赤ちゃんを愛するシャム猫
第一章
赤ちゃんを愛するシャム猫
カナダオンタリオ州で不幸な環境から保護された牛や馬、山羊達を保護している牧場を経営しているハロルド=ムーアとカーラ=レイリーの夫婦のところにだった。
ある若い女性が深刻な顔でホロボロの毛で痩せ細ったシャム猫を連れてやって来た。
「あの」
「その猫は」
「どうしたのですか?」
「随分酷い状況だったので」
女性は穏やかな顔の夫婦に話した、夫は緑の目で白いものが多い髪を短くしている。妻はブロンドの髪で目は黒だ。二人共背は高い。
「一刻の猶予もならないと思って」
「それで、ですか」
「こちらに来ました」
「ニャア~~・・・・・・」
見れば猫は弱りきっていた、女性はその猫を心配そうに見つつハロルドに話した。
「こちらは家畜を保護していますね」
「はい」
カーラがその通りだと答えた。
「そうです」
「それで無理だと思っていても」
「来てくれましたか」
「左様です、どうか」
「わかりました」
夫婦は同時に答えた。
「ではその娘を引き取ります」
「そうさせて頂きます」
「そして命を救います」
「必ず」
「そうしてくれますか」
女性は夫婦に顔を向けて問うた。
「この子を助けてくれますか」
「これも縁です」
夫は彼女に微笑んで答えた。
「ですからその子をです」
「引き取ってくれてですか」
「必ず助けます」
「そうしてくれますか、ではお願いします」
女性もここで明るい顔になった、そうしてだった。
猫は夫婦に引き取られてだった。
獣医に診てもらった、すると。
「骨盤が折れていますか」
「そして栄養失調が酷いですか」
「もう少しここに来るのが遅かったらです」
獣医は夫婦に話した。
「危なかったです」
「そうでしたか」
「そうした状況でしたか」
「はい」
獣医は沈痛な声で答えた。
「ですが完治出来ます」
「そうなんですね」
「では宜しくお願いします」
夫婦は医師の言葉に安堵してそうしてだった。
猫の回復を待った、おの時二人は娘も生まれたばかりで牧場に多くの保護された生きものを抱えていたが。
第二章
そんな中でも猫を心配して完治すると引き取ったが。
「ニャア~~・・・・・・」
「物凄く怖がってるよ」
「そうだな」
ハロルドは息子のセオ、自分達の息子と共に猫雌だとわかりサファイアと名付けられたケースの中にいる彼女を見て話した。
「特にお父さんを見たら」
「凄くね」
「男性が怖い、特に」
ハロルドはさらに言った。
「大人がな」
「じゃあ僕達はサファイアの傍にいられないかな」
「いや、時間をかけて優しく接していくんだ」
父は心配になった息子に答えた。
「そうすれば何時かは」
「サファイアは僕達と仲良くなれるんだね」
「そうなるよ、だから根気よく接していくんだ」
「わかったよ」
息子も頷いた、そうしてだった。
一家でサファイアに愛情を以て接していった、すると男性を怖がっていてキャリーから出なかった彼女も。
次第に心を開きキャリーから出て家の中を歩き回る様になった。ハロルドやセオを見ても怖がらなくなり。
家族の傍にいる様になった、特に。
「ニャア」
「ダアダア」
産まれたばかりの家の娘であるメアリーの傍にいる様になった、ベッドの中に一日いてハロルドの傍に来た日からだった。
メアリーの傍にいつもいる様になり。
いつも彼女を優しい目で見守る様になった、そしてメアリーもだった。
彼女が傍にいるといつもぐっすりと寝た、その様子を見て夫婦は話した。
「やっぱりな」
「ええ、愛情を以てずっと接しているとね」
「どんな過去がある子でも」
「やがて心を開いてくれるね」
「サファイアもそうなって」
そしてというのだ。
「そのうえで」
「ええ、今ではね」
「メアリーとも仲良くなった」
「そうね、もうあの娘達は姉妹よ」
妻は夫に笑顔で話した。
「そうなったわ」
「そうだな、生きものの種類は違うけれど」
夫も笑顔で頷いて応えた。
「僕達の娘で」
「姉妹よ」
「そうなったな、もうあの娘達はずっと一緒だ」
「何があっても離れないわね」
「絶対にな」
二人で一緒に仲良く寝ている娘達を見て話した、サファイアはもう毛はツヤがあり身体は丸々としていた。そのうえで幸せそうにメアリーと一緒に寝ていた。もう怯えることはなく愛情だけがそこにあった。
赤ちゃんを愛するシャム猫 完
2021・11・25