憑依先が朱菜ちゃんだった件


 

キャラ設定 改訂版(2019/05/03)

 
前書き
所有武器や技能(スキル)設定を一部変更しました。

究極技能(アルティメットスキル)】及び【特殊技能(ユニークスキル)】の名称及びルビを一部変更(2018/12/15)
(【究極技能(アルティメットスキル)】のルビは原作転スラ風に神様名に変更。※一部異なる) 

 
◎本作主人公


【名前】
大筒木(おおつつき)朱菜(しゅな)

【種族】
仙鬼(センキ)(神仙始祖級)

【属性】
中立 or 極悪[カルマ値:0 or -500(※5)]

【所属】
大鬼族(オーガ)の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大仙姫
大鬼族の里:巫女姫→人鬼族・鬼一族同盟:大老(たうろ)→鬼隠れの里:大老→テンペスト連邦:大老

【魔法】
『元素魔法』
『神聖魔法』
『回復魔法』
『幻覚魔法』
『妖術』
『気闘法』

究極技能(アルティメットスキル)
六道之祖(オオツツキ)
輪廻転生写輪眼、真・六道仙人モード、六道仙術[陰陽]、尾獣[守鶴、又旅、磯撫、孫悟空、穆王、犀犬、重明、牛鬼、九喇嘛]、尾獣チャクラモード、尾獣化、完成体須佐能乎、血継限界、血継淘汰、血継網羅
仙人之始祖(ジョカ)
不死、老化遅延、肉体再生、魂魄分裂、魂魄融合、魂魄活動、魂魄吸収、妖怪仙人化、半妖態、空間制御、スーパー宝貝(パオペエ)製作、スーパー宝貝(パオペエ)修復、スーパー宝貝(パオペエ)改造、宝貝(パオペエ)製作、宝貝(パオペエ)修復、宝貝(パオペエ)改造

特殊技能(ユニークスキル)
忍具開発者(シノビカジ)
忍具製作、忍具改造、忍具修復
解析者(サトルモノ)
思考加速、解析鑑定、詠唱破棄、法則操作
創作者(ウミダスモノ)
物質変換、融合、分離

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※1)、幻術、忍体術
『仙法』
自然エネルギー吸収、仙術チャクラ生成、万能感知、仙術
『神仙覇気』
『威厳』

【耐性】
『自然影響無効』
『状態異常無効』
『精神攻撃無効』
『聖魔攻撃耐性』

【所有武器】
スーパー宝貝(パオペエ)四宝剣(しほうけん)
スーパー宝貝(パオペエ)雷公鞭(らいこうべん)
スーパー宝貝(パオペエ)禁光銼(きんこうざ)(封印)
スーパー宝貝(パオペエ)三宝玉如意(さんぽうぎょくにょい)(封印)
スーパー宝貝(パオペエ)五火神焔扇(ごかしんえんせん)(封印)
宝貝(パオペエ)如意羽衣(にょいはごろも)
魔導具:鋼金暗器(こうごんあんき)
忍具:うちはの大団扇
傀儡人形:十機近松(じゅっきちかまつ)



◎原作主人公


【名前】
リムル=テンペスト

【種族】
スライム→粘体系妖怪仙人(上位神仙級)

【属性】
極善[カルマ値:400]

【所属】
人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
魔物を総べる者
人鬼族・鬼一族同盟:(オゥルォ)→鬼隠れの里:皇→テンペスト連邦:皇

【加護】
暴風の紋章

【魔法】
『元素魔法』

究極技能(アルティメットスキル)
千手之系譜(アシュラ)
血継限界(木遁)、????モード(未覚醒)、??仙術[?](未覚醒)、仙法強化、仙術適性向上、魔素増量

特殊技能(ユニークスキル)
大賢者(エイチアルモノ)
暴食者(グラトニー)
捕食者(クラウモノ)飢餓者(ウエルモノ)
変質者(カエルモノ)
妖怪仙人(ヨステビト)
不死、肉体超速再生(肉体再生+超速再生)、魂魄活動、妖怪仙人化、半妖態

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『仙法』
自然エネルギー吸収、仙術チャクラ生成、万能感知LV.2(※3)、仙術
『影移動』
『黒雷炎』
黒雷(黒稲妻+分子操作)+黒炎(炎化+炎熱操作+水操作)
『身体強化』
『多重結界』
各種耐性+範囲結界
『粘鋼糸』
『万能変化』
『分子操作』
『分身体』

共通技能(コモンスキル)
『威圧』
『思念伝達』
『身体装甲』
『毒霧吐息』
『麻痺吐息』

【耐性】
『痛覚無効』
『熱変動無効』
『電流耐性』
『物理攻撃耐性』
『麻痺耐性』

【所有武器】
スーパー宝貝(パオペエ)太極図(たいきょくず)
宝貝(パオペエ)打神鞭(だしんべん)
宝貝(パオペエ)天騒翼(てんそうよく)
鬼の忍刀:雷刀・牙



◎オリキャラ


【名前】
大筒木(おおつつき)紅麗(くれい)

【種族】
大鬼族(オーガ)妖鬼(オニ)帝鬼(オニ)

【属性】
中立[カルマ値:0]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:族長→鬼一族:族長
大鬼族の里:里長→人鬼族・鬼一族同盟:夏官長(かかんちょう)大司馬(だいしば)→鬼隠れの里:夏官長・大司馬→テンペスト連邦:夏官長・大司馬

【魔法】
『妖術』
『気闘法』

究極技能(アルティメットスキル)
団扇之系譜(インドラ)
血継限界(写輪眼(※4)LV.3)、???写輪眼(未覚醒)、??眼(未覚醒)

特殊技能(ユニークスキル)
大元帥(スベルモノ)
分割思考、思考加速、思念支配、予測演算、軍勢鼓舞

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『魔力感知』
『熱源感知』
『炎熱支配』
『紺炎』
黒炎+蒼炎
『魔炎化』
『覇気』
『剛力』

【耐性】
『痛覚無効』
『物理攻撃無効』
『状態異常無効』
『自然影響耐性』
『精神攻撃耐性』
『聖魔攻撃耐性』
『毒耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)莫邪の宝剣(ばくやのほうけん)
宝貝(パオペエ)鑚心釘(さんしんてい)
魔導具:木霊(こだま)
六道宝具:芭蕉扇(ばしょうせん)



◎オリキャラ


【名前】
大筒木(おおつつき)穂乃花(ほのか)

【種族】
大鬼族(オーガ)妖鬼(オニ)月鬼(オニ)

【属性】
善[カルマ値:150]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:族長の妻→鬼一族:族長の妻
大鬼族の里:大宮司→人鬼族・鬼一族同盟:春官長(しゅんかんちょう)大宗伯(だいそうはく)→鬼隠れの里:春官長・大宗伯→テンペスト連邦:春官長・大宗伯

【魔法】
『元素魔法』
『幻覚魔法』
『妖術』

究極技能(アルティメットスキル)
日向之系譜(ブラフマー)
血継限界(白眼)、??眼(未覚醒)、柔拳法、傀儡術強化

特殊技能(ユニークスキル)
大宮司(ミトオスモノ)
未来予知、思考加速、解析鑑定

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『威厳』

【耐性】
『状態異常無効』
『精神攻撃耐性』
『聖魔攻撃耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)太極符印(たいきょくふいん)
宝貝(パオペエ)霧露乾坤網(むろけんこんもう)
宝貝(パオペエ)五火七禽扇(ごかしちきんおう)
魔導具:影界玉(えいかいぎょく)



◎原作キャラ


【名前】
大筒木(おおつつき)紅丸(べにまる)

【種族】
大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)羅刹(ラセツ)

【属性】
中立[カルマ値:0]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:族長の若君→鬼一族:族長の若君
鬼の忍刀五人衆筆頭
人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)左近衛大将(さこんえたいしょう)→鬼隠れの里:夏官・左近衛大将→テンペスト連邦:夏官・左近衛大将

【魔法】
『妖術』
『気闘法』

究極技能(アルティメットスキル)
団扇之系譜(インドラ)
血継限界(写輪眼(※4)LV.3)、???写輪眼(未覚醒)、??眼(未覚醒)

特殊技能(ユニークスキル)
元帥(ヒキイルモノ)
思考加速、思念支配、予測演算、軍勢鼓舞

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『魔力感知』
『熱源感知』
『炎熱支配』
『紺炎』
黒炎+蒼炎
『魔炎化』
『覇気』
『剛力』

【耐性】
『痛覚無効』
『物理攻撃無効』
『状態異常無効』
『自然影響耐性』
『精神攻撃耐性』
『聖魔攻撃耐性』
『毒耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ):莫邪の宝剣
宝貝(パオペエ):鑚心釘
魔導具:帝釈廻天(たいしゃくかいてん)
鬼の忍刀:断刀・首斬り包丁



◎オリキャラ


【名前】
日向(ひゅうが)紫呉(しぐれ)

【種族】
大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)修羅(シュラ)

【属性】
中立[カルマ値:0]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:里長の右腕→鬼一族:族長の右腕
鬼の忍刀五人衆
人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)大僕(だいぼく)→鬼隠れの里:夏官・大僕→テンペスト連邦:夏官・大僕

【魔法】
気闘法

究極技能(アルティメットスキル)
日向之系譜(ブラフマー)
血継限界(白眼)、??眼(未覚醒)、柔拳法、傀儡術強化

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『天眼』
『覇気』

【耐性】
『状態異常無効』
『痛覚無効』
『自然影響無効』
『聖魔攻撃耐性』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)乾坤圏(けんこんけん)
宝貝(パオペエ)混天綾(こんてんりょう)
宝貝(パオペエ)火尖鎗(かせんそう)
魔導具:石棍(せきこん)
鬼の忍刀:爆刀・飛沫



◎原作キャラ


【名前】
日向(ひゅうが)紫苑(しおん)

【種族】
大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)修羅(シュラ)

【属性】
中立[カルマ値:0]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:若君の右腕→鬼一族:若君の右腕
鬼の忍刀五人衆
人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)小臣(しょうしん)→鬼隠れの里:夏官・小臣→テンペスト連邦:夏官・小臣

【魔法】
気闘法

究極技能(アルティメットスキル)
日向之系譜(ブラフマー)
血継限界(白眼)、??眼(未覚醒)、柔拳法、傀儡術強化

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『天眼』
『覇気』

【耐性】
『状態異常無効』
『痛覚無効』
『自然影響無効』
『聖魔攻撃耐性』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)呉鉤剣(ごこうけん)
魔導具:土星(どせい)()
魔導具:嘴王(くちばしおう)
鬼の忍刀:鈍刀・兜割



◎オリキャラ


【名前】
うちは蒼月(そうげつ)

【種族】
大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)忍鬼(オニ)

【属性】
中立[カルマ値:-50]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:里長の左腕→鬼一族:族長の左腕
鬼の忍刀五人衆
人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)隠密御庭番衆(おんみつおにわばんしゅう)御頭(おかしら)→鬼隠れの里:夏官・隠密御庭番衆御頭→テンペスト連邦:夏官・隠密御庭番衆御頭

【魔法】
『気闘法』

究極技能(アルティメットスキル)
団扇之系譜(インドラ)
血継限界(写輪眼(※4)LV.2)、???写輪眼(未覚醒)、??眼(未覚醒)

特殊技能(ユニークスキル)
隠密者(シノブモノ)
思考加速、超加速、一撃必殺、気配遮断

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『魔力感知』
『熱源感知』
『粘鋼糸』
『剛力』

【耐性】
『状態異常無効』
『痛覚無効』
『精神攻撃耐性』
『自然影響耐性』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)青雲剣(せいうんけん)
宝貝(パオペエ):鑚心釘
魔導具:風神(ふうじん)
魔導具:(おに)(つめ)
魔導具:式髪(しきがみ)
鬼の忍刀:双刀・ヒラメカレイ



◎原作キャラ


【名前】
うちは蒼影(そうえい)

【種族】
大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)忍鬼(オニ)

【属性】
中立[カルマ値:-50]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
大鬼族:若君の左腕→鬼一族:若君の左腕
鬼の忍刀五人衆
人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)隠密御庭番衆(おんみつおにわばんしゅう)次席→鬼隠れの里:夏官・隠密御庭番衆次席→テンペスト連邦:夏官・隠密御庭番衆次席

【魔法】
『気闘法』

究極技能(アルティメットスキル)
団扇之系譜(インドラ)
血継限界(写輪眼(※4)LV.2)、???写輪眼(未覚醒)、??眼(未覚醒)

特殊技能(ユニークスキル)
隠密者(シノブモノ)
思考加速、超加速、一撃必殺、気配遮断

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『魔力感知』
『熱源感知』
『粘鋼糸』
『剛力』

【耐性】
『状態異常無効』
『痛覚無効』
『精神攻撃耐性』
『自然影響耐性』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)万刃車(ばんじんしゃ)
宝貝(パオペエ):鑚心釘
魔導具:閻水(えんすい)
魔導具:神慮伸刀(しんりょしんとう)
魔導具:式紙(しきがみ)
鬼の忍刀:長刀・縫い針



◎原作キャラ


【名前】
千手(せんじゅ)白老(はくろう)

【種族】
大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)羅刹(ラセツ)

【属性】
中立[カルマ値:0]

【所属】
大鬼族の里→人鬼族(ホブゴブリン)・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
剣鬼
人鬼族・鬼一族同盟:太師(たいし)→鬼隠れの里:太師→テンペスト連邦:太師

【魔法】
『気闘法』

特殊技能(ユニークスキル)
武芸者(キワメルモノ)
天空眼、思考加速、超加速、未来予測、秘伝
千手扉間(ケンメイナルモノ)
空間感知、感知能力高補正、時空間忍術高補正

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『剛力』

【耐性】
『状態異常無効』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ)斬仙剣(ざんせんけん)
魔導具:氷魔閻(ひょうまえん)



◎原作キャラ


【名前】
奈良(なら)リグル

【種族】
子鬼族(ゴブリン)人鬼族(ホブゴブリン)大鬼将軍(オーガジェネラル)

【属性】
善~中立[カルマ値:100]

【所属】
子鬼族村→人鬼族町→人鬼族・鬼一族同盟→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
子鬼族:村長の息子→人鬼族:町長の息子→大鬼族(オーガ)大鬼王(オーガキング)の息子
人鬼族町:警備部隊隊長→人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)右近衛大将(うこんえたいしょう)→鬼隠れの里:夏官・右近衛大将→テンペスト連邦:夏官・右近衛大将

【魔法】
『妖術』
『気闘法』

特殊技能(ユニークスキル)
奈良之系譜(カゲホウシ)
思考加速、予測演算、軍略、軍勢鼓舞、秘伝忍術(影操作)

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『魔力感知』
『覇気』

【耐性】
『痛覚無効』
『物理攻撃無効』
『状態異常無効』
『自然影響耐性』
『精神攻撃耐性』
『聖魔攻撃耐性』
『毒耐性』

【所有武器】
宝貝(パオペエ):莫邪の宝剣
宝貝(パオペエ):鑚心釘
宝貝(パオペエ)万里起雲煙(ばんりきうんえん)
魔導具:磁双刀(じそうとう)弐型



◎原作キャラ


【名前】
奈良(なら)ゴブタ

【種族】
子鬼族(ゴブリン)人鬼族(ホブゴブリン)大鬼(オーガ)

【属性】
善~中立[カルマ値:100]

【所属】
子鬼族村→人鬼族町→人鬼族・鬼一族同盟→鬼隠れの里→ジュラ・テンペスト連邦国

【称号】
人鬼族・鬼一族同盟:夏官(かかん)右近衛府(うこんえふ)近衛兵→鬼隠れの里:夏官・右近衛府近衛兵→テンペスト連邦:夏官・右近衛府近衛兵

【魔法】
『元素魔法』
水氷大魔槍
『妖術』
『気闘法』

特殊技能(ユニークスキル)
奈良之系譜(カゲホウシ)
思考加速、予測演算、軍略、軍勢鼓舞、秘伝忍術(影操作)
見取者(マネルモノ)
技術摸倣、技術改良

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『魔力感知』
『覇気』

【耐性】
『痛覚無効』
『物理攻撃無効』
『状態異常無効』
『自然影響耐性』
『精神攻撃耐性』
『聖魔攻撃耐性』
『毒耐性』

【所有武器】
火尖鎗Ⅲ



◎原作キャラ


【名前】
秋道(あきみち)ゲルド

【種族】
豚頭将軍(オークジェネラル)猪人族(ハイオーク)猪人帝(ハイオークロード)

【属性】
善[カルマ値:200]

【所属】
オービック→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
猪人帝
オービック:豚頭帝(オークロード)副官→オービッグ:豚頭魔王(オークディザスター)副官→鬼隠れの里:夏官→テンペスト連邦:夏官

【魔法】
『回復療法』

特殊技能(ユニークスキル)
秋道之系譜(ハバタクモノ)
秘伝忍術(身体強化)
守護者(マモルモノ)
守護付与、代役、鉄壁
『美食者』
捕食、腐食、胃袋、受容、供給

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『賢者』
『魔力感知』
『多重結界』
『空間移動』
『思念操作』
『超嗅覚』
『外装同一化』

共通技能(コモンスキル)
『自己再生』
『毒麻痺腐食付与』
『威圧』

【耐性】
『痛覚無効』
『物理攻撃無効』
『状態異常無効』
『自然影響耐性』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】




◎原作キャラ


【名前】
山中(やまなか)ガビル

【種族】
蜥蜴人族(リザードマン)龍人族(ドラゴニュート)龍人王(ドラゴキング)

【属性】
善~中立[カルマ値:100]

【所属】
蜥蜴人族(リザードマン)の集落→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
龍戦士
蜥蜴人族(リザードマン)の集落:戦士団・戦士長→鬼隠れの里:冬官→テンペスト連邦:冬官

【魔法】
竜騎士化(ドラゴンボディ)
黒炎吐息(フレイムブレス)
黒雷吐息(サンダーブレス)

特殊技能(ユニークスキル)
山中之系譜(カラクルモノ)
万能感知、秘伝忍術(精神攻撃)
調子者(ミダスモノ)
不測効果、運命変更

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『天眼』
『多重結界』
『超嗅覚』

【耐性】
『状態異常耐性』
『自然影響耐性』
『物理精神攻撃耐性』

【所有武器】
水渦槍(ボルテクススピア)



◎原作キャラ


【名前】
山中(やまなか)蒼華(ソーカ)

【種族】
蜥蜴人族(リザードマン)龍人族(ドラゴニュート)龍忍族(ドラゴアサシン)

【属性】
善~中立[カルマ値:100]

【所属】
蜥蜴人族(リザードマン)の集落→鬼隠れの里→テンペスト連邦

【称号】
蜥蜴人族(リザードマン)の集落:首領親衛隊・親衛隊長→鬼隠れの里:夏官・隠密御庭番衆三席(次席補佐)→テンペスト連邦:夏官・隠密御庭番衆三席(次席補佐)

【魔法】
黒炎吐息(フレイムブレス)
黒雷吐息(サンダーブレス)

特殊技能(ユニークスキル)
山中之系譜(カラクルモノ)
万能感知、秘伝忍術(精神攻撃)

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※2)、幻術、忍体術
『天眼』
『多重結界』
『超嗅覚』

【耐性】
『状態異常耐性』
『自然影響耐性』
『物理精神攻撃耐性』



 
 

 
後書き
※1)医療忍術、結界忍術、封印術、秘伝忍術、時空間忍術含む
※2)医療忍術、結界忍術、封印術、時空間忍術含む
※3)通常の『万能感知』と『空間感知』(音波感知+熱源感知+魔力感知+超嗅覚)を統合し、感知範囲や感知精度を強化
※4)LV.1=一つ巴、LV.2=二つ巴、LV.3=三つ巴
※5)リムルを愚弄する様な行動をする者に対してのみ、中立から極悪へと変化する


【補足】
インドラ=帝釈天で帝釈天と対となるのが梵天、梵天=ブラフマーなので白眼持ちの【究極技能(アルティメットスキル)】ルビはブラフマーとなりました。




追記

封神演義外伝に登場した伏羲と女媧と同じ始祖である祝融(しゅくゆう)燧人(すいじん)が持っているという地球破壊宝貝とビッグバン発生宝貝に名前を付けました。

地球破壊宝貝=スーパー宝貝:三宝玉如意(さんぽうぎょくにょい)
ビッグバン発生宝貝=スーパー宝貝:五火神焔扇(ごかしんえんせん)

外伝に登場した時間移動宝貝であるスーパー宝貝:禁光銼(きんこうざ)も原作の封神演義では宝貝:五光石の様なショボイ宝貝なので、それっぽい名前を付けました。(笑) 

 

憑シュナ強さランク(17話現在)

 
前書き
魔物脅威度ランクをベースに人間なども加えてます。

登場キャラが増える毎に更新していく予定です。

豚頭魔王(オークロード)戦後なのでリムルの魔素量が増加してます。 

 
危険度ランク(等級)
種族名or称号:真名
戦闘スタイル(CS)/総合戦闘能力値(CC)/魔素総量(MP)/補足)

【特S:天災級(カタストロフ)(CC:15000以上/MP:2000000以上)】
星王竜:ヴェルダナーヴァ
(CS:対人~対界/CC:100000以上/MP:9000000以上)
暗黒皇帝:ギィ=クリムゾン
(CS:対人~対国/CC:50000以上/MP:4500000以上)
神仙始祖:大筒木朱菜
(CS:対人~対界/CC:45000以上/MP:4000000以上/武装&技量補正によりCC+12000以上/発展途上)
破壊暴君:ミリム=ナーヴァ
(CS:対人~対国/CC:45000以上/MP:4000000以上)
尾獣:群体
(CS:対人~対国/CC:38000以上/MP:3900000以上)
神仙始祖
(CS:対人~対国/CC:33000以上/MP:3500000以上)
白氷竜:ヴェルザード
(CS:対人~対国/CC:28000以上/MP:3500000以上)
灼熱竜:ヴェルグリンド
(CS:対人~対国/CC:28000以上/MP:3500000以上)
大地憤怒:ダグリュール
(CS:対人~対国/CC:25000以上/MP:3400000以上)
暴風竜:ヴェルドラ=テンペスト
(CS:対人~対国/CC:25000以上/MP:3300000以上)
大神仙:個体
(CS:対人~対国/CC:18000以上/MP:2450000以上)

【S:災禍級(ディザスター)(CC:5000以上/MP:200000以上)】
尾獣:個体
(CS:対軍~対国/CC:14000以上/MP:950000以上)
白金剣王:レオン=クロムウェル
(CS:対人/CC:12000以上/MP:900000以上)
上位神仙:リムル=テンペスト
(CS:対人~対国/CC:11200以上/MP:880000以上/武装&技量補正によりCC+2000以上/発展途上)
睡眠支配者:ディーノ
(CS:対人~対軍/CC:9500以上/MP:840000以上)
上位神仙:個体
(CS:対人~対国/CC:9001~12000/MP:700001~900000)
夜魔女王:ルミナス=ヴァレンタイン
(CS:対人~対国/CC:9000以上/MP:800000以上)
獅子王:カリオン
(CS:対人/CC:8200以上/MP:550000以上)
中位神仙:個体
(CS:対人~対国/CC:8001~9000/MP:600001~700000)
人形傀儡師:クレイマン
(CS:対人/CC:7700以上/MP:450000以上)
天空女王:フレイ
(CS:対人/CC:7200以上/MP:430000以上)
下位神仙:個体
(CS:対人~対国/CC:7000~8000/MP:450000~600000)
迷宮妖精:ラミリス
(CS:対人~対軍/CC:7000以上/MP:380000以上)
豚頭魔王:ゲルド
(CS:対人~対軍/CC:6800/MP:330000)
帝鬼:大筒木紅麗
(CS:対人~対軍/CC:6500/MP:300000/武装&技量補正によりCC+1300)
月鬼:大筒木穂乃花
(CS:対人/CC:5800/MP:270000/武装&技量補正によりCC+800)
帝鬼:個体
(CS:対人~対軍/CC:5200以上/MP:280000以上)
月鬼:個体
(CS:対人~対軍/CC:5000以上/MP:250000以上)

【特A:厄災級(カラミティ)(CC:3000以上/MP:100000以上)】
暴風大妖渦:カリュブディス
(CS:対軍~対国/CC:8500以上/MP:700000以上)
上位魔人:井沢静江
(CS:対人~対軍/CC:4900/MP:190000/全盛期)
羅刹:千手白老
(CS:対人/CC:4900/MP:190000/武装&技量補正によりCC+1400)
羅刹:大筒木紅丸
(CS:対人~対軍/CC:4300/MP:185000/武装&技量補正によりCC+800)
修羅:日向紫呉
(CS:対人/CC:4300/MP:180000/武装&技量補正によりCC+800)
忍鬼:うちは蒼月
(CS:対人~対軍/CC:4300/MP:180000/武装&技量補正によりCC+800)
修羅:日向紫苑
(CS:対人/CC:4000/MP:175000/武装&技量補正により+500)
忍鬼:うちは蒼影
(CS:対人~対軍/CC:4000/MP:175000/武装&技量補正によりCC+500)
羅刹:個体
(CS:対人~対軍/CC:3500以上/MP:170000以上)
修羅:個体
(CS:対人~対軍/CC:3500以上/MP:170000以上)
忍鬼:個体
(CS:対人~対軍/CC:3500以上/MP:170000以上)
豚頭族:群体
(CS:対軍/CC:3100/MP:132000/強化&集団戦闘補正によりCC+2900)
妖鬼:個体
(CS:対人~対軍/CC:3000以上/MP:110000以上)
悪鬼:個体
(CS:対人~対軍/CC:3000以上/MP:110000以上)

【A:災害級(ハザード)(CC:1000以上/MP:50000以上)】
炎上位精霊(イフリート):個体
(CS:対人~対軍/CC:2900/MP:99000)
水上位精霊(ウンディーネ):個体
(CS:対人~対軍/CC:2900/MP:99000)
風上位精霊(シルフィード):個体
(CS:対人~対軍/CC:2900/MP:99000)
土上位精霊(ウォーノーム):個体
(CS:対人~対軍/CC:2900/MP:99000)
猪人帝:秋道ゲルド
(CS:対人~対軍/CC:2800/MP:92000)
豚頭帝:ゲルド
(CS:対人~対軍/CC:2800/MP:90000)
猪人王:個体
(CS:対人~対軍/CC:2650/MP:90000)
龍人王:山中ガビル
(CS:対人/CC:2600/MP:86500)
猪人将軍:個体
(CS:対人/CC:2400以上/MP:80000以上)
龍忍族:山中蒼華
(CS:対人/CC:2200/MP:79000)
龍人将軍:個体
(CS:対人/CC:2200以上/MP:79000以上)
黒嵐星狼:ランガ
(CS:対人~対軍/CC:2100/MP:76500)
龍忍族:個体
(CS:対人/CC:2000位以上/MP:75000以上)
猪人英雄:個体
(CS:対人/CC:2000以上/MP:75000以上)
龍人英雄:個体
(CS:対人/CC:1950以上/MP:74000以上)
鬼人族:個体
(CS:対人~対軍/CC:1750以上/MP:70000以上)
黒嵐星狼:個体
(CS:対人~対軍/CC:1750以上/MP:70000以上)
龍人族:個体
(CS:対人/CC:1550以上/MP:65000以上)
猪人族:個体
(CS:対人/CC:1450以上/MP:60000以上)
大鬼王:リグルド
(CS:対人/CC:1400/MP:58000)
大鬼王
(CS:対人~対軍/CC:1350以上/MP:56000以上)
上位魔人(自称):ゲルミュッド
(CS:対人/CC:1300/MP:55000)
大鬼将軍:リグル
(CS:対人/CC:1250/MP:52500/武装&技量補正によりCC+350)
大鬼候:個体
(CS:対人/CC:1000以上/MP:50000以上)

【B:町滅(CC:500以上/MP:10000以上)
大鬼将軍:個体
(CS:対人/CC:900以上/MP:48000以上)
豚頭将軍:個体
(CS:対人/CC:880以上/MP:45000以上)
大鬼族:ゴブタ
(CS:対人/CC:850/MP:39000/武装&技量補正によりCC+100)
嵐牙狼族:個体
(CS:対人/CC:840以上/MP:38000以上)
大鬼族:個体
(CS:対人/CC:750以上/MP:35000以上)
牛頭族:個体
(CS:対人/CC:670以上/MP:31000以上)
馬頭族:個体
(CS:対人/CC:670以上/MP:31000以上)
蜥蜴人族:ガビル
(CS:対人/CC:500/MP:10000)

【C:村滅(CC:250以上/MP:3000以上)
蜥蜴人族:個体
(CS:対人/CC:480以上/MP:8000以上)
人族:騎士団長
(CS:対人/CC:400/MP:7500前後)
牙狼族:個体
(CS:対人/CC:250以上/MP:3000以上)

【D:人族を1対4で返り討ち(CC:30以上/MP:1000以上)
豚頭族:個体
(CS:対人/CC:200以上/MP:2000以上)
人族:騎士団員
(CS:対人/CC:150/MP:2100前後)
人鬼王:個体
(CS:対人/CC:130~150/MP:1400~2000)
人鬼候:個体
(CS:対人/CC:100~130/MP:1000~1600)
人鬼族:個体
(CS:対人/CC:90~100/MP:950~1500)
人族:一般兵士
(CS:対人/CC:30~50/MP:1050前後)

【E:戦闘系モンスター最弱(CC:1以上/MP:0以上)】
子鬼族:個体
(CS:対人/CC:2/MP:250)
兎人族:個体
(CS:対人/CC:1/MP:100)
人族:成人男性
(CS:対人/CC:5/MP:0~100前後)
 

 

第1話 改訂版(2018/04/30)

 
前書き
こんばんは、沙羅双樹です。

夏風邪を引いている間に思いついた作品を書いてみました。

現時点でストックは残り2話分。現在、第4話を鋭意執筆中です。 

 



【視点:???】



二次創作を嗜む者だったら、誰もが考えたことがある筈。自分の好きな作品に他作品のキャラの能力を持った転生系オリ主や憑依系キャラを登場させると言ったことを。

で、私も自分が大好きな作品――転生したらスライムだった件、通称:転スラに憑依系キャラを登場させる妄想をするのが大好きな人間だったりします。

例えば、登場人物の1人である大鬼族(オーガ)の若様――紅丸がRe:MONSTERに登場するオガ郎(又はオバ郎)の能力を持った憑依キャラだったら、とか。

同じく大鬼族(オーガ)の白老が刀語に登場する四季崎記紀の完成系変体刀の1本である斬刀『鈍』と宇練銀閣の技量を持った憑依キャラだったら、とか。

正直、色んな憑依系キャラの設定を考えて転スラに登場させる妄想を何度もしたことがありました。

で、私が考えた憑依系キャラの中で一番のお気に入りが、大鬼族(オーガ)の巫女姫である朱菜(しゅな)ちゃんを使った大筒木(おおつつき)朱菜ちゃんです。名前からどんな設定を組み込んだか分かると思いますが、一応説明させて貰います。

この朱菜ちゃんはNARUTOに登場する輪廻眼――正確には輪廻写輪眼と転生眼を融合させたオリジナル瞳術:輪廻転生写輪眼と六道仙術、血継限界全種、血継淘汰、血継網羅持ちで、十尾ではなく一尾から九尾までの9体の尾獣を宿した人柱力というチートキャラなんです。

ちなみに輪廻転生写輪眼の時の目の形状は輪廻写輪眼と変わりませんが、色は薄紫ではなく煌めきがかったワインレッド。輪廻転生写輪眼の能力のon/offが可能で、通常時の眼の色は赤紫という設定。

輪廻転生写輪眼の能力はNARUTOの作中に登場した輪廻写輪眼、転生眼、万華鏡写輪眼、白眼に該当する全ての瞳術を使用可能という、六道仙人どころか大筒木カグヤすら圧倒できるんじゃない?と言わんばかりのスペック。

その上、仙人繋がりということでフジリュー版封神演義に登場するスーパー宝貝(パオペエ)を含む全ての宝貝(パオペエ)を作り出せるスキル『仙人之始祖(ジョカ)』や忍具に該当するあらゆる武器を作り出せるスキル『忍具開発者(シノビカジ)』を組み込んだことで、二次小説好きの友人からバグキャラと言われた憑依系キャラだったりします。

仙人之始祖(ジョカ)』がどんなスキルかは先の説明で分かると思いますが、『忍具開発者(シノビカジ)』については分かり難いと思うので一応説明しておきます。

忍具に該当する武器とは、苦無や撒菱(まきびし)、鎖鎌、万力鎖などの一般的に知られている物から、NARUTOに登場する六道仙人の宝具や傀儡人形、起爆札、霧の忍刀7本といった特殊忍具だけでなく、烈火の炎に登場する火影忍軍の魔導具なども含まれるんです。

つまり、忍の登場する作品で忍が所持していれば忍具とは言い難い特殊武器でも忍具扱いとなり、作り出せるという訳です。宝貝(パオペエ)作れるだけでもチートなのに、チートの重ね掛け――正にバグですね。

転スラの人物記録風に現時点でのプロフィールとステータスを表記すると以下な感じになります。


【名前】
大筒木(おおつつき)朱菜(しゅな)

【種族】
仙鬼(センキ)(神仙始祖級)

【所属】
大鬼族(オーガ)の里

【称号】
大仙姫

【魔法】
『元素魔法』
『神聖魔法』
『回復魔法』
『幻覚魔法』
『妖術』
『気闘法』

究極技能(アルティメットスキル)
六道之祖(オオツツキ)
輪廻転生写輪眼、真・六道仙人モード、六道仙術[陰陽]、尾獣[守鶴、又旅、磯撫、孫悟空、穆王、犀犬、重明、牛鬼、九喇嘛]、尾獣チャクラモード、尾獣化、完成体須佐能乎、血継限界、血継淘汰、血継網羅
仙人之始祖(ジョカ)
不死、老化遅延、肉体再生、魂魄分裂、魂魄融合、魂魄活動、魂魄吸収、妖怪仙人化、半妖態、空間制御、スーパー宝貝(パオペエ)製作、スーパー宝貝(パオペエ)修復、スーパー宝貝(パオペエ)改造、宝貝(パオペエ)製作、宝貝(パオペエ)修復、宝貝(パオペエ)改造

特殊技能(ユニークスキル)
忍具開発者(シノビカジ)
忍具製作、忍具改造、忍具修復
解析者(サトルモノ)
思考加速、解析鑑定、詠唱破棄、法則操作
創作者(ウミダスモノ)
物質変換、融合、分離

特別技能(エクストラスキル)
『忍法』
魔素変換、チャクラ生成、忍術(※1)、幻術、忍体術
『仙法』
自然エネルギー吸収、仙術チャクラ生成、万能感知、仙術
『神仙覇気』
『威厳』

【耐性】
『自然影響無効』
『状態異常無効』
『精神攻撃無効』
『聖魔攻撃耐性』


……この設定を見て気付いた人もいると思いますが、念の為言っておきます。この朱菜ちゃんは原作の朱菜ちゃんと違って、大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)→……といった存在進化をした訳ではなく、初っ端から仙鬼(センキ)という種族なんです。

本来は大鬼族(オーガ)から生まれる筈のない、生まれながらに存在進化を果たした突然変異の超越者といった所でしょうか?その辺りは私自身、詳しく設定してた訳でも無いんですが……。

そのせいなのか、この世に生れ出る直前に世界の言葉(?)らしきものに名前を付けられ、お母様のお腹の中で大鬼族(オーガ)から仙鬼(センキ)へと存在進化を果たし、この世に生を受けてしまいました。

ちなみにこの仙鬼という種族、封神演義の仙人――正確には妖怪仙人の設定がベースとなっていて、種族等級というものもあったりします。

等級を上から順に説明すると神仙始祖級=伏羲(ふっき)女媧(ジョカ)神農(しんのう)燧人(すいじん)祝融(しゅくゆう)レベル。大神仙級=三大仙人、十二仙&十天君の筆頭レベル。上位神仙級=十二仙&十天君等の幹部仙人、三大仙人の直弟子レベル。中位神仙級=一般的な仙人や十二仙&十天君の直弟子レベル。下位神仙級=一般的な仙人の弟子レベルとなります。

当然、封神演義の妖怪仙人がベースなので半妖態設定も存在します。半妖態時の姿は戦闘形態の太極図を使用した伏羲(ふっき)の様な隈取の浮かんだ、角無しの朱菜ちゃん(妖鬼(オニ)ver)といった感じです。

そして、妖怪仙人なので人化の仙術設定もあります。これは人化できれば人魔交流編でも朱菜ちゃんをリムル様と絡ませられると思ったからです。

念の為言っておきますが、見た目が人間に変化しても身体能力等に極端な変化はないので足手纏いになることはありません。

封神演義で重要な設定といえば仙人骨ですが、仙人骨設定はオミットしました。理由は仙人骨無しでも宝貝(パオペエ)を使える様にしたかったからです。その結果、宝貝(パオペエ)の動力源が魔素かチャクラになりました。

あと、封神演義の仙人がベースなので、肉体が死滅しても魂魄が無事なら肉体再生が可能。老化速度の遅延については、肉体年齢が18になってから起こるというオリジナル設定だったりします。

こんな朱菜ちゃんなら豚頭帝(オークロード)率いる20万の豚頭族(オーク)の軍勢を余裕で返り討ちにできると思うでしょう。私もそう思って、キャラ設定を作りました。

けど、現実はそんなに甘くありません。戦略兵器的スペックを誇る朱菜ちゃんでも20万の豚頭族(オーク)の軍勢を返り討ちにできないんです。

いや、しようと思えばできますよ?本気で力を振るえば、100万単位の軍勢も全滅させられるでしょう。ただ、その場合周囲への被害が度外視になります。

つまり、大鬼族(同族)や仲間といった存在を気にしながら大軍と戦うとなると、私のスペックは高過ぎて逆に足枷になるという訳です。

正直、私1人(・・)が味方に被害を出さず一気に相手取れるのは100前後でしょう。というか、本気を出したら大鬼族(オーガ)の里どころか私を中心とした半径数十kmが荒野になりかねません。そんな訳で――――


「お父様、お母様、お兄様。里の皆を連れてお逃げ下さい。皆が逃げ切るまで豚頭族(オーク)の軍勢は私が足止めします」
「な!!?」
「何を言っているの、朱菜!?相手は数千に及ぶ軍勢なのよ!!?」
「そうだ!お前一人を残して逃げることなど――――」
「私一人の方が豚頭族(オーク)の足止めも、その後の逃走も容易です。このまま皆が残っていては大鬼族(オーガ)という種族そのものが滅びかねません」
「姫。我らが姫の造りし忍具や宝貝(パオペエ)を使えば豚頭族(オーク)の軍勢など退けられましょう」
「爺。確かに忍具や宝貝(パオペエ)を使えば豚頭族(オーク)を退けられるでしょう。ですが、敵の数は数千。例え上手く退けられても、多数の忍具と宝貝(パオペエ)が奪われることにもなるでしょう。
そして、生き残った豚頭族(オーク)は奪った忍具と宝貝(パオペエ)を使って再び攻めて来る筈。それを何度も繰り返されれば、いつかは全ての忍具と宝貝(パオペエ)豚頭族(オーク)の手に渡ってしまうことになります。
そんなことになれば、ジュラの大森林は豚頭族(オーク)によって蹂躙されてしまいます。豚頭族(オーク)の軍勢と戦うなら、私達だけでなく他種族とも手を取り合うべきです。
今は生き残っている全ての同胞と共に忍具と宝貝(パオペエ)を持って逃げ延びるのが上策。………お父様、大鬼族(オーガ)の長としてご決断を」
「ッ!………爺、長として命じる。生き残っている全ての者に武器庫に保管してある忍具と宝貝(パオペエ)を持ち出し、この里を捨てて封印の洞窟付近まで逃げ延びる旨を伝えよ!」
「あ、あなた!?」
「親父!!?本気か!?本気で朱菜を1人残して―――」
「黙れ!……息子よ、その先は口にするな。種族の長とは時として大を生かす為に小を切り捨てる決断をせねばならんのだ。私は大鬼族(オーガ)の里の長として――――」
「お父様。その先を口にする必要はありません。お父様の決断は正しく、またこれは私が自分から申し出たことなのですから。何も気に病む必要はありません」
「朱菜ッ……!」
「爺、皆。お父様やお母様、お兄様、里の他の皆のことをお願い。守って上げて」
「「「「御意!!」」」」


私は爺(後の白老(ハクロウ))や皆(後の紫苑(シオン)蒼影(ソウエイ)黒兵衛(クロベエ))にお父様達の事をお願いすると、瞬身の術を使い、生家でもある長の屋敷を後にした。

……さて、ここまでの会話等で勘の悪い方でも気付いていると思いますが、一応言っておきます。今まで言ってなかったんですが実は私、転スラの朱菜ちゃんに憑依転生しちゃった元日本人なんです。

しかも、原作朱菜ちゃんではなく、前世の私が考えたチートというかバグスペック朱菜ちゃんに憑依転生です。どうして朱菜ちゃんに憑依転生したのか不明なんですが、この世界に生まれてから朱菜ちゃんライフを堪能してはいます。

あっ、この転スラ世界での私の目標も言っておきますね。まず、リムル様の妻になることが一番の目標です。あと、私個人で原作崩壊できそうな所はしていこうと思っています。

その手始めが大鬼族(オーガ)の生存。原作では私とお兄様(後の紅丸)を含めて6人しか生き残れなかったけど、この世界では現時点で私を含めた原作組とお父様、お母様を合わせて263人の大鬼族(オーガ)が生き残っている。

豚頭族(オーク)との戦いで既に37人の大鬼族(オーガ)の民が犠牲になっているけど、私が足止めしている間に逃げてくれれば、リムル様の村に辿り着くまでの道中に何かあったとしても、最低でも200人強は逃げ延びれると思います。

そんな訳で皆が逃げ延びる為の時間稼ぎをする為にも、真面目に豚頭族(オーク)の軍勢に挑みたいと思います。


「……多重影分身の術」


周囲に被害を出さず私1人で相手取れる数が100前後なら、本体を含めた影分身1000体で挑めば10万の軍勢を相手取れることになりますよね。

豚頭族(オーク)の軍勢の総勢が20万。現時点で大鬼族(オーガ)の里に襲撃を仕掛けているのは数千。後詰めの部隊がいたとしても、流石に10万以上の部隊がいるということは無いでしょうから、逃走も余裕でできるでしょう。

というか、既にお兄様の服に飛雷神の術のマーキングをしているので、お兄様達が遠くに逃げてくれればくれるだけ、私の安全が確保されるんです。

……それにしても、影分身を使うといつも思うんですが、デート・ア・ライブの時崎狂三ちゃんになった気分になりますね。周囲には大鬼族(オーガ)の民もいませんし、狂三ちゃんっぽいことを言ってみましょうか。


「さぁ、私達。これから豚頭族(オーク)との楽しい闘争(デート)を始めましょう」


………自分で言ってなんだけど、朱菜ちゃんには似合わない台詞ですね。あと、この台詞はどっちかというと五河琴里ちゃんっぽいでしょうか?

