デリヘル嬢の正体


 

第一章

                デリヘル嬢の正体
 サラリーマンの三島幸彦の趣味は風俗通いである、それも最後まで出来るもの限定でそうした店で遊ぶことに生きがいを感じている程だ。背は一七七程で明るい顔立ちで黒髪をやや伸ばしすらりとした体格である。
 それでボーナスが入ったのでだった。
「さて、また行くか」
「お前好きだな」
 その彼に同僚の森田昭雄が言ってきた、三島と違いいかつい感じで背は彼と同じ位であるがやや太っている。
「風俗が」
「大好きだよ」
 三島は森田に笑顔で答えた、二人は今社内の喫茶コーナーで二人だけなので気兼ねなくそうした話をしていた。
「ああしたお店ならではの楽しさがあるからな」
「だからか」
「それでだよ」
 まさにというのだ。
「大好きで」
「それでか」
「行って来るよ」
「そうか、しかしお金を使うのも」
「ああ、それもな」
「承知のうえか」
「俺はな、それで副業もしてるしな」
 本業であるサラリーマン以外にもというのだ。
「それでな」
「行っていてか」
「ボーナスも入ったし」
「また行くんだな」
「今度はデリヘル頼むか」
 三島は笑って言った。
「そうするか」
「お前が行くからな」
 それでとだ、森田は三島に返した。
「好きにしろ、ただわかってるな」
「病気にはだよな」
「気を付けろよ」
「わかってるさ」 
 森田に笑顔で応えてだった。
 三島はボーナスが入ったその日に仕事が終わると夜の街に出た、そしてラブホテルに入って風俗雑誌を開き。
 ある店のこれはという娘、まきという名前で茶色のショートヘヤで二十歳一六二センチの背でスタイルは上から八十八、五十七、八十七の自分の右手で目の部分を隠している顎がすっきりした細面の娘に来てくれる様にその店に連絡を入れた。
 それから待つ間シャワーを浴びてバスローブに着替えて待っていると。
 連絡を入れて二十分位で部屋のチャイムが鳴った、それで出ると。
 写真の通りの若いかなりスタイルのいい美人が来た、だが。
 その彼女を見てだ、三島は思わず言った。
「あんた何処かで会わなかった?」
「はい?はじめてですけれど」 
 そう言われてもだ、その娘は。
 きょとんとした顔で答えるだけだった、見れば服装はデニムの青い半ズボンと黄色いティーシャツに白いサンダルというラフなものである。
「お会いするのは」
「そうか?どっかで見た様な」
「いえ、本当にです」
 まきという娘は目でもそう言ってきあ。
「私は」
「そうか?」
「人違いじゃないですか?」
「そうか、まあ来てくれたしな」
「私でいいですよね」
「いいよ、思った通りの娘だったしな」
 写真の娘が目を出した状態だというのだ、実際にそうで目は大きく二重でかなり明るいもので奇麗と言っていい。 

 

