動画を編集し投稿して


 

第一章

                動画を編集し投稿して
 ふわりを捨てた直後喫茶店でふわりを捨てて清々していた百田家の夫婦の状況を撮影した女子高生は学校で友人達に話していた。
「当人さん達は全く気付いてないけれど」
「ご近所の嫌われ者になったのね」
「犬を捨てたことが知れ渡って」
「そうなったのね」
「それで親戚の人達全員からも絶縁されて」
 そうなってというのだ。
「インスタグラムでも平気で犬捨てたって言ってね」
「炎上ね」
「そうなったのね」
「それはなるわよね」
「可愛がっていた犬を平気で捨てたんだから」
「それももういらないで」
 友人達もその話に頷いて口々に言った。
「清々してるんだから」
「嫌われて当然よ」
「それ平気で言ったのよね」
「それじゃあ親戚全員から絶縁もされるし」
「インスタも炎上するわよ」
「お付き合い出来る人って同類だけでしょ」
 ペット、家族を平気で捨てられる輩だけだというのだ。
「世の中そんな人達もいるけれど」
「実際にあの人達がそうだしね」
「まあ少数派よね」
「普通そんな人いないわよ」
「そうよね」
「それでね」
 女子高生は友人達にさらに話した。
「もう一つ動画見付けたのよ」
「動画?」
「もう一つって?」
「見付けたって?」
「この動画ね」
 自分のスマートフォンを見せた、そしてその動画は。
 保健所の薄暗いコンクリートと鉄格子の中で一匹の濃い茶色の毛の目と鼻の間も足も短い小さいトイプードルが鉄格子の中で座って必死に悲しく鳴いている姿だった、誰かを呼んで求めている様に。
 友人達にその動画を見せてだ、女子高生は話した。
「この娘がふわりなの」
「その捨てられた娘ね」
「可愛がってもらってたのに」
「いらないって捨てられた」
「その娘ね」
「そう、ずっと見てきたからわかったわ」
 この犬がふわりだということがというのだ。
「この娘がふわりなの。毛の色も目も大きさもスタイルも鳴き方からもわかるわ」
「物凄く必死ね」
「悲しそうね」
「飼い主の人達に捨てられて」
「それでも呼んでるのね」
「そうみたい、保健所の説明も載ってるけれど」 
 動画の下にそれがあった。 

 

第二章

「名前も書いてるしね」
「ふわりちゃんってね」
「若い飼い主の人達に性格が変わったからいらないって言われて捨てられたって」
「保健所の人達も怒ってる?」
「こんな理由で捨てるなって感じね」 
 その文章を見て話した。
「そのまま書いてるし」
「無責任なことするなって」
「命を何だと思ってるんだって」
「そうみたいね、けれど性格変わったから捨てるって」 
 女子高生は言った。
「しないわよね」
「しないしない」
「家族にすることじゃないでしょ」
「普通そこでどうしてかって考えるでしょ」
「何か朝から晩まで吠えてたっていうけれど」
「そこで普通訓練学校に送るなりするでしょ」
 そうして教育するというのだ。
「確かに無駄吠えってあるけれど」
「何で吠えるかって考えるわよ」
「もう五月蠅いから捨てるってね」
「その時点で犬飼う資格一切なしよ」
「最初から飼うなよ」
「結局家族と心の底では思ってなかったんでしょ」
「おもちゃだったのよ」
 おもちゃで遊んでいただけだというのだ。
「こう言うのよ外道って言うのよね」
「最低の屑よね」
「話してるのもそうだったけれど」
「いや、本当に最低ね」
「ふわりちゃんも悲しそうよ」
「幸い優しい人が引き取ってくれたけれど」
 ただし女子高生はそれが誰かは知らない。
「けれどね」
「悲しそうよね」
「捨てられて」
「それで」
「ええ、それでね」 
 女子高生はさらに言った。
「私あの人達の喫茶店での会話ユーチューブとかニコニコに投稿しようって今考えているんだけれどどうかしら」
「そうしたら?」
「これ許せないから」
「もう絶対に」
「だからそうしたら?」
「そうね、じゃあね」
 女子高生は投稿しようとした、だが。
 友人の一人がここで彼女に言った。
「ねえ、動画編集したら?」
「前の飼い主さん達の顔にモザイクかけて私達の声消すわよ」
「だから。その動画とね」
 さらにというのだ。
「保健所のふわりちゃんの動画をね」
「くっつけるの」
「そう、そしてね」 
 友人はさらに話した。
「インスタ炎上したって言ってたわね」
「そうそう、そこでも捨てたって言ってね」
「そのインスタまだあるなら」
 それならというのだ。
「そこからふわりちゃん可愛がっていた時の画像とかもね」
「動画に入れるの」
「そう、その時の動画もあったら」
「それも載せるのね」
「可愛がっていてこれだってね」
 そうした感じでというのだ。
「編集してね」
「それで投稿するのね」
「そうしたら?相手の人のプライベートは消して」
 わからない様にしてというのだ。
「そしてね」
「そのうえでなのね」
「投稿したらいいわ」
「わかったわ」
 女子高生は友人の言葉に頷いた、そして。
 家に帰ってから編集してユーチューブやニコニコに投稿しすぐにライン等で友人や知り合い達にその動画を送って拡散してもらった、すると。 

 

第三章

 視聴数は瞬く間に相当なものになりコメントも殺到した。
「ふざけるな!」
「犬飼う資格なし!」
「可愛がっていてそれか!」
「犬を何だと思ってるんだ!」
「こいつ等全ての犬の敵だ!」
「絶対に許さない!」
 ほぼ全てが怒りのコメントだった、そして。
 女子高生は母にもその動画を見せたが母も言った。
「余計にね」
「あの人達許せなくなったのね」
「ご近所にも知らせるから。お母さんの親戚皆にもね」
「お父さんにも見せてそうしてもらうわね」
「そうしなさい、ペットを捨てることがどういうことか」
 母はこうも言った。
「そのこともわかるから」
「だからなのね」
「この動画は皆が見るべきよ」
 まさにというのだ。
「本当にね。そしてこれでね」
「これで?」
「あの人達はネットでも嫌われ者になったわね」
「誰かはわからなくても」
「それでもね」
 顔にモザイクがかかっている彼等を見つつ述べた。
「そうなったわ」
「そうなのね」
「自業自得よ、悪事を働けば」
 そうすればというのだ。
「こうなるのよ」
「報いがあるのね」
「そうよ、それで全く反省していないみたいだし」
 母はさらに話した。
「これからもっとね」
「酷いことになるのね」
「そうなるわ」
 こう言うのだった、そして。
 その動画は尚更広まった、その動画はだった。
 百田家の夫の会社の者も見た、そして彼は同僚達にその動画を見せた。
「これあいつだな」
「あいつと奥さんだな」
「それでふわりちゃんだな」
「こんなことしてたんだな」
「ふわりちゃんも捨てられてこうだったんだな」
「会社でも平気で捨てたって言って引いたけれどな」
「どんな奴か余計にわかったよ」 
 その人間性がというのだ。
「奥さんの方もな」
「これは許せないな」
「ああ、もうあいつは無視だ」
「相手にするか」
「何があっても助けるか」
 こう話すのだった、こうしてふわりの前の飼い主達はどんどん嫌われていった。自分達はそのことに気付かなかったが。


動画を編集し投稿して   完


                  2021・5・28