…………あっ!神威空間に保管してあるスーパー宝貝(パオペエ)と六道宝具、霧ならぬ鬼の忍刀をお父様達に渡すのを忘れていました。……まぁ、再会した時に渡せばいいですよね?


 
 

 
後書き
補足説明

本作中内の朱菜ちゃんは体内魔素を身体エネルギーと精神エネルギーに分解変換し、再合成することでチャクラを生成しています。仙術チャクラを生成の設定はNARUTOと同一です。

ちなみにチャクラを使った忍法・仙法は魔法不能領域(アンチマジックエリア)の影響を受けない上、チャクラを動力源にした場合の宝貝(パオペエ)攻撃も無効化できない設定だったりします。

あと、四方印封魔結界(プリズンフィールド)も仙鬼という種族特性が仙人7:妖魔3の割合なので、弱体化比率も3割だったりします。

ぶっちゃけ、魔王覚醒編で異世界人3人組&ファルムス王国を余裕で返り討ちにできるレベルだったりします。

以上、第1話における本編での説明不足分の補足でした!! 

 

第2話 改訂版(2019/04/30)

 
前書き
こんにちは、沙羅双樹です。

本来、原作では死亡している紅丸父母が本作品では生存しているので、その容姿について先に語っておこうと思います。

紅丸父の容姿はぶっちゃけ赤髪にした新撰組異聞PEACE MAKERの土方歳三。紅丸母はうたわれるもの偽りの仮面&二人の白皇のヤマトの大宮司、ホノカ。

あと、他に登場予定のオリキャラである蒼影父&紫苑父は蒼影父が蒼髪にした新撰組異聞PEACE MAKERの山崎烝、紫苑父が紫髪にした新撰組異聞PEACE MAKERの原田左之助です。

最初は紅丸父を薄桜鬼に登場する土方歳三、蒼影父を薄桜鬼に登場する斎藤一、紫苑父を薄桜鬼に登場する永倉新八にしようと思ったのですが、元となっているのが乙女ゲーということもあって、分からない人もいるかもと思い、比較的に分かり易い新撰組異聞PEACE MAKERのキャラにしました。(笑)

ちなみに私は薄桜鬼をTV版とOVA、劇場版(DVD)しか見たことが無くて、ゲームは一切やったことがありません。(笑)
 

 



【視点:赤髪の若】



里から逃げ延びて早8日。俺達、大鬼族(オーガ)の民は封印の洞窟近くの森で武装した人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)の集団と鉢合わせ、戦うこととなった。

どうして戦うことになったかというと、武装した人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)を怨敵である魔人の手先と判断したからだ。

本来、封印の洞窟付近には暴風竜の魔素によって護られている小鬼族(ゴブリン)などの下位種族の魔物しかいないのだ。人鬼族(ホブゴブリン)が存在するなど何者かによって存在進化させられたと考えるのが自然といえる。

しかも、その人鬼族(ホブゴブリン)が他種族の嵐牙狼族(テンペストウルフ)と共存しているなど、より上位の存在によって統率されているとしか考えられない。

その上、ここに辿り着くまでの間に(かむなぎ)のまとめ役である大宮司を務める御袋が魔人級の妖気(オーラ)を封印の洞窟の方角から感じ取っていた。

そして、豚頭族(オーク)共に襲撃される少し前に里に現れた魔人が「こんな里、滅んじまえ!!」という悪態を吐きながら帰って行ったこともあって、人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)の集団を襲撃してきた豚頭族(オーク)共と同じ魔人の手先であると考えた訳だ。

……他にも豚頭族(オーク)によって37人もの同胞を殺されたことや、里の皆に慕われていた朱菜だけを置いて逃げ出した不甲斐なさから殺気立っていて、感情の赴くまま力を振るってしまった感があることは否定しない。

それでも人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)共を殺さない様に配慮はした。この二種族から実害を被った訳でも無い上、魔人の情報を吐かせる必要があったからだ。

殆どの人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)が峰打ちによる一撃で気絶する中、我ら大鬼族(オーガ)と切り結び抵抗している人鬼族(ホブゴブリン)は残り2名。嵐牙狼族(テンペストウルフ)も残っているのは族長と思しき個体のみ。


「その2名の人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)は必ず生け捕りにしろ!強き者ほど多くの情報を持っているものだ!!」


親父の指示により俺を含む戦い慣れた大鬼族(オーガ)の戦士が、人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)を取り囲み、捕縛する為に掛け出した。

しかしその時、森の奥から何か異様な気配が近付いて来ていることに全員が気付き、駆け出した足を止めた。魔なる者が必ず放つ妖気(オーラ)を一切感じない。されど、人間とは思えぬ気配。

その気配の存在は爺が相手をしていた人鬼族(ホブゴブリン)の胸を斬り裂いた瞬間、姿を現した。



【視点:朱菜】



どうも、大筒木朱菜です。私は現在、迷彩隠れの術を使った状態で木の上からお兄様達の様子を見ていたりします。

実は8日前の豚頭族(オーク)の軍勢による里の襲撃なんですが、私が出張ったら1日半ほどで軍勢が撤退してしまったんです。

1日目は螺旋丸とか、千鳥とか、火遁・火龍炎弾とか、水遁・水鮫弾とか、風遁・真空連波とか色々な術で狩っても狩っても豚頭族(オーク)は何処からともなく湧いていたんです。

なのに、2日目の戦いで私が仙法風遁・螺旋丸とか、仙法磁遁・螺旋丸とか、仙法灼遁・螺旋丸とか、仙法炎遁・螺旋丸とか投げられる螺旋丸シリーズを使ったり、流砂瀑流からの砂瀑大葬への対軍滅殺コンボを使っていたら、豚頭族(オーク)の軍勢は半日ほどで撤退してしまったんです。

その後、2日ほど里に居続けたんですが、豚頭族(オーク)の軍勢が増援を引き連れて再びやって来る、といったことも起きませんでした。

私の予想では豚頭族(オーク)の本隊がやって来ると思っていたんです。そして、私が仙法・螺旋手裏剣シリーズで迎撃。5日くらい掛けて軍勢の数を5万以下まで減らす予定だったんです。

なのに、豚頭族(オーク)達は怖気付いて逃げ出すだけでは飽き足らず、再襲撃すらしてきません。全く、情けないにも程があります!ガッカリです!!

……取り敢えず、そんな訳で豚頭族(オーク)の襲撃から5日目に私は里を出て、お父様達の後を追った訳です。

そして、つい数分前に輪廻転生写輪眼にもある白眼の基本能力である千里眼でお父様達を捕捉し、丁度リムル様が出て来そうだったので迷彩隠れの術を使って木の上からお父様達の遣り取りを見守ることにした訳です。

と、こんな説明をしている間にリムル様がお父様とお兄様、爺を除いた大鬼族(オーガ)の戦士達を降していってます。

あっ、爺が斬仙剣でリムル様の右腕を斬り飛ばしました。けど、リムル様は平然としています。まぁ、元々はスライムですから、痛みで発狂することもないですよね。

リムル様が斬り飛ばされた右腕を回収・吸収して右腕を再生させると、お父様とお兄様は顔を蒼くさせながら同時に鬼王の妖炎(オーガフレイム)を放ちます。

確か、この時点でのリムル様はイフリートを捕食したことで『熱攻撃無効』の様な特別技能(エクストラスキル)を獲得しているから、炎熱攻撃や氷結攻撃が効かないんですよね。


「やった……、のか?」


はい!お兄様の口からリムル様生存フラグのお言葉を頂きました。ありがとうございます!!


「悪いな。俺には熱変動攻撃は効かないんだ。あと、本当の炎を見せてやろう」


キャー!炎の中で余裕顔のリムル様!!凛々しくて格好良過ぎです。余りの格好良さに気絶しそうになりました。生リムル様、ヤバし!ですね。



【視点:リムル】



「本当の炎を見せてやろう」


俺は目の前で刀っぽいのを構えている老人とビームサーベルっぽいのを構えている中年と青年の大鬼族(オーガ)に対してそう告げると、腕を真上に挙げて特別技能(エクストラスキル)『黒炎』を発動させた。


「こ、これは!?」
「黒炎…、だと?」
「まさか、姫様以外に天照を使える者がいようとは……」


ん?今、爺さん大鬼族(オーガ)が口にしたアマテラスって何だ?天照大神じゃないよな?この『黒炎』と同じ炎系スキルの名称か?

取り敢えず、大鬼族(オーガ)達は黒炎系スキルを知ってるみたいで、ビビってくれてるみたいだな。このまま戦意喪失してくれたら助かるんだが……。


「あ、あの炎は妖術ではありません。周囲の魔素を利用せず、純粋にあの者の力のみで形作られています!」


おっ!後衛の巫女装束を纏った白髪の大鬼族(オーガ)のお姉さんが大鬼族(オーガ)側の戦意を更に喪失させる様な説明をしてくれたぞ。いいぞ、もっとやれ!!


「長、御方様と若を連れてお逃げ下され。ここはワシが―――」
「黙れ、爺。散って逝った同胞の無念を、長である我が晴らさず逃げるなどできるものか」
「親父の言う通りだ、爺。俺も朱菜の無念を晴らさず生き恥を晒すくらいなら、最後まで戦ってこの場で果てた方がまだマシだ」


ヤバッ!脅しが完全に裏目に出た。ってか、朱菜って誰?人の名前っぽいけど、もしかしてあの青年の恋人だったりするのか?リア充か?リア充なのか!?……いや、これまでの会話から死に別れてるっぽいし、リア充じゃないか。


「長、若……。それではワシもお供しましょうぞ!!」


あぁ、爺さん大鬼族(オーガ)も抜刀術の構えを取り始めた。もうこれは殺っちゃうしかないのか?ってか、さっきから何気に中年と青年の持ってるビームサーベルが気になるんだけど?

いや、ビームサーベルっていうよりライトセイバーか?ジェダ○の騎士?御二人はジェダ○の騎士ですか?この後、フォースとか使って来るの?

俺が現実逃避気味にそんなことを考えていると、いきなり『黒炎』の真上に何者かが現れた。


「餓鬼道・封術吸印」


『黒炎』のせいで姿は見えないが何者かがそう告げると、『黒炎』は掃除機に吸われる埃の様に何かに吸収され、あっという間に消えてしまった。

『黒炎』を吸収した者は当然のことながらそのまま落下し、俺の目の前に降り立つ訳なんだが、俺はその姿に思わず見惚れてしまった。

何故なら巫女装束に羽織と羽衣を纏った桃髪の美少女が危な気も無く、音すら立てずに目の前に降り立ったんだ。その姿が神秘的に見えて目を奪われない訳が無い。

しかも、俺に向けられた瞳―――波紋模様に巴紋が浮かんだ万華鏡の様に煌めきがかったワインレッドの眼を見た瞬間、今の身体には無い筈の心臓を鷲掴みにされた様な感覚に陥った。


「「しゅ、朱菜!?」」


俺と桃髪美少女巫女が見つめ合っていると、玉砕覚悟で俺に向かって来ようとしていた中年と青年が同時に声を上げた。

朱菜?朱菜って、あの青年が言ってた名前だよな?ってことは、この桃髪美少女巫女があの青年の彼女ってことか?クソッ!やっぱりリア充かよ!!

俺がそんなことを考えていると、桃髪美少女巫女は俺に微笑み掛け、一瞬の内に姿を消した。そして、気付いた時には中年と青年の背後を取っていて、その頭に手を添えると―――


「何をやってるんですか、お父様!お兄様!!」
「「へぶらッ!!」」
「「「「「「「「「「えぇーーーーーーーー!!?」」」」」」」」」」


そのまま地面へと中年と青年の頭を叩き付けた。桃髪美少女巫女の予想外の行動にその場にいた大鬼族(オーガ)達だけでなく、俺とリグル、ゴブタも驚愕の声を上げる。

っていうか、あの細腕のどこにあんな力があるんだ。顔を叩きつけられた地面が陥没して、地割れを起こしてるぞ。中年と青年、死んでないよな?

っていうか、今お父様とお兄様って言った?ってことは、あの朱菜って子は中年の娘で青年の妹?取り敢えず、青年がリア充でないことは喜ばしく思う。

……まぁ、何はともあれ。これが俺――リムル=テンペストと後に九天魔王の1人に名を連ねる大筒木朱菜との出会いだった訳だ。



 
 

 
後書き
第1話の本文でも説明されてますが、本作品での宝貝(パオペエ)は動力源を魔素orチャクラとしているので、紅丸(仮)達も使用可能です。

ちなみに今回登場した宝貝(パオペエ)は以下のもの。

紅丸(仮)父=莫邪の宝剣Ⅱ
紅丸(仮)=莫邪の宝剣
白老(仮)=斬仙剣


あと、本作品では魔素及びチャクラを利用した術、スキルは餓鬼道・封術吸印及び冥遁・吸穴孔で吸収される設定です。

以上、本編内で説明不足であった補足でした。
(まぁ、斬仙剣に関しては名称が出てるし、莫邪の宝剣についても予想できていたとは思いますが……(笑)) 

 

第3話 改訂版(2019/04/30)

 
前書き
こんにちは、沙羅双樹です。

本作の朱菜はNARUTOの六道仙人と封神演義(フジリュー版)の妖怪仙人をベースとした存在です。

それに伴い、本作での仙人の定義も封神演義(フジリュー版)をベースにすることになりました。

つまり、仙人=肉体が滅んでも、魂魄が健在なら再生する不老者ということです。

そんな訳で、本作ではルべリオスに所属する七曜の老師も設定が原作とは異なるか、原作通りの仙人(偽)という存在になる可能性があるので、その点をご了承下さい。 

 



【視点:リムル】



中年&青年大鬼族(オーガ)の頭を地面に叩き付けた朱菜と呼ばれる桃髪美少女巫女(?)は、地面に頭が減り込んだままの2人を無視して、俺の方にゆっくりと近付いて来た。

もしかして、この娘とも戦うことになるのか?と、少しばかり身構えていると朱菜は急に立ち止まり、俺に向かって頭を下げてきた。


「この度はお父様とお兄様、同胞の皆がご迷惑をお掛けしました。深く謝罪申し上げます」
「「「!?」」」
「「「「「姫!!?」」」」」


攻撃を仕掛けてきた側の関係者に謝罪されるとは思っていなかった俺とリグル、ゴブタは絶句し、中年&青年大鬼族(オーガ)が地面に叩き付けられたことでフリーズしていた他の大鬼族(オーガ)達も朱菜の行動が予想外だった様で驚きの声を上げた。


「姫!何故、その様な魔人に頭を垂れるのです!?その魔人は里を蹂躙した――――」


朱菜の俺に対する行動に物申す老大鬼族(オーガ)。それに対して朱菜は―――


「黙りなさい、爺」


波紋模様に巴紋が浮かんだ万華鏡の様に煌めくワインレッドの眼を向けながらそう告げ、老大鬼族(オーガ)を黙らせた。っていうか、さっき他の大鬼族(オーガ)も言ってたけど、この朱菜って娘は大鬼族(オーガ)の姫なの?

俺、さっきから心の内でバリバリ呼び捨てにしてんだけど、実際に名前を口にする時は様付けで呼んだ方がいいのか?


「身内が勘違いで豚頭族(オーク)とは無関係の方々を攻撃したのです。謝罪するのは当然でしょう」
「勘違い、だと?」
「「「「「若!!」」」」」


おおっ!生きていたか、赤髪青年!!この場にいる大鬼族(オーガ)達も赤髪青年の復活を喜んでいる。っていうか、下手したら死んだんじゃね?とか俺は思ってたんだけど、こいつらも赤髪青年のことを死んだと思ってたのか?喜び様が半端無い。

そんな周囲の反応を無視して、赤髪青年は朱菜との会話を続ける。結構シリアスな雰囲気を出そうとしてるんだけど、地面に叩き付けられた拍子に強打したのか、2本の角の間に瘤が出来ていてシリアス度が半減だ。


「御袋が感知した以上、そいつが魔人級の力を持った生物であることに間違いはない!魔人級の生物である以上、俺達の里を豚頭族(オーク)に襲わせた魔人と繋がりが―――」
「魔人級の力を持つ者全てが魔人ゲルミュッドと繋がっていると申されるのですか?ならば、魔人以上の力を持つとされている私はどうなるのですか?
私は魔人ゲルミュッドの配下ですか?それとも魔人ゲルミュッドに里を襲う指示を出した首魁?どちらにせよ、私は里と同胞を滅ぼそうとした裏切り者になりますね」
「――――ッ!!だ、誰もそんなことは―――」
「言っています。お兄様の言い分ではそういうことになるのです」
「だ、だが、そいつはあの魔人と同じ仮面を―――」
「この方と魔人ゲルミュッドの仮面は形状も含めて全くの別物です。魔人ゲルミュッドの仮面は鷲鼻の付いた布製のただの仮面でした。対してこの方の仮面は抗魔の力が付与された魔鋼製です。
それに私は輪廻転生写輪眼で豚頭族(オーク)を引き連れて来たと思しき魔人を確認しましたが、その者がしていた仮面は怒った道化師を模した物であった上、抗魔の力は付与されておりませんでした」


おいおい。妹に言い負かされてるぞ、お兄さん。朱菜が逆論破されるのも困るが、このまま兄貴としての威厳も見せずに終了されるのも何か悲しい。

俺がそんなことを考えていると、今度は赤髪中年が地面から頭を引っこ抜いて立ち上がり、口を開いた。


「……その者が里を襲った魔人と無関係というのは本当か、朱菜?」
「親父!」
「……お父様。私達の会話を聞いておられたのですか?」
「ああ、息子が起き上がった時には意識を取り戻していたのだが、地面に叩き付けられた衝撃で体が中々動かせずにいた。私も歳だということだ。そんなことより―――」
「この方が魔人ゲルミュッド及び豚頭族(オーク)を引き連れた魔人と無関係なのは事実です。まだ疑っておられるなら、自分の眼でこの方の持っている仮面を確認されれば宜しいかと」
「ふむ。では、仮面を改める前に1つ問わせて貰おう。お前は何者なのだ?多種多様な魔物の技能(スキル)を体得している種族など聞いたことが無い」


警戒しつつも先程までの敵意を向けずにそう尋ねてくる赤髪中年。それに対して俺は包み隠すことなく真実のみを口にする。


「俺はスライムだよ。まぁ、ただのスライムじゃなくて、この姫さんと同じ名有り(ネームド)のスライムだけどな。ちなみに名前はリムルだ」
「俺達を馬鹿にしているのか?貴様がスライムなどと信じられる訳―――」


俺が正直に答えたにも拘らず、赤髪青年が信じようとしなかったので、俺は嵐牙狼族(テンペストウルフ)のランガに乗ると人間の擬態を解き、通常形態であるスライムへと戻った。


「ま、真にスライムなのだな」
「この状況で自分の種族を偽って何の利点(メリット)がある?あと、俺の持ってる仮面はある女性の形見で、手元に戻って来たのも今朝方だ」


ある意味予想通りだけど、この場にいた殆どの大鬼族(オーガ)が俺の基本形態を見て驚いている。赤髪青年など顎が外れんばかり口を開き、呆ける始末だ。

そんな中、1人だけ俺の基本形態を見て驚いていない者がいた。それは俺と大鬼族(オーガ)達の中間地点に立っている朱菜だ。どうやら彼女は普通の大鬼族(オーガ)ではない様だ。

……取り敢えず、身の潔白を証明する為にも朱菜の言っていた様に仮面を改めて貰うことにしよう。


「お前らの里を豚頭族(オーク)に襲わせた魔人のと同種の仮面か改めてくれ。あっ、形見だから汚すのは勘弁な」


俺がそう言いながら仮面を差し出すと、一番近くにいた中立の立場をとっている朱菜が受け取った。


「申し訳ありませんが、少しばかりお預かりさせて頂きます」
「うむ」


……自分で言っといてなんだが、「うむ」って何様だ?普通に考えて他種族の姫に対する態度じゃないよな?けど、そんな俺に対して朱菜はツッコミや嫌悪といった反応も見せず、受け取った仮面を大鬼族(オーガ)達の所へと持って行く。

リグルド達にやった校長ネタでもそうだったけど、して欲しい時にツッコミを貰えないっていうのは何か悲しいな。と、こんなことを考えている内に仮面が大鬼族(オーガ)達の手に渡った。


「言われてみれば、里に現れた魔人のとは異なる様な。形状も道化師には全く見えぬ……」
「朱菜の言う通り、この仮面には抗魔の力が備わっている様です」
「では、あの魔人の仮面とは別物になりますな。あの魔人は妖気(オーラ)を隠してはおりませんでした」
「ということは……」


仮面の改めを終えた赤髪中年&赤髪青年、白髪巫女お姉さん、居合爺さん、他多数の大鬼族(オーガ)が一斉に俺に視線を向けて来る。

そんな中、朱菜は俺の仮面を赤髪中年の手から抜き取ると、俺のいる所までやって来て仮面を差し出してきた。


「リムル様、改めて謝罪させて頂きます。お父様やお兄様を含め里の者が大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「こちらの勘違いで攻撃を仕掛けてしまい、申し訳ない。虫のいい話と思うかもしれぬが、どうか謝罪を受け入れてくれぬか?」


立ったまま深々と頭を下げる朱菜と片膝立ちで首を垂れる赤髪中年。その後ろには同じ様に他の大鬼族(オーガ)達が頭を下げている。そんな集団で謝罪なんてされたら、俺調子に乗っちゃうじゃん。


「うむ、苦しゅうない。ところで、そっちの名有りの御嬢さん――朱菜さんだっけ?朱菜さんは本当に大鬼族(オーガ)なのか?他の大鬼族(オーガ)達と違って角がないみたいだけど」


うん。我ながらうざいくらいに調子に乗った。「苦しゅうない」って、何処の殿様だよ。あっ、調子に乗ったついで(?)に気になっていたことを聞いてみた。

ぶっちゃけ、この朱菜って娘は普通の大鬼族(オーガ)とは思えないんだよね。他の大鬼族(オーガ)と違って角が無いし、あの不思議な眼も気になる――って、あれ?瞳孔と虹彩の形が変わってる?

さっきまで波紋模様に巴紋が浮かんだ万華鏡の様に煌めくワインレッドの眼だったのに、今は普通(?)の赤紫色の眼だ。


「リムル様。私のことは朱菜と呼び捨てでお呼び下さい。そして、先の質問にお答えするなら、私は大鬼族(オーガ)ではありません」
「……大鬼族(オーガ)じゃないのか?」


大鬼族(オーガ)じゃないのに、大鬼族(オーガ)で姫として扱われてるの?俺がそんなことを考えていると、朱菜は俺の疑問に答えてくれるように話を続けてくれた。


「私は大鬼族(オーガ)の父と母の間に生まれた突然変異の上位種―――仙鬼と呼ばれる種族なのです」
「仙鬼?」
「リムル様は仙人というものをご存知ですか?」
「えっと、仙人ってあれか?不老不死で不思議な力を使う人間のあれか?」
「まぁ、概ね間違ってはおりません。正確には不老ではなく、18歳以降の老化速度が極端に遅くなるだけなんですが……。あと、不死というのも正確ではありませんね。
老化などで体が朽ちることはありませんが、外的損傷で体を滅することはできます。ただ、仙人となった者は魂魄生命体なので、体を失っても魂魄が健在なら時間を掛けることで肉体を再生させられます。
あと、仙術と呼ばれる魔法とも妖術とも異なる力を使える。仙人とはそういう存在です。
そして、仙鬼とは鬼族――子鬼族(ゴブリン)人鬼族(ホブゴブリン)大鬼族(オーガ)等から仙人へと至った種族なのです。
仙鬼へと至った者は自身の力を制御することで人間と同じ姿へと変化できる様になり、戦闘時に晒すのも人間と魔物の両方の特性を有する半妖態という姿で、生まれながらの本来の姿を晒すのは人化も半妖態も維持できない弱っている時か、力を制御できなくなっている時くらいなのです」
「……えっと、つまり君は現在力を制御できる状態だから角の無い人間の様な姿に変化してるってことか?」
「そういうことになります」
「……仙鬼ってことは、仙術ってのが使えるのか?」
「はい。お見せしましょうか?」


俺が何となしに仙術を見てみたい的なことを言うと、朱菜は特に戸惑う様な素振りも見せず、そう返してきた。


「え?いいの?」
「見られて減るものではないので、構いません。ただ仙術は攻性術式の方が多いので、見せるとなると村落などが無い方向に向かって放つしかないのですが……」
「……リグル、ここら辺って俺達の村落以外は未開拓領域だよな?」
「と、東方に子鬼族(ゴブリン)の村落が点在してますが、南方なら山なので問題ないかと」
「じゃあ、南に向かって放ってみてくれないか?」
「えっと、それでは使わせて頂きます」


朱菜はそういうや否や、瞳を波紋模様に巴紋が浮かんだ万華鏡の様に煌めくワインレッドの眼へと変化させ、更に全身をオレンジ色に光らせ始めた。

このオレンジの光は身体の内から外に漏れ出した魔素か?それとも仙人特有の何か特別な妖気(オーラ)ならぬ仙気(オーラ)か?

俺がそんなことを考えていると、朱菜はその手に手裏剣の様な風の刃(?)を取り付けたソフトボール大の球体を作り出していた。

その球体は、キィーンと甲高い音を上げながら、最終的にバスケットボール位の大きさとなった。それを見ていた俺は本能でヤバい術だと理解した。


「ちょ、待っ―――」
「では、いきます。仙法風遁・螺旋手裏剣!!」


そして、俺が止めるより早く朱菜はその術――仙法風遁・螺旋手裏剣(?)を投げてしまい、投擲先の木々をズパズパ斬っていったかと思えば、途中で術が弾けた様でその衝撃余波が俺達を襲った。

衝撃余波が治まり、顔を覆っていた腕を退けると大鬼族(オーガ)一行を含めた俺達は唖然とした。何故なら仙法風遁・螺旋手裏剣(?)の弾けた地点が禿山どころかクレーターになっていたからだ。

………よし。この先どんなことがあっても朱菜とだけは敵対しないことにしよう。っていうか、大鬼族(オーガ)の奴らも朱菜の仙術を知らなかったのか、男性陣は顎が外れんばかりの大口を開いてるぞ。


 

 

第4話 改訂版(2019/04/30)

 
前書き
こんにちは、沙羅双樹です。

今回の話は名付けですが、原作とは異なりリムルだけでなく朱菜からも姓の名付けが行われ、原作より更に強化されます。

というか、この勢力に喧嘩を売るであろうファルムス王国とクレイマンは自滅願望があることになりかねません。(笑) 

 



【視点:朱菜】



どうも、大鬼族(オーガ)で姫巫女を務めている大筒木朱菜です。私は現在、同胞の皆と共にリムル様が統率している人鬼族(ホブゴブリン)の村――というか規模でいうと町に来ています。

そして、私はリムル様と一緒に統率者用(?)の席に座らされて、人鬼族(ホブゴブリン)の方々に凄く持て成されています。

どうして私達が人鬼族(ホブゴブリン)の町にいて、私だけがVIP待遇で持て成されているのか?それにはちゃんとした理由があります。

まず、私達が人鬼族(ホブゴブリン)の町にいるのは、仙術である仙法風遁・螺旋手裏剣を見せた後、リムル様に招待されたからです。

大体の人は察していると思いますが、リムル様が私達を招待したのは豚頭族(オーク)の情報を聞き出す為です。統治者という立場を考えれば、自分達に害を為す可能性のある種族の情報を収集するのは当然の行動ですよね。

次に私がVIP待遇で持て成されているのは、町に辿り着いた直後に私が木遁・連柱家の術で大量の住居を作ったからだったりします。

人鬼族(ホブゴブリン)の人口に対して明らかに住居――テントの様な仮設住宅はあっても、ちゃんとした家屋が少なかったので、先の件のお詫びも兼ねて、木遁・連柱家の術を使った訳です。

その結果、リムル様と人鬼族(ホブゴブリン)の方々に感謝され、VIP待遇になったという訳です。まぁ、人鬼族(ホブゴブリン)の方々に関しては、尾獣チャクラモードの私が現時点でのリムル様を凌駕する魔王相当の存在である為、持て成しているのかもしれませんが……。

ちなみに尾獣チャクラ仙人モードの私のチャクラ量は現時点でのリムル様の魔素量の約25倍――つまり、魔王化を果たした直後のリムル様の2.5倍相当になります。六道仙人モードの場合はその魔王リムル様の10倍といった所でしょうか?

通常状態で現時点でのリムル様の5倍相当。仙人モードで魔王リムル様と同等のチャクラ――魔素量ということになります。

仙法風遁・螺旋手裏剣を使った際、尾獣チャクラ仙人モードで現時点でのリムル様の魔素量を感知したので、この数値に間違いありません。

と、こんな説明をしている内にリムル様待望の串焼き肉が完成したみたいです。この人鬼族(ホブゴブリン)の町随一の料理人であるゴブイチさんがリムル様の元に料理を持ってきました。

そして、料理を受け取ったリムル様は串に刺さっている肉を一切れ口にすると、無言で十数回噛み締め、肉を飲み込んだかと思ったら―――


「うんっっまぁぁぁい!!」


見る者全てを昇天させる様な天使の笑顔を浮かべました。RMT!RMTです!!あっ、このRMTはリアルマネートレードではなく、リムル様マジ天使の略です。

今の私なら魔王ミリム=ナーヴァと魔王ギィ=クリムゾンを休みなしで同時に相手をしたとしても1ヵ月は戦えます!それだけのリムル様分を補給できました!!

って、あれ?リムル様、いつの間に串焼きをそんなに食べたんですか?というか、その体のどこにそれだけの肉が収まったんですか?串の数が20本って……。


「あー、食った食った。……んじゃ、食休みも兼ねてあいつらの話を聞きに行くか」


リムル様はそう言うと、統率者用の席を立ってお父様やお兄様のいる所へと向かって行った。リムル様の食事量に少しばかり呆然としていた私もすぐに後を追います。

リムル様と私が向かった先では、人鬼王(ゴブリンキング)のリグルドさんとドワーフのカイジンさんがお父様やお兄様と話しています。


豚頭族(オーク)大鬼族(オーガ)を襲うのはそんなにおかしいことなんすか?」
豚頭族(オーク)大鬼族(オーガ)の里を襲撃するなど、本来なら在り得んことだ。そもそも大鬼族(オーガ)豚頭族(オーク)より遥かに格上――強さの桁が違う。格下の豚頭族(オーク)が仕掛けるなど、自殺行為でしかない」
「しかし、奴らが数千に及ぶ軍勢で俺達の里を襲撃し、37人もの同胞を手に掛けたのは事実だ」
「す、数千の軍勢だと!?あの協調性のない豚頭族(オーク)がか!?」
「軍勢ってことは統率されてたのか?」


お父様とお兄様が豚頭族(オーク)に里を襲撃された時の状況をカイジンさんに説明していると所にリムル様も加わります。


「リムル殿」
「肉はもういいのか?」
「ちょっと食休み。で、襲撃してきた豚頭族(オーク)ってのは統率されてたのか?」
「ああ。カイジン殿も言っていたが、豚頭族(オーク)とは本来協調性のない勝手気ままな種族なんだが―――」
「集団行動をしている時点で上位種に統率されていると考えるべきだろう」
「お前ら見てると大鬼族(オーガ)ってのが武人気質の種族ってのが分かる。そんな大鬼族(オーガ)が襲撃――何の前触れも無く攻撃されて同胞も殺されたとなりゃ、死んだ奴らの敵討ちをしたくなるのも分かる。
で、お前らこれどうすんの?まさか、玉砕覚悟で豚頭族(オーク)の軍勢に生き残った大鬼族(オーガ)全員で特攻とか無いよな?」
「いくら我らが戦闘種族でも、そんな生き急ぐ馬鹿な真似はせぬよ。だが、豚頭族(オーク)打倒の為に動くつもりではある」
「具体的にはどうするつもりなんだ?」
豚頭族(オーク)の軍勢に一種族だけでは対抗できぬからな。ジュラの大森林に点在している上位種族と手を結び、豚頭族(オーク)の軍勢を討つつもりだ」
「そうか。なら、手始めに俺達と手を組まないか?」
「……は?」
「話を聞く限り、この町も豚頭族(オーク)の軍勢に襲撃されかねないからな。正確には手を組むっていうより、お前らを傭兵として雇いたいって感じだ。
俺達が支払う対価はお前らの衣食住の保障。まぁ、雇い主と傭兵の関係が続く限り、この町を拠点にして貰っても構わないってことなんだけど……。どうだ?」
「…………我ら大鬼族(オーガ)は戦闘種族故、リムル殿の様な強者に仕え、戦場を駆けることに抵抗は無い。ただ―――」
「お父様、私のことは気にする必要はありません。私もリムル様と手を組むべきと進言するつもりでしたので……」
「そ、そうか」
「……そういえば、朱菜は大鬼族(オーガ)の上位種だったな。俺より格上とは思ってたけど、実際の所どのくらいの差があるんだ?」
「魔素の保有量だけでいえば、最大値が現時点のリムル様の100倍といった所でしょうか?」
「ひゃ、100!?」


私が現時点でのリムル様の魔素量を基準に輪廻転生写輪眼込みの真・六道仙人モードでのチャクラ量を正直に答えると、凄く驚かれました。


「そ、それだけの魔素量があれば大鬼族(オーガ)全員に名付けを行って、存在進化させることもできたんじゃないか?」
「名付けとは力を分け与える行為であり、消費した魔素が回復しないこともある為、軽はずみに行うものではありません」
「えっ!?そうなの!!?」
「はい。というか、名有り(ネームド)の上位魔人でも自身が弱体化する危険性のある名付けは行いません。そんなことを平然とできるのは災禍級(ディザスター)以上の存在か、私の特別技能(エクストラスキル)『仙法』の様に大気中に存在する自然エネルギーを吸収することで魔素を回復させられる技能(スキル)保有者だけです」
「……魔素の回復って、何それ?チート?………一応聞くけど、その『仙法』って特別技能(エクストラスキル)のお蔭で仙術も使えるんだよな?あと、災禍級(ディザスター)って何?」


そういえば、私というイレギュラーが介入するまでこの世界には通常のチャクラも仙術チャクラも存在しなかった筈だから説明する必要がありますよね。

それに本来リムル様が魔物の危険度ランクを知るのもドワルゴンと友好的になってからなので、説明する必要がありますね。


「そうですね、仙術には『仙法』以外に特別技能(エクストラスキル)『忍法』の説明もしなければいけないので、順番に説明させて頂きます。
まず、特別技能(エクストラスキル)『忍法』を獲得した者は魔素とは異なるエネルギー―――チャクラというものを生成できる様になります。『忍法』に属する術はこのチャクラを使わなければ発動できません」
「そういえば、大量の家を建ててくれた木遁ってのも、仙術じゃなくて忍術だって言ってたっけ?忍術は『忍法』の技能(スキル)の一部で、チャクラってエネルギーを使わないと発動しないんだな」
「はい。忍術以外にも幻術、忍体術というものあって、これらも使用するにはチャクラが必要となります。そして、『忍法』には魔素をチャクラへと変換する技能(スキル)があるのです」
「そのチャクラってのは魔素を直接変換してるのか?」


魔素から直接チャクラへと変換してると思いますよね。実はそういう訳でも無いんです。


「……『忍法』に含まれる魔素変換という技能(スキル)で魔素から身体エネルギー、精神エネルギーというものを生み出し、チャクラ生成という技能(スキル)でその2つのエネルギーを混ぜ合わせることでチャクラが使える様になるんです」
「うへぇ、結構面倒なんだな。そんな面倒臭いことをしなきゃいけないなら、普通に魔素で発動できる魔法を使った方が効率は良くないか?」
「チャクラを生成することを2つのエネルギーを混ぜ合わせることからチャクラを練るというんですが、魔素変換とチャクラ生成の技能(スキル)はチャクラを練ろうとした瞬間に自動的に発動するので、発動速度は魔法と大して差がありません。
それに発動速度が魔法より劣ったとしてもそれを補う利点が『忍法』にはあるんです」
「それが『仙法』と仙術か?」
「そうです。そもそも仙術とは、チャクラに『仙法』の技能(スキル)で自然エネルギーを取り込み生成した仙術チャクラを使用することで発動する術の総称――端的にいえば、威力や効果を強化した忍術、幻術、忍体術のことなんです」
「へぇ…。仙術っていう固有の術じゃなくて、忍法に属する術が強化されたのが仙法なのか……」
「はい。ちなみに人間や魔物が一般的に使用する元素魔法や妖術にも体内魔素と自然エネルギーと似た自然魔素が利用されますが、飽く迄自然エネルギーと自然魔素は似ているだけで全く異なるエネルギーなので、元素魔法と妖術は仙術に含まれません。
あと、エネルギー源の違いだけでなく、術の威力や効果に圧倒的な差があるのも系統を区別される要因となっています。
仙術に使用される仙術チャクラは体内で身体エネルギーと精神エネルギー、自然エネルギーを混ぜ合わせる―――これは各エネルギーを足しているのではなく、掛け合わせいるのでエネルギー濃度が高まるんです」
「……(う~ん。そもそも自然魔素と自然エネルギーってどう違うんだ?魔物にとっての常識だったら聞き難いし、大賢者は分かるか?できれば分かり易い説明で頼む)」
(解。自然魔素とは一部の強大な魔物の内から外へと漏れ出した魔素の総称です。外へと漏れ出した魔素は流出させた者以外も利用可能な為、自然魔素と呼称されています。
自然エネルギーとは惑星の内から外へと漏れ出した生命エネルギーの総称。惑星が生み出すエネルギーである為、自然魔素よりエネルギー濃度が高い)


私の説明を聞いていたリムル様が難しい顔をしていたかと思えば、その顔はすぐに明るいものへと変わりました。自然魔素と自然エネルギーの違いを大賢者にでも聞いたのでしょうか?

