スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇


 

プレリュード

              プレリュード
 遂に地球圏での戦いは終わった。だがそれは本当の意味での終わりではなかった。新たな仲間まで手に入れたロンド=ベルだったがいまだバルマー帝国は健在であり宇宙怪獣の脅威も消え去ってはいなかった。
 そして今銀河の遥か彼方で胎動する運命もあった。その運命は己の中にある邪なるものを今実現させんとしていた。
 戦いはいまだ終わらない。むしろこれからが真の意味でのはじまりと言ってもよかった。銀河の無数の瞬きの中でロンド=ベルの戦士達は最後の戦いに向かおうとしていた。今彼等は全てを終わらせる為に果てしない戦いの旅へと向かわんとしている。その先にある平和を信じ母なる地球を旅立つ。何時かきっと帰ってくることを誓い。そのうえで今彼等は銀河の遥か彼方へ向かった。 

 

登場作品

                 登場作品
機動戦士ガンダム
機動戦士Zガンダム
機動戦士ガンダムZZ
モビルスーツガンダム アドバンスドオペレーション
機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
機動戦士ガンダムF91
機動戦士クロスボーンガンダム
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー
機動武闘伝Gガンダム
機動戦士ガンダム 第08MS小隊
機動戦士Vガンダム
新機動戦記ガンダムW
新機動戦記ガンダムW エンドレスワルツ
機動戦士ガンダムSEED
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY
機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY
機動戦士ガンダムSEED DESTINY
機動戦士ガンダムSEED 流離う翼たち
機動戦士ガンダムOO ファーストシーズン
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン 
マジンガーZ
グレートマジンガー
劇場版マジンガーシリーズ
UFOロボ グレンダイザー
マジンカイザー
ゲッターロボ
ゲッターロボG
真ゲッターロボ(原作漫画版)
真(チェンジ!!)ゲッターロボ 地球が静止する日
勇者ライディーン
超電磁ロボコン・バトラーV
超電磁マシーンボルテスV
闘将ダイモス
未来ロボダルタニアス
無敵超人ザンボット3
無敵鋼人ダイターン3
聖戦士ダンバイン
聖戦士ダンバイン OVA版
超獣機神ダンクーガ
超獣機神ダンクーガ 白熱の終章
機動戦艦ナデシコ
劇場版機動戦艦ナデシコ
戦国魔人ゴーショーグン
大空魔竜ガイキング
百獣王ゴライオン
宇宙戦士バルディオス
創聖のアクエリオン
ブレンパワード
フルメタル=パニック!
フルメタル=パニック? ふもっふ
鋼鉄ジーグ
六神合体ゴッドマーズ
新世紀エヴァンゲリオン
劇場版新世紀エヴァンゲリオン
超時空要塞マクロス
超時空要塞マクロス 愛・おぼえてますか
超時空要塞マクロス2
超時空要塞マクロス 天使のラブソング
マクロスプラス
マクロス7
マクロスフロンティア
電脳戦機バーチャロン マーズ
電脳戦機バーチャロン オラトリオ・タングラム
超重神グラヴィオン
超重神グラヴィオン ツヴァイ
宇宙大帝ゴッドシグマ
THEビッグオー
THEビッグオー セカンドシーズン
勇者王ガオガイガー
勇者王ガオガイガーFINAL
蒼き流星SPTレイズナー
重戦機エルガイム
機甲戦記ドラグナー
冥王計画ゼオライマー
魔法騎士レイアース
ラーゼフォン
ラーゼフォン 多元変奏曲
機動大戦ギガンティック=フォーミュラ
装甲騎兵ボトムズ
伝説巨神イデオン
トップをねらえ!
魔装機神 THE LOAD OF ELEMENTAL
超機大戦SRX
バンプレストオリジナル
オリジナルキャラ 

 

第一話 新たな敵軍

                 第一話 新たな敵軍

バルマー帝国銀河辺境方面軍壊滅の話はすぐに帝国本土にも届いた。霊帝ルアフはそれを宰相であるシヴァー=ゴッツォから聞いていた。
「そう、マーグもロゼも」
「地球人に投降しました」
シヴァーはこのこともルアフに報告した。
「そしてロンド=ベルに入りました」
「そうか」
「そして処罰は」
「ああ、いいよ」
それはいいというマーグだった。
「彼等の一族やギシン家に対してだね」
「はい、それは」
「それについては不問にするよ」
こう言うのだった。
「彼等には何の興味もないからね」
「左様ですか」
「うん。それでだけれど」
「はい、それでは」
「地球には別の軍を送るとしようか」
「ではどの軍にしますか」
「そうだね。地球に近いし」
まずはそこから述べるルアフだった。
「外銀河方面軍にしようかな」
「彼等にですか」
「うん、君の息子に行ってもらうよ」
ここで思わせぶりにシヴァーの仮面を見てきた。
「それでどうかな」
「わかりました、それでは」
「そうしよう。それでね」
「すぐにですか」
「そう、すぐに向かわせよう」
ルアフは決定は迅速だった。
「そういうことでね」
「はい、それでは」
「そして後は」
ルアフの言葉は続く。
「反乱を起こしたボアザンやキャンベラには」
「兵を向けますか」
「そうだね、彼等にも兵を送ることを考えておこう」
「わかりました、そして」
「バックフランも来ているし宇宙怪獣もいる」
そうした勢力のことも頭の中に入れていた。
「彼等に対してはこの帝都の護りを固めたうえで」
「本土防衛軍をですね」
「彼等を集結させとしよう」
「わかりました」
「敵が増えたね」
ルアフはまた言った。
「ここに来て」
「宇宙怪獣は元からですが」
「うん、問題はバックフランだ」
「あの者達は他の銀河から来ております」
「彼等はこの帝星に迫ろうとしているけれど」
「引きつけますか」
「そうするとするかな」
何処か他人事の言葉だった。
「その方が確実だね」
「それでは」
「さて、それじゃあね」
ルアフは軽い調子での言葉を続けていく。
「僕はまた瞑想に入るよ」
「それでは」
こうして彼等の話は終わった。そして地球では。ロンド=ベルはセダンに戻り休息を楽しんでいたのであった。
その中でだ。皆プールの中にいた。そこにはロゼもいる。
「うわ、ロゼさんって」
「スタイルもかなり」
「いいんですね」
「そ、そうですか?」
それを言われて困った顔になるロゼだった。見れば彼女はダークブルーの競泳水着である。シンプルだが体型ははっきりと出ている。
「そんなに」
「いいって」
「そうよね」
「それもかなりね」
これが彼等の感想だった。
「スタイルいいし」
「背も高めたし」
「おまけに凄い美人」
皆でロゼを褒める。
「それじゃあ本当にね」
「マーグさんが羨ましいっていうか」
「確かに」
「いや、私の方こそ」
ここでマーグも出て来て皆に話してきた。
「ロゼが傍にいてくれて本当に勿体無いと思っている」
「私の方こそです」
負けずといった感じでロゼも言うのだった。
「司令、いえマーグ様が一緒にいてくれるだけで」
「うわ、顔が真っ赤」
「そこまで嬉しいんだ」
「本当に」
皆それを聞いて言うのだった。
「これはもう入る隙がないっていうか」
「それは」
「確かに」
こう言うしかなかった。誰もがだ。
「マーグさんとロゼさんってね」
「色々あって結ばれたし」
「幸せになって欲しいし」
「そうよね」
「私は今とても幸せだよ」
そして今言ったのはやはりマーグだった。
「本当に。ロゼもいてくれてマーズもいてくれて」
「何時の間にかロゼさんが第一に来てるし」
「そうよね」
「もうおのろけ」
「いいではないか」
ナタルも来た。彼女は黒のワンピースだ。腰にはパレオがある。パレオも水着と同じ黒でありガードは固い感じだ。
「それは」
「いいんですか?」
「あのままで」
「純愛はいい」
そのナタルの言葉である。
「だからだ。いいのだ」
「それでなんですか」
「いいんですね」
「そうだ、いい」
また言うのであった。
「とにかくだ。誰もが幸せになればいい」
「何かナタルさんって最近優しくなった?」
「そうよね、それもかなり」
「何でかしら」
「私も変わったのだ」
そうだというのである。
「ここにいる間にだ」
「ロンド=ベルにいてですか」
「それでなんですか」
「そうだ。確かに私はだ」
自分で自分のことを言う。
「堅苦しい女だが」
「最近それも変わりましたよ」
「かなり」
このことにも突込みが入る。
「柔らかくなったし」
「可愛くなった?それに」
「そうだよな」
「可愛いというのか」
ナタルはこの言葉には意外な顔になった。
「私がか」
「性格がですね」
「可愛いですよ」
「そうそう」
「可愛いと言われたのはここに入ってからだった」
彼女にしてもそうだったのである。
「意外だ。だが」
「だが?」
「それで」
「悪い気はしないな」
微笑んでの言葉だった。
「そう言われてもな」
「そうなんですか」
「やっぱり変わりましたよ」
「もう最初の頃なんか凄く厳しい感じで」
「未沙さん二号って感じで」
「おい、待て」
柿崎がここで皆に言う。
「本人がいたらな」
「いないですよ」
マックスがここで彼に言ってきた。
「今日はミリアと街に出ています」
「そうなのか」
「ええ、ミリアはお供で」
「旦那の御前はここか」
「本当はミリアと来たかったんですけれどね」
ここでは苦い笑顔になるマックスだった。
「それがですね」
「早瀬大尉って押しも強いしなあ」
「あの人だけは変わらないし」
「もうミス生真面目」
ここまで言われるのだった。
「鉄の女っていうか」
「そんな人がまた来たかって思ったら」
「それが違うから」
「よかったよかった」
「だから私も変わった」
そうだというのである。
「ここに来てからだ」
「そっくりな人も多いですしね」
「ナタルさんは特に」
「ミスマル大佐にしても」
彼女がまず挙げられた。
「あとフィルちゃんにフレイちゃんにステラちゃん」
「もう何人でも」
「そういう相手がいるのも有難い」
ナタルもそのことはまんざらではなかった。
「実際な」
「そうだな。やっぱり似ている相手がいるのは嬉しいことだ」
アムロは微笑みながら話しつつ述べた。
「そういえばロゼは何か」
「はい?」
「フラウに雰囲気が似てるな」
「そういえばそうだな」
ブライトも彼のその言葉に応えた。
「思い出すな、彼女を」
「っていうか雰囲気とか感じがな」
「そっくりだよね」
カイとハヤトも言う。
「それにどうも」
「ファーラ姫にも」
「そうですね」
白いビキニのファーラまで出て来た。彼女も立派なプロポーションである。
「私もそう思います」
「私達って確かに」
ロゼもまたファーラに応える。
「似ていますよね」
「そういう方が入られて私も嬉しいです」
実際にそのことを喜んでいるファーラだった。
「これからも宜しく御願いします」
「はい、それでは」
二人の間に友情ができた。それは友情をさらに超えたものがあった。それだけ深い絆をもう作り上げてしまったのである。
そしてだ。数日後だった。もう来たのであった。
「あの刻印からか」
「そうです」
セイラがリュウに応える。
「来ました、遂にです」
「バルマーも素早いな」
「ああ。じゃあ行くか」
それを聞いてまず動いたのはスレッガーだった。
「迎撃にな」
「よし、それではだ」
「総員出撃だな」
アポリーとロベルトも言う。
「刻印に向かってだ」
「すぐに行かなければな」
「用意しておいて何よりだったな」
その中でギュネイはこう言った。
「もう来るってわかっていたしな」
「そうね」
クェスが彼のその言葉に応える。
「あたしもヤクト=ドーガの整備忘れていなかったし」
「なあクェス」
「何?」
「御前ずっとあの赤いヤクトドーガでいくのか?」
こう彼女に問うギュネイだった。
「これからもよ」
「そうよ。それがどうかしたの?」
「御前にはアルパ=アジールも合うんじゃないのか?」
「あのでかいの?」
「ああ。あっちはどうだ?」
「あれもいいけれどね」
一応こう言いはするクェスだった。しかしである。
「けれどあれって地上とかじゃ使えないわよね」
「宇宙戦専用だからな」
「だからいいわ」
それが理由だった。
「ビグザムとかもね」
「だからいいのかよ」
「大きいとそれだけ動きも鈍いし」
もう一つ理由があった。
「だからいいわ」
「そうか。考えてみればそうだな」
「ほら、フォウさんだってロザミアさんだって」
クェスは彼女達のことも話に出した。
「プルツーだってそうじゃない。サイコガンダムから今はリ=ガズイとかキュベレイマークツーに乗ってるわよね」
「そっちの方がいいからか」
「動きやすいのよ」
とにかくそこに理由があるのだという。
「だからね。それでね」
「そうか。要塞みたいで言いかと思ったんだがな」
「身軽に動けるのが一番よ」
何につけてもそれだという。
「デンドロビウムとかノイエ=ジールは敏捷性もあるけれどね」
「でかいとどうしても鈍くなるからな」
「だからあたしはあのヤクト=ドーガでいいわ」
またこう言うのだった。
「このままね」
「そうか、わかった」
「ギュネイ、それはあんたもでしょ?」
クェスは彼にも問うのだった。
「やっぱりヤクト=ドーガでいいわよね」
「ああ、俺もな」
実際彼もそうだった。
「あれが一番合ってるな」
「相性もあるからね」
「少なくとも乗り心地はいいな」
こうも言うギュネイだった。
「もっとも俺の他にも乗れる奴はいるけれどな」
「大介さんとか?」
「あいつはグレンダイザーだろうが」
「ああ、そうだったわね」
「声や雰囲気が似てるだけだろ?俺がグレンダイザーに近付いたら撃たれるぞ」
「やっぱり大介さんとマリアちゃんだけなのね」
「あれに近付けるのはな」
そうした意味で非常に特別なグレンダイザーだった。
「まあそれでな」
「ええ、それじゃあね」
「行くか」
「そうね」
こうして彼等は刻印に向かって出撃した。その前に来るとだった。
「やあ、ようこそ」
「貴方は」
「また御前なのか」
クスハとブリットが彼の姿とマシンを見てそれぞれ言った。
「孫光龍、また」
「俺達の前に」
「暫く振りだね」
その男孫光龍は真龍王機から二人に応えてきた。
「どうやらマーグ君は君達のところに入ったみたいだね」
「そうだ」
そのマーグからの返答である。
「私はこれからバルマーの正しい未来を手に入れる為に戦う」
「おやおや」
孫は今のマーグの言葉には肩をすくめて返すのだった。
「それはまた頑張ってるねえ」
「馬鹿にしているのか?」
「生憎僕はそうした理想主義とは無縁でね」
「それでは貴方は一体」
「何の為に戦っているんだ?」
クスハとブリットがそのことについて問う。
「何故地球人なのにバルマーについているのですか」
「最初は地球にいたというのに」
「僕は神の僕さ」
そうだというだけの孫だった。
「それだけだよ」
「それだけだっていうんですか」
「それでなのか」
「そうだよ。さて」
また言う孫だった。
「それじゃあまた戦うとしようかな」
「孫光龍よ」
「先に来ていたのか」
その彼の後ろにキャリコとスペクトラが出て来た。
「何を考えているのかわからないが」
「今は外銀河方面軍に入るのだな」
「そういうことだよ」
こう二人に返しもするのだった。
「それでだけれどね」
「うむ、わかっている」
「それはだ」
二人の返答はもう既に決まっていた。
「我々はまずはここに足場を作り」
「ハザル様をお迎えする」
「いやいや、それには及ばないよ」
孫は二人に対して軽く返した。
「それはね」
「どういうことだ?それは」
「どうするつもりだというのだ」
「別にここで戦う必要はないんだよ」
そうだというのである。
「だからね」
「だから?」
「それで何がしたいのだ」
「だからだよ。地球はどうでもいいんだよ」
これが孫ォ考えだった。
「とりあえずはね」
「相変わらず何を考えているのかわからない奴だが」
「ハザル様はもうすぐ来られるのだぞ」
「それはわかっているよ」
「わかっているならだ」
「何をしたいのだ?」
二人はそれを聞いてまた首を傾げさせた。
「わからぬが」
「我等は我等の任を果たさせてもらう」
「それでいいな」
「貴様の任務はわからないが」
「任務?何だったかな」
今度はうそぶいてきた。
「僕の任務は」
「とぼけるつもりか。まあいい」
「今はだ」
二人は二人の任務を果たすことにした。そうしてだった。
刻印から次々に出て来た。その彼等がロンド=ベルに向かって来た。
「へっ、またかよ!」
「何かどんどん攻めて来たな!」
「相変わらず数で来るね」
ケーンとタップ、ライトがそのバルマー軍を見てそれぞれ言う。
「じゃあここはまたな」
「戦うしかないな」
「お決まりの展開だ」
「では全軍」
大文字も指示を出す。
「このまま迎撃する」
「了解!」
「それじゃな!」
全員で向かう。そのうえで一気に向かう。バルマー軍との激しい戦いが再び幕を開けた。
そのうえで派手な攻撃を繰り出し合う。ロンド=ベルはその中でだ。
ユリカが戦局を見ている。そのうえでだ。
「敵を引きつけます」
「引きつけるのですね」
「そうです、まずはです」
こうルリの言葉に応えるのだった。
「引きつけてです」
「それからは」
「グラビティブラストの用意を御願いします」
それをだというのだ。
「引きつけてそのうえで」
「それを撃つのですね」
「そうです」
まさにそれだというのだ。
「それでいいですね」
「はい、わかりました」
それに頷くユリカだった。そうしてだった。
バルマー軍を一気に引き寄せてそのうえで。そのグラビティブラストを放ったのである。
それで戦局が一気に動いた。ロンド=ベルに勢いがついた。
「次はです」
「攻勢ですね」
「そうです、それです」
今度はメグミに応えるのだった。
「それで御願いします」
「攻勢ですか」
メグミはそれを聞いて考える顔になっていた。
「ここで」
「刻印まで押しやるつもりで攻めます」
それがユリカの考えだった。
「それで御願いします」
「わかりました」
こうしてだった。ロンド=ベルは一気に攻めにかかる。その中には。
「よし、これで!」
綾人は照準を定めて弓矢をまとめて放ってだ。敵をまとめて倒した。
「バルマーとの戦いも慣れてきたな」
「そうね」
遥もその彼に言ってきた。
「かなりの数をこなしてきたし」
「遥さん」
綾人はその遥にさらに言う。
「気になることがあるんですけれど」
「どうしたの?」
「バルマー軍ですけれど」
彼が今言うのはバルマー軍についてだった。
「何か後ろにいるんじゃ」
「後ろに?」
「はい、そんな気がします」
それを感じるというのだ。
「この世界の地球にはイルイ=ガンエデンがいましたね」
「話を聞くとね」
遥もそれは聞いていた。
「そうらしいわね」
「僕達の世界もそうだったし」
彼等の世界もだというのだ。
「あのアル=イー=クイスも」
「あの三人の女神達ね」
「ああした存在がいるんじゃないですかね」
綾人はそれを察していた。
「はっきりとはわかりませんけれど」
「そうなの」
「そしていたら」
言葉が怪訝なものになっていた。
「何なのでしょうか」
「バルマーは専制主義国家で」
これは既に彼等もわかっていることだった。バルマーはそうしたシステムの国家なのである。
「そしてその頂点には霊帝がいるけれど」
「その霊帝でしょうか」
「そうじゃないかしら」
こう綾人に答える。
「綾人君が今感じているのは」
「そうですか」
「そう思うわ」
また綾人に話す。
「まだバルマー軍の全貌はよくわからないけれど」
「これからそのバルマーの全面対決ですね」
「ええ、それも」
戦局についても話される。
「そうなのよね」
「じゃあまずは」
また弓を放って敵を貫く。今度は戦艦を沈めた。
「こうして戦いに勝って」
「ええ、そうね」
「そうして少しずつ」
進み見極めようというのである。彼等もだ。
ロンド=ベルはそのまま敵を退けようとした。しかしである。
ここで刻印からまた。バルマーの軍勢が出て来た。それを見たロンド=ベルの面々が口々に言った。
「!?一機だと」
「一機だけ!?」
「あの赤い何か蛾みたいなマシンは」
そのマシンを見て言うのだった。
「一体」
「何なんだ?」
「どうやら」
そのマシンから声がしてきた。
「間に合ったか」
「貴殿か」
「ここで来るとはな」
「うむ、御前達も生き残っていたか」
キャリコとスペクトラに話してきた。
「それは何よりだ」
「おや、君も来たんだ」
孫はキャリコやスペクトラとは違っていた。
「これはまた勤勉だねえ」
「孫光龍か」
彼は孫を見て一言述べてきた。その言葉に感情は見られない。
「御前は今はこの軍にいるのだな」
「そうだよ。興味が尽きなくてね」
彼にはこう言うのだった。
「それでなんだ」
「そうか」
「そしてだけれど」
また言ってきた孫だった。
「君がここに来たってことは」
「そうだ」
また一言での返答だった。
「もうすぐ司令が来られる」
「そうだね。その為にだね」
「二人共」
今度はキャリコとスペクトラに言ってきた。
「この作戦のことはだ」
「覚悟はしている」
「司令からの処罰だな」
「それは不問になる」
そうだというのである。
「俺から言っておく」
「そうか」
「済まない」
「そしてだ」
彼はさらに言うのだった。
「下がっているのか」
「あれを使うのか」
「ここで」
「見たところだ」
今はロンド=ベルの部隊を見ての言葉だ。既にその刻印まで僅かの場所にまで迫ってきている。
「この者達の力はかなりのものだな」
「知っているとは思うがだ」
「銀河辺境方面軍が消滅した」
二人は先の戦いのことを彼に話した。
「用心が必要だ」
「少なくとも弱くはない」
「わかった。やはりそうか」
それを聞いて静かに頷くのだった。
そうしてだった。一気に前に出た。そのままロンド=ベルの中に入り。
「何だ、こいつ」
「突っ込んで来た!?」
「一体何を」
「我が名を言っておこう」
こうロンド=ベルの面々に告げるのだった。
「我が名はエイス=ゴッツォ」
「エイス=ゴッツォだと!?」
「まさかと思ったが」
それを聞いたヴィレッタとマーグがそれぞれ声をあげた。
「ではそのマシンが」
「あの伝説の」
「そうだ、ディバリウム」
まさにそれだというのだった。
「これがそのマシンだ」
「いかん!」
それを聞いたマーグがまた言った。
「このマシンは危険だ!」
「何っ、マーグそれは一体どういうことだ!?」
ケンジがマーグに対してすぐに問うた。
「あのマシンに何かあるのか」
「あのマシンはただのマシンではない」
こうケンジに答えた。
「一機で一度に多量の敵を相手にする為のマシンだ」
「ってことはだ」
それを聞いたマサキが言う。
「魔装機神と同じものか」
「そうだ」
今度はヴィレッタが言う。
「話には聞いていた」
「そうですね」
ロゼが彼女のその言葉に頷く。
「そうしたマシンが開発中だとは」
「だがそれでもここで出て来るとはな」
「はい、予想外でした」
「バルマーも本気だということか」
その本気を悟ったのだ。
「つまりは」
「来る」
レビも言ってきた。
「攻撃が来るぞ」
「なっ、何!?」
「ここでか!?」
「一体どんな攻撃が」
「ゲルーシュ=シュロシャー」
エイスが言うとだった。四方八方に雷が放たれた。それで攻撃が仕掛けられたのだ。
「くっ、回避だ!」
「急げ!」
「各機で避けろ!」
こう言ってそれでかわすのだった。何とか全機致命傷は避けられた。
しかしである。ダメージを受けた機は多かった。たった一機にだ。
「な、これだけの敵が」
「いきなり出て来るなんて」
「まさか」
「これでよし」
エイスは攻撃を放ってから言った。
「ロンド=ベルは今はこれ以上攻めて来れない」
「しかしだ」
「貴殿もそれ以上の攻撃は」
「わかっている」
今はキャリコとスペクトラに答えるのだった。
「それではだ」
「一時撤収か」
「そして然る場所にか」
「何も太陽系で戦うことはない」
こうも言うエイスだった。
「ここに拠点を置くこともだ」
「ではどうするというjのだ?」
「それでは」
「ハザル司令の判断次第だ」
それ次第だというのだ。
「しかし今はここに留まる」
「ハザル司令が来られるまで」
「それまで」
「そうだ。それではまずは七隻のヘルモーズを呼ぶ」
「それを基地として」
「そのうえで」
「ハザル司令をお迎えする」
こう言うのだった。
「今はだ。いいな」
「よし、わかった」
「それではだ」
こうして彼等はここは撤収した。戦いは引き分けとなった。しかしである。
ロンド=ベルにとってはショックであった。全てはあのディバリウムのせいだった。
「あの蛾みたいなマシン一機で」
「ここまでダメージを受けるなんて」
「何てことだ」
そのマシンの強さに衝撃を感じていたのだ。
「このままでは」
「どうしようか」
「また来たら」
「心配することはない」
だがここで言ったのはカイだった。
「今度あれが出て来てもだ」
「心配することはないんですか」
「何故ですか?それは」
「一機だからだ」
それが根拠だった。
「一機でも数機でもだ」
「一機ならですか」
「それだとなんですね」
「集中攻撃を浴びせればそれで済む」
まさにそれだけだというのだ。
「向こうが攻撃を仕掛ける前にだ」
「そういえばあのマシンは」
「まず私達の中に飛び込んで」
「そのうえで来るから」
「それだったら」
「そうだ」
カイの言葉は続く。
「今はだ。一気に攻める」
「わかりました。それじゃあ」
「あのマシンが今度出て来たら」
「そうします」
これで話は決まった。そのディバリウムに対してだ。戦術としては決まったのだ。
そのうえで今はセダンに戻る。だが刻印には監視役としてSRXチームが残ることになった。
「それじゃあな」
「頼んだわよ」
「宜しく頼むぜ」
「ああ、わかったぜ」
リュウセイが彼等に笑顔で応える。
「もう一度あの蛾野郎が出て来てもな」
「その時も頼むな」
「そういうことでね」
「それにしてもだ」
ここでライがふと言った。
「敵の司令官が来るそうだな」
「そういえばそんなこと言ってたわね」
アヤも言う。
「ハザルとか何とか」
「あの男はだ」
マーグがまた応えてきた。
「気をつけることだ」
「そいつは一体」
「どういう奴なんだ?」
アキラとナオトが彼に問うた。
「前から名前を聞いた記憶があるけれど」
「バルマーの中でもかなり偉い奴のようだな」
「私も一士官として見ただけだが」
ヴィレッタがここでまた言ってきた。
「宰相シヴァー=ゴッツォの嫡男でだ」
「宰相の」
「じゃあかなりの」
「そうだ、ゴッツォ家の次期当主でもある」
そうだというのである。
「しかしその人格はだ」
「そこから先はわかったぜ」
「私もね」
アラドとゼオラがすぐに応えた。
「最悪なんだな」
「人格は」
「お世辞にも褒められたものではない」
またマーグが言ってきた。
「傲慢で偏見が強く謀略を好む」
「本当に最悪な奴みたいだね」
「そうね」
それを聞いたアイビスとツグミの言葉だ。
「そんな奴が今度の相手か」
「厄介なことになるわね」
「そうだな。そうした男か」
スレイもそれを聞いて眉を顰めさせていた。
「あまり相手にしたくないな」
「へっ、そんな野郎だったらな」
だがここで忍は言うのだった。
「後腐れなくぶっ潰すことができるぜ」
「そうだね、相手は悪い奴の方がいいね」
沙羅も忍に同意して頷いた。
「容赦する必要はないしね」
「そういうことだね。それじゃあ」
「ハザル=ゴッツォだな」
雅人と亮も続く。
「そいつが出て来たらね」
「倒すとしよう」
「結論としてはそうなるな」
シナプスも言う。
「例え相手が誰でも戦う。それだけだ」
「はい、それでは今は」
「セダンに」
ジャクリーンとパサロフが話す。
「戻ってですね」
「そのうえで」
「それではだ」
最後にヴィレッタが言った。
「私達五人はここに残る」
「何かあればすぐに連絡する」
レビも言う。
「その時はまただ」
「ああ、すぐに飛んで来るからな」
「それまで持ち堪えてくれよ」
「もっともだ」
リーは安心した顔と声で述べた。
「SRXもまた一機で多くの敵を相手にできる。合体すればだがな」
「ああ、だから相当な相手でも倒せるからよ」
リュウセイも明るい声で話す。
「ここは任せておいてくれよ」
「そうさせてもらうぜ。それじゃあな」
「ああ、またな」
最後にカズマに応える。こうしてロンド=ベルはSRXチームを監視役に置いてそのうえでセダンに戻った。しかしそれは大きな間違いだった。
セダンに戻って次の日だった。すぐに敵襲の報告が届いた。
「刻印か!?」
「もう来たのね」
「いや、違う」
言ってきたのは不動だった。
「ネオエジプト近辺だ」
「ネオエジプトの?」
「刻印じゃなくてですか」
「あの巨大戦艦が来た」
それがだというのだ。
「七隻だ」
「七隻っていうと」
「ヘルモーズがですか」
「来たんですね」
「そうだ」
まさにそれだというのだ。
「あの戦艦を基地として来たようだ」
「あの戦艦を」
「それでなんですか」
「そうだ。そしてだ」
不動の言葉は続く。
「我々はそれに対してすぐに迎撃に向かう」
「わかりました。それじゃあ」
「俺達はそっちに」
こうして彼等は戦いの場に向かった。また新たな惨劇がはじまろうとしていた。

第一話完

2010・2・5


 

 

第二話 SRX敗北

                 第二話 SRX敗北
ネオエジプトに来たロンド=ベル。そこにいたのは。
「やっぱりヘルモーズが」
「七隻いる」
「ということだ」
「そうだ」
あの見知った七人がまた出て来たのだった。
「汝等の相手はだ」
「我等が務める」
「それでいいな」
ジュデッカ=ゴッツォ達であった。あの七人がである。
「既に我等を倒したのは知っている」
「銀河辺境方面軍のことはだ」
「特にだ」
「我等をだ」
出て来たのはエペソとラオデキアだった。
「我々はだ」
「とりわけ余だな」
「ああ、そうだよ」
甲児が彼等のその言葉に答えた。
「御前等とはもう随分会ってるな」
「その恨みもだ」
「晴らさせてもらう」
「その前に誰が誰なのかわかりにくくない?」
マリアはこのことに突っ込みを入れた。
「この七人って」
「声も外見も全く同じだしね」
ジュンも彼女の言葉に頷く。
「中々わからないわ」
「ヘルモーズもだからな」
鉄也は彼等の乗艦を見ていた。
「それで見分けるというのはだ」
「難しいわよね」
さやかも言う。
「本当に」
「髪の色デーーーース」
だがジャックはそれを見抜いていた。
「一人一人それが違いマーーーース!」
「あっ、そういえば」
メリーは兄の指摘でそのことに気付いた。
「髪の色は一人一人違うわよね」
「確かにな」
「そうよね」
大介とひかるもその言葉に頷く。
「そうか、それでか」
「一人一人違うのね」
「何処のRPGなんだ?」
今言ったのはかずマだった。
「それってよ」
「そうよね、殆どそれよね」
ミヒロも兄のその言葉に頷く。
「髪の色だけで見分けろって」
「しかも能力も同じだし」
「口調まで」
皆口々に言っていく。
「それが七人ね」
「お決まりっていえばお決まりね」
「さて、戯言は終わりだ」
「我等は我等だ」
そのジュデッカ=ゴッツォ達が言ってきた。
「ここで汝等を倒しだ」
「あらためて地球圏を掌握させてもらう」
「言いたいことはわかった」
その彼等に返すレーツェルだった。
「では相手になろう」
「うむ、それではだ」
「参るとしよう」
バルマー軍との戦いが再びはじまった。まずはロンド=ベルはその軍を大きく散開させた。
「ヘルモーズの主砲だ」
「それに気をつけろ」
アムロとフォッカーがそれぞれ言う。
「あれの直撃を受けるわけにはいかない」
「だからだ。いいな」
「つまりだ」
ここでテムジンが言う。
「いつも通りだということだ」
「ブラザー、それはまたわかりやすいな」
「物事を難しく言う趣味はない」
やはりいつものテムジンである。
「そういうことだ」
「よし、わかった」
ハッターもそれで納得した。
「なら俺もいつも通りだ」
「いつも通りやられるのね」
「ちょっと待て!」
まさにいつも通りフェイに言い返す。
「今の言葉は何だ!」
「だからいつも通りやられるっていうのよ」
「俺が何時やられた!」
「今まで勝ったことあるの?」
こんなことを言う彼等だった。
「噛ませばかりじゃない」
「おのれ、こうなったらだ!」
ハッターは敵よりまずはフェイと戦っていた。
「御前から先に懲らしめてやる!」
「だからだ」
「待つのだ」
二体のライデンがその彼を止める。
「味方と戦ってどうする」
「何を考えているのだ」
「ほら、フェイも」
「馬鹿なこと言ってないで」
「バルマーと戦わないと」
三姉妹は彼女の方にいっていた。
「そうでしょ?ハッターが敵じゃないんだから」
「だからここはね」
「いいわね」
「相変わらず仲がいいな」
パトリックはそんな彼等を見ながら述べた。
「全くねえ」
「ふざけていないで先に行け」
その彼にカティが声をかける。
「味方よりまずは敵だ」
「まあ大佐の本心はわかってますし」
「本心だと!?」
「またまた。隠す必要はないですよ」
笑いながら彼女に言うのだった。
「いつも俺のことを見てくれていて」
「なっ!?」
こう言われるとだった。その顔を急に真っ赤にさせるカティだった。
「な、何を馬鹿なことを言っている」
「だから。俺と大佐の仲じゃないですか」
「馬鹿なことを言うな、私と貴官はだ」
「ここまで嘘吐くのが下手だったんだ」
「この人って」
皆そんなカティを見て呆れていた。
「予想はしていたけれど」
「何ていうか」
「とにかくだ」
カティは真っ赤になった顔をとりあえず収めて言ってきた。
「作戦はだ」
「おっと、それだ」
「そうだったわ」
ここでそのことを思い出す彼等だった。
「戦いだったよな」
「何とかしないと」
「そうだよ、戦いだよ」
まさにそれだと気付いたのである。
「バルマー軍だな」
「何とかしないとな」
「また大勢来たし」
「それなら」
こうして彼等は散開しそのうえで敵に向かった。そうしてだった。
ヘルモーズの射程から離れてである。そのうえで敵と戦っていた。
「今はヘルモーズは相手にするな」
「はい」
「わかりました」
オズマの言葉にミシェルとルカが応える。
「今は他のマシンをですね」
「それに戦艦を」
「そうだ」
オズマはまずは彼等を見ているのだった。
「そのうえでだ。いいな」
「了解です」
「ではまずは他の敵を」
「時間はかけてもいいな」
アルトはこう判断した。
「それで敵を少しずつだな」
「その通りだ」
彼の言葉にジェフリーが頷いた。
「まずは的確に倒す。いいな」
「それじゃあ」
「ヘルモーズは後に回していい」
ジェフリーはまた言った。
「それよりもだ」
「ヘルモーズの後はまたあれが出て来ますからね」
「他のマシンの数を減らしておかないと」
これまでの戦いで既にわかっていた。バルマーの戦い方はだ。
「ズフィルードが出るそれまでに」
「他の敵を倒していって」
「そうしなければな」
またミシェルとルカに話すオズマだった。
「わかったらだ」
「こうしてですね」
ミシェルのバルキリーがバトロイドに変形してそのうえで射撃を放った。それで前にいた敵の戦艦の一隻をそのビームで貫いた。
それで一隻沈めた。そのうえでまたバルキリーに戻る。
「戻るんですか」
「ああした敵を相手にする時はともかく」
こうルカに答える。
「普段はこっちの方がいいからな」
「それはそうですね」
「バルキリーの方が何かとやり易い」
ミシェルは言う。
「反応弾もあるからな」
「そうですね、反応弾があるから」
彼等の翼には既にそれがあった。
「僕達はやっぱりバルキリーの方が」
「まあ俺達のバルキリーはな」
「少し違うがな」
イサムとガルドはだった。
「接近戦もできるからな」
「バルキリー形態でなくともいけるがな」
「しかしやはりバルキリーの方が動きやすいがな」
「特に普段はだ」
これは彼等も同じであった。
「よし、それならだ」
「ここは」
「さて」
ここでまた言う彼等だった。
「その反応弾をな!」
「撃たせてもらう」
こうしてだった。一気に攻める。反応弾を放った。
それが敵をまとめて消し飛ばす。相変わらずの威力だった。
「艦長!」
「これで」
「敵陣に穴が開きました」
モニカにミーナ、ラムが言ってきた。
「どうしますか、ここは」
「突撃ですか?それとも」
「まだでしょうか」
「まだだ」
ジェフリーはここでは慎重策を取った。
「まだだ、それは」
「ではこのまま敵の数を減らして」
「そうしていくのですね」
「まだ」
「そうだ、慎重にだ」
やはり慎重策であった。
「ここはまだだ」
「わかりました、では」
「ここはこのまま」
「遠距離攻撃を続けます」
「ヘルモーズの周りにはまだ敵が多い」
その彼等を警戒してのことであった。
「ヘルモーズに攻撃を仕掛けるのはまだ先だ」
「それでは」
「今は」
こうしてだった。彼等は慎重にバルマー軍を減らしていく。戦いは順調であった。しかしであった。
「さて、この程度か」
「そうだな、潮時だ」
「今がだな」
ジュデッカ=ゴッツォ達がそれぞれ言うのだった。
「全軍撤退とする」
「すぐにヘルモーズ及び母艦に戻れ」
「いいな」
こう部下達に対して述べる、
そうして撤退に入る。それを見てだった。
「えっ、もうか!?」
「まだ半分もいるのに」
「それで撤退なのか」
ロンド=ベルの面目はそれを見て驚きの声をあげた。
「今回は随分早いが」
「どうしてなんだ?」
「おかしいわね」
こう首を傾げているとだった。急報が入って来た。
「諸君、大変なことになった」
「すぐに刻印に向かってくれ」
ミスマルとアデナウヤーが同時に出て来て言うのだった。
「刻印にだ」
「即刻だ」
「刻印にといいますと」
ブライトが彼等に応えて言う。
「まさかそこに」
「そうだ、そのまさかだ」
「君達には御苦労だが」
それを承知のことだというのだ。
「すぐに向かってくれ」
「連邦軍も向かわせているがだ」
「わかりました」
ブライトは二人の言葉にすぐに頷いた。
「ではすぐに」
「うむ、頼んだ」
「それではだ」
こうしてロンド=ベルは刻印に急行することになった。その頃刻印では。
「くそっ、何という奴だ」
「僅か五機だというのに」
「まだ倒れぬか」
バルマー軍の将兵達は明らかな苛立ちを感じていた。四機のSRXチームとヴィレッタの攻撃の前に中々攻められずにいたのだ。
「我等が数においては有利だ」
「しかしだ」
「それでもか」
「数なんてな!」
リュウセイがその彼等に叫ぶ。
「俺達を倒したければ一個艦隊送ってきやがれ!」
「そうでなければだ」
ライも言う。
「倒れることはない」
「倒れるわけにもいかないしね」
アヤはこう言った。
「そういうことだからね」
「その通りだな。しかし」
「そうだな」
ヴィレッタはレビの今の言葉に頷いた。
「ヘルモーズがいない」
「ということは」
「何かがあるか?」
リュウセイもそれを直感で察した。
「これはよ」
「そうかも知れないな」
ライも察した。
「これは」
「リュウ」
ここでアヤが言う。
「いざという時はね」
「合体か」
「ええ、SRXになるわ」
こう彼に言うのだった。
「わかったわね」
「ああ、わかった」
リュウセイもそれに頷いてであった。敵を迎え撃つ。敵はまだ数で来るがであった。
二十機程度倒した時だった。刻印から。
「!?あれは」
「あのマシンは」
大型の船を思わせる白いマシンが出て来た。
「あのマシンは一体」
「何だってんだ?」
「ふふふふふ」
ここでそのマシンから声がした。
「それが地球人共のマシンか」
「司令、まさか」
「司令御自らとは」
「俺も司令の椅子を温めてばかりでは退屈だ」
その男は周りの部下達に告げた。
「たまにはこうして戦わなければな」
「ですがそれは」
「我々が」
「俺に指図をするつもりか?」
男の声が急に険しいものになった。
「まさかとは思うが」
「い、いえそれは」
「ありません」
彼等もそれはすぐに否定した。
「ではそれで」
「御願いします」
「ならばよい。さすればだ」
「はい、それでは」
「どうぞ」
そのマシンはSRXの前に来た。そうしてだった。
その攻撃を放った。四機に対してだ。
「受けるがいい」
黒い波動に見える衝撃波だった。それを出したのだ。
その速さは彼等とて避けられるものではなかった。
「な、何だこれは!」
「いかん!」
「回避!」
三人は咄嗟に叫んだ。
「これはいかん!」
「わかった」
レビもライの言葉に頷きだった。すぐにそれを避けようとする。
だがそれは間に合わずであった。激しいダメージを受けた。それは無視できないものだった。
「くっ、何てこった」
「まさかあのマシン」
「またバルマーの切り札だというの?」
「有り得る」
四人はそれぞれ言った。
「いかん」
そしてヴィレッタが決断を下した。
「四人共ここはだ」
「合体だな」
「そうだ」
こうリュウセイにも告げた。
「わかったな」
「あ、ああ」
「それならなだ」
「すぐに」
こうして四人はすぐに合体に入った。SRXになる。
そのうえでライフルを放つ。だがそれはあえなくかわされてしまった。
「かわした!?」
「嘘だろ!?」
アヤとリュウセイがそれを見て思わず叫んだ。
「SRXの攻撃を」
「しかもあの巨体でかよ」
「ふふふ、俺に攻撃を仕掛けてきたか」
そのマシンからまた倣岸不遜な声がしてきた。
「その罪を償ってもらおう」
「!?また」
「来た!」
「避けられん!」
また攻撃を受けた。それでSRXもまた致命的なダメージを受けた。
「くっ、これじゃあ」
「皆大丈夫!?」
アヤが他の三人に問うた。
「無事なの!?どうなの?」
「あ、ああ。何とかな」
「大丈夫です」
「私もだ」
「そう、よかった」
アヤは三人の言葉を聞いてまずは納得した。しかしだった。
ヴィレッタのヒュッケバインマークスリーが前に来てだ。言うのだった。
「いかん、ここは撤退だ」
「撤退かよ」
「すぐに退け」
こう四人に言うのだった。最早SRXはその下半身を吹き飛ばされ戦える上京ではなかった。それを見ての言葉であったのだ。
「わかったな」
「ああ、しかし」
「リュウ、ロックオンされたわ」
ここでアヤがまたリュウセイに告げた。
「すぐに回避を」
「駄目だ」
しかしここでリュウセイが言う。
「エンジンの出力があがらねえ」
「まさかエンジンまで」
「ライ、どうなってるんだ?」
「バイパス系をやられた」
これがライの言葉だった。
「現状ではウォータードライブにも達していない」
「それならだ」
リュウセイはそれを聞いて言った。
「合体解除か」
「それか」
「ああ、それだ」
まさにそれだとレビにも答える。
「分離してまた奴を」
「無理だ」
しかしそれはライが止めた。
「Rー3の脚がもう」
「ちっ、そうか」
「それにだ」
ライの言葉は続く。
「R-1とR-2の接続部も破損している」
「それもかよ」
「今の攻撃でだ」
「じゃあどうしろってんだよ!」
「あの敵は」
アヤが何とか狼狽を感情で抑えている顔で述べた。
「私達のSRXのことを知っているわ」
「何っ!?」
「間違いない」
ここでライも言う。
「さもなければここまで出来はしない」
「じゃああいつ等は」
「くくく、ここで出て来るとは思わなかった」
それは予想外であったようだ。彼にしてもだ。
「だが裏切り者が作り出したガラクタなぞその程度だ」
「全くです」
「またあのマシンが!」
「出て来た!?」
ディバリウムも出て来たのであった。
「くっ、こんな時にかよ」
「また厄介な相手だな」
「どうやらです」
エペソはその白いマシンにいる男に言うのだった。
「我等が今まで敗れてきたのは何かの間違いとしか思えません」
「ふん」
ここで男はまた傲慢な声をあげた。
「所詮はその程度だったのだ」
「マーグ達もですか」
「ギシン家の者なぞあの程度だ」
こう言ってはばからないのだった。
「所詮はな。だからこそ今地球人共に与しているのだ」
「確かに」
「さて」
ここで男はまた言った。
「サンプルの検分とトロニウムの回収をだ」
「では私が」
「いや、エペソよ」
ここで彼はエペソの名を呼んでみせたのだった。
「それはいい」
「といいますと」
「この俺自らが行う」
そうするというのだ。
「このハザル=ゴッツォがだ」
銀色の髪に険しい顔をしている。その顔にも態度にも傲慢の色がはっきりと出ている。
「行う。いいな」
「いえ」
ところがであった。ここでエペソは彼に言うのだった。
「御身に何かあれば一大事です」
こう言うのだ。
「後は我々にお任せ下さい」
「エペソよ」
だがハザルは彼を睨んで言うのだった。
「誰に向かって口を利いている?」
「申し訳ありません」
「このまま見ているだけというのは性に合わん」
「だからですか」
「そうだ。それにだ」
ここでハザルはさらに述べた。
「己の手で功績を挙げねば父上に対して示しがつかん」
「シヴァー様に」
「だからだ」
こう言ってであった。
「御前達は下がれ」
「我々はですか」
「そうだ。まずはサンプルとトロニウムを回収してだ」
それからだというのだ。
「この者達をゆっくりと料理してやる」
「では」
「俺の警護はもう必要ない」
「ですが」
また言うエイスであった。
「シヴァー様の御命令に反することに」
「黙れ」
ハザルの今度の言葉は有無を言わせぬものだった。
「御前の主は誰だ」
「ハザル様です」
「そうだな。ではだ」
「しかし」
「人形の分際で口答えする気か?」
ハザルの言葉はさらに高圧的なものになってきていた。
「俺の命令は絶対なのだぞ」
「わかりました、それでは」
「人形風情が。さて」
あらためてSRXを見てであった。
「リュウセイ=ダテか」
「何だってんだ?」
「御前の力を試す時が来た」
その傲慢そのものの笑みでの言葉だ。
「生贄として相応しいかどうか」
「何っ!?」
「父上に代わりこの俺が見極めてやろう」
「ちっ、ライ!」
迫ってきた彼を見ながらライに問うた。
「今使える武器は何だ!」
「右腕のハイフィンガーランチャーだけだ」
「無敵剣は!?」
「破損はしていないが」
しかし、なのだった。
「今の出力では無理だ」
「無理だってのかよ」
「そうだ、使用不可能だ」
そうだというのである。
「とてもだ」
「このままではどうにもならん」
ライはこのことも彼に話した。
「リュウ、後退だ」
「馬鹿言え!」
しかしここでリュウセイはこう言って反論した。
「ここまでやられて引き下がれるかよ!」
「冷静になれ。今の俺達では勝ち目がない」
ライはこの中でも冷静だった。
「あの敵はバルマー帝国だぞ」
「だからかよ」
「そうだ。それにだ」
さらに言うライだった。
「御前と大尉に万が一のことがあればだ」
「その時かよ」
「そうだ。誰がアルタードを操る」
こう言うのである。
「その時はだ」
「そうよ、リュウ」
アヤもここで彼に言ってきた。
「ライの言う通りよ」
「引けってのかよ」
「ええ」
まさにそうだというのである。
「私達は今は生きないといけないのよ」
「だからかよ」
「そうよ、何としても生き延びないと」
ならないというのだ。
「何があっても」
「ちっ、ここはかよ」
「まだバルマー帝国との戦いは続くわ」
リュウセイにこのことも話した。
「ここで終わる訳にはいかないのよ」
「だからか」
「今は歯を食いしばって耐えるのよ」
必死にリュウセイに話す。
「耐えて生き延びて成すべきことを成すのよ」
「その為に今は」
「ええ、これからの為にね」
「わかった」
「有り難う。じゃあライ」
アヤはリュウセイが納得したのを見て今度はライに告げた。
「武装へのエネルギー供給を最低限にまでカットして」
「カットですか」
「そして推進系に回すのよ」
そしてであった。
「ここから一気に脱出するわ」
「しかし」
だが、であった。ライはアヤのその言葉に対して言うのだった。
「それでは戦闘不能になる恐れが」
「私が念動フィールドを限界まで展開するわ」
そうするというのだ。
「リュウ、貴方は操縦に集中して」
「りょ、了解!」
「TーLINKフルコンタクト」
アヤの指示は続く。
「何としてもここから!」
「脱出する!」
レビも言う。そしてヴィレッタが護る。
そのまま脱出しようとする。だが。
ハザルはそれを見てもだ。残忍な笑みをたたえて言うのだった。
「逃げ出すつもりか。だが遅かったな」
「!?」
その後ろにエペソのディバリウムが回り込んだ。それで退路を塞がれてしまったのだ。
「ちっ、こいつもかよ!」
「敵の攻撃は私が防ぐ」
レビが出て来て言う。
「この宙域から脱出することを考えろ」
「あ、ああ」
「いいな」
「ふふふ、それは無理だ」
ここで自信に満ちた態度を崩さないハザルだった。
「何があろうともだ」
「くそっ、あいつも近付いてきやがるのかよ」
「さあリュウセイ=ダテ」
はざるはわざとゆっくり近付いて来て言うのだった。
「御前の力を見せてみろ。サイコドライバーの力をな」
「来たぞ!」
「ここでやられてたまるか!」
リュウセイも今は撤退する気だった。
「アヤ、フィールドを頼むぞ!」
「ええ、わかったわ!」
ここでロンド=ベルが戦場に到着したのだった。
「来た!?」
「ロンド=ベルが」
しかしであった。誰もが今のSRXの姿を見てだ。唖然として言うのだった。
「何だそのダメージは」
「どうしたの?」
「やられちまった」
無念の顔で言うリュウセイだった。
「奴にな」
「!?そういえばあの白いマシンは」
「まさか敵の新型のマシン」
「そうらしい」
レビが彼等の問いに答えてきた。
「私も見たことがないマシンだ」
「それがSRXを」
「瞬く間に」
「だとすればかなりの強さが」
「さて、ここで出て来たな」
ハザルの笑みはいよいよ不遜なものとなる。そしてだった。
「では俺の力をここで発揮するとしよう」
「!?」
「この力」
「間違いない!」
その力を感じてクスハとブリットが思わず叫んだ。
「あのマシンにいるのは」
「俺達と同じ」
「ううっ・・・・・・」
そしてアヤはその力を感じ取り頭に両手をやって苦しんでいた。
「この力は」
「奴も念動力者なのか」
リュウセイもそれをはっきりと感じ取っていた。
「まさか」
「間違いない」
レビもであった。
「あいつも」
「力を持っている」
「ただしだ」
ハザルは彼等を完全に下に見て告げてきた。
「俺は御前達とは違う」
「何っ!?」
「違うというのか!」
「そうだ」
こうクスハとブリットにも答えるのだった。
「今からその証拠を見せてやろう」
「来たぞ!」
「今の貴様の念では俺に対抗できまい!」
「リュウ!」
ライがまたリュウセイに叫ぶ。
「回避しろ!」
「だ、駄目だ!」
しかしであった。
「機体が動かねえ!」
「何だと!?」
ライも流石に今の言葉には驚きを隠せない。
「大尉、そちらは」
「ああ!・・・・・・ああああ!」
「T-LINKコネクターに異常発生!?」
レビも言う。
「アヤ!?」
「く、くそおおおおっ!」
リュウセイが悔しそうに叫ぶ。
「奴の念で縛られる!」
「ふふふふふ」
またここでハザルが勝ち誇って言ってきた。
「御前達のシステムのことはよく知っているのでな」
「何っ!?」
「既にか」
「ハンデをくれてやろう」
リュウセイ達を明らかに愚弄していた。
「ウラヌスシステム強制発動」
するとだった。何かのシステムが落ちそれとは別のシステムが起動した。そうしてだった。
「RTEレベル一定値ヲオーバー」
「な、何っ!?」
「パイロット及ビ機体ノ安全ヲ優先シ」
「これはSRXではじめて合体した時と同じだ」
「外部からシステムを強制起動させやがったのか!?」
「何故だ」
ライは唖然としながら言う。
「何故奴にそんなことができる」
「俺が知るかよ!」
リュウセイもこう言うしかなかった。
「こんなことはよ」
「さて」
また言ってきたハザルだった。
「御前の力を見せるのだ」
「リンク係数が正常に戻った」
ライの言葉が続く。
「どういうことだ!?」
「それだけじゃねえ!」
また叫ぶリュウセイだった。
「見ろ、エンジンの出力が!」
「三十、四十、五十」
ライもその数字を言う。
「六十を超えたぞ」
「いける」
それを聞いてリュウセイも言った。
「これならいけるぜ」
「どうするつもりだ?」
「コネクターをこっちに回す!」
リュウセイは一つの決断を下した。
「フルドライブだ!」
「止めろ!」
しかしライは彼に叫ぶ。
「これは奴の罠だ!」
「しかしだ」
ここでリュウセイは言い返す。
「あいつを倒さなきゃこっちあやられちまう!」
「待て、大尉が!」
「SRX!」
しかしもうリュウセイは止まらなかった。
「御前の力を奴に見せてやれ!」
「よせ!」
「うおおおおおおおお!」
今リュウセイは力を込めたのだった。
「ライ、無敵剣だ!」
「ふふふ、そうだ、それでいい」
ハザルは向かって来るSRXを見て笑っていた。
「それでだ」
「行くぞ、天上天下!」
その剣を出しであった。
「無敵斬りいいいいいいいいっ!!」
「所詮その程度か」
その言葉と共にであった。その攻撃で全て終わったのだった。
「何っ!?」
「SRXが」
「動きが止まった!?」
「何故だ」
「何っ、SRXが急に」
「瞬発力は中々のものだ」
ハザルはあらためて言った。
「だが所詮は地球製のシステムだな」
「それがどうしたんだよ」
「このヴァイクランのカルケリア=パルス=ティルゲムには程遠い」
「何だってんだ!?」
「どうやらまだ御前には熟成の時間が必要なようだ」
リュウセイへの言葉である。
「だがトロニウムだけは回収させてもらう」
「トロニウムをだと!?」
「あれは我が帝国にとっても非常に貴重な代物だからな」
そうしてであった。SRXに接近してだ。
「きゃあああああああっ!」
「ア、アヤ!」
「大尉!」
「ふふふ」
また言うハザルだった。
「これでいい」
「アヤを!」
「貴様!」
「欠陥品には用はない」
こうリュウセイとレビに告げるのだった。
「だからだ」
「き、貴様・・・・・・」
ライも何時になく感情を露わにさせていた。
「よくも大尉を」
「こ、こいつだけは・・・・・・」
リュウセイはとりわけだった。しかしハザルはその彼等を愚弄して嘲笑うのだった。
「ふはははははははは、憎いか俺が!」
「こ、こいつ!」
「まるでゼゼーナンだ!」
「ああ、あいつみたいだ!」
「いえ、それよりも」
ロンド=ベルの面々はそのゼゼーナンを思い出していた。
「あいつよりも酷い」
「まさに」
「こいつは」
「御前等の同胞を殺したこの俺が!」
「て、手前ええええええええっ!」
「そうだ、憎め!」
ハザルはとりわけリュウセイに対して言うのだった。
「リュウセイ=ダテ!この俺を憎むのだ!」
「一つ言っておく」
刹那が出て来た。
「御前はこの世に生まれるべきではなかった」
「よせ」
だがその彼をティエリアが止めた。
「今は」
「駄目だというのか」
「やろうとしていることはわかる」
既に彼のその考えは察していたのだ。
「しかしだ」
「しかしか」
「そうだ。今君が行ってもどうにもならない」
だからだというのだ。
「僕もできることならだ」
「行きたいのだな」
「あのハザル=ゴッツォ」
その目には怒りの光があった。
「できれば僕がだ」
「御前もか」
「あの男は許せはしない」
彼もなのだった。それはだ。
「だが。今はだ」
「そうか。それでもか」
「今はそれは駄目だ」
「その通りです」
アズラエルも言うのだった。
「僕としてもどうにかしたいのですがね。今は」
「今は?」
「そうなのかよ」
「残念ですけれどね」
こう言ってアレルヤとロックオンも止めるのだった。
「今はそれよりも」
「あの機体をか」
「調べるってんだな」
「残念ですがそれが最も合理的です」
「おい待て!」
そのアズラエルにカガリが叫んできた。
「何でそんなことを言えるんだ!アヤが殺されたんだよ!」
「貴女ですか」
「それで何でだ!今は見ているだけか!」
「カガリ、わかっている筈だよ」
しかしその彼女にユウナが言ってきた。
「君もそれは」
「ユウナか、それは」
「そうだよ。わかっている筈だよ」
ユウナの声には悲しいものが宿っていた。その声でカガリに言うのだった。
「君もそれはね」
「くっ・・・・・・」
「あのマシンの性能はまだよくわかっていない」
ユウナは言った。
「そしてあのマシンもいる」
「ディバリウムですね」
アズラエルがまた言ってきた。
「あれの確かな攻略法もよくわかっていませんし」
「何もかもか」
「あのSRXを瞬く間に倒したんだ」
ユウナはそれだけでそのマシンの性能を見ていた。
「下手をしたらこちらがね」
「だからか」
「うん、僕達はまだあのマシンと戦えない」
そうだというのだ。
「わかったね、それで」
「くっ、それじゃあ今は」
「ルリ君」
ユウナはルリに声をかけた。
「あのマシンのハッキングは」
「今それを行っています」
流石にルリの動きは早かった。
「暫く待って下さい」
「俺もしている」
「おっ、そっちもか」
「流石だな」
ライトの言葉にケーンとタップが応える。
「早いな、情報収集は」
「お手の物だってか」
「しかし。この性能は」
「尋常なものではない」
ブンドルも言うのだった。
「この性能は」
「性能は?」
「どうしたのだ、ブンドル」
「見るのだ」
カットナルとケルナグールに対して言う。
「この性能をだ」
「むっ!?これは」
「何と!」
彼等をしてもであった。驚くべき性能だった。そのヴァイクランはだ。
「これは迂闊に出るとだ」
「大火傷を負うぞ」
「しかもだ」
口々にそれぞれの言葉が出る。
「まだあのマシンがいるんだ」
「あの蛾が」
「ここで出たら」
「やはり迂闊に出なくてよかったですね」
アズラエルもここで言った。
「正解でした」
「そうですね。残念ですが」
ちらりと本音を出すユウナだった。
「戦いの後ですし。今は」
「刻印からもまだ出て来る」
シナプスはそれも見ていた。
「だからだ。今は」
「こんなことってあるかよ!」
闘志也が叫んだ。
「あんな奴をここで潰せないなんてよ!」
「落ち着け」
「気持ちはわかるがな」
ジュリイと謙作がここで彼を止めた。
「今の俺達では」
「それはだ」
「憎いかこの俺が!」
しかしハザルはまた言ってきた。
「御前の同胞を殺したこの俺が!」
「こいつだけは!」
「その憎しみを糧に生きろ!」
ハザルの高笑いは続く。
「そうすれば再びこの俺とあい見えるだろう!」
「手前、まだ!」
「ではさらばだリュウセイ=ダテ!」
最後にこう言ってであった。彼は姿を消した。
そうしてであった。敵が消えたところでだ。ブライトがトーレスとサエグサに問うた。
「SRXの状況は」
「非常に危険です」
「このままでは」
「まさかトロニウムが!?」
「反応はありません」
「ですが」
トーレスとサエグサはまた彼に言ってきた。
「機体が爆発します!」
「かなりの規模の爆発が!」
「いけない!」
すぐに綾人がSRXのところに来た。
そしてそのラーゼフォンでだ。三人を保護してだ。
ヴィレッタも来た。そのうえで彼を手伝った。
「済まない」
「いえ、とにかく今は」
「そうだな」
「SRXチーム!」
「脱出しろ!」
二人は彼等に対して言ってきた。
「今は」
「さもないと死ぬぞ!」
「だ、だが」
ライがその彼等に応える。
「このマシンが」
「このままでは爆発に巻き込まれます!」
「だからだ」
「早く脱出して下さい!」
「今すぐだ!」
「りょ、了解・・・・・・」
ライが最初に頷いた。
「それではだ」
「仕方ないというのか」
次はレビだった。
「今は」
「はい、すぐに」
「脱出しろ」
「リュウ・・・・・・」
ライはリュウセイにも声をかけた。
「脱出だ」
「・・・・・・・・・」
「リュウセイ!!」
「守れなかった・・・・・・」
ここでリュウセイは一人呟いていた。
「俺は・・・・・・アヤを・・・・・・」
「リュウ・・・・・・」
だがライはその彼に言うのだった。
「思い出せ」
「何っ!?」
「大尉の言葉をだ」
アヤのその言葉をだというのだ。
「いいな、それをだ」
「アヤのか・・・・・・」
「今は耐えるしかない」
それしかないというのだ。
「耐えて生き延びだ」
「そうしてか」
「成すべきことをだ」
「ライ・・・・・・」
「そうしなければ俺達は」
「そうか・・・・・・」
「早く脱出しろ!」
またヴィレッタが言ってきた。
「機体が爆発するぞ!」
「早く!」
そして綾人も。
「さもないと本当に!」
「・・・・・・ああ」
「行くぞ」
三人は保護された。ラーゼフォンとヒュッケバインがこれで離脱する。
「三人は収容しました!」
「これで!」
「よし!」
それを聞いて頷くブライトだった。そうして。
「離脱だ!急げ!」
「俺達は・・・・・・」
「守れなかった・・・・・・」
「アヤ・・・・・・SRX・・・・・・」
ライもレビもリュウセイは絶望の中にあった。
「しかし今は」
「生きるしかないのか」
「・・・・・・糞っ、今はかよ!!」
ロンド=ベルが戦場を離脱するとだった。そこに大爆発が起こった。しかしそれで戦いは終わった。しかしであった。
「三人はどうなんだ?」
「かなり重傷よ」
ファがカミーユに話す。
「まだどうなるかわからないらしいわ」
「そうか、そこまでなのか」
「特にリュウセイが」
ルナも暗い顔になっていた。
「集中治療室に入ってから」
「はい、昏睡状態になってしまわれて」
エイナも愕然となっている。
「最悪の場合は」
「おい、何でだよ!」
エイジはそれを聞いて叫んだ。
「何でそんなことによ!」
「落ち着いて」
だがその彼にミヅキが言ってきた。
「大丈夫よ、彼なら」
「そうに決まってるだろうがよ!」
豹馬もここで叫ぶ。
「あいつがそう簡単にくたばってたまるか!」
「三人はまだいい」
レイヴンも必死に冷静さを維持しながら述べた。
「だが。コバヤシ大尉は」
「あの敵はそれだけの力を持っていたということだ」
鉄也が言った。
「それは認めるしかない」
「それはその通りだが」
「鉄也さん、その言い方はよ」
大介と甲児が彼に言ってきた。
「酷ではないのか?」
「今それはよ」
「だが事実だ」
しかし鉄也はそれでも言うのだった。
「受け止めるしかない」
「それしかねえってのかよ!」
「俺もだ」
鉄也は宙に対しても話してきた。
「リュウセイ達は仲間だ」
「それじゃあ何でなんだよ」
「感傷に浸っている時間はない」
それでもこう言うのだった。
「俺達はSRXを倒したあの敵を倒さなくてはならないんだ」
「そうだな」
アムロも彼のその言葉に頷いた。
「鉄也の言う通りだ」
「おい、待てよ!」
今言ってきたのはカチーナだった。
「それで割り切れっていうのかよ!」
「アヤ大尉はこれまでの戦いを共に戦い抜いてきた仲間だった」
「だったら何でなんだよ」
「その仲間を失って平然としていられる」
アムロの言葉は続く。
「俺はそれ程強くはない」
「中佐、そうなのかよ」
「そうですよね」
ラッセルがアムロの真意がわかったカチーナの横で呟いた。
「それはもう誰もが」
「だが」
しかしここでまた言うアムロだった。
「何も失わずに済む戦いなぞありはしない」
「そんな戦いは」
「ないと」
「そうだ、ない」
彼はそのことがよくわかっていた。一年戦争の頃から。
「そして残された者達がすることは」
「悲しみを乗り越えて」
「その想いを受け継ぐ」
「それだよな」
竜馬と隼人、武蔵がそれぞれ言った。
「結局のところはだ」
「それしかないんだ」
「黙っていても何にもならないからな」
こう言うしかなかった。だが甲児はまだ吹っ切れてはいなかった。
「けれどよ」
「甲児君」
鉄也がその彼に言う。
「悲しんでいるだけじゃ駄目だ」
「わかってるさ、それはな」
「SRXを倒したバルマーを食い止めることなんてできやしない」
「そうだな。確かに」
大介も彼のその言葉に頷いた。
「それはもう」
「それにです」
鉄也の言葉はさらに続く。
「宇宙怪獣もいる。奴等も来る」
「彼等もだったな」
「このまま悲しんでいたらまた同じ思いをするだけだ」
「わかってるさ、けれどな」
それでもだった。甲児は言うのだった。
「やりきれねえんだよ」
「少し落ち着きましょう」
さやかがその彼に優しく声をかけた。
「今はね。
「・・・・・・ああ」
「刻印がある」
このことについて大河が言ってきた。
「そこからバルマー軍は幾らでも来るだろう」
「いや」
しかしだった。ここでマーグは言うのだった。
「ハザル=ゴッツォはどうやら地球には攻めては来ないようだ」
「!?そうなんですか?」
「それは何故」
「攻めて来るつもりならあの時に総攻撃に出ていた」
そうしていたというのだ。
「だがそれはなかった」
「確かに」
「随分回りくどいというか」
「そんな感じでしたね」
「あの男はプライドが高く直情的な性格をしている」
彼はハザルをいう男を知っていた。
「謀略も使うが攻める時はだ」
「総攻撃ですか」
「そうすると」
「しかしそれはしなかった」
このことについて言うのであった。
「それどころかSRX、リュウセイを誘い出すようにしている」
「それなら」
「今は」
「そうだ。地球圏には攻めて来ない」
そうだというのである。
「どうやら我々を銀河におびき出すつもりの様だ」
「俺達を銀河に」
「そこで」
「バルマーの本星は銀河の中央にある」
マーグはこのことも皆に話した。
「そしてその主力もだ」
「銀河に」
「ならばこそ」
「そうだ。だから我々には攻めて来ない」
それがハザルの考えだというのだ。
「我々を外に出してだ」
「そして倒す」
「そういう考えですか」
「それよりもだ」
マーグの言葉は続く。
「あの刻印は我々も使えるかも知れない」
「あの刻印をですか」
「私達も」
「そしてそれを使って」
「まさか」
「それでバルマーに」
「そうだ、攻められるのではないか」
この可能性について言及するのだった。
「我々もバルマーを」
「一気に敵の本拠地を叩く」
「そうするんですね」
「少なくともハザルの軍とは戦える」
マーグはこれは絶対とというのだった。
「間違いなくだ」
「それじゃあ」
「私達もあの刻印を使って」
「攻めるんですか」
「それじゃあ今は」
「これからは」
「まずはバルマーだ」
マーグはまた言った。
「彼等をどうにかしなければいけない」
「わかりました。それじゃあ」
「これから」
「そうだな」
ここで大河は決断を下した。
「あの刻印を調べ使えるのなら」
「バルマーを倒す」
「一気に」
「このまま待っているだけでは駄目だ」
彼も積極案になっていた。
「それならばだ」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
不動も言った。
「ならば答えは出ている」
「そうですか。じゃあ」
「まずは刻印を」
「調べよう」
まずはそれからだった。
「そしてだ」
「攻める」
「バルマーを」
「また長い戦いがはじまる」
サンドマンも述べた。
「しかしだ。それでもだ」
「戦う」
「そういうことですね」
「それしかない。我々が生き残る為にはだ」
サンドマンの言葉はまさに正論であった。
「では諸君、これよりだ」
「はい」
「まずは」
「地球に戻ろう。そして全てを調べるのだ」
「懐かしいですが今一つ感慨が湧きませんね」
アズラエルも普段の余裕はなかった。
「僕らしくもないですが。大尉は残念でした。いえ」
「いえ?」
「無念でした」
こう言うのだった。
「本当に」
「そうですか。無念ですか」
「アズラエルさんも」
「仲間というのは有り難いですね」
かつてのアズラエルなら絶対に言わない言葉だった。
「ですがいなくなるとその時は」
「ええ」
「それは確かに」
「けれど」
だがここでフォウが言ってきたのだった。
「私はアヤ大尉は死んでいないと思うわ」
「えっ!?」
「それって」
「どういうこと!?」
「あの時大尉の思念が四散するのを感じなかったわ」
「そういえば」
ここでセシリーも言うのだった。
「私もそれは」
「そうだな、感じなかった」
「間違いない」
カミーユもシーブックも言うのだった。
「それなら」
「やはり」
「私も」
そしてクスハも言うのだった。
「そう思う」
「あんたも同じようなことを感じてるのかい?」
アイビスが真剣な顔で彼女に問うた。
「まさか」
「バルマー戦役でも似たようなことがあったから」
「そうだったな」
ブリットが彼女の今の言葉に頷いた。
「あの時はイングラム少佐が大尉を」
「それは確か」
ショウがその時のことを思い出して言った。
「SRXがはじめて合体した時だったな」
「ええ、その時に」
似ているというのだ。
「少佐はわざとリュウセイ君を怒らせて」
「そうだったな」
ブリットもその時のことを思い出していた。
「あの時は」
「だから」
それでだというのだ。
「今も」
「それに」
クスハの言葉はさらに続く。
「ユーゼス=ゴッツォも同じ様な手で私達の力を」
「そういうこともあったな」
「じゃああの連中は」
今度はアラドが言うのだった。
「アヤ大尉を利用する為に何処かに」
「確証は持てないけれど」
それはだという。
「けれどアヤさんは生きてるって信じたいの」
「リュウセイ君達を殺したいのならあそこでそうしていた」
綾人もそれを察した。
「あながち信憑性の低い話ではないのかも」
「確かに」
「それだと」
皆アヤの生存についても考えだしていた。絶望の中でも光はまだあった。

第二話完

2010・2・10  

 

