優しい鳥のお母さん達


 

第一章

                優しい鳥のお母さん達
 アリゾナ州の野生動物保護施設リバティワイルドライフにスニッカーズという雌の梟がいる、ダークグレーの翼にブラウンの腹を持っている。
 彼女には家族がいない、だが施設のスタッフ達は話した。
「二羽の梟の雛を保護したし」
「あと一羽来る予定だし」
「ちょっとここはな」
「スニッカーズに育ててもらうか」
「家族はいないけれど雌だし」
「やってもらうか」
 こう話してだった。
 まずはスニッカーズが巣から離れている間に雛達を入れた、実は。
「スニッカーズはずっと卵を温めていたしな」
「無精卵だけれどな」
「寂しいと思って入れてみたが」
「ずっと温めていたし」
「それが孵ったことにしよう」
「スニッカーズが出ている間に」
 こう話してだった。
 実際に卵を割ってその傍にだ。
 二羽の雛達を置いた、そして。
 スニッカーズが帰るとだ、彼女は雛達と会った。
「ピイ」
「ピイイ」
「クァッ」
 スニッカーズは卵が孵ったと思ってだった。
 そのまま雛達を迎えて育てはじめた、そこに。
 もう一羽雛を入れた、するとだった。
「ピイッ」
「クア」
 その雛も育てはじめた、最初の二羽は雄で最後は雌で。
「雄はシューズにブーツ」
「雌はヒールと名付けたけれど」
「三羽共な」
「スニッカーズはちゃんと育ててるよ」
「公平に優しく」
「野生で生きるにはどうするかも」
「いや、いい母親だな」
 スタッフ達はスニッカーズを見て笑顔で話した。
「どうなるかって思ったけれど」
「本当にいい母親だよ」
「そうであって何よりだよ」
 やがて雛達は巣を後にした、それを見送ったスニッカーズの顔は母親の顔そのものでスタッフ達も喜んだ。  

 

第二章

 インターネットでこの話を読んでだった。
 カルフォルニアの動物保護施設で働いているケリー=バンデリヒューベル太っていてくすんだ茶色の髪の毛と黒の目を持つ白人の青年の彼は先輩にこの話を紹介した。
「似てますね」
「ああ、うちのフィオナとな」 
 先輩もこう答えた。
「子育てするってところはな」
「はい、ただ」
 バンデリヒューベルはこうも言った。
「うちのフィオナは鷹ですからね」
「カタアカノスリだな」
「はい、それにです」
 先輩にさらに話した。
「フィオナは飛べないです」
「翼に障害があってな」
「肝心の」
「はい、ですから」
「ここにな」
「ずっとですね」
「保護してるんだ」 
 飛べない鳥だからだというのだ。
「飛べない鳥はな」
「それこそですね」
「ペンギンや駝鳥でないとな」
 そうした鳥でないと、というのだ。
「どうしてもな」
「生きていけないですね」
「鷹も飛ぶ鳥だ」
 先輩は言った。
「だからな」
「飛べないならですね」
「もうこうしたところで保護しないとな」
「駄目ですね」
「ああ」
 絶対にというのだ。
「本当にな」
「そうですね」
「だからフィオナはここにずっといるが」
「それでもですね」
「ああ、いつもな」
「保護した雛をですね」
「育てている」
 そうだとだ、先輩はバンデリヒューベルに話した。
「本当にね」
「そうですね」
「この通りな」
「クァッ」
「クアアッ」
 見ればフィオナは。
 自分と同じ種類の雄の雛を育てていた、先輩はその様子を見て言うのだった。
「今だってな」
「そうしていますね」
「確かに飛べないさ」
 フィオナはというのだ。
「けれどな」
「それでもですね」
「こうしてな」
「立派な母親でいていますね」
「その梟もな」 
 スニッカーズはというのだ。
「子育てをしていて」
「フィオナもですね」
「ああ、ちゃんとな」
「そうしていますね」
「ああ」
 本当にというのだ。 

 

第三章

「素晴らしいことだよ」
「全くです」
 バンデリヒューベルもそれはと答えた。
「何よりも」
「それじゃあ」
「僕達はですね」
「これからも」
「そのフィオナを助けて」
 母親となっている彼女をというのだ。
「いきましょう」
「もう十四羽育てている」
 フィオナはというのだ。
「そしてだよ」
「これからもですね」
「育てていくんだ」
「そうしているから」
「その彼女を」
 共にというのだ。
「助けていこう」
「そうしましょう」
「飛べなくても」
 障害があってというのだ。
「けれどね」
「いい母親ですね」
「素晴らしい娘だよ」
 フィオナについてこうも言った。
「全く以てね」
「そう思う他ないですね」
「そうだね」
「この娘がいてくれてよかったです」
「この世にね」
「そしてですね」
「そのスニッカーズもだよ」
 彼女もというのだ。
「素晴らしい娘達だよ」
「全く以て」
「そしてその素晴らしい娘達をフォローしていく」
「それが僕達の仕事ですね」
「いい仕事だと思わないかい?」
「これ以上に」
 バンデリヒューベルは満面の笑顔で答えた、そしてフィオナと彼の子供を見守った、そうすると満面の笑顔がさらにいいものになった。


優しい鳥のお母さん達   完


                   2023・8・18