そう考えると私が説明するよりリムル様が大賢者に尋ねて、大賢者がそれに答えるのが情報伝達的に正しいと思うんですが、一度説明を始めた以上、途中で投げ出す等できないので私のできる範囲で最後まで説明を続けたいと思います。


「対して元素魔法と妖術は体内魔素と自然魔素を体外で別々に使用します。体内魔素が種火、自然魔素が燃料といった所でしょうか?兎に角、各魔素を掛け合わせているのではなく、足しているだけなので仙術チャクラほどエネルギー濃度が高くありません。
当然、濃度の高いエネルギーを利用した術は威力や効果が劇的に強化されます。そういう訳で掛け算術式と呼べる仙術と足し算術式と呼べる元素魔法、妖術は別系統の術式として区別されるのです」
「成程ね。仙術とか忍術とか、魔法とか妖術とか色々と奥が深いんだな。ちなみに自然エネルギーを魔素と組み合わせたり、チャクラや仙術チャクラを魔法や妖術に流用。もしくは魔素を忍術に流用することはできないのか?」
「それは私も試したことがあるのですが、どうしてもできません。忍術を使おうとすると魔素がチャクラに自動で変換されますし、魔法の時もチャクラが自動的に魔素へと変換されます。
自然エネルギーも体内に取り込むと、自動的にチャクラと組み合わさって仙術チャクラとなるので、魔素と組み合わせることができないんです」
技能(スキル)が自動調整してるから自分の意思で変更や改変ができないってことか。『仙法』と仙術については分かった。ありがとう。次は―――」


漸く仙術と『仙法』、『忍法』の説明が終わりました。今からは魔物の危険度ランクの説明です。


災禍級(ディザスター)についてですね。リムル様は人間によって魔物がランク付けされているのは御存じですか?」
「いいや。それは初めて聞いた」
「人間にとっての危険度ランクなんですが、上から順に特S、S、特A、A、B、C、D、E、Fとなっているんです。
特Sは人類が国家の枠組みを超えて協力しなければ対処できない存在。
Sは大国が総力を挙げなければ対処できない存在。
特Aは国家転覆規模の存在。
Aは町に激甚な被害を及ぼす危険性のある魔人や悪魔。
Bは個体で村を滅ぼせる魔物。
Cは個体で人間の職業兵士より強い魔物
Dは個体で人間の普通の大人3~4人を殺せる魔物。
Eは群で現れたら注意しなければいけない魔物。
Fは戦闘能力のない魔物。
そして、特A以上には別称が存在し、特Sは天災級(カタストロフ)、Sは災禍級(ディザスター)、特Aが厄災級(カラミティ)、A災害級(ハザード)と呼ばれているんです」
「そういえば、魔王が存在してるって聞いたことがあるんだが、魔王ってどの辺りのランクなんだ?」
「魔王ですか?一部の魔王は天災級(カタストロフ)になりますが、大部分の魔王は災禍級(ディザスター)になります」
「…………ん?今、魔王が複数存在するみたいな言い方じゃなかった?」


そういえば、この時点でのリムル様はこの世界に魔王が10人いることを知らなかったんですよね。今の内に知って貰っておいた方がいいでしょう。


「現在、魔王は10人存在しています」
「10人!!?」
「はい、10人です。私見ですが、その内天災級(カタストロフ)に該当する魔王は3名。破壊の暴君(デストロイ)・ミリム=ナーヴァ、暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)・ギィ=クリムゾン、大地の怒り(アースクエイク)・ダグリュールですね」
「そうか(ってことは、シズさんの仇は災禍級(ディザスター)に該当するのか……)」
「魔王ではありませんが、竜種――白氷竜・ヴェルザードや灼熱竜・ヴェルグリンド、暴風竜・ヴェルドラも天災級(カタストロフ)に該当する存在です」
「!!?(マジか!?シズさんの仇が一気に怖くなくなったぞ!!)そういえば、大鬼族(オーガ)嵐牙狼族(テンペストウルフ)人鬼族(ホブゴブリン)豚頭族(オーク)はどの辺に該当するんだ?あと、俺と朱菜のランクも気になる」
嵐牙狼族(テンペストウルフ)がB以上A未満のB+、大鬼族(オーガ)がB、豚頭族(オーク)がD、人鬼族(ホブゴブリン)は個体にもよりますのでD~E+といった所です。
リムル様は魔素の量から考えると厄災級(カラミティ)災禍級(ディザスター)、私は災禍級(ディザスター)天災級(カタストロフ)に該当すると思われます」
「ランクだけで見るとうちってある程度なら豚頭族(オーク)と遣り合える戦力なんだな。ってか、朱菜って下手したら天災級(カタストロフ)なの!?
………いや、前に見せて貰った仙術から考えると妥当な評価か。ところで、『仙法』を使えば消費した魔素を回復できるんだろう?なのに朱菜は何故、大鬼族(オーガ)全員に名付けをしないんだ?」
「……いくら種族として上位の存在であろうと、両親や兄、目上の大鬼族(オーガ)に名付けなど若輩の私にはできません。何とか許容できるのは、既に名を賜った同族に姓を名付けるくらいです」


そう。生みの親や血の繋がった兄、同郷で目上の同族に名前を付けるなんて、元日本人としての感性が許さないんです。

そんな普通の魔物では理解できない人間的な私の感性を理解できたのは、同じ人間からの転生者であるリムル様だけでした。ただ―――


「朱菜が名付けをしない理由は概ね理解できた。しかし、既に名を与えられた魔物に姓を与える意味ってあるのか?上位存在に名を与えられた時点で、魔物は存在進化するんだろう?」


私が姓の名付けを許容できる理由―――お父様とお母様、お兄様に同じ性を名乗って貰いたいという思いと、他の大鬼族(オーガ)の皆にも姓を名乗って貰いたいという思いまでは把握できなかったみたいです。

まぁ、姓の名付けを許容できる理由を私は口にしませんでしたし、読心系スキルでもなければ思考を読み取るなんてできませんよね。


名有り(ネームド)の魔物が名付け親より上位の魔物から更に名付け――新しい名前や姓を与えられると、名付けの重ね掛けが行われたこととなり、更なる存在進化を果たす、という話を聞いたことはあります。
ですが、私が姓を名付けることを許容できたのは、ただ単純にお父様達にも私と同じ姓を名乗って欲しいという思いと、血の繋がりが無くとも同郷の大鬼族(オーガ)には例外無く姓を持って欲しいという思いがあったからです」
「……成程。何ていうか、朱菜の感性と思考は人間っぽいな」
「両親や兄、同郷の大鬼族(オーガ)達にも良く言われます」
「………よし!それじゃあ、この場にいる大鬼族(オーガ)には俺が名付けをするとしよう」
「えっ!?」


名付けの危険性を説明した後ということもあって、もしかしたらお父様やお兄様達に名付けが行われないかもしれないと思っていた私は、リムル様の発言に思わず驚きの声を上げてしまいました。


「「えっ!?」って、俺が名前を付けるのは駄目なのか?」
「い、いえ!そういう訳ではなく、名付けの危険性を説明した後なので……」
「あぁ、別に気にする必要ないよ。今まで子鬼族(ゴブリン)、牙狼族合わせて700近くの魔物に名前を付けたけど、魔素の総量が減った感じはしないし」
「ですが、大鬼族(オーガ)は牙狼族以上の上位種族です!名付けに消費する魔素の量も桁違いになります!!それでも名付けをされるというなら、どうか私に補助をさせて下さい!!」
「補助って、何すんの?」
「私は他者に自分の魔素を受け渡すことができます。なので、リムル様が倒れられない様、魔素の供給役をさせて下さい!」
「260人ちょいなら休憩を挟んでも3日くらいで名付け終わると思うけど、そこまで言うなら補助を頼む」


リムル様は大鬼族(オーガ)の名付けに消費する魔素量を甘く見ていましたが、私の提案を拒否することなく受け入れてくれました。

この後、私はリムル様と共に中央広場へと移動し、お父様やお母様、お兄様を含む262人の大鬼族(オーガ)に名付けを行いました。

原作では6人の大鬼族(オーガ)に名付けを行い、鬼人族(キジン)へと存在進化させたことでリムル様は低位活動状態(スリープモード)に移行しましたが、この世界では私が補助に着いたことで低位活動状態(スリープモード)に移行することはありませんでした。

まぁ、それも全て守鶴、又旅、磯撫、孫悟空、穆王、犀犬、重明、牛鬼、九喇嘛達9人のお蔭なんですが……。

まず、私が影分身の術で8体の影分身を作り、その影分身に宿った守鶴から牛鬼までの8名が自然エネルギーを吸収して仙術尾獣チャクラを練る。本体である私は私で九喇嘛と共に自然エネルギーを吸収して仙術尾獣チャクラを練る。

そして、又旅、孫悟空、犀犬、牛鬼の影分身4名をリムル様のサポートに回し、リムル様の魔素が無くなりかけたら仙術尾獣チャクラを魔素へと変換してから供給。

チャクラと同じで仙術チャクラも魔素へと変換することができるんですが、変換された魔素は仙術魔素とかじゃなくて、ただの魔素なんですよね。その点が正直解せません。

取り敢えず、守鶴、磯撫、穆王、重明の4名は私と九喇嘛のサポートに回し、私の魔素が無くなりかけたら守鶴から順に仙術尾獣チャクラを魔素へと変換して還元。

そうすることで夜明けまで掛かったものの、私とリムル様は魔素切れを起こすことなく、大鬼族(オーガ)全員に姓名を付けることができました。

最終的な存在進化の最低ラインが妖鬼(オニ)という、原作以上の戦力強化となりましたが、別に問題は無いでしょう。ちなみに名付けを行った大鬼族(オーガ)の中で仙術尾獣チャクラを変換した魔素の消費が高かったのは以下の8名です。

1人目は私の父である大筒木紅麗(くれい)。リムル様が何故か烈火の炎に登場する紅麗と同じ名前を付け、まずは鬼人へと進化しました。

この時、仙術尾獣チャクラを変換した魔素による名付けの影響か、お父様は特別技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)団扇之系譜(インドラ)』を獲得し、三つ巴の写輪眼を開眼しました。

あと、私が姓の名付けを行うと鬼人から妖鬼(オニ)より更に上位の帝鬼(オニ)へと存在進化しました。

2人目は私の母である大筒木穂乃花(ほのか)。最終的に進化した種族は帝鬼(オニ)と同格の月鬼(オニ)。お父様と同じく特別技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)日向之系譜(ブラフマー)』を獲得したことで、白眼を開眼しました。

3人目は私の兄である大筒木紅丸。最終的に進化した種族は妖鬼(オニ)以上帝鬼(オニ)未満の羅刹(ラセツ)。お父様と同じく特別技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)団扇之系譜(インドラ)』を獲得し、三つ巴の写輪眼を開眼しました。

4人目は父の右腕であるうちは蒼月。転スラ原作に登場する蒼影の父です。最終的に進化した種族名は妖鬼(オニ)以上羅刹(ラセツ)未満の忍鬼(オニ)特別技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)団扇之系譜(インドラ)』を獲得し、二つ巴の写輪眼を開眼しました。

5人目は兄の右腕であるうちは蒼影。転スラ原作に登場する蒼影本人です。最終的に進化した種族名は父親と同じく忍鬼(オニ)特別技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)団扇之系譜(インドラ)』を獲得し、二つ巴の写輪眼を開眼しました。

6人目は父の左腕である日向紫呉。転スラ原作に登場する紫苑の父です。最終的に進化した種族名は忍鬼(オニ)と同格の修羅(シュラ)特別技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)日向之系譜(ブラフマー)』を獲得したことで、白眼を開眼しました。

7人目は兄の左腕である日向紫苑。転スラ原作に登場する紫苑本人です。最終的に進化した種族名は父親と同じく修羅(シュラ)特殊技能(エクストラスキル)『忍法』と究極技能(アルティメットスキル)日向之系譜(ブラフマー)』を獲得したことで、白眼を開眼しました。

8人目は大鬼族(オーガ)の里で剣術指南役の様なことをしていた千手白老。転スラ原作に登場する白老本人です。最終的に進化した種族名は兄・紅丸と同じ羅刹(ラセツ)

特別技能(エクストラスキル)『忍法』と特殊技能(ユニークスキル)千手扉間(ケンメイナルモノ)』を獲得したことで、時空間忍術の扱いと感知能力に高補正が付きました。

以上の8名以外にも究極技能(アルティメットスキル)団扇之系譜(インドラ)』と『日向之系譜(ブラフマー)』を獲得した者はいましたが、その殆どが1つ巴の写輪眼だったり、未開眼の妖鬼(オニ)達だったりします。

それとお父様とお母様、お兄様を除く『団扇之系譜(インドラ)』と『日向之系譜(ブラフマー)』を獲得した者には、例外なくうちはと日向の姓を付けました。

ちなみに『団扇之系譜(インドラ)』と『日向之系譜(ブラフマー)』が究極技能(アルティメットスキル)扱いなのは輪廻眼と転生眼に至れる可能性があるからです。輪廻眼と転生眼に至れない間は究極技能(アルティメットスキル)とは名ばかりで、ランク的には特殊(ユニーク)止まりになります。

あと、私の仙術尾獣チャクラを変換した魔素を供給していた影響でリムル様も究極技能(アルティメットスキル)を獲得した上、妖怪仙人へと進化していました。

獲得した究極技能(アルティメットスキル)は『千手之系譜(アシュラ)』。端的に述べると木遁行使と仙術適性向上の技能(スキル)ですね。仙術の適性が向上するので、当然のことながら特別技能(エクストラスキル)である『忍法』と『仙法』も獲得しています。

そして、『千手之系譜(アシュラ)』の仙術適性向上が引き寄せたと思しき特殊技能(ユニークスキル)―――『妖怪仙人(ヨステビト)』によってリムル様は妖怪仙人へと至った訳です。

妖怪仙人(ヨステビト)』の妖怪仙人化と『千手之系譜(アシュラ)』によって誕生した柱間細胞ならぬリムル様細胞によってリムル様は完全な人化が出来る様になり、とても喜んでいました。

NARUTOに登場した鬼灯一族の水化の術みたいに体を自由自在に粘体へと変えられるみたいですが、人型の時は生殖機能があるみたいなので、完全な人化と言えるでしょう。

ちなみにリムル様の性別は中性。リムル様の意思次第で男性にも女性にもなれるそうです。子供を作れるようになったという事実はリムル様の妻を目指す私にとってご褒美と言っても過言ではないものでしょう。

今思えば、仙術尾獣チャクラを変換した魔素の供給も内助の功っぽいですし、このままリムル様の正妻を目指して頑張っていきたいと思います。



 
 

 
後書き
本作では大鬼族(オーガ)以上の上位魔物なら通常宝貝(パオペエ)を使用可能という設定で、スーパー宝貝(パオペエ)は上位神仙級以上にならないと使えないという設定です。

というか、上位神仙級以上でないと手に持った瞬間に魔素を吸い取られて、干物になる設定です。(笑)

という訳で、スーパー宝貝(パオペエ)は本作での幹部の一部が仙人になった際に所持する予定です。 

 

第5話 改訂版(2019/04/30)

 
前書き
どうも、沙羅双樹です。

今回は鬼一族のリムル傘下入り、及び原作より一足早いリムルの建国足掛かり編的な話です。

目指すは「うたわれるもの」のヤマトもしくはトゥスクル、または「十二国記」の慶東国といった所でしょうか?(笑) 

 



【視点:リムル】



俺が大鬼族(オーガ)の姫巫女である仙鬼――大筒木朱菜と共に大鬼族(オーガ)達に名付けを行ってから早数時間。

つい先程まで、俺は名付けの際に供給して貰っていた仙術尾獣チャクラを変換した魔素の影響で獲得した特別技能(エクストラスキル)『忍法』と『仙法』、究極技能(アルティメットスキル)千手之系譜(アシュラ)』についての説明を朱菜から受けていた。

忍術使用時に必要となる印の組み方や忍術における属性――性質変化の優劣関係、本来合成できない複数の性質変化を合成することで得られる血継限界、血継淘汰、血継網羅という特殊(ユニーク)究極(アルティメット)に相当するスキルなど、覚えるのが面倒そうなことを教えて貰っていた。

ちなみに究極技能(アルティメットスキル)千手之系譜(アシュラ)』は水と土の性質変化を組み合わせた木遁を使える血継限界だそうだ。

あと、新たに獲得した特殊技能(ユニークスキル)妖怪仙人(ヨステビト)』の説明を『大賢者』から受けた。この技能(スキル)のお蔭で俺も朱菜と同じ仙人に至ったそうだ。

まぁ、同じって言っても俺の方が格下なんだけどな。兎も角、この技能(スキル)のお蔭で俺は完全な人間に擬態することができるようになったんだ。

そう!完・全な人間に!!完全な人間。それは俺の息子の復活を意味する!いや、元がスライムで無性だから、女に性転換もできるんだけどな。

つまり、俺の意思次第で息子を復活させたり、男を受け入れて子供を身に宿すことができるって訳だ。朱菜曰く、『妖怪仙人(ヨステビト)』に含まれる妖怪仙人化という技能(スキル)で人間に変化できるそうだ。

…………うげぇぇ!後者は想像するだけで悍ましい!情報収集とかで使えそうだけど、極力女性体にはならない様にしよう。

そして、現在。俺と朱菜は存在進化を果たし、姿の変わった元大鬼族(オーガ)の上役及びその子息子女達に跪かれている。


「リムル様、大鬼族(オーガ)の民一同、名を賜ったことで問題なく進化することができました」
「そ、そうか。ところで、お前は大鬼族(オーガ)の長だよな?」
「はっ!リムル様と朱菜から名と姓を賜ったことで妖鬼(オニ)を経て帝鬼(オニ)へとなりました。今は大筒木紅麗と名乗っております」


進化前は身長200cm近くあった某暗殺拳法四兄弟の長兄を彷彿させるムキムキの40代半ばから後半といった美中年が、同四兄弟の次男か四男を彷彿させる肉体を持った身長180cm前後の20代後半から30代前半の青年へと変わっていた。

これはあれか?ヨボヨボの爺さんからラ○ウへと進化したリグルドショックの再来か?内に秘めた魔素量も俺と同等か、少し下くらいな気がする。


「我が妻――穂乃花も妖鬼(オニ)を経て月鬼(オニ)へと進化し、息子――紅丸も鬼人族(キジン)を経て羅刹(ラセツ)へと進化しました」


紅麗のすぐ後ろには白髪美人巫女と赤髪の青年が控えていた。そういえば、白髪美人巫女さんは朱菜のお母さんだったんだな。

進化前は20代後半といった美人巫女さんだったけど、進化後は朱菜と同じ10代後半か20代前半といった美少女になっている。ってか、若返ったせいで二児の母親には全く見えなくなった。進化前も見えなかったけど……。

紅麗の息子である若様も大柄だった体格が一回り小さくなったものの、内に秘めた魔素量が進化前とは比べられない程に増えていた。


「……で、穂乃花と紅丸の後ろに控えている3人は俺の腕を斬り飛ばしてくれた爺さん――千手白老と、お前の両腕であるうちは蒼月、日向紫呉か?」
「はっ!その通りです。白老は紅丸と同じく鬼人族(キジン)を経て羅刹(ラセツ)へ、蒼月は鬼人族(キジン)を経て忍鬼(オニ)へ、紫呉は鬼人族(キジン)を経て修羅(シュラ)へと進化しました」
「ほっほっほっ。リムル様、余りこの老体を苛めて下さいますな」


白老は自分のことを老体と言っているが、進化後の見た目はどう見ても30代半ばから30代後半にしか見えない。紫呉は紅麗と同じく20代後半から30代前半、蒼月は20代半ばから20代後半といった見た目だ。


「残りの254名も鬼人族(キジン)を経て妖鬼(オニ)へと進化しています」
「白老殿を除く全員が究極技能(アルティメットスキル)団扇之系譜(インドラ)』と『日向之系譜(ブラフマー)』のどちらかを獲得しており、特殊技能(ユニークスキル)持ちも120名いることが確認済みです」
「……えっと、その2人は?」
「青髪は自分の息子の蒼影で―――」
「―――紫髪は俺の娘の紫苑です」
「蒼月の息子と紫呉の娘か。報告、ご苦労。……で、何でお前らは俺に跪いてるんだ?俺達の関係が傭兵と雇い主とは言ったが、実際の所は対等な――異種族間同盟といった関係だ」
大鬼族(オーガ)の歴史の中でも鬼人族(キジン)以上の上位種族に進化できた者はそう多くありません。262名もの大鬼族(オーガ)妖鬼(オニ)以上の存在へと進化できたのもリムル様と朱菜が名付けを行ってくれたからこそ。
どうか、我ら一同を家臣として召抱え、忠誠をお受け取り頂きたいのです。何卒、宜しくお願い致します!!」


この場にいる元大鬼族(オーガ)で紅麗の発言に反論する者もいないことから考えて、紅麗の発言は嘘偽りのない一族の総意なのだろう。

しかし、元大鬼族(オーガ)達が今の種族まで進化できたのは、8割近くが朱菜のお陰と言える。なのに、俺がこいつらの上に立っていいのか?

俺がそんなことを考えていると、俺の隣に座っていた朱菜が立ち上がり、紅麗の前へと移動すると紅麗達と同じく俺に跪いた。


「私もお父様達と同じ思いです。どうか我ら鬼の一族をリムル様の配下にお加え下さい。必ずやリムル様の求める理想を叶える手足となります」
「ちょっ、分かった。分かったから、朱菜まで跪かないでくれ!!」


俺からすれば魔素量だけでなく、その他の能力値も圧倒的に上な朱菜は会社の専務や常務の様な存在だ。精々部長か次長ポジの俺が朱菜に跪かれるのは違和感しかない。

多分、ここで俺が主になることを断って、朱菜を推薦しても当の本人が受け入れないんだろうな。血の繋がった両親や目上の大鬼族(オーガ)に名付けを行えない人間的な娘だし。


「……本当に俺が主でいいんだな?」
「リムル様には王の資質があります。どうか、人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)だけでなく、私達鬼の一族も束ねる王となり、私達の忠誠をお受け取り下さい。我らが聖上」


うおっ!いつの間にか同盟の盟主じゃなくて王様にされた!?聖上って確か皇帝の敬称だっけ?こいつら、ガチだ。



【視点:朱菜】



私達がオーバー■ードに登場するナザリックのNPCの様にリムル様への忠誠を捧げた後、人鬼族(ホブゴブリン)の町の広場に全人鬼族(ホブゴブリン)嵐牙狼族(テンペストウルフ)、鬼一族が集められ、リムル様の演説が行われました。

内容はリムル様の傘下に私達鬼一族が加わったことと、この町をいずれは他種族共生国家へと発展させるという宣誓だった。

この宣誓を聞いた全ての町民が興奮し、歓声を上げたのですが、その描写を詳しく説明する必要はないと思います。

そして、私達の王になることを覚悟したリムル様はこの町を中心に国を成り立たせる為に必要な国政の部門を6つ作り、町の幹部に当たる者達に各部門の役職を与えました。

まず1つ目の部門は宮中の諸事を司る天官(てんかん)。その長である天官長・太宰(たいさい)という役職には元行政機関長であった人鬼卿(ゴブリンロード)のログルドさんが就きました。

2つ目の部門は土地、戸籍を司る地官(ちかん)。その長である地官長・大司徒(だいしと)という役職には元管理大臣であった人鬼卿(ゴブリンロード)のリリナさんが就きました。

3つ目の部門は式典、祭祀、教育関係を司る春官(しゅんかん)。その長を務める春官長・大宗伯(だいそうはく)という役職には我が母・穂乃花が就きました。

4つ目の部門は軍事、警備、警邏、土木事業を司る夏官(かかん)。その長――軍事総大将に当たる夏官長・大司馬(だいしば)という役職には我が父・紅麗が就きました。

5つ目の部門は法令、裁判、外交を司る秋官(しゅうかん)。その長を務める秋官長・大司寇(だいしこう)という役職には元司法機関長であった人鬼卿(ゴブリンロード)のルグルドさん、次席の秋官次長・小司寇(しょうしこう)には元立法機関長であった人鬼卿(ゴブリンロード)のレグルドさんが就きました。

6つ目の部門は造作を司る冬官(とうかん)。その長を務める冬官長・大司空(だいしくう)という役職にはドワーフのカイジンさん。次席の冬官次長・小司空(しょうしくう)には原作キャラでもあるうちは黒兵衛が就きました。

あと、元警備部隊長であった人鬼族(ホブゴブリン)のリグルさんと我が兄・紅丸、日向紫呉、日向紫苑、うちは蒼月、うちは蒼影がそれぞれ夏官に属する部署に就きました。

リグルさんとお兄様はリムル様直属の親衛隊――右近衛府(うこんえふ)左近衛府(さこんえふ)の長に任命され、リグルさんが右近衛大将(うこんえたいしょう)、お兄様が左近衛大将(さこんえたいしょう)という役職になりました。

紫呉はリムル様の身辺警護長である大僕(だいぼく)、紫苑はその部下に当たる小臣(しょうしん)という役職です。蒼月はリムル様の裏の近衛府(このえふ)といえる隠密御庭番衆(おんみつおにわばんしゅう)の御頭、蒼影はその次席という役職です。

そして、天官、地官、春官、夏官、秋官、冬官の6つの部署を取り纏める冢宰(ちょうさい)という役職には町長的な役割であった人鬼王(ゴブリンキング)のリグルドさんが就きました。

その他、リムル様への助言や諫言、剣術指南を務める太師(たいし)という役職に千手白老が就き、私もリムル様の補佐、相談役を務める大老(たうろ)という役職に就きました。

自分で説明していて何ですが、与えられた役職がうたわれるものシリーズと十二国記が混ざったものになってますね。もしかしたら、リムル様の元いた世界には十二国記の小説が存在したのかもしれません。

うたわれるものに関しては偶然でしょうか?リムル様が母・穂乃花を見ても大きな反応を見せていなかったので、うたわれるものシリーズは存在しなかった可能性が高いです。

仲間が増えたら夏官に属する優秀な人材に八柱将の役職を与えて貰うのもありな気がします。その場合、八柱将に選ばれるのは紫呉、紫苑、蒼月、蒼影、ゴブタ、ランガ、ガビル、ゲルドでしょうか?

ディアブロはリムル様の身辺の世話をする天官の内小臣(ないしょうしん)に自分から志願しそうですし……。

……まぁ、今はいない人のことを考えても仕方がないですね。それよりも―――


「リムル様――いえ、聖上。私達の王となることを決意して頂き、私達は心より感謝致します。また、本日は聖上が神仙へと進化された大変めでたき日。
私達鬼一族から聖上へと忠義の証も兼ね献上したいものがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「献上したいもの?それは一体何だ?」


私が神仙へと進化したリムル様にスーパー宝貝(パオペエ)を渡す方便を口にすると、リムル様は興味津々といった感じでそう尋ねてきた。

私はリムル様の質問に答える為、輪廻転生写輪眼を発動させ、神威空間で保管していた鬼の忍刀と六道宝具、スーパー宝貝(パオペエ)などを出した。


「私達鬼一族が使用する忍具や魔導具、宝貝(パオペエ)と呼ぶ特殊な武装の中でも並の魔物が手に持つことが許されない強力な武具や神仙へと進化し膨大な魔素を得た者しか使用できない武具です。
こちらの鬼の忍刀は神仙でなくとも使用できますが使い手次第で上位の魔人を屠れる忍具で、こちらの六道宝具は能力こそ高いものの、動力源である魔素やチャクラの燃費が悪く、手にした者をミイラにしてしまう可能性の高い武具です。
スーパー宝貝(パオペエ)に関しましては、神仙でもない者が手にすれば魔素やチャクラが吸い尽くされ、確実にミイラにしてしまう強力な武具です」
「そ、そうか」
「本来、スーパー宝貝(パオペエ)は11あるのですが、内スーパー宝貝(パオペエ)・雷公鞭並びに四宝剣の所有者は私が勤めさせて頂いております。
そして、スーパー宝貝(パオペエ)の中でも危険極まりない禁光銼、三宝玉如意、五火神焔扇の3つは誰の手にも触れられぬ場所に封印管理させて頂いております」
「危険極まりないって、どのくらい危険なんだ?」
「出力調整を誤れば世界が滅びます」
「な、成程。それは危険極まりないな、うん。そんな危険物は献上されても困るから、そのまま朱菜が封印管理してくれ。
………ところで献上するということは、神仙となった今の俺ならスーパー宝貝(パオペエ)と六道宝具という武具を扱えるということか?」
「はい、その通りです。しかし、現時点の聖上ではスーパー宝貝(パオペエ)と六道宝具――特にスーパー宝貝(パオペエ)を複数扱うのは難しいと思われます。
武具として所持されるならスーパー宝貝(パオペエ)を1つのみ、またはスーパー宝貝(パオペエ)を1つと六道宝具を1つ。もしくは六道宝具を3つが宜しいかと……」
「成程。では、スーパー宝貝(パオペエ)を1つ所持するとするなら、どれがいいと思う?」
「……聖上の御立場を考えるなら、この太極図が宜しいかと」


リムル様の質問に答えながら私は先端に太極図の付いた打神鞭を差出し、説明を続けます。


「この太極図には大気を操る能力と特定範囲内のスーパー宝貝(パオペエ)を含む全宝貝(パオペエ)の能力無効化。そして、特定範囲内の宝貝(パオペエ)所持者の魔素、チャクラの吸収と収束による太極図所持者の全能力強化能力がございます。
使い様によって最強にも最弱にもなりえますが、他の宝貝(パオペエ)に干渉する能力は王たる者に相応しい能力ではないかと思われます」
「ふむ。確かに王たる者に相応しい能力だな。よし!その太極図を貰おうか。他の武具は―――」
「これらは全て聖上へと献上したもの。臣下へと下賜するもよし、捨てるもよし。全ては聖上の御心のままに」
「下賜って言っても、現時点で渡せるのは鬼の忍刀である7振りだけだろう?」
「お父様とお母様であれば、1つだけなら六道宝具を扱えると思います。ただ、単体で意味を為す六道宝具は芭蕉扇と琥珀の浄瓶だけなので、下賜されるならその2つが宜しいかと。
スーパー宝貝(パオペエ)に関しましては、臣下で神仙へと至った者がいた時、その者に下賜するのもありかと思われます」
「成程。取り敢えず、豚頭族(オーク)の軍勢との戦を考えると、即戦力となるのは鬼一族だし、六道宝具と忍刀を下賜するのも戦場へ連れて行く可能性の高い者にした方がいいな」
「その前にリムル様が所持される忍刀を選ばれるのが先決かと思われます」
「えっ?いや、俺には太極図があるし―――」
「確かに太極図は遠近両用ですが、どちらかというと遠距離寄りの宝貝(パオペエ)です。聖上も戦場に出られるなら太極図以外にも近距離用の武具も持っておくべきだと思います」
「そ、そうか?なら、この双剣を貰おうかな」
「雷刀・牙ですね。これは刀身に雷を纏わせることで、切れ味を最高まで高めた忍刀になります」


リムル様が雷刀・牙を選ばれた後、私は他の忍刀と六道宝具の説明を行い、それを聞いたリムル様は改めて忍刀及び六道宝具を下賜し始めました。


「夏官長・大司馬が大筒木紅麗、前へ」
「はっ!」
「紅麗、お前には軍事総大将として、また1人の武人として戦場での活躍を期待している。よって、お前には六道宝具の1つである芭蕉扇を与える」
「ははっ!有難く頂戴いたします!!」
「そして、夏官・左近衛府大将が大筒木紅丸、前へ」
「はっ……」
「紅丸、お前にも左近衛大将として、また武人として豚頭族(オーク)との戦での活躍を期待している。よって、お前には鬼の忍刀の1振りである断刀・首斬り包丁を与える」
「はっ!左近衛大将の名に恥じぬ働きを首斬り包丁と共に必ずや御見せ致します」
「次、夏官・大僕が日向紫呉、前へ」
「はっ!!」
「紫呉、お前は平時においては俺の身辺警護長を務めて貰うが、戦場においては最前線で戦う斬り込み隊長を務めて貰おうと思っている。よって、お前には鬼の忍刀の1振りである爆刀・飛沫を与える」
「はっ!」
「次、夏官・小臣が日向紫苑―――」


と、この様にリムル様は忍刀と六道宝具を下賜していき、紫苑は鈍刀・兜割、蒼月は双刀・ヒラメカレイ、蒼影は長刀・縫い針を下賜されました。

鬼の忍刀の1振りである大刀・鮫肌は意思を持った忍具で、鮫肌自身が所持者を選ぶので今回は下賜されませんでした。私の予想ではゲルド辺りが気に入られて、所持者になりそうな気がします。

そして、リムル様を除いた忍刀所持者にはリムル様直々に鬼の忍刀五人衆の称号が与えられ、お兄様が五人衆のまとめ役を務めることになりました。

あと、スーパー宝貝(パオペエ)と六道宝具、鬼の忍刀の他に鬼一族が所有する宝貝(パオペエ)と魔導具の製作者が私であることをお伝えした結果、無理しない程度に宝貝(パオペエ)と魔導具の増産を頼まれました。

宝貝(パオペエ)と魔導具の増産を強制ではなく依頼する所が、リムル様の暴君ではなく名君であることを象徴するいい所だと思います。

まぁ、左近衛大将のお兄様に断刀・首斬り包丁を渡して、右近衛大将のリグルさんに何も渡さないのはおかしな話ですし、リグルさんに似合いそうな宝貝(パオペエ)か魔導具を作らなければいけませんね。



 
 

 
後書き
今回、リムル王国(仮)に所属する鬼一族の幹部に武器が下賜された訳なんですが、同じく幹部で夏官(軍部)であるリグルが何も下賜されていない状きゃうだったりします。

魔導具か宝貝(パオペエ)を上げたい所なんですが、何がいいでしょう?RPG的職業で考えると剣士っぽいので、磁双刀か海月、降魔杵あたりがいいかな?とも思うんですが……



追記

朱菜は宝貝・如意羽衣を持っているので部分変化で忍刀を再現できることに思い至った為、首斬り包丁の所有者を紅丸に変更しました。

追記

スーパー宝貝(パオペエ)である禁光銼、三宝玉如意、五火神焔扇を封印管理している場所は神威空間です。(笑) 

 

第6話 改訂版(2018/11/07)

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回の話は難産でしたが、何とか完成しました。

そして、今回の話でリムル勢力が更に戦力強化がされます。

あらすじの注意事項にも書いていますが、元々リムル勢力をチート勢力にするつもりだったので、その点に対するツッコミは無しにして頂けると幸いです。(笑)

作者自身、全力で迷走している作品なので(笑)

それでは本編の方、お楽しみください!!
 

 



【視点:リムル】



俺が建国宣言を行ってから早数日。元人鬼族(ホブゴブリン)の町――現多種族共生都市(仮)は順調に発展していたりする。

人鬼族(ホブゴブリン)町を中心に周辺の木々は風遁と水遁を得意とする鬼一族が風遁・風切りの術と水遁・水断波を使って伐採。そして、俺と朱菜が木遁・連柱家の術を使って住居を建築。

それを繰り返すことで短期間での土地開拓が可能となり、あっという間に10km四方、10000ヘクタールの街になった。

しかも、四方には土遁を得意とする鬼一族の土遁・万里土流壁と土遁・地動核によって城壁と堀が作られていて、街への出入りは基本的に東門と西門、南大正門からしかできず、外敵による攻撃を簡単には受け付けない仕様となっている。

ちなみに北側も土遁・万里土流壁の城壁と土遁・地動核の堀によって守られた封印の洞窟へと繋がる道しか存在しない為、北側からの侵入も実質的に不可能となっている。

で、こういった土地開拓や街作りに忍術の使用を提案したのが誰かというと、実は朱菜だったりする。進化した鬼一族の者に少しでも早く『忍法』に慣れて貰う為、兵農一体の様な提案をしてきたそうだ。

何ていうか、朱菜の思考回路って古代中国の軍師っぽいよな。もしかして、朱菜って俺と同じ日本――というか、地球からの転生者?

……いや、普通に考えて無いな。ヴェルドラも異世界からの転生者は俺以外に前例がないみたいなことを言ってたし。

………けど、この世界にはシズさんみたいな異世界人も結構いたみたいだしな。その異世界人がこの世界で死ぬと、この世界の生命として転生する可能性もあるんじゃ……?