第三話 激突!!勇者対勇者

              第三話 激突!!勇者対勇者
   ロンド=ベルは地球に戻った。その行く先はGアイランドシティであった。
「ここに来るのも久し振りだな」
「そうね」
ヒメが勇の言葉に頷いていた。
「凄く色々なことがあったから」
「全くだ」
勇はヒメのその言葉に頷いた。
「本当に色々なことがな」
「まずはここで刻印のことを調べてもらうんだね」
「既にデータは取ってあるわ」
命がこのことを話してきた。
「だからそれは安心して」
「そうか。だったらすぐにわかるんだな」
光はそれを聞いて明るい声になった。
「そしてアヤさんが生きているのなら本当に」
「ええ、そうね」
「助け出しましょう」
彼女のその言葉に海と風が続く。
「今までずっと一緒に戦ってきたんだしね」
「大切な方ですから」
「アヤさんが生きているのなら」
「プウ」
「絶対に私達の手で助け出さないと」
アクアにモコナ、プリメーラが言う。この三人が揃うとだった。
「誰が誰かわからんな」
「全くだ」
マイヨがランティスの言葉に頷いていた。
「三人揃うとな」
「区別がつかない」
「ははは、確かにな」
そして二人の会話にヘンケンが笑うのだった。
「どうしてもそうなるな」
「我々もだが」
「声のことはだ」
「困ってしまう時がある」
「それは贅沢な悩みだぞ」
光がランティス達やモコナ達に話す。
「私は一人なんだからな」
「わたくしもですわ」
そしてそれは風もであった。
「海ちゃんがその点では羨ましいんだ」
「ナナさんがおられますし」
「ま、まあそれはね」
二人に言われて少しばかり戸惑いを見せる海だった。
「縁ってことで」
「私にもそうした相手が出て欲しい」
「届かない思いにしましても」
「私もレインちゃんがいるから」
アルシオーネにもしっかりといた。
「かなり助かってるわね」
「そうだよ、それっていいことだよ」
「うち等一人やで」
「いいことではないか」
アスコットとカルディナとクリフが言ってきた。
「もっとも僕はカティさんが出て来てくれたけれど」
「この裏切りモン。ラファーガに続いて」
「あはは、御免ね」
「私は何も言っていないが」
ラファーガは賢明にも沈黙を守っていた。
「しかし。最近ジェオの声が悪役にも聞こえるのだが」
「自覚はしている」
彼自身もそれはあった。
「害地大臣だな」
「そういえば似てるんだよね」
ザズも親友のその言葉に頷く。
「もうね。なりとか付けてユウキと一緒に喋ったらそれこそね」
「それはそれで羨ましい話ですね」
イーグルはそれを羨ましがっているようである。
「僕はそちらには疎いのですが」
「イーグルさんはセーラー服でしたっけ」
サンユンが言ってきた。
「僕はプリシラさんに声が似てるって言われますけれど」
「どうしてそっくりなのじゃ?」
主君のアスカがこのことについて問うた。
「わらわものう。相手がおらんからのう」
「アスカ様、御気になされぬよう」
シャンアンが溜息をつく主に述べた。
「それは特に困ったことではありませぬ」
「そういうものか?」
「アスカ様は寂しいと思われたことはありますか?」
「ロンド=ベルに入ってからはない」
これがアスカの返答だった。
「特にじゃ」
「そういうことでございます」
「しんくろが合う相手がいなくともじゃな」
「さびしくなければそれでいいではありませんか」
「ふむ、そういうものか」
そしてアスカもその考えに頷くのであった。
「わらわはそれでよいと」
「そう思います」
「ううむ。しかしチゼータはじゃな」
そちらはだ。しっかりといるのだった。
「二人共じゃからな。しかもセーラー服がどうとか」
「うちかい」
タータが出て来て言う。
「そらうちはプリセラさんやエルやマリュー艦長やサフィーネさんと仲良しや」
「多いわね」
「姉様も出てなかったか?」
「そうだったかしら」
タトラの返事は彼女らしいぼんやりとしたものだった。
「あまり覚えてないわ」
「そうか。うちはよお覚えとるんやけれどな」
「それは主役級だったからじゃないの?」
ミサトが微笑んでタータに言ってきた。
「私もその世界のことはよくわかるわ」
「何から何まで一緒になってないかしら」
タトラはミサトの言葉を聞きながら首を捻っていた。
「最近は」
「いや、なっとるやろ」
タータはそれはその通りだと答えた。
「どう見てもな。色々な世界の記憶が出て来てるで」
「何かあるのか?」
今言ったのは凱だった。彼にも心当たりのあることだった。
「やはりこれは」
「何かないとおかしいわね」
プレセアも真剣な顔で述べた。
「導師クリフ、これは」
「そうだな。私の記憶も別の世界のものが混ざってきている」
「やはり」
「プレセア、そなたは別の世界では翼を持つ竜だったな」
「はい、そうです」
まさにその通りだと述べるのである。
「その記憶が最近」
「私は荒ぶる神だった」
「そういえば俺もだ」
ヒイロが言って来た。
「白く大きな翼竜だったな」
「複数の世界が混ざり合い何かが起ころうとしているのか」
クリフは考える目で述べた。
「そして何が起こるというのだ」
「それはまだわかりません」
「そう、わからぬのだ」
プレセアの言葉にまた応えた。
「それが何かがだ」
「ああ、皆ここにいたのか」
話す彼等のところに雷牙が来た。ミスマルやアデナウヤー、イゴールといった連邦軍の重鎮達も一緒である。
「ちょっと探したよ」
「どうしたんですか?一体」
アクアが彼の言葉に応えた。
「私達を探していたって」
「許可は下りそうだよ」
こうアクアの問いに答える雷牙だった。
「宇宙に出るね」
「宇宙にですか」
「私としてはだ」
ミスマルがここで言う。
「娘が気掛かりだがだ」
「お父様、またそんな」
「そう言うがだユリカ!」
厳しい顔がまた涙まみれの顔になる。
「お父さんはな!ユリカだけでなくユリカのお友達も地球も何もかもが大事なんだよ!どれ一つとしてなかったら辛くて辛くてだな!」
「さらに凄いことになってないか?」
金竜がそのミスマルを見て呟く。
「前はただの子煩悩だったのにな」
「それが今じゃ博愛主義者って」
アーサーもかなり引いていた。
「この人の身に何が」
「何かがあったのは間違いないな」
ヒューゴも言う。
「それが何かが問題だが」
「君達も親になればわかるよ」
アデナウヤーが微笑んで三人に話した。
「しかし君達もまた実に」
「雰囲気が似ているのは自覚しています」
「我々もそういう関係なのはです」
「わかっているから安心してくれ」
「ならいいがね。とにかくだね」
アデナウヤーは落ち着いた物腰で話すのだった。
「子供を持って手元から離れると。色々なものが見えてくるんだよ」
「パパもだっていうの?」
「全く。御前にはいつも手を焼かされたが」
クェスには少し苦笑いを浮かべて述べるのだった。
「元気でやっているようで何よりだよ」
「私は何時だって元気よ」
親の気持ちはまだよくわかっていないクェスだった。
「だから安心してよ」
「だといいがね」
「それでだ」
イゴールも口を開いてきた。
「地球圏の守りは連邦軍とブリタイ司令の艦隊で行う」
「じゃあその間は」
「我々は」
「バルマー帝国、宇宙怪獣を頼む」
こう告げるのだった。
「是非な」
「わかりました」
「それなら」
「さて、許可は下りたよ」
雷牙が微笑んでまた皆に告げた。
「後は技術的な問題だけれど」
「そう、刻印は」
「あそこは一体」
「それで使えるんですか!?」
「それだけれどね」
雷牙は彼等のその問いにも応えて言った。
「順調だよ」
「順調ってことは」
「つまり」
「博士」
そうしてだった。翡翠色の髪と瞳に褐色の肌の美少女が出て来た。そうして雷牙に対して言ってきたのである。
「残りの解析も無事完了しました」
「おう、御苦労パピヨン君」
「パピヨン!?」
サコンがその名前に反応した。
「若しかしてシャッセールのパピヨン=ノワール博士ですか?」
「はい」
その通りだという返答だった。
「今はGGGでオペレーターを務めています」
「元気そうだね」
その彼女にルネが微笑んで声をかけてきた。
「何よりだよ」
「ええ、ルネ」
パピヨンもまたルネのその言葉に微笑みで返した。
「貴女もね」
「何かねえ」
雷牙はそんな二人を見て言う。
「僕ちゃんと再会した時と反応が違うじゃないか」
「まあまあそれは」
「御気になさらずに」
ミスマルとアデナウヤーが彼を慰める。
「娘さんも博士のことは大切に思っています」
「言葉には出さないだけで」
「だったらいいんだがね」
慰めを受けても今一つ安心できないようだった。
「いや、本当に」
「シャッセールの生体医学者にして」
サコンの言葉は続いていた。
「予知能力『センシング=マインドの持ち主」
「あまり買い被らないで下さい」
しかし当のパピヨンはこう言うのだった。
「私のセンシング=マインドでも今回の事件の全貌は掴めていないのですから」
「気にすることはないよ」
猿頭寺が優しく彼女に声をかけた。
「君の力が必要な時が必ず来るから」
「有り難う、耕助」
「ふん」
親しげに言葉を交わす二人に火麻が忌々しげに言った。
「勤務中にイチャつきやがってよ」
「二人は恋人同士なんデス」
スワンが皆に話す。
「そのことを覚えておいて下さい」
「へえ、そうだったんだ」
「成程」
皆それを聞いて頷いた。
「何かこんな美人が恋人なんて」
「案外隅に置けないっていうか」
「全く」
「仲がいいことはいいことだよ」
ルネもそんな二人を見て笑顔になっている。
「このまま幸せにな」
「有り難う、ルネ」
「じゃあ僕ちゃんとサコン君は後で向かうから」
雷牙がパピヨンに告げた。
「最終解析をね」
「わかりました」
「じゃあパピヨン」
猿頭寺が最後に彼女に告げた。
「頑張ってね」
「ええ。じゃあ研究モジュールで」
こうした話の暫く後でだ。基地に警報音が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
「敵か!?」
「バルマーか!?」
皆即座に身構えた。
「まさか今ここに」
「いや待て!」
だがここでイルムが全員に言った。
「ここは落ち着け!」
「落ち着く」
「それじゃあ」
「そうだ、皆落ち着くんだ」
こう仲間達に言うのだ。
「まずは場所を調べることだ」
「その場所は」
「それじゃあ」
「エリア特定完了!」
スワンが言うのだった。
「研究モジュールデス!」
「よし、そこか!」
「まさか」
ここで猿頭寺の脳裏に不安がよぎった。
「パピヨン・・・・・・」
「研究モジュール内の映像、こちらに回しマス!」
そしてであった。そこに映っていたのは。
「何っ!?」
「嘘だ!」
雷牙と凱がここで同時に叫んだ。
「まさか。そんな・・・・・・」
「護・・・・・・」
映像に映っていたのは護だった。誰もが信じられなかった。
「おう、嘘だろ」
「そう思いたいデス」
火麻に応えるスワンの言葉が何よりも雄弁に物語っていた。
「護が何でここに」
「ジーザス・・・・・・」
「だが」
ここでサコンがふと言った。
「彼はギャレオンと共にギャレオリア彗星で銀河に旅立った筈では」
「くっ!」
「凱!」
凱は何処かに向かった。すぐにその場を駆け去った。
そしてである。牛山も言う。
「護君はオービットベースを離脱!」
「Qパーツも持ってマス!」
スワンも叫ぶ。
「これは」
「まさか」
「ルネ!」
ここでサコンがルネに声をかけてきた。
「俺達も追うぞ!」
「待ってくれサコン!」
だがここでルネは言うのだった。
「その前にパピヨンを!」
「何っ!?」
「パピヨンーーーーーッ!」
猿頭寺が叫ぶ。そうしてであった。
パピヨンを医務室に運ぶ。しかしであった。
「それで容態は」
「駄目デス・・・・・・」
スワンが悲しい声で雷牙に応える。
「お別れデス・・・・・・」
「おい!」
火麻は今よりも激昂していた。
「何がどうなってんだよ、これはよ!」
「わかったことがあります」
だがここでその手遅れのパピヨンが言うのだった。
「銀河規模で起こっている異常気象ですが」
「それが」
「何か関係が」
「Qパーツにも同じ磁場の流れを感じます」
それを感じるというのである。
「あのパーツから」
「パピヨン・・・・・・」
「ルネ・・・・・・」
猿頭寺に応えながらなおも言うのだった。
「あの子には気をつけて」
「あの子って護のことかい?」
「ええ、あの子から生命の息吹が感じられない」
「生命の!?」
「ええ」
まさにそうだというのだ。
「全く感じられなかったわ」
「それはどういうことだい?」
怪訝な顔で親友に問い返した。
「それは一体」
「うう・・・・・・」
「わかったよ」
猿頭寺がここで彼女に優しく言うのだった。
「後でゆっくりと聞かせてくれ」
「いえ、もう私は」
ここでパピヨンは言った。
「もう・・・・・・」
「もうってまさか」
「一足先に精霊達の下へ」
その目をゆっくりと閉じていくのだった。
「帰ります・・・・・・」
「パピヨン!?」
猿寺が必死に彼女に声をかける。
「パピヨン!?」
「・・・・・・・・・」
しかしであった。もう返事はなかった。
「パピヨン!?パピヨンーーーーーーーッ!!」
「許さないよ」
ルネが怒りの声をあげた。
「許さないよ護!」
「ルネさん・・・・・・」
「あたしは御前を絶対に許さないよ!」
そしてであった。Gアイランドシティにおいても異変が起こっていた。
何とGGG開発のメカライオンが出て来ていた。そうしてだった。
大河がそれを見て言うのだった。
「あれは!?」
「GGG管轄のメカライオン!」
「何故ここに」
ミスマルやアデナウヤーもそれを見て言う。
「どうしてここに」
「あれは」
ここで華が言った。
「護君と一緒にいたライオンさん」
「うむ、間違いない」
大河もそれは認める。
「護君、帰って来たのね」
「だが君は何故」
大河にとってもとても信じられないことだった。
「あんなことを」
「護!」
その彼の前にだ。凱がガオファイガーで出て来たのである。
「何故だ!何故こんなことをする!」
「凱兄ちゃん」
「何故パピヨンさんを殺しQパーツを奪い取った!」
彼が問うのはこのことだった。
「それは何故だ!」
「今宇宙では大変なことが起きているんだ」
「大変なことだと!?」
「そう、そして」
彼はさらに言うのである。
「その為にはどうしてもこれが必要なんだ」
「何がだ!」
「バスキューマシンがだよ」
「パスキューマシン」
それが何かは凱にもわかっていた。
「四個のQパーツを合わせたものか」
「多少犠牲は出たかも知れないけれど」
「待て」
クワトロが今の言葉に気付いた。
「あれは護君なのか!?」
「じゃああいつは」
「違うんですか!?」
「護君は何があってもあんなことは言わない」
彼はそれはよく知っていた。そしてであった。
「しかもだ」
「!?そういえば」
「このプレッシャーは」
「護君のものではない」
ギュネイとクェスも同じものを感じていた。
「そうだな」
「は、はい」
「これは」
「あれは護君ではない」
また言うクワトロだった。
「だとすればあれは何だ」
「これで僕達の宇宙は救われるよ」
「待て護!」
その護に突き進む凱だった。
「聞きたいことはまだある!」
「邪魔しないで凱兄ちゃん!」
「まただな」
クワトロは再度言った。
「彼は凱君にああしたことを言ったりはしない」
「じゃあ一体あいつは」
「何者・・・・・・」
「わからん。だが」
クワトロはさらに言う。
「彼は護君であないのは確かだ」
「時間がないんだ!」
「人が死んでるんだ!」
尚も言う凱だった。
「説明しろ護!」
「そっちがその気なら」
そしてであった。
「力づくでも行くよ!」
「止めろ!」
「邪魔するなら仕方ない!フュージョン!」
「何っ!?」
何とであった。
「ガイガー!」
そしてさらに叫ぶ護だった。
「来い!ガオマシーン!」
「ガオマシーンだと!」
「そうさ!」
驚く凱にまた答えるのだった。
「このガオマシーンは凱兄ちゃんが原種との戦いで使っていたものだよ!」
「おい!あれかよ!」
「またあんな戦いが」
「起こる」
オルガ、クロト、シャニの顔が忌々しげに歪む。
「ちっ、護!」
「御前どう見ても護じゃないな!」
「御前は何だ」
「ファイナル!フュージョンッ!」
そうしてであった。
「ガオ!ガイ!ガーーーーーーーーッ!」
「護がガオガイガーを・・・・・・」
凱もこれには唖然となった。そして。
「スターガオガイガーとガオファイガーだと!?」
「どういうことだ、これは」
ジェリドもカクリコンも今起こったことが理解できなかった。
「何がどうなってんだ」
「夢じゃないのは確かだが」
「真ん中に鏡があるとか?」
フェイがここで言った。
「それじゃないわよね」
「よく見ろ!」
だがハッターが言うのだった。
「背中についているものが違うぞ!」
「こういう時は片方が偽者なんだがな」
「しかしだ」
デュオにヒイロが答える。
「センサーはどちらも本物だと言っている」
「何っ!?」
「それは本当か」
デュオだけでなくウーヒェイも問うた。
「どちらもなのか」
「本当です」
カトルも調べてから答えてきた。
「どちらも」
「ではあれはだ」
トロワも今は普段の冷静さが僅かに崩れていた。
「何者なのだ」
「そうさ」
ここでまた言う護だった。
「僕は勇者王の力を手に入れたんだ」
「護君!」
クスハがその彼に問うた。
「スターガオガイガーに乗っているのは護l君なの!?」
「護隊員が」
「宇宙から戻ってきただけでも驚くというのに」
氷竜も炎竜も今は唖然となっていた。
「それだけでなく」
「この事態は」
「信じられない」
「僕もだ」
風龍と雷龍も言う。
「この事態は」
「どうだというのだ」
「おかしいよ護!」
マイクは護に抗議する。
「どうしてパピヨンさんを!」
「そいつが誰だろうと関係ない!」
最早ルネはそれにはこだわっていなかった。
「あたしはパピヨンの仇を取る!」
「けれどあの護君は」
「そうだな」
クスハとブリットが言う。
「確かに何も感じない」
「人形か?」
「プレッシャーもないし」
「何だ、あいつは」
プルとプルツーもだった。
「護じゃない!?」
「人形なのか?」
「それにだ」
「そうよね」
今度はジュドーとルーも話す。
「あの護が間違ってもあんなことを言うか?」
「全然考えられないわよ」
「というか絶対にあれはね」
「護じゃない」
「何かな、あいつは」
「僕もプレッシャー感じないし」
エルにビーチャ、モンド、イーノも話す。
「偽者っぽいわね」
「ああ、絶対に護じゃねえ」
「外見はそっくりだけれど」
「あれは一体」
「僕の邪魔をするなら!」
その護がまた言う。
「ここは通らせてもらうよ!」
「!?しかも」
「こいつ等!」
護のスターガオガイガーの周りにだった。無数のモビルスーツや機械獣、そうしたものが姿を現わしてきたのである。その数は。
「三万!」
「数はどうってことはないが」
「それでもこれは」
「ゾンダーですか!?」
ボルフォッグが言った。
「彼等と同じ様に他の組織の機体を複製したのですか」
「皆の相手は彼等がするよ」
「絶対に違いますね」
トビアもわかった。
「あれは護君じゃ」
「あんな力はなかったよ」
ウッソもだった。
「だからどう考えても」
「そして僕は」
「待て護!」
「さよなら、凱兄ちゃん」
護は去ろうとする。しかしだった。
凱は追う。そうしてだった。
「ここは行かせる訳にはいかない!」
「ああ、そうだ!」
宙が追おうとするその彼に言った。
「それでいい!」
「他の敵は俺達が相手をする」
アムロも言う。
「君はその間に護を追って真相を明らかにするんだ」
「しかしだ」
「ああ、わかっている」
アムロはブライトの言葉に応えて頷いた。
「あれはやはり」
「護ではないな」
「その通りだ」
それはアムロが察しない筈のないことだった。
「あれはだ」
「こっちの方は任せておいてくれ」
真吾も凱に告げた。
「存分にな」
「私達だって護は信じたいしね」
「冗談抜きにな」
レミーもキリーも今は真剣だ。
「だからね、早くね」
「行ってくれ」
「頼んだ、勇者」
万丈も言った。
「護の目を覚まさせてやってくれ」
「皆・・・・・・」
「けれど凱」
最後にルネが言ってきた。
「余計な手心を加えたら許さないよ!」
「わかっている!」
「よし、ガオファイガー!」
ゴルディマーグも言ってきた。
「俺も付き合うぜ!」
「よし・・・・・・行くぞ!」
「ああ、どけどけーーーーーーーーっ!」
こうして彼等は合流してだった。護を追うのだった。
「さて、それでだけれど」
「いいわね、皆」
リツコとミサトがほぼ同時に言った。
「あのごった煮軍団はよ」
「ああ、わかってるさ!」
「殲滅よね!」
「そうよ。目標は全機撃墜!」
まさにそれだという。
「いいわね、それで!」
「了解!」
「言われなくてもね!」
「さて、それでよ」
また言うミサトだった。
「非戦闘員は安全な場所に避難してもらうわ」
「護君・・・・・・」
華は悲しい顔で彼が行った方向を見ていた。
「本当なの?そんな・・・・・・」
「ここは危険だ」
だがここで、であった。
「君は何処かに避難した方がいい」
「貴方は?」
「全軍攻撃用意!」
大河が指示を出す。
「基地を守り抜く!」
「よし!」
こうして戦ってである。しかしであった。
混成軍団との戦いは終わった。しかしである。
「あっ、嘘!?」
「そんな筈がないよ!」
ヒカリとケンスケが叫んだ。
「パターンが、そんな」
「これってない筈じゃ」
「どうしたの?」
「何かあったの?」
エルとベルが真っ青になっている二人に尋ねた。
「急に青い顔になって」
「戦いは終わったのに」
「使徒!?こんなところで!」
だがミサトが言った。
「また出て来るなんて!」
「これでこの使徒三回目ですけれど」
「使徒は復活するんですか?」
「一回は復活するのはわかっていたわ」
ミサトはにこりともせず二人に返した。
「何せそれがこの戦いでのエヴァのデビューだったからね」
「けれどどうしてなんだ?」
加持も流石にわかりかねていた。
「奴等の目的はネルフ本部への侵入だったんだろ?」
「ええ、そうよ」
ミサトはいぶかしむ顔で彼に返した。
「けれどどうして」
「けれど放っておくわけにはいきません」
シーラが冷静に述べた。
「彼等を放っておいては」
「その通りですね」
それにエレも応える。
「使徒もまた脅威ですから」
「まさか」
ここで言ったのはダバだった。
「あの使徒も護に」
「それは違うわ」
彼にダバが答えた。
「あれはまさしく」
「詮索は後回しだ!」
今叫んだのはフォッカーだった。
「まずは奴を叩くぞ!」
「そうですね」
今頷いたのはシンジだった。
「ここは」
「そうだ、シンジ君」
ダバが彼に対して応えた。
「さもないと多くの人達が」
「それなら」
「遠距離からの援護は任せてくれ」
ダバが言ってきた。
「バスターランチャーを使う」
「そうだな」
それにギャブレーも頷いた。
「あれならばだ」
「遠距離攻撃の機体は一斉射撃だ!」
アムロも指示を出した。
「そしてだ!」
「はい!」
「そして!」
「防御力の高い機体を盾にして使徒に接近戦を挑むんだ」
「よし!」
「それで!」
こうしてだった。戦いに入る。そして凱は。
「やっぱり来たんだね」
「護・・・・・・」
「凱兄ちゃん」
あらためて対峙する二人だった。
「僕はね」
「何故ガオガイガーに」
「パスキューマシンのおかげだよ」
そのせいだというのだ。
「それで僕はね」
「御前は?」
「最強の勇者王になれたんだよ」
「違う!」
凱は護の今の言葉を否定した。
「それは違う!」
「違うって?」
「そうだ、違う!」
こう叫ぶのだ。
「間違ってる・・・・・・」
「間違ってるって僕が?」
「そうだ!そんなものは力じゃない!」
こう護に告げる。
「そんなものはだ!」
「僕は間違っていないよ」
「護!」
「間違っているのは凱兄ちゃんの方だ!」
「止めろ!」
「うおおおおおおおおおっ!」
その護が攻撃に入った。
「ブロウクン!ファントム!」
「くっ!」
「ガオファイガー!」
「だ、大丈夫だ」
攻撃は受けた。しかし凱は健在だった。
こうゴルディマーグに応えたのだ。
「手を出すな」
「何っ!?」
「護は・・・・・・」
そして言うのだった。
「俺が止める!」
「ガオファイガー!」
「何があってもだ!」
「望むところだよ凱兄ちゃん」
そして護も応えた。
「さあ、はじめようか」
「護、何故だ」
凱はまだ信じられなかった。
「何故なんだ、一体・・・・・・」
「けれどよ、ここは」
「わかっている、それでもだ!」
その拳を繰り出しての言葉だった。
「俺は護を!うおおおおおおーーーーーーーーーっ!」
「ガオファイガー!」
拳を繰り出した。それで護のスイターガオガイガーを撃った。しかしだった。
「まだだよ」
「何っ!?」
「戦いはまだだよ」
こう言って立っているのだ。
「まだ僕はね」
「馬鹿な、まだ戦うのか」
「そうだよ、まだだよ」
護は凱にこう言ってきた。
「僕はまだ」
「くっ、それならだ!」
「ああ、やれ凱!」
ゴルディマーグがその凱に言う。
「ここはな!」
「護!」
凱も言う。
「言った筈だ!俺は何としても御前を止める!」
「ことは一刻を争うんだ!」
しかし護はまた言うのだった。
「それだから!」
「宇宙に危機が迫っているならだ!」
その言葉へだった。
「何故俺たちに相談しない!?」
「そんな時間だってないんだよ!」
「くっ、仕方ない!」
今度の技は。
「ガトリングドライバアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーッ!!」
「うわああああーーーーーーーーっ!」
それで一気に止めようとする。
「やったか!?」
「まだだよ!」
しかしであった。まだ護は立っていた。そうして。
一気に体力を回復させてきたのだ。
「何っ!?」
「僕は負けない!」
そしてまだ言う。
「相手が凱兄ちゃんだろうと!」
「くっ、まだ闘うのか!」
「まさかあれが」
ここでゴルディマーグが言った。
「パスキューマシンだってのか?」
「ゴルディマーグ!」
凱が声をかけてきた。
「やるぞ!」
「相手は護だぞ!」
ゴルディマーグはこのことを問うた。
「それでもかよ」
「急げっ!」
「わかった、しかしな!」
言わずにはいられなかった。
「俺は知らねえぞ!」
「これしかない!」
凱もまた覚悟を決めていたのだ。
「護を止めるにはだ!」
「わかった、ここは任せるぜ!」
「そうはいかないよ!」
しかしだった。ここで護は動いた。そして。
「ヘルアンドヘブン!」
「何っ!?」
「うおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーっ!」
何とだった。ヘルアンドヘブンを出してきた。そうして。
そのままガオファイガーに体当たりするのだった。
「ううっ!」
「凱!」
「どういうことだ!」
ガオファイガーは爆発しながら大きく後ろに吹き飛ばされた。そこから立ち直って言うのだった。
「まさか、何故だ!」
「僕には出来るんだ」
その護の言葉だ。
「真のヘルアンドヘブンが!」
「おい凱!」
ゴルディマーグがすぐに彼に声をかけてきた。
「大丈夫か!」
「ああ、何とかな。だがな」
「そうだな。こいつはまさに」
「だが!」
しかしだった。まだ立っている。
そしてその足で立ちだった。彼は言った。
「決着は俺の手でつける!」
「凱・・・・・・」
「だからだ!護!」
「勝負だよ凱兄ちゃん!」
「俺の拳で!」
こう言ってだった。彼もヘルアンドヘブンに入る。
「護!御前を!」
「行くよ!」
「うおおおおおおおーーーーーーーーーーーーっ!!」
そのヘルアンドヘブンとヘルアンドヘブンが激突する。そして。
スターガオガイガーの動きが止まったのだった。
「そんな。僕が・・・・・・」
「忘れたのか護」
その凱が満身創痍で護に告げる。
「勝利するのは」
「勝利するのは」
「勇気ある者だあああああああああっ!!」
こうしてスターガオガイガーは爆発して消えた。
ゴルディマーグはその爆発を見ながら。無念そうに言うのだった。
「護は・・・・・・」
「いや」
しかしだった。凱が答えた。
「大丈夫だ」
「生きてるのか?」
「コアとして出した」
だからだというのだ。
「大丈夫だ」
「そうだったのか」
見ればだった。護はいた。ガオファイガーのその腕の中にだ。
そしてであった。傷だかけの身体で彼に言ってきた。
「痛い、痛いよ・・・・・・」
「すまん・・・・・・」
凱も今は謝ることしかできなかった。わかっていたからこそだ。
「宇宙が危ないのに、どうして邪魔をするの?」
「護、俺は・・・・・・」
「駄目だ!」
しかしであった。ここで声がした。そうして。
護に攻撃が炸裂した。エネルギー波だった。
「うわ!」
「護!」
「そいつに騙されちゃいけない」
戒道が出て来た。そのうえで凱に言ってきたのだ。
「そいつはだ」
「君は・・・・・・生きていたのか!」
「そいつは本物のラティオじゃない」
「何っ!?」
「イミテーションだ」
その言葉と共にだ。攻撃を受けたその護は。
静かに消えていった。後には何も残らなかった。
「護が。消えていく・・・・・・」
「やはりそうなのか」
そしてであった。謎の男が出て来た。四角い顔の不気味hな男が。
「・・・・・・・・・」
「ソール11遊星主か」
「知っていたか」
「パルパレーパ!」
彼を見ての言葉であった。
「この地球にまで!」
「パスキューマシン、返してもらおう」
この時使徒もまた。倒されていた。
「行くぞ、シンジ君!」
「はい、ダバさん!」
二人が射程を合わせていた。そうして。
バスターランチャーとその超長距離ライフルでだ。使徒を撃ち抜いたのだ。
そのATフィールドすら貫通して。まさに一撃だった。
「よし!」
「やりました!」
使徒はこれで活動を停止し爆発の中に消えた。しかしであった。
「シーラ様!」
「はい」
シーラがカワッセの言葉に応えていた。
「来ました」
「上空に機影」
それであった。
「戦艦クラスです!」
「バルマー!?」
「まさか」
「ピア=デケム!」
ここでまた戒道が言った。
「来たのか!」
「我等は使命を全うするもの」
ここでそのパルパレーパが言って来た。
「邪魔をするのなら御前も消去する」
「Jは!?」
「この宇宙にはいない」
「やっと追いついたね!」
「うん!」
「凱さん!」
ルネに光竜、闇竜が応援に来た。
「それで護は!?」
「一体何処なの!?」
「まさかと思いますが」
「詳しい話は後だ」
だが凱は今はその彼女達にこう返すだけだった。
「今は」
「それでは我はだ」
「待て!」
ルネがパルパレーパを追おうとする。
「何かわからないけれど逃がす訳にはいかないよ!」
「そうはいかないわよ」
「何っ!?」
そのルネに攻撃が来た。
彼女は紙一重でそれをかわしてみせた。しかしだった。
「ルネ!」
「大丈夫さ。けれどね」
その相手を見回して探すのだった。
「誰だい。今のは!」
「私よ」
今度は女だった。
「残念だったわね、子猫ちゃん」
「御前は一体」
「ピルナス」
こう余裕の言葉と共に名乗ってきたのだった。
「覚えておいて欲しいわ」
「ピルナス」
パルパレーパは彼女にも声をかけてきた。
「引き上げるぞ」
「ええ、わかったわ」
「待て!」
今度は凱が彼等を追おうとする。
しかしだった。パルパレーパはその彼に対しても言うのだった。
「もう一度言う」
「何っ!?」
「邪魔をするなら御前も消去する」
完全に本気の言葉だった。
「それをだ」
「くっ!」
「駄目だ、今は」
戒道がここは凱達を制止した。
「落ち着くんだ。下手に攻めてはいけない」
「しかしそれでも」
「今はね!」
「慎重にならないといけない」
しかしそれでも戒道は言う。
「相手が強いだけにだ」
「だからなのね」
「今は」
「うん、行かせるしかない」
戒道は光竜と闇竜にも話した。
「ここはね」
「わかったわ、じゃあ」
「本意ではありませんが」
「ソール11遊星主」
その彼等についての言葉だった。
「太陽系の守護神」
戦いは終わった。だがだ。戒道はここでロンド=ベルの面々に話すのだった。
「僕達は」
「そうでしたね」
ボルフォッグが戒道に応えていた。
「貴方達はあの時に」
「あの時にザ=パワーの力を借りてZマスターと対消滅する筈だった」
「はい」
「Zマスターは滅んだ」
彼等はだというのだ。
「けれど僕達は気がつくと星一つ見えない宇宙の果てに飛ばされていたんだ」
「宇宙の果て!?」
「そこに」
「そう」
そしてさらに話すのだった。
「ザ=パワーの反発作用によって」
「それによって」
「そこまで
「そこはトモロの計算によれば」
話はさらに続けられていく。
「この銀河から遥か離れた場所」
「そこには」
「飛ばされたのね」
「銀河全体を見回せる場所だった」
そうした場所だったというのだ。
「そして僕達は見たんだ」
その見たことを話した。
「銀河が間違いなく光速を超えるスピードで収縮しているのを」
「宇宙が」
「収縮している!?」
誰もがそれを聞いて唖然となった。
「まさかそんな」
「そんなことが」
「いや、事実だ」
だが戒道は言うのだった。
「僕はこの目で見たんだ」
「じゃあ本当に」
「宇宙は」
「そう、そして」
その言葉が続けられていく。
「朴達はこのの真相を突き止める為にESドライブでその中心に向かったんだ」
「その宇宙収縮現象の」
「その中心になのね」
「そこで僕は見つけたんだ」
ここで話が核心に入った。
「あのパスキューマシンとラティオを」
「ラティオ」
竜馬がそれを聞いて述べた。
「護君のことか」
「ラティオはそこで戦っていた」
「あの歯医者みたいな奴か」
ルネが言った。
「あいつがそうだったのか。それに」
「そう、彼女もなんだ」
ルネと戦ったあの女についても話された。
「ソール11遊星主と」
「ソール11遊星主」
「それが奴等の名前なのか」
「その通り、Jは僕とパスキューマシンをESウィンドウで青の星」
「この星か」
「つまりは」
ここからはわかる話だった。
「地球へ送り込み自分は残ったんだ」
「ここに来なかったのか」
「どうして?それは」
「ラティオと共に戦う為に」
だからだというのだ。
「その為に」
「それなら」
万丈はここまで話を聞いたうえであらためて戒道に問うた。
「あのスターガオガイガーで戦った護君の正体は」
「あれは気配がなかった」
「そうよね」
「それも全く」
感じ取った面々がそれぞれ話す。
「そうしたものが何もなかった」
「あれは一体」
「何だというの?」
「あいつは多分」
戒道は怪訝な顔になった一同にも歯案した。
「パスキューマシンを回収する為に送り込まれたレプリジン」
「複製か」
凱はそれを聞いてすぐに察した。
「それなのか」
「ラティオがパスキューマシンに触れた時」
戒道はまた話してきた。
「偶然生み出されたものだ」
「偶然」
「あいつが」
「本来はラティオと同じ心を持っていて」
このことも話されるのだった。
「彼とともに遊星主と戦っていた」
「それがどうして」
「ああいう風に」
「捕まり」
これは戒道の予想だった。
「そして精神制御をされていたらしい」
「そうだったのか」
「確かにあれはだ」
ここでクワトロが言ってきた。
「護君ではなかった」
「わかった人もいるのか」
「さっきも誰かが言ったが気配がなかった」
それがわかった根拠だというのだ。
「それでわかった」
「そうか。それでなのか」
「そしてだが」
エイブが戒道に問うた。
「そのソール11遊星主とは一体」
「不吉なものを感じました」
エレの言葉である。
「それだけは」
「元々は三重連太陽系を復元する為に造られた制御プログラム」
「プログラムってことは」
「つまりは」
これでわかった面々もいた。
「奴等も人造の」
「そうした存在」
「それは間違いない」
戒道もその通りだという。
「彼等はそうした存在なんだ」
「ところでだけれどな」
勝平が問うてきた。
「その三重連太陽系って何だ?」
「太陽が三つあるのかしら」
「その様だな」
恵子と宇宙太も話す。
「そうよね。名前を聞いたら」
「そんな感じだが」
「僕達の故郷なんだ」
戒道はその三重連太陽についてこう話した。
「実は」
「というと」
「護やJの」
「その故郷か」
「そう、僕達の故郷」
語る戒道の顔がいささか暗いものになった。
「そこの復元プログラムなんだ」
「それならだ」
ここまで聞いた凱が彼に問うた。
「護の故郷を復元する為のプログラムなんだな」
「うん」
戒道はその問いに頷いて答えた。
「その通りだよ」
「それなら何故」
それを聞いてさらに首を傾げさせる彼だった。
「それがどうして俺達の地球を脅かすんだ?」
「恐らく」
こう前置きしたうえでの言葉だった。
「彼等は自分達の使命を果たそうとしているに過ぎない」
「使命を!?」
「それで地球を?」
「そう、パスキューマシンを使って」
「それではだ」
サコンはここまで聞いてあることを理解した。
「あのパスキューマシンは宇宙収縮現象を起こしているのか」
「あのマシンは」
戒道はサコンのその言葉にも応えて述べた。
「物質復元マシンの中枢回路なんだ」
「それでは」
また言う万丈だった。
「あのギャレオンも複製されたものなのか」
「そう」
「それで」
凱は心配する顔で言ってきた。
「本物の護は無事なのか!?」
「全ての謎を解き明かす為には」
だがここで戒道は言った。
「三重連太陽系に行くしかない」
「その通りだな」
サンドマンがそれを聞いて述べた。
「ここはだ」
「そして」
宙の言葉だ。
「その宇宙収縮現象を放っておくとどうなるんだ?」
「簡単な理屈だ」
サコンが彼の言葉に答えた。
「風船がしぼむのと同じだ」
「何っ!?それじゃあ」
「そうだ。中の空気が全て抜けるのと同じだ」
まさにそれだというのだ。
「つまりは」
「俺達の銀河が消滅するのか」
カミーユもその顔を強張らせてしまった。
「つまりは」
「そんなことを放っておいたら」
トビアは青くなっている。
「恐ろしいことに」
「つまりはだ」
シーブックも眉をしかめさせている。
「そのソール11遊星主は自分達の故郷を復元させる為に銀河全てを」
「それが彼等の結論らしい」
「若しかすると」
エキセドルはここであることに気付いた。
「銀河の宙域ごとに時間軸がずれていたり空間が不安定なのは」
「ですよね」
「私達も」
美穂とサリーも気付いた。
「それはつまり」
「それが」
「そうね」
セニアも何時になく真剣な顔になっている。
「その現象が関係している可能性が高いわね」
「放っておくわけにはいかないね」
万丈はまた言った。
「これはね」
「それじゃあその為にも」
「宇宙に」
「待ってろよ護」
凱は意を決していた。
「必ず御前を」
彼等は宇宙に行く決意をあらためて固めた。戦いはいよいよ宇宙に向かおうとしていた。

第三話完

2010・2・16  

 

第四話 果てし無き旅路のはじまり

                 第四話 果てし無き旅路のはじまり
ロンド=ベルは宇宙に向かう準備にあたっていた。それはかなり慌ただしいものだった。
「食料は?」
「マクロスシティに積めるだけ」
「あとエネルギーと弾薬は」
「安心してくれ」
大河の言葉だ。
「二十回の戦闘分は用意しておいた」
「後はバルマーを倒してそれを手に入れる」
「それしかないわね」
「バルマーもいるからな」
このことも考慮されていた。
「それなら」
「さて、と」
アズラエルも忙しく動き回っていた。
「僕にしましても」
「財団の方ですね」
「ええ、手配をしておかないと」
自分の所有する財団のことで忙しかったのである。
「これまでは地球圏にいたのでデスクワークはできましたから」
「そうですね。確かに」
「ユウナさん、貴方もでは?」
それは彼もではないかというのだ。
「幾ら何でも国家元首と首相がいなくなるのですから」
「あと外相と内相と国防相と財務相と通産相と文部相もいなくなります」
「それはまた」
全てユウナが兼任しているものだ。
「あと参謀総長に統合作戦本部長もです」
「ユウナさんって何か」
「国家元首の分まで仕事してるような」
「ねえ」
皆そんなユウナの話を聞いてつくづく思うのだった。
「大変っていうか」
「そんな人が地球から離れたらオーブは」
「主だった人材も行っちゃうし」
「ああ、信頼するスタッフは残ってもらってるから」
ユウナはその心配についてこう述べた。
「あまり極端な不安はないから」
「だといいですけれど」
「アズラエルさんの方も」
「僕の方も今腹心のスタッフ達に色々話しています」
だからこそ忙しいのだった。
「とにかく。長い間離れますからね」
「さて、それでだ」
タシロもいた。
「エクセリヲンもある」
「それが心強いですね」
「やっぱり」
皆エクセリヲンについてはこう言った。
「ガンバスターも来てくれたし」
「ノリコさん達や艦長もいてくれて」
「百人力よね」
「わしもだ」
タシロも言うのだった。
「それではだ」
「いよいよですね」
「宇宙に」
「そうだ。しかしだ」
「はい」
副長がタシロの言葉に応えていた。
「物資が要求していたより多いのだ」
「多い!?」
「多いんですか」
「搭載場所に困る位だ」
そこまでだというのだ。
「そこまであるのだ」
「そうなのですか」
「そこまであるんですか」
「モビルスーツもモビルドールも多い」
そうしたものもだという。
「クインマンサもあれば各種ガンダムもある」
「えっ!?」
「ガンダムまで」
「ガンダムマークスリーもあればもう一機デンドロビウムも来た」
「もう一機ですか」
コウも驚く話だった。
「もう一機デンドロビウムが」
「そりゃ凄いな」
キースも驚く話だった。
「そこまでなんて」
「しかもクインマンサもって」
「かなりのものだな」
プルとプルツーの話だ。
「キュベレイでも充分いけるけれど」
「クインマンサもあると心強いな」
「後はだ」
タシロの言葉はさらに続く。
「ノイエジールもあればガーベラテトラもある」
「そういったのもですか」
「あるんですね」
「そしてウィングゼロもある」
「ゼロもか」
「そちらも五機揃った」
「そうか」
ヒイロはそれを聞いて考える顔になった。
「カスタムで充分だがな」
「けれどあって損じゃないしな」
「その通りだ」
ウーヒェイがデュオに対して話した。
「俺達にとっちゃ懐かしい機体でもあるしな」
「あることが有り難い」
「ノインやヒルデが使うか」
「そうなりますね」
トロワとカトルも話す。
「ではそういうことだな」
「戦力アップになるのは間違いないですね」
「そうだな」
「有り難く使わせてもらう」
ノインにヒルデもまんざらではなかった。
「これでより効果的に戦える」
「楽しみにしている」
「それにだ」
今度言ったのはレイだった。
「ザフトの方も随分と送ってくれたな」
「ああ、確かにな」
シンがその言葉に頷く。
「インパルスとかまで送ってくれるなんてな」
「ガンダムは多いに越したことはない」
レイは言う。
「だからだ」
「こりゃいけるな。かなりな」
「そうね。何かこれだけあれば」
ルナマリアもいる。
「もう何でもいけるって感じ?」
「へっ、俺はインパルスデスティニーがあるからな」
シンのその愛機である。
「あれさえあればな。バルマーてもソール11遊星主でも何でも倒してやるぜ」
「頼んだわよ。あんたもエースなんだからね」
「ああ、どんな奴でも潰してやるぜ」
「それではだ」
「いよいよ向かうぞ」
「刻印にだ」
カットナルにケルナグール、ブンドルも来た。
「いよいよ宇宙にだ」
「そしてその大海の中にだ」
「漕ぎ出すとしよう」
「何か話が大きくなったね」
エイジもこのことを実感していた。
「そしてそれだけに」
「大変な戦いになる」
マーグも言う。
「だが。やらなければならない」
「まずはそのソール11遊星主か」
エイジの顔が強張る。
「彼等を何とかしなければ」
「その通りだ」
ロジャーも言う。
「この世界の戦いは私達のそれよりも大きなものだ」
「そうね」
ドロシーも彼の今の言葉に頷いた。
「その通りね」
「そしてだ」
ここでロジャーの目の光が強くなった。
「この戦いはだ」
「そしてロジャー」
「どうしたのだ?」
「他に感じていないのね」
こう彼に問うのだった。
「それだけなのね」
「いや、どうも」
ここでロジャーは言う。
「アル=イー=クイスだが」
「彼女達ね」
「彼女達に近いものも感じる」
「そうなのね」
「それが何故かはわからない」
ロジャーはそこまではわかっていなかった。
「だが。確かに感じる」
「そうした存在を」
「この戦いは大きなものになる」
彼はまた言った。
「それもかつてないまでにだ」
「全ての人達を救い」
ミリアルドも来た。
「平和を取り戻したいのなら」
「そう思うなら」
「その時は」
「この果てなき戦いの旅」
ミリアルドの言葉は続く。
「決して負ける訳にはいかない」
「簡単に言うけれどよ」
ディアッカは少し引いていた。
「相当やばい戦いなんだけれどな」
「今まで通りですね」
「ああ、そうだな」
エイナの言葉はその通りだった。
「じゃあそう考えるか」
「それならだね」
洸は明るい顔だった。
「いざ、だね」
「よし、じゃあ」
「行くか」
こうしてだった。彼等は遂に刻印に向かった。いよいよだった。
刻印の前に集結したところでだ。見送りを受けていた。
「では諸君」
「頼んだぞ」
「地球は任せてくれ」
ミスマルにアデナウヤー、イゴールがいた。岡や南原博士達もいる。他の面々もだ。
「君達も無事でな」
「宇宙を頼む」
「行って来ます、お父様」
「ううう、ユリカ・・・・・・」
彼も今はユリカに対してだけ泣いているのではなかった。
「立派になった・・・・・・」
「アラン」
「わかっている」
二人はこれだけだった。
「行って来る」
「うむ」
「父上、では」
「お父様もお元気で」
マイヨとリンダも父に挨拶をしていた。
「今から」
「宇宙に」
「うむ、頑張ってくれ」
彼はこう言うだけだった。しかしケーンにも言うのだった。
「ケーン君もな」
「ああ、それじゃあな」
明るい笑顔で頷く。そしていよいよだった。
その中でだ。火麻がスワンに問うた。
「猿頭寺はどうなんだ?」
「自室に閉じこもったままデス・・・・・・」
「パピヨンのことがショックで」
命も俯いて言う。
「それで」
「そうか」
今は火麻も乱暴ではなかった。
「こればかりは周囲がとやかく言ってもな」
「仕方ありませんね」
「それは」
「あいつ次第だ」
こう言うしかなかったのだ。
「立ち直ってくれたらな」
「そうデスね・・・・・・!?」
「どうした!?」
「この宙域に所属不明の部隊デス!」
「何っ、何処のどいつだ!」
「刻印前デス!」
「まさか!」
それは。やはり彼等だった。
「バルマー帝国!」
「しかもあれは」
ドモンとジョルジュが言う。
「外銀河方面軍か」
「まさかここで」
「おい、出て来たらな!」
「やっつけるだけだよ!」
ヂボデーとサイシーはもうやる気だった。
「おい、総員出撃だよな!」
「ここはそうだよね!」
「当然だ」
ダイテツが答えた。
「それならばだ」
「戦う」
アルゴも言う。
「それだけだな」
「じゃあ艦長」
「ここは」
「ええ、急いで」
マリューはサイとミリアリアに述べた。
「すぐにね」
「わかりました」
「それじゃあ」
「何かこういう時にいつも出て来るよなあ」
「全く」
トールとカズイはそれを話した。
「いつも絶好のタイミングで」
「迷惑なんだけれど」
「敵も必死なのよ」
マリューはその彼等にも話した。
「いいわね」
「しかしそれでも」
今言ったのはノイマンである。
「ここでの戦いは」
「終わってからまた整備補給を受けて行けばいいわ」
ここでは簡単に話すマリューだった。
「それだけよ」
「しかしよ」
だがここでイサムが言う。
「この連中俺達を外宇宙に誘いこむつもりじゃなかったのか?」
「そうだったな」
ガルドもそれに頷く。
「では何故ここで」
「気が変わったかそれでも何か調べてるのか?」
イサムはこうも考えた。
「まさかな」
「調べているのか」
「そういうのもよくする奴等だからな」
伊達にバルマー戦役から戦っているわけではなかった。イサムもバルマー帝国の行動パターンがわかってきていた。
「じゃあ今回も」
「とにかくだ」
「ああ、結論はそれしかないな」
「戦う」
ガルドは言った。
「いいな」
「よし」
アルトが話した。
「それならだ。やってやるぜ」
「全軍戦闘用意」
ジェフリーが指示を出す。
「いいな」
「了解」
「しかし」
「そうね」
ここで全員気付いたことがあった。それは。
「あの指揮官のマシンはないけれど」
「ヴァイクラン」
「あれは?」
「いないな」
ヴィレッタも鋭い目で言う。
「それは間違いない」
「何考えてるのかしら」
「さあ」
この事態に誰もが首を傾げさせた。
「まさか様子見とか?」
「いや、待て」
「あれは」
そしてであった。ここでその中の一機に気付いたのだった。
「ディバリウム」
「ってことは」
「あれは」
「それなりに本気ってことね」
そのことを認識せざるを得なかった。そしてであった。
そのまま戦闘に入る。そしてバルマー側もだ。
「エイスよ」
「はい」
ハザルであった。遠距離通信で声をかけてきたのだ。
「いたか」
「いえ、どうやら」
「そうか。地球にはいないか」
「既に」
「もう一人の巫女もだな」
ハザルはこのことも彼に問うた。
「そうなのだな」
「はい、いません」
「わかった」
それを聞いてまずは頷いたハザルだった。
「そうか。いないか」
「地球にはいません」
「ならいい。その連中と適当に遊んでおけ」
「遊ぶですか」
「そうだったな」
ハザルは今のエイスの言葉に少し愚弄した様な笑みを浮かべて答えたのだった。
「御前は遊ぶという感情を知らないな」
「感情そのものがありませんので」
「人形故にだな」
そしてこう言うのだった。
「ならばだ」
「はい、ならば」
「いい。遊ぶことはない」
「左様ですか」
「倒せ」
言葉を訂正するのだった。
「いいな、倒せ」
「はい、それでは」
「遠慮することはない。どのみちそうするのだからな」
「ではハザル様は」
「ここで倒れれば俺の相手でもなかったということだ」
何処までも傲慢な男であった。
「所詮はその程度だとな」
「では」
「そしてだ」
ここでまた言うハザルだった。
「若しあの少女を手に入れればだ」
「シヴァー様の下へ」
「そうしろ。そして巫女はだ」
「どうされますか?」
「事故には気をつけろ」
これが彼の言葉だった。
「いいな、事故にはだ」
「事故、ですか」
「よくあることだからな」
思わせぶりな笑みと友の言葉だった。
「わかったな」
「よく」
「ならいい。では任せた」
こう言ってであった。そのうえで彼はモニターから消えた。そのうえでエイスもまた己が率いるその軍をロンド=ベルに向かわせるのであった。
「倒せ」
「了解です」
「では」
こうして両軍が激突する。刻印前で激しい戦いとなった。
「諸君!」
ここでタシロが叫ぶ。
「ここで倒さなければ何もならない!」
「そうですね」
ノリコがそれに応えて述べた。
「本当にここで倒さないと」
「エルトリウムが間に合わなかったのは惜しかったが」
タシロはふと言った。
「だがそれも仕方ない」
「はい」
オオタもいた。
「それよりもです」
「行くぞ!人類の為にだ!」
今こそまさにという。
「果てしない大海原に出る!」
「お姉様!」
「ええ、ノリコ」
ノリコとカズミが息を合わせる。
「それじゃあ」
「行くわよ」
「うおおおおおおーーーーーーっ!」
いきなり気力をあげるノリコだった。そうして。
軍の先陣を切り敵を一気に叩き潰す。拳一撃で敵艦が沈んだ。
「私達には未来があるわ!」
「その未来の為に!」
ノリコだけでなくカズミも叫ぶ。
「その為にもここで負ける訳にはいかない!」
「何があろうとも!」
「やるわね」
ユングはそんな彼等を見ながら微笑んでいた。そして戦っている。
「なら私もね」
「ユング!」
そのユングに声をかけてきたのはレッシィだった。
「行くよ」
「ええ、わかったわ」
「あんたとはいい付き合いができそうね」
「そうね」
お互いに笑い合っての言葉だ。
「馬が合うっていうかね」
「そうだね。それじゃあね」
「このまま突き進め!」
「敵なぞ踏み潰すのだ!」
カットナルとケルナグールが言う。ドクーガ艦も突き進んでいる。
「敵は全て倒す!」
「遠慮はいらんぞ!」
「未来の為に剣を取り戦う」
当然ブンドルもいる。
「そしてそれこそが」
いつもの様に紅薔薇を掲げての言葉は。
「美しい・・・・・・」
「そうよ、その美の為にもだ!」
「行くぞブンドル!」
「わかっている。ではだ」
「あの蛾も倒す!」
「覚悟しておれ!」
ラムで一気に敵のマシンを粉々にした。そして。
そのまま一気に攻めていく。だがバルマーもしぶとい。
エイスの指揮は的確だった。冷徹か合理的に判断を下していた。
「よい」
「いいのですか」
「救援は間に合わない」
前線を見捨てるというのだった。
「救援をせずに彼等を下がらせろ」
「逃げられない者達は」
「捨て置け」
こう言うのである。
「わかったな」
「はっ、それでは」
「その様に」
「助けられる、そしてそれが必要ならばだ」
まるで機械の様な言葉だった。
「援軍を送るのだ」
「そうではないからこそ」
「今は」
「捨て置け」
またこの言葉を出した。
「よいな」
「では」
「御言葉のままに」
こうして冷徹な戦いを行っていた。そうしてであった。
戦いが過ぎる中でだ。そこに。
「!?」
「何かが移転して来る!?」
「あれは」
ロンド=ベルの面々が自分達の右手に出て来たそれを見て言う。
「戦艦か!?」
「間違いない」
「けれどあんな戦艦見たことないぞ」
「何だあれは」
「おい」
コスモがベスに問う。
「ここは地球なのか?」
「その様だな」
ベスも彼の言葉に応える。
「どうやらな」
「そうか、地球なのか」
「しかしだ」
だがここで彼は言うのだった。
「何だここは」
「そうだな。さっぱりわからない」
コスモも言う。
「何なんだ、ここは」
「戦っているのは何なの?」
カーシャも言ってきた。
「バックフランじゃないみたいだけれど」
「片方は地球だよな」
「あれはマジンガーだな」
ベスがマジンガーを見ながら述べた。
「ということは」
「あれは間違いなく地球の勢力か」
「じゃああれはバルマーの軍勢なのね」
ベスは敵のこともわかったのだった。
「つまりは」
「おい、あんた達は何なんだ?」
甲児が彼等に問う。
「いきなり出て来たけれどよ」
「俺達は宇宙に移民に出たんだが」
コスモは戸惑いながらも彼に応えた。
「ここは地球だよな」
「ああ、そうだ」
その通りだと答える甲児だった。
「それはわかるよな」
「一応はな。そしてバルマーと戦ってるんだな」
「そうさ。それであんた達はどうするんだ?」
「事情は今一つわからないが」
ベスが応えた。
「君達に協力しよう。同じ人類として」
「よし、わかった!」
「それならよ!」
「今から頼む!」
ロンド=ベルの面々は一斉に彼等に言った。
「こっちも大変だからな」
「何か赤と白の大きなマシンもあるけれど」
「それがあんた達のマシンなんだな」
「ああ、そうさ」
コスモが彼等の問いに答えた。
「イデオンさ、これがな」
「そうだよな。イデオンだよな」
「それが」
「戦うからな」
こう返すコスモスだった。
「とりあえず俺達にも向かって来ているからな」
「来たぞコスモ!」
ベスがまた叫ぶ。
「敵がだ!」
「わかった。それならだ!」
コスモもベスの言葉に応える。
「やってやる!バルマーも敵だ!」
「ソロシップはこのまま攻撃に入る!」
ベスも指示を出す。
「イデオンの援護だ!」
「了解!」
こうしてイデオンとソロシップも加わった。エイスはそれを見てだ。
「ふむ」
「副司令、あらたな敵です」
「どうされますか、ここは」
「あの敵については全くわかっていないな」
エイスはこう部下達に問うた。
「何一つとして」
「はい、出て来たばかりですし」
「どうにも」
「わかった」
こう応えて頷くエイスだった。
「それではだ」
「撤退ですね」
「今は」
「これ位でいい」
そのエイスの言葉である。
「だからだ」
「はい、それでは」
「これより」
「撤退する」
そして今告げた。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
「まずはこれでいい」
今の言葉にも感情は見られない。
「これでだ」
こう言ってであった。彼等は撤退するのだった。そして後に残ったのはロンド=ベルの面々だけであった。
「それでは、といきたいが」
「ちょっとな」
「何なんだ?それで」
残った彼等はイデオンとソロシップを見ながら問うた。
「同じ地球人で移民なのはわかったにしても」
「それでも一体」
「何なんだ?」
「詳しい話は後だ。ただ」
ベスが彼等に応えて話す。
「貴方達の目的も知りたい。詳しい話をしてくれないか?」
「いいだろう」
大河が彼の問いに応えた。
「それではだ」
「戻って来たばかりだけれどな」
コスモは少し名残惜しそうだった。
「まあ仕方ないか」
「気持ちはわかるけれどね」
カーシャがその彼に言う。
「どっちみち私達は」
「ああ、わかってるさ」
こう返しはした。
「移民だからな」
「ええ」
だからだというのである。
「どっちにしてもね」
「行くか」
コスモは決意をあらたにして述べた。
「また宇宙にな」
「ええ、そうしましょう」
「では諸君」
グローバルがあらためて告げる。
「いざだ。銀河にだ」
「はい、仲間も加わりましたし」
「いざ!」
こうして彼等は銀河に旅立つのだった。果て無き旅が遂にはじまった。

第四話完

2010・2・19 

 

第五話 ロスト=ディーヴァ

              第五話 ロスト=ディーヴァ
 ロンド=ベルはイデオンを仲間に加えたうえで銀河に出た。そしてまずは彼等の話を詳しく聞くのだった。銀河の中を進みながらだ。
「何かそういう話多いわよね」
「そうね」
リツコがミサトの言葉に頷いていた。
「偶然にしては出来過ぎてるっていうかね」
「そんな気もするけれど」
「俺も同じ気持ちだ」
コスモもこう彼等に話す。
「いや、何もかもがだ。何か偶然にしちゃな」
「それはもう説明がつくのよ」
ここでセニアが言ってきた。
「特異点があったからね」
「それの最後の影響みたいね」
「そうだな」
ミオとマサキも話す。
「それでソロシップの人達も地球に戻って来て」
「それでだな」
「地球も大変だったんだな」
ベスは地球のことを考えて述べた。
「俺達だけじゃなくて」
「そうよね、それは」
「確かに」
皆あらためて言い合うのだった。
「何か色々とあって」
「それで今銀河にだしね」
「ところで」
そしてであった。ここでふと言ったのは勝平だった。
「俺達何処に行くんだ?今から」
「とりあえずボアザンに向かっている」
今話したのはマーグだった。
「場所は私がわかっているからだ」
「ボアザンっていうと」
「健一やハイネルさんの」
「そうだ、そこだ」
まさにそこだというのである。
「尚補給も整備もゲストやインスペクターが協力してくれるそうだ」
「メキボス達がですか」
「そうなんですか」
「そうだ。今申し出てくれた」
マーグは皆にこのことも話した。
「今だ」
「そうなんですか、それじゃあ」
「これからは」
「そちらの心配をすることはない」
ないというのである。
「安心してくれ」
「そうですか。だったら」
「それじゃあ」
「安心して戦えばいい」
また言うマーグだった。
「宇宙でもだ。ただしだ」
「ボアザンも強い筈だ」
健一の言葉だ。
「だから注意してくれ」
「それにしてもハイネルは今どうしているんだ?」
一平はふと彼のことを思い出した。
「最近見ないが」
「兄さんは兄さんでしっかりしているでごわす」
「多分銀河の為に戦ってるよ」
大次郎と日吉が話す。
「だからでごわす」
「心配することはないよ」
「そうよね」
めぐみも二人のその言葉に頷く。
「今のハイネルだとね」
「ボアザンで皇帝ズ=ザンジバルを倒して」
健一はもうこのことについて考えていた。
「そしてまた一つ戦いが」
「あとキャンベル星人もいるぜ」
今度は豹馬が話してきた。
「あの連中だってな」
「そうやな。あそこもおるしな」
「何か凄いややこしいことになってるたい」
十三と大作が言う。
「あとプロト何とかもおったな」
「あの連中もでごわすな」
「皆さん」
小介も真面目な顔で言ってきた。
「地球圏での戦いより激しいですので」
「そうよね。国単位の戦いだからね」
ちずるはこう表現した。
「だから余計にね」
「ボアザンとキャンベルですが」
ここでロゼが話してきた。
「彼等は同盟を結んでいます」
「あの二国がか」
「はい」
このことを述べたのだ。
「ですから気をつけて下さい」
「しかしだ」
ここで言ったのはヴィレッタだった。
「あの二国、いやズ=ザンバジルと女帝ジャネラではだ」
「はい、同盟はうわべだけのものです」
それはロゼもわかっていた。
「ですから」
「そうだな。あの二人はどちらも己だけしかない」
即ちエゴイストであるというのだ。
「そうした連中だからな」
「そこに入り込めばいいのです」
「よし、わかった」
ヴィレッタはここまで聞いて納得した顔で頷いた。
「戦いに行こう」
「よし、じゃあ」
「今は」
しかしであった。ここで。
「通信が入りました」
「通信?」
アーサーがメイリンに問うた。
「一体何かな、それって」
「何か歌みたいです」
「歌!?」
歌と聞いてだ。ここでアーサーはこんなことを言った。
「またバサラが外で歌ってるとか?」
「確かにそれはしょっちゅうですけれど」
バサラに常識は通用しない。
「けれど今度は」
「違うんだね」
「女の人の声です」
「じゃあミレーヌちゃんとか?」
「私いますよ」
ミネルバのモニターにそのミレーヌが出て来た。
「ちゃんと。ついでにバサラも」
「何だ?呼んだか?」
「あれ、じゃあ違うんだ」
アーサーはバサラまでモニターに出て来たところで納得した。
「じゃあ一体」
「聴いてみますか?」
「うん、それじゃあ」
「そうね」
タリアも加わって来た。
「是非ね」
「幽霊とかそういうのじゃないかな」
アーサーの今の言葉は冗談である。
「それだと怖いね」
「本当にそうだったらどうします?」
「幽霊退治の専門家に頼もうかな」
「拙僧だな」
キメルが出て来た。
「さすればその時は」
「それで御願いしていいかな」
「是非共」
「これでいざという時はよしだね」
アーサーは一人納得していた。
「さて、マスターアジアが出るかBF団が出るか」
「どっちも出て欲しくないんですけれど」
シンジがアーサーの今の言葉に突っ込みを入れた。
「こんな宇宙空間で生身の人間がなんて」
「けれど有り得るよ、それ」
キラがシンジに言ってきた。
「だって。マスターアジアさんだから」
「そうなんだよね。そこがまた格好いいけれど」
「格好よくないわよ」
アスカがそれを否定した。
「あんな妖怪仙人みたいな爺さん」
「何でそこで妖怪仙人なんだ?」
「だって変態だから」
こう神宮寺に返すのだった。
「もうね」
「そうかな。確かに常識は一切通用しない人だけれど」
シンジは首を傾げながらアスカに述べた。
「それでもあそこまでできたら凄いじゃない」
「それでも流石にここまで来る筈ないじゃない」
「わからないぞ」
だがここでナタルも言う。
「あの人だけはな」
「何ていうか」
「確かに」
誰も否定できないところがまた恐ろしかった。
「まあとにかく」
「何ですかね」
「誰の歌なんですか?」
「今全艦に放送流すね」
そしてその歌とは。
「!?」
「これは」
「覚えていますか」
間違いなかった。その歌は。
「手と手が」
「メイリン」
タリアはすぐにメイリンに問うた。
「この歌の発信源は?」
「銀河中心領域M4方面S1926エリアです」
そこだというのだ。
「そこです」
「わかったわ」
そこまで聞いて頷くタリアだった。
「それじゃあね」
「そこに行くんですね」
「ええ、行くわ」
まさにそうするというのである。
「まずはそこにね」
「いや、待て」
だがここでタシロが言う。
「銀河中心だな」
「はい、そうです」
「バルマーの勢力圏だ」
まさにそこだというのだ。
「そいこに入るとならばだ」
「罠ですか」
「いや、それもない」
タシロはそれも否定した。
「こちらの殲滅を望むのならばだ」
「その場合は」
「何も銀河中心部に場所を移す必要もない」
「音声はです」
またメイリンが言ってきた。
「九十・九九九パーセントの確率で本人のものです」
「そうだな。しかしだ」
「しかしですか」
「帝国はいる」
こう副長に述べるのだった。
「しかしだ」
「しかしですか」
「帝国軍がどういった意図を以てこの情報を伝えたかだ」
「それですか」
「そうだ、それだ」
言うのはこのことであった。
「何故我々にこの情報を伝えたか。それいよってだ」
「ですが」
ここで言ったのはオオタだった。
「そこに彼等がいるならばどちらにしても」
「その通りだ」
「ではやはり」
「心の故郷だ」
今言ったのはグローバルだった。
「我々にとっても」
「だからこそここはだ」
「そしてだ」
ここでタシロはさらに言う。
「バロータ軍のことも警戒しておこう」
「彼等ですか」
それを聞いて声をあげたのはエキセドルだった。
「彼等の存在もまた」
「必ず出て来る。やがてはな」
「ではそちらも」
「警戒しておくべきだ」
用心ということだった。
「だからこそだ」
「はい、それでは」
「全てに備える」
タシロの言葉は続く。
「行くぞ」
「はい」
こうしてそのポイントに向かう。そしてそこには。
奇妙な二人がいた。白い天使と黒い巨人だった。
「グラビルよ」
「グルル」
白い天使が黒い巨人に声をかけていた。
「宴は今夜終わりを告げる」
「・・・・・・・・・」
「これぞまさに終焉美!」
そして言う言葉は。
「奴等を終焉の淵へ導け!」
「ゴガアアアアッ!」
何かを追っていた。
「御前達の船団の美しきスピリチュアには苦戦させられた!」
男は楽しそうに叫んでいた。
「だが今日こそはゲペルニッチ様にそのスピリチアの源をお届けできよう!」
そして言う言葉は。
「これこそ達成美!」
「来た!」
「くっ!」
守るバルキリーの面々が声をあげる。
「民間人は逃がした!」
「後はこの連中を」
「行くぞ完成美!」
そのまま向かおうとする。しかしだった。
「よし、間に合った!」
「何とかな!」
「ミンメイ!」
輝がミンメイの名前を叫んだ。
「大丈夫か!?」
「輝!?」
「うん、僕だ」
自ら名乗るのだった。
「無事だったか」
「ええ、何とか」
「よし、それではだ」
グローバルが言う。
「どうするかだな」
「すぐに救援に向かうんだよな」
イサムが性急に言ってきた。
「それじゃあな」
「無論だ」
グローバルも最初からそのつもりだった。
「それではだ」
「よし、それじゃあ」
「一気に行くぜ」
こうしてだった。全軍で戦いに向かう。
「皆いいか」
「ええ」
「相手のことね」
サコンのことに神経を集中させる。
「あの吸血鬼軍団」
「奴等が」
「それだけじゃない」
また言うのだった。
「ここは銀河の外だ」
「それなんだな」
「そうだ、そこだ」
まさにそれだとサンシローにも話す。
「あらゆる面で環境は太陽系と異なる」
「星図はこちらで観測する」
大文字も言う。
「そしてリアルタイムで情報を送る」
「御願いします」
「是非」
「とにかく自分の位置を失うな!」
「しかもです!」
ここでサリーが言う。
「敵軍に体長推定三〇〇メートル」
「!?となると」
「あれか」
「はい、今までと全く違う敵がいます!」
「あれです!」
美穂が指定する。
「あのマシンです」
「プロトデビルンですね」
エキセドルがそれを見て呟いた。
「あれです」
「プロトデビルンとは。お話したことはあるでしょうか」
「いや、それは」
「一度地球に来たことはあっても」
「それでも」
「ありませんでしたか」
そういうのだった。少なくとも彼等の記憶にはなかった。
しかしだ。それならばそれで、であった。
「わかりました」
「それでプロトデビルンとは」
「一体?」
「ゼントラーディの血を惑わす」
こう言うのであった。
「語ってはならぬこと」
「語ってはならぬ」
「というと」
「そういう相手ならな!」
ここでバサラのテンションがあがった。
「最高のステージじゃねえかよ!」
「あの、バサラ君」
ナタルが思わず彼に声をかけた。
「今は」
「燃えてきたぜ!」
勿論ナタルの言葉も耳に入らない。
「俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
「何だ、貴様は」
それを見た白い羽毛の天使が言った。
「急に出て来たが」
「そういう御前は誰なんだよ?」
「我が名はガビル」
天使は名乗った。
「しかし御前のスピリチュワは」
「スピリチュワ!?」
「ゲペルニッチ閣下の仰っていたスピリチア異常コードCか」
こう言うのだった。
「面白い!」
「何言ってんだ、こいつ」
「あのアニマスピリチアを手に入れればゲペルニッチ様の夢は大きく前進する」
自分で言葉を出していた。
「まさに躍進美!」
「躍進美!?」
「変な言葉使う奴だな」
「グラビル!」
ロンド=ベルの面々の言葉をよそに話続けるガビルだった。
「奴も捕獲するぞ!」
「ゴガアアアアアッ!!」
ロンド=ベルと彼等の戦いがはじまった。まずはグラビルに攻撃を集中させる。しかしだった。
「何っ!?」
「全然!?」
攻撃をしてみて誰もが驚いた。
「効いてない!?」
「まさか」
「装甲が厚いのか!?」
「若しくは皮膚が」
「いえ、違います」
ここで小介が言う。
「あの怪物の周囲には物理的な打撃やエネルギーの直撃を軽減する力場が存在するようです」
「えっ!?」
「ということは」
「つまりは」
「はい」
はっきり答える彼だった。
「こちらの攻撃は」
「あの巨体と攻撃力だぜ!」
今丁度豹馬が叫んだ。目の前の岩を叩き潰していた。
「それで攻撃までってよ」
「どうするの?」
ミレーヌも流石に顔を強張らせている。
「こんな相手じゃ」
「どうするもこうするもねえだろうが!」
だがバサラは相変わらずだった。
「このままだ!」
「そうか」
「おう!」
レイにも応える。そして。
「たっぷりと奴にも聴かせてやるぜ!」
「そうだな」
「・・・・・・・・・」
レイだけでなくビヒーナも無言で応える。
「それだけだな。俺達は」
「そういうことね」
ミレーヌもここで頷いた。
「それなら」
「ファイアーボンバーの熱い魂を見せてやるぜ!」
「!?」
そしてここで洸も感じ取った。
「ライディーンが反応している」
「本当ですか!?」
「ええ、間違いありません」
こう麗にも答える。
「これは」
「ということは」
「こいつを知っているのか!?まさか」
「とにかくだ!」
輝は今焦っていた。
「ミンメイを」
「焦るな、輝」
だがその彼をフォッカーが宥めた。
「気持ちはわかるがだ」
「そうですか」
「そうだ。焦っては何にもならない」
「そうですね、確かに」
彼の言葉でいつもの冷静さを取り戻した。
「それじゃあ」
「来たな」
ガビルはバサラを見て言った。
「スピリチア異常コードC!」
「俺のことか」
「貴様を捕獲すればゲペルニッチ様の夢は完成の美へとまた一歩近付く!」
「訳のわからねえこと言ってねえでな!」
だがバサラはそんな言葉で左右される男ではなかった。
「俺の歌を聴きやがれ!」
「グワアアアアアッ!」
「こんなでけえ客ははじめてだぜ!」
バサラはグラビルを見てもやはり変わらない。
「たっぷり聴かせてやるぜ。俺のハートをな!」
そしてガビルとグラビルを聴かせる。するとだった。
「ゴガアアアアッ!!」
「!?あのデカブツ」
フォッカーがグラビルが苦しんでいるのを見て察したのだった。
「苦しんでいる」
「バサラの歌のおかげでなのか?」
「そういえば」
ここで輝とマックスも言う。
「地球での戦いでも」
「バサラの歌で」
「何で歌に苦しむんだよ」
今言ったのは柿崎だった。
「どうしてなんだ?」
「わからん」
それでもフォッカーは言った。
「だが実際にだ」
「バサラ」
ガルドが彼に言ってきた。
「とりあえずここはだ」
「あいつにダメージだ!」
イサムも言う。
「あいつにもっとだ!」
「違うぜ、それはよ!」
だがバサラは叫ぶのだった。
「俺はあいつに歌を聴かせてるんだ!」
「歌を!?」
「それを!?」
「そうだ、戦ってるわけじゃねえ!」
少なくとも彼はそうだったのだ。
「俺の歌をこいつにだ!」
「熱気バサラ」
ガムリンも唖然だった。
「この期に及んでまだ」
「わかった」
それを見てグローバルは頷いた。
「それならだ。バサラ君」
「おうよ!」
「好きなだけ歌うのだ!」
「そうしてやる。歌ってやるぜ!」
「面白いことになったな」
「そうですね」
フィジカが金竜の言葉に頷く。
「この展開はな」
「どうなるか」
「一体」
「ですね。楽しくなってきましたよ」
ドッカーも笑っていた。
「熱気バサラ、どうしますかね」
「相変わらず何処までも横紙破りな男だ」
ガムリンは唖然だった。
「だがこれで」
「何が起こるか」
「それだ」
「熱気バサラ、見られるか!?」
皆も言う。そうしてだった。
バサラが熱唱する。すると。
「ゴガアアアッ!」
「グラビル!?」
ガビルがそれを見て驚きの声をあげた。
「まさか」
「ガアアアアッ!!」
戦場を離脱していくのだった。つまりは。
「退きましたね」
「敵戦力の中核は退いた!」
エキセドルとグローバルが言う。
「あとはです」
「残る敵機を掃討するのだ」
「おのれ!」
ガビルはその中で怒りの言葉を出していた。
「アニマスピリチア!」
「何だよあいつ」
それに対してバサラは拍子抜けした感じだった。
「俺の歌はまだこれからだってのによ」
「グラビルをあそこまで追い込むとは」
そしてバサラを見てだった。
「熱気バサラよ」
「俺かよ」
「御前の美、刺激過ぎる!」
そして言う言葉は。
「まさに限界美!」
こう叫んで彼も撤退した。他の軍も同じだった。
「よし!」
「待て!」
しかしだった。ここでフォッカーが言った。
「これ以上の深追いは」
「うおおおっ!」
「待て柿崎!」
彼を止めようとする。しかし遅かった。
「馬鹿め!」
だがガビルはここで動いた。
「貴様に美はない!」
「なっ!」
一瞬であった。柿崎は捕らえられてしまったのだった。
そしてそのまま。何処かに連れさらわれてしまった。
「柿崎!」
「今日はここまでだ」
ガビルは柿崎のバルキリーを掴んだまま言う。
「だがこの借りは新たな美の洗礼で返すぞ」
「退きましたか」
エキセドルがそれを見て述べた。
「ですが」
「残敵は?」
「いません」
マックスの問いに美穂が答える。
「今のところは」
「そうか」
「あの野郎」
ここでバサラは呻いた。
「俺の歌を聴かずに帰りやがったな」
「柿崎・・・・・・」
「どうするかだな」
ガルドはここで冷静に輝に述べた。
「ここは」
「生きているよな」
「生きている」
ガルドはイサムにも答えた。
「それはな」
「そうだな」
フォッカーはそれを見て述べた。
「また来る。その時にだ」
「ミンメイは」
ここで輝は彼女のことも考えた。
「一体何処に」
「それもあるな」
グローバルはそれについて述べた。
「無事ならいいが」
「待って下さい!」
ここでミドリが言ってきた。
「退避していたシティ7が」
「何っ!?」
「まさか」
「はい、そうです!」
まさにその通りだというのだ。
「敵艦が!」
「くっ、全軍反転!」
「抜かった!」
「すぐに行くぞ!」
こう言ってであった。すぐに全軍反転した。
そしてそのままその宙域に行くとだった。そこには。
「来たな!」
「あいつは!」
「地球に来た奴だな!」
「ああ、そうだ!」
ギギルだった。彼が来たのだ。
「御前達が出て来たって聞いてな!」
「来た!?」
「まさか」
「艦長!」
サリーがエキセドルに告げる。
「敵艦の作るフィールドにフォールドエネルギーが集中しています!」
「まさか!」
「それじゃあ」
「奴等シティ7を拉致するつもりか!」
「ちょっと、許さないわよ!」
ミレーヌが思わず叫んだ。
「そんなことは!」
「させるかよ!」
またバサラが前に出て来た。
「そんなことはよ!」
「バサラ!?」
「俺の歌を聴きやがれ!」
こう叫んでだ。歌う歌は。
「ホーリーロンリーナイト!」
「バサラ、あんたは」
「俺だってな!こんなこと許すか!」
「くそっ!」
ギギルは苦々しげな声でバサラに応えた。
「こいつの歌がシビルをおかしくさせたんだ!」
「俺も続くぞ!」
「よし!」
「ここは!」
他の面々も続く。それを見たギギルは。
「こうなったらだ!」
「司令!」
「どうするというのですか!」
「緊急フォールドだ!」
こうするというのだ。
「ここはだ!」
「ですが今は!」
「エネルギーの集中が」
「構うか!」
強引に移動しようとする。レイはそれを見て。
「まずいぞ!」
「ええ、このままじゃ!」
「私達も!」
「させるか!」
バサラだけが向かう。
「俺にこんなの意味があるか!」
「避難しないと!」
「うるせえ!ここで逃げるか!」
こうしてそのまま突っ込んでだった。
シティ7ごと消えたのだった。バサラも。
「嘘・・・・・・」
「シティ7だけじゃなくて」
「バサラまで」
「どうする!?」
皆唖然となっていた。どうしていいかわからなかった。
そしてゲペルニッチはだ。己の乗艦の中で苦い声を出していた。
「ギギルめ、勝手な真似を」
「ゲペルニッチ様、ですが」
だが彼女の前にいるガビルが言うのだった。
「御所望のものは手に入れました」
「この娘か」
「はい」
そしてそこにいるミンメイを見るとだった。
「貴方がバロータ軍の司令官なのですか?」
「バロータ?」
ゲペルニッチはミンメイのその言葉に問うた。
「それがか」
「それがとは?」
「それがこの星系を意味する御前達の言葉か」
「待て、貴様」
しかしここでガビルがミンメイに言うのだった。
「ゲペルニッチ様に無礼な口を言うな」
「私は何があってもです」
こう返すミンメイだった。彼女も強気だった。
「折れたりはしません」
「御前達の情報を得る為に生かしてやっているのだぞ」
「ここで私を殺しても何にもなりません」
それはないというのだ。
「しかし私はそれでもです」
「いいだろう」
ゲペルニッチはミンメイの心を見た。それで言うのだった。
「その意志に免じ我等も名前を名乗ろう」
「名乗られるのですか」
「我等を創りし者はだ」
そうした者もいるというのだ。
「我等をエビルと呼んでいた」
「エビルだったのですか」
「だが何時の間にか我等はプロトデビルンと呼ばれていた」
「プロトデビルン・・・・・・」
「我が夢スプリチアファーム」
ゲペルニッチはこの名前も話に出した。
「今その完成の時が近付いてきている」
「今が」
「そうだ。サンプルよ」
「サンプル!?」
サンプルと聞いてだった。ミンメイはまた言った。
「私のこと?それは」
「御前が他のサンプルのスピリチアを再生させればスピリチアは尽きることがない」
そうだったというのだ。
「それこそが我が夢スピリチアファームプロジェクト」
「私がスピリチアを再生させる?」
それはミンメイには自覚できないことだった。
「まさか」
「連れて行け」
ゲペルニッチはこれ以上話さなかった。
「くれぐれも手荒な真似はするな」
「はい」
「わかりました」
「ではゲペルニッチ様」
ここでガビルが言ってきた
「ギギルが討ち漏らした別の船団については如何されますか」
「あそこにはアニマスピリチアがいる」
こう言うのだった。
「ではやはり奴が」
(アニマスピリチア?)
これもミンメイにははじめて聞く言葉だった。
(それもまた)
「我が夢を磐石にする為にはあの者の力が必要となる」
ゲペルニッチは言う。
「わかるな、ガビルよ」
「はい」
ガビルは彼の言葉に恭しく頷いた。
「仰せのままに」
「ギギルの件もある」
ゲペルニッチはまた言う。
「次は私も出る」
「何と、ゲペルニッチ様御自身が」
「そうだ」
まさにその通りだというのだ。
「今回の戦闘で新たな兵士も手に入ってな」
「一人ですが」
「そのマインドコントロールもしなければならない」
「マインドコントロール、まさか」
ミンメイは連れて行かれる中で呟いた。
「それは」
「待っていろ、アニマスピリチア」
ゲペルニッチは期待する声で言っていた。
「御前を手に入れ我が夢は完成する」
それを見ているのだった。また戦いがはじまろうとしていた。

