か潜水艦にやられる事二、三回で疲労が溜まったり、空襲で誰かが大破したりとさんざんな結果が続いたがそれでも諦めずに挑み続けた。
そして何度目かになる戦いで北方水姫と戦い航空基地隊と支援艦隊の攻撃がうまく決まって戦艦棲姫や駆逐古姫を運よく倒すことが出来てうまく戦闘が運ぶことができて一度はS勝利をもぎ取ることが出来た。
それでドロップ運がよかったのかリットリオが救出できたのは思わぬ収穫だった。
もううちには一人いるが、それでもこれから戦力になってくれるだろう期待ができるからよかった。
そして感覚的に次はおそらくラストダンスだろうと思ったのか、

「司令官! 多分だけど次が最後の決戦よ! 気張んなさい!」
「ああ、わかっている!」

霞にそう言われて私達はラストダンスへと挑んでいった。

「フッ…ソレデ…カッタツモリカ……ッ!……ショウシッ!!」

そこには目が赤く光っていておそらく本気を出している北方水姫の姿がありさらには今まで一人であった戦艦棲姫が二体いるといった光景が映りこんだ。
随伴艦も多少変化していて強力になっているには明らかな事だ。
それで戦闘を開始する私達。

「ヤラレルモノカヨ…ッ!!」

北方水姫が何度も叫んで反撃をしてくる。
私達も負けないように何度も反撃をして、そしてほぼ万全な状態で夜戦へと突入しそれを見守る。

「阿武隈にお任せください!」
「那智に任せろ!」
「お前らの指揮官は無能だな!」
「40門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと」

阿武隈と那智、木曾に北上が攻撃をしておそらくあと少しで北方水姫を撃沈できるとこまで来たんだけど、霞とヴェールヌイの攻撃がカットインが発動せずにカスダメで終わってしまってそれで戦闘は終了してしまった。
それで霞とヴェールヌイは悔しそうにその目尻に涙を浮かべて、

「すまない…撃ち損ねてしまった」
「司令官、ごめんなさい…」

私はそんな顔を俯かせて落ち込んでいる二人の頭に手を置いて、

「なに、気にするな。まだ次があるさ。次で頑張ればいい」
「「うん…」」

そう言って私達は悔しさを滲ませながらも鎮守府へと帰投するのであった。


 
 

 
後書き
初めてのラストダンスは霞とヴェールヌイの不発で倒しきれませんでした。
おしいところまでいったんですけどね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0039話『北方水姫の打倒』

 
前書き
更新します。 

 

あれから一度鎮守府へと帰ってきて、私達は一度緊急会議を行った。
メンバーは北方水姫を倒すために向かった艦娘に大淀と言った感じだ。

「それでは会議を始めます」

大淀がそう言って場にいる艦娘全員に顔を向けた。
そしてスクリーンに映し出される北方水姫。
それを見て霞とヴェールヌイが思わず悔しそうに顔を歪めたのを私は見逃さなかった。
やっぱりラストを決められなかったのが悔しいんだろうな。
私は私で必死に攻撃と回避を榛名と妖精さんの指示でもってしているから気を回せる余裕なんてなかったし。

「まず今回の議題はいかに北方水姫を討伐するかです」
「その件だが…我々は甲作戦は今回が初めての試みだ」

そう言って武蔵が手を上げて発言した。
そう。今まで甲作戦でラストをやったことがない私達鎮守府は今まさに壁に立ち向かっているという状況だ。
そもそも私が今まで腑抜けだったのが悪いんだけど、最終海域では丙作戦に甘んじていたから北方水姫に加えて戦艦棲姫が二体も随伴艦にいるという経験は今回が初めてなのだ。

「そうですね。そこら辺はこれからの提督の手腕にもかかってきますがまずは今回の件を乗り切ることに集中しましょう。
北方水姫の体力はほぼ削りきっているという状況です。ですから後一回でも倒すことができれば私達の勝利は確定します。
それでですが、今回の敗因は何だと思いますか…?」

うわっ…。大淀もずばっと切り込んでくるな。
そんな事を聞けばすぐに反応が返ってくるのは当たり前な事で、

「私、ヴェールヌイと…」
「あたし、霞がカットインを発動できなかった事よね…?」

二人とも分かっているようで特に顔には出さないがそれでも拳が握りこまれているのだから悔しいのは分かる。
それに大淀も一回間を挟んだ後に、

「はい。お二人の攻撃が決まっていればおそらく北方水姫は倒すことが出来たのでしょうね」

と本当の事を言う。
そこには事実しか存在せずに誰も口を挟めないのは明白だ。
だけどそれで士気が下がってしまってはまずい。
私はそう思って手を上げた。

「はい、なんでしょうか提督…?」
「うん。まぁ本当なのは確かなんだけど二人も悔しがっているからまるで叱るような状態にはしないでくれ」

私の発言で一旦場は静かになった。
だけどすぐに霞のクスリと笑う声が聞こえてきた。

「司令官…庇ってくれてありがとう。でも私もヴェールヌイも気にしてはいないんわ。だって本当の事なんだから」
「そうさ。だからあまり司令官も気を病まないでくれ」
「そうか…?」

それで私は内心で強い子たちだな…と思って「邪魔したな。続けてくれ」と言って促した。

「はい。それでカットイン対策として霞さんとヴェールヌイさんには熟練見張り員を装備してもらいたいと思います」
「やっぱりね…」
「うん。それなら心強い」

霞とヴェールヌイは言われることが予想ついていたらしく反論はないらしい。
確かに私もカットインを発動するには専用の装備をさせようと考える。
そこで那智が手を上げて、

「では、私は電探の代わりに探照灯を装備しよう。千歳に千代田もいるのだから索敵は足りていると思うからな」
「いいのですか…?」
「ああ。第二艦隊で唯一四つスロットを持っているのは私だけだからな。
もしくは私を外してビスマルクにして夜戦の火力をアップさせるのも一つの手だが…」
「いや、今回は那智のままでいかせてもらうよ。那智も勝ちたいだろう?」

私の発言に那智はニヤリと笑い、

「ああ、そうだな。だろう? みんな?」

那智はそう言ってまだ発言していない他のみんなの顔を見渡した。
それでまず木曾が声を上げる。

「そうだな。提督、お前に最高の勝利を与えてやる」
「この北上様に任せておいてよ」
「阿武隈も一生懸命頑張りますね!」

木曾に北上と阿武隈も続く。こういう時はやっぱり仲がいいよな。
さらに、

「はい。このまま引き下がるわけには参りません。折角の舞台なのですから派手に勝ちましょう!」
「ああ。ここで引き下がったら弩級戦艦の名が廃るからな」

大和と武蔵が気合を込めてそう言葉を発した。

「イエス! このアイオワに期待していてね、アドミラル」
「千歳お姉、頑張ろう!」
「はい。この千歳、提督に勝利をプレゼントします」

残りの三人も意気揚々だ。

「霞、ヴェールヌイ…私達も頑張るとしようか」
「ああ。必ず勝とう」
「分かってるってば! 勝てばいいのよ!」

それで編成は変えず、されど装備は多少変更して私達は再度北方水姫へと挑むことにしたのだった。










それから何度か北方水姫を後少しという所でとどめを刺せない事が続いたが、

「今度こそ…! 今度こそ倒すんだ!!」
「「「了解!」」」

私の掛け声で今度こそはという気持ちで北方水姫へと挑んでいく私達。
道中でアイオワが中破してしまっていたが「まだいけるわ!」と言っているので戦いに挑んでいった。
そして始まる戦い。
基地航空隊の攻撃が次々と敵艦隊へと命中していく。
するとなんと戦艦棲姫一体に攻撃が集中し始めて基地航空隊の攻撃が終わった時には戦艦棲姫一体が沈んでいた。
さらに支援艦隊で攻撃して敵前衛艦隊もさすがの駆逐古姫は残っているものの三体沈めていた。

「この好機! 逃すわけにはいかない! やるぞ!!」
「「「はい」」」

そして始まる艦隊戦。
北方水姫残ったもう一体の戦艦棲姫の攻撃で千歳と千代田の二人が中、大破をしてしまったが、だけどよくここまで頑張って制空を支えてくれたと感謝しながらも攻撃をしていった。
そして昼の攻撃が終わる頃には残っている敵は前衛艦隊は駆逐古姫、そして戦艦棲姫に北方水姫だけという形になった。
駆逐古姫を倒しきれなかったのが悔しいが、だけどこれで安心して夜戦に突入できる。

「頼んだぞ!」

私の声に第二艦隊の面々が親指を立てながらも笑みを浮かべて夜戦へと突入していった。
そして次々とみんなの攻撃が戦艦棲姫というダイソンを無視して北方水姫へと入っていく。
途中で北方水姫がヴェールヌイを大破させてしまったが、

「まだあたしが残ってるんだから! 沈みなさい!!」

そしてここぞという時に発動した霞の魚雷カットインが北方水姫へと突き刺さってついに北方水姫は爆発をしてとどめを刺せたのだろう。

「………嘘ダ。………コノワタシガ…。モウ冷タイトコロハイヤ……アタタカイ世界ヘ、戻リ、タイ………」

…いつも聞くけど深海棲艦の言葉は倒したのに素直に喜べないものがあるな…。
でもまだ続きがあるようで、

「………ア、アタタカイ………ワタシ、ワタシタチ……帰ッテモ、イイノ……? アリガトウ……」

最後に北方水姫は私達なのかそれとも他の誰かに対してなのかわからないけど感謝の言葉を残して光となって消えてしまった…。
そして他の深海棲艦もその場から消え去って次第に海が青く、そうまるで溶けていくように赤い海が青の海へと戻っていく。

「勝った、のか…?」
《はい! 提督、私達の勝利です!!》

未だに実感できない私の呟きに榛名が出てきて私に抱きついてきた。
精神体だというのに榛名の方からは一方的に私に抱き着けるのは羨ましいと思う。
とにかく、私は霞に近寄っていき、

「司令官…あたし、やったわ!」
「ああ。霞、君が今回のMVPだ」

そう言って私は霞を両手で持ち上げて勝利を祝ったのだった。

「あっ…調子にのり過ぎよ! 下ろしなさいったら! このクズ!」

最後に照れ顔の霞にそう言われてしまらない終わり方をしたが…。



 
 

 
後書き
最後に霞の魚雷CIが北方水姫に突き刺さってA勝利ながらも勝つことが出来ました。
やっぱ駆逐古姫がやっかいだねぇ…。しぶとく残るからS勝利ができないです。

とにかく初の甲種勲章をゲットできました。よかったよかった。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0040話『ガングート着任と提督達の思惑』

 
前書き
更新します。 

 




北方水姫を撃破した事で大本営から甲種勲章とその他もろもろが一気に贈られてきた。
それに少しばかり戸惑っているという所にもうすぐガングートがこの鎮守府にやってくるという事で他の海外艦やロシアと縁のあるヴェールヌイなどといった艦娘達がいまかいまかとやってくるのを待っている。
私は私で長門に任せておいた分も含めての今回の作戦での報告書を大淀とともに作成している。
もうこれって一日で終わる量じゃないでしょう。
まじ提督を本業にしている人は偉いなぁと感心する事何度も。
この世界の提督はこの作業を普通にやってしまうんだから今まで事務仕事と言った仕事をしたことが少ない私にはつらいものがあった。
この作戦で使った資材などや出撃履歴などまとめていくとキリがない。

「提督。頑張ってください。私達も手伝いますから」
「ありがとうな大淀」
「いえ、提督は事務作業は不慣れなのはもう知っていますから少しでも効率よく終わらすことを考えると私が二人いる現状はありがたいと思いますから」

そうなのである。
今現在私が踏み込めない作業などは二人の大淀の助けもありなんとかこなしている感じだ。
これを一人で終わらすともなれば何日かかるかわからない…。
久保提督の話によると場所が場所で環境も環境なら艦娘は報告書作成は提督の仕事だと割り切って誰一人として手伝ってくれないという。
ここは信頼関係が築けている事に感謝しないといけない。
もう北方水姫を倒して帰ってきてから一睡もしていないのがいい証拠だろう。
机の上に乗せられている報告書作成の束を見た時には酷い眩暈がしたものだからな。

ゲームのようにただ終わったら解散なわけにはいかない。
今回で仲間になった艦娘などの正式な登録も報告書に書かないといけないから大変だ。
そう言えば新しく仲間になった艦娘と言えば、春日丸は演習で上げていたのもあり、すでに大鷹に改装してある。
他にも海防艦のみんなの使い道も考えていかないといけない。
ステータスを見せてもらったら対潜値が高いようで練度が低くとも装備によっては先制対潜をできるという。
神威に関しては速吸と同じように運用するのか、それとも水上機母艦として運用するのか判断が問われるものだ。
そして最後にこれからやってくるガングートは話によれば低速にも関わらずビスマルクのように連合艦隊では第二艦隊に編入できるという。

これからまた仮初めの平和がやってくる。
その為にはこの報告書をさっさと終わらさないと前に進めない。
そんな時だった。
執務室で報告書と格闘していると誰かが部屋をノックしてきた。

「誰だ…?」
『提督。ビスマルクよ。入ってもいいかしら?』
「ああ。今少し忙しいけど話をできるくらいの余裕はあるから大丈夫だ」
『そう。それじゃ新人を連れてきたから入らせてもらうわね』

そう言って扉が開かれるとそこにはまるでヴェールヌイが大人になったかのような女性がいた。
左目の下に切られたような痕が残っているのが印象的だ。
その女性は私を見て「フン」と鼻を鳴らしながら、

「貴様が提督というヤツか。私はГангут級一番艦、ガングートだ」
「そうか。よろしく頼むよ」
「ああ。しかし話には聞いていたが本当に提督が艦娘なのだな…。
聞いたぞ? 今回の作戦で大本の深海棲艦を一緒に叩いたというな」
「あ、やっぱり聞いているか。まぁそうだな」
「ならば話が早い。提督よ、後で手合わせを願ってもいいか…?」
「こら、ガングート。提督にいきなり失礼でしょ?」

そこでビスマルクがガングートを注意しているがあまり効果は薄いようだ。
そしてここで腰弱な対応を取れば舐められるかもしれないので言葉を選びながらも、

「はは。お手柔らかに頼むよ。演習でならいつでも相手になってあげるよ」
「そうか。断られると思っていたがどうしてなかなか…それにいい面構えじゃないか。
このガングート、貴様の事を気に入ったぞ」
「お目にかなったのならよかったよ」

それでガングートにもどうやら認められたようだ。
そしてもう少し休憩を挟もうと思ったが、その前にビスマルクが言葉を発した。

「提督。私はガングートを戦艦寮に案内してくるわ。
他にもこの鎮守府の内情とかも教えないといけないから少し忙しくなっちゃうから話をしたいところだけど出ていくわね」
「わかった。また後でゆっくりと話をしようか」
「ええ。提督も報告書作成を頑張ってね」
「ああ」
「それじゃ」
「失礼した」

それでビスマルクとガングートは執務室を出ていった。
大淀はそんなガングートに対しての感想は、

「また癖の強い人が来ましたね」
「そうだな。でもなんとかなるだろう…しかしこれでかつての大戦での国の艦が勢ぞろいした訳だな」
「そうですね。昔は敵同士でしたが今は心強い仲間ですからみなさん仲良くやってほしいですね」
「喧嘩にならないように注意しておかないとな」
「ですね」

それで私と大淀はまた報告書作成作業を再開したのだった。
もう一人の大淀が追加の報告書を持ってきた時には悲鳴を上げそうになった…。









榛名提督がそんな事をやっている中、他の鎮守府では大本営から榛名提督の艦隊が今回の作戦で登場した北方水姫のおそらく一番強い個体を撃破した事を知らせで聞いていた。
あるこの世界の半数以上の提督達は異世界から来たというのにこの世界のために頑張って協力してくれている榛名提督に対して好意的な感情を抱いて支持派に回った。
しかし他のある提督はそんな大戦果を上げたのはなにかこれから始めようという裏があるのではないかという考えで静観を決め込む提督も何人もいた。
そしてもっとも悪い部類に入るブラック鎮守府の提督は、自分達を差し置いて褒美を賜わった榛名提督に対して苦手意識を向けていて、これからどうしてくれようかという愚にもつかない事を考えていた。



…様々な提督達の思惑がなされる中でも大本営に逆らうわけにはいかないので表面上は各提督達は静観をする。







そして久保提督と柳葉大将もまた電話で話し合いをしていた。

「柳葉大将。今回の榛名提督の功績は凄いものがあります。
ですがそれによって色々な提督もまた動き出すと思いますが…」
『そうだな。儂もそこを懸念している。あまり榛名提督を危険な目には合わせたくない。
大本営からももしもの時は榛名提督を守ってくれという通達を受けている』
「そうなのですか」
『儂も今回の作戦に参加して攻略はできたのだが榛名提督には及ばないだろう。
しかしだからと言ってそれで榛名提督に対して嫌な感情は浮かばん。むしろこの国のために頑張ってくれているのだから好意的に見れるよ』
「そうですね」
『だが、儂のようなものばかりではない。今回の件で榛名提督の名はだいたいに知れ渡っただろう。
ゆえに悪しき感情を向けるものも少なからず出てくるのは考えておいた方がいい』
「…私にももう少し力があれば榛名提督の手助けをできるのですが」

それで久保提督は落ち込む。

『まぁそう言うな。久保少佐は久保少佐のペースでこれから頑張っていけばいいのだから』
「はい…」
『とにかくもし榛名提督関連でなにかあったら儂にもすぐに知らせてくれ。最悪の事態を防ぐためにな』
「わかりました。これからも榛名提督の鎮守府と連携して頑張らせてもらいます」
『うむ。それではな』

それで柳葉大将との通信を切る久保提督。

「よし…私ももっと頑張ろう!」

久保提督は気合を入れて私も頑張っていこうという気持ちになっていた。


 
 

 
後書き
大本営も頑張っているんですが提督達は一枚岩ではないですから制御できていないですね。
これからまた新たにオリキャラの提督も出していくことになるのでしょうか…。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0041話『いい雨だね』

 
前書き
更新します。 

 




本日の天気は曇り時々雨、この時期にしては少し蒸し暑くもあり湿気を誘う気温帯。
そんな中で私は後少しで終わりそうな報告書作成という悪魔と大淀とともに立ち向かっていた。

「…大淀、これのチェックを頼む」
「わかりました。私? そちらはどうですか…?」
「はい、私。報告書作成はほぼ滞りなく完了したと思われます」

大淀達のやり取りも慣れたものでその言葉を聞いて私はやっと解放された気分に浸れた。

「やっとこれも終わったか…」
《お疲れ様です、提督…》

榛名の表情も少し苦笑いで優れないものになっているのはそれだけ大規模作戦での報告書の多さにやられている為だろう。
これで夏の本格的大規模作戦を想定して考えると目が白けてくるのは仕方がない事だ。
榛名自身は私を応援する事しかできないから私が寝落ちしそうになったら頭に直接響く謎の不協和音をかき鳴らして強制的に覚醒させてくれるので頼もしかったりする。
…できれば優しく声をかけてもらいたいものだけど今回ばかりはありがたかったりした。

「ふぅ…」

それで報告書も終わった事で一息ついていたところで窓の外を見る。
外はポツリポツリと言う滴り落ちる雨音が聞こえてくる。
テレビでは予報は曇りだったがやっぱり雨が降り出してきていたか。

「それでは提督。倉庫に保管する用の資料などは私達にお任せください」
「ん、任せる」
「はい。それでは提督ももうそろそろ一休みをいれてください。眠たいでしょうし」

大淀達の優しさに涙が出そうになるけどやっと解放された反動でナチュラルハイになっているのかあんまり今は眠気が来ないんだよな。
なので、

「まだそんなに眠気が来ていないからちょっと羽を伸ばしてくるよ」
「わかりました。それでは榛名さん、提督が眠りそうになりましたら誰かを呼んでくださいね?」
《任せてください》

大淀達はそう言って報告書の束を一緒になってカートで運んでいった。
それを見送りながらも、

「しかし、今回はさすがに効いたなぁ…」
《そうですね。大淀さん達にもよくしてもらいましたしこれからも深海棲艦が侵攻してきて作戦が起きるたびにこの報告書とも格闘する羽目になるのですね》
「やめてくれ榛名。今はもう報告書の事はあまり考えたくないから」
《ふふっ…はい、わかりました》

それで執務室でこれからどうしようかと悩んでいた時に執務室に騒がしい声が響いてきた。

「Heyテートク! 榛名! 報告書は終わりマシタカ!?」
「ああ、金剛か。ああ、なんとか終わったよ」
「そうですカ。手伝えなくてsorryデース…」
「いや、金剛達はその分戦ってくれてるだろう? だから私がその分頑張らないとな」
「グレートデース。とても立派だよー」
「はは、ありがとう」

そう言って私は金剛の頭を撫でる。
それで金剛もされるがままになっているので私も気兼ねなく撫でる。
だけどそこで私の中で今は一番嫉妬焼きが多い印象の榛名がでてきて、

《金剛お姉様、ずるいです…榛名も提督に頭を撫でてもらいたいです…》
「Oh…そうでした。榛名は触れないから提督に触れられないのデシタネ」
《はい。あ、いえ…私からは触れることはできるのですが皆さんからは私は触る事ができないんです》
「そうですか…榛名? いつでもいいから本音をぶちまけてもいいですからネー? 私が受け入れマース」
《はい。ありがとうございます、金剛お姉様》
「Yes! それで提督もセットで来てくれるんですから嬉しいデース」

金剛の狙いはそれなんだよな。
榛名はできるだけ金剛姉妹と過ごしたいと思っている。
だけどこの姉妹たちだけを構う訳にもいかない。
日々艦娘達のメンタルケアもしていかないといけないからな。
自意識過剰かもしれないけど私が構うことが出来ずにそれで寂しがっている子達も実際は結構いるわけだし。
まぁ、それはおいおい考えていくか。
私は聖徳太子じゃないから全員の言葉に耳を貸すことは不可能だしな。
とにかく、

「金剛、少し歩かないか…? やっと報告書作成も終わったし気分転換もしたいしな」
「わかりましたー! それじゃ傘を用意しますね」

それで私と金剛は傘を用意して小雨が振っている中、中庭を歩いている時だった。

「オー、あれは時雨デスネ?」

金剛が指さした方を見ると木の下で雨に濡れているのか傘をさしていない時雨の姿があった。
そういえば………金剛に時雨。
この二人の進水日は確か一昨日だったか…?
そう考えて今からでも遅くないかなと思って、

「金剛。少し時雨と一緒に雨の中だけどお話でもしようか」
「いいんですか?」
「ああ」

それで私と金剛は時雨へと近寄っていくとあちらもこっちに気づいたのか、

「提督に金剛…いい雨だね」
「はい! そう思いマース」
「そうだな。時に時雨はどうしてこんな雨の中外に出ているんだ?」
「そういう提督達こそ」
「私はやっと報告書が終わって気分転換に金剛を誘ったんだ」
「そっか。…僕は、そうだね。雨に濡れたいと思った事かな…?」
「濡れたい…?」
「うん…深海棲艦を撃退した後はいつも僕はこうして雨の中を歩いているんだ。
気落ちしている時でも雨は平等に降り注いでくれて硝煙の匂いも誤魔化してくれるから」

それで私は少し驚く。
時雨と言えば雨が代名詞だけどそんな理由もあったんだな。
だから私はそんな時雨の頭に手を置いて撫でてやる。

「な、なんだい? いきなり…」
「いや、ただそんな思いを抱かせてしまってすまないなと思ってな」
「いいんだよ。僕が勝手にやってることなんだから」
「それでもだ。私の勝手だから気にしないでくれ」
「そう…」

それで少し場はしんみりする。
金剛も気を使ってくれているのか私の隣で黙り込んでいる。
そんな少し静かな空気に私はある事を金剛と時雨に言う。

「時雨、それに金剛も…少しいいか?」
「なんですか…?」
「なんだい…?」
「うん。大規模作戦で他に頭が回っていなかったんだけど、一昨日は君たち二人の進水日だろう…?」
「覚えてくれていたんデスカ!?」
「提督…嬉しいよ。忘れられていたと思っていたから」

それで二人は話してくれた。
一昨日は姉妹艦達とそれぞれ間宮に行って祝っていたと。

「私もみんなに祝ってやりたいけどそんなに進水日に詳しいわけじゃないんだ。
ただ二人の進水日は覚えていたっていうか…そんな感じだな」
「それでも覚えていてくれてるだけで嬉しいな」
「Yes! その通りデース」

それで金剛と時雨は嬉しそうに笑顔になってくれていた。
よかった。
二人の笑顔が見れて、

「だからって訳でもないけどプレゼントも用意してないから代わりにこれから三人で間宮にいかないか? なにか奢ってあげるよ」
「嬉しいデース」
「提督からの進水日のプレゼントか。嬉しいな…。あ……」

時雨はふと空を見上げた。
それに釣られて空を見上げてみると空は少しばかり晴れて来ていた。

「Oh! 日差しが差してきました!」
「雨は、いつか止むさ…でも今回はタイミングもあって嬉しいな」
「そうだな」

それで私達は傘を畳んで笑顔になりながらも間宮に向かっていったのだった。


 
 

 
後書き
今回はスポットを時雨と金剛に当ててみました。
進水日ネタはイベントでできなかったですから少し遅れてしまいましたがね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0042話『敷波の焦り』

 
前書き
更新します。 

 




私達の鎮守府は一応今回の作戦は完了できたけど、まだ深海棲艦は攻勢を止めていないという。
どうやら私達が倒した北方水姫の個体が上位で強い部類のものだったらしく、今現在はなんとか戦況は有利に進んでいるという。
それで私達でも役に立てたという事を実感できて良かったと思う。
だけど大本営の報告によると他の鎮守府では私の艦隊の例で行けば大和型は育てれば強いという当たり前の結論に至った鎮守府もあるらしくて関心が高まっている。
けど、まだ今回は現状は大和型を壁役にして使い潰す鎮守府がまだまだあるらしい…。
嘆かわしい話だけどみんながみんな私のようにうまく大和型を扱えるわけでもないのかという結論に至って溜息を吐くしかないかった。
深海棲艦が攻めてこなくなりこの作戦が終わったらもしかしたら艦娘の効率のいい練度上げというお題目でどこかの鎮守府に派遣するかもしれないな…。
そんな事を考えながらも日常業務に移行した仕事を終わらせながら、午後はなにをしようかと考えていた。
畑の手入れもしようかと思っているんだけどそこは天龍とか武蔵がやってくれているのでなんとかなっているんだよな。
天龍が、

『なぁ提督。俺にも畑仕事手伝わせてくれよ。この間、やっと練度がカンストして遠征番長から解放されてから暇していたんだ』

そう、天龍はこの鎮守府が稼働し始めてからほぼずっと遠征をやり続けていたために遠征だけでついに練度がカンストしてしまい、遠征は龍田に譲り渡したのだ。
そんな事もあって今度から天龍もイベントがあったら使っていこうかなという気にはなっているのだ。
それで畑仕事はローテーションを組んでやっている。
雨も適度に降っているので夏にはいい具合に育っているだろうしね。

次におそらくそろそろ宴会の準備もしないといけないな。
今回の大規模作戦での功績で給料も結構入った。
その額を見た時には思わず目が飛び出そうになったのは秘密だ。
やっぱりこういった提督業だと命も張っていることからお給金がいいのだ。
それは艦娘達にも同様に入っているので鈴谷とかこれを気にお洒落なものを買いにいくとか張り切りそうだ。
だけどあまり羽目は外し過ぎないようにと注意はしておかないとな。
あくまで私達は軍隊の人間だ。
だからという訳でもないけど一般人からそう言った軽い行動を見られたら批判を受けるかもしれないからね。
そんなわけであまり騒ぎ過ぎずに宴会を開かないとな。
羽目を外している時が一番危険なのだ。
もしそんな時に深海棲艦が狙いすましたかのように攻めてきたらやられてしまう。

「…っと、そうだな」
《どうしましたか、提督…? なにか考え事でもあったのですか》
「いや、今の演習スケジュールを考えてな」
《今の演習スケジュールですか。確か大鷹さんを旗艦にアイオワさん、ガングートさん、天城さん、敷波さん、鹿島さんでしたね》
「そうだ。それで鹿島に聞いた話なんだけどな。大鷹とガングートは順調に練度を上げていっているから心配していないというんだけど、ただ気になる点があると言っていたんだ」
《気になる点、ですか…?》
「うん。敷波の動きが少しおかしいらしいんだ。なにやら焦りに駆られているようだとか何とかで…」
《敷波さんが…提督、それでしたら敷波さんと一度話をしてみませんか? きっと提督なら解決できると思うんです》
「そうか?」
《はい!》

それで榛名は笑顔を浮かべているのでそうだな、と思って午後の演習が終わったら敷波に話しかけてみるか。
その前に綾波にも話を通しておこうか。
綾波型では敷波とは一番仲がいいからな。
それで綾波に連絡を入れる。

『はい、なんでしょうか?』
「あ、綾波か。ちょっと午後の演習が終わったら付き合ってもらってもいいか?」
『私で良ければいつでも構いませんよ。それでどうされました?』
「うん。敷波の事なんだけどな。綾波から見て敷波の様子はどうだ…?」
『そうですねー…。最近なにか焦りに似た感じがしますね』
「綾波もそう思うのか」
『はい。でも司令官。多分これは敷波に限る話じゃないんだと思います』
「それはどういった…?」
『はい。綾波も感じているんですけどまだ練度の低い子たちが特にその傾向が強いんですよ』
「やっぱりか…」

それで思い当たる節はいくらでもある。
育てている子はちゃんと育てているんだけど育てていない子は改になった状態で止まっているんだよな。
最近は演習でこの鎮守府に着任順に練度の低い駆逐艦の子達を練度70を目安に育てているんだけどまだ40人くらいはいるからな。

「わかった。とにかく折を見て敷波に接触してみるのでついてきてもらっていいか」
『わかりました』

それで綾波と約束をした後に電話を切って、午後の演習が終わるのを待った。








それから演習が終わったのを見計らって私は綾波と合流していた。

「あ、司令官。こちらです」
「待たせたか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか。それじゃ行くか」
「はい」

それで綾波を連れてまだ帰ってきていないので港へと向かうと、

「あ、提督さんに綾波さん」
「鹿島、少しいいか?」
「はい、なんでしょうか?」
「敷波は今どうしてる…?」
「敷波さんですか。そうですね、もう演習は終わったんですけど自主練をすると言ってまだ一人で残っていると思いますよ」
「そうか。わかったありがとう」
「いえ、それでは私は戻りますね」

鹿島を見送った後に、

「やっぱり敷波は焦っているんだと思います。
司令官にはツンとした態度を取っていますが心では司令官のお役に立ちたいと思っていると思いますから」
「そうか…」

それ以上は聞かない事にした。
敷波にも隠したい思いとかあるものな。
しばらく歩いて練習場へと足を運ぶとそこでは一人海の上を滑りながらも的に狙いを定めている敷波の姿があった。

「いっけー!」

敷波が連装砲から演習弾を放つ。
それはいくつもある的に当たっていく。
だけどいくつか外してしまっている。
それで少し悔しそうな顔になっている敷波。

「まだ…こんなんじゃ実戦じゃ通用しない。このままじゃ司令官の役に立てないよ…」

敷波は私と綾波の存在に気づいていないのか本音から来る言葉を発して必死に何度も演習弾を撃っている。
でも焦りから来る砲弾は照準を鈍らせて終いには疲労からか当たらなくなっていた。
その姿が少し悲しく見えてきた。

「綾波、止めて来てもらっていいか…? 見ていられないから」
「わかりました」

それで綾波が艤装を出して敷波の方へと出ていった。

「敷波。もうその辺で止めましょう。為にならないわ」
「綾波姉…でも…このままじゃ司令官にも期待外れの目で見られちゃうよ」
「司令官はそんな人じゃないっていうのは知っているでしょう? だから今は焦らずにゆっくりとでもいいから確実に練度を上げていきましょう」
「だけど…」

まだなにかを言いそうな気配だったので私は敷波に向けて声を上げた。

「そうだぞ敷波!」
「うぇ!? 司令官、いたの!?」

そこで敷波は初めて私がいたのを気付いたのだろう慌てている。
私はそれに構わず私も艤装を出して敷波に近寄って行って、

「敷波。私は練度が低いからって君の事を役立たずとかそんな扱いはしないぞ。
それに私のために頑張って練度を上げている姿は何度も見ているから期待もしているんだ」
「そ、そうかよ…」
「だからさ、焦らず自分のペースでやっていかないか? いつか敷波の努力は実を結んで活躍できる日が来るさ」
「本当…?」
「ああ。だからもう無茶な練習は無しな。わかったか?」
「うん、わかった。司令官がそう言うんだったらもう無茶はしない。だけど約束してね。いつか敷波も活躍させてね」
「うん。約束するよ」

それで敷波はやっと笑みを浮かべてくれてそれを見た綾波がほんわかな表情になって、

「はぁ…敷波の笑顔、癒されます。感謝ですね~」
「ばっ! 綾波姉、あんま見ないで!」

そんな姉妹のやり取りを見てもう敷波も大丈夫だろうという思いになった。


 
 

 
後書き
今回は敷波の焦りに関して書きました。
やっぱり綾波のセリフはこういう時に使わないとですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0043話『宴会と加賀の悪酔い』

 
前書き
更新します。 

 

「えー…本日を持ちまして深海棲艦の侵攻が食い止められて仮初めだけど騒がしい毎日が帰ってきます。
そして今回新しく仲間になった者達もいます。
それで―――…」

私が今回の大規模作戦終了の言葉を宴会場のみんなの注目が集まる場所でそう話している時だった。

「提督ー…長いよー。堅っ苦しい挨拶はいいからさ。始めようぜ?」

隼鷹が酒を飲む仕草をして私の言葉を遮ってきた。
そのセリフに仕方がないなと諦める事にした。
そうだな。私もそういう宴会の幹事なんて今まで務めた経験はないからな。
それじゃ最小限の注意だけをして始めるとしようか。

「…わかった。隼鷹の言う通りだな。それじゃ明日に引きずらずに羽目を外し過ぎないように…」

そして私がジュースが入ったコップを掲げて言う。
乾杯、と。
それに呼応して艦娘全員から、

「「「カンパーイ!!」」」

という喜びの声が上がった。
それで早速騒ぎ出す飲兵衛達。
隼鷹を筆頭に「ヒャッハー!! お酒だー!! 無礼講だー!!」と叫んで飲み会を始めてしまっていた。
特に今回活躍した那智が、

「今回ばかりは活躍させてもらったのだから飲ませてもらおう!」
「…今回、那智さんは頑張ったのですからこの早霜、一つ作らせてもらいます」

そう言ってカウンターバーで早霜がバーテンダーの恰好をして慣れた手つきでカクテルを作りだしている。
やっぱり早霜はそっち系が得意だったか。
意外といえば意外だけど別段驚きはない光景だった。

「提督…提督はあまりお酒は得意ではないのは最初の宴会で知っていますのでこちらで一緒にお食事でもどうですか?」
「ありがとう、鳳翔。行かせてもらうよ」

鳳翔に最初に声をかけられて私は赤城とかがあまり酒を嗜まない艦娘の集まりにいこうとしたのだけど、

「鳳翔さん、ずるいよー。しれーもたまには時津風達と付き合ってよー」

そこに時津風が私の腕を引っ張りながら「きてー」と声を上げていた。
それで鳳翔も「あらあら」と言って頬に手を添えていた。

「そうですね。それでは提督、後程また来てくださいね」
「わかった。すまんな鳳翔」
「いえ、それでは」

それで鳳翔は空母が多くいる場所へと戻っていった。

「しれー。こっちきて! 一緒にはぎーの料理を食べよう」
「わかった。それより萩風も一緒に作っていたのか?」
「うん。なんでもお料理クラブ会で作ったんだってー」
「そうか」

時津風とそんな話をしながらも陽炎型が集まっているエリアへと向かわせてもらった。
そこには思った通り陽炎型のグループがいくつかに分かれて話をしている。
そして私が来たことに気づいたのか秋雲がこちらに振り向いて、

「おっ! 提督じゃん。どしたのー?」
「うん。時津風に誘われて来させてもらったよ」
「そっか。それじゃ楽しんでってよ」
「ああ」
「司令。こちらへどうぞ!」

そこに萩風に呼ばれたので隣に座らせてもらう。

「司令。私の作った体にいい料理の数々、堪能していってくださいね!」
「わかった。頂かせてもらうよ」

それで手を付けようとして、野菜ばっかりのメニューだなぁと一回迷う。
私はそんなに野菜を食える方じゃないんだよな。
でも萩風のそんなキラキラとした目で食べて食べてと訴えられたら引けないじゃないか…。
それで勢いよく口に運ぶ。
でも、そこで野菜メニューだというのにあんまり苦くないのを感じて、あれ?と思った。
そこに萩風が、

「ふふっ。司令はお野菜があまり得意ではないというのはすでに把握済みです。
ですので司令の口に合うように味も工夫してみました!」
「確かに美味いな…箸が自然と進むよ」
「気に入ってもらえてよかったです」

萩風はそう言ってにこやかに笑う。
うん。いい子だなぁ。
そこに時津風が私の頭に乗ってきて、

「しれー…はぎーだけじゃなくてあたし達も構ってよう」
「わかったわかった」

それで雪風や時津風、天津風といった精神年齢が少し幼い組とじゃれあったりしていた。
それから浦風が作ったのも食べさせてもらったり陽炎型での中での話題などの話をしたりと楽しませてもらった。
しばらく話し込んでから、

「それじゃ先約の方へ行かせてもらうよ。まだ楽しんでいてくれな」
「「「うん」」」

それで陽炎型のグループから離れて鳳翔の約束を果たそうと空母組のエリアへと向かわせてもらうと、なにやら騒がしい事になっているみたいだ。
あの隼鷹でさえ酔いが少し覚めているのか「どうしようかー…」と言葉を零している。
何事かと思って向かってみると、

「どうしたんだ…?」
「あ、提督。それが…」

鳳翔がなにかを言う前にとある艦娘が私に気づいたのだろう酒が入った瓶を片手に酔いが回っている顔で近寄ってきた。

「…提督」
「加賀、どうした…?」
「…別に気にしてはいないのだけれど。そう、気にしてはいないわ。ええ…」
「えっと…」
「…気にはしていないのよ? でもどうして今回私を使ってくれなかったのですか…?」
「あっ…」

それでこれはまずい絡み方だなと一瞬で悟る。
しかしもう腕を掴まれている為に逃げることは不可能であった。
そのまま流れるままに加賀は赤城がいる場所へと私を移動させて座らされる。

「…あの、加賀さん?」
「…なんですか?」

ギンッ!と鳴りそうな瞳で睨まれてしまい私はそこで黙ってしまう。

「提督…? 加賀さんの事を構ってあげてください。今回一切使われなかったのを加賀さんは悩んでいるようで酒に走ってしまいまして…」
「そうか…」

加賀の隣ですました顔で食事をとっている赤城にそう言われてしまい諦めて加賀の言い分を聞くことにした。

「提督…私はいつか弓道場で約束しました。きっと大規模作戦ではお役に立ちますと…」
「そうだったな…」
「なのに、提督は今回私を使わないで二航戦や赤城さんを使うのならまだしも五航戦の二人や大鳳まで使いましたのに、どうして私は使われなかったのですか…?」

加賀らしくなくえらく饒舌だなぁ、これが酒の魔力か…。

「その、だな。大規模作戦では加賀さんはもしもの温存戦力なんだよ。
だけど今回は最終局面では機動部隊じゃなくて打撃部隊で挑んだからその…」
「…言い訳は結構です。どうせ改二になっていない私なんて…」

それでとうとう私の腕に擦りついて涙を浮かべる始末だ。
加賀さんがキャラ崩壊しているな。

「そんなことは無いぞ。加賀さんは鎮守府の役に立っているよ」
「気休めの嘘はいいです…。カレー洋リランカ島沖以外にはあまり出撃もないのですから…」

十分すぎない…?
港湾棲姫を倒す役目をいつも任せているんだから十分役に立っていると思うが…。
それを同じく思ったのか横から瑞鶴が口を出してくる。

「加賀さん! 黙って聞いていれば十分じゃないですか! 贅沢な悩みですよ!」
「…なによ、五航戦? 文句なら買いますよ?」
「酔っているんだから遠慮がないわね…上等ですよ!」

瑞鶴が加賀と喧嘩をし始めだして私はどうやらお役御免となったらしくなんとか解放されて鳳翔さんのもとへと逃げてきた。

「加賀さんはああなると止まりませんからね。しばらく様子を見ましょうか」
「そうだな…」
「それと提督? 今度の大規模作戦では加賀さんを使ってあげてくださいね?」
「はい。肝に銘じておきます…」

鳳翔さんにそう言われて頷くしかなかった。
それから他所でもなにやら騒ぎが起きていて私がその場所へと向かう事を何度も繰り返していたのであった。
そんな感じで宴会は最後まで大賑わいだった。


………ちなみに加賀さんは翌日にすべて覚えていて羞恥で布団にくるまっていたと言う。


 
 

 
後書き
2017年春イベントが後三時間程度で終わります。
提督の皆さん、お疲れ様でした。
まだ攻略されている方や新艦娘を掘っている方は最後まで諦めずに頑張ってください。

今回は萩風や加賀さんを出してみました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0044話『長門の第二次改装』

 
前書き
更新します。 

 



宴会から翌日になり落ち着きを見せ始めている鎮守府だったが執務室で仕事をしていた私に大淀がなにやら電文を持って入ってきた。
その表情はどこか嬉しそうで今にも笑顔が零れそうであったと思う。

「大淀。そんなに急いでどうした…?」
「はい。提督、とある方の改二改装の案件が大本営から言い渡されました!」
「なに!? 本当か!」

大淀のその報告を聞いて私も電文を大淀から受け取って読んでみた。

『第二次改装案件。
対象者。戦艦長門。
各提督諸君はさらなる長門の第二次改装を施行されたし。
第二次改装にはきわめて高い練度が必要である。
なおさらに改装には改装設計図が必要である』

電文にはそう書かれていた。
そうか…。ついに長門が改二になるんだな。
連合艦隊旗艦としては嬉しいだろう。
うちの長門は絆も結んでいるため練度に関しては問題ないだろうし。
それでそれに付随している任務も合わせて施行するために私は長門と陸奥を執務室へと呼ぶ事にした。
そこで榛名が出て来て、

《提督! これで艦隊がさらに強くなりますね!》
「ああ。長門が改二になったら大和並みとはいかないだろうがかなりの強化はされるだろうしな」
《はい。ですから長門さんに早く話してあげましょう》
「そうだな」

それで私は受話器を取って長門と陸奥の相部屋へと電話をかける。

『提督か? どうした、この長門になにか用があるのか?』
「ああ。お前にとってとってもいい朗報の話だと思うよ」
『ほう…それは楽しみだな。それで私だけか? 執務室に向かうのは…』
「いや、できれば陸奥も連れて来てくれ」
『わかった。それではすぐに向わせてもらうぞ』
「ああ、きっと長門が驚くことだから楽しみにしていてくれ」
『そう言われるとなにやら今すぐ聞きたいところだが…わかった。では執務室に向かわせてもらおう』

そう言って長門と通話を切る。

「ふふ。長門さん、かなり驚くでしょうね」
「そうだな、大淀。それじゃ大淀、勲章を改装設計図にする手配を頼む」
「わかりました。すぐに準備いたしますね」

そう言って大淀は改装設計図の準備のために執務室を出ていった。
それからしばらくして長門と陸奥が執務室へと入ってきた。

「提督よ。来てやったぞ」
「ふふ。提督、長門に何の用なの…?」

長門が普段通りの勇ましい風格を漂わせながら入ってきて、陸奥はお姉さん気質を前面に出して私にそう聞いてきた。
しかし姉妹なのにこうも性格が違うとはな。
まぁそこも二人の魅力でもあるんだけどな。

「ああ。大本営から電文が届いたんだけどな。長門、お前に第二次改装の話が入ってきた」
「なに!? それは本当か提督!?」
「長門、やったじゃない! おめでとう!」

陸奥が素直に長門の事を褒めていて長門は驚きから両手を私の机へと置いてグイッと私に顔を寄せてきた。
その表情から伺えるのは歓喜と困惑、そして嘘を吐いたら許さないと言った感じが読み取れた。

「ああ。その前に落ち着け長門」
「あ、ああ。そうだな…」

それで長門は一回大きく息を吐いて調子を整えている。
かなり嬉しかったのだろう何度も胸に手を添えて息継ぎを繰り返していた。。
小声で「落ち着け…この長門、舞い上がっては艦隊に示しがつかないだろう…」とブツブツと言っている。
しばらく時間が経って、

「…落ち着いたか?」
「ああ。もう大丈夫だ。無様な姿を見せたな提督」
「いや、大丈夫だよ。誰だって第二次改装は嬉しいものさ。それは長門も例外じゃない」
「そうか。提督の心遣いに感謝しよう」
「うん。それじゃ早速だけど明石がいる工廠へと向かおうか。今、大淀に改装設計図を用意してもらっているから」
「なに…? 私の第二次改装に改装設計図が必要になってくるのか…?」
「うん。最近の大本営は方針が高めなんだろうけど必ず改装設計図は必須な傾向が見られるからな」

それでこの世界の現在の私の鎮守府以外での最高練度の艦娘は横須賀鎮守府にいる練度90の長門という話を思い出す。
この世界ではそこまで上り詰めるのはそうとう時間をかけるんだろうけど美味い練度上げの方法を知らない節があるからな。
久保提督に話を聞いたがキス島やリランカ島、サーモン海域とかでの効率のいい練度上げを海軍学校では習わなかったという。
それで試しに柳葉大将に私の今までの積み上げてきた練度上げの方法を教えてみると、

『そんな方法があったのか…』

と、素直に驚いていたりしたから効率が悪い方法ばかりをやっているんだろうなと思った。
それはともかく、

「それじゃ行こうか」
「ああ」
「ええ」

それで工廠へと向かわせてもらうと大淀に話を聞いていたのだろう明石と大淀が待っていた。

「提督。待ってましたよ。それじゃ長門さん、改装設計図を持ってさっそく改装室へと入ってください」
「わかった」

明石に改装設計図を渡された長門は促されながら改装室へと入っていった。
そこに明石が私にある事をいってきた。

「提督? おそらく戦艦の第二次改装ですから大型建造以上の消費資材を要求されると思います。
ですから今後も見据えて計画的に資材を使っていってくださいね」
「わかった」

それでしばらくして使うであろう資材がパネルに映された。
その資材量はなるほど確かに多いと頷かせるには十分の量だった。

「それじゃもう後戻りはできませんよ。いいですね?」
「ああ、頼む」
「はい」

それで明石は改装ボタンを押した。
すると改装室から光が漏れだしてきていてしばらく経過した。
そして時間が経ち、改装室の扉が開かれた。
そこから姿が変わった長門が出てきた。
派手という訳でもないけど勇壮さはさらに磨きがかかり歴戦の風格をさらに纏っている。
試製41㎝三連装砲がその力強さを体現している。

「第二次改装されたこの長門…さらに提督の役に立って見せよう」

長門が力拳を握って笑みを浮かべた。
その笑みもとても力強い印象を受ける。

「長門! かっこうよくなったわね!」

陸奥がそれで長門へと近寄っていき抱き着いていた。
そして明石が長門へと近寄っていって、

「それじゃ長門さん。少し検査をしますからドッグへと向かってください」
「わかった」

それで長門はドッグへと向かっていった。
そして驚く結果が判明する。
火力に関しては大和達には及ばないもののアイオワと匹敵するような数値を叩きだしていた。
特に驚いたのが大発や特二式内火艇などを装備できるようになっている事だ。

「これから長門は陸上型深海棲艦に活用できるかもしれないな」
「そうですね」

それで長門が戻ってきて、明石から結果を渡されてまた驚いていた。

「…そうか。大発を装備できるか」
「思いつくことはあるか…?」
「おそらく私の逸話をもとにしているのだろうな。かの関東大震災で私は様々な物資を運ぶために奮闘したからな」
「なるほど…そうだったな。とにかく長門、第二次改装おめでとう」
「ああ、ありがとう提督。それで私に付随する任務もあるのだろう? 見事果たしてみせるさ」
「ああ、期待している」

それで私達は笑みを浮かべあった。


 
 

 
後書き
イベントが終わったと同時に長門が改二がきましたね。
練度88+改装設計図。
弾薬8800、鋼材9200必要。

かなりお高い代償でしたがそれに見合った力を手にしました。
任務内容は明日の更新で触れていこうかと。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0045話『大鷹の初めての出撃任務』

 
前書き
更新します。 

 




長門が改二になって翌日。
私は大本営から送られてきた新たな任務をするために編成を考えていた。
まず一つ目の任務内容である『海上護衛体制の強化に努めよ!』であるがこれはいつも通り鎮守府海域を哨戒する任務だらけだ。
だけど今回特に目についたのは駆逐艦あるいは海防艦三隻を含むと書いてある点か。
しかしなぁ、いきなり海防艦を含む任務が来ると思っていなかったのでまだ練度が低い海防艦の彼女達を使うわけにはいかない。
なので、だからいつも通り駆逐艦四隻に先制雷撃の阿武隈と現在育て中の大鷹を含んだ艦隊で任務をやってもらっている。

それで最初の任務箇所である製油所地帯沿岸を哨戒してもらっているんだけど、

『司令官…逸れちゃったみたい』
「わかった。速やかに帰投してくれ」
『了解…』

旗艦の敷波が気落ちをしながらもそう連絡してきたのでそう返しておいた。
あそこはいつもながら固定ができないからやっかいなんだよな。
下手したら渦潮を踏むしで敵は弱いのに厄介な場所だ。
だけど二回目の出撃で今度はボスエリアまでいけたみたいで、

『司令官! 敵掃討に入るね!』
「ああ、任せた」

それですぐに敵深海棲艦は倒すことが出来た。
よし、これでまずは製油所地帯沿岸はクリア。
次は南西諸島防衛線だな。
比較的軽い海域だからどうにかなるだろう。
それで同じ編成で哨戒してもらってクリアしてもらった。

そしてやってきました。
鎮守府近海の対潜哨戒。
今回から新たに完封できるだろう編成で挑んでもらう。
ここも海防艦が育っていればよかったんだけどまだ見送りで大鷹を旗艦に朝潮、朝霜、リベッチオで挑んでもらった。

『提督、大鷹…頑張らせてもらいますね』
「ああ、まだ改二にはなっていないけど対潜は十分に高いからできるだろう」
『はい。艦攻さん達に頑張ってもらいます!』

そう、大鷹は対潜値が高くて先制対潜が可能な軽空母だから駆逐艦の子達と一緒に先制対潜をできるのだ。
だからこれで潜水艦をほぼ無傷で勝利できる、と思う。
まだ今回が初の試みだから何回か試行しないと分からないからな。










「大鷹さん! 今回から対潜哨戒に編入されるそうですね。よろしくお願いします!」
「あ、はい…。まだまだ未熟ですがよろしくお願いしますね」

朝潮さんにそう言われて緊張しながらも今回初めての実戦を経験することになりました大鷹です。

「大鷹さん、硬いよ! もう仲間なんだからもっとフレンドリーでいこうぜ」
「アサシモのいう通りだよ! リベも大鷹さんともっともーっとお友達になりたいな!」

朝霜さんとリベッチオさんにそう言われて少し気分も幾分よくなって身体から余計な力が抜けていくような感じがしました。
そうですよね。一人で戦うわけではないのですからしっかりやらないと。
赤城さんや加賀さんにも言われましたし。

『大鷹さん、あなたはまだ未熟ですがあなたの中には未知の力が宿っています。ですからこれから頑張っていきましょうね』
『赤城さんのいう通りです。大鷹、あなたはやれば出来る子です』

大先輩の赤城さんと加賀さんにそう言われてしまってはこの大鷹、頑張らないといけません。

「やりましょうね、艦攻さん…?」
【―――】

艦攻さんは私にしか分からない言葉で「任せて」と言ってくれました。

「そう言えば大鷹さんは他の軽空母の皆さんとは少し異なって鷹匠スタイルでしたね」
「はい。ですから艦載機の子達とは意思疎通が必須項目になってくるんです」
「島風の連装砲ちゃんみたいなもんか」
「いいなぁ…リベも一度でいいから連装砲ちゃん達とお話してみたいよー」

そんな他愛もない話をしながらも私達は対潜哨戒を続けていきます。
そして装備してあるソナーに潜水艦の気配が感じられたので、

「皆さん! 潜水艦、来ます! 単横陣でお願いします!」
「「「了解!」」」

それで陣形を単横陣にして、

「大鷹! 発艦します! いって艦攻さん! よろしくお願いします!」

早速艦攻さんを発艦させて先制対潜で潜水艦を沈めました。

「…すげー、ほんとに先制対潜をした…」

朝霜さんがそれで驚いているみたいです。
私も初めての試みでこうもうまくいくなんて思っていませんでした。

「さすがですね。朝潮も負けていられません!」
「リベも負けずに頑張るよ!」

それから私達はエリアボスまでほぼ先制対潜で完封してボス個体も私が倒してしまいました。

「大鷹さん。さすがのお力、御見それしました」

朝潮さんがそう言って私の事を褒めてきました。
や、そんなに畏まれても困ります。

「これでまだ改二になっていないっていうんだからすげーよな…」
「うんうん。大鷹さん、これから毎日対潜哨戒を頑張ろうね!」
「はい!」

どうやら皆さんに認められたようです。
大鷹、ここでも頑張って行けそうです。
…ただ鎮守府に帰投したら秋津洲さんがいて、

「もうもしかしたら秋津洲の出番はないかも!?」

と、悲観そうな顔をしていました。
どうやら私が入るまでは対潜哨戒は秋津洲さんの唯一の取柄でもあったみたいです。
なので少し気の毒に感じて申し訳がなかったです。










大鷹の成果を聞いて私は今後は対潜哨戒は大鷹を入れていこうという思いになった。
まだまだ改二という伸びしろがあるから先が楽しみな子だな。
そしておいおい海防艦のみんなも練度を上げていって対潜哨戒に入ってもらおうと思っている。
とにかくこれで対潜哨戒もクリアっと報告書に印鑑を押して、最後の任務場所である鎮守府近海航路へと大淀と駆逐艦の水雷戦隊の編成でクリアしてもらった。

「提督。『海上護衛体制の強化に努めよ!』を完遂です。おめでとうございます」
「ありがとう。それでここから長門の任務が出てくるのか」
「はい。長門さんなら難なくクリアできると思いますよ」
「そうだな」

それで長門と陸奥を招集するのであった。


 
 

 
後書き
今回はまず長門の任務の前に『海上護衛体制の強化に努めよ!』の話を書きました。
そして大鷹を演習以外で初出撃させました。
秋津洲は少し気の毒ですがまぁもう90は越えてますから十分使えますしね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0046話『長門の大活躍』

 
前書き
更新します。 

 




まずは近海の海域を哨戒する任務である『海上護衛体制の強化に努めよ!』を終了したために、それによって発生した任務。
その名を『新編「第一戦隊」、抜錨せよ!』という。
内容は旗艦を長門改二、そして二番艦に陸奥を置いて、カレー洋リランカ島沖とサーモン海域北方の両海域を攻略せよというもの。
改二要求練度が上がってきたと同時に求められる任務内容も練度が上がってきていると思うのは決して勘違いではないだろう。
しかしやはりここで思ってしまう。
この世界はそこまで練度が高いものは少ないというのに無茶な注文を提示し続けている大本営に各々の提督達は不満はないのだろうかと…。
ただでさえ練度を満たしている長門の個体は横須賀鎮守府以外にはうちしかいないらしい。
それだけ高練度任務なのだ。
…まぁだからと言って同情するわけにもいかない。
そうすると上から目線だ!という人も増えてくるだろうから。
こういう言葉がある。
隣の芝生は青い 、と。
だからと言って決して羨むな。
自身のペースで今できる任務をやればいい。
私はそう思っている。
だから、

「長門。それに陸奥。与えられた任務をさっさと終わらせよう。
貯めておいても害はないだろうが、できる限り次に発生するであろう任務に控えて終わらせておいても得はあっても損はないだろうから」

長門達を執務室に呼んで私は二人にそう話した。

「そうだな。いいだろう、この長門に任せておけ。すぐに終わらせてくる」
「そうね。年々大本営から送られてくる任務はきつくなってきてるけど私達の練度なら十分の内容だからね」
「ああ。それじゃまずはカレー洋リランカ島沖に出撃してもらおうか」
「提督。編成はどうする…?」
「ああ。最近は装甲空母の瑞鶴に翔鶴、そして正規空母の加賀の三人と利根、筑摩、摩耶で攻略は事足りていた。
だけど今回は戦艦編成だからな。二人にアイオワと瑞鶴達を入れて出撃してもらおうか」
「わかった。すぐにメンバーを招集しようと思うがいいか?」
「うん。それじゃメンバーに連絡を入れるとしようか」

それで空母の三人とアイオワを執務室へと呼ぶ事にした。
しばらく時間が経過してまず空母の三人が入ってきた。

「提督さん。私達三人を呼ぶのは出撃の用事か何か?」

瑞鶴が代表して手を上げてきたので、

「そうだな。今回はいつも通りだけど今回は長門と陸奥を連れてカレー洋リランカ島沖に行ってもらう」
「やりましたね、加賀さん。さっそく昨日の汚名返上の機会が訪れましたよ」
「…翔鶴。あなたなかなかいい度胸ね」

汚名返上というのは先日に宴会で繰り広げられた加賀さんの悪酔いの件だろうな。
同室の赤城に聞いた事だけど加賀さんは宴会での出来事をすべて覚えていたらしく一時間くらい部屋に籠もっていたらしい。
それで瑞鶴がついからかってしまい血を見たとか…。
まぁ、それはいいとして、

「後はアイオワか。途中で見なかったか…?」
「いえ、見ませんでしたが…」

そんな話をしているとちょっとした足音が聞こえてきたので遅れて来ていたのか。
扉が開かれて、

「Sorry! 遅れてしまったワ!」
「いや、大丈夫だよアイオワ。まだ話をしていないから」
「そう…。ちょっとサラと話をしていていきなり連絡が来たから着替えるのに手間を取ってしまったワ…」
「そうか」

それで思い出す。
最近アイオワは普段着では変シャツをよく着ているとか。
胸に日によって違うが『戦艦魂』とか『米国最強』とか他にも色々…。
他にはトレーニングルームとかで汗を流しているとか。
長門もよくやっているのでジム仲間らしい。

「とにかくまずはこの今いるメンバーでリランカ島沖に出撃してくれ。
空母組はいつも通りの装備で、戦艦の三人は三式弾を忘れずに装備して来てくれ」
「「「了解」」」

それで装備換装をすませた一同は出撃していった。
そして今月のリランカ島沖はもうすでに勲章をもらっている為に港湾棲姫も最終形態になっているので少し手強いかもしれないから十分注意してもらいたいな。
だけどそこはすでに承知済みだったようで無線先で長門の、

『はっはっは! 港湾棲姫よ、この程度か? 温いぞ!!』

という長門が暴れている声が響いてきていた。
どうやら無用の心配だったらしい…。
そして帰ってきた一同は誰も小破から大破まで傷を負っていたが長門だけは無傷であった。

「さ、さすがだな長門…まさか港湾棲姫に対して無傷でやり過ごすとは…」
「そうだな。私自身も驚いているのだがな。手慣らしにはちょうどいい相手だったよ」
「長門の一撃で港湾棲姫はほとんど倒されたようなものだったから少し憐れに感じたわね…」

陸奥のそんな呟きで全員が同じ感想だったのか頷いていた。

「わかった。とにかくこれで任務の半分は完了だ。陸奥、翔鶴、瑞鶴はすぐに入渠してきてくれ。次の任務に移りたいから」
「わかったわ」
「わかったわ提督さん」
「わかりました提督」

それで三人はすぐにドッグへと向かっていった。
そこに残された加賀さんが、

「…提督。私はサーモン海域北方では使わないのですか?」
「いや、今回はついでにまだ今まで一回もクリアしていないサーモン海域北方を攻略しようと思っているんで長門の任務が終わるまで待機していてくれ」
「わかったわ」

それで私に見えないようにしているのだろうけどガッツポーズをとっている加賀さんの姿がそこにあった。
今回の攻略はS勝利をしないと完遂できないらしいから編成はどうするか…。
っと、そこである艦娘の特性を思い出した。
それで潜水艦を沈める役の五十鈴と一緒に彼女も呼ぶ事にした。
そして入ってきたのは、

「ちぃーす! 提督! この軽空母の鈴谷に用事なの?」

軽空母の方の鈴谷である。
鈴谷に今回の件について軽く説明を入れる。

「ああ。今回は潜水艦がいても水上艦がいるのならそちらを優先して攻撃する鈴谷の特性を活用させてもらうよ」
「そっか。それじゃ五十鈴っちは潜水艦撃破に集中すればいいんだね…?」

それで一緒に入ってきた五十鈴が苦笑いを浮かべながら、

「…五十鈴っちって、鈴谷あなたね?…まぁいいわ。そう言う事なら五十鈴もそちらに集中させてもらうわね」
「ああ。任せる」

それで高速修復材で入渠が終わったのだろう陸奥に翔鶴、瑞鶴が執務室へと戻ってきた。

「む、戻ってきたか三人とも」
「ええ、長門。そちらも準備はばっちしのようね」
「うん! この鈴谷にお任せ! まだまだ未熟だけど任せておいてよ!」
「五十鈴に任せておいて」

これでメンバーは揃ったのですぐに出撃してもらった。
そして一回逸れてしまってボスにいけなかったけど、

『提督よ。なんとかほとんど喰らわずにボスへと挑めそうだ』
「そうか。気を付けてくれ。最難関海域の一角だからな」
『任せておけ』

長門の力強い声で安心できるようなものだった。









提督へと言葉を返して私達はサーモン海域のボスマスへと突入していった。
五十鈴が中破にされてしまい、もしかしたらS勝利を逃してしまうかもしれないという瀬戸際だったがなんとか先制対潜と二回攻撃で潜水艦を沈めることに成功した。
そして厄介なのがレ級エリートだ。
もちろん空母ヲ級もやっかいだが先制雷撃で翔鶴も中破にされてしまってかなりやばいところまでなってきた。

「だが、ここで引き下がるわけにはいかんのだ! 陸奥! いくぞ!!」
「ええ、長門! 戦艦陸奥、突撃するわ!」

私と陸奥での連撃でなんとかヲ級二体は沈めてレ級を残して夜戦へと突入していった。
ここまで来れば後は倒すのみだ。
そして、

「―――――ッ!!」

私の砲撃が直撃しレ級エリートの断末魔の叫びが響き、深海棲艦は全艦が撃沈していたのであった。

「提督よ。全艦撃墜完了だ」
『よくやった!』

提督の喜ぶ声が聞こえてきたために任務が完了したのを悟る。
しかし、第二次改装でここまで劇的に力が上がっているとは…。
この力でこれからも艦隊を支えて見せようという意気込みを再度したのであった。

…そして、その後私は活躍できなかったがアイオワと五隻の空母の艦隊で初めてサーモン海域北方を攻略して勲章をもらったという。
最後まで活躍したいものだったな。


 
 

 
後書き
恒例の装備晒し。

4-5編成。

長門   試製41cm三連装砲×2、夜偵、三式弾
陸奥   試製41cm三連装砲、46cm三連装砲、零観、三式弾
アイオワ アイオワ砲×2、零観、三式弾
瑞鶴   天山(村田)、烈風(601空)、流星改、烈風
翔鶴   天山(村田)、艦戦53型(岩本)、艦戦52型(熟練)、彩雲
加賀   天山(友永)、Fw190T改、流星(601空)、烈風

夜戦BGMが『連合艦隊、西へ』から『モドレナイノ』に変更されていて、あれ!?という感想を持ちました。
連合艦隊、西への入りが好きだったんですけどね…。
すぐに夜戦が終わってしまいサビまで聴けなくてなんか残念な気持ちになりましたね。


5-5編成
長門   試製41cm三連装砲×2、夜偵、一式徹甲弾
陸奥   試製41cm三連装砲、46cm三連装砲、紫雲、一式徹甲弾
翔鶴   天山(村田)、流星(601改)、艦戦53型(岩本)、艦戦52型(熟練)
瑞鶴   天山(村田)、流星改、烈風(601空)、彩雲
鈴谷   天山(友永)、Fw190T改、艦戦52型(熟練)×2
五十鈴  四式水中聴音機×2、三式爆雷投射機

5-5もBGMが『連合艦隊旗艦』に変更されてましたね。
ボス曲はいつものままでしたが。



初めて5-5を攻略して勲章をもらえました。
やはり戦艦1に空母5が大正義かな。
支援が必要なかったから。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0047話『羽黒の淡い決意』

 
前書き
更新します。 

 




本日は司令官さんが町を視察に行くというので私、羽黒が同行することになりました。
それで準備している時に足柄姉さんに話しかけられました。

「ねえ羽黒…?」
「はい? なんですか足柄姉さん?」
「今日は提督と一緒に町に視察に行くそうじゃない?」
「はい。だから少し楽しみなんです!」

私がそう言うと足柄姉さんはどこか面白そうに「ははーん?」という言葉を発した後に、

「そういえば…羽黒ってば提督の事、好きだったかしら?」
「ッ!? い、いえそんな…! それに私なんかじゃ司令官さんとは釣り合いません!
それに司令官さんには榛名さんという心に決めた人がいるんですからまだ絆も結んでいない私が言っても…」

自分で言って落ち込んでしまいました。
それは足柄姉さんも思っているのだろう。

「そうよね…私達姉妹で唯一絆を結んでいるのは妙高姉さんだけで那智姉さんも含めて私達はまだ練度は80代だからね」

それでもイベントでは活躍しているけどね!って足柄姉さんは前向きに言っていました。
だけど足柄姉さんや那智姉さん、妙高姉さんに比べて私は最近の出撃はめっきりない。
私以外にもあまり出撃していない子はたくさんいるけど、だけど司令官さんはたまに私達の事を考えてくれているのだろう。
本格的に出撃する時にはローテーションを組んでくれるから向き合ってくれているとは思っている。
それでも、司令官さんには少しでいい、私にだけ意識を向けてくれることを祈っていたりするのは悪い事なのかな…?
私だって艦娘だけどそれ以前に女の子だ。夢を見たいことはある。

「でも、足柄姉さん。今はこの気持ちはまだ閉じ込めておこうと思っているんです。
司令官さんが率先して練度上げをしてくれるならその時には頑張ろうと思っていますし…」
「はぁ、相変わらず甘いわね、羽黒は…そんなこと言っていたらいつまで経ってもチャンスなんて掴めないわよ?」

そう足柄姉さんに言われて、でも率先して司令官さんに詰め寄るわけにもいきませんし…。
やっぱり押しが弱いのが私の短所だから。

「とにかく、今日の視察で思い切って提督と楽しんできなさいな。
ただでさえ提督と一緒にいられる時なんて滅多にないんだから…しっかりと限られたチャンスを手にするのよ」
「う、うん…わかりました」
「うん。それならよし」

そう言って足柄姉さんに送り出されたけど、そんな勇気なんて私には…。
そんな悶々とした考えが頭に靄をかけている中で、司令官さんと合流する。

「あ、羽黒。来たか」
「は、はい…ッ! 今日は同行させてもらいますのでよろしくお願いします! 司令官さん!」
「ああ、よろしく。…ん? どうした羽黒? 顔が赤くなっているぞ?」

いけない…!
司令官さんの顔を見たら足柄姉さんの言葉を思い出してしまって頬が赤くなってしまったみたい!

「はぐっ…司令官さんは気にしないでください…私の落ち度なだけですので…」
「そうか…?」
「はぐぅ…」

変な唸り声を出して気を紛らわせるしかなかった。









それから司令官さんと町を視察に行くとさっそく町の人達が司令官さんに気づいたのだろう近づいてきた。

「提督の嬢ちゃん! 今回の作戦では大活躍だったらしいじゃないか!」
「そうよ! 自ら出撃したっていう話じゃない? 怖かったでしょうに…」
「提督って戦えるものなんだなぁ…」
「いや、この提督さんだけが特別なんだろう…?」

司令官さんはどうやらもう町の人気者になってしまっているようです。
私は後ろに控えながらも司令官さんを見守っていました。
司令官さんはいろんな方から話しかけられながらも決して笑顔を絶やさないでいました。
それで私も見習わないといけないなぁ…という思いに駆られました。
そして一通り話が済んだんだろう。
今度は私の方へと町の人達は視線を向けてきた。
はぐっ!? な、なんでしょうか…?

「今日はまた大人しそうな子だな。提督の嬢ちゃん」
「はい。羽黒、挨拶を…」
「あ、はい。妙高型重巡洋艦の四番艦の羽黒です。よろしくお願いしましゅ…あう」

緊張をしてしまって言葉を最後に噛んでしまいました。
は、恥ずかしい…。

「羽黒は少し上がり症なんですよ。ですから手加減してやってください」

司令官さんがそう言ってフォローしてくれました。
やっぱり司令官さんは優しいです。
それから主に女性の方たちに話しかけられて「苦労してない…?」とか「なにかあったら言ってね? 力になるから」と言った感じの話をしてもらいました。
それで感謝の気持ちになりながらも、

「はい。お手数かけてすみません。私は大丈夫です!」
「そうかい。頑張りなさいね」
「応援しているよ」
「はい!」

そんな話をしながらも司令官さんと町の視察をしていきました。
町の様子は明るいもので暗い顔をした人はそんなにいない印象を受けました。
そしてお昼になって、

「羽黒、お腹すいていないか? 喫茶店にでも寄っていこうか。奢るぞ」
「い、いえ…そんなわざわざ司令官さんにそこまでしてもらわなくても私もお金は持っていますので…」
「まぁまぁ。ここは私を立ててくれ。普段頑張ってくれている君達に少しでも労いたいからな」
「うう…すみません」

それで結局司令官さんに押し切られて昼食を御馳走になりました。
トーストサンドを頼んでかぶりついているとどこか微笑ましい表情で司令官さんがハンカチを出して、

「羽黒、口が汚れているぞ?」
「はぐ…」

そう言ってハンカチで私の口を拭いてくれました。
は、恥ずかしいです…。

「あ、あの…司令官さん。恥ずかしいので、その…」
「あ、ごめんな。つい構いたくなってな」
「も、もう! 司令官さん!」
「はははっ! ごめんごめん」

そんなやり取りをしながらも視察を終えて帰り道になったところで、

「あ! 提督のお姉ちゃん!」

とある女の子が司令官さんに抱きついてきました。

「あ、七海ちゃんか。久しぶりだね。元気にしているかい?」
「うん! 今ね、海軍学校に入るために勉強をしているんだ」
「そっか。それで七海ちゃんの大事なものは確認できたかな?」
「うん。お父さんや友達をより大事にするようになったの。これも提督のお姉ちゃんのおかげなんだよ!」
「そっか。それじゃお勉強頑張ってね」
「うん!…ところでそちらの艦娘さんは…」
「うん。羽黒、紹介を」
「はい。妙高型重巡洋艦の四番艦の羽黒っていいます」
「羽黒お姉ちゃんか。よろしくね。私、七海っていうの」
「七海ちゃんですね。よろしくお願いしますね」

それから司令官さんと七海ちゃんと公園でお話をしながらも楽しい時間を過ごさせてもらいました。
そして七海ちゃんと別れた後に、

「…それで羽黒。今日は少しでも楽に過ごせたか?」
「え…? それってどういう…」
「うん。足柄達に最近羽黒が落ち込むことが多いからかまってやってって言われたんだ。
それで私としても羽黒と一度ゆっくりと話してみたかったからちょうどよかったっていうかな」
「そうですか。もう姉さん達ったら…」
「怒らないであげてくれ。三人とも羽黒の事を大切に思ってくれている証拠なんだから」
「わかってます」

それで私は笑顔になりながらも、司令官さんの鎮守府に入れてよかった…という気持ちになりました。
いつか…司令官さんに私の気持ちを聞いてもらいたいです。
その為にもこれからも足柄姉さんの言葉じゃないけど積極的にならないといけないと思いました。


 
 

 
後書き
今回は羽黒視点で書いてみました。
次羽黒を出す時は那珂ちゃんや神風も絡ませて書きたいですね。



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0048話『ゴーヤの見た夢』

 
前書き
更新します。 

 




…今朝、変な夢を見た。
どこかの世界でゴーヤが海底の底で発見されるっていう夢…。
嬉しいのに、どこか悲しいと感じてしまった。
少し恐怖も感じて布団にくるまってさっきまでの夢が忘れられるようにしていると、ふと誰かが私に覆いかぶさってきた。

「…重い。誰でち?」
「おはよー。でっち」
「ローちゃん…」

ゴーヤに覆いかぶさってきたのはどうやら呂500…ろーちゃんだったらしい。
ニコニコと笑いながらローちゃんは私に抱きついているままだった。
まぁ、そんなのも日常茶判事だからいいもんだなぁ。

「…ところででっちはなんで涙を流しているの? なにか悲しい事があったですって…?」
「え? そうかな…」

それで目元を触ってみるとどうやらゴーヤは泣いていたらしい。

「夢をみたんだ…」
「夢ですか?」
「うん。変な夢だった…でももう思い出せないから大したことじゃないものだったんだと思う」
「そっか」

そんな事を話していると他のみんなも起きだしてきたのかそこかしこから声が聞こえてくる。
基本私達伊号組…私、イク、イムヤ、はっちゃんは六人ずついるために四人ずつが六部屋で分けられている。
特に提督と絆を結んでいる組は同じ部屋で生活をしている。

「おはようなのね」
「ふわー…おはようございます」
「おはよう…」

三人が目を覚ましてきたのか寝間着のままこちらに顔を向けてきた。

「おはようでち」
「おはようですって」

ゴーヤとローちゃんもそれで朝の挨拶の言葉を返す。
それからみんなでジャージ着に着替える。
基本出撃の時は水着になるけど普段はすぐに着替えられるようにジャージを着ている。
どこかの鎮守府では普段から水着で鎮守府内を出歩いているっていう話だけどうちではこの方針だ。
提督がそれを決めたんだけどどうやらやっぱり普段から水着のままはさすがにまずかったらしい。

「でっち。これからどうする…?」
「そうでちね。今日の任務分のオリョクルを終わらしたら多分暇ができるから執務室にでも遊びにでもいく…?」
「いいと思うですって!」

ローちゃんとそんな話をしながらも食堂にいき料理を頼んで席についたところで、

「あ! 提督だ。提督、一緒にご飯を食べようですって!」
「ああ、ローちゃん。わかったよ」

それで提督がゴーヤ達の前の席に座る。
提督は少し変わり者でち。
榛名さんに憑依してしまってからどうにもより一層ゴーヤ達艦娘の事を大事に思うようになったらしくてゴーヤ達の体調をよく見てくれている。

「ゴーヤ、どうした? 食事の手が止まっているぞ?」
「でっち? やっぱりどこか調子が悪いの…?」
「そんなこと、ないでち…」
「なんだ? なにか悪い夢でも見たのか…?」

提督の目に心配の色が映る。
やっぱり提督はどこか察しがいいでち。
すぐに体調を気遣ってくれるからいい人だな。

「なにか不安があるなら話してくれないか…? 相談には乗るぞ。な、榛名?」
《はい。ゴーヤさん、なにかあったらすぐに相談してくださいね》

提督の呼びかけに榛名さんが表に出て来て一緒に心配してくれた。
嬉しいでちね。
それで話していいか迷ったけど今朝のおぼろげな夢の内容を話してみた。

「今朝ね…変な夢を見たでち。どこかの海底でゴーヤを含めた潜水艦が見つかって、しかもゴーヤは地面に突き刺さっていたでち」
「また的確な夢だな。でも、それだとすでに五島列島沖で私の世界では2015年に発見されていたと思うんだけど、海底に突き刺さっているか…」

それで提督は少し興味深そうに顎に手を持って行って、

「そうだな。ゴーヤ、試しに自分が沈んだ場所を見に行ってみたらどうだ?
この世界では深海棲艦が暴れているんで深海の調査はできていないからなにか発見ができるかもしれないぞ?
まぁ、自分の前世の姿がもしかしたら見つかるかもしれないから嫌なら嫌って言ってもいいけど」

提督の提案は渡りに船であったでち。
このもやもやした気分はどうにも晴らさないとなにか嫌でちから。

「いくでち! なにかあるかもしれないなら行ってみたいでちから」
「そうか。それじゃゴーヤの今日のシフトは外しておくとしよう。ついでにろーちゃんも着いていってやりなさい」
「いいですって…?」
「ああ。ろーちゃんはカンストしてから最近出撃という出撃もしていないだろう? 気晴らしも必要だからな」
「提督! ありがとうございます! でっち、楽しみだね」
「そうでちね」

ろーちゃんもゴーヤ以上に楽しみにしているのでなにか発見できるか楽しみになってきていた。









それから提督の許可も貰って五島列島沖までろーちゃんと一緒にお出かけする事になった。
なにかあったらすぐに連絡するようにと提督に言い含められたけど。
それで水着に着替えて海底へと潜っていきゴーヤが沈んだあたりを捜索している時だった。

「でっち! なにかすごいものを見つけたですって!」
「なにかあったでちか…って…これはまたすごいでちね」

そこにはほとんど原型をとどめている潜水艦がまさしく海底に突き刺さっていたのだ。

「本当にあった…」

それでどこかに型番が記入されているはずだから確認していると、

「でっち! 見つけたですって!」
「あったでちか?」

ろーちゃんに呼ばれてそちらに近寄ってみるとそこには錆びれて見にくくなっているけどまさしく『イ58』という名が刻まれていた。

「ゴーヤでちね…」
「うん…」

それで少し場はしんみりする。
ここにはゴーヤ以外にも姉妹たちがあちこちに沈んでいるのだ。
だからまだ艦娘として顕現していない彼女達の事を思うと胸が締め付けられる。

「…ろーちゃん。帰ろうか。いつまでもいていい場所じゃないでち」
「うん。でっち」

それでゴーヤ達が帰ろうとするがなにやら海の上で深海棲艦が進行しているのを捉えた。
だから、

「ろーちゃん、気晴らしに一発かますでちか?」
「うん、やろう。でっち!」

それでゴーヤとろーちゃんで敵水上型深海棲艦を気付かれる前に叩いたのであった。
そして帰投後に執務室へと向かい提督にその事を報告する。

「そうか…。本当に突き刺さっていたんだな。正夢だな」
「そうだったみたいでち」
「…ゴーヤは米軍の実験で自分が沈められる記憶も残っているんだろう?」
「…うん」
「辛かったらいつでも言いに来ていいからな。いつでも慰めてあげるよ」
「提督、ありがとうでち」

それで心のもやもやもがやっと晴れたような気がして今日初めての笑顔を浮かべられたと思う一日だったでち。


 
 

 
後書き
今回はニュースでやっていた海底に突き刺さっている潜水艦の話を取り入れてみました。
まだ58とは判明していませんけど、だったらいいなーと浪漫を感じました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0049話『提督と榛名の問題』

 
前書き
更新します。 

 




今日は演習で敷波の錬成も一応は終わったので次の駆逐艦を育てようと考えている。
それで艦娘表を取り出して少し考えてみる。
基本改二とか大規模作戦で重要になってくる子が来ればその子を育てているんだけど私はある程度育成については落ち着いてきている最近はこの鎮守府に配属順に育てている。
それで敷波を錬成し終わったからnewソートを確認して、思えば初期からこの鎮守府にいる子達にはまだ未熟だった頃には大変お世話になったなぁと思う。
初期艦の電から始まりどこから手を付けたらいいかを色々と考えさせられて、本当に最初なんか『工廠』とか『入渠』とかの読み方すら分からなかったんだもんな。
それから白雪、龍田、赤城と任務で仲間になる子達にも大変お世話になった。
それで資材集めて艦娘集めてイベントや通常海域攻略を頑張って、気づけば異世界で本当に提督をやっている。
なかなか普通なら経験できない体験をしていると思う。
そんな事を思っていると榛名が表に出て来て私の顔を覗き込みながらも、

《提督…? どうされました? なにか考え事をしている顔をしていますが》
「いや、なんでもないよ榛名」
《そうですか…? 提督は考え事をしている時は、こう…眉間に皺が寄る感じでしたから》

榛名が私の真似をしているのか眉間に皺を寄せている。
榛名…。うちに最初にやってきた戦艦。
最初は金剛とか目当てで始めた艦これだけど最初という事で愛着が沸いてしまって今では好きな艦娘なんだもんな。
それでつい榛名に手を伸ばしている自分がいた。
だけどスカッと榛名の透明の身体を通り過ぎてしまった手を見て、

「卑しい意味じゃないけど純粋にやっぱり、榛名に触れてみたいな…」
《提督…》

それで少し場がしんみりとしてしまう。

「すまない…榛名の気持ちも考えないでこんな発言をしてしまって…」
《いえ…。私も提督と触れ合いたいのは本当です。榛名は…提督と触れ合いたいです》

そう言いながらも榛名は私の背後に回ってその透明の腕を伸ばしてきて後ろから抱きしめてくれた。
その感触を確かめられないのがとても残念だけど今だけは嬉しい…。
そうだな。

「明石に相談してみるか…?」
《明石さんですか…?》
「ああ。明石なら榛名の今の状態を改善できるいい案でも浮かべられるかもしれないから」
《もしそんな方法があったら榛名も嬉しいです…》
「よし。事は早めにしたほうがいい。忘れないうちにな」

それで今日の任務を終わらせて、午後になり早速明石のいる工廠へと足を運んでいた。
工廠のドアを開けて、

「明石、いるか…?」
「はいはーい。いますよー」
「提督が工廠に来るなんて珍しいですね」

そこには明石以外に夕張の姿もあった。
ツナギ姿でとても見えている肌は健康的だな。

「ああ。明石、それに夕張。少し相談したい事があるんだけどいいかな…?」
「なんです? 改修以外でも出来る事ならやりますよ」
「私も工作関係は好きですから力になりますよ」
「すまんな二人とも。それで今日は折り入って相談があるんだが…榛名」
《はい》

それで榛名も出てきて一緒にある事を相談する。

「そのだな。今の榛名の現状なんだけどどうにかならないものかな…?」
「榛名さんの現状ですか。まぁそうですね。
どういう理由なのかは分かりませんが提督が宿った代わりに榛名さんは今は幽霊みたいな状態ですからね。
私と夕張ちゃんも何度かその事で議論した事はあるんですよ。
でも今まで提督と榛名さんは現状は満足していたらしいですから聞かれない限りは黙っていようと思っていたんです」
「だけどこうしてやっと提督も重たい腰を上げて榛名さんについて考えてくれているというのは嬉しい事なんですよ?」
「そ、そうか…それで二人はなにかいい案はあるのか?」
《よければ教えていただけませんか…?》

そう言って私と榛名は二人に頭を下げる。
それで二人も慌てたのだろう、「よしてください!」と言葉を零した後に、

「提督と榛名さんのお気持ちは分かりました。二人とも触れ合いたいんですよね?」
「青春ですね。いいですよねー…」
「ばっ!? た、確かに触れ合いたいというのは本当だけど榛名の自由を束縛しているのが嫌なだけだ」
《そうです! 確かに提督と本当に触れ合いたいのは本心ですけど、その…》

榛名!? そこで恥ずかしがって言葉を濁さないでくれ、こっちもなんか恥ずかしいから。

「…御馳走様でした」
「そうですね。まぁ方法はなくもないんですよ」
「本当か!?」
「ええ。まぁそうなってくるととてもシンプルで簡単な話なんですけど妖精さんの力を借りて榛名さんの精神だけを別のもう一つの身体に移すっていう手もあるかもしれないんです」
《え…それってもしかして…》
「はい。榛名さんの考えている通り、榛名さんの個体を用意してもう一人の榛名さんと意識を融合させるっていう感じなんですけど…」
《それは嫌です!》

そこで榛名が叫んだ。
それは当然だ。
意識の融合は下手をすればそのもう一人の榛名の意識を奪い取る行為だからだ。
私も最初、榛名の意識を殺してしまったと思った瞬間には血の気が引いてしまったからな。

《そんな…もう一人の私の意識を奪ってまで生きたくありません。申し訳が立ちませんし…》
「そうですよね。相手の気持ちを尊重できる榛名さんならそう言うと思っていました」
「だから安心も出来ましたよ。もしこの方法を採用すると言ったら最悪榛名さんは嫌われ者になってしまいますからね」

それで安心したと言って明石と夕張は安心する溜息をついていた。

「それじゃ明石に夕張。他にはなにか方法はないのか…?」
「無くはないですけどそれも危険なものです。最悪提督の魂も無くなってしまうかもしれないものですからこの方法はお教えできません」
「あるにはあるんだな…?」
「はい。ですが私達も含めて提督という存在は私達の支柱です。ですから危険な策に乗らせるわけにはいきません。
ですからもっと安全で、かつ二人とも別々に生きられる方法を夕張ちゃんと模索してみようと思います」
「頼めるか…?」
「お任せください」

そう言って明石は親指を立ててくれた。
こういう時の明石は頼りになるから安心できるものなのかもしれない。
私も私で案があったら話していこうという話で今回の相談は幕を閉じた。
そして工廠を後にして、

《提督…榛名は少し不安なんです。もしもですよ? 提督と私が無事に分離できたとします。
でもそしたら提督は戦う術を無くしてしまうかもしれないからです。
そんな時にまたこの間の大規模作戦の時のように出撃しろと言われてしまったら、榛名はもう提督と一緒に戦えないから提督が危険に晒される頻度が上がってしまいます。
そんな事になってしまったら分離できたことを後悔してしまうかもしれません…》
「そこまで私の事を考えていてくれたんだな。嬉しいよ榛名。
大丈夫…その時は柳葉大将を通じてもう戦えなくなったって大本営に報告するから」
《本当ですね? 約束してください。もう、あの時のように提督が大破してしまう光景は榛名は見たくありません…》

それで思い出しているのだろう、北方水姫の攻撃で大破してしまった私の姿を。
そしてその時になにもできなかった榛名はとても後悔をしたのだろうと…。

「大丈夫…。きっと榛名の事を悲しませることはしないから」
《約束しましたからね?》
「ああ…」

そう約束しながらも私達は執務室へと歩いていくのであった。


 
 

 
後書き
提督と榛名の問題を今回は書いてみました。
時折この話を挟んでいこうと思います。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0050話『長波の練度上げと慣れてはいけない事』

 
前書き
更新します。 

 




本日から長波が演習艦隊で出撃するようになった。
それで昨日は練度をリランカ島で40そこらまで上げておいた。

「提督っ! ついにあたしを育ててくれるようになったんだな!」

執務室で活気あふれる顔つきで長波が私に抱きついてきていた。
その突進力たるや時折背後から飛びかかってくる雪風や時津風並の威力を出しているので中々に腰に来る。

「ああ。今は大規模海域も終わってそんなに時間も経っていないから駆逐艦を平均的に練度上げをしようと思ってな」
「うーん…それだとあたしも70まで上がったらまた待機になっちゃうのか」
「すまないな」
「いいって…あたし達を全体的な視点で見てくれているんだから構わないよ。
今日の午前中の演習で出会った艦隊にいる駆逐艦の子に話を聞いてみたらその艦隊は効率重視で使える子しか育てていないとかいうんだぜ?
それを聞いてて嫌になっちまったよ…。
あたし達駆逐艦は確かに他の艦種に比べれば弱いかもしれないけど、それでも練度を上げれば強くなれるんだ」
「そうだな。だから君達も順番に育てているんだろう? 決して改二艦にも練度が高ければ勝てるっていう事を証明したいだろ?」
「おうよ!」

それで長波は「あたし達の気持ちも汲み取ってくれてありがとうな!」と笑みを浮かべていた。
うん。そうだよな。
決して駆逐艦は弱くない。
改二艦にも引けを取らない子はたくさんいるんだ。
それを見れていない提督が数いるのも現状だからしょうがないといえばしょうがないが。
うちは一応まず目指すべき道は最低ラインは全員70~80に届くように上げていきたいと思っている。
まだまだ先は遠いけど全員が満遍なく力を振るえるように日々努力していきたい。

「それはそうと…提督。たまには提督も出撃もした方がいいんじゃないか…?」
「え…?」

長波の意外な相談に私は目を丸くしてしまった。
いや、だってね。驚きますよ。そりゃ。

「意外な相談だったか…? 確かに提督は榛名さんとかのアドバイスを借りてなんとか大規模イベントでは戦えたと思う。
だけど、また大本営から無茶な注文をされないとも限らないだろ?
だったら通常海域でも少しは出撃して慣らしておいた方が後々になって効果を発揮すると思うんだ」
「ふむ、確かに長波の言う事も一理ある。だけどそれでみんなが納得してくれるものかな?
ただでさえ私が直々に出撃するのに否定的な子も多くいるんだろうし…」
「まぁそりゃそうだけど。でもだからって腕を鈍らせてちゃ勿体ないと思うんだ」
「ふむぅ…そうだな。長門と大淀に相談してみるか」

それで二人を執務室へと呼んだ。
そしてやってきて長波の相談を二人にしてみたら、

「反対…と言いたいところだが、無益に断るのもできないかもしれないな。これからの事を考えると大本営はどう出るかわからんからな…」
「そうですね、長門さん。榛名さんや妖精さんに頼らずに提督自身の練度を上げるのも解決策の一つだと思います」

長門と大淀も私の出撃に関しては幾分肯定的みたいだな。
長波もうちのトップ陣営の二人のその反応に満足そうに頷いているし。
だけど榛名は納得するだろうか…?
思い出すのは昨日の榛名の言葉。

『本当ですね? 約束してください。もう、あの時のように提督が大破してしまう光景は榛名は見たくありません…』

という榛名の本音から来る言葉。
あれには榛名の思いのすべてが込められているからな。
それで一応榛名の意見も聞こうと思い、榛名に呼びかけてみた。

「榛名。君の意見はどうだい…?」
《はい。私も提督自身の練度を上げるという意味では反対はないですが…でも見ているだけはつらいんですよ?》
「ま、まぁ榛名さん。提督はあたし達が守るからさ! だからさ。安心してくれないか?」

長波が額に汗を浮かばせながらも榛名の説得に回っている。
それで榛名も素直に勘弁したのか、

《はい…。ですが提督? ダメだと思ったらすぐに言ってくださいね? 榛名、前にも言いましたけど気持ちには素直になってもらいたいんですからね?》
「はい。わかりました…」

榛名の少し涙を浮かべながらの訴えには私は決して逆らえない。
だから約束は決して破ってはいけないのだ。

「ふふふ…榛名さんも相当提督に過保護になりましたね」
《大淀さん。私の気持ちにもなってください! 私がどれだけ提督の事を思っているか…》

そんな榛名の言葉に長門と長波が小声で、

「榛名…盛大に自爆しているぞ」
「そだなー」
《はうっ………も、もう知りません!》

と、言っており榛名は顔が赤くなってしまい、そんな逃げセリフを言って私の中に隠れてしまった。

「あー…こうなったら榛名は中々出てこないな。
まぁ一応榛名の許しも得たから少しばかりリランカ島に長波の練度上げも兼ねて出撃してくるか。
長門に大淀。いつも通りに私のいない間は提督代行を頼んだ」
「わかった。提督も少しは練度上げを頑張ってくれ」
「お任せください。長門さんにはしっかりと出来るように今後も努力してもらいます」
「なっ…まさか、大淀? 今後は私に提督業も押し付けるつもりではないよな?」
「もし提督が不在の時に深海棲艦が攻めてきたら大変ですから一人でも提督の仕事が肩代わりできる人がいれば嬉しいのですが…」
「それは、確かにそうだが…むむむ」

それで長門は悩んでしまっていた。
改二になってから活躍の幅が増えたばかりだから悩ましいのだろうな。

「すまんな、長門。前にも言ったが長門以外に務められるような人材がいないんだ。だから頼む」
「はー…提督の頼みだと断れないではないか。わかった…少しでも尽力できるように努力してみる」
「ごめんな」

それで今日のリランカ島に出撃するメンバーに私の名前が書かれたのだった。








それからリランカ島を何度も往復している時であった。
旗艦の長波が盛大に爆雷を投下して潜水艦を沈めている時に後ろから今回のメンバーで唯一の空母である葛城が話しかけてきた。

「でも、あなた。本当に大丈夫なの…?」
「何がだ、葛城…?」
「いや、平気そうな顔しているけどいざこういう戦闘になってもとは人間だった提督は怖くないのかなって…」
「そりゃ普通に怖いさ。でもその恐怖も北方水姫の圧に比べれば軽いモノなんだなって…。
最初に大物に当てられた事も関係しているけどあれに比べたらあんまり怖くはないんだよな。
もちろん油断も慢心もしているつもりはない。やるからには全力だ」
「そっか…。私が心配する必要もないくらいあなたも慣れちゃったのね」
「いやな、葛城。慣れているわけではないぞ。慣れたら慣れたで大変だ。
もとが人間だからこそ深海棲艦だろうと殺す事には変わらないんだからそこを見失ったらただの殺し屋になってしまうからな」
「そうよね…私達だってそれは同じことだわ。理由ない殺しはしたくないからね」
「そうだ。だから慣れるっていうのが一番いけないんだ」

そんな会話を葛城としている時だった。

「提督! ソナーに感あるぜ! 水上艦もいるぞ!」

長波のそんなセリフが聞こえてきて、

「ほら。葛城、出番だ。かっこいい所を見せてくれ。私も援護を頑張るから」
「そうね。私も立派な正規空母だってところを見せてあげるわ!」

それから私達は協力して敵潜水型深海棲艦の群れを倒していった。
それで私も少しは自身の練度は上がったかなって思うのであった。


 
 

 
後書き
前半は長波。
そして後半は殺しに慣れちゃいけないという事を書いてみました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0051話『瑞雲教徒の集まり』

 
前書き
更新します。 

 



………突然だがうちの艦隊にはとある宗教が存在する。
それは艦これをやっている者なら理解できるだろう装備の事だ。


そう、瑞雲…。


うちには瑞雲を装備できる艦娘が多数いるのだ。
航空戦艦から、航空巡洋艦、水上機母艦、補給艦、果てには潜水空母すら装備できる。
特殊なケースでいけばイタリア艦も装備可能だろう。
そんな一大サークルを築いている彼女達が今夜新たに『瑞雲の友の会 ××回目』という集会を開くという。
青葉からの情報だと今回の狙いは新たに艦隊に加入した神威の引き込みだろうという話である。
別に口出しをする事もないんだろうけど、少し不味い事になった。
今朝大本営からとある情報が電文で送られてきてどこからか情報が漏れたのかその情報が彼女達に伝わってしまい見事に感化されてしまったらしい。
その情報というのはとあるテーマパークで瑞雲祭りを近々に盛大に開くというもの。

どこから資金を捻出しているのか知らないが原寸大瑞雲を製作する事から始まった。
瑞雲の限定グッズの販売。
一部の白露型が踊る艦娘音頭を原寸大瑞雲の周りで踊るというある意味カルト的なステージ。
瑞雲が装備できる艦娘達による瑞雲航空ショー。
瑞雲をモチーフに作られたパークマシンで操縦も出来るという謎仕様。
瑞雲の歴史を振り返ろう。
瑞雲博覧会。
瑞雲を駆使して君も深海棲艦を倒そう! 君も瑞雲と握手!(ッ!?)
瑞雲、瑞雲、瑞雲……………etc。

大本営の方針が本気で謎過ぎてある意味怖い…。
この戦争が始まって落ち込んでいる市民を活気づけようという企画から始まったそうだが、なぜ瑞雲一押しなのかわからない。
…まぁ、そんなわけでうちの艦娘達も見事にやる気を出してしまった訳で、やり過ぎないように見張る必要があるという訳だ。

「…という訳で、川内」
「ここに…」

私の後ろにはまるで忍者かという仕草とセリフを言っている川内がいた。
君はいつの間にニン○ャス○イヤーになったんだい…?

「まぁ、いいか…。それじゃ川内。『瑞雲の友の会』なるものはどこで開かれるか調べてもらっていいか…?」
「いいよー。それじゃ今度夜戦させてくれるっていう約束で調べてもいいよ?」
「わかったわかった。今度サブ島にでも連れてってあげるから頼む」
「了解だよ。それじゃ!」

シュンッ!という掻き消える音とともに川内は一瞬で姿を消した。
それを見て、

「…やっぱり川内は本物の忍者なのか…?」

本気で疑ってしまうくらいの動きだったぞ、今の?
とにかく後は情報待ちだな。







…それからとある一室で『瑞雲の友の会』が開かれるという情報を川内がキャッチしたというので川内とともにここまでしなくてもいいのだけれど屋根裏に潜入しているという。
私もなぜか忍者チックな衣装にわざわざ着替えさせられてしまった。

《あの…川内さん? ここまで本格的に潜入捜査をしなくても》
「いいじゃん! なんかやっているうちに楽しくなっちゃってさ」

小声での榛名の言葉に川内はそう言って面白そうに笑う。
普段からどれだけ夜戦したい根性を貯めこんでいるのか。
それを少しでも発散できるのならいいだろうという結論に至る。
そして目的の部屋の上に到着した。
下から数人の声が聞こえてくる。

『神威。君の『瑞雲の友の会』の入会を歓迎するよ』
『イアイライケレ、日向さん』
『いや、この場では師匠と呼ばれているので今度からそうしてくれ』
『わかりました、師匠』

それでその場に集まったメンバー全員が拍手を贈る。

(なんだろう…この集会?)
(さぁ…? 私には少し理解できないかもしれない)
《榛名もです》

川内と榛名の三人で聞いていると不思議な集会だなという感じだ。
まぁ日向が会長的役割なのはなんとなくわかった事だけど。

『…さて。それでは諸君。今回青葉から聞いた情報によると…』

青葉ェ…二重スパイとはやってくれるな。
私がそんな事を思っている間にも話は進行していく。

『はい、師匠! 僕達も提督が視察に行く町で小規模だけど開いたらどうかな?』
『いい考えですわモガミン』
『…そうだな。後で提督に打診してみるとしよう。次、なにかあるか…?』

最上の案が即座に決定されているのを聞いてフットワークが軽いなぁと思ったり…。

『…あの、少し場違いで言わせてもらうけどいいかしら?』
『なんだね、ローマ?』
『私達イタリア艦はどうすればいいかしら…? 瑞雲を装備できるとはいえそう操作はあなた達に比べれば劣るし…』
『なんだ、そんな事か。気にするな。瑞雲を愛する者に優劣をつけるつもりはない。皆平等に同士だ』
『そーですか~。でしたらポーラも安心です~。ところでお酒が飲みたいです…』
『今は我慢しなさいポーラ』
『…はーい、ザラ姉様』

そんなやり取りが次々とされていく。
時には、口論になってどちらの瑞雲が優れているとかが始まって、だけどすぐに瑞雲に優劣をつけるな!という日向の叱咤の言葉に落ち着きを見せたり。

『大きくてスリムな翼が光って点いたり消えたりしているの。アハハ、大きいの……瑞雲かな? イヤ、違う、違うの。瑞雲はもっとバーって動くもんね』

というイクのどこかの精神崩壊者のセリフが聞こえてきて思わず吹き出しそうになったりしたり。
そんな面白おかしいやり取りが何度も行われて、なのに落ち着きを見せるどころかどんどんとヒートアップすらしていく部屋の中はどこか熱気がすごい。

(提督…聞いていてなんか頭がおかしくなりそうだよ)
(奇遇だな。私もだ)
《榛名もです…》

私達はどこか狂気の集会に紛れ込んでしまったのだろうと悟る。
そこに日向の『さて…』という言葉の後に、

『そろそろネズミには登場してもらおうか』
((《ッ!?》))

私と川内は共にやばいっ!?と即座に悟って撤退しようとしたが突然天井が開いて私と川内は部屋の中へと落下してしまい、瑞雲が装備できる艦娘達に囲まれてしまった。
それで川内とお互いに身を寄せ合って震えながら、

「…ど、どうなる?」
「そうだな。提督と川内に榛名よ、少し瑞雲について語るとしようか。なぁに、時間はいっぱいある」

その晩は瑞雲についてあれこれを叩き込まれてしまい気が狂いそうだった。
川内なんか最後には白目になって気絶していた。









…そして翌日になって大淀が執務室にやってきて、

「…提督? どうされました? どこかやつれていますよ?」
「気にするな。それより瑞雲はいいよな…」
「て、提督…?」

私は自然とそう呟いていたのだった…。
どこからともなく、

『まぁ、そうなるな』という日向の声が聞こえてきたような気がした…。


 
 

 
後書き
昨日のTwitterの運営の情報で我慢できずにこんなネタ話を書いてしまいました。
反省はしているけど後悔はしていません。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0052話『神通の献身』

 
前書き
更新します。 

 



……昨日に姉さんは提督と一緒になぜか忍者のような黒装束の恰好になってどこかへと言ってしまいました。
いつもなら夜になると姉さんの「夜戦だー!」という叫びが上がるものなのですがその日に限っては叫び声は上がらずにいつも姉さんと一緒に夜の哨戒をともにしている子達が心配になって部屋まで来るほどでした。
それで少し心配になりましたが日にちが変わる時間帯くらいに姉さんはなにやらゲッソリとした顔つきで部屋に帰ってきました。

「どうしたの、川内ちゃん!?」

那珂ちゃんが姉さんの心配をしますが姉さんはただ一言、「寝る…」と言ってそのまま深い眠りについてしまいました。
その姿に何があったのか本気で心配になりました。
これはおそらく提督も絡んでいる話だと思いましたので夜遅くに提督の寝室を訪ねてみたのですが、その際に布団になにもかけずにうつ伏せで横になっている提督の姿に私は慌てました。

「て、提督!? どうされたのですか!?」
「うっ………うう…ずい、うん…うー…」

なにやら言っているようでしたが小さすぎて聞き取れなかったので代わりに榛名さんに聞くことにしました。

「榛名さん、出てきてください」
《はい…なんでしょうか神通さん…?》

透明の姿で出てきた榛名さんは知っていないものからしたらお化けと勘違いしてしまいそうな光景ですがこの鎮守府ではその事を知らない子はいません。
だけど、出てきた榛名さんの表情は本気でお化けと勘違いしそうなほどに疲弊していました。

「あ、あの…大丈夫でしょうか?」
《榛名は…榛名は、大丈夫、ではありません…》
「ッ!?」

榛名さんのいつもの元気になれる合言葉である『榛名は大丈夫です』とは真反対のセリフにこちらもただ事ではないと悟りました。

「なにが、あったのですか…?」
《なにがあったか、ですか…? そう…瑞雲…》
「瑞雲…? 瑞雲がどうされたのですか?」
《いやっ! 瑞雲が迫ってくる…榛名は、榛名は大丈夫ではありませんッ!》

突然癇癪を起したかのように涙を流して瑞雲に対して恐怖を抱いている榛名さんの姿に、

「…本当になにがあったのですか…?」

私の疑問は絶えなかったです。
この状態の榛名さんは使い物にならなかったためにすぐに提督の中で休んでくださいと言って、それで榛名さんは無言で承諾したのか姿を消しました。
提督と榛名さん、それに姉さんのこの様子に私は少し考えました。
それで行き着いた回答はおそらく日向さん以下瑞雲の友の会メンバーによって悪夢を味わったのでしょうね。
後で日向さんにその件について問いただしましたが、日向さん曰く、

「提督は最後まで私達の話を聞いていたのだが、川内に榛名は早急にダウンしていたな。情けない…」

確信犯でした。
犯人、見つけました。

という事態でした。
だけどその時の私はこの件は知りえなかったのでとにかく提督の回復のお世話をしないとと今晩は提督の献身をしていましょうという結論に至りました。
それで備え付けの電話で那珂ちゃんに連絡を入れて事の重大さを教えて、

『そっかぁ。うん、わかった。川内ちゃんの方は那珂ちゃんに任せて!』
「はい、お願いしますね那珂ちゃん」
『うん! 神通ちゃんも提督の面倒をお願いね!』
「はい」
『それじゃ深夜の夜更かしはアイドルのお肌に大敵なのでお休みなさーい。キャハッ☆』

そう言って那珂ちゃんは電話を切ってしまいました。
最後まで那珂ちゃんは自身のプライドを貫いていましたね。
那珂ちゃんが隊長を務めている第四水雷戦隊の皆さんのご苦労が滲み出てくるようですね。
とにかく提督のお世話をしませんと。

それで提督の衣服をすぐに寝室着に着替えさせてお布団をしっかりとかけてゆっくりと寝てもらいましょう。
…そうですね。
なにか身体にいいものを作るとしましょうか。
それで勝手ながらも提督の冷蔵庫に入っている食材を拝借させてもらいまして提督が元気になれるようにおかゆでも作りましょうか。
そうと決まりましたら話は早いです。
提督の安らかな寝息をバックに聞きながらも私は色々と身体にいいものを作っていきました。
意外にこういった事は間宮さんの間宮食堂で食事を摂っていますのでしていませんが腕が鈍っていなくてよかったですね。
それであらかた食事も作り上げて後は提督が起き出すまで寝かしておきましょう。
するとかすかに提督が寝言で「ずい、うん…うー…」と魘され始めました。
これはいけませんね。
それで私はタオルに水を浸して濡れタオルを用意して提督の額の汗を拭ってあげました。

「大丈夫ですよ…神通が提督の事をしっかりとお世話しますから今はゆっくりと眠ってください…」

しばらくして提督は寝息も落ち着いてきましたのでこれで一応は大丈夫でしょうという結論に至って、私も少し仮眠を取ろうと腰を上げようと思った時でした。
提督の手が私の裾を掴んでしまっていまして離れられなくなりました…。
それで仕方がなく私は提督の横で一緒に仮眠をとる事にしました。
こういう役得もありですよね。
そして私も少し眠くなりましたので仮眠をとる事にしました。










…うん? なんだ。昨晩の瑞雲談話を聞いて気が狂いそうになってしまい布団にすぐさまダイブした後は記憶がないのになにやらとても寝心地がいいな。
不思議に思った私は目を開けてみると寝る前までは川内に用意してもらった忍者装束を着ていたのに今ではいつもの寝間着を着ていて不思議に思って、ふと気配を感じたので顔を横に向けてみるとそこには神通の寝顔があった。
ホワイ…?
数秒思考が停止していた間に神通も私が起きた気配で目を開けて、

「あ…おはようございます、提督…良い朝ですね」
「う、うん…ソウダネ。ところでなんで神通がここに…?」
「あ、そうでしたね。昨晩は提督が心配になって来てみましたら魘されていましたので勝手ながらもお世話をさせていただきました」
「そ、そうなんだ…」
「はい。あ、おかゆの準備を致しますね。昨晩に用意をしていたんです」
「そこまで…?」
「はい。なにかダメな事があったでしょうか…?」

コテンッと首を可愛らしく傾げる神通に私はそれ以上何も言えることができずに、

「あ、ありがとう。嬉しいよ神通」
「はい。提督の為なら神通は頑張ります」

眩しい笑顔を浮かべた神通を見て、もう私はただただ恥ずかしい思いをしていると思ったけどそれ以降もされるがままだった。
さすがに神通が蓮華を持って「あ~ん」は憤死してしまう思いだったのは記憶に強烈に残った。
それからも執務室にいくまで甲斐甲斐しく世話を神通はしてくれてなにやら居た堪れない気分だった。

「なにからなにまでありがとうな、神通。おかげで身体も心も回復したよ」
「そうですか。よかったです。それでは今日も神通、水雷戦隊の皆さんの稽古をしてきますので失礼しますね」

そう言って神通は帰っていった。
…ああいうのを良妻というんかな?
結婚した事がないからわからないけど…。

《提督!》
「うわっ!? ど、どうした榛名!?」
《今日は神通さんととても仲良かったですね。榛名、とても嫉妬してしまいました…》

いつから気づいて見ていたのかわからないけど榛名さんはとても嫉妬を焼いていました。
怖いけど可愛らしかったです。
そんなやり取りをしながらも話は大淀がやって来るまで続いたのであった。


 
 

 
後書き
昨日の続き物で神通がまるで母のようだ、という話を書いてみました。
普段は鬼のようなしごきをしますが普段は優しい神通さんもいいよね?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0053話『とある艦娘と提督との噂』

 
前書き
更新します。 

 



……昨日の神通さんとの訓練なんだけど、私…陽炎はどこか神通さんが手を抜いているような気がしたんだ。
でも普段通りだし気のせい程度だと思っていたんだけど不知火に試しに聞いてみると、

「そうですか? いつも通りの神通さんでしたが…」
「そうよね…。あなたってそう言う所には疎い子だったわよね」
「むっ…なんですか陽炎。不知火に喧嘩でも売っているのですか?」
「あ、そうじゃないのよ。ただ昨日の訓練では神通さんが少し様子がおかしかったからどうしたのかなって思ってね」
「そうでしたか…さて、どうしたのでしょうか?」

それで不知火と一緒に悩んでいると黙って私達の会話を聞いていた黒潮と親潮が、

「黒潮さん、ここは青葉さんにでも聞いてみませんか? あの方ならなにかご存知ではないかと」
「そうやね。それになんか面白い匂いがするんよ。提督がらみで」
「そうなのですか…?」
「うん。こういう時に限って言えばうちのセンサーは敏感や。楽しゅうなりそうやね」

黒潮も乗り気なのでちょうどいいので青葉さんの部屋へと四人で向かう事にした私達。
そして青葉さんの部屋の前に到着してドアをノックしてみると中から、

『はいはーい! ちょっと待ってくださいね!』

中にいるのだろう青葉さんの声が響いてくる。
と同時に『ドシャー!』という何かが崩れる音と『あわわ!?』という青葉さんの慌てる声が聞こえてきて少し不安になってドアを開けてみると部屋の中は色んな資料が崩れて散乱していた。
黒潮が「これはあかん…」と額を抑えていて親潮と不知火は片づけを手伝いそうな空気を纏っている。

「あの…大丈夫ですか?」
「なんとか平気です…後で片づけをしませんとねー」

青葉さんは今は片づけを諦めたのだろう、散乱している部屋の椅子に座って、

「…さて、どうしました? 青葉になにかご用ですか? 情報提供なら良い値で買いますよ」

いつも通り記者魂が逞しいなと思いながらも相談をしてみる。

「その、昨日なんですけど神通さんの様子が少しおかしかったんです」
「ほう…? それでそれで?」
「それは少しの違和感だったんですけどどこか浮かれているような感じでしたね」
「なるほどなるほど…。はい、なかなか面白い話ですね。
水雷戦隊の演習では一切手を抜かない鬼教官の神通さんが訓練中に浮かれていると感じたんですね?」
「は、はい…その私が依頼したってばらさないでくださいね?」
「はい、わかっていますよー。ただ面白い内容でしたら是非青葉新聞に書かせていただきたく思っていますので少し調査しますね」

それで青葉さんはニタァ…という恐怖の笑みを浮かべて取材を開始するみたい。

「青葉はん! うちも取材手伝ってええか? なんか楽しそうや!」
「いいですよー。それでは二人でこの謎を解明しましょうか!」
「はいな!」

ああ…黒潮がおそらく後で神通さんに折檻コースを受ける権利を自ら名乗り出てしまった…。
まぁ、私はただ聞いてみただけだから恐らく大丈夫…よね?
これがフラグにならない事を切に祈りたい。











それから青葉さんと黒潮が色々な場所に取材をしているらしい。
けど中々いい情報は掴めないらしくてついには姉妹の那珂ちゃんさんに話を聞きに行ったという話。
それで面白い話をキャッチしたという。
そしてあらかた情報が出揃ったのか私達は再び青葉さんの部屋へと招かれていた。

「それで…青葉さん。なにかわかったんですか?」
「はいー、それはとても甘酸っぱいほどに面白い内容でしたね」
「うちも少しドキドキしてもうたで」

青葉さんは満面の笑みで、黒潮も顔を赤くして思い出しているのだろう髪を指で弄っている。
この子の癖が出るという事は相当だ。

「…それでどうだったんですか?」
「少しお待ちを親潮さん。皆さん、誰にもつけられていませんよね?」
「…はい。不知火が感じられる範囲では誰も着いては来ていませんでしたが…それが?」
「もしこの捜査がばれていたら青葉新聞が発行できないではありませんか。それは困ります」

という事らしい。
青葉さんはいつもここぞという情報を一気に鎮守府中に開示するから中々強かな人なのだ。
それでこんな中途半端なところでご破算になったら目も当てられないという所だ。

「そうですか。では話しますね。実は―――…」

それで青葉さんの口から話された内容はこうだ。
まず那珂ちゃんさんからの情報によると、

『神通ちゃん…? うん、なんか提督が寝込んでいるみたいで看病するって言ってその夜は帰ってこなかったよ』

らしい。
そしてその内容通りに一昨日にとある事情で具合が悪くなった提督を看病するために神通さんが提督の寝室に同衾して夜通し看病して朝になって一緒に部屋から出てきたそうな…。
その少ない目撃情報から二人はとても仲良くなっていたという。
なぁるほど…。
確かにそれは面白いわね。

「青葉、そんな面白…いえ素晴らしい情報を掴めていなかったなんてジャーナリストの端くれとして情けない限りです…」

と、青葉さんは嘆いているがその口元は弧が描かれていたのを見逃さなかった。
確かに面白い内容だけどなんか純粋にデバガメしているみたいで神通さんに悪いなぁ…と思いながらも青葉新聞作成の手伝いをしてしまっていた。
そして翌日になってその青葉新聞は掲示板に掲載されて当然大体いつもの被害者であるおなじみ提督の『青葉ーーーーーッ!!』という叫びが上がったという。
司令官、ごめんねー。でも楽しかったから。

「いやー、とても面白かったわ」

黒潮が部屋でそんな事を宣いながら横になっていた時だった。
部屋の扉を誰かがノックしてきたので「どうぞー」と言って招き入れた。
だけど次の瞬間には怖気が走った。
扉が開かれてそこに立っていたのは笑顔を浮かべている神通さんだった。
だけど、その瞳は一切笑っていなかった…。

「うわぁ…」
「ぬいぃ…」
「黒潮さぁん…」
「あかん…」

私達のそれぞれの口に出た言葉がすべてを物語っていた。

「陽炎さん、不知火さん、黒潮さん、親潮さん…少し、そう少し話し合いを致しましょうか。
いえ、別に怒っていないんですよ? ただ、提督とのささやかな秘密をばらされて恥ずかしいだけです。ええ…」

神通さん、それを怒っているって言うんですよ…?
そう口を出す事も出来ずに私達はその後に鬼と化した神通さんにフルボッコ訓練を受けてその日は地獄を見たというだけ…。
ちなみに那珂ちゃんさんも悪気はなかったんだけどなにかしら罰を受けて、青葉さんに至っては次の日に死んでいるようだったという。


 
 

 
後書き
今回は陽炎たちをメインに書いてみました。
かなり続き物ですね。瑞雲の闇は大きい…。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0054話『ウサギのお人形』

 
前書き
更新します。 

 



今日の町への視察は卯月と弥生に着いてきてもらっている。
終始、卯月は初めて視察に来るために鎮守府の外に来たのか目を輝かせている。

「うーちゃん、楽しみぴょん!」
「そうだね…」

そんな卯月に対して弥生は感情表現が苦手なためにしかめっ面のままだ。
だけど知っている。
弥生は感情表現が苦手なだけでその実は楽しんでいることを。
それで弥生の方へと顔を向けて、

「弥生。そのままでもいいけど町の人にそのままの顔だと勘違いされてしまうぞ?」
「…それでもいい。司令官と卯月が理解してくれるだけで弥生は、嬉しい…から」
「まぁ弥生は楽しんでいるのは分かるんだけどなぁ…まぁいいか。しっかりと楽しめ」
「はい…」

それで少し微妙だけど弥生はかすかに笑みを浮かべたような気がした。
弥生の笑っている顔というのも想像は難しいけど、微笑んでいるのなら想像できる。
いつか弥生も普通に笑える時が来ればいいんだけどな…。

「あっ!? 司令官と弥生がなにか楽しそうぴょん! 混ぜるぴょん!」

そう言って卯月が私と弥生の間に入り込んで両手を繋いでいた。

「これで卯月もみんなもハッピーぴょん!」
「…弥生…恥ずかしい…」
「良いぴょん。弥生が楽しんでくれるなら何でもするっぴょん」

卯月はまったく優しいな…。
この世界に来てから数日だけど一回みんなと離れ離れを経験したからか卯月は友情をとても大事にしている。
睦月型はもちろんの事よく遊んでもらっている阿武隈には感謝の言葉を言っている。
照れ隠しに「うっそぴょーん!」と言って阿武隈に怒られているのをよく見るが。
…阿武隈、意外に慕われているよな。やっぱり。
そんな事を頭の片隅で思いながら『なんでですか~!?』………阿武隈の声が聞こえたような気がしたが、気のせいか。
それから町内会に顔を出して色々と話を交わした後に二人と一緒に町のショッピングストアに足を運んだ。
港町だというのに意外にバラエティーは豊富にあるんだよな、この町。
…後で知った事だけどなるべく全国の鎮守府のために大本営が暮らし政策をした一環で深海棲艦に襲われる可能性があり危険だというのに港町に来る人が増えたという。
それはなぜか…?という疑問に行き着くが結局はどこで暮らしていても空襲される危険があるのなら守ってもらえる場所にいた方が安全だという逆転の発想だという。
…まぁそれでいいならいいけどね。私も一生懸命守るだけだし。



―――閑話休題



そしてとあるファンシーショップに足を踏み入れると卯月が目を輝かせて、

「ウサギさんがいっぱいだぴょん!」
「そうだね…可愛い」
「二人とも欲しいなら買ってあげるぞ?」
「いいぴょん!?」
「ああ。そのために私をここまで連れてきたんだろう?」
「うっ………嘘だと言いたいけど言ったら買って貰えなくなるぴょん…」
「卯月…今回ばかりは、司令官の、勝ちだね…」
「むすー…いいぴょん。今回ばかりは素直になるぴょん」
「よーし、いい子だ」

そう言って私は卯月の頭を撫でてやる。
そしてくすぐったそうな顔をしながらも、卯月はさらに上機嫌になってその照れ隠しか弥生の詰め寄った。

「弥生! お揃いのウサギさんを買うぴょん!」
「…いいけど、同じものが二つあると迷うよ…?」
「ふっふっふー…抜かりはないぴょん。弥生はピンクのウサギ。そして卯月は青いウサギの人形を買ってもらうぴょん」
「なるほど。それならお互いにお揃いのウサギの人形を買えるな」

それで「むふー」と偉そうな声を出している卯月はいいとして、私は卯月のご要望通りに二つのウサギの人形を買おうと思い店員さんに聞いてみたが、

「…提督さん。すみません、実はいまピンクのウサギの人形は切らしていまして…」

店員さんのその一言に卯月は分かりやすく『ガーン!』という声を出していた。
弥生も弥生で口を開きっぱなしにしていて今回は分かりやすくショックを受けているみたいだ。
…さて、どうするか。
青いウサギの人形なら数はあるんだけどな。
だけどそこで一つ閃いた事がある。

「店員さん。ここにラッピング用にピンクと青のテープはありますか? 特大サイズの」
「司令官…?」

卯月が少し不思議そうな顔になっていたけど店員さんはそれだけで私の意図をわかってくれたのか、

「ありますよ。すぐにご用意しますね」

そう言って二体の青いウサギの人形を奥へと持って行った。
しばらくして店員さんは二体の青いウサギの人形を持ってきた。
だけどさっきまでなかったのは片方の青いうさぎの人形にはでかいピンクのリボンが巻かれていて、もう片方も色が被らないように水色のリボンを巻いてくれていた。
しかも私の意図とは関係なく睦月型のマークである三日月の装飾まで施してある。さすが仕事ができる人は違うね。

「うわー…これはとてもいいぴょん!」
「うん…とても、可愛い…」
「店員さん、ありがとう。予想以上だよ」
「いえいえ。艦娘さんが喜んでくれるのでしたら頑張れますから」

まじ店員さんグッジョブだ。
そのまま二体のウサギの人形を購入して卯月は笑顔を、弥生はささやかな微笑みを浮かべてウサギの人形をそれぞれ抱きしめていた。
うん、これを見たかったんだ。
弥生も嬉しそうだ。
そんなこんなで私達は視察を終えて鎮守府へと帰還するのであった。








…だけど翌日、とある事件が起きた。
弥生のピンクのリボンがされている青いうさぎの人形が腕が千切れていたのだ…。


 
 

 
後書き
今回は卯月と弥生の回でした。
最後に次回に続く文章を添えて…。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0055話『怒ってないよ…』

 
前書き
更新します。 

 




…事の発端はこうだ。
弥生が自室の部屋にウサギのぬいぐるみを飾っておいた。
だけど一度用があるために部屋を出ていき、用が終わったので帰ってきたらウサギのぬいぐるみの腕が千切れていたのだという。
その衝撃たるや弥生の限界を上回ったらしく一回気絶してしまったという。
それを後々に卯月が気絶している弥生とウサギのぬいぐるみの状況を発見して現在に至る。
今はもう弥生は目を覚ましており、しかしショックは大きいらしくいつも以上にしかめっ面がすごい…。

「弥生…大丈夫か?」
「は、い…弥生は、大丈夫、です」

全然大丈夫のようには見えないな。

「まったく誰がこんな事をしたぴょん! せっかく司令官が弥生のために買ってくれたものなのに…」

卯月はプンプンと怒っていてその表情は怒りに満ちていた。
そんな卯月の頭を「まぁまぁ」と言ってポンポンとしてやり落ち着かせた後、

「でも本当に誰がこんな事をしたんだろうな…?」
「うん…」
「ぴょん…」

それが気がかりでしょうがない。
最悪他の艦娘達を疑いたくはないが不和は生じてしまいかねない。
だから早くこの問題を解決しないとな。

「とにかくまずはこのウサギのぬいぐるみの処置だな。ここはやはり鳳翔さんが妥当か。悪い二人とも。私はこのぬいぐるみを鳳翔さんのところで直してもらえるように頼んでみるから待っていてくれ」
「はい…」
「わかったぴょん」

二人を部屋に残して私は鳳翔さんの所へと向かう。
だけどその道中でとある二人の艦娘と出会う。
その子達は…。









…せっかく、司令官に買ってもらった、うさぎのぬいぐるみ…。
それなのにどうしてこうなってしまったのだろうか…。
弥生はどんよりとした気持ちを隠すことが出来ずに意気消沈をしていた。
そこに卯月が、

「弥生ー! 元気を出すぴょん。司令官がきっと直して戻ってくるぴょん」
「うん…だけど、怖い。また、壊されてしまうかもしれないと思うと…胸がひどく、痛い…」
「弥生…」

きっと、今の弥生の表情は泣きたい表情になっているのだろうか…。
卯月の励ましの言葉にも弥生はやる気が起きなくて生返事しか返せない。
どうして…こうなって、しまったのだろう…?
ここの鎮守府のみんなはみんな仲間だと思っていた。
だのに弥生は今は疑心暗鬼になってしまっている。
だから誰がこんな酷い事をしたのか疑ってかかって見てしまうかもしれない…。
そう思うと弥生自身が怖くなってくる…。
嫌だ…。こんな嫌な気持ちを抱くのは嫌だ…。
みんなの事を、仲間の事を疑いたくない。
弥生はきっとこんな事をした誰かはなにかの訳があってこうしてしまったのだと信じたい。
そうじゃないと、もう弥生は笑顔を浮かべる練習も出来なくなってしまう…。
みんなに少しでも柔らかい笑顔と言えないけど笑みを浮かべられることが弥生の目標…。
その目標が遠ざかってしまう。
それだけは駄目だと心が訴えている。
だけど今の気持ちがそれを覆い隠してしまっている。

「卯月…弥生は、どうしたら、いいかな?」
「どうしたら…? 簡単な事ぴょん」

卯月は弥生の悩みを簡単な事と言った。
そんな反応をされるとは思っていなかったためについ卯月にきつい視線を浴びせてしまった。

「…これは久々の弥生の睨み、怒ってるぴょん…?」
「怒って、ないよ…」
「いや、今はうーちゃんの言葉が悪かったぴょん。弥生が怒っても仕方がない事だよ…。
でもね、聞いて弥生。弥生の悩みを晴らすことはとても簡単な事だぴょん」
「どういう事…?」

それで自然と睨みはなくなって疑問だけが浮かんで卯月に問いかけていた。
そして卯月はこう言った。

「その誰かが謝ってくるまで待つぴょん。
そしてもし謝ってきたら素直に許してやるぴょん。それはとても簡単な事なんだよ?」
「許せる、かな…?」
「それは弥生の気持ち次第だぴょん。でもいつも通りの弥生なら大丈夫だぴょん。
いつもしかめっ面で怒っていると誤解されやすい弥生だけど、その気持ちの底ではもっとみんなと仲良くなりたい。怒っていないって言いたいって思ってるぴょん」
「………」

卯月の言っている事は本当だ。
弥生は、もし謝られたのなら素直に許すと思う。
そしていつも通りの言葉を言うんだ…。
『怒ってないよ…』って。












「…それで? 二人はどうしたんだい? 文月に水無月…?」
「弥生ちゃんに謝りたいの…」
「…うん。水無月はふみちゃんと一緒にやよちゃんのぬいぐるみを見つけてつい羨ましいと思って色々とやよちゃんに内緒で二人でいじっていたの」
「うんうん。それで…?」

私は二人に優しい声で語りかける。
ただでさえ文月の方は涙目なのだ。
だから強く叱れないじゃないか。

「そしてついふみちゃんとぬいぐるみの取り合いになって、カッとなって引っ張り合っちゃったんだ…。そしたら…」
「ぬいぐるみの腕が破れちゃったの…それで文月と水無月ちゃんはつい怖くなって、逃げちゃったの…」

二人は素直にそう白状してくれた。
そして二人は謝りたい気持ちがあるのも確認できた。
なら後はやる事は一つだ。

「それなら素直に弥生に謝ろうか。なぁに、弥生もいつも通りに『怒ってないよ…』って言ってくれるさ」
「そう、かな…?」
「姉妹の事を分かってやれないでどうするんだ? 勝手知ったる仲だろう?」
「そうだよね…うん、ふみちゃん、やよちゃんにすぐに謝ろう!」
「うん!」
「そうと決まったらすぐにこのぬいぐるみを直さないとな」
「「うん!」」

それで三人ですぐに鳳翔さんに事情を説明して、

「あらあら。でしたら素直に謝りなさいね。弥生さんもきっと許してくれますよ」

と、おおらかに笑いながらもぬいぐるみを縫い直してくれた。
そして文月と水無月はそのぬいぐるみを持って弥生の部屋へと謝りに行った。
私ももしもの時に着いていったが。
二人は弥生の部屋へと入って素直に謝って事情を説明した。
それに対して弥生は微かに笑みを浮かべながらも涙を流して、

「怒ってないよ…そして素直に話してくれて、ありがとう。文月に水無月…」
「弥生ちゃん! ごめんね!」
「ごめん、やよちゃん!」

それで感化されたのか二人も涙を流しながらも弥生に抱きついていた。
その光景を見て、

「よかったな…」
「しれいかーん…これを気にほかのみんなにも平等にプレゼントをあげたらどうぴょん…?」
「それはまた、痛い出費になるかもしれないな…」

うちの艦娘全員に平等にプレゼントか…。
人数が多いから大変そうだけど、遣り甲斐はあるな。
私はそれでそんなに大きいものは買えないだろうけどそれぞれにお似合いのプレゼントをあげようと思い、せっかくだから提案者の卯月に手伝ってもらった。
もちろん、後日に全員から感謝の言葉を頂いた。


 
 

 
後書き
雨降って地固まるという表現を書いてみました。
弥生の気持ちの表現はこんな感じかなぁという気持ちで書いてみましたがどうでしょうか…?


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0056話『瑞鳳のお料理』

 
前書き
更新します。 

 




今日の仕事も終わり、少し背中を椅子に預けてゆっくりとしていた。
見れば時間はもう少しで午後の十時という時間帯。
大淀はもういないために少し手持ち無沙汰になっている。
…そろそろ秘書官を毎日ローテーションで回す事を考えようか。
大淀達だけに負担をかけるわけにもいかないしな。

それになにやら明後日の6月6日の夜に大本営がなにかしらの発表をするという話である。
この時期にしてはゲームで言えば複数の艦娘のグラフィックが梅雨modeに入るだろうメンテの頃間からそれ関連だと思うが…。
…まさかもう次の改二が来るのかもしれないが、ついこの間に長門を改二にしたばかりなのに来るとしたらスパンが早いな。
まぁ、なんなのかを楽しみにしていながらも…この世界では果たして艦娘達は梅雨modeになるのかならないのか果たして…。
そう考えるとそれぞれの季節にあるグラフィックって常時そういう格好をしているわけでもないんだよな。
ゲーム内では次のメンテが終わるまでは常時限定グラだけどこの世界は現実だから普段通りの恰好だろうし。
そう考えると少し残念に思いながらも、そこでお腹が少し空いたのか『くー』という可愛らしいお腹の音が鳴る。
自分で可愛らしいという表現を使うのもどうだかだけど。

《て、提督! 榛名のお腹の音ではないですからね!?》

そこで自身のお腹の音だと思われたくない榛名が出てきてそう言ってくる。

「わかってるよ。これは私のお腹の音だから榛名はあまり気にするな」
《そ、そうなんですけど…やっぱり私の身体でもありますから少し恥ずかしいんです》
「まぁそうだな。そこは我慢してくれ」
《はい…》
「それより何かを食べに行こうか。今の時間だともう間宮は閉まっているだろうし…」
《でしたら鳳翔さんの居酒屋に行ってみませんか?》

鳳翔さんの居酒屋か。
いいだろう、少し摘むだけでも明日の活力になるからな。

「わかった。それじゃ鳳翔さんの所へと向かうか」
《はい》

それで向かう道中でやはり思う事は榛名は何も口にできない状態だから食に対しての意識はどうなっているのだろうかと…。
今まで気になっていたけど中々言い出せないでずるずると引っ張ってきたけどこの際聞いてみるか。

「なぁ榛名…?」
《はい? なんでしょうか提督?》
「榛名ってこういっては何だけど何も触れられないから何も口にできない状態だからお腹とかは空かないのか? 食にたいして意識が下がっていないか…?」
《その事でしたか。はい、直接口にできないのはとても残念なんですけど、提督の食べたものが私にもどういう原理か分かりませんが味とか伝わってくるんです》
「そうだったのか…?」
《はい。ですから提督がお腹が一杯になりましたら私もお腹が膨れるんです》

むぅ…。
ますます榛名の状態がどういう事になっているのか調べたくなってきたぞ。
知的好奇心というのはこういう時に発揮しないといけないな。
だけど私の考えが多少榛名に伝わったのか、

《提督…? 今何かよからぬことを考えていませんでしたか?》
「そ、そんなことは無いぞ。ただだとすると私が忙しい時にまともに食事を摂っていない時は榛名もお腹を空かせているんだなって思って…」
《うっ! うう…提督、酷いです。榛名もできれば金剛お姉様と紅茶とかを一緒にしたいのを我慢していますのに、そんな事を言われたらお腹が空いちゃうじゃないですか》

榛名はそう言ってふくれっ面になってしまった。
うん。そんな表情でもやっぱり榛名は可愛いな。
一人榛名に癒されながらも居酒屋鳳翔へと足を歩ませていった。








…そして到着する居酒屋鳳翔。
よかった。まだ暖簾は下がっていないし明かりはついているみたいだな。
おそらくまだまだ中には艦娘が数人いるのだろうな。………酒飲みが多そうだけど。
とにかく玄関を開けて中へと入っていく。

「いらっしゃいませ。あら、提督でしたか」
「鳳翔さん、こんばんは。まだなにか作れるものはありますか?」
「はい。でも今日は少しとある子の料理の腕を見ていますのでよろしかったらそれを食べてみませんか…?」
「とある子ですか…?」
「はい、そろそろ…」

鳳翔さんが誰かが来る気配を感じたのだろう、厨房の奥から少し高い声が聞こえてきた。

「鳳翔さーん。瑞鳳特性の卵料理ができましたー! って、あれ…? 提督がいりゅ?」
「瑞鳳さん、噛んでますよ。それより瑞鳳さん、よかったら提督にその料理をお出ししたらどうですか?」
「え…でもまだ試作品ですから味は保証できませんよ?」

瑞鳳がそんな事を言っている。
でも瑞鳳はゲーム内設定でも料理は出来る方だったから大丈夫だろう。卵焼き限定かもしれないけど…。

「構わないよ、瑞鳳。今はなにか食べたいからよかったら食べさせてもらってもいいか? 味見も兼ねて食べさせてもらうよ」
「そうですか…? だったら瑞鳳の作った卵料理を食べてみて!」

そう言って瑞鳳はお皿に乗せられた卵料理を私の前に出してきた。

「今日は少しいつもの卵焼きにアレンジを加えてみました。卵の間にちょっと他の食材を細かく刻んで混ぜてみたんですけど…」
「これは………わかめか?」
「うん。それでよかったら味見してみて?」
「わかったよ」

それで箸で一切れ摘んで口の中に入れてみる。
卵焼きの甘さの中にほんのり磯の味が感じられて、だけどどちらも大きく出張はせずに調和している。
だから私は素直に「おいしい」と言葉にした。
それで瑞鳳は両手を合わせて、

「よかったぁ…アレンジの料理はしたことがなかったから不安だったの」
「そうか。そうだ、今度もなにか料理を試作するんだったら呼んでくれないか? 素直に判定させてもらうよ」
「本当? ありがとう! 鳳翔さんの採点も完璧なんだけど他の人の感想も欲しかったの」

それで瑞鳳は「えへへー」と笑いながら、

「それじゃ今度は萩風とか浦風とお料理会を開くから提督も呼ぶから来てね!」
「うん、ぜひ行かせてもらうよ」

それで夜も更ける中、私は瑞鳳の作った料理を味わっていたのであった。


 
 

 
後書き
今回は瑞鳳の料理をメインに書いてみました。
うーん…まだまだ書きたい子はたくさんいるんですけど毎日のネタを考えるのが時間的制約で難しくなってきたかも。
改二とかイベントごとなら話は進むんですけど日常に関しては大体即興で考えたオリジナルですからね。
でも、毎日投稿は根を上げるまで頑張ってみようと思う。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0057話『熊野達の不安と他の鎮守府の現状』

 
前書き
更新します。 

 



今、鎮守府内ではとある事が話題になっている。
それは今度の大本営の発表でまたしても改二が追加されるという話題だ。
この間の大規模作戦が終わったと同時に長門が改二になった。
それなのに今度は時期も置かずに改二の発表があるかもしれないとまだ改二になっていない子達の間では羨ましいという話題が尽きないという。
そう…大本営の前情報によるとすでに由良も初夏くらいには改二が来ると言っているし、他にも主力戦艦が改二になるという話もある。
改二と言えばうちではそろそろ大鷹とガングートも改二になる練度に達しそうでそわそわしているという。
それでか知らないが熊野達が執務室に逃げてきたのは、まぁ分からない話でもない。

「…提督? しっかりと聞いていますの?」
「そうですわ」

…熊野二人が左右で声を出してきている為に少し混乱する状況だけど我慢だ。

「ああ、聞いているよ。それで今日は二人ともどうしたんだ…?」
「事情は分かっているのでしょう? 明日には大本営が何かしらの発表をするというのはすでに青葉さんから聞き及んでいます」
「そうだな」
「そうだな、って…少しはわたくし達の気持ちも理解してくださいまし」
「そんな事を言われてもな。君たち二人の改二の情報は前々から出ていたし、今更慌てても仕方がないだろう?」
「そうですけど、クマノン的には練度は足りているとか不安なんですわ」
「そうです。熊野はもう練度は90を越えていますがクマノンは88で中途半端ではないですか。少し不安ですわ」

二人はそう言ってお互いに心配している。
ちなみに一人目の熊野の方は自身の事を『熊野』と呼称して言っており、もう一人の二人目の熊野は自身の事を『クマノン』と呼称している。
これは鎮守府では同型艦の子は前にも言ったと思うがそれぞれ呼称を変えてやり繰りしているという事だ。
鈴谷も改二の方は鈴谷で通して、航改二の方はスズヤンで通っている。
これを最初に言い出したのは三隈らしいというのはらしいと言えばらしい。
…もしかしたらだけど三隈と最上も改二になる騒ぎになったらもし、二人を用意するようになったら私も三隈の事をミクマンとか言わないといけないのだろうか…?
なんか言い方的に卑猥な感じがするのは気のせいか…?
まぁ、とにかく、

「その辺は大丈夫だろう。鈴谷も改二だけなら練度は84で足りたんだから」
「そうなのですが…もし、大本営が差別化を図って練度をさらに上げないとは限りませんから」
「クマノンの言う通りですわ」

それで二人はやはりどこか渋い表情をしている。
そこまで気を張る事でもないと思うが…。
別に改二は期間限定ではなく一度実装されれば決して逃げないんだから足りなければまた上げ直せばそれで済む話だし。
その辺をやんわりと二人に説明すると少し納得していない表情だけど、

「…分かりましたわ。提督がそこまで言うのですからもし出来なくても我慢します」
「はい、熊野のいう通りですわ」

なんとか納得してくれた。
まぁ、そこまで心配することは無い。
それに、

「それに別に改二にもしなれなくても十分君達は強いじゃないか。数少ない航空巡洋艦としていつも助かっているよ?」
「それは本当ですか?」
「提督が嘘をついているとは思っていませんからそうなのでしょうが…」
「ああ。だからそこまで心配するな。そんな落ち込んだ顔をしていると鈴谷達に心配されてしまうぞ」

その件を話した途端、二人は「はっ!」という何かを感じ取った表情になり、

「鈴谷に心配はかけたくありませんわ。もしそんな不安な表情で顔を合わせることになったらわたくしがダメになってしまいそうです」
「クマノンの言う通りですわ。いつも通り華麗に優雅に上品に振る舞わないといけませんわね、熊野」

そんなやり取りを交わして二人も自信が戻ってきたのか、

「改二になりましたら鈴谷達をあっと驚かせましょう!」
「そうですわね! 最上型重巡洋艦の末っ子として堂々とした態度で挑みましょう!」
「その意気だぞ、二人とも。私も改装設計図を準備して待機しているとしよう」

私がそう言った途端、二人の動きはピタッと止まり、

「…別の件で不安になってきましたわ」
「ええ。熊野の気持ちも分かりました。提督…? 勲章に関しては大丈夫でしょうか? 足りていますか?」
「その件もまるっとお見通しだ。大丈夫だよ。大規模作戦前に一回阿武隈をもう一人改二にしてしまって、こんなに改装設計図を使う改二ラッシュが来るとは思っていなかったが少し心配だった。
だけど、さっきも言ったように勲章も改二も実装されたら逃げないんだから足りなくなったら、また貯めればいい事だしな。
だから二人もそこまで深刻に考えないで堂々と振る舞っていてくれ」
「…わかりましたわ。提督がそこまでおっしゃるのでしたらもう心配はしませんからね?」
「ええ、ええ。それでいざって時に泣きついてきても知りませんからね」
「わかっているよ。その辺は自己管理でどうにかするとしよう」

それで熊野達はどこか不安な事は大体言い切ったのかすっきりとした顔で執務室を出ていった。











…ですが、提督もああは言っていましたがわたくしとしてはやはり不安なのですわ。
本題をはぐらかしてしまいましたわという気持ちである。
鈴谷が改二になった時には素直に喜びましたが、いざわたくし達が改二になった時には他の鎮守府からどんな反応をされるのか少し想像すればわかります。
それはやはり妬みの感情も含まれるでしょうね。
知っていますのよ? この世界ではうちのように高練度の艦娘が揃っているという例は稀なケースだという事を。
だから提督がまた他の鎮守府からやっかみ扱いを受けてしまわれないかと不安になってしまうのです。
長門さんが改二になった時もそうでしたわ。
演習をした時に相手の方の艦娘の方たちに聞いた話ですが、その鎮守府の提督が「またあの鎮守府か!」と言いがかりにもほどがある怒りを顕わにしていたそうです。
それで艦娘達も無茶な練度上げを強いられているという話ですわ。
いい練度上げの場所も把握していないらしく、その鎮守府ではブラックなやり方が横行しているという話です。
それで演習相手の艦娘達の話ではもう何人か低練度の子達が轟沈を繰り返しているという話を聞いて、怒りを顕わにしましたわ。
なんでそこまで艦娘を使い潰すやり方をしてしまうのか理解できませんでしたわ。
うちの提督がわたくし達艦娘達の事をとても大事に扱ってくれているというこの世界では稀なケースだというのは重々承知ですが、それでもその鎮守府の子達が可愛そうに思えました。
同情している時点でわたくしもその子達の事を下に見ていると言われればそこまでですが、でもブラックな鎮守府と提督は許せませんわ。
それでいつしか提督にその件を相談してみたところ、

『…そうか。わかった、柳葉大将に相談してみるとするよ』

と、どこか寂しそうな表情を浮かべていたのが印象的でしたわ。
それだけ提督も他の鎮守府に対して思う所があるのだろうという感じを受けましたわ。
だから、

「ねぇ、クマノン?」
「はい…? なんですか、熊野?」
「もし今度演習で助けてくださいと言ってくる艦娘がいましたらすぐに提督に報告いたしましょう。多少なりともその子達の役に立ちたいのですわ」
「…そうですわね。ではまずは他の皆さんにもその件を話してみましょうか。理解してくれる人は多いと思いますから」
「ですわね」

それでわたくし達は他の鎮守府の艦娘達が務めている場所がもしブラックな職場だったら救済しようという思いになりましたわ。


 
 

 
後書き
今回は熊野達をメインにしていました。
改二の任務内容もありますから当分は熊野達の回が多くなってくるかと思います。

運営の情報では6/6のメンテでもしかしたら改二を実装すると思いますから楽しみです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0058話『あきつ丸との様々な談義』

 
前書き
更新します。 

 




今日、任務をチェックしていたら久々に九六陸攻を一式陸攻にする任務が出たので私は迷わずに更新した。
そしてこれで他の一式陸攻と合わせてようやく一式陸攻シリーズが八個も貯まって後一個で基地航空隊の戦力も十分になった。
前の大規模作戦で『銀河』を無理してでも取りにいかなかったのが今更になって後悔し始めているけど、そう…今更なのだ。過去は振り返らない事にしている。
今できる戦力でやり繰りしていかなければいけないのだ。
それでも九六陸攻も今は一個あるからこれで最低限の三つの基地航空隊が出撃可能になった。
前回の作戦で初めて甲作戦で褒章として大本営から貰った『一式戦隼Ⅱ型(64戦隊)』や『零式艦戦21型(熟練)』も二個あるのでよほどでもない限りは射程は足りるだろう。
射程が足りない時は『二式大艇』か『カタリナ』を使って最大限まで射程を伸ばしてやればいい。
防空に関しても『三式戦 飛燕』シリーズを使えば十分戦力になるしな。
それで私は今年の夏に起こるであろう大規模作戦も今回は甲で頑張ってみようかなと考えている時だった。

「提督殿、少しよろしいでありますか…?」

そんな言葉とともにあきつ丸が執務室へと入ってきた。
その顔には今にも楽しそうな表情が刻まれている。
なにかを起こそうと考えているのか…?
それで少し警戒をしながらも構えていると、

「提督殿。本日に自分が以前に開発しました九六陸攻を一式陸攻に更新したというのはまことでありますか?」
「そうだけど、どうした…?」
「いえ、以前に九六陸攻が開発可能になった時に加賀殿と一緒に開発戦争を繰り広げて見事先手を会得しましたのでそれが無くなってしまったと思うと少し悲しく思いましたので…」

そう、以前に九六陸攻が開発可能になったと聞いていざ我はという者たちが工廠へとはせ参じたのであった。ほとんど空母だったけど…。
その中にあきつ丸もいて、いざ一人ずつ試しに開発戦争を繰り広げていたら加賀さんよりも先に陸攻を建造してしまって加賀さんに屈辱を与えていったのがあきつ丸なのである。
そのあとに加賀さんもどうにか踏ん張ってもう一機陸攻を開発したが、消費資材が重いために陸攻任務が出た際になければ開発すればいいという話で落ち着いたのである。
そんな経緯もあり、あきつ丸は陸攻になにやら思い入れを持ったのか、装備できないのが悔しい…と言っていたのはこの世界に来てから本人に聞いた話である。
だけど、

「珍しいな。特にあきつ丸とは陸攻は関係した話はなかったと思うが…」
「そうでありますが、どうにも陸攻に関しましては譲れない思いがありまして。今度も開発する際は自分を採用していただきたく今回は参りました」

…そんな真剣な眼差しで迫られると迫力あるな…。
ただでさえ顔がおしろいを塗ってあり白いだけに。

「わかった。それじゃ九六陸攻が足りなくなったらその時には呼ばせてもらうよ」
「はいであります!」

それであきつ丸も気持ちが落ち着いたのか少し余裕を持った面持ちで、

「しかし、一式陸攻は数が増えましたな」
「そうだな。これも今までイベントで頑張って取ってきたおかげだよ」
「そうですな。口惜しくは提督殿がチキンだったために有名どころのネームド機を取り逃している事ですな」
「うッ…あきつ丸、頼むからそこを着くのはよしてくれ」
「いえいえ。まだまだありますよ。かの有名な陸攻機である『銀河』を取り逃したのは痛恨の極みでしたな」
「うわああああっ!!? やめてくれ!! 頼むから…!!」

あきつ丸は私が苦しむ仕草を見るたびに愉悦の表情を浮かべている。確信犯か!?
それでなにかを言い返そうと思うけど特に反論できないのが悔しいところである。

「…まぁ、それでも提督殿はこの世界に来てから大本営の命令とはいえ苦難を乗り越えて初めて甲作戦を制覇して甲種勲章を貰えたのはこのあきつ丸も評価したい所存であります」
「あきつ丸…」

いきなりの上げてくるセリフに思わずほろりと涙を一筋流してしまった…。

「ふっふっふ。提督殿の涙、しっかりと確認いたしましたであります」
「くっ…!?」

それで急いで涙を腕で擦って無くす。
不覚を取ってしまった…。
やっぱり人心掌握に関してはあきつ丸には一歩及ばないのか…。
陸軍艦娘、恐るべし。

「まぁ、何が言いたいと言いますとこれからも提督殿には頑張ってもらいたいのが本音ですね。
それでできればネームドの艦載機やその他の装備を貰い受けていただければ自分も目が潤います」
「なに…? もしかしてあきつ丸。お前は夕張や明石と同じで装備マニアだったのか…?」

それであきつ丸はにっこりと笑顔を浮かべて一言、「はいであります」と答える。
そうだったのか…。知らなかったな。
それであきつ丸は少しうっとりとした表情をしながらも、

「陸攻の翼のフォルムはとてもいいものですよ。瑞鳳殿とも意見が合いましてどの陸攻や艦載機が一番かわいいのか論議を交わすくらいです」
「ほう…? あの瑞鳳とな。そんな仲だったのか」
「はいであります。提督殿が知らないコミニティは結構存在するでありますよ? 艦載機ファンクラブは空母組内では何人か入っているであります」
「確かにそんなグループもあっても驚きはしないな」
「でしょう? ですからもう少し提督殿も見聞を広めるために鎮守府内のある意味闇の部分を垣間見てもいいと思うであります。色々な艦娘の顔が見れますよ?」

そのあきつ丸の提案に内心で少し心が躍っている私がいる。
何それ面白そう。

「ちなみに駆逐艦とかのグループもあったりするのか…?」
「もちろんあるでありますよ。連装砲ちゃん会などが有名でしょうか? 島風殿を筆頭に天津風殿や秋月姉妹なども入っているであります。毎回どの子が一番かわいいかで騒いでいるので賑やかなのは確かですな」
「ああ、確かに…それはもしかして秋津洲とかも参戦しているのか? 大艇ちゃんとかの絡みで…」
「いいとこをつくでありますな。ええ、秋津洲殿もたまにそのグループで話をしていますな。それぞれの装備の子達の言葉はその所有者の艦娘にしか分からないから翻訳などもやっています」
「…やっぱり連装砲ちゃんとか喋るんだな」
「当たり前であります。でなければ自立歩行などしませんよ」
「だよなー」

そんな、少しあきつ丸の意外な面を見れた楽しい会話ができた一日であった。
それとは別として今夜の大本営の発表も楽しみにしておこうか。


 
 

 
後書き
今回はあきつ丸メインで書いてみました。
陸攻関連は昨日に任務で出たのでちょうどよかった話のネタが思いついたので書いてみました。
今夜の情報の開示が楽しみですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0059話『熊野達の改二改装』

 
前書き
更新します。 

 




夜となり大本営から電文がかなりの量が送られてきた。
その中にはもちろん熊野の改二の件も記載されていた。
それで私はその電文を持ってきた大淀に、

「大淀。熊野達の改二改装の用意を…。改装設計図を三枚頼むよ」
「わかりました。すぐに用意いたしますね」

そう言って大淀は準備のために執務室を出ていった。
そして私はすぐに熊野達二人を執務室へと呼ぶ事にした。
電話をかけてからしばらくして、

「提督。呼ばれてきましたわ」
「はい。熊野の言う通りわたくし達の改二の件なのでしょう?」
「そうだ。この世界に来て二回目の改二改装だ」

私がそう言った瞬間、二人はどこか身構えたような感じがした。
どうした…? 素直に喜ぶと思ったのだが…。
するとクマノンの方が口を開いてある事を言う。

「提督…。わたくし達の改二改装の件ですが見送りにはできませんでしょうか?」

そのクマノンの言葉に思わず私は目を見開いた。
先日はあれほど楽しみにしていたのにどういった心境の変化だ?
なにか悪いモノでも食べたのか?
いや、熊野達に限ってそんなことは無いと思うが…。
私が見当違いな事を考えている間にも二人は話を続ける。

「わたくし達の改二が施行されるとしまして、提督にある事が起こるかもしれないのがわたくし達は怖いのですわ」
「ある事…?」
「ええ。提督もご存じなのでしょう? 提督が戦果を上げたり改二の施行をしたりしたら快く思っていない他の鎮守府の提督達が理由もない逆恨みを提督にするかもしれないのですわ」
「クマノンの言う通りですわ。わたくし達はそれが怖いのです」

その告白に私は冷や水を浴びせられたような気分にさせられた。
確かに考えてみればこの世界では熊野達のように高練度に達している艦娘は数に限りがあるという事を。
そしてその大半を私の鎮守府は条件を満たしている。
それで他の提督の視線がさらに厳しくなるというふざけた計算式が成立するのだろう。
見れば熊野達は改二になりたいのだろう、しかしそれを我慢しているのかスカートをギュッと握りしめている。
怖いんだな…。
私がなにかされるのではないという恐怖で。
だけど、

「君たち二人の気持ちはわかった。とても嬉しく感じるよ」
「でしたら…」
「だけど、予定通り二人の改装は執り行う事にする」
「提督!? わたくし達の言葉を聞いていなかったのですか!? 提督の身に危険が迫ってからでは遅いのですわよ!」

そう言って熊野は叫ぶ。

「大丈夫…。それくらいの逆境は跳ね除けてみせるさ」
「ですが…わたくし達はもしそんな事になったら耐えられません。提督はこの世界ではわたくし達の父親的立ち位置でもあるのですわよ?
もし提督がいなくなってしまったらわたくし達はどうすればいいのか分からなくなってしまいますわ」

そう言ってクマノンは涙を目に滲ませていた。
その正直な気持ちが今は辛いけど、私は椅子から立ち上がって二人の前に立ち、そして勢いよく二人を抱きしめる。

「きゃっ!?」
「提督…?」
「ありがとう…そこまで思われているなんて思っていなかったからとても嬉しい。
だから信じてほしい。私一人だったら立ち向かえないだろうけど、私は一人じゃない。艦娘達みんながついていてくれる…だからどこまでも頑張れるんだ」
「「提督…」」

それで二人とも涙声になってしまっている。
悲しませたくないのに矛盾だな、これは。

「そして一人で出来ない事はみんなでやっていけばきっとなんとかなる。
なぁに、私達が力を合わせればどうとでもなる。だから…」

私が言葉を続けようとしたところで、熊野に指で口を押さえられて、

「提督にそこまで言わせてしまっては熊野の手落ちですわ。ですからそれ以上は言わないでくださいまし」
「そうですわ。提督の身はわたくし達が必ず守ります。ですから信じさせてくださいましね」

そう言って二人は少しして名残惜しそうに私から離れて、

「分かりましたわ! もう迷いません。提督! わたくし達を改二にしてくださいまし。
そしてもっと強くなって提督も仲間のみんなも守るのですわ!」
「熊野のいう通りですわ!」

そこには先ほどまで気落ちしていた二人の姿はなかった。
代わりに覚悟を決めている表情があった。
これならもう大丈夫かな。

「よし。では改装室へと向かうとするか。大淀と明石も待っている事だしな」
「「ええ」」

それで改装室へと向かい、

「提督。準備は出来ています。いつでもどうぞ」
「わかった。それでは二人とも、改装室へと入ってくれ」
「「はい」」

それで二人は改装設計図を持って改装室へと入っていった。
そして部屋の中から光が漏れて、しばらくして二人は仲から出て来て、

「改装された真のレディの力をお見せいたしますわ!」
「ご期待くださいましね」

熊野は改二へ、クマノンは航改二へと姿を変えて強気の笑みを浮かべている二人の姿があった。

《提督…二人とも覚悟を決めている表情ですね》
「そうだな榛名。私も負けていられないな」
《はい! 榛名も提督の事を守りますね!》

榛名とそんな会話を熊野達を見ながらしていたのであった。


 
 

 
後書き
熊野達の覚悟の回でした。
実際この世界って横須賀鎮守府の長門が最高の90ですから練度不足で第二次改装できない提督が後をたたない感じなんですよねぇ…。
だから妬みもひがみもされるんです。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0060話『クマノンの空母寮への移籍』

 
前書き
更新します。 

 



わたくし達の第二次改装が終了し、任務で出撃するまでは別途で待機していてくれと提督に言われました。
なのでわたくしクマノンはスズヤンがいる空母寮へと部屋を移動する事になりまして荷物を纏めていました。

「それではクマノン。あちらでもスズヤンと仲良くするのですわよ」
「当然ですわ。それでは行かせてもらいますわね」

大きいのや細かい荷物はすでに長門さんや武蔵さん等の有志達に空母寮へと運んでもらいましたので残った荷物をリュックに詰めてわたくしは熊野と別れて空母寮へと向いましたわ。
部屋はスズヤンの隣と聞きましたのでまた楽しい会話ができそうですわ。
そして到着した空母寮。
そこにはすでに複数の空母や軽空母の皆さんが待ち構えていました。
その中にはスズヤンの顔も見られまして少し緊張を致しますが心が和らぎましたわ。

「クマノン、やっとこっちに来れたね! 私一人だけこっちだったから心細かったんだよー」

そう言ってスズヤンがわたくしに抱きついてきました。
ふふ、相変わらずですわね。スズヤンは。
そこに他の空母の皆さんも近寄ってきて、

「クマノンさん。ようこそ空母寮へ。歓迎いたしますよ」
「ありがとうございますですわ、鳳翔さん」

鳳翔さんに出迎えられて改めて軽空母になったんだなという実感を持てましたわ。
次には、

「クマノン。スズヤンと同じく空母の心得をきっちりと叩き込んだるで」
「一緒に精進していきましょうね、瑞鳳もお手伝いしますね」

龍驤さんと瑞鳳さんもそう言ってきてくれました。
どことなくこの二人にはシンパシーを感じるのは気のせいでしょうか…?
それを感じ取ったのか龍驤さんがわたくしの肩に手を置いて、

「…それとクマノンの空母組フラット会の介入は歓迎するで」
「空母組フラット会…ですか?」
「そうや。いやー、スズヤンの奴は憎たらしくも改二になってさらに成長しておったから心配してたんやけど、クマノンはそのままの君でいてくれたのを嬉しく思うで」
「あの、少し話が見えないのですが…?」
「なに、すぐにわかるで。その会にはうちと瑞鳳、そして葛城に大鳳に瑞鶴が加入しているんや」
「そのメンバーの共通点というのは、まさか…」

なにやらそれでわたくしは何かを察してしまった。
それで龍驤さんは少し哀愁を帯びた憂いの表情をして、

「あえて言わぬが華ってモノや。クマノンならすぐに会員になれるから待っとるで」
「…ええ。機会がありましたら」

なにやらそれで少し悲しくなりましたわ。
確かにわたくしの胸は、その…スズヤンに比べれば無きに等しいですけれどそれでも悲観はしていないのですのよ…?
提督もどうやら胸の大きさに関しましては気にしていないようですから一安心ですし。
と言いますか、瑞鶴さんは改二になって成長してませんでしたか…?
そこが少し謎に感じましたわ。
それとなら鳳翔さんも会員に入っているので………ッ!?
と、そこで強烈な殺気を感じましてそちらに振り向いて見ますととびっきりの笑顔の鳳翔さんがいました。

「クマノンさん…? なにか、良からぬことを考えていませんでしたか?」
「イ、イエ…滅相モゴザイマセンワ」
「そうですか。それならよいのですが…」

それでもう鳳翔さんはいつも通りに戻っていました。
この話題は今後触れてはいけませんわね。

「まぁ、それじゃクマノン。お前はお酒は飲めるかい…?」

隼鷹さんがそんな事を聞いてきました。
わたくしはあまり飲んだことはないのですわ。
レディの集まりでよく紅茶を嗜んではいますが。
あの集まりでは暁さんが最年少で背伸びしていてとても可愛らしいのですわ。
ウォースパイトさんや三隈さんも一緒だから楽しいお茶会になるのですわ。
だから隼鷹さんには申し訳ないですけど、

「あまり飲めませんわ…」
「そっかー。鈴谷の奴も碌に飲めないから酒飲み仲間を増やしたいところなんだけど最近入った大鷹は幼いしなぁ」
「そうなのですか」
「ま、いいか。鳳翔さーん、とりあえず居酒屋の予約を入れておいて! 軽空母の集まりで宴会でも開こうぜ」
「わかりました。でも飲み過ぎはダメですからね?」
「わかってるって!」

そんなやり取りが交わされて今夜は強制的に付き合わされることが決定したようですわ。
まぁ楽しみではあるんですけどね。

「それじゃクマノンさん。私達と食事でもどうですか?」

そこに祥鳳さんが声を上げてきたので、

「よろしくてよ」
「はい。それじゃ今夜楽しみにしていますね」
「わかりましたわ」

私はすぐに承諾しましたわ。
それを見ていたスズヤンが、

「クマノンもやっぱり社交的だよねー。私なんか空母寮に入ってから慣れるまで結構苦労したのが今となっては良い思いだよ」
「知っているでしょうけどわたくしは人付き合いはいい方なのですわよ。そう言うスズヤンも軽いノリですぐに溶け込めそうなものだと思いましたが…」

わたくしはそう言葉を返すと、

「そうなんだけど、空母のみんなってお堅いイメージがあってなかなか入り込めなかったんだよね」
「そうだったのですか。でしたらわたくしもようやくこちらに来れた事ですしスズヤンのために人肌脱がせて頑張らせてもらいますわ」

未だにどこかスズヤンは空母寮では浮いているみたいですし、これをきっかけにしてもっと空母の皆さんとフレンドリーな関係を築けるように頑張っていきましょう。









そして夜になってわたくしとしましては初めて訪れる居酒屋鳳翔に入らせてもらいまして食事会を楽しませてもらいましたわ。
だけどそこで酔った隼鷹さんにお酒を無理やり飲まされてわたくしは、

「とおおう…」

すぐにダウンしてしまいました。
それから頭がズキズキして鳳翔さんに水を貰いながらも宴会を眺めている時でした。
なにやらそこに提督がお店に入ってきました。
なにかご用でしょうか?

「お、早速やっているな」
「どうしたんだい提督。あたし達と一緒に飲むかい?」
「い、いや…今回は遠慮しておくよ。それと今回はスズヤンの方に用があってきたんだ」

それでジュースを飲んでいたスズヤンが声を上げて、

「およ? 私に用って何? 提督」
「うん。今回の新任務でスズヤンの力を借りたいと思ってね」
「なになに? 今回の任務ってやっぱり厳しい場所なの?」

提督とスズヤンの会話を聞き逃さないように聞いているわたくしがそこにいました。

「ああ、いや。そこまで難しくはないんだけど編成で手こずるんでね」

どんな編成でしょうか…?

「今回の編成は第七戦隊絡みなんだ」

それを聞いてなるほどと思いましたわ。
最上さんに三隈さん、そしてスズヤンに熊野を編成するおつもりなのでしょうね。
わたくしも入りたいものですが我慢ですわ。
そこにわたくしの視線に気づいた提督が、

「クマノン、すまんな。今回は君の方はおあずけになる感じになってしまうみたいだ」
「別によろしくてよ。熊野の方をよろしくお願いしますわ」
「ああ。クマノンは引き続き楽しんでいてくれ。行くぞ、スズヤン」
「了解!」

それでわたくしはスズヤンが連れてかれるのを横目に宴会を楽しませてもらいましたわ。


 
 

 
後書き
今回はクマノンの方の軽空母組による歓迎会を開きました。
次回任務の話を書こうかと。

昨日に大鷹も改二になったのでその話も書かないといけませんね。改装設計図がかなり消費されました…。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0061話『第七戦隊の出撃』

 
前書き
更新します。 

 

スズヤンを執務室へと連れてきてさっそく私は話をする。

「それで提督~? 軽空母のスズヤンが必要ってどんな海域なの…?」
「まぁ待て。もう少ししたらメンバーが揃うから。それまで待っていてくれ」
「はーい」

それでスズヤンは素直に待っていてくれた。
しばらくして執務室に五人の影が現れる。
一人目は今回の主役である熊野改二。
そして最上に三隈。
加賀さんに最後に大和という布陣。

「うっわ…加賀さんに大和さんを投入って、ガチな海域じゃん?」

クマノンが口を抑えて驚いている。
大和を使うのは理由があるんだよな。

「そんな事はないんだけどな。ただ足りない火力を必要とした結果だったというだけだ」
「足りない火力…?」

と、そこで熊野が口を開いて、

「それで提督? わたくし達はどこに出撃すればよいのですか?」
「ああ、そうだったな。まだ教えてなかったか。場所はカレー洋リランカ島沖だ」
「ああ、なるほど」
「確かに私も使うのは分かりますね」

加賀さんと大和はお互いに納得できたのであろう。
このメンツではスズヤンを加賀さんと一緒に航空戦力として扱ってもきびしい制空権になるのは間違いない。
さらには熊野達三人の火力では最後のル級や港湾棲姫を倒しきれないかもしれない。
しかもだがもう今月のEOは割ってしまっている為に港湾棲姫は最終形態になっている。
だから手強い。
ゆえに足りない戦力を大和に求めたというわけだ。

「そうだろう。私も熊野達の力を信じていないわけではないが港湾棲姫が最終形態になっているのはさすがに手厳しいものがあるからな」
「そうなんだね。わかったよ提督。それじゃこの六人で港湾棲姫を倒してくるよ」
「行ってくれるか」
「うん!」

最上が素直に頷いてくれたのでよかった。

「もがみんが納得したのでしたらわたくしも反論はありませんわ。熊野もスズヤンも大丈夫でしょう?」
「ええ、問題ありませんわ」
「うん。了解じゃん!」

最上型四姉妹の承諾は得られた。
後は二人だけど、

「それでは提督。航空母艦加賀、はりきってまいります」
「久しぶりの通常海域への出撃、楽しみです。大和、頑張らせてもらいますね」

加賀さんは戦意向上をしていて、大和は通常海域に出れるのがうれしいのかガッツポーズを取っている。

「それではよろしく頼むよ」
「「「了解」」」

それで熊野達は出撃していった。











わたくし達は海を駆けながらも目的地であるカレー洋リランカ島沖を目指していますわ。
提督が火力不足を心配してか大和さんを投入するほどですからこのメンバーでは不安なものなのでしょうね。
もしスズヤンまで航空巡洋艦の方の鈴谷だったらとてもではありませんが航空戦力が不安なものになりますからね。
ですからスズヤンの方を使い航空戦力を整えるのは理にかなっていますわ。

「…でもさ、こうして第七戦隊のみんなで出撃するのも久しぶりだよね」
「そうですわね、もがみん」

最上さんと三隈さんがそんな会話をしていましたわ。
確かにこのメンツでの出撃は久しくなかったものでしたわ。
ですからガラにもありませんが気分が高揚していますわ。
どこか加賀さんが睨んでいましたが、決め台詞を使ったのを気づかれていませんわよね…?
そんな事を思いながらも海上を進んでいくわたくし達。
そこに索敵機を出していた加賀さんが口を開く。

「皆さん、そろそろ敵海域へと突入します。準備を…」
「わかりましたわ。全艦、単縦陣で陣形を組んで対処いたしましょう」

それでわたくし達は陣形を単縦陣にして最初の敵陣営を向かい打ちます。
そして次には潜水艦などとも遭遇して晴嵐や瑞雲隊を使いなんとかやり過ごし、この編成だともしかして軽巡棲姫のマスに行ってしまうかもしれないかもと思っていましたが、なんとか通常ルートの方へと歩を進めることが出来ました。
当然ですが通常の艦隊では相手にはなりませんでしたので港湾棲姫前の敵艦隊もすぐに倒させてもらいましたわ。
そして遭遇する港湾棲姫艦隊。
スズヤンと加賀さんの航空戦だけならまだしもわたくし達の瑞雲たちも力を貸してなんとか制空権を取ることが出来ました。
反航戦でしたが何とかなる事でしょう。
だけどどうにもやはり力不足は否めないのが実情でして大和さんの攻撃は通るのですがなかなか落としきれずにそのまま夜戦へと突入してしまい、

「くっ…港湾棲姫はなんとか倒すことが出来ましたけれど、ル級改が残ってしまいましたわ」

大本営の命令では条件はS勝利。
だから今回は口惜しいですが失敗という事でしょう。
それで一回帰投して補給をした後にもう一度出撃しました。
そして今度は航空機による攻撃がいい具合にヒットしてまず輸送ワ級二体を落とすことに成功して、なんとかなるかしらと思っていたのですが港湾棲姫の二回の攻撃で加賀さんとスズヤンが大破にさせられてしまってもしかしてやばい展開かしら…?と、思っていましたがそのまま夜戦に突入すると大和さんの砲撃が港湾棲姫に直撃して大破にして三隈さんの一撃で港湾棲姫を倒しました。
さらに残りのル級改も最上さんが倒してくださりなんとかS勝利をすることが出来ましたわ。
それで安堵の溜息をつきながらも、

「それではこのまま帰投しますわ」
「「「了解ですわ」」」
「…了解よ」
「ふふふっ…了解です」

さすがに加賀さんと大和さんは乗らなかったみたいだけど、スズヤン達三人が狙っていたのかわたくしの口調を真似て返事をしてきたために少々恥ずかしかったのが印象的でしたわ。
ちなみにその後のMS諸島沖はいつもより一回戦闘回数が増えましたがどうにか倒しきることが出来ましたので任務を見事達成できましたわ。
よかった…。
提督のお役に立つことが出来ましたわ。
それだけがわたくしの気持ちを占めていましたわ。
強くなったわたくしの活躍を今後も期待してくださいましね、提督…。


 
 

 
後書き
今回は熊野任務を掻きました。
そして明日は難敵だった南西諸島海域の話を書きます。
やっぱり羅針盤が最大の敵でした。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0062話『海上護衛総隊』

 
前書き
更新します。 

 




先日に引き続いて私は熊野を旗艦にして南西諸島海域の攻略を乗り出している。
任務の内容は『増強海上護衛総隊、抜錨せよ!』というもので航空巡洋艦か軽空母に軽巡を一隻ずつ、駆逐艦を二隻以上で編成せよという事であった。
それでまずは熊野を旗艦に置き、阿武隈、それと育て中の駆逐艦二隻…長波と雪風を置いて後は千歳、千代田を編成してまずは手頃なところで沖ノ島沖を攻略した。
ルート固定が唯一出来る海域なので一発でクリアできたのは良しとしよう。
そしてお次はカムラン半島への出撃。
そこでかなりの手こずりを見せた。
熊野が無線で、

『提督、また逸れてしまいましたわ…』
「そうか。わかった、帰投してくれ」

そう、南西諸島海域は全域がほぼランダムで構成されている為に逸れる可能性が高い海域なのだ。
それを思い出して戦慄していたのは…嫌な汗が出るというものだ。
そして試行回数を増やす事六回。
その六回でまず最初の戦闘後にすぐに逸れてしまい改めてこのエリアの手強さを体感していた。
やはり最大の敵は羅針盤だったかというものを味わっている。

『とりあえず索敵機を出しますがあまり期待しないでくださいましね?』
「ああ、とりあえず数をこなしてやっていくしかないだろう」
『わかりましたわ。それとそろそろ駆逐艦の皆さんの交代ですわ』
「…非常に遺憾だがわかっている。疲労がついていたらいざボスに辿り着いても疲労で命中率が下がって敵が倒せなかったじゃ話にならないからな」

それでまた熊野達が帰投した後に疲労がついている駆逐艦を交代していき七回目の戦闘。
それでボスエリアの前まで初めて行くことが出来て、

『提督…。ボスに行くことを祈っていてくださいね』
「ああ。それじゃ羅針盤を回してくれ」
『了解ですわ』

それで通信先では熊野が祈りを込めて羅針盤を回しているのだろう回転する音が聞こえてくる。
そしてついに、

『ボスエリアへと到着しましたわ。このたまっているうっ憤を晴らしてきますわ』
「ああ。思いっきりやってこい」

そして敵艦隊はあっという間に殲滅をされていった。

『ふぅ…これで少しは気が晴れましたわ』
「そうか。それじゃ次があるんですぐに帰投してくれ」
『そうでしたわね。任務内容は南西諸島全域の攻略ですからまだまだ半分も終わってませんのね』
「ああ。だから辛いと思うが頑張ってくれ」
『分かりましたわ』

気持ち言葉に覇気が感じられない熊野の事を心配しながらも、帰ってきたらすぐにバジー島沖へと出撃してもらった。
この海域は比較的いつもやっている海域なので大丈夫かなと思ったけど、こう思ってしまったのがフラグだったらしい。
二、三回また逸れてしまった。
それである事を思いついた。
バジー島沖と東部オリョール海は水上機母艦をいれるとボスに行きやすいという事で千代田を軽空母の方から水上機母艦へと変更して出撃させてみた。

『提督! 私に任せて! 千代田に代わってこの千代がみんなを導くわ』
「ああ、頼む」

ちなみに熊野達と同じように千代田二人は軽空母の方は『千代田』。水上機母艦の方は『千代』と呼んでいる。
千歳も同じで水上機母艦の方は『ちと』と呼んでいる。
そして阿武隈とともに甲標的を放って殲滅しながらも瞬く間にバジー島沖と東部オリョール海を攻略した。
これであの難関海域以外は攻略完了したことになる。
それで私は手慣らしをするために長門を執務室に呼んだ。

「どうした提督? 私を呼んだという事はまさかとは思うが…」
「ああ。長門、ちょっと沖ノ島海域を私も一緒に攻略してくる」

それで長門は少し呆れた顔をしながらも、

「はぁー…わかった。最近の提督のわがままぶりには振り回されて慣れてきたからな。その間は私が代行をしているとしよう」
「すまんな」

それで私は熊野達が帰ってきたら私も出撃する旨を話す。
それで長波も、

「お、提督。最近は結構やる気あるじゃん!」

と言ってくれた。まぁ君が言い出したことだからね。
最初の登竜門で難関海域と名高い沖ノ島海域の攻略はぜひ体験しておきたい。

「提督!? 授業参観ではありませんのよ!?」
「わかってるわかってる。だけどみんなの苦労を一緒に体験したいっていう私のわがままだ。
榛名もついていることだしなんとかなるだろうし…」
《はい、提督。榛名は大丈夫です》

榛名が出てきてなんとも頼もしい事を言ってくれる。
最近は榛名もあきらめがついたのか私のわがままに付き合ってくれているので最近は嬉しい限りだ。
だけどそれで少し悪夢を見るとは思っていなかった。
そう…何度も逸れてしまうのだ。

「やっぱり…この海域も逸れてしまいますわね」
「そうだなぁ…今何回目だっけ…?」
「提督。もう五回は越えたんじゃないかい?」

そう、一回目の戦闘後が鍵になってくるんだけど必ず西か東南方向へと逸れてしまい酷い時にはお仕置き部屋という名の行き止まりへと案内されてしまう。

「これが南西諸島の恐怖か…天龍じゃないけどフフ怖だな」
「提督ー? 呑気な事を知っている場合じゃないですよー? またみんなに疲労がつき始めましたよー」
「わかっているよ阿武隈。さて、どうしたものか」

この海域は固定が完全にできないためにランダム性が非常に高い。
イベント海域などではある程度固定は出来るんだけど、こちらではイライラが募るのを我慢できない感じだな。
だけどここまで来たらやるしかないよなぁ…。
それからすでに二桁の出撃をしていてそろそろ苛立ちが最高潮へと達しそうという時に、

「提督! やりましたわ! ボス確定ルートに入りましたわ」

索敵機を出していた熊野からのその報告に、

「よし! 全艦、道中の敵に気を付けつつ全速前進だ!」
「「「了解!」」」

それで私達は強行軍となり道中の敵を殲滅しつつボスエリアへと到着する。
そして向かい合うル級の群れ…。
初めて到達したときはその圧倒的物量で泣きを何度も見たけど今となってはなんだ、この程度か…くらいの認識しかないんだよな。
成長したと言えばそこまでだけどこの募った苛立ちを晴らさせてもらうぞ。
私は内心で怒りを制御しながらも砲撃をしていく。
そして瞬く間に殲滅してこれで南西諸島海域は全域を攻略したことになって任務が達成された。



その褒章で大本営から贈られてきた『新型砲墳兵装資材』が合計三つも貯まってちょうどうちには一つだけ試製41cm三連装砲(MAX)があったために明石に頼んで更新してもらった。
更新した先の兵装である『41cm三連装砲改』は武器として見れば試製41cm三連装砲よりは高性能だけどMAXではないので使いどころがきついかもしれないな。
まぁ、うちにはそんなに高威力の主砲が多いわけではないから普通に使っていくと思うけどね。
とりあえずこれで手慣らしもできたし攻略できて良かったと思っておこう。


 
 

 
後書き
合計回数が30回は越えたかと思います。
まじで羅針盤が鬼畜でした。
行くときはすぐにいけるんですけどねぇ…。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0063話『ガングートと大鷹と甘味』

 
前書き
更新します。 

 






先日に熊野の件での任務が終わって私は後回しにしていた大鷹とガングートの改二の施行を行っていた。
明石の「いいですよー!」という活気あふれる声とともに私は改装ボタンを押して改装室から光が漏れだしてくる。
先に改装室へと入っているのは大鷹の方だ。
彼女は改装設計図と試製甲板カタパルトを改装に使用するために結構大掛かりな手間がかかっているのだ。
それでその光景を見ていた今は名を十月革命…『Октябрьская революция(オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ)』である彼女が見ながら、

「素晴らしいな…。タイヨーももうすぐに真の姿で改装室を出てくるのか」
「ああ、そうなるな。改二になって大鷹はやっと本来ありえただろう姿に慣れるんだから。
…生前は活かすことが出来なかった飛行甲板を装備して強くなるぞ」
「…なるほど。タイヨーの生前にも色々あったのだな」
「ああ。まぁそこら辺はそちらで直接大鷹に聞いてくれ。同期だから仲はいい方だろう?」
「うむ。タイヨーはまだこの鎮守府にやってきた頃に少し不安があった私を何度も気遣ってくれたからな。
あのちびっこいのと一緒に仲はいい方だ」

ちびっこいの…ああヴェールヌイの事か。
あんまり面識はなかったらしいが一応ロシア繋がりで仲はいい方だと言う。
なんでもヴェールヌイはガングートの事を多少は意識しているようでこの間に執務室に来て彼女との付き合い方などを教えてほしい…と言ってきたものだ。
ヴェールヌイもロシアに賠償艦として連れていかれる前は暁型駆逐艦響として日本艦として活躍していたから多少思う所があるのだろう。
まぁ、そんな話をしていると改装室の中が光が次第になくなっていき、扉が開かれるとそこにはソナーを現しているのだろうヘッドホンのようなソナー機をかけている大鷹の姿があった。
飛行甲板も迷彩が施されており如何にも空母らしい姿になったな。

「提督…。私大鷹をここまで育ててくださりありがとうございます。
これからも精一杯頑張らせてもらいますね」

どこか強かに見える笑みを浮かべて大鷹は私にそう宣言してきた。
なので、

「ああ。これからも主に対潜戦闘や連合艦隊第二艦隊の方に組み込まれるかもしれないからそこら辺はおいおい覚悟しておいてくれ」
「わかりました。もし使われる際は存分に力を発揮させていただきますね」
「よろしく頼む。それじゃ…オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ。次は君の番だ」
「わかった。タイヨー…この私の改装が終わったらささやかだがマミーヤで甘味でも食べるとしよう。待っていてくれ」
「はい。わかりました」

どこかフラグのようなセリフを言いながらもそれでオクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤは改装室へと入っていく。
まさか失敗することは無いよな…?
妖精さん達の腕は信じていないわけではないが…。

「それにしても、改装設計図がいらない第二次改装というのも久しぶりだな」

そんな事を私はつい口に出して呟く。
最近の要改装設計図の傾向が特にあるから余計にそう感じるのだろう。

「そうなのですか…?」
「ああ。最近は必ずと言っていいほどに改装設計図が必要な大型改装が多かったからな。
だから改装費用もそんなに必要としない彼女は比較的ありがたい存在だと思っている。
あ…。もちろん大鷹など強くなるのなら改装設計図も惜しまないから気にしないでくれ」

大鷹がそれで少し機嫌が悪くなるかもしれないので補足説明もいれて話をする。

「いえ、気にしていませんので大丈夫ですよ提督。
私も生前はそんなに強くなかったのは自覚しているところですから強くなれるのはとても嬉しい事です」
「そうか? それならよかった」

そして、しばらく時間が経過して明石の方で準備ができたのだろう。

「提督。準備が出来ましたので後はボタンを押すだけですよー」

という明石の声が聞こえてきたので私は大鷹と笑みを浮かべあいながらも改装ボタンを押す。
そして改装室の中から光りが漏れてきて中では改二になるための改装が妖精さん達の手で執行されているのだろう。
しばらくして中から光りが薄れてきて改装の際に発する機械音も消えて、扉が開かれた。
中から改装されたオクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤが出てくる。
…いや、もうその名ではない。

Октябрьская революция(オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ)改め…Гангут(ガングート) два(ドゥヴァ)だ。
提督…この改装されたガングートの力をこれからも深海棲艦を倒すために活用してくれ。
私は必ず貴様の呼びかけに応えよう」
「ああ、これからもよろしく頼むよ、ガングート」
「うむ。提督の考えや思考パターンなどはこの短期間のこの鎮守府での暮らしで十分に理解させてもらった。
貴様はまともな部類に入る提督だ。だから安心して背中を預けられる。
演習で聞く他の提督とは根本的に違うようだからな」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいよ…。
他の鎮守府の提督が君の中でどんな扱いになっているのとかはあまり聞きたくないけどな…」

そう言うとガングートはニヤリと含みのある笑みを浮かべるだけであった。
その笑みはどこか怖いからやめてほしいな。
そんな事を思っていると、

「それでは提督。私とタイヨーはマミーヤへと行かせてもらう。
改二記念の宴会などの日程などは後で知らせてくれ」
「わかった。そのうち開かせてもらうよ」

それで大鷹を連れてガングートは甘味処間宮へと向かっていった。










私はタイヨーを連れてマミーヤへとやってきていた。
それで中に入らせてもらい席について、

「それじゃタイヨー。何か頼もうではないか」
「そ、そうですね…でもガングートさん。あなたはよく間宮に来るんですか…?」

タイヨーがそんな事を聞いてきた。
だから私は答えてやった。

「この国はロシアに比べて熱いからな。よくマミーヤにはアイスを御馳走になっているんだ」
「そうだったんですか…」

我が祖国ロシアは寒い国故に春に夏は暑く秋に冬には寒いというこの二ホンという国には肌が合わないものがあるからな。
だからアイスはとても美味しく感じるんだな、これが。
そこに、

「ガングートさん。はい、いつもの甘味ですよ」
「おお、イラコーか。ありがとう」

イラコーがアイスを持ってきてやってきたので素直に頂くとしよう。

「ガングートさん? あまり食べ過ぎないでくださいね? 最近よく来ますから心配になっちゃいますからね?」
「ははは。わかっているさイラコー。心配ない」

イラコーに少し小言を貰いながらもそれで私がそのアイスを頬張っているとタイヨーがどこかクスリと笑みを浮かべて、

「ガングートさん、どこか子供っぽいですね」
「そうか…? 背の小さい事もあって私としてはコンプレックスに感じていて子供と言われるのは心外なんだが…親しい中じゃなかったら銃殺刑者だぞ?」
「あはは…少し笑えないジョークですね」
「ははは! そうだな、悪かった」

そんな他愛ない話をタイヨーとしながらもアイスを食べていったのである。
うん、やはりアイスは美味しいな!


 
 

 
後書き
今回はちょうど熊野と改二が重なったのでガングートと大鷹の話を書かせてもらいました。
アイス好きで間宮でよくキラキラになっているという話があったので今回はそれを題材にしました。
これで今のところは改二は必要な艦はいないですかね。
これから由良に大型空母(おそらくサラトガ)に主力戦艦が改二が来るそうなのでそれに控えて勲章や資材を貯めておきます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

 

 

0064話『梅雨の始まり。扶桑と夕立』

 
前書き
更新します。 

 




朝に目を覚ましてみると少しどこか湿気のような雰囲気に包まれている部屋の匂いを感じた。
それでカーテンを開けてみると雨がしとしとと降り注いでいた。
そうか…。もう梅雨の季節か。

「雨が降っているな…。あ、榛名、おはよう」
《おはようございます、提督。よく眠れましたか?》
「ああ」

朝の毎日の日課である榛名との朝の挨拶を終わらせてから少し考える。
この時期になると洗濯物が湿気臭くなってしまいカビの温床になる。
そこら辺は鳳翔さんがなんとかしてくれるだろうけど頼り切るわけにもいかない。
自身の洗い物は各自で処理しないとな。
それから少し湿気で硬くなっている提督服に袖を通しながらも今日の予定を考える。
畑仕事もこの雨だと出来なさそうだからな。
雨の日の出撃だと憂鬱になる子もいそうだしな。

「今日の予定はどうするか…」
《そうですね…雨が降り止むのを待って任務をこなしていきましょうか?》
「そうだな。とりあえず工廠系の任務は早めにやっておこうか」
《そうですね》

これからの予定を榛名と話しながらそんなこんなで食堂へと顔を出すと間宮さんが私に気づいたのか近寄ってきた。

「提督、おはようございます」
「おはようございます、間宮さん。今日の朝のメニューはどうなっていますか?」
「そうですね…」

間宮さんに今日のメニューを聞きながらトレーをもって間宮さんの料理が配膳されるのを待っていると、するとそこに今日は非番なのか扶桑が着物姿の所謂梅雨modeの姿で現れて私の後ろに並んだ。

「提督…おはようございます」
「ああ。扶桑、おはよう。その姿も似合っているぞ」
「ふふっ…ありがとうございます。先ほどに山城や時雨達にもこの姿を褒められたので少し気持ちがいいんです」
「そうか。それにしてもまさかその恰好で出撃するわけじゃないんだよな…?」

それで思ったのはゲームでは必ず限定衣装の姿で出撃していたから夏のイベントなどとかでは水着姿で少し緊迫感に欠ける光景ではと思っていたのだ。
それを扶桑も思ったのか、

「はい。さすがに一張羅の服は普段の服装とは違い修復されませんから…」
「そうか。それならよかった。さすがにそのままの出撃だとなぜか罪悪感が沸いてくるものなんだよ」
「そうですね。提督…? 今は他の皆さんも色々な梅雨の姿でいますから見て回られるだけでも楽しいと思いますよ…」
「わかった。その都度出会ったら感想を述べておくよ」

扶桑とそんな会話をしていると間宮さんが用意できたのか料理をトレーに乗せてくれたので、

「ありがとう、間宮さん」
「いえ、これが私の仕事ですから。提督もたまには甘味処間宮に来てくださいね」
「わかった。扶桑、先に行っているけど一緒に食べないか?」
「いいんですか…? それではご一緒させてもらいますね」

それで扶桑と一緒に席について料理を食べ始めていると、

「あー! 提督、扶桑姉さまと一緒に食事を摂っているんですカ!?」
「ああ、山城か。それならお前も一緒にどうだ? まだ食べ始めたばかりだから」
「くっ…髪のセットに時間がかかったために扶桑姉さまとの食事に出遅れてしまうとは…不幸だわ」

また山城の不幸自慢が始まっているけどさすがにこのままでは扶桑も食べづらいだろう。
だから、

「ほら! きびきび動く。待っていてやるからさっさと取って来い」
「わかっていますよ! …ああ、もうどうしてこう間が悪いのですか…」

そんな愚痴を山城は零しながらも食事を取りに向かっていった。
その山城の姿を見て扶桑はクスリと笑いながら、

「山城も素直になりましたね…」
「そうか? いつも通りだと思うけどな…」
「そんな事はありません。提督が山城としっかりと向かい合っていませんとこんな関係にはなれませんから。ですから私もとても感謝しているんですよ?」
「そ、そうか…。それならよかった」
「はい…」

扶桑はそれで少し儚そうに見える笑みを浮かべた。
扶桑の雰囲気にもマッチしていてとても綺麗だな。
そこに山城が戻ってきたのかどこか私にジト目を向けてきている。なんだ…?

「提督…? どこか扶桑姉さまと一緒だと楽しそうですね。少し嫉妬してしまいます」
「山城…? それは私に対して…? それとも…提督に対してかしら…?」
「や!? 扶桑姉さま、からかわないでください! 私はいつでも扶桑姉さま第一です! そ、その…提督の事は扶桑姉さまの次くらいには…」

山城はそれでゴニョゴニョと言葉を濁しながらも顔を赤くしている。
扶桑もそれで少しからかい気分が増したのか、

「うふふ…可愛いわね山城は。ね、提督?」
「そうだな」
「ね、姉さま~…私で遊ばないでください…それと提督も扶桑姉さまと一緒になって悪だくみをしないでくださいぃ…」
「ごめんなさいね、山城。それじゃ食事を再開しましょうか提督」
「うん。まだ温かいからゆっくりと食べるとしようか。今日は雨で出撃任務はそんなに出来なさそうだしな」

ちなみに山城は扶桑の隣ではなく天然なのかちゃっかりと私の隣に座っていたのでそれもまた扶桑にからかわれる要因になっていたのはまた別の話であった。







それから食事も済ませて私は執務室で任務の確認をしているとそこに雨合羽を着ている夕立が姿を現して、

「提督さん! 外に遊びに行こうっぽい!」
「いきなりだな夕立。どうした…?」
「うん! 梅雨の季節に入ったからこのお気に入りの雨合羽を着るのが楽しみだったっぽい!」
「…まぁいいか。気分転換に出てみるか」
「やったっぽい!」

それで私は傘を差しながらも雨が降っているので控えめにじゃれてくる夕立をあやしながらも中道を進んでいると前方からどこか仕事人のような格好の雨具を着ている千歳と千代田が傘を差しながら歩いてきた。

「提督…? こんな雨の中でどうされたのですか?」
「少し夕立に誘われてな」
「ぽい!」

夕立の頭に手を乗せながらそう答える。
夕立はそれでどこか嬉しそうだったのが印象的だった。

「それでそっちはどうしたんだ?」
「私が千歳お姉を誘ったんだ。ただ雨の日だからって外に出ないのは勿体ないからね」
「確かにそうだな」
「提督。それじゃ私達はこちらなので夕立さんと楽しんできてくださいね」
「わかった」

それで千歳と千代田は私達とは反対側に歩いていった。

「やっぱりみんな、雨の季節を楽しみにしているっぽい!」
「そうだな。こうして歩いていると色々な子達と出会えそうだ」
「うんうん! だからもっと歩こう!」
「そうだな」

それで夕立と一緒にそれからも色々な梅雨の姿の艦娘達と出会うのであった。


 
 

 
後書き
今回は扶桑と夕立の梅雨、そして千代田に千歳のmodeを掻きました。
前にどこかのイラストで千歳と千代田が仕込み傘を持っているのを見た事があって仕事人みたいというイメージがついちゃっています。
扶桑姉さまの梅雨modeは色っぽいですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0065話『瑞穂と神威の野菜作り』

 
前書き
更新します。 

 




先日に引き続いて雨が降り注いでいる我が鎮守府は戦闘行動を制限されてしまっている為に暇を持て余している艦娘が少なくない数いた。

「しかし、今年はあまり降らないという感じの予報をしていたのに結構うちら辺は降っているな」
《そうですね。これでは鳳翔さんも洗濯物が出来なくて嘆いていそうです》

榛名の言う事も分かる。
私も中身は男性だけど今は榛名という身体だから女性という扱いにされている為に一緒に洗濯物をさせてもらっている身だけど鳳翔さんが服が干せないと嘆いていた。
そして仕方なく室内に中干をして半乾きになっている服が結構あるのだ。
こういう時に暖房室がある部屋があると便利だけどこの季節はエアコンはなるべく節約で制限している為に使えないのだ。
みんなで宴会をする大広間が今は服干しの場と化しているのはどうだろうか…?
しかしこうと考えればいい。
使える場所は使え、と…。
だから最近宴会は開かれていないのでちょうどよかったと鳳翔さんは嬉々として大広間に服を干していた。

「…まぁ、一応は着れないことは無いんだから我慢するとしよう」
《そうですね…ところで提督。本日はどうしますか? また夕立さんが嬉々として執務室に押しかけてきそうですけど》
「そうだな。誰かが執務室に入ってくる前に任務は片付けておくか」
《そうしましょう》

と、そんな事を思っているとさっそく執務室の扉を叩く音が聞こえてきた。
誰だろうなと思いながらも、

「どうぞー」

と言ってその誰かを招き入れる。
それで執務室に入ってきたのは瑞穂と神威だった。

「提督…。瑞穂、参りました」
「提督! 神威、瑞穂さんと一緒に少し提督に用があって来ました」

そんな言葉とともにその手には傘が握られていた。
そして瑞穂の三方には梅雨modeのアジサイが乗せられていた。
神威の方も髪飾りにアジサイが添えられている。

「私に用か。なんだ、言ってみてくれ」
「イヤイライケレ、提督。それでですが提督は確か鎮守府の一角に畑を作っていましたよね?」
「ああ、そうだけどそれがどうした…?」
「はい。神威さんと相談しまして私達もそこを使わせてもらっても構いませんかという相談をしに来たんです」
「別に構わないぞ。畑はやる気があるなら誰でも使えるようにしてあるからな。
それなら武蔵とか天龍にも相談してみると言い。
彼女達も私と一緒に畑を耕す仲だからな」

それで二人はパァッ!という笑顔を作って、

「ありがとうございます! 神威さんと一緒に今から夏にかけていいものを作りますね」
「ああ、わかった。…だけど今から作っても梅雨の季節もあって夏には間に合わないと思うが…」

私はそんな事を言うと二人は少しため息をついて、

「提督…? 提督はまだ畑仕事は初心者ですから分からないと思いますが、梅雨の時期に植える野菜というのもあるんですよ?」
「瑞穂さんの言う通りですよ。しし唐にミズナ、モロヘイヤに芽キャベツなどが夏には収穫出来て秋ごろにはサツマイモも収穫できるんですよ?」

それを聞いて私はひどく驚いた。
確かにまだまだ私は初心者だなという気持ちにさせられた。
まだまだ畑仕事は奥深いな…。
雨の季節だからこそ育つ野菜も結構あるんだな。
勉強になるな、うん。

「すまなかった。私が浅はかだったな」
「いえ、分かってくださればよいのです。それでですがついでと言っては何ですが提督に町に連れてってもらいたいんです」
「ん? 町にか…?」
「はい。野菜を作りたいのはいいんですけどまず種やら肥料、それに色々道具を調達しないといけません」
「その道具が今は不足しているんです…」

それで少し考えて私に相談するのは確かに仕方がない事だと思った。
基本艦娘は視察以外では私随伴の行動でないと町には繰りだせないのだ。
大本営の規則でもし艦娘がありえないと思うが誘拐などされたら大変だという処置で提督随伴でないと鎮守府以外では行動はできないという規則が出来ているのだ。
だから気軽に艦娘達は町に繰り出せないのだ。
それで不満を感じている子達も結構いるのが現状だ。
艦娘達は町の人とも触れ合いたいという気持ちがあるらしく私が町に視察をしに行く際には誰が行くかくじ引きをして決めているとかなんとか…。
酒保でも大体のものは揃えられるのだがいざ欲しいものがないという時にはよく私が町に行く際に買う事が多いのだ。
それで瑞穂たちもそんな事で今回私に相談してきたのだろうな。
その想いには応えないといけないな。

「わかった。それじゃ今日は雨が降っているけど任務が終わったら昼食後に午後にでも町に繰り出してみるか?」
「本当ですか!? ありがとうございます提督!」
「提督、イヤイライケレ!」

それで瑞穂と神威は手を合わせて喜んでいた。
この笑顔には逆らえないよな。
よし。それじゃ午前中に任務をあらかた片付けておくとしようか。

「瑞穂、神威。それじゃ任務を片付けたいので手伝ってもらってもいいか?」
「わかりました。瑞穂、頑張らせてもらいます」
「神威も頑張りますね」

それで三人で今日の任務書と格闘してなんとか午前中に本日の任務を終わらせた。
そして昼食時に私は二人と一緒に摂っているけど二人の浮かれ具合がすぐに分かるくらいには楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

「二人とも? 今からそんなんじゃ後でばててしまうぞ?」
「そ、そうですよね…でも私達も知識はありますけど野菜作りは初めてですので楽しみなんです」
「その通りです。瑞穂さんの言う事は神威も分かります」
「そうか…それじゃさっさと食べて町に繰り出そうか」
「「はい」」

それで昼食を終えた私達は町へと繰りだしていった。
雨も降っているので傘を差してだけどね。

「しかし、やっぱり降っているな」
「そうですね提督。でもこういうのも嫌いではありません」
「神威もそう思います。こういう雰囲気も結構好きです」

そんな事を話しながらも私達は町のホームセンターへとやってきた。

「あ、提督さん。いらっしゃい。本日はどうされました?」

店員さんに話しかけられたので、

「本日は野菜の種とか肥料や畑仕事の道具を買いに来たんですよ」
「そうですか。でしたら案内しますね」

それで店員さんに案内してもらう。
それを聞いていた二人は少し不思議な顔をしながらも、

「提督はよく来られるんですか…? 馴染んでいますけど…」
「ああ。武蔵や天龍と一緒によく買い物には来させてもらっているんだ。
買うのは大体野菜の種とか肥料に必要な道具とかだな」
「そうだったんですか…」

それで二人は素直に驚いている。

「いつもは武蔵が全部担いで持ってくれるんだけど今日は力仕事は苦手なメンバーだから鎮守府に後で買ったものを送ってもらうとしようか」
「わかりました」

それで店員さんに案内されてもらって必要な種や道具などを購入して鎮守府宛に送ってもらうように手配してもらった。
それでも野菜の種とかは二人して大事そうに抱えていたけどな。

「…とてもいい買い物ができました。ありがとうございます、提督」
「なに…それで鎮守府の食事に貢献してくれるならこれくらいの苦労は厭わないよ」
「提督は優しい人ですね…神威、感激しました」
「ははっ。そんなおだてても何も出さないぞ」

そんな話をしながらも私達は鎮守府へと傘を差しながらも笑顔で帰宅した。


 
 

 
後書き
今回は瑞穂と神威のグラも関係して書いてみました。
調べてみたら梅雨の時期から植えても夏には収穫できる野菜が結構あるんですよね。勉強になりました。



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0066話『漣の梅雨気分』

 
前書き
更新します。 

 




漣の回キタコレ!
というツッコミをしろというお告げが突然頭に沸きあがったのでとりあえず言っておきます。
なにやら漣が主役の回みたいなんですよこれが。
メタ発言は控えろって? ノンノン、私は読者の皆さんにお応えしているだけですよ。
え? それがダメだって? 知りません。
ですのでせっかくですからご主人様に前に買ってもらった私服を着て会いに行ってみましょうかねー。
漣は最初からフルスロットルですよー!
それで部屋で着替えをしていると同室のぼのたんが入ってきた。

「…漣、あんたなんで私服でいるのよ? クソ提督に怒られるわよ?」
「うっふっふ。ぼのたんには漣のたくらみが分からないみたいですねぇ…」
「はぁ? 相変わらずあんたって頭のネジが飛んでいるわね」
「痛ったー! ぼのたん、いつも通りに辛辣なお言葉、ごちになります」
「うっさい! それとぼのたん言うな!」

漣の返しにぼのたんは頭が痛そうな表情をしています。
そうです、ぼのたんはからかい甲斐がありますから漣が自らきっかけを作ってやりませんと調子を崩してしまうかもしれないのです。
…え? お前のせいで余計に調子を崩しているって? まっさかー。
漣はいつもぼのたんやみんなの事を大切に思っているんですよー。…信じてもらえませんけどねー。
とにかく、

「これからご主人様にこの恰好を見せに行こうと思っているんですよー。だからぼのたんも一緒にいきませんか?」
「なんであたしまであんたの用事に付き合わないといけないのよ…?」
「同じ部屋のよしみと思って付き合ってよぼのたんー」
「だからぼのたん連呼するな!って手を掴むな!!」
「まぁまぁ」

そんなこんなでぼのたんを強制的に引き連れて漣はご主人様に会いに行くのです。
ぼのたん、地獄まで一緒に付き合ってもらいますよー。ふふふっ!

「…やっば。あんた、その不気味な笑み、なんかたくらんでるでしょ?」
「まさかー。ただご主人様にこの恰好を褒めてもらうついでに間宮券をたかりにいくだけですよ」
「やっぱりたくらんでいるじゃない…」

それでぼのたんはため息をつきながらももう諦めもついたのか素直に着いてきてくれた。
ありがたいですねー。デレぼのたん、ktkr。
それで二人で執務室に向かっているとちょうどよかったのか前方から潮ちゃんと朧ちゃんが歩いてきました。
第七駆逐隊集合ですね。

「…あれ? 漣ちゃんに曙ちゃん? なにをしているの? っていうかなんで漣ちゃんは私服なの…?」
「そうだね。基本制服が標準の格好だから漣、なにかたくらんでるでしょ?」

あやや。朧ちゃんにまで疑われてしまいました。

「ほらね。あんたが珍しい格好をしていると疑いの眼差しを向けられるのよ。自覚あるんでしょ?」
「うう…ぐうの音も出ねぇ」

それでぼのたんが二人にご主人様にたかりに行く話を説明していた。
そしたら二人とも少しジトっとした目を向けてくるではないか。
なんですか! ただ褒めてもらいたいだけじゃないですか!…ただちょっとお駄賃貰いたいなっていう思いもあるにはありますけど…。

「もう…。漣ちゃん? 提督は忙しい見なんだから迷惑かけちゃだめだよ?」
「潮のいう通りだよ」

それで二人とも説教modeに入ってしまい漣はなぜか正座をさせられてしまってしまいました。
うう…事の達成には犠牲が付き物ですがまさか漣自身がこんな羽目になるなんて…。
うさぎさん、慰めてぇ…。
もしくはウサギさん連盟(巻雲に卯月)助けて!
まぁ、そんな都合よく二人が現れる事もなくそれから五分くらい説教を受けていました。

「…このくらいでいいかな?」
「うん。いいと思うよ朧ちゃん。漣ちゃん、反省した…?」
「しましたよ~。しましたから執務室に行くだけ行きましょうよ。褒めてもらいたいのです」
「しょうがないわね。潮、朧、少しだけだけど付き合ってよ」

おお! ぼのたんがまさかの助け舟を出してくれるとは。
デレ期か? デレ期なのか!?

「…なんか気分が変わりそうだわ。漣がなんか変な事を考えているみたいで…」
「そ、そんなことはないですよー…?」
「漣ちゃん、目が泳いでいるよ…」
「説得力は皆無だね」

三人にさんざんな扱いを受けながらもやっと漣たちは執務室へと到着しました。
それで扉をノックします。
大抵は畑仕事以外は鎮守府内を誰かと回っているか執務室で執務をしているかですから多分いると思いますけど…。

『どうぞ』

すると榛名さん声のご主人様の声が聞こえてきました。
よかった、今は執務室にいるみたいです。

「漣です。ご主人様、中に入ってもいいですか?」
『構わないよ。ん…? 他にも何人かいるのか? 気配がするけど…』
「さ、さすがご主人様です。たまに戦闘に参加するようになってから感知能力が上がりましたか?」
『ああ、多分そう言う所だろうな。一緒にいるのは第七駆逐隊の面々か…?』

するどい!漣の行動パターンも把握済みですか。
やりますね、ご主人様。
それで素直に扉を開けてみんなで中に入らせてもらいます。
執務室の中には提督と一緒に透明の榛名さんの姿がありました。
榛名さんって執務の手伝いは出来ないけど応援はしているという話なんですよね。羨ま…もとい楽しそうですね。
そしてご主人様がめざとく漣の恰好に気づいてくれました。

「お。漣、前に買ってあげた服を着てくれているのか」
「ッ! そうなんですよ。ご主人様に見せておこうと思いまして」
「そうか。似合っているぞ漣。な、榛名?」
《はい、漣さんとても似合っていますよ》

ご主人様と榛名さんに同時に褒められてしまいましたー。
いや、漣だけなら別に良かったんですけどぼのたんとかもいますから恥ずかしいですねー。
案の定ぼのたんは含みのある笑みを浮かべながら、

「ねぇ、クソ提督? 漣がね、なんか褒めてくれるついでになにか奢ってほしいとかいう魂胆らしいんだけど…」
「ちょ!? ぼのたん、それはさっき無しになったでしょうが!」
「いいじゃない? 漣の魂胆もついでに説明してあげるのも友としての役目よ」
「あはは…曙ちゃん、とっても悪い顔です」
「うんうん。でも曙の言っている事は別に間違っていないんだよね」

そんな感じで一人羞恥で顔を赤くしているとどこかご主人様が悩む仕草をしています。なんでしょうか?

「それならちょうどいいから後で曙と潮と朧の三人にも新しく服を買ってあげてもいいぞ。漣だけじゃ不公平だからな」
「い、いいんですか!?」

それでいの一番に潮ちゃんが食いつきました。
こう見えて潮ちゃんってご主人様に好意を抱いていますからご主人様の提案は嬉しいんでしょうね。

「…無理するんじゃないわよ?」
「別に無理はしていないよ曙。この世界に来てから趣味以外には特にお金は使っていないから余っているんだ。だから有意義に使わないとな」
「そんな…。朧、今の環境だけでも満足していますのにそんな大それたことなんて…」
「まぁまぁ、朧もそう言わずに素直に受け取ってくれ」
「ありがとうございます…」

ぼのたんがご主人様の心配をしていて曙ちゃんもどこか遠慮気味だけどご主人様の後押しで受け入れたみたいですね。
なんだか漣だけ取り残されているみたいですね。少し寂しい…。
だけどそんな漣の気持ちもご主人様は汲み取ってくれているのか、

「もちろん漣にもなにか上げるよ。ケーキでも買っておこうか?」
「ケーキキタコレ!」

とっさに反応を返してしまいました。
漣も結構がめついんだなと自己評価をしました。
それで結局間宮さんの所へと言って漣たち四人にご主人様は甘味を奢ってくれました。
最初に狙っていた事ですけどこうもうまくいきますと後が怖いですね。
でも素直に嬉しいです。


 
 

 
後書き
漣って結構表現が難しいキャラですよね。
調子いい時もあれば礼儀正しいしボケる時はボケるしで…。
そして第七駆逐隊が揃えば話のタネはいくらでもひねり出せますね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0067話『夕雲型の梅雨mode模様』

 
前書き
更新します。 

 



今日は例に漏れずに雨が降っている。
小雨程度だけどそれでも艦隊運営に支障を与えるくらいには迷惑な雨だな。
それでも川内率いる夜戦チームは平気で出撃して哨戒はしているけどね。
戦闘はなるべく控えて当然かっぱは着ているので雨に濡れても大丈夫。
そんな事を思いながらもふとなんとなく外を見てみるとそこには傘を差している緑色の髪の子の姿が見えた。

「あれは…高波かな?」
《多分そうでしょう。他にも黒髪の子も見えます。おそらく早霜さんかと…》
「だな。なにやら二人で楽しそうに会話しているけど姉妹だから波長が合うんだろうな。今はそっとしておこうか」
《はい》

それで私はまだ仕事が残っているのでそちらを優先させて今は二人をそっとしておく事にした。





それから少し時間が経過してお昼になる頃にある一人の戦艦に憧れいつか自身も戦艦になりたいと思っている艦娘が執務室へとやってきた。

「ねぇねぇねぇ! 司令官、今からお昼でしょ? 一緒にいこう!」
「清霜か。わかった。支度するから少し待っていてくれ」

それで財布やら傘やらを準備して食堂の棟へと向かう。
一見執務室と食堂はそんなに遠いわけではない。
だけど一回外に出ないと到着しない設計になっている。
まぁ、だけど中道に雨よけが設置されているから平気なんだけどな。

「司令官! 今日はね、武蔵さんと一緒にお食事するの!」

清霜がいかに嬉しそうに話をする。
武蔵とか。二次創作でもよく清霜と武蔵は仲がいいという描写が目立つけどここでもそんな感じだったか。
うちは結構武蔵に関してはそれなりの逸話を持っている。

とあるイベント海域が終わっていざ大型チャレンジだ!という感じで残った資材でやってみたところ一発でキター!な展開を発揮して、その時にはまだ来ていなかったビスマルクをチャンスを逃すわけにはいかないという事で十回以上はチャレンジして最後に開発資材を100個使いやっとビスマルクがきてくれたのだ。
あの時はついに来たか…というイメージだったな。
だから武蔵は結構使用資材は低い方なのだ。

そんな事を思い出していながらも、

「そうか。それじゃ清霜も武蔵にいいところを見せないとな」
「うん! 武蔵さんに倣って大盛を食べようと思っているわ」

ニコニコ笑顔で清霜はそういう。
だけどそこで少し笑顔が引き攣って、

「でもね、清霜も食べきれない事があるの。そんな時に限って武蔵さんが代わりに食べてくれるの」
「武蔵は清霜のいい姉貴分じゃないか」
「うん。だから武蔵さんの事は大好きなの!」

清霜がいかに武蔵の事が好きかという話をしながらも食堂へと到着して清霜はキョロキョロと武蔵を探してそして見つけたのか、

「それじゃ司令官! 武蔵さんの所へ向かうね!」
「わかった。それじゃまた後でな」
「うん! あ、武蔵さーん!」

それで清霜は武蔵の方へと向かっていって抱き着いていた。
武蔵は「おっと…相変わらず元気な奴だなお前は…」と言いながらも自然と笑みを浮かべて清霜の頭を撫でてあげていた。
うん。良き師弟関係かな…。
そんな事を思っていると私の後から来たのだろう高波と早霜が傘を傘立てに置きながらも食堂へと入ってきた。

「あ! 司令官、こんにちはかも!」
「ふふ。司令官…お食事ですか?」
「二人ともこんにちは。清霜に振られてしまったのでよかったら一緒に食べないか?」
「いいかもです! 早霜は大丈夫…?」
「大丈夫ですよ、高波姉さん…」

高波からの提案に早霜も異論はなく付き合ってくれるようだ。
それじゃさっそく食堂へと並んで食事を摂らないとな。
ところで、

「高波、アジサイの髪飾り似合っているぞ」
「ふぁー! 司令官に褒められたかもです!」

高波はそれで少し舞い上がっているけど早霜が「高波姉さん、どおどお…」と言って高波の興奮をうまく抑えていた。

「ふぅー…いきなり褒められたからびっくりしたかも! です」
「高波姉さんは浮かれやすいですからね。誰かが見張っていないといけません…」
「早霜、意外に結構酷い言い様かも…」
「そんなことは無いですよ…?」

二人のそんな掛け合いを楽しみながらも食事を持って席へと着く私達。
そういえばと今朝の光景を思い出して、

「そういえば…二人とも今朝は外に傘を差して出ていたけどなにかを見ていたのか?」
「司令官、見ていたかもですか?」
「ああ。窓から二人が楽しそうに笑みを浮かべあっているのが見えたものでな」
「そうですか…はい。高波姉さんと一緒に咲いているアジサイを見て楽しんでいたんです。この時期特有の花ですから結構楽しみなんですよ」

早霜はそれで片目が髪で隠れながらも楽しそうに口元を綻ばせていた。
うん。こういう表情もできるのか。
やっぱり色々と見ていくと実際に見れる顔というものがあるよな。
そんな事を思いながら食事を進めていく。


そして食事を終えて一息ついていると先ほど別れた清霜がなにやら朝霜と遊んでいる。
具体的には昔に私もやったなーという傘でチャンバラをしていた。

「いくぜ清霜! あたいの剣を受け止めてみな!」
「いくわよ朝霜姉さん!」

そんなやり取りをしながらも二人はキャッキャと楽しんでいた。
うん、これぞ雨の中の日常風景だな。
だけど一言言っておこう。

「二人ともー。傘だけは壊すなよー」
「「はーい」」

二人の返事が聞こえてきたので良しとしておこうか。
それで今日も梅雨modeの子達の顔が見られたので午後の仕事も頑張れそうだという思いで私は執務室へと戻っていくのであった。


 
 

 
後書き
今回は夕雲型の梅雨modeの子達の話を書きました。
急ぎ足で書いたので結構誤字があるかもしれないのであったら指摘お願いしますね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0068話『祥鳳の追想と今』

 
前書き
更新します。 

 


…朝になって目を覚ます。
私の隣の布団では同室の瑞鳳がまだ眠りの中なのだろう。
小さい声で「むにゃ…たまご、やき…」と言う寝言を呟いている。
どれだけ卵焼きが好きなのだろうか。
その光景を見て私は思わずクスッと笑みをこぼす。
私の癒しの時間の一つである。
それで時間を見るとまだ五時過ぎで早く起きすぎたかという感想を抱く。
だから目も冴えてしまったので鎮守府を散歩でもしていようかなと言う気分にさせられた。
そして外に出てみると空はあいにくの曇り模様…下手したら雨でも降ってくるのではないかと思い、私は傘を持参して中道を歩いていく。
この梅雨の季節は少し思うところがある季節だ。
私の進水日が近いこともあるが同時にもう先月で過ぎてしまったけど私が沈没した日も近いこともあって少し憂鬱な気分にさせられる。
ダメね…。
こんな気分じゃ誰かにあったらうまく対応できるか分からないかもしれない。
思えばこの鎮守府がこの世界に転移して来てからたくさんの事があったわね。
提督は榛名さんと物理的に一緒になってしまったり、環境の変化からか一時期体調を崩す子も数名であったがいた。
今では順応しているけどこの世界のシビアな部分を垣間見る機会が増えて主に提督は心を痛めているのは知っている。
以前に熊野さんたちから他の鎮守府の艦娘からもし助けを求められたらすぐに助けになろうという提案を受けました。
その件では私は中立の立場にいますけど、提督の心労を増やすのはあまりよくないという意見が多い慎重派もいます。
だからというわけではありませんがそのもしもがあった時にはすぐに提督の指示を仰ごうという話でまとまりましたね。

「(ふぅ…演習でよく聞く他の鎮守府の提督はどうして艦娘たちを無益に扱うのでしょうか?
艦娘とはいえ人間と同じく心があってたいして変わりはないのに…)」

私はそんな事を歩きながら考えていました。
すると畑の方でなにやら音が聞こえてきます。
それで少し興味が沸きましたので見に行くことにしました。

「提督ー? こっちはどうする?」
「どこだ天龍?」
「ここなんだけどよ…」
「そうだな、ここは―――…」

提督と天龍さんが耕し方について話し合っていて別の場所では、

「うむ。やはり畑仕事は楽しいな」
「そうですね、武蔵さん」
「はい。神威も楽しいです」

武蔵さん、瑞穂さん、神威さんが楽しそうに畑仕事をしていました。
全員つなぎ姿で似合っていますね。
そこに天龍さんと話が終わったのか提督が私が見ているのを気付いたらしく、

「どうした祥鳳? こんな朝早くにめずらしいな」
「はい。少し早く起きてしまいましたので散歩がてら散策しているんです」
「そうか。なにかいいモノは見つかったか?」
「はい! 提督達が朝早くに畑仕事をやっているのが見られてよかったと思っています」

私は笑みを浮かべながら提督にそう言う。
そして提督も笑顔を浮かべて、

「そうか。それじゃまだ野菜とかは実っていないからまだ食べられないけどできたら楽しみにしていてくれ」
「はい。楽しみにしていますね」
「任せろ。美味しい野菜を食べさせてやるからな」

そう提督は言いながらもまた畑仕事に戻っていった。
そんな提督の後姿を見ながらも私は思う。
こんな私達艦娘達の事を大事に思ってくれている提督の気持ちには応えないといけないなと…。
提督はこの世界に来る前からも私達の事を大事に育ててくれて、この世界に来てから余計親身になって成長の手助けをしてくれる。
そんな提督の人柄ゆえか特に不満を持つ子達はいないんですよね。
だから少しでも提督に恩を返せるように頑張っていかないといけませんね。
そんな事を思っている時でした。
ポツリポツリと雨が降り出してきたのは…。
なので、

「提督ー。雨が降ってきましたからそろそろ上がりましょう!」
「わかったー! それじゃみんな、後は雨に任せて撤収!」
『はーい』

それで提督達も片づけを始めているみたいである。
その作業は手慣れたものがあり様になっていますね。
提督は特にこの世界に来る前はこれといった趣味は他にはなかったそうですから畑仕事がお気に入りだそうです。
それで私も傘を差してゆっくりと食堂へと向かっていきました。
向かう道中で瑞鳳が少し急いでやってきて、

「祥鳳! どうして起こしてくれなかったの!? なんとか間に合ったけどもう少しで朝ご飯を寝過ごしちゃうところだったんだよ!」
「瑞鳳がお寝坊さんなのが悪いんですよ」
「そんなー…」

それで残念がっている瑞鳳の姿が可愛らしく思いながらも、

「瑞鳳。髪がまだぼさぼさですよ。今治してあげますね」

私は持っていた櫛で瑞鳳の髪を研いであげました。
それで瑞鳳は少し気持ちよさそうな表情を浮かべていました。
どうやら嬉しいみたいですね…。
しばらく研いであげながらも瑞鳳は少し名残惜しそうに「もういいよ」と言って梳かした髪をいつもの布で縛っていました。
ああ、たまにはそのままの瑞鳳のままでいても罰は当たらないのだから縛らなくてもいいのに…。
そんな事を思いながらも強制しちゃいけないんだろうなと自制してなんとか言葉には出さないですみました。

「うん、よし。ありがとね祥鳳」
「いえ、瑞鳳がよかったなら私も嬉しいわ」
「うんうん。祥鳳の髪梳きは気持ちいいんだよ。私だけの特権だね」
「もう…。あまり恥ずかしいから言いふらさないでね?」
「わかってるよー。それじゃ祥鳳、食堂にいこっか」
「はい」

それで私と瑞鳳は食堂へと行って間宮さんのメニューを受け取って席についていると先ほど別れた提督達がつなぎ姿のまま食事を摂りに来ました。
金剛さんがそれを見て、

「ノー! テートクゥ! もっとハルナの身体を大事にするデース!」

と叫んでいました。
提督も提督で「すまん、配慮がなかったな」と言って素直に反省していて他の皆さんもそれで己の恰好に気づいたのか顔を赤くしていました。
武蔵さんは何のことか分かっておらずはてな顔でしたが…。
そんな朝のささやかなハプニングの光景でした。

「ねぇ祥鳳」
「どうしたの、瑞鳳?」
「毎日が楽しいね」
「そうね」

瑞鳳の言葉に私は素直に返していました。
どうかこの日常風景がこれからも続きますように…。
私はそう願いました。


 
 

 
後書き
今回は梅雨グラがある祥鳳にスポットを当ててみました。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0069話『ホームシックと信じてあげる事』

 
前書き
更新します。 

 





今日は雨の中だけど村雨と春雨ともに町への視察に来ている。
そんな中で村雨がとある事を言い出す。

「ねぇ提督。提督っててるてる坊主って作った事はあるかしら…?」
「…てるてる坊主か。懐かしい響きだな。昔は姉妹の姉と一緒に作った事があるけど大きくなって結局は迷信だったというオチで作らなくなってしまったよ」

私が「ははっ」と笑いながらそんな事を言うが春雨は少し論点をずらして聞いてきた。

「司令官にはお姉さんがいたんですか…?」
「ん? ああ、上に二人くらいな。私の家系はいとこも含めて女が多かったから男の私は肩身が狭かったよ」
「ふーん…? だからかぁ。提督ってどこか私達の扱いに慣れているような感じだったけど女性と接する機会が多かったからなのね」
「それもあるけどな」

村雨にそう返事を返しておく。
それと少し論点がズレてしまっていたな。
村雨は先ほどはてるてる坊主の話題をしていたのに私の姉の話に置き換わってしまったからな。
だから軌道修正しないとな。あんまり過去は探られたくないし。

「それよりてるてる坊主の話題だったな」
「あ、そうだったわね。私からふったのに忘れそうだったわ」
「はい。司令官のお姉さんの話題で途切れそうでした」

二人も頭から抜けそうだったらしい。
危ない危ない…いまさらもう会えない家族の話題を出しても悲しくなるだけだしな。
これでいいんだこれで…。
少しホームシックな気持ちを抑えて気持ちの奥底へと追いやる。
今は艦娘達という家族がいるからそれでいいじゃないか。
そんな事を思っている時だった。

《提督…? 無茶をしたらダメですからね?》
「榛名…なんだ? やっぱり気づいちゃった口か?」
《はい。提督の心の痛みが少し伝わってきましたから》
「え? どういう事…榛名さん?」
「教えていただけませんか…?」

それで村雨に春雨も私の事を気遣ってか話を榛名に聞いていた。
いかんなぁ…今は探られたくないんだけど…。

「榛名。今はここだけでおさめてもらってもいいか? あまり他の子達に心配をかけたくはない」
《はい。提督がそうおっしゃるなら…村雨さんと春雨さんもいいですね?》
「ええ。ここだけの話題にしておくわ」
「だから教えてください」

榛名の真剣な言葉に二人も真剣な目で返して話を聞いてくれていた。

「まぁ、なんだ? ただのホームシックだからあんまり気にしないでくれ」
「ホームシック…提督、やっぱり家族の人達と会いたいの?」
「まぁ、本音を言えばまた会って話をしたいとは思っている。だけどいいんだ…」
「どうしてですか、司令官さん…?」

二人は分からないらしく私に心配の眼差しを向けてくれる。
だから二人にも分かりやすいように二人の頭に手を置いて、

「今は君達という家族が一緒にいてくれるから、だからいいんだ」
「提督…」
「司令官さん…」

私は安心してくれるように笑みを浮かべながらそう答える。
それに二人は少し潤んだ瞳をして顔を赤くしていた。
もしこんな時に曙か叢雲だったらと考えて、

『ふ、ふーん…そうなんだ。提督がそう言うんだったら私も嬉しいわ』

って、どこかツンデレ風味に答えるんだろうなと考えていた。
それに対して村雨と春雨は、

「そう…提督は私達の事を家族って認識してくれているのね。少し、嬉しいわ」
「村雨姉さんと一緒です。春雨は司令官さんのその気持ちがとても嬉しいです」

と素直に答えてくれた。
それが無性に嬉しくなって二人の頭を少し強く撫でてしまった。
それから二人の話題だったてるてる坊主を作るために紙を購入して二人にあげた。

「なんか、ありがとね提督。これでてるてる坊主が作ることが出来るわ」
「はい。うちの子達は意外にてるてる坊主を作るのが苦手な子が多いんです。だから春雨たちで教えてあげられたらなって思うんです」
「それはいい考えだな。よし、私も仕事が終わったら一緒に作らせてもらうよ」
「別にいいのよ? 提督は提督でやることがあるんでしょう?」
「つれない事を言うなよ村雨。家族なんだから手伝いたいっていう思いなんだ」
「ふ、ふーん…そうなんだ。それじゃ村雨が提督にちょっといいところ、見せてあげるわ」

それで村雨は私にてるてる坊主の作成の仕方を伝授してくれるという。
確かに子供以来は作っていないからこの際習いなおすのもいいかもしれないな。
そんな事をしながらも私は町内会へと顔を出す。

「ああ、提督さん。いらっしゃい」
「町長さん、こんにちは。今はとくに町からの不満とかは出ていませんか…?」
「はい。特には出ていませんよ。むしろ嬉しいと言ってくれていますね。よく頼めば提督さんは艦娘さん達を派遣してくれて漁業の手伝いで船団護衛をやってくれるから」

町長さんの言葉にこの思いは間違っていないという感じだった。
主に夕張とか水雷戦隊が護衛について漁船の船団護衛をしているのだ。
それで漁師さんからよく魚を見繕っていくつかもらってくるのを鳳翔さんが捌いてみんなに振る舞ってくれている。
深海棲艦に荒らされて海に出る機会が減ったからなのか魚の数は増えてきているんだよな。
取り過ぎることがないから魚が増えているのは確かに嬉しい事だけど、だけどそう考えるとそれだけ深海棲艦が出没する前は人類は魚を取り過ぎていたという考えをすると微妙な気分になる。
いったい、深海棲艦ってなんなんだ…?という思いが頭を過ぎるんだよな。
まぁ、考えていても仕方がない。
今のところ対話の道はないんだから結局は倒すしかないんだからな。

それで町長さん達と少し話をした後、私達は帰路についていた。

「司令官さん。やっぱり深海棲艦についてもっと知りたくなりました…?」
「春雨。そうだな…あちらにも喋れる個体はいるんだから少しは対話が出来てもいいんだけど肝心の深海棲艦が問答無用だからな。だから仕方がないよな」
「そうね。それでなきゃ私達が戦う意味がないからね」

村雨はそう言ってため息をつく。
人類に艦娘…そして深海棲艦。
この三つの枠組みはいつか平等になることはあるのだろうか…?
ただでさえ人類は艦娘を都合のいい兵器と捉える人も少なくない。
柳葉大将や他にも艦娘に理解ある人たちはいるにはいるけれどやっぱり少数の部類に入ってしまうのが現状だからな。
だからせめて私は私で彼女達艦娘の事を人と同じ扱いでやっていこう。
艦娘にだって人類と同じく心はあるし嫌な命令には不快感を出すのは当たり前だ。
だから私はそんな嫌だと思う命令をしないように心掛けていこう。
彼女達を守るのが私の仕事だ。
気負いせずに彼女達を信じてあげよう。
だって、彼女達は私の家族なんだから…。


 
 

 
後書き
村雨と春雨の回でした。
提督も多少はホームシックになっても仕方がないと思います。
漁業の皆さんには秋刀魚漁では活躍してもらいます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0070話『瑞雲祭り』

 
前書き
更新します。 

 




今日は大本営から是非手伝ってほしいという電文の内容が届いた。
電文の内容は簡潔に言うと以前に大本営が企画していた『瑞雲祭り』の件だ。
あの企画は結局進められているという事で最近は某テーマパークでお披露目会を開いたという。
それに関係してか全国の鎮守府でも同じように瑞雲祭りを開こうという企画が持ち上がったとか…。
それで会議を開く私達。
当然、以前に少し地獄を見た瑞雲の友の会メンバーも招集されていた。

「―――それでは提督。みんなにはこの法被を着てもらいたいと思っているのだが、どうだろうか…?」

会議が始まった途端にすぐに日向が瑞雲祭り用の法被を出してみんなの前で提示した。
それはサイズもそれぞれに作られているという話でこれを誰が作ったんだ…?という話をしてみたら明石が夜なべで作成したという。
だから今は明石は度のきつい疲労で寝込んでいるとか…。
それ、何気に艦隊運営に響かない?という私の疑問は置き去りにしてどんどんと話が進んでいく。

「それで師匠。瑞雲に関しては数は大丈夫なんですか…?」
「ああ、最上。抜かりはない。だろう? 提督」
「まぁ、その辺は大丈夫だ。この日のために瑞雲の開発を運営持ちの資材で開発していたからな」
「うむ! ナイスじゃ提督よ!」

それで利根がバシバシと私の背中を叩いてくる。
利根も瑞雲航空隊のメンバーとして抜擢されているだけに抜かりはない方がいいと思っているのだろう。

「…もう、利根姉さん? あんまりはしゃぎますと当日になって風邪をひいても知りませんよ」
「そこら辺は大丈夫じゃ! この利根、体調管理に関しては抜かりはないぞ」
「ですが最近よく暑いと言って間宮で甘味を食べていますよね? お腹は壊していませんか…?」
「うっ………」

それで利根が少し唸る。
これは………やっぱりお腹を壊していないか?

「だ、大丈夫じゃ! だから筑摩も心配はしなくていいぞ」
「そうですか…? でしたらもう何も言いませんが」

筑摩はそう言いながらもやっぱり利根が心配なのか利根のお腹を凝視していた。
まぁ、それはともかく、

「それじゃ伊勢、日向。君達が代表として瑞雲隊を指揮してくれ」
「わかった。この日向。瑞雲の為ならこの任務も見事完遂してやろう」
「あははっ。私は日向ほど熱くはないけど楽しくできればそれでいいんじゃないかな?」

日向が自身の顔をしていて伊勢の方は日向に合わせている感じで寛いでいる。

「そして最上、三隈、鈴谷、熊野、利根、筑摩の六人は航空巡洋艦の顔として一緒に盛り上げてくれ」
「わかったよ提督」
「はい、わかりました」
「任せるじゃん!」
「きっちりとやってみせますわ」
「うむ。任せておいてくれ」
「お任せください」

六人の返事をもらい、

「そして水上機母艦のみんなは販売コーナーを頑張ってくれ」
『はーい』

水上機母艦のみんなも元気よく返事をしていた。
そこに艦娘音頭を踊る予定の白露型のみんなを代表して白露が挙手をして、

「提督ー! あたし達はどうすればいいの?」
「そうだな。みんなには町の皆さんに艦娘音頭の踊りを指導してあげてくれ」
「わかったよ」
「任せてちょうだい」
「頑張るっぽい!」

白露型のみんなも役割分担は把握できたみたいだ。
これでどうにかなるだろう。

「作戦は明日の午前中は瑞雲隊の発艦を行い、午後から夜にかけて艦娘音頭や屋台などを行うから各自準備を怠らないように」
『了解』

それで各自準備を始めるために部屋を出ていった。







…そして翌日。
この日は村雨たちの作ってくれたてるてる坊主が効果を発揮したのか雲はあれど青い空が広がっていた。
予報でも今日一日は雨は降らないという結果に満足を感じていた。
町の町内会に顔を出して、

「どうですか? 準備はできていますか?」
「あ、提督さん。はい、大丈夫ですよ」
「任せてくれ。キャンプファイヤーの準備も出来ているからいつでも艦娘音頭とやらを踊れるように今は艦娘さん達の子達に踊りを教えてもらっているところだ」
「そうですか。それならよかったです」

と、そこに少し慌てて久保提督が町内会に顔を出してきた。

「お、遅れました! 榛名提督、まだ準備は大丈夫でしょうか?」
「はい、久保提督もそんなに慌てなくて大丈夫ですよ」
「そうなんですけど…うちはまだそんなに艦娘の数が集まってきていませんし練度も低いんでこの祭りには見学での参加しかできないから少し歯がゆいんですよね」

久保提督の鎮守府の方も最近はやっと何人か戦艦級も増えてきているという話を聞いているがまだまだ練度不足は否めない状況だから今回は見学だけとなった。
だから町内警備を任せてもらっている。
私の方の艦娘達は屋台やら踊り、瑞雲隊の発艦などで警備に回せないから久保提督の提案はちょうど痒い所に手が届く感じだったのだ。

「大丈夫ですよ。久保提督の艦娘達には警備を任せてもらっているんですからお相子ですよ」
「そう言ってもらえると心休まりますが…」

そんな話をしている時だった。
放送でそろそろ瑞雲隊の発艦式が行われるというので私達も町内会会場の外に出て空を見上げる。
同時に日向達瑞雲隊を装備した艦娘達が、

「それではいくぞ! 全員発艦準備!!」

いつになく気合の入った日向の言葉とともに瑞雲を発艦できる艦娘達がカタパルトを展開して次々と瑞雲を発艦させていった。
その瑞雲隊は熟練の妖精さんが操作している事もあり乱れることなく並んで飛行をしていて色々な形の飛行機雲を作っていく。
それに町の人達は「いいぞー!」という声を上げて盛り上げている。
うん、よかった。町の人達のウケはいいみたいだな。
それで午前中は何度も瑞雲を発艦させては町の人達の人気を集めていた。
そこに私の前に七海ちゃんが走ってきた。
私の腰に抱きついて、

「提督のお姉ちゃん! 瑞雲っていい動きをするんだね!」
「そうだよ七海ちゃん。昔の人達が戦争のために作ったものだから一概に褒められたものじゃないけど今は深海棲艦を倒すための力として一躍担っているんだ」
「そっかー。瑞雲ってすごいんだね」

七海ちゃんは素直な感想を抱いていた。
もしこれを日向とかが効いていたらとてもいい笑顔を浮かべる事だろう。

『―――続きましては艦娘音頭を始めたいと思いますので参加は自由ですが出たい人は集まってください』

というアナウンスが流れてきたので、

「提督のお姉ちゃん! 一緒に踊りに行こう!」
「そうだね。いこうか」

それで七海ちゃんに手をを引かれながらも時雨達がいる場所へと向かい、

「あれ? 提督も一緒に踊るのかい…?」
「ああ、七海ちゃんに誘われてしまったのでな」
「そっか。それじゃ楽しんでいってよ」
「ああ」

それで町に人達と一緒になって艦娘音頭を踊って夜まで楽しんでいった。
そして夜になるとサプライズとして着物姿の加賀がマイクを持ち、

「…それでは加賀岬、歌わせていただきます」

そういって加賀岬を熱唱する加賀さんの姿に見惚れる人が続出していた。
それを天龍がやっていた屋台でもらったフランクフルトを食べながらも、

《提督、楽しいですね》
「ああ。できれば榛名とも一緒に踊りたかったがな」
《私もです。でも楽しい雰囲気を一緒に味わえるだけでも嬉しいです》
「それならよかった」

そんな話を榛名としながらもその晩は瑞雲祭りは盛況で終わったのであった。


 
 

 
後書き
瑞雲ハイランドに合わせて今回の話を書いてみました。
いきたかったですねぇ…。Twitterで流れてくる内容が楽しそうでしたから。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0071話『長月のちょっとした疑問』

 
前書き
更新します。 

 



長月だ。
司令官は駆逐艦教育月間だと言って積極的に私達を育ててくれているのだけど最近の司令官は主に私達睦月型の育成に専念している。
この一週間で卯月に望月、水無月の育成をとりあえず70まで完了させて今は私を旗艦に置いて育成に専念している。
司令官がどうして私達ばかりを優先的に育ててくれるのかわからなかったので執務室に向かい理由を聞いてみようと思ったばかりだ。
それでという訳ではないけど道中で文月を見つけたのでとりあえず一緒に行こうかという誘った。

「どうしたの~? 長月ちゃん」
「いや、最近の司令官はどうして私達睦月型を率先的に育てているんだろうなと思ってな。
いや、ありがたいことなんだがどうにも腑に落ちなくてな…」

私の疑問に文月は「うーん…?」といった悩む仕草を少しした後に、

「あー…! もしかしてー…?」

そこで何かの答えに思い至ったのか文月は少し笑みを浮かべて手をポン!と叩いた後に、

「どうした…? なにか思い至ったのか…?」
「うん! んふふー。でもまだ私の考えがあっているか分からないからまだ言わないね」
「うーん…?」

私が悩むが文月はそれでどこか嬉しそうに顔を綻ばせながらも私の後についてきていた。
そして執務室へと到着して扉をノックする。
この時間帯なら司令官もきっといるであろうという確信があったからだ。
司令官は大体私達が起き出す前の早い時間帯に武蔵さんとか天龍さん達と一緒に畑を耕しているのは知っているからな。
お昼過ぎの今ならきっと執務室で午後の任務の確認をしているところだろうからな。
それは当っていたらしく中から「誰だい?」という司令官の声が聞こえてきた。
他のみんなもよく間違えるらしいけど司令官の声は榛名さんの声だからつい勘違いしてしまうんだよな未だに。
まぁそんな事はいいとして、

「長月だ。司令官、今は大丈夫か…?」
「文月もいるよー!」

私と文月で今は大丈夫かの話を振ってみた。
すると中から、

『ああ、今は大丈夫だ。入っていいぞ。長月に文月』
「わかった。入らせてもらうぞ」
「入るねー」

それで扉を開けて中に入ると司令官が私達の方に視線を向けてきながらも大淀さんから資料を受け取っているところであった。
ちょうど今はまだ忙しくはないと言った感じか。
ちょうどいい、かな…?