朱菜に直接聞いてもいいけど、それで違ったら俺が頭のおかしいスライムってことになるし………。よし!聞くのは止めておこう。

聞いた結果、鬼一族だけでなく、リグルド達やランガ達にまで可哀想なものを見る目をされたりしたら俺は死ぬ。いや、仙道になったから死ねないけど、精神的な意味で死ぬ。

……それにしても、上役組が優秀過ぎるっていうのも問題だな。俺の所に仕事が回って来なくて、超暇だ。ぶっちゃけ、俺にできる仕事は朱菜と一緒にする木遁での住居建築くらいだし。

っていうか、朱菜が万能過ぎる。木遁による住居の大量建築が可能だし、造作担当の冬官長・大司空(だいしくう)――カイジンと同等以上の鍛冶技術持ちで、戦闘能力も軍事担当の夏官長・大司馬(だいしば)――紅麗以上だ。

ちなみに大司空(だいしくう)大司馬(だいしば)にしなかったのは、役職決めの時点で朱菜の鍛冶技術は判明してなかったし、軍事面も指揮能力が不明だったから。

まぁ、朱菜の万能性を把握していたとしても、あの性格を考えるとカイジンや紅麗に遠慮して、大司空(だいしくう)大司馬(だいしば)の地位を辞退していただろうけど。

大鬼族(オーガ)の里で巫女を務めていたことを考えると、春官長・大宗伯(だいそうはく)にすることもできたけど、それも穂乃花に遠慮して辞退しただろうし。

大老(たうろ)という役職を引き受けたのは太師(たいし)と同じく政治介入力などを持たない役職で、俺の補佐 兼 相談役だからだろう。

そんな能力に反して権力に無関心な朱菜が現在何をしているかというと、都市北部中央区画にある神明造の和製宮殿――のすぐ横に建築された朱菜専用工房区画の鍛冶工房に3日程前から籠っていたりする。

数日前、夏官に属する幹部の鬼一族に朱菜から献上された鬼一族の忍具などを下賜した訳なんだが、同じ幹部である右近衛大将(うこんえたいしょう)のリグルには何も下賜できなかったので、リグルに下賜する為の武具を朱菜が現在作ってくれているという訳だ。

朱菜曰く、人鬼族(ホブゴブリン)は魔素量の関係で宝貝(パオペエ)が扱えないらしい。なので、渡せる武具も鬼の忍刀の様な忍具か魔導具に限られるそうなんだけど、その辺りの選考は完全に朱菜に任せることとなった。

俺には武具の形状を注文するくらいしかできないからな。付与される特殊能力とかそう簡単に思いつかん。ちなみに俺が注文した武具の形状は剣だ。リグルは元々剣士タイプだったからな。

本来、特殊能力が付与される魔鋼製の武器には鍛造製法が用いられ、高度な鍛冶技能を持つ鉱人族(ドワーフ)でも完成させるまでに最短でも5日は掛かるそうなんだが、冬官次長・小司空(しょうしくう)妖鬼(オニ)――黒兵衛曰く、朱菜は宝貝(パオペエ)や魔導具、忍具などを最短で2日もあれば完成させられるそうだ。

そして、朱菜はリグルの武器を作り始める前に3日で完成させると言っていた。つまり、今日がリグルの武器の完成予定日ということになる。リグル専用武器にどんなものを持って来るのか、楽しみで仕方ない。



【視点:朱菜】



私が鍛冶工房に籠って早3日。漸くリグルさん専用の武器が完成しました。リムル様には3日で完成させると言ったのですが、内心では2日で完成させるつもりだったので、予想より時間が掛かってしまいました。

いや、正直に言うと私が遊び心で見た目の改造なんてしなければ、1日で完成させられたんです。けど、付与された能力的に見た目を改造しないという選択肢が私の中から無くなってしまったんです。

あっ!ちなみに私がリグルさん専用武器に選んだのは魔導具の磁双刀です。一応分からない人の為に簡単な説明をさせて頂くと、S極とN極の磁力を纏った二刀一対型の魔導具ですね。

N極刀とS極刀が磁力で引き寄せ合うので、片方を敵に投擲して避けられたとしても、もう片方で引き寄せて敵の背後から奇襲攻撃できたりするんです。

というか、それ以外に奇襲攻撃の方法がありません。そして、形状も奇抜な物が多い魔導具の中では余りにも普通過ぎる日本刀。正直、魔導具の中で能力も形状も最も地味な武器だと私は思っています。

念の為言っておきますが、どれだけ地味でも魔導具であることには変わりないので、耐久性や切れ味などは普通の武器より上だったりします。

ガン○ムシリーズで例えると、あれです。0083に登場したジ○・カスタムの様な魔導具なんです。(目立った)特徴が無いのが特徴なんです。

そんなジ○・カスタムな魔導具をリグル様にそのまま渡すのは心が痛むので、私は磁双刀を改造することにした訳です。まぁ、改造と言っても見た目だけなんですが……。見た目はヘイ○ル改、中身はジ○・カスタムといった感じ程度です。

互いに引き寄せ合う武器で見た目がカッコいいものといえば、やっぱりFateシリーズの干将莫耶ですよね。普通の日本刀より曲刀型の方が何故か殺傷力が高そうに見えますし。

ただ、原作Fateシリーズに登場する干将莫耶はどれだけ大きく見積もっても小太刀サイズ。長剣(ロングソード)を扱っていたリグルさんには扱い辛い武器になってしまいます。

刀身の長い干将莫邪といえば鉄砕牙の様な大曲刀型のオーバーエッジか、Fate系同人誌『SWORD DANCERS』に登場したタルワールの様な長曲刀型の干将莫耶(改)になります。

そして、長剣(ロングソード)に最も近いのは長曲刀型の干将莫耶(改)。そんな訳で私は磁双刀の見た目を干将莫耶(改)風へと変更した訳です。

磁双刀の核である宝玉は干将莫耶(改)の太極図の部分に埋め込み、黒刀の干将(改)はそのままで白刀の莫耶(改)だけ朱刀に変えてみました。

色の変更はN極=北=玄武=黒色で干将をN極刀にしたので、S極刀の莫耶をS極=南=朱雀=朱色で朱刀にした方がいいかな?と思ったからです。

一般的な棒磁石で考えると黒=S極、朱=N極で真逆になってしまうんですが……。というか、何故棒磁石などは黒がS極で朱がN極なんでしょう?少なくとも四神の概念とは無関係なんでしょうけど……。

兎に角、完成した干将莫邪(改)風磁双刀――磁双刀弐型はリムル様に献上しなければいけません。他の幹部メンバーがリムル様から武器を下賜されている以上、リグルさんもリムル様から武器を下賜される必要がありますので。

何事にも形式というのは必要なので、私がリグルさんに直接渡す訳にはいかないんです。そんな訳で、私は磁双刀弐型を手に宮殿へと向かいます。



【視点:リグル】



俺がリムル様から右近衛大将という役職を賜って早数日。宮殿が完成して初めて俺を含む幹部全員が謁見の間に呼び出された。

話の内容がどんなものか、俺には想像もつかないが幹部全員を呼び出すということは、何か重要な話があるのだろう。

そういえば、幹部全員が呼び出される2~3時間前に地官長・大司徒(だいしと)であるリリナさんから右近衛府に牛鹿(うじか)を調達する手伝いの要請があったな。

それに玄関と謁見の間の中間にある厨房では、料理長であるゴブイチを始めとした料理人達が忙しなく動き回っていた。

忙しない料理人と牛鹿の調達、そして幹部の呼び出し。牛鹿と料理人の組み合わせは宴会を意味することが高いから、少なくとも悪い話で呼び出された訳では無さそうだ。

俺がそんなことを考えていると、謁見の間にある玉座の右側数m程の所にある引き戸が開かれ、リムル様と朱菜様が現れた。

御二人はそのまま玉座へと進み、朱菜様はその玉座の間横に立ち、リムル様は玉座へと御座りになられる。そして、俺を含む幹部全員が一瞬の乱れも無く叩頭すると―――


「全員、頭を上げろ。……皆、街の急激な発展で色々と忙しいのによく集まってくれた」
「何を仰られます。リムル様の命であれば、それに応えるのが臣下の務め」
「リグルド殿の仰られる通り。その様なこと、リムル様が気にされることではありません」
「……そうか。えー、今日は朱菜に頼んでいたリグルに下賜する武器が完成したので、そのお披露目も兼ねて皆に集まって貰った」


お、俺に下賜する武器の為に幹部全員が集められたのか!?幹部のほぼ全員が俺より上位の魔物だから、間接的とはいえ俺の為に集められたことに恐縮してしまう。だが、そんな俺の心境も知らずにリムル様は話を続ける。


「朱菜……」
「こちらになります、リムル様」


朱菜様がいつの間にか手にしていた布に包まれた物をリムル様に手渡し、リムル様がその布を取り払うとそこには黒と朱に色分けられた二振りの長剣が姿を現した。


「それでは、これよりリグル殿への魔導具授与の儀を執り行います。……夏官・右近衛府大将がリグル、前へ」
「はっ!」


普段は「さん」付けで名前を呼ぶ朱菜様もこういった行事では、リムル様の補佐という役目から幹部を「殿」付けか呼び捨てにするが、そのことを気にする者など幹部には誰一人としていない。

名を呼ばれた俺は元いた場所から立ち上がると、玉座の前まで移動し、片膝立ちでリムル様と朱菜様に頭を下げる。


「リグル。遅くなってしまったが、これが今日からお前の相棒となる魔導具・磁双刀弐型だ。お前にはこの磁双刀弐型と共に右近衛大将に相応しい働きを期待する」
「はっ!リムル様の期待に応えられる様、また磁双刀弐型に相応しい将になることを誓います」
「うむ。では、堅苦しいのはこれで終わりだ。今日はリグルが魔道具を手にし、名実共に右近衛府の大将として相応しい男となった目出度い日。これより先は無礼講の宴だ!!」


リムル様はそう告げると、俺を含むその場にいる幹部全員を伴って街の中央広場へと移動し、街の魔物全員が参加することとなった宴はリムル様と朱菜様を除く者が酔い潰れる明け方まで続いた。



【視点:朱菜】



リグルさんに磁双刀弐型が下賜されて早2日。リムル様の街の魔物――人鬼族(ホブゴブリン)が全員大鬼族(オーガ)以上の魔物に進化しました。

そうなった原因は私にあります。磁双刀弐型を下賜され、名実ともに右近衛大将となったリグルさんに苗字が無いのは不格好ではないか?という話が宴の翌日に挙がったんです。

ちなみに、その話題を挙げたのは私のお兄様で、宴の翌日にリグルさんに苗字の名付けが行われた訳なんですが、その名付けを行ったのは私なんです。

苗字を名付けるのはリグルさんだけでも良かったんですが、どうせならということで人鬼族(ホブゴブリン)全員に苗字の名付けをすることをリムル様に提案した所、許可が出たので人鬼族(ホブゴブリン)全員に苗字を名付けることになったんです。

人鬼族(ホブゴブリン)の名前をどうするか迷ったんですが、原作でゴブタさんが影移動を使っていたことを思い出した私は、影繋がりで人鬼族(ホブゴブリン)に奈良の名字を名付けることにしました。

そして名付けの結果、人鬼王(ゴブリンキング)だったリグルドさんは大鬼王(オーガキング)に、右近衛大将のリグルさんは大鬼将軍(オーガジェネラル)に、人鬼候(ゴブリンロード)だったレグルドさん、ルグルドさん、ログルドさん、リリナさんは大鬼候(オーガロード)に進化し、他の人鬼族(ホブゴブリン)達も全員が大鬼族(オーガ)に進化してしまったんです。

しかも、全員が鬼一族と同じく特別技能(エクストラスキル)『忍法』と特殊技能(ユニークスキル)奈良之系譜(カゲホウシ)』を獲得していて、NARUTOの奈良一族化を果たしてるんです。

仙術尾獣チャクラを変換した魔素による名付けとはいえ、私は驚きを隠せませんでした。まさか、全人鬼族(ホブゴブリン)大鬼族(オーガ)以上に進化するなんて思わないじゃないですか。

まぁ、そのお陰で街の魔物全員が一般的な宝貝(パオペエ)を所持できる最低限の魔素量を得られた訳なんですが……。

あっ!宝貝(パオペエ)といえば、リグルさんが副武装として宝貝(パオペエ)を3種類下賜されました。下賜された宝貝(パオペエ)は莫邪の宝剣、鑚心釘、万里起雲煙の3つです。

元々、子鬼族(ゴブリン)だったリグルさんは弓も得意なので、弓型宝貝(パオペエ)である万里起雲煙も下賜されることになったんです。

魔導具だけでなく、宝貝(パオペエ)も下賜されたことで、リグルさんはますます右近衛大将らしくなったと言えるでしょう。ただ、新しい技能(スキル)である『忍法』、『影法師(ナライチゾク)』、魔導具、宝貝(パオペエ)の扱いに慣れるのには時間が掛かりそうですが………。

大鬼族(オーガ)へと進化した人鬼族(ホブゴブリン)の見た目での変化は、肌の色が黄緑から人間と同じ白色や黄色に変わったことと、鬼一族の証である角が生えた位でしょうか?それ以外に大した変化は無いと言えます。

兎に角、そんな感じでリムル様の街は更なる戦力強化が為された訳です。そんなリムル様の街に本日、東門から1つの種族の使者が訪れました。その種族は――――

 
 

 
後書き
という訳で、リムル街(仮称)に住んでいる人型魔物が全員戦闘系鬼種族になり、リムル街が鬼隠れの里(仮称)化しました。(笑)

次話では原作のお調子者キャラの彼が出てくる訳ですが、彼は初見でどう思うのでしょう?

子鬼族(ゴブリン)村に来たと思えば、城壁と堀で囲まれた巨大な街(というか里?)
②街の住民は子鬼族(ゴブリン)ではなく、仙鬼、帝鬼(オニ)月鬼(オニ)、羅刹、修羅、忍鬼(オニ)大鬼王(オーガキング)大鬼将軍(オーガジェネラル)大鬼候(オーガロード)大鬼族(オーガ)、スライム、嵐牙狼族(テンペストウルフ)子鬼族(ゴブリン)どころか人鬼族(ホブゴブリン)すらいない。

普通なら心が折れますけど、果たして彼の心はどうなるか?

ちなみに大鬼王(オーガキング)大鬼将軍(オーガジェネラル)大鬼候(オーガロード)はオリジナル設定の種族です。

大鬼王(オーガキング)鬼人族(キジン)と同格といった感じで考えています。(笑)


追記


本文内で比喩表現として登場したジ○・カスタムについて、ガン○ムシリーズに詳しくない人の為にも念の為説明しておこうと思います。

ジ○・カスタムとは

ガン○ムの世界において短期大量生産を目的に作られた低コスト型ガン○ム―――ジ○という機体を、性能向上させつつコストを抑えるという無茶な目的で再設計、開発された量産機体です。
しかし、量産機とはいえ一般兵全員に配備することがコスト的に難しかった為、エース級パイロットに優先的に配備される専用機の様な機体でもあります。
ジ○の時は動力炉の出力が低くて使えなかった武装があるのですが、この機体はその点が改善されていて拡張性もあり、機体設計も優秀だった為仕様変更やパイロットに合わせた改造がされ、かなり長い期間バージョンアップ等で使われていました。
配備されてから数年後には新型機が配備される様になりましたが、その機体にはある問題点があった為、ベテランには新型機ではなくジ○・カスタムに乗り続けることを選ぶ者も多かったそうです。
また配備直後は出力だけでなく、信頼性や整備性も含めて量産機では最上位機体だったのですが、突出した面の少ない無難な特性であった為、「特長がないのが特徴」と表現するパイロットもいた機体でもあったのです。 

 

第7話 改訂版(2019/04/30)

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回はお調子者蜥蜴人族(リザードマン)・ガビル君の登場回です。

本作では(本気モードの)朱菜が天災(特S)級の存在である為、朱菜の前でリムルを愚弄したりしたら、どんなことになるか……。

考えただけでガクブルものです。さて、ガビル君は果たして原作通り地雷を踏むのか?それとも某剣の英霊の様に直感で回避するのか?

それでは本編をお楽しみください。 

 



【視点:ガビル】



我輩の名はガビル。誇り高き蜥蜴人族(リザードマン)の戦士長であり、蜥蜴人族(リザードマン)の次期首領となる者である。

現在、我輩は側近ともいえる者達と共に蜥蜴人族(リザードマン)の現首領である親父殿の命で、子鬼族(ゴブリン)の村々を巡っている。

何故、誇り高き蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)村を巡っているかというと、20万にも及ぶ豚頭族(オーク)の軍勢が蜥蜴人族(リザードマン)の領域へと侵攻しようとしているからである。

我ら蜥蜴人族(リザードマン)の戦力が1万に対して、豚頭族(オーク)の戦力は20万と彼我兵力差は1対20。その戦力差を少しでも解消する為、親父殿は子鬼族(ゴブリン)共を戦力に加えようと考えている様である。

そして、我輩は子鬼族(ゴブリン)村を巡っている時に子鬼族(ゴブリン)共から封印の洞窟付近に新たな子鬼族(ゴブリン)村が作られたという話を聞き、態々封印の洞窟の近くまでやって来たのである。

……そう、封印の洞窟近くまでやって来たのであるが、我輩は疲れているのだろうか?封印の洞窟へと近付いて行くにつれて我輩達に巨大な壁が迫って来ている様に見える。


「………子鬼族(ゴブリン)村巡りに疲れたのだろうか?何故か封印の洞窟に近付くにつれ、我輩達に巨大な壁の様なものが迫って来ている様に見える」
「ガビル様、その壁なら俺達にも見えてるぜ」
「見えてるー」
「封印の洞窟付近に壁があるなど、聞いたことがないが……」


部下達の話を聞く限り、我輩が疲れで壁の幻を見ている訳ではない様である。しかし、あの壁は一体何であるか?今まで見たことも聞いたこともないのである。そんな我輩の疑問は壁へと近付いて行くことで判明するのである。


「あれは……、門か?」
「ということは、あの壁は人間や亜人などの街で見られる城壁というものか?」


城壁。その様なもの、今まで巡った子鬼族(ゴブリン)村には存在などしなかった。どうやら、あの子鬼族(ゴブリン)村の統率者はただの子鬼族(ゴブリン)ではない様だ。

もしかしたら、人鬼族(ホブゴブリン)がいるのかもしれぬ。または他の子鬼族(ゴブリン)村より子鬼族(ゴブリン)の数が多く、建造できたのかもしれぬ。

兎に角、統率者がどの様な存在であれ、我輩の方が立場は上であるという印象を与えねばならんな。


「すまんがあの村に先行し、我輩が使者として訪ねてきた旨を村の者に伝えて来てくれんか?当然のことだが、村の統率者に会いたいということも一緒に伝えてくれ」
「わかったー」


我輩が部下の中で一番愛嬌のある者にそう告げると、部下は子供の様な返事をして、門のある所まで走って行った。


「………あいつは本当に我輩の言ったことを理解しているのだろうか?」
「当然、……とは言い難い」
「あ奴は天然である故」


おい!お前らまでそう言うと我輩も不安になるであろう!!我輩がそんなことを考えていると、対して間も空けずに門へと向かわせた部下が槍を持っている手を左右に振って来た。

どうやら、子鬼族(ゴブリン)村の統率者が出てきた様である。よし!第一印象が大事である故、華麗に登場しようではないか!!

我輩は走行蜥蜴(ホバーリザード)に騎乗したまま駆け出し、子鬼族(ゴブリン)村の者共の前で華麗に走行蜥蜴(ホバーリザード)を止め、マントをはためかせながら地面へと降り立った。


「我が名はガビル!お前らに我輩の配下となる栄誉を与えてやろう!!」


地面に降り立つと共にカッコいいポーズをとりながらそう告げ、改めて子鬼族(ゴブリン)村の者達に視線を向けると、そこには人間と思しき者が2人、鬼人族(キジン)と思しき者が6人、大鬼族(オーガ)と思しき者が2人いた。

……………あれ?子鬼族(ゴブリン)が1匹もいない?もしかして、ここは子鬼族(ゴブリン)村ではないのか?



【視点:リムル】



何だ、この蜥蜴野郎。配下となる栄誉?偉そうなこと言って、一体何様のつもりだ。

俺がそんなことを考えていると、真横から異様な空気が漂ってきたので、恐る恐る真横に視線を向けると、そこには冷笑を浮かべた朱菜がいた。


「リムル様、私にこの無礼者を成敗する許可を下さい」


やっぱりキレてるーーーー!朱菜さん、超キレてるよ!!あっ!?眼が輪廻転生写輪眼に変化してる!!?それにこの場にいた俺以外の全員が朱菜から距離を取ってる!!

紅麗と穂乃花、紅丸!お前らは朱菜と血の繋がった家族だろう!!何で朱菜から一番距離取ってんだよ!?紫呉と紫苑も俺の身辺警護役なのに離れてんじゃねぇよ!!

白老も気配消すな!リグルドとリグルも冢宰と右近衛大将って立場なのに、俺を見捨てようとするな!!お前ら、どんだけ本気(マジ)ギレ朱菜さんが怖いんだよ!!?

…………すみません。俺も怖いです。俺もお前らと同じ立場なら自分の身を優先して朱菜から距離を取ります。けど、一生――いや、百分の一生のお願いだから俺を見捨てないで!

ちなみに俺が百分の一生って言い直したのは、神仙に至った俺には寿命というものが存在しないからだ。

というか、どうにか朱菜を宥めないとマジでこの蜥蜴人族(リザードマン)達がヤバい。現に朱菜の眼が輪廻眼と転生眼に変化してから、ガビルって奴以外の震えが止まらなくなっている。ぶっちゃけ、イタチに睨まれた蛇だ。


(写輪眼のイタチに睨まれた大蛇丸ですね。分かります)


……あの『大賢者』さん?いきなり喋ったかと思えば一体何言ってるんですか?写輪眼の鼬って何ですか?写輪眼を持ってるのはうちはの鬼一族だけですよ。鼬が写輪眼を持ってたら、魔物が鼬以下になっちゃうよ。

それに大蛇丸って何?誰かの名前?相手が蜥蜴だから、爬虫類繋がりで蛇を例えに出して、天敵を鼬にしたんだろうけど、意味が不明過ぎるぞ。


(否。今のは『大賢者』ではなく世界の言葉です。意味は不明)


………うおぉぉぉい!マジでか?マジで世界の言葉!?噂の世界の言葉―――しかも、俺にとってこの世界初の世界の言葉が意味不明な内容って、一体どういうこと!?


(解。その質問に対する明確な答えを出すことができません)


いや、別に『大賢者』さんに質問した訳じゃないんだけど……。っていうか、名有り(ネームド)だけのことはあるのか?ガビルって奴、体が震えてはいるけど、他の奴等ほど酷くは無いな。


「あ、貴女(あなた)がこの集落の統率者であるか?身に纏う妖気(オーラ)から只者ではないと思うが、大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)にも見えぬ」
「私の名は大筒木朱菜。神仙へと至った鬼――仙鬼(センキ)という種族です。分かり易く説明するならば、魔王に至った鬼といった所です。
そして、私はこの街の統率者ではなく、統率者の補佐兼相談役です。この街の統率者は―――」
「一応、俺だ」
「貴殿が?失礼だが、貴殿の妖気(オーラ)は大筒木殿より劣っている様に感じるが……」
「お前の言う通り、俺の魔素量は朱菜より劣っている。だが、魔素量の多寡が戦力の決定的な差や統率力に繋がる訳でも無いだろう?」
「……ちなみに貴殿はどういった種族であるか?」
「元スライムだよ。今は粘体系妖怪仙人―――神仙へと至ったスライムだけどな」
「…………成程。どうやら大筒木殿は騙された、もしくは脅されておるようだ」
「「は?」」


ガビルの意味不明な発言に俺と朱菜は思わずハモってしまった。何言ってんだ、この蜥蜴野郎?


「シンセンというものを我輩は知らぬが、スライムを主に仰ぐ鬼が本来存在せぬことは知っている。もし、鬼がスライムに従っているとするなら、それは何かしらの弱みを握られているからであろう」
「お前、何言って――――」
「スライムという種族には人型生物の衣服を溶かす破廉恥極まりないものもいると聞く。大方貴様も大筒木殿を辱め、脅しているのであろう!この不埒者め!!」
「………」


いや、もう本当に何言ってんのこの蜥蜴?ってか、この世界には衣服を溶かす浪漫スライムが存在するの?


(解。該当種族はグリーンスライムという名称です。衣服しか食べない偏食スライムであり、性別が女の人型生物に嫌われています)


そりゃあ、男にとって浪漫生物でも女にとっては屈辱極まりないだろうから、嫌われるのも当然だろうな。けど、この世界のスライムがそのグリーンスライムだけってことは無いだろう?


(是。グリーンスライム以外にポイズンスライム、ロックスライムなど、様々な種族が存在します)


……なら、何でこの蜥蜴野郎は俺をグリーンスライムであることを前提に罵倒して来てんだよ!?理不尽過ぎるだろ!!?


「………――す」


俺が蜥蜴野郎の理不尽な罵倒に対して心の中で文句を叫んでいると、真横から何かしらの呟きが聞こえてきた。


「勝手な妄想でリムル様を糾弾するなど、一族郎党万死に値します。豚頭族(オーク)に滅ぼされる前に私達で蜥蜴人族(リザードマン)を滅ぼしましょう」


ヤバァァァァァい!さっきまで激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態だった朱菜が超新星・ムカおこエンドオブエンシェントジェノサイドブレイバァァァ状態になってるぅぅぅ!!

朱菜の周囲にオレンジを通り越して、黄金色のチャクラが火の粉の様に舞ってるよ!名付けの時に何回か見てるけど、これって尾獣チャクラモードになる前兆だよな!?

あっ!朱菜の肌に隈取みたいな模様が浮かび始めてる!これって、あれだよな!?半妖態って奴になり掛けてるんだよな!!?


「ちょっ!落ち着け、朱菜!!」
「私は十二分に落ち着いています、お兄様」
「落ち着いている様には全く見えんぞ、朱菜!少し頭を冷やせ」
「私は至って冷静です、お父様。今まで生きて来て、これほどまでに心の内が冷え切ったことはありません」


それは冷静なんじゃなくて、頭の中が殺意一色になってるだけじゃないか?取り敢えず、真剣(マジ)で朱菜を止めないと、ここにいる蜥蜴人族(リザードマン)だけでなく、ジュラの大森林にいる蜥蜴人族(リザードマン)が根絶やしにされかねないな。


「……木遁・木龍の術」
「!!?」


朱菜が殺意と共に尾獣チャクラモードになったら、この場にいる蜥蜴人族(リザードマン)仙気(オーラ)に中てられてショック死しかねないので、俺は木龍の術で朱菜の拘束と尾獣チャクラの吸収をすることにした。

木龍に巻き付かれた朱菜は自分が拘束されるとは思っていなかった様で凄く驚いている。


「朱菜、(オゥルォ)の補佐兼相談役の大老(たうろ)が皇の意見も聞かずに勝手に行動するな。少しの間、そのまま頭を冷やせ」
「…………はい」


よし!何とか朱菜を抑えたぞ!!……あれ?これって俺の実力を見せたことになるんじゃないか?暴走し掛けの朱菜を拘束した訳だし。


「……うちの巫女姫を怒らせる様な発言は控えて貰えないか?さっきの状態を見た後なら分かると思うが、朱菜が本気になれば蜥蜴人族(リザードマン)は疎か豚頭族(オーク)の軍勢ですら滅ぼせる可能性があるんだ」
「朱菜様はリムル様のことを敬愛しておりますからな。リムル様への罵倒は朱菜様の逆鱗とも言えるでしょう」


白老、よく言ってくれた!そういうことは俺が言うより第三者が言った方が説得力はあるんだ。


「取り敢えず、これで俺の実力は示せたと思う。それでも納得できないというなら―――」
「リムル様ーって、幹部の皆が揃って何やってんスか?それに何で朱菜様が木龍に絡まれてんスか?」


ナイスタイミングでゴブタが現れた。流石に俺やうちは、日向の鬼一族が蜥蜴人族(リザードマン)の相手をする訳にもいかんし、リグルドやリグルも論外だ。

なら、普通の大鬼族(オーガ)(?)であるゴブタに相手をさせればいい。一応、ゴブタは右近衛府の兵士で左近衛府との合同戦闘訓練にも参加してるみたいだし、きっと大丈夫だろう。


「1対1での勝負をしようじゃないか。こっちが負けた時は俺を含む全員がお前の配下になってやる。だが、こちらが勝った時は問答無用で帰って貰う。
交渉先の統率者を愚弄する愚か者とは手を組む気が無いんでな。ちなみにこちら側から勝負に出る戦士はこのゴブタだ」
「え?何っスか?何なんっスか?」


スマンな、ゴブタ。恨むならこのタイミングで現れた自分を恨め。



 
 

 
後書き
という訳で、ガビル君は見事に地雷を踏んでくれました。(笑)

もし、リムルが木龍で朱菜を拘束していないと、ガビル君達は全員が螺旋丸でミンチか、尾獣玉で消滅していたことでしょう。(笑)

まぁ、蜥蜴ミンチより豚ミンチの方がおいしいでしょうから、螺旋丸は豚頭族(オーク)にお見舞いされることになる可能性がありそうですね。(笑)

次回はゴブタVSガビルということになりますが、決着方法は原作と異なる形に行きたいと思っています。

そんな訳で、次回もお楽しみに!!



追記

ガビルの一人称で「我輩」と「吾輩」が混在していたので、「我輩」に統一しました。 

 

第8話 改訂版(2018/11/07)

 
前書き
2ヶ月振りのおはこんばんにちは。沙羅双樹です。

読者の皆さん、9月は更新できずに申し訳ありませんでした!orz

実は私、グラブルで騎空団の団長をやっていて、刀○乱舞とのコラボイベントや古戦場などで忙しかった為、更新できませんでした。

そして、今週からまたCCさ○らとのコラボイベントが始まるので、執筆が滞りそうです。(笑)

その点を先に謝罪させて頂きます!orz
(まぁ、執筆が滞った原因はグラブルだけでなく、新しく買った小説を読み進めていたことにもあるんですが……
読者の皆さんは「ありふれた職業で世界最強」という作品をご存知でしょうか?今回の話で朱菜が「ありふれ」の主人公の影響が出ていることが十二分に分かると思います。(笑))

まぁ、何はともあれ第8話が無事に完成したので、更新を待っておられた方は今回もお楽しみ下さい。

 

 



【視点:ゴブタ】



どうも。つい先日、人鬼族(ホブゴブリン)から大鬼族(オーガ)に存在進化した奈良ゴブタッス。

現在、オイラは蜥蜴人族(リザードマン)の戦士と相対している状態なんッスけど、正直何でこんなことになったのか、オイラも全く分かってなかったりするッス。

ただ、白老さんの鬼鍛錬を終えてから東門付近を適当にぶらついてて、東門の外が急に騒がしくなったから右近衛兵として様子を見に来ただけなのに。


「ゴブタ、その蜥蜴人族(リザードマン)を殺さん程度にぶっ飛ばせ。それができたら、朱菜に頼んでお前用の魔導具か宝貝(パオペエ)を作って貰ってやる」
「ホントッスか!?かなりやる気が出たッス!!」
「ちなみに、お前が負けた場合は朱菜がキレてこの辺り一帯が焦土になり兼ねない―――」
「超死ぬ気でぶっ飛ばすッス!!」


オイラの負け=朱菜さんがキレるって、オイラが来る前にこの蜥蜴人族(リザードマン)が絶対に何かしてるッスよね!?一体何をしたんッスか!!?

朱菜さんをキレさせるとか、唾を吐きかけた竜種の逆鱗を踏んでグリグリする様なもんッスよ!?暴風竜様に唾を吐いて、中指立てる様なもんッスよ!?

今のオイラの全力で何としてもこの蜥蜴人族(リザードマン)をぶっ飛ばすッス!でないと、この辺一帯がどうなるか……、想像もつかないッスよ!!



【視点:朱菜】



どうも、こんにちは。現在進行形で木龍に拘束されている大筒木朱菜です。現在、私の目の前でリムル様を愚弄した駄蜥蜴とゴブタさんの戦いが始まろうとしています。

もし、ゴブタさんが負ける様なことになれば、この場にいる駄蜥蜴を仙法・超尾獣螺旋手裏剣で殲滅してから、尾獣化して蜥蜴人族(リザードマン)の洞窟がある湖へと尾獣玉を放とうと思ってるんですが、問題ないですよね?

少なくとも私は問題ないと思ってます。あっ!どうせなら、豚頭族(オーク)達が蜥蜴人族(リザードマン)の洞窟に最も近付いた時に尾獣玉を放ちましょう。そうすれば、豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)を一網打尽にできます。

そういう訳でゴブタさん、その駄蜥蜴に負けて貰っても全然構いませんよ?というか、寧ろ負けて下さい。

私が切実にゴブタさんの負けを願っているにも拘らず、ゴブタさんは相手と同じ長物である槍を手にして、気合十分といった感じです。

というか、気合と共に体外にチャクラが漏れ出してますよね?八門遁甲の第一門・開門でも開いたんですか?八門遁甲のことは教えてないですよね?

………そういえば、街を発展させる前に行った忍術講義の時、現在の夏官に属する方々に忍体術講義も行った気が……。その時、お兄様相手に獅子連弾、お父様相手に表蓮華を使った気が……。

もしかして、その時に八門遁甲の第二門・休門までの開き方を見様見真似でコピーされたのでしょうか?もしそうなら、ゴブタさんの名字は見取り稽古が得意な某姉の鑢か、某学園の98・99代生徒会長の黒神にすべきだったかもしれません。

っと、私がそんなことを考えている内に勝負が始まりました。ゴブタさんが手に持っている槍を駄蜥蜴へと投擲して、自分から意識を逸らすと同時に嵐牙狼族(テンペストウルフ)が得意とする影移動を使って移動しました。

移動先は駄蜥蜴の足元。ゴブタさんを見失い周囲を見回している駄蜥蜴は足元の影から現れたゴブタさんによって顎を見事に蹴り上げられ、その体を十数m程上空に打ち上げられます。

今更ですが、数mから十数m上空に打ち上げる蹴りを顎に喰らった場合、普通の生物なら顎の骨が砕けた上、脳が揺さ振られて意識を失う―――というか、脳に障害が出るレベルの衝撃が伝わってると思います。

表蓮華や裏蓮華、獅子連弾の予備動作で顎の骨が砕けないどころか、意識すら失わないNARUTO世界の忍って、ある意味人外ですよね。

まぁ、この世界の魔物はその名の通り人外なので、顎の骨が砕けなかったり、意識を失わなくても不思議ではないんですけど。……あれ?よく見てみると駄蜥蜴は気絶してる?白目を剥いた状態で打ち上げられてる気がします。

当然のことなんですが、影舞葉で駄蜥蜴の背後を取っているゴブタさんはそのことに気付いていません。いいですよ、ゴブタさん!そのまま駄蜥蜴をオーバーキルして下さい!!

私の要望を知ってか知らずか、ゴブタさんは駄蜥蜴に獅子連弾を撃ち込み始めます。蹴り、裏拳、ボディーブロー、回し蹴りと繋がる連撃。でも、全て攻撃を放ってもまだ高さに余裕があります。

あっ!回し蹴りで地面に急降下していた駄蜥蜴に晒しが巻き付いて、空中にいるゴブタさんへと引き戻されます。これはまるで裏蓮華―――


「まだまだ、ここからッスよ!」


ゴブタさんはそういうや否や、自分の下に引き戻した駄蜥蜴に更に晒しを撒きつけ、抱き着くと同時に高速回転を始めました。これは表蓮華!裏蓮華ではなく、獅子連弾と表蓮華の融合体術ですね!!


「ゴブタ連華ッス!!」


技名を叫びながら駄蜥蜴を地面に叩き付けるゴブタさん。地面に叩き付けられた駄蜥蜴は完全に陸上犬神家状態です。というか、ゴブタレンゲって何ですか?しかも、ニュアンス的に蓮華の蓮が獅子連弾の連っぽいんですけど。

…………まぁ、何はともあれ良くやってくれました!見事なフルボッコ具合で私も気分爽快です。ブラボーです!クライマックスブラボー!!木龍に拘束されてなければ盛大な拍手を送ってます。


「よくやったな、ゴブタ。約束通り、お前用の魔導具か宝貝(パオペエ)を作ってくれる様、朱菜に頼んでやる」
「やったッスー!!」


あれ?いつの間にか私がゴブタさんの魔導具か宝貝(パオペエ)を作ることになってます。そういえば、勝負が始まる前にリムル様がゴブタさんに耳打ちしていた様な……。

いや、別にゴブタさんの魔導具や宝貝(パオペエ)を作るのが嫌って訳ではないんですけどね。むしろ磁双刀弐型を作ってから改造魔導具や改造宝貝(パオペエ)を作りたい衝動に駆られてたりするんですが……。

私がそんなことを考えていると、リムル様は駄蜥蜴がやられたことに唖然としている蜥蜴人族(リザードマン)達に視線を向け、口を開きました。


「お前らもちゃんと見てたと思うが、勝負はウチのゴブタの圧勝だ。約束通り、そのガビルって奴を連れて帰ってくれ。あと、配下ではなく対等な立場の同盟を結ぶというなら豚頭族(オーク)の軍勢との戦いに協力する旨を伝えといてくれ」
「こ、これで終わりと思うでないぞ」
「い、いずれまた来るぜ」


蜥蜴人族(リザードマン)達は三下のチンピラみたい捨て台詞を吐くと、犬神家の駄蜥蜴を地面から引っこ抜き、去って行きました。


「………やっぱり尾獣化して蜥蜴人族(リザードマン)の住む湿地帯に尾獣玉を叩き込みましょう」
「だから、止めいっての!」


私が蜥蜴人族(リザードマン)殲滅を口にすると、リムル様が私の頭頂部にチョップを放ってきましたが、私を軽く諌める為のチョップなので痛くはありません。

……なんか、恋人同士がじゃれ合う遣り取りみたいでいいですね。リムル様とそういう遣り取りが出来たので蜥蜴人族(リザードマン)達のことは許して上げましょう。



【視点:リムル】



蜥蜴人族(リザードマン)達を追い帰して早数時間。豚頭族(オーク)の軍勢に関する情報収集をさせていた蒼月と蒼影が戻って来た為、幹部メンバーを宮殿に召集し、会議――というか軍議を行うことになった。

あっ!ちなみに朱菜の拘束は既に解いている。というか、俺がチョップしてから何故か機嫌が良くなったので、拘束しておく必要が無くなったんだ。

どうしてチョップで機嫌が良くなったんだ?紅麗と紅丸にそれとなく朱菜がそういった性癖なのか聞いてみたんだが、返って来た答えは―――


「私がそんなことをすれば、確実に昼虎を繰り出されます」
「俺がそんなことをしたら、裏蓮華でボコボコにされます」


というものだった。取り敢えず、朱菜がM気質でないことには安心したんだが、だとするとどうして機嫌が良くなったのかが謎だ。

…………まぁ、別に気にするべきことでもないか。そんなことより今は豚頭族(オーク)の軍勢のことだ。蒼月と蒼影の話によると、その総数は―――


「……20万って、そんな馬鹿げた数の豚頭族(オーク)がこの森に進攻してるのか?」
「はい。敵方の動向については自分と蒼影の影分身20体が四体一組(フォーマンセル)で監視しているので、何かしらの変化があればすぐに分かる手筈になっています」
「……大鬼族(オーガ)の里に襲撃を仕掛けてきた豚頭族(オーク)の数は数千。1万にも達していなかった筈ですが……」
「穂乃花様の仰る通り、我らの里を襲撃した豚頭族(オーク)は数千でした。ただ、あの豚頭族(オーク)共は別動隊だった様です。まぁ、その別動隊も朱菜様によって大半が塵も残さず殲滅された様ですが……」
「害意をもって襲って来たんです。容赦なく殲滅するのは当然ではないですか、蒼影?それに私の大切な存在(もの)に手を出す存在(もの)は、この世に存在する価値もありません」
「「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」」
「………ゴホン。豚頭族(オーク)の軍勢本隊についてですが―――」


覇王の様な朱菜の過激な発言にその場にいる者全員が絶句してしまった。そして、その中で最も早く復帰した蒼月は咳払いを1回すると、何事も無かったかの様に話を再開した。


「―――大鬼族(オーガ)の里から少し離れた東側のルートを北上し、蜥蜴人族(リザードマン)の支配領域であるシス湖へと向かっています」
「……豚頭族(オーク)本隊の目的がシス湖にあるとするなら、大鬼族(オーガ)の里は何で襲われたんだ?本隊の進路の妨げにもなってないし………。もしかして、お前ら豚頭族(オーク)に恨まれる様なことをしてないよな?」
「ワシがこの世に生を受けて数百年、大鬼族(オーガ)豚頭族(オーク)に恨まれる様なことをしたという話は見たことも聞いたこともありませんな」
「ふーん。……って、数百年?大鬼族(オーガ)ってそんなに長命な種族なのか?」
「一般的な大鬼族(オーガ)の寿命は100年前後ですよ。数百年生きてる白老は異常なんです」
「年長者に向かって異常なんて失礼にも程があります、お兄様。それに大鬼族(オーガ)の上位種である鬼人族(キジン)は寿命が1000年、鬼人族(キジン)より上の上位種となれば、その寿命は数千年から数万年になるじゃないですか」


………数千年から数万年の寿命って、一体どこの異星人?まるで梶○ワールドのキャラじゃん。もしかして、ジュラの大森林って、樹○本星の皇都なんじゃね?ジュラだけに。この森のどこかに皇家の樹とかあるんじゃね?……取り敢えず―――


「朱菜。宇宙一の天才科学者を自称する哲学士にだけはならないでくれよ」
「はい?」
「……ただの妄言だ、気にしないでくれ。…………で、恨まれてないとすると、豚頭族(オーク)が別動隊を使ってまで大鬼族(オーガ)の里を襲ったのは何でだ?何が目的だ?」
豚頭族(オーク)は基本的に知能が高くない魔物だからな。本能以外で侵攻してるってんなら、バックに何かしらの存在がいると考えるべきだろうな」
「数万の軍勢を支配できるカリスマ持ちってなると、魔王か?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」


カイジンの発言から俺が豚頭族(オーク)のバックにいる存在の候補を口にすると、この場にいる全員が黙り込んだ。まぁ、下手すれば魔王を敵に回すかもしれないんだ。黙り込むのも当然だな。


「ま、飽く迄可能性だ。根拠も確証もないし、今の話は忘れてくれ。…………そういえば魔王じゃないけど、怪しい奴はいたな。魔人ゲロメットとかいう奴。
お前らも最初はそいつが豚頭族(オーク)大鬼族(オーガ)の里に嗾けたって思ってたんだろ?そいつが何かしらの目的で豚頭族(オーク)を利用しているって可能性は無いのか?」
「リムル様、ゲロメットではなくゲルミュッドです」
「お、おう。そうか。……で、そこの所はどうなんだ?蒼月」
「………ゲルミュッドが豚頭族(オーク)を利用している可能性はあると思います。ただ、数万の軍勢を支配できるかといえば、それ程の能力があったとは思えません」
「……ぶっちゃけ、今のお前らと比べてどうなんだ?」
「………正直言って、自分達より格下です。鬼人族(キジン)以上であれば、個人で瞬殺できる相手でしょう」
「成程。確かにそんな三下が20万もの豚頭族(オーク)の軍勢を支配できるとは思えないな。それじゃあ、誰が豚頭族(オーク)の軍勢を支配してるんだ?」
「……魔王でないとすると、可能性としてあり得るのは豚頭帝(オークロード)でしょうか」
豚頭帝(オークロード)?それは人鬼候(ゴブリンロード)大鬼候(オーガロード)豚頭族(オーク)verか、穂乃花?」
「どちらかといえば、人鬼王(ゴブリンキング)大鬼王(オーガキング)の様な統率種です。ただ、数百年に一度生まれる特殊個体(ユニークモンスター)で、その異常な統率力は味方の恐怖心を喰らうことで得ているとの話です」
「……魔王が統率している可能性よりかは高いか。ちなみに豚頭族(オーク)が名付けで豚頭帝(オークロード)に進化する可能性はあるのか?」
「まぁ、魔素量がそれなりに多い魔人が名付けをすれば、進化する可能性もあると思いますけど」
「なら、魔人ゲルミュッドが豚頭帝(オークロード)を裏で操ってると考えるべきだな。三下の魔人でもそれくらいはできる可能性も高いだろう。取り敢えず、豚頭帝(オークロード)が存在していることを前提に軍議を続けよう」


俺がこう告げた数分後、俺達はとある存在から豚頭帝(オークロード)が実在していることを告げられることとなる。


 
 

 
後書き
………という訳で、トレイニーさんの登場は次回に回してみました!(笑)

今回のメインはゴブタvsガビルといった感じなんですが、どうだったでしょう?