第五話完

2010・2・21  

 

第六話 禁断の惑星へ

              第六話 禁断の惑星へ
 何とか保護、合流できた船団との話でだ。ロンド=ベルの面々は多くのことを知った。
「そうだったのか」
「何かこの船団も大変だったのね」
「そして他の船団も」
「攻撃を受けている」
このことがわかったのだ。
「バロータ軍に」
「それは間違いない」
「そして」
もう一つのこともわかったのだ。
「彼等は敵が使用していた機体を改造して使っている」
「それも」
「しかし」
ここで言ったのはイサムだった。
「今までよく無事だったな」
「それにも理由があるみたいです」
輝がここで彼に答えた。
「実はです」
「理由?」
「ええ、ミンメイの歌です」
それによってというのだ。
「それでだったんです」
「そうだったのか」
「敵の攻撃が激しさを増す中で」
輝はこう話していく。
「ミンメイは人々を勇気づける為に歌い続け」
「それによって」
「そう。彼女の歌は生きる気力を吸い取られた人々を徐々にだけれど回復させ」
「えっ、それはまた」
「凄いな」
「そうね」
皆それを聞いて驚きを隠せなかった。
「流石はリン=ミンメイ」
「確かに」
「時にはバリアの様に艦を守ったりもした」
「歌エネルギーね」
ミリアはそれを聞いて述べた。
「つまりは」
「そうですね、デカルチャー」
「まさに」
「そして」
「これからは」
ここで話が変わった。
「シティ7の発見だな」
「それね」
「一体何処に」
「それに彼」
言うまでもなく熱気バサラのことだった。
「一緒に行ったけれど」
「何ていうか」
「まさかあんなことするなんて」
「あいつらしいけれどね」
これはミレーヌの言葉である。
「ああいったことも」
「ですがミレーヌさん」
ここでガムリンが彼女に言ってきた。
「熱気バサラは間違いなく」
「ええ、わかってます」
ミレーヌもそれは頷くのだった。
「あいつは生きています」
「はい、そう簡単に死ぬ奴じゃありません」
「ですが」
「あいつは誰よりも早くシティに向かいました」
「あれはそうはできません」
ガムリンも彼を認めることは認めていた。
「破天荒な奴ですがそれでも」
「凄いですよね」
「その通りです」
はっきりと答えた。
「あそこまでの奴は滅多にいません」
「ファイアーボンバーも認めてくれるんですね」
「私はミレーヌさんの歌の方が好きですけれど」
「えへへ、私なんかまだまだですけれど」
このことは笑って否定する。
「けれど嬉しいです。ですから」
「ですから?」
「御礼って訳じゃないですけれど」
言いながらあるものを出してきた。
「これを」
「これは・・・・・・お守りですか」
「はい、それです」
そのお守りだというのだ。
「小さい頃買ってもらったものなんです」
「ミレーヌさんの小さい頃にですか」
「はい、その通りです」
また話すのだった。
「嫌なことがあったらこれをこすりなさいって」
「どうかなるんですか?」
「魔法がかかって」
そうなると笑って話すのだった。
「未来がぱーーっと開けるって」
「えっ!?」
「そう言われたんです。それでですね」
「それで」
「一生懸命こすったんですよ」
幼い頃を思い出しての言葉だった。
「けれどそんなの単なる気休めだって後から馬鹿にされたんですよ」
「そうだったんですか」
「酷いと思いませんか?」
あらためてガムリンに問うた。
「これって」
「あっ、いえ」
そう言われるとだった。急に口ごもるガムリンだった。
「それは」
「けれど何か気に入っちゃって」
ミレーヌは笑いながら話し続ける。
「ずっと持ってたの」
「成程」
「けれど」
けれどというのだ。
「若しよかったらガムリンさんにあげます」
「どうして自分に」
「だってガムリンさんってとても真面目だから」
「いえ、それは」
これは謙遜だった。
「私は別に」
「だからこういういい加減なものを持っていてもいいじゃないかしらって」
「有り難うございます」
「それじゃあ今から」
「ええ」
「バサラを探しに行きましょう」
そしてシティ7をだった。探索をはじめるのだった。
「シビルよ」
ギギルはある場所で言っていた。
「御前は眠ったままか。これだけスピリチアを与えても・・・・・・んっ!?」
ここでだった。彼は後ろから足音を感じ取った。そこにいたのは。
「誰だ・・・・・・」
「シビルか」
バサラは早速ギターを鳴らしだした。
「それならな!」
「何をするつもりだ、手前!」
「今日こそ御前に俺の歌を届けてみせるぜ!」
言いながらの演奏だった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!!」
「これがか」
ギギルはそれを聴いて言うのだった。
「シビルの言っていたアニマスピリチアか。若しかしたらこいつなら」
そしてここでだ。ロンド=ベルはすぐにシティ7を発見した。しかしそこには。
「司令!」
「ゲペルニッチ様が」
「まさか!」
部下に応えて戦局を見た彼は驚きの声をあげた。
「ゲペルニッチの艦か」
「はい、間違いありません」
「あれは」
「ここにシビルがいるのを知っていて仕掛ける気か!」
「よし、見つけた!」
「ええ!」
ロンド=ベルはシティ7を見つけ出したことを素直に喜んでいた。
「後はだ!」
「早く助け出して」
「よし、全軍シティ7へ!」
ブライトが指示を出す。
「すぐにシティ7と合流し救出する!」
「了解です!」
「それなら!」
こうしてだった。全軍で向かう。
両軍が激突した。そうして。
そおまま激しい戦闘に入る。そうしてその中でだ。
「よし!」
「バサラ!」
「俺もだ!」
「やっぱり生きていたのね」
「俺がそう簡単に死ぬかよ!」
こうミレーヌにも返す。
「さあ、それならな!」
「どうするのよ、生きていたのはいいけれど」
「今日こそだ!」
その手には既にギターがある。
「俺の歌を奴等に届けてやる!」
「ちょっと、あんた」
ミレーヌは呆れてしまった。
「生きていたと思ったらすぐにそれ!?」
「何だ?おかしいのかよ」
「いや、そうじゃなくてね」
「俺はいつも通りやるだけだ」
「あんたね、こっちはあんたも探してね」
「ミレーヌ、後にしろ」
レイがミレーヌに言ってきた。
「今はシティ7を守る方が先だ」
「そうね。この男は言っても聞かないし」
それがまさにバサラだった。
「それじゃあ」
「よし、それなら!」
「シティ7を!」
しかしであった。ここで異変が起こった。
「!?シティ7が!?」
「動いた!?」
「何故」
「待て!」
その中にいるギギルも言うのだった。
「俺に断りもなく艦を動かすとはどういうつもりだ!?」
「全ては」
「ゲペルニッチ閣下の御命令」
「ふざけるな!」
それを聞いて思わず怒鳴るギギルだった。
「あのナルシストのバケモンのことは放っておけ!」
「!?しかも!」
「敵がまた!」
そのシティ7の方にまた敵が出て来たのだ。
「出て来た!?」
「ということは」
「増援が現れたということはだ」
ここで言ったのはオズマだった。
「シティ7の動力部を乗っ取ったのはバロータ軍か」
「うおおおおおっ!」
「えっ、ちょっと!」
ミレーヌがまた叫んだ、何とバサラがここでもシティ7に突貫したのだ。
「バサラ、またあんた!」
「熱気バサラ!」
そしてガムリンもだった。
「御前一人では無理だ!」
「ガムリンかよ」
「あれだけの数を相手にするのは無理だ」
こう言うのだった。
「ここは俺に任せて下がっていろ」
「冗談じゃねえぜ!」
しかしバサラはここでも言うのだった。
「俺は歌う為にここに来たんだ!」
「そうだというのか」
「ああ、そうだ!」
そう思い切り断言するのだった。
「俺はその為に戦場にいるんだ!」
「そうか、わかった」
ここまで言われてはであった。ガムリンも頷くしかなかった。
「御前はやりたいようにやれ!」
「それでいいんだな」
「それが御前のやり方ならだ」
彼に対して微笑みさえ向けていた。
「俺は軍人としてシティ7を守る!」
「へっ、わかってきたじゃねえか!」
バサラもそれを聞いて言った。
「行くぜえええええええっ!」
その間にだ。バンパイア達は勝手に動いていた・
「フォールドエネルギー充填完了」
「充填完了」
「止めろ!」
ギギルは何とかそれを止めようとする。
「ここで動かすな!」
「全てはゲペルニッチ様の御意志」
「だからこそ」
「ここの指揮官は俺だ!」
あくまでそう叫ぶのだった。
「俺の指揮に従え!」
「ですがです」
「私達の最高指揮官はゲペルニッチ閣下です」
「だからこそ」
「くっ!」
ギギルも思わず歯噛みした。
「貴様等、何処までも」
「まずい!」
ここでガムリンが叫んだ。
「シティ7がフォールドする!」
「ガムリン、行くぜ!」
しかしバサラはここでもだった。
「このままな!」
「ああ!」
そしてガムリンも乗っていた。
「こうなったら銀河の果てまで食らいついてやる!」
「そのノリだぜ!」
「そうだな!」
「バサラ!ガムリンさん!」
ミレーヌが二人に叫ぶ。
「また何処に」
「またか」
「・・・・・・・・・」
レイとビヒーダも眉を顰めさせていた。
「どうするかだな」
「ガムリンまでか」
金竜も困った顔になっていた。
「どうしたものかな」
「大丈夫だ」
しかしここでサコンが言ってきた。
「今度は確実にフォールドアウト先を掴んでいる」
「それじゃあすぐに」
「そっちに」
「向かうとしよう」
こうしてだった。話が決まったのだった。
「全機帰還せよ」
大文字が指示を出した。
「我々はこれよりシティ7を追う!」
「はい」
「それでは」
そしてバサラとガムリンが辿り着いたその場所は何処かというとだった。惑星が見える。
「何処だ、ここは」
「待ってくれ」
すぐにそのチェックを行うガムリンだった。
「全天座標照会する」
「ああ」
「S1350N3605空域だ」
「何処だ、そこは」
「あの惑星はラクスだ」
「ラクス?」
「数年前に他船団が入植を開始したとの報告がある」
こうバサラに話すのだった。
「ラクスに援軍を要請するか」
「いや、おかしいぜ」
「どうした?」
「誰もいねえんじゃねえのか?」
こう言うのである。
「これってよ」
「どうだというのだ?一体」
ここでだった。ロンド=ベルが二人とシティ7のところに到着したのだった。
「ロンド=ベルが来た!?」
「今度は早いな」
バサラはその彼等を見て話した。
「バサラ!ガムリンさん!」
「ミレーヌか」
「来られたんですか」
「無事だったみたいね」
彼女はまずこのことを喜んだのだった。
「よかった・・・・・・」
「ああ、まあな」
しかしバサラはそれをどうでもいいといった感じだった。
「それはな」
「全く無茶をして」
「無茶!?」
「そう、無茶よ」
こうミレーヌに話すのだった。
「どうしてそんなことをしたのよ」
「誰がそんなことしたよ」
しかしバサラはこう言うだけだった。
「そんなことよ」
「我々はいつも通りのことをしただけです」
しかしガムリンも言う。
「それだけです」
「えっ、二人の仲がいい」
ミレーヌはこのことに気付いた。そのうえで驚いたのだった。
「どういうこと?これって」
「この短い間に何があったんだ?」
レイも言うのだった。
「一体」
「別に」
「特に何も」
しかし二人はこう返すだけだった。
「俺はいつも通りだけれどな」
「私もです」
「どういうことなの?これって」
ミレーヌは思わず首を傾げさせた。
「何でこの二人が」
「ミレーヌ」
輝が微笑んで彼に言ってきた。
「パイロット同士はこういう風に分かり合える時もあるんだよ」
「けれど犬猿の仲のあの二人が」
「どうしたミレーヌ」
レイが微笑みながらバサラに言ってきた。
「ヤキモチか?」
「そんなんじゃないわよ!」
それは否定する彼女だった。
「けれど何か」
「それでシティ7は」
「そうだよ、そっちは」
「大丈夫なんですか?」
「はい、無事です」
エキセドルが答えた。
「今データを送ってもらいましたが犠牲者も損害もありません」
「そう、よかった」
「それなら」
このことを聞いてまずは胸を撫で下ろす一同だった。
「しかしそれでも」
「そうよね」
「ここは」
「策がありますね」
マックスが言った。
「敵がシティ7をここに運んだのは」
「ああ、間違いないな」
フォッカーも同じことを想定していた。
「それならだ」
「すぐにこの場所を離脱しましょう」
レトラーデも言う。
「さもないと何かが」
「!?艦長!」
ここでサリーが言う。
「重力場に異常発生です!」
「遂に来ましたか」
「何者かがフォールドアウトしてきます!」
「わかりました」
そして出て来たのはだった。
巨大な戦艦だ。ロンド=ベルの面々はその巨艦を見て言う。
「あの巨大な戦艦は」
「それに他の艦艇の数も」
実に多いのだった。
「こう来るとはまさか」
「ここで決着を」
「よし!それならそれでいいぜ!」
ここでも叫ぶバサラだった。
「相手がでかければでかい位燃えるぜ!」
「艦長!」
今度は美穂がエキセドルに言う。
「敵艦より通信です」
「通信?」
「どうされますか?」
「出ましょう」
すぐに決断を下した彼だった。
「それでは」
「わかりました、それでは」
「それで」
こうして通信に出るとであった。
「我が名はゲペルニッチ」
「ゲペルニッチ」
「それがか」
「プロトデビルンの」
「五十万年周期」
そのゲペルニッチが言うのだった。
「悠久の彼方より遂に我が夢の完成の時をここに見出した」
「ここに」
「それが?」
「サンプル達よ」
いぶかしむロンド=ベルの面々に対してさらに語るのだった。
「夢の雫となるがよい」
「何だよこいつ」
ゲペルニッチを見たバサラの言葉だ。
「言っている意味がわからねえぞ」
「おい、待ってくれ」
ギギルがゲペルニッチに言う。
「あんたは一体」
「我が夢の前には全てはうたかたの如きもの」
ギギルにもこう言うだけだった。
「御前も幻を見るがいい」
「貴様、何を言ってるんだ?」
「おかしいな」
「そうね」
今度は霧生とミスティが話す。
「惑星ラクスの移民団から応答がない」
「これはまさか」
「奴等に倒された!?」
こう考えたのはダッカーだった。
「まさか」
「いえ、有り得ますよ」
フィジカはその可能性を否定できなかった。
「それも」
「ちっ、あいつ等そんなことまで」
「ある意味ラッキーか?これは」
「ラッキーなんですか?」
ルカがミシェルの言葉に問うた。
「今が」
「敵の総司令官がいきなりお出ましだからな」
「それを倒せばいいっていうんですね」
「俺はそう思うけれどな」
「ポジティブなのはいいさ」
真吾もそれはいいとした。
「しかしな。いきなりここでっていうのは」
「しかもだ」
「あちらさんの言ってることがねえ」
キリーとレミーも言う。
「これが全くわからない」
「これはどうなのよ」
「しかも凄い数だな」
「そうですね」
アルトがオズマの言葉に応える。
「この数はかなり」
「敵の旗艦もあることだしな」
「各機散開せよ」
ジェフリーが指示を出した。
「防衛ラインを形成する」
「了解」
「何はともあれですね」
「シティ7を囲む」
今回は狙われないようにする為だった。
「いいな、それで」
「はい」
「それで」
そしてであった。ここでガビルとグラビルも出て来たのであった。
「ゲペルニッチ様」
「・・・・・・・・・」
「御前達か」
「はい、我等も是非」
こう言って名乗り出て来たのである。
「戦わせて下さい」
「いいだろう」
ゲペルニッチもそれを許したのだった。
「それではだ」
「はい、それでは」
ガビルはここでグラビルに声をかけるのだった。
「行くぞグラビル」
「・・・・・・・・・」
グラビルは喋らない。しかしであった。
ガビルはそれがわかっているらしくだ。そのうえで満足した顔で微笑んでから言うのだった。
「御前の徹底した破壊の美をゲペルニッチ様にお見せするのだ」
そして言う言葉は。
「これぞ徹底美!」
「サンプル達よ」
また言うゲペルニッチだった。
「そのスピリチアの高まり、見せてもらうぞ」
「全軍シティ7を守る!」
「了解です!」
こうしてだった。全軍で守りにつくのだった。そのうえでやって来たバロータ軍との戦闘に入った。
暫くそのまま戦っていた。ロンド=ベルはバロータ軍を寄せ付けない。しかしであった。
ここでだ。バルマー帝国軍も出て来たのだった。
「帝国軍か」
「ちっ、こんな時に」
「厄介なのが」
ロンド=ベルは彼等の姿を見て舌打ちした。しかしであった。
帝国軍はロンド=ベルには向かわない。バロータ軍を狙うだけだった。
皆それを見てだ。あることに気付いたのだ。
「敵はバロータ軍だけを狙っている」
「ええ、確かに」
「間違いないな」
このことを察したのである。
「これは一体」
「どういうことだ?」
「詳しいことはわかりません」
それはシーラもだった。
「ですが」
「そうだな」
ここでショウが言った。
「奴等にとってはバロータも敵になるのも当然だ」
「そのオーラ力を吸い取る存在ですかな」
「ああ、そうだな」
トッドも気付いて言う。6
「そんな奴等だからな」
「バルマーが敵視するのもだ」
また当然だというショウだった。
「それならだ」
「はい、我々はです」
エレも言う。
「このまま敵の旗艦を」
「全軍帝国軍は相手にするな!」
大文字も指示を出す。
「あくまでバロータだけを狙う!」
「しかしあいつ等」
ここで言うのはカイだった。
「どういうつもりだ」
「何か魂胆があるのは間違いない」
レーツェルもそれは察していた。
「しかしだ。今はだ」
「そうだな。この状況を利用しよう」
「とりあえず側面への警戒は怠るな」
リーは油断はしていなかった。
「何時来るかわからん」
「その通りだな。奴等も敵であることには変わりない」
テツヤもそれに続く。
「それならだ」
「今はこのまま進む」
ダイテツも言葉は限定だった。
「しかしだ」
「はい」
「バルマーへの警戒は怠らない」
テツヤだけでなくエイタも応える。
「それでいきましょう」
「いまは」
「ふふふふ」
そしれバルマーの指揮官と思われるマシンの中にいる女が笑っていた。
「エビルを倒す為の鍵をここで失うわけにはいかないからねえ」
「!?あれは」
「間違いありません」
そのマシンを確認したマーグとロゼが言う。
「あれこそまさしく」
「十二支族の」
「今日はほんの挨拶代わり。それにしても」
女の方でも彼等を見て言うのだった。
「あの二人も宜しくやってるみたいだね」
「トーラー家の祭司長のマシン」
「ジュモーラ」
「それが何故ここに」
「どういうことでしょうか」
二人はそれを見ていぶかしんでいた。
「何を考えているのだ」
「レツィーラ=トーラー」
「まあ精々頑張るんだね」
その女は最後にこう言った。
「じゃあ私はこれでね」
「消えた」
「撤退しましたね」
ロゼはマーグに対して告げた。
「今は」
「そうだな。今は」
「あの女、一体」
ヴィレッタも彼女の姿を確認して呟いていた。
「何を考えている」
「こいつが!」
その間にであった。輝のバルキリーはゲペルニッチの旗艦に近付いていた。
そのうえでだ。反応弾を放った。しかし。
「くっ、駄目だ!」
「輝!」
その彼にフォッカーが言ってきた。
「反応弾でも一発じゃ駄目だ!」
「隊長」
「次は俺だ!」
こう言って彼も反応弾を撃ち込むのだった。
「こうしてだ!全員で何度も波状攻撃を仕掛けろ!」
「はい!」
「このデカブツはそうでもないと沈まん」
それをもう読んでいるのだ。
「だからだ」
「わかりました、それでは」
「しかもです」
マックスはガビルを相手にしていた。
「柿崎さんの仇が」
「心配無用!」
そのガビルが言ってきた。
「人は我々が有効に使っている!」
「有効だというのか!」
「そうだ、活用美!」
こう叫んで戦うのだった。ここでまたバサラが前に出た。
「うるせえんだよ!」
「熱気バサラか」
「そうだ、この美野郎!」
ガビルへの言葉である。
「そんなに美しいもんが好きならな!」
「どうするつもりだ?」
「天国に行かせてやるぜ!」
そしてギターを取ってであった。
「俺のこの歌でな!」
「美の何たるかを理解せぬサンプルよ!」
ガビルはそのバサラに対して言う。
「貴様はここで終焉美を迎える!」
「そこのでかいのもだ!」
バサラはグラビルも見ていた。
「まとめて聴きやがれ!」
「グラビル!」
「そうすりゃ俺のハートがわかるからよ!」
こう叫んでギターを鳴らして歌うとだった。グラビルが急に呻きだした。
「グワアアアアアッ!」
「おのれ、グラビルを!」
「どうだ!」
歌ってから誇らしげに言うのだった。
「俺のこの歌はな!最高だろうが!」
「ゴガアアアアッ!」
「グラビル!」
ガビルの言葉も空しくグラビルは戦場を離脱する。ガビルはそれを見届けて忌々しげに言うのだった。
「よくも我が半身を!」
「何っ!?」
「半身!?」
「まさかあいつ等」
「許さんぞ!」
ガビルはいよいよ激昂してきていた。
「貴様等にだ!滅殺美を!」
「おい、ちょっと待て!」
「今気付いたんだけれどさ!」
「御前のそれは」
ここでオルガ、クロト、シャニがガビルに言うのだった。
「クロトと同じじゃねえかよ!」
「ただ美をつけただけだよね!」
「芸がない」
「我が美は究極美」
しかしガビルはそう言われても動じない。
「それのみ!従って御前達のことなぞ関係ない!」
「ちっ、居直りやがったよこいつ!」
「それならこっちも容赦しないよ!」
「最初からそのつもりはない」
三人は前に出て暴れにかかった。戦いはロンド=ベルに有利に進んでいた。
そしてだ。ゲペルニッチの旗艦にも攻撃を浴びせていく。しかしだった。
「おいおい!」
「まだなの!?」
「これだけ攻撃してるのにかよ!」
何とまだ浮かんで戦っていたのである。
「これだけ攻撃を浴びせても」
「まだ生きているなんて」
「一体」
「これはだ」
ここで言ったのは隼人であった。
「突破口を開くしかないな」
「そうだな」
「それじゃあ」
竜馬と弁慶もそれに続く。
「真ゲッターならいける」
「突破口開くぜ」
「どけどけえっ!」
しかしであった。ここでまたバサラが出るのだった。
「こいつもだ!」
「何っ、バサラ!?」
「ここでも!?」
「出て来るっていうの!?」
「ここは俺の戦いだ!」
だからだというのである。
「だからだ。俺のギターで戦いを止めてやる!」
「何処まで破天荒なのかしら」
未沙もマクロスのブリッジで呆れていた。
「戦いを止めるって」
「俺は奴に歌を聴かせる!」
彼は言うのだった。
「皆がこいつを沈める前にな!」
「よし、わかった!」
それに応えたのはガムリンだった。
「やってみろ!俺が援護する!」
「おうよ!恩に着るぜ!」
「ゲペ何とかとかいったな!」
まだ彼の名前は覚えていなかった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「いかん!」
ここで敵の攻撃が来た。しかしそれは金竜が楯になって防いだ。
「大尉!」
「大丈夫だ!」
しかし返答は返って来た。
「かすり傷だ。俺は何ともない」
「そうですか」
それを聞いてまずはほっとしたガムリンだった。
「ならいいのですが」
「行け、熱気バサラ!」
彼もバサラに託すのだった。
「御前のハートを見せてやれ!」
「ああ、見やがれ!」
ゲペルニッチの旗艦に接近してであった。
「!!」
「あれは」
ミンメイもそれを見て言う。
「赤いバルキリー」
「ハートをビンビンにしてやるぜーーーーーーっ!!」
そして歌うとだった。
ゲペルニッチがだ。突如として叫んだ。
「おおおっ!アニマスピリチア!」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!!」
その歌でだ。旗艦の動きは止まった。
「やったか!?」
「だが動きは止まった」
「それなら」
「今のうちだ」
シナプスが指示を出す。
「各機戦線を離脱し乗艦に戻れ」
「そしてですね」
「今は」
「そうだ、惑星ラクスに降下する」
そうするというのだ。
「今のうちにだ」
「わかりました」
「それじゃあすぐに」
こうしてすぐにラクスに降下する彼等だった。そしてゲペルニッチは。
「異常コードC」
このことを確認していた。
「アニマスピリチア。ふふふ」
そして笑い。
「スピリチアドリーミング!」
こう叫ぶのだった。その意味は彼女だけがわかっていた。

第六話完

2010・2・24  

 

第七話 インフィニティ=ソウル

              第七話 インフィニティ=ソウル
彼等は惑星ラクスに降下していく。その中でだ。
「おかしい」
アムロが言うのだった。
「何も感じない」
「感じないというのですね」
「ああ、そうだ」
こうラクスに答えるのだった。
「誰もいないのか?」
「だよな。何も感じないんだよな」
バサラも言うのだった。
「どうなってんだ、これは」
「誰もいないっていうの?」
「そうじゃねえのか?」
ミレーヌにも答える。
「御前は感じるのかよ」
「ええと、そういえば」
「そうだな、何も感じられない」
また言うアムロだった。
「この惑星からはだ」
「けれどここは確か」
「何かがあったのは間違いない」
今度言ってきたのはクワトロだった。
「しかしその何かがだ」
「わからない。そして」
「問題だ」
「そういうことだ」
アムロと二人で話すのだった。しかし既に降下コースに入っていた。
「何はともあれ行くしかないんですね」
「行くぜ!」
ミレーヌとは対象的にバサラのテンションは相変わらずだった。
「このままな!」
「あんたは本当に変わらないわね」
それでも今はバサラが頼りになっていた。彼の破天荒さがロンド=ベルを救ってきたのは事実だからだ。
そしてだ。この時ゲペルニッチの旗艦では。一人目覚めていた。
「バルゴ!?」
「ガビルか」
彼、バルゴはガビルの姿を見て問うてきた。
「俺に用が」
「私が御前なぞに用がある筈もない!」
彼は忌々しげな口調になって言葉を返した。
「その様なことがだ!」
「ではだ」
バルゴはそれを冷静に聞いて述べるのだった。
「誰が私を呼び覚ましたのだ?」
「私だ」
言って来たのはゲペルニッチだった。
「今はここにいる」
「ゲペルニッチ様だったのですか」
「そうだ」
「有り難いことです」
ゲペルニッチには恭しい態度であった。
「我を先に呼び覚まして頂けるとは」
「夢の隙間に見たのだ」
「我をですか」
「そう、御前の姿をだ」
こう告げるのだった。
「夢の隙間にだ」
「夢!?」
「遥かな星達の煌きの中に消えては輝き」
ゲペルニッチの言葉は続く。
「輝いては消える」
「そのことが」
「流離いの吟遊詩人が奏でる様なまどろみの夢です」
「我が力」
その言葉を受けたバルゴは応えて言う。
「必要とあれば何時でもお貸ししましょう」
「・・・・・・・・・」
ガビルはその彼を嫌悪の目で見ていた。彼等にも動きがあった。
ラクスに降りた面々は。とりあえずはそこで一日を過ごした。その中でだ。ガムリンとフィジカは金竜を見舞っていた。その彼はというとだ。
「あれ、もうですか」
「大丈夫だったんですか」
「本当にかすり傷だった」
見ればその通りだった。左手に包帯を巻いているだけだった。
「すんでのところで急所を外したしな」
「そうですか、それは」
「何よりですね」
「俺は大丈夫だ。しかしだ」
彼はここで話を変えてきたのだった。
「敵はだな」
「はい、そうです」
「そのままです」
二人の顔は安堵からすぐに暗いものになった。
「衛星軌道上にいたままです」
「依然として」
「まずいな」
金竜はそれを聞いてあらためて述べた。
「そしてこの星は」
「残念ですが」
「誰もいません」
「皆で出ての結果だな」
今全員で探索しているのだ。しかしなのだった。
「一人もか」
「はい、誰一人として」
「死体ですらも」
「おかしいな」
金竜は死体一つない状況について言及した。
「滅んだにしても死体が全く無いというのは」
「その通りですよ」
ドッカーも言う。
「どういうことなんですかね、これは」
「わからない。しかしだ」
「しかしですか」
「ここは」
「そうだ。今は待つことだな」
こう言う金竜だった。
「何か発見があるかも知れない」
「ではまだ数日程度」
「探索ですね」
「俺も今日から復帰だ」
ここで三人に笑ってみせたのだった。
「左手のかすり傷だけだからな」
「はい、それじゃあ」
「晴れてダイアモンドフォース復帰ですね」
こうして金竜は何事もなく復帰したのだった。しかしであった。
それから二日探索しても何もなかった。やはりであった。
「駄目だな」
「そうですね」
帰って来たミシェルとルカが言い合う。
「何もないな」
「誰一人として」
「そうだったな」
アルトもそこにいた。彼等も探索に出ていたのである。
「何も見つからないな」
「やはりおかしいな」
オズマもその目を顰めさせていた。
「これはな」
「けれどです」
だがここでルカは言うのだった。
「ここは居住可能です」
「それもかなり良質か?」
「はい、その通りです」
こうアルトにも答えるのだった。
「ですから移住できたと思うのですが」
「上にいる連中にやられたか?」
ミシェルはここで空を見上げた。マクロスクウォーターの甲板からだ。
「ひょっとして」
「それが一番妥当な考えだな」
オズマもそう見ているのだった。
「連中がここにいることを考えるとな」
「そして歌が効く」
アルトの言葉だ。
「それもわかってきたな」
「地球の時からそれはわかっていたんですよね」
「ああ、そうだ」
彼等にフォッカーが答えた。
「それはな」
「正直あいつはな」
豹馬がここで苦笑いと共に言う。
「最初何なんだって思ったぜ」
「武装なしの戦闘機で戦場で歌うんだからなあ」
キースもぼやき気味である。
「最初見て馬鹿どころじゃないって思ったさ」
「いや、あれは普通に驚いたぞ」
神宮寺も言う。
「命は惜しくないのかってな」
「しかしだ」
だがここで竜馬が言った。
「彼は本気だからな」
「そうなのよね」
ミチルも彼の言葉に頷く。
「バサラ君は彼のやり方で戦争を止めさせようとしているわ」
「それでも彼は歌うから」
未沙の言葉である。
「その覚悟は並大抵ではないわ」
「戦場に出て歌う」
今言ったのは大介だ。
「それは滅多なことではできない」
「けれど」
しかしここでクスハは首を傾げさせて言うのだった。
「そこまで歌に賭けられるなんて。自分の命を危険に晒してまで」
「クスハ」
ブリットはそのクスハに声をかけてきた。
「多分それが」
「それが?」
「バサラさんの戦いなんだ」
「戦いなのね」
「戦いを止めさせる為に戦う」
ブリットはこう表現した。
「そうした意味では俺達と同じだけれど」
「それを歌ってなのね」
「そういうことだと思う」
まさにそうだというのだ。
「あの人はね」
「そしてミレーヌもね」
今度はマーベットが出て来た。
「そう信じているからこそ」
「あっ、この歌は」
「確か」
ここで艦内に音楽がかかってきた。ミレーヌの曲であった。
「マイフレンズ」
「ミレーヌちゃんの曲ね」
「それが今」
「元気出していくか」
皆その曲を聞いてであった。
「これからな」
「それでだけれど」
未沙が皆に問うてきた。
「バサラ君は何処かしら」
「えっ、まさか」
「いないとか?」
「彼のバルキリーも見えないの」
まさに案の定であった。
「何処に行ったのかしら」
「うわ、またあいつ」
「勝手なことを」
「言っても聞かないのよね」
未沙の顔はいつもの彼について語る時の顔になっていた。
「というか耳に入っていないのよ」
「鬼の早瀬大尉が唯一頭を抱える相手」
「熱気バサラ」
人の話が耳に入らない人間もロンド=ベルには多い。だが彼はその中でも際立っていたのである。実はミレーヌもそうなのだが。
「まああいつはですね」
「あれっ」
「ガムリン!?」
そのガムリンの言葉だった。
「やる時はやる男ですから」
「ってあんたが言うなんて」
「どういう風の吹き回しなんだ?」
「確かガムリンさんって」
ミカが怪訝な顔で彼に言ってきた。
「バサラさんのことは」
「同じパイロットじゃないですか」
しかしガムリンは微笑んで言うのであった。
「相手のことがわかりますから」
「だからですか」
「それで」
「あいつのことは嫌いじゃなかったのか?」
ナオトも少し驚きながら彼に問うた。
「確か」
「いえ、別に」
しかしであった。そうではないというのだ。
「嫌いではないですよ」
「本当になんですか?」
「ええ、本当に」
こうアキラにも答えるのだった。
「その通りです」
「信じられないことだが」
ケンジもまずはこう言うしかなかった。
「君がそう言うのなら本当だな」
「はい、そうです」
「彼を認めたか」
「無茶苦茶な奴だとは思いますけれどね」
それは否定できなかった。
「けれど凄い奴ですよね」
「まあ何ていうか」
「無茶苦茶だとは思うけれどな」
「嫌な奴じゃないし」
「信念は確かだし」
そういったものはあるのである。
「バルキリーの操縦には全人格が出ると言われています」
「ああ、そうだな」
霧生が今の言葉に頷く。
「それはな」
「いや、それでもですね」
だがガムリンはここで少し気恥ずかしい顔になった。
「凄いと思うのはそのパイロットとしての技量と」
「それと?」
「他には」
「確かに人間としても凄い奴ですよ」
何だかんだでそれは認めるのだった。
「あそこまでのパワーを持った人間はそうはいませんからね」
「確かに」
「ロンド=ベルの中でも」
「かなり」
「バサラの歌は全然理解できませんけれど」
「うふふふふふ」
それを聞いても楽しげに笑うミレーヌだった。その時バサラは。
シビルの前にいた。彼女もいたのだ。
「おい、シビル!」
バサラは彼女に対して叫ぶのだった。
「今日こそ御前にわからせてやるぜ!」
そして奏でる歌は。
「プラネットダンス!」
「あいつが」
ギギルはそれを遠くから見ていた。
「ああしてシビルに歌を聴かせてから随分経つ」
それを言うのだった。
「一体何時まで待たせる気だ?」
彼は明らかに苛立っていた。
「アニマスピリチア」
そしてこのことにも思いを馳せた。
「力が、力が足りねえんだ!」
「何故だ!?」
そしてバサラも言う。
「俺の歌は届かねえっていうのか!?俺の歌が!」
「うおおおおおおお!」
ギギルは遂に我慢できなくなりだ。前に出た。
そのうえでバサラを殴ったのだった。
「アニマスピリチア!」
「何っ!?」
「生ぬるいぜ!」
そしてバサラにさらに言うのだった。
「手前、あの」
「御前が、御前が!」
ギギルはバサラをさらに殴りながら彼に言う。
「御前しか起こせないんだよ!」
「俺がか」
「ああ、そうだ!」
こうバサラにさらに言う。
「もっとだ!」
「もっとか」
「そうだ!もっとアニマスピリチアをシビルにだ!」
こう言うのだった。
「わかったな!」
「ならだ!」
そしてバサラもだ。それに応えて再びギターを持ち。
「行くぜええええええええっ!」
「それは」
「突撃ラブハートだ!」
その歌を奏でるのだった。
「貴様、誰の為に歌っている」
「そんなのわかってるだろうがよ!」
これがバサラの返事だった。ギターを手に歌っていた。
「俺はな!」
「俺は」
そしてギギルは思うのだった。
「何なんだ、御前は」
そのうえで次に思うことは。
「その前に俺は、俺は一体何者なんだ」
こんなことを考えるのだった。そしてこの頃。
「危ういところだったな」
「はい」
「全くです」
ブライトに対して八雲とキムが応えていた。
「皆何とか間に合ってくれました」
「この危機に」
「来るとは思っていたが」
ブライトは二人に対してまた言った。
「しかしだ」
「はい、上からです」
「次々に来ます」
八雲とキムはさらに言う。
「その数かなりです」
「シティ7は既に戦闘予定エリアを離脱しています」
「いいことだ」
ブライトはまずはそれに安心した。
「それではだ」
「はい」
「では」
「総員出撃だ」
ブライトは指示を出した。
「いいな」
「了解です」
こうして戦闘配置に着く。そこには金竜もいる。
「隊長もう」
「大丈夫なんですか」
「だから何度も言っているだろう?」
金竜はガムリンとフィジカの言葉にここでは苦笑いになっていた。
「ただのかすり傷だ」
「ですよね。それじゃあ」
「本当に」
「ああ。しかしだ」
金竜はコクピットの中で首を傾げさせていた。
「あの男はまたか」
「戻って来ません」
未沙がマクロスの艦橋の中で憮然とした顔になっていた。
「相変わらずです」
「やれやれ、何処に行ったのか」
「わかれば苦労しません」
こんなことも言う未沙だった。
「全く」
「まあそのうち帰って来るんじゃないの?」
フェイは能天気に述べた。
「バサラのことだから」
「あんな破天荒な奴は見たことがない」
ハッターも言う。
「しかし凄い男だからな」
「大丈夫ですよ」
ミレーヌが皆に話してきた。
「あいつは絶対に戻って来ますよ」
「殺したところで死ぬ奴じゃないしな」
ゴルの言葉である。
「まあ俺達にしろそうだけれどな」
「た、確かに」
「不死身のグン=ジェム隊四天王だ」
ガルとジンも当然いる。
「し、死んでたまるか」
「不死身なことには自信があるからな」
「そうだよ。こんなところで死んでもね」
言うまでもなくミンも健在だ。
「一銭の価値もないからね」
「勝ってバサラの音楽を聴きながら美味い飯だ!」
グン=ジェムも豪快に言う。
「いいな、野郎共!」
「おうよ!」
彼に応えたのはエイジだった。
「やってやるぜ!美味い飯の為にな!」
「あんたもノリいいわね」
ルナはそんな彼に少し呆れていた。
「全く」
「悪いか?」
「悪くは無いわ」
ルナもそうは言っていなかった。
「けれど。それでも」
「いや、いいじゃない」
斗牙も微笑んでいる。
「何かこう。白熱してきてね」
「そうですよね」
ルカも笑いながら言ってきた。
「こうした雰囲気って」
「そうだよね、ルカ君」
「はい、斗牙さん」
「ええと」
エイナは二人の会話を聞きながら少し戸惑っていた。
「どちらがどちらなのか」
「わからないわね」
「はい」
こうミヅキにも答える。
「斗牙さんにもそうした人が出来たんですか」
「何かいやらしい表現だな」
「全くだ」
それを聞いたミシェルとティエリアの言葉だ。
「今のはな」
「雰囲気が似ているだけではないのか?」
「いや、そういうあんた達もね」
ルナは呆れながら二人に突っ込みを入れた。
「全然区別つかないから」
「そうか?」
「僕達は特に」
「話は置いておけ」
刹那の言葉である。
「来るぞ」
「ああ、そうか」
「それならだ」
「上から前方に降下して来るぞ」
カティの言葉だ。
「総員迎撃用意!」
「よし!この不死身のパトリック様が相手をしてやるぜ!」
「あんたも不死身だったな」
「そういえば」
皆このことも思い出したのだった。
「うちの部隊って本当に」
「不死身さんばかり」
「けれど死ぬような目は勘弁だよ」
「全くですよ」
トールとニコルは苦い顔だった。
「あの時本気で死ぬかと思ったしさ」
「よく助かりましたよ」
「私も死ぬところだったしな」
マイヨもであった。
「運がよかった」
「このアークエンジェルにしても何度撃沈しかけたか」
マリューにも心当たりのあることだった。
「運がいいのはいいことね」
「クサナギだってねえ」
「あの、ユウナ様」
トダカが呆れながらユウナに言ってきた。
「危なくなったら騒ぐ癖は本当にいい加減に」
「いや、そうは言ってもね」
「周りの者がさらに動揺しますので」
「いつもですし」
キサカも言う。
「これで終わりかとか何でこうなるのとか」
「御免御免、気をつけてるんだけれどね」
相変わらずいきなり起こったことには弱い彼であった。
「どうしてもね」
「どうしてもではないです」
「全くです」
二人の言葉は厳しい。
「気をつけてもらわないと」
「困りますので」
「わかったよ。さて」
「はい」
今のユウナの言葉にはアズラエルが応えた。
「また変な敵が出て来たみたいだけれど」
「あの敵ですね」
「あれは何かな」
バルゴを指差しながらの言葉だ。
「宇宙怪獣かな」
「いや」
だがここでチーフが言うのだった。
「あれは違う」
「違うのかな」
「連中と違う知能があるようだ」
「というと」
「生態兵器か」
サコンはそう考えた。
「まさかとは思うが」
「それじゃあかなり」
「あれも危険だってことね」
「しかも」
バルゴだけではなかった。
「敵がさらに降下してくるし」
「これはかなり」
「まずいんじゃ」
「そうだな」
ここで大文字は気付いた。
「我々をこのまま追い詰めるつもりだな」
「おそらくは」
エキセドルも言う。
「我々を大地に縛りです」
「おそらくはな」
それはグローバルも気付いていた。
「しかしだ」
「しかし?」
「大丈夫なんですか?」
「敵が戦力を小出しにするならだ」
実質その通りだった。一度には来ていなかった。
「それを叩くだけだ」
「それだけですね」
「今は」
「そうだ、叩く」
グローバルの言葉は微動だにしない。
「このままだ。いいな」
「さて」
そしてバルゴはそのロンド=ベルを見て言うのであった。
「見せてもらうぞ。御前達のスピリチアを」
「何をしに来たのだ」
ガビルは忌々しげにそのバルゴに問うた。
「決まっている」
「決まっているだと!?」
「御前ごときがゲペルニッチ様の夢を叶えるなぞ不可能だ」
「俺ではだというのか」
「そうだ」
また言うのであった。
「それはない」
「ないというのか?」
「その美の華を咲かせるのはだ」
彼はかなりムキになって言うのであった。
「私の役目だ!」
「ならばだ」
それを聞いても動じないバルゴだった。
「好きにするがいい」
「好きにというのか。私の」
「そうだ」
冷たい言葉ではあった。
「今の御前にできるのならな」
「おのれ・・・・・・」
「俺は俺のやり方でやらせてもらう」
彼は彼だというのだ。
「それでいいな」
「私もまた同じだ」
「貴様もだというのか」
「そうだ」
こう言ってであった。それぞれロンド=ベルに向かう。
バルゴのその動きを見てだ。ロンド=ベルの面々は驚きを隠せなかった。
「おいおい、あの大きさでか」
「随分速いわね」
「しかも動きが緻密ときたものだ」
真吾にレミー、キリーが言う。
「これはかなりな」
「手強い相手みたいね」
「強敵も減らないわね」
しかしであった。ここでだ。戦場に彼が出て来た。
「バルキリー!」
「よし!」
「真打ち登場だな!」
「やっと出て来たな」
神宮寺もいつもよりのっていた。
「戦争を変えるロックスターがな!」
「いいか、どいつもこいつもだ!」
そのバサラがバルキリーの中から叫ぶ。
「俺の歌を」
そしてさらに。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!!」
こう叫ぶのだった。それを聞いたガムリンも言う。
「変わったな、何もかもがだ」
「ああ、これでだ」
「この戦いはあいつのものになったな」
金竜とフィジカも言う。
「完全にだ」
「もうこれで」
「奴の美は刺激的過ぎる」
ガビルが躊躇いながら言う。
「これは」
「おい御前等!」
しかしバサラがここで怒りを見せた。
「攻撃を止めてだ!」
「何っ!?」
「攻撃を!?」
「そうだ!」
こう大声で叫ぶのだった。
「攻撃を止めて俺の歌を聴け!」
これが彼の主張だった。
「俺の歌を何で聴きやがらねえんんだあっ!」
「バサラ!」
「うおおおおおっ!」
そのまま突っ込む。何とガビル達にだ。
「何っ、来たというのか!?」
「まさか!」
「そうだ、熱気バサラ!」
ガムリンがその彼に対して言う。
「歌え!」
「歌えってんだな!」
「そうだ、歌え!」
ガムリンが彼に言うのはこれだった。
「御前は歌え!」
「そうだ!」
今度は闘志也が言う。
「あんたが歌わなくてどうするんだ!」
「それが御前だよな!」
サンシローも叫ぶ。
「自分の信念の為に生命を張ってるんだったな!」
「ああ、そうだ!」
「なら歌え!」
彼も言うのだった。
「そのままな!」
「俺達は戦う」
フォッカーはまずは自分自身について語った。
「そして御前は歌うな」
「ああ」
「それは同じ意味だ」
こう言うのであった。
「だからだ。行け」
「止まるなんてな!」
今叫んだのはロックオンだった。
「あんたらしくないぜ!」
「いや、今前に出てますから」
斗牙はそれを見ていた。
「ですから」
「なら行け!」
「そうだ、ここは!」
「あんたには歌があるのよ!」
全員がその突っ込むバサラに対して言う。
「だからその歌でだ!」
「道を切り開け!」
「散るがいい!」
ガビルがその彼の前にいた。
「散って美を知るがいい!」
「バサラ!」
ミレーヌも彼に言う。
「歌って!ここは!」
「よおおおおおおし!」
バサラのその全てが限界を突破した。
「行くぜえええええええええええええっ!」
「来た!」
「このテンション!」
「のってきたじゃない!」
誰もがバサラの今の演奏を受けて力を取り戻す。
「俺のハートにもガンガン来るぜ!」
「歌え!」
「歌ってバサラさん!」
その極限まであがった士気の中での彼への言葉だ。
「ここは!」
「是非!」
「ミレーヌ!ビヒーダ!」
レイが二人に声をかける。
「俺達もだ!」
「行くのね」
「そうだ、行くぞ」
こうミレーヌに返してだ。今四人が一つになった。
そしてその演奏は。
「ドクター千葉!」
「うん、これは」
「歌エネルギーが五万チバソングを突破しました!」
美穂が千葉に告げる。
「これならいける!サウンドブースターを超えた!」
「はい!」
「バサラ君!」
彼もまた晴れやかな顔でバサラに告げる。
「このまま行ってくれ!」
「とことんやりゃいいんだな!」
「そうだ!君達次第ではだ!」
こう彼に言うのである。
「光や時空を揺るがすことさえ出来る!」
「えっ、歌で」
「時空まで」
「そうだ、できるんだ」
こう美穂とサリーにも答える千葉だった。
「だからだ!」
「ああ!行くぜ!」
最早バサラを止められるものはなかった。そうして。
「ファイアーーーーーーーーーーッ!!」
「くっ!」
「これは!」
ガビルもバルゴもであった。彼の圧倒的な歌の力を受けて。
大きく吹き飛ばされだ。そのうえで言うのだった。
「何だというのだ!」
「これは!」
「この刺激的な美は」
「何だというのだ」
「それにしても」
ここでふと洸が言った。
「ライディーンの中にこいつ等に関する記憶がある」
「そうなの?やっぱり」
「ああ、間違いない」
こうマリにも話すのだった。
「こいつ等の存在はムー帝国やプロトカルチャーに関係しているのか?」
「まさか。そんな」
「わからないけれど」
それはまだ確信はできないことだった。
「ライディーンは覚えている」
「そうなのね」
「このことも調べる必要がありそうですね」
猿丸が言ってきた。
「今度は」
「先生、そっちも頼めるかな」
「はい、それではです」
猿丸は洸のその言葉に快く応えたのだった。
「そちらもお任せ下さい」
「頼んだよ、それじゃあ」
「それにしても戦いは」
麗が一変した戦局を見て言う。
「変わりましたね」
「そうだな。やはりバサラの存在が大きい」
神宮寺も言う。
「今回はな」
「はい、本当に」
「俺達もだ」
そしてこうも言うのであった。
「このままだ」
「突撃ですね」
「そうだ、勝つ」
まさに一言であった。
「この戦いもだ」
「わかりました、では」
「全軍総攻撃だ!」
「よし!」
「このまま!」
全軍でバロータ軍を攻めにかかる。これで決まりだった。
バロータ軍は遂に軍を送らなくなった。それで終わりだった。
戦いはロンド=ベルの勝利に終わった。バルゴもまた。
「くっ・・・・・・」
「どうするつもりだ?バルゴよ」
「止むを得ん」
まずはこう答える彼だった。ガビルへの返答だ。
「撤退だ」
「そうか」
「後詰は俺が務める」
彼がそうするというのだった。
「だからだ。御前はだ」
「ふん、何を言うかと思えばだ」
だがここでガビルは不敵に笑って言うのであった。
「殿軍こそ我が美だ」
「何っ!?」
「味方の為に戦う。これぞ犠牲美!」
まさにそれだというのだ。
「だからだ。バルゴ、御前は去るのだ」
「御前が後詰を務めるというのか」
「そうだ」
また言う彼だった。
「わかったな。それではだ」
「ふん、いいだろう」
バルゴも彼のその言葉を受けて頷いた。
「好きにしろ」
「そうさせてもらう。熱気バサラよ」
「何だ?」
今度はバサラへの言葉だった。
「貴様の刺激的な美はだ」
「どうだってんだ?」
「面白い。だが危険過ぎる」
そうだというのである。
「今後はそれを倒していく。これこそ私のこれからの美だ」
「相変わらず何を言ってるのかわからねえんだがな」
「美はそれだ」
まさにそうだというのだ。
「それではだ。撤退しよう」
「じゃあ俺達もだな」
バサラがまた言う。
「この星を離脱するのか?」
「そうだな。今は」
「これ以上残っても仕方ない」
「それじゃあ」
去るというのであった。
「明日だ。この星を経つ」
「わかりました」
「それじゃあそれで」
こうしてこれからのことも決まった。ロンド=ベルはラクスを経つことになった。
それにあたってはラクスにあった施設を利用することになった。その設備は多少老巧化こそ見られたがそれでも見事なものであった。
それを使って出ることになった。その中でだった。
「しかしな」
「そうよね」
「何ていうか」
「これだけの施設があってどうして」
「滅んだのかしら」
「何故?」
それがどうしても彼等にはわからにことであった。どうしてもだ。
「滅ぼしたのなら一体誰が」
「どうやって」
それですらもわからないのだった。
「滅ぼしたのかしら」
「一体」
「それもわかるのかな」
首を傾げるしかなかった。今は。
「これから」
「どうなのかな、それは」
「本当に」
「それにしても」
ここでまた話す彼等だった。謎が謎を呼びそれが解けないままにもなっていた。だが大きなうねりがそこにあるのは多くの人間が感じてはいた。

第七話完

2010・2・28
 

 

第八話 バッフ=クランとの出会い

             第八話 バッフ=クランとの出会い
 
また宇宙に出ようとする。しかしここで。
「まさかなまた襲い掛かって来ないよな」
「ああ、それね」
「いつもだからな」
「こういう時に来るからねえ」
「どいつもこいつも」
「だから」
誰もが警戒はしていた。何度もあったことだからだ。
「これで何があってもね」
「おかしくはないっていうか」
「本当にね。いざって時は」
「出られるように」
実際にしていた。そうしてだった。
「来るか?」
「それなら」
「何時でも」
「皆警戒はしておいてくれ」
ヘンケンがそれを言った。
「何が出て来るかわからないからな」
「そうですよね、それは」
「何が出て来てもね」
「何時でも」
「何もないことを祈るが」
ヘンケンはそれは信じてはいた。
「だが。敵には敵の事情があるからな」
「何時出て来ても」
「というかこの時にこそ」
「宇宙へ行く時と降下の時」
「その時にこそ」
それがわかっているからだった。全員警戒していた。そうしてであった。今宇宙に出ようとする。しかしそれが終わった時であった。
「あれっ、結局」
「何も出なかった?」
「そうよね」
「意外っていうか」
「滅多にないけれど」
「そうなのか」
コスモが周りの話を聞いて驚いていた。
「いつもこうした時に狙われるのか」
「そうなんだよ、もうな」
彼に応えたのはジュドーであった。
「こうした時にこそ出て来るんだよ」
「そうだったのか」
「だからなんだよ。いつも警戒してるんだよ」
また言うジュドーだった。
「けれど何もなくてよかったな」
「そうだよな。それじゃあこれからは」
「ああ、これから」
「ボアザンに向かうか」
とりあえずはボアザンを倒そうと考えている彼等だった。しかしであった。
「んっ!?」
「レーダーに反応!?」
「まさか」
それに気付いたのである。
「またバロータ軍!?」
「じゃあここで待っていた!?」
「だったら!」
「いや」
しかしだった。ここでベスが言った。
「間違いない!」
「ああ、その通りだ!」
コスモもそれに続く。
「バッフ=クランだ!」
「あれは!」
「どうなってるんだ!?」
ベスは思わず言った。
「何故連中がここに」
「まさか」
「これも」
シェリルとカララがここで言う。
「イデによって」
「導かれたというの!?」
「イデ、何かそれは」
イーグルが目を鋭くさせて述べた。
「何なのでしょうね」
「ああ、それはな」
「話を聞いただけじゃわからないよね」
ジェオもザズも目を鋭くさせて応える。
「色々な力が集まってきてないか?」
「そんな気もするよね」
「そうじゃのう」
アスカも考える顔になっていた。
「この状況は何なのじゃ?イデとは」
「ふむ、それは」
「神の様な存在でしょうか」
シャンアンとサンユンもわからないことだった。
「ちと。そこまでは」
「わかりませんな」
「イデに取り込まれてるのは俺達だけじゃなさそうだな」
コスモもここでまた言った。
「バッフ=クランの奴等もか」
「そんなことよりよ」
カーシャはここでコスモに言ってきた。
「今は一緒に飛ばされてきた連中をどうするかよ」
「そうだな、それはな」
「向こうだってそう考えてるし」
そしてバッフ=クランの面々もであった。
「ギジェ様」
「一体ここは」
「わからん」
彼等の指揮官はギジェだった。だが彼にしても今の状況がわかりかねていた。それで眉を顰めさせながらそのうえで部下達に応えるのだった。
「だが」
「だが?」
「それでは」
「目の前にあの巨神がいる」
そのことを言うのであった。
「それならばだ」
「はい、それでは」
「やはり」
「我々は戦わなくてはならん!」
「了解です!」
「それでは!」
部下達はそれに応える。そうしてだった。
彼等も戦闘態勢に入る。ギジェはその中でまた言うのだった。
「そしてだ」
これは呟きだった。
「この星には以前戦ったロゴ=ダウの異星人の戦闘部隊までいる」
それを見ての呟きであった。
「我々バッフ=クランもその中に取り込まれているのか?イデに」
「皆、ここはだ」
「えっ、じゃああの連中とは」
「会話が不可能?」
「そうなの」
誰もがベスの言葉に問うた。
「何か白旗掲げたら攻撃してきたっていうけれど」
「それなら」
「やっぱり」
「そうだ、とんでもなく野蛮な奴等だ」
これがベス達のバッフ=クランへの見方だった。
「だからだ。気をつけてくれ」
「了解」
「それじゃあ」
「そうか、やはりな」
そしてギジェも彼等も見て言うのだった。
「彼等は好戦的な文明だ」
「はい、全くです」
「何しろいきなり白旗を出してきたのですから」
「とんでもない奴等です」
彼等は彼等でこう考えていた。
「我々としては戦闘は決して好まないというのに」
「それでも戦うとは」
「恐ろしい奴等です」
「それでは」
「攻撃だ」
こうして彼等はそのまま攻める。両軍の戦闘がはじまった。
「コスモ」
「ああ」
コスモはモエラの言葉に頷く。
「俺達はまた」
「戦って生き延びる」
そうするというのだった。
「ここはだ」
「そうだな。それしかない」
こうして彼等もまた戦いの中に身を置いた。そしてであった。
「不思議だ」
「んっ!?こいつ」
竜馬はギジェと対しながら彼の言葉に気付いたのだ。
「何か言っている」
「リョウ、どうしたんだ?」
「何かあるのか?」
「ああ、この敵は何かを言っている」
このことを隼人と武蔵に言うのだった。
「それは間違いない」
「だとすれば一体」
「何を言ってやがるんだ?」
「宇宙にはこうした力が多いのか?」
ギジェは三人に察せられながらも呟いていた。
「本当に」
「コスモ!」
「ああ、わかってる!」
コスモがカーシャの言葉に応えていた。
「あいつは!」
「バッフ=クランの中でもいつも私達を追い掛けてる奴よ!」
「ギジェだったな!」
「巨神もいるか」
ギジェはイデオンも見逃さなかった。
「ここに飛ばされたのがイデの力だとするのなら」
「それでだ!」
「何だっていうのよ!」
「益々その力に興味が出て来た」
こう言うのだった。
「その力にな!」
「くそっ!」
それを聞いたコスモが歯噛みして叫ぶ。
「俺達は御前の好奇心を満たす為のオモチャじゃないんだぞ!」
「行くぞ!」
ギジェはイデオンに向かうのだった。
「そしてだ、その力見させてもらう!」
「待ちやがれ!」
ここでもバサラが出て来てギジェの前に立ちはだかってきた。
「手前もな!」
「何だ御前は」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!」
彼に対してもこう叫ぶのであった。
「俺の歌をな!」
「何だこいつは」
ギジェはその彼を驚きながら見つつ言うのだった。
「戦場で歌う道化か?」
「いきなり一曲いくぜ!俺の歌をな!」
「地球人とはわからんものだ」
これはギジェの偽らざる本音だった。
「いきなり歌うというのか」
「ギジェ様」
しかしここで部下達が言うのだった。
「戦力が」
「どうした?」
「既に戦力の三割を消耗してしまいました」
報告はこれであった。
「既にです」
「何っ、もうか」
「はい、如何しますか?」
「まだだ」
ここで彼は言った。
「まだ戦うぞ」
「まだですか」
「そうだ、まだいける」
その戦局を見ながらの言葉であった。
「正面からではなく兵を二手に分けよ」
「そのうえで、ですね」
「そうだ。挟み撃ちにする」
戦術の基本であった。
「それぞれ左右に兵を向けてだ」
「わかりました、それでは」
「地球人も強いか」
ギジェはここでこんなことも言った。
「そしてだ」
「うおおおおーーーーーーーっ!」
バサラが曲の間に絶叫していた。ギジェはそれを聞いても言うのだった。
「変わった男だ。実にな」
「俺の歌で戦争なんて終わらせてやるぜーーーーーーーーっ!!」
このまま兵を二つに分ける。しかしであった。
ロンド=ベルはそれを見てだ。瞬時に動いたのだった。
「右だ!」
「まずは右の敵を叩く!」
「そしてだ!」
そのうえでだった。
敵の右を叩いた。それからすぐに軍を旋回させて左翼の敵軍も叩いたのであった。
こうしてギジェの作戦は瞬く間に破綻してしまったのだった。
「くっ、まさかこう簡単に」
「ギジェ様、ここは」
「どうしましょうか」
「ダラム様に通信を送れ」
ギジェの判断はこれであった。
「我が軍は一時撤退する」
「撤退ですね」
「そのうえで救援を要請する」
「了解です」
「それでは」
こうして彼等も撤退した。ロンド=ベルはこの戦いも勝利を収めることができた。
「周囲にバッフ=クランの反応はないな」
「そうだな」
ハタリがジョリバの言葉に応えていた。
「とりあえずは、だがな」
「助かったな」
「そうだな」
「しかしいきなりとはいえ」
「そうだよな」
「派手な戦いになったわね」
皆このことを噛み締めていた。
「いきなりな」
「これはまた」
「それでは今は」
「とりあえず移動です」
エキセドルがジェフリーに告げる。
「ここにいてはまたバロータ軍の攻撃を受けかねません」
「その通りだ。それではだ」
「はい」
「わかりました」
モニカとミーナが彼の言葉に応える。
「今からですね」
「移動しましょう」
「そして艦長」
ラムは彼に問うた。
「どのポイントにでしょうか」
「一一〇一だ」
そこだというのであった。
「全軍そこに移動する」
「じゃあ行くわよ」
ボビーがそれを聞いて述べた。
「そのポイントに今からね」
こうして彼等は移動をはじめた。しかしそれを見る影があった。
「禁断の惑星でのプロトデビルン、アニマスピリチア、そしてイデ」
こう言うのであった。
「やはりこの星にはアポカリュプシスの秘密を解く鍵があるようだねえ」
その言葉を続けていく。
「そして、それを統べる者」
不意に存在のことが出て来た。
「それこそが無限力。うふふふふふ・・・・・・」
謎の笑みであった。しかし今また戦いが終わった。
「しかし戦いが終わったが」
「まだ大分いますね」
「そうだな」
「バロータの大軍が」
彼等がまだ展開していたのだ。
「すぐ近くにいる」
「脱出しようにも」
それもまた問題があるのだった。
「あれだけの大軍がまだ近くにいるとなると」
「フォールドインも最終手段ですね」
「隙を狙われたら」
「参ったな」
その苦境が強く認識されていた。しかしであった。
「!?」
「何だありゃ」
「バロータの機体?」
「まだ誰か残っているのか?」
「いや、あれは」
ここで気付いたのはミレーヌだった。
「柿崎さんのバルキリーじゃないかしら」
「えっ!?」
「嘘・・・・・・」
「生きてたのかよ」
皆それを聞いて一斉に驚いた。
「まさかと思うけれど」
「生きていたって」
「そういえば捕虜になったけれど」
死んではいない。そのことにも気付いたのであった。
「大丈夫だったのね」
「何とか」
「生きていたの」
「すぐに回収しよう」
グローバルが言った。
「本人がいるかどうかはまだよくわからないがな」
「そうですね。それじゃあ」
「すぐに」
こうして彼のバルキリーがすぐに回収された。その中にいたのは。
「いやあ、参ったぜ」
「まさか生きていたなんて」
「奇跡ってあるんだ」
「本当に」
彼を笑顔で迎えはするが皆驚いていた。
「前の戦いでも撃墜されても生きていたし」
「まさかと思ったけれど」
「今度もなんて」
「どうやらだ」
ここで大文字が皆に説明する。
「彼は精神制御を受けてバロータ軍の一員とされるところだった」
「バロータの!?」
「それでは」
「そうだ。バロータ軍はだ」
ここで一同に説明する大文字だった。
「他の星の者達を捕虜に精神制御を行い兵とするのだ」
「じゃあ私達が今まで戦ってきた相手にも」
「そうした地球人がいた」
「そういうことに」
「おそらくはな」
こう述べるのだった。
「そういうことだ」
「何てことだ」
輝はそれを聞いて歯噛みした。
「俺達はこんなところでも同じ地球人と戦っていたのか」
「因果なことですね」
霧生も同じ顔になっていた。
「まさかと思いますよね」
「そうだな。しかしだ」
ここでフォッカーも言った。
「俺達が生き残る為にはだ」
「はい」
「わかっています」
それはもう言うまでもなかった。彼等も戦うしかなかったのだ。
そしてであった。格納庫ではだ。バサラがガムリンに笑いながら声をかけてきたのだった。
「よお、ガムリン」
「何だ?」
「ちょっと手をあげてみな」
「手をか」
「ああ、それでだ」
手と手と合わせて叩くのだった。それであった。
「こういうことさ」
「そうか、こういうことさ」
「わかった」
そしてここにだ。ロンド=ベルの面々が来るのだった。
「やったな、バサラ!」
「あらためてですけれど」
豹馬と洸が笑顔で彼に告げる。
「よくやったぜ」
「いい歌でした!俺感動しました!」
「ありがとよ」
「なあ」
しかしであった。コスモは深刻な顔で彼に言ってきたのであった。
「どういう訳かわからないけれどな」
「あのイデか?」
「あんたの歌とイデは何か反応してるみたいだな」
こう言うのであった。
「だからあの連中が来たみたいだな」
「そうかもな」
バサラもそれは否定しなかった。
「俺にもよくわからねえがな」
「それでもこれはだ」
「ああ」
「考えておく必要があるな」
コスモはさらに言ってきた。
「おまけにまだあのバケモノ共に囲まれてるしな」
「バロータか」
「あんたの歌はあの連中に効果があるんだな」
それは見たからわかることだった。
「じゃあ精々頑張って歌ってくれよ」
「歌をなんだな」
「俺が言いたかったのはそれだけだ」
ここまで話して話を止めるコスモだった。
「それじゃあな」」
「ああ、じゃあな」
こうしてコスモも去った。その次は。
「やったね、バサラ!」
「ミレーヌかよ」
「あの化け物を一発で追い返すなんて!」
「ちょっと待てよ」
しかしであった。バサラはミレーヌの今の言葉に怪訝な顔で返すのだった。
「俺の歌はな」
「あんたの歌は?」
「人殺しの道具じゃねえ」
それを言うのだった。
「それはな。違う」
「人殺しって」
だがミレーヌはそれを言われてもきょとんとなるだけだった。そのうえでバサラに返すのだった。
「何言ってるのよ」
「何っていうのかよ」
「そうよ、相手は化け物だったじゃない」
彼女にとってはそうした認識だった。
「それで何でそんなこと言うのよ」
「・・・・・・そうか」
バサラはそれ以上言わなかった。ただ立ち去るだけであった。
ミレーヌはその後姿を見送ってだ。きょとんとなるしかなかった。
「何なの?一体」
「まあバサラだから」
「ああいう奴だからな」
「何か考えがあるんだろうがな」
しかしそれが常人には到底わからないのがバサラであった。
「ただ、また飛び出ていきそうだな」
「そうね、それは」
「今にもって感じで」
そうして実際にであった。バサラはこの後すぐに飛び出したのであった。
それを聞いたナタルと未沙がだ。呆れた声で言った。
「営巣に入れてもすぐにこじ開けるしな」
「参ったわね」
二人の偽らない本音だった。
「それで今度は何処に行ったのだ?」
「まさかバロータ軍の方?」
「残念ですがそうです」
キムが二人に答えた。
「今物凄い勢いで飛んでいっています」
「わかった。それではだ」
「どのみち戦わないといけなかったでしょうし」
二人はここで作戦の変換にかかった。
「行くとしよう」
「今すぐね」
こうして作戦が決まった。ロンド=ベルはすぐにバロータ軍に向かうことになった。
「やられるよりやれ」
「そういうことにもなるし」
「それなら」
全員それならそれだと乗り気だった。消極案は彼等には似合わなかった。
そのままバロータ軍に向かう準備に入る。そしてそのバサラは。
「行くぜシビル!」
バロータの大軍に向かいながら既にハイテンションになっていた。
「俺の歌をもっと聴かせてやるぜ!」
そのまま突き進む。彼はその道を突き進んでいた。

第八話完

2010・3・2


 

 