「それで二人とも。どうしたんだい?」
「うん~。司令官、ちょっと教えてほしい事があるんだけどいいかな?」

文月が少し下っ足らずな口調で司令官へと話を振ってみた。

「言ってみなさい」
「うん! 最近司令官は私達睦月型の事を率先して育ててくれているみたいだけど、もしかしてだけどもしかしてなの…?」
「文月は気づいたようだな」
「うん!」
「うん…? 私にも説明してくれ。二人のやり取りが抽象的で少し分からなかったぞ?」

私は司令官と文月が何が言いたいのか分からなかったために二人に問いただしてみた。
すると大淀さんも少し笑みを浮かべており司令官が言うのを待っているのかそのままだった。
そしてそれに対して回答は司令官の口から聞かされることになる。

「ああ。まだ本格的な情報ではないのだけど、昨日の某テーマパークの瑞雲祭りのイベントで大本営直轄の日向からまだ誰かは分からないけど睦月型の改二が夏に行われるという話があったのでな」
「なっ!?」
「やっぱりー!」

私と文月は司令官のその話された内容に驚きの声を上げた。
文月は予想していたと思うが見当がついていなかった私からしてみれば驚愕の内容だった。

「そ、それで誰が改二になるんだ司令官!?」

それで私は思わず司令官に詰め寄ってしまった。
だけどそこで文月が、

「長月ちゃん、どおどお…! まだ誰かは分からないって司令官が言っていたでしょう? だから落ち着こう…?」
「そ、そうだな…すまない司令官。取り乱してしまって…」
「いや、大丈夫だ。…だからまぁそんなわけで今は駆逐艦強化月間with睦月型をしているわけなんだ」
「そうなのか…」

それで納得はいった。
司令官は基本資材を貯めている時などはほぼ演習でしか育てていないけど少しでも有力な情報が入ってくればそれに向けて走り出すんだよな。
それで今までも改二の艦娘は大体実装された当日には間に合っていたからな。
それならば私達睦月型としては喜ばしい内容だな。

「それでだけどな…」

そこで司令官が少し含みを入れた言葉の後に、

「有力の筋では今のところ文月が一番改二になる可能性が近いかもしれないという話が持ち上がっているんだ」
「わ、わたしー!?」

それで文月が驚愕したのか自身に指を差して変な顔になっていた。
司令官は「ああ」という前置きをした後に、この世界で使える提督同士のパソコンでのスレッドのやり取りの切り抜きを私達に見せてくれた。
そこには色々な事が事が書かれていたが私には理解できない内容もいくつかあった。
文月も少し分からなかったのか、

「司令官…? この■■■や×××ってなぁに…?」
「うわっ!?」
「ひっ!」

…なにやら文月の口から放送禁止用語が飛び出したようで司令官は慌ててその切り取りを大淀さんと一緒に隠していた。
そして、

「…ふ、ふむ。純粋な文月の口からそんな言葉が飛び出してくるとなぜかいけない事を教えているみたいで罪悪感が沸いてくるな…」
「そうですね。なまじ内容を理解していませんからなおさらいけないと思います…」

司令官と大淀さんはそれで疲れたような表情になっていた。
そして私達に視線を向けてきて、

「とにかく二人とも。先ほどのものは忘れなさい。いいね?」
「あ、ああ…」
「…? わかりましたー」

私は生返事で、文月はどこかまだわかっていないけど何となくな感じで返事を返していた。

「…まぁ、なにはともあれ睦月型の改二が迫ってきた訳だから誰が来てもいいように準備はしておかないとな」
「そう言う事なら私も練度上げを頑張るとしようか」
「うん! 文月もまだ練度は30だけどすぐにみんなに追いつくね!」

それで私達は少しすっきりしたので執務室を出ていった後に、

「…しかし、そうなるとまた騒ぎになるな。話によればすでに今年の夏に改二候補になる艦娘は私達睦月型も含めて四名くらいはいることになる」
「そうだねー。確か由良さんはほぼ確定していて、他には海外の大型正規空母の改二があるから多分サラトガさん、大穴でグラーフさんだよね」
「ああ。そして主力戦艦の改二も誰かがなるかもしれないからな。もう半分以上は戦艦は改二になっているから絞られてくるぞ。この前に長門さんが改二になったからおそらく陸奥さんかな…?」
「まだわからないけど、これからも楽しみだねー」
「ああ。また艦隊がより一層強くなれるんだからな」

それで誰が改二になるのかまだ分からないけどもし決まったらそいつを祝ってやろうか。
私はそう思っていた。


 
 

 
後書き
瑞雲祭りで色々な情報が開示されましたね。
睦月型の改二。
海外の大型正規空母の装甲空母化。
ウォースパイトの中の人が務める新たな新艦娘など…。

これからが楽しみです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0072話『工廠での一騒ぎ』

 
前書き
更新します。 

 




本日は先日の瑞雲祭りの余波で艦娘達が各地で賑わっているが今では一応終了したために落ち着きを見せている。
七夕で瑞雲浴衣祭りを開くとかいう話があるがそれはそれである。
また日向達が騒ぐことを見越しておいた方がいいだろう。
そんな感じで私はまだ雨が降っていないために榛名とともに中庭を歩いていた。
べ、別にさぼっているというわけではないのだけれど本格的な雨の降りが始まる前日の唯一の晴れ模様だという予報を聞き、それならばという感じで羽を伸ばしていたのだ。

《提督…? 本日はどうされますか? 金剛お姉さまたちの所にでも参りますか?》
「そうだなー。榛名がそう言うんだったら今日は金剛達の所へと向かってみるか」

私と榛名がそんな会話をしている時だった。
突然工廠の方で小規模な爆発の音が響いてきたのは…。

「な、なんだ!?」
《あ、提督。工廠の方で煙が上がっています!》
「なに!?」

それで私も工廠の方へと目を向けてみると確かに黒い煙が上がっていた。
これはただ事ではないと思ってすぐに私は向かう事にした。
そして到着してみればすでに数名かの艦娘達が煙が上がっている工廠をおそるおそる覗いているところだった。
それで近くにいた最上へと話を振ってみた。

「最上。この件はどうしたんだ…? 火は上がっていないようだけど工廠の中から煙が上がっているようだけど…」
「あ、提督。うん。ボクも爆発の音で駆けつけてきたものだからどういったことかまだ分かっていないんだ」
「そうか。とりあえず中に入ってみるか…? 中で明石や夕張がなにかの実験に失敗した可能性があるかもしれないのだし」
「そうだね」

それでみんなが見守る中、私と最上が中へと入っていこうとした時だった。
中から少し黒く焦げた格好をしている明石と夕張の姿が現れた。

「ケホッ…夕張ちゃん、平気…?」
「ゴホッ…ゴホッ…明石さん、なんとか平気よ」

二人はなにかしらの爆発をもろに喰らったのか咳き込んでいた。
それで私は二人に近寄っていき、

「おい二人とも。その、大丈夫か…?」
「あー、提督。はい、大丈夫ですよー」

明石がそう答えるがどうにも大丈夫そうには見せないんだよな。
それで夕張の方へも視線を向けてみると、

「うっ………提督。そんなに怖い顔をしないでくださいよー。別に悪い事なんてしていませんからぁ…」

なにやら自覚があるのか反省の言葉を述べている夕張。
いったい二人はなにを工廠でしていたんだ…?

「結論から聞くが二人はなにをしていたんだ…?」
「…はい。その、怒らないでくださいね?」
「わかっている」

明石に念の一言を言われたので一応まだ怒らないで内容を聞くことにした。

「実は、私と明石さんで花火の製造を行っていたんです」
「は、花火!? またなんで…」
「はい。来月から色々と催しが増えるじゃないですか。瑞雲浴衣祭りとか…七夕とか…夏本番とか…」
「それで明石さんと夏に向けて色々な花火の準備をしていたんですけどちょっと手違いが発生して一つの火薬に引火してしまったんですよ」

その夕張の発言にゾッとする。
下手したら工廠が使い物にならなくなるかもしれない事態だったわけだ。
それはもう不安になる事だろう。
だけど明石は私の表情を察したのか、

「あ、安心してください。引火したのは小規模の一つの火薬玉だけです。
ですので連動して他のものに爆発が起こっているわけではありません」
「それなら大丈夫…なのか? 私ははたして二人を怒るべきなのか?」

そこに状況を見守っていた最上が口を出してきた。

「とりあえず提督。みんなには大丈夫だと言っておいた方がいいと思うんだ。
そろそろ長門さんとかが消防器具とかを持って工廠へとやってきちゃうかもしれないから…」

それを聞いて明石と夕張は焦りの表情を浮かべて、

「まずい! 今工廠に水をかけたら用意していた花火一式がダメになってしまいます!」
「早くこの騒動を収めないと…!」

それで二人は機敏に行動を開始して片づけを始めだす。
それを私は一応手伝いながらも反省文を二人に書かせることを頭に入れておいた。

「明石ー! 大丈夫か!? この長門が来た以上すぐに鎮火してやるぞ!」

最上の言ったとおりに長門が消防のホースを持ってやってきた。
それで仕方がないので私が長門の対応に当たる事にした。

「すまない長門。消防ホースまで準備してもらって悪いと思っているがもう火は消えているんだ」
「なに…? そうなのか提督?」
「ああ。今は全員で工廠の中を清掃中だ。長門もよかったら手伝ってくれ」
「わかった。この長門に任せてくれ」

それでズンズンと長門は中に入っていく。
そこに明石の声が響いてきて、

『長門さーん! 今は危険物が並べられていますから注意してくださいね!?』
『危険物とは何だ!? お前たちは一体なにを作っていたんだ!?』
『えっと、その…花火を…』
『花火だと!?』

という長門達のやり取りが工廠の中から聞こえてくる。
それで案の定というか長門の怒声が響き渡ってきたのは言うまでもないことだろう。
それからしばらく工廠内の片づけをしていって、

「…しかし、どうしていきなり花火なんて作ろうと思ったんだ…?」

私は一応理由は聞いたけどその動機が分からなかったので二人に聞いてみた。
すると二人は少し恥ずかしそうにしながらも、

「そのですね。提督を喜ばそうと思いまして…」
「私を…?」
「はい。最近提督は精力的に私達のために頑張ってくれています。
だけど私達はなにかを提督に返していないんです。だから少しでも恩返しにと提督を喜ばせるものをと考えていたらいつの間にか花火を作成していたわけでして…」

それ以上は二人も面と向かって話すことが出来ずに顔を俯かせてしまっていた。
おそらく私に怒られるのかなと思っていたのだろう。
内容はともかく危険なものを作っていたのは確かな事だから叱らないといけないだろう。
だけど、

「…ありがとうな二人とも。私のために色々と考えていてくれて」
「「提督…」」

それで二人は俯かせていた顔をパッと上げて嬉しそうに顔を綻ばせる。
だけどただで許すわけにはいかないから、

「まぁ、それはそれとして反省文は書いてもらうぞ二人とも」
「はい。わかっています…」
「うん。しょうがないですよね…」

それで二人は素直に反省文を書くことにしたのであった。

「だけど花火は楽しみにしているよ。もう失敗はしないようにな」
「わかりました」
「了解です」

私から花火作成の継続の言葉が出たのが嬉しいのか二人は反省文を書きながらも嬉しそうだったのは言うまでもないことだろう。


 
 

 
後書き
今回は明石と夕張の実験を書いてみました。
自由意思がありますから勝手に花火を作っていますがこれも夏に備えてのものですのでイベント事の時に使わせてもらおうかと…。

しかし、夕張の梅雨グラ関連を書こうと思ったのになんだこれ…?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0073話『艦隊運営ができない一日』

 
前書き
更新します。 

 



………―――工廠が花火で燃える騒ぎがあった翌日…。
工廠の通路の場所にはでっかく見えるように『改装中につき立ち入り禁止』という立て看板とバリケードがされていた。
今現在は明石と工廠妖精さんたちにより工廠内の点検にリフォーム作業が中で行われているのだろう。
先日の花火騒ぎで他にも燃え移りそうなものがあるかもしれないのだからそりゃ全点検もしたくはなるだろう。
だからか改装室もある工廠は使えない以上は艦隊運営がストップしてしまうのは誰でも分かってしまうわけで…。
それで私は今日一日の近海の哨戒を最も最寄りの鎮守府である久保提督に頼むことにした。
私が久保提督に電話をかけた際に、

『はい。どうされましたか? 榛名提督』
「はい久保提督。…ちょっとうちの鎮守府のお恥ずかしい事情で先日に工廠でぼや騒ぎが起こりまして今現在は工廠が使えない状態なんですよ。
それで工廠が使えないから改装室なども一緒に使えないために艦隊運営がストップせざるをえない状況でして……」

久保提督に今現在のうちの鎮守府の今の状況を伝える。
それで久保提督はどういう事かすぐに理解が及んだようで、

『それは大変でしたね。わかりました。それでは哨戒を榛名提督の区域もうちが担当させてもらいますね』
「よろしいですか…?」
『はい。いつもなにかしてもらっているんですからたまには恩を返さないと割に合いませんから。お任せください』

久保提督…ほんとうにいい人だよなぁ。
私はそんな事を思いながらも、

「それではお願いしてもよろしいですか? 今日中には明石にも点検を終わらしたら報告するように伝えておきますので」
『わかりました。それではうちの子達にも伝えておきますね。それでは』

それで久保提督との通話を終了して、

「これでなんとか一息つけたな。後は明石達のリフォームが終わるのを待つばかりだな」
《ですね。提督》

榛名もどこか苦笑いを浮かべていたので先日の苦労が一緒に分かち合えるというのは嬉しい事だ。
改装が使えないとなると装備の着脱もできないから今かろうじて動かせるメンツは演習メンバーに常時魚雷を装備している潜水艦たちくらいだろう。後はリランカ島沖に向けての装備している者達とかだが。(それに関しては戦艦枠には私も含まれている)。
最近はリランカ島で私も自身の練度上げも一緒に行っているところなのだ。
その際の艦隊運営代行の長門と大淀には苦労を掛けているな…。
そんな事を思いながらも一応演習などはできるので相手方から挑まれたら出れるくらいはしておかないとな。
今現在は神威を旗艦に置いて育て中なのだ。
駆逐艦に関しては時間があればリランカを回しているから大丈夫だけど、神威は特殊艦ゆえに練度を上げる場所がキス島くらいと限られてくるので演習で少しでも練度を上げておきたいのが本音である。



―――閑話休題



それから私は演習艦隊を演習に出してこれからについて考えていた。
やる事は探せば出てくるようなものだけど艦隊運営が必須だからな。
だから今日は我慢をしておこう。
一日身動きできないのも休めると思えば別に苦ではないしな。
とりあえず大淀を呼ぶとしようか。
私は大淀を執務室に呼んで今日のやれることを聞いてみた。

「そうですね…。艦隊運営ができない以上は出来ることは限られてきますし…。まったく明石はたまにろくでもない事をしますから困りますね」

それで大淀の表情が曇っていた。
普段から明石とそれなりに付き合いが結構ある大淀からしたら困りものなんだろうな。
明石がなにかを提案して大淀がそれを阻止するか承諾するかをいつも話し合っているくらいだからな。

「まぁそう言ってやるな。明石と夕張もみんなを楽しませようと張り切っていたようだしな」
「まぁそれはそうですが…無断で花火を作成していたのは見逃せませんし…その資材だってどこから調達してきたか考えると頭が痛くなってきますから」

それで本当に頭痛がしているのだろう、大淀は額を抑えている。
うーん、確かに擁護はあまりできないな…。
花火つくりは完全に明石達の趣味の範疇だからな。
精々弾薬が少し減っているくらいか…?
後で花火作成の見積書を作成しておかないとな。
大本営に捏造の資材運用を通達するわけにはいかないからな。
うちはホワイトな職場を目指しているから嘘を吐くわけにはいかない。

「とにかくだ。今日は特にやる事はもうないという判断でいいのか…?」
「はい。今のところは差し当たってすることはないでしょう。夜になったら川内さん達に夜中の哨戒を出てもらうくらいには工廠も復帰してもらいたいものです」
「そうだなぁ…。夜戦クラブの面々が夜の哨戒に出られないと騒ぐから早く復帰をしてもらいたいものだ」

夜戦クラブ…主に川内を筆頭に嵐や江風といった夜戦好きが多く所属しているもので夜の十時過ぎに川内の『夜戦だー!』という夜戦時報とともに哨戒をしにいく連中の事である。
夜に関しては川内の右に出るものはおらずたまに空母だけど夜戦攻撃ができるグラーフなども駆り出されるほどだからな。
グラーフに関しては、

『アトミラール。そのだな…センダイなのだが、彼女はどうにかならんか? 私の武装では夜戦ではこの国の言葉でヤケイシにミズ…だったか? その程度の威力しか出せないんだ…』

というグラーフの懇願の話がしてこられて川内は見境ないなぁ…と思った事しばしば。

「それと後は明石と夕張さんの反省文もまだ受け取っていませんので早めに提出してもらいたいですね」
「ん…? まだ受け取っていなかったのか?」
「はい。明石に関しましては工廠の修理後に受け取る予定ですが夕張さんに関しましてはまだ受け取っていませんね」
「そうか…それじゃそろそろ来る頃じゃないか…?」

私と大淀がそんな話をしている時だった。
扉がノックされて、

『提督ー? 夕張です。反省文を持ってきました』

なんというかタイムリーな感じで夕張が反省文を持ってやってきた。
それで思わず大淀と一緒に笑みを浮かべながらも、

「わかった。入ってきていいぞ」
「はーい。夕張入りまーす」

それで夕張が普段の姿で執務室へと入ってきた。
夕張は最近は明石と一緒につなぎ姿のイメージだからたまに見る普段着の恰好は新鮮に見れとれるんだよな。

「提督。昨日は本当にすみませんでした…。この通り反省文を書いてきました」
「わかった。それじゃ大淀に預けてくれ」
「了解です。大淀さん、お願いします」
「わかりました。チェックしますね」

それで夕張の反省文を大淀は受け取って内容をチェックしている。
しばらくして、

「はい。夕張さん、しっかりと反省文は書かれているようですのでもう大丈夫ですよ。今後は明石と一緒になにかする際は私に一言言ってくださいね?」
「はい。ご迷惑おかけしました」

それで夕張も反省の色が見れたのだろう素直に謝罪していた。

「はい。それじゃもう大丈夫ですよ」
「うん。あ、提督。昨日も言ったけど花火の件は楽しみにしておいてね? 戦艦のみんなにも協力してもらう予定だから」
「戦艦のみんなにも…? まさか砲弾式の花火もあるのか?」
「はい。まだ試し打ちができていないのでそのうちに誰かにやってもらう予定です」
「そうか。…ちなみにその件は大淀には…?」
「あ…」

それで夕張は大淀の笑みで凍り付いていた。

「…夕張さん? 反省文がもう何枚か必要ですか…?」
「スミマセンデシタ…」

それで夕張はもう一度大淀に謝罪をしていた。
うん、まだまだ反省が足りていないようだな。
とにかく今日一日はまぁ静かに過ごせそうだな…。
大淀と夕張のやり取りを見ながらもそんな事を思った一日だった。


 
 

 
後書き
昨日の続きで艦隊運営がストップする話を書きました。


そう言えば今週の金曜日のメンテで由良さん改二が来るそうですね。
また改装設計図が必要そうですね(白目)。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0074話『由良改二の前祝いの光景』

 
前書き
更新します。 

 



本日は夕立が一人で執務室へと訪れていた。
いつもなら仲良しの吹雪と睦月も一緒にいそうなものだけど今回は個別で私に用があるみたいだ。

「提督さん。正直に答えて…?」
「どうしたんだ夕立…?」
「うん。今週の金曜日に大本営からなにか発表があるっていう話を聞いたんだけど、その日に誰かの改二が実装されるっていう噂を聞いたの」
「相変わらず…」

青葉は相変わらず情報を流すのが素早いな。まだつい昨日に出た情報なのにな。
まぁ、由良に関しては前々から知らされていたしやっと来たか!という感想だしな。
でも目の前の夕立はまだ由良が改二になるのを知らないらしく、

「その改二になるのって誰なの…? 教えてほしいッぽい!」
「別にいいけど…夕立はその誰かが改二になったらどうするんだ?」
「うん。もし私の思惑通りの人だったら盛大に祝ってあげたいっぽい!」
「そうか…」

夕立は由良の事が大好きな部類だったからな。
史実でも由良の最後を看取った艦でもあるしな。
思い入れはあると言っても過言ではない。

「わかった。多分夕立の考えている通り今度の改二は由良だ」
「やっぱり! とっても嬉しいッぽい!」

夕立はそれでらんらんと瞳を輝かせて由良の改二になる事を祝っている。
口に出すほどに夕立は由良の事を祝うくらいなんだから由良の事が相当好きなんだな。
少し嫉妬をしてしまうくらいには…、
まぁ、それで、

「それじゃ夕立。由良の改二が来たら盛大に祝ってあげようか」
「そうっぽい! 夕立、頑張って由良のためにケーキを作るっぽい!」
「それじゃ由良の改二が実装される日に間宮さんの場所を予約を入れておくよ」
「提督さん、ありがとう!」

それで夕立は私に遠慮なく飛びついてくる。
うん、やっぱり夕立って犬っぽいよな…。
忠犬が時雨なら夕立は狂犬か…?
そんなどうでもいい事を考えている間に、

「それじゃ少し忙しくなるかもしれないっぽい! 間宮さんにケーキの作り方を教えてもらわないと! 提督さん、夕立ちょっとお先に出てくるね!」
「ああ、行ってきなさい」
「頑張るっぽい!」

そう言って元気に夕立は執務室から飛び出していった。
夕立が出ていったのを合図に榛名が表に出てきて、

《ふふ…夕立ちゃんはとっても元気ですね》
「そうだな。大変元気があってよろしいな」
《由良さんもだいぶ待たされましたからね》
「うん。長門の改二が発表される前から告知されていたからな。だから嬉しさも倍以上はあるだろうさ」

それで私はせっかくだから由良を執務室へと呼ぶ事にした。
由良の部屋へと電話をかける。
軽巡寮は人数が少ないために部屋が余っている為に一人一部屋を使っているのだ。
すると誰かが受話器を取ったのだろう。

『あ、提督? どうしたんですか…?』

受話器を取ったのは声からして阿武隈だけど、あれ…? 由良の部屋に電話をかけたつもりだったんだけどな。
それでどうして阿武隈が取ったのか聞いてみることにした。

「阿武隈か? 確か私は由良の部屋へと電話をかけてみたんだけど掛け間違ったか?」
『あー大丈夫ですよ。ちゃんと由良ちゃんの部屋であっています。はい』
「そうか。ならいいんだけど…」
『今長良型で由良ちゃんの改二決定を祝していたところなの』
「なるほど…背後で聞こえてくるどんちゃん騒ぎは長良達の声か」
『はいー。』

阿武隈の楽しそうな声と背後での長良達の声が聞こえてくる。
うん、大変元気があってよろしい。

「それじゃ少し由良に代わってもらってもいいか…?」
『わかりましたー。由良ちゃん、提督がお呼びですよー』
『はーい』

それで由良の元気な声が響いてきて阿武隈に代わって由良が受話器を持ったのか、

『提督さん、由良になにかご用ですか?』
「うん。もうそちらでは前祝をしているようだけど私からも言わせてもらおうと思ってね。由良、改二決定おめでとう」
『あっ…ありがとうございます。由良、嬉しいです…』

受話器越しで少し泣きが入っている由良の声が聞こえてくる。
おそらく長良達のおかげですでに涙腺が緩くなっているのだろうな。

「それでだけど少しいいか…?」
『はい。なんでしょうか』
「由良は夕立に好かれていたよな」
『はい。夕立は私のことを慕ってくれているのは知っていますけど…どうしたの?』
「うん。夕立が由良の改二を祝いたいって事で今頃間宮さんのところでケーキ作りを教わっているだろうと思うんだ」
『本当ですか! わぁ…嬉しいな。ね、ね? それって夕立から聞いた事なの?』
「ああ。直接私に改二の事を聞きに来て由良の改二が決定したって話をしたらとても喜んでいたぞ。ケーキを贈るんだってはりきっていたしな」
『そっかぁ…嬉しいな。ぐすっ…』

それで受話器越しにまた感極まっているのか由良のぐずる音が聞こえてきた。

「まぁそんなわけだから改二になった日には素直に夕立の贈り物を受け取ってくれ」
『わかっています。夕立からの贈り物なんてとても嬉しいから…』

それで少し元気が出たのか由良の声にどこかハリが出ていた。

「まぁそれはそれとしてなにか私も改二祝いを考えておくから期待しておいてくれ」
『提督さんからももらえるなんて…もう嬉しすぎて由良、改二になる日まであまり嬉しすぎて眠れそうにありません…』
「そうか。でもそこら辺はしっかりと体調を整えておいてくれ。いざ改二になるだろう日に熱なんて引いたら少し情けないからな」
『わかっています。由良、体調管理に関してはしっかりしているほうなんですよ。お任せください』
「ん、了解した。それじゃそろそろ電話を切るけど前祝いでダウンしないようにな…?」
『はい、それでは提督さん、ごきげんよう』

それで由良との電話を切った。
うし。それじゃ私も由良の改二を祝して少し町へとプレゼント探しにでもいくとするかね。

「明日には誰かを視察に同行してもらうか。誰がいいと思う…? 榛名」
《そうですね…。無難に由良さん関連で二駆の面々はどうでしょうか…?》
「うーん…そうか。でも村雨と春雨はこの間に一緒に視察にいったばかりだからな。それじゃ残っているのは五月雨くらいか…」

よし。それじゃ明日は五月雨とついでに仲良しの夕張を連れて町への視察に行くとするか。
明日の予定が決まったので任務も頑張らないとな。
それで私は本日の任務を取り掛かろうと奮起したのであった。


 
 

 
後書き
夕立と由良のカップリングはいいですよね。
これで長良型も後残すは長良に名取だけになりましたね。
由良は果たして甲標的を装備できるのか…? はたまたまた差別化で別の固有能力がつくのか色々と楽しみです。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0075話『由良へのプレゼント選び』

 
前書き
更新します。 

 





…本日は昨日に言った通り今日の夜に発表される由良の改二のためにプレゼントを見繕うという名目で町に視察に来ていた。
同伴は五月雨に夕張だ。

「わー! 先日の瑞雲祭りでも来ましたけど鎮守府の外の町には色々なお店があるんですねー」
「そうね、五月雨ちゃん。私もなにか創作意欲が湧きそうなものが見つかればいいけどなー」

五月雨と夕張は二人で会話をしながらもあちこちの店を見て回りたいのか時折お店に目を向けていた。
まぁ別に構わないのだけれど今日の目的を忘れてしまっては本末転倒だな。
それなので、

「二人とも。今日は由良の改二祝いの品を買いに来たんだから今日は我慢してくれ」
「はい、わかっていますよー」
「由良のためだもんね。試し撃ちもしたいなぁ…」

五月雨は元気に答えてくれたけど夕張はどこか不穏な空気をまとっている。
だいたい何を試し撃ちするつもりだ…?
私の感じた不安は少し拭いきれなかった。
まぁそんな感じで町の視察を終わらせた後にとあるショッピングセンターで由良の欲しそうなものを探していた。

「提督ー。こんなのはどうですか?」

夕張は熊さんパーカーを持ってきた。
でもそれってどちらかというと球磨の方ではないかな…?

「提督! これはどうでしょうか!?」

五月雨が少し速足で手にマグカップを持ってやってきていた。
小走りの五月雨…。
五月雨はドジッコ属性だ。
ゆえになぁんか悪い予感がしたのですぐに駆けだせるように身構える私がいた。

「わっ!?」

思った通りだった。
五月雨は足を滑らせたのか商品ごと転倒しそうになる。

「夕張! 商品を頼んだ!」
「了解です!」

私と夕張はとっさに五月雨とマグカップをそれぞれ倒れないように支えていた。
それでどうにか事なきを得た。

「あ、ありがとうございます。提督…」
「ああ。五月雨に怪我がなくてよかったよ。夕張、そっちは大丈夫か?」
「なんとか大丈夫ですよー。商品もどこも壊れていません」

それで私達は少し深いため息をついて胸をなでおろす。

「あ、あの…提督。いつまでも支えられいると恥ずかしいです…」

五月雨のその言葉に気づけば私は五月雨をお姫様だっこのままで支えていた。
それで少し気まずくなったのですぐに五月雨を降ろそうとするのだが、

「あっ…」
「ん? どうした五月雨…?」
「あっ! いえ、なんでもないです! なんでも…」

五月雨はそれでそそくさと少し名残惜しそうな表情をしながらも私から離れた。
うーん…嫌われたわけでもないんだけど少しその反応は傷つくなぁ…。
まぁ五月雨の事だから恥ずかしかっただけだと思いたい。
そんな事を考えながらも私達は物色を続けていくのであった。








うー…恥ずかしいです。
提督にお姫様だっこされてしまいました。
しかもそのあとに私はもっとその感じを味わいたかったのか変な声を出してしまいました。
今私は盛大に顔を赤くしていると思うな。
もし提督が男性のままだったらきっと当分胸のドキドキが止まらなかったんだろうなと思う…。
そんな時でした。
夕張さんが小声で話しかけてきて、

「五月雨ちゃん…? 提督とのお姫様だっこは嬉しかった?」
「ふぇっ!? ゆ、夕張さん、な、なんのことでしょうか!?」
「隠さなくてもいいよ? うちの鎮守府の子達はあんなシチュエーションになったら誰だって嬉しく思っちゃうから。多分だけどね」
「うー…やっぱり恥ずかしいです」
「ふー…(照れている五月雨ちゃんも可愛いなぁ…)…」

夕張さんがさらに小声でなにかを言ったようでしたがあいにく聞こえませんでした。
何を言われたのか気になってしまいます。
でもそこで提督が少し離れた場所から、

「五月雨、夕張。次行くぞ!」

と声をかけてきたので、

「はーい!」
「今行きます!」

私と夕張さんで返事を返してすぐに提督の後を追いました。
この胸のドキドキは今はあまり提督には悟られたくないですから隠しておこう。
まだまだ練度が低い私には過ぎた想いだから…。

「五月雨ちゃん? 気落ちしているところ悪いけどもしなにか我慢しているんだったら私に言ってね? すぐに相手になってあげるから」
「はい! ありがとうございます、夕張さん!」

やっぱり夕張さんは頼りになるなぁ…。
いつも私の事を第一に考えてくれて私の気持ちの変化にも機敏にすぐに気づいてくれる。
そんな夕張さんだから私も気兼ねなく話ができるんです。
…時折なにか変な視線を夕張さんは私に向けてきているような気もしますけどきっと夕張さんの事だから私の事を考えてくれているんですよね。きっとそう!


…………五月雨は知らない。夕張は常に五月雨の事を愛しいものとして見ていることを。
夕張の片思いなんだけどきっと五月雨は気づく事はないだろう。
夕張は五月雨以上に気持ちを隠している奥手だからだ。







…なにやら私が見ていない間になにやら五月雨と夕張の百合事案が発生していたようだ。
どこか二人の間の空気が甘く感じられるのはきっと気のせいではないだろう…。
二次創作世界でも夕張と五月雨は結構両想いな事がよくある事だったからこの世界でもどこかしらでそんな関係なんだろうな。
それで少し寂しく思いながらも私は私で由良のプレゼントを選んでいた。
そこでふとあるものに私の視線が止まった。
それは長めの白いリボンだった。
私はそれを手に取って少し考えてみる。
由良は髪が長いのでいつも専用のリボンで結んでいるのだ。
少し味気ないけどこんなプレゼントもありかなと私はリボンを購入する事にした。
それでレジへと向かおうとして、

「あれ? 提督、なにか決まったんですか?」
「ああ。由良にリボンをプレゼントしてやろうと思ってな。いつものリボンだけじゃなんだからたまにはおしゃれ用にもリボンは必要だと思ってな」
「なるほど…確かに由良は喜びそうですね。いいと思います」
「ありがとう。それでそっちはなにか選べたか…?」
「はい。五月雨ちゃんと一緒にさっきのマグカップをプレゼントしようかと…」
「そうか。よし、それじゃ一緒に購入するか」
「はい」

それでレジへと並ぶ際に、

「由良さん、喜んでくれるといいですね提督」
「そうだな、五月雨」
「由良の事だからなんでも喜びますよ。親友の私が保証しますよ」
「夕張の保証付きか。なら安心だな」

それで私達は由良に対してのプレゼントを購入して意気揚々と鎮守府へと帰っていったのであった。
由良の改二が楽しみだな。


 
 

 
後書き
今夜の由良改二が楽しみです。
明日明後日で改に話と任務話を書こうかと思います。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0076話『由良の改二改装』

 
前書き
更新します。 

 



長門、熊野の時と同様に夜になってゲームで言うメンテナンスが終わったのであろう時間帯に様々な情報が電文として送られてきた。
由良の改二は当然のことながらフィット特性の追加や新たな武装の改修更新、由良の改二が持ってくるであろう新装備、瑞雲の新たな姿、新任務、とある艦娘のステータスアップなどなど…。
今回も深く吟味して理解していかないといけない内容が目白押しの内容だった。
まぁ、なにはともあれ…、

「それじゃ大淀。いつも通りに改装設計図の準備に取り掛かってくれ」
「わかりました。すぐに手配しますね。今現在勲章は18個ありましたよね? 今回の新任務でも取得可能と明記されていましたがどうされますか?」
「うん。今回は勲章をいい感じに合わせるために二個は取っていこうと考えている。
『新型砲熕兵装資材』は今中途半端に一個あるから一つだけ取りに行けばいいだろう。また次の機会に取りに行けるだろうと思うし…」

そう、最近になって新型砲熕兵装資材がないと改修更新ができない装備が増えてきたのだ。
ただ更新するだけでは手に入らない装備とはこれ如何に?という?マークが頭に浮かぶが大本営の発表なのだから従うしかないだろう。

「わかりました。それではその方針で今回の任務を進めていきましょうか。次に瑞雲の改修更新はどうしますか?」
「そうだなぁ…」

それで少し悩む。
今回の決定で瑞雲系統が改修できるようになったのだ。
それに合わせて熟練搭乗員を使用した最新の瑞雲が手に入るという事だけどそのためには瑞雲(六三四空)を改修MAXにするしかないのだ。
今のところ急ぎの任務ではないしただでさえネジの少なさが物語っていて改修もままならない状況だ。
だから、

「そちらに関してはおいおい進めていこう。別に任務は消えるわけではないのだから」
「わかりました。それでは工廠任務がまた増える方針でいいんですね?」
「ああ…」

今のところは改修できても☆二2が今のところの限界だろうからな。
無理はいけない。
来月の熟練搭乗員による零式艦戦21型の更新のためにもネジを使う予定だから下手したらネジを購入する事も念頭に入れておかないといけないしな。
考えることは山盛りだから忙しい。

「まぁそんな感じだ。後でこの方針をもう一人の君と共有しておいてくれ」
「わかりました。それでは改装設計図を準備してまいりますね」

それで大淀は改装設計図の準備のために執務室を出ていった。
部屋が急に静かになったために少し色々と整理も出来たのでとりあえずまずは由良を執務室へと呼ぶ事にした。
そうだな…。夕立や村雨、五月雨、春雨の二駆のみんなを呼んでおくか。
編成任務にも必要になってくるしな。
それでサプライズの意味も含めて先に夕立たちを執務室へと呼んだ。
しばらくして、

「提督さん! 夕立含めた二駆の面々やってきたっぽい!」
「提督? このメンツを集めたって事は…そう言う事よね?」

夕立が元気にやってきて村雨が少し誘惑も入ったような言い方をしてきたので、

「ああ。由良改二が決定されたので第四水雷戦隊編成任務の事も含めてこのメンバーを集めさせてもらった」
「やっぱりですか! 由良さん、きっと喜びますね!」
「そうですね五月雨さん」

五月雨と春雨がそれで互いに由良の改二の件について色々と語り合っていた。
もう自分の事のように四人はそれぞれ嬉しがっている。
特に顕著な反応をしているのがやはり夕立だ。

「ぽいっ! 提督さん、もう由良に渡すケーキも準備が出来ているっぽい! 早く由良を執務室に呼びましょう!」
「そうだな。それじゃ由良を呼ぶとしようか」

それで少し遅れて私は次は由良を執務室へと呼んだ。
しばらくして由良も執務室へと少しそわそわしながら入ってきた。

「…あの、提督さん。由良をお呼びでしょうか…?」

どこか由良の表情が硬い。
おそらく緊張しているのだろうね。
自身の改二情報が来るのだから当然か。
それで私が口を開く前に夕立たち二駆の面々が由良が執務室に入ってきたと同時に、

「由良! 改二発表おめでとうっぽい!」
「「「おめでとうございます!」」」

夕立の嬉々とした声の後に三人も負けじと続いていた。
それで由良は四人が先に執務室にいるとは思っていなかったために、

「夕立…それにみんなも。由良の事を待っていてくれたの…?」
「っぽい! 由良を驚かそうと事前に提督さんと話し合っていたっぽい!」
「ま、由良さんの事なんだから当然よね? 我が事のように嬉しいわ」
「はい! 由良さんおめでとうございます!」
「まだ準備は終わっていませんが祝賀会では春雨も料理を作らせてもらいますね!」
「そう言うわけだ。由良、改めて改二決定おめでとう」

最後に私もそう告げると由良は少し涙目になって、少しして笑顔を浮かべながら、

「提督さん…みんな、ありがとう…」

由良の心からの感謝の言葉を受け取った。
それで私達は揃って笑みを浮かべあう。
望んでいた展開だけに嬉しさも一塩なんだから。

「それじゃ由良。さっそくだが改装室へと向かおうか。今頃大淀が改装設計図を準備して待っているぞ」
「わかりました。由良、張り切って改二になります!」
「由良ー! その意気っぽい!」

それでみんなして改装室へと向かうとそこには大淀と明石以外にも夕張も待っていた。

「由良…。改二おめでとう。私からも言葉を贈らせてもらうわ」
「夕張…、ありがとう」

それでもう感極まったのかポロポロと涙を垂らす由良の姿を見て夕張は慌ててハンカチを取り出して、

「…ああもう。改二になる前からこんなんじゃこの先の展開も持たないわよ?」
「ふぁい…」

少し力を込めて由良の涙を拭いてあげている夕張の姿がそこにはあった。
それで由良の涙も一通り拭き終わったのか大淀が改装設計図を持ってきて、

「それでは由良さん。改装設計図を持って改装室へと入ってください」
「わかりました。提督さん、改装ボタンを押す際は少し時間を置いてね、ねっ?」
「わかったよ」

それで由良は改装室へと入っていった。
それを見届けた夕立はというと、

「提督さん! もう時間は結構経ったっぽい! もういいでしょ!?」
「そうだな。もう由良の心の準備も大丈夫だろうし…」

それで明石に声をかける。

「明石! もういいだろうか?」
「大丈夫ですよー。由良ももう準備は出来ているみたいだから。いつでもどうぞー!」

明石の許しも得たので私はそれで改装ボタンを押した。
そして改装室の中から光が漏れてきて色々と機械音が響いてくる。
いつも通り工廠妖精さん達が由良の改二を執行しているのだろうな。
そして時間が経過して改装室の扉が開かれた。

「提督さん…改装された由良の力、存分にお使いくださいね、ねっ!」

そこには阿武隈や鬼怒と同じ衣装に身を包んだ少し垢抜けた感じの由良の姿があった。
それでいの一番に夕立が由良に飛びかかって、

「由良ー! とってもカッコいいッぽい!」
「ありがとう、夕立…」

それで夕張や村雨たちもこぞって由良の周りに集まって改二を祝っていた。
そこに明石が由良のカタログスペックが記された紙を持ってきた。

「提督。由良のスペックですよ。ご確認どうぞ」
「ありがとう明石」

それで紙を受け取って確認する。
そこには少し雷装が阿武隈には劣るけどそれでもかなりの強化がされている由良の情報が示されていた。
なにより大きいのが甲標的も含めた多くの装備をセットできる事か。
瑞雲系統の装備が出来て大型電探、大発系装備、艦隊司令部施設、整備員、水戦など………由良の戦略的な使いどころが広がったみたいだ。
ただただすごいの一言だ…。
今までの改二を遥かに上回っている内容だらけで嬉しさも湧いてきた。
なので私も由良へと近寄っていき、

「由良。改二おめでとう」
「ありがとうございます! 提督さん!」

由良の表情はとても晴れやかな物だった。


 
 

 
後書き
由良が改二になりました。
そして装備できるものも多い事から色々な使い道が可能になりましたね。
第二の阿武隈になったのが大きいです。

明日は由良の任務、明後日は日向達の任務などを書いていこうかと思います。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0077話『旗艦、由良の出撃』

 
前書き
更新します。 

 



由良の第二次改装が終わり、私はさっそく由良関連の任務を始めようと思ったけど先に細々とした工廠任務を先にクリアしていこうと思っていた。
それで明石に話を振ってみた。

「明石。この『電探技術の射撃装置への活用』という任務だが……これってやっぱり電探を十個も破棄しないといけないのか?」
「そうですねー……はい、そうなります。ですから改修に今後使う予定があるのでしたら慎重に破棄してくださいね」
「わかった」

それで手頃な電探を十個見繕って一気に破棄を敢行した。
破棄したのは13号対空電探だけど今のところは数がかなりあったからこれにした。
先がちょっと怖いけど今のところは電探関連は改修は見送っているから今はまぁいいか。
それで弾薬と鋼材が一緒に消費されて明石がそれによって電探技術のなにかしらの役に立ったのだろうと思いながらも『新型砲熕兵装資材』と『勲章』のどちらかを選択する事に迫られた。
今回はちょっとした事情で勲章をとった。

そして次にやるのは『民生産業への協力』というちょっと不思議なネーミングの任務。
これはどうやら文字通り民生産業への武器の提供みたいで後日明石が指定された場所へと送付するという。
だから私が直接出向くわけではないのでそこら辺は少し安心した。
それなのでさっそく小口径主砲を16個破棄した。
それによって民生産業へも燃料も一緒に送られるようで燃料も多大に消費された。
まぁその甲斐あって今回は前回の任務で中途半端に一個残っている『新型砲熕兵装資材』のために勲章は見送ってこちらを会得した。
これで『新型砲熕兵装資材』は二個となったので改修素材に使えるのでまぁいいだろう。
それで工廠系の任務は後は瑞雲の件だけだけどこれに関しては焦る事もないので大淀に言ったように見送った。
そしてようやく由良の任務をすることにした。
それでメンバーを考えていた。
任務内容は『旗艦「由良」、抜錨!』。
由良を旗艦に駆逐艦を二隻運用して後はフリーで編成を組めるので結構楽な任務かもしれない。
私はもう一つの任務である日向達の任務から目を遠ざけながらも由良の任務へと集中していた。
なにがって…日向任務は結構きつそうなんだよな。
だから由良の任務が終わってから考える。
まずはオリョール海域の攻略。そして南方海域全面への出撃だ。
編成は第四水雷戦隊の由良と夕立とそしてそれとは別に秋月も一緒に組んでもいいという事で組む事にした。
そして他のメンバーは隼鷹に龍驤に千歳を採用した。
それで執務室へと六人を呼んでみんなは少ししてやってきた。

「提督さん。由良の任務の件でしょうか…?」
「ああ。まずはこのメンバーでオリョール海域攻略をしてもらいたい」

由良にそう聞かれたのでその通りだという感じで答えておいた。

「夕立、由良のために頑張るっぽい!」
「はい。秋月も頑張らせてもらいます!」

駆逐艦の二人も大変元気でよろしい。

「うちに任せておいてな。しっかり仕事はさせてもらうで」
「ああ。最近体が鈍っていたからちょうどいい肩慣らしになりそうだしな」
「もう……私も人の事はとやかく言えませんけど隼鷹さんは少しお酒を控えた方がいいですよ? ポーラさんみたいに飛鷹さんに禁酒を迫られても知りませんよ?」
「飛鷹が怖くて酒が止められたらすでに飲んでないね」

龍驤は一人奮起していて隼鷹と千歳に関してはお酒を飲む仲間として色々と会話をしていた。隼鷹はすでに開き直っているし……。
しかし、やっぱりポーラはザラに禁酒を迫られているのか……。
まぁあれだけ飲んでいれば仕方がない事だけど……。

「まぁそういうわけで頼んだぞ。みんな」
「「「了解」」」

それで六人はオリョール海域へと出撃していった。
そして何度か逸れるもののボスマスへとたどり着ければ後は殲滅するだけなのでオリョール任務はすぐに終わりをつげた。
そして南方海域への出撃だけど今度は龍驤と隼鷹を抜いて摩耶と妙高の二人を入れて編成した。
これは南方海域前面へのボスマス固定メンバーなのでちょうどよかったりする。

「提督ー。あたしに任せておきな」
「妙高にお任せください」
「うん」
「しっかし提督。南方海域のボスっていえば確率で敵編成に潜水艦がいるだろう? そこら辺の対策はどうするんだ?」
「一応夕立にソナーを一つ積んでもらって複縦陣の陣形で確実に倒してもらおうと考えている。潜水艦がいなければいないでめっけもんだからな」
「そっか。提督も考えていたんならあたしはもう口は出さないよ」

それで摩耶も満足そうに引き下がっていった。

「というわけで夕立。もし潜水艦がいたら頼んだぞ」
「任せてほしいっぽい!」
「よし。それじゃ出撃してくれ。健闘を祈るよ」
「「「了解」」」

それで今度は南方海域へと六人は出撃していった。







由良たちはそれで南方海域へとやってきていた。
私を旗艦に妙高さん、摩耶さん、夕立、秋月さん、千歳さんの編成だ。

「千歳さん、索敵お願いしますね!」
「任せて! ルートは固定できているんだから制空権は私に任せておいて」

それで千歳さんが艦載機を次々と発艦させていく。
そして敵深海棲艦と会敵した。

「みなさん! まずは単縦陣で第一群を殲滅します!」
「おう!」
「はい!」
「夕立、本気を見せるッぽい!」
「秋月、いきます!」

それで最初の敵深海棲艦を私の先制雷撃も役に立ったのか深い傷はあまり受けないで殲滅できた。
よし! これならいけるわね。
阿武隈と比べると攻撃力が落ちるけど、それでもしっかりできるんだから!
そして次の敵陣営も倒すことが出来てボスに挑もうとしている時だった。

「それじゃ夕立さん。もし敵に潜水艦がいましたら頼みますよ?」
「頑張るっぽい!」

妙高さんの指示で夕立がすぐに爆雷を投入できる準備をしていた。
だけど会敵してみると意外な事に潜水艦の姿は今回はなかった。
それで運がいいのか悪いのか夕立はすこし落ち込んでいた。

「少し消化不足になるかも…」
「ま、まぁそう言うなって! 後はあたし達がなんとかするからよ!」

落ち込み気味の夕立を摩耶さんがフォローしているのが目についた。
まぁ単純な編成の方がいいよね、ねっ!
私もそう言い聞かせながら戦闘開始していった。
戦艦タ級フラグシップが二体いるから少し手強いけどT字有利を引いていたのでなんとか敵の攻撃をやり過ごしていたんだけど、

「ぽいーっ!?」
「夕立っ!?」

そこで夕立がタ級の攻撃を受けてしまい大破してしまった。

「夕立は下がっていて! 後は由良たちがなんとかするから!」
「ごめんなさいっぽい…」

それで夕立は後ろへと下がっていった。
それじゃ夕立の仇をとらないとね。

「由良を怒らせたら怖いんだから!」

それで瞬く間に由良たちは深海棲艦を倒しきった。
夕立の大破があったけどそれ以外はほぼ無傷だったのでこれで任務は成功だよね。
それで提督さんにその旨を報告すると、

『わかった。夕立を守るように輪形陣を組みながら帰投してくれ』
「わかりました。それより提督さん、由良……強くなりましたか?」
『由良自身が強くなったと思ったんなら強くなったということだろう。今後も活躍を期待しているよ』
「はい! これからも頑張りますね!」

提督さんの言葉が嬉しかったので夕立を安全に護衛しながらも私は少し心が躍っていたのはここだけの秘密です。


 
 

 
後書き
今回は由良の任務話を書きました。
日向の任務の方が少し内容的に難しくなるので明日に回します。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0078話『第四航空戦隊、出撃』

 
前書き
更新します。 

 




由良の任務が終わった翌日に私は今度は『精鋭「第四航空戦隊」、抜錨せよ!』を攻略するためにメンバーを考えていた。
と言っても今回はかなり限定されている。
日向に伊勢はもちろんの事、軽巡一隻に駆逐艦を二隻配置してあと一枠を自由枠として扱えるのだけど攻略する海域が厄介だ。
沖ノ島沖はまぁまだなんとかなるだろう。
だけどもう一方の北方AL海域が難しいという感想を持つ。
今まで大体空母を編成して挑んでいたからなんとかなっているけど今回は上の通り艦種がかなり限定されているのだ。
だからこの際ならもう一枠を戦艦を入れて制空権を捨てて特攻をさせるしかなくなってくるのだ。
いや、別に完全に制空権を捨てるわけではない。
伊勢、日向には瑞雲を積んでもらう予定だし今回は火力も吟味して大和を入れてみようと考えている。
だから大和に水戦を載せて少しでも制空権を維持してもらいたいところだ。
そして固定の軽巡と駆逐艦は先日から引き続き由良と夕立のコンビを使おうと考えている。
なんせ今回は由良の晴れ舞台の任務なのだから由良を使ってあげないとダメだろうという気持ちなのだ。
そして前の任務同様にもう一隻の駆逐艦は秋月を採用する。
残り一枠は軽空母の隼鷹でも入れてみるか。
これでまずは沖ノ島沖を攻略してもらおう。
というわけでこの六名を招集する。

最初に日向が入ってきて私の執務室にあるとあるものにすぐに目についたのか笑みを浮かべて、

「提督よ。その瑞雲魂の掛け軸をさっそく飾ってくれているんだな。やっぱり提督も瑞雲が好きなようで私としては嬉しい限りだ」
「ああ。このギミックも面白いよな」

それで私は掛け軸に付随している瑞雲模型をいじると動き出して飛び立っていってすぐに帰ってくるという面白いギミックがある。

「ふふ……気に入ってもらえてよかった。このために私が丹精込めて作ったのだからな」
「あ、やっぱり日向がこれを作ったのか」
「うむ」

それで日向と私はお互いに笑みを浮かべあう。
と、そこで日向の後ろでつっかえているみんながいるのを忘れていたのか、

「提督ー? 日向ー? どうしたのさー。中に入れないよ」
「ああ、すまない。みんな入ってくれ」

伊勢の言葉で私と日向は現実に戻ってきたので、それで全員を執務室へと招き入れる。
そして全員に今回の任務を説明するのだが、

「提督……? こういっちゃー悪いけどさ。あたしは今回は必要なくないかね?」

隼鷹がそう言う。
またどうしてだろうか。

「提督は無難に東南ルートを通ろうと考えているんだろうけどかなりの確実で行き止まりのマスに行くと思うよ。このメンバーじゃ…」
「そうだな。だけど試してみないことは無いから一回か二回行ってみてくれ」
「わかったよー。それじゃこの隼鷹さんも少しは頑張らせてもらうかね」
「ゆ、由良も頑張りますから。ね、ねっ?」
「夕立も頑張るっぽい」
「秋月も頑張ります」

それで全員の意見も固まったのか出撃してもらった。
だけど無線機の先では、

『提督……? 隼鷹の言った通り一戦目はなんなく倒したのだがやはり逸れてしまったようだ』
「そうか。それじゃ帰投してくれ」
『了解した……』

日向の少し気落ちした声とともに通信が切れる。
しかしそうか。
やっぱり逸れてしまうんだな。
なら無茶を承知で夜戦ルートを行く編成にしてみるか。
それで私は今手が空いている駆逐艦を一隻呼んだ。
そして少ししてやってきたその子は、

「司令官。初霜をお呼びでしょうか……?」
「ああ。初霜、もう少ししたら出撃した艦隊が帰ってくる。
そしたら隼鷹と交代して初霜は電探を山盛りで載せて挑んでくれないか?」
「電探を全部のスロットに載せるんですか……?」
「そうだ。沖ノ島沖は索敵がかなり必要になってくるから今のままだと索敵不足で逸れてしまうと思うんだ」
「そうですか。わかりました! 初霜にお任せください!」

それで日向達が帰ってきた後に隼鷹と初霜を交代する旨を伝えると隼鷹は「やっぱり……」といった表情になって、

「なぁ? 言った通りになったろ?」
「まぁ試してみるのも悪くはないからいい経験になったろ?」
「まぁ、ね……それじゃ初霜、頼んだよ」
「はい。お任せください」

それで改めて六人に出撃してもらった。
それで一回目で夜戦エリアもなんなく突破したらしくボスに辿り着いて日向と伊勢の航空戦艦コンビを中心にして倒したという。

「……うん。これで半分は任務達成か。それじゃ大和……頼んだぞ?」
「はい。提督の期待に応えてみせます」

事前に呼んでおいた大和にそう話して第一艦隊が帰ってきたら大和を加えた艦隊を編成した。
だけどそこで秋月が疲労が溜まっていたので照月に交代した。
それでメンバーは日向、伊勢、大和、由良、夕立、照月の六名として改めてこのメンバーで北方AL海域へと出撃してもらった。







……さて、今回のこの任務だが空母戦力がいないのは少し痛いものがあるな。
私と伊勢でなんとか瑞雲で制空権を取ろうと思うのだが如何せん敵が空母ヲ級の数が多いために苦戦を強いられている。
そして、

「いったぁ……」
「被弾したっぽい…」

これで何度目かになる由良と夕立が揃って大破してしまうことが続いているのだ。

「どうしたんだ二人とも。どこか調子が悪いのか……?」

私がそう問いかけるが二人は曖昧な表情で、

「なんだろう……日が悪いのかな…? ね、夕立…?」
「そうっぽい…」

そう言って由良と夕立は少し反省の表情をしていた。
まぁ仕方がない。
制空権を確保できないのだから敵の攻撃の威力も上がってしまうのは道理だ。
だから今回は運悪く二人がよく狙われてしまうのだろうな。

「私も結構撃ち漏らしが多いですからすみません……」
「照月もどうにか艦載機を落としているんですけどすみません……」
「大和さんと照月が謝る事じゃないっぽい。これは私達の責任だよ」
「まぁここで反省会をしていても仕方がない。追撃が来る前に帰投しよう」
「「「了解……」」」

そして帰投した後に高速修復材を使って全員回復したので改めて出撃した。
そしてなんとか北方棲姫の場所までたどり着いて、

「カエレッ!!」

北方棲姫のいつもながら強烈な艦載機の嵐に大和が中破を受けてしまうもなんとか大破者はでないで突破できた。
北方棲姫め…。今度会う際は万全な体勢で挑んで倒してやろう。
私はそう誓いながらもボスマスへと航路を進める。
そして辿り着いてしまえば後は倒すだけの仕事だ。
やらしてもらおう。

「日向隊! 前へ! 突撃する!!」
「「「了解!」」」

旗艦の私の指示とともに全員が攻勢に出てあっという間にボスを殲滅したのであった。
そして提督へと通信を送ると、

『日向、敵は倒すことが出来たか……?』
「うむ。やってやったさ。みんな頑張ってくれたよ」
『そうか。ならよかった』
「ああ。それでだが今回の新任務の件だがいつまでも放置はしてくれるなよ? 新たな瑞雲が手に入るチャンスを逃すほど悔しいものはないからな?」
『わ、わかった……。善処する』

提督に新たな瑞雲についての件で釘を刺しておいた。
これで遠くない未来に新たな瑞雲がやってくるのは嬉しい事だ。

「日向。どこか嬉しそうじゃん?」

伊勢にそう言われたので、

「まぁ、そうなるな」

そう答えておいた。


 
 

 
後書き
装備メモを置いておきます。


2-5攻略編成

日向 41㎝三連装砲改、アイオワ砲、零観、強風改
伊勢 46㎝三連装砲、アイオワ砲、零観、32号電探
由良 甲標的、紫雲、15.2連装砲改
夕立 10㎝連装高角砲+高射装置×2、33号電探
秋月 10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
初霜 22号対水上電探改四×2、13号対空電探改


3-5攻略編成
日向 41㎝三連装砲改、アイオワ砲、瑞雲12、強風改
伊勢 46㎝三連装砲、アイオワ砲、瑞雲12、三式弾
大和 試製41㎝三連装砲×2、二式水戦改(熟練)、三式弾
由良 甲標的、紫雲、15.2連装砲改
夕立 10㎝連装高角砲+高射装置×2、33号電探
照月 10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改




瑞雲掛け軸は面白いですよね。箪笥と一緒に瑞雲を飛ばすと直の事面白い…。
まぁそんなわけで日向の回でした。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0079話『隼鷹と飛鷹とお酒』

 
前書き
更新します。 

 





……ええ。先日からの工廠系任務で消費した資材を回復させるために遠征部隊のみんなには頑張ってもらっているそんな時に私は隼鷹に居酒屋鳳翔へと誘われていた。
私がお酒はあまり得意ではないのはもうみんなには周知の事だけど、それでも隼鷹は一度私とお酒を交わしながら語り合いたいという。
それで仕方なくっていうのも変な言い方だけど参加させてもらう事にした。

「提督~。今回はあたしと飛鷹のおごりだから遠慮はなしだかんねー?」
「わかっているけど……隼鷹もあんまり飲み過ぎるなよ?」
「そこは安心してください提督。飲み過ぎないように私が見張っていますから」

飛鷹がそう言って手を胸に添えて言い切っていた。
うん、頼りにはなるんだけど少し心配なんだよな。
なにがって……飛鷹も隼鷹に劣らず酒を嗜んでいるからだ。
だから少し不安になってしまう気持ちも分かってもらいたい。

「飛鷹も硬いな~。どうせ飲み始めたら飛鷹も止まらなくなるのはあたしも知ってるんだよ……?」
「だけど、提督の前では無様な姿は見せたくないから」
「おーおー。いい子ちゃんぶっちゃって…」
「……なによ? やる気?」
「いいよー? 久しぶりに飲み比べでもするかい?」

ほら……。飛鷹がもう隼鷹のペースに乗せられてしまっているよ。
だから言わんこっちゃないんだよな。
だからここで釘を差しておこう。

「隼鷹……? 今回は私となにか話をする予定なんだろう? 素面のままでもいいけど飲みすぎもいけないんだと思うけどな?」
「ふん……わかったよ。飛鷹、勝負は今度つけるからね?」
「望むところよ」

それでお互いになんとか和解が出来たのか普段通りに戻っていた。
そしてそんな会話をしながらも私達は居酒屋鳳翔へと到着した。
暖簾をくぐって扉を開ける。
すると中から色々な食材のいい匂いが漂ってきて少しお腹が空いてくる感じだ。

「やっぱ鳳翔さんの所に来ると酒を飲む際にはおかずが欲しくなるね~」
「そうね」
「そうだな」

私達が意見が一致したために少し笑いあう。

「いらっしゃいませ。あら、提督に隼鷹さんに飛鷹さん。珍しい組み合わせですね」
「ああ。鳳翔さん、今日は貸し切っていいかい? 提督と少しばかり込み入った話がしたいんだよ」
「別に構いませんよ。そろそろ店仕舞いにしようかと考えていたところでしたので……」

それで鳳翔さんは暖簾を下げに行った。

「……さて、それじゃ提督。カウンター席に座ってくれよ。特等席だぜ?」
「わかった」

それでカウンター席に着席する。
そして隼鷹が右に、飛鷹が左に着席した。
しかし……いったい隼鷹たちは私となにを話をするつもりなのだろうか……?

「鳳翔さん。少しお酒をくれないかい?」
「はいはーい。わかりました。準備しますね」

そう言って鳳翔さんは厨房の奥へと入っていって少しして戻ってきた。
そこには未開封の瓶が持たれていた。

「おっ! 鳳翔さん、話が分かるね。高知名産の純米大吟醸ときたか」
「はい。隼鷹さんが好きそうなものを出してきました。提督は甘いモノなら飲めるそうですからこれなら平気かなと思いまして」
「いいですね。鳳翔さん、ナイスです」

そして鳳翔さんは三人分のとっくりを出してコポコポと注いでいった。
その透き通るようなお酒の色は確かに純米だな。

「はい。どうぞ。それではなにか作ってまいりますね。その間にお話をしていてくださって結構です」
「おう! あんがとう鳳翔さん!」
「はい。それでは……」

そして鳳翔さんはなにかを作りに厨房に入っていった。
それで場も整ったのか隼鷹がお酒が入れられたとっくりを持ちながら、

「さぁさ。それじゃまずは一杯。いってみましょうか」
「そうね」
「わかった」

三人して「乾杯」と言ってそれぞれお酒を口に入れる。
そして一気にそのお酒の味が喉に浸透してきた。
どこかワインのような甘さもあってか私も苦手意識はあんまりない。
むしろ美味しいと感じられるほどであった。

「どうだい…? 子供舌の提督でもおいしく感じられるだろう?」

どこか勝ち誇っているような表情の隼鷹の顔に少しムッとさせられるが、まぁ本当なのだから仕方がない。
なので、

「ああ。確かにうまいよ」
「でしょう? よかったわ。提督もこれくらいは飲めるくらいにはならないとね」

飛鷹にそう褒められた。
それで素直に喜んでいいのかに関しては横に置いておくとして、

「……さて、お酒も回った事だしそろそろ話といこうじゃないかい?」
「その話って何なんだ……? 内容によっては答えられないぞ?」
「わーかってるって。なに……別に機密とかそんな情報を聞き出そうなって野暮な事はしないさ。聞きたいことはただ一つだよ」

そこでどこか真剣な表情になった隼鷹に私も自然と体が引き締まった気分になった。

「提督……? そんなに肩筋張らなくて大丈夫よ。隼鷹もただ興味本位で聞きたいだけなんだから」
「飛鷹? 今はあんま茶々入れるなって……?」
「わかったわよぅ……」

それで飛鷹は飛鷹でお酒を嗜んでいた。
なるほど。やっぱり今回飛鷹はお目付け役ってところか。

「聞きたいことは一つだよ。提督よぉ……最近榛名としっかりと話はしているかい……?」
「え……?」
《えっ?》

隼鷹にそんな話をされたのでとっさに榛名も表に出てきて私と一緒に首を傾げる。

「あちゃー……。そっか。榛名もだいたいは一緒になって聞いていることを忘れていたよ」
《はい。でも、隼鷹さん。それってどういうことですか……?》
「まぁ、榛名も一緒に聞いているならちょうどいいと言えばいいか? まぁいいか」

そう言って隼鷹は一回頭を掻きながらも、

「たださ……最近、提督と榛名をたまに観察していると思うんだけど二人とも、本音で会話しているようでその実はお互いに本音は隠しているんだろうなって思ってね……」

隼鷹のその言葉に少し当たっているだけに胸にグサッと刺さるものがあった。
確かに榛名にも隠している本心はいくつかある。
だけどいつかは話し合いたいとも思っているのだ。
そして榛名も思い当たる節があるのか少し顔を赤くさせながらも、

《……はい。提督には隠している本心がいくつかあります》

やっぱり榛名もあるよな。
一緒の身体で共存しているからって心まではお互いに読めないから。

「だから、さ。余計なお節介だとは思っているんだけどね。たまには本心で語り合ったらどうかなって、思うんだよ……あたしはさ」

隼鷹の表情はどこか哀愁が漂っていた。
過去を思い出しているのかどこか切なそうだ。
過去と言えば榛名と隼鷹は終戦まで生き残った組だから色々と見てきたものがあるんだろうな。
その隼鷹の言葉に少し感化されたのか、それともお酒が回ってきたのか、

「……わかった。榛名、今度いつか本音で二人で一緒に話し合おうな」
《はい……。私もできるだけ提督と話し合いたいです》

それで見つめあう私と榛名。

「かぁー……。やっぱりこういうのは柄じゃないわ。こっ恥ずかしいなー」
「いえいえ……隼鷹もたまには中々いい事を言ったじゃない?」
「たまには、は余計だよ飛鷹。たっく……二人していい雰囲気になっちゃってさ。見事な道化じゃん……」

そんな隼鷹の会話で慌てて私と榛名は即座に視線を逸らす。
恥ずかしいやらなんやらで。
そこに鳳翔さんがちょうどよくおかずを持ってきてくれたのか、

「さって……そんじゃもうあたしの話はおしまいだから後は飲み明かそうぜ?」
「いいわね。提督……? 覚悟してくださいね」
「ほどほどに頼むぞ……?」

そして鳳翔さんも加わって今夜は少しいつもより多めにお酒を飲んでしまったのであった。


 
 

 
後書き
今回は少し本筋に関わってくる問題に触れました。
榛名と本音で話し合える日は来るのだろうか……?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0080話『少し遅めのプール掃除』

 
前書き
更新します。 

 



それはとある艦娘達が言い出した事であった。
複数いる潜水艦の子達なんだけど毎日オリョール海域へと任務のために出撃してもらっているのだけどたまには普通に安全なところで遊びたいと言い出したのだ。
それでふと思い出す。
この世界にきてから知った事だけどこの鎮守府には潜水艦専用の練習プールというものが存在していたのだ。
だけどうちの潜水艦の子達は大体高練度だから使う予定もなくて放置されていた。
それでためしに確認をしに向かってみると案の定ともいうべきか……梅雨の季節もあってか藻が浮いていて緑の水になってしまっていたのだ。
その現状を見てイク達はさすがにこんなプールに入りたくないのか、

「提督ぅ…さすがにこんなのじゃイヤなのね」
「はっちゃんもさすがにこんな藻だらけのプールには入りたくないです」
「ニムもちょっと遠慮するかなぁ……」

口々に入りたくないという苦情が飛び交ったので仕方がないと私も腹を括って、

「それじゃ他の艦娘達も夏には入りたいだろうから今から水を抜いて掃除するか……?」

私のそんな提案に、

「いいでちね!」
「掃除! 楽しみですって!」

ゴーヤとローちゃんが即座に反応を示した。
なので私は急きょ青葉に頼んでプール掃除をしたい艦娘達を募集する事になった。
そして翌日。
集まったのは第六駆逐隊の面々と長良、名取といった長良型の面々だった。
意外に少なかったな。
夏には水着modeになる艦娘も多いと思うから結構来ると思っていたんだけど……。
ちなみに潜水艦のみんなはオリョール海域に出撃中で参加できなかったとさ。
……まぁいいか。

「よし! それじゃこのメンバーで今日は一斉にプール掃除を決行するぞ!」
「「「おー!」」」

ちなみに私は濡れてもいいように榛名の水着を着用してその上にTシャツを着ていた。
羞恥心はどうしたって……?
そんなものはもうとっくに麻痺しているからどうということはない。
別に男性に見られる心配もないのだからどんな服装だろうと着てやるさ。

《提督も結構感覚がマヒしてきましたね……》
「榛名……? こんな女所帯の鎮守府で羞恥心はもうないに等しいんだよ?
いつも味わっているだろう……? いざお風呂に入ろうとしたら誰か必ず一緒に入ってくるんだから……」
《はい……みなさん、提督は中身は男性のままですのにそれを完全に気にしていませんから》
「私にだって男のプライドは残されているから女性の裸には抵抗があるのにみんながそれをゴリゴリと削ってくるんだからもう慣れてしまって興奮すらしなくなってしまった私はすでにもう手遅れだと思うんだよな……はは」

それで私は覇気のない笑いをする。

《提督……お労しいです》
「わかってくれるか榛名……?」
《はい。わかります。提督は女性になってもいつでも襲える環境なのに誰も襲わない……とても偉いです》
「そんな後で罪悪感と艦娘達の非難の声に襲われるようなことはしたくないからな」
《提督はとてもご立派です》

そんなやり取りをしている時だった。

「司令官! 早くお掃除しようよー!」
「わかったよ長良。昨日のうちにはもう水は全部抜いてあるからいつでもできるからな」
「私達も夏になったら泳ぎたいからね。本気でいくよ」
「わかった。期待しているよ」

と、そこで暁たちが目に入ったので少し注意しておく。

「暁ー!」
「ん? なに司令官……?」
「他の三人もだけど今現在プールはぬかるんでいるから十分注意して掃除するんだぞ?」
「わかったわ」
「わかりましたなのです」
「ふふん、雷に任せなさい司令官!」
「了解だよ」
「よし。それじゃみんな、始めてくれ」
「「「了解」」」

それで私もデッキブラシを持って一気にプール内を掃除していく。
そこに阿武隈がさっそくこけていて、

「あー……やっちゃったぁ……」
「阿武隈。もう服が泥だらけになっているぞ」
「うー……ヌメヌメしていて気持ち悪いですぅ」
「阿武隈! それじゃ掃除が終わったら入っちゃおうよ! きっと気持ちいいぞう!」

鬼怒がそう言って前向きに笑っていた。
そうだな……。
プール掃除に参加してくれたみんなにはご褒美も必要だな。よし。

「わかった。みんなー! このプール掃除が終わったら一番に入る権利を上げよう。だから頑張ってやっていこう」
「「「やったー!」」」

それでみんなは俄然やる気を出したのかデッキブラシで藻を擦る作業がスピードが上がった。
いい調子だな。

「提督さん。こちらは終わりましたよ」
「由良。そうか。それじゃ第六駆逐隊の方を手伝ってやってくれ」
「わかりました。由良、頑張っちゃいます」

そう言って笑顔を浮かべた由良は暁たちの方へと向かっていった。
一方で長良が一番この中ではプールに入りたいらしく、

「とおーーーーりゃー!!」

すごい勢いでデッキブラシを走らせていた。

「な、長良姉さん! 待ってぇ!」
「遅いよ名取ー!」

長良と名取は競争でもしていたのかプール中を走りまくっていた。

「長良と名取も元気ねぇ……」

五十鈴はマイペースに掃除をしていた。
そんな五十鈴に近寄っていく。

「調子はどうだ五十鈴……?」
「うん。この調子なら午前中には終わるんじゃないかしら……?」
「そうだな。よし、もう少しみんなを見習って私も頑張るとしようか」
「その意気よ」

それで五十鈴とともに一緒になって掃除をしていた。
そして……。

「終わったー!!」

長良のその一言で分かる通りプールの掃除が終了したのだ。
みんなの頑張りもあってかどこかキラキラと輝いていた。

「わーい!」
「やったのです!」
「やればできるものね!」
「ハラショー」

長良に続いて第六のみんなも喜びの声を上げていた。
どうやら掃除が終わったのが嬉しいらしく長良型のみんなも笑みを浮かべていた。
うんうん。
やっぱり清潔になると嬉しいものだよな。

「っていうわけでさ。司令官、さっそく入らせてよ?」
「まぁ待て。まだ水を貯めないといけないから君達はまずはお昼を食べてきてから水着に着替えてきなさい。その間に水を貯めておくよ」
「わかったよ。みんなー! それじゃさっさと済ませてプールはいるぞー!」
「「「おー!」」」

元気よくみんなはそれで一度出ていった。
その間に私は排水装置を操作して水を貯める準備をしていた。
そして午後の三時過ぎくらいには十分な量の水が溜まっていた
そこに水着姿の第六駆逐隊と長良型の面々がやってきたので、

「みんな。溺れないように注意しながら入りなさい。私はその間に食事を摂ってくるから」
「「「はーい」」」

それでいの一番に長良が準備体操を終わらせて飛び込んでいた。

「ひゃー! 冷たいよ! 楽しいなー!」
「暁たちも入るわよ!」
「なのです!」

それで次々とみんなはプールへと入っていった。
楽しそうで何よりな光景が広がっているのを後にして私は食事を済ませて戻ってくる道すがら。
掃除に参加しなかった艦娘達がちらちらとプールで遊んでいる長良達を見ていて、

「いいなぁ……」
「ちぇっ! 私も参加すればよかった……」

と少しプール掃除に参加しなかったことを後悔している姿が目についた。
それなので、

「みんなも長良達に感謝しながらプールに入るんだぞ」
「「「はーい」」」

みんなも素直で大変結構だ。
明日からプールは賑わいそうだなと思った一日だった。


 
 

 
後書き
遅いプール開きでした。
普段使わないものを放置しておくとダメですよねー。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0081話『江風と山風の喧嘩』

 
前書き
更新します。 

 




「いっひひ! 提督、ちょっといいかい?」
「失礼します、提督。少しよろしいでしょうか……?」

朝の執務をしていた私のところに江風と海風が執務室に入ってきた。
この二人が一緒にいるのはよく見る光景だから別段不思議には思わないな。
なんせ同時期に実装された二人だからな。
仲がいいのは当然だろう。
そんな二人が私に何か用があるらしい。
この二人が関わってくる用と言えば大体姉妹関係に絞られてくる。
お調子者の江風にしっかりものの海風。
その二人をして用と言えばだいたい分かってきた。
それで私は言葉を出す。

「……どうした? 山風関係でなにかトラブルでもあるのか?」

それで江風と海風の二人は目を見開いた。
そして、

「……提督さ。なンか察しがよくね……?」
「はい。海風も驚きました……提督は読心術でもお持ちなのでしょうか……?」

二人して不思議がっている。
だってな。

「いや、大体わかるだろう。二人が一緒に来るときはいつも山風の事しか話さないじゃないか……?」
「……ン? そう、かな……?」
「そうだったでしょうか……?」
「そうだ。自覚はした方がいい」

そう。どちらか一人の時だったら別の話になるんだけどこの二人が揃うとどうしても山風の話に流れてしまう。
まぁ、その気持ちは分かる。
私も山風が実装されると聞いてそのビジュアルを見た時には生みの親であるイ○ソさんには感謝したものだ。
そのあふれ出る可愛さからくる言葉とは裏腹に実はかまってちゃんな山風は私の心を射抜いた。
そしてイベントが始まってさぁ掘りをするぞ!と息巻いていた一週目のボス撃破でなんと一発で来て度肝を抜かされたのは記憶に鮮明に焼き付いている。
それでイベントが終わったら速攻戦力レベルには練度を上げたものだ。
………っと、私の内事情はいいとして。
私は気持ちを切り替えて二人に今回は山風が何かをしたのかという感じにやんわりと聞いてみた。
すると、

「……いや、実際山風がなにかをしたって訳じゃないンだけどさ……なぁ海風の姉貴?」
「はい。提督のお力を貸していただきたいんです」
「それは一体……?」
「はい。山風がちょっと部屋に閉じこもってしまいまして……」

それを聞いて私は思わず天を仰ぐ。
人見知りの山風が部屋に閉じこもってしまったというのは例えで言うと神話でアマテラスが岩戸隠れしたようなものだ。
それほどに厄介な案件だな。

「しかし、またどうしてそんな事になってしまったんだ……?」
「いやー……それがさー」
「じー……」

どこか目が泳いでいる江風。
そしてどこか厳しめの視線を江風に送る海風。
まぁそれで理由はともかく江風が原因だというのはわかった。

「江風……? なにがあったか言ってみなさい。なに、怒ったりしないから」
「ホントか……?」
「うん。内容によるけどね」

うん。よほどのことがない限りは怒らないよ?
ただ山風をいじめたとかだったら叱るつもりだけどね。

「うー……榛名さんの顔でそんなニッコリ笑顔を浮かべられるとなにか後が怖いんだよなぁ……」
「江風。正直に話したらどう……? どうせそのうち白状しなくちゃいけないんだから」
「そうなンだけどさぁ……」

それで頭をポリポリと掻く江風。
だけど少ししてとうとう白状する気になったのか溜息を吐いた後に、

「ちょっと山風とな、時雨姉についての論争が巻き起こっちまって……」

ここで時雨と来たか。
江風と山風は、いやだいたいの白露型は時雨の事を慕っている。
だてに佐世保の時雨とは言われていないから時雨に関しては信者が多いイメージなんだよな。

「それでどんな論争が巻き起こったんだ……?」

先が読めるだけに少し疲れた感じの私の声の覇気のなさに江風は不満そうに表情をムスッとさせるけどそれを我慢したのか語りだす。

「そのな……江風と山風のどっちがどれだけ時雨姉の事が好きかで勝負していたんだ」
「ああ。……やっぱりか」
「提督も予想されていたんですね。はぁー……」

それで海風とともに溜息を吐く私がそこにはいた。

「なンだよー! 別にいいじゃンか! 実際白露型のみんなだって時雨姉の事が好きだろう!?」
「まぁ、そこは否定しませんけどね」

海風も少し頬を赤くさせながらそこには肯定していた。
やっぱり姉妹同士だと似ている感情があるのだろうな。

「それでなンだけど……話がヒートアップしちまっていつの間にか山風が涙目になっちまってて『もう! 江風なんて知らないんだから!』……って言って部屋に閉じこもっちまったんだよな」

あー、容易く想像ができる私の想像力が逞しいのか?
しかしそれだと私の手にも余る案件だと思うけどな。
まぁ、頼られたんだから役には立ちたいよな。

「わかった。まぁ結局は喧嘩だけど喧嘩両成敗で二人にはあとで反省してもらうとしてとにかく山風を部屋から出すことを考えないとな」

それで江風と海風と一緒に山風の部屋へと向かいながら、

「しっかしどうする提督……? あの山風は強情だかンな。なかなか出てこないと思うンだけど」
「そこはなんとかするさ」
「提督。頼りにしていますよ」

それで山風の部屋の前に到着する。
そしてノックをすること数秒して、

『…………誰?』
「提督だ。山風、少し話をしないか……?」
『やだ……今はそんな気分じゃない……』

うん。分かっていたけど今の山風の精神状態はまるで頭を隠す亀だな。

「そう言わずに。今ならもれなく間宮に誘ってやるぞ」
「うっわ。間宮で釣るか。提督もなかなかずる賢い……」
「黙っていなさい江風」
『江風がそこにいるの……?』
「ああ。江風は山風と仲直りしたいって言うから許してやったらどうだ……?」
『それもやだ……あたしの方が時雨姉の事が好きだもん……』
「うん。それに関しては否定はしないよ。だけどさ、私は思うんだ」
『なにを……?』
「ああ。人好きの度合いなんて人それぞれだから比べるまでもないと思うんだ。好きなら好きでその気持ちをしっかりと通せばいいじゃないか? その山風の気持ちは嘘じゃないんだろう……?」
『……うん。時雨姉の事が好きなのは誰にも負けないつもり……』
「それならこうして部屋に閉じこもっていないで堂々と時雨の事が好きだと江風に言ってやればいいじゃないか」
『でも、絶対江風はバカにしてくる……』
「いやいや! そこはバカにはしないって!」

そこで話を聞いていた江風が思わずツッコミを入れる。

「江風だって山風に負けないくらい時雨姉の事が好きなつもりなンだ。だからさ……山風にも提督が言ったように正直に気持ちをぶつけてきてほしい」
『江風……』
「だからさ。出て来いよ?」
『うん……わかった』

それで山風は扉を開けて外に出てきた。
それで海風も嬉しかったのか山風に抱きついていた。

「よかったわ。山風、もう江風と喧嘩しちゃだめだからね?」
「……うん。海風姉、わかった」
「うんうん。よかった。これで私のお役は御免かな?」
「ン。ありがとな提督。少しは役に立ってくれてあンがとな」
「はは。それならよかった。それじゃ私はちょっと野暮用があるんで先に行かせてもらうよ。もう喧嘩するなよ」
「わかってるって!」
「うん……我慢する。提督も、ありがとう……」

それで和気あいあいな空気の三人を見ながらもその場を後にして少しして曲がり角を真っすぐ通る際に、

「……愛されているな、時雨」

私はそう独り言のように呟いた。
そのまま通り過ぎる背後で小さい声で、

「気づいていたのかい……? 恥ずかしいな……。でもありがとう。提督……」

という時雨の言葉が聞こえてきたが気づかないふりをしてやってあげた。
これも優しさだよな。


 
 

 
後書き
最後にこっそり聞いていた時雨を出しました。
時雨は白露型の中ではみんなに愛され系だと思うんですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0082話『記念の準備と榛名との関係』

 
前書き
更新します。 

 



……―――私はとある理由でもう今日の工廠の任務は一通り終わっているのだけど工廠へと訪れていた。
工廠の扉を開けて中を確認する。
今は稼動していないのかどこか静かなままだ。

「明石ー? いるかー?」

それで私は明石がいるかを大声を上げて確認をとる。
するとしばらくして工廠の奥の方から「はいはーい! いますよー!」という声が響いてきた。
よかった。明石はいたか……。
まぁ、大体明石が工廠にいるのは当たり前なんだけどな。
酒保にいくとアイテム屋で店番をしていることもあるから瞬間移動をしているのでは……?と少し勘ぐってしまうからな、たまに。
そして明石が作業服のまま顔を出してきた。

「待たせましたか? 提督」
「いや、大丈夫だ」
「そうですか。それで用件はなんでしょうか? 装備の改修ならすぐに取りかかれますよ?」
「あ、いや……今日はちょっと違う用事だ」
「なんでしょうか……?」

それで明石は興味を持ったのかずいっと顔を近づけてきた。
や、その無自覚の無邪気な行為は私の精神を削るから控えてほしいな……。
それで少し工廠の匂いと一緒に漂ってくる明石の特有のいい匂いを我慢しながらもとあることを相談する。

「ちょっとした相談なんだけど、いいかな……?」
「内容によりますね。どんなことか言ってみてください」
「それは―――……」

それでしばらく明石と話し合いをしていてああでもないこうでもないと話は二転三転しながらもようやく落ち着きを見せたのか、

「ふぅ……わかりました。ですが、そうですか。もうすぐあれの日なんですね」
「ああ。だから少し手の凝った事をしたいと思ってな」
「わかりました。あの子の事ですからきっと喜びますよ……?」
「そうか? そうならいいんだけどな……」

それで私はとある子の喜ぶ顔を想像して、そしてすぐに計画を実行するために準備に取り掛かろうと思う。

「それじゃ明石。そちらの準備はお願いな」
「はい。お任せください」

それで私は工廠を後にして執務室に戻ろうと考えていた。
そこに榛名が表に出てくる。

《きっとあの子も喜ぶと思いますよ提督》
「そうだな。そうだといいんだけど……だけどまだ明石以外にはその日の事は誰にも教えていないからなぁ……それにいざやるとして私もやりたいって子が出てこなくもないし……」
《ふふっ。そこは提督の腕の見せ所ですよ。榛名も……やりたいですから》
「榛名……」

それで榛名との記念の日の事を想う。
きっと、榛名も我慢している事があるだろう。
それが特にあるのはやはり触れ合いが出来ない事だ。
榛名にだってしたいことはあるだろう。
だけどそれを押し殺して私に体を譲ってくれている。
だからだろうか。
私は榛名にはひた隠しにしているけどいつも榛名の身体を使ってしまっていて罪悪感を感じている。
いつか、榛名にこの体を返す時が来るのだろうか……?
でもそうなると私はどうなってしまうのか……。
そしてもしそんな事が起きて私という自我が消失してしまったら残された艦娘達はどうなってしまうのか……?
いつもそんな事を暇があったら考えている。
その時だった。
実際に触れられるわけではないんだけど榛名は私の額に指を置いて、

《提督……? 今何か暗い事を考えていましたよね?》
「………」
《だんまりは肯定と判断しますよ》
「すまない……」
《謝る事はありません。おそらく提督は私の今の現状を変えられない事に対して苦しんでいたんですよね》
「ああ……。私は、できるなら榛名にこの体を返したいと何度も思っている。だけど……同時に怖いんだ」
《怖い、ですか……?》
「ああ。もし榛名にこの体を返す事が出来たとしてそうしたら私の意識はどこにいくのだろうな……と。
そんな誰にも理解してもらえない悩みがあるんだ」

私は隠していることを一つ榛名に開示した。
これで榛名との関係は壊れるとは思っていないけど、だけど榛名の心に闇を抱えさせてしまうかもしれない。
もしそうなったら私は申し訳が立たない。
そんな時に榛名は安心するような笑みを浮かべて、

《大丈夫ですよ……提督は消えません。私も、今のままでもいいと思っているんです。
だって、提督の事をいつでも感じることが出来るんですから……慕っている金剛お姉さま達には悪いですけどこれだけは榛名の独り占めの特権なんです》

そう言って榛名は意地悪い笑みを浮かべながら舌を出して場を濁していた。
榛名はそれでいいかもしれないけど……。
だけど私は……ッ!
でもそんな私の葛藤も分かっているようで、

《知っています……。提督が前からその件に関して苦しんでいた事は。だけどいいんです。
さっきも言いましたけど私は提督の為ならこの体は素直に差し出します。
もし私の身体から提督がいなくなってしまって消えてしまったら私はきっと自身を許せなくなりますから》

そして今度はすまなそうな表情を浮かべる榛名。
その表情だけでもう私は押し黙る他なかった。
悩みは尽きないけど、榛名も承知しているなら私だけがうじうじしていたらダメだよな。

「すまない、榛名。いらん心配をさせたな」
《いえ、榛名は大丈夫です》
「だけど約束させてくれ。いつか榛名を自由にさせてやりたいという思いは私の本心だ。だからそのためならどんな苦労も厭わない。だって、私は榛名の事がす、好きだから……」
《て、提督……榛名、嬉しいです》

思わず告白してしまったけどそれで榛名は嬉しいのか涙を零していながらも笑顔を浮かべていた。

「だから何度も言ったと思うけど榛名がやりたいことはなんでも言ってくれ。できるだけ叶えたいと思っているんだから」
《はい……。榛名、提督のそのお気持ちだけでも嬉しいです。いつか、そういつか私の我儘に付き合ってくださいね……?》
「任せろ。榛名は一回溜まっている物を吐き出した方がいいんだ。いつも私のせいで我慢させてしまっているんだから」
《はい!》

それで榛名は笑顔を浮かべながらも私に抱きついてきた。
榛名は透明な姿だけど私限定では触れられるというけど、だけど私からはその抱きつきの感触は感じられないけど、気のせいかな? 榛名の温もりを感じられたような気がした……。


 
 

 
後書き
前半の内容は数日後に話に書きます。
そして後半は榛名との素直なやり取りを書いていました。
この関係はとある日に一気に激変するかと思いますけどまだその時じゃないんですよねぇ。
来月の終わり頃まで引っ張るつもりです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0083話『記念日の前日に動き出す者達』

 
前書き
更新します。 

 




私は明日にある子の祝いをするためにとある二人を探していた。
その二人というのは照月に初月だ。
なぜこの二人なのかというと明日の関係で必要な二人なのだ。
それで探していると食堂の方で二人の後姿が見つかった。
よかった……。どうやらあの子は一緒にはいないようだ。
それで声をかけることにした。

「照月に初月。ちょっといいか……?」
「あれ? どうしたんですか提督……?」
「ボク達になにか用かい……?」
「ああ。ちょっと明日の事で話し合おうと思ってな」

すると照月が少し嬉しそうな顔をして、

「ちょうどよかったです! 私達も明日の事で話し合っていたところなんですよ!」
「そうなのか……?」
「ああ。明日は秋月姉さんの進水日だからな。なにかプレゼントにするものを考えていたところなんだ」
「そうか……」

そう、明日は秋月の進水日の日なのだ。
それで二人も色々と準備をしようと色々と考えているんだろうな。
私と一緒だな。

「それだったら私も一緒に考えさせてもらえないか……?」
「えっ? いいんですか?」
「ああ。明日は秋月の進水日以外にも特別な日でもあるからな」
「……ああ。そういえば明日は秋月姉さんの進水日と一緒に秋月姉さんが提督とケッコンカッコカリをした日だったな」
「あっ! そうだったね! 初月、よく覚えていたね!」
「まぁ……」

初月はどうやら覚えていたようで少し複雑な表情を浮かべている。
秋月のことが姉として好きな二人としては心境は複雑怪奇なものなんだろうな。
だけどまだもう一つとある事があるんだ。

「それもだけどもう一つ特別な日なんだ」
「……? 秋月姉の進水日とケッコンカッコカリ以外になにかあるんですか?」
「ああ。当時はちょうどというのも言葉が悪いけど、まだ私はその時は秋月の進水日の日の事を知らなかったんだ。その事を知ったのはカッコカリした後の事さ」
「そうだったのかい……?」
「うん。それでだけどその日は私の特別な日でもあるんだ」
「それって……?」

照月が首を傾げながら聞いてくる。
二人になら話してもいいだろう。

「ああ。明日は私の誕生日の日でもあるんだ」

その事を話した瞬間、どこからか鋭い視線を感じた気がしたけどきっと気のせいだ。

「そうだったんですか!? うわー、それじゃ明日は本当におめでたい日なんですねー!」
「ああ。照月姉さんの言う通りだな。しかしその件は初耳だったな」
「まぁ、な。今年にこの世界に来てから表だって話したのは榛名と明石だけだったからな」
「……ちなみに提督はそれでおいくつになられたんですか……?」
「それは内緒にしておく……今はもう年齢という概念がないからなぁ」

そう、榛名の身体に宿った事で轟沈でもしない限りは半不老の身になったから年齢の事に関してはないに等しいのが現状なんだよな。
私の本当の年齢を知っているのは今は榛名だけだ。

「そうか……。聞けないのは残念だが、そうだな。それじゃ明日は秋月姉さんと一緒に祝ってやろう」
「そうだね、初月!」
「二人ともありがとう。それで話は戻るんだけど今私の方は明石に秋月へのプレゼントとしてあるものを製作してもらっているんだ」
「それはどんなのだい……?」
「それは明日までのお楽しみという事で」
「うん。わかったよ提督ぅ! だったら明日はみんなでどこかに出かけないかな?」
「それもいいけど私達がいない間に鎮守府が深海棲艦に襲撃されるかもしれない危険性もあるからなにかと不便で空けるわけにはいかない。だから間宮さんに貸し切りで予約を取っておくよ。時間は明日の夜で大丈夫か……?」
「私は大丈夫です!」
「ボクも大丈夫だ」
「それじゃそれまでに二人もなにか秋月に渡すものを考えておくんだな。酒保にでもいけばなにか見つかるだろうしな。最悪明日の午前中に私の付き添いで町に付き合っても構わない」
「いいんですか!? いひひ……提督ありがとう!」
「ボクもなにか酒保ではプレゼント選びには物足りなかったから提督が付き合ってくれるのならちょうどいいと思う」
「よし。それじゃ明日は町へと買い物に行くとするか」
「わかりました!」
「了解だ」

それで話は決まったので私達はそれぞれ秋月への誘いなども計画して準備をすることになった。







そんな話をしていた三人だったがそれを密かに隠れて聞いていた人物が一人。

「青葉、聞いちゃいました! ふふふ、これはいいネタですね。
まさか明日が司令官の誕生日だったとは……情報不足でした。
もっとこの世界に来てから司令官のあれこれを聞いておくべきでした。
青葉、痛恨の極みです」

青葉が一人で唸っていた。
そして、

「さて、こうしちゃいられませんね! こんなおいしい話はすぐに広めないと旬じゃなくなってしまいますぅ! 過ぎちゃう前に徹底的に司令官をみんなでお祝いを致しましょうか! くふふ……」

そして青葉は自室へと入っていき、艦娘内での秘密のやり取りを執り行って各艦娘達に情報を流していくのであった。
少しして全員に行き渡ったのだろう事を確認した青葉は各自の内線で話し合いを始めていた。
鳳翔や料理好きの子達などは特に乗り気で豪華な料理を作るという話が伝わってきて青葉は思わずほくそ笑む。
これは司令官に恩を売る絶好のチャンスなのではないかと……ッ!?
そんな邪まな考えをしているけど一方で素直に司令官の事を祝ってあげようという気持ちもあるのだ。
だから、

「秋月さんには悪いですけど青葉たちは司令官を中心に祝わせてもらいますね。
もちろん秋月さんの事も祝いますけどね……」

それで青葉は相変わらず鳴る無線機を片手に計画を練っていくのであった。








そしてとうのなにも聞かされていない秋月だけは鎮守府に漂う不穏な空気に敏感に反応していたのか、

「……なにやら鎮守府の空気が淀んでいますね。なにかが起こる前触れでしょうか……?」

自身の進水日の事を忘れているらしくこの空気に、だけど疑問しか浮かべられない少し残念な秋月だった。
果たして秋月に、そして提督に対してのサプライズは成功と相成るのかは明日になってみないと分からない……。
だけど鎮守府中の艦娘の思いは一つの事に集束していた。
明日はいい日にしようと……。


 
 

 
後書き
明日はリアルに私の誕生日でそして秋月とのケッコンカッコカリ記念日でもあります。
その日が秋月の進水日だとも知ったのは本当に後の事でした。
偶然って時にすごいですよね……。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0084話『今日は何の日? 記念の日だよ』

 
前書き
更新します。 

 







秋月は今日という日をなにも知らされずにただただ照月と初月に午後になって、いきなり捕まって連行されていた。
どこかに案内されるのかも分からず少し不安な気持ちになっていた秋月。
それで秋月は二人に聞くことにした。

「……ね、ねぇ? 照月? 初月? 私をどこに連れて行くの? こんな目隠しまでして……」

そう、今現在秋月は照月と初月にいきなり廊下で出合い頭に捕まったと同時に目隠しをされてどこともしれない場所へと連行されていたのだ。
それで照月は少し苦笑を浮かべながらも、

「秋月姉……? ほんとうに今日は何の日か分からないの……?」
「そうだぞ秋月姉さん。そうだとすると提督も悲しむぞ?」
「どうしてそこで司令の事が出てくるの……?」

本当に分かっていないらしい秋月の反応に照月と初月の二人は鈍感な姉に対して溜息を吐きながらも、

「もう……これじゃ提督が可愛そうだよぉ」
「ふむ。まさか秋月姉さんがここまで忘れっぽい性格だとは思っていなかったな。普段はよくボク達の事を気遣ってくれるのだけどな」
「そうだよねぇ……」

それで二人はまたしても溜息を再度吐く。
さすがにそんな反応をされては秋月も少し考えないといけないなと思って悶々と今日の日の事を考え始める。
果たして何の日だっただろうか……?そう「むむぅ……」と唸り声を上げながらも考え始めても中々答えが出てこない。

「秋月姉……? もう思いつかないならそのままでいいよ? それならそれで好都合だし……」
「ま、待って! すぐ! すぐに思い出すから……ッ!」

そう秋月は粘るけどそこで初月が一言。

「もう諦めるんだな。秋月姉さん」

そう言って秋月は感触からしてなにかの椅子に座らされる。
そして次の瞬間に、

『今日はなんの日ーーーー!?』

マイクで喋っているのだろう子日の大音量の声が響いてきた。
そして一斉に周りから声が上がる。

「「「秋月の進水日と提督の誕生日の日と二人がケッコンカッコカリした日だよー!!」」」

というこの鎮守府に所属している艦娘のおそらくすべての声が轟いてきた。
それは照月と初月も呼応して一緒に言葉を発していたので近くで聞いていた秋月は、

「え、え、えぇぇえええ!?」

という驚きと同時に情けない声を上げていた。
それで照月に目隠しを外してもらいながらも、

「そういうわけで秋月姉。進水日おめでとう!」
「まぁ、そういうわけだ。おめでとう秋月姉さん」

それで改めて秋月は目隠しを外してもらった後に周りを見回すとそこはいつもの宴会場で周りには艦娘達がぎっしりと宴会場を埋め尽くしていた。
そして隣を見れば提督が笑みを浮かべながら秋月の隣に座っていた。
秋月はそんな提督の顔を見て思わず顔が火照ってしまっていて赤く染まり、

「あ、あのあの……! その、司令!」
「ん? なんだい……?」

提督はあくまでおおらかに秋月がなにかを言うのを待っているようであった。
そして秋月が出した言葉は、

「その……お誕生日、おめでとうございます……?」

気が動転していても真面目な性格が功を相してなんとか提督にお祝いの言葉を言うことが出来た。
それで提督も素直に言葉を秋月に返した。

「ありがとう秋月。そして君も進水の日だからおめでとう」
「あ、ありがとうございます!」

そして感謝の言葉を述べたのだった。







……どうやら秋月に対してはサプライズは成功したようだな。
でも本当に自分の進水日の日も忘れているとは思っていなかったな。
できることならケッコンカッコカリの日も合わせて覚えていてほしかったのが本音だ。
まぁ、秋月の慌てふためく姿が見れただけでも儲けものか。
そんな秋月の近くに瑞鶴、翔鶴、秋雲、朧が近寄ってきて、

「秋月。提督さん。色々とおめでとう」
「おめでとうございます。秋月さん、提督」
「瑞鶴さんに翔鶴さん……ありがとうございます!」
「ああ、瑞鶴に翔鶴もありがとう」

まずは瑞鶴と翔鶴の二人にお祝いの言葉をもらった。
そして続けとばかりに、

「いやー。秋雲さんとしてはこのまま提督と一緒に夜のお勤めも期待しちゃうんだけどね~」
「あ、秋雲さん! な、なにを!?」

秋雲の冗談を真に受けたのか秋月はまた顔を盛大に赤くさせてしまっていた。
それで注意しようかと思っていたが先に朧が秋雲の頭をチョップを落として、

「秋雲……? こんな祝いの席でセクハラはいけないよ?」
「ごめんごめん! だからチョップはやめてって! 痛い痛い!」

朧に何度も頭にチョップを食らっていて秋雲は痛みの声を上げていた。

「まぁ、秋雲の冗談はともかくとして……秋月、それに提督。記念日おめでとうございます」
「ありがとう、朧」
「朧先輩……秋月、とても嬉しいです!」

それでポロポロと涙を流す秋月。
感極まっていたのだろうな。
秋月は朧の事をとても先輩として尊敬しているから言葉を貰って嬉しいのだろう。
ここでさらにとどめを刺すようで悪いとは思うけど私は明石にわざわざ作ってもらったものを懐から出して、

「秋月。私からも祝いのものだ。受け取ってくれ」
「えっ、司令……?」

私は秋月の手にそれを隠すように握らせた。
そして「手を開いてごらん……」と言って秋月が手を開くのを促した。
それで秋月はおずおずと握らされたものを手を開いて見やる。
そこには『進水日おめでとう』という言葉と秋月の艦時代の艦首の部分が描かれていた鉄製のワッペンが握られている。

「司令……ッ! これって……!」
「ああ。私ではこんなに細かいものは作れないから明石に頼んだんだが……どうだい? 気に入ってもらえたか?」
「はい! 司令、ありがとうございます! 秋月、とても嬉しいです! 大事にしますね!!」

そう言って秋月はその鉄製のワッペンを大事そうに握りしめて胸に持っていき包み込むようにして目を瞑っていた。
相当嬉しいらしくやっぱり涙を流す秋月の姿があった。
そしてしばらく経って、秋月は少しすまなそうな表情になり、

「司令……すみません。秋月、今日が司令のお誕生日などと知らなくてなにも用意できません。ふがいない私を許してください……」

そう言って秋月は頭を下げる。
そんな秋月の頭に私は手を置いて、

「気にするな。私も教えてなかったのが悪いんだから……」
「はい……」
「ほら。こんな祝いの席で暗い顔はもうなしだ。というわけだ。こんな私にも隠して宴会場なんて用意していた青葉含めてみんな……ありがとうな!!」
「いえっ! 青葉もお役に立てて嬉しいです!」

そう言って久しくお役に立てたのか青葉が笑顔で敬礼をしてきていた。
そして今度は金剛が立ち上がり、

「ヘーイ! テイトクゥ! 今度からは事前に準備しますカラ来年も楽しみにしてるネー!」
「わかった……。だったら来年までまたみんなで一人も欠けずに生き残ろう!」

そう言って私の言葉の後に宴会が始まってみんなはそれぞれ楽しんでいた。
結局はみんなは楽しめる事があればとことん楽しもうという魂胆なんだよな……。
後の経費が怖いけど……こんな日もあってもいいだろう。
そして少しお酒を飲んだ後に風に当たりに外に出ていき、

《提督……。改めて、お誕生日おめでとうございます》
「ありがとう榛名」

榛名にそう言われたのでまた感謝の言葉を返した。

《いえ……ですが一つ心残りがあるとすればみなさんはなにかしら提督にプレゼントを用意していたのに私はこんなですからなにも用意できないのが悔しいです》
「そんなことか。気にするな……って言っても無理か。だったらこれからも一緒に生きていこう」
《はい! 榛名はいつまでも提督と一緒にいます!》

そんな会話をしていると後ろから「提督ー!」というみんなに呼ばれる声が聞こえてきたので、

「さて、それじゃ戻るか。まだまだ楽しまないとな」
《はい。お付き合いしますね》

そんな感じで夜も更けていった。


 
 

 
後書き
こんな感じでお誕生日回も消化しました。
いつまでやっていけるか分かりませんが来年まで続けられるように頑張りたいものですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0085話『阿武隈の憂鬱』

 
前書き
更新します。 

 




……先日に提督と秋月ちゃんの盛大なお祝い事でパーティーが開かれました。
それであたしも今日はとある人へとプレゼントを上げようかなと考えているんです、はい。
でもその相手がとても厄介なんです……。
そう、あたしがプレゼントを贈ろうとしている相手は今日が進水日の北上さんなんです。
昨日の件で感化されたわけじゃないけどたまにはいつもお世話になっている北上さんになにかあげられればいいなと思っていたりします。
だけどそう簡単にはいかないのが世の常と言いますか……問題がありましてぇ……。
それで思わずあたしは窓から今北上さんがいる場所へと目を向ける。
そこには、

「北上さん、はいプレゼントです!」
「おー……ありがと、大井っち。でもよくアタシの進水日が今日だって知ってたね?」
「当然のことです。この私が大好きな北上さんの記念の日を忘れるわけがありません!」
「んー……そっか。とにかくありがとね」
「はい!」

それで大井さんは満面の笑顔を北上さんに向けています。
北上さんも満更でもないようで大井さんと一緒に笑顔を浮かべあっています。
普段はあんまり笑わない北上さんですけどこういう時は素直に笑うんですよね……。
少し卑怯かも……。
まぁ、そういう訳で北上さんにプレゼントを渡すには大井さんという壁を突破しないといけないんです。
相手はとてもではないですけどあたしには敵わなそうな強敵です。
だからどうしたものかと考えている時でした。

「……おい、どうした阿武隈?」
「あ、木曾さん……」

そこであたしの様子がおかしい事に通りかかったついでに気づいてくれたのか木曾さんが話しかけてきてくれました。
うーん……? これはもしかしてチャンスなのかもしれません。

「木曾さん。少し相談に乗ってもらってもいいですか……?」
「お、おう……。どうしたんだ?」

あたしが急に迫ってきたのを驚いたのかどこかのけ反っている木曾さんですけどどうにか話を聞いてくれるようです。
そして普段鈍感そうな木曾さんだけどあたしが窓の外を見ていたのを見ていたのか木曾さんも窓の外を覗いて、

「北上姉さんに大井姉さん……? あー、なるほど。阿武隈、もしかしてお前……」

そこで木曾さんはすぐにあたしの相談したいことが分かったのか少し意地の悪い笑みを浮かべる。
うー……こういう時に限って察しがいいですね。

「多分木曾さんの思っている通り、北上さんにどうやってプレゼントを渡せばいいかと悩んでいたんです」
「なぁるほど……まぁ真正面から渡せれば世話はないけど大井姉さんがいるからな」
「そうなんですよ! あの人がいるから北上さんにプレゼントを渡せないんですよぉ!」

それであたしはつい興奮してしまい木曾さんの事を肩を掴んで揺すってしまいました。

「おおお、落ち着け阿武隈。わかった、俺がなんとか考えてやるから!」
「本当ですか!?」
「ああ。ちょうどこの話題は球磨姉さんと多摩姉さんともしていたからな。ちょうどいいしな。ちょっと付き合え、阿武隈」

木曾さんに付き合えと言われたのであたしは正直に木曾さんに着いていくことにしました。
そしてやってきたのは……、

「ここって……球磨ちゃんの部屋だよね?」
「そうだぞ。今頃は多摩姉さんも一緒にいるだろうから一緒に話し合おうじゃないか」

それで木曾さんは扉をノックする。
中から、

『合言葉を言うクマ』
「球磨型は最強……」
『よし、入るクマ』

そんな、なんか面白いやり取りを木曾さんと球磨ちゃんがしながらも木曾さんは扉を開けてあたしを球磨ちゃんの部屋の中へと招き入れてくれました。
そこには木曾さんが言っていた通りに多摩ちゃんも一緒にいて寛いでいました。

「木曾。よく来たクマ」
「待ってたにゃ木曾。おりょ……? 阿武隈の姿があるにゃ……?」
「ああ。阿武隈が俺たちと同じく北上姉さんにプレゼントを渡したいんだとさ。それでちょうどよかったから連れてきたんだ」
「そうかクマ。まぁいいクマ。阿武隈なら特別に許してやるクマ」
「ありがとう、球磨ちゃん……」
「いいクマ。これも軽巡仲間のよしみだからクマ」
「そうニャ」

それで球磨ちゃんと多摩ちゃんに許しをもらって北上さんの進水日のお祝いをすることになりました。

「ちなみに阿武隈はもうプレゼントは用意してあるクマ……?」
「あ、はい。……でもそうなるともう大井さんはプレゼントを渡していましたけど、そこのところはどーなんでしょう……?」
「なにクマッ!?」
「本当にゃ!?」

それで球磨ちゃんと多摩ちゃんは驚愕の表情をした後に、

「……大井に先を越されたクマ」
「うむ。大井には事前に伝えておけばよかったにゃ……」

その二人の反応におそらくだけど大井さんはフライングで渡してしまったのだと悟りました。
それで二人は木曾さんとともに少し諦めた表情になって、

「まぁ……大井についてはもう諦めるクマ」
「そうだにゃ」
「ああ。大井姉さんは言っても止まらないからな。俺達だけでも通常通りにお祝いの準備をしておくとするか……」

そして三人は疲れ切った表情でため息をついていました。
うーん……ここでも大井さんは少し問題児なんですねぇ……。

「それじゃ気を取り直して二人が来るまでに準備をしておこうクマ」
「そうだにゃ。木曾、阿武隈も手伝うにゃ」
「わかった、姉さん」
「わかりました」

それで四人で部屋の飾り付けなどをして事前にケーキも用意していたのかテーブルの中心に置かれました。
そして二人が入ってくる頃合いを見てクラッカーなども準備して待っていると、

『球磨姉さん。北上さんを連れてきました』
「わかったクマ」
『大井っち? 球磨姉さんの部屋でなにをするのさ……?』
『ふふ。先ほどの続きですよ北上さん』
『ふーん……?』

それで扉が開かれたと同時に、あたし達はクラッカーを打ち鳴らしました。
それで驚いている北上さんの表情が見れました。
普段は達観したような顔をしていますからどこか新鮮です。

「北上! 進水日おめでとうクマ! お姉ちゃんも嬉しいぞクマ!」
「多摩も鼻が高いにゃ!」
「北上姉さん、おめでとう」
「えっと……北上さん。進水日おめでとうございます……」

少し三人に出遅れながらもあたしもお祝いの言葉を言いました。

「球磨姉さんとかは別に分かるんだけど……なんで阿武隈がいんの……?」
「べ、べつにいいじゃないですかぁ! あたしも北上さんの事を祝いたかったんですよー! はい!!」

そのままの勢いであたしはプレゼント箱を北上さんに渡しました。

「まぁ、ありがと……? 受け取っておくよ」
「球磨も用意しているクマ」
「抜かりはないにゃ」
「ああ。俺からもあるぞ、受け取ってくれ姉さん」

あたしに続いて三人も渡していました。
それで北上さんは普段しないような優しい表情になって、

「なんだか知らないけど……色々とありがとね、みんな」
「さあさ! 北上、さっさと立っていないで座るクマ。ケーキも用意してあるクマよ」
「ちなみにケーキは俺が作った。球磨姉さんが作ると科学変異が起こって食えたものじゃないからな」
「木曾……そういうのは本人がいないところで言えにゃ。後で球磨に叱ってもらうにゃ」
「すみませんでした……」

そんなやり取りをしながらも北上さんの進水日の会は意外に静かに行われていきました。
そしてそんな北上さんはあたしの前髪をわざといじりながらも、

「阿武隈もありがとね」
「もう……あたしの前髪を自由にいじらせるのは今回だけですよ?」
「はいはい~」

それで北上さんはあたしが顔が赤くなっているのを承知でいじり続けていました。
大井さんの睨みが怖かったけど我慢です。


 
 

 
後書き
進水日のお祝いは特別提督に関係していなければそれぞれの艦娘同士が小さい規模でそれぞれ開いている感じです。
さすがに毎日誰かの進水日騒ぎをしていたら経費がとんでもないことになりますからね。

ちなみにうちには阿武隈改二は二人いますがもう一人は別の事をやっているという感じです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0086話『台風前の収穫』

 
前書き
更新します。 

 





昨日に阿武隈が北上達と一緒に北上の進水日を祝っていた間に農作業連合(私、武蔵、天龍、瑞穂、神威、そして最近加入した清霜)は今日の台風の準備に備えて兼ねてから育てていた農作物の収穫をしていた。
なんせ台風が来るんだからせっかく育てた野菜たちが流されかねないからな。
それで急いで収穫をしていた。

「武蔵! そっちのきゅうりとトマトを頼む!」
「任されたぞ!」
「天龍はそっちのナスをお願い!」
「あいよ!」
「その……提督。梅雨に植えた種とかなどはどうしましょうか……? まだ芽を出したばかりですので……」
「はい。台風で流されないか心配です」

私が色々と指示を出していると瑞穂と神威が心配そうに梅雨に植えた野菜のことを心配していた。
まだこれらは収穫するには芽を出したばかりだから早いからな。
不安になるのも分かる。

「そうだな。一応なにかシートをかけて様子を見るしかないだろうな。
まだ芽を出したばかりだから折れるとかいう心配はないだろうし……」
「そうですね……わかりました。この子達の耐久力に期待します。神威さん、シートを持ってきてください」
「わかりました、瑞穂さん」

それで神威がシートを取りに行こうとした時に、

「神威さん! シートなら清霜が持ってくるよ! ちょっと待っててね!」

そう言って清霜が元気にシートのある方へと向かって駆けて行った。



それを収穫の片手間に見ながらも、

「しかし……清霜はえらいな。他の子達はたまに手伝いに来る事もあるけど私達のように本格的に参加はしないというのに清霜だけは積極的に手伝いに来るからな」

私がそう話すとそこで武蔵が実にいい笑みを浮かべながら、

「そうだろう。清霜には私からあることを吹き込んでおいたんだ。聞きたいか……?」
「いや、なんとなく分かるような気がするんだけど言い出したら聞かせたいんだろう……?」
「うむ。戦艦になるための特訓と言っておいた」
「うっわ……武蔵の姐御もなかなか酷いっすね。もう何度も言われている事だけど駆逐艦の清霜が戦艦になれるわけないじゃないっすか」

そこで天龍が苦笑いを浮かべながらそう言う。
だけど武蔵は少し真剣な表情になって、

「そんな事を言うなよ天龍。清霜はあれで本気で戦艦になろうと日夜特訓を私としているんだ。その清霜の心意気だけでも買ってあげたいじゃないか」
「清霜さんの気持ち……瑞穂、少し分かります。瑞穂も何度かはせめて軽空母になりたいという夢を見たことはあります。でも以前に提督に言われたんです」

うん……?
前に瑞穂に言った事か。
そう、確かあれは……、
私が後少しで思い出そうとしている前に瑞穂がその内容を言った。

「提督はこう言いました。
『瑞穂、いいかい? 水上機母艦にもいいところはたくさんある。だから自身の力を卑下しないで誇りに思ってこれからも頑張ってくれ』……と」
「提督……とても良い事を言いましたね。神威も瑞穂さんの気持ちになって嬉しく思います」
「あはは……。そう言えばそんな事を言ったな」
「まぁ、そのあとの言葉で少し台無しにもなっていたんですけどね……」
「ほう……? どんなことを言ったんだ? 少し興味あるな」
「俺も俺も!」

それで全員が私を見てくる。
存外に言えと言う眼差しであった。

「はぁー……仕方がないな。ただ水上機母艦としては少し不安が残る秋津洲がいるから同じ水上機母艦として彼女の事も気遣ってほしいというお願いを瑞穂にしたんだ」
「「「確かに……」」」

全員が秋津洲の運用を考えると困りもんだなと思っているのだろう、何度も頷いている。

「まぁ、その分は可愛さと料理の手際の良さにステータスを全振りしているからな。秋津洲は……」
「そうかもなー。秋津洲って家事能力は鹿島と同様にかなり高いからな」

それで天龍は思い出しているのだろう。
お料理教室のメンバーに鹿島と秋津洲が入っているのを。

「それでも最近は色々と装備できるものも増えてきて役立っているんだけどな。
……っと、そうだな。こんな無駄じゃないけど話をしていると収穫が遅れてしまうな。急ごうか」
「「「了解」」」

それで収穫作業を再開する。
そこに清霜がシートを持ってきた。

「司令官! シートを持ってきたわよ!」
「ありがとう清霜。清霜はこの中では一番体力がないんだから少し休んでていてもいいぞ? 水分補給をしてきなさい」
「うん、わかったわ!」

それで清霜は木陰に入っていってドリンクを飲んでいる。
うん、素直でよろしい。
その後、私たちも休憩を交代しながらやっていってもう出来上がっているものは大体収穫できたので荷台に全部載せたあとに間宮さんのところへと向かった。
甘味処間宮へと到着してドアを開けて、

「間宮さーん! 少しいいかな!」
「はーい! 少しお待ちください! 伊良湖ちゃん、配膳はお願いね」
「わかりました、間宮さん」

間宮さんが伊良湖ちゃんとそんなやり取りをしながらもパタパタと小走りで玄関までやってきた。

「提督。それにみなさんもどうしました? 私になにかご用でしょうか?」
「うん。ちょっと外に出てもらっていいかな? 新鮮な野菜が収穫出来たんで持ってきたんです」
「まぁ! とても素敵ですね。ぜひ頂いてもよろしいでしょうか!」
「ああ。そのために持ってきたからな」
「それでですが他にはどこに持っていくのですか……?」
「うん。鳳翔さんの居酒屋のところと萩風とか秋津洲がいるお料理教室に持っていこうと思っているんだ。そして残った分は食糧庫に保存の形でいこうと考えているんだ」
「そうなんですか。彼女達もきっと喜びますね。提督、ありがとうございます!」
「喜んでもらえたならよかったよ。な、みんな」
「うむ」
「おう!」
「はい!」
「やりがいがありました!」
「やったね!」

みんなから言葉を貰って甘味処を後にした後に鳳翔さんのところやお料理教室などへと持っていき、その度に感謝の言葉をもらったので少し嬉しい気持ちになってくる。

「なぁみんな。少しいいか?」
「なんだ……? まぁ提督のその顔だ。おそらく野菜作りで感謝の言葉をもらえるのに味を占めたのだろう?」
「ああ。だからこれからもみんなで野菜作りを頑張っていこうか。できればもう少し仲間も増やしたいところだし」
「わかったぜ。あとで龍田にも聞いてみるよ」
「きっと秋津洲さんも手伝ってくれると思います」
「速吸さんもきっと話に乗ってくれると思いますよ」
「そうだな。大和も誘ってみるか」
「清霜は夕雲姉さん達も誘ってみるね」
「勧誘は任せる。だけど無理強いだけはだめだぞ?」

それで五人とも「分かってます」と答えてくれたのでよかった。
まぁそんな感じで初めての野菜作りはなんとか台風前に収穫出来て成功を収めたのであった。






……ちなみにこれは昨日の事だ。
今はもう台風が直撃していて外は大荒れである。
昨日に収穫しておいて本当によかったと本気で思った。

《提督……昨日に収穫しておいて本当によかったですね》
「ああ榛名。これは確かにひどい台風だ。窓がミシミシ言っているからな……」

榛名とそんな話をしながら本日の執務をしているのであった。 
 

 
後書き
野菜の収穫回でした。
今後も野菜作りの話は続けていこうと思っています。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0087話『清霜のお誘いチャレンジ』

 
前書き
更新します。 

 



わたし、清霜はお姉様たちを司令官がやっている畑仕事に誘おうと思っているの。
だけどまずはじめにやりそうな朝霜姉さんに話を振ってみたんだけど、

「えー……なんか嫌だなぁ」
「どうして……? 朝霜姉さん?」
「だってなんか大変そうじゃん? ……まぁ、たまには付き合ってもいいけどさ」
「そっかー……残念」

それで朝霜姉さんの勧誘は諦めて次に行くことにした。
次のターゲットはずばり長波姉さんに高波姉さん。
あの二人はだいたいいつも一緒にいるから探す手間が省けるんだよね。
それで探すこと十分くらい。
いろいろな人に行き先を聞きながら探しているとようやく二人が廊下を歩いているのを発見した。
清霜、突撃します!

「長波姉さんに高波姉さん! ちょっといい!?」

二人を呼び止めて駆け寄る。
まず長波姉さんが口を開いた。

「おー。清霜どしたー? あたし達になんか用か……?」
「長波姉様はともかくわたしにもなにかご用かも……?」
「うん。ねぇねぇねぇ! 二人とも畑仕事って興味あるかな!?」
「いきなりだな。まぁ、無くはない、かな……? 提督が最近になって料理にも手を出し始めたんでならチャーハンを作ってよって注文してるんだ。
だからチャーハンの具のネギとか作ってみたいかな……?」
「ネギかぁー……そういえば司令官の今後作る予定の野菜リストにネギもあったと思うの」

わたしがそう言うと長波姉さんは目を光らせて、

「へぇー……? 提督も本気で畑仕事にのめり込んできたか」
「よかったですね。長波姉様」
「だとすると清霜の言い回しだと提督がやっている畑仕事の勧誘に来たんだな?」
「うん、そう! それでどうかな……? 長波姉さん?」

わたしがそう言って長波姉さんに懇願するように手を合わせてお願いしたんだけど。

「うっ……清霜のお願いアピールか。無自覚でやってくるからあんまり耐性がないんだよな」
「高波もです。清霜の純粋な眼差しはさすがに堪えるかもです。どうしましょう、長波姉様……?」
「んー……そうだなぁ。まぁやってみるのもありかもしんないな。意外と楽しそうだし」
「本当!? 長波姉さん!」

それでわたしは喜ぶんだけど、

「だけど条件付きで頼みたいな。どうせ提督には無理に誘わなくてもいいとか言われてんだろ……?」

さすが長波姉さん……。司令官の事をよくわかってらっしゃる。
それでわたしは素直に頷くことにした。
そしたら、

「やっぱりなぁ。提督は優しいからあたし達の時間も優先対象にしてくれるんだよな。
ま、そんなわけだから清霜。今度いつ畑仕事をするか日付をあとで教えてくれよ。それで都合がよかったら参加してあげるから。高波もそれでいいよな?」
「長波姉様がそう言うのでしたら高波も異論はないかもです」
「うん! それでもいいよ。無理強いはよくないって司令官も言っていたもんね。だから参加したかったらいつでも来てね!」
「わかったよ」
「はいかも」
「それじゃ他の姉様達にも話をしてくるわね!」

それでわたしはまた他の姉さん達を探しに行く。
背後で長波姉さんと高波姉さんが微笑ましい笑みを浮かべていたけど、気にしなくてもいいよね。
そして次に発見したのは藤波姉さんと沖波姉さんだった。

「藤波姉さんに沖波姉さん! ちょっといいかな!?」
「ん? どした? 清ちん?」
「どうしました? 清霜さん」
「うん」

それで長波姉さん達に話した内容を二人に伝えてみた。
朝霜姉さんみたいに断られる可能性も一応考えておかないとね。
藤波姉さんと沖波姉さんは重労働は苦手な方だし。
それで少し考え込んでいる二人。
少しして、

「……ごめん、清ちん。参加したいのは山々なんだけどちょっと沖ちんと色々と今している事があるから……だからゴメン」
「ごめんね清霜さん」

そう言って藤波姉さんと沖波姉さんは手を合わせて謝ってきました。
だけどやっぱり無理強いはいけないなと思って、

「ううん。いいよ。無理強いはよくないからね」
「ホントゴメン。この埋め合わせは今度なにかするからさ」
「ごめんね……」

それで二人はわたしに謝るとそのままそそくさとどこかへと言ってしまいました。
うーん……残念だけど。だけど二人がなにをしているのか少し興味を持った感じかな……?
さて、気を取り直して次は夕雲姉さんに巻雲姉さん、風雲姉さんを勧誘してみよう。
だけどわたし的にはこの三人は誘う前から断られるのはなんとなくわかっているんだよね。
夕雲姉さんと巻雲姉さんはお料理クラブに入っているから来られなそうだし。
………ちなみに夕雲姉さんが作る専門で巻雲姉さんは食べる専門だという。
そして風雲姉さんはなにやら秋雲さんの手伝いをしているとかで手が離せなそうだし。
ドウジンシ……? とかいう絵本を作っているとかなんとか……。
まぁ聞くだけ聞いてみようかな?
それでまずは夕雲姉さんと巻雲姉さんの部屋へと言ってみた。
そして二人はちょうど部屋にいたらしく、

「清霜さん……? 夕雲と巻雲さんになにかご用……?」
「うん。ダメもとで聞きたいんだけど二人って畑仕事って興味ない……?」
「ああ。提督がやっている事ね。興味あるわぁ。あ、清霜さん、先日はお料理クラブに野菜のお裾分けをしてくれてありがとね。助かっちゃったわ」
「ううん、大丈夫だよ。司令官も夕雲姉さんとかに感謝されるのに味を占めたらしくてこれからも精力的に畑仕事をやっていくって話だよ」
「そう……。提督にはそのうち御礼をしないといけないわね」
「司令官様も律儀ですからねー。あ、巻雲は袖が汚れるんでパスかな~?」

巻雲姉さんが夕雲姉さんの膝枕の体勢でそう答えていた。
起きていたんだね……。眠っていると思ったよ。

「清霜さん」
「はい」
「残念なんだけど提督にはお料理クラブの方を優先したいと伝えてほしいのだけど、いいかしら……?」
「うん。大丈夫よ。任せて!」

それで夕雲姉さん達の部屋を後にして多分風雲姉さんは秋雲さんの部屋にいると思うんで一回扉をノックして、

「秋雲さーん。風雲姉さんはいるー?」
『いるよー……』

中からどこかどんよりとした秋雲さんの声が聞こえてきました。

「今、話は大丈夫……?」
『ごめん……今風雲は手伝いで修羅場も相まってダウンしてるから後にしてもらってもいいかな……? あたしも期限までに仕上げないといけないんだよ』

そんな、疲れ切った声で今は話は出来なさそうだと感じたわたしは、

「そっか……。頑張ってね?」
『おうー……』

そんなやり取りをして部屋を後にした。
でも風雲姉さんがダウンするとかすごいことしているんだね。
さすがに誘うのは酷かな……?
これであらかた誘い終わったけど後一人残っているんだよね。
それでいるだろう場所へと向かってみた。
お花の手入れをしている場所があるんだけど早霜姉さんは大体いつもそこで花のお世話をしているんだよね。

「早霜姉さん。ちょっといいかな……?」
「清霜さん……? どうしたの……?」
「お花の手入れのお邪魔をしちゃってごめんね」
「大丈夫よ……それでなにか用があるんでしょ? 言ってみて……」
「うん」

それで早霜姉さんにも同じ内容を伝えてみた。
きっと断られちゃうんだろうなと思っていたんだけど、

「いいわよ……」
「へ? いいの?」
「……ええ。お花の手入れもあるから少し時間を取っちゃうかもしれないけど参加させてもらうわ。私も司令官の作るお野菜は楽しみだから手伝ってみたかったのよ……」
「そっかぁ……。よかった! それじゃ今度畑仕事をするときは誘うね!」
「ええ、待っているわ……」

早霜姉さんは独特の喋りをしながらも参加してくれることになった。
うん、何名かは参加できそうで良かったよ。
司令官に伝えてこないといけないわね!
それで司令官に内容を伝えると、

「よくやった」

と言われて頭を撫でてもらった。
それがとても嬉しかったのを記憶にとどめました。


 
 

 
後書き
着々と参加者は増えていきますね。
これからの畑描写が賑やかになりそうです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0088話『七夕の準備』

 
前書き
更新します。 

 





私は明日に控えていた七夕について準備を始めていた。
そして今日は町への視察の警護に島風と白露を連れていた。
島風は開口一番で、

「提督、白露おっそーい!」

と落ち着きがないようにそわそわしていた。

「まぁそう焦るな。島風」
「そうだよ? 別に町は逃げないんだからさ」
「そうだけどー……やっぱり一番になりたいんだもん」
「その気持ちはわかるよ、うん」

私の注意に島風はそう答えて白露は速攻同意して寝返りやがった。
まぁ二人ともどちらも一番を目指している性質上気が合うというか何とか……。
片や走りに関しては誰にも負けない自負がある島風。
もう片やは白露型一番艦としての一番という生まれが原因の一番になりたがりの白露。
この二人が仲良くなるのはそんなに時間はかからなかったんだと思う。
島風はよく天津風や時津風とかとかけっこをして遊んでいるけど島風に関しては常に本気で遊んでいるから見てる分は少しひやひやする場面も多い。
そんな折に白露が島風とかけっこ勝負をするという展開に発展してその為だけに『改良型艦本式タービン』と『新型高温高圧缶』を装備してお互いに速力を最速にして勝負をした。
そして結果は見るまでもなく二人は一日中勝負をしていたらしく、

『いい加減、諦めなさいよ……』
『島風……諦めないもん』

そんなやり取りをしながら走り続けた二人はいつしか同時にぶっ倒れてそのまま医務室送りへと相成った。
それからというもの、二人には微妙だけどライバル意識と友情が芽生えたのか適度に走り込みは一緒になってやっているという。
この二人の説明に関してはこのくらいでいいだろう。
そんな二人をして私は言う。

「島風、今度走り込みに付き合ってあげるから今は我慢しておきなさい」
「いいんですか、提督!」
「ああ。これでも高速戦艦の名に恥じない走りは見せられると思う。な、榛名」
《はい。私も走りに関しては負けない自負はあるんですよ。ぜひ提督には頑張ってもらいたいです》

そんな私と榛名の話が聞けたのか島風は目をキラキラさせて、

「約束ですよ!」

そう言って何度も飛び跳ねていた。
お供の連装砲ちゃん達も一緒に飛び跳ねているので同調しているのだろうな。

「うう……提督ぅ。あたしも一緒に走り込みしたいよぉ」
「わかったわかった。それじゃ今度三人で勝負でもしようか」
「やったー!」

それで島風と白露の二人は機嫌がよくなったので素直に私の後ろを着いてきていた。
ただ……やはり白露はともかく島風の恰好は少し派手な事もあり町の道中でよくギョッとする視線を何度も受けるのは、まぁ島風らしいとしか言えない。
この辺はまぁ我慢だな。
それで町内会へと顔を出して、

「町長さん。ご無沙汰しています」
「おお。提督のお嬢さん。よく来てくれましたね。本日は視察ですかな……?」
「はい。それもあるんですけどうちでも七夕の準備もしたいと思いまして笹の葉を数本いただけないかという相談に来まして……」
「そんな事でしたか。でしたらちょうどいい笹の葉がいくつかありますので持っていきますか?」
「いいんですか……?」
「ええ。常日頃から漁師さん達の海上護衛をしてもらっていますからせめてものお返しと思ってください」
「そうですか。……ありがとうございます」
「いえいえ。お互い様ですよ。市場にも顔を出してあげてください。漁師の皆さんは提督や艦娘さん達の事はきっと歓迎してくれますよ」

そう言いながら町長さんは私の隣でそわそわしていた島風の頭を撫でていた。
そんな島風も気分は悪くないらしくされるがままだったけど……。

「ほら。島風ちゃん、それに白露ちゃんも飴ちゃんをあげよう。後で舐めるといい」
「ありがとうございます!」
「美味しく頂きますね」

そして二人は飴を貰って上機嫌になるのであった。
うーん……単調で分かりやすいな二人とも。
そんなやり取りをして後は町の今後のスケジュールなどを調整していって七夕の翌日に行われる瑞雲浴衣祭りの件に関しても町長さんとは話し合いを重ねていった。
そして時間は三時過ぎ。
お昼を取るには中途半端な時間だし、町内会の会議で私を含めて三人とも食事は頂いたのでそれほどお腹は減っていないのもあり、

「二人とも。なにか町に用とかはあるか……?」
「え? うーん、そうですね。島風は特にはないかなぁ」
「あたしもあんまりないかも。酒保で買えるもので事足りているし」
「そうか。まぁいいか。後でこれが欲しいといってもお預けになるけどいいよな?」
「うーん……そう言われると少し後ろ髪が引かれる思いかも」
「それじゃ提督! アイスが食べたいです!」

島風はそんな事を言い出す。
普段間宮でも食べられるけど町のアイスというものも食べてみたいのだろうな。

「わかった。それじゃどこかのカフェに寄るとするか。笹の葉はもう鎮守府へと送ってもらったから手持ちぶたさだしな」
「やったー!」

それで三人で近くにあるカフェへと寄って注文をする。

「このベリーベリージャンボパフェが食べたい!」
「あたしもあたしも!」
「白露……? 一緒のものを頼むって事は島風と勝負したいの……?」
「いいよお。いつでも相手になってあげるよ」

そんなやり取りが行われていて私は気長にショートケーキを頂きながらも、

「それじゃどちらが勝っても恨みっこなしだからな。それと二人とも女の子なんだからがっつき過ぎな食べ方は控えろよー」
「「はーい」」

そしてパフェが運ばれてきて二人は私の「それじゃはじめ」という合図とともに食べるのを開始した。
それから数分……。
私が懸念していた事が発生していた。
それはというと、

「うぷっ……やっぱり量が多かったかな?」
「白露だらしないよ。島風はまだまだ平気なんだから」

そんな事を言う島風も顔には汗が浮かんでいた。
二人とも駆逐艦で低燃費だからあんまり量も食えないのだろうな。
仕方がないな。

「二人とも。全部食えなかったら言いなさいね? 最悪私が食べてあげるから」

これでも戦艦だから量は入るしな。
だけど二人はやせ我慢をして食べるのを止めなかった。
そして、

「ふぅー……島風が一番!」
「悔しいよー……うっ」

先に島風があの量を食べきって人差し指を掲げていた。
それで白露はまだ残っている為に食べ終わるまで待っていることにしてあげた。
そして帰り道、

「提督ー! 腹ごなしに走り込みでもしよう!」
「おいおい。白露がまだダウン気味だから勘弁してやってくれ」
「ううー……当分はあまりああいうのは食べたくないかも……」

島風はもうお腹の調子はいいらしくそんな事を言って私がそれとなく注意して白露は唸っていた。
うん。カオスだな。
まぁ楽しかったからいいけど。
そんな一日だった。
ちなみに鎮守府のみんなには七夕にするお願い事を考えておくように通達しておくのであった。


 
 

 
後書き
七夕の準備と島風と白露の回でした。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0089話『初期艦の七夕の願い』

 
前書き
更新します。 

 




この世界に来て初めて感じた事がありました。
それは……とても悲しい事でした。
司令官さんがいなくなってしまった……。
その事実だけが私の心を打ちのめしました。
司令官さんが艦隊これくしょんを始めて最初に私を迷うことなく選んでくれたことがとても嬉しかったのです。
司令官さんは最初、着任してから私達艦娘を艦種ごとにどういった運用をしていいのか分からないのか最初はまったく知識がなかったために右往左往していました。
当たり前なのです。
司令官さんは軍艦のゲームなんて今まで一度もやった事がないらしかったからどの艦娘が有名なのかも分からなかったのですから。
しいて言うなら大和さんとか有名な名前くらいなら知っていたらしいですけど、結局はその程度の知識しかなくもちろん私達の名前なんて知らなかったのは当たり前でした。
それでも司令官さんは最初の頃は私を旗艦にして使い続けてくれました。
そして仲間が増えていく内に私は後続の人達にどんどんと練度を追い抜かれていきましたけど、だけど司令官さんはそんな私をそれでも見放さなかったのです。
辛い事もあった。
司令官さんがミスをしてしまい大破進軍をして木曾さんやまるゆさんを轟沈させてしまったり、時には最初のイベントでは練度も艦隊の密度も足りずに泣く泣く途中であきらめるしかなかったり、思い出して来れば色々と思い出せます。
だけどそれでも司令官さんはゲームを止めることもせずに続けてくれました。
司令官さんには艦隊これくしょんはもう生活の一部になっていたのか暇さえあれば私達に会いに来てくれました。
会うたびに思いました。
この人はいい人なんだと……。
それは何度か轟沈させてしまったりしましたけど、それでも今度は二度と轟沈させないと息巻いているのを画面の外で言っていたのを覚えています。
その甲斐あってか司令官さんは何度もイベントを経験していく内に強くなっていきました。
もちろん司令官さんは戦えませんから実際には私達が強くなったと言ってしまえばそれまでですけど、そこまで育ててくれた司令官さんには感謝しかないのです。
でもそんなある日に、私達は謎の閃光とともに異世界と呼べばいいのでしょうか……?
そんな世界に私達は実体を持って具現化しました。
それはどんな事より嬉しかった。
これで司令官さんとも自由にお話ができると。
だけどのちに曙さんに教えてもらった事ですが司令官さんが榛名さんとともに私達と同様に謎の閃光で一緒になって消えてしまったという報告を聞いて私は目の前が真っ暗になりました。

『もう、司令官さんに……会えないのですか……?』

私はそれで一時部屋に閉じこもって塞ぎ込んでしまいました。
だけど時間は進んでいき知らない人たちが何人も侵入してきそうな事態になって私達は応戦するしかなかったのです。
このままじゃいけないと思いつつもこれ以外に自衛の方法を知らなかった……。
そんなギスギスした空気の中司令官さんは榛名さんに宿って再び私達の前に現れてくれました。
最初に私達に言葉を発した瞬間にあの人は榛名さんじゃないと直感で思いました。
同時に最初からの付き合いの私にはあの人は司令官さんだとすぐに気づきました。
でも周りの皆さんはそれでも疑心暗鬼が抜け切れずに司令官さんの言葉を聞きませんでした。
そしてとうとう司令官さんは土下座までする騒ぎになってそれでようやく皆さんもその人が司令官さんだと気づいたのだと思います。
それからはうまくとんとん拍子に司令官さんは私達の場所へと帰ってきてくれました。
そしてそれから今日という日まで色々な事を体験しました。

この世界の軍の人との話し合い、交渉……。
この世界に慣れるために試行錯誤し始めた皆さんにそして私。
この世界に来て初めての大規模作戦。
そこから見え隠れしてくるこの世界が抱えている闇の一端。
熊野さん達が言い出したもし助けのコールがあったら助けようという話し合い。

たくさん、たくさん経験しました……。
それでもどの事でも必ず中心にいたのは司令官さんでした。
司令官さんが動けば私達は信頼をもって従っていきます。
それはこの世界に来る前から変わらない不変の気持ち。
司令官さんはひどい命令はしない事は初期から知っている私は知っています。
轟沈した時に何度も涙を流したのを知っています。
そんな心優しい司令官さんだから……。
だから、いつでも頼ってくださいなのです。
私は目の前で七夕の準備をしている司令官さんを見ながらそう思っていました。

「電、そっちのひもを取ってくれ」
「はいなのです」

司令官さんに呼ばれるたびに嬉しい気持ちが溢れてきます。
……ああ、司令官さんは私を必要としてくれているんだなと心が歓喜します。
その気持ちは今は出さないでいるけどいつか素直に伝えたいのです。
そして司令官さんがいくつもの笹の葉の準備が終わったのか、

「さて……それじゃみんな! 短冊の準備はもう済ませてあるか!?」

司令官さんがそう叫びました。
今の司令官さんの声は榛名さんの声でもあるので少し男ぶっている女性のような感じですけど中身は司令官さんは男性なのですから当たり前の事なのです。
そしてその司令官さんの言葉に皆さんは「「「はーい」」」と返事を返していました。

「電、あなたはなにを願うの……?」

暁お姉ちゃんにそう聞かれたので私は笑みを浮かべながら「内緒なのです」と言った。

「えー? 教えてくれてもいいじゃない!」
「暁ー? 無理に聞き出すのはダメよ?」
「そうだよ暁」

そこで雷ちゃんと響ちゃんが同調してくれました。
嬉しいのです。
そこで私はとある人を探しました。
その探している人物は背が高いのですぐに見つかりました。

「大和さん! 少しいいですか!」
「あら……? 電さん、どうしました?」
「はい。ちょっと肩車をしてほしいのです」
「ふふ。いいですよ。短冊の内容を見られたくないんですか?」
「それもあるのですが願掛けも込めたいので一番高い場所に飾りたいのです」
「わかりました」

それで大和さんは笑顔で承諾してくれたので私は肩車をしてもらい一番高い場所へと短冊を飾りました。
そこに書かれている内容は……。

『いつまでも司令官さん達と一緒にいたいのです』

そう、私は書きました。
この願いがいつまでも続きますように……。
その時でした。
空に一条の星が流れたのは。

「綺麗なのです……」

それで私は手を合わせて心の中で再度お祈りをしました。
でも星はもう消えちゃったけど願掛けにはちょうどよかったのです。

「大和さん、ありがとうなのです」
「いえ、このくらいならお安い御用ですよ」

大和さんにお礼を言った後に司令官さんのもとへと向かっていって後ろから腰に抱きつきました。

「おっと……どうした、電?」
「司令官さん、これからもよろしくお願いしますなのです」
「ああ。来年もきっとみんなで色々な行事をしていこうな」
「楽しみなのです」

私の願い事は常に叶い続けているのです。
この尊い日常を壊さないためにも頑張るのです!


 
 

 
後書き
初期艦の電回でした。
初期からずっと私のいいところもダメなところもきっと見てくれているという願望も含ませてみました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0090話『瑞雲浴衣祭り』

 
前書き
更新します。 

 





先日は七夕で色々と楽しめたと思う。
特に曙とか満潮とか霞とかの普段本音を隠してきつく当たってくる子達が短冊に素直な言葉を書いていたのは印象に残っている。
まぁ内容もそこそこに今日も頑張らないとな。
私はそう思い本日日本全国の鎮守府と自治体が協力して行われる『瑞雲浴衣祭り』に関して色々と考えを練っていた。
浴衣に関しては去年から限定グラで着慣れている神通とかたくさんいるからそこら辺の着付けは彼女達に任せよう。
なにやら速吸や明石が特注で瑞雲浴衣祭りに備えて法被を作っていたようだけど今回は目をつぶろう。

《提督。本日は浴衣はどうされますか……?》
「そうだなぁ。私としては男性の時だった時も浴衣なんて着た経験がないからどうしようか悩んでいる」
《でしたら長良型の皆さん辺りに頼んでみませんか……? 彼女たちでしたら姉妹の子達にも着させていたのを覚えていますし》

そうなんだよなぁ。
特に長良とかは今日という日を楽しむ気満々で着付けを今しているとからしいし。
そんな時だった。
バンッ!という勢いよく扉が開かれた。
何事だ……?と思っているとそこには浦風と浜風が浴衣を着て執務室に入ってきていた。

「提督さん、うちが着付けの手伝いをしてあげようかの」
「提督。この浜風にお任せを。しっかりと着付けをエスコートします」

そんな事を言っていた。
いつから聞いていたんだという思いもあるけど、

「二人とももう楽しむ気満々だな」
「当り前じゃ。せっかく町ぐるみで祭りを開くというじゃけぇ。縁日も楽しまないと損じゃ」

浦風がその独特の広島弁で楽しそうに喋っていた。
そして浜風がその手にいつの間にか用意していたのだろう私の大きさの浴衣を持っていた。
そこから察するにもう逃げられないなという思いだった。

「わかった……。それじゃ私の私室に向かうとするか。浜風、着付けを頼む」
「お任せください提督。浜風、この日のために抜かりはありませんから」
「お手柔らかに頼む」

それで私達は私室へと移動する。
そこで初めて私の私室に入ったのか二人は少し楽しそうに笑みを浮かべて、

「ここが提督さんの部屋なんじゃね。なにか掘り出し物でもあるかのう?」
「浦風、いけません。提督のプライベートを勝手に詮索するものではありませんから」

浜風はそう言うけどすでに榛名に知られている時点でプライバシーのへったくれもないんだよな。
まぁいいだろう。

「それでどうする……?」
「はい。まずはパパッと着ている服を脱いでくださると助かります」
「わかった」

それで私は着ている提督服を脱ぎ出そうとするけどそこで浦風が「わわっ!」と声を上げた。
どうした……?

「提督さん。いきなり脱ぎ出すのはいかがなもんじゃ……?」
「そうは言っても脱がないと着付けができないだろう? それに今更じゃないか……?」
「そうですね。浦風は初心ですね。前に一度磯風を先頭にして提督がお風呂に入っている時に突入した時がありましたではないですか」
「そうじゃけど……あの時は磯風が乗り気で行っていたからついていっただけじゃし……」

それで急にもじもじしだす浦風の姿を見て思い出す。
そう言えばお風呂に突入してきた時も浦風一人は少し言葉数が少なかったなと……。
まぁそりゃそうか。
外見は榛名だとはいえ中身は男性なんだから少しは羞恥心があってしかるものだからな。
そこら辺は磯風、浜風、谷風の方が感覚が麻痺しているんだろうな。
それに磯風とかに限っての話じゃないし。
さすがに軽巡から上になってくるとあんまり一緒には入ってこないけど(金剛達は別として)うちの駆逐艦の半数以上は一度は私と一緒にお風呂をともにしている。
私の気持ちも無視しての暴挙であった。
男として見られていないのを悲しいとみるべきか悩みどころである。


―――閑話休題。


「わかった。それじゃ浦風は着付けが終わるまで後ろに向いていてくれ」
「わかったけん……」

それで浦風は顔を赤くさせながらも後ろを向いた。
それを見て浜風はため息を吐きながらも、

「それでは気を取り直して、提督。着付けをしますので……」
「わかった。頼む」

それで私は服を脱いでさらしとパンツだけの状態になった後に浜風に用意してもらった浴衣に袖を通して最後に帯をしめてもらう。
浜風が「少しきつく締めますね」と言った後にお腹が締められる感覚は中々味わえないものだった。
最後に浜風が私の髪形を少し弄っているようで簪などを取り出して髪を纏めた後に簪で固定していた。

「はい。提督出来ましたよ。鏡で確認してください」
「ああ」

それで私は私室にある鏡台で確認をする。
それで私と榛名は同時に感嘆の声を上げる。

《私が私じゃないみたいです……》
「ああ。普段見慣れている榛名とはまた違った印象だな」
「お気に召しましたか? 提督」
「ああ。ありがとう浜風」

そこでようやく終わったのを確認できたのか浦風がこちらを振り向いてくる。
そして、

「うわっ! 提督さん、もとから榛名さんで綺麗じゃったけど余計にきれいになったのう……浜風ナイスじゃ」
「はい。浦風にそう言っていただけるとやった甲斐がありますね。それでは提督。準備もそこそこに町の町内会に顔を出しに行きましょうか」
「そうだな」

それで私達は町に繰り出していった。








……うん。予想していた事だけど下駄ってとても歩きづらいな。
そんな事を思いながらも町内会へと顔を出すとそこで町長さんが少し驚いた表情になりながらも、

「おう……提督のお嬢さん。綺麗になりましたな」
「はは……どうも」

褒められるのに慣れていないのをなんとか気にせずに本日の予定を話していく。

「それで町の活気はどのような感じになっていますか……?」
「ええ。盛況と言えるでしょうな。艦娘の皆さんにも深海棲艦が来ないか見張ってもらっていますので不安になる事はありませんしね」

そう、今は川内を中心に交代で近海の海を哨戒してもらっている。
この日のために頑張って着付けをしようとしていた者も数名いるのでその恨みを今頃深海棲艦に向けて発散している子もいるだろうしな。

「そうですか。それでは本日も盛り上げていきましょうね」
「はい。よろしくお願いしますね」

そんな話をしながら私と町長さんはそこそこ暗くなってきた夜の町を回りながらも今後の事に関して話していた。

「しかし……提督さんの艦娘達は素直な子たちが多くて助かっていますよ」
「そうですか?」
「ええ。聞く話によりますと他の鎮守府の提督と艦娘はこんな行事には参加しない人達も多いと聞きますので……」

それを聞いてやはりか……と思い至る。
私の方が異端だと思われるのも癪だけどこの世界の提督達は基本深海棲艦を倒すために日夜心身をすり減らしていて心に余裕がないのだろうな。
だからこんな大本営が企画したある意味提督達にとっても癒しのイベント事でも参加するくらいなら深海棲艦を倒している方が戦果にも繋がるからいいだろうという考えをする提督が多いと前に柳葉大将に電話で聞いた覚えがある。

「そうですか。まぁ、仕方がないですね。きっと私の方が他の提督の方々と比べて考えが甘いんだと思います」
「そんな事はありませんよ。提督さんが普段たまにこうして町に視察として顔を出してくれているおかげで私達町の者達は安心して暮らしていけてるのですから……。
特別な視線も向けることは無く提督さんも町の一員として見れるので私達役員もいちいち緊張せずに付き合いができるので助かっています」
「持ちつ持たれつな関係ですね」
「そうです。ですから提督さんも気にしないでください。世間の目なんて私達でなんとかしますから」

そう、町長さんは言ってくれた。
ここまで町の人達と信頼関係を結べていてとても嬉しいと思う。
いまだに庶民感覚が抜けない私としてはこんな関係がベストな状態だなと感じていた。
それから町長さんと町を回りながら艦娘達がわざわざこの日のために練習して出している屋台や踊りを見ながらもまた記憶の一ページにこんな楽しい思い出を刻んだのであった。


 
 

 
後書き
今回は瑞雲はあんまり出てきませんでしたね。
代わりに町の人達との関係を表現できたと思います。
提督はもう感覚が麻痺していますねー。積極的な駆逐艦が多いですから。
うちの浦風は初心です。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0091話『二日目の浴衣祭り』

 
前書き
更新します。 

 





昨日に引き続き、浴衣祭りは開かれていた。
本場の方では明石が鉄骨番長とか呼ばれていて大本営の大淀とともに一般人と写真撮影をしていたとかいう話を聞いた。
なんでも妖精さんを明石が操作する特別な艤装で遊ばせている光景があってそんな遊んでいる妖精の姿が見える子には提督になる資質があるというある意味将来を決めかねない行事もあったりとかなんとか……。
他にも法被仕様に身を包んだ速吸がお店で料理を運んだりしていたとか。
それぞれにあった艦娘の使い方を遊園地は実施しているらしい。
楽しそうだけど私は私で地元の町の活性化に貢献しないといけないので新情報とかは後日に確認するとしよう。
それで私は昨日に引き続いてまた浜風に着付けをしてもらいながら町内会でパンダのような状態になっていた。
何度も人が私のとこに来ては、

『これからも頑張ってね』やら。
『俺も応援しています』やら。
『提督さんの浴衣姿、ハァハァ……』やら。

と、握手を求められていた。
……最後の人に関しては憲兵さんにぜひ引き渡したいと思った私は悪くない。
そんなこんなで午前中はそれを繰り返していてお昼になって食事を摂った後に、

「提督さん。この後はもう大丈夫ですので町の中を散策して来ても大丈夫ですよ」
「いいんですか……?」
「ええ。収益に関しましてはかなり黒字に転じていますのでこれも普段の提督さんの行いの成果ですね」

それで町長さんは満足そうに頷いていた。
私も恥ずかしいやらなにやら。

「それでしたらお言葉に甘えておきますね」
「はい。いってらっしゃい」

それで町長さんに見送られた後に私は近くに誰かいないかと視線をさまよわせていると特徴的な電探を頭の左右にぶら下げている叢雲の姿があった。
どうやら今は一人のようで椅子に座って綿あめを食べているようであった。
なので近寄っていく。

「叢雲」
「あら……? 司令官、町内会の方はもういいの?」
「ああ。自由にしていていいという話なんで暇をもらったからこれから町の露店に繰り出そうかなと思っていたんだ。そういう叢雲はどうして今は一人なんだ……?」
「ええ。吹雪の奴に連れてこられたんだけど……あの子、艦娘音頭の会場の方にいっちゃって私一人が取り残されちゃったのよ」
「そっか。……なら私と一緒に回らないか?」

私は叢雲を誘ってみることにした。
それに対して叢雲は少し頬を赤くさせながらも、

「いいわよ。付き合ってあげるわ」

そう言って私の手を取ってくれた。
少し恥ずかしいのか私の顔はあんまり見ないようにしている辺り素直じゃないなぁ……。
まぁそんなところも可愛いところなんだけど。
それで叢雲と一緒に露店巡りを始めた私。
そして最初に目に入ったのがザラがやっている屋台でパスタを作っている光景だった。
それと向かい側ではプリンツオイゲンがホットドッグを作っている姿も見えた。
両者とも結構な客数のようで並んでいる光景が目に入る。
そこでプリンツオイゲンが私の姿に気づいたのか、

「あ! 提督-! よかったら私のお店に寄ってくださいね!」
「わかった。それとビスマルクとかはどうしたんだ……?」
「ビスマルクお姉さまはマックスやレーベ達と一緒にビールを提供していますよ」

私と会話をしながらもホットドッグを作る手は止めないプリンツに感嘆の声を上げていると、

「ちょっとあなた? あっちのもおいしそうじゃない?」
「ザラの方のパスタか?」

叢雲に促されてザラの方へと向かおうとする前に、

「それじゃプリンツ。後でまた買いに来るよ」
「はい! お待ちしていますね」

それで私と叢雲はザラのパスタ店へと向かう。

「あ、提督。こちらにも来てくれたんですね」
「ああ。ザラ、それで叢雲に一つ作ってくれないか? 食べたそうだったんで」
「あっ……ちょっとぉ」

叢雲は少し反論したい感じだったけど自分から誘った身としては言葉が出てこないのだろう。

「……まぁいいわ。ザラさん、一つくれないかしら?」
「ムラークモ、grazieです!」

それでザラはすぐに叢雲に本場の特性パスタを作って叢雲に提供していた。
叢雲はそれでお金を払おうとしているけど、

「あ、私が払うよ」
「無理しなくてもいいのよ……?」
「このくらいなら平気だよ」
「ならお言葉に甘えておこうかしら」

すぐに素直になった叢雲。
感情に呼応しているのか叢雲の電探がピンクに光っていた。
分かりやす過ぎて微笑ましいな。
それで笑いを堪えながらもお金をザラに払い私達は近くに椅子に座った。
叢雲はザラのパスタを口に入れるたびに、

「たまに鎮守府でも食べさせてもらえるけどこういう露店で買ったものを食べるのも乙な物よね」
「そうだろう?」

叢雲はこういった露店での飲食は初めてのようで少しウキウキしているみたいだった。

「ほら。あなたにもあげるわよ」

そう言って叢雲はパスタを起用に箸で掴んで私に出してきた。
少し恥ずかしいけど落ちちゃうのも悪いのですぐに食べさせてもらった。

「うーん。確かにボーノだな」
「そうでしょ。よかったわ。さすがザラさんのパスタね」

そんなやり取りをしながら寛いでいると周りからなにやら色々と聞こえてくる。
耳を澄ませてみると、

『提督さん、食べさせてもらっちゃって……可愛い』やら。
『叢雲殿は可愛いですな』やら。
他にも色々……。
それで少し気恥ずかしくなった私は、そして叢雲も気づいたのか顔を赤くして、

「い、いきましょう……」
「ああ……」

それですぐにその場を退散したのであった。
背後で微笑ましい表情の住民の方々がいたけどこの際気にしないでいこう。
それから色々と艦娘達がやっているお店を巡りながら楽しんだ私と叢雲。
最後に艦娘音頭が始まるというので、

「叢雲。一緒に踊りに行くか……?」
「いいんじゃない? いきましょう」

それで叢雲と一緒に会場へと向かうと、

「あ! 司令官に叢雲ちゃん。いらっしゃい!」

そこでは赤い法被を着たお祭りmodeの吹雪がいて私達を歓迎してくれた。

「吹雪もうまい具合に溶け込んでいるな」
「はい! とても楽しいです!」

元気にはしゃぐ吹雪の姿を見て和む私と叢雲。

「楽しそうでなによりだわ。私達も一緒に踊らさせてもらうけど構わないわよね?」
「叢雲ちゃん! それに司令官もぜひ踊っていってください!」

そしてちょうどよく始まる艦娘音頭。
見れば中心で深雪が太鼓を叩いている光景が映って似合っているなぁと思ったり。
「そいやッと!」という掛け声とともに太鼓を叩いているので楽しそうだ。
それで私達も踊りをしながらも艦娘音頭を楽しませてもらうのであった。

「こんな楽しみ方もいいものね」
「そうだな叢雲」

叢雲はここ一番の笑顔を私に向けて来てくれた。
楽しんでいるようでよかった。
こうして叢雲と廻った一日は終わりを告げていくのであった。


 
 

 
後書き
叢雲と回る露店巡りでした。
こんな感じで二日目も終わりです。
なにか新情報が出ればいいのですが……。
せめて睦月型は誰が改二に来るのかはっきりしてほしいです。
もう今育成中の菊月以外の睦月型の面々は全員最低ラインの70まで上げてしまいましたから。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0092話『改二に向けて……菊月の不安と悪夢』

 
前書き
更新します。 

 


瑞雲浴衣祭りが終わってから一日が経過した。
もう今後の瑞雲企画は当分は未定らしくうちの艦娘達も落ち着きを見せてきていた。
特に日向なんかは国規模で盛大に瑞雲祭りを楽しんだのか少しばかりだが満足そうに笑みを浮かべながらもいつもの決め台詞である

『まあ、そうなるな』

と、呟いているとかなんとか。
私も私で滅多に着ないであろう浴衣を着て楽しむことができたのでよかったと思っている。

《提督。仕事も通常業務に戻りつつあるみたいです》
「そうだな、榛名。これで少し停滞していた駆逐艦強化月間を再開できるな」
《そうですね。……今回の瑞雲浴衣祭りでは残念ながら睦月型の誰かに改二が来るのかは話されませんでしたが、きっと提督なら大丈夫ですよね》
「ああ。なんのために先月から頑張ってきたのかを思い出せばあまり苦ではなかったからな」

それで思い出す。
先月に発表された睦月型の改二の情報が出たと同時に改二艦以外は改にした後はほぼ今まで手付かずだった睦月型の子達の錬度上げを本格的に始めたのを。
うちの育成方針は普段はそんなに切り詰めていない。
せいぜい演習と遠征で間に合わせて後は備蓄がほとんどなためだからだ。
だけど深海棲艦が攻めてくるだろう来月に控えて備蓄をするのならまだいいのだけど、本格的にリランカ島で集中的に錬度上げを始めていたのだ。
そして気づいたらいつの間にか今現在錬度上げ中の菊月を除いて睦月型の面々は最低ラインの70まで錬度上げを完了していたのだ。

「きっと間に合わせるさ」
《その意気です提督》

榛名とそんな話をしながらも執務をしていると扉がノックされる。
誰だろうと思いながらも招き入れるとそこには菊月の姿があった。

「司令官……少しいいか?」
「どうした菊月? なにか不安な事でもあったのか……?」

どこか不安な表情を浮かべている菊月の表情を見て少し大事になりそうだなと思いながらも冷静に菊月に問いかける。
それに対して菊月は少し口ごもりながらも、

「司令官……。私は常日頃から不安に感じることがたまにあるんだ」
「またどうして……?」
「よく夢を見るんだ」
「どんな……?」
「皐月や文月、望月に三日月……私の姉妹たちが次々と轟沈するような、そんな悲しい夢を……」

菊月のそんな話を聞いて身構えておいて正解だったなと思う。
もし軽い気持ちで聞いていたらきっとうまく対応できないで菊月を傷つけてしまうかもしれないからだ。

「そして……最近で一番夢に出てくるのは……司令官、あなたが私達を庇って轟沈してしまうというものなんだ。
嫌なんだ……そんな夢を見たくないのにすぐに不安に駆られるとそんな悪夢を何度も見てしまう……。
こんな話は睦月達にはさすがに相談できない……それで私は……」

菊月がそこまで言ったところで私は彼女の事を抱きしめてあげる。
それで菊月は少し体を震わせたけどそのあとは動きが止まったままだった。
そしてそれを都合がいいと解釈するひどい私がいたけどこの際だから利用させてもらおう。

「大丈夫……。菊月が夢で見る事はきっと起こらないよ」
「そうだろうか……」
「ああ。私はもう君達を誰一人だって沈めないって決めているんだ。だからそんなに不安に駆られないでくれ。
確かに君達は過去に轟沈した事があるだろう。
菊月に関してはいまだに本体だった船の残骸は現地に残されたままで思う事はあると思う」
「………」

菊月は黙って私の話を聞いていてくれた。
だから精一杯私もその想いに答えないとな。

「だから……不安になるなとは言わない。だけどそんな悪夢に負けないくらい強い心をもって挑んでくれ。
君達は決して弱くない。昔の経験だって生きてくる。
後ろばかり見ないで前に進むことも考えて行ってくれ。それが菊月とともに沈んでいった多くの英霊たちへの手向けになるんだから……」

そこで菊月の目から涙が一滴零れる。

「そう、だったな……。私がこうしてここにいられるのは多くの人々の願いが具現化したからだったな。
私達艦娘はこの国を守るために再び生を受けて今まで戦ってきた。
それが、決してゲームのキャラクターで仮想の存在だったからって関係ない。
私は私だ……『睦月型駆逐艦九番艦 菊月』……それが私だ」

どうやら私が全部言い切る前に答えに辿り着いたようだな。
これでもうおそらくだけど菊月は悪夢を見ることは少なくなるだろうな。

「司令官……もう大丈夫だ。離してくれ」
「わかった」

それで私は抱きしめていたままだった菊月を離す。
そして真正面で菊月は私の顔を覗き込みながらも微小だけど笑みを浮かべて、

「司令官。私は、私達はあなたのことを信じている。だからこれからもずっと信じさせてくれ」
「ああ。わかった」
「そして……もしこの戦争が終わって艦娘としての役目を終えて離れ離れになるかもしれない事態になってもいつまでも一緒にいてくれ」
「わかった。大丈夫だよ。今は私も艦娘なんだから消える時は一緒さ。な、榛名?」
《はい。できれば提督にはずっと生きていてもらいたいですけど消える時は一緒に消えたいものです》

そう言って榛名も透明の姿のまま菊月の手に触れるように手を添えて、

《菊月さん。大丈夫ですよ。きっと提督は私達の事を守ってくれます。信じましょう》
「ああ。わかったよ榛名さん。もう迷わない……まだこれからも何度も悪夢は見るかもしれない。だけどその際は姉妹たちに相談してみる」
「そうか。きっと菊月なら大丈夫さ。私に相談で来たんだからきっと睦月達も相談すれば一緒に悩んで受け入れてくれるさ」
「ああ。きっと……」

それで菊月は自身の胸に手を添えて目をつぶって何度も息を吸って吐いてを繰り返した後に、

「相談に乗ってくれてありがとう、司令官。これからも私達睦月型をよろしく頼む」
「わかった。それでまだ誰が改二に来るかはわからないけどその時には思う存分活躍させてやるからな」
「うむ。きっと司令官のお役に立つさ……」

それで気分もスッキリしたのか菊月はもう一回お礼を言った後に執務室を出ていった。
そんな菊月を見送りながらも、

「やっぱり艦娘はそれぞれ大なり小なり不安を抱えているんだな……」
《はい。生き残ってしまった私が言うのもなんですけど沈んだ経験と記憶というものは拭いきれるものではありませんから》
「そうだな。そんな思いを二度と味合わせないように頑張っていくとしようか」
《はい! 期待していますね提督》

そんな、改めて覚悟を決めた一日だった。


 
 

 
後書き
今ちょうど菊月を育成中でしたのでお題にしてみました。
瑞雲浴衣祭りではなにかしら発表はなかったようですからTwitter情報を頼りに練度上げを続けていきます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0093話『旧第十六駆逐隊のとある子の不満』

 
前書き
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突然だけど少し話そうか。
『第十六駆逐隊』は誰で編成される艦隊だ?と聞かれたら誰を思い浮かべるだろうか……?
一般的には雪風、初風、天津風、時津風の四人が挙げられるだろう。
ならもう一つの『第十六駆逐隊』と聞かれたら答えられる人は結構減るのではないか……?
旧第十六駆逐隊……この編成はあまり知られていない事が多い事だけど過去に実際にあった編成だった。
黒潮、初風、雪風の三人がそれに該当する。
私も第二次世界大戦時の過去の資料を調べる目的で偶然にこの編成を知ったのだ。
黒潮と言えば親潮と一緒に組むパターンが多いが、まだ当時は第十五駆逐隊の僚艦である親潮にまだ実装されていない艦娘である『早潮』に『夏潮』の三人が完成が遅れていたために黒潮の錬成も兼ねての第十六駆逐隊への編入となっていた。
同時に天津風と時津風もまだ完成していなかったので先に完成していた雪風と初風の二人に黒潮の三人で揃って第十六駆逐隊と呼ばれていた。
この三人で観艦式にも参加した事があるのはコアな人なら知っているかもしれない。
それなので艦これが運営を始まった当初は雪風は一人だったと言われるが黒潮がいたために一応は駆逐隊は組めるようにはなっていたのは知っている人は知っていそうだな。

……少し話を戻そうか。
そんな三人が珍しく一緒になって執務室へと来ていたのだ。
黒潮が執務をしている私の机に腕を伸ばすようにぐてーっと腕を広げながらとある事を話す。

「なぁなぁ司令はん。なんか最近思うんやけどうちら陽炎型は大本営から嫌われているんやろうか……?」
「黒潮さんはどうしてそう思ったんですか……?」

雪風が興味ありますと言いたげに黒潮に聞いていた。
そして初風は一人我関せずに小説を開いて一人黙々と読んでいた。
いったい初風はなにをしに来たんだ……?

「まぁそうやね。早潮に夏潮がまだ実装されていないけどな。他は大体揃っとるんやからもうそろそろ陽炎型にも改二を一人くらいは実装してもええと思うんよ……」
「あー……」
「その事でしたか!」
「私は別に気にしていないけど……」

私は少し前から思っていた事なので言葉を濁す感じで答えるしかできず、雪風は「納得しました!」と元気よく答えて初風は本をパタンッ!と閉じて興味なさげに溜息を吐いていた。
だけど私もそれで納得した。
黒潮の不満はなんでうちら陽炎型には誰一人改二がこないんじゃこらー!という訳である。

「まぁそれでもし雪風が改二になったとしてこれ以上どこを上げるんだ?……って性能を誇っとるんは分かっとるしなぁ……」
「そんな事はありません。雪風はただ運がいいだけで能力的にはそこまで強くありませんよ」
「はいダウトー」
「そんなー!?」
「そこは私も黒潮に賛成しておこうかしら……? ユキは自己評価が低いのよ」
「そうでしょうか……?」

うん。私もそこには賛成しておきたい。
雪風はうちの最終バッターだからな。
霞と一緒にいつもだいたいはラストを決めてくれるからね。

「まぁともかくな。うちも早く改二になりたいんよ」
「そうは言っても大本営が全決定権を持っているから私が何かをしたとしてもどうにもならないことだし……来るのを待つしかないのだから我慢するしかないんじゃないか? ほら、そんな事を言ったら夕雲型のみんなだって誰も改二は来ていないじゃないか?」
夕雲型(あの子達)はまだ伸びしろがあるからええやん。陽炎型(うちら)は器用貧乏なところあるからなぁ……」

それでまた黒潮は机にカエルのように伸びをしていた。

「……そう。そんなに改二になりたいんなら大本営にお願いでもしてみる……?」
「いやー……そこまでして改二になりたいかというと迷いどころなんよね」
「はっきりしないわね。まったく……」

それで何度目かになる溜息を吐く初風。
それとは一方で雪風は自身が改二になったらどうなるだろうと予想しているのかどこか上の空だった。
そして次に言った言葉で室内の温度が少し下がる事になるとは思わなんだ……。

「雪風がもし改二になるとしたら……響さんがヴェールヌイさんになったみたいに丹陽(タンヤン)になってしまうのでしょうか……?」

どこか雪風は寂しそうに笑う。
これはいかんな。
雪風が急に気落ちしている。
ヴェールヌイも今も少しだけ日本艦でいたかったという気持ちがあるのだから雪風もそう思うのは仕方がない事実なのであった。
それを初風も感じ取ったのか雪風の背中をさすりながらも黒潮を睨んで、

「黒潮姉さん……ユキを悲しませるようなことは言わないでくれる?」
「……え? 雪風の改二の話は雪風自身が話し出しt『なにか……?』いえ、スミマセン。ナンデモナイデス、ゴメンナァ……」

初風のきつい睨みで黒潮はたちまち顔を青くして雪風に平謝りしていた。
それで雪風もようやく現実へと戻ってきたのか「ど、どうしました……?」という天然ぶりを発揮していた。
先程のは無意識領域での雪風の思い出だったか。
一人で孤軍奮闘した話が多いからなぁ……。

「雪風。そう焦ることは無い。まだまだ改二実装は遠いだろうがどうにかなるだろう」
「はい! わかりました!」
「ううぅー……雪風の笑顔がまぶしすぎてうちの心が汚れているみたいや。……そうやね、焦っても仕方がない。いつか来るのを願って待ってるのが得策やね」
「ま、そうね……」

それで初風もようやく黒潮に同意したのか合いの手を入れていた。
雪風はどういった事態でこんな展開になったのか分かっていないのか首を傾げていた。

「ユキはユキのままでいていいのよ?」
「……? はい、わかりました初風さん」

それで黒潮の改二になりたいという駄々も終わったのか私はある事を聞いてみることにした。

「ところで今日はまたどうしてこの三人できたんだ? 天津風や時津風、親潮も一緒に連れてくればよかったじゃないか……?」
「ちっちっち! わかっとらんなぁ司令はん。たまには古巣のメンバーで集まりたいって言ううちの親切心で今日はこのメンバーなんやで」
「そうか。……それで本音は?」
「……親潮が忙しそうで寂しかったんや。雪風たちも天津風と時津風がなにやらしているみたいなんで寂しさを共有したいんやなと思って誘ったんや」

黒潮はすぐに本音を言ったので寂しかったんだなと自己完結しておく。
だけど初風はあえて追及していく構えで、

「あら……? 私はユキと一緒にいられればそれだけでいいわよ?」
「初風ェ……そこはあえて嘘でも気を使ってくれてもええんやよ……?」
「別にそこまで気を遣う関係でもないでしょう? 同じ陽炎型なんだから相談くらいは乗ってあげるわよ」
「あえて落としてからの上げてくる感じ……初風、キミィやるなぁ」
「どうでもいいわよ」

初風はあくまでマイペースで黒潮に対してはざっくりとした対応を取っている。
うん、見ている分には面白いな。

「黒潮さん! 相談ならいつでも引き受けますよ!」

ビシッ!と手を上げて雪風が表裏なく本音を言うので黒潮も思わず涙を流しそうになったのか、

「雪風はええ子やねぇ……姉としては嬉しいわ」
「ありがとうございます!」

そんな三人のやり取りを見ていて常に中心には雪風がいるんだなと思う私であった。
雪風は良くも悪くも陽炎型の良心だからな。

「えらいぞ雪風。これからも陽炎型のみんなの中心にいてやってくれ」
「はい、わかりました!」

眩しい笑顔で答えるために私も心が洗われる気分だったのは内緒だ。
それで初風が何かを想ったのか雪風を抱きしめながら、

「……あなた。ユキはあげないからね?」
「ははっ。嫉妬とは可愛いな初風」
「もう……調子に乗らないの」
「わかったわかった」

それからやっと黒潮も調子が戻ってきたのか初風をからかうなどをして少しばかりの間だけど執務室は和やかな空気だった。


 
 

 
後書き
今回は珍しい組み合わせで話を書いてみました。
駆逐隊の組み合わせは結構ありますから色々と書けますよねー。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0094話『海外空母の暑さ対策』

 
前書き
更新します。 

 





グラーフ・ツェッペリンとアクィラは空母寮であまりの暑さに参っていた。

「暑いな……」
「グラーフー……それは何度目の暑いですかー?」
「さぁな……私としては鎮守府に来てから二回目の夏だがこうして実際に暑さを体験するのは初めてだからさすがに参るな」
「それを言ったらアクィラだって二回目の夏ですけど、なんとかやっていますよー……」
「まぁお前は脇が開いている服を着ているからな。さぞ涼しかろうな」
「まぁ! グラーフったら酷いわ。これでも暑いものは暑いんですよ?」
「すまない。少し暑さにやられているようで感情が制御できていないようだ」
「まぁ仕方がないですよね。ただでさえ異常気象ですからー……そんなグラーフはよしよししてあげますね」

それでグラーフの頭を撫でてあげようとするアクィラだったがグラーフの「止さんか」というセリフでシュンッとなってしまい結局よしよしできずに消化不足なアクィラだった。

「そうだ! 提督の執務室に行ってみませんかグラーフ? 提督だったら多分クーラーをつけていると思うわ」
「いや、アトミラールの事だ。ウチワかセンプウキで我慢していると思うぞ。節約しているだろうからな」
「とにかく行ってみましょうよ。少しは気を紛らわすことが出来ると思うわ」
「そうだな。気休めだが行ってみるか」

それでグラーフとアクィラは二人して執務室へと向かっていった。
それで執務室へといく道中でふとグラーフはある事を言い出した。

「しかし……アトミラールと初めて過ごす夏だが、意外といいものだな」
「突然どうしたの、グラーフ……?」
「いや、今まで画面越しでしか会った事がなかったアトミラールとこうして直接会えるというのは実はすごい事なんだぞ?」
「確かにー……それはわかります。提督は実際に会ってみて気さくないい人でしたからね」
「そうだな。鎮守府の他の仲間たちも平等にそう思っている事だから最初期からいるであろうコサンの者達は余計に嬉しいだろうさ」
「そういうグラーフだって提督と会うたびに笑顔を浮かべているじゃないですか。さすがクーデレじゃなくってデレデレね」
「その、デレデレというのはよしてくれないか? 私だってそこまでアトミラールと親密な関係という訳ではないぞ?」
「ふふふ……知らぬは本人ばかりなりって言葉が似あいますねぇ~」
「ほう……敢えて私に喧嘩を売っているのかアクィラ? 高値で買ってやるぞ?」
「いやー! 怒らないでグラーフー!」

そんな漫才じみたやり取りをしながらも二人はいつの間にか執務室へと到着していた。
そしてグラーフが扉をノックすると少しダルそうな感じの榛名ボイスで「どうぞー」というセリフが聞こえてきたために、

「グラーフ・ツェッペリンだ。入るぞアトミラール」
「アクィラもいますよ!」

二人はそんな言葉を発しながら執務室へと入っていった。
瞬間、感じる熱気にグラーフとアクィラは思わず険しい顔つきをする。
そこにはクールビズの恰好をしながらも扇風機だけで暑さに耐えている提督の姿があった。

「あー……グラーフにアクィラか。いらっしゃい」
「うむ。ところでアトミラール、大丈夫か……?」
「大丈夫だ。心頭滅却すればなんとかなるからな。普段は畑仕事もやっているからこのくらいの暑さならなんとかなっているよ」
「日本の諺ですね。えらいです、提督。よしよし♪」

そう言って暑そうな提督の頭を撫でているアクィラがいた。
それで幾分癒されているのだから効果はあるのだろう。

「ハルナ、アトミラールがダメそうだったらすぐに言ってくれ。我らがなんとかしよう」

それで榛名が出てきて、

《はい、お願いしますグラーフさんにアクィラさん。今日は提督はちょっとこの暑さの中で働き過ぎですから見ていて冷や冷やしていたんです。クーラーをかけてくださいと言っても「節約だ」で済まされてしまいますから……》
「そうか。アトミラール、無理は良くないぞ。休む時には我慢せずに休むのも鎮守府の長としての仕事だからな」
「ああ。そうさせてもらうよ。ありがとうな、グラーフ」
「いや、アトミラールが分かっているならそれでいいんだ……」

それで少し頬を赤くして視線を逸らすグラーフ。
そこにアクィラが目ざとく気付いて、

「グラーフー? 顔を赤くしてどうしたんですか……?」

チャシャ猫のような笑みを浮かべながらグラーフを弄り倒そうとしているアクィラの姿がそこにあった。
だけどそうは問屋が卸さないというべきかグラーフが少しムッとしてアクィラにデコピンを食らわせていた。
それで当然アクィラは「あいたー!?」という叫び声をあげていた。
手加減はしただろうがグラーフの馬力でデコピンは相当痛いだろう。

「アクィラ? お前のその手には乗らないぞ?」
「痛いですよグラーフー!」

それでプチ喧嘩をしだす二人。
そこに提督が無粋かなと思いながらも、

「ところで二人はどうして来たんだ……?」
「あ、そうだったな。なに……アクィラの奴がきっとアトミラールはクーラーを使って涼んでいるだろうと言い出したんであやかりに行こうと言い出したんだ。私はセンプーキで耐えてるだろうと思っていたのだが、正解してよかった」
「なるほど……。まぁ確かにそうだけど冬でもない限り耐えられる間はクーラーは使わない事にしているんだ。自家発電設備もあるけどそれだけじゃ限界だしな」
「さすがだアトミラール。……アクィラ、こういうアトミラールの姿を見習ったらどうだ?」
「もうっ、わかっていますよー。でも少しは涼しくなりたいじゃないですか。暑いんですから!」

そこでとうとうアクィラが開き直ってしまった。
それでグラーフがどうしたものかと悩んでいると、

「そうだな……。だったら二人とも、スイカでも食べるか? 今ちょうど冷水で冷やしてあるから食べごろだと思うけど。冷たくて美味しいぞ?」
「はい! 食べたいです!」
「アクィラ。少しは遠慮をする精神をだな……」

グラーフがそんな事を言っているがアクィラは少しでも涼しくなれればという思いでグラーフの小言を全然聞いていなかった。
まぁそれでグラーフも結局は着いていくことになった。
中庭に出ればそこにはタライに氷が張ってあってスイカが冷やされていた。

「少し待っていてくれ。人数分にカットするから」

提督がそう言って包丁を取りに行こうとするがそこで赤城がちょうどよくやってきて、

「はい、提督。包丁です、どうぞ」
「あ、ありがとう赤城……。ところでどうしてこんなばっちりなタイミングで持ってこれるんだ?」
「いえ、提督がスイカを冷やしているのを知っていましたからなんとなく待ち伏せしていたらちょうどよく来てくれたんで……」
「つまりアカーギも食べたいんだな?」
「はい、グラーフさん。提督、いいでしょうか……?」

それで提督はその表情にやれやれという感じの笑みを浮かべながらも、

「わかった。それじゃ四人分にカットするよ」

それで提督が四人分にカットして四人で木陰に設置してある長椅子に座ってスイカを食べている。
アクィラは初めてスイカを食べたのか、

「冷たくてそれに甘いです!」
「そうだろう? 夏に備えてスイカも畑で作っていたんだ」
「それではまだまだあるのですね提督?」
「まぁね。だけどみんなにも上げたいから食べ過ぎないでくれよ?」
「分かっていますよ」
「アカーギのその言葉は果たしてどこまで信じられるものなのか……」

素直に頷いている赤城を見て、だけどグラーフは一途の不安を感じたのであった。
スイカが均等に配られるのを切に祈るばかりである。
そんな事をグラーフは思いながらもスイカにかぶりついて、

「……うむ。確かに美味しいな」

スイカを味わっていたのであった。
夏のそんな一幕……。


 
 

 
後書き
今回はアクィラとグラーフを出してみました。
最後に赤城が出てくるのは狙っていたからです。

サラトガも出すべきだったと思いますけど暑さには慣れていると思ったので。出番も多分近くであるでしょうし。




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0095話『三日月のとある悲しみ』

 
前書き
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私は大本営からのとある電文を受けて少しショックを受けていた。
そう……それは昨日進水日だった三日月に関する話題を出しておきながらそれとは別に改二の睦月型を用意しているといういわゆる三日月には改二は来ませんという残酷なお知らせだった。
それで内心では「それはないぜ、大本営様よ……」という愚痴を吐いているのは許してほしい。

《て、提督……どうしましょうか? 三日月さんをお呼びいたしますか?》
「いや、まずは縁のある子達に教えた方がいいだろう。睦月型の他の子達も呼んでもいいだろうが、今回はあの子だな……」

それで私はとある子を執務室へと呼ぶ事にした。
しばらくしてその子は執務室へと入ってきて、

「提督……? この瑞鳳になにかご用ですか?」

そう。呼んだのは瑞鳳。
三日月がかつて三航戦所属のよく瑞鳳や鳳翔の護衛についていたためについたあだ名が『瑞鳳の護衛艦』というもの。
それで今回は瑞鳳を選抜させてもらった。

「ああ、話はというのはなんだけど三日月にとある話をする時のクッション材になってほしいんだ」
「それはどう言った事でしょうか……?」

瑞鳳はまだ話が読めないらしく首を傾げていた。
それなので教えることにした。

「それなんだけど、昨日の大本営からの電文で改二になる睦月型のヒントが発表されたんだけどな」
「うんうん」

それで瑞鳳も興味を持ったのか耳を傾けてきていた。
おそらく誰かを予想しているのだろう。
然としたとおりに瑞鳳は三日月の事を可愛がっているのはよく聞く話だ。
だからもしかしたら三日月に改二がくるのではないかと淡い期待を持ったのかもしれない。
その予想を外してしまうのは少し心苦しいが仕方がない。

「さっきも言った通りに電文で一応三日月に関して少しは触れたんだ。だけど触れたの昨日の進水日の件だけでそれとは別に改二艦が用意されているというものなんだ」
「それって……」
「ああ。つまり……三日月には改二は今回は来ない事が確定してしまったんだ」

それで瑞鳳はがっかりといった感じの表情になった後に、

「で、でも仕方がないですよね。また次の機会がありますよ。だから三日月ちゃんにはそれとなく伝えましょうよ」
「わかっている。だからこその瑞鳳というクッションを入れておきたいんだ」
「なるほど……睦月型の子達以外だと三日月ちゃんに近しいのは私だもんね」
「ああ。だからそれなりに期待しているよ。きっと真面目な三日月の事だから話を聞いた後にきっと『まだまだ精進が足りないみたいですね』と空元気で答えながらも裏では涙を流す光景がやすやすと想像できてしまうんだよな」
「そうですねぇ……」

それで瑞鳳も思い浮かんだのだろう少し上を見上げて考え込んだ後に、

「はい。多分三日月ちゃんの事ですからそんな感じになっちゃうと思います」
「それでだ。それとなく瑞鳳が三日月のフォローに回ってもらいたいんだ」
「そう言う事でしたか。わかりました、この瑞鳳にお任せください!」

それで瑞鳳が元気よく答えてくれた。
よし、これで三日月に素直に話が出来ると思う。
それなので私は三日月を執務室へと呼ぼうと思ってふと思った。

「なぁ瑞鳳。この際だから第三十駆逐隊の望月と卯月も一緒に呼ぶか? 彼女達もそれとなく元気づけてくれるとは思うから」
「いいと思います」
「わかった」

それで私は電話を取って三日月、望月、卯月の三人を呼ぶ事にしたのであった。








突然司令官から呼び出しを受けたので私は執務室へと向かっていました。
道中で望月と卯月の執務室へと向かう姿もあったので、

「もっち、それに卯月姉さんも……二人も執務室に呼ばれたのですか?」
「あー? まぁな」
「卯月、なにか司令官の怒りに触れたのかと思うと怖いぴょん……」

もっちはいつも通りに気だるげに答えて卯月姉さんはどこか震えていた。
きっと卯月姉さんは最近なにかしらやらかしてしまったのですね……。
でも私を含めたこの三人だと第三十駆逐隊関連の任務でしょうか……?
それでなにを司令官に言い渡されるのかドキドキしながらも、もし私達が活躍する任務なのでしたら思う存分頑張りたいと思った所存です。
そして執務室へと到着して、

「三日月、および望月、卯月、入ります!」
『ああ、入ってくれ』

司令官の声が聞こえてきたので私達は中へと入っていきました。
だけどそこには瑞鳳さんの姿がありました。
その瑞鳳さんの私を見る眼差しがどこか悲しそうなのはどう言った事でしょうか……?
とにかく私は一回司令官に敬礼をしながらも、

「司令官! 今回は私達に何のご用でしょうか?」
「ああ、三日月。楽にしていいよ」
「はい、分かりました」

それで私は言われたとおりに楽な姿勢を取ります。
でも司令官の表情も幾分か優れないものであった。
どこか体調が悪いんでしょうか……?
でしたら早めに休んでいただきたいものです。
私は司令官の隊長を少し気にかけながらも司令官がどんな話をするのか今か今かと待っていました。
すると司令官と瑞鳳さんは少し躊躇するような顔つきになりながらも、

「三日月ちゃん?」
「はい。なんでしょうか瑞鳳さん?」
「これから提督が話す事なんだけど……気をしっかりと持って聞いてほしいな。望月ちゃんと卯月ちゃんもそれとなくフォローに回ってね?」
「んー……? どう言った事かわからないけどわかったよ」
「うーちゃんも一応は了解ぴょん」
「それで司令官。どういった内容でしょうか……?」

どうやら私に関係する話らしい。
しかもどうやらあまりいい話という訳でもないようです。
司令官は少し黙った後に、

「三日月。君にとって少し残念なお知らせがあるんだ」

そう言って司令官はとある電文を私達に見せてくれた。
その内容は睦月型の改二に関連する話のようです。
しっかりと一文一文を呼んでいって、ああ……つまりそう言う事なんですねと私は理解した。
それなら司令官と瑞鳳さんの表情がどこか優れないのか理解できた。

「なるほど……つまり私には今回は改二への話は回ってこないという事ですね?」
「ああ。残念ながらそう言う事なんだろうな。それで三日月も改二になれない事に対して思う事はあると思う。だけどあんまり落ち込まないでほしい……今回がダメだったからと言ってまた次の機会が来るかもしれないのだからな」
「そうだよ三日月ちゃん。だからそんなに落ち込まないでね?」

司令官と瑞鳳さんが私を気遣う言葉を言ってくれている。
それだけで私は改二になれないショックよりも安心感を感じていた。
ああ、私は司令官たちに大事にされているんだ……という嬉しい気持ちが少しばかり溢れてきていた。
それなのでその思いを伝えるべく、

「大丈夫ですよ司令官に瑞鳳さん。私はそれくらいでは落ち込みません。他の姉妹に改二が回ったと考えればむしろ嬉しいです。今回は私の努力が足らなかった……そう考えておきますね」

私がそう言った瞬間、司令官は「やっぱりそう感じるんだな」と言った後に、

「望月、卯月。三日月はこんな反応をしているけどやっぱりどこかショックは感じているだろうから後でそれとなく頼むよ」
「あいよー。三日月は溜め込みやすいからなにかで発散させておくよ」
「うーちゃんもなにか三日月にできることをするぴょん」

……どうやら私がショックを隠しているように感じられてしまったようです。
まぁそんな司令官の気遣いも嬉しいですから心に刻んでおきますね。
改二になれないのは少し悲しいけど……でも私は大丈夫です。
ですからこれからも期待していてくださいね、司令官。
私は口には出しませんでしたがそう思いました。


 
 

 
後書き
運営の無慈悲な三日月には改二に来ないという発表でしたね。
まぁそれで他の子に絞られてきましたけどまだまだ誰かはわかりません。
どうかヒントをー……。



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0096話『球磨の気持ちの整理』

 
前書き
更新します。 

 




むっふっふ……。
ついに来たクマ。
今日は球磨の進水日と同時に大本営が何かしらの発表をする日クマ。
定例でいけばみんなの夏水着が公式に解禁されるクマ。
だからだとは言わないけど球磨にも公式の水着を大本営は提供してくれないクマかね?
そこで球磨の部屋でくつろいでいる多摩に話を聞こうと思っている。
きっと多摩がいるのは球磨がどこかに行かないか監視をしている為クマ。
姉思いの大井に北上、木曾はきっと今頃サプライズの準備をしているクマ。
球磨は知っているクマよ?
だから今日は一回も顔を合わせていないんだろうクマね。

「なぁ多摩よ。少しいいクマ?」
「……ん。なんにゃ?」

多摩は気怠そうにこちらに振り向いてくるクマ。
そのまなざしはどこか深淵を感じさせられる深い感じがするクマね……。
イカンクマ。
そんな錯覚を感じている暇はないクマ。
それで手っ取り早く用件を言おうと思ったので、

「今日は大本営がなにかしら大々的に発表をする日クマね?」
「そうだにゃ」
「それでもしかしてだけど球磨にもなにかしらゲームで言う所の限定グラがあるかもしれないクマね」
「夏の水着modeだにゃ。今年は誰が増えるのか楽しみだにゃ。でも結構融通されている球磨型でも厳しいものがあると思うにゃ」
「やっぱりそう思うクマ?」
「うむ。球磨に多摩はあれだけど結構グラはあったけどだからと言ってそういくつも増えるものじゃないにゃ。第七駆逐隊でもあるまいしにゃ」
「そうクマかね……」

多摩からそう聞いて思い出す。
思えば第七駆逐隊の面々はかなり優遇されて居るクマよね。
さすがの球磨も嫉妬をしてしまうほどにはグラの数があるクマ。
漣の「キタコレ!」という余裕ぶったセリフが頭を過ぎていくクマ。
うん……。今度漣をいたぶってやろうかクマ。
今後の漣への憂さ晴らしが決定した日だった。
どこからともかく『ガーン!』と言った漣の声が聞こえてきたような気がするが無視するクマ。

「まぁ、いいクマよ。今夜の大本営の発表ですべてが決まるクマから今から焦ってももうどうにもならないクマ」
「そうだにゃ。時の流れに身を任すにゃ」

ごろにゃんと多摩はそんな猫のような仕草をした後にまた寝転がってしまった。
扇風機に顔を向けてずっと「我々は猫だにゃーーーーーー………」と言って遊んでいるクマ。
ちょっ! 多摩、少し邪魔クマ。お姉ちゃんに風が来なくなってしまうクマ!
暑いクマ!
そんな感じで多摩と扇風機の取り合いが勃発していたのはまぁいいクマ。

それと話は変わるけどこの夏に改二が追加されると聞いたクマがもしかして明日にでも海外の大型正規空母のおそらくサラトガが改二になるクマかね……?
提督の話によると大本営はまだそんな気配は漂わせていないというけど最近の大本営はサプライズ発表をする事が多いから油断ならないと提督は言っていたクマ。
それでもう一度多摩にその件を聞いてみることにしたクマ。

「なぁ多摩。話は変わるけど今日にも改二が来ると思うかクマ?」
「いきなりの質問だにゃ。まぁ、だけどタイミング的には大規模作戦の前にやるとしたらもう今日くらいしかないからきっとなにかしらの発表は付き物だにゃ」
「そうクマよね。今日か明日にでもサラトガが改二になるとしたら大規模作戦では大々的に最終局面で活躍する未来を勝ち取ったようなものクマ」
「そうだにゃ。多摩達も大規模作戦で活躍したいにゃ……」

それで多摩はどこか寂しそうに「にゃー」と喉を鳴らしていた。
うむむ。確かにそうだクマ。
大規模作戦で最後の海域で華を飾るのは誰もが夢見る舞台クマ。
だけど提督の事だからきっと今回も榛名のために自身が旗艦を務めるだろうことは予想に難しくないクマ。
前回の大規模作戦で味を占めたわけでもないと思うクマけどこの世界に来る前から提督はずっと榛名を第一艦隊旗艦として置いていたクマ。
だからまた提督が出撃したら大破して帰ってくる事態になったら鎮守府の空気が少し悪くなるから勘弁してもらいたいクマ。球磨も心配するクマよ?
まぁ、きっと提督はまた大本営から頼まれるかもしれないなとという諦めの感情もあるだろうと思うクマよ。

「なぁ多摩。提督はまた出撃するクマかね?」
「多分するにゃ……。もう一回は覚悟を見せてしまったからには大本営もきっとまた提督を出撃させようと躍起になると感じると思うにゃ」
「そうクマね……。だけどもし提督が前みたいに大破したらと考えると胸が締め付けられるクマね」
「そうだにゃー……あの思いはどうにも勘弁にゃ。おもに駆逐艦のほとんどが涙目になっていたのが印象に残っているからにゃ」

そうだクマ。
あの時は酷かったクマ。
北方水姫との戦いで気を失って自力で航行不可になった提督を大和が担いできた時にはもう、なんというか心がざわついたクマからね。
あんな思いをまた体験すると思うと嫌だクマ。
だけど提督の事だからきっと球磨たちのために頑張るんだろうクマね。
だから少しでもカバーできるように球磨たちもさらなる力をつけないとクマ。


……まぁそんな感じで話しを戻すクマけど、そして第二艦隊旗艦は場合にもよるけどおそらく阿武隈が投入されるんだクマね、きっと。あるいは由良か……?
そう考えると球磨も早く改二になって木曾たちのように雷巡にでも大規模改装して活躍したいものだクマね。
球磨型のうちの三人が雷巡へと艦種を変えたんだから残りの球磨と多摩には雷巡にしないという事はないだろうクマからね。
でも、改の状態でも十分戦力になる球磨ちゃんだから提督に頼み込めば活躍もあるやも知れない。

「いざとなれば提督に直訴することも考えるクマね」
「それはいいね。それで出撃できれば多摩達の株も上がるかもしれないにゃ」
「だから、いつか球磨たちも改二になりたいクマねぇ」
「そうだにゃー」

それで多摩とともに何度目かになる溜息をつくのであった。
それで部屋で寛いでいると自然と北上達三人がケーキを持ってやってきたので自然と口元が吊り上がる球磨の姿がそこにあったクマ。
いや、姉思いの妹たちをもって球磨は果報者クマね。
そんな感じで球磨の進水日のお祝い会は進行されていくのであったクマ。


 
 

 
後書き
球磨の進水日にメンテ……なにかを勘ぐってしまう私がいます。
サラトガは果たして今日にでも来るのか来ないのかメンテ明けを少し楽しみにしています。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0097話『夏になった鎮守府の任務』

 
前書き
更新します。 

 




大本営から正式に今年の夏水着の告知が届いた。
だけど残念なことに改二の情報はなかったためになにやら球磨がサラトガになぜか「ドンマイクマ」と言って肩を叩いていたとか……。
球磨とサラトガの間に何があったのか知らないけど、まぁ改二が来なかったのは残念な結果であった。
まぁ、

「そうだな。大淀、今回追加された新任務をやっていくとしようか」
「はい。提督」

それで新たに追加された任務に目を通していくのだけど……、

「しかし、まさかついに戦闘食糧が改修できる日が来ようとはな」
「驚きですよね。報告によりますと改修には戦闘食糧が必ず一個は必要だそうですが代わりに☆6まではネジは要らないそうです」
「そうなのか?」
「はい。明石がそう言っていました」

それを聞いて思った。
倉庫に無駄に貯まっている戦闘食糧を消費することで毎日の改修の任務でネジが確実に一個は手に入る時が来たんだなと。
ネジ難民としては嬉しい限りだな。
それで手っ取り早く私は『新型戦闘食糧の試作』という任務を済ませて『戦闘食糧(特別なおにぎり)』を手に入れた。
手に入れたんだけど、やっぱり戦闘食糧をあまり多用しない私としては倉庫に備蓄するしかないんだよな。

「この戦闘食糧はやっぱり倉庫に眠らせておくしかないようだな」
「そうですね。使われる機会が来ればよいのですが……」

それで私と大淀は仕方なく腐らないように冷凍保存をしておくことにしたのであった。
さて、それでは気を取り直して次の任務といこうか。
次の任務は『民生産業への協力を継続せよ!』というやつだ。
以前に小口径主砲を提供する形になったけど今回は機銃を十個贈るらしい。
なにやら闇取引をしているみたいで気が引けるけどやるしかない。
鋼材が15000も消費するのは少しいただけないけどまた勲章が手に入るのは嬉しいのでさっそく機銃を解体して民生産業へと送る事にした。

「しかし、最近の勲章のありがたみが薄れてきているのはどうしてだろうか……?」
「提督。深く考えてはいけません。これも立派な企業への投資としての任務なのですから勲章をもらえるのもありがたいのです」
「そうだな。そう考えておくよ」

また気を取り直して次の任務へと取り掛かる事にした。
次はやっと出撃任務である『強行輸送艦隊、抜錨!』というもの。
でも、これは場所は鎮守府近海航路なのは別にいいのだけど航空戦艦二隻を含めた編成か。
私としては今までずっと水雷戦隊編成でクリアしていたからどうにも試したことがないルートに少し怯んでいるのかもしれない。
だってなぁ、話によると航空マスが二回あって潜水艦も結構いるっていう話で大破撤退が多いっていうもっぱらの噂だからな。

「とにかくやるしかないか。大淀」
「はい。なんでしょうか?」
「まずは航空戦艦二隻を扶桑と山城の二人に入ってもらおうと思っているので招集を頼む」
「わかりました。他はどうしますか……?」
「そうだな……。対空要員に摩耶と秋月を、後は千代田を入れて航空優勢を取りに行きたい。最後に大淀、主砲を載せつつソナーを積んで対潜をやってくれないか?」
「わかりました。それでは私を含めた六名をすぐに招集しますね」

それで大淀は電話を取って各自の部屋へと連絡をしていった。
それからしばらくしてメンバーが揃ったので、

「さて、みんな。集まってもらったのは他でもないんだけど新たな任務で鎮守府近海航路にこのメンバーでいってもらう」

私がそう言った瞬間大淀以外は少しどよめいた。
そりゃそうか。
指定した装備は明らかに高練度海域を指定したものなのだから。

「あのさ提督? さすがに近海航路だとあたし達の今の装備じゃ楽勝じゃないか……?」
「やっぱりそう思うんだな摩耶は。しかし、今まで一回もこの編成で行った事がないから分からないと思うが二回の航空戦がありそこで大破させられる事が多いと聞く。さらには潜水艦も結構当てて来るらしいのでできれば用心してほしい」
「あたしと秋月の対空装備でもきついのか……?」
「おそらくな」
「そうなのですか……秋月、用心してかかります!」
「そうだなぁ。いっちょやるか!」

それで摩耶と秋月は気合を入れていた。

「……ああ、ですから私と山城には晴嵐を積んだのですね」
「確かに納得ですね。航空戦で少しでもお役に立てればいいのですが……」
「そこらへんは臨機応変に頼む」
「それじゃ千代田はとにかく制空権を取るのに努力するね」
「ああ。よろしく」
「それでは提督。行ってまいりますね」
「おお。道中気をつけてな」
「はい」

それで大淀達は鎮守府近海航路へと出撃していった。
……のだけど、最初の潜水艦はやり過ごして艦隊戦もなんとかなったんだけどさっそく一回目の航空マスで大破者が続出する騒ぎになっていた。
無線先で旗艦の山城が、

『提督……何名かが航空戦で大破しました。撤退しますね』
「ああ。分かっていた事だけどやっぱり大破者が出たか」
『はい。手ごろな海域だと舐めていたのもあるのでしょうが油断なりませんね』
「その通りだ。だからもっと気を引き締めてかかっていってくれ」
『わかりました。すぐに帰投して入渠した後に再出撃しますね』
「わかった」

それで山城との通信が切れた。
ううむ。やっぱり航空マスで大破が出るか。
意外にやっかいだな。
摩耶か秋月を抜いてもう一隻軽空母をいれるのもありだけどそうすると防空が心配になってくるからな。
とりあえずこのまま頑張ってみるか。
それから山城たちが出撃する事、五回ほど。
それでなんとか二回は輸送マスへと到着することが出来たのでよかったのだけど鎮守府近海航路のもう一つの顔を見た感じだったな。
それと話は別になるのだけど、その後の任務である『前線の航空偵察を実施せよ!』というグアノ環礁沖海域への出撃は神通と阿武隈が頑張ってくれたおかげですぐにクリアできたことをここに記しておこうか。
今回の大本営の情報で神通の火力がアップしているという報告があったから試しに行かせてみたらすごい威力を出していたからな。
さすが神通、やってくれるな。


 
 

 
後書き
1-6 出撃編成

山城改二   41㎝三連装砲改、アイオワ砲、一式徹甲弾、試製晴嵐
扶桑改二   試製41㎝三連装砲、アイオワ砲、一式徹甲弾、試製晴嵐
大淀改    SKC34 20.3㎝連装砲×2、零観、三式水中探信儀、Bofors
摩耶改二   SKC34 20.3㎝連装砲、12.7㎝高角砲+高射装置、零観、FuMO25 レーダー、25㎜三連装機銃 集中配備
秋月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改、ポンポン砲
千代田航改二 村田隊×2、岩本隊、彩雲

6-3 出撃編成

千歳甲   試製晴嵐、晴嵐(六三一空)、甲標的
阿武隈改二 甲標的、SKC34 20.3㎝連装砲×2、ポンポン砲
神通改二  SKC34 20.3㎝連装砲×2、夜偵
朝潮改二丁 10㎝連装高角砲+高射装置×2、四式水中聴音機
夕立改二  10㎝連装高角砲+高射装置×2、33号対水上電探、Bofors
初霜改二  10㎝連装高角砲+高射装置×2、33号対水上電探、25㎜三連装機銃 集中配備



今回は初めて1-6の上ルートをいきましたが大破撤退が多かったイメージですね。
たまにル級もいるパターンがあってそこで必ず大破させられていましたのでイライラが溜まりましたね。
文中には書きませんでしたが遠征の任務はおにぎりだけとかいう……。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0098話『鉄骨番長』

 
前書き
更新します。 

 



「提督提督ッー!」

朝一番でいきなり誰かが私の寝室のドアを叩いてきた。声からして明石か……?

《ふぁー……提督、何事でしょうか……?》
「さぁな」

榛名の眠さのボイスで癒されて覚醒しながらも突然の対応に困っていた。
それで私達は少し訝しみながらもドアを開けて明石を中に入れる。

「提督! 榛名さん! おはようございます!」
「ああ、お早う」
《おはようございます、明石さん。ところでこんな朝早くからどうしました……?》
「まさか夜の哨戒をしている川内達になにかあったのか……?」

それで少し心配になる。
なにか異変があればすぐに誰かが知らせに来るものなのだがとうとう何かが起こったのかと不安になっているが、明石はそんな事など一切知らないようで、

「いえ? なにもありませんでしたよ? 自室に眠りに行く川内さんの姿なら見ましたけどね……」
「そうか。何事もないならそれでいいんだけど……」
「ところで提督? 私、どこか違うような感じしません……?」

明石がそんな事を言い出してきた。
ふむ……明石の恰好がどこかいつもと違っているな……そう、

「瑞雲祭りの法被、か……?」
「そうです! ついにうちでも瑞雲祭りでの恰好が許可されたんですよ!」

それで明石は嬉しそうな顔をして喜んでいる。

「そうか。明石もついに瑞雲教に入ったんだったな」
「いえいえ。そんなことはありませんよ? ただ私は楽しめればそれだけでいいんですよー」
「そんな事を言って後で日向に聞かれてみろ。すごい目つきで睨まれるぞ?」
「そこは御安心ください。日向さんには悟られないようにしますから!」

そう大見得を切っているけど大丈夫かなと思っている矢先に、

「それよりちょっと見てくださいよ! 衣装に合わせてどういう原理か分かりませんけど私の艤装も少し変化したんですよ!」

そう言って明石は艤装を顕現させる。
光りがおさまるとそこにはいつもの艤装とは異なった形のものがあった。
そう、それはいわゆる『鉄骨番長』と呼ばれるアトラクション……その艤装バージョンである。
前にも話したと思うけど明石のその艤装で妖精さん達を遊ばせることも可能なのである。
その目的が遊んでいる妖精さんを見れる提督候補の人材を探る事にも含まれているために一部ではあまりお勧めはされていない。
なぜかって……妖精さんが見れるだけで将来がほとんど決められているもののようなら提督になりたくないという子も強制的に海軍に入れられてしまうかもしれないという親の心配もあるからである。
そこら辺は私も危惧している事だけど、もしかしたら近場で言えば七海ちゃんが見れるかもしれないな。
目的は変わったとはいえ将来は提督を目指している七海ちゃんだからぜひ適性検査もあるこの艤装を試してみるのもありかもしれないな。

【明石さん、その……乗せてもらってもよろしいでしょうか……?】

そこで榛名の恰好をした私達の艤装の妖精さんがおずおずと出てきたために表に出てくるのは久しぶりだなという感想を持ったのは内緒だ。

「いいですよー。ぜひ乗ってみてください!」
【ありがとうございます!】

それで妖精さんはせっせと明石の鉄骨番長へと乗り込んでいってシートベルトを装着し、

「それでは動かしますよー」
【お、お願いします!】
「はい。それではグングングルグル!」

それが掛け声なのかどうかはわからないけど明石のその言葉の後に鉄骨番長が稼働し始めて回転を始めだす。
次第に早くなっていく回転で乗っている妖精さんはというと、

【きゃーーーーー♪♪】

実に楽しそうな悲鳴を上げているのであった。

《妖精さん、楽しそうですね……》
「ああ。普段は冷静な子なんだけどやっぱりどこかでゆとりもないとな」
「提督達にも乗せてあげたいんですけど本場の場所までいかないとさすがに無理ですから、すみません……」

それで明石がぺこりと頭を下げてきた。

「いや、明石が謝る事じゃないよ。だいたいこれでも一応は海軍に身を置いているんだからそんな簡単に遊びに行けるとは思っていないし……だから気にするな」
「はい……」

明石とそんな話をしながらもいつの間にか鉄骨番長は終了していたために動きが停止していた。

「妖精さん、どうでしたか……?」
【はぁー……楽しかったです。もっと乗りたいと具申します】
「ふふ。わかりました。それじゃ後で妖精さんの集まりにも言っておきますね。榛名妖精さんの感想は乗り心地はよかったって」
【はい。こんな楽しい乗り物は私だけが独占するのは気が引けます。他の皆さんにも楽しんでもらいたいものです】
「そこまで気に行ってくださるなんて……嬉しいです。それでは明石の工廠へとまた来てくださいね。順番待ちにもなりますが期間中はいつでも乗れるように私も手配しておきますので」
【はい。よろしくお願いします】
「それでは提督、榛名さんもまた工廠へと来るのをお待ちしていますね。それと……」

最後に明石が何かを言いかけて取り出したのはカメラであった。
何をする気かな?
私がそう思う前に明石は私に向けてパシャリ!と写真を撮った後に、

「提督の寝間着の姿、頂きました。では失礼します!」
「まっ!? その写真をどうする気だ!?」
「安心してください。悪用はしませんから―……」

明石の声は次第にフェードアウトしていった。
それで私は油断して事を迂闊に思いながらも、

「明石にはしてやられたな。まさか青葉みたいに使われないよな……?」
《多分大丈夫じゃないでしょうか……? 明石さんの事ですから青葉さんみたいに……ならないといいですね》
「榛名。声が上ずっているから自信がないなら無理に言わなくてもいいからな?」
《はい……すみませんでした。でも、提督と一緒なら榛名は大丈夫です!》

そこで榛名の決め台詞を言われたらどうにも大丈夫そうに聞こえてくるのは謎だけど、大丈夫だろうと思ってしまう効果がある。

「ま、なるようになるか。さて、それじゃさっさと着替えて食事を摂った後に今日の任務をやりにいこうか」
《はい、今日も榛名は提督のお役に立ちますね!》

それで私は着替えて執務をしに元気に今日も頑張っていこうという気分になっていた。





……ちなみに提督の写真は提督LOVE勢に高値で取引されていたとかなんとか……。
そして工廠では非番の妖精さん達が結構な列を成していたと記載しておこう。


 
 

 
後書き
鉄骨番長modeの明石さんから書いてみました。
明日は速吸にでもしましょうかね?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0099話『畑仕事の合間の補給』

 
前書き
更新します。 

 





今日からまた新たな野菜を育てようと考えている。
畑仕事での仲間も何人か増えたので嬉しい限りだ。
元からいた武蔵、天龍、瑞穂に神威、清霜以外に早霜に長波、高波、速吸の四人が新たに加入していた。

「四人とも、畑仕事にようこそ。歓迎するよ」
「おう! 提督の炒飯にも期待しているからね!」
「た、高波も頑張るかもです!」
「……早霜も、お役に立ちます」
「速吸はおもに皆さんの補給に回りますね!」

事前に汚れてもいい服装に着替えてきてもらっていた四人はそれで元気よく答えていた。
うむ。元気があって大変よろしい。

「それじゃさっそくだけど始めるとするか。長波の希望もあってネギを新たに育てようと考えているんだ。本来は八月から苗つけをしていくものだけど最近はそんなに雨も降らないから今から育てれば秋ごろには収穫ができるだろうと思っている」
「提督よ。それでは早く植えても大丈夫なのか……? 痛むかもしれないぞ?」

武蔵がそう聞いてくる。
まぁ武蔵の意見も分からなくはない。

「今回はあくまで試験的な意味合いもあるからな。瑞穂たちが梅雨に植えていた野菜の経過も一緒に見る感じで一角にネギの場所を確保してもらった」
「なるほど。それなら心配ないな」
「ああ。八月になればさらに植え付けが出来る野菜が増えるけどちょうど大規模作戦に突入してしまうから忙しくなってくるから今いるメンバーで交代制で経過を見ていこうと思っている」
「そっかー……もうそんな時期なんだよね」
「ああ。のどかな時間が続いているから忘れがちだけど一応は戦争をしているんだよな」

それで清霜と長波がしみじみと呟いていた。

「その通りだ。最近は深海棲艦も活性化してきたという報告を川内に聞いているから備蓄もしっかりしておかないとな」
「とか言って提督。一昨日はサーモン海域北方を攻略していたよな? それに今日もKW環礁沖海域を攻略するつもりだろう? 大丈夫なのか……?」

天龍にそう突っ込まれる。
確かにそうだけどまだ八月までは半月はあるからなんとかなるだろうと私は考えている。
そこら辺をうまく伝えると天龍も納得したのか、

「わかったよ。まぁそこら辺は提督の責任って事で考えとくわ」
「はは、手厳しいな」

そんな話をしながらも私達はそろそろ畑を耕す作業へと移行していた。
不要な部分の枝を切ったり水やりなどをやったり他にも色々……。
地味な作業だけどそれでも一つ一つが大切な作業だから手を抜くことはできないのが畑仕事の難しいところだ。
あ、そうだ。後で粘り強さがモットーのザラでも畑仕事に誘ってみようかな?
イタリアの野菜のあれこれを学べるかもしれないし……。

「……そう言えば、司令官」
「ん? どうした早霜?」
「はい……。最近なのですが暁さん等第六の駆逐艦の子達がアサガオを作りたいとか言っているのですが、司令官、あとでお手を貸してもらってもいいですか……?」
「そう言う話か。わかった。あとで暁たちのためにプランターとアサガオセットを購入しておくよ」
「ありがとうございます……。司令官は話が早くて助かります」
「まぁそれだけみんなも色々と興味を持ってくれているから嬉しいんだよ」

と、そこに榛名が顔を出してきて、

《早霜さん。提督は皆さんの思いを大事にしていますから出来ることはしてあげたいんですよ》
「榛名さん……。その気持ち、少し分かります……」

それで早霜は微少だけど笑みを浮かべていた。
うん。あの早霜から笑みを見ることが出来るんなら誘った甲斐があったな。
誘ってくれた清霜には感謝だな。

「提督さん! それに皆さん。そろそろ休憩にしましょう」
「わかったよ、速吸」

それで私達は一度作業を止めて木陰へと入っていって椅子に座る。
そこに速吸が笑みを浮かべながらタッパを持ってきて、

「はい提督さん。それに皆さん。レモンのはちみつ漬けを作ってみたんです。よかったらどうぞ!」
「「「おー!」」」
「美味しいな!」
「とっても甘いかも!」

みんなが喜んでいる中で私も速吸が作ってきたというレモンのはちみつ漬けは一口口に含むと一気に味が浸透してとても美味しいな。

「もう! 速吸さん! 私も作ってきたんですから持ってきますね!」

そう言って神威もなにやら作ったらしくその後に少しゲテモノが出てきたけど美味しく頂かせてもらった。

「さすが補給艦の二人だな。抜かりはないみたいだ」
「はい! この日のために神威さんと一緒に色々と作ってあるんです。また次は色々なものを持ってきますね。ご期待ください」
「ああ。期待しているよ。……ところで速吸こんな時だけどその恰好は暑くないか……?」
「はい……?」

それで速吸は首を傾げている。
こんな時というのは速吸は今日は瑞雲祭り仕様のジャージを着ているのだ。
それで太陽の日差しもあって暑くないかなと言う感じである。

「あ、大丈夫ですよ提督さん。意外とこの恰好は普段の恰好とそんなに大差はないんですよ?」
「そうか? それならいいんだけど暑かったらすぐに脱ぐんだぞ?」
「はい、わかりました」

速吸はそれで腕をキュッと引き締めて大丈夫アピールをしていた。
うん、この調子なら大丈夫かな?

「さて、少し休んだことだしそれじゃ再開するとしようか」
「「「わかりました」」」

それでみんなと午前中いっぱいは畑仕事をしているのであった。
午後になれば艦隊運営をする予定なのでちょうどいい具合の疲労感だろうな。
一回お風呂にでも入ってくるかと考えていると、

「提督よ。どうだ? 一緒にお風呂でも入らないか?」

武蔵からそんな事を言われた。
うん……やっぱり男として意識はあんまりされていないようで少し悲しいけど断るのもなんだから、

「わかった。それじゃ午後に備えて汗を流してくるか」
「うむ。そうするとしようか」
「あ! 清霜も入る!」
「あたしも入るぜ!」
「長波姉さまが入るなら私も入るかも!」

それで次々とお声が上がり結局は全員でお風呂へと入りに行くことになってしまっていた。

「……うん。分かっていた事だけどみんな、私が中身が男だって分かっているんだよな?」
《あはは……分かっているからこそ安心して入れるのではないでしょうか? 提督は酷い事はしませんっていう事はみなさん分かっていますし……》

榛名の言葉に少し気持ちが回復してきたので、

「ありがとう、榛名。少し気持ちが回復した」
《このくらいならお役に立ちます》

それでみんなでお風呂で汗を流しに行くのであった。


 
 

 
後書き
結構な人数出したので速吸メインにできませんでしたね。
まぁ出せたからいいか。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0100話『オペレーション・チャーハン』

 
前書き
更新します。 

 

新たな日が昇る前にとある二人は食堂へとやってきていた。

「ふふふん! きらりーん☆ それじゃ始めよっか、長波ちゃん」
「はいはい。………もう、声がでけぇっつうの阿賀野さん」

そう、食堂へと入ってきていたのは阿賀野と長波の二人であったのだ。
なぜ二人がこんな朝早くに食堂へとやってきたのかというと……、

「もう! 長波ちゃん、そんなことじゃ全国にいる私達に笑われちゃうよ? 作るんでしょう? チャーハンのおにぎりを……」
「そうっすけど……はぁ、なんでこんな事になったのか」

それで長波は少しばかり回想をする。
それはほんの出来心だった。
明日からあたしと阿賀野さんにちなんだおにぎりが全国で発売されるって……。
しかも先行で戦闘食糧を炒めることでうちでももうそのおにぎりはゲットしているという。
なるほど……工廠ではなく食堂でなにかをやっていたのはそれだったのかと。(実際、今後は工廠で改修をするからいい匂いがもしかしたら漂ってくるかもしれない……)
なにより青葉さんの情報では全国で発売するおにぎりのタイトルが『長波サマも大満足! 提督の大きな炒飯おにぎり』という少しこっ恥ずかしいものが発売されるとかなんとか……。
それならあたしでも作れるようにならないとなと奮起したところを阿賀野さんに目撃されて現在に至るという……。
なぜ阿賀野さんもこんなに協力的なのかというと特別なおにぎりにも妖精さんがついていてその妖精の姿が阿賀野と長波にそっくりなのだという。
だからか余計に一緒に作りたいという感じなのだそうだ。

「話は分かったっすけど、阿賀野さんって料理ってできましたっけ……?」
「え? ううん、まったくできないよ。てへっ☆」

あっけらかんとそう舌を出して言う阿賀野に長波はつい眩暈が起きそうになるのを必死に我慢しながらも、

「そ、そうっすか……それじゃ参考書を片手になんとか頑張るしかないか」
「うん、そうだね!」

阿賀野のどこからそんなに無駄な元気が湧いてくるのか長波には理解できなかった。
だけど手伝ってくれるに越したことは無いんだから今は手を借りるしかない。
それで二人は手頃な調味料とご飯を取り出そうとするのだがそこに声が響き渡る。

「こらー! 勝手に食堂をいじっちゃダメよ!」
「ダメですよー!」

そこには食堂を任されている間宮さんと伊良湖さんの姿があった。
それで阿賀野は慌ててしまい、長波はそんな阿賀野の手を取りながらも、

「す、すみませんでしたー!」
「ご、ごめんなさいぃ!」

二人は速攻で謝っていた。
そんな二人の姿を見て間宮は「もうっ、しょうがないですねぇ」と言った後に、

「それでは阿賀野さんに長波さん。どうして急に食堂へと侵入していたのかを説明してくれませんか?」
「そ、それはー……」

間宮の追及の言葉に思わず阿賀野は目を泳がせる。
だけど長波の方はもうあらかた諦めている為に、

「ごめんなさい、間宮さん。でもちょっと悔しかったんだ」
「悔しい、ですか……?」
「うん。今日から海軍が全国のコンビニとコラボするっていう話があるだろう? それであたしもどうにかして特別なチャーハンを作りたいと思ったんだ」
「ああ、例のあれですね。知っていますよ。そうですか……わかりました。それではお二人とも、朝の食事の時間が終わりましたらまた来てください。私と伊良湖ちゃんでお二人に指導しますね。ね、伊良湖ちゃん」
「はい。私達でお教えしますね」
「ほんとか!?」
「きらりーん☆ やったね!」

間宮の言葉に二人は思わず嬉しい声を上げていた。
だけどそこで終わるほど話は早くない。

「ですが……勝手に食堂を使おうとしたのは見過ごせませんので反省の意味も含めて掃除の手伝いをしてもらいますからね?」
「うげっ……」
「ガーン……」

ただでさえ大勢の艦娘が食事をする場所だ。
それだけ中は広いのだ。
それを掃除するとなるとかなりの労力になる。
まぁ、それを鎮守府周辺に住む地元の人達の手伝いもあるけどだいたいは間宮と伊良湖の二人で切り盛りしているから頭が上がらないのは明白だ。
二人はしぶしぶだけど頷くしなかったのであった。

「わかりましたぁ……」
「頑張りまーす……」
「はい。それではこれでお話は終わりです。朝の支度を始めますのでお二人は一度出て行ってちょうだいね」
「「はーい」」

それで食堂を出される二人。
二人は顔を見合わせながらも、

「まぁ当然の報いとして受け入れるしかないよなぁ阿賀野さん」
「そうだねぇ……」

二人はとぼとぼと食堂の始まる時間まで時間を潰していたのであった。
そして少し時間は過ぎて朝食後に二人は再び食堂へと顔を出していた。

「はい。それでは今からお二人にチャーハンおにぎりの調理法を教えますね」

間宮は笑顔でそう言った。
間宮の隣では伊良湖が拍手をしていた。

「「お、お願いします!」」
「はい。それと二人ともやる前からそう肩に力を入れないの。自然体でやりましょうね」
「それとゲストとして提督さんもお呼びしていまーす!」
「「えっ!?」」

伊良湖のセリフの後に提督が食堂へと入ってくる。

「はは。まぁこんな事だろうとは思ったけどまさか二人が食堂に忍び込んでいるとは思わなかったよ」

どうやらすでに事態は把握済みらしい。
それで長波は深いため息を吐きながらも、

「なんか、少し脱力した感じだな」
「阿賀野もちょっとそんな感じかも……」
「まぁまぁそう言わずに。提督がお二人の味を採点してくれるそうですから元気出して!」

間宮が二人を元気つける。
そこに提督も続くように、

「まぁ美味しいものを期待しているよ二人とも」
《頑張ってくださいね、お二人とも》

それで長波は頭を掻きながらも、

「仕方ないな。提督に榛名さんに応援されちゃ頑張らないといけないよな」
「阿賀野も頑張るよ!」
「その意気ですよお二人とも。それではまずはチャーハン作りから始めていきましょうか」

それで始まる間宮のチャーハン調理法。
二人は意外に集中力があったためにチャーハン作りに関してはなんとなくできていた。

「うん。お二人は意外に筋はありますね。チャーハンに関しては合格です。でも次は難しいですよ? チャーハンはパラパラしていますからおにぎりにするにはちょっと手間が必要なんですよ」

そう間宮は言いながらもチャーハンからどうやっておにぎりにするのか丁寧に説明していき、二人はそれで初めて作ったにしては少し不格好だけどそれでも見た目は悪くないチャーハンおにぎりが出来上がっていた。

「はい。お二人とも、よくできましたね。形はまだまだですけどしっかりと出来ていますよ」
「あははー……。意外に集中力が必要だったな」
「阿賀野、もう疲れたよう……」
「それでは提督。お二人のおにぎりを試食してみてください」
「わかった」

それで提督の前に差し出されたおにぎりを提督は口に入れていく。
それを固唾をのんで見守る長波と阿賀野。
そして、

「……うん。二人とも美味しいよ」
「よかったぁ……」
「やったぁ……」

提督のその言葉に安堵の息を吐いた二人だった。

「これなら練習すればもっとうまくなるんじゃないか?」
「そ、そうかな?」
「ああ。間宮さん達も試食をお願いします。美味しいですよ」
「わかりました」
「それでは失礼しますね」

それから二人の作ったおにぎりはみんなで美味しく試食していったのであった。
そして自身がついた二人は姉妹たちに作ってあげる事にしたのであった。
だけど阿賀野に関しては能代達には信じられないといった顔をされたとかなんとか……。


 
 

 
後書き
第100話目になる話は長波と阿賀野に務めてもらいました。
コラボの商品は買えるか不安ですけど頑張ります。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0101話『何にでも挑戦したいお年頃』

 
前書き
更新します。 

 



昨日から始まった海軍と某コンビニのコラボ企画ですでにグッズが色々と売れていて大はつかないけどそれなりに盛況らしい。
それは私の鎮守府がある地元のコンビニでも同様でありうちでも今回のコンビニの目玉である艦娘が大本営直轄から派遣されることになっている。
派遣される艦娘は少し不安が残るけどポーラだという。
それでうちのポーラもやりたいやりたいと今現在執務室で駄々をこねているんだけどどうしたものだろうか……。

「提督~。ポーラもコンビニ体験をしたいですよ~」
「そうは言ってもな。大本営からすでに別のポーラが着任しているから今回はお前の出番はないぞ、ポーラ」
「そんな~。ひどすぎです~」

それでポーラが泣きそうになっているのを見て良心が掻き立てられるが我慢だ。
ここでポーラを解放してしまったら迷惑がかかるかもしれないからだ。
ただでさえコンビニにポーラが行くものなら仕事中にコンビニのお酒を飲みだしてしまうかもしれないという危機感があり、主にうちのポーラは派遣はされないというのにザラがお腹を痛めているのが主に挙げられる。

「別の私、いいな~。ポーラもコンビニで働いてご褒美にお酒を頂きたいです~」
「……そう言う所があるからあまり今回は派遣に大本営も前向きじゃないんじゃないか?」
「え~? そうですかね~?」
「そうよ!」
「「ッ!?」」

っと、そこでいきなりどこに隠れていたのかザラが顔を出してきた。
どこに隠れていたんだ……?

「ポーラ? 何事も節度というものがあるのよ? あなたがコンビニで働くと思うと私、心配になっちゃうわ」
「ザラ姉様、大丈夫だよ~。ポーラ、しっかりとやるから~」
「だからな、ポーラ? お前は派遣されないからな」
「え~?」

なんだこの堂々巡りは……。
ポーラは言われたことを忘れてしまう子だったのか? いや、ただ酔いが回っていて正常な判断が出来ていないだけなのだろうか……?
そう考えると、

「なんだろう……? 私も今物凄く心配になってきたんだけど……」
「提督もそう思いますか? はい、私のポーラじゃないですけどぜひ確認に行きたいものです!」

ふんすっ!とザラは握りこぶしを作っている。
そこまで心配なら見学に行くのも吝かではないけどそのうち情報が伝わってくるだろうしな。
そんな話を午前中にしている時であった。



それから午後になって今日の任務を確認している時だった。
執務室の扉が開かれて入ってきたのはまたしてもポーラだった。
だけどいつもの恰好ではなかった。

「じゃ~ん。提督~、鹿島さんから制服を借りてみました~。どうですか? 似合いますか~?」

そう、ポーラは某コンビニの制服を着ていたのだ。
鹿島とポーラは体型は似ているからちょうどいいのだろうな。

「まぁ似合っているよ」
「やった~。それじゃこのままちょっとマミーヤまで行ってきますね~」
「待った。間宮で何をするつもりだ……?」
「なんですか~? お手伝いに決まっているじゃないですか~」
「そ、そうか……。ポーラから自発的にやりだすというのはにわかに信じられないけど今回は少し頼もしさを感じるな」
「そうでしょう~。それではなんにでも挑戦したいお年頃のポーラ。行ってまいりま~す」

そう言ってポーラは執務室を出て行っておそらく間宮に向かったのだろう。
不安だ、不安だけど……自発的にやりだしたのなら止める術はないんだよな。
飽きるまで待つのもありだろう。
間宮さんもなにか不祥事をポーラが起こしたら止めるだろうし。
それで一応は様子見をすることにしたんだけど、そこで榛名が出てきて、

《提督……なにやら嫌な予感がするのは私の気のせいでしょうか?》
「榛名はそう感じるんだな。うーん……やっぱり一回見に行ってみるかぁ……」

それで私は少し重く感じる足をなんとか進めて間宮へと向かうのであった。







もう、ザラ姉様も提督も失礼です~。
ポーラだってやる時はやるんですよ~?

「マミーヤさん。ちょっといいでしょうか~?」
「あ、はい。なんでしょうか、ポーラさん。……あら、その恰好は?」
「はい~。鹿島さんに借りてみたんです~。それでせっかくですからマミーヤさんのお手伝いもしたいと思っているんですよ~」
「そうですか。でも今は別段忙しくないんですが、どうしますか……?」
「そうですね~。それでは店番をやってみたいです~」
「店番をですか。構いませんよ。でも勝手にお店のお酒は飲んだら駄目ですからね?」

あら~、マミーヤさんにも注意されてしまいました~。
ポーラってそこまで信用ないんでしょうか……?
少し傷つきますね~。

「ポーラにお任せください~。見事仕事を務ませてもらいます~」
「くれぐれもお願いしますね……それでは少し席を外して裏方に回っていますね」
「は~い!」

マミーヤさんはそれで少し席を外して裏に入っていきました。
さて、ポーラも頑張らせていただきますね~。
それから何人かマミーヤにお客さんが来ましたけど、来るたびに、

「あれ!? ポーラさんが店番ですか!?」

やら、

「ポーラさん……なかなかやるわね」

とか、

「さっすがやる時はやるわね。ポーラ!」

色々と言われてとても気分がいいです~。
なんでしょうか……? とっても今充実していますね~。
これが働くっていうことですか。
とても気持ちいいモノですね~。
今ならお酒を飲んだらとても美酒な気持ちになれるんでしょうね。
と、そこでポーラの禁断症状が出始めてきてしまいました。
手が……震えてきましたけど、どうしましょうか。
とても……とてもお酒が飲みたい!
ああ、お酒が飲みたい!
でも、任されたからにはしっかりとやらないと~!
ああ……でも、もう限界かもしれません……。
ポーラはそれでふらふらと目の前のお酒に歩み出そうとしてふと誰かに肩を支えられました。
誰でしょうか~?

「……ふぅ、まったく禁断症状が出るまで我慢するなんてお前らしくないぞポーラ」
「あ、提督~?」
「そうよ、ポーラ。無理はしちゃだめよ」
「ザラ姉様も……? なんで……?」

それで二人は曖昧な表情を浮かべながらも、

「ポーラが心配になってな」
「それで禁断症状が出始めたのを見てとっさに支えたのよ」
「そうだったんですか~。ポーラ、いいところを見せようとしたのにダメでしたね……」

それで落ち込みましたけどそんなポーラの頭を提督は優しく撫でてくれながら、

「いや、落ち込むことは無いぞ。真面目に取り組んでくれるポーラを見れて私は嬉しい」
「そうよ。最後は禁断症状が出ちゃったけど真面目なポーラも見れたからお姉ちゃんとしては合格点を上げたいわ」

それでザラ姉様もポーラの頭を撫でてくれました。
う~……。
恥ずかしいです~。

「恥ずかしい~! こんな時はお酒を飲むのに限ります~!」
「やっぱりいつも通りのポーラだな」
「ですね、提督」

二人は呆れていますけどポーラはこれでいいんです~。
いつも通りが一番~!