私的にはガビルならこのコンボを喰らっても「あ~、死ぬかと思ったである」とか言って復活する気がしたので、書いてみました。(笑)

そして、何気に組み込んだ梶○ネタ。(笑)読者の中に何人くらい○島ワールドを知っている人がいるでしょうか?

異世界○聖機師物語へと繋がる天地○用!魎皇鬼の第4期OVAが発売されたことで、地味にテンションの上がった作者が何の考えもなくネタを組み込んだ訳なんですが……。(笑)

建国時の名前も原作通りではなく、樹○連邦国にしてもいいかな?とか思ってます。ジュラの大森林だけに(笑)
(その場合、首都名は始祖樹からとって津○魅―――はないですね(笑))

次話はトレイニーさんの登場から豚頭族(オーク)の軍勢との大戦手前まで話を書く予定です。期待し過ぎない程度に期待してお待ちください。(笑)


追記

作中内における梶○ワールドネタが分からない人はT●TAYAかGE●で天○無用!魎皇鬼シリーズを見て下さい。(笑)

哲学士云々は3期以降や外伝とも言える天地●用!GXPなどを見れば分かると思います。(笑)

まぁ、端的に述べるとマッドサイエンティストなんですけどね。(笑)研究対象を手に入れる為なら破壊活動も辞さなかったり、同期との軽口の賭けから軽い気持ちで銀河連合最大規模の王政国家の転覆を目論んだりする連中がいるので……。(笑)
(当然、そういう奴らばかりという訳でもないんですが………)
 

 

第9話 改訂版(2018/11/07)

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回は話が割と短い上、樹妖精(ドライアド)のあの人アンチと捉えられかねない遣り取りがありますが、私は別にあの人が嫌いな訳では無い上、アンチにしたつもりもないのでその点のみご了承下さい。(笑) 

 



【視点:リムル】



幹部メンバーと共に豚頭族(オーク)の軍勢対策の会議を始め早数十分。その背後にいるであろう黒幕の予想をしていると、蒼月と蒼影が何かに反応したのか同時にピクリと一瞬だけ動いた。


「……どうかしましたか?蒼月、蒼影」
「偵察中の影分身に接触した者がいた様で、思念伝達が来ました」
「リムル様と朱菜様に取り次いで貰いたいとのことですが、如何いたしましょう?」
「俺と朱菜にか?誰だ?ガビルみたいな奴だったら会いたくないんだけど」
「無礼者の類ではありませんが、大変珍しい相手です」
「ジュラの大森林の管理者―――樹妖精(ドライアド)です」


樹妖精(ドライアド)!?樹妖精(ドライアド)って、あれか?知性ある種族の雄を誘惑して、最終的には養分にしちゃうエロ&デンジャーなお姉ちゃんか?ちょっと会ってみたい気もするけど、養分にされるのは嫌だな。

………ん?今、蒼影は樹妖精(ドライアド)をジュラの大森林の管理者って言ったよな?ってことは、その樹妖精(ドライアド)さんが国王的ポジで、俺は地方領主みたいなもんじゃね?

…………会わないって選択肢が最初から無ぇじゃん。会わなかったら一族郎党どころか領民諸共養分にされかねないじゃん。


「……お呼びしてくれ」
「「は」」


俺が樹妖精(ドライアド)さんをお呼びする様に言うと、蒼月と蒼影は同時に返事をし、それから大した間もなく1枚の木の葉が何処からともなくテーブルへと舞い落ちてきた。

そして、舞い落ちた木の葉がテーブルと接触すると共に旋風の様な魔素の衝撃波が発生し、木の葉の落ちた場所に1体の妖精が姿を現した。


「初めまして、“魔物を総べる者”。そして、“安寧秩序を為す者”及びその従者たる皆様。突然の訪問、申し訳ありません。私は樹妖精(ドライアド)のトレイニーと申します。どうぞ、お見知りおき下さい」


あれ?エロいお姉ちゃんじゃなくて清楚系のお姉ちゃんが出てきたぞ。ちょっと予想外――いや、これは誘い攻めのパターンか?襲われ易い清楚系を装いながら、襲ってきた相手を捕食する的な?

ってか、トレイニーさんとやらは俺と朱菜に視線を向けながら“魔物を総べる者”、“安寧秩序を為す者”って言ってたけど、一体どういう意味だ?

………取り敢えず、魅了されない様に気をしっかり持ちつつ、失礼の無い様に応対しておこう。


「こちらこそ、御初に御目に掛かる。えー…、そういえば集落の名前を決めて無かったな。住民の殆どが鬼族で構成されてるし、鬼隠れの里でいいか。俺はこの鬼隠れの里で(オゥルォ)を務めているリムル=テンペストです」
「私はリムル様の補佐役である大老(たうろ)を務めている大筒木朱菜です。…………自己紹介も終えた所で単刀直入にお尋ねします。トレイニー様は本日、どの様なご用向きでこの里にお越しになられたのでしょうか?」
「魔物を総べる者――リムル=テンペスト。そして、安寧秩序を為す者――大筒木朱菜。あなた方に豚頭帝(オークロード)の討伐を依頼する為、本日は罷り越しました」


……このお姉ちゃん、笑顔で何言ってんの?


「お、俺と朱菜に豚頭帝(オークロード)の討伐依頼、ですか?」
「ええ、そうです。リムル=テンペスト様」


どうやら、俺の聞き間違いではない様だ。ってか、このお姉ちゃんにっこり笑顔で言い切ってきやがった。


「いきなり現れたかと思えば随分と身勝手な物言いだな、樹妖精(ドライアド)。何故、この里に来た?今でこそ、里の住人は全員が大鬼族(オーガ)以上の魔物に進化しているが、つい先日まで大半が人鬼族(ホブゴブリン)だった。このジュラの大森林には人鬼族(ホブゴブリン)より有力な種族はいるだろう?」
「確かに、あなた方――元大鬼族(オーガ)の里が健在であれば、そちらに出向いていたことでしょう」
「……つまり、私達がこの地に移ったからトレイニー様もこの地にお越しになられたということですか?」
「そうでもあり、そうでもないと答えるのが正解です。元大鬼族(オーガ)の里が健在であっても、リムル様の存在は無視できなかったのでこの地には訪ねていたことでしょう。
豚頭帝(オークロード)豚頭族(オーク)の軍勢の襲撃を受ければ樹妖精(ドライアド)だけでは抵抗もできず、樹人族(トレント)の集落は滅ぼされるでしょう。ですから、こうして強き者に助力を願いに来たのです」
「俺達にとって豚頭帝(オークロード)が存在すること自体、まだ仮定でしかないんだが?」
樹妖精(ドライアド)はジュラの大森林で起こったことの殆ど把握しております。あなた方の予想通り、豚頭帝(オークロード)は存在していますよ?」


トレイニーさんが茶請けのうす塩風ポテチを食べながらそう言うと、現大鬼族(オーガ)組であるリグルド達がざわついた。ってか、トレイニーさん。緊急事態の割には落ち着き過ぎじゃないですかね?ポテチ喰いながら、「まぁ、美味しい」とか言ってる場合ですか?


「……えっと、トレイニーさん。取り敢えず、返事は保留にさせて貰っていいか?一応、俺はこの里の長だからな。里の者の安全を最優先に考えないといけないし、元大鬼族(オーガ)である鬼達と共に戦う気はあるが、率先して藪を突く気はないんだ」
「……承知しました」


俺が里長としての意見をはっきりと告げると、トレイニーさんは微笑を浮かべたまま返答してくれた。どうやら機嫌を損ねることは無かった様だ。そして、トレイニーさんの為の椅子と茶を用意し終えた後、俺達は会議を再開した。


「……対策会議を続ける。豚頭帝(オークロード)の存在が確定した訳だが、豚頭帝(オークロード)豚頭族(オーク)達の目的が何か、予想できる者はいるか?」
「……豚頭帝(オークロード)は『飢餓者(ウエルモノ)』という特殊技能(ユニークスキル)を生まれる時に保有すると聞いたことがあります」
「『飢餓者(ウエルモノ)』?それはどんなスキルなんだ?朱菜」
「捕食した魔物の性質を一定確率で自分のものとするスキルです。同じ魔物を数多く捕食すれば、その分性質獲得の確率が上がるそうです」
「リムル様の特殊技能(ユニークスキル)捕食者(クラウモノ)』の下位互換といえるスキルですね」
「……大鬼族(オーガ)の里が襲撃された時も生きたまま捕食された者や亡骸を食い尽くされた者達がいました」
「貴女はそれを行った豚頭族(オーク)を例外なく滅していましたね。雷を纏った腕で体を貫いたり、広範囲に広がる炎で焼殺したり、鮫の形をした水弾の衝撃で内臓を破裂させたり、真空の刃で切り刻んだり。
他にも風を乱回転させながら球状形成したものや黒炎を乱回転させながら球状形成したものをぶつけたり、灰すら残さぬ黒炎で焼殺したり、砂を使って地面に引き摺り込んで圧殺したりと、色々な方法で同族が滅されたからこそ、豚頭族(オーク)は早々に大鬼族(オーガ)の里から撤退したのかもしれません」
「……私が里に攻め込んできた豚頭族(オーク)にどういった対処を行ったか、随分と詳しいですね。トレイニー様には覗き趣味でもおありなのでしょうか?」
「先程も言いましたが、樹妖精(ドライアド)はジュラの大森林で起こったことの殆ど把握しておりますので」
「つまり、豚頭族(オーク)の軍勢が大鬼族(オーガ)の里に進軍していることを知っていながら、私達にそのことを教えなかったということですか?
そして、自分達の集落が滅びに直面した途端、見捨てた種族すら巻き込んで助力を求めているんですか?随分と自分勝手ですね。恥という言葉を知っていますか?」


しゅ、朱菜とトレイニーさんが笑顔で毒舌を吐き合ってる!2人共見惚れてもおかしくない笑顔の筈なのに、見惚れることもできない。ってか、2人を中心に部屋の温度が急激に下がってる気がするぞ!

ってか、話が脱線してる。今の空気を如何にかする為にも無理矢理にでも話を戻そう!


「と、取り敢えず、豚頭族(オーク)の狙いはジュラの大森林に存在する大鬼族(オーガ)蜥蜴人族(リザードマン)を含む上位種を捕食し、その力を奪うってことだよな?
ってことは、ウチも高確率で狙われるな。仙鬼(センキ)帝鬼(オニ)月鬼(オニ)羅刹(ラセツ)修羅(シュラ)忍鬼(オニ)妖鬼(オニ)大鬼王(オーガキング)大鬼候(オーガロード)大鬼将軍(オーガジェネラル)大鬼族(オーガ)嵐牙狼族(テンペストウルフ)もか?
豚頭帝(オークロード)にとっては御馳走の並べられたテーブルと言っても過言じゃないよな?」
「リムル様、ご自分のことをお忘れではないですか?種族は異なってもリムル様は朱菜と同属の妖怪仙人ですよ?」
「元が粘体生物(スライム)だからな。俺なんて無視されそうな気もするけど、それはそれで助かるか?油断している所を逆に捕食できたら楽に倒せそうだ」


………まぁ、何はともあれ他人事ではなくなったな。紅麗達に豚頭帝(オークロード)を討たせてやりたいし。


「……そういえば、お伝えするのを忘れていました。此度の豚頭帝(オークロード)の誕生に魔人が関与しているのは確認済みです。そして、その魔人は十大魔王のいずれかの手の者です」


………森で起こったことの殆ど把握している、か。外面に反して腹黒にお姉ちゃんだ。暗黒物質を煮立てて焦げ付かせたのをブラックホールにぶちこんで黒蜜でもぶっかけた物体Xでも腹ン中に隠してんじゃねぇか?

魔王が関与していると聞かされて俺が動かない訳が無いって知っているからこそ、魔王と魔人のことを口にしたよな。………腹をくくるしかないか。


 
 

 
後書き
今回の後書きでは本文内でのことを2つ程補足して置きたいと思います。

まず、リムルが想像していた樹妖精(ドライアド)について

これは原作での清楚系樹妖精(ドライアド)ではなく、Re:Monsterのエロ系樹妖精(ドライアド)を想像していたという形に変更してみました。(笑)

次は朱菜による豚頭族(オーク)の滅殺方法について

本文内でも分かると思いますが天照で焼殺したり、流砂瀑流からの砂瀑大葬で圧殺したりしてますが、それ以外にも風遁・螺旋手裏剣でミンチにしたり、爆遁で爆殺したり、灼遁で木乃伊(ミイラ)にしたり、溶遁で溶かしたり、塵遁で原子分解したりしています。

以上、本文内では説明しきれなかった補足でした!(笑)
 

 

第10話 改訂版(2018/11/07)

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回の話の流れは、ゴブタ専用宝貝開発と戦準備、戦意高揚の演説といった流れになっています。

演説のシーンでは「うたわれるもの 偽りの仮面&二人の白皇」のBGMでもある「天啓の地」をyo●tubeなどで流しながら読んで見るといいかもしれません。(笑)

それでは本編に移ります。
 

 



【視点:朱菜】



会議の結果、蜥蜴人族(リザードマン)と同盟を組んだ上で豚頭族(オーク)の軍勢を叩くことが決定し、トレイニー様から提供された情報で決戦の日が早くて9~10日後ということから、私達の里は大急ぎで戦の準備を始めることになりました。

まず、リムル様が同盟を結ぶ為に蜥蜴人族(リザードマン)と交渉を行いたいと言ったことで蒼月と蒼影の2人が鬼隠れの里の使者として蜥蜴人族(リザードマン)の集落へと向かうことになりました。

まぁ、実際の所集落へと向かったのは蜥蜴人族(リザードマン)の集落から一番近い所にいた2人の影分身なんですが。本人達が直接向かうより、念話で影分身を直行させた方が手っ取り早いですしね。

あと、私と黒兵衛、カイジンさん、ガルムさんの4人が湿地帯の合戦に参戦する者の武器と防具を大急ぎで揃えることになりました。タイムリミットが1週間ということもあって本当に突貫作業でした。

私は自分専用の鍛冶工房、黒兵衛とカイジンさん達は冬官の為に用意された大規模工房で作業を行いました。別々に作業することになったのは、私が宝貝(パオペエ)や魔導具を作ったり、改造してる所を他の人には余り見られたくないからです。

取り敢えず、私はリムル様がゴブタさんに約束していた宝貝(パオペエ)を真っ先に用意しなければいけなかったので作り始めたんですが、完成までに3日も掛かってしまいました。

ちなみにゴブタさんの為に用意した宝貝(パオペエ)は複合型改造宝貝(パオペエ)です。ベースとなっているのは紫呉も持っている火尖鎗(かせんそう)Ⅱなんですが、見た目も能力もかなり改造してしまいました。

まず、見た目はFate/stay nightに登場する兄貴サーヴァントことランサーの宝具――ゲイ・ボルクに改造。穂先の伸縮と刺した対象を燃やす能力は火尖鎗Ⅱと変わりません。

能力面で火尖鎗Ⅱと異なる点は穂先の伸縮距離が最長で650mという点と番天印の押印機能を限定的ですが追加した点でしょうか?

見た目をゲイ・ボルクにしたので、刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)の様に押印された心臓を穂先が追尾する形で貫くといった能力を追加してみたんです。

本当なら穂先の伸縮距離を13kmにしたかったんですが、そうした場合大鬼族(オーガ)に進化したゴブタさんの魔素量でも、1日1回しか使用できなくなってしまうので、伸縮距離を20分の1に抑えることで最大で1日20回は使用できる様にしてみました。

宝貝名は火尖鎗Ⅲ。最初は火尖鎗Ⅱ改にしようかとも思ったんですが、フジリュー版封神演義の那吒(なたく)が所有していた最終形金磚(きんせん)も金磚Ⅲだった気がしたので、私も火尖鎗Ⅲという名称にしてたんです。

火尖鎗Ⅲを作り終えた後も私の鍛冶仕事は続きます。4日掛けて量産型宝貝(パオペエ)や魔導具の製作に精を出しました。量産型宝貝(パオペエ)莫邪(ばくや)の宝剣、量産型魔導具は式紙(しきがみ)ですね。

一応、鑚心釘(さんしんてい)も量産型宝貝(パオペエ)式髪(しきがみ)偽火(にせび)も量産型魔導具なんですが、今回の戦で鑚心釘と式髪は役に立たなさそうですし、偽火も鬼王の妖炎(オーガフレイム)の方が威力は高いので量産しませんでした。

というか、量産型といっても鑚心釘、式紙、式髪は世間でいう所の稀少級(レア)武具、莫邪の宝剣に至っては特質級(ユニーク)武具に相当する代物なので、制作期間がたったの4日では大して量産できません。

実際、量産した莫邪の宝剣と式紙も6個ずつしか製作できませんでした。……もしかしたら、式紙12個作った方が良かったかもしれません。

近接武器としては莫邪の宝剣の方が性能は上なんですが、式紙は使い方次第で遠近中距離だけでなく、拘束などの補助にも使えますから。

……まぁ、今更どうこう言ってもどうしようもないことですし、この教訓は次の機会があればその時にでも活かしましょう。

取り敢えず、この1週間で私が製作できた武具は伝説級(レジェンダリー)1、特質級(ユニーク)6、稀少級(レア)6の計13ということです。

ちなみにカイジンさん達は黒兵衛以外にも冬官に属している妖鬼(オニ)がいたこともあって、本当の意味で稀少級(レア)武具を大量生産していました。

魔鋼製小太刀12(ふり)、魔鋼製大太刀12口、魔鋼製大刀12本、魔鋼製長剣15本、魔鋼製槍12条、戦斧12挺の計75の稀少級(レア)武具を製作していたんです。

当然のことながら、魔鋼製武具を製作する過程で失敗作も多数出来上がります。その数は小太刀18口、大太刀23口、大刀18本、長剣12本、槍17条、戦斧16挺の計104だったそうです。

この104の武具、魔鋼の伝達が上手くいっていない為失敗作とされていますが、魔鋼製であることには違いが無いので通常の鋼を使った武具より性能は上だったりします。

今回の戦、大鬼族(オーガ)の里に住んでいた鬼一族で戦闘を得意とする者が100名、元人鬼族(ホブゴブリン)で現大鬼族(オーガ)である者から100名。嵐牙狼族(テンペストウルフ)が100体の総勢300の軍勢で挑むことになりました。

本来、鬼一族で戦闘を得意とする者は男女問わず合わせて200名はいて、現大鬼族(オーガ)も戦闘を得意とする者が400名はいたんですが、武具の数の関係で鬼一族と大鬼族(オーガ)を100名ずつしか連れて行けなくなったんです。

念の為言っておきますと、100名の大鬼族(オーガ)嵐牙狼族(テンペストウルフ)とセットの騎兵隊――狼鬼兵(ゴブリンライダー)ならぬ狼鬼兵(オーガライダー)だったりします。

単純な火力だけなら鬼一族を200名連れて行けばいいのですが、鬼一族は騎乗経験が皆無なので騎兵に不向きだったりします。

対して現大鬼族(オーガ)組は人鬼族(ホブゴブリン)時代に嵐牙狼族(テンペストウルフ)への騎乗経験があるので、存在進化を果たした後も騎兵を務められるのです。

そして、戦では火力だけでなく機動力が戦局を左右することが多々あります。そう考えると、鬼一族より劣るものの火力がそこそこにあって、騎兵になることで機動力も得られる現大鬼族(オーガ)組を軍勢に加えるのは理に適っているといえるのです。

そんな訳で私が製作したものとカイジンさん達が製作した成功作(真打)失敗作(影打)を合わせて計192全ての武具が今回の戦で投入されることになりました。

……え?軍勢の数と武器の数が合わない?何を言ってるんですか?鬼一族の参戦者の中にはお父様とお兄様、白老、蒼月、蒼影、紫呉、紫苑、私の8名も含まれていて、その全員が既に宝貝(パオペエ)や魔導具持ちなので、8名分は武具が少なくても問題ないじゃないですか。

………それでは現在に至るまでの説明を終えたことで、現在の話に移りましょうか。現在、私を含む里の幹部の前には戦に出陣する兵がそれぞれの武具を装備した状態で集まっています。

初めての戦ということもあって、出陣前に兵の戦意を高揚させる為、演説を行うことになったんです。これって結構重要ですよね。けど―――


「これから始まる戦の為、よく集まってくれました。勇敢なる精鋭の皆さん」


こういうことをやるのは普通、(オゥルォ)であるリムル様や夏官長・大司馬(だいしば)であるお父様だと思うんですが、私のこの考え方はおかしいのでしょうか?


「皆さんは平和を愛する心優しき民。初めての戦――それも20万に及ぶ敵を前にして大半の者は不安を感じていることでしょう。血で血を洗う戦いに恐怖を感じていることでしょう」


まぁ、リムル様とお父様がこういった演説を苦手とするタイプであることは重々承知していますので今回は私がやりますけど、いずれは御二方にも絶対にやって貰います。


「ですが、恥じることはありません。私は知っております。皆さんがこれまで、どれだけ苦しくも厳しい訓練を耐えてきたか!それは強い意志と、勇敢な魂を持つ者にしか成し遂げられぬことです。
さぁ、自らを誇るのです!この鬼隠れの里の猛き英雄達よ!これより始まる戦は、ジュラの大森林の生態系を賭けた一戦!
もし敗れることが在れば、この森に住まう全ての種族が蹂躙され、親兄弟は無惨にも貪り食われ、私達の築き上げた里は灰燼に帰すことでしょう。
ですが、そうはさせません!断じてさせません!!私達の闘志は無双の剣であり、どの様な敵が相手でも遅れを取ることはありません!
これは揺るがぬ確信であり、この里に住まう全ての者が認める事実です!それ故に、私はこの度の戦に参戦する全ての兵に約束しましょう!圧倒的な勝利を!!
皆さんの大切な家族――同胞を護り!愛すべき里を護り!暴食な侵略者達を完膚無きまでに叩きのめすことを!!」
「「「「「「「「「「オォォォォォォォォォォ!!!」」」」」」」」」」
「忘れてはなりません!皆さんは常にリムル様の大いなる御心と共にあることを!!」


私がリムル様の名前を出すと、リムル様はギョっとした顔をしますが、私はそれに気付かない振りをして演説を続けます。


「森の管理者たる樹妖精(ドライアド)様から直に要請を受けた私達こそ、このジュラの大森林における正統なる官軍!この戦の大義も正義も、全て私達と共にあります!!」
「「「「「「「「「「オォォォォォォォォォォ!!!」」」」」」」」」」
「総員、決戦の地であるシス湖へ向けて出陣!!」


私が演説を終えると兵の方々はシス湖がある方角の東門へと向かって移動を開始しました。私達も兵に遅れる訳にはいきません。

私は演説を聞いて呆然としているリムル様達に声を掛け、正気に戻すと兵達の後を追って東門へと向かい、里から出ると兵達の先頭に立ち、シス湖へと進軍を開始した。


 
 

 
後書き
念の為説明させて頂きますと、作中内で登場している伝説級(レジェンダリー)として扱われているのは火尖鎗Ⅲのことです。(笑)

次回はついに豚頭族(オーク)の軍勢とのバトル開始です。(笑)

恐らく年明け更新になると思います。期待し過ぎない程度に楽しみにしていて下さい。(笑)
 

 

第11話 改訂版(2018/11/07)

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

本当なら01/01か01/02に投稿したかったんですが、1週間ほど投稿が遅れてしまいました。

今回はシス湖(というか湿地帯)の戦いの前哨戦といった話なんですが、初のスーパー宝貝使用回だったりします。

どのスーパー宝貝が使用されるかは、本編で確認してみて下さい。(笑)

それでは本編のスタートです!! 

 



【視点:リムル】



今回の豚頭族(オーク)の軍勢との戦に参戦する者達――俺を含めて総勢301の軍勢が里を出発してから丸1日。

特殊技能(エクストラスキル)【忍法】を持つ者が嵐牙狼族(テンペストウルフ)と同等の移動速度を出せるということもあって、既に蜥蜴人族(リザードマン)の集落があるシス湖まで半日足らずという所までやって来れた。

トレイニーさんからの事前情報で豚頭族(オーク)の軍勢がシス湖に現れるのは約2日後。つまり、残りの移動時間を考慮しても1日半分は時間的余裕があることになる。

そんな訳で俺達は大戦前の休息として野営をすることにしたんだが、野営の準備中に招かれざる客がやって来た。


「おっ?お前ら、大鬼族(オーガ)か?蜥蜴を追い立ててたら予想外の獲物と鉢合わせたな」


1体の蜥蜴人族(リザードマン)と50体の豚頭族(オーク)が転がり込んできたんだ。しかも―――


「数は大体300って所か?喰い応えがありそうだ。お前ら、遊びは終いだ。蜥蜴諸共、こいつらもぶっ殺して俺達で食っちまうぞ!」
「「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」」
「「「「「腹減ったぁぁぁ!」」」」」
「「「「「は、早く喰いてぇ」」」」」


豚頭族(オーク)は某世紀末漫画で瞬殺されるモヒカン共を彷彿させる奴らだった。こういう奴らは大概瞬殺――


「痴れ者め」


――される。って、言ってる間に朱菜が何かやり始めた!?今、ヴンって音が聞こえたぞ!!って、今度はヒュンヒュンヒュンってロープを振り回す様な音が!!?

朱菜をよく見てみると、その手にはいつの間にか真紅の鞭が……。あれはスーパー宝貝(パオペエ)・禁鞭!?使える者が居ないってことで、結界を施した宮殿内の宝物庫に保管してたよな?何で朱菜が持ってんの!?

あぁ!そうこうしてる間に豚頭族(オーク)の部隊がバシバシバシって音と同時に上位個体だけを残して周辺の木々諸共蹂躙されてる!!全員、禁鞭で打ち据えられてバラバラ死体に!!

上位個体だけは禁鞭の打撃で両手足を千切り飛ばされた達磨状態だけど一応生かされてる。……けど、手足を斬り落とされた状態じゃ、出血多量でそんなに長くないか?

俺がそんなことを考えていると、紅麗と白老の2人が同時に俺の肩に手を置き、これまた同時に達磨豚頭族(オーク)と朱菜を指さしてきた。

一体なんだよ?…………あれ?達磨豚頭族(オーク)の傷口からいきなり黒炎が発生したぞ!これは傷口に塩を塗る程度の痛みじゃないだろう。達磨豚頭族(オーク)も絶叫してる!

あっ、黒炎が消えた。……成程、出血多量で殺さない為に黒炎で傷口を焼いて止血したのか。けど、この方法って下手したらされた側がショック死する様な気も……。

まぁ、いいか。実際の所、達磨豚頭族(オーク)は死んでないし。これで情報を聞き出すくらいはできるだろう。俺がそんなことを考えていると―――


「リムル様に悪意を向けるなど、万死に値します。ですが、あなたは色々と情報を持っていそうなので簡単には殺しません。というか、楽に死ねると思わないで下さいね」


朱菜が極上の笑顔(ただし、目は笑っていない)でそう告げると、達磨豚頭族(オーク)の顔から一気に血の気が引いた。

………そして、豚頭族(オーク)部隊の殲滅から2時間後。達磨豚頭族(オーク)は蒼月と蒼影による拷問で体をズタボロにされるだけでなく、朱菜の幻術によって精神までズタボロにされ、息を引き取った。

っていうか蒼月と蒼影だけでなく、朱菜と紫苑も結構エグい拷問するんだな。俺も若干引いたけど、蜥蜴人族(リザードマン)の娘なんてドン引きしてるよ。

まずはぶりぶり拷問から始まったんだけど、朱菜と楽しそうに「ぶ~りぶりっ」って声掛けをして、紫苑がその声掛けに合わせて逆さ吊りの達磨豚頭族(オーク)をこれまた楽しそうに木遁で作られた木刀でシバくんだよ。しかも、途中で紫呉が―――


「中々情報吐かないな。いっそのこと爆刀・飛沫でぶりぶりするか?」


なんて言い出したからな。その発言を聞いた瞬間、俺は―――


「それは拷問じゃないよな!?既に新手の処刑だよな!!?」


ってツッコミを入れそうになったよ。まぁ、俺がツッコミ入れる前に蒼月と蒼影、朱菜がそのことを指摘したから実行されずに済んだ訳だけど。

その後、蒼月と蒼影が焼鏝(やきごて)や針責め、皮剥ぎなどの拷問を行ったんだけど、それでも情報を吐かなかったので最終的には朱菜が幻術を使うことになったんだ。

で、その幻術の内容が結構エグかったんだよ。現実時間では一瞬だったんだが、幻術内では時間の流れが72時間だったみたいで、その72時間もの間、達磨豚頭族(オーク)を何百、何千、何万回と7振りの鬼の忍刀で殺し続けたらしい。

朱菜曰く30時間経った所で達磨豚頭族(オーク)は根を上げ、情報を吐いたそうなんだが、俺に悪意を向けたことが万死に値するということで、精神が完全に死ぬまで殺し続けたそうだ。

五感だけでなく時間や空間、質量すら支配する幻術――月読。この幻術の前では精神的な死を迎えない限り、死ぬ様な激痛に何度襲われても死ぬことができない。喰らった側からすれば正に無間地獄だろう。

それ程の拷問によって得られた情報なら普通は結構重要なものだと思うだろう。けど、実際の所は大した情報でも無かったんだ。

実は蒼月達が拷問してる間、俺は俺で豚頭族(オーク)と一緒に転がり込んできた蜥蜴人族(リザードマン)の娘から情報収集をしてたんだけど、その情報と達磨豚頭族(オーク)から得られた情報が殆ど被ってたんだよ。

ちなみに達磨豚頭族(オーク)蜥蜴人族(リザードマン)娘から新しく得られた情報で被っていたのは2つ。1つ目は豚頭族(オーク)の軍勢が既にシス湖で蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)の混成部隊と戦闘しているというもの。

2つ目は上位個体である豚頭親衛隊(オークエリート)率いる別動隊が蜥蜴人族(リザードマン)の住処である地下大洞窟に侵入しているものだった。

被ってなかったもので達磨豚頭族(オーク)から得られた情報は、豚頭将軍(オークジェネラル)を含む豚頭親衛隊(オークエリート)の数と一般豚頭族(オーク)豚頭親衛隊(オークエリート)の見極め方だ。

豚頭親衛隊(オークエリート)の数は2000ちょいで、全員が黒鋼の鎧を身に付けてるらしい。ってか、達磨豚頭族(オーク)も黒鋼の鎧を着てたから豚頭親衛隊(オークエリート)だったんだな。

……流石に達磨豚頭族(オーク)豚頭将軍(オークジェネラル)ということはないだろう。スーパー宝貝(パオペエ)・禁鞭を使ったとはいえ、将軍(ジェネラル)と呼ばれる魔物が一瞬で四肢をもがれるとか、普通に考えて無いだろう。

……けど、スーパー宝貝(パオペエ)が俺の想像を絶する超兵器の可能性もあるか?けど、どれだけ強力な兵器か俺自身が把握できてない以上、達磨豚頭族(オーク)豚頭親衛隊(オークエリート)最弱の存在として考える必要もあると思うし……。

…………分からんことを考え続けても意味がないな。スーパー宝貝(パオペエ)を含む宝貝(パオペエ)だけでなく魔導具の威力などは実際に戦場で使って検証するしかない。

さて、少しばかり話が逸れたが次は蜥蜴人族(リザードマン)の娘から得られた被ってない情報だ。これはガビルが謀反を起こし、蜥蜴人族(リザードマン)の首領を幽閉したというものだった。

俺にとっては豚頭親衛隊(オークエリート)の数よりガビルの謀反の方が重要な情報だったりする。ってか、可能性の1つとして起こりうるとは思っていたけど、まさか本当に大戦の前に謀反を起こす馬鹿がいるとは……。

ぶっちゃけ、一番聞きたくない情報だったよ!………いや、考え様によってはガビルの部隊を囮に豚頭族(オーク)の軍勢を横から強襲することもできるか?

取り敢えず、蜥蜴人族(リザードマン)の娘が土下座してまで首領とガビルの救助を嘆願してるし、どうにかしてやりたいけど―――って、紫苑が勝手に蜥蜴人族(リザードマン)の種族そのものを助けることを確約しやがった!?

………仕方がない。今、ここで里に撤退したとしてもいずれは戦わなきゃいけないんだ。それなら余計な強化がされる前にやっちまおう。

俺は蜥蜴人族(リザードマン)の娘を首領の代理と認め、この場で同盟が締結したことを告げると、蒼月と蒼影の2人を蜥蜴人族(リザードマン)の娘と共に首領の所へと向かわせ、俺自身は残りの者と共にガビルの所へと向かうことにした。

 
 

 
後書き
………という訳で、本編で使用されたのはスーパー宝貝・禁鞭でした。

まぁ、実際は如意羽衣(にょいはごろも)を使った部分変化による禁鞭なので、本物ではないんですが……(笑)

ちなみに本文や設定などでは書いていませんが、朱菜は全ての宝貝(パオペエ)の生みの親なので、全ての宝貝(パオペエ)を十全に扱うことができるという設定だったりします。

なので、如意羽衣で素粒子に変化するだけでなく、封神演義の楊戩(ようぜん)の部分変化も再現できるのです。

で、今回は部分変化で禁鞭を再現した訳なんですが、実はこの禁鞭は出力がオリジナルの2分の1だったりします。

いくら全ての宝貝(パオペエ)を十全と扱えるとしても、通常の宝貝(パオペエ)である如意羽衣の変化ではスーパー宝貝を再現しきれないという設定にしました。(笑)

まぁ、2分の1の出力でも十二分に強力な武器なんですけどね。(笑)

次回こそ、湿地帯での戦いが始まる訳なんですが、またまた宝貝(パオペエ)を登場させる予定です。

コミック版転スラを読んだことがある人は分かると思いますが、リムル様は背中から吸血蝙蝠(ジャイアントバット)の翼を出すことができます。

そして、翼型の宝貝(パオペエ)といえば?風の能力が打神鞭と被ってますが、楊戩(ようぜん)も張天君との戦いで部分変化を使って両方使っていたので、問題はないでしょう。(笑)

6枚翼でパワーも6倍!!ってことで、次回もお楽しみに!(笑) 

 

第12話 改訂版(2018/11/07)

 
前書き
おはこんばんにちは!そして、3ヶ月振りです。沙羅双樹です!

仕事が忙しく、また精神的疲労から情緒不安定になっていたりしたので、2月と3月に更新ができませんでした。

憑シュナを楽しみにされていた方々、誠に申し訳ありません。

そして、今回はルビ込みで双文字数約3800と文章量が少ない点も謝罪させて頂きます。

話の流れ的には豚頭帝(オークロード)戦の前哨戦と言った所です。

会話文が殆どないのですが、それでも楽しんで頂ければ幸いです。



追記


色々と加筆修正してみました。その結果、総文字数が約6900と修正前より3000字程多くなっています。

増えた分、修正前より楽しんで頂けると幸いです。
 

 



【視点:朱菜】



蜥蜴人族(リザードマン)との同盟が締結してから数時間後。飛行系宝貝(パオペエ)天騒翼(てんそうよく)を使って私とリムル様が戦闘の最前線となっている湿地帯へと先行して来た訳なんですが……。

ぶっちゃけ、蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)の混成部隊は豚頭族(オーク)の軍勢に囲まれて完全に詰んだ状態になっていて、私だけでなくリムル様も呆れ状態になっています。

起風発雷で豚頭族(オーク)の軍勢を殲滅することもできるけど、出力的に考えると蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)混成部隊諸共になりそうなんですよね。

あっ、念の為言っておくと私とリムル様の背中に生えている翼の数は6枚3対の最終形態で、リムル様の方は宝貝(パオペエ)、私の方は如意羽衣(にょいはごろも)による部分変化です。

最初期の折畳み式天騒翼の出力を1とすると、大型天騒翼が3。そして、6枚3対天騒翼が18といった所なんです。

大型天騒翼でも花狐貂(かこてん)――鯨モドキな攻城宝貝(パオペエ)を押し返すことが可能な暴風を起こせると考えると、6枚3対天騒翼がどれほど強力か理解できると思います。

現状、戦っているのはクーデターを起こした駄蜥蜴(ガビル)豚頭親衛隊(オークエリート)と思しき個体の2人だけなんですよね。他の混成部隊と豚頭族(オーク)の軍勢は全く戦ってないので、一騎打ちをしている所なんでしょう。

もう少しだけ駄蜥蜴(ガビル)が持ち堪えられたら、お父様達が到着するでしょうから一気に形勢逆転できると思うんですけど……。

っと、そんなことを考えている間に駄蜥蜴(ガビル)豚頭親衛隊(オークエリート)が共に三叉槍と戦斧で必殺技っぽいのを放った様です。

駄蜥蜴(ガビル)の必殺技は渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)というみたいなんですが、どの辺りが渦なんでしょう?水を纏った槍を回転させている所でしょうか?

