十三年振りに戻って来た猫


 

第一章

                十三年振りに戻って来た猫
イギリスノークヨークシャー州のハルゲートに住んでいるジャネット=アダモーウィッチはこの時二匹の猫、茶と黒のトラ猫の雄猫チャーリーと白の雄猫ショーンの二匹を家族にしていて夫や息子達と暮らしていた。くすんだ短い金髪とグレーの目の痩せた中年女性だ。
 その彼女が今息子のエドワード、自分と同じ髪と目の色の小学生の彼に家でこんなことを言われていた。
「お母さん、うちの猫が見付かったってね
「うちの猫?」
「獣医さんから連絡があったよ」
「えっ、けれど」 
 ジャネットは息子の言葉を聞いてだった。
 すぐにリビングを見回すとそこにチャーリーもショーンもいた。
「二匹共いるわよ」
「ニャ~~」
「ナア~~」
「けれど獣医さんそう言ってるよ」
「どういうことかしら」
「それで獣医さんが来て欲しいって言ってるけれど」
「そうなの、じゃあ行って来るわ」
 訳がわからない、その感情を顔に出してだった。
 ジャネットは動物病院に行ってみた、すると。
 そこに下が白で上が焦げ茶色と黒の虎毛の模様の猫がいた、ジャネットはその猫を見て一緒に来た息子に言った。
「お母さんが昔飼ってたね」
「前に言ってたよね」
「貴方が産まれる前に飼っていた子で」
「ブーだった?」
「その子にそっくりよ」
「そのブーですよ」
 獣医はここでジャネットに答えた。
「この子は」
「えっ、まさか」
「実はマイクロチップを調べますと」
 獣医は驚くジャネットに話した。
「まさにです」
「ブーだったんですか」
「そうです」
「四歳の時にいなくなって」
 ジャネットはその猫をまさかという顔で見ながら獣医に話した。
「それ以来です」
「十三年の間ですね」
「捜索願いも出して探してたんですが」
「そのブーです、間違いありません」
「ニャア!」
 その猫もジャネットを見ると飛びついてきた、その仕草は。
 十三年前と変わらなかった、それでジャネットも言った。
「間違いないです、この子は」
「ブーですね」
「雄ですし」
 性別を見るとそちらもだった。
「けれどどうして」
「ここから六十キロ離れた場所で見付かったんです、ちょっと汚れていて栄養も水分もですが」
「元気ですか」
「この十三年その辺りで誰かに飼われていたかご飯を貰ってたか」
 そうしてというのだ。
「生きていたみたいですね」
「そうなんですね」
「ですが十三年経って」
 そうしてというのだ。 

 

第二章

「今です」
「そうなんですね」
「はい、それでなんですが」
 獣医はブーを抱き締めるジャネットに問うた。
「この子は」
「勿論。家族ですから」
「お家にですね」
「連れて帰ります」   
 こう言って実際にだった。
 ジャネットはブーを息子と共に連れて帰った、そうして再び彼との生活家にいる二匹の猫達も含めて再開した。
 その彼女のところにある一家が来た、オーストラリアから来たというポーラ一家だった。夫はリチャードといい恰幅がよく妻のアンは眼鏡をかけている。父親の髪の毛と目、母親の口元と顔の輪郭を受け継いだ姉のマーガレットと息子のエルキューもいる。
 一家は黒と白のタキシード模様の毛と黄色い目を持つ猫をアダモーウィッチ一家に紹介して話した。
「ニャア~~」
「シェルビーといいます、雌でして」
「その娘もですか」
 ジャネットの夫であり一家の長であるジェームスが応えた、面長で丸眼鏡に黒髪に青い目の紳士的な外見である。
「十三年間」
「行方がわからないで」
「見付かってですか」
「もう一度家族になれました」
 ポーラ一家の主であるリチャードが答えた。
「そうなりました」
「こんなこともあるんですね」
 ジャネットはブーを含めた三匹の家の猫達を周りに置きつつ応えた。
「十三年も離れ離れでも」
「そうですね、もう一度家族になれるんですね」
 ジャネットにはアンが応えた。
「そんなことが」
「嘘みたいですが」
「ですが嘘ではなく」
「長生きしてくれて」
「また戻ってくれる」
「そうしたこともありますね」
「はい、猫が十三年は結構なもので」
 猫の寿命を考えるとだ。
「それだけでもですが」
「それだけの歳月が経ってもですね」
「また一緒になれます」
「そんなこともありますね」
「はい、そう思いますと」
 本当にとだ、アンはジャネットに話した。
「猫も長生きするものですね」
「そうですね、ではこれからも」
「猫が長生きる様にしていきましょう」
「そうあるべきですね」
 二つの家族はそれぞれこう話した、そしてだった。
 家に戻って来た猫達そして他の二匹の猫達も優しく撫でた、すろと彼等は嬉しそうに鳴いて喉を鳴らしたのだった。まるでそうすると答えた様に。


十三年振りに戻って来た猫   完


               2021・4・20