 
 

 
後書き
ポーラは果たしてコンビニ店員としてやっていけるのか……?
いつもの禁断症状が出るのが頭に浮かびますね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0102話『ラムネはいかが?』

 
前書き
更新します。 

 





八月に迫る大規模作戦を前に私は備蓄をしながらも並行して今ある任務をやっていた。
その主な任務が『戦果拡張任務!「Z作戦」前段作戦』の攻略だ。
数日前に行った『サーモン海域北方』と『KW環礁沖海域』の同時攻略で喪失してしまった資材もそこそこに回復してきたためにZ作戦を行おうとしていた。
なにかって一度はクリアした海域だからこそ大規模作戦の前の手慣らしにやっておこうという話になったのだ。
別段戦果に関しては気にしてはいないんだけど少しでも深海棲艦の勢力を削ることが出来ればそれだけで役に立つことはできるという考えである。

「提督。中部海域に出ていた大淀(わたし)から離島棲姫の撃破に成功したという連絡が届きました」
「そうか。これで後は消化試合だな」
「そうですね。後の海域はどれも手強いですが今のうちの練度ならなんなくクリアできるものですから」
「よし。順次出撃してもらって海域を攻略してもらおう」
「はい。部隊の編成に入りますね」

それで大淀とともに『中部海域哨戒線』、『グアノ環礁沖海域』、『沖ノ島海域』へと出撃させる部隊を編成してそれらを攻略していった。
報告はすぐに帰ってきて各海域の攻略に成功したという。

「よし。これで任務とEO攻略ともにあらかた終わったし戦果関係のものはなくなったな」
「そうですね。資材の消費もそこそこで済みましたし後は大規模作戦開始まで待ちましょうか」
「そうだな。後は遠征部隊に頑張ってもらおうか」
「はい」

それで今日のやるべき任務も終わったので一息つこうと思う。

「大淀。少し外に出てくるからなにかあったら無線で連絡を入れてくれ」
「わかりました。お疲れ様でした提督。出すべき資料はまとめておきますね」

大淀にそう告げて執務室を後にした私はどこに向かおうかと考えていた。
畑にしても今は特にやるべきことは無いし……もしあっても武蔵達が勝手にやってくれるだろうと思っている。
もう畑仕事では私だけの仕事ではなくなって交代制なために言葉は悪いが替えは効くんだよな。
畑仕事が趣味になりつつある現状はどうにもできないのは耐えがたいけど他のみんなも畑仕事を楽しくやってくれているし時には私も休むのもありだろう。

次にすることと言えば艦娘達の直接のメンタルケアだけどこれといってうちの鎮守府の艦娘達はストレスを感じている子は少ない印象なんだよな。
春の大規模作戦で仲間になった六人もそれぞれの役割を持って頑張ってもらっているしな。
ガングートは演習で練度上げを頑張っているし、神威も改母となった今は畑仕事で張り切っているし、大鷹と海防艦の四人は鎮守府近海の対潜警戒をしょっちゅうしてもらっているしな。
特に対潜警戒のおかげで地元の漁師さん達が安心して漁に出れるという話をよく聞く。
択捉なんか漁師の人達に可愛がられているとかなんとか……。
もちろん占守と国後も一緒に可愛がられているのは言うまでもない事だ。

『お役に立てて嬉しいっしゅ!』と占守。
『べ、別に御礼なんていいわよ。で、でもありがとう……』と照れる国後。
『これも海防艦の務めですから!』と一番幼く見えるのに真面目な択捉。
『ふふふっ、頼もしいですね。わたしも、頑張らないと……!』とそんな三人を見守る大鷹。
そんな四人が今ではもう鎮守府近海のパトロール専門になってしまったので今では駆逐艦のみんなが出る機会が減ったのが唯一の心配かな……?
まぁいつか行ったと思うけど先制対潜が出来る子は限られているから燃費も軽い四人が警備に回ればかなり経費が浮くのも一つの利点でもあるんだよな。

他には……と色々と考えていると前方から大和が歩いてきた。
その恰好は水着姿のために鎮守府内の潜水艦の訓練用のプールでひと泳ぎでもしてきたのだろう。

「大和」
「あら提督。こんにちは」
「ああ、こんにちは。そんな大和はプールから戻ってきたところか?」
「はい。正式に水着の恰好が大本営から許されたのでこうして泳いできました。あのいつもの水の上に浮く感じと違って沈みながら泳ぐというのは不思議な気持ちになりますよね」
「それはわかるな。私も初めてこの世界に来て海の上で立っているという現象を味わった時は不思議な気持ちだったからな」
「そういえば忘れていましたけど提督と榛名さんはいきなり海の上に置き去りにされていたんでしたね」
《はい》
「そうだな。その時はまだ榛名が眠りについていたから妖精さんだけが私の助けの綱だったな」

大和にそう聞かれたので榛名と一緒に当時を思い出しながら大和に話を聞かせる。

「……思えばこの世界に来たのはなにかしらの世界の意思だったのでしょうか……?」
「それはわからない。だけど一つだけ確かな事があるな」
「提督、それは……?」
《榛名も聞きたいです提督》

大和と榛名に催促されたので私は素直に答えることにした。

「それはみんなに実際にこうして会えたことだな。こんな奇跡はなかなかないだろう……? だから嬉しいんだ」
「そう、ですね……。大和も提督とこうして普通に話ができるのも今でも夢なのではないかと錯覚する事がたまにありますから」
《榛名も大和さんと同じ気持ちです。そして提督の気持ちにも触れられる機会が何度もあって私達は真に家族のような関係になれたんですよね》
「また、恥ずかしいけど嬉しいような事を言ってくれるな二人とも」

それで少し恥ずかしくなって頭を掻いていると、

「ふふ……提督のそういう仕草を見れるのも役得の一つですね。この世界に来るまでは一方通行な気持ちでしたから。いつか提督自身の本当の姿も見れたら嬉しいですね」
「はははっ。私の本当の姿なんて見たらガングート達は驚くだろうな」
《そうですね。提督の本当の姿を知っているのはこの世界に来る前までの者しか知りませんからね》

それでついつい大和と榛名と話が弾んでしまっている私達。
そんな時に少し話し込んだために暑さも相まって喉が渇いてきた。
そんな私を大和がすぐに気づいたのか持っていたバスケットの中から一本ラムネを取り出して、

「提督。大和印のラムネです。一本いかがですか?」
「ありがとう、いただくよ」

それで大和にラムネをもらってすぐに口に含む。
炭酸のいい感じが伝わってきてすぐに喉が潤う。

「うん。やっぱり大和のラムネはうまいな」
「ありがとうございます。あ、そうです。でしたらこれから提督もひと泳ぎしませんか? きっと今も泳いでる子達も喜びますよ」
「そうか?」
「はい」

大和がそう頷いていたので、

「わかった。それじゃ榛名。水着に着替えてこようか」
《はい、提督》

それですぐに水着に着替えて私はみんなと一緒にプールを楽しんだのであった。



 
 

 
後書き
前半はリアルな近況の攻略話で後半は大和を出してみました。
アニメのような過激な恰好の水着じゃないから可愛いですよね大和。
ラムネが飲みたくなってきました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0103話『五十鈴のお誘い』

 
前書き
更新します。 

 





五十鈴は私室で鏡の前に立ちながらも気分が言い様で「ふんふんふんっ♪」と鼻歌を歌いながら水着に着替えていた。
今日はプールでひと泳ぎしようと考えていたのだ。
青いオーシャンブルーのような柄の水着に身を包んだ五十鈴は気分よくプールへと向かっていった。
最近は対潜作業も海防艦の子達に奪われ気味なので御無沙汰なのだ。
だから今のうちに遊んでおこうという算段だ。
大規模作戦にでもなれば潜水艦相手に活躍というか酷使される未来が待っているのだ。
だから、そう、今のうちにね……。

そんな思いで五十鈴は向かっていたが途中で夏服の初月に遭遇する。

「あら。初月じゃない」
「ッ! 五十鈴か……」

五十鈴は結構気にしていなかったのだけれど初月は突然水着姿の五十鈴に遭遇したために驚きの表情をしていた。

「……あんた。夏服になったっていうのに相変わらずインナー服なのねぇ」

五十鈴は初月の恰好に少し呆れの表情を持っていた。
それで少し初月はムッとしたのか、

「悪いか……? これでも少しは通気性もあって涼しいんだぞ」
「ああ、怒らないで。ただ暑くないのかなって思っただけだから」
「そうか……」
「ところでさ、どうせならあんたもプールに行かない? 私も居間から向かおうと思っていたところなのよ」
「いや、僕は姉さん達に野暮用があってだな……」
「どんな用? すぐに済みそう……?」
「まぁ、すぐに終わるものだが……五十鈴、僕を誘っても特に得られるものはないぞ?」
「別にいいのよ。私が誘いたいだけなんだから」
「うーん……そう言われてしまうと迷うな」

それで少し考えだす初月。
だけど五十鈴はどうやら待ってくれないらしく初月の手を掴んで、

「さっさと用を済ませちゃいましょう。いくわよ」
「わっ!? ちょっと引っ張らないでくれ!」

そんなこんなで秋月の部屋へとやってきて、初月はすぐに用が終わったのか秋月に、

「初月。部屋で涼んでいかない?」
「すまない秋月姉さん。ちょっと五十鈴に捕まってしまっていてな」
「五十鈴さん?」
「ああ。今は外で待ってもらっているがどうやらなにをしてでも僕をプールに誘いたいらしいんだ」
「いいじゃない? 初月もたまには楽しんできたらどう?」
「そうか……?」
「はい。初月も遊びの心が必要だと思うのよ。だからいってらっしゃい」
「……わかった。善処してみる」

それで秋月に送り出されながらも初月は色々と諦めていた。
なので外に出て五十鈴と顔を合わせると、

「五十鈴。わかった、君に少しだけど付き合う事にするよ」
「そうそう。素直が一番よ。それじゃさっさと水着に着替えちゃいましょうか」

それでまたしても五十鈴に腕を引っ張られてしまい初月は少し疲れた表情をしていたのは仕方のない事だった。
その後に初月の私室で水着に着替えて着替えも持って出ていくと、

「うんうん。やっぱり初月は黒の水着なのね。しかも私と同じタイプか」
「どうだろうか……? 似合っているとは思っていないのだが……」
「あら。そんなことはないわよ。とっても似合っているわよ」
「そ、そうか……まぁありがたいな。……そうだな。まだ五十鈴の姿を褒めていなかったな」

それで今度は初月から五十鈴の手を持って、

「とても似合っているぞ五十鈴」

そんな、初月のイケメンボイスで五十鈴は褒められてしまったために少し五十鈴は顔を赤くさせながらも、

「あ、ありがとう……」

必死にそっぽを向いて顔が赤くなっているのを悟られないようにしていた。
まぁそれでも初月は気づいているのだけど「可愛いな」と思いつつ敢えて気づかないふりをしていた。
初月は紳士なのだ。だから無粋な事は言わないと決めている。

「そ、それじゃいきましょうか」
「ああ」

それで二人は仲良く手を繋ぎながらプールへと向かっていった。
そしてプールへと到着するとそこには見張り員をしているのか提督が高台に乗って監視している姿があった。

「あら。あなた、なにをしているの?」
「五十鈴か。見てわからないか? 誰がおぼれた時に助けられるように監視しているんだ。危険な飛び込みをする子は今はいないけど普段水上の上に立っている事が多いから慣れない子もいるだろうし」
「そうなの。頑張ってね」
「ああ。ところで初月も来たのか。珍しいな」
「うむ。五十鈴に誘われてしまってな。たまにはいいかなと思って来させてもらったんだ」
「そうか。それなら楽しんでいってくれ」

提督はそう言ってまた監視作業へと入っていった。
プールの方から、

「司令官も一緒に入りましょうよー!」

とか色々聞こえてきて、提督は「もう少し監視をして平気だと思ったら入らせてもらうよ!」と叫んでいる光景を見てしっかりライフセイバーをやっているなという感想を二人は思ったのであった。

「ま、いいわ。それじゃ初月。プールに入る前に体操でもしましょうか」
「そうだな」

それで二人して体操をした後にゆっくりとプールの中へと入っていく。
初月はプールに入る際に、

「冷たッ……そうか。これがプールに入るという事なのか」
「そういえば初月は水の中に入るというのは初めてだったかしら?」
「ああ。生前も沈む際に体験はしているんだけどな。それとはまた違った感触だ」
「またそんな後ろめたい感想を持っちゃって……今は今なんだから昔の事なんて今は忘れておきなさいな」
「すまない……不謹慎だったな」

謝りつつも初月はプールの中へと入っていき、少しづつだけど泳ぎ始めた。
五十鈴もそれに倣って泳ぎ始める。

「うん。やっぱり冷たくていいモノね。日差しが暑い分、体が冷えるからちょうどいいわ」
「そうだな。こういうのもたまにはいいものだな」

二人してはしゃぎはしないけどそれでも楽しんでいるようである。
そんな時だった。

「ふあー!? 足がッ!!」

そこで文月の叫び声が聞こえてきたために、

「初月!」
「了解した!」

それで二人はすぐに慣れた手つきで泳いでいき溺れてしまっている文月の場所へとたどり着いてすぐに引き上げる。

「ケホッ、ケホッ……ありがとうー」
「気にするな。それより大丈夫だったか文月?」
「うん。足が攣っちゃったけどすぐに初月ちゃんと五十鈴さんが助けてくれたから大丈夫だよ」

ほんわかと笑いながら文月は二人に感謝していた。
そこに提督が、

「文月ー! 大丈夫かー?」
「うんー。大丈夫だよ」
「そうか。でも一応足が攣っているんだから一度上がって来い!」
「わかったー!」
「それじゃ僕が連れて行くよ」
「お願いね」

五十鈴は文月の面倒を初月に任せて見送った。
その際に、

「(ふふふっ……やっぱり頼もしいじゃない初月の奴。誘って正解だったわ)」

内心でそんな事を思っていたのであった。
それから仕切り直しで半日遊び倒したのであった。


 
 

 
後書き
水着第二弾は五十鈴にしてみました。
まだメインを張った事がなかったのでちょうどよかったです。
ついでに初月も出してみました。
五十鈴と初月のカップリングはよく見ますよね。



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0104話『龍田の謎の思惑』

 
前書き
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……日に日に暑くなってくる気温。
梅雨が開けたと最近のニュースで聞いた気がする。
だから雨が降ってこないだけマシな方か。
あの雨が降った後のジメジメとした感じは本気で最悪だからな。
まだ扇風機だけで耐えられる程度の環境だけどクーラーなんてまだ使うほどじゃない、まして今日に関してはクーラーなんて使ったら私の首が物理的にパンパカパーンと飛んでしまうかもしれないという恐怖を感じている。
それは何故かって……?
なんだって今日は珍しく龍田が秘書官をしているからだ。
なぜかしきりに今日は秘書官がしたいと言ってきたのでまぁ、いいかなという感じで龍田に秘書官を任せている。
でも、少し後悔しているかもしれないかなぁ……。
なんでって、

「提督~。どうしたの? 腕が止まっているわよ」
「すみません……」
「どうしてそうすぐに謝っちゃうの? 龍田は別に怒っていませんよ?」
「いや、それは分かっているんだけどどうにもやっぱり威圧感的な何かが……」
「な・に・か……?」
「いや、やっぱりなんでもないです」

それでまた謝ってしまう私。
うーん……別段龍田は嫌いな子ではなかったはずなんだけどな。
実際に会ってみるとなんというか他の子とは違った凄みを感じるんだよな。
天龍のなんちゃってフフ怖が可愛くみえるくらいには差は歴然だ。

「あら~、今提督ってば天龍ちゃんのことを考えていませんでしたかー?」
「ッ!? い、いやそんなことはないよ?」
「うーん? 目がどこか泳いでいるみたいですけど、まぁそういうことにしておきますね? ただ……」

安堵した次の瞬間に感じるひんやりとした冷たさ。
見れば私の首筋に感じる龍田の薙刀の刃の部分が優しく添えられていた。
冷や汗がだらだらと流れる。
うん、もう龍田の前では心の中でも天龍のことは考えまい。

《あ、あのー……龍田さん》

そこで私のことを心配に思ったのか榛名がでてきて龍田に話しかける。

「なんですか、榛名さん……?」
《そのですね。提督も別に悪きはないですのでその薙刀をしまってもらえるとすごく嬉しいんですけど……》
「あら。私ったら……ふふふ、ごめんなさいね。いつものくせでつい……」

それで薙刀をしまう龍田。
それよりもなにもいつもの癖って!?
私と榛名はそれでつい戦慄してしまう。
龍田は一体だれに対してこんなことを日常としているのか……。
少し怖くなったから聞かないでおこう。

《て、提督。あまり気にしないようにしましょうね》
「そ、そうだな」
「うふふふふ~」

龍田の意味深な笑みがとても怖いです、はい。

「でもぉ、私としましてはー、提督の事は嫌いではないんですよー?」
「突然どうしたんだ?」
「いえ~、ただ私は提督の事を嫌ってはいないという意思表示をはっきりとしておこうと思いまして。勘違いされていても嫌ですし……」

それで自然な笑みを浮かべる龍田。
うん、まぁそれならそれでいいんだけどね。
私も龍田を嫌う理由がないし。少し怖いけどね……。

「それでですが~、ちょっとお聞きしたい事がありまして」
「なにをだ?」
「はい。榛名さんとはどういったご関係のつもりかなと思いまして」
「そ、それは……」
《龍田さん。その、それは……》
「いえ、無理に言わなくてもいいんですよー? ただうちの鎮守府は提督に対して好意的な気持ちを持っている子は結構な数はいますから。だから榛名さんと提督の気持ちを聞きたいなって……」

龍田はそう言って聞きたいオーラを出している。
うーん、答えてもいいんだけど、

「榛名。私は気持ちははっきりしているから大丈夫だけど君の方はどうなんだ?」
《わ、私は……その提督の事は大好きですよ》
「そうか。私も同じ気持ちだよ榛名」
《提督……》
「榛名……」

それでしばし見つめあう私と榛名。
だけどそこで龍田が「こほんっ」と咳払いをした。
うっ、つい龍田がいるのを忘れてしまっていた。
それで私と榛名はつい顔を赤くしてお互いに顔を逸らしてしまう。

「うふふふ~。いいわねぇ、こういうのはとっても愉しいわ。でも、やっぱり残念なのは提督と榛名さんが触れ合えない事かしらね~」

龍田は核心を突いてきたのでつい「うっ……」といううめき声をあげてしまう。
そうなんだよなぁ。
私と榛名は現状は一緒の身体で過ごしているから触れ合える瞬間がないのだ。
それで榛名も日々残念に思っている事だし。

《うう……龍田さん、ひどいです。榛名だって提督と触れ合いたいんですよ? それでも我慢しているのに……》
「ごめんねぇ~。ただ諦めてはいないんでしょう……?」
「当然だ。いつか榛名と分離できる日が来たとしたらとても嬉しい事だからな」
《はい。私もいつか提督と触れ合いたいですから諦めたくないです》
「だったら希望は捨てないでいてね。いつか、そういつか報われる時が来ると思うから~」

龍田はそう言って頬に手を添えて笑みを絶やさないでいる。
その自信はどこからくるのだろうか。
まるで未来を見通しているようなそんな感じだ。

「龍田はなにか知っているのか……?」
「いえ? 私は何も知りませんよ~。ただそうなったらいいなって思うだけですから」
「そうか……」

それで少しは龍田との距離を詰められていると思っていたんだけど、そこで龍田がある事を言い出した。

「うん。提督と榛名さんの気持ちも知れることが出来ましたし~、もう満足ですから仕事も終わっているみたいだし私はそろそろおいとましますね~」
「わかった。相談に乗ってくれてありがとうな龍田」
「いえいえ~」

そう言って「天龍ちゃんでも誘ってプールでも入ってこようかしら?」と言いながら龍田は執務室から出ていった。
最後まで不思議な雰囲気の残る立ち合いだったな。

《提督……龍田さんはなにかの確信でも持っているのでしょうか……?》
「それは、わからない。だけど自然と龍田の言っている事は信じられるような気分にさせられるんだよな」
《そうですね……》

それで不思議な感覚は拭えないまままた一日が過ぎていく。








龍田は天龍を誘ってプールに入りながら一人考えていた。

「(提督、それに榛名さん。きっともうすぐあなた達の気持ちが報われる時が来ると思うわ~。だからそれまで我慢していてね)」

そう心の中で思っていた。
そこに天龍が、

「おーい! 龍田、泳ごうぜ!」
「はーい!」

それで一緒に泳ぎに行く龍田であった。
しかし一体龍田はなにを知っているというのか……?
謎は残るばかりである。


 
 

 
後書き
最後に謎を残した龍田さん。
その謎は今月中に判明するかもしれませんね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0105話『赤の純情』

 
前書き
更新します。 

 




私がカーテンの隙間から朝の陽ざしを浴びながらも目を開けようとしていた時だった。
突然耳元で「て・い・と・く……」という甘い声が聞こえてきたのは。
そして当然私が驚くはずなのだけど先に榛名が《ふぁあああ!?》とびっくりしてしまっていたために私はなんとか冷静でいられたのであった。
そしてそんな甘い声を出せるのはうちの鎮守府では限られてくるんだよなぁ。

「……突然どうした龍鳳?」
「えへ。やっぱり私だとわかっちゃいましたか。さすが提督ですね!」
《ふぇえ……とてもびっくりしました》
「ごめんなさいね、榛名ちゃん」

そこには潜水母艦から軽空母へと改装が終わっている龍鳳の姿があった。
龍鳳はどこか楽しそうにころころと表情を変えながらも、

「提督! 実は折り入ってお話があるんですけどいいでしょうか?」
「なんだ? 内容にもよるけど相談には乗るぞ」
「あ……ありがとうございます! それでですね―――……」

それで私は龍鳳の頼みを聞くことにしたのであった。
それから執務を終わらせた午後に私はまたしても水着へと着替えてプールへとやってきていた。
そして龍鳳も赤い水着に着替えて大勢いる潜水艦の子達の前で笛を鳴らしながら、

「はーい! それじゃみんなー。伊号番号ごとに並んでねー?」
「「「はーい!」」」

それでそれぞれ並びだす潜水艦の子達。
伊58の六人は練度ごとにって感じで複数いる子は練度ごとに並びをしている。
おもに多かったのがやっぱりまるゆだろうな。10人弱はいるからな。
龍鳳が今回私に頼み込んできたのは潜水艦の子達の久々の訓練の様子を監視しておいてほしいとのことだ。
だから今日は貸し切りになっているので他の子達の姿はない。

「提督提督! 今日はなにをするでち?」
「一号の言うとおりでち。オリョクルじゃないの?」
「ひさびさに潜水訓練でちか!?」
「でちでち」
「でちでち」
「…………」

かなりの具合ででちでちとやかましいわ!と思った私は悪くない。口には出さないけど。
他にも、

「はっちゃん、やっちゃいますね」
「イク、いくの!」
「ニムも張り切っちゃいます!」
「イムヤも、頑張るわ」
「シオイ、潜航していいですかー!?」
「ローちゃん、頑張るですって! ね、ユーちゃん」
「うん……ユー、頑張る……」
「姉貴! 早く泳ごうよ!」
「イヨちゃん、まだダメよ……龍鳳さんの言うこと聞こうね……」
「まるゆも、あの……頑張ります!」

それぞれが色々と騒いでいた。
うん。思えば増えたもんだねぇ……。
最初の頃はゴーヤ、イムヤ、はっちゃん、イクの四人しかいなかったのが今ではこんなに仲間が増えていたんだな。
ちなみに誰が誰かわかったらすごいと思う。
私はわかるからいいけど今さら誰か分からないとか言ったら全員に一斉に魚雷を向けられそうだからな。
計45人もいる潜水艦の子達に一斉に雷撃されたら私は殺られるだろうな。考えたら恐ろしいな……怒らせないようにしないとな。くわばらくわばら。
私がそんな事を思っている横で龍鳳がまた笛を鳴らしながら、

「はい! 無駄話はよしてしっかりと並んでね?……さもないと……」

龍鳳がなにかを言いかけた瞬間に全員は一斉に顔を青くして素直に並んでいた。
どうしたんだ?
ぽわぽわしている龍鳳のどこに恐怖するところがあるのだろうか?
まぁ、なにかしら私が知らない龍鳳の顔を潜水艦の子達はどこかで味わったのだろうな。
しかし、全員が恐怖する龍鳳の本性か。あまり想像できないなぁ……。
まあ、そんなこんなで全員は並んだことで体操を始め出す。
私もそれに倣って一緒に体操をする。
プールに入るのは体操が不可欠だ。
いざ筋肉が張って先日の文月みたいに溺れたら大変だからな。
普段から彼女たちは海に潜っているからそこら辺は心配はないだろうけどね。

「それじゃ三列に並んで順番に潜航訓練をやりましょうね!」
「「「はーい」」」

龍鳳の言葉に潜航訓練を始め出す一同。
うん、しっかりと先生出来てるじゃないか。
これなら私がいる必要性はなかったかな?
私がそんな事を思っている時だった。
龍鳳が私の方へと振り向いてきて、

「提督? 今自分は必要ないんじゃとか考えませんでしたか?」
「うっ……よくわかったな?」
「それは分かりますよ。だって私は提督のことをいつもよく見ていますから……」

そう言われてどこか恥ずかしくなった。
やっぱり見られているのかな……?
自意識過剰じゃないけどたまに誰かの視線を感じることが結構あるからな。

「そうなのか」
「はい。それに私に限った話ではなく提督に気持ちを寄せている子は大体提督のことを意識しているんですよ?」
「そこまで思われるほどの人物だろうか、私は?」
「自身を卑下してはいけませんよ? 提督は私たちにとっては立派で大切な人なんですから……」

大切な人、か……。
嬉しいようなむず痒いような。

「一番身近で提督のことを感じている榛名ちゃんももちろんそう思っているでしょ?」
《はい。提督はとても優しい方です。いつも榛名のことを最優先に考えてくれて皆さんとの思いにも同調しようと努力してくれています》
「うんうん。そんな提督だから私たちも命を預けられるんですよ? だからいつまでも変わらないあなたでいてくださいね」
「わかった。だったらもし私がどこか変わったと思ったら叱ってもいいから正してくれ」
「はい。龍鳳におまかせください♪ 大好きな提督のためならなんでもしますね」
《は、榛名も頑張ります!》

うん。その気持ちは嬉しいな。
龍鳳は純情だから特に気持ちが表に出やすいからダイレクトに響いてくるしな。
私もそんな気持ちに応えられるようにこれからも頑張っていくとしよう。
それから潜水艦の子達の潜航訓練は終わって自由時間となり、

「提督も一緒に泳ぐの!」

イクに腕を引かれたので、

「わかった。それじゃ泳ぐか」
「やったの! みんなー、提督と遊ぶのー!」

それでわらわらと集まってくるみんな。
龍鳳はそんな私たちをまるで母親のように見守ってくれているのであった。


 
 

 
後書き
今回は龍鳳回でした。
軽空母になっても潜水艦の子達のお守りをしていてほしいですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0106話『とある海外艦の日本の夏』

 
前書き
更新します。 

 





水上機母艦、Commandant Teste……通称コマちゃんは初めて体験する日本の夏というものに少しばかり疲労の色を滲ませていた。
フランスもこんなに暑くないのだから日本がいかに暑いか分かるというものだ。
証拠に、

Été au Japon(日本の夏)は非常にアツいです」

間宮でアイスクリームを舐めながらもそうコマンダンテストは呟いていた。
そこに間宮さんが近づいてきて、

「コマさん。日本の夏はどうですか……?」
Désolé(ごめんなさい)……とてもではないですがきついですネ」
「そうですか。まぁそうですよね。ただでさえ日本は異常気象で気温が上がってきていますから。でもまだまだこれからもっと暑くなってきますから頑張ってくださいね」
Merci beaucoup(ありがとう)……頑張ってみるわ」
「はい」

それでコマンダンテストは間宮を後にしてどこに涼みに行こうかと考えていると、

「コマさん!」

そこにコマンダンテストを呼ぶ声が聞こえてきた。

「あ、ミズホ!」
「よかった……すぐに見つけることが出来てよかったです」
「どうしました……? なにか用でもありましたか?」
「用って程じゃないんですけどちょっと夏野菜でいいものが収穫できたんで料理の味見を付き合ってほしいんですけど構いませんか?」
「いいですよ。わたくしでよければ付き合います」
「ありがとうございます」

それで瑞穂に案内されながらも、

「それにしてもやっぱり日本の夏は暑いですよね」
D’accord avec vous(同感です)……わたくしも少しばかり辛いです……」
「コマさんでそうなら私はかなりダメみたいですね。日本の艦としては慣れたものなんですけどやっぱり暑いものは暑いですから」
「ミズホも我慢することは無いと思いますよ」
「そうなんですけどね」

そんな話をしながらも特殊艦寮へと到着する。
見ればそこには秋津洲もいて食材をどう使うとか考えているのだろう思案顔である。

「秋津洲さん。コマさんを見つけてきました」
「あ、ちょうどよかったかも。コマちゃん、ちょっといいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「コマちゃんって苦手な物ってあるかも?」
「いえ、特にはありませんけど……」
「そっか。それならこれから瑞穂と一緒に揚げ物をするんだけど食べて行ってね」
「アゲモノ……」

揚げ物と聞いて少し暑い今は少し遠慮したいなと感じたコマンダンテストだけど、そこは瑞穂と秋津洲も察したのであろう、

「大丈夫だよ。今から作る揚げ物は冷たい麺汁に浸して食べる奴だから」
「はい。だからちょうどいいと思いますよ」
「そうですか。それならよかったです」
「それじゃ少し作るから待っていてね」

それで秋津洲は手慣れた手つきで料理をし始める。
料理スキルがピカイチな秋津洲だからこその芸当だ。
それで瑞穂とコマンダンテストは料理が出来るまで雑談をしていることにしたのであった。

「それでコマさん。この艦隊の雰囲気はどうですか?」
「はい。驚く事ばかりでいつも楽しませていただいています。この世界に来るという体験もなかなか体験できるものではないですからね」

それでコマンダンテストもあの時の事を回想しようとする。
謎の光で突然連れてこられた異世界。
不安で押しつぶされそうになっていた一同。
そこに提督がやってきて一気に不安を払拭してくれた事など……。

「なにもかも提督のおかげなんですね。Merci(感謝です)
「そうですねぇ……提督がいなかったらいずれは破滅していましたからね、きっと……」

瑞穂もコマンダンテストには同感のようで提督の存在にありがたみを感じていた。

「それにですね。提督はまだまだ未熟ですけど畑仕事に精を出していますのでとても助かっているんですよ? 今回の夏野菜だって提督がこしらえてくれたものばかりですから」
「そうなのですか……提督は野菜が好きなんですね」
「それがそうでもないんですよね、これが。提督って苦手なものが野菜なんですよ」
「えっ……そうなのですか? だったらどうして……」
「はい。なんでもこの世界に来る前に親の野菜作りをたまに手伝っていたとか何とかでそれがこの世界に来て趣味に高じてしまったらしくて……」
「なるほど……親の真似事みたいな感じなのですね。そう考えると提督は親とは離れ離れになってしまっていて寂しくはないのでしょうか?」

コマンダンテストがその話題を出した瞬間に瑞穂は少し暗い表情になって、

「……そんなわけはないと思います。それでも提督は私達の事を新たな家族と思ってくださっていますから寂しくないと以前に聞きました」
「そうなのですか……très bien(素晴らしい)ですね」

二人は提督の懐の大きさに少し感激しているのであった。
普通なら錯乱してもおかしくない状態なのに平静を保てているのは偏に艦娘という存在が提督の心の支えとなっているのが一番大きい要員なのかもしれない。
それはつまりそれだけ提督は艦娘達の事を愛しているという証拠なのだ。

「だからね、コマさん。これからも提督の事をみなさんと一緒に支えていきましょうね」
「わかりました。このCommandant Teste、提督に恩を返していきたいと思います」
「はい」

それで二人の話は終了した。
そしてちょうどよかったのか秋津洲ができた揚げ物を持ってきた。

「できたかも! 食べましょうかも!」
「はい。コマさん、そちらの汁に浸けて食べてください。美味しいですよ」
「わかりました」

それでコマンダンテストは言われたとおりに麺汁で浸けて揚げ物を口に入れた。
瞬間口に広がる甘みと酸味がちょうどいい感じで浸透してコマンダンテストは言葉を発した。

「とっても美味しいです……」
「よかったかも。さぁ、もっと食べて!」
「はい!」

それで三人は暑い中、揚げ物を食べては笑みを浮かべているのであった。


 
 

 
後書き
コマちゃんの水着が関係ないデシタネ。
まぁしょっちゅう水着話もなんですからちょうどいいとは思いますけどね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0107話『鎮守府の経過報告と第七駆逐隊』

 
前書き
更新します。 

 



……ええ、先日に海防艦の三人がやっと改にまで練度を上げることが出来ました。
これで鎮守府近海の哨戒がさらにスムーズにできるようになったので嬉しい限りだ。
改になる前は結構取りこぼしが多かったためにカスダメを受けることが多かったので今ではあまりそんな事態はないのでバケツに優しい。
だけどそれによってうちの艦隊で約一名だけまだ改になっていないとある子を早く上げてあげないといけない子がでてきてしまいました。
そう……その子の名を速吸という。
私の艦隊に加入したのは2015年の八月の大規模作戦の時だというのに未だにずるずると放置してしまっているんだよなぁ……。
速吸は気にはしていないようだけど時折寂しそうな表情を浮かべる事があるので罪悪感がある。
それにそのくせ同じ補給艦の神威が来たらそっちは色々あって戦闘に耐えうる練度まで上げてしまったし……。
そして今から上げようと思っても後少しで迫ってきている夏の大規模作戦までに間に合いそうにないという理由で練度上げはまた見送ってしまいそうだ。
あー……これで夏に加入する新たな艦娘によってはさらに放置度が増してしまうのだろうか……?
そんな得も知れない恐怖を感じながらも今日もまた練度上げは続いていく。


話は変わるけど睦月型の駆逐艦の改二はもう文月が来ると予測して的を絞っている為に現在は74まで上げてしまっている。できれば80までは上げておきたいなとは思っている。
文月を旗艦にして殿にまだ練度が67の菊月を置いてしょっちゅう演習を行っている。
菊月が練度70になれば睦月型は全員最低ラインの70にまで上がることになる。
今月の31日の発表ではたして改二は来るのかが問題だ。
まさか大規模作戦の前に改二をねじ込んでくるとは思っていないけどまさかがあっては敵わないからな。最近の大本営の出方が大胆で予測は不可能だし。
そして今のところ菊月を含めて練度が70にまで達していない駆逐艦は計35人はまだ残っている。
85人もいる駆逐艦の中でまだ35人も残っているのか、はたまたもう35人しか残っていないのかというのは見方は色々分かれるけどとにかく私は早くみんなの練度を上げてあげたいと思っている。
だからぼちぼち上げていっているけど主に陽炎型と夕雲型が現状は多く残っている。
それで最近はよく磯風が執務室にやって来ては、

「司令官。私達の練度上げはまだなのか……? 早く戦場で活躍をしたいぞ」

と寂しそうな表情でそう言って催促をしてくる。
うん、時期に上げてあげるからまだちょっと待っていてほしい。
できれば睦月型の改二が誰かに決まったら順次上げていこうと思っているから。
まぁそんな感じでうちの鎮守府はまだまだ練度上げをじっくりやっていこうという事になっている。
……まさか大規模作戦のモチーフにもう坊の岬沖決戦が来るとは思っていないけどそしたら磯風と浜風も練度は早めに上げておいて損はないだろうしね。


そして資材に関しては今のところは27万以上はあるボーキ以外は大体カンスト気味なので夏の大規模作戦には耐えられると思っているけど問題は開発資材なんだよな。
まさかまた前の冬イベントである『偵察戦力緊急展開!「光」作戦』の時のように彩雲を解体するのにいちいち開発資材を使うという稀な事態はできれば避けてほしいと思っている……。
伊13ちゃん掘りでかなり苦労していい加減でないからもう先に根を上げてしまって丙でクリアしてしまいそれから掘ったからという苦い記憶が蘇る。
連合艦隊編成で177周もしたのはいまだにトラウマだ……。
あの時はやる気があれば甲も行けたと思っているからなおさら残念なんだよな。


そんな感じで毎日の日課になりつつある日記のような資料を作成している最中で、

「クソ提督、入るわよ?」

そこに曙の声が聞こえてきたので「分かった、入っていいよ」と執務室の中に入れる。
見れば他にも潮、漣、朧の三人もいるので第七駆逐隊の面々が揃い踏みだ。
何の用だろうか……?

「ご主人様? なにをしていたんですか……?」

そう言って漣が今私が作成していた日記の内容を覗いて、

「あ。相変わらずご主人様はこの世界に来てから日記をかかさないのでしたね」
「ああ。これもいずれは振り返れたら面白いだろう……?」
「そうですねー……確かに楽しそうです」
「あ、あの……提督、潮も見せてもらってもいいですか……?」
「朧も見たいです」

それで潮と朧の二人も私の日記を覗いてくる。
曙もそっけない素振りをしながらもチラチラと覗いてきているのでつい笑みが零れてしまう。

「あー……速吸さんですかー。そうですよね。うちで唯一まだ改になっていないのは速吸さんだけでしたもんね」
「そうだね朧ちゃん」
「ご主人様……? 速吸さんの精神的なもののために早めに練度上げをしてあげてくださいね?」
「ああ。わかっているよ」

それ以外にも曙は机の上に出してある駆逐艦の練度表を見たのか、

「……ああ。クソ提督もあたし達の事をしっかりと見ていてくれているのね。この練度表を出しているのには誰を今度は上げていこうとか考えてんでしょう?」
「そうだよ。朧も時期に上げようと思っているから覚悟しておいてくれ」
「了解しました。その時になりましたら精一杯頑張らせていただきますね」

そう、第七駆逐隊……いや綾波型駆逐艦では唯一朧だけがまだ低練度なのだ。
だから今は遠征などで少しずつ練度を上げていってもらっている最中だ。

「それよりご主人様? 今はお暇でしょうか……?」
「そうだな。榛名? 今はなにかこれといった用はあったか……?」
《そうですね。今のところは任務も終わって資料作成も大淀さんに頼んでありますのでこれといって大事な用は残っていないと思います》
「だそうだ。それで四人はなにか私に用があったのだろう? なにか言ってみなさい」

私がそう切り出すと漣を中心に笑みを浮かべる四人。
次には曙がこう言い出した。

「それならクソ提督。これからあたし達と一緒にプールに入りに行きましょう。……別にあたしは誘おうとは思っていなかったんだけど潮とかがクソ提督を誘おうと言ってたから仕方なくよ……?」
「はいはい、わかっているよ」
「ボノたんのツンデレキタコレ!」
「うるっさい! 漣!! それとボノたん言うな!!」

それで騒がしくなる執務室。
私はそれで笑いながらも曙の頭を撫でながら、

「ありがとな、曙」
「ッ!……ふ、ふん……」

そっぽを向かれてしまったけど別段悪い空気ではないのは分かったので私達は笑みを浮かべながらもプールへと向かっていったのであった。


 
 

 
後書き
大規模作戦に向けてのまとめをしておく回でした。
第七駆逐隊の面々は緩衝材の役割をさせてみました。
提督の内情だけではつまらないですし。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0108話『香取の修練』

 
前書き
更新します。 

 





先日に提督からついに睦月型の誰が改二になるのか情報が出たというお知らせを聞きました。
そしてそれは提督の読み通り文月さんらしいという事ですね。
トラック島空襲で一緒に轟沈した身としましては文月さんの事が誇らしいと思うと同時に頑張り過ぎないでほしいという思いもある。
普段はふわふわしていますけどいざ戦闘になれば文月さんは表情が変わるのをよく見ますね。
牙を隠しているという訳でもないのですがどうにも……。

とにかく私はそれで文月さんのもとへと向かっていました。
そして見つけてみれば那珂さんと一緒に文月さんを発見しました。
二人とも笑顔で会話をしているので少し会話に入りづらいですけど勇気を出して話しかけようと思います。

「文月さん。お話し中にすみませんが少しよろしいでしょうか……?」
「あ! 香取先生! どうしたの? 文月になにか用なの~?」
「那珂ちゃんはお邪魔かなぁ……?」

それで那珂さんは少し離れようとしていますけど今はちょうどいいですね。
那珂さんも巻き込んで話をしてみましょう。
阿賀野さんはいませんけどこのメンツはやはりトラック島のメンバーだから思いを共感できると思いましたので。

「那珂さんもよかったら一緒にお話ししませんか?」
「え? いいの?」
「はい。トラック島での仲ではないですか」
「そっかぁ! よかったー……那珂ちゃん、嬉しい☆」

それでいつも通りに戻った那珂さんを横目に流しながらも本題へと入らせていただこうと思います。

「それでですが、文月さん。あなたに朗報ですよ」
「朗報……? なにかいいことがあったの~?」
「はい。提督から聞かせていただいた話なのですが昨日の大本営の発表で文月さんの改二が確定したそうなのです」
「え!? それって本当ー!?」

それで文月さんはよほど驚いているのだろう口を大きく開いていますね。
その気持ちはわかります。

「やったね文ちゃん! これはお祝いをしないといけないかな? かな!?」
「あわわ……さすがに驚きだよー! 那珂ちゃんさん、待ってね! 少し文月、深呼吸ー!」

文月さんはそれで何度も息継ぎを繰り返していました。
しばらくして落ち着いてきたのでしょう。少し文月さんは目を輝かせながら、

「香取先生! それって本当に本当の事なの!?」
「ええ。提督が嘘を吐くわけありませんから」
「そっかぁ……」

それで文月さんは嬉しいような、でも少し悩む仕草をしながら表情をころころと変えていました。どうしたのでしょうか……?

「うーん……そうだとすると早く練度を上げないといけないよね?」
「そうだね、文ちゃん。今の文ちゃんの練度っていくつだっけ……?」
「今はあたしの練度は75だよー!」

私はその文月さんの現在の練度を聞いて、そして最近の練度インフレの事も吟味しまして最低でも80は上げておいた方がいいという結論に至りました。
ですので、

「文月さん。でしたらこれから私と特訓しませんか? これでも練習巡洋艦の私です。少しはお役に立てると思うのです」
「ほんとう!? 香取先生、ありがとう!」
「那珂ちゃんも手伝うね! もう忙しくなりそうだね!」

そんな話をしながら私達はその話をするために執務室へと向かいました。
向かう道中で、

「でもでも! なんか文月だけなんか悪いなぁと思うの。弥生ちゃんとか望月ちゃんとかもきっと改二になりたかったと思うしあたしだけ特別扱いなのも嫌なの」

文月さんはそう言って悩んでいました。
お優しい文月さんの事ですから姉妹の子達に気を使っているのでしょうね。
ですが変に情けをかけても余計変にこじれてしまうのが目に見えてしまうと思うのです。
ですからここは心を鬼にしますね。
それで私は文月さんの肩に手を置いて真正面から話しかけます。

「文月さん。あなたのその気持ちはきっと姉妹の皆さんは嬉しいと感じるはずです。ですが同時に足枷にもなってしまう事を危惧した方がいいですよ」
「なんで……?」
「どういう事? 香取さん……?」
「那珂さんは水雷戦隊を務めていたのなら分かると思いますけど気休めの情けは時には逆に相手を傷つけてしまうのですよ」

それを聞いて那珂さんは思い当たる節があったのか「あー……」と言って苦い顔をして頭を掻いていました。
どうやら心当たりがあるようですね。

「確かにそれは少しわかるかもしれない。戦闘で行動不能になった子は負い目を感じながらもその場で雷撃処分か放棄せざる場面も昔はあったからねー。那珂ちゃんも胸が苦しいよー……」

オーバーリアクションとまではいきませんがそれなりに感情を込めて那珂さんはそんな話をしていました。
それでもまだ文月さんは分からなかったらしく「え? え?」と少し混乱しているようですね。

「文月さんはもし姉妹の誰かがもう動けないような状態になってしまったらどうしますか……?」
「それは……助けたいよぉ」
「はい。普通ならそう考えますけど一刻と変わっていく戦況でそれすら許されない状況になってしまう事も時にはあります。そんな時は心を鬼にして見捨てる覚悟も必要なのですよ」
「そんなぁ……嫌だよぉ」

それで文月さんは少し涙目になっています。
心が私も締め付けられますけど我慢をしなければ……。

「ですからそんな事態にならないように文月さんが強くなって守って差し上げればいいのですよ」
「あたしが、守るの……?」
「はい。改二になるというのはそれほどの強さと夢、希望が託されているのですよ。ですから遠慮などせずに文月さんは素直に強くなれば良いのですよ」
「そっかぁ……改二になればもっとみんなを守れるようになるんだね……」

それで先ほどまでの泣き顔もどこかに行ってしまったのか自信に満ち溢れている表情になって、

「うん! 文月、頑張って改二になるね!」
「その意気ですよ、文月さん」
「那珂ちゃんも応援するから改二になれるように頑張ろうね!」
「うん!」

これでもう文月さんは大丈夫でしょうね。
こういう時に練習巡洋艦としての役目を果たせることが出来たのは私としましても嬉しい事です。
そんな会話をしながらも執務室へと到着したので、

「提督? 香取です。入らせてもらってもよろしいでしょうか?」
『香取か。わかった、入ってくれ』
「はい」

それで文月さんと那珂さんと一緒に執務室に入り、文月さんは開口一番に、

「司令官! あたし、改二になれるように頑張るね!」

いきなりの文月さんの宣言に提督は目を点にしていましたがすぐにニヤリと笑みを浮かべて、

「それならこれから忙しくなるぞ。練度上げを頑張っていこうか」
「うん!」

それで大本営の指定した期日までに練度をある程度上げておこうという話でケリがつきました。
私も、練習巡洋艦として頑張らないとですね。
それから暇があれば私は那珂さんと一緒になって文月さんの練度上げを手伝う事にしました。よい結果を残せればいいですね……。
私はそう願いました。


 
 

 
後書き
運営情報で文月改二確定のご報告がありました。読みは当たっていた!
これから残り一週間でできれば練度85まで上げたいなぁ……。
最低でも80は越させるつもりです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0109話『大トリの瑞雲祭りに向けて』

 
前書き
更新します。 

 



私は来たる30日に迫ってきている最終ステージの瑞雲祭りについて町への視察に来ていた。
今回の私のお供には霧島がついてきてくれている。

「それで司令。町内会との話はどんなことをお話しされるのですか……?」

霧島がそう聞いてきたので私は言葉を返す。

「うん。分かっていると思うけど瑞雲祭りについての話をしようと思っているんだ。大本営の話によれば今月の30日の祭りを最後に瑞雲祭りは締めを飾るそうだから」
「そうですか。でしたらしっかりとしておかないとですね」
《霧島? あんまり張り切らないでくださいね?》
「わかっているわよ榛名」

榛名の心配の言葉に霧島は眼鏡をクイッと上げて大丈夫の合図をしたのであった。
それから私達は町内会へと顔を出して、

「おお、提督さん。本日はどうされましたか……?」
「それはですね―――……」

それで霧島に説明した内容をまた一度話して理解をもらう。
町長さんはそれで納得の表情をしたのか、

「わかりました。最後の祭りに関しての取り決めですね。それでは本日からまた祭りに向けて準備を進めていきますね」
「お願いします」

それで細々と言った話し合いを重ねていく私と町長さん。
それをじっと隣で眺めている霧島の表情はあまり伺えなかったけどどこか熱を感じると思った。
そして話し合いは終わり町長さんとあらかた打ち合わせは済んだので私達は帰ることにしたのであった。
その帰り道に、

「司令。なかなかご立派でしたよ。小さい会議とはいえあれほど話し合えるのはいいと思います」
「そうか? あれくらいなら前から結構やってきたんだけどな。それにいい祭りにしたいじゃないか? それはよその鎮守府の提督達はここまで熱心に行事に取り組まないとは思うけどね」
「確かに……他の鎮守府となると戦果を気にするあまり、積極的に取り組まないとは話を演習では他の子から聞きますね」
「まぁそろそろ大規模作戦の期間が近づいてきているのもあってかそちらに意識を向けているのがほとんどだろうな」
「司令はそうではないのですか……?」
「そちらに関しては今のところは大丈夫だ。今のところはそれといってもう準備をすることは無いからな。しいて言えば大型主砲の改修を少ししておきたいのが本音かもな」
「そうですね。まだ不安がおありでしたら改修しておくのも一つの手だと思いますね」

それからそんな話を霧島としているとすでに時間はお昼時になって来ていたので、

「霧島。今からじゃまだ鎮守府には帰るには早いからお昼でも食べていくか……?」
「よろしいのですか?」
「ああ。私がおごるから何でも頼んでくれ」
「わかりました。それでは司令のお言葉に甘えておきますね」

それから私と霧島は近くにあった食事処で昼食を摂っていた。
以外に和風なチョイスで改造巫女服の霧島にも似合っていた。
食事をしながらも霧島は話しかけてきて、

「……しかし、瑞雲祭りは今度は扶桑さんと山城さんがなにやら主役らしいですね」
「そのようだな。なんでも大本営の方でもその二人がガチガチに緊張をしてしまっているという話だ」
「うちの二人も緊張しなければよいのですが……」
「そこら辺に関しては大丈夫だろう。うちの二人はそこまでやわ……じゃないよな?」
「いや、私に聞かないでくださいよ司令」
「ははは、すまん……」
《提督は早とちりですね。きっと扶桑さんと山城さん達なら大丈夫ですよ》
「そうだな。……雨が降らない事を願うばかりだ」
《あはは……提督、縁起でもないですよ》
「榛名のいう通りですよ司令」
「うん、まぁ。だからいい祭りにしようか」
「はい」
《はい、わかりました》

それで食事も終えて、

「提督さん、いつもありがとうございましたー!」

店員さんの元気な声に送りだされながらお店を後にする私と霧島。

「さて、それじゃもう用は終わっているしこれからどうするか」
「でしたらもう鎮守府に帰りましょうか。まだ今日の分の任務が終わっていなかったと記憶しています」
「そうだな。わかった。帰るか」

それで鎮守府へと真っ直ぐに帰る事にした私達。






鎮守府へと帰ってきた私達にさっそくとばかりに散歩をしていたのだろう夕立と時雨が近寄ってきた。

「提督さん。霧島さんとどこに行っていたの?」
「ああ。町への視察をしてきたんだよ。一緒に瑞雲祭りに関しても話し合いをしてきた」
「あ、そっか。今度の瑞雲祭りでは扶桑と山城が主役だったね。僕としては嬉しいけどね」

それでどこか誇らしげな時雨の姿がそこにあった。

「ああ。だから時雨からも二人にあまり緊張はしないようにと伝えておいてくれないか?」
「わかったよ」
「それより提督さん! 今度は夕立達も町に連れてってほしいッぽい!」

そこで夕立がここぞとばかりに甘えてくる。
だけどそこで霧島が、

「夕立さん? 視察は決してお遊びではないんですよ? 司令の身の安全もしっかりと守る役目もあるんですからね」
「それはわかってるっぽい! もし誰かが提督さんを襲ってきたら夕立が返り討ちにするっぽい!」
「頼もしい限りだな」
「にゅふーん……」

それで夕立の頭を撫でてやると甘い声を出し始める夕立。
それをどこかもの欲しそうに見つめてくる時雨と霧島の視線に関しては見なかったことにしておく。

「それじゃ霧島。今日の護衛はありがとな」
「いえ。司令、いつでも私に頼ってくださいね。お力になります」
「ねぇねぇ提督さん。もう今日の用ってもうないの……?」
「いや、視察前にまだ任務が残っていたと思うんでそれを消化しようとは思っているけど……」
「でしたら!」
「それじゃ!」

そこで同時に声を出す霧島と夕立。
そしてにらみ合う二人。

「夕立さん? 私が司令の手伝いをしますから大丈夫ですよ?」
「いやいや、夕立が頑張るっぽい……」

どこか張り合っている二人にどうしたものかと思っていると時雨が私の手を取って、

「それじゃ間を挟んで僕が提督の手伝いをするね。いこうか提督」
「あ、時雨……?」

睨み合いをしている二人をよそに私を連れて行こうとする時雨にさすがの二人も気づいたのか、

「時雨! ずるいっぽい!」
「時雨さん、抜け駆けはいけませんよ!」

そんな事態になりながらも活気があっていいなと私は現実逃避をしていた。
まぁ結局は最終的に三人に手伝ってもらったんだけどね。


 
 

 
後書き
霧島を久々に出しました。
前に出たのは金剛姉妹全員でのお風呂だったと思うので久々の登場でしたね。
最後はグダグダになりましたけど鎮守府の一風景だと思っていただければ幸いです。


そういえば夏イベの時期が発表されましたね。
来月の8月10日かららしいですね。
よし、まだボーキが貯められる期間が増えたぞ。カンストを目指そう。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0110話『大淀のちょっとした悩み』

 
前書き
更新します。 

 





私は廊下を歩きながら今日の予定を考えていた。
意外にまだ備蓄期間があったのでこのまま任務と遠征を繰り返していれば大規模作戦までには開発資材以外のカンストも夢ではないのかもしれないと思い始めていたのだ。
しかし、だからといって油断はできない。
月初めのEO消化でどれだけ資材をできるだけ最小限に抑えて期日までに回復するかを考えないといけないからだ。
この際、サーモン海域北方とKW環礁沖海域は大規模作戦が終わるまで見送ろうと考えている。
特にサーモン海域北方の攻略にはボーキを大量に使う編成である旗艦のアイオワ以外は全員空母で埋まっているのだ。
それに戦艦レ級エリートをなんとか退けられても運悪くE風に何度も見舞われたらシャレにならない。
よってそんなに思ったよりダメージの少ないカレー洋リランカ島沖までの攻略にとどめておこうと思う。それでも勲章は四つ貯まるのだから改装設計図は一つは作れるのでいい具合だろう。
特に大規模作戦は苛烈を極めると思うからできるだけ温存しておくのも悪くない。というか本音を言うと初めて開発資材以外の資材がカンスト間近まできているからベストな状態で挑みたい。
そして私の艦隊の練度で甲が通用するのか試してみたいと思っている。
新艦娘掘りでは丙で挑むだろうができるだけ甲で攻略したいしね。
そんな私事を色々と考えている時だった。
曲がり角で誰かと接触してしまった。

「あっ! ごめんなさい!……って、なんだ提督さんか。チャオ♪」

ぶつかってきたのはリベッチオだった。

「曲がり角で私も気を付けなかったのは悪いと思うがそんなに急いでどうしたんだ……?」
「うん! これからキヨシーと一緒にプールに入りに行くんだ!」
「なるほど。それで清霜の部屋に向かっていたのか。だけどここは本棟だぞ? 駆逐艦寮は隣だと思うんだけど……」

私は少し気になったのでリベッチオに聞いてみた。

「それはー……えっとね。怒らないでね? プールに行く道の間にちょうど本棟があるから近道で通らせてもらっているんだー」
「ああ、なるほど。それでよく駆逐艦の子達がよく本棟の廊下を水着で走っているのか。納得した」

そういえばそうだよな。
プールがある場所は本棟が一番近いんだよなぁ。
意外に潜水艦寮の近くではないという苦情もなかったので気にしていなかったな。

「そうか。それなら大淀とか任務の書類を持って歩いている子が多いから気を付けるんだぞ」
「わかったー! それじゃ提督さん、またねー!」

それでリベッチオは元気よく廊下を走っていった。
「走るな」とも言っておくべきだったな……。
証拠にリベッチオが走り去っていった先でまた誰かと接触したのだろう。
「キャー!」という叫び声が聞こえてくるではないか。

「うーん……元気過ぎるのもいいんだけどケガはしないでほしいな……」

ただただリベッチオ含めて駆逐艦の子達が心配になった。
やんちゃな子が多いからなぁ。
後で大淀に頼んで『廊下は走らない』という張り紙を付けるのを話してみるか。
なにかしら検討をしないと接触事故が多発しだしてからでは遅いからな。
さっきもすでに接触事故が起こっているわけだし。
昔の艦時代の記憶があるのだから接触事故の危険性くらいは分かると思うんだけどな……。
主に深雪とかは昔を思い出しているのか走ったりはしないしね。
そんな事を考えていて先ほどまで何を考えていたのか忘れかけていたのでやばいやばいと手帳にメモを取っておくのであった。

そんなこんなで執務室に戻って書類作業に勤しんでいる時であった。
大淀が執務室に入ってきて、

「提督。少しよろしいでしょうか?」
「どうした大淀。表情がどことなく疲れているぞ?」
「提督にもそう見えるのですね……。はぁ」

それで分かりやすいため息を吐く大淀。
いったい何があった……?

「それがですね。プール使用が解禁しましてから本棟を抜ける子が後を絶たないのです」
「あー……その件か。それは私もリベッチオに聞いたから知っているよ。なんでも近道で使わせてもらっているとか……」
「はい。ただ通過するだけなら別に構わないのですが、駆逐艦の子達がよく水着を持って走っている光景をよく目にしまして……気が緩んでいるのではないかと思う次第でして」

それでまた溜息を吐く大淀。
私が思っていた以上に事情は深刻のようだな。

「わかった。それじゃ私も考えていたんだけど『廊下は走らない』の張り紙でも廊下の壁につけておくか?」
「それもいいと思うんですけど……聞いてくれるでしょうか?」

不安そうな表情を浮かべる大淀。
その気持ちは分かるな。
精神年齢が割と高い方の陽炎型の子達はマシな方なんだけどそれ以外の子達は性格もあってかやんちゃな子が多い。
冷静な子もいるにはいるんだけど他の子の特有の個性に喰われ気味なんだよな。
睦月型の子達とかなんかははしゃぐ子が多いイメージだ。

「まぁ後でお知らせでもしておく方がいいと思う。そうでもないと聞かない子が多いだろうし」
「そうですよね……。朝霜さんとか清霜さんとかもよく走っていますし」

礼号組関係で不安な子達の名前をあげられる。
うん、大淀の言いたいことは分かる。
あの二人は夕雲型の中では落ち着きがない子だからな。

「そんなに不安なんだったら大淀がプールに行って直接注意でもしておくか?」

なにげなく私はそんな話をしてみる。
だけどそれで大淀は真剣な表情になって、

「……そうですね。私が直接注意すれば……いや、でもここはやっぱり提督が注意した方が効果はありそうですけど……それに私も実を言えばプールに入りたいですし……いやいや、私事を表に出すわけにはいきません。我慢しませんと……」

色々とぶつぶつ言っている大淀の姿を見て、私は言う。

「大淀。命令だ。頭を冷やす目的でプールに入って来なさい」
「えっ!? そんな、でもよろしいんですか?」
「ああ。もう一人の大淀と交代で入って来なさい。普段から頑張ってもらっているんだからこんな時くらいご褒美があってもいいもんだろう?」

それで私はおそらく部屋にいるであろうもう一人の大淀も執務室に呼ぶ事にして電話を取る。

「……もうっ。こういう時は提督は強引なんですから……。ですがお気持ちは受け取っておきますね。それでは大淀、行ってまいります」

それで大淀はどこか嬉しそうにプールへと向かっていった。

「気持ちの発散も大事だよな」
《はい。大淀さんは普段から真面目ですから少しは休んだ方がいいと思います》

榛名の同意も得られたので良かったと思う。
ちなみにその後のプールでは大淀が駆逐艦の一同に廊下は走らないようにと注意していたという。
その後にプールで気持ちを発散していたとも。
そして廊下を走る子が減ったかどうかは大淀の腕次第だろう。
結果として後日に走る子の数は減ったと思うしな。
さすが大淀だなと思った私であった。


 
 

 
後書き
リベッチオだと思わせて後から大淀にシフトしていく話を書いてみました。
まぁ、タイトルで分かってしまうものですが。
うちの提督像は優しいの一言ですから少し甘いんですよね。
ブラックになられても困りますから調和は取れている感じです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0111話『ドイツ艦達の水着試着』

 
前書き
更新します。 

 



ビスマルクは去年からある思いを抱いていた。
それは……、

「マックス、レーベ……あなた達、さすがにその水着はアウトではないかしら?」

ドイツ艦の集合場所としてよく使われるビスマルクの部屋で水着に着替えている二人に対しての率直な疑問をビスマルクは言ってみた。

「そうかしら……?」
「ボクは、少し恥ずかしいかな……」

もう去年も着てしまって慣れきってしまっているマックスはともかくレーベの方はまだ恥じらいがあるので間に合うけどマックスはもう手遅れのようだ。

「っていうかマックス。あなた去年は設定とはいえ深海忌雷に襲われたばかりじゃない? そんなに呑気にしていて大丈夫なの?」
「平気よ……。深海忌雷ごとき私の艤装で撃ちぬいてみせるわ」

なにやら物騒な物言いでマックスは艤装の銃を出してその身体から瘴気を放っている。
去年に実装されたマックスの水着グラで港の方で遊んでいたら深海忌雷に襲われて水着を剥されるという事態に陥ったのをマックスは忘れていない。
それからというもの、マックスは深海忌雷の標的になりやすくなってしまっているので今度は殺す覚悟で挑むという。

「……まぁ、頑張りなさい」
「ビスマルク姉さま! 私の水着はどうですか? マックス達に似ているみたいですけど」
「オイゲン……あなたはもう完全にアウトだから違うのに着替えてきなさい」
「えー? いいと思うんですけど……」

プリンツオイゲンが着ている水着はマックスの水着とそんなに大差はなかった。
ただ胸部面積に関しては多少は増えているという程度だ。
よってもしプリンツがこの水着を着ようものなら今度はプリンツオイゲンが深海忌雷の標的になるかもしれない。
そうなったらさすがにビスマルクでも庇いきれない事態になってしまう。
プリンツオイゲンは発育がいいために脱がされでもしたら結構やばい事態なのだ。

「ふふ……ビスマルクは心配性だな」
「グラーフ……そうは言うけどドイツ艦で支給されている水着がどうにも破廉恥なのはあまりいただけないだけよ」
「そうか。まぁそれは仕方がないだろう。祖国からも『お前たちはもっと日焼けしろ』というお達しが全鎮守府に在籍する我らに通達されているらしいからな。この世界では……」
「つまり、この世界のドイツが思考がおかしいという事になるけど、どうにもね……」

それでビスマルクはこの世界のドイツに対して不信感を顕わにしていた。
グラーフはそれで苦笑をせざるを得ないでいた。
確かにドイツは少しネジがぶっ飛んでいるのかもしれないなとグラーフも少しは思い始めている事だし。
そこに、

「ビスマルク姉さんは心配性ですって。ね、ゆーちゃん」
「うん……ゆー、今の水着ウェアは着心地はとてもいい、よ……?」

日本に染まってしまっているろーちゃんはもういいとしてまだゆーちゃんはドイツ式の水着を着ているのでまだ助かる見込みはあると考えていた。

「ろーもだけど……この日本はつくづく変態なのかしら? スクール水着って言ったかしら? それが潜水艦の標準装備なんだから」
「慣れればどうということはないですって。ビスマルク姉さんは気にしすぎだよ」
「そうなのかしらねぇ……?」

ビスマルクだけはどうにもまだ自身に支給されていた水着を着る勇気が持てないでいた。
ただでさえマックスでこれなのだ。
プリンツオイゲンですら似た水着なのだから私もどうせ同じようなものなのだろう……?と、着る前から拒絶感を前面に出していた。

「まぁ、ビスマルク。貴君の気持ちも分かるが一度は気持ちを解放してみて着てみるのもありではないか?」
「そういうグラーフだってまだ着替えてないじゃない?」
「そ、それはだな……」
「どうせあなたもオイゲンと一緒のようなタイプの水着なんでしょう? あなたはただでさえ肌が白いんだから一番肌が焼けやすい水着を贈られていると思うし」
「…………」
「無言は肯定ととらえるわよ?」

無言のグラーフにビスマルクはさらに不信感を増していた。
それでどうするか考えていたビスマルクだったが結局はいい考えが浮かばずに仕方なく、そう……仕方なく支給された水着を着ることにしたのであった。
それからしばらくしてビスマルクは水着に着替えてみて、

「と、どうかしら……?」

六人に自身の水着姿を披露する。

「いいんじゃないかしら……?」
「ボクはいいと思うよ」
「ビスマルク姉さまは相変わらず素敵です!」
「いいと思うぞ」
「ビスマルク姉さん、素敵ですって!」
「ゆーも……とても、いいと思う……」

上から順番にマックス、レーべ、プリンツオイゲン、グラーフ、ろーちゃん、ゆーちゃんにそれぞれ誉められてビスマルクは少しはいい気分になったのか、

「ダンケ。もっと誉めてもいいのよ」

そう気分よく言葉を発していた。
ビスマルクもビキニタイプだったのだがしっかりサイズは合っていたので大人の色気も相まってとても様になっていたのだ。

「さて、これであと水着になっていないのはグラーフだけね。早く降参して着なさいな」
「そ、そうだな……」

だが尚も渋るグラーフの姿を見てさすがにビスマルクも頭に血が昇ったのか、

「ああ、もうじれったいわね。みんな、グラーフを剥いでやりなさい」
「「「了解」」」
「ま、待ってくれ!」
「待たないわ。私が先に折れてあげたのに諦めが悪いあなたが悪いのよグラーフ。丁重にお縄につきなさい」

それでビスマルクの命令を受けて全員は速やかにグラーフを捕らえて身ぐるみを剥いで水着を着せるのであった。
そして、

「うぅ……ひどい辱しめにあった……」
「往生際が悪いのがいけないのよ。それより、似合っているじゃない?」
「よしてくれ。似合っているとは思っていないのだから」
「グラーフさんも中々に自虐的ですねー。私から見ましても似合っていると思いますよ?」
「そうですって。白い肌に黒い水着がとても似合っていますって!」

オイゲンとろーちゃんにそう誉められたので、

「気休めでもありがとう」
「やれやれ……素直に言葉は受け取りなさいな」

ビスマルクは相変わらずのグラーフに呆れの表情をしていたのであった。

「ま、いいわ。せっかく着替えたんだからこの際泳ぎにでもいきましょうか」

ビスマルクの提案に渋るものもいたが反対意見はなかったのでそのままプールへと繰り出していった。
ただ道中で提督とばったり会ってしまって、

「似合っているぞ、みんな」

素直な言葉に顔を赤くさせたとかなんとかだったらしい。


 
 

 
後書き
今回はドイツ艦達の水着回でした。
最後に提督と遭遇するのはお約束というものです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0112話『瑞雲祭り大とりと輝きだす指輪』

 
前書き
更新します。 

 


今日は瑞雲祭りが最終日と言うことで私の鎮守府がある地域の町でも盛大に祭りが行われている。
私も私でまた浜風に着付けをしてもらい町へと繰り出していた。

「提督。本日はどうされますか?」

今回は私と一緒に行動するみたいで浜風がそのまま着いてきていた。
どうやら私の事が心配らしく着いてきている節があるようで、

「浜風? どうしたんだ? いつもならすぐに浦風とかと祭りに行っていると思うんだけど……」
「そうなのですが……提督は明日の7月31日を何の日か覚えていますか……?」
「何の日か……それは……」

それで私は記憶している限りの何の日かを思い出す。
まずは明日は文月が改二になる日だ。
だけどそれなら浜風はそこまで心配はしないだろう。
だとするともう一つは私と榛名にとってとても大切な一日……。
それは……、

「私の思い違いでなければいいけど浜風は私と榛名のケッコンカッコカリ記念日に関して言っているのかな?」

つい質問形式で浜風に問いていた。
だけどそれで浜風は満足そうに頷いて、

「はい、その通りです。よかったです……提督は覚えていてくれたんですね」
「それは覚えていないとダメだろうとは思っているよ。私は秋月の時だけは私の誕生日も重なっていたので盛大に宴会を開いたけど去年までにケッコンカッコカリした艦娘達にはケッコンカッコカリした日にはなにかしらの贈り物は贈っているからな。榛名もそれは例外じゃないよ」

それで榛名も表に出てきていて、

《提督……榛名、嬉しいです。ですが、すみません……こんな体たらくな体では提督の贈り物も受け取ることが出来ません》

それで榛名はシュンッとなって落ち込んでしまう。

「榛名さん! 落ち込んではいけません! きっと……きっとそう、いつか報われる時が来ますよ!」
「そうだぞ榛名。だからそんなに気を落とさないでくれ。現に榛名の部屋には金剛達姉妹を始めとして色々な艦娘達がいつ榛名が戻ってきてもいいように部屋の掃除もしていてくれているしな」
《はい……すみません提督、浜風。また落ち込んでしまっていました……》

それでもまだ気落ちしているのか表情がどこか暗い。
うーん……こういう時の榛名は色々と引きずりやすいからな。

「とにかく。榛名、。いつかお前が自由になれるように私も明石達と一緒に考えているからそんなに落ち込まないでくれ。でないと私も悲しい……」
《提督……。はい、わかりました。まだまだ榛名は大丈夫です!》

それでなんとか元気に振る舞う榛名の姿を見てよかったと思うと同時に、まだ痛々しいなと思ってしまう自分がいて心が痛んだ。
だけど表面上は今のところは大丈夫だろうと思うので榛名の気持ちを汲む事にした。
だから今はもうこの話題は掘り起こさない事にする。

《ところで浜風》
「はい、なんでしょうか榛名さん?」
《これからも提督の事を守ってくださいね。私はこんなですからいつ提督が襲われても対応できませんので……》
「わかりました。浜風、必ず提督の事をお守りします」

榛名の気持ちは嬉しいけど私は榛名をこそ守ってやりたいんだよな。
いつも裏ではどこかで傷つけていると思うから榛名のためになる事をしてやりたい。
そんな私の思いとは裏腹に、

「それじゃいこうか」
《はい!》
「わかりました」

私はこの偽りでもいい平和な時を味わうために心を隠す。
榛名にこんな思いを知られたらまた榛名は心を病んでしまうかもしれないからだ。
だから……今はまだこの関係を続けていこう。
浜風が言ったようにいつか、報われる時が来る日を信じて……。
そんな事を考えていると遠くからおそらく山城と扶桑の声なのだろう、マイクを使って声が響いてくる。

『えー、ほ、本日はお日柄もよく……』
『山城……? どこかいつもの喋りではないわよ?』
『そ、そんな扶桑姉さまこそ……』
『ああ、そうね……こんなに空は青いのに……』
『『……―――不幸だわ』』

そんなやり取りが聞こえてくる。
おそらく大トリを飾るために日向に司会を頼まれたのだろうけど緊張してテンパっているのだろう。

《ふふっ……扶桑さんも山城さんもおかしいですね》

榛名はもう自然な笑みを浮かべているので安心かな?
私ばかりが沈んでいても仕方がない。
今日という日を楽しもうか。

そうして私と浜風と榛名は瑞雲祭りを楽しんだのであった。









……そして瑞雲祭りも最後には盛大に幕を閉じて立派に最後を飾れたのだろう扶桑と山城も満足そうに笑みを浮かべていた。
最後に艦娘音頭を踊って私達は町長さん達に挨拶もして鎮守府へと帰ってきた。
少しこの祭りの終わりが名残惜しいと感じるほどには楽しかったので日向もどこかやり切った感じの顔つきであったのが印象的だった。

《提督。本日は楽しかったですね》
「ああ、そうだな」
《それでは明日に備えてまた頑張っていきましょう!》
「うん。明日には文月の改二も控えている事だしなにより榛名とのケッコンカッコカリのお祝いも開かないとな」
《あ……はい!》

それで嬉しそうな笑みを浮かべる榛名。
私が守りたい笑顔だ。
これからもこの笑みを見たいがために頑張っていかないとな。

「それじゃ榛名。明日に備えてもう寝るとしようか」
《はい。それではお休みなさい、提督》
「ああ、お休み榛名……」

それで私と榛名は眠りにつくのであった。
だけどその時には気づいていなかった。
榛名の指輪が淡く光を出していることに……。
そして翌日には最良の一日になるだろうことも、この時の私には知る由もなかった。


 
 

 
後書き
今日の瑞雲祭りではなにかしらの発表はあると思いますけどこの話は昨日書いていますので触り程度しか瑞雲祭りに触れていません。
夏イベに関してなにかしら情報があったらいいですね。
そして最後になにやら不思議な展開をさせてみました。
真相は明日の話で書かせていただきますね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0113話『たった一日の指輪の奇跡』

 
前書き
更新します。
文字数多めです。 

 



朝になってまどろみの中、目を覚ます。
するとなにやらいつも体の中で感じていたものが無くなっているような違和感を感じた。
それはなんなのかと思う前になにやら私の腕に重みを感じる。
なんだろうと横を向いてみると、そこには……、

「てい、とく……むにゃ……」

可愛らしい寝言を呟いている榛名の姿があった。
その事実に私は困惑していた。

「はっ……? なんで……?」

それで間抜けな声を出すことしか出来ずに唖然としていると榛名(?)も目を覚ましたのか目を擦りながら、

「あ……提督。おはようございます……提督? どうされましたか……?」
「あ……榛名、だよな……?」
「はい。私は榛名で間違いあり……あれ?」

そこで榛名も違和感に気づいたのだろう自身の身体を何回も触っている。

「私……体が、ある……?」
「榛名ッ!!」

どうしてこんな事態になったのかはわからない。だけど今、榛名がいつもの透明の姿ではなく実体を持って目の前にいる。
その事実が嬉しくて私は榛名の事を思いっきり抱きしめる。

「きゃっ!? て、提督!」
「よかった……本当によかった……」

私はただただ榛名の事を涙を流しながらギュッと抱きしめていた。
それで榛名も何かを想ったのか私の背中に腕を回して、

「提督……榛名も嬉しいです」

それで私と榛名はお互いに喜びを分かち合っていた時に、入ってくる空気を読めない誰か。

「ヘイ! テートク、榛名! グッモーニングデース!……ってワッツ!? 榛名が二人いますデース!?」

金剛が色んな意味でこのいい雰囲気をぶち壊してくれたおかげで私と榛名も冷静になれた。
それで榛名が、

「金剛お姉さま……こうして会うのはとても久しぶりですね」
「ホンモノの榛名、デスカ……?」

金剛の声もどこか震えていて榛名が「はい!」と答えると金剛も感極まったのか榛名に抱きついた。

「榛名デース……本物の榛名デース……」
「もう、金剛お姉さまったら……」
「よかったな、榛名」
「はい。あ、でも……この現象は一体何なのでしょうか……?」
「これは一回明石に調べてもらった方がいいな」
「その通りデース! テートクと榛名は先に明石の工廠へと向かうデース。その間は私が皆に知らせるデース!」

そう言って金剛は部屋を出ていった。
部屋を出ていった先の方から金剛の声で「みんなー! 大変デース!」と叫んでいるのが聞こえてくる。

「とりあえず、私達も明石の工廠へと向かうとするか」
「はい、提督」

それで見分けがつくように私は提督服に袖を通して向かった。






そして工廠へと着いて明石にさっそく事情を説明した後、

「……うーん。理由は不明ですけど突然二人は分離をしてしまった訳ですね?」
「ああ。それでなにか分かるか明石?」
「そうですねー。私としましても予測していなかった事態ですのでうかつに判断するのも迷いますね。ただ、一つ分かっている事があります」
「それは……?」
「教えてください明石さん」

私と榛名が明石に理由を聞く。
すると明石はとある部分に指を差して、

「おそらく指輪の効果だと思いますね」
「指輪……?」

それで私はケッコンカッコカリの指輪に目を向ける。
すると今まで気づかなかったけどいつもはただの指輪なのに今だけは淡い光を放っている。
榛名の方もそれは同様のようだ。

「そして重要なのは今日がお二人のケッコンカッコカリした日です。ですから私の予測が正しければ二人が分離していられるのは今日限りではないかと思います」

明石の非常な、でもしかし納得のいく説明を受けて私はそれで残念な思いになる。
でも榛名が私の手を取ってくれて、

「提督……今日だけというのはとても残念ですけど、こうして提督と触れ合えるだけでも榛名は嬉しいですから」
「榛名……榛名はそれでいいのかい?」
「よくはないですけど、今日だけという日でも奇跡のようなものです。だから今だけはこれで我慢しておかないといけないではないですか」
「そう、だな……榛名がそう言うんだったら私ももう何も言わない。けど……」
「はい。辛かったら隠さずに言いますね。分かっています。これでも今までずっと提督と一緒にいたんですよ? これくらいは理解できます」

と、そこで話が落ち着くのを待っていたのだろう、みんながこちらを覗いていた。
私達の視線に気づいたのだろう誰かの「やばっ!」という声で急いで隠れる一同。
それなので、

「榛名。ちょうどいいからみんなと楽しんできなさい。後で私との時間も作っておくから」
「はい。それでは榛名、行って参ります」

それで榛名はみんなの方へと向かっていった。
みんなも一様に喜びの表情で榛名に抱きついている光景を見て、

「よかったな、榛名……」

私はただそう呟くのであった。
と、そこで明石がとある事を聞いてくる。

「ところで提督。一つお伺いしたいんですけど……」
「なんだ?」
「艤装って出せます……? さっきに榛名さんと一緒に確認しておけばよかったんですけど今回は提督だけでもと思いまして」
「わかった。出してみる」

それで私はいつものように偽装を顕現するように念じてみると艤装は普通に出現した。
けど、なんかなぁ。違和感を感じるというかなんというか。

「一応は出せるけど、なんだろうか? いつもより力強さを感じられないようなそんな感覚がある」
「そうですか。多分榛名さんの部分が抜けてしまったので今は提督だけの練度で艤装が構築されているんだと思います」

それで明石がなにかの機材を弄って私の艤装へとセットしていき、

「ふむふむ……榛名さんが抜けてしまったせいで今の提督の練度はちょうど70くらいですかね?」
「榛名のサポートが無くなってもそんなに私は練度を持っていたのか……?」
「はい。おそらく春の大規模作戦から今日まで暇があれば皆さんと一緒に出撃していたから自然と提督自身の練度も上がっていたんだと思います」
「なるほど……妖精さんにも聞いてみるか」

それで妖精さんを呼ぶと艤装から顔を出してきたので、

【なんでしょうか、提督?】
「今回の現象は君も理解しているんだろう?」
【はい。私も今は本体のコピーの状態ですから今だけは提督だけの妖精です】
「ということは榛名の方もちゃんと艤装は出せるという事だな?」
【はい。特に不備はないですので出せると思います】

そんなやり取りを聞いていたのだろう明石が、

「それでは妖精さん。今後の課題のためにもどうして指輪のおかげで提督と榛名さんが分離できたのか意見を交わしませんか?」
【いいですよ。私もぜひ解明したいですので協力します】

それで妖精さんと明石は二人で話し合いを始めていた。
私はどうすればいいだろうかと思っていると明石が、

「提督は自由にしていてください。せっかくの貴重な一日なんですから榛名さんと楽しんできてください」
「わかった。それじゃ妖精さん、また後で」
【はい。提督も楽しんできてください】

それで二人はさらに話し合いを加速しているようだったので邪魔にならないように工廠から出ていくことにした。
そしてみんなと一緒に出ていった榛名がどこにいったのか探そうと思って、いつもの癖で榛名に問いかけようとして、

「っと、そうだな。今は榛名はいないんだったな。なんて間抜けな事をしているんだ私は」

もういつもの状態が慣れきってしまっていたために自然になってしまっていたんだな。
普通なら異常な状態だから余計にって感じで。
少し寂しさを感じるもこれが本来あるべき姿なんだから習慣を抜いておかないとな。
それで一人で探そうとしている時に、

「司令官さん」
「電か。どうした?」
「はい。それが……榛名さんが司令官さんがそばにいなくてとても寂しがっていたので探しに来たんです」
「そうか。榛名も今までの状態が抜けきっていなかったんだな」
「その通りだと思います。ですからすぐにいきましょう。榛名さんも今は皆さんに囲まれて食堂にいますので」
「わかった。それじゃ向かうとするか」
「なのです」

それで電とともに食堂へと顔を出していった。
来てみれば代わる代わる榛名はみんなに質問にあっていて少し参っているようであった。
そして私に気づいたのだろう、「あ、提督……」と少し寂しそうな声を出す榛名。
それで周りにいたみんなも道を開けてくれて私は榛名のところまで来て、

「大丈夫か、榛名?」
「はい。でも、提督がそばにいないと思うととても胸が苦しくなってしまって……」
「榛名。それに司令。それはおそらく二人とも共依存のような状態になっていると思うのですが、間違いないですか?」

霧島の推測した状態については私も心当たりがあったので「多分、そうだろうな」と言葉を返していた。

「やっぱり。多分ですが今までずっと提督と榛名は一緒に過ごしてきましたからもうどちらか片方が一緒にいないとすぐに不安になってしまうという状態にまでなっていると思うんです」
「ひぇー……それじゃもう榛名は提督と一心同体みたいなものって事ですか? 霧島?」
「おそらく。比叡お姉さま」

それで霧島の話した内容を周りで聞いていたみんなも、

「それじゃそれじゃ! とっても大変ってことでしょう!?」
「司令官! 榛名さん! 大丈夫!?」

暁と雷がそれで心配の言葉をかけてくる。

「確かに……これまでいつも一緒にいたから気づかなかったけど私と榛名はお互いに依存していたんだな」
「はい。榛名もこうして分かれてみて気づきました」

そこで長門がらしくないけど一つの提案をしてきた。

「それでは提督に榛名。今日の残り一日はずっと一緒にいればよいのではないか?」
「ちょっと、長門? そうは言うけど提督も仕事があるのよ? それじゃ榛名の事を構ってあげられないじゃない……?」

陸奥がそこに心配をしているけど長門は「心配ない」と言葉を出して、

「なんのために私が提督が出撃する時は提督代行をしてきたと思う? こういう時こそ私が今日だけは提督代行をするべきだろう。大淀、補佐を頼んだぞ?」
「わかりました、長門さん」

なんか長門がとても頼もしく思えてくるな。
それからもなんかいつもより積極的に私と榛名の周りの環境をよくするためにみんなが話し合っていて、結局午後には私と榛名は仕事もなくなって二人で過ごすことになった。

「それじゃ榛名。今日は鎮守府内を散歩でもしてようか?」
「はい、提督……」

それで今日一日は色んな所を見学していた。
見学するたびにその場所にいた子達に冷やかされるという事もあったけどみんなは意地悪をしていないというのは分かっていたから笑って許してあげていた。
ただ榛名は恥ずかしいのか私の背後に隠れていたけど。

そんな事で時間は刻一刻と過ぎて行って夕暮れ時、沈んでいく太陽を見ながら、なんだかんだで楽しんでいた私と榛名。
そして一緒に夕食を摂って、そのまま後少しで時間も十二時を過ぎてしまうという時に私は榛名に今日が終わる前に、

「榛名……ケッコンカッコカリの贈り物だ。受け取ってくれないか?」

私はネックレスを榛名に贈った。

「提督……嬉しいです。その、つけてもらってもいいですか?」
「わかった」

それで榛名の首に触れてネックレスをかけてあげる。
そして鏡を見て、

「とても綺麗です……」

榛名はネックレスを見てそう呟いていた。
これで私も『榛名も綺麗だよ』と少し気の利いた言葉を言えればよかったのだけどさすがにそんなきざなセリフは言えなかったので、

「似合っているよ榛名」
「ありがとうございます、提督」

そしてふとそこで私と榛名の薬指に嵌められている指輪の輝きがどんどんと消えて行っているのを見て、

「そろそろ時間か……一日ってなんだかんだで短いよな」
「はい。提督……少し、目を瞑っていてくれませんか?」
「わかった」

それで私は目を瞑った。
そして次に感じたのは唇への感触。
それがなんなのかを分かった上でしばらくそのままでいた。
時間が経ち感触が消えたのを確認して目を開けてみるとそこにはもう榛名の姿はなかった。
代わりに私の隣で顔を赤くさせながらも照れている透明な状態の榛名の姿があって、

《えへへ……提督の唇、頂いちゃいました》
「貰われちゃったな……それよりお帰り、榛名……」
《はい。ただいまです提督》

先程まで感じられなかった榛名との繋がりがしっかりと実感できる。
ああ、そうだな。認めよう。
私は榛名とのこの関係が一番しっくりくるんだな、と。

「榛名。また来年……こうして楽しもうな」
《はい。今度はもっといい思い出を作りましょうね提督!》

それで二人で約束をして来年の記念日がまた一つ増えた最良の一日だった。


 
 

 
後書き
こんな感じで来年も続いていたらまたこの話を書きたいですね。
一年に一度だけ出会えるような演出にしました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0114話『文月の改二改装』

 
前書き
更新します。 

 


先日は文月の改二が実装された日なのだけど、同時に私と榛名の絆も深められた大切な日だったためにこうして翌日になって私は大本営から通達された情報を確認していた。
その最中で大淀が笑顔を浮かべながらも、

「提督。先日は榛名さんと楽しむことができましたか……?」
「ごほっ!」
《はうっ……》

私と榛名は同時に咳き込んでしまう。
大淀は狙ってやっているのか分からないなぁ。今でも表情からは読み取れない。
本人はキョトンとしているけどね。

「ま、まぁそれなりに楽しませてもらったよ」
「そうですか。それならよかったです。榛名さんもネックレス、似合っていますよ」
《あ、ありがとうございます……あの、大淀さん? 狙って言っていませんか……?》
「そんな事はありませんよ?」
《そ、そうですか……》
「はい」

そう、大淀が言うには私が渡したネックレスも一緒に榛名と透明化してしまって榛名の装備している一部になっているのである。

「それより提督。昨日は長門さんが普段の任務だけはやってくれましたので新情報とともに任務を遂行していきましょう」
「そうだな。まずは新情報によると文月の改二は確定として他には那珂のステータスが多少上方修正されて、さらには最大練度が155から165に引き上げになったという所か」
「そうですね。ですからまたこれまで以上に強くなれますね。ですがまだうちの鎮守府では155に達しているのはろーさんだけですから提督のこれからの頑張り次第だと思います」
「そうだよな。でもまだそんなに高見は目指すつもりはないと思っているから別にいいと思っている。それより早速だけど文月を第二次改装するか」
「はい、了解しました。今回は改装設計図は不要とのことで久しぶりに気が休まりますね」
「だな。最近の改二ラッシュで各鎮守府も勲章が枯渇していると思うから今回ばかりはありがたい」

それで私は文月の部屋へと連絡を入れる。

『なーに? 司令官?』
「文月か。至急工廠へと向かってくれないか。君の改装をしたいと思っているので」
『わかりましたー。それじゃすぐに向いますねー』

それで文月との連絡を切る。

「ふむ。これと言って気負っているではないようだな」
「そうですね。おそらく前々から文月さんだと狙っていましたので本人も十分覚悟は決まっていたのだと思います」
「そういうことだな。それでは私達も向かうとするか」
「はい、提督」

それで私と大淀は工廠へと向かっていった。
するとすでにそこには文月の姿があった。
どこか緊張しているのか何度も手をにぎにぎしている。

「司令官。ついに私も改二になれるんだね?」
「ああ。だからそんなに緊張はせずにいつものペースで改装して来てくれ」
「わかったよー」

と、そこで明石の声が聞こえてきた。

「提督ー? もういつでも準備は整っていますのでいつでもどうぞー」
「だ、そうだ。文月、それでは行ってきなさい」
「わかったよー! 文月、立派に成長してきますね!」

それで文月は改装室へと入っていく。
そしてしばらくして、

「提督。文月ちゃんの準備が整ったようですよ。いつでも改装ボタンを押しても大丈夫です」
「そうか。それじゃ押させてもらおうか」

それで私はいつも通り改装ボタンを押す。
すると改装室の中から光が漏れてくる。
中で改装妖精さん達の手によって文月が今現在も生まれ変わっている最中なのだろうな。
少し時間が経過して改装室の扉が開かれる。
そこには皐月にも通じる制服を着ている文月の姿があった。

「司令官~! 文月、改二になりました! どーう? 似合ってる?」
「ああ。とても似合っているよ。皐月とお揃いという所が姉妹らしくていいじゃないか」
「そうでしょう!? あたしもそれで嬉しいんだー!」

それで私の周りをクルクルしながら回っている文月は今のところ有頂天の状態なのだろう。しばらくはこのまま放っておこうとするか。
そしてしばらくして私の背中に張り付いて、

「ね、司令官……?」
「なんだ? 文月?」
「これからあたしも大規模作戦で活躍できるかなぁ……?」

それは偏に不安の一言。
文月は旧式の駆逐艦だから改二になったとしてもステータス的には弱い部類に入るだろう。
だけど、

「……ああ。かならず文月の活躍できる場所を作るよ。だからこれからも頑張ってくれ」
「うん! 文月、頑張るね! 大発動艇系統も装備できるようにもなっているんだから輸送連合でも活躍するから!」
「うん。期待しているよ」

と、そこに那珂が工廠へと入ってくる。

「あ! 文ちゃん! 第二次改装が終わったんだね! おめでとー!」
「うん! 那珂ちゃんさんもありがとう!」

それで二人して「イェイ!」とハイタッチをしている光景を見て仲いいなぁと思った。

「提督! 那珂ちゃんもさらなる改修ができるようになったんでしょう!? これでまたセンターに舞い戻れると思うと嬉しいな!」
「そうだな。最近は神通と川内ばかりが強化されていたから那珂も強化されて嬉しいだろう」
「うん! それじゃ早速改修してきまーす!」

それで那珂は改装室とは別にある改修室へと入っていった。
その間に私は文月にある相談をする。

「それでだけど文月。明日にはさっそく任務を受けてもらいたいと思っているんだけど大丈夫か……?」
「うん! 文月、頑張るー!」
「そうか。それなら明日にでも文月は第二二駆逐隊を編成するので皐月、水無月、長月に教えておいてくれ」
「わかったよー! みんなで任務、楽しみだなぁ……!」

文月はそれで何度目かになる笑顔を浮かべる。
実に楽しそうだと分かるものだな。
さて、どうなることやら。


 
 

 
後書き
文月の第二次改装を行いました。
77で足りたそうですね。
うちでは80まで上げておきましたので余裕でしたね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0115話『第二二駆逐隊、出撃』

 
前書き
更新します。 

 



今、執務室にはじつに個性的な面々が集まっている。
睦月型の文月を始めとして皐月、水無月、長月、さらには追加人員で三日月に菊月の計六名。
文月、皐月、水無月、長月で第二二駆逐隊を編成するのに追加でどうせなら睦月型で編成しようと思ったためのこのメンバーであった。

「司令官~。文月、いっぱい活躍するからねー」
「文月の護衛はこのボクに任せてよ!」
「この長月に任せておけ。役目は果たすさ」
「水無月としてはこうして任務に出させてもらえるだけで嬉しいからふみちゃんに、さっちん、ながながは守るね」

第二二駆逐隊の面々は元気があって大変よろしい。
さらには三日月と菊月も出れるとあってやる気を出していた。

「司令官。キス島撤退作戦ですね、この三日月におまかせください」
「出せる力は出しきるさ」

二人もかなり気力は十分のようだ。
これならかなりいい感じにみんなでクリアできるのではないか?
私はそう思った。
だって何のために睦月型の練度をこの日の為じゃないけど全員70以上にしたのか分からないからちょうどよかったとも言える。
いや、よかったよかった。

「それじゃこの六名でキス島撤退作戦に参加してもらいたい。軽巡が入れられないのは少し不安だけど君達の練度なら十分攻略は可能だろう」
「「「了解」」」
「それではさっそく出撃してくれ。いい報告結果を待っているよ」

それで私はみんなを送り出した。
気持ちは子供を送り出す親の気分である。
ぜひ頑張ってもらいたいな。







司令官に送り出されてあたし達は今、北方海域へと足を運んでいた。
そんな中、皐月ちゃんと長月ちゃんが、

「でもさー、司令官も相変わらず過保護だよねー」
「ほう? どうしてそう思ったんだ皐月?」
「だってさ、当然だけど誰かが大破したら即座に撤退しろと口を酸っぱく言っているからね」
「それは当然のことだろう。司令官にも苦い記憶はあるさ。過去を思い出しているのだろうな」

長月ちゃんが皐月ちゃんとの会話でそんな事を言っている。
そうだよねー。
司令官は過去に何度か轟沈させてしまった過去があるから余計気を張っているのはあたしから見ても分かるから。
文月たちはそんなに弱くないんだよー?
ついあたしはそんな事を思ってしまう。

「そうですけど、だけど私達だけで部隊を編成してくれたのですから私達の事を信じてくれていると思いますよ」

そこに三日月ちゃんがそう言って話に入ってきた。

「そうだね。水無月はまだこの鎮守府で睦月型としては新参に近い方だから言えるけど司令官の指揮は十分だと思うな。だってそれなら水無月が来てから間違って大破進撃したなんて報告は一度も聞いたことがないし」
「そうだな……司令官はそこら辺はかなり徹底的に熟知しているからな」

水無月ちゃんと菊月ちゃんもそれで司令官の事を褒めていた。
うんうん。それは文月もわかっているよー。
だってあたし達自慢の司令官だからね。
うちの鎮守府はゆるくもなくそんなに厳しくもないのが印象的だ。
司令官が優しいのもあるけど不便に思った事はあまりないから。
そしてここ最近で改二になるまで演習艦隊に入っていたから分かる事だけど他の鎮守府の子に話を聞いた事があるけどなにかしらブラックな職場が多いのが印象的だったから。
よく言えば軍隊式で規律に厳しい鎮守府もあれば、悪く言えばあたし達艦娘を兵器として運用している鎮守府もあり前に熊野さんが言っていた事だけど助けてやりたいというのも少しは頷けることだったし。
今はさほどそんな事態にはなっていないけどいつでも受け入れる用意は出来ていると司令官は言っていたからそんな事態にはあまりなってほしくないけどそうなったら司令官にはぜひその子達を助けてほしいなー。
そんな事を思っていた時だった。

「文ちゃん。そろそろキス島周辺海域に突入すると思うよ」
「わかったよ皐月ちゃん。みんなー、十分注意して進んでいってね!」
「「「わかった(りました)」」」

それでキス島周辺へと突入していくあたし達。
最初に渦潮に接触するのはもうお約束でなんとか巻き込まれないように進んでいく。
そしてボス前の強敵ル級がいる艦隊が現れた。

「みんなー! 単縦陣で攻めていくよー。なんとかル級の攻撃は避けるようにしてね!」
「わかった。皐月、突撃するよー!」
「いきます!」

みんながそれぞれ戦闘態勢に入る中、私も改二になってからの初の戦闘となるので気合も十分に挑んでいった。
ル級の攻撃が何度もあたし達に晒されていく。
それをみんななんとか避けながら反撃していくけど少しずつカスダメも喰らっていく。
そして一番危うかったのが皐月ちゃんが中破してしまったんだ。

「さっちん、大丈夫!?」
「くっ……まだまだ大丈夫だよ。ボクの事は気にしないで戦闘に集中して!」

水無月ちゃんが皐月ちゃんの事を心配するけど皐月ちゃんはなんとか踏ん張っているようでまだまだ平気のようだ。よかったー。

「もう! 文月怒ったんだから! やっちゃうからねー!」

それでル級は倒しきれなかったけどこちらもなんとか大破者は出ないで済んだので司令官に報告をする。

「司令官。なんとか大破者は出ないですんだよ」
『わかった。そのままボスエリアへと足を踏み込んでいってくれ』
「了解だよー」

それで司令官との通信を切った後、

「それじゃみんな。羅針盤に祈って進んでいこう」
「そうだな……この先は敵のエリアに行くか気のせいかのどちらかだったな」

それで菊月ちゃんが少し声のトーンを落としている。

「ダメダメ! 弱気になったら勝てないよ!」

あたしがそれでみんなを鼓舞する。
それでなんとかみんなもやる気を取り戻していってボスエリアへとなんとか突入していった。
だけど、

「敵艦隊、私達の横から接近中! 文月、状況はT字不利だ! 気を付けろ!」

長月ちゃんのそんな警告の言葉が聞こえてくる中、戦闘が始まる。
あたし達の攻撃はことごとくカスダメで終わってしまいこちらは長月ちゃんと菊月ちゃんも中破にさせられてしまって負けムードになっていたけど、だけどまだただでは終わらないんだから!

「みんなー! 夜戦にかけていくよー!」
「「「了解!」」」

それで夜戦へと突入していく。
するとやっぱりあたし達の攻撃は夜戦の補正もあってか次々と命中していく。
そして結果を見ればあたし達は全敵を沈めていたのであった。

「な、なんとか勝ったねー……」
「ああ。辛い戦いだった……」
「まぁ、なんとか勝ったからよかったじゃない。文ちゃん、司令官に報告しようか」
「わかったー」

それであたしは司令官に勝利の胸を報告するのであった。
あたし達睦月型でもやる時はやるんだから!


 
 

 
後書き
なんとか二回でクリアできました。
そして報酬は兵装資材を受け取りました。
一個だけだけどそのうちまた手に入る機会はあるだろう。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0116話『人探しの山風』

 
前書き
更新します。 

 



先日に文月の任務が終わって後少しで大規模作戦という時に私はEO攻略をしていた。
それなんだけど、北方海域まではなんなくクリアできたんだけど久しぶりにカレー洋リランカ沖海域で沼ってしまって結構な資材を消費してしまった。
今現在資材を急ピッチで回復しようと試みているけどこの調子だともうサーモン海域北方にKW環礁沖海域は放置をせざるを得ないだろうな。
後は備蓄に専念しないとな。
それでうちの鎮守府はもう完全に備蓄modeに入ったので大きく消費する心配もないので意外と暇をしている。
まだ期日までは何日かあるので今のうちに遊んでおこうという艦娘達も少なくはない。
そんな中、

「海風姉……どこぉ……?」

普段はもう『構わないで……』という言葉が決め台詞となりつつある山風が珍しく私の執務室へとやってきて少し泣き顔になっていた。
その理由は海風が最近接触する機会があまりないらしく構ってmodeに入ったとかなんとか、

「山風。私の執務室に来てくれたのは嬉しいけど海風は今はいないぞ?」
「うん……分かってる。でも提督なら海風姉を探せるかもしれないから……だから見つけてほしいの」
「そうか……」

山風のその普段はしないだろう頼ってくれるのは嬉しいので私も頑張ってみるか。

「それじゃ一緒に海風を探しにでも行くか」
「うん……」

それで私と山風は一緒になって鎮守府内を歩いていた。

「それで、山風は海風の行き先は予想しているのか……?」
「ううん。最近海風姉、どこかに消える事が多いから……あまり把握していないの……」
「消える、か……榛名はどう思う?」

それで私は榛名に聞いてみることにする。
そして榛名が透明の姿で現れるのだけど、

「(ビクッ!)」

榛名が現れたと同時に山風が私の後ろに隠れてしまう。
どうしたのだろうか……?

《あ、あの……山風さん? どうしましたか?》
「そ、その……びっくりしちゃっただけなの……気にしないで……」

山風はそう言う。
だけどふと私は思った。

「もしかして山風はまだ榛名のこの姿に慣れていなかったりするのか……?」
「うん……頭では分かっているの……でも、どうしてもおばけと誤解しちゃうの……」
《そ、そうですか……少しショックですけど、でも山風さん、安心してください。私は決して危ない事はしませんからね》
「うん……分かってる。あたしも気を付ける……」

それでいそいそと山風は榛名に寄り添っていた。
うんうん、よかった。
そういえば山風のようにまだ榛名のこの姿に慣れていない子も数名いるんだよな。
どうしても遠目で見ると山風のようにおばけと勘違いしてしまう子がいるようでどうにも榛名が不憫で仕方がない。
まぁもうそろそろ慣れてほしいところだな。
前の指輪の件で明石が判明させた事だけど榛名の実体化の条件は指輪に絆の力が溜まっていくことで発動するというものなんだけどその溜まり具合がかなり微小なのでちょうど一年しないとまともに充填されないんだという……。
その結果を聞いて榛名はやっぱり落ち込んだものだけど一年に一度だけだけど触れ合えるという方に考えをシフトしたようでそれからはもう落ち込んでいないようだ。
なんでもワクワクしているとかそんな感じ……?
まぁ落ち込んでいないのなら別にいいんだけどね。


―――閑話休題


山風が榛名に寄り添っているので今のうちに私は海風の行きそうな場所などを考えていた。
ただでさえ広い鎮守府内だ。
私がまだ艦これをゲームとして認識していた時に家具コインで買ってあった家具系統などもそれぞれセットになって各部屋にまとまっているんだよな。
それで酒飲みがよくカウンターバー室へと足を運んでいるのは知っている。
そこでなぜか早霜がカウンターバーでの主となっているのも意外といえば意外だけど似合うんだよなぁ……。
そんな感じで海風もどこかの部屋に行っているのかもしれないからな。
すると前方からプリンツオイゲンが歩いてきた。
その姿は水着のようでプールで遊んできたのだろう。

「あ! 提督だ」
「やぁプリンツ。プールにでも行ってきたのか」
「そうだよー。みんなも楽しそうに泳いでいたからきっと大規模作戦までの短い間を楽しもうと思っているんだと思うな」
「そうか、やっぱり考えることはみんな一緒なんだな」
「うん! あ、山風ちゃん? どうしたの、私の事……怖い……?」
「う、ううん……そんなことは無いけど……あまり構わないで……」

それでまたしても私の後ろに隠れてしまう山風。
うーん……やっぱり山風のこの対人恐怖症をどうにかしないとな。
今は構わないけど他の鎮守府の子達にあったら問題が起きるかもしれないからな。

「山風も少しずつみんなに慣れていこうな」
「……うん……頑張ってみます……」
「うん。いい子だ」

それで山風の頭を撫でてあげる。
それで撫でた後でもしかしたら拒絶されるかもしれないとも思ったけど山風は目を細めて甘えたままでいる。

「山風ちゃんは提督なら平気なんだね」
「うん……提督は安心できるから別に大丈夫……」

嬉しい事を言ってくれるな。
それでついつい頭を撫で続けてしまう。

「……提督? あまりやらないで……痛いし暑い」
「おっと、ごめんな」

それでやめた後にそうだと思い、私はプリンツにある事を聞いてみる。

「そういえばプリンツ。プールとかで海風の事を見なかったか?」
「海風ちゃん? そうですねー……?」

それで少し考え込みプリンツ。
だけど、

「江風ちゃんや時雨ちゃんなら見たんですけどいなかったと思います」
「そうか。悪かったな」
「いえ。頼っていただけるだけで嬉しいので大丈夫だよ! それじゃ私はもう行きますね。ビスマルク姉さまがきっと待ちくたびれていると思うんで」
「わかった。引き留めてごめんな」
「いえ、では」

それでプリンツは歩いていってしまった。
しかし、困ったな。
プールにもいないとなると他に海風が行きそうなところはどこだろうな……?

「とりあえず、海風の部屋にでも行ってみるか? もしかしたらいるかもしれないかも」
「うん……わかった」

それで二人して海風の部屋へと向かう。
そして到着して部屋の扉をノックしてみる。
すると中から『はーい』という返事が返ってくる。
どうやら海風はいたみたいだ。

「どうやら灯台下暗しだったみたいだな」
「……でも、海風姉、今朝はいなかったのにどこに行っていたんだろう……?」
「まぁ聞いてみればいいじゃないか」

それで私は海風に聞いてみることにした。

「海風。私だけど今は平気か……?」
『提督ですか!? ちょ、ちょっと待ってくださいね。今、ちょっと着替えていまして』
「そうか」

それでしばらくして扉が少し開かれてそこからなんと水着姿の海風が顔を出してきた。

「その……ちょっと水着を試着していまして……すみません」
「海風姉……可愛い……」
「あれ? 山風、どうしたの……?」

海風のこの反応を見るにどうやら行き違いだったみたいだな。

「ああ。なんでも山風が海風を探していたみたいなんで私もちょうど暇だったんで一緒に探していたんだ。そういう海風は午前中は水着の購入でもしていたのか……?」
「はい。なんでも大本営から私用の水着が届いたとか何とかで受け取りに行っていたんです」
「そうだったのか。よかったな山風。別に避けられているわけじゃなかったみたいだぞ」
「……うん。よかった……」

それで山風は海風に抱きついていた。
海風は山風に抱きつかれて少し頬を赤くさせながら、

「もう、山風は甘えん坊さんね……」
「海風姉……あたしも水着、欲しい……」
「そっか。それじゃ一緒に水着を買いに行きましょう」
「……うん……」

そんな感じで仲がよろしそうでよかったよかった。
それから二人は一緒に酒保に買い物にいったとか。
私はそんな二人を見送りながら、

「いつか海風みたいにもっと山風に頼られるようになりたいな」
《そうですね。でも提督も結構山風さんに頼られていると思いますよ? 今日を見た感じでは》
「そうか? それならよかった」

それで私は榛名と今日についってまた二人で話し合うのであった。


 
 

 
後書き
水着グラおめでとうということで海風が主役ではないですけど山風を主役にして書いてみました。
やっぱり海風は可愛いですよね。これからもみんなに水着グラが増えていってほしいですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0117話『古鷹の着付け』

 
前書き
更新します。 

 





私は任務を終わらせた後にとある艦娘に部屋へと呼ばれていた。
それで向かう道中で加古と遭遇する。
珍しいな。加古がこの時間帯に起きているのは……。
普段は古鷹に起こされるまでは寝ていたというのを記憶している。

「んあ? あ、提督じゃん」
「やぁ加古。それより君が普通に起きているなんて珍しいな」
「そうか? まぁそうなんだろうね。なんでも古鷹の奴にちょっと外に行っててって言われて部屋を追い出されちまってな」
「そうなのか。私も今から古鷹の部屋に呼ばれたので行くところなんだけどそれじゃ一緒にいくか?」
「いくいく! こうしてダラダラしていてもなんかつまらないからな。あたしもそれなら古鷹に部屋を追い出された理由を知りたいしね」

それで加古は私とともに古鷹の部屋へと向かう事になった。
だけど途中で加古にある事を聞かれた。

「ところで提督。古鷹になにか聞いてるかい? あたしもただ追い出されただけだからなにも聞いてなくてね」
「私もだよ。ただ一言『見てください』とだけ……」
「見てください、ね……あの恥ずかしがり屋の古鷹がね。なにを見てもらいたいんだろう……?」
「わからん。でも古鷹にとってはたぶん大事な事なんだと思うからしっかりと確認をしてやらないとな」
「だなー」

そして私と加古は古鷹の部屋の前へと到着した。
ノックすると中から『はい、います』という古鷹の声が聞こえてきた。

「古鷹。私だ」
『あ、提督。来てくれたんですね』
「ああ。それと道中で加古を拾ったんで一緒に連れてきたんだけど大丈夫か?」
『加古もいるの? はい、大丈夫ですよ』
「古鷹ー。それじゃ入るよー」
「失礼するよ」

それで私と加古は部屋の中へと入らせてもらう。
すると出迎えてくれたのは浴衣姿の古鷹の姿だった。

「提督、それに加古もいらっしゃい!」
「お、おう……」

加古の声が驚きで少しどもっているな。
私も加古がいなければこうなっていたかもしれないと思う。
だって、あの古鷹が浴衣に着替えていたのだ。
普段から可愛らしい古鷹だ。
それが浴衣に着替えていてさらに魅力が増しているともいえる。
だけど古鷹は私と加古の反応に首を傾げていた。
……もしかして自覚がないのか?

「そのだな、古鷹」
「はい、なんでしょうか?」
「もしかして見てもらいたいというのはその浴衣姿の事か……?」

それで古鷹も「あっ!」と言って気づいたのだろう。

「はい! 提督に一人で着付けをして着替えた浴衣を最初に見てもらいたくて呼ばせていただきました」
「そうか。それじゃ……似合っているよ古鷹。普段からはあまり想像できない姿だったから少し驚いてしまったよ」
「ふふ……ありがとうごうございます。提督」

それで古鷹は嬉しそうに頬を赤く染める。
だけどそこでやっと加古も現実に戻ってきたのか、

「うわー! うわー! 古鷹、とっても可愛いよ!」

どうも少し暴走気味で古鷹の肩を掴んで何度も揺すっていた。
それで少し困り顔の古鷹が、

「か、加古。落ち着いて……浴衣がほつれちゃうから」
「あ、ごめん……。でも本当に似合っているから見惚れちゃったよー」
「ありがと、加古」

加古の素直な感想に古鷹も嬉しそうに表情を綻ばせていた。
しかし、いったいどうして今こんな格好をしているのだろうか……?
私はそこが疑問になったので古鷹に聞いてみることにした。

「古鷹。どうして浴衣を今着ているんだ? なにか祭りが予定でもあったか……?」
「えっ? 提督はご存知じゃないんですか? 今週末にいつもの町で小規模ですけど花火大会が行われるんですよ。それで今から予行のために着付けの練習をしていたんです」
「そうだったのか……」

それで私も思い出す。
そういえば回覧板にそんな事が書かれたいたなと。
任務の資料と一緒になっていたから思わず忘れそうになっていたな。

「そういえばそんな広告記事が資料の中にあったよ」
「でしょう? ですから提督も一緒に行きませんか?」
「まぁ……今週末ならまだ大規模作戦は行われていないから大丈夫だと思うよ」
「よかった。他にも一緒に行きたいって子が何人もいるんで喜ぶと思います」
「まぁそれはいるだろうな。ただでさえうちの鎮守府は200人以上はいるんだから不思議じゃないし。今のうちに楽しんでおきたいんだろうな」
「だと思います。それと多分ですけど花火大会の件でそろそろ町から警備の要請が来ると思うんです。だからその前に私は祭りに行くっていう話をしておこうと思いまして……」

それで古鷹は舌を出して照れていた。
確かに事前に言っておいてくれればシフトから外すのもありだな。
そうだな。他のみんなにも予定を聞いておくか。直前で言われて花火大会の警備でいけないと騒がれても後で非難を浴びそうだし。

「古鷹の言い分はわかった。それじゃ今日中に花火大会に行くメンバーの名前を名簿を作成して私に渡してくれ。今のうちに予定を立てておけば警備に出せるメンバーも選びやすいし」
「わかりました」

それで古鷹の話は終わりなのだろう。加古と楽しく談笑している。
だけどそこで誰かが部屋の中に入ってきた。

「あやや。古鷹さん、また珍しい格好をしていますね」
「本当ね。なに? 祭りにでもいく準備? それならこの衣笠さんも混ぜてよ」
「あ。青葉に衣笠……」

うん? この展開はもしかして……。

「それじゃせっかくですから古鷹さんの浴衣の撮影会でもしましょうかね!」
「いいんじゃない?」
「いいと思うよ!」

古鷹以外の三人はそれで乗り気になっていた。
それで古鷹を見ると「仕方ないなぁ……」と言葉を零しながら、

「少しだけだよ?」
「わかってますよー。後で写真は渡しますね」

そう言って青葉による撮影会が始まったので少しだけ部屋の中は賑やかなのであった。


 
 

 
後書き
古鷹の浴衣姿は可愛いですよね。
来年にはもっと浴衣姿の子は増えてほしいですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0118話『レディのお買い物』

 
前書き
更新します。 

 





本日は土曜であり明日の花火大会もあるので控えめにしておきたいところだったけどとある艦娘達が買い物をしたいとお願いしてきたので私も同伴で着いていくことにした。
その艦娘というのは、

「Admiral。本日はお願いを聞いてくださりありがとうございます」
「私も感謝しているわ。ありがとね、司令官」
「気にするな。最上とか三隈も着いてきたそうだったけど今回は二人が特に行きたそうだったから特別な」

そう、お願いしてきたのはウォースパイトと暁の二人である。
最近海軍と大本営とまたしてもコラボしている某百貨店なのだけどさすがに東京に行くまでの道のりは鎮守府を空けるわけにもいかないので諦めてもらった。
代わりと言ってはなんだけど宿毛湾の近くにあるそれなりに有名なブランド店へと三人で足を運ぶことにしたのだ。
こういう時に関東圏内ではないという実感を沸いてしまうのは考え物だ。
特に私は欲しいものはこれと言ってないので不便と感じたことは無かったのでまさか二人が頼み込んでくるとは思っていなかった。

「司令官! 早くいきましょう!」
「わかったわかった。だから手をあまり引っ張らないでくれ。急ぐと転ぶぞ」
「ふふ……Admiralもお姉さんみたいですね」
「それを言ったら今の私の姿は榛名だから反論できないんだよなぁ……」

そう、暁と榛名は同じ黒髪だから歳の離れた姉妹だと思われても不思議ではない。
そしてウォースパイトという外国人を案内している感じに周りから見られてもまた不思議ではない。
実際、今回の買い物ではいつもは町に出るのは提督服を着ているのだけど今回だけは榛名の私服を借りているために一般人とそう大差はないからね。

《提督……? 私の姿がお嫌でしょうか?》
「そんなわけないだろう! だからそんな涙目にならないでくれ……」

榛名がそう言って涙目で訴えてくるのはさすがに心が痛くなるのでやめてほしいな。
そんな私と榛名のやり取りを見ていた暁とウォースパイトはというと、

「ハルナもAdmiralもとても楽しそうですね」
「そうね。息がとても合っているわ」

二人には仲が良いように見えるらしい。
まぁそれなら嬉しいけど。

「まぁ、榛名。それに二人とも。今回はお忍びでの買い物だからあまり騒ぎすぎるなよ? 軍人である私達がこうして鎮守府の外に出ているだけで変な目で見られたらまずいから」
「わかっているわ。そこら辺は注意しておきますね」
「暁もちゃんと気を張っているんだから! 安心していきましょう、司令官!」
「それなら良いんだけど……まぁ、いいか。それじゃちゃっちゃと済ませてしまおうか。それで帰りはどこかいい飲食店でも寄って食事をした後は真っ直ぐに鎮守府へと帰ろうか」
「はい」
「わかったわ」

それで私達はさっそくブランド店まで向かっていった。
そして到着して中を色々と見学をしていく。
そこのブランド店も多少は本店の方での恩恵も受けているようでコラボのグッズも色々と置かれていた。

「わぁー……綺麗なものがたくさんあるわね! どれも欲しいかも」
「アカツキ、買うのは自分と姉妹の分一つずつだけよ。お給金を貰っているとはいえ無駄使いはできないから」
「わかっているわ。レディとして嗜みを持ってお買い物をしてくるわ」
「それではイギリス本場のオールドレディである私に着いてきてくださいね」

それで二人のレディはずんずんとブランド店の中を突き進んでいった。
私はそんな二人を見失わないように後ろで着いていく。
こういう時の女子の行動力は凄まじいものがあるから置いてかれないように注意しないとね。
そして榛名は今は人の目もあるので私の脳内に語り掛けるような感じで話しかけてきた。

《ふふ……暁ちゃんもウォースパイトさんも楽しそうですね》
《そうだな。二人とも立派なレディだから色々と馬が合うんだろうな》

私も脳内で榛名に語り掛けるように話す。
さすがに一人で喋っていると変な人に見られたくないのでこれが一番いい方法だろう。
言葉に出さないで会話をする方法は結構習得するのに苦労したからな。
こういう時には役立ってくれてよかったと思う。
それで二人の後を追っていると、

「ウォースパイトさん、これってどうかしら……?」
「いいんじゃないかしら? アカツキにとても似合っているわ」
「そ、そうかしら? それならこれを四人分買おうかしら」

暁はそれで買うものが決まったのか買い物かごに四人分それぞれ色が違うものを選んでレジへと持って行っていた。
そしてウォースパイトも暁とは別に買うものをすでに選んでいたために暁の後ろに着いていっていた。

《こういう時は女の子って買い物をする時間は長いって話だけどすんなりと選んでいたな》
《そうですね。おそらくですけどすでに買うものは事前に調べておいたんだと思います》
《なるほどね。それじゃ私も調べておいた方がよかったかな? 特に下調べはしないで来ちゃったから》
《あはは……提督も意外と抜けていますね》
《それを言ったら榛名だって口出しはしてこなかったからお相子だろう?》
《確かにそうですね》

そんな脳内会話をしながらも私も手ごろなマグカップを購入する事にした。
そして三人で買い物を済ませた後に暁がアイスクリームが食べたいと言い出したので外の販売店の近くでアイスクリームを購入している暁をウォースパイトと見守っている中、私はウォースパイトにある話を持ち掛けた。

「……それで、ウォースパイト。少しは気は紛れたか?」
「えっ? な、なんのことですか?」
「とぼけないでいいよ。もう今度の大規模作戦の話は行き渡っていると思うから知っていると思うけど今は少し欧州周辺の海域が危ないそうじゃないか。気になっているんだろう……?」

それでウォースパイトは少し言葉を止めていたけどしばらくして、

「……さすがAdmiralですね。はい、少し心配なのは本音です。祖国が今危ない状況だというのにこんなに呑気にお買い物をしているのもおかしいですけど少しでも気が紛れればと思いまして……ソーリー」

それで頭を下げて謝罪してくるウォースパイト。
いや、別に謝らなくていいから。
そこら辺をやんわりと言って宥めてあげる。

「まぁ気にするなとは言わないけど重圧に感じないでほしいと言っておく。それだから今回は私達が欧州を助けにいくんだろう」
「そうですね。はい、今度の作戦では頑張らせていただきますね」
「その意気だ」

そんな会話をしていると暁が危なっかしく三人分のアイスクリームを持ってきていた。

「はい。司令官にウォースパイトさん」
「アカツキ、サンクス」
「ありがとう暁。頂くよ」
「ふふん。もっと褒めてもいいのよ?」
「どこか言い分がビスマルクに似てきたな」
「そうですね。とっても似ているわね」
「そ、そうかしら……意識して言ってみたんだけど。えへへ、まだまだね」

そんな感じで笑いあいながら三人でアイスクリームを食べた後に飲食店で食事をしていった。
ちなみに少し有名らしい和食店だったのでウォースパイトが目を輝かせていたのは別の話。
そしてそれから私達は真っすぐに鎮守府へと帰っていったのであった。


 
 

 
後書き
某コラボ関係での話を書いてみました。
場所が宿毛湾という設定ですので本店にはいきませんでしたけどね。



それとついに資材が開発資材以外がカンストしました。
これで後はイベントを待つばかりです。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0119話『それぞれの花火大会模様』

 
前書き
更新します。 

 





今日は町の方で花火大会が行われるという事で私達は鎮守府から出ていき花火が見える丘へとやってきていた。
浴衣姿の川内が、

「提督ー、もうすぐで花火が上がるんだね!」
「ああ。だからそんなにせわしなく動き回るな」
「もう……姉さんはこういう事に関してはよく騒ぎますよね」

神通がそれで額を抑えていた。
神通も浴衣姿のために少し動きにくそうにしている。
だけど私は知っている。
浴衣グラでの神通は中破してからが本番とばかりに目つきも鋭くなるんだよな。

「司令官もよく花火が見える場所に行きましょう」
「あっ……綾波姉ばっかりずるいぞ! 司令官、アタシも一緒に行くからね」

それで綾波と敷波に両手を引かれて私は移動する事になった。

「提督? あまり遠くに行っちゃダメだからね? お姉さんとの約束よ」

陸奥が私が移動する間際にそんな事を言っていた。
おそらく私の身を心配しての事だけどどうにも子ども扱いされているようで何とも言えない気分になる。

「さ、司令官。ここならよく花火が見えると思います」
「一緒に見ようね」
「それじゃ座るとするか」

それで私は芝生が生えている地面に持ってきていたシートを敷いて座った。
綾波と敷波が私の両隣りを確保して座っている。
そこに古鷹が遅れてやってきて、

「あ、少し遅かったかな……?」

そこには少し残念そうにへこんでいる古鷹の姿があった。

「古鷹さん、私の隣なら空いていますからどうぞ」
「うん。座らせてもらうね……」

それで古鷹も綾波の隣に腰を下ろした。
他にも何人か浴衣姿の艦娘はいるのだけど暗いので誰が誰か分からない状況だ。
そんな時に空に上がる一つの光。
空高く昇っていったそれは破裂をしたのだろう。闇夜の空を明るく染めあげる。
花火大会が始まったのだろう。

「わぁー……綺麗です」
「そうだね。綾波姉」
「はい。提督、とっても花火って綺麗ですね」
「そうだな」

それで誰かが「たーまやー!」とか叫ぶかなと思ったんだけどそこで川内の声で、

「夜戦だー!!」

と叫ぶ声が響いてきて思わず笑みが零れていた。
普段通りで安心したとも言えるけどね。
それから次々と花火は上がっていき夜の空を様々に変色させる。
………そういえばよく友達と見に行っていたっけ。
この世界に来る前の懐かしい記憶が蘇ってきていて少し郷愁を感じていた。
だけどそこで古鷹がそんな私の事を心配したのだろう顔を覗き込んでくる。
左目の輝きがそれで余計に私の顔が映ってどうしたものかと思っていると、

「……提督? もし心細かったらいつでも頼ってくださいね? もう私達は提督が言うように家族なんです。胸に溜まっている事があったら言ってくださいね」
「………ああ。ありがとう、古鷹。大丈夫だよ。古鷹のその気持ちだけでもうずいぶん気持ちは和らいだから」
「そうですか! よかったです」

それで私達は花火が終える時まで空を眺めていたのであった。







違う場所では海外勢の艦娘達が、

「ジャパンの夏……とてもビューティフルですね」
「そうね。ドイツでもこんなのはあまりないから見ていて飽きないわ」
「アメリカもそうね! とっても綺麗だわ!」

ウォースパイトが、ビスマルクが、アイオワがそれぞれ空を見上げて日本の花火を美しいと感じていた。




また違う場所では空母たちが、

「赤城さん、やはり日本の風物詩はいいものですね」
「そうですね、加賀さん。やはり……日本の花火はいいものです」
「そうですね赤城さん」
「多門丸にも見せたかったなぁ……」
「翔鶴姉、また来年見に来ようね」
「そうね瑞鶴」

一航戦、二航戦、五航戦のみんなが騒いでいた。




またある海上の上では深海棲艦が襲ってこないか哨戒をしている川内の代わりに阿武隈率いる水雷戦隊が遠くから見える花火を見て、

「ここからでもちゃんと見えますね! みなさーん、周囲を警戒しながらも花火を楽しみましょうねー」
「「「はーい!」」」

阿武隈はそれで駆逐艦のみんなに指示をしながらも花火を見て笑みを浮かべていた。




そして鎮守府で待機している面々も、

「おっ! 花火の音が聞こえてきたわね!」
「見えるかしら……?」
「いい音を鳴らしているわね」

それでせめて音だけでもと楽しもうとするものや寮の上に登って楽しんでいるものもいた。




そして駆逐艦のグループも少しお茶目を発揮していて、

「照明弾でも上げようか!」
「いやいやダメでしょ! せめて普通に花火セットを用意して普通に楽しもう!?」

皐月を筆頭にはしゃぐ子達が後を絶たないでいた。
それでもなんとかお姉さん組が場をなんとか宥めていたんだけどどうにかなりそうであった。






みんながみんな、撃ち上げられる花火を見上げて楽しんでいた。
そして一同は同じ考えをする。
それは、

『また来年もこの綺麗な花火を見るために生き残ろう』と……。











花火が撃ち終わりだしたので私達もそろそろ撤収しようかという話になっていた。
そんな時に川内がその手に花火セットを持ってやってきていた。
そしてその目は爛々と輝いていて、

「提督……? これだけで終わりって訳じゃないでしょう? 私達の花火大会はまだまだこれからが本番だよ」
「そうか……それじゃ帰ったらみんなで盛大に花火をしようか」
「やっりい♪ 提督も話が分かるね!」

それで川内は喜んでいた。
後ろでは神通が眩暈を起こしそうになっているけどそこで那珂が「大丈夫? 神通ちゃん?」と支えていたのでまぁ大丈夫だろう。
陸奥も陸奥で、

「あまり火遊びはダメよ? 引火したら後が怖いんだから……」

そう言って過去を思い出しているのか少し表情が優れていなかった。

「まぁまぁ、節度を持ってやりましょうよ陸奥さん」
「そうだよ。こんな時間は貴重なんだから楽しまないと」

綾波と敷波にそう言って陸奥はしぶしぶだけど「そうね」と答えていた。
そして古鷹が私の腕を掴んで、

「さ、提督も早く鎮守府に戻りましょう」
「そうだな。あ、少し待ってくれ。榛名は楽しめていたか……?」

そこでさっきまで無言だった榛名に問いかけると、

《はい……とても、とても感動しました。やっぱり花火はいいものですね。榛名、感激です》
「そうか。それならよかった。それじゃ鎮守府に帰ったら私達で第二次花火大会でも開こうか」
「そうですね」
《はい!》

それで私達は鎮守府に帰ったらみんなで花火を出して楽しんだのであった。
だけど後で大淀達に怒られたのはしょうがないという事で諦めたのは別の話。


 
 

 
後書き
途中で別の艦娘の視点も何度か入れてみました。
時折こんな時もあるんだと思います。
リアルな花火大会には今年は行けなくて残念でしたけど家の部屋の窓から見えていたのでまぁよかったです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0120話『天津風と島風のかけっこ』

 
前書き
更新します。 

 

「あっついわねー……」
「暑いなぁ……」

私は今執務室で天津風とともに扇風機にあたりながらも暑さについて言葉を出していた。
昨日の花火大会から少しは納涼できたのではないかと思っていたけどそんな考えは甘かったようだ。
それはそれとして天津風の頭の煙突から立ち上るハート型の煙がとてもチャーミングである。

「ちょっとあなた? もしかしてだけど私のこの煙を取ろうとしていないわよね?」
「いや、気を紛らわすのにいいかなぁとね」
「ちょっとやめてちょうだいね! さすがに私の煙突から出たのを取られるのは恥ずかしいから……」

それで天津風は手で煙突を押さえながらも威嚇をして来ていた。
うーん、可愛らしい威嚇だな。
と、そこで足元のズボンの生地を引っ張られる感じがしたのでそちらに視線を向けてみると連装砲くんがいた。

「連装砲くん、どうしたの……?」
「遊んでもらいたいのか?」
「ギギッ!」

連装砲くんはどうやら正解だったらしく島風の連装砲ちゃん達みたいに跳ねていた。

「そっか。どうする天津風?」
「あなたが決めていいわよ。私もそれに従うから」

天津風も特に異論はないらしく私に一任するそうである。
しかし、連装砲くんと遊ぶとなるとなにがいいだろうか?

「うーん……どうやって遊ぶか思い付かないからここは島風でも呼ぶか……? 連装砲ちゃん達もいれば楽しそうだし」
「そうね。島風ならいても退屈しないだろうしね」

天津風はそれで微かに笑みを浮かべていた。
島風は天津風とはある意味では姉妹みたいなものだから仲がいいのは頷けるものだろう。
それで私はさっそく島風の部屋に電話をかけようとしたんだけど、

『ツー、ツー、ツー……』

受話器の向こうからは誰もいないのだろう電子音だけが響いてきていただけだった。
それで島風はどこかに出ているのだろうと思い私は受話器を置く。

「どうしたの……?」
「どうやら島風は留守らしいな。電話には出なかったから」
「そうなの。それは残念ね……」
「ギギィ……」

それで残念がっていたのだけどそこで誰かが執務室の扉を開いてきた。
何事だと思ったらそこには連装砲ちゃんズを連れた島風の姿があった。

「提督ー! 島風をお呼びでしょうかー!」
「えっ……? ま、まぁ部屋に電話をしたのは確かだけど。……え? まさか電話が鳴ったのを合図に部屋を飛び出してきたのか……?」
「おうっ!」

返事の叫びにそう叫んだ島風。
そんな姿に天津風は呆れていたのだろう口を出した。

「あなたねぇ……電話くらいでなさいよ」
「あっ! 天津風ちゃんもいたんだね! かけっこしよう!」
「話を聞きなさいったら!」

それで対照的な二人は話が噛み合わない会話をし続けていた。
島風が一方的に騒いで天津風がさらに呆れるというある意味悪循環のような感じである。
このままでは埒があかないので、

「島風? いろいろ言いたいことはあるけどまずはちゃんと電話には出ような」
「うー……ごめんなさい。気を付けます」
「よし。それじゃもうこの話は終わりな」
「そうね。……はぁ、なにか余計に疲れたわ」

天津風はそれで無駄に体力を消耗したのか肩を落としている。
島風の相手は疲れるんだろうな。普段からよく一緒にいるのを見かけるし。

「それで提督ー? 私になにかご用でしょうかー?」
「うん。天津風の連装砲くんがなにかして遊びたいらしいらしくなにをするか困っていたんだ。それで島風はなにかいい案はないだろうか?」

そうすると島風は腕を組んで少し悩むそぶりをしたあとに、

「それじゃ連装砲くん、天津風ちゃんと一緒に私とかけっこしよう!」
「やっぱりねぇ……あなたはそうよね。予想通りすぎてなんとも言えないわ」

島風のそんな台詞に天津風はどこか諦めていたような表情をしていた。

「えー ? かけっこ楽しいじゃない! やろうよー!」

そう言って天津風を揺すっている島風。
どこか否定されたと思っているのだろう島風は目尻に涙を溜めていた。
そこまでかけっこしたいか……?
と、そこで以前にかけっこしようという約束をしたのを思い出した。なので、

「島風。それじゃ今から私も混ぜてもらってもいいだろうか?」
「いいの……?」
「あなた、大丈夫? 島風が走り出すとどこまでも走らされるわよ?」
「まぁ、そうだろうけど無下に断るのも悪いだろう? だからこれくらいなら付き合ってもいいと思ってな」
「やったー!」
「ギッギッ!」
「ギギィ!」

島風がそれで喜びを表現するために跳び跳ねていて、連装砲ちゃんと連装砲くんも一緒になって跳び跳ねているではないか。

「連装砲くんまで……もうそれじゃ仕方がないわね。私も付き合ってあげるわよ」

一人仲間はずれも嫌だったようで頬を赤くさせながら天津風も付き合うと言ってくれた。
ふふ、素直じゃないなぁ……。

「………なによ? あなた、なにか変なこと考えていないかしら?」
「そんな事はないぞー? それじゃ仕事を終わらせたあとに走りにでもいくとしようか」
「わーい!」

それで私たちは仕事を終わらせたあと、鎮守府周りを何度も走り込みをしていた。
そしていい感じに時間は経過して息も絶え絶えになりながらも、

「少しは気張らしになったかな……はぁ、はぁ……」
「そ、そうね……余計に暑くもなったけどね」
「提督も天津風ちゃんも情けないよー!」

私と天津風はかなり疲労しているのにまだ島風は元気のようだった。
この有り余る体力はどこから湧いてくるのか……?
まぁ、楽しかったので私は島風の頭に手を乗せて撫でてやりながらも、

「今日は楽しかったよ島風」
「うん! 私も楽しかったです! また走ろうね!」
「私は当分はもういいわ……」

私も天津風には同意しておきたいかな。
そんな事を思っていた帰りに、

《提督、お疲れ様です》
「ああ。榛名」
《もう今日はすぐにお風呂に入って汗を流してしまいましょう》
「そうだな」

それで私はすぐにお風呂に入ったんだけど金剛が乱入してきたので休まる暇がなかったなと思った次第だった。


 
 

 
後書き
今回は前から書きたかった二人を出していました。
イベントに突入したらほとんどキャラ話はできませんから今のうちにやっておくのもいいですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0121話『如月と睦月の提督慢心事情』

 
前書き
更新します。 

 





如月は睦月とともに執務室へと向かっていた。
その道中で、

「ねぇ、睦月ちゃん?」
「なぁに? 如月ちゃん……?」
「そろそろ大規模作戦が近づいてきたじゃない?」
「そうにゃし! だから睦月も輸送作戦をがんばるにゃしぃ!」

そう言って「おー!」と拳を突き上げる睦月。
それを見て如月は「あらあら、睦月ちゃんは元気ねぇ」と言って頬に手を添えていた。
事実、輸送作戦は睦月型が有利なのは変わらない事実なのである。
燃費はいいし最近になって文月も改二になって大発動艇を載せられるようになって攻略の幅が広がった事だし。
だけど如月が心配しているのはそこではなかった。

「でも最近司令官は油断をしているんじゃないかしら……?」
「およ? なんで? 如月ちゃん?」
「だって、資材はカンストしたからいいもののまだまだ資材が減るのを怖がっちゃってあまり出撃しなくなったじゃない……?」
「そうかなぁ……? 任務分は出撃していると思うけど……」
「そうなんだけど大抵は潜水艦の子達で事足りちゃうじゃない?」
「そうだね。うちはゴーヤちゃんやイクちゃん、イムヤちゃん、はっちゃんの四人が六人ずついるから二回出撃したら次の子に交代って感じでやり繰りしているから周回はスムーズでいいんだよね」
「そう……だから潜水艦の子達の練度ばかり上がっていっちゃって、それに対して私達駆逐艦の練度上げはほぼ演習で済まされちゃうものね」

そう、最近の演習風景は大体が戦艦二隻、空母、軽空母一隻ずつ、駆逐艦二隻でやり繰りしている為にたまに負ける時はあるけど大体は勝利しているのだ。

「司令官が言うのはまずは駆逐艦を全員練度70まで上げてから後の事は考えるそうだけど……いつになるのか分からない話だから少し心配よね」
「にゃしぃ……睦月達はほぼ遠征で大発動艇要員として出ずっぱりだから練度はかなり上がっているけど睦月達を含めて練度90以上の駆逐艦の子達はまだ合わせて、ひぃふぅみぃ……」

睦月が指でわざわざ数えるくらいしかいないのは丸わかりである。
それで計算が終わったのか、

「わ! まだ14、5人くらいしかいないね!」
「そうなのよ。後は大体70から80代の間がほとんどだから……最近熱心に駆逐艦の子達の練度を上げているけどまだ32人くらいは低練度の子達がいたと思うわ」
「でもでも全員で確か今の駆逐艦の子達の数は85人だから十分充実してきた方じゃないかなぁ……?」
「まだまだ甘いのよ。さっきもいったけど資材が余るほどあるなら少しくらい本格的な練度上げに消費してもいいと思うのよ」

それで如月は困り顔で腕を組んでいた。
だけどそれでももうそんな猶予はないこともわかっている。
だってもう後4、5日したら大規模作戦が始まってしまうのだ。
攻略だけならまだしももしも新艦娘を救出するという名目の掘りで沼ってしまったらどれほどの損害が出るかもわからないからだ。
前々回の作戦の伊13ちゃん掘りでそれはもう十分味わっているからできるだけ資材は満タンにしておきたい気持ちも分かっている。

「……そう考えると如月達が考えているよりもっと司令官は深く考えているのかもしれないわね」
「およ? 如月ちゃん、なにか話をいきなり飛ばしちゃったね」
「あら……。ごめんなさいね睦月ちゃん。ただ掘りでの被害も考慮しているとやっぱり臆病でもいい、万全の態勢で挑みたいという気持ちも分かっちゃったのよね」
「そうだねぇ。昔は提督も少ない資材でひぃひぃ言っていたからね」

睦月は昔を思い出しているのだろう。苦い顔をしていた。
まだ資材が行って5桁くらいがやっとの時代。全体的に低かった練度、足りない装備、お目当ての艦娘がドロップせずに阿鼻叫喚する様など……。なんとかそれでも資材が底をつきそうになるくらいにはなんとか全員手に入れてイベントも丙作戦でクリアしていった。
この世界に来るまで丙作戦に甘んじていたために甲作戦になかなか挑めなかった。
だけど大本営のお達しで甲作戦で初めてクリアできたことなど……。
睦月は昔から最近の事までをざっと思い出していて、

「今までかなり苦労したにゃしー……」
「そうよねぇ……」

それで二人して溜息を吐くまでが定番のやり取りだったりする。
と、そこに背後から気配を感じた二人。
なにやら嫌な予感がしたのでおそるおそる振り返るとそこには少し複雑そうな表情をした提督の姿があった。

「あっ、その、司令官……」
「提督……。にゃ、にゃしぃ……」

二人は思わず言葉に詰まってしまった。
この表情からしておそらく二人の会話は聞かれていたのだろうと悟る。
そしてしばらく無言の三人。
少しして、

「ごめんなぁ……頼りない提督で」
「そ、そんなことはないわ!」
「そうにゃしぃ! 提督はとっても頑張ってるよ!」
「いや、さっきの二人の会話をたまたま聞いちゃってな。胸に刺さる刺さる……」
《提督……大丈夫ですよ。二人は悪きはないですから》

榛名のフォローが入るがそれでもダメージは大きいらしくまだへこんでいるようであった。
それでどう声をかけていいか分からない二人だったが、

「だけど、これからも君達に心配かけないように頑張っていくから。だから着いてきてもらってもいいか……?」

そう提督が二人に言った。
それで如月は少し安心した表情になって、

「ええ、もちろんよ。司令官がダメになりそうだったらいつでも甘えてくれてもいいですからね?」
「睦月も睦月も! 提督のことを慰めるにゃしぃ!」
「ありがとな二人とも」

それで二人の頭を撫でる提督。
それで嬉しそうな表情を浮かべる睦月と如月。

「まぁ、駆逐艦問題が解決したら順次上げていこうと思っているよ。だからそれまでなんとか頑張ってみる。大規模作戦が終わったら資材の残り次第では練度上げを本格的にしてもいいと思っているしな」
「それじゃ睦月も遠征を一生懸命頑張るからね!」
「ええ。如月にお任せくださいね」
「ああ、十分期待しているよ。………ところで二人はなにか私に用があったんじゃないか?」
「「あっ!」」

それで二人は本来の話をするために提督と色々と話し合うのであった。
鎮守府の日常は大規模作戦が迫ってきていても通常運営である。


 
 

 
後書き
昔は本当に辛かったですね。
もうあの頃にはあまり戻りたくないという思いです。
結局主砲も改修していないしどうしよう……?
まぁなんとかなるか。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0122話『イタリア艦達の相談と明石の偉大さ』

 
前書き
更新します。 

 




本日は後明日なれば大規模作戦が開始されようとしている時にイタリアとローマの二人が執務室に訪れていた。
その相談内容とは一体なんなのだろうか……?
まぁ大体は予想は出来ない事もないけどね。

「イタリアにローマ。今回はどうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないわよ。提督、今回の大規模作戦でイタリア艦が仲間に入るっていう話は本当なの……?」
「そうです。場合によっては私達も頑張って出張らないといけませんから」

そう言ってイタリアとローマの二人は真剣な表情で私にそう聞いてきた。
だから私も隠す必要はないという思いで、

「ああ。まだ艦種や名前などは判明していないけどイタリア艦が来るのは判明しているよ」
「そうなの……少し楽しみね、姉さん」
「そうねローマ。誰が来るのかしら……?」

それでイタリアはまだ見ぬ同胞に夢を抱いていた。
だけどその雰囲気を壊したくはないんだけど、

「だけど同時にイギリスとフランスの艦も誰かが来るらしい」
「なっ! まさかまた他の国の艦娘も来るっていうの? それじゃただでさえ様々な国の艦が在籍していてごった返しているうちの鎮守府がまた騒ぎになるわね」
「そうだな。艦種に合わせて寮も部屋を用意してやらないといけないからな」
「提督? 必ず今回も全員仲間にしましょうね」
「イタリアの言う通りだな。報酬艦もだけどドロップ艦は全員深海棲艦から救わないとな」
「そうね」
「はい!」

それで三人で気合を入れる。
と、そこで明石が執務室に入ってきて、

「提督……? お取込み中すみませんが指示されていた試製41㎝三連装砲の改修が二本とも☆6まで完了しましたよ」
「そうか。それじゃ今日は金剛と一緒に試製35.6㎝三連装砲を一つ☆6まで上げてくれないか?」
「わかりました。……しかしこんな直前でいきなり主砲の改修は勘弁してくださいよ? ただでさえ大規模作戦前で工廠妖精さん達が各自装備の念入りなチェックで慌ただしいんですから。私も色々と準備はあるんですし」
「すまない、苦労を掛けるな……」
「わかっているならいいんです。それではまた工廠で改修作業をしてきますね。イタリアさんとローマさんもあんまり提督に迷惑はかけちゃダメですよ……?」

そう最後に二人に釘を刺したのか明石はそれで執務室を出ていった。
それを三人で見送った後、

「……アカシの顔、少しやつれていたわね」
「はい。おそらくですけど先ほど言ったように今工廠で出来ることは最大限準備しているんでしょうね」
「そうだな。大規模作戦が始まれば恐らくだけど明石が一番働くことになるだろうからな」

泊地修理はあまり多用はしない方だけどそれでも明石は工廠や入渠施設の点検を逐一チェックしているのは知っている。
前回の大規模作戦の時も少しどころかかなり疲れた表情をしていたのは記憶に残っている。
この世界に来るまでは知らなかった事だけど高速修復材を使用するときは必ず明石が入念なチェックをして安心して入渠できるようにいつも万全な状態を維持している事を知った私は明石の偉大さにホロリと涙を流しそうになったものだからな。
うちにはもう一人明石がいるけど育てていないために改修も手伝えないとのことで明石の補助に回っているとか……。

「とにかく明石がうちの生命線の一つなのは間違いない事実だから大切に扱ってあげないとな」
「そうね。私もよく入渠施設は使わせてもらっているけどとても環境がいいからお風呂と間違えそうだったわ」
「そうですね。私も安心して使えるから心強いです」

それで三人してほう……と特別な溜息を吐くのであった。
そしてローマが眼鏡をクイッと直しながら、

「さて、それじゃじっとしていられないわね。私もおそらくだけど今回は使われると思うでしょうから今からジムに行ってイメージトレーニングをしてくるわ」
「いいですね。私も付き合いますよローマ」
「そう。それじゃいきましょうか姉さん。それじゃ提督、また後で」
「失礼しました」

そう言って二人は執務室を出ていった。
しばらくして任務を片している執務室に新たな来客の姿が、

「提督ー! イタリア艦が新しく仲間になるかもしれないっていう話は本当ですか!?」
「ポーラもそれを聞いて気になって来てみました~」

ザラとポーラが執務室に入ってきて先客の二人のように私に聞いてきた。

「……イタリアかローマに聞いたのか?」
「いいえ? リベッチオが言いふらしていたのを掻い摘んだだけです」
「そうか。そう言えば情報が出た時にリベッチオも一緒にいたな」

先日にリベッチオが執務室に清霜と遊びに来ていた時に大淀が新情報の電文を持ってきたので一緒に聞いていたんだよな。
二人して「誰が来るんだろう……?」と目を輝かせていた。
それなのでイタリアとローマにしたように同じ内容を教えてあげた。
そして、

「そうですか……今回はフランス艦にイギリス艦も同時にやってくるんですね。どんな方達か気になりますね」
「できれば~、お酒が飲める人が来てほしいですね~、ポーラとしましては……」

ザラは真面目に、ポーラは酒仲間が増えればいいな的な感じでともに新たに来るであろう仲間の事を考えていた。

「それんだけどもしかしたら今回は海外艦のみんなが主役になるかもしれないから心構えだけはしておいてくれ」
「お任せください! ザラ、一生懸命頑張りますね! ねっ! ポーラ?」
「はい~。ポーラもできるだけ頑張りますねー」
「よし、ポーラは少し不安だけどもしその時がきたら存分に活躍してくれ」
「はい! それじゃポーラ行きましょう。提督、失礼しました」
「少しお酒が進みそうですねー……提督もあとで一緒に飲みましょうねー? それじゃー」

それで二人も執務室を出ていった。
……みんな、関係が深そうなだけあって興味津々だなぁ。
このパターンだと今日は海外艦が色々と尋ねてきそうだなと私は思ったので事前に伝えられる内容をメモしておくのであった。
ちなみにその後にドイツ艦やアクィラ、コマンダンテストなど関係の深そうな子達が入れ代わり立ち代わり執務室に訪れてきたのは予想通りだったのをここに記しておく。


 
 

 
後書き
明石はいるだけでもう偉大な存在ですよね。改修然り泊地修理然り。
それと海外艦は誰が来るのか楽しみです。
そして日本の駆逐艦は一人はおそらく旗風らしいですね。神風型も数が増えて賑わってきましたね。
明日の投稿はまだ影も出していない神風たちを書きましょうか……?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0123話『朝に起こしに来る人は』

 
前書き
更新します。 

 






私がまだ朝五時過ぎの時間帯に目を覚ましてまだ寝ていたいという気持ちになり二度寝をしようと思った矢先に事件は起こった。

「朝ー! 朝ですよー! 朝だってば!!」
「………」
《なんでしょうか……?》

夜の川内張りに朝には騒ぎ出す子の存在を忘れていたなぁ……と。
それで私はしぶしぶ起き出して、

「こんな朝早くにどうしたんだ朝風……?」
「司令官! そんな調子じゃダメよ! 今夜には大規模作戦が始まってさらには『旗風』が仲間になるっていう話じゃない!? だからいてもたってもいられなくなったのよ!」

そう言って朝風は寝室で元気に騒ぐ。
わかった、わかったから。

「はぁー……仕方がない。起きてしまったのもなんだからもう朝の食事を食べにでもいくとするか」
《そうですね、提督》
「話が早くて助かるわ! 朝の元気は食事から始まるんだから!」
「そうだな……少し着替えるから外に出ていてもらってもいいか……?」
「わかったわ」

それで提督服に着替えた私は朝風と一緒に食堂へと向かっていた。
食堂に着くともう朝の準備をしているのか間宮さんと伊良湖さんが朝の支度をしていた。

「あら? 提督に朝風ちゃん、おはようございます」
「ああ、おはよう間宮さん」
「おはようございます!」

間宮さんに挨拶をした後に、

「それにしても提督、本日は早いんですね。今日から大規模作戦が始まるから気合が入っているんですか……?」
「いや、それが朝風に起こされてしまってな」
「そうだったんですか。それではすぐに朝の食事の準備をしますので待っていてくださいね」

そう言って間宮さんは厨房の方へと入っていった。
いや、ほんと間宮さんには頭が下がる思いだ。大規模作戦が始まったらちょくちょく訪れることになるだろうからありがたみを感じるな。

「司令官! それじゃ早く席に着きましょう!」
「そうだな」

朝風はいまだにやる気が抜け切れていないのか騒々……ゲフンッ、元気だ。
これが昼頃になっていくと普通の状態に戻っていって夜には低浮上になっているから本当に川内の健康状態みたいだな。
それで朝食が来るのを待っていると朝風と同じく早起きなのか神風、春風、松風の三人もしっかりとした着心地で食堂へと入ってきた。

「あら? 司令官、早いじゃない? おはようございますね」
「司令官様、おはようございます」
「ふふ、察するに朝風の姉貴に叩き起こされた口だね……?」

神風が私に気づいたのか朝の挨拶をしてきて、春風も礼儀正しく挨拶をしてきて、松風だけはなにやら朝風の方を見ながらもそんなことを言っていた。
松風に関しては当たりなので何とも言えない。
そんな松風に対して朝風はというと。

「別にいいじゃない? 大規模作戦が始まる朝はしっかりと栄養を取っておくのも大事なのよ松風?」
「否定はしないさ。ふふ、君も中々大変そうで何よりだよ。ああ、朝風の姉貴に弄ばれる君の姿はなんて面白いのだろうか」
「うるさいわよ松風! あんたの調子に合わせているとこっちも疲れてくるんだから少しは静かにしていなさい!」

どこか演技が入っているんではないかと思うくらいには松風が自分の世界に入っている。これで素なんだからすごいよな。
そして君が言えるセリフかい?という言葉を発している朝風にはどうしたものか。
そんな二人をよそに神風が私に話しかけてきた。

「それより司令官? とうとう旗風も来るらしいっていう話は本当なの?」
「ああ。だから楽しみにしていてくれ」
「そう……それじゃ神風型で旗風の歓迎会を開かないとね!」
「神風姉さま、とてもそれはいい案だと思いますわ」

春風が手を合わせて神風の提案を褒めていた。
そんな事を言われると早く合わせてあげたいじゃないか。
私は先行勢じゃないけどできるだけ早めにイベント海域には突入していく性質だから早めに仲間にしてやりたいよな。
と、そうだな。
まずは旗風より先にE1で仲間になるであろう駆逐艦の子を救出しないといけないから頑張らないとな。
……まさかE1でいきなり連合艦隊を組むとは思いたくないけど前例がないわけじゃないから引き締めてかかっていかないとな。
私がそう思っていると間宮さんが食事を持ってきてくれたのか、

「はい。提督、今日の食事ですよ」
「ありがとう間宮さん」
「いえ、それでは。神風ちゃん達も早く注文して頂戴ね」
「「「はーい」」」

いまだに四人でがやがや騒いでいたので間宮さんの一言で次々と注文をしていく三人。
朝風だけはどうやら息切れを起こしているようだ。
松風に弄りに弄りられたか。

「はぁー、はぁー……ほんとうに松風の相手は疲れるわね」
「お疲れさま。ほら、朝風も食事を摂ったらどうだ? さっき一緒に持ってきてもらってたぞ」
「そうね。朝の補充は大切よね。いただきます!」

そう言って朝の食事にありつく朝風の表情はとても晴れ晴れしているのが印象的だった。
やはり間宮さんお手製の料理は美味しいのだろうね。

「うまい! やっぱり間宮さんの料理は最高ね! ほら、司令官も早く食べましょうよ!」
「そう急かすな。食事はゆっくり食べてこそだろう」
「そうね。悪かったわ」

それで二人でゆったりしながら食事を食べていると次第に食堂にはほかの艦娘達も顔を出し始めたのか色々と注文をしている光景を見て、

「朝に早起きをするのもいいものだな。みんなの色々な顔が見れるから」
「そうでしょう? これもあるから朝は楽しいのよ。今度から司令官も早起きをした方がいいんじゃない?」
「わかった。努力はしてみるよ」
「ん。まぁいい返事だからいいわ」

その後に神風たちも食事を持ってきて神風型のみんなと一緒に食事を摂った後に今夜から始まる大規模作戦に向けて準備を開始するのであった。
きっと、今回も新艦娘全員を仲間にすることを目標に掲げる。
あわよくば全甲でクリアしたいなという気持ちにもなっていた。

「司令官。今度も頑張っていきましょうね!」
「ああ」

そう朝風に答えておいた。


 
 

 
後書き
今回は朝風をメインにして書いてみました。
今夜から大規模作戦が始まります。
備蓄は済ませましたか……? 主力はレベリングは完了しましたか……? お祈りはすみましたか……?
提督の皆様の健闘を祈ります。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0124話『イベントで現れる艦娘』

 
前書き
更新します。 

 




この世界に来て第二の作戦が開始された。
作戦名、『西方再打通!欧州救援作戦』。
この作戦は欧州で困難を極めている深海棲艦との戦いを有利とするために再度欧州周辺海域を救援して深海棲艦の群れを一掃する作戦だ。

「ついに始まりましたね提督」
「ああ、大淀。この世界に来てから初めてになる大規模作戦だ。覚悟を決めて挑んでいかないとな」
「はい。特に海外艦の皆さんがいつもよりやる気を出していますのでこの作戦も頑張ってまいりましょう」
「そうだな。まぁ、こういう時に限って誰かが聞きに来そうなものなんだけどな。誰とは言わんが……」

するとその私のセリフを待っていたかのように執務室の扉が開かれてドヤ顔で入ってきたとある艦娘。
その表情はとても情報を欲しがっているように見えて飢えているよに感じた。
そう、前回の時も作戦が開始されたと同時に突撃取材してきた青葉であった。

「ふふふ……司令官、青葉、来ちゃいました」
「来るとは思っていたよ。それで情報を知りたいんだろう……?」
「もう……司令官、反応が冷たいですよー。もっとやる気を出していきましょうよ! せっかくの大規模作戦なんですから」
「そうは言うがな……まだ今は各情報が送られてくるのを待っている状態だからまだ出撃はしないぞ?」
「分かっていますって! ただ分かっている情報だけでも教えていただければ青葉もさっそく記事作成に着手することができますので~!」
「わかったわかった。それじゃ教えてやるから早めにみんなに伝わるように頼んだぞ」
「わっかりましたー!」

それで私は青葉に今回の各海域の作戦名を教えていくことにした。

「まず第一海域だが、『再打通作戦発動』。
そして第二海域が、『リランカを越えて』。
さらには第四海域は『ステビア海の先へ』。
最後に第四海域が『遥かなるスエズ』。

この四つの作戦を統括して前段作戦となる」
「なるほどなるほどー」

青葉はそれでメモを取っている。
取材魂が逞しいな。

「それで艦娘の方はどうなっているのでしょうか……?」
「そうだな。この前段作戦の間の海域で特Ⅱ型駆逐艦の『狭霧』と『天霧』が深海棲艦に魂を捕えられているという」
「狭霧さんと天霧さんですか。綾波さん達が喜びそうですねー」
「そうだな。そしてE2攻略報酬で神風型駆逐艦の『旗風』。そしてE4攻略報酬でフランス戦艦である『Richelieu(リシュリュー)』が仲間に加わるという。
今のところは情報はこれで全部だ」
「なるほどー。わかりましたー。それではこれで分かりやすい記事を作成しておきますね。失礼しましたー」

そう言って青葉は部屋を出ていった。
うん、本当に台風みたいなやつだな、青葉は。

「とりあえずはこれで青葉の件はいいとして攻略はどうするか?」
「万全を期すために攻略情報が出揃ってからでも遅くはないかと」
「そうだな。それじゃその方針でいくとするか」

それで私と大淀はこれからの攻略について話し合いを開始した。







青葉はさっそく記事を作成するために自室へと向かっているとそこにちょうどよく前方から綾波が歩いてきた。
それなので青葉はさっそくこの内容を伝えようという思いで綾波に話しかけた。

「綾波さん、少しよろしいでしょうか……?」
「はい? 青葉さん、なんでしょうか?」
「はい。耳寄りな情報があるのですけど聞きませんか?」
「耳寄りですか……その情報はなにか私に関係するのでしょうか……?」
「はいー。情報源は司令官からですからかなり確かな情報ですよ」
「司令官から……? なんでしょう……?」

それで綾波は考え始めだす。
青葉はそれを見計らって、

「なんでも今回の作戦の前段作戦では特Ⅱ型駆逐艦の狭霧さんと天霧さんが仲間に加わるという話ですよ」
「ッ!? それは本当ですか!?」

それで青葉の腕を思わず掴む綾波。
青葉は少し汗を垂らしながらも、

「綾波さん、落ち着いてください。だから今現在司令官と大淀さんが出撃編成を考え中らしいですよ」
「そうなのですか……。それを聞いていてもたってもいられなくなりました。この情報はすぐに綾波型で共有しますね!」
「どうぞー。でもまだ記事が作成できていませんので公けに公表するのはまだ我慢してくださいねー?」
「わかりました! 綾波、頑張りますね!」

それでご機嫌となった綾波はスキップでもするのではないかという感じで青葉から離れていった。
それを見送った青葉は思わず綾波に捕まれた腕を見て再度汗を垂らしていた。
すこし赤くなっていたのだ。
綾波がどれだけ本気かという感じが伺える。

「……まだ情報を教えるのは早かったみたいですね。青葉も反省しないと……姉妹艦が仲間になるなんて言われればそれは有頂天にもなりますよね」

青葉は情報を出すタイミングを少し誤ったのを反省しながらも「さて……」と言葉を零した後に、

「それでは皆さんが納得するような記事を作成しないといけませんね。頑張りますよー!」

そう言って青葉は自室へと入ってさっそく記事作成を開始した。
ちなみに作成した記事は午後にはすでに掲示板に告知されていたために多くの艦娘達がそれを見ていた。
その中でコマンダンテストが仲間が増えるという感じで執務室へと向かったのは別の話。


 
 

 
後書き
前回同様に青葉を出しました。
青葉を出すのはイベントの始まりのようでいいですよね。
皆さんも頑張ってください。
私も全員仲間にできるように頑張ります!



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0125話『第一海域、新たな仲間』

 
前書き
更新します。 

 





私はさっそく第一海域を攻略するために部隊の編成を大淀と考えていた。
それでまずは深海棲艦の補給線を絶つために補給地の確保を行うための部隊を作成したので執務室へと呼び出した。

第一艦隊旗艦は『那珂』。
そして『リベッチオ』。『朝潮』。『朝霜』。『初霜』。『阿賀野』。
この六名でまずは補給線を確保してもらいたいということだ。

「提督ー! この那珂ちゃんにお任せ! キャハ☆」
「那珂ちゃん、ご機嫌だねー。阿賀野も頑張っちゃうぞー!」

軽巡の二人がそれで騒いでいる。
うん、この二人を組ませるとこうなるという事は分かっていたけどまぁ仕方がない。

「朝潮に初霜。この二人のお守りを頼んだ」
「了解しました。朝潮、一生懸命頑張らせていただきます」
「はい。初霜にお任せください」

「うゆー……司令、それってあたいも含まれているのかい?」
「自覚があるならあんまり迷惑はかけるなよ?」
「わかっているけどさー……那珂ちゃんさんと一緒くたにされるのはなんか嫌だなぁ……」
「まぁまぁ。リベ達も頑張ればいいじゃん!」

それで執務室の中では騒ぐもの、真面目に考察しているもの、静観しているものと分かれる形になっている。

「さて、それではみんな。聞いてくれ。この部隊は補給線の確保を目的としているために数名は深海棲艦本体を倒す部隊ではないものもいるけど、それでもしっかりと務めてもらいたい」
「わっかりましたー!」
「それとその過程で特Ⅱ型駆逐艦の狭霧が深海棲艦に捕らわれていると聞く……よって彼女の救出も最優先で頼みたい」
「わかりました。綾波さん達のためにも狭霧さんを救出しましょう!」

朝潮がそう言って狭霧救出のために意欲を燃やしている。
うん、やる気は十分だな。
これなら大丈夫かな?

「頼んだ。それではみんな、まずはリンガ泊地に寄って一度補給を行った後に作戦を開始してくれ」
「「「了解」」」

それで六人は戦闘へと駆り出していった。







提督に大事な任務を任されたんだから那珂ちゃん、一生懸命頑張るんだからね!
普段私の性格もあってか軽く見られちゃうこともあるけど水雷戦隊魂が宿っている私がいるからにはこの任務……必ず成功させちゃうんだから!
それからリンガ泊地へと到着して現地での補給を受けた私達はさっそくとばかりに出撃を開始した。
今回は普通にボスに向かってもいいというのだけどまずは狭霧ちゃん救出を最優先でということでまずは丙作戦で挑んでいる。
二度にわたる補給路を確保するのにはそう時間はかからなかった。
そして羅針盤に新たな道が表示された。

「みんなー! 情報によると敵深海棲艦にはPT小鬼がいるそうだから気張っていこうね!」
「わかりました。そのための索敵と機銃装備です」
「おう! このあたいに任せておきな!」
「リベも頑張るよー!」
「お任せください!」
「阿賀野は索敵に集中しているねー!」

それぞれ分担役割はできているようで安心した私は、

「それじゃ那珂ちゃん水雷戦隊、突撃ー!」

それで那珂ちゃん達は出現した道へと突き進んでいった。
そして出現するPT小鬼。
久しぶりの遭遇にやっぱり不気味さがすごいんだよねー。
攻撃しても『キャハハ』と笑い声を上げているだけでとてもではないけど那珂ちゃん的には精神をやられちゃうような感じだ。
ダメダメ! そんな弱気になってちゃ!
今は那珂ちゃんが旗艦なんだからいいところを見せないとね!

「それじゃみんなー! 攻撃開始ー!」
「「「了解」」」

それで那珂ちゃんを筆頭にみんなが攻撃を開始する。
それでただでさえ当たれば紙装甲のPT小鬼は瞬く間に駆逐されていった。
さっすが那珂ちゃん達だね!
このペースなら結構いい感じに周回できるのではないかな?っと思っていた。
そして何度も倒す事計三回くらいやったくらいかな……?
海面が光りだして次々と体を形成していくのを見て、

「那珂ちゃんさん、これは……」
「うん、そうだね。多分そういうことなんだよね」

そんな会話をしている間にも体の構築が終わったのかその子は名乗りを上げる。
白い髪に大人しめな感じの女の子。その子の名前は、

「あの、綾波型駆逐艦の狭霧と言います。よろしくお願いしますね……」

そう、やっぱり狭霧ちゃんだったのだ。
こんなに早く救出できるとは思っていなかったので那珂ちゃんも嬉しい!

「ようこそ狭霧ちゃん、私は那珂だよ。よろしくね!」
「那珂さんですか……私、綾波姉さんのもとへと会いにいけるのでしょうか……?」
「会えるよ! 那珂ちゃんが保証するから安心して。それじゃさっそくだけど鎮守府に帰って報告をしようか」
「はい……ッ!」

それで狭霧ちゃんは笑顔を浮かべて私達に着いてきてくれた。
うんうん、素直な子は那珂ちゃんも嬉しいよ。
それで鎮守府に帰投して、執務室へと向かい、

「提督ー! 報告だよー。狭霧ちゃんを仲間にできたよ!」

那珂ちゃんがそう報告すると提督は一瞬の驚きとともに、

「よくやってくれた。それで、君が狭霧でいいんだな?」
「は、はい……綾波型駆逐艦の狭霧です。提督、よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく。それじゃさっそくだけど綾波達に会って来なさい。積もった話があるだろうからね」
「はい!」

それで狭霧ちゃんも笑みを浮かべて提督の事を認めたようだ。
その後に提督に「那珂、狭霧を綾波達の所へと案内しといてくれ」と言われたので快く引き受けた。
それで向かう道中で、

「……それで提督の第一印象はどうだったかな?」
「とても優しそうな感じでした。よかったです……少し不安だったから」
「うん。提督は少し特殊だから後で綾波ちゃん達に提督の事情も聞いた方がいいよ。あれで提督も今は艦娘だから」
「えっ……提督が艦娘なのですか?」

それで狭霧ちゃんは驚いた表情をしている。
そうだよねー。知らない子からしたら驚きだもんね。

「うん、そうだよ。だから時には提督自身が出撃する時もあるからもしかしたら一緒になる時もあるかもね」
「そうなのですか……」

そんな話をしながらも綾波ちゃんの部屋に到着して、

「綾波ちゃん、那珂だけどちょっといいかな?」
『はい、どうぞ』

それで扉が開かれて中には綾波ちゃんがいた。
こちらに振り向いてすぐに狭霧ちゃんを目にしたのだろう破顔して嬉しそうな表情で、

「お帰りなさい、狭霧ちゃん……」
「ただいま……綾波姉さん……」

それで抱きつく狭霧ちゃん。
うんうん。やっぱり姉妹っていいモノだよね。
那珂ちゃんは空気を呼んで「あとはよろしくね」と言って部屋を出ていった。
さて、これで後はボスを倒すだけだよね。
もしかしたら外されちゃうかもしれないけどその時はその時だよね。
使ってもらえるだけでも嬉しいから那珂ちゃんは満足です。


 
 

 
後書き
まずは狭霧ちゃんを仲間にしました。
次回は新ボスを倒しましょう。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0126話『お盆の日、会いに来た艦娘達』

 
前書き
更新します。 

 




今日はお盆の日だ。
この世界では誰かを失ったという事はないんだけどそれでも私はしておきたい事がある。
それでナスときゅうりを鳳翔さんから拝借して馬やら動物の形を作って鎮守府の入り口に置いた。

《提督……? これは……?》
「榛名も知っているだろう? 死んでしまったものがこれに乗って帰ってこれるように動物の形をしているんだ」
《ですが……この世界に来て提督はまだ誰も失っていませんよ》
「そうだな。でも、きっと彼女達は彷徨っていると思うんだ……」
《かつて沈んでしまった木曾さんや綾波さん達ですか……?》
「そうだ。もし本当に彼女達が死んだ後も彷徨っていたとしたら目印くらいは置いておいた方がいいだろう……?」
《そうですね》

それで榛名が笑顔になって頷いてくれた。
お墓もないけど、きっと帰ってきてくれるという思いで私はその場を離れようとしたその時に、

【―――………】
「ん……?」

なにか、聞こえてきたような気がした。
でも気のせいかという思いで、

「さて、それじゃ今日もはりきって大規模作戦の攻略にでも乗り出すとするか」
《…………そ、そうですね提督》

私が元気を出してそう言ったのだけどどこか榛名が声が上ずっているのが気になったので聞いてみることにした。

「どうした榛名?」
《い、いえ……提督は気にしないでください。ただ……》
「ただ? どうしたんだ一体……?」
《……いえ、提督に害がないのでしたら別にいいのです》

なんか榛名はそう言って体を少し震わせながらも微妙な笑みを浮かべていた。
気になるな……?
まぁ、榛名が話したくないのだったら別に無理に聞き出すこともないだろう。
それで私は執務室へと向かっていった。






榛名は提督が気づいていないのを分かっていてか虚空に向かって提督に聞こえないように話しかけた。

《ですが……驚きました。なんで私には見えるのかはわかりませんが……木曾さん達なんですね?》
《ああ。どういう訳か知らないがここに戻って来ちまった……》
《司令官に会いたいという気持ちが私達の魂を引き寄せたのでしょうか……?》
《どうでもいいけど多分榛名さんは今は精神の状態だからイムヤ達の事が見えるんじゃない……?》
《もぐもぐ……まるゆもそう思います》

現れたよ四人の姿に榛名は多少は驚きながらももう会えないと思っていた彼女達と再び会えたことに喜びの思いを感じていた。

《でも、不謹慎ですけどよかったです……沈んでしまったら深海棲艦になるという噂話もあったのでみなさんがこうして艦娘のままの姿で……》
《まぁな。しっかし提督も見ない間に逞しくなったな。榛名さんの姿になっているのはなんか微妙な気持ちだけどな……》
《ふふ……そうですね。綾波達もさすがに今の司令官の姿は驚きを感じています。でも……》

綾波は視線をそっと別の方へと向ける。
そこでは今の綾波がつい最近仲間になった狭霧とともに笑顔を浮かべながら一緒に歩いている姿を見て、

《そっか……。狭霧ちゃんもやっとこの鎮守府に来られたんですね。実際に会えないのが寂しいですけど嬉しいです》
《綾波さん……》

榛名はそれで綾波にどういって声をかければいいか分からなかった。
榛名は意識すればみんなに姿を見せられるけど四人はもう榛名という特例を除いて誰にも声をかけられないのだ。
それがどれだけ悔しい事か計り知れないだろう。

《あ、すみません。ついしんみりしてしまいました》
《いや、綾波は悪くないわよ。イムヤ達はまたみんなに会えるだけで幸せなんだから》
《そうです! まるゆもそう思わないと悲しくなっちゃいます!》

イムヤとまるゆが綾波を慰めている時に、今の綾波と狭霧が提督のもとへと歩いてきた。
それでつい身構えてしまう幽霊の方の綾波。

「司令官! 天霧ちゃんも仲間になるっていうんですから必ず助けましょうね!」
「お願いします! 提督! 天霧ちゃんも助けてくださいね!」
「そうだな。きっと……助けような」

それで綾波と狭霧に優しい笑顔を向ける提督。
そんな姿を見て、

《司令官……今でも頑張ってくれているんですね。嬉しいです》

綾波がそう言っている時に、

「ところで司令官……? なにか肩が重くなっていませんか?」
「またどうして……?」
「いえ、なにか榛名さんとは別に誰かが提督の肩にいるようなそんな感じがするんです」
「そ、そうか……もしかしたら今日はお盆だから沈めてしまった彼女達がいるのかもしれないな」
「そうなのでしょうか? でも懐かしい感じがしますからきっと悪いようにはならないと思います。きっと司令官の事を守ってくれているんだと思います」
「そうだと、いいな……。私は彼女達に恨まれても仕方ない事をしてしまったんだからこれくらいの重みは我慢しないとな……」

そう言って提督は少し儚い笑みを浮かべる。

《そんなことないです!》

綾波は叫んでいた。
決して恨んではいないと……!
またこうしてあえて嬉しいと!
そんな気持ちがつい爆発してしまっていたが、それでも提督には聞こえない事がこんなに辛い事だなんて……ッ!
そんな涙を流している綾波の肩に木曾が手を置き、

《無理をするな綾波。俺達はこうして現れているだけでも奇跡みたいなもんだからな》
《そうよ》
《はい……》

四人はそれで少し落ち込み気味に声のトーンを落とす。
そんな四人の姿を見かねて榛名はある事を提案した。

《でしたら皆さんの声を提督に伝えますね。きっと、届くはずです》

それで榛名は透明な姿で提督の前に現れて、

《提督……》
「ん? どうした榛名……?」
《はい。沈んでしまった彼女達の声を提督に届けたいと思いまして……》
「え?」

提督と綾波達はハテナ顔をするけど榛名は構わず続ける。

《まずまるゆさんからです。『隊長、まるゆは隊長の事を恨んでいません!』》
「ま、待ってくれ榛名……? みんながいるのか……?」
《はい。ですから伝えますね》
「私もいるんですか……?」
《綾波さんもいますよ。伝えます。『綾波は決して司令官の事を恨んでいません。むしろまた司令官に会えてうれしいです』って言っています》
「「「………」」」

それで三人は無言で榛名の言葉を聞いていた。
提督の目尻には涙がうっすらと浮かんでいた。

《イムヤさんからです。『司令官? イムヤ達を沈めてしまった事を今でも覚えていて苦しんでいるなら気にしないでとは言わないけどあまり背負い込まないでね……?』って言っています》
「イムヤ……」
《最後に木曾さんからです。『おい、提督。俺は沈んだことは悔やんではいるけどお前の事を恨んじゃいないさ。だから代わりにこれからも誰かを沈めるのだけはやめてくれよ? こっちにいるのは俺達だけでいいからさ』って言っています》

四人の言葉を言い終えたのだろう榛名はすっきりとした表情をして、

《お盆の間だけは木曾さん達はいるそうですから、ですから提督も話しかけてあげてくださいね?》
「ああ、ああ……必ず」

それでもう提督は涙を流し続けていた。
そんな提督の背中を綾波と狭霧が宥めてあげていた。
彼女達も提督ほどではないけど涙を浮かべているのだから感情移入できたのだろう。
こんな奇跡の再会にただただ榛名も嬉しい限りだった。

そして四人は笑みを浮かべながらも提督の後ろで榛名に「ありがとう」という言葉を贈っていた。


 
 

 
後書き
イベントとは関係ありませんけど今日はお盆ですからこんな話を書いてみました。
実際こんなだったら嬉しいですね。



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0127話『潜水新棲姫の登場』

 
前書き
更新します。 

 





ようやく私達はE―1の攻略へと乗り出していた。
先日に狭霧も仲間にしたのでもう遠慮をすることは無いという事である。
それで先日の狭霧掘りから大幅にメンバーをチェンジしていた。
まず、那珂と阿賀野の二人は外してやはり先制対潜ができる五十鈴に代わってもらった。
那珂と阿賀野は装備によっては先制対潜は可能なのだが今回は電探も持たせる用途で対潜値が足らなくなってしまうからだ。
そしてお次は初霜を外して伊勢と瑞鳳に入ってもらった。
伊勢は二順要員として後は水上艦を倒す役目を担ってもらう予定だ。
瑞鳳も対潜装備と制空権を確保してもらった。
よってメンバーは五十鈴、伊勢、瑞鳳、朝霜、リベッチオ、朝潮の六名になった。
すぐさま六名を執務室へと呼んで作戦会議をする。

「―――それで今回は先日に引き続き対潜警戒をしてもらいたいのだけどどうやら今回の深海棲艦のボスには新顔がいるらしい。よって十分に気を付けてもらいたい」
「それでも五十鈴達ならだいぶ楽な敵なんでしょう……? 任せてください」

そう言って五十鈴は力強い笑みを浮かべる。
やはり対潜番長として心強いものだな。

「司令官。先制対潜は五十鈴さんに私と朝霜さん、リベッチオさんでお任せください」
「そうだぜ。あたいもこんな時じゃないと活躍できないかんな」
「そうだよー。でも今更だけどリベをこんな序盤で使ってよかったの……?」

リベッチオがそんな事を言い出す。
なぜそうなるのかというとやはり懸念しているのだろうな。
舞台は欧州。
よって自身がルート固定のメンバーになるかもしれないという事を。

「その辺に関しては大丈夫だ。今回はさすがに無理して甲種勲章を狙っていくほどうちの戦力は充実しているとはまだまだ言い難い……。だから後半ではおそらく丙作戦か乙作戦でやると思うからまたリベッチオの出番があるかもしれないという事だ」
「そっかぁ。わかった!」

それでリベッチオは納得をしたのだろう。もう発言は控えたようだ。
次に瑞鳳が前に出てきて、

「でもやっぱり大規模作戦ともなると北上さんや大井さん等雷巡を複数持ち、それに二航戦の二人も複数持って挑んでいる提督が多そうですよね。
うちはどちらも一隻しかいませんから……」
「そうだ。だから送られてくる情報によると結構先の海域では多用されていると聞く。うちはこの作戦が終わったら来年に控えて駆逐艦の大幅な強化も念頭に入れて二隻目以降を解禁しようと考えている」
「そっか……。やっぱりそうなってくるんだよね」

それで伊勢は少し声のトーンを落として話す。
前にも言ったと思うけどうちでは二隻持ちはそう珍しい話ではないので伊勢もこれ以上は口出しはしてこないのだろう。
ありがたい話だけどね。
でも最後に一言。

「でもさ、提督。育てるのはいいけどしっかりと愛情も持ってあげてね? そうでないと目的の為だけに使われるだけじゃ北上や大井が可愛そうだからさ」
「……わかっている。しっかりと接していくよ。安心してくれ」
「そっか。ならいいんだ。私からは以上だよ」
「よし。それじゃ話を戻してさっそくだけど攻略に乗り出してもらいたいと思っている。よろしく頼む」
「「「了解」」」

それで六人は出撃していった。






私は少し不安に感じていた。
出撃した後もそれは思っている。

「提督は、もしかしたら朝潮とかも二人目を作るかもしれないね……」
「そうなのですか、伊勢さん……?」
「うん。朝潮は本人の前で言うのもなんだけど改装設計図も使わないで広範囲によって運用できる子だから育てるとしたら候補に入るのは目に見えているからね」
「そうですか……。ですが構いません。朝潮も司令官の事は信じていますから」

そう言って朝潮は真面目にそう答えていた。
やっぱり真面目だなぁと思いながらも、

「だけど提督は私達の事はないがしろにだけはしない人だからきっと大丈夫だとは思っているんだけどね……」

私はみんなに聞こえるようにそう話す。
それにすぐさま朝霜が反応してくる。

「まぁ伊勢さん。そう難しく考えることはないんじゃないのか? 同一人物とはいえ仲間が増えると思えばいいじゃんか……? そんな事を言ったら潜水艦の奴らは今更だぜ?」
「そうだよ! 瑞鳳だって私含めて二人いるんだから」

そうなのである。
貴重な高速軽空母枠で瑞鳳も二人いるんだよね。
提督曰く軽空母の育成が粗方片付いたから新たに育てたそうだけど真相はどうやら……。

「ま、なるようになるか」

私はそう言って小難しい事を考えることはやめた。
どのみち戦力が増えるのは歓迎だから提督の考えも否定はしないだろうし。
そんな事を思っていたら旗艦の五十鈴が、

「そろそろ作戦海域に入るわ。みんな、注意してね」

それで私達は散らばっていた思考を集中させて作戦へと挑んでいった。
そして何度か深海棲艦の群れを倒す事に見えてきたこのエリアのボスの姿。

「アナタタチハ……トオ……サナイカラ……」

どうやら潜水艦の深海棲艦の新顔らしい。
提督の情報通りだね。
それで戦闘が開始されて、さっそくその深海棲艦は先制雷撃を撃ってきた。
それで驚く。
いつもの潜水棲姫だったら先制雷撃は撃ってこないのに今回の新顔は撃ってきたという事実に深海棲艦も進化をしているんだなという感想を持った。
それでも当たらなければどうという事はない。
なんとか避けて随伴艦を倒しながらもなんとか潜水新棲姫を倒すことに成功した。

「マダマダ……ヤラレナインダカラ……!」

そう言って一度は引き下がっていった潜水新棲姫。
子供の姿を模しているからやはり精神年齢が低そうではある。
少しやりづらいけどしょうがないよね。
それで何度か倒していく内にラストダンスに入ったのだろう。
少し表情が切迫していながら、

「トオ……サナイッテ……イッタヨォッ……!」

どうやら彼女も後がないらしく随伴艦も強化されていた。
だけど私達もここでやられるわけにはいかないんだよね。
それで五十鈴達の攻撃がさく裂していき、ついに潜水新棲姫を倒すことに成功した。
そして潜水新棲姫は驚愕の表情をしながらも、

「……ヤラレテ、シマッタ……」

そう言って沈んでいったのであった。
やっぱり子供の姿だから罪悪感を感じるけどもう分かり合えないのだから仕方がない事なのである。

「提督。潜水新棲姫を打倒する事に成功したわ」

五十鈴が提督に報告をしているのだろう、それで私達は周囲を警戒しながらも鎮守府へと帰っていったのであった。


 
 

 
後書き
装備さらし。

五十鈴   四式水中聴音機、三式爆雷投射機、32号対水上電探
伊勢    試製41㎝三連装砲×2、試製晴嵐、晴嵐(六三一空)
瑞鳳    九七式艦攻(九三一空)、天山(九三一空)、彗星(江草隊)、彩雲
朝潮    四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
リベッチオ 四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
朝霜    四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機



今回は少し大規模作戦事情で考えさせられました。
明らかに足りない駆逐艦の練度。
改二にはなっているけどそこで練度が止まっている艦が多いんですよね。
さらには優位に進めるためには雷巡を複数持ちが当たり前を前提にしないと辛い現状。
今まで一隻持ちでしたけど今回の件で少し考えを改めさせられました。
なのでイベントが終わったら最低一隻ずつ育てようと考えています。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0128話『ギミック解除艦隊』

 
前書き
更新します。 

 





昨日にE1『再打通作戦発動』を突破した私達はE2『リランカを越えて』を攻略するために出撃をしていたのだけど、

『提督ー、道中の潜水艦が厄介だよー』

先発隊として出撃してもらっている川内からそんな弱音の声が漏れてくる。
それで思う。
川内が弱音を吐くほどには道中の……つまりボス前の潜水艦が厄介だという事を。
それで私は一回は無理やりにでも突破してやろうと思っていたギミックを解除するためにメンバーを集めることにした。
そして集められたメンバーが彼女達だ。
先発隊の旗艦を務めてもらっている霧島を筆頭に雲龍、祥鳳、龍驤、初月、そして荒潮だ。
まだ後の事を考えると荒潮を使うのは早いかもしれないと思ったけどギミック解除のためには港湾夏姫を倒さないといけないために特二式内火艇を装備できる艦娘が必要不可欠だったために使う事にしたのであった。

「司令? やはり攻略するためにはギミックを解除するのが有効な手段かと思います」

霧島がそう言う。
そうなんだよな。
何回かボス前まで言って潜水艦に魚雷を撃たれて大破撤退を繰り返していて嫌な気分になっているんだから無視出来ない案件だと思う。

「わかっている。ボス前の潜水艦を回避できるのならできるだけ回避したいからな」
「わかっているのでしたらよいのです」

それで霧島は発言を控えた。
代わりに龍驤が前に出てきて、

「さぁて、そいじゃさっさと港湾夏姫を倒しにいこか。荒潮っていう切り札を切ったんやから見事成功しないとあかんしな」
「あらあら~」

龍驤は荒潮の事を切り札と言った。
それで荒潮自身も頬に手を添えていつものゆったり口調で反応をしている。
その通り、荒潮は特二式内火艇を積めるという事は大発動艇も当然詰められるわけだから輸送連合には必要な人材なのだ。
まだまだうちには代わりを務められる人員は数名いるけど正直言ってぎりぎりなところなんだよな。

「それもわかっている。だからみんな、確実にギミックを解除して来てくれ」
「「「了解」」」

それで各自装備を十分にチェックしながらも点検していって搭載して出撃していった。

《霧島には頑張ってもらいたいですね》
「そうだな」

榛名にそう話しかけられながら私はいつでもとっさの指示を出せるように執務室で待機しているのであった。
雲龍とかなんかは出撃前に私にこんな事を言ってきたからな。

「提督………私にはいい艦載機をちょうだいね……」

と。
それでいつもエースを飾っている村田隊を装備させた。
そしてこの大規模作戦が始まるまでに一か月に一回はやっていた零式艦戦21型の改修からの熟練への転換作業をしていって52型熟練(改修MAX)が三個は作る事が出来たからそれも装備させてあげた。
熟練搭乗員の数の限りもあったけど春イベまでは改修しないで更新していたから少し……いやかなり勿体ない事をしていたなと思っていた。
未改修の烈風(六〇一空)と同等の艦載機にまで成長するという有用性に気づいて嘆いていた事があったけど、まぁどうにかなっているからなんとかなっている。
さて、それじゃみんなの健闘を祈っていよう。


そして通信でみんなの状況を逐一聞いているとやはりというべきかTP小鬼が出現したそうで、

『司令! TP小鬼の群れが出現しました!』
「わかった。なんとか撃破できるように対処してくれ。もしできなかったらなるべく雷撃は避けてくれ」
『わっかりました! 霧島艦隊いきます!』

それでまずはTP小鬼の群れはなんとか倒すことが出来たそうだ。
その報告を聞いて、

《霧島、よかったです……》
「そうだな」

榛名と一緒に安堵の息を吐いていた。
それで次の進路を確かめている時に、

『司令? どうにか全員無傷とはいきませんがカスダメで済んでいます。もう少しで港湾夏姫と接触します。どうされますか……?』
「わかった。そのまま進撃してくれ。できれば夜戦にまで持ち込んで打倒してくれ」
『了解しました。それではそろそろ接触しますのでこれで通信を終えます』

それで霧島との通信が聞こえなくなった。
さて、どうなるかな?
しばらく通信が来るのを待っている間に夜になっているのを感じていると、再度通信が響いてきたので取ってみると、

『司令! 港湾夏姫を倒すことに成功しました。それによってどうやら新たな進路が解放されたと羅針盤妖精さんが言っています』
「そうか。それではもう夜も遅い……帰りに注意しつつすみやかに帰投してくれ」
『了解です』

これでもう潜水艦の脅威に晒されることは無いだろうという思いでこれで攻略に本格的に乗り出せるというものだな。

「さて……それじゃ川内、せっかくみんなが作ってくれたんだからもう弱音は吐かないでくれよ」
「わかってるよー」

いつの間にか私の背後に立っていた川内に私はそう告げる。
何時からいたのか知らないがこういうドッキリはよくするからいつの間にか気配を読めるようになっていたんだよな。

《え!? 川内さん、いたのですか!?》
「あー……榛名は気づいていなかったのか。かなり鈍ってるんじゃない? ダメだよー、一応艦娘なんだから私の気配くらい察せないとさー」
《あう……おっしゃる通りです、すみません》

川内と榛名がそんなやり取りをしている中で、さて、明日の攻略はどうなるかな?…と私は色々と考えていた。
E2の艦隊はE3でも運用できるというからそのまま活用しないといけないしな。

「さて、川内。榛名で遊んでいないで君も出撃の準備はしておいてくれ」
「了解だよ、提督。夜戦は私に任せてよね」
「ああ。しっかりと暴れてもらうから覚悟していてくれ」
「うん!」

それで川内はまた次の瞬間には姿を消していた。
それで思う。
やっぱり忍者だなぁと。

《川内さん、日に日に動きが鋭さが増していっていますね……》
「そうだな。ま、頼りになるからいいんだけどね」

それで私は明日に出撃してもらうメンバーを再検討するのであった。


 
 

 
後書き
装備さらし。


霧島  アイオワ砲×2、紫雲、三式弾
雲龍  村田隊、52型熟練×2、烈風(六〇一空)
祥鳳  村田隊、流星(六〇一空)、53型岩本、烈風
龍驤  村田隊、52型熟練、烈風、彩雲
初月  10㎝連装高角砲+高射装置×2、WG42
荒潮  特二式内火艇、大発動艇(八九式)、WG42


今回はギミック解除の話を書きました。
いや、本当にボス前の潜水艦が苦労させられましたからね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0129話『E2攻略と帰っていく魂』

 
前書き
更新します。 

 





私は先日にE2のギミックを解除したために攻略しやすくなった海域の攻略をしようとしていた。
そしてそのために先日の件も含めて川内などを招集していた。
招集したメンバーは旗艦を霧島、そして高雄、川内、初月、雲龍、天城の六名だ。
本当なら空母枠には今回のルート固定艦になるだろう蒼龍と飛龍の二航戦を使いたかったのだけど後が詰まっている為にまだ使うわけにはいかなかったので雲龍と天城の二人に頑張ってもらおうという計画だ。

「提督-、今日こそはあの重巡ネ級を倒してくるね!」
「ああ。川内、頑張ってくれ。夜戦の見せ所だぞ」
「うん! いっぱい夜戦してくるね!」

それで川内は浮かれながらも闘志を燃やしていた。
これなら川内は常時キラ状態だから大丈夫だろう。
と、そこに高雄が話しかけてきた。

「提督? あまり川内さんを調子づかせないでくださいね? 着いていく私達も大変ですから」
「いいじゃん! 私だって別にみんなに合わせていないわけじゃないんだから」
「それはそうなんですけどいざ夜戦になると川内さんは突撃してしまうではないですか……」

それで高雄はため息を吐く。

「まぁまぁ高雄。そこは私達でカバーすればいいじゃないですか」
「霧島さん……そうですね」

霧島にそう言われて高雄も諦めがついたのだろう、もう口は出してこなかった。

「すまないな高雄、苦労をさせる」
「いえ、提督もいろいろと考えていますのに私情を挟んでしまいすみませんでした」

高雄はそう言って頭を下げてきた。
まぁ高雄がそう思うんならそれはそれでいいんだけどね。

「それと初月と雲龍と天城は制空権を頼んだぞ」

私は三人にそう告げる。
それで最初に初月が声を出して、

「任せてくれ。必ず艦載機は撃ち落とそう」
「ええ……。制空権は私と天城に任せておいて」
「はい! 雲龍姉様と一緒に空をお守りします!」

三人は元気よくそう答えていた。
よし。士気は全員十分という所か。
それなら最後に霧島に話を振る。

「霧島。旗艦としてみんなを率いて頑張ってくれ」
「お任せください司令。しっかりと敵深海棲艦を倒してきますね」
「うん。それじゃみんな、出撃してくれ」
「「「了解」」」

それでみんなは出撃していった。
みんなを見送った後に私は榛名へと話しかけた。

「榛名、少しいいか……?」
《はい。なんでしょうか提督?》
「ああ。今日はお盆の最終日だけどまだ彼女達は……そこにいるのか?」

私はつい弱気な声でそう聞いてしまう。
私の罪の象徴である彼女達がまだここにいると思うと過去の自分を殴りたくなるほどだ。

《提督……はい、まだ木曾さん達はいますよ》
「そう、か……なら少し通訳を頼んでもらってもいいか?」
《お任せください。榛名は大丈夫です!》

それで榛名を通じて彼女達へと話をすることにしたのであった。






提督が木曾さん達と話をしたいという事ですので私は木曾さん達の言葉を代弁する事にしました。

《というわけです。木曾さん、綾波さん、イムヤさん、まるゆさん、よろしいでしょうか……?》
《ああ。提督が話をしたいと言うなら俺も話すのも吝かじゃないぜ》
《はい。綾波も司令官とお話をしたいです》
《イムヤは……その、イムヤもしたいかな……》
《まるゆも隊長とお話をしたいです》

皆さんはそう言って提督とお話をしたいそうですので私は嬉しくなりました。
彼女達は決して提督の事を恨んでいなかったのがこれほど嬉しいなんて……。
それで私はちゃんと彼女達の言葉の代弁を務めようと頑張る思いになりました。

「木曾は……まだまだ戦場に出たかったか? ふがいない私のせいで沈めてしまって申し訳なく思っているが……」
《えっと、はい……。
『提督、俺は確かに轟沈しちまった時は悲しかったさ。もう姉さん達に会えないし戦場にも出れないという気持ちでいっぱいだったからな。だけどな、俺の遺志を継いでもう一人の俺が今は頑張ってくれている。それだけで嬉しいんだ。だから今はもう戦場にに出たいという気持ちはあまりないな。代わりに見守っていたいんだ』
……木曾さんはそう言っています》
「そうか……ありがとう榛名」
《いえ……》

それでもう木曾さんについてはいいのでしょう次に提督は、

「まるゆ……初めてうちに来た最初のまるゆ型のお前を私の不注意で大破進撃させてしまいすまなかった。
イムヤもそれは同様だ。
二人には同じような悲劇をさせてしまってすまないと思っている」

今度はまゆるさんとイムヤさんに話しかけたようです。
それで私は二人に話を聞いて代弁する事にしました。

《ちょっと待ってくださいね。えっと……、
『隊長、気にしないでください。まるゆはそんなに活躍できる艦ではありませんでしたからいいんです』》
「だがしかし鍛えればまるゆだって活躍は出来るだろう? 私に言いたい事があったら言っていいんだぞ?」
《『ううん、いいんです。沈んでしまったのは悲しいですけどそれで隊長がもう沈めないと誓ってくれるのでしたらそれでまるゆは満足です……』》
「そうか……」
《お次はイムヤさんですね。
『司令官? まだ司令官が始めたての頃にまだ大破進軍で轟沈してしまうという事も知らなかったんだから最初の轟沈者である私が言うのもなんだけど、気にしないでね』》
「……本当にすまなかった」

それで提督は二人がいるであろう方向に頭を下げていた。

「そして最後になるけど綾波。君には一番残酷な事をしたと思っている。当時、サブ島沖海域であまりにも攻略が捗らなくて焦っていた私はもっともやってはいけない手段であるデコイという役目を君に背負わせてしまった……。
それで結局は君を無駄死にさせてしまって本当にすまなかった……」

それで提督は一番後悔があるのだろう。
少し涙を浮かべていた。
私も覚えています。当時、提督は本当に何度も大破撤退を繰り返していて資材も残りわずかという所まで追い込まれていて焦っていたのを思い出します。
それで綾波さんに役目を背負わせてしまった事も……。
それで私は綾波さんに話を聞きました。

《代弁しますね。
『司令官……そこまで後悔しているのでしたらもう、綾波のような悲劇は起こさないでくださいね? そんな事態になるのは綾波だけで十分ですから……。
それでも今はもう立派な司令官の姿を見ることが出来て、綾波も嬉しいです。これからも頑張ってくださいね』
綾波さんからは以上です》

これでみなさんの代弁は終わりました。
と、その時でした。
霧島から通信が入って来まして、

『司令。重巡ネ級の撃破に成功しました。これにてE2海域の攻略を完了です』
「よくやってくれた。すみやかに帰投してくれ」
『了解です』

それで霧島との通信は終わりました。
そして時間もそろそろ夜です。
見れば木曾さん達の身体が私の目で見てもどんどん透けていくのが分かります。

《提督……どうやらタイムリミットのようです……。木曾さん達は帰ってしまうみたいです》
「そうか。もう、そんな時間か……最後にみんなに伝えたい。君達のような悲劇を起こさないように私もこれからも頑張っていくから見ていてくれ。そしてまた来年も会おう……」

提督がそう伝えると皆さんは満足そうに無言で頷いてくれました。
そして次の瞬間にはもう皆さんの姿は消えていました。

《提督……》
「わかっている。もういなくなってしまったのだろう……? 悲しいけど彼女達はもうあちらの住人なんだから無理に騒ぎだてない方がいい。私も、伝えたいことは伝えられたからよかった……。また、来年に会おうな」
《はい。長いですけどまた会えるのを信じています》

それで私と提督は来年に向けて思いを馳せていました。
その後に提督は鎮守府内に彼女達のお墓を立てると言っていました。
それがとても嬉しかったのでよかったです。


 
 

 
後書き
E2の装備さらし。


霧島  アイオワ砲、紫雲、一式徹甲弾
高雄  SKC34 20.3㎝連装砲×2、零観(MAX)、FuMO25レーダー
川内  SKC34 20.3㎝連装砲、15.2連装砲改(MAX)、夜偵
初月  10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
雲龍  村田隊、52型熟練×2、烈風(六〇一空)
天城  村田隊、岩本隊、友永隊、彩雲



今回はお盆最終日ですので彼女達も帰っていきました。
こんな感じのお話も来年も書きたいですね。
それには誰も轟沈しない事を心掛けないといけません。
頑張らないと!



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0130話『ステビア海、そして増える仲間達』

 
前書き
更新します。 

 




先日にE―2……作戦名を『リランカを越えて』を攻略して本日はE―3……『ステビア海の先へ』の攻略を開始した。
そして先日のE―2の艦隊を天城を抜いた川内、高雄、霧島、初月、雲龍を内包しつつ新たなメンバーを加えて輸送連合と見せかけての水上打撃部隊を組む事にした。
第一艦隊のメンバーには旗艦を最上、続いて霧島、三隈、雲龍、睦月、如月の六名。
第二艦隊のメンバーには旗艦を川内、続いて高雄、古鷹、初月、叢雲、初春の六名。
この十二名で連合艦隊を組んでもらう。

「でも……ボク達で輸送連合を水上打撃部隊で組めるっていうのはある意味裏技だよねー」
「そうですわね、モガミン」

最上と三隈が二人でそんな事を呟いている。
そうなのである。
まさか水上打撃部隊で組めるとは思っていなかったんだよな。
だから霧島や雲龍などと言った大型艦もメンバーにできるというのはある意味すごい。

「まぁいいじゃない? 組めるモノは仕方がないのだから割り切りましょう!」
「そうじゃのう。叢雲のいう通りじゃ。わらわ達はただ提督の命令に従っていればなんとかなるというのはもう経験済みじゃからのう」
「そこまで過大評価をされていると後が怖いな……」

私は初春のその発言に少し及び腰になっていた。
そんな私の背中を睦月が足りない背ながらも撫でてきて、

「大丈夫にゃしぃ。提督はただ睦月達の事を信じてくれれば後はこっちでなんとかするよー」
「そうよ。だから司令官も如月達を信じていてね?」

睦月と如月にそう言われてしまって私はもういろいろと考えることを放棄した。
それならこのメンバーで頑張ってもらおうかな?

「それじゃみんな。まずは輸送エリアであるステビア海で輸送作戦を頑張ってもらいたい。
さらにはそこには綾波型五番艦の天霧の存在も確認されている。彼女もいっしょに救出してくれるとありがたい」
「わかりました。古鷹、救出作戦もはりきって挑みますね!」

古鷹がいの一番に拳を握ってやる気を出していた。
それに続けとばかりに川内が、

「綾波の妹が増えるんでしょ? 夜戦に連れていきたいからさっさと仲間にしようね、提督!」
「川内は相変わらずぶれないな。頼もしいからいいんだけど」
「そこが私の取り柄だからね!」
「いばらないの!」
「あいたっ! なにすんのさ、高雄ー!」
「少しは落ち着きなさい!」

それで高雄に頭を手で突かれている川内の姿があった。
二人して戯れているのは見ていて飽きないけど二人ってこんな関係だったんだな。
気苦労の絶えない高雄とお調子者の川内。
なんだかんだ言って二人は結局は意気が合うのかもしれないな。
そんなどうでもいい事を考えていたら、

「それで司令官。輸送でのボスの情報などは聞いているのかい……?」
「ああ。その件か初月。うん、輸送でのボスはどうにも脳筋な艦隊編成らしい。戦艦ル級が四体に駆逐艦が二隻というらしい」
「なるほど……だから雲龍で制空権を取って弾着で殴ろうという訳だね」
「そういうことだ。だけど道中が結構やはり危ないらしい。だから……霧島、雲龍」
「はい、司令」
「……うん、なに?」

それで自制していた霧島と雲龍を呼ぶ。
雲龍に関してはただぼうっとしていただけだとも思うけどね。反応が返ってくるのが微妙に遅かったから。
とにかく、

「大型艦の二人にはぜひとも頑張ってもらいたい。せっかく水上打撃で輸送作戦が出来るのだから暴れて来てくれ」
「わかりました、司令! この霧島、頑張らせていただきますね!」
「うん……雲龍も頑張る」
「うん。それじゃさっそくだけどみんなには出撃してもらいたい。健闘を祈っているよ」
「「「了解!」」」

それでみんなは私に敬礼をして出撃準備を済ませて出撃していった。
天霧もできれば早めに助けてくれるとありがたいしな。
……そう言えば今日の午後頃にはE―2の報酬艦である『旗風』もうちの鎮守府に配属されるために輸送トラックで送られてくるという。
それならみんなが出撃している間に神風たちに迎えにいってもらったほうがいいな。
それで私は神風の部屋へと連絡を入れる。
神風はすぐに出たようで、

『司令官? どうしたの?』
「ああ。神風、今日の午後頃には旗風がうちの鎮守府に贈られてくるという。だから正門前まで迎えに行ってもらいたい」
『ッ! わかったわ! どうせならみんなも連れて迎えに行ってくるわ』

どこか嬉しそうに声を弾ませている神風。
そうだよな、嬉しいに決まっている。
神風はともかく春風たちはついに第五駆逐隊が揃うのだからなおさら嬉しいだろうな。
もしかしたら天霧と着任はほぼ同時に行われるかもしれないという思いを抱きながらも出撃の報告を私は執務室で待っていた。





神風は提督から電話でその話を聞いていても立ってもいられなくなったのでさっそくとばかりに春風、朝風、松風の三人を食堂へと集めて、

「それじゃみんな! 旗風の歓迎会を開くわよ!」
「いい考えだな神風の姉貴」
「ええ、とてもいいと思いますわ。神風お姉さま」
「うん。ついに旗風が来るのね。朝風も歓迎するんだからね!」
「まぁまずは執務室へと案内しないといけないけどね」
「まぁ当然よね」
「はい」
「そうだな」

それで四人はさっさと食事を済ませて旗風を迎え入れるために正門へと足を運んでいた。
正門では一台の軍用トラックがすでに到着しており、運転手の軍服の男性が、

「ああ。君達はもしかして神風型のみんなかな……?」
「はい、そうです! 私の妹である旗風を迎えに来ました!」
「そうか、偉いな。それじゃすぐに車から出すから待っていてくれ」

そう言って男性は荷台の方へと足を運んでいって、

「さ、到着したぞ。あとのことはお姉さん達に色々と聞くと言い」
「はい。わざわざありがとうございました……感謝いたしますね」

荷台から一人の黄色い袴を着ている女の子が出てきた。
それを見て神風たちは嬉しそうな表情になって、

「旗風、着任しました……姉さん達、お久しぶりですね」
「旗風ー!」

朝風がすぐに旗風に抱きついていた。
それに続けとみんなが旗風の周りを占領しあっていた。
それで少し時間が経過して、

「それじゃ司令官の執務室に挨拶に向かいましょうか!」
「わかりました。司令に挨拶をするのですね。どんなお方でしょうか……?」
「安心していいわよ旗風。司令官はとってもいい人だから!」
「そうですよ。きっと旗風さんも安心すると思いますわ」
「そうね。私も安心するくらいだからね」
「ふふ……朝風の姉貴はボク達の中では一番司令官になついているからね」
「そ、そんなことはないわよ……?」

そんなやり取りを見て旗風は楽しそうに、

「姉さま達がそんな感じなのでしたらわたくしも安心ですね」

ニッコリと笑顔を浮かべていたのであった。
それから執務室へと向かう道中でどうやら艦隊が帰還したようでばたばたと騒がしい。
五人は何事かと思っていると、川内の姿が見えてそれと一緒に見知らぬ人物の姿も見えたために、

「……どうやら旗風が着任するタイミングでもう一人も救出できたみたいね。川内さーん」
「ん……?」

神風はそんな事を呟きながらも川内を呼び止める。

「ああ。神風か。それと一緒にいるのはもしかして……」
「はい。旗風です!」
「そっかー。それじゃこっちも一緒に執務室に一緒に連れてこうか」

見れば仙台の隣の子は物珍しそうに神風たちを眼鏡を直しながらも見てきて、

「あたしは綾波型五番艦の天霧だ。よろしく頼む」
「ええ。これから顔をよく合わせると思うからよろしくね」

それで新人の二人を連れて執務室へと向かっていった。
その際に執務室では二人を盛大に提督は歓迎したという。


 
 

 
後書き
旗風と天霧を同時に着任する形にしました。
天霧は十回以上は掘ったんですけどこんな感じに話を合わせてみるのもいいですよね。
明日は天霧の話を書こうかと思います。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0131話『狭霧と天霧の歓迎』

 
前書き
更新します。 

 




天霧が先日にE―3海域で救出された。
その件で綾波型の面々は綾波の部屋に集まって歓迎会を開いていた。
別の場所では神風型による旗風の歓迎会も開かれているので私達も開いてもいいだろうという話である。
綾波がジュースが入ったコップを持ちながら、

「それではまだまだ大規模作戦は終わっていませんけど、こうして天霧ちゃんがうちの鎮守府に来てくれたのは綾波型にとって一同にとってとても嬉しい事なので狭霧ちゃんと一緒に天霧ちゃんの二人の歓迎会を開きたいと思います!」
「さすが綾波姉!」
「わー!」
「キタコレ!」
「楽しくしようね」
「ま、せっかくの歓迎会だから楽しみなさいな」

上から敷波、潮、漣、朧、曙。
それで歓迎されている狭霧と天霧はというと、

「その、いいのでしょうか……? まだ作戦中ですけど……」
「いいんじゃないか狭霧。綾波姉たちに歓迎されるんだ。素直に楽しんでおこうぜ」

少し対照的な狭霧と天霧の二人。
そんな二人を見て漣が、

「狭霧ちゃんは少し大人し目で天霧ちゃんは少しばかり喋りが男の子っぽいですねぇ」
「狭霧に関してはそんな感じだけどあたしはそんな評価なのか、漣……?」
「そうですね。天霧ちゃんはその喋り方はもう素なのだそうですからこのままいかせてもらいましょう」

漣のさんざんな評価に天霧は少しイラッと来たのは内緒である。
しかし、まぁいいかと流せるくらいには天霧も子供ではないという事だ。

「でもこれで綾波型も後は『朝霧』、『夕霧』の二人を残すだけだね。うちに来るのが楽しみだね……」

朧がそう話す。
それに綾波が「そうですねぇ」と言葉を零しながら、

「朧ちゃん。二人が来るのが楽しみなのはいいですけど今回は狭霧ちゃんと天霧ちゃんの歓迎会ですから二人の事を話しましょう?」
「綾波姉さんの言う通りだと思います。潮、狭霧姉さんと天霧姉さんがうちに来ることが出来てとても嬉しいです」
「おっ! 潮も嬉しい事を言ってくれるじゃないか! うりゃうりゃ!」
「天霧姉さん! や、やめてください!」

天霧が潮の頭を少し強引に撫でていたのであった。
そんな天霧の姿を見て曙が呟く。

「……天霧姉ってなんかやっぱり姐御肌っぽいわね」
「ふふ……そうですね、曙ちゃん」

それに同意したのか狭霧が笑みを浮かべながらそう言葉を返した。
そして敷波が、

「まぁいいじゃん。今回は綾波型だけの歓迎会なんだから楽しもうよ。どうせ司令官が全員揃ったら一気に全員での歓迎会を開くと思うし……」
「そうだね。きっと司令官なら開くね」

朧もそう頷いていた。
それに狭霧が少し不思議そうに首を傾げながら、

「敷波姉さんは提督の事をとても信頼しているんですね。とても見ていて嬉しそうです……」
「ばっ!? そんなわけないだろ狭霧! だいたいアタシは司令官の事をどうも思って、思ってなんか……その、ごにょごにょ……」

最後の方ではもう顔を赤くして小声になっている感じなので説得力は皆無だった。
そんな敷波の姿に綾波が嬉しそうな笑顔を浮かべながら、

「あ~……敷波ちゃんの照れてる姿、癒されますねー、感謝です」
「あ。綾波姉が少しトリップしちゃった……恍惚とした表情を浮かべていますね」
「綾波姉さんは敷波姉さんの事となるとネジが緩んじゃいますからね……」
「キタコレ! さっすが敷波姉、綾波姉を落とすのが綾波型の中で一番のツンデレぶり!」
「漣、あんたねぇ……あとで覚えておきなよぉ……」

涙目でそう言う敷波はただただ可愛いだけであったというのは綾波型勢ん院の共通の認識となった。

「あはは! なかなか楽しいじゃないか!」
「う、うん……天霧ちゃん。こうして姉さん達とお話が出来るなんて思ってもなかったから狭霧も嬉しい……」

狭霧と天霧はそれでここに来ることが出来てよかったと心の底から思うようになっていた。
この世界に再び艦娘として深海棲艦と戦うために人型の形で生き返ったのだからてっきりもっと軍隊らしいことになっているのではないかと二人は少しばかり不安になっていたのだ。
だけどいざこの鎮守府に来てみれば確かに軍隊っぽさはあるけどみんながみんな楽しそうに色々と楽しんでいる姿を見たために二人の心の中ではもう不安は無くなっていた。
そしてこの鎮守府の長である提督自身が艦娘というのにも驚かされたのも言うまでもない事だった。
それで天霧は綾波に提督について聞いてみることにした。

「ところで綾波姉。ちょっと聞きたいんだけどどうして提督はその、なんだ? 榛名さんと一緒になっているんだ……?」
「あー、その件ですか……。そうですねー、そうするとまずは私達の生い立ちも語らないといけませんね」

それで綾波は天霧と狭霧の二人にこう話した。
前回の大規模作戦と今回の大規模作戦以外の艦娘達は全員もとはただのゲームのデータだったという事を。

「……え? ゲームのデータ、ですか……?」
「うん、そう。驚くのも分かる話だけど私達はもともと『艦隊これくしょん』というゲームのキャラクターだったんだよ。だけど、そうね……。あの謎の光が原因で私達はこうして本物の身体を得て司令官もこの世界に榛名さんと一体化して来てしまっていたの……」

綾波が少し懐かしそうに語る。
そう、春先の出来事だった。
謎の光によってこの世界に連れてこられた艦娘達は提督と一緒になってこの世界で生きていくためにいろいろと勉強をしたことを二人に語った。
その際にこの世界で分かった艦娘達の扱いなど……。

「なるほどな……それで提督にそれほどの信頼を置いているという事か」
「うん……提督はいつも潮たちの事を見てくれるからとても優しいんだよ」
「ま、うざくないくらいには構ってくれるからそんなに寂しくないわ」
「あやや。デレボノちゃんが久々にキタコレ……?」
「漣、うっさい!」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて……。まぁそんな感じで朧たちは昔から司令官の事は見てきたから人としてのそれは大体は把握しているんだ」
「そそ。だから今更司令官の恥ずかしいことなんて掘り起こすこともないしね」

いつも画面の外でいろいろとやっていた提督の姿を見ていたので隠す事などないと敷波は言う。
実際その通りだと思う。
だから同等の距離感で話し合えるというのもこの鎮守府の個性ともいえる。
この世界の他の鎮守府ともなると結構ブラックな場所もあるらしいからこの鎮守府はとても居心地はいいだろうとみんなは話す。

「そうですか。狭霧も、早く馴染めるようになりたいです」
「そうだな狭霧。だから綾波姉たち、これから狭霧ともどもよろしくな」
「うん。とっても歓迎しますよ。ね、みんな」
「「「うん」」」

そんな感じで歓迎会は楽しく進められていくのであった。


 
 

 
後書き
今回は二人の歓迎会を開きました。
こんな感じで話を挟んでいきます。
まだまだ半月以上はイベント期間があるのですから有効に使いませんとネタ切れしちゃいますしね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0132話『E‐3攻略と断念する心』

 
前書き
更新します。 

 



私はE-3攻略をするためにE-2とE-3輸送艦隊で活躍した艦娘達を集めていた。
第一艦隊は旗艦を最上、そして霧島、三隈、雲龍、天城、龍驤の六人。
第二艦隊は旗艦を川内、そして高雄、古鷹、初月、叢雲、木曾の六人。
……私としてはお札の縛りさえなければここで阿武隈に北上と大井も追加するところなんだけどあとあとで使うかもしれないので木曾だけにしといた。
甲作戦でやっているためにどうしても縛りがあるのは仕方がない事であった。

「さて、それじゃみんな。このメンバーで重巡夏姫を撃破してもらいたいと思っている。しかし、まだまだ前半戦とはいえ敵は強敵だ。だから十分気を引き締めて頑張ってもらいたい」
「ボク達に任せてよ提督。必ず勝利するからさ」

最上が強くな笑みでそう答えてくれるけど私としては甲でおそらく沼る事を予想している為にかなり苦労を掛けると思う。
だから今のうちに行っておこう。

「……みんな。いざという時は甲作戦から丙作戦に変える時もあるかもしれないから覚悟をしていてくれ」

私の本心からの弱気の言葉にみんなの表情は驚きに染まる。
だけど、

「提督がそう思うんだったら気にせずした方がいいよ。提督は少し短気なところがあるから沼ったら気持ち的に沈んじゃうと思うし……」
「そうですね。別に誰と競っているわけでもないのですから辛いと思ったらその決断も必要かと」

川内と霧島にそう言われて私は少し気持ち的に楽になった。

「すまないな。みんなを信じていないわけではないんだけど倒しきれない時はそう言う方針で行かせてもらう」
「……ま、それも仕方ないか。でもすぐに根を上げないでよね? 苦労もせずにいきなり切り替えたら酸素魚雷を食らわせるわよ!」
「肝に銘じておくよ叢雲」
「わかっているならいいわ」
「ふふ……叢雲もなかなかに手厳しいな。まぁボク達に任せておいてくれよ。なんとか勝てるようにするから」

叢雲に続いて初月がそう言ってくれるので少しは頑張ってみようと思う。
まぁ、実際戦うのは彼女達なのだから信じるしかないのだけどね。

「わかった。それじゃみんな出撃してくれ。いい知らせを待っているよ」
「「「了解」」」

それでみんなは出撃していった。
できれば諦めたくないけどいざという時には丙作戦も辞さない思いでやっておかないと心に余裕が持てないからな。







………まったく司令官もなかなかに小心者やね。
まぁ甲作戦の経験が少ないから仕方がない事やけどうちらの事ももう少し信じてもらいたいものや。
ま、うちも根性みせたろうか!

「そいじゃ雲龍に天城! うちらでなんとしてでも制空権を取って深海棲艦に大打撃を与えるんや。それがうちらの仕事やからな」
「はい。龍驤さん、お任せください!」
「任せて。提督の不安な気持ちを払拭させてみるわ」

うんうん。二人ともいい返事や。
やからうちも頑張らないとな。
だけどE-3なのに道中が結構厳しいからな。
何度も出撃しているけどうちの一番多いスロットに攻撃機をセットしているはずやのに艦載機が全滅して航空戦に参加できないパターンが結構あるからな。
こういう時にうちの艦載機スロットの少なさが仇になっているのが少し悔しいかな……?
羅針盤も結構乱れることがあるからボス前に弾薬が尽きるのもよくあるしな。

「龍驤さん、索敵は大丈夫ですか?」
「あー、大丈夫や高雄。こっちの心配はせんでいいから砲撃戦に集中しとき」
「わかりました」

高雄も少し心配なのだろう。
戦力的には今回の艦隊は二軍のメンバーと言っても過言ではない。
司令官的には木曾とかだけではなく阿武隈に大井に北上とかもっとうちらより強い空母を編成に入れときたいつもりやけどそれも制限がかかるから慎重に出ざるを得ないという事でうちらを使っているからな。
うちらの実力はうちらが一番分かっているんやけど辛い所やね。

「敵深海棲艦のボス艦隊と接触するよ! みんな、注意して!」

最上のそんな言葉が聞こえてくる。
よーし、いっちょかましたろうか!

「ブスイナ……ヤツラ……メ……ッ! カエレ!!」

重巡夏姫が舐め腐った格好をしているのでどつきたい気持ちで一杯やけど今はこの思いを艦載機に込めて放つんや!

「それじゃ艦載機のみんな、お仕事お仕事!!」

それでうちを含めて天城と雲龍も艦載機を発艦させていく。
だけどやっぱりうちの艦載機隊が全滅しとるんのはどうにかならへんかなぁ……?
敵深海棲艦の対空能力が鬼怒じゃないけどマジでパナイ!
それに新型の駆逐艦が不気味さを放ってきておるからな。
本当に攻撃が当たらない……。
なんや、あいつ?
まぁ、愚痴っても仕方がない。
後は第二艦隊のみんなに任せるしかないなぁ……。
だけどあと一歩のところで重巡夏姫を撃破できない事が何度も続いている。
おそらく後一回倒せば破壊できると思うんやけどそれがなかなか達成できないのがイライラを貯めていく。




……そしてもう何回出撃したのか分からないくらいの時に司令官から通信が入ってくる。

『みんな……撃破できたかい?』
「ごめん。また撃破できなかったよ……」
『そうか』

司令官の声はどこか沈んでいた。
重巡夏姫が水着というふざけた格好をしていながらも耐久と装甲が高いために夜戦に入っても削り切れないのだ。
時には新型の駆逐艦に邪魔されることもしばしばあるからなぁ。
もう、ホンマなんやあいつ!?
うちはつい誰かに愚痴りそうになるけど我慢や我慢。
みんなもうちと同じ気持ちになっているのは分かっとるからな。

『それじゃみんな。もし、後一回出撃して倒せなかったら甲作戦から丙作戦に落とそうと考えているんだけど、いいか……?』

司令官の言葉は少し弱弱しかった。
司令官も悔しいのだろう。
ここまで来て今までの苦労をリセットしてしまうという事が。
うちらやって悔しい。
でも無駄に資材を消費するのもなるべく避けたい。
すでに燃料弾薬は三万から四万は消費したしな……。
ここらが諦めどころやろうな。
後段作戦でのことも考えるともう決断しないとアカン。
だからうちは言ってやった。

「司令官の気持ちに従った方がええと思うよ。うちらは誰も司令官の事を責めたりはせぇへん。だから決めるなら決めてええで」
『すまない…龍驤』
「ええて」

それで司令官は決断をしたのだろう。
後一回出撃してダメだったら丙作戦でやり直すという事を。
それからは早いモノやった。
今までの苦労が嘘のように輸送作戦も速攻で終わらして重巡夏姫を軽く捻ってやることが出来たので少し気持ち的には消化不足やけどこれも仕方がない事やとうちは鬱憤は心に隠しておこうと決めた。
そしてなんとかE-3も攻略が完了した。
執務室に入ると司令官が少し表情がやつれていたのが印象的だったからなぁ。
また次を頑張ればええんや!と励ましてやった。
こうでもしないと司令官は引きずるからな。


 
 

 
後書き
装備さらし

第一艦隊
最上  20.3㎝(3号砲)連装砲×2、零観、艦隊司令部施設
霧島  アイオワ砲×2、零観(MAX)、一式徹甲弾
三隈  20.3㎝(2号砲)連装砲×2、零観、強風改
雲龍  村田隊、岩本隊(☆6)、52型熟練(MAX)、彩雲
天城  村田隊、52型熟練(MAX)×2、烈風
龍驤  友永隊、Fw190T改、52型熟練×2

第二艦隊
川内  15.2連装砲改(MAX)、20.3㎝(3号砲)連装砲、零観
高雄  SKC34 20.3㎝連装砲×2、紫雲、FuMO25レーダー
古鷹  SKC34 20.3㎝連装砲×2、夜偵、FuMO25レーダー
初月  10㎝連装高角砲+高射装置(MAX)×2、13号対空電探改
叢雲  五連装(酸素)魚雷×2、熟練見張員
木曾  甲標的、20.3㎝(3号砲)連装砲、15.2連装砲改(☆5)



……というわけでE-3は断念して丙作戦にしてやりました。
本当に重巡夏姫が固かったです……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0133話『空母夏鬼の打倒艦隊』

 
前書き
更新します。 

 



先日のE-3攻略のためにどうしても攻略できずに丙作戦に落としてしまった事を少し後悔しているけど気を取り直して進めていかないといけないなという気持ちで私はE-4攻略艦隊を編成するためにメンバーを大淀とともに考えていた。

「それで大淀。先行報告によるとE-4のボスにはなにかしら装甲破砕ギミックがあると聞いたんだけど、そこのところはどうなのだろうか……?」
「そうですね。噂によりますとE-1で狭霧さんを探していたエリアとE-2のギミックを解いた時に一緒に出現した一見無意味なエリアを攻略すると敵深海棲艦の装甲が弱体化するという報告を聞いていますね。まぁ、実際に体感としては気のせい程度という感じだったそうですが……」
「そうか。わかった、ありがとう」
「いえ」

それで私は考えてみる。
E-4には二体のボスの存在が確認されている。
まずは前半戦のボスである『空母夏鬼』。
そして後半戦のボスである『戦艦仏棲姫』。
この二体を攻略するためにはまずは空母夏鬼を攻略してからルートを解放するというめんどくさい事をしないといけない。
さらには編成も空母機動部隊と水上打撃部隊とそれぞれ分けないといけないという面倒さ。
空母夏鬼には空母機動部隊編成で。
戦艦仏棲姫には水上打撃部隊編成でという感じだ。
そうでもしないとルートがそれてしまうという。
好きな方で挑めないという欠点をそれぞれ持っているけど対応するしかないんだよな。

「それじゃまずは空母夏鬼を攻略するために部隊を組むとしようか」
「はい」

それで私と大淀は考えた編成での人員を執務室に呼ぶ事にした。
まずは第一艦隊は旗艦は那智、そして熊野、飛鷹、隼鷹、葛城、蒼龍の六名。
次には第二艦隊は旗艦を神通、そして足柄、時雨、綾波、吹雪、加古の六名だ。
この十二人で空母機動部隊を編成してもらいたいと思っている。
メンバーが執務室へと入ってきた。

「それじゃさっそくだけどこのメンバーでまずは空母夏鬼を攻略してもらいたいと思っている」
「わかったぞ。この那智に任せておけ!」

さっそく那智が元気よく先陣を切って声を上げてきた。
うん、元気があっていいな。
考えてみれば第一艦隊のメンバーは元気が売りの艦娘が多い印象である。那智然り隼鷹然り葛城然り……。

「那智は相変わらず真面目だねぇ。まぁ隼鷹さんも頑張らせてもらうけどさー」
「隼鷹? あんまり羽目は外しちゃダメよ?」
「わーかってるって飛鷹」

隼鷹と飛鷹が相変わらずの姉妹でのやり取りをしている一方で熊野が私の顔をじっと見てきていた。どうしたんだ……?
だけど少ししてホッとした表情になっていた。なんだ?

「よかったですわ」
「ん? どうしたんだ熊野?」
「いえ、提督はてっきりE-3で丙に落としてしまったのですから落ち込んでいる物かと思っていたのですけど、もう引きずってはいないようで安心したのですわ」
「あぁ……ありがとう熊野。大丈夫だよもう復帰しているから」
「それなら安心ですわね」

熊野は意外とこういう気遣いが出来る子だからな。さすが淑女(レディ)だな。
熊野の気遣いに癒されながらも他のみんなを見ていると蒼龍と葛城が二人して「頑張ろうね」と言い合っていた。
うん、この二人は相変わらずで安心するね。
さて、第二艦隊の方はどうなっているかな?

「神通。いけそうか……?」
「はい。この神通にお任せください。夜戦では存分に活躍させていただきます。駆逐艦の皆さんも頑張りましょうね」
「うん。僕に任せてよ」
「はい。綾波も頑張ります!」
「司令官! 吹雪にお任せください!」

神通の言葉に三人が元気に反応をしてくれた。
うん。これなら安心だ。
だけど一人いつも通りにだるそうな子がいた。

「……もう加古? そんなに眠そうなんてダメよ?」
「あれー? 古鷹ー?」
「足柄よ! いい加減しっかりしなさいな!」
「わぁかってるよー……その前に寝ていい……?」
「砲弾を食らわせるわよ……?」

足柄が額に怒りマークを作って怒っているな。
うーん、やっぱり加古は古鷹と組ませた方がよかったかな……?
しかし古鷹はもうE-2で使ってしまったしな。
足柄には加古の面倒は荷が重そうだし。
私の不安を察したのか他のみんなが、

「大丈夫です! 加古さんは私達でなんとか海域に入るくらいには覚醒させておきますから!」
「任せたぞ吹雪?」
「はい!」

これで若干不安が残るけど全員の体調は確認できた。
それじゃさっそくだけど出撃してもらおうか。
今回は海域に移動するだけでも時間を食うのだからさっさと行ってもらわないとな。

「それじゃみんな。出撃してくれ。戦果を期待しているよ」
「「「了解」」」

それで一同は港へと出て行って艤装を展開して出撃していった。
まだ眠そうな加古はそのうち起きるだろうという希望的観測を信じて……。







「……でも、私達って空母棲鬼って戦った事がないからよくわからないんだよねぇー」

私、蒼龍はそう言ってみんなに話す。
それにみんなも同意なのか頷いてくれた。
前のイベントで最後に登場したらしいのが2014年秋の小規模作戦である『発動!渾作戦』で初めて登場したらしいんだけどその時はまだ提督が着任して間もない練度の低い頃だったから最奥のステージまで行けることが出来なくて結局は会わずじまいだったからね。

「でも、そんな事を言いましたら葛城だってまだ出会った事がない深海棲艦はたくさんいますよ?」
「まぁそうなんだけどね。葛城も来るのが遅かったからね」

そんな世間話をしながらも一度中継地点で補給を済ませた私達は紅海海域へと足を踏み込んでいった。
道中の軽空母部隊と戦艦部隊がやっかいだったけどなんとか開幕と先制攻撃で仕留めていき、そして遭遇する。

「ナンドデモ……ナンドデモ……シズンデイケ……!」

空母夏鬼と遭遇したのは、まぁいいんだけど……なんだろう?少しムカッと来るこの気持ちは……?
格好がやっぱり水着で麦わら帽子を被っていていかにもバカンスをしていますって感じのいで立ちだ。
なんか心の奥ではきっと『バカンスの邪魔をするな』とでも言っているんじゃないかと勘ぐってしまうほどには心がむかむかします。

「かーっ! たくよー、夏だからって余裕のバカンスってか!? 上等じゃん! 沈めてやるよ!」

隼鷹のその一言で戦闘が開始された。
私も航空機を発艦させていきこのむかつきを晴らそうと思う。

「艦載機のみんな! あの余裕をこいている空母夏鬼を撃滅してください!」

私の気持ちに答えてくれたのか艦載機のみんなは空母夏鬼に大打撃を与えてくれた。
そして夜戦でも第二艦隊のみんなが活躍してくれたおかげで空母夏鬼はほぼストレートに倒すことが出来た。
そしてそれは何回か繰り返していって何回か大破撤退はしたけどそれでも十分な成果を出してついに空母夏鬼を完全に沈黙させることに成功した。

「やったね、みんな!」
「「「おー!」」」

それでみんなで喜んでいる中で那智が提督へと報告していた。
羅針盤もどうやら新たなルートを解放したみたいで先への進路を示している。
後半の部隊も頑張ってほしいな。水上打撃部隊だから多分私は入れなさそうだしね……。


 
 

 
後書き
装備さらし。

第一艦隊

那智改二 SKC34 20.3㎝連装砲、20.3㎝(3号)連装砲、零観(MAX)、FuMO25レーダー
熊野改二 SKC34 20.3㎝連装砲、20.3㎝(3号)連装砲、零観、強風改
飛鷹改  流星(六〇一空)、流星改、Fw190T改、烈風
隼鷹改二 村田隊、52型熟練(MAX)、流星改、烈風
葛城改  流星改、52型熟練(MAX)、村田隊、彩雲
蒼龍改二 流星改、友永隊、岩本隊(☆6)、52型熟練(MAX)


第二艦隊

神通改二 20.3㎝(2号)連装砲、15.2連装砲改(MAX)、夜偵
足柄改二 SKC34 20.3㎝連装砲、20.3㎝(3号砲)連装砲、零観、FuMO25レーダー
時雨改二 10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
綾波改二 10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
吹雪改二 10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
加古改二 SKC34 20.3㎝連装砲、20.3㎝(3号)連装砲、零観、32号対水上電探



E-4はE-3で丙でやったために乙で挑みました。
なんとか沼る事なく空母夏鬼を倒すことが出来たので良かったです。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0134話『戦艦仏棲姫の撃破』

 
前書き
更新します。 

 





空母夏鬼を撃破した翌日に私は新たなルートが解放されたために今度は水上打撃部隊を組んで挑もうと思っていた。
先行組によると空母機動部隊のまま進めるとまた空母夏鬼と戦う羽目になるというからね。
それで大淀とまたしても考えていた。

「まだ海外の高速戦艦は使うのは惜しいからどうするか……?」
「そうですね。もうすでに霧島さんと比叡さんは使ってしまっていますし、アイオワさんはまだまだ取っておきたいですからね。だとすると……」

それで大淀は私の方へと向いてくる。
なるほど……。

「金剛と私をここで使うんだな」
「はい。提督を前線に立たせるのは心苦しいですがお願いしてよろしいでしょうか……?」

大淀はそれで苦い表情になっていた。
私を使うというのはこの鎮守府では結構ジョーカーじみているからな。
でも海外艦が特攻持ちが多いかもしれない現状で渋っていても仕方がない。

「わかった。それじゃ長門を呼ぼうとするか」
「了解です。すぐにお呼びしますね」

それで大淀は内線で長門の部屋へと連絡を入れている。
しばらくして長門が執務室へと入ってきた。

「提督よ。私だけを呼んだという事は……また戦場に出るんだな?」
「ああ。後半は丙作戦でするかもしれないけどなるべく海外艦は温存しておきたいという私の一存で今回は出撃しようと思っている」
「そうか……。わかった、提督が留守の間は私がまたしても代行を務めよう。もう慣れたよ……」
「いつも苦労をかけてすまない」
「そう思うのであったならもう一隻榛名を育ててみたらどうだ……? うちは何隻もいる事はそう珍しい事ではないのだから」

長門がそんな事を言っているけど、私としては榛名だけは一隻のままでやり繰りしていきたいと思っているんだよな。
それにそんな事をしてみろ?

「そんな事をしたら榛名に嫉妬されてしまうからな。言葉が悪いけどもし育てるなら他の金剛型をもう一隻育てるよ」
《提督……私の事を考えてくれているのですね。嬉しいです》

それでどこか感動をしているような表情をしている榛名が出てきた。
うん。やっぱり榛名は反応してくるよな。
榛名はそう簡単に怒る光景は浮かばないんだけどいざという時に怒ったら多分怖いからな。

「はぁー……暑い暑い。わかった、それではこれからも私がその場その場で提督の代行を務めるとしよう」
「ありがとな、長門」

長門もため息を吐きながらもそれで納得してくれたために私は感謝した。

「それじゃメンバーを招集するとしようか」

それで私は一斉に招集コールを各部屋にかけた。
そして少ししてメンバーが執務室へと入ってきた。
第一艦隊の旗艦は那智、そして私、金剛、隼鷹、飛鷹、熊野の六名。
第二艦隊の旗艦は神通、そして足柄、吹雪、時雨、綾波、そして加古と交代で妙高を入れた六名だ。
この十二名で水上打撃部隊を組む。
金剛が最初に執務室に入って来て、

「テートクー! ワタシの出番ネー! ワッツ!? 長門がいるって事はテートクも出撃するって事デスカ!?」
「その通りだ金剛。今回は私も出撃させてもらう」
「大丈夫デスカ……?」
《金剛お姉さま。心配ありがとうございます。ですが提督は榛名が必ずお守りしますのでご安心ください!》
「任せましたよー、榛名!」
《はい! 榛名は大丈夫です!》

榛名も元気よく握りこぶしを作ってそう言ってくれた。
それで他の面々も渋々と言った感じだけど納得の表情をしていたのでよかった。
春イベでは突然の戦闘だったけど今回は事前に色々と出撃経験を積んであるから前よりは役に立てるだろう。

「司令官! この吹雪が司令官を必ずお守りしますね!」
「ああ。頼りにしているよ吹雪」
「はい!」

それで吹雪が敬礼をしながらも心強い笑みを浮かべていた。

「それじゃ、長門。後の事は大淀と一緒に頼んだ」
「任せておけ」
「それじゃみんな。出撃だ」
「「「了解」」」

それでみんなとともに港へと出て行って、

「妖精さん、頼んだぞ?」
【分かりました。提督の艤装操作の半分はお任せください】

みんなが艤装を出している中、私も艤装を顕現させて出撃していった。
そして実際に紅海へと入っていき、目にしたのは少し狭い海へと侵入するルートだった。

「……こんな細いルートに入っていくのか……。本物の艦船だったらさぞ通るのが辛いだろうな」
「そうデスネ! テートクも気を付けてくださいヨー!」
「わかってる」

それで隼鷹、飛鷹とそして水上戦闘機をガン積みした熊野が索敵を懸命に行いながらも、

「提督ー! 前方に敵さんが見えたよ!」
「よし! 第四警戒航行序列で迎え撃とう!」
「「「了解」」」

それで道中の厄介なPT小鬼群も混じった艦隊との戦闘をどうにか潜り抜けて私達はボスエリアへと入っていった。
そして遭遇する。
前回の北方水姫にくらべればそんなに脅威には感じられないけどその代わりに守りに徹しているような感じの戦艦仏棲姫。

「コナクテ……イイ……ノニ……」

戦艦仏棲姫は戦闘を嫌っているような節を感じるな。
でも私達を視界に入れたのだろう、前回のイベントで登場した目玉付きの艦載機を飛ばしてきた。
だけどこちらもやられているだけではない。
航空基地隊の攻撃が命中していき、少しは敵艦隊を削ることが出来た。
さらには隼鷹と飛鷹の艦載機で少しは敵も減って制空権も取れた事なので私達は攻撃を開始した。

「みんな! 一気に行くぞ!」
「「「了解!」」」

それで次々と砲撃戦を繰り返す私達。

「喰らえ!」

私の砲撃も初めて見るであろう目つきの悪い駆逐艦に命中していく。
だけど他の既存の駆逐艦より硬いのか中々落とせない事が続く。
それでもなんとかほとんど倒すことが出来て後は戦艦仏棲姫を倒すだけとなって、それで神通達に夜戦を挑んでもらったんだけど……、とにかく戦艦仏棲姫の装甲が硬かった。
これで本当に乙作戦なのかという感じで神通達の攻撃を耐えている戦艦仏棲姫。
そして結果は倒しきれずにA勝利で幕を閉じる事になった。

「悔しいですが、相手の装甲が硬いのは事実のようです……」

神通が実に悔しそうに拳を握っている。
だとするとこれはあれも試してみるのもいいかなと私は考える。

「みんな、聞いてくれ。私達はまだ先行組が結果を出していた装甲破砕のギミックをやっていないんだ。それでもしかしたら戦艦仏棲姫が弱体化するかもしれない」
「それはいいな。では早速部隊を再編してそのギミックとやらを攻略してもらおうか」

那智も悔しかったのだろう、不敵な笑みを浮かべながらそう言ってくる。
それで私達は一度鎮守府へと帰っていき、E-1の那珂を旗艦とした艦隊とE-2の川内を旗艦とした艦隊をそれぞれのエリアへと出撃してもらった。
しばらくして、

『提督ー! 那珂ちゃん達の方はオッケーだよ!』
『私の方も軽く倒したよ!』

那珂と川内からエリアを攻略した旨を聞いたので私達は再度攻略を開始した。
そして今度は戦艦仏棲姫の装甲が弱体化しているのを実感しながらも何度か撃破していく。
だけどおそらく次でラストダンスとなるだろう戦闘で、

「シツコイ……ヒト……キ・ラ・イッ……!」

戦艦仏棲姫の装甲の至る所が損傷している事から【壊】になっているのを確認したんだけど、前回までなんとか倒しきれていたのに今度はさらに硬くなっていたのだ。
それでまたしてもA勝利で幕を閉じた。

「後少しだったんだが……」
「テートク、落ち込んじゃダメネ! まだまだこれからヨ!」
「そうだな金剛。………そうだ! 戦艦仏棲姫にはプリンツオイゲンの攻撃が特攻があるという話もあったんだ」
「オイゲンさんですか……? それでは私と交代でしょうか……?」

妙高が最後までいることが出来ずに少し残念そうな表情をしていた。

「すまない妙高」
「いえ、大丈夫です。それでは一回鎮守府へと帰ってさっそくオイゲンさんを編成に入れましょう」

すっぱりと妙高が折れてくれたので私達はさっそく帰ってプリンツオイゲンを編成に加えた。

「提督! プリンツオイゲン、頑張りますね!」
「ああ。一緒に倒そう!」
「はい!」

それで私達は今度こそ最後の戦いをするつもりで出撃していった。
そしてすぐさま戦艦仏棲姫‐壊と戦闘になって他の深海棲艦は昼で沈める事に成功したために後は第二艦隊のみんなに任せた。
だけど思った通りにはいかずにダメージは入っているモノのまだ倒しきれない状態になって、後はプリンツを残すのみとなった。
だけどそこでプリンツオイゲンが魚雷CIを発動した。
放たれた魚雷は真っすぐに戦艦仏棲姫へと吸い込まれていって、そして……盛大に爆発を起こして戦艦仏棲姫は苦悶の表情をしながら少しずつ体が粒子に溶けていきながらも、

「ダメナノ……? ソウナノ……。コレデ……オワリ……?……マタ、ワタシ……ナニモ、ナニモォ……。……ソノ、エガオハ、ナニ……?……ソウカ、ソウ……ソウヨネ……―――――……」

戦艦仏棲姫は最後の部分だけおそらくフランス語で話したのだろう聞き取れなかったけど、なにかに満足して光の粒子となって消えていった。
少しの余韻の後に、

「やったネ! テートク!」
「ああ、やったな。みんな、ありがとう!」

それで私達は勝利に喜びながらも鎮守府へと帰っていったのであった。
そしてこれで前段作戦が終了したことになる。
次は後段作戦だ。頑張るとしよう。


 
 

 
後書き
装備さらし。
今回は前に乗せていなかったので私のE-1SマスとE-2Qマスの編成も書いておきます。
まだ攻略のされていない方のためになればと……。


・E-1Sマス攻略編成

那珂改二   20.3㎝(3号)連装砲、15.2連装砲改(MAX)、零観
リベッチオ改 10㎝連装高角砲+高射装置×2、25㎜三連装機銃 集中配備
朝潮改二丁  10㎝連装高角砲+高射装置×2、25㎜三連装機銃 集中配備
朝霜改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、ポンポン砲
初霜改二   10㎝連装高角砲+高射装置×2、25㎜三連装機銃 集中配備
阿賀野改   20.3㎝(3号)連装砲、15.2連装砲改(☆6)、零観(MAX)

おそらく零観(MAX)でルートが通ったのかな……?
もしくは主砲一本と機銃とそして熟練見張員を持っていれば装備したら効果あるかもしれません。


・E―2Qマス攻略編成

川内改二   15.2連装砲改(MAX)、20.3㎝(3号砲)連装砲、零観(MAX)
初月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、三式水中探信儀
電改     10㎝連装高角砲+高射装置×2、三式水中探信儀
満潮改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、三式水中探信儀
祥鳳改    村田隊×2、友永隊、彩雲
千歳甲    甲標的、晴嵐(六三一空)、瑞雲(六三四空/熟練)


・戦艦仏棲姫攻略編成

第一艦隊

那智改二   SKC34 20.3㎝連装砲、20.3㎝(3号)連装砲、零観(MAX)、FuMO25レーダー
榛名改二   アイオワ砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、零観、一式徹甲弾
金剛改二   アイオワ砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、零観、一式徹甲弾
隼鷹改二   村田隊、52型熟練(MAX)、流星改、彩雲
飛鷹改    村田隊、流星(六〇一空)、岩本隊(☆6)、52型熟練(MAX)
熊野改二   Ro.44水上戦闘機、二式水戦改、二式水戦改(熟練)、強風改


第二艦隊

神通改二   20.3㎝(2号)連装砲、15.2連装砲改(MAX)、夜偵
足柄改二   SKC34 20.3㎝連装砲、20.3㎝(3号砲)連装砲、零観、照明弾
吹雪改二   10㎝連装高角砲+高射装置(MAX)×2、探照灯
時雨改二   61㎝五連装(酸素)魚雷×2、熟練見張員
綾波改二   61㎝四連装(酸素)魚雷×2、熟練見張員
妙高改二   61㎝五連装(酸素)魚雷×3、熟練見張員

 ⇩変更

プリンツオイゲン改 61㎝五連装(酸素)魚雷×3、熟練見張員


妙高から特攻持ちというプリンツオイゲンに変更しました。
そしたら最後はカットインで決めてくれました。
戦艦仏棲姫の最後のセリフ部分だけがどうしても聞き取れなかったので線で表現しました。
明日はリシュリューの着任話ですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0135話『リシュリューの着任と以前にあった視察の話』

 
前書き
更新します。 

 





今日は前段作戦が終了したという事で大本営からリシュリューが贈られてくる予定になっている。
それでコマンダンテストも執務室でそわそわしていた。

「提督……わたくし、とても今嬉しい気持ちです。ようやく祖国から新たに仲間がやってくるのですから……Je suis donc très heureux(だからとっても嬉しいです)
「そ、そうか……」

とにかくフランス語が分からないけどコマンダンテストが喜んでいるのだけは分かったのでよしとする。

「とにかく、そろそろ大本営から贈られてくると思うからコマンダンテストは正門まで向かっておいてくれ」
Oui, je comprends(はい、了解しました)

おそらく了解の意だと思うけどそれでコマンダンテストは執務室から出ていった。
しかし……、

「やっぱりフランス語は難しいな。まったくわからない」
《そうですね。榛名も全然分かりません》

私と榛名は共通の認識だと分かったので互いに海外艦も増えてきているのでわざわざ日本語を喋ってくれるみんなに甘えないでそのうち勉強しようかという話になっていた。
そしてしばらくして執務室の扉を叩く音が聞こえてくる。

「どうぞ」
『失礼します』

声はコマンダンテストの声だろうな。
そして気配から察してもう一人いるな。
だとすると……。
そして私の予想通りに執務室にコマンダンテストと一緒に似ているけど違う子が入ってきた。

Je suis vraiment ravie de vous rencontrer amiral(提督にお会いできて光栄です).お逢いできて嬉しいです、amiral。戦艦Richelieu、まいります」
「ああ、歓迎するよ。私の鎮守府にようこそ。リシュリュー」
「はい。……しかし、コマンダンテストの言う通りamiral、あなたも艦娘なのですね」
「ああ、もうその件を聞いたのか。それなら話が早いな。榛名」

私は榛名を呼ぶ。
そして榛名がみんなに見えるように姿を現した。
次にはリシュリューに挨拶をする。

《今は提督と一緒の身体を共有していますが、戦艦榛名です。リシュリューさん、よろしくお願いしますね》
「オー……ハルナ、よろしくお願いします。それにしてもとても神秘的ね」
「そうでしょう、リシュリュー。だから提督はわたくし達と同じ視線で向き合ってくれるのです」
「そのようね。楽しくなりそうだわ」

それでリシュリューは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
よし。まずは掴みは大丈夫だったようだな。

「それじゃコマンダンテスト。リシュリューを戦艦寮まで案内してもらっても構わないか?」
「分かりました。それでは行きましょうか、リシュリュー」
「ええ。案内よろしくね。コマンダンテスト」

それで二人は仲良く執務室を出ていった。
そんな二人を見て思った事は、

「二人を見ているとまるで姉妹のようだな」
《そうですね。それに榛名の事もすぐに受け入れてもらえてよかったです》
「そうだよな。たまに何度か視察に来る他の鎮守府の人は榛名の事を不気味そうな視線で見てくるからな」
《あの時は少し悲しかったですね……》
「まぁ、それだけどその提督の同伴の艦娘に睨まれていてすぐに謝ってきたから怒るに怒れなかったんだよな」
《はい。やはり艦娘の方たちはすぐに分かってくれるようで安心しました》

それで榛名は表情を綻ばせていた。
そして私はその提督に内緒で榛名の事をどう思ったか聞いてみたんだけど返ってきた言葉は、

『どんな形であれ提督とともに過ごせるのですから私は羨ましいと感じました。それに比べてうちの提督と来たら手が早いくせに鈍感で……』

と、いつの間にかその艦娘の愚痴が始まったのでどうしようかという展開になったのはどうしたものかという感じだった。
うちの鎮守府に視察に来る提督は大体は私に好意的な視線を向けてきているので助かっているんだけど、たまに柳葉大将が一緒に同伴してくるとある提督は柳葉大将に信用されていないのか四六時中柳葉大将に監視されていたのを覚えている。
そしてたまに視線が緩くなると途端に私に卑しい視線を向けてくるからたまったものではなかった。
男性視点では分からなかった事も女性になって初めて分かる視線というのを実感できた思いだった。
それでセクハラでもしてきそうな動きをしていたのでどう対応しようか迷った時にすぐに柳葉大将が気づいてその提督の腕を掴んで、

『すまんな、榛名提督。こいつはなにかと欲望に忠実な奴なのでな。儂が同伴しないと視察もまともにできないからな』

と言って結局はその提督は終始どこか悔しそうに帰っていった。
それで視察とは一体なんなんだろう……?という思いに駆られたものだ。
私と私の艦娘達と鎮守府は異世界から来たからと言ってパンダではないのである。
だからもっとまじめにいつも通りに視察をしてもらいたいものであった。
そんな事を思い出して、

「今度、視察してくる提督のためにマニュアルを作成した方がいいかもしれないな……」
《そうですね。私達の鎮守府はどこかしら軽い目で見られている節がありますからね》
「ああ。この鎮守府は憲兵さんとかそう言った役職の人が一切いない珍しい鎮守府でもあるからな。だから今度柳葉大将に相談してみるのもありかもしれないな。
みんなは表立って反対はしないだろうけど部外者をこの鎮守府に少しでもいれたら不安がる子が多そうだから。
それとは別として酒保に女性の人だけを限定して雇ってはいるからみんなはなんとか平気だし、もし憲兵さんをいれるとしたら女性の人だったらみんなも安心するだろうしね」
《おそらくは……。みなさんも分かってはいると思うんです。自分達だけでは鎮守府の運営は回らない事を。ですけど同時に怖いのだと思います。異世界からやってきた私達を変な視線で見てくる人も少なくないですからどうしても部外者をいれると萎縮しちゃうんだという感じで……》
「難しいものだな……」
《はい……》

榛名とそんな会話をしながらも私は別の思考では後段作戦について考えていた。
今後のことも大事だけど今は大規模作戦にも力をいれないといけないしな。
頑張らないと!