私には三叉槍を回転させながら突きを放つ点が同じだけで、水を纏っている以外は威力も速度も本家より圧倒的に劣っているブラッディースクライドもどきにしか見えないんですが……。

あと、豚頭親衛隊(オークエリート)も戦斧を回転させながら突きを放ち、混沌喰(カオスイーター)と技名を叫んでいましたが、何故に戦斧で回転突き?槍の様な穂先も無い両刃の斧で突き技を放つ意味があるんでしょうか?

しかも、豚頭親衛隊(オークエリート)妖気(オーラ)がモンゴリアン・デス・ワームの様な姿で実体化したんですけど、どう見てもこの実体化した妖気(オーラ)混沌喰(カオスイーター)という技ですよね?戦斧の回転突きは混沌喰(カオスイーター)と全く関係ない様にしか見えないんですが……。

もしかしてアレですか?渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)の威力を相殺する為に戦斧による回転突きを放ったということなんでしょうか?

もしそうなら、ただの回転突きに相殺される渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)が超絶弱い技ということになってしまうんですが……。

というか、5体のモンゴリアン・デス・ワームが加わったことで彼我兵力差が6対1になって、より一層駄蜥蜴(ガビル)が不利になってしまいました。

もう少しでお父様達が到着するんですが、それまで駄蜥蜴(ガビル)は持ち堪えられるでしょうか?まぁ、無理そうな場合は私が宝貝(パオペエ)・番天印でも使って助けてあげましょう。

よくよく考えれば豚頭帝(オークロード)を除く豚頭族(オーク)の軍勢を殲滅するだけなら、番天印でも可能なんですよね。

番天印は押印したものを100%殺傷するマルチロックホーミングレーザーの様な宝貝(パオペエ)。射程距離は禁鞭より劣るものの、対軍勢戦に於いての有用性はほぼ同レベルといってもいい筈です。

実際の所、私の作った番天印は射程(押印(捕捉)可能)距離が半径500m、最大捕捉人数1000人の高性能対軍宝貝(パオペエ)ですからね。

ちなみにオリジナルの禁鞭は射程距離が直径6km、最大捕捉7000人、部分変化禁鞭は射程距離が直径3km、最大捕捉3500人といった所でしょう。

っと、そんな説明をしている間にお父様達が到着したみたいですね。リグルさんとゴブタさん、ランガが駄蜥蜴(ガビル)の救援を行ってます。

それと同時に二ヶ所で鬼王の妖炎(オーガフレイム)黒炎獄(ヘルフレア)の上位互換に当たる煉獄業火(サタンブレイズ)が発生しました。あれはお父様とお兄様ですね。一気に数百単位の豚頭族(オーク)が灰も残さず燃え散ったことでしょう。

他にも紫苑が鈍刀・兜割の(まさかり)と槌で豚頭族(オーク)を両断し、骨を砕く音。紫呉が爆刀・飛沫で豚頭族(オーク)を爆殺している爆音が聞こえてきます。白老は音も立てず、斬仙剣で豚頭族(オーク)を細切れにしてますね。

あっ、ランガが黒雷嵐(デスストーム)を使ったみたいですね。複数の竜巻と黒雷が発生し始めました。


「ええぇ……、何これ……?」
「恐らく、ランガによる広範囲攻撃と思われます。威力はリムル様と私が使っている天騒翼の起風発雷の方が上ですが、有象無象の数を減らすには効果的な手段といえるでしょう。もしかすると、敵軍の士気を下げることも考慮して使ったのかもしれません」
「………それは一体どういうことだ?」
「目の前で同族がその身を竜巻で捩じ切られ、黒雷に焼かれるのを直視するのです。それが自分の身にも起こると考え、豚頭族(オーク)達が怖気付く可能性は十二分にあり得ます」
「成程。恐怖で敵の戦意を挫く策か」


いや、実際はそんな策を考えたりして無いでしょうけど。実際の所は「リムル様を侮辱され、ムシャクシャしてやった。反省はしていない」といった所でしょうか?

まぁ、リムル様を侮辱する者に生を享受する権利はありませんので、ランガの行動も問題ないでしょう。……それにしても、私達の勢力が加わっただけで一気に形勢逆転しましたね。

原作では存在しないお父様と紫呉が存在している上、リグルさんやゴブタさん達――元人鬼族(ホブゴブリン)組が大鬼族(オーガ)に進化しているので、もしかしたらリムル様と私達の出番がないかもしれませんね。

……原作に存在しないといえば、蒼月が蒼影と共に蜥蜴人族(リザードマン)の首領の方に行きましたが、向こうはどうなっているのでしょう?

蒼影一人でもでも余裕なのに、蒼月も加わったのはオーバーキルだったかもしれません。



【視点:蒼影】



俺と親父殿が蜥蜴人族(リザードマン)の住処である地下大洞窟に辿り着くと、既に数十体の豚頭族(オーク)が侵入していることが魔力感知で分かった為、二手に分かれ行動することになった。

親父殿は蜥蜴人族(リザードマン)の首領がいる首領の間へと向かい、俺はそれ以外の場所にいる豚頭族(オーク)を排除する為だ。

俺達が到着した後に同盟種族に犠牲者が出たとあっては、リムル様の顔に泥を塗ることになる。そう愚考した故の行動だ。

で、俺が18体の豚頭族(オーク)を長刀・縫い針で6体ずつ、3つの塊に縫い纏め、それを引き摺りながら首領の間へと向かうと、そこでは2体の豚頭将軍(オークジェネラル)が粘鋼糸で拘束され、蜥蜴人族(リザードマン)の首領が大口を開けた状態で呆けていた。


「何をしているんだ、親父殿?その程度の奴、瞬殺できるだろう」
「そういうお前こそ、その後ろの塊は何だ?」
「これは蜥蜴人族(リザードマン)への手土産だ。俺達が到着するまでの間に蜥蜴人族(リザードマン)豚頭族(オーク)に喰われている筈。自分の手で同胞の仇を取りたいと思っている者もいると考え、半殺しで捕らえた」
「成程。俺はこいつらに伝言役を頼もうと思って生かしている。まぁ、こいつらに情報共有の秘術がかけられている為、こちらの手の内を明かせんという理由もあるのだがな」
「こいつらが纏っている血の臭いから察するにかなりの蜥蜴人族(リザードマン)を喰らった筈だ。こいつらの止めも蜥蜴人族(リザードマン)に譲ってはどうだ?
蜥蜴人族(リザードマン)は同胞の仇を取れる。俺達は黒幕に手の内を知られない。お互いにとって好都合な提案だと思うが?」
「そうだな。……首領殿、聞こえていたと思うがこの豚頭族(オーク)共への止めを任せてもいいだろうか?」
「う、うむ。我らとしても同胞の仇を討ちたいので、是非も無い提案だ。しかし―――」
「安心されよ。豚頭族(オーク)共の動きは我らが封じる。それにいくら無駄に生命力の高い豚頭族(オーク)でも槍で頭を一突きすれば絶命する」


親父殿はそう告げると同時に動きを封じた2体の豚頭将軍(オークジェネラル)を俯せに転倒させる。俺も引き摺って来た豚頭族(オーク)共の塊を蜥蜴人族(リザードマン)達の前に突き出した。

すると、蜥蜴人族(リザードマン)達は兵士だけでなく、非戦闘員であるあんな子供までもが床に散らばっていた槍などを手にし、身動き1つできない豚頭族(オーク)達へと近付いて行った。


「ま、まっ―――」


豚頭族(オーク)共は命乞いをするより早く蜥蜴人族(リザードマン)達にその豚面を槍で貫かれていった。因果応報。恨みを買う様なことをし続けた者には当然の末路といえるだろう。

これで地下洞窟内の豚頭族(オーク)は殲滅できた。地上の部隊はどうなっているだろう?リムル様と朱菜様が居られる以上、敗北は無いだろうが、豚頭族(オーク)相手に無様を晒している者が居ないか、その点が少しばかり心配だ。



【視点:世界】



時は少しばかり遡り、先行したリムルと朱菜を追って湿地帯へと辿り着いたリグル率いる大鬼騎兵(オーガライダー)部隊と紅麗達鬼一族の幹部を除く妖鬼(オニ)部隊。

リグル達が湿地帯で最初に目にしたのは、完全に豚頭族(オーク)の軍勢に包囲された蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)の混成部隊の姿だった。

この光景を目にしたリグル達の心境は全く同じもので、「何をどうすれば、こんな絶体絶命な状況になる?」というものだった。

絶体絶命過ぎる混成部隊の状況に呆れつつもリグルは同盟種族を救助する為、混成部隊の背後にいる豚頭族(オーク)軍への突撃を同胞へと命じた。


「「「「「「「「「「うおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」


リグルの命令と同時に雄叫びを上げ、豚頭族(オーク)軍に突撃するリムル軍。混成部隊を囲んでいる豚頭族(オーク)軍は全軍が豚頭将軍(オークジェネラル)とガビルの一騎打ちを観戦するのに集中して隙だらけだった為、混成部隊の背後にいた豚頭族(オーク)軍は呆気なくリグル達に殲滅された。


「な、何だ!?何が起こった!!?」


いきなりの出来事に混乱する豚頭将軍(オークジェネラル)。当然、援軍が来るとは思っていなかったガビルも混乱している。そんな中、ガビルは自分の目の前に現れた人物に更に驚きの声を上げる。


「き、貴殿はあの里の大鬼族(オーガ)!名はゴブタ殿だったか?我輩達の助太刀に来てくれたのであるな。周囲の者達は……、ゴブタ殿の配下であるな!流石は我輩を打倒した戦士。あの里で戦士長を務めているのであるな!!」


ガビルの発言を耳にしたその場にいるリムル軍の全員が一瞬の内にその額に青筋が浮かべた。理由は簡単。この場におけるリムル軍の指揮官は右近衛大将であるリグルであり、ゴブタではないからだ。

無論、ゴブタに指揮官としての才能がないという訳ではない。実力的には分隊や小隊を指揮できる能力はある。しかし、紅麗や紅丸からはお調子者である為、現時点では中隊以上の規模を任せられないと判断されているのだ。

指揮官と間違ったのがゴブタではなく、妖鬼(オニ)部隊の誰かであれば、流石にリムル軍の全員が不愉快な思いをすることは無かっただろう。


「な、何を言ってんッスか!?オイラは戦士長なんかじゃなくて、一兵卒ッスよ!!?」
「ゴブタの言う通り、この部隊の指揮権は紅麗殿よりこちらのリグル殿が預かっている。ゴブタに指揮権はない」


同胞が不機嫌になっていることを察したゴブタは自分が一兵卒であることをガビルに告げ、ランガもゴブタの言を肯定する。


「貴殿は牙狼族の……」
「ランガだ。森の管理者である樹妖精(ドライアド)の要請を受諾されたリムル様の命により豚頭族(オーク)の討伐に赴いた」
「………リムルなどという魔物の名は聞いたことが無いな。それにゴブタと言ったか?貴様、その角と妖気(オーラ)から察するに大鬼族(オーガ)だな?
大鬼族(オーガ)の里は数千に及ぶ別動隊に襲わせたはず。何故、貴様――いや、貴様らは生き残っている?」


ランガがガビルに自分の名と蜥蜴人族(リザードマン)の救援にやって来た理由を告げると、その話を聞いていた豚頭将軍(オークジェネラル)が話に割り込んだ。

豚頭将軍(オークジェネラル)大鬼族(オーガ)の里を襲撃した別動隊のことを知っていた個体であった為、この場に現れた大鬼族(オーガ)の部隊――正確には大鬼騎兵(オーガライダー)妖鬼(オニ)が生存していることに疑問を感じ、ゴブタへと問い掛けたのだ。


「別動隊?ああ、そういえば紅麗さん達がそんなことを言ってたッスね。そんなの当の昔に朱菜様が全滅させたッスよ」
「数千の部隊を全滅だと、笑えん冗談だな。……いや、しかし別動隊が大鬼族(オーガ)の里に向かって既にかなりの日数が過ぎている。まさか、本当に……」


豚頭族(オーク)の別動隊が全滅したのは事実だが、数千にも及ぶ部隊が全滅した事実を受け入れられない豚頭将軍(オークジェネラル)は混乱する。そんな豚頭将軍(オークジェネラル)にゴブタは更に追い打ちを掛けた。


「っていうか、少し前までオイラ達はただの子鬼族(ゴブリン)だったッスよ。大鬼族(オーガ)の里とは何の関係も無かったッス。大鬼族(オーガ)まで進化できたのはリムル様と朱菜様が名付けをしてくれたからッス」
「な、名付けで子鬼族(ゴブリン)大鬼族(オーガ)まで進化させる魔人が2体もいるだと?そんな話、信じられるか!!」
「事実ッスよ。ってか、大鬼族(オーガ)の里にいた大鬼族(オーガ)も全員がリムル様と朱菜様の名付けで妖鬼(オニ)以上の魔人に進化してるッス」


ゴブタがそう告げると同時に、豚頭将軍(オークジェネラル)の後方に存在する部隊が蒼と黒の中間―――濃紺のドーム状の炎に包まれ、灰も残さず消滅した。


「初めて見たッスけど、あれが羅刹(ラセツ)以上の鬼が使える煉獄業火(サタンブレイズ)ッスか。今ので数百体の豚頭族(オーク)は屠ったんじゃないッスか。ホント、紅麗さんと紅丸さんは容赦ないッスね」
(オニとは何だ?大鬼族(オーガ)の上位存在として鬼人族(キジン)なる魔人が存在すると聞いたことはあるが、オニなどという種族は聞いたこともない!それにラセツなる種族も知らんぞ!!
鬼人族(キジン)以上の存在であるならば、危険極まりない。王の為にも何としても討ち取らねば!!)


豚頭将軍(オークジェネラル)豚頭帝(オークロード)の為、煉獄業火(サタンブレイズ)を放った紅麗と紅丸、そして、鬼人族(キジン)以上の存在である妖鬼(オニ)を自身の命に代えても討ち取らねばならぬと心に決めた。


「……ゴブタといったか?我らが王の為、何としてもオニなる存在を討ち取らなくてはならなくなった。貴様を含む大鬼族(オーガ)と遊んでいる暇はない。一瞬で決着をつけさせて貰うぞ」
「一瞬で決着、ッスか?別にいいッスよ」


ゴブタはそう返答すると同時に背負っていた真紅の長槍――火尖鎗Ⅲを手にし、器用に回転させながら構えた。


「あんたの心臓、貰い受けるッス」


ゴブタがそう告げると、豚頭将軍(オークジェネラル)が気付いた時には火尖鎗Ⅲの炎の穂先がその心臓を貫いていた。


「な、んだ…と……」


豚頭将軍(オークジェネラル)は信じられないと言わんばかりの顔をしながら火尖鎗Ⅲによって体の内と外から燃やされ、灰となった。


「火力的には凄い筈なんッスけど、煉獄業火(サタンブレイズ)を見た後じゃ、火力自慢はできないッスね」
「………お、豚頭将軍(オークジェネラル)を1体倒した程度でいい気になるな!我ら豚頭親衛隊(オークエリート)の中には豚頭将軍(オークジェネラル)が複数体存在しているのだからな!!」
「所詮は豚か。ブヒブヒと五月蠅いことこの上ない。豚が集団で騒いだら主も不愉快だろう。少しばかり数を減らさせて貰う」


強がりを言った豚頭親衛隊(オークエリート)に対してランガはそう告げると同時に黒雷嵐(デスストーム)を使い、紅麗達の煉獄業火(サタンブレイズ)と同様に豚頭族(オーク)の数を数百単位で削った。

 
 

 
後書き
という訳で豚頭帝(オークロード)戦の前哨戦とも言える豚頭族(オーク)軍殲滅戦でした!

次話から本格的に豚頭帝(オークロード)戦に突入するんですが、その前に皆さんに聞いてみたいことがあります。

本作では原作での魔王覚醒編の時期に朱菜が首都リムル(仮)直上に仙人界(崑崙山or金鰲島)を作る設定なんですが、崑崙山と金鰲島のどっちがいいと思いますか?
(種族的に考えると金鰲島なんですが……)

あと、少し前までオーバーロードⅡが放送されていたこともあって、友人からオーバーロード×憑シュナのネタを頂きました。

内容的にはナザリックが転移した同時期に上記の仙人界(崑崙山or金鰲島)がナザリック直上に転移するというものです。

ナザリックとリムル勢力の共闘モノなんですが、この場合同盟組織になるのか、それともリムルが至高の42人目になるのかは現時点では未定となっています。

ただ、リムルと朱菜、アインズの3名がはっちゃけまくる話になるのは確実でしょう。

ちなみに。この話を読んで見たいという方はおられるでしょうか?おられる場合はもう少し設定を煮詰めていきたいと思います。

では、次回も頑張って更新したいと思いますので、応援よろしくお願いします!(^-^)



追記


次話も冒頭を【視点:世界】にして、紅丸達の戦闘シーンを書くべきかで迷っています。その点のご意見など感想で頂けると幸いです。 

 

第13話

 
前書き
おはこんばんにちは、そして1年1ヶ月振りです。沙羅双樹です。

既に放送開始から2ヶ月経ってますが、転スラのアニメが始まりましたね。

そして、Google Playからゲームも開始!私もプレイヤー名:大筒木朱菜でやってます。(笑)

さて、それではまず投稿までに1年近くの時間が掛かった言い訳をします。

仕事先のスタッフが減って忙しくなったのも理由の一つなんですが、最大の理由はぶっちゃけると他の小説を書いていたからです(笑)

どんな小説かと言えば、ありふれた職業で世界最強×魔法少女特殊戦あすか×憑依したら朱菜ちゃんだった件の三重クロス作品です。

内容はありふれに嵌まっていたのでありふれをベースにしていて、Web版ベースのハジメくんが特殊戦世界と融合した平行世界の過去の自分に憑依、ディストニア戦争後にトータスに召喚されるという内容です(笑)

しかも、召喚されたトータスには魔国連邦建国から1000年後のリムル達も召喚されてしまったという、ハチャメチャな内容(´▽`)

そんな作品を10話まで書いていたため、憑シュナを書く暇がありませんでした(´▽`)

まぁ、ありふれの執筆が行き詰まって書く余裕ができたので、暫くは憑シュナを書き進めていこうかと思ってます。(笑)

では、言い訳もこの辺にしてとうぞ本編をお楽しみください!

 

 



【視点:紅丸】



先行するリムル様と朱菜を追って湿地帯へと辿り着いた俺達が最初に見た光景は豚頭族(オーク)の軍勢に囲まれた蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)混成部隊の姿だった。

恐らく、俺だけでなく親父や紫呉、同僚である右近衛大将のリグル殿も「何をどうすれば、こんな絶体絶命な状況になる?」と思ったことだろう。

余りにも酷過ぎる状態に夏官長・大司馬(だいしば)である親父も一瞬だけ呆けていたが、すぐに正気に戻り俺達に指示を出した。

指示の内容は、リグル殿が率いる大鬼騎兵(オーガライダー)部隊が混成部隊を救出する為に正面から突撃し、俺達が率いる妖鬼(オニ)部隊が豚頭族(オーク)の後方部隊を強襲するというものだった。

後方部隊への強襲の第一撃は俺と親父が同時に放った煉獄業火(サタンブレイズ)だ。大鬼騎兵(オーガライダー)部隊の突撃で豚頭族(オーク)共が混乱していたこともあり、この一撃で一気に400~500以上は屠れただろう。

その後、他の妖鬼(オニ)達も黒炎獄(ヘルフレア)を放ち、1人辺り数十単位の豚頭族(オーク)を屠っていく。


「な、何だ?何が起こった!?」
「!?今の大魔法は貴様らが放ったものか!!?」


俺達を目視した豚頭族(オーク)が何とも間抜けな問いを口にする。


「貴様らには同族を焼き殺す趣味でもあるのか?この後方()には我らと貴様らしか居らんのだから答など分かり切っているだろう」


親父はそう告げると同時に豚頭族(オーク)へと煉獄業火(サタンブレイズ)を放った。当然、俺も親父と同時に煉獄業火(サタンブレイズ)を放ち、他の妖鬼(オニ)達も黒炎獄(ヘルフレア)の2発目を放つ。


「先のと合わせて数千の豚頭族(オーク)は屠れたか。これだけ屠れば貴様らの犠牲となった37の同胞の無念も晴れたであろう」
「その角……。貴様ら、大鬼族(オーガ)だな!?」


内包する魔素の量が圧倒的に違うのにも拘らず、俺達の事を大鬼族(オーガ)と勘違いしている豚頭族(オーク)に対して、俺を否定の言葉を返す。


「いいや、俺達は大鬼族(オーガ)ではない。大鬼族(オーガ)を凌駕した鬼だ」
「我らとしても無駄な殺生は避けたい。先程までの攻撃で貴様らの犠牲となった同胞の件も水に流してやる。故に早々にこの場から立ち去り、元いた場所へと帰れ。
それとも丸焼きにされるのが好みか?ミディアム、ミディアムウェル、ウェル、ウェルダン、ヴェリーウェルダン。ゴブイチ殿の様な料理人ではないが極力希望通りの焼き加減で焼いてや―――あっ」


親父が脅しも兼ねて右手に煉獄業火(サタンブレイズ)を発生させながら焼き加減を言っていると、黒雷を纏った竜巻が発生し、数百単位の豚頭族(オーク)が屠られた。

上空で普通に飛行しているリムル様と朱菜から考えると、黒雷と竜巻の原因は宝貝(パオペエ)・天騒翼の起風発雷ではなく、ランガの攻撃系技能(スキル)といった所だろう。


「俺達が言える立場でもないが、ランガも派手にやってるな」
「ああ。私としては無駄な殺生は避けたかったのだが………」
「大方、どっかの馬鹿がランガの前でリムル様を馬鹿にしたんだろう。俺達もリムル様と朱菜を馬鹿にされたら同じ様な行動を取っていただろう?」
「………それもそうだな」


俺と親父がそんな会話をしていると、薙ぎ払う様に鎖分銅が飛んできた。当然のことだが、俺と親父はその攻撃を余裕で回避する。


「数多の同胞を殺しただけでなく、敵前でよそ見と会話をするとは……。貴様ら、楽に死ねると思うな!」


鎖帷子を身に纏い、鎖鎌を持った豚頭族(オーク)はそう叫ぶや否や、鎖鎌の鎖分銅を使って俺に攻撃を仕掛けてきた。

豚頭族(オーク)の割には鎖分銅を器用に操って攻撃して来ているが、ぶっちゃけ鋼金暗器を使う朱菜より攻撃速度が遅い上、精度も低い。

朱菜の場合、鎌の方で攻撃してくるだけでなく、手足の延長みたいに鎖鎌を操り、速度もこの豚頭族(オーク)の10倍以上の速さだからな。

この豚頭族(オーク)程度の使い手なら目を瞑っていても空気の振動だけで攻撃を避けられる自信がある。まぁ、1対1の決闘でもないこの場で目を瞑るなんて馬鹿な真似はしないけどな。


「そらそら、どうした!?俺の攻撃を避けるのに必死でさっきの大魔法を使う余裕も無いのか!!?」


……凄く腹立たしい勘違いをしてやがるな、この豚。いや、豚共というべきか?遠巻きに俺達を見ている他の豚もニヤニヤしてやがる。


「これで終わりだッ!」


豚がそう叫びながら放ってきた鎖分銅を俺は右手で難なく受け止めた。


「なっ!?」
「豚風情が何を勘違いしてるんだ?お前の攻撃なんざ、スロー過ぎて目を瞑っていても余裕で避けられるし、簡単に片手で受け止められるんだよ」


俺は豚にそう告げると同時に、鎖分銅を掴んでいる右手に紺色の炎を発生させ、鎖を通して勘違い豚野郎を焼き殺した。


「予想通り、豚頭族(オーク)で手応えのある奴が1人もいないな。豚頭将軍(オークジェネラル)も大したことが無さそうだし、それなりに手応えのありそうなのは豚頭帝(オークロード)くらいか?
だが、リムル様の初陣である戦で敵総大将の首をリムル様ではなく俺達が討ち取るのも問題な気が……。どうする、親父?白老?」
「そうだな。妖鬼(オニ)以上の存在である我らが格下の豚頭族(オーク)を一方的に狩るというのは、弱者を甚振る外道な行為にも思える。故にここはリグル殿達に一任するのも手ではあるが―――」
「リムル様の華々しい勝ち戦の初陣で我らが高みの見物というのは家臣として問題がありましょう。戦場である以上、強者が少なかろうと―――」
「敵前で武器も構えず会話に興じるとは、我等を馬鹿にするのにも程があるわ!」


俺と親父、白老が話をしていると、1体の豚頭族(オーク)が白老を背後から襲った。まぁ、当然のことながら白老はその豚頭族(オーク)の攻撃を容易く避けた訳なんだが……。そして―――


「活躍せねば末代まで語り継がれる鬼の恥となりましょう?」


襲ってきた豚頭族(オーク)は白老の斬仙剣で一瞬の内にコマ切れとなった。流石は音速の斬仙剣。一瞬の内に放たれた50の斬撃だけでなく、抜刀と納刀の瞬間も写輪眼が無ければ目視することはできなかっただろう。


「白老の言う通りだな。この戦はリムル様の初陣。後世で笑われぬ働きをせねばならん」


親父はそう言い終えると同時に豚頭族(オーク)の固まっている所に煉獄業火(サタンブレイズ)を放ち、俺もそれに続く形で別の場所に固まっている豚頭族(オーク)へと煉獄業火(サタンブレイズ)を放つ。


「あ、あの紺炎球(ドーム)から逃げろ!触れたら灰も残さず燃え散らされるぞ!!」


煉獄業火(サタンブレイズ)で燃え散る同胞を見て、撤退の指示を出す豚頭族(オーク)。投降ではなく撤退か。逃げ延びた先で再起を計られ、リムル様の里を襲撃される危険性は早めに排除した方がいいな。

親父も俺と同じ考えに至った様で、修羅(シュラ)の紫呉と紫苑に指示を出した。


「紫呉、紫苑。投降する者は生け捕りにし、逃げる者は例外なく狩れ。捕虜は戦後の労働力として使える可能性があるからな」
「「御意!」」


親父の命で逃げ出す豚頭族(オーク)に突撃する紫呉と紫苑。ある豚頭族(オーク)は爆刀・飛沫で爆殺され、ある豚頭族(オーク)共は宝貝・火尖鎗で串団子の様に貫かれて焼殺。また、ある豚頭族(オーク)共は鈍刀・兜割の鉞で体を両断され、槌で肉と骨が砕かれる。

………うん。ランガが技能(スキル)攻撃をする前から紫呉と紫苑は同じ様な攻撃で豚頭族(オーク)を殺していたが、兜割の槌の方で攻撃された奴は死にぞこなったら死ぬまで生き地獄を味わうだろうな。



【視点:リムル】



俺と朱菜がここに到着した直後は圧倒的に優勢だった豚頭族(オーク)の軍勢が今は完全に戦線を押し戻されてるな。

俺達の勢力が参戦して30分も経っていないのに、既に1万以上の豚頭族(オーク)が現世から退場している。しかも、その死に様が焼殺、爆殺、斬殺、撲殺だからな。思わず「南無南無」と言ってしまいそうになる。

あっ、兜割で豚頭族(オーク)を斬殺&撲殺していた紫苑が俺と朱菜に気付いて槌を持った方の手を振って来た。

いい笑顔だが顔に飛び散った豚頭族(オーク)の血痕のせいで恐怖しか感じられないぞ。直情型な感じもするし、極力紫苑を怒らせない様にしないとな。

それにしても優秀な部下が多いからやることが無くて暇だな。『思念伝達』で俺から俯瞰情報を得た紅麗が的確な指示を出すから、俺が指揮することもなく豚頭族(オーク)の前衛部隊が後続と分断され、駆逐されていく。

紅麗も投降する豚頭族(オーク)は生け捕りにするみたいだし、いくら豚頭帝(オークロード)が味方の恐怖心を喰らえたとしても、同胞の無残な死に様を目にし続ければ生き残っている豚頭族(オーク)達の精神も折れるだろう。

紅麗達の魔素残量から考えると明日の昼までは戦えそうだし、この一方的な状態をこのまま維持できるなら夜明け前には豚頭帝(オークロード)を除く全豚頭族(オーク)の精神を圧し折って捕虜にできるだろう。

………あっ。よくよく考えると朱菜が尾獣チャクラを他者へと譲渡できるから、こちら側の魔素切れ&チャクラ切れの心配はないのか。

豚頭帝(オークロード)豚頭族(オーク)の軍勢、完全に詰んでるじゃん。根絶やしにされるか、投降して捕虜になるかの2択しか残ってねぇ。

ってか、さっきからドラ○ンボ○ルの舞空術を使った高速飛行音みたいな音が聞こえてくるんだけど、この音何なんだ?そう思いながら飛行音の聞こえてくる方向に顔を向けると、何かが俺の真横を通り過ぎ、豚頭帝(オークロード)の前に降り立った。

何だ、あれ?ザ○ボンかドド○アが来たのか?それともギ○ュー隊長か?他の4人の隊員はどうした?ベジ○タにぶっ殺された後なのか?

と冗談はこれ位にして、豚頭帝(オークロード)の前に降り立ったのはペストマスクの出来損ないみたいな鷲鼻マスクの小柄な三下臭全開の男、……男だよな?多分男(?)だった。……ん?鷲鼻の付いた布製のマスク?どっかで聞いた特徴だな?


(告。個体名:大筒木朱菜から報告された魔人ゲルミュッドの特徴と一致します)


ゲルミュッド?………あぁ!豚頭族(オーク)の軍勢の一部を大鬼族(オーガ)の里に嗾けた疑いのある魔人か?


(告。個体名:奈良リグルの兄に名付けを行った者も「魔王軍の幹部、ゲルミュッド」という情報です)



そういえば、そんなことをリグルが前に言ってたっけ。けど、こいつが魔王軍の幹部?どう見ても某国民的RPG第5作に登場する悪の教団所属の鞭男レベルの雑魚じゃね?


(告。個体名:ゲルミュッドの魔素量は大鬼王(オーガキング)へと進化した個体名:奈良リグルドと同等です)


つまり、妖鬼(オニ)より劣ってる訳だな。そんな魔素量でよく大鬼族(オーガ)だった紅麗達に名付けしようと思ったな。名付けって、魔物や魔人にとって危険な行為なんだろ?

もし、あいつが大鬼族(オーガ)だった紅麗達に名付けをしていたとして、紅麗達は存在進化をすることができたのか?


(告。個体名:大筒木紅麗は初接触時、大鬼将軍(オーガジェネラル)であった為、大鬼候(オーガロード)に進化していた可能性があります。他の個体も大鬼族(オーガ)から大鬼将軍(オーガジェネラル)へと進化していた可能性があります)


あっ、一応存在進化はできたんだ。けど、ほんの少ししか進化できてないじゃん。名付けする意味無くね?


(告。無能で低脳な魔人がどういった思考で行動しているのか分かりかねます)


だよな。まぁ、どうでもいいか。黒幕、もしくは黒幕に繋がってるっぽい奴が出張って来てくれたのはこっちにとっても幸運だ。

こっちには拘束系の術を得意とするリグル達奈良一族がいるし、情報を吐かせるのも朱菜や紅麗、紅丸が輪廻写輪眼や写輪眼を使えば余裕だろう。

飛んで火にいる夏の虫。鴨が葱を背負って来るってのは正にこのことだな。


 
 

 
後書き
という訳で今回は前回の紅丸サイドの視点でした(笑)

ゲルミュッドの魔素量とか完全にオリジナル設定なんですが、実際のところはどのくらいの強さだったんでしょうね?
(少なくとも鬼人族以下だったと思いますが………)

取り敢えず、次回こそ豚頭帝(オークロード)戦になります。1月までには森の騒乱編を終了させたいですが、無理かな?無理だろうな………。

まぁ、体を壊さない程度に頑張っていきたいと思います。( ゚∀゚)ノシ 

 

第14話

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回は2週間の空きで更新できました!まぁ、本当なら昨日の内に更新したかったんですが………。

今回は豚頭魔王(オークディザスター)の誕生と豚頭魔王(オークディザスター)との戦闘(前編)といった所です。 

 



【視点:朱菜】



嵐牙狼族(テンペストウルフ)より少し上程度の魔素の持ち主が、ドラゴ○ボールの世界ならギューンという擬音が付いていそうな飛行音と共に現れたかと思えば、自称:上位魔人のゲルミュッドですか。


「貴様ら!!上位魔人であるこのゲルミュッド様の計画の邪魔をするとは、一体どういうつもりだ!!?」


ゲルミュッドは豚頭帝(オークロード)とお父様達の間に降り立ったかと思えば、お父様達に向かって杖を向け、怒鳴り始めた。

この小物、本当に自称:上位魔人ですね。ぶっちゃけ、魔素量だけなら帝鬼(オニ)のお父様は災禍級(ディザスター)相当。お兄様や白老達――修羅(シュラ)羅刹(ラセツ)忍鬼(オニ)でも厄災級(カラミティ)相当の魔素量があるのに、それが分からないのでしょうか?

というか、他の妖鬼(オニ)でもゲルミュッドの倍以上の魔素を持っています。煉獄業火(サタンブレイズ)黒炎獄(ヘルフレア)の連発で魔素を消費していたとしても、魔素量にはかなりの差があります。

感知タイプの魔人でなかったとしても、上位魔人であるなら災禍級(ディザスター)相当の魔素量を感知出来ないのはおかし過ぎます。

ちなみにリムル様の魔素量は上位神仙に進化した時点で災禍級(ディザスター)相当。私の魔素量は天災級(カタストロフ)相当です。


豚頭帝(オークロード)、貴様もだ!貴様が鈍間なせいで俺様が出向くことになったのだ。何故さっさと魔王種へと進化せんのだ!?」
「……魔王種に進化?」


この小物、豚頭帝(オークロード)――というか、名付けを行った魔物全員に計画の内容とか話してないですよね。だって、絶対に数撃てば当たる戦法で名付けをしてたでしょうし、見込みのない奴は見込みのある奴の糧にしようとを思っていたでしょうし。


「ちっ!この鈍間の愚図が!!……もういい。貴様は何も考えず俺の指示通りに動け。取り敢えず、この場に居る者を全員喰え」


………この小物、馬鹿ですか?思考能力の低下してる豚頭帝(オークロード)にそんなことを言ったら自分も喰われ兼ねないのに。だって、|この場に居る全員って自分も含まれてますよね。

思考能力の低下している者に命令を出すなら、自分を除くこの場に居る敵全員と言わないと意味が無いと思います。……あっ。


「手始めに向こうの蜥蜴共を―――」
「オレ…、ゲルミュッド様の……、命に、従う」
「え?」


あー。私の予想通り、小物が真っ先に食べられました。しかも、生きたまま頭から丸かじり。マミられてます。私の記憶では豚頭帝(オークロード)に喰われる前にお兄様達がリンチしていたと思うんですが、記憶違いでしょうか?


「ゲ、ゲルミュッド様……」
「間抜けな男だ。どう見ても意識が混濁してそうな豚頭帝(オークロード)に、自分も喰われ兼ねない命令をするとは……」
「が、牙狼族の長殿!ゲルミュッド様を愚弄する様な物言いは―――」
蜥蜴人族(リザードマン)、貴様はあの間抜け以上の愚か者だ。あの間抜けは貴様とその仲間を真っ先に豚頭帝(オークロード)の餌にしようとしていたのだぞ」


手始めに~とか言われていたのに、この駄蜥蜴は難聴系ハーレム男なんでしょうか?あっ、ハーレム男じゃありませんね。ただの難聴系脇役でした。

と、そうこうしてる間に豚頭帝(オークロード)が小物を食べ終えたみたいですね。豚頭帝(オークロード)から溢れ出た漆黒の魔素がその体を包んでます。これは―――


(個体名:ゲルドの豚頭帝(オークロード)から魔王種への存在進化を開始します)


今のが「世界の言葉」ですか。私があの声を聞いたのはこの世界に生を受ける直前なので、17年振りに聞いたことになります。というか、魔王種に進化しきっていない今を狙えば豚頭帝(オークロード)を倒せそうですよね。

私達は特撮番組でヒーローの変身やヒーローロボットの合体を待ってあげる親切な怪人や怪獣ではないので、進化し切る前に倒すのもありだと思うんです。故に仙法風遁・螺旋手裏剣でも―――あっ。


「「「「「「「「「「「「「「「鬼王の妖炎(オーガフレイム)!!」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「黒炎獄(ヘルフレア)!!」」」」」」」」」」」」」」」
「「煉獄業火(サタンブレイズ)!!」」
「『黒雷』!!」


お父様が思念伝達で指示を出したのでしょうか?私が螺旋手裏剣を使うより早くリグルさん達大鬼族(オーガ)部隊が鬼王の妖炎(オーガフレイム)を、妖鬼(オニ)部隊が黒炎獄(ヘルフレア)を、お父様とお兄様が煉獄業火(サタンブレイズ)を、ランガが『黒雷』を使いました。

これは完全にオーバーキル―――……ここで更に白老の斬仙剣による飛ぶ音速斬撃ですか。しかも、紫呉と紫苑が影移動でこの場に現れた蒼月と蒼影と合わせる様に起爆札を付けた苦無を投げ始めました。

これをオーバーキルと言わずして何と言えばいいでしょう?まるで聞仲に総攻撃を仕掛ける崑崙十二仙です。起爆札の爆発の余波で周囲の豚頭族(オーク)などが軽く吹き飛ばされてますよ。

流石にここまでの過剰攻撃をされたら進化中の豚頭帝(オークロード)は死んでもおかしく―――


(―――確認しました。豚頭魔王(オークディザスター)は『炎熱攻撃耐性』を獲得、………成功しました。続けて『電流耐性』を獲得、………成功しました。付属して『麻痺耐性』を獲得、……成功しました。続けて『斬撃耐性』を獲得、………成功しました。続けて『爆撃耐性』を獲得、………成功しました)


………ないわー。超ないわー。進化途中の豚頭帝(オークロード)を狙った結果、耐性強化された豚頭魔王(オークディザスター)が生まれるとか本当にないわー。

数少ない救いは私が螺旋手裏剣を放たなかったことでしょうか?放ってたら『風攻撃耐性』も付いていた可能性がありますよね。

……豚頭帝(オークロード)を覆っている魔素の繭(?)から腐食の妖気(オーラ)が出始めました。そろそろ豚頭魔王(オークディザスター)の誕生ですね。

取り敢えず、腐食の妖気(オーラ)で被害が拡大しない様、影分身を使った四紫炎陣で魔素の繭(?)を囲んでおきましょう。私が4体の影分身で魔素の繭を囲み、四紫炎陣の結界を張ると腐食の妖気(オーラ)が結界内に充満し―――


(―――確認しました。豚頭魔王(オークディザスター)は『腐食耐性』を獲得、………成功しました。………個体名:ゲルドは豚頭魔王(オークディザスター)への存在進化を完了しました)


ああっ!更に耐性を与える結果に!!魔素の繭(?)から生まれた豚頭魔王(オークディザスター)は結界に触れます。普通なら触れた時点で結界に身体を燃やされるんですが、『炎熱攻撃耐性』のお陰で体が燃えることがありません。

そして、指先が結界を突き破ると、エ○ァが使徒のA・Tフィールドを侵食する様に結界を左右に引き裂こうとします。けれど、四紫炎陣でこれだけ時間を稼げるなら四赤陽陣なら破られることなく閉じ込めることも可能かも?