第九話 受け継ぎし遺産

               第九話 受け継ぎし遺産
 「それはだ」
「ああ」
「どうだったんだ?」
バロータ軍に向かいながらだ。皆柿崎の話を聞いていた。
「そこは冷たい吹雪の吹き荒れる凍て付く様な大地だった」
「そんな場所だったのか」
「それで?」
「奴等に捕まった俺は船団から脱出した民間人と一緒に」
「あの星に連れて来られた」
「そうなんですね」
「ああ、そうだ」
皆の言葉に頷く柿崎だった。
「その通りさ」
「それでその星は?」
「一体」
「バロータ第四惑星」
そこだというのである。
「そこですか」
「知ってるんですか?」
「はい」
こう答えるエキセドルだった。
「聞いたことはあります」
「そうだったんですか」
「それでだけれど」
千葉が彼に言ってきた。
「続けてくれるかな」
「はい、それじゃあ」
「しかし」
ここでフォッカーがいぶかしんで言う。
「あの星には確かメガロード船団から」
「ええ、そうでしたよね」
「特務調査隊が送られて」
「それで」
「はい、覚えています」
それはエキセドルも知っていることだった。
「確か遺跡らしいものを発見したという報告が」
「ですがその後」
「残念ですが」
ここで美穂とサリーが言う。
「連絡が途絶えました」
「消息は」
「はい、そうです」
「それでは」
サコンがそれを聞いて述べた。
「その遺跡というのが奴等の正体の謎を解く鍵となりますね」
「そうだな」
「ええ、確かに」
リーとブンタがサコンの今の言葉に頷く。
「その通りだ」
「それは」
「そして」
ピートは柿崎にさらに問うた。
「それからは?」
「俺達もその遺跡らしい場所に連れて行かれた」
また話しはじめた柿崎だった。
「そしてその奥には」
「その奥には?」
「何が」
「その奥には巨大な・・・・・・」
しかしだった。ここで。
「うおおおあっ!!」
「!?」
「柿崎どうしたんだ!」
輝が彼に駆け寄って問うた。
「そこで一体何を見たんだ!」
「あああ、あああああっ!」
「ミンメイは無事なのか!?」
さらに問う輝だった。
「柿崎!」
「よせ、輝」
しかしここでフォッカーが止めた。
「これ以上は」
「無理ですか」
「ああ。余程恐ろしいものを見たんだろうな」
「それじゃあ」
「そうですね」
ここで千葉も言ってきた。
「催眠療法で記憶を辿ってもです」
「無駄だってんだな」
「もう」
サンシローとヤマガタケが千葉に問うた。
「じゃあこれ以上は」
「わからねえのか」
「残念ですが」
返答はその通りだというものだった。しかしフォッカーはここで言った。
「だがな」
「だが?」
「何が」
「はっきりしたな」
こう言うのだった。
「バロータ軍の正体が」
「そうだな」
シナプスが彼のその言葉に頷いて続く。
「彼等は銀河の様々な種族を襲いその生命力を吸収し」
「そしてそのうえで」
「その種族を」
「同時に精神制御を施して」
さらに言うシナプスだった。
「自分達の軍隊を作り上げていた」
「けれど」
しかしここで輝が言うのだった。
「柿崎の精神制御が解けたのだろう」
「おそらくですが」
千葉もその問いに答える。
「バサラ君の歌の力によるものでしょう」
「歌の力?」
「それでなのかよ」
輝だけでなくイサムもそれに問う。
「歌の力で」
「リン=ミンメイみたいにかよ」
「わかりやすくいえばそうです」
こう二人に答える千葉だった。
「これは大いに研究する価値ありです」
「バロータ第四惑星の遺跡」
大文字が言う。
「そこで柿崎君が見たものが我々の敵の正体なのだろうか」
「そうだと思うわ」
セニアが言ってきた。
「それで」
「その目覚めには以前派遣したその特務調査隊がです」
ウェンディも分析して言ってきた。
「関与していると思います」
「メガロード船団を壊滅させた怪物が」
今言ったのはアルトだった。
「それがかよ」
「まさか」
ここでシェリルが不安な顔になって述べた。
「イデは私達とあの怪物を戦わせるつもりかしら」
「いや、しかし」
それにはブライトが言う。
「その力はあまりにも強大でこれまでも敵とは異質過ぎる」
「そうですよね。それは」
「何ていうか」
「異常なまでに」
これは誰もが感じていることだった。
「あまりにも」
「不自然なまでに」
「そうだ。不自然に過ぎる」
無頼とはまた言った。
「断定ができない」
「もう少し情報があれば」
マヤも困った顔になっていた。
「対策も立てられますよね」
「プロトデビルン」
エキセドルはこの名前を出して話してきた。
「その僅か一体が我等ゼントラーディ一個艦隊を全滅させた」
「えっ!?」
「あのゼントラーディの!?」
「まさか」
これは誰もが信じなかった。
「一個艦隊じゃなくて一部隊なんじゃ!?」
「それか向こうも一個艦隊とか」
「幾ら何でもそれは」
「いえ、事実です」
しかしエキセドルは言うのだった。
「艦隊をです」
「馬鹿な、そんな」
「あのゼントラーディの」
「一個艦隊を」
「しかしよ」
ここでカムジンが真剣な面持ちで言ってきた。
「この一年あれなんだろ?」
「ああ。ゼントラーディもメルトランディも銀河ではな」
ミシェルが彼の問いに答える。
「活動規模が縮小している」
「じゃあやっぱり」
「それは」
「バルマーや宇宙怪獣にあるにしても」
彼等はそうした存在も頭の中に入れてはいた。
「やっぱり」
「プロトデビルンが」
「関わってる」
このことを認識せざるを得なかった。そうしてであった。
「あの戦う為の種族を」
「滅ぼすなんて」
「尋常なものではない」
ガルドの言葉も険しい。
「そして今までの奴等の戦力を見る限りだ」
「嘘じゃないな」
ショウが言った。
「それは」
「とにかく今は」
フォッカーが話をまとめにかかってきた。
「奴等と戦う為にはもっと情報が必要だ」
「ええ、確かに」
「それは」
こんな話をしてであった。彼等はこれからのことを考えていたのだった。
「まずはバサラを追う」
「そしてあの連中を倒して」
「それからだな」
こうしてバロータ軍に向かう彼等だった。今はそれしかなかった。
その中でだ。ミレーヌは暗い顔で自機のところにいた。そのうえで俯いて呟いていた。
「あたしのせいだ」
「どうしたんですか?」
「あたしがバサラに余計なこと言ったから」
こうガムリンに言うのだった。
「バサラは出て行ったんだ」
「それは」
「バサラはずっと戦うんじゃなく歌うんだって言ってきたのに」
このことを思い出しての言葉だった。
「あたし、バサラの歌を兵器みたいに言ったから」
「いや」
何とここでビヒーダが口を開いてきた。
「えっ!?」
「今何て」
「ビヒーダさんが!?」
これには誰もが驚いた。グババまでもが。
「喋れたんだ」
「まさか・・・・・・」
「バサラは今何かを探している」
そのビヒーダの言葉である。
「だから違う」
「そうだな」
ここでレイも言ってきた。
「ビヒーダの言う通りだ」
「そうなの」
「俺もよくわからないがだ」
こう前置きしてから話すレイだった。
「最近のあいつは何かに苛立っていた」
「何かに」
「そうだ、そしてだ」
さらに話すのだった。
「今回の一件もだ」
「今回もなのね」
「だからだ。ミレーヌ」
その言葉が優しいものになっていた。
「御前のせいじゃない」
「私の」
「そうですよ」
ガムリンも笑って言ってきた。
「きっとその何かを見つけますよ」
「じゃあ今は」
「俺達は俺達のやるべきことをやる」
レイは確かな顔で頷いた。しかしその時だった。
「大変です!」
「えっ、何!?」
「何があった!?」
「バロータの大軍がラクスに降下しています!」
こう美穂が言うのだった。
「そして。バサラさんのバルキリーまで」
「ちょっと待ってよ」
バサラまでと聞いてあらためて驚くミレーヌだった。
「あいつのバルキリーってそんなことまでできるの?」
「アルテリオンかゼータみたいだね」
アイビスもそれを聞いて驚きを隠せなかった。
「まあバサラならって思えるけれどね」
「否定できないな」
スレイも言う。
「それはな」
「そうよね。とにかくよ」
ここでツグミは話を本題にやってきた。
「バロータ軍がそう動いたってことは」
「つまりはこのまま」
「我々も」
「総員降下準備」
ジェフリーは即座に命令を変更させた。
「いいな、そうしてだ」
「またラクスに」
「それからまた」
「戦う、いいな」
まさにそうするというのだ。
そのうえで降下準備に入る。その時だった。
「海底から遺跡が浮上してきたみたいだ」
「遺跡!?」
「遺跡って何!?」
皆シゲルの今の言葉に問う。
「今度は遺跡って」
「何が」
「面白そうですね」
今行ったのはエキセドルだった。
「そこにバロータ軍は降下していますか?」
「いえ、まだです」
「それは」
シゲルだけでなくケイスケも報告してきた。
「わかりました。では我々の今のポイントは」
「丁度そこです」
マヤが言う。
「その上です」
「では今です」
その判断は素早かった。
「今ここで効果です」
「よし、それなら」
「これで」
こうしてであった。皆すぐに降下した。そのうえで、であった。
遺跡の近辺に降りた。すぐに総員出撃する。
その中でだ。皆まずはバサラを探した。
「おい、バサラ!」
「何処なの!?」
「ここにいるの!?」
彼は今は見当たらない。その中でブライトがエキセドルに問うのだった。
「エキセドル艦長」
「何でしょうか」
「何故この遺跡に?」
彼が問うのはこのことだった。
「何故またその様な」
「ある予感が」
エキセドルはブライトの問いにまずはこう答えた。
「今はそうとしか言えません」
「予感が」
「そうです」
それ故にだというのだ。
「ですから」
「予感、それによって」
「しかし貴方は」
今度彼に問うたのはアムロだった。
「長い間ゼントラーディの参謀だった」
「はい」
「それにより数多くのデータも把握している」
アムロが言うのはこのことだった。
「海から現れたその遺跡に何を感じたのでしょうか」
「若しもです」
エキセドルはまた前置きしてきた。
「私の予測が当たっていたならば」
「その時は」
「我々の」
まずはこう言うのであった。
「そして地球人の謎が解ける重要なデータが手に入るかも知れません」
「祖先の謎が解ける」
「それによって」
「それだけの重要なデータ」
「それは一体」
「そうです」
また言うエキセドルだった。
「人類の祖先であり」
「俺達の祖先で」
「我等ゼントラーディを創造した」
次の言葉こそであった。
「プロトカルチャーと呼ばれている種族ですが」
「その謎が解かれる」
「あの遺跡によって」
「広大な宇宙の中で」
エキセドルの言葉は続く。
「プロトカルチャーがこの宙域で生きていたらしい」
「それが丁度」
「ここだと」
「私の把握するデータの一部にはそれがあります」
また語るのだった。
「以前より気にかかっていました」
「人類の祖先と言われているあのプロトカルチャーがか」
グローバルも静かに述べた。
「それがあれなのかも知れないのか」
「そしてです」
ここでまた言うエキセドルだった。
「眼下の遺跡はまさにプロトカルチャーのもの」
「それではあれが」
「まさか」
皆眼下のその遺跡を見る。今まさにそこに降り立とうとしていた。
バサラは今ギターを奏でていた。その前にはシビルがいる。
「コオオオオオーーーーーーッ!」
「すげえぜ!」
バサラはギターを奏でながら言う。今彼等は銀河を飛んでいた。
「この感触、これまでのもやもやが吹き飛ぶぜ」
「何故だ」
ここにはギギルもいた。彼もまた同じであった。
しかしであった。彼は戸惑っていた。そしてその戸惑いと共に言うのであった。
「何故だ・・・・・・」
「んっ。何だ!?」
「俺はどうしてこいつと一緒に銀河を飛んでるんだ!?」
「細かいことは気にすんな!」
これがバサラの返答だった。
「シビルがだ」
「シビルが!?」
「俺に、俺達にだ」
まさに感性の言葉であった。
「銀河を見せてくれているんだ!」
「そうなのか・・・・・・!」
「だからだ!」
ここでバサラのテンションがあがった。
「俺も歌うぜーーーーーーーーっ!!」
「それは何だ!?」
「パワートゥザドリーム!」
曲名を叫ぶ。
「シビル、聴けーーーーーーーーーっ!」
「コオオオオオオーーーーーーーッ!!」
シビルがそれに応え楽しそうに声を出す。
「うおおおおおおおおっ!」
「シビル・・・・・・」
ギギルはバサラの叫びも聞いて呟いた。
「まさか御前・・・・・・」
「アニマスピリチア!」
「ボンバーーーーッ!!」
バサラも叫ぶ。彼等は今絶好調であった。
そしてだ。その頃ゲペルニッチはその遺跡に迫っていた。軍も一緒である。
その遺跡を見てだ。ゲペルニッチは思わず声をあげた。
「あれは・・・・・・」
「サンプル共のいる惑星GGTに現われた不可思議な建造物」
ガビルはそれだと言った。
「まず確実に」
「そうだ。そしてだ」
ゲペルニッチもさらに言うのであった。
「紛れもなくこれはプロトカルチャーの遺跡」
「はい、確かに」
ガビルもその通りだと答える。
「これは」
「まずい」
ゲペルニッチはそれを認識して述べた。
「この遺跡はまずいと」
「夢は実現せねば意味はない」
そしてこうも言うのだった。
「だからだ」
「どうされますか?」
「ここは」
ガビルとバルゴが問うた。
「一体どの様に」
「されるのでしょうか」
「遺跡を消去せよ」
これが指示だった。
「よいな、直ちにだ」
「直ちにですか」
「遺跡を」
「そうだ、消去する」
まさにそうするというのである。
「わかったな」
「はっ」
「それでは」
「そしてだ」
さらに命じるのだった。
「我が夢の妨げとなるシビル」
「シビルですか」
「あの女ですね」
「そうだ。奴を始末せよ」
彼女はそうしろというのだった。
「すぐにだ」
「仰せのままに」
「それでは」
「我が夢を壊すかも知れぬ」
こう言うのだった。
「危険な存在だ」
「では今より」
「遺跡とシビルを」
「急げ」
明らかに危惧する声であった。
「よいな」
「はい」
「わかりました」
ガビグラもいた。彼等はそのまま先に進む。
そしてだ。ロンド=ベルは遺跡の中も調べていた。その遺跡は。
「これがか」
「そうみたいだな」
護衛役のイルムとカイが話をしていた。
「プロトカルチャーの遺跡ってわけか」
「想像以上に入り組んでいるな」
「全くだ」
皆その中を進んでいく。その中でだ。
「しかし」
「何だ?」
「大尉まで選ばれるなんてな」
イルムはここでヴィレッタに対して言うのだった。
「それに洸か。どういう人選なんだ?」
「何となくですけれど」
答えたのはクスハだった。
「是非にと思いまして」
「それでこの人選にしたのか?」
「はい」
実は選んだのはクスハだったのだ。彼女がメンバーを選んだのである。
「それで」
「まあ俺はですね」
洸が話してきた。
「祖父は考古学者ですし戦う前はムー帝国の研究を手伝っていましたしね」
「それにだ」
今度はヴィレッタが言ってきた。
「サイコドライバーの能力がだ」
「それがだというのだな」
「そうだ。それがだ」
カイに応えながら話すのだった。
「プロトカルチャーの遺した力の一つだというのなら」
「その時はか」
「この遺跡でそれがわかるかも知れない」
「洸君」
エキセドルが洸に声をかけてきた。
「どうですか?何かを感じますか?」
「いえ」
しかし洸はここで首を横に振るだけだった。
「今のところが何も」
「左様ですか」
「ですが貴方はです」
エキセドルはその彼に対して言うのだった。
「ライディーンを造ったムー帝国の血を色濃く受け継いでいます」
「それですか」
「そしてです」
言葉をさらに続けてきた。
「ライディーンには地球の先史文明の記録が残されており」
「そして」
「それとプロトカルチャーに何ら課かの関係があるのではと思うのです」
「個人の存在が力の発動に直結している」
今言ったのはシェリルだった。
「その好例ね」
「はい、そうえす」
「そして」
サコンもいた。
「その点で言えばイデの力は特定の誰かに起因してはいないようですね」
「いえ、それは」
しかしエキセドルはサコンのその言葉には異を呈した。
「まだはっきりわかりません」
「左様ですか」
「断定はできません」
今はというのだ。
「とにかくです。今は」
「先にですね」
「もっと先に」
「進むか」
「はい」
そしてであった。やがて彼等は壁画の前に出て来た、それは。
「この壁画は」
「これはです」
またエキセドルが言ってきた。
「プロトカルチャーの歴史を綴ったものです」
「それが」
「ここに書かれている」
「そしてこれって」
シェリルはあるものを見た。それは。
「文字かしら」
「プロトカルチャー文字ですね」
エキセドルはその文字を見て答えた。
「これは」
「解読できますか?」
「はい」
サコンの問いに答えた。
「ゼントラーディ文字と文字の構図がほぼ同じですから」
「だからですか」
「何とか。それでは」
早速解読に入った。読んでいく。
「エッグ=チャータ=デラーダ=エット=プロトカルチャー」
「どういう意味ですか?」
「それは」
「誇り高き我等は」
それを人の言葉にしていく。
「宇宙に生息する数多の生命体の中ではじめて文化を持った種族である」
「それが」
「彼等だと」
「故に我等は自らをプロトカルチャーと名付けし」
「プロトカルチャー」
サコンはここでこの言葉を口に出した。
「宇宙の各所に残っている先史文明の一つにして最大の規模を持つもの」
「おそらくは」
シェリルも言ってきた。
「イデの力の源になっている第六文明人も無関係ではないでしょう」
「ムー帝国は」
洸にも気付くものがあった。
「プロトカルチャーの直接的な末裔達の国だったらしいですが」
「そうでしたね、それは」
「はい」
エキセドルの問いにも答えた。
「母さんはそのムー帝国の姫だった」
「我等プロトカルチャーは」
エキセドルはまた解読をはじめた。
「緑多き大地に生まれ育ち」
「大地に」
「そうして?」
「小さな集落を形成し」
解読がさらに続く。
「木の実を取り魚を釣り平和に暮らしていた」
「それはまあ」
「同じですね」
「ええ」
「俺達と」
これはであった。彼等の文明と同じであった。
そしてだ。さらに解読が続けられてであった。
「やがて銃器を開発し農耕器具を作り田を耕しはじめた頃には」
「それで」
「どうなったんですか?」
「種族が増え領土が二つのエリアに分かれはじめていった」
そうなったというのだ。
「さらに工業や商業が発達し政治経済文化等あらゆる面で交流を持つようになった」
「この辺りは」
そこまで聞いたシェリルの言葉である。
「今の私達の文明の進歩と全く同じね」
「ええ、確かに」
「それは」
「その通りだな」
皆これはわかった。
そしてだ。エキセドルの解読をさらに聞くのであった。
「やがて我が種族は宇宙に進出し」
「そして」
「どうなったと」
「二つの勢力に別れて争いが起こった」
そうなったというのだ。
「そして」
「そして!?」
「それからは」
「戦火は次第に全宇宙に拡大していった」
かなり大規模な戦いだったというのだ。
「我が種族は自らの手を汚さず」
「そのうえで」
「まさか」
「相手を倒すべく巨大な戦闘用兵器を作った」
「やはり」
「それか」
誰もがそれはある程度予想していたので驚かなかった。
「そうなりましたか」
「そしてそれこそが」
「はい、ゼントラーディです」
やはり彼等であった。
「兵器は次第にエスカレートし」
「それに留まらず」
「さらにですね」
「そうです。そしてです」
さらに続くのであった。
「ゼントラーディ兵士より強力な新たなる兵士」
「それこそが」
「あの」
「はい、エビルを造った」
そう書いてあるのだった。
「何時果てるとも知れぬ長きに渡る戦いは続き」
「随分と長くかかったのだな」
ヴィレッタがそれを聞いて述べた。
「聞く限りだと」
「その様です。そうしてです」
エキセドルは彼女に応えてからさらに話す。
「やがて我等はプロトデビルンによって滅びの道を辿りぬ」
「エキセドル艦長」
それを聞いたガムリンがエキセドルに問うてきた。
「我等の祖先を滅ぼしたのはプロトデビルンなのですか?」
「今まで、ですが」
エキセドルは言葉を一旦置いてからガムリンの言葉に応えた。
「プロトカルチャーの滅亡については諸説ありました」
「そうだったのですか」
「諸説が」
「宇宙怪獣をはじめとする外敵の襲来」
まずはそれだという。
「そしてそれを回避する為に行われた補完計画」
「それも前から?」
シンジはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「プロトカルチャーも行おうとしていたんですか」
「あくまで説の一つです」
エキセドルは驚きを隠せない彼にこう告げた。
「ですから」
「そうですか」
「他にはです」
彼はさらに話すのであった。
「制御不可能となったゼントラーディ、メルトランディによる殲滅」
「私達ね」
ミスティがそれを聞いて呟いた。
「つまりは」
「そうです。それにプロトデビルンも加えられるます」
「生きる意志を吸い取るプロトデビルンは」
そこから話すシェリルだった。
「まさに知的生命体の天敵ね」
「そしてそのプロトデビルンは」
洸がそれについて言う。
「何処から来たんだ?一体」
「別の宇宙か世界からか?」
今言ったのは黄金だった。
「俺達みたいにな」
「有り得るわね、それも」
ルナもそれを否定しなかった。
「本当に」
「おそらくはこの先に手掛かりが」
ここでまた言うエキセドルだった。
「ある筈です」
「しかしもう」
ガムリンがここで残念そうに言う。
「通路はここで」
「待って」
しかしここでシェリルが見つけた。
「ここにも文字があるわ」
「これは」
エキセドルはその文字の解読もはじめた。それは。
「平和の証たる者、触れれば扉開かれん」
「平和の証たる者!?」
「というと」
「この言葉に何かの鍵が隠されているに違いありませんな」
「あの」
ミレーヌが出て来た。
「あたしにも見せてくれますか?」
「いや、落ち着け」
金竜がその彼を宥める。
「尖った部分もある。危ないぞ」
「痛っ」
言った側からだった。ミレーヌはその指を傷付けてしまった。
それで手を引っ込めてからだ。彼女はまた言った。
「ちょっと指の先を切っただけですから」
「ですが気をつけて下さい」
ガムリンはその彼女を心配して話した。
「破傷風になる恐れだってありますからね」
「え、ええ」
「すぐに消毒しましょう」
千葉が早速消毒の道具等を出してきた。
「じゃあ少し滲みますが」
「御願いします」
ミレーヌが消毒を受けようとしたその時だった。
不意に彼等の先の壁が光ってだ。何かが起こった。
「何っ、これは」
「影が開き出す!?」
「おお、これぞまさしく」
エキセドルが言う言葉は。
「デカルチャー・・・・・・」
「平和の証たる者よ」
「!?この声は」
「まさか」
「プロトカルチャー!?」
誰もが瞬時にそう察した。
「これが」
「我は」
その声がまた言って来た。
「プロトカルチャーの遺せし言の葉を蓄え」
「言葉を」
「それを」
「後の世に伝える役目とし」
その言葉が続けられていく。
「ここに眠るものなり」
「どうやら起こしてしまったようですな」
エキセドルはそれを聞いて述べた。
「これは」
「平和の証たる者」
声はまた言ってきた。
「触れれば扉は開き」
「扉が」
「それが」
「我を眠りから呼び覚ます者なり」
「一体」
そこまで聞いて考える顔になるガムリンだった。
「平和の証たる者とは」
「それは」
声がまた言ってきた。
「異種族の血の混ざり合いし者」
「ってことは」
「それは」
皆ここでミレーヌを見るのだった。
「ミレーヌさん、貴女です!」
「あたし!?」
ガムリンの言葉に思わず応えるミレーヌだった。
「あたしって・・・・・・」
「平和の証たる者とは!」
「確かに」
ここでエキセドルはエイジも見て言った。
「貴方もですが」
「僕もまた」
「そして貴方達も」
今度は健一達も見る。ロンド=ベルには多かった。
「二つの勢力の間に生まれた平和の象徴達」
「あたしが」
「僕が」
「俺達は」
「この時が来るのを待っていた」
声がまた言ってきた。
「平和を司る者達よ」
「はい」
「僕に」
「俺達への言葉か」
「時空の歪みより異次元のエネルギー体が戦闘兵士エビルに取り憑いた」
「エネルギー体・・・・・・」
健一はそれを呟いた。
「それがなのか」
「取り憑いたって」
「何かさ」
「そうでごわすな」
大次郎は日吉の言葉に頷いた。
「オカルトみたいになってきたよね」
「全くでごわす」
「その異次元のエネルギーは悪魔の様な存在となった」
「そういえばあれは」
「確かに」
「そういった」
彼等にしてもそう思うところだった。
「我々はそれをプロトデビルンと呼んだ」
「プロトデビルン!」
「それじゃあ」
「彼等は」
「そうね」
リツコも真剣な顔で頷く。
「戦闘兵士エビルが変化したものだったのね」
「そして」
セニアも言う。
「エビルを変化させたものは異次元のエネルギー」
「プロトデビルンはあらゆる銀河の生物のスピリチアを奪い取った」
声がまた語ってきた。
「彼等はスピリチアがなければ生きてゆけぬ存在なのだ」
「そのスピリチアだが」
「そうよね」
「何なんだ?」
ここでまた疑問が生じていた。
「それは一体」
「話を聞くと」
「精神とか魂の様なものみたいね」
シェリルはそう推察した。
「語源からも考えて」
「おそらくはじゃ」
兵左衛門も語ってきた。
「奴等が吸い取る生きる気力やその他の総称じゃな」
「それですか」
「スピリチアとは」
「彼等はあまりに無造作にスピリチアを乱獲した」
また声は語った。
「その為スピリチアを持つ生物がいなくなり絶えかけた」
「乱獲で」
「それで」
「そして彼等は生命の源を自ら断ってしまい」
「その辺りは動物と同じ?」
「そうよね、普通の」
「そんな感じよね」
皆話を聞いて思ったのだった。
「何か」
「そういう感じだけれど」
「そして力を弱めた」
「つまりです」
エキセドルはここでまたわかった。
「彼等は自らそのスピリチアを生み出せないわけですね」
「スピリチアを喪失した彼等は以降力を弱めた」
そうなったというのだ。
「さらにある神秘的な力が彼等を封じ込め」
「神秘的な力!?」
「それは一体」
ここでまた謎が出て来た。しかし声の話はそのまま続く。
「長き眠りにつかせたのだ」
「その力って」
「神秘な力とは」
「何なんですか?」
「アニマスピリチア」
ここでエキセドルが呟いた。
「それですね」
「アニマスピリチア、それは」
「!?」
「誰だ!」
ここで銃声がした。ヴィレッタが放ったのだ。
「そこにいるな」
「いきなり銃弾を浴びせるなんてね」
ここで女の声がしてきた。
「随分と手荒な挨拶だねえ」
「御前は!」
「エツィーラか!」
マーグとロゼが咄嗟に身構えた。
「何故ここにいる!」
「貴様程の者が!」
「ちょっとね。面白いものがあるからね」
そう言ってであった。赤い髪の女が出て来たのだった。異様な巫女の服をした派手な女だ。その手には杖がある。
「だからなんだよ」
「皆、気をつけてくれ」
マーグが全員に告げる。
「この女こそエツィーラ=トーラーだ」
「!?トーラーっていったら」
「レビの」
何人かはこのことに気付いた。
「名字だけれどよ」
「まさか」
「そのまさかだ。バルマー十二支族の一家トーラー家の者だ」
「マーグ様のギシン家と同じです」
ロゼも言ってきた。
「その家の者です」
「じゃあバルマーの中でも」
「かなりの高官!?」
「この女が」
「そう」
エツィーラも得意げに自分から言ってきた。
「帝国の祭司長さ」
「その貴様が何の用だ」
ヴィレッタは既に彼女に銃を向けている。
「それは何故だ」
「それはね・・・・・・んっ!」
突如として壁が光った。そうしてだった。
「これは!?」
「おお、遺跡が」
レツィーラとエキセドルは同時に声をあげた。
「何か起こるね」
「今度は一体・・・・・・」
「近付くプロトデビルンは殲滅すべし」
これが今度の言葉だった。
「近付くアニマスピリチアは迎えるべし」
「アニマスピリチア・・・・・・」
「また」
「それのある所」
声の言葉が次第に小さなものになってきていた。
「それこそ即ち半永世・・・・・・」
「!?終わった」
「これで」
声が途切れた。まさにそれで終わりであった。
「気配が消えた」
「これで」
「もう何処にも」
「おやおや」
レツィーラもそれを感じ取っていた。そのうえでの余裕の言葉だった。
「盗み聞きしたのがよくなかったのかねえ」
「また聞こう」
ヴィレッタの言葉はいよいよ剣呑なものになっていた。
「何の用だ、バルマーの人間がだ
「プロトデビルンの情報を手に入れる為さ」
それだというのだ。
「あの連中は私達にとっても厄介な相手だからね」
「ふむ。それでは」
彼女のその言葉を聞いて言うエキセドルだった。
「我等の敵は同じだというのですか」
「まあそうだね」
レツィーラは彼の言葉に応えながらこんなことも言った。
「ゼントラーディ人のあんたに言われるのは納得がいかないけれどね」
「確かに」
それはエキセドルやガルドも認めた。
「我等の戦争も長きですからな」
「私達はね」
レツィーラはここでまた言ってきた。
「ここにいる地球人みたいにあんた達と手を組むつもりはないけれどね」
「私達ともなのね」
「そうさ」
こうメルトランディ人のミスティにも答えるのだった。
「支配するならともかくね」
「またか」
洸はそれを聞いて不機嫌さを見せてきた。
「御前達はそうやって」
「最近分が悪いけれどね。裏切り者もいるし」
「それは私のことか?」
「そうさ」
ロゼに対する返答だった。
「あんたもそうだしね」
「手前のその態度」
それを見て起こったのは一平だった。
「あのハザルとかいう奴と同じだな」
「そうね、確かに」
「これがバルマーだっていうのね」
「やっぱり」
「ハザル!?」
しかしだった。レツィーラはここで一旦忘れた様な顔をしてきた。そのうえで思い出した様な顔になってそのうえで言ってきたのである。
「ああ、あのお坊ちゃんかい」
「お坊ちゃん!?」
「あいつが」
「シヴァーのね」
また一同の知らない名前であった。
「あれも父親同様に救いようのない奴だね」
「あいつが救いようのない」
「しかも父親!?」
「また何が」
「ハザル=ゴッツォは宰相シヴァー=ゴッツォの唯一人の子供です」
ここでロゼが話す。
「ですから」
「そうか、それで今」
「父親を」
「鍵さえ手に入ればいいと思ってるなんてね」
「鍵!?何なんだそれは」
「一体」
ロンド=ベルにとって謎がまた出て来た。
「鍵というと」
「それは」
「無限力の発動が近いのに詰まらないプライドにしがみついてね」
レツィーラはまた言った。
「所詮小者なのさ」
「おかしなことを言うものだな」
マーグがその彼女に言ってきた。
「レツィーラ=トーラー、御前の言葉とは思えぬ」
「へえ、何か知ってるのかい?」
「少なくともだ」
マーグはレツィーラを見据えて言ってきていた。
「以前の御前の口調とは全く違っている」
「えっ、そうなのか!?」
「昔は違ったの」
「今みたいなのじゃなくて」
「そうだった」
言葉は既に過去形であった。
「どういうことなんですか!?」
「違うって」
「以前のこの女は徳の高い祭司長だった」
「へっ!?」
それを聞いて驚きの声をあげたのはジュドーだった。
「この如何にも洗脳とか謀略とかしそうなおばさんがかよ」
「おばさんは余計だね」
レツィーラは今の言葉にはすぐに反応した。
「私はまだ二十代なんだよ」
「いや、外見はそうでも」
「中身はって結構あるし」
「そうよね」
「れっきとした二十代さ。しかしマーグ」
「何だ?」
「あんたはまだ知らないのさ」
こうマーグに言うのであった。
「まだね」
「私が何を知らないというのだ?」
「何もかもがだよ」
知らないというのである。
「知らないね、本当にね」
「少なくとも御前が変わったのは知っている」
これがマーグの返答だった。
「それはだ」
「言うようにはなったね」
「そうだな。だが御前はだ」
マーグの語るその言葉は鋭いものだった。
「全くの別人になってしまったな」
「知ったからね」
だからだと返すレツィーラだった。
「私もね」
「何をだ?」
「無限力にアポカリュプシスをね」
「アポカリュプシス・・・・・・」
それを聞いたエキセドルの反応が一変した。
「その言葉は」
「エキセドルさん、どうしたんですか!?」
「何か様子がおかしいですけれど」
「プロトデビルンよりももっと深い位置に記憶されている・・・・・・」
顔から血の気が引いていた。
「何でしょう、それは」
「それを発動させる力」
そのレツィーラがまた語る。
「そしてそれに取り憑かれた者達」
「それを一体」
「どうするつもりなんだ?」
「私はそれを知りたいだけさ」
「まさか」
ここまで聞いたシェリルの言葉である。
「それはイデに取り憑かれたソロシップのこと?」
「答えとしては不十分だね」
これはエツィーラの返答だった。
「とりあえずはね」
「とりあえずは」
「この遺跡の浮上でまたスケジュールが進むね」
「待て」
マーグがまた彼女に言ってきた。
「御前はどうも私達が帝国の手の内にいると思っているようだな」
「さて、それはどうかね」
「それは違うな」
エツィーラを見据えての言葉だった。
「残念だがな」
「違うっていうのかい?」
「現に私は今貴様の前にいる」
彼自身を出しての言葉だった。「こうしてだ」
「じゃあ聞くよ」
「何をだ?」
「そのあんたが今この惑星にいる」
「このことがか」
「そうさ。プロトデビルンの活動宙域にいる」
このことを言うのであった。
「それはどうしてだい?」
「それはもう読んでいる」
タケルの言葉だ。
「帝国が誘い出したというんだな」
「そうさ。多くの勢力を退け帝国の一個方面軍を崩壊させた」
彼等のこれまでの戦いの結果だ。
「これでも帝国も敵が多くてねえ」
「っていうか多過ぎるよな」
「そうよね」
甲児とルナが顔を見合わせて言う。
「宇宙怪獣にバッフ=クランにそれによ」
「プロトデビルンだってね」
「こっちも大変ってわけでね。キャンベルやボアザンも造反したしね」
「今時あんな封建主義を敷いているからだ」
エイジの返答は冷たいものだった。
「造反が相次ぐのも道理だ」
「ふん、バルマー人以外に力を渡して何になるってんだい?」
これがレツィーラの返答だった。
「それこそ同胞でもないのにね」
「その考えこそが間違いだ」
マーグはまたレツィーラに言い返した。
「バルマーも地球もない。我等は所詮同じだ」
「そうだ!ニュータイプも超能力者もコーディネイターもサイボーグも関係ない!」
凱の言葉だ。
「そんなことはだ!」
「まあいいさ。とりあえずあんた達はそのまま戦ってもらうよ」
言いながら一歩退くレツィーラだった。
「これで必要な情報は手に入ったし。後は」
「待て!」
ガムリンが追おうとする。
「逃がさんぞ!」
「!!」
「これは!」
今度は爆発音が聞こえてきた。衝撃が僅かに一同のところにも来た。
「爆発・・・・・・」
「一体何処で」
「来たようだね」
レツィーラはそれを聞いても涼しい顔であった。
「この遺跡の存在を邪魔に思う連中がね」
「それってまさか」
「プロトデビルン?」
「まさかね」
レツィーラの言葉が楽しむものになっていた。
「アポカリュプシスの縮図がこの目で見られるなんてね」
「待て!」
去ろうとする彼女をサコンも追おうとする。
「そのアポカリュプシスとは何だ!」
「さあね」
それについてはあえて言おうとしないエツィーラだった。
「私の集めた知識は私だけのものさ」
「ちっ、そう言うと思ったぜ!」
「あんたみたいな人間はね!」
「けれどもうすぐね」
エツィーラは悠然と笑ったまま彼等に告げる。
「もうすぐあんた達も身を以て知ることになるよ」
「身を以て」
「何を」
「無限の力の目的をね」
こう言って姿を消すのだった。まるで煙の様にだ。
「くそっ、逃がしたか!」
「何て速さ!」
「けれどね」
エクセレンがここで言った。
「これ以上ここにいても仕方ないわ」
「そうですね」
エキセドルがその言葉に頷く。
「それでは。外に出ましょう」
「急いで」
「今から」
彼等はすぐに外に向かう。しかしであった。
「無限の力」
「アポカリュプシス」
その二つの言葉が彼等の中に残った。
「それは一体」
「何だというの?」
彼等が戻るとだった。敵はまだ動いていなかった。一機も来ていない。
「衛星軌道上の敵の動きは」
「先程までは超高空より遺跡への攻撃がありました」
美穂が艦橋に戻ったエキセドルに告げる。
「ですが今は沈黙しています」
「おかしいですね」
エキセドルはそれを聞いて呟いた。
「彼等は遺跡を破壊する気がないのでしょうか」
「大気圏以外は」
今度はサリーが言ってきた。
「敵のジャミングにより状況が殆ど掴めません」
「わかりました」
エキセドルはそれを聞いて言った。
「今のうちに全機出撃です」
「わかりました」
「それでは」
こうして全軍戦闘態勢に入ったその時だった。
「敵です!」
「来ます!」
こうしてだった。両軍は再びラクスで戦闘に入るのだった。
すぐにロンド=ベルを取り囲んで来る。ここれフォッカーが言ってきた。
「いいか!」
「はい!」
「敵のパイロットはコントロールを受けているだけだ!」
柿崎からわかったことである。
「できるだけコクピットは狙うな!」
「わかってます!」
「それは」
「俺だってな!」
その柿崎も当然いる。
「やられてばかりじゃねえからな!」
「そうだな。しかし」
輝はここでふと思うのだった。
「バサラ君はまだか。戻って来る時じゃないんだな」
「よし、来たぞ!」
「ならあたしが!」
ミレーヌがここで叫ぶ。
「歌うわ!バサラの分までね!」
「うっ・・・・・・」
ここで洸が何かを感じた。それはライディーンの共鳴だった。
「これは」
「洸、どうしたの?」
「い、いや」
まずは誤魔化した洸だった。
「何でもないよ」
「そうなの」
(胸騒ぎがする)
だが心の中では言うのだった。
(これはまさか)
そして考えるのだった。
(あの女が言っていたアポカリュプシスの前兆なのか?)
「来たぞ!」
「ええ!」
だがこれ以上考えている時間はなかった。
「全軍戦闘用意!」
「コクピットは狙わなくても派手に行くぜ!」
こうして戦いに入った。プロトデビルン達は四方八方から来る。ロンド=ベルは遺跡、そしてシティ7を囲んでそのうえで戦うのであった。
暫くそのまま戦いが続いた。そして一時間程経つとだった。
バロータ軍はいなくなった。とりあえずは彼等の勝利だった。
「油断するな」
「ええ」
「そうですね」
サエグサとトーレスがブライトの言葉に頷く。
「また来ますね」
「第二陣が」
「そうだ、間違いなく来る」
それはもう読んでいるブライトだった。
「奴等のことだ。絶対にな」
「そうですね。それは」
「間違いなく」
誰もがそう思っていた。しかしその時だった。
「何っ!?」
「バッフ=クラン軍!?」
「まさかまた」
「出て来た!?」
「惑星に効果できたのはこれだけか」
ダラムが部下達に問う。
「今は」
「はい」
部下の一人が答える。
「残りは衛星軌道上の艦隊と交戦中か」
「若しくはか」
「はい、あるいは」
「撃沈されたか」
ダラムは苦い顔で述べた。
「これではだ」
「これでは?」
「手ぶらで帰っては財団に申し開きが立たんか」
「ダラム様」
ギジェもいた。
「ロゴ=ダウの異星人は巨神以外にも相当の戦力を持っています」
「報告は聞いている」
ダラムはこうギジェに返した。
「だが」
「だが、ですか」
「雇い主のオーメ財団の為にもだ」
「財団の為にも」
「我々は結果を出さなければならん」
「はい」
「ギジェ」
ダラムはギジェに対して告げてきた。
「御前はイデ探索を願い軍を引いた身だ」
「その通りです」
「働きを期待しているぞ」
「有り難き御言葉」
「各員に告ぐ」
そのうえで全軍に告げてきた。
「我々の任務は何だ」
「はい、イデの力を手に入れることです」
「そしてバッフ星に持ち帰ることです」
「そうだ。邪魔をするロゴ=ダウの異星人は駆逐しろ」
そうしろというのだ。
「それ以外は無視して構わん」
「あれは」
ここでバルゴも降下してきた。
「別の銀河からの種族、奴等もスピリチア再生種族か」
「げっ、あいつまで!」
「出て来たのかよ!」
ロンド=ベルの面々は彼の姿を確認して言った。
「こんなところで」
「余計に厄介なことに」
「だが」
ここでまた言うバルゴだった。
「我等の今の狙いはゲペルニッチ様の邪魔をする者達だ」
「長官!」
「わかっている」
大河はスワンの言葉に応える。
「各員はプロトデビルンと共にバッフ=クランも迎撃する!」
「了解デス!」
「まずい」
ここで洸は呟いた。
「胸騒ぎが収まらない、まさかまだ」
「レーダーに反応です!」
案の定ここでマヤが言った。
「今度は」
「誰だ!?」
「今度の勢力は」
「帝国軍です!」
彼等だというのだ。
「彼等です!」
「ちっ、四つの勢力が!」
「ここに!?」
彼等自身も入れての言葉だった。
「出て来たなんて」
「まさか」
「こっちも慈善事業をやってるわけじゃないんでね」
エツィーラがそこにいた。
「それじゃあね」
「!?」
「しまった!」
エツィーラがここで攻撃を放つ。しかしであった。
戦艦が狙われたのだった。ソロシップがだ。
「しまった!」
「ベス、大変だ!」
ハタリがベスに言う。
「機関部をやられた!」
「何だと!?」
「エンジンに異常発生!」
ジョリバが言う。
「航行に支障が出るぞ!」
「ははは、これでね」
エツィーラはエンジンにダメージを受けたソロシップを見て言う。
「発動条件の足しにはなるね」
「くっ、何てことだ」
「これでは」
「無限力をはじめとするあんた達の力を見せてもらおうかね」
「あの機体」
ヴィレッタはその攻撃を仕掛けてきた機体を来て言う。
「エツィーラ=トーラーか」
「帝国も来たか」
「はい、バルマー帝国です」
ギジェがダラムに報告する。
「あの者達もです」
「我等の敵か」
「その通りです」
バッフ=クランも帝国も既に戦闘に入っていたのだ。
「彼等もまた」
「だが」
しかしここでダラムは言った。
「奴等にイデの巨神を渡すわけにはいかん」
「それでは」
「邪魔をするなら戦う」
そうするというのだ。
「しかし今はだ」
「あくまで巨神を」
「そうですね」
「そうだ。攻めるぞ」
「はい」
こうしてだった。三つの勢力がロンド=ベルを完全に取り囲んだ。そうしてだった。
「来たぞ!」
「三つの勢力が」
「まずい・・・・・・」
「全ての軍が来たか」
サンドマンも今は表情が険しい。
「ここでか」
「あのですね」
小介はここで言った。
「僕の計算だと勝利の確率は限りなく」
「そんなことはどうでもいい!」
今叫んだのはドモンだった。
「ここまで来たら計算なぞ問題ではない!」
「左様、戦いそして生きる!」
キメラも言う。
「それだけだ。今の拙僧達はだ」
こうしてであった。彼等はその三つの勢力との戦いに入った。戦いはこれまでになく恐ろしいものになろうとしていた。

第九話完

2010・3・6  

 

第十話 四つ巴の中で  

                 第十話 四つ巴の中で
三つの勢力に囲まれ攻められようとしているロンド=ベル。その彼等にだ。
「くっ!」
「またか!」
「衛星軌道上からの砲撃です!」
メイリンが叫んで報告する。
「ここでまた」
「ここで」
「まずいわね」
タリアがここで顔を曇らせる。
「これでは遺跡は」
「となると」
ここで言ったのはユウナだった。
「プロトデビルンの狙いはあの遺跡なんだろうね」
「となりますと」
アズラエルも言う。
「彼等はそれ程までに自分達の情報を渡したくない。そうなりますかね」
「この星に集いしサンプル達よ」
ここでまた声がした。
「!?この声は」
「あのプロトデビルンの司令の」
「間違いない」
そしてダラムにエツィーラもであった。
「我等がこの星に降りるのを拒んだあの艦隊の司令か」
「いいねえ」
それぞれ言うのであった。
「ここで出て来たのか」
「役者が揃ってきたね」
「我が名はゲペルニッチ」
語ってきたのだった。
「この約束された星で自由と幸福を得たサンプル達よ」
「まさか」
「私達も!?」
ダラムとエツィーラはこうも考えた。
「入っているのか」
「心外だね、それは」
「見果てぬ夢に酔いしれ暮らすがいい」
こう言うゲペルニッチだった。
「引き換えにだ」
「引き換えに!?」
「何だっていうの!?」
「我々はスピリチアを吸収する」
そうするというのだ。
「永遠の生命の果てるまで」
「させるものか!」
タケルが彼のその言葉に返す。
「俺達もそう簡単にはだ!」
「永遠の命の果てるまで」
「くっ、まさかこの連中だ」
「そうだな、マーズ」
マーグが彼に対して頷いた。
「ここまで積極的に仕掛けて来なかったのは」
「俺達を飼い殺しにする為かよ!」
エイジが忌々しげに言った。
「ふざけやがって!」
「スピリチア」
またこの言葉を出すエキセドルだった。
「それによって」
「これこそ究極の夢」
ゲペルニッチの言葉は恍惚となってさえいた。
「スピリチアファーム」
「スピリチアファーム」
「何、それは」
サリーと美穂がそれを聞いて言った。
「ファームっていうと」
「牧場」
「そういうことね」
ミヅキがここでわかったのだった。
「私達は家畜ってことなのね」
「ダ、ダラム様」
「この者達は」
「うろたえるな」
ダラムは浮き足立つ彼等に対して告げた。
「イデの力を手に入れればだ」
「そ、そうですね」
「あれを手に入れれば」
「あの様な化け物恐れるに足りん」
「いいかい?」
エツィーラもであった。
「撤退は死刑にするからね」
「は、はい」
「わかっております」
十二支族に言われれば逆らうことはできなかった。
「それでは」
「我等は」
「このままロンド=ベルを倒すよ」
あくまでそうするというのだ。
「いいね」
「ではプロトデビルンは」
「無視をするのですか?」
「前に来たら倒すんだよ」
そうしろというのだ。
「それでいいね」
「は、はい」
「それでは」
(連中の計画通りにことが進むものか)
エツィーラはまた一人笑っていた。
(今ここには無限力の欠片達が集まっている)
戦場を見ての呟きである。
(アカシック=レコードがこの状況を静観するとお思いかい?)
「無理よ・・・・・・」6
さしものミレーヌも弱気になっていた。
「こんなの・・・・・・」
「ミレーヌさん!」
「周りが皆敵でしかもスピリチアファームだなんて」
さしもの彼女も弱気にならざるを得なかった。
「そんな状況でどうしたら」
「それでもなんだ!」
だがガムリンがその彼女に言う。
「それでもやるんだ!」
「でも・・・・・・」
「歌うんだ!」
彼は言った。
「ここは何としても歌うんだ!」
「歌う・・・・・・」
「さっき言ったじゃないですか!」
そのことも言うのだった。
「あいつの分まで歌うって!」
「それなら」
「そうです、歌を!」
彼はあくまで言う。
「貴女の歌を!」
「キィィーーーーッ!!」
グババも叫ぶ。これで決まりだった。
「よし、ここは!」
「全軍守り抜くわよ!」
ジェフリーとボビーが言う。
「あたしも今回最高に本気よ!」
「げっ、ボビーさんが本気になった!」
「これは確実に何かが起こる」
「っていうか起きてるし!」
「マクロスクウォーターの力見せてあげるわよ!」
まさに本気のボビーであった。動きが違う。
「あたしの操艦見なさい!」
「す、凄いなこれは」
オリファーも唖然となっている。
「あれだけの動きをする戦艦なんてはじめてだ」
「そうね」
マーベットも唖然であった。
「あれだけの動きができるなんて」
「そらそらそら!」
今も動くボビーであった。
「そいじょそこいらの艦には負けないわよ!」
「ソロシップはエンジンをやられて航行不能だ」
こちらは正反対だった。
「防戦に徹するしかない」
「よし、それならだ!」
コスモのイデオンも動く。
「俺達はここでだ!」
「守るのか?」
「家がなくなったら困るからな」
それを理由にするのだった。
「だからだ。ここで戦う!」
「そうか。頼んだぞ」
「ああ!」
「ところでコスモ」
カーシャがまた言ってきた。
「踏ん張るのね」
「いつもの根性論だが」
コスモはまた言った。
「ここはそうするしかないな」
「ええ、もうね」
「じゃあやってやる!」
選択肢はなかった。
「戦ってやる!敵が誰だろうと生きることを諦めてたまるか!」
「今のうちにだ」
サコンもサコンで動いていた。
「脱出ルートを出しておく」
「ああ、頼んだぞ」
「それはね」
皆彼にも言う。戦いは熾烈なものだった。
敵はまさに尽きずに次々に来る。その数は。
「ガルラ帝国の時みたいだな」
「ああ」
「そうね」
「百倍ってとこか?」
「三百倍はいるけれど」
三つの勢力はどれもそれだけの力を注ぎ込んできたのだ。
「よくもまあこんなに」
「特にバッフ=クラン」
一番数が多いのは彼等だった。
「何処にこれだけの戦力があるのか」
「信じられないわね」
「まさか」
ここでベスは言った。
「連中もまた銀河単位の勢力なのか?」
「有り得るな」
頷いたのはモエラだった。
「それもな」
「そうだな。確かにな」
「今は耐えるしかないにしてもな」
「それだけの戦力があるのはわかっておくべきだな」
「ああ」
「これからの為にな」
こう話してであった。今はその数に耐えていた。しかしその中で。
ライディーンがグラビルを撃墜した時だった。
「!?」
「こいつ」
「ゴガアアアアアッ!」
絶叫してだ。そのうえでライディーンに襲い掛かって来たのだ。
そしてそのやけっぱちの攻撃を受けてだ。ライディーンは海に落ちてしまった。
「洸!」
「まずい!」
「ライディーンが!」
その彼を助けようとブルーガーが向かう。その中で。
「うう・・・・・・」
洸は闇の中にいた。彼はその中で思った。
「俺は・・・・・・死んだのか」
「いいえ」
だがそれは。誰かの声によって否定されたのだった。
「貴方は意識を失っているだけです」
「その声は!?」
彼にはすぐわかることだった。
「まさか」
「はい、そうです」
その通りだという返答だった。
「私は貴方の母ひびき玲子」
「やっぱり、母さん!」
「ですが今はムー帝国皇女レムリアとして」
「レムリアとして」
「勇者ひびき洸に会いに来ました」
そうだというのである。
「だから今ここに」
「でも」
しかしここで洸は言った。
「母さんは妖魔帝国の支配者大魔妖帝バラオとの戦いで」
「あの戦い、そうね」
「ラ=ムーの星を発動させて」
「確かに私は」
そのことへの返答も来た。
「バラオとの戦いで肉体から魂を失いました」
「それなのに」
「しかしです」
だが、だというのだ。
「その魂は勇者と共にあるべきライディーンに宿ったのです。
「じゃあ」
「はい」
「この遺跡の場所を俺に教えてくれたのも」
「貴方に最後の危機を教える為です」
「それはあのバルマーの祭司長が言っていた」
それが何かもわかるのだった。
「アポカリュプシスなのか」
「そうです」
「じゃあ教えてくれ、母さん」
その母に対する言葉だ。
「最後の危機」
「その危機・・・・・・」
「そのアポカリュプシスとは一体何なんだ!?」
「それを私の口から語ることには何の意味も持ちません」
だが彼女はこう答えるだけだった。
「私に言えることは一つだけ」
「一つだけ・・・・・・」
「そう、戦うのです」
こう言うのだった。
「戦うのです、洸」
「母さん・・・・・・!」
「強い意志、生きようとする意志」
彼女も言うのだった。
「人として生きる意志」
「それこそが」
「それだけがアポカリュプシスに打ち勝つ術です」
「待ってくれ、母さん!」
洸はその母に対して叫んだ。
「それだけじゃ何もわからないよ!」
「戦うのです」
だが母はこう言うのだけだった。
「ラ=ムーの星はライディーンと共にあります」
「ライディーンと」
「母さん、じゃあ俺は」
「戦うのです、洸」
またこの言葉を出したのだった。
「人類と銀河の為に」
「その為に」
「それがムーの民の願いであり母の願いです」
「願い・・・・・・」
「今ライディーンの最後の封印を解きます」
そうするというのだ。
「洸、負けないで・・・・・・」
「母さーーーーん!」
「おい、洸!」
「洸!」
神宮寺とマリが必死に呼び掛ける。
「生きてるのか、おい!」
「返事して!これ位じゃ死なないわよね!」
「ゴガアアアアッ!」
「あの化け物は全然平気かよ!」
ジョナサンが舌打ちの様に言う。
「あの化け物はよ!」
「まずい」
シラーも言う。
「洸も復帰していない。ここは」
「戦うしかない」
クインシィは既に剣を抜いている。
「それだけだ」
「これ位で人間死ぬかよ!」
「そうです!」
トールとニコルが言う。
「俺なんか機体が真っ二つになっても生きてたんだぞ!」
「僕だって!あれだけのダメージを受けても!」
「死ぬ訳がねえんだよ!」
トッドも叫ぶ。
「バーンの旦那!あんたなんかハイパー化から生き返ってきたよな!」
「確かにな。あの程度ではな」
「そうだよ、死ぬかよ!」
彼も力説する。
「絶対にな!」
「!?」
しかしこの時だった。
「な、何だ!?」
「この地鳴りは!?」
「地震!?」
「ち、違う!」
そうなのだった。違っていた。
「海が・・・・・・」
「割れてきた・・・・・・」
そしてだった。その割れた海から出て来てだった。
「ラァァァイディィィィィィン!!」
「ラ、ライディーン!」
「洸、生きてたのか!」
「やっぱり!」
「けれどあの光は一体」
「何だ!?」
「まさか」
「ラァァァァァイ!!」
その声を聞いてだった。マリは確信した。
「無事だったのね!」
「心配かけたなマリ!」
その彼からの言葉だ。
「もう大丈夫だぜ!」
「けれどあの」
「爆発的なエネルギーは」
「一体」
「そうだ」
神宮寺にはある程度わかることだった。
「バラオを倒したあの時の」
「ああ、ミスター!」
彼にも応える洸だった。
「ライディーンは再びムートロンを開放した!」
「ムートロン開放!?」
「しかも巨大化もせずに!?」
「まさかと思うが」
大文字がここで言った。
「ライディーンはあのエネルギーを制御しているのか」
「あの光は」
「まさに」
「神の力」
デボラ達三姉妹が言う。
「それね」
「今のライディーンは」
「最早」
「エモーショナル!」
フェイも歓声じみた声を出す。
「ちょびっとデンジャラスな感じね!」
「あれがライディーンの真の力か」
「まさしく」
「行くぞプロトデビルン!」
洸は言う。
「俺は戦う!人類と銀河の為に!」
「ゴガアアアッ!!」
「行くぞ!」
そしてグラビルに向かい。一撃で退けたのだった。
「ゴガアアアアッ!」
「い、今まで以上に」
「強くなってる」
「ライディーンも」
それは見てもわかることだった。
「何て強さ・・・・・・」
「本当に」
「行くぞライディーン!」
洸は今まさにライディーンと一心同体であった。
「最後まで戦うぞ!」
「あれは」
「シェリルさん」
カララは彼女がライディーンを見ていることに気付いて声をかけた。
「あのライディーンの力」
「ライディーンの力」
「あれもイデやザ=パワーと同じく」
力は多くあった。
「無限力の一端だとしたら」
「そうだとしたら」
「そんな力が幾つも存在するなんて何かがおかしいわ」
「そういえば」
カララもそれに思い立ったのだ。
「それは」
「ええ、それは」
「おかしいわね」
こう言ってであった。戦いを見続けるのであった。
その中でだ。クスハ、ブリットはエツィーラと戦いながらだ。話をしていた。
「おやおや」
「!?一体」
「何が言いたいんだ?」
「二人共よくないねえ」
エツィーラは笑いながら言ってきたのだった。
「念が乱れてるよ」
「えっ!?」
「気付いている!?」
「私を誰だと思ってるんだい?」
その倣岸不遜な物言いから話すのだった。
「バルマーの祭司長だよ」
「そうさ。だからわかるんだよ」
こう言うのであった。
「だからなのさ」
「この人、一体」
「何の目的で俺達と」
「確かに私はあんた達の敵さ」
それは彼女自身も認めることだった。
「けれどね」
「けれど!?」
「何だというんだ!?」
「ハザル坊や達とは目的が違うんだよ」
そうだというのだ。
「底が違うんだよ」
「御前の目的はわからない」
ここで洸が話に加わってきた。
「だが」
「だが。何だい?」
「一つだけはっきりとしていることがある!」
こう言うのだった。
「それはだ!」
「じゃあ聞かせてもらおうじゃないの?」
エツィーラはその彼の言葉を受けても平然としていた。
「太陽の勇者さん」
「御前が邪悪な目的で俺達に接したということだ?」
「おやおや」
エツィーラは今の彼の言葉を受けて肩をすくめてみせたのだった。
「何かって思えば」
「何だというつもりだ!違うのか!」
「ありきたりな答えだねえ、坊や」
「そう言うのか」
「言うさ、何度でも言ってやろうかい?」
冷笑と共の言葉だった。
「そっちの気の済むまでね」
「くっ、この女・・・・・・」
洸はその彼女に対して歯噛みした。
「そんなことを言うのか」
「言うさ。とにかくね」
さらにであった。
「あんた達もじっくりも見せてもらうよ」
「洸君、この相手は」
「はい、わかってます」
洸はクスハのその言葉に頷く。
「この女は」
「そうだな。気をつけるべきだ」
ブリットも同じものを感じていた。彼等の戦いはかなり熾烈だった。
そしてだ。ギジェはイデオンに向かっていた。そうしてだった。
「ユウキ=コスモか!」
「俺の名前を知っている!?」
「何度かやり取りを聞かせてもらった」
だから知っているというのだ。
「だからだ。そしてだ」
「そして?」
「ここで終わらせる」
こう言ってイデオンに向かう。
「この戦いでだ!」
「くっ、こいつ」
コスモはギジェのその執念を感じ取って呟いた。
「何故ここまでイデオンに執着する!?」
「イデもあるしね」
エツィーラは彼等も見ていた。
「この戦い、本当に面白いねえ」
「しかし」
ベスはこの戦いの中で呟いた。
「何だというのだ?」
「そうだな、これは」
「ああ、正規軍の戦い方じゃない」
軍人でもあるベスにはわかることだった。ハタリにもわかった。
「これはむしろ」
「ゲリラ的だ。だとすると」
ベスは考えを巡らせ続ける。
「バッフ=クラン軍の組織はどうなっているんだ!?」
「グワアアアアアアッ!」
「歌わなきゃ!」
ミレーヌもグラビルを前に歌っている。
「あたしだってサウンドフォース、ファイアーボンバーなんだから!」
「くっ!」
ここでギジェの乗機がイデオンの攻撃を受けてしまった。
「しまった!」
「やったわねコスモ!」
「いや、まだ生きている」
こうカーシャに返す。見ればその通りだった。
「まだ奴は」
「この力は何だ!?」
ギジェは今は周りを見ていた。
「ロゴ=ダウの異星人は巨神以外にも無限力を持っているのか!?」
こう感じ取ったのだ。
「だが、私は死ぬ訳にはいかない。あの力の発現を見るまでは!」
「これ以上の戦闘は無意味だ」
バラムも言う。既に自軍は殆ど残ってはいない。
「撤退する」
「はい、それでは」
「バッフ=クランは退いたな」
「はい」
ベスの言葉にカララが応える。
「ですが彼等は」
「そうだな」
「イデを手に入れることを諦めたわけではないでしょう」
「間違いなくな」
やがてガビルもグラビルもバルゴも撤退していた。そしてバルマー軍も。
「減ったね」
「九割を失いました」
「うふふ、やるじゃないか」
エツィーラは余裕の笑みを浮かべていた。
「このジュモーラを怯ませるなんてね」
「ジュモーラ!?」
「あのマシンはジュモーラっていうのか」
ここでロンド=ベルの面々もエツィーラのマシンの名前も知るのだった。
「そういうのね」
「そうか」
「お陰で陛下にいい土産話が出来たよ。それじゃあね」
「撤退した」
「バルマーも」
「しかしあの女」
「何を考えているの!?」
それが今のロンド=ベルの面々にはわからないことだった。
そしてだ。今は誰もいなくなった。しかしであった。
「サコン」
「どうなんだ!?」
ピートとリーがすぐにサコンに問うた。
「脱出ルートはまだか!?」
「見つからないのか!?」
「駄目だ・・・・・・」
サコンの言葉は彼にしては珍しく弱音だった。
「敵の包囲網を破らない限りは」
「脱出は無理なんですね」
「それでなのかよ」
ブンタとヤマガタケも言う。
「だとすれば」
「俺達はこのままなのかよ」
「いや、待て!」
しかしだった。ここでサンシローが言う。
「何か来るぞ!」
「何か!?」
「何かって!?」
「艦長!」
サリーがエキセドルに叫ぶ。
「この空域に高速で接近する物体をキャッチしました!」
「物体!?」
「間違いありません!」
美穂も言う。
「これってまさか・・・・・・」
「来たぜ!」
そしてだった。赤いバルキリーが来たのであった。
「待たせたな!」
「バ、バサラ!」
「今まで何処に行っていたんだ!?」
すぐにミレーヌとガムリンが彼に問うた。
「一体今まで」
「本当に」
「へへ、ちょっと銀河にね」
バサラは笑ってこう答えた。
「言ってたんだよ」
「銀河!?」
「さあ、皆行くぜ!」
バサラはまた笑って言った。叫んだと言ってもいい。
「さあ、皆行くぜ!」
「!?」
「ギターを」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーーっ!!」
そして奏でた歌は。
「!!」
マクロス7の中の花束の少女も反応した。
そしてロンド=ベルの面々もだ。思わず言った。
「一体」
「けれど」
「何ていい曲・・・・・・」
「パワー=トゥ=ザ=ドリーム!」
バサラはその技の名前を叫んだ。
「俺の新しい曲だ」
「そうか。バサラの奴」
レイは微笑んで言った。
「何があったか知らんが完全に吹っ切れたな」
「大尉!」
ガムリンが金竜に叫ぶ。
「あれを見て下さい!」
「!あれは!!」
「バ・・・・・・サ・・・・・・ラ・・・・・・」
シビルだった。何時の間にか彼女もいた。
「何故あの女が」
「くそっ!」
そしてギギルもいた
「あのアニマスピリチアのおかげでシビルが目覚めたのはいいが」
彼はそれはよしとしていた。
「今度は俺の調子がおかしくなっちまったじゃねえかよ!」
「見つけたぞ!」
そこにガビルも来た。
「発見美!」
「ガビルか!」
「ギギル、シビル、喜ぶがいい!」
その二人への言葉だった。
「貴様達はこのガビルが消滅の美に包んでやる!」
「何だと!?」
「私の美を受けるのだ!」
言いながら攻撃を浴びせてきた。
「ぐわっ!」
「どうだ、この美は!」
「くっ・・・・・・」
ギギルは何とか攻撃に耐えてだ。そのうえでそのガビルに問うのだった。
「ガビル、どうしてだ」
「どうしてだと!?」
「どうしてシビルを狙いやがる!」
彼が問うのはこのことだった。
「それは何故だ!」
「ゲペルニッチ様の御命令だ!」
「何っ!?」
「わかったなら死ぬのだ。抹殺美!」
こう言ってまた攻撃を浴びせる。ギギルはその中でまた言うのだった。
「何故だ、何故・・・・・・」
「させるかよ!」
何とここでだ。バサラがシビルの方に向かう。
「お、おい!」
「また何するってんだ!」
「どんな無茶をする気だ!」
「バサラ、何する気なの!?」
ミレーヌも彼に問う。
「今度は」
「シビルを助けに行く!」
そうするというのである。
「今からな!」
「えっ、シビルって」
またしても唖然となるミレーヌだった。
「あのプロトデビルンの女の子!?」
「シビルはな!」
そしてバサラはまた叫ぶ。
「俺に銀河を見せてくれた!」
「バサラ・・・・・・」
そのシビルがバサラを呼んでいた。
「それならだ!俺もだ!」
「あの野郎・・・・・・」
ギギルも攻撃を受けながらそのバサラを見て呟く。
「本気か」
「ふふふ、消えていけシビル」
だがその間にもガビルの攻撃は続いていた。
「消滅美!」
「シビルーーーーーーーーーッ!!」
だがここで。
「!!」
「何っ!?」
「光が!」
バサラとギギルはシビルが光の球体に包まれたのを見て声をあげた。
「何だこりゃ・・・・・・」
「馬鹿な・・・・・・」
ガビルもまた言う。
「あいつはまだ目覚めてはいない筈だ」
「シビル、御前・・・・・・」
バサラもその彼女を見て動きを止めていた。
「何だってんだ!?」
「おい、バサラ!」
ここでギギルがバサラに声をかけてきた。
「俺はな!」
「何だってんだ!?」
「シビルの為ならどうなってもいいんだ!」
こう言うのだった。
「俺はなだ!」
「その言葉嘘じゃねえな!」
「俺はギギルだ!」
こう叫んで。そして。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「何っ!?」
バサラもその曲を聴いた。それは」
「ぱわーとぅーざどりーむ!!」
「何なの、これって」
ミレーヌはギギルが歌うのを見て言葉を失っていた。
「まさか・・・・・・」
「奴等が歌を・・・・・・」
それはレイもだった。
「まさかな」
「いや、しかし」
「これは」
皆その歌を聴いてであった。口々に言う。
「凄いダミ声だけれど」
「それでも」
「凄い迫力・・・・・・」
「心がある」
それは間違いなかった。そしてだ。
ガビルはその歌を聴いて苦しんでいた。そのうえで言うのだった。
「ギギル、貴様!」
「シビル、聴くんだ!」
ギギルは今シビルの為に歌っていたのだ。
「俺の歌をな!」
「へっ、上等じゃねえか!」
そしてバサラはギギルのその歌を聴いて笑っていた。
「俺の歌を俺より先に歌い出すとはな!」
「くっ、グラビル!」
ここでグラビルも再び出て来た。しかしであった。
「ゴガアアアアアッ!!」
「駄目だというのか、御前もまた!」
そしてであった。ガビルもさらに。
「アニマスピリアアまで加わるとはまさしく危険な存在」
「言うな」
「間違いなくな」
カットナルとケルナグールがここで読んだ。
「ここはだ」
「あの言葉だ」
「戦慄美!」
「ほれ見ろ、言ったぞ」
「予想通りだな」
二人はここで得意になった。
「うちのブンドルと同じだな」
「全くだ」
「失礼な」
それを聞いたブンドルはかなり面白くなさそうであった。
「私はあそこまでやたらと言ってはいない」
「いえ、それは」
「あのですね」
キラとルナマリアが戸惑いながら彼に突っ込みを入れた。
「お世辞にもそうは」
「言えませんけれど」
「私はただ美しいものを賛美しているだけだ」
やはり自覚はない。
「それだけだ」
「はあ」
「だったらいいんですけれど」
彼は相変わらずだった。そしてギギルは。
「ぐはっ・・・・・・」
血を吐いた。しかしだった。
「まだだ!」
「おい、ギギル!」
バサラがその彼に対して言う。
「もう止めろ!」
「許さねえ!」
だがギギルはまだ歌おうとする。
「シビルを殺そうとする奴は誰であろうと許さねえ!」
「もう止めろ!」
だがバサラがその彼を止める。
「死んじまうぞ!」
「バサラ・・・・・・」
「止めろギギル!」
彼も命を張ってギギルを止める。
「いいな!」
「!?」
「これは!」
そしてだった。ここでイデのゲージが一気にあがったのだった。
「いきなりパワーが上がったぞ!」
「地球に飛ばされた時と同じだ!」
ハタリとジョリバがそれぞれ言う。
「じゃあやっぱり」
「そうですね」
シェリルとカララが話す。
「歌の力は」
「イデの発動と関係が」
「!!」
今度は洸だった。
「来る!」
「えっ、洸」
「今度はどうしたんですか!?」
マリと麗が彼に問う。
「また何かあったの!?」
「だとすると」
「奴等が来る・・・・・・!」
洸はさらに言った。
「これがアポカリュプシスなのか!?」
「大変です!」
ここで猿丸が言った。
「惑星の衛星軌道上にフォールドアウトを多数確認です!」
「何っ!?」
神宮寺はそれを聞いて思わず身構えた。
「今度は何だ!?」
「宇宙怪獣です!」
スタリオンが言った。
「宇宙怪獣の大群がプロトデビルンと交戦しています!」
「今度は宇宙怪獣って」
「もう何が何か」
「だが好機だ」
ここでハマーンが決断を下した。
「ミネバ様」
「ハマーン、今なの?」
「そうです、今なら衛星軌道上の敵の包囲網を破れます」
それが可能だというのだ。
「シティ7と共に」
「わかたわ、それなら」
「ソロシップも今ならDSドライブが可能だ」
ベスも言う。
「だから今のうちに」
「よし、総員帰還!」
「すぐにこの惑星を離脱する!」
「そのまま超長距離フォールドに入ります!」
命令が慌しく行われる。
「今のうちに」
「とにかく」
「バサラ!」
その中でミレーヌがバサラに言う。
「早く帰らないと!」
「ギギル・・・・・・」
「安心しろバサラ!」
そのギギルがバサラに叫ぶ。
「俺は絶対に死なない!また会う!」
「その言葉嘘じゃねえな!」
「俺は嘘は言わん!」
その言葉が何よりの証だった。
「だからだ!早く行け!」
「わかった!なら次に会う時はだ!」
「ああ!」
「俺の歌をたっぷりと聴かせてやる!」
こう叫ぶのだった。
「俺の歌をな!」
「じゃあバサラ!」
「ああ!」
ミレーヌに応えて遂に彼も帰った。そしてであった。
「全機収容確認!」
「これで全てです!」
報告が次々とあがる、
「それでは」
「今から」
「全艦大気圏を離脱する」
グローバルが言う。
「その直後にフォールドに入る!」
「はい!」
「今から!」
「じゃあなギギル!」
バサラは宇宙に上がるその瞬間にも彼を呼んだ。
「また会おうぜ!」
「うおおおおおおおおおっ!」
バルゴも来ていた。だがギギルは全ての力を振り絞り。
その光を広げて遂には。
「ギギル、止めろおおおおおおおおおっ!」
「シビル、俺の全て・・・・・・」
彼の姿が消えた。
「また・・・・・・会おうぜ」
「ギギル・・・・・・」
これで戦いは終わった。彼等はその姿を一旦消す。そして。
ゲペルニッチは一旦退いていた。流石に連戦のうえで宇宙怪獣達との戦いはできなかった。それで退いて今は己の旗艦でミンメイ、そしてガビルと共にいた。
「ゲペルニッチ様」
「あの者達だな」
「はい、バルゴめは行方知れずとなりました」
そうなったというのだ。
「ギギル、シビルと共に」
「そうか」
「そして破壊神共もまた」
「あの者達はどうなったか」
「あの惑星から離れました。どうやら興味がないようです」
「そうか。しかしだ」
ここで彼は言った。
「五十万年周期の時を経て再びか」
「それに今回の活動はです」
ガビルの言葉は続く。
「これまでとは比較にならない程の規模を誇っております」
「そうだな」
「その様に美はなくおそましさと恐怖が銀河を塗り潰そうとしております」
「遂にだな」
ゲペルニッチはここまで聞いて述べた。
「アポカリュプシスがはじまるということか」
「!?」
ガビルもまたその言葉を聞いて眉を顰めさせた。そのうえで問うのであった。
「あの、それは」
「してサンプル共は」
だがここでゲペルニッチはさらに問うのであった。
「何処に消えた」
「現在のところそれは不明です」
だがそれはわからないというのであった。
「おそらく四万光年以上の長距離フォールドを敢行した模様です」
「そうか」
「どうされますか?」
「今はよい」
いいというのだった。
「我が手元にはもう一つのサンプルが残されておる」
「だからですか」
「我が夢、いまだ費えぬ」
こう言ってそれはいいとした。しかしここでミンメイが言うのだった。
「人の生命力を吸い取る為の農場なんて、そんなものは」
「黙れ!」
だがガビルはその彼女に怒鳴る。
「ゲペルニッチ様のお情けで側に置かれている情報収集用のサンプルが!」
「サンプルではありません、私は」
「何だと!」
「止めておけ」
ゲペルニッチはそのガビルを止めた。
「このサンプルが持つスピリチア再生種族の譲歩はまだまだ有用だ」
「だからですか」
「いずれアニマスピリチアは再び銀河にやって来る」
彼は確信していた。
「そしてその時こそが新たな夢を成し遂げる時となろう」
「その時こそこのガビル」
ここでガビルは恭しく述べた。
「ゲペルニッチ様の為に銀河に美の華を咲かせましょう」
(輝、急いで)
ミンメイはその中で言うのだった、
(このままでは捕らえられた人達は)
彼女も彼女の戦いの中で危惧していた。そしてその時。
ロンド=ベルは超空間の中を彷徨っていたのだった。
「超空間センサー使用不能」
「艦の制御も」
「このままでは何処に行くか」
「各艦は接近して下さい」
ミサトはすぐに判断を下した。
「何処に飛ばされるにしてもせめて同じ場所に」
「超空間内の流動速度低下!」
「通常空間に出ます!」
「総員対ショック姿勢!」
そうして出た場所は。そこは。
「えっ、まさか」
「ここは」
そこにあったのは巨大なシティだった。シティ7よりもまだ大きい。彼等はその前に出て来たのだった。そしてそのシティは。
「フロンティアか」
オズマが言った。
「まさかな。ここで会うとはな」
「二十五番目の移民船団」
「こんな場所で」
ロンド=ベルはその前に出たのであった。これが新たな出会いのはじまりであった。

第十話完

2010・3・10  

 

