チューリップと少女


 

第一章

                 チューリップと少女
 この時OLの米村満里奈は憮然としていた、切れ長の大きな垂れ目で泣き黒子があり色白で艶やかな唇を持っている。
 面長で顎の先が尖っており黒髪は長くセットしている。見事なスタイルを青のセーターと群青色のフレアスカートで覆っている。
 その彼女は今チューリップ畑を前に難しい顔をしていた。
「何かこうね」
「いい写真が取れないの?」
「そうなのよ」
 一緒に来ている同僚の鈴原万土香に答えた、万土香は茶色の髪をショートにしていて大きな優しい目を持っている。丸い感じの顔で優しい口元であり背は一六〇位で満里奈より五センチ程低いが胸は負けていない。黒のズボンとグレーのセーターという格好だ。
「どうもね」
「そうなのね」
「何かね」
 カメラを手にして言うのだった。
「これだっていうね」
「いい写真が撮れないの」
「そうなの、どうしてかしら」
 こう言うのだった。
「これは」
「そんな時もあるのね」
「いつもあっさりとね」
 そうした感じでというのだ。
「撮れるのに」
「満里奈はそうよね」
「もう即座って感じでね」
「そうなのに」
「それがよ」 
 どうにもと言うのだった。
「今日はね」
「満足に撮れないのね」
「ええ、スランプかしら」
「まあそんな時もあるわよ」
 万土香はこう言って満里奈を慰めた。
「だからね」
「気を取り直して」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「チューリップ見てね」
「趣味の写真撮影をなのね」
「やっていきましょう」
「そうするわ」
 満里奈は万土香のその言葉に頷いた、そうしてだった。
 チューリップ畑を見て撮影をしていった、やはり納得出来る写真は撮れなかったがふと目の前にだった。
 綺麗なキラキラした目と見事な波立つ黒髪に白のワンピースを着た六歳位の女の子が出て来た、その女の子を見てだった。
 万土香がだ、こう言った。
「あの娘奇麗ね」
「凄い美少女ね」
 満里奈も少女を見て言った。
「これまた」
「そうよね」
「いや、あの娘絵になるわ」
 満里奈は言った。 

 

第二章

「色とりどりのチューリップ畑の中でね」
「あんな奇麗な娘空いたらね」
「本当に絵になるわ、だからね」
 それでというのだ。
「ちょっと写真撮りたいわ」
「そうね、けれど勝手に撮ったらよくないから」
「親御さんがおられたらね」
「確認を取りましょう」 
 こう話してだった。
 二人で少女の周りを見るとだった。
 すぐ傍に上品そうな三十代と思われる男女がいた、満里奈はその二人を見てすぐに万土香に話した。
「女の子ずっと優しい目で見てるし」
「ええ、おそらくね」 
 万土香も応えた。
「お二人がね」
「あの娘のご両親ね」
「間違いないわね」
「それじゃあね」
「お二人からね」
「許してもらって」
「それで撮らせてもらうわ」
 満里奈は強い声で言った、そうしてだった。
 すぐに二人でそのカップルのところに行って話すと実際にだった。
 少女の両親だった、それでだ。
 少女の撮影を申し出るとだった。
「ええ、どうぞ」
「うちの娘でよかったわ」
「私撮ってくれるんですか?宜しくお願いします」
 少女も笑顔で応えてだった。
 満里奈は撮影に入った、すると。
 どんどん撮っていった、そうしてだった。
 最後は満足した笑顔でだ、こんなことを言った。
「もう最高よ」
「いい写真が撮れたの」
「何枚もね」
 万土香にその顔で話した。
「そうなったわ」
「それは何よりね」
「だからね」
 それでというのだ。
「撮った写真をね」
「コンクールに出すのね」
「そうするわ」
 実際にというのだ。
「これからね」
「そうなのね」
「いや、何かが足りないってね」
 その様にというのだ。
「思ってたけど」
「今日は」
「その足りないものは何か」
「奇麗な女の子だったのね」
「そうだったのよ、けれどね」
 満里奈はこうも言った。
「まさかね」
「まさかっていうと」
「いや、こんな奇麗な娘がいるなんて」
 その少女を見ても話した。
「奇跡みたいよ」
「確かに物凄い綺麗さね」
 万土香も少女を見て述べた。
「この娘は」
「そうよね、末はどうなるかしら」
「楽しみな位ね」
「本当にね」
 こんなことを話した、そしてだった。 

 

第三章

 満里奈は少女とチューリップ畑の写真の中でもだ。
 これはという写真をコンクールに出した、するとだった。
「金賞獲ったの」
「ええ」
 満里奈は万土香に満面の笑みで答えた。
「そうだったのよ」
「そうなのね」
「チューリップにね」
 これに加えてというのだ。
「特によ」
「あの女の子ね」
「あの娘が凄くて」
 それでというのだ。
「なったのよ」
「そうよね、あれだけ奇麗だと」
「もうね」
 それこそというのだ。
「金賞もよ」
「当然ね」
「そういうことよ」
 まさにというのだ。
「本当にあの娘に出会えてよかったわ」
「そうよね」
「きっとね」
 満里奈はこうも言った。
「あの娘今にでもね」
「タレントさんになれそうね」
「それでね」
 そのうえでと言うのだった。
「将来はね」
「物凄い美人さんね」
「この世に二人といない」
 それ程までのというのだ。
「それ位のよ」
「美人さんになれるわね」
「間違いなくね」
「そうよね」
 こう話した、そしてだった。
 二人は暫くしてテレビのドラマを観て話した。
「あの娘ね」
「ええ、出てるわね」
「そうなるって思ったけれど」
「やっぱりそうなったわね」
「あれだけ奇麗だと」
「当然ね」
「そうなることもね」
 まさにと言うのだった、そしてだった。
 少女は忽ちブレイクした、そのうえで。
 美形子役から美人女優にとなった、二人はその彼女を見て当然だと頷き合った。その時の写真を観ながら。


チューリップと少女   完


                  2022・10・22