まぁ、それでまた面倒な技能(スキル)を獲得されても嫌なので閉じ込めませんが。結界破壊系の技能(スキル)などを獲得されたら洒落になりませんから。

私はリムル様と共に地上へと降り立ち、天騒翼を消すと同時に影分身を解き、豚頭魔王(オークディザスター)を隔離していた四紫炎陣を消します。すると―――


「ふむ。無駄な抵抗は止めたか。賢明な判断だ」


意識が混濁していた豚頭帝(オークロード)の時とは異なり、豚頭魔王(オークディザスター)は意識をはっきりとさせた状態で話し掛けてきた。


「我が名はゲルド。豚頭魔王(オークディザスター)ゲルドである。そこの3名、名を名乗るがいい」


豚頭魔王(オークディザスター)はリムル様と私、お父様に名を名乗れと言ってきました。………この豚、何様のつもりなんでしょう?


「リムル=テンペストだ」
「大筒木紅麗」
「………………大筒木朱菜です」
「リムル=テンペスト、大筒木紅麗、大筒木朱菜。貴様らの魔素量は俺に匹敵している。俺の軍門に降るのであれば貴様らに連なる者も生かそう。
そうだな。リムル=テンペストと大筒木紅麗は側近に、大筒木朱菜は俺の妻として迎え入れてやろう。我が手を取り、蜥蜴人族(リザードマン)を、樹人族(トレント)を、牛頭族(ゴズ)を、馬頭族(メズ)を、耳長族(エルフ)を喰らって、このジュラの大森林を――――何をする、大筒木朱菜?」


長々と演説を続ける豚頭魔王(オークディザスター)が不愉快極まりないことを口にしたので、私が雷の性質変化で貫通力を上げた苦無を投げ付けると、豚頭魔王(オークディザスター)は片手でそれを防ぎました。

そういえば、この豚頭魔王(オークディザスター)は『電流耐性』を獲得していましたね。けれど、『電流無効』ではないので1.5cm位は苦無が刺さりました。


「あなた程度に私の伴侶となる資格があるとでも?そもそも私がお慕いしているのはリムル様ただ1人。他の者の妻になる位なら自害した方がマシです」
「心に決めた者がいるか。ならばその者を降し、力づくで言うことを聞かせるのも一興」
「あなた程度、リムル様が出るまでもありません。私が滅します」


私は豚頭魔王(オークディザスター)にそう告げると同時に輪廻転生写輪眼を発動させ、尾獣チャクラモード(九喇嘛ver)となります。


「何だ、その魔素量―――」
「反応が遅いです」


尾獣チャクラモード(九喇嘛ver)になったことで増加した私の魔素量(正確にはチャクラ量)に驚く豚頭魔王(オークディザスター)に対して、私は一瞬の内に豚頭魔王(オークディザスター)の懐へと入り、その顎へと掌底アッパーを放ちます。

本来なら蹴り上げる所なんですが、体格差から打ち上げるのに掌底アッパーが一番遣り易い方法でした。そして、尾獣チャクラモードで可能となった高速ならぬ光速移動で豚頭魔王(オークディザスター)の打ち上げられた先へと移動。

空中で身動きを取れないその体―――鳩尾へ桜花衝と超加重岩の術で攻撃力を高めた一撃を放ちます。


「――――ッぁ!!」


声にもならぬ声を上げる豚頭魔王(オークディザスター)。当然、私の一撃を受けた豚頭魔王(オークディザスター)は吹っ飛びます。……あっ。一撃加えた時、ついでに飛雷神の術のマーキングを付けて置きました。

念の為言っておきますが、豚頭魔王(オークディザスター)が吹っ飛んだ先に私はまた回り込み、今度は背中目掛けて桜花衝+超加重岩の術の一撃&飛雷神の術のマーキング。

元々、相手をピンボールみたいに殴り飛ばし続ける高速体術なんですが、飛雷神の術と組み合わせたら、先回りが楽になりますよね。新しい術名を付けるとしたら、裏蓮華・散華といった所でしょうか?



【視点:紅丸】



「なぁ、親父」
「何だ、紅丸?」
「あれは桜花衝と超加重岩の術を併用した裏蓮華だよな?」
「ああ。……いや、若干だが朝孔雀が混ざりはじめているぞ」
「うわっ!紅麗さんの言う通りッスね。一撃の様に見えて、3~4撃入れてるッスよ。豚頭魔王(オークディザスター)が殴り飛ばされる毎に摩擦の炎が3~4つ発生してるッス」
「………容赦ないですね」
豚頭魔王(オークディザスター)の発言が相当許せなかったのでしょう。飛雷神の術も併用し、移動の手間を省いておられる」


空中で弾き飛ばされ続けている豚頭魔王(オークディザスター)を見ながら、俺と親父、リグル殿、ゴブタ、白老は朱菜の容赦のなさに軽く引いている。

紫呉と蒼月、紫苑、蒼影、妖鬼(オニ)達も血の気が引いていて、大鬼族(オーガ)蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)達もドン引きだ。

豚頭族(オーク)の軍勢に至っては戦意を喪失したのか、顔面蒼白で武器を手放している者もいる。


「そういえば、朱菜的に許せなかった豚頭魔王(オークディザスター)の発言って何だったんだ?やっぱり、リムル様を愚弄した発言か?」
豚頭魔王(オークディザスター)の発言全てが許せないものではあっただろうが、恐らく引き金となったのは自分の愛するリムル様を降し、自分を力づくで嫁にする発言だろう」
「成程ッス。リムル様、超愛されてるッスね」
「……朱菜様ならリムル様の伴侶となられても誰も文句は無いと思いますよ」
「リムル様。朱菜様のこと、宜しく頼みましたぞ」
「………この光景を見せられた後にそんなことを言われても素直に喜べないんだが?夫婦喧嘩で俺が勝てる未来が見えない以前に尻に敷かれる光景しか見えない。お前ら、主君が嫁の尻に敷かれる様な奴で納得できるか?」
「嫁どころか娘の尻に敷かれる者が鬼一族の族長をしておりますが、それが何か?」
「…………」


親父の一言にリムル様は何も言い返せなくなっていた。本来なら上に立つ者として情けないという所だが、相手が朱菜では何も言えない。

というか、俺も尻に敷かれてる立場だ。飯を食う所作が上品じゃないとか、部屋を散らかしっぱなしとか。お前は俺の母親か、と問いたくなる。

あっ。長い(さらし)へと変化させた如意羽衣で豚頭魔王(オークディザスター)を拘束し、最後の一撃の為に引き寄せた。これで決着だな。


(―――確認しました。豚頭魔王(オークディザスター)は『打撃無効』を獲得、………成功しました。続けて『痛覚無効』を獲得、………成功しました)


ここで更に無効系技能(スキル)の獲得だと!?朱菜も驚きで目を見開き、豚頭魔王(オークディザスター)を拘束していた如意羽衣を元に戻すと、飛雷神の術を使って俺達の所に戻って来た。

あれ?いつの間に俺達のいる所にマーキングしたん―――あっ、マーキングの施された苦無が地面に刺さってる。何かがあった時に離脱できる様、苦無を地面に刺してたんだな。


「……あのまま最後の一撃を放っていたら、受け止められていたかもしれません」
「その可能性は高そうだな。多分だけど、スライムを捕食したことがありそうだ。体の傷が少しずつではあるが回復している。固有技能(スキル)の『自己再生』を獲得していると考えるのが妥当。
『打撃無効』と『痛覚無効』、『自己再生』を併用すれば朱菜の一撃も受け止められるだろう。そして、受け止めたら最後だ」
「自分より魔素量が上と分かった以上、嫁とは言わず捕食して私の技能(スキル)の獲得を狙う。もしくは更なる存在進化を狙う、ですか?暴食にも程があります」


朱菜は少しだけ悪態を吐きながら、両手に立方体のチャクラを形成しようとする。が、それは蒼月によって止められた。


「朱菜様、それを使うのはお止め下さい」
「何故です、蒼月!これを使えば、耐性系技能(スキル)や無効系技能(スキル)を獲得するより早く――――」
「この戦、豚頭族(オーク)を通して何者かに覗き見られている可能性があります。先程までの状態もそうですが、これ以上覗き見している者にこちらの情報を流すのは良くありません」


豚頭族(オーク)を通して俺達を覗き見ている者がいるだと?黒幕はゲルミュッドだけじゃないのか!?


「………なら、どうするのです?一撃で殺しきらなければ耐性系技能(スキル)を獲得される可能性がある。炎も雷も効かない。斬撃と打撃も効かない。
風や土、水で攻撃しても耐性を獲得される可能性がある。砂を使った圧殺も死ぬより早く『圧力耐性』を獲得されるかもしれない。確実に仕留められるのは塵遁か尾獣―――」
「そこまでだ。蒼月の言う通り、この一件の黒幕が覗き見ているならこれ以上情報を渡す様な発言は控えろ」
「ですがリムル様―――」
「朱菜は何でも自分一人で解決しようとし過ぎだ。ちょっとは周りを頼れ」


リムル様はそう言い終えると、豚頭族(オーク)に向かって歩を進め始めた。


「時間を掛けた攻撃で耐性を獲得されるなら短期決戦だ。同じ捕食系技能(スキル)持ち同士、捕食で勝負を決しようじゃないか」



 
 

 
後書き
という訳で14話でした!少しだけ原作と異なる仕様にしてみたのですが如何だったでしょうか?

・ゲルミュッド即退場
豚頭魔王(オークディザスター)技能(スキル)強化
・理知的(?)な豚頭魔王(オークディザスター)

主な変更点はこの3つですね。というか、朱菜VS豚頭魔王(オークディザスター)を見ているクレイマンはぶっちゃけどんな心境なんでしょう?
(皆さんのご意見を感想のコメントで頂けると幸いです)

次話更新は年末年始が仕事で忙しいので早くても年明け2~3週間後以降になると思います。
(私のモチベーション次第で大晦日か元旦に更新される可能性もあり)

そんな訳で次話も楽しみにしていて下さい。(笑) 

 

第15話

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回も約2週間の空きで更新することができました!

今回は豚頭魔王(オークディザスター)との戦闘(後編)です。

意外としょぼい内容かもしれませんが、楽しんで頂けると幸いです。  

 



【視点:リムル】



「時間を掛けた攻撃で耐性を獲得されるなら短期決戦だ。同じ捕食系技能(スキル)持ち同士、捕食で勝負を決しようじゃないか」


攻撃すればする程に耐性を獲得していく豚頭魔王(オークディザスター)との戦いでは、いくら尾獣チャクラモードの朱菜でも殺しきる手段は限られてくる。

耐性系技能(スキル)を凌駕する攻撃を与えた結果、無効系技能(スキル)を獲得される危険性もある。恐らく、尾獣チャクラモードの朱菜が確実に豚頭魔王(オークディザスター)を仕留められる手段は塵遁か、須佐能乎(スサノオ)十拳剣(とつかのつるぎ)、尾獣玉くらいだろう。

六道仙人モードなら求道玉や共殺の灰骨で仕留めることもできるだろう。だが、蒼月の報告では何者かがこの戦いを覗き見ている。

ゲルミュッドが十大魔王の誰かの手先なら、覗き見ているのは高確率で魔王の誰か。もしくは魔王の幹部と考えるべきだろう。

ならば、うちの最大戦力である朱菜の力は極力晒さない方がいい。晒した結果、複数の魔王が手を組んで襲ってきたりしたら厄介だしな。

あっ!どうして俺が六道仙人モードのことを知っているのかというと、月読の幻術空間で見せて貰ったことがあるからだ。紅麗や穂乃花、紅丸達も知ってるぞ。

さて、豚頭魔王(オークディザスター)に無効系技能(スキル)を獲得させること無くどうやって仕留めるかだが、前言通り捕食勝負を仕掛ける。

一応言って置くけど、考え無しに捕食勝負をする訳じゃないぞ。朱菜と蒼月が言い合い(?)をしてる間に『大賢者』に豚頭魔王(オークディザスター)が『捕食者(クラウモノ)』への耐性を獲得できるか聞いてみたんだよ。

結果、捕食系技能(スキル)は物理攻撃系の耐性技能(スキル)や無効技能(スキル)で防ぐことはできず、また捕食系技能(スキル)を防ぐ手段は被捕食側の魔素量が捕食側の魔素量より上でなければ不可能ということだ。

豚頭魔王(オークディザスター)の魔素量は俺の2分の1以下なので捕食できるらしい。ちなみに、現時点での俺の4倍以上の魔素量があるヴェルドラに『捕食者(クラウモノ)』を使えたのは本人が抵抗しなかったかららしい。

そう。今の俺なら豚頭魔王(オークディザスター)に『捕食者(クラウモノ)』を防がれる心配が無い。だが、相手も下位互換とは言え捕食系技能(スキル)である『飢餓者(ウエルモノ)』を持っている。

互いに捕食し合うとなると、互いの魔素と技能(スキル)の奪い合いになるからな。豚頭魔王(オークディザスター)の魔素が増えて、捕食効率が下がる可能性があるので、その点を『大賢者』は心配していた。

けど、俺には特殊技能(ユニークスキル)妖怪仙人(ヨステビト)』の肉体超速再生がある。再生速度でなら自己再生より上。更にスライム形態なら全身が胃袋そのもの。

豚頭魔王(オークディザスター)みたいに口から摂取し、食道を通して胃袋に獲物を入れる必要はない。捕食速度も俺の方が上だ。これだけでも勝てる確率はかなり高い。

だが、このままでは低確率でも負ける可能性がある。確実に勝つ為には別の技能(スキル)を使う必要がある。それは―――


「それじゃあ、殆どワンサイドゲームだろうけど行かせてもらう。………木遁・黙殺縛りの術!」
「!!」


俺は印を組んでから左手を豚頭魔王(オークディザスター)に向かって突き出し、紐状の樹枝を形成して豚頭魔王(オークディザスター)を拘束した、更に―――


「続けて木遁・木龍の術!!」


朱菜を拘束したこともある木龍を絡ませ、更に豚頭魔王(オークディザスター)を拘束。木龍の術は敵の拘束だけでなく、拘束した者のチャクラや魔素を吸い取る性質がある。

これで魔素を用いた放出系の技――豚頭将軍(オークジェネラル)の使っていた混沌喰(カオスイーター)などは使えなくなるだろう。あとは一方的に食らうだけだ。俺はスライム形態となり、木龍の様に豚頭魔王(オークディザスター)へと絡みつく。


「貴様、スライムだったのか!?何をするつもりだ!!?」
「喰うのがお前の専売特許とでも思っていたのか?俺はお前より上位の捕食者だ」
(――告。敵個体、特殊技能(ユニークスキル)飢餓者(ウエルモノ)』を使用。体の一部を捕食されました。肉体超速再生にて捕食部分を再生。
敵個体、『自己再生』により被捕食部を回復。こちらが先に捕食できる確率は―――)



【視点:朱菜】



流石はリムル様です!まさか捕食勝負をする前に黙殺縛りと木龍の木遁拘束コンボで豚頭魔王(オークディザスター)の動きを封じるとは思いもしませんでした。

木遁で作り出された木製品はチャクラでコーティングすれば鉄製品以上の耐久度を得られますから。しかも、木龍には拘束した者のチャクラや魔素を吸い取る性質があります。

木龍に絡みつかれた状態では、豚頭魔王(オークディザスター)も腐食の妖気(オーラ)混沌喰(カオスイーター)を使えなくなるでしょう。

豚頭魔王(オークディザスター)の今の状況を端的に述べるなら、某狩人漫画で登場した鎖使いに拘束されて能力を使えなくなった怪力自慢の盗賊団員といった所でしょう。

拘束されて『飢餓者(ウエルモノ)』の腐食効果も封じられた以上、豚頭魔王(オークディザスター)の捕食手段は直接口から捕食対象を取り込むしかありません。

対するリムル様はスライム形態となれば全身が捕食器官。捕食速度はリムル様が上。更に再生能力も豚頭魔王(オークディザスター)の『自己再生』よりも『妖怪仙人(ヨステビト)』の肉体超速再生が上。

攻めと守りの両方でリムル様が圧倒している以上、豚頭魔王(オークディザスター)がリムル様に勝てる要素が皆無。もし、これでリムル様が負けるとしたら、完全に外部からの干渉によるものです。

物理的な意味でリムル様に『捕食者(クラウモノ)』を使えない様にするとしたら、肉体超速再生を上回る速度と『物理攻撃耐性』を突破できる破壊力でリムル様を攻撃し続ける必要があります。

そんな物理攻撃が可能な存在は某奇妙な冒険に登場するスピードパワー型の幽波紋(スタンド)―――星之白金・世界(スタープラチナ・ザ・ワールド)位しか考えられません。あの幽波紋(スタンド)、パンチ速度が光速みたいですし。

魔法や忍術、仙術、『妖術』。あと、技能(スキル)に該当する攻撃手段なら『物理攻撃耐性』を無視してダメージを与えられると思いますが、それでも肉体超速再生を上回る速度で攻撃し続けなければ、『捕食者(クラウモノ)』の妨害はできないでしょう。

肉体超速再生も『物理攻撃耐性』も意味を為さない必殺、もしくは必封できる術や技能(スキル)と相対した場合、流石のリムル様でも負けることになるとは思いますが……。

少なくともこの場に居る敵―――豚頭族(オーク)軍に光速連撃や必殺、必封技能(スキル)を持つ者がいるとは思えないので、その点は安心していいでしょう。

けれど、窮鼠猫を噛むという諺もあります。外部からのショボイ干渉に意識を向けた結果、豚頭魔王(オークディザスター)が少しでも盛り返したとしたら?

その盛り返したことで得られた時間で『自己再生』を進化させられたとしたら?もしくは『飢餓者(ウエルモノ)』を進化させられたとしたら?

超極少確率ですが、あり得ないと言いきれない以上、ほんの僅かなことでもリムル様への干渉を許す訳にはいきません。

そんな訳で私は尾獣チャクラモード(九喇嘛ver)のまま特別技能(エクストラスキル)『神仙覇気』を使い、豚頭族(オーク)を委縮させます。

『神仙覇気』は覇気系技能(スキル)の中では『大魔王覇気』と同格なんですが、余波で蜥蜴人族(リザードマン)の連れて来た子鬼族(ゴブリン)達がショック死されても困るので『英雄覇気』以上『魔王覇気』以下のレベルに抑えています。

そのせいなのか、豚頭族(オーク)の中でも500人位は動けそうな者がいます。まぁ、その程度ならお父様達で対処できるでしょうから、許容範囲内でしょう。



【視点:豚頭魔王(オークディザスター)の腹心】



我等が父王――魔王ゲルド様と敵将――リムル殿が互いを捕食し始めて一体どれだけの時間が経っただろう?実際はほんの僅かな時間しか経っていないのだろうが、両者の行く末を見届けるしかできぬ我らにはとても長い時間が経っている様に感じた。

木製の枷と龍に拘束された父王はリムル殿に身体を捕食されながらも『自己再生』の技能(スキル)で体を癒し、特殊技能(ユニークスキル)飢餓者(ウエルモノ)』で捕食し返しているが、捕食と再生の速度が圧倒的に劣っている様で一方的な流れとなっている。

恐らく、オレだけでなくこの場に居る全ての豚頭族(オーク)が父王の加勢に入りたいと思っていることだろう。だが、その様な行動を取ることは許されない。

何故ならば、俺達の前には敵将と同等の存在である武人―――大筒木紅麗という名有り(ネームド)の魔人と敵将をも凌駕し父王を物理的に仕留めかけた女傑―――大筒木朱菜という魔王にも匹敵する名有り(ネームド)の魔人がいるからだ。

特に大筒木朱菜という魔人は我らのことを威圧している。我等が動けば彼等も動き、我等の同胞を一方的に蹂躙するつもりなのだろう。ここまで進軍した15万の同胞の中には老人から赤子に至る非戦闘員も含まれている。

同胞が全滅しかねない未来への恐怖か、それとも非戦闘員を巻き込む訳にはいかないという僅かばかりに残っている理性によるものか。兎も角、我等は誰一人として動けずにいた。

そして、ついに父王の命は最後の時を迎える。その体は骨に食べ残しの様な肉が幾ばくか付いている所まで喰らい尽くされ、父王はその場に倒れ込んだ。そして―――


「魔王ゲルド、お前の全ては俺が喰らう。後は俺に任せて安らかに眠れ」


リムル殿がそう告げると同時に父王は動かなくなり、その体はリムル殿に喰らい尽くされた。その瞬間、オレには骨しか残されていなかった父王の顔に安らぎの笑みが浮かんでいた様に見えた。


「……父王よ。漸く重責(おもみ)から解放されたのですね……」


父王の重責を知っていながら、それを共に背負うことすらできなかったオレは、父王が亡くなったことによる同胞の嘆きの声とリムル殿の勢力の歓声を耳にしながら父王の冥福を祈った。

その後、我ら豚頭族(オーク)とリムル殿の勢力の間にジュラの森の管理者である樹妖精(ドライアド)が現れ、翌朝に此度の一件を収束する為の話し合いを行うと宣言し、各種族は数名の代表者と共に一族の意見を纏め、参加する様言ってきた。

敗北した我ら豚頭族(オーク)には不参加という選択肢はない。また、多くの他種族を喰らった我らが無罪放免となることもないだろう。

行ったことが詫びて許されることではないと承知しているが、同胞を根絶やしにされる様な話になった場合、虫のいい話ではあるが父王の腹心であったオレの首1つで容赦して貰える様嘆願してみよう。


 
 

 
後書き
という訳で15話でした!ほんの少しだけ原作にアレンジを加えてみたのですが如何だったでしょうか?

本当なら1/3に投稿する予定だったのですが、投稿機能などに問題が発生していた為、投稿できずにいました。

ちなみに本文内で豚頭魔王(オークディザスター)の動きを封じる手段として仙法・明神門を使うというのもあったのですが、それはミリムの説教案として温存しておくことになりました。(笑)

次話は戦後処理の話になります。次話も割と早く投稿できると思うので楽しみにして頂けると幸いです。 

 

第16話

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

年末年始にリアルが忙しかったものの、暇を見つけては執筆していたこともあって2日連続投稿ができました。

第17話の投稿には少し時間が掛かると思いますが、できれば今月中にもう1話くらいは投稿したいと思っています。 

 



【視点:朱菜】



リムル様が豚頭魔王(オークディザスター)を倒した翌日早朝。シス湖湿地帯の南西にある森の広場で戦後処理の会議が行われることになりました。

参加者は鬼一族からは私、お父様、お兄様、白老、紫呉、蒼月の6名。大鬼族(オーガ)からはリグルさんとゴブタさんの2名。紫苑と蒼影を含む他の鬼一族や大鬼族(オーガ)の人達は一足早く里に帰還して貰うことになりました。

蜥蜴人族(リザードマン)からは首領さんと親衛隊長さん、親衛隊副長さんの3名。駄蜥蜴(ガビル)部隊と行動を共にしていた子鬼族(ゴブリン)からも3名が参加。

豚頭族(オーク)からは豚頭将軍(オークジェネラル)、もしくは豚頭親衛隊(オークエリート)らしき代表者が10名。当然、森の管理者である樹妖精(ドライアド)のトレイニー様も参加しています。

というか、豚頭族(オーク)達の様相が凄いことになってます。これから一族郎党皆殺しにされるんじゃないか、と戦々恐々としている感じです。

実際の所、そうされても文句を言えない立場なんですが、リムル様の人の良さから考えると無用な心配になるでしょう。

もし、リムル様が豚頭族(オーク)の現状を知った上でその罪を問う方なら、問答無用で襲い掛かった前科のあるお父様達は今頃全員捕食されているでしょうから。

………あら?お父様達が何故か身震いをしました。どうしてでしょう?この場は日差しがいいので特に肌寒くも無いのですが……。あっ、そろそろ戦後処理の会議が始まりますね。


「あー……。各種族の代表者も揃って名有り(ネームド)は自己紹介を終えたことだし、これから戦後処理の会議を始めたいと思う。と言っても、俺自身こういった会議の経験が無いから俺の考えだけを話そうと思う。
で、俺が話し終えた後に、話の内容で意見等があれば言ってくれ。……まず最初に言って置きたいことなんだが、俺は豚頭族(オーク)の罪を問うつもりはない」
「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」
豚頭族(オーク)に同族を喰われてる紅麗達や蜥蜴人族(リザードマン)達からすれば納得できないことだろうけど、豚頭族(オーク)が侵略行為に至った原因と現在の状況を聞いてくれ」


そして、リムル様の口から語られる豚頭族(オーク)の行動の原因と現状。その内容を端的に述べると豚頭族(オーク)王国オービッグで大飢饉が起こり、同胞を生かす為に奔走していた豚頭魔王(オークディザスター)が魔人ゲルミュッドに利用されたというものでした。


「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」
「無論、種族の存続が危うくなる大飢饉に襲われたからといって、他種族を文字通り喰らっていいという訳じゃない。だが、豚頭族(オーク)に戦争賠償ができる蓄えが無いのも事実」
「……リムル様、賠償ができない云々は建前なのでは?」
「………朱菜の洞察力には脱帽だな。朱菜の言う通り、豚頭族(オーク)が賠償できない云々の話は建前だ」
「では、本音を仰って下さい」
「いや、本音を話しても受け入れられるとは―――」
「弱肉強食。それこそが全ての魔物に共通する唯一不変の規則(ルール)。この度の戦で敵将である豚頭帝(オークロード)を討ち取り、戦いを終結させたのはリムル様です。
そのリムル様の決定に異論を挟むなど、恥知らずにも程があります。もし、この場で異論を挟む者がいるなら……」


私はそこまでで言って口を閉ざすと、『神仙覇気』でこの場に居る者を威圧します。リムル様の決定に異を唱えるなど星王竜が許しても私が許しません。

……あっ、『神仙覇気』の出力を間違ったでしょうか?私の立っている地面が『神仙覇気』の影響で罅割れ、周囲を舞っていた木の葉が弾け始めます。

木の葉が弾けるこの光景は、昔の剣劇アニメで見たことありますね。確か、超一流の剣客が放つ裂帛の気合い―――剣気だったでしょうか?

まさか、『神仙覇気』でそれを再現できるとは思いもしませんでした。ちなみに剣気もどきな『神仙覇気』に中てられた子鬼族(ゴブリン)は気絶。蜥蜴人族(リザードマン)豚頭族(オーク)、森の管理者であるトレイニー様は冷や汗を流しています。


「朱菜。俺はこの会議に参加している全員を対等な立場だと思って話をしているんだ。技能(スキル)を使って威圧する様な行為は止めてくれ」
「畏まりました、リムル様。差し出がましい真似をして申し訳ありません」
「ああ。……さてと、一体どこまで話したっけ?」
「……あー、豚頭族(オーク)が戦争賠償をできぬ云々の話がリムル様にとって建前という話までされていたな」
「ああ、そうだった。ありがとう、首領。で、本音を話さないといけなかったんだよな。俺は豚頭魔王(オークディザスター)と捕食対決をした時、精神世界って言えばいいのか?取り敢えず、そんな感じの所で奴の記憶を見て、会話もしたんだ」
「「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」」
「ゲルドは豚頭族(オーク)の王として20万の同胞を飢えから救う為、他種族を喰らうという選択肢しか取れない立場だった。また他種族を喰らった罪を自分一人で背負う覚悟をし、退くに退けない状態になっていた。
死の間際まで同胞の未来を案じていた者を喰らい尽くした俺には、その同胞―――豚頭族(オーク)の罪と喰らったゲルド自身の罪を引き受ける義務がある。
豚頭族(オーク)を許してやれとは言わない。だが、豚頭族(オーク)に対して殺意や怨恨といった負の感情を向けるのは止めてくれ。豚頭族(オーク)の罪を喰らった以上、その感情をぶつけられる立場にあるのは俺だからな」
「……………」
「………先程、大筒木殿も言っておられたが、全ての魔物に共通する唯一不変の規則(ルール)は弱肉強食。
この戦の勝者であるリムル様の決定に敗者である豚頭族(オーク)は勿論、救援して頂いた立場である我等蜥蜴人族(リザードマン)子鬼族(ゴブリン)も異論など挟めませぬ。
ただ、1つだけどうしても確認して置かなければならないことがあるのですが、聞いてもよろしいか?」


リムル様の発言に無罪放免となった豚頭族(オーク)の代表達は呆然となり、蜥蜴人族(リザードマン)の首領さんは無理やり自分を納得させながら、どうしても気になっている点を尋ねました。


「ああ、構わない。何だ?」
豚頭族(オーク)を無罪放免とするのは構いませぬ。ですが生き残った者達をどうするおつもりですかな?このままオービッグへと帰すのですか?それともこの森に受け入れるつもりですか?
戦で数が減ったとはいえ、現時点でも14万前後の豚頭族(オーク)がいる筈。それだけの数の豚頭族(オーク)を全て受け入れられる場所など無い筈」
「……確かに、我ら――元大鬼族(オーガ)はリムル様と共に在り続ける故、旧大鬼族(オーガ)の里を渡すことはできるが元々そこに住んでいた人数は300人。14万もの大所帯が住める様な場所ではない。
更に開拓したとしても2000の豚頭族(オーク)が住める程度だろう」
「リムル様の里で急遽受け入れるとしても食料の問題で今は1~2万が限界でしょうし」


お父様とお兄様の言う通り、14万の衣食住を用意できないのが現状なんですよね。住だけなら忍術による土地開拓と私とリムル様の木遁・連柱家の術で用意できなくもないですし、衣も豚頭族(オーク)に製作協力させれば如何にか出来るでしょう。

ですが、食だけはどうしようもありません。豚頭帝(オークロード)豚頭魔王(オークディザスター)程ではないとしても、豚頭族(オーク)はそれなりの食欲があります。

鬼隠れの里では農業を開始していますが、今育てているものが収穫できるのは夏になる頃。食糧の備蓄も住人全員が忍術を使える様になったことで魔獣狩りが容易くなり、保存食も含めて結構な量がある筈ですが、それでも14万の飢えを満たす程ではありません。


「………ただの理想論かも知れないが、14万の豚頭族(オーク)全員を生かせるかもしれない案を今から提案したい。
このジュラの大森林に住む各種族―――取り敢えず、今は鬼一族と樹妖精(ドライアド)大鬼族(オーガ)蜥蜴人族(リザードマン)豚頭族(オーク)子鬼族(ゴブリン)で同盟を結ぶというのはどうだ?」
「同盟ですか?」
「同盟というより互助関係の構築だな。豚頭族(オーク)には同盟を結んだ種族の土地へと散って貰い、労働力を提供。労働力を提供された種族は豚頭族(オーク)に食糧を提供するというのはどうだ?」
「ふむ。労働力の対価に食糧を渡すのはいいですが、住居などはどうするつもりですかな?」
「俺と朱菜がその気になれば14万の住居くらいはすぐに作れる。朱菜の手伝いが無くとも数日有れば俺1人でも用意できるだろう」
「リムル様の命であれば、14万でも20万でも家を作ります」
「……まぁ、そんな訳で住居の心配は無用だ。この場に居ない種族にも使者を送り、協力を得られれば一種族辺りの食糧負担も軽くなるだろう。
豚頭族(オーク)にとっては食糧を確保する為に自分達より下位の魔物に首を垂れることになるだろうが、生き残った者達を飢え死にさせない為にもその点は我慢して貰うことになるだろう」


リムル様が申し訳なさそうに豚頭族(オーク)達へとそう告げると――――


「滅相もありません!我らは一族郎党が死罪となって当然のことをしたのです。それを許されただけでなく、飢えを凌ぐ道すら示されたのですから感謝の念しかございません」
「そうか。最終的にこのジュラの大森林に存在する全種族が手を取り合って、人間みたいに国―――他種族共生国家を作って、農業や畜産、水産を出来る様になれば、飢饉による争いも起きなくなると俺は思ってるんだが、どうだろうか?」
「他種族共生国家。確かにそれを実現できれば、ジュラの大森林で魔物同士の争いが起こることは無くなりましょう」
「それだけでなく、各種族が協力関係にあれば今回のゲルミュッドの様に魔王の配下、もしくは魔王からの干渉を極力防ぐことができる様にもなるな」
「であれば、同意せぬ訳にはいきますまい。是非とも協力させて頂きたい」


リムル様の案に納得したお父様達や蜥蜴人族(リザードマン)の首領さん達、豚頭族(オーク)の代表達。そして、気絶状態から目が覚めた子鬼族(ゴブリン)達は一斉に立ち上がり、私とリムル様の前に跪きました。

私もお父様達の方へと回ってリムル様に跪こうと思い、歩を進めようとしましたが―――


「朱菜――いや、朱菜様はリムル様以上の力を持つ者。我らの様に跪く立場ではありません。そのままリムル様の横に居られる様、お願い申し上げます」


お父様に凄く他人行儀な立場を取られてしまいました。肉親にこういった態度で接されるのは結構ショックですね。けれど、リムル様の伴侶=魔物を総べる者の妻ということになるので、将来を見据えるとこういった状況にも慣れないといけないのでしょうか?


「結論は出た様ですね。では、森の管理者としてリムル様をジュラの大森林の新たな盟主。朱菜様を盟主代理と認め、この時を以てジュラの森同盟の成立を宣言します」


トレイニー様がそう告げるや否や、腰掛けていた木の幹から立ち上がり、私とリムル様の前で跪きました。トレイニー様まで跪いたことで、リムル様はすこし焦っていますね。


「………えっと、俺自身盟主とかやった経験が無いから色々と頼りないかもしれないけど、よろしく」
「私も若輩者で皆様にご迷惑をお掛けするかもしれませんが、宜しくお願い申し上げます」
「「「「「「「「「「ははッ!!」」」」」」」」」」


私とリムル様の言葉に跪いているお父様達は声を揃えて返答し、リムル様は皆のその反応に汗が止まらない状況になっていました。

あっ、ちなみに言い忘れていましたがリムル様の姿は会議が始まってからずっと人間形態です。


 
 

 
後書き
え~、一応今回の話で森の騒乱編は終了です。
(半分以降の話の流れは原作とほぼ同じなので省略しようと思ってます)

豚頭族(オーク)も生存者が原作より少し減っていますが、それ以外は特に変更なく原作通り名付が行われています。

名付の変更点があるとするなら、朱菜によって姓が与えられ、名前も数字ではなくちゃんとした者が与えられたと言った所です。

どういった名前を付けたかは次話で明かしたいと思います。

そんな訳で次話もお楽しみに!! 

 

第17話 改訂版 (2019/01/17)

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回の視点はミリムとリムルの2人なんですが、2人の視点で時間軸が異なっていたりします。

先にミリム視点から始まりますが、時間軸的にはミリムの方がリムル視点より後の話になります。

そのことをご了承の上で本文を読んで頂けると幸いです。

 

 

【視点:ミリム】



豚頭帝(オークロード)の件でクレイマンに呼び出された私は同じ十大魔王の1人あるフレイを連れて、同じく十大魔王の1人であるクレイマンの屋敷へとやって来たのだ。


「クレイマン!豚頭帝(オークロード)のことで話したいこととは何なのだ?豚頭帝(オークロード)が無事に豚頭魔王(オークディザスター)へと進化したか?」
「そのことなんですが、豚頭帝(オークロード)が討ち取られた為、新たな魔王を誕生させる計画は白紙になりました」
「……は?」


クレイマンは何を言ってるのだ?豚頭帝(オークロード)が討ち取られた?冗談にしては笑えないのだ。けど、受け狙いの可能性もあるから、大人の私は笑ってやるのだ。


「わはははは!クレイマンも偶には面白い冗談を言うのだ!」
「冗談ではありませんよ」
「20万の軍勢を率いた豚頭帝(オークロード)を討ち取れる奴等、上位魔人以上で無いと不可能なのだ」
「その上位魔人以上の存在が現れたのですよ」
「はは、は……。………本当に討ち取られたのか?」
「ええ。討ち取られたのは変え様のない事実です。まぁ、私の口から話しても信じられないでしょうから、実際に見て頂きましょう。………と、その前に1つ気になることがあります。どうしてフレイがこの場に居るのですか?」
「面白い話は皆でした方がより一層面白くなるからな。私が誘ったのだ!」
「………おいおい。元々は俺とミリム、クレイマンの3人で進めていた計画なのに、バラしちまっていいのかよ?」
「……ミリムの突拍子もない行動は今更ですよ、カリオン。この際ですからフレイも巻き込みましょう」


クレイマンはそう言うと4つの水晶を取り出して、記録していた映像を流し出したのだ。


「この水晶球は少し特殊な物でして、水晶球越しでも相手の魔素量を感じ取れる仕様なんですよ」
「………こいつらは大鬼族(オーガ)鬼人族(キジン)―――いや、妖鬼(オニ)か?」
「大半が大鬼族(オーガ)妖鬼(オニ)みたいだけど、何名かは妖鬼(オニ)を凌駕する魔素を持っているわ。妖鬼(オニ)以上の上位種族かしら?
この紅髪の男なんて私達程じゃないけど、魔王クラスの魔素を持ってるんじゃない?」
「シス湖付近にある湿地帯での戦いの映像です。豚頭帝(オークロード)より興味深い者達が映っているでしょう?特に興味深いのは―――」


クレイマンがそういうと2つの水晶に2人の人物が映ったのだ。1人は銀髪のちっこい奴。もう1人は桃髪の女だったのだ。


「おおっ!…………ん?」
「おいおい、マジかよ!?この銀髪のガキ、ディーノ程じゃねぇけど、俺やフレイより魔素量が多いんじゃねぇか!!?確実に魔王級だぞ!!」
「それよりも驚くのはこっちの娘ね。ミリムと同等の魔素量かも知れないわよ。これだけの魔素量があるということは、確実に名有り(ネームド)でしょうけど、何でこれだけの力を持った魔人が今まで知られてなかったのかしら?」
「その点に関しては私も疑問に思っていましたが、彼らが住んでいるのは不可侵条約で守られているジュラの大森林。魔王は誰も確認できなかったのでしょう」


この銀髪、どこかで会ったことが………。いや、会ったことは無いのだ。けど、会ったことがある様な感じもするのだ。何なのだ、この感覚は?


「…………」
「あー……。確かに、不可侵条約が無かったらギィ辺りが接触してそうだもんな。三下のゲルミュッドの名付けで生まれたとも思えねぇし、偶発的に生まれた特殊個体(ユニークモンスター)って所か?」
「そう考えるのが妥当でしょうね。魔王級の特殊個体(ユニークモンスター)が2人も生まれて、協力関係にあるのは納得できないけど」
「実際の所、この2名は大鬼族(オーガ)妖鬼(オニ)黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)を一緒に従えているので、協力関係にあると考えるべきでしょう」


会ったことが無いのに会ったことがある。おかしな感覚な筈なのに、気持ち悪かったりはしないのだ。逆に何かポカポカする様な……?


「……………」
「俺達より強い魔王級特殊個体(ユニークモンスター)が存在しているのは想定外だな。強者を配下に加えられるチャンスと思ったから計画にも乗ったが、この2人を敵に回すことだけは避けてぇ」
「……そうね。ミリムと同等の魔素量を持つ娘を敵に回した日には国ごと滅ぼされかねないもの。配下に加えるのではなく、友好関係を築く方向で話を進めるべきね。ただ――――」
「友好関係を結びたくても、不可侵条約のせいで俺らはこいつらと接触できないんだよなぁ………。ってか、ミリムはさっきから黙り込んでどうしたんだ?」
「ずっと銀髪の特殊個体(ユニークモンスター)の水晶球を見てたわね?その特殊個体(ユニークモンスター)に何か気になる点でもあるの?」
「意外ですね。ミリムが気にするとしたら桃髪の特殊個体(ユニークモンスター)だと思ったのですが」


カリオンもフレイもクレイマンも五月蠅いのだ。私は今、この銀髪に感じる感覚が何か考えてる所なのだ。


「この銀髪を見てると変な感覚に襲われるのだ。知らない筈なのに知ってる様な、安心感を覚える様な……」


そうなのだ!安心感なのだ。ポカポカは1人で居る時ではなく、フレイ達と一緒にいる時の感覚に似てるのだ!