第十一話 クロス=エンカウンター

               第十一話 クロス=エンカウンター
  フロンティアの前に出たロンド=ベルは早速フロンティアの中に入った。そしてそのうえで彼等の状況や自分達のことを話したのであった。
「ふむ、そうだったのか」
「はい、そうです」
一行の主だった者達がフロンティア大統領であるハワード=グラスと話していた。彼の横には若い白い軍服の軍人が男女それぞれ立っている。
男の方は黒髪をボブにしていた鋭利な顔をしている。女の方は豊かな栗色の髪の美女であり。二人共グラスの左右に位置してそこにいる。6
「それでフェードアウトしてここに辿り着きました」
「事情はわかった」
グラスはここまで聞いて述べた。
「それはな」
「はい」
「しかしだ」
だがグラスはこうも言ってきたのだった。
「不可思議な話だな」
「やはりそう思われますか」
「思わないという方が無理ではないのか?」
それがグラスの言葉だった。
「やはりな」
「そう思われますか」
「それは」
「そうだな。それでだ」
「それで?」
「君達はこれからどうするつもりなのだ?」
話を一通り聞いてからの話だった。
「地球に介入しようとしてきた勢力は全て退けた」
「はい、そうです」
「その通りです」
「それは」
「そして今は帝国をはじめとした様々な勢力を相手にしているな」
「さしあたってはプロトデビルンです」
エキセドルが述べた。
「彼等です」
「そうだな。彼等には我々も悩まされている」
そうだというのだ。
「何度か襲撃を受けた」
「よく御無事でしたね」
それを聞いた大河が言ってきた。
「彼等の攻撃を何度も受けてなのですか」
「しかしそれでもです」
「我々にも戦力があります」
ここで左右の男女が言ってきた。
「ですから」
「何とか」
「そうなのですか」
大河はまずはそれを聞いて納得した顔で頷いた。
「そちらにも戦力がありますか」
「はい、そうです」
「何とかです」
「その通りだ」
グラスも言ってきた。
「だからこそ我々も今こうしている」
「しかし。あの彼等を退けるとは」
「一体どんな戦力があるのですか?」
「そちらには」
「それについては後でお話します」
「それでなのですが」
話はさらに続いた。グラスの左右からの言葉だった。
「貴方達はこれから」
「どうされるのでしょうか」
「それが問題です」
今言ったのは大文字だった。
「我々は何をするべきかですが」
「とりあえずはあれですね」
今言ったのはダグラスだった。
「バルマー帝国は何としても倒さなければ」
「そうだな」
これにはグラスも同意だった。
「帝国は何とかしなければな」
「まずはバルマー、それでキャンベルにボアザン」
人類にとって敵対的な勢力が挙げられていく。
「それにムゲにプロトデビルン」
「そして宇宙怪獣」
「彼等もまた」
人類にはまだ多くの敵がいるのだった。
「そうした敵を一つ一つ倒していかなければ」
「他の船団もいる」
その彼等のことにも言及するのだった。
「そしてソール十一遊星主達」
「おまけにバッフ=クランか」
「敵は多いな」
「あまりにも」
「そして」
そしてであった。今のはグラスの言葉だ。
「我々は安息の地を見つけなければならない」
「そしてギャラクシーのこともあります」
「様々な問題が」
まさに山積みなのであった。
「どうするべきか」
「何をしていくか、お互いに」
双方で考えを出し合うその中でだった。
「よし」
「!?閣下」
「一体何を」
「私からの提案だが」
グラスはロンド=ベルの面々に対して話すのだった。
「君達は暫く我々と共に来てはどうだ」
「フロンティアとですか」
「そうだ。我々はこのまま暫く安住の地を見つけて宇宙を旅立つことになる」
彼は言った。
「当分かも知れない。だからだ」
「一緒にですか」
「それで」
「そうだ。それでだ」
また言う彼だった。
「君と一緒にだ。行くか」
「そうですね。我々はこれからまだ多くの戦いが続く」
「まだこれからも」
それについても話すのであった。
「ボアザンもキャンベルもいる」
「彼等も倒さなくてはならない」
「それなら」
そうしてだった。皆で言うのであった。
「御願いできますか」
「暫くの間」
「是非共だ。ではこれで決まりだな」
「ゾヴォークも協力してくれますので」
「それも御願いします」
こうしてだった。ロンド=ベルはフロンティアと共に宇宙を旅することになった。ロンド=ベルは思わぬ形で仮の宿を手に入れたのだった。
そしてフロンティアの中はだ。かなりのものだった。
「シティ7よりもまだ凄いな」
「っていうか地球を出てからも科学とかが発展してる!?」
「そうかも」
ロンド=ベルの面々はその様々な施設を見ながらそれぞれ言うのだった。
「ゼントラーディの人達もいるし」
「平和に共存共栄してるし」
「ここまで凄いなんて思わなかったし」
「全く」
そしてであった。ふとその見事な街を見るとだ。
「あれっ、何この歌手」
「ええと、シェリル=ノーム!?」
「誰、それ」
「今フロンティアで一番有名なアーチストみたいね」
今言ったのはミレーヌだった。
「凄い歌手みたいよ」
「凄いって」
「そんなに?」
「何となくわかるけれど」
ミレーヌの直感がそう教えることだった。
「ただ」
「ただ?」
「どうしたの?」
「何か不安定なものも感じるけれど」
ミレーヌはこうも言うのだった。
「バサラみたいに無茶苦茶な破天荒さはないみたい」
「まあバサラはな」
「ちょっとな。あいつはな」
「規格外だから」
少なくともバサラとは違うのだった。
「そのバサラとはまた違うから」
「そうなの。違うの」
「それにしても不安定なのか?」
「そうは見えないけれどな」
少なくとも画面にいるシェリルは光を放っていた。それは眩しいまでだった。
そしてアルトはだ。一人複雑な顔になっていた。
「フロンティアに来るとはな」
「ははは、そういえばそうだったな」
「ここはアルトさんの」
ミシェルとルカもここで彼に言うのだった。
「親父さんがいたな」
「お元気ですかね」
「親父のことはいい」
アルトは忌々しげに顔を背けた。
「もう二度と会わないと思ったのによ」
「これも縁なんだろうな」
「僕もフロンティアって聞いてまさかと思いましたから」
二人はまた言った。
「しかもな、少佐もな」
「因果ですね」
今度はオズマについての話だった。
「あの補佐官がなんだろ?」
「ですよね。レオン三島さん」
先程の男の軍人のことだった。
「あの人がですよね」
「そうだよな。難しい場所に来たよな」
「ああ、いいか?」
ミシェルはここで皆に話してきた。
「アルトには姫とかはここでは特に言うなよ」
「特にね」
「そうなのね」
「そう、絶対にな」
それを皆にひそひそと話す。
「怒るなんてものじゃないからな」
「絶対に」
「それは」
「今のあいつは地雷だ」
まさにそれだというのだ。
「カリカリしてるからな」
「ううむ、アルトに少佐か」
「地雷が二つか」
「厄介だな」
「それに」
話はまだあった。
「十二機のマシンか」
「このフロンティアを守る主戦力は」
「それは一体」
「それはだ」
クランが話した。
「出来ることならわかる状況は来ては欲しくないが来るな」
「だよな、いつものパターンだと」
「どっかの勢力がすぐに来るわね」
「プロトデビルンかそれとも帝国か」
「はたまた宇宙怪獣か」
どちらにしても厄介な相手ばかりであった。
「出て来たらどうするか」
「まあもう少ししたらやって来るな」
「その連中も」
そしてであった。ここでふとミスティが言った。
「そうね。多分」
「多分?」
「何ですか?」
「私と似ている波長を感じるわ」
「私も。それも」
今言ったのはアイナだった。
「二人かしら」
「二人ねえ」
「何かまた縁がある?」
「またしても」
「俺も感じるしな」
そしてそれはミシェルもだった。そのうえでティエリアに対しても話すのだった。
「だよな、感じるな」
「うん、確かに」
そしてそれはその通りだった。
「感じる。僕達に似た波長を」
「俺もやしな」
「またあんたもなのね」
アスカは今のトウジの言葉にかなり羨ましそうだった。
「私はグレースしかいないのに」
「縁やな、ホンマに」
「みたいね。それにしても羨ましくはあるわ」
実際に羨ましく思っているアスカだった。
「何か世界は色々と」
「広いようで狭いのね」
「何かね」
「まあとにかく」
「とりあえずはここに留まって」
「それでいくか」
「そうね」
そう話してであった。今はフロンティアの中を遊んでいた。
そしてだ。アルトはその中でだ。不意にスコールに遭ってしまった。それで慌てて森の中に入って上着を脱いで乾かそうとした。その時だった。
緑の髪の小柄な少女が来たのであった。
「あちゃ~~~~、びしょびしょ」
「んっ!?」
背中から聞こえたその声を聞いて振り向くとであった。
「誰だ」
「えっ・・・・・・」
そして少女も彼の顔を見た。中性的な美しい顔をだ。それがはじまりだった。
少女も服を乾かしていた。上着はアルトのものを着てだ.その間いるのだった。
「そうなの。地球から来た人達ね」
「ああ、そうだ」
そうだと話す彼だった。
「それであんたは」
「うん、このフロンティアにいるのよ」
少女は明るく彼に話してきた。
「ランカ=リーっていうの」
「ランカか」
「そうよ。ランカっていうの」
こう名乗るのだった。
「宜しくね」
「そうか、ランカか」
「娘々でアルバイトしてるから」
「娘々!?」
「そうよ。ハオチュー娘々」
ここで猫の仕草をして踊りはじめたのだった。
「ゴージャスデリシャスデカルチャーってCM知らない?」
「そういえばな」
アルトも今の言葉と仕草で思い出した。
「ここに来る時に映像で見たな」
「そうでしょ?そこなのよ」
「そうだったのか」
「名物は鮪饅頭とかだから」
それも話すランカだった。
「よかったら来てね」
「ああ、わかった」
食べることについてはアルトもやぶさかではなかった。
「それじゃあな」
「来てね。御願いだから」
「ああ、その時はな」
そんな話をして別れた。そして一旦マクロスクウォーターに戻るとだった。
「えっ、手伝いか?」
「ああ、コンサートにな」
「どうですか?」
ミシェルとルカが笑顔でアルトに言ってきたのだった。
「シェリル=ノームな」
「アルトさんも」
「そうだな」
アルトは少し考えてから答えた。
「丁度暇だしな。それじゃあな」
「よし、それなら」
「決まりですね」
こうして彼等はそのシェリル=ノームのコンサートの手伝いに行った。するとそこには見事なブロンドと赤の髪の美女がいた。
「へえ、あれがか」
「シェリル=ノームですか」
ミシェルとルカはその彼女を見て声をあげた。
「美人だけれど」
「気は強そうですね」
「その通りよ」
彼等の前に先程大統領と共にいた美女が出て来て言ってきた。
「かなり気が強いから気をつけてね」
「あれっ、そういうあんたは」
「さっきの」
「そうよ。キャスリン=グラス」
こう名乗ってきたのであった。
「宜しくね」
「ああ、それじゃあな」
「宜しく御願いします」
「これから長い付き合いになるのか?この人とも」
今言ったのはジュドーだった。
「何か早瀬さんと似た雰囲気だよな」
「そうよね、何か」
「妙にね」
それは誰もが感じていた。確かにそんな感じであった。
その彼女がだ。また言ってきた。
「とりあえず貴方達はね」
「大道具ですか?」
「それとも証明ですか?」
「それも御願いするわ」
まだあるというのである。
「あと。舞台を飛んでね」
「舞台を飛んで」
「そうして」
「それで演出を御願いしたいの」
こう話すキャスリンだった。
「わかったかしら」
「それじゃあ」
「僕達が」
ミシェルとルカが名乗り出て来た。
「そっちの訓練もやってるしな」
「それでいいですか?」
「ええ、いいわ」
キャスリンもそれで頷くのだった。
「それともう一人欲しいけれど」
「ああ、それだったら」
「もう一人いますよ」
そのミシェルとルカがまたキャスリンに告げた。
「なあ、アルト」
「先輩も」
「俺もか」
「御前もできるだろうが」
「ですから」
彼だというのである。
「それじゃあそういうことでな」
「御願いしますね」
「拒否権はないみたいだな」
アルトはそれは本能的に悟っていた。
「じゃあやらせてもらうな」
「ああ、それじゃあな」
「そういうことで」
これで三人が空を飛んで演出にあたることになった。そうして程なくしてそのコンサートがはじまるのであった。
そのコンサートはだ。まずは青い軍服と帽子のシェリルが言うのであった。
「あたしの歌を聴けーーーーーーーーーっ!」
「あれっ、この言葉って」
「そうだよな」
「完璧に」
本家がいるからすぐにわかることだった。
「バサラよね」
「確かにね」
「そうだな」
バサラ本人もそれを聞いて頷いた。
「俺のあれだな」
「オマージュってやつ!?」
「そうよね」
言うならばそれであった。
「それだったんだ」
「つまりは」
「まあいいさ」
バサラはそんな彼女の台詞をいいとした。
「大事なのは」
「音楽」
「そうなのね」
「ああ、聴かせてもらうぜ!」
相変わらずのテンションのバサラだった。
「是非な!」
「そうね。それだったら」
「今こそ!」
こう話してであった。実際に音楽を聴く。その曲は。
「えっ、これって」
「何ていうか」
「凄い・・・・・・」
「本物よね」
「そうよね」
そしてこう言い合うのだった。
「このシェリル=ノームの曲は」
「それにステージ衣装も」
「かなり派手だし」
「確かに凄いわね」
ミレームもここで言う。
「私から見てもね」
「先輩以上」
「そういうことになるよな」
「ええ、凄いわ」
また言うミレーヌだった。
「あれはね。負けるかも」
「何かこのコンサートって」
「そうだよな」
「かなり凄いよね」
「技術の発展もあって」
そんな話をしているうちにだ。
アルト達が空にハートマークを描く。憎い演出だった。
「おっ!?」
「これはまた」
「かなり見事」
「そうよね」
皆から見てもそうだった。
「こんな演出も出来るの」
「アルト達も」
「これまた意外っていうか」
「そうよね」
こう話してであった。コンサートを楽しみ続ける。不意にシェリルがこけかけるとであった。
「危ない!」
アルトが咄嗟に飛んできた。そしでアルトが出て来たすぐに抱えた。そして所謂お姫様抱っこで空を飛んでみせたのだった。
「危ないところだったな」
「貴女は?」
シェリルも最初はこう思った。
「奇麗な顔をしているね」
「奇麗!?」
「ええ、お姫様みたいね」
「俺は男だ」
むっとした顔で返したアルトだった。
「それは言っておくぞ」
「えっ、そういえば」
言われてそれに気付いたシェリルだった。
「貴方確かに」
「そうだ、俺は男だ」
また言うアルトだった。
「これでわかったな」
「そうだったの」
「下ろすぞ」
また言ってきたアルトだった。
「いいな」
「ええ。ところで」
そのアルトに対して問うシェリルだった。
「貴方の名前は?」
「俺の名前か」
「そうよ。よかったら教えてくれないかしら」
飛びながらの問いだった。
「貴方の名前をね」
「アルトだ」
まずは名前から名乗るのだった。
「早乙女アルトだ」
「そう、早乙女アルトっていうの」
「そうだ」
「わかったわ。覚えておくわ」
シェリルは楽しそうに応えて述べた。丁度歌と歌の間なので話をすることができたのである。これは二人にとっては幸いであった。
「アルトね」
「ああ」
こう話をしただけであった。しかしそれがはじまりになるのだった。
コンサートは暫く続いた。だがここで。
「!?」
「警報!?」
「まさか!」
ここでいきなりロンド=ベルの面々の携帯に一斉に警報が鳴り響いたのだった。
「はい!」
「宇宙怪獣ですか!?」
「それともプロトデビルンですか!?」
「まだよくわからん、しかしだ」
大文字の声だった。一同に告げていた。
「もうすぐそこまで迫って来ている!」
「えっ!?もうですか!?」
「何時の間に!?」
「詳しい話は後だ。すぐに戻ってくれ」
また言う彼だった。
「いいな、すぐにだ!」
「は、はい!」
「それなら!」
こうして全員すぐにコンサート会場を後にする。そうしてであった。
コンサートも中止になった。皆慌しく避難する。それはシェリル達もであった。
「シェリル、こっちよ」
「ええ」
紫の髪の眼鏡の美女の先導を受けていた。
「早くね」
「わかったわ」
こうして彼女も避難に向かう。キャスリンがここで二人に声をかけてきた。
「シェリル=ノームさんとグレイス=オコナーさんは」
「ええ」
「何処に避難すればいいのですか?」
「こちらへ」
こう言ってシェルターにまで案内するのだった。
「急いで下さい」
「スサノオ達がいるわよね」
シェリルは不意にこの名前を出してきた。
「確かここには」
「そうよ。フロンティアを守っているのはスサノオ達十二体のマシンよ」
こうシェリルに話すグレースだった。
「丁度ギャラクシーのボトムズと同じね」
「ボトムズね」
ここでシェリルの表情がふと動いた。
「あの人は元気なのかしら」
「キリコ=キューピーね。あの人なら大丈夫よ」
グレースも彼に関してはこう言うのだった。
「何があってもね」
「そうね。スコープドッグ隊も健在だし」
「彼等がいるから」
「ギャラクシーは心配いらないわね」
「どの船団も護りには注意しているわ」
そうしなくてはならないのである。
「生き残る為にね」
「生き残る為になのね」
「皆必死よ」
まさにそうなのだという。
「だからね。わかるわね」
「ええ、そしてそれは」
「ロンド=ベルも同じよ」
ここでグレースは思わせぶりな笑みを浮かべた。
「あの人達もね」
「そうなの。あれだけ強いのに」
「幾ら強くても生き残るのには力を尽くさないと駄目なのよ」
そうなのだというのである。
「誰でもね」
「そしてそれは私もなのね」
「貴女は別に」
「皆私を運がいいって言うわ」
だがここでシェリルは強い顔と声で言うのだった。
「けれどそれに見合う努力はしてきたつもりよ」
「だからだというのね」
「そうよ。私も生き残る為によ」
それを言うのである。
「必死に力を尽くしているつもりよ」
「そうね」
納得した微笑みになって頷くグレースだった。
「じゃあ。これからもね」
「そうするわ。それじゃあね」
「ええ。それじゃあ」
グレースはまた言ってきた。
「行きましょう」
「シェルターに、なのね」
「貴女は歌うことが仕事よ」
要するに軍人ではないというのだ。
「だからね。今はね」
「わかったわ」
こうして彼女達は今は安全な場所に向かう。もう敵はフロンティアの中に入っていた。
「ちっ、早い!」
「しかもこの敵は」
「一体」
「バジュラです」
レオンが迎撃するロンド=ベルの面々に言ってきた。
「彼等はバジュラといいます」
「バジュラ!?」
「何だそりゃ」
「プロトデビルンとはまた違うんですね」
「はい、全く違う種族です」
まさにそうした存在だというのだ。
「知能は見られないのですがそれでも」
「数は多いな」
「そうね、この数は」
「かなり」
「十万はいるな」
ブライトが言った。
「それだけは普通にいる」
「十万ですか」
「確かに最初にしては多いですね」
「これだけの数は」
「こちらも迎撃機を出しています」
レオンはまた言ってきた。
「ですから彼等と協力して御願いします」
「そしてその迎撃機は何ですか?」
「バルキリーですか?」
「それともニュータイプですか?」
「いえ、ギガンティックです」
しかし彼はここでこう答えた。
「我々の迎撃機はギガンティックです」
「ギガンティック!?」
「何ですかそれ」
「はじめて聞きますけれど」
ロンド=ベルの面々にとってはまさに初耳であった。
「どういったマシンなんですか?」
「それで」
「ギリシア神話のオリンポス十二神」
この神々自体はよく知られていた。
「その彼等の名前をそれぞれ冠していまして」
「それで」
「どういったマシンなのかですけれど」
「互いの力を受け合い戦う」
レオンはそれに応えて述べてきた。
「そうしたマシンです」
「十二機がお互いに」
「それでは」
「はい、戦えば戦うだけそれぞれが強くなっていく」
こう話すレオンだった。
「それがギガンティックです」
「ではそのマシンも今」
「出て来るのですね」
「はい、今発進させます」
それはまさに今だというのだ。
「それでは大統領」
「うむ」
グラスはレオンの言葉に頷く。そうして。
「ギガンティック全機発進!」
「了解です!」
「それでは!」
こうしてその十二機のマシンが出撃した。それは。
「何と」
「これは」
見た目にもロンド=ベルの面々にとってははじめてのマシン達だった。
それぞれ異なったシルエットを持っている。その彼等がフロンティアの中に出て来たのである。そのうえで戦闘に入るのであった。
そしてそのうちの一機でだ。一組の少年と少女が話していた。
「いいわね、慎悟君」
「うん、真名さん」
お互いに言い合う。
「また戦うことになるわ」
「フロンティアの為に」
「そうよ、皆の為にね」
まさにその為に戦うというのであった。
「戦いましょう」
「わかったよ。じゃあ」
「いい、全機それぞれ連携して」
レオンの前で一人の白い軍服の女が通信を入れてきていた。
「そのうえで戦って」
「いつも通りですね」
「そうよ」
彼女はその真名という少女の言葉に応えて頷いた。
「十二機全てでね」
「わかった」
それに頷いたのは一人の厳しい男だった。
「ではそうさせてもらおう」
「お父さん」
その彼と同じ機体に乗るブロンドの少女が言ってきた。
「敵は一部がフロンティアの中に入ったわ」
「もうか」
「ええ、もうよ」
「そしてだな」
出て来るというのである。
「中で迎撃だな」
「そういうことなるわ。大海司令」
「ええ」
その軍服の女が応えてきた。
「その通りよ、ここはね」
「ロンド=ベルも来ているが」
「彼等との連携は」
緑のマシンから一組の若い男女が彼女に問うてきた。
「どうするのでしょうか」
「それは」
「当然御願いするわ」
その司令は彼等にも応えた。
「そうでもなければ勝てはしないわ」
「十万」
「数としては多いわね」
「確かに」
それぞれのマシンに乗る面々が言う。
「じゃあここはやっぱり」
「ロンド=ベルと」
「そうだ。そうしてくれ」
レオンもここで言ってきた。
「今はだ。いいな」
「了解」
「それなら」
彼等もそれで反論はなかった。これで決まりだった。
「よし、今は」
「ロンド=ベルと」
「これからはだ」
ここでレオンはさらに言ってきた。
「彼等と協力して戦うことになる」
「そうなるのですね」
「大海華都美司令」
レオンはその彼女の名前も呼んできた。
「貴女には正式にロンド=ベルの移転も告げられることになるだろう」
「えっ、まさか」
「いや、そのまさかだ」
そうだというのである。
「戦力は集中させるべきだからだ」
「ですがフロンティアの護りは」
「それもロンド=ベルがしてくれる」
まさに彼等がだというのだ。
「だからだ。わかってもらえたかな」
「そうですか」
「それはまた大胆な」
「確かに」
大海の周りにいる面々もこれにはかなり驚いていた。
「戦力を集中させるのは必要とはいえ」
「フロンティアの護りを彼等に委ねるとは」
「また彼等には私から話をしておく」
レオンは冷静な口調で述べた。
「だからだ。心配は無用だ」
「そうなのですか」
「それでなのですか」
「これからフロンティアとロンド=ベルは行動を共にする」
このことも言うのだった。
「それならば当然のことだ」
「わかりました」
大海はここで頷いた。
「ではこれからは」
「それで御願いする」
「はい」
こうした話の後で戦いに向かう。十二機のマシンはそれぞれ連携し合いながら戦う。ロンド=ベルとも見事な連携を見せフロンティアを護っている。
「何かな」
「そうよね」
「あのギガンティックって」
「かなり強いな」
その彼等と共に戦うロンド=ベルの面々の言葉である。
「よし、それなら」
「私達だってね」
「負けてられないよな」
彼等もフロンティアの中と外で果敢に戦う。何とか一般市民を守っている。そしてその中にはアルトもいた。彼はオズマ達と共にフロンティアの中にいた。
そのオズマがだ。彼に声をかけてきた。
「アルト、いいか」
「何ですか?」
「御前は街の東に向かってくれ」
「東にですか」
「そうだ、東だ」
そこにだというのである。
「今すぐにだ、いいな」
「まさかそこにバジュラが」
「そうだ」
まさにその通りだというのだ。
「来ている、だからいいな」
「わかりました、それなら」
「四体だ」
その数も告げられた。
「御前一機でいけるな」
「ええ、大丈夫です」
既にこの戦いでバジュラ達の力は見ていた。そのうえでの判断である。
「それ位なら」
「俺達は今はここを動けない」
ギガンティックのうちの砲塔を思わせる一機と共同しながらバジュラの編隊と戦っていた。
「だからだ。御前一機でだ」
「ええ、そういうことなら」
こうしてアルトはそちうらに向かった。そうしてだ。
バジュラ達と戦う。そのうえで民間人達に対して言う。
「早く避難を!」
「貴方は」
「ロンド=ベルの」
「ああ、そうだ」
こうそのギガンティックの一体に答える。
「その通りだ」
「そうですか。すいません」
「では御願いします」
「あんた達がそのギガンティックのパイロットか」
アルトはその二人に対して言った。
「見たところまだ子供だな」
「はい、十三です」
「十四です」
慎悟と真名はそれぞれ自分の年齢も話した。
「州倭慎悟です」
「神代真名です」
「そうか、わかった」
アルトは二人の名前も聞いて頷いた。
「俺は早乙女アルトだ」
「えっ、早乙女っていったら」
「まさか」
二人はその名前を聞いてあることに気付いた。
「あの歌舞伎役者の早乙女さんの」
「あの人と何か」
「ああ、そうだ」
ここで嫌悪感も見せた。
「親父だ」
「そうですか。ロンド=ベルにおられたんですか」
「地球に残られて」
「その話はこれで終わりだ」
強引に打ち切ってきたアルトだった。
「いいな」
「は、はい」
「わかりました」
二人もアルトのそうした感情を読み取ってそれ以上は問わなかった。
「それじゃあアルトさん」
「今は」
「バジュラだったな」
その彼等のうちの一体を倒しての言葉である。
「この連中は」
「はい、そうです」
「バジュラです」
彼等も目の前の敵の名前はその通りだと返す。
「数が多いですから」
「気をつけて下さい」
「ああ、わかっている」
答えながらバトロイド形態に変形してそのうえで攻撃していく。それで敵のそのバジュラを数機瞬く間に倒してしまったのだった。
だがその後ろからまた来る。ここで慎悟が彼に言ってきた。
「アルトさん、大変です」
「どうした!?」
「逃げ遅れた一般市民がいます」
このことを話してきたのだ。
「女の人が一人です」
「よし、わかった」
それを聞いたアルトがすぐに頷いた。
「それならだ」
「どうされますか?」
「それで」
「決まってるだろ?敵は倒すだけだ」
ある意味非常に戦士らしい言葉だった。
「それだけだ」
「じゃあ御願いします」
「それで」
「敵を倒してそれからだ」
アルトの言葉が強いものになった。
「その女の子を助け出す」
こう言ってそちらに向かう。するとだった。
その女の子を見ると。見た顔だった。
「えっ、御前は」
「!?」
道の端に怯えている彼女を見ての言葉である。
「あの時の」
「えっ、その声は」
そして彼女の方も気付いたのだった。
「ロンド=ベルの」
「確かランカ=リーっていったな」
「ええ」
アルトのその言葉にこくりと頷く。
「そうだけれど」
「おい、すぐに安全な場所に逃げろ」
アルトはこう彼女に告げた。
「いいな、すぐにだ」
「ええ。けれど」
「けれど・・・・・・そうか」
見れば前にバジュラが一体いた。これではだった。
「こいつを倒してからだな」
「・・・・・・・・・」
バジュラは無言で向かって来る。そのバジュラを攻撃して倒した。
しかしここでだ。いきなりフロンティアの上が開いたのだった。
「何があった!?」
「外での戦闘の結果みたいです」
「それで」
すぐに慎悟と真名から返答が来た。
「穴が開きました」
「けれど安心して下さい」
ここで真名がアルトに言ってきた。
「このフロンティアには自己修復機能がありますから」
「破損してもすぐに閉じるんだな」
「はい」
まさにその通りだというのだ。
「ですから。あの程度のダメージですと」
「わかった」
それを言われてまずは安心して頷くアルトだった。
「それならな」
「もうすぐ戦闘も終わりですね」
今度は慎悟が言ってきた。
「これで何とか」
「そうね、州倭君」
真名も彼の言葉に応える。
「もうこの辺りの敵はいないし」
「はい、これで」
しかしだった。ここで突風が起こった。その穴からだった。
それに巻き込まれてだ。ランカの身体が舞い上がった。
「きゃあっ!」
「しまった!」
「あの女の人が!」
二人はそのランカを見て驚きの声をあげた。
そしてだ。真名が慎悟に対して言ってきた。
「ここはすぐに」
「はい、わかってます」
すぐに飛び上がろうとする。だがアルトの方が速かった。
「ここは俺が行く」
「えっ、アルトさん」
「いいんですか!?」
「構わない。こうした場合はバルキリーの方が速い」
だからだというのである。
「折角戦いが終わったんだ。ここでこれ以上死んだら何にもなりはしない」
「じゃあ」
「それで」
「任せてくれ」
こうしてバルキリーになって飛び立ちであった。すぐにランカに向かう。
「おい!」
ランカに声をかける。
「今行く!」
そしてキャノピーを開放しそこから出てた。
「目と口を塞げ!」
「えっ・・・・・・」
「若し外に出てもそれなら一瞬だけでも何とかなる!」
だからそうしろというのだ。
「いいな!」
「うん、じゃあ」
こうして目と耳、そして口を塞いだ。そこにアルトが来て抱き寄せる。
そのうえで素早くコクピットに戻る。穴はそれで塞がれた。
「危なかったな」
「よかったですね」
「ええ、本当に」
それを見て慎悟と真名も言う。
「あと一瞬遅かったら」
「これで」
「全くだ」
ランカをコクピットの中に入れたアルトも一息ついていた。
「あともう少し遅かったらな」
「そうですね、本当に」
「その時は」
「だがこれで終わりだ」
丁度今戦闘終了が告げられた。
「後は帰るだけだ」
「・・・・・・ちゃん」
だがここでランカが何か呟いていた。アルトもそれに気付いた。
「んっ、何だ?」
「お兄ちゃん・・・・・・」
こう呟いていたのだ。
「恐かったよお・・・・・・」
「っておい」
そのランカに対して言うアルトだった。
「俺は別にだな」
「えっ!?あっ」
ここでようやくランカ自身も我に返った。
「御免なさい、私ったら」
「いいがな。しかし危ないところだったな」
「ええ、それは」
「帰るか」
こうランカに話した。
「これからな」
「有り難うございます」
ランカは落ち着きを完全に取り戻しアルトに言った。
「おかげで」
「だからそれはいいんだよ」
またこう言うアルトだった。
「こっちはそれが仕事なんだからな」
「そうなんですか」
「とにかく帰るぞ」
またこう言うのであった。
「いいな」
「はい」
こうしてランカは何とか助かった。そしてそれがロンド=ベルの中にも伝わると。オズマがアルトのところに来て言うのだった。
「済まなかったな」
「済まなかったなって」
まずは話がわからないアルトだった。
「何かあったんですか?」
「ランカは俺の妹だ」
こう言ってきたのである。
「血はつながってないがな」
「妹、ですか」
「そうだ。孤児だったあいつを俺が引き取った」
その事情も話すのだった。
「そうして育ててきた。だがあいつは自分から言ってだ」
「フロンティアにですか」
「まさかここで会うとはな。全くこれもだ」
「縁ってやつですね」
「そうですね」
ここでミシェルとルカも出て来て言った。
「全く」
「少佐にとってもそうですね」
「全くだ。ところでだ」
ここでオズマは言うのだった。
「あいつは何処に行った?」
「あいつ?」
「あいつっていいますと」
「ブレラだ」
彼のことだった。
「あいつは何処に行った?」
「ああ、あいつならですね」
「今グレースさんに呼ばれてます」
ミシェルとルカがこう話した。
「ですから今はいません」
「そうした事情で」
「グレースというと」
オズマはそれを聞いて再び考える顔になってそのうえで述べた。
「あれか。あの」
「はい、シェリル=ノームのマネージャーの」
「あの人です」
「そうだったな」
オズマもそれを聞いて頷いた。
「あの人だったな」
「はい、その人に呼ばれてまして」
「今は」
「何かつながらないな」
オズマは首を傾げながら述べた。
「あの二人となると」
「確かに」
「接点が思い浮かばない」
それはエリエラとエイジスも言う。
「どういった接点なのかしら」
「それもさっぱり」
「まあよ」
だがテムジンがここで気さくに話す。
「行き先がわかってるのなら特に心配はいらないじゃねえか」
「それもそうか」
「そうだよ。とりあえずは休もうぜ」
こう仲間達に言うのであった。
「戦いも終わったしな」
「そうだな」
ジェフリーが彼の今の言葉に頷いた。
「それでは諸君」
「はい」
「休息に入ろう」
「わかりました」
まずは休む彼等だった。戦いが終わってからだ。そしてその時そのブレラは確かにグレースと会っていた。しかしその話の内容は。
「まさかここで会うとはね」
「思いも寄らなかったわ」
「ええ、本当に」
思わせぶりな笑顔と共に話すグレースだった。
「もう少ししたら地球に向かわせるつもりだったけれど」
「そちらはどうするのだ」
「先になったわ」
そうだというのである。
「それよりもまずはね」
「ロンド=ベルか」
「彼等はどちらにしろ何とかしないといけなかったから」
「そうか」
「だからよ」
こうブレラに話すのだった。
「今暫くはね」
「何もしないか」
「ただ、バジュラは行かせるわ」
「そうか」
「その為にも手駒を用意してあったから」
「手駒?」
「そうよ」
こう言うのである。
「それはもう用意してあるわ」
「あれか。ギャラクシーから連れて来た女か」
「そうよ。彼女よ」
まさにそうだというのだ。
「彼女こそがそうなのよ」
「若しそうでなかったらどうするのだ?」
「安心して。フロンティアでも見つけるから」
ここでまた思わせぶりな笑みを浮かべてきたのだ。
「一人。いるのはわかっているから」
「何故それがわかった?」
「気配よ」
それからだというのだ。
「それでわかったから」
「そうか。それでか」
「ええ、それで」
さらに言うグレースだった。
「貴方にはそれが見つかった時にね」
「その時か」
「動いてもらうわ」
「そうか、その時にか」
「わかったわね」
あらためてブレラに告げた。
「その時にこそね」
「わかった」
その言葉に頷く彼だった。
「ではその時にだ」
「そうして。それでは今は」
「どうするのだ、今は」
「芝居を続けるわ」
目を笑わせることなく口だけでの笑みだった。
「もう暫くはね」
「ではそうするといい。それでは俺はこれで」
「ええ、さようなら」
グレースも別れの挨拶を告げる。
「また会いましょう」
「そうだな」
こうやり取りをして別れるのだった。フロンティアでも何かが奥で蠢いていた。そしてそれは外に出るその時を待っているのであった。

第十一話完

2010・3・15  

 

第十二話 この手で守りたくて

              第十二話 この手で守りたくて
ロンド=ベルの面々からレオン=三島に話があった。それは。
「えっ、いいんですか!?」
「その様なことを」
「本当に」
「はい、こちらこそ御願いします」
彼はこうロンド=ベルの面々に言うのだった。
「彼等を貴方達に加えさせて下さい」
「ですがそれは」
ユウナが彼の言葉を受けて怪訝な顔で返した。
「貴方達にとっては」
「そうですね。あまりにも無謀です」
ユウナに続いてアズラエルも言ってきた。
「ギガンティックは貴方達の守りの要ではないのですか?」
「はい」
それはレオンも素直に認めることだった。
「それはその通りです」
「ではどうして」
「その彼等を」
「我々は今貴方達と共にいます」
レオンは彼等に対してこのことを話してきた。
「それはおわかりですね」
「ええ、それは」
「わかっているつもりです」
またユウナとアズラエルが答えた。
「我々はフロンティアに駐留しその整備と補給を受ける」
「そのうえで貴方達を守る」
「そして人類に悪意を持つ勢力も倒していく」
ここでまた言うレオンであった。
「そうなっていますね」
「その通りです」
「それは仰るままです」
「しかしです」
「それでも」
二人はさらに言う。
「貴方達の守りの要を預けて下さるのは」
「幾ら何でも」
「今の我々の守りの要は貴方達です」
レオンの言葉は大胆ですらあった。
「そう、貴方達なのです」
「私達だと」
「そう仰るのですか」
「はい」
そのことを肯定さえしてみせた。
「その通りです。今我々は一蓮托生ではありませんか」
「そうですな」
それに頷いたのは大河だった。
「仰る通りです」
「長官」
「それではまさか」
「受けましょう」
大河がここで言った。
「喜んで」
「ですがそれは」
「フロンティアには」
「しかし」
大河はまた言ってきた。
「我々は誓いましょう」
「何をでしょうか」
「フロンティアを守り抜きます」
そうするというのだ。
「何があろうともです」
「そうして頂けますか」
「はい、貴方達の為に」
大河の言葉は続く。
「彼等を迎えます」
「有り難うございます。それでは」
これで話は終わりだった。こうして十二体のギガンティックがロンド=ベルに加わることになった。早速そのパイロット達が挨拶に来た。
「うわ、国籍単位だったのか」
「これはまた」
皆まずはこのことに驚いた。
「アメリカに中国にロシアにインドね」
「そして欧州の国まで」
「南米やエジプトも」
「多国籍だったのね」
「一応それぞれのルーツの文化はあるさ」
ここで言ったのは眼鏡の男だった。
「俺はムハンマド=デュカキス」
「俺はハサン=パパスだ」
もう一人も名乗ってきた。
「宜しくな」
「共に戦わせてもらう」
「他にも大勢いるけれど」
「何か色々な顔触れがいて」
「まあそのうち名前と顔が頭に入るかな」
「お互いにね」
「ええ、そうね」
大海も頷く。
「一緒に戦っているうちにね」
「そうですよね」
小さな女の子もいた。
「これから宜しく御願いします」
「あっ、子供までいるんだ」
「パイロットかな」
「あはは、それは違います」
その少女は十歳程度だった。ロンド=ベルの面々の言葉に顔を崩して笑って応えたのである。
「私はパイロットじゃありません。スタッフです」
「スタッフなんだ」
「科学?それとも技術?」
「両方になりますね。私の名前ですけれど」
その名前についても話す彼女だった。
「天野卯兎美です」
「天野さんっていうのか」
「成程」
「卯兎美って呼んで下さい」
また笑っての言葉だった。
「これからはそれで」
「ああ、じゃあ」
「宜しく」
「御願いします」
ここで慎悟も挨拶をしてきた。
「それで僕達のマシンですが」
「それですが」
真名も言ってきたのだった。
「十二体が互いに影響してきています」
「それはです」
「十二体がそれぞれですか」
「影響し合ってるんですか」
「はい」
「そうです」
慎悟も真名もそうだというのだ。
「それで強くなっていきます」
「それぞれ影響し合い力を取り込み合って」
「それでなんです」
「かなり特別なマシンです」
「そうだよな」
話をここまで聞いたアポロが頷いた。
「それはな。うちにも変わったマシンが多いけれどな」
「そう言うアクエリオンもね」
「かなりだと思うけれど」
「そうか?普通じゃないのか?」
彼には自覚のないことだった。
「特におかしなところはないよな」
「僕達に意見を求められてもだ」
「客観的には言えないけれど」
シリウスもシルヴィアも首を傾げさせ困った顔で返してきた。
「だが。アクエリオンはそれでもだ」
「かなり変わったマシンだと思うわ」
「それを言ったら」
インド風の美女が言ってきた。
「私達のイシュタル12なんかは」
「そうよね」
その美女リリィ=ルーナに対してラヴィ=カーンが頷く。彼女もまた美女だ。
「それはね。否定しないわ」
「変わってるっていうのならね」
「そうね」
レイはシンジの言葉に頷いていた。
「僕達のエヴァだって」
「独特だから」
「まあ世の中中の人自体が凄い場合もあるし」
今言ったのはアスカである。
「もうね。壮絶な人だって」
「アスカだってあまり人のこと言えないんじゃ」
「何言ってるのよ、今回はいい意味よ」
こうシンジに返す。
「一矢さんとかタケルさんね」
「あの人達のことだったんだ」
「そうよ。誰のことだって思ったのよ」
「いや、いつもの」
シンジはこう前置きしてから話した。
「マスターアジアさんかと思ったんだけれど」
「流石にあの変態爺さんもこんな場所までは来ないわよ」
流石にそれはないと確信していた。
「幾ら何でもね」
「それはどうかしら」
しかしここで言ったのはレインだった。
「あの人だったらわからないわよ」
「うっ、確かに」
そしてアスカもそれを否定できなかった。
「それはその通りね」
「否定できないでしょ」
「ええ、かなり」
とにかくそれは無理だというのだった。そしてだ。
「それでだけれど」
「はい」
「何ですか?」
皆大海の言葉に問うた。
「皆で親睦を深めましょう」
「ってことは」
「これから」
「そうよ。飲みましょう」
まさにそれであった、
「飲みましょう。いいわね」
「お酒ですか」
「いいですね、それじゃあ」
こうしてだった。全員で飲む。その頃アルトは一人フロンティアの中を歩いていた。そしてその時にふと彼女と会ったのだった。
「あっ・・・・・・」
「御前は確か」
「はい、ランカです」
にこりと笑って答えたのだった。
「暫く振りです」
「そうだな。それにしても」
「はい?」
「まさかこんなところで会うとはな」
それを言うのだった。
「想像しなかったな」
「そうですよね。それで」
「それで?」
「これからどうされるんですか?」
顔を見上げてアルトに問うてきたのだった。
「何処か行かれるんですか?」
「そう言われてもな」
アルトはランカの問いに首を傾げながら応えた。
「今のところはな」
「そうなんですか」
「ああ、何処に行こうかと思っていたところなんだけれどな」
「じゃあ私のバイト先のお店はどうですか?」
「バイト先っていうと」
「はい、娘々です」
明るい声で言ってきたランカだった。
「そこです」
「そこにか」
「どうですか?美味しいですよ」
ランカはにこにことしながら話してきた。
「うちのお店のお料理は何でも」
「そうか。それなら」
「それにかなりの人が入られますし」
さらに言うランカだった。
「如何ですか?」
「そうだな。それだったら」
「じゃあそれで御願いします」
また笑って話すランカであった。
「今から」
「そうか。今からか」
「お酒もありますよ」
「いや、酒は今はいい」
「いいんですか?」
「とにかくそこに行かせてもらう」
こう返すアルトだった。
「それじゃあな」
「はい、行きましょう」
「ああ」
こうしてアルトはランカに連れられてその店に入った。そこは中華そのもの店でありテーブルも丸い。アルトとランカはそこに二人で座った。するとやけに胸の大きい眼鏡をかけた少女がやって来た。
「あっ、ランカさん」
「ナナセちゃん」
二人は笑顔でやり取りをしていた。
「今日はお客様ですか」
「うん、そうなの」
まさにその通りだというのだった。
「鮪饅頭御願いできるかしら」
「はい、わかりました」
「バイト仲間だな」
「貴方は確か」
そのナナセという少女もアルトに言ってきた。
「ロンド=ベルの」
「ああ」
「松浦ナナセです」
一礼してから彼に言ってきたのだった。
「宜しく御願いします」
「ああ、こちらこそな」
「それで何を御注文ですか?」
早速アルトに尋ねてきたのだった。
「何にされますか?」
「まずはその鮪饅頭を貰おうか」
アルトはまずは勧めに従った。
「後は」
「後は」
「麺類だな。海鮮麺だ」
「それですか」
「それと五目炒飯にそれと」
アルトの注文は続く。
「海老餃子に蟹焼売。それと豚バラだな」
「それですね」
「後は青梗菜もくれ」
「デザートは」
「杏仁豆腐。どれも二人分だ」
「わかりました」
こうして注文して二人で心おきなく食べた。それからだった。
店を出てそれから二人で歩く。ランカは明るく笑っている。
そうして歩きながらだ。アルトはそのランカに対して言ってきた。
「おい」
「どうしたんですか?」
「御前今は学生だな」
こう問うてきたのだ。
「そうだよな」
「はい、そうですけれど」
「そうか。確かシェリル=ノームもだったな」
「今私の学校にいますよ」
彼もそうだというのだった。
「ギャラクシーから留学みたいな形で」
「そうなのか」
「確かロンド=ベルの皆さんもそうなるんじゃ」
「そうなのか?」
「そうですよ。確か」
こう話すのであった。
「皆さん」
「何か話が急に決まったな」
「確かロンド=ベルの皆さんって」
さらに話す彼だった。
「今はマクロス7のシティにあるスクールに通っておられますよね」
「そうだけれどな」
「それでフロンティアに来られましたから」
こう話すのであった。
「フロンティアの学校に編入されるんですよ」
「話はわかった」
それでいいというのであった。
「ただ」
「ただ?」
「本格的にフロンティアに入るんだな」
アルトが思うのはこのことだった。
「それはまたな」
「だからアルトさんとは学校でも一緒ですよ」
「ああ」
「それにシェリルさんとも」
「あいつともか」
「あっ、見つけたわよ」
そしてここで三人目が出て来た。何とシェリルであった。
「早乙女アルト、いたわね」
「なっ、シェリル=ノーム」
「シェリルさん!?」
「遂に見つけたわよ」
こう言うのであった。
「今まで何処にいたのよ」
「俺を探していたのか」
「そうよ。いいわね」
「いい!?何がだ」
「貴方のことを知りたくてね」
不敵に笑って返すシェリルだった。
「それでね」
「それでか」
「そうよ。いい!?」
「何だ!?」
「これから付き合ってもらうわよ」
こう言ってきたのだ。
「いいわね、それは」
「一体何なんだそれは」
アルトにとってはわからない話だった。
「話が急にわからなくなってきたんだがな」
「どうしてシェリルさんがアルト君を!?」
「貴女は!?」
シェリルはここでランカを見た。そうしてそのうえで言うのだった。
「一体」
「はい、ランカ=リーといいます」
笑顔でシェリルに挨拶をするのだった。
「宜しく御願いします」
「わかったわ」
シェリルは彼女の挨拶を受けて微笑んだ。そのうえで言うのであった。
「それじゃあ」
「どうするっていうんだ?」
「今日はこれでいいわ」
踵を返しての言葉だった。
「また会いましょう」
「帰るというのか」
「そうよ」
こう言うのであった。
「またね」
「またか」
「そうよ。またね」
こうしてシェリルは今は帰るのだった。後に残ったのは二人だけになった。ここでアルトはランカに対して言ってきたのだった。
「なあ」
「はい?」
「これからどうするんだ?」
こうランカに問うのだった。
「何処に行くんだ?」
「ええと、後は」
「路面電車にでも乗るか?」
丁度目の前にそれが通っていた。見ながらの言葉だった。
「とりあえずは」
「はい、じゃあ」
「行くか」
また言うアルトだった。
「この街を見て回るか」
「そうですね」
こうやり取りをして今は二人でいた。そしてその翌日だった。
この日は平穏という訳にはいかなかった。朝からバジュラが来たのだ。
「敵襲だ!」
「はい!」
「来ました!」
すぐに全軍に連絡が入る。そして集結し出撃になった。
その中にギガンティックとそのパイロット達もいた。彼等も出撃するというのだ。
「それじゃあ今から」
「行きましょう、慎悟君」
真名が慎悟に告げる。
「今からね」
「はい、今から」
こう言い合い彼等も出撃に向かう。その中で。
「慎悟さん、真名さん」
「うん、卯兎美ちゃん」
「どうしたの?」
「ロンド=ベルとしての初陣ですね」
このことを言うのである。
「いよいよ」
「ああ、そうだね」
「今が」
「頑張って下さいね」
また二人に言うのだった。
「そして皆さんも」
「わかっている」
「それは」
二人だけでなく他のギガンティックも言ってきた。そうしてだった。
「よし!」
「全機迎撃!」
「行くぞ!」
こうして彼等とバジュラの戦いが再びはじまった。その中でだ。
「いいか!」
「はい!」
「隊長!」
ミシェルとルカがオズマの言葉に応える。
「バジュラのデータは既に読んでいるな」
「ええ、見たところ」
「生物なんですね」
それはもうわかっているのだった。
「けれど。何か」
「どうも今一つわからないところもありますね」
「そうだな。どうやら脳がない」
オズマもこのことを聞いていた。
「おかしな存在だ」
「確かにそうですね」
「どうやって動いてるんでしょうか」
「それはまだわからない」
オズマはまた言った。
「それにだ」
「ええ、数も多いですし」
「脳はないのに機能的な動きもします」
「妙な奴等だな」
アルトも言う。
「これはまたかなりな」
「しかし行かなければならない」
今言ったのはクランである。
「いいな、行くぞ」
「ああ、わかっている」
「第二スカル小隊発進!」
オズマが声をかけた。
「行くぞ!」
「了解!」
アルトが応える。そのうえで迎撃に向かうのだった。
バジュラの大軍はフロンティアに向かう。その大軍に攻撃する。
「撃て!」
「叩き落せ!」
まずはこう命令が出される。
「一機もフロンティアに近付けるな!」
「いいな!」
「そう、ここはね」
大海はラー=カイラムの艦橋にいた。そこからギガンティックの指揮にあたっている。
「防がないとまた」
「司令、ところで」
ブライトがその彼女に声をかけてきた。
「このバジュラですが」
「どうしたのでしょうか」
「これまでにも何度か戦ってますね」
「はい」
まさにその通りだと返す彼女だった。
「数もありその強さはです」
「そうですね。かなりです」
「その通りです」
まずはこのことを話すのであった。
「ですから注意して下さい。それに」
「それに?」
「これはまだはっきりとはわかりませんが」
こう前置きしてからの言葉だった。
「バジュラは進化するようです」
「進化ですか」
「そうです。進化です」
それがあるというのである。
「まだはっきりとわかりませんが」
「進化する」
「こちらの攻撃が効かなくなってきているようなのです」
こう話すのである。
「どうやら」
「艦長、それは」
「かなり厄介ですね」
ここでトーレスとサエグサもブライトに言ってきた。
「そんな敵だとすると」
「戦う度に強くなるのでは」
「その母星もわかりません」
バジュラについてさらに話される。
「ですから。そういう相手ですので」
「わかりました。まだ様子見が必要ですね」
考える顔で言うブライトだった。
「ここは」
「はい、それで御願いします」
「わかりました」
こんな話をしていた。その間にも戦闘が行われている。そうしてそのうえで戦いだ。今ユーノワ8が孔雀の目の様なものを背中に出すのだった。
「セルゲイ、いいわね」
「うん、タチヤナ」
セルゲイ=クラコフスキーはタチアナ=グリゴリエフの言葉に頷く。
「今度は数が多いから」
「一気に数を選らしていきましょう」
「うん」
「よし、シルヴィア」
「ええ、お兄様」
オリヴィエ=ミラボーは妹であるシルヴィア=ミラボーに声をかけていた。
「今回のバジュラは」
「前より強くなっているね」
「はい」
「えっ、そうなのか!?」
それを聞いて驚きの声をあげる甲児だった。
「この連中強くなってるのか」
「そうみたいね」
今言ったのはシンシア=ホルバインだった。
「前に比べて」
「これがバジュラです」
今度はダニエル=ピーターソンの言葉だ。
「戦う度に少しずつ強くなっています」
「進化か」
今言ったのは鉄也だった。
「そういうことだな」
「そうだね。生物なら当然のことだ」
大介も落ち着いた顔だった。
「ただ」
「何か凄い数だけれどな」
「それは何とかしないと」
ロンド=ベルの面々は今は派手に攻撃を浴びせていた。まずは数を減らすのだった。
「この数は」
「まずは減らさないとね」
「凄い火力ですね」
慎悟はここで彼等の戦いを見て言う。派手にファンネルやメガ粒子砲といったものでバジュラ達を吹き飛ばし敵を倒していた。
「ロンド=ベルの皆さんの武器は」
「慎悟君、私達も」
ここで真名が言ってきた。
「攻撃は幾らでもあるわよ」
「そうですね。十二のギガンティックの攻撃をそれぞれ使えますから」
「ええ、確かに」
「それと」
さらに言う真名だった。
「ただ。メインの技と比べたら威力は落ちるからね」
「はい」
「ああ、そうなのか」
ケーンは二人の言葉に気付いたのだった。
「全ての武器を普通に使えるってわけじゃないんだな」
「実はな」
「そうなのよ」
雲儀と走影が言ってきた。
「それぞれのギガンティックにも特性があるから」
「全ての武器を普通に使えるわけでもないの」
「まあそこまで都合よくはできてないか」
「そうだな」
タップとライトもここで言う。
「けれど十二のマシンの武器が使えるってな」
「それは確かに凄いな」
「例えばこのジュピター2はだ」
「得意な武器な雷だから」
ザイオンとレイが言う。
「しかし他のギガンティックの武器はだ」
「雷より威力は落ちるわ」
「しかしそれでもいいものだな」
グン=ジェムは素直に賞賛していた。
「わしのこのマシンもな。ギルガザムネとまではいかないまでもな」
「おい待ておっさん」
「あのマシンはないでしょ」
皆一斉に彼の今の言葉に突っ込みを入れる。
「そんなの使ったらそれこそ」
「大変なことになるじゃない」
「おお、そういえばそうだったな」
言われてそのことを思い出したのだった。
「あのマシンはそれで封印されたのだったな」
「だからそれで我慢しておいてくれよ」
「変な気を起こさないで」
「そうだな。しかし」
それでもまだ言う彼だった。
「あれはあれで破壊力があってだな」
「あんたもこっちも破壊されるから」
「それは問題外でしょ」
「まあそうだな。では止めておくか」
こう話してそのうえで今はそれを止める。しかしグン=ジェムはその剣でバジュラ達を次々に斬り倒していき戦いを有利に進めていた。
そしてだ。一時間程の戦闘でだ。バジュラ達はもういなくなっていた。
「もういないですね」
「そうね」
慎悟の言葉に真名が頷いていた。
「これでね」
「じゃあ戦闘は終わりですか」
「そうよ。じゃあ今は」
「そうよ。戦闘終了よ」
大海もここで言ってきた。
「皆帰還して」
「はい、じゃあ」
「これで」
「けれど」
ここでオズマを見てだった。見れば彼のバルキリーは被弾していた。
「少佐は大丈夫なの?」
「ええ、とりあえずは」
「命に別状はありません」
ミシェルとルカが応えた。
「ですが左腕に怪我をしていて」
「それが」
「骨折はないけれどな」
アルトも言ってきた。
「それでもな」
「そうか。それはいいがな」
ジェフリーもここで言う。
「しかし治療は必要だ」
「そうよね。ダーリンの為だから」
ボビーも真剣に気遣う顔だった。
「ここは急いでね」
「病院は手配できているか?」
「はい」
ジェフリーの言葉に応えたのはキャスリンだった。
「もう既に」
「そうか、ならいい」
「他に負傷者は」
「いることはいるが全員かすり傷だ」
こう答えた。
「入院する程のことはない」
「わかりました。それではすぐに」
「頼んだわよ」
ボビーも彼女に言う。こうしてオズマはすぐに病院に入れられた。
そうして病室にいるとだった。ランカが部屋に駆け込んできた。
「えっ、ランカ」
「どうしてここに!?」
「お兄ちゃん!」
見舞いのアルト達が驚く間もなく騒ぎ出すランカだった。明らかに普段とは違っていた。
「どうしてなのよ!」
「どうしてって」
「どうなってるんだ?」
「どうしてパイロットやってるのよ!」
その異様な様子で叫ぶのだった。
「もう乗らないって言ったじゃない。どうしてなのよ!」
「ランカ、それはだ」
「その約束で地球に残ったんでしょ!?どうしてなのよ!」
「おい、ランカ」
アルトがランカを抑えながら言ってきた。
「何だってんだ、急に」
「何でよ、何でよ!」
しかしランカは話にならない。
「何でなのよ!」
「これは駄目だ」
その彼女を見てサコンが言った。
「暫く落ち着かせよう」
「そうだな、ここは」
「まずは」
こう言ってであった。ランカに鎮静剤を打ってそのうえで静かにさせた。そうして何とか騒ぎを収まらせた。オズマはそれを見届けてから言った。
「ランカはか」
「一体どうしたんですか?」
「あんなになって」
「地球での戦いで家族を失っている」
そうだったというのだ。
「それも目の前でだ」
「目の前で」
「それで」
「じゃあトラウマですか」
「そうだ」
まさにそうだというのである。
「その通りだ。あれでかなりましになったんだがな」
「それでもですか」
「ああなるんですね」
「そうだ。そうなる」
こう話すのである。
「何かショックがあればだ」
「ああなる」
「洒落になりませんね、それは」
「俺が地球でパイロットをしていた時に派手に撃墜されたことがあった」
このことも話す。
「その時もああなった。それで二度と乗らないって約束したがな」
「それでどうして乗ったんですか?」
「そうしなければならない時だったからだ」
「大変でしたからね」
今言ったのは洸だった。
「もう少しでも人手が欲しい状況で」
「乗りたくはなかった」
こうは言った。
「しかしだ」
「しかしですか」
「そうだ。しかしだ」
乗るしかなかったというのである。
「だから今こうしてここにいる」
「そういうことですよね」
「仕方ないです」
「そう思って乗った。だが」
ランカに会った。それは予想していなかったのだ。
「ああなるとはな」
「正しいか正しくないかは言えない」
フォッカーも即答はできなかった。
「だが。それは一つの判断だ」
「判断か」
「正しいか間違っているかなんて言えないものだ」
まさにそうだというのだ。
「そういうものさ」
「そうか。そういうものか」
「だからだ。あんたの考えはランカを守る為でもある」
その為でもあるというのだ。
「だったらそれは正しい」
「正しいか」
「しかしランカとの約束は破ったな」
「ああ」
相反するものではあった。
「だが。それも仕方のないことだ」
「そう言ってくれるか」
「それでどうするんだ?これから」
「これからか」
「そうだ。どうするんだ?」
フォッカーが問うのはこのことだった。
「あんたはこれから。まだ乗るのか?」
「そのつもりだ」
答えはそれしかなかった。
「俺は戦う。人類の為にだ」
「ならいい。戦うんだな」
「ああ」
強い表情で頷くオズマだった。
「そうする」
「後はランカは」
アルトは彼女のことを考えていた。
「あいつはどうするかだな」
「頼む」
オズマはその彼に言ってきた。
「あいつのことを」
「いいんですか、俺で」
アルトは今の彼の言葉に目を向けた。
「俺で」
「ああ、頼む」
また頼むと告げたのである。
「あいつのことをだ」
「わかりました。それじゃあ」
「戦いはまだ続く」
これもわかっていることだった。
「だからだ」
「わかりました」
こう頷いてであった。戦いに向かうことになった。アルトの戦いは一つではなかった。
ランカは落ち着きを取り戻し自分の部屋に帰った。彼女についても今は落ち着いた。しかしそれは一つの話の終わりでしかなく別の話のはじまりであった。

第十二話完

2010・3・18  

 

第十三話 ミス=マクロス

            第十三話 ミス=マクロス
   
バジュラとの戦いはまずは終わった。しかしであった。
「わかりにくいな」
「そうですね、何か」
「二度戦っただけでは」
わからないというのである。ロンド=ベルの面々は首を捻っていた。
「いや、それでもわかることは少な過ぎる」
「どうなっているんだ?あのバジュラは」
「しかも」
こう口々に言いながら首を捻るのだった。
「脳がないのにあれだけの機能的な動きができる」
「戦術もある」
「おかしな生き物だな」
「しかも」
彼等の話は続く。
「どの勢力とも戦うみたいだしな」
「かといってプロトデビルンみたいな連中でもない」
「だとすると一体」
「何なのかしら」
「まだデータの収集が必要ですね」
ここでスタリオンが言ってきたのだった。
「まだです」
「そうか、それなら」
「今は」
「また戦う時が来るか」
「その時に」
こう言って今は首を捻る一同だった。しかしである。
話が終わってからはだ。彼等は遊びはじめた。切り替えの速さは相変わらずだ。
「何かフロンティアってな」
「そうよね」
「物凄い充実してるし」
「食べ物も美味い」
このことは頭の中に既に入れている。
「ゼントラーディの人達もいるし」
「特にこれよね」
言いながら見るのは牛達だった。カバにそっくりの牛達であるのだ。
「牛か」
「そうだよな」
「カバに見えるけれど確かに」
「牛だよな」
それは水の中にもいる。カバにも見える。
「食べたら美味しい?」
「ひょっとして」
「牛の味がするのかしら」
「やっぱり」
「ああ、それはね」
だがここで言うのはそのゼントラーディの人であった。
「牛の味がするから」
「牛なんですか」
「カバではなくて」
「牛ですか」
「そう、牛だよ」
また言うのである。
「牛の味がするよ」
「そうですか。牛ですか」
「けれど何でカバなのかな」
「そうよね」
彼等もそれがわからなかった。それを言い合うのであった。だがそれでも今はその牛達を見て楽しんでいる。それから街にも入った。
「どうだい、ゼントラーディもいい連中だろ」
そのカムジンが言ってきた。
「戦わなくても生きていけるからな」
「その通りだ」
ここで上から声がしてきた。
「ゼントラーディもメルトランディも同じ人間だ」
「あっ、クラン大尉」
「いたんですか」
「そうだ、中々いいものだな」
メルトランディの本来の姿に戻っての言葉である。
「この街もな」
「いないと思ったら元の身体に戻って」
「それでいたんですか」
「そうだ。しかしフロンティアが気に入った」
「それはよくわかりますね」
ミリアリアがその彼女の言葉に頷く。
「私もここが大好きになりました」
「そうだな。ハゥ少尉」
「はい」
「前から思っていたが」
そのミリアリアを見下ろしての言葉である。
「貴官とは気が合うな」
「そうですよね。同じ人間みたいに」
まさにそうした関係であった。
「一緒にいて楽しいですし」
「私もそうした存在がいることが嬉しい」
見れば実際に笑っているクランだった。
「これからも一緒に戦っていこう」
「はい、御願いします」
「そうだ。そうした存在がいるのはいいことだ」
サンドマンも言ってきた。だが。
「えっと、どうしてなんですか?」
「あの、サンドマンさんがどうして」
「巨大化してるんですか?」
それを言うのであった。見れば彼はそうなっていた。
「ゼントラーディじゃないですよね」
「それでどうしてなんですか?」
「巨大化してるなんて」
「細かいことはどうでもいい」
だがサンドマンはそんなことは些細なこととした。
「こうして大きくなるのもまたいいことだ」
「どういう人間なのかな」
「前からおかしなところばかりの人だったけれど」
「巨大化できるなんて」
「何かもう」
皆そのことに首を傾げさせていた。
「訳がわからないっていうか」
「しかも納得できるし」
「物凄い人だよな」
「全く」
「話を戻そう」
サンドマンは強引にそうしてきた。
「それでだ」
「はい」
「巨大化ですよね」
「人は時として大きくなり小さくなる」
こう言うのである。
「それをこうして肌身で感じることもまた重要なのだ」
「そうなんですか?」
「それでなんですか」
「そうだ。いいものだ」
また言う彼だった。
「実感するというのもだ」
「つまり立場も変えてみる」
「そしてその変化の中で、ですね」
「そうだ。それでは諸君」
その巨大化したままでの言葉だった。
「また会おう」
「そのままで行くし」
「何かもう」
完全にカオスであった。そして。
落ち着いたランカはふとあることを決意してそこに応募した。そうしてだった。
バイトの時間にこけた。皿を派手に割ったうえでだ。
「す、すいません」
「困るよ、ランカちゃん」
店長がその彼に溜息交じりに言う。
「しっかりしてくれないと」
「弁償しますから」
「ああ、それはいいよ」
このことについては寛容な店長だった。
「けれどお皿はなおしてね」
「はい、じゃあ」
こうしてその割った皿をなおしてだ。彼女はすぐに店の裏に入った。するとそこで。
「あっ」
「どうしたんですか?ランカさん」
ナナセがここで言うのだった。
「何かあったんですか?」
「私オーディションに通ったの」
こう笑顔で話すランカだった。
「それでなの」
「えっ、本当ですか!?」
それを聞いて笑顔になるナナセだった。
「ランカさん、おめでとうございます」
「うん、これで」
すぐにアルトに連絡する。彼はそのメールを見てぽつりと言った。
「なあ、これって」
「これって?」
「どうしたんですか?」
「いや、ランカがオーディション受けることになったんだよ」
こうミシェルとルカに話すのだった。皆も周りにいる。
「今連絡が来た」
「そうか。それ自体はいいけれどな」
「少佐には」
「ええ、言えないな」
それは言うまでもなかった。
「ちょっとな」
「そうだよな。内緒にしておくか」
「そうしておきましょう」
「しかし。オーディション通るなんてな」
また言うアルトだった。
「というかミス=マクロスに出るなんてな」
「そうだよな、予想外の展開だよな」
「けれどいいじゃないですか」
ルカは素直に喜んでいた。
「ランカさんにとって前向きになれて」
「それもそうか。行けたらいいけれどな」
アルトはふとこう言うのだった。
「どうなるかな、それで」
「さてな、見事ミス=マクロスになれればいいけれどな」
「どうでしょうね、それは」
それについては不明だった。しかし何はともあれであった。
ランカにとってはいい話だった。皆オズマには内緒だが素直に喜んでいた。
「まあそういう時にこそな」
「来るのよねえ、実際に」
「敵が」
まさにその通りであった。
「いつも絶好のタイミングで来るからねえ」
「いざって時にね」
「覚悟はしておくか」
「って前にこういうことなかったか?」
今言ったのはショウだった。
「ミス=マクロスの時にも」
「あれっ、その時ショウそこにいたっけ」
「どうだったっけ」
「どうだったかな」
言われたショウもよくわからない感じであった。
「いたようないなかったような」
「そうよね」
この辺りはかなりあやふやになっていた。しかしそれでもランカはオーディションを受けるのであった。それはもう決まったことだった。
「じゃあ今から」
「はい」
ナナセがランカの言葉に頷く。そうしてであった。
二人でそのミス=マクロスのオーディション会場の更衣室に行く。するとだった。
「うわ、凄いですね」
「え、ええ」
ナナセもランカもまずは驚いた。中の水着姿や下着姿の美女達にだ。
「何か私って」
「それは言わないで下さい」
ランカの引っ込み思案はすぐに止めた。
「ですから中に」
「う、うん」
「あら、ナナセじゃない」
ここで褐色の肌のブロンドの美女が出て来た。ピンクのビキニがよく似合っている。
「ジュニアハイスクール以来ね」
「あっ、お久し振りです」
「貴女もコンテストに出るのかしら」
そのナナセを見下ろす様にして言ってきたのだった。
「まさか」
「いえ、私でなくて」
「貴女ではないの?」
「はい」
胸を揺らす彼女への言葉だった。
「お友達で」
「そうなの」
それを聞いても何とも思わない感じだった。
「じゃあね。またね」
「はい。じゃあ」
「あの人って」
「ジュニアハイスクールの時の同級生です」
「そうだったの」
「そうなんです」
こうランカに話すのだった。
「実は」
「それにしてもあの人って」
「はい?」
「聞いた声だけれど」
「あっ、そういえばそうですよね」
ナナセも言われて気付いたのだった。
「ラクスさんと」
「うん。ラクス=クラインさんと同じ声よね」
「そうですよね」
こう話してであった。二人で中に入る。しかしであった。
「ちょっと」
「あっ、はい」
「どいて下さらない?」
こう言って別の美女が来て言うのだった。
「そこ」
「あっ、はい」
「あ~~~あ、ニキビができているじゃない」
その美女はこう言って鏡を見て嘆いていた。そいの間にランカ達も着替える。
着替えてからだ。ランカはまた言った。
「それにしても」
「はい?」
着替えたのはランカだけでナナセはそのままだ。出ないから当然である。
「何か私だけ場違いじゃないかしら」
「そんなことありませんよ」
ピンクのビキニになったランカをナナセが励ます。
「ランカさんだって奇麗ですよ。頑張って下さい」
「うん、じゃあ」
この言葉に頷いてであった。そのうえで胸を大きく無意識のうちに揺らす。ランカにはないものである。
ランカは着替えてから少し戸惑っていた。休憩室で上着を着て俯いている。だがここで一人の女性がそこに来たのであった。
「何をしているのかしら」
「シェリルさん!?」
「そこで俯いていても何にもならないわよ」
こう言うのである。
「貴女は今入り口にいるのよ」
「入り口!?」
「そうよ、入り口にいるのよ」
そうだというのである。
「夢への入り口にね」
「そこにですか」
「さあ、中に入りなさい」
優しい声だった。
「今からね」
「わかりました、それじゃあ」
こうしてであった。ランカはオーディションに向かった。そしてその頃。
「何っ!?」
「やっぱり来た!?」
「まさにグッドタイミング!」
皆ここで言うのだった。敵襲であった。
「それで何処からなんだ?」
「敵はどの勢力!?」
「バルマー!?それとも」
「プロトデビルン!?」
「いや、宇宙怪獣だ」
大河がここで言った。
「今度来たのは宇宙怪獣だ」
「あの連中ですか」
「今度は」
「そしてだ」
さらにであった。
「バッフ=クラン軍も来ている」
「えっ!?」
「あの連中も!?」
「そうだ。それぞれ今左右から我々の方に来ている」
そうだというのである。
「お互いの交戦ポイントに入ってしまったようだ」
「何てタイミングの悪い」
「というかオーディションの時に」
「折角ランカちゃんの晴れ舞台なのに」
「んっ!?」
丁度退院して復帰したオズマがここで話を聞いた。
「ランカがどうした?」
「あっ、いや」
「何でもありません」
「気にしないで下さい」
しかしそれは皆で咄嗟に誤魔化すのだった。
「何もありませんので」
「とにかく出撃しましょう」
「相手は宇宙怪獣ですしね」
「そうだな。あの連中ならだ」
オズマはすぐに戦いに心を切り替えた。
「すぐに向かわなければな」
「はい、ですから」
「すぐに行きましょう」
こうして向かってであった。全員すぐに出撃した。
そしてだ。マクロスクウォーターの環境でボビーが言うのだった。
「ダーリン、頑張ってね」
「ボビーさんっていつも思うんですけれど」
「純愛なんですね」
「告白しないんですか?」
モニカにミーナ、それとラムが彼に言う。
「そんなに愛しているのなら」
「それでどうしてなんですか?」
「愛があれば性別なんて」
「あら、嫌ねえ」
外見はともかく仕草は女のものであった。
「そんなのはもうとっくに卒業してるわよ」
「卒業って」
「どういうことなんですか?」
「愛は与えることなのよ」
こう言うのであった。
「想うことが大事なの。彼はノンケだし」
「ああ、そういえばキャスリンさんと以前は」
「そうらしいですね」
「それがわかってるからなのよ」
こう言うのである。
「あたしは想うだけ。それだけなのよ」
「そうなんですか」
「それで」
「そうよ。それでね」
さらに言う彼だった。
「ダーリンの機以外には」
「はい、オーディションを」
「実況ですね」
「さあ、かけるわよ!」
ここでは一気に男らしくなった。
「皆に愛のオーディションを見せてあげるわよ!」
「それが愛かどうかはともかく」
「オズマさんは気遣うんですね」
「気遣うのも愛よ!」
正論そのものであった。
「じゃあ皆行くわよ!」
「了解です!」
「それじゃあ!」
「全軍出撃する!」
ジェフリーも言う。
「フロンティアを護りつつ戦闘を行う。いいな!」
「了解です!」
「ただな」
「どうした?」
ハサンがムハンマドの言葉に応えた。
「何だろうな」
「音楽の中での戦いか」
「それだ」
ムハンマドが言うのはこのことだった。顔は考えるものになっている。
「違和感があるようでな」
「そうでもないか」
「それが不思議だな」
こう言うのである。
「だけれどな。戦ってるっていう実感はあるな」
「そうだな。では行くか」
「ああ、やらせてもらう」
こう話してそのうえで戦いに向かう。ギガンティック達はもう完全にロンド=ベルの一員として戦場にいた。今回バッフ=クランの指揮官はこれといっていなかった。
「あのギジェとかいうのいないわね」
「そうだな」
コスモはカーシャの言葉に応えて頷いた。
「あいつは今はいないか」
「そうそういつもいるわけじゃないのね」
それを言うのだった。
「やっぱり」
「そうみたいだな。けれどな」
「けれど?」
「相変わらずの数だな」
それを言うのだった。
「この数はどうしようもないな」
「バッフ=クランは数なんですか?」
慎悟がそのコスモに対して言ってきた。
「こうして数で攻めてくるんですか?」
「基本的にはそうだよな」
「そうよね」
シンとルナマリアが彼に応えて話す。
「もう数で来るよな」
「それも何処までも」
「そうなんですか。数ですか」
「それで来るんですね」
「ああ、それに宇宙怪獣もな」
シンは慎悟だけでなく真名にも話した。
「数で来るからな」
「その数ですけれど」
真名はもうそれについて調べていた。
「十万を超えています」
「相変わらずね」
カズミはそれを聞いても冷静に返すだけだった。
「数で来るのね」
「それじゃあノリコ」
「はい、お姉様」
そのカズミの言葉に応えるノリコだった。
「またガンバスターで」
「行きましょう」
「おそらく十万だけでは済まない」
タシロはもうそう読んでいた。
「あれはほんの先鋒だ」
「そうですね」
カズミは彼の言葉にも応えた。
「多分。波状攻撃で来ます」
「百万ってところか?」
今言ったのは忍だった。
「ここでもよ」
「そうだね。それ位は覚悟してないとね」
沙羅も言う。
「十万じゃ済まないからね」
「百万。じゃあバッフ=クランよりも」
「まずはそちらだな」
雅人と亮もそれで言う。
「どうするかだね。それじゃあ」
「まずはバッフ=クランを先に倒すか」
「いや、待て」
だがここでアランが言ってきた。
「バッフ=クランも数で来るぞ」
「数で来る!?」
「それじゃあ」
「その数で来るなら」
全員で話しはじめた。
「どっちかに重点的で攻めるよりは」
「むしろここで守るべき?」
「そうよね」
「その通りだ」
葉月博士が言ってきた。
「ここはだ。フロンティア及びシティ7を守りながら戦う」
「よし、それなら」
「このまま」
こうして皆で守りながら戦うことになった。実際にそこにかなりの数の両軍が来た。忽ちのうちに三つ巴の戦いがはじまったのであった。
「このっ!」
コウがビームライフルを放ってそれでバッフ=クランの機体を次々と倒す。
「次から次にか!」
「コウ、どっちを撃てばいいんだよ!」
こう言ってきたのはキースだった。
「どっちも凄い数じゃないか!」
「来る方に撃て!」
コウはこう彼に返した。
「今はそれしかない!」
「とにかく来る奴か」
「そうだ」
まさにそうしろというのだった。
「ここは敵を選んでいる余裕はない」
「そうみたいだな。本当に次から次に来るよな」
「これはもう」
クリスはGP-02を操りながら話す。
「核がないと」
「おいクリス」
しかしバーニィがその彼女に話す。
「それは幾ら何でも」
「難しい?」
「ああ、難しいな」
そうだというのである。
「幾ら何でもな」
「いや」
しかしであった。ここでレオンが言ってきた。
「確かに核も必要だな」
「ということは」
「フロンティアにも核はあるんですか?」
「それは」
「流石に多くはない」
だが、といった口調だった。
「しかしあることにはある」
「あるってそれだったら」
「まさか」
「ここで?」
「そうだ。核を使うことも止むを得ない」
こう言ったのだ。
「諸君、すぐに手配する」
「えっ、すぐに!?」
「核を!?」
「核をですか」
「そうだ。大統領には後で私から話す」
動きは早かった。まさに迅速そのものであった。
「諸君等一体に一発ずつだ。それぞれ核を渡す」
「核ミサイルですか」
「それか核弾頭を」
「今から」
「しかし」
それに反対する声もあった。
「核を使うのはそれは」
「どうなのでしょうか」
「フロンティア及びシティへの影響はない」
レオンはそれは大丈夫だという。
「では問題はない筈だ」
「しかしそれでも」
「それはどうなのですか?」
「幾ら何でも」
「いえ、この場合はいいです」
ここで言ったのはアズラエルだった。
「確かに核は非人道的とされていますね」
「はい、ですから」
「核は」
「しかし。フロンティアやシティ7を宇宙怪獣やバッフ=クラン軍に破壊され多くの市民達を失うよりはです」
「それよりはですか」
「いいんですね」
「そういうことです」
アズラエルはこう話すのだった。
「ですから。今は」
「今は、ですか」
「核を使うことも」
「それも仕方ありません」
また言うアズラエルだった。
「宇宙怪獣はそもそもそうした悠長なことを言っていられる相手でもありません」
「その通りですね」
彼の今の言葉を聞いて応えたのはユウナだった。
「宇宙怪獣はそれが通じる相手ではありませんしね」
「そうです。バッフ=クランもまた同じ様な相手ですし」
彼等もだというのだ。
「ですからここは」
「よし、それなら」
「今は」
こうしてであった。すぐに全機に核が渡された。そうしてすぐにそれが使われた。両軍に対して核弾頭が放たれたのであった。
「生き残る為にはか」
「それなら!」
「これを!」
一斉に大爆発が周囲で起こった。その中でだ。
「いいか、出来るだけ遠距離を狙え!」
「フロンティアやシティ7には影響が出るようにはするな!」
「いいな!」
このことは厳命されてだ。そのうえで両軍合わせて百万ではきかない大軍が一気に減らされていく。
「何かガルラ帝国の戦いは雑魚ばかりだったから」
「来るのを次から次に潰していけばよかったけれど」
その時の戦いはまさにそうだったのである。
「しかしそれでも今は」
「この戦いは」
「宇宙怪獣は違う」
その戦力はガルラ帝国のそれとは比較にならなかった。そうなのだった。
「それなら核もか」
「いや、こうしないといけない相手か」
「そうだよな」
これが出された結論だった。そのうえでさらに攻撃が放たれる。
結局のところ度重なる核攻撃で両軍を退けたのだった。両軍はそのままロンド=ベルの核攻撃でかなり減った。その中でだ。
「あ、あの」
「おっ、出て来たな」
「ランカ=リー」
「遂にな」
オズマ以外の面々がここで笑った。
「ランカ=リーです・・・・・・あっ」
一礼したところでマイクに頭をぶつけてしまった。その鈍い音が響く。
「す、すいません」
「あらあら、緊張しちゃって」
「けれどこっちの方がいい感じよね」
「そうよね」
モニカにミーナ、ラムが笑顔で話す。
「こうした方が好感持ててね」
「可愛い感じがするし」
「それなら」
「よし、それなら」
こうしてであった。話は進む。
司会者がここで言うのであった。
「さて、歌うのはあの曲」
「何かしらね」
ボビーも楽しそうである。
「いい曲じゃないと許さないわよ」
「私の彼はパイロットです」
その曲だというのだ。
「はい、それではどうぞ」
「わかりました」
こうしてその曲が歌われる。その中でバルキリー達が舞いモビルスーツ達が撃つ。その中での戦いであった。
戦いはそれから暫くして終わった。ランカの曲が終わり暫くしてからだ。核を使ったことが決め手となり勝利を収めることができた。
「いい感じとはいかないが」
「そうですね」
「勝利は収められました」
このことは喜ばれた。
「核を使うのも仕方ありませんか」
「最早」
「止むを得ない」
大河も言った。
「諸君、これからは宇宙怪獣相手にはだ」
「核をですね」
「わかりました」
最早相手が相手であった。そうしたものも使わなくてはならない、ロンド=ベルにとっては過酷な現実であった。これも戦いであった。
そしてだ。ミス=マクロスのコンテストも終わり皆今はニャンニャンにおいて祝勝会を開いていた。当然そこにはランカやナナセもいる。
「では諸君」
「いいな」
「はい」
「じゃあ」
「かんぱーーーーー!」
まずはそれからだった。早速それぞれ酒を飲み御馳走を食べていく。
そのうえでだ。まずはカガリが豪勢に大杯に酒を入れていく。老酒である。
「あっ、カガリ様」
「あれですね」
「いつものあれですね」
そんな彼女をマユラ、アサギ、ジュリが囃す。
「いっちゃって下さいよ」
「もういつもみたいに」
「一気一気」
「今日の私はそれだけではないぞ」
しかもこんなことまで言うのだった。
「老酒だけではない」
「っていうと?」
「他にもまだあるんですか?」
「といいますとそれは」
「これだ!」
言いながら店で頼んだバーボンを出すのであった。
「これも入れる!」
「おお、チャンポンですか」
「流石カガリ様」
「ここはいいとこ見てみたい」
「よし、それならだ!」
実際にそのバーボンまで入れてだ。杯を両手に持ちそのうえでぐびぐびとやっていく。一分半か二分は飲んでいた。するともう杯は空になっていた。
「ふううーーーーーーーーーーーっ」
「よっ、女王陛下」
「いつもながらお見事」
「流石酒豪!」
また三人が囃す。見ればカガリは満足した顔でそこにいる。
「私はやったぞ」
「あのですね」
卯兎美がここでユウナに尋ねる。
「いつもこんなのですか?カガリさんって」
「うん、そうだよ」
何でもないといった口調で返すユウナだった。
「それがどうかしたのかな」
「あれだけ飲んで大丈夫なんですか?」
「カガリの酒の強さは異常だから」
「だから平気なんですか」
「頭はともかく身体は頑丈だよ」
それはだというのだ。
「だから全然気にしなくていいよ」
「そうなんですか」
「そうだよ。それにしてもね」
ユウナはワインを飲んでいる。中華料理でもワインは飲まれるのだ。
「lここのお酒っていいね」
「そうですね」
「美味しいです」
見れば慎悟と真名も飲んで食べている。他のギガンティックの面々もだ。
「何か量も多いですし」
「満足できます」
「それにしてもね」
ここで言ったのはミスティだった。
「ランカちゃんもよかったじゃない」
「そうですよね」
レトラーデも彼女のその言葉に頷く。
「もう事務所が決まって」
「本当にね」
「はい、有り難うございます」
そのランカが明るい顔で応える。
「おかげさまで」
「そのコンテストだけれど」
「ああ、今中継やってるよ」
店のテレビにそれが映っていた。
「あっ、本当だ」
「この時だよな」
「そうそう」
皆言いながら見る。見れば優勝はあのナナセのかつての同級生だった。残念ながらランカではない。しかしそれでもなのだった。
「事務所が早速決まったのはさ」
「いいと思うよ」
「まずは第一歩」
それだというのだ。
「今ランカちゃんがはじまったんだし」
「目指せシェリル=ノーム」
「今からね」
「確かあれだよね」
ここでトールが言う。
「ゼントラーディの人の事務所だったっけ」
「ああ、何か演歌歌手の人がいるんだっけ」
「徳川さんだったかな」
カズイとサイも言ってきた。
「ゼントラーディの人も芸能人になるんだ」
「あまり考えなかったけれど」
「ちょっと、何言ってるのよ」
しかしここでミレーヌが苦笑いと共に彼等に対して述べてきた。
「あたしはあれよ。ハーフよ」
「あっ、そうよね」
ミリアリアが彼女の言葉を受けて頷いた。
「ミレーヌってメルトランディとのだったわね」
「そうよ。だから全然大丈夫よ」
「そういえばミレーヌって歌も演奏も凄いし」
「しかも運動神経もいいし」
「それもかなり」
何かと多才であるのだ。
「パイロットとしても凄いしね」
「それ考えたらゼントラーディの人も普通に歌手になれるんだ」
「そうなるわね」
「その通りだ」
ここでクランも出て来た。
「私を見てもそれはわかるな」
「あれっ、ミリアリアちゃん何か言ったかな」
「言ってないわよ」
ミリアリアは今度はこうミシェルに返した。
「どうしたの?」
「ああ、クランか」
ここで自分で自分に納得する彼だった。
「そうだったんだな、悪い」
「まあいい。それは許す」
何故か満足している面持ちのクランである。
「私とミリアリアは似ているからな」
「見分けつかない位にな」
「ミシェル、そういう御前もだ」
「ああ、自覚はしてるさ」
「そうだな。ティエリアとそっくりだ」
言うのは彼と比較してであった。
「私も何度間違えたかだ」
「そういえばこの二人は」
ムハンマドもそのミシェルとティエリアを見ながら述べる。
「鏡を見ているようだな」
「おい、本当に別人か!?」
問うているのはカティだった。
「貴様は私ではないな。間違いないな」
「それはこちらも聞きたかったところよ」
ラヴィーナもそのカティに返す。
「本当に貴女は私ではないのね」
「自信がない」
「私もよ」
二人共悩んでいる顔であった。
「何故だ。私にもこうした相手が出て来たのか」
「嬉しくはあるけれど」
「俺もだな」
ハサンもいた。
「何故かオズマ少佐とは他人の気がしない」
「そうだな。親しさを感じる」
オズマもハサンに対してこう返す。
「まるで自分を見ているような」
「本当にな」
「何か俺は」
「貴方もそうした相手が多いのね」
「そうだ」
雲儀は妻の走影に答えている。
「ドモン君といいイザーク君といいな」
「そういう相手がいるのはいいことね」
「全くだ」
「落ち着くな」
「その通りでごわすな」
何とザイオンは大次郎と談笑している。その横ではレイがリィナやエマやハルミと一緒である。一見すると変わったというのもおこがましい顔触れである。
「この部隊が気に入った」
「ずっと一緒にいるでごわすよ」
「さて、諸君」
ここで言ったのは大河だった。
「戦いは終わった」
「はい」
「今の戦いは」
「そうだ。だがまだ戦いは続く」
こう言うのである。
「それに備え今は英気を養うとしよう」
「そしてランカちゃんのお祝いにも」
「是非」
「その通りだ。ではランカ君」
実際に彼女にも声をかける。
「おめでとう」
「はい、有り難うございます」
こう話してであった。皆からの祝福を受けるランカだった。コンテストに落ちたことは彼女にとっては最早些細なことでしかなかった。