 
 

 
後書き
書かないところで実は何度か視察は来ていたということを書いておきました。
うちは日常メインなので書いている話だけの裏では実はこんな事もあったんだー程度の認識で構いません。
新たなオリキャラを鎮守府に入れるかは今後考えていきます。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0136話『択捉の気持ちと松輪の着任』

 
前書き
更新します。 

 




今日から後段作戦を攻略開始しようという思いでもう甲はしないだろうという感じで進めていた。
そんな中、E-5『地中海への誘い』の地中海キプロス島沖海域では択捉型海防艦二番艦である『松輪』が魂が捕らわれているという話がある。
それなのでまずは丙作戦で進めて松輪救出を先にしておきたい所存であった。
そしてそれに呼応して今現在執務室には択捉が私の提督机の隣に置いてあるもっぱら駆逐艦が多く使うデザインの椅子に座っていた。

「司令。松輪の事をお願いします。私も早く松輪に会いたいですから」
「任せておけ。必ず彼女の事を救出しような」
「はい!」

択捉と元気に会話をしていると第五海域攻略艦隊の面々が執務室へと入ってきた。
旗艦を照月にして、イタリア、ウォースパイト、グラーフ・ツェッペリン、加賀さん、雪風の六人で行ってもらおうと考えていた。

「司令! この雪風にお任せください!」
「照月の対防空でお空をお守りしますね!」

ビシッ!という敬礼が似合う雪風が最初に声をあげた。
続いて照月が声をあげる。
うんうん。やっぱり駆逐艦の子達は元気だな。
それで私は二人の頭を撫でてやった。

「やりました!」
「えへへー……」

喜んでいる二人を横目に私は残りの四人に視線を向けて、

「イタリアとウォースパイト、グラーフは海外艦の戦艦としておそらく特攻があると思う。だから頼んだぞ」
「わかりました。イタリア、頑張りますね」
「アドミラルの頼みでしたなら快く承りますわ」
「そうだな。アトミラール、我らの活躍を愉しみにしておいてくれ」

三人は海外艦とはいえ国が違うから少しは揉めるだろうけどそれに関してはもう過去に何度もやっているのでどうにかなるだろう。
そして最後に加賀さんへと目を向けて、

「加賀さん。みんなのまとめ役をお願いします」
「わかったわ。きちんとまとめ上げるから期待しておいて……」

表情筋が少し死んでいるけどそれでも強気の笑みを浮かべる加賀さん。
ここぞという時に頼りになるんだよな。
前回の大規模作戦で活躍させてあげられなかったから今回はぜひとも頑張ってもらいたい。

「そして最後に択捉からみんなに話したい事があるそうだ。聞いてやってくれ」

それで六人は私の隣にいる択捉へと視線を向ける。
それで択捉は少し萎縮してしまっているけど勇気を出して言葉を紡ぐ。

「あの……! 皆さん、お願いがあります! 私の妹の松輪が深海棲艦に魂を捕らわれていると聞きました。できれば私が自ら助けに行きたいんですが自身の力不足は自覚していますので、それで皆さんに松輪を救出してもらいたいんです。よろしくお願いします!」

そう言って択捉は頭を下げた。
そしてすぐに照月とイタリアが択捉の肩に手を置いて、

「照月達に任せておいて! 妹さんは必ず助けるから!」
「そうですねー。イタリアもローマという妹がいますから他人事とは思えませんからお任せください」

姉妹艦がいる二人ゆえなのだろう。
かなり燃えているな。
択捉もそれで安心したのか「司令、もう私からはいいです」と言って引き下がっていった。

「まぁそんなわけでみんな。まずは松輪救出のために頑張ってもらいたい」
「「「了解」」」

そしてみんなは出撃していった。
とうの択捉はというと、

「択捉。もし松輪が救出されたらすぐに伝えるから部屋で待っていてもいいんだぞ? 長丁場になるかもしれないからな」
「いえ。司令のお気遣いには感謝しますがすぐに知りたいので私もここで待たせてもらいます。よろしいでしょうか……?」
「そういう事なら構わないよ。でも無理そうだったら強制的に部屋に戻らせるからな?」
「はい、わかりました」

それで出撃した艦隊の報告を待っていた時だった。

『提督! 戦艦夏姫との接触を確認しました。交戦に入ります!』

照月からそんな報告が来たので、

「わかった。丙作戦だからそんなに苦労はしないだろうけど用心してかかってくれ」
『わかりました!』

それで照月との通信を切る。

「でも松輪……早く救出できるといいですね」
「そうだな。こういう時の深海棲艦は中々渋ってくるからな。さっきも言ったように長丁場を覚悟しておいてもいいかもしれないな」
「ですね」

それで択捉とともにこれから苦労するだろう溜息を吐いている時だった。
また照月から通信が入ってきた。

「どうした照月……? みんなは無事か?」
『う、うん……みんなは誰も轟沈していないよ。戦艦夏姫も倒すことが出来たから。だけどね、そのね……』

うん? なんだ、どことなく照月の言葉に歯切れが悪いな。
なにか突発的な事態にでも陥ったのか……?
私がそれで不安がっている時だった。

『提督に択捉ちゃん? 落ち着いて聞いてね? その、松輪ちゃんが救出出来ちゃった……』
「は……?」
「え……?」

それで私と択捉は間抜けな声を上げてしまった。
私の聞き間違いでなければ松輪が救出できたという。

『それじゃすぐに帰投するから待っててね!』

それで照月は通信を切った。
だけどまだ上の空だった私達だけど次第に現実味を帯びてきたのか択捉の表情が喜びで彩られた。

「司令! 松輪が、松輪が鎮守府に来ます!」
「そ、そそそそうだな! でも一旦落ち着こうか!」
「そ、そうですね! それじゃヒッヒッフー……」
「択捉!? それは違うぞ! それに択捉がするとなにかいけない事みたいで……!」

それで執務室は混乱の様相を呈していた。

《提督? それに択捉ちゃんも落ち着いてください。嬉しいのは分かりましたから松輪ちゃんが来る前に冷静になっておきましょう》

榛名の一声で私と択捉は冷静になれた。
こういう時に冷静な榛名がいると助かるな。

「ありがとう榛名。落ち着けたよ」
「はい。ありがとうございます、榛名さん」
《いえ……》

それで私達は今か今かとみんなが帰投するのを待っていると外から秋津洲の声で『第一艦隊帰投かもー!』という声が響いてきた。
それで私と択捉も窓から帰ってきた皆を見た。
その中に見知らぬ格好と容姿をした子がいたのであの子がおそらく松輪だろう。
択捉はそれで嬉しそうに表情を綻ばせていた。
しばらくして照月が執務室へと松輪を連れてきた。

「提督。第一艦隊旗艦照月帰還しました!」
「ああ、おかえり」
「そしてこちらが……挨拶できる?」
「はい……。海防艦、松輪です。司令、よろしくお願いします。択捉ちゃんも、会えて嬉しい……」
「私もですよ! 松輪、ようこそ!」
「ああ。これからよろしく頼むよ松輪」
「はい……」

それで択捉とも再会できて松輪は嬉しそうに笑みを浮かべる。

「それじゃ択捉。ちょうどいいから松輪を特殊艦寮の一画にある海防艦達の区画に案内してやってくれ」
「わかりました! それじゃ行こう、松輪!」
「うん、択捉ちゃん!」

それで二人は手を繋いで仲良く出ていった。
うんうん、良きかな。
さて、気持ちを切り替えてこれでもうこの海域には未練はないからさっさと攻略をしてしまおう。

「照月。乙作戦に切り替えて攻略を再開してくれ」
「わかりました! 正直に言えば丙作戦の戦艦夏姫は弱かったのでちょうどいいです」

それで編成を変えずにギミックなどと言った面倒もやってもらい、乙作戦だというのに特に苦労はせずにストレートで戦艦夏姫を倒すことが出来た。
うん……水着を着ていたらしいので装甲が弱かったんだろうな……。
そしてこれで攻略報酬で『一式陸攻 二二型甲』が手に入るので主力陸攻がやっと九つ揃った事になる。
これでもう陸攻不足に悩まされる心配は無いだろうな。
次の海域も頑張るとしよう。


 
 

 
後書き
装備さらし。

照月改       10㎝連装高角砲+高射装置(MAX)×2、13号対空電探改
Italia      Iowa砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、紫雲、一式徹甲弾
Warspite改    Iowa砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、零観(MAX)、一式徹甲弾
Glaf Zeppelin改 村田隊、52型熟練(MAX)×2、彩雲
加賀改       52型熟練(MAX)、岩本隊(☆6)、村田隊、烈風(六〇一空)
雪風改       61㎝五連装(酸素)魚雷×2、照明弾


ギミック解除の編成は単に集積地だと戦艦には三式弾、駆逐艦にはWG42を積んで特攻させました。
PT小鬼群は最初の解除以外は放っておきました。編成例の装備で何とか倒せましたから。


なんと松輪は一発でドロップしました!
とても嬉しいです!




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0137話『はりきる長門。しかし無念……』

 
前書き
更新します。 

 



本日はE-6『マルタ島沖海戦』の場所である地中海マルタ島沖へと進出して、一気にジブラルタル方面への進出も視野に入れて攻略していくらしい。
そして最初の肝が輸送作戦なのである。
私ははっきり言ってしまえば輸送作戦は嫌いだ。
なにがって……なにかと大発動艇を持てる子を温存しておかないといけないからだ。
まぁ今のうちの現状は少し余るくらいにはいるからどうにかなっているけど、それと同時に攻略するのに輸送する量が異常なのだ。
持てる大発動艇をガン積みして挑まないと終わらないぞこれは……。
しかし今回もどういう訳か空母機動部隊で輸送艦隊ができるというので私は道中の事も考えて大型艦を中心にして部隊を編成する事にした。
そして今回はイタリア艦の潜水艦がこの海域で仲間になるという話だから輸送攻略中にでてもらいたいなぁ……という思いで部隊を編成した。
そして決まったので人員を執務室へと呼び出した。
まず第一艦隊旗艦を長門、続いて、翔鶴、瑞鶴、サラトガ、大鳳、コマンダンテストの六名だ。
長門に一台大発動艇を装備してもらい、コマンダンテストには大発動艇をガン積みしてもらった。
次に第二艦隊旗艦を阿武隈、そしてヴェールヌイ、霞、鈴谷、大潮、皐月の六名にした。
分かってもらえる通り第二艦隊は鈴谷以外はほぼ大発動艇を搭載している。
こういう事態になるとは思っていなかったので大発動艇の数が足りてよかったと思う。
ドラム缶……?
あるにはあるけど大発動艇に比べれば必要はほぼないよね。
まぁそんなわけで、

「それじゃみんな。まずは前半である輸送作戦をクリアしてくれ」
「任せておけ。提督よ、この長門も使うという事はかなりのスピードで攻略をしようと考えているな?」
「まぁそうだな。編成的には第一艦隊はサーモン海域北方に挑んでもらう編成とそんなに大差はないくらいだからな。かなり重たいから燃費に注意しておかないとな」
「そうだな。そして輸送作戦中に潜水艦が来ればよいのだがな……」

それで長門は表情を曇らせている。
おそらく先のE-5で運を使い果たしたのではないかという危惧をされているようだしね。

「提督さん。私と翔鶴姉にサラさん、大鳳まで投入するんだから潜水艦の子も必ず救出しようね」
「そうね瑞鶴。提督、私達にお任せください」
「ああ。任せたよ」

瑞鶴と翔鶴の二人が出番とあって燃えているけど、そこで阿武隈が余計な口を出してしまった。

「でもー、もし出なかったらどうしましょうかー?」
「アブクマ……? もしかしたら出ないなんて今のうちに言っていたらダメよ?」
「そうよ。出るように祈らないといけないわ」
「ご、ごめんなさい……」

サラトガと大鳳に思った通り怒られていた。
しかしその気持ちも分からなくはない。

「まぁもし輸送作戦が攻略が完了しても出なかったらエコ輸送艦隊でやるしかないだろうな……。先行組の話によると輸送作戦が終了したらもう空母機動部隊も水上打撃部隊も編成しても輸送ボスにはいかないそうだからな」
「なるほどね。それじゃ長門さん達は輸送作戦が終わったら外すしかないわね」
「……霞よ。その物言いは少し寂しいものがあるぞ?」

それで長門がいじけてしまっていた。
こんな長門も珍しいけど実際このメンバーで輸送攻略は不可になるんだからまた編成を考えないといけないしな。

「とにかくだ。まずは輸送作戦を終了する事を考えてくれ。今後についてはそれから考えるから」
「「「了解」」」

それで長門達は出撃していった。
だけどここから地獄が始まるのだという事はこの時の私にはまだ分からなかったのである……。






はっはっは!
さぁ、進もうではないか!
晴れの部隊だ!
はりきっていくぞ!
私は気合を込めながら進撃を開始していた。

「みなのもの! この旗艦長門に続け! 突撃する!!」
「「「はーい……」」」

なんだ!? 元気がないぞ!
そうか、こういう時は元気を分けてやらないといけないな!

「そんな事では攻略できるものもできんぞ! 気合を入れないか!」
「だけどぉ……道中のPT小鬼群で何度か足止めを食らってるんですけどー!」
「それに重たい編成だからなのか一戦多いみたいだからこれって帰ったら絶対提督ってば資材消費の量で悲鳴を上げるじゃん?」

阿武隈と鈴谷が弱音を吐いていた。
確かにそうだがまずはこの輸送作戦を終わらさないといけないからな。

「二人のいう通りだ。だがそれで怯んでいては勝てる戦も勝てんぞ!」
「……長門さん、久しぶりに出撃するから気合入りまくってるね」
「そうね、翔鶴。長門さんは改二になってから表立って出撃した回数は少ないですからね」
「そこ! 本音とはいえもっと隠した方がいいぞ。最後には泣くぞ!?」

そんな話し合いをしながらも我らは輸送エリアへと足を踏み入れて物資を搬送した後に港湾夏姫がいるエリアへと挑んでいった。

「フザケタ……ヤツラメ……ッ! ココデ……シズメテ……ヤルワッ!」

港湾夏姫がなにかを言っているが今の我らにはあまり効果はないな。
見せてくれるのなら駆逐艦の水着姿ぐらいではないと張り合いがないぞ!
なので早々に退場願おうとするか!
そして航空基地隊と連携して瑞鶴達が攻撃を与えていき、軽々と敵深海棲艦の艦隊を駆逐していった私達は最後に私の砲撃によって港湾夏姫は沈んでいった。

「ふむ……なかなか弱いな。やはり丙作戦ではこの程度なのだな」
「そうだねー。もっと張り合いが欲しいところだけど堅実に慎重に行くというのが今回の方針だから従わないとねー」

私の発言に鈴谷が合いの手を乗せてきた。
まぁ仕方がないか。

「よし! それでは潜水艦がドロップするのを祈りながらも港湾夏姫を撃破しつつ輸送作戦を終わらしていくぞ!」
「「「了解」」」

それで我らは何度も出撃を繰り返していった。
出撃するたびに表情が青くなっていく提督の顔を見ないようにしながらもなんとか輸送作戦を終了できたことを喜びたいところなのだけどな。

「ルイ……出なかったな」
「そうだな……。まぁこういう時もあるさ」
「ああ。だからルイが出るまでは攻略は一旦中止だ」

その提督の発言を聞いた瞬間、心の中で『あっ……(察し』と思ってしまったのは悪くないだろう。
つくづく提督は潜水艦とは出会いの運が悪いからな。
前々回の伊13掘りの再来にならなければいいなと私は思った。


 
 

 
後書き
装備さらし。

第一艦隊

長門改二      大発動艇、試製41㎝三連装砲(☆6)×2、紫雲
翔鶴改二甲     橘花改、村田隊、天山(六〇一空)、岩本隊(☆6)
瑞鶴改二甲     墳式景雲改、友永隊、52型熟練(MAX)、彩雲
サラトガ改     村田隊、流星改×3
大鳳改       52型熟練(MAX)、流星(六〇一空)、流星改×2
コマンダンテスト改 大発動艇×4


第二艦隊

阿武隈改二     甲標的、大発動艇×2
ヴェールヌイ    大発動艇×3
霞改二乙      特大発動艇、大発動艇×2
鈴谷改二      SKC34 20.3㎝連装砲×2、三式弾、WG42
大潮改二      大発動艇×3
皐月改二      大発動艇×3

この編成で挑んだんですけど輸送ゲージが終わるまで結局ルイは出ませんでした……。
ただ大量な資材が消費されたとだけ……。悲しい……。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0138話『掘りという名の狂宴 Ver.ルイ』

 
前書き
更新します。 

 




「……さて、集まってもらって早速だがこのメンバーでルイージ・トレッリの掘りをしてもらいたい」

私は開口一番にみんなにそう話す。
みんなというのは第一艦隊は旗艦は大鷹、そして日向、朝霜、朝潮、照月、江風の六人。
そして第二艦隊は旗艦を阿武隈、そして大潮、霞、ヴェールヌイ、利根に筑摩の六人。
この十二人で輸送連合を組んでもらう。

「……提督よ。別に構わないのだが航空戦艦は私だけでいいのか……? もう一隻いれば安定すると思うが……」
「日向か。それも考えたけど道中と港湾夏姫‐壊の事も考えて航空優勢を取れる大鷹を入れさせてもらった。大鷹、君の真価が発揮するぞ」
「は、はい! 一生懸命頑張りますね!」

大鷹はおどおどとしていたけど、それでももう立派な改二の仲間入りをしているので十分役立ってくれるだろう。

「それにしても、ガチガチな装備にしたな。まぁ仕方がないと思うけどな」
「そうですね江風さん。今回はPT小鬼群が猛威を振るっていますからこその編成装備だと思います」

江風と朝潮がそう話す。
その通り、持てる者は大体が機銃を装備している。
そうでもしないと道中のPT小鬼群の雷撃で大破者が続出してしまうからな。

「大潮、長門さんの艦隊を一緒にしましたけど…正直当たらない事が多かったイメージですね。さすがにテンションもさげさげです……」
「私も……少し嫌だったかな」

大潮とヴェールヌイがそう言って苦手意識を表に出している。
うーん……しかしこうしないといけないしな。

「すまないとは思っている。だけど頑張ってくれ。新たな仲間を救出するために……。
イタリア艦のみんなからはぜひとも救出してほしいと懇願されているからな」

思い出すのは必死に手を合わせてお願いしてくるイタリア達。
それで引くに引けなくなってしまった訳だ。

「リベッチオちゃんも早く来てほしいと言ってたからねー。照月、頑張らないと!」
「提督よ。吾輩達に任せておけ。必ず救出してくるからな!」
「はい。利根姉さんとともに筑摩も頑張りますね」
「わかった。……みんな、出撃してくれ。まだ資材はあるから頑張っていこう!」
「「「了解」」」

それでみんなは出撃していった。
だけどそこから色々と地獄を見る事になっていた。

『提督! 利根さんがPT小鬼群の雷撃を受けて大破しました!』
「利根の装甲を撃ちぬいたのか!? わかった、大潮を護衛に付けて退避させてくれ」
『わかりました!』

それで大鷹は大潮に頼んで利根を退避させていた。

『すまんのじゃ……』

利根がそう言って謝ってくる。

「構わないよ。運が悪かったと思っておこう。しかし……」

やはりPT小鬼群が本当に厄介だな。
攻撃が当たらないのはどうしたものか。
しかしやってもらわないといけないからな。
頑張ってもらおうか。
それでなんとかメンバーを欠いていたけど港湾夏姫は倒すことはできたけどドロップが渋いな。
主に20周回目までは夕雲型駆逐艦が多くドロップするイメージだった。
そんな感じで進めていく。
だけど途中で何度も航空基地隊や艦隊のみんなが疲労がつく事が多々あり休憩もしないといけない事が続いた。








さすがに今回は手厳しいものがありますね。
提督も表面的には表情はまだ大丈夫そうですが、苛立ちが溜まっているのでしょうね。
報告を済ませた後に執務室を出ていくと中からでかいため息が聞こえてくる。
それで榛名さんの声も聞こえてきますのでおそらくですが慰めているのでしょうね。
榛名さんはこういう時に提督の精神的支柱な存在ですよね。
同じ体に宿っているのですから当然ですけどね。
さて、それでは大鷹……まだまだ頑張らせていただきます。

「第二艦隊のみなさん! 道中のPT小鬼群は無理に倒さなくて構いません! ですが避ける事に関しては本気で挑んでください!」
「「「了解」」」

主な大破での退避が多いのはやはりPT小鬼群による雷撃ですからね。
むしろ戦艦の編成の時は不思議と皆さんは避けてくれるのですよね。本当に不思議です……。
それから40周回目を過ぎた頃でしょうか……?
ローマさんがドロップして提督にその事を報告すると、

『イタリア艦違いか……いや、来てくれただけ嬉しいんだけどね。これで二隻目のリットリオとローマの姉妹が揃った訳だし』

提督は二隻目のリットリオさんをロックもかけて大切に取っているんですよね。
いつか活躍するかもしれないし、それに解体するには勿体ないし……との事ですね。
それからまた出撃を繰り返しました。
輸送連合編成ですから資材消費は軽いですけど、それもチリも積もればなんとやらということわざがあるように着々とダメージが蓄積されていきます。
そしてついに50周回を過ぎました。

『50周回目を超えたか……ふふふ、まだまだ50周回目じゃないか。いけるいける……』
《提督!? 表情が少しいけない事になっていますよ!?》

どうやら提督の精神状態はいけないらしいです。
通信越しに聞こえてくる榛名さんの慰めの言葉にもあまり効果が見られないですしね。
これは本腰を入れてかからないといけませんね。

そして60周回目……。

70周回目……。

80周回目……。

90周回目……。

出撃回数はどんどんと積み重なっていきました。
私達も疲労困憊状態が何度もやってきてその度に中継地点の基地の一室で休んでいるのですけど、

「これはもしや100周回を越えてしまうのではないか……?」
「あー……師匠。確かにそうかもしンないっすね……江風ももう疲れたね」
「確かにだらしないわよっていう言葉ももう出せないくらい疲れているわね……」
「そうですね霞。これはヒトミさんの時を思い出しますね。司令官は発狂寸前でしたからあの時は……」
「提督は潜水艦との遭遇率は今までの実績で考えれば低い方じゃからな……」

どうやら皆さんも提督の事を以前から知っているだけあり色々と思う所があるのでしょうね。
やはりE-5海域での松輪さんのドロップの反動が来ているのでしょうか……?
とにかく、

「皆さん、疲労は取れましたか……?」
「万全とはいきませんが朝潮はいけます」
「あたいもいけるよ」

それで皆さんは声を上げていきました。

「それでは提督に連絡を入れますね」

それで私は提督へと連絡を入れました。
だけど提督は出た瞬間に、

『大鷹……ルイは出たかい?』
「いえ、まだ出ていません」
『そうか……そろそろ100周回目を超えてしまうが出るのだろうかね?』
「出る事を祈りましょう。それでは96周回目を出撃してきます!」
『わかった。健闘を祈るよ……』

そろそろ末期状態のようですね。
私も旗艦として頑張っていますけどそろそろ終わりにしたいところです。
そしてもう何度倒したか分からないくらいに港湾夏姫を沈めた時でした。
なにやらいつもよりドロップの時の光り方が違う感じがしました。
そしたらついに、

「Ciao! あたしは、そう、Luigi Torelliよ。そね、トレッリ……。んー、ルイでいいや」

望んでいた子がついに来てくれました……。
私は思わず涙腺が緩くなって涙を流しそうになったのは内緒です。
周りが喜びの声を上げているのでなんとか隠し通せました。
そして提督へと連絡を入れて内容を伝えると、

『そうか……。やっと、来てくれたか。わかった、帰投してくれ。
そして大鷹、よく頑張ったな。みんなにも感謝の言葉を伝えたいけど返ってきたら伝えるとしよう』
「ありがとうございます! 速やかに帰投しますね!」

それで提督との通信を切った後に、

「あの、ルイがなにかもしかしてやらかしちゃった……?」
「いえ。ただ提督や皆さんはあなたが救出されることを一番望んでいたんですよ。
それでは帰りましょうか。これからあなたの帰る家にもなるのですから……」
「うん!」

ルイさんはそれで頷いてくれました。
それでどっと疲れが来て眩暈がしましたけど最後まで踏ん張らないと!
とにかく頑張りました……。
帰ったら少し長いお休みを貰いましょうか……。


 
 

 
後書き
編成・装備さらし。


第一艦隊

大鷹改二   艦隊司令部施設、村田隊、岩本隊、彩雲
日向改    試製41㎝三連装砲(☆6)×2、零観(MAX)、一式徹甲弾
朝霜改    12.7㎝連装砲B型改二×2、QF 2ポンド8連装ポンポン砲
朝潮改二丁  10㎝連装高角砲+高射装置×2、Bofors、2㎝四連装Flak38
照月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、25㎜三連装機銃 集中配備、2㎝四連装Flak38
江風改二   10㎝連装高角砲+高射装置×2、25㎜三連装機銃 集中配備


第二艦隊

阿武隈改二  甲標的、15.2連装砲改(MAX)、25㎜三連装機銃 集中配備×2
大潮改二   大発動艇(八九式中戦車)(☆6)×2、WG42
霞改二乙   10㎝連装高角砲+高射装置×2、特二式内火艇(MAX)、3.7㎝ Flak M42
ヴェールヌイ 10㎝連装高角砲+高射装置×2、特二式内火艇(MAX)、25㎜三連装機銃 集中配備
利根改二   20.3㎝(3号)連装砲×2、紫雲、三式弾、3.7㎝ Flak M42
筑摩改二   SKC34 20.3㎝連装砲×2、夜偵、三式弾、3.7㎝ Flak M42



最初はこんなに盛ってなかったんですけど検証を繰り返していく内に最終的にこんなにガチャガチャな装備欄になってしまった……。
本当にPT小鬼群がうざいのなんので……。

そして長門達の出撃も含めて96周回目でルイが掘れました。
出た瞬間、ガッツポーズをしましたね。
百周を超えないで良かった……。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0139話『空母夏姫の攻略』

 
前書き
更新します。 

 




……先日にやっとの事でルイージ・トレッリの救出が成功したためについに私達はE-6ボスへと進行を開始しようとしていた。
その為かメンバーは数名を残してほとんど一新している為に改めて執務室へと全員を呼んでいた。
第一艦隊旗艦をアイオワ、そしてザラ、鈴谷、筑摩、千代田航、千歳航の六名。
第二艦隊を旗艦を阿武隈、そして利根、照月、大井、北上、霞の六名。
この十二名で水上打撃部隊を組んでもらう。

「Admiral! このMeに任せておいてチョウダイ! いっぱい活躍しちゃうんだから!」

アイオワが元気にそう言葉を発する。
この艦隊の中で唯一戦艦なので活躍してもらいたいものだな。

「ああ。頼んだぞアイオワ」
「イエス!」

それで笑顔になるアイオワ。
いつもニコニコしているイメージだからいざ戦闘になると怖いんだよな。
まぁそこも魅力の一つだけどな。

「提督ー。あたし達を入れたって事は本気だね?」
「そうですね北上さん! 私と北上さんでなら最強です!」
「あのー!? 阿武隈の事も忘れないでちょうだい!?」
「あ゛? おまけの分際で気安いわね……?」
「ひどい!? いっつも一緒に活躍していたでしょう!?」
「そうだったかしら……?」
「もうっ! あまりからかわないでください! ねぇ北上さんもそう思うでしょう!?」
「んー? まぁ阿武隈も頑張ってるんじゃない?」
「北上さんがそう言うのでしたらそうなんでしょうね!」
「……うわー。相変わらずの開き直りの早さですぅ……」

なにやら先制雷撃トリオが漫才を勝手に始めているようだ……。
それによって他のみんなが少し呆れた視線を三人に向けている。
それでも気づいていないのか……? いや、大井に関しては気づいていて敢えて無視を決め込んでいるのか? 北上は無関心だろうし。

「まぁまぁ三人とも落ち着くじゃん? これから会議って時に野暮な争いは無しにしておこうよ」

そこで意外な人物である鈴谷が仲裁に入ってきた。
いつもなら面白そうに見学していそうなんだけどな。
私のその視線に気づいたのか鈴谷は私の方を見て舌を出して「褒めてもらいたいじゃん!」と言ってきた。
うん、やっぱりいつも通りの鈴谷だな。
まぁそれで北上達三人もようやく落ち着いたので私は話を開始する。

「今回は空母夏姫の攻略を行ってもらいたい。丙作戦だからもしかしたら最後までみんなに出番が回らないかもしれないけど頑張ってもらいたい」
「はぁ……出撃前からそんな余裕をかましているんじゃないわよ! これでも結構奥の方の海域なんだからね! シャキッとしなさいな!」

霞に怒られてしまった……。
確かにそうだな。戒めておこうか。

「ありがとう霞。気持ちがすっきりしたよ」
「あ、そう? ま、それなら構わないのだけどね」
「カスミは相変わらず提督思いですね」
「ちょっ!? ザラさん、別にそんなんじゃないから!」
「そうですか? カスミはいつも提督の事になると真剣になるじゃないですか。とても健気です」
「ううー……そんなんじゃないんだからぁ……」

霞はそれで顔を赤くしてしまいそれ以降は黙り込んでしまった。
ザラは特に悪気はないので霞の反応に不思議そうな顔をしているけど意外とツッコミがきついな、霞を黙らせるとは……。

「提督よ! 早く出撃しようじゃないか! この利根、張り切っていくぞ!」
「利根姉さんは気合が入っていますね。それでは筑摩も頑張らないといけませんね」
「よし。それじゃみんな。気合を入れて出撃してくれ。打倒空母夏姫だ」
「「「了解」」」

それで一同は出撃していった。





出撃してみたのはいいのですけど、道中の潜水艦の編成が厄介ですね……。
照月さんが中破をしてしまいました。
利根姉さんも第二艦隊ですから大破しないかハラハラしてしまいます。

「利根姉さーん! 大丈夫でしたか?」
「筑摩よ。吾輩は大丈夫じゃ! 照月が少し食らってしまったが……」
「私なら大丈夫です! まだ航行可能です!」
「そうですか……。しかし道中の潜水艦が厄介ですね」
「そうだね。あたしと千歳お姉じゃ沈められないから……」
「そうね、千代田。道中の潜水艦をどうにかしてもらうようにこの戦いが終わったら提督に進言してみましょうか」

千歳さんがそう言っています。
そうですね。それがいいと思います。
そしてなんとか中破者はいるものの空母夏姫へと遭遇する事が出来たのですけど、

「ヒノ……カタマリトナッテ……シズンデシマエ……!」

水着の恰好をしていますけどいつもの威圧感は変わらず持っていますので要注意ですね。
ですが次の瞬間には驚きに目を見開きました。
基地航空隊が到着したのですけど、なんと言いますか開幕でほとんどの敵深海棲艦を沈めてしまったのです。

「なんじゃ……? 意外に脆いのじゃな」

利根姉さんがそう呟いているのを聞きまして私もそう思いました。
呆気なさ過ぎたのです。
そして残ったのは空母夏姫に戦艦夏姫だけだったのです。

「これなら! 後はこのアイオワに任せておいて! いくわよ!」

そしてアイオワさんがきつい一撃を空母夏姫に叩き込みました。
そしたらまるでバターのように柔らかかったみたいにダメージが入りたった一撃で空母夏姫は沈んでしまいました。

「脆っ!?」

誰かがそう言葉を発していました。
いえ、本当に脆かったのです。
これならもう第二艦隊の皆さんは道中は対潜装備でもいいかもしれませんね。
私達第一艦隊の攻撃だけで戦闘が終了してしまいましたから。
それで鎮守府へと帰投した後に提督に事情を説明しましたら、

「そうか。それなら阿武隈、大井、北上の三名は甲標的以外は対潜装備で挑んでくれ。霞も対潜装備でも構わないぞ」

それで四人は少し不満そうな表情をしていましたけど渋々と言った感じで装備を換装していました。
私の提言とはいえ心苦しいですね。

「提督? これなら乙作戦でもよかったんじゃない……?」

北上さんがそう言っていました。
確かにこれなら乙作戦でもいけたかもしれませんね。

「そうだな。しかし、また輸送作戦をするのは資材的にはあまりやりたくないからな……」

提督はそう言ってため息を吐いていました。
前々から提督は輸送作戦を苦手とする構えですから仕方がないですね。

「だから不満だと思うけどこのまま丙作戦で倒してくれ」
「わかったー……ま、楽が出来るから別にいいけどね」

それで対潜装備を充実させて私達はまた出撃していきました。
そしたら厄介だと思っていた道中の潜水艦が綺麗に先制対潜で全艦沈んでしまっていて思わず笑ってしまいました。
これほどに先制対潜は有効な手段だと改めて思いましたね。
そして何度も空母夏姫を倒していって次でおそらくラストダンスだと思いましたら、またいい乱数を引いたのか航空基地隊がいい仕事をしてくれました。
空母夏姫と戦艦夏姫を残してまたほとんどを沈めてくれました。
さらには千代田さんと千歳さんの艦載機による攻撃で二体とも中破をしていましたので、

「これなら楽勝ネ! とどめを刺してあげるわ!」
「後はザラとアイオワさんに任せて!」

そう言ってアイオワさんとザラさんが二体にとどめを刺していました。
本当に丙だと簡単に終わるのですね。
提督は……丙を脱出することが出来るのでしょうか……?
私達の練度なら甲作戦は無理でも乙作戦なら突破は不可能ではありませんからね。
まぁ、夏の作戦は色々と辛いですからね。E-6までに十万以上は資材を消費しましたしね。
ですから秋の作戦に期待しておきましょうか。
私達はそれで鎮守府へと帰っていきました。


 
 

 
後書き
編成・装備さらし。


第一艦隊

Iowa     Iowa砲×2、紫雲、一式徹甲弾
Zara due  二式水戦改(熟練)、20.3㎝(3号)連装砲×2、零観(MAX)
鈴谷改二   SKC34 20.3㎝連装砲×2、零観、強風改
筑摩改二   20.3㎝(3号)連装砲×2、零観、熟練艦載機整備員
千代田航改二 村田隊、岩本隊(☆6)、52型熟練(MAX)、烈風(六〇一空)
千歳航改二  村田隊、52型熟練(MAX)×2、彩雲


第二艦隊

阿武隈改二  甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
利根改二   SKC34 20.3㎝連装砲×2、夜偵、照明弾
照月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
大井改二   甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
北上改二   甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
霞改二乙   四式水中聴音機×2、三式爆雷投射機


最初は全員主砲を装備していたんですけど丙だとこの装備で十分でした。
道中の潜水艦を対潜で封殺して基地航空隊が粗方終わらしてくれてアイオワとザラが一撃を加えて終了な感じでしたから。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0140話『決戦前の小休憩』

 
前書き
更新します。 

 



……時には休息も必要である。
私達の艦隊はE-7『ドーバー海峡沖海戦』と銘打たれた最終海域にいきなり突入せずにまずは一日休息をとることにしたのである。
それはなぜか……?
資材の回復の意味もあるけど連日の出撃でみんなが疲れに疲れていたからだ。
だからまだ期間はあるので少しでも回復できるように今日一日だけを鎮守府は休みにした。

「それでは提督。大和以下数十名は近くのビーチに行ってまいります」
「ああ。特にこれまで出撃してきた者も含まれているからゆっくり休んできてくれ」
「はい。私は今回はどうやら出撃はお預けになるようですけど、楽しんできますね。それでは失礼します」

そう言って大和は執務室を出ていった。
そして数分してゲートを出ていくみんなの姿を見て、

「少しでも休んでもらいたいものだな」
《そうですね、提督》

私と榛名でそう願っていた。
別に作戦が終了した後でも休息は出来るだろうけど今回の最終海域はかなりの難関らしいからみんながストレスを感じてしまうかもしれないしな。
そんな時だった。
誰かが扉をノックしてきた。

「入っていいよ」
『失礼するわ』

声的にウォースパイトかな……?
そして扉が開かれて入ってきたのは紅茶セットを持ってきているウォースパイトだった。

「どうしたんだいウォースパイト? みんなと一緒にビーチに行かなかったのか?」
「ええ。どうも騒ぎすぎるのは苦手でして……それでしたらMy admiralと一緒にゆっくり過ごすのもいいのではないかと思いましたので。コンゴー達はビーチの方に行ってしまいましたから話し相手を探していたのもありまして……」
「そうか。わかった、それじゃ準備をするよ」

それで私は執務室に置いてあるカップとかを戸棚から出し始めた。

「Thank you.」

ウォースパイトに感謝されながらもカップを出して、後はウォースパイトが紅茶を作ると言うので任した。
やはり本場の人が入れた方のが美味しいしな。
それから少しの間、ウォースパイトの精錬された紅茶の淹れ方を見学しながらも時間は過ぎていき、

「どうぞ、My admiral。本場でも正式な紅茶ですわ」
「ありがとう、いただくよ」

それで零さないように口へとカップを運んでいき、一口飲む。
夏だからというのも関係なくやはり紅茶というのも美味しいな。
金剛が淹れるのとも一味違うものだしね。

「ふぅ、美味しいな……」
「そうですか。よかったですわ」

それで笑顔を浮かべるウォースパイト。
だけどなんとなくだけど私にはウォースパイトがなにかを話したそうにしているのも感じた。
それなので聞いてみる事にした。

「ウォースパイト? なにか心配事があるのか……? 少し表情が優れないようだけど……?」

そう聞いてみるとウォースパイトは少し驚いた顔になった後に、

「……そうですね。別にこの休みに不満はあるわけではないの。適度に休みを入れてくれるMy admiralには感謝すらしているわ。だけどそれと同時に思ってしまうの。
今頃は祖国はまだ深海棲艦の脅威に晒されていて苦しんでいるのではないかと……」
「ウォースパイト……」

それで私は少しばかり言葉を失っていた。
そうだよな。早く救援したいものな。
だからこんなに呑気に休養している場合ではないのだけど私も万全の姿勢で挑みたいからな。
そんな私の気持ちを察してくれたのか、

「sorry……。別にMy admiralの判断を批判しているわけではないの。でもそう思ってしまったら少しでも早く助けてやりたいと願ってしまって……」
「そうか。いや、ウォースパイトのその気持ちは間違っていないよ。私も早く欧州周辺の国を救援したいとは思っているからな」
「そう……」

それで少し安心の表情を浮かべるウォースパイト。

「少し、紅茶が冷めてしまったわね。淹れなおすわ」

そう言ってそそくさとウォースパイトは私の分も淹れなおしてくれている。
その気持ちに感謝しながらも、

「そうだな。ウォースパイト、この作戦が終了したらイギリスから一隻空母の艦娘が来るというのはもう知っているよな?」
「ええ。アークロイヤルが来るのでしょう?」
「そうだ。だから早く彼女とも会えるように頑張らないとな」
「そうね。私も気合を入れていくわ!」

それで笑顔を浮かべあう私とウォースパイト。
そこに榛名がおずおずと言った感じで会話に入ってきた。

《ウォースパイトさん》
「オー、ハルナですか。どうしましたか……?」
《はい。提督との会話を盗み聞きしているようで心苦しかったんですけどウォースパイトさんの気持ちも分かりまして……もし日本が困難な目にあいましたら救援したいですからね。だから! 必ず欧州の国々をお救いしましょうね!》

榛名はそう言って握りこぶしを作って気合を入れている。
そんな榛名の姿を見て勇気をもらったのかウォースパイトは強気な笑みを浮かべながらも、

「そうね……。必ず救いましょう。私達には救うための力があるんだから……ハルナ、Thank you」

そう言って榛名にウォースパイトは感謝の言葉を贈っていた。
そんな時だった。

「ヘーイ! テートク! やっぱりテートクも一緒にビーチに行きましょうヨー!……あれ? ウォースパイトじゃナイデスカ! どうしてここに……?」

金剛が水着姿で執務室へと入ってきたのであった。
そんな姿に先ほどまでのいい雰囲気を壊されたのか私も含めて金剛に呆れた視線を贈ってしまう。

《金剛お姉さま……》
「金剛……」
「コンゴー……あなた、せっかく執務室内がいい空気だったのにいい感じにぶち壊してくれたわね……」
「ワッツ!? なにかワタシ、粗相をしちゃいましたか!?」
「ええ、そうね。まずはあなたのその恰好をどうにかしないといけないわね」

それからウォースパイト直々に金剛は徹底的に矯正されたのは、まぁ仕方ない事として諦めた。
終始金剛は悲鳴を上げていたけど今回ばかりは擁護できないしな。
まぁウォースパイトと改めて話が出来てよかったな。
前にショッピングに一緒に出掛けた時は暁が一緒にいたこともあってなかなか切り込んだ話はできなかったからな。
そう言う意味では今回休みの日を入れた私もナイス!
そんな感じで戯れる金剛とウォースパイトの二人を見ながらも和んでいたのであった。


 
 

 
後書き
今回はサブタイトル通り休息の回でした。
そしてウォースパイトの心の内を書いてみました。
オチは金剛でしたけど仕方がないですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0141話『ドーバー海峡沖海戦・前哨戦その1』

 
前書き
更新します。 

 




一日の休養を得てみんなは大体が疲労が抜けたみたいだな。
数人、逆に遊び過ぎて疲れているのも見受けられるけどその件に関しては自業自得として諦めてもらおう。
さらには貸し切りのビーチではなかったためにナンパを受ける事もあったらしいけど、町内会の人がすぐにガードしてくれたというので特に被害はなかったという。いつもありがとうございます、町内会の皆さん。
それじゃというのもなんだけど最終海域の攻略を開始するとしようか。
それで私は大淀とともに先行者たちのありがたい情報を確認していた。

「……しかし、昔に比べまして複雑なギミックも増えましたよね。普通に攻略する分には道中で燃料弾薬が尽きてしまうというのは何とも言えませんね」
「そうだな。羅針盤妖精さんが思わず叫んだという報告も受けているからな。分かりやすくギミックを用意しているのものなんだけどルート解放のために検証勢がどれだけ資材を消費したかと思うと頭が下がる思いだな」
「はい、そうですね。それではそろそろ皆さんをお呼びしますか。まずは対潜部隊を中心にした連合艦隊で攻めていきましょう」
「そうだな」

それで私は内線を取って決めた部隊のメンバーを執務室へと招集する。
そして少しして一同が執務室へと入ってきた。
第一艦隊旗艦はビスマルク、そして金剛、ザラ、摩耶、千代田航、千歳航の六人だ。
そして第二艦隊は対潜が可能な艦娘を中心に編成してあるためにメンバーは旗艦を阿武隈、そして唯一対空要員である照月、リベッチオ、朝霜、北上、大井の対潜チームの計六人だ。

「さて、みんな。昨日はゆっくりできたか?」

私はいきなり作戦については触れずにまずは昨日の出来事について聞いた。
まさか不満を持っているとは思えないけど一応はメンタルチェックはしておいても損はないからな。
だけどそこで阿武隈が少しふくれっ面になっていた。どうしたんだ……?

「阿武隈……? どうした、昨日になにかあったのか?」
「それなんですけどー……北上さんと大井さんがー……」

うん。予定調和な話題が始まりそうだったので、

「うん……いつも通りで安心したよ」
「まだなんにも話していないんですけどー!?」
「諦めなさいな。あなたはそういう星の巡りの人なのよ」
「まぁ阿武隈だから仕方がないよねー」
「なんでー!?」

阿武隈が嘆いて大井と北上がすかさず追撃する辺りやはりいつも通りで落ち着きすらあるな。
実際他の面々も苦笑いだろうけど三人のやり取りを面白そうに見ているしな。

「それで他にはなにかなかったか……?」
「提督、酷いですぅー……」

阿武隈に関しては一応無視を決め込んでおこう。別に阿武隈の事が嫌いなわけじゃないからね、一応だ。

「そうね。コンゴウやオイゲン達と一緒にビーチバレーをしていたらいやらしい目で私達を見てきた男たちがナンパというのかしら……? まぁ、そんな事をしてきたのよ。でもいつもお世話になっている町内会の皆さんに助けてもらったから安心したわね」
「ホントーに感謝デスネー!」

結局昨日は金剛はおとなしくみんなのもとへと戻っていったけどそんな事があったのか。

「それは災難だったなビスマルクに金剛。まぁ町内会の皆さんには後で感謝の言葉を贈っておくとするか」
「そうしてもらえるとありがたいわね」
「ああ。それで他にはないか……?」

それでメンバーのみんなに各々聞いていくけど特に大事なことは無かったという。
それなら安心かな……?
だから私は本題に入ろうと思って口を開いた。

「それじゃほのぼのとした話はそろそろ終わりにして、本題に入るとするか」
「待っていたわ!」
「イエス!」

戦艦の二人が一早く反応を示した。
気力もばっちしだしやる気も十分なのだろうな。

「提督ー! 対空に関してはあたしと照月に任しておきな!」
「はい! 頑張ります!」

対空メンバーの二人も気合が入っているな。
だけど、

「対空もだけど、今回はギミック解除のために阿武隈達対潜チームが要になってくる。話によると今回の最終エリアは今回の各海域での今までのボスが大体出没してくるらしいからな」

潜水新棲姫や空母夏姫、港湾夏姫、戦艦夏姫といった姫級がぞろぞろと道中に配置されているらしい。
だから丙作戦でも苦労をするだろうという話をみんなにすると、

「望むところじゃん! 最終海域なんだからそれくらいしないと手応えないからね!」
「朝霜、一応言っておくけど……」
「あんだよ?」
「各地の提督は丙作戦ですら結構な悲鳴を上げていると言う。だから舐めてかからずに本気で頼むぞ?」
「そんな事か。だったらなおの事あたい達に任せておきなよ!」

朝霜はそれで胸を叩く。頼もしいやらなんやらだな。

「わかった。それじゃまずは羅針盤のギミック解除のために潜水新棲姫が出没するエリアへと赴いてそれを撃破してくれ」
「「「了解」」」

そして一同は出撃していった。
していったんだけど上方のエリアの潜水新棲姫はなんなく倒すことができたという報告を受けるが、もう片方の下方のエリアへと羅針盤妖精さんが調子が悪いらしくて行かずに苦労しているという。

『提督ー……また上方の方に行っちゃったよー』
『提督? 少しばかり編成を変えた方がいいんじゃないですか……?』

北上と大井からそんな相談を受けるけど、

「そうなんだけどまた鎮守府までわざわざ帰って来て編成の見直しをするのは時間を押している事も関係して厳しいと思う。だから中継基地に一旦戻って羅針盤の調子が良くなることを祈っていてくれ」
『わかりましたー……』
『素直に中継基地で補給を受ける事にするよー』

それで二人からの通信が終了する。
それにしても厄介だな。
おそらくギミックの場所なんだろうけど羅針盤がランダムらしく固定できないから何回も同じ方へと行ってしまい疲労が溜まっていってしまうな。
今度こそはという思いでみんなが下方の方へと行ってくれるのを祈っていると、

『提督! 下方への進路を確保できたわ! このまま進撃するけど構わないわよね!』
「ああ。ビスマルク、そのまま進撃してくれ」
『わかったわ! みんなー、いくわよ!』

それで通信先でみんなの叫ぶ声が聞こえてくる。
うん、これなら大丈夫そうかな?
そして二つのエリアで潜水新棲姫をそれぞれ倒したという報告を受ける。

「よし。そのまま進撃して駆逐水鬼の艦隊を火力で撃破してくれ」
『わかったわ』
『やっとあたしと千歳お姉が活躍できるんだね!』
『必ず撃破しますね』
「頼んだ」

そして瞬く間に駆逐水鬼の艦隊を撃破した後に、もう一回出撃してもらい下方エリアの港湾夏姫も油断なく倒してもらった。

『提督。羅針盤妖精が新たなルートが解放されたと言うわ』
「そうか。それじゃ今度はまだ見ぬ最終ボスの弱体を図るためにもう一回駆逐水鬼と港湾夏姫を倒してくれ」
『わかったわ』

それでビスマルク達はもう一回進撃して言って駆逐水鬼に関しては倒すことが出来たんだけど、下方の港湾夏姫のエリアに行くためのルートが何度も逸れてしまったという。
これはもしかしてE-6でもあった輸送連合で挑まないと港湾夏姫へと進めないという事だろうか……?
とにかく今日はもう駄目だという事でみんなには帰投してもらった。
明日は輸送連合で編成を考えないとな。
水上打撃部隊のみんななら平気だったとしても輸送連合は使える艦に縛りがあるから火力で圧倒できない弱点があるしな。


 
 

 
後書き
装備さらし。


第一艦隊

ビスマルクドライ Iowa砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、零観(MAX)、一式徹甲弾
金剛改二     Iowa砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、紫雲、一式徹甲弾
ザラ・ドゥエ   強風改、SKC34 20.3㎝連装砲×2、零観
摩耶改二     90㎜単装高角砲(MAX)×2、5inch連装砲 Mk.28 mod.2、14号対空電探
千代田航改二   村田隊、岩本隊、52型熟練(MAX)、烈風(六〇一空)
千歳航改二    村田隊、52型熟練(MAX)×2、彩雲


第二艦隊

阿武隈改二    甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
照月改      10㎝連装高角砲+高射装置(MAX)×2、13号対空電探改
リベッチオ改   四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
朝霜改      四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
北上改二     甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
大井改二     甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機


まずはこれでギミックを解除しました。
上の潜水新棲姫にはいくのになかなか下のマスにはいかなくてイライラが溜まりましたね。

それとイベント期間が延長されて9/11まで延びたらしいですね。
まだまだ時間はありますのでまだクリアしていない人は頑張ってください。





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0142話『ドーバー海峡沖海戦・前哨戦その2』

 
前書き
更新します。 

 

最終ボスの装甲破砕ギミックを完了するために私達は改めて港湾夏姫を倒さないといけないんだけど、港湾夏姫のもとへといくためには輸送連合編成でいかないといけないので少し困っていた。
道中の潜水艦や水雷戦隊、空襲にも対応しないといけないし、港湾夏姫には随伴艦にPT小鬼群が複数配置されている。
このPT小鬼群がとても厄介な存在なのである。
機銃を載せまくっても当たらない事が多数あるからな。
だから道中支援も航空基地隊もフルで使用しないと勝ち目はないだろう。

「というわけで、みんなに集まってもらった訳だけど……」
「提督さん、夕立頑張るっぽい!」

まずいの一番に夕立が声をあげた。
だけどまだ説明をしていないから少し大人しくしておこうね。

「まぁ夕立、少し落ち着いてくれ。まずは概要を話したいから」
「わかったっぽい!」
「それでだけど、みんなには港湾夏姫を倒すために大量に機銃を積んでもらっているけどどういう意味か分かるな?」
「提督がおっしゃる事はわかるわ。随伴艦のPT小鬼群がなかなか倒せないのが厄介なのでしょう?」
「山城正解だ。今回のPT小鬼群は避けに避けるからな。だから持てる者は大体持ってもらっているしな」
「あたしと朝霜ちゃんとリベッチオちゃんは対潜に集中していればいいんですか……?」

阿武隈がそう聞いてくる。

「主にはそうだけどできればPY小鬼群にも攻撃を当ててもらいたいのが本心だな」
「そうですかー。それじゃなんとか頑張りますね!」
「ああ、よろしく頼む」

そして大鷹が手を上げて、

「それでは私は制空権を取る事に専念しますね」
「秋月たちは艦載機を落としますね!」
「照月達にお任せください!」
「姉さん達も一緒にいるんだ。やってやるさ!」

それで四人が張り切っている。うん、頼もしいな。
秋月たちを全員入れたから対空に関しては問題はないだろうな。

「それじゃ鈴谷と熊野は港湾夏姫を倒すことに集中するね!」
「おまかせくださいましね」
「あたしも港湾夏姫打倒に専念するわ」

鈴谷、熊野、霞もやる気はあるようで安心した。

「わかった。みんな、頑張ってくれ!」
「「「了解!」」」

それで全員は出撃していった。






ああ、不幸だわ……。
もしかしたら扶桑姉さまとも一緒に出撃できるかもと思っていたのに私一人だけだなんて……。

「山城さん……? 表情が優れないようですが、大丈夫ですか?」
「ああ、大鷹。ええ、大丈夫よ」

いけないけない……。戦闘に集中しないといけないわね。
提督が私達を信じて送り出してくれたんだから役目は果たさないとね。
それで私は声を上げる。

「それではみんな。まずは敵水雷戦隊を倒すわよ!」
「「「わかりました」」」

それで私達はまず深海棲艦の駆逐棲姫の艦隊と接触する。
と、そこに航空基地隊から支援が入ってきた。
どうやらここにも多少は送ったようね、提督は。
輸送艦隊じゃ不安ですものね。
それでも新型駆逐艦が落とせずにいるのは少し納得でいませんでしたけど。

「みんな! 戦闘態勢に移行!」

それで私達は第四警戒航行序列で挑んでいった。
そして戦闘が終わった時には第二艦隊のメンバーが多少雷撃を受けたのか中破を受けている者もいた。

「あちゃー……中破しちゃったよ」
「大丈夫ですの? 鈴谷……」
「まだまだ大丈夫だよ。いけるいける!」

鈴谷は元気にそう言ってるけど中破をしているんだから無理はしないでほしいわね。
でもなんとか大破者はいないようで安心したので、

「それじゃ進撃するけど大丈夫……?」
「いけるよー! 山城さん、行こうか!」

鈴谷がそう言ったので遠慮なく進もうと思う。
そしてお次は潜水新棲姫との遭遇をしたので第二艦隊の面々にまたしても頑張ってもらわないといけない。
だけど先制対潜でなんとか随伴艦は撃破出来て潜水新棲姫も小破を受けていたので雷撃を撃ってきたけどなんとか誰も喰らわなかったようで安心した。
そして三人で難なく倒していたので、

「山城さーん! 潜水新棲姫を倒しましたよー!」
「わかったわ。それじゃ進むとしましょうか」

そして矢継ぎ早に空襲がやってきたけど、

「撃ち落とします!」
「照月、やっちゃうんだから!」
「姉さん達に続くとしよう!」

秋月達三人が艦載機を隙なく撃ち落としていたので被害はなくてよかったわね。
そしておそらく次のエリアには港湾夏姫が待っているわ。

「みんな! 次はおそらく港湾夏姫が待っているわ! 身構えなさい!」
「「「わかりました!」」」

そして私達は進撃をして港湾夏姫の部隊と接触する。
そこには港湾夏姫の本隊を守るようにPT小鬼群がニタァ……とでも言いそうな笑みを浮かべて、

「キャハハ!」
「キャハハ!」

……いつも通り笑っていた。
本当に不気味な奴らね。
まだ港湾夏姫の方がマシに見えるのはどうかと思うわね。
とにかく、

「それじゃ第二警戒航行序列で挑んでいくわよ!」

私達は第四警戒航行序列ではなく第二警戒航行序列で挑んでいった。
これは複縦陣でもあるので少しでも命中率を上げるための苦肉の策なのである。
そして、

「夕立、突撃するっぽい!」
「ああっ、もう……夕立突っ込み過ぎよ!」

私はそう言いながらも砲撃で支援をしていく。
それでも港湾夏姫の周りの奴らが守るように陣形を組んでいるので厄介ね。
でも、

「秋月姉! 当てていくよ!」
「ええ、照月。当てます!」
「僕も当てていくよ!」

第二艦隊の取りこぼしのPT小鬼群をなんとか当てていくけどやはりミスる事が多いわね。
それでもなんとかPT小鬼群を倒すことが出来たので、

「阿武隈! 夜戦で仕留めるのよ!」
「任せてください! 皆さん、あたしの指示に従ってくださぁい!」

阿武隈の声を響き渡る。
それでいつも通りみんなは苦笑いを浮かべながらも「はーい」と言っていた。
うーん……阿武隈はやっぱりあんまりみんなに舐められているのかしら……?
そんな事を思いながらも港湾夏姫が撃墜されていく様を見たので、

「提督……? 港湾夏姫含めて全滅させたわ」
『そうか。こちらでもなにかしらの反応があったからこれでおそらく最終ボスの装甲が解除されたのだろうな』
「そのようね」
『それじゃ速やかに帰投してくれ。ご苦労だった』
「わかったわ。それじゃ帰投するわ」

それで提督との通信を切って私はみんなに帰投しましょうと声をかけて帰っていくのであった。
そしてボスへの道は空母機動部隊でないといけないらしいからおそらく私はもう出番はないわね。
少し残念だけど任せるしかないわね。



 
 

 
後書き
Pマス攻略装備さらし。(機銃は書いていませんけどちゃんと乗せました)

第一艦隊

山城改二   Iowa砲×2、一式徹甲弾、晴嵐(六三一空)
大鷹改二   村田隊、岩本隊、52型熟練(MAX)、彩雲
秋月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
照月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
初月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
夕立改二   10㎝連装高角砲+高射装置×2、Bofors 40㎜四連装機関砲

第二艦隊

阿武隈改二  甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
朝霜改    四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
リベッチオ改 四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
霞改二乙   10㎝連装高角砲+高射装置×2、特二式内火艇(MAX)
鈴谷改二   SKC34 20.3㎝連装砲×2、三式弾、瑞雲12型
熊野改二   SKC34 20.3㎝連装砲×2、三式弾、瑞雲12型



もっとPマス掘り編成(敷き詰めバージョン)


第一艦隊

山城改二   Iowa砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、一式徹甲弾、瑞雲12型、2㎝四連装Flak38
扶桑改二   Iowa砲、試製41㎝三連装砲(☆6)、一式徹甲弾、瑞雲12型、2㎝四連装Flak38
秋月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改、2㎝四連装Flak38
照月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改、Bofors 40㎜四連装機関砲
ヴェールヌイ 特二式内火艇(MAX)、大発動艇(八九式中戦車)(☆6)、25㎜三連装機銃 集中配備、3.7㎝ Flak M42
夕立改二   10㎝連装高角砲+高射装置×2、熟練見張員、25㎜三連装機銃 集中配備


第二艦隊

阿武隈改二  甲標的、三式水中探信儀、OTO 152㎜三連装速射砲、25㎜三連装機銃 集中配備
朝潮改二丁  三式水中探信儀、三式爆雷投射機、熟練見張員、3.7㎝ Flak M42
霞改二乙   10㎝連装高角砲+高射装置×2、特二式内火艇(MAX)、25㎜三連装機銃 集中配備
初霜改二   10㎝連装高角砲+高射装置×2、熟練見張員、25㎜三連装機銃 集中配備
熊野改二   SKC34 20.3㎝連装砲×2、三式弾、WG42、3.7㎝ Flak M42
摩耶改二   SKC34 20.3㎝連装砲、12.7㎝高角砲+高射装置、零観、三式弾、3.7㎝ Flak M42

これでもボロボロにやられました。
大鷹はやっぱり入れてもいいかもしれませんね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0143話『ドーバー海峡沖海戦・欧州棲姫の撃破』

 
前書き
更新します。 

 





ギミックを解除してボスの装甲も剥すことに成功した私達はついにボスへと挑んでいこうという思いでメンバーを編成していた。
だけどここで難関にぶち当たった。
そう、水上打撃部隊ではボスマスまでいかないのだ。
だから空母機動部隊で挑まないといけなくなってしまう。
それなので第二艦隊が主に狙われる羽目になってしまうので私はここで出し惜しみは無しだという思いで第二艦隊のメンバーには女神を持たせておいた。
そしてメンバーはこうだ。
第一艦隊の旗艦はアイオワ、そして翔鶴、瑞鶴、大鳳、飛龍、ザラの六名だ。
第二艦隊の旗艦はもう変わり映えもないけど阿武隈、霞、夕立、プリンツオイゲン、北上、大井の六名だ。
威力偵察のために一回出撃してみたはいいんだけど、道中の空母夏姫に大破させられて撤退、そして一回空母夏姫を抜いて進撃したのはいいんだけどお次は戦艦夏姫との遭遇で大破してまたしても撤退という結果に終わっていた。
さらには本来なら潜水新棲姫の方へと移動するはずなのにランダムなのか逸れてしまって余計な戦闘を二回もする羽目になった時はさすがに撤退を余儀なくされた。

「……さて、こうして大破撤退を繰り返していってみんなはどう思った……?」
「ソウネ。やっぱり第二艦隊のメンバーが空母機動部隊の編成上で集中砲火を浴びてしまうからツラいわね……」

アイオワがそう言って口を開く。
やっぱり第一艦隊の面々は第二艦隊の面々を庇えないのが悔しいらしいのか瑞鶴とかなんかは拳を握りしめて悔しがっている。

「せっかく女神を積んでいてもボス前まで耐えられないと辛いッぽい!」
「そうだねー。北上さんも装甲は薄いからね~」
「北上さんはよくやっています! あの道中が鬼畜なのがいけないんです! ほんっとクソが!」

おいおい……大井がひた隠している本性丸出しで悔しがっているぞ。これは相当なものだな。

「あの道中の逸れも問題だと思うなー。あれで無駄に燃料と弾薬を消費しちゃうから……」

オイゲンがそう話す。
そう、何度かだけど逸れてしまい無駄に消費して撤退する事もあるから疲労がつきやすいんだよな。
それで何度も疲労回復のために時間を要したからな。

「わかった。まずは空母夏姫と戦艦夏姫をどう潜り抜けるか考えていこうか」
「あのー、潜水艦対策もした方がいいと思います」
「そうか。潜水新棲姫にも遭遇するからそこで大破もしているしな。道中で姫級と連続して遭遇するとは……本当に今回は鬼畜だな。どうにか抜けられればなんとかなると思うのだけどな」
「私と翔鶴姉と大鳳と飛龍さんでどうにか開幕で潰せればいいんだけどね……」
「そううまくいくものではないわ、瑞鶴」
「そうですね。基地航空隊も空母夏姫には送らずに戦艦夏姫に一艦隊送らないといけないから」
「後の残りの航空基地隊はボスマスに集中しないといけないしね……」

空母の四人がそれで表情を曇らせている。
そうなのだ。
空母夏姫の艦隊は連合艦隊編成のために第一艦隊から攻撃していくからなんとか航空基地隊を頼らずに火力で押し切れるけど戦艦夏姫の艦隊は通常艦隊のために第二艦隊に攻撃が行ってしまい多大な被害を及ぼしている。
だから少しでも被害を最小限に抑えるためにも航空基地隊の一艦隊は戦艦夏姫に集中している。

「まぁこればかりはお祈りをしてなんとかしていくしかないな」
「またそんな適当な……被害をこうむる私達の身になりなさいよね、クズ司令官!」
「おっしゃる通りで……でもなんとかみんなには抜けてもらいたいのは本心だからなぁ。頑張ってもらいたい」
「わかってるわよ、まったく……」

それで霞は頬を膨らませながらも一応は納得してくれた。
そしてみんなにはまた出撃してもらった。









まったくあのクズは……。
でも私達の事を信じて送り出してくれているところは評価に値するわね。口には出さないけどね。こういう時は調子に乗らせちゃいけないからね。
そして潜水新棲姫を突破して遭遇する空母夏姫。

「シズミナサイ……」

空母夏姫が艦載機を放ってくるけどどうにか翔鶴さん達が迎撃して、そして第一艦隊の攻撃で私達にはあまり被害はなく突破できた。
だけど次の戦艦夏姫の戦闘の時だった。

「霞ちゃん! 危ない!!」

阿武隈さんのそんな声が聞こえてきた時にはもう遅かった。
私は戦艦夏姫の砲撃をもろに喰らってしまい大破してしまっていた……。
だけど私以外はなんとか凌いでくれた。
これなら!

「提督……霞ちゃんが大破しちゃった……」
『そうか。……霞、私の言葉が聞こえているか?』
「ええ、聞こえているわ」
『そうか、安心した。それなら酷な命令をしているという自覚はあるけど女神を積んでいる為に進撃してほしいんだけど構わないか……?』
「ほんとクズね」

私は第一声でそう言う。
司令官はそれで『すまない……』と謝ってくるけど、まだ私は最後まで言い切っていないったら。

「だけど……イイ判断だわ。せっかく勝ち目が拾えそうなんだからこんなところで撤退なんかしたらむしろ許さないんだからね!」
『ッ!ああ、わかった。少しの間だけど耐えてくれよ霞』
「任せなさい! この霞、轟沈間際の痛みなんて耐えてみせるわよ。見ていなさい!」

それで私は強引に司令官との通信を切った。
そこに私の事を心配してくれたのか阿武隈さんが話しかけてきた。

「……霞ちゃん、ホントーに無理だったら言ってね?」
「大丈夫よ」
「そっか……。霞ちゃんは強いね」
「そんなんじゃないわよ……司令官の信頼には応えたいじゃない……」

司令官が一緒にいない以上は本音を隠す必要もないしね。
それで他のみんなもいい笑みを浮かべていたけど私は敢えてそっぽを向いて無視した。

「さぁ進撃よ!」

私の一声で私達はついに最終ボスの欧州棲姫との対面を果たした。

「コンナトコマデ……キタノ……? バカナノ……? オロカナノ……ッ!」

欧州棲姫はそんな事を呟いているけど、確かにこんな遠くまで来るとは思っていなかったら私達はバカなんでしょうね……。
でもね、救いの手を伸ばせるなら伸ばしたいのよ!
だから私達は戦えるんだから!
そして攻撃が始まって航空基地隊の攻撃で敵の半数を薙ぎ払っていってさらには空母の皆さんの攻撃でほとんどが沈んでいった。
これならいけるかしら……?と思っていたんだけどやっぱり欧州棲姫は私を狙ってきた。
そして今度こそ直撃して私は激痛を味わいながらもダメコンを発動させた。
そして痛みはスッとすぐに引いてきて、夜戦の突入して、

「さっきのお返しよ! 受けなさいったら!!」

私のカットインによる攻撃が欧州棲姫に直撃して見事欧州棲姫を一回沈めることが出来た。

「オー! カスミ、見事だったワ!」
「すごいわ!」

そう言ってアイオワさんが私を抱きしめてザラさんが褒めてくれた。
だけどまだ痛みが引いていないので加減してほしかったのは内緒だけどね。
それからというもの、運がよかったのかもしれないけど連続して空母夏姫と戦艦夏姫の攻撃を掻い潜り、何度も欧州棲姫と遭遇してその度に撃破していってついに、

「コンナトコマデ……キテモ……。モ……ウ…………。ムダ……ナンダカラ……ッ!!」

欧州棲姫の身体が黄色く発光していて装甲もところどころ剥げている。
おそらくラストダンスに入ったんだわ。

「司令官! ラストダンスに入ったわ! 倒しに行くわよ!」
『ああ。頼んだぞ、みんな!』
「「「了解!」」」

それで私達は攻撃を開始する。
戦艦夏姫が増えていたけどそんなものも意味ないというほどに航空基地隊がダメージを与えていって空母のみんなの攻撃もダメージを与えて行って最終的には軽巡ツ級と戦艦夏姫、欧州棲姫だけが残っているといういい結果を残して砲雷撃戦へと突入する。
まずは戦艦夏姫へとアイオワさんが攻撃していって一撃で沈めて、欧州棲姫がザラさんを中破させたけどまだまだ空母の皆さんは健在だ。
それで欧州棲姫へと艦載機が集中砲火していき、ついに欧州棲姫は盛大に爆発を起こして、そして……、

「アハハ……スコシ……シッパイシタケドネ……。コンナノ……ゼンゼン……ワタシ……ワタシ……ウソダ……。ベツニ、ワタシハ……コンナノ……望んで、ないから……」

欧州棲姫は最後まで悔しそうにしながらも光の粒子となって消え去っていった。
司令官も通信越しで聞いていたのだろう。

『深海棲艦は……どうしてこうも悲しい存在なのだろうな』
「分からないわ……。でも相いれないんだから仕方がないでしょ……?」
『そうだな。とにかくみんなよくやってくれた。これで私達は欧州救援作戦成功だ。現地の人達に会って来なさい。
あ、でもまだ他の鎮守府の作戦自体は続いているから手短に済ませておいてくれ。
私達は一つの個体である欧州棲姫を倒したに過ぎないんだからな……。他の艦隊の迷惑にならないように』
「分かったわ」

それで私達は手短に現地の人達に感謝されながらも鎮守府へと帰投していくのであった。
私達の戦いはまだまだ続いていくんだから……。
こんなところで足止めなんてしていられないのよ。


 
 

 
後書き
編成さらし。


第一艦隊

アイオワ改     Iowa砲×2、紫雲、一式徹甲弾
翔鶴改二甲     村田隊、流星改、52型熟練(MAX)、Fw190T改
瑞鶴改二甲     流星改、村田隊、岩本隊、烈風
大鳳改二甲     友永隊、流星改、52型熟練(MAX)、烈風
飛龍改二      流星(六〇一空)、流星改、流星改、52型熟練(MAX)
ザラ・ドゥエ    SKC34 20.3㎝連装砲×3、零観(MAX)


第二艦隊
阿武隈改二     甲標的、61㎝四連装(酸素)魚雷×2
霞改二乙      61㎝五連装(酸素)魚雷、61㎝四連装(酸素)魚雷、熟練見張り員
夕立改二      61㎝五連装(酸素)魚雷、61㎝五連装(酸素)魚雷、熟練見張員
プリンツオイゲン改 61㎝四連装(酸素)魚雷、61㎝五連装(酸素)魚雷、夜偵、熟練見張員
北上改二      甲標的、61㎝四連装(酸素)魚雷、61㎝五連装(酸素)魚雷
大井改二      甲標的、OTO 152㎜三連装速射砲×2


空母機動部隊は第二艦隊が主に狙われますから全員女神を積んでいました。
でも女神効果なのか霞が一回使用した以外は大体小破で済んで勝てました。
いつもなにかと女神を積むと回避率が上がるのは気のせいではないんだと思います。
とにかくこれで私の『西方再打通! 欧州救援作戦』は終了です。
次回はアークロイヤル着任の話を書きますね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0144話『アークロイヤルの着任と一悶着』

 
前書き
更新します。 

 




欧州棲姫の個体を倒したことによって私達の艦隊は任務を完了したことになったので大本営から褒章として勲章とアークロイヤルの受け取りを行うために鎮守府正門へと待機していた。
アークロイヤルはイギリスからわざわざ来てくれる手はずになっているので結構な待ち時間があったけどそれも予定通りには今日中には来てくれるという。
それで私は今か今かと送られてくるはずの車が来るのを待っていた、のだけど……、

「……ビスマルク? あなたはアークロイヤルの事が苦手でしょう? なぜ出迎えに来たのですか?」
「う、うるさいわね、ウォースパイト……別にいいじゃない? もう今は敵じゃないんだから少しくらいは挨拶くらいはしておいても損はないだろうし……」
「そうね。これから毎日顔を合わす仲になるんですから始めのうちに慣れておくのも大切よね」

私の右側には少しビスマルクの怯えようにニヤリと笑みを浮かべているウォースパイトが、左側には挨拶をするというが及び腰になって私の服の裾を掴んでいる少ししおらしい感じのビスマルクがいた。
普段この二人は滅多な事では喧嘩はしないのだけど、やっぱり因縁があるのかたまに口喧嘩をするくらいには仲はそこそこ良いのか分からないけど、まぁ仲はいい方なのかな……?
私もそこについてはいまいち分からないんだよな。
よく金剛が二人の間に入って仲裁している光景を見るけど金剛はいい感じに緩衝材にはなってくれていて感謝している。
しかしそれもアークロイヤルが来たら相関図模様が激変するだろうなぁ、主にビスマルクにとっては……。
史実でビスマルクは大英帝国の誇る戦艦であるフッドを沈めたのはいいんだけどその後に追撃戦を受けて最後にはアークロイヤルの発艦させたソードフィッシュの艦載機によって攻撃を受けたことによって負傷して不安定な航行を余儀なくされて最後には追撃艦隊によって総攻撃を受けて沈んだという。
だからか今回の大規模作戦でソードフィッシュが貰えた時はビスマルクはとても複雑な表情をしていたのを覚えている。
ソードフィッシュが苦手……それは総じてアークロイヤルも苦手になるというのは少し考えれば分かる事なのかもな。
そんな事を考えている時だった。

「あ、 Admiral。車が来たようよ」
「そうみたいだな」
「ついに来たのね……」

ウォースパイトはとても嬉しそうに、私は新たな仲間の歓迎のためにキリッとした表情になって、ビスマルクはこれから難敵に挑むような心持ちで挑むのだろうな。
そして車が正門前へと到着した。
時間にしてはもう午後の8時過ぎだから結構遅かったのだろうな。
車からは運転手の軍の人が降りてきて、私はその人と握手をした後に、

「榛名提督。ただいまを持ちまして一人の艦娘の護衛輸送を完了いたしました」
「ありがとうございます。いつもご苦労様です」
「いえいえ。榛名提督含めてこの鎮守府の艦娘さん達は私に優しいですので嬉しい限りです。他の鎮守府だと事務的にしか接触して来てくれませんから」

そう言って群の人は苦笑いを浮かべていた。
中々に苦労人のようだな。

「ともかく、それではドアを開けますのでどうぞ受け取ってください」

それで軍の人がドアを開けるとそこからまるで騎士のような恰好をしていて冠のようなカチューシャが似合う女性が降りてきた。
それでウォースパイトが走りだしそうなのを我慢するのを見て取れた。
まずは私が挨拶をするのを分かっているのかその場で立ち止まっている。
その気持ちがありがたいと思いながらも私はその女性に挨拶をする。

「あなたが……アークロイヤルで合っていますか?」
「ええ。私は、Her Majesty's Ship Ark Royal。貴女がAdmiralなのね……よろしく」
「ああ、よろしく。これからともに頑張っていこうか」
「ええ。そして祖国の窮地を救ってくれて感謝しているわ。ありがとう……」

そんな感じで私とアークロイヤルは握手を交わす。
それが終わるのを待っていたのかウォースパイトがアークロイヤルに話しかけた。

「ようやく会えたわね……。嬉しいわ、アークロイヤル」
「ウォースパイト……貴女もこの艦隊にいたのね。私も会えて嬉しいわ……。そしてそっちのは……おや? ふむふむ……」

アークロイヤルはビスマルクに視線を向けると興味を示したのかじっくりと見つめていた。

「な、なによ……?」

やっぱり私の服の裾を掴んでいる為に弱腰になっているのだろうな。
普段の気丈な振る舞いからは少し考えられないけどこれも仕方がないな。

「ふむ、なるほど……お前はビスマルクか。過去に大変お世話になったな」
「お、お互いさまでしょ……?」
「そうだな。……まぁ過去のいざこざを掘り起こすほど私もバカじゃない。だからビスマルク、これから同じ艦隊で過ごすのだからよろしく頼むぞ」

そう言ってアークロイヤルはビスマルクに手を差し出す。
その手をビスマルクは少しおずおずしながらも握って、

「よ、よろしく……」
「ああ」

これでお互いに過去の因縁は払拭できたわけではないだろうが第一印象はまずまずだったな。
そんな二人にウォースパイトが「クスリッ」と笑いながら、

「また私達の艦隊が国際的になったわね、Admiral」
「そうだな。まぁまた賑やかになるだろうことは考えなくても分かる事だろうけどこうして因縁の相手とも同じ釜の飯を食べる仲になるというのは感慨深いものだな」
「その気持ち、分かるわ」

それでビスマルクの頭を「これから楽しくなりそうだな」とガシガシと掻いているアークロイヤルと「やめなさい!」と必死の抵抗をしているビスマルクのそんな少し憧れる光景を見ながら、

「さて、それじゃ改めて……アークロイヤル。我が艦隊にようこそ」
「ええ。Admiralの指揮を見させてもらうわ」

それで改めて私はアークロイヤルと握手を交わした。
その後は軍の人は見届けたのか満足そうに帰っていった。
そしてアークロイヤルの空母寮に移籍するための準備をするのであった。
もうアークロイヤルの私物も別口で届いているから部屋の整理に忙しくなるぞ。


 
 

 
後書き
アークロイヤルの着任回でした。
次回は空母寮の賑わいでも書きましょうかね。
まだイベントは終わっていないので終わるまで宴会話はお預けですし。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0145話『イギリス艦の語らい』

 
前書き
更新します。 

 




「なるほど……Admiralにはそのような事情があったのだな。道理で女性なのに口調がどうにも男性っぽかったと多少の違和感を感じていたが間違いではなかったのだな」
「ええ。でも中身は男性だけど今はもう女性だからなのか色々と融通が利くのがMy Admiralのいいところよ」

私はウォースパイトから空母寮での私の部屋となる場所の整理をあらかた終わらせた後にAdmiralについて色々と聞いていた。
ウォースパイトもだがもともとこの艦隊の艦娘達は違う世界の出身だという。
所謂私達がゲーム?でのキャラクターという存在の世界でAdmiralももともとはただの一般人と変わらなかったらしい。
それが今となってはJapanのBattleshipであるハルナと一緒になってしまい、この艦隊を率いる立派なAdmiralとなり日々海の平和を守っているという。

「だからMy Admiralの感性が一般人のそれだからあまりうちの艦隊の規律はそんなに厳しくないのよ。だけど緩くもなくみんなが協力して成り立っていると言っても過言ではないわ」
「お互いに共存しあっている証だな」
「それもあるけどもともと私達はMy Admiralがこの世界に来る前から色々と知っていたのもあって隠すことも互いにあまりないのよね」
「なるほど……積み上げられてきた実績と信頼というやつだな」
「そう言う事よ」

そう言ってウォースパイトは優雅に笑みを浮かべながら紅茶を口に含んでいる。
それにしても何度か思った事だがウォースパイトはAdmiralの前に“My”を付けて話をする。
そして薬指には光る指輪がある。
お堅いイメージがあったウォースパイトがこんなに柔らかい笑みを浮かべるのだからケッコンカッコカリというシステムの恩恵に賜わっているのだな。
聞けばAdmiralは何人もの艦娘と絆を結んでいると聞く。
最初は軽い奴なのか……?と不安に感じたけど、それでもこの艦隊の艦娘達と挨拶がてらにAdmiralの印象を聞いてみると特に不満な点はないという。
むしろ絆を結べて嬉しい奴も何人もいたからな。
そしてAdmiral自身は一番に愛しているのはハルナだという。
だからみんなも諦めはついているとも聞いた。
しかし、それを聞いてみると何度も思う。

「なぁ、ウォースパイト。Admiralはハルナと触れ合えないのを悔やんでいないのか……? 今の現状に不満とかなども抱いてはいるのだろう?」

私がそうウォースパイトに聞くが、それでウォースパイトはまた嬉しそうな笑みを浮かべる。なんだ? なにか変な事を言ったのか……?
私が少し不安に感じているとウォースパイトは話してくれた。
一年で一日限りのAdmiralとハルナが触れ合える瞬間の事を……。
それを聞き終えて、

「ね。なかなかロマンチックでしょう……?」
「そうか。ケッコンカッコカリの日だけ触れ合えるというのか。確かにロマンある話だな」

そうだとしたらAdmiralは中々に我慢強いのかもしれないな。
好きな異性と一年で一日しか触れ合えないというのは常人では耐えきれないだろうと私は思うからな。

「そうなのよ。あ、そうね。アークロイヤル、この艦隊では作戦が終了したら盛大に新たに艦隊に加入した艦娘の歓迎会と作戦終了のお疲れ様会を開くのだけど、まだ欧州の危機は去っていないから作戦が終わるまでお預けよ」
「分かっている。まだまだあの欧州棲姫が海域を荒らしていると聞くからな。落ち着くまで待つさ」
「それならいいのよ。さて、My Admiralの件について説明は終わったから後は空母の皆さんと交友を深めてきたらどう……? 昨日はビスマルクと色々と遊んでいたからまだ挨拶は色々としていないでしょう? 貴女が来たのは夜遅くだったから……」

そうなのである。
あのビスマルクまでこの艦隊にいるとは思っていなかったのでつい柄にもなくはしゃいでしまった。
ビスマルクも最初の内はなにかと我慢しているみたいだったけど途中で耐えきれなくなったのか猫も真っ青なダッシュをかましてくれたからな。
それで仕方なく私はソードフィッシュを発艦させて捕まえようとしたらビスマルクは白目を剥いて気絶してしまった。
はて、なにがいけなかったのだろうか……?
ビスマルクを回収しに来た重巡のドイツ艦になにかと怯えられながらも挨拶を交わしたが、はて……。
そう考えているとAdmiralが教えてくれた。

「ビスマルクはソードフィッシュにトラウマを持っているからな。こう、なんていうか本人の前で言うのもなんだけどアークロイヤル自体にも少し怯えの気持ちがあるしな」
「それはなぜだ……?」
「あー……過去の事を思い出してもらえると分かると思うんだけどビスマルクは君の発艦させたソードフィッシュ隊に痛い目を見ているだろう? そこから苦手意識があるんじゃないか……? 現にさっきのソードフィッシュの襲撃で気絶してしまったしな」
「なるほど……だが私としては過去の件は過去として扱っているからビスマルクとはぜひ仲良くしたいのだけどな……」
「まぁそのうちビスマルクも慣れるだろう。これでもビスマルクはうちの海外艦の外交筋だからな」

そんなAdmiralとの話を思い出して、

「ビスマルクはなにかと信頼が厚いんだな」
「まぁそうね。来るのは結構遅かったらしいけどなにかと海外艦の子達をまとめ上げる事に関しては一目置かれているわね」
「ドイツは規律と法に厳守した国だからな。その役職も当然の帰結だな」
「ええ。ビスマルク本人としては次々と来る海外艦の把握に手こずっているらしいしね。私が着任した時も嫌そうな視線を浴びせられたから……」

それで当時を思い出しているのだろう、ウォースパイトは少し不機嫌な表情になっていた。
……なるほど。この艦隊の歴史と思い出も結構なものなのだな。
さすが現在Japanで確認把握されている艦娘が全員この艦隊にいるだけはあるな。

「色々と説明感謝するぞ、ウォースパイト」

それで私はそろそろ空母寮の者達に挨拶をしていった方がいいだろうと思い立ち上がったらちょうどよく扉がノックされる。
入っていいと言うと扉が開かれてそこには午前中に紹介された世界で初めて建造されたという空母のホウショウが入ってきた。

「失礼しますね。アークロイヤルさん、少しよろしいでしょうか?」
「大丈夫よ」

礼儀正しくホウショウは私に挨拶をしてくる。
なるほど、これがJapanの空母の礼儀正しさという奴か。

「それではまだ作戦が終了していませんので盛大には開けませんけど空母の艦娘だけの集まりでの小規模の宴会が開かれますのでアークロイヤルさんもいかがでしょうか……?」
「わかった、参加しよう」
「そうですか。それでは着いてきてください。すみません、ウォースパイトさん。そういう訳ですのでアークロイヤルさんを連れていきますね」
「わかったわ、ホウショウ。楽しんできなさいね、アークロイヤル」
「ああ」

それでウォースパイトは部屋を出ていった。
それから私は空母の一同に迎え入れられて盛大に歓迎されるのであった。
海外の空母も何人かいたので孤立しないで済んだのも幸いだったな。


 
 

 
後書き
今回は前回に引き続き、アークロイヤルとウォースパイトの会話で書いてみました。
……さて、そろそろ日常のオリジナル話メインに移行しますので誰を主役にするか考えないといけませんね。
毎日更新はそこが難しいですからね。頑張らないと!



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0146話『フランス艦の語らい』

 
前書き
更新します。 

 




ウォースパイトとアークロイヤルがこの鎮守府での提督の事や色々と話をしている同時間に、コマンダンテストとリシュリューもまたこの鎮守府について話をしていた。

「コマンダンテスト、この鎮守府について教えてもらえマスカ?」
「いいですよ。この鎮守府は少し特殊ですから誰かが新入りには教えるというのがしきたりのようなものになっていますカラ」

コマンダンテストはそう言って笑顔を浮かべる。
前回の大規模作戦時はガングートにはヴェールヌイが教えていたりと同郷の人が教えるパターンが多かったりする。
北海道組も縁がある多摩が教えていたりしたからである。
それでコマンダンテストもウォースパイトが説明したような感じでこの鎮守府の事情と提督について話をしていた。
それで聞き終えたリシュリューはというと、

「J’ai été surpris……いえ、驚きました。ハルーナとamiralがそういう不思議な関係だなんて……」
「はい。それでも現状二人は今のところはお互いに不満がないところなんですね」

それでコマンダンテストは手を合わせて「いいものですねー」と笑っていた。
リシュリューもそんなコマンダンテストに同意したのか同じように笑みを浮かべていた。

「amiralについてはわかったわ」
「もういいのですか……?」
「ええ。リシュリューが色々と意見を言っても現状はもう変えられないのだからamiralの件については素直に受け入れるわ」
「そうですか」
「それより問題なのは……あなた達よ」
「私達……? なにか変なとこがありましたか?」
「ええ。リシュリューはこの世界で生み出された艦娘だけど、あなた達は……いえ、この鎮守府のほとんどは別の世界ではもとはただのデータだったのでしょう? 体の不備とかはないのかしら?」
「あー……その事でしたか。はい、大丈夫デスヨ。確かに私達はもとは自由意思のないデータでしたけどちゃんと心は持っていました。
そしてこの世界に転移したと同時に束縛という名のそれが解放されて提督とも自由にお話ができるようになったんデス」
「そうなの……。コマンダンテスト以外にもそんな感じの子は何人もいるのでしょう? 意識調査とかはしたの?」
「はい。この世界に転移してきて提督とも合流出来た後にみんなで色々と話し合いましたから。それで感じたのが総じて提督への思いでしたね」
「提督への思い……?」

それでリシュリューは不思議そうに首を傾げる。
この世界出身のリシュリューはいまいち要領が得ないだろうけど、ゲームとしてのキャラクターとして存在していた彼女達は刷り込みのような思いを感じていたのだ。

「提督に対してのこの気持ちは本当のものなのか……。それが最初に話し合われた議題でしたね。ワタシ達は本当に提督に対して親しみを感じているのか……? それは皆さんも同様だったのでしょう。ワタシ達の心はもともとデータでしたから本物の物ではありませんでした。ただ、データ場、提督に対して普通に接触できる程度のモノだという感じだったのかもしれません。
でも、この世界に来て本物の体と心を手に入れたワタシ達は提督の事を本当に思っているのか……? それだけが不安要素でした」

……そう、当時まだ提督とも合流できていない現状で不安一色だった鎮守府と艦娘達。
あちこちで泣き声やすすり泣きが聞こえてくるような現状でコマンダンテストも不安に支配されていた。
ワタシ達はこれからどうすればいいのかすら判断できない状況だったのだから。

「だけど……」
「だけど?」
「ハルーナの姿としてワタシ達の前に現れた提督によってワタシ達はその不安を吹き飛ばされました。提督はワタシ達の事を心の底から大事に思っていてくれたのです」

それでコマンダンテストはあの時の提督の行動をリシュリューに教えた。
覚悟のこもったやり取りは、見ていて嬉しいものだったと……。

「Japan式のDogezaというものをしたのね、amiralは……」
「ハイ。それでワタシ達はこの気持ちが嘘の物ではないと確信を持てたのです」

それで両手を胸に持って行って添えるコマンダンテスト。
この気持ちは本物なのだと。
提督の事を信じていいのだと。

「それに……ワタシ達は提督の事を大体はもとから知っていたのが大きいですね」
「それはそうでしょうね。データの時から一方的にamiralはあなた達に話しかけていたのだから」
「はい。だからお互いに隠しあう事もあんまりないのが嬉しいのです」
「なるほど……ね? あっちの世界でのamiralはどういった感じの人だったの? リシュリューは最初からハルーナと同化している状態のamiralしか知らないから……」
「それについては内緒にしておきます。リシュリューを混乱させたくないから」

それでコマンダンテストはわざわざ指を口の前に持って行って内緒の為のジェスチャーをしたのであった。

「ひどいわ……。amiralとは隠し事がないのにコマンダンテストはリシュリューとは隠し事をするのね?」
「ゴメンナサイ……」
「嘘よ嘘。大丈夫よ、誰だって隠した事があるのは当たり前だから。それにもうamiralもあなた達に隠している事もいくつかはありそうだしね」
「それは……そうですね。もうディスプレー越しではないのですから、提督も秘密の一つや二つはあっても不思議ではありませんよね?」
「ええ。まぁ、ハルーナは大体は把握しているでしょうけどね」
「あはは……。確かに。提督はハルーナには頭が上がらないと以前に言っていましたから」
「ふふ。やっぱりこの鎮守府は面白いわね。これからの生活がとても楽しみだわ」
「そう思っていただけると嬉しいです」

それで二人はこれからも続くであろう、この鎮守府での生活に思いを馳せたのであった。


 
 

 
後書き
今回は初登場時にあんまり話せなかったリシュリューとコマンダンテストとの会話を書きました。
元の世界出身者の艦娘とこの世界の出身の艦娘は意識の根底が少し違いますからね。
ズレはあって然るべきです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0147話『嵐の練度上げと演習を終えて…』

 
前書き
更新します。 

 




新しい艦娘達ももう全員着任して日が経過してきたので落ち着きも見せてきている時に私は通常任務に移行していた。
事務処理に関してはまた大淀二人とともに頑張って作成した。
前回の時の経験もあって前よりは早く終わらせられたと思う。
やっぱりこまめに記録を付けておくと二度手間をしないで済むよね。
今回は一海域ごとに記録を打ち出していたからなんとかなっていた。
私は学生の頃は夏休みの勉強とかは中間くらいで時間をかけて終わらすタイプだったからそれも相まって追い込まれるという事もなかったんだよな。
まぁそれはともかくまだ作戦は続いているけど私達の鎮守府は再び資材貯めやら練度上げを集中的に行っていた。
その筆頭が現在練度を上げている嵐だった。
よく演習では嵐(練度64)を旗艦にして戦艦二隻枠に後まだうちではカンストしていない戦艦の武蔵(練度94)と育て始めているリシュリュー(練度52)を配置、空母二隻枠にはグラーフ・ツェッペリン(練度97)にリシュリューと同様に育て始めたアークロイヤル(48)を配置、最後にもう一隻駆逐艦の春雨(練度48)を配置している。
現在、嵐の練度は64だ。
だからもう少ししたら目標の70に到達するだろうことを見越して春雨の練度も上げているわけだし。
今回の大規模作戦で新たに駆逐艦の狭霧、天霧、旗風の三名が加入したのでその三人も含めて後駆逐艦が練度が70に達していないのは32名だ。
嵐がもうすぐ達する事も考えれば31名になる。
次の作戦までには少なくとも10人以下にまでは数を減らしておきたいものだと考えている。
そんな事を色々と考えていたら、演習が終了したのか帰投ラッパの音が鳴り響いてくる。
それで私はみんなを港まで迎えにいくことにした。
港に到着すると嵐が笑顔を浮かべながら、

「なぁなぁ武蔵さん。今日の俺はどうだったかい?」
「そうだな。練度も上がってきて命中率も上がってきているのではないか?」
「そっかー! へへっ、やったぜ!」
「春雨はいかがだったでしょうか……?」
「春雨は、そうだな。まだまだ狙いが甘いからもう少し練度を上げていこうか」
「わかりました。春雨もこれからもっと頑張りますね!」
「おう、頑張れよ! 俺も頑張るからさ!」

そう言って三名は和気あいあいとしている。
一方で残った海外艦の三名はというと、

「……アークロイヤル。まだまだ貴殿の艦載機たちの狙いは甘いところがあるな」
「わかっているわ、グラーフ。まだまだ練度を上げていかないとな」
「わかっているならいいんだ。……それとは別としてビスマルクに発艦する時のあの精密度はどう説明するんだ……?」
「リシュリューも気にナリマス。よくビスマルクに発艦させていますけど、正直に言ってあの攻撃の命中率は異常ですネ」

リシュリューとグラーフはそこが気になるらしくアークロイヤルに聞いていた。
それにアークロイヤルは少し悩んだ仕草をした後に、

「うーん、そうだな。一種の愛情ゆえの命中率とでもいえばいいか?」
「そうだったな……ビスマルクとは過去に色々とあったのだったな」

それでグラーフはため息を吐いて、リシュリューは苦笑いを浮かべていた。
そんな二組に分かれて話している一同に私は近寄っていった。

「みんな、演習お疲れさま」

私はそう言って人数分のタオルと飲み物を差し出した。
それで嵐がいの一番にそれにありついて、

「司令! ありがたいな! ちょうど喉が渇いていたんだよ」

そう言って嵐は一気に飲み物を飲み始める。
それにつられて他のみんなもタオルと飲み物を受け取ってそれぞれ疲れを癒している。
そんな時だった。
先に休憩を取っていた嵐が私にある提案をしてくる。

「なぁなぁ司令」
「なんだ、嵐……?」
「俺の練度もそろそろ目標の70に近くなってきただろ?」
「うん、そうだな」
「それでなんだけど、俺が練度が達したら他の四駆のメンバーも育ててやってくんねーか?」
「もちろんそのつもりだけど、今現在嵐の次に旗艦の予定をしているのは春雨だからサブで萩風でも構わないか? 四駆というと野分はもう練成は終わっているしな。そして舞風に関してはもう少し遠征で練度を上げていってもらいたいしな」
「それでいいよ。のわっちはまぁいいとして、萩ぃもそろそろ役に立ちたいとか前に言っていたからな。逆に舞は踊りを集中してやっているからあんまり練度上げに関しては積極的じゃないしなー……」

それで嵐はため息を吐いていた。
舞風はなー……遠征から帰ってくるとよく暇をついては那珂と一緒に踊りの練習をしているからな。別にそれが悪いと言っているわけではないんだけどな。避ける練習にもなっているわけだし。
まぁ、うちの艦隊も大所帯になってきたから待機組も増えてきているので時間を有効的に使おうという艦娘も少なくはない。
実際私も何人かの艦娘と畑仕事に精を出しているからな。

「嵐。なんなら今日は一気に練度を上げてしまおうか? 嵐を巻き起こしたいだろう?」
「それはいいな! もうそろそろ演習も飽きてきたからリランカ島で潜水艦狩りでもやるとするか!?」

そう言って嵐はニヤリと笑みを浮かべていつも手で転がしている爆雷を何回もいじりながら楽しそうにしていた。
対潜が得意というからさぞ早めに先制対潜が出来るだろうと思ったんだけど最低でも嵐は練度90以上にならないと先制対潜ができないしな。ま、気楽にやっていくしかないだろうな。
それで私はみんなに話しかけるように声を大にして、

「それじゃみんな。それぞれやる事はあるだろうけどまずは朝食を食べに行こうか。演習帰りでみんなもお腹が減っているだろう……?」
「それはいいな。提督よ、私は結構食べるからな。覚悟しておけよ?」
「ははは……。あまり間宮さんには迷惑をかけるなよ武蔵」
「ああ。そこら辺は熟知しているから大丈夫だ。安心しろ」

それで私も安心している一方で、

「Japanのワショクはとてもヘルシーだから楽しみだわ」
「その通りデス。リシュリューも様々なフランスとは違った文化の食事は楽しみの一つです」

アークロイヤルとリシュリューも間宮さんの料理にもうハマっているようだな。
そんな感じで私達は食堂へと向かっていくのであった。
今日もいい一日でありますように……。


 
 

 
後書き
今回は現在の演習でのおもな編成で嵐中心に書いてみました。
そのうち四駆での話も書きたいですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0148話『春雨の頑張り』

 
前書き
更新します。 

 




先日に宣言した通り、嵐はリランカ島で嵐を巻き起こしてきたためにすぐに練度は70へと達したことになった。
よって私は春雨を旗艦にして、萩風を最後尾に置いて演習を行っているのであった。

「それじゃ春雨。当分の間だけど旗艦でよろしく頼むな」
「はい! ふつつかものですがよろしくお願いします、司令官!」

そう言って改になってからは持たなくなったであろう飯盒を持ちながら私に頭を下げてくる春雨。
いや、春雨は癒しになるねなにかと仕草が可愛いから。
そんな事を思っていると、

「それで……その、司令官。私は今日はなにをすればよろしいでしょうか……?」
「ん?……ああ、そうだね。そういえばうちでは秘書官は大体が大淀が務めちゃっているからなにをすればいいのか分からないか。それじゃそうだな。一緒に資料の整理でもするか。大本営に提出する資料がまだまとまっていないから」
「わかりました! 春雨、頑張ります!」

そんな感じで春雨と私は色々と残っている資料を纏め始める。
と言っても大方の資料はすでに終わっている為に後は間違いがないかの点検くらいなんだけどね。
大規模作戦が終わった後はこの作業に追われることが多いから手伝ってくれる大淀達には本当に感謝している。
そんな時だった。
執務室の扉が開かれて独特の語尾を付ける子が部屋に入ってきた。

「提督さん。それに春雨も頑張っているっぽい?」
「あ、夕立姉さん」
「夕立か。どうした?」
「うん。今日は春雨が提督さんと一緒に色々と頑張るっていう話だから、だったらって思って手伝いにきたっぽい!」

夕立はそう言ってわーいという仕草をしながらも春雨に抱きついている。

「やっ……夕立姉さん……体を弄らないで……!」
「春雨はとってもいい匂いがするっぽいからいつまでも抱きしめていたいっぽい……」
「夕立、姉さん……」

それでどこかうっとりとした表情をし出す春雨。
なんだ? 普段この二人はいったいなにをしているんだ……?
ただの姉妹の光景には見えないんだけど。
どこか百合百合しいな。
それは榛名も思ったのか、

《どこか比叡お姉さまと金剛お姉さまがじゃれついているのを見ている気分です……》
「ああ、納得だな」

私も見ている分には飽きないけど、仕事が進まないのをどうかと思うので一度「おほんっ」と咳払いをした。
それで春雨もやっと正気に戻ったのかはっとした表情で、

「ゆ、夕立姉さん! 仕事ができませんから……!」
「残念っぽーい……いつもはもっと甘えさせてくれるのにな」

それで夕立はしぶしぶだけど春雨を解放した。
うん……夕立。君はもしかしてそっちの気があるのかい?
私も思わず気になってしまうではないか。

「まぁ、いいか。それじゃ夕立、君も資料まとめを手伝ってくれ」
「分かったっぽい! 夕立も頑張るっぽい!」

それで三人で資料まとめを開始して午前中にはなんとかそれも終わりの目途がついた。
それでお昼時になったので、

「ありがとう、二人とも。それじゃこれから一緒にお昼でも行くとするか?」
「わーい! 提督さんとのおっ昼ーおっ昼ー♪」
「嬉しいです!」

二人も楽しそうなのでいいとするか。
それで三人で食堂へと向かうとそこで時雨達とも遭遇する。

「あ、提督。今日は春雨が秘書官で頑張っているって聞いたんだけど夕立も一緒にいたのかい……?」
「ああ。手伝いに来てくれたので予定より早く仕事が終わったよ」
「そうなのかい。夕立もえらいね……」
「もっと褒めてっぽい!」

それで時雨に頭を撫でられて嬉しそうに表情を綻ばせる夕立。
と、そこに春雨もおずおずと、

「あの……時雨姉さん。私も……」
「ん? わかったよ、春雨」

それでもう片方の手で春雨の頭を撫でる時雨の手に癒されるような顔をする春雨。
どこか綾波のようなセリフと口調で、

「はぁー……癒されますぅ……感謝ですねー」

と、呟いている。
それでツッコミを入れたかった。
見ているこっちが癒されるわ!と……。
実際、時雨と一緒にいた村雨と白露もそんな光景を見て癒されているのか表情がうっとりとしていたし……。
それでその後は白露型のみんなと食事を一緒に摂って色々と楽しませてもらった。
この五人の中では一番春雨が年下なので特に可愛がられているんだろうな。
見ていて本当に飽きないからな。

「白露がいっちばーん!なところを見せてあげるからね! 春雨!」
「はい、楽しみです。白露姉さん」
「春雨……? 白露姉さんの無茶に付き合わなくていいからね?」

そんな白露と春雨の会話に村雨がため息を吐きながらそう言っていた。
それに白露が「なんだとー!」と叫んでいたけど村雨は相手にはしていなかった。
そして食事が終わったのか時雨と夕立がまたしても春雨に抱きついていて、なんというか……その御馳走様ですと言いたい気分だった。
何か本当に仲が良いなこの姉妹は。
今ここにはいない五月雨や改白露型の面々とも仲はかなりいいし。
それでもそんな楽しい時間もあっという間に過ぎて行って、

「それじゃ姉さん達、すみません。私、司令官の手伝いがありますので」

それで時雨達は「わかった」と言って先に戻っていった。
だけど少し心配になったので、

「春雨、よかったのか……? 無理に私に合わせないでいいんだぞ?」
「いえ、大丈夫です。姉さん達とはいつでも会えますけど司令官とは中々接触する時間が掴めませんからむしろ一緒にいたいですし」

そう言って笑みを浮かべる春雨。
そんな顔をされたら断れないじゃないか。
自慢じゃないけどうちの艦隊の子達は金剛を筆頭に私と一緒にいたいって言う子が結構いるから私としては役得な気分なんだよな。
これもまだもとの世界で大事にみんなを育てていた恩恵なのかもな。
ブラック鎮守府のように毎日のように捨て艦戦法をしているプレイヤーはもし私と同じようにこの世界に来てしまったとしてもここまで艦娘達に好意を寄せられないと思うし。

「そうか。それじゃ午後も頑張るとしようか」
「はい!」

それで私と春雨は午後になったとも日が落ちる頃合いまで一緒に事務仕事を頑張っていた。
そしてやる事も無くなったのか、

「それじゃ司令官。その、お夕飯は私が作りましょうか?」
「いいのか?」
「はい!」

それで春雨は元気よく私の部屋にある台所で食事を作り始めた。
だけど出てきたのがお約束というか、

「春雨……別に無理して作らなくてもいいんだぞ?」
「だ、大丈夫です……」

そう、出てきたのは春雨特製の麻婆春雨だったのだ。

「そうか。それじゃ頂くとするけど……」
「はい。召し上がってください」

一緒に食べたいのだろうけど最初は私の感想を聞きたいのかどこか真剣な表情で見てきたので私は先に食べさせてもらった。
そして、

「うん、美味しいよ春雨」
「よかったです。どんどん食べてくださいね!」
「わかった」

それでお夕飯は春雨と一緒に楽しんで食べて本日も特に問題なく終わっていくのであった。


 
 

 
後書き
今回は春雨を書いてみました。
姉妹たち間では春雨は可愛がられていると思うんですよ。
そして夕立とはちょっと違う雰囲気も醸し出してほしいところデスネ。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0149話『ろーとユーの過去のいざこざ』

 
前書き
更新します。 

 



私とユーちゃんは同型の艦娘だけどこの鎮守府では提督には別人扱いとして受け取ってもらっていますって。
それはなんでかって?
うーん……そうだね。
どうにも私とユーちゃんは改装前と改装後では性格が違うように感じるんだって。
おかしいよね。
ただろーちゃんはもっとみんなと一緒に楽しくやりたいだけだから頑張って前向きになっただけなのにね。
別にユーちゃんを過去の自分を見ているように見ているわけじゃないんだ。
ユーちゃんはユーちゃん。ろーちゃんはろーちゃんですって。

「ねぇねぇ、ユーちゃん。今日はどんな遊びをしよっか……?」
「……ん。そうだね……でっちや他の皆さんとまた一緒にプールに入りたいかな……? まだ鎮守府のプールは閉まっていないから……」
「それ、とてもいい考えですって!」

ユーちゃんの発言でろーちゃんも賛成したので二人で提督にプールに入っていいか?って言いに行こうと思っていたんだ。
最近秋も近くなってきたんでそろそろ肌寒くなってきたからプールを使う人も減ってきたんだけど潜水艦のろーちゃん達には関係ない事だしね。
毎日、どこかしらの海域に潜っているわけだし。
それで執務室へと向かっていたんだけど、そこでちょっとろーちゃん的にも苦手意識を持っている人たちと遭遇してしまった……。

「あっ……」

ゆーちゃんも気づいたのか少しろーちゃんの後ろに隠れてしまった。

「ひっ!? Uボートか!」
「ああ……。アークロイヤル、そんなに怖がらないでいいわよ。そうよね、まだこの子達とはあなたは挨拶していなかったわね」

その相手とはウォースパイトさんにアークロイヤルさんだった。
アークロイヤルさんはろーちゃん達を目に入れると恐怖の表情をしてウォースパイトさんの後ろに隠れてしまった。
そして日本の潜水艦としての記憶があるろーちゃんはまだしもユーちゃんはユーちゃんで申し訳ない気持ちがあるのか小声で「ごめんなさい、ごめんなさい……」とまるで壊れたレコーダーのように繰り返しているから。
それで少し困ったろーちゃんはどうしようと思っていると、以前からこの鎮守府で知り合いだったこともあるのでウォースパイトさんが何度かアイコンタクトをしてろーちゃんが気づいたのを確認して分かりやすく話しかけてきた。

「……そうね。過去の遺恨をそのままにしておくのも癪だからこの際、このメンバーでお茶会でもしましょうか」
「それはとてもいい提案ですって!」
「その……プール……」
「ごめん、ユーちゃん。また今度でいいかな? やっておかないと今後に響くと思うですって」
「……わかった」

それでなんとかユーちゃんも納得してくれたので四人で談話室に向かった。
ふと、このメンバーでいるところをビスマルク姉さんに見られたらどう思われるだろうと考えて、やめた……。
きっと、とても面倒なことになるからと思ったから。
それでろーちゃんの後ろに隠れるようにユーちゃんが、そしてウォースパイトさんの後ろに隠れるようにアークロイヤルさんが着いてきた。
うーん……やっぱり色々と不安だよね。
ろーちゃんも不安に感じているから……。
提督が仲裁に入ってくれればって思うけどもうこのメンバーでやる事は確定みたいだし……うー、やっぱり辛い。
そんな事を考えているうちに談話室に到着したので四人で中に入る事にした。
中には数名の艦娘の人達がいたけど、

「みなさん。少しこの部屋を貸しきってもらわさせて構わないかしら?」

ウォースパイトさんの言葉とメンバーでなんとなく事情が分かったのかみんなはそそくさと部屋を出ていった。
ミユキさんが出ていく際に小声で話しかけてきて、

「……頑張れよー、ろーちゃんにユーちゃん。後で愚痴でもなんでも聞いてやるからさ」
「ありがとうですって」
「うん……」

それで談話室の中にはろーちゃん達だけが残された。

「さて……」

ろーちゃん達が全員席に着いたのを確認したのかウォースパイトさんが最初の発言をしたですって。
この中では一番落ち着いているから任せるのもいいかもって思うの。

「……まずは一言、こうして艦娘として新たな生を得た身としては過去の事については根掘り葉掘り掘り起こさない方がいいと思うのよ。ね、ろーさん?」
「それがいいですって。アークロイヤルさんを沈めた事は確かに事実だけど、それは戦争だったからって言い訳もできるけどあまり触れたくはないですって……」

ろーちゃんとウォースパイトさんでそんな会話をしている時でした。
ダンッ!とテーブルを叩く音がして見るとアークロイヤルさんが少し厳しい表情で震えていました。
その表情に思わずユーちゃんも「ひっ!?」と声を漏らしてしまうほどでした。

「確かにそれも、いいと思う。だが、私が許してしまったらともに沈んでしまった船員たちの気持ちはどうなるんだ? 今は深海棲艦と戦う仲間だという認識で間違いないだろうが、それでも私は心の底からお前たちの事を許せそうにないんだ……」

それでアークロイヤルさんは言い切ったのだろう黙り切ってしまった。
それでウォースパイトさんと顔を見合わせてどうしたものかと思っていたんだけど、そこでユーちゃんが独り言のように話し出した。

「……その、アークロイヤルさん……ごめんなさい……ユーが過去にしたことは確かに忘れられないと思う……ユーも決して忘れたわけじゃない、から……でも、もう戦争は終わったの……憎しみは連鎖させちゃいけないの……」
「…………」

少し涙目ながらもユーちゃんは語りを続ける。
アークロイヤルさんもそんな健気なユーちゃんの姿になにかを想ったのか口を挟まないでいてくれている。
だからユーちゃんはなお言葉を続けた。

「だからね……もう、喧嘩はしたくない……ユー、アークロイヤルさんと友達になりたい……」
「そ、それは……」
「ダメ……?」
「うっ!?」

ユーちゃんの必死の上目遣いでそれでアークロイヤルさんは顔を赤くさせてしまった。
ろーちゃんとおんなじ顔だけどユーちゃんは可愛いですって!
だけどそれでとうとうアークロイヤルさんも観念したのか、

「わかった……過去のあれこれを言うのもこれで最後にしよう。私も、いつまでも引きずっていては他のものに示しがつかないからな」

そう言ってアークロイヤルさんはユーちゃんに手を差し出してきた。

「これからはともに戦う仲間で、そして友達だ」
「うん……」

それで二人は互いに笑みを浮かべながら握手を交わしていた。
とてもいい画ですって!

「……これでいいのだろう? ウォースパイト?」
「ふふっ……ええ。それでいいのよ、アークロイヤル」
「ろーちゃんも嬉しいですって」

それで四人で笑顔を浮かべている時でした。
なにかドタドタと足音が聞こえてきて談話室の扉が思いっきり開かれて、

「ユーにろー! 無事!?」
「ビスマルク姉さん!?」
「どうしたの……?」
「どうしたのって……なにかウォースパイトとアークロイヤルに部屋に連れ込まれたって聞いたから脅されているんじゃないかって急いで来たのよ!」
「ああ、ビスマルク。安心しろ、もう過去のあれこれについては解決したからな」
「はっ……?」

ビスマルク姉さんはそれでどこか抜けたような表情になっていた。

「それよりお前の方から来てくれるなんて嬉しいじゃないかビスマルク。さぁ、遊ぼうか!」
「嫌よ! グラーフ! グラーフ! 直掩機を! 急いで!!」

そう叫びながらもアークロイヤルさんとビスマルク姉さんはどこかに行ってしまった……。

「ふふ。この様子だともう安心ね」
「はい。ろ-ちゃんもビスマルク姉さんが楽しそうでなによりですって」
「ユーも……嬉しい……」

そんな会話をしながらももうこれでユーちゃんが謝罪しないで済むと思って嬉しく思ったですって。


 
 

 
後書き
今回はアークロイヤルとろーちゃん達のお話でした。
過去に沈められたとはいえもう一緒に戦う仲間ですから険悪な仲の解消はしておいた方がいいですしね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0150話『松輪の心配事』

 
前書き
更新します。 

 



私は松輪……。
択捉型海防艦二番艦の松輪。
択捉ちゃんの妹としてこうして艦娘の姿で顕現しました……。
私がこの鎮守府に着任してから結構な時間が経過しました。
択捉ちゃんは優しいし、司令もとても私の事を気遣ってくれるし……。
他の海防艦の先輩である占守ちゃんと国後ちゃんも後輩の私の面倒を見てくれて、まだまだ練度は低いけれどここでの生活は充実しています……。
だけど、少し不安に思う事があります。
それは……。

「択捉ちゃん……」
「ん? どうしたの松輪?」
「うん。私って、見た通りちょっと弱気な性格でしょ?」
「そんなことは無いと思うんだけど……」
「ううん。多分そうなんだと思う。それで司令と話す時もつい遠慮しちゃうことがあるから」
「うーん……そうなのかな? でも、そこも含めて松輪は可愛いからいいと思うけど」
「それじゃダメなんだと思うの……。まだまだ練度も低いし鎮守府近海の対潜掃討には出させてもらえないから」
「あー……」

それで択捉ちゃんは苦笑いを浮かべている。
きっと私の事を心配しての苦笑だと思うんだけど、やっぱりそれだけでも私はまだまだ役立たずなんだと実感してしまう。
だから、

「だからね……私、もっと練度を上げて弱気な性格も直して、それで司令の役に立てるように頑張りたいの……」

私がそう言うとなにかを感じたのか択捉ちゃんが私の頭を撫でてくれた。
ふぇ……?
いきなりどうしたのかな……?

「大丈夫……松輪はきっとまだ不安なのかもしれないけど、ここのみんなは松輪の事を役立たずなんて思っていないよきっと」
「でも……」
「でもその気持ちも分かるかな?」
「え……?」

択捉ちゃんはそう言って少しなにかを思い出すような表情をして、

「私もね。今回の作戦の前の作戦でこの鎮守府に配属されたんだけどね、この鎮守府では海防艦って私と国後ちゃん、占守ちゃんの三人が初めてだったらしくて扱いに困っていたらしいの」
「そうなんだ……」
「でも、司令はすぐに私達の能力を理解してくれて練度を上げてくれて対潜掃討の任務を任せてくれるようになったの」

それでどこか嬉しそうな表情を浮かべる択捉ちゃん。
きっと嬉しいんだろうな。
対潜しか取り柄がないだろうと思われていても、それでも司令はこんな私達を使ってくれるんだから。

「だからね。松輪も心配することは無いよ。司令は誰も役立たずなだなんて思っていないから。この三か月だけのこの鎮守府の暮らしでそれだけは理解できたの」
「うん。司令はとても優しいから……」
「うん!」

それで択捉ちゃんと一緒に笑いあう。
択捉ちゃんもだけど前回の作戦でこの鎮守府に配属された艦娘の人達は前からいた艦娘の人達に司令についての人柄を聞いたんだって。
それで思ったのは私達艦娘以上に不思議な体験をした人だって分かって、それでどこか安心している自分がいた。
司令はもとはただの一般人で軍隊然としていなくて、そして人死にに慣れていないから私達の事を誰も無茶な事をして無くしたくないっていうのがみんなの意見の同意だという。
司令はこの世界に来る前に何人か轟沈させちゃったらしいんだけど、司令はその理由と轟沈した艦娘の人達の事を今も忘れないで想っているみたいなの……。
だから、私も不安はあるけど司令の命令なら従いたいと思っているの……。
でも、だからこそ最初に戻っちゃう感じだけど司令に迷惑をかけちゃいけないと思うから、

「やっぱり私……もっと頑張るね。司令に迷惑をかけたくないから」
「あはは……。松輪は少し頑固なんだね。司令はそんな事を思わないって……。そうだ。だったら今から司令のとこに向かおうか」
「え? でも……迷惑じゃないかな?」
「そんな事を思うほど司令は心は狭くないよ。いいから行こう!」

そう言って択捉ちゃんは私の手を握って指定の場所へと向かって歩き出した。
うー……少し緊張するなぁ。

「ほらほら。手に力が入っているよ。リラックスしなきゃ」
「う、うん……」

択捉ちゃんは私の手を握っただけで状態を把握しちゃうんだからやっぱりすごいなぁ……。
さすが私のお姉ちゃん。
そんな、少し択捉ちゃんの事を誇らしく思っている間に私達は執務室へと到着していた。
幼児体型の私達からしたら少し重厚で大きい扉。
択捉ちゃんは一回扉をノックする。
すると中から大淀さんの声で『どなたですか?』という言葉が聞こえてくる。

「択捉です。司令は今中にいますか?」
『はい、いますよ』
『どうしたんだ択捉? 私に用かい?』

それで大淀さんとは違う声で司令の言葉が聞こえてきた。

「はい。ちょっと松輪が不安に思っていることがあるそうですので司令に相談をしに来ました」
『そうか。それじゃ入ってくれ』
「わかりました! それでは失礼します」

それで択捉ちゃんは扉のノブを少し背伸びして開けていた。
そんな姿に少し癒されながらも、私達は執務室の中へと入っていく。
中では大淀さんと司令が事務仕事をしているのか少し資料が机の上に溜まっていた。

「択捉、まいりました」
「その、松輪、まいりました……」
「ようこそ二人とも。それで松輪、択捉が言う心配事ってなんだい?」

そう言って司令は笑みを浮かべました。
戦艦の榛名さんと同化していると言いますけどこの司令の笑顔はとてもいい顔だと思いました。
それで私は意を決して話しました。

「その、司令……松輪はこの鎮守府でうまくやっていけるでしょうか……? それとうまくやっていけてるでしょうか? 役立たずではないでしょうか?」

私は今思っている事を口に出しました。
すると司令は少し驚いたような表情になった後に、優しい微笑みを浮かべて、

「なんだ。そんな事だったのか……。うん、松輪は不安に思うのは分かるよ。でもな、誰も役立たずだなんて私は思わないよ。みんながみんないい個性を持っている。だから頑張っている姿を見れるのならここでもやっていけるさ。
それに……そんな事を言ったらむしろ私の方がみんなに迷惑をかけているかもしれないからな。もう知っていると思うけどこの世界に来るまではこんな戦いとは無縁の生活を私は送っていた。だからこそ分かるんだ。
必死に深海棲艦と戦ってくれているみんなには感謝の念しか浮かばないよ。
だからな……松輪」
「は、はい!」

そこで司令は真剣になってでもどこか優しさも含まれている感じの表情を浮かべて、

「松輪がここでやっていこうと強く思っているなら私は歓迎するよ。誰だって練度が低ければ不安に思う事はある。それでも私はみんなを手放さないよ。もう私達は家族なんだからな」
「家族……」

その言葉を聞いた瞬間、私は胸の中が熱くなるような錯覚を覚えました。
そして気づけば私は涙を流していました。

「ど、どうした松輪!? なにか気に障る事でも行ってしまったか?」
「い、いえ大丈夫です。ただ、嬉しかっただけですから……」

そう、嬉しかったんだ。
こんな戦うしか能がない私を家族と言ってくれて、その司令の気持ちに触れられて……。
だから私は涙を拭いながらも、

「だったら……松輪、これからも頑張らせていただきます。ですから……手放さないでくださいね、司令……」

私がそう言うと司令が、大淀さんが、択捉ちゃんが、そして司令と一緒に聞いていたのだろう透明な姿の榛名さんが、全員が笑顔を浮かべていました。

「ああ。これからもよろしくな松輪」
《よろしくお願いしますね、松輪ちゃん》
「はい!」

もう、不安に感じることは無いんだ。
これからは択捉ちゃんと一緒に頑張っていこう。
私はそう決意しました……。


 
 

 
後書き
今回は松輪の回でした。
択捉は松輪の前では口調が砕けた設定です。
イベントが終わるまでに新規艦娘の掘り下げをしていきたいですね。
次回はルイですかね?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0151話『ルイとイタリア艦の食事会』

 
前書き
更新します。 

 




……今回の大規模作戦で仲間になった艦娘の中で一人、扱いに困っている子がいたりした。
その子とは『ルイージ・トレッリ』の事なんだけど……。
彼女の過去の艦歴がなかなかにすさまじいんだよな。
イタリア海軍の潜水艦として進水したのはいいんだけど、その後にドイツ軍に接収されてドイツ艦のUボートとなって、またドイツが負けると日本軍の潜水艦として活躍したという何気に転々と生きながらえた潜水艦なのだ。
改装していけば姿とともに名前も変わっていくようだけど現在はまだうちでは未改装のためにルイージ・トレッリのままだ。

「ねぇー、Ammiraglio。あたしってまだ練度上げの途中だけどまだ改装はしないんだよね?」
「ああ。練度が55になったら一気に改装していこうと考えているんだ」
「ふーん……まぁいいけどね」

そう言ってルイージは執務室の窓から空を眺めている。
少し不思議ちゃん要素がありそうな感じの子だからどう接していけばいいのか迷っているんだよな。
と、そこに執務室に入ってくるリベッチオの姿が。

「提督さん。ここにルイはいるって……あ、ルイ。ここにいたんだね」
「あ、リベだ。チャオ♪」
「チャオ♪」

そう言ってリベッチオとルイはハイタッチをしていた。
うん、やっぱり同じイタリア艦としては仲が良いんだろうな。

「ルイになにか用があったのか?」
「うん! なんでもイタリア艦の集いをするってイタリアさんが言うんで探していたの!」
「そうなんだ! にゅふふー……パスタが出るかなぁ……?」
「多分あると思うよ」
「そっかー。にひひ、楽しみ」

それでルイは笑みを浮かべる。

「提督さんも参加する? 今は少し暇してそうだから」
「いいのか?」
「うん。きっとザラさんとか喜ぶと思うし」
「それじゃ参加させてもらおうかな。一応聞いておくけど……榛名。今のところは大丈夫だよな?」
《はい。今日の予定は大体は終わっていますので後は明日に回しても大丈夫な物ばかりです》
「そうか。それじゃ行くとするか」
《はい》

それで私達はリベッチオとルイに着いていくようにイタリア艦がよく集まっている部屋へと案内された。
そこにはイタリア、ローマ、アクィラ、ザラ、ポーラとイタリア艦が勢ぞろいしていた。
最初にローマがこちらに気づいたのだろう。

「リベにルイ……? 遅かったじゃない?……って、提督? どうしたの?」
「ああ。リベッチオに誘われてな」
「そう……それじゃ楽しんでいってね」

それでローマは席に着いた。
よく考えてみると海外艦で一番多いのはイタリア艦になったんだよな。
今まではドイツ艦と数は同じで二強だったけどルイが来たことによって七人になって一番多い国になったんだな。
私がそんな事をしみじみと考えているとパスタを作っていたのだろうザラがお皿に盛ってやってきた。

「提督! 私が作ったイタリアンのパスタ、楽しんでいってくださいね」
「ああ、ありがとうザラ」

それで料理も運ばれてきたので全員で頂くことになった。
そんな中でザラがルイに話しかける。

「……でも、ルイ?」
「んー? なに、ザラ姉さん……?」

パスタを頬張っているのかどこかリスのように見えるルイは少しお行儀が悪かった。
それも見かねたのかイタリアがフキンを使って、

「ほら、ルイ。一かいお口を拭きましょうねー?」
「んー……」

それでなすがままのルイ。
そして綺麗になったのか再度ザラはルイに話しかけて、

「それでルイ。この艦隊に来て少し経ったけど調子はどう……?」
「んー……そうだね。まだ改装がされていないからまだどうとも言えないかなー?ね、Ammiraglio。あたしの改装の目途っていつ頃になりそう……?」
「そうだなー。さっきもいったけど最終改装が出来るような練度に達したら一気に上げようとは思っているけど今はまだ他の潜水艦の練度上げに集中したいからな。もう少し待っていてくれ」
「わかったー」
「提督? 早くルイも活躍できるようにお願いしますね?」
「分かっているよ、ザラ」

そんな話をザラとしながらも食事を進めて行っているけど、

「そういえば、提督?」
「どうした、アクィラ?」
「はい。近々なんですけど、サラトガさんが改二になられるという話を聞いたんですけど……話の信ぴょう性はどうなんでしょうかー?」
「ああ、その件か。なんでも大規模作戦が終了したら実装するという大本営から通知が来ているな」
「なるほどー。そのための今回の大本営が報酬でカタパルトを出したんですね」
「おそらくな」
「なるほどー。海外の空母としては初めての改二実装ですから羨ましいですね……」

そう言ってアクィラはどこか己の事のように頬を染めている。
ここにグラーフがいれば「お前も改二になればもう少しまともになるかもしれないな」とでも言うのか……? 本当に言いそうだから困りものだな。

「ポーラもザラ姉様みたいに改二になって綺麗に成長したいですね~」
「それじゃまずはポーラは禁酒をしないとね?」
「それは嫌ですぅ~……」

ザラの速攻のツッコミでポーラはいやいやと首を振って酒瓶を握りしめていた。

「あはは! イタリア艦ではまだザラ姉様しか改二になっていないからこれからが楽しみだね!」
「そうねー。リベもいつ改二になるのかしらね?」
「リベはまだ先かなー? こう考えてみるとドイツ艦って本当に恵まれているよねー。レーベちゃんとマックスちゃんの二人が改二、それでビスマルクに至っては改三なんだから」

羨ましいなぁ……とリベッチオは呟く。
ふとそれでリベッチオがキラキラした目で私を見てきたのでなにかを言う前に予防線を張っておくとしよう。

「リベッチオ? 一応言っておくが私が大本営に口出してもなんの影響力もないからな?」
「ぶー……提督さんのいけずー!」

それでみんなで笑いあう。
それから食事会は終了して、解散となった後に、

「でもー、Ammiraglio……」
「ん?」
「あたしも早く活躍したいからなるべく早めに改装してちょうだいね?」
「わかっているよ。これから頑張っていこうな」
「にひひ。うん!」

それでルイは笑顔を浮かべたのであった。


 
 

 
後書き
今回はルイを焦点に当ててみました。
まだまだうちでは練度は低いですから早めに上げてあげたいですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0152話『旗風の鎮守府散歩』

 
前書き
更新します。 

 



八月の半ばごろにこの鎮守府に配属されましたわたくし旗風でございます。
同時期に一緒に配属された天霧さんとはなにかと話をする機会がありますので嬉しいです。
今日はそろそろ秋も近くなってきましたのでそんなに暑くもなく気候もいいですので一人で鎮守府を色々と巡ってみようかと考えています。
それで朝早くに起きて朝食を摂ろうと部屋を出て行こうと思いましたら外から朝姉さんの声で、

『朝ー! 朝だよー! みんなー、起床しなさい!』

という元気な声が響いてきました。
それで思わずわたくしはクスリと笑みを浮かべてしまいました。
朝姉さんはこの鎮守府では駆逐艦寮の朝起こし当番のようなのですね。
ここに来て少し経ちましたからそれは分かります。
ただ……、

『朝風、うるさい!!』
『これじゃ朝版川内さんじゃン!』
『これはこれでいいものだな……眠気が覚めたよ』

と、朝姉さんへの苦情があちこちで聞こえてくるのはどうなのでしょうか……?
まぁ朝姉さんも気にしていないのか、『起きたわね。さ、みんなで支度をしましょう!』と己の性分を曲げずに進む姿はさすがだと言えますね。
それでわたくしも朝姉さんに倣ってせっせと袴に着替えて食事に向かおうと扉を開けました。
そこで松姉さんが隣の部屋から出てきましたので、

「松姉さん、おはようございます」
「うん。おはよう旗風。良い朝だな」
「はい」

それで松姉さんはいつも通りにかっこいい爽やかな笑みを浮かべています。
松姉さんはわたくしの中ではあこがれもありますのでついうっとりしてしまいそうです。

「しかし……朝風の姉貴はいつも元気だな」
「そうですね。わたくしが来る前からあんな感じだったのですか……?」
「ああ。僕が来た頃にはすでにあんな感じだったよ」
「そうなのですか」

それで松姉さんはため息を吐いていました。
いつも朝姉さんの事をからかっているようにお見受けしますけど照れ隠しのようで実は素なのが松姉さんらしいですよね。

「それじゃ気を取り直して朝食でも摂りにでもいくとしようか」
「はい、松姉さん」

それでわたくしと松姉さんは一緒に食堂へと向かいました。
最近はそろそろ冷たいものはお腹を壊しそうですので温かいものが食べたいところですね。
それでわたくしはいつも通りお味噌汁と鯖定食を頼みました。

「ふふふっ。旗風ちゃんはいつもお行儀が良くて嬉しいわ」
「ありがとう存じます、間宮さん」
「いえいえ。それじゃゆっくり食べて行ってね。まだ慣れない事が多いと思うからお姉さん達に遠慮なく頼るのよ」
「はい、わかりました」

間宮さんはやっぱり優しいですね。嬉しく存じます。
それで食事を持って席に着席するとそこに遅れて神姉さんと春姉さんがわたくしの前に着席しました。

「あっ……! 春姉さんに神姉さん、おはようございます」
「おはよう、神風と春風の姉貴」
「おはよう、二人とも。それにしてもまた朝風に起こされてしまったわね」
「ふふ。そうですわね、神風お姉様」

神姉さんはどこか眠そうに、春姉さんはそんな神姉さんを微笑ましい表情で見ています。
そして最後に朝姉さんがさらに遅れてやってきました。

「あー……もう。なんでみんなこんなに朝に弱いのかしらねー?」
「朝風の姉貴……姉貴を基準に置かない方がいいと思うよ。姉貴は五時過ぎには起きているじゃないか」
「そうよ! だって早起きは三文の得よ!」
「もっと他の者にも配慮した方がいいと思うんだ」
「なによぉ……」

それでいつも通り朝姉さんと松姉さんが言い争いを始めました。
神姉さんと春姉さんは二人とも「仕方ないわね」と言った感じの表情を浮かべていますけど敢えて無視して朝食を食べ始めていますね。
それでわたくしもそれに倣って食事を食べ始めました。
うん、やっぱり美味しいです♪






それから姉さん達と楽しい食事を終わらせた後にわたくしは執務室へと向かいました。
一回扉をノックした後に、

「旗風、入ります」
『どうぞー』

中から大淀さんの声が聞こえましたので入らせてもらいました。
そこでは今日の任務を確認しているのか司令が資料とにらめっこをしていました。

「旗風、おはよう」
「おはようございます、旗風さん」
《おはようございます、旗風さん》

司令と大淀さんと榛名さんに挨拶をされたのでわたくしも「おはようございます」と返しておきました。
それにしてもまだまだ榛名さんの事は慣れない気分ですね。
ここの鎮守府ではこれが普通なのだそうですけど初めて見た時は思わず悲鳴を上げそうになりましたから。

「今日はどうしたんだい? 神風たちは一緒にいないみたいだけど……」
「はい。今日は兼ねてより考えていました鎮守府の中をお散歩してこようかと思いまして、司令に相談に来ました」
「そう言う事か。でもわざわざ私に確認しなくてもいつでも周ってきてもいいんだぞ?」
「はい。ですが他の寮や訓練場など色々な方がいますと思いましたので……」
「そうか」

それで司令も納得したのだろう、「それなら気兼ねなく周って来なさい」と承諾してくれました。
わたくしはそれで「ありがとう存じます」と言って執務室を後にしました。
そして散策を開始しました。
それで色々と周っているのですけど空母寮などは一番和風な作りが多く見られましたので日向日和にはちょうどいいかもしれないですねと思ったので鳳翔さんにたまに来てもいいですか?と話をしてみたら、

「いつでも来ても構いませんよ。ここには誰も拒否する人はいませんから」
「ありがとう存じます」

それで空母寮を後にしたわたくしは次は、戦艦寮や特殊艦寮、潜水艦寮などと色々と周っていきまして寮の見学は大体が済んだので次は施設などを見学しようと思いました。
そして特に目についたのがなにかの菜園でしょうか? お野菜を作っているようで何人かの艦娘の方々が畑を耕していました。

「お? 旗風か。どうしたんだ?」
「天龍さん。はい、見学に来ました」
「そうか。まぁここは提督の趣味で始められた菜園だからあまり面白味もないけどみんながみんな楽しんで作っているから旗風もその気があったら参加してみてくれよ」
「はい! その時はよろしくお願いしますね」
「おう!」

それで天龍さんは人好きの笑みを浮かべてわたくしを送り出してくれました。
ああ……確かに農作業は楽しそうですね。
自給自足もいいものです。
その後にわたくしは鎮守府の隅の方でひっそりと佇んでいるあるものを発見しました。
石碑……でしょうか?
そこには数名の名前が彫られていました。
これはもしかして……。
すると背後で誰かの気配を感じたので振り向いてみるとそこには司令の姿がありました。

「やっぱり最後はここに来たんだな、旗風……」
「司令。これは、もしかして……」
「ああ。旗風の思っている通り、この世界に来る前に私がやってしまった罪なんだけど轟沈してしまった子達のお墓なんだ」
「そう、なのですか……」

それでわたくしは今一度石碑をじっと見ます。
そんなわたくしの隣に司令が並んで、

「この石碑を見ると何度も思うんだ。もう二度と彼女達のような悲劇を起こしてはいけないってな……」
「司令は優しいですね。お墓まで作ってあげてるなんて……」
「そんな事ないさ。ただ、私の自己満足で作ったものだからな。でも、これでいつでもこの鎮守府に迷わずに彼女達が帰ってこれるからいいモノだと思っている」
「そうですね……はい、わたくしもそう思います」

その後に「少し辛気臭かったな。そろそろお昼だからなにか奢るよ」と司令に言われましたので快く受け取りました。
そして思いました。
こんなものまで作ってくださるのですから司令は優しい人なんだという実感を持てました。
朝姉さん達も楽しそうに過ごしていますのでわたくしも早くこの鎮守府の空気に溶け込めるように努力したいと存じます。


 
 

 
後書き
旗風の朝風景と鎮守府巡りでした。
次回は誰にしようか……? 狭霧と天霧は一回歓迎会を書きましたから、でももう一回書くのも私の自由ですしね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0153話『狭霧の意識調査とこれから』

 
前書き
更新します。 

 





遠征艦隊の一つの部隊が帰ってくる帰投ラッパの音が鳴り響いてくる。
それで私は執務室の窓から帰投したみんなの姿を確認する。
その中には今回の大規模作戦で仲間になった狭霧の姿も見える。
まだ狭霧は練度を満たしていないので改装練度になるまで遠征で上げていくつもりなんだけど、それは天霧と旗風も同様の事である。
狭霧はまだ自身の練度が低い事を自覚しているのか遠征に専念しているけどそのうち他のみんなのように練度を上げてくれという要望を言ってくるかもしれない……いや、言ってくるのはどちらかというと天霧の方か?
狭霧は大人し目な性格だから真面目に遠征を取り組んでくれると思うし。
……そうだな。
少し狭霧の意識調査でもしてみるか。
それで私は遠征帰りのみんなの所へと顔を出しに行く。
そして港へと到着してみればドラム缶の中に大量の資材を入れて少しご満悦の遠征艦隊旗艦の球磨が笑みを浮かべていた。

「ぬふー……今日も遠征完了だクマ!」
「お疲れ、球磨」
「あ、提督。どうしたクマ?」
「うん。ちょっと狭霧の遠征中での球磨から見た評価を聞いてみたいんだけど、いいか?」
「いいクマよ」

それでまだみんなと色々と話をしている狭霧を横目に私は球磨に色々と話を聞く。

「そうクマねー……狭霧は真面目な性格をしているからとってもとっつきやすいクマ」
「そうだろうなー」
「でも真面目が高じて集中しすぎるきらいがあるクマ」
「なるほど……遠征中もずっと集中を続けているのか……?」
「うむ。何回か話しかけた時にまだ慣れない作業なのか返事が返ってこない事があるクマ」
「そうか。わかった……球磨、そこら辺は球磨の采配に任せるよ」
「分かったクマ! 狭霧はしっかりと出来るように頑張らせるクマ」

それで球磨との会話を終わらせて私は狭霧の方へと向かう。

「狭霧、少しいいか?」
「はい? なんでしょうか提督?」
「うん。まだ練度が低いから遠征で苦労していないか聞いておきたいと思ってな」
「そうですか。そうですねー……まだまだ学ぶべきことが多い事は確かです。生前にも輸送作戦はしたことはありますけど人の姿で輸送するというのは意外と大変でして……」
「そうだな。まぁそこら辺はこれから慣れていけばいいさ」
「はい。それとですが遠征中に何度か球磨さんに注意される事がありますのでもう少し気持ちに余裕を持たないといけないと思っています」

そこら辺は球磨の言う事と一致しているな。
狭霧も自身で分かっているのなら別段注意しておくこともないかな?
自身で気づいているのなら勝手に改善していくだろうしな。

「わかった。これからも頑張ってくれ」
「はい! 狭霧、これからもつとめを果たしますね」

そう言って敬礼をしてくる狭霧。うん、真面目で結構だけどまだまだ硬いかな……?
それで私はもう少し言っておくことにした。

「狭霧。もう少し第七駆のみんなのように柔軟にとは言わないけど肩の力を抜いた方がいいんじゃないか……?」
「え、そうですか……? これでも結構普段通り話しているつもりなんですけど……」
「なるほど。朧タイプかな、狭霧は」
「そうなのかもしれません。朧ちゃんとは割と気が合いますから」
「そうか。他には気兼ねなく話せる友達とかはいるか?」
「あ、はい。天霧さんはもちろんの事ですけど暁ちゃんとかはよくお話しますね」

おっと、ここで暁の事が出てきたか。
そういえば狭霧は漣と暁と第10駆逐隊を組んだ仲だったな。
それなら仲が良いのも頷けるな。

「暁とは昔組んだ駆逐隊の仲だったな」
「はい。暁ちゃんは今でも立派なお姉ちゃんですから私も見習わないとと思います」

それで嬉しそうに狭霧は笑う。
うん。こういう仕草も出来るなら私の心配も杞憂かもしれないな。

「そうか。それじゃこれからもみんなと仲良くな」
「はい」

そして私との話が少し長かったのか一緒の艦隊にいる朝雲と山雲から声が聞こえてきた。

「狭霧さーん。早く次の遠征のスケジュール表を見ましょう!」
「そうね~。山雲も朝雲姉さんと一緒の遠征は楽しみ~」
「あ、はい。わかりました! それでは提督、ここらへんで失礼しますね」
「ああ」

それで狭霧は遠征部隊の中へと入っていく。
そんな後姿を見送りながらも思う。
まだまだ硬いけど狭霧もうまくこの鎮守府に溶け込もうと努力しているんだなと。
これならゆっくりと見守っていけばいいな。
そう思い、私は満足したのか執務室へと帰ろうと踵を返す。
その帰り道に、

《提督は新しく着任した艦娘の方々には色々と気を配っていますけど、なにか心配事でもあるのですか……?》
「そうだな。別にいじめとかの心配はこの鎮守府に限って一切していないんだけど、なにかと不慣れな事も多いだろう? 狭霧とか日本の艦娘はいいとしてアークロイヤルとかリシュリューとかの海外艦はまだ日本の鎮守府に溶け込めていないだろうし……」
《そうですね。でも、その分ウォースパイトさんとかコマンダンテストさんとかが助けてくれていますから特に心配はないのではないでしょうか?》
「そうだといいんだけどな。私の心配性なところが少し出ているんだろうから新しく着任した艦娘のみんなも早く慣れてもらいたいとは思っているし……」
《そうですね。でもきっと大丈夫です。皆さんはもう提督の人柄には触れていますから自然ともう溶け込んでいると思いますから》
「そうか? そうだと、いいな……」

それで私はこれからも増えていくだろう艦娘のみんなについてあれこれと考えを馳せていた。
そういえば、

「一応榛名も新しい子達とは一回か二回は挨拶は交わしているけど改めて話し合う機会でも入れてみようか? 大規模作戦終了の宴会の席とかで」
《そうですね……。私もそうしていただけると嬉しいです。まだ戸惑っている子も少ないないですから》
「よし、決まりだな」

それで大規模作戦が終わったら改めてみんなと話し合う機会を予定するのであった。
他のみんなが親しくなっていく中で榛名だけのけものはいけないからな。
みんな平等にしていかないとな。


 
 

 
後書き
今回は前半は狭霧で後半は榛名について書いてみました。
また一日イベントが延期されましたから繋ぎの話を考えないと……。

それとトラブっているリンガ泊地の提督さん達は頑張ってください。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0154話『天霧の夜の出会い』

 
前書き
更新します。 

 




………うあー、まだ眠いなぁ~。
狭霧が部屋に帰ってくるのを待っていたら少し寝落ちしちまったぜ。
時間は……そうか。そういえば寝落ちする少し前に川内さん達が出撃していったから今は……、
それであたしは時計を見るとそこには二時のところに針を刺していた。
うーん……実に中途半端だな。
この場合だと隣の部屋の狭霧はもう寝てるだろうしな。
少し夜の散歩でも行ってくるかな?
それであたしはいつでも運動できるようにジョギングウェアの恰好に着替えて外に出た。
この時期だと夏も終わりだからか少しだけ半袖だと肌寒いところだな。
まだまだ川内さん達は夜の哨戒から帰ってこないから少し静かだからな。
あー……あたしも早く練度を上げて川内さん達の哨戒に一緒についていきたいなぁ。
狭霧は夜が苦手なのか遠慮気味だけどあたしは平気だからな。
それで夜空に輝く月を見上げながら鎮守府内の庭を歩いていると、なにやら声が聞こえてきた。
大抵の人達は眠りについている中でこんな夜中に出歩くのは誰だろうという感想を持ってあたしはつい興味本位でその誰かの顔を見てやろうと思ったんだけど、

「榛名……月が輝いていて綺麗だな」
《そうですね、提督……》

……どうやらあたしはデバガメをしてしまったらしいという気持ちにさせられた。
あたしが気づいた先にはこの時間に珍しく起きている提督の後姿とうっすらとした姿の榛名さんが提督に寄り添って一緒に月見をしている光景だった。
しかもちょうどよく夏目漱石で有名な『月が綺麗ですね』というセリフに出くわすとはな……。
意味を知らないあたしじゃないからつい顔が熱くなってくるのを感じていると、

「……誰だ?」

提督はあたしの気配を感じたのかそれで振り向いてきた。
それであたしは無駄だと思ってもつい物陰に隠れてしまった。
でも提督は夜目が効いているのかすぐにあたしの事に気づいたのか、

「なんだ、天霧か? どうしたんだい? 眠れないのか?」
「あ、えっと……まぁそんな感じだね」

それであたしは諦めて提督の前へと出ていく。

《ふふっ、天霧さんも月見ですか?》

榛名さんは優しそうな笑みを浮かべながらあたしにそう聞いてくる。
まぁ、たまたま中途半端な時間に起きちまっただけなんだけどな。
でも、それに乗っかっておくか。

「まぁ、そんな感じですね。そういう提督と榛名さんはどうしたんだい……?」
「ああ。つい任務のチェックをしていたらいつの間にかこんな時間になってしまってな……。それなら月見も悪くないなと思ってな」

そう言って榛名さんの顔なんだけど少し男を感じられる笑みを浮かべる提督。
その少しちぐはぐな感じのせいなのか、はたまた月夜に照らされているのが原因なのかついその笑みに見惚れてしまっているあたしがいた。

「そ、そうなんですか……」

それでつい声が上ずってしまっていた。
提督はそんなあたしの動揺に気づいているのか分からないけど敢えて触れないでいてくれた。助かったと言えば助かったかな……。
だけどそこでふと提督は少し儚い笑みを浮かべているのに気づく。
どこか懐かしそうな表情を感じ取れた。どうしたんだ……?

「あの、どうしたんですか? どこか辛そうだけど……」
「ああ、すまない。こんな時間だからこそつい感傷的になってこの世界に来る前の事を思い出してしまってな」
「この世界に来る前、ですか……」
「ああ。天霧ももう綾波とかに聞いているんだろうと思うけど私はもともとこの世界の人間じゃない。どういう訳かもとの世界からこの異世界に鎮守府のだいたいの艦娘達とともに来てしまって今に至っている」
「知っています」

綾波姉達からは聞いた。
提督はもともとただの一般人だったけど提督のいう通りこの世界に来て成り行きで軍の人間になったという経緯も。

「昼間とかはみんなが起きているからつい目まぐるしい毎日で忘れてしまうんだけどな。
ふとこんな時間にまで起きていると家族や友人たちの事を思い出してしまってな。
……こういう時に飲める人はお酒でも飲んで気を紛らわすものだろうと思っているけど私はあいにくあんまり飲めないからな。だからこういう時は榛名とよく世間話をしているんだ」

提督はそう言って笑う。
それでもどこか寂しさも含んでいるものだとあたしにはわかった。

「そう、だったんですか……」

それであたしはどう提督に声をかけていいか分からなくなってそれ以降少しだけ沈黙が入ってしまう。
そんな、少し苦しい空気なんだけど提督は少ししてまたいつも通りの笑みを浮かべて、

「ま、今はもう天霧や榛名も含めてこの鎮守府にいるみんなが私の家族だ。だから寂しくないんだ」
「そうですか……」

それで空気もだいぶ柔らんだのであたしはそれに感謝しながらも肺に溜まっていた空気を吐き出した。
そんなあたしの様子を察したのか、

「すまんすまん。つい思い話をしてしまったな」

そう言って提督はあたしの頭を撫でてくる。
意外とすんなりその提督の手を受け入れているあたし自身に驚きながらも悪くない、という気分になった。

《もう、提督はすぐに駆逐艦の子の頭を優しく撫でるんですから……天霧さんも嫌だったら嫌って言ってくださいね?》

どこか拗ねている榛名さんの様子をあたしは見て思わず口に出していた。

「もしかして、榛名さん、嫉妬しています……?」
《そッ!? そんなことはないですよ! ただ提督は駆逐艦の皆さんには甘いですから、その、あの……》

どんどんと小さくなっていく声にあたしは榛名さんが提督に甘えたいのを察したので、

「提督? 榛名さんをもっと甘えさせたらどうですか?」
「そうだな。榛名、今度はもっと甘えてもいいんだぞ?」
《うー……提督も天霧さんも私の気持ちを知った上でそんな意地悪を言うんですからぁ……私だって触れられるものならもっと提督と触れ合いたいですのに……》
「本音が出たな」
「ですね」

それであたしと提督は少し意地悪い笑みを浮かべているのだろう、榛名さんはそれで《もう知りません!》と言ってそっぽを向いてしまった。
その後はなんとか提督が榛名さんの機嫌を治しているのを見ていて思った。

(あたしはこの鎮守府に来れたのはよかったのかもしれない……。他の鎮守府にもそれはあたしと同型の天霧は配属されているだろうけど、それでもどこか軍隊然みたいな関係じゃなくて家族との接し方みたいな関係なんだよなこの提督達は……。だからか自然と身構えなくても済んでいる。だから綾波姉達とも普通の姉妹のようにやり取りができる。だから……)

「提督、あたしを深海棲艦の手から狭霧ともども救ってくれてありがとうな」
「どうしたいきなり?」
「いや、改めて言っておこうと思ってな」
「そうか……」

それであたしは少し機嫌がよくなったので、

「提督と改めて話せてよかったよ。それじゃもう遅いからもう眠るとするわ」
「ああ、お休み」
《お休みなさい、天霧さん》
「おう。提督も早く眠れよ」

それで提督達とは別れてあたしは部屋に戻っていったのだけどそこで狭霧が起きていたのか少し笑みを浮かべて待っていた。

「天霧さん、おかえりなさい」
「ああ。でもなんで狭霧が……」
「うん。お庭での話を私も聞いちゃってね」
「あ……まさかついてきていたのか?」
「うん、ごめんなさい……ねぇ天霧さん?」
「なんだ?」
「優しい提督達と一緒に頑張っていこうね……」
「そうだな。頑張っていこう」

それであたしは狭霧や鎮守府のみんなとともにこれからも頑張っていこうと誓った。


 
 

 
後書き
今回は天霧でした。
これで新規艦娘は大体出せたと思えますので明日は集合回でも書きましょうかね?
明日は一日期間が増えたので宴会はまだしませんし。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0155話『お風呂でのひと時』

 
前書き
更新します。 

 




……とある時間に一人のいたずら好きの少女がとある部屋の前でなにかが書かれている紙をテープで張り付けていた。

「うぷぷ~……これでいいぴょん」

少女は憎らしい笑みを浮かべながらも誰にも悟られないようにその場を立ち去っていった。
紙にはこう書かれていた。

『今回の作戦で鎮守府に入ったものは今日ここで集まりましょう』……と。





同時間に今回の作戦で仲間になった者達の部屋に一枚の紙が届けられていた。

まずは狭霧が部屋に届けられている紙に気づく。

「……あれ? この紙、なんでしょうか?」
「おーい狭霧。あ、お前の部屋にも届いていたか」

そこに天霧がやってきて同じく狭霧が持っている紙に気づく。
それで二人は不思議そうな顔をしながら、

「あ、天霧さん。天霧さんの部屋にもですか?」
「ああ。一体誰だろうな……?」
「わかりません……とにかく指定された時間にこの場所へと向かえばいいんでしょうか?」
「そうみたいだな」

それで狭霧と天霧は二人でその場所へと向かっていくのであった。
二人がその場所へと到着してみるとそこには他には旗風、松輪、ルイージ・トレッリ、リシュリュー、アークロイヤルの五名も揃っていた。

「む? サギリにアマギリも来たか」
「アークロイヤルさんに皆さんもこの紙で呼ばれたのですか……?」
「うむ。なにかのイタズラかなにかなのか、これは? しかもこの場所は……」
「amiral専用のバスですね」

そう、みんなが集まった場所は提督専用のお風呂の前だったのだ。
それで松輪が少し顔を赤くさせながら、

「その、司令はこの事を知っているんでしょうか……?」
「Ammiraglioは多分知らないんじゃないかなー?」

松輪の不安にルイがそう言って腕を頭に後ろで組んで適当に流している。

「そうですわね……神姉さん達にも話さないで来てしまいましたから少し不安ですわね」
「それにしても、本当に大丈夫なのでしょうか……? この紙には『この時間は誰も入らないからお風呂を満喫してください』とだけ書かれていますけど……」
「疑ってかかった方がいいと思うぞ狭霧。提督がまさかのぞきをするためにとかはまずないだろうしな」

それで七人はそれぞれ提督に対しての現在の評価を話し合う。

「Admiralはそのような事はしなと思うが……中身は男性だというのは知っているがこの鎮守府に配属されて少し経つがAdmiralは真面目な方だ」
「そうね。amiralは誠実な方だから……」

アークロイヤルとリシュリューが二人とも提督に対しては信頼の言葉を述べていた。
それは狭霧と天霧、旗風、松輪も同様のようで、

「はい。私も提督はそんな事はしないと思います」
「そうだな。あの人は榛名さん一筋なところがあるからな」
「松輪もそう思います……」
「そうですわね。はい、旗風も春姉さん達が信頼している司令の事を信じたいです」

概ね提督に対しての評価はいい方だった。
だけどそこでルイが意地悪い笑みを浮かべながら、

「わからないよー?Ammiraglioだって中身は立派な男性なんだから秘めているビーストを解き放つかもしれないし~」

それでいやんいやんと体をくねらせているルイの姿がそこにあった。
それに六人は思わず「確かに……」と意識を誘導されてしまっていた。

「いかんいかん! こうしていてもAdmiralに不安を感じていては騎士としてあるまじき失態だ。今回は誰だか知らないがご厚意に甘えて貸し切りバスに入らせてもらおうとするか」
「「「異議なし」」」

それで七人は提督専用のお風呂へと入っていく。
だけどそれを見ていたある子が「にひひ♪」と笑いながらも入る前にアークロイヤルが差していった『使用中』という札を裏返して誰も使用していないように見せかけた。
そしてまたしても誰にも見られないように隠れていくのであった。







場所は変わって執務室。
そこでは今日の任務をやっていた提督に対して金剛が一緒にいて、

「テートクー! お風呂に入りに行きましょうヨー!」
「ん? もうそんな時間か?」

それで提督は時計を見ると確かにいい時間だった。
それなので、

「そうだな。それじゃお風呂に入りに行くとするか」
「イエス! ワタシも一緒に入ってもいいデスカ?」
「あんまり羽目を外すなよ?」
「分かってマース!」
《金剛お姉様。榛名も信じていますからね?》
「オー……ハルナもあまり信じてくれないデース」

それで三人は笑いながらもお風呂へと着替えを持って向かっていくのであった。
そして到着してみて提督はまずは誰も入っていないかをチェックする。

「テートク? どうしたデスカ?」
「いや、たまに私専用の方で入っている子達がいるから油断ならないんだよな。それでチェックをしていたんだ」
「なるほどー。行けない子達デスネ」
「金剛もその一人だからな……?」
「………、テヘ♪」

可愛らしくポーズを取って誤魔化す金剛。
そんな金剛に少し呆れながらも可愛い奴めと頭を撫でてやりながらもお風呂へと入っていく。

「さて、それじゃお風呂へと入るとしようか」
「そうですネー。テートク、あまり見ないでくださいね?」
「分かってるよ。まったく……このやり取りはもう何回もしたからもうドキドキを感じられないのは悲しむべきか……?」
「また、その感覚を感じたいデスカ……?」

金剛はもうタオルを巻いただけの姿となってわざとらしく提督に背後から胸を押し付ける。
それに対して提督は顔を赤くさせながらも、

「金剛……あまり、そのだな……そう言う行為は控えた方が……」
「えー? いいじゃないデスカー。ワタシとテートクの仲デース。ワタシは気にしませんよ? むしろ……」
《金剛お姉様! 提督を誘惑しちゃダメです!》
「オー……いいところでしたのに。ハルナ、空気を読もうヨー?」
《読んだからの結果です!》
「榛名……助かった。少し理性が飛びそうだったから……」
「飛んでしまって結構デース!」

それでわいわいと騒いでいると何やら浴室の中からガタッと音が聞こえてきたので二人は思わず二人は身構える。
そして少し浴室の扉が開かれて、

「もしかして……Admiralか?」

そこから少しアークロイヤルの顔が見えたので、

「あれ? アークロイヤル、お風呂に入っていたのか?」
「そうだが……。その、使用中という札を差しておいたと思うのだが……」
「えっ? さっき入る前に確認したけどそんなものはなかったぞ。なぁ金剛?」
「イエス。アークロイヤル、間違えたんじゃないデスカ?」
「そんなわけは……」

その時だった。
入り口の扉が突然開かれて外からカメラを構えた青葉と卯月が入ってくる。

「司令官! 現行犯ですよ!」
「逮捕するぴょん!」

その二人の乱入に提督はすぐに事態を察したのかすかさず二人にアイアンクローをかます。

「いだだだだだっ!?」
「ぴょーんッ!!?」
「お生憎だったな、二人とも。おそらくのぞきの現場を撮りたかったんだろうがタイミングが悪かったなぁ……」

それで二人はその後に提督と金剛にこってり絞られて逃げ帰っていった。

「ふぅ……まったくこりない奴らだな」
「まったくデース」

それで溜息をつく提督と金剛。
だけどまだ事態は収束していない。

「それでアークロイヤル。他には誰が入っているんだ……?」
「そのだな。今回の大規模作戦で仲間になったメンバー全員だ」
「そうか……。さて、どうするか?」
「テートクー。この際ですから新規の皆さんと裸のお付き合いでもシマセンカー? これから一緒に過ごしていく上で皆さんが慣れておくのも大事デース」

金剛のその言い分に提督は少し困った表情を浮かべながらも、

「だ、そうだが。そっちは大丈夫なのか? 私は襲わないという事は事前に誓っておくけど……」
「ちょっと待ってくれ」

それでアークロイヤルは中へと入っていってみんなに説明をしていた。
それで少し時間が経ち、

「みんなはいいそうだ。Admiralの事を信頼しての決断だからな?」
「分かっているよ」

その後に提督、金剛を含めた一同でお風呂に一緒に入るのであった。
提督の見た目は榛名なのでみんなもそこまで抵抗はなかったらしく次第に慣れていったようだ。
その後に、

「その、司令……?」
「なんだ、松輪?」
「司令は、その……艦娘の皆さんとよく一緒にお風呂に入るんですか?」
「一緒に入ると言うより乱入してくるというのが正解かもしれないな。自慢じゃないけど金剛を筆頭に私と一緒にお風呂に入りたがる子が結構いるから」
「そうなんですか……もしかして択捉ちゃんも?」
「択捉とはまだ入っていないけど時間の問題じゃないかなぁ……? 国後と占守がよく入ってくるから」

それを一緒になって聞いていたみんなは「提督はお風呂でも安全」という認識を頭に学習したのだった。


 
 

 
後書き
今回は新規艦娘と金剛を一緒に書いてみました。
さて、明日はいよいよ宴会です。どう書こう?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0156話『自己紹介と作戦完了の宴』

 
前書き
更新します。 

 




私達はこの世界に来て二度目の大規模作戦の攻略完了の日を迎えた。
欧州の方では昨日まで頑張って戦い続けてくれた提督の皆さんも晴れて深海棲艦を撃退できたという事でそれぞれに祝い事をしている。
それはうちでも例外ではない。
私はマイクを片手に皆に見えるように壇上に立って話をしようと思う。

「さて、話をする前に……隼鷹? こういう時は邪魔立てはしないでくれよ?」
「わーかってるって!」

前回みたいに話の出鼻を折られたらたまらない。
だから一応釘を差しておいた。

「それじゃ改めて……こうして大規模作戦も終了したわけだ。
活躍したもの、逆に活躍できなかった者もいるだろう。
それも踏まえてこれからもみんなの練度をより一層上げていくことに専念していくと考えている。だからみんなもこれからも力を合わせて頑張ってくれ。
そして今回新たに仲間になった七名のみんなに改めて挨拶をしてもらいたい」

それで私は横で控えている七人に壇上に登ってくるように促す。
七人は少し緊張した面持ちながらも壇上に登ってきて、私はまずはアークロイヤルにマイクを渡す。

「Thank you Admiral。さて、もう知っていると思うが私の名はアークロイヤルだ。イギリスの正規空母としてこの鎮守府で活躍できることを期待していてくれ」

それでアークロイヤルの話は終わったのだろう私にマイクを返してくる。
正規空母の会の方からなにやら「真面目かー!」という飛龍の声とか「頼もしいわね」といった赤城と加賀のやり取りが聞こえてきた。

そして次はリシュリューにマイクを渡して、

「私はリシュリューよ。フランスの戦艦としてこの鎮守府で活躍させてもらうわ。行っておくけどフランスの戦艦は世界で一番よ。そこだけは譲れないわ」

リシュリューは敢えて挑発するように発言して私にマイクを返した。
そして戦艦の会の方では長門が「ほう? 面白いな……」と凄みのある笑みを浮かべていて、ウォースパイトなどは「頼もしいわね」と言っていた。

次はルイージ・トレッリにマイクを渡して、

「あたしはルイージ・トレッリだよ。イタリア艦の潜水艦なんだけど色々あってドイツ艦とか日本艦にもなったけどよろしくね」

ルイがそう言って私にマイクを返してくる。
潜水艦の会の方からは「はやく練度を上げて立派なオリョクル要員の仲間になるでち!」というゴーヤからブラックな勧誘が行われたり、「同じ経緯の艦だから楽しみですって!」とろーちゃんが笑みを浮かべていた。

「これで海外艦のみんなの挨拶は終わったな。次は……そうだな。天霧、よろしく」
「んあ……? わかったよ、提督。それじゃあたしから行かせてもらう。あたしは綾波型駆逐艦の天霧だ。まだまだ練度は低いんで活躍はまだまだだけどいつか川内さんと一緒に夜戦をしたいと思っているからよろしく!」

それで天霧は紹介を終えた。
客席の方から川内が「いいよー。いつでも夜戦の会に招待するから待ってるよー!」という声が聞こえてきた。

「ふふ。天霧、言ったからには後戻りはできないぞ?」
「望むところだよ」
「そうか。それじゃ次は狭霧だな」
「はい、わかりました。私も天霧さん同様に綾波型駆逐艦の狭霧です。みなさん、よろしくお願いします。……天霧さんと違ってあまり夜戦は得意じゃないからほどほどにお願いしますね。後、暁ちゃん、あとで色々とお話ししましょうね」

それで狭霧は私にマイクを返してきた。

「というわけだ。暁も狭霧の相手をしてやってくれよ?」
「任せなさい! 狭霧は私のあこがれの人だからいつでもいいわよ!」

憧れの人という情報は初耳だったから周りから微笑ましい目で見られている暁だった。

「それじゃ次は旗風だな」
「わかりました。それでは少し喋らせていただきます。わたくしは神風型駆逐艦の旗風と申します。皆さま、どうぞこれからも神姉さん達ともどもよろしくお願いいたしますわ」

そう言って旗風は深々と頭を下げていた。
どうやらこれが素なのだろうが海外艦のみんなは和の心を体現したような旗風の姿になにかを見たのか口々に「it's beautiful……」と言っていたのが印象的だった。

「それじゃ最後の大トリは松輪。君に任せた」
「は、ははははい! 松輪、が、頑張らせていただきますね!」

緊張しているのか松輪はかみかみで少し落ち着きがなかった。
順番を間違えたか……?

「あ、あの……私は択捉型海防艦の松輪です……。択捉ちゃん達と一緒に対潜任務を頑張りたいと思いますので、その、えっと……よろしくお願いします……。あの、つまらない紹介でごめんなさい……」

何とか言い切ったんだけど最後には涙目になっていたので私は落ち着かせるために松輪の頭を撫でてやりながら、

「頑張ったな松輪」
「はい……すみません」

私が慰めているんだけど、「あー、提督ばっかずるいー! 松輪ちゃん、いつでも相談に乗ってね!」やら「松輪ちゃん、択捉ちゃんと一緒でとても可愛い……」などといったどこか怪しい言葉を発する駆逐艦の子が多めにいた。
どうやら自分達よりさらに小さい子が来たのでお姉さんぶりたいようだな。まぁ、仲が悪くなるよりはいいだろうな。

「よし。これで全員の紹介は終わったな。もうそろそろ時間も経ったんで待ちきれないものもいるだろうから言わせてもらうよ」

そう言って私はジュースが入ったコップを持つ。
それで「待ってました!」やら「お腹がすきました……」といった声が聞こえてきたので焦らすのもなんだし、

「それじゃ食事にお酒にそれぞれ楽しんでくれ。乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」

それで一同はそれぞれに食事や飲み物に手を伸ばしていっては舌鼓を打っている。
それでも礼儀は出来ているので汚した食べ方はしていないのが嬉しいところか。
もしそんな事をしたらせっかく作ってくれた鳳翔さんや間宮さん、伊良湖さんが泣きそうだしな。
それで私も手ごろな席に着いた途端に、

「司令官ー! 今回の作戦について色々と聞きたいのですが……!」という青葉とか、「さて、提督よ、飲むとするか」と飲兵衛軍団が迫ってきたりと宴会は終わりまで賑やかに行われていったのだった。
うん……やっぱりいいものだな。こういう雰囲気は……。
これからも守っていこう。
私はそう誓った。
その後にお酒でダウンするのはお約束だったとも言うが……。


 
 

 
後書き
2017年夏の大規模作戦を参加の提督の皆さま、お疲れ様でした。
または後三時間掘るぜ!という方は諦めずに頑張ってください。

海外艦の改装話は明日に書きますね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0157話『サラトガの改二改装』

 
前書き
更新します。 

 





大規模作戦明けに私はさっそく新たな情報を会得していた。
それは空母関係の大幅な攻撃力アップの方法……そう、カットイン戦法が実装されたのだ。
それでうちの空母たちは少し賑わいを見せているのはまぁ妥当な反応か。
そしてもう一つはサラトガの第二次改装の案件である。
うちのサラトガは絆を結んでいるのでいつでも改二案件の改装は準備はできていると言っても過言ではない。
だけど任務を読んでいく内に私は少し悩んでいた。
任務内容は『精強「任務部隊」を編成せよ』というので、『Saratoga Mk.Ⅱ』および、『Saratoga Mod 2』を配備せよというのは理解できるんだけど随伴艦に軽巡を一隻、駆逐艦を二隻以上を配備するのは少し怖いな……。
まだ次の任務が発生していないからどんな怖いところに行くのか分からないからな。
それで思わず任務の電文が届く機械を睨んでしまったのは大人げない……。
とにかく、

「まずはサラトガの改二改装だな。大淀?」
「わかりました。すぐに試製甲板カタパルトと改装設計図を準備します。サラトガさんの準備ができ次第改装室へと来てくださいね」

そう言って大淀は仕事が早いのですぐに執務室を出ていった。
それで私は大淀に言われたようにサラトガを呼ぶ事にした。
そしてサラトガの部屋へと連絡を入れるとなんと出たのは、

『ヘイ! Admiral?』
「アイオワ……? どうしてサラトガの部屋にいるんだ?」
『なにって……きっとサラが改二になるのでしょう? だからMeもすぐに駆けつけられるようにサラトガの部屋に待機していたのよ』
『すみません、提督。それではすぐに向わせてもらいますね』

おそらくアイオワの隣にサラトガがいるのだろう、すぐに事情を察したのか執務室へと来るようだ。

「わかった。それじゃまずは執務室へと来てくれ。……アイオワも来るよな?」
『当然! すぐにサラと一緒に向かうわね!』

それでアイオワは電話を切った。
うん、大変元気があってよろしいな……。
姉貴分のサラトガが改二になるのだ。
嬉しくないわけないからな。
それでしばらく二人を待っていると執務室のドアがノックされたので私は二人を招き入れる。

「来たわよ、Admiral!」
「サラトガ、到着いたしました」

そう言って二人は元気よく私に敬礼をしてくる。
それですぐに楽にしていいと言ってさっそく本題に入らせてもらう。

「さっそくだけどサラトガには改二……アメリカ風に言うとMk.Ⅱになってもらうけど、大丈夫だよな……?」
「はい。サラはいつでもいけます」

そう言ってさらとがはニッコリと笑顔を浮かべる。
それなら話は早いという事で私はさっそくサラトガとついでにアイオワを連れて改装室へと向かう事にしたので、

「それじゃ行こうか。もうすでに大淀が改装室へと明石と一緒に待っていると思うから」
「とうとうなのね……アイオワ、とても楽しみだわ」
「もうっ……私以上に嬉しそうなんだから」

腕を構えて嬉しそうにポーズを取るアイオワを見てサラトガは少し気おくれをしているみたいだ。

「まぁいいじゃないか。誰でも嬉しいもんさ」
「はい。それはわかっているのですが……まぁいいです。それではさっそく向かいましょうか」
「ああ」
「イエス!」

それで改装室へと私達は足を運んでいった。
到着してみると改装設計図を持った大淀が待っていた。
明石も改装するための装置に張り付いているのが見て取れる。

「あ、提督。それにサラトガさん。よくぞおいでくださいました。すでに準備は整っていますのでいつでもいけますよ。試製甲板カタパルトもすでに改装室の中に配備されていますので」
「Thank you オオヨド! それでは提督……」
「ああ。行ってきなさい」

それでサラトガは無言で笑みを浮かべて改装室へと改装設計図を持って入っていった。
それをアイオワとともに見送りながらも、

「サラの改装……ワクワクするわね」
「そうだな。きっとかなり強くなることは決定された事実だからな。改の時点で改二の子達に引けを取っていなかったからな」
「それはそうよ。なんてったって誇りあるアメリカ海軍の船なのよ、サラは!」

そう言って自分の事のように自慢げにアイオワは話す。
そんなアイオワを見て思う。

「なぁアイオワ。君はサラトガより早く鎮守府に来たよな。後から来たサラトガが先に改二になってなにか思う所はあるか……?」
「ああ、大丈夫よ。そこら辺はちゃんとわかっているわ。Meだって子供じゃないんだからそれくらいは許容しないとね」
「それなら大丈夫だな。アイオワもアイオワで戦艦の中では長門改二と同等の力を持っているからな」
「もちろん! まだまだ負けるつもりはないわ!」

それで強気の笑みを浮かべている。
うん。やっぱり強い子だなアイオワは。
そうして準備ができるまでアイオワと話し込んでいる時だった。
明石から、

「提督ー? 改装準備が整いましたのでいつでもどうぞー!」
「明石、わかった」

それで私は目の前にある改装ボタンを見て一度深呼吸をする。
大丈夫……もう改装する事は分かっていた事じゃないか。
だからいつでもいける。
それで私はゆっくりと改装ボタンのスイッチを押した。
すると改装室の中からまばゆい光が漏れてくるのを確認できた。
おそらく今頃は中ではサラトガが妖精さんの手によって大幅に改装されているのだろうな。
しばらく光は漏れてきていたんだけどその光もだんだんと収まってきて改装室のランプが消えた。

「いよいよね!」

アイオワが今か今かとサラトガが出てくるのを待っていた。
そして改装室の扉が開かれてそこには最初の時の服装である白い衣装を着たサラトガの姿があった。

「……提督。サラトガ、改装が終了しました。これで前以上に力を発揮できます!」
「ああ。これからもよろしく頼むよサラトガ」
「はい!」

それでサラトガはまた笑みを浮かべた。
そんなサラトガにアイオワは「かっこいいわ、サラ!」と言って抱きついていた。
そんな二人をよそに私は明石にサラトガのパラメーターの紙を受け取っていた。

「提督? サラトガさんは何回でもコンバートできるから正規空母と装甲空母のどちらでも運用できるので状況に合わせて使ってあげてください。ようは瑞鶴さんと翔鶴さんみたいなものです」
「そうか、わかった」

それで私はこれからのサラトガの活躍に期待するのであった。


 
 

 
後書き
ミスカット。

改装室の光がだんだんと収まってきて改装室の扉が開かれる。
だがそこにはサラトガとは似ても似つかないとある深海棲艦に酷似した姿の……いわゆる浮遊要塞の姿があった。

「ワッツッ!?」

アイオワはそれで目が飛び出しそうになるくらいに驚愕している。
私もアイオワがいなかったら同じような顔をしていただろう。

『提督……? どうされました?』
「い、いや……なんでもない。そう、なんでも……」
『そうですか』

浮遊要塞からサラトガの声だけが聞こえてきて私とアイオワは困惑をするのであった……。





―――――――


というわけでサラトガ改二の話でした。
いきなりエラーが出てサラトガの姿が浮遊要塞になるというバグがあったらしいですがうちでは普通の姿でしたのでよかったです。
次回は私の失敗談と任務話を書いていきます。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0158話『選択ミスとサラトガ達の頑張り』

 
前書き
更新します。 

 




………私は少し失敗したかな?という気分にさせられていた。
最初のサラトガの編成任務で『精強「任務部隊」を編成せよ!』を任務完了したのはいいんだけど。
艦戦のF6F-3と、あるいは艦爆のF4D-1Dのどちらかを選ぶ選択肢で私はF4D-1Dの方を取って、次の艦攻のTBFと、あるいは新型航空兵装資材を選ぶ選択肢で私はTBFを取った。
艦攻に関しては後々の任務で使う事が後で分かるので取ってよかったと思えるのだけど、艦爆に関しては艦戦を取っておいた方がよかったと思うほどには後悔していたりした。
なぜかって……?
次に発生した任務なんだけど『夜戦型艦上戦闘機の開発』というやつで、そこでF6F-3を使う事に気づいて顔を真っ青にしたからな。
一時期、本気で焦ってしまった。
だけど大淀に「落ち着いてください」と言われて気がぶれるのをなんとか回避できた。

「提督の焦りも分かります。ですがこの先の任務でまたF6F-3は手に入る機会はありますからご安心ください」
「そう、なのか……?」
「はい。それに最悪大規模作戦で手に入れたF4F-4を改修するという手もありますから」
「しかし、改修するにはネジが圧倒的に足らないからなぁ……」
「そうなんですよね。今現在改修するのが確定しているのはF6F-3ですから現状ではF4F-4までは手が回らないというのはしょうがないと思います。ですからあくまで最悪の手段としてお考え下さい」
「わかった」

それで私は大淀の言うように最悪の手段として改修もいずれはしていこうかなと考えていた。
まぁ、気を取り直してそれじゃ出撃任務をやっていくとするか。
でもいざ開始するとして私はまた困っていた。
出撃任務はサラトガを旗艦にしてさらに軽巡一隻と駆逐二隻を入れた編成で挑むのだけど場所が場所だった。
MS諸島沖(6-2)はまぁ大丈夫なんだけど、問題はサーモン海域北方に行く方なんだよな。
駆逐二隻も連れてサーモン海域北方に行くのはさすがに難しいかもしれない。
それで大淀に聞いてみる事にした。

「なぁ大淀。駆逐艦二隻を随伴艦としてサーモン海域北方に行くというのは現実的だろうか……?」
「仕方ありませんよ。それでも任務なのですから」

オオヨドは相変わらずドライだね。
まぁ仕方がない。
編成するとしようか。

「榛名も一緒に編成を考えてもらってもいいか?」
《わかりました。お任せください》

それで大淀と榛名の三人で編成を考える事にした。
そしてしばらく経って一応は仮組みだけど攻略編成はできたのでメンバーを呼ぶ事にした。
執務室に入ってきたのはサラトガは当たり前として随伴艦にアイオワ、由良、秋月、照月、北上の六名だ。

「サラトガ、まいりました。私の編成任務、頑張らせていただきます」
「このアイオワに任せておいてね!」

サラトガとアイオワは対照的な挨拶をしてきた。
サラトガに関しては一回装甲空母まで改装してしまったんだけど後に発生する任務で正規空母の状態で挑む出撃任務があるらしく泣く泣く正規空母にコンバート改装で戻したという経緯がある。

「んー……ま、この北上様に任せておきなよ」
「由良にお任せくださいね」
「秋月、頑張ります!」
「照月も秋月姉と一緒に頑張りますね!」

残りのメンバーも順番に言葉を出していった。
そして、

「それではまずこのメンバーで威力偵察の意味も含めてサーモン海域北方に出撃してもらいたい。場合によってはメンバーチェンジも検討していくから覚えておいてくれ」
「「「了解」」」

全員の返事を貰えたのでまずは小手調べで出撃してもらった。
もらったんだけどさすがに正規空母がサラトガだけというのはやっぱりきついものがあったのかな……?
道中で色々とカスダメを受ける事があったためになんとかボスに辿り着いた時には戦える状態ではない事が何度もあった。
それで何度も敗北を喫してしまい、あるいは全部倒しきれずにA勝利で終わってしまうという事態もあったのでどうしたものかと考えていた。
そして、

「メンバーチェンジをしたいんだけどいいか……?」
「わかったよー……」

北上が少し残念そうに声を出す。
あまり活躍できなかったので悔しいのだろう。
まずアイオワと北上を瑞鶴と翔鶴に変更して、由良を阿武隈と交換、照月を朝潮と交換。
空母三隻で制空権を会得しながらも火力を出していく方針で後は秋月と朝潮を対潜に特化させる方向でまとまった。
さらには私はいつもサーモン海域北方にいくのは空母山盛りの編成だったために道中と決戦支援を必要としていなかったんだけど今回はさすがに分が悪いので活用していく感じで行こうと思う。
それで再編成したメンバーが執務室へと入ってくる。

「提督さん! 瑞鶴と翔鶴姉に任せておいてよ! サラトガさんは必ずフォローするからさ!」
「はい。瑞鶴と一緒に頑張りますね」
「ああ、任せた」

それで頑張ってもらいたい。
そして、

「やっぱりいざという時には阿武隈を使いますよねー」
「まぁそう拗ねるな。期待してるというのは間違いじゃないんだから」
「わかってますけどー……頼られるのは嬉しんですけどなんか最近酷使されまくっているんですけどー」

それでちょっと疲れた表情の阿武隈。
すまない、いつも助かっています。

「この朝潮! 必ずや潜水艦を撃墜する所存です!」
「うん。朝潮が頼りだ、頼むぞ」
「はい!」

このメンバーで出撃してもらう。






私達はメンバーを再編成してサーモン海域北方へと挑んでいきました。
相手はなかなかの強者揃いですから提督も万全の状態で挑みたいのでしょうね。

「サラトガさん、まだ言えていませんでしたが第二次改装おめでとうございます」
「ショウカク。ありがとう」
「後々は同じ装甲空母に慣れるんだから仲間が増えて嬉しいよ」
「サンクス、ズィーカク」

ズィーカクさんとショウカクさんと話をしながらも私達は海域へと侵入していきました。
敵深海棲艦と遭遇して私達は艦載機を発艦していきます。
さらには道中支援の部隊の人達の攻撃も入っていきますので、

「やっぱり支援があると楽だね」

ズィーカクがそう言っています。
確かに……。
先の戦闘では支援はなかったですからそれを考えると楽が出来ていいですね。
そして小破が数名出るもののなんとかボスマスへと進むことができました。
そこでは決戦支援としてヤマトさん達が頑張ってくれました。

「いくわよ! 全砲撃、斉射!!」

ヤマトさん達の一斉射撃で半数は削れることに成功しました。

「後は任せたわ!」
「ありがとう、ヤマトさん! 皆さん、まいりましょう!」
「「「了解」」」

それで砲雷撃戦を開始します。
中破ながらもアサシオが潜水艦を沈める事ができましたのでこれで安心して挑めます。
そして……、

「私に任せなさい!」

後はレ級だけとなって私達は総攻撃をしていきます。
ズィーカクの艦載機による攻撃が決め手となってそれでレ級も沈めることが出来ましてホッとしました。

「提督? なんとかS勝利をものにしました」
『そうか、よく頑張ったな。速やかに帰投してくれ』
「了解しました」

それで私達は鎮守府へと帰投していきました。
そしてその後にまた少しメンバーを変えてMS諸島沖に出撃していってそれを撃破しました。
これで任務が完了してよかったという思いにさせられました。


 
 

 
後書き
編成さらし。

5-5

サラトガMk-Ⅱ 村田隊、流星(六〇一空)、岩本隊、52型熟練(MAX)
翔鶴改二甲   橘花改、友永隊、52型熟練(MAX)、烈風(六〇一空)
瑞鶴改二甲   村田隊、52型熟練(MAX)、52型熟練(MAX)、彩雲
阿武隈改二   甲標的、SKC34 20.3㎝連装砲、15.2㎝連装砲改
秋月改     四式水中聴音機×2、三式爆雷投射機
朝潮改二丁   10㎝連装高角砲+高射装置×2、四式水中聴音機



こんな感じで出撃任務も消化です。
最初支援艦隊の存在をすっかり忘れていてやばかったです。
でも勝利できて良かった……。

明日は任務達成の続きから書いていきます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0159話『夜戦型装備の開発』

 
前書き
更新します。 

 




サラトガの最初の出撃任務が終了したため、私は報酬をもらうために任務表を開いていた。
そして三つのアイテムの中から一つを選ぶという事になっている。
その中には『F6F-3』、『熟練搭乗員』、『新型航空兵装資材』の三つが選べるようであった。
私はここを逃したらもう手に入る機会はおそらくないだろうとう思いでF6F-3を選択した。
次に選ぶのは『TBF』と『夜間作戦航空要員』の二種類。
TBFはもう一つは取ってあるので私は夜間作戦航空要員を選んだ。
やったぞ……。
なんとかF6F-3を一つゲットできたぞ。
最悪F4F-4を改修しないといけないと思っていたからよかった。
なんでかって、サラトガを改二にしてしまったらもうF4F-4を改修できないというデメリットが発生してしまったのだ。
改修するためには大型の釜を開いてサラトガを新たに建造しないといけないという資材に多大なダメージを受けかねない事態にまで発生してしまうから。
だからなにはともあれゲットできて良かった。

《提督。よかったですね》
「ああ、榛名。これでひとまずは安心できたな」
「提督はミスをしてゲットできなかった時は真っ青な表情になっていましたからね」
「大淀。それは言わないでくれ……」
「ふふ、はい」

それで私は次のサラトガの出撃任務をする前に改修をして夜戦装備を作ろうという事を決めた。
それには問題があってうちには今現在一つも艦戦52型がなかった事だ。
だから改修するのにもちょうどいいので、

「サラトガに開発を行ってもらうか」
「そうですね。それがいいでしょう。それではさっそくサラトガさんをお呼びいたしますね」
「頼む」

それで大淀は電話をサラトガの部屋にかけて呼び出しをしていた。
普段は私が直接呼出しをしているんだけど大淀がいる時は大淀が呼び出しをしている。
特に役割は決めていないんだけど大淀がしたいのなら任せてもいいと思っている。
それで連絡が済んだのだろう、

「少ししたらサラトガさんが来るそうです」
「わかった。ありがとう大淀」
「いえ」

それでしばらくしてサラトガが執務室へと足を運んできた。

「提督。サラトガ、まいりました」
「よく来たな。それじゃ執務室まで足を運んでもらって悪いんだけど今から工廠へと向かうとするか」
「はい? なにか建造するのでしょうか……?」
「ああ。F6F-3を改修するためにまずは艦戦52型を12個作らないといけないからその任をサラトガに任せたい」
「そう言う事でしたか。わかりました。サラトガ、頑張って開発しますね」

それで私とサラトガは工廠へと向かっていった。
大淀にはいざという時のために執務室に残ってもらっているので安心だ。
そして工廠へと顔を出すと明石がいたので、

「おーい、明石。少しいいか?」
「はい? なんでしょうか提督?」
「ああ。開発をしたいんで手伝ってもらっていいか?」
「わっかりました。なにを開発するんですか!?」

開発と聞いて明石は目を輝かせた。
普段はデイリー任務でしか開発をしないから本格的な開発をしていない最近は明石の手も余っているのだろうな。実に楽しそうだ。

「零式艦戦52型をサラトガと一緒に12個作ってもらいたい」
「52型ですか……。なるほど、改修に使うためですね?」
「その通りだ。だから頼んだぞ」
「お任せください! それじゃサラトガさん、手伝ってもらっていいですか?」
「わかりました」

それでサラトガと明石は開発室へと入っていった。

「数が揃ったら報告してくれ。私は執務室へと戻っているので」
「わかりましたー!」

中から明石の声が聞こえてきたので後は任せる事にした。
そして私は執務室へと戻っていった。
その道中で加賀と遭遇する。

「提督……? 工廠の方から来られたみたいですがどうされました?」
「ああ。空母の夜戦装備を作るために今現在サラトガと明石が改修するための52型を作ってもらっているんだ」
「なるほど……。空母が夜戦を出来るというのは気分が高揚しますね」

それに微かに笑みを浮かべる加賀の姿がそこにあった。

「加賀さんも夜戦がしてみたいか……?」
「ええ。川内のように夜戦夜戦!とはしゃぐわけではないけれど、それなりに練習はしておきたいわね」
「そうか。基本サラトガ以外の空母は夜間作戦航空要員と夜戦艦載機の装備をしないと夜戦はできないそうだから装備できるスロットが埋まってしまいそうだけど、そこら辺は大丈夫か……?」
「安心して。無様な事はしないと約束するわ」

安心と信頼の笑みで応えてくれる加賀さんに私はやはり安心感を得ていた。

「わかった。それじゃ装備が揃ったら加賀さんにも修練も兼ねて手伝ってもらうとするよ」
「わかったわ。その時が来るのを楽しみにしているわね」
「うん」
「それでは私は空母寮に戻っているわね」
「わかった。話をしていて移動するのを邪魔して悪かったな」
「いえ、いい話が出来たからチャラにしておくわ」

そう言って加賀さんはどこか嬉しそうに空母寮の方へと向かっていった。
おそらく空母寮に帰ったら空母のみんなに私との会話を教えるのだろうな。
それでみんながやる気を出してくれれば説明する手間も省けるというものだ。
それで今度こそ私は執務室へと戻っていった。

「お帰りなさい提督。工廠の方はいいのですか……?」
「ああ。今はまだ明石とサラトガが開発しているところだからな」
「そうですか。それではその間に別の任務でもしていましょうか」
「そうだな」

それで私はまだ残っている今日の任務をやるために頑張っていた。


………しばらくして、


執務室の電話が鳴り響いてきた。
これは……、ようやく数が揃ったのかな?
少しワクワクしながらも電話に出ると思った通り相手は明石だった。

『提督? 52型の開発が指定された数分生産完了しました』
「わかった。それじゃさっそくサラトガと一緒にF6F-3の改修作業を行ってもらって構わないか?」
『わかりました』

それで電話が切れた後しばらくして明石から☆6まで失敗もなく改修が終わった事の知らせを受ける。
☆7以降からは使う装備は紫電改二を使うという。
うちにはいつか使うだろうという思いで20機ぐらいは紫電改二が倉庫に死蔵してあったからついに日の目を見ることが出来るな。
そして改修が出来たという報告を受けて私は向かわせてもらった。

「できたか明石」
「はい。見てください。改修MAXになったF6F-3の姿を! 輝いていますよね!?」

久しぶりにいい仕事ができたのだろう、明石はいい笑みを浮かべている。

「それじゃさっそく艦載機の練度を上げるために鳳翔さんに出張ってもらうか」

それで私は鳳翔さんを呼んでF6F-3を装備をしてもらい鎮守府近海に出撃してもらった。
そして、

「提督……。F6F-3の練度上げが終了しました。これでよろしいでしょうか……?」
「ああ、ありがとうございます鳳翔さん」

改修に練度もMAXになったために私はF6F-3をサラトガに装備してもらい、ついに『夜戦型艦上戦闘機の開発』の任務を完了させた。
そして改修されたF6F-3は『F6F-3N』へと改修が完了された。

「提督! ついに夜戦装備ができましたね!」
「ああ。これで後はもう一つの艦攻の方も出撃任務が終わったら作ろうとしようか」
「はい。サラトガ、次の出撃任務も頑張らせてもらいますね!」

それで今日は開発と改修に一日を費やしたので出撃任務は明日にやる事になったのであった。


 
 

 
後書き
F6F-3Nの開発完了です。
これでもう一つの艦攻夜戦型を装備すればサラトガが夜戦でも活躍してくれるので楽しみです。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0160話『続・サラトガの出撃任務と夜戦型艦攻』

 
前書き
更新します。 

 





昨日に引き続き最後のサラトガの出撃任務をやろうと思う。
最後の出撃任務は『夜間作戦空母、前線に出撃せよ!』というKW環礁沖海域(6-5)に出撃するというものであった。
まだ今月は6-5は攻略していないので幾分楽に攻略は出来るだろうなという思いである。
よって私はメンバーを集める事にした。

「大淀、榛名。メンツはいつも出撃するメンバーから一人サラトガに変えればいいと思うのだけど、大丈夫かな?」
《問題はないと思いますよ。提督がそれでいいと感じたのでしたらきっと大丈夫です》
「そうですね。榛名さんの言う通りです。提督はもっと自信を持った方がいいと思いますよ」
「そうだな……わかった」

私は任務でもなければいつものメンバーは秋月、アイオワ、瑞鶴、翔鶴、摩耶、北上の六名を使っているんだけど今回は瑞鶴をサラトガに変えて、あと戦艦はアイオワからビスマルク、秋月はもう少しでカンストしそうな照月に変更。
よって再編成されたメンバーはサラトガを旗艦に、ビスマルク、翔鶴、照月、摩耶、北上の六名になった。
そして決まったメンバーを招集する。

「提督。サラトガ、最後の任務も頑張りますね」
「ああ。頑張ってくれ」

私はサラトガにねぎらいの言葉をかける。
一昨日から頑張ってもらっているからな。
この作戦が終わったら休ませてあげようとするか。

「ビスマルクさん、戦艦として頑張ってくださいね。私とサラトガさんが制空権は維持しますから」
「頼むわね、ショウカク。アイオワの代わりだなんて言わせないんだから!」

翔鶴とビスマルクがそんなやり取りをしている。
ビスマルクはいつも6-5攻略にはアイオワを使うから力不足だと思われたくないのだろう頑張って強がって胸を張っている。

「サーモン海域北方では頑張れなかったから張り切っていこうかー。ね、照月?」
「はい! 今度こそ頑張りますね!」
「お前らも少し根に持ってんだなー」

先のサーモン海域北方での任務でメンバーチェンジで活躍できなかったのを悔やんでいるのだろう北上がやる気を出しているのはいい事だな。
そんな北上に摩耶がそんな言葉を言っている。
うん。ごめんなー。
そしてみんなのやる気も確認できたので私はみんなに話しかける。

「さて、それじゃみんな。このメンバーでKW環礁沖海域に出撃してほしい。特に体調は悪い者はいないよな?」
「あたしは平気さ! しっかりと対空防御をしてやるぞ!」

真っ先に摩耶が声を上げる辺り性格が出ているよな。

「摩耶は大丈夫と……他も大丈夫か?」

それで各々に確認を取っていき、みんなは体調は万全いつでもいけるということで、

「それじゃ出撃してくれ。戦果を期待しているよ。まだ今月は最初の攻略だからそれほど難しいという事はないだろうしな」
「「「了解」」」

それでみんなは出撃していった。






KW環礁沖海域に進撃している一同はまだ道中が敵深海棲艦がいないために話をしながら進んでいた。

「しっかし……KW環礁沖海域っていうとボスは空母棲姫だよな?」
「そうですね。でもそれがどうしましたか……?」

摩耶がふとそんな事を確認するように口を出す。
それに照月が反応して答える。
摩耶は少し難しい表情をしながらも、

「いや、夏の大規模作戦ではあいつって水着着ていたじゃん? それなのにいつもより強く感じたし道中も邪魔ばかりしてきたからな。だからよ、ぼこぼこにしてやろうぜ……?」

まるで悪だくみをするような表情で摩耶がそんな事を言い出した。
それで他のみんなもいつも空母棲姫には苦い思い出を持っているのかやる気……殺る気を出していた。
そして戦闘海域へと突入していき、

「おらおらっ! 摩耶様の登場だ! 雑魚は消えな!」
「摩耶さん、少し怖いよー」

摩耶が対空射撃をしまくって襲い掛かってくる艦載機を照月とともに根こそぎ叩き落としている。
そんな摩耶に感化されたわけではないのだろうがビスマルクも日ごろの鬱憤を晴らすがごとく、

「マヤには負けていられないわね! 全砲門、ファイア!!」

戦艦の火力で深海棲艦を次々と屠っていた。
そんな二人を北上は見ながら、

「あたしは装備もあれだし~……雷撃でも頑張るとしましょうかねー」

それで先制雷撃を放っている少しおとなしい北上の姿があった。
みんながみんな活躍するのをサラトガと翔鶴は見ながら、

「みなさん元気ですねー」
「ちょっと元気が良すぎると思いますけどね……ボスエリアへの到着前にばてないといいのですけど……」
「そうですね。あ、サラの子達、お願いしますね」

翔鶴の言葉に反応しながらもサラトガは艦載機を発艦させていた。
そしてほぼ無傷と言ってもいい状態でボスエリアへと到着する。

「シズミナサイ……!」

空母棲姫率いる連合艦隊が登場したのだけど、そこに航空基地隊の陸攻が襲来して襲い掛かっていった。
それによって半数以上が撃沈していた。

「ひゅー♪ やっぱり景気がいいねー。それじゃ砲雷撃戦開始するぜ! みんな、あたしに着いてきな!」

旗艦でもないのだけど摩耶がそう言って砲撃をかましていく。

「負けないわよ!」
「あたしも頑張るよー!」

それであまりの勢いに少し引き気味の照月が、しかし大人しく対空射撃をしまくっていたのはまぁ性だから仕方がない。
まぁそんなこんなで、

「カッタト……オモッテイルノカ? カワイイナア……」

そんな捨てセリフとともに空母棲姫は沈んでいった。

「勝利しましたね。それでは皆さん、鎮守府に帰投しましょうか」
「「「了解」」」

サラトガの号令でみんなは鎮守府に帰投していった。
そして提督はというと、

「みんなの会話を通信で聞いていたけど、みんなストレスが溜まっていたのか……?」

ついそんな本音を漏らしていたり……。
そして任務が完了したので、

「それじゃ今回は報酬で貰うのは『夜間作戦航空要員+熟練甲板員』と『熟練搭乗員』としようか」
「そうですね。F6F-5Nは今のところ出来る目途が立っていませんから現実的に行きましょうか」
《できれば欲しいところですけど欲張ってはいけませんからね》

提督と榛名と大淀はそんなやり取りをしながらも現状では出来る任務である『夜間作戦型艦上攻撃機の開発』を行って『TBF』を改修して『TBM-3D』をゲットした。
これで先に受け取っておいた『F6F-3N』と一緒に装備する事で夜間での航空機発艦を行うことが出来るようになる。

「これからもさらに戦いは激化していくだろうから空母が夜戦をできるというのはありがたい事だな」
「そうですね。深海棲艦も強化されているでしょうからいい事だと思います」

そんなやり取りをしていきながら提督達は今後について色々と話し合っていったのであった。


 
 

 
後書き
装備さらし。


サラトガMk―Ⅱ 村田隊、岩本隊、52型熟練(MAX)、F6F-3N
ビスマルク   Iowa砲×2、夜偵、一式徹甲弾
翔鶴改二甲   村田隊、52型熟練(MAX)×2、彩雲
照月改     10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
摩耶改二    90㎜単装高角砲(MAX)、5inch連装砲 Mk.28 Mod.2、FuMO25 レーダー、Bofors
北上改二    甲標的、10㎝連装高角砲+高射装置×2


F6F-3NとTBM-3Dを装備したサラトガがとても強かったです、はい。
夜戦が出来るだけでここまで変わるものなんですね。
でも、残念な事と言えばイベントでは連合艦隊編成がほとんどですので第二艦隊に入れられない空母が夜戦で活躍する機会は少ないという所でしょうか……。
無理に大鷹に載せてもスロットを無駄にするだけですし少し考えモノですね……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0161話『観艦式の情報で喜ぶ子達』

 
前書き
更新します。 

 



昨日に関東方面の横須賀鎮守府で観艦式が行われていた。
有名どころの鎮守府の艦娘が各地から集まって盛大に催しを開いたという。
まぁ、うちの鎮守府にはお声はかかってこなかったんだけどね……。
それも仕方がない事ではある。
もうこの世界に来てから五か月以上は経過したとはいえまだまだ私達の鎮守府は珍しい目で見られているというのは違いない事なんだから。
だから宿毛湾泊地から代表として観艦式に参加したのは柳葉大将だったという。
その観艦式で少々お疲れのところだと思うのだけど柳葉大将の方から連絡を受けたのだから出ないわけにはいかないので私は電話越しに会話をしていた。

『榛名提督。君の活躍は聞いているよ。今回の大規模作戦でも遠路はるばる欧州まで艦隊を遠征させたらしいではないか』
「はい。同盟国の危機なのですから出ないわけにはいかないですからね」
『そう言ってくれるとこの世界の人間としてはありがたいのだけどな……。すまないな、今回の大規模作戦では日本の危機ではないために中々腰を上げない提督が多かったのも事実でな。特に日本に拠点を置いている提督は半数以上が今回の大規模作戦を見送っていたのだ……』
「そうなのですか……」

その話を聞いて所詮は他国の危機と割り切っているのか、それとも日本の防衛に専念したいという感じなのか私には判断がつかなかった。
全世界で今もなお深海棲艦が跳梁跋扈していて艦娘達のおかげでなんとか制海権をギリギリ保てているというのに未だに各国との連携が厳しい世の中という現実に私は頭を悩ませていた。

「やはり、20年以上深海棲艦と戦い続けていても一丸となれませんかね?」
『儂もそれは常日頃から考えているのだがな……さすがに政治に口を出せるほどには儂も一提督でしかないから権限はないからな』
「結局は国のトップ同士が判断する事なのですね」
『うむ……』

それで一旦私と柳葉大将との会話は途切れる。
だけどしばらくして、

『まぁ、そんな儂たちにはどうにもできない話より儂や榛名提督にとっても役立つだろう話でもしていくとしようか』
「と、いいますと昨日の観艦式でなにか大々的な発表がありましたか……?」
『うむ。まぁいつも通り民間人も招いてのパーティのようなものだったがな。大本営の話によれば次に起こるであろう大規模作戦では現状で分かっているだけでも二人の駆逐艦を報酬として出すという』
「もう次の作戦での報酬を提示しているのですか。それだけ深海棲艦が活性化する時期を判断しているという事ですね」
『うむ。もうかれこれ二十年以上戦い続けてきて深海棲艦が活性化する時期や習性などは大本営や軍司令部も大方は把握しているからな』

うん。メタな発言をするとこの世界の深海棲艦はゲームと同じみたいに年に四回活性化する事が私としては例外がない限りは知識として知っている。
艦隊これくしょんというゲームを作っている会社は各々の提督の資材回復期間を踏まえて四回という回数で一年を回している。
他のソーシャルゲームみたいに定期的にイベントを開催していたら資材なんて貯められる余裕なんて微塵もないしね。
そんなゲームのルールがこの世界では深海棲艦の決まり事でもあるのだろうね。
未だ正体不明な深海棲艦がどうやって数で攻めてくるのか分からないけど、あっちにも回復期間などはあることは分かっているという事だな。

『っと、そうだな。まずはその駆逐艦なのだがもう一人だけは誰が報酬で来るのか判明しているのだ』
「誰なのですか……?」
『うむ。秋月型三番艦の『涼月』だ』
「ついに涼月が実装されるのですか。秋月たちが喜びますね」
『そうだな。うちにも三名はいるから喜んでもらいたいな』
「はい」
『そしてもう一人はまだ名前は公表されてはいないがイギリスの駆逐艦を一隻実装するという話だ』
「なるほど……」
『今のところ分かっているのはその二名だけだが、すまないな』
「いえ、十分な情報をありがとうございます。それで他にはなにかあるのですか?」
『うむ。榛名提督はまだこの世界での秋を体験していないから分からないと思うのだが、秋になると漁師の団体の間で艦娘の警備を要請してくる事がある。これを俗に儂達は秋刀魚祭りと呼んでいるな』

あぁ、この世界でもこのプチイベントはあるんだなぁ……。
私は少し心が洗われるような気持ちになりながらも、元の世界での差異はないかと思い、黙って柳葉大将の話を聞いていた。

『この時期の深海棲艦は大規模作戦並ではないが秋刀魚やその他の魚を捕獲しているという。深海棲艦の主食なのかは分からないが、漁獲エリアでの深海棲艦を倒すことによって安定した漁を漁師の皆さんが行い、艦娘達はその漁師さん達を守る。そして守ってくれるお詫びに漁獲した秋刀魚を幾分か提供してくれるという話になっている』
「まさにWin-Winの関係という訳ですね?」
『その通りだ。だから榛名提督も秋刀魚漁が開始されたら大本営から任務が通達されると思うから参加しておいて損はないと思うぞ』
「そうですね。秋刀魚は美味しいですからね。艦娘達もきっと気に入ってくれます」

それで柳葉大将とその後も色々と話をした後に、

『つい長話をしてしまったな。そろそろ切らせてもらうよ。榛名提督が今後も活躍してくれるのを祈っているよ。ではな』
「はい。また話し合いましょう」

それで柳葉大将との電話会談は終了した。
その後に私はまだ未確認のイギリス駆逐艦の件はあやふやなために話題には出さないでおこうと決めた後に、秋月達を執務室へと呼んだ。
しばらくして秋月、照月、初月の三名が執務室へと顔を出してきた。

「どうされましたか司令?」
「うん。三人ともそんな重要な案件……なのかな? とにかく楽にして構わないよ」
「なんか歯に挟まっているような感じだね提督」
「まぁな照月。君達三人にとっては重要かもしれない案件だからな」
「なんだい? 少し僕も興味が出てきたな」

それで私は焦らすのも悪いと思ったので話すことにした。

「まだ大規模作戦が終わったばかりで気の早い話だとは思っているんだけどな。今度の秋に発生するだろう大規模作戦では秋月型三番艦の……」
「涼月ですか!?」
「涼月なの!?」
「涼月姉さんなのかい!?」

私が名前を言う前に三人が速攻で反応して提督机に身を乗り出してきていた。
それで私は驚いて思わずのけ反ってしまった。

《三人とも、落ち着いてください。提督がまだ最後まで話していませんよ?》
「「「あ、すみません……」」」

それで三人は一旦下がった。

「ありがとう榛名」
《いえ、大丈夫です》

榛名に礼を言った後に、改めて私は発言をする。

「まぁ三人の予想通り、秋の作戦で涼月が実装されるという」
「そうですか! 秋月、頑張ります!」
「そうだね秋月姉! 初月も頑張ろう!」
「ああ。必ず涼月姉さんを迎え入れよう!」

それで三人は意欲を燃やしていた。
うん、元気があって大変よろしい。

「だけどな。まだ先の話だから今からそんなに気張っていてもばててしまうからほどほどに意欲を燃やしておいてくれ。私も必ず手に入れるように頑張るから」
「「「はい!」」」

それで三人は新たな姉妹の情報を貰ったのか嬉しそうに執務室を出ていった。
出ていく際に、

「あ、司令。秋と照と初の三人にも伝えておきますね」
「ああ、頼んだ」
「それでは失礼しました」

それで三人は出ていった。
ちなみに秋と照と初と言うのは二人目の三人の呼び名である。
三人とも改装した状態で錬度はストップしてしまっているから駆逐艦全員が70まで上げ終わったら上げていこうと思っている。
照月に関しては三人目もいるからまだまだ錬度上げは頑張らないとだしな。
そして三人を見送った後に、

「秋の大規模作戦もまた少し装いが変わっているらしいからどうとも言えないけど、まずは秋刀魚祭りを頑張っていこうな」
《はい、提督》

それで私はまたモチベーションを上げるのであった。

 
 

 
後書き
久しぶりの柳葉大将の出番でした。
そして昨日の観艦式では色々と発表がありましたね。
涼月にイギリス駆逐艦。
さらにはHTML5に移行しての艦これ第二期の発表。
それと同時に実装される友軍艦隊。

友軍艦隊がどういう仕様になるのかは分かりませんが、今まで通りソロプレイが魅力のゲームでいてほしいですね。
下手に協力プレーが実装されてしまったら例えば『大和武蔵ケッコン済み以外はお断り』とか『友軍艦隊はカンストかケッコン艦六隻が当たり前』とか変なルールをつけてソシャゲみたいになってしまいますし……。
運営の手腕を信じたいですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0162話『磯波と浦波のカメラ』

 
前書き
更新します。 

 




朝にみんなと一緒に朝食を食べた後に本日の予定である町への視察の事を考えていた。
誰を連れていくかに寄るんだけどどうしようかな……?
私がそんな事を思いながら執務室へと向かっている道中で背後から誰かに「あの……司令官!」声をかけられた。
この声は……磯波かな?
それで私は後ろへと振り向くとそこには磯波だけかと思っていたら浦波の姿も確認できた。

「磯波に浦波。どうしたんだ?」
「は、はい! その……」

私になにかを訴えたいような感じなんだけどどうにも口ごもってしまっていて中々切り出せないでいる磯波。
そんな磯波に少し痺れを切らしたのか浦波が「磯波姉、私が言っていいかな?」と口を出していた。
それで磯波も「うん。ごめんね浦波ちゃん……」と返していた。
うん、姉妹仲がよろしいようでいいね。
そして浦波が磯波の一歩前に出て少し真剣な表情になって、

「あの、司令官。今日の町への視察の件なのですが、まだ決まっていないのでしたら私と磯波姉を連れて行ってもらってもよろしいでしょうか……?」

浦波からの意見具申だった。
それは磯波も同じようでコクコクと頷いていた。
そうだな。

「ああ、別に構わないよ。今日は誰を連れて行こうかと悩んでいたところなんだ」
「そうだったんですか。それはよかったです! やったね、磯波姉」
「うん、浦波ちゃん!」

それで二人は手を合わせてきゃっきゃと騒いでいる。
そんな二人の姿を見てやっぱり仲が良いなぁと感じながらも、

「ところで二人は町になにか用があったのか……?」
「あ、はい。ちょっと買いたいものがありまして……」
「その……青葉さんにいつも写真を撮ってもらっているのも悪いかなと思いまして……私と浦波ちゃんもカメラには興味がありましたので、今まで貯めていた貯金を切り崩して思い切って買ってみようかなと思ったんです、はい」

そこで青葉を話題に出してくるか。
青葉はよくみんなの姿を写真に収めている姿を見かける。
それで聞いてみると鎮守府での思い出をアルバムに収めたいという理由らしいので特に私は反対はしなかったという経緯を持つ。
そんな青葉に磯波と浦波の二人は感化されたのかカメラを欲しがっているという所か。

「わかった。それじゃ視察の帰りにカメラショップへと足を運んでみるか」
「あ……! ありがとうございます!」
「それでは司令官。すぐに準備してきますので正門で待っていてください」
「わかった。早めに頼むな」
「はい!」

それで二人は一度お金とかもろもろを取りに部屋へと足を運ばせていった。
うんうん。これも成長かな……?
吹雪型のみんなは一部を除いて駆逐艦の模範になろうという気概を感じるから戦闘以外の事にも興味を抱いてくれているというのは私としても嬉しい限りだ。
そんな私の考えが顔に出ていたのか、

《提督。どこか嬉しそうですね?》
「おっと、顔に出ていたか。ああ、榛名。戦闘以外で興味を持ってくれて嬉しいんだよな」
《そうですか。でも他の子も結構戦闘以外の事も興味を持っている子はたくさんいますよ?》
「うん、それは分かっているんだけどどうしてもな、そう思ってしまうんだ」

そんな会話をしながらも私は磯波と浦波を待つために正門まで来ていた。
そこでは大体いつも正門で警備をしている木曾の姿が見えたので、

「木曾。お疲れさま」
「ああ、提督か。どうしたんだ? 町への視察か?」
「まぁ、そんなところだ」

木曾と軽い挨拶をしているところで後ろから二人分の足音が聞こえてきたので振り向いてみると磯波と浦波がカバンを持ってやってきた。

「司令官、お待たせしました」
「待ちましたか……?」
「いや、大丈夫だ」

私はそう言って安心させる。
そこに木曾が声を二人にかけていた。

「なんだ。今日の提督の護衛は二人か」
「あ、はい。ちょっと司令官に頼んでみたんです」
「その……買いたいものもありましたので」
「そうか。まぁいいけどな。だけど提督の護衛も抜かりなくやれよ?」
「はい、もちろんです」
「その、頑張ります……」

三人の会話もそこそこに私が「それじゃ行くか」という声をかけて町へと出発していった。

「その、司令官? もし荷物が増えるようでしたら送ってもらえるのも可能でしょうか……?」
「え? そんな大きいモノを買おうとしているのか……?」
「いえ。ただ、ちょっと値段が張るものかもしれないので……」
「そうか。まぁそれなら店員さんに頼んでみるよ」
「ありがとうございます」
「よかったね、磯波姉」
「うん」

そんな会話をしながらも私達は町の視察をするために町内会へと顔を出していた。

「町長さん、ご無沙汰しています」
「ああ、提督さん。よく来てくれましたね。今日は視察をよろしくお願いしますね」
「はい、頑張らせていただきます」
「君達も初めて来たのだろうからあんまり気張らなくても大丈夫だからね。この町の人達はいい人ばかりだから」
「「はい」」

おそらく初めて顔を出してきた磯波と浦波に気を使ってくれたのだろう。

「ありがとうございます、町長さん。ですがよく二人が初めてだとわかりましたね?」
「ええ、まぁ。提督さんは必ず町の視察に来るときは私に声をかけてくれますからその度に連れてきている艦娘の子達も顔ぶれが違いますから誰が来たのかいつも覚えているんですよ」
「そうだったんですか」

それで少し町長さんと話をした後に町の視察を開始していた。
今日は祝日ともあり町はいつもより人が多く歩いているのを確認できる。
私が視察に来たのを確認するとその度によく私に声をかけてきてくれるのでとても安心できるというものだ。
そんなこんなで視察をしていく道すがら、

「司令官はこの町の人達に慕われているんですね」
「そうか?」
「はい。その、とてもこの町の人達が司令官を信頼しているのが分かります」
「それならありがたいことじゃないか。それで私達もやる気が出していけるしな」
「はい。守っているという思いを抱けますからね」

浦波にも同感だと感じてもらってよかったと思う。
それで今日の視察もそろそろ終わりに近づいてきたので、

「それじゃ、そろそろ二人のお目当てのものを買いにいくか」
「あ、はい!」
「ありがとうございます!」

それで私達は町のカメラショップへと足を運んでいく。
そして店の中へと入っていくと二人は目を輝かせていた。

「うわー……浦波ちゃん! これ、いいと思うの!」
「こっちもいいと思うよ、磯波姉!」

二人はまるで宝石でも見るような感じでどれを買おうか悩んでいた。
少しその光景に微笑ましいなという気持ちを抱く。

《楽しそうですね》
「そうだな」

それでしばらく榛名と二人で二人が何を選ぶのか観察していた。
していたんだけど……、

「その、磯波さん?」
「はい? なんでしょうか司令官?」

私はついその金額に目がいってしまい磯波に声をかけてしまっていた。

「その、なんだ? 本当にそれを買うつもりなのか……?」
「そうですけど……なにかおかしいでしょうか?」
「いや、別におかしくはないんだけど……金額がすごいけど大丈夫なのか?」

そう、そのカメラ一式の金額が約70万という膨大な金額だったのだ。
確かにお給金は貰っているからそれくらいはお金は持っているだろうけどそれでもさすがに少し見過ごせない金額だった。

「本当に大丈夫か……? お金の心配だったら私も工面するぞ?」
「だ、大丈夫です! 司令官の手を煩わせるほどお金には困っていませんから! その、この日のためにこの世界に来てからずっとお金を貯めていたんです……」

それで恥ずかしそうに磯波は俯いている。

「磯波姉はずっと楽しみにしていましたから」
「そんな浦波も結構な物を買うんだな」
「まぁ、大丈夫です。私の方は10万そこそこですから」

それでも高いと思うんだけどな。
まぁいいか……。

「まぁ、金欠にならないようにしておけよ二人とも?」
「わかっています」
「その、平気です……」

それで二人はカメラ一式を購入していった。
その表情はどこかホクホク顔だったのは言うまでもなかった。
そして鎮守府へと帰ってみると青葉と遭遇して、

「なっ!? い、磯波ちゃん? そのカメラはまさか!?」

と、あの青葉ですら驚愕していたのは私の気持ちを代弁しているようだったと記載しておく。

 
 

 
後書き
観艦式modeの浦波の方のカメラはまぁいいんですけど、磯波の方はちょっと本気度がすごいと感じましたね。
しばふさん、本当にいい仕事をしますね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0163話『第五航空戦隊の集まり』

 
前書き
更新します。 

 




アタシ、朧はなにやら瑞鶴さんと翔鶴さんが小さな催しを開くというので談話室へと向かっていた。
そこで道中で秋月と秋と秋雲と遭遇する。
なにやら秋続きで紛らわしいけどそこはもううちの鎮守府では慣れたものである。
それなので、

「秋月に秋に朧も瑞鶴さん達に呼ばれたの……?」
「あっ! 朧先輩!」
「はい! そうなんです朧先輩!」

二人の秋月が揃ってアタシに近寄ってくる。
秋月の違いと言えば提督とケッコンカッコカリしている方が指輪をしているくらいかな?探せば他にも見つかりそうだけど同型の艦娘だからどうしても一緒に見えてしまうのは致し方ない事だ。
だから、

「秋月」
「はい!」
「秋」
「はい、なんでしょうか?」
「いや、確認の意味も含めて呼んでみただけだからもう大丈夫だよ」
「「はぁ……?」」

それで二人とも不思議そうな表情をして首を傾げている。
ほんとー同じ仕草だから迷うよね。
そこに秋雲もアタシに近寄ってきて、

「わかる。わかるよー朧。この秋雲さんでもたまにどっちがどっちか分からなくなるから」

それでなははーとあっけらかんに笑う秋雲。
アタシも少しは気を使っているんだからそんなに正直に言うものじゃないと思うんだけどなぁ……。まぁ秋雲に関しては今に始まった事じゃないから諦めているんだけどね。

「……まぁ、いいや。それじゃさっさと談話室にいこうか。久しぶりに第五航空戦隊で集まれるんだから」
「「了解しました」」
「あいよー」

それでアタシ達は談話室へと向かっていった。
そして到着してみれば談話室には『第五航空戦隊・貸し切り』という看板が貼られていたのでアタシ達は笑みを浮かべながらも入ろうとする。
だけどその前に秋月と秋がふと呟く。

「でも、実際私達は第五航空戦隊に所属していたわけではありませんからなんとも……」
「そうですね、秋。ただ五抗戦のお二方を護衛したというだけですからね」

それでどこか気が引けている二人の姿がそこにはあった。
馬鹿だなー……。真面目も過ぎるとどうとか言うけど……。

「ふぁ……?」
「朧先輩……?」

だからアタシはそんな二人の頭を撫でてやりながらも、

「確かに二人は第五航空戦隊所属じゃないかもしれない。だけど瑞鶴さん達と運命を共にした仲じゃない? だから胸を張りなさい」
「おーおー。さっすが朧だね。先輩風を吹かしているよ」
「茶化さないの秋雲」
「へーい」
「まったく……」

アタシがそれでやれやれと頭を振っていると二人も自信がついたのか、

「はい! 朧先輩ありがとうございます!」
「なんとか自信が戻ってきました!」
「そう……それならいいんだ」

秋月と秋が自信を取り戻してくれたので良かったと思う。
そんな時に談話室の扉が開かれて、

「そうよ、秋月に秋。あなたは最後まで私に着いてきてくれたじゃない? そこは誇りに思ってほしいわ」
「「瑞鶴さん……」」

談話室の中からアタシ達の話を聞いていたのだろう瑞鶴さんが顔を出してきた。

「そうですよ。秋月さんに秋さん。だからそんなに自分を落とし込んではいけませんよ」
「翔鶴さん……はい」
「わかりました」
「よし! それじゃちゃっちゃと始めるから中に入ってよ四人とも!」

瑞鶴さんにそう促されてアタシ達は談話室の中へと入っていく。
そして翔鶴さん以外の全員が着席したのを合図に翔鶴さんがアタシ達にお茶を出してくれた。

「つまらないものだけど、これも食べてちょうだい」

そう言って翔鶴さんは手作りなのだろう和菓子を出してくれた。

「わぁ! 美味しそうです!」
「そうですね、秋!」

秋月と秋がそれで目を輝かせている。
生前の暮らしが定着しているのか秋月は……いや、秋月型のみんなは質素なものをよく食べる傾向があるからこういうものが出されるとそれはもう嬉しそうな顔を浮かべるんだよね。
そこが秋月達の魅力でもあるんだけど。

「さっすが翔鶴さん。ところで瑞鶴さんはなにかありますか……?」
「うっ……私が料理が苦手なのを知っていっているでしょう? 秋雲」
「あははー……冗談ですからそんな睨まないでくださいよ」
「うー……」

秋雲が冗談だと言って笑い、瑞鶴さんが拗ねてしまっている。
そんな、どこか少し羨ましいやり取りがなされる。
秋雲は気兼ねしない性格をしているから誰とでもフレンドリーに接することが出来るんだよね。
アタシは性格がこんなだからこういうやり取りは本当に羨ましいと思う。

「ふふふ……。楽しそうね瑞鶴」
「翔鶴姉~……そんなんじゃないんだからー」

そんなみんなのやり取りを包容力のある笑みを浮かべながら見守っている翔鶴さん。
こんなバラバラな個性のあるメンバーだからか意外と調和が取れているんだろうなとアタシは思う。
それから仕切り直しで色々と最近の話などをしだすアタシ達。
例えば「提督について」とか「新しい子について」とかなど。
それで話題になったのは、

「あ、聞いてください瑞鶴さん!」
「んー? なに、秋月?」
「はい! 司令から聞いたのですがとても嬉しい事だったんです!」
「なにがあったのですか、秋月さん?」

秋月はどこか嬉しそうに表情を綻ばせる。
この顔はアタシ達にしか見せない顔だと思った。
姉妹の照月と初月には姉としての顔を見せる事が多い秋月だからか一人の女の子としての顔を見せる時は大抵アタシ達に話をする時なんだ。
だから相当嬉しい事があったんだと推測する。
果たしてその推測は当たっていた。

「はい、妹の涼月が今度の作戦で艦隊に合流するそうだという話です」
「えッ!? それって本当なの!?」
「本当なのですか秋月さんに秋さん!」
「秋雲さんもまだ掴んでいない情報だよ!」
「驚いた……」

アタシ達はそれで全員驚いていた。
だとすると、

「するとついに第六一駆逐隊がもう少しで揃うという事だね。若月がいつ来るのか分からないけど近いうちに来てほしいね」
「はい!」

それでニコニコ顔の秋月と秋だった。

「そっかー。涼月がね。それだと坊ノ岬沖組もリーチになるじゃない?」
「そうね、瑞鶴。大和さん達にももう知らせたの……?」
「それがまだなんですけど、どう切り出せばいいか迷っているんです」
「司令が仲介してくれればありがたいんですけど……」

それでシュンッとなる秋月と秋。
だったらという感じで、

「それじゃ朧達が手伝うよ、秋月?」
「いいんですか……? 朧先輩」
「うん。情報はみんなで共有しないといけないからね。楽しみにしておいて損はないだろうしね」

それでアタシ達は後日に涼月と関わりのある艦娘の人達に情報を伝える事にした。
もう次の仲間の情報があるっていうのはアタシ達の活力になるから嬉しいね。
アタシもまだまだ練度は低いけどいずれまともに戦えるようになるんだ……。


 
 

 
後書き
今回は朧視点で五航戦護衛組の三人と瑞鶴翔鶴でガールズトークを差せました。
いや、イベントが楽しみですね。
朧もそろそろ上げていこうとは考えているんですけどまだまだですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0164話『矢矧と坊ノ岬沖組の思い』

 
前書き
更新します。
昨日の続き? 

 


なにやら朧と秋月が私達……おもに大和、雪風、浜風、磯風、初霜、霞、朝霜、そして私、矢矧を話したい事があるというので執務室に集まるようにとの連絡を受けたわね。
私達を招集するというのはどういう事かは分かるものは分かる……。
大日本帝国海軍の終戦に近い海戦の一つである『坊ノ岬沖海戦』のメンバーであるというのを……。
私の隣を歩く雪風が少し緊張した面持ちで歩いていた。
だから私はそんな雪風に対して、

「雪風、大丈夫よ。私達を意味もなく呼ぶ提督ではないわ。それに提督は信頼できるお方……だから特攻して来いなんて命令なんて絶対しないわ」
「そ、そうですよね! しれぇがそんな事を言う訳はないと思います。ですが、それでも不安になってしまうんです……」

それで雪風はやはりどこか緊張がとれない顔だった。
やっぱり最後まで生き残ってしまったのをどこかで重く受け止めているのね。可愛そうに……。
それを言うと初霜もそうね。
そう言う初霜はどこかそわそわしているけどそんなに緊張はしていない様子だった。

「初霜は平気なの……?」
「はい。私は提督の事を信じていますから」

やっぱり真面目な性格をしているのよね、初霜は。
そして他の面々にもそれぞれ声をかけてみた。
磯風はというと「決戦なら来るなら来い」という感想を持っていた。
浜風はというと「やれるだけやりたいです」ともう戦闘思考に入っていた。
二人とも好戦的な性格だから仕方ないか……。
礼号組でもある霞と朝霜はというと、

「もしも決戦だったら……今度こそ守りたいわね」と霞。
「あたいは今度は足を引っ張りたくないね」と過去を後悔している朝霜。

みんながみんな、どこかで戦闘を行うのを想定して考えているわね。
それは少しいけないと思うわ。
だから私がそこら辺を話そうとしたのだけど、最後に大和がそっと言葉を出した。

「みなさん、落ち着いてください。提督がこのメンバーを集めたからと言って何も戦闘を行うとは限りませんよ。もっと前向きな事を考えないと……」

やはり大和はすごいな。
私が言いたいことを言ってくれた。
だから私はそれに続くことにした。

「大和の言う通りよ。みんな、少し落ち着きなさい。まだ大規模作戦が終了してそんなに経過していないんだからそんな大それた任務は来ないと思うから、だからもっと柔軟な考え方をしていきましょう」

私がそう言葉を出すとみんなも「そうですね……」と言って少し緊張が抜けてきていたので良かったと思う。
それは私もこのメンバーを招集すると聞いた時にはとうとう来たのか……?という思いをしたが、だけどまだそんなに国は切羽詰まっていない。
だから状況的にはもっといい話だと私は予測したのであって。
それで私も少し緊張しながらも執務室の前まで到着したので大和が代表として扉をノックする。

「提督。大和以下坊ノ岬沖組のメンバーを連れてい参りました。入ってもよろしいでしょうか?」

大和がそう言うと執務室の中から『入ってくれ』という声がかかったのでそれで私達は中に入らせてもらった。
中には提督の隣に朧と秋月の二人が立っていた。
この組み合わせはなんだろうと私は思いながらも状況を見守る事にした。
そして提督が話し出した。

「わざわざ集まってもらってありがとうな、みんな。今回は朧と秋月の願いあってみんなを集めさせてもらったんだ。今回の私の役割は見守り任みたいなものだよ」

提督はそう言った。
よかった……。どうやら懸念していた戦闘事ではない事に私は心の中で安堵をしていた。
それは皆も同様で一様に安堵のため息を吐いていた。

「それでは朧さんに秋月さん。私達になんのご用でしょうか?」

大和がそう話を切り出した。
すると秋月が少し緊張をしながらも一歩前に出てきて、口を少し震わせながらも何かを言おうとして、でもどこか緊張しているのかまだ何も言わない。
そんな秋月の肩に朧が優しく手を置いて「ほら」と言って笑みを浮かべると秋月の顔から緊張が取れてきたみたいで改めて秋月は話をし出す。

「そうそうたる皆さんの前で言うのは緊張しますが言わせていただきます。まだこの事を知っている人はごく僅かなのですが大和さん達には伝えた方がよろしいかと思いますたので司令にこの場を準備してもらいました」
「なんだよ秋月? 前置きはいいからもったいぶらずにあたい達になにかを教えてくれよ?」
「朝霜さん、シィーッですよ!」

朝霜のヤジに雪風が黙るように指を立てている。
でも秋月がここまでもったいぶるのには少し私も予想が出来たかもしれない。
私達と秋月の間で関係している事と言えばおのずと限られてくるからね。
もしかしてという期待を持ちながらも私は秋月が言うのを待っていた。

「はい。もったいぶった言い方ですみません。それでですが、秋月型が待っていたと同時に坊ノ岬沖組の皆さんも待っていたとある子が次の秋の作戦で艦隊に合流するという話です」
「もしかして!」

それで雪風が笑顔になった。
他のみんなもそれで笑顔になる。

「はい。ついに涼月が艦隊に合流するという話です」

秋月がそう言った瞬間に執務室の中はどっと騒がしくなった。
初霜とか霞などは涙を流しているほどだからね。
かくいう私も嬉しさがこみ上げてきていてつい提督に話を振った。

「提督……。秋月の言った事は本当なのですか?」
「ああ、本当だ」

提督はそれで肯定の言葉を述べていた。
ああ……涼月がついにやってくるのね。
彼女達も終戦まで生き残った組だ。
今も船体が防波堤として冬月等とともに九州に残されているのだから未だに日本を守っているのだろう……。
そんな彼女が艦娘として顕現するという事はとても喜ばしい事だ。
みんなの喜びの最中に大和が強気な笑みを浮かべながらも、

「提督! おそらくですが涼月は作戦の最終海域での報酬艦となると私は予測します。よって、大和以下一同は万全の態勢で挑みたいと思います! ですからそれまでにさらなる練度の向上をお願いいたしますね」
「わかった。大和達の期待に応えられるように秋の作戦も頑張ってやっていくとするよ」
「はい!」

それで大和も笑顔になる。

「それでは浜風もそろそろ練度を上げておかないとな? この中ではまだまだ低いのは浜風だけだからな」

磯風がそう言うと浜風が前に出ていき、

「提督。秋の作戦までにご期待に応えられるようにご指導ご鞭撻よろしくお願いします」
「わかった。浜風も早いうちに練度を上げられる態勢に持っていくことにするよ」
「ありがとうございます!」

それでわいわいと騒いだみんなはそれで他のみんなにも涼月の事を教えにそれぞれ動いていった。
今日中にはもう全艦娘に伝わっている事でしょうね。
それなので、

「提督。私、矢矧も必ず力になるから期待しておいてね」
「うん。期待しているよ矢矧」

提督の太鼓判も押してもらったので秋の作戦までには練度を現在の80から理想では90までには上げていきたいわね。
そろそろ軽巡の先輩方もいい練度になってきているから私達阿賀野型も、という期待を持った。


 
 

 
後書き
涼月の話題でくどいと言われようと書きます。

ちなみに阿賀野型も含めて軽巡は全員練度は80を越えています。
坊ノ岬沖海戦がモチーフのイベントはまだまだ先でしょうけどね。
涼月と冬月、それと桃型駆逐艦の柳とともに今も防波堤として利用されていると聞きます。見に行きたいですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0165話『雷の取り調べ』

 
前書き
更新します。 

 





朝になったので私は目を開けて起きようとしたんだけど起き上がる前にふと頭の置き所に違和感を覚えたのでなんだろうと思いながらも目を開けてみるとそこには雷が慈愛の表情で私を見下ろしていた。

「……あ、司令官。おはよう♪」
「いか、ずち……?」
「うん!」

雷はそのトレードマークの八重歯を覗かせながら笑みを浮かべる。
その表情はどこか楽しそうで……。
気づけば私は雷に膝枕をされている状態だったのだ。
どうりで枕が柔らかいと感じたわけだ。
それでなにかを言おうとするんだけど、

「司令官? どうしたの? なにか不安があった……?」

雷は私の心配をしているのかどこか不安げな表情を覗かせる。
二次創作でもよく小さいママとか言われているけど、なるほど……。
こういう事態はこの世界に来てから初めての事なので動転してしまって私は中々声を出せないでいた。

「大丈夫よ。この雷が司令官の不安を消し去ってあげるんだから!」

そう言って私の頭を笑顔で撫で始める雷。
ちょ……なにかいけない構図のような?
そんな事をまだぼーっとしている頭で考えていると榛名がようやく起動してくれたのか、

《あ、あの……雷ちゃん?》
「あ、榛名さんもおはよう!」
《あ、おはようございます……って、そうではなくて……》

榛名もつい純粋な雷に流されそうになっているけどどうにか言葉を出してくれるようだ。

《雷ちゃん……羨ましいです》

って、

「そうじゃないだろう!? 榛名!」

私はつい起き上がって榛名にツッコミを入れていた。
それで私の頭もやっと目覚めてくれたようでなんとか平常心を保ちながらも、

「そ、それで……雷はなんでここに?」
「うん。司令官を起こしにきたんだけど寝顔が可愛かったからつい膝枕して司令官が起きるのを待っていたの」
「そ、そうか……」

まぁ納得しておくとするか。なんかまた流されそうだけどこれ以上の事情はなさそうだし。
そんな時だった。バタンッ!と私の寝室の扉が開いて、

「司令官さん、失礼しますなのです。雷ちゃんはいますかって……やっぱりいたのです!」

電が顔を出してきた。
なにやら雷を探していたようで少し息切れをしている。

「もう~……雷ちゃん、司令官さんを甘やかし隊の会員メンバーの皆さんに抜け駆けをしたとして怒られちゃいますよ?」
「あ、ごっめーん……つい疼いちゃって♪」

そう言ってプリプリと怒っている電と反省していない様子の雷。
それより、なにやら聞捨てならないセリフを聞いたような……?

《あの……電ちゃん? その、司令官さんを甘やかし隊というのはなんですか……?》
「あ、そうですよね。いつも司令官さんと一緒にいる榛名さんは知らないのは当然なのです。その会員に入っているのは普段から司令官さんを甘やかし隊と思っている艦娘が集まっているクラブなのです」
「なんだろう……? 聞いている分には危険は皆無に感じるんだけど、どこか違う危険を感じるのは……?」

私はついそんな事を呟いていた。
それで電はため息を吐きながら、

「電は入っていないのですが、雷ちゃんとか鹿島さんとか夕雲さんとかが代表格なのです。他にもそれとなくメンバーは多いクラブなのです」
「なるほど……わかりやすいメンバーだな」
「いっつも司令官は榛名さんと一緒に甘えているから見てる分の私達は結構ストレス溜まっているのよ?」

それで雷はニカッと笑みを浮かべながらも、それとは裏腹にどこか毒が入っているようなセリフを吐く。
それで榛名は顔を赤くさせながらも、

《そ、そんなに私、提督に甘えているでしょうか……?》
「ま、まぁ電達もそれなりに榛名さんが司令官さんに甘えているのはよく見る光景なのです……」

どこか苦笑いの電。
そんなに露骨だろうか……?

「別段榛名とは普段の会話しかしていないと思うけどな」
《はい。それに触れ合えないのはやはり辛いですし……》
「司令官も榛名さんも甘いのよ!」

それで雷の雷が落ちた。ややこしい!