第二章

「それじゃあな」
「はい、宜しくお願いします」
 その娘は笑顔で言い三島も部屋に入れた、その翌日。
 彼は森田と共に牛丼のチェーン店に入ってそこで牛丼を食べつつ彼にこのことを話した、そして言うのだった。
「本当にどっかでな」
「その娘に会った覚えがあるんだな」
「そうなんだよ」 
 こう言うのだった。
「どうもな」
「気のせいじゃないのか?」
 森田は牛丼を食べつつ応えた、二人共特盛であり三島は紅生姜を森田は玉子を入れている。
「テレビに出てる人に似てるとかな」
「そういうのか」
「ああ、たまたまな」
「似てるか」
「そうじゃないか?」
 こう言うのだった。
「あることだろ」
「それはな」
「ああ、だからな」
 森田は自分と同じものを食べている三島にさらに言った。
「別にな」
「気にすることはないか」
「そうだろ」
 こう言うのだった。
「別にな。それはそうとお前副業してるって言ったな」
「在宅ワークでな」
「そうだよな」
「オンラインでやり取りしながらな」
 そのうえでというのだ。
「相手とそこで話をしながらやってるよ」
「空いてる時間にか」
「仕事から帰ってな」
「それでそこで稼いだお金でか」
「本業で稼いだのもでな」
 両方だというのだ。
「風俗行ってるんだよ」
「そうしているな」
「ああ、それでな」
 三島はさらに話した。
「今やり取りしてる相手の人若くて奇麗な」
「そうした人か」
「顔にマスクをしてるけれどな」
 それでもというのだ。
「目は奇麗だよ」
「そうなんだな」
「その人とやり取りしながらな」
「そっちもやってるんだな」
「そうだよ、借金をするつもりはないし」
 この辺り三島はしっかりしていてあくまで自分の持っている分だけで遊んでいるのだ。
「今日も帰ったらな」
「副業もか」
「頑張るよ」
「そうしろよ」
 森田は笑って応えた、そして実際にだった。
 三島は会社から帰ると夕食とシャワーの後で副業に入った、パソコンのスイッチを入れてであった。
 仕事をはじめた、それで相手の人とのやり取りに入ったが。
 あることがわかった、それで次の日彼は会社で森田を社内の人が来ない場所に呼んでこっそりと話した。
「この前の風俗の娘誰かわかったんだよ」
「へえ、誰なんだそれは」
 森田は三島のその言葉に興味を持って顔を向けて問うた。
「一体」
「副業の在宅ワークのやり取りしてる人だった」
「そうだったのか」
「お互いマスクしていてわからなかったけれどな」
「副業の時はか」
「こんなご時世だからな」
「今も俺達マスクしてるしな」
 森田もそれはと応えた。 

 

第三章

「それでお前とその人もか」
「在宅の時でもな」
「マスクしているんだな」
「まあ仕事の礼儀ってやつで」
「それでか」
「ああ、もう外してもよくなったけれどな」
 それでもとだ、彼は話した。
「お互いな」
「まだマスクしていてか」
「わからなかったんだな、相手の人は俺だって本気でわからなかったみたいだけれどな」
「マスクしてたからか」
「俺もな」
「そういうことか、しかしな」
 森田はここまで聞いて述べた。
「世の中そんなことがあるんだな」
「ああ、何処かで会ったと思ったら」
「副業の相手の人だったなんてな」
「凄いこともあるな」
「滅茶苦茶可愛くてスタイルもよかった」
 三島は真顔で話した。
「最高だった」
「それは何よりだな」
「けれどお互い顔ばれはな」
「しない方がいいな」
「俺これからも副業の時はマスクを被るよ」
「外してよくなったのにか」
「それで相手の人にもな」
 他ならぬ彼女にもというのだ。
「これからもマスク着けたままでいてくれってな」
「お願いするか」
「そうするな」
「じゃあそれがいいな、お互いばれるとな」
「こんな気まずいことないしな」
「ああ、注意していけよ」
「そうするな」
 こうした話をした、そしてだった。
 三島は風俗に通い続けたがその資金源である副業は相手の人が代わるまでお互いマスクを着けたままでいようと話してやっていった、それで最後までばれないでよかったと思った。だがその相手の女性迫真紀は。
 彼との仕事のやり取り、担当が終わってから親友にこっそりと話した。
「実は後で気付いたけれど」
「デリヘルの時のお客さんだったのね」
「ええ、いや気付いた時びっくりしたわ」
 こう言うのだった。
「本当にね」
「世の中そんなことあるのね」
「ええ、何があるかわからないわね」
「世の中ってね」
「風俗の時のお客さんと他のお仕事の時一緒なんて」
「ある意味怖いわね」
「全くよ」 
 ほっとした顔で話した、だが三島はこの話を知らずただほっとするだけであった。


デリヘル嬢の正体   完


                    2023・5・14