第十三話完

2010・3・22


 

 

第十四話 果てに待つ者

            第十四話 果てに待つ者
      ロンド=ベルは宇宙海獣達との戦いから三日後。また敵襲を受けた。
「今度は!?」
「一体どの勢力だ!?」
「何処のどいつが」
「バッフ=クランだ」
ベスが言う。
「あの連中だ」
「ちっ、またか」
コスモが彼等の名前を聞いて舌打ちする。
「あいつ等かよ」
「コスモ」
「ああ、わかってるさ」
しかしカーチャにはこう返した。
「すぐに出よう」
「ええ、すぐにね」
「出撃だな、ベス」
「勿論だ」
返答はもう決まっていた。
「さもないとやられるのは俺達の方だ」
「だからね。出ましょう」
「しかし」
ここで言ったのはレイヴンだった。
「バッフ=クランの数もかなりだな」
「そうですよね。これじゃあ本当に」
「宇宙怪獣と変わらないです」
テセラとチュルクもそれに頷く。
「とにかく数で来ますし」
「一機一機の性能も高いですし」
「それにだ」
レイヴンはさらに言う。
「その戦力を支えるものもあるな」
「後方ですね」
今言ったのはクッキーである。
「それですね」
「そうだ。それもかなりのものだな」
「となると」
ここでシンルーが考える顔になる。
「バッフ=クランの戦力はこの銀河とは別の銀河から来ている」
「えっ、隊長それって」
それを聞いたアレックスが唖然とした顔になる。
「あの連中はその銀河を丸々自分達の勢力としているんですか!?」
「そう考える方が妥当だ」
シンルーの言葉は真剣であった。
「この銀河にあそこまでの戦力を擁する勢力はもうない筈だ」
「確かに」
「そう言われると」
「流石にもう」
ジュゼにイワン、ハンスもここで頷いた。
「バルマーやゾヴォーク、そして人類の他には」
「今ゼントラーディとメルトランディはそのほぼ全てが人類と和解しています」
エキセドルは彼等について述べる。
「ですから。プロトデビルンの他には」
「もうない」
「じゃあやっぱりあのバッフ=クランは」
「他の銀河から来たな」
また言うシンルーだった。
「この世界の宇宙のことはよくわからないが」
「その通りだ」
ヴィレッタがここで言ってきた。
「この銀河にはあの勢力は最初存在していなかった」
「じゃあつまり」
「あの連中は」
「そうだ。おそらくバルマーとの戦闘に入る」
このことも言うのだった。
「これからより混乱していく」
「そうなるのか」
「これからは」
「そうだ。気をつけろ」
また言うヴィレッタだった。
「ここに出て来た戦力もほんの一部だからな」
「俺達はそんな戦力を相手にしているのか」
コスモの顔がここで歪んだ。
「ならだ。余計にだ」
「戦うっていうのね」
「当たり前だ」
こうノリコの問いにも返す。
「そうさせてもらう!」
「わかったわ。じゃあコスモ君」
ノリコは彼の言葉を受けて微笑みになった。そのうえでの言葉だった。
「行きましょう。今回もね」
「よし、それなら!」
こうして戦いがはじまった。まずはバッフ=クランの大軍に斬り込む。そしてだ。
その軍を率いるのはダラムだった。彼が指揮を執っている。
「ふむ」
「どうしました。バラム様」
「何かありましたか?」
「あのバルマー帝国が来ると思ったが」
彼が言うのは予想だった。
「しかしだったな」
「はい、確かに」
「バルマーではなく彼等ですか」
「あのロンド=ベルですね」
「バルマーは数を頼みに来る」
これは既に把握していることだった。
「しかしだ。あのロンド=ベルはだ」
「そうですね。数は少ないですが」
「かなりの精鋭揃いです」
このことも把握していることだった。ロンド=ベルのタイプもだ。
「ですから」
「よし、それなら」
「こちらは」
「幾重にも陣を敷け」
これがバラムの執った戦術だった。
「いいな、そうしろ」
「はい、それでは」
「ここは」
こうしてだった。実際に軍を幾重にも敷いてそれを守りとした。そうしてそのうえで彼等は護りを固めるのだった。
その彼等にだ。ロンド=ベルは突っ込む。すぐに激戦がはじまった。
「よし、ここはだ!」
「防衛ラインを一つずつ突破する!」
「目指すは敵の本陣だ!」
こうしてであった。一気に雪崩れ込む。まずは第一次ラインだった。
「喰らえっ!」
コスモが叫ぶ。そのうえでミサイルを放つ。
ミサイルは前の敵にそれぞれ向かい倒していく。それが合図になった。
そのまま第一次ラインを突破し突き進む。そうしてだった。
第二次ラインも突破し第三次ラインもだ。攻撃はさらに続く。
しかしであった。バッフ=クラン軍の数は多い。それが問題だった。
「おい、本陣はまだかよ」
「ああ、まだだ」
こう甲児に返す万丈だった。
「まだまだ先だね」
「ちっ、相変わらず何て数なんだよ」
「やっぱり銀河単位の戦力なのね」
さやかもここでわかった。
「バッフ=クランって」
「何か次から次に出て来やがってよ」
甲児の言葉はいささか苛立ちを見せていた。
「だがな」
「どうするの?甲児君」
「それならそれで潰してやるぜ!」
そうするというのである。
「俺はな!」
「何かそれっていつものパターンじゃないの?それって」
これを言うさやかだった。
「結局突っ込んで戦うのよね、甲児君って」
「そういう戦いが一番気に入ってるんだよ」
やはり甲児らしい。
「じゃあな。行くぜ!」
「やれやれだけれどそうね」
さやかも何だかんだで彼についていく。しかしであった。
ゴウ達のゲッターを見てだ。ふと言うのだった。
「そういえばだけれど」
「どうしたんだ?さやかさん」
「いえ、向こうの世界で最後に真ドラゴンとか出て来たじゃない」
「ああ、あれな」
「あれは何だったのかしら」
言うのはこのことだった。
「あの戦いが終わってこっちの世界に戻る時に消えたけれど」
「そうだったな。何処に行ったんだろうな」
「あの圧倒的な力があれば」
また言うのであった。
「戦いはかなり楽になるわよね」
「そうだよな。あれは凄かったからな」
「急に出て来て急に消えて」
さやかの言葉は続く。
「それも凄い力で」
「存在自体が謎だよな」
「そうよね」
そんな話をしながらも戦いは続く。ロンド=ベルは確かに勝ち進んでいく。しかし数があまりにも違っていた。やがて息切れが目立ってきた。
「まだ本陣には辿り着けないか」
「それはまだか」
「どうする?」
それを言っていく。そうしてであった。
「くそっ、駄目だ!」
そのゴウが叫ぶ。
「ドラゴンですらまだ」
「そうね、これだけの数の敵が相手だと」
「百倍はいるぜ、これは」
ケイとガイも言う。
「これだけの数を相手にするのは」
「しかもバッフ=クランは強い」
その問題もあった。
「どうする?本当に」
「何かいい手はないか?」
「こんな時によ!」
ここでゴウは歯噛みして言ってきた。
「あの真ドラゴンがあればよ!」
「ないものは言っても仕方ないな」
「そうね、それは」
「今は必要だ」
こう言って今は何とか耐えるしかないように思われた。しかしであった。
「・・・・・・・・・」
「何だ!?」
ここでゴウは何かの気配を察した。
「何が来たんだ!?」
「ゴウ・・・・・・」
謎の声が言ってきたのだ。
「力が必要か」
「力がか!?」
「そしてその力何の為に使う」
このことを問うのだった。
「御前はその力を」
「それは決まっている!」
ゴウはすぐに答えた。
「戦う!」
「戦うのだな」
「そうだ!仲間の為にだ!」
これが彼等の言葉だった。一気にそのまま叫ぶ。
「俺は戦う!何があろうともだ!」
「わかった」
「わかったっていうのか!?」
「御前の心はわかった」
声の主はこう言うのだ。
「ならばこの力使うがいい」
「力!?何の力なんだ!?」
「真の力」
それだというのだ。
「それをここでも使うのだ」
「ここでも!?じゃあ御前は」
「今がその時だ」
その言葉と共にであった。彼等の乗るドラゴンに凄まじい力が降り注いだ。銀河の中に雷が落ちた。まさにそう見えるものだった。
「何っ、雷!?」
「馬鹿な、銀河に!?」
「いや、違う」
それは違うというのだった。そしてだ。
ドラゴンの姿がとてつもなく巨大化してだ。禍々しいまでに姿が変わり。その姿で戦場に姿を現してきたのである。
「あれは・・・・・・」
「真ドラゴン・・・・・・」
「こんなところで出て来るなんて」
「嘘・・・・・・」
誰もがその姿を見て唖然となった。
「けれど真ドラゴンが出て来るなんて」
「一体どうして」
「何が起こったんだ!?」
「真ドラゴンが来るべき時が来たのだ」
だがサンドマンだけは言うのだった。
「今がその時だったということだ」
「今がですか」
「それでなのですか」
「今真の力が降臨した!」
また言うサンドマンだった。
「では行こう諸君!」
「はい!」
「それでは!」
「全軍再度攻撃に移る!」
グラヴィゴラスからの言葉である。
「今こそ勝敗を決する時!進むぞ諸君!」
「は、はい!」
「それなら!」
こうして戦いに進む彼等だった。その真ドラゴンの力はまさに戦いすら帰るものだった。ただ突き進むだけでバッフ=クランの大軍をなぎ倒す感じだった。
「ば、馬鹿な」
「何だあの巨大なマシンは」
「巨神とは違う」
「うむ、また違う力だ」
バラムも言う。
「全くな」
「それでその力がここで来た」
「どういうことでしょうか」
「また。何かあるのでしょうか」
「それはわからない」
バラムはまずはこう述べた。
「しかしだ」
「しかし?」
「どうだというのでしょうか」
「あの力、恐るべきものだ」
今目の前でだ。その真ドラゴンが派手に暴れている。
「うおおおおおおおおっ!」
ただ両手を振り回すだけでだ。バッフ=クランのマシンが薙ぎ倒されていく。
「う、うわあっ!」
「何だこいつは!」
「この強さは!」
「あの強さは脅威だ」
バラムの目が鋭くなっている。
「そうそう容易に戦えるものではない」
「ではここは」
「撤退ですか」
「それですね」
「止むを得ない」
これがバラムの決断だった。
「ここはだ」
「まだ戦力はありますが」
「それでもなのですね」
「今のうちに撤退すべきだ」
こう言って彼も引かない。
「わかったな」
「はい、では」
「仕方がありませんか」
「全軍撤退だ」
こう判断を下してすぐに撤退する。戦いはこれで終わった。
だがロンド=ベルのところにはだ。また一つ大きな謎が残ったのであった。
誰もがそのゲッターの巨大な姿を見てだ。それぞれ話す。
「しかし、真ドラゴンがここで出て来るなんてな」
「別の世界のマシンが自分の意志で来た!?」
「どういうことなんだよ、これって」
「声が聞こえた」
ゴウはこう一同に話すのだった。
「ゲッターの声がだ」
「それが聞こえたんだな」
「それが」
「そうだ、そして真ドラゴンが出て来た」
こう話すのである。
「俺達のところにだ」
「しかしどうしてなんだ?」
「こちらの世界に来るなんて」
「しかもあの時のアル=イー=クイスとの戦いで」
その時のことも話される。既に遥かな昔のことに思える話だった。
「消えた筈なのに」
「それがどうしてここで」
「しかも今に」
「時が来たと言っていた」
また言うゴウだった。
「あいつが来るその時だってな」
「それがその時!?」
「今が!?」
「そうだっていうの」
「あいつはそう言っていた」
ゴウの言葉は続く。
「それで来たんだ」
「やはり自分の意志でこの世界に来た」
「そのうえで」
「しかも時が来た」
このことも言うのだった。
「どういうことなんだ?」
「いや、待ってくれ」
ここで言ったのは万丈だった。
「今までのゴウの言葉を聞いているとだ」
「ああ」
「何かわかったんですか?」
「つまりあれだね。この世界は今確かに危機にある」
万丈はこのことから話した。
「宇宙怪獣の他にも様々な脅威に晒されているね」
「ええ、それは」
「もう言うまでもないことだけれどよ」
「その危機を救う為に彼等は来た」
また言う万丈だった。
「そういうことだね」
「それでなのですか」
「それによって」
「そう、僕はそう考える」
これが彼の考えなのだというのだ。
「だから彼等は来たんだ」
「それによってあの真ドラゴンは来た」
「そういうことなんですね」
「そうじゃないかな。少なくとも真ドラゴンの加入は大きい」
今度は戦力としての話だった。
「それはかなりのものだよ」
「そうだよな、それは」
「言うまでもないよね」
「そうだよ。それは間違いないね」
このことは言うまでもなかった。ロンド=ベルにとって確かにここでの真ドラゴンの加入は大きかった。そしてそれがどうなるかもわかっていた。
「じゃあそれは素直に喜んで」
「そのうえで」
「また戦いを続けよう」
万丈はこう言って話を終わらせた。今はこれで終わった。
そしてだ。話は全く別のところに向かっていた。
「しかし。前から思っていたけれど」
「そうだよな」
「声な」
今回もまた声の話だった。
「何かあれじゃないか?タシロ艦長の声って」
「どっかで聞いたっていうか」
「三輪長官そっくり」
「確かにね」
「よく言われることだ」
タシロ自身も周りの言葉に頷く。自覚しているのだ。
「困ったことにな」
「困ってるんですか、それで」
「声が似ていることが」
「わしはあそこまで極端ではないつもりだ」
これは自己分析に基づくものだ。
「しかしだ。それでもだ」
「それでもなんですね」
「やっぱり」
「何か感じるものは昔からあった。そうか、あの男がか」
「今はもう軍法会議の結果刑務所に入っている」
京四郎がこう話す。
「出て来ることはないだろうな」
「そうか、もうか」
「出て来ないのか」
「俺達はこれからどうなるかわからない」
京四郎はこうも話した。
「しかしだ。あいつはもう決まっている」
「刑務所から出ることはない」
「そう決まったんですね」
「自業自得だな」
こう言ったのは健一だった。
「あれだけのことをやればな。それも当然だ」
「そうよね。本当に色々やってたから」
「捕虜虐待もあったし」
この件でも軍法会議にかけられたのだ。
「それに。やっぱりアラスカでのあれ」
「ああ、サイクロプスを発動させた」
「あれよね」
このことも多くの者がよく覚えていた。
「サザーランド准将が唖然としたっていうあれ」
「問答無用でサイクロプスのボタンを押して」
「そのうえでの」
「あれは凄かったな」
また言う彼等だった。
「本当に一瞬どうなるかって思ったからな」
「ルリちゃんのボゾンジャンプで助かったけれど」
「若しそれがなかったら」
「全滅でした」
ルリも言う。
「本当に危ういところでした」
「そうよね、それはね」
「確かにね」
「本当にあと一歩で」
皆また話す、
「あそこまで極端な人間って滅多にいなかったし」
「まあ二度と出て来ないならそれに越したことはないし」
「地球もまずは安心かな」
「そういえば地球は今どうなってるんですか?」
慎悟はこのことを尋ねてきた。
「それで」
「今のところは敵はいないぜ」
こう話したのは豹馬だった。
「俺達が全部倒したからな」
「じゃあ今は何もないか」
「安心してもいいんだな」
他のギガンティックのパイロット達も言う。
「どうなってるか心配だったけれど」
「とりあえずは」
「そう、ただ」
しかしここでまた言うのであった。話すのはカズミだった。
「脅威は去っていないから」
「宇宙怪獣ですか」
「それにバルマーもいるから」
カズミはこのことも話した。
「注意しておいてね」
「わかりました」
慎悟はここまで聞いたうえで頷いた。
「宇宙怪獣とバルマーですか」
「プロトデビルンもいるし」
「連中も」
「そうですね。予断は許しませんか」
とはいてもだった。今ここにいる誰もが地球については何もできはしなかった。そうするにはあまりにも遠く離れ過ぎてしまっていたからである。
「大丈夫ですか」
「さて、それでだけれど」
ミサトがここで話を変えてきた。
「これからだけれど」
「はい」
「これからですか」
「キャンベル星人やボアザン星人の勢力に入るわ」
彼等の名前が出て来たのである。
「だから注意してね」
「今度はあいつ等か」
「また新しい敵に」
「そう、一応データはあるわ」
ミサトはここでこのことも話した。
「ボアザンもキャンベルもね」
「ガルーダ、あいつは」
ここで豹馬はまた言った。
「あいつは誇り高く戦ったがな」
「そうね、彼はね」
ミサトも彼のことば認めた。
「けれど豹馬君、わかってるわね」
「ああ、敵はああいう奴だけじゃない」
それはもうわかっていることだった。
「下衆な野郎も一杯いるからな」
「今度の敵はどうかしらね」
「少なくともボアザンの皇帝ズ=ザンバジルはだ」
ここで言ったのは健一である。
「最低最悪の奴の様だな」
「そうだな。話を聞く限りはな」
ケンジが彼の今の言葉に頷いて応える。
「あの国の皇帝はどうにもならない愚物だ」
「じゃあそれと組む女帝ジャネスもまた」
「そういう奴なのね」
「まあそうでしょうね」
こうした察しはすぐについた。
「さて、その連中が次の相手となると」
「果たしてどうなるか」
「謀略に警戒」
ミサトの今度の言葉は一言だった。
「何をしてくるかわからないわよ」
「話し合いはできないんですね」
「まさかできると思ってないわよね」
シンジに返す言葉もこうしたものだった。
「シンジ君も」
「やっぱり無理ですか」
「それができる相手ならもう講和しているわ」
こう言うのである。
「彼等とはね」
「その通りだな」
ここで加持も話に加わってきた。
「話し合いができる相手とできない相手がいるからな」
「結局そういう相手ばっかりだよな」
「本当よね」
このこともまた話すのだった。
「バルマーといいプロトデビルンといい」
「宇宙怪獣は特にね」
とりわけ宇宙怪獣はそうなのだった。
「知能らしきものもないし」
「もう戦うしかない」
「そういう相手だからな」
「そうよ。戦いしかないのよ」
ミサトの目が鋭いものになる。
「それはわかっておいてね」
「はい、それじゃあ」
「それで」
「では今から入るわ」
まさにそれは今だった。
「中に入るわよ、いいわね」
「はい、それじゃあ」
「今から」
こうしてであった。ロンド=ベルは彼等の勢力圏に入る。また戦いがはじまろうとしていた。

第十四話完

2010・3・24
  

 

第十五話 悪夢への招待状

            第十五話 悪夢への招待状
  
「大統領、今からです」
「そうか、入るのだな」
「はい、これより我がフロンティアは」
レオンはこうグラスに話す。
「キャンベル星人及びボワザン星人の勢力に入りました」
「これは避けられなかったか」
「残念ですが」
レオンは目を閉じて彼に対して答えた。
「検討しましたがそれでも」
「わかった」
「それでは」
「止むを得ないか」
「そうです。どちらにしろいずれ人類はですl
「彼等と戦う運命だった」
グラスは苦い顔で述べた。
「いや、決着をつけなくてはいけなかったか」
「その通りです。地球の頃からでしたから」
「あの頃からの因縁がか」
「それを終わらせる為だ」
まさにその通りだった。
「行くか」
「それでは」
こうして方針は決まった。そうしてである。
フロンティアはロンド=ベルと共にその勢力圏に入った。するとすぐにであった。
「レーダーに反応です」
「本当にすぐだな」
サンシローはミドリの言葉を聞いてすぐに言った。
「もう来たのかよ」
「向こうも愚かではないな。それではだ」
「行くんだな」
「それしかない」
こうサンシローに言ったのはリーだった。ピートも言う。
「戦闘態勢だな」
「そうですね」
ブンタが彼の言葉に応える。
「すぐにな」
「わかりました」
「しかし。本当にあちこちに敵がいるよな」
ヤマガタケは出撃に向かいながらぼやいている。
「今度はキャンベル星人にボアザンかよ」
「それだけで済めばいいがな」
今言ったのはサコンだった。
「ムゲ=ゾルバトス帝国もいるからな」
「あっ、そういえば」
「あの連中もいたか」
それに気付いたのはロックオンとパトリックだった。
「俺達は見ていないがな」
「それでも奴等がいたか」
「彼等との決着もつけなくてはいけない」
サコンが言うのはこのことだった。
「絶対にだ」
「じゃあ奴等が出て来る可能性も」
「あるんだな」
「向こうも間違いなくそれを望んでいる」
サコンはこうも認識していた。
「それならばだ」
「ヘッ、それならそれで好都合だぜ」
忍はそれを聞いてかえって威勢のいい言葉を出した。
「シャピロの野郎共決着をつけるか」
「そうだね」
沙羅も忍のその言葉に頷く。
「あいつともいい加減ね」
「あいつ、まだ諦めていないだろうね」
「諦める筈がない」
亮はこう雅人に返した。
「あいつは宇宙の支配者になるのが望みだからな」
「その為に今も俺達の前に」
「出て来るのならそれまでだ」
アランはその言葉も考えも簡潔だった。
「それだけだ」
「その通りだ」
葉月博士はアランの言葉に頷く。
「出て来れば倒す。それだけだ」
「よし、それならだ!」
忍がここで叫ぶ。
「行くぜ!」
「あれっ!?やってやるぜじゃないって」
「どういうこと!?」
皆そのことに少し驚いた。
「いつも通りじゃないっていうか」
「本当に忍さん!?」
「まさかと思うけれど」
ここでアスカが言う。
「忍さんのふりをした何か別の存在とか?」
「それはるかも」
「そうよね」
皆でそれに頷く。
「まさか誰かが乗り移ってる!?」
「そういえば忍さんも結構」
「そうそう、色々な世界知ってるみたいだし」
「まさかそのうちの一つじゃ」
「違うから安心しろ」
それはしっかりと言う忍だった。
「ただ気分で言ってるだけだからよ」
「そうなんですか」
「何かほっとしたのと一緒でがっかり」
「まさかと思ったのに」
「それを言えば私はどうなる」
ここで葉月がまた出て来た。
「私はある世界ではウラキ少尉の部下になっているかも知れないのだ」
「っていうか博士の声って聞いていたら」
「そうよね」
「もう何ていうか」
心当たりがあることなのだった。誰にとっても。
「甲児にそっくりだし」
「声がもう」
そんな話をしながら出撃する。出て来たのはキャンベラ星人にボアザン星人の連合軍だった。その彼等が出て来たのだ。
「さて、出て来たな」
「それじゃあやるか」
「そうよね」
こう言ってであった。全軍で両軍に向かう。その敵の動きを見てちずるが気付いた。
「両方共同盟を組んでるみたいね」
「はい、間違いありません」
それに小介も頷く。
「歩調を合わせて僕達の方に来ています」
「そうよね、間違いないわ」
「何かやっかいやな、それは」
十三もそれを見て言う。顔を顰めさせている。
「一緒に来るっちゅうのは」
「その通りですたい」
大作は彼のその言葉に頷いた。
「片方だけでもかなりの数ですたい」
「へっ、そんなのはもう経験してるじゃねえかよ」
だが豹馬は強気だった。
「そんなのとっくにな。違うか?」
「ええ、そうね」
それに頷いたのはちずるだった。
「言われてみせばね」
「バルマー戦役じゃそうだったからな」
だからだというのだ。
「こんなのは全然平気だぜ」
「その通りだ。では行こう」
健一も豹馬と同じ考えだった。
「まずは敵軍の間に入るべきだ」
「間にか」
一平は両軍を見た。敵は確かに共同歩調を取っている。しかしその間にははっきりとした溝があった。健一はそれを見て言ったのである。
「そうだな。そこに入ればな」
「両軍を分断できるでごわすな」
「一緒に攻められるよりいいよね」
大次郎と日吉も頷く。
「それならでごわす」
「今はあの間に」
「わかったわ」
めぐみが最後に応えた。
「それなら皆今すぐ」
「よし、全軍両軍の間に入る」
実際に大文字がこう指揮を出した。
「いいな、諸君」
「はい、それじゃあ」
「今から」
こうしてロンド=ベルは両軍の間に向かう。それを見たキャンベル軍の将達が言う。
「おのれ、そう来たか」
「小癪な奴等だ!」
率いているのは白い顔の男と黒い顔の男である。
「そう来るならばだ!」
「ボアザン軍の指揮官に連絡を取れ!」
「どうした、騒々しい」
人相の悪い二本角の男が出て来た。
「ワルキメデス将軍もダンゲル将軍も」
「おお、ググル将軍」
「出て来たか」
ワルキメデスとダンゲルはそのググルの顔を見て述べた。
「早速だが、だ」
「どうするのだ?」
「そんなことは決まっているではないか」
こう返すググルだった。
「間に入れば挟み撃ちにすればいいだけだ」
「そうか、そうするのか」
「ここは」
「それでどうか」
あらためて二人に言うググルだった。
「それでだ」
「よし、それで行くとしよう」
「では早速だ」
「うむ、では早速そうするとしよう」
こうして両軍は動きはじめた。そのうえでロンド=ベルをサンドイッチにしようとする。しかしである。ここでロンド=ベルは早速動くのだった。
「さて、来たな」
「はい」
未沙がグローバルの言葉に頷く。
「予想通りですね」
「それならばだ。まずは一方に突撃を仕掛け」
「そのうえで反転して一気に決着をつける」
「その通りだ」
これが彼等の作戦だった。
「いいな、それではだ」
「はい、仕掛けます」
彼等はボアザン軍に攻撃を仕掛けた。忽ちその円盤達が撃破されていく。
「よし、撃て!」
「どけ!」
早速攻撃を浴びせる。ビームライフルやミサイルで次々と倒す。
そうしてだ。そのままボアザン軍を突破し反転する。合流せざるを得ない両軍をさらに攻めるのだった。
「よし、今ね!」
ロザリーが照準を合わせる。そのうえでリニアレールガンを連射する。
それで何機も倒してだ。それから剣を抜く。
突進し左右の敵を次々に倒す。戦いはロンド=ベルに傾いていた。
「このままいけるか?」
「そうですね」
プレセアがジノの言葉に応える。
「今はかなりいい感じですけれど」
「しかし油断はできぬか」
「はい、そう思います」
慎重な彼女の性格がそのまま出ていた。
「援軍は出て来ないみたいですけれど」
「だが。何が出て来るかわからない」
ここでまた言うジノだった。
「だからだな」
「はい、それじゃあ今は」
「警戒を怠らずに攻める」
これがジノの考えだった。
「周囲から出て来る可能性がなきにしもあらずだ」
「バルマーか宇宙怪獣か」
ファングも言う。
「若しくはだな」
「そうだ。そのムゲ=ゾルバトス帝国だ」
ジノが出したのは彼等だった。
「長い間姿を現していなかったがな」
「それが出て来る」
「遂に」
「油断はできない。今は敵を倒そう」
こう話してだ。両軍をさらに退けていく。やがて彼等の損害はかなりのものになった。
それを見たググルがだ。また言うのだった。
「頃合いか」
「くっ、忌々しいが」
「そうなのか」
ワルキメデスとダンゲルがここで言う。
「損害が七割を超えた」
「これ以上の戦闘はというのだな」
「そうだ。撤退する」
また言うググルだった。
「御二方はそれでいいか」
「致し方あるまい」
「こうなってはだ」
二人も今は諦めるしかなかった。それで終わりだった。
「撤退だ」
「すぐにな」
こうして彼等は徹底した。この戦いは終わった。しかしである。
「やっぱりな」
「そうね」
ジャックとエルフィが少し忌々しげに話す。
「レーダーに反応か」
「出て来たわね」
「はい、八時の方向にですね」
フィリスも言う。
「出て来ましたね」
「ムゲ帝国か」
ミゲルはその彼等を見て言った。
「予想通りだな」
「ここまで予想通りだとある意味関心だ」
アルフレッドには余裕すら見える。
「全く。ここぞというタイミングだな」
「しかしそれだと」
「どうなるんだ?」
「全く」
そんな話をしながら彼等に対して向かう。それはやはりムゲ帝国軍だった。その指揮官が誰かというのであった。
「久し振りだな」
「誰だ?あんた」
エイジはその彼にきょとんとした顔で返した。
「俺ははじめて見たぜ」
「そうだよね。誰だったかな」
斗牙もわからなかった。
「ムゲ帝国については全然知らないけれど」
「我が名はギルドローム」
彼は自分から名乗った。
「見たところはじめて見る顔も多いな」
「うわ、また怪しいのが出て来たわね」
小鳥がその彼を見て言う。
「何かあからさまに企んでそうな奴ね」
「その通りだ、皆気をつけるんだ」
万丈がその通りだというのだった。
「絶対に仕掛けて来るからね」
「仕掛けるタイプか」
「やはりな」
刹那と宗介がそれを聞いて言う。
「では問題は何をしてくるかだ」
「それだな」
「そうだ、皆気をつけるんだ」
宙もそれは強く警戒していた。
「こいつは絶対に何かしてくるからな」
「じゃあ問題は何?」
「一体何を」
「してくるか」
「皆まずは迎撃だ」
ブライトはそれを命じるのだった。
「いいな、まずはだ」
「わかりました」
「それじゃあ」
こうして全員で迎撃に向かう。そしてだ。
今まさに戦端を開こうという時にだ。彼は言った。
「よし、今だな」
「はい、閣下」
「それでは」
部下達も応える。そうしてだ。
「いいか、数は少なくともよい」
「それでもいいのですね」
「まずは」
「奴等の中にそれをさせることが重要なのだ」
そうだというのだ。
「わかったな、それではだ」
「了解です」
こうしてその作戦が発動される。それは。
「!?」
「なっ、何だ!?」
突如としてボルテスとコンバトラーに異変が起こった。そうしてだ。
急に無差別で攻撃しだした。皆必死にそれをかわす。
「お、おい!」
「どうしたんだ!」
「豹馬!」
「おい健一!」
「そこか!」
「そこにいたのか!」
だが彼等にはわかっていない。無差別に攻撃を繰り出しはじめたのだ。
「これは一体」
「どういうことなんだ」
「そうか、やっぱりね」
万丈がここで気付いたのだった。
「仕掛けてきたね」
「っていうと」
「やっぱりムゲ帝国がですか」
「仕掛けてきたんですね」
「うん、間違いない」
万丈はこう断言した。
「さて、とりあえずコンバトラー、ボルテスからは離れて」
「はい、それじゃあ」
「とりあえずは」
「俺が引きつける」
ショウはこう買って出た。
「あの二人の攻撃は俺が全てかわす。皆は安心してくれ」
「すいません、それじゃあ」
「今は」
「ショウ、やろうね」
「ああ、チャム」
ショウはチャムの言葉に頷いて二機の前に出る。そのうえで攻撃をかわしてだ。彼等の攻撃が仲間に及ばないようにしたのであった。
そしてだ。トッドが万丈に対して言ってきた。
「あいつの戦艦を沈めればいいんだな」
「うん、二人は精神攻撃を受けている」
万丈はこう断言した。
「だからね。まずはあの戦艦をね」
「わかった。じゃあそうするな」
「頼んだよ。ではまずは彼等を」
「ああ」
こうしてだった。全軍で向かう。だがその戦いは辛いものだった。
「まずいな、また誰かが操られたら」
「その場合はどうする?」
「一体」
「心配しても何にもならないよ」
だがここで万丈が言った。
「そんなことをしてもね」
「じゃあどうするの?」
「ここは」
「ああ、このままでいいよ」
万丈はかなり楽観的な言葉を出してみせた。
「このままでね」
「このままでいいっていうと」
「攻撃かよ」
「それでいいんですか」
「そう、攻撃は最大の防御」
万丈はあえてシンプルに話してみせた。
「だからね。それで行こう」
「その通りだね」
彼の言葉に頷いたのはロジャーだった。
「ここはね。そのまま正面から行こう」
「よし、それなら」
「今は」
こうしてだった。彼等は一気に攻める。そしてそのままムゲ帝国軍を押し切りギルドロームの旗艦にまで迫った。一矢がそれに迫る。
「よくもあの二人を!」
こう叫んでギルドロームの戦艦に迫る。
「その落とし前はつけさせてもらう!」
「し、司令!来ました!」
「敵が!」
「案ずるな」
だがギルドロームはダイモスが向かって来ても冷静だった。
「このままでいい」
「ですがこのままですと」
「我々は」
「だから案ずることはない」
こう言ってであった。そのまま精神攻撃を浴びせる。しかしだった。
「だ、駄目です!」
「聞きません!」
「ダイモスが!」
ダイモスはそのまま突き進む。そしてだ。
その蹴りを放つ。ギルドロームの乗艦が大きく揺れた。
「う、うわああっ!」
「こ、このままだと!」
「この艦が!」
「駄目なのか」
ギルドロームは何とか立ち止まっていた。そのうえで言ったのだ。
「この艦は」
「は、はい」
「あと一撃を受ければ」
「わかった」
ギルドロームはそれを聞いて頷いた。そうしてだった。
「今は撤退する」
「仕方ありませんか」
「それでは」
「撤退だ」
こうしてムゲ帝国軍は撤退した。そしてそれと共に豹馬達も元に戻った。彼等は呆けたようにして言うのだった。
「あれっ、どうしたんだ!?」
「俺達は一体」
「よし、これでいいな」
ショウはその彼等を見て安心した声を出した。
「全部何事もなく終わった」
「そうね。ショウやったじゃない」
チャムがそのショウに対して言う。
「全部かわすなんて」
「やろうと思えば何だってできるさ」
ショウは笑ってチャムのその言葉に応えた。
「こうしたことだってな」
「そうなのね」
「しかしな」
そして京四郎が一矢を見ながら言う。
「一矢には全く効かなかったな、あの精神攻撃も」
「そうよね」
ナナもそれを言う。
「本当に全然ね」
「一矢さんだからですね」
ユリカが明るくその理由について述べた。
「一矢さんはそうそう生半可な精神攻撃を受けたりしませんよ」
「それだけ心が強いってことか」
「そういうことなのね」
「一矢さんの心は誰よりも強いです」
ルリも言う。
「ですから」
「一矢さんの強さなら大丈夫です、何があっても」
「おいおい、買い被り過ぎじゃないのか?」
一矢本人はそんな彼女達の言葉を笑って返した。
「俺はそこまで強くないさ」
「いえ、強いですよ」
「本当に」
だがその彼にプレアとカナードが言う。
「僕達見ていますから」
「だから言えます」
「そうだといいんだがな」
一矢は彼等のその話を聞いて述べた。
「俺の心が強ければな」
「迂闊だったな、しかし」
「全くだ」
だが豹馬達はこう言ってぼやくのだった。
「いきなり仕掛けられたといってもな」
「それでもな」
こう言ってであった。ぼやくばかりだ。
「皆には迷惑かけたな」
「申し訳ない」
「ああ、それは気にしたら駄目だよ」
万丈はその彼等に優しく声をかける。
「ああいうことを狙って来る奴等だしね」
「だからだって言ってくれるか」
「悪いな」
「だから謝らなくていいよ。ああした攻撃は防ぐのが非常に難しい」
そのことはよくわかっていた。
「そういうことでね。この話は終わりにしよう」
これで話は終わった。そしてである。
戦いを終えたロンド=ベルはフロンティアに帰還した。そこで整備と補給を受けながらこれからのことを話すのだった。
「さて、これからだが」
「彼等はさらに来るだとうな」
クワトロとアムロがそれぞれ言う。
「それをどうするかだが」
「また迎撃に来るな」
「じゃあ臨戦態勢のままですね」
「そうだ、暫くはだ」
「皆出来るだけ艦内にいてくれ」
こう言うのである。
「今はな」
「わかりました。それじゃあ」
「暫くは」
「そしてだ」
アムロはさらに言う。
「皆ここで気をつけてくれ」
「っていいますと」
「どうしたんですか?」
「うん、ムゲ帝国だけじゃない」
その彼等のことを言ったのである。
「それにボアザンにキャンベルもだ」
「ここでの敵は三つですよね」
「そうですよね」
「そして彼等だけではない」
そうだというのだ。
「宇宙怪獣やプロトデビルンもだ」
「あの連中もですか」
「出て来るんですか」
「可能性はゼロじゃない」
だからだというアムロだった。
「バルマーはいないようだがな」
「ここでも宇宙怪獣が出て来たり」
「プロトデビルンもですか」
「出て来ますか」
「不意打ちもある。気をつけてくれ」
アムロが言うことの重点はそこだった。
「いいな、それではな」
「はい、わかりました」
「それでは」
「とにかく暫くは臨戦態勢にいてくれ」
クワトロはこのことを念押しした。
「いいな、くれぐれもだ」
「わかりました。フロンティアにいられないのは残念ですけれど」
「それじゃあ今は」
「まあここでリラックスしていくか」
こう言ったのは神宮寺だった。
「暫くはな」
「まあ宇宙での戦いはそうですしね」
「元々艦内に閉じこもりですし」
「それが元に戻ったと思えば」
考えをそう変えるのだった。
「そういうことで」
「わかりました」
「済まないな。さて、それではだ」
また言うクワトロだった。
「これからの戦いはだ」
「はい、何時来てもいいように」
「しておきます」
こうして彼等は臨戦態勢を取って艦内に止まる。そのうえで敵を待つことにした。そのまま待っていてだ。何だかんだでくつろいでいるのだった。
「そうそう、リリィさんの声も」
「テュッティさんにそっくりだよな」
「フロンティアでもいるんだな、そういう人って」
「それと」
さらに話すのだった。
「ロゼの声って」
「私ですか」
ロゼは話を振られたところでびっくりした顔になる。
「私なんですか」
「ファーラ姫に似てない?」
「そっくりよね」
「本当に」
こう話すのである。
「声も雰囲気も」
「私もそう思います」
そのファーラも話す。
「私と似てるなって。思っていました」
「確かに」
言われてロゼ自身も思うことだった。
「ファーラさんと似ていますよね」
「そうそう」
「それにマーグさんも」
今度は彼だった。
「マーグさんと豹馬さんって似てるっていうか」
「雰囲気は全然違うようでそっくり」
「弟さんよりもずっと」
「確かに似ているな」
マーグもまた認めることだった。
「声も何もかも」
「そうですよね、本当に」
「そっくりですし」
「私はそういう意味でも一人ではないのだな」
マーグは微笑んで言った。
「いや、最初からそうだったな」
「最初から?」
「っていいますと」
「ロゼがいてくれていた」
こう言ってロゼに顔を向けて微笑むのだった。
「ずっとな」
「司令、あっいえ」
話を振られたロゼはふと言葉を変えてきた。
「マーグさん」
「そういう関係か」
「みたいね」
「そうよね」
皆それぞれ言う。はっきりと気付いたのである。
「完全に恋仲っていうか」
「何時の間にっていうか」
「最初から?」
「そんなのではありませんっ」
まずいことにムキになってしまったロゼだった。
「私と司令、いえマーグさんはそんな」
「だから自分で言ってますから」
「今はっきりと」
「嘘はつけないにしても」
「うっ、これは」
最早言い逃れができなかった。ロゼもぎくりとした顔になる。
「何もありませんから」
「ま、まあそれでだけれど」
ここでタケルがたまりかねて言う。
「そういうことはあまり検索しないで」
「いや、検索していませんけれど」
「別に」
「何ていうかロゼさんが勝手に」
「自爆したっていうか」
まさにそれであった。これは自爆であった。
「だからロゼ、あの」
「私は・・・・・・」
ロゼはタケルに対しても言う。
「何でこんなことに」
「ロゼさんって生真面目だから」
「こういうことに奥手だと思ったけれど」
「本当に」
こう話してだった。それで今の話は終わった。しかしである。
「けれどこれだけ純情な人ってそうはいないし」
「マーグさんの為にはやっぱり」
「あれなんですか?」
「私はマーグ様の為なら全てを捧げます」
必死の顔での言葉だ。
「例え何があっても」
「様付けだし、今度は」
「あの、気付いてます?」
「あっ、また」
今も言ってから気付くのだった。
「しまった、これは」
「やれやれ、こりゃ大変だ」
「本当にね」
周りも呆れるしかないことだった。
「けれど可愛いっていうか」
「本当にね」
「可愛いって」
また言うロゼだった。
「私が・・・・・・ですか」
「可愛いよね」
「そうだよな」
これは皆が思うことだった。
「性格がな」
「特に」
「顔は奇麗系だけれど」
「そんなこと言われたことは一度も」
ロゼの顔は真っ赤になっている。
「ないですけれど」
「まあ戦ってばかりじゃそうだけれどね」
「それは」
こんな話をしながら今は臨戦態勢の中にあった。ロンド=ベルの戦いは続く。しかしそれでもそこには緊張と共にこうしたリラックスしたものもあった。

第十五話完

2010・3・27


      

 

第十六話 総力戦

               第十六話 総力戦

「うわ、多国籍料理」
「豪勢~~~~」
「ここまでなんて」
皆目の前にある御馳走の山に目を奪われている。
「ギガンティックの人達って皆料理上手なんですね」
「これは嬉しい誤算」
「確かに」
「そうか?」
雲儀がその彼等に対して返す。
「我々も戦うばかりではないからな」
「こうしたことも好きですよ」
レイも言う。
「時間があればこうして料理をしたり」
「それでか」
「あれ、そういえばこれって」
「ミリタリーなのもあるけれど」
「それ私です」
神代が言うのだった。
「私、そういう料理が好きでして」
「何か野戦食って」
「こんなのまで」
「ずっと。特殊部隊の訓練を受けていまして」
だからだというのだ。
「こうした料理ばかり得意になって」
「ううん、何か凄い状況だけれど」
「けれどこれもかなり」
「美味しいよね」
「独特の味で」
「そうですよね」
慎悟もそれを食べている。
「神代さんも料理上手よね」
「だったらいいけれど」
神代は彼の言葉に頬を少し赤くさせる。
「私こういうのは得意じゃないから」
「そうかな。結構」
「上手よね」
「確かに」
皆それは言う。舌は素直だ。
「まあ今はこうしてリラックスして」
「何時何が来てもいいようにね」
「しておかないといけないし」
「そうそう」
こんな話をしながら食事を楽しんでいる。艦内にいてもリラックスはできていた。
そしてそうしたものを食べてからだ。慎悟はゲームに興じた。相手はニコルである。
「むっ、これは」
「どうなんだ、ニコル」
「慎悟の腕は」
「はい、かなりです」
レースのゲームで競争しながらの言葉である。
「慎悟君、やります」
「そうですか?」
「はい、見事ですよ」
慎悟を賞賛さえする。
「ディアッカもイザークもどうですか?」
「いや、俺達はな」
「ゲームはそれ程上手くはないからな」
こう言ってしないのだった。
「やっぱりニコルがな」
「俺達の中では一番だからな」
「アムロ中佐はもっと凄いですよ」
ニコルはここで彼の名前を出した。
「もう超絶的な反応ですから」
「あの人はまた別だろ?」
「俺達なぞ比較にならない」
とにかくアムロは別格だった。
「最強のニュータイプだからな」
「ロンド=ベルでも随一だ」
「アムロ中佐ってゲームも凄いんですか」
「凄いというものではない」
「だよな、あの人はな」
イザークとディアッカが言うのだった。
「反応が尋常ではない」
「記憶力や判断力も桁外れだしな」
「そうなんだよ。もう全てが凄いんだ」
ニコルもここで話す。
「信じられないだけの速さだから」
「そうなんですか。そんなに」
慎悟も話を聞いて驚いていた。
「けれどそれだと。一度見てみたいですね」
「うん、見てみたらいいよ」
ニコルもそれを勧める。
「本当にびっくりするから」
「そんなにですか。じゃあ機会があったら」
「どんなゲームでもすぐにクリアしてしまうからな」
「ニュータイプとかいう話じゃないからな」
そこまで言われるアムロだった。やはり彼は尋常な人物ではないのだ。
そしてだ。彼等は今は酒も飲んでいる。マクロスの中で酒盛りに興じている。
あるのは日本酒にするめ、それと柿の種にピーナツだ。ビールもある。そうした乾物をメインとして酒とつまみを楽しんでいるのである。
「おいよ」
「どうしたの?」
キラがシンの言葉に応える。
「いきなりだけれど」
「いや、この柿の種だけれどな」
「美味しくないとか?」
「いや、美味いんだよ」
逆だというのだ。
「これ何処のなんだ?随分美味いな」
「ああ、それな」
アルトがそのシンに応える。
「フロンティアのだよ」
「あそこのか」
「ああ、そこで採れた米から作ったものだ」
そうだというのだ。
「だから天然ものだ。美味いのはだからだ」
「だからですか」
「そう、だからなんだよ」
キラに対しても答える。
「しかしな。艦内待機でも何かかんだで楽しめるよな」
「そうだな」
クランもいてビールを飲んでいる。
「皆それぞれリラックスしていて何よりだ」
「あのさ」
その彼女にムウが言ってきた。
「あんたその姿で酒か」
「おかしいか?」
「年齢的にはいいが外見じゃアウトだろ」
その幼い姿を見て言うのである。
「ちょっとな」
「私は前からこの格好で飲んでるが」
「じゃあいいのか」
「いい」
いいというのだ。
「特に気にしないでくれ」
「それができないんだがな」
「だから気にするな。それよりも少佐」
「何だ?」
「貴官もあれだな。色々と似ている相手が多いな」
こう言ってきたのである。
「私もミリアリアと似ているがな」
「私もね」
ユングもいる。
「レッシィとは前に会ったかしら」
「いや、はじめてだ」
すぐに言い返すレッシィだった。
「それは間違いない」
「そうよね、それは」
「しかし。何故だ?」
だがここで言うレッシィだった。彼女もなのだった。
「何故だ?前に一度会っていないか?」
「そうよね。そういえばチャムちゃんとも」
「私も。バルマー戦役の時にも思ったわよね」
「うん、何処かで会ったわよね」
「どうしてかしら。本当に初対面だった筈なのに」
ユングにはそれがどうしてもわからなかった。
「おかしなこともあるものだわ」
「おかしいどころじゃないんじゃないかしら」
ノリコが話を聞きながら述べた。
「けれど私もだし」
「そうね。コスモ君達とも」
カズミもいて言う。
「はじめて会った筈なのに前に何処かで戦ったみたいな」
「それに」
話はさらに続く。
「イデオンのことを何処かで見たみたいな」
「その記憶があるのかしら」
「有り得ない筈ですよね」
ノリコはいぶかしむ顔でカズミに述べた。
「こんなことは」
「そうだよね。有り得ない」
タケルはビールを飲んでいた。そのうえで言うのだった。
「それに俺もロジャーさんとは何処かで」
「そうだな。パラダイムシティの外で出会っている」
ロジャーもタケルに対して応える。
「有り得ない筈なのにだ」
「他の皆とも何処かで会った記憶がある」
タケルはさらに言う。
「この世界とは別の何処かで」
「世界が複数ある!?」
「ひょっとして」
「それは有り得るな」
ロジャーはまた言った。
「私達もこの世界とは別の世界に来ている」
「あっ、確かに」
「それを考えたら」
「パラレルワールドだ」
ロジャーが話に出すのはこの話だった。
「複数の世界がありその中には私がいる世界があればない世界もある」
「修羅の世界もだな」
フォルカがその目を鋭くさせた。
「その中の一つか」
「俺達の世界もまた」
「その中にあった」
そしてアクセルとエリスも。
「それなら話はわかるな」
「確かに」
「デュミナスもそこから?」
「そうだね」
「そして私達も」
ティスにラリアー、デスピニスもお互いに話し合う。
「何かあたし達も他の世界じゃいなかったりするのね」
「そしてこうして皆と一緒にいたり死んでいたりするのかもね」
「それがパラレルワールド」
「私達の幾割かがいる世界もあれば誰もいない世界もある」
ロジャーはまた言った。
「そうした世界が無数に存在しているのだ」
「じゃああれですか」
ノリコはロジャーの話をそこまで聞いて述べた。
「私達は別の世界でコスモ君達と会ってるんですね」
「そのことを無意識に感じ取っているのだ」
そうだというのだ。
「そういうことだ。だが」
「だが?」
「何かがおかしい」
眉を曇らせての言葉になっていた。
「何かがだ。おかしい」
「っていいますと」
「どういうことですか?それは」
「私達はこれまで幾つかの世界を巡り知ってきた」
「はい、それは」
「確かに」
「しかしその世界全てが崩壊に瀕している」
言うのはこのことだった。
「シャドウミラーの世界も修羅の世界もだな」
「そうだ」
「その通りだ」
エリスとアルティスがそれぞれ話す。
「私達の世界だけではない」
「全ての世界がそうだとは思わなかった」
「全ての世界がそうだということが有り得るのだろうか」
ロジャーは自然に腕を組んでいる。そのうえでの言葉だった。
「偶然そうなるものだろうか」
「特異点はもうないぜ」
マサキがそれは言った。
「それはもう皆見たよな」
「忘れる筈がないニャ」
「その通りだニャ」
それにクロとシロが応える。
「シュウがそれをしたニャ」
「だから偶然はもう起こらないニャ」
「そうだ。それに全次元単位での偶然なんてあるのか?」
マサキもそれを言う。
「そうそうよ。しかもそれが全部世界崩壊なんてとんでもねえことになるのか?」
「まず有り得ないな」
「そう言うのね」
ドロシーがそのロジャーに対して返す。
「ロジャーは」
「そうだ。こんなことはまず有り得ない」
実際にそれを断言するのだった。
「それにだ」
「それに?」
「私達の世界は一万二千年ごとに崩壊していたな」
「ああ、そうだよな」
「それはな」
皆それに頷く。
「そしてパラダイムシティは四十年に一度」
「破壊され創り直されていた」
「アル=イー=クイスは神だった」
ロジャーは今度は彼等について話した。
「しかしだ。それは一つの次元の話だ」
「全ての次元には影響を及ぼせない」
「他のパラレルワールドには」
「そうだ、それはない」
また言うのだった。
「どう考えてもだ」
「全ての次元が崩壊している」
「それを誰かがしてるって」
「神!?」
ユングが首を傾げさせながら述べた。
「神がいるのかしら」
「この世界にはイルイ=ガンエデンという神がいたな」
「ああ、そうさ」
「イルイちゃんのことですよね」
今度はアラドとゼオラが応える。
「あの娘なら今は平和に過ごしてるぜ」
「普通の人間の女の子として」
「そうだな。だが神はそれだけか」
ロジャーの考えはさらに進んでいく。
「それはどうなのかだな」
「ううん、何か凄い話になってきたけれど」
「本当にどうなのかしら」
「何かあるのかな、やっぱり」
こんな話をしていた。そしてそのフロンティアの中では。
「ねえルリア」
「はい、アルマナ様」
二人の少女が何か話をしていた。
「ここに忍び込めてよかったわね」
「はい、まさかこれだけ上手くいくとは思いませんでした」
「あのシェリルについていってね」
それで入ったというのである。
「それで入ったけれどね」
「ここもいい場所ですね」
「そうね。ギャラクシーはスラムもあって」
それについても知っているらしい。
「暗い部分も多かったけれど」
「ここは暗い場所はありません」
「そういうことはしっかりと計画しているみたいね」
「そうですね。ではアルマナ様」
「ええ」
「お部屋を用意してありますので」
こう言うのだった。
「そちらに」
「わかったわ。じゃあ今からね」
「はい、参りましょう」
こうした話をして姿を消す。フロンティアの中でも何かが起こっていた。
そしてだ。ロジャーが話をした次の日だった。レーダーに反応があった。
「出たか」
「今度はどの勢力だ?」
「ムゲ帝国です」
そこだというのだ。
「その勢力です」
「げっ、またあそこか」
「っていうとまた」
「あの精神攻撃!?」
「いや、それは違うな」
だがここでアランが言う。
「ムゲ帝国との地球での戦いを思い出すとだ」
「あの戦い?」
「その時?」
「そう、その時のことだ」
アランはそこから検証して話していた。
「ギルドローム、ヘルマット、それにデスガイヤーの三人の将軍がいたな」
「シャピロの野郎もな」
忍は彼の名前を出して忌々しげな顔を作る。
「あいつもいやがったな」
「何か今は見ないけれどね」
沙羅も言う。
「とりあえずはね」
「それでその三人の将軍だったね」
雅人は話を将軍達に戻してきた。
「そして最初に出たのはギルドロームで」
「では次は後の二人か」
亮も見ている。
「ヘルマットかデスガイヤーか」
「どちらかが出て来る」
また言うアランだった。
「デスガイヤーは正攻法でヘルマットは物量戦だったな」
「どっちが来る?」
「それなら」
「数は?」
ミサトはマヤに対して問うていた。
「どれだけ?」
「かなりですね」
これがほぼ答えだった。
「十万を超えています」
「十万!?」
「それ以上ってことは」
「ヘルマットだな」
アランがまた言う。
「奴か」
「数で来るならやり方がある」
それを聞いて静かに言うベスだった。
「総員出撃だな」
「よし、それなら」
「これから」
こうしてだった。まずは総員出撃した。するともうムゲ帝国軍は来ていた。
「さて、それではだ」
「はい、閣下」
「このままですね」
「そうだ。攻める」
まさにそうするというのだ。
「いいな、それではだ」
「はい、それでは」
「攻めましょう」
こうして彼等はその圧倒的な数で攻めにかかった。ロンド=ベルは既に戦闘態勢に入っている。防御陣形を組んでいるのだった。
「よし、来やがったな」
「そうですね、リョーコさん」
「来た」
リョーコに対してヒカルとイズミが言う。
「それじゃあ早速」
「迎撃する」
「よし、突撃だ!」
だがここでダイゴウジが叫ぶ。
「一気に行くぞ!」
「おい旦那」
その彼にすかさずサブロウタが突っ込みを入れる。
「それはないだろ」
「何でだ?」
「俺達は守りを固めてるんだぜ」
それを言うのだった。
「とにかくな。今はな」
「突撃は駄目か?」
「守るのにそれはないだろ」
サブロウタは正論を話していた。
「突撃してもな」
「そういえばそうか」
「そうだよ。まあ落ち着けよ」
「それに僕達は」
ジュンもここで言う。
「あれじゃないですか。ナデシコの近くでないと」
「その通りだ」
ナガレもいる。
「ブラックサレナならともかくな」
「いや、それでも」
今度言ったのはアキトだった。そのブラックサレナに乗る彼だ。
「離れたら危険だから」
「ヤマダさん、突撃は厳禁ですから」
ルリも参戦してきた。
「それは御願いします」
「くっ、そうなのか」
「死んだら許しません」
そしてこんなことも言う。
「わかりましたね」
「糞っ、性に合わないな」
こうは言ってもだった。
「このダイゴウジ=ガイ、突撃こそが」
「いや、待ってくれ」
雲儀も彼に突っ込みを入れる。
「貴方のそうした性格はどうも見ておけない」
「そうだな」
レイも彼の言葉に頷く。
「私もまた大次郎君にはだ」
「全くでごわすな。おいどんもレイさんに対しては」
「だからだ。くれぐれも軽挙妄動は謹んでくれ」
「あんたに言われるとな」
ダイゴウジもそれに返す。
「どうもな」
「では頼むな」
「ああ」
「アキト君」
ビリーが声をかけるのは彼だった。
「くれぐれもな」
「ええ、わかっています」
「そういうことだ」
「では私も」
ユリカはそんな彼等のやり取りに何故か影響されて言う。
「ステラちゃん、フレイちゃん」
「はい」
「やっぱり私達なのね」
フレイは思わず苦笑いになった。
「そう来ると思ったわ」
「そういうことで御願いします」
「ステラもう死なないから」
「私もね。生きていたらそれだけ楽しいことがあるし」
「そういうことです。ですから」
「全軍迎撃です」
ルリがここで指示を出す。
「守りを固めたまま御願いします」
「敵の第一陣来ました」
サリーが言う。
「それでは」
「はい、戦闘開始です」
こうしてだった。今は全軍で迎撃にあたる。しかしだった。
「また来るな」
「そうね」
「絶対にね」
それはもう予想できることだった。
「ヘルマットの戦術だと」
「しかも別の勢力が出て来るかも」
「ボアザンかキャンベルか」
「それか」
若しくはだった。
「プロトデビルンか宇宙怪獣か」
「何が」
「それが出る!?」
「今度は」
「とにかく何が出るかわかりませんね」
それをまた言うエキセドルだった。
「それは用心しておきましょう」
「わかりました」
美穂が彼の言葉に頷く。
「それでは」
「ミサイル発射です」
エキセドルの指示はこれだった。
「攻撃は敵前方に」
「了解です」
「それでは」
美穂とサリーが応えてだった。前方に展開する敵の部隊に複数のミサイルがそれぞれ生き物の如く動いてだ。彼等を撃墜した。
それを合図にして応酬がはじまった。両軍の戦いがはじまったのだ。
ロンド=ベルは見事な防御陣形を組み彼等を防ぐ。そのまま十万の敵を防ぐ。そうして一時間程戦ったその時だった。
「よし、それではだ」
ここでヘルマットが言った。
「第二陣はもういけるな」
「はい」
「間も無く到着します」
「では第二陣も向かわせる」
そうするというのだった。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「すぐに」
こうしてその第二陣が来てまたロンド=ベルに攻撃を浴びせる。戦いはそのまま続く。だがロンド=ベルの守りは固く崩れはしない。
だがそれでもだった。その彼等の顔は晴れない。優勢であってもだ。
「来るだろうな」
「そうですね。プレッシャーを感じます」
カミーユがアムロに対して返す。
「彼等がまた」
「来るな」
「レーダーに反応よ!」
「糞っ、やっぱり来たか!」
コスモがカーチャの言葉に反応して言う。
「それでどの相手だ!」
「あいつ等よ!」
まずはこう返す彼女だった。
「この反応は」
「あいつ等って?」
だがデクはそれが誰かわからない。
「誰なの?それで」
「バッフ=クランよ」
彼等だというのだ。
「彼等が来たわ」
「あいつ等が!?」
コスモはバッフ=クランと聞いて意外な顔になった。
「ここで出て来たのか」
「そうなのよ、バッフ=クランが」
「そうか」
コスモはまだ意外な顔のままだった。
「そうなのか」
「しかしそれでもだ」
ここでまた言うベスだった。
「敵にはかわりない。それならだ」
「そうだな。戦うか」
コスモもすぐに返す。
「ここは」
「よし、それなら」
「そうだ。彼等の攻撃にも応える」
そうするというのだった。
「それでいいな」
「わかった。じゃあな」
「また会ったか、巨神」
率いているのはギジェだった。
「それならだ」
「はい、隊長」
「すぐにですね」
「あれはムゲ帝国軍だ」
ギジェは彼等の話もする。
「名前だけは聞いている」
「そうですか、ムゲ帝国ですか」
「この銀河にはバルマー以外の帝国もあるのですね」
「そうだ。本拠地はまだわからない」
バッフ=クラン自体がそこまで彼等を把握していない。
「まだな」
「ですがここは、ですね」
「彼等も」
「情報も集めたい」
その意図もあった。
「是非共な」
「そうですね。それでは」
「ここは」
「その通りだ」
ここでもう一人の声がした。そして巨大な戦艦が出て来た。
「ドロワ=ザン!?」
「あの艦がここに」
「ということは」
「そうだ、私だ」
こう言って出て来たのはである。明らかにバッフ=クランの巨大戦艦だ。そしてその艦橋にいるのは赤い髪の気の強そうな女だ。
そしてその巨大戦艦を見てだ。カララが言った。
「あれはドロワ=ザン、まさか」
「えっ、カララさん」
「どうしたんですか?」
ケイスケとヒカリが彼女に問うた。
「何が出て来たんですか?」
「あの巨大戦艦に何が」
「私の予想が正しければ」
彼は鋭い顔で話す。
「あの戦艦に乗っているのは」
「カララさんのお知り合いですか?」
「それじゃあ」
「姉です」
ここでカララが言った言葉はこれだった。
「私の姉です。ハルルです」
「ハルル!?」
「それがカララさんのお姉さんの名前なんですね」
「そう、そして」
カララの言葉は続く。
「姉は生粋の軍人です。父から男に生まれていればと言わしめた程の」
「それだけの人物なんですか」
「そのハルルという人は」
「そうです。ですから気をつけて下さい」
そうだというのだ。
「姉は手強いです。それにギジェもいますから」
「あのいつもの奴か」
「あいつまで」
「来てますね」
ギジェの姿も確認された。バッフ=クラン軍はそのままロンド=ベルとムゲ帝国軍の戦いの間に入ろうとしている。三巴の戦いになった。
三つの勢力がそれぞれの敵と戦う。混戦になろうとしている。ヘルマットはその中で部下達に対して話すのだった。
「陣形を整えよ」
「混戦を避けてですね」
「それで、ですか」
「そうだ。陣形を整え今は抑える」
そうするというのだ。
「そして頃合いを見て動け」
「はい、それでは」
「今は」
彼等は陣形を整え積極的な攻撃を止めた。バッフ=クランは双方に攻撃を仕掛けている。ロンド=ベルはそれを見て一つの判断を下した。
「よし、ここはだ」
「どうするんですか?」
「ここは」
皆ベスの言葉に問う。
「どっちを攻めますか?」
「それとも防ぎますか?」
「防ぐ」
そうするというのだった。
「バッフ=クランはだ」
「ではムゲ帝国軍は」
「どうしますか?」
「攻める」
そうするというのだ。
「守りを固めているのなら突き崩す」
「ではあれだな」
それを聞いたオズマが言う。
「バッフ=クラン軍は一部の兵で止めて主力はムゲ帝国軍に向かう」
「よし、それなら」
「今はそれで」
こうしてだった。皆それに頷いてだった。
彼等はそのまま向かう。バッフ=クラン軍に対してはソロシップとイデオンだけが残った。その他の軍はまずはムゲ帝国軍にであった。
「幾ら何でも無茶ちゃうか?」
「無茶って?」
「いや、ソロシップとイデオンだけで防ぐのはや」
タータはこうタトラに話す。二人もムゲ帝国軍に向かっている。
「幾ら何でも」
「そうかしら。私は大丈夫だと思うわ」
「何でや?姉様」
「巨神の力があるから」
だからだというのだ。
「イデ、だったわね」
「ああ、あれか」
「あの力があるのなら」
大丈夫だというのである。
「そんなに心配しなくていいわ」
「そうなのか」
それに光が頷いた。
「今はそれで」
「そう思います。今は安心していいです」
タトラは光に対しても話した。
「イデオンは」
「わかった。ではまずはムゲ帝国軍だけを倒す」
そうすると言う光だった。
「そしてすぐにバッフ=クラン軍を」
「そうしましょう、今は」
「そうね。行きましょう」
「優先順位はそれで」
海と風も話す。
「まずはムゲ帝国の奴等を倒してね」
「それからです」
「ムゲ帝国軍は一気に倒す」
クリフもこう作戦を言う。
「そしてそれからだ」
「バッフ=クランですね」
「彼等を」
「そうだ、それがいい」
アルシオーネとラファーガにもこう返す。
「いいな、それではだ」
「わかりました、ではその様に」
「今から」
こうしてだった。彼等の作戦は決まった。まずはムゲ帝国軍に向かう。そうして彼等の防衛ラインを側面から攻撃を仕掛けてだ。そのうえで言う。
「よし、このまま!」
「行くぞ!」
こうしてだった。全員で攻める。
ヘルマットはそれを見てまずは防ごうとする。しかしだった。
「駄目です、敵の勢いが凄いです」
「それにです」
「バッフ=クランもいるからだな」
ヘルマットは彼等の名前も出した。
「だからだな」
「はい、敵が二つもあっては」
「そう容易では」
こう話している間にも自軍は次々と倒されていく。ヘルマットはそれを見ながらまた問う。
「残っているのは」
「一割程度です」
「今は」
「止むを得ん、それではだ」
それを聞いてだった。
「撤退する」
「わかりました」
「では」
ムゲ帝国軍は撤退した。彼等はすぐに戦場から姿を消す。しかしそれで終わりではなくまたバッフ=クラン軍がいた。彼等もだった。
彼等はイデオンを集中的に攻めていた。しかしである。
「くっ、巨神はまだか」
「まだ落ちぬか?」
「まだか」
「いや、臆することはない」
だがここでギジェが言うのだった。
「このまま攻めるのだ」
「そうすればいいのですか」
「今は」
「そうだ、押している」
だからだというのだ。
「押している、このまま攻める」
「しかし損害は増えています」
「それでもなのですね」
「それでもだ。臆してはならない」
今度はこう言った。
「いいな」
「その通りだ」
ハルルも言う。
「このまま巨神を倒せ。よいな」
「ハルル様、あの巨神をですか」
「敵の主力ではなく」
「確かに敵の主力も問題だ」
ハルルもそれは忘れてはいない。
「だがそれでもだ」
「それでもですか」
「今は」
「そうだ、兵を二手に分け」
具体的な戦術の話にもなる。
「一方は地球人達の主力に向かい」
「そしてもう一方は」
「巨神になのですね」
「そうだ、巨神には私も行く」
ハルル自身もだというのだ。
「それでいいな」
「ハルル様、巨神には私も」
ギジェは既に彼等に向かっている。
「向かわせてもらいます」
「そなたもか」
「なりませんか」
向かいながらも問うのだった。
「それは」
「いや、よい」
ハルルはそれを許した。
「行くがいい、そなたもな」
「有り難き御言葉」
「だがそなた」
そのギジェを見ての言葉である。
「変わったな」
「変わったといいますと」
「以前のそなたは純粋な武人だった」
そうだったというのだ。
「だが。今のそなたは」
「今の私は」
「何か別のものを見ているな」
こう彼に言うのである。
「それは巨神か」
「いえ、それは決して」
「ならよいのだがな」
ギジェのその言葉を聞きながら述べた言葉だ。
「では。向かうがいい」
「はい、それでは」
こうしてだった。ギジェとハルルは大軍で向かう。しかしだった。
「くっ、巨神はまだか」
「これだけの攻撃を受けても」
「まだ何ともないというのか」
「巨神の力」
ギジェはその彼を見ながら呟く。
「一体どういったものだ?果たして」
だがそのイデオンでは。コスモ達は狼狽の中にあった。
「ファトム、ゲージは!?」
「駄目だ!」
ファトムはこうコスモに答える。
「とてもだ。あがらない」
「くっ、どうなってるんだ」
「今が大変な時なのに」
カーシャも言う。
「それでも何もならないなんて」
「イデオンのゲージはどうなってるんだ!?」
コスモは攻撃を何とか受けながら舌打ちしていた。
「何時あがったり変わったりするんだ」
「わからん。だが」
しかしだというのはベスだった。
「このまま戦うしかない」
「そうだ」
ジョリバも言う。
「もうすぐ友軍が来てくれる。それまでだ」
「そうだ」
ベスもジョリバのその言葉に応える。
「このまま防ぐ。いいな」
「よし、それなら」
「今は」
ナブールとギャバリーも言ってだ。戦いを続けるのだった。
だがここでゲージが動いた。するとだった。
「ミサイルだ、コスモ!」
「ああ、わかった!」
コスモはファトムの言葉に頷いた。
「今なんだな!」
「そうだ、撃て!」
こうして全方位にミサイルが放たれた。その時だった。
バッフ=クラン軍はイデオンを取り囲んでいた。それが仇になった。
「し、しまった!」
「ミサイルが!」
「総員回避!」
すぐに避けようとする。しかしだった。
間に合わなかった。かわせたのは僅かでイデオンを攻めていたバッフ=クラン軍の殆どが破壊されてしまった。そのミサイルによってだ。
「くっ、しまった」
ギジェは何とかかわした。だが残っているのは殆どいない。
「やられてしまったか」
「ギジェ」
そしてここでハルルも言う。
「地球人達の主力も我が軍の攻撃にかかってきている」
「左様ですか、それでは」
「そうだ、これ以上の戦闘は不可能だ」
そうだというのだ。
「だからだ」
「わかりました。それでは」
ギジェも撤退に頷く。しかしだった。
イデオンを見てだ。こう呟くのだった。
「巨神、一体何処までの力を出せるのだ」
こう呟いて撤退に移った。何はともあれ戦いは終わった。
戦いの後でだ。ロンド=ベルはまず全員戻ってだ。そのうえでまたしても宴会に入る。
「へえ、スパムサンドに」
「スパムバーガー」
「それとコンビーフ」
「何か加工した肉料理が多いな」
「ちょっと工夫してみたのよ」
クリスがにこりと笑って皆に答える。
「サンドイッチとかハンバーガーもこうしてみたらどうかしらって」
「けれどさ」
ここでバーニィがクリスに対して言う。
「スパムサンドとかって俺結構食べるよ」
「そうなの」
「うん、自分でも作るし」
こう言うのだった。彼は今はホットドッグを食べている。フランクフルトもかなりある。
「だからさ」
「そうだったの。あまりないって思ったけれど」
「いや、結構見るよ」
「そうよね」
「かなりね」
ここで皆言う。
「っていうかクリスアメリカ系でしょ?だったらスパムは」
「知ってるんじゃ」
「けれどスパムサンドやスパムバーガーは」
「知らなかったの?」
「そうだったの」
「ええ、そうなの」
そうだというのである。
「それで作ってみたけれど。チャレンジでね」
「味自体はいいよ」
バーニィは今度はそのスパムサンドを食べている。
「美味しいよ、俺スパム好きだし」
「そう、美味しいのね」
「うん。普通のハンバーガーもあるし」
それも食べていた。
「ソーセージサンドもあるしね」
「そういえばバーニィってドイツ系だったけ」
「そうよね」
「そうだよ、名前でわかるよね」
バーナード=ワイズマンというその名前のことだ。
「俺が何処にルーツがあるか」
「ええ、確かに」
ユンがその言葉に頷く。
「私もよく言われます」
「ユンは中国の北の方じゃなかったの?」
アイビスが笑いながら彼女に言ってきた。
「あれでしょ?そこで影の薄い領主やってたのよね」
「違います」
それを言われるとすぐにむくれるユンだった。
「私はそんなことしていません」
「けれど白い馬は?」
「それは大好きです」
「じゃあやっぱり」
「はい、弟も好きです」
自分から観念したようにして言ってみせた。
「実際に。大好きです」
「だろうね。実は私もね」
アイビスは微笑んでこんなことを言った。
「最近火が好きになったわ。火事がね」
「何でなんですか?それは」
「何となくね。そうなったのよ」
そうだったのである。
「何でかわからないけれど」
「ううむ、おかしな話だな」
それを聞いて頷いたのはスレイだった。
「私もな。色々とあるが最近ではシンシアとだ」
「そうなんですよね」
そのシンシアから言ってきたのだった。
「私スレイさんだけじゃなくて」
「わかるぞ。マヤやイズミとだな」
「はい、そうです」
まさにその通りだった。
「ここに来て驚きました」
「ここはそうした場所だ」
スレイはこう言い切る。
「他にも様々な記憶も入るがな」
「では私が包丁を好きなのも」
自分で言うユンだった。
「やっぱり」
「それは振り回さないでね」
レフィーナはそれはそっと忠告した。
「危ないから」
「振り回しはしません」
ユンはそれはないという。
「突き刺すのは好きですけれど」
「何か危なくないか?」
それを聞いて言ったのは凱だった。
「まあ俺も実際は」
「ゴォォォォッド米道!?とか」
それではないかというのだ。皆ここで彼に対して言う。
「それ?」
「ひょっとして」
「俺はこの言葉が妙に気に入っている」
「最早何が何だか」
「無茶苦茶っていうか」
「俺は他にも色々叫んでいるような気がするが」
「というかあんたそれだけか?」
マサキが言ってきた。
「俺もちょっと以上に心当たりがあるけれどな」
「俺もだ」
ムウも出て来た。
「ここにはいないがシュウもそうだな」
「私もだ。仙人か何かだったか?」
ガムリンもいる。
「それで出て来たのか?私も」
「確か女の子だけの中国だったな」
凱はその世界の話もしてきた。
「そこにいた記憶がある」
「色々な世界にしても複雑過ぎますね」
アズラエルにとっても他人事ではなかったりする。
「そうですね、凱君」
「あんたはよくわかるみたいだな」
「君とシロー君のことは特に」
こう返すのだった。
「わかりますよ」
「俺もだ」
シローもそうだというのだ。
「よくわかる。とてもな」
「あの世界はかなりいい世界です」
アズラエルの顔は自然と笑みになっている。
「そう思いませんか?ユンさん」
「私はあの世界はあまり」
こう返すユンだった。話を振られてもだ。
「何か。いい思い出がなくて」
「だからですか」
「アズラエルさんや凱君、それにアマノ中尉はいいです」
彼等はだと限定する。
「私なんてとても」
「ではあちらの世界でしょうか」
アズラエルはまた話してきた。
「オーバーとかそういう世界ですよね」
「はい、そちらは」
「あちらはあちらで」
だがユンはその世界についても首を傾げさせるのだった。
「何か色々とありまして」
「そういえばあの世界って確か」
「あれよね。カオスっていうか」
「悪の元凶があの親父でな」
「一体子供何人いるんだ?」
「もうそのレベルじゃないし」
そして店の名前も出て来た。
「サマーラディッシュ?」
「そのお店日本に・・・・・・流石にないか」
「この世界には」
「ないから」
それは否定された。
「というかあの親父がいればそれこそ大変なことになるから」
「そうよね、それは」
「だからないか」
「そうそう」
「世界が違うし」
「世界はどうなっているんだ?」
ここでマサキがまた言った。
「何か複数の世界が全部ごちゃこちゃになってきてるな」
「というか話していたらキリがないんじゃないのか?」
クリフが言った。
「それはな」
「というかあんたもな」
そのクリフにイサムが突っ込みを入れる。
「俺もだけれどな」
「そういえな御主達はだ」
クリフはj二人に突っ込みを入れる。
「そっくりではあるな」
「そういえばラファーガも」
「私もか」
「そや、あんたもや」
カルディナはラファーガに対して言っていた。
「パサロフさんとそっくりやし」
「ううむ、前から自分でも思っていた」
「私も」
アルシオーネはレインを見ている。
「そうよね」
「そうですよね、本当に」
レインにしても心当たりのあることだったりするのだった。
そしてアスコットも。
「僕カティさんとどうも」
「全くだな。ラヴィーナもそうだな」
「自覚している」
この三人もであった。
「まさか私にもそうした相手がいるとは」
「奇遇ではある」
「奇遇も奇遇ですけれど」
慎悟はそんな面々を羨ましそうに見ている。
「何かいいですよね。そういう人がいてくれているっていうのは」
「その通りですね。それでは」
テッサはベーコンレタスバーガーを食べている。
「今はリラックスして楽しみましょう」
「はい、それじゃあ」
「こうして」
実際に皆で楽しむ。戦いの後はいつもの調子であった。