「触れ合えないからこそ、それ以上に司令官と榛名さんはいつも会話を欠かさないでしょう? それがどれだけ羨ましい事か……」

それでグッっと拳を震わせる雷。

「それに一年に一回でも触れ合えるなんて、とてもロマンチックだわ! ケッコンカッコカリした日というのがポイントよね!」

そう言って手を合わせて憧れていますという感じのポーズを取る雷。電もどこか一緒の仕草をしているのがポイントだ。

《はうぅ……》

それで榛名は恥ずかしくなったのかさらに顔を赤くして俯いてしまってしまった。
おそらく思い出しているのだろう、あの日の事を。
最後に二人でキスをして終わりにしたことを……。

「二人とも、その辺にしておきなさい。榛名がどんどん追い込まれている……」
「あーっ! もしかして司令官、榛名さんとあの日になにかあったんでしょう!?」

ぎくりッ!?
察しがいいな本当に。

《………ぅぅ》

榛名はもう虫の息だな。顔を赤くして俯いて無言になってしまった。

「な、なにもなかったヨー?」
「その、どこか金剛さんみたいなごまかしは効かないわよ司令官! さぁて、教えてちょうだい!」
「ワクワク……」
「その、黙秘権は使えませんか?」

雷はもう空気を得た魚のようにどんどんと私に迫ってきている。
電もそれでどこか目を輝かせているではないか。
これは、まずいな……。
今はまだ布団の中だから圧倒的に雷に場は有利だ。
これはもう諦めるしかないのか……?
それで私は折れてしまう事にした。

「わかったわかった……。教えるから一回下がりなさい」
《て、提督!?》

榛名のどこか「そんなっ!」とでも言いそうな顔は印象的だったけど、

「ただし、口外だけはしないでくれ。それを約束しないと話さないぞ?」
「わかったわ! 我慢するわ」
「なのです!」

それで私はあの日の事を二人に教えた。
榛名はそれで恥ずかしさからか姿を消してしまったほどには二人はその内容に目を輝かせていたのは言うまでもない。

「あぁ……いいわね。身体が消える間近に行うキスって……とってもロマンチックじゃない!」
「はい! とっても羨ましいのです!」
「あはは……ありがとう。だからもう詮索はしないでくれよ? 榛名が拗ねて出てこなくなってしまう」

そう、今もなお榛名は私達に見えないように消えてしまっている。
それほどには恥ずかしいのだろう。

「榛名さん、お願い出てきて? この事は誰にも話さないから」
「はいなのです」

それで渋々といった感じで榛名はまた透明の姿を現して、

《本当ですね……?》

と、もう涙目だったのが可愛いと思ったのは内緒である。

「私達だけの秘密にしておくわ。こんな事が青葉さんにもしバレでもしたらその日には全員に知られるようなものだからね」
「司令官さんと榛名さんの大切な秘密を守るのです」
《ありがとうございます。雷ちゃんに電ちゃん……》

それで二人は秘密は守ると約束してくれたので良かったと思う。
それで少し気恥ずかしい朝だけどなんとか私達はどこかぎこちないけどいつも通りに過ごしていった。
ただ、何名かは「なにかあったな……?」という感じで見てきたけどな。
その度に榛名は思い出したのか顔を赤くさせていたので冷や冷やしたものだった。


 
 

 
後書き
本当は雷の秋グラにちなんで大団扇の作成話でも書こうかとも思ったんですけどいつの間にかこんな話になっていました。おかしいなぁ……?
毎日この子で書こうと思ったまではいいけど内容で迷走しているんですよね。



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0166話『意識の覚醒』

 
前書き
更新します。 

 




私、飛龍は今まで練度1の状態で睡眠状態で冷凍睡眠室……別名は艦娘保管庫に眠らされていました。
基本、二人目以降に鎮守府に配属になった艦娘は三つの道を選ばされる。
一つ、普通に二人目として鎮守府で暮らす道。
二つ、母港の確保のために解体か改装の素材に使われるために痛みを伴わないために冷凍睡眠される道。
三つ、最後に、誤解体されないようにロックをかけていつか育ててもらえるだろうと夢見て冷凍睡眠に入る道。

……私は、せっかく配属になったんだから育ててもらいたいと願い、三つ目を選んで眠りについていた。
そしていつ目覚めるかもしれない日々を夢見て眠っていたところ、私は提督に起こされた……。
提督は目を開けた私を見て少し弱弱しい笑みを浮かべながらも、

「飛龍……今まで眠らせてしまっていてすまなかった」
「いいんですよ……いつかこういう時が来るのを待っていたんですから」
「そうか……」

それで提督はなぜ私を起こしたのかを掻い摘んで説明してくれた。
今年の夏の大規模作戦で正規空母の数は足りてはいるんだけど、それでもなにかとお札に悩まされて使うタイミングの海域で使えなかった事を……。
それで私を育てる事を決意したという。
さらには今はまだ私のように眠りについているけど蒼龍も二人目の育成に入るという。

「それじゃ、蒼龍が来たら寂しくありませんね。相棒の蒼龍が一人目の飛龍()と話していたらとても悲しくなるから……」
「だからそれまで待っていてくれ」
「わかりました! 改めて、飛龍型航空母艦飛龍、頑張らせていただきますね!」

提督に改めて挨拶をした後に私の隣のカプセルで未だに眠りについている蒼龍を見て、

「蒼龍……先に行って待ってるから!」

カプセルを優しく撫でた後に私は正装に着替えて空母寮へと案内されていた。
……そういえば、冷凍睡眠室には蒼龍以外にも赤城さんに加賀さん、瑞鶴に翔鶴の眠っている姿もあった。
提督はいずれは他の人達も育てるつもりなのかな……?
そこのところを聞いてみると、

「ああ。特に赤城と加賀は育てるつもりだ。まぁ今から焦っても詮無いんだけど加賀に関してはもしかしたらいつか来る第二次改装でコンバート改装で戦艦になるかもしれないとかいう噂話があるからな」
「あー……そういえば加賀さんってもともとは空母じゃなくて戦艦だったんでしたよね」
「そういうことだ」

それで納得をした私だった。
そして空母寮へと提督と一緒に顔を出して、最初に鳳翔さんがいた。
お庭を掃除しているところが鳳翔さんらしいと言えばらしいね。

「鳳翔さん」
「あら、提督。どうされましたか……? あら……?」

鳳翔さんは提督の隣にいる私に気づいたのだろうすこしして笑みを浮かべて、

「提督……? いきなり起こしたら困ります。事前に言っておいてくださいね。もし言ってくださっていたなら飛龍さんの歓迎をいたしましたのに……」
「すみません、私の配慮が欠けていました」

それで提督は鳳翔さんに頭を下げていた。
やっぱり鳳翔さんには頭が上がらないみたいだね。
そんな鳳翔さんは私の方を向いてニッコリと笑顔を浮かべながら、

「さぁさ、飛龍さん。空母寮にようこそ。ここにはもう一人飛龍さんがいますけど気にせずに暮らしてくださいね」
「は、はい!」

どうやら私も少し緊張していたようだ。
鳳翔さんにそう言われて初めて緊張してのが分かって同時に解されるのも分かった。

「それじゃ飛龍。自分の部屋の場所やこの鎮守府のルールとかは鳳翔さんに教えてもらってくれ。なるべく後に来る蒼龍と同じ部屋にしてもらうつもりだから」
「わかりました! 私の身を案じてくださってありがとうございます、提督」
「それじゃ私はここで失礼させてもらうよ」

それで提督は執務室へと戻っていった。

「さて、提督にも言われましたから飛龍さん、この鎮守府で暮らしていく上で大事な事を教えていきますね」

それから鳳翔さんにこの鎮守府での暮らしでのレクチャーを受けた。
なにやら私のイメージするものとは少し変わっているけど怖い場所じゃないという事だけは理解できた。
そして私の部屋へと案内されている途中で、

「あ! もしかして飛龍()!?」
「そうみたいだね。そっかぁー。提督、ついに二人目を育てる気になったんだぁ……」

もう一人の私と蒼龍に遭遇した。
飛龍()は私を見てとても驚いていた。
聞くと今までなかなか手を付けられなかったという話だけど、育成の目途が立ったという事だね。

「飛龍が二人か。どっちに浮気しようかなぁ?」
「あっ……! ちょっと飛龍()? 蒼龍は渡さないんだからね! 蒼龍もそんな事を言わないの!」

と、やっぱり予想した通りの反応を飛龍()はしていた。
だから安心させるために、

「大丈夫よ。提督が言うのは蒼龍も二人目を育てるっていう話だから」
「そ、そう……まぁそれなら安心かな?」
「でもそれまで飛龍が二人いるっていうのは変わらない事実だからねー。もう一人の蒼龍()が起きるまでにつば付けておくのもそれはそれで……」
「いい加減にしなさい! このエロ女!」

そう言って蒼龍に拳骨を叩き込んでいる飛龍()
うん、やっぱり楽しそうだね。蒼龍が来ればこういうやり取りができるようになるのかな……?
私は早く蒼龍が起きてくれることを願いながらも、部屋の片づけを終わらせた後に提督に呼ばれて高速レベリングスポットのキス島へと出撃していくのであった。
もちろん私が旗艦なのは当たり前なんだけど、随伴艦の面々が結構面白いメンツばかりだった。

「飛龍さん、これからよろしくお願いしますね」
「うん、龍鳳」

どうやら龍鳳はあと練度二つでカンストするほどには高いのかどこか歴戦の風格を持っている。
そしてもう一人の空母が私が寝ている間に入った新人であるアークロイヤルって子なんだけど中々の堅物みたいでとっつきにくい感じだったんだけど、

「二人目のヒリュウだな。よろしく頼む。アークロイヤルだ」

そう言って握手を求められたので少し嬉しくなった。当然握手はしたけどね。

他は伊勢さんに朝風ちゃん、そしてまゆるちゃんの三人。
私がこの鎮守府に配属された時は眠る前に練度表を確認したんだけどその時にはまだ50人以上は練度の低い駆逐艦がいたと思うんだけど今では基準練度の70まで後27人くらいまで減っていたので驚いた。

「飛龍さん、朝風です。よろしくね」
「よろしく!」

それで伊勢さんともまるゆとも挨拶をして私達はキス島に到着して深海棲艦を殲滅したんだけど今の私の装備している艦載機たちが優秀なのが起因しているのかな?
必ずMVPを私が取ってしまう。
そう言う方向で提督が調整したらしいけどなんか少し悪い気がしなくもない。
そんな事を思っていると龍鳳が近寄ってきて、

「飛龍さんはそんなに気を使わなくていいんですよ。もう立派な仲間じゃないですか。それに鳳翔さんにも教わったんでしょう? 提督は鎮守府のみんなの事を家族だと思っているって言う事を……」
「うん、まぁ……」
「だからゆっくりに、でも確実に練度を上げていきましょうね」
「そうだね……わかった。私、頑張るよ!」

そんな会話をしながらも私達は日々練度上げに明け暮れていた。
 
 

 
後書き
少し鎮守府の闇っぽい内容ですね。
艦これ七不思議に該当されるかもしれませんね。冷凍睡眠室からは声が聞こえてくるっていう……。


ちなみに3-2-1の私的最優編成はというと、

飛龍 (001)      友永隊、村田隊、村田隊、熟練艦載機整備員
龍鳳改(097)      二式艦上偵察機、彗星、彗星、彗星
アークロイヤル改(072) 彩雲、彗星、彗星、彗星
伊勢改(106)      試製35.6㎝三連装砲、OTO副砲、試製晴嵐、試製晴嵐
朝風改(061)      22号対水上電探改四、22号対水上電探改四、33号対水上電探改
まるゆ(007)      無し


駆逐艦の練度も少しずつ上げられるのがいいですね。リランカには飽きてきましたから気分転換に。



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0167話『長良の早朝ランニング』

 
前書き
更新します。 

 





珍しくもないけど私は朝早くに起きたので外に出て鎮守府内を散歩していた。
この時間にはまだ大淀も執務室には来ないのでみんなも寝ている事もあり割と静かだ……。
まだ平気とはいえ少し半袖では肌寒くもあり、そろそろ長袖も検討していくのも一考かもしれないな。

《提督。気持ちの言い朝ですね》
「そうだな。少し霧がかかっているのはこの季節柄仕方がないとは思うし」
《ですね》

榛名とそんな会話をしながらもそんな少し霧がかかっている中を歩いているとなにやら霧の向こうから誰かが走っているのか息継ぎの声と走る足音が聞こえてきた。
それでこんな時間に起きていて尚且つ運動好きと言えば割と予測も可能な部類であるんだよな。
果たしてその走ってきた人物は私の予想通り、運動着に着替えている長良だった。

「あ! 司令官、それに榛名さん、おはようございます!」
「ああ、おはよう長良」
《おはようございます、長良さん》
「司令官はどうしたの? 朝の散歩……?」
「そんなところだ。そういう長良は朝の走り込みかい?」
「そうなんですよ! この季節はなにかと体調を崩しがちになってしまいますから体を鍛えていればそんなこともないでしょうから妹たちも誘ったんですけどどいつもだらしがなくて……」

そう言って長良は愚痴を開始する。
他の長良型はあまり運動を好んでするタイプじゃないからなぁ。
阿武隈とか鬼怒は朝も影響してダルイとか言いそうだし。

「あ、そうだ! 司令官も朝の運動はどうですか!? ちょうどいい感じに服装はラフな物みたいですし」

そう、今の私は少し涼しい格好をしている為、あまり他の子達には見られたくはないような恰好なんだよね。まぁ、だらしないというほどではないけど普段着みたいなものだ。一回少ししたら朝食前に制服に着替えようと思っていたんだよな。

「そうだな。まぁ着替える予定だったし、いいかな?」
「それじゃ早速走り込みでもしましょう! それ、ワンツー!」
「ッと、その前に少し準備体操をさせてくれないか?」
「いいですよー! 私も一緒にしますね」

それで長良と二人で一緒に準備体操をする。
そしていい感じに身体が温まってきたので、

「よし。それじゃ少し慣らし程度に走ろうか」
「うん! 司令官はほとんど戦闘時以外は執務室で仕事しているんだから体が鈍っていそうだし、最初は軽くいくね」
「あはは……ぐぅの音も出ないな」
《提督はお仕事が大変ですからね……》
「それじゃレッツゴー!」

それで私と長良は最初は軽くジョギング程度の感覚で走り出した。
出したんだけど……なんだろう? やっぱり体が鈍っているのだろうか……?
艦娘の身体になってから前の身体のようにそんなに筋肉痛は起こらなくなったんだけど、それでも継続的には鍛えていないから疲れ始めてきた。

「ほらほら。司令官、息が乱れてきてるよ。もっと効率的にしていかないとすぐにばてちゃうよ?」
「わかってはいるんだけど、やっぱり鈍っているんだよな」
「うん、それはもう分かった。だから私が司令官の事を鍛え治してあげるね!」

それから長良は少しペースを上げだした。
それで私もなんとか着いていこうとペースを上げていく。
長良のペースに合わせていくとそのうち本当に力尽きてしまうからこういう時に呼吸法を変えていかないと!
それで私は先ほどより慣れてきたのでなんとか呼吸を整えて長良に追いつく。

「お? 司令官、少し慣れてきたみたいだね」
「まぁね。これでも何度か島風と全力ダッシュをしているからそれよりは楽で済んでいるし」
「なるほどぉ。確かに島風ちゃんはどこまでも全力で走っちゃうからね。司令官の苦労がなんとなくわかるよ」
「分かってくれるか……」

それで少しジーンとしながらも、それでも走るペースを落とさない私達。
すると噂をしていたからなのか、私達の背後から猛スピードで誰かが走ってくる気配がした。
それで後ろを振り向いてみるとそこには島風が追い付こうと全力ダッシュをしていた。

「島風!?」
「おう! てーとく、おはようございまーす!!」

それで島風はあっという間に私と長良に追いついてきた。

「噂をすればなんとやら……どうしたの、島風ちゃん!」
「うん! てーとくと長良が走っているのが見えたんで混ざろうと思って全力で走ってきたの!」
「そっか! それじゃいっちょ勝負でもする……?」
「望むところだよ!」

……なにやら長良と島風が私を置いてきぼりにして勝負を始めるみたいな雰囲気になってきたな?
それで私は事前に二人に伝える。

「二人とも。私は私のペースで走っているから二人で走って来なさい」
「了解です! それじゃ島風ちゃん、いっくよー!」
「負けないからね!」

そして次の瞬間には二人ともすごいスピードを出して駆け抜けて行ってしまった。
そんな二人にさすがの私と榛名も苦笑いを浮かべながら、

「運動マニアの長良にスピード狂の島風……凶悪な組み合わせだな」
《そうですね。私達は自分のスペースで走っていましょうね提督》
「そうだな」

それで私達はマイペースに鎮守府を一周走り終わってみるとすでに二人ともゴールしていたのか私を待っていたみたいで、

「司令官! いい汗かいたね!」
「そうだな。島風もお疲れさま」
「うん!」

それでその後はいい感じに汗を掻いていたので服がちょっとベトベトになっていたためにお風呂に入ってこようという話題になったんだけど、

「あ、司令官。私も司令官の方で一緒に入ってもいいかな? ほぼ貸し切り状態だって話を聞いたから入ってみたかったの」
「島風も入る!」
「わかったわかった。それじゃ入りに行こうか」
「了解です」
「うん!」

それで三人で汗を流しにお風呂へと入っていく。
そして入った後に長良と島風はお風呂上がりのジュースを飲んでいて、

「はぁー! やっぱりお風呂上がりのジュースは格別だね!」
「そうだね! 運動後っていうのも重要ポイントだよ!」

それで笑いあっている二人をよそに私は提督服へと着替えていた。

「それじゃ時間もいい頃だから三人で朝食でも食べに行くか」
「やった! 朝の食事だ」
「今日はなんだろう……?」

そんな話をしながらも今日の一日が開始したのであった。


 
 

 
後書き
少し肌寒い季節になってきましたね。
私も来月に町の体育祭に出なきゃいけないんで運動をしないと……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0168話『イムヤと一航戦』

 
前書き
更新します。 

 



今日は赤城と加賀さんの二人が執務室で一緒に仕事をしてくれていた。
赤城はコツコツと、加賀さんに関してはほぼ無表情でやっている為にはたから見たらギスギスしているようにも取られていてもおかしくはない。
実際、今日の報告をしに来た瑞鶴が執務室に入った瞬間に、その光景を見たのが少しゲッソリとした表情をしていたのが印象的だった。
それで加賀さんに、『なに、五航戦? 私達がここにいて不思議かしら……?』とわざわざ煽りも入れている辺り相当だろう。
それで加賀さんと瑞鶴は何口か口喧嘩をしていたけどしばらくして瑞鶴が負けて『うにゅいぃぃぃ!!』という奇声を上げながら泣きを見ながら出ていったのはどうしたものかと考えていた。

「ふふ。加賀さんも瑞鶴さんも面白いですね」
「あのやり取りを見て普通に流せる赤城が羨ましいよ……」
「そうですか?」

どうやらあれが空母寮でのいつもの風景らしい。
赤城は私にそう言われても不思議に思っていないらしいからあれが日常風景の一部なんだと納得しておく。
それからしばらくして、また誰かが執務室の扉を叩いてきた。

「誰だい?」
『イムヤよ。入っていいかしら?』
「いいよ」

それでイムヤを中に招く。
入ってきたイムヤは赤城と加賀を目に入れると少し笑みを浮かべて、

「ああ、赤城に加賀。あなた達が今日の手伝いだったのね」
「ええ。そういうイムヤは今日の南西諸島の任務はどうしたのですか?」

イムヤの言葉に加賀さんが普通に返答している。
その光景を見て加賀さんはイムヤに関しては普通に話すんだよなと前から思っていた。

「今日も大体終了したわ。各潜水艦のみんなは順次入渠しているわ」
「そう……。あなたはもう大丈夫なの?」
「私はさー……ほら、他のみんなと比べて入渠時間が短いからね。だから後回しなんだよね」

そう話すイムヤ。
気づけばイムヤの腕にはまだ入渠が終わっていないためにいくつか擦り傷が見えた。

「イムヤ……。順番待ちでもいいけど包帯くらいは巻いておけよ?」
「司令官、ありがとね。大丈夫よ。これでも潜水艦だからって頑丈なんだから!」
「それならいいんだけど……」

私が少し心配しているところで加賀さんが席から立ってイムヤに近寄っていく。
何をするのだろうと思ったけど至極単純な事でハンカチを出してイムヤの顔を拭いてあげていた。

「うぷ……いきなりなに、加賀?」
「我慢なさい。すぐに入渠で落とせるとはいえ顔が少し汚れていますよ。だからおとなしく拭かれなさい」
「はーい……」

それで素直に顔を拭かれるイムヤの姿を見て、

「赤城、加賀さんってイムヤには面倒見がいいんだな?」
「そうですね。まぁ過去の事も関係している事なのですけど、あのミッドウェー海戦で沈んだ私達の仇を取ってくれたことも関係しているんだと思いますよ」
「あー……」

それで思い出す。
なにもイムヤは伊達や酔狂で『海のスナイパー』とは自称してはいない。
ミッドウェーで飛龍の攻撃で大破していたヨークタウンを追撃して、数時間に及ぶ追跡でついには護衛の駆逐艦とともにヨークタウンを撃沈したのだ。
そしてなんとか追撃から命からがら逃れて帰還したという過去を持つ。
そんな関係だからこそ、加賀とイムヤは仲がいい方なのだろう。
それを言ってしまえばイムヤは一航戦、二航戦とも仲はいい方だと思うんだよな。
たまによく話している光景を見るし。
そんな事を思っていると加賀さんがイムヤの顔を拭き終わったのか、次には私の方を見てきて、

「……提督。なんですか? 私を見て少しにやけていて……」
「いや、微笑ましい光景だなと思ってな」
「別に、当然の事ですよ」

加賀さんはそれで終わらそうとしているんだけど代わりにイムヤが加賀に抱きついて、

「そうだよ。私と加賀は仲が良いんだから! ふっふーん!」
「こら、やめなさい……」
「本気で振り払うならやめるけど……?」
「……仕方がない子ね」

加賀さんもそんなイムヤを振り払おうとはせずにされるがままでいた。
なんとも珍しい光景だなとまたしても私は少し笑みを浮かべる。

《提督、楽しんでいませんか……?》
「わかるか、榛名。うん、今日は加賀さんの意外な光景を見れて少し楽しいと思う」
「加賀さんは懐いてくれる子には優しいですからね。瑞鶴さんにも同じ態度を取っていればもっといいと思うんですよ?」
「赤城さん、それはダメよ。あの子は厳しくしないとすぐに調子づいてしまうんだから……厳しくしないといけないわ」
「と、加賀さんは瑞鶴さんには素直になれないんですよ」
「なるほど……赤城、解説ありがとう」
「いえいえ」

どこか楽しそうな赤城。
普段あまり人をからかう事はしない赤城だけど加賀に関しては別物らしい。

「加賀。目が吊り上がってるよ? もしかして怒った……?」
「そんな事はないわよイムヤ。ただ、赤城さんの茶目っ気に少し呆れているだけです」
「うふふ。ごめんなさい加賀さん」

手を合わせて謝りながらもどこかやはり楽しそうな赤城はいい性格をしている。
そんなこんなでイムヤはそれ以降も執務室に居座っていてそのまま時間は昼過ぎになっていて、

「それじゃ切りよく終わらせてお昼でも食べに行こうか」
「わかりました」
「はい。イムヤも行きましょう?」
「わかったわ」

それで四人で食堂へと行く途中でイムヤが「そういえば……」と言葉を発して、

「司令官。潜水部隊の第二隊(ゴーヤ、イムヤ、はっちゃん、イクの四人)がつい最近練度がカンストしていたけど、指輪は渡さないの……?」
「その件か。まぁ私の方針でもあるんだけど、二人目はなるべく渡さないようにしているんだ」
「そっかー。それじゃ私だけが特別なイムヤって事ね」
「まぁ、誤解を生みそうだけど大体は合っているから何とも言えないな」
「そっかぁ……ふふ、それなら少し嬉しいかも」

それで笑顔を浮かべるイムヤ。
うん、良い表情だな。

「提督? どこかイムヤを見る目が可愛い孫娘を見るようなものを含んでいるようですけど……?」
「それはそうだろう。私はみんなの育ての親だからな」
「それでしたら私と加賀さんも孫娘のように扱ってくれるんですか?」
「うーん……それはどうだろう? 赤城と加賀さんは同年代な感じだからどうしても異性として見てしまうし……」
「むっ、司令官は今は女の子でしょう……?」

異性として見られていないような発言にムッとしたのかどこか膨れっ面のイムヤにそう返されてしまった。

「ごめんごめん。大丈夫だよ、イムヤもちゃんと素敵な女の子として見ているから」
「そ、そう……まぁそれならいいん、だけど……」

それでイムヤは気を紛らわすために赤くなっている顔を逸らしてスマホを弄りだしていた。

「提督もなかなか隅に置けませんね」
「まったくです。純粋に言っているのが余計性質が悪いです」

ありゃ。今度は赤城と加賀さんに呆れられてしまった。
うーん……どうしたものか?

《提督は皆さんの事が好きなんですよね》
「まぁそうだな」

榛名が場の空気を呼んでそう言ってくれたんだけど、それでイムヤが反応して、

「でも、司令官が一番好きなのは榛名だってのは知っているんだからね?」
《あう……》
「ははは。うまく返されてしまったな」
「まったく、急に惚気話を聞かされる私達の身にもなってください」
「そうですね、加賀さん」

それでからかわれるんだけど三人とも嫌味では言っていなかったのでありがたかった。


 
 

 
後書き
第168話でイムヤの出番でした。
いや、しっかりとイムヤを出せてよかった。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0169話『雲龍と時雨の秋日和』

 
前書き
更新します。 

 


「雲龍……秋っていいものだね」
「そうね、時雨」

私、雲龍と時雨は鎮守府の近くの森の中にある丘に登って景色を眺めていた。
自然に広がる森林は少しずつだけど赤く染まっていっていて秋の季節を感じられるというもの……。
この紅葉も冬になれば散ってしまう儚く短い命。
それでも一生懸命に染まってくれて、私達がこうして景色を覗けられることに感謝しないといけないわ。

「ふふ……。雲龍、どこか嬉しそうだね?」
「そう言う時雨こそ……」

それで二人して笑い出す。
私と時雨は過去にかなり悪い戦況でともに輸送作戦をした仲だけど、時雨には残念な思いを抱かせたと思う……。
艦載機ももうなかった当時、時雨は必死に私を守ろうとしてくれたけど敢え無く私は轟沈してしまった……。
それが今もきっと時雨の心の枷になっているんだと思う……。

「ねぇ、時雨?」
「うん? なんだい、雲龍……?」

時雨がこちらに振り向く前に私は時雨の事を抱きしめる。
それで一瞬時雨は目を見開いたけど、おそらく私の今の顔を見てしまったんだろう……。

「大丈夫……大丈夫だよ雲龍。今度は、今度こそは僕が雲龍を必ず守るから……」
「うん……」

慰めるつもりが逆に慰められてしまった……。
それで少しばかり自責の念に苛まれるけど、それでも私は言葉を紡ぐ。

「ねぇ時雨……。私はもう、守られるだけの存在じゃないわ」
「うん、知ってる」
「だから、今度は時雨の事も守らせてね……」
「わかった……」

それからしばらく私は時雨はくっついたままだった。
そして少し時間が経過して、

「……さて、それじゃいつまでも過去の事を悔やんでいないで紅葉でも楽しもうか、雲龍」
「そうね。良いと思うわ」

それで私と時雨は手を繋ぎながら赤く染まっている森の中を歩いていく。
提督にも感謝しないとね……。
時雨と私の休みが重なったのを鑑みて一緒に外出届を出してくれたんだから。
それで私と時雨はどこに行こうかという話になって、それでもあまり遠くに行くことも出来ないので鎮守府の周りを周る事にしたんだ……。
それで少し歩いていると偶然見つけた丘に登ってみようという事になっていざ上ってみればそこは素晴らしい景色が広がっているではないか……。
それでいい場所を見つけたなぁと時雨と話していたのよね。
今度、天城と葛城も連れてこようかしら……?
きっと喜ぶわ。
しかし、ふと……、空を見上げてみるとそこには一機の艦載機が私達を見下ろしていた。
誰だろう……? 無断で陸地内に艦載機を飛ばしているおバカさんは……?
そんな事を私は思っていると時雨がとある事に気づいた。

「あれって、龍鳳の艦載機の艦攻だね」
「どうして分かったの……?」
「うん。龍鳳がたまに見せてくれるんだ。私のお気に入りだとか言って」
「そう……」

それで私は少しムッとしてしまう。
せっかく時雨と散歩を楽しんでいたのにまさか除き見られていたなんて……。
あ、艦載機が急いでどこかに行ってしまった。
おそらく私達が気づいたのを焦った妖精さんが逃げていったのね。
別に少し気に入らないからといって撃ち落とすつもりはないんだけどな……。

「どこかに行っちゃったね」
「そうね。まぁいいじゃない? これで邪魔物は居なくなったわけだし」

それでまた散歩を再開した私たちはしばらくして沈み行く夕日を眺めながら、

「また、来たいわね……」
「大丈夫だよ。まだ秋は始まったばかりだからいつでも来れるさ」
「そうね。それにしてもいい夕日……」
「そうだね」

そんな話をしながら私と時雨は鎮守府へと帰って来た。
すると正門の場所にはどこかふて腐れている龍鳳とどうしたものかといった表情の木曾がいた。
たぶん、艦載機を勝手に持ち出したのがバレて叱られたのね。
龍鳳は私たちに気づくと、

「うわーん! 時雨さーん!」

一目散に時雨に抱きついていた。

「聞いてくださいよー!」
「ちょっと落ち着こうか龍鳳。何があったんだい……?」
「あー……時雨、真面目に取り合わない方がいいぞ?
龍鳳の自業自得なんだから」
「そうですけどー! そうなんですけどー!」

涙目の龍鳳はどこか癇癪でも起こしているのか情緒不安定だ。

「……木曾。なにがあったの?」
「まぁ、なんだ? お前たちも気づいたんだろうけど龍鳳のやつ、勝手に艦載機を持ち出してお前たちを監視してたんだろ?」
「そうだね」
「そうね……」
「うー……」

私と時雨が相づちを打って、龍鳳が唸り声をあげ出した。

「まぁ、それで提督にバレて少しばかり叱られるくらいならまだよかったんだ。だけど加賀さん達にバレたのが不味かったな。二人が帰ってくる少し前までこってり絞られたそうなんだ」
「「あー……」」

それはなんとも……確かに自業自得だけど、御愁傷様……?

「私だって時雨さんと一緒にピクニックに行きたかったんです! だけど私は待機だったから、だからぁ……」

とうとう龍鳳が涙を流し始めた。
そこまで時雨の事が好きなのは分かったけど、

「龍鳳? 少しは反省しないとね」
「うぅ~……時雨さん……」

時雨に頭を撫でられて龍鳳はもう色々とダメダメだった。
仕方がないな……。

「しょうがないわね。後で提督にシフトを掛け合ってみるわ。今度は一緒に行きましょう?」
「いいんですか!?」
「うん。僕も構わないよ」
「時雨さん!」

それで嬉しそうな龍鳳に私と木曾はやれやれと言った感じのやり取りをしていた。
その後に私達は提督に感謝の言葉を述べたんだけどその際に、

「雲龍、進水日おめでとう」
「提督……。覚えていてくれてたのね」
「まぁ、一応な。今日の進水日の子は何人もいるから一気に覚えていたのもあるしな」

それでたははと笑う提督。
やっぱり提督はいい人ね。
そんな提督だからこそ、私達も力を出せるのよ。
それで少し嬉しい気持ちで空母寮へと帰っていく。
きっと、明日もいい秋日和になるわね……。


 
 

 
後書き
雲龍の進水日という事でこの話を書きました。
今日は他に神風、青葉、鹿島の三人も進水日なんですけど雲龍をピックアップしました。
来年はこの三人から書こうかな……?



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0170話『風雲の飛龍の心配』

 
前書き
更新します。 

 




数日前に二人目の飛龍さんが艦娘保管庫から連れてこられました。
本人はやる気を出していたようだけど私としては少し不安なのよね。
思い出すのはミッドウェーでの飛龍さんが沈む前の出来事だった……。
大破した飛龍さんの乗組員を全員で巻雲姉さんと一緒に収容出来たところでふと二発の銃声が鳴り響いたのは……。
そして私の甲板に落ちてきたピストルを感じた時には艦船の時にも思ったけど、私は『山口司令官と加来艦長は逝ったのね……』と、私に乗っていた乗組員の人達と同じことを感じていた。
それで二人目の飛龍さんもそんな怖い目に合わないかという不安に駆られてしまった。
それで現在私は空母寮へと足を運んでいた。
相談するのは一人目の飛龍さん。
飛龍さんにその事を相談してみたんだけど、

「あはは! 風雲も心配性ね。私が多聞丸と同じ死に方なんかしてやらないんだからね?」
「ですけど、二人目の飛龍さんはまだこの鎮守府に馴染めていません。だから色々と不安に感じる事もあるのではないでしょうか……?」
「まぁそうだろうね。でも、それでもあの子は飛龍()なのよ? そんな事くらいでクヨクヨするたまじゃないわよ。私が言うんだからそこは確かね」
「はい……」

それで私はそれでもつい顔を俯かせてしまう。
そんな私に飛龍さんが頭を撫でてくれた。

「飛龍さん……?」
「ありがとね、風雲。私の事を心配してくれて……」

そう言ってニッコリと笑う飛龍さん。
その笑みには不安など一切感じなかった。

「それに、もうあの時のように慢心はしないって決めてるんだから! 最後まで足掻き続けるわよ! それが私の取柄なんだから!」

おそらく赤城さん、加賀さん、蒼龍さんが沈んだ後も奮戦した事が飛龍さんのやる気の源なのだろう。
私はそこまで強い心を持てないからどうしても憧れてしまう。

「……私は、これといって武勲がありません。それでも、飛龍さんは私の憧れです。だからどこまでも着いていってもいいでしょうか……?」
「うんうん! もちろん構わないよ! どこまででも着いてこさせるんだから! そこが私達の勝利の場所なんだから! 二ヒヒッ!」

惚れ惚れする笑みを浮かべる飛龍さんには敵わないなと思っていたところに、

飛龍()~……? 今日のノルマが終わったわよー?」

二人目の飛龍さんが部屋に入ってきた。

「お! 噂をすれば……」
「何のことよ……? あ、風雲じゃん?」
「どうも。飛龍さん、今日は練度上げに行っていたんですか?」
「そう。演習にキス島と行くところは決まっているから少し飽きてくるよねー?」
「そんな事を言わないの。早く改二になって蒼龍を迎えるんでしょう?」
「うん。そこは早めにやっておきたいね」

二人の飛龍さんがそんなやり取りをしている。
二人を見比べてみればどこかしこにいくつか違いがあるから見分けはつく方ね。
一人目の飛龍さんはどこか自分を誇っていて自身の笑みをよく浮かべる。
対してまだ二人目の飛龍さんは艦載機と自身の実力が伴っていないのを気にしているのかまだまだ不安は抜けない感じだ。私が感じた通りのイメージよね。

「飛龍さん! なにか困った事があったら相談に乗りますから言ってくださいね!」
「お、おおう……? なんだろう、風雲が妙に私に優しい……?」
「ま、素直に受け取っておきなさいな。今日はあんたの心配をして私に相談を尋ねてきたんだからさ」
「あっ……! それは言わないでください!」
「あっはは! 風雲、顔が真っ赤だよ。いいじゃない、それくらい? 知らない仲じゃないんだからさ」
「まぁ、そうですけど……」

そんな会話をしながらもそれから相室の蒼龍さんが部屋に帰ってくるまで私達は色々な話をしていった。
そして空母寮を出る際に、

「ま、私の心配もいいけど風雲自身も自分の事を心配しておきなさいよ? まだまだ練度が低いんだから」
「はい、精進します」
「ふふ。それじゃ頑張ってね」

それで飛龍さんは空母寮の中へと戻っていった。
その後ろ姿を見送りながら思った。
やっぱり飛龍さんは私の憧れの人なんだって……。
だから私自身も強くならないと!
そんな思いを抱きながらも私は気づけば執務室へと足を向けていた。

「提督? 少しいいかしら……? 風雲よ」

私は執務室の扉をノックして提督が中にいるかを確認した。

『風雲か。入っていいよ』
「それじゃ失礼するわね」

それで執務室の中に入らせてもらうとそこには夕雲姉さんと巻雲姉さんという先客がいた。

「あら、風雲さん。どうしたの……?」
「そういう夕雲姉さん達だって……どうしたの?」
「うん。今日は巻雲達が司令官様の手伝いをしているのだー!」

「えらいでしょ!? 褒めて褒めて!」と巻雲姉さんが言っているけどどうにも気が抜けるような思いだわ。

「それで風雲はどうしたんだ……? 用があったんだろう?」
「そうね。提督、今の駆逐艦の練度上げの状況ってどうなっているの?」
「そうだなぁ……。もう少しで朝風と旗風の二人が練度70になるから次には遠征で鍛えている中で練度が高い朝雲と山雲を育てようと思っている。その四人が終わったら次は浜風かなと考えているかな……?」
「そう……。それじゃ浜風の次でいいから私を練度上げをしてもらってもいいかしら?」
「またどうして……? まぁ最終的には全員上げるつもりではあるけどな」
「強くなりたいの……。今も二人目の飛龍さんが練度上げを頑張っているんだから私もと思って……。ダメ、かしら?」

それで提督の顔色を伺うけど、どうにも優しい表情だった。

「そうか。まぁみんながみんな、誰かのために頑張ろうとはしているからな。わかった。浜風の次にシフトを入れておくよ」
「ありがとう、提督」

いい返事を貰えたのでよかった、んだけど、

「風雲いいなぁ~。夕雲姉さんと巻雲もまだ練度が低いから上げてもらいたいよー」
「そうねぇ。ねぇ、て・い・と・く? 夕雲たちはいつ上げてくれるのかしら……?」

巻雲姉さんがそれで袖をパタパタさせて羨ましがっていて、夕雲姉さんに至っては提督をその甘い音色で催促している。
うん……ごめん、提督! 相談する機会を間違えたわ!

「そ、それはだな……」

案の定、提督は少ししどろもどろになってしまっている。

「そ、それじゃ提督、頑張ってねー?」
「あ! 風雲、私を置いて逃げるなー!」

提督の救いを求める声を敢えて無視して私は執務室から脱出した。
後で夕雲姉さん達に何か言われそうだけど私もあの空間は少し苦手な部類だから提督には生贄になってもらおう。
さて、それじゃ鍛えてもらえるまで自己鍛錬を頑張ってやろう!


 
 

 
後書き
今日は風雲の進水日という事で書かせていただきました。
風雲と飛龍の史実は少し物悲しいですよね。多聞丸の最後のとことか……。
後半から少しテンポが変わったけどまぁいつもの事ですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0171話『陽炎と叢雲の進水日』

 
前書き
更新します。 

 





私が廊下を資料を持ちながら歩いている時だった。
目の前にいきなり陽炎が現れて、

「ね、司令。ちょっといいかな?」
「どうした陽炎?」
「うん。厳禁な話なんだけど今日って何の日か知ってる……?」

陽炎の言葉に少し考えてみる。
そして思い当たるのはやっぱりあれだろうと思って、

「そうだな。今日は陽炎の進水日か?」
「あったり! さっすが司令だね。だけどまだ正解じゃないかな? もう一人いるでしょう?」
「叢雲の方か?」
「うわー……やっぱり把握しているんだね」
「なんだ。答えてやったのにその露骨に嫌そうな顔は?」
「いや、司令って大体の艦娘の進水日は把握しているんだなって再確認しただけよ。その日になったら何かを贈っているのは知っているから」
「そうか。それだと陽炎は何か欲しいものがあるのか? わざわざ催促に来るって事は?」
「いやいやそんなんじゃないって! ただね、叢雲の件なんだけどね」

それでどこか表情を曇らせる陽炎。叢雲が何かあったのかな?

「つい数日前なんだけど叢雲にそれとなく進水日が同じだねって尋ねたんだけど、あの子自分の進水日の事を覚えていなかったのよ」
「あの叢雲がか……?」
「うん。それで場は流れちゃったんだけど、司令、どうしたらいいと思う……?」
「どうしたらいいか、か。まぁこういうケースもなくはないからサプライズで贈り物を渡して驚いてもらうのも一つの手だとは思うけどな」
「そっか。サプライズプレゼントって手もあったか。ありがと司令! 私もちょっと考えてみるよ」

そう言って陽炎はなにかを決意したような顔をして走っていってしまった。

《陽炎さん、何を思いついたのでしょうか……?》
「さぁな。まぁこちらも二人分のなにかを用意しておくか」
《そうですね提督》

それで私と榛名はいつも通りの酒保でなにか彼女達に合ったいいものはないかと検討をしていた。






なにか最近陽炎が私の周りをうろちょろするようになったんだけどなにか用かしら……?
小声で進水日がどうとか言っていたけど、それ関係かしらね?
まぁ陽炎が話をしてきた時につい反射的に知らないとか答えちゃったけど今日が私と陽炎の進水日だってことはしっかりと知っている。
そして司令官も密かに動いているのも知っている。
だから余計に目につくのよね。私も何かをしないといけないかしらって思うほどには……。
それでどうしたらいいか、吹雪に相談してみた。
こういう時にはあの子は役立つからね。

「で、どうしたらいいと思う?」
「うーん……叢雲ちゃんだけだったらいいんだけど陽炎ちゃんの進水びと被るかぁ。それじゃ叢雲ちゃんもなにかを用意してあげた方がいいんじゃないの? 陽炎ちゃんもなにかを用意しているんだったらお互いに楽しくなると思うし」
「やっぱりそうなるのよね。さて、それじゃどうしたものか……?」
「なんならプレゼント選び、私も手伝うよ? 私達も叢雲ちゃんになにかあげようって数日前から姉妹艦で話し合っていたし」
「あんたねぇ……素直なのはいいけど私の前で言うのはどうかと思うわよ?」
「えー? いいじゃない」

そう言って吹雪は私に抱きついてくる。
むむむ。普段から騒がしい子だったけど今日は余計に甘えてくるわね。
まぁ悪い気はしないけどね。

「それじゃ酒保にでもいこうか」
「そうね」

それで吹雪と一緒に酒保へと足を運んでいく。
するとばったり司令官と遭遇してしまった。

「お、叢雲に吹雪か」
《こんにちは。吹雪さんに叢雲さん》

司令官と榛名さんに挨拶をされたので私達も挨拶をした後に、

「司令官も叢雲ちゃんと陽炎ちゃんのプレゼント選びですか?」
「まぁ本人の前で言うのもどうかと思うけどそうだよ」

それでどこか苦笑いの司令官。

「ほら。吹雪、渡すまでは隠しておくのもありなのよ」
「状況によりけりだと思うけどな?」
「しかし、叢雲。君は進水日の事を忘れているんじゃなかったのか?」
「えっ? 誰からそう聞いたの?」
「陽炎からだけど……。それで私もサプライズプレゼントをしようと思っていたんだけど」

司令官はそれで「考え直さないとな」と言っていた。
それにしても、やっぱりあの時の咄嗟の言葉でそう誤解しちゃったのね、陽炎は。
ま、それならそれで好都合かしら?

「それならそれを利用してやろうかしら?」

私がそう言うと司令官と吹雪がニッコリと笑みを浮かべる。

「な、なによ……? 言いたい事があるならはっきりと言いなさいな?」
「いや、叢雲は優しいなって思ってな」
「うんうん。さすが私の妹です」

なにか司令官と吹雪がお互いに分かりあっているのか笑みを浮かべあっている。
少しむかつくわね。
まぁ、いいけど。
それで私は陽炎に何を渡すか選んでいたんだけど、渡すものが決まった時にそこに不知火がやってきた。

「叢雲。陽炎が部屋に呼んでいましたよ。おそらくサプライズがどうとか言っていましたからそう言う事でしょうね」
「ん、ありがと不知火。それじゃ司令官も一緒に行きましょう?」
「いいのか?」
「ええ。どうせ渡すんだから一緒の方がいいでしょう。不知火はどうするの?」
「私は陽炎型のグループの方で渡しますので叢雲と司令の方で先にやっておいてください。それでは」

それで伝える事は伝えたのか不知火はどこかに行ってしまった。

「不知火もあれで姉思いだからな。色々とみんなで用意でもしているんだろな」
「そうね。それじゃ行きましょうか」
「ああ」

それで私と司令官で陽炎の部屋へと向かおうとしたんだけどそこで吹雪が、

「あ、叢雲ちゃん。後で私の部屋にも来てね?」

そう言って吹雪もどこかに行ってしまった。

「ははは。何か想像できるだけに良い事じゃないか」
「そうでもないわよ。吹雪型は結構盛大に開くから疲れるのよ」
「そうは言うがどこか楽しそうじゃないか?」
「ばっ! そ、そんなんじゃないんだから……」
「わかったわかった。酸素魚雷は食らいたくないからここまでにしておくよ」
「うー……」

私の決め台詞を先に取られてしまったのでなんか消化不足ね。
まぁいいわ。
それで私と司令官は陽炎の部屋へと向かう。
そして扉をノックして、

『入っていいよ』

と、陽炎の声が聞こえたので扉を開くとそこには陽炎が待ち構えていた。

「叢雲! 進水日おめでとう!」

そう言ってクラッカーを鳴らしていきたんだけど、

「あれ……? あんまり驚かないね?…って、司令も一緒なの?」
「ああ」

それで司令官は叢雲に色々と説明をしていた。
それで陽炎は納得した顔で、

「そっかー……叢雲は本当は知っていたのね」
「誤魔化して悪かったわ」
「別にいいわよ。それじゃお互いに……はい!」

陽炎は私にラッピングされた箱を渡してきた。
それなので私も同じく箱を渡す。
それで同時に中身を空けてそれぞれに合った物が出てきたので私と陽炎は互いに笑みを浮かべあう。

「それじゃ私も二人に渡しておこうか」

その後に司令官も私達にプレゼントを渡してきたので姉妹艦でのパーティの前のプチパーティを三人で開いた。
とても有意義な時間だったと思ったわね。


 
 

 
後書き
二人の進水日祝いを同時にやりました。
こうでもしないと二人とも出せないので。
陽炎と叢雲、進水日おめでとうございます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0172話『アイオワの様変わり上戸』

 
前書き
更新します。 

 





後少しで秋刀魚祭りが開催されようとしているこの頃。
私は珍しくアイオワに居酒屋鳳翔へと誘われていた。

「ヘイ、Admiral。最近の調子はドウデスカ……?」

アイオワが私にお酒を手渡ししてきながらそう聞いてくる。
それをありがたく受け取りながらも、

「ありがとう。まぁぼちぼちやっているよ。最近は後少しで駆逐艦のみんなの練度上げも終盤段階に入りそうな感じだから秋刀魚祭りも並行してやっていかないとな」
「ノンノン! そういうのじゃなくてハルナとの仲デス!」
《ふぇ!?》

そのアイオワの言葉に私が反応する前に榛名が先に反応していた。
榛名って結構いきなりの事には弱いよな。
そんな榛名も可愛いけどなと思いながらもアイオワの言葉に返事を返す。

「特に変わりはないよ。いつも通り私は榛名の事が好きな事は」
「オー! さすがね。もうこの世界に来た頃のAdmiralじゃないのね。初心な反応が見れなくて残念デス」
《あ、あの……その、あうぅ……》

榛名は顔を赤くしていて可愛いなぁ。

「ハルナの反応が一々私のやばい琴線に触れるわね! とってもキュートだわ! 抱き着けないのが残念ね……」
「それには私も同感だ」
「Admiralもわかっているわね! そういうAdmiralにはもう一本ビールをプレゼントするわ。ホウショウ! お代わりお願い!」
「はいはい。でもアイオワさん、提督はお酒が苦手なのですからほどほどにしてあげてくださいね?」
「わかっているわ!」

本当だろうか……?
もう酔ってきた感覚があるしな。
それで鳳翔さんが気を利かしてくれたのかお冷を持ってきてくれた。

「提督どうぞ。さすがに連続で飲まれますと明日に響きますよ? 休み休みでいいではないですか」
「ありがとうございます、鳳翔さん」
「オー! これが噂のテイシュカンパクって奴かしら?」
「嫌です、アイオワさん……。私は提督とはそんな仲ではありませんよ?」
「そうはっきりと言われると傷つくのだがな……」
「あ、すみません。ですが提督には榛名さんという素敵な女性がいるではありませんか」
「それはご尤もで」
《あの、提督も、アイオワさんも鳳翔さんも! 榛名をからかわないでください!》

もう榛名は涙目で訴えているので触れたら抱きしめているかもしれないくらいには可愛いのである。

「ごめんごめん榛名。少し酔いが回ってきてるようだからいつもより口が軽くなっているのかもしれないな。元の世界では私はお酒が入るとよく笑うって言われていたから」
「提督は笑い上戸なんですよね。それは私ももう知っていますよ」
「アイオワも知っているわ! 再会した日の宴会でそれは見たからね。笑いながらバシバシとコンゴウを叩いていたわね」
「そんな事をしていたのか私は……」

それでやはりお酒は控えめにしないといけないなと感じていた。

「思い出しますね……。アイオワさんも提督がいなくて寂しがっていましたよね」
「それはホウショウも一緒でしょ? あの時はみんな不安だったのよ……戦艦と空母のみんなで手分けしてメンタルケアしていたけど、あのままAdmiralが来てくれなかったらきっと私達は崩壊していたわね。思い出しただけで寒気がするわ……」
「そうですね」

そう言ってアイオワは体を抱きしめていた。
鳳翔さんも同意見なのかうんうんと頷いているし。

「そんな状況とは聞いていたけどそこまでだったのか」
「そうよ! Admiralが来るまでの数日は本当に地獄だったんだから!」

そう言ってグビグビとビールを飲み干すアイオワはもう完全に酔っ払いだな。
ダンッ!とジョッキを下ろすと、

「あーもう……あの時はね。本当に、ホントーに心配したんだから……サラとかもコンゴウとかもみんながみんな……だっていうのにAdmiralと来たら……ヒック……エグッ……」

ッ!?
アイオワが怒り上戸から泣き上戸に変化した!
カウンターに突っ伏してながら泣き出してしまっている。

「あらあら……。どうしましょうか。ここに来てあの時の事を思い出してビールも回ってしまったようですね」
「どうしましょうか鳳翔さん?」
「これは落ち着くまで付き合うしかないですね。ちょっと待っていてください。もういい時間ですので暖簾を下ろしてきますので」

そう言って鳳翔さんは少し席を外していた。

「Admiral……もう、消えない、でね? あの時の、あんな思いは……二度と嫌、なんだから……」

まるでうわ言のようにアイオワは呟く。
そんなアイオワの背中を私は擦ってあげる。

「大丈夫……私はみんなの前から消えないよ……」
「約束、よ……」

それでアイオワはそのまま眠りについてしまった。
ふぅ……なんとかなったな。

《アイオワさんも今までこんな不安を抱えていたんですね……》
「だな。いつも周りを元気づける明るさの持ち主の人だったから、こんな思いを今まで抱えていたなんて知りもしなかったからな」
《大規模作戦でも終盤は先陣を切っていましたからね》

そんな話を榛名としていると鳳翔さんが戻ってきて、

「みなさんもアイオワさんと似たような不安をいつも抱いているんですよ。かく言う私も提督がまたいなくなってしまったらという不安を持っています。ですから時間が解決してくれるでしょうけどまだ皆さんのこんな顔を見る事も稀にはあると思いますので提督はその場に遭遇したら慰めてあげてくださいね? 特に駆逐艦の子達はその傾向が強いですから……」
「わかった」

鳳翔さんとそんな約束をして私は眠ってしまっているアイオワを背中に背負って戦艦寮へと足を運んでいた。
そしてアイオワの隣の部屋にいるであろうウォースパイトを呼んだ。

「はい。どなたでしょうか?……あ、Admiralでしたか。どうされました?」
「ちょっとアイオワがお酒の飲み過ぎでダウンしてしまったんで代わりに介抱してくれないか?」
「まぁ……あのアイオワが。わかりました」

それでウォースパイトに任せて私はその場を後にしようとしたんだけどアイオワの手が私の裾を掴んだままで離してくれなかったので、

「今日はこのまま居座るのを検討に入れておくか」
「ふふ。アイオワも甘えん坊さんですね」

それなのでせっかくだから金剛とかも呼んで今日は戦艦寮で一日を終えた。
翌朝になってアイオワが起きたのか、

「……あれ? なんで私の部屋にAdmiralが?」
「昨夜の事を覚えていないのか?」
「Admiralと一緒にお酒を飲んでいたところまではなんとか思い出せるんだけど……うーん……」
「ま、忘れているんならそれでいいよ。今はゆっくり横になっていなさい。なにか酔い覚ましに効く料理でも作ってやるから」
「サンキュー……」

それでアイオワは昨日の事はもう忘れていたんだけど私は自覚をしないとな、という思いを感じていた。
みんなの提督であると同時に家族でもあるんだから。


 
 

 
後書き
今回は特に関係はないんですけどアイオワをチョイスしてみました。
普段活発な子がこんな弱い一面も持っているのもいいと思うんですよ。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0173話『夜はいいよね』

 
前書き
更新します。 

 




………今の時間は丑三つ時。
その時間帯に四隻の艦娘が夜の海を航行していた。
旗艦は川内から見てわかる通り、夜の巡回をしているグループである。
随伴艦は今回は江風に嵐、磯風の三人だ。

「川内さーん! 今のところ異常はありませんね。今日はとても静かです」

随伴艦の嵐が川内にそう報告する。

「そう……わかった。もう少し巡回したら帰投するとしようか……」
「「「了解」」」

川内は基本夜戦バカと主に言われているけど巡回中はとても静かなのである。
まるで牙を研いでいる獣のようで、そんな川内の姿に憧れを持った一部の子達が川内の夜の巡回に付き合うのである。
そんな時だった。

「川内さん! 敵影確認しました! 数は四、主に水雷戦隊編成です」

江風がそう報告する。
それで川内はニタァ……と、少しだけ口を弧にして嗤う。

「よーし。それじゃちょうどこちらも四人。水雷戦隊魂を見せる時よ」
「いいだろう。この磯風、やる気を出させてもらおうか」

それで磯風が主砲を構えながら川内の指示を待つ。
同じように嵐と江風も主砲を構えて指示を待っていた。
その指示を出す川内はまだだまだだと心の奥で縛っている気持ちを解き放とうとしている。
そしてついにその時が来た。

「全員構え! よーく狙いなよ? 砲雷撃戦開始!!」

川内の命令によって主砲から火花が散り装填された弾丸が発射される。
それは全弾まずは敵水雷戦隊の前方方面へと着弾してそれに気づいた深海棲艦は慌てて迎撃態勢を取ろうとするが、

「迎撃態勢なンて……取らせるわけないじゃン?」
「嵐、江風……行ってきなさい!」
「うっす!」
「いっくぜぇ!」

川内の命令によって嵐と江風が突撃していく。

「磯風は私となにかイレギュラーが起きた時のために待機ね」
「うむ。委細承知した」

何も不満も漏らさずに磯風もそれに従う。
夜戦バカと言ってもなにも考えずに突撃するほど川内はバカではない。
過去に水雷戦隊の旗艦を務めていた経験からもっともいい最適解を出して各個に指示を出しているのだ。
そして突撃していった嵐と江風は瞬く間に敵深海棲艦を駆逐していた。

「ふいー……無事に殲滅できたな」
「気を抜くなよ江風。こういう時画一番危ないんだ」
「わーかってるって! 大丈夫、こういう時が一番危ないっていうのは川内さんに叩き込まれてるかンな」

江風はそう言って二ヒヒと笑う。
それに嵐も「ならいいんだ」と言って川内達のもとへと帰っていく。

「川内さん。深海棲艦の駆逐完了しました」
「うん、ご苦労様。今回は私が出張るほどじゃなかったかな……?」
「深海棲艦が深夜に活動しているのは稀ですからね」
「そうっすよ。だから川内さんが出張ることは無いっすよ。イヒヒ」
「そうだな。私としては少しばかり暴れたりなくて不完全燃焼だが、だが深海棲艦がいないのはいいことだからな」

四人でそれでその後に反省会などを開いている時だった。

「うっ!? さっむ!」

江風が思わず吹き付ける風邪で身体をさする。

「あー……そろそろ寒い季節になってくるからね。そろそろ防寒着を着こんだ方がいいかもね。夜は寒いから」
「ですね。でも……のわっちやはぎぃとかも来ればよかったのに……」
「そう言わないの。特に萩風は夜は苦手なんだから」
「それは分かっていますけどね」

川内にそう諭されて嵐はしぶしぶ引き下がった。
川内はこう見えて艦娘達の繊細な部分を見分ける目を持っている為にこういう時は気遣える気持ちを持っている。
だからなのか着いてくる子が多いのは実績ゆえなのだ。

「そういえば……川内さん」
「んー……どうしたの磯風?」
「いえ、今日か明日から秋刀魚祭りが開催されますが川内さん的にはどう考えているのかと……」
「そうだねぇ。船団護衛とかが増えそうなイメージだから頑張らないといけないなという感じかな?」
「だなー。提督は地元の漁師さん達とも懇意にしているから秋刀魚漁の時は護衛に着くのは確実だね」

それでみんなは提督の事を思い浮かべる。
なにかと町の視察に行っては町内会の人達や市民の方々と話をしてくるのを。
おそらく今日も町内会へと顔を出しに視察に行くのだろうと四人は予想する。

「ま、なにはともかく今年は秋刀魚も少し不漁らしいから取り過ぎないように注意しないとね」
「そうですね」

そうして話をしている間に夜が明けてきたのか日差しが昇ってきて朝焼けが海を照らす。
それを確認できたのか川内は声を出す。

「よし。今日の夜の巡回も終了だね。近隣の町への被害もなし、鎮守府への襲撃もなし。みんなが起きてくる前に帰投していこうか」
「「「了解」」」

それで四人は鎮守府への航路を確保しながらも帰っていく。






そして四人は鎮守府に帰投後に夜の報告担当の方の大淀に巡回報告を済ませてそれぞれ部屋へと帰っていく。
川内もそれで朝のためにいつものようにだるい表情をしながらもぐてーっと体を伸ばしながらも鎮守府の廊下を歩いている。
もう少ししたら部屋で眠るか……と考えているとそこで提督と朝の遭遇を果たす。

「あぁ、川内。おはよう」
「おはよー提督……」
「いつもながら朝はダルそうだね」
「まぁねー……」

それで提督は川内に近づいていき笑顔を浮かべながら、

「いつも夜の巡回ありがとうな、川内」
「……いいって。私はいつも通り夜戦バカを通してみんなが安心して眠れるように頑張ってるんだからその努力を分かってくれる人がいるだけでこれからも頑張れるしね」
「そうか」
「ま、そういうわけでそろそろ少し眠ってくるわ。それじゃね、提督」
「ああ。ゆっくり休みなさい」

それで川内は提督と別れて部屋へと戻っていくのだけど、

「(うー……変に提督と遭遇しちゃったから目が冴えちゃったよ。やっぱり提督の笑顔は効くなぁ……)」

と、すっかり眠気が覚めてしまっていたためにどうしようかと川内は心中で困っていた。
この鎮守府の間では提督の笑顔はかなり効果があるという噂は絶えないので見たいという子が後を絶たないのが現状であり、見れた子もやる気がみなぎっているという話を川内は思い出して、

「(やれやれ……私も毒されてるね)」

と、思っていたけど、でもそれも悪くない……と感じていたのであった。


 
 

 
後書き
川内の回でした。

今日から秋刀魚漁が解禁されますから頑張りたいと思います。
報酬が気になるところですね。
今回の大漁旗は誰が作るものなのか楽しみです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0174話『秋刀魚漁、解禁』

 
前書き
更新します。 

 





大本営から正式に秋刀魚漁の解禁のお達しが来た。
それなので私はまずは同じ近海の久保提督と電話で話をしようと思っていた。
電話をかけて数秒して、

『はい。こちら第164号宿毛湾泊地です』

出たのはやはり久保提督で合っていたようで私は言葉を返す。

「久保提督ですか。榛名提督です」
『榛名提督ですか! お久しぶりですね。活躍は常々聞いていますよ』
「ありがとうございます。それなのですがさっそく本題に入らせてもらってもよろしいでしょうか?」
『はい、構いません。おそらく大本営から発せられた秋刀魚漁の事なのでしょう?』
「お分かりでしたか。はい、その件でですが久保提督は現在どの程度の艦隊練度になっていますか? もしよろしかったら船団護衛とかなので協力をしようと思いまして」
『そうでしたか。はい、今のところはですね―――……』

それで久保提督の艦隊の練度などを聞いていると少し驚いていた。
久保提督は提督業を開始したのは今年の4月からだというけど通常海域で行ける場所は今のところは西方海域のカスガダマ沖まではいけるそうだ。

「最後に会ってから結構仲間が増えたようですね」
『はい。以前に貰った榛名提督の練度上げの資料なども参考にさせてもらいまして平均的には上がってきていますね』

聞くとまだ改二艦は数人しかいないようだけどそれでも十分活躍はできるという。
艦娘の平均練度は60程度で通常海域でドロップする艦娘はほとんど入手しているという。
それならばもう新人とは言えないだろう。
さすが海軍学校を首席で卒業したというだけはあるね。

『それでですがまだ西方海域までしかいけませんから奥の方の南方海域や中部海域などの方は榛名提督の方でお願いしたいんですけど大丈夫でしょうか……?』
「わかりました。それじゃまずは町の漁師さん達にどこに漁に行くかを聞いて分担して船団護衛をしていきましょうか」
『そうですね。それではまずは町内会に顔を出しましょうか。おそらく私達の事を待っていると思いますから』
「ですね」

それで私と久保提督は一度合流して町に顔を出す方向で話は決まった。





それから一時間後に私と久保提督は町の入口で合流していた。
だけどそこで驚いたのは久保提督の連れている艦娘が天龍と龍田だったのだ。
なぜ驚いたかって?
それは私も今日は天龍と龍田を連れてきていたからだ。

「あらぁ~? 天龍ちゃんが二人もいるわ~」
「そうね~。私としては少し嬉しいかも~」
「「コワッ!?」」

ウフフフフ……と語り合う久保提督の龍田と私の龍田。
それで天龍はどこか二人とも寒気を感じたのか体を擦っている。

「あはは……。まぁこういうこともありますよ」
「そ、そうですよね。気にせずに行きましょうか榛名提督」

それで背後で笑っている龍田と怖がっている天龍を横目に流しながらも私達は町内会へと顔を出す。

「町長さん、いますか?」
「おー、提督さん方。よくおいでになりましたね。待っていましたよ。ちょうど私達も話し合っていたところなんですよ」

町長さんに歓迎されて私達は席に着かせてもらう。

「さっそくですが、提督さん方にお願いがあります。今日から解禁になりました秋刀魚漁で艦娘の子達に船団護衛をしてもらいたいと思っているんですよ」
「それはこちらもお願いにしに来たものですから快く引き受けますよ」
「はい。大本営からも秋刀魚漁の支援をお願いするというお達しを受けていますから」

私と久保提督でそう言葉を繋げると町長さんを始めとし町内会のメンバーの方々はどこかホッとしたような顔つきだった。
以前になにかあったのだろうか……?
思い当たるとすれば、

「その反応から察しますともしかして話に聞く前の提督となにかありましたか……?」
「ええ、まぁ……」

それで町長さんを始め漁業関係者の人達も思い出しているのか苦い表情になっていた。

「以前に話しましたがあの時の提督は暴虐の限りを尽くしていましたので秋刀魚もほとんどが提督の手に落ちてしまってただただ無駄足ばかりを食わされましたもので……」
「そうだぜ! 俺達がせっかく漁で取ったものを奪われちまったからたまったもんじゃなかったぜ!」
「そうだな」
「ああ……」

口々に以前の提督の悪口が飛び交う場で私と久保提督はどうしたものかと途方に暮れていると、

「みんな、静まりなさい。今ここで愚痴っても提督のお嬢さん方には何の得にもなりませんよ」
「そうだな……」
「悪かった、提督さん……」

町長さんの一声でなんとか町の人達は声を収めてくれた。
よかった……。あのままだったら少しお腹がキリキリしそうだったから。

「話は戻りましょう。提督さん方、漁をする場所や時間などの指定などは随時鎮守府へとお知らせしますのでその時はどうぞよろしくお願いしますね」
「わかりました」
「お任せください」

それで一度会談は終了した。
その帰り道の事、

「なんかよー……前にも聞いたけど前に赴任していたっていう提督はかなりのクソだったんだな」
「ああ。それにはオレも同感だ。町と一丸になってやっと取れる秋刀魚漁なのにそれを根こそぎ奪うとか馬鹿らしいぜ」

二人の天龍がそう言って前任の提督の愚痴を開始していた。
それで私達も二人の言い分に納得できる部分もあるだけに二人の愚痴を止めることが出来なかった。

「まぁまぁ天龍ちゃん達、落ち着いて~」
「そうよ~。もう過去の人の事を話していてもしょうがないでしょう~? 前を向いていこうよー」
「そうだな……。わりぃ、龍田。どうにも頭に血が昇っていたみたいだ」
「オレも反省しておくわ」

それで四人は落ち着いたので、

「それでは久保提督の方は今の艦隊練度に合った装備で構いませんので分担をよろしくお願いしますね」
「わかりました。まだまだ榛名提督には及ばないと思いますが頑張らせてもらいますね」
「お互いに頑張りましょうね」
「はい」

それで久保提督と笑みを浮かべあって私達はそれぞれの帰路についた。

「さて、それじゃ私達も頑張っていくとしようか」
「そうだな」
「ええ、頑張るわ~」

期間は二週間。それだけあれば任務も十分達成できるだろう。頑張ろう。


 
 

 
後書き
昨日は四尾だけ取って寝落ちしてしまいましたので今日は頑張ろう。
なにげに海防艦のレアリティが上がったのはすごいですね。対潜や運だけならまだしもついに耐久まで上がる時が来たとは……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0175話『多摩の応援』

 
前書き
更新します。 

 





ついにこの日がやってきたにゃ!
秋刀魚漁解禁にゃ!!
去年に秋刀魚漁のために作った応援旗を多摩は引っ張り出してきてその手に持つ。
これを持っている間はやる気がみなぎってくるみたいにゃ。
提督も初日から船団護衛をしながらも秋刀魚漁を開始するみたいだからさすがだにゃ。
それで執務室へとさっそく応援旗を持ちながら向かってみるとするにゃ。
そっとドアを開けてみれば提督は電話で町の人と話をしているのかメモをかなり取っているのが目につくにゃ。

「……提督。今は大丈夫かにゃ?」
「多摩か。どうした?」
「うん。秋刀魚漁が開始されたから応援しに来たにゃ」
「そうか。それじゃ今日から各自皆には出撃してもらう予定だから多摩はそれで応援してもらっててもいいか?」

提督の言うそれとはやはり多摩が持っている応援旗かにゃ。

「わかったにゃ。多摩、応援頑張るにゃ」
「ああ。まずは鎮守府近海の対潜掃討部隊が出撃するところだから今ならまだ間に合うと思うから行ってみたらどうだい?」
「わかったにゃ!」

それで多摩は港へと走っていく。
その途中で磯風と出会う。

「あぁ、多摩さんか」
「どうしたんにゃ? 磯風」

見れば磯風の恰好は割烹着を着ていたのでいつもと違って目立っていた。
そういえば去年もこんな格好だったにゃ。

「いや、せっかく秋刀魚祭りが開催されるのだから私も張り切って焼こうと思ってな」
「そっか……。ま、頑張るにゃ」
「ああ。だから秋刀魚漁のメンバーにはぜひ頑張ってもらいたいと思っている」
「そうだにゃー」

そんな話をしていてふと窓の外を見ると海防艦のみんなが出撃しようとしているのを見つけて、

「あ、磯風、話はまた後でするにゃ! 今は多摩はみんなの応援にいかなきゃいけないにゃ!」
「そ、そうか。わかった……」

それで磯風と別れて急いで港へと到着した。
みんなはもう艤装を展開していていつでも出撃可能な状態だったにゃ。
旗艦の松輪が多摩に気づいたのかこちらへと目を向けてきてくれたにゃ。
よかったにゃ。なんとか応援が出来るようだにゃ。

「あの、多摩さん。どうしましたか……? そんなに息を切らして……」
「いやにゃ。みんなを応援するために来たんだにゃ」
「あ、そうでしたね。多摩さんはその応援旗で去年はいつも送り出してくれてましたね」

随伴艦の朝潮が多摩の持っている旗を見て思い出したかのようにそう言った。
そうにゃ。
去年までは確かにゲームの中だったから提督は知らない事だったらしいけど多摩だって無駄に過ごしていたわけじゃないにゃ。
ゲームの中だって応援くらいはしていたにゃ。
それが今年は本物の体を得てこうしてみんなを送り出せることが出来る。
これ以上の幸せなことは無いにゃ!

「そうにゃ。だからみんなを応援して送り出してやるにゃ! にゃふーーーー!!」

それで多摩は応援旗を振ってみんなを送り出してあげた。

「さっすが多摩さんね! それじゃ国後達も行ってくるわね!」
「行ってまいりますね」
「はりきっていきましょう!」
「あ、あの……旗艦の松輪に着いてきてください……。今日の船団護衛は鎮守府近海の海ですから比較的落ち着いて出来ると思いますので……」

そういう感じで松輪、大鷹、国後、朝潮の四人は海へと駆り出していった。
それを多摩は見えなくなるまで旗を振りながら送り出していた。

「よし。多摩の任務は完了にゃ」

それで出来る事も無くなったので多摩はまた一度執務室へと戻っていくことにしたにゃ。
そしてまたしても磯風と遭遇する。
どうやら待っていたみたいにゃ。

「ふふ。さすがだ多摩さん。見てましたよ。この時期の多摩さんは張り切っているからな」
「当然にゃ。みんなを応援して、船団護衛してその褒賞として秋刀魚を貰えて、それをみんなで調理して食す……。それはとても幸せなことにゃ」
「それには同感です。私も一昨年の秋刀魚漁でこの鎮守府に配属になったから思い入れはあるからな」

そういえばそうだったにゃ。
磯風は一昨年の秋刀魚祭りで期間限定実装されてドロップして鎮守府に配属になったんだったにゃ。
提督は期間限定でも逃さない人だからかなり掘ったのは思い出せるにゃ。

「みんなはどれくらい秋刀魚を持ち帰ってきてくれるかにゃ……?」
「ざっと見繕ってもかなりの量がないとみんなに行き渡らないからな。毎日人数分の漁を捕獲するのは骨がいりますね」
「そうだにゃ。まぁ、深海棲艦のせいで普段は海への漁をする船はいないし、隣国の密漁船も同じく深海棲艦のせいで来れるわけもないから魚の漁はかなり豊富だろうから安心できるにゃ」
「そうですね。こういうのもなんだけど提督の世界の情勢はデータで見たことはあるけど隣国からの密漁が盛んに行われていましたから……」

それで磯風と多摩とでため息を吐く。
まぁ、この世界ではあまり関係ない事だから気にしないで行くとするかにゃ。

「まぁ楽しみにしているにゃ」
「そうですね。私も張り切って焼こうと思っていますから楽しみにしていてください」
「ま、ほどほどに頑張るにゃ……」

磯風はこういうのもなんだけど比叡と一緒で壊滅的な料理をするから多摩も少し不安なのにゃ。
でも、なぜか秋刀魚だけは焼くだけなら成功するからにゃ。なぜか七輪が壊れているのを見た時はどうしてそうなった……?と言わんばかりだったが……。

「うむ。頑張るとしよう。それでは多摩さん、私は準備がありますので」
「わかったにゃ。多摩もまた執務室へと行こうと思っていたからまたにゃ」
「はい。では」

それで磯風はどこかへと行ってしまった。
それで多摩も執務室へと顔を出していき、

「提督。秋刀魚漁に出る時は多摩を呼ぶにゃ。かならず応援するからにゃ」
「わかった。その時は事前に教えておくよ。今日みたいに焦っていたらしょうがないしな」
「それはありがたいにゃ」
「だから多摩も遠征頑張ろうな」
「わかったにゃ。遠征も立派な仕事だから頑張るにゃ!」

それで多摩も遠征の準備をしにメンバーを集める事にしたにゃ。
今日も一生懸命頑張るにゃ。


 
 

 
後書き
今回は多摩でした。
うちの磯風は秋刀魚漁産ですね。
多くの提督はまだ磯風はレアだった頃は秋刀魚漁で掘っていたと思います。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0176話『ルイの改装、そしてごーちゃん!』

 
前書き
更新します。 

 




秋刀魚漁の支援も継続して行っているけど今日はとある艦娘がとある練度まで達したので一気に改装を行おうと思っている。
その艦娘とはルイージ・トレッリだ。
最近になってやっと練度をまともに上げられる状態にまで漕ぎ着けられたので少しずつだけど上げていっていたのだ。
それが今日、やっとの事で練度を55まで上げることが出来たのでこうしてルイを連れて改装室までやってきたのである。

「ねぇねぇ、ammiraglio? 今日はやっとあたしも改装できるんだよね?」
「ああ、そうだ。今まで初期状態のままで少し苦労していたけどやっとの事最終段階まで改装できるからな」
「そっかー。それじゃあたしもこれで正式に日本の潜水艦になるんだね」
「その通りだ。でも別にイタリア艦のみんなと仲良くするのを止めろとかは言わないから安心してくれ」
「うん。そこら辺はもう今までのammiraglioの行動を見ていれば分かるから大丈夫だよ。はにゃはにゃ~」

ルイはそう言って独特の笑い方をした。
うん。これならまぁ大丈夫かな……?

「それじゃ明石。ルイの改装を頼んだぞ」
「お任せください! ルイちゃん、それじゃもう改装室に入ってもいいからね?」
「はーい!」

それでルイは改装室へと入っていった。
そして、

「提督。今回は三段階の大掛かりな改装になりますから色々と覚悟していてくださいね?」
「わかった」

明石が懸念しているのは改装した事によって名前や姿も変わるから今まで通りにはいかないという事を言っているのだろうな。
それで準備が整うまで待っている時だった。

「あ、提督さん! まだルイちゃんの改装は終わっていない!?」
「リベッチオ? ああ。まだ終わっていないけど……」
「よかったー。間に合ったよー」

どうやらリベッチオはルイの改装の話を聞いて急いで改装室まで来たらしい。
見れば他のイタリア艦のみんなも続々と改装室へと入ってきた。

「提督。ついにルイが改装しちゃうんですね。日本の艦になってしまうのは少し寂しいですけど、それでもルイは私達の家族ですから安心して提督に任せますね」
「大丈夫だよ、イタリア。別に日本艦の考えに矯正しようとは考えていないから。改装が済んでも今まで通りにルイに接してあげてくれ」
「はい。もちろんです」

それでイタリアは笑みを浮かべる。
するとイタリアの横でローマが、

「でも、ルイが改装して日本艦になったらどんな姿になるのかしら……?」
「ローマさん。おそらくスク水になってしまうんじゃないですか?」
「ポーラもそう思います~。ユーちゃんもスク水になってましたからー」

ローマの発言にザラとポーラがそう続く。
私もそこは少し懸念しているところなんだよな。
ルイの黒い水着のままなのかはたまた日本独特のスクール水着になってしまうのか……。

「ですが、なにはともあれルイさんが強くなるのは歓迎だと思いますよー。改装が終わりましたらよしよししてあげないとですねー」

アクィラがぽわぽわしながらそんな事を言っていた。
うん、そうだな。私としても戦力強化に繋がるのだからそこら辺は歓迎だ。
そして準備が整ったのか明石から「提督ー、準備が出来ましたよー」という声が聞こえてきたので私は目の前の改装ボタンを押そうとする。

「あ、提督さん。リベが押してもいいかな?」
「いいけど押したが最後、もう後戻りはできないぞ?」
「わかってるよー。大丈夫、どんな姿になったってルイちゃんはリベのお友達だから!」
「そうか。それじゃ後は頼んだぞ」
「うん、任せて!」

それでリベッチオが改装ボタンを勢いよく押した。
そして改装室の中から光が漏れてきて今頃中ではルイが妖精さんの手によって改装されているのだろうな。
しばらくして光は収まってきて改装中のランプが消えた。
そして改装されたルイが扉から出てくる。

「きゃああーーー!? ルイちゃん!?」

だけどそこでイタリアの叫びが上がった。

「えっと……改装されたルイージ・トレッリ改め……えっと、なんだろう、もうごーちゃんでいいや」

ルイ改めてごーちゃんがそう言って紹介をするけど問題はそこではなかった。
スク水になるのはある程度予想していた私達だけどまさか白スク水姿になるとは予想の上を言っていた。

「……なるほど。これが日本の魔改造の結果なのね。実に変態的だわ」
「あ、あはは……。まぁなっちゃったものは仕方がないですよ」

急いでイタリアがルイにタオルをかけている光景を見て静かにローマとザラが言葉を発していた。

「うん。私もその意見には賛成だな。まさかこんな水着になろうとは……」
「でも、ルイちゃんには似合ってると思うのはどうしてだろう……?」
「リベッチオ、それはですねー。ルイの能天気な性格が反映されてるからじゃないですかー?」
「ポーラも少しばかり驚きましたー。でも確かマルユーも確か白かったですよねー……?」

そうだな。確かにまるゆも白いスク水だったけど最初からだったからある程度は許容していたけど改装してこの姿になるとは思わないじゃないか。
それで大本営にこれはどういう事かと言いたい気持ちで一杯だった。
まぁそんな私のどうでもいい気持ちは横に置いておくとして、

「まぁ、ごーちゃん。これからも頑張ってくれ」
「うん! ammiraglio、任せてよー。はにゃはにゃ~」
「て、提督ー……本当にこれでよかったのでしょうかー……?」

イタリアが少し涙目でごーちゃんの心配をしているけど、

「もうなるようにしかならないだろう。諦めてこのまま運用していこうか」
「はい……。でも! ルイ!?」
「な、なに……? イタリアさん?」
「海に出る時は構いませんけど鎮守府にいる時は上着を着用してね!」
「わ、わかったよー……イタリアさんも心配性だなー」

それで少し困っているごーちゃんの姿がそこにあった。
もしこんな感じでよその鎮守府から視察に来た提督に無断で連れてかれでもしたらイタリア艦のみんなならまだしも潜水艦のみんなも激怒するかもしれないからな。
もちろん私もその時は相応の態度で挑むけどな。
問題があるとすればごーちゃんが自分の恰好に疑問を抱いていないところか。
これから情緒教育もしていった方がいいなと私は考えていた。


 
 

 
後書き
ルイージが練度が達しましたので一気に改装しました。(ちゃんと中破もさせましたよ?)
少し犯罪チックな恰好ですから少し心配ですよねー。
まぁ本人はあまり気にしていないようですけど。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0177話『ヴェールヌイのサンマ漁』

 
前書き
更新します。 

 





私は同士ガングートの為に秋刀魚を釣りたいと思い、司令官に話をしようと執務室に向かっていた。
その道すがらで暁と出会う。

「あら。響、どうしたの?」
「いや、ちょっと司令官に用があってね」
「そっかー。それじゃ私も一緒に着いていくわ。なんてったって私は響のお姉ちゃんだから!」

暁は優しいと思う。
改装して響という名からヴェールヌイという名に変わって他のみんながヴェールヌイと呼ぶようになっているというのに未だに私の事を響と呼んでくれる。
まぁそれは雷と電もだけどね。
出来れば司令官にも響と変わらず呼んでもらいたいけどこの世界に来る前からすでに司令官はヴェールヌイという呼び方が定着していたようで今更治せないそうだ。
少し残念にも思うけど仕方ないとあきらめておく。

「それで響は司令官になにを頼みたいの?」
「うん。秋刀魚漁のために装備を整えたいんだ」
「装備? ソナーとか爆雷とかそんな感じ……?」
「いや、一般的な釣り道具が欲しいところかな?」
「なるほどー。それじゃ一回町に出ないといけないわね」
「そう言うわけだよ」
「それじゃ司令官の所に向かいましょうか」
「そうだね」

それで暁は私に笑顔で手を差し出してくる。
その合図が何を示しているのかは分かっている。
だから私は暁のその手を握る。
それから二人して仲良く手を繋ぎながら執務室へと向かった。
そして到着して扉をノックする。
最近はドアノブが高い位置にあるとは感じなくなったのはいい事だと思う。
私達より小さい海防艦の子達が頑張って背伸びしている光景をよく見るようになったからかな?
とにかくノックをした後に司令官の声が聞こえてきた。

『誰だい?』
「ヴェールヌイだよ。司令官、入ってもいいかい?」
「暁もいるわ」
『そうか。入ってもいいよ』
「それじゃ失礼するよ」

それで私と暁は執務室の中へと入らせてもらった。
中では司令官が任務表とにらめっこしている光景があった。
どうやら少し忙しいところのようだね。
だけどその動作をやめて私達の方へと向いてきて、

「それでどうしたんだい二人とも?」
「うん。司令官! それがね、響がちょっと欲しい道具があるんだって!」
「欲しいモノ……? 言ってみなさい」
「……うん。秋刀魚漁での釣り道具一式を欲しいところなんだ」
「釣り道具か……。それじゃ町に出ないといけないな。酒保では売っていないだろうから」
「やっぱりそうなんだー……」

それで暁は少し残念そうな表情をしている。
だけど司令官が少しいい顔をしながら、

「それなら一緒に買いに行くかい? 町内会への経過報告をしないといけなかったからちょうどいいし」
「いいのかい?」
「ああ。少ししたら行くとするか。それまで準備をしておいてくれ。暁も行くだろう?」
「当然行くわ!」

暁がすぐに食いついていたので外に出かけるのが嬉しいんだろうね。私も楽しみだけど。

「司令官、ハラショーだよ」
「はは、そうか。それじゃ私も準備をするから正門で待っていてくれ」
「了解だよ」
「わかったわ」

それで私達は正門へと向かっていく。
そこでは毎度おなじみの番人の木曾さんがいた。

「お。チビども、どっかにいくのか?」
「うん。司令官と一緒に町にお買い物に行くのよ」
「そうか。まぁ楽しんできな」

そう言って木曾さんはもう興味が無くなったのかまた正門の番人modeに入っているんだけど、

「前から思っていたんだけど、木曾さんって退屈じゃないのかい? こんなあまり人が来ない場所で一日中立っていて……」
「ん? まぁな。でも誰かがしないといけないだろう? 俺の暇つぶしも兼ねてこの役目を引き受けたんだよ」
「そっか……。それじゃ頑張ってくれ」
「おう」

木曾さんとそんな話をしている間に司令官も正門へとやってきた。

「木曾、いつもながらお疲れさま」
「ああ。提督も楽しんで来いよ」
「わかった。それじゃ行こうか二人とも」
「ああ」
「うん」

それで司令官と暁と町へと繰りだしていく。
それから司令官と一緒に町内会へと顔を出して秋刀魚漁の経過報告を済ませた後に、

「それじゃ釣りショップへと向かおうか」
「わかった」
「うん」

それで釣りショップへと顔を出す私達。
そこでは色々な釣り道具が並べられていた。
それで少し私は目を輝かせていたのかもしれない。
だって司令官が少し笑みを浮かべながら私の頭を撫でてきて、

「楽しそうだね、ヴェールヌイ」
「うん。そうかもしれない。榛名さんもそうかな……?」

それで私達お一緒にいる時はあまり顔を出さない榛名さんにも話かける。
それで榛名さんが顔を出してきて、

《そうですね。こうして見て回るのも楽しいですよね。響ちゃんはどんなのが欲しいの……?》

ああ、そう言えば榛名さんも数少ない響と呼んでくれる人だったね。
そんな事を考えながらも、

「うん。ウェアに釣り道具一式が欲しいところかな?」
「それならヴェールヌイに合ったものがいいだろうな」

それで司令官が私のために服を探そうとしているんだけど、ふと暁の顔を見てみると少しムーッとしている。どうしたんだろうか?

「司令官! ちょっといいかしら!?」
「ど、どうしたんだい暁?」
「司令官も響の事をヴェールヌイじゃなくって響って呼んであげてよ。確かにヴェールヌイっていうのも響のもう一つの名前だけど私的にはちょっと嫌かな……」

暁はそれで服を掴んで少し悔しそうな顔をする。
別に私はどちらでも構わないんだけどな。
だけどそれで司令官は少し悩む素振りをして、私の方へと顔を向けてきて、

「響。君は私にどちらで呼ばれたい? 今まで改装が終わってからずっとヴェールヌイって呼んできたけど響も気にするなら響って呼ぶけど……」
「そ、それは……その、私も出来る事なら響って呼んでほしい、かな……」

私の精一杯の言葉で司令官は笑顔になって、

「分かったよ、響。これからは前のように響って呼ばせてもらうから」
「……は、ハラショー」

私は少し嬉しい気持ちになった。
呼んでもらいたいっていう気持ちが暁のおかげで叶ったんだから。

「よかったわね響」
「うん……」

それで少し司令官との距離も近くなれた気持ちになれた。
だから暁には後で感謝の言葉を贈っておかないといけないね。
そして話は戻ってウェアと釣り道具一式を買って後はと思って目についたものを購入しようとしたんだけど……、

「あのさ、響。それってワカサギ釣りの道具だよな? 秋刀魚漁で使うのかい……?」
「ああ。これは私の趣味で購入するものだから気にしないで大丈夫だよ司令官」
「そうか。ならいいんだけど……」

私はいつか使うかもしれないという気持ちでこの道具も購入した。
いつか使えるといいな。
そしてホクホク顔で帰っている時に、

「響、嬉しそうね」
「そうかな? うん、そうだと思う。暁も今日はありがとう」
「いいわよ。これもお姉ちゃんの務めなんだから!」

暁はやっぱり頼もしいね。
そんな事を思いながらも司令官たちと一緒に鎮守府へと帰ったのであった。


 
 

 
後書き
ヴェールヌイの道具購入の回でした。
本当にワカサギ釣りの道具はどうして買ったのってぐらいにはヴェールヌイのグラには疑問を感じてしまいました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0178話『十五夜と甘える卯月』

 
前書き
更新します。 

 





………今夜は十五夜である。
だから私は午前中に空母寮のみんなにも協力してもらって和作りの空母寮にお月見ができる場を作ってもらった。
みんなも見たいという事で意欲的に制作してくれたので場はかなりいいものになっている。
月見台を作って瑞穂の三方も借りてとの本場仕込みの作りだ。
月見団子は鳳翔さん等料理が得意なメンバーで作ってもらい、ちょうど秋刀魚漁でもあるので秋刀魚も豊漁を願ってお供え物として飾った。
ススキなどもしっかりと準備は完了しておりもういつでもできる状態であるから後は雨が降るか雲で隠れない事を願うばかりである。

「Admiral……今夜はなにが行われるのですか……?」

そこに話を聞きつけて海外組も空母寮へと足を運んできて代表してウォースパイトが私に内容を聞きに来たという流れである。
ちょうど海外組は全員その場にいたので説明するのはちょうどいいということで、

「今夜は日本でいう十五夜っていう日なんだよ」
「ジューゴヤ……?」
「あー……つまりみんなで月を見ながら海では豊漁、陸地では豊作などが成功するようにお祈りをする日なんだ。まぁうちでいえば艦隊運営がうまくいきますようにっていうのもありかな……?」
「まぁ! それは素晴らしい日ですね!」

それでウォースパイトが嬉しそうに手を合わせる。

「まぁ、表面的には日本の行事の一つなんだけど実質は月を肴に宴会をする感じかなぁ……? 酒飲み連中なんかはもう準備を始めているしな」
「なるほどな。中々面白い行事じゃないか」

ガングートがそれで腕を組みながら感心していた。

「それじゃ今日はお酒が飲めるんですね~? ポーラもっ、ぐえっ!?」
「ポーラは今は少し禁酒中でしょう……?」
「それはあんまりですから~。許してザラ姉様~」

ザラに襟を掴まれたポーラがそれで引きずられて行ってしまった。
まぁあの調子だと諦めないだろうからそのうちザラが脱走したポーラを探し始めるのも時間の問題だろうな。
それで海外組はそれぞれ仲のいい子たちとグループになってもっと詳しくお月見について話を聞いているという感じか。
海外交流もいいものだよな。
そんなこんなでそろそろ暗くなってきたところで空を見上げてみるとそこにはいい感じに満月が顔をのぞかせていた。
それを見て各場所から感嘆の声が聞こえてくる。
みんなも不安だったんだろうな。
雲で隠れてしまわないかと……。
そんな感じで私は月見台の前で月を眺めながら榛名と一緒にお月見を満喫していた。

《やはりお月見はいいものですね、提督……》
「そうだな。日々深海棲艦と戦う感じなんだから少しは癒しがないとみんなも持たないだろうしな。いい感じにリラックスできるだろう」
《そうですね》

そして少しの間周りでみんながわいわいと騒いでいるのを眺めているとふと私の隣に一人のウサギ……もとい卯月が座ってきた。

「司令官、お月見楽しんでいるぴょん?」
「ああ。月の下でみんなと一緒にお月見をしてふと隣を見ればウサギが一匹……これで楽しめなければ損だろうな」
「うーちゃんはウサギじゃないぴょん!……でも、今日は司令官のウサギになってもいいよ?」
「また素直だな今日は……」

それで私は卯月の頭を撫でてあげる。
そして少し気持ちのいい表情をする卯月。そのまま私の肩に項垂れかかってくる。
甘えたいのかな?

「司令官の手は暖かいぴょん……」
「そうか? この手は榛名の手でもあるんだけどな」
「そういうのじゃないぴょん。しっかりと榛名さんとは別の司令官の熱が伝わってくるぴょん……とっても暖かいぴょん」

それで私も卯月と一緒に和んでいる時にふと卯月の今の恰好を見て、

「ふふ……。卯月、そのTシャツ中々似合っているじゃないか」
「そうぴょん? やったぴょん」

卯月の今のシャツには大きくサンマの字が書かれていたのだ。

「あんまり睦月型のみんなは褒めてくれなかったけど司令官に褒められたからよかったぴょん」
「独創性があっていいじゃないか」
「わかってくれるぴょん!? いやー、頑張って作った甲斐があったっぴょん」

私から理解を得られてなおの事嬉しそうに笑う卯月。
そんな卯月の笑顔が私には少し眩しいと感じてしまった。
純粋な笑みっていいものだよな……。
周りではお酒におつまみにと結構騒いでいるけどこの場所だけは少し静かに感じられる。
みんなに混ざれないのも少し悲しいけど卯月がいるだけでもいいものだよな。

「あ、司令官。お団子食べていいぴょん?」
「一つだけな。みんなの分もあるんだから」
「わかったぴょん」

それで卯月はお団子を一つ摘んで美味しそうに食べていた。
と、そこに今まで別の場所で楽しんでいたのか赤城と加賀がやってきた。

「提督。それに卯月さんも楽しんでいますか?」
「ああ。赤城たちも楽しんでいるか……?」
「はい。もう飛龍さんや蒼龍さんが隼鷹さん達に酔いつぶされてしまいましたので私達も巻き込まれないようにこちらに来ました」
「まったく……せっかくのお月見なのにお酒で台無しにするなんてもったいない子たちね……」

加賀がそれで溜息を吐いていた。
とは言いつつも赤城の手には少しお酒が握られている。

「提督、少しだけなら大丈夫ですよね。一尺しますよ?」
「それじゃ頂こうかな」
「うーちゃんも飲みたいぴょん!」
「卯月はダメよ。すぐに酔ってしまうでしょう……?」
「司令官よりは飲めるぴょん!」
「まぁそう言うなら……」

それで加賀が私と卯月にお猪口を渡してきた。
そして赤城が少しだけ注いで私達は月を肴に一滴飲み干す。
少し染み渡る感覚を味わっているんだけど横では卯月が「うぇー、苦いぴょん……」と言っていた。
まぁ予想通りの反応だな。

「だから言ったでしょうに……ほら、お水を飲みなさい」
「ありがとぴょん」

それでお水を飲んで「ぷはぁ!」という感じのリアクションを取った卯月は、

「でも、やっぱりお月見はいいものだぴょん。司令官、来年もやろうぴょん!」
「そうだな。という訳で赤城に加賀。来年も空母寮を使わせてもらうぞ」
「はい、いつでもどうぞ。大人数入れるように出来ていますからまた人数が増えるでしょうけど歓迎ですよ。ね、加賀さん」
「ええ。来年にはまたどの程度の仲間が増えているのか楽しみね」
《榛名も楽しみです!》

来年か。また一つ外せない行事が出来たな。
ちなみに来年の十五夜は『9月24日』という事を忘れないようにしておかないとな。
それでみんなが寝静まるまで私達はお月見を楽しんだのであった。


 
 

 
後書き
来年は9月24日ですよ。忘れないようにしませんとね。
少し素直な卯月を書かせていただきました。
お月見と言ったら卯月でしょうという事で。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0179話『綾波の気持ちとサプライズ』

 
前書き
更新します。 

 




私、綾波は本日は司令官にお付きになろうと思いました。
それはただの気まぐれですけど司令官ならきっと気づいてくれるだろうと思ったからです。
それでみんなにも相談しようと思ったのですけど、なぜか今日は誰とも会わないのがすこっ不思議に思っています。みんなどこに行ったのでしょうか……?
まぁそれはいいとしてそれで執務室へと顔を出しに行くと司令官はやはり秋刀魚漁関係で各所から連絡を受けているという光景がありました。
でも一通り本日の任務をチェックし終えたのでしょう、司令官は私がドアから顔をのぞかせているのに気づいていたのか笑みを浮かべて、

「どうしたんだい綾波?」
「あ、あの……気づいていたんですか?」
「まぁ、視線は感じていたからな」

それでばれてしまったのなら仕方がないと私は思って素直に執務室の中に入っていきました。
そして司令官は私に聞いてきました。

「それで綾波は本日はどうしたんだい?」

司令官は私の思いを知ってか知らずかそう聞いてきます。
知っているんですよ?
司令官は進水日の日には必ず贈り物をしているのを。
まぁ、期待している私も厳禁だとは思ってしまうんですけどそれでも司令官から贈り物をもらいたいです。
でも、自分から言うのも何か違うと思ってはぐらかす事にしました。

「あの、本日は司令官のお手伝いをしたしと思いまして参上いたしました」
「そうか。それじゃ今日は秘書官になってもらってもいいか?」
「はい! 綾波にお任せください!」

少し嬉しくなったのでそう答えました。
それから私は司令官と一緒に任務の内容などをチェックしていきます。
どれもこれも秋刀魚漁関係のもので司令官は大変そうだなーと思う始末です。

「ところで綾波。最近の姉妹艦の仲はいい方かい?」
「え? あ、はい。いい方だと思います。狭霧さんと天霧さんが来てから綾波型のみんなはより楽しく過ごすようになっていますのでまだ実装されていない『朝霧』に『夕霧』がいつか来るのをみんな楽しみにしているんです」
「そうか。それならよかった」

それで司令官はニッコリと笑みを浮かべます。
何で司令官はそんな事を聞いてくるのでしょうか……?
こんな話は前にも話したと思うのですけど、

「綾波も長女としては妹が増えるのは楽しみだもんな。いつか、みんなが揃うといいな……」
「綾波もそう思います……」

そんな感じで司令官と一緒にいつか来るだろう二人の事を思っていると、

「それじゃもう一つ。今いる姉妹たちの事をどう思っているか聞いていいかい?」
「え? いいですけど……司令官、なにか企んでいませんか?」
「いや別に。ただ綾波の気持ちが知りたくなってな。興味本位だから気にしないでくれ」

なにか司令官の考えがあるのでしょうけど、仕方がないですね。それに乗ってみましょうか。
それで私は一人ひとり頭にみんなの顔を思い浮かべながら思案します。

「まずは……そうですね。敷波ちゃんでしょうか。敷波ちゃんはいつもつっけんどんな態度を取りがちで少し素直じゃない子ですけどとても根はいい子なんです。綾波型二番艦としても私の事をいつも手伝ってくれますからとても優しい子ですね」
「そうか。敷波は綾波の中ではそんな感じなんだな」

そう言って司令官はなにかメモをしていますけど、なんでメモを取る必要があるのでしょうか……?まぁ気にはしませんけど。

「お次は朧ちゃんですね。朧ちゃんは第七駆逐隊のまとめ役みたいなものでお姉さんな感じの雰囲気を纏っていますけど、それでもどこか達観しているような感じです。でも、姉妹の事を思う事に関しては人一倍強い子ですから私も朧ちゃんの事は大好きです!」
「ふむふむ……」
「そして次は曙ちゃんですね。曙ちゃんはいつも司令官の事をクソ提督と呼んでいますので口が悪いのはもう司令官も知っている事だと思います。ですが曙ちゃんはそれはただの照れ隠しみたいなものだと私は感じます。だって、たまに曙ちゃんは司令官と話す時は笑みを浮かべる事がありますから。だから私としましては素直になってほしいところですねー」
「ふふ……。なるほど、曙はそんな感じか」

それで司令官は笑みを浮かべていました。
ううー……何やら少し話していて恥ずかしくなってきますね。

「それじゃ続いていこうか」
「あ、はい。お次は漣ちゃんですね。漣は綾波型のムードメーカー的な存在ですね。いつもなにか面白い事があると首を突っ込んでいる感じですのでお姉ちゃんとしましては少し心配ですね。ですけど漣ちゃんは他人の気持ちを尊重できる子ですので無茶な事は言わないのが取柄です。いつも誰か気持ちが沈んでいたらその個性を使って勇気づけていますから」
「そうか。確かに漣はいつも場を盛り上げてくれるからな。その評価は妥当か」
「そしてお次は潮ちゃんです。潮ちゃんは少し自信がない子ですけどいざという時の動きには目を見張る時がありますね。それで私も何度も助けられています。潮ちゃんは綾波型では珍しいタイプの子ですけど私も潮ちゃんの事が大好きです」
「そうだな。潮は改二になってから少し自信がついたようなイメージがあるからな」
「はい。だから信頼もしっかりとしていますよ。それではお次は狭霧さんですね。狭霧さんは過去に早く沈んでしまった事もあって少し弱気な感じですけど、とても献身的で頑張り屋さんです。だからいつか大きく羽ばたいてほしいですね」
「そうか」

そう、狭霧さんは過去、開戦後まもなく沈んでしまってあまり接触する機会も少なかった子ですから実装されて嬉しかった記憶を持っています。

「そして最後は天霧さんですね。天霧さんは少し男の子っぽい感じで性格も壮快な感じです。でも時折見せる女の子な姿がとても可愛らしいと感じています。私も天霧さんのようにもっと元気な感じになりたいですね。
……とまぁそんな感じですね。私の姉妹たちのプレゼンは以上です」

それで私は全員の事を話し終えて少しすっきりとしていると司令官はさらに笑みを浮かべます。

「そうか。綾波は姉妹たちの事を大切に思っているんだなぁ……」
「はい。大事な妹たちですから!」
「だそうだ、みんな」
「え……?」

私は司令官のその言い方に違和感を持ちました。
みんなって……まさか!?
そしていきなり執務室のクローゼットが開いてみんなが飛び出してきました。
なんでぇ!?

「ぷはぁ……少し苦しかったですねぇ」
「潮ぉ……最近やっぱり太ったんじゃない?」
「そ、そんなことないです!」
「まぁまぁ……」
「天霧さん、大丈夫でしたか?」
「ああ、大丈夫だ狭霧」

みんながそれぞれ言葉を発していますけど私には少し聞こえてきませんでした。
もしかして、私の発言が聞かれていた?

「し、司令官?」

それで藁にも縋る思いで司令官に涙目で訴えました。

「まぁ、だましている感じで悪かったな綾波。今日は綾波の進水日だからみんなが綾波の気持ちを知りたいっていうからこんな感じになったんだよ」
「「「綾波姉さん、進水日おめでとう!」」」

そう言ってみんなは私にプレゼントを渡してきました。司令官からももらって嬉しいんですけど……。
私、嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてきてどうにかなってしまいそうです。
みんなは口々に私の言った事を取り上げては嬉しそうに笑みを零していまして、なんと言いますか穴に入りたい気持ちです。
でも、みんなの気持ちがとても嬉しかったので、

「はぁー……癒されます。感謝ですねー」

最後には無理やり私はそう締めくくりました。


 
 

 
後書き
綾波の進水日という事でこんな感じに書いてみました。
少し無理やり感がパナイですね。まぁ楽しければいいのです。




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0180話『長月と紅葉集めと焼き芋』

 
前書き
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私は今現在、鎮守府の外れの方で長月とともに紅く染まっている紅葉の葉を集めていた。

「司令官、こんな感じでどうだ?」
「ん。いいんじゃないか?」

長月に呼ばれたので見てみれば麻袋の中には大量の紅葉が入っていた。
私の方も結構溜まったのでこれくらいでいいだろうという感じで、

「それじゃ皆のところへと持っていくか」
「了解だ。しかし芋を焼くだけなのにこんなに必要なのか……?」
「まぁ、人数はいるからな。他の場所でも集めてもらっているしな」

そう。なぜ紅葉の葉を集めていたかというとみんなで焼き芋を作るためなのだ。
白露型の皆とかが私服で焼き芋を食べている光景を見て感化されてしまったらしいのでこうして私まで駆り出される始末になってしまっていた。

「文月とかは楽しそうだったからいいが、みんなが太らないかが心配だな」
「そこまでみんなも食い意地は張らないだろう、多分……」
「なんだ。司令官もあんまり信じていないんだな」
「そうじゃないんだけど、ヘルシーな秋刀魚を食べていて代わりに焼き芋を食べて太ったら自己責任でダイエットしてもらわないといけないなと思ってな」

それをすると文字通り阿鼻叫喚の地獄絵図が再現されるんだよな。潮とかが泣きながら走ってそうで……。
でも長月は体調管理はしっかりしてそうだよな。

「ん? まぁな。私は人一倍気を付けているつもりだからな」
「声に出していたか……まぁ、でも長月は真面目だからな」
「ふふん、まぁな」

それでどこか誇らしげに笑う長月。
その笑みが似合っているだけにどこか憎らしくもあったりする。

「さ。それじゃさっさと持っていこうか」
「そうだな」

それで長月とともに荷台に積んで紅葉の葉を運んでいく。
そして私達を待っていたのか睦月が、

「おーい、提督ー、長月ちゃーん! もうみんなが集まっているから早く来るにゃしぃ!」
「「おー」」

それでどこか睦月のセリフで癒されながらも運んでいった。
それで各所から集められた葉っぱを見て、

「うん。いい感じに集まったんじゃないか……?」
「それを一気に消費しちゃうんだから豪快だよねー」
「まぁ焼き芋の為だ。疾く犠牲になってもらおうじゃないか」

睦月型のみんながそれでわいわい騒いでいる。
ところで菊月さん? あなたはいつから王様になられたのですか?
そんな感じでお芋と言ったら吹雪型のみんなだろうという認識は間違いではないらしく、

「みなさん。お芋を持ってきましたよ」
「ありがとう、白雪」
「いえ、吹雪型の部屋にはなぜかお芋がよく残っているのですけどみなさんは食べないのでしょうかと心配になってしまいます」

どこか困った感じの白雪の姿を見て、私は思った。
やっぱりどこかで芋っぽいっていう風評被害にあっているんじゃないかと……。

「ヘーイ、テートク! こっちもいろいろと持ってきましたネー」

そう言って戦艦組も色々と焼けそうなものを持ってきていた。
闇鍋じゃないんだぞという言葉がどこかに行ってしまいそうだな。

「みなさん。火事にだけは注意してくださいね?」
「わーかってるって、大淀さん」

深雪がそれで反応を返していた。

「しれー、楽しみですね!」
「おいもー、時津風も早く食べたいよー」
「もう少し待とうな」

続々と集まってくるので収拾がつくのか不安になってきたな。
まぁ気のせいだろうと思い込んでみんなでホイルにお芋やキノコにバターを添えて網で焼くスタイルなど色々とやりそうな雰囲気になってきたので少しだけど楽しみになって来ていた。

「おーい、提督。そろそろつけるぜ?」
「天龍ちゃん、気を付けてねー?」
「おう。任せろ龍田」

それで天龍が火をつけて一気に集めた葉っぱ全体に燃え移った。
そして燃えている葉っぱの近くで寒くなってきたのか暖炉代わりに当たっている子も何人かいる。
まぁ一気に寒くなったからな。
先週までまだ半袖でも平気だったんだけど一気に昨日から寒冷前線が入り込んできたからな。
場所が場所では耳を触りあっていたりしているから寒いんだろうな。

「そろそろみんなも冬服に衣替えの時期だな」
「そうだな司令官。これからもっと寒くなるからな」
「長月もなにか暖かい服装に着替えた方がいいな。普段のだったらもうこれからは寒さに耐えられないだろう……」
「そうでもない……と言いたいところだが確かにな。わかった、後で酒保で何か上着を購入するとするよ。海にだればより一層寒いはずだからな」

それで長月も寒いのか手をこすり合わせていた。
そうだな……。

「長月。それじゃ今日の贈り物は手袋でもするか?」
「ん? ああ、そうだったな。今日は私の進水日か」

それでようやく思い出したみたいな感じの長月は「そうだなー」と言った後に、

「それじゃ上着でも頼むとするか。いいよな、司令官」
「ああ。それじゃ今日は午後になったら酒保に行ってみるとしようか」
「ああ。楽しみだな」

そんな話をしていると長月に抱きつく感じで文月が「いいないいなー」と言っていた。

「文月ちゃん。今日は長月ちゃんの進水日だから譲ってあげなさい」
「はーい」

そう言う如月もどこか羨ましそうである。
うー……そんな顔をされると買ってあげたいじゃないか。
でもここで甘えさせたら他のみんなも集ってくるからここは我慢だぞ!
そんな感じで時間も経過していたのかいい感じに焼き芋とかが焼きあがっていたのでみんなで分け合って焼き芋を消化したのであった。
うん、久しぶりに食べるけどやっぱりうまいものだよな、焼き芋は。

「はい、睦月ちゃん。あーん」
「あーん! うん。美味しいにゃしぃ。はい、今度は如月ちゃんだよ」
「わかったわ」

そんな光景も見ていて、

「本当に仲が良いよなー」
「まぁな。あの二人は元の世界ではひどい扱いされたから余計にって感じなんだよな」
「あ、もしかしてアニメの事を知っているのか……?」
「まぁそこそこはな。だからか大体あの二人は一緒にいるのが普通なんだ」

そんな、どこか羨ましそうな表情をする長月に、

「混ざっていかないのか?」
「いいんだ。私は眺めている方が幸せを感じられるからな」
「そっか」

そんな感じで秋の風物詩もまた一つ消化した日だった。


 
 

 
後書き
今回は長月の回でした。
いい感じに寒くなってきましたよね。皆さんも防寒の準備をしましょう。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0181話『朝雲と山雲の演習に関しての心配』

 
前書き
更新します。 

 




先日に武蔵が練度がカンストしたためにカッコカリをして、もうカンストしていない戦艦はあとはリシュリューだけという事になったので私は演習に参加して自身の練度を上げていこうという事になった。
だけどそれで演習に参加する旨を現在の演習艦隊のみんなに伝えたんだけど……。
まず飛龍から、

「まぁ提督自身の練度を上げたいってんなら別に構わないとは思うけどね。悔しいけどまだまだ練度が低い私じゃ提督には物申せないしね」

と、飛龍は比較的賛成だった。
だけどアークロイヤルは結構厳しい意見だった。

「Admiral……? まだまだ新参者の私だけど言わせてもらうわね。あなたはみんなのAdmiralなのでしょう? 演習とはいえ下手すれば傷を負うのよ? そこのところは理解しているか?」
「ああ、まぁ理解はしているよ。それでもいざという時に私が出る事になったらまともに動けないとなったら色々とあれだろう?」
「そうだけど……はぁー。他の子達には聞いていたけど、Admiral……あなたはもうすでに自分が戦う前提で考えているのね」

それで色々と溜まっているような溜息を吐かれてしまった。
うーん、これは手厳しいね。

《大丈夫ですよ、アークロイヤルさん。いざとなったら私が大声で何度も提督の耳元で叫んで無理やりにでも撤退させますから》
「そうしてくれるとありがたいわね……。Admiralはもっと自身や周りの事を視野に入れて考えた方がいいわよ? 私でさえこんななんだから前からずっと一緒にいるみんなは相当の物よ……」
「わかっている……そこら辺は反省しているよ」

アークロイヤルに言われるまでもないけど私はみんなに心配をかけているのはもう承知済みだ。たんにこれは私のいつか榛名が体を取り戻した時のための保険だから。
榛名には練度は上がっていてほしい。
そんな感じでアークロイヤルには渋々だけど納得してもらった。
そしてお次はリシュリューなんだけど……、

「amiral、ワタシからはアークロイヤルが大体言ってくれたから特にいう事はないですけれど……やっぱりamiralは安全な場所にいてほしいのが本心よ。戦えるからってわざわざ前線に出る必要性はないわ。amiralの代わりになれる艦娘は大勢いるんだから。最近は駆逐艦のみんなも含めて練度は上がってきている……だから無理だけはしないでね」
「ああ。心配ありがとうリシュリュー。大丈夫、私という存在はいざという時の保険だから。だから実践経験だけを積みたいだけだから安心してくれ」
「それならいいのですが……。以前にコマンダンテストに聞いたのですが、春の戦いでは重傷を負ったと聞きましたよ? それで悲しむ艦娘だってたくさんいるんだから不安がらせちゃダメよ」
「わかった。肝に銘じておくよ」
「それならいいわ。ハルーナにも心配はかけないように」
「はい……」

それでリシュリューも納得してくれた。
これでつい最近入った三人からは賛成を得られたんだけど残りの二人は少し説得に骨を折りそうだな。
そう、朝雲に山雲だ。
この二人は他のみんなと同じく長い間私の艦隊で過ごしてきたから結構な言葉を浴びせられそうだし。
それで朝雲の方へと向いてみると少し涙目になっていた。

「むー……」
「あ、あの……朝雲?」

朝雲はただ私の事をじいーっと睨みつけてきていた。

「朝雲姉ぇ~、落ち着いてぇ?」
「……落ち着いているわよ山雲。ただね、司令にいくつか言いたいだけよ。だから司令、目を逸らさないで聞いてよね……?」
「わかった」
「司令さん。山雲も~、言いたいことはあるから逃げないでねぇ~?」

山雲もそのふんわりとした物言いなのにどこか目つきが怖い感じなんだよな。
これは覚悟を決めないとな。

「司令……朝雲たちはいつも司令に命じられれば戦ってきたわ。それはこれからも変わらないと思うわ。だけどね、司令自身が出撃して傷を負うたびに私達はどれだけ気持ちがざわつくかわかってる!?」
「………」

私は無言で頷いた。今はただ朝雲の物言いを黙って聞く時だからだ。

「分かっているなら……なんで司令自身が表に出ようとするのよ! 戦いは私達がするから司令は安全な場所で見ていて指示してよ! 朝雲達じゃ信用できないとでもいうの!?」
「そんなことは無いよ」
「だったら……!」
「それでも私だってみんなと一緒に戦いたいんだ」
「ッ!」

それで朝雲は少し悔しそうに表情を歪める。

「……ずるいじゃない司令。それじゃ朝雲ももう司令に何も言えないわよ……」
「ごめんな、これは私の我儘なんだ」
「……うん。それじゃもう私からはもうないわ。司令の好きにして。だけど絶対に死なないでよ?」
「わかった」
「それじゃ山雲、後はお願いね」
「はーい、朝雲姉ぇ~」

朝雲とバトンタッチをして交代をして私の前に立った山雲。
この子からは何を言われるのか少し不安だった。

「司令さん? 山雲が何を言いたいかくらいは、わかるわよね~?」
「それは……もう他の四人から聞いたから分かっているよ」
「そうじゃないわ~」

ん……?
違うのか?
それじゃ一体……。

「朝雲姉ぇを悲しませたんだから山雲はとても怒っているんだから~」
「そこか……」
「そうよ~。山雲はいつだって朝雲姉ぇ第一なんだから~。司令さんはその次よ~。だからね~…………また朝雲姉ぇを悲しませたら~……酸素魚雷を叩き込むんだから~♪」

ニッコリ笑顔でとても怖い事を言いだす山雲。
叢雲以上の威圧感を感じるんだけど……?
これは本気の目だ!?
私の第六感がそう告げていた……。

「……わかりました。なるべくみんなを悲しませないように努力します」
「それでいいのよ~」

それで山雲は笑顔を崩さずに引き下がっていった。
最後に一番怖い事を言われたけど、みんなからはなんとか承諾を得ることが出来たからよかった。

「あ。それと朝雲達はもう言わないけど他のみんなからも何か言われるのを覚悟はしておいてね、司令?」

朝雲は最後にそう言って演習場へと先に向かっていった。
今日はみんなへの対応で眠れなさそうだな……。

《提督、ご愁傷さまでした……》
「甘んじて受け入れないといけないんだよな……」

榛名とそう話して私も少し心が痛んだけど遅れて演習場へと向かっていくのであった。


 
 

 
後書き
普通は指揮官は後ろで指示するものですからみんなの塩対応は当たり前だと思うんですよね。
これが現実だったらもっときつい事を言われそうですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0182話『体育の日。怠惰な初雪の災難』

 
前書き
更新します。 

 




初雪です……。何やら吹雪姉が今日は体育の日だからって運動をしようとかふざけた提案をしてきたんだけど、初雪以外のみんなは乗り気のようで吹雪型は強制的に運動をすることが決定してしまったらしいの……。
だるいー。部屋でゲームしていたい……。
そんな事を顔には出す事も出来ずに初雪も今現在みんなと走り込みをしているんだけど……。

「ねぇ、白雪姉さん……」
「なんですか、初雪ちゃん?」

白雪姉さんは平気そうな顔で走っているけど少しどうなんだろうと思う。

「もう少し、ペースを落とさない……?」

私はせめてもの思いでもう少し走るスピードを下げないかという事を進言したんだけど、

「それは却下です」
「なんでー……?」
「この程度のスピードならまだ海上を走っている方が体力の消費が激しいからですよ。だから初雪ちゃんも我慢してね」
「うー、分かった。頑張る……」

確かに会場を走るくらいならまだジョギングをしている方が気楽ではあるからね。
それでもやっぱりダルイ事には変わりはないんだけど……。

「ほら、初雪姉さん。もっと早く走んなよ? 後ろがつっかえちゃうだろう?」

体力バカの深雪がなにかほざきだしているんですけどー? 私だってこれで精一杯だっていうのに……。まったく困ったものだ。

「……それじゃ追い越してもいいよ。深雪なら一番前を走る吹雪姉に追いつけるでしょう……?」
「まぁな。そんじゃ深雪スペシャルをお見舞いするとするかー! ゴー!!」

そう言って深雪は一気にダッシュをかけて吹雪姉のところまで走っていく。
吹雪姉にそれで「うわっ!? 深雪ちゃん元気だね!」と驚かれているし。
それを見て単純だねぇと思う始末である。

「あの、初雪ちゃん……なんか深雪ちゃんに悪いと思うんだ」
「そうだよ初雪姉さん」

磯波と浦波がそう言う事を言ってきたけど、

「私は悪くない。深雪がただ単純なだけ……」
「ま、まぁそうなんですけど……」
「それを言われちゃ仕方がないけどさぁ……」

それで磯波と浦波も静かになってくれた。
私としてはありがたい。
この無意味ともいえる長距離走では喋るだけでも体力を奪われるんだから少しでも力を温存しておかないと身が持たない……。
そんな中、叢雲にふと目が止まる。
彼女だけはなにか考え事をしながら走り込みをしているという少し器用な光景だった。
それなので私は少し走るスピードを落として叢雲に並走してなにをしているのか聞いてみようと思う……。

「叢雲……?」
「……吹雪……落とす……こんな……くだらない事に……私を……参加……させるなんて……」

ゾワッ!っと少し寒気を感じたのは間違いじゃなかった。
叢雲は私以上にこの長距離走をダルイと感じていたのだ。
だから考え事の邪魔をしてはいけないなぁ~という事で私は叢雲から距離を取った。
……うん。藪をつついて蛇が出てきたらたまらないからね。合理的判断という奴だ……。
だから私はまた白雪姉さんのところまで戻っていった。

「初雪ちゃん……? どうしたの? どこか顔が青いよ」
「なんでもない……。そう、なんでもないよ……」
「そう? それならいいんだけど……辛かったら行ってね」
「うん……」

そして午前をかけて走り込みが終了して私達は午後には何をしようという話題になったんだけど、

「吹雪姉……」
「なぁに、初雪ちゃん?」
「もう走り込みは嫌だから別の事をしよう……」
「んー……まぁそうだね。それじゃ体操関係でもしていようか」

それで私含めて吹雪型のみんなは安堵の息を吐く。
結構みんなも疲れがたまっていたようだから体操関係ならまぁ……という気持ちになったんだろうね……。

「その前にお風呂にでも行こうか。一回走って掻いた汗を流してこよう」
「「「賛成……」」」

それでみんなでお風呂へと向かっている途中で、司令官と出会う。
司令官もお風呂に入りに来たのか桶と着替えを持ってきたのだ。

「あれ……? 司令官もお風呂ですか?」
「ん? 吹雪達もか? 私は演習で汗を掻いたんで少しお風呂に入りに来たんだ」

そういえば……司令官は最近カンストしていない戦艦がリシュリューさんだけになったのか嬉々として演習に参加しているという話を誰かに聞いたね。司令官も物好きだね……。わざわざ演習に参加しようなんてダルイだけなのに……。
私が一人そんな事を思っていたんだけど、

「その……司令官、もっと自身を労わってくださいね?」
「そうよ。指揮官が前線で活躍する鎮守府なんてうちくらいなものよ? 分かってる?」

吹雪姉と叢雲がそれで司令官を少し叱っている。
まぁそうなるのも明白だよね……。
司令官を好いている子は私から見ても結構の数いるから心配になるのはしょうがない……。
司令官も分かっているのか黙って大人しく二人のお叱りに耳を傾けているから。
そんな時に白雪姉さんが私に話しかけてきて、

「……司令官が前線に出張る事態にならないように、私達も頑張ろうね」
「まぁ、そうだね……。だるいけど私もそうならないように頑張る……」

私はそう答えておいた。
私だって司令官を失う事態だけは避けたいし……。
もしそんなことになったらうちの子達は集団で何をやらかすか想像しただけで怖いし……。
だから、

「司令官……初雪も頑張るからあんまり無茶な行動はしないでよ……」

私は司令官にそう言った。
それで私がそんな事を言うとは思っていなかったらしく珍しく司令官も少し目を見開いていたし。失礼な……。

「……ああ。わかった、そうならないように努力するよ」

司令官はそう言って私の頭を撫でてきた。
うー……別に強請ったわけじゃないんだけど……。
ほら、吹雪姉さんと叢雲が羨ましそうに見てくるし……。
本当にだるいなぁ……。


そしてその後はどうせなら司令官とも全員で入ろうという吹雪の思いがけない提案で、またしても吹雪姉の思い付きに振り回される羽目になった。
司令官と一緒に入るのは……まぁいいんだけどやっぱり恥ずかしいから私は隅の方で隠れるように体を洗っているのであった。


 
 

 
後書き
今回は初雪視点で体育の日の運動でした。
私も今日は町の体育祭でなにかをやりますから疲れそうです……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0183話『西村艦隊の喜び』

 
前書き
更新します。 

 


……なにやら先日の夜あたりから司令官は私、満潮の練度を急に上げだした。
そのおかげで練度は80まで上がったんだけどね……。
その件について私はどうして急に私の練度を上げようと思ったのか理由を聞きに行こうと執務室へと向かっていった。
だけどなにやら執務室の中に複数の気配を感じたので取り込み中かしら……?と思いながらも扉をノックをする。
すると中から司令官の声で『おそらく満潮だと思うけど入っていいよ』とまるで私が来るのを待ちわびていたかのような返事が返ってきた。
それで少し不思議に思いながらも、

「それじゃ入らせてもらうわ」

私はそう言って執務室の中へと入っていった。
するとそこには私以外の西村艦隊のメンバーである扶桑、山城、最上さん、時雨、朝雲、山雲の姿があった。
全員私を見てニッコリと笑った。
な、なに? その含みある笑みは……?

「し、司令官。これはなに……?」
「あぁ。もう満潮以外には伝えたんだけどな」

それで頬をかく司令官。
その顔からは少し疲れが見える。
そこに榛名さんが顔を出してきて、

《満潮さん、先日から急に提督が満潮さんの練度を上げだしたのはもう分かっていますよね?》
「え? ま、まぁそうね……。それで私も不思議に思ってこうして聞きに来たわけだし……」

私がそう返すと、

「ね、みんな。満潮ならこういうだろうと思ったでしょう?」
「当たっていましたね扶桑姉さま」
「確かにね」

扶桑と山城と最上さんがそれで三人して笑顔を浮かべる。
だから、その顔は何なのよ。

「……あの、もっと詳しく説明してくれない?」
「そうよね。満潮姉、気づかない?」
「なにがよ、朝雲?」
「司令が急に練度を上げだしたら近づいてくるものはなーにかなって……」
「満潮姉ぇなら~、分かると思うわ~。だってタイミングよくって言葉も~変だけど~、演習で後少しで朝雲姉ぇが基準の70まで達しようとしている時に、急に演習のシフトを満潮姉ぇを旗艦にしてもう一人を朝雲姉ぇにするくらいなんだから~」

それでうふふふ~と笑う山雲。

「ま、これで気づかない満潮じゃないでしょう……?」

時雨がささやかな微笑みを浮かべながら私にそう言ってくる。
まさかね……。
私は少し考えて司令官へと顔を向けて聞く。

「まさか……また朝潮型の誰かが改二にでもなるっていうの……?」
「ああ。そのまさかだよ、満潮」

そう言って司令官はニヤリと笑う。
そうして語りだす。

「先日の大本営からの定期情報でな。わざわざ西村艦隊の事を言及しながらも今月の終わり頃に駆逐艦の改二改装の情報を提示して来たんだ」
「それって本当なの……? だったらもしかしたら朝雲か山雲って可能性もあるんじゃない……?」

私はわざわざいらぬ期待を持たないようにそう言ったんだけどそこで朝雲と山雲が真剣な表情になって、

「絶対に満潮姉よ!」
「そうよ~。今の今まで耐えてきたんだから絶対満潮姉ぇに決まっているわ~」
「別にそうと決まったわけじゃ……」
「いや、そうだと思うよ。だって……」

そう言って司令官は後ろに飾られている今年の秋刀魚漁での最終報酬である大漁旗を見ながら、

「今年の大漁旗は第八駆逐隊がモチーフになっている。そこには四人の姿が映っているが、一人だけまだ改二姿じゃないけど……きっと満潮が改二になったらこの大漁旗も再度修正されて贈られてくると思うんだ……多分だけどな」

そこには確かに第八駆逐隊の朝潮姉さん、大潮姉さん、荒潮とそして私の姿がプリントされていたけど私だけ初期の服装のままだ。
これだとなんか私だけハブられているみたいで見栄えが悪いわね。
でも、もしもだけど私が改二になったらこの大漁旗も変化するのかしら……?
わざわざ大本営がもう一つ用意しているとは思えないけど……。
でも、もしそうだったらサプライズにも程があるわ。

「……まぁ、それじゃ期待して待っていようかしら?」

私は照れ隠しのように後ろを向いてそう話す。
多分今の私の顔はみんなに見せられないと思うから……。

「ああ。だけど朝雲と山雲の練度も満潮の練度が85から88の間までになったら順次一応は上げていこうとは思っている。だから三人とも、誰が改二になってもいいように練度を上げておこうな」
「わかったわ、司令!」
「了解よ~司令さーん」

司令官の言葉は頼もしいものだった。
私達のために頑張ろうという気持ちが伝わってくるから。
でも、

「司令官? 調子に乗らないでね。私はこんなことじゃまだ喜ばないんだから! きっちり確かな情報が提示されるまで司令官の言葉に踊らされないんだからね!? わかった!?」
「はいはい、分かっているよ」

だけど司令官はどこも痛くも痒くもないという感じなのか余裕の笑みを浮かべてやんわりと私の発言を受け流した。くっ……悔しいわね。

「ひっさしぶりの満潮の照れ隠しだねー」
「この扶桑……満潮の愛らしさで感激で倒れそうだわ」
「あぁ、扶桑姉さま!?」
「満潮も嬉しいようだね。僕も嬉しいよ」
「山雲ー! こうなったら私達も練度を上げるわよ!」
「了解よ~、朝雲姉ぇ~。頑張るわ~」

西村艦隊の面々もどこか浮かれているのかそれぞれ楽しそうだわね。
……まぁ確かに私も嬉しいけどね。

「満潮、頑張って練度を上げていこうな」
「ふ、ふんっ!……まぁ期待しているから司令官も私を失望させないでね?」
「ふふっ。了解だ。みんなも頑張ろうな」
『了解』
「りょ、了解よ……」

私だけ遅れて返事を返す。
なんなのよ! なんでこういう時だけみんなはタイミングをばっちり合わせるのよ!? なんか私が司令官の手のひらで踊らされているみたいじゃない!?
くっ……こうなったら絶対に改二になって司令官を見返してあげるんだから!
私はそう誓いを立てたのであった。


 
 

 
後書き
急に運営から西村艦隊を言及しながらの改二の話で浮かれて頑張って満潮を80まで上げてしまいました。
朝雲は67、山雲は61。
三人とも月末までには十分間に合いますから頑張ります。
それと運営は朝潮型提督が多いのだと思いますね。これでもう五人目になりますから。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0184話『利根の退屈しのぎと筑摩の熱騒ぎ』

 
前書き
更新します。 

 





私と大淀がいつも通りに執務室で事務作業をしている時だった。

「提督に大淀よ。お主等、少し働き過ぎではないか?」
「利根さん、いきなりどうしましたか?」

利根が執務室にゆらりと入ってきてそんな事を言いだすので大淀がつい返事をしていた。
珍しいな。普段は筑摩と大抵は一緒なのにな。
なにか私に用があるのだろうかと思うけど、

「どうしたんだ、利根? なにか用があったから来たんだろう?」
「いや、今日はただの退屈しのぎじゃ。だからたまには提督の事を手伝ってやろうかと思ってな」

そう言ってニンマリと笑みを浮かべる利根。
その顔はどこか幼子のようで背の低さもあいまって精神年齢を低く見せてくれる。

「むっ? なにやら失礼な事を考えられたような気がしたぞ……?」
「それはきっと気のせいだ。でも、そうだな……大淀、今何か余っている仕事はあるか?」
「そうですね。週明けの任務は昨日でほとんど済ませてしまいましたからデイリーの任務ばかりですけどね。秋刀魚漁ももう大体は終了しまして後は町の漁師さんの呼びかけで護衛任務に出るくらいかと……」
「そうか……」

だとすると少し悩むな。
今はこれと言って忙しいという訳でもないしまだ限定作戦までは日程はかなり空いているしな。

「なんじゃなんじゃ! 何もないのか!?」

利根はそれでどこか拗ねてしまっている。駄々っ子か。
私と大淀はそれで利根の扱いに困っているところで大淀が「閃きました」とばかりに手を叩いて、

「でしたら提督。もう後は私が残りの作業をやっておきますので利根さんと遊んできても構いませんよ?」
「しかし……いいのか?」
「はい。これくらいなら私一人で大丈夫です」
「そこまで言い切られてしまうと任せないといけないな。わかった、後は頼んだ」
「了解です」

それなので大淀に後の事は任せて、

「それじゃ利根。これからどこかに行くか?」
「うむ! 提督も息抜きが大事じゃぞ! いざ参ろうか!」

それで利根は機嫌が治ったのか私の前をズンズンと歩いていく。
退屈しのぎ、ね……。
まぁ、それくらい付き合ってやろうか。
たまには筑摩の苦労でも味わってみるとしよう。

「またなにか良からぬことを考えておるな……?」
「だから気のせいだ」
「そうかのう……? 吾輩の直感は当たるのじゃがの。まぁよい。それでどこに行こうかの提督よ」
「そうだな……」

私はそれで少し考えた後にある場所を提案する。
その場所とは装備保管室である。

「提督よ……少しほこり臭い場所に来たのにはなにか理由があるのか……?」
「いや、ただの気まぐれだ。だけど利根なら普段から使っている瑞雲とかの区別はつくんじゃないか?」
「当然じゃ! 吾輩のカタパルトにかかればどの瑞雲も綺麗に飛ぶのじゃ!」

利根は自慢げに自分がいつも装備している瑞雲系統の装備を私に紹介して自慢してくる。
その姿はまるで子供の工作を作った紹介みたいで微笑ましい。
だけどそれで利根の眉毛がまたピクリと動いたので私は考えることを止めた。

「気のせいか……。今日はよく吾輩のセンサーが反応するな」
「誰かが利根の噂でもしているんじゃないか?」
「そうかのう……? まぁ吾輩の感覚では悪口とは無縁のものだと思うから大丈夫じゃ!」
「そうだな。うちの子達はみんな仲良しだもんな。そういえば聞こうと思っていたんだけど今日は筑摩は一緒じゃないのか……?」
「筑摩のう……今はちょっと体調を崩してしまって部屋で休んでおるのじゃ」
「それはまた珍しいな……」
「そうじゃろう……? それで吾輩ではどうしようもできずに提督の所に来たのじゃ」
「なるほど……それじゃ今から筑摩のお見舞いでもいくとするか? 酒保でなにか栄養の付くものを買っていってさ」
「おー! それは名案じゃな! ではさっそくいくとするかの酒保へ!」

そして私と利根はそのまま酒保で少し買い物を済ませた後に筑摩の部屋に向かった。
利根が筑摩の部屋の扉を叩いているのだけど、

「ちくまー? いるなら返事をするのじゃー! お見舞いの品を提督と買ってきてやったぞー?」

利根がそう中にいるであろう筑摩に話しかけるのだけど反応はなかった。
もしかして結構やばい状態だったり……?
それなので、

「利根、私が変わろう。筑摩、入らせてもらうぞ?」

筑摩の了解を得ないで私はドアを開けた。
するとそこには筑摩が少し息を荒くして倒れていた……。

「筑摩ー!? なぜ布団の中に入っておらんのじゃ!?」
「あ……利根姉さんに提督……。いけません、私としたことが……」

筑摩はそれでなにかを取ろうと手を彷徨わせているのだけど私がその手を握ってやり、

「無理をするな……筑摩はもう休んでいなさい。後は私と利根がなんとかしておくから」
「すみません、提督……」

私は筑摩を担いで布団に横にさせて毛布をかけてやった。
まだ筑摩の息は荒いままだから熱でも出しているんだな。

「ててて、提督よ! どうすればよいのじゃ!?」

おそらく普段は筑摩に頼りきりだからこういう時に対処ができないんだろうな。まぁしかたがないな。

「利根はおけに水を入れてきてくれ。あと布タオルを用意してくれ」
「了解じゃ!」

それですぐさま利根は用意を開始している間に私は筑摩の額に手を乗せる。
思った通り熱いな……。

「あ……提督の手、冷たいです……」
「今はこれで我慢してくれな」
「はい……」

それと利根が準備のために部屋を出て行ったので私はちょうどいいので筑摩に聞いてみる事にした。

「筑摩、お前は普段から利根を甘えさせ過ぎじゃないのか……? こういう事態であたふたしていたらダメだと思うぞ」
「あはは……すみません。でも大切な姉さんですから構いたいんです」
「そっか……。それじゃたまには筑摩も私にも甘えてもいいんだぞ? なにかと筑摩も疲労が溜まっていた証拠なんだから発散するのもありだと思うんだ」
「でも……」
「でも、じゃない。何度も言うけど筑摩にも甘えは必要だ。だから無理してそうだったら私から筑摩を構いに行くぞ?」
「提督もたまには強引なんですね……」
「たまにはは余計だよ……まぁそれくらい言い返せれば大丈夫か。少し休んだら栄養のつくものを買って来てあるからそれを食べて早く元気になる事。いいね?」
「わかりました……」

そして筑摩は安心したのか私の手を冷やし代わりにしながらも眠りについた。
そこに利根が準備を終えたのか部屋に戻ってきた。

「提督よ! 準備できたぞ!」
「ちょっと静かに……今やっと筑摩が眠りについたところだ」
「そ、そうか……」

私は利根の持ってきた水とタオルで一回絞って筑摩の額に乗せてやった。

「しばらく安静にしていればなんとかなるだろう。それでも治らなかったら明石に相談に行くんだな」
「わかったのじゃ。しかし、筑摩の奴安心し切った顔をしとるの。よほど提督のおかげでリラックスできたと見る。姉としては少し悔しいのう……」
「利根もたまには逆に筑摩を甘えさせてやれ。筑摩は利根の事を第一に考えて少し自分の事を蔑ろにしている傾向があるから」
「わかったのじゃ。吾輩も少し頑張ってみるかのう!」
「その意気だ」

その後は少しして後は利根に任せて私は暇も潰せたので執務室へと戻ろうとしたんだけど、

《筑摩さん。本当に安心していましたね》
「そうだな榛名」
《やっぱり提督の身は皆さんに必ず必要ですから提督も無茶をしてはいけませんからね?》
「わかっているよ」

それで私と榛名はそれから色々と会話をしながら戻っていくのであった。
筑摩が治っている事を祈って……。


 
 

 
後書き
前半は利根パート、後半は筑摩パートでした。
なにげにイベント以外では初めて出した感じですかね?
まだ出し切れていない子達がいますから出してあげないとですね。





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0185話『照月、月を見て思う……。』

 
前書き
更新します。 

 



秋の夜の空を眺めながら私はぼーっとある事を考えていた。
そんな時に秋月姉が話しかけてくる。

「照月……? 月を見上げてどうしたんですか?」
「うーん……そうだね。秋月姉、ちょっといいかな?」
「なぁに? 言ってみてください?」
「うん。そういえばさ………昨日ってさ、花月と夏月の進水日だったなって……」
「あぁ……そうでしたね」

それで秋月姉も私の隣に立って月を眺める。
秋月姉の視線はどこか儚なそうで触ったらふわっと消えてしまいそうで……。
だから私は秋月姉の手を握った。
錯覚だとしても秋月姉が消えるのは嫌だから。

「もう……困った子ですね」

そしたら秋月姉は私の考えは分からずとも頭を撫でてきてくれました。
うー……嬉しいんだけどなんか違うような。

「大丈夫よ。もうじき涼月も来る……だからいつかみんなで集まって笑いあえる時が来ます」
「そうかな……?」
「そう信じて行かないとやってられないでしょう?」
「そうだね……」

それで窓から流れてくる秋の少し寒い風を感じながら私は秋月姉とまた空の月を見上げた。
そんな時に誰かがやってきた。

「秋月姉さん、照月姉さん。夕ご飯の支度が出来たぞ。もう寒いから中に入ったらどうだ……?」
「ん。わかったわ初月。でも今はもう少し空を見上げていたいの……初月も来なさい」
「わかった……」

秋月姉のお誘いで初月も加わって少し一つの窓では狭いけど、でも三人で空の月を眺める。

「……でも、なにやら気持ちが沈んでいるようだね秋月姉さん」
「そうかな? まぁ、照月が花月と夏月の話題を出したから少し感傷的になっていたのかもね」
「花月に夏月か……たしか昨日が進水日だったか?」
「そうだよ」

私がそれで初月に答えてあげる。
えへへ……初月も覚えていたんだね。さすが姉妹なだけの事はあるよね。

「まだまだ僕たち三人だけだから姉妹艦としては下から数えた方が早いあいつらはまだまだ先の事だろうな……下手したら最悪会えない可能性も考えておかないといけないからな」
「そんな事を言うもんじゃないわ初月。こうして私達が再び会えた……だからきっと願えばいつか会えるわよ」
「……そうだな。悪い、僕も少し月にやられていたようだ。どうにも月を見ていると気持ちが沈んでくるものだからな」
「その気持ちはわかるわ」
「照月も分かるよ。変だよねー……名前に月が入っているんだからもっと喜びそうなものなのに……」
「元来月というのは太陽とは反対の位置にいるものですから闇の誘いでもしてくるのでしょうね」
「あ、秋月姉、どこか詩人っぽいね」
「そんなものじゃないですよ。でも、少し気持ちが塞ぐのは本当ですから……」

あ。また儚い笑みを浮かべる秋月姉がいる。
それで私はまた不安になってまだ握っていた手をギュッと強く握りなおす。

「それじゃ僕も握ろうかな?」

初月が私の行動を気付いたのか秋月姉の反対の手を握っていた。
そして秋月姉は「ふふ……」と笑みを零した後に、

「私は幸せ者ですね。姉妹達にこんなに勇気を貰えるんですから」
「わっ!」
「強いな……」

秋月姉が私と初月の手を握る手を強くしてきた。
それだけ嬉しいって気持ちが溢れているんだなって思うな。

「照月、初月……」
「なに? 秋月姉?」
「なんだい、秋月姉さん?」

秋月姉は少し改まった感じで私と初月の名前を呼んだので真剣な話だと思ったのですぐに返事をする。

「今度は三人じゃなくって涼月も加えて四人でゆっくりと月を眺めたいわね……」
「そうだね」
「そうだな」
「だから三人では無理だけど艦隊のみんなで頑張って涼月を迎え入れましょうね。司令もきっとそれを望んでいるから……」
「そうだね。提督もきっと私達のために頑張ってくれるって思っているよ」
「そうだな。提督は普段は少し真面目すぎて中々僕たちと触れ合えるタイミングも掴めないけど僕たちのためにやるといったら必ずやる人だからな」

うん。私達は三人とも提督の事をとっても信頼している。それだけは確かな事なんだよね。
だから提督が困っている事があったら力になりたいとも思うんだよね。
だってうちの鎮守府のモットーは一人はみんなのために、みんなは一人のために、だから。
それだから提督が困っていたら全力で支援をするんだ。
みんなも相談をすればすぐに話に乗ってくれるしね。
そんな事を考えている時だった。
秋月姉が少し体を震わせていました。

「うぅ……さすがに風に当たり過ぎたようですね。照月、初月、そろそろ部屋の中に入りましょう。もう少しだけ夕ご飯も冷めちゃってるでしょうから三人で温めなおしましょうね」
「うん!」
「そうだな」

そんなこんなで私達は部屋の中に入っていき少し冷めていた料理をまた温めなおして食べようとしたんだけど、

「初月……火を着けっぱなしで来たの?」
「うっ……ごめんよ。すぐに中に入ると思ってそのままにしておいたんだ」
「火事になっちゃうでしょう! 離れる時はすぐに火は消す! 節約にもなるんですからそこら辺は徹底しないと! 贅沢は敵です!」
「わー、ほんとにごめんよ!」

それから少しの間秋月姉の説教が開始された。
しばらくしてやっと解放された初月は少し泣きそうであったので

「ドンマイ、初月……」
「うん。少し反省したよ……」
「まったく……まぁいいでしょう。そろそろ食べましょうか。せっかく暖かいままなんだから」

それでやっと秋月姉は笑顔を浮かべて私達はそれから楽しく料理を食していった。
食事の献立内容……?
恥ずかしくて言えません♪

そしてもう夜も更けてきたので、

「それじゃ二人とも。電気を消すわよ」
「うん。わかったよ秋月姉」
「もう寝るとしようか」

外から「夜戦だー」という叫び声をBGMにして私達は眠りにつきました。
みんなで集まれる夢を見れたらいいな……。


 
 

 
後書き
昨日が花月と夏月の進水日だというのを忘れていました。
まだまだ実装されないでしょうけど覚えておいて損はないですからね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0186話『白露の秋の味覚』

 
前書き
更新します。 

 





今日はもう少しで雨が降り続ける陽気になりそうなので締めとして焼き芋を焼いています!

「白露の姉貴! そっちはもういいンじゃないか?」
「まだですよ江風。まだ焦らないの……」

江風が目を光らせてあたしの温めていた焼き芋を取ろうとしていたんだけど海風のおかげでなんとか防げたので良かったと思う。ありがと海風!

「あ、なにか水物でも持ってきましょうか……?」
「「「いやいや、五月雨(の姉貴)(姉さん)は大人しくしていていいよ……」」」
「なんでぇ……!?」

アタシ達が全員で五月雨の水物という単語を聞いてその後に訪れるだろう悲劇を予想してなんとか阻止する。
こういう時に五月雨はここぞという時に焚火に水をぶっかけちゃうとかやりかねないしねー。

「五月雨はこんな時って水をこけて焚火にぶっかけちゃうかもだろう? あたいはそう感じたんだ」
「涼風! 思っていても口には出さないのが優しさだよ!」
「うう……そうですよねー。私はそうしちゃいますよねー……」

るーるるーと涙を流す五月雨の背中に哀愁を感じちゃうなー。
まぁ、犠牲が出ないうちに対処しとかないとだもんね。だから許してね五月雨。
それから気を取り直して焼き芋も全員分焼きあがったので、

「それじゃいただきましょうか白露姉さん」
「そうだね春雨」
「村雨のいいところを見せてやろうかしら……?」
「何をする気だい、村雨……?」
「とっても美味しそうっぽい!」
「焼き芋……おいしそう……」

全員に行き渡ったのを見たあたしは声を揃えるように、

「それじゃいただきます!」
「「「いただきます!」」」

そして白露型全員で一気に焼き芋にかぶりつく。
うーん……この焼けている部分がとっても美味しいんだよね。中に熱が伝わっていて熱いんだけどお芋のまろやかなうまみが伝わってくるっていう感じで。

「幸せだなぁ……」

あたしはついそんな事を呟いていた。
そんな時だった。

「おーい、みんな」

そこに提督が何かを持ってやってきた。どうしたんだろう……?

「どうしたんだい提督?」
「うん。間宮さんから栗を貰ったからちょうど焼き芋をしているっていう話を聞いたからお裾分けに来たんだ」

「ほら」と提督は袋の中に入っている栗をみんなに見せてきた。
それで誰かが言ったのかはわからないけどつばを飲み込み音が聞こえた。
みんなも焼き芋以外も食べたいもんね。気持ちはわかるよ。

「今日は栗ご飯がいいかもしれないですね」
「お! それはいいな。海風の姉貴」

海風がさっそく今日の献立を考え始めているな。うん、それはいいかもしれないね。

「ああ、間宮さんもそれをしようと今頃作っている頃だろうと思うぞ」
「そうなんだ。少し楽しみかもね♪」
「栗ご飯も美味しいっぽい!」
「夕立はなんでも美味しく感じちゃうもんね。羨ましいなぁ……」
「ぽい!」

そんな夕立にアタシも少し羨ましいという気持ちを感じながらも、

「それじゃ提督。さっそく入れようか」
「まぁ待て。栗は跳ねるから準備をしてしないと食べられなくなるぞ」

そう言って提督はなにやら焚火に入れる前にアルミホイルに包んでいた。
確かに跳ねると痛いし勿体ないしだもんね。
しばらくして準備を終えた提督は焚火の中に栗を入れていった。
美味しく焼けるといいなぁ……。

「白露姉さん、よだれが出ていますよ?」
「おっと、失敬……」

まだ残っている焼き芋を食べつつ栗が焼きあがるのを待っていると、五月雨がなにやらそわそわしだしている。これはもしかして……?
それでこっそりと聞いてみることにした。

「五月雨……? どうしたの? もしかしてお腹にガスとか溜まってきていない……?」
「うー……なんでこういう時の白露姉さんは鋭いんですか……? 提督がいる前では恥ずかしいですからどうにかしないとですし……」
「そうだなー……」

それで提督の方を見る。
提督は山風の事を構っているようでこちらには気づいていないようだ。
山風も「構わないで……」と言いつつ逆に構ってオーラ全開だし。
だからあたしは名案と言わんばかりに、

「提督ー! ちょっと五月雨と一緒にお花を摘みに行ってくるね!」
「ん? あ、ああ……わかった。行ってきなさい」

提督は少し顔を赤くしたけど意味が通じで良かった。
それで五月雨と一緒におトイレに行って、

「ありがとうございます、白露姉さん……」
「いいって。姉妹の事を助けるのも姉の役目だからね」

それから少しして少しスッキリした表情の五月雨の姿があった。
うん、恥ずかしい思いをしないで良かったね五月雨。

「それじゃ戻ろうっか。焼き栗が待ってるよ!」
「はい!」

あたしと五月雨はすぐに戻っていった。
そして到着してみるとどうやらまだみたいで提督はちょうどアルミホイルを取り出しているところだった。

「おーっと! 提督、ちょうどよかった?」
「ああ。今から開くから待っていなさい」
「よかったですー……」

それで一安心するあたしと五月雨。
提督は安心したような表情を浮かべながらもアルミホイルを開いていった。
そこにはぱっかりと割れている栗の姿があった。

「うわー! 美味しそう!」
「まだ熱いから気を付けて食べるんだぞ。まだ向けていない部分は軍手をつけて剥くように」

提督がアタシ達に順番に焼けた栗をアルミホイルに包んで渡してきた。
よし! それではいざ参ろうとするかね!
あたしはアルミホイルを持ちながら器用に残った皮を剥いていく。
そして、

「それじゃいっちばーん!にいただきます!」

あたしは大きく口を開いて栗にかぶりついた。
そして焼き芋とは違ったうま味が伝わってきて、思わず「うーん!」と唸り声を上げてしまう。
それだけ焼き栗がうまかったという事である。
みんなもあたしのそんな姿を見たのか急いで皮を剥いている。
それから美味しく頂いていた。
そこに提督が、

「今日は間宮さんお手製の栗ご飯のメニューだからあんまり食べ過ぎないような」
「提督もそれは同罪でしょー……?」
「確かにな」

笑みを浮かべる提督。
そんな提督の笑みもまたいいものだよねとあたしは思った。
そして夕ご飯では栗ご飯を美味しく頂いたのであった。
秋の味覚を堪能中です!


 
 

 
後書き
今回は白露を出していきました。
多少五月雨成分も含んでいますね。




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0187話『不知火の見た夢』

 
前書き
更新します。 

 




朝から私は変な夢を見まして執務室へと向かっていました。
この、胸のわだかまりを相談できそうなのはやはり司令だけだと思いましたので……。
ですが道中で早霜が歩いてきましたので、

「早霜、おはようございます」
「不知火さん、おはようございます……。どうされましたか? なにやら少し難しいお顔になっていますが……」

むっ? 顔に出ていましたか。
それで早霜に私が今朝見た夢に関して司令に聞いてみようかと思いましたという話を伝えてみると、

「夢、ですか……」
「はい。なにやら現実味の帯びた夢でした。きっと司令ならこの答えを教えてくれると思いまして……」
「そうですか。でしたら私も着いていってもよろしいでしょうか……?」
「別に構いませんがきっとつまらない結果になると思いますよ?」
「構いません。それに不知火さんの事に関してはつまらないことなんてありませんから」

そう言って早霜は笑みを浮かべます。
……やはり少し早霜は私にとって苦手な部類なのかもしれませんね。
まぁ、いいでしょう。

「それではいきましょうか」
「はい」

それで私は早霜を連れて執務室へと向かいました。
中に入ろうと思いノックをします。
雪風や時津風はノックもしないで入ってしまうそうですが規律はきっちりとしないといけませんからね。
すると中から司令の声が聞こえてきました。

『誰だい?』
「不知火です。少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
『構わないよ。入りなさい』
「はい。それでは失礼します」

そして執務室の中に入ると司令以外にはちょうど人はいないみたいで少しホッとしている私がいました。

「早霜も一緒にいたんだな」
「はい……」
「それでなにかあったのか?」
「はい。少しつまらない内容ですがぜひ司令の耳に入れておきたいと思いましたので……」

すると司令官は「ほう……」と声を鳴らした後に、

「言ってみなさい。つまらないつまらなくないに関しては私の方で判断するから」
「ありがとうございます。それでですが私は少し今朝に夢を見たんです」
「夢か……」
「はい、夢です。その夢の内容がまた少し不思議な物でした」

私はそれで思い出す。
私が昨日に見た夢はおそらく進水日の光景だとは思うのですが私の時とは少し船体の姿が異なっていたのです。
これは?と思い……。
そんな少しあやふやな内容を私は司令に伝えました。

「なるほど……進水日の光景が目に映ったのか」
「はい。ですが私には身に覚えのない光景でしたのでどういうことなのかと司令に相談に来たのです」
「なるほど……なんとなくわかったよ。そしてだけどおそらくその進水した船体の正体は不知火の名を引き継いだ『護衛艦 しらぬい』だと思うな」
「しらぬい、ですか……」
「そうだ。多分武装とかも近代的だったんじゃないのか?」
「は、はい……確かに昔の私達が装備していた武装とはかなり異なっていました」
「それならおそらく私の予想は当たっていると思う。やっぱりどこかで不知火と繋がっているんだと思う。私の元の世界ではおそらく昨日がそのしらぬいの進水日だったんだな」

司令のその予想の内容を聞いて私は胸にストンッとなにかがはまる感じを覚えました。
そうですか……。
私の名を引き継いだ船が就役したのですね。
それは……とても素晴らしい事だと思います。

「不知火さん、よかったですね」
「ええ。もしそれが本当だったのでしたら私も嬉しい限りです」

早霜にそう言われましたので私も少し表情が笑っているように感じました。

「お、不知火の久しぶりの笑みを見れたな。なんとも役得な気分だな」

おや。顔にもやはり出ていましたか。
ですが司令になら見られても別に構いませんけどね。

「それでしたらその新たな私にはこれからも活躍してもらいたいものですね」
「そうだな。きっと、不知火の魂を宿しているだろうから果敢に挑んでくれるだろうさ」
「そうです……。不知火さんの名を引き継いだのですから立派になってもらわないと困りますからね」

それで三人で笑みを浮かべあいます。
こうして笑うのも久しぶりな気がしてなりません。
実に気分がいいものですね。

「司令。私も新たな私に負けないようにこれからもご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」
「わかった。不知火もいい練度に達しているから限定作戦では使う時が来るだろう。期待しておいてくれ」
「はっ! 了解です」

それで私は司令に敬礼をしました。
それから私は執務室を早霜と一緒に出ていきました。
部屋へと帰る道中で、

「ですが、やはりいいものですね。もう一人の自分が就役するというのは……。私にもいずれは名前を継ぐ船が現れるのでしょうか……?」

早霜はそれでどこか遠い眼差しをしていました。
おそらく気分を私と重ねているのでしょうね。

「きっと必要な時が着ましたら早霜の名を継ぐ船は出てくると思いますよ」
「そうですね。だといいのですが……」

それから早霜と少しの間、色々と話し合いました。
話的には事務的なあれこれがほとんどですが悪いものではなかったですね。
その後に早霜とも別れて私は部屋に戻るなり、

「ふぅ……ですがやはり司令に話してよかったです。こんなに胸が晴れやかな気持ちになるとは思っていませんでしたから。ふふっ……護衛艦 しらぬい、ですか。頑張ってくださいね、もう一人の私……」

目を瞑ってもう一度進水したしらぬいの光景を思い出していました。
するとどこからか船の汽笛の音が聞こえてきたような錯覚を覚えましたが目を開けてみてもなにもありません。
ですが私には分かりました。
きっと、私の呼びかけに応えてくれたのだと……。
私はそれでまたさらに気分がよくなりましたのでこれからの活力にしていきたいと感じました。
不知火は今日も元気です。


 
 

 
後書き
昨日に護衛艦 しらぬいが進水したという話を聞いたのでこんな話を書いてみました。





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0188話『狭霧と磯風の関係』

 
前書き
更新します。 

 




磯風と松輪の二人が七輪を囲んで楽しそうに秋刀魚を焼いていた。

「わくわく……」
「もう少し待つんだな松輪よ。この磯風が最高の秋刀魚焼きというものを食わせてやるぞ」
「はい。……待ちます!」

二人の会話は一見成立しているようであまりしていない。
なぜかというと松輪は秋刀魚が焼けるのを楽しみにはしているんだけど、どこまでの範囲で焼いていいのかまったく分かっておらず、磯風に関しては言わずもがな……。
時折誰かが二人の前を通りかかるのだけど磯風が秋刀魚を焼いているというだけであまり関わらない方がいいだろうという感じで見ぬ振りをするのが大半だという結果である。
だから誰も磯風の秋刀魚焼きを矯正してくれる人がいないのでどこまでも秋刀魚は焦げていき食べられないものへと姿を変えて行ってしまう。
松輪もそれが美味しいとは言っていても、それが本当に正常な秋刀魚の味なのかすら判別がついていない現状だったので不幸としか言えない。
だけど捨てる神もいれば拾う神もいるということわざ通りにある子が二人の前を通りかかった時にその光景を見て見過ごせないという感じで二人へと近寄っていく。

「あの、磯風さん……?」
「ん? あぁ、なんだ。狭霧か。どうしたんだ?」
「その、その秋刀魚って……」
「うむ。今いい感じに焼けてきているところなんだ。できたら松輪に食べさせてやろうと思ってな」
「楽しみ、です!」

磯風と松輪は二人して笑顔を浮かべあう。
そんな二人に対して狭霧は少し悪いという気持ちになりながらもここは心を鬼にして挑まないと二人とも不幸な目に合うと予想したので、

「磯風さん! その秋刀魚ですけど……もう焦げちゃっていますよ!」
「なに……?」

それで鋭くなる磯風の視線。
狭霧の「怒っています」という感じの視線と、磯風の「聞き捨て置けないな」という感じの視線と視線が交差してバチバチと鳴っているようだ。
それを中間で見ている松輪は思わずあわあわしてしまいおろおろと狼狽えることしかできないでいた。

「……よかろう。狭霧よ。それなら私に本当の秋刀魚焼きというものを見せてもらえないだろうか……?」
「い、いいですよ! 狭霧、頑張ります!」

狭霧はそれで今現在の恰好である私服でバスケットには秋刀魚が二尾入っていたのでそれを出して磯風の焼いていた真っ黒焦げな秋刀魚を申し訳なくお皿にどかして新たな秋刀魚を用意し始める。

「いいですか? まずは最初から秋刀魚を七輪に乗せないで炭を温める事から始めます」
「なに!? 秋刀魚は最初から乗せてはダメだったのか!?」
「やっぱり乗せていたんですね……」

予想通りの反応に狭霧は思わず内心でため息をつく。
一方で松輪はというとなぜか持っていたメモ帳でメモをし始めだす。

「炭を焚いていってよく火が通って来ましたらそこで初めて秋刀魚を乗せるんですよ」
「なるほど……」
「あと、風よけとかもあったら用意した方がいいですね。風でせっかく焚いた火が散ってしまうと秋刀魚が生焼けしてしまいますから」

そう言って狭霧はどこから取り出したのか小さい風よけの囲いを用意して七輪の周りに置く。
これによって七輪の火の弱まりを防げるのである。

「ふむふむ……参考になるな」
「はい……」
「そして次に注意しないといけないところは火加減の難しさです。生焼けでもダメですし焼き過ぎても炭の味になってしまいますから。磯風さんの焼いていた秋刀魚がその炭の味というものになっているんですよ?」
「そうか……私のは焼き過ぎだったのか」

磯風は初めて指摘された事に対して反省点などを考えている。
磯風も料理音痴とはいえ馬鹿ではないので反省する点は反省できるのだ。
だから狭霧の話を真剣に聞いていた。
松輪は松輪で「(狭霧さん、教え上手です……)」と思っていた。

「それでは後は焼けるのを待ちましょうね。ほんのり焦げ具合が出てきましたら裏返してそちらも同じ感じに焦がしていきます」

狭霧の焼いていた秋刀魚の焦げ具合といえばいい感じにきつね色になってきていた。

「あと、ここでも注意する点と言えば秋刀魚の脂が七輪に零れると火柱が上がってしまってやっぱり焼け過ぎのもととなりますので注意深く見て行ってください。
もしそれでも火柱が上がったら秋刀魚の位置をずらしてその火柱に当たらないようにしてくださいね」
「了解した」
「とても美味しそうです……」
「最後にちょっと焼け過ぎって具合の感じが出てきたら七輪からどかしてお皿に乗せると完成です」

狭霧はそう言ってお皿に出来上がった焼け秋刀魚を乗せた。
そのあまりの出来具合に思わず磯風は「おおー」と感嘆の声を上げて、松輪は「ゴクリッ……」と唾を飲み込む。

「どうでした? 私も秋刀魚焼きは初心者な方ですからあまりうまくは出来ていないかもしれませんけど……」
「いや、狭霧よ。いい勉強になった。私の焼いた秋刀魚と見比べてみれば一目瞭然だな。なぜか私が秋刀魚を焼くと七輪も壊れていたのはそれが原因だったんだな……」
「へー、そうなんですか……って、いえいえ!? 七輪が壊れるっていうのはどういった状況でしょうか!?」

思わず流しそうになってその異常性に気づいて狭霧はツッコミを入れる。
それに対して「なにか変か?」と言わんばかりの表情をする磯風に狭霧はこれは重症かもしれない……と悟って、

「磯風さん、今度から私が料理の指導をしましょうか……? 未熟者ですけど未熟なりに教えられることもあると思うんです」
「いいのか?」
「磯風さんさえ良ければですけど……」
「うむ。それならありがたいな。司令にもあまり出す前に萩風とかに邪魔されるからな。見返してやりたいしな」
「いい心構えです。一緒に頑張りましょう」
「うむ、心得た」

それから二人はよく料理を一緒にする仲になっていって磯風の料理の腕は多少は改善されていったという。
ちなみに焼けた秋刀魚は松輪が美味しく頂いていたという。

「秋刀魚、美味しい……」

松輪の一人勝ちな結果とも言えなくもない状況だったけど誰もツッコミはいなかった。


 
 

 
後書き
まだまだ秋刀魚の季節は終わらない……。
次はだれを書こうかな……。



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0189話『姦しい三姉妹と羨む赤城』

 
前書き
更新します。 

 





今日は結構な人数の進水日なので酒保やらを周っていた私は赤城と遭遇する。

「あら? 提督、どうされましたか?」
「そう言う赤城こそ」

お互いに聞き返すという間抜けを演じているけどすぐに二人して笑みを浮かべて、

「ふふ。提督は天城さんの進水日のプレゼントですか?」
「ああ、まぁな。今日は他にも熊野とか卯月とかもそうなんで結構悩んでいたんだよな」
「でしたら一緒に選びませんか? 天城さんに関しましては私にも考えがありますので」
「いいのか?」
「はい」

赤城がそれで頷いてくれたので私は頼る事にした。

「それじゃお願いしようかな」
「はい。それでは選びましょうか」

それから赤城と一緒にプレゼント選びをしていたんだけど、

「やっぱり赤城の方は本当の姉の方の天城に関しても気にしている感じか?」
「そう、ですね……彼女は進水日すら迎えられなかったですからなにかと天城さんの事は構ってあげたいというのが本当の所です」

赤城はそれで「あはは……」と力ない笑みを浮かべる。
その普段の赤城とは違った笑みに私は聞く内容を間違ったかという気分にさせられた。
赤城の姉になるはずだった空母・天城は関東大震災のせいで竜骨を破損してしまい破棄せざるを得なかったという話がある。
だから余計同じ名前である天城の事を妹のように構いたいんだろうな。

「あまり無理はしないようにな赤城。それじゃ加賀さんとかが心配するぞ」
「大丈夫ですよ提督。無理はしていませんので」

もうそれで赤城の表情は普段通りになっていた。
これなら安心かな?
それから赤城と一緒に天城に贈るプレゼントは紅葉の形をしたブローチに決定した。
天城は戦闘時以外は改装前の着物を着ているから似合うだろうな。

「これでいいと思いますね」
「赤城の方は黄色い紅葉色か」
「はい♪」

二人してプレゼントは決まったのでそれでみんなに渡しに行こうと思う。
ちなみに卯月にはウサギのブローチ、熊野には鈴谷とお揃いの髪留めなどを買ってみた。喜んでくれるといいけどな。
そして赤城とともに天城を探していると甘味処間宮にいたので、

「天城さーん」
「天城、いま大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫ですよ」

なにやら天城は少し慌てていたようで身嗜みを直している。
どうやらまだ葛城と雲龍はいないようだな。

「それで提督に赤城さん。どうしましたか? 天城になにかご用でしょうか?」
「はい。天城さん、本日はあなたの進水日でしょうから提督と一緒にプレゼントを用意しましたので受け取ってもらえないでしょうか?」
「赤城に言われてしまったけど、まぁそんな感じだ」

私と赤城はそれで天城にそれぞれ色違いのブローチを贈った。

「わぁ! 私にですか!? 提督に赤城さん、天城……嬉しいです!」
 
天城は素直に喜んでくれていたのでよかった。
もしかしたら過去にとあるビラを撒かれてそれ関係で葉っぱ関係は苦手なんじゃないかと危惧していたけど杞憂だったか。
そんな時だった。

「あー! 雲龍姉、提督に先を越されちゃったみたいよ……」
「そうね。少し残念……」

そこに私たちに遅れて雲龍と葛城がおそらく天城を探していたのだろうやってきた。

「お前たちも天城にプレゼントか?」
「ふふん。そうよ提督。天城姉の進水日の事を忘れるわけないじゃない?」
「まぁ、私が教えたんだけどね……」
「雲龍姉! それは言わないでって……!」

ぼんやりしていながらもしっかりとダメだしする雲龍と慌てる葛城の姿を見て赤城が、

「やっぱり姉妹というのはいいですね、提督」
「そうだな。天城はどうだ?」
「あっ……その、はい。とっても嬉しいです……」

それで涙を流し始める天城の姿に、

「あー……もう、天城姉は涙脆いんだから……」
「天城、泣かないで……ここは笑う時よ」

雲龍と葛城が天城の涙をハンカチで拭きながらも慰め合っている。
うん。やっぱり姉妹仲はいいようで安心できる光景だ。
ふと、赤城の方を見てみるとやっぱりというかどこか羨ましそうな表情で見ていた。
だから私は赤城の頭を撫でてやりながら、

「大丈夫だよ赤城。姉妹がいないからって赤城にはたくさんの仲間がいるじゃないか」
「……そうですね。それをいったら加賀さんだって土佐という妹が本来ならいたはずですが廃棄処分されてしまいましたから悲しいはずですからね。私だけが悲しんでいられませんよね」
「土佐か……確かにな」

まぁとにかく天城の進水日を祝わないといけないなという事で、

「それじゃ今から私がなにか奢ろうか? ちょうど間宮にいることだしな」
「いいのですか提督?」
「ああ。天城の好きなものを頼みなさい」
「ラッキー! 提督、それじゃ私達にもなにか奢ってよ!」
「……葛城。少し図々しいわよ?」
「いや、いいよ雲龍。赤城や雲龍、葛城にもなにか奢るぞ」
「そう。それじゃなにを食べようかしら……?」
「赤城さん、これなんてどうですか? 新作みたいですよ!」
「それはいいですね葛城さん。それではこれにしましょうか」

四人がそれでそれぞれ個性的に騒ぎだしているのを見て、姦しいなとも思っていた。
やっぱり艦娘と言えど女の子なんだからこれくらいがちょうどいいんだよな。
戦闘をするだけの機械じゃないんだから。
人間と同じく感情を持つ立派な私達の同類なのだから。

「提督! これをお願いね!」
「わかったわかった。それじゃ間宮さーん! 注文をいいでしょうか?」
「はーい、ただいま!」

私は間宮さんを呼んでそれからみんなで新作のデザートを楽しんだ。
その後に雲龍たち三姉妹と別れた後に、赤城と一緒に歩いていたんだけど、

「提督……なにかと私にも気を使ってくださってありがとうございます」
「いや、構わないよ。赤城もたまには気を抜くこともしないと疲れちゃうだろう? 一航戦という誇りと看板を背負っているとはいえ赤城も一人の女の子なんだから」
「もう……提督はずるいです。そんな事を言われてしまったらもう少し提督の事を好きになってしまいますよ……?」
「ははは。それならむしろ嬉しいかな」

そんな会話をしながらも赤城とともにこれからどうしようかと予定を立てていくのであった。


 
 

 
後書き
天城を題材にしながらも赤城さんを主に書いていましたね。
まぁ楽しいですからいいんですけど。




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0190話『黒潮と現在の低練度の者達』

 
前書き
更新します。 

 


うちがやっとのこと演習の旗艦を務めさせてもらえるようになって一日。
なにやら司令はんの様子がおかしいと思うのはうちの気のせいやろうか……?
そんな事を考えながらも今日の司令はんのお手伝いをしに執務室へと到着したんやけど、

「司令はん……? なんや難しい顔をしてるなぁ~」
「黒潮か……そうなんだよなぁ。おそらく今月の月末に来るだろう改二は満潮で決まりだと思うからすでに満潮の練度は85まで上げてあるから大丈夫かと思うんだけど、それとは別としてまだ他の練度の低い駆逐艦の子達に関してなんだけど……」
「あ、もしかしてそれってうちも含まれとる……?」
「まぁ、まだ最低ラインの70に達していないから低い方だとは思うけどな」
「そやかてうちももう練度は51やから結構高い方だとは思うんやけどな~」

うちがそう言うんやけど司令はんはやっぱり難しい顔のままで、

「もう改二に必要な練度が70じゃ足りなくなってきているからな」
「そやねー。大型艦の人達は改装するのには練度が高いのは当然やと思うんやけど、駆逐艦のボーダーラインが霞はんのおかげで格上げされてもうたもんなー」

そう、霞はんのコンバート改装が練度が88と極めて高い練度で実装されてもうたから最近の司令はんは改二の情報が少しでも揃ったら一気に80以上まで対象の艦娘の練度を上げているのをよく見る。
まぁ、司令はんの気持ちも分からなくもないしなぁ~。
改二実装は難しい任務や改装に必要な道具を必要とするケース以外は実装された当日にしてあげないと可哀想だろう派の司令はんやからうちの子達は今のところ全員改二改装は済ませてあるんやけどなー。

「でも、なにがそんなに不満なの? 司令はんはうちらのためによくやってくれているやん? 駆逐艦の子達ももう少しで20人以下を切りそうなところまで来たやん」
「そうだな。いつでも改二が来ていいようにみんなの練度を上げてきているのは間違いじゃない……だけどな、最近思うんだ。陽炎型と夕雲型のみんなが可愛そうじゃないかなと……?」
「あー……」

そう来たか。
まぁそう考えてくれると嬉しいんやけどね。
それを言うと神風型のみんなもそろそろ実装してほしいという思いもあるやろうし。
秋月型のみんなももとが高性能やから改二なんてまだまだ来ないやろうし。
島風に至ってはいつかの隠し玉でいきなり実装されかねないと思うしなー。
島風本人は「おっそーい!」と叫びそうだけどな。

「まぁ、そやね。うちらもそろそろ数も揃ってきたから初期からいるうちらの一人くらいは改二が欲しい所やね」
「そうだろう……?」

うんうんと頷く司令はん。
そこまでうちらの事を考えてくれえるのは嬉しいんやけどね。

「でもその割には型ごとに分けてみるとうちらの数が一番多いのはどういう事なんや……んー?」
「そ、それはだな……」

それでしどろもどろしだす司令はんを見ているのもまぁ楽しいんやけど、実際の所も聞いておきたいのもうちの本音の所やね。

「それは、まだ一人も改二が来ないからそれなら優先順位を付けてしまっていてな。改二が来そうな比較的優位な子達を先に先にという考えがあったんだ。後回しにしていたのは本当だからすまなかった」
「まぁそうやろうとは思っていたけど……確かにそうやろうね。それに司令はんはうちら陽炎型の誰かに改二が来そうな情報が来るものならすぐに上げてくれるんやろ……?」
「当然だ。改二というのはまだ改二が来ていないみんなの憧れだから、出来る限りはすぐに叶えてやりたいとは常々思っているからな」
「それならええんや。うちもええ感じに演習で頑張るさかい。期待しておいてな」
「ああ」

それで笑みを浮かべあううちと司令はん。
ところで、

「ちなみに今のところ駆逐艦はあと型ごとに何人残っておるんや?」
「ああ。吹雪型が深雪と浦波の二人。初春型が子日だけ。綾波型が朧以外に最近入ってきた狭霧と天霧の合わせて三人。神風型が旗風。夕雲型が、早霜、巻雲、高波、夕雲、風雲、沖波、藤波の合わせて七人。そして最後に陽炎型が舞風、黒潮、秋雲、時津風、浦風、浜風、谷風、初風、親潮の合わせて九人。全員合わせてあと残りは23人だな」
「まだまだ結構おるなー……」
「そうだな。できれば来年になる前までには全員をいい練度にしておきたいのが私の考えているところだ」
「そこら辺は司令はんの頑張り次第やね。司令はんって通常でのレベリングはめんどくさがりなところがあるからなー」
「まぁそこら辺は私も気にしてはいるんだけどな」
「せっかく備蓄はいい感じにしているんやからランカーを目指していないんならパァーッと上げてもうてもええと思うんやけどな」

うちはそれでオーバーリアクションで両手を上げてみる。
それに司令はんは苦笑いを浮かべながらも、

「そうしたのは山々だけどなかなか他の事にも手を回さないといけないからそれが思い切ってできないのが辛いところなんだよな」
「ま、そううまく事が運ばないのは仕方がない事やけどなー」
「ああ、ままならないものだな」
「そやねー」
「「はぁー……」」

それでうちと司令はんでため息をつく。
と、そこに榛名さんが表に出てきた。
どうしたんやろうか……?

《あの、黒潮さんも提督もそんなに落ち込まないでください。私もこの通り手伝えませんが応援はできますので》

それでフレーフレー……と小さい声で恥ずかしがりながら言っている榛名さん。
うん、可愛ええなぁ~。癒されるわー。

「うん。少し元気が出てきたかな。ありがとう榛名」
《いえ……》

うん。このままだったら二人のいちゃラブ空間になりそうやから止めに入らんといつまでも二人の会話が続いてまう。

「ま、司令はん。そんなに気張らんといてな。うちらかて別にそこまで改二を望んでいるわけでもないからな。その時が来たらでええんやで?」
「わかってる。だからみんなの練度上げを継続して頑張っていこうか。まずは黒潮、君からだな」
「任せとき!」

それでいつ来るか分からない改二を望むより現実に足を付けて着実に進めていこうという感じに話は締めくくられた。
うん、うち等の鎮守府はゆっくりのペースやからな。このくらいがちょうどええんや。


 
 

 
後書き
ちなみに現在のnewソート順にまだ70未満の駆逐艦。

舞風  練度43 第四遠征艦隊
早霜  練度30 待機
黒潮  練度51 演習艦隊旗艦
朧   練度51 演習艦隊最後尾
深雪  練度43 第四遠征艦隊
子日  練度47 第二遠征艦隊
秋雲  練度30 待機
時津風 練度30 第四遠征艦隊
浦風  練度38 第三遠征艦隊
巻雲  練度30 待機
浜風  練度34 第三遠征艦隊
高波  練度30 待機
谷風  練度30 待機
夕雲  練度30 待機
風雲  練度30 待機
初風  練度30 待機
沖波  練度30 待機
親潮  練度35 第二遠征艦隊
浦波  練度36 第三遠征艦隊
藤波  練度30 待機
狭霧  練度30 待機
天霧  練度29 第四遠征艦隊
旗風  練度32 第二遠征艦隊

第二艦隊と第三艦隊の旗艦である球磨(89)と多摩(87)もいい練度なので由良改二(大発要員)と阿武隈改二(大発要員)を入れて駆逐艦をもう一枠入れれるようにしますかね?いや、でもそうなると4-3レべリングでの甲標的&対潜要員がいなくなるからまだこのままでいいか。穴埋めに二人目の北上さんと大井さんを育てないとですし……。
今の近況はこんな感じですね。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0191話『ドーン! 大漁旗もアゲアゲです』

 
前書き
更新します。 

 




今日は午前中は明石の鎮守府の総点検らしいので艦隊運営は停止している。
よってなにかすることもないので家具でもいじっていようかなと思っていた。
妖精さんに頼めばすぐに執務室は様変わりするからな。
そこら辺は謎の力として捉えておかないと頭がおかしくなりそうだしね。
それで最近飾ってある大漁旗を見る。

「うーん……しかし今年も大漁旗はよくできているよな」

そう独り言を言いながらもつい大漁旗のひもを引っ張ってみる。
するとお決まりのセリフって感じで『アゲアゲでまいります!』っていう大潮の声がギミックとして仕組まれている。

「榛名はどう思う?」
《私ですか? そうですね……色々な楽しみがあっていいと思います。家具が一つ一つ個性があって楽しめますしね》
「そうだな。来年の大漁旗が誰になるのか今から楽しみだな」

それでまた何度もひもを引っ張っては大潮の声を聞いているとなにやら二重で聞こえてくる。
だからどこかに隠れているなと思って大漁旗が飾ってある隙間を覗いてみると思った通りそこにはどうやって入っているのか分からないけど大潮が入り込んでいた。

「あちゃー……見つかっちゃいました」
「こら大潮。今日は総点検だから自室で控えていないとダメだろう?」
「そうなんですけど司令官は執務室にいるなら一緒にいようかなって思ったんですけどダメでしょうか……?」
「はぁー……そんな潤んだ瞳をしない。分かったから少ししたら部屋に帰るんだぞ?」
「はーい!」

大潮はそれで喜んでいるのでまぁいいかと思っていた。私も甘いな。

「それにしましても司令官もこの大漁旗をそっこうで手に入れましたよね。任務が発生しましてから二日で手に入れるのは早かったと思います」
「発生した任務はさっさと片付ける主義だからな」
「ふふふー。そんな事を言いましてもやっぱり司令官もまだまだ楽しんでいるんですよねー」

どこか楽し気な大潮の姿にどうにも調子を狂わされるんだよな。

「まぁ、楽しんでやっているのは否定はしないよ。みんなで楽しく秋刀魚漁をするのは結構面白かったからな」
「そうでしょう? それにこんな立派な大漁旗を貰えるなんて思っていなかったから大潮も嬉しいです。ただ、不満があるとすれば満潮が改二服じゃない事ですかねー」

少し不満そうな大潮の反応に私は「そうだな」と答える。

「せっかく満潮が改二になるかもしれないというのにこのままだとこの大漁旗は残念な結果になってしまうと思うんですよ。だからもし満潮が改二になりましたら大潮が塗り直してもいいでしょうか……?」
「家具を弄るのは感心しないな。きっと新しく送られてくるだろうという願いを持って待っているのもありだと思うぞ?」
「そんなに大本営は融通を効かせてくれますかねー?」

どうにも大本営の方針を信じていないような感じの大潮。
まぁそこまで私も新しく大漁旗を贈ってくるとは思っていないからなんとも同意してしまうんだよな。
本当に中途半端な仕事をするよな、大本営も。
これが満潮改二の伏線の為のミスリードの可能性もある事だしな。

「ま、そのうちなるようになるさ」
「そうですね。あ、司令官。ところでまだ秋刀魚は交換を一切していませんけどどうしますか……? 早めにしておかないと無くなってしまいますよ」
「そうだな。危ない、忘れるところだったよ。ありがとう大潮」
「えへへー……」

感謝の意味も込めて大潮の頭を撫でてあげる。
それで気持ちよさそうに表情を緩める大潮を見て間違いではないという思いだったり。

「それじゃ艦隊運営は停止しているから暇だから秋刀魚を交換してくるとするか」
「そうですね!」

そして大潮と一緒に明石の所へと向かう。
明石は妖精さんに色々と指示を飛ばしているのを見て忙しそうだなと思った。

「あ、提督に大潮ちゃん? ダメですよー、今は総点検なんですからあまり出歩かないでくださいね?」
「すまんすまん。今のうちに秋刀魚の交換をしておこうと思ってな」
「そうですか。それでは少し待っていてください。もう少しで指示が完了しますので」
「わかった」

それでしばらく明石の指示する光景を大潮と椅子に座りながら見ていたんだけど、

「明石さん忙しそうですねー」
「そうだなー」

私達は呑気に話しているとようやく明石が用事が終わったのか、

「提督。終わりましたのでさっさと秋刀魚の交換に行きましょうか」
「そうだな」

そしていざ秋刀魚の交換をしようと思うんだけど、現在は先日に高速修復材がカンストしたので『蒲焼』の選択肢は無くなっている。
さらには鋼材と弾薬もカンスト気味なので『刺身』という選択肢もいらない。
だから残るはネジとの交換である『塩焼』に限られるんだよな。

「今なら提督的には塩焼きがお得ですよ」
「そうだな。大潮、一緒に食べるか?」
「いいんですか!? 食べます!」
「それじゃ塩焼きに交換とするか。39尾あるから4尾余ってしまうけどまだ一日はあるから1尾だけでもなんとかゲットできるようにしないとな」

それで塩焼きと交換して大潮と明石と一緒に食べているんだけど、

「でももう少ししたら秋刀魚漁も休止してしまいますから寂しくなりますね。はむ……」
「そうですねー。売店も儲かりますからもう少し続いてもいいと思うんですよ。あむ……」
「そうは言っても取り過ぎにも注意しないといけないからな。我慢して来年にまた取ろうじゃないか。はふっ……」

そんなやり取りをしながらも三人秋刀魚の塩焼きを美味しく食したのであった。
また来年も秋刀魚漁を楽しみにしておこう。
だから次の行事に取り掛からないとな。
ハロウィンとかもあるからお菓子も購入しておかないとだしな。
いや、秋イベもあるから忙しくなるぞ。
頑張らないとな。


 
 

 
後書き
18日のメンテで秋刀魚漁は終了です。
提督のみなさんも交換を済ませておきましょうね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0192話『終わる秋刀魚漁』

 
前書き
更新します。 

 





今日で秋刀魚漁が終了する。
これで今年の行事がまた一つ終わった事に関して思う所もあるけど、まぁ、

「それなりに楽しかったよな」
「そうですね、司令官」

私の隣で朝潮がそう言っていた。
秋刀魚漁の任務で主に活躍していた子が朝潮だったこともあって今日は朝潮が秘書官についていた。
なにかとやっぱり優秀な子だから助かっているんだよな。

「司令官。今回の秋刀魚漁が終われば次の行事は秋の限定作戦になりますね」
「そうだな。でもその前に満潮の改二改装の案件もあるかな」
「そうでしたね。この朝潮、とても嬉しく思います」

笑みを浮かべている朝潮の姿を見て本当に喜んでいるんだなと感じる。
なんせこれで朝潮型は改二が五人目になるから喜びも一塩だろうなって。

「満潮はどんなふうに改二になるんだろうな……?」
「きっと私達に引けを取らないくらいの強化を為されると思います。それでも私は改二になると言うだけで嬉しくも思いますが」
「そうだな」
「まぁまだ朝雲と山雲の可能性も無きにしも非ずですが確率は低いと思いますね。この大漁旗から大本営の意思というものが感じ取れます」

そう言って大漁旗を見る私達。
やっぱり、みんなも感じる事なんだよな。

「やっぱり違和感があってしかるべきだよな」
「はい。満潮だけ改のままだなんて可哀想です」

それで少し怒り顔の朝潮。
私もその気持ちは分からなくもない。
どうせなら改二の姿で書いてほしかったものだもんな。

「まぁ、大本営への愚痴はこの辺にしておいて……今日の秋刀魚漁が終了するという事で今夜になにか新たな任務が来るかもしれないから控えておかないとな」
「大丈夫ですよ。この朝潮、どんな任務だろうと必ず司令官のお役に立ちます」
「ははは。頼もしいなほんとうに」

私は思わず朝潮の頭を撫でてあげる。

「あ、司令官。その……あんまり子ども扱いも、その……」
「ん? 嫌か……?」
「いえ、大丈夫です」
「それならよかった」

しばらくそれで朝潮の頭を撫でてやっていた。
朝潮も言葉ではああはいうけど気持ちよさそうにしているので嫌がっていないというのは分かるしな。
少しして、

「さて、それじゃこれからどうしておこうか。秋刀魚漁が終わるって事はしばらくは備蓄期間に入るわけだけど……」
「でしたらさらなるみなさんの練度の向上を図るべきではないかと思います」
「そうだな。こういう時に溜まっている資材は使わないとだもんな」
「はい!」

元気よく腕を上げる朝潮を見て思う。
そっかー……。もう今年も後少しなんだなと。
炬燵の準備もしないといけないしな。
今年から入った海外勢も炬燵の魔力に負けてしまうものかというある意味見ものだな。
あ、そうだ。

「そういえば今月のサーモン海域北方のEOをまだやっていなかったよな?」
「そうですね。ですが司令官はおそらく故意にやっていないと私は思っていたのですが……?」
「まぁそれもある。改二改装で発生する任務でまた高難易度の任務が発生すると思うから控えていたんだよな」
「やっぱりですね。最近の大本営は難しい任務ばかりを提示してきますからね」
「ああ、困ったものだ」

それで朝潮と一緒に溜息を吐く。
それだけまた高難易度を設定してくるのは予想してしかるべきだからな。
どこのエリアを指定されるのか今から考えていても仕方のない事だけど必ず南方海域か中部海域のどこかしらに任務は発生すると思うからな。
だからいつも駆け足で月末近くに攻略を開始していて地獄を見ていると言っても過言ではない。

「今から考えていてもお腹が痛くなるだけだからもっと平和的な話をしようか。今日は朝潮と他に誰かを連れて町へと視察に行こうと思っている」
「秋刀魚漁終了のお祝いみたいなものですか……?」
「そんな感じだ。町の人と協力して新鮮な秋刀魚をたくさん取れてわけだから労いに行かないとダメだろうと思うしな」
「わかりました。私もしっかりとお供しますね」
「頼んだ」
「はい、了解です」
「そして視察から帰ってきたらみんなで一気に炬燵やら暖房器具を出し始めようか」
「それはいいですね。もうそんな季節に入っていくんですね……」

どこか思いを滾らせている朝潮。
やっぱりもう寒いと感じていたんだろうね。

「朝潮も厚着の服を用意しておかないとな。朝潮に限らずみんなもそろそろ暖かい格好をしないと海に出て風邪でも引いたら大変だからな」
「わかりました。みんなにもその旨を伝えておきますね」

これであらかた伝える事は伝えたと思う。

「後は……そうだな。榛名?」
《はい、なんでしょうか提督?》

私と朝潮が会話をしていたためか会話に入ってこなかった榛名だけど一緒に話せないのも悲しいので会話に誘う。

「榛名はどう思う……? この激動の毎日を感じてみて」
《そうですね……提督がいつも一緒にいますし毎日がとても楽しく感じられています。ですから榛名的には大丈夫です》

榛名はそう言って元気そうに笑顔を作るんだけど、

「榛名さん? あんまり無理はしないでくださいね? 榛名さんだって本当ならもっと司令官のお役に立ちたいと思っているでしょうし……」
《お気遣いありがとうございます、朝潮ちゃん……》

それから榛名と朝潮は何口か会話をしているのであった。
うん、榛名ももっと他のみんなと会話をした方がいいと思うんだよな。
私とばかりいつも一緒にいても退屈だろうしな。
そして私はふと時計を見て、

「よし。それじゃ朝潮に榛名。そろそろ町の視察へと行くとするか」
「わかりました」
《はい!》

私はそれで少し厚着の恰好をしてもう一人誰かを見繕って町へと出かける事にした。
町の人達も秋刀魚以外にも大量に魚が取れたので結構賑わっているだろうしな。
最近の私はそんな喜んでいる人たちの顔を見るのがお気に入りになっているのかもしれないなと朝潮たちと向かいながらも思っていたのであった。


 
 

 
後書き
今日で秋刀魚漁も終わりですね。
今日はそんなに任務はこなそうですけど新たに陽炎型とかの限定秋modeがあるそうですから楽しみにしておきましょうか。



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0193話『川内と愉快な仲間達の補給線』

 
前書き
更新します。 

 


あー、眠いなぁ……。
私はそう考えていながらもついつい執務室へと足を向けているのはどういうことだろうかと自問する。
はて、これは啓示みたいなものかねぇ……?
こう、秋のヤングな私服を着るのです、的な?
まぁ別になんでもいいんだけどね。
それで執務室にいるだろう提督と顔を合わせる。
なにやら提督は少し難しそうな顔をしていて私と顔を合わせた途端、……深い笑みを浮かべた。
一瞬この私ですらゾクッとした。
なんだ? 何を私にさせるつもりだ?
警戒心を起こしながらも、

「提督……? 私に何をさせようっていうのさ?」
「そう警戒するな。別に難しい事じゃない。新しい任務での『補給線の安全を確保せよ!』っていう任務なんだけど川内に任せようかなと思ってな」
「なーんだ。そんなことかぁ……警戒して損した気分だよ」
「まぁ警戒するっていうのはある意味当たりかもしれないけどな」
「どういう事……?」

それで提督は任務の内容を話していく。
それには毎度こまめに追加される鎮守府近海の任務なんだけどまたしてもある意味鬼門と言わしめる製油所地帯沿岸の攻略が必要だとかで……。

「うへぇ……確かにまずいタイミングで顔を出しちゃったな。そこってあんまり夜戦もしないからつまらないんだよね」
「川内ならそう言うと思っていたよ。まぁ運が悪かったと思って諦めてくれ」
「はーい……それじゃまずは鎮守府近海の対潜哨戒から始めるの?」
「ああ。大鷹と択捉、松輪の三人と一緒になって攻略して来てくれ」
「わかったよ。川内、行ってきまーす」

そんな感じでメンバーを集めて鎮守府近海へと向かっていくんだけど、

「……あの、川内さん」
「ん? なに、大鷹?」
「はい。あの、川内さんは先制対潜は可能なのでしょうか?」
「ああ。確認ね。それなら……」

そう言った後に私は左手の薬指を三人に見せる。

「わぁー……」
「いいなぁ……」

択捉と松輪が案の定目を輝かせて反応してくれた。

「ま、そんなわけで対潜値に関しては大丈夫だよ」
「そうですか。しかし提督は一体何人の方々と……」

それでぶつぶつ言いだす大鷹。
ふぅん? まだそこら辺は気にするタイプの子だったか。
まぁ仕方がないよね。この世界の出身の子だからね大鷹は。
提督は一番好きなのは榛名だっていうのはもう周知の事実だから別段気にはしているけどそこまで入れ込んでもいないしね。
気にしているのは特に金剛型の三人かな……?
特に金剛は着々と提督の貞操を狙ってるっぽいし。
提督はもう女性の身体だから間違いも起こるわけもないのにねー。
だけどそんな事を前に誰かと話してか忘れたけど、『提督と一線を越えたという理由が出来ればワンチャンあるかも……』と企んでいるような会話を聞いて怖いなぁ……と感じてたりもした。
いや、本当に誰か忘れたからね? なぜか思い出そうとすると恐怖が蘇るというか……。
それにそんな事は榛名が一緒にいる限りはまず起こらないだろうしね。
そう考えると提督っていつも榛名の見張りを受けていることになるんだよね……?
よく平常心を保てているなって感心するね。
まぁそれだけお互い通じ合っているって事だし口出しは不要だね。

「そんな事を言ったら大鷹だって絆を結んでるじゃん?」
「そ、そうですけど……それとは考え方が別と申しますか……!」

顔を赤くして可愛いなぁ、こいつぅ~。

「まぁでも提督の事は嫌いじゃないんだからいいんじゃない? 私も提督の事は好きだよ?」
「そ、それは……そうですけど」

しどろもどろになる大鷹。

「司令は優しいですから」
「はい……。松輪達にも優しくしてくれます……とてもいい人です」
「あう……お二人にもそう言われてしまいましたら私も引き下がるしかないじゃないですか……」

そんな感じで雑談をしている間に、

「……さて、そろそろソナーも引っかかってきたからお話はしゅうりょー。行くよ……?」
「あ、はい!」
「了解です!」
「わ、わかりました……!」

おそらく私の視線に感化されたんだろうけど三人も真剣な表情になった。
私って切り替えが早いタイプだからねぇ……。
夜戦だともっと頑張れるんだけど、我慢我慢。

「それじゃ行くよ!」

そして私達は潜水艦の深海棲艦を屠っていった。






……それから場所は変わって場所は南西諸島。
提督もこのメンバーならいけるだろうという感じでメンツを変えずに装備だけ変えてもう二人今遠征で育て中の黒潮と朧を追加して挑んでいる。

「ひゃー。ひっさびさの実戦や。うち、頑張るで!」
「朧も頑張ります!」
「まぁそんなに気張らなくてもいいんじゃない? 気楽に行こうよ」
「まぁそやねー」

黒潮はさっそくもう空気になれたのか順応している。
さすが大阪人の魂を引いているだけあるね。

「それじゃバリバリいくよ!」
「はい、吶喊殲滅します」
「いやいや、朧ちゃん口が堅いし物騒やでぇー?」

黒潮のツッコミがさく裂するけど朧にはあまり通用していないようである。
堅物だねぇ。
大鷹たちも苦笑いを浮かべているし。
まぁいいけどね。
そして南西諸島の深海棲艦も瞬く間に殲滅した。
敵には情など抱いてはならぬってね。







そしてやってきました。
製油所地帯沿岸のエリア。
ここは毎回羅針盤が安定しない事で有名だからきっちり仕事をしてさっさと終わらせないとこじらせたら泥沼になるからね。

「それじゃ最後のエリアだからゆっくりだけど確実に仕留めるよ」
「「「了解」」」

それで航路を進んでいくんだけど……。
やっぱり渦潮に進んでしまうのはどうにかならないものか……。

「これで何回目だっけ……?」
「えっと……確か六回目ですね。初期の海域だというのに難しいという話を聞いていましたけどこれほどとは……」

択捉がそれで別の意味で感心していた。

「沖ノ島海域に比べれば可愛いもんだよ……? あそこじゃ択捉達は……いや、私も速攻で大破しちゃう可能性があるからね」
「「「うんうん」」」
「本当ですか……?」
「少し、怖いかも……」

知っている者は頷き、択捉達のように知らない者達にとっては少しの恐怖を覚えるだろうね。
ゲーム的には最初の難関だからね。
まぁそんな感じで数回繰り返して疲労も貯まってきた頃合いで、

「きたで! 絶好のチャンスや!」

黒潮が叫んだ通りボスエリアの前まで進めることが出来た。
いや、やっぱここも鬼門だわ。再確認。

「行ってください!」
「お願い!」

択捉と松輪の二人が祈りながら羅針盤を回していた。
そしてついにボスマスへと進むことが出来たので、

「さぁて、それじゃ鬱憤晴らしといこうかね……?」

その後の事なんて記載する事もない。
当然勝利で終わらせたんだからね。
そして向かうは執務室。

「提督ー? 任務終了だよー」
「ご苦労だった。疲労も貯まっているだろう。明日は夜まで寝ていてもいいよ」
「了解だよ。夜になったらまた哨戒を頑張るからさー」
「ああ」

それで私は執務室を後にして自室へと向かっている途中で、

「川内姉さん、お疲れ様です」
「川内ちゃん、お疲れー」
「おお、神通に那珂か。さっそくで悪いんだけど夜になったら起こしてよ。一旦眠るからさ」
「わかりました」
「了解だよー」

二人にそう言って私は自室に戻ると速攻で眠りにつく私だった。
夜になったら鬱憤も晴らす気持ちでバリバリで深海棲艦を狩ろうかね。


 
 

 
後書き
夜戦型アイドルの川内ちゃんは可愛いですよね。秋グラが可愛いのなんので。
それと狭霧と天霧がかなり優遇されている感じがしましたね。




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0194話『ドイツ艦のオクトーバーフェスト』

 
前書き
更新します。 

 




今日はなにやら間宮さんのお店が騒がしい事になっている。
特にお酒を嗜んでいる子がよく出没しているという。
今日は何かあっただろうかと私は思いながらも、

「なぁ大淀。今日はなにかあったっけ? 甘味処間宮が騒がしいという話を聞いたんだが……」
「あぁ、その件でしたか。今日はドイツの艦の人達が少し遅いオクトーバーフェストを開催しているんですよ」
「あ、なるほど……確かに遅いよな。オクトーバーフェストはやるのは10月の上旬までだからな」
「そうですね。ですが楽しければいいのではないでしょうか……?」
「そうだな……それじゃお昼にでも行ってみるか」
「提督? 午後の仕事に支障が出ない程度にお願いしますよ」
「わかってるよ。大丈夫、少し見に行くだけだから」

それで午前中はしっかりと任務をこなしていってお昼になったので私は甘味処間宮へと赴いていた。
しかし甘味処でお酒を飲んでいるというのはそれはそれでどうなのだろうか……?
鳳翔さんのお店でもよかったと思うんだけどな。
まぁいいけどね。
そして私が顔を出すと、

「いらっしゃい。あ、提督だったんだね」
「あ、レーベか」
「うん」

そこにはオクトーバーフェストのディアンドル姿のレーベの姿があった。

「うん。その恰好は似合っているよレーベ」
「ふふ……ありがとう提督。ビスマルクー、提督が来たから案内よろしく!」
「わかったわ」

レーベに呼ばれてまたしてもディアンドル姿のビスマルクが出てきた。

「よく来たわね提督。提督はお酒が苦手だからなにか摘めるものを用意するわね。さ、席に案内するから着いてきなさい」
「わかったよ」

そしてビスマルクに席に案内してもらっている道すがら、

「しかし……やっぱりお昼というのも影響して大型艦のみんなが集まっているんだな」
「そうね。甘味処で開いているのもあって子供たちも食事には来てくれているしね」
「なるほど。それが目当てでここで開催しているんだな」
「ま、そんな感じね」

見ればディアンドル姿のマックスやプリンツなどがジョッキのビールを景気よく両手で運んでいるのが目立つな。
客層は戦艦や空母が多しと……。

「さ、こっちはあまりお酒を飲まない人が座る席だから安心しておいてね」
「ありがとうビスマルク」
「ええ。……それより提督、私になにか言う事があるんじゃないかしら?」

ビスマルクにそう言われて少し苦笑いを浮かべながらも、

「はは……。その恰好も似合っているよビスマルク」
「そうでしょう? いいのよもっと褒めても!」

でっかい暁であるビスマルクがそれで上機嫌になっていたので良かったと思う。

「さて、それじゃ何か持ってくるわね。ソーセージの盛り合わせでもいいかしら?」
「お好みで頼むよ」
「わかったわ。少し待っていなさい」

上機嫌のままビスマルクは厨房の方へと向かっていった。
それで少し厨房の中も遠目で見てみるとどうやら裏方の方ではグラーフが料理を作っているみたいだな。

「……提督、お冷を持ってきたわ」

そこにマックスが水を持ってやってきた。

「ありがとうマックス」
「いいわよ。…………」

ん? なにやらマックスは私の事をじっと見てきているな。
なにかを訴えているようにも感じるんだけど、はて……?
しばらくしてマックスはため息を吐いて、

「……はぁ。レーベやビスマルクには言ったのに私には何も言ってくれないのね。まぁ別にいいけれど……」
「あぁ……なるほど。マックスも恰好を褒めてほしかったんだな。大丈夫、似合っているよ」
「そ、そう……ありがとう」

マックスはそれで顔を赤くしながらもそそくさと下がっていった。
うーん……やっぱりマックスは恥ずかしがり屋だな。
私は少しそれで和んでいながらも周りを見回してみる。
確かに駆逐艦の子達がよく集まっているスペースみたいだな。
みんなお酒は飲めないから食事の方に手を付けていて楽しそうにしているな。
それで近くにいた皐月に話を聞いてみることにした。

「皐月、楽しんでいるか?」
「あ、司令官! うん、楽しいね。特にこのパンがなんとも言えない美味しさなんだよね」

そう言って皐月はドイツ産のパイ生地にかぶりついてる。
うん、楽しそうだな。

「それじゃ楽しんでいってな」
「うん!」

それから他の子達にも色々と感想を聞いている間にプリンツが食事を持ってやってきた。

「提督ー。持ってきましたよー!」
「ありがとう、プリンツ。それとなにかを言われる前に言っておくけどプリンツもその恰好は似合っているよ」
「ありがとうございます! ビスマルク姉さまにも可愛いって褒められたんですよー。嬉しいです!」
「そうか」

と、そんな時に足元の方から猫の鳴き声が聞こえてきた。
それでプリンツと視界を下げてみるとそこにはビスマルク達が飼っているオスカーの姿があった。

「あ、オスカー! ダメですよ。さ、厨房に戻りましょうね」
「ニャー……」
「まぁいいじゃないか。私も猫は嫌いじゃないよ。元の世界ではよく逃げられていたからこうして近寄ってきてくれるのは嬉しいし」

そう言ってオスカーの頭を撫でてやる。
気持ちよさそうにしているオスカーの姿にまたしても和んでいる私がいた。

「……提督がそれでいいんならいいんですけど、オスカーに食事を与えちゃダメですからね? ペット用の食事はこちらで用意しておきますので」
「わかったよ」
「ニャッ!」

するとオスカーは私の膝上に登ってきて丸くなってしまった。
うーむ……どうしたものか。

「どうやらオスカーは提督の事が気にいったようですね」
「うん……嬉しいやらなんやらで」
「それじゃお昼の間だけでもお世話をお願いしますね」
「わかった」

プリンツはそれで戻っていった。
私はオスカーを撫でてやりながらも食事を開始する。

《オスカーちゃん、楽しそうですね》
「そうだな」

榛名とそんな会話をしながらも食事を楽しむ。
それとお酒の席の方ではすでに宴会が開かれているから後で注意しておかないとな。
そんな事を思う秋の一日であった。




 
 

 
後書き
オクトーバーフェストをまずは消化しました。
次は誰にしましょうかね。




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0195話『JD風な蒼龍』

 
前書き
更新します。 

 




朝になったので着替えをしている時だった。
扉がノックされたので誰かなと思ったけど、

「どちら様ですか?」
『提督ー、今はいっても大丈夫かなぁ?』

この声は蒼龍あたりかな?
そう思ったのでまだ着替え中だったので、

「少し待ってくれ。もう少しで着替え終わるから」
『わかりました』

それなので私はすぐに着替えを済ませて寝室の扉を開ける。
そこにはいつも通りの蒼龍の姿が……なかった。
なぜかちょっと女子大生みたいな長髪の美人が立っていた。

「……え? え、えっと……どちら様ですか?」
「あ、提督ひどいー。私、蒼龍だよー!」

頬をぷっくらと膨らませたどこか可愛い顔をした蒼龍がいたので、

「蒼龍なんだな……?」
「そうですよー。うふふ……もしかして見違いました?」
「まぁ、な。髪を下ろしているとかなり印象が変わるんだな。私服まで来ているからどこかの大学生が迷い込んだのかと思ったよ」
「やだやだやだ! 褒め過ぎですよー!」
「そういう言い回しは完璧に蒼龍だな……」
《ですね、提督。私も最初蒼龍さんだと気づきませんでした》
「榛名までそう言うんだ。だとすると今日は一日そう言われちゃうのかなぁ……?」

蒼龍はそれで少し残念がっている。
まぁたまのお洒落をしたのに本人だと気づかれないのもあれだよな。

「でもなんでまた私服になっているんだ……? 今日は非番だったか?」
「そうでもないんですけどぉ……確か提督今日は町に視察に行くんですよね?」
「ああ。もしかして一緒に行きたいのか……?」
「ぜひ! ちょっと欲しいものがあったんですよー! それで張り切ってお化粧しちゃいました」
「うーん……」

少し頭が痛いな。
視察はあくまで町の人との親睦を図るのが目的であり遊びに行くものではないんだけどな。
まぁ楽しそうにしている蒼龍を見ていると何も言えなくなっちゃうのが不思議だよな。
しょうがないか。

「それじゃあんまりはしゃぎすぎるなよ?」
「了解です」

それで敬礼をしてくる蒼龍。
ふと気づけば手に何かの本を持っている。
タイトルは『九九艦学』。
うん、さっぱりわからんな。
瑞鳳との艦載機についての会みたいな内容かな?






まぁそんなこんなで蒼龍とともに町の視察へとやってきたんだけどよく町の椅子に座っている一人のおばあちゃんが私達を見つけると、

「あらー。提督さん、視察ですか?」
「はい。おばあちゃんも特にお変わりはないですか?」
「大丈夫よー。提督さんがしっかりと町を守ってくれていますから最近はしっかりと寝れていますから」
「それならよかったです」
「……ところでそちらのべっぴんさんは……どなたかい?」
「べっぴんさんだなんて……おばあちゃん、私蒼龍だよ?」
「あんれま! 蒼龍ちゃんかい。またお洒落をしちゃってわからなかったよ!」

おばあちゃんはそれで本気で驚いていた。
うん、その気持ちはとてもわかるな。
それからおばあちゃんと蒼龍はいくつかお話をしておばあちゃんはどこか羨ましそうな表情をしながらおじきをして帰っていった。

「ふぅー……でもやっぱり見た目がそんなに違うのかなぁ?」
「それはそうだろう。普段見慣れていると思っていた私ですら別人かと思ったくらいだからな。それに綺麗だしな」
「いやですよ提督。褒めても何も出ませんよ?」
「本当にそう思っただけなんだけどな……」

私は小さい声でそう呟いたけどどうやら聞こえていたようで顔を赤くして蒼龍は黙り込んでしまった。
やっぱりピュアだな蒼龍は。
それから行く先々で私の隣を歩いている人は誰なのか?という視線を幾度もされてさすがに参ったのか、

「はぁー……みんなってあんまり普段の私の事を見る目無いですよね?」
「そんなことは無いんじゃないか? 今日はお洒落をしていて美人だと思われているんだからそれでいいじゃないか? 可愛いしな」
「はぁー……」

二度目のため息をする蒼龍。なんだ、どうした?

「提督ってたまにですけどナチュラルに褒めちぎりますよね?」
「そ、そうか……? ただ思っている事を言っただけなんだが……」
「まぁ、そういうところがみんなに好かれる要因だっていうのは分かっていますよ。ね、榛名?」
《はい。提督はとっても優しいですから》

なんだろう? 褒められているのか?そう思っておいた方が気持ち的に楽になるからそう考えておこう。
とそこに、

「提督のお姉ちゃん!」

私の背後から腰に抱きついてくる久しぶりに見る子が来た。
そう、私の腰に抱きついてきたのは七海ちゃんだったのだ。

「あ、七海ちゃん久しぶりだね」
「うん!」

七海ちゃんは眩しい笑顔を浮かべて相槌を打っていた。
うん、やっぱり笑顔の似合う子だよね。

「それと……蒼龍さんもこんにちは!」
「え? 私が誰か分かるの?」
「え?うん……蒼龍さんは蒼龍さんだよね? 少し綺麗になっているけどすぐにわかったよ」

七海ちゃんのその言葉に蒼龍は気分を良くしたのか、

「ふふん、提督ー。七海ちゃんはすぐに私だって分かったみたいだけどそこのところはどうなのかなー?」

どこかからかい口調の雰囲気だな。
その手に乗るか!

「七海ちゃん、蒼龍お姉ちゃんは綺麗だけどどこら辺がそう思ったのかな?」
「うん? そうだね……いつもは髪を両方で結んでいてどこか子供っぽい雰囲気もあったsんだけど、今日は髪を下ろしていて長い髪がとても似合う美人さんだよ!」
「はうっ!?」

子供の純粋な感想に蒼龍のなにかの琴線に触れたらしい。
少しずつだけどにやけてきているのが分かるな。
これぞ戦法・褒め殺し作戦である。
それからも何度か七海ちゃんに質問をしてその度に蒼龍の事を褒める姿を見れて採取的には、

「な、七海ちゃん、提督も……そろそろやめてほしいかな~? 恥ずかしくなってきちゃったよ……」

心に余裕が無くなってきたのかもう顔を盛大に真っ赤にさせている姿を見て、

「(勝った!)」

私は内心ほくそ笑んだ。
なのでそろそろからかうのもやめておく事にした。

「ところで七海ちゃんはその分厚い本はどうしたの?」
「うん。海軍の提督になるためのお勉強のための本だよ」
「すごいね! 七海ちゃん、頑張ってね!」
「うん! 私も将来は提督のお姉ちゃんみたいになりたいから頑張るの!」

私を目標としてくれるのは嬉しいけどどこかむず痒いな。
それから少し話をして「またねー!」と言って七海ちゃんと別れた後に、

「でも、七海ちゃんっていい子ですよねぇ……」
「そうだな。あの子の事も守れるように頑張らないとな」
「そうですね。あ、そうだ。欲しいものをまだ買っていなかった!」

それで蒼龍におねだりされたのでしょうがないから目的のお店まで付き合ってやって蒼龍は嬉々として購入していた。
本当に蒼龍はノリは女子大生だから元気だよなと思う私だった。


 
 

 
後書き
蒼龍の私服modeは可愛いですよね。
Twitterではケッコンする人が続出していたのをよく見ましたね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0196話『炬燵の季節ですよ』

 
前書き
更新します。 

 




阿賀野は先日から一斉に出されていた炬燵にあたって暖を取っていた。

「はぁー……あったかいな~」

完全に緩い顔つきになっているためすでに阿賀野型長女の威厳なんて微塵もないのである。
そこに雷がやってきて、

「阿賀野さん。そんなにあたりすぎない方がいいわよ。それでいざ出撃なんかしたら一気に体が冷えちゃうんだから」
「それでも今この時だけは炬燵は阿賀野のベストポジションなの~」

完全に阿賀野はタレパンダと化していた。
これは強敵ね……と雷は思うのであった。
と、そこに、

「ほう……これが噂のコターツというものか?」
「ごーちゃんも入ってみたいなー!」
「暖かいの……?」

初めて見るのであろうアークロイヤル、ジャージ姿のごーちゃん、リシュリューの海外勢三人がやってきた。
その三人を見て瞬時に雷は悟った。「あ、これは間違いなく堕ちるわね……」と。
阿賀野は三人を手招きしながら、

「とっても暖かいよー。三人も入ったら……?」

と、誘う。
アークロイヤルとリシュリューはまだ半信半疑の状態だったんだけどごーちゃんは迷いもなく炬燵に飛び込んでいった。

「うわぁ!?」

叫び声を上げるごーちゃん。
それでやはり危ないものなのか……?と険しい顔つきになる二人。
だけど次の瞬間には、

「はにゃはにゃ~……なんだろう、このもうお外に出たくなくなるような幸福感は……」
「そうでしょうそうでしょう? 炬燵ってとても暖かいんだから! アークロイヤルさんもリシュリューさんも入ったら? 暖炉よりも温いから」

ごーちゃんのその緩み切った表情を見てアークロイヤルは入るかどうか迷った。
入った瞬間、私もあんな顔になってしまうものなのかという戦慄を感じていたからだ。
だけどリシュリューの方は決意を固めたのか、

「それなら入らせてもらおうかしら……?」

そう言ってリシュリューも炬燵へと入っていった。
そして……、

Ce qu’est un merveilleux(なんて素晴らしい)……このコターツは魔性のものかしら? 足元から全身に熱が行き渡っていくわ」

ごーちゃんや阿賀野みたく緩み切った表情にはならないも笑みを浮かべて炬燵の魔力を味わっているリシュリューだった。
これで二人が撃墜されてとうとう残りはアークロイヤルだけとなり、ここは逃げの一手を取るか?という気持ちになっていた。
なぜかってここで入ってしまったら威厳が保てなくなる可能性があるからだ。
じりじりと迫ってくる炬燵の勢いにアークロイヤルは負けそうだった。

「入っちゃいなよ、ユー……?」

阿賀野がまたしても手招きをしてアークロイヤルを誘ってくる。

「アークロイヤルさん、無理はしちゃだめだからね? 入りたかったら入るのよ?」

雷からもやせ我慢をしているのが分かったのでそう声をかけられる。
それでとうとう意を決しようかと思いかけた前に、

「同志ガングート、これが炬燵だよ」
「おー! これはまた面白いものだな」

そこにヴェールヌイがガングートを連れてやってきた。
新たに海外勢の艦娘のエントリーだ!
冬になると地獄だと言われるロシア人のガングートはさて、どう反応するのか?
それを見届けてからでも悪くないとアークロイヤルは一回思いとどまっていた。
ガングートはそれで迷いもなく炬燵に入っていき、

「ハラショー! これはいいな! 祖国ロシアにもこれがあったらもっと戦えたかもわからんな!」

大絶賛だった……。
そして海外勢が三人目が撃墜されてとうとうアークロイヤルも心が折れたのだろう。

「そ、それでは私も入らせてもらおうかな……?」
「折れたねー……」
「折れちゃったわね……」

阿賀野と雷の呟きは聞こえてこないようにアークロイヤルは炬燵へといそいそと入っていった。
そして、

「くっ……! なんたることだ……私がコターツなどに敗北するなんて……」

涙を浮かべながらもゆるい表情になっているアークロイヤルの姿がここにあった。
くっころな表情、いただきました!
そこに提督が現れて、

「お! さっそく海外のみんなも炬燵に負けているんだな」
「あ、司令官。うん、さっき全員負けちゃったわ。ところでなんでアイスなんて持ってるの……?」
「いやな、炬燵を出したらきっと入るだろうと思って炬燵に入る際の至高の贅沢であるアイスを炬燵で食べるを実践してもらおうかとな」
「司令官もなかなかいけない人ね。そんな事をしたらもう抜け出せなくなっちゃうわよみんな」

雷は呆れながらも、それなら私も入ろうかしらと言って阿賀野の隣に入っていった。

「提督ー! 阿賀野にもアイスちょうだい!」
「わかった。バニラでいいか?」
「うん!」
「雷は抹茶を貰おうかな?」
「私はバニラでいいよ司令官」

それぞれ提督からアイスを貰う阿賀野、雷、ヴェールヌイの光景を見て海外勢の四人はというと、

「なぁちっこいの。炬燵でアイスというのは体を壊さないものなのか?」
「同志も食べてみれば分かるよ。暖かい中でのアイスはとてもハラショーだよ」
「そうか……では貰おうかな? 提督よ、私にもくれ」
「ammiraglio! ごーちゃんにもちょうだい!」
「それではリシュリューも頂こうかしら?」
「わ、私は……」
「アークロイヤル。ココは素直に食べておいた方があとあと後悔しないで済むぞ?」
「そ、そうだな……それじゃ一つ頂こうかしら」
「了解だ」

それで全員にアイスが行き渡ったのを見て、

「それじゃいただこうとするか」
「「「いただきます」」」

全員がア炬燵にあたりながらもアイスを口に入れる。

「んーーー! やっぱり炬燵にはアイスよね!」

阿賀野が真っ先に叫んだ。
その表情は幸福感で満ちていた。

「これは……なるほど。暖の中のアイスというのもなかなかいいものだな」
「ごーちゃん、これとっても気にいっちゃった!」
「これはなかなかに危険な魅惑ね……Délicieux」
「くっ……! これはダメだ! ダメになってしまう!」

それぞれ絶賛の声を上げていた。
アークロイヤルに関してはもう抜け出せないだろうという思いは間違いではない。

「あはは。気にいってくれてよかった。でも食べ過ぎないようにな。炬燵の中でもお腹は壊すんだからな」

提督もそう言いながらもアイスを美味しく食べているのであった。
それから続々と暖を求めて海外勢が後からやってくることになるのだがこの辺にしておこう。収拾がつかなくなるので。


 
 

 
後書き
今日は阿賀野と雷の進水日ですので二人を一緒に出しました。
海外勢は炬燵にあたったら堕ちるのは約束された未来ですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0197話『大型台風にさらされて……』

 
前書き
更新します。 

 




先日から続いていた台風がついに日本へと上陸したために私達は総出で窓の補強や鎮守府内で栽培している畑などを守る作業を先日までに完了していたために今のところは問題はないんだけど、

「しかし……こんな台風はかなり久しぶりだな」
《そうですね……皆さんも今は部屋に閉じこもってそれぞれ台風が過ぎるのをじっと待っている感じですかね?》

榛名とそう話している私達も今は執務室ではなく自室でラジオを聞きながらも経過を見守っているのであった。

『現在台風は関東付近へと上陸中であり―――……』

と、ラジオからは聞こえてくるので、

「とりあえず、今のところはもう大丈夫かな?」
《はい。この調子でしたら午後にはもうおそらく晴れていると思いますから》
「だけどこの台風の影響で畑が全滅していないといいけどな」
《はい。そんなことがあったら武蔵さんや天龍さん達畑メンバーが落ち込みそうです》

そうだよな……。
まだ外は仕切り戸がガタガタ言っているしもう少し天候の回復には時間が必要だなと思う。
そんな時だった。
ふと、扉がノックされたので誰か来たのだろうと思って扉を開けてみるとそこにはずぶ濡れの藤波と鳥海の姿があった。
って、

「二人とも、どうしたんだ? ずぶ濡れじゃないか?」
「あはは……ちょっと藤波さんと一緒に外に歩きに行かないかという話になりまして出てきたんですけど、出て行った後に重巡寮と駆逐寮が完全に閉められてしまって……」
「すみません司令。少しお世話になります」
「そうか。それはタイミングが悪かったな……少し待っていなさい。タオルを持ってくるから」

それで私は二人分のバスタオルを用意する。
こういう時にたまに私の部屋に泊まりに来る子がいるから事前に用意しておいたのだ。
まだまだ不安定な子もいる事だしな。
たまに部屋に泊まらせては落ち着くまで談話や最近の近況などを聞いては慰めている事もしばしばあるからな。
そんな事を考えながらもバスタオルを出して二人のもとへと持っていく。
それと備え付けのお風呂も沸かさないとな。
このままだと二人とも風邪を引いてしまう。

「ほら。バスタオルだ。二人とも体が冷えているだろう? よかったらお風呂に入っていくか? たまにしか使わないから今から沸かせば入れるけど……」
「それじゃお願いしようかな……?」
「でしたら私も入らせてもらいます。正直言って体もずぶ濡れで風邪を引きそうですし……」

藤波と鳥海の了解を得たので私もお風呂の準備を開始する。
支度をしながらも思っていた事を聞いてみる。

「しかし……こんな台風の中、どうして外に出ようと思ったんだ?」

お風呂を沸かす準備が終わったので後は勝手にお湯が溜まるのを待つだけだしそう聞いてみると、

「……その、鳥海さんと遊びたいなって、思ったんです」
「藤波さんってたまに私のところに来ては遊んでいくんですよ。よく昔の事も思い出すみたいで……」
「あっ! 鳥海さん、恥ずかしいからそういうのは無しで!」
「ふふ、ごめんね」

昔の件か……。
藤波と鳥海の史実の話となると、

「鳥海が沈んだ後に藤波が乗員を救出した件か?」
「司令……知っていたんだ」
「まぁな。そこらへんはこの世界に来てから学び直した事なんだけど……だとすると早霜の事ももしかして後悔しているのか?」
「それは、ないです……理由はどうであれ姉妹を見捨てるなんて藤波にはできません。だから艦長の判断は否定されるものの仲間を救おうとしたんですから悪くは言えません。もち言えません」

そう藤波は言い切った。
それならよかったんだ。
史実で藤波は座礁した早霜から空襲の知らせを受けるも不知火とともに無視して救出しに行って、直前の救出していた鳥海の乗員ともども空襲で失うという悲劇を体験したからなにかと思う所はあると思っていたんだ。
でも、そこら辺を分かっているなら話でしか知らない私が口出しできる事でもないよな。

「……そうか。ならいいんだ。無粋な事を聞いて悪かったな」
「いえ、大丈夫です。……クシュンッ!」

そこで藤波が可愛いくしゃみをしたので、

「ああ、もう。だから言わんこっちゃないな。鳥海、そろそろお風呂も沸いている頃だから入って来なさい。着替えはちょっと大きいけど二人分用意しておくから」
「わかりました。迷惑をかけてすみません提督。さ、行きましょう藤波さん」
「はい。クシュンッ!」

またくしゃみをしながらも二人はお風呂へと入っていった。
さて、これで一応は安心かな?
それで二人がお風呂に入っている間に私はまず高雄の部屋へと備え付けの電話でかける。

『どなたですか……?』
「私だ高雄」
『まぁ、提督でしたか。どうしました?』
「ああ。そちらに鳥海が帰ってきていないと思うけど今藤波と一緒に私の部屋のお風呂に入っているから台風が過ぎた後に還すようにするよ」
『そうでしたか。わかりました。でも、鳥海ったらこんな時にまったく……』
「怒らないでやってくれな?」
『ふふ。わかっています。それでは提督失礼しますね』
「ああ」

それで高雄との電話を切った後に今度は夕雲へとって感じで電話をかけておいた。
これで安心かな?
夕雲なんかはやっぱり心配だったらしく安心した溜息をついていたから。
これで後私がすることは着替えの用意くらいか。

「しかし、鳥海はともかく私の着替えはやっぱり藤波には大きいけど大丈夫だろうか……?」
《大丈夫ではないでしょうか……? パジャマなんですから多少は融通が利くと思いますから》
「それならいいんだが……」

私はその後に二人がまだお風呂に入っているのを確認した後に、

「二人とも。着替えは置いておくからな?」
『わかりました』
『了解です。司令、あり!』

これで私の用事は終わったかな?
しばらくして私の寝間着を来た二人がお風呂から出てきた。
榛名サイズの寝間着だから鳥海は問題はなかったけどやっぱり藤波には大きかったらしく腕がちょっと隠れてしまっていた。

「提督、ありがとうございます」
「ありがとね司令」
「ああ。それじゃ二人とも台風が収まるまでこの部屋で暖を取っていなさい。炬燵もある事だしな」
「「はーい」」

二人はさっそくとばかりに炬燵に入っていた。
うんうん。でもちょうどいい話し相手が出来たからよかったかな?
私も炬燵に入りながらもそれから台風が過ぎ去るまで二人と榛名と四人で色々な会話をして楽しんでいたのであった。


 
 

 
後書き
なんでも話のネタにしていくスタイル。

午後には台風は抜けるそうですけど出かける際には気を付けてください。
風もかなり吹きそうですから怪我したら大変ですから。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0198話『大本営の情報に困惑する衣笠』

 
前書き
更新します。 

 





本日の秘書官は進水日の日でもあったので衣笠になっている。
なので先日に発令された例の情報の件について聞いてみようと思う。

「衣笠、少しいいか?」
「なぁに提督? この衣笠さんにご用かしら? あ、進水日のプレゼントはまだ受け取っていなかったからくれるんならちょうだい♪」
「はいはい」

衣笠が両手を出してちょうだいちょうだい言ってきたので私はそれで事前に用意していたプレゼントを渡す。

「ぶー……なんか気持ちがこもってないなぁ~?」
「そんなことはないぞー?……それよりあらためて少し話があるんだがいいか」
「なにかしら? 面白い内容……?」
「まぁ、少し物騒な内容とでも言えばいいのか?」
「えー……それじゃなんか嫌だな……」
「まぁ聞きなさい。昨日の大本営からの通達でな」
「うんうん」
「今年の秋の作戦なんだがな。今まで例にない冬との二段作戦になったんだ」
「うぇ!? それって本当なの?」
「ああ」

そう言って私は送られてきた電文の紙を出して衣笠に見せる。
衣笠はそれを受け取るとこれでもかという感じで凝視していて「むむむっ……」と唸っている。
そして、

「うはー……これはすごい作戦になりそうだね」
「そうだな。だから盤石の態勢で挑まないと足元をすくわれかねないな」
「そうだね。これってやっぱり満潮ちゃん関係でレイテなのかな……?」
「おそらくはな……雪辱戦とはいかないだろうが深海棲艦もかなりの戦力を投入してくるんだろうな。それを迎え撃つのが私達という訳だ」
「総力戦だね……」
「そうだ。だからさらなる練度の向上を図っておいた方がいいと思うんだ」
「そうだね。うちの戦艦空母達はまぁまぁ化け物揃いだけど他はそんなに高くないからね」
「ああ。悩みどころだな」

それで思い出すのはいまだに練度を上げられていない速吸の件。
いつか話した事だが来年の夏まで大丈夫だろうと腹を括っていたのが間違いなのかな?
今からでも遅くないから上げておいても損はないけど特殊艦ゆえに上げにくいのもあってなぁ……。
駆逐艦ローテが終われば演習には入れられるんだけど今はあとがつっかえている状態だからな。

「はぁー……やっぱりままならないものだな」
「提督、でっかいため息ね」
「すまんな。つい衣笠だとフランクに話せるからどうしても素が出てしまうんだよな」
「そ、そうなんだー……私だと自然で離せるんだね。少し、嬉しいかも……」

どこか顔を赤くしている衣笠が気になるがまぁ大丈夫だろう。
さて、ダレていても仕方がないな。

「ところで衣笠。最近は重巡のみんなとは仲はいい方か?」
「ん? もちろん仲はいいわよ。青葉とかー、古鷹とかー、加古とかー他にもたくさん」
「そうか」
「そんな事を聞いてきてなにか考え事?」
「うん。満潮が改二が来るだろう? だからそろそろ青葉や高雄、愛宕とかにもそろそろ改二の情報が来てもいい頃だと思うんだよな。何がとは言わないけどこの三人は元の世界では限定グラとか一度もなかったからな」
「あー……結構メタいね」
「まぁな。だから早く実装されたらいいなって思うのもいいかなと……」
「そうだね」

それからしばらく話題が途切れたので静かになったんだけど衣笠が率先して話しかけてきた。

「ねぇねぇ! 提督、さっきの電文の内容を館内放送で流さない? きっとみんな驚くと思うよ」
「んーー……確かに驚きそうだけど大丈夫かな?」
「大淀に確認を取ってやれば大丈夫だって!」
「そうかぁ……よし、やってみるか」

それで私は大淀を呼ぶ事にした。
しばらくして大淀が執務室に入ってくる。

「提督、どうされましたか……? 衣笠さんも私を待っていたようですけど……」
「うん。衣笠の提案なんだけど館内放送で大規模作戦の内容を教えようという試みをしようと思うんだ」
「それは、大丈夫でしょうがかなりの騒ぎになりますよ?」
「なるようになるって! やろうよ大淀ー!」

大淀の背後に周って肩を揉んでやっている衣笠は甘え上手なんだなと思いながら、

「……仕方がないですね。わかりました。それでは執務室の隣の放送室へと参りましょうか」
「わかった」
「やりぃ!」

それから三人で放送室へと歩いていく中、

「ですが真面目な話で血気盛んな人達は聴いたら勢い余って暴れ出しそうな感じですけど本当にいいんですね?」

二度目の忠告を大淀からもらう。
まぁ言い出したらやらないといけないよなという感じだから。

「まぁ大丈夫だろう。その都度対応すればいいんだから」
「でしたら責任は重大ですからね」
「わかっています」

そして私は放送室の席に着くとマイクを持って全館に伝わるように操作した後に、

「あー……全館に私の声が聞こえていて驚いていると思うが静かに聞いてくれ」

私がそう話し出すと外からもなにやら騒ぎになっているようで声が色々聞こえてくる。
だけどもうここまで来たら止まれないよな。

「心して聞いてほしい。今年の秋の作戦なのだが、冬の作戦との前篇後篇で分割する大型の作戦となる見込みのようだ。だからみんな、気持ちを高ぶらせるのもよし、一度落ち着いて心を静めるのもよし、限定作戦を見事成功させるために全員一丸となって頑張ろう。私からは以上だ」

私はそれで最後に電源を切って放送を終える。

「提督、やり切ったね!」
「あはは……少し緊張したな」
「ですがこれからが大変ですよ? 特に青葉さんが悔しがりそうですね」
「そうだな」

と、そんな話をしていると結構の足音が近づいてくるのが分かったので、

《提督、覚悟を決めましょうね》
「そうだな榛名……」

榛名の慰めの言葉をバネにみんなの質問への対応に当たろうと思うのであった。
それからは代わる代わるやってきて対応に一日を費やしたのは言うまでもない。
特にレイテ組が多く来たのはなにかしら予感を感じたんだろうという思いなんだな。


 
 

 
後書き
艦これ第一期を超大型作戦で締めくくるというのはロマンがあっていいですよね。
もうレイテで決まりでしょうというのが本音ですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0199話『霞のお姉ちゃんが可愛い件について』

 
前書き
更新します。 

 




今日は満潮姉さんの改二が実装される日だ。
だからってどうというわけじゃないんだけど……少し私の以前に起きた話をしていこうかしら。
そう、それはまだ満潮姉さんが改二の情報が来ていなくて、朝潮姉さん達第八駆逐隊の面々が揃って改二になっていた時に起きた事件だ。
それは私がお風呂に入って私服に着替えていた時だった。
ふと自室に戻ったらなぜかいつも制服をかけてある場所に私の制服がなかった……。
私は少し混乱した。
なんで私の制服が無くなっているのか……と。
司令官がまさか盗むような事はしないと思うし……あれで私が認めるくらいには真面目な司令官だから。
それでどうしたものかと思っていたんだけど、そこでなにやら書置きがあったのでそれを読んでみた。
そこには

『霞、少シ借リルワネ』と書かれていたので私は瞬時に悟った。

「ははーん……?」

珍しく私は自身の顔がにやけるのを自覚しながらもその書置きを書いた人の部屋へと歩いていった。
なにも言わずにそっと扉を開けて中を覗いてみるとやはり思った通り、満潮姉さんが私の改二の制服を着て鏡の前で楽しんでいる光景が映っていた。
それはなんと微笑ましい光景だろうか。
わざわざ自身の黄緑のリボンまでつけていかに自身の改二の恰好を演出している満潮姉さんは可愛いという言葉以外が見つからなかった。
そこで私の嗜虐心が大いに揺さぶられたのは言うまでもない。

「お姉ちゃん~?」

私は扉を開けながらもいまだに服装のチェックをして楽しんでいる満潮姉さんの部屋へと突撃していった。

「か、霞!?」

案の定満潮姉さんは顔を真っ赤にさせながら慌てだす。
そんな仕草もいまとなっては可愛いという表現しか浮かんでこない。

「わたしの~制服で~なにをしているの~?」
「ちょ! そ、それはねー……?……っていうかあんたなにかキャラがおかしいわよ!?」
「今は気にしない方向で行くわ。満潮お姉ちゃんたらいつか来るだろう改二の恰好をして楽しんでいるなんて可愛いわねー」
「ううう、うるさいわね! いいでしょう!? 少しは気分に浸らせてよ!」
「うんうん。それもいいんだけど……ここに取り出したるわコンパクトなカメラ」

私は事前に準備しておいたのだ。
まさか使う時が来るとは思っていなかったけどね。

「ま、待ちなさい! 撮らないで!」
「どうしようかなー?」

もし今の私と満潮姉さんを司令官が見たら困惑する事はかなりの確率であると思う。
それくらい今の現状が楽しい事になっているんだから。

「まぁまぁそう言わずに……一枚だけ撮らせて! ね?」
「うざいったら! 可愛く言っても私が写真を撮られるのは変わらない事実でしょうが!」
「えーでも満潮お姉ちゃん可愛いし……」
「その、なんていうかお姉ちゃん呼びもよして……恥ずかしくなってくるから!」

私達がそんな感じで部屋で騒いでいるとこの騒ぎに気づいたのか都合が悪く? いや、私にとっては都合がいいのか? 朝潮姉さんと荒潮姉さん、大潮姉さんが満潮姉さんの部屋に入ってきた。

「満潮? なにやら騒がしいですがどうしまし―――……」
「朝潮姉さん? どうしたの~? 中を覗いて固まって―――……」
「なになに!? 二人とも固まっちゃったよ!? 中に一体何が―――……」

三人は案の定満潮の恰好を見て固まってしまっていた。
満潮姉さんはそれはもう完璧にフリーズしているのか顔を盛大に赤くさせて「あうあう……」しか言葉を発していない。
そして少しの間の後に朝潮姉さんが最初に再起動を果たしたのか、

「満潮! とっても可愛いですよ!」
「やめて姉さん! 今だけは放っておいて!」

朝潮姉さんが逃げようとする満潮姉さんに、だけど手を掴んで興奮しているのか頬ずりをしているというなんとも羨ましい光景が広がっていた。

「あら~。満潮ちゃんったらお茶目なところがあるのねー。まだ改二になっていないのに憧れちゃったのかしら~」
「これはもうアゲアゲですね! いつか第八駆のみんなで揃って並びたいよね!」

荒潮姉さんと大潮姉さんもとても嬉しそうな表情を浮かべている。
どうやらかなりウケがよかったようだわ。

「あー、もう! 少しは落ち着いてよー!!」

満潮姉さんがそう言って叫ぶが敢えて私はそこで火を着けた燃料を投下しようと思う。

「朝潮姉さん、せっかくだから記念に撮影でもしておかない? ちょうどいまカメラを私、持っているよの」
「ちょ!? 霞、図ったわね!」
「なんのことやら……」
「それはいいですね! いつか本当に満潮に改二が来たらまた撮りたいですが今この時だけでも写真に残しておきたいものです!」
「朝潮姉さん、その気持ちはわかるわ~」
「そうですね。気分はとってもアゲアゲです!」

どうやら満潮姉さん以外は賛成らしく、

「それじゃ四人とも並んで。写真を撮るから」
「うーうー!」

満潮姉さんは逃げたそうにしているけどしっかりと朝潮姉さんに手をホールドされているのか逃げ出せないでいる。
そして私はこの瞬間が逃げ出さないようにしっかりと写真にその光景を写し取ったのだった。








………という事があったのを今司令官と話しているんだけど、

「そうか……やはり満潮も楽しみにしていたんだな」
《そうですね提督。満潮ちゃんも今日の改二実装ではとても喜びそうです。だって第八駆逐隊が全員改二で揃うんですから》
「そうよね! ちなみにその時の写真なんだけど……」

私が写真を司令官に見せようとしている時だった。
バンッ!と扉が開かれてそこには満潮姉さんが立っていた。

「か~す~み~!? なに、司令官にあの時の写真を見せようとしているのよ!!」
「チッ……気づかれたか」
「その分かりやすい舌打ちもやめなさいったら! やっぱりその写真は私が押収するわ!」

そう言って満潮姉さんは手を出してくるんだけど、

「はい、司令官パスー!」

私は撮られる前に司令官へと写真を渡した。
司令官はその写真を見て、

「可愛いじゃないか。やっぱり四人で揃っていると見栄えがいいものだよな」
「う、うー……恥ずかしいったら!」

満潮姉さんは急いで司令官の手から写真を取り上げるけど時すでに遅し。

「満潮……今日の改二実装、楽しみにしておいてくれ。練度85だから最低でも改二にはなれるだろうからな」
「ふ、ふん……まぁ楽しみにしておくわ」

そっぽを向きながらも満潮姉さんも満更ではない笑みを浮かべているのだった。
やっぱり、

「満潮姉さん……やっぱり可愛いわね」
「……霞? 後で覚えておきなさいよ?」
「はいはい。待っているわ」
「うー……」

終始私のペースで勝負的には勝っていたのであった。
いや、でも本当に楽しみだわ。
盛大に朝潮型の面々でお祝いをしてあげないとね。


 
 

 
後書き
霞を少しキャラ崩壊させました。
姉妹間だとこれくらいはありそうですからね。
そして今日の改二実装、楽しみです!そのために来るだろう激ムズ任務を見越して我慢して5-5と6-5の攻略を控えていたんですから!