「何だ?お前、この銀髪に惚れたのか?」
「実年齢が私達より上でも精神年齢は見た目相応ということかしら?」
「本当に意外ですね……」
「………カリオン。ふざけたことばかり言ってると半殺しにするのだ」
「うぇッ!?何で半殺しの対象が俺だけなんだよ!?フレイとクレイマンも同罪だろ!!?」
「というか、お前達は何でジュラの大森林に行くのを躊躇してるのだ?」
「おい、俺を無視してんじゃねぇよ!最古の魔王の癖に大人気無さ過ぎだろ!!」
「だから、彼らと友好関係を結ぶにも不可侵条約のせいで行けないじゃない」
「あれ?フレイ?何でお前まで俺を無視してんだ?」
「不可侵条約など、この場に魔王が4人もいるのだから撤廃できるではないか」
「「………あっ!?」」
「おーい。言い出しっぺの俺が悪かったから無視すんのは止めてくれ、ってか、同罪のフレイとクレイマンも無視すんな」


……カリオンも反省したみたいだし、そろそろ許してやるのだ。無視し続けた結果、いい歳した男が泣いたりしたらキモいだけなのだ。


「おい。今、すげぇ失礼なことを考えなかったか?」
「カリオンは何を言ってるのだ?そんなことより、今この場に居る私達で不可侵条約を撤廃するのだ。そもそも、あの条約は魔王が暴風竜の封印に干渉しない様にする為に締結されたものなのだ。暴風竜が消滅した以上、不可侵条約など必要ない。そうであろう?」
「……取り敢えず、条約撤廃に関しては賛成だ」
「私も領土が森に接してるから、条約が撤廃されると助かるわ」
「私も2人と同じく賛成です」


カリオン、フレイ、クレイマンの順番で3人が条約撤廃に賛成すると、クレイマンが他の魔王達に通達する為の紙を取り出したのだ。流石はクレイマン、仕事が早いのだ。

私達は全員がその紙にサインをすると、恨みっこなしの早い者勝ちというルールで動き出す。すぐに挨拶に行くから待っているのだ、銀髪!



【視点:リムル】



豚頭魔王(オークディザスター)との戦いから既に3ヶ月が経った。言葉にすれば一言だが、この3ヵ月の間に色んなことがあった。

まず、生き残った約14万の豚頭族(オーク)の名付けと受け入れ。ぶっちゃけ、名付け地獄過ぎるので、付ける名前も住む場所と数字、性別―――M(マウンテン)001M()みたいな適当なものにする予定だった。

だが、朱菜の提案で俺が名付けを行う人数は豚頭魔王(オークディザスター)直轄の豚頭親衛隊(オークエリート)2000人だけとなった。

まぁ、人数が減った代わりに2000人分のちゃんとした名前を考えて付けることになったんだが……。残りの13万5000以上の豚頭族(オーク)はどうしたのかというと、朱菜が影分身1000体を動員して名字込の名付けを行った。

1000体の影分身を動員すれば、1人辺りに割り当てられる豚頭族(オーク)の数は135人前後。普通の影分身なら10人名付けた時点で魔素切れ、チャクラ切れを起こして消滅するけど、朱菜の場合は例外だ。

尾獣チャクラモードと影分身の特性を活かしたチャクラの連結。更に本体である朱菜自身が仙術チャクラを練り続けて影分身に供給すれば、影分身も簡単には魔素切れ、チャクラ切れを起こすことがない。

影分身を使った名付けに問題があるとしたら、同姓同名の豚頭族(オーク)が量産されることだろうか?まぁ、豚頭族(オーク)の戸籍作成と管理を行った地官長・大司徒であるリリナ曰く、1つの名前に対する同姓同名の豚頭族(オーク)の数は10人以下だったらしいけど。

ちなみに朱菜が豚頭族(オーク)達に名付けた姓は秋道。名は蝶の名前に因んだものが多かった。例えば、女性豚頭族(オーク)に秋道揚羽とか秋道紋白といった名前の者がいる。

何故に蝶?と思って聞いてみたりもしたが、朱菜曰く特に意味は無いそうだ。というか、朱菜って本当に転生者じゃないのかな?名付けられた豚頭族(オーク)の中に秋道モスラとか秋道バトラって名前のがいたし。

モスラとバトラって、あれだよな?あの国民的怪獣映画に登場する守護神的な怪獣。確か、あいつは蝶じゃなくて蛾がモデルだった気もするけど。

あと、秋道ガイラとか秋道レイラってのもいたけど、あれって鎧モスラとレインボーモスラの略称じゃないかと俺は思ってる。けど、確認したくてもできないんだよな。

この世界にモスラやバトラっていう種族名の蝶型の魔物がいないとも言い切れないし。名付けられる側はどんな名前でも拒否する権利とか無さそうだから、他の魔物の種族名を付けられても文句を言えなかった可能性がある。

…………まぁ、1人で考えても答えは出ないんだ。このことに関しては考えるのを止めよう。で、話を戻すけど朱菜の名付けを行った豚頭族(オーク)達は全員が豚頭族(オーク)の上位種である猪人族(ハイオーク)を更に一段階進化させた猪人英雄(ハイオークチャンピオン)へと進化した。

ちなみに俺が名付けを行った豚頭親衛隊(オークエリート)2000人にも秋道の姓と個別の名前を与え、豚頭魔王(オークディザスター)の腹心だった豚頭将軍(オークジェネラル)には秋道ゲルドの名を与えた。

名付けの結果はゲルドが猪人帝(ハイオークロード)に、他の豚頭親衛隊(オークエリート)達は猪人将軍(ハイオークジェネラル)へと進化するというものだった。

しかも、全員が特殊技能(ユニークスキル)持ち。技能(スキル)名は『秋道之系譜(ハバタクモノ)』。全身もしくは体の一部を巨大化させられたりする身体強化系の技能(スキル)らしい。

他にも戦後会議に参加していた子鬼族(ゴブリン)達が一族郎党を引き連れて俺達の里にやって来た。

弱小種族である彼らを追い帰す訳にもいかず、受け入れて名付けを行ったんだが、その数が数千近くだった為、俺と朱菜は二度目の名付けデスマーチを体験することになった。

………いや、あれはデスマーチという程でも無かったか。ゴブタ達の名前をちょっと弄った名前を付けたし。ゴブータとかゴッブータとか。あと苗字はリグル達とは別で猿飛って苗字にした。

苗字の提案をして来たのは当然のことだが朱菜。けど、何故に猿飛?全員忍者にでもする気か?いや、実際の所うちの名有り(ネームド)は全員が特別技能(エクストラスキル)『忍法』を獲得してるから忍者なんだけど。

あと、蜥蜴人族(リザードマン)の首領・アビルから勘当されたガビルとその部下達+αもうちの里にやって来た。どうやら俺達の配下になりに来たそうだ。

朱菜は嫌そうな顔をしてたけど、俺はそれなりにガビルのことを気に入ってたので、ガビル達の事も受け入れて、姓を含む名付けを行った。

ガビル達に与えた姓は山中。そして、ガビル達が進化して至った種族は龍人族(ドラゴニュート)だ。正確にはガビルは龍人王(ドラゴキング)、ガビルの側近だった3人は龍人将軍(ドラゴジェネラル)が2名と龍人英雄(ドラゴチャンピオン)が1名。

ガビルの妹でアビルの親衛隊長をしていた蜥蜴人族(リザードマン)――山中蒼華は龍忍族(ドラゴアサシン)という竜の角と翼が生えている以外はかなり人間に近い姿へと進化した。

あっ、ガビル達も特殊技能(ユニークスキル)を獲得したぞ。獲得した特殊技能(ユニークスキル)は『山中之系譜(カラクルモノ)』。精神攻撃と感知に特化した技能(スキル)だ。

取り敢えず、住人も増えてこれからより一層里を発展させ、平和な日常を堪能しようと思っていたんだが、その矢先に新たな問題がやって来た。


「リムル様、北から多数の気配がこの里に接近しています。数は500といった所です」


感知したのが朱菜でなければ、報告内容を笑い飛ばしていただろう。何故なら、俺達の里の北側には山と武装国家ドワルゴンしかないからだ。

集団で移動しているなら小規模でもドワルゴンの軍隊である可能性がある。ドワルゴンにちょっかいを掛けた記憶は無いんだけどな。

取り敢えず、500の集団と接触できそうな開けた所に幹部メンバーと行ってみることにしよう。里は地中・空に関わらず球状の結界で覆われてるからな。



 
 

 
後書き
という訳で17話でした。

本文では説明されていないのですが、里を覆っている結界のモデルはBLEACHの遮魂膜です。朱菜の考案した雷遁ベース結界で触れた瞬間に消し炭になるレベルの超高圧電流が流れる設定です。
(もし、この結界を突破できる者がいるとするなら、災禍級(ディザスター)の中でも上位の魔王だけでしょう(笑))

さて、次話はドワーフ王との対決と建国話です。順調に執筆できれば来週にでも投稿できそうですが、2月投稿になる可能性が高そうです。

まぁ、どちらにしても頑張って執筆したいと思います。そんな訳で、次話もよろしくお願いします!! 

 

第18話

 
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。

今回はVSドワーフ王の話です。

ドワーフ王の相手は原作通りなのか?はたまた、別の誰かなのか?

その辺りは本編を楽しみながら確認してみてください。(笑) 

 



【視点:朱菜】



私達の里にドワルゴンから飛行武装集団―――確か、天翔騎士団(ペガサスナイツ)だったでしょうか?兎に角、天馬(ペガサス)に騎乗した約500の騎兵がやって来たので、それだけの大所帯が着陸できる場所に誘導しなければいけません。

里の上空は半球状に形成された四紫炎陣の雷遁verといえる結界を張ってますからね。結界に触れたら、1時間もしない内に炭化を通り越して灰になってしまいます。

もし、この結界を抜けられる者がいるとするなら災禍級(ディザスター)上位以上の存在か、『電流無効』や『全属性無効』の技能(スキル)を持つ存在だけでしょう。

そんな訳で飛雷神の術で里の外へと跳んだ私は誘導の為、如意羽衣の部分変化で天騒翼を形成し、天翔騎士団(ペガサスナイツ)の所へと向かいます。


「そこの武装集団に警告します。私達の里には侵入防止の攻性結界が張られています。上空から侵入しようとした場合、高圧電流で骨すら残さず灰になります。私達の里に用があるのなら、私の指示に従いなさい」
「小娘。貴様、一体何者だ?」
「私はジュラの森の盟主代理であり、あの里の大老(たうろ)―――森の盟主であり、里長であるリムル様の相談役を務める大筒木朱菜です」
「……我が国の暗部から銀髪と桃髪の魔人が豚頭帝(オークロード)を討伐したという報告を受けた。貴様はその片割れだな?」
豚頭帝(オークロード)?それなら私達ではありません。私達が討伐したのは魔王へと進化を果たした豚頭魔王(オークディザスター)です。
豚頭帝(オークロード)を討伐した魔人をお探しであれば、私達の里は無関係。他の場所へと向かわれては如何でしょう?」
「「「「「「「「「「豚頭魔王(オークディザスター)!!?」」」」」」」」」」
「…………ふむ。豚頭帝(オークロード)ではなく豚頭魔王(オークディザスター)を討伐した、と。討伐したのはオオツツキ殿か?」
「いいえ。討伐されたのは我らが聖上であられるリムル様です」
「………成程。豚頭魔王(オークディザスター)豚頭帝(オークロード)を遥かに上回る脅威。それを討伐したとあれば、隣国の王として相応の礼をせねばならん。オオツツキ殿。汝の主であるリムル殿に会わせて貰えんか?」
「…………畏まりました。ですが、リムル様に傲岸不遜な態度を取らぬようお願いします。それでは天馬(ペガサス)が着陸できる場所へと誘導させて頂きます」



【視点:ガゼル】



オオツツキ=シュナという名有り(ネームド)の誘導に従い、城壁に囲まれた町の外へと降り立った俺達を待っていたのは複数人の魔人であった。

その場にいた魔人の最低危険度ランクはB+。私見だが特Aランク――厄災級(カラミティ)に相当する者が多く、中にはSランク――災禍級(ディザスター)に相当する者も3名いた。

災禍級(ディザスター)相当の魔人の中でS+と思われる銀髪の魔人が1人。恐らく、この魔人がオオツツキ殿の言っていたリムルという魔人なのだろう。

それにしても、この魔人の町は何なのだ?災禍級(ディザスター)相当の魔人が3――いや、オオツツキ殿も恐らくは災禍級(ディザスター)。そう考えると災禍級(ディザスター)相当の魔物が4名。

厄災級(カラミティ)相当の魔人が6名。災害級(ハザード)に相当する魔人と魔物が5名。これだけの戦力が手を組んでいるとなると、その危険度は天災級(カタストロフ)――特S-に相当する。

城壁の内側にどれだけの魔人と魔物がいるかは分からんが、町の規模から考えると最低でも1万の住人は居るだろう。その住人全員の最低危険度ランクがB以上であるのなら、総合的な危険度は特Sとなる。

如何に我が国の精鋭部隊である天翔騎士団(ペガサスナイツ)といえど、たった500人では天災級(カタストロフ)に相当する1万以上の魔人、魔物の集団に勝利することなど出来ぬ。

天災級(カタストロフ)という存在は決して見過ごすことのできぬ人類への脅威。普通ならばそう判断するべきなのだが、少なくともこの場に居る魔人、魔物に対して俺は即断できずにいた。

その理由は我が国から国外追放となり、スライムと共にジュラの大森林へと去ったカイジンが魔人達と共にいたからだ。

俺がスライムの監視を命じた暗部からの報告では、この場にいる魔人達の出現と同時にスライムは姿を現さなくなったとのこと。

ほんの僅かな可能性と消去法で考えると銀髪の魔人=スライムということになるのだが、これはあまりに荒唐無稽な考えだ。

……何はともあれ、カイジンの状態を見る限りは奴隷扱いではなく魔人達と共存共栄関係にあることが把握できる。それ故に俺は魔人達の危険度を計りかねてもいるのだが………。


「まさか、この様な形で再びご尊顔を拝することになろうとは、思ってもおりませんでした。ガゼル王よ」
「うむ。久しいな、カイジン。ところで貴様を連れて行ったスライムは―――」
「久し振りだな、ガゼル王」


俺がカイジンにスライムのことを聞こうとすると、銀髪の魔人が話し掛けてきた。久し振り?何を言っておるのだ、この魔人は?


「すまぬが貴殿と俺はどこかで会ったことがあるのか?」
「忘れたのか?俺だよ、俺。リムル。リムル=テンペストだよ」
「リムル?確か、オオツツキ殿が言っていたジュラの大森林の新たな盟主で、この町の長の名であったな。だが、俺の知人にリムルという名の魔人はおらぬ。やはり、貴殿とは初対面の筈だ」
「あ、あれ?」
「旦那。ガゼル王は旦那の名前も今の姿も知りませんよ」
「そうだっけ?今の姿は兎も角、名前は裁判の時に――」
「裁判の時は王の許しが無かったら一切発言できないって教えただろ?」
「………あっ。そういえば、あの時ガゼル王と会話したのってお前だけだっけ?半年も経ってない筈なのに、すっかり忘れてたわ」


カイジンとの会話から察するに、この銀髪の魔人はあの時のスライムの様だな。だが、スライムが人に擬態するなど聞いたこともない。


「……貴殿は本当にあの時のスライムなのか?」
「そうだよ」
名有り(ネームド)の様だが、名有り(ネームド)になってから人に擬態できる様になったのか?」
「いいや。裁判の時には既に名有り(ネームド)だったけど、人に擬態できる様になったのはドワルゴンを出入り禁止になって以降だ。色々とあってね。信じられないなら裁判の内容でも話そうか?」
「いいや。そこまでする必要はない。しかし、スライムがジュラの大森林の盟主とは、些か信じられぬな」


そう。この町の長であることは百歩譲って信じられたとしても、スライムがジュラの盟主など信じられぬ。おっと、俺の発言に対してこの者の家臣と思しき魔人達が殺気立ち始めたな。

魔人達の殺気に対して、我が家臣達も武器に手を掛けている。このままでは一触即発の事態となりかねん。だが、未確認の事柄に対して謝罪ができる程、王という立場は軽くも無い。この事態を収拾するにはどうしたものか……。



【視点:リムル】



………やべぇ。ガゼル王の発言に対して、紅麗達が超殺気立ってるよ。特に蒼月と蒼影の笑みが超怖い。逆に朱菜は全く殺気立ってない。何でだ?いや、朱菜が殺気立たないことはいいことなんだけど。

俺がそんなことを考えていると、俺とガゼル王の間に3枚の木の葉が舞い落ち、3人の樹妖精(ドライアド)が姿を現した。その内の1人は俺のよく知ってる樹妖精(ドライアド)で―――


「ドワーフ王。森の管理者である私達樹妖精(ドライアド)が盟主と認めた方に無礼な態度を取るのは止めて頂きましょうか」
「「「「「「「「「「樹妖精(ドライアド)!?」」」」」」」」」」
「やぁ、トレイニーさん。会うのは同盟締結以来かな?」
「ご無沙汰しております、リムル様」
「………ふむ。樹妖精(ドライアド)の態度を見る限り、貴殿がこの森の盟主であることは事実の様だ。だが、俺達には他にも確認せねばならぬことがある」
「他に確認しなきゃいけないこと?」
「貴殿らが人に仇為す魔人か否か。その本質を見極めねばならぬ」
「俺達の本質を見極めるって、どうやって見極めるんだ?言葉を交わすだけじゃ駄目っぽいけど」
「簡単なことだ。俺も武人の端くれ、剣を交えれば相手の人となりを知ることはできる」
「……この場に居る全員と剣を交える気なのか?」
「貴殿がこの森の盟主であるなら、貴殿の人となりを知ることができれば、その配下のことまで心配する必要はない。森の管理者たる樹妖精(ドライアド)が下剋上される様な愚者を盟主にするとは思えぬしな」
「ならば、リムル様の前に私と剣を交えて貰いましょう」
「何?」
「私もリムル様と同じく樹妖精(ドライアド)であるトレイニー様によって盟主代理に選ばれました。盟主の人となりを知りたいのであれば、剣を交える相手は私でも構わない筈。それとも魔人とは言え女に負ける危険性は冒せませんか?」


うおっ!ここに来て朱菜がガゼル王を煽り始めたぞ。これはあれか?さっきまでの俺に対する煽りの逆襲か!?

あと、紅麗達と同じくガゼル王の部下も煽り耐性がないのか?武器に手を掛けた奴が何人かいるぞ。ガゼル王が手を出すな的なジェスチャーをしたことで手を離したけど。


「ふむ。俺は手合せする以上、相手が女でも手加減ができん。それでも構わんか?」
「構いません。逆に私の方が手心を加えましょう。亜人より能力的に格上な魔人なので」
「あの、朱菜さん?さっきからガゼル王に刺々しくないですか?」
「刺々しく等ありませんよ、リムル様。ガゼル王がリムル様に無礼な態度を取ったことなど、別に気にしてもいません」


語るに落ちるとは正にこのことだ。ここは止めるべきか?けど、朱菜も手心を加えると言ってるし、尾獣チャクラモードとか六道仙人モードを使うことは無いと思うし………。

あっ!朱菜がいつの間にか鋼金暗器を、ガゼル王も剣を抜いて構えてる!これはもう止められそうにないぞ!!

取り敢えず、人間や亜人も含めた他種族との友好関係の構築を考えている俺としては、交友断絶になりそうな勝負だけは絶対に避けて欲しい。


「トレイニー様、立会人をお願いします」
「………では、僭越ながら立会人を務めさせて頂きます。始め!」


トレイニーさんの開始の合図と共に駆け出す朱菜に対し、開始地点から一歩も動こうとしないガゼル王。あれは朱菜が女だからって油断しているな。

しかし、何で朱菜は鋼金暗器を両手じゃなくて右手だけで持ってるんだ?。何か意味が―――……成程、左袖の内側から取り出した苦無を投擲する為か。

白老に鍛えられてるから少しは分かるんだが、ガゼル王は剣士としても一流だろう。投擲された苦無を避けることも弾くことも難なくできる筈。

………やっぱり、俺の予想通り難なく苦無を避けた。けど、あの苦無を避けるのは悪手だ。何故なら―――


「ッ!!?」
「あら?初見で飛雷神二の段を防がれるとは思ってもみませんでした」


投擲された苦無には飛雷神の術のマーキングが施されているからなんだが、ガゼル王は瞬間的に前方から真上へと移動した朱菜の攻撃を防いだ。

けど、朱菜の放った鋼金暗器の一撃はかなり強かったみたいで、地面に亀裂が入ってガゼル王の足が少し減り込んでる。片手で振るった攻撃の威力がこれなら、両手で振るわれた場合はどうなるんだろう?

………考えない様にしよう。あっ、朱菜が飛雷神二の段に使った苦無を口に咥えて、鋼金暗器を両手で持った。

うおっ!すげぇ、連続突きだ!いや、突きの合間に横薙ぎと袈裟斬り、斬り上げも加えている。ガゼル王が防戦一方だ。


「……剣士としての腕はお父様や白老ほどではありませんが、お兄様より上の様ですね。手心を加えた状態で正面から打ち破るには時間が掛かりそうなので、変則的な攻撃を仕掛けてみましょう」


朱菜はそう言うや否やガゼル王から距離を取り、一瞬で鋼金暗器の形状を変化させた。


「鋼金暗器、二之型・龍――鎖鎌」
「……形状を変化させるとは、珍しい武器を持っているものだ」
「この鋼金暗器は6つの顔を持っています。ガゼル王はいくつの顔を見れるのでしょうね?」
「久々に血が滾ってきた。残りの4つも見せて貰うとしよう」


朱菜が鎖を振り回しながら挑発すると、ガゼル王は獰猛な笑みを浮かべながらそう口にした。このおっさん、もしかして戦闘狂なのか?

朱菜が巧みに操る鎖鎌はガゼル王の鎧を傷付けることはあっても、体には一切傷を付けられずにいた。これは朱菜が手加減しているからなのか?はたまた、ガゼル王が紙一重で避けているからなのか?

あっ!ガゼル王が鎖鎌の動きを読み切って、朱菜との間合いを詰めた。朱菜も鎌の方を引き戻したけど、近距離では鎖鎌は不利―――おい、いつの間に鎖鎌から鋏に変わった?


「三之型・極――大鋏」


朱菜はガゼル王の一撃を白刃取りの様に大鋏の刃で挟み込んで受け止める。見応えのある攻防だけど、そろそろ止めた方がいいかな?このまま続けさせたら、人となりを知る為の試合が死合になりそうだし。


「おーい。俺達の人となりを知る為に始めた勝負ならそろそろ終わらせてもいいんじゃないか?十分過ぎる位刃を交わしただろ?」


俺がそう告げると、ガゼル王と朱菜は同時に視線を向けてきた。そして、天翔騎士団(ペガサスナイツ)(?)の騎士達は「よくぞ止めてくれた!」的な視線を向けて来る。


「そうだな。では、次の一撃を最後としよう」


ガゼル王はそう言うや否や、姿を消した。この技は白老と始めてた戦った時に使われた技に似ている。次にガゼル王が姿を現した時、朱菜は袈裟斬りで真っ二つになっていた。

と思いきや、真っ二つになったのは丸太だった。変わり身の術で入れ替わった様だ。そして、本物の朱菜は鋼金暗器を一之型・牙――薙刀へと戻し、ガゼル王の背後からその刃を突き付けていた。

よくよく見てみると、ガゼル王の背後の地面には飛雷神のマーキングがされた苦無が刺さってる。いつの間に投げたのか分からないけど、飛雷神の術も使ってガゼル王の背後を取ったんだな。


「勝負あり、ですね」
「うむ。こうも容易く背後を取られては俺の完敗だ」


どうやら勝負は決した様だ、けど、この勝負で俺達の人となりを把握できたのだろうか?見応えのある攻防ではあったけど、朱菜の攻撃手段って搦め手とか意表を突くのが多かった様な。


 
 

 
後書き
という訳で、18話でした。

ガビルの時は煽り耐性が低かった朱菜も少しは成長しました。(笑)
(特に卑劣様の飛雷神切りや飛雷神二の段&超大玉螺旋丸のコンボを使用しない辺りに成長が見られます)

当然のことながら、本編の朱菜は尾獣チャクラモードどころか、普通の仙人モードすら使ってません。(笑)

次話は建国話とミリム来襲の話を投稿する予定です。 

 

第19話

 
前書き
おはこんばんにちは。そして、お久しぶりです。沙羅双樹です。

本来ならば平成最期の日である4/30に投稿したかったんですが、改訂や修正をしていたら令和3日目に投稿する羽目になってしまいました。(泣)

今回の話はドワルゴンとの同盟と国名決定の話です。ルビ込で5500字程度なので余り長い話でもないかもしれませんが、楽しんで頂けると幸いです。 

 



【視点:紅麗】



ドワーフ王と朱菜の戦いは朱菜の勝利で幕を閉じた。だが、俺だけでなくこの場に居る殆どの者が疑問に思っていることがある。

それはこの戦いでドワーフ王が我らの人となり――リムル様の人間と友好的でありたいという理念を知って頂けたかということだ。

何故ならこの戦いで朱菜は初っ端から飛雷神の術、そして最後も飛雷神の術でドワーフ王の背後を取った。真正面からの正々堂々の戦いではなく、完全に暗殺者の戦い方だ。

いや、リムル様と朱菜に名付けられた者は全員が特別技能(エクストラスキル)『忍法』を獲得しているので、全員が忍者――諜報と暗殺を主な生業とする傭兵ということになるんだが、それでも人となりを知って貰う勝負であの戦い方は無いだろう。


「………何故でしょう?この場に居る大半の人に失礼なことを思われている気がします。暗殺者の様にガゼル王を背後から攻撃するなど卑怯極まりない、とか」


………いつも思うのだが、何でこの娘は無駄に察しがいいんだ?取り敢えず、ここで肯定したら後でどんなお仕置きが行われるか分からん。

朱菜はお仕置きをする時、必ずお仕置きルーレットというものを使う。ちなみにルーレットの内容は苦手料理フルコースの刑、紫苑料理フルコースの刑、表蓮華の刑、裏蓮華の刑、朝孔雀の刑、昼虎の刑、雷我爆弾(ライガーボム)の刑、雷虐水平千代舞(らいぎゃくすいへいチョップ)の刑、雷犁熱刀(ラリアット)の刑、月読残虐拷問24時間の刑となっている。

物理系のお仕置きはリムル様の完全回復薬(フルポーション)で回復できるが、精神攻撃系と紫苑料理はかなりヤバい。特に紫苑料理は一口目で即死する危険性もある。


「斬仙剣と飛雷神の術を組み合わせた卑劣コンボ――音速飛雷神斬りを使わなかったことを考えれば、至って普通の戦いだったと思うのですが……」
「「「「「「「「「「そのコンボは卑劣過ぎるんで、実戦でも使わないで下さい!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「??????」」」」」」」」」」


朱菜の余りに卑劣な発想に、俺を含むこの場に鬼隠れの里の幹部全員が声を揃えてそう口にした。そして、ドワーフの騎士達は我らの会話に付いて行けず、何の話だ?といった顔をしていた。

ドワーフ王とその騎士達よ。世の中には知らない方がいいこともあるのだ。故に深入りしないで頂きたい。

………しかし、よくよく考えれば朱菜は飛雷神の術以外に忍術は使っていないので、先の戦い方も卑怯という程のものでもないのかもしれん。

流石に飛雷神二の段と螺旋丸や千鳥を組み合わせていたら卑怯だったかもしれないがな。ガゼル王の剣を稀少級(レア)に相当する武器と見ているんだが、恐らくその剣でも螺旋丸や千鳥の攻撃を受けたら簡単に壊れてしまうだろう。

いや、武器が壊れるだけならまだマシだ。こちらには優秀な武器職人であるカイジン殿と黒兵衛がいる。壊れたとしても代わりの武器を用意できる。

螺旋丸や千鳥の場合、武器破壊だけでなくドワーフ王の命すら奪っていた可能性があるのだ。仮に命を奪わなかったとしても直接接触した際に飛雷神のマーキングを付けることができただろう。

そうなっていたら先の戦い以上に一方的な展開となっていたことだろう。他にも鋼金暗器・千鳥刀で殺傷能力を上げていなかった点からも手心を加えていたことが分かる。

ただ、それをドワーフ達に理解して貰うにはどうすればいいかが問題だ。さて、どうしたものか………。



【視点:リムル】



「……あー、ガゼル王。今回の勝負は俺達の人となりを知る為のものって話だったけど、俺達の人となりを正しく知って貰うことはできただろうか?
ぶっちゃけ、最初と最後に不意打ち攻撃を仕掛けたりしたけど、俺達は真剣に人と魔物の共存共栄を考えてるんだ。だから、もし変な誤解を―――」
「安心するがいい、リムル殿。俺は貴殿らを邪悪な存在ではないと判断した」
「えっ?何で?」
「何でも何も、オオツツキ殿が災禍級(ディザスター)以上の魔人であることは一目で把握していた。英雄王などと言われている俺でも災禍級(ディザスター)の魔人と正面からぶつかれば死んでもおかしくは無い。
そうであるにも拘らず、初撃の不意打ちも含めて全ての攻撃を防ぐことができたのはオオツツキ殿が手心を加えてくれたからこそ」


ガゼル王の判断に俺が思わず質問してしまうと、ガゼル王は律儀に答えてくれた。確かに朱菜は手心を加えていただろう。

そうでなければ、今頃ガゼル王は斬仙剣による細切れか、千鳥による串刺し、螺旋丸によるミンチになってた可能性があるからな。


「そもそも、初撃の不意打ち攻撃も弱肉強食を法としている魔物、魔人からすれば防御も回避もできぬ者が悪。
こちらがリムル殿達の人となりを見極めようとしていた様に、オオツツキ殿も我らが友好関係を結ぶに値する武力を持つか見極めようとしていたと考えれば得心がいく」


朱菜がこの勝負でドワーフ王国が友好関係を結ぶに値するか見極めようとしていたとか、それは考え過ぎじゃね?

そんなことを考えながら朱菜を横目でチラリと見ると、ガゼル王の発言に対して動揺することもなく平然としていた。………えっ?ガゼル王の言う通り、マジでこの勝負でドワーフ王国を見極めようとしてたの?

………いや、でも友好関係を結ぶのなら相手側の武力も知っておいた方がいいのか。俺としても友好関係だけで止まらず、できれば同盟関係も結びたいから猶更だ。

そして、同盟関係を結ぶ以上は有事の際に相手側の武力を借りることもあるだろう。そうでなければ対等な立場とは言えないからな。

うーん。やっぱり朱菜の方が俺より盟主に相応しいよな。何で俺が盟主で、朱菜が盟主代理兼秘書なんだ?今からでも立場を代わって欲しい。いや、俺に盟主代理と秘書業ができる訳でも無いんだけどな。



【視点:朱菜】



「そもそも、初撃の不意打ち攻撃も弱肉強食を法としている魔物、魔人からすれば防御も回避もできぬ者が悪。
こちらがリムル殿達の人となりを見極めようとしていた様に、オオツツキ殿も我らが友好関係を結ぶに値する武力を持つか見極めようとしていたと考えれば得心がいく」


………ガゼル王が何か凄い勘違いをしています。私は別にドワルゴンの武力を見極めようなどとしていませんでした。

今後の為にドワルゴンとは友好関係を結ばなければいけないので、ガゼル王を殺す訳にはいかないとは思っていましたが……。

手心を加えた真正面からの攻撃だけでは、リムル様を侮られた不快感を拭うことができないと思ったので、少しでも私の気分をスッキリさせる為にガゼル王への嫌がらせも兼ねて不意打ち初撃をしただけなんです。

鋼金暗器、二之型・龍を使ったのも変則的な攻撃でガゼル王が困惑する無様な姿を見たかったからで、それ以外の理由は一切ありません。

ですが、ここはガゼル王の勘違い通り、私がドワルゴンの武力を見極める為、不意打ちも含めた攻撃をしたことにしておきましょう。だって、その方がリムル様と国のことを考えて行動をした盟主代理兼秘書っぽいですし。

と、私がこんなことを考えている間にガゼル王が白老の存在に気付いたみたいですね。300年振りに再会した師弟ということもあって、色々と話が盛りあがってます。

………あれ?ガゼル王が白老の弟子ということは、私とリムル様、お兄様、紫苑、蒼影だけでなく、お父様とお母様、紫呉、蒼月もガゼル王の弟妹弟子ということになるのでは?

一般的な大鬼族(オーガ)は人間と同じで寿命が100年前後ですし、大鬼族(オーガ)で300年以上生きた白老はある意味異常な存在。

お父様とお母様、紫呉、蒼月の歳は確か30代後半から40代前半。朧流の門下である以上、お父様達もガゼル王の弟妹弟子ですよね?

あっ、いつの間にかお父様達もガゼル王と白老の会話に加わっています。私やリムル様、お兄様達も朧流の門下であることを話しているみたいです。

ガゼル王はお父様達と会話を終えると、私とリムル様の所に向かってきました。そして―――


「よもや、リムル殿とオツツキ殿が俺の弟妹弟子とは思いもせなんだ。これからはリムル、シュナと呼んでもいいか?」


予想通り、先輩風ならぬ兄弟子風を吹かせてきました。いや、別にこういった態度が嫌いって訳ではないんですけどね。


「ああ、俺は構わないよ」
「私は基本的に朧流より忍術や忍体術を組み込んだ我流剣術を使うことが多いのですが、そんな私でも妹弟子と認めて頂けるのなら構いません」
「ふむ。ではリムル、シュナよ。お前達の町を案内してくれ。上空から町並みを見たが、きちんと整理されていて美しかったぞ。
そこらの魔物ではこの様な町は作れん。美しい街を作れるということは技術があるということ。そして技術があるということは美味い食い物や酒もあるということだ」
「何だよ、その理論。まぁ、ウチで作ってる酒や調理技術が他国に劣ってるとは思ってないけど」
「リムル様、ドワルゴンの方々に食事を楽しんで頂くのなら、宮殿で歓迎の宴を開いてはどうでしょう?私が先に宮殿へと戻り、ゴブイチ殿達に伝えれば、リムル様が町を案内されている間に準備は整うかと……」
「そうか?なら、申し訳ないけど頼むよ。朱菜」
「畏まりました、聖上」


私はリムル様にそう返答すると、飛雷神の術で宮殿へと跳び、多重影分身の術を使って歓迎の宴の準備に取り掛かった。



【視点:世界】



ガゼル王を含むドワルゴン一行が現れてから数時間後。リムルと冢宰のリグルドが里内を案内している間に、朱菜の主動で歓迎の宴の準備が進められ、どうにか夕食時に間に合わせることができた。

そして、宴の場ではドワーフと魔物という種族の壁を越え、似た様な立場の者同士が食事をしながら言葉を交わすという光景が広がっていた。

例えば、天翔騎士団(ペガサスナイツ)の団長であるドルフと近衛大将である紅丸&リグル。ドワルゴン軍部の最高司令官(アドミラルパラディン)であるバーンと夏官長・大司馬である紅麗。

暗部長(ナイトアサシン)であるアンリエッタと隠密御庭番衆の御頭である蒼月。宮廷魔導師(アークウィザード)であるジェーンと春官長・大宗伯である穂乃花。

武官組が武装関係や部下に行っている訓練内容などの話で盛り上がり友好を深めている中、国を纏める立場であるガゼルがリムル&朱菜に真面目な話を始めた。


「リムル、そして朱菜よ。俺と盟約を結ばんか?」
「………は?」
「……それはガゼル=ドワルゴ個人としてリムル=テンペスト並びに大筒木朱菜と盟約を結びたいということではなく、武装国家ドワルゴンとして私達――ジュラの森大同盟という魔物の共同体と盟約を結びたいということでしょうか?」
「ああ。国家間での盟約を結ばんか、ということだ。俺の予想では、そう遠くない内にこの町は交易路の中心都市となる。その様な重要な地と友好関係を結ばぬ王など愚王でしかないからな。
当然のことだが、このことでお前達が得られる利点もある。それは―――」
「ドワルゴンと友好関係であれば、少なくとも大同盟に加盟している種族が一方的に人類とその国家に敵対する存在ではないと喧伝することができますね。
他にもドワルゴンの後ろ盾で他の人類国家と対話による友好関係の構築が可能になるかもしれません。
そして、他の人類国家と友好関係を結べれば、私達が魔物であるというだけで攻め滅ぼそうとする、もしくは侵略して属国にしようとする敵性人類国家への反抗も正当性が認められ易くなります」
「ああ、成程。人類と友好関係を結びたい俺からすれば渡りに舟な提案な訳だ。それに全人類が善人な訳が無いから、大同盟(うち)を侵略したり属国にしようと考える国があることも想定しておかないと駄目だよな」
「………リムルよ。お前、本当にこの町の長か?朱菜の方が長らしいぞ」
「あっ、ガゼル王もそう思う?俺もそう思ってんだけど―――」


リムルがガゼル王の質問に答えながら朱菜に視線を向けると、朱菜は即行で自分の意見を返した。


「私は盟主や王になる気も無ければ、リムル様以外の者に仕える気もありません」
「―――こんな感じで朱菜は俺を大同盟の盟主にしようとするんだよ。柄じゃないんだけどな……」
「……まぁ、なんだ。お前が王に相応しいと思える何かを朱菜は感じ取っているんだろう。で、盟約についてはどうする?
一応、国家の危機に際しての相互協力。そして、相互技術提供の確約の2つを盟約締結の条件に考えているんだが―――」
「その条件ならこっちへのデメリットも無さそうだし、むしろ盟約を結ばない方がこの先後悔することになりそうだ。そんな訳で大同盟(うち)とドワルゴンで盟約を結ぶのには賛成だ」
「……ふっ!なんだかんだと言いながら、王者に相応しい決断力を見せるではないか!流石は我が弟弟子といった所か!!」


こうしてジュラの森大同盟と武装国家ドワルゴンとで盟約が結ばれることとなるのだが、その前に魔物の集団でしかなかったジュラの森大同盟を国家として成り立たせる為、国と首都の名称を考える必要が発生した。

国主となるリムルは明け方までガゼル王と飲み明かすことになった為、国名と首都名を決める話し合いに参加することができなくなり、朱菜を始めとした幹部メンバーによって国名と首都名が決められた。

国名は(オゥルォ)である俺の姓と他種族共生国家という特性からテンペスト連邦と命名され、首都である鬼隠れの里も交易都市に相応しい響きでジュラの大森林を彷彿させる名称として樹雷と名付けられた。

そして、自分の知らない間に決まった国名と首都名を聞かされたリムルは―――


(……何故に樹雷?皇家の樹とか存在しないし、俺も光鷹翼とか出せないんだけど。…………まぁ、国名じゃないだけマシか。飽く迄、首都名だし。恐らく偶然の一致だろう)


というツッコミたい衝動を押さえなから、偶然の一致であると無理やり自分を納得させていた。


 
 

 
後書き
という訳で19話でした。どうでしたか?今回も楽しんで頂けたでしょうか?

次話はついに例の魔王が登場します。原作ではあっさりと決着がつきましたが、当作では同格の朱菜さんがいるので色々とハッチャけるかもしれません。

というか、原作みたいにあっさりと決着がつくのと某魔王vs朱菜さんのハッチャけ戦闘のどちらがいいでしょうか?

まぁ、どちらの内容にするとしても頑張って執筆しようと思います。