第十六話完

2010・4・1


 

 

第十七話 シャピロの思惑

                 第十七話 シャピロの思惑
「しかしだな」
「そうだな」
ブライトとアムロがラー=カイラムの艦橋で話をしていた。
「ムゲ帝国は次が」
「三将軍の最後の一人だな」
「間違いなく出て来る」
こう予想していた。
「そしてあの男もな」
「ああ、出てくるな」
それを言うアムロだった。
「シャピロ=キーツだったな」
「そうだ、あの男だ」
まさに彼だった。
「あの男も出て来るだろうな」
「出て来ない方がおかしいな」
アムロはこうまで言う。
「やがてな」
「さて、その時だが」
また言うブライトだった。
「何時かだな」
「今ではない可能性もあるか」
「そうだ、ある」
ブライトはこうも見ていた。
「その可能性もある」
「今ではなくてもか」
「そう思う。そしてその時だが」
「ああ、その時は」
「獣戦機隊が問題だな」
彼等のことを念頭に置いていた。
「彼等だな」
「そうか。彼等か」
「彼等には気をつけてくれ」
アムロへの口調が頼むものになっていた。
「くれぐれもな」
「ああ」
「わかってくれているか」
「俺もだ」
笑って返してきたアムロだった。
「それがわかるようになったかな」
「そうか」
「それだけ歳を取ったということか」
「ふふふ、それは私もだな」
アムロが歳の話をするとブライトもそれに乗った。
「私にしてもだな」
「御前もか」
「一年戦争も遠い昔になった」
確かにそれはもう記憶の彼方になってしまっていた。
「あの時は私も御前もな」
「そうだな。まだ若かった」
「若いから色々とあった」
これも事実だった。
「私もまたな」
「お互いよく喧嘩もしたな」
「そうだったな」
こんな話をしながら過去も振り返っていた。そうしてだった。
「飲むか、これから」
「そうだな」
自然とこんな話になった。
「さて、それならだ」
「二人で飲むか?」
アムロはこうブライトに問うた。
「今からバーボンでも」
「いや、待ってくれ」
だがブライトはここでまた言うのだった。
「二人で飲むのはいいが」
「バーボンは駄目か」
「今ウイスキーでいいのがある」
それだというのだ。
「それはどうだ?」
「そうか。ウイスキーか」
「ああ、それだ。それはどうだ?」
「そうだな。悪くないな」
アムロもそれに乗った。彼はウイスキーもいけるのだ。
「それならだ。氷も用意してな」
「食べるのは何がいいか」
「チョコレートはどうだ?」
それはだというのだ。
「甘いものとウイスキーは合うからな」
「そうだな。それもいいな」
こんな話をしているうちに自然とブライトの部屋に移っていた。そうしてだ。
テーブルの上にウイスキーが出ている。氷とコップもだ。
「何か話をすればだな」
「ははは、そうだな」
ブライトは笑いながらまた話していく。
「それにチョコレートもだ」
「やはりそれか」
「久し振りに二人で飲もう」
ブライトはあらためてアムロに話した。
「それではな」
「そうだな、では二人でな」
「そうするか」
こうした話をしながら二人で飲む。そうしながら話もしていた。
「御前とはじめて会った時はな」
「あの時はまさかな」
アムロは笑いながらその時の話もした。
「ガンダムに乗って戦うなんてな」
「だがそれがはじまりだったな」
「そうだな。あの時がな」
「それに御前もだったな」
「私もな。士官学校を出たばかりだったな」
「頼りないと思ったぞ」
ブライト自身への言葉だ。
「こんなので大丈夫かとな」
「私もだ。どうしようもない奴だと思った」
「今じゃ俺も御前もな」
「そうだな。周りの評価は違うな」
これは確かだった。
「頼りにされているな」
「全くだな」
そしてだ。それはこの二人だけではなかった。シンジは今トランクス一枚になってそのうえで皆とポーカーをしている。ビールとソーセージ、それに枝豆のセットも一緒である。
そうしながらだ。困った顔で他の面々に声をかけた。一緒にいるのはエイジ、闘志也、それに勝平の三人だ。しかし三人の服は一枚も脱がされてはいない。
「・・・・・・おい」
エイジがそのシンジに声をかけてきた。
「何でそんなに弱いんだ?」
「何でって言われても」
「俺もギャンブル弱いんだぞ」
「エイジは感情がすぐに出過ぎる」
アスカにさえ突っ込まれる。
「顔を見ればすぐにわかってしまうぞ」
「そうですね。勝平君達もですが」
イーグルも言う。
「しかし。シンジ君はかなり」
「こういうの勝ったことがないんだよね」
シンジはそのトランクス一枚の姿で言う。カードはその手にある。
「子供の頃から」
「そうなの」
「うん、そうなんだ」
こうレイにも返す。
「レイってポーカー強いよね、そういえば」
「私ポーカー好き」
レイもそれを認める。
「顔色出さなくていいから」
「そうだよね。僕もそれはできるつもりだけれど」
「シンジ君はこうしたギャンブルには向かない性格ですから」
カトルがそのポイントを指摘する。
「ですから」
「参ったなあ。確かにギャンブルはね」
そのシンジの言葉だ。
「何か苦手で」
「しかし俺よりも弱いのかよ」
エイジはこのことにかなり驚いている。
「それはかなりすげえぞ」
「またあんたはすぐに頭に血がのぼるから」
ルナがそれを指摘する。
「大勝負に出ていつも失敗だからね」
「全くだ」
ギャブレーもそこに突っ込みを入れる。
「それはどうかと思うぞ」
「あんたもね」
アムはすぐにその彼に突っ込みを入れ返した。
「クールぶっていてすぐに感情的になるんだから」
「ううむ、ギャンブルは奥が深い」
「いや、あんたが弱いだけよ」
まさにそうだというのだ。
「どう考えても」
「言ってくれるな、全く」
「じゃああんたバーンさん、サンドマンさんと勝負して勝てる?」
「バーン殿とは互角だ」
何とそうであった。
「あの方とはな」
「ああ、あの旦那はな」
トッドがそのバーンについて話す。
「すぐ頭に血がのぼるからな。ギャンブルの類はな」
「ううむ。やっぱり似た者同士」
「確かに」
そう思われるのにはしっかりとした根拠があったのだった。
「流石ギャブレーさん」
「しかもバーンさんも」
「俺もあまりギャンブルはしないけれどな」
ダバは首を捻りながらシンジを見ていた。
「しかしシンジ君」
「はい」
「君はトランクスは白派なんだな」
彼の下着の色を見ての言葉だ。確かに彼は白トランクスである。
「その色がいいのか」
「ええ、清潔感がありますから」
「俺は青なんだがな」
彼の下着の色は相変わらずそれだった。
「青トランクスがいいんだがな」
「何か皆トランクスの色はそれぞれなんだな」
「そうだよな」
ロンド=ベルでの男の下着は見事なまでにトランクスで統一されていた。
「まあ人それぞれだよな」
「そうだよな」
「しかし」
ここで皆アズラエルを見て言うのだった。
「アズラエルさんの紫のトランクスって」
「それは幾ら何でも」
「ないんじゃ」
「いえいえ、男の下着は紫ですよ」
しかし当のアズラエルは涼しい顔である。
「それこそがダンディズムです」
「何がダンディズムだよ」
「悪趣味だよ。最悪」
「全く」
速攻でオルガ、クロト、シャニに突っ込まれる。
「ったくよ、下着はすっきりと柄でいいじゃねえかよ」
「そうそう、紫なんて邪道だよ」
「黒もいい」
「っていうかあんた達今日も相変わらずね」
「どんだけ飲み食いするのか」
「全く」
三人の暴飲暴食は相変わらずだった。
「俺達もまあ下着はさ」
「それなりにこだわるけれど」
スティングとアウルも言う。
「ただステラは女の子だからさ」
「そこは違うけれどね」
「ステラ下着は白」
そのステラがぽつりと呟く。
「ナタルさんと同じ」
「ちょ、ちょっと待て」
今の言葉に驚いたのはそのナタルだ。
「いきなり何を言う。私はだ」
「ああ、ナタルさんらしいですね」
「確かに」
「というかナタルさんは白よね」
「それしかないっていうか」
「何故わかった」
しかもナタルはそれに突っ込みを入れる。
「私は何も言っていないのにだ。何故だ」
「いや、何故って」
「今言ったし」
「前もこんな話なかったっけ」
「そうよね」
そしてこんな話も為される。
「下着の話って前にも」
「そういえばロゼさんの下着も白よね」
「えっ、私もですか」
話を振られたロゼの顔が真っ赤になる。
「私が何か」
「だから。下着の色だけれど」
「白よね」
「そうよね」
「そう言われますと」
ついつい言ってしまうロゼだった。
「派手な下着は抵抗がありまして」
「やっぱりね。清純派だしね」
「そうだと思ったわ」
「白って清純派の色だったんだ」
その話を聞いて呟くシンジだった。
「そうだったんだ」
「そうみたいだな」
エイジもここで言う。
「俺もそれは実感なかったけれどな」
「そういえばエイジのトランクスて赤が多いよね」
「ああ、赤好きなんだよ」
それを自分でも言うのだった。
「やっぱりな」
「そうなんだ。それでなんだ」
「そうさ。まあシンジには白が似合うな」
「清純とかじゃないよね」
「いや、外見とかでな」
その関係だというのだ。
「それでなんだよ」
「成程、それでなんだ」
「そうさ。まあそれぞれ似合う色があるよな」
「あんた赤似合い過ぎ」
ルナがまたエイジに対して言う。
「っていうか赤がこんなに似合う人ってそうそういないんじゃ」
「紫が似合うってのも言われるけれどな」
エイジはこうも話した。
「シンだってそうだよな」
「ああ、よく言われるな」
そのシンも応えて話す。
「何か随分とな」
「そうそう、紫もよね」
ルナも彼のその言葉に成程と頷く。
「ねえエイジ」
「俺はシンだよ」
「御免、雰囲気とかそっくりだから間違えた」
それを聞いてすぐにシンに謝る。
「何度目かわからないけれど」
「何度目かどうかってな」
「私は間違えられることはないけれど」
ルナはここではかなり残念そうだった。
「正直エイジとシンが羨ましいけれど」
「そうなのかよ」
「っていうか本当にどっちがどっちだか」
「わからないんだな」
「全然」
「ええ、全然」
実際に二人に同時に返す。
「あとタツノコタロウともね」
「ああ、そっちな」
「その紫のとな」
二人同時に話していく。
「俺それずっと言われてるんだよな」
「困ったことにな」
「まああたしもね」
ここでまた話すルナだった。
「超能力がどうとか言われること多いし」
「超能力って?」
「何それ」
「あんた超能力ないんじゃ」
皆それについては首を傾げさせる。どういった話なのかとてもわからなかった。しかしルナはここでこんなことも言うのであった。
「それでも何か他の世界でね」
「ああ、そういえば僕も」
何とカツが出て来た。
「僕もなんだよね」
「そうよね、あんたもね」
「そうそう」
ルナとカツは言葉を合わせる。
「あっちの世界ともね」
「縁があるわよね」
「いや、どうなんだ?」
皆で話す一同だった。
「何が何なのか」
「ああ、そういえばジェスってあれよね」
ルナはまた皆に話した。
「カツと雰囲気似てない?」
「っていうかそっくり?」
「そうよね」
皆で話す彼等だった。そしてそのジェスもだ。
「俺も似ていると思っていた」
「そうだよね。はじめて会った時に思ったよ」
カツもそうだと返す。
「異様にそっくりだってね」
「そっくりもそっくりって」
「何かこういう関係多い部隊ね」
「世界が違っても」
「全く」
皆で話をする。そうしてだった。
あれやこれやと話しているうちにシンジはまた負けた。ところがだ。
「もう脱ぐものないよな」
「そうよね」
「どうするんだ?」
皆で話す彼等だった。
「流石にトランクス脱げないだろ」
「最後の一枚はなあ」
「幾ら何でも」
「正直なところね」
アスカも言う。
「男の裸は見苦しいから今で充分よ」
「充分過ぎるっていうか」
「まあ女の子だったらそこまでできないし」
「男だからね」
そこまでいけたということだった。
「トランクス一枚までね」
「けれどこれ以上は流石にね」
「とても」
「いや、待って」
しかしここでまた言うアスカだった。
「じゃあこれでいいんじゃない?はい、これ」
「ビール?」
シンジに対して一杯のジョッキを差し出してきたのだ。大ジョッキである。
「これを飲んでそれで終わりましょう」
「それをなんだ」
「そう、それよ」
また言うアスカだった。
「はい、これ飲んで済ませましょう」
「それでいいんだ」
「そうよ。飲んでそれで終わり」
アスカの言葉は続く。
「わかったわね」
「うん、じゃあ」
シンジもそれを受けてだった。酒を飲む。それで何とか話は終わった。しかしである。
「うっ、これは」
「どうしたのよ、今度は」
「御免、トイレ」
こう言って席を立ってであった。そして一気に部屋を出た。
「そういえば俺もかなり」
「私も」
「飲み過ぎたから」
「これは」
皆ここでそれぞれ席を立ってだった。トイレに向かう。彼等はそうした日常を過ごしていた。今はまだ平和な状況を楽しめたのだった。
しかしである。その次の日だ。朝食の直後にだった。
「げっ、来た!?」
「警報って」
「今度は一体」
「キャンベル軍とボアザン軍だ」
大文字が皆に告げる。
「その彼等が来た」
「彼等がって」
「まさかここで?」
「朝早くに」
「じゃあ」
皆席を立つ。そうしてだった。
大文字がその彼等に告げた。
「総員出撃だ」
「はい」
「今すぐですね」
「そうだ、今すぐにだ」
こうして出撃が決まった。動きは迅速だった。
彼等が出撃した時にはだ。もう両軍は展開していた。そうしてそのうえで、である。連合軍の指揮官であるグルルが指示を出したのである。
「よいか、ここはだ」
「はい」
「どうされますか?」
「機雷を撒布せよ」
そうしろというのである。
「機雷をだ。いいな」
「機雷をですか」
「ここで」
「そうだ、機雷をだ」
また言う彼だった。
「機雷を撒いてそのうえで向かう。いいな」
「わかりました。それでは」
「今から」
こうして両軍は機雷を撒いてだ。そのうえ戦いに向かう。彼等は前方をそれで凌いでだ。それぞれ左右に展開する。だがここでだった。
「いいか、諸君」
「はい」
「まずはですね」
「どちらかを叩く」
そうするというのだった。それからすぐにだった。
右側に軍を向けそのうえで集中攻撃を浴びせる。それからだった。
彼等はすぐに全軍で向かいだ。その右側から来た敵を一気に叩いた。だがその間にだ。
グルルはそれを見てだ。また話した。
「左側の軍勢は回り込め」
「それで挟み撃ちですね」
「今は」
「右側の軍で敵を防ぎ」
グルルは言う。
「その間に挟み撃ちだ。いいな」
「よし、それなら」
「このままですね」
「挟み撃ちで潰す」
また言う。こうしてそのまま左側の軍を機雷源を迂回する形で回り込んでだ。ロンド=ベルを挟み撃ちにしようとする。しかしであった。
「後ろから来ています!」
「迂回してきています!」
「よし、予想通りだな」
シナプスはそれを聞いて述べた。
「ここはだ」
「我々もですね」
「機雷を」
「そうだ、そうする」
シナプスはパサロフとジャクリーンの問いに対して答えた。
「そのうえでだ。いいな」
「左側の敵を防いで」
「そのうえで」
「右側の敵を集中的に叩く」
これが彼等の戦術だった。
「わかったな」
「はい、敵がすることをこちらもする」
「そういうことですね」
「何も彼等だけがすることではない」
シナプスは落ち着いた声で述べた。
「我々もできるのだからな」
「けれど艦長」
ここで言ってきたのはモンシアだった。
「敵は機雷にそうそうかかったりしないぜ」
「そうだろうな」
シナプスもそれはわかっていたことだった。冷静に見ていた。
「それはな」
「それでもなんですね」
「そうだ、足止めだ」
あくまでそれだというのだ。
「足止めをしてそのうえでだ」
「右側の敵に集中して戦う」
「そうすると」
「そうだ、いいな」
また言うシナプスだった。
「まずは彼等だ」
「はい、わかりました」
「それで」
こうしてだった。彼等はまた進んでだ。右側の敵に集中攻撃を浴びせだした。
「受けろ!」
バニングが一気に攻撃を仕掛ける。ライフルを連射する。
それにより連合軍の敵が次々と崩れる。しかしだった。
「くそっ!」
「まだ出て来るのかよ!」
「数で来るのは相変わらずだな」
他の面々も歯噛みする状況だった。しかしである。
「このまま行くしかない」
大文字は言う。
「今はだ。いいな」
「そうですね。今は」
「それしかありません」
「それじゃあ」
「全軍攻撃だ」
こうしてそのまま突っ込みだ。敵をさらに倒す。
数分経つと戦局は次第に変わってきた。彼等に有利になってきた。
「いけるな」
「そうね」
ちずるが豹馬の言葉に頷く。
「このままいけば」
「勝てるぜ」
豹馬は自信を込めて言った。
「ええ、けれど」
「どうしたんだよ」
「また出て来るでしょうね」
ちずるは警戒する顔だった。
「ムゲ帝国がね」
「あいつ等かよ」
「まあそやろな」
十三もここで言う。
「出て来るやろな。最近そういう流ればかりやからな」
「そうでごわすな、確かに」
大作も頷く。
「このまま終わるとは思えないでごわす」
「レーダーの適用範囲を拡げておきましょう」
小介はこう述べた。
「彼等が何時出てきてもいいように」
「そうだな。じゃあな」
豹馬も小介の言葉に頷く。
「頼んだぜ、それでな」
「ええ。けれど豹馬」
「どうしたんだよ」
ちずるの言葉にも返す。
「急によ」
「今のところ戦いが続くけれど」
「ああ」
「バルマーは思った以上に敵が多いのね」
話すのは彼等についてだった。
「想像以上に」
「ああ、数だけじゃなく勢力もな」
「最初はこの銀河を統一してると思ってたけれど」
それが違っていたのである。
「ゲストやインスペクターもそうだったし」
「ああ、それにな」
「このキャンベル星人やボアザン星人も」
彼等もなのだった。
「それにプロトデビルンもね」
「我々もだな」
ガルドも話に加わってきた。
「ゼントラーディもだな」
「ああ、そうだよな」
イサムがその言葉に頷く。
「ゼントラーディやメルトランディも連中の敵だよな」
「それに宇宙怪獣もいるし」
ちずるが彼等についても述べた。
「そう思うと敵の多い勢力よ」
「敵は多いか」
「確かにかなりの勢力を持っているわ」
それは否定できなかった。
「ただね」
「敵も多いってことだな」
「そうよ。それにそれは今戦っている相手も同じで」
「そうだよな。それに」
戦いながらの言葉だった。敵陣の中をツインランサーで斬り回る。一機斬ればまた一機、そうした流れで次々と斬り倒していた。
「何か微妙な隙間があるよな」
「ああ、その通りだ」
健一のボルテスはコンバトラーの隣にいる。
「彼等は協同しているがその行動には壁がある」
「お互い牽制もしているな」
一平も見抜いていた。
「協同しながらもな」
「そこを突けば」
めぐみも言う。
「楽な相手みたいね」
「味方が信じられない相手はどうということはないでごわす」
「そうだよね」
大次郎と日吉も続く。
「実際に両軍はしっかりと分かれているでごわす」
「協同できていないよ」
「そうだな。それならだ」
健一もまた言う。
「このまま敵の間に入り暴れればいい」
「よし、暴れるのは得意だぜ!」
完全に波に乗る豹馬だった。
「どいつもこいつもかかって来やがれ!」
「ボルテスも行くぞ!」
健一もそれに続く。ボルテスの手には剣がある。
「このままだ!」
「暴れて暴れて暴れ回ってやるからな!」
ロンド=ベルは両軍のその隙間に入り派手に暴れた。それにより彼等は混乱し総崩れになった。そして右側から左側まで一気に潰された。戦いはロンド=ベルのものになった。
「し、司令!」
「どうしましょう!」
すぐに部下達がグルルに問う。
「我が軍は総崩れです」
「戦力の殆どを失いました」
「くっ、止むを得ん」
右から左に潰されてはグルルも決断するしかなかった。
「ここは撤退する」
「わかりました、それでは」
「ここは」
「全軍撤退する」
こうして彼等は戦場を慌しく離脱にかかった。しかしロンド=ベルは彼等を追おうとはしなかった。ただその場所に止まっていた。
そしてだ。彼等の予想は当たった。
「レーダーに反応!」
「そうか」
ヘンケンはアドレアの言葉に頷いた。
「もう来たのか」
「艦長、敵は」
「間違いないな」
「はい」
こうヘンケンに返すナタルだった。
「それでは」
「総員このまま戦闘に入る」
ヘンケンは指示を出した。
「いいな、このままだ」
「わかりました」
ナタルは敬礼する。これで決まりだった。
ムゲ帝国軍が来た。その指揮官は。
「久し振りだな、ロンド=ベル!」
「やっぱり手前かよ!」
忍は彼の姿を見て叫んだ。
「デスガイヤーだったな!そうだな!」
「そうだ、ダンクーガよ」
そのデスガイヤーは彼等を見据えながら返した。
「今度こそ貴様を倒す、いいな」
「手前は俺が相手してやる!」
早速燃え上がる忍だった。
「いいな、一気にだ!」
「面白い。来るがいい」
こう言いながらだった。
「こちらも攻める。行くぞ!」
「来やがれ!」
こうして今度はムゲ帝国軍との戦いに入った。今度は正面からの激突だった。
「攻めろ!」
デスガイヤーの指示はこれだった。
「ただひたすら攻めよ。いいな!」
「来たな!」
ダンクーガが先頭になって突き進む。
「約束通り相手してやるぜ!」
「忍、このままいくんだね!」
「当たり前だ!」
こう沙羅にも返す。
「雅人!」
「うん!」
「亮!」
「わかっている」
そして雅人と亮にも声をかけるのだった。二人もすぐに言葉を返してきた。
「いいな、相手はあいつだけだ」
「ファイナルダンクーガにはならないのだな」
横にいるブラックウィングからアランが言ってきた。
「それはいいのだな」
「ああ、それはいい」
それはだというのだ。
「俺達だけで!やああああああああってやるぜ!」
「わかった。では周りは任せろ」
熱くなる忍とは正反対だった。
「このまま行け」
「言われなくてもな!」
そしてだった。砲撃態勢に入りだ。
「おい亮」
「あれだな」
「ああ、断空砲だ!」
まずはそれであった。
「フォーメーションだ。いいな!」
「うん、忍!」
雅人がそれに応えてだった。そうしてだ。その断空砲が放たれた。
「いっけえええええええええええっ!」
「忍、外すんじゃないよ!」
沙羅がここで叫ぶ。そして忍は。
「外すかよ、こんなのよ!」
「来たな!」
デスガイヤーもその断空砲を見据える。そしてだ。
何とかわさなかった。受けたのだ。
「よし、くたばったか!」
「何の!」
こう忍に返すのだった。
そのうえで全身に力を込めてだ。戦艦すら一撃で吹き飛ばすその断空砲を凌いでみせた。何と見事耐え切ってみせたのである。
「この通りだ」
「手前、強くなってるってのか」
「貴様に勝つ為にだ」
デスガイヤーはダンクーガを見据えながら言葉を返してきた。
「この程度はだ」
「面白いな、おい」
そして忍はそれを聞いて述べた。
「それなら派手にやってやるぜ!」
「来い、ダンクーガ!」
あらためて言うデスガイヤーだった。そして。
彼等は激突し接近戦に入った。戦いは熾烈なものになった。
そしてその周りではロンド=ベルとムゲ帝国軍が戦う。戦いは力と力の勝負になっていた。ロンド=ベルはその彼等に対してだ。
「兄さん!」
「よし、マーズ!」
マーグがタケルの言葉に応える。そうしてだった。
「マーズフラッシュ!」
「マーズフラッシュ!」
二人同時に敵の戦艦の一隻にマーズフラッシュを叩き込み動きを止めた。
そのうえでだ。同時に剣を抜いてだ。
「ダブルファイナル」
「ゴッドマーーーーーズ!!」
二人の剣が戦艦を切り裂く。これで瞬く間に撃沈した。
彼等だけではなかった。多くの敵を倒していく。何時しかムゲ帝国軍は崩れようとしていた。
「怯むな!」
「まだだ!」
だがそれでもだった。ムゲ帝国軍は踏ん張ろうとする。必死に前に出て積極的に戦おうとする。
彼等は勇敢だった。それは相当なものだった。
だがロンド=ベルもだ。ここで受ける。
「よし、このままだ」
「敵の突撃を防ぎ」
「そして」
そしてであった。
「攻撃が止まったところで反撃だ!」
「やり返してやるぜ!」
そのまま敵の攻撃を受ける。迎撃戦だった。
「受けるのはな」
「何か得意じゃないけれどな」
「その経験も多いけれどね」
その中にはケーン、タップ、そしてライトもいる・
「俺はもっと派手にいきたいんだよ」
「そうそう、もうフォーメーション使ってな」
「そういきたいけれど」
「がはははははは!来た奴をぶった斬ればそれでいい!」
だがその三人にグン=ジェムが豪快に告げる。
「わしの様にだ!ふん!」
「ふん、っておっさん」
「一撃で真っ二つかよ」
「相変わらずやるねえ」
「これがわしのやり方だ」
グン=ジェムは不敵に笑って述べた。
「こうしてな。戦うだけだ」
「来た奴は全員地獄行きだよ!」
ミンはチェーンソーを振り回している。
「おらおら!全員斬り殺してやるから感謝しな!」
「おい、全然迎撃じゃねえんじゃねえのか?」
「あんた達のやってることって」
「あんた達らしいけれどね」
三人はミンのその戦いを見ても言う。
「しかし。迎撃っていっても」
「別に俺達の流儀崩さなくていいんだな」
「だったら」
「流儀!?俺達の流儀がな」
「来た奴を潰す」
ガルとジンもいる。彼等も相変わらずだ。
「それだからな」
「ほら、ほんどん来たな」
「た、倒す」
当然ゴルもいる。
「敵倒す。それでいい」
「よし、それならだ!」
「こっちもやってやるか!」
「俺達の流儀でな」
こうして三人は光子バズーカを構えてだ。それぞれ撃つ。
「よし!いけえええーーーーーーーっ!」
「やっぱりこれだぜ!」
「大人しくっていうのはやっぱり合わないな」
「そうだな」
そしてマイヨもいた。
「こうしてだ。消極的にやる必要はない」
「はい、少佐殿」
「では我等も」
「敵を積極的に倒します」
プラクティーズの面々もいる。尚マイヨはもう少佐になっている。
そのマイヨがだ。また言う。
「銀河でもこうして戦うか」
「嫌か?それが」
「いや、感慨に耽っているだけだ」
こうケーンに返す。
「ギルトール閣下の下から。随分変わったと思ってな」
「それでなのかよ」
「そうだ。閣下は地球を愛されていた」
それは間違いなかった。ギルトールにも理想があった。
「ならば。私もだ」
「地球の為に戦うのかよ」
「いや、銀河の為だ」
マイヨの言葉はさらに上をいくものだった。
「その地球のある銀河の為か」
「銀河のねえ」
「閣下も思われた筈だ。銀河はあまりにも美しいと」
それはその通りだった。今彼等が戦っている銀河は確かに美しい。
「必ずな」
「だからここで戦うってのか」
「そうだ、戦う」
また言うマイヨだった。
「この銀河でだ」
「わかったぜ。じゃあ旦那」
「うむ」
「そっちの戦艦は任せたからな。頼んだぜ」
「わかった。それではだ」
そのレーザーソードを抜いてだった。一直線に進む。
そのうえで一気に斬り抜いた。敵艦は真っ二つになり爆発の中に消えた。
戦いはロンド=ベルに有利になってきていた。ムゲ帝国軍も必死に戦うがであった。遂に総崩れになろうとしていたのであった。
そしてだ。デスガイヤーもそれを見て言うのだった。
「最早これ以上は無理か」
「申し訳ありません」
「我等はこれで」
「わかった」
部下達の言葉にも頷く。
「それではな」
「撤退ですね」
「これで」
「止むを得ん。そうする」
まさにそれだという。
「では総員撤退だ」
「はい、それでは」
「今より」
「そしてだ」
さらに言う彼だった。
「後詰は俺が務める」
「えっ、閣下がですか」
「ですがそれは」
「いや、これは当然のことだ」
しかし彼はこう言うのである。
「指揮官が最後まで残るのはな。だから先に撤退しろ」
「申し訳ありません、閣下」
「そこまでして下さるとは」
「謝る必要はない」
それはいいという。
「わかったらすぐに撤退しろ。命令だ」
「はい、それでは」
「お先に」
こうしてムゲ帝国軍は撤退していく。そして最後にデスガイヤーも撤退してだ。戦場に残ったのはロンド=ベルだけになるのだった。
「よし、これで終わりだな」
「ああ、けれどね」
「わかってるさ」
こう沙羅に返す忍だった。
「あいつはいなかったな」
「シャピロはね」
「あっ、そういえば確かに」
「そうだな」
雅人に亮も話す。
「これまで三度も戦ったけれど」
「あいつの姿はなかったな」
「けれどね。絶対に出て来るよ」
沙羅はこのことを確信していた。
「何があってもね」
「じゃあその時に潰してやるぜ」
忍の言葉は単純明快なものだった。
「それだけだ。それでいいな」
「そういうことだな」
アランは彼のその言葉に頷いた。
「それしかない」
「そうだな。会った時にな」
忍の激しい闘争心は相変わらずだった。
「断空光牙剣で一撃で倒してやるからな!」
「全機戻ってくれ」
葉月博士がここで言ってきた。
「そしてフロンティアに戻ろう」
「よし、じゃあ帰るか」
忍はそれを聞いて述べた。
「後はまた飲むか」
「そうだね。ビールがいいよね」
「日本酒もだな」
雅人と亮は早速酒の話をしだした。
「すぐに戻ってね」
「楽しむとしよう」
「よし、戻るか」
最後にアランが言った。そのうえで彼等はフロンティアに戻った。そしてそこでこう言われたのだった。
「臨戦態勢の解除ですか」
「そうなんですか」
「そうだ。その通りだ」
彼等に話すのはレオンだった。
「もうキャンベル星人、ボアザン星人の勢力圏から出る」
「じゃあとりあえずは」
「今は」
「そうだ、よく頑張ってくれた」
ロンド=ベルの者達への労いの言葉も忘れない。
「それでは。ゆっくりとしてくれ」
「さて、フロンティアはどうなってるかな」
慎悟は微笑みながら言った。
「まそんなに極端に変わってないだろうけれど」
「ええ、それはないわ」
神代もそれは言う。
「だって少ししか経ってないし」
「そうですよね、じゃあやっぱり」
「少し離れただけよ」
本当にそれだけだというのである。
「じゃあ街に出ましょう」
「はい、それじゃあ」
こうして慎悟は神代に案内されて街に出る。皆その彼を見ながら言うのであった。
「やっぱりあの二人って」
「そうだよな」
「完全に姉さん女房よね」
「どう見てもね」
温かい目で見ながらの言葉だった。
「神代ちゃんの方が年上だし」
「しかもしっかりしてるしね」
「いいんじゃない?あれで」
こうも言われる。
「それじゃあ俺達もな」
「久し振りにフロンティアに出ますか」
「さて、何食おうかな」142
「路面電車にでも乗ろうかしら」
こんな話をしてフロンティアに出た。するとであった。
「ええと、人参!?」
「何これ」
「あの、ランカちゃん」
皆ランカに出会って唖然としている。何と頭に人参の被り物をして全身黒いタイツになってだ。そのうえでゼントラーディの市民達のエリアのスーパーで歌っていたのだ。
「何でここにいるの?」
「それも人参って」
「どういうことなんだよ」
「私デビューすることになったんです」
そのランカの言葉だ。
「それでなんです」
「いや、それはわかるけれど」
「人参!?」
「それがわからないけれど」
「駄目ですか?」
ロンド=ベルの面々に逆に聞く始末である。
「これって」
「いや、駄目っていうか」
「何ていうかね」
「微妙!?っていうか」
「ううん、センスがどうにも」
「そうよね」
彼等はそれぞれ腕を組みながら述べる。
「それはないと思うけれど」
「どうにもこうにも」
「そうよね」
「そうですか。私は結構」
しかしランカの顔は明るい。
「面白いと思いますけれど」
「まあ自分でそう思ってるのなら」
「それでいいと思うけれど」
「それにしてもゼントラーディの人達のところで会うなんてね」
「意外ね」
「私の事務所がここにあるんです」
だからだというのだ。
「ゼントラーディの人達の場所に。私も血が入っていますし」
「あっ、じゃああたしと同じじゃない」
ミレーヌはランカのその言葉を受けてにこりとなった。
「あたしもゼントラーディとのハーフだしね」
「そうですよね。ミシェルさんも」
「ああ、そうさ」
そのミシェルも笑って述べてきた。
「俺も。血が入ってるからな」
「っていうか元々同じだし」
「そうそう、巨大化するかどうかだけで」
周りはもうゼントラーディもメルトランディもそう見ていた。
「俺達も必要なら巨大化できるしな」
「本当に一緒だから」
「その通りだ。もうゼントラーディもメルトランディもない」
クランはそのことを胸を張って断言する。
「皆同じなのだ」
「しかし何故大尉は」
「そうよね」
「人間の大きさになるとどうして」
「それは言うな」
周りの言葉に少しバツが悪そうに返す。
「気にはしている」
「まあともなく」
「ゼントラーディもメルトランディも同じってことで」
「同じ人間ってことよね」
「そういうことですよね。じゃあ皆さん」
またランカが明るく言ってきた。
「私の歌聴いてくれますか」
「おお、それだったらな」
バサラが出て来た。
「俺が演奏させてもらうぜ」
「えっ、バサラさんがですか」
「ああ、チャリティーだ」
こう言ってであった。
「それでいいか?」
「嘘みたいです」
ランカの言葉はうっとりとしたものになっていた。
「まさかあのバサラさんが私に」
「あたしもよ」
そしてバサラだけではなかった。
「あたしもいいかしら」
「ミレーヌさんもですか」
「だって。ランカちゃんを見てたらね」
それならばというのである。もうミレーヌの手にはベースがある。
「是非やらせて」
「俺もだ」
「・・・・・・・・・」
レイとビヒーダも出て来た。
「ドラムは・・・・・・あるか」
「今出て来たよな」
「何処から出て来たんだ?」
皆そのドラムがどうして出て来たのかはわからなかった。しかしそのドラムが実際に目の前に出て来ているのは間違いないことであった。
「まああるのならな」
「レイさん、それでいいよな」
「ああ、それでいい」
レイもそれで頷くのだった。
「それではビヒーダ、いいな」
「・・・・・・・・・」
そのドラム担当の彼女が無言で頷く。そうしてだった。
ファイアーボンバーの演奏と共に歌うランカだった。彼女の名前はこの日からフロンティアにおいて知られることになったのである。

第十七話完

2010・4・6  

 

第十八話 発動する力、無限

                   第十八話 発動する力、無限
「しかしなあ」
「どうしたんですか?」
 ニコルがディアッカに対して問うた。
「いきなり」
「いやな、プロフェッサーさんだけれどな」
「あの人ですか」
「マリュー艦長と見分けつかないんだよな」
 こう言うのであった。
「雰囲気とかそっくりだからな」
「マリューさんとですよね」
「あとミサトさんとな」 
 この二人の名前を出すのだった。
「何もかもそっくり過ぎるんだよな」
「それはそうですね」
 これはニコルも頷くことだった。
「けれどそういうディアッカもですね」
「ダコスタさんとか」
「はい、そっくりですよ」
 これを言うのだった。
「それに国としては」
「その話もかよ」
「あれですね。オーストリアのイメージがします」
 彼は国としてはそれであるというのだ。
「オズマさんはアメリカのイメージでミハイル君は中国のイメージですか」
「そういえばな。カナンさんはな」
「私はスイスなのね」
 カナンは自分から言ってきた。
「そう言いたいのね」
「はい、それです」
「それで後は」
 ディアッカはさらに言ってきた。
「あれなんだよな。アーサーさんとか金竜大尉とかヒューゴさんがな」
「日本ですよね」
「そうだよな」
 こう話すのである。
「何かどっかの世界とも一緒になってるよな」
「ええ、確かに」
 それを二人で言い合う。
「それにシルヴィアさんですか」
「似ているというレベルではないな」
 アスランが言ってきた。
「あの世界の三兄弟のな」
「声がもう」
「国としてはリヒテンシュタインだな」
 ディアッカは国に当てはめた。
「で、俺がオーストリアならな」
「私なのね」
 レイヴンではなくアヤカだった。
「私はハンガリーなのね」
「そうなんだよな。それでプロイセンが嫌いでな」
「プロイセンはいませんよ」
 ニコルが言ってきた。
「ディアッカの名前はドイツ系ですけれどね」
「主役がいないのがミソだな」
 イザークがこっそりと言う。
「俺はまだいないしな」
「御前その代わり女の子だらけの中国にいただろうが」
「そうですよ」
 ディアッカとニコルはそれを言う。
「悪役だったか?」
「それでもいましたよね」
「いいだろうが。そうした世界にいても」
 イザークは開き直ってきた。
「どうも俺にはそうした話が少なくてだな」
「そうなのか?」
 イザークに対して雲儀が突っ込みを入れてきた。
「私はそうは思わないが」
「うわ、一緒の声にしか聞こえないし」
 ハルカがその二人を見て言う。
「そうですよね、エマ大尉」
「そうね。本当にね」
「全くですよ」
 リィナもいた。
「そう思わない?レイちゃん」
「確かに」
 レイはリィナの言葉に頷いた。
「けれど何か私達って」
「誰が誰だ」
 ザイオンがそれを問う。
「全くわからないが」
「そうよね。複雑ね」
 走影は一人だった。
「もう誰が誰なのか」
「私はだ」
 そのザイオンの言葉である。
「大次郎君と似ているか」
「そっくり?」
「同一人物にしか」
「しかも」
 その大次郎の言葉だ。
「おいどん達はでごわす」
「魔法、それは勇気の証」
 ザイオンは言いだした。
「他にはカタツムリになっていたか」
「今度は何の世界だ」
 ここで言ったのはヒイロだった。
「俺はその世界では犬に噛まれていたか」
「というか誰が誰だかわからなくなってきていません?」
 今言ったのはレフィーナである。
「私もサリーちゃんとやたら間違えられますし」
「うふふ、そうよね」
 エクセレンは彼女のその言葉を聞きながら述べた。
「私もサラちゃんと間違えられたりするし」
「不思議ですよね」
 サラもいる。
「そういえば私忍者の世界では学校の理事長だったり」
「そうそう。それで相手は」
「私なのね」
 タリアが名乗り出て来た。
「そうね。一緒にいた記憶があるわ」
「物凄く丈の長いセーラー服着て鞭も持ってね」
 エクセレンは笑いながらタリアに話す。
「それでサンドマンさんが物凄く長い木刀持っていて」
「そうだったな。記憶の中にある」
 サンドマン自身こう言う。
「世界はそれぞれ複雑に絡み合っているものだ」
「俺はそれを言ったらどうなるんだ?」
 宙である。
「あるチームのピッチャーだったりその忍者の世界に近いギリシアで戦っていたりしたぞ。他には確かその魔法の戦隊の次の冒険の話の特別篇で」
「俺も」
 洸もいた。
「それこそ超人だったり女好きのスナイパーだったり拳法の伝承者だったり」
「最後は凄過ぎない?」
「そうよね」
 皆洸の最後の言葉にひそひそと言う。
「何かもう無茶苦茶」
「やっぱり」
「僕もですけれど」
 ルカは斗牙を見ている。
「斗牙君と何か」
「そうだよね、似ているよね」
 斗牙の方も言ってきた。
「雰囲気も何もかもね」
「はい、本当に」
「やっぱりカオスだよなあ」
「こういう話になると」
 言う殆どの面々にも心当たりがあるから余計に複雑である。
「それで今は」
「ああ、戦局な」
「それよね」
 その話に移った。
「今ボアザンとかキャンベルの勢力圏を出たし」
「今の敵は?」
「何が出て来るかな」
「宇宙怪獣かしら」
 こう言ったのはノリコである。
「何時出て来てもおかしくないし」
「それかバルマーかバッフ=クラン」
「何が出て来てもおかしくないか」
「ムゲ帝国にしてもプロトデビルンにして」
「何時何が出て来てもであるのね」
 とにかくそうした状況だった。
「それじゃあ今は」
「何が出て来てもいいようにね」
「備えておくか」
 彼等の中で結論が出た。そうしてであった。
 彼等はそのまま宇宙を進んでいた。そこにだ。
「レーダーに反応です」
「来ました」
 トーレスとサエグサが言ってきた。
「右にです」
「かなりの数ですね」
「そうか、来たか」
 ブライトはそれを聞いてすぐに頷いた。
「よし、それならだ」
「迎撃ですね」
「では今すぐに」
「総員迎撃用意」
 実際にこう命じる。
「そして敵は」
「キャンベル及びバルマーです」
「連合軍ですね」
「追って来たか」
 ブライトはそれを聞いてまずはこう考えた。
「ここまで」
「若しくは進出してきたところにです」
「我々がいたかですね」
 二人はそのケースも想定してきた。
「どちらかですね」
「ですがどちらにしても」
「そうだ、戦わなければならない」
 ブライトはそう見ていた。
「それではだ。総員出撃だ」
「はい」
 こうして全員出る。連合軍は数は多かった。しかしである。
「あれ?指揮官がいないな」
「あの兄弟も角生えたのも」
 すぐにそれに気付いたのである。
「ってことは」
「ただ進出してきた部隊かしら」
「そうよね」
「それじゃあ敵としては」
「大したことがない?」
「いや、油断は禁物だ」
 だがここで大文字が慎重案をあえて述べた。
「敵の数は覆い。それに油断が最も恐ろしい」
「確かに、それは」
「その通りですね」
「だからこそだ。油断は禁物だ」
 大文字の言葉は冷静であった。
「そしてだ」
「そして?」
「敵を侮らないことだ」
 こうも言うのである。
「わかったな。それは」
「はい、それじゃあ」
「油断禁物ってことで」
「そうだ、いいな」
 こう話してであった。その連合軍に向かう。彼等との戦いも激しいものだった。
 しかしだ。敵には統率された動きがなかった。これが大きかった。
「よし、このままだ!」
「いけるぞ!」
「右翼突撃だ!」
 まずはそこからだった。
「そして左翼だ!」
「右翼から押される敵を撃て!」
「総攻撃だ!」
 こう命じられてであった。連合軍は瞬く間に倒されていく。その壊走も早かった。
「よし、追撃だな」
 モエラがその壊走を見て言った。
「行くか、コスモ」
「そうだな。二度と来れないようにしてやる」
 それをコスモも言う。
「それじゃあな」
「ええ、行きましょう」
 カーシャも続こうとする。しかしであった。
「いや、待て」
「!?」
「何かあったのか、ベス」
 モエラがベスのその言葉に問うた。
「まさかまた敵が」
「ああ、レーダーに反応があった」
 こう言うのであった。
「間違いない、敵が来た」
「そうなのか。ここで」
「全軍迎撃だ」
 ベスの判断はこれであった。
「わかったな」
「それで誰だ?」
 コスモは敵が誰なのかを考えた。
「プロトデビルンか?それとも」
「どうやらバッフ=クランだ」
 ベスは彼等だという。
「彼等が来た」
「そうか、奴等か」
 コスモはその敵を聞いて言うのだった。
「奴等が来たのか」
「またあいつ等なのね」
 カーシャはバッフ=クランと聞いて露骨に嫌な顔になった。
「何度出て来たっていうのよ」
「じゃあやってやる!」
 越すもの戦意があがる。
「潰してやる!一気にだ!」
「コスモ、あいつもいるみたいよ」
「あいつ!?ギジェか」
「そうよ、あいつの機体もいるわ」
 見ればであった。そこに確かにギジェがいた。彼等がなのだった。
「どうするの、それで」
「決まってるだろ!」
 コスモの答えはそれしかなかった。
「あいつを倒す!」
「やっぱりそうするんだな」
「ああ、そうしてやる!」
 モエラにも返す。
「いいな、それで!」
「それはわかった」
 モエラも彼の言葉に頷く。
「だが、コスモ」
「何だ、それで」
「気をつけろ」
 彼が言うのはこのことだった。
「焦るな、頭に血がのぼってもすぐに落ち着きを取り戻せ」
「落ち着けっていうのかよ」
「そうだ」
 まさにその通りだという。
「わかったな、落ち着け」
「ああ、わかった」
 コスモも彼のその言葉に頷いた。
「それならな」
「そうしろ。それでベス」
「ああ」
「敵はさっきの連合よりもずっと強いみたいだな」
「それは間違いないな」
 ベスもそれは見ていた。
「数も多いし指揮官もいるな」
「そうだ。それが問題だ」
 敵の強さを的確に見抜いていたのだった。
「どうするかだな」
「まずは守りを固める」
 グローバルはこう判断した。
「いいな、守りを固めるぞ」
「固めるか」
「それなら」
「今は」
 こう話していってであった。守りを固める。そのうえでバッフ=クラン軍を迎え撃つ。だが指揮官のギジェはそのロンド=ベルの軍勢は見ていなかった。
 彼が見ているのはだ。赤い神であった。
「閣下、ここはどうされますか?」
「それでは」
「待て」
 待てというのだった。
「突撃はしない」
「突撃はですか」
「ではどうされるのですか?」
「我等の敵はロンド=ベルではない」
 こう言うのである。
「敵は巨神だ」
「伝説の巨神ですか」
「あの巨神を」
「そうだ、それだけを狙え」
 こう指示を出すのだった。
「いいな、それではだ」
「巨神をですね」
「今は」
「そうだ、今は攻める」
 また話す彼だった。
「巨神だけを」
「わかりました、それでは」
「巨神に集中攻撃を仕掛けます」
「そうする。いいな」
 こうしてだった。全軍そのままイデオンに向かう。他の敵には見向きもしない。
 それに対してロンド=ベルはだ。バッフ=クラン軍全体に攻撃を浴びせる。 
 ルナマリアはだ。インパルスのライフルを乱射して次々に敵を撃墜する。
「このっ!このっ!」
「あの、ルナマリア」
 そのルナマリアにシホが通信を入れてきた。
「ビームのエネルギーには気をつけてね」
「わかってるわよ、けれどね」
「けれど?」
「敵の数が多いからね」
 それを理由にするのだった。
「もうある程度はね」
「それでも撃ち過ぎよ」
「そうだな。派手にやり過ぎだ」
「そのままではすぐにエネルギーも弾数も尽きるぞ」
 ミゲルとハイネも言ってきた。
「そうなれば元も子もない」
「それも考えろ」
「ちぇっ、皆で言うの」
 ルナマリアはそんな彼等の言葉を聞いて口を尖らせた。
「そういうハイネは何かスマートに戦ってるわね」
「そうか」
「そうよ。セイバー使ってね」
 変形を巧みに使ってだ。そのうえで鮮やかに動いてみせてだ・
 前の敵を次々に撃墜する。その炎の中を飛んでもみせていた。
「かなりやるじゃない」
「これが俺の戦い方だ」
 実際にそうだと返すハイネだった。
「このセイバーはいい機体だ」
「それは確かにね」
「だがそのインパルスもそうだ」
「確かに。ただね」
「ただ。何だ?」
「デスティニーとかみたいに無茶ができないのよね」
 それを言うのである。
「どうもね」
「幾ら何でもデスティニーと比べるな」
 ミゲルは少しむっとしたような声でルナマリアに返した。
「それかあれか。あの三人だな」
「ええ、今も暴れてるけれど」
「わははははははははははは!!死ね死ねーーーーーーーーーっ!!」
「抹殺!必殺!滅殺!」
「くたばれ」
 オルガ、クロト、シャニは無尽蔵に暴れていく。彼等の破壊力は健在だった。
「俺達の前に出たら誰でもな!」
「容赦せずに叩き潰すからね!」
「地獄に落ちろ」
「あの無茶区茶な破壊力が欲しいのよ」
 ルナマリアは三人を見ながらまた話す。
「私もね」
「インパルスも戦い方次第でできるぞ」
 今言ったのはそのシンである。
「もうな。インパルスデスティニーみたいにな」
「いや、それは無理だ」
 それにクレームをつけたのはカガリだった。
「絶対にな」
「無理かよ」
「大体御前のインパルスデスティニーはストライクフリーダム以上の破壊力なんだぞ」
 カガリはこのことを指摘するのだった。
「デスティニーの接近戦能力にドラグーンまであるんだからな」
「ドラグーンかよ」
「御前はそれも使っているな」
「使わなくて何なんだよ」
「だからだ。そんなマシンを使っていて言うな」
 カガリは口を尖らせて言う。
「私も欲しいのだからな、ドラグーンは」
「使うと楽しいぜ」
「だからだ」
 カガリの本音が出た。
「私も使いたいのだ」
「じゃあ付ければいいだろうがよ」
 シンはこう彼女に返した。
「御前のストライクルージュにもな」
「それができたら苦労はしない!」
 本音がさらに出た。
「御前は何かというと派手な機体で暴れるな!私も暴れたいのだ!」
「っていうかカガリ様も」
「そうよね」
「いつも前線に出られるし」
 ここでアサギ、マユラ、ジュリが言う。
「ユウナさんが幾ら止めても前に出られて」
「ダメージ受けても下がらないし」
「派手に暴れてるけれど」
「より暴れたいのだ」
 さらに本音を言う。
「私としてはな」
「私達の苦労考えて下さい」
「カガリ様に何かあればですね」
「オーブの国家元首なのに」
「まあこいつはな」
 三人とは正反対にシンの言葉は冷たい。
「幾ら攻撃受けても死なないからな」
「それは何故だ?」
「馬鹿は死なない」
 こう言うのであった。
「死んでもなおらないしな」
「貴様!また言うか!」
 そしていつもの喧嘩がはじまった。
「ここでまず貴様を殺す!」
「やってみやがれ!容赦はしねえからな!」
「ああ、待ちなさい」
 ルナマリアが呆れながらその二人の仲裁に入る。
「いつものことだけれど」
「本当にね」
「カガリ様もシン君も進歩がないんだから」
「毎度毎度のことだけれど」
 アサギにマユラ、ジュリも呆れながら仲裁に入る。
「今戦闘中ですよ」
「言い合いながらも両方攻撃はしてますけれど」
「もっと集中して下さい」
「くっ、命拾いしたな」
「そっちこそな」
 二人の言い合いは続く。
「だがこの戦いの後はだ」
「おう、決着をつけてやるからな」
「いつもその時になったら忘れてるじゃない」
 ルナマリアはきつい突込みをその二人に入れた。
「全く。とにかく今は何とか敵を倒さないとね」
「そうだな。だが」
「だが?」
「俺達には目もくれないか」
 レイはプロヴィデンスレジェンドのドラグーンを放ちながら言った。そのドラグーンはそれぞれ敵機の後ろに回り込んでだ。そのうえで撃っていた。
「あくまでイデオンだけを狙っているな」
「楽といえば楽な展開だけれどね」 
 ジャックはその状況をこう述べた。
「ただ。イデオンもそこまで攻撃を受けたら」
「ええ、そうね」
「限界があります」
 エルフィとフィリスはそれを危惧していた。
「撃墜されることもね」
「有り得ます」
「すぐにイデオンの援護に向かおう」
 ハイネが言った。
「いいな、すぐにだ」
「わかりました」
 最初に頷いたのはシホだった。
「では今から」
「行くぞ」
「よし、どけどけっ!」
 またドラグーンを派手に放つシンだった。それで前の敵を蹴散らす。
「邪魔だ!一機でも多く減らしてやるからな!」
「よし、このまま行くぞ」
「ええ、このままね」
 レイやルナマリアも続く。彼等はそのまま敵を倒しながらイデオンの救援に向かう。
 だがそのイデオンはだ。限界に近付いていた。
「モエラ、どうなんだ!?」
「駄目だ!」
 モエラのコスモの返答は悲鳴めいたものだった。
「ゲージが上がらない」
「駄目なのか、まだ」
「コスモ、それによ」
 カーシャも言ってきた。
「もうイデオンのダメージが」
「限界なのか?」
「ええ、もう」
 そうだというのだ。
「これ以上のダメージは」
「そうか、これ以上の攻撃は・・・・・・くっ!」
 言っているそばからだた。その攻撃を受けた。
「コスモ!」
「大丈夫か!」
 カララとベスが慌てて問うてきた。
「あ、ああ」
「そう、よかった」
「それならいいが」
「今のところは大丈夫だ」
 こう返すコスモだった。
「しかし」
「そうね、本当にこれ以上のダメージは」
「危険だ」
 それは二人もわかることだった。
「ソロシップもイデオンの援護を」
「わかっている」
 ベスはカララのその言葉に頷く。
「安心しろ、そう簡単にやらせはしない」
「済まない」
「そういうことだ、何とか頑張ってくれ」
「ああ」
 こうした話をしているとだった。ここでだ。
「コスモ!」
「どうしたんだモエラ!」
「ゲージが動いた!」
 このことを告げるのである。
「ゲージがだ。動いた!」
「何っ、ゲージが!?」
「そうだ、動いた!」
 また言うモエラだった。
「それもこれは」
「えっ、嘘・・・・・・」
 カーシャもそのゲージを見てだ。思わず声をあげた。
「これは」
「これまでにない動きだな、おい」
 コスモもそのゲージを見て言った。
「一体何が起こるんだ!?」
「コスモ、そんなことを言っている間に!」
「今度は何だ!?」
「イデオンが勝手に!」
 イデオンに異変が起こった。それは。
「動いてる、何これ」
「おいイデオン!」
 コスモもここで叫ぶ。イデオンのコクピットにいながら。
 そしてだ。イデオンは突如動いてだ。何かが変わった。
「な、何!」
「イデオンの両肩から光が!」
「あれは!」
 皆それを見て驚きの声をあげる。
 それはバッフ=クランの面々もだ。彼等もそれを見て驚きを隠せない。
「一体何が起こる!?」
「あの巨神に」
「一体何が」
「あの時のミサイルだけではなかったのか」
 ギジェも言う。
「あれだけではなかったのか」
「閣下、ここは」
「どうされますか?」
 部下達もそれに問う。
「巨神に異変が起こりました」
「ここは」
「いや、待て」
 しかしここでギジェは言った。
「ここは攻める」
「このままですか」
「攻められるのですか」
「巨神の力はまだ全てわかっていない」
 今言うことはこのことだった。
「だからだ。ここはさらに攻める」
「わかりました、それでは」
「ここは」
「全軍攻撃を続けよ!」
 ギジェは実際にこう命じた。
「いいな、このままだ」
「はい、それでは」
「このまま」
 こうしてイデオンに向かう。そしてそのイデオンはだ。
 その両肩の光を増してきた。そしてそれが剣になった。
「何だ、この光は!」
「わからん!」
 ナブールにモエラが返す。
「だがこの光が」
「武器なのか」
 ナブールにもそれがわかった。
「そうなのか、これが」
「そうみたいだな、それにしてもイデオン」
 コスモにはもう為す術もなかった。見ているだけだった。
「一体何をするつもりなんだ、今から」
「コスモ、光が放たれたわ!」
 カーシャがそのコスモに対して叫んだ。
「これは」
「な、何だこれは!」
 コスモはその光が放たれるのを見た。何とそれは二条の光になってバッフ=クランの大軍を襲った。そして彼等を消し去ったのである。
「な、今のは一体」
「光が敵を一掃した!?」
「一撃で」
「敵の損害は」
 ナタルも驚きを隠せない。その唖然とした声でアドレアに問うた。
「どれだけだ?」
「今ので存在していた戦力の九割五分を失いました」
「一撃でか」
「はい、一撃です」
 まさにそれでだというのだ。
「消し飛ばされました」
「ただ撃墜されたのではないのか」
「はい、そうです」
 また答えるアドレアだった。
「今ので」
「何ということだ」
 ナタルはそれを聞いてあらためて唖然としていた。
「イデオンによってか」
「少佐、どうしましょうか」
 アドレアの声もうわずっていた。
「ここは」
「攻撃だ」
 ナタルも軍人だ。ここでどうするべきかはわかっていた。
「いいな、それではだ」
「はい、それではすぐに」
「そうだな。行こう」
 ヘンケンもここで言う。三人は今もラーディッシュの艦橋にいる。
「勝敗を完全に決する」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はすぐに攻撃に向かう。しかしだ。
 ギジェは何とか生き残っていた。しかし彼の機体もかなりのダメージを受けている。そして周りに残っている戦力は僅かだった。
「止むを得ないか」
「ではここは」
「撤退ですか」
「そうだ、最早戦えはしない」
 ギジェも戦力を冷静に見ていた。
「ここは撤退だ」
「わかりました、それでは」
「ここは」
 彼等は撤退するしかなかった。こうしてギジェは残った僅かな戦力を撤退させた。彼はその中でイデオンを見ながら呟くのだった。
「巨神。果たして何処までの力を持っている」
 退くその時もイデオンを見ていた。
「それを見たくもなってきたな」
 こうしてだった。彼は部下を率いて撤退する。戦いはこれで終わった。
 だがイデオンのその力はだ。ロンド=ベルの面々をしても驚愕に値するものだった。彼等は戦いが終わってからそれについて話すのだった。
「しかしな」
「そうよね」
「イデオンのあの力」
「いきなり出て来たけれど」
「それに」
 しかもであった。
「あれだけの戦力があるとなると」
「コントロールできないみたいだし」
「じゃあ諸刃の剣?」
「そうよね」
 こうも話される。
「じゃあ私達にとっても脅威」
「それでしかないよな」
「確かに」
「巻き込まれることもあるし」
「どうすれば」
「いや、待ってくれ」
 ここで言ったのはコスモだった。
「そのイデオンの力だけれどな」
「よく考えたら何もわかってないし」
「そうだよな」
「確かにそうだ」
 それはコスモも認めた。
「けれど何か法則があるかも知れない」
「法則?」
「それが」
「若しかしたらだが」
 こう前置きしてからの言葉だ。
「イデオンには意識があって」
「イデオンにも意識が」
「あるっていうの」
「そうだ。他のマシンを見ていたら」
 コスモはさらに話す。
「意識があっても不思議じゃないしな」
「そうですね」
 洸もコスモの今の言葉に頷く。
「ライディーンもそうですし」
「そういえばマジンカイザーもだよな」
 甲児もそれに続く。
「意志はちゃんとあるからな」
「それと同じだ。イデオンもそうだとしたら」
 コスモの仮定の話は続く。
「イデも。それに関係があって」
「イデオンの意識に関係して」
「それでゲージが」
「そうかも知れない。イデには何かがある」
 また言うコスモだった。
「それは間違いないと思う」
「ではコスモ」
 ベスはここでそのコスモに対して話した。
「これからそれについてはじっくりと見ていくことにしよう」
「そうした方がいいか」
「そうね」
 シェリルも言ってきた。
「イデはまだ何もわかっていないわ。それだったらね」
「よく見るべきか」
「そう思うわ」
 シェリルはコスモに対しても話した。
「それでね」
「わかった。これからだな」
 コスモはシェリルのその言葉に頷く。そうしてだった。
 イデへの考えについても考えを巡らせていくのだった。戦いはそれで終わりではなかった。イデについての研究もはじまったのだ。


第十八話   完


                      2010・4・9 

 