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0200話『満潮の改二改装』

 
前書き
更新します。 

 



ついにこの日が来たと思う。
先日はあの悪夢のレイテ沖海戦から74年目の日だった。
あの西村艦隊が栗田艦隊を支援するべく戦いに挑んでいき時雨を残して沈んでいった日でもある。
そんな中で満潮の改二が今から行われようとしていた。
私は大本営からの電文を読みながら、

「なるほど……満潮の改二改装には改装設計図はいらないのか」
「そのようですね提督」

大淀とまた勲章を改装設計図にしないで済んだことに安堵していた。
まぁ、それでも現在は約9人は改装設計図は使える状態には勲章は溜まってきているから誰かを二人目を改装を目指すのも吝かではないけどな。
でも今は駆逐艦強化月間が続いているしその終わりの目途が立ったら北上に大井の二人目も育てる予定だから他になかなか手を回せないのも現状である。
数日前に朧が練度70になり今現在残りの駆逐艦は21人にまで減っていて今は子日を育てているけどまだまだ時間は要しそうだからな。
そんな事を頭でまとめている中でそれとは別の意味での溜息を吐く。
まぁ、

「それならそれでいいとしようか。それじゃさっそく西村艦隊と第八駆逐隊の面々を集めようか。満潮にはどちらにも欠かせない仲間達だからな」
「うふふ。そうですね」

それなので私は満潮を始めとしたまずは西村艦隊の扶桑、山城、最上、時雨、山雲、朝雲の七人と、第八駆逐隊の朝潮、荒潮、大潮の三人を入れた10人を執務室へと呼ぶ事にした。
各々の部屋に電話をかけて招集をかける。
そしてしばらくしてメンバーが執務室に揃って集まってきた。

「提督……扶桑以下西村艦隊集合いたしました」
「司令官! 朝潮含め第八駆逐隊集合しました!」

扶桑はお淑やかに、朝潮は元気に敬礼をしながら挨拶をしてきた。
それにしても……、

「しかし、ここまで朝潮型のメンバーも揃っているなら霰と霞もいっそのこと呼んでおくべきだったか……」
「そうですね提督」

大淀もミスしたように苦笑いを浮かべていた。
それは呼ばれたみんなも思ったのだろう同じく苦笑いを浮かべていた。

「あはは……まぁ大丈夫です。後で二人も含めて朝潮型でパーティを開いておきますので」
「そうか。それならいいんだ」
「それより提督……ついに、満潮が改二になるんだね?」

時雨が少し真剣な表情になって私にそう聞いてきた。
だから私もここは茶化さないで真面目に答える事にした。

「そうだ。今回は改装設計図も使わない普通の第二次改装だけど練度は77で十分らしいから今の満潮なら十分だろう」
「そ、そう……司令官、私をここまで育ててくれて……その、ありがとね……」

満潮はそう言って照れながらも感謝の言葉を述べてきてくれた。

「いつかの約束を果たせてよかったよ」

私も満潮の嬉しそうな顔を見て満足そうに頷き返す。
それから駆逐艦のみんながあれこれ騒ぎ出し始める。

「もう、満潮姉ったら顔が真っ赤よ……?」
「朝雲姉ぇのいう通りね~」
「あはは! 満潮、顔が真っ赤です。気分はアゲアゲですか?」
「満潮ちゃんたら、とっても嬉しそうね~」
「あー! もうみんなしてウザいったら!」

相変わらず素直になれない満潮はツンツンしながらも、だけど満足げに口元が緩んでいた。
一方で扶桑が私にある事を聞いてくる。

「……ですが提督」
「ん? なんだ扶桑?」
「あの運命の日に満潮の改二が実装されるという事は……例の秋と冬の作戦はやはり……なのでしょうか?」
「扶桑姉さま……」

扶桑の不安げな表情に山城も同じくどことなく不安げだ。
そうだよな。
なにかしらのモチーフの海戦が毎度お来ているのだからついにあの悪夢の海戦がモチーフになってもおかしくはない。

「多分、そうだろうな。……だけど、今回は過去のようにはいかせない……。私が信じる君たちの事だ。必ず勝利ももぎ取ってくれることを固く信じているよ。だからそう不安になるな……とは言わないけど前向きに行こう。きっとそれが力になるから」
「そうですね……」
「提督もたまにはマシな事を言いますね」
「たまにはは余計だ、山城」
「あはは! そうだよー。もう過去の過ちを起こさないために僕たちは戦ってきたんじゃないか。だから今回もきっと勝てるよ!」

最上が表裏ない笑みを浮かべてそう言う。
うん。こういう時は最上の明るさがいい感じに状況を一変させてくれるよな。
それで聞いていた他のみんなも笑みを零しているからな。
それからある程度落ち着きも見せてきたので、

「……それじゃ満潮」
「なに……?」
「そろそろ行こうか? 改装室へと……」

私がそう言うと満潮も真剣な表情で、

「そうね。行きましょうか司令官」
「それじゃ善も急げというかみんなで改装室へと向かうとするか。もう明石も待ちくたびれているだろうしな」
「「「了解」」」

私達はそれで一同で揃って改装室へと足を運んでいった。
そして案の定待っていてくれたのか、

「あ! 提督、待ってましたよ。さ、満潮ちゃん、改装室はもう準備万端だからいつでも入っていいよ!」
「分かったわ。司令官……」
「ん……なんだ?」
「行ってくるわね」
「ああ。行って来い」

最後に好戦的な笑みを浮かべた満潮は改装室へと入っていった。
妖精さん達の準備が整うまで私達は雑談をしていた。

「そう言えば……朝潮、それに荒潮に大潮」
「はい、なんでしょうか?」
「あら~? なぁに……?」
「なんでしょうか?」
「うん。以前にあの秋刀魚漁での報酬でもらった大漁旗なんだけどな。明日に新規書下ろしでまた贈られてくるらしいから楽しみにしておいてくれ」

私がそう話すと三人とも、

「「「やっぱり!」」」

と、口を揃えていた。

「やはり見栄えが少し悪かったと思ったんですよ。満潮だけ改のままだったのは……」
「そうねぇ~」
「だったら嬉しいです! 大潮も気分がアゲアゲですよ!」

三人とも気持ちは一緒だったらしく大漁旗の話で気分も上がってきたようだ。
そんな時に明石の声が聞こえてきた。

「提督! 準備が整いました! いつでもどうぞ!」
「わかったー!……それじゃ押すとしようか。いいか、みんな?」
「「「うん……!」」」

全員の頷きを確認して私は改装ボタンを押した。
そしていつも通りに改装室の中から光が漏れてきて満潮の第二次改装が始まった。
全員は固唾を飲みながらもそれを見守っている。
そして……、改装室の扉が開かれてそこから朝潮型の改二特有の制服を着こんでチャームポイントの緑のリボンを付けていて少し背も伸びたような感じがした成長した満潮の姿がそこにあった。

「悪夢を乗り越えて、真の力を発揮した満潮の力を見せてあげるわ! レイテでもスリガオでもなんでもかかって来なさい!」

そう宣言した満潮は力強い笑みを浮かべているのであった。

「満潮……立派になって。この扶桑、嬉しいわ……」

この中で一番の年長者である扶桑がホロリと涙を流して満潮の成長を喜んでいた。
それからみんなが揃って満潮を囲んでいたので、

「よかったな、満潮……」

ただ一言そう言ってあげた。
囲まれている満潮は素直な笑顔を浮かべているのであった。
きっと今度もうまくいくはずさ。だから私がみんなを導かないとな。


 
 

 
後書き
記念すべき200話達成です。
この話数で満潮が改二になるのはなにかしらの縁を感じますねー。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0201話『最精鋭「第八駆逐隊」、出撃』

 
前書き
更新します。 

 




満潮の第二次改装が終了したために私は新たに発生した新任務を片付ける事にしていった。
まずは『「第八駆逐隊」、南西へ』という任務から始めて行こう。

「というわけで……」
「というわけで、じゃないわよ! どうして私達の出撃任務なのに司令官が一緒に出撃するわけ!?」

満潮がさっそく噛みついてきた。

「まぁまぁ満潮ちゃん、落ち着いて?」
「阿武隈のいう通りだぞ、満潮。そう……ただの数合わせじゃないか?」
「提督はもう慣れたようなものですからねー……」

阿武隈は少し虚ろな視線をしていたのはこの際見なかったことにしよう。
私だって練度上げをしたいからな!たまには前線に出たっていいではないか。

「あはは……長門さんの苦労が垣間見えますね」
「今頃執務室で司令官の事を呆れているんじゃないでしょうか……?」
「そうよね~。今頃溜息を吐いているわね」

朝潮たちも揃って呆れているのでなにか悪い気になってくる。

《ま、まぁ皆さん。提督もたまには体を動かさないと鈍ってしまいますからいいのではないでしょうか?》

榛名のフォローが入るけどどうにも反応は悪いな。
まぁ仕方ないと諦めておくか。

「そうはいうけど~……最近司令官たら演習には出ずっぱりだから結構動いているんじゃないの……?」
「まぁ確かに荒潮の言い分も正しいけどな。でも実戦に勝るものはないだろう?」
「そうねー……」

それで荒潮も渋々と言った感じで引き下がっていった。
他の面々もそれでどうにか納得したのか後は黙って海の上を進んでいっていた。
ただ満潮は睨みを効かせたままだったけどな。
そんな感じでまずはというか南西諸島沖を攻略した私達は次はバジー島へと進んでいたのだけど、

「くっ! やはり進路が安定しませんね……」

朝潮のいう通り、今回はいつも以上にボスのエリアへとなかなか進まないのだ。
それで悪い感じにみんなの疲労も溜まっていく一方であった。
だけどそれをなんとか堪えてみんなで何度も出撃してやっとの事、バジー島の深海棲艦を倒すことが出来たんだけど……、

「あー、もう……疲れたわね。司令官少し休むわ。その間に遠征の方を頼むわよ?」
「わかった」

執務室へと戻ってきた私達は新たに出現した遠征である『南西方面航空偵察作戦』の編成に四苦八苦していた。
なんでも話によると水上機母艦を編成に入れた状態で尚且つ対空値、対潜値、索敵値の上がる装備をして万全の態勢で挑むというもの。
最近の新遠征はそんな感じのばかりだよな。
まぁいいけどな。
それで各遠征部隊のみんなに該当する遠征をそれぞれしてもらって『「捷一号作戦」、発動準備!』をクリアした。

さらにはもう一つの任務で『最精鋭「第八駆逐隊」を編成せよ!』という編成任務が発生していた。
これは朝潮型を順調に第二次改装してある私には何でもない事だけど意外とみんな改装練度が高いし改装設計図も必要になる子もいるからなにげに編成するにはきついかもしれないな……。
まぁ、

「それじゃ改めて第八駆逐隊を編成するか」
「そうですね提督」

私はそれでみんなを集めて編成任務をクリアしたんだけどそこで思いがけない事が発生した。

「はぁ……みんなおまたせ!」
「そんなに待っていないわぁ~」
「司令官! 改装八駆、全艦集合しました!」
「これでアゲアゲです!」
「第八駆逐隊、出撃準備完了」

という四人の掛け合いの言葉が発せられたのだ。
なんていうか新鮮味を感じた私だった。
さらには新たに出現した次の編成任務は第三艦隊を使うものだけど西村艦隊を編成する『「西村艦隊」第二戦隊随伴部隊、集結せよ!』というもの。
これは満潮、時雨、最上、朝雲、山雲の五人を第三艦隊に編成して任務を達成する物なんだけど、

「どうしてまた私が……」

と満潮が不満を漏らしていた。

「まぁ、いいじゃないか? すぐに終わるようなものだろう? 遠征部隊が帰ってきたらさっそくするとしようか」
「わかったわよ……」

私はそれで満潮以外の四人も集めておいたのだけど、時雨はなにかを思い出しているのかどこか不安げな表情だ。
満潮がそれで時雨を気遣っている姿を見れたのでまぁ時雨も笑顔を浮かべていてくれてよかった。
そして滞りなくこの編成任務もクリアしたので最後に発生した出撃任務に取り掛かろうと思う。
任務名は『最精鋭「第八駆逐隊」全力出撃!』だ。
これは今となってはそんなに難しくないだろうキス島沖とサーモン海域にそれぞれ出撃するものだ。
だけどキス島沖の方は阿武隈を旗艦に四人と霞を編成してクリアしてもらったんだけど、問題はサーモン海域だった。
サーモン海域に駆逐艦を四人も連れて行くのは結構シビアな事だから、だから随伴艦にはサラトガと大鳳を編成して四人の護衛についてもらう事にした。

「というわけで二人とも、頼んだぞ」
「はい。このサラトガにお任せください」
「大鳳も頑張らせていただきますね!」

そして六人はサーモン海域へと出撃していった。
ちなみに第八駆逐隊の面々は主砲とは別にドラム缶を積んでいる。
なにもわざわざ一戦多くする必要もないからな。
そこでやはりサラトガのカットイン攻撃は光った。
四人を護衛しながらも敵深海棲艦をほぼ先制攻撃で落としていたのだ。
これにはやはり改二の力はすごいなと感心したほどである。
そしてこれもなんなくクリアできて良かった。
最後に四人は執務室へと顔を出してきた。

「よし、これで最後の任務もクリアだ。お疲れさま、みんな」
「はい! 第八駆逐隊、全力出撃任務完了です!」
「ふんっ! 今の私達ならどうってことないわ」
「あらあら~? 満潮ちゃん、被弾していなかった……? ウフフフフ~」
「な、なに言ってんの! あんなの無傷よ無傷!」
「結果、オーライです!」
「司令官! ありがとうございました!」

朝潮が最後に元気よく挨拶して来たんだけどその後に満潮が小さい声で、

「あ、あの……ありがと……」

と言ってきたので私は嬉しくなったので、

「ついに満潮もデレてきたか。成長は嬉しいものだな」
「バカ言ってんじゃないわよ! そ、その……感謝の言葉を贈るくらいはしないとダメでしょうが!」
「満潮、可愛いですよ!」

朝潮たちがそれでやはり満潮に抱きついていたりしていたので、最後にいつも通り、

「ああー、もうウザいったら!」

満潮の怒った言葉が発せられたのであった。
やはり満潮はこうじゃないとな。


 
 

 
後書き
四人の任務での掛け合いボイスはとてもよかったですよね。
時雨との掛け合いも悲しみが含まれていましたけど、前に進もうという気持ちを感じられました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0202話『初春型の集会』

 
前書き
更新します。 

 



ふんふふーん!
子日は今日も今日とで練度上げに励んでいますっと。
もうすぐ練度が70に達すれば子日は晴れてお役御免になるんだけど、でもそうなると今度の練度上げはいつになるんだろうという不安があるのは否めないんだよね。
提督が言うには駆逐艦全員練度が70に達したら次の目標は練度75だ!と言っていたけどまだまだ先の話だよねー。

「そんな感じなんだけどどう思う? 若葉」
「そうだな……。若葉としてはまだまだ強くなれる余力があるなら上げていきたいとは思うが……」
「相変わらず若葉は真面目だなぁ……」
「そこが若葉らしいというのも感じますけどね」
「そうじゃな。最近若葉はまだ戦場に出て活躍できないのをちと憂いていたからのう」

初霜と初春姉さんがそう反応してきた。

「あーあ、初霜に初春姉さんはいいなー。改二になっているから出番がある可能性があるから」
「うむ。若葉もその意見には賛成だ。早く若葉たちにも改二が来ないものだろうか……」

先日に改二になったみっちー(満潮)は朝潮型としては五人目の改二だから羨ましいよねー。
絶対大本営が贔屓しているよねって他の型の子達と話すこともあるくらいだから。
子日もいつか改二になれたら精一杯活躍できるんだろうかな……?

「子日よ、お主たちにもいつの日か改二の話が来ることじゃろう。だから今のうちに力を溜めておくんじゃな。わらわとて改二になってからというものこれと言って戦場に出ないからあまり練度は上がっておらぬからな。あの提督はちとわらわ達の使い方を心得ていないと見るが、さて……」

初春姉さんはそれで少し思案顔になっていた。
そっか。改二になっても悩み事はあるもんね。

「その分初霜は羨ましいものだな。提督と絆も結んでいるからな」
「あっ……えへへ、そうでしょうか?」

嬉しそうな顔をしちゃってー。
初霜は満更でもないようにはにかんでいるし。
ケッコンカッコカリ、か……。
改二にもなっていない子日達からしたらカッコカリの条件を満たすのは容易ではないからね。
まずは最低ラインの70にやっとどうにか届くくらいだからね。
提督は戦力強化の意味も含めて練度がカンストした人とはすぐに絆を結んでいるから戦艦空母のみんなは大体は絆を結んでいる人達が多いし……。
駆逐艦の子日達に比べたら確かに強いから仕方のない事なんだけどなんか釈然としないなー。
ま、いまさらそんな事を考えても詮無い事だからもう考えるのはよし!
もっと明るい話をしていこう!

「それじゃだけどー、この後だけどどうする? 子日はどこかに遊びに行きたいなー」
「それは……どうなのでしょうか? 基本鎮守府の外に出るには提督との随伴が必須ですから……」
「そうじゃな。もしやという訳でもないが単独行動をして好からぬ者にもし誘拐されでもしたら目も当てられないからな」
「艤装を出すのはダメなのか……?」
「人に向けてもダメじゃろう? 久保少佐に教わらなかったか……?」
「ぶー……それじゃもう妥協案で間宮にでも行こうか」
「そうだな……鎮守府内にも色々な娯楽施設もあるから不便はないしな」
「そうじゃな」
「いいでしょう。行きましょうか」

そんな事でみんなで間宮に行こうという感じで移動を開始したんだけど、

「……そういえば、若葉はどこかしら煙草を吸っているという噂を聞きますけど……吸っていませんよね?」

突然初霜がそんなびっくりな話題を出してきたので子日は驚いていた。
ま、まぁ子日達艦娘は基本年齢はないから大丈夫だろうと思うけど……むしろ艦の年齢も加算するとかなりの歳だしね。

「ふぅ……心配するな初霜。そこまで落ちてはいないさ。まぁ吸ってみたいという願望はあったりもするけどな」
「ただの噂ならいいんだけど、ほらうちの人達って提督も含めて吸う人がいないじゃない? 大型艦の人達もそれぞれお酒とか色々自由に娯楽を楽しんでいるけど煙草だけは誰も吸っていないから」
「なんじゃ初霜。そういう物言いだとお主の方がむしろ煙草に興味を示しているようにも感じるぞ?」
「そそそ、そんなことは無いですよ!? ええ、当然ないですとも!」

慌てて否定しているけど怪しいなぁ。
真面目な初霜は意外とストレス発散のために吸っているかもしれないというか吸っている姿を想像すると意外に似合うのが結構問題だったり。
まぁ……煙草は身体に悪いからね。
半不老の子日達の艦娘とはいえ体を壊すことはあるからね。
あまりにも酷い時は高速修復材を投与されるくらいだしね。

「ちょーっとこの話題はよしにしようか。なんか話していて見た目的にもアウトな話題だしね」
「そ、そうですね」
「じゃな」
「そうだな」

ふぃー……なんとか終わらすことが出来たよ。
初霜はいざ話題を出すとそれに固執する癖があるから早めに切り上げないとどこまでも続いちゃうからね。
そしたら初春姉さんがバサッと扇子を広げながら、

「わらわ達にもっとふさわしい話もないものかのー?」

ホホホとそう言って笑う初春姉さん。
うーん……初春姉さんが結構雅な口調だからどうにも調子が狂うんだよね。

「それではこれから行く間宮でなんのスイーツを頼むか考えましょうか」
「それはいいな。うん、それで行こう」
「そうじゃな。ではわらわは間宮特製モナカでも頂くとするかのう」
「やっぱり子日はアイスかなー?」
「若葉は抹茶プリンだ」
「むむむ……言い出した私が言うのもなんですが三人とも決めるの早くないですか?」
「なんじゃ。初霜よ、まだ決めておらんかったのか?」
「むー……お店に着いてからメニューを見て考えます」

やっぱり初霜は真面目だけどその分ゆとりがないから思考が固いのが少しダメなところだよね。
そんな感じで子日達四人は間宮へと向かうのであった。

「おうっ! 子日がいる! 今日はなんの日!?」

島風ちゃんがいきなり現れてそんな事を言ってきたので子日は即座に返事を返した。

「子日だよ!」
「はっやーい! さすがだね」
「うん!」

それで島風ちゃんとハイタッチをする。
そんな初春型の日常の一ページであった。


 
 

 
後書き
子日を主役として日常の切り抜きをしてみました。
なにげに若葉は初めて出したかもしれない……。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
 

 

0203話『深雪様の出番だよ』

 
前書き
更新します。 

 




深雪様の出番だね!
そう切り出したのは言うまでもない事なんだけどついにあたしが遠征艦隊から外されて演習艦隊へと移ったんだ。
だけど演習艦隊に移った日は生憎の悪天候。
台風もまた近づいてきているときちゃ少しの胸のざわめきも感じるってもんだな。
それで思い出すのは電との衝突事故でなんの活躍も出来ずに沈んじまったことだな。
まぁ、気にはしていないんだけど衝突と聞くとどうにも怖いんだよな。
最上さんじゃないけど古傷が痛むっていうか……。
そんな事を考えながらも廊下を歩いているとちょうどよく電が前から歩いてきた。

「あ、深雪さん……」
「電か。どしたー? そんなに離れなくたっていいじゃないか?」
「ですが、また衝突してしまったらと思うと、怖いのです……」

あー、電はあたし以上に気にしているのかー。
ならアタシから歩み寄らないとダメだよな。
そう思ってあたしは電へと近づいていって肩に手を回してがっちりと組み合う。

「あ、あの……深雪さん? これはなんなのですか?」
「うん? まぁ、あれだ。もう艦船じゃないんだからいちいち気にしていないでも別にぶつかったって怪我はしないんだから気にしないでいいんじゃないかってな」
「そうですけど……」

むー。強情な奴め。
まだ何か言い繕おとするか。
ならば最終手段だ!
あたしは電の脇をくすぐってやった。

「あっ、あはっは! やめてなのです! くすぐったいのです!」
「ここかー? ここが弱いのかー?」

ちょっと強引に電を笑わしてみるあたし。
こういうのもいいもんだよなー。
こうでもしないと電って距離を開いちゃうからなー。

「分かった、分かったのです! もう距離を取りませんからやめてなのです!」

もう息もキレキレで泣きそうになっているのでそろそろいいかな?
それであたしはくすぐるのをやめる。

「ふー……それじゃもう無用に距離を置くのはなしにしてな? 深雪様的にも少し傷つくから」
「わかったのです」

電はもう遠慮が無くなったみたいで微妙な感じも拭えているみたいでよかったよかった。

「あの、そういえば深雪さんも演習艦隊に組み込まれたんですよね?」
「ああ。だから演習で練度を上げていけば衝突の心配も減らせるってもんだな!」
「あはは……」

どうにも苦笑いを浮かべちゃうみたいだな。まぁしょうがないっちゃしょうがないか。

「それじゃ今から執務室に一緒に行くか? ちょっと司令官とも話がしたかったもんでな」
「わかったのです。いきましょうなのです」
「よし!」

それであたしと電は執務室へと向かっていった。
ふと気づけば窓の外は大荒れの天気で窓がガタガタと軋みを上げていた。
うーん……やっぱり怖いもんだよなー。
そんな事をまた考えていながらあたしと電は執務室へと到着した。
電が率先して扉のドアを叩いて、

「司令官さん。いますか?」
『電か。どうした?』
「はい。少しお話がしたいと深雪さんが言うので着いてきました」
『そうか。それじゃ入ってくれ』
「了解なのです。さ、深雪さん、入りましょう?」
「おう。でもやっぱ電って初期艦だけあって司令官の事はなんでも知ってそうだよな」
「そ、そんなことはないのです……初めの頃ならそうですけど今はもうみんなの司令官さんですから」

それでどこか寂しそうな表情を浮かべる電。
なんか面白くないなー。こんな顔を見たいわけじゃないんだけど。
ま、いいか。
あたし達はそれで執務室の中へと入っていく。
そこにはいつも通り軍服を身に纏った榛名さんな提督の姿があったのであたしとしても少し安心できる光景だな。

「こんな雨の中よく来たね二人とも」
「おう!」
「はいなのです」
「それで今日はどういった話かな?」
「それなんだけどさー、司令官。あたしの練度って今どんくらいだったっけ?」
「なんだ。自分の練度を覚えていないのか……?」
「あははー……。どうにも忘れっぽくてな」
「しょうがないな」

司令官は艦娘名簿を取り出して現在の練度を確認してくれている。

「深雪はまだ演習艦隊に入ったばかりだから今は練度は56ってところかな?このペースで行くなら一週間もしないで練度70は行くだろうな」
「そっか! それならいいんだ」
「それより深雪。電と一緒に来るって事はもう二人はあまり気にしていないんだな過去の事」

あ、司令官め。やっと収まった話を掘り返しやがった。

「司令官~……いつまでも引き摺っていたらやっていけないでしょうが」
「な、なのです……!」

さっきまで思いっきり引き摺っていた電も一緒に反論してくれたのでよかったとしようかな。
司令官はそれで少し反省したのか、

「……すまん。少し配慮に欠けていたな」
「いや、別にいいけどさ。それよりもっと楽しい話をしようぜ司令官!」
「そうだな。二人は姉妹たちの仲は良好そうだよな」
「あったりまえだぜ! この深雪様がいつも盛り上げてやっているからなー。吹雪とかもそれで助かっているとか言ってくれるんだぜ?」
「電も……その、暁お姉ちゃんとかが率先して引っ張ってくれるのでいつも楽しいのです」
「そっか。楽しそうでよかった」

司令官はそれで笑みを浮かべている。
司令官はよくみんなにこういう話を振ってるそうだけど、やっぱり心配性なんだろうかな?たまにまだ気持ちが不安定な子とかはメンタルケアしているって話だし。
だからあたしも司令官に逆に聞いてみる事にした。

「それじゃあさー。司令官と榛名さんの仲もいいのかい?」
「私達の仲か? それは仲はいい方だよな。な、榛名」
《はい。提督とは仲はいい方だという自覚はありますね。なんかこの話題もよく他の皆さんからも振られるんですよね。やっぱり不安定に思われているのでしょうか? 一緒の身体で共存しているというのは……》
「いんや。むしろ羨ましいって思うくらいじゃないすか? あたしも電ももちろん他の子たちも二人の仲は見ていて羨ましいって感じているのは本当だしね」
「はいなのです。電も、司令官さんとそう言う関係になれたらってたまに思う事があるのです」
「そうか……。」

司令官はそれで少し考え込んだ後に、

「もしだけど、私の意識が他の誰かに移ってその移った子の意識が榛名みたいになったらどう思う……?」
「そ、それは……少し怖いのです。今までの司令官さんが別の誰かになってしまうと思うと……」
「そうだなー……今となってはもう榛名さんで慣れたからいいと思うけど、今更他の誰かに移ったら少し司令官の事を軽蔑するかもしれないな」
「そういうわけだ。私と榛名はもうお互いに納得済みだけど、他の子たちは少しだけど拒否感を感じてしまうだろうからな。だから分離する手立てがない現状は今のままでいいと思っている」
《榛名も提督と同じ考えですね。提督と一緒に戦えるって思えば苦ではないですけど、他の子たちにしてみれば一緒の感覚は味わえないと思いますから。それに意外と提督と触れ合える機会が少ないのも辛いものなのですよ?》
「やっぱそっかー。うん、それを聞いて安心した。なにもお互い100%今の現状を容認しているわけじゃないって分かっただけでも聞いた甲斐があったかな」
「なのです」

うん。当然の話だけど辛いもんだもんな。
お互いに好き合っているから尚更辛いと思うしね。
だからあたしも司令官と榛名さんの事を出来るだけフォローしてやりたいと思った。
後で電にもその件を聞いてみたら同じ考えだったのでやっぱり考える事は皆同じって事かな……?
いつか、深雪様も司令官の役に立てるように頑張るぜ!


 
 

 
後書き
今回は深雪回でした。
提督と榛名も現状は少なからず不満はあると思うんですよね。
年に一回だけしか触れ合えないというのも考えモノですからね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0204話『秋の作戦名で時雨は思う』

 
前書き
更新します。 

 





私は大本営から送られてきた電文を見て予想通りというかやはりか……という感想を抱いていた。
それなのでちょうどよく執務室に来ていた時雨にその事を話すことにした。

「時雨、少しいいかい?」
「なんだい提督……?」

時雨は秘書官用の椅子に腰掛けて今はこれといって忙しい任務がないために読書をしていた。本を閉じながらも私の方に向いてくるのを確認して、

「大本営からとある情報が届いた。覚悟して聞いてほしい」
「ッ! ついに来たのかい?」

時雨の表情はそれで少し引き締まる。

「ああ。秋の作戦名は『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』という銘を打たれた」
「やっぱり、そうなんだね……」

それで時雨は表情を少し暗くしてなにかを思っているのか拳をギュッと握りしめている。
そんな時雨に話を続けるのも酷だけど敢えて続けようと思う。

「時雨……そんなに思いつめるなよ? 前にも言ったと思うけど無謀な特攻なんてさせるつもりは毛頭ないから」
《そうですよ。だから時雨、落ち込まないで》
「うん。大丈夫だよ。提督に榛名……僕は平気さ」

そう言いながらもどこか体を微妙に震わせている時雨に私は手を握ってあげる事にした。

「あっ……提督?」
「大丈夫だ。大丈夫だから……私を、そしてみんなを信じてくれ。もう西村艦隊のような悲劇は起こさせない。だから……」
「…………うん」

それで次第に時雨の手の震えは収まってきた。
ふと時雨の顔を見てみるとどこか安らぎのような表情を浮かべていた。これって……。

「僕は……幸せ者だね」
「急にどうしたんだ?」
「うん……僕は過去に佐世保の時雨とか言われているのは知っているでしょう?」
「まぁ……」
「だけどそう言われるまでに僕はたくさんの悲劇をその目に焼き付けてきた。仲間達がどんどんと沈んでいく中、僕は運よく生き残ってきた……。だから本当だったら提督だってそんな厄介者は使いたくないと思うはずさ」
「そんなことはない!」

私はつい大きい声を出して時雨の言葉を否定してやった。
そんなことは無い。時雨だってそれだけ辛い思いをしながらも最後には沈んでいったのを知っているから……。

「そんなことは無いんだ……時雨だって大切な仲間だ。だからそんな悲しい事を言わないでくれ」
「うん。提督ならそう言ってくれると思っていたよ。だからさ、僕はそんな僕の事を厄介者扱いしない提督だからこそ存分に力を振るいたいと思うんだ。それはきっと西村艦隊のみんなも一緒……そしてこの鎮守府のみんなのほとんどの総意。榛名だってそうだろう……?」
《はい。提督の為でしたらどこまでも力をお貸しします》

そんな時雨と榛名の言葉に私は胸が熱くなるのを感じた。

「まったく……嬉しい事を言ってくれるじゃないか二人とも」
「うん……だから僕は幸せものなんだ。こんな提督を主に持てた僕はどこまでも進んでいける。そして打ち勝つんだ……かつての悪夢を……!」

今度こそ時雨は強気な表情を浮かべてかすかだけど笑みを浮かべている。
その表情は私も勇気づけられるというものだった。

「時雨……」
「うん……」

私と時雨がなにかを言おうとしていたんだろうけどそこで執務室の扉が開かれた。
そして入ってきたのは西村艦隊の面々だった。

「そうよ、時雨……一緒に乗り越えましょうね」
「そうですね扶桑姉さま」
「扶桑に山城……いつから聞いていたんだ?」
「そうだよ……少し恥ずかしいな……」
「まぁ、提督が時雨に秋の作戦名を言っているあたりですかね……?」
「なんだ。ほとんど聞いていたんじゃないか。それならそれで入ってきてもよかったんだぞ?」

私がそう言うけどそれで最上が笑みを浮かべながら、

「いや、ちょっとね。みんなで提督は時雨をどう慰めるか試していたんだー」
「それはまた、意地が悪いな……」
「ですが、提督は私達の期待に応えてくれました……落ち込んでいる時雨をすぐに勇気づけてくださいました……。この扶桑、やはり提督は素晴らしいお方だと確信しました。ありがとうございます」

そう言って頭を下げてくる扶桑に少し恥ずかしい気持ちになっていた。

「はぁー……扶桑にそこまで言わせたんだから今度もきっちりと指揮をしてちょうだいよね、司令官!」
「そうよ! 朝雲達も精一杯頑張るけどやっぱり司令の命令があって初めて私達は力を発揮できるんだから!」
「そうよ~。だから頑張ってねぇ~」

満潮、朝雲、山雲の三人にもそう言われたので私は「そうだな」と答えた後に、

「それじゃみんな。レイテ沖海戦の悪夢を乗り越えられるように頑張ろうとするか!」
「「「了解」」」

全員がそれで敬礼をしてきたので私は少し勇気づけられていた。
そうだ。みんながいればどうにでもできる。
今までだって色んな深海棲艦との戦いを打ち勝ってきたみんながいるから私も頑張れる。今度も、信じてあげないとな。

「提督……信じているからね?」
「分かっているよ時雨」
「それじゃそーいうわけで私達は明日のハロウィンの準備をしてきますのでここらで失礼しますね。さ、扶桑姉さま、行きましょうか」
「そうね山城。明日が楽しみだわ……」
「司令! お菓子、楽しみにしておきますね」
「用意していないと~いたずらしちゃうんだから~」
「しっかりと用意しておきなさいよね!」
「あはは! 大変だね提督」

それで時雨以外のみんなは執務室を出て行った。
うーん……実際本当に何しに来たんだろうか?たまたま通りかかったにしてはメンバーが揃っているのは不審に感じるし。
それは時雨も感じていたのか、

「みんな、何しに来たんだろうね……? 僕は秘書官だったからいいとしてみんなはそれぞれやることはあっただろうし……」
「分からんな。まだみんなに大本営の電文を発表する前だったから何とも言えないし……そろそろ青葉も聞きに来るだろうとは思っていたけど」
「そうだね。青葉だったらすぐに聞きつけてくるかもしれないからね」
《あはは……提督も時雨も結構青葉さんには辛辣なんですね……》
「まぁ、普段の行いが悪いからなあいつは」
「そうだね」

それで三人で笑いあっていた。
まぁ、それでやっぱりと言うべきか午後になったらやっぱり青葉が聞きつけてきたのか取材をしに来たのは言うまでもない事だった。
そして今日中には全員に話が行き渡った。
廊下を通る際にみんなの顔を伺っていくとどこかしら真剣だった。
みんな、悪夢を乗り越えたいんだろうな……と思った私だった。


 
 

 
後書き
ついに作戦名が公開されましたね。

『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』

いくつのマップになるのか分かりませんが夜戦マップが多そうですよね。そのための新装備とかカットイン戦法みたいですし。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0205話『ハロウィンの日と油断』

 
前書き
更新します。
少し文字数多めです。 

 




今日は年に一度のイベントであるハロウィンの日だ。
私はこの日のためにお菓子を買いためておいたと言っても過言ではない。
それだけうちには駆逐艦も含めてトリック・オア・トリートとし言ってきそうな子がたくさんいるしな。
執務室のテーブルの上にはそれはもうお菓子が山積みされている。

《提督、準備が万端ですね》
「当然だ。彼女達にイタズラをされるというのもどういうものか味わってみたいというのもあるけど後が怖そうだし……」
《そうですね。金剛お姉様とかも言ってきそうでなんとも……》
「ああ、ありえそうで怖いな……」

そんな事を榛名と話し合っていたら早速とばかりに「コンコンッ!」という執務室の扉を叩く音が聞こえてきた。
さて、誰が来るかな?
少しの期待をしながらも入っていいよと言って中に招き入れる。
そこにはそれぞれ衣装を纏っていた第六駆逐隊の姿があった。
電はカボチャの被り物かな? 響はミイラ男で、暁は魔女、雷はドラキュラかな。
四人が揃ってこう言った。

「「「司令官! トリック・オア・トリート!!」」」
「また初っ端から可愛い子たちが来たな。待っていなさい。すぐにお菓子を持ってくるから」
「わーいなのです!」
「あたしとしては司令官にいたずらをしたかったかなー?」
「ハラショー! こういうのもいいものだね」
「暁もちゃんとイタズラの内容を考えてきたのに残念だわ」

四人がそれぞれ言い合っている中、榛名が、

《四人とも、とっても可愛いですよ!》
「「「えへへー……」」」

榛名に褒められたので四人ともとてもいい顔をしていたのは記憶に残りそうだな。
私はそんな事を考えながらも四人にお菓子をプレゼントする。

「ありがとうなのです!」
「ちゃんと食べたら歯を磨くんだぞ?」
「はーい!」
「それじゃ次の場所へと行こうか」
「そうね。司令官、それじゃまたね!」

そう言って四人は次のターゲットへと向かっていった。

「ふふ……やっぱりこういう催しはいいものだな。みんなの可愛い格好が見れるというのは役得ではあるし」
《そうですね》

そんなこんなで次がやってきた。

「ガオー! 提督、トリック・オア・トリートー!」
「が、がおー……司令官……その、トリック・オア・トリートーよ……」

そこには狼の恰好をしている島風と少し恥ずかしがっている天津風の姿があった。
狼の被り物がキュートで微笑ましいな。
てっきり島風はウサギで来ると思ったんだけどな。

「二人とも可愛いよ。それじゃお菓子を持ってくるな」
「おっそーい! もっと早く渡してくれないとイタズラしちゃうぞー!」
「そ、その……ガオー……」
「はいはい。少しお待ちを、お姫様達」

そんな事を言いながらも私はお菓子を二人にあげる。

「わーい! それじゃ提督、次にいっくねー!」
「あ! 島風待ちなさい! その、あなた! この恰好はあんまりじろじろ見ないでね……? も、もう行くから……それじゃ!」

島風は元気に、天津風は少しツンツンしながらも出て行った。
うーん……天津風は初々しくていいね。
そしてお次は、

「ぽーい! 提督さん! お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞー!」
「その、司令官! トリック・オア・トリートです!」
「睦月にお菓子を献上するにゃしぃ!」

夕立と吹雪と睦月の三人は揃ってウサギさんの恰好をしてきた。
島風が予想を外れたのでこちらで来たかと思いながらも、

「三人とも可愛いな。はい、それじゃお菓子を献上しようじゃないか」
「わーい! でも、いたずらもするっぽーい!」
「うわっ!?」

夕立はそれで私の胸を鷲掴みにしてきた。
なんてことだ! これではお菓子の意味がないじゃないか!

「ゆ、夕立……やめなさい! うっ……ほんとに、やめ……ッ!」
「ふっふっふー! 提督さんのお胸はとっても柔らかいッぽーい!」
「あわわ! 夕立ちゃん、やめようよ! その、司令官も変な感じになってきたし……」
「そういう吹雪ちゃんだって興味津々みたいにゃしー! 睦月もまぜるにゃしー!」
「もう! 睦月ちゃんまでー!?」
「……ッ! ッ!!」

私は必死に口を抑えて変な声を出さないように堪えていた。
ここで変な声を出してしまったらそれこそ変態じゃないか!?
いや、今の私は女性なんだから別に平気なのか!? いやいや、そんなわけはないしね!

《て、提督! 耐えてください! ここが踏ん張りどころですよ!》

榛名ー!? そう思うんだったら夕立と睦月を説得して!?
それで私は嵐が過ぎ去るまで必死に耐えていた。
終いには腰砕けになってしまったのか床に突っ伏してしまっていた……。

「むふー……堪能したっぽい!」
「睦月も睦月も!」
「はー……司令官、大丈夫ですか……?」
「い、今はあまり私に触れないでくれ……体がやけに敏感になっているから……」
「ほんとーにすみません。後でなにか謝罪の品を持ってきますね。ほら、いくよ! 夕立ちゃんに睦月ちゃん!」

ちゃっかりお菓子も確保しながらも私の身体を堪能した二人を引っ張って吹雪は消えていった。
私はしばらくの間、体の火照りを収める為に必死になって立ち上がってなんとか椅子に座って机に突っ伏していた。

《提督……大丈夫でしたか?》
「なんとか……体の敏感さも少しは収まってきたけど、夕立と睦月め……遠慮を知らないなまったく……」
《あはは……とにかく平気そうで良かったです》

榛名の苦笑いが今は恨めしいと感じるのは間違っていない。
まぁそんな事をしている間にも次の子達はやってくるのだから今度はもっと用心して構えないと。
そんな感じで駆逐艦の半数以上が執務室へと顔を出してきたのでその度にお菓子をプレゼントしてやったんだけど、

「少し数が心もとなくなってきたな……」
《そうですね。人数分は確保してあったと思うんですけど……》
「数個ちょうだいって言ってくる子が結構いたからな。今頃他の大型艦の子達も四苦八苦しているんじゃないのか……?」
《そうですね……》

それで少し困っているところにまだまだ時間は許す限りの次の刺客が入ってきた。

「うふふ~、司令官。トリック・オア・トリートよ~……」
「夕雲も……。トリック・オア・トリートですよ~」

そこに荒潮と夕雲の二人が入ってきた。
なんとも二人らしい恰好をしているな。
何と二人ともサキュパスの恰好をしているから大胆極まりない。
幼さとは裏腹に妖艶さも感じられる佇まいだな、二人がこの恰好をすると。

「わ、わかった……少し待っていてくれ」

私はテーブルの上にあるお菓子を取りに行こうと二人に背後を見せた。見せてしまった……。
そこからが二人の行動は早かった。
二人とも私の腕に手を回してきて、

「て・い・と・く……夕雲はイタズラしたいんですけどー……」
「荒潮もよ~」

二人は耳元でそんな言葉を発してくるために思わず体を震わせてしまった。
なんとも言えない感情が迸ってくる。
いかんな……このまま流れに身を任したら後が本当に怖いぞ!
榛名なんか《あわわ……!》と言って目を必死に隠しながらもチラチラと覗いているし。

「あ、あはは……。ふ、二人とも……? 冗談はいけないぞ?」
「冗談じゃないんですけど……」
「そうよねー」

二人は常に耳元で喋っている為に常に耳が敏感になっている為にどうしたものかと体を震わせている。

「あは♪ 提督ったら耳がとっても赤いわ……甘噛みしたいわね」
「しちゃいましょうか?」

そんな事を言いだしている二人に私はどうにか逃げ出そうと体を振るおうとするんだけどがっしりと腕をホールドされているために動けない。

「それじゃ……、はむ♪」
「あむ……」
「ッッッッ~~~~ッ!!」

やばいやばいやばい!!
二人は私の耳を本当に甘噛みし出し始めた。
身体が甘噛みされるたびにゾクゾクとやばい感覚が体を突き抜ける。

《あわわ……その、夕雲ちゃんに荒潮ちゃん! 提督が困っていますから、その……ッ!》
「「(ギンッ!)」」
《あうっ……》

二人の妖艶な眼差しに榛名が貫かれたのを幻視した。
あり大抵に言うと邪魔するな、か……?
ううう……早く終わってくれ!
しばらく未知の感覚を味わっていたけど二人とも満足したのか、

「ぷはぁっ……司令官の反応はとっても可愛かったわぁ」
「そうねー……提督、こんなサービスは今日だけですよ♪」

最後に二人はウィンクしながらもちゃっかりお菓子も貰って執務室を出て行った。
私はやっと解放されたのを実感したのかその場でへたり込んでしまう……。

《て、提督!? 大丈夫ですか!》
「あはは……大丈夫そうに見えるなら榛名は眼科に行った方がいい……あの二人は本当にやばいな……」

二人の行動に戦慄していながらもそれから朝潮達が来て、その真面目というか素直さに思わず涙を流しそうになったのは内緒だ。
そしてその後に軽巡や重巡、特殊艦の子達も来たりしたけど無事にあらかたお菓子も配り終えたと思った頃に、

「ヘーイ! テートクー! トリック・オア・トリートネー!」

またしてもサキュパスが現れた。しかも予想通り金剛だった。

「やっぱり来たか……」
《そうですね。しかも予想通り大胆な恰好で来ましたね……金剛お姉さま》
「ワッツ!? もしかしてすでに誰かこの恰好で来ちゃったデスカ!?」
「ああ……しかもちょっとした爆弾を置いていったよ」
「チッ……先を越されたネ……」

金剛は本気で悔しがっているようだった。
まぁ、もう油断はしないで挑みたいのでちゃんと視界に金剛を収めながらもお菓子を渡そうとしたんだけど、

「あ、あれ……? もしかして……」
《あはは……お菓子、切れちゃいましたね……どうしましょうか?》
「ほほーう……? それはいい事を聞いたなぁ~」

そこに龍驤の声が金剛の背後から聞こえてきた。
まさか……!?
私は思わず執務室の端へと逃げていきながらも、

「そやでー? 司令官、油断したなぁー……ここからは大型艦の出番やで!」

そしてぞろぞろと入ってくる戦艦や空母の皆さん。

「ひゃっはー! 提督、お菓子がないんだって? そりゃいかんなー!」
「隼鷹……」
「Admiral……せっかくですからイタズラされてくださいね?」
「「「トリック・オア・トリート!」」」
「うわー!?」
《て、提督ーーー!!?》

それから次々とやってくるみんなに私はなす術もなくイタズラされまくったのであった……。
くそう、来年は全員分用意しとかないと……。
私はそう心に誓ったのであった。


 
 

 
後書き
最後はこんなオチで終わらせました。
読者の皆さんのなにかの琴線に触れたのなら幸いです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0206話『武蔵の過去』

 
前書き
更新します。 

 





……私は、あのレイテ沖海戦の事を忘れない。
なにもできずにただ沈んでしまった情けない私の姿も……。
そんな事を思いながらも私はまた新たな朝を迎えた。







今日は武蔵、谷風、江風の進水日の日だ。
それでまずはという感じで江風と谷風にお祝いの品を贈ったんだけど、

「きひひ! ありがとな提督!」
「提督! ありがとね!」

二人は快く受け取ってくれた。
それなので最後に武蔵に贈り物をしようと思い武蔵の部屋に向かっていったんだけどなにやら戦艦寮に到着すると大和が玄関先でおろおろとしていたので、

「大和……どうしたんだ? なにやらそわそわしているけど……?」
「あ、提督。……やはりそう見えましたか」
「なにかあったのか? よかったら相談に乗るぞ」
「ありがとうございます。実は―――……」

大和からとある相談を受ける。
それはなにやら武蔵の様子がおかしいとか……。
大和も武蔵に贈り物を贈ろうとしていたらしいんだけど武蔵の部屋の中に入ったらなにやら武蔵が重たい雰囲気になっていたので理由を聞いてみたらしいんだけど「特に問題はない」、と言われてしまったらしくそれでも武蔵の相談に乗りたい大和は先ほどの状況になっていたという。

「提督、どうしましょうか……? 武蔵の様子がおかしいのはあまり見ない事ですので……」
「そうだよな。いつも軽快に笑っている姿がよく見られるからな。でも、そうだな……思い当たる節がないわけじゃない……」
「提督、それは……?」
「まぁ、色々な艦娘も気にしているんだろうけどやっぱりレイテ沖海戦が関係しているんだと思う」
「あぁ……」

大和もそれで思い至ったのか少し暗い表情をする。

「武蔵は……栗田艦隊でいざ活躍しようとしたけど魚雷や艦爆による攻撃で一網打尽にされて壮絶な最後を遂げたからな。きっと武蔵自身も古傷が疼いているんだろうな」
「そうですね……提督、こういう時はどうした方がいいでしょうか? 私も無関係な話題ではありませんから武蔵の事を説得するのはきついと思います」
「そうだなぁ……まぁ一回当たってみるか。それからどうするか考えよう」
「はい」

私と大和は方針が決まったので武蔵の部屋へと向かっていった。
そして普段はよく外で畑仕事をやっていたり清霜ともよく遊んでいる武蔵だけど今日は部屋の中に閉じこもっているみたいでどうにも調子が狂う感じだな。
部屋の扉をノックする。
しばらくして、

『誰だ……?』
「私だ」
『なんだ提督か。どうした? この武蔵になにか用があるのか?』
「ああ。まぁ一回部屋に入ってもいいか……?」
『構わん』
「わかった。それじゃ入らせてもらうよ」

それで私は武蔵の部屋の中に入っていった。
そこで少し驚いた。
入った矢先で武蔵はまだ布団に寝間着のまま入っていていつも整えられている髪型が少しぼさぼさしていて部屋の中も少し荒れていた。
表情も少しやつれていて普段の元気がなさそうだ。

「武蔵! さっき以上にやつれているじゃない!?」
「……なんだ。大和もいたのか」
「ええ。それより武蔵、調子が悪いんだったらすぐに明石さんのところに行きましょう!」
「大丈夫だ……これくらいはすぐに治るだろうしな」

そういう武蔵だけど私から見てもやはり辛そうに見えるのはどうしようもない事実で、

「武蔵。やっぱりレイテ沖海戦の事を思い出しているのか……?」

私がそう聞くと少し表情が険しくなった武蔵は俯きながらも小さい声で「ああ……」と返事を返してくれた。
どうやら私の考えは合っていたらしいけどまさかここまで武蔵の事を消耗させるとは過去の思いは拭えないものなんだな。

「提督からみんなに伝えられた次の作戦名……それを聞いた後からよく悪夢を見るようになったんだ。なにもできずに沈んでいく私の光景がよく夢に現れる……まるで見せつけられているようなそんな光景を何度も見せられて私は、もしかしたらこの光景をまた繰り返すんじゃないかと思い恐怖した……」
「武蔵……」

思わずという感じで大和の声が漏れる。
これは思った以上に重傷だな。
私が解決できる相談の容量を軽く超えているしな。

「私らしくないよな……こんな弱気な姿まで晒してしまうなんてな……」

「ははは……」と武蔵は笑うがそれとは裏腹にギリッと拳を握りしめて歯を食いしばっている武蔵はやはり辛いんだろうな。
西村艦隊のみんなのように思いを共感できるものがいれば話は変わったのだろうけど、武蔵は一人で抱え込んでしまっているからな。
だけど武蔵のセリフを聞いて少しは入り込む余地があるのを感じた私は武蔵の頭を撫でてやりながら、

「武蔵……別に恥ずかしい事じゃないんだ。誰だって悔しい思いを抱えている。だから武蔵も誰かに甘えていいんだ。現にこうやって私と大和に話してくれているじゃないか」
「そうだが……やはり……」
「やはり、じゃないの! 大和は武蔵がこうやって頼って話してくれるのはとても嬉しいわよ。これからもなにかあったら相談に乗ってほしいとも思うわ」
「大和……」
「だからさ、武蔵も抱え込まないでもっとみんなに話していこう。なぁに、みんなで話し合えば自然と疲れや悩みも取れて来るさ。そしていつも通りの頼りがいのある武蔵の姿を見せてくれ」
「提督……ふっ、そうだな。確かに本当に私らしくなかったな……すまなかった」

そう謝ってきた武蔵はそこで一気に立ち上がった。
そして一気に服を脱いで着替え始めるんだけど、

「わわっ! 提督、見ちゃダメですよ!? 武蔵も少しは恥じらいを持ってちょうだい!」

大和が私の視界を塞ぎながらも武蔵を怒っている。
だけど武蔵はどこ吹く風という感じで制服を着終わったのだろう。

「提督になら見せても構わないぞ? はっはっは! それじゃ気を取り直して今日も一日張り切っていこうか!」

どうやら武蔵はもう元気が出たらしくそう叫んで腕組みをしていた。

「まったくもう……調子がいいんだから」

そう呆れる大和も元気が出た武蔵の姿に安心の色を覗かせていた。
そうだ。やっぱり武蔵はこうじゃないとな。
私もどこか勇気を貰えるような気持ちになりながらも、

「それじゃ本来の目的だった進水日の贈り物だ。受け取ってくれ」
「おー! ありがとな提督!」

武蔵の笑顔が眩しかったと思う私だった。


 
 

 
後書き
今回はレイテも近いという事で武蔵をメインにしてみました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0207話『舞風と踊ろう』

 
前書き
更新します。 

 





今日はこれと言って……いや、月初めの翌日なのでEO海域担当艦のみんなが大規模作戦の前の景気づけとしてEO海域を攻略しに行ったので結構せわしなく動いていて忙しいけどなんとかそれも落ち着きを見せてきていた。
月初めと貯めてある任務をEO攻略と並行して遂行していっていたので出撃で減った分の資材はまた任務で資材の回復するという方法であらかた鎮守府近海(1-5)、沖ノ島沖(2-5)、北方AL海域(3-5)、カレー洋リランカ島沖(4-5)までを一気に攻略してもらった。
サーモン海域北方に関してはまだ資材の回復を見てから改めてやろうと考えている。
さしずめ先月に作っておいた零戦21型(熟練・MAX)も任務で零戦52型(熟練・MAX)へと機種転換できたためにうちの零戦52型(熟練・MAX)の数は6機となったので、零戦53型や烈風(601空)、Fw190T改を合わせて対空戦力は充実したのでこれでもう完璧に烈風が使わない事態にまで発展してしまったので、いつかまた改修の餌になる事を祈りながらも倉庫にしまっておこうと考えているしな。
準備は怠りなくしておきたいからな。
改修できることはできるだけしておきたいしまだまだ準備は必要だ。
それで資料を色々と見ていた時に今日の秘書官である舞風がジッと私の顔を覗き込んでいるのに気づく。

「……どうした舞風?」
「うん。提督って今日は難しい顔をしているなーって……」
「そうか。すまない、今日は舞風が秘書官だから話したい事とかもあっただろうに放っておいてしまってごめんな」
「あ! ううん、大丈夫だよ! 提督がお仕事を頑張っているなら舞風も邪魔しないように隅の方で踊りの練習でもしているから!」

そう言ってニカッと笑う舞風……。
いや、そこは仕事を手伝うとか言ってほしかったかなぁ……。
まぁでも、そこが舞風のいいところなんだよな。

「まったく……舞風のおかげで少し肩の力が抜けたのか楽になった気分だよ」
「そう!? そうでしょー。舞風はねー、提督が疲れているならなんでもして気分をリラックスさせることにしているんだー」

そう言ってクルリと踊りだしている舞風。
うん、踊りに関してはなんとも分からないけどいい動きはしているよな。

「やっぱり那珂仕込みの踊りなのかい……?」
「そうだよ! これって那珂ちゃんさんのおかげかなー? 色々と教えてくれるからねー」

それで私は那珂に教わっている舞風の姿を想像する。
それはやっぱりどこか抜けているけど踊りに関しては手を抜かない那珂が熱血指導をしているというなんともスポ根ドラマを見ているような感じで少し笑える光景かもしれない。

「あっ! 提督ってば今那珂ちゃんさんとの特訓の光景を思い浮かべて笑ったでしょう!?」
「うっ……鋭いな」
「舞風はそう言うのには敏感なんだから! プンプン!」

腕を組んで頬を膨らませている舞風はまるでリスのようで少し微笑ましくも感じるけどこれ以上の機嫌を損ねるのはまずいと思ったのでもう余計な事は考えないようにしておこうか。

「すまんすまん。いや、別に変な事は考えていないから安心してくれ。ただ、やっぱり那珂は熱血指導をしているんだろうなってな」
「それはそうだよ! ああ見えて那珂ちゃんさんは手抜きはしないのに定評があるんだから!」
「まぁ四水戦のリーダーだからな」
「うん! 那珂ちゃんさんもお船の時代もそれはもう縦横無尽に戦場を踊っていたもんだからねー」
「そうなのか……」

それはそうか。
那珂は軽巡の中ではそれほど活躍したエピソードはないけどあの帝国海軍が完勝したスラバヤ沖海戦でも駆逐隊のみんなとともに活躍してはいるからそれなりに戦果は持っているからな。

「ところで舞風はどうしてそんなに踊りに固執しているんだ……? いや、言い難いなら別に言わなくても構わないんだけどな」
「ううん、大丈夫だよ。舞風はね、戦場でもみんなを勇気づけたいといつも思っているの。だけどどうしたらいいかわからない時に那珂ちゃんさんにこうしたらきっと戦いも楽しくなるよ!って教わったの。だから舞風も踊りを頑張っているんだ。のわっちとかはあんまり乗り気じゃないけどそれでも踊りこそがいつまでも絶望しないって証みたいなものなのかな……? ほら、深海棲艦も舞風が躍っていたらそこに狙いを集中するでしょう? そこを華麗に避ける私ってかっこよくないかな!?」

そう言って目をキラキラと輝かせる舞風はどこか楽しそうで、でもそれだと辛いんじゃないかと私は思った。
だから、

「だけど舞風自身もしっかりと自身を守るように行動してくれないかな? 避ける分には別に構わないけどもし被弾してしまったら自慢の踊りも出来なくなってしまうだろう?」
「うん……そこは少し怖いかな? 踊れなくなったら私の存在意義がかなりなくなっちゃうから……」

こりゃ参ったね……と少し気落ちしている笑いをする舞風は少し痛々しかった。
うーん……落ち込ませるつもりでもなかったんだけど……。
うまく言葉が出てこないな。
こういう時はむしろ開き直ってみるのもいいかもしれないな。

「それじゃ舞風。気分転換に私と一回踊ってみるか? 踊りに関しては私は素人だけど舞風が指導してくれるならなんとかなりそうだしな。本当に踊るわけじゃないけど私も戦場に出る事はあるから参考にでもできるしな」
「うん! いいよ、提督。この舞風に任せておいてよ!」
「ありがとう。それじゃ榛名は見ていてくれないか……?」
《分かりました。それではお二人の踊りを見ていますね》

榛名はニッコリと笑みを浮かべて私達の踊る姿を見ていてくれた。
それから私と舞風は少しの間だけど踊りをして楽しんだ。
そして少し時間が経過して、

「ふぅ……踊りって意外と疲れるものなんだな」
「それはそうだよー。さらにこれを海の戦場でやる舞風達の苦労が少しは分かったんじゃないかな?」
「確かに……かなりの度胸が必要そうだな」
「でしょでしょ! それじゃもう一回やろっか! そらワンツー!」
「あはは……それじゃ少し頑張ってみるかね?」

また踊りを再開して舞風と一緒に踊るのも楽しいものだなと思った私であった。


 
 

 
後書き
今回は舞風回でした。
今現在舞風が練成中ですのでちょうどよかったので。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0208話『山城の進水日と提督の気持ち』

 
前書き
更新します。 

 




うちの鎮守府では提督が好きなのは文字通り榛名というのはもう知られているんだと思うんだけどそれとは別に私は山城も同様に好きなのは知る人は少ない事だと思われているらしい。
扶桑や時雨辺りは知っている事なんだけどどうにも認識があまりされていないという。
まぁそれもしょうがないとは思っている。
この体になってからというもの、榛名を構いきりになっているという自覚はあるしな。
それなので今日は山城の進水日というわけなのでなにかと私の思いも改めて知ってもらいたいと思っている。
前に一回山城と気持ちを確かめ合った時があったけどそれ以降はあまり個人として接触する機会はあまりなかったからな。
だいたい山城は扶桑か西村艦隊の面々と一緒にいる事が多いし、いざ一緒になろうとしても一人の時はなぜか警戒されるし。
なので今回は助っ人を用意した。

「……というわけで相談に乗ってくれないか扶桑?」
「まぁ……山城の事は応援したいですから別に構わないのですけど……私でよかったのですか?」
「ああ。山城の事なら扶桑が一番知っていると思ったからな」
「そうですね。ですが知っていると思いますが提督も知る限りあの子は私に常に気を集中しているきらいがありますから……」
「うん。それも知っているけど山城本人の本音も知りたいところだし」

そう。
前に一回その件を山城に話した時に山城はこう本音を漏らした。

『でしたら、でしたら……私の事も守ってくださいね?』

と。
だから山城もどこかでは気にしてくれていると思うんだ。

「そうですね。私もぜひ山城には素直になってもらいたいわ。でも、あの子は手強いですよ……?」

頬に手を添える扶桑は少し難しそうな顔になった。
そこなんだよなー。
山城は本音は中々語らないから手強い事は重々承知している。

「まぁなるようになるさ」
「そうですね……」

それで早速という感じで扶桑に山城を呼んでもらう事にした。
扶桑の呼びかけならすぐに山城は来てくれるだろうと思うし。
私は扶桑とともに休憩室で待っていることにしている。
しばらくして、

「扶桑姉さま! この山城をお呼びですか!って、ゲッ! て、提督も一緒にいるんですか……」
「そんな露骨に嫌そうな顔をしないでくれないか?」
「しょうがないじゃないですか! せっかく扶桑姉さまに呼ばれたと思ったのに提督までおまけでいるんですから!」
「堂々とおまけ発言をするとはなかなかに度胸あるよな……」
「そうよ山城。ちょっと提督に謝りなさい」

扶桑にも指摘をされてしまったために山城は抗う事も出来ないんだろうという感じで、

「……その、提督すみませんでした」
「うん。まぁ別に怒っていないから大丈夫だよ」
「そうよ山城。提督が本気で怒っているところなんて見たことないでしょう?」
「まぁそうですけど……ところで提督は今日は扶桑姉さまと一緒になにをしているんですか?」
「その件だけど今日は何の日かくらいはわかっているよな?」
「ええ。私の進水日でしたよね?」
「そうだ。だからって言葉も変だけど扶桑と一緒に山城の事を祝おうと思ってな」
「そうだったんですか……ありがとうございます」

そう言って素直に感謝の気持ちを言ってくる辺りは嬉しいんだけどまだ続きがあるんだよな。それは扶桑に任せるとしよう。

「ウフフ……それと、山城? 提督がね、改めて山城の気持ちを知りたいらしいのよ」
「え゛っ……」

つい裏声が出てしまったのか急いで口を抑える山城の姿を見て可愛い奴めと思う。
それで山城は少し顔を赤くさせながらも、

「そ、その……提督? あんまり調子に乗らないでくださいね? 私は扶桑姉さまという想い人がいるんですから……」
「それは前にも聞いたよ。だけどもう一度山城の本音を知りたくてな。こうして扶桑にも場を設けてもらっているんだからできれば本音を喋ってもらいたいところだな」
「それは……確かに私も提督とは最初にケッコンカッコカリしたという自覚はありますから多少は提督の事は好きですよ? ですが、提督は榛名の事が一番好きなのでしょう……?」
「はぁー……やっぱり山城も他のみんなと同じ認識でいたか」

私は思わずため息を漏らす。
扶桑も扶桑で少し笑みを零しながら、「提督、ご愁傷さまです……」と私を気遣ってくれるのは嬉しいけどね。

「な、なにか変な事を言いましたか?」
「ええ、言ったわね山城。あなたは提督の気持ちを理解していないようで私は少し悲しいわ……」
「そんな、扶桑姉さま……!」

慌てだす山城に私は追い打ちをかけることにした。

「それじゃ改めて言わせてもらうけど……私は榛名と山城の二人を同じくらい大好きだからな。それはケッコンカッコカリを争ってもらった時から変わらない気持ちだよ」
「あう……その、恥ずかしいですからそんな素面で堂々と言わないでください……私もどう反応していいか困ります……」
「山城の思うままに行動していいのよ? 今は私達だけしかいないんだから……」

おおらかに扶桑は笑う。
こういう時はやっぱり扶桑は頼りになるよな。
山城は扶桑の物言いでやっぱり色々とテンパっているし。
と、そこに榛名が表に出てきて、

《山城さん、大丈夫ですよ。あなたの本当の気持ちを教えてください。前にも言いましたけど私は山城さんに勝負で負けてしまっていますから……》
「榛名までそちらにつくのね……」

もはやここには味方はいないと悟った山城はどうしていいかという感じだけどしばらくして覚悟が決まった表情になったのか、

「その……提督、それではもう一度聞かせてください。もし私がピンチになったらすぐに助けてくれますか?」
「ああ。必ず助けるよ」
「それと……私を最初に選んだことも後悔していませんよね?」
「していないよ。だから山城もそこは最初の絆を結んだ仲として誇ってもらっても構わない」
「そうですか……それでは、その……最後に聞きます。こんな事を改まって聞くのは今後一切ないと思いますからしっかりと聞いてくださいね?」
「うん、わかったよ」

そして山城は一回深呼吸をして気持ちを落ち着かせたのかさらに真剣な表情になって、

「でしたら……でしたら榛名と同じくらいに私の事を愛してくれますか……?」
「ああ……それは誓うよ。だから山城ももう不安にならなくていい。今後なにか困った事があったらすぐに私の事を頼ってくれ」
「わかりました……提督、その気持ちはありがたく受け取っておきますね。…………もう二度とこんな恥ずかしい事は聞きませんからね!? いい加減調子に乗りますと主砲をお見舞いしますからね!」
「あはは……それは怖いな。大丈夫、山城の気持ちを確認できただけでかなりの収穫だからもう聞かないから安心してくれ」
「山城、とっても可愛かったわよ」
《はい。榛名も少し見とれてしまいました……》

それから扶桑と榛名に少しの間山城は可愛がられていたために山城は顔を盛大に真っ赤にしてのは記憶に残った。
最後に進水日の贈り物も贈ったのでそれで喜んでもらえてよかったと思う。


 
 

 
後書き
今回は山城の進水日ともあり最初の嫁艦ですのでこんな話を書いてみました。
こんなに山城は素直じゃないだろう……というツッコミは無しの方向でお願いしますね。



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0209話『初霜と雪風の本音の話し合い』

 
前書き
更新します。 

 





………私は、レイテ沖海戦でも生き残ってしまったためにあの坊の岬沖海戦でも死力を尽くすつもりだった……。
だけど、雪風と共にまたしても生き残ってしまった。
それが私の後悔の一つ。
どうせなら一緒に逝きたかったという想いもあるけどそれはすなわち乗員の人達も巻き添えにするという軽々しい言葉だから私にはできなかった。
そして迎えた本土決戦ではついには空襲を受けて一方的に撃沈されてしまった。
あの後どうにか生き残ったらしい雪風の経緯を艦娘として顕現した後に資料を読み漁って知って涙を流したのも記憶に残っている……。

「雪風……」
「はい。なんでしょうか?」

雪風はこうして私の進水日を祝いに私の部屋に来てくれているけどどうしても罪悪感を感じてしまっている自分がいるのを自覚する。
雪風自身もいつも通りの明るい笑顔を浮かべているけど、心の内ではどんなことを思っているのかわからない。
そこがどうしても悔しいと感じてしまう。

「ねぇ雪風。私にあなたの気持ちを教えてほしいの……」
「雪風の、気持ちですか……?」
「ええ。涼月さんが来ることが分かっている今、坊の岬沖海戦での生き残り組みがまた増える事になるわ。それでも終戦後も生き残ったのは雪風、あなただけよ。そして他国の船として連れてかれたあなたをどうしても悲しんだと思うの……だから知りたいの。雪風の気持ちを……」
「初霜さん……」

それで雪風は少しの沈黙の後に語りだす。

「……そうですね。雪風は皆さんが沈んでいく中で最後まで生き残ってしまったという幸運艦とか言われますがそれでも乗員の皆さんも必死に国のために戦っていました。だからというわけではないですが、幸運艦という呼ばれ方は本当はあまり好きではありません」
「やっぱり……そうなんですね」
「ええ……」

雪風の本音はやはり当たりでしたか。
そうですよね。
私も武勲艦とは言われていましたが正直言って複雑な気持ちでしたから。
それはつまり数々の仲間の沈む姿も見てきたわけですから……。

「でも、今はもう気にしていません! また皆さんと会えましたししれーという優しい人が雪風たちを指揮してくれますから安心していますから」
「そう……そうよね。それは私も同じ気持ちだわ。提督に会えたからこうして皆さんともまた時を一緒に過ごせる。こんなに嬉しい事はありません」
「はい!」

それで私達はお互いに今の現状を感謝する形になった。

「でしたら初霜さんはどうだったんですか……?」
「え? なにが……?」
「はい。こうして雪風が進水日のお祝いに来たのを疎ましく感じましたか……?」
「そんなことはないわ! 雪風が来てくれたのをとても嬉しく感じましたから!」
「だったらいいのです。雪風は……みなさんの喜ぶ笑顔を見るのが大好きなんです」

嬉しそうに笑う雪風の笑顔を見て、やっぱり雪風には敵わないなと思う自分がいた。
この子はどこでもやはり笑顔を絶やさない子でいるのだ。
それがどれだけ皆さんを勇気づけている事かが分かる。

「まったく、雪風はどうしてそんなに強い子なんですか」
「当然です。雪風は皆さんより少しだけですけど長生きしましたから! 確かに名前も変わって他国に使われたのは少し思う所もありますけど、それでも人を救い続ける事には変わりありませんでしたから……」
「そう……」

雪風は胸に手を添えて過去の事を思い出しているのかしら?
とってもその姿が尊いものに感じたわ。

「立派よ雪風。貴女の事を誇らしく思うわ」
「えへへ、ありがとうございます!」

そんな時でした。
私の部屋の扉がノックされたので私は返事をしました。誰が来たのでしょうか……?

『私だ。入ってもいいか初霜?』
「しれーです!」
「そうですね。はい、入っても大丈夫ですよ提督」
『わかった。それじゃ入らせてもらうよ』

そう言って提督は私の部屋に入ってきました。
その手にはなにかが握られていて、おそらく私に贈るものだと分かったので少しですが胸が熱くなりました。
提督は進水日の方々にはいつもなにかしらの贈り物を贈っているという話は聞いていましたがまさか私にまで持ってきてくれるなんて……。

「雪風もいたのか」
「はい! しれーも初霜さんのお祝いに来たんですか?」
「そうだ。だからお祝いの品も選んできたもんだからな」

提督はそう言って笑みを浮かべます。
ああ……どうしてでしょう。提督の笑顔が少し綺麗すぎて見れません。
嬉しいという気持ちが溢れてきましてどうにかなってしまいそうです。
だから少しでも感謝の気持ちを伝えようと言葉を紡ぎました。

「あの、提督……私のためにありがとうございます」
「気にするな。私がしたいだけでやっている事だからな」
「しれーはとっても優しいですね!」

雪風はそう言って提督に抱きついていました。
こういう時は気持ちを素直に表現できる雪風の事が羨ましいと感じてしまいます。
私も素直に提督に抱きついけたらどれだけいいか。
でも、この距離感も嫌いではありません。
そう思っていると提督はなにかを思ったのか私の頭を撫でてくれました。

「初霜がなにを思いつめているのかわからないけど、たまには素直になってもいいんじゃないか? 気持ちをしっかりと伝えるのもこういう時にしかできないことだぞ」
「そ、そうですね……それでは提督。私も、その……提督に抱きついても構わないでしょうか……?」

私は勇気を振り絞ってそう言いました。
すると提督は笑顔を向けてきて、

「ああ。大丈夫だよ」
「はい……」

それで私はおずおずと提督に抱きつきました。
少しですが嬉しい気持ちが溢れてきました。

「初霜さんもたまにはいいものですよ! しれーはとっても暖かいですから」
「そうですね。私も今実感できました」
「ははは。なんならいつでもいいんだぞ?」
「それは、さすがに恥ずかしいです……」

私はついそう言ってしまいましたがそれでもこうしている間はどこか素直になれると思いました。
やっぱり提督は優しいですね。私の事もこうして気遣ってくれますから。
今日は私の進水日でもあり雪風や提督にも祝ってもらった最良の日となりました。



 
 

 
後書き
今日は初霜の進水日でしたので書かせていただきました。
昨日は寝落ちしてしまってつい20分前にこの話を書き終えたので少しいつもより荒いですがすみませんでした。



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0210話『巻雲の相談と強請り』

 
前書き
更新します。 

 





えー……本日は巻雲の進水日であるのです。
だからと言っても真正面から司令官様に突撃するほど巻雲も子供ではありません。
でもでもー、もしもらえなかったらそれはそれで悲しいです~。
司令官様が忘れているわけでもないですけど少し心配になってしまうのも分かってもらいたいです。

「というわけで夕雲姉さん、ちょっといいですか?」
「なぁに? 巻雲さん……?」

夕雲姉さんはいつも通りにその優しそうな笑みを私に向けてきてくれます。
それだけでどうしても甘えたいという気持ちが沸々と湧き上がってくるのは止められません。
でも今は我慢です!今日は巻雲、頑張りますよ!

「そのですね! 今日は巻雲の進水日なのです!」
「まぁ! そうだったわね。それじゃなにか皆さんで集まってお祝い事でもしましょうか」
「もしかして夕雲姉さんは忘れていたのですかー!?」
「うふふ……冗談よ。しっかりと覚えているわ」
「はう~……よかったですぅ」
「ごめんなさいね。でも巻雲さんがそう言う事を聞いてくるという事は提督に関しての事よね?」
「うえっ? どうしてわかったの……?」
「いえ、なんていうのか……提督って必ず進水日の子にはお祝いの品を贈っているじゃない? だから巻雲さんの事を忘れるわけがないと思うからよ」
「そうなんですけどー……やっぱり少し心配なんです。司令官様はとても優しい人ですけどたまに一緒に遊んでもらえるとよく袖に関してからかいみたいなことをしてきますから……」

そうなのです。
司令官様ったら巻雲の伸びている袖をよく私の隙を見ては縛っていたりと意外とお茶目な事をしてきますからね。
初めてそれをされた時はつい「何をしてくれやがりますかー!?」と叫んでしまったのは忘れたい思い出です。恥ずかしい……。
と、とにかく!

「それでもし司令官様が巻雲の部屋に来たら夕雲姉さんは司令官様を見張っていてもらいたいのです」
「あらあらー。提督ったらお茶目な事をするのね。そう言う所も可愛いですけどね」
「巻雲は少し迷惑なのですよー!」
「うふふ……まぁそう言う事なら分かったわ。見張っておいてあげるわね」

よし!夕雲姉さんを味方にできたのは大きいです。
ふっふっふー……司令官様、今回はそう簡単に行かせませんよ?
それから夕雲姉さんと一緒に司令官様が部屋に来るのを待ち構えている間に色々とお話をすることにした。

「でもー……やっぱり司令官様はお優しい人だと思うんです」
「そうね。提督は誰にでも優しいから皆さんから好かれていますからね」
「そうなんだけどー……その優しさに付け込まれて外の人間の誰かに悪だくみに加担させられそうでそこも心配なんですよね」
「そうねぇ……あの柳葉大将というお方と久保少佐というお方は信用に足りる方々だと思うけど、それ以外の人に関してはあまり信用ならないからね」
「そうなんですよー」

思い出すのは司令官様にセクハラをしようとしていた例の別の鎮守府の提督の話。
どうにもそいつはきな臭いイメージがしましたので巻雲は心配です。
もちろん司令官様も気づいていると思いますけどね。
司令官様は女性の身体でありながら心は男性のままですから違った視線を感じ取れるらしいという話を前に聞いた。
だから事前にセクハラをされないで済んでいるわけですし……。

「まぁ末端の夕雲たちがとやかく言える立場ではないから提督の事を信じるしかできないんだけどね」
「そこもどこか歯がゆいです……。でも」

巻雲は袖を何度も振りながら、

「きっと司令官様なら大丈夫だとも思うのですよ。確かに不安ですけどそれでも今までこうしてこの世界で過ごしてきたわけですから司令官様も誰が信用出来てだれが怪しい人なのかも区別は出来ると思いますから」
「そうね。そこは見る目がある提督の事だから多分平気よね」
「そうです!」

夕雲姉さんとそんな会話をしている時でした。
扉がノックされたのでやっと来たかな?と思って出て行って扉を開けるとそこには司令官様と一緒に長波の姿もありました。

「おー! 巻雲姉、やっぱり夕雲姉と一緒にいたんだな!」
「お邪魔しても大丈夫かい? 巻雲」
「どうぞどうぞ! 多少汚いところですけど座れるスペースはありますので大丈夫です!」
「そんじゃあたしも座らせてもらうわ」
「長波はちょっと図々しいですね」
「いいじゃん! あたしもせっかく巻雲姉のお祝いをしにきてやったんだから大目に見てくれよ、な?」
「まぁ、いいですけどね……」

それで司令官様と長波を部屋の中に入れる。

「提督、長波さんもいらっしゃい」
「おう!」
「ああ。同席させてもらうよ」
「それじゃそろそろいいかしらね?」
「そうだな」
「ん、そだね」

……ん? なにやら巻雲が知らないところで三人が示し合わせたかのように言葉を交わした後にクラッカーを取り出して三人で一斉に打ち鳴らしていました。
パンッ!パンッ!という軽快な音が鳴り響いて少し煙も上がっていてそして、

「巻雲ー! 進水日おめでとう!」

司令官様が代表して私に贈り物を渡してくれました。
それから夕雲姉さんと長波も色々と渡してきたので、

「もしかして……夕雲姉さんもグルだったんですか~?」
「ごめんなさいね。もう昨日の間にこの計画は立っていたのよ」
「そういうこった」

夕雲姉さんが手を合わせてごめんねポーズをして、長波が二ヒヒと笑いながら言葉を紡ぐ。
うー……なにか腑に落ちませんけど、でも嬉しいのは確かですからここは流されておきましょう。

「まぁ、なにはともあれ……巻雲。何かしたい事があったら言ってもいいぞ? 出来る範囲でなら一つは叶えてあげるから」
「いいんですかー? でしたらー……」

巻雲は少し考えた後にこう答えました。

「ここにいる私も含めたみんなに間宮のケーキを奢ってください!」
「そんなのでいいのか……?」
「いいのです。司令官様も懐事情はそこまで潤ってもいないでしょうし駄々を捏ねたらいけませんから!」
「巻雲さんったら立派よ」
「巻雲にしてはだけどなー」
「長波は黙ってて!」
「はいはい」

それで少し目が目のズレを直しながら改めて司令官様の方へと振り向くと司令官様はいい笑顔を浮かべて、

「わかった。それじゃみんなで食べにでも行くか」

と言ってくれましたので私は少し嬉しい気持ちになりながらもみんなで間宮へとデザートを食べに行ったのでした。
とってもアイスが美味しかったです!


 
 

 
後書き
今回は巻雲の方を書かせてもらいました。
朝雲は続いていたら来年ですかね?




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0211話『浦風、頑張るけん!』

 
前書き
更新します。 

 




今日は浦風を秘書官としている。
それはとうとう駆逐艦の育てる予定の残り人数が18人になったのでちょうど浦風を育て中だからであるのだ。

「提督さん。今日はうちに任しとき!」
「ああ。頼むよ浦風」
「あははー。提督さん、ちと真面目すぎるのう。もう少し肩の力を抜いた方がいいけん!」

浦風はそう言って笑みを浮かべる。
もう恰好も寒い事もあって腕まくりはしないで長袖を着て上着も羽織っているけど、それでもどこかさばさばしているようなイメージがあるから夏が似合うという感じなんだろうなぁ……。

「……ん? 提督さん、どしたの……? うちの顔を見たかってなんの起きへんよ?」
「いや、すまない。どうしても浦風は夏のイメージの方が強いから厚着をしていると少し不自然な感じがしてしまってな」
「そうかな? じゃけぇ提督さん、うちの事やらしい目で見てるんじゃないけ?」
「そんなことはないぞ」
「ホントかー? まぁいいか。……そうじゃ! 榛名姉さん、ちょっとええか?」

浦風が榛名の事を呼んだので何事かと思いながらも榛名が姿を現してきて、

《浦風さん、どうしました?》
「うん。榛名姉さんなら提督さんの好みの味を知っていると思ったんじゃ!」
《え、ええ……。いつも提督の食べるものは把握していますから知っていますけど、どうして今それを……?》
「うん。提督さんになにか美味しいものを作ってやりたいと思ったんじゃ!」

浦風はそう言って笑みを浮かべる。
その自然な笑みが私の事を思ってやっているという事がよくわかるものだから少し嬉しくもあるな。
だけどそこで榛名が少し拗ねているのか頬をふくれさしてしまっている。どうしたんだ……?

《浦風さんはいいですよね……榛名もできることなら提督にお料理を作ってあげたいのに》
「榛名姉さん……そうじゃね。確かに榛名姉さんの気持ちも考えもせずにすまんかった。だけど、いつか榛名姉さんも自由になれる日が来ると思うんじゃ。だから今は我慢してほしいんじゃ……」
《浦風さん……すみません。少し大人げなかったですよね》
「いいんじゃ。榛名姉さんは謂わば禁欲状態をずっと続けているようなものじゃ。だからたまには感情を発散させておいても罰はあたえらんて!」
「浦風の言い分は納得できるな。榛名、不満があったらすぐに言ってくれ。なにか出来る事はするから」
《提督まで……本当にすみませんでした》

榛名はそう言って私と浦風に頭を下げてきた。
おそらく少しの罪悪感を感じているんだろうな。
別に榛名の感情は悪いものじゃないしいいと思うけどな。
むしろずっとこんな状態でストレスも溜まらない人も珍しいものだろう。
榛名は我慢しているだけでたまには息抜きもしないとやってられないだろう。
そうだな。

「浦風、なにか榛名にできることはないか?」
「そうじゃねぇ……」

二人でそれで考え込む。
脇の方で榛名が《あ、あの……本当に大丈夫ですから》と言っているけど今は聞いてあげない。
榛名の労いも大切な事だからな。

「そうじゃ。金剛姉さんのところにいくのはどうじゃろう? きっと霧島姉さんもいると思うしなにかと相談に乗ってくれるお思うんじゃ」
「そうだな。そうと決まれば……浦風、仕事の方はどうなっている?」
「無論大事なものはすでに終了しとるよ。ばっちしじゃ!」
「よし。それじゃ早速金剛達のところに行くとしようか」
「がってんじゃ!」
《ああ……提督と浦風さんが私の話を聞いてくれません……》

榛名の虚しい声が聞こえてくるけど今は我慢していてくれ。
それから私と浦風は戦艦寮に移動をしている。
おそらく金剛の部屋でみんなは集まっているだろうからな。

「金剛姉さん、おるかー?」
『オー、その声は浦風デスカ! どうしましたカ?』
「うん。今提督さんも一緒のおるんじゃけど部屋の中に入っても大丈夫じゃけぇ?」
『テートクもいるんですカ!? それならウェルカムデース!』
「……だそうじゃ。提督さん、それじゃ入らせてもらおうかの」
「そうだな。金剛、入るぞ?」

そして金剛の部屋の中にドアを開けて入らせてもらうとちょうどよく霧島と比叡も一緒にいた。

「司令、どうしましたか?」
「司令も金剛お姉さまのお茶会に参加しにきたんですか?」
「まぁ似たようなものだよ。少し相談があってな」
「テートク! なんでも聞いてください! ワタシならなんでも相談に乗るネ!」
「そうか。それじゃさっそく内容を教えようか」

それで私と浦風は三人に榛名のストレスが溜まっている事を伝えると、

「オー……やはりハルナはストレスが溜まっていたんですネ……」
「そりゃそうですよ、金剛お姉さま。榛名はずっとこんな自由に触れない状態なんですから……」
「比叡お姉さまの言う通りですね。榛名……なにかあるのならこの霧島にも相談してくださいな? 双子の姉妹なんですから」
《霧島……はい、ありがとうございます》
「そうじゃよ榛名姉さん。榛名姉さんかて別に誰も縛ってはおらんのじゃから自由に発言してもいいんじゃ。提督さんもきっと榛名姉さんがしたい事なら応えてくれると思うしな。じゃろう? 提督さん」

浦風にそう聞かれたので私は「そうだな」と答えた。
だって私だけの身体じゃないんだから榛名の事も思いやってやらないと罰が当たってしまうからな。

「そうデース! ハルナ? 我慢を溜めちゃノーなんだからネ?」
《はい、すみません。金剛お姉さま》
「それなら良いんですヨ! テートクもたまには榛名の我が儘も聞いてやってくださいネ?」
「わかっているさ」

その後に私達は少し金剛達とお茶会をしていった後に執務室へと戻る道すがらで、

《浦風さん、それに提督も……本日は私の我儘に付き合ってくださりありがとうございました》
「気にするな。たまには息抜きも必要だからな」
「そうじゃよ。榛名姉さんかていつまでもその状態は嫌じゃろう? いつか分離できる日を楽しみにして待っとるんじゃ! 必ずうちらがいい方法を見つけるけんね!」
《はい!》

それで今日一番の榛名の笑顔を見れたので良かったと思う。
こういう場を作ってくれた浦風には感謝だな。
ちなみに今日のお夕飯は浦風特製の食事を振る舞われて私も楽しめた感じだった。


 
 

 
後書き
今回は浦風回でした。
嫉妬する榛名もそれはそれで……。
本当に普通の精神をしていたら榛名の状態はおかしくなっても仕方ないですからね。




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0212話『炬燵での談話』

 
前書き
更新します。 

 



今日は立冬である。
だからもう秋から冬に移り変わった日でありこれからどんどんと寒くなってくるだろうという思いを感じている。
外を見れば風がビュービューと吹いており外にいるのだろう艦娘達を寒がらせているのが見える。
こんな日に外に出るなんて寒いだろうに……と思いながらも私は談話室にある炬燵の準備をしている。
各個人の部屋にある炬燵に関しては自分たちでやってもらっているけど共同スペースのここだけはいかんせん誰かがやらないといけないからな。
そんな事を思っている時に早速という感じで誰かが談話室に急いで入ってきた。

「ひゃー! 寒いですよ!」
「そうだね漣」
「うー……とっても寒いです」
「三人ともだらしないったら」
「そう言うボノたんだって少し体が震えているのですよ?」
「漣うっさい! それとまたボノたん言うなし!」

どうやら第七駆逐隊の面々が炬燵にあたりに来たらしい。
それなので私はさっそく炬燵の電源をいれながら、

「四人とも。今しがた炬燵の電源を入れたばかりだからあたっていくか?」
「おー! ご主人様ナイスです! 漣、突撃します」

さっそく漣が炬燵に入ってきた。
だけど、

「やっぱり入れたてはまだ少しだけ冷たいですねー。でも、これこそ炬燵の醍醐味と言いますか……」
「クソ提督にしてはマシな仕事じゃない? あたしも入らせてもらうわ」
「曙は素直じゃないなぁ……あたしも入らせてもらいます」
「私も入ります。失礼しますね提督」

三人もそれで炬燵に入ってきては少しだけ表情が蕩けてきていた。
それに少し面白さを感じながらも、

「それじゃ町内会から譲ってもらったみかんを持ってくるから待っていてくれ」
「「「はーい」」」

町の人達は気前がいいんだろうけどよくミカン箱をくれるんだよね。
この季節は特に助かっているから重宝している。
ざるに数個かみかんを入れて炬燵の場所へと戻ってきて、

「漣、ミカンを持ってきたからとなり入らせてもらうぞ」
「わーい! どうぞどうぞ! ご主人様なら歓迎ですよ」
「それじゃ失礼するよ」

私も炬燵に入らせてもらう。
気づけば曙が談話室のテレビをつけてなにかの映像を見ている。
私のついそれに目を向けるとそこには艦娘が映っていた。
どうやら大本営直轄の艦娘らしいけど、映像の中では歌などとか歌っている。

「はー……この子達は気楽よね。戦場で戦うより歌で稼いでいるんだから」

頬杖をつきながらそう言葉を零す曙。
なにか思う所があるんだろうな。

「曙はなにか感じたのか? 彼女達に」
「いや、そんなんじゃないけど……なんていうか艦娘もアイドルに転向してきたのかなって……海で深海棲艦と戦う事しかできないあたし達がどうやったらアイドルになれるのかなってね」
「曙もそういうのを感じるんだね」
「それってどういう意味よ朧。あたしだって少しは思う所があるんだからね?」
「ふふ、そうだね」
「むー……」

少しむくれながらもミカンを剥いてそれぞれ食べている光景を見て、

「そうだな……潮とかは歌とかは歌わないのか?」
「へ……? いえ、そんなの全然あり得ませんよ! 私なんかが歌ってもつまらないだけです……」
「そうですかねー? 漣としましては潮はいい線いっていると思いますけどね」
「漣ちゃん、そんな……私がもしそんな事になったら恥ずかしくて耐えられないよぉ……」

潮はそれで少し照れてしまっている。
うーん……確かに潮の性格だとそうかもしれないな。

「でも、そういうご主人様は歌とかは歌わないのですか?」
「私か……? そうだな。この世界に来る前はよく友達とカラオケとかで歌ったりしていたけど今ではもう歌う事もあまりないしな」
「ほー……そうなのですか。でしたらぜひご主人様の歌唱力も知りたいところですね」
「朧もそれは知りたいかも……」
「はは……私もそんなうまい方じゃないよ。せいぜいアニソンを歌うくらいでメジャーなジャンルはそんなに歌えないしな」

私はそう言うながらもミカンを剥いて口に入れる。うん、この酸っぱさ加減がいいよな。
歌と言えば……、

「そういえば……榛名は確か金剛達と一緒に元の世界では歌が出ていたけど謳わないのかい……?」
《そうですね……私も恥ずかしいですけど金剛お姉さま達となら歌っても構わないと思いますけど……》
「そうなのか」
《はい。ただ確か少しだけ感動が入っている感じの歌でしたよね?》
「まぁ、確かに……他にも加賀とか赤城とか第六駆逐隊とか夕立達とかも持ち歌はあるからな」
「こうしてみると……意外に歌う人たちって多いですよねー……」

だらーと体をのばしながら言う漣はどこか面白くなさそうな感じだった。

「もしかしたらこれから第七駆逐隊にも歌が出るかもしれないよな。四人とも人気があるからな」
「はぁ? よりによってあたし達がどうして歌わなきゃいけないのよ? なんか嫌ね」
「まぁ曙はそういう反応をするとは思っていたよ」
「そうですよねー。ボノたんはツンデレですからー」
「誰がツンデレよ!? もう……それにもういちいち注意するのも疲れたわよ……」
「お? それじゃもうボノたん呼びで構わないのですか!?」
「やっぱりそれだけは嫌ね、うん」
「いじっぱりですねー……」

漣と曙のやりとりは飽きないよな。
それを見て朧と潮も少しだけだけど笑っているから。
私はそんな四人を見ながらいい仲間関係だよなと改めて仲の良さに少しの憧れを感じていた。

「それじゃそれじゃご主人様! 今度ですけど人数集めてみんなでカラオケとか行きませんか? みんなと歌うならなにか楽しそうですから!」
「お。それはいいな」
「冗談でしょ……?」
「朧は構いませんけど……」
「潮もみんなと一緒ならいいかもしれないです」
「あんた達ねぇ……」

なにやら少し決定事項な感じになってきたな。
それはそれで楽しそうだしね。
それで後々みんなでカラオケに行く約束ができた。
楽しめればいいなと私は感じた。

それとちょうどよかったんで曙に進水日の贈り物を贈っておいた。
喜んでいたようでよかった。


 
 

 
後書き
第七駆逐達のみんなと談話は楽しいですよね。
バランスが取れているというか……。




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0213話『摩耶との特訓』

 
前書き
更新します。 

 





執務室で今日の予定や資料などを見ていた時だった。
なにやら外が騒がしい事になっているので窓から顔を出してみてみるとどうやら艦娘達が走り込みなどをしているようだった。

「あいつら、なにをしているんだ……?」
《さぁ……朝の稽古でしょうか……?》

私と榛名が不思議がっているとそこで中心人物の摩耶が色々と叫んでいた。

「おら! レイテ作戦に控えて対空とかもすぐにできるように体を鍛えるぞお前ら!」
「「「はーい!」」」

どうやら対空に備えて事前に体も鍛えている感じだな。
脳筋……失礼、対空番長らしいやり方だな。

「少ししたら海に出て鳥海が夜戦の演習をするらしいからバシバシいくぞ!」
「潜水艦は私達が役目をしますから安心してくださいね?」

そこにはっちゃんが現れてそう言っていた。
そうだよなー……レイテって夜戦が多そうなイメージだからな。
西村艦隊も夜に大勢の艦隊に迎えられて次々と轟沈してしまったからな。

「やっぱりみんな不安なんだろうな……あのレイテ沖海戦がモチーフの作戦だから」
《そうですね。結構トラウマを抱えた子も何人かはいますからね》
「そうだな……」

それで私は考える。
やっぱり私も一緒になって参加した方がいいかなと。
だけど、

《提督……? いま一緒になって鍛えようとか考えていませんでしたか?》
「ばれたか……」
《分かりますとも。提督は演習でもよく先陣を切って攻撃していますからね》
「まぁ、戦艦の射程は長いからな。リシュリューとともにいつも攻撃しあっているし」

演習の参加はまぁ今のところみんなには黙認されているけどやはりいまだに心配に思っている子もいるらしいというのが現状だ。
演習弾を使うわけだから別に痛いことは無いんだけどな。
そんな事を考えている間に摩耶の訓練が終わったのか、

「よーし! それじゃあたしからの今日の訓練は終了だ。駆け足で艤装をつけて鳥海のところに向かいな」
「「「わかりました!」」」

駆逐艦のみんなはそれで海の方へと走っていった。
そんなみんなの後姿を見て摩耶は笑みを浮かべていた。
とそこで摩耶が窓から見ていた私の視線に気づいたのかこちらへと顔を向けてきて、

「おう、提督。そんなところで顔を出してどしたー?」
「いや、摩耶の特訓風景を見ていたんだよ。やっぱり対空番長なだけあってかなりの徹底ぶりだったな」
「あたぼうよ! もう誰にも沈んでほしくないからな! それより提督もそんなところにいないで降りて来いよ」
「そうか? それならちょっと待っていてくれ」
「ああ」

それで私は執務室を出て摩耶のところへと向かっていった。
少しして外に出て行って摩耶と正面で向かい合ったんだけど、

「提督ー……来るのが遅いぞ? せっかく誘ってやったんだからきびきび動いてこないとダメだぞ?」
「すまんすまん。それで私を呼んでなにをするんだ?」
「まぁそうだな。どうせ提督もいざとなったら戦場に出る気ではいるんだろう……? 言っても聞かないからなぁ。それならあたしが提督を鍛えてやるよ」
「それはありがたいけど摩耶は別に否定はしないんだな?」
「まぁ、そりゃあたしも提督の事は心配だけど、それならあたし達が提督を守ればいい話じゃないか」
「ごもっともで。足枷にはなりたくないからな。それじゃお願いしようかな」
「おう。それじゃまずは体をほぐすか!」

それから摩耶の訓練が始まった。
これが意外と疲れるものであまり使っていない筋肉を使うなどもしていたので少しして私は体を捻りながらも、

「摩耶って意外と教え方が上手いんだな」
「突然どうした? 褒めても優しくしてやんねーぞ?」
「いや、別にそんなことは無いんだけど……」

少し失言だったか。
これでも摩耶はみんなから姐御とか呼ばれているから色々と慕われているんだろうし。

「提督だって演習に出ずっぱりなんだから色々と前より強くなったんだろ? それならあたしと少し勝負してみないか?」
「内容は……?」
「当然ガチンコだ!」
「そうですよねー」

なので私と摩耶は運動を終わらせた後に演習スペースへと向かっていった。
ここでは主に駆逐艦などの子達が射撃演習などを行っているので内容はおのずと分かるというものだ。

「提督。あたしから一本でも多く的の数を上回ったら実力を認めてやるよ」
「そうは言うが私の方は連装砲と違って主砲だから装填時間が違うぞ?」
「まぁ細かい事は気にすんなって! そんじゃ始めるか!」
「まぁ付き合うけどな」

それから私と摩耶は主砲の打ち合いをしていた。
演習場に砲撃音が響くので少ししたらギャラリーも集まってきたのか、

「提督と摩耶さん、なにをしているんだろうね?」
「摩耶さんと的の狙い撃ちの勝負みたいだよ?」
「だからさっきから提督の主砲の音が聞こえてきたのか……」

と、色々と話し合われている。
うん……やっぱり戦艦の主砲だから色々と目立つみたいだな。
だけど摩耶はそんな事も気にせずに、

「おらおらどうした提督! まだまだ狙いが甘いぞ!」
「くっ! 主砲、てぇっ!!」

また主砲から火が吹いて的へと砲弾が向かっていって炸裂する。
同時に機銃も掃射して細かい砲撃も行っていくんだけど相手が摩耶だから分が悪かった。
摩耶はガチガチに対空機銃を積んでいるので私よりも倍の数値の的を射抜いているのだ。
しばらくして演習場の的がなくなったのを確認した私達は、

「はぁ、はぁ……まだまだ摩耶には敵わないな」
「あたぼうよ! この対空番長の摩耶様に勝とうなんて十年は早いぜ提督!」
「確かにな……」

と、そこで鳥海が夜戦演習を終わらせてやってきたのか、その手にはスポーツドリンクが持たれていた。

「摩耶、それに提督もお疲れ様です」
「おう、あんがとな鳥海」
「ありがとう鳥海」

私達はありがたくそれを受け取って飲む。
うん、喉が潤ってくるなぁ……。

「ですが提督はあまり無茶はしないでくださいね? うちの鎮守府は戦力が不足気味ではないのですからいくらでも代わりはいますから」
「わかった……摩耶も私の我儘に付き合ってくれてありがとな」
「いいってことよ。ま、提督もいい筋だったんじゃないか?」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」

たまにはこうして実演も交えた訓練もいいものだよなと思う一日だった。


 
 

 
後書き
今日は摩耶と朧の進水日でしたので今回は摩耶を選択しました。
日々訓練は大事ですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0214話『代行提督長門の提督記録』

 
前書き
更新します。 

 




ふぅ……今日もいい天気だな。
私、長門は執務室の椅子に座りながら外の景色を眺めていた。
いま、なぜ私がここに着席しているかというと、現在提督があくなき自身の練度上げのために演習に出て行っているからである。
だから私がその間は大淀とともに提督ではなくても片付けられる軽い作業をやっているのだ。
まったく……提督代行とはいえいつもこの時だけは柳葉大将から電話はかかってくるなよ?といつも念じている。
もちろん柳葉大将も提督が演習に出ているのはご存知なのだがたまに礼儀知らずが電話をかけてくるから厄介物なのだよな。

「大淀よ。提督はなにをそんなに焦っているのだろうな……?」
「長門さん、いきなりどうしました?」
「いやなに……別にいいのだが最近は駆逐艦達の練度を急上昇させるために色々と手を回しているそうじゃないか」
「そうですね。もうすぐ浦風さんも練度が70になりますので残り17人となりますね」
「それだ」
「はい……?」
「提督はなぜそうも残りの子達の練度を気にしているのか気になってな」
「その件ですか。なんでもみんな平等にしてあげたいという提督の願いでして……」
「ふむ、そうか」

なるほどな。
提督も中々考えているようだな。
私はそう感心しながらも提督が演習から帰ってくるのを待っていた。
そして少しの時間が経過して、

「長門、今戻ったよ。いつもすまないな」
《戻りました。長門さん、いつもありがとうございます》

提督と榛名がそう言って謝ってくる。
だから私も素直に答える事にした。

「なに、大丈夫さ。いつもの事だからな」
「そうか。それとなにか重要な電話とかはあったか?」
「いや。今のところはそんなものはなかったよ」
「わかった。それじゃ長門、お疲れさま」
「ああ。それでは今日はこれで終わりにしておこうとしておきたのだが……今日は私が秘書官なのでな。なにか頼りたいことがあったら言ってくれ」
「わかった。その時になったら言わせてもらうよ」
「うむ」

ちなみに提督は普段は海軍の士官服に身を包んでいるが演習や出撃時には榛名の恰好で行っている。
心構えの問題のようで榛名の恰好の方が気合が入ると言うらしい。
それでは着替えに面倒ではないか……?という事を前に聞いた事があるがその件に関しては妖精さんの助けがあって解決した。
それは艤装を展開すると海軍服から榛名の恰好へと一瞬で着替えられるように明石とともに開発したとかなんとか……。
明石のやつもたまに暇を持て余してはなにか実験しているがこういうのも作れるんだよな。さすが工作艦というところか。


―――閑話休題


私は提督に席を譲って今日の仕事が始まった。
提督は大淀から本日の書類などを受け取って確認する作業を行っている。
初めの頃に比べれば慣れたものだな。
最初は目を通すのも嫌々やっていたものだけど今ではもう自身の仕事として割り切っているようだしな。

「長門、ここはどうすればいいと思う……?」
「どれ……貸してみろ」

私は提督から相談を受けて書類の一枚を受け取る。
こういうのも頼ってもらえるのは嬉しいものだよな。
この世界の最初の大規模作戦までは一人で出来ないと情けないと感じていたのか提督は一人で片付けようと奮闘していたんだけど一人でできる限界をそれで知ったのかもうだいたいは大淀とかと一緒に作業を行うようになったからな。

そして今日の任務も滞りなく終わらせていく提督の手腕には少しだが惚れ惚れしていた。
本当に……慣れたものだよな。
もとがただの一般人とは思えない成長具合だ。
私としても誇らしく思えるよ。

「よし。今日の大方の任務は終わったな。大淀、他に重要な案件とかはあるか?」
「はい。大本営からの電文で明日になにやらどういう内容かはまだ分かりませんが新しい取り組みを取り入れるという旨が記載されていました」
「大規模作戦前のテコ入れというところか」
「おそらくは……」

ゲームで言う新しいシステムというところか。
まさか西村艦隊が七人だから六人から七人編成にできるような取り組みとかだろうか……?
六人編成だとなにかと限界を感じてしまうからな。

「なにかは分からないが楽しみにしておいた方がいいだろうな。大本営も最近は役立つ情報をよく出してくれるからな」
「そうですね。私もそれで色々と助かっていますから」

提督と大淀がそれで笑みを浮かべあっている。
この二人は大体仕事では一緒にいるから意思疎通ができているんだよな。少し羨ましくも思いながらも、

「提督よ。おそらくだが私の予想では七人編成にできるように調整が入るのではないかと思うのだが……」
「七人編成か……ありえそうな話だな。そうすれば西村艦隊の面々を全員投入できることになるからな」

西村艦隊の悲願とも言うべき全員であの悪夢を乗り越えるという感じの発想。
私としても嫌いではない。
ぜひあいつらには乗り越えてほしいところだからな。
私がしみじみとそんな事を思っている時だった。
そこで扉が開いて、

「ヘーイ! テートク、グッドモーニングデース!」

金剛が執務室に突撃してきた。
うーむ……いつも思うのだが金剛は邪魔をしに来ているのか分からない状態だな。
でも提督も特に気にしてはいないのか(慣れたのか……?)普通に対応しているし。
それから他にも何人か執務室にやってきては提督と楽しく会話をしている。
少し軍隊としてはダメだと思うけどこれがうちの艦隊では普通の光景だからな。
適度にゆとりを取っているのが分かる感じだな。
そんな感じでお昼になったのか提督は立ち上がって、

「大淀、長門もお昼に行こうとするか」
「そうだな」
「わかりました」

私はそれで食堂に行く準備をしていたのだがそこで提督がなにかを思いだしたのか、

「そうだな。長門、少し時間いいか?」
「む? どうしたのだ提督よ」
「ああ。長門は今日は進水日だったよな。だからこれを受け取ってくれないか?」

提督から進水日のお祝いの品を受け取って突然の事で少し驚いたが、

「ありがとう提督。気持ちよく受け取っておくとしようか」
「ああ。そうしてもらえると嬉しいよ」

内心の喜びをなるべく出さないように私は笑みを浮かべる。
本日の秘書官の仕事が終わって部屋に帰ったらさっそく陸奥に自慢してやらないとな!


 
 

 
後書き
10日の小さいアップデートではなにやら七人編成が実装されるとかなんとか……。
ついに来たかという感じですね。



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0215話『時津風の悔い』

 
前書き
更新します。 

 




時津風にはねー、ひとつだけ後悔を残してることがあるんだ。
まぁ、他にも探せばいくらでも出てきそうだけど敢えてあげるならやっぱり第二次ソロモン海戦で龍驤を守れなかったことかなー。
天津風や利根さんとかもいたけど敵艦載機の前にはやっぱりどうにもならなかったからねー。
あーあ、悔しいなー。
それであたしはついしれーの肩の上に乗ってる状態でだらーんと垂れてしまった。

「おっと……時津風、いきなり体重をかけないでくれ。落としそうになっただろ?」
「ごめんごめん。……ねぇしれー……少しいいかな?」
「なんだい……?」
「しれーはもし目の前で誰かを守れない事態になったらどうする……?」
「それは……」

しれーの顔が引き攣ったのが分かった。
そうだよねー。まだしれーはそう言う体験をしたことがないから当然の反応だよね。
でも、この世界に来てしまった以上いつかどこかで過ちを犯してきっとしれーは後悔してしまう時が来ると思う。
だから時津風はそんなしれーの心を守るんだー。

「大丈夫だよしれー……もしそんな事になったら時津風が慰めてあげるから。でも、聞かせて。それーはその時にどうするの……?」

しれーの頭を撫でてあげながらそう言う事を聞く時津風はきっと悪い子だ。
でも、しれーにも知ってもらいたい。
どうしようもならない時だってあるって事を。

「しかし……そうだな。もしもの事態になったら私は……どうするのかな? きっとがむしゃらになってその子を守ろうとすると思うな」
「やっぱりしれーはそう答えるよね。うん、知ってた」

時津風は笑みを浮かべながらもまたしれーの頭を撫でてあげる。

「少し昔の話をするねー? 時津風はねー……龍驤を第二次ソロモン海戦の時に守れなかったんだ」
「第二次ソロモン海戦の時か……でも、あれは仕方のなかった事じゃないかな? 海軍は龍驤を完璧に囮に使っていたのはもう知っているし」
「うん。でも護衛を任された以上は守りたかったんだ……でも、守れなかった。だからね、しれーはもし今の海軍の人達にそんな命令をされた時は覚悟をしてほしいと思うの。時津風達はみんなしれーの事が大好きだからきっとしれーの言う事なら従うと思う。それがたとえ死に逝く定めの命令だとしても……」
「時津風! そんな悲しい事を言うんじゃない!」
《そうですよ!》

あ、思わずという感じで榛名さんも出てきちゃった……。
まいったなー。困ったなー。
しれーだけならなんとか対処は出来るけど榛名さんも一緒だと少しつらいものがあるし。
うーん……。そうだね。

「でもさ、榛名さんももし自分が犠牲になって代わりにしれーが助かるならなりふり構わず命を投げ出すでしょ……?」
《そ、それは……否定できないところが悔しいですけど、でも! そんな事にならないように提督の事を守りつつ自身も死なないようにすればいいと思います。そうでもしないと……残されてしまった提督の心を守れません……》
「あっ……」

そうだね。時津風もそこは考慮していなかった。
そっかー。もし時津風が沈んでしまったらしれーが悲しむのは当たり前の帰結なのにね。

「バカだなー、あたし……そんな簡単な事も考えていなかったんだなー」
「時津風……?」
「ごめんね、しれー。もうこんなもしもの悲しい話はよそう。あたしにもしれーにもきっとよくない事だから」
「まぁ、そうだな。でも私はもし時津風が沈みそうになったら必ず救い上げるからな?」
「うん。そこは期待してるよー」

そんなしれーだから時津風達はしれーの事が大好きなんだ。
だからどんな命令でも聞こうと思っている。
きっとしれーも命令内容を改ざんしてでもあたし達を生き残らせようとすると思うし。

「しれー……時津風、重くなぁい……?」
「大丈夫だ。いつも雪風と一緒に登ってくるからもう慣れたよ。むしろ軽いくらいだよ」
「そっかー」

そんな他愛ない話をできる今という時間を時津風は大切にしていきたい。
時津風達艦娘はいずれは深海棲艦を倒したらもしかしたらいなくなっちゃうかもしれないけどそれでもしれーの心の中には残っていたいから。

「むふー!」

あたしは一回しれーから降りた。
しれーは少し不思議そうな顔をしていたけどあたしはそのあとにしれーにもう一回抱きついて、そして、

「しれー! 大丈夫だよ。さっきは少し暗い話になっちゃったけど時津風達はしれーが命令してくれる限りは沈む気なんてさらさらないから。だからしれーも誰かが沈むことを恐れないで胸を張って指揮をしてね」
「ああ、当然だ。もう誰も沈ませはしないよ……。その誓いは先に沈ませてしまった木曾たちに言っているからな」
「あー……そう言えばお盆の時に木曾さん達が来たんだっけ?」
「うん。だからその時にもう誰も沈ませないって誓いを四人に言ったんだ」
「そっかー……沈んでしまった後もしれーのところに顔を出してきてくれるんだね。少し、それは嬉しいかも」
「そうだな。もう会えないと思っていたからなおさら私も嬉しかったよ」

しれーはそれで思い出しているのか少し笑みを浮かべている。
このしれーの表情も時津風は大好きだなー。
だからこんなしれーの表情が何かの拍子に曇らないように時津風達も頑張って生き残らないとね。

「榛名さん」
《はい》
「しれーの事を守ろうね……」
《当然です。榛名はどこまでも提督の事をお守りします!》
「あはは。嬉しいな……そんな事を言われると私ももっと頑張らないとなって思ってくるみたいだよ。まぁ、まずは近々行われるレイテ沖海戦で西村艦隊のみんなを最後まで活躍させないとな」
「そうだねー。時雨達にはぜひとも最後まで頑張ってほしいな」
《そうですね……きっと、乗り越えられますから》

最後はまた少ししんみりしちゃったけど、悪い空気じゃないからいいよね。
うんうん、いい風が吹いてきたんじゃないかなー。


 
 

 
後書き
今日は時津風の進水日ですので書いてみました。




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0216話『第三次輸送船団の悪夢』

 
前書き
更新します。 

 




あたいは悪夢を今見ているんだろうな……。
まるで現実みたいに昔の光景が蘇ってくる……。
島風、長波……他にも何隻もの船が蹂躙されていくのを目の当たりにするというとっておきの悪夢。
そしてしばらくの間、あたいはうなされていたけど深夜に目を覚ます。

「うぇー……汗でびっしょりだ……」

まだ日もさしていない中、あたいはふとカレンダーへと目を向ける。
そこに記されていた今日の日付は、

「なぁるほど……どうりでこんな飛び切りの悪夢を見るもんだな」

あたいはそう言葉を出さずにはいられなかった。
そう、今日は戦争末期の第三次輸送船団があたいを残して全滅してしまった日だったんだ……。






……今日はなにやら最上さんがわざわざレイテ沖海戦に向けて気合を込めたのかあたいみたいにはちまきとか巻いて決戦仕様の恰好をし出し始めて西村艦隊の面々が賑わっているのをあたいはぼーっと椅子に後ろ向きで座りながら眺めていた。
そんな時にふと島風と長波姉の姿が遠くに見えた。
あたいはなんか今は二人に顔を合わせられる気分じゃなかったから少しの間食堂の脇の方で隠れていた。
そして二人の姿が消えたのを確認して少しの罪悪感と安堵を感じている時に、

「なぁにしょぼくれてんのよ、朝霜……?」
「足柄の姉ちゃん……」

足柄の姉ちゃんがあたいの頭に手を乗せてニシシと言う感じの笑みを浮かべていた。
あたいは少しの間相談に乗ってもらおうか悩んでいたけど先に足柄の姉ちゃんが言葉を繋いできていた。

「さっきまで朝霜ったら島風ちゃんと長波ちゃんの事を見ていたわよね? もしかして今日の事を気にしていたりするの……?」
「やっぱ足柄の姉ちゃんにはお見通しって感じか……」
「まぁね!」

どこか自慢げにご機嫌の笑みを浮かべていた足柄の姉ちゃんに毒気を抜かれたのかあたいも少しだけ気分が楽になった。
それで正直に話そうかなと思ったので口を開く。

「……今日の深夜さ。悪夢で目を覚ましたんだ……」
「………」

さっきまでのお気楽な感じの笑みがスッという感じで無くなって真剣な眼差しになった足柄の姉ちゃんに少しだけ感謝しながらも言葉を続ける。

「それがもう大参事でさ。300機以上の艦載機の群れがあたい達に襲い掛かってきてさ。輸送船の奴らは全滅するし、長波姉とかも砲撃を沈むまでやっていたけど最後には腹部に爆弾を受けて轟沈……島風に至っては直撃は免れはしたものの機銃の掃射を受けまくって全身穴だらけになって最後には松原参謀に『カエレ』って言われる始末だよ! まったく困っちゃうもんだよなー」

あたしはアハハと笑いを零しながら頭を掻いたんだけどそこで足柄の姉ちゃんがあたいの顔を胸に押し当てながら、

「朝霜……無理して笑っちゃダメよ? もう涙目じゃない……?」
「あ、れ……? なんで……」

あたいはいつの間にか涙を流していたみたいだ。
うわ……恥ずかしいじゃんか。でも、一度出てしまった涙を止める術をあたいは知らずにただただ涙が次から次へと溢れてきやがる。

「くそっ……止まれよ!」
「我慢しちゃダメよ? 過去の事は忘れられないけど吐き出す事くらいはできるんだから……」
「でもっ! これじゃ天下の礼号組のあたいじゃいられないじゃんよ!」
「いいのよ……朝霜が泣き止むまで付き合ってあげるから。それに……隠れているようだけど島風ちゃんに長波ちゃんもそこにいるでしょう? 出てきなさい」
「嘘だろ……?」

足柄の姉ちゃんの指摘を受けてそこで島風と長波姉の二人が少し目を腫らしながらも隠れていたところから出てきた。

「おうっ……朝霜、ゴメンね……今日はいの一番に会いに行けばよかったのに」
「そだなー……朝霜の胸の内を聞いてアタシ等ももらい泣きしちまったじゃないか……」
「お前ら、い、意地がわりーぞ! 聞いてたんなら最初からいろよ!」
「朝霜だって島風たちから隠れるようにしていたじゃん!」
「そうだぞ。だからお相子だ」
「うー……足柄の姉ちゃん、もしかして最初からこうなる事を見越していたんじゃないよな……?」
「さて、どうかしら……?」

不敵な笑みを浮かべる足柄の姉ちゃんに「やっぱり敵わないなぁ……」と改めて思い知らされることになった。

「朝霜。姉のあたしから言わせてもらうけど溜め込むのだけはよしてくれな? あたしだってあの時の悲劇は無念に感じるけど、それでも朝霜だけが生き残ってくれたのは艦娘になって後から知った身としては嬉しかったんだ。その後の活躍も聞いて胸が熱くなったのを覚えているもんさ」
「そうだよー。島風ももっともーっと走りたかったけど朝霜が代わりに走ってくれたんだから誇りにしてもいいんだよ?」
「長波姉、島風……」

それであたいはまた涙を流してしまう。
こんなのあたいらしくないと思ったけど長波姉と島風の二人があたいに抱きついてきて、

「大丈夫だ……もう今は一人じゃないんだから思いを共有していこうぜ?」
「そうだよ……だから前を向いて走っていこうよ朝霜」
「……そうだな。うん、ありがとな二人とも」
「おう!」
「うん!」

あたいは二人にお礼を言った後に改めて相談に乗ってくれた足柄の姉ちゃんに向かい合って、

「足柄の姉ちゃん、ありがとな。姉ちゃんのおかげでなんか気分が楽になったしこうして長波姉と島風とも話せたから」
「いいのよ。こういうのは大人の特権なんだから!」
「いよ! さすが飢えた狼! 言う事が違うねぇー!」
「長波ちゃん……あなた、アタシの事を馬鹿にしているでしょう?」
「そ、そんなことはないぞ。うん……」
「ホントかしらー……?」

足柄の姉ちゃんが長波姉にニヤリと言った感じの笑みを向けて長波姉はそれでたじたじになっているのを見てやっぱり歳の差を思い知った。

「朝霜ー? 今何か失礼な事を考えたでしょう……? 正直に話しなさい!」
「ぐぇっ! 後生だから許してくれよ!」
「あははー! 朝霜変な鳴き声を上げたね!」
「島風! お前も助けろよー!」

それからあたい達は少しの間悲しみも忘れて笑いあっていた。
そうだな。あたい達はこういうのがお似合いなんだよな。
昔の事も忘れられないけど今は今だからな。


 
 

 
後書き
今日は第三次輸送部隊が朝霜を残して全滅した日ですのでこの話を書かせてもらいました。
最上を主役にしたかったんですけど今回はチョイ役ですみませんでした!
どうしてもこれが書きたかったので。
書いていて足柄がとってもいいお姉さんでした。



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0217話『最上の件と伊勢と日向のからかい』

 
前書き
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今日は最上が先日からレイテ沖海戦に向けて衣装を整えたという話を聞いたので見に行っていた。
なにやらそれで昨日は朝霜の方が少し様子がおかしい事になっていたので少し見守っていたが、そういえば昨日はあの悪夢の輸送船団壊滅の日だったかという思いでどうにも素直に最上の方にいけなかったけど足柄達のおかげでどうにか落ち着いたのを見てよかったとは思っていた。
そして気を取り直してもう一度最上に行ったら伊勢と日向が最上のところに一緒にいる光景を目撃した。

「……素晴らしい格好だぞ最上」
「えへへ……ありがとう日向さん」
「でもこれで改二じゃないんだからまだまだ大本営は出し渋っているようだね」
「そうですけど……気持ち心構えは出来たかなって」
「そうだな……」

そんな会話がされていたので私も混ざろうという気持ちになったので顔を出していく。

「三人とも。元気そうだな」
「あ、提督! どうしたの?」
「ああ。最上が決戦前におめかしをしたっていうんで見に来たんだけど……そのはちまき、似合っているぞ」
「そうかな? ありがと!」

最上はそう言って笑顔を浮かべる。
そして伊勢がそこでずずいっという感じで、

「それで提督としてはどうなのさー?」
「な、なにが……?」
「わかっているんでしょう? 西村艦隊の話題だって事。私達は知っているんだからね? 提督は榛名と同じくらい山城の事が好きだってことは」
「それかー……そういえば君らは知っていたのか?」
「ふむ……扶桑と山城関係についてはだいたい周知しているつもりだよ提督。最初にケッコンカッコカリしたのも実は山城だってことは初期組では知っている方さ」
「そうだよねー」

三人がそれで少し面白がっている顔をしているけどそううまくは事は運ばせないぞ。

「確かに……なにかと大本営は西村艦隊を最終決戦で第三艦隊で突撃させる旨を電文で言ってきているけど、それはそれ……ただ私は信じるだけさ。そしてもし山城がピンチになったら私も出撃するつもりではある。扶桑からも頼まれているからな」
「おー! 提督ってすごいね。少しも恥ずかしがらないでそんな事を言ってのけちゃうなんて。山城も愛されてるなー」
「フフフ……からかうつもりが逆に惚気られてしまうとはな」
「本当だよねー。日向も少し顔が珍しく赤いしね」
《提督は山城さんの事も好きですからね》

そこで榛名も顔を出してきたんだけど、日向の目が光ったのを目視した私は今度は榛名がいじられるのを感じたので心の中で事前にご愁傷さまとしか言えないでいた。

「いいカモがネギを背負って出て来たじゃないか……」
《え……?》
「そうだね日向ー」
「榛名さん、ご愁傷さまです……」

日向と伊勢がニヤリと含みのある笑みを浮かべて最上だけは榛名の事を思って祈りを捧げている。

《あ、あの……提督、どういうことでしょうか?》
「いやなー……このタイミングで二人の前に顔を出してしまった榛名が不憫だなって思って……」

私にはもうどうしようもできないので榛名を切って捨てた。
そしてさっそくとばかりに伊勢が榛名にいい笑顔を向けてきて、

「それでさー、榛名はほんとうはどう思ってるのさー?」
「そうだな。そこは確かめておきたいところだな」
《な、なにがでしょうか……?》
「もう! 榛名はさー、ここぞという時に押しが弱くていざとなったら『榛名は大丈夫です!』って言って我慢しちゃうんだからもっとぐいぐいって感じで提督に迫らないとそのうち山城に提督を取られちゃうぞ?」
「そうだな。あの山城も表面上は提督の事はあまり気にしていないが心の内は扶桑の次には好きという感じだからな。フフフ……いつ榛名との取り合いが起こるか楽しみではあるがな」

伊勢と日向のそんな会話を聞いて榛名もサァーッと言う感じで少しだけ顔が青くなる。
これは、真に受けてしまったな。
そしてついには涙目になって、

《伊勢さんも日向さんも私をイジメないでください……て、提督は榛名と山城さんを同等に愛してくれますよね!?》
「それは当然だけど、榛名もこの会話だけで動揺しすぎだぞ」
《そ、それはそうなんですけど榛名も急に不安になってしまいまして……》
「不安になるって事は榛名も提督との間に少なからず溝があるって感じているんじゃないか……?」

そこに日向が追走した。
それで榛名は《そ、そんな……! 榛名は……》とさらに動揺してしまっている。
そろそろ榛名が可愛そうになってきたので、

「日向に伊勢、この辺でそろそろ勘弁してやってくれないか……? 後でなにか奢ってやるから」
「言質は取ったぞ、提督」
「そうだねー。やりぃ!」
「ついでに今日は伊勢の進水日でもあるんだからなにか買っておくとするよ」
「あ、私の事覚えていてくれたんだね。提督、やるねー」

そんな感じで二人は榛名も構うことが出来たのか上機嫌で満足そうにその場を離れていった。
残された私と最上はというと、

「……あの、榛名さん? あの二人も悪気があったわけじゃないから、そのですね……あ、だとするとなお性質が悪いですね……うーん……」
《わかってますよー……あの二人の話に乗ってしまった榛名もいけなかったんです……もっと気持ちを強くしないとですね》
「そうだな。榛名ももう少し状況にあった対応をしていかないとまたからかわれてしまうからな」
《でも、提督ももっと早く助けてほしかったです……》
「うっ……それは、ごめん」
「あはは。提督も恋愛ごとに関してはまだまだ素人だからねー。山城もこれは大変そうだねー」
「言うな最上。これでも二人とも同じくらい好きなんだからな」
「うん、知ってるよ。きっとこれを聞いてたら山城も顔を真っ赤にしていただろうね。……うん、それを聞けただけでも満足かな? それじゃ僕もそろそろ退散するとするよ」
「わかった。それじゃまた後でな最上」
「うん!」

そして私と最上もお互いにその場を離れていった。







……提督は歩いていったね?
よしよし……それじゃそろそろいいかな?
僕は物陰の方に歩を進めて行って、

「……だってさ、山城。愛されていてよかったね」
「………」

そこには顔を盛大に真っ赤にさせている山城がいたのは僕だけが気づいていた事なんだよね。
うん、いいものを見れてよかったよ。


 
 

 
後書き
最後に最上と山城に全部持って行ってもらいました。
うん、私としましては満足ですかね。




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0218話『鳳翔さんとパーティ』

 
前書き
更新します。 

 



執務室で資料を見ていた時だった。
執務室の扉が開いてそこから赤城と加賀の二人が入ってきた。

「提督、少しよろしいでしょうか……?」
「はい。赤城さんと同じくよろしいですか……?」
「どうした二人とも、そんなにかしこまって……?」

私はそう言いながらも二人用のお茶を用意するために備え付けのカップを用意してお茶を注いでいく。
そして二人に出しながらも話を聞く準備を整えた。

「ありがとうございます、提督」
「ああ。それでどうしたんだい……?」
「それなのですが……提督は本日は何の日かご存知ですか……? いいえ、この聞き方は変でしたね。ご存知ですよね?」

加賀はそう言ってさも私が何の日か知っているという確信を持って聞いてきた。
まぁ、この二人が訪ねてくるんだからおのずと答えは分かってくるというものだな。
それで私は「ああ」と頷きながらも、

「今日は鳳翔さんの進水日の日だよな?」
「よかった……覚えていてくれたんですね」
「安心しました……」

二人ともそれで安堵の息を吐いているのを見て私も正解してよかったと思う。

「それでなのですが、提督には鳳翔さんを少しの間だけでいいのですが連れ出してほしいんです」
「鳳翔さんを……? またどうして?」
「それは……今五航戦や他の空母のみんなにも用意してもらっているのですが空母寮でパーティを開こうと赤城さんと提案したのです」
「そう言う事か。わかった。それじゃどのくらいの間鳳翔さんを連れ出しておけばいいか……?」
「そうですね……午後の三時くらいまではお願いしても構わないでしょうか?」
「午後の三時か。了解した。今はまだお昼過ぎだからちょうどいいだろうしな」
「提督……お願いしますね」
「わかっているよ加賀さん。任せておけ」

そして二人は「お願いしますね」と口を揃えて出て行ったのを確認した後に、私は鳳翔さんを空母寮から引き離すために誘いに行くことにした。
この時間だとまだ鳳翔さんは食堂辺りにいるだろうという感じで食堂へと向かうと案の定鳳翔さんはまだ間宮さんや伊良湖ちゃんと話をしていた。

「鳳翔さん」
「あら、提督……どうされましたか?」
「ええ。少しの間で構わないんですけど付き合ってもらって構わないですか?」
「まぁ……榛名さんという方がいますのに提督も罪な人ですね」
「いやいや、鳳翔さん違いますから!」
「うふふ……冗談ですよ」

鳳翔さんはそれで優雅に微笑んでいるのを見て思った。
やっぱりからかうのがうまいよなぁと……。

「それでどこにいかれるのですか?」
「はい。少しの間ですが鎮守府内を雑談をしながら散歩でもどうですか?」
「いいですよ。それでは間宮さんに伊良湖ちゃん、また後で」
「わかりました。それと提督、鳳翔さんの事を泣かせてはいけませんからね?」
「そうですよー。鳳翔さんは私達にとっても大事な人なんですから!」

間宮さんからはおおらかに、伊良湖ちゃんからは活発にそう言われたので「大丈夫だよ」と言っておいた。

「それではまいりましょうか、提督」
「はい」

私と鳳翔さんはそれで鎮守府内を散歩する事になった。
その後に鳳翔さんと散歩をしながらも、

「鳳翔さん、最近はどうですか? 元気ですか?」
「はい。みなさんもよくしてくださるので私も気兼ねなく過ごせるので嬉しいですね」
「そうですか」
「そう言う提督はどうなんですか? そろそろ限定作戦も近づいてきましたが準備は平気ですか?」
「はい。備蓄に関してはなんとか言っていますし、西村艦隊や志摩艦隊のみんなも一応の練度は確保できましたので後はみんなを信じるだけですね」
「そうですか。扶桑さん達も最近は張り切っていますからね。見ていて私も元気を貰えるような気持ちになります」
「そうですね。最近は特にみんなは気合を入れていますからね」

そう、最近は演習以外にも自主特訓をする子が多く見られるのでみんなそれぞれレイテ沖海戦に向けて意欲を燃やしているんだろうなという思いを感じるからな。
そんな感じで酒保にも顔を出している時に私は鳳翔さんに「少し待って居てもらえますか?」と言って鳳翔さんに承諾をもらって急いで鳳翔さんにプレゼントするものを選んでいた。
事前になにを買うのかも検討していたのですぐに買えることが出来てよかった。
それからすぐに鳳翔さんのところへと戻るのだけど、

「提督? なにを購入していたのですか……?」
「まだ内緒ですよ」
「あら。それは楽しみですね」

そう言って笑う鳳翔さんはやっぱり気づいているのかな?と思いつつもふと時間を確認するとそろそろいい時間だったので、

「鳳翔さん」
「はい」
「ちょっとこれからある場所に連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですけど……どこに行かれるのですか?」
「鳳翔さんにとってもなじみ深いところですよ」

少しのごまかしをしつつ私は空母寮へと足を運んでいく。

「あの、この先は空母寮のある方角だと思うのですけど……」
「大丈夫ですよ。あっていますから」
「えっと、そうなんですか?」
「はい」

そして到着する空母寮。
私は中に入る前に確認を入れる。

「誰かいるか……?」
『あ、はい! お待ちください!』

するとおそらく龍鳳の声が中から聞こえてきたので「わかった」と答えつつ扉が開くのを待っているとしばらくして龍鳳が扉を開けてきた。

「提督! それに鳳翔さんもいらっしゃい!」
「ああ。もう大丈夫かな?」
「はい! 準備はもうできています!」
「あの……提督に龍鳳さん? 話が見えないのですが……」

鳳翔さんが少し困惑しているけどそこで龍鳳が鳳翔さんの手を掴んで「ついてきてください!」と言って引っ張っていった。
私もそれで着いていくことにする。
そして居間へと到着すると龍鳳は一気にふすまを開いて、そこには空母のみんなが全員集合していた。
次の瞬間には、

「「「鳳翔さん、進水日おめでとう!!」」」

と言ってクラッカーを鳴らしていた。
鳳翔さんはそれで少しの間ぼーっとしていたけど次第に状況を飲み込めてきたのか、

「あ、あの……提督これって」
「はい。鳳翔さん、進水日おめでとうございます」

私は先ほど購入したプレゼントを鳳翔さんに渡す。

「あ、あの……ありがとうございます」
「司令官! 抜け駆けはあかんなぁ! うちらもちゃんと準備したんやからな! 鳳翔、受け取ってや!」
「鳳翔さん、おめでとうございます!」
「ひゃっはー! 宴だね!」

そう言って続々と鳳翔さんにプレゼントを渡していく一同。
それに鳳翔さんは嬉し涙を流しながらも、

「みなさん……ありがとうございます……私、嬉しいです」

そして最後に赤城と加賀さんが鳳翔さんの前に来て、

「それでは鳳翔さん、私達が準備した食事がありますので日頃の感謝の気持ちも込めて受け取ってください」
「頑張りました……」
「まぁ! お二人が作ったのですか!」

鳳翔さんはそれで笑顔を浮かべていた。
普段あまり作る事のない二人がわざわざ作ってくれたのだからなおさら嬉しいんだろうな。
それからはもう結構なパーティを開いたのであった。
終始鳳翔さんは笑顔を浮かべていたので良かったと思う。
金剛と大和もサプライズで登場したのは驚いたな……。



 
 

 
後書き
今回は鳳翔さんでした。
空母の皆は全員出せませんでしたがまぁ全員いるから大丈夫ですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0219話『先日の続きの出来事の鶴姉妹の回想』

 
前書き
更新します。 

 




瑞鶴と翔鶴は先日の鳳翔さんの進水日のお祝いについて話をしていた。

「ねぇねぇ翔鶴姉。昨日の鳳翔さんっていつもより可愛かったよね!」
「そうね、瑞鶴。もう皆さんからお祝いされて涙を流していたからね」
「そうだよねー。まださっきの事のように思い出せるよ」

そして瑞鶴は昨日の騒動を色々と思い出していた。






サラトガがいの一番に、

「ホウショウ、Congratulations on your birthday!」

と言って鳳翔に抱きついて熱い抱擁をしていたり、

「ホーショウさん、Congratulazioni per il tuo compleanno!」

アクィラからもイタリア語で誕生日を祝われてたりしていた。
それで鳳翔は少し照れながらも、

「なんとなく言っている事はわかります。サラトガさん、アクィラさん、ありがとうございます……」
「まだまだこれからだぞホウショウ!」

そこにまだ続けと言わんばかりにグラーフが色々とかくし芸などを披露していた。
実際はゲルマン忍法を披露したのだけどかくし芸で済んでいるのはグラーフの普段の行いゆえなのか。

「まぁグラーフはいいとしておこうか。ホウショウ……あなたにこれからもご加護がありますように」
「まぁ……」

わざわざアークロイヤルは片膝をついて鳳翔の手を握っていた。
それを見て龍驤が、

「女騎士の見せ場やんか! ええなー……」
「龍驤には似合わないよなー」
「なんやと!? もういっぺん言ってみ隼鷹!」
「わわ! 龍驤さんが切れてしまいました!」
「あははー!」

軽空母組が騒ぎ始めたので提督が鳳翔を少し静かな場所へと案内していた。
案内したのは雲龍たちの場所だった。

「ここなら鳳翔さんも落ち着けるでしょう」
「提督、ナイス判断ね! ささ、鳳翔さん、赤城先輩たちが作った料理がありますからお皿に乗せますね」
「ありがとうございます、葛城さん」

葛城がそう言って色々と鳳翔の面倒を見始めたのを合図に雲龍と天城も鳳翔さんに声をかける。

「鳳翔さん……おめでとうです」
「おめでとうございます!」
「ありがとうございます。雲龍さん、天城さん」
「はい♪」
「うん……」

と、そこに瑞鶴が翔鶴を連れてやってきて、

「ね。鳳翔さん、せっかくのお祝いなんだから翔鶴姉と一緒にケーキを作ったんだ。食べてほしいな」
「はい。ぜひいただいてみてください」

持ってきたケーキには『鳳翔さんおめでとう』と文字が書かれていたのでそれがさらに鳳翔さんの涙を誘ったのかもう目が潤んでいるではないか。

「もう……みなさん、ここまでしてくださらなくてもよいですのに……でも、嬉しいです」
「「「はぁー………」」」

満面の鳳翔さんの笑顔にみんなは顔がにやけていたのを隠し切れないでいた。
提督もそれで少し見惚れていたのは内緒であったが後で榛名に問い詰められたとかなんとか。

「さぁ鳳翔さん! 壇上に上がって!」
「はい。シャンパンも用意しましたのでコップに注いで乾杯の音頭をお願いします」

千歳と千代田がそう言って鳳翔さんにシャンパンの入ったコップを渡す。
みんなもそれに習ってジュースやお酒などを各自手に持つ。
鳳翔さんは顔を赤くさせながらも壇上に立つと、

「みなさん……私のためにここまでしてくださりなんと言葉を残せば困ってしまいます……でも、これだけは言えます。みなさん、私は皆さんの事が大好きです!」
「「「うっ……!」」」

鳳翔さんのその言葉で何名かが感激のあまり胸を抑えて倒れたとかなんとか。
そしてその言葉を言い終わったと同時にふすまがいきなり開かれてそこには金剛と大和が立っていた。

「ま、間に合いましたデース……」
「鳳翔さん! 進水日おめでとうございます!」
「金剛さん! 大和ちゃん!」

いきなりの二人の登場に鳳翔さんはさらに驚きの表情をする。

「ヘーイ、鳳翔! ワタシからもプレゼントデース! 受け取ってクダサイネ!」
「私からも鳳翔さんに日ごろからもお世話になっているお礼でプレゼントを持ってきました。受け取ってください」
「私も!」
「あたしも!」

と、そんな感じで褒章の足元にはどんどんと贈り物が置かれていくのを見て鳳翔は困り顔で、

「まぁまぁ……こんなにくださるなんて……もう私、感無量です……本当にありがとうございますね」

またしても満面の笑みを浮かべてさらに撃墜数を増やす鳳翔だった。






……そんな事を瑞鶴は思い出しながらも、ふとある事を思い出す。

「そういえば、進水日のお祝いが終わった後に鳳翔さんと提督さんの二人でまたどこかに行っちゃったけど……どこに行ったんだろうね?」
「それは分からないわ。でも、きっともう一人のところに行ったんだと思うわ」
「もう一人……? あ、そう言う事ね。提督さんって本当にみんなの進水日の事はチェックは欠かさないんだよね」
「そこが提督の優しいところよ。見習わないとね瑞鶴」
「そうだね、翔鶴姉」





提督と鳳翔は宴会が終了した後にとある部屋へと向かっていた。

「提督? 私にもこんなに盛大に祝ってもらったんですから彼女の事も祝わないとダメですよね?」
「そうですね。まだこの鎮守府に来て半年も経っていないけどもう大事な仲間ですから」

そしてある部屋の前に到着するとノックをする。

『あ、はーい! どちら様ですか?』
「私だ択捉。中に松輪はいるかい?」
『いますよ。今ドアを開けますね』

択捉がドアを開けると中には二人だけで祝っていたのだろうケーキを食べている松輪の姿があった。

「あ、司令……どうしたんですか?」
「うん。松輪、今日は君の進水日でもあるから祝いに来たよ」
《提督は松輪ちゃんのためにプレゼントを買ってきてくれたんですよ!》
「本当、ですか……? 鳳翔さんも?」
「はい。私はもうみなさんに祝ってもらいましたから今度は松輪さんを祝いに来ました」
「よかったね松輪!」
「うん、択捉ちゃん! 司令、榛名さん、鳳翔さん……その、ありがとうございます!」
「うん」
《はい》
「はい」

それから五人でささやかだけど進水日のお祝いをしたのであった。
松輪はまさか祝ってもらえるとは思っていなかったらしくやはり涙を浮かべていたのは言うまでもなかった事である。


 
 

 
後書き
先日に続いて回想な感じで鳳翔さんと松輪も祝いました。
松輪の進水日を取りのがすところでしたので危なかった……。




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0220話『仲良し三人組』

 
前書き
更新します。 

 



「司令官、おはようごさいます!」
「ああ、おはよう吹雪」

朝から執務室で元気よく吹雪が挨拶をしてきた。
本日は吹雪が秘書官になっているのでなにかと面倒を見てもらっている感じだな。
久しぶりに秘書官にしてもらったのもあってか吹雪はどこか嬉しそうに表情が緩んでいるしな。


「それでは本日も頑張ってやっていきましょうね! それで早速なんですけど……司令官、先日にサーモン海域北方に艦隊を出撃をかけましたよね……?」
「そうだな。それに関しては、まぁ悪かったとは思っているよ。もう限定作戦が発動されるまで一週間を切ったっていうのに無駄に資材を減らすのはどうかと私も感じてはいたが……でも攻略しておきたかったんだ」
「まぁ、司令官の気持ちも分かりますがあまりこういう突発的な事は控えてくださいね? 減ってしまった資材の回復に遠征艦隊各三隊が現在必死になって頑張っているんですから」

書類をめくりながら吹雪はそう言ってきた。
いや、ほんとうにすまないとは思っているよ。だからあんまり責めないでくれ。

「すみませんでした」
「はい。素直で大変よろしいですね。それじゃもうこれくらいにしてこれからについて考えていきましょうか」
「そうだな。かのレイテ沖海戦に向けてのみんなの練成だけど西村艦隊に志摩艦隊のみんなは一応は練度は十分になったのは幸いというところか」
「そうですね。他にも必要そうな子が何人かいますけど今からではもう間に合いそうにもないですしね……」

その何人かというのが夕雲型の面々なんだよな。
まさかここで夕雲型の面々を育てていないのが響いてくるとは思っていなかったからな。
陽炎型と並んで改二がいまだに一人もこない夕雲型だから結構練度上げを後回しにしてしまっているからな。
まぁ、今年中にはなんとか駆逐艦のみんなは練度70にしておきたいけどどうなることやら。

「まぁその時になってから考えればいいさ」
「そうですね。一応は全員改にはなっていて改修も済んでいますからなんとかなると思いますし」
「そんな状況はあまり望まないけどな」
「はい」

それで吹雪と一緒に苦笑いを浮かべあう。
なにかと吹雪は気苦労がたえない性格だから深く考えそうだよな。
いや、逆にすっぱり後回しにもしそうだけども。

「それじゃ次の事案だけどなにかあるかな?」
「いえ、今のところは大事な用事はないと思います。任務も滞りなく遂行されていますし柳葉大将さんからの電話の予定も本日はありませんから」
「そうか……それだとどうするか。溜まっている書類整理もしておくのもいいけど大淀達にもそう何度も頼むのも気が引けるし」
「あはは……でも大淀さん達なら気持ちよく手伝ってくれると思いますよ?」
「それならいいんだけどな」

そこで仕事関係の話題もなくなったのでどうするかと考えているとふと今日は吹雪の進水日の日だという事を思いだしたので、

「そうだな。吹雪、なにか欲しいものとかはあるかい?」
「欲しいモノ、ですか? これといってないですけど……突然どうしました?」
「いや、今日は吹雪の進水日だろう? だからなにか買ってあげようと思ってな」
「あー……そう言えばそうでしたね。私も忘れていました」

頭をこつんと叩く吹雪は本当に忘れていたらしいけど可愛いので許すとしよう。

「今頃白雪とか磯波とかがお祝いの準備をしているかもな?」
「そうですかね? 今日の朝はそんな話は一切聞きませんでしたけど……」
「こういうのは本人には知らせずに隠れてやるもんだからな。きっと準備をしているだろうな」
「それだったら嬉しいです。あ、でも……」

そこで吹雪がなにやら考え始める。どうしたんだ……?

「どうした、吹雪?」
「いえ、前に睦月ちゃんと夕立ちゃんに進水日を聞かれた事があったんです。だからもしかしたら……」
「あの二人にか。吹雪は仲が良いからな」
「はい。だからもしかしたら探しているんじゃないかなって……」
「なるほど……それじゃそろそろ来るかな?」
「来ますかね……?」

私と吹雪がそんな事を話している時だった。
執務室の扉がノックされてそして扉の向こうから夕立と睦月の声で『提督さん、吹雪ちゃんいるっぽい?』というもう確信しているようなセリフが聞こえてきたので、

「ああ、いるよ。入ってきても大丈夫だよ」
『わかったっぽい!』
『入るにゃしぃ!』

そして扉が開かれて夕立と睦月の二人が執務室に入ってきた。
二人の手にはなにやら小包が握られていた。
そのまま二人は吹雪にそれを差し出しながらも、

「吹雪ちゃん! 進水日、おめでとうっぽい!」
「この睦月が吹雪ちゃんに献上するよー!」
「わぁ! 二人ともありがとう!」

素直に吹雪はそれを受け取って感謝の言葉を述べていた。
うんうん、仲良きことは素晴らしいかな。
すると夕立が私の方へと向いてきて、

「ところで提督さんは吹雪ちゃんになにか上げたの……?」
「いや、まだだ。それでこれからなにか欲しいものはないかとちょうど吹雪に聞いていたところだったんだ」
「それはいい事を聞いたかなー」
「ねー!」

睦月と夕立はそれでお互いに笑みを浮かべあってなにかを考えたようだ。
ふむ……どうやら私の財布が少し軽くなりそうな予感がしたぞ。

「提督さん! 吹雪ちゃんに間宮特製の限定スィーツを食べさせてあげるッぽい!」
「あれかー……」

限定スイーツとは一人ではとうてい食べきれない代物で唯一赤城だけが食べきったという特大の容器に入っているものなんだよな。それで値段も張るという代物だ。
それを注文するという事は、

「三人でそれを食べたいんだな……?」
「お、提督わかってるねー!」
「そうっぽい!」
「あの、司令官……あれ結構値が張りますから無理はしないでくださいね?」

吹雪は遠慮しているけど私はもともとなにかを買ってあげるつもりだったから渡りに船だ。
だから、

「よし。それじゃこれから間宮に行くか」
「やったっぽい!」
「提督、やるにゃしー!」
「すみません、司令官。ありがとうございます!」

それから四人で間宮へと行って三人は限定スイーツを頑張って食べきっていたのを見てやっぱり女の子は甘いものが好きなんだなと再確認できた。
まぁ、その後にスイーツとは別に形が残るものを買ってあげたんだけどな。
それで吹雪は喜んでいたからよかった。
後、後日に聞いたんだけどやっぱり吹雪型の面子でパーティが開かれたとかなんとかだったらしい……。


 
 

 
後書き
吹雪の回でした。
後少しでイベントなのに5-5で資材を減らしたバカは私です。
まぁ後二、三日ありますからなんとか回復させます。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0221話『霰と過ごす静かな時間』

 
前書き
更新します。 

 




今日は特に珍しい子が秘書官を務めていた。
今ではもう改二になってしまい被らなくなってしまった大潮も被っていたその帽子がトレードマークの艦娘、霰。
霰は秘書官の椅子に座りながらどこかボーっと部屋の中を眺めていた。
だからか部屋の中は少しだけ静かだ。
だけどそれといって悪い空気ではないのが不思議なんだよな。
霰特有の空気がこの執務室に居ついているんだろうか。
私がそんな事を思っていた時だった。

「司令官……」
「なんだい?」

呼ばれたので慌てずに返事をする。
なにか用があるのなら頼ってほしいからな。

「うん……。後明日になれば限定作戦が開始される……だから少しだけ満潮姉さんが心配です……」
「そうかー……そうだよな。西村艦隊として活躍してもらう予定だけど朝潮型でもあるからな」
「うん……」

霰は静かに頷いた。
そして今日送られてきた電文を見ながら、

「なにかまた新しい陸軍戦闘機が手に入るらしいです……」
「なんていう名前なんだ?」
「うん……。『四式戦 疾風』っていう名前らしいの……」
「疾風か……またネームドの機体だな」
「そうみたい……それと限定作戦に合わせて海軍が各作戦名を2海域までなら発表したみたい。はい……」

霰は私に電文を渡してきた。
そこに書かれていたのはE1海域の作戦名は『第二遊撃部隊、抜錨!』。
そしてE2海域の作戦名は『捷一号作戦、発動準備』。
というらしい。

「これはそろそろ青葉も聞いてきそうな感じだな。明後日あたりにはいつも通りに執務室に突入してくるだろうな」
「大変だね……司令官」
「いつもの事だからな」
「そう……」

それで用は済んだのか霰はまたボーっとしだし始めた。
うーん、やっぱり少しだけ物静かな感じだよな、霰って。
言葉数が少ないから尚更な感じだ。それでいていざとなったら鋭いツッコミも披露してくれるから結構傍観しているところなんだろうな。朝潮型のポジション的には。
そんな事を思っているとそこに扉がノックされたので私は返事をする。

『司令官。霰はいるかしら……?』

この声からして噂の満潮かな?

「ああ、いるよ。入っても大丈夫だから」
『わかったわ』

そして満潮が執務室の中に入ってきた。

「霰、探したわよ?」
「今日は秘書官だって言っていなかったっけ……?」
「聞いてなかったわよ。あなたは言葉数が少ないんだからもっと伝わる努力をした方がいいわよ」
「んちゃ……頑張る」

満潮の少し呆れの入った口調で霰は帽子を少し下げながら返答していた。
うーん……この姉妹関係も中々複雑な物なんだな。

「ところで司令官。大本営からなにか情報は入っているの……?」
「ああ。もう電文が来ているから見るかい?」
「ええ。見させてもらうわ」
「わかった」

私はそれで今現在通達されている情報の束を満潮に渡した。
満潮はそれを一枚一枚確認していきながら、

「へぇ……また海防艦の子が仲間になるのね」
「そうだな。択捉型七番艦の対馬らしい」
「これはもう対潜に関しては海防艦の子達に譲るしかないかしらね……?」
「そんな事もないと思うぞ?」
「うん……朝潮姉さんはまだまだ現役で活躍できているから……」
「それもそうね」

私と霰にそう言われて満潮は素直に納得していた。

「あぁ、それと……分かっていると思うけどこの遊撃部隊って奴には私達西村艦隊を必ず使ってよね?」
「そのつもりだよ。みんなで、乗り越えような……」
「ええ。そのつもりよ……!」
「満潮姉さん……ファイト、だよ……」
「ありがとね、霰」

それで満潮は表情を綻ばせて笑みを浮かべる。
それは果たして西村艦隊で戦えることが嬉しいのか、それとも霰に応援されて嬉しいのか……。それは満潮だけが知っている事だ。

「後は……そうね。司令官、霰の進水日のお祝いの品はもうあげたんでしょうね……? 忘れているって言ったら承知しないわよ?」
「満潮姉さん……大丈夫。司令官……もうくれたから……」

霰はそう言って大事そうに小包を手に出して満潮に見せていた。
それを見て満潮も満足したのか、

「合格よ。さすがこの私も認めている司令官だわ」
「お褒めにあずかり光栄だよ。罵倒の言葉が来ないだけ認めてもらっているって実感が持てるからな」
「ふんっ……いい事? 少しでもいい加減な事をしたらまた霞と一緒に言葉責めしてあげるんだからね?」
「おー……それは怖いな。肝に銘じておくよ」
「よろしいわ。霰もなにか不満があったら言うのよ? 今はこうだけど司令官たらたまに抜けているから」
「大丈夫……霰は、司令官の事を信頼している……から」
「そう……。それならいいわ。それじゃ暇が出来たら朝潮姉さんの部屋に来なさい。進水日のお祝いをしてあげるから」
「うん……必ず行くね……」
「それじゃ邪魔したわね」

そう言って満潮は執務室を出て行った。
静かだった執務室の中はまるで台風でも通り過ぎたかのような錯覚を覚えるくらいだった。満潮が出て行った事でもうもとの静かな雰囲気に戻っているからな。

「ゴメンね、司令官……」
「ん? なにがだい……?」
「満潮姉さんも優しいんだけど……司令官の前だと感情が先に出ちゃうから……」
「それか。大丈夫だよ、あれも満潮の良さの一つだから気にしていないから」
「そう言ってもらえると……嬉しいです……」
「霰は姉妹たちの事が好きなんだよな」
「うん……みんな大好きです……」

少しだけ笑みを浮かべてそう言う霰は本当の事を言っているのだろうな。
多分だけどまだ部屋の外にいるだろう満潮にも聞こえているから今頃顔を赤くしているだろうな。

「満潮が聞いていたら顔を赤くしているだろうなー」

と、わざとらしく言ってみたら外で『ガタッ』という音がしたので私は思わず笑みを浮かべてしまった。
霰も気づいたのか少し顔を赤くしているしな。
とにかく、

「とりあえず……改めて進水日おめでとう、霰」
「うん……ありがとう司令官……」

こんな感じで今日も執務は捗っていったのであった。


 
 

 
後書き
霰回でした。
なにげにまた初めてかもしれなかったですね。
霰は静かな子ですからからみがあんまりないですから。





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0222話『秋の作戦に向けて』

 
前書き
更新します。 

 




「とうとうやってきましたね」
「そうね……案外早かったようです」

私は今加賀さんと今夜中に開始されるだろう深海棲艦との制海権を争うレイテ沖海戦について話していた。

「思えば……私ももし生き残っていたのなら五航戦や他のみんなにも少しは貢献できたのかしら……?」

加賀さんはそう言ってどこか寂しそうな表情を浮かべる。
やっぱりあの時に沈んでしまった事を後悔しているのだろうな……。
でもそれを言ったら一航戦と二航戦の四人はそれでも頑張って戦った。それだけは分かっている。
だから、

「そういうもしもの話はやめないか? 加賀さんらしくないよ。いつも通りに鎧袖一触を通す加賀さんの方が似合っているよ」
「そう……ありがとうございます提督。提督も……この日のためにみんなの育成を頑張ってきたんですから成果が出るといいですね」
「そうだな……戦艦に空母勢は言わずもがな重巡に軽巡の子達も練度は充分。駆逐艦の子達も主力の子達は練度はばっちし。装備群もある程度は頑張れたから後は運がこちらに味方してくれるのを待つのみな感じだな」
「期待しているわ。明確に出るだろう子達は固定要員に使われるでしょうけど、それでもそれ以外だったら私も力になります。赤城さんや二航戦のみんなも同じ思いです。ですから提督はどんと構えていてください。私達はいつも提督の指示があるのなら万全で戦えるのですから」
「ああ……わかっているよ」

加賀さんの過度の信頼が少し重くも感じるけどそれでも頑張らねばという気持ちで奮い立つ。
この世界に来て戦うと決めたのだから必ずだれも失わずに勝利をもぎ取らないといけない。誰も沈んでほしくはないからな。

《加賀さん、大丈夫です。提督の事を信じましょう》
「榛名……ええ、そうね。お互いに頑張りましょう」
《はい。応援しかできない身ですが私も精一杯頑張ります!》

うん。二人も気合が入っているな。
私もこうしてはいられないな。

「さて、それじゃ先日に出た情報を纏めておくか。
なんでも今回に仲間になりえるだろう艦娘は海防艦が二隻に噂の涼月、そしておそらく軽巡か重巡級……この子は海外艦だろうな、が仲間になるという話だからな」
「軽巡だったらやっとって感じですね。もう日本の軽巡は出し尽くした感がありますから」
「そうだな。そしてもし本当に軽巡だったなら私はそこまで括っていないけど海外艦だけで連合艦隊が組めるようにもなるという感じだから楽しみだな」
「海外艦だけで連合艦隊ですか……面白そうですけどどこか不安も感じる編成ね」
「まぁそう言うなって。これを目指している提督だって中にはいそうなんだから」

そう……海外艦だけでの編成は唯一今まで軽巡だけがいなかったために実現しなかった事だけど再現出来たらおそらく歓喜する提督が後を絶たないだろうしな。

「……まぁなにはともあれ、頑張りましょうね提督」
「はい。加賀さんにも活躍できる場があったら出てもらうからな」
「はい。楽しみにしておくわ」

そこで加賀さんが普段はあまり笑わないけど笑みを今は浮かべている。
こういう時には本当に信頼されているという実感を持てる瞬間で少し私も嬉しい。
と、そんな感じで加賀さんと楽しく話していると執務室の扉が開いて時雨が入ってきた。

「提督、少しいいかい……?」
「どうした時雨?」
「うん……今日の夜から作戦が開始されるけど少し僕も不安になっているみたいなんだ。あの時の事を思い出して少し手が震えてしまっていて……」
「そうか……。あ、加賀さん……?」

加賀さんが無言で時雨のところへと歩いていって時雨の手を取ってあげると、

「大丈夫よ時雨……あなたは強い子よ。だから西村艦隊のみんなの事を信じてあなたも精一杯頑張りなさい。結果はおのずと分かってくるものだわ。だから提督の方針を信じていつも通りに……余裕の笑みを浮かべながら深海棲艦を殲滅するのよ」
「加賀さん……うん、少しだけ元気が出てきたかもしれない。ありがとう、手の震えもおさまってきたみたいだ」
「そう……それならよかったわ」

そう言って加賀さんは時雨の頭を撫でていた。
時雨も気持ちよさそうに笑みを浮かべているしな。

「なんだか加賀さんにお株を取られてしまったみたいだな」
「ふふ……いつも提督ばかりに良い思いはさせませんよ?」
「はは、それは参ったなぁ……」

苦笑をするも悪い気分ではない。
こういう事も普通に話せる事が嬉しいんだから。

「まぁいいけどね。それより時雨。不安もあるだろうけど今回の主役は間違いなく君達だ。だから思いっきり戦ってきてくれ」
「うん、わかったよ。僕も……今度こそみんなであのスリガオ海峡を乗り越えてみせるよ」
「その意気だ」
「うん!」

それで時雨も笑顔になってくれたので良かったと思う。

「後は今夜の大本営の発表を待つのみだけど艦隊のみんなはどんな感じか知っているか……?」
「うん。みんな気合が入っているよ。特にレイテ沖海戦に参加した子達はかなり気力が溢れている感じだね。坊の岬組のみんなも涼月が仲間になると知ってからはいつもよりはしゃいでいるしね」
「そうね。初霜や雪風もいつもより幸運の値がマシマシな感じで笑顔を振りまいているのを見たわね」
「なるほど……みんながみんな気力は十分という事だな」
「そうだね。だからね提督。みんなはもう提督の事を信じているのは知っていると思うからこれからも信じさせてね?」
「そうね。私も時雨の意見には賛成だわ。提督、腕の見せ所ですよ」
「それは頑張らないといけないな。加賀さん、時雨……私もみんなの事を期待しているから頑張ろうな」
「はい」
「うん」

そんな感じで私達は今夜に通達されるだろう時まで時間を適度に過ごしているのであった。
ちなみに加賀さんの進水日のお祝いも渡したけど少し顔を赤くさせただけで私としてはもっと恥ずかしがる加賀さんの姿を見たかったなと思ったのは内緒である。


 
 

 
後書き
加賀さんと時雨を出しました。
今日の夜についに秋イベントが開催されます。
練度も備蓄も十分な感じですので頑張りたいと思います。




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0223話『レイテ沖海戦の始まり』

 
前書き
更新します。 

 




限定作戦の始まりとともに大本営から次々と送られてくる作戦の説明の束を見つつ私は手伝ってくれる大淀に感謝をしながらも、

「やはり新しい情報が目立つ感じだな」
「そうですね。今回の作戦に気合が入っているのでしょうね」
「まぁ、一番大きい海戦の名前を銘に使うくらいだからな」

そのくらいはしてくるとは思っていたけど深海棲艦も結構な所を責めてくるよな。
私はそれで深海棲艦に愚痴を零しそうになるのを抑えつつ作業を進めていく。
まだ集まっていない情報の量でむやみやたらに出撃してもダメだからなと自身の早く攻略したいという気持ちを我慢している時だった。
一つの足音が近づいてくるのを察知した私は少しだけ「またか……」と呆れつつ大淀に指示を出す。

「大淀、お客さんだ。いつもの対応で頼む」
「了解しました。もう用意できていますから大丈夫ですよ」
「さすが準備が早い事で助かるよ」
「この手の感じはもう二回も味わっていますからこれからも作戦ごとにありそうですから準備はしておいても損はありません」
「そうだなぁ……」

大淀の優秀さに感激しながらもその相手が執務室に突撃をかけてくる。

「司令官! 青葉です。今回の作戦内容を教えていただけないでしょうか!?」

バンッ!と勢いよく扉を開けて部屋の中へと入ってきた青葉はいの一番にメモ帳を片手に目を光らせながら私に迫ってきた。
うん、変わらないね君は。
内心そう思いつつも、

「わかった。それじゃ要点だけ話すから聞き逃すなよ?」
「ふむぅ……司令官、慣れてきましたね。少し残念ですよぉ」
「もう二回も突撃噛まされているからな。さて、それじゃみんなに早く伝えたいんだろう? 早くしようか」
「了解です!」
「大淀、それじゃ説明を頼む」
「わかりました」

そして大淀が説明用の束を見つつ、

「それでは青葉さん、今回の作戦名はご存知の通りですが『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』と銘打たれているのはもう知っていますよね?」
「もちのろんですよ!」
「ではその中身の作戦名をお教えしますね」
「わっかりましたー!」
「では、まず第一海域の作戦名は『第二遊撃部隊、抜錨!』と言います。この海域は通常編成での戦闘となりますがすでに突撃している提督型の情報筋を纏めますとかなりの強敵が待ち構えているそうです」
「そうなのですか……」
「はい。なんでも甲編成では戦艦棲姫が二隻も出現するそうで……」
「はっ……? 第一海域でいきなりダイソンですか?」
「はい。戦艦棲姫です」
「はわー……それは強敵ですねぇ」
「そうなりますね。さらに悩みどころなのはそんな戦艦棲姫も敵として登場しますのにこちらの編成に縛りがありまして戦艦、空母を入れられないところなんです」
「そ、それでは空母に一方的にボコられてしまいますよ……!」

青葉はやはりそこに注目してきたよな。
その気持ちは私にも分かる。
戦艦空母を入れられないなんて辛いのは誰でも分かる事だ。

「ですが、悪いだけではありません。第一海域から航空基地隊の運用が可能です。ですから制空権はなんとか大丈夫でしょう。さらには水上機母艦や航空巡洋艦などの方々で制空権を確保するという方法も色々と模索されているようです。それですでに第一海域は甲作戦で突破した提督も見られるようですから」
「はわー……さすがですねー」
「そうだな。毎度の事だけど先行組には助かっているのがありがたいところだよな」

そんな感じで話は次の海域へと移行した。

「そしてお次の海域は第二海域、『捷一号作戦、発動準備』と銘打たれています。この海域も通常編成での戦闘となりますがまだ攻略している人の数が少ないために情報は出揃っていません。ですがそれだけ辛い戦闘になるのは目に見えていますね」
「そうでしょうねー。ただでの通常編成で辛い事はないですから」
「はい。そして第三海域ですが『捷一号作戦、作戦発動!』となっています。ここでようやく連合艦隊が組めるようになりますね。そして第二海域から運用も出来ますが第三艦隊による『遊撃部隊』を組めるようになるのも大きいですね」
「礼の西村艦隊を編成できる七人編成ですね?」
「そうです」

その話を聞いて思う。
西村艦隊の面々は今頃どんな準備をしているのかと。
まぁ、彼女達の事だ。張り切っている事だろうな。

「以上を含む三つの海域からなる前段作戦の構成となりますね」
「わかりました。最終海域はいつものごとく一日挟んで発表される感じですかね?」
「おそらくは……それではお次は今回の作戦で仲間になるであろう艦娘の情報です」
「待ってました!」

青葉もそれが聞きたかったのだろう、嬉しそうにメモを広げる。

「まず第二海域を突破のさいには択捉型海防艦の『佐渡』さんが仲間になるそうですね」
「ふむふむ……佐渡さんですか」
「はい。さらには第二海域以降では同じく択捉型海防艦の『対馬』さんが深海棲艦に魂を捕らわれているそうですので早めの救出を試みたいですね」
「佐渡さんに対馬さん……なにげに海防艦も増えてきましたねぇ」
「そうだな。まぁ姉妹が増えるから択捉は喜びそうだけどな」
「そうですね。そして第三作戦海域以降では潜特型伊号潜水空母の『伊400』さんがドロップするそうです」
「うわー……シオイさんが喜びそうですね。ついにお姉ちゃんの登場ですか」
「ああ。だから必ず救出しないとな」

シオイの喜ぶ顔も見たいからな。頑張らないと。

「そしてまだ詳細は明らかになっていませんが駆逐艦と海防艦より大き目な艦娘が仲間になるそうですね」
「それって……軽巡とかですかね?」
「おそらくは……まだ憶測でしか判断できないのがつらいところですね」
「だとしたら海外艦が妥当ですかね?」
「多分な」
「はい。そして最終作戦を完了する事で秋月型防空駆逐艦の『涼月』さんが艦隊に合流するみたいですね」
「秋月さん達も気合が入っていますからね。司令官、必ず仲間に向い入れましょうね!」
「当然だ。今回も全員仲間にするぞ」

私と青葉で気合を入れている中で、

「それと細かな追加ですが『警戒陣』という新たな陣形が組めるようになりますので詳細はあとで確認してくださいね。提督もいざという時に単横陣と選択を間違えないようにしてくださいね?」
「わかった」

これで大体の情報は伝えたと思うから青葉はそれで満足したのか、

「それではさっそく情報を皆さんにお知らせできるように手配しますね」
「頼んだ」
「了解です!」

そう言って青葉は颯爽と部屋を出て行った。
それを見送りながら、

「本当に風のようだな……」
「ですね。提督、それではいつ出撃を開始できるようにこちらも準備を整えましょうか」
「そうだな。頑張るとしようか」

私も指示を頑張らないとな。
まずは艦隊編成を確認だ。


 
 

 
後書き
ついにイベントが始まりましたね。
提督のみなさん、頑張ってまいりましょう!




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0224話『E1、始まるギミック解除隊の活躍』

 
前書き
更新します。 

 




さて、限定作戦が始まった事でにわかに騒ぎだしてきた我が鎮守府だけどまずはE1作戦名、『第二遊撃部隊、抜錨!』の攻略を開始するためにメンバーを考えていた。

「大淀、まずはギミックを解除して羅針盤が正常に稼働するために色々としないといけないよな?」
「そうですね。提督のいう通り羅針盤が最初はうまく作動しないそうですから。ですから先行で突入している提督達の情報によると空襲が発生しますのですべてのマスで制空権を取って優勢にならないといけないらしいです」
「そうか……。それだと空母達が使えない今は航空基地隊と水上戦闘機か瑞雲でなんとかやりくりしないといけないな」
「そうなりますね」
「うん……わかった。それじゃ久しぶりにあきつ丸に烈風拳をお見舞いしてもらうとしようか」
「フフ……そうですね」

烈風拳という響きにおかしなものを感じたのか笑みを浮かべる大淀。
こういう時に余裕があるから作戦の指示が出来る艦娘はえらいよな。
さて、それじゃメンバーを募集するか。対潜も一緒に編成しないといけないからな。
私はそれで考えたメンバーを集めるために各自の部屋へと電話をかけた。
しばらくして、

「提督、三隈まいりました」
「ちとの出番ですね。頑張りますね」

まずは三隈とちと(水上機母艦の方)が挨拶してきた。
この二人には制空権を確保するために水上戦闘機を存分に装備してもらいたいと思っている。
それなので、

「さっそくだけど三隈とちとの二人には瑞雲や水上戦闘機を装備してもらいたいと思っている」
「わかりましたわ」
「はい。空母の私が使えない以上は私が頑張りますね」
「頼んだ」
「「はい」」

そして次は、

「提督殿、このあきつ丸に出番とはまた珍しいですな」

そう言って笑みを浮かべるあきつ丸。
こうして空母が増えてきた中で、それでもあきつ丸を使うのは久しぶりなので運用方法を間違えないようにしないとな。

「あきつ丸に言う事はただ一つ。艦戦を精一杯積んで烈風拳……いや、烈風拳・零を撃ちこんできてくれ」
「なるほど……もう烈風は装備するには弱いからの命名ですな。了解しました。それでは零戦52型(熟練)をガン積みで行かせてもらうであります」
「よろしく頼む」
「了解であります」

私は次は初月に目を向けながら、

「そして次は初月。君には制空権を確保してもらうためにいつも通りの対空装備で臨んでもらいたい」
「わかった。この僕に任せておいてくれ。しかし……まだ秋月姉さんが残っているとはいえ僕をいきなり投入するなんて提督はあとの事を考えているのかい……?」
「まぁ、初月はなぁ……そうだけど、それに関しては第四海域がどういう風になるのかで後悔するかしないか変わってきそうだからな。まぁ、現状は頑張ってもらいたい」
「わかった。やるだけやってみるさ」
「頼む」

そして最後にリベッチオと初霜に目を向けて、

「最後にリベッチオと初霜は潜水艦の対潜掃討を行ってもらいたい。潜水艦が多く出没するらしいからな」
「わかったよ!」
「わかりました!」
「よし! これでメンバーは全員だな。……あ、それと昨日に伝えた上方なんだけど誤報があったので先に謝っておきたい」
「「「……?」」」

六人は何の事は分からないために首を傾げていた。

「私の予想では軽巡が来るかもという予測を立てていたんだけど、駆逐艦、海防艦より少し大きい艦娘というのはどうやら伊400の事だったらしい。だから今回仲間になるのは四人だけという事になるな」
「まぁ、そうでしたの。うっかり五人かと思っていましたわ」
「提督殿もたまには勘違いして間違える事があるのですね」
「うるさいぞあきつ丸。まぁそれだけだ。それと航空基地隊も艦戦でまとめておいたから安心してかかってほしい。それじゃみんな、さっそく出撃してくれ」
「「「了解!」」」

六人はそれで港へと向かっていった。
それからしばらくして、

「提督、皆さんが作戦海域へと入った模様です」
「そうか。まずは制空権の確保を頑張ってもらいたいものだな」
「祈りましょうか」
「そうだな」

私と大淀はそれで祈っていた。









「しかし、提督殿もいけずですなぁ……たまの出撃でいきなりこんな大役をこのあきつ丸に頼むのですから」
「それは仕方のない事ではないですかね……? 軽空母や空母が出せない以上はあきつ丸さんが艦戦を積む事は決定したものですからね」

あきつ丸の呟きにちとがそう言葉を繋いでいた。

「そうでありますな。まぁせっかくの出番なのですから活躍したいものですな。お、潜水艦ですかな? 初霜殿、リベッチオ殿、頼みますね」
「わかったー! やっちゃうよー!」
「お任せください! できるだけ掃討します!」

二人は爆雷を投下しながら潜水艦を屠っていた。
その光景を見ながら、

「いや、しかし……やはり先制対潜は直に見るのは久しぶりですがすごいものですな」
「そうですね。いくつか取りこぼしもいるようですがおかげで脅威にならずに済んでいるのがありがたいです」
「そうですな。……お、ちと殿。空を……さっそくお出ましのようであります」

あきつ丸がそう言ったのでちとも空を見るとたこ焼き……もとい敵艦載機群が迫ってきたので、

「それでは制空権を確保するために一仕事と参りましょうか!」

あきつ丸のその掛け声とともに敵艦載機を全機撃墜する事はできなくても航空基地隊と協力して航空優勢を取ることに成功したのであった。

「ふふ……血が滾ってきますな。この調子で他の空襲されるポイントでも優勢を取ってまいりましょう!」
「「「了解!」」」

もうあきつ丸がなぜか指揮官然で会話しているけどみんなも気にしていない様子であった。
みんなもこの雰囲気を楽しみたいのだという事だ。
……それから四苦八苦しながらも中々羅針盤がうまくいかない中で何度かボス攻略隊とも交代しながらもなんとか全マスで航空優勢を取って羅針盤を正常に稼働させてついにはボスマスまでの道を開いたのである。

「ようやくでありますか……何度空襲されるポイントに行った事か……それでは後は攻略隊に任せるとしましょうか。おそらく三隈殿と初霜殿は引き続きメンバーに募集されると思いますからな」
「まぁ……確かにそうですわね」
「それでも頑張ります!」

そんな感じで全員は帰投していった。


 
 

 
後書き
装備さらし。


三隈改     Ro.44水上戦闘機、二式水戦改(熟練)、二式水戦改、強風改
千歳甲     瑞雲12型、Ro.44水上戦闘機、Ro.44水上戦闘機
あきつ丸改   零戦52型(熟練・MAX)、零戦52型(熟練・MAX)、零戦53型(☆6)
初月改     10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
リベッチオ改  四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
初霜改二    四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機



何度か空襲マスに行ったのですがなかなかボスマスが出現しなかったので焦りましたね。これで出てくれと最初の空襲マスへ行って航空優勢を取ったらやっとボスマスが出ましたから。
是だから甲作戦は面倒でした。

それと勘違いしていたようで駆逐艦より大きい艦娘は潜水艦でしたね。
前日の五人というのは私の勘違いでした。すみません。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0225話『戦艦棲姫を率いる軽空母』

 
前書き
更新します。 

 




それではあきつ丸たちにボスまでの羅針盤を解放してもらったので攻略艦隊を組む事にするか。
今回は志摩艦隊が活躍する事になっているのでメンバーは大半を志摩艦隊にするつもりである。
だから私はこの子達を呼ぶ事にした。

「というわけだ。ほぼ志摩艦隊で固めたメンバーだから話もしやすいだろう。みんな頼むぞ。まずは那智と足柄」
「うむ!」
「ええ!」

それで元気よく言葉を返してくる二人。

「那智には志摩艦隊の旗艦を務めてもらいたい。できるな?」
「当然だ。いつでもいいぞ!」
「それでは頼む。足柄はそんな那智を支えてやってくれ」
「任せておいて! 存分に活躍してあげるんだから!」

那智は握りこぶしを作って余裕の笑みを浮かべ、足柄はニシシと笑みを浮かべていた。
うんうん。やっぱりこの二人が揃うと頼もしいよな。

「次だ。昨日の編成から引き続き初霜と三隈、頼んだぞ」
「お任せください」
「必ずお役に立ちますね」

二人はそれで強気に言葉を返してくれた。
初霜は唯一の対潜係で三隈も制空権を獲得するための戦闘機運搬要員だ。
だから二人ともそれぞれ頼りにしてもらっている。

「うん。そして霞。今回は対空掃討を一人ですることになるけどよろしくな」
「ふんっ! それくらい余裕だわ。任せておきなさい!」

霞はいつも通りな感じで強気な態度で応じてくれた。
やはりこの調子がとうどいいよな霞には。

「そして最後に殿は阿武隈、頼むぞ」
「お任せください! 一人目のあたしに負けないくらい活躍するんだから!」

そう、今回は多分大丈夫だろうけど一応練度93の二人目の阿武隈を使用する事になった。
由良が改二になった事で甲標的要員が三人になったけど夏とかの運用を思い出すと胃が痛いからな。なるべく本戦力の阿武隈は温存しておきたい。

「今回の敵編成には戦艦棲姫が含まれているが無理して倒す必要はないぞ。旗艦の軽空母を倒すだけでいいんだからな」
「だが、倒せれば倒した方がいいのだろう?」
「まぁできるならやってくれ、那智」
「ふふ。このメンバーで戦艦棲姫を倒すか。なかなか骨が折れそうではないか。楽しみだな」
「もう、那智姉さんたらまたそんな負けフラグを立てるんだから……」
「何を言う。必ず勝って見せるさ」

そう言って那智と足柄の二人は少しだけ言い争っているのを見ていると霞は案の定溜息を吐いていたのは見なかったことにしよう。

「それでだけど、今回は三隈だけが唯一の制空権のかなめだからおそらく制空権は確保は出来ない事を予想できる。なんせ軽空母があちらには三隻もいるからな。
だから少し辛い戦いになるだろうことを予測するけどなんとか勝ちを拾ってくれ。航空基地隊もできるだけ援助をするから」
「「「了解!」」」
「それでは出撃してくれ」

私はそう指示をするとみんなはそれで港へと出て行って艤装を展開して出撃していった。
みんな、頼んだぞ。最初の難関の攻略を。







「それではみなさん。先日から出撃しているこの初霜と……」
「三隈が道中の説明をしていきますわね」

初霜と三隈がそう言って移動しながらも口を開いてきた。
うむ、助かるな。前情報がある分警戒が出来るからな。
この那智、必ずみんなの役に立って見せるぞ。

「道中はやはり潜水艦が多めですので先日はリベッチオさんとともになんとか対処していましたが今回は対潜係は私だけですので少し辛いものがあると思います。ですができるだけ頑張りますね」
「そして空襲される位置ですがもう他のところへは行かない都合でボス前での空襲が予想されますわ。ですからわたくしもできるだけなんとかしますけど初霜さん以外の皆さんは対空装備も持っていますので各自防衛をお願いしますわ」
「わかったわ!」

足柄がそれで元気よく言葉を返していた。
強気な足柄らしいな。おともの霞が相変わらず溜息を吐いているけどな。

「はぁ……でも肝心なのはボスの敵編成なんでしょう?」
「そうですわね。皆さんもすでに提督から情報を会得していると思いますけど敵には軽空母が三隻も存在しますので制空権は取れない事を覚悟していてください。わたくしとしましても悔しいところですができるだけ制空権の喪失だけは避けてみせますから」
「よろしくお願いしますね、三隈さん!」
「ええ、阿武隈さん」

そんな感じで説明も終わり私達は敵陣地へと突入していった。
そしてなんとか潜水艦や空襲もかろうじて避けていきボスへと挑んでいく。

「さて、ボスマスへと接敵したが……どうなることやらな?」

私はそう呟きながらも攻撃を始めようとする。
だけど先に航空基地隊が攻撃を開始し始めたんだがな、

「これは……ひどいな」

思わずそう言ってしまった。
それはというと陸攻達が半分以上が落とされてしまっているからだ。
それほどに敵軽空母の対空力が高いという事なのだろうな。

「那智姉さん! ボーっとしていないで! 行くわよ!」
「ああ。わかっているさ!」

敵編成には一体戦艦棲姫の姿も見えたために少しだけ辛い戦いになるだろうことを予測した。
だが制空権の喪失だけは三隈のおかげで避けることが出来たのでなんとか戦艦棲姫のカットイン攻撃だけは避けている感じだな。それだけがありがたい……。
そんな調子で何度も苦戦をしながらも何回か倒していった。
そんな最中で提督から通信が入ってきた。

「提督か、どうした……?」
『ああ。陸攻なんだがラストダンスには出せられないところまで消費してしまったから最後は話によると軽空母は一隻になるという話だから艦戦を積んで制空権の確保だけに集中させてもらうよ』
「なるほど……だがそれはつまり戦艦棲姫の数が増えるという事だな?」
『ああ。二隻になるな。だから出撃する時にも行ったけど無理に倒す必要はない事を先に行っておくぞ?』
「わかっているさ。無茶はしない」
『それならいいんだけどな。頑張ってくれ』
「了解だ」
『それではな』

それで提督との通信が切れる。
そしてみんなに顔を向けて、

「だそうだ。無理しないで行くぞ」
「「「了解」」」

私達はそれで挑んでいく。
途中で足柄が中破してしまったが「まだ大丈夫よ!」と言ったので進撃していく。
そして到着してみれば確かに軽空母は一隻になっていたけど代わりに戦艦棲姫が二体になっていた。
うむ、辛そうだな。
だけど運がこちらに味方したようだ。
まず艦戦でほぼ軽空母の艦載機を落としきって、続いての決戦支援のみんなの攻撃によって軽空母だけに中破のダメージを追わせられた。
さらには、

「制空権、確保いたしましたわ!」

三隈がそう叫んだ。
よし、これならいける!
最後になんと阿武隈が甲標的でうまく軽巡を射抜いてくれた。
おまけにT字有利を会得できたのも大きい。

「行くぞ!」
「「「おう!!」」」

そして攻撃を開始する。
前回から登場した駆逐ナ級もいたがそれもなんのその、簡単に落ちていくのでこちらの攻撃が貫通しているのだろうな。
最後に足柄を抜いた私達で魚雷を放ってついには軽空母を落とすことに成功した。
だけどな……。

「提督よ。戦艦棲姫が二体とも生き残ってしまっているが……夜戦をするか?」
『いや、無理に落とす必要はない。そのまま終わっていいぞ』
「了解だ。悔しいが作戦は成功したのだから欲はかけないからな」

私達は夜戦をせずに戦闘を終わらせた。
くっ……戦艦棲姫の二体が無言で笑みを浮かべているのが憎らしいな……。
まだまだ地獄はこれからだとでも言いたいのか……?
……まぁ、それでも作戦は成功した。
これでいいんだ。
私はそう無理やり納得したのであった。


 
 

 
後書き
編成装備さらし


那智改二  20.3㎝(3号)連装砲×2、零観(MAX)、Bofos
足柄改二  20.3㎝(3号)連装砲×2、紫雲、FuMO25レーダー
霞改二乙  10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
初霜改二  四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
三隈改   Ro.44水上戦闘機、二式水戦改(熟練)、二式水戦改、強風改
阿武隈改二 甲標的、SKC34 20.3㎝連装砲、15.2㎝連装砲改



最後にダイソンが二体残りましたが面子的に辛かったので無視しました。
軽空母をスナイプできたんですからいいですよね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0226話『潜水新棲姫の攻略』

 
前書き
更新します。

あっぶな! 寝落ちしていたら今日の六時に起きてしまって危うく今日の投稿を書けないかもしれない状況でした。なんとか書けましたけど中身は簡素なものですからあまり期待しないでください。 

 



第一海域『第二遊撃部隊、抜錨!』の作戦が終了したために私達は第二作戦海域『捷一号作戦、発動準備』へと移行を開始していた。
それによって第三艦隊での七隻での出撃が可能となったためにさっそくそのための編成を組もうと思う。
第一海域と同じく正規空母を含まない編成を強いられるために第一海域で使った志摩艦隊を再度使う形になるけどそれはしかたがない。

「それではこのわたくしにお任せくださいましね!」

今回第二海域でのギミックを解除するために熊野を旗艦に置いて三隈と同じく制空権を保ってもらうために使う役目を与えた。
それによって七隻編成で出撃できる事もあって少しだけ浮かれている感じである。

「それじゃ熊野。君だけがこの第二海域で初めて使われることになってしかも第三艦隊での七隻編成で初めて使われる身だからある意味実験的な立場だけどよろしく頼む」
「わかりましたわ。この熊野に任せておいてくださいね!」
「ああ」

次に潮へと視線を送る。

「それじゃ潮。対潜掃討の任も任せたよ」
「わ、わかりました。せい一杯頑張ります……」

少しだけ緊張した感じの潮。
それもそうか。改二になってからあまり育てていなかったこともあって対潜装備フル装備でも練度が少し足りていないのか先制対潜がまだできないから心配なんだろうな。

「潮。なにも先制対潜ができないからって悲観することは無い。それを言ったら昔はそんなのはなかったんだからな。ようは気の持ちようだぞ」
「は、はい! そうですよね! 頑張ります!」

それで少しだけ元気を取りもどした潮を見て私はよかったと思う。
それから後は他のみんなに視線を送って、

「それじゃ後は第一海域で活躍してもらったみんなで対応を頼む」
「お任せください。熊野の面倒はわたくしが見ますわ」
「阿武隈も対潜を頑張りますね!」
「右に同じくー。リベにお任せ!」
「まぁやるだけやってやるわ」
「まぁまぁ霞さん。そう邪険にならないで……この初霜も頑張りますね」

三隈、阿武隈、リベッチオ、霞、初霜も第一海域から引き続いて活躍してもらう。

「それではみんな。まずは潜水新棲姫を倒すことに専念してくれ。出撃準備を頼む」
「「「了解!」」」

みんなはそれで出撃していった。








……さて、このわたくしが出撃するのですから必ず制空権を獲得いたしますわよ!
わたくしはそう決意して三隈さんとの協力も兼ねて頑張ろうと思っていましたわ。
そしてさっそくとばかりに潜水艦の群れと接触いたしましたので、

「それでは先制対潜の皆さま、よろしくお願いしますわ!」

旗艦らしくそうみなさんにお願いしました。
それによってみなさんは返事を返してくれたのでわたくしも少しだけ良い気持ちですわね。

「それじゃ行きます! この阿武隈に従って爆雷を投下してくださーい!」
「「「はーい!」」」

阿武隈さんの指示で各自爆雷を投下していく光景を見まして、しばらくして懐中から潜水艦の破裂する音が聞こえてきましたのでおそらくほとんどを退治ができたのでしょうね。
こういう時はやはり先制対潜は便利ですわよね。
それでも取りこぼしが一体だけいたのか魚雷を放ってきますけど、

「潮、負けません! えーい!」

先制対潜はできないもののそれでも対潜値が高い潮さんが遅れて爆雷を放っていました。
それによって残りの一体も終わっていました。

「潮さん、やりましたわね」
「はい! 先制対潜が出来ないまでもそれでも潮も頑張ります!」
「えらいですわ」
「ありがとうございます、熊野さん……!」

潮さんをいい子いい子して頭を撫でた後に、

「さて、それでは三隈さん。次はおそらく空襲マスですわ」
「そうね。とびっきり戦闘機を積んでいますから頑張りましょうね、熊野さん」
「ええ。フフフ……制空権を確保するだけのお仕事ですから軽いですわよ」

そう言っている間にも空襲がやってきましたわね。
敵艦載機の群れがわたくし達に襲い掛かってきましたわ。
それでも、

「負けませんわよ!」
「ええ! 水上戦闘機達、お願いいたしますわ!」

三隈さんとともに戦闘機をカタパルトから発艦させていきます。
そしてそれは敵艦載機と接触をして華麗な動きで次々と落としていく様を見まして、

「さすがですわ!」
「そうね! やっぱり戦闘機はわたくし達に力を与えてくれますね」

三隈さんと喜び合っているところでどうやら制空権を確保できたらしいので、

「これでもう後は潜水新棲姫を倒すだけですわね! 後はお願いいたしますわ」
「わかりました! みんなー、頑張ろうねー!」
「「「はーい」」」

それから先へと進んでいきます。
途中で進路を選ぶことになりましたけど燃料の関係でもう道は限られていますので迷うことなく潜水新棲姫のいる場所へと進んでいきます。
そして遭遇する潜水新棲姫。
あの潜水棲姫と違って少しだけ愛らしいそのお姿ですけど見た目に惑わされてはいけませんわね。
わたくしと三隈さんで制空権を確保しつつも対潜係のみなさんの活躍を見ている事に致しました。
さっそくとばかりに爆雷を投下していくみなさん。
それによってことごとく潜水艦は駆逐されていきましたわ。
そして類に漏れず潜水新棲姫も見事倒すことに成功したのを見て、

「それにしましても……わたくしの出番もこれで終わりですのね。七隻編成をもっと体感したかったのですけど……」
「そうですね。でもまだこれから使ってもらえることもありますわ。期待しましょうね」
「そうですわね」

そんな感じでわたくし達は新たに道が開かれたのを羅針盤で確認しながらも鎮守府へと帰投していきましたわ。



 
 

 
後書き

装備編成さらし


熊野改二   Ro.44水上戦闘機×2、瑞雲12型、強風改
三隈改二   二式水戦改(熟練)、Ro.44水上戦闘機、瑞雲12型、二式水戦改
阿武隈改二  甲標的、四式水中聴音機、三式爆雷投射機
初霜改二   四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
霞改二乙   四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
リベッチオ改 四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
潮改二    四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機



こんな感じで次は攻略艦隊を書いていきますね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。

 

 

0227話『対馬との出会い』

 
前書き
更新します。 

 




先日の潜水新棲姫を倒したことによって解放されたエリアへと輸送作戦を決行するためにメンバーを選出していた。
と言ってもほぼ志摩艦隊で変わりはないのでしいて言うなら戦艦のItaliaと軽空母のスズヤンを新たに使うくらいか。
それなのでメンバーは決まったので執務室へと集める事にした。

「しかし……今回は編成をちょくちょく変えないといけないから少し面倒だな……」
「そうですね。それだけ複雑な作戦なのでしょうね」

大淀も同じことを考えていたのか私に同意してくれた。
うん、同じ考えを持ってくれるのは正直に言ってありがたいからな。

「これでまだ第二作戦海域っていうんだからさすがはレイテ沖海戦っていったところか」
「ですね。この先でまだまだ編成を構成し直さないといけないと思いますから頑張りましょうね」
「そうだな」

そんな事を話しているとメンバーが集まってきた。
メンバーは那智にItalia,鈴谷航改二、霞、初月、阿武隈、足柄の七名だ。

「提督。このItaliaを使うのですね。それでしたらできるだけ活躍しますね」
「うん。よろしく頼むよItalia」
「はい」

まずItaliaがそう言ってきた。
そして、

「提督ー。このすずやんを使うって事は戦果を期待していてもいいんだよ?」
「あはは。すずやんも色々と頑張ってくれ」
「了解じゃん!」

ビシッ!と敬礼をしてきたのでやっぱり元気な子はいいなと思う次第である。

「それでは今回は輸送作戦になるのでなにかと敵深海棲艦……特に重巡棲姫がいるけど無理に攻略しないでいいと思う」
「だがそれでも倒しておくことに越したことは無いだろう?」
「まぁそうだな、那智。そのために編成にItaliaも入れた感じだからな。そしてこの作戦海域では択捉型海防艦の対馬がドロップするらしい。だからできるだけ救出も優先してほしい」
「わかったわ。また可愛い子が増えるのは足柄も歓迎よ」
「そうだな。姉妹が増えるのは択捉も喜ぶところだろうしな。きっと、僕も姉さんを向い入れる……」

初月はそう言って最終海域攻略で艦隊に合流する涼月を思ってか拳を握りしめていた。
初月の気持ちは分かるな。
なんせ今まで待ち望んでいた秋月、照月以外の姉妹がやってくる絶好のチャンスだからな。
だから私も頑張って攻略していこうと思うしな。

「まぁそれでも辛い事もあるだろうけどみんななら必ず突破できると思っているから頼んだぞ」
「ええ。司令官に貢献できるように頑張ってやるわ。でも変な命令をしたら承知しないわよ?」
「うん。わかっているよ霞。大丈夫、ちゃんとしっかりと判断して指示を出すから」
「そう。それならいいんだけどね」
「霞ちゃんは心配性ですねー」
「そ、そんなんじゃないわよ……ただね、ただよ? 私も信頼はしているけど想像以上の敵深海棲艦が出てきたら撤退もやむなしなんじゃないかって思ってね」
「霞ったらやっぱり心配しているのね。大丈夫よ。私達なら突破できるからね」

そう言って足柄が霞を抱きしめていた。少しだけ顔を赤くさせた霞はそれでもう勘弁したのか、

「わ、わかったわよぅ……だからもう離しなさい」
「うふふー。この照れ屋さん♪」

足柄と霞は実に楽しそうだな。
そんな二人の空間に水を差すのも悪いとは思うけど、

「それじゃみんな。出撃してくれ」
「「「了解」」」

そしてみんなは出撃していった。
定例通りなら対馬はそんなに苦労しないでドロップしそうだからまずは頑張ってもらおうか。







「ま、そんな感じじゃん!」
「いきなりそんな感じとか言われても分からないったら!」
「おおう。霞ちゃん、やっぱりツッコミにキレが入っているねー」
「どうでもいいわよ」

うんうん。やっぱり霞ちゃんはいじりがいがあるよねー。
少しはそれでみんなも肩の力が抜けた感じだしねー。
そんじゃすずやんも少しは制空権を確保するために頑張らせてもらうとしましょうかね。
それで道中で二回の空襲を受けたんだけどこの私にかかればお茶の子さいさいなんてね。
みんなほとんど無傷で突破できたんだよねー。いい感じじゃん。
これもすずやんのおかげって奴?

「その、鈴谷……」
「ノンノン! 那智さん、私はすずやんだよー?」
「そ、そうだな。す、すずやん……」

少しだけ照れが入っているけどまぁいいけどね。

「うん、なに?」
「ここまで順調に来れた感じだが思えは重巡棲姫との戦いは貴様はどう感じているか……?」
「そうだねぇ。まだ戦ってみない事には話もできないけど……だけど私達にかかれば楽勝じゃないの?」
「まぁ……油断はできないがそうだろうな」
「頑張っていくじゃん? 別に死戦じゃないんだからさー」
「そうだな。しかしお前の口から死戦という言葉が出るのは珍しいな」
「そうかな? でも、そんな事もあるって事だよ。別にすずやんは沈む気はさらさらないけどね」
「貴様も強いな……」
「別にそんなことはないんだけどね。あ、それとそろそろボスエリアに突入するからお話はまた後ででいいじゃない?」
「そうだな」

そんな感じでまずは輸送作戦をしながらも重巡棲姫を打倒するために攻略を開始したんだけどね。

「バカメ……ヤクタタズドモメ……マタ、シズンデシマエ……」

重巡棲姫が相変わらず高圧的な態度でそう言ってくるんだけど、いつもの事だからスルーが大事だね。
でもやっぱり少しだけ手強いねー。さの駆逐ワ級がいるのがなんとも……。
ま、でも。

「それでも負ける気はしないんだけどね!」
「ヴェアアアアア!?」

みんなの攻撃で重巡棲姫を倒すことが出来たんだ。
すると海面がいつもより少し反応が違う光りを発している。
これはあれだね。
そして光は人型へと集束していって、

「択捉型海防艦、対馬。ここに……。南方航路防衛用に建造されたこの体……。存分に働くつもりですから。楽しみに…ね」

と、そこには対馬ちゃんがドロップしてくれた。
数回もせずに出てきてくれるなんて嬉しいじゃん!
これで提督にもいい話ができそうだよー。

「それじゃ対馬ちゃん。あなたがこれから暮らす鎮守府へと帰ろうか」
「はい……よろしくお願いしますね」

そんな感じで一度帰投した後に、もう何度か輸送作戦を繰り返して私達は輸送を終えて第二海域をクリアした。
明日には報酬艦の海防艦も来るっていう話だから楽しみだねー。




 
 

 
後書き
装備編成さらし。


那智改二  20.3㎝(3号)連装砲×2、紫雲、FuMO25 レーダー
Italia   Iowa砲×2、零観、一式徹甲弾
鈴谷航改二 天山(村田隊)、53型、52型熟練×2
霞改二乙  大発×3
初月改   10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
阿武隈改二 甲標的、大発×2
足柄改二  20.3㎝(3号)連装砲×2、零観、Bofos



対馬が三回でドロップしました。意外と早かったです。
初回でドロップした松輪には負けますけどね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0228話『佐渡の着任』

 
前書き
更新します。 

 





第二海域を攻略した翌日に私は択捉、松輪、対馬の三人と正門へと集まっていた。

「少し嬉しいかもです。対馬が来たばかりですのにもう佐渡も来てくれるんですから!」
「そうだね、択捉ちゃん……」

択捉と松輪がそう言って笑顔を浮かべている。
そう、今日は第二海域攻略完了のあかつきに大本営から報酬艦として択捉型海防艦の佐渡が私達の鎮守府へとやってくる日なんだ。

「……司令。対馬も先日に救出していただきありがとうございます……ふふふふ」
「そ、そうか。それならよかった」

対馬は少しだけ不思議な笑い方をするけどこれが素なんだろうな。慣れないといけないな。
そんな感じで車が来るのを待っているんだけど、

「まだ来ないようですから少しだけ雑談でもしていましょうか司令」
「そうだな、択捉。それじゃ対馬の話でもしようか」
「対馬の事ですか……? 司令も対馬に興味がおありなんですね……うふふふふ」
「そ、そうだな……。うん、仲間になったばかりなんだから知っておくのもいいと思ってな」
「そうですか……」

少しだけ妖艶さも感じられる笑みを浮かべる対馬。この容姿でこんなに精神年齢が高いと少しだけちぐはぐな感じだよな。
択捉と松輪が普通の女の子をしているから余計にそう感じられる。
それで少しだけ調子を狂わされるもそれからは択捉達も対馬の性格を把握してか私に話を合わせてくれてなんとか色々と聞き出すことが出来た。
うん、少しだけ有意義な時間だったな。
すると前方から一台の車が走ってくる。
おそらくあれが噂の佐渡が乗っている車なんだろうな。
車が正門の前で停止して運転手が降りてきた。
その人はいつもうちの鎮守府に艦娘を送り届けてくれる軍の人だったので、

「お久しぶりですね、元気そうでなによりです」
「そういう提督さんこそまた活躍していて羨ましい限りですよ。ははは!」

軍の人はそう言って軽快に笑う。

「それでは話もなんですので大本営からの贈り物をお届けに参りました。さ、降りてきなさい」
「わかった! おっちゃん、ここまで送ってくれてありがとな!」

車の中から少しやんちゃそうな音色が感じられる声が聞こえてきた。
そして中から思った通りな感じの活発な少女が出てきた。

「あたしは佐渡様だ! よろしくな、司令!」
「ああ、よろしくな佐渡」
「いっひひ。優しそうな指令でよかったぜ。って、おわっ! えとにまつ、つしもいるのか!?」

佐渡は私の後ろで待機していた三人を見つけて驚きの表情を浮かべている。
みんながいるのに驚いたんだろうな。その気持ちはわかる。
佐渡の反応にまず択捉が前に出て行って、

「ええ。久しぶりですね佐渡。会えて嬉しいですよ」
「お久しぶりです、佐渡ちゃん」
「対馬も昨日に配属になったばかりですが……少しだけ先輩ですね、うふふ」
「そっかー! みんながいるならこりゃこれから楽しくなりそうだなー」

佐渡はそんな感じで笑みを浮かべている。

「それじゃ指令。佐渡様はこれからどうすればいいかい?」
「そうだな。それじゃ択捉、それに松輪に対馬の二人も最近新設した海防艦専用の寮へと案内してやってくれ」
「わかりました! それじゃ国後さんと占守さんにも知らせてきますね! さ、行きましょうか佐渡」
「おうよ! えと、案内頼むぜ。それじゃ指令、また後でなー」
「わかった。後で君の荷物も届くだろうから届いたら知らせるよ」
「ありがとな!」

四人はそれで笑みを浮かべあいながら海防艦寮へと向かっていくのであった。
それを私と軍の運転手さんとで見送りながら、

「しかし……艦娘というのは不思議なものですね。あんな駆逐艦の子よりもわりかし小さい姿で戦えるのですから」
「それには同感です。それでも過去の艦船の時代の記憶を持っていますから侮れませんからね」
「そうですな。あんな子供の姿をしていますが私よりも年齢は上なのですから見た目では判断しかねますしね」
「それもそうですね」

そんな感じで運転手さんと雑談をしながら少しの時間が経過して、

「それではそろそろ私も帰らせてもらいますね。また報酬の子が出ましたら送りに来ますので」
「はい。その時もまたよろしくお願いします」
「では失礼します。これからも頑張ってくださいね、珍しい女性の提督さん」

運転手さんはそんな感じで正門から車に乗って去っていった。

「珍しい女性の提督さん、か……やっぱり女性は少ない方なんだろうな」
《そうみたいですね。久保少佐も珍しい部類なんでしょうね》
「そうだな。七海ちゃんも海軍に入るって言っているけど狭き門なんだろうな」
《いつもたまに町で会う女の子ですね》
「ああ。提督になるために勉強しているけどまだまだ小学生だから先の話になる感じだよな」
《七海ちゃんが不安ですか……?》
「いや? 後輩になるのなら色々と教えてあげたいとは思っているよ」
《そうですね。きっと、七海ちゃんも喜ぶと思います》
「この作戦が終わったら町に会いに行ってみるか……」
《提督? 少し死亡フラグが立ちますからそういう発言はやめておいた方がいいですよ?》
「おっと……そうだな。いかんいかん、まだ気を緩めていい段階じゃないからな」

榛名とそんな会話をしながらも明日からは第三海域の攻略をしようと私は考えていたのであった。




 
 

 
後書き
前半は佐渡様で後半は榛名との会話でした。




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0229話『防空棲姫の再来』

 
前書き
更新します。 

 




E3海域作戦名『捷一号作戦、作戦発動!』の攻略を開始しようとしていた私たちは少しの間考えさせられいた。

「ふむ……第三海域の敵深海棲艦は三体いるのか」
「はい。情報によりますと一回目の敵が防空棲姫、二体目の敵が駆逐古姫、三体目の敵が空母棲姫という段階だと聞いておりますね」
「15年夏の作戦の再来か……」

それで私が思い出すのはランダムな羅針盤、零時迷子、ことごとく落とされる艦載機達……とにかく防空棲姫にはいい思い出がないんだよな。
大淀も私の考えが分かったのか苦笑いを浮かべながらも、

「て、提督……大丈夫ですよ。さらなる情報によりますと防空棲姫はあの夏の時に比べて数段弱体化しているという話ですから」
「そうか……それなら、いいんだがな」

私はそれでも不安が拭えないでいた。
防空棲姫がここで登場するという事はこの先でのもしかしたら涼月に似た深海棲艦が登場するのではないかという考えを持っているからだ。
多分、最終海域で登場するんだろうなという気持ちになりながらも、

「わかった。とにかく編成を組んで出撃してもらおうか」
「はい、了解しました」

それで私は防空棲姫攻略艦隊を編成するためにメンバーを呼び出した。
しばらくしてみんなは執務室にやってきた。
第一艦隊は羽黒、リシュリュー、古鷹、ポーラ、筑摩、照月の六名。
第二艦隊は摩耶、千歳、由良、綾波、雪風、妙高の六名。
この十二名を合わせた連合艦隊で防空棲姫を打倒してもらうつもりだ。

「まずみんなに伝えることがある。リシュリューとポーラ、照月は会った事がないだろうが今回攻略してもらうのはあの“防空棲姫”だ」
「「「ッ!!」」」
「……あれ? みなさん、どうしたんですかー?」
「少し顔が引き攣っているわね。過去に相当の苦労をさせられたような感じね……」
「私は少し気持ちが分かるかもー……私を手に入れるために提督ってかなり神経をすり減らした感じだったから……」

みんなの表情を見て少し困惑しているポーラとリシュリュー、そして何となくだけど分かるという感じの照月。
みんなの気持ちは痛いほど分かるからなぁ。

「まぁ、といっても多少の弱体化はされているというからそんなに緊張はしないでほしいのが本音だ」
「だけどよー提督。あの、防空棲姫だぜ? 大丈夫なのか……?」

摩耶が少し心配そうにそう聞いてくる。

「おそらく大丈夫だろう。今回は軽空母が千歳だけの水上打撃部隊で挑むから艦載機を落とされることは無いだろうしな」
「ま、それもそうだな。やっぱり砲撃戦だよなー」
「それに、あの夏の作戦の時より確実にみんなは強くなっているから勝ちは拾えるだろう」
「雪風たちにお任せください、しれぇ!」

ビシッと雪風が敬礼をしてきたので、

「ああ。それではさっそくだけど出撃してくれ。多分大丈夫だろうからな」
「「「了解」」」

みんなはそれで出撃していった。

「きっともう乗り越えられるよな……前の時も乗り越えられたんだから」
「そうですね。照月さんがいるのがその結果の形ですからね」

大淀とそんな会話をしながらもみんなが無事に突破してくれるのを祈っているのであった。







……私を手に入れるための作戦で苦労させられたという防空棲姫。
私は今回初めて会うんだけど少しだけ緊張するなー。

「照月さん、大丈夫ですよ。きっともう乗り越えられますから」
「そ、そうですよね! 照月、少しだけ不安になっていました」

筑摩さんにそう励まされて私もなんとか気持ちを高ぶらせた。
そして道中の深海棲艦を倒していきながらも私達は進んでいく。
羅針盤が示された方へと進んでいくとなにやら少し毛違いの深海棲艦と遭遇する。

「フフ……キタンダァ……? ヘーエ……キタンダァ……」

その深海棲艦はそう言ってクスクス笑っている。あれが防空棲姫なんだね。
私の超10㎝砲ちゃんと比べてもなお大きい高角砲を従えている防空棲姫はなるほど、確かにあれなら艦載機を簡単に落とせるんだろうなという思いをさせられる。
だけど!

「私達はあなたになんか負けないんだから!」
「おう、言ってやれ照月!」

摩耶さんにそう言われて私も少しだけ勇気が持てた。
防空棲姫はそれで不気味な笑みを浮かべながらも、

「ソーオ……アソンデアゲルワァ……」

そう言って高角砲を構えてきた。

「艦載機を出します! ポーラさんと筑摩さんも続いてください!」
「わかりました!」
「行きますよ~!」

千歳さんとポーラさん、筑摩さんの艦載機や戦闘機の発艦であの防空棲姫に落とされないかと少し心配に思っていたんだけど、

「……なんだ。あんまり今回は落としてこないんだね」

そんな古高さんの呟きが聞こえてきた。
そう、今回はそんなに艦載機も落とされていない感じだ。
これが弱体化の証みたいなものなのかな……?
とにかく、

「制空権を確保! みなさん、私、羽黒に続いてください!」

今回の旗艦の羽黒さんの普段ではあまり見せない大声を上げて私達は防空棲姫と他の深海棲艦へと攻撃を開始した。

「オノレ……オマエモイタクシテヤルゾ!」

防空棲姫も抵抗はしてくるんだけどあきらかに私達の方が実力はあるのは明らかな戦闘になってきた。
そして夜戦へと突入していき、

「このあたしの攻撃で、沈めー!」

摩耶さんの連撃がさく裂して防空棲姫は、

「クッ……コンナコトガアッテイイノカ……」

という捨てセリフを残しながらも沈んでいった。
やった! 防空棲姫を倒したよ!

「みなさん、やりましたね」
「やりましたー!」
「やったです!」

みんなも苦労させられたのを覚えているから喜んでいた。
うん。よかったぁ……。
私も嬉しい気持ちになってくるんだー。


 
 

 
後書き
装備編成さらし

第一艦隊

羽黒改二   20.3㎝(3号)連装砲×2、零観、艦隊司令部施設
リシュリュー リシュリュー砲×2、紫雲、一式徹甲弾
古鷹改二   20.3㎝(2号)連装砲×3、零観
ポーラ改   SKC34 20.3㎝連装砲×2、零観、Ro.44水上戦闘機
筑摩改二   二式水戦改(熟練)、二式水戦改、Ro.44水上戦闘機、強風改
照月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改

第二艦隊

摩耶改二   20.3㎝(3号)連装砲、90㎜単装高角砲、夜偵、FuMO25 レーダー
千歳航改二  TBM-3D、F6F-3N、岩本隊、夜間作戦航空要員+熟練
由良改二   甲標的、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
綾波改二   五連装(酸素)魚雷×2、照明弾
雪風改    五連装(酸素)魚雷、四連装(酸素)魚雷×2
妙高改二   20.3㎝(3号)連装砲、五連装(酸素)魚雷×2、熟練見張員



防空棲姫があんまり強く無かったイメージでしたね。




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0230話『警戒陣の怖さと輸送での掘りの断念』

 
前書き
更新します。 

 




先日に防空棲姫を倒した私達は今度は輸送作戦をするために編成を考えていた。
だけどこのエリアでは伊400がドロップするというので無理をしてでも駆逐古姫も倒してS勝利を取りに行かないといけない。

「というわけだ。なので少し戦闘が増えてしまうけどこの編成で輸送作戦に挑んでもらいたい」

私の前には第一艦隊が日向、伊勢、如月、江風、皐月、睦月の六名。
そして第二艦隊が五十鈴、ヴェールヌイ、朝潮、朝霜、羽黒、古鷹の六名。
合わせて12名が立っていた。

「ふむ。提督よ、その伊400はシオイのお姉さんなのだろう?」
「日向は私より知っていると思うから確認はいらないと思うけどそうだ」
「そうか……。それなら早めに救出してあげないとな。でないとシオイが悲しむからな」
「そうだね日向ー」

伊勢と日向がそう言って腕を組みながら考えを巡らせていた。
おそらく瑞雲の友の会のメンバーに加入させるつもりなんだろうな……。
まだまだメンバーは増えるだろうから会議も混迷してきそうで何とも言えないな。
それはともかく、

「それではさっそくだけど出撃してくれ。道中の敵も結構新たな陣形のせいで手強くなっているから用心して頼む」
「「「了解」」」

みんなはそれで出撃していった。







「さて、出撃したはいいものの……」
「そうだね、日向……」

伊勢も私と同じことを考えていたんだろうな。それは……。
最初の水雷戦隊の編成で何度も第二艦隊のメンバーが大破か中破を食らう事が多いんだよな。
敵深海棲艦も使うようになった新たな陣形『警戒陣』。
これによって私達が使うものならば夜戦や手強い敵などと言った敵の攻撃を避けつつ雷撃戦で仕留めるような形にまで運べるのだけど、いざ敵にこれをやられるとこちらの攻撃が当たらない事がかなり多いんだよな。

「うわっ!」
「朝霜さん、大丈夫ですか!?」

朝霜の悲鳴と朝潮の心配する声がまた響いてきた。
そう、敵深海棲艦に攻撃が当たらないという事は雷撃戦にまでもつれこんでしまうので手痛い一撃を誰かが食らってしまう事なんだよな。

「ごめん日向さん……大破しちまったよ」
「気にするな朝霜。また来ればいいさ」
「そうだけど……やっぱり水雷戦隊で警戒陣をされるときっついなぁ」

本気で嫌そうな表情をする朝霜を見て相当厭らしい陣形だという事は分かった。
とにかく一回帰投しないとな。
そんな感じで何回か撤退をしながらもなんとか潜り抜けて行って駆逐古姫へと挑んでいく。
最初は乙作戦でやっていたために戦艦がいる編成の時にもきつかったしボスエリアに至ってはレ級まで姿を見せていたから掘りもままならなかった。
それで提督も先に音を上げてしまって丙作戦にまで落とし込んで本格的に掘りをするつもりらしい。

「提督よ……」
「すまん……」
「いや、謝らないでいい。時には諦める勇気も必要だからな。それに丙と乙作戦ではそんなに報酬は変わらないのだろう?」
「ああ。甲でやるつもりなら『東海(九〇一空)』を取りに行くんだけどさすがにそこまで余裕はないからな。それに限定作戦終了後にまた試製東海が手に入る任務があるって大本営が言っていたからそれで我慢するしかない」
「そうか」

東海が実装されたと同時に航空基地隊に潜水艦も攻撃できるような機能が搭載されたからな。できれば東海(九〇一空)も欲しいところだが我慢するしかないよな……。
さて、

「それではまずは輸送作戦を終わらすことを考えて行こうか。そうすれば微々たる効果だが駆逐艦達に大発ではなく主砲を載せられるからな」
「そうだな。だから頑張ってもらいたい」
「任せておけ」

そんな話を提督とした後に、私達はまた出撃を繰り返していった。
そしてどうにか輸送作戦も航空基地隊に物資を送り届ける事に成功したために羅針盤が第三のボスへと続く道を指し示した。
だけどまだ伊400が掘れない以上は攻略を断念するほかないからな。

「ちょっと疲れたわね……丙作戦でもあの水雷戦隊が手強い事には変わりないんだから……」

五十鈴が珍しく弱音を吐いている。
その気持ちは分かるな。
私達は第二艦隊の攻撃、雷撃戦の後に攻撃する感じだからどうしても手遅れ感を感じてしまうからな。

「五十鈴さん、頑張りましょう。私と古鷹さんでなんとか打撃を与える事に専念しますから」
「そうだね羽黒さん。私達が頑張っていきますのでそんなに心配しないでください」

羽黒と古鷹がそう言って気丈に振る舞っているんだけどな。
どうしても疲れが見えて仕方がない。

「さて、どうしたものか……」

結構の回数をやってレア艦が何人か出たのだがそれでも本命には至らずの結果だからな。
これはもう第三のボスの方へと望みをかけてみるのも一考かもしれないな。
そう考えた私は提督へと通信を送る。

「提督よ、聞こえるか……?」
『どうしたんだ日向? なにかあったのか?』
「ああ。それなんだが輸送ボスの討伐はバケツを多く使用してしまうのでまだまだあるだろうがあまり減らない方法の方がいいと思ってな。第三の空母棲姫のマスへと進まないか……?」
『それは構わないんだけど……やはり輸送艦隊では少し荷が重かったか……』
「すまないと思っているが正直きついものがあるからな」
『わかった。日向がそこまで言うのなら輸送での伊400のドロップは諦めよう。次の攻略のために一度帰投してくれ。私の我儘に付き合わせてしまってすまないな』
「いや、みんなも新たな仲間には会いたいからな。提督だけ気に病むことは無いさ」
『すまん……』

そんな感じで私達は輸送での伊400の掘りを断念した。
次の空母棲姫にはこの鬱憤をぶつけてやるとしようか。



 
 

 
後書き
装備編成さらし


第一艦隊

日向改    Iowa砲×2、新型高温高圧缶、瑞雲12型
伊勢改    試製41㎝三連装砲×2、新型高温高圧缶、瑞雲12型
如月改二   大発×3
江風改二   大発×3
皐月改二   大発×3
睦月改二   大発×3

第二艦隊

五十鈴改二  20.3㎝(3号)連装砲、15.2㎝連装砲改、四式水中聴音機
ヴェールヌイ 10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
朝潮改二丁  10㎝連装高角砲+高射装置×2、四式水中聴音機
朝霜改    四式水中聴音機、三式水中探信儀、三式爆雷投射機
羽黒改二   20.3㎝(2号)連装砲×2、零偵11型乙(熟練)、FuMO25 レーダー
古鷹改二   20.3㎝(2号)連装砲×2、零偵11型乙、FuMO25 レーダー


伊400掘りでこの編成でやっていました。一戦増えますけど効率的だと感じました。
結局こっちでは出ませんでしたけどね。




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0231話『空母棲姫の攻略と伊400との邂逅』

 
前書き
更新します。 

 



いま、執務室にはシオイがやってきていた。

「ねぇねぇ提督。お姉ちゃんはまだかなー?」
「そうだなぁ……今日の攻略で出てくれればいいんだけどな……」
「そうですね。それでは提督、そろそろ第三海域の第三の姫級の空母棲姫攻略へと乗りだしましょうか」
「そうだな。それではメンバーを集めるか」
「お姉ちゃんを早く救出してもらいたいなー」
「出る事を祈ろうか」
「うん……」

そんな感じで私達はメンバーを執務室へと集めた。
第一艦隊のメンバーは旗艦は瑞鶴、そして日向、千代田、千歳、瑞鳳、秋月の六名。
第二艦隊のメンバーは旗艦は大淀、ザラ、ヴェールヌイ、江風、妙高、雪風の六名。
この編成を見てもらって分かる通り半数以上を小沢艦隊で占めてある。
これで羅針盤も安定するのは先の偵察での出撃で確認済みだ。

「それではみんな。まずは空母棲姫の攻略を最優先にしながらも同時に伊400のドロップを継続して実施してほしい」
「みんな、お姉ちゃんをお願いします!」

私の言葉にシオイが続いてみんなに頭を下げてお願いしていた。

「シオイよ、任せておけ。必ず伊400は救出しこよう。そして瑞雲の友の会に入れてあげるとしようか」
「はい、日向さん!」
「あははー……日向とシオイは放置しておくとして……まぁ提督さん、私達に任せておいてよ。必ずなんとかしてみせるからさー。ね、みんな?」
「うん。千歳お姉頑張ろうね」
「そうね千代田」
「瑞鳳に任せておいて!」
「秋月も頑張ります!」

小沢艦隊のみんながそれぞれ声を上げていたので戦意は十分だと判断した。

「それでは私。提督と後の事はお願いしますね?」
「はい。任せてください」

大淀たちもそれで二人でのやり取りをしていたので見分けは最近つくようになったので分かりやすいやり取りだよな。

「それでは出撃してくれ。戦果とドロップを期待しているよ」
「「「了解」」」







それから私達は空母棲姫へと挑んでいく感じだったんだけどどうにもやっぱり丙だと第二艦隊のみんなが手持ちぶたさな感じなんだよねー。
まぁ仕方ないと言えば仕方ないけど。
東海(九〇一空)も欲しかったなーとは思うけど完全防空がままならないうちの鎮守府では甲作戦は難しいからね。仕方がない。
それよりも小沢艦隊で出撃できるのはある意味悲願に近いものがあっていいよね。
過去に越えられなかったあの海を再現できるというのは私達としても願ったり叶ったりな状況だし。

「瑞鶴……少し嬉しそうだな」
「え? そうかな?」

日向さんにそう言われて少しだけ私も笑みを浮かべているのに気づいてちょっと反省。
これから戦いが始まるのに不謹慎だよね。

「でも、みんなでこうして挑めるのは少し嬉しいんだ」
「そうか……その気持ちは分かる。あのレイテだものな」
「うん……」

それっきり日向さんも考え事をしていたのか黙り込んでいたけど別に悪い気はしなかったのでこのまま進んでいこうか。
そんな時に、

「瑞鶴さん! 空母棲姫の一団が見えましたよ!」
「わかった! それじゃみんな! さっさと倒してシオイのお姉ちゃんを見つけてあげようか!」
「「「はーい!」」」

そして空母棲姫と接触する。

「ヒノカタマリトナッテ……シズンデシマエ……」
「誰が! みんな、艦載機発艦!」
「「「うん!」」」

私と千代田、千歳、瑞鳳で艦載機を発艦していき制空権を確保する事に成功する。
同時に、

「秋月! 防空頼んだわよ!」
「了解です! お任せください!! 長10㎝砲ちゃん、いくよ! てぇッ!」

次々と艦載機を撃ち落としていく秋月。
成長したわねほんとに……。

「それじゃ第二艦隊のみんなお願いね!」
「お任せください! みなさん、まいりますよ!」

大淀の号令で次々と攻撃を開始するみんな。
私達も艦載機を発艦させていく空母棲姫たち深海棲艦の攻撃をほとんどさせないで進行していく。
そして、

「クッ……ナマイキネ……」

と、そんな感じで空母棲姫を倒すことに成功する。
でも、まだ伊400は出てこなかった。
まだ足りないみたいね……。
それなら何度でも叩くだけよ。
それから私達は何度も空母棲姫を叩きに同じ海域を周っていた。
試行錯誤する事20周目を迎えた頃にいつものドロップとは違った感じがしたのでもしやと思う。
光りが溢れてきて人型を形成していき、そしてそこには一人の水着を着た女の子がいた。
その子はシオイに似た顔立ちで「ああ……やっぱり姉妹なんだな」と思わせる感じだった。
目を開いて、こちらに気づいたのか笑みを浮かべながら、

「みなさん、ごきげんよう。潜特型の長女、一番艦、伊400です」
「やっと出てくれたか。会えて嬉しいぞ。伊400」
「はい。私もみなさんと出会えてうれしいです」

どうやらシオイとは違ってお淑やかな感じの子なんだね。

「それでだが今後はお前の事を何と呼べばいいか……?」
「そうですね。ん…。し…お……ん? そう…しおん…とお呼びください」
「わかった。それではシオン。提督とシオイが待っている。私達の鎮守府へと帰るとしようか」
「わかりました。シオイにも会えるんですね……嬉しいです!」

いい笑顔ね。そして空母棲姫も倒した事だからこれで第三海域も終了という事になるのね。
少しだけ良い気持ちだわ。
鎮守府に帰るとさっそくとばかりに、

「お姉ちゃん! 会いたかったよ!」
「シオイ! 私もよ!」

二人で抱きしめ合っていた。
うんうん。こうじゃないとね。私も翔鶴姉と出会えた時は嬉しかったからね。
そして提督も後から顔をだして、

「日向から聞いたがシオンでいいんだな?」
「はい。提督、よろしくお願いしますね」
「ああ、よろしく。そしてようこそ我が鎮守府へ。歓迎するよ」
「はい!」
「お姉ちゃん! 早くみんなのところに行こう! みんな、待っているよ!」
「そうね」

シオイとシオンはそう言って潜水艦のみんなのところへと向かっていった。
そんな後姿を見ながらも、

「提督さん、会えてよかったね」
「そうだな。そしてこれでもう後残すは最終海域だけだからな。頑張らないとな」
「そうだね!」

西村艦隊のみんなにも頑張って乗り越えてもらいたいな。
私はそう思うのだった。


 
 

 
後書き
装備編成さらし。


第一艦隊

瑞鶴改二甲  友永隊、江草隊、Fw190T改、彩雲
日向改    Iowa砲×2、紫雲、一式徹甲弾
千代田航改二 村田隊、岩本隊、52型(熟練)×2
千歳航改二  村田隊、52型(熟練)×3
瑞鳳改    流星(六〇一空)、52型(熟練)、烈風(六〇一空)、熟練艦載機整備員
秋月改    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改

第二艦隊

大淀改    SKC34 20.3㎝連装砲×2、夜偵、照明弾
ザラ・ドゥエ 20.3㎝(3号)連装砲×2、零観、探照灯
ヴェールヌイ 五連装(酸素)魚雷×2、熟練見張員
江風改二   10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
妙高改二   20.3㎝(3号)連装砲、四連装(酸素)魚雷×2、熟練見張員
雪風改    五連装(酸素)魚雷×3


なんとかシオンちゃんとも邂逅できました。ひとまず良かったです……。



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0232話『栗田、志摩、西村艦隊の出撃』

 
前書き
更新します。 

 





ついに後段作戦の最終海域まで解放されたために私達は本腰を入れる気持ちで編成を考えていた。
今回は多分にボスエリアまでのルート解放ギミックが存在するために第一海域から出撃してもらっていた面々を駆り出していく事になっていた。

「というわけで、長門。提督代理を務めてもらっても構わないか?」
「構わないが……栗田艦隊として榛名が必要とはいえな……あまり無茶はしないでくれよ?」
「わかっているよ」
「長門! 大丈夫ネ。テートクはワタシが守りマース!」

そう。まずは栗田艦隊の連合艦隊編成でクリアしていく事になる。
第一艦隊は旗艦を金剛、私、鈴谷、熊野、千代田、千歳の六名。
第二艦隊は旗艦は大井、雪風、島風、阿武隈(カッコカリしている方)、鳥海、北上の六名。

「それじゃまずはギミック解除を念頭に入れて頑張っていくとしようか。志摩艦隊のみんなや西村艦隊の面々も何回も編成を変えていかないとボスマスまでのルートが解放されないからな」
「分かったネー!」
「任せるじゃん!」
「お任せください!」
「それじゃ出撃だ!」

そんな感じで私達は何度か指定された場所へと航路を進めていき、そこの敵深海棲艦を倒すという事を繰り返していた。
時には志摩艦隊でも出撃してもらいルートを増やしていったり、西村艦隊のみんなにも出撃してもらい夜戦を繰り返してもらったりした。
そして後は栗田艦隊でとある場所の敵艦隊を倒すだけとなっていき、進んでいくんだけど………、


「やっぱり少しだけつらいものがあるな……何回撤退したか分からないぞ」
「そうだねー……どうしても第二艦隊に攻撃が行っちゃうからぼろが出ちゃうのはしょうがないよねー」
「それでも進まなければいけませんわ。鈴谷、気持ちを入れ替えなさいな」
「わかってるんだけどねー」

道中の戦艦が多めの編成で大破を食らうケースが多発している。
そしてそれを突破しても夜戦マスに突入してしまい、警戒陣で挑んでも相手が相手でよりによってPT小鬼ときた。
それによって攻撃が当たらないから反撃でダメージを食らってしまうとか言う悪循環も発生している。
本当に敵編成が厭らしい構成ばかりで少しだけ嫌になってくるというものだ。
だけど、ついにそれも抜ける事に成功したために私達はその深海棲艦の連合艦隊へと攻撃を開始すべく、

「先ほどまでの鬱憤をまとめて晴らすぞ! みんな、攻撃準備を!」
「「「了解!」」」

千歳と千代田の二人の艦載機で航空優勢を取ってもらい、私達は攻撃を開始する。

「金剛、一気に行くぞ!」
「分かったネー! ファイアー!!」
《提督、私達も頑張りましょう!》
「ああ、榛名! 一斉掃射!!」
「熊野! 提督達に負けてらんないね! いっくよー!」
「そうですわね鈴谷! まいりましょうか!」

それからみんなで深海棲艦の群れを圧倒してついにボスまでのルートを解放する事に成功したのであった。
これで私達栗田艦隊のお役目も終了したので私は再び執務室で指揮を取ることになる。
だけどボスへの攻略開始は今日はもうみんなもギミック解除のために疲労が溜まっていたのでまた明日から開始するようにして体力温存を図らせることにした。
そんな中で山城が執務室に入ってきて、

「提督……ついに明日からスリガオ海峡の深部に突入するのですね?」
「そうだ。西村艦隊の出番がついにやってきたという訳だな」
「そうですか……ふふふ、楽しみだわ」

山城は一見余裕の笑みを浮かべているんだけどどこかしら腕が震えているように見える。
そんな山城の姿に私は椅子から立ち上がって山城のところまで歩いていく。

「提督……? どうしたのですか?」
「いや、山城。聞いてくれ……そんなに強くあろうとしないでくれ。強がっているのが見え見えだからもっと心を穏やかに明日を挑んでもらいたい」
「わかっています……大丈夫です。この山城、西村艦隊をきっと支えてみせます。ですが……そうですね。提督、私の手を握ってもらっても構いませんか……?」
「別に構わないけど……理由を聞いていいかい?」
「はい。提督はおそらく敵深海棲艦のボスの情報はもう会得していると思うのでしょうが、どうにも不安が拭えないのです……」

先程までの表情が一転して不安一色になっている山城を見て私は深海棲艦のボスの情報を伝えるべきか一瞬迷った。
だけど、伝えないといけない。
だから私は山城の両肩を優しく掴んでやり、

「聞いてくれ山城。まだ他のみんなには伝えていないけど今回の深海棲艦のボスは……おそらく扶桑と山城の負の側面が実体化した存在だと思うんだ……」
「それは……どういった事ですか?」

どこか私の答えを聞きたくないと言った感じの顔になる山城。
だけど伝えていないのと伝えているのとでは受け止め方が違ってくるからな。
だから私は言う。

「先行情報で分かっている事だが今回のボスの名称は『海峡夜棲姫』……二人組の深海棲艦でその姿は山城と扶桑にとても酷似しているんだ」
「そ、そんな……! それじゃ……!」

山城も私の言いたいことが分かったのだろう。少し涙目になりながら、

「そうだ……西村艦隊で突破してスリガオを越えるためにはその二人に酷似した深海棲艦を倒さないといけないんだ」
「そんな、ことって……あんまりです……」

それで地面に手をついて涙を浮かべる山城。
そんな山城の姿を私はいつまでも見ていたいわけではなかったので抱きしめてやり、

「だけど、西村艦隊のみんなで乗り越えるって決めたんだろう? だからもし本当に海峡夜棲姫が怨念の集合体なんだとしたら……倒して浄化してやりなさい」
「できるのでしょうか……?」
「決心を揺らがせたらそこですでに心が負けていることになるんだぞ? 私の好きな山城なら諦めないで乗り越えてくれ……」

しばらくそうして抱きしめてあげていたが、

「……提督。もう、大丈夫です……この山城、必ずその深海棲艦を倒します。それが私達の試練なのですから……!」
「その意気だ。他のみんなにもそれとなく後で伝える……だから重く受け止めるなよ?」
「わかっています。必ず……必ず突破します!」

もう山城の顔からは怯えのような感じはなかった。
代わりに必ず突破するという気持ちが感じられた。
もう大丈夫かな……?
信じて送り出そう。私が出来るのはそこまでなんだから。
明日が決戦だな……。


 
 

 
後書き
装備編成さらしは今回は多めなのでカットします。
ギミック解除のためにいちいち編成を載せていたら大変ですから。


そして最後に山城をヒロインとして扱いました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0233話『西村艦隊、スリガオ海域深部に突入せよ』

 
前書き
更新します。 

 




ついにやってきたな。
ボスへの道はすでに開かれている。
西村艦隊の編成任務も終わらせた。
七人とも気力は十分でまだかまだかという感じでそわそわしている。
私は執務室に七人を招集して口を開く。

「……さて、とうとうここまで来たな。みんな……」
「「「………」」」

七人とも緊張からか無言で私の言葉を聞き入っている。
それだけ決戦が近づいていることに対してそれぞれ思う事があるのだろうな。

「まずは敵深海棲艦の第一陣は海峡夜棲姫だ。昨日に山城だけにはもう伝えたがこの深海棲艦は山城と扶桑に似た姿をしている事はもう分かっている」
「……ッ!」

時雨の表情が険しくなったのを確認できた。
もう驚くこともないけどやはりこれだけで少しだけ悔しい思いがあるのだろうな。
時雨にとっては一人だけ生き残ってしまった無念の残る戦いだったからな。
そんな時雨の気持ちも汲んで上げたいけど今は我慢しておかないとな。

「そして道中も夜戦だらけのエリアで大破してしまう可能性があるだろう……もう言わなくてもいいだろうが気を付けて挑んでくれ。そして願うのならみんな無事にスリガオ海峡を乗り越えてほしい」

私は最後に少し顔を俯かせながらそう言葉を紡ぐ。

「……提督。大丈夫ですよ。この扶桑……満潮や時雨、山雲、朝雲、最上……そして山城がいてくれれば百人力です。必ず乗り越えてみせます」
「扶桑姉さまの言う通りです。ここまで来たらもう全員生きて帰ってくることをお約束します……提督が愛してくれるのですから頑張ります!」
「ふふ……素直になった山城も可愛いね。僕も、必ず力になるよ」
「そうだね! もう時雨だけを残して沈んだりはしないからね」
「当り前よ! もう時雨には悲しい思いはさせないんだから!」
「当然ね! だからこれまであたし達は頑張ってこれたんだから!」
「そうね~。山雲も朝雲姉ぇとなんとか練度は戦えるまでには鍛えたんだから頑張るわ~」

みんなが口々に鼓舞する言葉を言っている。
やっぱり結ばれている絆は素晴らしいものだな。

「みんなの気持ちはわかった。もう後は言う事は特にはないが暁の水平線に勝利を刻んできてくれ」
「「「了解!」」」

西村艦隊の面々はそれでスリガオ海峡へと出撃していった。
私は港までみんなを見送りながらも思う。

「今までの頑張りが無駄になるものか……きっと乗り越えてくれるさ」
《そうですね提督。特に山城さんを信じましょう。私も信じます……》
「榛名……そうだな」

榛名と山城はライバルだけど同時に仲はいい方だから私としても頑張ってもらいたいと思う。







「みんな! 旗艦の私にしっかりと着いてきてね!」
「「「おう!」」」


私は一番前方で進みながらも水偵を飛ばしながら深海棲艦がいつ現れるか警戒していた。
制空権に関しては戦闘機を積んでいる最上に一任しているから私達は攻撃に専念できる。

そして何度かの夜戦を突破している時だった。

「イー! イー!」
「キャハハ!」

夜戦での戦闘でPT小鬼の艦隊が私達の前に出現してきた。
出たわね……。海峡夜棲姫と戦う前の最大の壁ともいえる敵深海棲艦。
だけどこんなところでつまずいているわけにはいかないのよ。
だから!

「邪魔だぁぁぁ! どけぇぇぇぇっ!!」
「山城、落ちついて! 確実に落としていきましょう!」
「みんな、警戒陣で守りに徹するよ!」
「そして反撃でとどめね!分かりやすいわ!」
「やっちゃいましょ~」

みんながみんな冷静に対処しているのをみて私も冷静にならないといけないと思ったので一かい深呼吸をした後に、

「やりましょう!」
そしてPT小鬼も殲滅する事ができてその後もなんとか潜り抜けていき、とうとう私達は海峡夜棲姫との邂逅を果たすことになる。

「ココ…ハ…トオレナイシ……。……トオサナイ……ヨ……ッ!」
「ッ!?」

提督の言っていた事は本当だった……。
あれはまさしく私と扶桑姉さまとうり二つの姿。
本当に私と扶桑姉さまの負の側面が実体化したようなその姿に私は一瞬狼狽えてしまう……。だけどそこで、

「山城! 狼狽えてはダメよ! あんななりだけど私達の敵なのよ! 今は覚悟を決めなさい!!」

扶桑姉さまのそんな叫び声が聞こえてきた。
思わず見れば扶桑姉さまの表情も辛いものになっているのを見て「ああ……辛いのは私だけじゃないのね……」という思いを持った。

「すみません、姉様……。みんな、たとえあれがなんであろうと立ちふさがるのなら殲滅あるのみです! 参りましょう!」
「「「おう!」」」

そして私達の戦いが始まった。
夜戦からの戦闘だから打つ手は決まっている。
砲撃戦の純粋な殴り合い。
提督が必死になって考えて現状で一番いいであろう最適解の装備で必ず抜けてみせます!
そこからはお互いに砲撃戦の応酬が繰り広げられていった。

「くっ!?」
「時雨!? 大丈夫!?」
「僕の事は気にしないで! みんなは砲撃を続けて!」

大破しながらもそう言ってくる時雨に感謝しながらも私達は海峡夜棲姫を残すのみとなった感じで昼戦へと移行していった。
そこで提督から通信が入ってきた。

『航空基地隊の到着だ! 頑張ってくれ!』
「ありがとうございます、提督!」

航空基地隊の攻撃によってさらに海峡夜棲姫にダメージが入っていき、

「これでも、くらいなさい!! てぇっ!!」

私の渾身の砲撃が直撃したのだろう。海峡夜棲姫はそれで一度は悔しそうな表情をしながらも撤退していった。
だけどそこで私は思いがけない光景を目にする。
扶桑姉さまに似ている片割れが撤退している最中で海に沈んでいく光景を……。

「ア、アァ……」

おそらく私なのだろう片割れはそれで悲しみの声を上げて、撤退しながらも私を一睨みしてきた。
その眼差しが私には忘れられないものになったのは言うまでもない事だった……。
おそらく次が海峡夜棲姫との最後の戦い……。
追い詰められたからには相応の反抗をしてくることは予想できる。
私達も覚悟を決めないと……!


 
 

 
後書き
まずはけずりだけの段階だけ描写しました。
次回は海峡夜棲姫‐壊‐との戦闘になります。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0234話『悲しみの海峡夜棲姫』

 
前書き
更新します。 

 



私は先の戦いで沈んでいく扶桑姉さまに似た深海棲艦を見て、胸が締め付けられる思いになりました。
あれは……けっして扶桑姉さまではないはずなのに罪悪感が襲い掛かってくる。
今日は海峡夜棲姫を倒しに行く日なのに今になって怖気づいてしまっている……。なんて、情けない……。
そんな感じで沈んでいる中で誰かが部屋の扉をノックしてきた。
まだ、出撃前だというのにこんな時間に来る人は誰かしら……?

「誰……?」
『僕だよ、山城……』
「時雨……? どうしたの?」
『うん……ちょっと相談事。いいかな?』
「わかったわ……入っていいわよ」
『うん……』

そして時雨が私の部屋へと入ってくる。
だけど時雨の表情を見て思わず顔を顰めてしまった。

「どうしたの時雨。とても酷い表情をしているわよ……?」
「そうかな……? そう言う山城だって部屋の電気を消しているなんて、やっぱり昨日の戦いが響いているのかい?」

カチッと時雨が私の部屋の電気をつける。
今は私もあんまり顔は見られたくないものなんだけれどね。

「うん……やっぱり山城の顔もひどいじゃないか。ふふ……お互い様だね」
「なぁに? 愚痴を言いにでも来たわけ……?」
「そんな事はないよ……ただ、昨日に海峡夜棲姫が残した言葉が頭に残っていてどうしても寝れなくってね」
「あぁ……」

それで私は昨日の海峡夜棲姫の言葉を思い出す。

『マダ……サキニナンテ……ススマセナイ……。コノジゴクデ……コノジゴクノカイキョウガ……アナタタチノイキドマリナノ……ヨオオォッ!』

と、言っていたわね、たしか……。

「行き止まり、ね……なかなかに皮肉が聞いているじゃない……」
「そうだね……。まさしく僕たちに言っているセリフだね」
「そうね……でも」
「そうだね。僕たちは乗り越えるためにここまでやってきた。だから進まないといけないんだ……スリガオ海峡の先に……」
「その通りよ……だから弱音なんて言っていられないわ」
「ふふ……」
「なによ? 突然笑い出して……?」
「いや、さっきまで落ち込んでいた山城から僕を勇気づける言葉が出てくるのが不思議だなって思ってね」
「相変わらずあんたは生意気ね。少しは戦艦を敬いなさいよ」

そう言って時雨の頭を強引に撫で繰り回す。

「まったくひどいじゃないか……」
「口が悪い子にはお仕置きよ。でも、ありがとね時雨……」
「うん……?」
「あんたが来てくれたおかげで少しだけ吹っ切れる事が出来たわ。だから今日は頑張って海峡夜棲姫を倒しましょうね」
「そうだね。うん、僕も頑張るよ」

それで時雨と一緒に笑みを浮かべあっている時に、

『山城……そろそろ出撃の時間よ』
「わかったわ姉さま」

部屋の外から姉さまの声が聞こえてきたので返事をした後に、

「それじゃ行くわよ……時雨」
「うん。行こうか」

私達は気分もいい感じで出撃していった。






それから私達西村艦隊はまたきつい道中の敵を撃退していきながらもついに海峡夜棲姫と再度の戦いを挑むことになった。

「トオサナイッ…テ…イッテルノニ……。…………。シニタイ……ノォッ!」

そう叫ぶ海峡夜棲姫はやはりもう扶桑姉さまの姿をとっていた片割れがいなくなっていた。
それを少しだけ悲しく思いながらも、

「無理やりにでも通させてもらうわよ! 扶桑姉さま、それにみんな……いくわよ!! この旗艦山城に着いてきて!!」
「「「おう!」」」

戦闘が開始される。

「一式徹甲弾! てぇッ!!」
「僕も続くよ山城! はぁっ!!」

海峡夜棲姫の随伴艦を次々と落としていき、ついには海峡夜棲姫へと攻撃を当てられるようになって海峡夜棲姫は被弾して叫ぶ。

「クッ……マップタツニナリタイノォ!?」

そう言いながらも砲撃をしてくる。
真っ二つね……やっぱり私達の事をよく知っているようね。まるで自分の事のように……。
提督の言った通りにあの子はやはり私の負の側面なのかしらね……?
そんな今は気にしてはいられない事を考えながらもついには昼へと戦闘が移行する。
そして基地航空隊の活躍もあってかどんどんと被弾していく海峡夜棲姫。
被弾するたびに、

「ヤメテッテ……オネガイシテルノニィッ!」

何度も血を流しながらそう叫ぶ姿はまるで私を見ているようでやはり悲しくなってくる。
扶桑姉さまも失い孤軍奮闘しているように感じる私……それはとても悲しい事。
だけど、あの子とは違って私にはかけがえのない仲間がいる。

「みんな! 後少しよ! 踏ん張りなさい!!」
「山城も冷静にね……」
「はい、扶桑姉さま!」

昼になったからにはカットインを駆使しないと大打撃を与えられないから必然的に私と扶桑姉さまが攻撃の要になる。
それでも時雨達は諦めずに砲撃をやめないでいる。

「夜にくらべれば攻撃力はなくとも……それでも攻撃は通るんだから!」
「そうよ! みんなで乗り越えるのよ!」
「山雲! 一緒に行こう!」
「わかったわ~。いくわよー!」

駆逐艦のみんなが頑張っているんだから旗艦の私が頑張らないでどうするのよ。

「山城……制空権は僕に任してよ。決めてきて!」
「わかったわ最上。これで……最後よ!! てぇっ!!」

私に最後の砲撃が海峡夜棲姫へと吸い込まれていく。そして、

「アァァッ!!」

とどめをさせたのだろう、海峡夜棲姫は艤装のあちこちから火を吹かせながらもゆっくりと沈み始めていた。
終わったのね……。
そして最後に海峡夜棲姫は安らかな声で、

「ソウ……ソウカ……アナタタチハ、ソレデモ……コノサキニ……ススモウトイウノデスネ……。
ナラバ、アナタタチハ……進んで……この先に、待つモノは……」

最後の部分の声はどうしても私の声と被るものがあったわね。
やっぱりあの子は私だったのかしら……。
今はもう確認できないけどこれで道は開けたのね。

「……………」

だけど海峡夜棲姫が沈んだ先ではまたしても違う個体の深海棲艦がニヤリと笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
長い砲身から分かる通りに防空棲姫にも通じるものがある高射装置。
あれがこの海域の最後のボスになるのね……。
私達はもう燃料も弾薬も尽きそうだったために一度撤退するしかなかったけどその深海棲艦は攻撃はしてこなかったために追撃されない事を今は感謝した。


 
 

 
後書き
最後に防空埋護姫の登場で今回のお話は終わりです。
次回、最終決戦です。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0235話『防空埋護姫との戦い』

 
前書き
更新します。 

 


西村艦隊のみんなが海峡夜棲姫を倒した翌日に私のもとへと集まって話し合っていた。

「提督……あの深海棲艦はなんなのですか……? 海峡夜棲姫を倒しただけじゃ終わりじゃないのですか……?」
「そうだな……あの深海棲艦は通称『防空埋護姫』と呼ばれている」
「防空埋護姫……防空棲姫の姉妹みたいなものかな……?」
「大方その認識で合っていると思うよ時雨」

先行隊の情報によれば海峡夜棲姫だけがあそこのボスではないというのは分かっている。
つまり、そう言う事だ。

「今回は二段階でのボス仕様になっているみたいだな。どうしても深海棲艦たちはスリガオ海峡を突破させたくないらしい」
「くっ……どうしてそこまで!」

山城がそう言って拳を握りしめている。
その気持ちはわかる。
やっと倒したと思った海峡夜棲姫がただの前座でしかなかったのだから。

「まぁみんなの気持ちも分からなくもないが、それでもまたみんなに頑張ってもらいたい。なに……まだ西村艦隊として戦えると思えばいいじゃないか?」
「司令さーん? みんなで戦えるのは嬉しいけどー……でもー余計な戦闘はこりごりよー?」
「あははー……山雲は手厳しいな」

そう言って場の空気を和ます。
こうでもしないとやっと倒したと思っていたのに暴動が起きかねないからな。

「提督……それではあの深海棲艦を倒せば今度こそ今回の作戦は終わりなのですね……?」
「そうだ扶桑。だから最後まで頑張ってもらいたい」
「そうですか……みんな、それでは後少しの辛抱ですから頑張りましょう……? そしてみんなでスリガオ海峡を突破しましょう」
「そうね……こんな中途半端なところで降りるのもなんか嫌だしこの際どこまでも着き合ってあげるわ」
「満潮は相変わらず素直じゃないなぁ……」
「ちょ!? それどういう意味よ!?」

満潮がギャーギャー吠えている中で最上が話しかけてきた。

「それじゃ提督。最後の戦いに行ってくるよ。大丈夫、今度も必ずみんなで帰ってくるからさ!」
「頼んだぞ」
「うん! それじゃ行こうかみんな!」
「「「はい」」」

それでみんなはまた出撃準備をし始めていた。
そんな中で、

「それでは提督……私達の勝利を祈っていてくださいね」
「わかった山城。帰ってきたら盛大にお祝いをしないとな」
「ふふ……提督、そう言うのをフラグと言いませんでしたっけ?」
「あっそうだな。でもそんな事は関係なく勝ってくるんだろう?」
「当然です。必ず乗り越えてみせますから……」
「ああ。行って来い」
「はい!」

山城はそれで笑みを浮かべながら出撃していった。

《よかったのですか提督? もっと話しておく事があったのでは……》
「大丈夫さ榛名。みんなはきっと無事に帰ってくる。私達はただ待っているだけでいいんだ」
《そうですね……》








僕たちは提督に見送られながら出撃していった。
道中の敵は特に変化は見られないので気を付けて行けばもう大丈夫だしね。
そして海峡夜棲姫を倒した場所にもう一度到着してみれば昨日に出会ったあの深海棲艦……防空埋護姫が僕たちを待ち構えていた。
僕たちという存在に気づいたんだろう。防空埋護姫は長身の砲をこちらに向けながら、

「……ワタシガ……オアイテ……シマス…………」

低音の声で呟きながら随伴艦の深海棲艦の群れとともに攻撃を始めてきた。

「みんな! やる事は変わらないわ! できるだけ夜戦で沈めるわよ!」
「うん!」

山城の号令で戦闘は始まった。
それから僕たちは何度も戦闘を繰り返しながらも少しずつだけど防空埋護姫の体力を削っていった。そして、

「ワタシガネ……? マモッテイクノ……ッ!」

防空埋護姫はそう言いながらももうボロボロの砲身を構えて砲撃してくる。
彼女がなにを守りたいのか分からない……けど、僕たちにだって守りたいものがある。
その行き先を邪魔するのなら、僕たちは君達を倒すよ!

「これで終わりよ! てぇっ!!」

扶桑の渾身の一撃が防空埋護姫に直撃した。
それで防空埋護姫は少しずつ沈んでいきながら、

「ウソ……ワタシガ……ッ……モドルウミ…ナンテ……ソンナ……モドレナィ……エッ……? ウデ……ガ、ジユウ……ニ」

今の今まで防空埋護姫の腕を拘束していた鎖が外れていた。
それがなにを意味するのか僕たちには分からない……。
それでも、

「もど…れ、もどれる……カエレる、のね? わたし、もういちど……自由に……海を、駆けて……!」

最後に笑みを浮かべながら防空埋護姫は海へと沈んでいってもう浮かんでこなかった。
そして今度こそ海域を突破したのだろう海が赤から本来の水色へと戻っていく。
山城が提督に涙を浮かべながら報告をしている。

「みんな……提督からすぐに帰ってくるように言われたわ。さ、帰りましょう……!」

山城も少しだけ興奮しているのが分かる。
笑い泣きをしているようで僕も一緒に泣きたい……でも、提督の前まで我慢だね。
そうして僕たちは鎮守府へと帰ってきて、

「みんな……よくやってくれた。これで私達の任務は終了。無事スリガオ海峡を突破できたわけだな。悲願が叶ったんだな」

提督がそう言った瞬間だった。
もう山城が嬉しそうに、

「ね、姉様……第一遊撃部隊、第三部隊……一戦隊がスリガオ海峡を突破しました! フフフ……やったわ!!」
「山城! 私達、ついにスリガオを越えたのよ! あの海峡を越えたのよ……提督、ありがとう」

山城と扶桑がそれで抱き合っていた。
僕ももらい泣きしながらも、

「扶桑、山城、最上……そして満潮、朝雲、山雲も……みんな、本当にありがとう……。よかった……提督、止まない雨はない、ね……ありがとう……」

僕はここまで連れてきてくれた提督に感謝をしながらもそしてみんなで整列して、

「「「西村艦隊、成し遂げました。提督、ありがとう……」」」

僕ら七人で全員で提督に感謝の言葉を贈った。
それに提督は笑顔を浮かべながら、

「よかったな……これでもう不幸だなんて言わせないからな?」
「もう……でもそうね。私達はもう不幸じゃないんだわ。ね? 姉様……」
「そうね山城……」

それから僕たちはそれぞれに騒いだのであった。
そして明日には大本営から報酬艦として涼月が来る……楽しみだね。


 
 

 
後書き
これで戦闘は終わりです。
後は涼月を迎えればこれで作戦は終了ですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0236話『涼月の着任』

 
前書き
更新します。 

 





本日は大本営から今回の限定作戦の全作戦の終了を賞して報酬艦である涼月が我が鎮守府にやってくる日だ。
月を跨いでの事もあり、師走に入ってからの艦隊合流は艦娘達も大いに歓迎している感じである。
秋月と照月と初月の三人が私とともに門の前で待っている時だった。

「でも、私達だけでよかったのでしょうか司令?」
「ん? なんでそう思ったんだ秋月……?」
「いえ、大和さん達坊の岬組みの皆さんも来たかったと思うんですけど……」
「まぁな。でもこれから何度でも会えるという事で今は我慢してもらっているんだ。今回はまずは秋月達三人に最初に会わせたいという感じだな」

私がそう言うと照月が笑顔になって、

「そうだったんだー! 提督、ありがとう!」
「こらこら、勢いよく抱きついてくるんじゃない……」

照月が急に抱きついてきたためにどうあやすか困っていた。
一方で秋月も抱きついては来なかったものの、少し優しい表情をしながら、

「司令……私たちの事を考えてくださりありがとうございます!」
「そうだね秋月姉さん。僕も……嬉しいな」

たまにしか見せない笑みを浮かべて初月も喜んでいるようで良かった。
そんな感じで護送車が来るのを待っているといつもの感じの車が正門の前までやってきた。
停車するといつもの軍人さんが降りて顔を出してきたので、

「お疲れ様です」
「提督さんこそ……今回の作戦もお疲れ様でした」

ニカッと笑みを浮かべる軍のおじさん。
この人はいつも通り優しい感じでよかった。

「ありがとうございます。それでさっそくですが……」
「わかっています。それでは降りてきなさい」
『はい……』

車の中から声が聞こえてきた。
声の感じからして優しそうな感じが溢れてくるな。
そしてついに車の中から一人の銀髪の女の子が降りてきた。
その子は私に敬礼をしながらも、

「秋月型防空駆逐艦『涼月』です。皆さんを……皆さんをいつまでもお護りできるよう、私……頑張ります。よろしくお願いします!」
「挨拶ありがとう。私がここの鎮守府の提督だ。これからよろしく頼むよ」
「はい!」

私は涼月と握手を交わす。

「さて、それじゃ私も君と色々と話をしたいところだけど今は我慢しておこうかな。涼月と会いたい子が三人もいるからな」
「もしかして……秋月姉さんに照月姉さん、お初さんですか……?」

私の後ろで今か今かとタイミングを待っていた三人がそれで私の前へ出てきた。そして、

「涼月! やっと会えましたね! 私も嬉しいです!」
「照月も涼月と会えて嬉しいよー!」
「涼月姉さん……やっと、やっと会えたね……」

秋月はなんとか冷静を保って、照月はもう涼月に勢いよく抱きついて、初月はもう目に涙を溜めてそれぞれ喜んでいた。
そしてとうの涼月も三人に会えたことを喜んでいるのか、

「私も……私も姉さん達と会えて……嬉しいです!」

感極まったのか涙を流していた。
それから少し間、四人で抱きしめ合っているのを私は尊い目で見つめていた。
よかったな、四人とも……。




それから少し経過して、

「……すみません、司令」
「いや、いいものを見させてもらったからよかったよ。それじゃ涼月、君を鎮守府内のことを案内したいから着いてきてもらってもいいか……?」
「わかりました」
「うん。それじゃまたよろしくお願いしますね」
「はい。それでは私もそろそろ失礼しますね」

軍の人はそう言って護送車に乗って帰っていった。
それと秋月達三人が、

「それじゃ涼月! あとでまた迎えに来るからそれまで司令とお話を楽しんでいてね」
「はい、秋月姉さん」
「今日はめいいっぱい歓迎するからね!」
「御馳走だな!」

そんな感じで三人は先に駆逐艦寮へと歩いていった。

「御馳走か……でも三人の事だから質素な感じだろうから後で私もなにかお祝いの料理を持っていくとするか」
「ふふ……提督は姉さん達の事をよくわかっているのですね」
「まぁ、結構長い付き合いだからな」
「そうですか。少し、羨ましいです……」

どこか羨ましそうな表情をする涼月。

「そんな顔をしないでくれ。涼月もこれからこの鎮守府に溶け込んでいけばいいさ。それに雪風や初霜とかも涼月に会いたがっていたしさ」
「雪風さんに初霜さん達もですか……嬉しいです」
「ああ。だからすぐに馴染めるだろうから安心してくれ」
「はい……改めてよろしくお願いしますね提督」
「うん」
「あっ、それと……」

どこか涼月は忙しなく喋り出した。何か聞きたい事でもあるのだろうか……?

「軍の人に掻い摘んで聞いた事なのですが……提督は鎮守府内で家庭菜園をやっているというお話は本当ですか……?」
「うん、やっているよ。今ではもっぱら艦娘達に世話は任せっきりだけど私も時期が時期なら色々と収穫の手伝いとかもしているしな」
「そうですか……つかの事お聞きしたいのですがかぼちゃなどは作っているでしょうか……?」
「かぼちゃか……うん、作っているよ」
「そうですか。よかった……私、カボチャ料理が少しだけ得意なんです。それでもしよかったらいつか提督に御馳走しますね」
「そうか。楽しみにしているよ涼月。それじゃそろそろ鎮守府内を案内するから着いてきてくれ」
「はい。よろしくお願いしますね提督」

それから少しの間、私は涼月を連れて鎮守府内の施設などを案内していた。
その際に色々と艦娘達と何度も遭遇して涼月はその度に関係の濃い子たちとは抱きしめ合っていたのが印象的だったとここに記載しておく。


 
 

 
後書き
涼月が着任しました。
これにて私の『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』は終了です。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0237話『涼月の歓迎会 in 坊ノ岬沖組』

 
前書き
更新します。 

 



涼月です。
昨日に着任しまして秋月姉さん達に熱烈に歓迎をされて昨日の晩には秋月姉さん達が作ってくれた料理を食べることが出来てとても有意義な時間を過ごさせてもらいました。
提督もお肉のお裾分けをしてくださって照月姉さんやお初さんとかがよだれを垂らしていたのにはさすがに苦笑いを浮かべましたが……。
そして今日、私は大和さんのところへと招かれましたので向かっていました。
どうやら大和さんの部屋はやはりVIPルーム顔負けの広さを持っているらしくそこならみなさんで私の歓迎会を開けるという事で……。
とても……とても嬉しく思います。
そして大和さんの部屋へと向かっている時でした。

「あ! 涼月さんだ!」
「雪風さん!」

雪風さんがどうやら大和さんのお部屋へと向かっていたのでしょう、ばったりと遭遇しました。
まだ昨日に着任したばかりですのでこうして会うのは初めてですけど嬉しい気持ちが溢れてきます。

「やったのです! ついに涼月さんが着任してくれたんですね!」
「ええ……やっと来れました」
「それじゃ精一杯歓迎したいですのでいきましょうか!」

そう言って雪風さんは私よりも小さい手で私の手を握ってくれてまだ道中が不安な私を案内してくれました。

「でも……まだ冬月さんはこれないのですね……」
「はい。でも……そういつかお冬さんとも会える時が来ます。その時まで一緒に待っていましょうね」
「了解です! あ、大和さんのお部屋に着きましたよ!」

雪風さんにそう言われて改めてその部屋の横幅の広さに驚かされました。
ここは戦艦寮なのですがただでさえ戦艦の人の部屋は大きく感じたのですが大和さんのお部屋は多分二倍以上はあるでしょうか……?
それで思わず、

「広いんですね……」

と、呟いていました。

「はい。大和さんは大きいですから!」
「その……あまり大きい大きいと連呼はしない方がいいのではないでしょうか……?」
「あ、そうですね。大和さんも気にしていますから気を付けますね」

てへっ!と頭をコツンと叩く雪風さんの姿が愛らしく感じましたね。
そんな感じで中に入ろうとしたのですが……、

「ちょっと涼月さんは待っていてください。中を確認しますね」
「わかりました」

雪風さんがそう言って扉を少し開けて中にいる皆さんに話しかけているのでしょう、少しだけ時間が経ちました。
しばらくして、

「はい。準備が出来たようですので中に入りましょうか、涼月さん!」
「はい」

それで私は雪風さんに急かされるようにドアノブに手をかけて扉を開けました。
すると中からクラッカーの鳴る音が響き渡りました。

「「「涼月! 着任おめでとう!!」」」

中には大和さんを始め、矢矧さん、浜風さん、磯風さん、初霜さん、霞さん、朝霜さんの姿がありました。
みなさんはとてもいい笑顔を浮かべていて私は皆さんに歓迎されているんだと改めて感じることが出来ました。ですので、敬礼をしながらも、

「涼月、着任しました!……皆さん、お久しぶりですね……私は会えてとても嬉しいです……」
「私も会えて嬉しいわ、涼月さん……」
「大和さん……」

大和さんにそう言われて嬉しい反面、過去に守り切れなかった思いが蘇ってきて、

「大和さん……すみません。この涼月、防空駆逐艦だったのに大和さんの事を守り切れなかった……」
「いいですよ! 涼月さんにこうしてまた会えることが出来ただけで私はもう胸いっぱいですから!」
「そうよ。それを言ったら私達全員が大和の事を守れなかったんだから同じ気持ちだわ」
「矢矧さん……はい、すみません。一人で勝手に落ち込んでしまいまして……」
「真面目ね……でも涼月のそういうところは嫌いじゃないわ。着任……おめでとう」
「はい!」

矢矧さんにもそう言われて嬉しい気持ちになりました。
それから磯風さんと浜風さんが近寄ってきて、

「ふふ……涼月よ。この艦隊では先輩だな。これからともに頑張っていくとしようか」
「磯風はこう言っていますが先輩とかそう言う事も気にせずに過ごしてくださいね」
「ふふ……わかりました」

磯風さんと浜風さんも冷静な方々でよかったです。
そしてお次は朝霜さんが近寄ってきて、

「そんなことより早く涼月の歓迎会を開こうぜ! あたい、もう待っていただけでお腹が空いちまったよ」

それを気にしてか初霜さんと霞さんが、

「もう……もう少し落ち着きなさいったら。料理は逃げないんだから!」
「そうですよ朝霜さん。もう少しだけ涼月さんと話していてもいいではないですか」
「ま、それもそうだな。そんじゃ涼月、こちらに座れよ。大和さんの専用の椅子なんだぜ!」
「は、はい……」

朝霜さんにそう言われたので私は大和さんの専用の椅子だというものに座らせてもらいました。

「よし。涼月さんも席に座った事ですし、この大和が大和ホテル自慢の料理を振る舞いますね!」
「いよっ! 待ってました!」
「大和さんの料理……楽しみです!」
「そうね」

みなさんが口々に楽しそうにしていましたので私も気分が高揚してきました。

「ほら。涼月もボーっとしていないでなにか話しなさいな?」
「霞さん……そう言われましてもなにから話せばいいか……ありすぎて迷います……」
「ま、そうよね。でもこれからは一緒に過ごしていくんだからなんでも話してよね?」
「そうですよ。涼月さんも私達の仲間なんですから!」
「その通りです!」

みなさんもそれで「うんうん」と頷いていましたので、

「そうですね……それではまずは……」

という感じで大和さんの自慢の料理を食べながらもみなさんと楽しく色々なお話をすることができましたのでとっても嬉しかったです。
この涼月……これから皆さんのために頑張らせてもらいますという気持ちで胸がいっぱいになりました……。


 
 

 
後書き
涼月は喋りが礼儀正しい子なので書きやすかったですね。
これからさらにいいところを発見していきたいです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0238話『艤装が使えなくなった利根』

 
前書き
更新します。
これは先日に起こった話です。 

 




吾輩はいつもの朝の日課で艤装の手入れをしようと思ったのじゃ。

「ふんふんふん♪ 今日もカタパルトを綺麗にしてやるのじゃ!」

そう思っていつも通りに艤装が顕現するイメージをしたのじゃが……。

「ぬっ……?」

なぜか艤装はうんともすんとも出現しなかった……。
おかしい……。
いつもなら自然と顕現できるはずなのに……。
それで何度も何度も顕現するように祈ったのじゃが……どうしても艤装は出てきてくれなかった。
そして吾輩はしょうがなく妖精さんを呼ぶ事にしたのじゃが妖精さんも出てきてくれない。
これは何事じゃと思うと同時に最悪の想像をしてしまったのじゃ……。
それは……艤装を使えなくなってしまい艦娘として役立たずになってしまった吾輩はもしかしたら提督に捨てられてしまうのでは……?という想像をしてしまった。
顔から血の気が引いてきて吾輩はもうこの場では耐えられなかったために、

「筑摩ー筑摩ー!?」

筑摩の事を叫んでいた。
もう吾輩だけでは解決は困難んじゃと悟った最後の防衛本能から来る叫びじゃった……。







突然利根姉さんの尋常ではない私を呼ぶ泣き叫び声が聞こえてきたために私は慌てて利根姉さんの部屋へとまいりました。
すると利根姉さんはそれはもう顔を青くさせて震えているではないですか?可愛い……、ではなくて!

「ど、どうしたのですか利根姉さん!?」
「ぢぐまー……」

利根姉さんが私に抱きついてきました。
相当の出来事があったのですね……。
それで丁寧に事情を聴きだすために一から聞いていきました。
そして判明したのが、

「艤装が出せなくなったのですか……?」
「そうなのじゃ……何度念じても艤装が顕現しないのじゃ……妖精さんも出てきてくれないし……このままでは吾輩は提督に捨てられてしまうのじゃ……」
「そんな……提督はそんな酷い方ではないのは利根姉さんもご存知でしょう?」
「それはわかっておるのじゃ……でも艤装が使えない艦娘などいても迷惑をかけるだけじゃぞ?」

利根姉さんはそれでひどい落ち込んでしまっている。
そこまで思いつめてしまっていたのですね。
可愛そうな利根姉さん……。

「でも、まずは明石さんに見てもらいましょう? なにか原因が分かるかもしれないですから!」
「そ、そうじゃな……」

利根姉さんを説得してすぐに私達は明石さんのいる工廠へと向かいました。

「明石さーん! いらっしゃいますかー!」
「はーい!」

明石さんは私の声に気づいてすぐに出てきてくれました。
意外と明石さんは多忙な方ですから工廠にいない事も多いので助かりましたね。

「どうしたしたか筑摩さん? おや、一緒にいる利根さんがなにやら気分が優れないようですがどうしました……?」
「それが……」

私は明石さんにも事情を説明しました。
聞いていく内に明石さんは真剣な表情になっていって最後まで聞き終えると、

「なるほど……そのような事情でしたか。分かりました。それでは利根さんは少しドッグに横になってもらってもいいですか? 検査しますので」
「わかったのじゃ……」
「それと筑摩さんは提督を呼んできてもらっても構いませんか……? 結構大事かもしれませんから」
「わかりました。利根姉さん、心配しないでください。きっと治りますからね……」
「う、うむ……明石の腕は信じておるから任せたぞ?」
「お任せください!」

それから明石さんの検査が始まりました。
私はその間に提督を呼ぶために工廠にある通信機器で提督のお部屋へと通話を試みました。
もう日も登っていますから朝のお食事に行っているかもしれませんし最悪は執務室に電話をかけてみましょうか。
しばらくして提督は出てくれました。

『こんな朝にどうしたんだ明石?』
「い、いえ……筑摩です」
『ん? 筑摩か。工廠からだからてっきり明石かと思ったんだが……どうしたんだ? なにかあったのか?』
「はい。それがですね―――……」

私は提督にも事情を説明しました。

『なるほど…わかった。すぐに工廠へと向かうとするよ。それとまだ明石以外の他のみんなにはこの件は話していないよな?』
「はい。でもなぜでしょうか……?」
『いや、艤装が使えないって事があるともしかしたら他の子もって事もあるかもしれないから余計な不安を抱かせるわけにもいかないからな』
「なるほど……」
『とにかくまずは向かわせてもらうよ』
「はい。お待ちしています提督」

それで提督とも通信を終了して明石さんのところへと戻っていきました。

「明石さん。提督はすぐに来られるそうです」
「そうですか……それにしても、うむむー……中々難しいですねぇ」

明石さんが珍しく難しい顔をしています。
それほどにこの件は問題なのでしょうか……?
利根姉さんは今はドッグで眠りに入っていますので余計な声が聞かれないだけマシですけど。

「なにかわかったのですか……?」
「はい。検査上は特に問題点は見つからなかったんですけど……やっぱりなにか誤作動を起こしているのか艤装が展開できないんですよね」
「誤作動ですか……」
「はい」

それで明石さんと一緒に悩んでいるとそこに提督が急いでやってきたのか少しだけ汗を掻いていました。

「筑摩、来たぞ。それで利根の様子はどうだ……?」
「はい。それがやっぱり艤装が出てこないそうで明石さんと一緒に悩んでいたんです」
「現状はなにか分からないですから手の施しようもないといいますか……精密な検査をしていかないといけませんね」
「そうか……タイミング的にはよかったのか悪かったのか分からないな……。限定作戦中に起きなかったのがせめてもの幸いだな」
「そうですね。利根姉さんも活躍できなかったら悔しいでしょうから……」

それから明石さんとともに利根姉さんの事を調べていく中で、

「妖精さんが出てこない……?」
「はい。なにやら呼びかけても出てこないとかで……」
「そうか。それじゃ少し試してみるか……」

提督はそう言うと自身の艤装を展開していた。
なにをするのでしょうか?

「妖精さん、少しいいか……?」
【何でしょうか提督さん?】
「事情は分かっていると思うけど少し利根の中に入ってもらってもいいか……?」
【可能ですけど大丈夫でしょうか……?】
「たぶん妖精さんの方でなにかあったと思うから確認だけ頼む」
【わかりました】

提督の艤装の妖精さんはそう言って利根姉さんに入っていきました。
しばらくして妖精さんは出てきました。

【大変です提督さん。利根さんの妖精さん達が全員風邪で倒れていました】
「えっ!?」
「本当ですか!?」
「やっぱりか……それじゃ至急運び出してくれ」
【わかりました】

それから話は早かったですね。
利根姉さんの妖精さん達はなぜか全員風邪を引いていたために艤装も展開できなかったらしいです。
明石さんの手でなんとか妖精さん達もしばらくして回復したのか感謝をしながら利根姉さんの中へと戻っていきました。
そして、

「おおー! 艤装が展開できるのじゃ!」
「よかったな、利根」
「うむ! 提督よ、感謝するのじゃ!」
「ああ。それとこれからは妖精さん達の体調管理もしっかりとしておくんだぞ?」
「わかっておるのじゃ!」
「よかったですね、利根姉さん」
「うむ!」

利根姉さんの顔に笑顔が戻ってきたのでよかったと思いました。
私も妖精さんの事をこれからはもっと気遣いましょうか……。


 
 

 
後書き
実際はバグだったらしくて運営に連絡してキャッシュクリアをしてみてと言われたので試してみたら直りました。
利根の姿が映らなくて出撃したらすぐにフリーズしてしまうから焦っていたので直ってよかったです。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0239話『多摩の改装案』

 
前書き
更新します。 

 




今日はこの球磨が秘書官だクマ。
大規模作戦も終わったので少しゆったり気味な鎮守府だけどそれでもしっかりと任務をこなしていく提督は偉いクマ。
そんな時に大淀が電文を持ちながら執務室に入ってきたんだクマ。

「提督。昨日の電文でとあることが分かりました」
「そうか。何が書いてあったんだ……?」
「球磨も気になるクマ」
「そうですね……球磨さんは喜ぶ内容ですよ」
「お……?」

なんだろうクマ。球磨が喜ぶ事っていったい……?
球磨がそう考えている時だった。

「それでは教えますね。大規模作戦が終了する日に大本営からとある艦娘の改二が実装されるというお話です」
「おー……また改二の話か。今年は多いな」
「そうですね。それで誰が改二になるかというと『北方海域警備など北方の護りに就き、戦局の激化により南方へ展開、最期は「レイテ沖海戦」となったある5,500t級軽巡の改二改装』と書かれていますね」
「クマッ!?」

球磨はそれで思わず変な声を上げてしまった。
それってもしかして! もしかすると!

「お、大淀……それはもしかして……」
「はい。球磨さんの考えいる通りですね。ここまで情報が出ているのなら確実でしょう。おそらく多摩さんで間違いないようです」
「そっかー! ついに多摩に第二次改装の話が来たクマか! お姉ちゃんとしては嬉しいクマ! 提督、多摩を呼んでもいいクマか!?」
「ああ。構わないよ。それじゃ多摩の部屋に連絡を入れるとしようか」

さっすが提督、分かっているクマ!
提督が多摩の部屋に連絡を入れているのを横目にして大淀とお話を色々としてしていた。

「ですが、球磨さんとしては複雑なのではないですか……?」
「む、どういう事クマ……?」
「いえ、だってこれで多摩さんの第二次改装が行われれば姉妹艦ではついに球磨さんだけが残ってしまうわけですから」
「あー、そう言う事クマね。それに関しては問題ないクマ。球磨は姉妹のみんなが楽しく過ごしてくれればそれだけで嬉しいからクマ。だから球磨の事は後回しでもなんでもいいクマよ」
「そうですか。球磨さんは立派なお姉さんですね」
「むふふー。そう褒めるなクマ♪」

球磨がそれで少し恥ずかしがっているところで、

「球磨。多摩に連絡をしておいたぞ。もう少しで来るだろう」
「提督、ありがとうクマ!」

さーて、多摩の驚く顔が目に浮かぶクマ。楽しみだクマ!
いつごろ来るかクマね?なんか今からそわそわして来たクマ。







『多摩、ちょっと話したい事があるから至急執務室に来てもらっても構わないか……?』

提督から急にそんな電話がかかってきたので何事かと思ったにゃ。
でもなにやら電話の先から球磨姉の声も聞こえてくるからどうやら騒いでいるようだ。
それで多摩も少し気持ちがざわつくのを我慢しながらも、

「わかったにゃ。すぐに向うにゃ」
『ああ。分かっている通り球磨が騒いでいるから早めにな』
「了解にゃ」

多摩はそれで電話を切った後に、

「まったく球磨姉はなにを騒いでいるんだにゃ……まぁすぐに向えばわかる事にゃ」

さっそく多摩は執務室に向かう事にしたにゃ。
だけど道中で北上に大井、木曾の三人も発見したので多摩はちょうどいいと思ったので、

「おーい、三人とも。ちょっといいにゃ?」
「んー? どうしたの多摩姉?」
「どうしたんですか多摩姉さん?」
「どうした多摩姉さん?」

三者三様で返事をしてくる三人は個性が出ているなーと思ったにゃ。
それはともかく、

「なにやら多摩に用があるみたいで提督から呼ばれたにゃ。それになんか球磨姉も一緒にいるみたいで少しきな臭いから一緒に着いてきてもらってもいいにゃ……?」
「そーいう事ね。わかったよー。それじゃ行こうか、大井っちに木曾」
「北上さんがそういうのでしたら私も着いていきますね♪」
「そうだな。球磨姉さんが騒いでいるってのも気になるから行ってみるか」
「それなら話は早いにゃ……早速行こう」

多摩は三人を引き連れて執務室へと向かったにゃ。
そして執務室のドアをノックすると、

『多摩か。入ってもいいぞ』
「わかったにゃ」

それでドアを開けてみるとそこには満面の笑みを浮かべている球磨姉の姿があったにゃ。どうしたんだろうか? なにか悪いものでも食べたにゃ?

「むふふー。やっと来たクマか。それに北上達も連れてきてくれるとは好都合だクマ!」
「いったいどうしたの球磨姉ー?」

北上がそう言って球磨姉に話しかけている。
多摩もすぐに知りたいから好都合だにゃ。
それで球磨姉が笑みを絶やさないである事を言ってきた。

「ふっふっふー。聞いて驚け見て笑えだクマ! なんとー!」

一際大きい叫び声を上げながら球磨姉はある紙を多摩達の前に出してきた。
それはいつも提督がチェックしている電文だった。

「内容を読んでみるクマ!」

そう言われたので読んでみた。
だけどそれだけで多摩もどうしてここまで球磨姉が喜んでいるのか分かってしまった。

「これは……もしかして多摩の第二次改装案にゃ……?」
「そうクマよ! ついに多摩にも話が来たんだクマ!」
「おー! それはめでたいねー」
「はい! おめでとうございます、多摩姉さん!」
「こんなめでたい話があるなら今夜はパーティか何かか!?」

多摩達五人はそれで色々と騒いでいる時に、

「まぁそんなわけだ。現在の多摩の練度も90と改二の練度としては十分だから後は時が来るまで待っているとしようか」
「わかったにゃ。楽しみにしているにゃ……」
「およ? 珍しく多摩姉が頬を赤くしているねー」
「たまには、は余計にゃ北上……」
「にゅふふー。楽しみだクマねー」

球磨姉は終始笑顔を絶やさないでいたのもなんていうか冷静になれる感じだったにゃ。
まぁ楽しみだにゃ……。


 
 

 
後書き
イベント後に改装が来るという事で楽しみですねー。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0240話『第一潜水隊、揃いました!』

 
前書き
更新します。 

 




伊401……こと、しおいです。
ついにしおんお姉ちゃんが来てくれたので救出してくれた提督やみんなには感謝してもしきれないよ……。
だから今日もお姉ちゃんと一緒に出歩いてるんだー。

「えへへー」
「どうしたんですか、しおい?」
「うん。お姉ちゃんと一緒に出歩くことが出来るだけで嬉しいんだー」
「そうですか。私も一緒出来て嬉しいわよ、しおい」
「うん!」

それでついつい嬉しくなってお姉ちゃんの腕に私の腕を組ませちゃうんだー。
これぞ妹の特権だよねー。
そんな事を思っていると、

「あー、しおんさんだ!」
「こんにちは……しおいさんにしおんさん……」
「あ、イヨさんにヒトミさん」
「イヨちゃんにヒトミちゃん!」

私とお姉ちゃんとでイヨちゃんとヒトミちゃんの事を呼ぶ。
でもやっぱりお姉ちゃんは礼儀正しいなー。誰にでもさん付けで呼ぶから。
そこがお姉ちゃんの魅力なんだよねー。

「えへへー……しおんさんが来たって事はついに第一潜水隊が揃ったって事だね!」
「そうだね、イヨちゃん……少し、嬉しいかも……」

それでヒトミちゃんとイヨちゃんが嬉しそうに頬を緩めている。
お姉ちゃんもそれで笑顔になっているし……。
確かにそうだったー。
私としたことがお姉ちゃんのことで頭がいっぱいになっていてこの件を忘れているなんてほんとうに抜けてるなー。
あの運河にいく予定だった第一潜水隊がこれで揃ったって事だね。
イヨちゃん、思い出させてくれてありがとう!

「それじゃこれからみんなでどこかにいこうよ! みんなで遊ぶのはかなり夢だったかもしれないしね」
「しおいさん、ナイスアイディア!」
「とても、いいと思います……」
「しおい、いい提案だと思うわ」

よし! 三人にも了承を得たのでこれからどこにいこうかなー?
鎮守府内をお散歩するのもいいよね?
四人で遊ぶならまたお姉ちゃんとは違って格別な事になりそうだしね。

「でも……」

そこでヒトミちゃんが少し表情を曇らせる。
どうしたんだろう……?

「ヒトミ達だけ、浮かれていてもいいのかとたまに思います……ゴーヤさんや他にもいっぱいいる潜水艦の皆さんに少し悪い気がしまして……」
「もう! 姉貴は心配性だなー。大丈夫だよ、だってただでさえゴーヤちゃん、イクちゃん、はっちゃん、イムヤちゃんのみんなは自分自身が会わせて六人もいるんだから寂しいなんて思いはしていないだろうしごーちゃんとかも今もイタリアの艦のみんなと楽しんでいるしろーちゃんもドイツ艦と楽しんでいるしね。
うちの潜水艦の子達はただでさえ数が多いんだから今更気にする事ないって……!」
「た、確かにそうだね、イヨちゃん……」

それで改めてヒトミちゃんはうちの艦隊の潜水艦の子達の数を思い出して汗を垂らしている。
その気持ちは分かるよー。
私も同型艦は合わせて四人もいるから他人事じゃないし。
あー、今のところはただ一人だけオンリーワンの子達は逆に羨ましいとも感じちゃうしね。
今のところでお姉ちゃんの取り合いにならないのは偏に時間割とか決めているところもあるしね。
みんなは私と思考パターンはだいたい同じだけどケッコン艦は私だけだからね、だから少し気持ちの余裕もあるしね。
いざってなれば提督のところにいけばいいしね。これぞケッコン艦の特権って奴……?
……そうだね。

「それじゃ今から提督のところにでもいこっか! 今の時間は任務も終わらせて残っている書類整理とかしているとおもうし」
「しおいさん、ナイスアイディア♪ それじゃさっそく行ってみよう! いざという時は夜まで付き合わせてお酒に弱い提督をべろんべろんにして食べちゃうのもありだよね! イヒヒ♪」

おおっと! イヨちゃんが妖艶な笑みを浮かべているね。
これは提督をガードしないとすぐに食べられちゃいそうだね。イヨちゃんはお酒飲みのグループの中でもかなり飲む方だから。
この間なんて朝まで隼鷹さんとかと酒飲み比べしていてヒトミちゃんが必死に「イヨちゃん……もう飲むのは、やめて……!」と涙目で必死に説得していたしね。あれは見ていて酷かった……。
そして案の定、

「……イヨちゃん……」
「ヒッ! あ、姉貴!?」

ヒトミちゃんがかなりの低音からの声を出してイヨちゃんを睨んでいた。
これは説教modeだね。
そんな二人の光景を見ていてお姉ちゃんが少し引きながら話しかけてきた。

「し、しおい……? ヒトミさんの様子がおかしいわね?」
「あー、大丈夫だよお姉ちゃん。これはいつもの事だから。お姉ちゃんもそのうち慣れるよ」
「そうなの……あまりなれるのも怖いわね……」

そんな感じで騒ぎながらも執務室へと向かう私達。
そして扉をノックすると中から榛名さん声の提督の声で『入っていいよ』と返ってきたので、

「それじゃ入ります!」

私達は中に入らせてもらった。
そして、

「おお、みんなか。見れば第一潜水隊の揃い踏みか……なかなかいいものだな。みんなが揃うのは」
「えっ? 提督も私達の編成を知っていたの?」

イヨちゃんがそれで驚いていた。
声には出さないけど私も驚いた。
提督も博識だねー。
あまり目立たなかった私達潜水隊の編成も知っているなんて。

「当然だ。この世界に来てよりいっそう勉強したからな」
《ふふふ……提督は頑張りましたからね。仮初めの提督じゃ嫌だって言っていて……》

榛名さんもどこか自分の事のように嬉しい表情を浮かべている。
そういえば、

「お姉ちゃんは提督と榛名さんの関係はもう教えてもらったの……?」
「はい、しっかりと。驚きました……提督は異世界の人だったというのは……でもいい人だというのはもう感じ取れていますから私ももう納得していますから安心してください」
「うん! 提督はとってもいい人なんだよ!」
「そうだねー。姉貴を必死になって見つけてくれたから感謝しているんだ」
「はい……それにとても気遣いがうまいですから……ヒトミも嬉しいです……」

私達は提督をそう言って褒める。
それに提督は顔を赤くしながらも、

「嬉しい事を言ってくれるな。それじゃお礼になにか奢るとしようかな?」
「「「わーい!」」」

それから私達は提督に間宮で甘味を奢ってもらったんだ。
やっぱり提督って優しいよね。
そう思った日でした。


 
 

 
後書き
オチは四人でオリョクルですかねー(腹黒感。



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0241話『佐渡と大鷹とヒ71船団の話』

 
前書き
更新します。 

 




佐渡様がこの鎮守府に来てからというもの、シレイは佐渡様の事を育てている感じなのか絶対に対潜掃討の任務に就かせてくれる。
それでいつもある人と一緒に組む事がある。
その人とは、

「それではみなさん。今日も頑張ってまいりましょう……」

静かな音色の声で、それでも力強い感じでそう喋る人……そう、大鷹さんだ。
あたしと大鷹さんは少しだけ深い関係でもあるってのは多分シレイも知っているんだろうなぁ……。
この鎮守府にいるみんなに話を聞くとシレイは異世界の人とか言うにわかには信じられない人らしいんだけど、それ以上にほとんどの艦娘の人達も異世界出身とか言うから信じるしかないんだろうな。
その中で大鷹さんは数少ないこの世界の出身の人だから色々と話しやすいのも確かな事で。

「おう! 大鷹さん、この佐渡様に任せておいてよ! 必ず今度は守るからさ!」
「ふふ……期待していますよ佐渡さん。それではみなさん、そろそろ敵深海棲艦の潜水種と遭遇します。各自爆雷の用意を……」
「わかりました……」
「了解でーす……」

まつとつしもそれで戦闘の準備をする。
あたしもそれに習ってソナーで潜水艦の居場所をすぐに察知する。

「それではいきましょう!」

大鷹さんがそう言いながら艦載機をまるで鳥のように射出していく。
軽空母で唯一先制対潜が可能な大鷹さんは誰よりも早く攻撃をしていくのでアタシ等も遅れずまいとして爆雷を投下していく。
そしてしばらくして、ボーン!と海面が爆発する感じがしたのでおそらく潜水艦を倒すことが出来たんだろうな。

「よっし! ソナーでも潜水艦の感じはなくなったな」
「でも、まだまだ用心が必要です……あうぅ」
「海は危険がいっぱい……」

まつとつしがそれでまだ周囲の警戒をしている。
うん、そうだな……。
この海域は特に潜水艦が多いから用心に越したことは無いからな。

「ふぅ……それでは佐渡さん、それにみなさん。そろそろ先に進みましょうか」
「了解だぜ!」

それで先に進もうとするんだけどふときらりと光るものが目に映って、

「大鷹さん、危ない!」

あたしはとっさに大鷹さんの前へと出て行く。
次の瞬間にはあたしは魚雷をくらっていた。

「いってぇ……!」
「佐渡さん! 大丈夫ですか!?」
「佐渡……平気?」
「松輪、もう許しません!」

珍しくまつが怒っていて爆雷を投下していた。
あたしはなんとか中破で済んだけど少しだけ服が破けちまったな。

「もう……大丈夫ですか? 私の事はきにしないでも大丈夫ですのに……」
「そんな事、言わないでくれよ大鷹さん。あたしは……もう大鷹さんが守れないのは嫌なんだよ……」

思い出すのはヒ71船団での出来事……。
大鷹さんが敵の魚雷を受けて沈んでしまい悔しい気持ちでそれでも進んでいったけど結局あたしも後を追う事になってしまった……。
だからもう大鷹さんが沈む姿は見たくないんだ。

「あたしは、あたしは絶対に大鷹さんを守るんだ……そう心に決めてるんだ」
「佐渡さん……」
「佐渡ちゃんの気持ち、分かるな……松輪も、佐渡ちゃんとヒ71船団の時に一緒だったから大鷹さんが沈んだ時はとても悔しかったもん……」
「わかってくれるか、まつ……」
「うん……」

まつが同意の笑みを浮かべてくれるので少しだけあたしも気分が落ち着いた。

「……まだあたしは大丈夫だから先に進もうぜ!」
「平気なんですね? 無理そうだったら言ってくださいね?」
「わかってますよ。大丈夫、これでも海防艦のはしくれだからどうにかするよ!」
「わかりました。それでは佐渡さんを守りながら進みましょう!」
「「「はーい!」」」

そんな感じであたし達はその後も潜水艦を打倒しながら進んでいって任務も終了して帰投したらそっこうで入渠をしていた。

「いやー……やっぱお風呂はいいよなぁ。身体の痛みが引いていくぜ」

あたしはそう呟く。
他のドッグには誰もいないので今はあたしが独占できるのはいい事だ。
そんな時に入渠ドッグの部屋に誰かが入ってきた。
あたしはそれで顔を向けてみると大鷹さんがいた。

「大鷹さん……?」
「佐渡さん……少しよろしいでしょうか?」

少しだけ真剣な表情の大鷹さんにそう言われたら断れないので、

「そんじゃこんな状態ですみません……」
「いいですよ。私を守って負傷してしまったのですから気にしないでください」

大鷹さんはドッグの近くに椅子に座って一回息を吐いた後に、

「佐渡さん、私は……あの時にすぐに沈んでしまったから後の事はあまり分かっていないんです。それでも調べる事はできました。速吸さんや佐渡さん、松輪さんと大勢の方が沈んでしまった事も……とても大変だったんですね。私が力になれずにすみませんでした……」
「あ、謝ることは無いよ! あの時だって大鷹さんはほとんど艦載機も積んでなかったじゃん! だからあれは仕方がなかったんだよ」

そう、あの時にはすでに積める艦載機もなかったから輸送船と化していた大鷹さんは魚雷には対抗する術もなかったから仕方がなかったんだ……。
だからあたし達が船団護衛についていたのに……みすみす敵の攻撃を許してしまって……、

「むしろ謝りたいのはあたしの方だよ。船団護衛していたのに守れなかったからな……」
「ふふ……それではお互い様ですね」
「そうだなぁ……悔しいけど敵が強すぎたんだな、うん……」

それで大鷹さんと苦笑いを浮かべあう。

「でも、こうして艦娘として佐渡さんとも出会えたのは嬉しいんです……ですから今度は私も佐渡さんの事を守りますね?」
「あたしこそ! 今度こそ佐渡様の力を見せたげるから!」
「それでは期待しておきますね」

そんな感じで大鷹さんとしばらくの間だけどお話が出来て良かったと思う。
これからもっと頑張ろう!おー!


 
 

 
後書き
佐渡回でした。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0242話『対馬の不思議探し』

 
前書き
更新します。 

 




対馬は自分でも思いますけど少し不思議な性格をしているんだと思うんです……。
不思議な事には敏感でなにかと鎮守府の不思議を探しているところがあるからです。
今日も対潜任務が終了したから後は一日どう過ごそうかと考えて、やっぱり解明しないといけない不思議がこの鎮守府にある事に気づきました。
それは司令のこと……。
司令は異世界の人だって聞きましたから対馬の不思議センサーにすぐに引っかかりました。
でも、なんともうしますか特に司令は何かを隠しているとかそんなそぶりは一切ないんですよね……。
自然体で対馬たちと接していると言いますか。
だから特に司令の隠し事を暴こうとかそう言うのはないですかね……?
ただ、やっぱり榛名さんの身体に入っているというのが不思議でたまりません。
これはぜひ解明したい案件です。

「……と言うわけで、明石さん。あなたなら色々と司令のことは知っていると思いますから教えてもらえませんか……?」
「突然来たねー。提督のなんの事を知りたいの?」
「はい。いまだに司令と榛名さんが一緒に行動出来ているのが不思議でならないんです……司令は男性で榛名さんは女性です。ですから必ずどこかでズレが生じて然るべきなんだと思うんですけど……」
「うーん……対馬ちゃんはなかなか科学とか哲学方面の方で力が発揮できそうだね。うちの艦娘のみんなはもう自然と受け入れちゃっているからそういう考えを持っている対馬ちゃんの思いは無駄にしちゃいけないと思うんだ」
「ありがとうございます」

うふふ……褒められました。
対馬は不思議な事があったら解明しないと気が済まない性分ですから。

「でも、提督と榛名さんはあれはあれでたまに喧嘩する事もあるんだよ?」
「えっ……? あんなに仲が良いのにですか……?」
「うん。二人っきりになる時とかでどちらかが少しでも話が合わないと言い争いになる事もあるとか……」
「そうなんですか……それはいい事を聞きました」
「でもね。あの二人は基本性格は温厚な方だからすぐに仲直りしちゃうんだよね」
「そうなのですか……?」
「うん。基本は提督は榛名さんの身体を借りているわけだから申し訳ない気持ちの方が上回っているし、榛名さんの方もこっちはこっちで面倒で少しでも提督と離れ離れになると不安で涙目になっちゃうもんだから」

驚きました。
結構なほどの共依存しているんですね、提督と榛名さんは。

「それに前に一日だけ二人が分離した事があったんだけどその時なんか榛名さんは酷かったよ……? 提督が他の場所に少しだけ行っている間にすでに意気消沈していたから。それだけ榛名さんの方が提督に対しての依存度は高いかな……?」
「分離した……ですか。それはどういう事情だったんですか……?」
「うん。それはケッコン指輪にも関係してくるんだけど提督と榛名さんがケッコンカッコカリした日だけ限定して二人は分離できるみたいなんだ」
「それはまた……不思議ですね」
「でしょう? それでその日はもういつも以上に二人はべったりしちゃっていたしね」

それで明石さんはごそごそと引き出しの中を漁っていて、取り出したのは何かの写真でしょうか……?
それを見せてもらって驚きました。

「司令と榛名さんが二人でキスをしていますね……」
「うん。青葉ちゃん渾身のショットなんだけどその後にすぐに次の日になった瞬間に榛名さんは消えちゃったの」
「司令の身体に戻った、という感じですか……?」
「そう言う事……だから私も提督と榛名さんが一年中分離できるように妖精さん達と話し合って今も薬を開発中なんだけどなかなかうまくいっていなくてね」

あははーと笑う明石さんだけど、そんなものを普通に開発しようとしている明石さんの腕が異常だと捉えるべきでしょうか……?
対馬の中でまた不思議な事が追加されました……。

「ま、そんなわけで提督と榛名さんは結局のところ両想いだから今の関係が保てている感じかな? 対馬ちゃんも想像してみてよ? 好きでもない相手と同じ体を共有するとかそんなの嫌でしょ……?」
「確かにそれはとっても嫌……ですね」

そう考えるとなるほど、今の司令と榛名さんは好き合っているから同じ体でも不満はないわけなんですね。納得しました。
一つ不思議が解明できたかもしれませんね。
まぁ、それでもまた増えるんでしょうけどね……ふふふ。
私の探求心はなくなりませんよ。
そんな事を思っている時でした。

「明石、ちょっといいか……?」

そこにひょっこりと司令が工廠の部屋へと入っていきました。

「あ、はい。なんでしょうか?」
「ちょっと相談したい事があるんだけどいいか?」
「わかりました! それじゃ対馬ちゃん、ちょうどいいって言うのもなんだけどお話はまた今度ね?」
「ふふ……わかりました」
「対馬は何の話を明石としていたんだ……?」
「ふふふ……提督には内緒の話ですよ」
「? そうか」

司令が納得しかけていた時でした。

《あー!?》

突然榛名さんが顔を出してきて顔を真っ赤にさせながら叫んでいました。

「ど、どうした榛名……?」
《あ、明石さん……その写真は何ですか!?》
「え? あ、やべ……」

それで司令も気づいたのか写真を取り上げながら、

「これを撮ったのは誰かなー?」
《榛名は大丈夫じゃありません!》
「い、いえー……その、青葉さんです……」

あっさり青葉さんが売られてしまいました。
明石さんも自分の命が大事ですからね、分かります。

「そうか……あとで青葉を捻らないとな」
《許せません! 断罪です!》

榛名さんもさすがにオコなのか普段の温厚ぶりから少し外れていますね。
まぁ仕方がないんですね……。
青葉さん、あなたの無事を祈っています。
私はそれで十字を切っておきました。


 
 

 
後書き
対馬が新規艦のなかで一番難しい子だと思うんですけど……時報もないから。
だからうちではこんな子にしてみました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0243話『二人目の空母達』

 
前書き
更新します。 

 

私こと、二人目の蒼龍が艦娘保管庫から出されて結構経過してんだよね。
もうすぐ改二の練度に達する今日この頃なんだけど、提督は新たに二人目の加賀さんを艦娘保管庫から出してきた。
加賀さんは加賀さんでまだ練度も低いので低姿勢で演習を頑張っている感じかな?
提督に事情を聴いてみると最近まで育てていたアークロイヤルさんが練度がカンストしたのでもう一人目で正規空母や軽空母でカンストしていないのは練度97の龍鳳、練度82のアクィラさんに鳳翔さん、そして愛称がスズヤン、クマノンこと練度90の鈴谷と練度88の熊野の合わせて五人くらいらしい……。
残りの空母のみんなもそれならカンストを目指してもいいんじゃないかと言う話にもなったんだけど提督はついに加賀さんが改二になってもしコンバートしたらという時のために二人目に着手したんだって。
だから今は演習では私と一緒に頑張ってもらっている。
加賀さんが練度90くらいになったら赤城さんも育てるつもりらしいからうちの鎮守府は空母が多い事多い事。
今回の限定作戦でも雲龍と葛城の二人目もゲットしたから前の作戦で手に入れていた天城も含めて雲龍型が二人目が揃っているから育てないって事もないだろうし……。

「だからさー、加賀さんもそんなにムスッとした表情にならないでくださいよー。この鎮守府では二人目なんてそんな珍しい事でもないんですから」
「ムスッとなんてしていないわ……。この顔はもとからです」
「とかなんとか言って結構目つきが鋭いのは気のせいですか……?」
「……気のせいよ」

絶対嘘だ。
だってたまに一人目の方の加賀さんを見てはため息を吐いている事があるし。
やっぱり注目する点は二人目はケッコンしないっていう提督の方針があるからかな……?
加賀さんはたまに薬指を弄っている事があるし。

「はぁー……加賀さんってほんとに難儀な性格をしていますよね」
「放っておいてちょうだい……」

これも突っぱねられてしまった。
うーん、これは早々に二人目の赤城さんも艦娘保管庫から出て来てもらって傷心気味の加賀さんを慰めてもらいたいところだな。
そんな時に間が悪いのかなんというか、

「あら……蒼に私、どうしたの……?」
「あ、加賀さん……」

そこに一人目の加賀さんが心配になったのか話しかけてきた。
ちなみに私は加賀さんが言うように『(あお)』って愛称を貰っている。

「なんでもないわ。そう、なんでもないのよ……」
「そう……でもあまり無理はしないようにね。あなたはまだ目覚めてから日が浅いのだからじっくりと強くなっていけばいいのよ」
「あなたは余裕なのね……やっぱり艦隊主力の空母の人は違いますね」
「嫌味なら買ってあげるわよ……? でも、無理して強がらない方がいいわよ。私は私、あなたはあなたなんだから」
「分かっているわ……でもやっぱりあなたを見ていると自身の力不足が分かってしまって焦ってしまうのは仕方がない事なのよ」
「そう……」

あわわ……なにやら加賀さん達が少し暗い雰囲気を醸し出しているよ。
私はこの空気はちょっと苦手だなぁ……。
ひーちゃん(二人目の飛龍のこと)助けてー!

「……でも、そうね。それじゃ少し鍛錬に付き合ってもらってもいいかしら? 少しでも早く強くなりたいから」
「わかったわ。蒼、あなたもちょうどいいから付き合いなさい。もうすぐ改二の練度になるのだからそれまでに甘えている部分を矯正してあげるわ」
「うわーい……」

やっぱりこういう流れになっちゃったか。
二人の加賀さんが揃うとどうしても真面目空間になっちゃうからね。
それから三人で空母寮内にある弓道場へと向かった。
そこに到着すると先にいたのかひーちゃんが鍛錬している姿があった。

「ふぅ……あれ? 加賀さんに加賀ちゃん、蒼もどうしたの?」
「その……愛称とは分かっているとはいえ素直に加賀ちゃんはやめてもらえないかしら? まるで子供みたいだわ」
「でもこれがここの鎮守府での愛称になっちゃったんですから慣れが大事ですよ? 私もすでに諦めていますから」

ひーちゃんはそれで少し遠い目をしていた。
うーん、そう考えると私って結構恵まれている方なのかな……?蒼ってなんか普通の名前っぽいし……。

「まぁ気を取り直して……少し鍛錬をしに来たのよ。ちょうどいいからひーも付き合いなさい」
「いいですよー。私もまだまだ改二になってからそんなに練度は上がっていませんからもっと上げたいところですし」

ひーちゃんは特に不満はないらしいなー。
やっぱり真面目だよねー。普段は飛龍と一緒に酒飲みとかもしているけど。

「それじゃ演習だけでは身に着かないものもあるから気合を入れていくわよ。ただでさえあなた達は実戦の経験はあまりないのだから……」
「まぁ大体は一人目で事足りていますからねー」
「悔しいけどその通りね」
「そうですねー」

ひーちゃんの言う通り、最近は空母の数も増えたのもあって私達はいざっていう時の予備戦力扱いだからねー。
だから通常海域でもあまり出たことがないから加賀さんの言い分にはぐぅの音も出ない感じだ。
それから半日は加賀さんの指導のもと結構鍛錬をしてもらって少しは強くなったかなって思う感じはした。
その後に加賀さんとは別れて三人で歩いている時だった。

「あーあ、でもやっぱりもう少し実戦経験を詰みたいよね、ひーちゃん」
「そうだねー。でもその時が来るのを待つのもいいんじゃないかな?」
「そうね……。いつかは下剋上もしてみたいから」
「うわ、加賀ちゃんって度胸あるね」
「ふふ……それほどでもないわ。それじゃ二人目連合で鳳翔さんのところにでも行きましょうか」
「賛成です! お酒飲みたい!」
「いいですね!」

そのまま三人で居酒屋鳳翔でお酒を嗜んでいたのでした。


 
 

 
後書き
やっと加賀さん二人目に着手しました。
いつかは来るだろうから早めにしておくのもいいですよね。
葛城育てはいつでもできますしね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0244話『クリスマスが近づいてきたある時に……』

 
前書き
更新します。 

 


先日にリシュリューが練度がカンストしたので絆を結んだんだけどこれでようやく戦艦全員と絆を結ぶことが出来た事になる。
だからという訳でもないんだけど新しい戦艦が来ない限りは演習では最近放置気味であった重巡勢を入れて行こうと考えている。
今現在練度が高い重巡は鳥海(練度97)という事になるから、

「そういうわけだから鳥海。今度から演習に入ってもらっても構わないか……?」
「わかりました。この鳥海にお任せください」

鳥海はそう言って可愛くちょこんと敬礼をしてくる。
そう言う仕草も様になるからいいんだよな。
それじゃ、

「大淀。今度からの演習の予定を組んでおいてくれ」
「わかりました。でも、最近限定作戦が終わってから提督は張り切っていますね」
「そうかな? まぁ年末にかけての仕事の追い込みもあるからまだ余裕がある今のうちに色々としておきたいしな」
「なるほど……確かに年末には大本営から新任務が下されそうですからね」
「それにクリスマスの準備もしないといけないし、榛名の進水日もなんとか予定を開けておかないといけないしな」
《提督、ありがとうございます……榛名、嬉しいです》

榛名がそう言って照れている。いつも可愛いなー。

「ですが、クリスマスですか……提督とこの世界に来てからもうそんな時間が経過したのですね……」
「そうだな鳥海。かなり忙しかったから激動の半年ちょっとだったな」
「そうですね。新たな仲間も増えましたし、改二の人も何人も実装されましたから戦力アップにも繋がりましたからね。近々多摩さんも改二になるみたいですし楽しみですね」
「うん。果たして多摩は改二になって軽巡のままなのか、それとも球磨型は全員雷巡になるのかで話は変わってくるからな。個人的には軽巡のままでもいいとは思っているし……」

そこに大淀が話に加わってきて、

「そうですね。提督は最近になって二人目の大井さんと北上さんを育て始めましたから雷巡に関しましては今のところは足りていますからね」
《空母に関しましてもひーさんの育成も終わりましたので現在は蒼さんに加賀ちゃんも演習で少しずつですが育てていますからね。艦隊強化に余念がありませんね》
「まぁ、加賀はいつでも改二が来てもいいように二人目も育てているわけだしな……」
「それの件は例の戦艦に逆戻りしてしまうかもしれないという話ですね? でも、そんな事が本当にありえるのでしょうか……?」

大淀がそれで少し思案気になっている。

「まぁ無いに越したことはないけど、最近は航巡から軽空母にコンバート改装したスズヤンとクマノンの例があるからな。油断はできないし……」
「あはは……確かにそうでしたね」
《最近は少しでも可能性があればそちらに力を注ぐ大本営の強い意思が感じ取れますよね》
「そうですね」

私の言い分に大淀、鳥海、榛名も納得の表情を浮かべているので理解があってとても助かる。

「あ、それと話は戻りますがクリスマスはどうしますか……?」
「どうするかというと……?」
「まぁ、疑問の声も当然でしょうけどまだサンタさんの存在を信じて疑っていない駆逐艦や海防艦の子達もいますから」
「あー……そうだな」

そうか。それだとみんなが寝ている間に秘密裏にみんなの部屋にプレゼントを届けないといけないわけか。それは大変だな。

「……ちなみに聞くけど駆逐艦の中でもう真実を知っているのはどのくらいいるんだ……?」
「それも把握できていませんからツラいところなんですよね。下手に聞き出して知ってしまったらそれこそ大変ですし……」

大淀がそれで困ったと言った感じになっている。
そうだなー。

「それじゃここはやっぱり大型艦のみんなにも手伝ってもらって各自にプレゼントを配るしかないだろうな」
《そうですね。皆さんの好みも把握しておかないといけませんから今から念入りに準備しておかないと大変です》

榛名の言う通りだな。
もう何十人もいる艦娘の中で全員の好みを把握するのはとても大変な作業だ。

「それじゃ各自駆逐艦のみんなに付き合いが深い軽巡や重巡、戦艦、空母その他のみんなに聞き出してくれ」
「了解しました」
「それとつかぬ事を聞くんだけどまさか大型艦の中でサンタさんの事を信じている子はまさかいないだろうな……?」
「「「………」」」

私の質問に大淀と鳥海の表情が引き攣る。
まさか、いるのか……?

「……あながち海外艦の人とかはまだ信じているかもしれませんね? アイオワさんとかグラーフさんとかも意外と……」
「そうなると迂闊に大型艦のみんなにも話を振るのは危険だなぁ……。まずは大型艦のみんなにもそれぞれそれとなく聞き出しておくのが正解だろうか……?」
「ですね。慎重に参りましょう」
《そうですね。金剛お姉さまとかはもう大丈夫だとは思うんですけど……まだ比叡お姉さまとかは危険なラインにいそうですし……》
「比叡はまだ信じていそうだよな……」
「提督。それではまずは各自で信用できる人を誘っておきますね」
「頼む。これは早速忙しくなってくる予感がひしひしと感じられるな。クリスマスの次は大みそかに元旦とこの時期はイベントが詰め込まれているからな」
「頑張りましょうか」
《榛名も応援頑張りますね!》

そんな感じで話はまとまったのでまずはメンバーを慎重に募る事から考えようと動き出した私達だった。
さて、うまくいくかは神のみぞ知るってところか。
みんなの喜ぶ姿を見るために頑張らないとな……。




……ちなみにギリギリ実は鳥海もサンタさんの事を信じていた口だったらしく話し中は冷静でいられたけど陰でこっそり涙を流したとかなんとか……。
話題を出してしまった大淀もまだまだ迂闊であるのは確かな事であった……。


 
 

 
後書き
最後に鳥海をオチにしてみました。
涙目になっている鳥海は可愛いと思うんです。



あ、それと鬼怒がカンストしましたのでクリスマスグラでケッコンします。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0245話『マレー沖海戦について思う事』

 
前書き
更新します。 

 




今日はあの第二次世界大戦の引き金とも言われた真珠湾作戦に続いてマレー半島にて行われた海戦『マレー沖海戦』が起きた日である。
この作戦では主に活躍したのは戦艦ではなく基地航空隊の航空機群だったのは言うまでもない話である。
この作戦で海軍はイギリス海軍が誇る戦艦である『プリンス・オブ・ウェールズ』と『レパルス』を圧倒的な艦載機による攻撃によって撃沈し、世界の常識であった大艦巨砲主義時代に終わりを告げたとも言われていた。







「という事が過去にあったんだがビスマルクはこの件についてなにか思う事はあるかな……?」

私は今日の秘書官であるビスマルクに今日のあった海戦について聞いてみた。
プリンス・オブ・ウェールズはビスマルクにとってもある意味関係が深い戦艦とも言える。
なんせあの『デンマーク海峡作戦』でフッドを沈める戦果を見せたビスマルクだけど、プリンス・オブ・ウェールズの主砲を数発浴びてしまい海水が流入してしまい燃料タンクからも重油が漏れ出してしまっていたために作戦継続が不可能となってしまい、その後の怒りのイギリス軍による『ビスマルク追撃戦』によってアークロイヤルなども参加していたほぼすべての大型艦による攻撃で何度か逃走に成功するも低速での航行を余儀なくされて最終的には英国艦による何百発もの砲撃を受けて最後には沈没した。

「そうね……アークロイヤルとは別としても私には因縁深い相手とも言えるプリンス・オブ・ウェールズが呆気なく沈められたというのは驚きの内容でしょうね……」

そう言ってビスマルクは深く考え込んでいる。
そこから感じるのは郷愁か、あるいは……。

「まぁアークロイヤルというイギリス艦が来た以上はこれ以降も海外艦は増えるだろうからいつかはプリンス・オブ・ウェールズやフッドとかも参戦してくるかもしれないけど、そんな時になって喧嘩とかはしないでくれよ?」
「それについては保証はできないけどわかったわ。ただでさえ最近はアークロイヤルにソードフィッシュを向けられる機会も初期よりは減った方だから仲はいい方だとは思うし……」
「ほう……結構仲良くなったんだな」
「まぁね。アークロイヤルは結局構ってって言っているようなものだからね。あの子の感覚ではお遊び感覚なのでしょうね。まったく困ったものだわ」

そう愚痴を零すビスマルクだけどそれでもどこか楽しそうに感じるのは私の気のせいかな……?
昔には色々あったけど今ではともに戦う仲間だからな。折り合いもついているんだろうな。
そんな時に話題に出ていたのを感じたのかお姫様が執務室に入ってくる。

「私を呼んだかビスマルク!」

バタンッ!と扉が開き笑顔のアークロイヤルとどこか疲れているような表情のウォースパイトが入ってくる。

「げっ……」

案の定ビスマルクは嫌そうな表情を浮かべる。
そしてそんな反応をされてさらにアークロイヤルは刺激を感じたのかビスマルクに顔を近づけながらも、

「なんだ……? 私の話題が出ていたような気がしたのだけど気のせいかしら……?」
「近い、近いわよ! もっと距離を取ってちょうだい!」
「そんな冷たい事を言うな……寂しいじゃないか」
「私はそれでもいいわよ!」

と、二人がじゃれている間にウォースパイトが私に話しかけてきた。

「それでAdmiral……アークロイヤルが言っていましたようにビスマルクとなにを話していたのですか……?」
「ああ、まぁ……今日の海戦についてでいつかはプリンス・オブ・ウェールズもやってくるかもしれないから喧嘩はしないでくれよって感じの話だな」
「まぁ……そう言えば今日はあのマレー沖海戦が起きた日でしたわね。プリンス・オブ・ウェールズやレパルスも戦果を上げれずに沈んでしまい悲しい思いをしたのでしょうね……」

二人の事を思いだしたのかウォースパイトもどこか遠い場所を見るような目をして二人の事を考えているのだろうな。

「……そういえばプリンス・オブ・ウェールズではないんだけど冬の作戦ではイギリスの駆逐艦が参入するっていう話はもうしたかな?」
「そうなのですか。それは少し、楽しみですわね……。Admiral、その子の救出あるいは報酬艦でもどちらでもよいのですが必ず仲間にしましょうね」
「そうだな。うん、頑張ろうか」
「はい」

私とウォースパイトで和やかな雰囲気を出している中で、

「Admiral! 少しビスマルクをどうにかしてくれないか!? 大人しくしてくれないんだ!」
「あなたこそ落ち着きなさいな! ええい、もう! グラーフ! グラーフはいないの!?」

和やか……とは程遠い二人をどうにかしないといけないなぁ。

「ウォースパイト……二人をどうにかしたら紅茶でも淹れてくれないか? ちょっと心労で疲れたかもしれない」
「ふふ……わかりました。それでは四人で仲良くお茶会でもしましょうか」
「頼んだ」

そんな話をしながらも私はその後にビスマルクとアークロイヤルを喧嘩両成敗で叱った後に四人でお茶会を楽でいる時だった。

「そう言えばAdmiral……明日で今回の作戦も終了しますが、もう思い残すことはないのですか……? Admiralが望むならまだ新たな仲間の救出を頑張りますけど……」
「そうだな。うん、大丈夫だ。今回仲間になる艦娘達は全員仲間にしたし、欲しかった子もばっちり手に入れたからな。西村艦隊のみんなも雪辱を張らす事も出来た事だからもう私からはこれ以上は望むことは無い」
「そうですか。それならばよいのです」

そう言ってアークロイヤルは優雅に紅茶を飲んでいた。

「だが、私達の鎮守府はいいのだけど他の鎮守府はどうなのだろうな? 話に聞けばうちより低練度の艦隊が多く存在するのだろう……?」
「そうだな……」

思い出すのはこの世界ではいまだに横須賀鎮守府の長門がうちを除けば最高練度というのは変わっていないだろうし、まだ意識改革もそんなにできていないだろうから大和型を壁にしている鎮守府もまだあるかもしれない。
よその鎮守府の方針に口出しできるほど私もそんなに位は高くないからなんにもできないのは悔しいけど仕方がない現状なんだような。

「まぁそれでも……私達は私達で今の居場所を守るくらいがちょうどいいと思うんだ。なにか要請があればその時に考えればいいさ」
「そうね。それでいいと思うわ」

そんな感じでもうこの件についてはもう話はしなかった。


 
 

 
後書き
今日はマレー沖海戦が起きた日ですね。

それとは別にまだ一日ありますからクリアできていない提督の方は頑張ってください。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0246話『レイテ沖海戦、前篇終了、冬に備えての宴』

 
前書き
更新します。


-追記-

12/12分の更新については活動報告に詳しく事情が書いてありますのでよろしくお願いします。 

 




この世界に来て三度目の大規模作戦も終わりの日を迎えた。
主に西村艦隊の悲願が達成できたことも大きくみんなして海峡夜棲姫や防空埋護姫を倒せたことに大いに喜んでいたのは記憶に新しい。
まぁ、その分海峡夜棲姫に対する複雑な思いもあったみたいだけどもうなんとか落ち着きを見せていた山城たちだった。
だからというわけでもないんだけど、

「それでは、また作戦終了の宴を開こうと思う。みんな、静かに聞いてくれないか?」
「「「はーい!」」」

宴会場でみんなが集まって私の言葉に耳を傾けてくれる。
こういうのは何度体験しても気持ちのいいものだよな。
それはともかくとして、

「それじゃみんな。こうしてまたみんなで無事に作戦の終了を迎えられて私も嬉しく思う。まだ来年のレイテ沖海戦、後篇の作戦に向けてより一層励んでもらいたいと思っている」
「あの……その件なんだけど、ちょっと物申してもいいかしら……?」

そこに朝雲が手を上げてなにかを言いたげだ。
だから発言を許した。

「確かに司令の指示のおかげもあって西村艦隊七人でスリガオ海峡を突破できたのは私も嬉しいんだけど……司令ってまだ山雲に謝らないといけないんじゃないかな……?」
「えー? 朝雲姉、なんのこと~?」
「山雲はもう気にしていないのか忘れちゃっているかもしれないけど司令……今回の第三艦隊での七人編成での件で一回危うく山雲を轟沈させちゃったかもしれない事態があったじゃない?」
「あぁ……その件か。それに関しては本当にすまないと思っている。うっかりと言えば軽い言葉になってしまうが出撃する時に一番後ろにいた山雲の状態をチェックし忘れて危うく大破状態のまま出撃してしまったからな……。なんとかすぐに私が追いかけて引き返したからよかったとは思うけど私もあの時は心臓が破裂するかもしれないと思ったからな……。山雲、ここで言わせてくれ、すまなかったな」

私は素直に朝雲の言い分を受け入れて山雲に対して頭を下げた。
すると山雲は「あははー」と笑いながら、

「大丈夫よ~。山雲は今もこうして生きているんだからもう気にしていないわ~。でも、朝雲姉を悲しませることだけはもうしないでね~?」
「ああ。肝に銘じておく」
「だったらもういいわ~。それと朝雲姉も山雲のために言ってくれてありがたいけどわざわざこの場で司令さんに謝らせるのは酷いと思うのー。みんなが見ているんだからー」
「あっ……そ、そうね。ごめんなさい、司令……別の機会でもよかったんだけどつい我を忘れていたわ……」
「いや、こうして謝る機会を作ってくれたことを感謝しているから朝雲も気にしないでくれ」

私の素直な気持ちも伝えられたのか聞いていたみんなも素直に受け入れてくれたのか、

「朝雲はよく言った!」とか「提督のその素直さも美徳よ」とか「これで心のもやもやもやっと晴れたねー」とか色々と言葉が飛び交っていた。
よかった、みんなに嫌われないで……。
それで私は気を取り直して、

「それじゃ少し変な空気になっちゃったけど、今回新たに仲間になった四人の自己紹介を改めてやろうと思う。みんな、待たせてしまってごめんな。上がってきてくれ」
「「「わかりました」」」

私の言葉を合図に壇上へと上がってくる佐渡、対馬、しおん、涼月の四人。

「最初は、そうだな。佐渡、君から行ってもらってもいいか?」
「おっ、最初は佐渡様かい? いいよー。最初をビシッと決めてやるぜ!」

ニシシッ!と笑みを浮かべながら佐渡がマイクを取ってみんなに向かって宣言する。

「あたしは択捉型海防艦三番艦の佐渡様だー! この鎮守府にはすでにえととまつがいるからあたしの性能はもう大体わかると思うけど対潜掃討で活躍するから期待してくれなー! よろしくー!」

そう言ってビシッと決める佐渡はカッコいいと思う。
外野の深雪から「この深雪様とキャラが被ってるぞー!」とかヤジが飛んできたり「やんちゃっ子も素晴らしいな……」という長門の囁きが聞こえてきたり。

「ありがとう佐渡。それじゃ次は対馬、頼んだ」
「ふふふ……わかりました」

対馬にマイクを渡して壇上に上がる対馬は、

「それでは……私は択捉型海防艦七番艦のつ・し・ま……です。よろしくお願いしますね。この鎮守府には危険がいっぱいなのかはこれからの生活で見極めさせてもらいますね、楽しみです……うふふ」

対馬は最後まで子供らしくない妖艶な笑みを浮かべている為に鹿島とか夕雲が戦慄の表情をしながら「あの子、侮れないわ……」と呟いていたり、他にもあまりにも子供離れしている対馬の態度に駆逐艦の子達からは「おー、大人だー」という声が複数上がっていた。

「あ、あはは……。対馬、ありがとう」
「いえ……司令もこれから見させてもらいますね? 不思議を探求する身としては一番の対象ですから」
「お手柔らかにな……」
「うふふ、はい」

やっぱり冷や汗が出そうになるな、対馬を相手にしていると。
まぁ気を取り直して、

「それじゃ次はしおん、君だ」
「わかりました。それではご紹介に与りました伊400こと、しおんです。妹のしおいがお世話になっているそうですがこれからは私もみなさんとお近づきになりたいですのでよろしくお願いしますね」

そう言ってしおんは頭を下げていた。
それに対して「しおんさーん! 今度は第一潜水隊のみんなで運河にいこうねー!」とイヨが叫んでいたり、「はっちゃん、歓迎しますね。一緒にオリョクル頑張りましょうね」と珍しくはっちゃんが勧誘していた。

「しおん、ありがとう。それじゃ最後を飾るのは涼月、君だ。頼んだぞ」
「わかりました。それでは最後を務めさせていただきます」

そういって涼月も壇上に立って、

「私は秋月型防空駆逐艦、その三番艦の涼月です。みなさんとこれからも海の平和を守れるように頑張りたいと思います。そして秋月姉さん達と同等に坊ノ岬組のみなさんは私の事を長い間待っていてくれたことを聞いてとても嬉しい気持ちで一杯です……。そしていつか……いつかお冬さんもこの鎮守府に来れる事を祈っています……。最後になりますがどうか、これから私の事もよろしくお願いします」

涼月の挨拶が終わると一番大型艦の大和が泣きながら、「涼月さん、よかったですよー……!!」と柄にもなく大声で泣いていた。それにつられてか他の坊ノ岬組のみんなも涙を流しながら涼月の着任に関して喜んでいた。

「よかったな、涼月。そして四人とも、これからよろしく頼む」
「了解だぜ!」
「うふふ、わかりました」
「よろしくお願いしますね」
「はい。この涼月、姉さん達に負けずに頑張らせていただきます!」

四人からの返事も貰えて、これで自己紹介も終わったので、

「それじゃみんな。まだ今回の作戦では半分しかレイテ沖海戦は終わっていないから気持ちを切り替えて次の作戦まで備えてくれ」
「「「了解!」」」
「よし、いい返事だ。それじゃ後は明日に響かないように各自飲んで食べて楽しんでくれ。さらには今夜に発表される多摩の改二も楽しみにしているぞー!」
「にゃ! 任せろにゃ!!」

多摩も気合のこもった返事をしてくれたので、私はグラスを持つ。
それを見てかみんなも各自でコップやグラス、瓶などを持ちながらも私の人事を待っている。
焦らすのも悪いと思ったので、

「いくぞみんな、乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」

私のその一言を待っていたのか一斉に騒ぎ始めるみんな。
それを見ながら私は満足そうに笑みを浮かべて、

「それじゃ榛名。私達も楽しむとしようか」
《はい、提督》

榛名とともにみんなの輪の中へと入っていくのであった。


 
 

 
後書き
2017年秋の中規模(?)作戦『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』を参加の提督の皆さま、お疲れ様でした。
または後三時間攻略するぜ!&掘るぜ!という方は諦めずに頑張ってください。勝利を信じれば完走あるいはドロップ出来ますから。



そして多摩の改二の話は明日に書きますね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0247話『多摩の改二改装と寝坊』

 
前書き
更新します。

今日はこんな時間にすみませんでした。
一日一回投稿は守っていますよー。 

 





《…………とく……》
「………ん……」

なんだろう……? 少し頭がぼんやりしながらもどこからか声が聞こえてくる……。
それで私は少しずつ頭に響いてくる声に耳を傾けていき、

《提督! もう朝の演習時間が終わっちゃいますよ! 早く起きてください!》
「えっ……?」

その榛名のはっきりとした声に私はすぐに覚醒をするとともに少し、いやかなり顔がさーっと青くなっていくのを感じる。
見れば目覚まし時計がかなり遠くに飛んでいる……? もしかして一回止めて遠くにやってしまった後にまた寝てしまったのか……?

「やばい!?」
《提督、やっと起きましたか……今日は多摩さんの改二への改装の日ですのに提督ったらなかなか起きませんでしたから……》
「すまない、すぐに着替える!」
《わかりました。急ぎましょう》
「そうだな!」

それで私は部屋を出る前に一回執務室にいるだろう大淀に連絡を入れる。
少しして、

『提督ですか? どうしたのですか? そろそろ呼びに行こうかと多摩さん達と話していたんですよ?』
「すまない、寝坊してしまった。すぐにいくからもう少し待っていてくれ」
『わかりました。でもそんなに急がなくて大丈夫ですよ。もうこちらでいつもの演習メンバーから提督だけを抜いて遂行しておきましたから』
「仕事が早くて嬉しいなー、私は思わず泣きそうだよ……」
『ですのでまずは身支度と朝食を済ませてから来てくださって結構です。それまで皆さんを引き留めておきますので』
「わかった……」

大淀の配慮に感謝しながらもそれで少し落ち着けたのか溜息を吐いた後に、

《ですが……提督がこの世界に来てからお寝坊をするなんて初めてですね》
「本当にすまなかった。昨日はみんなに明日に響かないようにって言っておいたのに私がさっそく響いていたなんて……限定作戦が終わって疲れていたんだな」
《あはは……。ですが安心しました》
「なんで?」
《提督も普通に失敗はするんだなって。今までこの世界に来てから初めてやる事がいっぱいあったのに提督は頑張って失敗しないでいましたから》
「それは、まぁ……みんなにかっこ悪いところは見せたくなかったからな。まぁ、それじゃ少し急いで朝食を食べにでも行くか」
《はい。あ、提督、髪がまだ少しだけはねていますよ。落ち着いていきましょう》
「そうだな」

それから少し急ぎ足で朝食を済ませて執務室へと向かった。間宮さんにも寝坊した事を驚かれたから今まで気づかないところでかなり気を張っていたんだな……。





「提督! 遅いにゃ!」

執務室に入るなり多摩に怒られてしまった。

「すまない」
「まぁ、反省しているようだし限定作戦明けだから許してやるにゃ……」
「クマー……それにしても提督が寝坊をするなんて珍しいクマね?」
「そうだねー。いっつも早起きしていたからねー」
「そうですね北上さん」
「まぁ、提督もやっぱり人の子だったんだな。少し安心したよ。いっつもやる事は早めに済ませていたから俺達は必要ないんじゃないかって思った事もあるからな」

なんか、みんなに散々な事を言われているような……。特に木曾がひどい。

「そんなに……私はみんなの前では肩筋張っていたイメージだったのか……?」
「まぁ、真面目だよねー。最初の頃なんかアタシ等が快適に過ごせるために色んな人に相談していたからさー。感謝しているんだよ?」
「まぁ、北上さんのいう通りです。私も、感謝していますよ?」
「珍しく大井がデレてるにゃ」
「た、多摩姉さん、そんなんじゃないです!」
「クマー」

そんな感じで多摩がみんなをからかい、球磨はお姉ちゃん故なのかそんなみんなを見守っている感じで無言で笑みを浮かべている。
そして、

「それじゃ提督。さっそく改装室に行くにゃ! もう待てないにゃ!」

多摩が私の手を引っ張って改装室へといこうと言っている。うん、やっぱり楽しみにしていたんだな。本当にすまない。

「少し待ってくれ。大淀、多摩の改装に必要な練度と改装設計図の有無は?」
「はい。多摩さんは練度は70以上で改装設計図は必要だという事です」
「それなら安心だな。多摩はもう練度90もあるからな」
「そうにゃ!」
「それじゃ改装設計図の準備を頼んでもいいか?」
「そこら辺はもう抜かりはありません。すでに準備は終えて明石に渡してきてありますから」

さすが大淀、出来る女は違うね。
そこに感謝しておきながらも、

「それじゃ改装室へと向かおうか」
「「「はーい」」」

それで球磨型のみんなと一緒に改装室へと向かうと明石も私の顔を見て開口一番に、

「聞きましたよー。提督がお寝坊をするなんて珍しいですねー」
「それはもういいよ。反省しているから」
「あはは。でも、提督が寝過ごした事はもう鎮守府中で話題になっていますから覚悟しておいてくださいね?」
「うえー……マジか」
《諦めましょうか、提督》

榛名に慰められながらも、

「それじゃさっそくだけど多摩の改装をお願いしてもいいか?」
「わかりましたー。それじゃ多摩さん、改装室に入ってください」
「わかったにゃ。楽しみだにゃ……♪」

多摩は笑みを浮かべながら改装室に入っていった。
それを確認してか球磨がある事を言ってきた。

「それにしても……情報によると多摩は雷巡にはならないそうだクマね。少し残念クマよー」
「またどうして……?」
「そうクマね。もしこれで多摩も雷巡になっていたなら球磨の雷巡化も決まっていたようなものだから雷巡で戦隊が組めると思ったクマ……」

それで残念がる球磨。
だから私は少し想像してみた。
ちょっと子供のイメージ感覚も取り入れてみて、

『球磨レッド!』
『多摩ブルー!』
『北上イエロー!』
『大井ピンク!』
『木曾グリーン!』
『『『五人そろって球磨型戦隊! 雷巡ジャー!!』』』

そして最後に爆発音。

……とか、アホな事を妄想してみた。
うん、ないな……。

「そうか、それは残念だったな……」

そんなあほな事を考えつつ球磨の頭を撫でて慰める。

「……提督? なんか変な事を考えなかったクマ?」
「気のせいだ」
「そうかクマ……?」

察しのいい球磨に少し戦慄しながらもそこで明石から「改装ボタン、どうぞー!」と言う声が聞こえてきたので私はボタンを押す。
改装室から光が漏れてきてしばらくした後に、

「いい感じにゃ……!」

そこには北方迷彩柄の服を着て少し成長していた多摩の姿があった。
それを見て球磨型のみんなから「おー!」と声があがる。

「多摩、改装終了にゃ!」
「いやー、かっこよくなったクマね! 胸も……うぅー、成長しているクマ……お姉ちゃんは少し悲しいクマ……」
「にゃ!? なんで悲しまれなきゃいけないにゃ!?」

違うんだよ多摩。きっと球磨は仲間がいなくなって悲しんでいるんだ。
球磨もいずれは改二になって成長できるといいな。
とにかく、

「それじゃ多摩。これからも頑張ってくれ!」
「了解にゃ!」

そんな感じで多摩の改装は終了したあとに少し遅れて任務などに手を付けようと考えていたのだった。


 
 

 
後書き
今日の出来事も話に加えていく方針。
まぁ、七時に起きたから寝坊でもないんですけど……。いつもなら5時から6時の間に起きて書いていますから。おのれ目覚まし……。
そして18時前に帰ってきて一時間の早業でー、な感じで書きました。
これから明日の分も書かないといけないからツラい……(自業自得)。

とにかく多摩の改装話でした。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0248話『多摩の可能性と出撃任務』

 
前書き
更新します。 

 




多摩の改二改装から翌日、私は多摩のステータスや装備できるものを確認していた。
でも、やっぱり甲標的は装備できないのが少し惜しいとは感じていたんだよな。
多摩のフル改修の雷装には目を見張るものがあるから余計にそう感じた。
まぁ、ないものねだりはよくないな。
他の項目を挙げていこうか。

まず最近の改二艦の多くが載せられるようになった大発動艇。これに関しては北方輸送をしていた多摩だからこそだろうな。

そしてお次はカ号観測機がなぜか載せられるようになった。これは、どうしてだろうか……? まぁ、制空権を取れるのかは不明だけど対潜装備と一緒に装備すればかなりの効果を発揮できると踏んでいる。未知数だけど対戦特化にするのはお勧めかもしれない。

お次は艦隊司令部施設が載せられるようになった事でいざという時に旗艦を任せられるようになった。これはおそらく冬の限定作戦でもしかしたら多摩が旗艦になる任務でもでるのかもしれない。要件等だな。

そして驚きなのは今まで空母か航空巡洋艦しか載せられなかった熟練艦載機整備員や夜間作戦航空要員などの搭載も可能となった。これに関しては瑞雲や水上戦闘機も載せられるようになったためだろうな。

これ等を踏まえて考えてみると、甲標的は使えないもののそれ以外の項目で軽巡としてはかなりの強化がされた事になる。
なんていうのかな……? 航空軽巡洋艦といったところか。
こうなると、残りの球磨型の球磨はどう強化れるのか今から考えると楽しくなるな。
なんせ今の状態でさえその強さから来る軽巡のオーパーツとしての立場は変わっていないからな。

「多摩の活躍が楽しみではあるな」
《そうですね、提督。それではそろそろ新任務に手を付けていきましょうか》
「そうだな」

それで任務表を開く私。
そこにはこう書かれていた。
『北方海域警備を実施せよ!』と。
内容はモーレイ海、キス島沖、アルフォンシーノの三つの海域を軽巡を一隻含む艦隊でクリアするというもの。
なので、

「モーレイ海とアルフォンシーノは演習艦隊に多摩を旗風と変えてやるとしようか」
《編成を考えるのが面倒くさいんですね……?》
「そ、そんなことはないぞ? うん……」
《まぁ、大丈夫ですけどそれだと提督も出ることになりますよ? いいのですか?》
「そうだなぁ。毎度のこと長門に任せるのも気が引けるけどやってもらうしかないしな」
《はぁ……わかりました。それでは多摩さんと一緒に長門さんも呼びましょうか》
「そうだな」


そしてしばらくして多摩が執務室へと入ってきた。

「提督、多摩の襲撃任務をするんだにゃ?」
「そうだ。まずは北方海域に出撃してもらおうから主砲装備で準備してくれ」
「わかったにゃ!」

それで多摩を旗艦とした私、鳥海、加賀ちゃん、蒼、涼月の六名でまずはモーレイ海とアルフォンシーノに出撃したんだけど、

「……今回は運が良かったんだにゃ。どちらも一発でクリアとは幸先がよいにゃ」

そう言っている多摩は少し幸せそうにしている。
うーん……あんまり特訓ができなかったから私としては少し消化不足だけどクリアしたんだからいいとしようか。

「それじゃキス島に行ってもらおうか。念のためまだカンストしていない高練度の駆逐艦を連れて行ってくれ」
「了解にゃ」

それで私は多摩を旗艦にして、大潮、雪風、照月、朝霜、荒潮の六名編成で出撃してもらった。
だけど今回の多摩はとても運が良かった。
ボス前の戦艦マスでほぼ無傷で乗り切ってこれまた一発でボスにたどり着いてしまったのだから。
それで通信越しに、

「多摩……今回はかなり神がかっているな。これが改二になった恩恵なのか?」
『それはわからないにゃ。でもとてもいい気分だにゃ……』
「そうか。それじゃ次の任務内容が出たから一旦帰投してくれ」
『了解にゃ』

それで多摩との通信を終えたんだけど、

「この調子だと次の出撃任務も結構早い段階でクリアできそうだな」
《それでも油断は禁物ですよ、提督》
「わかっているさ」

それで多摩が執務室に帰ってきたのを確認して、

「それじゃ次の任務なんだけど『北方海域戦闘哨戒を実施せよ!』とあるがその中身は北方AL海域に二回出撃してS勝利を取ってくるというものだ」
「なんだ。それなら簡単にゃ」
「いや、艦の指定が入っている。軽空母、軽巡、水上機母艦を最低でも一隻入れて出撃するみたいだ」
「そうなのかにゃ? でも、それなら別に苦でもないにゃ」
「そうだな。うちの水上機母艦も育ってはいるからな」

それで編成を考えることにした。
まず多摩の旗艦は当然として、軽空母は鈴谷でいこうか。水上機母艦はまだ瑞穂は練度が低いので必然的にちとかちよとコマンダンテストの三人に絞られるけどここは今回は四スロットのコマンダンテストに行ってもらおうか。
残りは瑞鶴に翔鶴に涼月の三人だ。

「よし。至急このメンバーで出撃してきてくれ」
「了解にゃ」

多摩はそれで出撃していった。








多摩はこたつで丸くなりたいにゃ。でも多摩の出撃任務だから張り切っていくにゃ。

「多摩っちも改二になって結構いろいろと立派になったねぇー」
「? スズヤン、なんのことにゃ?」
「あら? 無自覚だったかぁ。これは大変そうだね」

なにが大変かわからないけどなんか馬鹿にされた気分にゃ。後でスズヤンは絞める。

「私が出撃させてもらえるのでしたら対空を頑張りますね」
「涼月、よろしくー。それじゃ翔鶴姉、やろっか!」
「そうね、瑞鶴」
「わたくしは制空権確保に努めていますね。戦闘機しか載せていませんから」
「了解にゃ」
「それじゃいっくよー!」

スズヤンの掛け声で海域に突入していった。
そしてやっぱり姫級の北方棲姫—――ほっぽちゃんが待ち構えていたにゃ。

「カエレ!!」

そう言ってくるほっぽちゃんは、やっぱり冬の海を楽しんでいるのかサンタの格好をしている。
うちのみんなの手前言えないけど結構大概だにゃ。
とにかく、

「進ませてもらうにゃ!」

戦闘が始まってタコヤキがいっぱい艦載機を飛ばしてくるけどなんとか掻い潜って凌ぐことに成功する。
ほっぽちゃんは悔しそうな子をしながらも多摩達は先に進んでなんなくボスを倒して鎮守府へと凱旋にゃ。

「提督、任務終了にゃ」
『よくやった。それじゃ帰投してくれ』

うーん……やっと終わったから軽くお風呂に入ったら後はこたつで過ごしていようにゃ……。


 
 

 
後書き
『北方海域戦闘哨戒を実施せよ!』出撃メモ。


多摩改二     20.3㎝(3号)連装砲×2、零観
瑞鶴改二甲    村田隊×2、岩本隊、52型熟練
翔鶴改二甲    橘花改、噴式景雲改、52型熟練、F6N-3N
鈴谷航改二    友永隊、江草隊、52型熟練、彩雲
涼月改      10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改
コマンダンテスト 強風改、二式水戦改(熟練)、二式水戦改、Ro.44水上戦闘機



多摩も強くなりましたよね。


それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0249話『榛名の進水日ととある薬』

 
前書き
更新します。 

 




「司令! 少しよろしいでしょうか!」

なにやら霧島がいきなり執務室に入ってきてそう叫んでいた。
何事だろうと思っていると、

「司令はご存知でしょうけど本日は榛名の進水日です。ですから少しお祝いでもしましょうか」
「それはいいな。私も金剛達と一緒に榛名のお祝いをしたかったからな」
《霧島、ありがとうございます……》
「うぅ……榛名がやはり提督と一緒というのは少しやりにくいですね。ですがこの霧島、めげません! それでは妖精さん!お願いします!!」

すると突然家具妖精さん達を呼び寄せたのかぞろぞろと執務室に入ってくる。
そして執務室の内装は瞬く間に『金剛の紅茶セット』とそれに準じたものに変化していたのであった。

「相変わらずの仕事の速さ、ありがとうございました!」
【いいってことですよー! それではまたお呼びくださいねー】

家具妖精さん達はいい仕事をしたと言わんばかりに退散していった。後でまた直しておかないとな……。
その後に霧島が執務室の電話を使って金剛と比叡を呼び出していた。
しばらくして、

「ヘイ、テートク! それに榛名も。元気にしてイマスカー」
「比叡も参りましたよー」
「よく来たな二人とも。それじゃこれからみんなでお茶会でも開こうとするか。でもやっぱり榛名が飲めないのが悔しいところだな……」
「ソーデスネー。まだ明石とバリィの発明はうまくいっていないようデース」
《ですが雰囲気だけでも味わえるだけでも満足です……》
「そう言うわけにはいかないわよ榛名」
「そうですよー! もっと榛名は欲を出してもいいと思うんです。そうじゃないと榛名が可愛そうなんですから!」
《霧島に比叡お姉さま……》

そう言われて少し申し訳ない表情を浮かべる榛名。
うーん、こんな顔はあんまり見たくないものだな。
それでどうしたものかという話題になっていた時に電話が鳴り響く。誰だろうと思ったら、

『提督! こんな時のために試作ですが開発に成功しました!』
「明石? なんの開発に成功したんだ……?」
『ふっふっふー! 今からそちらに向かいますからしばしの間、待っていてくださいね!』

明石はそう言って電話を切った後にこちらへと向かうという。

「テートク? 明石はなんて言ってマシタカー?」
「うん。なんでもとある薬の開発に成功したとかなんとか……」
「まさか……このタイミングで?」
「ヒェー……さすがの私もびっくりかもです」
《何の薬でしょうか……?》
「いや、榛名……さすがに予想は出来ると思いますデースよ?」
《……?》

榛名はまだ分からないような感じの表情を浮かべているけど私はなんとなくだけど予想は出来た。
それで私は事前に買っておいた榛名のお祝いの品を机から出してきて、

「まさか、明石はやってくれるとはな。買っておいて正解だったかな?」
「テートク。それは榛名のための……?」
「ああ。渡せないから無駄に終わってしまうかもと危惧していたんだけどな」

そんな感じで話をしていると明石が執務室に入ってきた。

「お待たせしましたー! 明石、到着です!」
「まってましたヨー、明石! それでクスリというのは本当デスカー?」
「はい。まだ試していないので結果はどうなるか分かっていないんですけど妖精さん達と色々と話し合いながらも開発をしたこの『分離薬』を提督に試してもらいたいんです!」

明石の手には七色に光っている薬が一錠握られていた。

「うわっ……またすごい色の薬が出てきましたねー?」
「まだ秘薬の関係で色までは拘れませんでしたから許してください。でも、かなりの一品ですよ?」
「これを飲めば、榛名とまた分かれる事が出来るのか……?」
「理論上は……ですが、まだ試作ですのでせいぜい約二時間が限度だと思います。この薬も結構なお値段を費やしましたので複数量産の目途も立っていませんから大事にご使用くださいね?」
「わかった……」
《て、提督……無理そうでしたらすぐに吐き出しても構いませんからね?》
「大丈夫だ。良薬口に苦しだから我慢してみるよ」

それで明石から薬を貰って少し覚悟を決めながらも一気に口に入れて水で流し込む。
そして、

「「「…………」」」

みんなが無言で見守る中、まだ変化は起きないけどどうなのだろうか?だけど次の瞬間に、

「あ、提督の身体が光りだしましたね!」

比叡の言う通りに私の身体が光りだしていたのだ。
光が次々と私の横に集まっていって、そしたら榛名との繋がりが無くなったのを自覚した。
その感覚は五か月前の時と同じであった。
そして光が収まるとそこには榛名の姿があった。

「私は……」

閉じていた瞳を開く榛名。
それから何度か拳を開いたり閉じたりしている中で、

「やりました! 明石さん、分離できました!」
「よかったです……」
「榛名ー! 良かったデース!」
「比叡も嬉しいですよ!」
「明石さん、ナイスです!」

四人がそれで久しぶりに抱き合って喜んでいたのを見ていると明石がこちらへと振り向いてきて、

「それで……提督? なにか身体に異常とかはありませんか? 一応榛名さんが身体に戻るまでは経過観察しておきたいんですけど……」
「今のところは、ないかな……? 榛名との繋がりが切れている状態なのは確かだけど」
「そうですか。ですが薬の副作用があるかもしれませんので一応異常があったらすぐに言ってくださいね?」
「わかった。明石、色々とありがとうな……こうして榛名と対面できたのは明石の努力があったわけだからな」
「はい。榛名も感謝します。ありがとうございます明石さん」
「いえいえ! こんなことならお安い御用ですよ」
「それじゃ明石もせっかくだからお茶会を楽しんでいってクダサーイ!」
「ありがとうございます!」

それからみんなで楽しくお茶会の時間を過ごして榛名にも新たにプレゼントを渡したりと時間を忘れて楽しんでいた。
そしてきっちり二時間経過した時だった。
榛名の身体が光り出したのは。

「あっ……やっぱり時間切れみたいですね……」
「ふーむ……やっぱり試作品ですからこれが現界ですね」
「でも……よかったです」

榛名はそれで光の粒子となって私の身体に入っていった。
そして、

「おかえり、榛名」
《ただいまです、提督》

こうしてまた榛名は私の中で一緒になって繋がりも感じられるから薬の副作用もないようだしよかったよかった。

「残念デース……でも、これからもっと開発を頑張ってほしいデース!」
「お任せを。提督、まだ油断はできませんから薬の副作用があったらすぐに言ってくださいね?」
「わかった」

それで無事にお茶会は終わったんだけど、まさか翌日に面白おかしい副作用が起きるとは思いもしなかったんだよなと、後に思うのであった。


 
 

 
後書き
榛名と一時的に分離が出来ました。
明日の更新で副作用の話を書きますね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0250話『平和的な薬の副作用(その1)』

 
前書き
更新します。 

 



私、榛名は久しぶりに提督より早く起きることが出来ました。
まぁ、この間に初めて提督が寝坊をしたこともあったのでつい最近のことなのですが、提督の寝顔を見れるのも役得ですよね。
私の顔を見ていて楽しいかって……? 違います、今は提督の顔でもあるんです。霧島には悪いですけどこれも双子の姉妹みたいなものですね。
それでいまだに布団を被っている提督を起こそうと思いましたので提督に話しかけました。
ですけど、

《あれ? なぜか布団のふくらみがいつもより小さくなっているような……?》

いつもとは違う違和感を感じて、それからなぜか胸騒ぎがしてしまいましたのですぐに提督を起こすことにしました。

《提督! もう朝ですよ! 起きてください!》
「…………」

提督からの返事はありません……。
また寝ぼけているのかもしれないのですが今日に限っては少し気分が違いました。
どうしてかって、昨日に明石さんが言っていた事です。
『副作用があるかもしれませんからなにかあったら言ってくださいね?』と……。
だからまさか今になって副作用が起きたのではと心配になったからです。
こういう時にものに触れない自身が恨めしいとも感じてしまいますが仕方がないです。
それから何度も提督を起こすように大声を上げていました。
するとしばらくして布団がもぞもぞと動き出したのでおそらく提督が起きたのでしょうと思いました。
だけど次の瞬間には布団から小さい女の子が出てきて一瞬ですが頭が真っ白になりました。
姿はまるで私が幼子になったかのように……そうですね。松輪さんと同じくらいの女の子が布団から出てきたのです。

《て、提督……?》

提督(?)は何度か周りを見渡して、

「……お姉ちゃん、だれ……? ここはどこ……? どうしてお姉ちゃん透けているの……?」
《い、いやああああーーーーー!!?》

私は気が動転して思わず大声で叫んでしまいました。
て、提督が幼子になってしまってさらに記憶もなくなっているようなのです。
これで冷静になれと言うのがおかしい話です。
だけどタイミングがよかったのか、

「ヘーイ! テートク、朝デスヨ!」
《金剛お姉さま!? よかった……明石さんを呼んでください、すぐに!!》
「ワッツ!? どうしたの、榛名……?……って、まさかこの小さい女の子は……」
《私との繋がりがある事からおそらく提督です。ですから早く!》
「わ、分かったネ!」

お姉さまもお目々ぐるぐるさせながらも電話で明石さんを呼んでいました。
それからしばらくしてバタバタという足音とともに明石さんが寝室に入ってきました。

「榛名さん!? 提督のご様子は!?」
「明石……この通りネ……」

今、提督は金剛お姉さまに抱っこされながらきっと私の金切り声で衝撃を食らって気絶してしまったのでしょう、スースーと寝息を立てています。

「これは……! まさか幼児化ですか」
「多分ネ。これが明石のいう副作用ってモノデスカ?」
「そうだと思います」
《おそらく記憶もないみたいです……私の事が分からなかったみたいですから……》
「そうですか……すぐに医療室に運んでください! 検査しますので!」

それからは行動は迅速に進んでいって提督は医療室のベッドに寝かされていました。
だけどさすがに情報封鎖は出来なかったみたいでぞくぞくと艦娘のみなさんが医療室に集まってきていました。

「提督が子ども化したって本当ですか!?」
「あ……司令が私より小さい……」
「これはもうスクープですね!」

と、みなさんが騒いでいる中で、

「静かにしてください。提督が起きてしまいますよ?」

明石さんに叱られていましたけど、やっぱりと言う感じで提督が目を覚ましたのか、

「う……あれ? また違う部屋……」
「あ、提督起きましたか」
「お姉ちゃんもだれ……?」
「うー……これは一大事ですね。自然に元に戻るのかも分からない以上は下手に治療ができませんから」
「治療……? 私、どこか体が悪いの……?」

コテンと首を傾げる提督の可愛いご様子に「はぁ~……」と歓喜から来ているのでしょう甘い吐息を吐くみなさんの姿がありました。
青葉さんなんて鼻血を出しながらも何度もシャッターのボタンを押していますし。
するとみなさんの中から対馬ちゃんが出てきました。

「うふふ……また司令に不思議な事が起こりましたね。対馬、とっても嬉しいですよ。よしよしー……」

対馬ちゃんがそう言いながらも提督の頭を撫でていました。
提督も対馬ちゃんの不思議な魅力に当てられたのか、

「対馬ちゃんって言うの……?」
「はい、対馬です……。司令、可愛いですよ」
「私……可愛いの?」
「はい。とても愛らしいですよ。思わず食べてしまいたいほどに……」
「ひっ!?」

その子供らしからぬ妖艶な笑みを浮かべる対馬ちゃんに訳も分からない恐怖からでしょう提督は明石さんに抱きついていました。いいなぁ~……。

「あぁ、いいですねー……って、そうじゃなくて対馬ちゃん、提督を怖がらすことは禁止ですよ?」
「ふふふ、すみません」
「ここは適任者に任せましょうか。鳳翔さん、いますかー?」
「はーい。いますよー」

明石さんは鳳翔さんを呼ぶとみんなの中を掻き分けて鳳翔さんが温和な笑みを浮かべながら出てきました。

「少しの間ですが提督の事をお願いしてもいいですか……? 私も人の事を言えないのがちょっとと思いますけど襲われたらシャレになりませんし、それに下手に歩き回れると迷子になっちゃうかもしれないので」
「わかりました。それじゃ提督、少しの間ですが私に着いてきてください」
「怖くしない……?」
「はい。大丈夫ですよ」
「……わかった」

提督は鳳翔さんの手を握ってそのまま空母寮へと向かうみたいです。

「それじゃ各自思う事もあるでしょうけど解散してくださーい! 提督に会いに行きたい方は鳳翔さんの許可をもらってからお願いしますねー」
「「「はーい!」」」

明石さんの言葉で一時的に解散しましたけど、私は提督に寄り添いながら、

《鳳翔さん、それではしばらく提督をお願いしますね。私はなにもできませんから……》
「はい。お任せください。提督は私がきっちり面倒を見ますから」
《はい》

その後なんですけど、一応艦隊運営はしないといけませんから最低限近海の哨戒などを回すそうです。
提督代行も長門さんがやってくれるそうで安心ですね。
ただ……。
長門さんの提督を見る目が少し怖かったのは気のせいでしょうか……?あれはまるで小動物を狩る狼のように目が据わっていましたよね……少し不安です。


 
 

 
後書き
というわけでしばらくは提督子供シリーズが続くと思います。
三日くらいで終わると思いますので次の新任務や行事には間に合わせようかと。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0251話『平和的な薬の副作用(その2)』

 
前書き
更新します。 

 




今、提督と私は鳳翔さんとともに近海の潜水艦掃討の任務に就いている松輪さん達を港まで来て見送っています。

「いってらっしゃーい!」
「い、行ってきますね、司令……!」

松輪ちゃんがいつも以上に笑顔を浮かべて手を振り返しています。
おそらく同じくらいの身体年齢になったのであんまり壁が無くなったのが要因だと思いますけど、もしこれを提督が元の姿に戻った後に教えたら複雑な表情を浮かべる事でしょうね……。

「それでは提督、戻りましょうか?」
「うん、鳳翔さん!」

鳳翔さんの言葉によって提督も笑顔を浮かべながら鳳翔さんの手を握って空母寮へと戻っていくのでしょうね。
その素直さからくる提督の行動に鳳翔さんは少しですけど至福の笑みを浮かべているのも気持ちは分かりますね。

「榛名ちゃん? どうしたの? なにか考え事……?」
《あ、いえ……なんでもないですよ提督》
「そーお?」

ああ、この姿の提督も愛らしいですね。
でも、私としましては早く元の提督に戻ってもらいたいですね。
そしていつもの感じで「榛名」と呼んでもらいたいです。
それはそうと昨日は大変でしたね。
空母寮へと移動した私達は鳳翔さんの私室で提督に色々と質問をしていました。

「それでは……提督? あなたはご自身が何者かは分かっていますか……?」
「ううん、なんにもわからない……」
「ッ……そうですか」

一瞬ですが鳳翔さんも辛い表情を浮かべていました。
その気持ちは分かります。
自分の事はおろか私達の事でさえ分からないのですからツラいですよね。

「それでは質問を変えますね。そうですね……ご自身の性別は分かりますか?」
「え? 女の子じゃないの……?」
「確かにそうですが、提督、あなたはそれでも男性なのですよ……?」
「私、男の子だったの……? でも、えっと、あの……」

提督が少し顔を赤くさせながら言葉を濁らせています。どうしたのでしょうか……?

「どうしました……?」
「さっき、トイレに行かせてもらったんだけど……その、あれがついてなかったよ……?」
「「……ッ!!」」

私と鳳翔さんはそれで一気に顔を赤くさせました。
無邪気とは罪とも言いますけど私の身体でもありますからかなり恥ずかしいです!

「そ、それでも提督は男の子なのです。そう思っておいてくださいね」
「う、うん。わかりました、鳳翔さん……」

どうにも納得がいっていないような表情ですけど一応は納得はしたみたいです。

「あ、それとなんでみんな私の事を提督っていうの……? 私にも名前はあるんでしょ……?」
「そうですね。ですが覚えていないでしょうがあなたは私達にとって唯一無二の提督なのです。ですから名前で呼んでもらいたいでしょうが我慢してくださいね」
「うー……わかった」
「はい。お利口さんですね」

鳳翔さんはそう言って提督の頭を撫でていました。
提督も気持ちよさそうに目を瞑っています。
まるで猫みたいで可愛いですね。
と、そこで襖が少し開いて空母の皆さんが中を覗いていました。

「あら、皆さん? どうしましたか……?」
「はい。鳳翔さん、提督のご容態はいかがですか……?」

みなさんの代表として加賀さんがそう聞いてきました。

「はい。今のところは小さくなってしまった以外には異常はないようです」
「そうですか、安心しました……」

そう答える加賀さんですがやはり気持ち落ち込んでいるようですね。
その表情を見て提督は加賀さんのところへと歩いていって、

「お姉ちゃん、そんな悲しそうな表情をしないで? 私がなにか原因があるんだと思うんだけど、きっと大丈夫だから……」
「ッ……! あなたという人は……どこまで」

それで泣き顔になった加賀さんは提督を軽く抱きしめていました。

「はい。大丈夫ですよ……きっと、元に戻れます。その間は私達もあなたの事を守ります。ですから、安心してくださいね」
「うん……」

と、それを見ていた瑞鶴さんが、

「あの加賀さんを落とすなんて無邪気な提督さんもこれはこれでいいものだね」
「ダメよ瑞鶴。今のこの子には悪いですけどいつもの提督に戻ってもらう事が一番いいのよ……」
「翔鶴もドライだねー。大丈夫よ、明石がきっとなんとかしてくれるからさ」
「飛龍のいう通りだよ。ね、提督? これからはお姉さん達が守ってあげるからね?」
「そうですね。提督、なにか不祥事がありましたら子の赤城に相談してくださいね」

それからも他の皆さんも色々と提督を励ましていたので提督は満面の笑顔を浮かべながら、

「お姉ちゃん達、ありがとう!」
「「「はうっ!?」」」

またしても全員が提督の笑顔に落とされてしまいました……。
提督は罪な方ですね……。




そんな感じで昨晩は空母寮の鳳翔さんのお部屋で一夜を明かして今現在は記憶だけでも思い出せないかという試みで鎮守府中を鳳翔さんの案内のもと、歩いているところでした。

「あ、おーい! 提督ー!」
「うゆ……?」

声をした方へと向いてみれば那珂ちゃんさんが踊りの練習をしていました。見れば舞風さんや野分さんもいましたね。

《那珂さん、どうしました……?》
「うん! 提督が元に戻れるように元気づけるための踊りの練習を舞風ちゃん達としていたんだ! キャハ♪」
「提督ー! 早く元に戻れるといいね!」
「はい。野分も司令が元に戻れるように祈っています」
「う、うん! よくわからないけど頑張るね!」

拳をギュッとしている提督の姿に三人も顔を赤くしながら、

「あちゃー……これは、いけないねぇ」
「うん。司令がとても可愛いです……」
「鳳翔さん! 迷子にだけはさせないでね! きっと今の提督はその可愛さから誰かに誘拐されちゃうかもだから!」
「はい。しっかりと手を握っていますね」

そんな感じで那珂さん達とも別れてその後も何名かと遭遇するたびに心配されながらも一日が過ぎて行って、

「それで、提督。なにか思い出しましたか……? 大体の場所は廻ったと思うんですが……」
「ううん、ごめんなさい……まだなにも思い出せないの……」
「そうですか。でも焦ることは無いです。じっくりと思い出していきましょうね?」
「……うん」

どこか提督は浮かない顔をしていますね。
きっと思い出せないのが辛いのでしょうか……?

「いけないいけない!」

いきなり提督は頬を何度も叩いていました。

「暗い事を考えちゃうとダメだから気持ちを強く持っていくね!」
「提督! はい、それでいいと思います。頑張りましょうね」
「うん!」

鳳翔さんとそう約束して今日は特になにも掴む事が出来ずに一日が終わっていきました。
明石さん、開発の方は順調でしょうか……?








「青葉よ……」
「はい、長門さん」
「礼のブツは……?」
「ここに……」

青葉は長門からそう言われて数枚の提督が映っている写真を見せて、

「高値で買おう。いつ提督が戻ってしまうか分からない現状でこれは貴重な財産になるからな」
「長門さんもいけない人ですねー。素直に会いに行けばいいじゃないですか?」
「それはダメだ。私はいざ提督を前にした時に理性が制御できるか分からない。もしこの力で提督を抱きしめてあの細い腕に少しでも傷がついてしまったら、私は立ち直れないだろう……」
「そうですか。それではまた提督の追跡調査に戻りますね」
「ああ。いい写真が撮れることを祈っている」
「了解です!」

二人の密約はここになされ……、

「あの、長門に青葉……? 私もいる前でそういうのはしないでちょうだい?」

なかった。
二人の会話を聞いていた陸奥が呆れ顔でそう言っていたのであった。

 
 

 
後書き
長門はギリギリ理性を抑えていました。
まだまだ子供状態は続きます。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0252話『平和的な薬の副作用(その3)』

 
前書き
昨日の分を更新します。 

 
「もー! 提督ってとってもかわいいかもー!」
「くすぐったいよー秋津洲お姉ちゃん!」

今日は秋津洲さんが鳳翔さんのお部屋に訪れていて今現在提督とキャッキャと戯れています。
提督も積極的にスキンシップをしようという子に対しては警戒してしまうのですけどなぜか秋津洲さんだけには平気でいられているんですよね。少し不思議です。

「あ、そうだ! ね、提督」
「なぁに?」
「少しだけ秋津洲と一緒にお散歩でもしてこようか?」
「いいと思う! 秋津洲お姉ちゃんなら安心だからー」
「そう言ってもらえると嬉しいかもー!」

二人でそんな話をして盛り上がっています。

《というわけですから大丈夫でしょうか鳳翔さん……?》
「まぁ、大丈夫でしょう。榛名さんももし提督が迷ったら案内をお願いしますね」
《わかりました。それでは秋津洲さん、行きましょうか》
「わかったかもー!」
「かもー!」

うふふ、秋津洲さんの口癖を真似して一緒に言う提督も可愛いですね。
すっかり仲良しになってしまいましたね。秋津洲さんは料理とか掃除に関してはかなりの腕を持っていますからその一切の邪気のない感じで提督との触れ合いも上手ですし、もしかしたら保育さんという職業にも向いているのかもしれません。

「それじゃいこっか。二式大艇ちゃん」

秋津洲さんの呼びかけに二式大艇さんも起動して空に浮かび上がりました。
こういう時は頼りになる相棒がいるのもいいものですよね。

「わー! かっこいいなー!」
「でしょでしょ! 私の二式大艇ちゃんはとってもかっこいいんだから!」
(キュイキュイ!)

秋津洲さんの言葉に二式大艇さんも照れているのか何度も艦首部分を振っています。
ここまで褒めてくれる人も珍しいのでしょうね。
普段は二式大艇さんは大体は航空基地隊で活躍していますからこう目立った場面は少ない方ですからね。

《秋津洲さん、そろそろ……》

楽しそうな雰囲気を壊すのは悪いとは思うのですが今日も提督の記憶を取り戻すために頑張らないといけませんからそう言って行動を起こすように促します。
それを汲み取ってくれたのか、

「あ、わかったかも! それじゃ提督、いこっか!」
「うん! 秋津洲お姉ちゃん!」

二人仲良く手を繋いで歩いていきます。
その姿を見ながら私もいつかはこういうことをしたいなぁとは思うけど我慢ですよね。

「それじゃどこにいこうかー……」
《そうですね。それでは今日は執務室にでも行ってみましょうか。いつも提督がいた場所なら何かの反応を示すかもしれませんから》
「わかったかも。長門さんと大淀さんがいるんだよね?」
《はい。簡単な任務なら今の長門さんでも十分できますから。大淀さんも付いていてくれますから安心です》
「安心ー!」
「そうだよね。長門さんは艦隊の星だから安心かも!」

それで提督と「ねー」と呼吸を合わせているところを見ているので私もそう感じるのですが最近の長門さんはなにかと様子がおかしいといいますか……。少し会いに行くのが不安ですね。
そんな心のわだかまりを感じながらも執務室へと到着しました。
秋津洲さんが扉をノックしながらも、

「長門さーん、いるかもー?」
『なんだ? 秋津洲か。入ってもいいぞ』
「了解かもー!」

そして長門さんの了承を得て執務室の中に入らせてもらったのですけど、長門さんは提督をその目に収めると目を見開いて顔を赤くしていました。うーん、やっぱり他の人より過剰に反応気味でしょうか……。

「ど、どうしたんだ。て、提督も連れているではないか」
「うん。提督のいつもいた場所を巡っているんだけど執務室なら記憶を思い出せるんじゃないかなって思ってきたかもー」
「そうなのか……わかった。特に今は忙しい用事もないので適当に過ごしていても構わないぞ」
「わかったかもー。それじゃ提督、なにか探そっか」
「うん。それじゃなにか記憶に引っかかるものでもあるのかなー?」

提督も積極的に探そうとしています。
でも、提督はなにかを思ったのか長門さんのところへと近づいていきます。どうしたのでしょうか……?

「ど、どうしたのだ提督よ」
「うん。長門お姉ちゃん、いつもありがとね」
「いきなりの感謝の言葉は嬉しいのだが、なんでだ……?」
「うん。なんでかわからないんだけど、いつもお世話になっていたような気がしたの……」

そう話す提督はやはりいつもお世話になっていた長門さんの事を無意識下で感謝しているんでしょうね。
やはり提督は素晴らしい方です。
でも、

「長門さん、しっかりしてください!」
「お、大淀……私はここまでかもしれない……後は……」
「物騒な事を言わないでください! 今ここで長門さんがリタイアしたら誰が艦隊運営をするのですか!」
「あうあう……」

大淀さんに何度も揺すられている光景をみて提督もどこかで悪い気がしたのか、

「あ、あの……なにか悪い事をしたならゴメンナサイ……秋津洲お姉ちゃん、次にいこ……?」
「わかったかも」

私達はそそくさと執務室から退散しました。
いまだに中から大淀さんの叫びが聞こえてきますね。
長門さん、大丈夫でしょうか……?

「提督もかなりやるかも。あの長門さんをノックダウンさせるなんて」
「ううん。なにが原因だったんだろう……?」
《おそらくは記憶を無くしていてもお世話になっていた事を提督が覚えていてくれたことが嬉しかったんだと思いますよ》
「そういうものかなー……?」

そんな話をしながらも廊下を歩いていますと前から少し表情が暗い朝潮さんが歩いてきました。今度はどうされたのでしょうか……?

「……あ、司令官」
《あ、朝潮さん? どうされました? 表情が優れないようですが……》
「いえ、大丈夫です……この朝潮、特に問題はありません……」

そう言う朝潮さんですけどやはり空元気のように見えてしまいますね。
ですけど、提督はそれでなにかを感じ取ったのか、

「朝潮お姉ちゃん、ちょっと付いてきて……?」
「え? あの、司令官……?」
「何事かも……?」

提督の突然の行動に私達は不思議に思いながらも提督の行きたい場所へと連れていかれました。
その場所とは提督の私室でした。

「どうしたのですか司令官……?」
「うん……なぜかわからないけど、ここに朝潮お姉ちゃんのためのものが置いてあると思ったんだ」

まさか、提督はあれを覚えていて……?
それはまだこの状態になる前に購入しておいた朝潮さんのための……。
提督はまるで覚えているかのように私室の中へと入っていってピンポイントに戸棚を探り始めました。そして、

「……あった」
「司令官、それは!」

そこには綺麗にラッピングされていて『朝潮へ』と書かれているプレゼントが入っていました。
そうでした、昨日は朝潮さんの進水日でしたね。

「はい! 朝潮お姉ちゃん!」
「あ、ありがとうございます。で、でも……どうして司令官がこれを……?」
「うん……。よくわからないけど朝潮お姉ちゃんの顔を見たら急にこれを渡さないといけないって気持ちになったの」
「ッッッ! 司令官!!」
「わっ……」

朝潮さんが感極まったのか涙を流しながら提督を抱きしめていました。

「提督、とっても偉いかも……」
《そうですね。提督は忘れていても私達の進水日の事を覚えていたのですね……》

提督は記憶を失っていても私達の事を大事にしてくれているという事を再認識させてくれました。
とても嬉しい気持ちが溢れてきます。
それから朝潮さんはとてもいい笑顔を浮かべながらも「私はどこまでも司令官についていきます!」と言って嬉しそうにしていました。
その後に朝潮さんとも別れて今度はどこに行こうかという感じでいましたが、

「あ、提督。ここにいましたか」
《明石さん……? どうしました? というか隈がすごいですね……》
「あはは……。ちょっと責任を感じていまして夕張ちゃんや妖精さん達と一緒に開発を頑張っていました……その成果もあってついに解毒薬が完成しました!」

そう言った明石さんですけど、提督は少し泣きそうな顔をしながら、

「やっ!!」
「あ、提督ー!?」

秋津洲さんの手を急に振り切って逃げ出してしまいました。

《て、提督! どうされたのですか!?》
「…………ッ!!」

私の問いかけにも答えてくれませんでした。いったいどうされたのでしょうか……?


 
 

 
後書き
最後に提督は逃げ出してしまいました。
次回、感動の幕引きをできたらいいですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0253話『平和的な薬の副作用(終幕)』

 
前書き
更新します。 

 



明石さん達から逃げ出してしまった提督はその後に色々な子達とも遭遇するも何度も掻い潜って最終的には人があまり来ない工廠の倉庫の端の方へと隠れてしまいました。
時間はもう深夜になっているために寒空もあって提督は体を震わせていました。
遠くからはたくさんの提督を探す声が聞こえてきます。
それで私は気持ちおろおろとしながらも提督に問いかけました。

《……提督。どうされたのですか?》
「榛名お姉ちゃん……私は、元に戻らなくちゃいけないの……?」
《そ、それは……》

私はもちろん皆さんも元の提督に戻ってもらいたいと願っています、でも、今の提督の表情を見たらこれ以上の事を言えなくなってしまいました。
提督はもうそれは目元を涙で腫らしてまるで駄々っ子のようになお涙を流しています。

「この二日でもうみんなの気持ちは分かっているの……元に戻る事が私にとっていい事なんだって……でも、そしたら今の私はどうなっちゃうのかなって……? そう考えちゃったらもう怖くなっちゃったの……」

そこまで、今の提督の気持ちは深刻化していたのですね……。
もしかしたら元に戻ったらこの二日間のみなさんとの楽しい記憶は消えてなくなってしまうんじゃないかって、

《提督……》

私はそこまで考えていなかったために少しだけ絶句してしまいました。
私はそれでかける言葉も見つからずに黙り込むしかできずに時間が刻一刻と過ぎていきます。
このままでは提督は凍え死んでしまいます。
だから早く温かい所に戻らないといけません。
ですから、

《提督……? 皆さんのところに戻りましょう……?》
「やだ………戻ったらあの薬を飲む事になるから嫌だぁ……」
《それでも! 提督がこのままでしたらきっと皆さんも悲しみます! ですから薬は飲まなくてもいいですから戻りましょう!》

私は強い口調でいいました。
嫌われてもいい、提督には安心してもらいたいから……。

「榛名お姉ちゃんは、何で私のことをそこまで励ましてくれるの……?」
《それは……提督は、あなたは……私のもっとも大切な方だからです》
「大切……?」
《提督は覚えていないでしょうが私とあなたはとても愛し合っていました。提督が私の事を名前で呼んでくれることが至福の喜びでした……》
「そっかー……榛名お姉ちゃんの事が大事にしていたんだね。元の私は……」

なにかを思ったのか提督はその場を立ちあがって、

「それじゃ、邪魔者は退散しないといけないよね……?」

そう言う提督の顔は泣き笑いのように無理やり自分を納得させているようにも感じられました。
違います、そうではありません!

《そうではありません! おそらく提督は自分がいなくなればすべて解決すると思ったのでしょうがあなたも大事な提督に変わりはないのです!》
「でも、それじゃどうすればいいの!? 私はもう消えるしかないんだよ! いつまでもこのままだったらきっと私の事を気遣ってくれていたみんなも困っちゃう……迷惑をかけちゃう……それは嫌なの! とっても嫌なのぉ……」

提督は癇癪を起したかのように胸の内を暴露しました。
あぁ……こういう時に限って泣いている提督の事を抱きしめてあげられない自身が本当に憎く感じてしまいます。
そんな時でした。

「―――それではこの鎮守府であなたがいたって事の証を残しませんか……?」
「誰……?」
《青葉さん……?》

物陰の方から青葉さんが歩いてきました。
まさか……。

《青葉さん、まさか先程までの私達のやり取りを……》
「はい。榛名さん、すみません。聞かせてもらっていました」

青葉さんはどう言いながらも提督の目線に合わせてしゃがんで数枚の写真を見せてきました。

「これは……?」
「これはあなたがこの数日間で鎮守府で過ごしたメモリーの数々です。私達はあなたの事を決して忘れません。アルバムにしてしっかりと残しておきます」

敢えて盗撮写真とは言わない辺り、青葉さんも悪い人ですね。
でも、今は少しだけ感謝しないといけません。

「だからとは言いませんが……明石さんのところに戻りましょう? 皆さんも心配しています。そして最後には盛大にお別れをしましょう」
「やっぱり、別れなくちゃいけないよね……」
「はい。冷たいようですが今のままでは提督はおろか私達の存在も上層部の方々に気づかれたら処分対象にされてしまいかねません。ですから覚悟を決めてお薬を飲みましょうね?」
「……わかった」

青葉さんの言い分に納得したのか提督は青葉さんの手を取りながらいまだに聞こえてくる皆さんの方へと歩いていきました。
そして、







「提督ー! とっても心配したかもー!」

秋津洲さんが泣きながら提督の事を抱きしめていました。
他のみなさんも提督が見つかって安堵したのか涙を流しています。
そして提督は明石さんのところへと向かい、

「明石お姉ちゃん、お薬飲むね?」
「……いいのですか? 青葉さんから聞きましたが自分という存在が消えてしまうかもしれないんですよ?」
「うん。でも大丈夫……みんなの中に少しでも私が残ってくれるんならそれだけで嬉しいから」
「提督……」

それで一緒に聞いていた鳳翔さん達も涙を流していました。

「提督……この二日間はとてもかけがいのないものになりました。だから、またいつか一緒に遊びましょうね」
「うん。鳳翔さん!」

もう叶わない事だと分かっていても提督は笑みを浮かべながらそう返答していました。
それでもう鳳翔さんは限界だったのでしょう、赤城さん達の方へと向かって涙を流していました。

「それでは、これがお薬です」
「うん……」

提督はお薬を受け取って少しだけ間を置いて、

「みんな! 私はみんなのこと、大好きだよ! またね!」

全員に聞こえるようにそう叫んだ提督は薬を飲みました。
すると途端に提督の身体が光りだしました。
みなさんが静かに見守る中、その場にはもとの提督の姿がありました。
まだ目を覚まさない事から提督の寝室に運ばれました。






それから少し時間が経って午後になった時でした。

「……ん、あれ?」
《提督……!?》
「榛名か。どうしたんだ? そんなに真剣な表情になって……?」
《私の事が、わかるのですか……?》
「分かるって……なにがあったんだ?」

どうやらもとの提督に戻ってくれたようです。
でも、やっぱり記憶を失っている間の事は何も覚えていない感じでした。それだけが少し悲しく感じました。

「しかし、なんだろうな……結構時間が経っているような感じだけど自然と安心できるんだよな」
《そ、そうですか……》
「なにか知っている感じだな。あとで聞かせてもらっても構わないか……?」
《はい。わかりました》

きっと伝えます。
この三日間で起きた幼い提督のお話を。
資料室に閉まってある幼い提督が撮られている写真が収められているアルバムとともに……。


 
 

 
後書き
これで子供提督の話はおしまいです。
ですがまた出てくるかもしれませんからその時まで我慢ですね。



それとなんか年末に夕雲型の改二が来るとか言うので早くだれかを特定して高速レベリングしないといけませんから大変です。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0254話『のたうち回る提督と夕雲型改装案』

 
前書き
更新します。 

 



うわぁーーーーー!!
恥ずかしい! 誰だこんな動画や写真を撮ったのは!?
青葉だな!? 青葉だ! 確定!!
私は昨日までの間に起きた不思議な出来事について榛名から聞かされていく内に顔を青くすること数回……。
まさか子ども化していたなんて……。
それにアルバムに収められた写真の数々(撮った奴、青葉だろう! あきらかに盗撮写真が多めだから)を見せられて何度ものたうち回ってしまう。

「な、なぁ榛名? これは処分しないか……? 後生の頼みだ」
《だーめです。これは大事な思い出なんですから。提督、とても可愛かったですよ》
「うわぁぁぁ!?」

人生何があるか分からないけどまさか子ども化してこんな辱めを受けるなんて。

「うん。やっぱりこれはどこかに閉まっておこう。そうしよう!」
《多分もう無駄ではないでしょうか……? 青葉さんが何枚も複製してみなさんに高値で売っていましたし……》
「やっぱり青葉なんだな!?」

おのれ青葉! あとで痛い目にあうぞ!
そしてもうこの写真の流出を防ぐ手段もない………詰んだ。

《その、提督……。また榛名お姉ちゃんって言ってもらってもいいですか……?》
「勘弁してくれ……」

榛名のそんな要望も何回か断りながら食堂に向かう私達なんだけど、

「あ、普通の提督だ! おはよー!」
「おはよう白露。頼むから普通の、をつけるのだけはやめてくれ」
「えー? いいじゃん! あのちっちゃくて無邪気な提督も可愛かったし……あ、もちろん今の提督も凛としていてかっこいいよー?」
「まるで付け足した様な言い方もなんか傷つくな……」
「あはは! まぁ、今日はだいたいみんなにそう言われるだろうから覚悟しておいた方がいいよー」
「そうだな……。はぁ、気が重い……」

白露とそれで別れたんだけど食堂で鳳翔さんと出会うとどこか熱っぽい視線を向けられたんだけど、鳳翔さんともなにかしたのか……?

「その、提督おはようございます……」
「おはよう。それでその熱い視線は何の意味があるんですか……?」
「い、いえ! ただ……そう、ただですね。また一緒にお布団で眠りたいなって……」
「…………」

照れながらそう言う鳳翔さんに私は絶句した。
そんな羨ま妬ましい事になっていたのか!?
そしてそれを聞いていたのかガタッ!と一斉に席を立ちだす空母組。
なんだ!? 鳳翔さんと寝たのは記憶を失っていた時の私だぞ! だから今の私に言われても困る!
だけどそこで予想外の事を言われた。

「提督……この加賀が添い寝をしてあげますよ?」
「加賀さんずるい! 私も提督さんと一緒に暖かいお布団でうたた寝したいよ!」
「ここは先輩に譲りなさい」
「くぅ! こういう時だけ先輩面するなんてー!」

待って待って! 状況が追い付かない!
その後も飛龍とひーちゃん、蒼龍と蒼の四人が一斉に誘惑してくるし。
赤城は冷静なんだけど翔鶴に関してはどこか後ろめたい事でもあったのか一人悔しそうな顔をしているけどなにがあったんだ……?
それで少しだけ落ち着かない朝食を済ませた後に廊下を歩いていると朝潮が突然現れて、

「司令官! なにかありましたらこの朝潮に言ってください! 聞ける範囲での事ならなんでもしますから!」
「朝潮……お前もなにかあったのか……?」
「はい! 司令官は記憶を失っていても私の進水日の事を覚えていてくださった事に感激しました! ですからなんでも仰ってください!」
「あー……だから渡そうと思っていたプレゼントが無くなっていたのか……」
「はい! 朝潮型のみんなに自慢しました!」
「それはまた珍しい……」

そんな感じでなんとか執務室まで到着してようやく落ち着いたのだけど、先に中にいた長門が私に意味深の視線を送ってきていた。
それで思わず身構えてしまう私。
長門ともなにかあったのか?

「……提督よ。提督が幼くなっていた間、私が代わりに艦隊運営をしていたのだ……」
「そ、そうか。それはすまなかった……」
「まぁそれはいいのだが、なにかそれで言う事があるだろう……?」
「その、ありがとう……?」
「うむ。それが聞きたかった。できればお姉ちゃんとまた呼んでもらいたいものだがな」

長門はそう言いながらも豪快に笑いながら執務室を出て行った。
本当になんだったんだ?
長門と入れ替わりで執務室に入ってきた大淀が私を視界に入れたのだろう、ホッとした表情をして、

「よかったです……もうあの状態の長門さんを相手にするのは疲れましたから」
「なんか色々とあったみたいだな……。大淀はまともそうでよかったよ」
「いえ……まぁ本音を言いますと私もちっちゃい提督と遊びたかったんですけどね」
「……本当に記憶を失っていた間の私はみんなになにをしたんだ……? 気になって仕方がないんだけど……」
「いえ、別段特別な事はしていませんよ? ただ、小さかった頃の提督の素顔を見れただけでも役得だったのではないでしょうか……」
「できれば黒歴史に閉まっておきたい内容だな……」
「ふふふ……みなさんに大小さまざまな影響を与えましたからね。元に戻る前にほぼ全員がいるみなさんの前で『私はみんなのこと、大好きだよ!』と言ってのけた提督は素晴らしかったです」
「なんだそれなんだそれなんだそれ……!?」

どこかうっとりとしている大淀から飛び出してきた内容に私はもうどこかに籠もりたい気持ちで一杯だった。

「と、提督を弄るのはこれくらいにしておきましょうか」
「大淀、あとで覚えておけよ……?」
「はい。覚えておきます。提督は私達に酷い事はしませんから」
「そう言い切られるともうなにもできないじゃないか……」
「えへへ♪」

可愛く舌を出す大淀も可愛いなこんちくしょうめー!

「それでですが話は変わりますが新たな改二改装案が来ていますけど見ますか……?」
「なに……? 誰に来るんだ?」
「はい。なんでも『主力of主力な艦隊型駆逐艦』らしいですね。これはまずいですね……」
「まさかの夕雲型か。いつごろ来るんだ?」
「はい。クリスマスから年末にかけての忙しい時に来るそうです」
「って、もう一週間もないじゃないか!?」
「はい。ですからまだ誰に来るか分からない以上は全員を一応の練度にしておかないと辛いかもですね」
「そうだな……。ここは今まであまり手を付けてこなかったサーモン海域駆逐艦三隻同時レベリングをやるしかないか」
「期日までに頑張りましょうね」
「そうだな」

これから相当頑張んないといけなくなったな。
なんとかしないとな……。


 
 

 
後書き
これは相当恥ずかしいですよね。
記憶のない間にしでかした数々を聞かされるんですから。


夕雲型レベリング頑張ります。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0255話『陽炎型の緊急会議』

 
前書き
更新します。 

 



一つの部屋に陽炎型全員が集合していて物々しい雰囲気の中、一番目立つ場所で腕を組みながら座っていた陽炎が一言言い放つ。

「諸君……集まってもらってありがとう」
「陽炎姉さん、いきなりどうしたんですか……?」

陽炎以外の全員の総意とも言うべき今回の集まりに対しての疑問を親潮が聞く。

「そうね。まどろっこしい前話はいいわ。今回集まってもらったのは他でもない……ついに恐れていた事態が訪れたわ」
「なんでしょう……?」
「雪風、今は真剣な話だから横やりは勘弁ね。そう、ついに夕雲型から一人改二が出るという情報が開示されたわ」
「「「!!」」」

陽炎の一言で全員が大小それぞれ驚きの顔をする。

「ついに夕雲型に先を越されてしまったのよ!」

陽炎は悔しそうに机をダンッとわざとらしく叩く。

「あほくさ……私は先に帰ってもいいかしら……? 妙高姉さんに会いに行かないといけなんだけど……」
「おだまり初風。今回は最後まで付き合ってもらうわよ」
「うえっ……」

陽炎の逃がさない宣言に初風は嫌そうな顔を隠そうともしない。
他の面々もそれぞれ陽炎の本気度合いがかなりあるのか付き合うしかないかという気持ちになっていた。
ただ秋雲だけは本気で嫌そうな顔をしながら、

「あのー、秋雲さんだけ本気で上がらせてもらってもいいかなー? 徹夜で仕上げている本がそろそろ危ないんだよねー」

そういう秋雲はもう死にそうな面をしていてこの会議中もなおクリスタを弄っている手を止めていなかった。
それを見てさすがに陽炎も良心が痛んだのか、

「それじゃいるだけでもいいわ……。作業を進めていてもいいわよ」
「うぃーっす……」

それで秋雲は自己の中へと陥没していった。
それを見届けながら、

「でも、どうしてこう……私の妹たちは纏まり感がないのかしら……?」
「それは陽炎の影響だからではないですか……?」
「不知火、それってどういう意味よー?」
「いえ、寛大なお姉さまを持つと自由が出来ていいですよねっていうことで」
「そ、そうかしら……?」

不知火の話術にそっこうではまる陽炎を見て全員は思った。

(((ちょろい……)))

と。

「まぁ改二云々はまぁいいとしておくわ。前に司令はんと話していたけど陽炎型と夕雲型にそろそろ改二がきてもいいんじゃないかな、って言っていたんよ。だからまぁ祝福してもええんやないの……?」
「えー? 黒潮は夕雲型の方を持つのー? いけないなーいけないなー。時津風は少し不満かな~? だって、後少しで練度70までなるかもしれないというところで急に夕雲型の改二案が来たから演習から外されちゃったしぃー……それに今では夕雲型のメンバーはサーモン海域にばっか出撃しているから夕雲と巻雲、風雲の三人に練度抜かれちゃったし……」
「そういえば先日に夕雲がもう練度70になっていたわね……」

時津風の不満を天津風が見事に煽っていた。嫌な風吹いてるぅーッ!

「まぁそうだな……。だが、後になればなるほどかなりの強化の期待が持てるのだからいいのではないか?」
「そうですね。磯風さんの言う通りだと思います。嵐も現状は不満はあんまりないでしょう?」
「お? まぁ萩ぃの言う通り俺はそんなに焦ってもないかな……? まだまだ伸びしろはあるんだしな」
「谷風さんもそんなにかなー? 改二がなんぼのもんだって奴かな? まぁ実装されるならありがたく賜わるけどね」

磯風、萩風、嵐、谷風はまだまだ余裕を持っている方なのだろう。

「舞風は何とも言えないかなー? 戦場で踊れる機会もあれば楽しいけどそんなに積極的じゃないしー」
「野分も舞風とは理由は違いますがどちらともつかないですかね?」
「舞風と野分は中立派か……残りは浦風と浜風と雪風だけどなにか意見ある……?」

陽炎にそう言って発言を終わらす二人。
それで残りの三人にも意見を聞くことにしたのであった。

「そうじゃねー……うちは提督さんが頼ってくれるんなら思う存分協力はするつもりじゃけん」
「私も同意見です。改二がなくともこの浜風、最後まで戦い抜く覚悟はありますから」
「二人とも考えが固いわねー。まぁいいけどね。で、黙りこくっている雪風はどうなの?」
「雪風は……そうですね。できればあんまり改二にはなりたくないですかね」

雪風の意外な意見に陽炎も興味が引かれたのか理由を尋ねることにした。

「またどうして?」
「もし……もし改二になったら雪風は雪風ではなくなってしまうかもしれないですから……」
「「「あー……それはありえるかも」」」

全員の意見が重なった瞬間だった。
もし生前の艦の最後まで引継ぎがあるのであったら響、ろーちゃん、ごーちゃんと言った名前自体が変化する艦娘のように雪風も中国の船に名前が変わってしまうからだ。

「かの国での活躍も雪風は誇りに思っています。ですが日本艦のままでいたいです……」

そこにはかつてない決意をしている雪風の姿があり、さすがの陽炎もそろそろ議題に熱が入らなくなってきたのか、

「そうねー……少し頭を冷やしたけど、素直に歓迎してやろっか。来年になればもしかしたら陽炎型ラッシュが来るかもしれないしね」
「来ればいいですね」
「不知火! そこで不吉な事を言わないの! 本当に来なかったら嫌じゃない!!」
「きゃー……」
「あ、待ちなさい!」

不知火は無表情で悲鳴を上げながら部屋を飛び出していった。
そんな不知火を陽炎は別の意味で血が昇ったのか追いかけて行ってしまった。
それで会議室はグダグダになったので、

「それじゃかいさーん!」
「「「はーい!」」」

それで各自戻っていく一同。
ただ一人、自己に陥没していた秋雲だけが部屋に残されていて、

「出来たー! あれ!? みんないない!?」

と慌てていたとかなんとか。


 
 

 
後書き
夕雲型練度点呼!

夕雲(70)
巻雲(60)
風雲(55)
長波(70)
高波(37)
藤波(38)
沖波(37)
朝霜(97)
早霜(34)
清霜(70)

現在5-4で急ピッチ練度上げをしているところです。
早く、誰が来るのか発表してくれ!
安らぎが欲しい!



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0256話『長波の喜び』

 
前書き
更新します。 

 




先日に大本営から送られてきた電文で大体の改二になる艦娘の候補が分かったのでその対象者を執務室に呼ぶ事にした。
電話で呼んだ後に、

「しかし、この時期に改二改装案が来るとは大本営も突拍子もないよな」
「そうですね。ですが艦隊強化に繋がるのですからいいと思いますよ」
《はい。榛名もいい事だと思います》

大淀と榛名とそんな話をしていると扉がノックされたので来たのだろうと思って、

「入っていいよ」
『あいよー!』

少し軽い調子の声が聞こえてきて、次いで中に入ってきたのは夕雲型四番艦の長波だった。
長波は笑みを浮かべながら、

「それで提督。このあたしになんの用だい……?」
「そうだな。もううわさは聞いていると思うけど夕雲型に改二改装案が来ているのは知っているな?」
「おう!……って、おいおいまさか!」

長波は軽快に返事をした後に今回呼ばれたことに対して感づいたのか驚きの表情をする。
気づいたのだろうな。今回改二になるのは誰なのかを。

「そう。そのまさかだよ。長波、今回改二になるのは君が一番近しいと思う」
「まさか! ほ、本当なのか!?」

まだ信じられないのだろう疑いながら聞いてくる長波に私は大淀に話を振って電文の内容を教えることにした。

「大淀、頼んだ」
「わかりました。長波さん、今回の電文でこう書かれていました。
『主力駆逐艦として建造されながら、厳しい戦局下に次々と斃れていった姉妹たち。その中でも奮戦を続け、最期はレイテ島近くで眠りについた、ある名駆逐艦の改二改装を実装予定です』と……」
「マジか……島風とか言うオチはないよな?」
「ここまできてそれはないだろう」
「はい。ですから長波さん、素直になりましょうか」

それで先ほどまで疑心暗鬼だった長波もようやく諦めたのだろう、溜息を吐きながら、

「わかーったよ。もうあたしって事なんだな?」
「そうだ。だからさっそく練度上げに行こうか」
「わかったぜ!」

さっそく乗り気になったのかニシシと笑みを浮かべながらそう返事をしてくる長波。

「それにしても……」
「ん? どうした?」
「いや、なんていうかあたしに改二が来るのは嬉しいんだけど、清霜に悪いなぁって思ってな」
「あぁ……それはわかる」
「確かに、清霜さんなら言いそうですね」

大淀とそれで笑いあう。
確かにすぐに「戦艦になれるもん!」と駄々をこねる清霜の姿が連想できた。
私は笑みを浮かべながらも、

「まぁそこら辺はなんとか対応しておいてくれ」
「まぁわかったよ」
「それに素直に喜んでくれるかもしれないだろう?」
「ま、そだなー」

長波もなんだかんだで夕雲型のみんなには信頼されているからおそらく大丈夫だろうな。

「そんじゃ少しみんなに話してくるよ」
「そうか、わかった。それじゃさっそく演習に入れておくから準備はしておいてくれ」
「了解!」

それで長波は執務室を出て行った。








やった! まさか夕雲型で最初に改二が来るなんて嬉しいぜ!
あたしは提督から聞かされた内容に少し浮かれながらも夕雲姉の部屋へと到着した。
扉をノックすると中から夕雲姉の声で『はーい!』と聞こえてきたので、

「長波だ。入ってもいいか?」
『大丈夫よ』
「そんじゃ入らせてもらうわ」

中に入るとやっぱりと言うべきか巻雲が一緒にいた。

「長波? どうしたの?」
「長波さん……?」
「いや、なんでもない……」

二人の不思議そうな表情を敢えて見なかったことにして、

「それより夕雲姉、聞いてくれよ! 例の夕雲型の改二の件なんだけどさ……!」
「あら? もしかして……長波さんだったんですか?」
「って、気づくのが早いよ!」

アタシは早速とばかりにつまづいてしまった。
だけどそれを聞いて巻雲が「えー!?」って声を上げながら、

「長波だったのですか!? いいなぁ~……」
「まぁな。だから先に行かせてもらうぜ」
「ずるいですよー!」
「まぁまぁ、巻雲さん落ち着いて……いいじゃない? なかなか来なかった夕雲型についに改二の光が差したんですから素直に祝福しましょう?」
「うー……夕雲姉さんがそう言うなら従うけどー……」

巻雲はそう言って引き下がっていった。
さっすが夕雲姉だな。心が広すぎるぜ。

「それで長波さん。他の方にはまだ……?」
「ああ。まだ二人にしか話していないよ」
「そうですか。それじゃすぐにみなさんを呼びましょうか」
「それはとてもいいと思うー! さすが夕雲姉さん! 長波ー? 覚悟しておくんだねー?」
「お、おう……巻雲が言ってもなんか迫力がないけどわかったぜ」
「なにをー!」

袖をパタパタさせながら怒っているけど、いや本気で迫力がないねぇ。
まぁそこが巻雲らしいけど。
それから他のみんなも夕雲姉の部屋へと呼ばれてぞくぞくと集まってきた。
そしてあたしの改二の情報を聞いたのか、

「長波姉さま! 改二、おめでとうかも!です……」
「あんがとな、高波!」
「はいです!」

さっそく高波がアタシの事を自分の事のように喜んでくれた。
高波はあたしになついているからなぁ……。嬉しくなるぜ。

「はぁー……長波姉様に先を越されちゃったかー。でも、清霜もこれから頑張るよ!」
「その意気だぜ清霜。あたいも練度は充分だから後は待つだけだしなー」

そうなんだよなー。朝霜だけはうちらの中で一番の高練度(97)だからなー。先制対潜組はやっぱり違うよなー。

「長波! 改二の決定、おめでとう!」
「おう、あんがとな風雲姉!」
「長波姉さん……改二、おめでとうございます……ふふふ」
「早霜もありがとな!」
「長波姉さんが改二かぁ……嬉しくなってきますね」
「そうだな、沖ちん」

みんなから祝福の言葉を何度もされてそこで夕雲姉が笑みを浮かべながら、

「ね? みなさんも素直に喜んでくれたでしょう?」
「そうだな。よかったぜ……」

みんなに感謝をするあたしだった。
やっぱり姉妹っていいもんだよなー。


 
 

 
後書き
今現在リランカで長波を上げているところです。今日中には80にしたいですね。(現在73)




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0257話『子日と長波と国後の関係』

 
前書き
更新します。 

 




今日は何の日? 子日の進水日だよ!
え? 聞いていないって? そんなぁ……。
だけど提督はきっと私のところに来てくれると思うから安心しているんだぁ。
初春姉さんに若葉や初霜もきっと祝ってくれると思うから恵まれているなーって思う事だよ。
だけど、そんな時に子日の部屋に誰かがやってきたのかノックをしてきた。
提督かなー?
誰でも嬉しいけどそれで出て行くと、

「お、子日。いたか」
「あ、長波ちゃん! どうしたの?」
「いやな、お前の進水日のお祝いをしに来たんだけどなんかもしかしてあたしが一番乗りな感じか……?」
「そうだよ! 長波ちゃん、ありがとう!」
「いやー、それならよかったよ。なんせ先日まで改二に向けて練度上げの日々を送っていたからなかなか酒保に買いに行けなかったんだ」
「そっかー。そういえばもう長波ちゃんも改二になるんだよね? 練度とかは大丈夫……?」
「ああ。そこら辺は提督が頑張ってくれたからもう80まで達したから一応は安心ラインだと思うけどな」
「そうなんだー。よかったね」
「おう!」

それで長波ちゃんはいい笑顔を浮かべる。

「それじゃいつまでも扉の前じゃ悪いから入って入って!」
「それじゃ上がらせてもらうぜ」

長波ちゃんが中に入ってきてさっそくとばかりにプレゼントを渡してくれたのでありがたく受け取ったの。

「なんか恥ずいから後で開けてくれな?」
「わかった!」
「でも……なんかこうしていると昔を思い出すよな。まぁ、艦時代の話じゃないんだけど艦娘として鎮守府に配属されたはいいものの、子日ときたら初春型以外の奴らと関わるのが苦手みたいであんまり話しかけないでいたよな」
「あー……そう言えばそうだったね。その時はまだ提督とは直接出会っていない頃だったし話しても信じてもらえないだろうけど結構臆病だったんだよね、子日」
「そうそう。だから仕方がないからあたしが色々と見んなと関わるきっかけを作ってやっていたんだよな」
「うん! 長波ちゃんのおかげでみんなとも仲良くできるようになったんだ。ありがとね、長波ちゃん」
「まぁ、あたしもそれは同じだからお相子だな」

ニシシと笑う長波ちゃんはやっぱり頼りになれる子だよね。
話に聞くところによると今現在で実装されている夕雲型で姉妹の子達と艦時代では唯一全員と面識があるとかで艦娘になってから色々と取り持ってやったとかなんとか。
姐御肌で面倒見もあるから憧れちゃうなー。

「それでさー……」

それから少しの間、長波ちゃんとお話に花を咲かせていたらまた誰かがノックをしてきた。
今度は誰だろう……?

「あたしはいいから出てやんな」
「うん。はーい!」

子日が扉を開けるとそこには意外な人物というか子日的には少し苦手な子が立っていた。

「……その、来てやったわよ」
「く、国後ちゃん……」

少し照れているのかそっぽを向きながらも目では部屋に入れなさいと訴えてきていた。
うーん……国後ちゃんとは少し苦手な間柄なんだよね。
直接子日が悪いわけじゃないんだけど、子日の艦長さんが国後ちゃんの艦長さんにどえらい態度を取ってしまって、階級が上であると分かった途端に直接船にまで赴いていったという艦時代の話がある。
だから艦長さんの影響もあって子日も少しだけ国後ちゃんは苦手な存在とも言えるんだ。
でも、こうして国後ちゃんから会いに来てくれるんだったら歓迎しないといけないよね。
そう思った子日は国後ちゃんを部屋に通すことにした。

「それじゃ入って!」
「反応が遅い! それじゃ海の上では致命的よ!」
「きゃん!」

さっそく怒られちゃった……。
やっぱり厳しい性格しているよね。

「お、国後じゃん!」
「長波、あなたもいたのね……上がらせてもらうわよ」
「おう。入れ入れ」

なんか、すでに長波ちゃんに部屋を乗っ取られている気がするのは子日の気のせいかな……?

「しっかしお前から子日に会いに来るなんて珍しいな」
「はぁ!? べ、別にいいでしょ! あたしだって子日さんと話がしたいんだから。でも、なかなかタイミングが合わないからこちらから会いに行くしかないじゃない!」
「おー……なになに? 意外と国後の方は子日の事を気にかけてるんだな」
「べ、別に……そんなんじゃないわよ」

あれあれー?
なんか変な空気になってきたねー。
実は国後ちゃんて子日の前では照れ屋さんだったの……?
だとしたら、

「それだったら子日も嬉しいかな! 国後ちゃんと仲良くしたかったから!」
「わっ! ちょっとー。あんまり引っつかないでよー!?」
「嫌よ嫌よも好きの内って奴だなー」
「あんたは黙っていなさい!」

それから少しだけ三人でコントのような会話をしながら話が盛り上がってくる。

「……はぁ。子日さんはともかく、長波は一緒にいると疲れるわね……」
「あ、ひどいなー!」
「まぁ……今日は子日さんの手前、許してあげるけどね。そういえば、長波は近々改二になるそうじゃない……? おめでとうって言っておくわ」
「お、ありがとな!」
「それじゃ子日さん。遅くなっちゃったけどプレゼント、受け取ってちょうだい」
「ありがとー! 後で開けるね」
「ええ、構わないわ」

今日は二人に祝ってもらって嬉しいなー。
だけどふと複数の気配を感じたので扉の方を見ると隙間から提督、初春姉さん、若葉、初霜の四人の顔が見えたので、

「もー! 隠れてこっちを伺っていないで入ってきてもいいよー!」
「いや、なんか邪魔したら悪いかなって思ってな」
「そうじゃのう。なかなか珍しい組み合わせじゃったからのう」
「……楽しそうでなによりだ」
「はい。子日さん、とても楽しそうでしたよ」

うう……。いつから見ていたんだろう?
だけど、

「みんな! ありがとね! 子日、とっても嬉しいよ!」

それからみんなが子日の事を祝ってくれた最良の日でした。まる!


 
 

 
後書き
ながねのはジャスティス。
そしてねのくなもいいですよね。国後が「子日さん」って呼ぶところに愛を感じます。



長波の練度、80になったのでメンテナンスの日まで待機です!



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0258話『狭霧の進水日の過ごし方』

 
前書き
更新します。 

 




もう明日にはクリスマスイブです。
鎮守府も少なくない賑わいを見せてきました。
あちこちの艦娘の寮ではツリーや年末の買い出しなどもしている人が目立ちますね。
私も先ほどまで天霧さんと一緒に明日の準備などをしていたところでしたね。
この鎮守府にやってきて初めてのクリスマス……。
聞けば皆さんもクリスマスをこうして過ごすのは初めてとのことですので何が起こるのか今から楽しみになってきますね。
そんな時でした。
私が廊下を歩いていると、

「狭霧ちゃん♪」
「え? あ、はい。なんでしょうか蒼龍さんに蒼さん?」

私の前に蒼龍さん達が現れました。
一航戦と二航戦の方々はお二人ずついますから少し見分けがつかなくなる時があるのですけどそこら辺はまぁ雰囲気で察しろという事で頑張って覚えていますね。
どうも一人目の方はやっぱり年期があるのか貫禄のようなものがありますが、二人目の方はまだ控えめな印象があるんですよね。
まぁ、それはともかくといたしまして、

「狭霧ちゃんは今日って何の日かわかるよね?」
「分かってないわけないわよ、私!」
「そうよね、蒼!」

やはりお二人は同じ思考をしているようですのでいつもの調子でキャッキャと騒いでいます。可愛いですからいいのですけど、今日は何の日ですか……。
子日さんではないですけど、そうですね。
そこで私ははたとあることに思い至りました。

「あ、そうでしたね。今日は私と蒼龍さんの進水日でしたか……?」
「そう、その通りだよ!」
「やっぱり狭霧ちゃんはしっかりしているから覚えていたんだね!」

なるほど……それで私に話しかけてきたんですね。
それでは今日は噂に聞く提督が私達にプレゼントを持ってきてくれるのでしょうか……?
蒼龍さん達はそれでどこか嬉しいのか、

「クリスマスイブ直前に進水日っていうのもなんか乙な物よね」
「そうですね。蒼龍さん達はもしかして提督がプレゼントを持ってくるのが楽しみなんですか……?」
「それもあるんだけど、空母のみんなでこの忙しい時期に私達のためにいろいろ準備してくれていることが嬉しいんだよね」
「そうそう。飛龍とかひーちゃんとかも私達が手伝おうとすると『今は大丈夫だから外に遊んできなさい』って言われて空母寮を締め出されちゃったし……」

たはは……と頭を掻きながら嬉しそうに笑う蒼さん。
それを見て私のもデジャブのようなものが起こりました。
そういえば、

「そうですね……そういえば私も綾波姉さん達にちょっと準備しているから暇してきてちょうだいって言われたのですけど、そう言う事でしょうか……?」
「多分そう言う事だと思うな」
「うんうん。やっぱり姉妹がいるといいよね。私達は姉妹艦はいないけど空母みんなが家族のようなものだから」

それは、なんといいますか……羨ましいものですね。
空母の方々は最近では人数も増えてきましたので様々な方がいらっしゃいますから飽きは来ないでしょうし。

「まぁ、本題なんだけどそれで少し手が空いちゃっているから同じく暇してそうな狭霧ちゃんを誘いに来たんだー」
「私をですか……? 構いませんけどなにかをするのですか……?」
「うん。提督もきっと私達にプレゼントを渡す機会を伺っていると思うからどうせなら一緒にいた方がいいと思ってね」
「はぁ……確かにそうですが私で構わないのですか?」
「ぜんぜん大丈夫だよ! 違う艦種の子達ともたまには交流も深めておかないといけないしね」
「そうそう。楽しんだもの勝ちよ!」

蒼龍さん達はとても愉快な性格ですから私もつい乗せられてしまいそうになります。
確かに、それなら私も付き合うのは吝かではありませんね。

「わかりました。それでは少しの間ですが一緒になにかやりましょうか」
「決まりね! それじゃさっそくだけど間宮にでもいこっか! きっと間宮さんもサービスしてくれると思うしね」
「そんなわけで行きましょう!」

お二人に両手を掴まれてまるで連行されるように連れていかれました。
まぁ、たまには贅沢もいいですよね……?
ついつい節約思考が働いてしまうのは私の悪い癖ですから。
それで到着した甘味処間宮で、

「間宮さーん! あんみつ三人分お願いします!」
「はーい! あ、蒼龍さん達に狭霧ちゃんでしたか。それでは今日は進水日ですからなにかサービスしておきますね」
「やりぃ♪」
「思った通りだったね蒼龍」
「そうだね蒼」

お二人がそれで騒いでいる中、少し悪いと思ったんですけどやっぱり気が引けるものですね。
それを察したのかお二人はにんまりと笑いながら、

「もう! 表情に出てるよ。狭霧ちゃんは考えが固いよ! こういう時くらいは楽しまなきゃ損だよ!」
「そ、そうですね……でもこう言う事はあまりしないので慣れないものですね」
「こういうのは慣れが必要だよ。何事もこの鎮守府ではみんながみんな優しいんだからそれを受け入れるのも器が問われるよ」
「そうですね……他の鎮守府ではどうかは分かりませんがここはとても暖かい場所ですから私も慣れないといけないですよね」
「そうそう。だから楽しんじゃおうよ」
「はい!」

それから間宮さんの特別なあんみつ贅沢セットを三人で食した後に、

「あー、美味しかった! さっすが間宮さんだね」
「うんうん。それじゃこれからどうしよっか?」
「そうですね。娯楽施設はあるにはあるのですが数は限られていますからね」

そう、この鎮守府は提督がみんなの意見を聞いてそれぞれ要望に沿ったものを家具妖精さん達にお願いして作ってもらっているとかなんとか。
提督曰くストレスを溜めない環境を作りたいとか言う事で。
だから結構色々なものがあるんですよね。
運動場もあれば雨の日とか用に屋内訓練場とかもありますし、鳳翔さんとかも居酒屋とか開いていますしね。
私もたまに天霧さん達と行った事があるのですけど、良いところでしたね。
それで考えている時でした。

「おーい、三人とも」

そこで提督の声が聞こえてきました。
振り返ると提督が私達を探していたのか少し息が上がっていました。

「やっと見つけた……」
「あら? もう準備とか整ったんですか提督?」
「ああ。空母のみんなとか綾波達が準備は終えたらしいから呼びに来たんだ」

そう言う提督はいい笑みを浮かべていました。
やっぱり提督は優しいですね。
みなさんの進水日には必ずなにかを準備してくれますから。

「それじゃ三人とも。進水日のお祝いとして小さいけど会場は確保してあるからさっそくいこうか」
「「やったー!」」
「提督、それではお付き合いいたしますね」
「ああ。プレゼントも用意してあるからぜひ楽しんでくれ」

その後に私達はみなさんの準備したケーキなどを食べさせてもらいました。
間宮さんのところであんみつを食べたばっかりでしたから少し口の中が甘いですけどせっかく用意してくださったんですから美味しく頂かないとですよね。

「うん。美味しい……♪」

この鎮守府に配属できてよかったと今もいえますね。
これからもみなさんとこうして楽しみたいです。
私は、そう思いました。


 
 

 
後書き
今回は狭霧を主役で書きました。
楽しんでいただけたら幸いです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0259話『クリスマスのサンタさん作戦』

 
前書き
更新します。 

 




『……こちら金剛。磯風たちに届けたネ』
「了解した。速やかに移動してくれ」
『分かったネー!』

金剛の他にも色々な艦娘達から報告が入ってくる。
今、私達は何をしているかというと時間は深夜の中、クリスマスイブという事で駆逐艦や海防艦に潜水艦のみんなにクリスマスプレゼントを届けているところだ。
時間は少し夜のクリスマスパーティーまで遡ることになる……。






「このケーキ、うまー!」
「う、潮……あんまり食べ過ぎないようにしないと……!」
「メリー、クリスマスー……わーい……」

と、各自でいくつものクリスマスケーキやターキーなどを食べて楽しんでいるみんなの姿があった。
この日のために発注しておいて正解だったな。
さすがに全員分のクリスマスケーキとなると間宮さんや鳳翔さんだけじゃ賄えないからな。
皆が騒いでいる中、背中を叩かれる。
振り向けば長門や他の大型艦のみんながいた。

「……提督よ。今晩の予定は大丈夫か……?」
「……ああ、抜かりはない。もう全員分のプレゼントは用意してある」
「……そうか。それではみんなが寝静まった頃に作戦の開始だな」
「……ああ。それまではみんなもそれぞれ楽しんでくれ」
「……わかった」

私達は小さい言葉でそうやり取りを交わしてまた解散をする。
そこに駆逐艦のみんなが「長門さんと何を話していたの……?」と聞いてくるけど適当に誤魔化しておいた。
今夜は忙しくなるぞ!






……というわけで私達はわざわざこの時のために作戦司令部まで設置して各自でプレゼントの配布を行っていた。

『阿武隈です! 第七駆逐隊のみんなはオッケーです!』
『由良です。白露型のみんなも大丈夫です。少しだけ気づかれそうでしたけどなんとかプレゼントを置いてきました』
『羽黒です。神風型のみなさんも万事大丈夫でした』

と、みんなから次々と報告が入ってくる中、

「これでしたらもう平気ですかね……?」
「そうだな、大淀。だけどまだ油断はできないのがうちの子達なんだよな」
「そうですね。全員に配り終えるまでは油断は禁物でしたね」

大淀とそんな会話をしていると、何やら切迫しているような報告が入ってくる。

『こちら山城! 満潮に気づかれそうです!』
「状況は!?」
『不幸だわ……まだ寝ぼけているみたいで目を擦っていますけどどうしましょうか……?』
「まだ誤魔化せるか……?」
『やってみます……』

その後にしばらくして、

『な、なんとかやり過ごせました。また眠りについたみたいです……』
「そ、そうか……それならよかった。そのまま続行してくれ」
『了解です……ああ、姉様助けて……』

山城はそんな助けの声を発したけどなんとか遂行しているようで安心して良いのか……?まぁ大丈夫だろう。
と、安堵しているとまたしても報告が入ってくる。

『こ、こちら足柄! 朝霜が追ってきているわどうぞー!』
「なんとか逃げてくれ……妙高、代わりに朝霜の場所にプレゼントを届けてくれ」
『了解しました』
「それと誰か足柄の近くにいるものは救援を。川内なら尚更いいな。朝霜はこの際意識を奪う覚悟で行ってくれ。明石はこの晩だけの記憶を奪う薬の用意を……」
『了解だよ! 背後から一瞬で意識を奪うね!』
『了解しましたー! 明石、向かいます!』

と、なんとかやり過ごせそうだな。
それで席に着席しながら、

《ですが、明石さんはそんな薬を開発していたんですね》
「ああ。なんでも前に分離役を作った副産物で開発できたとか……」
《な、なるほど……》

榛名が少し汗を流しているところを見るとやっぱりあんまり反応はよろしくないように見えるな。まぁ仕方がない。

「この調子だと後は潜水艦担当の龍鳳に海外艦担当のビスマルクとイタリアくらいか。報告がないのは……」
「そのようですね」

だけどそこで作戦司令部に優雅にビスマルクが入ってきた。

「ビスマルク? どうしたんだ?」
「いえ、こちらも終了したから報告にしに来たのよ」
「そ、そうか。レーベにマックスも大丈夫だったのか……?」
「ええ。二人ともぐっすりだったわ」
「それならいいんだが……」

と、思っていると龍鳳からも連絡が入ってきた。

『こちら龍鳳です。みんなはとてもいい子ですからぐっすりですよ。寝顔が可愛い……』
「あんまりゆっくりしていないで速やかにな……?」
『はーい』

龍鳳はいつもの調子で返事をしていた。
うーん、ゆったりしているから少し不安だ。
そして、イタリアからも連絡が入った。

『提督……。イタリア、完了しました。リベッチオだけですから安心でしたね』
「そうか。わかった」
『五十鈴よ。海防艦のみんなもオッケーよ』
「了解。それじゃこれでみんなに配り終わったかな……? まだ配り終えていない子はいないか……?」

確認のために全員に聞こえるようにそう話す。
すると全員から『万事オッケーです』と返ってきたので、

「それじゃ任務終了だ。ねぎらいの料理を鳳翔さんが用意してくれているから全員集合してくれ」
『『『わかりましたー!』』』



それで全員が居酒屋鳳翔まで集まってきた。
そして私はみんなに聞こえるように、

「それじゃみんな。プレゼント配布の作業、お疲れさま! 今年はなんとか無事にみんなにプレゼントを配り終えてよかったと思う」
「朝霜が少し危なかったわねー……」
「足柄ったらもう息もキレキレでしたからね」
「まったく情けない……」
「なによー! こっちだって大変だったんだからねー!?」

と妙高達にからかわれている足柄の姿があったり、

「この調子だと数名は気づいているかもしれないな……」
「そうね、長門。結構騒がしかったから」

と、心配の声を上げる長門達やらがいたけど、

「まぁ気づいている物に関してはこの際諦めるとして……それじゃみんなにもプレゼントが買っておいたから各自、自分の名前が貼ってあるものを持って行ってくれ」
「「「やったー!」」」

みんなもそれで喜んでくれているので良かったと思う。

《それでは提督。少ししたら私達も眠りに入りましょうか》
「そうだな。さすがにもう時間も時間だからな」

その後に少しだけ騒いだ後に私達は解散をしたんだけど、その翌朝に、

「……あれ? 誰だ? 私のところにプレゼントを置いたのは……?」
《榛名も気づきませんでした……》

所在不明のプレゼントが私の枕元に二つ分置いてあったとさ……。


 
 

 
後書き
最後にホンモノが現れたのでしょうか……?
真実を知るものはいない。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0260話『山城と榛名で過ごすクリスマス』

 
前書き
更新します。 

 




今日は山城を連れて久保少佐とともにとある居酒屋で食事をしていた。
のだけど、

「聞いてくださいよー……榛名提督~」
「はいはい、どうしましたか? 久保少佐?」
「私も頑張っているんですよー……ですけどまだまだ未熟なこの身では今年の秋の作戦も途中敗退ですよ~。悔しいですよー……」
「そうですか。でもまたこれから頑張ればいいじゃないですか」
「そうなんですけどー……」

と、久保少佐はもう完全に酔いが回っている為に愚痴を隠さないでへべれけ状態であるので少し扱いに困っていた。

「ヘーイ、テートク。少し飲み過ぎネー」
「そんなことはないぞ~コンゴー……」

久保少佐の金剛がそれで介抱しているという始末である。

「榛名テートク、ゴメンナサイネ。折角の食事会だったノニ……」
「気にしていないよ。ところで久保少佐の鎮守府はどの程度の成長具合なんですか?」
「そうネー。テートクも真面目なお方ですから毎日任務はきっちりと終わらせて頑張ってイルネ。そういう真面目なところも大好きナンダケドネー」
「そうだー。私は真面目な提督だー……すぅ……」
「あら……? ついにダウンしてしまいましたね……」
「そうだな、山城」

それで金剛はため息を吐きながら、

「それじゃそろそろお開きネ……。そっちの榛名も不自由だけどテートクの事を離さないように頑張るネー!」
《はい、金剛お姉さま》
「夜道は気を付けてな?」

金剛は「大丈夫ヨー」と言いながら、そんな感じで居酒屋を後にしていった。
それで山城と榛名と居酒屋に残ってしまったので、

「それじゃ三人で飲み直すとするか」
「そうですね」
《はい!》

榛名も普通に外に出てきているけどここの居酒屋は結構な常連なので親父さんも慣れたようで驚きはしていない。
まぁ、他のお客さんなどは少しだけ目を見張っているけどそれでもこの町に住んでいる人なら私達の事情もある程度は知っているのでそれだけで何も言ってこないので安心である。

「……ですが、今年も色々な事がありましたね」
「そうだな、山城。山城的には一番嬉しかったのはやっぱりレイテを越えられた事だったかな……?」
「……そうですね。はい、提督の指揮のもと、西村艦隊のみんなでレイテを越えられたのは少し、いえ……かなり嬉しいです」
「そっか。前にも言ったけどもう不幸艦なんて言わせないからな……?」
「ふふ、分かってますよ」

そう言って山城は笑みを浮かべる。
その笑みは決して愁いを帯びたものではなかったのは私から見ても分かったくらいだから純粋に楽しんでいるようで良かったとも思う。

「はい。それじゃ少しだけ飲みますか。親父さん、少し度のきついのをお願いします」
「あいよ。提督さんに艦娘さんはこの町をいつも守ってくれているからな。奮発しておくぜ」

気の利いた親父さんに感謝しつつも、

「それじゃ飲もうか」
「はい、提督……クリスマスですからね」

カンッ!とコップを鳴らせる私達。
それを見て榛名が《いいなぁ~……》と呟いているけど、

「ふふ。榛名、あとで提督にまた例の薬を飲ませて一緒に飲みましょうね」
《あ、はい!》
「こら。あれは副作用がまだ解決してないんだからむやみに飲めるモノじゃないだろうに……」
「幼児化ですよね。前回は私はあんまり関われませんでしたからまたなってくれるのでしたら扶桑姉さまとともに可愛がりますよ……?」
「はぁ、勘弁してくれ……」

そんな感じで三人で笑いながらもいい時間になったのでそろそろ鎮守府に帰ろうかという話になった。
お勘定を済ませて外に出てみると、

「あ……雪ですね」
「そうだな。念のために傘を持ってきてよかったな」
「あのー……私は持ってきていないんですけど……?」
「え……? それじゃしょうがないか……」

私はそれで二人で入れるように傘を広げる。

「提督……わざとやっていませんか……?」
「そんなことは無いぞ? 一つしかないんだから我慢してくれ」
「まぁ、いいですけど……」
《提督と相合傘……羨ましいです》
「ちょ……なんかデバガメを食らっている気分ね」
「まぁいいじゃないか。三人でゆっくりと帰ろうな」
「わかりました……」
《はい!》

山城と二人で雪の地面を歩きながら思う。

「山城……私はこの世界に来れて良かったと思う……」
「いきなりどうしましたか……?」
「うん。今年の四月にこの世界にみんなとともに来てからというもの激動の毎日だったけど、こうしてみんなと触れ合って改めてみんなの事を大事にしていきたいと思ったし、それにこうして普通に会話できることが素晴らしい事なんだなって実感も出来た……」
「そうですね。はい、私もそう思います。データだけの存在だった私達も体を得て自由に意思表示をすることもできるようになって、それでも提督は変わらず私達の事を大事に扱ってくれることは鎮守府中の艦娘達は感謝していると思います」
「そうか……」
「そして、こうしてこの世界でも私も自身の気持ちも再確認できたことが何より嬉しかったんですよ……? まぁ、榛名と二股というのは少し気に入りませんが……」
《あ、あはは……でもこうして山城さんとも今でも良好な関係を築けているのも提督の人柄ゆえだと思うんですよ榛名は》
「そうね。これでもし提督の性格が悪かったら私は提督の事を普通に振っていましたし、榛名も嫌悪感全開だったでしょうしね……」
「なかなか怖い事を言ってくれるなぁ……」
「本当のことですよ……? 私はともかく榛名は一緒の身体になんてとてもではないですけどいられなかったでしょうしね。まぁ、それも現にこうして一緒に共存しているのが絆があるという証ですからうまくいっているのでしょうね」
「だとしたら嬉しいな。私はみんなの期待に応えられているんだな」
「はい。ですからこれからも自身を見失わずに私達の事を大事にしてくださいね」
《榛名も同じ気持ちです。提督……信じていますから》

二人からのその期待という重しが私をより一層引き締めてくれるという気持ちになって、

「わかっているさ。これからもよろしくな榛名に山城」
「はい、よろしくお願いします」
《提督にはどこまでも付いていきますからね》

二人の、いや鎮守府のみんなの期待に応えられるように来年も頑張っていこうと私は雪の降る夜に誓った。




 
 

 
後書き
後、残すところ一週間となりましたね。
仕事も後少しで終わるので元旦まで頑張りたいですね。
駆逐艦もあと残すところ10人を切りましたから。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0261話『拗ねる時津風と妖しい雰囲気』

 
前書き
更新します。 

 



「うー……しれーのアホ! バカ! イジワル!」

今現在時津風が私の肩に乗っかって私の頭をポカポカと叩きながら罵倒していた。
まぁ、しょうがないと言えばしょうがないけど、時津風を育てていた最中に急に夕雲型の改二の情報が来たから時津風をほったらかしにしてしまって、長波が改二になる事が分かって練度80に上げた後もどうせだからと一緒に育てていた夕雲、巻雲、風雲の三人も70まで上げてしまって、やっと時津風の出番まで戻ってきたという訳である。
それで時津風は盛大に拗ねてしまっていたために今はこうしておかんむりなのであった。
だから甘んじて受け止める覚悟であった。

「すまないな時津風。今度なにかお奢るから怒りを収めてくれないか……?」
「そんなこと言ってまた中途半端に育ててくれなかったら許さないんだからね!」
「わかっているよ」

まだプリプリと怒りながらも頭を叩くのだけはやめてくれたみたいで安心した。

「うーん……それじゃあねー。しれーが少し嫌がりそうな事でもしようかなー?」
「い、嫌な事って……?」
「しれーってまだ聞くところによると榛名さんの身体に慣れていないみたいじゃん……?」
《そうなのですか提督!?》

時津風の一言に榛名がガーンといった感じの表情をしていた。
いや、慣れるって……。

「慣れていると思うんだけどな……これでもかなり榛名の身体は半年以上は使わせてもらっているし……」
「違う違うー」

そう言いながらひゅるひゅると背中を滑り下りてくる時津風は何を思ったのか突然私の胸を鷲掴みにしてきた。

「うっ!? 時津風、突然なにを!?」
「いやねー、なんか金剛さんとかとたまにお風呂に入る時に聞いたんだけど、しれーってまだ榛名さんの敏感な所を触られるとすぐに、ね……」

そこで妖艶に笑う時津風。
榛名も「あうあう……」と恥ずかしがっているだけで戦力にはならなそうだし……。
私も確かに慣れてはいけないとは思うんだけど逆に慣れちゃったらそれはそれで残念だしねとか思っていたりする。
だからすぐに時津風を引きはがそうとするんだけどそこで耳元を「ふー……」と息を吹きかけられて力が抜けてしまった瞬間に膝かっくんされて地面に仰向けで倒されてしまった。
時津風はそんな私の上に馬乗りしてきてまるで小悪魔のように笑うと、

「せーの!」

一斉に私の敏感な個所をくすぐり始めてしまっていた。

「あははははっ! 時津風、やめなさい!」
「ふっふっふー……しれーには意地悪をしないといけないんだよねー。甘んじて受けるんでしょ? それなら我慢しようね?」
「く、く……こんな事で……」
《て、提督……どうかご無事で……》

榛名-っ!?

「ふふふー」
「うぅっ……」

次第に力が入らなくなってきてしまいもうされるがままの私に時津風は厭らしい笑みをその顔に刻んで、

「それじゃ、そろそろ前を開けよっかー?」
「そ、それだけは……ダメ、だ……」

なんと時津風は提督服の胸のボタンを一つ一つずつ外していくではないか。

《と、時津風ちゃん! それだけは勘弁してやってください! 提督の理性が壊れてしまいます!》
「むふふー……壊したいかもー」
「やめて……くれ……」
「しれーも結構敏感になってきたみたいだねー。声が色っぽいよー?」

もう駄目だ……と思ったその時だった。
バーンッ!と扉が開かれて、そこには少し怒り顔の大淀がニッコリと笑いながら立っていた。

「おお、よど……?」
「あっ、やば……」
「時津風さん……? 少しお仕置きが必要でしょうか……?」




「ぴぃ!?」

その後に時津風は大淀に正座をさせられて反省をしていたのか、

「いやー、少しやりすぎちゃったね、反省」
「いいですか? 提督は女性の身体でも中身はしっかりとした男性の心なのですから変な性癖に目覚めてしまったらどうするつもりなのですか……!? まぁ、私も少し興奮はしましたけど……」
「大淀!?」

いきなりのカミングアウトに私もつい大声で突っ込んでしまった。

「わっかるよー。しれーの泣き顔もそそるものだったよね!」
「はい、そうで―――…………いえ、私的感情は今は閉まっておきます。それよりしっかりと反省してくださいね!」
「はーい!」

反省しているのかどうか分からない受け答えだけどもう安心なのか?

「それで提督もされるがままではいけませんよ? しっかりと対処しませんともし外に出ている時に痴漢に襲われでもしたら貞操も守れませんよ?」
「す、すみません……」

さっきまでの時津風との浮かれた表情は無くなっていたのだけど、先ほどの事がなければ私も素直に受け入れられたんだけどな……。

「そして榛名さんも手が出せないとはいえもっとしっかりと言葉に出してくださいね」
《すみませんでした……》
「はぁ……実戦訓練で痴漢に対する対処法をお教えしたいところですけど鹿島さんや香取さんに任せるとどんな目に合うか分からないので却下にしておきましょうか」
「なんでだ? あの二人なら適役じゃないか?」
「まぁ、そうなのですけど……最近教える機会が減ってきたのかなにやら溜めている物があるようでして……」
「そうなのか……」

鹿島に香取も色々と大変なんだな。
後で憂さ晴らしにでも付き合ってあげるか。

「はい。それでは時間も時間ですし、提督と時津風さんは今すぐに演習に向かってください」
「わかりましたー」
「わかった。行ってくる」

それで時津風と二人で演習艦隊の場所へと向かっているんだけど、

「それで、時津風。もうあんな事はよしてくれよ? 私も変な性癖に目覚めたくないから」
「ごめんねー♪」
「……反省していないな」
「えへ♪」

まぁ可愛いから許すけど。








お二人がいなくなった執務室で、

「誰もいませんね……? それでは、青葉さん……」
「はいはい♪」

どこからともなく大淀の前に現れる青葉。川内も顔負けの隠密スキルである。

「提督と時津風さんのやり取りの録音は……?」
「大丈夫ですよー! 司令官の喘ぎ声もちゃんと入っていますよー!」
「そうですか。高値で買いましょう……」
「まいどありー♪」

ここにまた闇取引が行われていたのであった。


 
 

 
後書き
後半でエロ親父と化した時津風w

最後に闇取引の現場を入れてみました。
大淀もワルよのう……。




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0262話『クリスマスの片づけと正月の準備』

 
前書き
更新します。 

 



「はーい! そっちのツリーと飾りつけはそっちの倉庫にしまって!」
「わかったー!」
「正月のお料理の下ごしらえをしたいのですが……」
「それじゃ買い出しに行こうかー! 外出許可取りに行こう!」
「しっかり数人で行くんやでー! 誘拐されたらたまらんからなー!」
「「「はーい!」」」
「着物の準備はどこでしましょうか……?」
「ここはやっぱり和風の空気漂う空母寮だよね!」
「鳳翔さんや龍鳳さんに着付け教えてもらおう!」

鎮守府中は今現在大掃除もさながらのクリスマスの片づけや正月に向けての準備などを行っている。
私も私で今は大掃除を手伝っている真っ最中である。

「しかし……やっぱり結構ほこりが溜まっていたな」
《そうですね。普段は妖精さん達が勝手にというのもおかしな話ですけどやってくれていますからね》
「こういう時は妖精さん達にも感謝しないといけないよな」

それで私は近場にいた妖精さん達を集めて、

「いつもみんなありがとな。後でなにか美味いものを食べさせてあげるぞ」
【【【わーい!】】】

喜ぶ妖精さん達を見て和む私。
妖精さん達は艤装にいつもいるから結構体のサイズが小さいのに、頑張り屋さんだから可愛いんだよな。
それで最近めっきり世話になっていない榛名の艤装の妖精さんを呼んだ。
すると私の肩によじ登ってきたので、

「いつもありがとな。細かな部分はやってくれているのは知っているから感謝しているんだ」
【はい、ありがとうございます。提督さんも今年はまだ数日ありますけど私達妖精にも良くしてくださりありがとうございます】
「なに、気にするな。妖精さん達だって家族には違いないんだから」
【はい……】

妖精さんのデフォルト顔でも照れているのが分かるからやっぱり可愛いよな。頬をつつきたくなる衝動を抑えながら、

「それじゃもう少し頑張って掃除でもしようか」
《はい、提督!》
【お手伝いします】

それから他の場所で掃除をしている艦娘のところへと赴いて手伝うなどをしていた。
その度に、

「提督、ありがとー!」
「司令、感謝いたします!」

感謝されるのが嬉しいと感じるのはいい事だよな。
そんな感じで午前中は大掃除に駆けまわっていたのであった。






そして食事を摂った後、時間は午後となって執務室で少し任務の片づけなどをしていた。
今日の夜に来るであろう長波の改二に含まれる任務と、正月までに集めて系の任務もおそらくだけどあるだろうから年末は頑張らないといけないしな。
まぁ、多少の心残りと言えば今年中に駆逐艦全員を練度70まで上げられなかったところだな。
あと、10人だったんだけどな……。
それにそろそろ本気で気が早いけど夏に向けて速吸とかも育てないといけないから大変だ。北上や大井も育ててお札対策にしておきたいしな。
加賀さんと赤城さんの二人目は今は順調に育成中だから今のところは問題はないけど、果たして私の予想は当たるのかはわからないところだな……。
それに提督間の噂ではなにやら村雨が改二になるかもしれないという話が持ち上がっているからな。
大本営からお知らせが来る前までには練度を80にまで上げておいても損はないだろうしな。

《提督……? 少し眉間に皺が寄っていますよ? なにか難しい事でもお考えですか……?》
「いや、大丈夫だ。ちょっと来年の抱負をどうしようかと考えていたものでな」
《抱負ですか……そうですね。榛名は明石さんのお薬が完成してほしいところですかね? そしたらいつでも提督のお役に立てますから》
「それはありがたいな。でもまだまだ開発途中だから何回か実験で幼児化はするだろうからな……覚悟しておかないと」
《あはは……まだまだ臨床試験は始まったばかりですからね》
「そうなんだよなぁ……」

あの薬は分離薬と解毒薬がセットになって今のところは現状維持な状態だからどちらか紛失すると大変なことになるからな。
明石に成分を聞いてみたが「企業秘密です♪」ではぐらかされてしまったし。
そんな時に、ふと……もとの世界の事を思い出していた。

「……そういえばこの時期は家族や親戚と一緒に色々と集まっては初詣やらに行っていたっけな……」
《あっ……。そ、そうですよね……》

そう受け応える榛名はどこか声のトーンが下がったような気がする。
おそらく気にしているんだろうな。

「榛名が気にする事じゃないから安心してくれ。大丈夫……もう戻れない事は分かっているから吹っ切れているし、それにもう何度言ったか分からないけど今は艦娘のみんなが私の家族なんだから。だから寂しくなんかないよ」
《はい……》

まずったかな……少し空気がしんみりとしてしまったな。
どうにか元に戻さないと気まずいし……。

「そうだ……。榛名、正月は薬を飲んで分離して一緒に初詣に行こう」
《え、でも……それでは提督がまた子供になって記憶を失ってしまいます》
「なに、大丈夫だ……とはさすがに言えないけど元に戻る薬もあるんだからどうにか小さい私を説得して飲ませてやってくれ」
《わかりました》
「よし、決まりだな。明石も時間の延長くらいはもうすでにやっていそうだから後で聞いてみようか」
《はい!》

そんな感じでお正月の予定が一つ決まった瞬間だった。
少し不安だけど榛名の喜ぶ姿も見たいからな。頑張ろう。


 
 

 
後書き
正月はまず任務を済ませてから初詣の話を書こうと思います。
実際、うちはいつも三が日に初詣に行っていますから。




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0263話『長波の改二改装』

 
前書き
更新します。 

 


年末の今日この頃、長波の第二次改装の日がやってきたなという感じである。
それで私は長波改二以外にも追加された項目などを見ながら大淀と話をしていた。

「しかし……新たに新遠征が追加されたのか」
「はい。南西諸島関連の遠征ですが『敵泊地強襲反撃作戦』という名前になっていますね」
「重巡一隻に軽巡一隻を入れて後は駆逐艦を四隻の編成での遠征か……これはおそらく敵強襲ともあるんだから主砲を装備していってもらった方がいいよな……?」
「おそらくですが、それで正解だと思います。最近の新遠征は装備を重視していますからね」
「そうだな。それじゃさっそくだけど行ってもらおうか」
「了解しました。手配しますね」

それで私達は編成した艦隊を送る事にした。
8時間40分もあるんだからそれなりに時間を要しないとクリアは難しいから慎重に行かせる子達は選ばないといけないしな。もし無駄になったら嫌だし。思い出すのは潜水艦派遣任務……あれを一回失敗した時はさすがに少し萎えたからな。48時間はきついんですよね。
まぁ、後は時間が解決してくれるだろうから遠征に関してはもう任せておこう。
続いての項目に目を行かせる。
そこには火力や装甲など微修正された艦娘の名前が載せられていた。

「綾波に潮、時雨、初霜、ヴェールヌイのステータスが上方修正されたのか……」
「そのようですね」

それで私はさっそくとばかりにこの五名を電話で呼び出してすぐに改修室へと向かうように指示した。
しばらくして、

『提督ー。五名の改修が済みましたよ』

明石からそう連絡が入ってきた。

「そうか。結果はどうだった……?」
『はい。まず時雨さんは雷装が強化されました。初霜さんは雷装と一緒に装甲も強化されましたね』
「そうなのか。続いては……?」
『はい。ヴェールヌイさんは安定して装甲の強化でしたね』
「なるほど……なんかどんどんヴェールヌイが要塞化してきたな」
『あははー。それ、本人の前で言わないでくださいね……?』
「わかってるよ」
『はい。そして極め付けなのが潮さんと綾波さんの火力の強化ですね。なんと、ついに綾波さんがあの夕立さんの素の火力を越えてしまいました』
「なんと。夕立を越えたのか……」
『はい。これで装備しない限りトップの座は譲る形になりましたね』
「そうか。わかった。それじゃ明石、もう少ししたら長波を連れて第二次改装に行くと思うから改装室の準備を頼む」
『わかりましたー! では』

それで明石との通信を終了する。
そして、

「しかし、そうか。綾波が夕立を越えてしまったか……」
「さすがの鬼人と呼ばれた綾波さんなだけありますよね」
「それも本人の前では言えないな」
「ふふ、そうですね。それでは次の項目に行きましょうか」
「そうだな。次は……武蔵の建造率が上昇しているのか」
「はい。分かっていると思いますけどうちにはすでに武蔵さんはいますので大型建造はほどほどにしておいてくださいね……? 時には諦めも大事ですから」
「わかってる。まぁ期待しないで回しておくよ」
《あはは……。提督、結局は回すんですね》

そこで榛名が出てきてそう言う。

「まぁ、私の気分の問題なんだけどもう一隻欲しいというのは欲が出ているとは思うけど仕方ない事なんだ。幸い今はボーキ以外はカンスト気味だから何回かは回せるしな」
「提督……?」
「わかってるわかってる! ほどほどにしておくから!」

大淀の追及があるけどなんとか流しておこう。
資材を集めてくれるみんなの苦労も知っている事だし……。
武蔵建造の件はこれで一応は終わりとして、最後の項目になってきた。

「そして最後に長波の第二次改装か……これには改装設計図にプラスして戦闘詳報も一つ必要とあるけど、確か一つだけあったよな……?」
「はい。秋の作戦で未使用の戦闘詳報が一つ残っていますね。どうやら新任務でも数個手に入るとありますから安心して良いと思いますけど」
《なんか最近本当に改二に必要な道具が増えてきましたよね》

榛名がそう言ってどこか感心しているような声を出していた。
そうだよな。大体二年から三年以内に実施された改二には改装設計図も必要としない子が多かったけど、レアな装備を持ってくるようになってから改装設計図を必要とする感が増えてきたからな。

「わかった。それじゃ大淀、改装設計図と戦闘詳報の準備をお願いしていいか……?」
「わかりました。すぐに取り掛かりますね」

大淀はそれで一度部屋を出て行った。
その間に長波を部屋に呼んでおくとするか。
長波の部屋へと連絡を入れる。

『お、提督かー? どしたー?』
「長波か。さっそくだけどお待ちかねの時間だからすぐに執務室に来てもらっても構わないか……?」
『ッ! 改二だな!』
「ああ。だから早めにな」
『わかった! すぐにいくから!』

よほど嬉しいのだろう、長波はそれで通話もほどほどに通信が切れた。

《ふふ。長波さん、よほど嬉しいのでしょうね》
「そうだな。すぐに来るだろうから待っていようか」
《はい》

と、そこでタイミングよく、

「提督。改装設計図と戦闘詳報の準備が出来ました。すでに妖精さん達に頼んで明石の方に運んでもらっていますよ」
「わかった。さて、改二はどうなるか楽しみだな」

するとさっそくとばかりにドタドタと複数の足音が響いてきたので来たのだろう。

「提督! あたしの改二は!?」
「落ち着きなさい。まだ改装もされていないんだから焦らないの」
「そ、そうだな……」
「長波姉さま、深呼吸かも!」
「そうだな、高波」

それで何回か深呼吸をしている長波。
その間に清霜が近寄ってきて、

「司令官。長波姉さまの改二は練度はどの程度なんですか……?」
「ああ。75で改装できるらしいから80の長波なら十分だろう」
「そっかー。それじゃ楽しみだなー。夕雲型では初めての改二だから」
「そうだな。果たしてどういう風になるのかで今後の使い方が決まってくるようなものだからな」

そこに夕雲が入ってきて、

「ふふ、提督。使うなんてなんか言い方がダメですよ?」
「ああ。すまない、配慮に欠けていたか」
「いえ、間違ってはいないですからいいんですけどね」
「それじゃ提督! 行こうぜ!」

落ち着いたのだろう、長波がそう言うので、

「それじゃ改装室に向かおうとするか」
「おー!」

元気よく改装室へ向かう私達。
明石がおなじみの笑顔で、

「まってましたよー。それじゃ長波さん、改装室に入ってもらってもいいですか?」
「わかった!……清霜」
「ん? なぁに? 長波姉さま……?」
「……お先に戦艦になってくるぜー」
「うー……う、羨ましくなんかないもん! いつか清霜も改二になれるもん!」
「あははー! じゃ、行ってくる」

清霜を煽りながらも長波は改装室へと入っていった。
しばらくして、明石から合図が来たので私は改装ボタンを押す。
するといつも通りに改装室の中から光が漏れてきて、そして……。

「改二改装された長波様だぜ! どんな敵でもかかってきな!」
「「「おー!」」」

そこにははちまきを巻いて上着を着ている長波の姿があった。
ふとももまでになったストッキングが眩しいな。

「な、長波姉さな、とっても素敵かもー!」

ぶー!と鼻血を出している高波にみんなが「わー!?」と駆け寄っていった。
長波が好きな高波には刺激が強かったようだな……。
とにかく、

「それじゃこれからもよろしくな、長波」
「おー! 任せておいてよ!」

こうして長波は改二になったのであった。


 
 

 
後書き
武蔵建造、七連敗して爆死しました。また資材を貯めます。
長波可愛いですよね。




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0264話『長波関連の新任務』

 
前書き
更新します。 

 




長波が第二次改装を受けて翌日に長波の能力チェックをしているところであった。
しかし、本当に強くなったなぁと感心する。

「大淀」
「はい。なんでしょうか……?」
「この、長波が改二になって持ってくる『12.7㎝連装砲D型改二』なんだけど、情報によると夕雲型、陽炎型、それに島風の甲型駆逐艦が装備すると基本数値の火力以上の数値が加算されると言うが、すごいな……」
「はい。長波さんはさらにそこに水上電探を一緒に装備すれば火力がプラス1されるそうですから下手したら軽巡の火力に迫る勢いですね」
「そうだな。でも、最近の傾向としては大発系の装備が出来ないというところは驚きだな」
「そうですね。てっきり装備できるとも思ったんですけど、火力の方にベースを回したみたいですね」
「主力of主力駆逐艦ゆえなんだろうな」
「そのようですね。それでは提督、そろそろ新しい任務に取り掛かっていきましょうか」
「そうだな」

大淀にそう言われて新しく出現した任務欄を確認する。

「まずはこの『装備開発力の集中整備』という工廠系から終わらせていくか」
「そうですね。明石に連絡を入れますか……?」
「頼む。その前に今の装備管理庫のチェックだな」

手早く現在の装備数をチェックするために妖精さん開発製のタブレットを出して現在の在庫数を確認する。
中口径主砲を3基、副砲系装備を3基、ドラム缶1個を破棄して鋼材2400を用意せよとあるからまた消費系かと思いながらも明石に頼んで破棄してもらう。
これで開発資材やらが手に入ったから先日に行った大型建造の被害で減った開発資材を回復出来て満足である。久々にグロ画像を見た気分だったからな……。連続して大型建造はするものではないという気持ちを思い出してたよ。

「次は『甲型駆逐艦の戦力整備計画』という任務だな。これは初めてだろうと思うけど演習と出撃が重なっている任務なんだな」
「そうですね。甲型駆逐艦……つまり陽炎型か夕雲型から二隻を選出して演習に出した後にその演習を行った二隻を編成に入れて南西諸島の海域全てを周ってくるというものですね」
「南西諸島全域か……これは久々に面倒くさい任務だな」
「あはは……そうですね。羅針盤がかなりあらぶりますからね」
「気が進まないけど、まずは演習をしてくる」

それで私は長波と高波を入れた編成で演習を済ませてきた。
やっぱり編成するなら長波を入れるならもう一隻はルンガ沖海戦関連で関係が深い高波がいいよな!
私はロマンを決行していくスタイルなのだ。
それで演習をしている時だった。

「提督ー! D型改二を装備した長波様の力を見なよ!」

長波はまるで本当に軽巡のような火力を出しながら演習相手を屠っていた。

「長波姉さま、素敵かもです!」

そんな長波を見て感激している高波がいる、っと……。
うん、予想通りの展開だな。見ていて可愛いというか面白い。

「よっし! 演習3回終わったぜ!」
「いっそのこと、このまま演習全部終わらせて来るか」
「いいねー! やろう!」

長波もやる気に満ちているのでこのまま5回とも終わらせてきた。
そのまま長波と高波を連れて執務室へと戻って来ながら、

「しっかし……今回の新任務は難しいのか分からないな……。いや、沖ノ島海域にいくくらいだから難しいとは思うんだけどな」

そう言って頭を掻く長波。
それに榛名が表に出てきて、

《長波さんに高波さん。沖ノ島海域は駆逐艦にとってはかなりの難所ですから十分注意してくださいね。提督と私も付いていますけどあの海域の戦艦勢はなぜか駆逐艦を主に狙ってきますから……》
「そうだなー……高波? 気合入れていくぞ?」
「はいかもです!」

ビシッ!と長波に対して敬礼をしている高波を見て思わず笑ってしまいそうになる。
本当に長波に対しては従順な態度だから見ていて和む。

「それじゃまずは沖ノ島海域以外の場所をやっていくとしようか」

私達は演習艦隊に北上さんを入れた編成で挑んでいった。
なぜ一人だけ変更したかというと演習で入れていた鳥海がちょうど練度がカンストしたのでもしかしたら正月になにか来るのではないかと希望しつつ待機中であるからだ。

「んー……まぁ、このあたしに任せておきなよ。ビシッと決めてあげるからさー」

いつもの気だるげな感じの北上様だけど頼りになるから任せておきたい。
それで加賀ちゃんとあーさん(二人目の赤城の事)を入れた6人で各海域をクリアしていった。
今回は運が良かったのかあんまり苦労はしないで回ることが出来た。
沖ノ島沖もいつもの攻略艦隊に長波と高波を入れて出撃してもらったのでなんなくクリアできたし。
そしてやってきました沖ノ島海域。
そこへと出撃していく私達はもう何度も逸れる羅針盤に「やはりか……」と内心で涙を流していた。

「うー……やっぱり改二になったからって駆逐艦じゃ辛いぜー……」
「そうかもです……」

すでに何度もの出撃によって二人は疲労困憊状態が何度も続いていた。
もう大破してはバケツを使う羽目になっていたからな。
いや、本当に今回は運がないな。
でも、最初の一回でいきなり成功ルートにいったのまではよかったんだけど運悪くあーさんが大破させられて泣く泣く撤退したからな。
それであーさんは「精進が足りず、すみませんでした……」と謝ってきたけどよくあることだから気にするなと言っておいた。
一回神威を入れて遠回りルートも行ってはみたんだけど、ボスにたどり着いた時には被害が凄い事になっていたので普通に負けたしね。
それでやっぱり羅針盤に祈ることにした。
そして何度も出撃する事30回は越えたかな……?

「ッ! 提督! 羅針盤が正常に動いたぜ!」
「よし! 今度は道中に注意しながら進もうとするか」

そしてついにボスの戦艦勢を倒すことが出来たので、

「やーっと終わったぜ……だるかったなー」
「かもかも……」

高波はすでに語尾だけになっていた。
それほど疲れたんだろうな。
そんな二人に鞭打つのは少し引けたけど、

「それなんだけど、もう一つこれから二人に任務をしてもらいたい」
「まだあんのか!?」
「かもー!?」

それで悲鳴を上げる二人。
だけど、安心してくれ。

「今度は楽な任務だから大丈夫だ」
「本当かー……?」
「ああ。まずは編成任務にとりかかるか」
「おっ? どんな編成任務なんだ?」
「ああ。『精鋭「三一駆」第一小隊、抜錨準備!』というもので長波改二、高波改、沖波改、朝霜改の四人を含めた編成をするというものだ」
「なーんだ。それなら大丈夫じゃん? うちは全員いるからな」

長波はそう言ってホッと溜息を吐いているが、私はそうは思わない。

「まぁ、うちはいいんだけどな……まだ沖波だけは通常海域でも実装されていないから持ってない提督は涙するだろうな。朝霜もカレー洋リランカ島沖でしか手に入らないし、高波に至っては現在最奥のKW環礁沖海域でしかドロップしないからな……。だから演習先で自慢だけはするなよ?」
「お、おー……」
「わかりましたかも……」

その後に四人を執務室に集めて編成任務をクリアした後に、

「それじゃ最後の任務を取り掛かろうか」
「どういう任務なんだ……?」
「ああ。『精鋭「三一駆」、徹底海域に突入せよ!』というものだから四人のうち二人を引き連れてサーモン海域に二回行くだけだから簡単だろう……?」
「なんだ、そうなのか。それなら簡単だな」
「はりきっていくかもです!」

そんな感じでまた二人を引き連れてサーモン海域を攻略していったのであった。
ちなみに今回の任務で戦闘詳報が二つ手に入ったけど、今後また誰かの改二に使うかもしれないので大事に取っておこうと思っている。
なぜか改修で使えるとか言う話だけど勿体ないの一言に尽きるからな。


 
 

 
後書き
戦闘詳報は大事に取っておきましょうね。
私は必ず今後も使うと思っていますので取っておきます。

それと今年もあと今日を入れて三日です。
有明海域に挑んでいる提督の方は頑張ってください。



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0265話『曙と対馬の大掃除』

 
前書き
更新します。 

 




「…………なによ?」
「なんですか……?」

曙と対馬の二人がともに大掃除のための恰好をして箒と塵取りを持って提督の私室の前で睨み合っていた。対馬に関しては普段から薄い目をしているが……。

「あたしがクソ提督の部屋を掃除するんだからあなたは引っ込んでいなさいよ?」
「そうはいきません……。司令は私の観察対象ですから出来る事ならしたいのです」
「観察対象って……」
「そういうあなたも司令のことが嫌いなのではないのですか……? クソなんて呼ぶんですから相当の物なんだと思いますけど……」
「いいじゃない! クソ提督はクソ提督よ! そ、それに別にき、キライなんかじゃないしー……」

対馬の言葉に小さい言葉でなんとか答える曙は形勢が不利であった。
そこに対馬はニヤリと笑みを浮かべる。それは相手の弱点を掴んだがごとくのような……。

「そうですか……。でも、それなら対馬の方が勝っていますかね……? 対馬は司令のことをただの上官以上の気持ちを抱いていますからね」
「なっ!?」

妖艶に笑う対馬の発言に曙は思わず絶句する。
だけどここまで来て負けたくないという気持ちが勝ったのか、

「そ、そう……あなたって小さいくせにませているのね」
「別に不思議な事はありませんよ……? 今はこんな成りですが年齢はかなりのものなんですから」
「それもそっかー……って、流されないわよ!?」

思わず納得しかけていた曙だったけど、それを言うのなら自身も相当な年齢であるのは確かな事であるから負けてはいられない。

「むー……別にいいじゃないですか。ただ対馬は司令のお部屋を掃除したいだけなんですから」
「いや、あんたは多分それ以上の事をしそうよね? あなた、ムッツリそうだしクソ提督の持ち物とか物色しそうよね……?」
「それは思い違いも甚だしいです……対馬は司令本人以外は興味ありませんから」

きっぱりとそう言い切る対馬に曙は「クッ……手強い」と内心で愚痴る。
ここまで言い切られると本気で曙は分が悪い。
普段から提督に対してはツンとした態度を取っているから第七駆逐隊の面々以外には弱みは握られたくないから曙の本音も言えないからである。
そんな感じでくすぶっている曙に対馬は猛攻をかけることにした。

「それに対馬は司令のことは大好きですよ……いつもの司令も好きですけど幼児化した司令もそれはそれで可愛いから食べてしまいたいほどに好きです……これからも司令がなにかしら変な事に巻き込まれてしまわないかと思うと胸の鼓動が高まってきます……」
「うわー……」

赤くなった頬に手を添えて想像しているのか体を左右に振っている対馬に対して曙はかなりの低音で本音から来る声を出した。
さすがの曙もここまでくるとその対馬の提督に対する思いがかなり歪んでいる事に気づいてかなり引いている。
下手すればヤンデレ一歩手前ではないかと……。

「あんたってかなりの特殊性癖を持っているのね……」
「フフフ……褒めても何も出ませんよ?」
「別に褒めてないし!……っていうかかなり話が脱線してるんだけど気づいてる!?」
「別に忘れてはいませんよ……? 部屋を掃除したいというのは本当ですし」
「あーもうっ! あんたと話しているとやりにくいわね!?」

音を上げ始めた曙はこれからどう挽回しようかと思っているけど、

「……そういう曙さんは司令のことは好きなのではないのですか……? 普通なら他人の部屋の掃除なんてやりたがらないでしょうし……」
「うっ! そ、それは……」
「好きなんですか……? 好きじゃないんですか……? どっちですか? 曖昧な態度を取り続けていてはあなたの身体に悪いですよ……?」
「う、うっさい! 本人の前じゃ言えないけどあたしはただいつもお世話になっているクソ提督のために何かやってあげたいだけよ!!」
「なるほど……これがツンデレというものなんですね。勉強になります……」

涙を浮かべながらも大声で叫ぶ曙に対馬はツンデレというものを理解した。

「うぅ……あんた、やな奴ね……」
「ひどいですね……対馬はとてもいい子ですよ? それでしたら一緒にお掃除しませんか……? これならお二人で出来ますから問題も解決ですよ」

対馬の妥協案に曙は惹かれるものがあったけど、これを鵜呑みにしてもいいものかと思案した。
だけど対馬は待ってくれないらしく曙の耳元まで近寄って、

「それに……対馬、司令には及びませんが曙さんに少し興味を持ちました。ですからこれから仲良くしてくれませんか……?」
「ひぃっ!?」

耳元でそんな事を言われて思わず曙は後ずさりした。
本能からの緊急司令が来てこの子とは深く関わってはいけないと何度も警鐘をならしている。
対馬は曙のそんな反応に嗜虐心を刺激されたのか、

「ああ……いいんですね。曙さんのその表情、そそるものがあります……」
「わ、わ……」

曙はもう逃げ出したい気持ちで一杯だった。
だけど提督の部屋も掃除したいという気持ちで何とか踏みとどまっていた。だけど決壊は近い。
そんな時だった。

「あれ……? 曙に対馬? 私の私室の前でなにをしているんだ……?」
「あ、司令……お仕事は終わったんですか……?」
「クソ提督ー!」

二人が同時に提督に話しかけた。曙に至ってはもう泣き顔で抱きついている。

「おおっと……どうしたんだ? 曙がここまで消耗しているなんて……対馬は何か知っているか……?」
「ふふふ、はい。それはもう……それより司令。司令のお部屋を曙さんと一緒にお掃除しても構わないでしょうか……?」
「掃除か。構わないけどあんまり配置とかは変えないでくれよ? 下着とかも漁るのは厳禁な」
「わかっています。それでは曙さん……逝きましょう?」
「い、嫌よ! いまなんかニュアンスが違く聞こえたしー!」

そんな曙を対馬や「やれやれ……」と言いながらも首根っこを掴んで部屋の中へと引っ張っていく。
そしてドアを閉める際に、

「それでは司令……。少しの間、お部屋を失礼しますね?」
「わ、わかったけどあんまり曙の事をイジメてやらないでくれな?」
「分かっています。それでは……」
「助けてクソ提督ー!」

曙の悲鳴が聞こえてくるけど対馬の笑みで提督も一歩引きさがって曙の無事を祈った。
その後に曙はしばらくして部屋へと帰ってきたんだけど漣とかに様子が変だと言われたが「なんでもないわよ……」と、ただただ疲れ切った表情を浮かべていたとかなんとか……。
ここから曙と対馬の変な関係が続いていく事にはこの時には本人でさえ気づかなかったのである。
曙に幸がある事を……。


 
 

 
後書き
何か、自分の中でかなり対馬が他の子と違って特殊な個性を持っている事に気づいた。
書いていてかなり面白いというか……。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0266話『除夜の鐘を聞きながら……』

 
前書き
今年最後の更新をします。 

 



私は今あと一時間も経過すれば来年となる中で大鳳とか島風とか他諸々を部屋に招いてお蕎麦を食べていた。
外ではもう何回も鐘の音が響いてきているのでもう少しというところだろう。

「やっぱり今年の締めは年越し蕎麦だよな」
「てーとくー! もう食べ終わっちゃいましたー!」

島風がそう言って空になったお椀をこちらに出してくる。

「はいはい。すぐに持ってくるから特番でも見ていなさい」
「はーい!」
「提督ー! あたしのも頼むわ」
「アタイのも頼むぜ!」
「わかったわかった」

島風は相変わらず元気でよろしい。
それで一緒に炬燵で駄弁っている長波と朝霜とテレビを見ながら話し込んでいた。
それで私が自分の分も一緒に入れてこようと思って立ち上がると、

「提督。この大鳳も手伝わせてもらいますね」
「悪いな。それじゃ頼む」
「はい!」

付いてくる大鳳はそれから一緒に私室についているガスコンロと荷台に置いてある蕎麦の汁やら蕎麦の麺などの袋を開けながら丁寧に盛ってくれる。
大鳳は作業をしながらも、

「……ですが、提督。どうして今日はこの大鳳を呼んでくださったのですか……? もっと他に……そうですね。金剛さんや山城さんなども呼んでもよかったのでは……?」
「またピンポイントで誰かを言ってくるな……。まぁ、そうなんだけどな……。大鳳、君が鎮守府に来た日はいつかを覚えているかい……?」
「え……? えっとー……」

思い出そうとしているのか少し考え込んでいる。
だけど私がすぐに答えを教えようと口を開いた。

「2016年の1月1日、零時を過ぎた瞬間の年始めに初めて回した大型建造で君、大鳳はうちに来てくれたんだよ」
「あ!」

思い出したのか口に手を当てて照れているレアな大鳳の姿があった。

「そうでしたね……提督はあの時すごく画面越しに喜んでいたのを思い出しました」
「あはは……そこも覚えていたか。あの時はお互いに一方通行だったから話も出来なかったけど、大鳳が来てくれて本当に嬉しかったんだ……。私の中では大鳳は史実で言う不幸な艦ではなく幸福艦なんだぞ?」
「それは、とてもありがたいです……。ありがとうございます、提督。この大鳳の着任日を覚えていてくださって……」
「だからさ。大鳳、今日は年越しまではみんなもいるけど一緒にいようか。年越しと同時に着任日三年目の日なんだから」
「はい! 喜んで!!」

それで大鳳と笑いあっていると炬燵の方から、

「てーとくー! まだですか!? おっそーいっ!!」

そんな島風の声が聞こえてきたので、

「すまんすまん、すぐに持っていくよー!」
「うふふ。すぐに持っていきましょうか。あ、榛名さん?」
《はい。なんでしょうか?》
「提督と少しいい雰囲気になってしまってごめんなさいね?」
《いえ、榛名は大丈夫です。大鳳さんもそうですけど提督はみなさんの提督なのですから》
「そこまで言われてしまうとこちらが申し訳なくなってしまうのですけどね……」
《大丈夫です。初詣ではすでに提督と一緒に行くって約束も貰っていますから!》
「え……? ではまたあの明石さん謹製の薬を飲むのですか……?」

大鳳がそう言って心配そうにこちらを見てくるけど、

「私は大丈夫だ。元に戻る薬もあるんだからタイミングを見計らって飲ませてくれとは頼んであるからな」
「そうですか。それなら、まぁ……安心なのでしょうか?」
「まぁ、問題は小さい私が言う事を聞いてくれるかどうかだから少しの間だけど遊んでやってくれ」
「わかりました」

そんな話をしながらもみんなのお蕎麦を持ちながら炬燵へと戻っていく私達。

「てーとく、遅いですよ!」
「すまんすまん!……っと、時間は……後30分ってところか」

テレビを見ればすでに特番も終盤に入ったのか終わりになっていたので、

「ニュースでも見るか……多分そろそろカウントダウンに入っていると思うしな」
「いいねー。提督と迎える新年も乙なものだよなー」

長波がそう言ってニシシと笑みを浮かべる。

「そう言う長波や朝霜は姉妹達と過ごさなくてよかったのか……?」
「まぁ、そうだけどなー。たまにはこういうのもありなんじゃないか?」
「朝霜のいう通りだよ、てーとく。それにこのメンバーも大鳳さん以外は結構仲が良いメンバーですし」
「まぁ、過去に色々あったからなー」

しみじみと頷く長波。

「長波は長波で今年最後に改二になれたのは嬉しかったんじゃないか……?」
「そうだね! やっと夕雲型にも光が差してきたってもんだからな!」
「次はアタイの番かもなって期待はしているぜ!」
「うー……島風も早く改二になりたいです! ね!? 連装砲ちゃん!」

島風の言葉に三体の連装砲ちゃん達は飛び跳ねている。
うーん……意思がある艤装も増えてきたから今度明石に翻訳機でも作らせてみるかな……?
意外な発言を聞けそうだし。

「この大鳳も早く改二になりたいものですね……」
「いつかはなれるさ……。それじゃまだ改二になっていない子は来年の抱負にでもしてみたらどうだ……? それで余計頑張れるかもしれないぞ」
《それはとてもいい案だと思います。提督》

私の言葉に朝霜や島風が色々と騒いでいたけど、そうしている間に時計を見れば秒針がもうすぐ零時を過ぎる。

「それじゃそろそろカウントダウンでもしようか」
「わかったぜ!」
「来年になったら一番早くてーとくに挨拶をするんだー!」
「それじゃアタイと勝負だな、島風!」
「望むところだよ!」

それからみんなで10……9……8……とカウントを言っていく。
そしてついに、

「年明けだな……。みんな、今年もよろしくな!」

年明けとともにまた鐘が「ボーン……」と鳴ったのでみんなに挨拶をした。

《はい。提督、今年も頑張りましょう》
「あー! 榛名さんに先を越されたー! て、てーとく、明けましておめでとうございまーす!!」
「よろしくだぜ!」
「今年もよろしく、提督!」
「よろしくお願いしますね、提督」

朝になればわいわいとみんなで賑やかになるんだからこういう少数でのお祝いもいいものだよな。
こうしてみんなで年明けを祝ったのであった。
今年もいい年でありますように……。


 
 

 
後書き
少しフライング気味なスタートダッシュですが除夜の鐘を最後に鳴らして今年の締めとさせてもらいます。
来年も『戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。』をどうぞよろしくお願いします。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0267話『2018年の新年のあいさつ』

 
前書き
明けましておめでとうございます。
今年最初の更新とまいります。 

 




大鳳たちと昨晩は日の出まで起きていて過ごしていたけどそれももう昼過ぎである。
少し眠いけどまだまだ頑張らないといけないよな。
それで私はマイクを持ち、いつもの大ホールでの壇上に登って、

「んーっ! あーあー……マイクテス、マイクテス」
「提督ー! 緊張してるのかー?」
「うるさいぞ摩耶。提督の最初の挨拶だから静かに聞かないか」
「へーい……武蔵の姉貴」

摩耶がそんな事を言ってきたけどすぐに武蔵に窘められていた。
助かるよな。
と思っていると別方向から、

「司令! マイクはもうこの霧島が事前にチェックしておきましたから大丈夫ですよ!」

という霧島の声が聞こえてきた。いつチェックしたんだ……?まぁいいか。

「それじゃ改めまして……みんな、新年あけましておめでとう!」
「「「あけましておめでとー!!」」」

みんなが元気よく言葉を返してくれることに感謝しながらも、

「思えば去年は忙しい毎日だったと思う……。ほとんどの者達は去年の春頃までは私の世界でゲームのキャラクターという存在で私はそのみんなを操作するプレイヤーでしかなかったけど、どういう訳かみんなとともにこの世界にやってきて、今ではこうしてみんなとともに頑張ってこれてなんとか提督という地位もこの世界で確立できて深海棲艦と毎日戦い続ける日々だけど、それでもなんとか平穏に暮らせて行けている。だからみんな、こんな私を支えてくれてありがとう」
「「「提督……」」」
「「「司令官……」」」

みんながそれで思い出しているのか各自思い思いに話し合っている。

「そしてこの世界に来てから仲間になったみんなもありがとう。
春の作戦『出撃!北東方面 第五艦隊』では占守、国後、択捉、神威、春日丸改め大鷹、ガングートの六名。
夏の作戦『西方再打通!欧州救援作戦』では狭霧、天霧、旗風、松輪、リシュリュー、ルイージ・トレッリ改め伊504ことごーちゃん、アークロイヤルの七名。
秋の作戦『捷号決戦!邀撃、レイテ沖海戦(前篇)』では佐渡、対馬、伊400ことしおん、涼月の四名。
どの作戦も厳しいものだったけどその甲斐もあって合わせて17名もの仲間が増えた。
こうして元からいた者達も含めて全員が揃っているというのは私としても嬉しい。
そして今年もおそらく仲間は増えていくだろう。またみんなで新たな仲間を救出して頑張っていこう!」
「「「おー!!」」」

みんなが片腕を上げて鼓舞していた。

「そしてここで私の今年の抱負を言わせてもらうと、まずは在籍している艦娘の練度を全員70以上まで上げる事だな。これに関しては駆逐艦のみんなも後残りは早霜、高波、沖波、藤波、秋雲、谷風、初風、狭霧の合わせて8名となっているから今月中には上げておきたいと思っているから、みんなも協力してくれ。
そしてもう一つはやはり誰も轟沈しないでこれからも行われるだろう限定作戦で勝利を収める事だ。特に冬の作戦ではレイテ沖海戦の後篇が待ち構えているからより一層の練度の向上を図っていくぞ」
「ふむ……提督よ。おそらくこの武蔵が活躍する戦なのだろう?」
「多分な。だから頼りにしているぞ、武蔵」
「任せておけ! この武蔵、必ず提督の力になるぞ!」

武蔵はそれで気合を入れている。頼もしいものだな。

「それじゃ最後に……新年の挨拶だからと少し長たらしくなってしまったが、みんな、今年もよろしく頼むな」
「「「よろしくお願いしまーす!!」」」
「よし、いい返事だ。それじゃ後は宴会を楽しんでくれ。私からは以上だ」
「よっしゃ、飲むぜー!」

と、いの一番に佐渡が大声でビール缶を掲げている。

「……鳳翔さん、取り上げてください」
「わかりました提督。さ、佐渡ちゃん。あなたはジュースを飲みましょうね?」
「ぶー! いいじゃん!」
「いけませんよ。艦娘とはいえその身体に合わないものもあるんですから……」
「ちぇー……」

それで不満そうにジュースを飲みだす佐渡。
すまんな、どうしても子供が飲むというのは不健全に感じてしまうんだよな。
それを思うとイヨとかもあんまりお勧めはしないけどあっちはもうすでに手遅れで色々と出来上がっているしな……ヒトミちゃんの努力も虚しく終わったか。
と、そこに大和がこちらに笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。

「提督。少しよろしいでしょうか……?」
「大和か。どうした……?」
「はい。提督は初詣には榛名さんと一緒に行くそうですね?」
「そうだな」
《はい!》
「礼の薬も使うんですよね?」
「そのつもりだけど、どうした?」
「いえ、ただ……よろしかったら着物の着付けを手伝わせてもらっても構わないでしょうか?」
「え……でも、榛名はともかく私は私服で行こうかと思っていたんだけど……」

私がそう言うと大和と榛名の二人が「ダメです!」と口を揃えていた。

「提督も今はもう立派な女性なのですから着物くらいは着こなさないといけませんよ!」
《榛名もそう思います!》
「だけどなぁ……」

それで思い出すのはこの世界に来る前の自分。
いつも家族や親戚とともに普段着で初詣に行っていた思い出。
そういえば、姉の子供はもう大きくなっただろうか……?と違う事を考えだす私。それを問う人も言う。

「だけどではありません。しっかりとやらせていただきますから覚悟してくださいね!」
「わ、わかった……」
《大和さん。でしたら色違いのを頼んでも構いませんか?》
「いいですよ。私の部屋にも色々とありますから試してみてください」
《わかりました!》

榛名は嬉しそうに笑みを浮かべている。
まぁ、この笑顔を守るためならこのくらいはしてやるかという気持ちになったのであった。
それと、

「榛名に大和も……この一年もよろしくな」
「はい。よろしくお願いしますね提督」
《榛名もよろしくお願いします。提督》

それからまた色々と場所巡りをしていった。


 
 

 
後書き
もうクリスマスまで見れませんけど佐渡のクリスマスグラは爆雷がビール缶に見えますよね?
そして大和、ウォースパイト、リシュリュー、対馬の晴れ着modeは可愛いですね。
オークラ先生も無事やり遂げられてよかったよかった。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0268話『2018年新春の任務群』

 
前書き
更新します。 

 



せっかくの正月だ。
みんなとゆっくり時間を過ごしたいと思う気持ちもあるけど、これでも軍の人間というわけなのだからゆっくりもできないという……。
早速とばかりに大本営から正月任務の通達が入ってきたので、正月気分もそこそこに任務に取り掛かる事にした。

「しかし……これでは初詣に行くのにはまだまだ時間がいりそうだな」
「そうですね、提督」

大淀も少しため息を吐いていた。
だけど、

「しょげていてもしょうがない。それじゃ今年も元気にやっていこうとするか!」
《その意気ですよ。提督!》

榛名からの応援もあるので頑張ろうという気になった。
それで私は任務欄を開く。
最初に目に入ったのは、

「最初の新春任務は……『謹賀新年!「水雷戦隊」出撃始め!』か」

内容を見てみれば、いつも通り水雷戦隊を編成して鎮守府近海の南西諸島沖と南西諸島防衛線を各二回ずつ反復往復して敵深海棲艦を撃破せよという感じか。

「これは、あ号の任務が捗りそうだな……」
「そうですね。各任務を既存の任務も含めて並行して消化していけば今週の任務の消化具合は効率は上がると思います」
「よし。それじゃまずは水雷戦隊を編成して年初めの出撃となってもらおうか」

それで私は手ごろなところの軽巡の子を入れて後は駆逐艦五隻を何回も交代させることで『謹賀新年!「水雷戦隊」出撃始め!』を消化していった。
そして終了後に、

「まぁ、まずはまずまずな結果だったな。羅針盤以外は難しい海域じゃないからな」
「はい。それでは任務完了ですのでなにを貰うか選択しましょうか」
「そうだな。まずは……弾薬が2018貰えるのか。これは実質四つの任務で各資材が2018もらえる感じか」
「そのようです」
「そして次は……戦闘糧食2個と開発資材5個のどちらかを選択か。これは……微妙に悩むな。だけど改修でネジが稼げるからここはやっぱり戦闘糧食かな?」

私は戦闘糧食を選択した。
そして追加で「応急修理女神」も貰えたのでラッキーと思っておこうか。

「それじゃ、次は『新春「伊良湖」のお手伝い!』……これは伊良湖さんからのお願いか?」
「まぁ、形式上はそうなのでしょうが、任務内容はバジー島とオリョール海を水上機母艦か巡洋艦級でまたしても反復出撃するというものですね」
「また面倒な……まぁいつもの南西任務と並行すれば苦にはならないか」

それなので私は旗艦に水上機母艦の方のちとを置いて後は潜水艦のみんなを編成して出撃してもらった。
だけどまぁバシー島は大体駆逐艦から重巡級までしかいなかったからそんなに被害はなかったんだけどオリョール海に入ったらちとが集中狙いをされたので少し良心が痛んだので普通の編成をして挑んでもらった。
まぁ、無事に済んでよかったという感じだったけど、普通の編成にするまでに何度も「ちとが大破したでち!」というごーやの報告を聞くのは本当に肝が冷えた。

「まぁ、終わったからよかったけど後でちとになにか買ってあげるか」
「そうした方がいいと思います。それで今度はどれを選びますか? 提督」

任務達成の報酬として今度選ぶものは『戦闘糧食(特別なおにぎり)』と『高速修復材5個』と『新型砲熕兵装資材』のどれかを選ぶ感じだった。
まぁ、戦闘糧食は普通のだったらそこそこよかったんだけど特別なおにぎりじゃネジにできないからこれは除外かな。
高速修復剤も自然回復する程度には持っているからこれもいいとして、選んだのは今後に改修で使うかもしれない『新型砲熕兵装資材』を選択しておいた。
あんまり副砲とか改修していない私にとっては手に余っているけどいざって時にないとそれはそれで困るしな。

「おめでとうございます。それでは引き続き継続してやってまいりましょう」
「そうだな。次は『護衛始め!「海上護衛隊」なお正月!』という任務か。これは海防艦か駆逐艦に軽空母を一隻入れた編成で近海対潜哨戒及び輸送船団護衛作戦を格三回ずつ実施するという感じだけど……これはまずは近海対潜哨戒を勲章を貰いにいかないといけないか」
「そうですね。さらにはいつもの輸送船団護衛作戦ですが今回は軽巡洋艦を艦隊に編成できない事から羅針盤がランダムになってしまいますのでそこらへんを注意して編成してくださいね」
「つまり対空装備をもりもりで編成しないといけないって事か」
「頑張ってください。この任務の報酬にはなんとあの『雷電』が選べるそうですので」
「雷電か!防空四天王の局地戦闘機が手に入るとは今後の航空基地隊の防空には欠かせない装備だな。よし、それじゃ対馬たちに頑張ってもらおうか」

それで私は対馬たちいつもの対潜哨戒のメンバーを編成して出撃してもらった。
ついでだからと事前に第五戦隊の任務もクリアしておいて対潜警戒の任務も出しておいて一緒に継続して行ってもらった。
その甲斐あってあ号もいい感じに捗っているのを感じながらも、輸送船団護衛作戦も出して大鷹を対潜装備から対空装備に変更して駆逐艦の全員にもそれぞれ10㎝連装高角砲+高射装置と対空電探、あまりで対潜装備を二名ほどに装備してもらい攻略してもらった。
多少やっぱり敵深海棲艦に空母が多かったので苦労があったけど輪形陣で乗り切ってもらった。
そしてめでたく、

「よし。これで雷電を選択だな!」

二式爆雷、戦闘詳報、雷電の三つの中から選ぶとしたらここはやっぱり雷電しかないというある意味選択というのがなかった。
どうせ今後も戦闘詳報は誰かが改二になる時にその時の任務で手に入るだろうしな。

「それでは後残すのは大本営も挑戦はしてみてくださいという任務ですね」
「どうせ難しい海域なんだろうな……」

そう思いながらも新しい任務内容を見る。
そこには『迎春! 「空母機動部隊」全力出撃!』と明記されていた。
これはてっきりKW環礁沖海域と勘違いしそうだけどサーモン海域北方の任務である。
駆逐艦二隻に空母二隻残りは自由編成で計四回A勝利以上を収めよと言うものだ。
これはボーキがマッハで減りそうな任務だな。

「だけど、うちの子達の練度ならまぁ大丈夫だろうな。駆逐艦を二隻も入れるってかなりの不安要素だけど……」

それで私は装甲空母のみんなに対空の秋月、対潜の夕立を編成して、空母四人にはバルジを積んで駆逐艦二人にはダメコンを装備してもらって出撃してもらった。




……そして結果的には何回も大破はするものの主に大破したのは駆逐艦の二隻だったのでダメコンも積んであるので大破進撃をしてもらった。心が痛むけど突破率を優先した。
だけど今回は運が良かったのか一回も逸れなかったし、さらには大破進撃をしたにも関わらずダメコンを装備しているのが原因なのかいつもの不思議な力が働いて敵深海棲艦は一回も大破している秋月達には攻撃をしてこなかったので最終的にはダメコンを一個も使わなかったというのは面白いし助かる気分だった。
復活できるとはいえ轟沈を経験させるのは心苦しいからな……。
サーモン海域北方の敵のゲージは二回しか削れなかったけどこの編成ならまずまずの結果だった。
やっぱり戦艦に空母五隻で蹂躙するのが一番手っ取り早いからな。支援もいらないし。


まぁ、そんな感じで最後の新春の任務も終了したので『熟練搭乗員』と『新型航空兵装資材』と『紫電改二3個』の中からは今後も手に入る可能性が低い『新型航空兵装資材』を選択しておいた。
熟練搭乗員は今のところはもういちいち艦戦21型の更新には使うほどでもないからな。一個あればいまのところは十分。
52型(熟練)も数は揃っているからね。
さらには家具も手に入るのは嬉しい感じだったな。
さっそくとばかりに執務室を妖精さん達の力を借りて入れ替えてもらった。


「……しかし、大鷹に択捉、松輪、佐渡、対馬の対潜哨戒メンバーの書き初めか。五人ともなかなか達筆じゃないか」

五人を執務室に呼んでそんな話をしていた。

「大鷹さん! なかなかのもんだろう!」
「はい。佐渡さん、お上手ですよ」
「頑張りました……!」
「司令、ありがとうございます! ですが松輪の『安全』は分かるのですが、対馬……あなたの『危険』はどういう意味ですか?」
「うふふ……内緒ですよ」

相変わらず変な雰囲気を出している対馬に私達はそれ以上は聞くことはやめたのであった。
ともかくこれにて新春の任務は終了である。
明日には初詣にいかないとな。


 
 

 
後書き
一応5-5の編成を晒しておきます。

瑞鶴改二甲 村田隊、岩井隊、52型(熟練)、彩雲、バルジ
サラトガ  村田隊、彗星(六〇一空)、天山(六〇一空)、岩本隊、バルジ
大鳳改   友永隊、江草隊、52型(熟練)×2、バルジ
翔鶴改二甲 流星(六〇一空)、彗星(六〇一空)、52型(熟練)×2、バルジ
秋月    10㎝連装高角砲+高射装置×2、13号対空電探改、ダメコン
夕立    四式水中聴音機、type124 ASDIC、三式爆雷投射機、ダメコン


なんとか一日で終わりましたね。
疲れたけど良い装備が手に入ったので満足です。特に雷電!




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0269話『榛名達との初詣』

 
前書き
更新します。 

 




「提督。一つご注意を。あれから少しは薬の改善が出来ましたがそれでも効果はまだ半日までしかありませんから、分離できている時間は限られていますので注意してくださいね?」

明石が初詣当日にそんな事を私に言ってきた。

「わかった。それじゃ薬を飲んで榛名と分離できた後は速やかに晴れ着に着替えてお参りをしてくるよ」
《榛名も了解しました》

私と榛名でそう答えておく。

「それにしても、もう半日も伸びたのは凄い成果だな」
「えへへー。一度作った薬ですからさほど改良には手間はいらなかったのもありますけどね。それにまだまだ改良の余地があるのは確かですから。まだ幼児化に記憶を失うという欠点は解消できていませんから」
「そこら辺はまぁ今後の成果を期待しておくよ」
「ありがとうございます。それじゃそろそろ時間も時間ですからお薬を飲んでみてください」
「わかった」

明石から渡された薬を私はまた飲んだ。
そして効果はすぐに現れたのかまた私の身体が光に包まれてその光が隣に集まっていくとそこには榛名の姿が出現した。

「……これは、成功のようですね」
「よかったな、榛名」
「はい!」

それで榛名と見つめあっているんだけど、

「はいはい! 提督も榛名さんも時間が惜しいですからさっさと支度をしてきてください。もしもの時のために一緒に初詣に同伴及び警護をする人選もすでに決められていますので大和さんの部屋で着替えたら行ってください。
ちなみに大和さんも一緒に着いていくそうですので戦力は十分かと思われますけどね」
「わかった。それじゃ大和の部屋に向かうとするか」
「はい、提督」

榛名と手を繋ぎながら大和の部屋へと向かう道中で、羽根つきをしている谷風、浦風たちと出会って、

「あ、提督さん。また無事に榛名姉さんと分離できたんじゃね?」
「ああ。おかげさまでな」
「んー。でもこうしてみるとやっぱり分かりやすいもんだねー。榛名さんはやっぱり清楚な感じが出ているけど提督の方は榛名さんの顔でも男らしさが滲んできているから」
「違いが分かるというのはいいものじゃね」

浦風がそう言っていい笑みを浮かべている。

「あ、でも提督ー。時間は大丈夫なのかい?」
「あ、そうだな。谷風、浦風、すまない。時間制限があるから早く大和のところに行かないとだからここで」
「お二人とも、すみません!」
「ええって。いってきんしゃい」
「ちゃんと初詣を済ませてくるんだよー」

二人とはそんな感じで別れて大和のところへと向かった。
大和の部屋へと到着するとすでに大和は晴れ着に着替えて待っていた。

「お待ちしていました。提督に榛名さん」

その大和の晴れ着姿に私は少しばかり目を奪われていた。
普段から綺麗だとは思っていたけど晴れ着を着るだけでここまでの変化をしてしまうものなのかと……。

「どうしましたか提督……?」
「……あ、いや。なんでもない」
「むー……」

案の定榛名は拗ねてしまっていた。
これはあとでなにか奢らって機嫌を治さないとな。

「あ、えっと……それじゃ大和。さっそく私と榛名の晴れ着の準備をお願いしてもらってもいいか……? 半日は時間があるとはいえ有限だから大切に使いたいし」
「わかりました。それではまず榛名さんはこちらのお部屋で」
「わかりました」

最初に榛名が更衣室に大和と一緒に入っていった。
それから少しだけ待つこと10分くらいか……?
カーテンが開くとそこには目も奪われるほどの美人になっている榛名の姿があった。

「あの、提督……どうでしょうか? 榛名、似合っていますか……?」
「…………」

その少し遠慮しがちな態度も私の心を大いに揺さぶってくれる。
なんというか、大和とはまた一味違った味わい深さを出している感じだった。
私は自身の頬が赤くなっているのを自覚しながらもどうにか口を開く。

「その……榛名、とても似合っているよ。率直に言えばかなり可愛いし綺麗だな」
「えっと……提督、ありがとうございます……」

それでお互いに萎縮してしまっているところで、

「提督? 榛名さんと良い雰囲気になるのもわかりますけど時間がもったいないですよ? 提督も早く着替えましょうか」
「わ、わかった! それじゃ榛名、行ってくる」
「はい!」

それから私も榛名と色が違って赤い色が目立つ晴れ着を着させてもらったんだけど、

「なんか少し派手じゃないか……?」
「そんなことはありませんよ。お似合いですよ提督」
「元が男性だったからやっぱり少し複雑な気分だな……」
「そうですよね。でもお似合いですからいいと思います」
「そうか?」
「はい!」

そんな感じで榛名にも見せたんだけどやっぱり「提督、とても似合っていますよ!」と普通に褒められたからどうしたものかという感じだった。

「それでは向かいましょうか。すでに夕立さんに山風さん、アイオワさん、ウォースパイトさんが待っていますよ」
「今回はその四人に私達を含めて七人か」
「はい、特に夕立さんが提督の警護を担当しますので安心してくださいね」
「わかった」

それで少し歩きにくいけど我慢して正門まで向かうんだけど、

「わー! 提督さんとってもお似合いかも!」
「……提督……その、似合っているよ……」
「ありがとう。夕立に山風。二人もとても似合っているよ」
「嬉しいッぽい!」
「……うん」

夕立は素直に嬉しがっていて山風は遠慮しがちだけど頬をうっすらと染めて照れていた。うん、やっぱり可愛いなー。
そして、

「Admiral! とっても綺麗ヨ! Very beautiful!!」
「アイオワのいう通りですわ。Admiral、とてもお似合いですよ」
「二人もありがとう。アイオワはやっぱり青の晴れ着が似合っているな。ウォースパイトもまた気品があっていいな」
「Thank you!」
「ありがとうございます」

その後に榛名の晴れ着も褒めている四人の姿があった。
そして、

「それじゃ時間も惜しいんでさっそく初詣に出発しようか」
「「「はーい!」」」

七人で町の初詣に顔を出していく。
でもやっぱり三が日という事もあって人混みが凄い事になっていた。
それでも町の人達は私達の事に気づいてくれたのか、

「あ、提督さん! あけましておめでとうございます!」
「提督の嬢ちゃん、今年もまた船団護衛とか頼むぜ!」
「提督さん、綺麗だねー……周りも綺麗揃いだから目を奪われるぜ」

などなど。
みなさんもとても好意的だったので安心して参拝が出来そうだった。
そしてお賽銭を済ませたあとにみんなで目を瞑って今年のお祈りをした後に、おみくじなどを引いてみた。

「提督さんはどんな感じだったっぽい……?」
「うーん……今回は中吉だったな。夕立は?」
「大吉っぽい!」

褒めてと言わんばかりに見せてくる夕立はとても嬉しそうだ。

「ノー! これは、キチ……? いい方なのかしら……?」
「うーん……悪くもなくよくもない感じですね」
「つまりアイオワの今年の運勢は普通って事ね」
「うー……悔しいデス」

大和とウォースパイトの評価に本気で悔しがっているアイオワがどうにもいつもより小さく感じた。
そんな中で、

「………提督。凶を、引いちゃった……」
「マジか……」

それで私は今にも泣きそうな山風の頭を撫でてやりながらも、

「そんな事は気にしないでいい。それなら気にせずに過ごせばいいじゃないか。でも心配だからおみくじを縛りに行こうか」
「わかった……」

山風とおみくじを縛りに行った後に、

「それじゃ少しだけ時間を過ごした後に帰るとしようか。時間制限も後二時間かそこらだろうと思うから」
「提督? あまり無茶はしないでくださいね?」
「わかっているよ榛名。少しの間だけ楽しもうか」
「はい!」

それで私達は屋台巡りなどを楽しんだのであった。


 
 

 
後書き
明日は小さい提督の話ですかね。






それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0270話『小さい提督と明石の決意』

 
前書き
更新します。 

 
深夜の事、まだ副作用が現れていない提督は少し不安に思いながらも、

「それじゃ、榛名……後のことは任せたぞ?」
《はい、提督……》

そしてすぐに提督は深い眠りに入った。
それから別室のモニターでは明石と山城が寝ている提督の姿をモニターで観察していた。ちなみに事前に提督には許可は貰っているから大丈夫である。

「でも、子供になるタイミングが提督が眠りについた後なんておかしな話よね……」
「そうでもないですよ? 一番油断するタイミングが眠りにつくところなんですから。普通ならすぐに副作用が現れてもいいものですからね」
「ふーん、そう言うものなのね……」

山城は明石の説明に感心しながらもモニターを凝視していた。
心配ないとは言ってもやはりまた記憶が失われてしまうのはショックだしなにより、

「また、あの子の教育を一からしないといけないところが不安ね……」
「そうですねー。あの子も可愛かったんですけどまたあの時の子のような性格になるとは限りませんから」
「北上じゃないけど、こういう時は子供って厄介よね」
「あはは。最近は北上さんも表立ってはそんな事は言わなくなってきましたけどこれからもどうなるかは分かりませんからね」

と、二人が話し合っている時だった。
モニターの向こうで提督の身体がまた光りだしてきていたのだ。

「……始まりましたね。科学的にも神秘的にもとても興味深い光景が映し出されますよ」
「明石、あなたね……提督のことなのに結構楽観視しているわね」
「まぁまぁ。これも薬の開発で研究材料としてはとっても必要なんですよ。これからやみくもに副作用の効果を消す方法を探すより直接見ていた方がなにかわかるかもしれませんから」
「ふーん……」

山城は明石の少し言い訳じみたそんな話に興味半分そこそこでもう提督の方へと興味を映していた。
見ればどんどん提督の身体は縮んでいくという摩訶不思議現象が現在進行形で見れるのだ。
明石ではないけど山城もその光景にある意味で目を奪われていた。
そして、

「小さくなっちゃいましたね……」
「それじゃこれからどうするの?」
「そうですね。まずは提督が寝ている間に検査でもしておきましょうか。前回はあんな騒ぎだったんで碌な検査が出来ませんでしたから」
「わかったわ」

二人はそれでモニター室から出て行き、提督の部屋へと入っていく。
そこには少し悲しそうな榛名の姿が透けて見えていたので、

「榛名。それじゃこれから提督を検査室に運ぶからね」
《わかりました。お願いします……》

分かっていたとはいえやはりショックは隠しきれないのだろう榛名は落ち込んでいた。

「ほら。そんな顔しないの……。いざって時には明石の薬があるんだからすぐに戻れるでしょうに」
《そうなんですけど、やっぱり私のせいだと思うと……》
「榛名さん、それは違いますよ。提督は榛名さんのそんな泣き顔が見たいがためにこんな事をわざわざお願いしてきたわけではないんですから。いつか榛名さんが自由になれる事を祈って私に薬の開発を依頼してきたんですから榛名さんがそんな顔をしたら提督もどうしたらいいか悩んでしまいます。ですからもっと前向きに行きましょう」
《そうですね……わかりました》
「はい。それでは手早く提督を運んでしまいましょうね」
「了解よ。運ぶのは私に任せなさい」

提督の小さい体をこの中で一番力がある山城が持って運ぶ。
でもその際に山城はある事を思った。
提督はこんなに軽いのね……と。子供なのだから当然だけど、もとは一般人だった提督にはこの世界の過酷な状況で提督という重い地位を与えられて無理をしていないかと山城は今まで不安に思っていたのだ。
いつもみんなの前では気丈に振る舞う提督だけど心の中では辛いと感じているのではないか?と提督の立場になって考える事もある山城だから今は子供になってしまった提督は一時的に重圧から解放されているのでは……とも思う。
だから、

「いつも守ってもらっているんだから今この間だけは私達が守るからね。提督……」

そう呟いた。






そして時間は朝八時過ぎくらいになって、

「うゆ……?」

小さい提督は目を覚ましたのか目をパチクリとしている。
榛名はそれで安心してもらえるように笑顔を浮かべようとしたんだけど、

「榛名。今回はまた提督が記憶がない場合があるわ。だから最初は私にやらせて……。どうせ前の時は『どうして透けてるの……?』とか言われたんでしょ?」
《うう……その通りですから何とも言えないのが悔しいです。わかりました》

二人はそれで話が終わったのか提督に話しかけようとするんだけど、

「あれ? 山城お姉ちゃんに榛名お姉ちゃん……? 私、また小さくなったの?」
「えっ……? もしかして、あなた……前回の記憶を持っているの……?」
「えっと……うん。最後に薬を飲んだところまでは薄っすらとだけど覚えているかな……」

そう話す提督に遠くでそれを聞いていた明石が近寄ってきて、

「これは驚きですね……」
「あ! 明石お姉ちゃんだ!」
「はい。提督、ごきげんよう。ですがこれはある意味で一つの問題が解決してきましたが、新たな問題が浮上してきましたね」
「どういう事……?」
「わかりませんか? 小さい提督はこうして前回に小さくなった時の記憶をそのまま維持しています。でも、もとの提督に戻った時にその間の記憶はどこに保管されていたのか……? これはもうもう一つの人格の覚醒とも言うべき問題ですね」
「私……やっぱり問題なの……?」

提督は聞いていて理解してしまったのか涙目を浮かべている。
そんな小さい提督に明石は「そんなことはありません!」と前置きを入れた後に、

「提督。あなたの記憶が残っているのはある意味で嬉しい誤算です。提督とはまったく違う意識の覚醒なんてこれほど研究意欲をくすぶられるものはありませんから」
「明石、やっぱりあなた……」
「誤解なきように、山城さん。私はさっきも言ったように今回の件は嬉しい誤算です。
と同時に、これからは新たな研究と新薬の開発もしないといけなくなりましたね」
「新しい薬の開発……?」
《あの、明石さん。それって……》

そんな二人の反応に明石はニヤリと笑みを浮かべながらも宣言する。

「榛名さんとの分離薬を完璧なものとして開発し副作用を無くすと同時に、提督と小さい提督とも分離させて三人に増やす薬ですよ!」
《そんな事が可能なのですか!?》
「そんなことが出来るの!?」
「私、消えなくていいの!」

三人のそんな反応を見て明石は満足そうな顔を浮かべながらも、

「出来るか出来ないかではありません。やらないといけないんです!
このまま小さい提督の意識を無視して副作用を無くすほど私は外道ではありません。小さい提督もちゃんとした命と記憶を持っているんですからきっと提督も私の考えには賛成してくれると思います。いつになるか分かりませんけど必ず完成させますので……ですから小さい提督も安心して待っていてください」
「うん!」

最後に明石は小さい提督に安心してもらえるように笑顔をうかべた。
その後に榛名と笑顔を浮かべながら子供らしく話している提督をそのままにして山城と明石は別室の方で話し合っていた。

「でも、本当にやる気なの? 明石……」
「はい。もし今回で提督がまた前回と同様に記憶がまっさらな状態だったらこんな案は思いつきませんでしたよ。でも、しっかりと小さい提督は前回の記憶が引き継がれている。つまりそれは新たな生命が誕生したに等しいんです」
「新たな生命……あの子が……?」
「はい。私が開発した分離薬の副産物なのかは分かりませんが、このまま副作用として処理するにはあんまりですから」
「まぁ、そうよね……だったら明石。言い切ったからには最後までやってちょうだいね?」
「お任せください! 必ず開発を成功して見せますから!」

ここに明石の新たなプロジェクトが始まった瞬間だった。


 
 

 
後書き
これはこの小説の題である提督と艦娘の毎日の日常を描くという以外に明石の挑戦というストーリー性が出てきたとも言うべきでしょうか?
今後、いつか三人が分離できるように話が書けたら楽しいだろうな。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0271話『小さい提督と山城』

 
前書き
更新します。 

 





提督がまた小さくなってしまってから翌日。
小さい提督とは前に会っているのでそれなりに覚えてもらっているようで安心したわ。
それにしても明石の提案した新薬の研究開発についての持論には驚かされたわね……。
もうすでに研究に入ったのか夕張や妖精さん達もグルになって絶賛工廠に引きこもっているしね。
だから今は私の部屋で遊んでいるところだ。

「山城……あなた、とても楽しそうね」
「そうですか姉さま?」
「ええ。これも小さい提督のおかげね」

そう言いながらも扶桑姉さまは膝の上で抱きしめられながら眠っている提督の頭を撫でてやっている。かなり二重の意味で羨ましい。

「それにしても榛名との分離薬を作ったと思ったら今度はこの子ともさらに分離させようなんてよく思いつくわよね」
《はい。こればかりは榛名達ではさすがに話についていけない内容ですからね》

榛名とそんな話をしながらも寝ている小さい提督の頬をつく。
身じろぎをする仕草すら可愛いわね。

「それならもし叶うのだったらこの子の名前も付けてやらないといけないわね。いつまでも小さい提督って呼ぶのは可哀想だから……」
「いい案だと思います姉さま!」
《榛名も賛成です!》

そんな話が扶桑姉さまから持ち上がってきたので私達も特に反対はなかったのでどうしようかと悩んでいたら、ふと扶桑姉さまは電話をどこかへとかけだす。どこに連絡を入れたのだろうか……?
しばらくして走ってきているのだろう足音が響いてきた。
扉が開かれてそこには青葉の姿があった。

「はーい! 呼ばれてきました青葉です!」
「ゲッ!……扶桑姉さま、なんでよりにもよって青葉を呼ぶんですか……?」
「うふふ。こういう時は青葉さんの力が必要だと思ってね」

おおらかに笑う扶桑姉さまにはなにか考えがあるんだろう。しばらくは見学でもしてようかしら。

「青葉さん、一つお願いを言っても構わないかしら?」
「なんでも大丈夫ですよ! 司令官の為だというのは分かりますから!」
「ふふふ、そうね。それじゃこの鎮守府に在籍している艦娘のみんなにとある募集をかけてもらってもいいかしら……?」
「募集ですか……?」
「ええ。あなたは青葉新聞で目安箱もやっているって聞いたから、それを利用させてもらうわね。みんなにはこう募集してちょうだい。『小さい提督の名前、あるいは呼び方をみんなの意見で統一して決めよう』……って」
「なるほどー……確かにいつまでも小さい提督じゃかわいそうですからねー。了解です! すぐに青葉新聞でみんなに募集をかけてみますね! それでは早速ですが失礼しました!ッと、その前にチェキ!」

最後に小さい提督の寝顔を撮影した青葉はさっそく部屋を出ていって急いで自室に向かったのだろう。
前に青葉の部屋を見させてもらった事があるが、資料の束で溢れていたから相当汚い部屋だったという認識である。
だから今回の扶桑姉さまの案も資料の山に埋もれないかと心配になってくる。

「ほんとうに大丈夫でしょうか……?」
「きっと、大丈夫よ。提督の為ならみんなは精力的に動いてくれるから……」
《扶桑さんはなぜかいつもよりどっしりと構えていますね……》
「そんなことは無いわ。ただ、私もこの子と遊べる時間もあったら嬉しいと思うから……」

扶桑姉さまはそれでまたしても慈しみの表情をしながらも小さい提督の頭を撫でている。
グッ……あの子のポジションもかなり羨ましいわね。
私も小さくなったら扶桑姉さまに頭を撫でてもらえるのだろうか……?
そんな夢も見ているうちに小さい提督が目を覚ましたのか寝ぼけ眼のままあくびをしていた。

「提督、おはようございます。よく眠れましたか……?」
「うん。扶桑お姉ちゃんの膝の上ってとっても気持ちいいね」
「うふふ、ありがとうございます」

少しの疎外感を感じた私は小さい提督に話しかけた。

「提督? この後はどうしますか? どこかにでも遊びに行きますか?」
「うーん……それじゃどこかにいこっか。山城お姉ちゃんも付いてきてくれるんでしょ?」
「はい。できれば扶桑姉さまと一緒にいたいですけど今回は提督にご同行します」
「やったー!」

そんな感じで小さい提督と外に出かけることになった。

「それではどこにいきますか。提督?」
「うーん……山城お姉ちゃんの希望とかある……? 私、まだ知らない事の方が多いから」
「そうだったわね。ところで提督はこれを聞くのは少し気が引けるんですけどいつまでこのままでいるつもりなんですか……?」
「そうだね。明石お姉ちゃんには薬を飲むのは私が満足するまでいいと言われちゃったけどいつまでもこのままじゃ元の私が可哀想だから今日遊んだから元に戻る薬を飲むね」
「いいんですね?」
「うん。本来私はなかった存在だから少しでもみんなと遊べるだけでも嬉しいんだ」

まだ幼くて小さいのに、そこまでもう達観しているのですか……?
遠慮しなくてもいいのに……。
この子は本当に提督とは違うのか疑問に感じましたけどそれ以上にこの子の存在が少しだけ尊く感じてきました。
出来るのならこのまま守ってやりたいけど、私が素直に言葉に出すのは恥ずかしいですが好きなのはやっぱり元の提督だから。

「わかったわ。それじゃその間は思う存分遊びましょうか」
「うん!」

それから私と小さい提督は西村艦隊のみんなを集めて遊んだり、間宮でホットなデザートなどを食べたりと小さい提督と思う存分遊んだ。

「提督。満足できましたか?」
「うん!」

小さい提督のそんな笑顔を見られるならできたものよね。
そんな事をしているとそれを見ていた時雨達が、

「ふふ。山城、なんかお姉ちゃんみたいだね」
「そうだね。僕も今の山城の表情は楽しそうに感じれたからね」
「そうね~。司令さんに向ける視線とはまた違うものだったわね~」
「え? 山城さんが司令に向ける視線……? 山雲、それってどんなの?」
「朝雲、あなた気づいていなかったの……?」

なんか外野で私にとってそんな恥ずかしい会話をしているけど今は無視しておこう。後で覚えていなさい。
とにかく、

「それじゃそろそろ戻りますか……?」
「うん。お姉ちゃん達とはまた会えるって分かってるから寂しくないよ。だから……」

小さい提督は懐から一つの薬を取り出した。

「山城お姉ちゃん、それに時雨お姉ちゃん達も今日はありがとう。また会えるといいね」

そんな、少しだけ儚い笑みを浮かべた小さい提督は薬を飲むと次の瞬間にはその場で倒れそうになって、私がとっさに支えてあげた。

《山城さん。服が破れてしまいますのですぐに戻る前に着替えさせてください》
「わかったわ」

それでなんとか元に戻る前に提督のいつもの服装を着させたんだけど、

「でも、よくこれでぴっしりとはまるものね。今はダブダブよ?」
「いいじゃないか山城。こういうご都合主義もたまには容認しないと」
「まぁ、そうね」

時雨とそんな会話をしていると小さい提督の身体が光りだして次の瞬間にはもとの提督へと戻っていた。
まだ眠りについている事から部屋で寝かせた方がいいだろう。

「それじゃみんな、先に帰っていて。提督は私が部屋に送っておくから」
「わかったよ」

それで他のみんなとは別れて部屋へと向かっている途中で、

《山城さん、ありがとうございます》
「いきなりなに……?」
《いえ、山城さんがいなかったらこんなにスムーズにはいかなかったと思うので》
「まぁ、そうね。私も提督に惚れてしまったツケみたいなものだから気にしなくてもいいわ。それより、またいつか会えるといいわね……」
《そうですね……》

榛名と小さい提督とは次はいつ会えるかという話でその日は終わっていくのであった。


 
 

 
後書き
山城さんがもうデレデレな感じですね。
不幸ではない山城もいいものです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0272話『報告書と相次ぐ改二の情報』

 
前書き
更新します。 

 




提督は今明石から提出された資料を読みながら少し悩ましい表情をして考え込んでいた。
その資料にはこう書かれていたのだ。

『椿ちゃん分離計画』と……。
ちなみに音読みでシンちゃんというのがこの鎮守府に在籍しているみんなの総意見だという。
昨日の今日でもう決まったのには驚きだけど、青葉が大きく宣伝していたのがこうもうまくいくものなのかと提督は驚いていた。

「しかし、この榛ちゃんというのはなんとなく納得はしたけど、まさか小さくなっている時の記憶の継続が続いていたとは驚きだな」
《そうですね提督》
「これも明石さんの薬の副産物という結果に終わりましたね」
「副作用がまさかの副産物と化した訳か」

だけど提督の表情があんまりすぐれない。
それで榛名は不安に思ったのか聞いてみることにした。

《提督は……榛ちゃんが現れるのはお嫌ですか……?》
「あ、いや。そんなことはないぞ。小さい榛名と思えば可愛いものだしな」

慌てて提督はそう言って榛名が悲しい顔をしないように言葉を紡いだ。
だけど「ただ」と呟いて、

「果たしてその子は成長が出来るのだろうか……? 榛名は艦娘の精神を持っているから大丈夫だし、私もいつまでもみんなで暮らせることに関しては嬉しいからこのままでもいいと思うけど……その子はずっと子供のままだろう……?」
「そうですね。戦いには出せませんし、かといって町の方々に養子として任せるのもどこか引けてしまいますからね」

それで大淀と提督とで考え込んでいた。

《それならもし分離が完全に成功した時にはみなさんで育てればいいではないですか。こういう時に鹿島さんや香取さんなら喜んで引き受けてくれるでしょうし、駆逐艦や海防艦のみなさんも一緒になって遊んでくれると思いますから。鳳翔さんはもう絶対に喜びますよ?》

榛名の言い様に「確かに……」と納得をする提督と大淀。

「まぁ、今更一人や二人増えても変わらないか。別に新しく家を建てる事もないんだし誰かの部屋で一緒に住まわせて情緒教育をしていくのもありっていえばありだな」
「提督にとっては妹のように感じられるかもしれませんね」
「妹か……姉はいたから目上の対応はできるんだけど下に兄妹はいなかったからなぁ……しいて言えば姉夫婦に姪がいたからよく遊んでいた記憶はあるからなんとかなるだろうけど」

それでまた悩みだす提督。
元の世界での話はこの際なしにして実際に会ってみてから考えればいいかという気持ちで落ち着いてきていたりする。

「まぁ、この問題はまだ明石の研究成果が出てから考えればいいか」
《わかりました》
「そうですね。それではそろそろ話を変えていきましょうか。昨日の間に大本営から新たな情報が送られてきたのですが目を通しますか……?」
「わかった。見せてくれ」
「はい、それでは」

大淀がそれで手持ちの資料から一枚の紙を提督に渡す。
それを受け取った提督はすぐに目を通して、驚いた。

「一月中に軽巡洋艦と駆逐艦の二隻に改二だと? さらには二月には『捷一号作戦に出撃、シブヤン海を抜けレイテ湾突入を目指したある「戦艦」の改二改装』だと!?」

その情報にはさすがの提督も驚愕の二文字をするに値するほどの衝撃だったことは分かるだろう。

「多分ですがレイテ沖海戦に向けての改二だと思われますので軽巡洋艦に関しましては改二になっていないのは私と能代さんと矢矧さんくらいだと思われますから、有力なのは能代さん辺りだと思いますね」
「どうしてだ? 大淀ももしかしたらあるかもしれないじゃないか」

大淀の発言に提督は疑問を感じたのでそう聞いた。
だけどその大淀が苦笑いを浮かべながら、

「そうなのですけど……まさか私が来たらとも思いますけど、大本営がまだまだ私の改装はしないかもしれないというのが本音なんですよね。
そして矢矧さんに関しましては坊ノ岬沖がモチーフの海戦でない限りは保留されると思いますから」
「なるほど……それなら駆逐艦はともかくシブヤン海絡みでの戦艦はもう誰かに絞られてくるよな? 少し資源的に怖い気持ちもあるけど……」
「そうですね……間違いがなければ武蔵さんが改二になるのでしょうね。今現在も大型建造では武蔵さんの建造率は上がっていますしね。
ただでさえ強力な大和型ですのに改二になったらどんな力を発揮するか楽しみでもありますけど、同時に消費燃料弾薬がどれだけ増加するかと考えると恐ろしくも感じますね」
「そうだな。そしてこんなタイミングを逃したら改二にはなれないだろうからな」

それで提督と大淀は二人して渇いた笑みを零しているのであった。
そんな二人を見てられなかったのか榛名はこう言った。

《提督も大淀さんもそんなに後ろ向きではいけませんよ! せっかく改二になれるかもしれないのにそれを聞いたら武蔵さんが悲しみますよ!》
「そう、だな。ありがとう、榛名。危うく武蔵に悲しい思いをさせるところだった」
「そうですね。資材が減るのならまた回復させればそれでいい事ですよね」

どうにかそれで二人も暗い考えはやめることができた。

「それじゃ戦艦の件はこれでいいとして、残りの駆逐艦だけど……これは噂の村雨なのだろうかね?」
「こればかりは分かりませんね。まだ誰のヒントも得られていませんから」
「おそらくだけど数日中に情報が来ると思うからそれから練度を上げてもいいとは思っているんだ。誰になっても今のところは安定しているからな。先日に高波も練度70になったことで残りは七人になったし……」
「そうですね。村雨さんも現在は練度71で遠征艦隊に入っていますからいつでも引き抜けますしね」

それで提督と大淀と榛名の三人はとりあえず様子を見てから動き出そうという気持ちになっていたのであった。


 
 

 
後書き
駆逐艦に関しましてはもしかしたら武蔵と合わせて清霜という線も否定できないところですねー。
まさか藤波(練度42)な訳はないと思いますけど……。
勲章が減っていくなぁ……。




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0273話『正月の胃休めに』

 
前書き
更新します。 

 




望月と初雪の二人はもう正月は終わったというのにいまだに炬燵で残っている餅を食べているという堕落した生活を送っている。

「しっかし……司令官も頑張るよね。なんか今月中に二隻も改二の子が出るって話で色々頑張ってるじゃん?」
「……どうせ初雪達にはあんまり関係ない事。きっとレイテ組に実装されると思うから」
「ま、そうだなー」

初雪のその発言に望月もそれでこたつむりとなって特に動こうとはしないでみかんを一口。
かなりだらけきっている事である。
そこに皐月と水無月が部屋に入ってきた。

「あれ? もっちーに初雪。いたんだ。っていうかかなりだらけてるねー。餅まで食べていて」
「そうだねさっちん。なんていうか二人ともそのままだとかなり太るよ……? 艦娘としてそれはどうなの……?」
「「うぐっ……」」

二人の正論に二人はうめき声を上げる。
考えてみれば当然だけど、これでも艦娘なのだからいつ出撃してもいいように準備はしておいて然るべきなのだ。
だけど、

「そうなんだけどさー。最近、もうこれといって真新しい任務はないじゃん? かといって残っている任務もだいたいは工廠系か司令官が敢えてやっていない任務くらいだしね」
「……そうだよー。だから初雪達はこうしてゆっくりできるんだ……」

そんな二人に皐月と水無月は揃って「しょうがないなー」と諦めながらも一緒に炬燵に入っていく。

「皐月と水無月、ご入場ーっと」
「ふふふ。炬燵の魔力にやられるがいい……」
「そんなこと言われてもボクは少ししたらまた遠征に行くんだけどねー」
「さっちんは大発要員で引っ張りだこだからねー。大変だ。あ、ミカン貰うね」

水無月は親友である皐月の身を案じながらももう慣れているのでそのままゆっくりしていた。
それに対して皐月はというと顔を少し嬉しそうにさせながらも、

「うん! だってもう少しで司令官とキズナを結べる練度まで達しそうだから頑張ってるんだー」
「さっちんは司令官の事が好きだよねー。まぁそれを言ったら先に練度がカンストするのは睦月姉に如月姉だと思うけどね。さっちんはあと少しで練度が98になるくらいだから」
「そうなんだよねー。遠征でも練度は上がっていくけど雀の涙程度な感じだから。ボクだって先制対潜が可能なんだからやろうと思えばすぐに練度なんてカンストできるんだよ!?」
「うんうん、そうだね」

皐月の訴えにそう流す水無月。慣れた手つきである。
と、なんだか皐月と水無月が話が少し騒がしくなってきたので望月が、

「二人ともー? もっとゆっくりしようよ。せっかく炬燵の中にいるんだからさー」
「……そうそう。静かが一番」

そんな感じで四人で炬燵でゆっくりしていたんだけどそこで提督が談話室には言ってきて、

「あ、やっぱり望月に初雪はここにいたか」
「んあ? どうしたの司令官……?」
「初雪達になにか用……?」
「ああ。どうせ二人は暇しているだろうからとの鳳翔さんの推薦で今日は『七草がゆの日』ということで料理作りを手伝ってほしいとの事だ」
「えー? だるいなー」
「右に同じ……」

そんな二人に提督はやれやれと言いながらも、

「そんな感じだと二人の今日のお夕飯は悲惨な事になるぞ? いいのか……?」
「そ、それは……嫌だけど……」
「でも、出るのは寒いし……」

なお強情な二人をよそに、

「はいはい! 司令官、水無月手伝いたい!」
「ボクも……手伝いたいところだけどそろそろ遠征に行かないといけないからね。残念……」
「そうか。二人はいい子だなー」

それで提督に頭を撫でられて嬉しそうに笑みを浮かべる二人を見て、少し悔しさが出てきたのか、

「……わかったよぅ。あたしもやるからさ……」
「初雪、たまにはやる子だよ……?」

と言ってのそのそと炬燵から出てくる二人。
そんな二人に提督は笑みを浮かべながらも、

「それじゃ頑張っていくとしようか。もう他の子も七草がゆのお手伝いをしているところだから」
「わーい! 早く行こう司令官!」
「うー……付き合いたいけどボクはもう行くね」

提督に抱きつく水無月を見て少し名残惜しそうに皐月は遠征艦隊の部屋へと向かっていった。
そんな感じで四人で鳳翔さんが七草がゆを作っている食堂へと顔を出していくと、

「あ、提督。望月さんと初雪さんを連れてきてくれたんですね」
「はい。少しだけ面倒くさがりましたけどなんとか連れてこれました」
「そうですか、ありがとうございます」

提督に感謝の言葉を述べながらも鳳翔さんは二人及び水無月に目を向けて、

「それじゃ三人とも。頑張って作りましょうね。今夜はみなさんで揃って七草がゆも食べようと思いますから」
「七草がゆかー。やっぱり苦いのかな……?」
「そんなことはありませんよ水無月さん。草にも味はありますし独特の味はするでしょうがお味噌汁みたいなものですから」
「そっかー」

鳳翔さんと楽しそうに話す水無月をよそに、

「それじゃ望月に初雪。二人ともしっかりと鳳翔さんのお手伝いをするんだぞ?」
「わかってるって!」
「たまには頑張るよ……」
「それでよし。それじゃ鳳翔さん、後はお願いしますね」
「わかりました」

それで提督は部屋を出て行った。
それから二人はだるそうな顔をしながらもしっかりとお手伝いをしてその晩にはみんなで七草がゆを含めた料理を食べて嬉しそうにしていたという。
ちなみに望月と初雪が手伝った事を言うとみんなは揃って驚いていたというオマケ付きである。これが普段の行いの結果だと分かっていても大層不満そうだったのは言うまでもない事であった。


 
 

 
後書き
話題は頑張って考えるものだ。
ちなみに七草がゆはそんなに食べたことがないんですよねー。



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0274話『町の成人式と初風の心配』

 
前書き
更新します。 

 




私は今日、町の成人式に呼ばれていた。
なんでも鎮守府代表とかでぜひ出てくれとの打診を受けたものである。
それで久保少佐とともに席に着きながら次々と進んでいく成人式の光景を見ながら、

「……それにしても、懐かしいですね。私はまだ一、二年前のことですがもう親友とはこういう場でもないとあまり会う機会もないですから」
「私もです。もうかなり前のように感じられますね……」

久保少佐にそう話しかけられたのでなんとか言葉を返しておいた。
私的には本当の年齢はあんまり言いたくないから黙っているけど相当前の話になってくるからな。
そんな中、一人の若者が壇上に代表として上がってきてこう宣言する。

「俺は! いっぱい勉強して軍学校を卒業して榛名提督や久保提督のような立派な提督になってみせるぞー!!」
「「「わーーー!!」」」

と、盛大に若さを見せてくれる。

「うーん……恥ずかしいですね」
「確かに……」

その後に成人式はつつがなく終わっていって、私達も町の人との飲み会に付き合ってやっぱり久保少佐は限度がまだ分からないのか酔いつぶれていたりしたけどこのままでは同人誌みたいな展開になりかねないので急いで控えていた久保少佐の艦娘の子達を呼んで持ち帰ってもらった。

「あはは……それでは私もおそろそろおいとましますね」
「わかりました。それでは今後もよろしくお願いします」
「はい」

宴会場の外に出ると最近秘書官にしていた初風が待っていてくれたので、

「終わったの……?」
「ああ。それじゃ帰るとしようか」
「わかったわ」

初風と帰り道を歩きながら、

「それにしても、あなたも大変ね……こんな私達とは関係ない事にも出なくちゃいけないんだから」
「まぁそう言うなって。これも町の人との親睦を図るのには必要なっ事だからな」
「ふーん……そういうものなのね。成人式か……私達で言う就役日みたいなものかしらね」
「うーん……そんなものかな」
「なによ、パッとしないわね」
「あはは」

そんな感じで楽しく会話をしながらも鎮守府に帰ってきたんだけどなにやら少し騒がしくなっていることに気づく。

「なにかしら……?」
「さぁ……」

見ると、中庭でなぜか複数のみんなが晴れ着を着て壇上に立って今年の目標とか叫んでいる。

「今年も提督さんとみんなと頑張るっぽーい!!」

夕立なんか魚雷を持ちながら騒いでいるから危なっかしいな。
もしかしなくても成人式に感化された集まりだな。

「アホくさ……成人式の真似事かしら……?」
「多分な」

それで手頃なところにいる大淀に話しかける。

「大淀」
「あ、提督。お帰りなさい」
「うん。それでこの騒ぎはどうしたんだ?」
「はい。皆さんがテレビを視聴していてちょうどよく成人式のニュースが流れましてせっかくだから私達もしようかって話になってしまいまして」
「やっぱりか……」
「単純ね」
「まぁそれで提督が帰ってくるまでは暇な子も多かったので暇をつぶすという名目で晴れ着まで用意してこうして騒いでいるという事です」
「なるほどな……」

それでもう一度みんなを見るんだけど各自で楽しく騒いでいるのでこうして見ているだけでも目の保養になるので止める事もないかなと思って、

「それじゃほどほどにしておいてくれと伝えてくれ。寒い中で風邪でも引いたら大変だからな」
「わかりました」
「それじゃ私は執務室に戻っているけど初風はどうしてる?」
「私も行かせてもらうわ。あまり騒がしいところは好きじゃないから」
「そっか」

初風らしいと思いながらも執務室へと戻って今日の任務を再開した。

「……それにしても結構あなたは頑張っているわね」
「どうしたいきなり……?」
「いえ、先日に私も練度70まで上げてくれたじゃない? だから後残すは六人ってところだから一応の終わりは見えてきたんじゃないかなってね」
「いや、まだまだだよ。駆逐艦のみんな全員が練度70になったら次は特殊艦のみんなも上げていかないといかないとだしな。目指すは全員70以上をめどにしてそれが終わったら次は75をって感じで順々に上げていこうと思っているし」
「それだと終わりが見えないわね……」
「はは。確かにな」

そして話が終わったのか少し静かになる執務室。
初風はもとから静かな性格をしているから息苦しいという事もないからちょうどいい。

「でも、無理はしちゃダメよ? これでもみんなはみんなあなたの事をいつも見ているんだから少しの変化も見逃さないんだからね」
「うん。それは分かっているよ。いつもなにかあったら気遣いの言葉を言ってくれるからな。おかげで体調を崩すこともないしな」
「そう……私が言うまでもなかったわね。それに、誰よりも榛名さんの方があなたの事を分かっているから口出しは無粋だったわね」
《初風さん、そんなことは無いですよ》

そこに榛名が外に出てきた。
多分初風の事を心配してのことだろう。

《確かに私は提督の事をいつも把握していますけど、それだけですので言葉はかけられても触れられませんから皆さんのそういう気遣いがとても助かっているんですよ? だから遠慮せずにいつでも提督の事を心配してくださいね》
「そう。それなら覚えておくわ」
《はい》

話は済んだのかそれで二人は笑いあっていた。いいものだよなこういうのも。
それから三人で話に花を咲かせながらも任務をやっていった。


 
 

 
後書き
今日は少し遅めの更新です。
ちょっと疲れていたのでご容赦ください。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0275話『村雨を呼ぶ提督』

 
前書き
更新します。 

 




提督から伝えたい事があるからと呼ばれはしたものの、何を伝えられるのだろうと思いながらも執務室へと向かっていく。
まさか、この村雨になにかイヤらしいことを注文してきたり!
あ、でもそれはないかー……。
うちの提督は榛名さんが一番だし、その榛名さんも見張っているようなものだからねー。
いつも思うけど提督と榛名さんっていつも一緒にいて窮屈じゃないのかしら……?
気になる異性と一緒にってなったら私はきっとすぐに耐えられないという自信があるわ。
いっつも謎の雰囲気を醸し出してるって姉妹のみんなに言われる村雨だけどさすがにそこまで肝は据わっていないしね。
そう考えると、とっても提督と榛名さんてお互いにラブなのねー。
と、どうでもいいことを考えているうちに執務室に到着ッと!
それじゃなにかわからないけど覚悟を決めて入らないとね!
一度扉をノックして、

「村雨、入りまーす!」

返事はなかったけど入らせてもらった。
別に怪しい事をしているわけじゃないし、呼ばれたんだからいいわよねっという気持ちで挑んでいく村雨ってどこかかっこよくない?
でも入った途端に、何かが起こるわけでもなくいつもの提督が椅子に座って私の事を待っていてくれた。

「来たか、村雨」
「はい。それでこの村雨になにかご用でしょうか?」
「うん。まぁ、そんなに緊張する内容じゃないから楽にしてもいいよ。なにか淹れようか」

そんな感じで提督はお茶か何かを用意しようと立ち上がったので私も部屋にあるソファーに座らせてもらった。
このソファーっていつも誰かが座っていて気持ちよさそうだったから一度座ってみたかったのよね。
少しして提督は紅茶を淹れてきたのか私の前に置く。
……さすが暇なときは金剛さん達とよく一緒にいるだけあるわね……。
紅茶からいい匂いがしてくるわ。

「簡単なものだけど、飲んでくれ」
「わかりましたー」

提督に許可をもらったので一口飲んでみる。うん!

「美味しいです! さすが金剛さん達に習っているだけありますね!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。結構練習したからな」
《提督、結構金剛お姉さまに習っていましたよね》
「ああ。なんでも金剛型の嗜みとかなんとか……その割には比叡の腕は壊滅的だけど……」
《あ、あははー……》

あ、榛名さんが笑って誤魔化そうとしている。
まぁ、比叡さんの口に入れるもの関係の腕は私も知っているけど相当危険だからね。
あの磯風とどっこいどっこいかさらにやばいかの二択くらいだしね。

「それじゃ紅茶を飲みながら聞いていてくれ。まだ本当かどうかは分からないんだけどとある有力筋からの情報では新春から白露型駆逐艦の誰かが改二になるという話だ」
「ブフォッ!?」

飲んでいた紅茶を思わず器官に詰まらせてしまった……。

「あぁ……大丈夫か?」

提督は優しく私の背中をさすってくれるけど、情報がいきなり過ぎである!

「ゲホッゲホッ!……もう、提督! いきなりすぎますよ!」
「ごめんごめん。驚かしたいわけじゃなかったんだけど一応伝えておこうと思ってな」
「はぁ……そうですか。まぁ確かに驚きましたけど……それって村雨だったりするんですか?」
「多分な。大本営の方ではすでに準備に取り掛かっているという情報があるからな。それにもし違っていても白露型の誰かには来ることはもう決まっているらしいから期待はしておいて損はないと思う」
「ふーん? でも本当ならとてもいいじゃない!」

そうよ。
最近は朝潮型のみんなに改二の数に差を付けられてしまっていて不満はないけど残念がっていたからちょうどいいかもしれない。

「それだったら村雨ってどんな風に改二になるのかしら?」
「まだ分からないけど、江風みたいになるんじゃないか……?」
「江風はマントを羽織っているわよね。村雨もそうなのかしらねー……」

やばっ! 考えだしたらについやけ顔になってしまう。
本当に改二になったらどうなるんだろう!
わぁー、とっても楽しみね!

「まぁ、そろそろ大本営から正式に告知とかが来るだろうからそれまでゆったりしているんだな。情報が来た時には練度上げを頑張ってもらう予定だから」
「まっかせてよ。今の村雨の練度は71。だからすぐに最近の基準練度である77に上げるのは楽よね?」
「そうだな。今から上げていってもいいんだけど……やっぱり私ってめんどくさがり屋だから」
「それはないわね」
「きっぱりと言うんだな……」

そこはきっぱりと言っておかないといけないわ。
なんでったって、去年から怒涛の勢いでみんなの練度を上げている光景を何度も見せられてきたんだからどこがめんどくさがりなんだかって言いたいところね。
それを伝えてみると提督は案の定今気づいたような顔をしていた。

「確かに……そう考えると相当頑張っていたんだなー」
「そうね。だからそんなに自分を貶しちゃダメよ? せっかく頑張ってきたんだから」
《村雨さんのいう通りだと思いますよ、提督》
「あはは……。反省しておくよ」
「わかればよろしい」

提督はそれで自分を振り返っているのか少し遠い目をしていたのが印象的だった。
とにかく!
白露型の改二は楽しみにしておこうかしらね。
もし本当に村雨だったら提督にいいところたくさん見せるんだから!


 
 

 
後書き
コンプティークで情報が出ましたね。
白露型の改二、楽しみです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0276話『レーベの武蔵チャレンジ。なお……』

 
前書き
更新します。
昨日に起こった話をそのまま書きました。 

 


今日は提督に工廠に来てくれと呼ばれたんだけど、なにをするんだろうね?
ボクはそれで部屋を出て行こうとするんだけど一緒にちょうど部屋にいたビスマルクが立ち上がって、

「なにかしら……変な胸騒ぎがするわね。レーベ、私も一緒に付いていってもいいかしら?」
「別に構わないけど……多分やる事は決まっているんだと思うよ?」
「それでもよ。もしかしたらもしかしてかもしれないから」

うーん……こういう時は提督も信用が少しだけなくなるよね。
そんなうまい話はないと思うんだけどな。
ボクが建造をしたら良い結果になるなんてことはあるかもだけどかなりの運を使う事になるからね。
まぁ、やるだけやってみるさ。
それでボクとビスマルクは工廠へと足を運んでいった。
そこではすでに工廠の任務をしているのか提督と明石が色々となにかをしている。
少し声をかけずらいけど勇気を振り絞って、

「提督! ボクに用って何だい?」
「あ、レーベ。来てくれたか」
「うん」
「私もいるわよ」

ずいっとビスマルクが前に出てくる。
うん、いつも通り自己主張が激しいね。

「ビスマルクもいたか。まぁいいか。それじゃレーベ、今日は弾薬がカンストしたんで一回だけ大型建造をするから建造ボタンを押してもらえないだろうか?」
「やっぱりだったね。でもボクでもいいの?」
「ああ。むしろレーベの方がいいと思う。前もこんな感じで大型を当ててくれたじゃないか」
「そうだったね」

ずいぶん懐かしい事を話すね。
もう一年か二年くらい前の話じゃないか。

「わかった。それじゃどういう結果になっても怒らないでね?」
「わかってる。こういうのは運が作用してくるからな。怒りはしないよ。とにかく頼んだ」

それで建造ボタンの前に座らされるボク。
こういう時は少し緊張するよね。
ボクが建造を手伝うとビスマルクも出る可能性があるから。
そのせいもあってかボク達の後ろの方ではビスマルクが何かとそわそわしているし。

「て、提督! 早く押してもらいなさいな! もしかしたら武蔵が来るかもしれないでしょう?」

どこか緊張しているビスマルク。怖いのかな……? 二人目の自分が来るかもしれないから。
まぁ、それだったら少し面白い展開になるからボクとしては面白いかもしれないけど。
あ、そうだね。提督には悪いけどビスマルクが出るように祈りながらやってみようかな……?
少しそんな気分でボクは大型建造のボタンを押した。
そしたら資材が投入されていく光景が映ってパネルに建造時間が表示される。
そこにはこう表示されていた……[04:59:00]と……。
えっ? まさか本当に……?
ボクは少しだけ疑う気持ちを抱きながらも思わず提督の顔を見る。
そこには目を見開いている提督の顔があった。

「これは………もしかして、本当にビスマルクか?」
「いえ、わからないわよ。もしかしたら長門か陸奥かもしれないわ……」
「でもなぁ……こんないい感じに一回で出ると思わずビスマルクかもしれないって思ってしまうじゃないか」
「まぁ、そうね……」

提督とビスマルクがそう言って二人して神妙な顔になっている。
ボクはそれでおっかなびっくりな感じで二人に聞く。

「そ、それじゃ高速建造材を使うけど、いいよね……?」
「ああ、頼む……これでビスマルクだったら運は回ってきていると感じられるからな」
「そうね。でもこれで長門や陸奥だったら笑ってあげるわよ提督」
「ああ、頼む。むしろ笑ってくれ」
《なんかドキドキしますね》

榛名も顔を出してきて固唾を飲んで見守っている。
ボクはそれで意を決して高速建造材の投入ボタンを押した。
そしたら妖精さん達がわらわらと出てきて一気に建造を始めていた。
そして建造室が開いてそこに立っていたのは……、

「Guten Tag.私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。よおく覚えておくのよ」

思った通りビスマルクが建造室から出てきた。
それでボク達は思わず無言になる。

「……な、なぁに? この変な空気は……? 私、もしかして歓迎されてない?」

そのビスマルクの言葉で提督も我に帰ったのか、

「あ……すまない。いや、ビスマルクが建造できたのは嬉しい誤算だからいいんだ、うん……」
「そ、そうなの? それならいいんだけどね」
「あなた? 同じビスマルクとしてここでの規則とか守り事を教えてあげるわ」
「あら。それは嬉しいわ。よろしくね、私」
「ええ」

それで握手を交わす二人のビスマルク。
そんな二人をよそにボクは提督の肩に手を置いて、

「……まぁ、こういう時もあるさ。まだ今月は十分に期間はあるんだからまた挑戦すればいいじゃないか」
「……そうだな。レーベ、また資材がカンストしたら頼むな」
「まさかの三人目とか出ても微妙な視線を送ってこないでよ?」
「努力する……」

そんな感じで本日の武蔵建造チャレンジは終わりを迎えたのである。
提督に運は微笑むのかどうか……。
ボクもさすがにさっき思った気持ちを提督に教えられなくなったから申し訳ない気持ちで一杯だよ……。

《提督、それじゃ執務室に戻りましょう?》
「そうだな。気持ちを入れ替えて頑張っていこうか」

提督と榛名はそれで工廠を出て行った。

「それじゃ行きましょう。あ、アークロイヤルとかいるから艦載機で追われないように気を付けなさい」
「はぁっ!? それって本気なの!?」

そんな会話をしながらも二人も一緒に工廠を出て行った。
うん、ボクもいつまでもここにいるもんじゃないからマックスに今日起こった話を面白おかしく聞かせてやろう。うん、そうしよう。


 
 

 
後書き
武蔵チャレンジ、ある意味大成功だけど失敗!
またカンストしたらチャレンジします。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0277話『広がる軽巡改二の話』

 
前書き
更新します。 

 




現在、演習で村雨の練度上げをしながらも私はある事を考えていた。
それは今朝に大本営から送られてきた電文に書かれていた軽巡洋艦の改二の件に関してだ。
そこにはこう書かれていた。

『やや旧式ながら輸送作戦や支援で戦線を支えたある軽巡洋艦のさらなる改装の実装を準備しています』……と。

この内容から察するに最新鋭軽巡と言われている阿賀野型は改二の候補から外れたという事になる。

「ふぅ……演習は汗が出るわねぇ……」

私の目の前で艶めかしく汗を垂らして怪しい雰囲気の村雨の事はあんまり気にせずに、この件に関して聞いてみることにした。

「なぁ村雨。ちょっといいかい?」
「ん? どうしたの提督?」
「ああ。新しく大本営から送られてきた電文で軽巡改二の情報が記載されていたんだけど誰が候補に挙がるだろうと思ってな」
「ふーん……? どんな内容だったの?」
「そうだな。まぁ駆逐艦の改二の情報も一緒にあったから伝えておくよ。
『ソロモンなどで四水戦の一翼として奮戦したある白露型駆逐艦』というのが書かれていた」
「それってもう私か春雨とかに限られてくるわね」
「ああ。だから村雨はこのまま練度上げを続行してもらうとして……軽巡の改二の予想が分からなくなったんだよな」
「どう言う事……?」

それで軽巡の情報も村雨に教えると村雨は少し考えるそぶりをしながらも、

「そうねぇ……。もしかしたら球磨型で残りの球磨さんかもしれないし、長良さんか名取さんって事もあるかもしれないけど、やや旧式ってなると天龍さん達の方が可能性としては濃厚かもしれないわね」
「村雨もそう思うか……? 誰に来るんだろうな……」

私がそう悩んでいるんだけどそこで村雨が呆れた表情をしながらも、

「提督も心配性ね~。別に誰に来たっていいじゃない? 阿賀野型の四人と夕張さん以外の軽巡は全員練度が90を越えているんだからどんと構えていればいいのよ」
「確かにそうだな……。こういう時のために全員練度を上げてきたんだからな」

まぁ、正確に言えば名取はまだ練度89なんだけどそれにしても後は3000ちょいの経験値で90に達するから今は遠征に行かせているからすぐに到達するだろうし、球磨に長良に天龍、龍田の四人は90を越えている。
夕張も練度86で阿賀野型もそれぞれ練度は80以上を言っているから特に心配はないんだよな。

「悩んでいても仕方がないか」
「そうよ。だから今は村雨の練度を上げていく事だけを考えていてね?」
「わかった」

そんな感じで村雨との会話は終了した。
それから私は執務室に戻ると榛名と大淀と会話をしながらも誰が軽巡になるかという話をまたしていた。

「……そうですね。可能性としましては輸送任務を多くしていた天龍さんが一番有力だと思いますね」
「大淀もそう思うか?」
「はい。電文の内容から察しますともう私の可能性はなくなったのは明らかですけどね……」

それで大淀は少し寂しそうにしている。
うーん……やっぱり大淀も気にしているよな。

《大淀さんもいつか来ますよ。ですからあんまり気に病んではいけませんよ》
「そう、ですね。はい、少しだけ感傷的になっていましたね。すみません」
「謝る事じゃないだろう? 誰だって改二になりたいと思うのは当然のことなんだから」
「はい。お気遣いありがとうございます、提督」

そんな感じで任務や資料とにらめっこしていたらどこからか改二の情報を嗅ぎ付けてきたのか天龍が執務室に入ってきた。

「なぁなぁ! 提督よ、軽巡の改二の候補にオレが上がっているっていうのは本当なのか!?」
「嗅ぎ付けてくるのが早いな天龍。まぁもしかしたら来るかもしれないな」
「そっかー! それは嬉しいかもしれないな! オレの力がついに天元突破か……いいもんだな」

もう自分が改二になると信じて疑っていない天龍に私は生暖かい視線を送りながらも無粋だろうとは思うけど言っておく。

「まだ決まったわけじゃないからそんなに期待度を上げておくと後でダメになりそうだからそこそこにしておくんだぞ?」
「分かってるって! しっかし、ああ楽しみだなぁ……」

どうやら私の助言は届いていないようだな。まぁそこが天龍らしくていいとも思うけどな。
怖気を知らない鉄砲玉って表現もおかしいけどなんにでも全力で突撃していく天龍は見ていて気持ちがいいからな。改めて納得する。

「まぁ楽しそうでなによりだよ」
「おうよ! そん時はオレがめい一杯活躍するから期待しておけよ!」

そんな感じで天龍は風のように部屋を出て行った。
それを見送りながら、

「相変わらず落ち着きがない奴だな」
「ふふ、そうですね。でも天龍さんらしくていいではないですか」
《榛名もそう思います。あれでこそ天龍さんですからね》

そう三人で話し合っていた。
うん。天龍が楽しそうで私も少しだけ楽しく感じられるよな。
これで本当に天龍が改二になったら頼もしさが増すからな。

「まぁ……誰がなるにせよ改二は楽しみだな」
「そうですね。球磨さん、長良さん、名取さん、天龍さん、龍田さんの全員に可能性がありますからとてもいい事だと思います」
《村雨さんの改二も控えていますからもしかしたら二人同時に改二の実装をするんでしょうか……?》
「それはそれで大変そうだな……」

そしたら久しぶりに疲れそうだと私は思ったのであった。


 
 

 
後書き
誰に来るんでしょうね……?
とにかく楽しみです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0278話『居酒屋鳳翔でラーメンを……』

 
前書き
更新します。 

 



今日は悲しい事があった。
武蔵建造チャレンジをまた資源がカンスト気味だったので決行してみたんだけど、結果は大損であった。
レーベにも何度もやってもらったんだけどもうビスマルクすら出ないで八回も大型建造を行ってしまい、この感覚ではこのままだと冬の限定作戦に響くぞ!?という事でまだ今月は武蔵の建造率は上がっているのだけど私のチャレンジはここまでだ……という事になった。
レーベには悪い事をしたと思いながらも、少しだけやけ酒をしたい気分だったので居酒屋鳳翔へと足を運んでいる最中だった。

《提督……大丈夫ですよ。まだ資源はそれぞれ20万以上はあるではないですか……。今月の残りの時間を費やせばいいところまでは回復しますよ》
「ああ、分かってるんだけどな……どうしてもこの気持ちを発散させておかないと明日に響くと思ったんだ。だからあんまり飲めないけど少しだけ嗜むことにしたんだ」
《ああ、提督。お労しいです……》

榛名のそんなちょっとした芝居かかったリアクションのようで本音で言っているところにときめきを感じる今日この頃である。
そして居酒屋鳳翔へ到着してみるとなにやら中が少し騒がしかった。

「なんだ? 今日は宴会でもしているのか……?」
《なんでしょうか……?》

少しだけ疑問に思いながらも暖簾をくぐってドアを開けて中に入ってみるとそこでは武蔵と長門、そして大和のうちのトップ戦力三人が静かに、だけど豪快にラーメンをすすっていた。
清霜も武蔵の隣でお子様のラーメンを食べているところが癒しを感じるな。

「あら、提督。どうされましたか?」
「ああ、鳳翔さん。ちょっと今日は大型建造で失敗をしまくってしまったんで少しだけ気晴らしに飲みに来たんだけど……」

チラッと四人を横目で見る。
四人とも種類は違えど美味しそうにラーメンを食している。
そんな光景に私は少しだけ胸をときめかせていた。

「ふふ……。みなさん、良い食べっぷりですよね。提督も無理に苦手なお酒を飲むのはよして一緒にラーメンでもお食べになりませんか? すぐにお作りしますよ?」
「それもいいかもしれないな……」

鳳翔さんの魅力的な提案に私は条件反射で言葉を返していた。
お酒を飲もうとしていた気分ももうラーメンに移行しているところはさすがである。

「はい。それでは席についていてください。すぐに注文を聞きに行きますので決めておいてください」
「わかった」

それで手頃な席を探そうとするんだけど清霜が私に気づいたのか、

「あ! 司令官、清霜の隣空いてるよ!」

そう言って清霜が手招きをしてくるので無理に断るのも気が引けたので清霜の隣に座る事にした。
席に着席するとさすがに他の三人も私の事を気付いたのか、

「ふふ、なんだ提督。浮かない顔をしているじゃないか。さては私の建造に失敗した口かな?」
「つぅ……痛いところを突いてくるじゃないか武蔵」
「はっはっは! まぁいいじゃないか。そういう時もあるさ。それにすでに私はもういるのだからそんなに焦る事もないじゃないか」
「そうですよ提督。今回はもう諦めて冬の作戦に備えましょう?」

大和もそう言ってきたので、

「そのつもりだよ。もう久しぶりに大型建造の闇を味わったからな……今回はもう備蓄に専念する事にした」
「いい心がけだな提督よ。まぁこれで安心したよ。提督代行をしている身としては資源の激変を何度も見せられる様は結構キタからな」
「それは、悪かったな……」

もう苦笑いも出来ない。
そんな私の背中を清霜は撫でてくれながらも、

「司令官! もう大型建造の事は忘れて清霜たちと一緒にラーメンでも食べましょう? とっても鳳翔さんの作るラーメンは美味しいんだから!」
「そうだな」

それで私はメニューを取って何を食べようかと考え始めるんだけど、

「ときに提督よ。提督はラーメンの味は何が好みなんだ? あまりこの世界に来てから提督がラーメンを食す光景は見たことがなかったからな。少し興味が湧いた」
「大和も少しだけ興味があります。提督はもちろん醤油味ですよね?」
「いやいや大和、ここは断然味噌味だろう?」
「塩味やとんこつ風味もなかなか隅に置けないと思うのだが……」
「清霜はー、醤油とんこつ味がいいなー!」

それぞれの好きな味を四人が言った瞬間にブリザードが吹いたのではと思うくらいの視線と視線が交差していた。
清霜は純粋に楽しそうなんだけど長門と武蔵がメンチの切り合いをしていて大和は柔らかい笑みの中に鋭いものをちらつかせていた。
味の好みでそこまで揉めるものなのか……?
私はどう答えていいものかと戦々恐々としながらも、

「私は……どちらかといえば醤油かとんこつ側かな……。どうも味噌味は口に合わなくて。あ、塩も当然好きだけどな」
「そうなのか……」

大和と長門はうんうんと頷いていて一人武蔵だけが落ち込んだ顔をしていた。
そこまでなのか!?
そんな感じで鳳翔さんが来るまで和やか(?)だったところに鳳翔さんがメモ帳を持ちながらやってきた。

「お決まりになりましたか提督?」
「そうですね。それじゃ醤油のチャーシューで少しピリ辛風味をお願いしてもいいですか?」
「わかりました。それでは少しお待ちください」

そう言って鳳翔さんは厨房へと消えて行った。

「なるほど……提督は少し辛めの味が好みなのか? しかし、どうして普通に辛い方を頼まないのだ?」
「あはは……前に一度この世界に来る前に汁が赤い奴を頼んだ事があるんだけど見ただけですでに汗が止まらなかったんだよな。それだから案の定食べてみたらもう大惨事で喰い終わった時には舌がもうヒリヒリして翌日は味覚が少し麻痺していた事があってさ」
「それはまた……」
「それで提督は妥協案として少しだけ辛いのにしたんですね?」
「そんな感じだ。少しのスパイスがある程度でいいんだ」

そして少し時間が経って鳳翔さんがラーメンを運んできたので、榛名の身体になってからというもの持ち歩いているシュシュで髪を結んでいざ参るという感じでラーメンを食べだす。

「うん……やっぱりラーメンは美味しいよな」
「司令官たらとっても幸せそうな顔をしているわね」
「そうだな清霜」
「やはりラーメンは皆共通して美味しく食べられるものなんだな」
「鳳翔さんのお手製ともあればなおさらですね」
「あら。大和ちゃん、ありがとうございますね」
「いえ」

そして榛名もそれに影響されたのか、

《榛名も……食べたくなってきてしまいました……今度、分離する機会がありましたら食べてみたいです》
「そうか。それじゃ今度は一緒に食べような」
《はい!》

その後に少しして酒飲み連中も居酒屋鳳翔に訪れて騒いで気が付けば大型建造の悲しみも忘れていたのであった。


 
 

 
後書き
ネタが思いつかずに深夜まで考えていてふと『ラーメン大好き小泉さん』を初視聴していて飯テロをされてハマったので思わず書いてみました。

もう大型建造は当分はしないと思います。闇が深い……。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0279話『ヒトミとの執務とお洒落事情について』

 
前書き
更新します。 

 




今日は、私……伊13が秘書官をすることになりました……。
どうして今日なのかな……とも思ったけど、どうやら1月13日にかけているという話みたいです……。
当然秘書官だから色々と仕事があるのは分かっているから、頑張ら……ないと。

「提督……。本日の演習の具合は、どうでしたか……?」
「ああ。村雨を育成しているところだけどあと練度2上げれば80に行くんで一応は改二の練度には達した感じだな」

それで提督は私に今日の演習で出撃した艦隊の表を見せてくれた。
そこには当然提督の名前も入っていたので、

「その……提督? あんまり、無茶はしないでくださいね……? 演習弾とはいえ当たれば痛いんですから……」
「うん。分かっているよ。大丈夫だから安心してくれ」
「あっ……」

提督は私を安心させてくれるように頭を撫でてくれました。
それがとても安心感を私にもたらしてくれると同時にもっと撫でてもらいたいという欲求が芽生えてきてしまうんだけど、いつまでも甘えていてはイヨちゃんに示しがつかないから我慢、です。

「……もう、提督は優しんですから。それとなんですけど、龍鳳さんを編成に入れているんですね……」
「ああ。今現在は練度は98になったからこのままカンストを目指していきたいと思っているんだ」
「それだと、その……龍鳳さんとも絆を結ぶため、ですか?」

そう聞いてしまった直後に少しだけ罪悪感に襲われました。
提督は、私も含めてみなさんに優しいお方です。
だから少しでもいいから私だけを今は見てほしいというある意味嫉妬のようなものを表に出してしまいました……。
もしかしたらこれで提督に嫌われてしまわないかと不安になってしまいます。
だけど、

「……そんな不安そうな表情で聞いてくるセリフじゃないな。これでも私的には鈍感ではないからヒトミが思っている事はなんとなく分かるよ。構ってほしいのか……?」
「い、いえ! そんな事はありま、せん……!」
「我慢はよくないぞ。秘書官の時じゃないとできないことだってあるんだから。金剛とかが秘書官になった時にはいつも以上に甘えてくるからな」

そう言って思い出し笑いをしている提督の顔を見て、『ああ、やっぱり優しい人……』と感じてしまいます。
昨日もたまにしか行けない居酒屋鳳翔でイヨちゃん達と騒いでいたとか言う話でしたけど、とても今更なのですけど提督はやっぱり軍人には性格的に向いていないとは思うのはきっと気のせいではありません。
それは仕事も指揮も立派にこなしていますけどやっぱり関係的に軍隊というより家族という感じがしっくりくるんですよね……。
それだから皆さんに好かれる要因だと私は考えています。
もし、提督がとても私達艦娘に厳しくて酷い事も平然と行う人だったらもうこの鎮守府は崩壊していたと思います。
だからこそ、一般人の感性を持っている提督は特殊な例だと感じます。
前に演習をしていた時によその鎮守府の子と話をした事がありますけど、とても規律や規則に厳しい提督らしくてストレスを感じている子が多いという話を聞いたことがありますから。
……それが一般的な軍人の姿だとは私も思います。
でも、結局はよそはよそ、うちはうちなんですから気にしたらダメですよね……。
提督は今のままでいいんです。それが魅力なのですから……。

「ヒトミ……? どうした? さっきからころころと表情を変えて……?」
「えっ……い、いえなんでもありません。ただ、そうですね……私は提督と出会えてよかったと感じています……」
「そうか。それなら嬉しいんだけどな」

そんな感じで少し誤魔化してしまいましたけどその後は普通に執務をしている提督のお手伝いをしているという事をやっていました。
少しだけ時間も経過して窓の外を見ればもう暗くなってきていました。

「提督……。暗くなってきましたのでそろそろ艦隊を引き上げましょう……」
「そうだな。夜間哨戒艦隊や遠征艦隊以外はもう戻しておくか」

提督はそれで皆さんに聞こえるように通信をかけていました。
それから外にいた皆さんはわらわらとそれぞれの寮へと戻っていく光景を執務室から見ていました。

「とても、寒そうでしたね……」
「そうだな。さすがに冬なだけあるからな。ヒトミも潜水艦だから寒いところはなれているとはいえ防寒の服は着た方がいいぞ」
「ですが、一応室内の服も来ていますけど……」

潜水艦の皆さんは海に出ない時は普段は基本はジャージなどを着ていますね。
格好は少しダサいかもしれませんけどすぐに海に潜るためにはお洒落なんかに気を回していてはいざという時の出撃に間に合いませんから。

「そうだけど、少しはお洒落も気に回してもいいんじゃないか……? はっちゃんとかは去年は結構な恰好をしていたのを記憶しているんだけどな」
「そうでしたね……」

あの時のはっちゃんはいつも以上に大人みたいな雰囲気を出していましたからね。
それを私達は羨ましい視線を送っていたのも覚えていますね。

「……そうだな。後で服装のカタログを潜水艦のみんなに配るから欲しいものがあったら言ってくれないか? いつもジャージ姿だけじゃ味気ないだろうし」
「そうですね……。後で皆さんと話し合ってみますね。提督、お気遣いありがとうございます」

私はそうお礼を言っておきました。
こういう気遣いも嬉しいと感じています。
だからこれからも提督のもとで頑張りたいと思いました……。



 
 

 
後書き
潜水艦達の都合上は陸ではほとんどジャージを着ている設定です。
なんでってすぐに脱げるからですかね。
たまにはお洒落をしてもいいと思いますよね。去年のはっちゃんみたいに。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0280話『冬の作戦の告知について』

 
前書き
更新します。 

 



んっふっふー。
今日は昨日があれな日だったからなんとなく予想はしていたけどやっぱりこのイヨちゃんが秘書官を務めるよ。
昨日は姉貴が色々と嬉しそうな顔をしていたからこれはなにかあったな?とも思うけど、姉妹とはいえ深く干渉するのもどうかと思うから聞いていない。
ま、いつもお酒とかで迷惑をかけてるから少しは姉孝行もしないとね。

「というわけで提督。今日も張り切って頑張っていこう!」
「そうだな。今日は日よ感を頼むぞ、イヨ」
「まっかせてよ!」

それでイヨは秘書官専用の席について提督の執務の手伝いをしているんだ。
毎日結構な資料と睨めっこしている提督も偉いよねー。
イヨはこれを毎日しろって言われたらすぐに根を上げちゃいそうだよ。

「提督って頑張り屋さんだよねー」
「そうか? まぁ、これもみんなの為だから頑張れるんだけどな」
「そっかー。えへへ……やっぱり提督はそういうところがいいよね、うん」

そういう提督だからみんなが信頼を置いているのも分かっちゃうなー。
イヨがそんな感じで提督の事を感心している時だった。
大淀さんがなにかの資料を持ちながら執務室に入ってきた。

「提督。今は大丈夫でしょうか?」
「大淀か。ああ、大丈夫だ。それでどうした?」
「はい。大本営から新たな電文が届きました。内容は冬の作戦についてでしたね」
「そうか。ついに告知が来たか……」

それを聞いてそこか真剣な表情になる提督。
イヨも少しばかり緊張しちゃうなー。
提督はそれで大淀さんから電文を受け取って読んでいる。

「提督。イヨも見ていい?」
「いいよ。はい」
「どれどれ?……なるほど、来月の中旬辺りにレイテ沖への再突入の準備をしているんだね?」
「そうみたいだな。どういう結果になるか分からないけど勝ちに行きたいものだな」
「そうですね、提督」
《はい。頑張りましょう提督》

大淀さんと榛名さんがそれで一緒に声かけをしていた。
そうだよねー。
レイテ沖海戦については因縁深い子がたくさんいるからね。
イヨはあんまり関係ない海戦だったけど歴史に残る戦いの一つだからね。前に資料で見たけど日本の軍は悲惨な感じだったから今回はぜひ勝ちを拾ってほしいとも思う。
イヨももし活躍する場があるなら頑張りたいしね。

「それじゃもう大型建造は完全に中断だな。完全備蓄modeだ」
「そうだねー。まぁ二人目のビスマルクさんが来たから結果オーライって事で済ませておこうよ?」
「そうですね。二人目のビスマルクさんは改装設計図を二つも使いますけど改三(ドライ)になれば必ずこれからの戦力の一柱になってくれると思いますから」
「そうだな。まぁ、まだ練度1だから冬の作戦には間に合わないんだろうけどな……昨日に早速だけどアークロイヤルとの追いかけっこを体験していたとかで……。今まで一人だったのが二人になったのが余計にアークロイヤルの心に火をつけたとかなんとか……。元からいたビスマルクの方も負担が半分になったとかで喜んでいたけどね」

あー、確かに昨日は艦載機の音がうるさかったけどやっぱり追いかけっこをしていたんだね。
アークロイヤルさんってビスマルクさんだけに対して過激な人だよねー。
普段はウォースパイトさんとか金剛さんとかと一緒に優雅に紅茶を飲んでいるんだから、落ち着いた物腰も持っているんだけどね。

「それと、もしかしたら潜水艦の活躍もあるかもしれないからその時は期待しているぞ、イヨ」
「え? イヨでいいの?」
「まぁ、潜水艦のみんなも含めてだからそんなに深く考えないでいいよ」
「えへへー。そうだよね。あーよかった……」

期待してくれるのは嬉しいけど出ずっぱりも疲れるからね。
こういう時に全員揃っていると替えが効いていいもんだよね。

「ふふふ。それでは提督。本日もなにか相談事がありましたらすぐに呼んでくださいね? 私は明石のところに用事がありますので工廠の方にいると思いますから」
「わかった。それじゃ工廠の任務の際に向かわせてもらうよ」
「わかりました。それでは」

笑みを浮かべながら大淀さんは執務室を出て行った。
うーん……やっぱり出来る人は違うね。
大体は大淀さんがいれば済んじゃう案件が多いからね。
それで提督からも全幅の信頼を得ているからどこまで計算してやっているのか気になるところだよ。
まぁそれはともかく、

「それじゃ提督。仕事が終わったらまた居酒屋鳳翔か甘味処間宮にいかない? イヨ、こういうことしていると頭が疲れてきちゃって糖分が欲しくなってくるんだよね」
「その気持ちは分かるな。私も最初の頃はよく通っていたからなぁ……」
《提督、この提督業に慣れるまでは皆さんに力を借りてなんとかやっていましたからね。最初の大規模作戦の時の事を思い出すと涙が流れそうです……》

そういえばそうだったね。
最初の作戦の時は提督はあまりの疲労に死にそうな顔をしていたからね。
それが今じゃもう慣れた手つきでやっているから人って成長できる生き物だよねとしみじみと感じられる。

「うん。やっぱり提督は頑張り屋さんだね。後で潜水艦のみんなで提督の事を労ってあげるね!」
「それはありがたいな。普段はオリョール海域に何度も行かせているから疲労も溜まっているだろうに」
「あはは。それはそうなんだけど……ほら、今は交代要員がたくさんいるからそんなに疲労はないんだよね。二回出撃したらすぐに交代出来て休めるしね」
「そうか。それならいいんだけどな」

任務をするのに燃料と弾薬の節約に欠かせないからね。イヨたち潜水艦は。
だからいつも頑張っている分、お給金も結構多くもらえるからイヨとしてはもっと頑張りたいなー。
それでお酒も飲めるわけだし。
あー、お酒の事を考えたらポーラさんじゃないけど早く飲みたいって気持ちになって来ちゃった。
今日は問答無用で提督を連れて行こう、そうしよう!

「提督、覚悟しておいてね?」

イヨはそう言って笑みを提督に向けるのだった。


 
 

 
後書き
ついに冬の作戦の告知が来ましたね。頑張りたいですね。
あ、それと村雨の練度が80になったのでひとまず安心です。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0281話『天龍型の改二の続報について』

 
前書き
更新します。 

 


うふふー。
天龍ちゃんたらもしかしたら改二になれるかもしれないって思っているかもしれないから浮かれちゃっているわねー。
私もとっても嬉しいなー。
こういう天龍ちゃんは見ていて飽きないから―。

「おい、龍田。オレの顔ばっか見ていないで手を動かせよ」
「あ、ごめんね~」

そう、今は天龍ちゃんと一緒に私達の武装である剣や槍の手入れをしているのよね~。
いつでも改二になれるようにって事だけどここまでしっかりとするのも気になるわよね~。
そんな時だった。

『天龍さんに龍田さん。提督がお呼びですけど今は大丈夫でしょうか……?』

部屋の外からそんな大淀ちゃんの声が聞こえてきたのよね~。
それで天龍ちゃんも「うしっ! やっぱりか!」という感じで立ち上がって、

「大淀! 今から向かうから待ってなって伝えておいてくれ!」
『わかりました。それでは伝えてきますね』

そんな感じで大淀ちゃんの気配は離れて行ったんだけど、

「やっぱりか! 提督からお呼びがかかるって事は大本営から新たな情報が来たって事だよな!?」
「そうみたいね~。それじゃ天龍ちゃん、向かいましょう?」
「おうっ!」

そして天龍ちゃんと一緒に艤装を仕舞うとすぐに準備をして執務室に向かったのよね~。
でも~、どうして私も一緒に呼ばれたのかしら~?
もしかして私の方にも可能性があるって事なのかな……?
そしたら天龍ちゃんってば拗ねそうよね~。
まぁ、そういう天龍ちゃんも見たいと言えば見たいけど。
そんな事を思いながらも執務室に到着したので天龍ちゃんは乱暴にドアを開いて、

「おう、提督。来てやったぜ!」
「こら天龍。入る時はしっかりとノックはしなさい。大事な客人が来ていたらどうするつもりだ」
「ははは、すまねぇ。まぁどうせ今日はそんな用はないんだから大丈夫だろう?」
「そうだけど。まったく……」

天龍ちゃんは悪びれもせずにそういうけど、

「提督。ごめんなさいね~。天龍ちゃんの代わりに謝っておきますね」
「いや、別にいいんだ。私が先に呼んだのは確かなんだからな」
「それで提督。オレ達に用ってなんだ? どうせ新たな情報が来たんだろ? 教えてくれよ?」

天龍ちゃんは待ちきれないのかすぐに本題に入っていったんだけど、提督は少し難しそうな顔をしながらも、

「わかった。だけど一応言っておくけどまだ天龍と龍田のどちらかの可能性もあるからがっかりはするなよ? 大本営からの電文によるとだな。『進水当時は世界水準を上回る性能を誇り、輸送や後方支援で戦いを支えたある軽巡洋艦』というヒントが来たんだ」
「それって……!」

それで天龍ちゃんはすぐに嬉しそうな顔をしたんだけど、すぐに少しだけがっかりのような表情になった。
どうしてだろう……?

「ああ……。提督の言いたいことはなんとなく分かった。これは龍田の方が改二の可能性が高いな」
「えっ……? どうして~? 天龍ちゃん……?」
「龍田もなんとなくわかるだろう? もしオレの方だったら重要な話題が抜けてるだろう? ソロモンとか三川艦隊とかっていうワードが……」
「あー……」
「それにオレも輸送作戦はしたことはあるけどどちらかというと戦闘方面の方も多くやったからな。だから龍田の方が今のところは改二が近いかもしんねーな。やったじゃねーか龍田」
「その、ありがとう天龍ちゃん……」

天龍ちゃんはさっきまでの落ち込みの顔からすぐに立ち直ったのか私の事を喜んでくれたんだけどどうしてもやっぱりがっかり感が抜けていないみたい……。

「うふふ~。提督ったら悪い人ね~……」
「すまんな。一応は天龍か龍田の二人には絞り込めたんだけど、現状の情報ではどっちかにはまだ分からなくてな」
「まぁいいって。もし龍田だったらオレも喜んで祝福するし、まさかのオレだったらそれはそれで盛大に喜ぶからよ」
「そうか。それならよかった。今の状態じゃ天龍は察しがいいから落ち込むとばかり思ったんだがな」
「オレを舐めすぎだぜ提督。確かにちょっとは落ち込んだけど、ついに天龍型に改二が来るって分かっただけで儲けもんじゃないか!」

そう言ってニシシと笑う天龍ちゃん。
でも私には分かるのよ~? 無理して笑っているって。

「提督? それじゃもう用がないのなら下がらせてもらいますね~? さ、いきましょう。天龍ちゃん」
「お、おう……そんじゃまたな提督」
「わかった。そんなに気に病むなよ?」
「わかってるって!」

そして執務室を後にした私達なんだけど、

「だけどよ。龍田、いきなりどうした? オレは別に気になんかしてないぜ?」
「そうだけど~。なんか天龍ちゃんを見ていると胸がざわついちゃって……。だから、部屋に帰ったらなにか楽しい事でもしましょう? もう改二が来るのだけは確実なんだからどちらに来てもいいように前祝いでもしましょう?」
「そうだな。そんじゃどっちが改二になっても恨みっこなしだからな龍田!」
「そうね~。わかったわ天龍ちゃん」

その後に部屋に戻ったら私と天龍ちゃんとで久しぶりに豪華なケーキを食べて前祝いをしていた。
そうよね~。
もうどっちになってもいい感じの心構えをしておかないといけないわね~。
もし私の方だったら天龍ちゃんの事を慰めてあげないと。
それが妹の役目なんだから。


 
 

 
後書き
私的にはやっぱり龍田の方が可能性は高いと思うんですよね。
天龍ちゃんだったらそれはそれで嬉しいですけど。

現在、天龍(100)、龍田(90)、村雨(80)、武蔵(100)で待機中ですので早く来てほしいですね。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0282話『藤波の思い』

 
前書き
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今日はこの藤波が秘書官を務めているんだけど同時に練度上げも一緒にやっているからこりゃ大変だという感じだ。
鳥海さんのところに行きたいけどせっかくの司令とゆっくり話をできる機会だから有効に使わせてもらわないとね。

「なぁ司令。ちょっといいかな?」
「ん……? どうしたんだ藤波。なにかわからないところがあるか?」
「いや、特にはないから大丈夫。そうじゃなくって来月には冬の作戦が控えているじゃん?」
「そうだな」
「それなんだけどさ、多分栗田艦隊の所属だった艦娘は結構使われると思うんだ。なのに、藤波も含めてピンポイントに沖ちんと早ちんがまだ練度上げが終わってないじゃん? どうするの?」
「そう言う事か。なんとか間に合わせるつもりだよ。藤波も含めて後育ち切っていないのは5人だけだからな。そういう藤波だってもう練度は57まで上がっているじゃないか」
「そうだけどさー……藤波の次は狭霧を育てるつもりなんだろう? 本当に間に合うの……?」
「あははー」
「笑って誤魔化さないの!」

こういう時は司令は少し意地悪になるから悪いところだよね。もち悪い。

「心配しないでくれ。大丈夫……まだ今月のまだ十分に日数はあるし、冬の作戦は2月中旬だというからかなり余裕ができると思うんだ。だからそこまで深く考えないでいいよ。信じていてくれ」
「信じていいんだね?」
「ああ。今のところは改二予定の子も全員育ち切っているから想定外の予定が入らない以上は大丈夫だと思うしな」
「まぁそこまで司令が言うんなら信じてあげてもいいけどさー。もち頑張ってよ!」
「了解だ」

これで藤波の言いたいことは終わったかな?
司令も司令で去年からみんなの練度上げは頑張ってきたことは分かっているから藤波も強く言えないしね。
なんか駆逐艦のみんなの練度が全員70以上になったらパーティを開くとか言う話をしているから相当な事だろうし。
練度70まで上がれば現在の駆逐艦基準の改二の練度まで上げるのはそんなに苦労はしないからね。
先日も村雨さんを一気に80まで上げていたのは驚いたしね。

「そういえば、新情報が結構あるんだけどついに陽炎型の改二が複数実装されるとか言う話があるんだ」
「それほんとのことなの? まぁついにかって感じだけど」
「ああ。だから夕雲型も長波を皮切りにどんどん増えていくとも思うから期待しておいてもいいんじゃないか?」
「そうだね。長波姉が改二になったのはかなり嬉しかったし」

そう……長波姉は夕雲型の期待の星となって改二になったんだ。
だから冬の作戦では存分に活躍してもらいたいと思うんだよね。
大発が積めない代わりに主砲での火力の強化が可能になったからかなり上位に食い込んできたしね長波姉。

「そうだね……うん。少しだけ怖いけど、でも冬の作戦はとても楽しみだね。過去にかなりの惨敗をした記憶があるから今度こそはっていう思いもあるからね」
「そうだな。西村艦隊のみんなみたいに今度もみんなで乗り越えような」
「もち当然!」

藤波はそれで笑みを浮かべる。
こういう時は司令も色々と話を合わせてくれるから嬉しくなるんだよね。
こういう時にこの場に鳥海さんとか他の姉妹のみんなもいたらもっと盛り上がるだろうなぁ……。
でも、今は藤波と司令だけ。榛名さんも今は見えないけどいるにはいるから三人か。

「そういえば、榛名さんもどうせなら活躍したいんじゃないの……?」
《活躍ですか……そうですね。おそらく私も固定要員にはなると思いますからその時は提督が出ることになるのでしょうけど……》
「あ、そっか。そういえばいっつも司令って長門さんに提督代行を任せて出撃しているよね。あれって司令官としてはどうなのさ?」
「うぐっ……それを言われると少しだけ弱いんだよな。でも、榛名と一緒に活躍したいっていう私の我儘だから多分だけどこれからも出撃はすると思うよ」
「ふーん……まぁ、演習で今は一緒に付き合う仲だから司令の腕も知っているから何も言わないけど今でも心配に思っている子はたくさんいるんだから滅多なことはしでかさないでよ?」
「ふふ、わかっているよ。春の作戦の時のような失態はもうしないさ」

春の作戦の時か……。
北方水姫との戦いの時だったね。
あれは思い出すだけでひどかったよね。
大本営からの出撃命令が出てまだぎこちなかった司令は北方水姫の砲撃の直撃を受けて大けがをして気絶している中で至急ドッグに入れられていたから。
藤波達艦娘は大破っていうのは慣れっこだから大丈夫だけど、司令はもとはただの人間だったんだからかなりの激痛が走っただろうしね。
そう思うと、司令って強いよね。
そんな体験をしたのに今なお出撃はしているんだから。
それで藤波は少しだけ感心しながらも、

「藤波? いきなり私の頭を撫でないでくれないか?」
「いいじゃん。司令はいっつも頑張ってるんだからたまには甘えなよ」
「そうか? まぁ悪い気はしないからいいけどな」
「そうそう。素直が一番だよ」
《藤波さんも優しいですね》

っと、榛名さんにそんな褒め方をされてしまった。
うーん、こういうのは夕雲姉とかの専売特許なんだけどな。
ま、たまにはいいよね。

「それじゃ司令。今日も残りの作業を頑張っていこう。この藤波と一緒ならすぐに終わるって」
「そうだな。頼りにしているぞ」
「もち!」

そんな感じで今日も今日とで頑張って仕事をしていったのであった。



 
 

 
後書き
現在は藤波育成中です。
早ければ水曜か木曜までには練度70にしたいですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0283話『大本営の発表を待ちきれない天龍型姉妹』

 
前書き
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今日を持って正月の任務が終了する。
中にはやっていない提督もいるだろうけどせめて雷電だけでも取っておいて損はないと思うのは私だけではないはずだ。なにより択捉達海防艦の筆初めの家具が貰えるのは今回限定だから今回を逃したら手に入る可能性は零に等しい……。
だから、

「任務は適度にやっておいて損はないんだよな」
「そうですね、提督」

私の思いを察してくれたのか大淀も合わせるように答えてくれる。
さて、再度言うけど今日で正月の任務が終了するとともにおそらく改二関連の任務がやってくるだろうと私は思っている。
もう大本営はこんな直前でヒントは出してくれないけどもう龍田が改二になるのは分かっているから後で天龍を慰めておかないとな。

「今夜に大本営が発表する報告でなにかしらの改二の情報は来るだろうけど、果たして改二の予告がされている龍田と村雨は二人とも同時に改二になるのかが教えてほしいところだよな」
「二人の同時第二次改装というのは記録によれば過去に例はないのでどうなるか分かりませんね。ですが大本営は二人の事を同時にたびたび告知していましたからもしかしたら初の同時第二次改装はあるかもしれませんね」
「そうだな。だけど、扶桑と山城みたいに少しだけ期間を開けて実装ということになるかもしれないと予想している。……まぁ今夜が楽しみだという事だけだな」
「ふふふ。そうですね」

大淀と二人で笑いあっている時だった。

《ですが提督。もし二人が同時に改二になったらそれはそれで夢が広がりませんか? こういうパターンを作っておくことで今後も二人が改二になる可能性という事例が確立しますし》

榛名の言う通りである。
今まで一人を改二にするのがやっとという事が多かったからそれならそれで嬉しい事だし。
……そのぶん、二人分の任務があって大変そうだけどな。

「そうだな。まぁ今夜を待とう。話はそれからだ」
《はい、そうですね》

とにかく今は現在の事をやっていこうか。
それで任務表を開くんだけど、いつも通りの任務で特に変わりはなかったから「うーん……」と悩む。
大本営の発表が行われた後にでも出来る内容だしな。
それでもいくつかの出撃任務はやっておいてもいいとは思っている。
いざ大本営の発表が行われた後に任務欄を見てもやっていなくて新任務が出ていないという事が今まで多々あったからな。

「とりあえず出撃任務はやっておくか」
「そうですね。それでは艦隊を動かしましょうか」

それで無線で待機している艦隊を動かして出撃してもらう。

「これにて一応は様子見かな」
「そうですね。これにて―――……」

大淀がなにかを言おうとしている時だった。

『あ、あの~天龍ちゃん……待って……』
『まぁそう言うなって龍田。今夜にお前が改二になるんだから提督に顔出しをしておくのも悪くはないだろう……?』
『そうだけど~……』

そんな天龍と龍田のセリフが聞こえてきた。
ドアが少しだけ開いているのか丸聞こえである。
それでまた笑みを浮かべながらも、

「天龍に龍田。入ってきていいぞ?」
『へ!? なんでオレ達がいるってわかったんだ!?』
『天龍ちゃん、少しドアが開いているわよ~?』
『マジか! 恥ずかしいなおい!』

そんな声が聞こえてきた後に二人はしぶしぶと言った感じで中に入ってきた。

「よ、よう提督。元気か?」
「提督、ごきげんよう~」
「二人とも待ちきれなかったのか……?」
「まぁ天龍ちゃんが張り切っちゃって~」
「あっ!? 龍田、裏切ったな!? お前だってかなりそわそわしていたじゃねーか!」
「そうだったかしら~?」

龍田はそう言ってはぐらかそうとしているんだけど、見ている分にはとても分かりやすい。
なんでかって龍田の頭の上の円盤型の艤装がぎゅるぎゅると高速で回転しているのだから。

「龍田もやっぱり嬉しいんだな。頭の艤装が回転しているぞ」
「っ!? あらあら~。私としたことが……恥ずかしいわね」

赤く染まった頬に手を添えながらもなんとか体裁を保とうとする龍田に、天龍はいたずら心が刺激されたのか分からないがガシッと艤装を掴むと、

「ほーら。やっぱり嬉しいんじゃねーか龍田ー? おらおら!」
「天龍ちゃん、やーめーてー!」

姉妹のそんなやり取りに和んでいる私達だった。
それからしばらくしてようやく二人が落ち着いたのか、(龍田が力技で天龍を黙らしたとも)私の方へと向いてきて、

「それで提督。今日は本当に私が改二になるのでしょうか……?」
「おそらくな。だから覚悟だけはしておいてくれ」
「わかりました~。でも、それだと村雨ちゃんはどうなるのかしら~?」
「村雨か。それに関しては私達も話し合っていたんだ。まさかの同時に第二次改装をするんじゃないかって」
「あら。それだったら嬉しいんじゃないですか~? 今まで二人が同時に改装をするというのはなかったですから~」
「そうだな、龍田。もし本当だったら新しいパターンができるんじゃね?」

天龍と龍田は私達と同じ感想を漏らしていたので考える事は一緒かと納得する始末であった。

「私の方でも一応村雨の方に声かけをしておくけど少なくとも龍田の第二次改装だけは今日に行うだろうからそういうことでよろしくな」
「わかりました~。うふふー……今夜が楽しみね」
「龍田がどんな成長をするのか姉としては楽しみだぜ。瑞鶴みたいに身長が伸びるかもな」
「うふふー。天龍ちゃんに負けない強さを手に入れるのは確実よね~」
「うぐっ……それは、少し悔しいな。あー、オレも早く改二になりたいもんだぜ」
「いつか来るさ。だから期待はしておいてもいいんじゃないか?」
「ま、そだな」

そんな感じで今夜に発表されるまで私達は各自で待機をしているのであった。
本当に楽しみである。


 
 

 
後書き
果たして同時に第二次改装があるのかないのか楽しみにしながら今夜を待ちましょう。
現在の公式のアイコンが龍田ですから一人は確実でしょうけどね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0284話『村雨と龍田の改二改装』

 
前書き
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今日の夜に大本営から発表があった。
そこには私が予想した通りに村雨と龍田の二人とも同時第二次改装の文字が記されていた。
その件で榛名が嬉しそうに、

《提督の予想が当たりましたね!》
「そうだな。まさか本当に二人とも同時に第二次改装をできるとは思っていなかったけどなんとかなるもんなんだな……」

私もまさか当たるとは思っていなかったので正直に驚いていた。
村雨の第二次改装には練度が70で改装設計図はいらないけど、戦闘詳報が一つ必要との事。任務で手に入るのだろうな。
龍田も練度は80で同じく改装設計図はいらないけど、高速建造材5個と開発資材15個を必要とするらしい。龍田は古い艦だからより一層の開発が必要なんだろうな。

そこに大淀が、

「それでは提督。どうしましょうか? お二人をお呼びしますか……?」
「そうだな。それじゃ二人の部屋に電話をかけるとしようか」

それなのでまず私は村雨の部屋へと連絡を入れる。
すると、

『提督さんっぽい!?』
「夕立……? どうして村雨の部屋に?」
『きっと連絡が来るだろうからって待っていたっぽい!』
『ちょ……夕立、私が出るんだから……』
『うふふ。村雨さん以上に嬉しそうですね』

電話の向こうでは村雨と由良の声が聞こえてくる。
他にもおそらく白露や春雨とかもいるんだろうな。

「そうか。それじゃご期待通りに改装案件だからすぐに村雨を執務室に連れてきてくれ」
『わかったっぽい! それじゃ一回切りまーす!』

それで夕立は元気よく電話を切った。
うーん……元気があって大変よろしいけど少し落ち着きも必要だろうな。

《夕立ちゃん、元気ですよね》
「いつも通りで安心するけどな。それじゃ次は龍田だな」

今度は龍田の部屋へと連絡を入れる。
すると同じパターンで、

『おっ、提督か。待っていたぜ』
「天龍も同じパターンか……」
『ん? なんのことだ?』
「いや、なんでも……それじゃ龍田の改装案件だから執務室へと連れてきてくれ」
『わかったぜ。龍田ー、そんじゃいくぞー!』
『はーい!』

そんな軽いやり取りで二人はこちらへと向かってくるらしい。
夕立よりはまぁそんなに騒いでいないから別にいいか。

「これでよしと。それじゃ大淀、明石に連絡を入れておいてくれないか? 戦闘詳報と開発資材とかも必要だと……」
「わかりました。それではお先に改装室に向かっていますね」

大淀はそれでお先に執務室を出て行った。
いつも通りの素早い行動で助かるな。
そう思っていると、少しして扉が開かれて、

「おう、提督。来てやったぜ」
「うふふー。御機嫌よう、提督」
「天龍に龍田が先に来たか」

そしてすぐ後に、

「提督。村雨、まいりましたー!」
「来たっぽーい!」
「ぽ、ぽーい……」
「春雨? 夕立の真似をしなくてもいいからね?」
「うふふ。元気があっていいわよね、ね?」

村雨たちもすぐに執務室へと入ってきた。
夕立がいつも通り元気よく、春雨も夕立の真似をしているけどどこか恥ずかしそうで、白露がそんな春雨に一応優しく指摘をしている辺り温情で、由良はそんな四人の見守り役であった。

「みんな揃ったか。それじゃ今回は初めての二人同時第二次改装という新しい試みだから夢が広がったということで早速だけど改装室へと向かおうとするか」
「わかりましたー」
「まったく、オレが先かと思ったのに羨ましいぜ龍田!」
「白露も……いつか、いつかみんなが羨む改二になるんだから! ほんとなんだから!!」
「はいはい」

そんな感じでみんなでわいわいと改装室へと向かっている。
そして到着してみると笑顔の明石と大淀が待っていた。

「提督。もう準備は整っていますのでいつでもどうぞ」
「今回は二人を同時に第二次改装しますから、一人ずつお願いしますね」
「わかった。それじゃまずは龍田からでいいか?」
「私でいいの~? うふふー、わかりましたー」

それで龍田は改装室の中へと入っていった。
天龍が私の隣に立って腕組みをしながらも、

「さーて……龍田は果たしてどんな感じになるのか楽しみだぜ」
「そうだな。天龍的には龍田の改装結果次第であとに残るほどいい改装になるから楽しみなんじゃないか?」
「まぁな。フフフ、いつかまたオレの怖さを見せてやるぜ」
「楽しみに待っておくよ」

そして明石の準備が整ったのか「いいですよ」という声が聞こえてきたので私は改装ボタンを押した。
改装室から光が漏れてきてしばらくしたら扉が開かれて、

「うふふー。改装されました龍田の力をお見せしますねー」

そこにはなんというかかなり際どい格好をして胸も成長している龍田の姿があった。

「おまっ……龍田! 胸がかなり成長しているんじゃね!? それになんか際どいぞ恰好が!」
「あらあら~……そうみたいね。少しだけ恥ずかしいわね」

それで照れている龍田。
うーん……これは予想以上だな。
肩出しもしていて上には控えめにマントを羽織っている。
武装もところどころごつくなっているので純粋に強化された姿なんだろうな。

「龍田、改二おめでとう」
「ありがとうございます~。これからも活躍しますねー」
「ああ。よろしく。それじゃ次は村雨、君だ」
「わかりましたー。龍田さんの次だから少しだけ緊張しますけど行ってきます!」

村雨はそう言いながらも改装室へと入っていった。

「村雨の改二、楽しみっぽい!」
「そうですね、夕立姉さん」
「ううう……く、悔しくなんかないんだからね!」
「まぁまぁ。白露さんも落ち着いて、ね?」

四人が思い思いに村雨の改二に思いを馳せている中で準備が出来たのかまた明石の声がかかってきたので私は改装ボタンを押した。
そして、

「村雨、パワーアーップ!」

そこには色々と武装が追加されていて成長していた村雨の姿があった。
なにより特徴的なのが、

「村雨!! 右目だけが夕立と同じで緋色になっているっぽい!! お揃いっぽい!!」
「村雨姉さん、その瞳綺麗です!!」
「わー……夕立の遺伝子が混じってるよ……」
「うふふ。村雨さん、とっても似合っているわよ。ね?」

そう、村雨の瞳が右目だけが赤く変色していたのだ。
それに対して村雨はというと、

「そうなんだー。でもいいかもね」

と、素直に受け入れていた。
夕立という改装例があるだけに落ち着いているのだろうな。
とにかく、

「村雨、改二おめでとう」
「ありがとうございます! これからも活躍させてもらいますね!」
「ああ。それじゃ龍田に村雨、明日には新任務もあるだろうけど、まずは変わった身体に慣れるように努めてくれ」
「わかりましたー」
「了解です」

こうして龍田と村雨の第二次改装は終わったのである。


 
 

 
後書き
二人ともとても可愛くなりましたよね。
明日と明後日は任務の話を格好と思います。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0285話『二人の性能と出撃系以外の任務』

 
前書き
更新します。
今回少し短く感じるかもです。いつもか。 

 


龍田と村雨が改二になって翌日、私はいつも通りに明石から渡されたスペック表を見て色々と考えていた。
まず龍田改二の性能を見てみるとやっぱり旧式というのは覆しようのない事実だから改二になってもそこそこ性能は低い方だと思う。
しかし輸送作戦やらの実施経験があることから大発と特二式内火艇全般の装備はすべて装備できるから今後の輸送関連の出撃では重宝するだろう。
さらには艦隊司令部要員を装備できるためにいざという時の旗艦を任せられる性能を秘めている。
多摩とかと同じでジャイロ……カ号観測機も装備できるけど今のところはやっぱりどういう使い道があるのかは分からないのが現状だ。だからこれについては今のところは保留だな。
そして一番の要素と言えば五十鈴と同じようになにも装備していないのに潜水艦に対して先制対潜ができるということだ。
だから大発を装備しつつも潜水艦に対して対潜攻撃が出来るという今後はかなり使える能力を持っている感じである。
これは捗るな!

そしてお次は村雨改二の性能を見てみると戦闘詳報を改装に使用したことからやはり艦隊司令部要員を装備できる点だな。
だけど大発に関しては睦月と如月、江風と同じように装備は可能だけど特二式内火艇は装備できない感じで落ち着いている。
だから大発特攻はあまりお勧めは出来ない感じか。
しかし、それをカバーするかのようにステータスが高い事が伺える。
火力に関しては駆逐艦の中で5位圏内に入っていて雷装も結構高いので夜戦火力が高いんだよな。
そして今の村雨の練度は81だから四式ソナーを三つ装備する事でなんとか先制対潜が可能なのでもし練度を99にすることを検討しているのなら楽に上げられることが可能だ。

「とにかく二人の性能はなんとなく把握できた感じだな」
《そうですね。お二人とも今後はかなりの活躍を見込める事は確かだと思います》

榛名の同意も得られたので今後は出番は増えてくるだろうな。
ただ、

「村雨と龍田が改二になったのはもちろんうれしいんだけど、それに増して姉妹艦の長女が改二になっていない事例が増えてきて天龍や白露が結構拗ねているのが問題なんだよな」
《あはは……。それを言いますと長女関係では長良さんや球磨さんもまだ改二になっていませんから不満が溜まっていそうですね》

球磨に長良に天龍。
三人とも軽巡では長女だけど姉妹ばかり改二になっていっていまだに改二が来ていないからな。不満は募っている頃だろうな。
大本営、頼みますから彼女達にも恵みを与えてください……。
そんな事を考えつつ、

「それじゃそろそろ増えた任務に取り掛かっていくとしようか」
《そうですね。いくつか増えましたよね。工廠関係も一つまた増えましたし》
「そうだな。でもまずは演習関係から片付けていくか。これはおそらく龍田関連の任務だとは思うんだけど『給糧艦「伊良湖」の支援』という演習の任務だ。
これに関しては軽巡を二隻配備して演習で三回勝利して、のちに旗艦に戦闘糧食を二個装備してもらう感じだな。これはおそらくモナカが貰える任務だな」
《そうだと思います》
「それじゃさっそく演習に行ってくるとしようか」

私はそれでさっそく長門を呼んで提督代行を頼んで演習に駆り出していった。
軽巡に席に関しては龍田とまだ練度が90以下の矢矧を入れておいた。
演習時に、

「うふふ~。提督、さっそく私を使ってくださりありがとうございますねー」
「ああ。演習だけど頼んだぞ。旗艦は任せた」
「了解ですー。いくわよー」

そんな感じで軽く演習を三回勝利してその後に龍田に戦闘糧食を装備してもらって任務を達成した。
そしてやはり給糧艦「伊良湖」を一つもらえることが出来たのでよかった。
演習が終わったので少し伸びをしていると、

「提督~。確か私の関連した任務があると思うんだけど、早めにしてちょうだいね?」
「わかった。任務をする時に呼ばせてもらうよ」
「はーい。それじゃ天龍ちゃんのところに戻っていますね」

ニコニコ笑顔で龍田は軽巡寮へと戻っていった。
うん、やっぱり独特の強さを感じられるよな。
そんな事を思いつつも私は執務室へと戻ってきて、

「長門。ありがとな」
「いいさ。慣れっこだからな。それでお次の任務はどうするのだ……?」
「そうだな。まずは工廠関連をやっていこう。これも結構な鋼材を消費する任務だからな」

私はそれで工廠系の新任務である『継続支援能力の整備』という任務にとりかかった。
この任務はいつも通り鋼材を消費する物なんだけど、週に一回はやってくるだろうから他の任務と合わせていくと鋼材の消費が大型建造一回分くらいには使うから慎重にやっていかないとすぐに鋼材が枯渇してしまう可能性を持っている。

「しかし、大口径主砲を四つ、水上偵察機系統を二つ、魚雷関係を三つと……なかなか廃棄するものが多いのだな……? これが毎週来るとなると結構な消費だな」
「その通りだ。だから今後は各海域で手に入った艦娘から逐一装備を外しておくのが得策だと思う。そうじゃないとすぐに装備が無くなってしまうからな」
「そうだな。それでいいと思うぞ。そして任務達成でもらえるものが高速修復材が5個か……うまいものだが鋼材を3600も使って得るには少し高い感じがするな」
「長門もそう思うよな……。だから今後は鋼材の量を見て慎重にこの任務はやっていくとしようか」

それで工廠系の任務も終わったので、

「さて、それじゃ明日から出撃系の任務に取り掛かっていくとしようか」
「そうだな。なかなか龍田と村雨に見合った任務があるらしいからな」

頑張ろうと私は思いながら二人の任務に目を向けていた。



 
 

 
後書き
明日に出撃系任務の話を書いていきますね。


それと武蔵が出ました!(FGOの方の……嬉しいけどなんか違うんだ……)




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0286話『松輸送作戦』

 
前書き
更新します。 

 




うふふふ~。
今日は提督から新任務として『松輸送作戦、開始せよ!』というのをやらされることになったんだけどー。
少しだけ苦い思い出があるのもどうかと思うわよねー。
私が旗艦をつとめた東松2号船団での輸送中に攻撃されちゃって沈没しちゃったから……。
でも、もうあんなへまはしないって思っているから平気なんだー。
それに提督も気を利かせてくれたのか随伴艦の駆逐艦の子達を卯月ちゃん、野分ちゃん、朝風ちゃんの三人を入れてくれたから私としては少しだけ嬉しいかもしれないかもー。
それで出撃している時に、


「ですが、こうして龍田さんとまた松輸送作戦をできるというのは少しだけ野分は嬉しく思います」
「そ~お? そう言ってくれると私も少し嬉しいかな」
「ぷっぷくぷー。うーちゃん、張り切って頑張るぴょん!」
「この朝風が龍田さんを守りますから!」

三人がそう言ってくれるので嬉しい気持ちが溢れてきちゃうじゃない。
だからその気持ちを正直に話すことにしたの。

「三人とも、ありがとね。それじゃ頑張りましょうかー」
「「「おー!」」」
「それと、数合わせでごめんなさいねー。龍鳳さんに祥鳳さん」
「いえ! 龍鳳も何かのお役が立てればと思いますから大丈夫です!」
「そうですね。せっかく提督がこの任務のために組んでくださった艦隊なんですから空のお守りは任せてください」

龍鳳さんと祥鳳さんもそう言ってくれるのでありがたいわねーと思いながらも航路を進めていく。
この任務は割かし簡単な海域の攻略だからすぐに終わるとは思うんだけど、やっぱり油断はしちゃダメよねー。
またこれで沈んだりとかしたら卯月ちゃんとかに申し訳が立たないし、天龍ちゃんに怒られちゃうからねー。

「それにしても、司令官ってこういう時は本当に気を利かせてくれるわよね。こんなマイナーな編成はなかなかやろうとは思わないだろうし」

朝風ちゃんがそう言ってうんうんと頷きながら提督の事を感心して褒めている。
その気持ちは分かるなー。
任務の一覧にはただ駆逐艦か海防艦三隻と指定されているだけなんだから誰でもいいとは思うんだけど、効率より編成の方を優先的に括ってくれる提督はとてもありがたいわねー。
本当に提督はロマンを追い求めている感じよねー。

「司令官はやる時はやる人ぴょん! うーちゃんもそういう司令官のところがお気に入りぴょん!」
「野分も司令官がそう言う人だって知っていますから疑いなく付いていけますね」

野分ちゃんはともかく卯月ちゃんの口からもそう言われる提督ってかなりいい人なのよねー。
やっぱり普通の軍人さんより私達の事に関して踏まえている点が多いからかしら……?
少しだけ憧れちゃうなー。
私もそう言う人になりたいって思っちゃうし……。性格的に無理そうだけどね。

「まぁいっか。それじゃ卯月ちゃん達の気持ちに免じて張り切っちゃおうかなー」
「おっ! うーちゃんも龍田さんに負けないように頑張るぴょん!」
「いったわねー? それじゃどちらが多くの深海棲艦を狩れるか勝負でもしましょうか?」
「望むところぴょん!」
「あ、あのー……一応輸送作戦ですからね? ね!」

龍鳳さんが何か言っているけどこれは戦闘任務でもあるんだから変わらないもん!
そして進んでいくと、

「龍田さん! 索敵をしていた艦載機の子達から入電ですけど深海棲艦が群れでいます! どうしますか?」
「そうね……突撃しちゃいましょうか~! こういう時、天龍ちゃんだったら迷わず突っ込んでいっちゃうと思うしー」
「確かに……」
「天龍さんじゃそうかもしれないわね」
「龍田さんのいう通りぴょん!」
「うふふー。それじゃこの旗艦、龍田に続いてくださーい! 死にたい船はどこかしら~?」

私達はそれで深海棲艦に突撃をしていったの。
結果は完勝でしたけどね~。
やっぱり鎮守府近海の海域の敵は弱いわよね~。
その後の近海航路の方も楽に輸送を出来た事だし……。
それで任務も完了した事だろうし提督に連絡を入れる。

「提督~? 任務完了したわよ?」
『そうか。それじゃすみやかに帰還してくれ。今回は龍田のために編成した艦隊だからやりやすかっただろう?』
「そうね~。うん、とってもやりやすかったわ。やっぱり提督ってこう言う事に関しては分かっているわねー」
『それならよかった。松輸送作戦って任務が出た時にはこの編成でしないとだろうって心に決めていたからな』
「そうなの~? だったら私も嬉しいかな? 最近はあんまりこういった任務はあまりこないから私も出来てうれしかったし~」

それで少しばかり提督と世間話のように帰投しながらもお話をしていたんだけど会話が終了した後にみんなの方へと振り向いてみると何故かみんながとても生暖かい視線を送ってきていた。どうしたのかしら~?
それなのでどうしたのか聞いてみるとまず野分ちゃんが口を開いた。

「その、龍田さん……とても司令と通信で話す時に笑顔だったから普段はそんなに素の表情を龍田さんは出さないからやっぱりそんな顔を出させる司令はすごいなって……思いまして」
「あらあら~……それはとても恥ずかしいかな?」
「龍田さん、とっても笑顔だったぴょん!」
「そうね。私も少しだけ顔が熱く感じるくらいだから」

いやだわー。恥ずかしいじゃない~。
龍鳳さんと祥鳳さんも同意なのか半笑いだからどれだけ私、提督と話している時に笑顔を浮かべていたのかしら~。
これは帰投したら意味のない八つ当たりだけど天龍ちゃんをからかわないと私の気が晴れないかもしれないわね~。
そういうわけで天龍ちゃん、ちゃんと私に弄られてね?


 
 

 
後書き
今回は松輸送作戦を書きました。
このメンツでやりたい欲が高かったですしおすし。


それとTwitterで流れてきた話題で知ったのですけど龍田を斜めで見てみるとポールダンスをしているみたいとか言う話で画像が回ってきてなるほど……と納得しました。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0287話『精鋭「四水戦」抜錨開始!』

 
前書き
更新します。 

 


さーて、それじゃ最後の任務に取り掛かろうとしますかね。
龍田の任務は昨日に終わらせたから後は村雨の任務だけだしな。
それで任務表を開いて確認をする。
そこにはこう書かれていた。
『精鋭「四水戦」抜錨開始!』と。
内容は村雨改二を旗艦にして、本来四水戦の旗艦である由良を随伴艦にそえて、夕立、春雨、五月雨、秋月の六名を編成してこれを遂行せよという感じの編成任務だ。
だから私はまずこの六人を執務室に呼ぶ事にした。
それからしばらくして六名が執務室に集合して、

「それじゃみんな。四水戦の任務だけどはりきって頼むぞ」
「わかりました!……うふふ。村雨の本気でいいところ、見せちゃおうかな!」

そう言って村雨はいい笑みを浮かべている。そこに由良が、

「村雨さん、頼もしいですね、ね? 今度の戦い、四水戦、お願いしてもいいですか……?」
「由良さん……村雨、了解しました」
「ぽーい! 夕立も連れて行ってほしいッぽい!」
「春雨もが、頑張りますね!」
「五月雨も頑張ります!」
「皆さんのお力になれるように、秋月、頑張ります!」

それで夕立達も感化されたのか一緒に力強い声を出していた。
それで村雨はとても嬉しそうに笑みを浮かべながら、

「それでは……村雨、第四水雷戦隊、お預かりします。さぁ、行きましょうか!」

村雨はそれで腕を上げて頑張るぞー!という感じでみんなを鼓舞していた。

「それじゃ村雨。それにみんな。次の任務内容はこうだ。
『精鋭「四水戦」、南方海域に展開せよ!』という内容だ。
だから出撃先は南方海域だから少し手間がかかる海域だけどよろしく頼むぞ」
「「「了解!」」」

そして村雨たちは出撃していった。




よーし!
それじゃ今回は由良さんに代わってこの村雨が第四水雷戦隊の旗艦を務めるんだから!
それで意気揚々と航路を進めていく。
さすがに水雷戦隊だけじゃ南方海域に行くのは辛いからまずは春雨と五月雨を悪いとは思うけど抜かせてもらって代わりに利根さんと筑摩さんに入ってもらった。
南方海域前面海域には支援艦隊も出せるんだからもしかしたら私達だけで攻略も出来るのかもしれないけどさすがにそこまで提督は無謀な事はしないという事である。
だから、

「利根さんに筑摩さん、今回はよろしくお願いしますね」
「うむ。吾輩と筑摩に任せておくのじゃ! 南方海域はもう慣れっこじゃからな。のう、筑摩?」
「そうですね、利根姉さん。戦艦級にはお任せくださいね」

頼もしい限りである。
戦艦級がいないのがつらいけどなんとかなるだろうと私は思った。
そして、

「いくわよー!」
「村雨さん、あまり前に行き過ぎないでね?」
「わかっているわよ、由良さん」
「ぽーい!!」
「って、行ってる傍から突っ込まないの夕立!」

そんなこともあって少し危なかったけど、なんとか南方海域前面の敵深海棲艦の道中を潜り抜けてボスまで到達することが出来た。
何度か危ない場面があった。
なんてったって、普段は戦艦とかで来る海域だから私達駆逐艦や軽巡が来る場所じゃないから何度大破させられそうになった事か……。
それでもなんとか全員小破で耐えられたのは凄いと正直に思ったわね。
そしていざボスに挑んでみればなんとか勝利もすることが出来たので良かったと思う。
こういう時に私が改二になって先制対潜ができるようになっていたおかげで由良さんや夕立、秋月の三人が高火力で戦えたおかげなんだけど、私も活躍したかったなぁ……。

そして続くはサブ島沖海域。
ここはさすがに利根さんと筑摩さんでも荷が重いと感じたのか提督はイタリアさんとローマさんを入れてきた。

「それじゃよろしくお願いしますねー」
「やるだけやってあげるわ……よろしく」

イタリアさんとローマさんは性格がまるで反対な感じなんだけどやっぱり姉妹だからそれでも仲良さそうでよかったわ。
普段、私達はあんまり絡む人たちじゃないからこういう時に少しでも付き合いをよくしておくのもいいわよね。
そう思いながらも夜戦で私は照明弾を放っていた。
ここの海域はやっぱり夜戦が辛いから何度やるかも検討が付かないから気を引き締めてやっていかないとね。
道中で何回大破撤退するだろう……と恐怖を感じながらも進んでいくんだけど、

「あれ……? すんなりとボスまで来ちゃったわね」
「ぽーい……なんか今回は物足りないかも。川内さんじゃないけどもっと夜戦をしたいっぽい!」
「あはは……川内に聞かれたら大変そうな会話ね……でもすぐに終わってよかったじゃない? ね?」
「そうですよ。被害最小限に突破できたんですからむしろ良かったと思うべきです」

秋月のいう通りね。
イタリアさんとローマさんももともとそんなに乗り気じゃなかったのか二人してうんうんと頷いているし。
そんな感じでサブ島沖海域もクリアできた。
それで後はサーモン海域だけなんだけど、これに関しては特に特筆した出来事はなかった。
なんせ一番南方海域では楽園と言われている海域だから瑞鶴さんと翔鶴さんの装甲空母のお力を貰えてすんなりとクリアできたからだ。
それで私達は執務室へと戻っていった。

「みんな。任務終了だ。お疲れだったな」

提督がそう言って褒めてくれたのでやっと肩の荷が下りた感じで、

「やったー! 南方ソロモン方面での任務、成功です! 艦隊、全艦帰投! 由良さん……村雨、やりました」
「お疲れ様でした。村雨さん、お見事です。……本当にみんなで無事に戻れてよかったですね。ね?」
「四水戦、お預かりしました。指揮、お返しします。……はぁ~……緊張したー……でも、いい感じいい感じ! ねぇ?」

私がそう言って夕立達に声をかけるよ、

「さっすが村雨っぽい! 今度も一緒に頑張ろうっぽい!」
「そうですね。村雨さん、お見事です!」
「あはは……夕立に秋月もありがとね」

だけどそれで春雨と五月雨がしょぼんとしながら、

「私達も、一緒に活躍したかったですね……」
「そうですね……」

二人して落ち込んでいたので私は二人の肩に腕を回しながら、

「また今度、頑張りましょうね?」

途端に二人は笑顔になって「はい!」と答えてくれたのでよかったよかった。
これにて、私の任務は終了です。お疲れ様でした。


 
 

 
後書き
サブ島沖海域がすんなりクリアできたのがよかったですね。運がいい。



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0288話『村雨嬢の戸惑う心』

 
前書き
更新します。 

 




先日に私の任務も終わらせられていい感じで布団に入って眠りについたのまでは覚えているんだけど、どうしたことだろうか……?
目を覚ました瞬間に私の目の前に夕立の顔がある……。
あ、夕立のまつげ長い……。
じゃなくって、いつの間に入り込んだのかしら……?
夕立はぐっすりと寝入っているし起こすのもなんか気が引けちゃうし……。
でも、ふと時計を見ればそろそろ起床ラッパが鳴り響くころだろうから起こさないとなにかしら変な噂話が発生してしまうかもしれない。
だから仕方がないけど私は夕立を起こすことにした。

「夕立、夕立……起きなさい。朝よ?」
「ぽーい……村雨ー……?」

少し寝ぼけ眼の夕立が起きたのか私と目を合わせる。
するとニッコリと笑みを浮かべて、

「村雨の右目の瞳……きれいっぽーい……」
「そ、そう……って!」

近い近い! 夕立がどんどんと顔を近づけてくるじゃない!?
何をする気!?

「村雨……ヒトミ、舐めてもいーい……?」
「ダメに決まっているじゃない!?」
「えー……」
「そこで不満の声を上げないの。はぁー……朝っぱらから変な感じね。さ、起きるわよ」
「はーい……」

それで私達はのそのそと布団から這い出して来るんだけど夕立がなぜか下着姿だけだったので、

「なななっ! 夕立、あんたなんで下着姿なのよ!?」
「あー……村雨の体温を直接感じたかったからかなー……」
「なぁっ!?」

ひぃっ!?
なぜか昨晩は妙に温かいなって思っていたら夕立が私の身体に張り付いていたっていうの!?

「とにかくすぐに服を着なさい!」
「はーい!」

夕立はそれで丁寧に畳まれていた制服を着始める。
……いつの間にそこまでの準備をしていたのやら……。

「(まったく……ドキドキするじゃないの……)」

私は内心の胸の鼓動をなんとか抑えながらも制服に着替え始める。
だけど先に服を着終わった夕立が下着姿になった私に抱きついてきた。

「ぽーい! 村雨、やっぱり改二になって成長したっぽい!」
「だからって、私の体を弄るのはやめなさい!……あ、もう……だ、ダメ……んっ!」
「あ、もしかして村雨感じちゃったっぽい……?」
「っ! いい加減にしなさい!!」

とうとうキレてしまった私は夕立にげんこつを落としていた。
それで夕立は目を回して「ぽーい……」と言いながらその場でうずくまってしまっていた。
ふん、いい気味ね。
それからまた身体にわるさをされたらたまらないからすぐに服を着ていくんだけど……やっぱりこの服装、前より面倒な仕組みになったわよね。
大体この左腕に巻き付ける鎖は何の意味があるのかしら……?
服装も脇出しだし片足だけ包帯を巻いているのもなんていうか、その……片目だけ色が違うのも相まってなんて言ったかしら……?チュウニ病だったかしら……そんな変な病名があるとかないとか……。
これを夕張さんか明石さんに相談したらおそらく「片翼の翼も生やしたいわねー」とか訳の分からない事を言われるんだろうな。

「村雨……起こった?」
「別にー……夕立のスキンシップの多さは前からあったから気にしていないわよ」
「よかったっぽい……村雨には嫌われたくないから」
「ふーん……? 殊勝な心掛けね。まぁ私もとくに嫌うことは無いから安心しておきなさいな」
「ぽい……」

夕立の頭を撫でてあげるとまるで犬のように目を細めて身を委ねてきてくれる。
うーん……やっぱり夕立って犬属性よね。それを言ったら時雨ちゃんなんて忠犬だしね。
そんな事を思いつつも改二になって夕立と同じヘアピンをつけて黒い帽子を被って準備は万態。
村雨、いつでもいけるわよ。
そして部屋を出ようとするとドアが少しだけ隙間が開いていてその隙間から春雨がジト目でこちらを覗き見ていた……。……え? いつから見ていたの……?
私の視線に気づいた春雨はゆっくりと部屋に入ってきて一言。

「村雨姉さん、ずるいです。改二になってから夕立姉さんのハートを射抜いているんですから……私も夕立姉さんにもっと構ってもらいたいのに……」
「ああ、嫉妬をしているのね。春雨は分かりやすいわね」
「うー……」

そんな春雨に夕立は何を思ったのか春雨の事を抱きしめてあげて、

「春雨、ごめんっぽい。村雨が改二になって少しだけ浮かれちゃったみたい。でも、大丈夫! 春雨の事は放っておくことは無いから!」
「夕立姉さん……はい!」

なんか、夕立と春雨が変な空間を作り出しているんだけど、え? 二人ってそんな関係だったの……? それが本当ならかなり私としてもショックがでかいかも。
まぁ、考えてみれば提督は一応は魂は男性だけど体は榛名さんだから夕立の事を異性として捉えるには少し無茶がありそうだからそう言う関係になる事もないんだろうけど……。
それでうちの鎮守府に在籍している艦娘達のことを思い出してみる。
そういえばこの鎮守府って少し特殊だから憲兵さんとか男性の軍人さんの類は一切いないから(酒保には外から働きに来ている人もいるけど大体が女性だし)そういう異性の関係っていうのは一切ないのよね。
さっきも思った通り、提督はもうみんなからは女性という認識をされていてさらには榛名さんっていう恋人もいるから他の子とは練度がカンストして指輪で絆は結んでいてもそう言った関係になる子はいないのが現状だから、だからってわけでもないけどそれなら女性同士で交友以上の仲を深めようって子が多いと私は思っている。
もちろん、大体の子は提督の事を好意的に感じているのは知っている。
それでもそれ以上には決してなれない事も自覚している。
それゆえの慰め合いの仲って言うのかしら?
そんな感じの子が多くいるのよね。
それを今目の前で見せられている。夕立と春雨は過去の例もあってそれはそれは仲がいい方だ。

「村雨? どうしたっぽい?」
「村雨姉さん……?」
「ううん、なんでもないわ」

二人が不思議そうに無言だったのだろう私に話しかけてきたから変に思われないように言葉を濁して紛らわした。

「それじゃ朝食を食べに行きましょうか」
「いくっぽい!」
「はい」

それで私達は食堂へと歩いていくんだけど目の前にちょうど由良さんが見えて私は本能から来る気持ちで由良さんに駆け寄っていき、

「由良さん! おはようございます」
「あ、村雨さん。それに夕立さんに春雨ちゃん。おはようございます」
「今日はどうしますか? なにか用はありますか……?」
「そうね……」

と、私から積極的に由良さんに話しかけるんだけど、別の意識では「ああ、私ももしかしたら提督とはそんな関係になれないから夕立や由良さんにそんな関係を求めているのかな……?」って思っていたけど、その気持ちはみんなには迷惑になるだろうから心の奥に閉まっておくことにした。
私はいつも通り騒ぐみんなを面白楽しく眺めてたまにからかいをいれる方が性に合っているのかもねって納得する事にしておいた。
少し胸の奥がズキッ!と痛んだのはきっと気のせいだから……。


 
 

 
後書き
最後に謎の村雨嬢と呼ばれる所以な感じを出してみました。
女所帯の鎮守府ですからいつまでも普通ではいられないんですよね。
この鎮守府は言い換えれば女子高みたいなものですし。

ちなみにまだ夕立と春雨は一線は越えてはいません。ここ重要。




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0289話『雪ではしゃぐ吹雪とロシア組』

 
前書き
更新します。 

 




いま、私は吹雪とともに外を窓越しに一緒に眺めていた。

「わぁ! 司令官、雪です! 雪が降っていますよ!」
「そうだな。ニュースによれば今日の昼頃には止んでしまうと言うが……どうなることやら」
「それでしたら外に出ませんか!? きっと楽しいと思うんです!」

そう言ってはしゃぐ吹雪。
うん、やっぱり吹雪は風の子だな。
名前も吹雪だからこういうのには耐性があるみたいだし。

「よし。それじゃ雪がやんだら一緒に外で遊ぶか」
「はい!」

吹雪の喜ぶ顔を見て私も思わず笑顔を浮かべる。
こういう純粋無垢な感じの吹雪はなにかと癒しになるんだよな。

《でしたら提督。厚着にでも着替えましょうか。風邪を引かれたら大変ですから》
「そうだな榛名。マフラーとか用意しないとな。吹雪もなにか暖かい格好をしてきてくれ」
「わかりました! それと誰か一緒に連れてきますね!」
「迷惑はかけないようにな」
「了解です!」

いちいちオーバーリアクションで吹雪は楽しそうに寮へと向かっていった。

「ふむ……吹雪は相変わらず元気だな」
《そうですね。でもあーいうのも吹雪さんらしくていいと思います》
「そうだな。それじゃ私も何か準備でもしておくか。きっと色々とやるだろうし」

そうして少し時間が経って私は中庭へと足を運んでいた。

「あ! 司令官! こっちですよ!」
「わかった、すぐにいく」

そこには吹雪はもちろん響とガングートの姿があった。
吹雪とは意外な組み合わせに少し考える。
でもこういう仲もあるんだなと納得しておく。

「司令官。今日は同志ガングートと一緒に楽しく遊ぼうじゃないか」
「ちっこいのの言う通りだ。こういう時は外で遊ぶのもいいものだぞ提督」

こんな寒い中だというのに袖を捲って笑っているガングートはさすが雪国出身。この程度の寒さではどうという事はないんだな。

「ガングートは平気そうだな」
「まぁな。祖国ロシアではこの程度ならまだ寒くはないぞ? むしろ川に水着になって入りたいくらいだ」
「同志……さすがにそれは私も引くんだが……」
「なんだと? まぁもとは日本の艦だから純粋な私とは感覚が違うんだな。そう言う事で納得しておこうか」

わっはっは!と笑うガングートだがどこか憂いの表情をしていた。
仲間にいきなり裏切られた様な感じと言っておこうか。

「さ、司令官も一緒に雪だるまでも作りましょう!」
「吹雪、私も負けはしないさ」
「雪だるまか。いいだろう。ロシア式のを見せてやろう。いくぞちっこいの!」

図らずもそれで私と吹雪、響とガングートでの雪だるま対決となった。
それからしばらくして、

「司令官。頭の部分が出来上がってきました」
「そうか。こっちはまだまだ胴体部分はもっと丸めないとダメかな……?」
「頑張りましょうか!」
「ああ」

二人で気合を入れているんだけど、ふとロシア組の方へと視線を向けてみるとそこには三段式の雪だるまの姿があった。
ほう……あれが欧州の方で見るという雪だるまか。
日本の二段式とは違うんだなやっぱり。

「どうした提督よ。我らはもう後少しで完成するぞ? なぁちっこいの?」
Получите выигрыш.(勝ちは貰うよ)

二人してもうすでに勝ち誇っている感じで少し悔しさを感じる。
響もガングートのペースに合わせているのか私にも分からないロシア語で話しているし。

「くっそ。吹雪、頑張るぞ!」
「はい! 頑張ります!」

それから健闘はしたんだけどやっぱりロシア組には勝てずに先に完成させられていた。
それでどこか勝ち誇った笑みをガングートは浮かべながら、

「これが我らの力だ」
「ハラショー。いい感じだよ同志」

それで二人して腕を組んではっはっは!と笑っている姿を横目に、

「残念だったな吹雪」
「はい。でも、それでも雪だるまは完成しましたから大丈夫です!」

それで四人でそれぞれ作った雪だるまを並べながら思う。

「久しぶりに童心に帰った感じだよ。最近は雪なんて降ることは無かったからこういった遊びもしなくなってきていたし……」
「そうですね……」

どこか吹雪と一緒に感慨深く思っているとガングートが口を開いて、

「それなら少し遠出になるが我ら祖国のロシアに一度遊びに来ないか? まぁ、戦時下だからそんなにホイホイ行けるものでもないのだがな……。貴様となら楽しい遠征ができそうだ」

そう言ってパイプを吹かしながら笑うガングート。
招待したい気持ちがあるんだろうなと思う。
それに引っかかったのか吹雪が笑顔を浮かべながら、

「私、一回ガングートさんの故郷、行ってみたいかもです!」
「お、そうかそうか。それなら一回帰郷する時に連れてってやってやるのも吝かではないぞ!」

ぐりぐりと吹雪の頭を撫でくり回しているガングートはかなり嬉しそうだ。
響も興が乗ったのか、

「それじゃ司令官もいつか案内するね。歓迎するよ。暁たちも連れて行きたいな……」
「そうだな。それじゃいつか行きたいみんなを連れて旅行に行きたいものだな」
「はっはっは! 来い来い! もうソビエド連邦はないが歓迎するぞ!」
「銃殺刑だけは簡便な?」
「そんなことはしないさ。なに、もう絆を結んでいる仲じゃないか」

バシバシと背中を叩いてくるガングートはえらい楽しそうだったと記載しておこうか。
それでふと少しだけ先ほどより寒くなった気配を感じて空を見上げてみると、

「また雪が降ってきたな……天気予報はあてにならないな」
「いいじゃないか。これくらいならそよ風なものだ」
「私的にはこれでも十分なんだけどな」

そんな感じで吹雪になる前に私達は中へと入っていって炬燵で暖をとっていたのであった。


 
 

 
後書き
今年は北海道とか東北に比べれば少ないですけど関東は結構積もりましたね。
今日の仕事も中止になりそうです。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0290話『陽炎型の最後の方』

 
前書き
更新します。 

 



「提督。狭霧をここまで育ててくれてありがとうございます。また練度を上げるようでしたらお声をかけてくださいね」
「わかった。その時はまたよろしくな狭霧」
「はい。それでは天霧が待っていますので失礼しますね」

そんな感じで狭霧は笑みを浮かべながら執務室を後にしていった。
これで狭霧が練度が70に達したのでこれであと残りの練度70以下の駆逐艦は二隻目を含まなければ谷風(52)、沖波(45)、早霜(42)の三人となった。
特に沖波と早霜は栗田艦隊に所属していたからおそらく出番はあるだろうから早めに育てておこうとは思っているけど、まだ限定作戦の開始日は二月の中旬ときたからゆっくりと育てて行っても十分に間に合うくらいの余裕はある。
むしろ、まだ余裕があるのなら二人目の秋月(46)と初月(45)も小沢艦隊の予備として練度を70まで上げておいても損はないと思うくらいには猶予はある。
なんせ今度の限定作戦は大規模の予定らしいから早々にみんなを使い切ってしまうかもしれない可能性も孕んでいる。
まぁ、そんなに難しく考えないでいいとも思っている。
行けるとこまでは甲か乙で走って無理そうだったら丙に落とせばいい事だしな。
そういうわけで、

「それじゃ今度は谷風。陽炎型では君が最後になってしまったけど張り切って練度を上げていこうとしようか」
「おうともー! かぁーっ! この谷風さんを最後に残しておくとは提督もなかなかこの谷風さんの事を舐めているねー。うりうり♪」

そう言って肘でコツコツと突いてくる谷風は何だろう……やっぱり江戸っ子だよな。
涼風と同じ感じかな?

「あはは。すまないすまない。後でなにか買ってあげるから勘弁してくれ」
「おっ! わるいねー! にしし♪」

そんな感じで今日は谷風をそのまま秘書官に据えてやっていくことになった。

「それにしても……とうとう三人まで減ってきたって事は提督も頑張ったんだなー。これで谷風さん達も一応の練度に達すればいつでも改二の準備はできる段階になるからね」
「その通りだ。最近は最低でも80まで上げないと安心が出来ないから一応全員70まで上げておいて誰かの告知が来たら一気に上げていこうって方針だからな。
そして春先には数隻の陽炎型の第二次改装案が来るって話だから楽しみだよな」
「確かになー。あー……前に長波が改二になって陽炎型のみんなで会議を開いたんだけど陽炎姉がそれはもう悲壮感を漂わせていたからやっと念願叶ったって感じかねぇ?」

そんな事があったのか。陽炎も焦っていたんだろうな……。いまだに陽炎型の誰にも改二が来ない事に。
それで私は谷風のその言い分に「そうだったのか」と返しておいた。

「これで晴れて改二の道も開くってもんさ。誰に来るのか今から楽しみだねぇ」
「確かに。それに結構陽炎型の制服ってみんなばらばらだから改二になったらなにかの服に統一されるのかなとも思う」
「それもあるかもねぇ。今の服装も着慣れているっちゃー着慣れているんだけどみんなでお揃いの制服になったらそれも乙なものだよねー」

お揃いか……。やっぱり陽炎の制服基準とかになるのだろうか?
雪風とか時津風、天津風とかもしそうなったら着心地が悪いとか言い出しそう。

「まぁおそらく陽炎がなるとは思うけどな。結構待たされていたから」
「そうだねー。やっぱりネームシップだから陽炎姉にはぜひとも改二になってもらいたいものだね」
「その時はお祝いもしないとな」
「だねー。あ、お祝いと言えば、提督。今日は初風の進水日だけどなにか用意は当然しているんだろう?」
「もちろんだ」

私は忘れていないからな。みんなの進水日は。

「それじゃさっそく執務室に呼んでみようよ。今頃一六駆のみんなでお祝いをしているだろうしさ」
「そうだな。一応は連絡を入れてみるか。いざって時に執務室にいない時に外から電話がかかってきたら大変だからね」
「でも、そん時は大淀さんが取ってくれるんだろう?」
「まぁそうなんだけどなるべく私自身が出ておいた方がいいだろう?」
「ま、そうだね」

そんな話をしながらも初風の部屋へと連絡を入れてみる。
そして電話に出たのは、

『はい。初風さんのお部屋です!』

雪風だった。
やっぱりみんなでお祝いをしていたか。

「雪風か」
『あ、しれぇ! どうしましたか?』
「うん。雪風が出たって事は今頃初風の進水日のお祝いをしているところだろうから暇を見てそちらに行かせてもらうよ」
『わかりました! きっと初風さんも喜ぶと思います。しれぇ、待っていますね』
「ああ。それじゃまた後で」
『はい!』

そして雪風との電話を終了して、

「あははー。やっぱり雪風は元気な子だねぇ。谷風にも声が聞こえてきていたよ」
「そうか。そう言うわけだ。しばらくしたら顔出しに行ってくるからその間は執務室にいてもらってもいいか谷風。大淀とかも呼んでおくから」
「あいあい。了解だよ。盛大に祝ってきな。後で谷風とかも行かせてもらうからって言っておいておくれよ」
「わかった。初風に伝えておくよ」
「うしっ! そんじゃそれまでに残りの任務でも片付けるとしますかね!」
「了解だ。頑張ってやっていこう」
「おうよー!」

それで谷風と一緒に残りの任務とかを速やかに終わらせていってその後に初風の進水日のお祝いに顔を出しに行った。
初風はそれはもう照れていたからいいものを見れたと思う私だった。


 
 

 
後書き
やっとこさ後三人までやってきました。
もう少しですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0291話『明石の頼み事』

 
前書き
更新します。 

 





執務室で書類と睨めっこをしている時だった。
電話が鳴り響いたので出てみると相手は明石だった。
なにかの用事だろうかと思っていると工廠へと来てくれというらしい。
それなので私は一緒にいた大淀に執務室の係を任せて工廠へと向かう事にした。
しかし、

《明石さんから呼び出しだなんて……なんなのでしょうか提督?》
「わからんな。なにか研究している実験がなにかの成果を上げたんだろうか……」
《提督はシンちゃんには早く会いたいですよね》
「まぁ会いたくないと言えば嘘になるけど……実際どのくらいの性格をしているんだ? そのシンちゃんが出てきている間は私は眠りについているからなんとも想像が出来ないんだよな」
《そうですね。とっても可愛らしいですよ。明石さんが言うには提督のちっちゃい頃じゃなくって新たな人格という話ですから提督も多分ですけどお気に入りすると思います》
「そうか。会えるといいんだけどな」
《はい……》

榛名とそんな会話をしながら工廠へと足を運んでいく。
そして到着してみて明石専用の工場へと足を運んでいったんだけどそこには明石の姿はなかった。

「明石? いないのか……?」

私は明石に聞こえるようにそう声をかけてみると小さいスペースの扉が開いてそこから明石が出てきた。

「提督。待ってましたよ!」

明石はニコニコ顔をしながら私に近づいてきた。
その恰好はいつもの工廠の物とは違って白衣を身に着けている事からやっぱり実験をしていたんだろうな。
やっぱり明石にはこういうマッドな成分もあるんだなと再確認をする。

「それで、私に用というのはなにかな? なにかの実験をするならまぁ付き合うのも吝かじゃないけど……」
「そうですねー。はい、実験と言えば実験です。ちょっと提督と榛名さんとシンちゃんの三人同時分離の原理の作成に煮詰まっていまして。それでよろしかったら提督の成分を少し拝借したいなって」
「成分って……」

一気に怖くなりそうな予感がした。
まさかなにか良からぬ事をするんじゃないだろうな……?
それで私は少し警戒をしながらも話を聞いていく事にする。
だけど明石はわたわたと慌てだして、

「ちょ! そんなに警戒しないでくださいよ! 大丈夫です。少し提督及び榛名さんのDNAデータとかを回収したいだけですから」
「DNAのデータを……? またどうして……」
《はい。明石さんならもうすでに行っていたものと思っていましたけど》
「うんうん」

榛名と二人で頷いていると明石は少しだけ顔を膨らませながらも、

「ひどいですねー。私だって少しは配慮しますから事前に聞く事くらいしますよ」

プンスカと怒りながらもそういう明石。
でも、そうなると、

「だとすると今までの実験の成果である薬は本当に手探りでやっていたんだな」
「そうですよー。指輪の成分を妖精さん達と何度も検証しながら、時には研究班の一人の妖精さんに実験台になってもらい、時には私が実験台になったり、時には―――……」
「わかった! わかったからもう思い出さないでいい! どんどん目が虚ろになっていってるぞ!?」
「あ。すみません……つい過去の実験の数々を思い出していると涙が流れそうになりますね」
「そうか……」

私達が知らなかっただけで裏では明石達の壮絶なドラマがあったんだなと感心をする。
それでもとうとう研究に行き詰まってきて私達に相談をしたという事なんだな。それなら断る事もないだろうな。

「わかった。それじゃ私はどうすればいい?」
「はい。少しの間ですけど採取をしますのでベッドに横になって眠ってもらえるだけで大丈夫です。その間に済ませる事は済ませちゃいますので!」
「少しだけ怖いけど頼りにしているよ明石」
「はい。お任せください!」

それで私は実験室に置いてあるベッドに横になって明石に渡された眠くなる薬を飲んだ後、少しして眠気が襲ってきたのでそのまま眠気に抵抗せずに受け入れて寝入っていった。







提督が眠りについた後、明石さんは色々と提督からなにかの採取をしていました。
血液だったり髪の毛だったりと種類が結構ありましてまるで錬金術でも行うのではないかと思うくらい明石さんの姿はアレでしたね。

《明石さん。それでそれはどういう風に使うのですか?》
「あー、そうですね。それはやっぱりDNAに含まれる提督と榛名さんとシンちゃんの成分をそれぞれ抜き出して薬を作成するというものですね」
《そうなのですか。榛名はそう言った知識は持っていませんのでよくわかりませんけど私と提督はともかくシンちゃんの成分はどうやって取り出すのですか?》
「それはさっきに提督に飲ませた睡眠薬に分離薬の成分を少しだけ入れておいたんです。だから今は少しだけ提督からシンちゃん成分も出ていますので抽出は可能かという感じですね」
《なるほど……やっぱり明石さんはすごいですね》
「それほどでもないですよー」

パタパタと手を振りながらも満更でもない笑みを浮かべる明石さんはやっぱり研究者としてやっていけそうですよね。
そしてしばらくして、

「よし……これで揃えられるものは揃えられました。榛名さん、待っていてくださいね。もう少しで提督と完全に分離できる時が来ますよ。シンちゃんというオマケ付きで!」
《それは……楽しみなんですけどいざ分かれろと申されますとまだ提督と一緒にいたいという感情がありますね》
「そうでしょうね。指輪の件がなかったらずっとこのままでいられたかもしれません。ですがもう分離が可能だと実験の成果で出た以上はいつでも分離できる心構えをしておいてください。織姫と彦星のような関係も羨ましいですけど、分離できればいつでも提督や皆さんとも触れ合えるんですから」
《はい》

それはとても嬉しい事です。
そしたら今までずっと夢見てきていた提督や金剛お姉さま達としたい事をいっぱいしたいです。
だから、

《明石さん。信じていますね》
「お任せください!」

その後に提督も起きて私達は実験室を後にしている時でした。

「……そうか。もう完全分離も目前の段階まで来ているんだな」
《そうみたいです。楽しみでもあり不安でもあります》
「それは私もだよ。でも、そしたら二人でしたい事をたくさんしような?」
《はい!》

提督と思っている事が同じで榛名はとても嬉しく思いました。
楽しみです。


 
 

 
後書き
さて、動き出しました。
この小説の一つの結末まで後少しという感じですね。
活動報告にも書きましたけど予定を繰り上げて冬イベが始まった瞬間に終わらそうと考えています。

ですのでもう少しだけですけどお付き合いしてください。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0292話『艦娘達のシンちゃんに対する期待』

 
前書き
更新します。 

 





明石が本格的に薬の開発に時間を取るようになってから結構忙しくなってきている感じがする鎮守府。
それの噂は駆逐艦のコミニティの間でも結構されている。
駆逐艦寮の休憩室の一角で朝潮や五月雨など複数の駆逐艦娘の一同が話をしていた。

「やっぱり明石さんの力は凄いですね。シンちゃんにもしまた会えるのでしたらこの朝潮、思う存分司令官の代わりに面倒を見る所存です」
「あはは……朝潮ちゃんも結構シンちゃんにのめり込んでいますね。やっぱりあの進水日の日の思い出が忘れられないんですか……?」

五月雨がそう聞くと朝潮は顔を薄っすらと赤く染めて、

「はい……もちろん司令官が用意してくれていた事も知っていますから感謝してもしたりません。でも、シンちゃんはまだそんなに私達の事も知らなかった中で司令官の思いを引き継いで私にプレゼントをくれたのです。だからその思いに応えたいです」

グッと拳を握る朝潮の姿に五月雨は微笑みながらも、

「それじゃ提督と榛名さん、シンちゃんが完全に分離できましたらシンちゃんの歓迎会の用意でもしましょうか」

手を合わせてそう五月雨は提案をする。
それに一緒に聞いていた他の子たちも揃って「さんせー!」と声を上げているほどであった。






軽巡の寮の方でもシンちゃん及び提督達の分離の話題が出ていた。

「なんかその件では夕張も一枚噛んでいるらしいのよ……」

由良がそんな事を話す。
それに阿武隈が、

「そうなんだー。まぁ夕張も結構工廠に行く機会が多いから手伝いをさせられているんだろうね」
「そうだねー。あの夕張のことだから気前よく手伝っているらしいよ」
「北上さんもそう思うのですか? まぁ、シンちゃんは可愛かったですからね。仕方がないですね」
「だが、分離した後はどうするつもりなんだろうな? 一番精神年齢が近い海防艦とかに任せておけばいいと思うが、出撃も出来ないんじゃ鎮守府にいる意味がないぞ?」

木曾のその発言に一同は「そうね……」と呟く。

「でも、数日しか会ってなかったけど結構いい子だったから艦隊運営には支障はきたさないんじゃないかな? だから提督がどうにかしてくれるわよ。いざって時は香取さんか鹿島さんに教育をお願いすればいいと思うし。最近出番が少ないから張り切ってやってくれると思うし……」
「でもさー。香取はいいとして鹿島っちはシンちゃんの事、襲わないかな……?」
「大丈夫、ではないでしょうか? 北上さん」
「大井姉。言葉が上ずっているぞ……?」
「うるさいわね木曾。少しは心配になるのも分かるでしょ?」
「まぁな……」





そして重巡寮でも、


「パンパカパーン! もしシンちゃんが普通に暮らすようになったらいっぱい面倒を見ましょうね!」

手を広げて目を輝かせる愛宕はもう育てる気全開であった。
そこに高雄がツッコミを入れる。

「まったくもう……うちの鎮守府は人はいるんだから交代制でもいいでしょうに。今からそんなにはしゃいでいちゃ身が持たないわよ?」
「えー? でもでもーシンちゃんは可愛いからいいじゃない?」
「あのよ、姉貴。シンちゃんははっきりと言っちまえば榛名の小さい姿と言ってもいいんだぜ?」
「でも摩耶。どちらかというと性格は小さい頃の提督なのでしょう? それなら外見はあまり気にしないでいいんじゃないかしら?」
「ま、そうだけどなー」

そんな感じで高雄姉妹ははしゃいでいるのであった。
それを見つつ眠そうな顔をした加古はというと、

「まぁ子供だから一緒に寝たら温いんだろうねー」
「もう加古はすぐに眠る方面に話を持っていっちゃうんだから……」

すでに加古の抱き枕になる事が決定していた感じであった。





そして戦艦寮では金剛達がいざ来るであろうシンちゃんに対して熱意を燃やしていた。

「さーて、霧島に比叡! ワタシ達のところに榛名が帰ってくると同時にテートクの生き写しであるシンちゃんがやってキマスヨ! 言わばシンちゃんはワタシ達の妹も同然ネ。思う存分可愛がってアゲマショウ!」
「はい、金剛お姉さま。この霧島、教育マニュアルをお作りしますね。ぜひともシンちゃんには私がコーディネートした服を着てもらいたいです」
「あちゃー……霧島も結構悪乗りしてるね。まぁ妹分が増えるんだから私も歓迎かな? そしたら私の料理でも食べさせて……」
「「それだけはやめて……シンちゃんが死んじゃうから」」
「そんなー……」

金剛と霧島の二人に必死に止められていた比叡だった。






特殊艦の寮でも秋津洲が瑞穂たちと一緒に話をしていた。

「あー、早くシンちゃん来ないかなー? また一緒に遊ぶかも!」
「秋津洲さんは前にシンちゃんの面倒を見た事があるのでしたよね」
「そうかも! とっても素直で可愛かったかも!」
「でしたらこの神威も育てるのを頑張りたいと思います」
「みんなで育てましょうね!」

速吸や他のみんなも話に混ざってきて期待を膨らませていた。





そして空母寮では鳳翔さんが自室で手編みをしながらも、

「よし……こんなものでしょうか」

鳳翔さんの手にはシンちゃんのために作っていたのだろう手編みの服が持たれていた。
提督の服も複数作っている鳳翔からしてみればシンちゃんの服を作るくらいは苦労も何もないのである。

「うふふ……また一緒に寝られたら嬉しいですね」

一人鳳翔さんは胸をときめかせていた。








最後にやってきたのは執務室。
そこでは提督が噂でもちきりの現状に頭を悩ませていた。

「うーん……まぁシンちゃんの話題で持ちきりになっても仕事はちゃんとしてくれるからいいんだけど、なんかジェラシーを感じる……」
《あはは。提督ももっと皆さんと仲良くしたいって事じゃないですか?》
「そうなのかもなー……」

提督の事を慰めつつも榛名もいつか来るであろう分離の日を心待ちにしているのであった。


 
 

 
後書き
更新記録が途切れると集中力も途切れちゃいがちですよね。
もう少しで完結もしそうですから結構間が開く事が多くなるかもですね。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0293話『夕張の疲れ』

 
前書き
更新します。 

 



……あぁ、もう。
最近あんまり寝ていないからお肌が荒れてきちゃったかな?
五月雨ちゃんとも会ってないしどうしたものかと思う始末。
まぁ、もう少しで今作っているこの薬も完成するからそれが終わったら精一杯五月雨ちゃんに甘えよっかな。
そう、明石が立ち上げた提督と榛名さん、シンちゃんの分離薬の精製がもう少しで完了しそうなのだ。
それで明石は張り切っちゃって今も寝ずに研究室に籠もっているし。
あたしにも手伝えることがあるのならって思ったけど次元が違い過ぎたわね。
所詮はあたしも研究者としては二流だって思い知ったくらいだから。
だけど、それでも明石に着いていきたいって思っちゃうんだからしょうがないわよね。

「明石ー、だからさー……もう少しゆっくりしたらー? 提督は別に逃げないわよー……?」

あたしがそう言うんだけど、

「ダメです。何事も完璧を追い求めるんですから早急に完成させて提督達の喜ぶ顔を見たいんですよ」
「真面目よねー」

あたしに一応返事は返してくれるんだけど同時に手の動きは止めないでいる。
見ていて惚れ惚れするくらいの腕だわね。
だから今のあたしが明石の邪魔をしない方法と言えば明石が倒れないように料理を振る舞うくらいなのよね。

「はい。明石、少しはなにか食べたら? 倒れちゃうと元も子もないわよ?」
「わ、わかってますよ!……少しだけ休憩します」

それでやっと作業する手を止めて食事を摂る明石。
見ていて目の下にくまがあるし少しやつれも感じるくらいだから相当ね。
まぁあたし達艦娘は戦闘で轟沈しない限りは死にはしないんだけどそれでも疲労は溜まっていくんだから適度に休まないと疲労状態が続いたんじゃ地上でも倒れかねないからね。

「それで? いつも思っていたんだけど、明石ってなんでそんなに提督のために頑張ろうとしているわけ……? さっきも言ったけど提督は逃げないしいつでも薬は完成できる段階まで来ているじゃない?」
「そうなんだけどね……なんか最近胸騒ぎがするのよ」
「胸騒ぎ……? またどうして?」
「うん。私も不思議に思うんだけどたまに提督を見る時に思うんだけどふっとそのままどこかに行っちゃうんじゃないかなって錯覚をする時があって……」
「それはまた……考えすぎじゃないの?」
「それだったらまだよかったんだけどね」

そう言って明石は悩まし気に苦笑いを浮かべながらドリンクを一飲みして、

「ふぅ……なんかうまく言えないんだけど早くしないとなにか提督に良くない事が起こるんじゃないかなって思うようになって最近は開発の時間を急いでいるんだよね」
「ふーん……。良くない事ね。もしかして提督が元の世界に帰っちゃうとか……?」

あたしがそう何気なく言ってみたんだけどそしたら明石の顔が真顔になっていた。
え? まさか図星だったのかしら?

「そう……そうなのかもね。提督の存在は私達と違ってひどく曖昧なのよ」
「曖昧って……」
「夕張も感じない? 提督は榛名さんの身体に魂だけが入っているようなものなのよ? もしなにかのはずみで提督の魂が榛名さんから出て行ってしまってもおかしくないのよ……」

それで明石は少しだけ悲壮感を漂わせながら顔を手で覆っている。
これはかなり重症かもしれない……。
明石がここまで思いつめていたなんてあたしも想像していなかった。
それが今日までの開発の力となっていたのね。

「やっぱり考え過ぎよ! 明石らしくないわよ?」
「そうなんだけど一度そんな考えを持っちゃうとどうしてもその考えを拭いきれなくて……そうなったらと思うともう胸がとても痛くて……」

それで明石はとうとう涙を流し始めてしまったではないか。
まったく考えすぎったら!

「あーあー……もう、そんなもしものことで泣かないの。大丈夫よ。提督はあたし達の前からはいなくなったりしないから」

ハンカチで涙を拭いてあげるんだけどそれでもとめどなく泣いている明石をどうしたものかと思っていると、そこにタイミングがいいのかしら? いや、かなり悪いわね。
なんと提督が顔を出してきた。

「明石、いるか……?」
「て、提督!? ちょっと待ってください!」
「夕張もいたか。どうした? なにやら声が裏返っているようだけど……?」
「なんでもないですよ! そうなんでも……(明石! 早く泣き止んじゃいなよ! 提督はあたしが相手してるから)」
「(うん。ごめん、夕張……)」

明石は奥の方へと入っていくのを確認して、

「もう……提督もタイミングが悪いですよ?」
「やっぱり明石に何かあったのか……?」
「あったと言えばあったんですけど、まぁ考えすぎな事ですよ。だから少しすれば平気になっていると思います。ところで提督。少しいいですか……?」
「ん? どうした?」
「はい。提督ってもし、もしもですよ? 元の世界に戻れるって言われたらどうします……?」

明石に感化されたわけじゃないんだけどあたしも少し不安に感じてしまったのでそんな事をつい聞いてしまっていた。
これでもし提督が元の世界に帰りたいとか言ったらどうしよー……?

「そうだな……この世界に来てから最初の頃は元の世界に戻りたいって思った事があるのは何回かあるけど、そうだな……今はもうそんな思いはあんまりないかな?」
「またどうして? 元の世界に帰ればこんな殺伐とした世界で苦労もする事もなく家族や知人の人達とまた一緒に暮らせるんですよ?」
「そうだけど……もう私には君達という家族が出来てしまったからな。だからもし帰れるとか言われても今更みんなを見捨てて一人で帰るなんてできないし、したくない……」

……そうよね。あたしったらなんでこんな事を聞いていたんだろう?
提督はこんな人だって前から知っていたんだからこんな質問も無粋以外の何物でないかったわよね。

「そうですよね……提督はそんな人でしたよね」
「どうした? またそんな嬉しそうにして」
「なんでもありませんよ。それじゃ約束してください。いつかそんな事態になってもあたし達の事を絶対に見捨てないでくださいね? もうあたし達も提督がいない人生なんて考えられませんから」
「わかった。約束するよ」

そう言って提督はあたしの頭を撫でてくれた。
うん。今考えると明石の気持ちも分かるかもしれない。
やっぱりあたし達には提督という存在が必要不可欠なんだって……。
その後に明石も戻ってきていつも通りに提督の相談事に乗っている感じだったし大丈夫よね、きっと……。


 
 

 
後書き
終盤に向けて話を詰めていきます。
こんな話が当分続くかもですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0294話『薬の完成』

 
前書き
更新します。 

 





それは朝になり冷たい空気が新鮮に感じる時間帯。
その時間に工廠では明石が感動的な笑顔を浮かべながら、

「薬が、でき、たー!」
【【【わーい! わーい!】】】

明石のその叫びに今まで手伝っていた工廠妖精さん達も万歳三唱をして喝采をしている。

「えっ!? なになになに!? どうしたの!」

その賑わいに工廠の端の方で過労のため毛布に包まって仮眠を取っていた夕張も置きだしてきた。
明石もそれで夕張の手を掴んで笑顔を浮かべながら、

「出来たんですよ! ついに!」
「本当に?」
「はい! これが試作に試作を重ねてきた完成品。『分離薬・真』です!」

明石の手にはこれでもかといわんばかりの色をした錠剤が握られていた。
それをみてさすがの夕張も少し引きながら、

「ちょっと……これって本当に大丈夫なの?」
「大丈夫です! 色や味はともかく効果はばっちしです! この薬の完成のために何度も妖精さん達が犠牲になってきたんですから完成してもらわないと困ります!」
「そ、そうよねー……」

夕張はちらっと妖精さん達の方を見て冷や汗を流す。
試作の錠剤を飲んで中途半端に分離している子がいたり原形を留めていない子もいたりといかにこの錠剤が完成するまでに犠牲になったか分かるというものである。
それを夕張は即座に見なかったことにした。
精神衛生上、あまり見ていても気分が悪くなるだけだから。

「わかったわ。それで提督にはいつ渡すの?」
「そうですねー。早めがいいと思いますから明日にでも渡すとしますか。分離した後に榛名さんが普通に戦闘できるかも検証しないといけませんし、もし不手際でまた一人に戻ってしまったら元も子もないですから経過観察も必要です。
近々限定作戦も迫ってきていますから榛名さんには万全な体勢で挑んでもらいたいですからね」
「了解よ。それじゃ明石は一回寝といたら? もうかなり目の下の隈がひどいわよ」
「そうですねー……はい。それじゃ少し仮眠を取ってきます……お昼過ぎになったら起こしてください」
「わかったわ。それじゃ一応あたしが提督に事情を伝えてくるわね」
「お願いします。それじゃ……」

それで明石はかなりの疲労が溜まっていたのだろうフラフラと体を揺らしながらも仮眠室へと入っていった。
それを見送った夕張はすぐに執務室へと向かう事にした。

「(頑張ったわね、明石……)」

夕張は素直に明石の努力を誉めていた。
完璧な薬を作ると決めてからの明石の頑張りはずっと近くで見続けていた夕張だからこそ、その成果を褒められるのだ。
そんな感じで夕張は執務室へと到着して、

「提督ー。いますかー?」
『夕張か。入っていいぞ』
「はい。それじゃ夕張入りまーす!」

元気よく執務室へと入っていく夕張。
そこではいつも通りに大淀とともに今日の任務表を見ていた提督の姿があった。
夕張は気持ちも新たに提督に報告をしようとする。

「提督。ビッグニュースですよ」
「その物言いだともしかしてついに薬が完成したのか……?」
「正解ですよ。明石がついにやってくれました」

ブイ!とブイサインをしながら夕張は提督にそう告げる。

《提督! ついに明石さんがやってくれましたね!》
「はい。明石、頑張ったわね……」

榛名と大淀も明石の頑張りを知っている為に完成した事が嬉しい様子である。

「そうか……頑張ってくれたんだな。それで明石は今は?」
「かなりの疲労で今は工廠の仮眠室で寝入っています」
「そうか、わかった。それでその薬はいつ頃出してくれるんだ?」
「明石が言うには明日に提督に渡すと言っていましたね」
「明日か。まだ限定作戦まで期間が少しだけあるからちょうどいい感じかな?」
「そうだと思います。分離した後の経過観察や榛名さんが普通に戦えるかをチェックするそうです。しばらくぶりですからね、榛名さんが戦闘に出るのは……」
《はい。榛名もしばらく戦っていませんでしたから腕が鈍っていないか心配なんですよね。むしろ今はもう提督の方が練度は高いのではと思う事もありまして》

そう言って榛名は《たはは……》と苦笑いをする。
それに全員も同意で頷いている。
演習ではもうずっと出ずっぱりだったから提督の練度は相当上がっているだろう事は鎮守府のみんなも知っている事だし。

「それじゃ明日を楽しみにしておかないとな」
「そうですね。それで提督。鎮守府の皆さんにはどうお伝えしますか?」
「そうだなぁ……それとなく青葉にでも情報を流しておくか」
「あぁ……青葉さんならすぐに皆さんに知らせてくれそうですもんね」
「あたしも納得できますね」
《青葉さんですから……》

別の意味で全員から信頼を得ている青葉の明日はどっちだ?
そう四人が思っていると盗聴でもしているのではないかという速足で扉が開かれて青葉が執務室に入ってくる。

「司令官! この青葉をお呼びでしょうか!?」
「………呼ぼうとは思っていたが、青葉、お前、盗聴をしていないよな……?」
「してませんよぉ~。ただ直感で面白い事が起きると判断したまでですぅ!」
「本当かウソかどっちなんだろうな。まぁいいけどな……それならちょうどいい。青葉、今から言う内容を今日中に鎮守府中に伝えてくれ」

提督は青葉に分離薬完成の話をする。
それで青葉は目を輝かせながら、「了解です!」と言って執務室を飛び出していった。
それを見て四人は思った。
青葉には要注意しないといけないな、と……。


 
 

 
後書き
というわけで薬が完成しましたので明日にでもその話を書こうかなと。

そしてローソン海域、頑張って全部ゲットします。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0295話『分離の成功』

 
前書き
更新します。 

 





提督達は一同が集まれる講堂で今か今かと明石が薬を持ってくるかを待っていた。
提督なんてそわそわしているのか落ち着きがない感じであるから期待度は高いんだろうと伺える。

《提督、少し落ち着きましょう。明石さんは必ずやってくれますから》
「分かってはいるんだ。だけど、まだ不安が拭いきれていないのが正直な所なんだ」
《まぁそうですよね。榛名も少しだけ不安に感じていますから……》

二人ともやっぱり考える事は一緒らしくお互いに声をかけあっている。
そんな中、

「あ! 提督、明石さんがきたよ!」

最初に気づいたのだろう那珂がそう叫んでいた。
それで全員が入口の方へと視線を向けるとなにかのケースを持っている明石と付き人の夕張が入ってきた。
みんなはそれで一気に緊張しだす。
当たり前である。
今から行われるのはこの鎮守府に在籍している艦娘全員が待ち望んでいた提督と榛名、そしてシンちゃんの分離が決行されるのだから。

「提督。お待ちしました……これがそのお薬です」

明石がケースを開けるとそこには完成した時には見栄えが悪かったが今では普通の薬みたいに着色されていて見る人が見れば普通の錠剤となんら変わらないものが入っていた。

「明石。これが本当にその薬なのか……?」
「はい。命名して『分離薬・真』と言います」
「薬の名前はまぁ、いいとして―――……「よくないですよー!」……すまない。
とにかくこれを飲めば本当に三人に分離できるんだな?」
「はい。今度はもう副作用もなくずっと分離したままでいられます。ですからもう榛名さんとは一緒じゃいられないですけど覚悟は決まっていますか、提督……?」

明石のその言葉に提督は少しだけ間を置いて、

「ああ」

その一言とともに頷いた。

「昨日に分離が可能という話になってから榛名とは色々と話し合ったさ。その結果が今日の事に繋がっている。大丈夫、離れてしまっても別れるわけじゃないんだからなんとかなるさ」
《はい。少しだけ一緒の時間が長かったですから心細くなることもあるでしょうけど、きっと……提督と榛名は大丈夫です!》

提督と榛名ももう心が決まっているような感じで明石は安堵の表情をしながら、

「それでは提督。思い切って行きましょうか!」
「わかった」

提督は明石の持っているケースに入っている錠剤を手に取って少しだけそれを見つめつつ、

「それじゃ……榛名、行くぞ?」
《はい。提督》

そのまま薬を提督は一飲みした。
そして少しの間を置いていつもの感じで身体が発光しだしていく。

「テートク! ハルナ!」

金剛が提督と榛名の事を叫ぶ。
最後まで確認しないとやっぱり不安なのか金剛以外の面々も固唾の思いで経過を見守っている。
提督の身体に光っている粒子が左右に分かれて人型を形成していく。
最後にその光が晴れるとそこには榛名の姿と、そしてシンちゃんの姿があった。

「て、提督……どうなったんですか?」
「……今のところは成功のようだけど……明石、どうなんだ?」
「まだ分かりません。シンちゃんの意識が覚醒するのを見届けないとどうとも……」

先に意識を取り戻した提督と榛名はいいとしてまだシンちゃんは目を瞑ったままだった。
だけど少ししてシンちゃんはその目を開く。

「…………私は………?」
「シンちゃん、私のことが分かりますか?」
「榛名お姉ちゃん……?」
「はい。……………提督! シンちゃんの意識が覚醒しました!」

榛名は嬉しそうに提督にそう告げる。
提督も確認が取れたのか安堵の笑みを浮かべて、

「シンちゃん……こうして会うのは初めてだね」
「もしかして……あなたが提督さんなの?」
「ああ」

シンちゃんと視線を合わせるように片膝をついて会話をする提督。
だけどシンちゃんはどこか恥ずかしいのか榛名の背後へと隠れてしまった後に、

「あう……なんか恥ずかしい。どう言う事か分からないけど提督さんの前だと心がざわつく感じがする。なんでだろう……?」
「シンちゃん。おそらくは同族意識が働いているんだと思いますよ」
「明石お姉ちゃん。同族意識って……?」
「はい。シンちゃんと提督はもともと一人の人間だったのですから分離しても根っこの部分でまだ繋がっているんだと思うんですよ」

明石のその説明に提督も「なるほど」と言うけど、シンちゃんには難しい話だったらしくうんうんと考え込んでいた。

「とにかく! これで分離は完了です! シンちゃん、もう時間の制限はないですからいつまでもここにいられますよ!」
「ホントー……?」
「はい。本当です」

まだ実感が持てないらしいシンちゃんだけど明石の自信の顔でそれが本当なんだと悟ると嬉しそうに破顔させて笑顔になって、

「それじゃそれじゃこれからはお姉ちゃん達といつまでも一緒にいられるんだね!? わーい!」

心の底からの喜びを感じているシンちゃんに周りで見ていたみんなももう我慢の限界だったのだろう、シンちゃんに群がって一緒に喜んでいた。
その光景を見ながら提督と榛名は明石や金剛達と一緒になって話し合いをしていた。

「それでアカシ! 本当にもう大丈夫ナンデスカー? また元に戻るって事はナイデスヨネ?」
「金剛さん。ご心配なく。もしそんなことになったら更なる研究を重ねて今回の精度を上回るものを作ってみせますから。ですから今は経過を観察していてください」
「榛名! よかったですね! これでもう窮屈な思いはしないでいいんですよ!」

比叡がそう言いながら榛名の事を抱きしめていた。

「ひ、比叡お姉さま……はい!」
「比叡お姉さまずるいですよ。霧島も榛名の事を抱きしめたいんですから!」

そんな感じで金剛四姉妹が久々に並ぶ光景を見れて提督もどこか嬉しそうにしていた。

「これでよかったんだよな?」
「はい。離れても絆は変わりませんからね」

提督の呟きに明石はそう答えていた。
そうだな……と納得する提督だったけど、ここから少しの間とある事件で少しだけ悩まされる事態に陥る事になるとは今は想像はしていなかったのである。


 
 

 
後書き
最後にちょっとだけ最後の謎に触れる文章を書きました。
果たしてその内容とは……?




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0296話『提督と榛名の一緒じゃない生活』

 
前書き
更新します。 

 


榛名とシンちゃんと分離できてから二日目。
榛名は今まで貯めていた気持ちを発散するがごとく金剛達との時間を大切にしているようだ。
シンちゃんも主に鳳翔さんや秋津洲がともになって過ごしているようで教育係は鹿島と香取がやっているそうだ。
明石の説明によると今のシンちゃんの状態は言ってみれば駆逐艦みたいなものらしい。
主砲は体格差もあって装備できないけどなぜか駆逐艦の主砲が装備できるというのには航空戦艦のみんなが騒いでいたのは記憶に新しい。
日向なんて瑞雲教徒にいずれ引き込むとか言っていたから恐れ多い。

「提督。もう二月に入りましたのでもうじき大規模作戦が控えています。ですのでそれを前提に艦隊運営をしていってくださいね?」
「わかってるよ大淀。そこのところ、榛名はどう思う? 榛名……? あっ……」
「ふぅ……提督、またやってしまいましたね。今日でもう五回くらいはやっていますよ? 気持ちも分からなくはないですけどもう少ししっかりしてください」

それで大淀に怒られてしまった。
ふむー……これは結構な重症かもしれないな。
榛名がいないだけで集中力が持続しないでいるなんて……。

「すまない。どうしてもいつも一緒に榛名がいてくれていた時を思い出してしまって前の感じで話しかけてしまう」
「それは仕方のない事だと思いますけど、いつまでもその調子ではいられませんよ。もう明石の言う事が正しいのでしたら榛名さんと一緒にはなれないのですから」
「心配かけてごめん。でも、そうなると榛名の方は私よりもダメージがでかいんじゃないかな?」
「提督がそうなのですから榛名さんもおそらくそうなのでしょうね。当分は慣れてこの状態が普通だと思えるくらいにはなりませんと身が持ちませんよ?」
「そうだな……頑張ってみるよ」
「はい。それでは気を取り直してやっていきましょうか」
「ああ」

それからなんとか榛名のいない状態でもやっていけるように努力はしていった。





……提督。
榛名は本当にこのままでいいのでしょうか……?
この状態であるのが本来なら普通だというのに榛名と来ましたらもう提督に寄り添えない事を感じてしまうと心が締め付けられてしまいます。

「ハルナー? どうしましたデスカー? やっぱりまだテートクと一緒じゃなきゃハートが痛いデスカ?」
「あっ……いえ! 大丈夫です! 榛名は、榛名は大丈夫です!」

なんとか笑顔を作って金剛お姉さまに心配されないように努めているのですけど、

「はー……これはダメネ。ハルナはテートクに依存しきってイマース」
「そのようですね金剛お姉さま。なまじ今までずっと司令と一緒にいたからいざ離れてしまったら気持ちが追い付かないものです」
「榛名は苦労を背負うタイプですからねー。ま、あたしも金剛お姉さまと離れ離れになるって言われたら思わず叫んでしまうでしょうけどね。そう思ったら……ヒエー!!」

お姉さま達が騒いでいますけどどうしましょうか。
こういう時に提督だったら優しい言葉でこの場を鎮めてくれるのでしょうけど……。
はっ!? いけません。
いつまでも提督に頼り切りではこれからの深海棲艦との戦いでみなさんの足を引きずってしまいます。
そのために今でもカンを取り戻すために演習で出ずっぱりなんですから。
幸い提督の練度が私の練度と重なっていたので高練度のままで安心しましたけど、演習相手の方々に「なんかいつもより動きにキレがないですね」と言われてしまいまして落ち込んでしまいましたから。
提督はやっぱりすごいです……。
榛名の身体を榛名以上に動かして今まで戦っていたのですから。
私も早く提督に心配されないように落ち着かないと……!

「すみません……すぐにこの状態に慣れますのでそれまでお姉さま達には苦労をおかけします」
「気にしないでイイネ! 妹の事を面倒を見るのは姉の務めデスカラ!」
「姉妹なんですから何も遠慮はすることは無いんですよ榛名」
「そうですよー。それを言ったら比叡なんていっつも金剛お姉さまに苦労を掛けてしまって……」

それでどこか和やかなムードになってそれからはなんとか提督の事を気にしつつも平常心でいられました。
そうですよね。慣れないといけませんよね。
慣れないと……。







そんな感じで提督と榛名はお互いに今の状態に慣れよう慣れようと努めていたんだけど、それも夕食時を過ぎれば我慢の限界に達していた。
提督は本日の任務ややる事も終わらせて細かい後処理などは大淀に任せて自室へと向かっていた。
だけどその心はしずんでいた。

「(ふぅ……榛名がともにいない日常がここまでの疲労を及ぼすなんて考えられなかったな)」

肩を何度か回して改めて疲労が溜まっている事を自覚する提督。
それで自室へと到着して別に誰が中にいるわけでもない自分の部屋なんだからとノックもせずにドアを開けた。
だけどそこには先客がいた。

「あれ? もしかして、榛名か……?」

電気が付いてなかったので誰か分からなかったけど榛名は後姿で提督の布団の上に座っていた。
提督が呼びかけるとビクッと榛名は震えて、

「て、提督……」

その潤んだ瞳を提督に向けてきていた。
その榛名の表情を見て提督は悟った。
榛名は自分以上に心の隙間が大きくなっていたのだと。

「榛名……」
「提督。お願いします……。昼間は榛名も提督とは一緒ではない事に耐えますから夜だけは一緒にお布団で眠っていただけませんか? 提督と一緒じゃない生活がここまで苦しいものだなんて思っていなかったので榛名は、榛名は……」

提督は何も言わずに榛名の事を抱きしめてあげて、

「……わかった。榛名の思う存分気が済むまでいつでも私の部屋に来なさい」
「ありがとうございます、提督……」

その晩は提督と榛名は一緒の布団で眠った。
そして今後も慣れるまではできるだけ夜は一緒にいようという話になった。
翌日になって大淀には呆れられていたけどもう決まったから文句は言わせないという気持ちだったという。


 
 

 
後書き
こんな感じでお互いに依存しきっていますのでまだ別々で過ごすには時間が必要ですね。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0297話『節分ではしゃぐ一同と不安な光景』

 
前書き
更新します。 

 




「福はうちー! 鬼はそとー!」

今日は節分の日。
主に駆逐艦が豆を投げる感じで鎮守府内は賑やかになっていた。
その中でシンちゃんが佐渡とともに豆を持って一緒に鬼がやってきたら投げてを繰り返していた。

「がおー!」
「あ、鬼だ! いくぞシンちゃん!」
「うん。佐渡お姉ちゃん!」
「くぅ! お姉ちゃんて呼ばれるのもいいな! 対馬の奴は呼んじゃくれないからね!」

そんな感じで鬼の仮面を被った鬼怒が豆まきの餌食になるところなんだけど……今回は様子が違った。

「ふっふっふー! いつまでもやられっぱなしの鬼怒様じゃないぞー! そりゃー!!」

なんと鬼役のはずの鬼怒が豆を投げ返すという展開になって佐渡とシンちゃんは二人して「キャー♪」と楽しい悲鳴を上げながらも逃げていた。

「そりゃそりゃー! どんどんいくぞー!」

鬼怒は実に楽しそうである。
そんな鬼怒に対して二人はどうするかという相談をしていて、

「シンちゃん、どうする? あの鬼は手強いぜ?」
「そうだね……反撃されないように一気に投げ返しちゃおうか?」
「お、いいねぇ! それじゃ行くか!」
「うん!」

それで二人は鬼怒の前に姿をさらして、

「お? 観念したのかな?」
「どうかな! 行くぞシンちゃん!」
「了解だよ!」

二人はあろう事か豆が入っているケースごと鬼怒に投げつけた。
それで案の定鬼怒のおでこに命中して、

「あいたー!? くそー! 覚えてろー!!」

鬼怒は仮面越しに涙を流すという器用な事をしながらも退散していった。
そして二人は「いえーい!」と言ってハイタッチをしていた。
だけど一部始終を見ていた鳳翔さんが二人の襟首を掴んで、

「お二人とも……? ケースごと投げるのは大変危険ですからもうしないでくださいね?」

ゴゴゴゴゴ……と謎のオーラを出す鳳翔さんの前に二人は顔を青くさせながらも「ひゃい……」と生返事を返しながらも謝っていたのであった。






ところ変わってしおんがプリンツオイゲンとなにやら揉めていた。

「ですからプリンツオイゲンさん。この行事はセッツブーンじゃなくって節分ですよ!」
「セッツブーン♪」
「ですから節分……」
「セッツブーン♪」
「セツブーンですってば!」
「あ。あってるんだね?」
「え? あ……」

そこでしおんは自分もセッツブーンと言っている事に気づいて落ち込んでしまっていた。

「お姉ちゃんも迂闊だなー。プリンツさんには敵わないのに」
「もうごーやも諦めたでち。ろーちゃんやユーちゃんも二人ともセッツブーンって言っちゃってるから……」
「大体の海外艦のみんなはセッツブーンって言っているのね。プリンツさんのが移ったみたいなのね」
「海外の人にはどうしても発音が難しいものなんですね。はっちゃん、学習しました」
「いやいや。はっちゃん、そんなの学習したって何の役にも立たないから……」

しおい、ごーや、イク、はっちゃん、いむやの五人がそんな会話を敗北しているしおんを見ながら話していた。
そこに噂をすればという感じで、

「でっちー! 豆まきですって! セッツブーン!」
「あいたっ!? ろーちゃん、ごーやは鬼役じゃないでち! 龍鳳だよ!」
「あ、ごめんねーでっち」
「いや、別に構わないけどあんまり強く投げないようにするんだよ? 目に当たったら後が怖いから」
「わかったですって!」

そんなごーやとろーちゃんのやり取りを見て、

「ごーやさんってなんだかんだでろーちゃんには甘いよな。姉貴」
「そうだね……ごーやさんは面倒見がいいから適任だと思うの……」
「ろーちゃん、いいなー。ごーちゃんも相手してほしいよ」
「それじゃ木曾さんのところにいきましょうか。まるゆ、木曾さんにはいつもお世話になっていますから」

その後にまるゆは木曾のところに行くとちょうど鬼役をしていたので豆を投げていたんだけど中々当たらずに泣いていたという。
木曾も木曾でまるゆには甘いから頭を撫でていたとか。





「みんな、楽しそうだな」
「そうですね提督」

提督と榛名の二人はそこら中で頻発している豆まき騒動を楽しそうに見守っていた。
まだ分離して三日目だけどどうにか二人は落ち着きを見せ始めてきたのだ。
それでも今日の夜にはまた二人で一緒に眠るのだろうが。

「また来年もこうしてみんなと騒ぎたいものだよ」
「大丈夫ですよ提督。提督と榛名たちで海を深海棲艦の魔の手から守っていけばいつまでもこんな事は出来ますから」
「そうだな。これからも海を守っていこうな榛名」
「はい!」

そんな感じで和やかに時間は過ぎて行ったのだけど、提督達の近くで豆まきをしていた第七駆逐隊の面々は少しだけ不思議そうな顔つきをしながらも、

「あれ……? いま一瞬……」
「そうだね。なんか一瞬ご主人様の姿が透けたような……」
「き、きっと気のせいだよ漣ちゃん……そんなことありえないよ」
「そうよ。クソ提督が消えるはずがないじゃない……?」

四人は揃って提督が一瞬だけだけど以前の榛名のように透けているような錯覚を感じていた。
ただもう提督の姿はいつも通りのままだったので四人は不思議そうにしていたけど曙は胸の中でざわめきを感じていた。

「(まさかあたし達の前から消えるなんてことしないわよね? クソ提督。そんな事になったら絶対に許さないんだから……)」

ただたださっきの光景が嫌な知らせではない事を祈るばかりだった。

「曙ちゃん……」

潮が曙の手を握ってきていた。
見れば手が震えている事に気づく曙。

「大丈夫よ潮。きっと大丈夫だから……」
「そうだよ潮。提督が消えるなんてありえないですから」
「そうですよー。もしそんな事になったらご主人様の事を許しませんから。さ、気を取り直して豆まきでもしましょうか」

四人はそれで豆まきを再開したのだけど、さっきの光景が現実になるだなんて今は思いもしなかったのであった。


 
 

 
後書き
最後に意味深な事を書きました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0298話『提督のとある症状』

 
前書き
更新します。 

 




「提督、本日の任務なのですが今晩にも大本営からなにかしらの発表があるらしいですよ?」
「………」
「……? 提督?」

大淀は反応が返ってこない提督に少しだけ不思議に持ってもう一度問いかけてみた。
すると提督は大淀の声に気づいたのか慌てて、

「す、すまない大淀。また少しだけ意識がどこかに飛んでいた……」
「そうですか」

大淀は思っていた。
最近の提督はどうにも集中が出来ていない事を。
というより意識が飛んでいる? それは一体……?

「どうされたのですか提督? 最近やけに意識が飛んでいる事が多いですがどうされたのですか? 体調が悪いのでしたら休まれた方がよろしいですよ?」
「あはは……すまん。なんか最近頭の中に変なささやきのようなノイズが走ってくる事が多くて……」
「ノイズ、ですか……?」
「ああ。なんか榛名とは違って妙に聞いていると眠くなってくる感じなんだ。なんだろうな一体?」

それを聞いて大淀は昨日に相談を受けた第七駆逐隊の面々との会話を思い出していた。







『大淀さん。ちょっといいですか?』
『はい。なんですか漣さんにみなさん?』

漣は少しだけ神妙な表情で、潮は少し怯えるように体を震わせていて、曙はそんな潮の手を握ってあげているんだけど自身もどうにも表情が優れない、朧に至っては信じたくないというべきなのか曙以上にきつい表情になっていた。
さすがのその四人の顔を見てはただ事ではないと大淀も察したのか、

『ゆっくりで構いません。どう言う事か話してくれませんか……?』
『はい。最近なんですけどご主人様ってどこか調子を悪くしてませんかね?』
『またどうしてそう思ったのですか……?』
『まぁそうなんですけど……ただの目の錯覚だったならよかったんですけど漣たち四人が同時にご主人様の姿が前の榛名さんみたいに透ける瞬間を見てしまいまして……』

その漣の発言に大淀は驚きの顔をする。
確かに四人同時にそんな光景を見たら潮の怯えようも納得というものだ。

『そうでしたか……』
『はい。それに漣達以外にももしかしたらご主人様が透けてしまう光景を見ている子もいるかもしれませんからよく執務を一緒にやっている大淀さんにはご主人様の事を見ててもらってほしいんですよ』
『わかりました。提督の事は注意深く観察しておきますので四人ともどうか気に病まないでくださいね?』

そんな感じで大淀は相談を受けた四人を帰しながらも、そのまま明石の工廠へと足を運んでいった。

『明石、いますか?』
『ん? どうしたの大淀?』
『それが―――……』

大淀は明石に漣たちに受けた相談内容をそのまま伝えると明石も少し悩む素振りをしながらも、

『……もしそれが本当だったら非常にやばい状態かもしれませんね。私の想定していた事が実際に起こるかもしれません』
『それはどういう……?』
『今回私は良かれと思って提督達が分離できる薬を開発してそれは見事成功しました。
ですけどそれはつまり榛名さんとの繋がりが切れたわけですから今は提督の精神だけで今の状態を保っているわけです。
さらには提督の魂の幾分がシンちゃんとして抜け落ちてしまったために今の提督の状態はかなり不安定なものだと私は推測しています』
『それはつまり……』
『はい。もしなにかのきっかけで提督の精神に異常が起こったらいきなり目の前から消えてしまうかもしれないという感じですね。考えたくないですけど……』
『そんな……』
『私も何か対策は考えておきますので大淀は提督の事を注意深く観察していてください。何か起こったら私がすぐに駆けつけますので』
『わかったわ。お願いね明石』
『うん』






その会話内容を思い出していて、さらには今もどこか提督は頭にノイズのような音が聞こえてくるという。
やっぱり分離をしてしまったがために変なものが提督の身を蝕んでいるのではないかと大淀は危惧していた。

「提督。一度明石に検査をしてもらいましょうか。まだ分離できてから数日で安定していないのかもしれません」
「そうだな……この変なノイズも相談しておいてもいいかもしれないしな」
「そうですね。それでは長門さんをお呼びしますので提督は明石のところへと向かっていてください」
「わかった。苦労をかけるな大淀」
「いえ。提督の身の安全が一番ですから気にしないでください」

それで提督は大淀に詫びの言葉を入れて明石のところへとやってきていた。
そして相談してみると、

「謎のノイズ、ですか……どんな感じですか?」
「なんていうんだろうか……? こう、ザザー……みたいなテレビのモノクロ時代の感じなんだけどそれを聞いているとなぜか意識が遠くなって眠くなってきてしまうんだ」
「なるほど……それ以外にはなにか問題とかありますか?」
「今のところは特にはないかな? でも、このままだと職務に身が入らないからどうにかしておかないとな」
「そうですね。これでもし提督が艦隊運営が出来なくなってしまったら私達もどうなってしまうか分かりませんから」

そう、提督がいなければ艦娘達は独自で行動できないから海での惨事にも駆けつけられなくなるし、もし空襲でもされたらそれこそおしまいだろう。

「それじゃ一応艦娘用の頭痛薬を処方しておきますね。それと検査をしますので横になっていてください。少し時間を要しますので寝ていても構いませんよ」
「わかった」

それで提督は横になるとすぐに寝入ってしまった。
明石はそんな提督のすぐに寝入ってしまう光景を見て、

「まずいですね……提督の意識を手放す時間が早いです。これはもしかするともすかするかもしれません」

それから明石は提督に検査器具を付けようとして、次の光景を見て絶句する。
そう、提督の身体が透けたり戻ったりを繰り返しているのだ。

「提督!!」

思わず明石は提督を起こそうと体を揺さぶる。
そんな明石の必死の声を聞いて提督は何とか目を覚ました。

「ど、どうした明石? そんな必死な顔をして……?」
「なんとも、ないんですか……?」
「特にはないけど……なにかあったのか?」
「………」

明石はどう話すべきか悩んでいた。
でも、提督に自覚してもらってしまうとなにかさらに悪化してしまうかもしれないと思った明石は、

「……今は言えません。ですが提督。提督の身体は必ず私が治しますから……」
「そ、そうか……」

一応提督は納得したけど、その後に明石は提督とお布団を共にしている榛名を呼んで提督の症状を説明して注意を促しておくのであった。


 
 

 
後書き
さて、問題が起こってきました。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0299話『榛名の不安と祈り』

 
前書き
更新します。 

 





今日は私の不安もありまして提督の秘書官はこの榛名が務めさせてもらっています。
それは先日のことでした。
明石さんから工廠へと呼び出されましたので何事でしょうか……?と思いながらも向かうとそこには明石さん以外にもベッドに横になって眠っているのでしょうか?目を瞑っているいる提督の姿がありました。
その光景を見た途端に私はとてつもない悪寒に襲われました。
まるで提督がいなくなってしまうかもしれないという嫌な思いが生まれてしまいました。

『榛名さん。来ましたか……』
『明石さん。提督は、どうされたのですか……? どこか具合が悪いのでしょうか?』

私は明石さんに事情を聞こうとそう尋ねました。
ですが明石さんの表情も少しだけやつれているのを見てこれは本当にただ事ではないというのを察しました。

『あはは……。すみません。私が良かれと思った事が裏目に出てしまったみたいなんです』
『裏目に、ですか……? それはいったい……』

それから明石さんはポツリポツリと語りだしました。
要約すると明石さんが開発した分離薬で一応は成功したかのように見えたのですけど、分離してしまったために提督がこの世界に留まるためのエネルギーと言っていいのでしょうか?
私達で言う艤装が燃料不足で顕現できないまではいかないですけど自身の身体を維持するためのパワーが今の提督には足りていないという事でした。

『今眠っている提督をよく見ていてください』

そう明石さんに促されて提督を観察していると提督の身体が何度か透けたり戻ったりを繰り返しているではないですか。

『こ、これは……ッ!』
『はい。榛名さんだけならまだよかったんですけどシンちゃんという提督の一部分が抜け出てしまったために今提督はとても不安定な状態でいつ消えてもおかしくない状態なんです』
『そ、そんな! それじゃどうすれば!』

私は気が動転してしまい何も考えることが出来なくなっていますけど、明石さんが『ですが!』と大声を上げて、

『必ず私が提督のこの症状を回復させてみせます。そうでないと私は一生後悔にまみれてしまいますし皆さんに申し訳が立ちません。
恨まれるのは別に構いません。それが私の罪なんですから。
だけど、だからこそ私は必ず提督を直してみせます。信じてください!』
『…………』

その明石さんの告白に私も幾分ですけど落ち着くことが出来たのですけど、

『ですが、具体的に案はあるのでしょうか……? 今も提督はいつ消えてもおかしくない状態ですので猶予はありません……』
『はい。それは百も承知です。だから早く解決策を立てないといけません。ですけどこの話は決してみなさんには言わないでください』
『どうしてですか……?』
『考えてもみてください。もしこんな大事がみなさんの耳に行き渡ったらそれこそ鎮守府は揺れてしまいます。
おそらく士気低下で出撃もままならず、もし最悪の事態として提督が消えてしまったら後を追う子は多いでしょう。榛名さんももちろん後を追う覚悟ですよね?』

明石さんにそう言われて私は反論が出来なかった。
その通りです。
提督がいない世界なんている意味がありません。
そこまで私は提督の事を愛しているんですから。

『だから榛名さんは提督の事を見ていてください。多分ですけど……榛名さん、提督の手を握ってみてください』
『え? はい……』

それで少しだけ透けている提督の手を握ってみると途端に提督の透ける現象は収まりました。これは……?

『やっぱり……。提督と榛名さんはまだ完全に繋がりが絶たれたわけではないんですよ。直接触れることによって提督との絆の力と言えばいいのでしょうが、榛名さんの力が提督に流れていくと推測しています。ですのでできるだけ提督の事を離さないでいてください』
『……わかりました』









そんな話を明石さんとしたのでした。
それで私は執務室でいつもと変わらずに仕事をしている提督の手を止めるわけにはいきませんので嫌な予感がしたら肩もみなり手を触れるなりしてなんとか提督の身体が透けるのを阻止しています。

「榛名……? どうしたんだ?」
「え? なんの事でしょうか……?」
「いや、なんか今日はやけに榛名のスキンシップが多いなって思ってな」
「ダメ、ですか……?」
「いや、ダメなんてことは無いよ。むしろ私は嬉しいから」
「そうですか。よかったです」

すみません、提督。
提督にこの症状を自覚させてしまったら悪化するかもしれないという明石さんの助言で真実を話すことが出来ないんです。
現状、この事を知っているのは私に明石さん、それに妖精さん達だけです。
艦娘の皆さんに相談できないのが辛いところですけど頑張らないといけません。

「提督……」
「ん?」
「安心してください。榛名はいつも提督とともにありますから。必ず提督のお役に立ちます!」
「榛名……。ありがとう。でも、榛名も無茶だけはしないでくれ。榛名になにかあったら私はどうかしてしまうかもしれないから」
「はい、わかっています。榛名は大丈夫です!」

元気に振る舞うのですけどやはり辛い気持ちが溢れてきてしまいます。
神様でも誰でもいいです。
明石さんがもし間に合わなかった時は提督の事をお助けください……。
皆さんから、榛名から提督を奪わないでください!
私はそう祈りを捧げました。


 
 

 
後書き
少し重たい話が続いています。
終わりが近づいてきたって事で最後まで見届けてくださると嬉しいです。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0300話『ついに起きてしまった事』

 
前書き
更新します。 

 



早霜が練度が70に達した。
それでついに今日で駆逐艦のみんなが揃って全員練度が70以上になった。
去年から頑張ってきたからなぁ……。
嬉しくて涙が出そうだよ。
なんか最近やけに眠たいけど頑張って執務をこなしていかないとな!
そう私は思って、ふと用を思い出して椅子から立ち上がった時だった。

「―――あ、れ……?」

まただ。また急な眠気に襲われてしまった。
やばい、このままだと地面に倒れてしまう。
そんな事になったらみんなに心配をかけてしまう……。

「なに、おう!」

だから私はなんとか力を振り絞ってまた椅子に腰掛けた。
椅子で居眠りをしているのは格好が悪いけど致し方ない……。
大淀とかが起こしてくれるだろうと思いながらもそろそろ限界だったので私は瞼を閉じた。
……―――最後にまたあの嫌なノイズが聞こえてきたけど、もう意識が……。







今日は提督が今まで頑張ってきた駆逐艦強化月間がついに達成しましたので小さいですけど提督のお部屋でお祝いでもしましょうかと考えながらも演習を終えて執務室へと帰ってきました。
すると目の前の廊下から大淀さんと明石さんが歩いてきました。

「大淀さんに明石さん。どうされました?」
「あ、榛名さん。はい、提督のご様子を確認に来たんですよ。大淀もみなさんには提督の症状については内緒にしてくれるそうで助かりました」
「はい。私も初めは耳を疑いましたけど、明石の話には嘘はないようですので信じました」

大淀さんも仲間になってくれたのは嬉しいですね。
金剛お姉さまとかにも話せない事ですから共通の仲間がいるというのはいいものですね。

「それじゃ演習が終了したのを提督にお話ししましょうか。
私も勘が戻ってきましたので活躍しているって話したいです!」
「うふふ。最近の榛名さんは頑張っていますからね」

そんな会話をしながらも執務室へと入っていきました。
だけど提督は椅子に腰掛けて眠ってしまっているようでした……。
でも、よく見ると、

「明石さん!!」
「はい! 提督!!」
「これは!?」

私は大声を上げて明石さんに動いてもらうように指示しました。大淀さんも初めて見るのか目を見開いています。
だって、提督が、提督が! 完全に透けてしまっているからです!

「榛名さんはすぐに提督の手を握ってあげてください!」
「はい!」

それで私はすぐに提督の手を握りました。
私の力で提督が助かるならなんでもします!
だけど!

「明石さん! 提督の症状が治りません! ど、どうすれば!?」

昨日までは提督に触れていればなんとかなっていた症状が一向に回復しません!
これはどうしたらいいのですか!?

「これは…………! かなり危ないかもしれません! 大淀!!」
「は、はい!」
「すぐに提督を医務室に運びますから手伝ってください! 榛名さんはそのまま提督に力を送り込むイメージを!」
「わかりました!」
「お任せください!」

そんな事が起きてしまい、提督の症状は医務室に運ぶまでにたくさんの人達に見られてしまい、もう隠せないところまで来てしまいました……。
そして……。

「ハルナ……。どうして話してクレナカッタノ?」
「ごめんなさい、金剛お姉さま……これは内密に処理しようとしていたのですけど……」

涙を滲ませている金剛お姉さまに私は反論をする余地もありませんでした。
もう医務室の内外ではたくさんの艦娘の皆さんがそろって集まってきていましたから。

「このっ! クソ提督! あたし達の前から消えるんじゃないわよ! 消えるんじゃ……う、うぅ……」
「ぼのたん……」

曙さんが今も透けてしまっている提督に向かって己の胸の内を叫んでいて漣さんが肩に手を置いて慰めていました。
きっと……なにかしら予感をしていたのでしょう。
私も、いつかこうなるのではと危惧していましたけどとうとうやってきてしまいましたから。
今も手を握っていますが提督の姿は透けたままです。
もう、私だけじゃ……無理なのですか? 提督……。

「提督さん、せっかくこうして会えたのにお別れなんていやだよぉ……」
「シンちゃん……」

シンちゃんが私とは反対の提督の手を握っていました。
シンちゃんと私ならもしかしたら……。
と、思いもしましたけど、結局提督の様態は回復していませんでした。
どうしたらよいのですか、提督……。
榛名はもう耐えられないかもしれません。
みなさんもそうです。
ですから早く帰ってきてください……。





そんな榛名たちの光景を見ながら一応はまだ冷静な長門が明石に提督の容態を聞いていた。

「……そうか。やはり裏目に出てしまったのだな」
「はい。すみません。私の提督にしてあげたいというエゴでこんな結果になってしまいまして……」
「なに、気にするな。いずれは誰かが思いついた事だろうからな。遅いか早いかの問題だったんだ……。
それで、提督を治す見込みはあるのか……?」
「それが……なにぶん症状が発覚してからそんなに日数が経っていませんから納得のいく成果をまだ上げられていないんです。提督は私が治す!って啖呵を切ったのにこのざまです。自分が情けなくなってきます」
「わかった。とにかくしばらくの間は私が提督代行をしていよう。
柳葉大将や久保提督にはなにか連絡があったら『風邪で寝込んでいる』と誤魔化しておく」
「お願いします。その間に私もなにかしら解決策を見つけてみせます」
「頼んだぞ」
「はい。お任せを」








提督はぼんやりとする意識の中、目を覚ますとそこは上下左右の感覚がない何もない空間に自身は浮いている事を感じた。

『ここは……?』
『ようやく来たね……』

そこにそんな少年のような声がしたので提督は思わず振り向く。
そこには自身と同じようにこの謎の空間に浮いている謎の少年の姿があった……。


 
 

 
後書き
300話というキリがいいタイミングでこんな話をぶち込んでみました。
駆逐艦が全員練度が70以上になったのもいいタイミングでしたね。






それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0301話『少年との話し合い』

 
前書き
更新します。 

 





提督は謎の空間で出会った少年を見て怪訝そうな表情をしながら、

『君は誰だい……?』
『そうだね……君からすればこの世界に送り込んだ張本人ってところかな……?』

それを聞いて提督は目を見開く。
いきなりの発言に驚きの表情をしながらも警戒をしながらも、

『それじゃ、君は一体何者なんだ……?』
『君達の世界で言う神様でもいいよ。実際この世界を創造したのも僕だしね』
『なっ……それじゃなんで私を送り込んだんだ……?』
『そう、それだよ』

そう言って少年は笑みを浮かべながらも、

『僕はね、君達の世界の『艦隊これくしょん』というゲームを基盤にしてこの世界を創造した。
最初は大変だったけど深海棲艦ももとからデザインは出来ていた分はやりやすかったよ。だけどね、この世界の人間はあまりにも醜悪だった……』
『醜悪……?』
『君も柳葉大将や久保提督という人に聞いただろう……? 君が来るまでこの世界の人間が艦娘達にやってきた行いを。特に大和型の扱いがひどいったらないね』

それを聞いて思い出した。
この世界の提督達は良心的な人達もそれはいただろうけど大半は艦娘をまるで自殺でもして来いと言わんばかりに特攻させてその犠牲とともに戦果を上げていた事を。

『それはね、船の方の駆逐艦一隻を作る分に比べれば艦娘一体を建造する費用は抜群にコストはいいからね。ムダ撃ちでもいいから特攻させて勝利をもぎ取りたいという気持ちもわかるよ。深海棲艦のせいで普通の船が海に出たらすぐに沈められてしまうからね。
でも、それじゃ意味がない。
人間と艦娘がともに思いあって戦っていくのを目指してこの世界を作った僕からしてみれば愚劣にも映る光景だったよ。
それで僕は思った。元の世界で提督をしている人間を送り込もうとね』
『だけど、なんでそれが私だったんだ……?』
『うん。それはね、誰でもよかったんだけどたまたま君に目がついてね。
それなりに轟沈経験をしていてもその轟沈した艦娘の事を忘れないでいて艦娘達を愛している提督だった君を選ばせてもらったんだ。
でもその世界には君は存在していないから器が必要だったんだけどちょうど君が一番好きそうな艦娘、戦艦『榛名』に君の魂を憑依させることでそれも解決した』
『…………』

それで提督は一応は納得をした。
最初は何でこんな世界に来てしまったのかという疑問が一気に解消されたからだ。
提督は無言で次に少年から発せられるだろう言葉を待っていた。
この少年は気前がいいのか質問している以上の事を教えてくれる。
だから無理に質問をして機嫌を損ねられるより、答えを教えてくれることを待っていた方がいいと言う判断であった。

『ここまではいいね? それで君をこの世界に送り込んでみたはいいんだけど最初からこの世界の事を改善してくれるとは思っていなかったからただ見守っていたんだ。
だけどふたを開いてみればどうだい?
君の保有する艦娘達の活躍が瞬く間に広がっていって、最初の大型作戦での活躍を鑑みて少しずつだけど艦娘の扱いが変わっていったのを今でも覚えているよ』
『だけど、それは大本営のおかげでもあるし別に私は普通に深海棲艦と戦っていただけだ』
『それだけでよかったんだよ。もうさっきも話したし知っていると思うけどこの世界の人間は艦娘を轟沈させてでも勝利をもぎ取っていったんだけど、君は誰一人失わないで何度も限定作戦を乗り切っていった。
それでちゃんと育てれば艦娘達もきっとその期待に応えてくれるっていう話がどんどん海軍内で広がっていったんだ。
ほら、最近はもう聞かなくなったんじゃないかい? 艦娘を特攻させるっていう反吐が出そうな話題は?』
『確かに……』

柳葉大将もそういえば最近は前はあんまり笑う人でもなかったのに何度か通信で話す時は笑みを浮かばている事が多い。
上に立つ人がこれなのだから改善されてきた証なんだろうという事だ。

『君のおかげで良い世界へと少しずつだけど変わってきている。それのお礼として一年に一回というのにはロマンがあるだろう、一緒になっている艦娘と分離できる機会を与えてあげたんだ』
『やっぱり……』
『君も嬉しかったろう? いい事じゃないか。だけど、あの工作艦がまんまとある事をやり遂げてしまって僕の計画外の事が起きてしまった』
『ある事……それってやっぱり私と榛名、それにシンちゃんの分離の件ですか?』

提督がそう聞くと少年はため息を吐きながら、

『そうだよ。もともと君とそのシンちゃんって子が榛名と一緒になっている事で君があの世界での存在していられるエネルギーを得られていたんだ。
だけどそれが分離してしまったせいで君はあの世界で存在していられるだけのエネルギーが不足してしまった。
だから今回僕は君をこの空間に呼び出すことにした。
君が感じていた謎のノイズは僕が呼びかける声だと思ってもらって構わないよ?』
『なるほど……』
『そして今の君の現状はこうなっている』

そう言うと少年はとあるスクリーンを映し出した。
そこに映っていたのは大勢の艦娘達に見守られながら今にも消えそうになっている自身の姿だった。

『これは……!』
『そう、今の君の現状だよ』

そこでもう一度少年はため息を吐いて、

『この問題は新たに僕が存在し得るだけの力を君に与えれば解決する問題だ。
だけどそれを含めて君にある問いかけをしたいと思ったんだ』
『問いかけ……?』
『こういうのは君からしたら魅力があると同時にとても薄情な質問だとも思うけどね、君のもとの世界に戻れるって言ったら君はどうしたい……?』

少年のそんな突然の問いかけに提督はターニングポイントに立たされることになった……。


 
 

 
後書き
最後にされた質問。
提督はどういう決断をするのか?
次回を待て!




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0302話『提督の選択』

 
前書き
更新します。 

 




『こういうのは君からしたら魅力があると同時にとても薄情な質問だとも思うけどね、君のもとの世界に戻れるって言ったら君はどうしたい……?』
『は……?』

少年の突然のそんな質問をされて私は間抜けな声を出してしまった。
それはそうだろう。
わざわざこの世界に送り込んだというのにまたもとの世界に送り返すなんて都合が良すぎる。
何か裏があるんじゃないかと思わず勘ぐってしまう。

『それは……しかし、でも本当に戻れることが出来るのか?』
『大丈夫だとも。僕の力にかかれば君をもとの世界に戻すくらいは造作もない事さ』

そうあっけらかんと笑う少年の笑みを見て、でも信じられなかった。

『それじゃ聞くけど私がもとの世界に戻ったとして残された艦娘達はどうなってしまうんだ……?』
『そこは安心してもらってもいいよ。また君の艦隊これくしょんのデータに戻ってもらうだけだから。多少は感情は残るだろうけどそれでもほぼ元通りになると思うよ?』
『それはあまりにも酷い話じゃないか……? 今まで築き上げてきたものを無に帰すにも等しい行為なんだぞ?』
『そうだね。僕も今自分がとても酷い事を言っている自覚はあるよ。そこは認める。
でもね、僕も君には有情を持って接しているつもりだよ?』

この提案のどこが有情なんだと思う。
艦娘達をもとのデータに戻すと言う事はこの世界で過ごしてきた様々な出来事、楽しい事、嬉しい事、その他もろもろも無かったことになってしまう。
そんな事になったら私は気まずくなってしまいもう艦隊これくしょんというゲームに手を出せなくなってしまう。

『だったら私は―――……』
『話は最後まで聞くものだよ? まだ時間はあるんだからじっくりと検討しなよ。まぁこの空間に一時間いるだけで外の世界は一日進んでしまうからそんなに考えている猶予もないけどね』
『だったらなおの事! 私はみんなのところに帰るよ』
『だから落ち着きなって。さっきも言ったけど僕は有情を持って接しているんだ。
理由を言わせてもらうとね。この世界は君が思っている以上に闇が深いんだよ』
『闇が深い……? それはどういう……』
『君は考えたことがないかい……? いつかは深海棲艦を根こそぎ排除できたとしよう。でもその後のこの世界がどうなるかまではもう僕の管轄から外れているんだよ。だからもうどうなるかはわからない。この意味が分かるかい?』
『それは……』

確かに分からない。
深海棲艦との戦争が集結したらその後の艦娘の扱いはどうなる?
海軍はどう判断を下すのか読めない。

『うんうん。少しは想像できたと思うけどね。
もしかしたらあり得る事とすれば艦娘達の一斉解体なんてシナリオになるかもしれない。もちろんそれには艦娘という身体である君も含まれている事も忘れないでおくれよ?
無論、君は当然彼女達を無くさせないために反抗するだろう事も予想できる。だって家族だもんね。
深海棲艦と戦える戦力に人間が太刀打ちできるわけがない……結果、人間と艦娘との戦争が勃発するかもしれないかもね』
『そんな事は……』
『ない、なんて軽い言葉は言わないでおくれよ? 人類の歴史を紐解いてみればいつだって戦争をしてきた。戦える人間は率先して前線に送りこまれていきその尊い命をたくさん落としてきた。
艦娘だって死なないわけじゃない。お腹もすくし疲れもする。
人類と戦争を起こすという事は過去の日本のように補給路を断たれて戦えなくなってしまう艦娘だって出てくるだろう。艤装が使えないのなら人間の身体能力を多少上回っているとはいえ倒せないことは無いからね』
『…………』

私はそれで無言になるしかなかった。
少年の言う事は確かに的を得ていたのだから。
私も人類と戦争なんて御免被るししたくない。

『どうやら現実を見れたようだね。
それじゃそんな君にもう少しひどいもしものシナリオを教えてあげるよ』
『まだあるのか……?』
『うん。艦娘と人類との戦いならまだ艦娘側が勝つ見込みはあるだろうさ。
だけどね。深海棲艦を倒したら今度は国同士の艦娘を使用した醜い争いという事も起こるかもしれない』
『ッ!』
『そう、意思や心を持っているとはいえ艦娘は所詮は兵器というのは変わらない事実だ。だから各国は欲がくらんだが最後、艦娘同士で争わせてしまうかもしれないんだよ』
『そんな事は許されない! そんな事になったら沈んでいった艦娘達の恨み辛みが具現化してまた深海棲艦と同じかそれ以上の怪物を生み出してしまうかもしれない!』

私は思わずそう叫んだ。
深海棲艦は沈んでいった船の負の感情が具現化した存在だって私は思っているから、そんな事になったらまた繰り返してしまう。
人類同士の戦いで疲弊した中での新たな深海からの使者なんかが現れたらそれこそ今度こそ人類は滅ぼされてしまう……。

『……その通りだよ。そして君はおそらくそんな事にならないように色々と手を尽くして駆け回る事も想像するに難しくない。
だけど一人の意思と群集とが相手では勝ち目はとうに見えている。
君が暗殺されるかもしれないという事も想定しないといけないからね。ふぅ……やれやれだよ』

それで少年は深いため息を吐く。


『……―――まぁ、色々と君にもしもの事態を教えてあげたけどね。
話は戻すけど僕としては手遅れになる前に君は安全な世界に戻る事を進めたいんだよ。
もとの世界も紛争が各地で起きているだろうけど一般人でしかない君には遠い話かもしれないし、それに家族や友人たちとの平凡でもいいありきたりな普通の生活を送れるというのもそれはそれでありだと思うしね。
僕が言えるのはここまでだよ。時間は有限だ。もう一時間はとうに経過しただろう。一日は経過したことになる。決断は急いだ方がいい。
もとの世界に戻るか、それとも艦娘達と一緒にこれからも戦い続けるか……』

そんな、二者択一な選択。酷いにも程がある。
それでもこの少年は私のために色々と考えてくれている事は痛いほど分かった。
でも、もしもとの世界に戻れたとして私はこの世界に来る前までの生活を取り戻せるかどうか。答えはノーだ。
もう一年近く軍人として過ごしてきて染みついた感覚が、艦娘達と過ごしてきた今の私の人格が抜けきらずに生き急ぐ光景をやすやすと思い浮かべられる。
それほどに濃かった生活を送っていたのだ。
だから色々と考えはすれどもう答えは出ているんだ。
それを告げるために私は少年の方へと真っ直ぐに向いて、

『私のために色々と考えてくれてありがとう。でも、もう私は彼女達と一緒に過ごしていくって決めているんだ。
この先どんな辛い事が待ち受けているだろうとみんなが一緒ならきっと乗り越えて行けると思っている。私はそう信じている。だから……』
『わかった……。君の決意はとうの昔に固まっていた事はもう知っていたから今回の話はかなり無粋だったみたいだね』
『すみません……』
『謝らなくていいよ。もともとは僕が君を送り込んだのが原因なんだからね。それじゃこれで最後になるけどもう迷いはないんだね?』
『はい!』

それで少年は満足そうに笑みを浮かべながらも、

『それじゃこれを受け取りなよ』

そう言って少年は一つの丸い玉を投げてきた。
私はそれを受け取ると瞬く間にその玉は私の中へと吸い込まれていった。

『これは……』
『君があの世界で存在していられるだけの十分なエネルギーが込められている宝珠だよ。それでもう君はあの世界で消える事はないだろう。
あ、でもあの工作艦の作った薬はもう飲まない事をお勧めするよ。これ以上は僕も面倒は見切れないからね』
『わかりました』
『そして僕の加護がその宝珠にも込められているからよほどのことがない限りはなんとかなるだろう。それじゃこれで最後も最後、君達のこれからの航海に幸運がありますように……』

少年のその最後の贈る言葉とともに私の意識は薄れていくのであった。


 
 

 
後書き
そして提督は戻っていくのでした。
後戻りはもうできないけど後悔はないでしょうとも。




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0303話『帰還した後の説明』

 
前書き
更新します。 

 
「―――ん……」

私は目を覚ました。
結構寝ていたのか体を起こすのがだるいな……。
見回してみれば数人の子達が暗い部屋の中で仮眠を取っているようであった。
心配をかけたな、このまま寝かせておこうかと思ったんだけど誰かが部屋に入ってきた。

「提、督……?」
「司令官さん……?」
「テートク……?」

そこには榛名に金剛、電の姿があった。
その手には水が入っている桶が握られている事から私の身体を拭きにでも来たのかな……?
とにかく、

「三人とも……ただいま」
「「「ッ!」」」

そう言うと三人ともすぐに涙目になって一斉に、

「「「よかったぁ!」」」

と言いながら私に抱きついてきた。
そんな三人の頭を撫でてやりながらも、

「心配かけてごめんな。もうこんな事にならないようにするから……」
「本当ですよ……? もう、榛名はこんな思いは嫌です……」
「ワタシもデース!」
「もう消えないでください、司令官さん!」

三人が騒がしくしてくれたおかげで部屋でそれぞれ仮眠を取っていたみんなも起きだしてきて何度も私を見ては抱きついたり涙を流したりしていた。
遅れて大淀と明石も部屋にやってきて、

「提督! もうお体は大丈夫なのですか!?」
「ああ。詳しい説明をしたいからみんなを集めてもらってもいいか?」
「わかりました。すぐに皆さんを起こしてきますね」

大淀はそう言って部屋を急いで出て行った。

「大淀も泣いていたなぁ……」
「当然ですよ! もう二日間以上は提督は眠っていたんですから」
「そんなに経過していたのか……」
「はい。私も結構きつかったんですよ……」

そう言って明石も涙ぐんでしまっている。

「ごめんごめん」
「いえ、もとはと言えば私の作った薬が原因ですから提督は悪くありませんよ」
「それを言われるとどっちもどっちな感じだけどな。とにかくみんなが集まれる場所に移動しようか。榛名、少し体がだるいんで支えてもらってもいいか?」
「わかりました!」

榛名に支えられながらもみんなが集まれる講堂へと足を運んでいって、そこにはすでに他のみんなも集まっていた。
みんな一様にホッとしたような表情になっていた。
やっぱり心配かけたな……。
まずはみんなに安心してもらえるように、

「あー、みんな。まずはごめん。心配かけたよな」
「本当だよー」
「提督はいっつも吾輩達に心配をかけるのう」
「もう明日はバレンタインだって言うのにそっちに集中できなかったよ」
「ちゃんと説明してくれよな提督!」

みんながみんな、それぞれきつい言葉は言えど私の事を心配してくれていた事を感じられて私はやっぱりこの世界に戻ってこられてよかったと思う。
もとの世界に戻りたいっていう未練も多少はあるけどもうこっちの世界が私の居場所なんだ。

「それじゃどう説明したものか……」

どこから話そうかと考えている時だった。
私の肩に妖精さんが姿を現して、

【それではこの私がみなさんに映像をお見せしましょうか?】
「妖精さん……? 映像って、まさか……あの世界での映像を記録していたのか?」
【はい。私もあの世界に一緒に連れていかれていたみたいで提督がもしもとの世界に帰られるのではないかと冷や冷やしていましたから】
「そっか。それじゃお願いしてもいいか?」
【お任せください。明石さん、艤装と接続しますので映像機器の用意をお願いします】
「わっかりました!」

妖精さんにそう指示をされて明石はすぐに動き出して映像機器を用意してもらった。
そして艤装からケーブルを伸ばして映像機器に接続し、あの世界での映像が再生される。
みんなもその映像を食い入るように見ていた。
そこにはあの少年と私のやり取りが一切合切記録されていたのだ。

少年が正体を明かしたところを見て、

「本当の神様なの……?」
「創造主って言っているからそうなんだろうね……」
「あんなガキがか?」
「天龍さん、見た目で判断するのは迂闊かと……」

など色々と意見が交わされていた。
そして私がなぜこの世界に送り込まれたのかの説明に入ると、

「ワッツ!? そんな事でAdmiralはこの世界に送られたっていうの!?」
「でもアイオワ。こうして提督と会えたのですからよかったのではないですか?」
「しかし、Admiralや我らはこの少年の思う通りに動かされていたのだな……なにやら複雑だな」
「そうね、グラーフ」
「この世界出身の我らからしてみても酷い話だな。銃殺刑ものだぞ?」

と、海外艦のみんなが主に意見を交わしていた。
続けて明石の薬の問題が出てきてみんなが一斉に、

『やっぱり……』

と明石の方へと視線を向けていて明石は思わずのけ反っていたのは印象に残っていた。
まぁそれも少年の手で解決する話だったからよかったのだけど、そこからがみんなも真剣にならざるえない内容だった。
少年のもとの世界に戻れるという誘惑の言葉。
それに一瞬でも期待してしまっていた私も私だから何とも言えない。
みんなも、

「もう、もとのデータに戻るのは嫌かなぁ……」
「そうね。こうして本物の身体を得た後にまた戻されるのはたまったものじゃないからね」
「うんうん」

と、元に戻るのは否定的だったんだけど、次のこの世界の闇の話になってみんなは一斉に押し黙ってしまった。
それはそうだろう。
そんな先の話でもありえるかもしれない話なのだから。
それでも最終的に私はこの世界に残る選択をした時の映像を見て、

「テートクゥ!」
「司令官は私達が守りますから安心してください!」
「おうよ! この摩耶様がきっちりと守ってやんぜ!」
「みんなでこれからの事を考えていきましょうね!」

と、そんながそれで私に色々と言ってくれたので嬉しい気持ちで溢れる感じを味わいながらも、

「ありがとう、みんな。この先困難が待ち受けていると思うけどみんなで乗り切っていこうな」
『はい!』

そして最後に少年からこの世界に残れるための宝珠を受け取ったところで映像は終了した。

【これが私が記録した映像の全てです。みなさん、それぞれ思った事はあるでしょうがどうか提督の決断を否定しないでください。みなさんのためでもあったのですから】
「わかってますよ。妖精さんも私達の事を信じてください」
「提督さん、私も頑張るから手伝わせてね?」
「わかったよ、シンちゃん」

シンちゃんも私の手を握って来ながらそう言ってきてくれた。
こうして私達の結束力はさらに高まったのであった。
色々とあるだろうけどもう切り替えて行こうという話になった。
さぁ、明日はバレンタインデーだ。
色んな意味で覚悟しておかないとな。


 
 

 
後書き
説明回が終わりました。
後残り話数は2、3話くらいですかね?




それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0304話『バレンタイン模様』

 
前書き
更新します。 

 



昨日まで結構大変な事があったというのにもうみんなは通常状態に戻ってきている。
そこら辺はたくましいからぜひとも学ばせてもらわないとなと思っている。
そう、今日みんなが浮足立っているのバレンタインであるからだ。
友チョコでもいい、普段お世話になっている人に贈るのでもいい。
だけどかなり厚かましいとは思うけど私は結構もらえるのではないかと期待をしてしまっている。
執務室でそわそわしながらも仕事は怠らないでやっているのだけど、

「提督? あまり作業が進んでいませんよ?」
「あ、ああ。すまない大淀……」
「もう……。病気は治ったのですからしっかりしてくださいね? それとも提督が欲しいものはこれですか……?」

そんな事を言いつつ大淀が私に包みを手渡してくれた。
これってやっぱりそうだよな。

「大淀、ありがとう。君が初めてなんだよ」
「そうでしたか。それはとても、よかったです……加賀さんではないですけどやりました」
「よし。記念すべき一個目が貰えたのでやる気が出てきたぞ。頑張るとしようか」

そんな感じで午後になって粗方今日の任務も終了したのでゆったりとしていた。
そんな時に執務室に来訪者がやってくる。

「司令官? もうお仕事は終わったかしら?」
「神風? ああ、もう大丈夫だよ」
「そっかー。よかった。それじゃ、はい!」

ズン、と机の上に筒状のどでかいピンクの包みが乗せられる。

「えっと、これは……?」
「えへへ。少し頑張って作り過ぎちゃったの。食べてくれたらうれしいな……」
「そっか。ありがとな」
「うん!」

その神風のチョコを皮切りに次々とやってくるみんな。

「クマー! 熊さん方のチョコクマ。食べるクマ!」
「お、おう……」

おめかしした球磨から熊さん人形型のチョコを頂いた。
とても甘そうだというのは分かった。

「後で感想をちょうだいクマよ?」
「わかった。美味しく食べさせてもらうよ」
「んふふー!」

こんな球磨の可愛い姿を見せられたら食べないわけにはいかないじゃないか。
そしてその後に潮達がやってきた。

「あ、あの……提督。今回は控えめにクッキーにチョコをコーティングしてみました……。食べ過ぎて倒れないでくださいね?」
「心遣いありがとな、潮」
「はい……!」

またその後に隼鷹がどこで買ってきたのかチョコレートボンボンを持ってきた。

「提督よー……後で一緒にお酒でも交えて食べようぜー?」
「チョコレートボンボンにお酒を交えるって……さすがにチョコの意味がないんじゃないか?」
「どうせお酒だからいいんだよう! みんなの分はどうせ食べられないだろうから一緒に食べてやるって言ってんだから付き合いなって」
「まぁ、あそういうことなら……」
「約束だかんなー」

笑いながら隼鷹は出て行った。
そのすぐ後に秋津洲が入ってきて、

「提督ー! 二式大艇ちゃん型のチョコかも! 食べてほしいかも!」
「これはまた……凝ったものを作ったな秋津洲」
「うん。ほかのみんなに負けたくなかったから頑張ったかも!」

それで当分は記念に二式大艇型のチョコは飾られるかもしれないなと思った。

「パンパカパーン! 提督? 高雄と一緒にチョコを作ったから食べてくださいね?」
「その、提督……食べてくださいね?」

愛宕はいつもの調子で、高雄はそんな愛宕に押されて控えめに渡してきた。
こういう時に性格が出るもんだよな。

「提督さん。由良と夕張で作ったチョコです。絶対に食べてくださいね。ね?」
「そうですよー。後で感想聞かせてくださいね?」

由良と夕張のコンビが楽しそうにチョコを渡してきた。
うん、とても美味しそうだ。
夕張の方は昔に見たメロン型のアイスの器みたいなものに入ってるからなおの事美味しそうである。

その後にも海外艦や駆逐艦のみんなが色々と個性的なチョコを持ってきてくれたのでありがたく貰っておいた。
食べきるのに根気がいるぞ。
でも、私的には本命の人達からまだもらえていない事に少ししょんぼりしていた。
そう思っていると、

「ヘーイ! テートク! バレンタインのチョコ、受け取ってクダサーイ!」
「金剛か。ありがとな」
「イエス! テートクの為ならワタシ、頑張るヨー!」
「ところで、金剛。せっかく金剛が私に来てくれているのに悪いと思うんだけど少しいいか?」
「待ってくださいネ。おそらくハルナの関係だと思うデース」
「お見通しか……」
「ハイ。大丈夫デスヨ。ハルナならきっと渡してくれますカラ! テートクはドンと構えていてクダサーイ!」
「そうか。ありがとな金剛」
「それじゃテートク、お返しは待ってますよー!」

元気に出て行った金剛だけど気を使わせてしまったな。
それから時間は経って行って、もう十時過ぎである。
さすがにここまでくると怖くなってくるなぁ……。
だけど静かに扉が開いてそこから榛名とシンちゃんが姿を見せてきてくれた。

「その、提督……お待たせしました」
「提督さん、待たせてごめんなさい……」

二人は謝りながらもその手にはしっかりとチョコの袋が握られていた。
それだけで私は満たされる思いを感じながらも、

「大丈夫。安心してくれ、二人とも」
「はい。それじゃシンちゃん……?」
「うん。提督さん、チョコ受け取ってください! 榛名お姉ちゃんと一緒に頑張って作ったの!」
「はい! ちょっと時間が経ってしまいましたけど結構いい出来ですので必ず召し上がってください!」
「わかった。それじゃさっそく頂こうかな?」

それで私は榛名からもらったチョコを開封して一口食べる。

「うん。美味しいよ榛名」
「ありがとうございます提督……去年には渡せるなんて思っていませんでしたからもう思い残すことはありません!」
「提督さん、私のも食べてー!」
「分かったよ、シンちゃん」

それから私達は一緒にチョコを食べながらもお互いに換装を言って楽しんだのであった。
うん……やっぱり思う。この世界に残ってよかったって。


 
 

 
後書き
チョコレート風景でした。


さて、後はイベントまで残り二日間。
頑張っていきましょう。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

0305話『決戦前の弱気』

 
前書き
更新します。 

 





ついに今夜、決戦が始まるな。
鎮守府内もやる気と熱気が溢れているのかバレンタインが過ぎてからすでに臨戦態勢に入っている子も何人もいる。
みんな、悲願を成し遂げたいんだろうな。
そんな中、

「提督……榛名、今度こそは皆さんをお守りできるように頑張りますね。
演習でもう完全に力を取り戻しましたので必ずお役に立ちます!!」

榛名はそう言ってギュッと拳を握っている。
うん。頼もしいものだな。
だけどなぁー。

「やる気を出してくれているのはとてもありがたいんだけど、もう私が前線に出ることは無いから榛名と一緒に戦えないのが少しだけ寂しいものがあるな……」
「そうですね。今までどの作戦でも提督と榛名は一緒に戦ってきました……。
ですが! 安心してください! 提督が安心して勝利を望んでくだされば必ず私達は応えますから!」
「わかった。期待しているぞ榛名」
「はい。榛名は大丈夫です!」
「ははっ。久しぶりにその決め台詞を聞いたな」

そう言いながらも私は榛名の頭を撫でてあげる。
榛名もそれで嬉しそうにしているし、やっぱり分離できたのはいい効果だったんだろうな。
執務室でそんな話をしている時だった。
扉がノックされて私が「いいよ」と言うと瑞鶴と加賀さんが中に入ってきた。

「提督さん……少しいいかな?」
「提督、少しよろしいですか……?」
「また珍しい組み合わせだな。どうしたんだ……?」
「ええ。少し、この子に活を入れてもらいたいのよ」

加賀さんがそう言いながら瑞鶴の頭を撫でている。
瑞鶴もそんな加賀さんの言葉に改まっているのか無言でこっちを見てくる。

「……わかった。瑞鶴、何が不安か話してみなさい」
「うん……。今度の戦い、己惚れているわけじゃないけど私が艦隊の中心に添えられると思うんだ。だけどそう考えると前世の事を思い出してとっても不安に駆られてしまうんだ……」

それで瑞鶴は思い出しているのか苦い表情をしている。

「今度はちゃんと艦載機もある。練度も十分に上がっている……提督さんもこの日のために資材をたくさん準備してくれた。だからもう悩む必要はないのに、不思議だよね? 怖いんだ……私の判断ミスが命取りとなってまた過去のように囮部隊の二の前にしてしまうんじゃないかって……」
「そうか……」

瑞鶴は自身の不安を言葉にして改めてシュンッとなってしまっている。
これが普通の軍の人間だったらきっと『弱音を言っているんじゃない! 貴様はただ勝てばいいんだ!』とか言うんだろうけど、生憎私もまだ感性は一般人に毛が生えた程度のものだ。
だから瑞鶴の気持ちは痛いほど分かる。
誰だってもし負けるかもしれない戦いだったら臆してしまうものだしな。
だから私は瑞鶴に安心してもらえるように頭に手を置く。
そして、

「瑞鶴。君はもう一人じゃないんだ。それは分かるな?」
「うん……」
「過去の最後の時の仲間はもちろん、翔鶴や、そして加賀さんも一緒になって戦ってくれるだろう。そうですよね? 加賀さん」
「ええ。後輩のしりぬぐいをするのは先輩の役目。過去では沈んでしまって手を貸せなかったけど、今度は必ず役に立って見せるわ……きっと赤城さんや飛龍、蒼龍も同じ気持ちよ。今度は誰も欠けていないのよ。だから瑞鶴、あなた一人が背負い込むことは無いのよ」
「加賀さん……」
「それに、私と赤城さんの一航戦を引き継いだあなたがそんな腑抜けになっているのなら手柄は私達がもらうわ。ねぇ、五航戦?」
「むっ……こんな時に五航戦って呼び方やめてくださいよ!」
「五航戦は五航戦よ。私達からすればね……だから一人で背負い込むのではなくて肩を貸しなさい。持ってあげるから……」
「あっ……うん。お願いします、一航戦の先輩」
「よろしいわ。勝ちに行くわよ……?」
「うん!」

それで笑顔を浮かべあう加賀さんと瑞鶴。
なんだろうな……私と榛名もいるのに瑞加賀の光景を見せられてしまっている……。
放っとけば勝手に解決したんじゃないか……?

「提督……もう二人の世界に入っていますね」
「そうだな、榛名……」

私と榛名の呟きが耳に入ったのか二人はすぐに離れて咳ばらいをしながら、

「と、とにかく! 提督さん、決戦が始まったら私は少し気合を入れるから期待をしておいてね!」
「わかったよ。楽しみにしておく」
「うん! あー、でもやっぱり相談できて良かったかも。胸がすっきりした感じ」
「それは当然よ瑞鶴。なんせ私達の提督なのだから……」
「そうだね加賀さん!」
「おいおい……そこまでよいしょしなくてもいいんだぞ? 私だって榛名と一緒に戦えないんだったらかなり弱体化してしまっているんだから」
「そのようですね……そうなるとまた大本営から提督自身が出撃してこいとかけったいな命令をしてこなければよいのですけど……」
「それはもうさすがにないとは思いたいんだけどな……」

ありえそうで苦笑いを浮かべるしかできないでいた。

「安心してよ提督さん。提督さんの分もきっと瑞鶴達が戦うから!」
「そうですよ提督。この榛名にお任せください!」
「……それなら私も張り切るしかないわね」
「あはは。まぁもしそんな命令が来たらもう戦えない旨を伝えておくよ。柳葉大将にももう事情は話してあるから大丈夫だとは思うしな」
「それならよいのですが……」

それで落ちつく私達。
そして、

「例の神様な子供の言い分じゃないけど、提督さんにはきっと加護が付いているから今度の戦いも乗り越えられるよ。提督の力が足りなかったらみんなの分を合わせればいい事だしね!」
「たまにはいい事を言うわね……それじゃ期待しておきましょうか」
「任せてよ加賀さん!」
「みなさんで力を合わせましょうね!」

そんな感じでみんなで気合を入れ直して話は終了したのちに、

「後は、そうだな。不安を抱いているだろう子達に一声かけておく事でもしておこうか、榛名?」
「はい、提督。お供します」

それから榛名とともに声かけをしてったのであった。
今夜が決戦だな……頑張ろうか。


 
 

 
後書き
ついに今夜決戦の火蓋が切られますね。
まぁメンテが伸びて明日になるでしょうけど……。
とにかく提督の皆さんは艦これ一期最後の戦いも頑張りましょうね。





それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 

 

最終話『これからも続く艦娘達との日常』

 
前書き
更新します。 

 




とうとうレイテ沖海戦が始まった。
そして続々と集まってくる情報を見ながらも思う。

「みんな、やる気を出しているな……」
「はい、提督!」
「榛名も鉢巻きをしているしな」

多くの艦娘達が気合を入れるために鉢巻きを巻いている光景が廊下を歩いているとよく見られていた。
それほど気合の入れ具合がすごいのだろうと思う。

「まぁなにはともあれ、榛名……今度も勝ちに行くぞ」
「お任せください! 榛名も存分に頑張ります!」
「よし。それじゃまずは武蔵の改二でもしてくるとしようか」
「それでは武蔵さんをお呼びしますね」

榛名がそれで武蔵を呼ぶために電話をしている。
それからしばらくして武蔵が清霜とともに執務室に入ってきた。

「提督よ。とうとうこの日がやってきたな」
「そうだな。そういう清霜は武蔵の手袋や髪形をしているけど、やってもらったのか?」
「そうよ! 武蔵さんが私のためにやってくれたの! いいでしょいいでしょ!」

嬉しそうに笑顔を浮かべる清霜。
清霜も気合が入っているな。
それじゃさっそくだけど行くとしようか。

「それじゃ武蔵。作戦が始まってさっそくだけど第二次改装、いくとしようか」
「おうとも!」

それで改装室へと向かう私達。
そこにはいつも通りに明石が待っていて、

「あ、やっぱり来ましたね提督。限定作戦で改装設計図とかその他いろいろ手に入るから後に回せるのですけど提督ならすぐに来ると思っていました!」
「それならよかった」
「もう大淀から必要なものは預かっていますのでいつでもいけますよ!」
「わかった。それじゃ武蔵、行って来い!」
「任された!」
「武蔵さん、かっこよくなって帰ってきてね!」
「ああ。清霜もかっこよくなった私を見て腰を抜かすなよ?」

それで「あっはっは!」と笑いながらも武蔵は改装室へと入っていった。
それから準備が整ったので明石からいつでもいいですよー、と声がかかってきたので私は改装ボタンを押した。
いつも通りに改装室から光が漏れてきて、扉が開くとそこには雰囲気が大幅に変わった武蔵の姿があった。

「これが武蔵の新しい力……行ける!行けるぞ!!」
「ふああああああ!! 武蔵さん、かっこいい!!」

案の定、清霜が武蔵に飛びかかっていた。
私は明石から武蔵改二のスペック表を受け取って見てみたけど、やっぱり第5スロット解放の恩恵は凄まじいなという感想だった。
それからすぐに武蔵を改修MAXにして完璧な武蔵がここに出来上がった。

「ふふふ……力が漲ってくるぞ。これならもう怖いものはないな。なぁ清霜?」
「はい! 武蔵さんは最強です!」

いい感じに師弟感を醸し出しているな。
羨ましい限りだ。
そんな感じで廊下を歩いて講堂まで向かっている途中、瑞鶴と遭遇する。
その瑞鶴の姿はいつものツインテールではなく翔鶴みたいに下ろしていてまるで戦国武将みたいないで立ちであり、その、とてもカッコいいと素直に感じてしまった。
だけど、

「あ! 提督さん、見てみて! この日のために新調した服装なんだ! これでもう怖いものなんてないんだから!」
「そうか。いつも通りの瑞鶴で安心したよ」
「え? それってどういう意味?」
「深い意味はないから安心してくれ。それじゃみんなも待っているだろうから早く講堂へと向かおうか」
「うん!」

武蔵と清霜、瑞鶴とともに講堂へと到着した。
そこにはすでにほとんどの艦娘達が集まっていた。

「提督、おっそーい!」
「悪い悪い」

島風に抱きつかれながらも壇上へと私は上がった。
そして、

「さて……みんな。いよいよ決戦が始まった。深海棲艦もこぞって攻めてくるだろう。だけど私達もただ胡坐をかいていたわけじゃない。この日のために駆逐艦のみんなも練度は上げてきたし、他の艦種のみんなも練度の向上を図ってきた。資材も豊富に蓄えてきた。準備という準備はしてきた。だから後は勝ちに行く。それだけだ」

私がそう話すとみんなも気合が入ったのか真剣な表情になる。

「思えばこうしてみんなと普通に話し合えるというのもいいものだと思う。この世界に来るまではただのゲームのキャラクターだと思っていたみんなとこうして触れ合えるのは私はとても嬉しく思う。
だから、このささやかながらも楽しい日常を壊さんとする深海棲艦を駆逐するために、みんな、私に力を貸してくれ! そして必ずまた暁の水平線に勝利を刻もう!」

私がそう言いきった瞬間に湧き上がる艦娘達の歓声。
これもとてもいいものだと思いながらも、この世界に招いてくれたあの少年には感謝をしながらも、

「それじゃ各自、準備を終え次第、抜錨の準備に取り掛かってくれ!」
「「「了解!!」」」

私達はそれで今度のこの作戦も勝ちに行くことを決意した瞬間だった。
そして慌ただしくなる中で、榛名とシンちゃんと一緒になって、

「それじゃシンちゃんもみんなを信じてお留守番していような?」
「うん。きっとみんな勝てるよね?」
「大丈夫ですよ。提督も私達もこの日のために頑張ってきたんですから」
「そうだよね! わかった! 私、信じて待ってるね!」

榛名とシンちゃんとで笑いあう。
私の最大の幸福は榛名とシンちゃんと会えたことかもしれないな。
これだけでこの世界に来れただけでも幸運だと思う。




……そしてこれからも深海棲艦との戦いは続いていくだろう。
あの少年が言ったようにいつか終わりの時が来るかもしれない。
だけど、それでも私達は決してあきらめずに足掻いていき、このささやかな日常を守っていこう……。



そう信じて私達は突き進んでいく。
いつか辿り着く安息の場所を追い求めて……。
私達の航海の旅はまだまだ続いていくのだから……。


 
 

 
後書き
はい。
というわけで『戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。』はこれでお終いになります。
今まで読んでくださった読者の方々は応援ありがとうございました。
艦これ一期最後の作戦が始まって物語が終わるのは少し締めが悪いですけど、終わりどころを探っていったらちょうどよかったので。

とにかく、これにて短いようでしたが後書きを終了いたします。
読者のみなさん、こんな拙い我が作品を今まで読んでくださりありがとうございました!


そして提督の皆さんはこの限定作戦も頑張って最後まで駆け抜けましょう!


炎の剣製がお送りしました。