第十九話 シャピロの見えないもの

           第十九話 シャピロの見えないもの
     イデの謎をそのままにして。ロンド=ベルはさらに進む。その中でだ。
「ええと、何これ」
「また変なものが出て来たっていうか」
「そうよね」
 皆でゲームをしている。その中でのやり取りだった。
「この敵強過ぎるし」
「それも滅茶苦茶」
「だからこの会社のラスボスはおかしいだろ」
 見ればRPGをしている。そのうえでのやり取りだった。
「駄目だ駄目だ」
「このレベルじゃ勝てないわよ」
「全く」
 そして遂にコントローラーを投げ出す。プレイしているのはトールだった。
 そのうえでだ。周りを見回して皆に問う。
「こいつどうやって倒せばいいんだよ」
「トール、見ていたが」
 サイがその彼に怪訝な顔で言ってきた。
「光の玉は使わなかったのか?」
「何だよ、それ」
「だから光の玉だ」
 彼が言うのはそれだった。
「光の玉は使わなかったのか」
「それ何?」 
 トールはサイに言われても目をしばたかせるだけだった。
「はじめて聞くけれど」
「えっ、それ嘘でしょ」
 樹里はトールの今の言葉にすぐに目を顰めさせた。
「光の玉ってこのシリーズの定番じゃない」
「そうなの?俺このシナリオからはじめたし」
「いや、ぜんぜん知らないっていうのは」
「有り得ないんじゃ?」
「ねえ」
 皆トールの話を聞いてそれぞれ言い合う。
「そんなのすぐにねえ」
「わかるっていうか」
「このシリーズ凄い有名だし」
「いや、俺さ」
 そのトールの反論である。一応全滅からやりなおしはしている。
「最後の幻想シリーズばっかりやってきたから」
「じゃあこういうのはしたことない?」
「そうなの」
「そうなんだよ」
 こう皆に話すのである。
「実はさ。この竜を求めてのシリーズははじめてなんだよ」
「それも珍しいな」
 カナードはトールの今の言葉を受けてこう言った。
「今はじめてするのもな」
「そうか?」
「いや、確かに珍しいよ」
 カズイもそうだと言う。
「俺一応シリーズは全部したけれどさ」
「そんなに珍しいのか」
「ううん、確かにそうですね」
 トビアにもそれは否定できなかった。
「僕もそう思います」
「そうなんだ。結構珍しいだ」
「それでだ、トール」
 サイが真面目な顔でまたトールに言ってきた。
「光の玉は地上に行ってだ」
「ああ」
「それで竜の女王の城で手に入る」
 そうだというのだ。
「そこにあるからな」
「へえ、そうなんだ」
「それをラスボスに対して使う」
「そうしたら倒せるんだ」
「そうだ、さもないとだ」
 サイの細かい説明は続く。
「倒せるという噂もあるがまず倒せない」
「そうだったのかよ」
「わかったらまずは地上に行くことだ」
 サイはこのことを強く説明する。
「これでわかったな」
「そうか。地上か」
 トールはそれを聞いてまずは頷いた。
「わかった。じゃあまずはそこに行くな」
「それにしてもこのシリーズもね」
「そうよね」 
 皆あらためて話をする。
「面白いよな」
「伝統だけはあるわよね」
「そうそう」
 皆でさらに話す。
「やればやる程面白いし」
「いいシリーズよね」
「全く」
 そんな話をしながらゲームを見ている。そうしてだ。
 ケーキも食べている。そのケーキは。 
 ザッハトルテである。皆それを食べてさらに言うのであった。
「レオナってさ。普通に作ったらさ」
「料理上手いよな」
「お菓子もね」
「それだけれど」
 レオナはその皆の言葉を受けながら応える。困った顔になっている。
「私の好きな味付けだったら皆まずいって言うのよね」
「けれどな、レオナがまずいって言う味だったらな」
「そうなのよね」
 その困った顔でタスクにも応える。
「美味しいっていうし」
「そこが謎だよな」
「全く」
 こう言うのであった。
「どうしてなのかしら」
「けれど今のレオナのザッハトルテは美味いぜ」
 タスクはそれは太鼓判を押した。そのうえで食べている。
「もうな。幾らでも食べられる位にな」
「そこまでなの」
「ああ、美味いぜ」
 言いながら次々に食べている。
「しかし。それにな」
「それに?」
「コーヒー淹れるのも美味いしさ」
 タスクも皆もコーヒーも一緒に飲んでいる。ザッハトルテと一緒にだ。
「やっぱりいいよな」
「そう。コーヒーもやっぱり」
「だからあれなんだね」
 ここで言ったのはギリである。
「レオナの舌は普通の人と逆なんだよ」
「逆なの」
「そう、他の人が美味しいと思うものはまずくて」
 まずはこう話す。
「そしてまずいと思うものがね」
「そういうことなの」
「けれどこれはこれでわかりやすいよ」
 にこりと笑ってそのレオナに話す。
「だってはっきりしてるしね」
「そうなの。だから」
「そうだな」
「確かにその通りね」
 それにバーンズとローズマリーも頷く。
「料理をするとすればだ」
「ただ。本人はどうかしら」
「私にしてみたら」
 レオナは腕を組んで述べた。
「やっぱり。美味しいものを食べたいけれど」
「そうだよね。それは」
「誰でも」
 皆も彼女のその言葉に頷く。
「美味しいものを食べたいのは当然で」
「それは」
「それに」
 さらに話されていく。
「美味しいものを作りたいのもやっぱり」
「当然だし」
 それもであった。
「しかも自分にとってだから」
「レオナさんにとっては辛いよね」
「そうだよな」
「ああ、俺は別に気にならないから」
 だがここでタスクが笑顔で言ってきた。
「そういうのはさ」
「気にならない?」
「別に?」
「ああ、そうさ」
 笑顔はそのままだった。
「全然さ。だってさ」
「だって?」
「それはどうしてなの?」
「レオナが作ってくれるものだからさ」
 こう言うのだった。
「それは何でも美味いさ」
「おっ、言うな」
「そうよね」
「まさに愛の告白」
 皆そんなタスクの言葉を聞いて述べた。
「ここまでストレートな告白っていうのも」
「滅多にないし」
「タスクも案外隅に置けないっていうか」
「本当に」
「いや、それはさ」
 タスクも言ってから気付いてだ。顔を真っ赤にさせてそのうえで反論する。
「まああれだよ。俺だってさ」
「それだったらいいけれど」
 レオナにしてもその顔は真っ赤になっている。
「ただ。そういうことは」
「そういうことは?」
「できれば。誰もいない場所で」
 こう言うのだ。
「言って欲しいけれど」
「悪い、つい」
「ええ。けれどね」
 それでもだというのだ。
「嬉しいわ」
「おっ、レオナにしても」
「まんざらじゃないわね」
「そうね」
 周りはレオナの真っ赤な顔を見てまた話す。
「いやいや、お熱いことで」
「遂に言葉で出て来たし」
「全く」
「おい、茶化すなよ」
 すぐにタスクが言い返す。
「俺達は別にな」
「もう言っても無駄だから」
「言い逃れはできないわよ」
 しかし周りは笑いながらまた言う。
「どうやってもね。わかったから」
「そうそう」
「いや、よくわかったから」
「うう、しまった」
「迂闊だったわ」
 タスクもレオナも今更になって言うがもう後の祭りだった。
 そうしてだ。苦い顔でそっと消えるだけだった。二人の完敗だった。
 その彼等は順調に連合の勢力圏から去っていた。しかしであった。
「レーダーに反応」
「まさかと思うが帝国軍か?」
 ジェオがザズに対して問う。彼等は今NSXの艦橋にいる。
「そこか?」
「ううん、バルマーじゃないみたいだね」
「そうか。しかし連合軍でもないな」
「あの連中も流石にここまでは進出していないみたいだよ」 
 ザズはそれも否定した。
「となると」
「あれか?プロトデビルンか?」
「ああ、この反応は連中でもないね」
「ではあれですか」
 ここでイーグルも言ってきた。
「ムゲ帝国か。若しくは宇宙怪獣か」
「それかあれだな」
 ジェオもまた言う。
「バッフ=クランだな」
「もう飽きたぞよ」
 童夢からアスカが言ってきた。
「あの者達の相手は暫くよいぞ」
「ですがアスカ様」
「そうですぞ」
 その彼女のサンユンとシャンアンが言ってきた。
「敵にも敵の都合がありますから」
「バッフ=クランにもバッフ=クランの」
「それはわかっておるがもううんざりなのじゃ」
 どうやらアスカはバッフ=クランが好きではないらしい。顔も如何にも嫌そうである。その顔で二人に対しても言うのである。
「とはいっても宇宙怪獣も好きではないが」
「あんなの好きな奴おるんかい」
「ちょっと。いないと思うけれど」
 今度はタータとタトラが言ってきた。
「会話もできんしただ破壊するだけやろが」
「ああいうのはかなり」
「そうですね。勘弁して欲しいものです」
 イーグルもそのことに同意して頷く。
「出会えば戦うだけですが」
「会話できねえからな。奴等は」
「そうだね。バッフ=クランはまだ話し合いはできそうだよ」
「確かにのう」
 アスカはジェオとザズの言葉に今度は考える顔になった。
「少なくともマスターアジアなどとは違って人間ではあるな」
「何でそこでその人の名前が出るの?」
 レインがこのことに突っ込みを入れる。
「確かに人間離れはしているけれど」
「そうだな、アルシオーネよ」
 クリフがそのレインに突っ込みを入れる。
「あの能力は常人の域を遥かに超えているのは間違いない」
「あの、私は」
「むっ?どうした?」
「レイン=ミカムラですけれど」 
 こうクリフに返すのだった。
「何度か間違えられますけれど」
「そうだった、済まぬ」
「私はここです」
 アルシオーネはクリフの真後ろにいた。
「レインとは本当に近いものを感じていますが」
「そうよね。私もね」
 そしてそれはレインも同じであった。
「例えば。勝てるわね」
「新条君」
 二人の息は完璧だった。見事に合っている。
「この会話もできるし」
「ええ。合うわね」
「あんた等ホンマは同一人物ちゃうんか?」
 カルディナがその二人に横から突っ込みを入れた。
「傍から見たらそうとしか思えんし」
「俺もな。そういう奴がいるからな」
 何故か今度はアレックスが出て来た。
「スティングだけれどよ。これは嬉しいことなのか?」
「そう思うが」
 フェイが彼に言ってきた。
「私はいないぞ」
「おっと、そうでしたね」
「いないよりいる方がいい」 
 フェイの今の言葉は実に切実なものだった。
「そういうものだ」
「俺は他の世界に今呆れる程多くなっているが」
 アスランも出て来て言う。
「だが蝿は何だ?俺は何時まで蝿に取り憑かれるんだ」
「案ずるな、私なぞは冥神だぞ」
 またクリフが出て来た。
「あれはいい役だったのか」
「そうだろ?俺も結構出て来たしな」
 ジュドーも言ってきた。
「そういうのはいいんじゃね?」
「いいのか、それは」
「そっちの世界は気にしていたら」
「きりがないか」
「ああ、そういうものだと思うぜ」
「わしものう」
 兵左衛門も出て来た。
「暮らしの中に修業ありじゃな」
「だからまんまじゃないか」
「本当にそうよね」
 皆兵左衛門の声にそれぞれ突っ込みを入れた。
「だから声の話になるとどうしてこんなに皆熱くなるんだ?」
「きりがないけれど」
「話戻るなり」
 ジェオの言葉だ。
「そうだな、ユウキ」
「その通りぞよ」
 ユウキも彼に合わせて言う。
「何か結構さまになってるな」
「本当ね」
 それにカナンが突っ込みを入れる。
「完全にあっちの世界になってるわね」
「ほんまですなあ」
 コウは何故か奇怪な関西弁になっている。
「我も中々気に入ってますさかい」
「何かきりがなくなってきたからこれで止めるか」
 ヘンケンが遂に止めに入った。
「俺ものりたくなってきたしな」
「止めて下さい。もうきりがありません」
 ナタルも止めてきた。
「とにかく。敵です」
「そうだ、それだな」
「すぐに迎撃に向かいましょう」
 彼女は何故か焦った調子で言う。
「それで敵の軍勢は」
「ああ、ムゲ帝国だよ」
 ザズがここでやっと言った。
「ムゲ=ゾルバトス帝国の軍だよ」
「ということは」
「そうだね」
 ラファーガとアスコットがここで話す。
「三将軍は今のところ全て出た」
「ということは」
「あいつかよ」
 忍が怒った顔になった。瞬時にだ。
「あいつが出て来やがったな」
「生きてたんだ」
 キースは少し緊張感のない声で言った。
「ずっと姿見なかったけれど」
「死んでいても別によかったんだがな」
 ムウも素っ気無い調子で述べる。
「どうせまた私は神だとか言うんだからな」
「気にすることはない」
 アルフレッドがそんなことは気にしていなかった。
「出て来たら倒す。それだけだ」
「それだけですか」
「そうだ、それだけだ」
 こうボーマンにも返す。
「わかったな。出て来たら潰すぞ」
「わかりました。それじゃあ」
「やっぱりあいつですね」
 エメラルドグリーンに塗装されたメビウスからキーエンスが報告してきた。
「一際派手な感じの戦艦がいますよ」
「おいシャピロ!」
 忍がその闘争心を露わにさせた声で言ってきた。
「手前はまだ諦めてねえのか!」
「諦める?何をだ」
 やはりシャピロだった。彼は相変わらず高みに立った様な顔でいた。そうしてそのうえでロンド=ベルの面々に大軍と共にいるのだった。
「何を諦めるというのだ、この私が」
「神になろうってのか」
「そうだ」
 まさにそうだと。悠然として返す。
「私は神だ。それがどうかしたのか」
「相変わらず何もわかってねえな、手前はな」  
 忍はその彼の戦艦を睨み据えて言った。
「何一つとしてな」
「それは貴様だ、藤原」
「何っ!?」
「貴様は人であり続けるのだな」
「それがどうしたってんだ?」
「愚かなことだ。それだけの力を持ちながらだ」
 こう言うのである。
「人に留まるとはな」
「やっぱりあんたは何もわかってないね」
 沙羅も言ってきた。
「相変わらずね。見えてもいないね」
「結城、御前も言うのか」
「ああ、言うさ」
 彼女もシャピロに対して何の容赦も見せない。
「あんたは何もわかっていないさ、本当にね」
「愚かな」
 やはりシャピロは傲慢な笑みと共にこう返すだけだった。
「所詮は私の崇高な考えなぞわからないのだな」
「ああ、一つ言っておくけれどさ」
「何だ、式部よ」
「御前自分が格好いいと思ってるかも知れないけれど」
 彼の言葉は冷めていた。
「そういうのは全然ないから」
「何っ!?」
「っていうか格好悪いから」
 そのクールな口調で言い放ったのだった。
「もう全然ね」
「言ってくれるものだな」
「まあ人の話を聞かないのはわかってるさ」
「そうなのか」
「そうさ、だからもういいけれどね」
 こう言ってであった。彼はその言葉を止めた。次は亮だった。
「俺は言うことはない」
「どういうことだ、司馬」
「既に他の三人が言った」
 だからだというのだ。
「言うことはない。貴様は所詮小さな器でしかない」
「神という偉大な私に言う言葉ではないな」
「それならそう思っておくといい」
 彼もかなり突き放している。
「それが一番幸せだ」
「私の偉大さは御前達の死の瞬間にわかる」
「やっぱり何もわかってねえな」
「そうね」
 獣戦機隊以外の面々もここでわかった。
「何かこういう奴がいるっていうのも」
「喜劇ではあるわね」
「俗物にはわからん」
 シャピロはあくまでも轟然としている。
「所詮はだ」
「言いたいなら勝手に言いやがれ」
 忍もこれ以上言わなかった。
「手前はここで倒す、絶対にな」
「いいだろう、藤原よ」
 シャピロはその彼の言葉に返した。
「死ぬのは御前達だ。この私の手によってな」
「おい、いいよな」
「うむ」
 葉月博士が彼の言葉にすぐに頷く。
「それでは全軍でだ」
「やあああああああってやるぜ!」
 忍はいつもの絶叫を出した。
「どいつもこいつもな。一掃してやる!」
「全軍攻撃開始!」
 博士が指示を出す。
「ムゲ帝国軍を退けるぞ!」
「了解!」
「わかりました!」 
 こうして両軍は戦闘に入った。ムゲ帝国軍は正面から来た。しかしである。
「何かパターン通りだね」
「そうだな」
 亮は雅人のその言葉に頷いた。
「それならだ。このまま」
「迎撃だね」
「来た奴を残らず斬ればいいんだよね」
「ああ、そうしてやるぜ!」
 忍は沙羅の問いにすぐに返した。
「来やがれ!来ないからこっちから行くぜ!」
「全軍左右に展開!」
 また博士が指示を出す。
「そのうえで次の行動に移るぞ」
「包囲ですか?」
 アランがその博士に問うた。
「ここは」
「いや、違う」 
 だが博士はそれは違うと答える。
「今は包囲はしない」
「では何を」
「一旦敵の後ろに回り込む」
 そうするというのだ。
「今はだ。そうする」
「包囲せずにですか」
「そうだ、まずは敵の鋭鋒をかわし」
 そうしてそれからは。
「敵を後ろから攻める。そうする」
「えっ、その作戦って何か」
「随分と変わってるけれど」
「いいんですか?」
「ただ普通に攻めるだけでは駄目だ」
 その博士の言葉だ。
「こうして後ろまで回り込んでだ」
「そのうえで、ですか」
「敵を攻撃して」
「そうだ、そうする」
 博士はまた言った。
「いいな、そうしてだ」
「わかりました、それなら」
「左右に分かれてそれで」
「今から」
 こうしてだった。両軍はまずは左右に分かれる。そのうえで敵の攻撃をかわした。それはまるで敵から逃げるようであった。
「どうやら上手くいったな」
「そうね」
「まずは」
 皆それを見てまた話す。
「いいか」
「はい」
 皆博士の話を聞く。
「このまま後ろに回り込んでだ」
「そうしてですね」
「本格的に攻めるんですね」
「その通りだ」
 またこの話になった。
「いいな、このままだ」
「はい、じゃあ」
「そうして」
 そのまま動く。そうしてである。
 ロンド=ベルは帝国軍の後ろに来た。そこから派手に攻める、
「よし、やってやらあ!」
「正念場ってな!」
「このまま!」
 こうして後方から攻め入る。ムゲ帝国はいきなり後ろを攻められる形になった。
「シャピロ閣下!」
「敵が我等の後ろに回り込み!」
「攻撃して来ます!」
「小癪な真似を」
 シャピロもそれはわかっていた。顔を顰めさせている。
「そうして攻めるとはな」
「反転しますか、今は
「どうしますか?」
「それしかない」
 シャピロは苦い顔で述べた。
「今はな」
「そうですね、それでは」
「今は」
「全軍反転せよ!」 
 すぐに命じるシャピロだった。
「いいな、反撃だ!」
「はい!」
「ではすぐに!」
 こうしてムゲ帝国軍は反転にかかる。しかしだった。
「今だ!」
「隙だらけだぜ!」
 ウーヒェイとデュオがそこに攻める。反転する隙を狙いそうしてだ。敵に突っ込みその武器をそれぞれ縦横に振るうのだった。
「行け、ナタク!」
「おらおらあっ!」
 アルトロンカスタムが頭の上でそのツインビームトライデントを振り回してから周囲の敵をまとめて斬っていく。デスサイズヘルカスタムは前にいる敵をまとめて斬る。そして二人だけではなかった。
「反転はこの場合はだ」
「隙を作るだけです!」
 トロワとカトルもだった。すぐに動いた。
 ヘビアームズカスタムは両手をクロスさせ回転しながら飛び着地して総攻撃を放つ。サンドロックカスタムの周りにマグアナック隊が来た。
「カトル様!」
「今ですね!」
「はい、そうです!」
 カトルもすぐに彼等に返す。
「御願いします!」
「わかりました!」
「それならすぐに!」
「総攻撃です!」
 こうして全員で敵軍を攻める。そうしてだった。
 前の敵をまとめて薙ぎ倒す。敵はそれで陣形を乱した。
「うむ、いい流れだ」
「確かに」
 ノインの言葉にヒルデが頷く。
「この流れはな」
「このままいくか」
「いくべきだ」
 勢いを殺すなということだった。
「いいな、このままだ」
「わかった、それでは我々もだ」
 二人も攻撃を出す。そしてゼクスもまた。
「二人共、いいな」
「はい、ミリアルド様」
「それでは」
「勢いは殺すべきではない」
 彼もビームライフルにエネルギーを込める。そうしてだ。
 それを放ちだ。敵をまとめて叩き潰すのだった。
 また穴が開いた。そしてヒイロも。
「神か」
「何だというのだ?」
「愚かなことだ」
 こうシャピロに言うのだった。
「実にな」
「何度も言うが御前達にはわからないことだ」
「わかっていないのは御前だ」
 ヒイロはこうそのシャピロに返す。
「神というものはだ」
「何だというのだ?」
「人を見下ろすものではない」
「見下ろすというのか」
「人を思いのままにする存在ではない」
 これが彼の言う神だった。
「そうではない」
「では何だというのだ?貴様は」
「人は神だ」
 これがヒイロの言う神だった。
「人でもある。それが神だ」
「戯言を。人は神ではない」
「人は神であり神は人である」
 だがヒイロはシャピロの言葉を受けても尚も言う。
「それがわからない貴様は所詮その程度だ」
「貴様等にはわからぬことだと何度も言っているが」
「わからないからこそだ」
 ヒイロは負けてはいない。
「貴様はそれまでなのだ」
「そう言うのか」
「確かに言った。そしてだ」
「今度は何だ?」
「貴様の軍は倒す」
 ウィングゼロカスタムをさらに進ませての言葉だった。
 そしてその中に入りだ。両手にバスターライフルを出した。
 そこから光を放ちそのうえで回転する。周りの敵が忽ちのうちに炎と化して消えていく。ウィングゼロカスタムの圧倒的な攻撃だった。
 勢いは完全にロンド=ベルのものだった。ムゲ帝国軍はそのまま数を減らしていくだけだった。
「シャ、シャピロ様!」
「このままでは」
 すぐに部下達が彼に言ってきた。
「無駄に損害を増やすだけです」
「このままでは」
「くっ、しかしだ」
 だがシャピロは歯噛みして言う。
「今退いてもだ」
「ですが三将軍の方々は休養中です」
「閣下の失敗は問われません」
「皇帝陛下にだな」
 シャピロは部下達に皇帝の名前を出して問うた。
「そうだな」
「はい、そうです」
「ですから」
「私も休養になることはないか」
 シャピロは自分でもこのことを考えて呟いた。
「そうか」
「はい、またロンド=ベルとすぐにでも戦えます」
「ですからここは」
「わかった」
 ここで遂に決断を下したのだった。
「では撤退だ」
「わかりました」
「それでは」
 こうしてムゲ軍は撤退にかかる。しかしだった。
 シャピロはここで見た。フロンティアを。
「むっ!?」
「どうされました?」
「敵の街に何が」
「ふむ、そうか」
 ここで彼は言うのだった。
「地球にいない筈だ」
「!?地球にとは」
「何かあったのですか?あの星に」
「では今度は地球に」
「いや、地球には行くことはない」
 それは否定するのだった。
「しかしだ。またすぐに攻撃を仕掛けるぞ」
「はい、それは」
「わかっています」
 部下達もそれに頷く。戦いは終わりそのうえでムゲ帝国軍は姿を消した。ロンド=ベルのユニークな戦術がそのまま勝利につながった。
 そしてそのロンド=ベルはだ。戦闘の後で話をしていた。
「勝ったしな」
「まずはよしとするか」
「戦術がよかったわね」
 勝利を喜ぶ言葉からだった。
「しかし。どうなのかな」
「何か撤退の時な」
「おかしくなかった?」
 そしてこうした話にもなった。
「しかもさ」
「どうしたの?アラド」
 ゼオラがアラドの言葉に問うた。
「何かあったの?」
「いやさ、何か前からなんだけれどさ」
 こう言ってからだった。
「フロンティアに知ってる人がいるような気がするんだよな」
「フロンティアに?」
「そうなんだよ」
 こう言うアラドだった。
「どういう訳かな」
「そんな訳ないじゃない」
 ゼオラはそのことはすぐに否定した。
「私達フロンティアに来たのははじめてだし」
「そうだけれどな」
「それで覚えている筈ないじゃない」
「いえ、若しかしたら」
 だがここでクスハも言ってきた。
「それはあるかも」
「あるって?」
「その気配は私も少し感じたことがあるから」
 彼女も言うのだった。
「少しだけれど」
「感じたことがあるって」
「そんな筈は」
「あの気配は」
 皆が否定しようとするがクスハはそれでも言った。
「イルイ・・・・・・ちゃん?」
「そうそう、それそれ」
 アラドもそれだというのだった。
「イルイちゃんだよ、あの気配はさ」
「それ余計に有り得ないから」
 ゼオラはまたアラドの言葉に突っ込みを入れた。
「何でイルイちゃんがフロンティアにいるのよ」
「やっぱりないか」
「だから有り得ないわよ」
 全否定だった。
「どうしてイルイちゃんがここにいるのよ」
「普通に考えればそうだよな」
「そうよ、絶対に有り得ないわよ」
 ゼオラは常識の範疇で話した。
「何があってもね」
「だよな。じゃあ俺の気のせいか?」
「私はそうは思わないわ」
 クスハはまだ言うのだった。
「それに」
「それに?」
「一つ変わったお屋敷も見たし」
 こうしたことも言うのである。
「何かね。他のとは全く違うお屋敷で」
「ああ、フロンティアの高級住宅街にあったな」 
 ブリットもそれに合わせて頷く。
「そうしたお屋敷が。しかもゼントラーディの地区に」
「あのお屋敷何なのかしら」
 クスハは首を傾げさせながら話していく。
「二人だけ住んでいるみたいだけれど」
「フロンティアの人ならさ」
 今度言ったのはトウマだった。
「レオンさんに言えば調べてもらえるんじゃないかな」
「ああ、レオンさんね」
「どうかな、あの人」
「難しいんじゃないの?」
 皆でトウマの提案に対していぶかしむ顔で返した。
「忙しい人だし」
「それにさ、何か企んでない?」
「そうそう、そういう感じする人よね」
「確かに」
 皆レオンについてはあまりいい感情を持っていなかった。明らかにだ。
「アズラエルさんに似た空気だけれど」
「アズラエルさんみたいに変態じゃないし」
「もう腹に一物ある感じだしね」
「危険っていうか」
「僕の勘ですが」
 引き合いに出されているアズラエルの言葉だ。
「彼は信用してはいけませんね」
「やっぱりそう思います?」
「類は友を呼ぶでわかるんですね」
「腹に一物ある人同士で」
「あのですね」
 さしものアズラエルも周りの言葉に流石にむっとしてきた。
「幾ら何でも言い過ぎじゃないんですか?寄ってたかって」
「だってそのライトブルーのスーツに紫のトランクスって」
「食べるものもあれですし」
「そういうのを見ていたら」
「ファッションや味の好みは関係ありません」
 そのむっとした顔で返す。
「まあいいでしょう。とにかくですね」
「はい、とにかく」
「レオンさんについてはどう思われますか?」
「信用できませんね」
 鋭い顔で述べたアズラエルだった。
「あの人は」
「そうですか、あの人は」
「信用できませんか」
「頭は切れますがその分野心家です」
 そうだというのである。
「そしてやはり企んでいますね」
「俺達を迎え入れてくれたのは」
「好意じゃないんですか」
「利用しようとしているのでしょうね」
 きっぱりと言い切ったのだった。
「確かにギガンティックの方々の戦力は大きいですが」
「今まで無事に守ってきました」
「それは間違いありません」
 慎悟と神代がここで答えた。
「僕達十二機で」
「はい、ですから」
「そうですね。しかしです」
「しかし?」
「それでもなんですか?」
「戦力は多いに越したことはありません」
 こうも言うのであった。
「まして。銀河には数え切れない敵がいますし」
「そうした相手への用心棒ですか」
「つまりは」
「はい、そうです」
 まさにその通りだと答えたアズラエルであった。
「僕達はまさにそれです。フロンティアの用心棒ですね」
「何だ、そうなんだ」
「だから温かく迎えてくれたんですか」
「成程」
「けれどそれはいいことではないかしら」
 今言ったのはリツコだった。
「それがフロンティアの市民の為になるのなら」
「そうですよね、フロンティアの人達を守れますし」
「それなら」
「ただ」
 しかしだった。アズラエルはここでまた言った。
「それだけだと。いいのですがね」
「待て、ではあいつはまだ何か企んでいるのか」
「企みは一つとは限りませんよ」
 カガリの問いに微笑んで返した。
「特に。野心ある若手の政治家は貪欲なものですから」
「その求めるものを手に入れる為に多くのことを企んでいる」
「そういうことなんですか」
「はい、その通りです」
 まさにそうだと一同に述べた。
「少なくともあの方は信用できないでしょうね」
「そうか。政治の世界は難しいな」
 カガリはそれを聞いて言うのだった。
「そうした相手だとわかって相手をしないといけないのか」
「大事なのは顔に出さないことです」
 これはアズラエルのアドバイスだった。
「自分の感情をです」
「わかった。では気をつける」
「カガリ様には不可能でしょうが」
「確かに」
 ここでキサカとユウナが嘆く言葉を出した。
「すぐに表情に出されますし」
「しかも言葉にまで」
「私は嘘は言わない」
 こうした言葉に対して開き直りで返したカガリだった。
「それに。感情を隠すのは苦手だ」
「ああ、そういう仕事は僕がやっておくから」
 オーブの首相でもあるユウナがそのフォローに回った。
「カガリは余計なことをしなかったらいいから」
「余計なことか」
「うん、もう黙っていてくれたらそれでいいから」
 あまり多くのものを望んではいないのだった。
「静かにしてくれたらいいからね」
「私は邪魔者か?」
「だからカガリは国家元首だから」
 珍しくシンではなくキラが言ってきた。
「それらしく振舞っていればいいんじゃないかな」
「そういうものか」
「そうだよ。カガリはオーブの主としてね。振舞って」
「黙っていてか」
「うん、それでもいいと思うよ」
「そうか、わかった」
 キラの言葉には素直に頷くカガリだった。
「ではそうしよう」
「さて、問題はお婿さんだね」
 爺やめいているユウナだった。
「ということでアスラン君、地球に帰ったらだね」
「何で俺なんですか!?」
「いや、君なら大丈夫だ」
 真剣そのものの、戦場での指揮の時より真剣な顔での言葉だった。
「カガリのお婿さんにだ。なれるからね」
「無理にでも決めようとしていません?」
「いやいや、皇室や王室の伴侶を決めるのって大変なんだよ」
「けれどどうして俺なんですか?」
「ああ、あみだくじで決めたんだ」
 さりげなくとんでもないことをばらすユウナだった。
「ロンド=ベル全員を入れてね。女の子も家庭がいる人も含めてね」
「おい、ちょっと待て」
「女の子もって!?」
「しかも所帯持ちまで!?」
 皆今のユウナの言葉に唖然となる。
「何時の間にそんなことを」
「おまけに何てとんでもないことを」
「ユウナさん、貴方という人は」
「ああ、それは冗談だから」
 それはあっさりと返すユウナだった。
「楽しんでもらえたかな」
「心臓が止まりました」
「死ぬかと思いました」
「謝罪と賠償を」
 皆ほっとしながらユウナに返す。
「けれどアスランですか」
「そうなったんですね」
「もう彼しかいないからね」
 ユウナの言葉はしみじみとしたものになった。
「カガリみたいなのを貰ってくれるのは」
「全くです、アスラン君ならです」
「必ず果たせます」
 キサカとトダカもユウナと一緒になって既成事実化を目指している。
「さて、それでは」
「地球から帰ったらすぐに」
「式場はもう決めてあるから」
 何処までも強引に進めるユウナだった。
「いいね、そういうことで」
「あのですね」
 アスランも何時の間にか話が進んでいるのを聞いてだ。冷静ではいられなくなり思わず彼等に対して言い返した。声がうわずっている。
「ですから俺の意志は」
「ああ、そういうのは関係ないから」
「はい、オーブの悲願ですから」
「もうプラントとは話をしていますので」
「何処まで強引なんだ・・・・・」
 ことここに至ってはアスランも唖然とするしかなかった。
「これがオーブだったなんて」
「まあそういうことでね」
「宜しく御願いします」
「オーブの為に」
 三人はさらに強引に話を進める。
「いやあ、オーブの未来は明るいよ」
「アスラン君でなければユウナ様しかいませんからね」
「カガリ様のお相手は」
「僕としてはカガリの夫まで引き受けたらたまらないからね」
 三人は本音を話しはじめた。
「いやあ、よかったよかった」
「何処までも私を厄介者扱いするか」
 カガリもいい加減むくれてきた。
「機嫌がよかったからいいが悪かったら三人共殴っているところだ」
「というか殴ったら?」
 フレイが横から三人を冷たい目で見ながら述べた。
「無茶苦茶言ってるじゃない」
「だから気にしない気にしない」
 ユウナは何処までも笑顔であった。
「オーブにとって婿選びは絶対に避けて通れないし」
「そういう問題じゃないでしょ」
「ああ、言っておくけれどフレイは駄目だからね」
 ユウナはそのフレイに対しても言う。
「女の子同士はね。絶対にね」
「さっきのあみだくじは何だったんですか?じゃあ」
「だから冗談だって」
 ここでも平然としている。
「気にしない気にしない」
「何かわからないが凄く馬鹿にされている気がするな」
「だからそうなんでしょ」
 そんな話をしながら宇宙の旅は続く。果てしない戦いの旅が。


第十九話   完


                                   2010・4・14
 

 

第二十話 シャピロの本性

                第二十話 シャピロの本性
 アラドはフロンティアの街を歩いていた。ランカの音楽が聴こえてくる。
「あれ、本格デビューしたんだ」
「そうみたいね」
 一緒にいるゼオラが応える。
「実は私も誘われたことがあるけれど」
「ああ、ゼオラもなんだ」
「フェアリさんとシルヴィアちゃんと一緒にね」
「三人一緒に?」
「そう、三人一緒にね」
 こうアラドに話すのだった。
「スカウトされたことがあるわ」
「フロンティアって芸能とか盛んなんだな」
「ギャラクシーもそうみたいだけれどね」
「あっちもか」
「そうよ。今は結構距離が離れてるみたいだけれど」
 アラドに話していく。その街中で。
「それでもお互いに交流があったりしてね。盛んみたいよ」
「そうなんだ」
「あんただって音楽は好きよね」
「まあな」
 ゼオラの言葉に笑顔で返す。
「けれど俺はやっぱりな」
「食べるのが一番いいの?」
「やっぱり食うのが一番だよ」
 笑顔をさらに明るいものにさせての言葉だった。
「人間腹一杯食わないと死ぬからさ」
「それでいつも御飯は丼に五杯なのね」
「ああ、そうさ」
 その通りだと答えもする。
「もう食わないと死ぬからさ」
「それだけ食べないとなのね」
「人間食わないと死ぬぜ」
 これは正論であった。
「それにゼオラだってかなり食ってるじゃねえかよ」
「否定はしないわ」 
 こうは言っても少しバツの悪そうな顔であった。
「それでもあんたよりは少ないわよ」
「俺そんなに食ってるかな」
「甲児君位ね」
 そこまでだという。
「まあうちの部隊食べる人多いけれど」
「そうだよなあ。全体で普通の部隊の四倍は食ってるよな」
「まずそれだけは食べてるわね」
 ゼオラも実際にそれだけだと予測していた。
「もうかなり食べてるから」
「だよなあ。ただな」
「ただ?どうしたの?」
「ラクスさんやミナキさんの料理はな」
 ここで出したのは二人だった。
「あれは食えないけれどな」
「アズラエルさん食べてるわよ」
「あの人はまた特別だよ」
 こうしたことでも常人離れしているアズラエルだった。
「またな」
「それもそうね。けれど」
「けれど?どうしたんだよ」
「あんたやっぱりあの話本当なの?」
 アラドに顔を向けて問うてきたのである。
「ほら、フロンティアの街でイルイちゃん見たって話」
「ああ、あれか」
「そう、あれよ」
 まさにそれだというのである。
「あの話見間違いとかじゃないわよね」
「俺が嘘言うか!?」
 アラドはゼオラの問いにまずはこう返した。
「言わないだろ。違うか?」
「言われてみればそうね」
 顎に左の人差し指を当てて眉をしかめさせたうえでの言葉だった。
「そういうことはね」
「だろ?そういうことはしないさ」
 アラド自身もこのことを強調する。
「分っててもさ」
「そうよね。じゃあやっぱりここにいるのかしら」
「俺はそう思うぜ」
 また言うアラドだった。
「イルイは絶対にここにいる」
「ううん、有り得ないけれど」
「ワープしたとかな」
「ワープね」
「それもあるんじゃねえか?」
「言われてみれば」
 アラドの言葉にあらためて考える顔になった。
「その可能性も」
「だよな。それでだけれどな」
「ええ、それで」
「どうする?これから」
 アラドはここで話を変えてきた。
「これからな」
「これからっていうと?」
「何処行く?」
 具体的には行く先の話だった。
「これから。何処に行く?」
「そうね。何処に行こうかしら」
 ここで腕を組んで言うゼオラだった。
「場所は色々あるけれど」
「路面電車乗るか?」
 アラドはこう提案してきた。
「そっから中華街に行くか?」
「悪くないけれど」
「じゃあそこな」
「けれど。あそこ前にも行ったし」
 だがゼオラはここでこうも言った。
「あまりそうした場所にばかり行くのもね」
「あれか」
「ええ、飽きるじゃない」
 こう言うのだった。
「他の場所行かない?何処かね」
「じゃあゼントラーディの人達のところ行くか?」
 アラドはこう提案した。
「それだったらな」
「そうね。だったらね」
「行くか、そこに」
「ええ、そこにね」
 そんな話をしてそのゼントラーディの街に行った。するとだった。
「あれ、ヴィレッタさん」
「それにラーダさん達もですか」
「ああ、ここに来ようという話になってな」
「それでなんです」
 そのヴィレッタとラーダが二人に話す。そしてだった。
「何だ、御前等も来ていたのか」
「奇遇ですね」  
 カイとラッセルも来たのだった。
「ゼントラーディの地区はかなり面白いからな」
「何か自分が小人になったみたいで」
「そうそう、ガリバーみたいでいいですよね」 
 アラドは三人に応えて述べる。
「ここって。それで面白くて」
「では食べに行くか」
 ヴィレッタが言ってきた。
「ラーメンでもな」
「ラーメンですか」
「それをなんですね」
「そうだ、ここのラーメンは面白い」
 ヴィレッタはアラドとラッセルに対して述べた。
「量がかなりのものだ。果たしてアラドでも食べきれるかどうかわからない」
「ああ、ゼントラーディの人達用だからですね」
 それを聞いてまた言ったアラドだった。
「それでなんですか」
「そうだ。それでどうする?」
 ヴィレッタは他の面々に対して問うた。
「ラーメン代はそのままだ。それで腹一杯だ」
「よし、それなら」
 ラッセルが最初に言った。
「食べに行きますか、それを」
「よし、それなら俺も」
「私も」
 アラドとゼオラも乗った。
「丁度腹ペコだったんですよ」
「丁度いいですよね」
「そうですね。私もラーメンを食べたいと思っていたところですし」
「俺もだ」
 ラーダとカイも加わってきた。
「それでは是非そこに」
「行くか」
「よし、話は決まりだ」
 ヴィレッタは二人の言葉を受けて述べた。
「その店に行くとしよう」
「はい、それなら」
「今から」
 こう話してだった。六人でそのゼントラーディのラーメン屋に入った。そこで出て来たラーメンはさながらプールであった。
 全員そのラーメンの上にボートで乗ってだ。ラーメンを食べはじめた。
「麺の細さとかチャーシューやネギやもやしが人間用の大きさなのは」
「これはどういうことかな」
「かなりわからないですけれど」
「気にしないことだ」
 ヴィレッタがアラド達に対して言う。
「では食べていくぞ」
「ええ、しかし本当に凄い量ですね」
「これだけあったら食べられるかな」
「どうかな」
 困った言葉だった。
「これだけ食べられたらいいけれど」
「うわ、まだあるし」
「何十人分はありそう」
「一人辺り十人前は充分にありますね」
 ラーダもラーメンの中に箸を入れそのうえで食べながら述べる。
「食べがいがあります」
「しかも量だけじゃないですよ」
 当然アラドも食べている。
「味だってかなり」
「そうね。スープも美味しいし」
 ゼオラはレンゲでスープを飲んでいた。トリガラの比較的あっさりとしたスープだ。
「それに卵もあるし海苔もあるし。このメンマだって」
「全てのバランスがいい」
 カイも言う。
「見事だな」
「幾らでも食べられますね」
 またラッセルが言った。
「これは食べられるかも」
「油断は禁物だ」
 だがここでヴィレッタは言った。
「最後まで気を抜かずに食べるぞ」
「はい、それじゃあ」
「最後まで」
 こう話して食べていってだ。皆遂に食べきった。麺と具は一本もなくなり勝利を収めたのである。
 だが食べ終えてだ。アラドが漫画の如く膨れたその腹で横たわりながら言うのだった。
「うう、もう満腹」
「あんた一番食べたからね」
「ここまでラーメン食ったのはじめてだからな」
 こうまで言うのだった。
「いや、本当にさ」
「そうだったの」
「二十玉は食ったぜ」
 そこまで食べたというのだ。
「いや、もっとかな」
「多分」
 そこまでだとゼオラも言う。
「食べたわね」
「だろ?もう満腹」
「私も。確かに」
「これだけ食べるのはもうそれだけで」
「冒険だな」
 ラッセルもカイも言う。
「本当に凄い量でしたね」
「しかし全て食べた」
「食べられると思っていた」
 ヴィレッタは最初からそう見ていたのだった。
「六人いればな」
「しかし、それでもなあ」
「暴力的な量だったわよね」
 アラドですらこう言っていた。ゼオラもだ。
「いや、冗談抜きで満腹だよ」
「本当に・・・・・・あれっ?」
 ここでゼオラはあることに気付いた。
「あれは」
「どうしたんだよ」
「変わった人がいるわ」
 こう言うのである。
「ほら、あそこに」
「んっ?フロンティアじゃない服だな」
「ええ、何かしらあれ」
「あれは」
 ヴィレッタもそのゼオラが言う者を見る。見れば一人は淡いピンクのアラビアのそれを思わせる服でありもう一人はかなり堅苦しい服と帽子である。ピンクの服の少女は幼い少女でありもう一人はきりっとした顔をしている。その二人であった。
「まさかとは思うが」
「あれっ、まさかって」
「お知り合いですか?」
「いや、それは違う」
 アラドとゼオラの言葉は今は否定した。
「だが。どうもな」
「何か知ってる人じゃないっていうと」
「一体」
「バルマーの服装に似ているな」
 こう言うのである。
「しかもかなりの大貴族のものだ」
「大貴族っていうと」
「つまりは」
「そうだ、十二支族だ」
 この存在の名前も出て来た。
「カイツ家の服か、あれは」
「カイツ家?」
「十二支族の一つなんですね、それは」
「そうだ。あの少女の服はだ」
 きりっとした顔立ちの少女の服を見ての言葉だった。
「そうした感じだが。侍従のそれか」
「何かバルマー帝国って服でそういうのがわかるんですね」
「そうだったんですか」
「服でそのまま階級や仕事を表わす」
 こうも話すのだった。
「そうしているのだ」
「そういえばヴィレッタさんは軍服でしたね」
「だったら」
「そうだ、私もまた同じだ」
 そうだというのだ。
「中級の軍人だった。高級軍人はジュデッカ=ゴッツォ家やゴッツォ家の者がなる。ハザル=ゴッツォやあのジュデッカ=ゴッツォの面々がそうだったな」
「ああ、あいつですか」
「ハザル」
 皆ハザルの名前にはすぐに顔を顰めさせた。
「そういえばあいつは宰相の息子でしたね」
「バルマーの」
「そうだ」
 まさしくそうだというのである。
「あの者がいい例だ。バルマー帝国は霊帝と十二支族により全てが治められているのだ」
「典型的な封建主義だな」
 カイが言う。
「まさにそうだな」
「そうだ、封建主義にして専制主義だ」
 ヴィレッタはそれもあるのだという。
「霊帝のな」
「それを考えると凄い国家だよな」
「今時専制主義、しかも封建体制って」
 アラドとゼオラもそれを言う。
「そんな国になると」
「まだ宇宙にあったっていうか」
「そうよね。前から思っていたけれど滅多にない国家よね」
 クスハもこう考えていたのだった。
「今時ね」
「そしてそれが弱まってもきている」
 ヴィレッタはこのことも話した。
「統治が弱まり宇宙怪獣やゼントラーディ、メルトランディとの戦いも続いている」
「それに俺達とも」
「そうなんですね」
「そうだ。だからこそキャンベル、ボアザンにも背かれた」
 その結果だというのだ。
「既に一個方面軍が崩壊しているしな」
「僕達が倒した銀河辺境方面軍」
 ラッセルはすぐに述べた。
「あれを倒したから」
「流石の帝国も一個方面軍を失くしたのは痛い」
 ヴィレッタは冷静に述べた。
「戦力の五分の一だ」
「それだけの戦力の穴埋めには」
「相当な苦労が必要ですね」
「そういうことですか」
「その通りだ」
 ヴィレッタはラッセルだけでなくアラドとゼオラにも答えた。
「彼等は今その衰えた力を取り戻すのに必死だ」
「そういうことですか」
「バルマーも大変なんですね」
「そうだ。彼等のこともわかっておくことだ」
 そんな話をしたのだった。バルマー帝国も苦しい状況だということをわかった彼等だった。そしてそんな話をした次の日のことだった。
「来ましたか」
「またしても」
「ムゲ帝国軍です」
 エキセドルが全員に告げていた。
「その数二十万です」
「二十万、かなりですね」
「相変わらずの数ですね」
「それが第一陣です」
 しかもそれだけではないというのだ。
「続いて第二陣で二十万来ています」
「合わせて四十万」
「そういうことですか」
「そして第二陣にです」
 エキセドルの言葉は続く。
「彼がいます」
「シャピロか」
 アランがすぐに述べた。
「あの男だな」
「はい、そうです」
 まさにそうだと答えたエキセドルだった。
「あの者の乗艦が来ています」
「それではだ」
 アランはそこまで聞いてだ。冷静に言ったのであった。
「まずは第一陣を防ぎだ」
「はい、そうですよね」
「そしてそのうえで」
「第二陣です」
 エキセドルの言葉だ。
「それで宜しいですね」
「ではまずは敵を迎え撃ち」
「それから」
「そうです。その第二陣こそが問題です」
 エキセドルの言葉が真剣なものになった。さらにだ。
「彼をどうするかです」
「そんなことはもう決まってるぜ」
 忍が強い声で述べた。
「あの野郎、絶対に今度こそな」
「そうだね、潰してやるわよ」
 沙羅も闘争心を剥き出しにしている。
「今度こそね」
「そうだね。まずは第一陣をやっつけて」
「それからだな」
 雅人と亮も話す。
「それからシャピロだね」
「そうなるな」
「それではです」
 エキセドルの言葉が続く。
「まずは防衛ラインを敷きそのうえで迎撃しましょう」
「全軍まずはフロンティア及びシティ7を中心に陣を組む」
 葉月博士も言う。
「そうする。いいな」
「了解です、それでは」
「今から」
 こうしてだった。全員でそのフロンティアとシティ7を囲んで陣を組んだ。そしてその時だった。第一陣がここで姿を現したのであった。
「やっぱり来たな」
「それもぴったり二十万」
「しっかりと来たわね」
 皆そのムゲ帝国軍を見ながら言う。そのうえでだ。
 敵が来てそれを迎撃する。戦いがはじまった。
 ロンド=ベルはその敵を迎え撃つ。すぐに攻撃を浴びせる。
「大外れ~~~」
「狙いが甘いぜ」
 ゴーショーグンは敵機の攻撃をあっさりとかわした。レミーとキリーが言う。
「じゃあ真吾」
「今度はこっちの番だな」
「そうだ、それでは今度は」
 空間からバズーカを出した。そうしてだ。
「ゴーバズーカ!」
 そのバズーカで敵をまとめて吹き飛ばす。かなりの威力だった。
「よしよし、吹き飛ばしたわね」
「まだまだ出て来るけれどな」
「そうだな。しかし幸先よく吹き飛ばしたな」
 真吾がレミーとキリーに対して答える。
「四機まとめてな」
「何か最近数の多い相手ばかりだけれど」
「慣れてきたしな」
「ガルラ帝国の時はもっと凄かったな」
 ガルラ帝国の戦いも思い出していた。
「百万とかそういう数だったからな」
「そうそう、その時に比べればね」
「今の戦いなんて楽なものじゃないか?」
「そうだな。あの時よりはな」
 それを言うのだった。
「宇宙怪獣みたいだったよな」
「どうせ後で宇宙怪獣も出るからね」
「今はウォーミングアップみたいなものだな」
「数、こんなのじゃないわよ」
「億単位かもな」
「億か」
 真吾はその数にまず言う。
「何か壮絶な戦いになりそうだよな」
「そんなことはもう承知のうえよ!」
「わしなんぞかみさんと一時の別れを告げて来ているのだぞ!」
「その圧倒的な戦いこそ美だ」
 カットナルにケルナグール、ブンドルも出て来た。
「そうした派手な戦いもいいものよ」
「手加減なしで暴れられるわ!」
「その通り」
 三人はその状況も楽しんでいた。
 そしてだ。そのうえで彼等も攻撃を浴びせていた。
「よし、このままだ!」
「このまま潰すぞ!」
「美しく行くとしよう」
「そうか、この三人もいたのね」
「相変わらずの存在感だな」
「全くだ」
 レミー、キリー、真吾は三人を見ても言う。
「これだけの面子がいるし」
「それなら大丈夫かな」
「助っ人の必要はないな」
「いや、出るわよ」
 だがここでアスカが出て来て言うのだった。
「どうせね。あの変態爺さんとドイツ忍者が」
「出るのか?」
「絶対に出るわよ」
 アスカはうんざりとした顔で述べた。
「もうね。最高のタイミングでね」
「でしょうね。もうヒーローのタイミングで」
「間違いなくだろうな」
 レミーとキリーもそれに頷く。
「それであっさりと敵を殲滅」
「あの技で」
「まあ今はいないけれど」
「それでもどうなるか」
「出て来るかもな」
「出て来たら絶対に無視よ」
 アスカはこれ以上になく不機嫌な顔で言い切った。
「こんな場所にまで来るとは思いたくないけれど」
「思わない、じゃないんだ」
「時空を超えて来る相手よ」
 別世界での戦いのことをシンジに話す。
「何をしてきてもおかしくないじゃない」
「まあそうだけれどね」
「そんな相手だからね」
 また言うのだった。
「変態だからね、相手は」
「変態なんだ」
「そうよ、二人共上に超ドが付く程の変態を」
 とにかくそう言い張るのだった。
「二度と会いたくはないわね」
「けれど出て来る可能性は」
「否定できないのはわかっているわよ」 
 それはもう隠さなかった。
「覚悟は決めているわ」
「決めているの」
「そう、決めているわ」
 レイにも答える。
「今こうして宇宙空間に生身で立って高笑いしていてもね」
「そんなん言うたらホンマに出て来るで」
 今度はトウジが言う。
「あの人はな」
「だから余計にタチが悪いのよ。本当にね」
「まあさ。話は置いておいてね」
「何よ」
「敵の動きがおかしくない?」
 シンジは前の敵をポジトロンライフルで吹き飛ばしながら述べた。
「何かさ」
「あれっ、そういえば」
「確かに」
 皆もそれに気付いた。言われてだった。
「俺達よりも」
「何かフロンティアに向かっている?」
「そうよね、何か」
「どういうこと?」
「シティ7にも向かっていない」
 このことに気付いたのだった。
「フロンティアに向かうのは当然だろ?」
「そうよね」
 ハッターとフェイが言った。
「俺達の本拠地だからな、今の」
「それを狙うのは当然じゃないの?」
「少し違うな」
 だがここでテムジンが言った。
「それはな」
「違う?」
「そうじゃないの?」
「そうだ、それは違う」
 それをまた言うのであった。
「ただフロンティアを本拠地として狙うのならここまで執拗には狙わない」
「そういえばシャピロの野郎」
 ここで忍はシャピロの戦艦を見た。
「今度は自分から来ていやがるな」
「あいつ普段はいつも後ろにいるよな」
「ああ、普段はな」
「ふんぞり返ってね」
 勝平に宇宙太と恵子が答える。
「それが今は自分から来てやがるな」
「最前線にね」
「何かあるのかよ」
 勝平は首を捻って言った。
「フロンティアに」
「あれ、そういえば確か」
「そうよね、アラドが」
「言ってたけれど」
 ここでアラドの言葉を思い出した一同だった。
「ということはつまりは」
「まさかとは思うけれど」
「イルイちゃんいる?」
「ひょっとして」
「そんな筈ないわよ」
 だがここでまたゼオラが言った。
「だってイルイちゃんは」
「普通に考えたならばだ」
 だがここでゼンガーが言ってきた。
「しかし。イルイがガンエデンだ」
「普通の人間じゃない」
「それだったら」
「そうだ、有り得る」 
 ゼンガーはこう見ていたのだった。
「それもだ」
「まさか・・・・・・いや、そうだな」
 アイビスは言いながら自分の考えを変えた。
「イルイはガンエデンだ。それも有り得るな」
「そうだな。ないとは言い切れない」
「それに今は」
 ツグミも言う。
「イルイちゃんの今の所在知ってる人は」
「いないな」
 スレイも言い切った。
「それもだ」
「今は地球で静かに暮らしている・・・・・・筈だ」
 アイビスはまた言った。
「しかし。イルイは自由に行動できる」
「それならやっぱり」
「フロンティアにいても」
「それは有り得る」
「そうだ、有り得る」
 ゼンガーは言い切った。
「それもまただ」
「じゃああいつ等はイルイちゃんを狙って」
「けれど何で?」
 今言ったのはクスハである。
「どうしてイルイちゃんを?」
「それはわからない。力を利用しようとしているかも知れないが」
 ゼンガーの言葉は続く。
「しかし狙っているとなればだ」
「迎え撃つしかない」
「そうよね」
「それじゃあ」
「倒すしかないよな」
「そうだ。どちらにしろムゲ帝国は退ける」
 ダイゼンガーはもうその両手にあの斬艦刀を持っていた。そうしてだった。
 一直線に前に出てだ。敵艦を両断した。
「ムン!」
「な、何っ!?」
「一度に二隻もだと!?」
「化け物か!」
 斬られた戦艦のクルーが驚きの声をあげた。
「あのマシン一体」
「何だというのだ」
「我が剣に斬れないものはない!」
 ゼンガーは斬ってから言ったのだった。
「そして護れぬものもない!」
「甘いな」
 だがそれにシャピロが返す。確かにいつもとは違い前線にいる。
「それは」
「甘いというのか?」
「それが」
「そうだ、甘いのだ」
 こう返すシャピロだった。ゼンガーに対してもそうした態度である。
「それはだ」
「何故甘い?」
「人は神に勝てはしない」
 ここでも己を神と言うのだ。
「だからだ。それはできはしない」
「愚かだな」
「私を愚かだというのか」
「そうだ、愚かだ」
 また言ってであった。その戦艦を前にやる。そのうえで総攻撃を仕掛ける。
 彼の相手はダンクーガだった。忍はシャピロを見据えながらその攻撃をかわしていた。そうしてそのうえで彼も攻撃を放つ。
「忍、あれだな」
「そうだ、あれだ!」
 こう亮に返す。
「断空砲だ!」
「よし、行け!」
「喰らえシャピロ!」
 照準を合わせながらシャピロに対して叫ぶ。
「これで手前を地獄に叩き落してやるぜ!」
 そうしてその砲撃を敵艦にぶつける。それはかなりのダメージだった。動きが止まった。
「やった!?」
「いけたね」
 雅人と沙羅が会心の笑みを浮かべる。
「これでシャピロも」
「終わった?」
「いや、まだだ」
 だがここでアランが言った。ブラックウィングでダンクーガの横にいる。
「この程度で沈む奴じゃない」
「そうだな」
 忍もそれはわかっていた。
「これ位じゃな。あいつは死なないぜ」
「けれどさ、敵艦は」
「今にも沈みそうだよ」
 雅人と沙羅がそれを言う。
「それで何で?」
「シャピロの奴も」
「普通はそうだな」
 亮も二人と同じだと見ていた。
「このままな」
「あいつは自分しかない」
 だがここでまたアランは言った。
「ならばだ」
「へっ、自分だけでも生き残ろうとするぜ」
 忍はシャピロを見据えながらその目に嫌悪を見せていた。
「部下を見捨ててもな」
「そうだな」
 ここで刹那が彼の言葉に頷いた。
「自身を神と思う輩はだ。自分だけは生きようとする」
「それならやっぱり」
「ここは」
「そうだ、逃げる」
 刹那もそう見ていた。
「部下を見捨ててな」
「果たしてそうするかな」
「そんな卑怯なこと」
 だが多くの者はそれを容易には信じようとしなかった。
「幾ら何でもさ」
「そこまで卑怯なことはしないんじゃ」
「いや、逃げる」
 忍は周りの言葉に従わなかった。
「あいつは絶対に逃げるな」
「逃げるって本当に?」
「まさか」
「見な」 
 しかし彼はそのシャピロの乗艦をダンクーガで指差した。するとだった。
 一機のシャトルが去った。これでもうわかった。
「本当に自分だけ逃げるか」
「何て野郎・・・・・・」
「あれが神って」
「そんなものだ」
 刹那の言葉は醒めたものだった。
「自分さえよければいいのだからな」
「だからああする」
「そういうことなの」
「そうだ、だが戦いは続く」
 それはだという。
「フロンティアを何としても陥落させる」
「そしてイルイちゃんがいたら」
「手に入れてその力を」
「そうする、間違いなくな」
 また言ったゼンガーだった。
「その為にだ」
「来るのならそれなら」
「倒してやるか」
 こうしてだった。指揮官がいなくなろうとも迫り来るムゲ帝国軍を倒していく。やがて彼等は一機もいなくなり残ったのはロンド=ベルの面々だけだった。
「勝ったけれど」
「全機を行かせて自分は逃げるって」
「何て野郎だ」
 皆シャピロの汚い行為に顔を顰めさせていた。
「本当にそんなことするなんて」
「どういうことなんだ?」
「何処まで卑怯な奴なんだ」
「卑怯も何もないのだ」
 ゼンガーはまた言った。
「奴にとってはだ」
「つまり本当に自分さえよければいい」
「そういうことなんですか」
「あいつにとっては」
「その通りだ。まさに自分だけなのだ」
 こう返したのだった。
「だからそうしたことも平気でできるのだ」
「余計に負けたくなくなったな」
「そうよね、それは」
「確かに」
 皆あらためてシャピロのことがわかった。しかしそのシャピロはだ。
「四十万が全滅か」
「一人もいなくなりました」
「文字通りの全滅です」
「わかった」
 それを聞いて頷く彼だった。それだけだった。
「役立たず共が」
「えっ!?閣下」
「それだけですか」
 皆シャピロの今の言葉に唖然となった。
「あの、閣下の御命令で全員戦死したのですが」
「それでもですか」
「あの、それでも」
「どうしたのだ?」
 シャピロの言葉は平然としたままであった。
「何かあったのか」
「いえ、それは」
「何も」
 ここに至ってだ。彼等も言うことを諦めた。遂にである。
 そしてだ。シャピロはこう部下達に言ってきた。
「ロッサを呼べ」
「ロッサ様をですか」
「そうだ、呼ぶのだ」
 こう言うのである。
「わかったな、すぐにだ」
「は、はい。わかりました」
「それでは」
「そのうえでだ。軍議を行う」
 それをするというのだ。
「そしてまたロンド=ベルを攻める」
「わかりました、それでは」
「今から」
「戦いはまだはじまったばかりだ」
 シャピロのみが笑みを浮かべていた。
「神がその至高の座に就くべき戦いがな」
 彼は自分だけを見ていた。他の者は全く見てはいなかった。それがこのシャピロ=キーツという男であり彼の全てであった。


第二十話   完


                       2010・4・17 

 

第二十一話 守護神の巫女

           第二十一話 守護神の巫女
   「さて、シャピロの奴はまさか」
「わかっているのか?」
「それとも知っている?」
 ロンド=ベルの面々は怪訝な顔で話をしていた。
「それでここに来た?」
「有り得るよね」
「フロンティアを狙った」
「それが」
「イルイちゃんがここにいる」
 彼等も確信のない話であった。
「若しそれが本当なら」
「どうしようかしら」
「イルイちゃんを探すか?」
 今言ったのはブリットだった。
「そして俺達で保護するか?」
「それはどうかな」
 だがリョウトがそれに疑問の言葉で返した。
「僕はあまり」
「駄目か?」
「うん、イルイちゃんがそのことに気付いたらね」
「そうね。かえって逆効果よ」
 リオもここで言った。
「イルイちゃん気付いて。去ってしまうわ」
「残念だがその可能性は高いだろうな」
「そうね」
 ユウキとカーラもそう見るのだった。
「そしてだ。そのうえでだ」
「何処かに去ってしまうわ」
「ならどうすればいいんだ?」
「保護できないのなら」
 タスクとエレナがそれにあえて言った。
「イルイちゃんが危ないだろうがよ」
「若し何かあったら」
「いや、話は簡単だ」
 だがここでクォヴレーが言い切った。
「要はこのフロンティアを守ればいい」
「そうね」
 彼のその言葉に頷いたのはマリューだった。
「結局はそうなのよ。イルイちゃんがフロンティアにいるのならね」
「そのフロンティアを守ることが」
「イルイちゃんの保護になる」
「そういうこと、守ればいいのよ」
 笑っての言葉だった。
「要するにね」
「フロンティアを守るそのことが」
「イルイちゃん自体を守る」
「そうよ。それじゃあ」
「わかりました、それじゃあ」
「このフロンティアの防衛に専念します」
 出された答えはこれだった。
「そしてイルイちゃんが本当にここにいるのなら」
「イルイちゃんも」
「そういうことよ。いいわね」
「はい」
 これで彼等の方針は決まった。イルイはあえて探さないのだった。
 そしてだ。尚も話が為された。今度言ったのはロゼだった。
「あの」
「あっ、ロゼさん」
「どうしたんですか?」
「気になっていることですが」
 ロゼは少し困ったような顔になって皆に言ってきた。
「ゼントラーディの地区にあるあの屋敷ですが」
「あの二人だけで住んでいるっていう?」
「女の子達だけで」
「まさかとは思うのですが」
「そうだな、私もこの前そこに行ってみたが」
 ロゼだけでなくマーグも来てだ。そのうえで言うのである。
「あそこにいるのは」
「バルマーの者ではないだろうか」
「えっ、まさか」
「そんな筈が」
「しかしです」
「見た記憶があるのだ」
 二人は怪訝な顔で一同に話す。
「その二人の服も」
「私達の知っているものだった」
「では顔は」
「どうなのでしょうか」
「はい、それもです」
「知っているものだ」
 顔についても答えた二人であった。
「まさかとは思いますが」
「十二支族の者達ではないのか」
「十二支族っていうと」
「バルマーの中枢よね」
「それ?」
「そうだ、アマルナ=ティクヴァーとルリア=カイツ」
 マーグが出した名前はこの二つだった。
「その二人だ」
「馬鹿な、そんな筈がない」
 ヴィレッタはその名前を聞いてすぐに反論した。
「あの二人がこの様な場所にいる筈がない」
「確かにだ」
 マーグも彼女に対してこう返した。
「普通に考えるとだ」
「確かにあの服は二人のものだ」
 ヴィレッタはまた述べた。
「だが。あの二人が何故フロンティアにいる」
「普通に考えて有り得ることではない」
 マーグはまた言った。
「それは何があろうともだ」
「そうだよな、っていうか」
「バルマー十二支族がこんな場所にいるなんて」
「普通はあれだよな。バルマー本星にいる筈だよな」
「ああ、確かにな」
「いる筈がないわ」
 一同はこう言って首を傾げさせるばかりだった。
「絶対にな」
「それは」
「私の見間違いか」
 マーグはこうも考えた。
「やはり」
「いえ、それは」
 ロゼが顔を俯けさせたマーグに対してすぐに言ってきた。
「マーグ様、それはです」
「ロゼ、気遣いは嬉しいが」
「たまたま服がそうであるかも知れません」
 こう言うのである。
「それでそう思ったのかも知れません」
「そうなのだろうか」
「私も。あの方々がここにいるとはです」
「思えないか」
「はい、申し訳ありませんが」
 それを言うのである。
「あの方々は本星におられる筈です」
「しかし。確かによく似ている」
 マーグはあらためて言った。
「そっくりと言ってもいい程にな」
「あまりにもな」
「あっ、そういえばマーグさんもあれですよね」
「十二支族でしたよね」
「ギシン家の」
「そうだ、その当主ということになっている」
 このことにも答えた。
「だが。今はだ」
「それも過去のことですか」
「今は私達と共にいますから」
「そうだ。もうギシン家は事実上途絶えている」
 こうも答えるマーグだった。
「私はロンド=ベルに加わりマーズもここにいることでだ」
「俺は最初からバルマー帝国の人間だったつもりはない」
 タケルはそれは確かに言った。
「けれど兄さんは」
「私も今まで操られていたのだ」
「操られていた、そういえばレビ=トーラーという女に」
「そうだ、その女に操られていた」
 こう話すのである。
「長い間。悪い夢を見ていた」
「申し訳ありません」
 それを言われるとであった。ロゼが申し訳なさそうに言ってきた。
「私は。マーグ様を」
「いや、いい」
「宜しいのですか」
「御前もまた辛かった筈だ」
 もうロゼの心はわかっていたのだ。それもよくだ。
「ならば致し方がない」
「マーグ様・・・・・・」
「だが御前はいつも私を守ってくれた」
「えっ、私がですか」
「そうだ、守ってくれた」
 こう言うのである。
「そして今もまた」
「それは、その・・・・・・」
「あっ、照れてる」
「顔真っ赤だし」
 皆今のロゼの顔を見てすぐに言った。
「前から思っていたけれど凄い純情!?」
「みたいね」
 皆それがわかってきたのである。
「しかも可憐っていうか」
「仕草とかがね」
「もう乙女って感じで」
「意外にも」
「私は別に」
 しかし当人はその真っ赤になった顔で言うのだった。
「そんなことは」
「いや、あるから」
「そうよね」
「どう見てもね」
 皆その彼女に対して言う。
「純情可憐そのもの」
「ロンド=ベルでも一番なんじゃないかな」
「そうよね」
 さらに話す彼等だった。
「性格が特にね」
「それに一途だし」
「そうだな、ロゼは一途だ」
 タケルもそれは認めた。
「それに純粋だ」
「兄さんもわかってるんだね」
「わからない筈がない」
 微笑んで弟にも返す。
「ロゼの心は。誰よりも」
「マーグ様、そこまで・・・・・・」
 そのマーグの言葉に目をうるわせるロゼだった。
「言葉もありません」
「それでロゼ」
「はい」
「今から少し街に行かないか?」
 彼女を誘っての言葉であった。
「今から。どうかな」
「わかりました」
 ロゼに断る理由はなかった。こくりと頷く。
「それでは」
「やっぱりマーグさんもロゼさん大事にしてるわよね」
「それもかなりね」
「どう見ても」
 皆このことにも気付いた。そんな話をしながら楽しい時間を過ごしていた。
 しかし彼等は戦士だ。それはほんの一時のことでしかない。そうしてだった。
「来ました!」
「敵です!」 
 レイヴンに対してテセラとチュクルが述べる。
「ムゲ帝国軍です!」
「彼等が来ました!」
「数は五十万です!」
 コリニアも言ってきた。
「それだけ来ました」
「そうか。今度は一度に来たのだな」
 レイヴンがグラヴィゴラスの艦橋で全てを聞いていた。
「わかった。では今回も迎撃だ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「来る」
 サンドマンがこの中で言った。
「必ずだ、来る」
「来ますか」
「そうだ。敵はフロンティアを狙う」
 レイヴンに対しても告げた。
「間違いなくだ」
「そうですか、それでは」
「またフロンティアを中心に守りを固める」
 サンドマンは戦術も述べた。
「そのうえで戦うぞ、いいな」
「はい、それではその様に」
「諸君!」
 サンドマンは今度は全軍に対して告げた。その右手に持っている杖を前に突き出す。
「総員出撃だ、戦いの場に赴こう!」
「はい、それでは!」
「今から!」
 こうして全軍出撃した。そしてフロンティアを取り囲んで布陣した。するとだった。
「何っ、敵の陣形が変わった!?」
「このまま来ずには」
「囲んで来たわね」
 少しずつ動いてだった。包囲陣を敷いてきたのだ。そのうえで攻撃に入ろうとしていた。
「囲むつもりですね」
「ええ」
 スメラギが留美の言葉に頷く。
「そう来たのね」
「どうしますか?ここは」
「こちらの戦術は一つしかないわ」
 スメラギは落ち着いた声で述べた。
「ここはね」
「一つしか、ですか」
「守り切るしかね」
 それしかないのだというのだ。
「フロンティアを受け渡す訳にはいかないしね」
「そうですね。ところでスメラギさん」
「何かしら」
「フロンティアのことですが」
 留美もまた聞いていたのである。
「まさか。本当に」
「私はその娘のことはよく知らないのよ」
「そうですね、それは私も同じです」
「けれど。それでも」
 スメラギは話を前置きしてから言うのであった。
「有り得るわね」
「そうですね。この世界にも神がいます」
「イルイ=ガンエデン。それが」
「どう動いているかですね」
「ああ、イルイちゃんだがな」
 彼等に言ってきたのはカイ=シデンだった。
「地球を護ろうとはしていたけれどな。それでもな」
「別に悪意はないよ」
 ハヤトがそれは否定した。
「何もね」
「そうですね。それは聞いています」
 留美が二人に対して答えた。
「ただ。何故ここにいるのか」
「本当にいるのならね」
「それにです」
 スメラギに続いて紅龍が言ってきた。
「その力は何でしょうか」
「謎だらけの存在なのだな」
 グラハムもそれを聞いて述べた。
「神というものはわかりにくいものだがな」
「とにかくあのシャピロってのがイルイちゃんを狙ってるのは間違いないな」
 パトリックはあえてかなり単純に考えて述べた。
「そういうことだな」
「それはそうだが。パトリックよ」
「何ですか、大佐」
「もう少し考えられないのか?」
 カティはこう突っ込みを入れたのである。
「単純過ぎるのではないのか」
「いいじゃないですか。それしか考えられませんし」
「それでももう少しだ」
「とりあえず戦って撃退しているうちにわかりますよ」 
 また言うパトリックだった。言葉は明るい。
「どうせしつこく何度も来るんだし」
「それはその通りだ」
 カティもそれは読んでいた。
「ならばだ。やはり今は」
「戦いましょう」
「そうだな」
 こうして戦いがはじまった。ムゲ帝国軍は包囲しそのうえで攻撃を仕掛けた。しかしそれでもロンド=ベルの強さは健在であった。
「主砲発射用意」
「わかりました」
 レイヴンがサンドマンの言葉に応える。グラヴィゴラスの主砲が動く。
 そうして敵軍にその主砲が放たれる。幾条の光が敵軍を貫き多くの光が起こった。
 ムゲ帝国軍は劣勢だった。それを見てシャピロの横にいるロッサが言ってきた。
「シャピロ様」
「わかっている」
 シャピロは不機嫌を露わにさせている。
「戦局だな」
「はい、このままではです」
「敗れるか」
「フロンティアを陥落させられません」
 こう言うのだった。二人は今旗艦の艦橋にいる。
「とてもですが」
「いや、このまま攻める」
 しかし彼は諦めようとはしなかった。
「このままだ」
「攻めるのですね」
「一兵だけでも残ればいい」
 こうまで言った。
「そしてフロンティアを陥落させるのだ」
「フロンティアに何があるのでしょうか」
 ロッサは怪訝な顔になっていた。
「どうしてそこまで」
「やがてわかる」
 シャピロは腕を組んで答えた。
「その時に話そう」
「その時にですか」
「そうだ、私が神になるにはフロンティアにあるものは必要だ」
「神に。シャピロ様が」
「ロッサよ、見ているのだ」
 彼は戦局を見続けていた。その一向に進まない戦いをだ。
「私が神になるその時をだ」
「わかりました」
 ロッサの言葉が恭しいものになっていた。
「では私はシャピロ様のお傍で」
「そうしてもらおう。ではロッサよ」
「はい」
「全軍さらに攻撃を命じろ」
 さらに言う。
「いいな、それではだ」
「では。一兵でもフロンティアに」
「犠牲は厭うな」
 シャピロの今の言葉は冷酷なものだった。
「幾ら死のうが構わん」
「五十万の兵、全滅してもですか」
「そうだ、構うことはない」
 シャピロはここでも自身の率いる軍を捨て駒にしようとする。
「兵なぞ幾らでもいるのだ」
「だからこそですか」
「そうだ。私は神となる」
 やはり自分のことしか考えていなかった。そうしてだった。
 自軍に攻撃をさせる。撤退は許さなかった。
 ムゲ帝国軍は損害だけが増えていく。シャピロだけが後方で平然としている。
 ロンド=ベルの面々はその彼を見て言った。
「あいつ、今度は自分だけ動かないのかよ」
「自分の軍は無茶な攻撃をさせておいて」
「自分はそれかよ」
 言葉には嫌悪が露わになっていた。
「神にでもなったつもりか?」
「そんなのなれる筈がないってのによ」
「何様のつもりよ」
「あんな奴が神の筈がねえ」
 忍は忌々しげに言い捨てた。
「自分でそう思い込んでるだけなんだよ」
「じゃあどうするんだ?」
 ジュドーがその彼に問う。
「ここはよ」
「叩き潰してやる!」
 これが忍の返答だった。
「一機残らずな。そうしてやるぜ!」
「けれどよ、それだとよ」
 ジュドーは忍に対してまた問うてきた。
「あいつだけまた逃げるぜ」
「そうね。前と同じね」
 マウアーもそう見ていた。
「ああした人間はそうするわ」
「へっ、逃がすかよ!」
 ジェリドは何としても追いつくつもりだった。
「その時はな、そうしてやるぜ!」
「どうかな、それは」
 その彼にカクリコンが言ってきた。
「あの時も上手く逃げられた。またそうなると思っていてもいい」
「そうだね。ここは一つ考えがあるよ」
「えっ、ライラさん」
「じゃあどうするんですか?」
「今囲まれてますけれど」
「あの戦艦を一撃で跡形もなく吹き飛ばすんだよ」 
 こう言うのだった。
「ローエングリンなりバスターキャノンなりでね」
「一気にですか」
「そうするっていうんですね」
「そうさ。もっとも届くには距離があるみたいだね」
 シャピロの旗艦は後方にいる。それを見ての言葉だった。
「それをどうするかだね」
「まあそれはどうとでもなるさ」
 ヤザンは楽しげに笑って述べた。1
「ちょっと近寄って攻撃をすればな」
「では少佐」
「我々の海蛇で」
 ラムサスとダンケルが名乗り出て来た。
「そうしましょう」
「それならどうでしょうか」
「いや、待て」
 だがここでヤザンは言うのだった。
「海蛇じゃ駄目だな」
「無理ですか、それは」
「海蛇では」
「ああ、あれは攻撃範囲がまだ狭いな」
 好戦的だが冷静に見ている彼らしい言葉だった。
「一撃で沈めるにはな」
「じゃあ我々は今は」
「あの戦艦にはですか」
「他の奴に任せるしかないな」
 ヤザンはいささか残念そうに述べた。
「俺も仕方ないんだけれどな」
「そうですか。わかりました」
「それでは」
「おい、誰でもいいから行け」
 ヤザンはこうも言った。
「手柄くれてやるぜ」
「よし、それならだ」
 ヤンロンが出て来て言う。
「僕のグランヴェールのメギドフレイムなら」
「そうね。雑魚はあたしに任せて」
「俺も行くぜ」
 リューネだけでなくマサキも出て来た。
「それで一気にあの野郎のところまで行くか」
「そうね。あのシャピロ」
「許せん」
 こう言ってであった。三人が向かう。 
 そして三人だけではなかった。残る二人もいた。
 テュッティとミオもだ。五機が一斉に前に出たのだ。
「マサキ、私達もいるから」
「周りは気にしないでいいからね!」
「悪いな、あのシャピロの野郎」
「ここで終わりにしてやるわよ!」
「あの戦艦を沈めてだ」
 マサキにリューネ、ヤンロンは一直線に向かっていた。
「そのうえで倒す」
「雑魚はヴァルシオーネがいるからね」
「俺のサイバスターもな!」
「ここであのシャピロを倒さないとニャ」
「いい加減面倒なことになってくるニャ」
 こう言うクロとシロだった。
「あいつもう本気で鬱陶しくなってきてないニャ?」
「企んでるから余計に腹立つニャ」
「しつこいのも腹立つがな」
 マサキはそれについてもだと前置きしてからさらに話した。
「俺が一番気に食わないのはな」
「自分だけが生き残ろうとすることだニャ」
「自分以外と手駒として」
「ああ、それだよ」
 まさにそれだというのである。
「それが一番気に入らねえ」
「確かにそうだニャ」
「あれは見ていて頭にきたニャ」
「俺もできればあいつはこの手で倒したいんだがな」
「けれどコスモノヴァでもニャ」
「あの戦艦を吹き飛ばすことはできないニャぞ」
「それはわかってるさ」
 忌々しい口調のままだった。
「くそっ、あいつだけはよ」
「まあそのうちああいう奴は破滅するニャ」
「墓穴掘ってその中にだニャ」
 クロとシロはそうなると見ていた。
「あたし達がそうしなくてもニャ」
「絶対にそうなっていくニャ」
「そうだろうな」
 マサキも真顔でファミリア達の言葉に頷く。
「それが常だからな」
「じゃあ今は敵を蹴散らしていくニャ」
「それじゃあニャ」
「ああ、行くぜ!」
 そして繰り出した技は。
「サイフラーーーーーーーーーーーッシュ!」
 これで敵をまとめて消し去る。そしてリューネもまた。
「いくよ!」
 こう叫んでからだった。
「サイコブラスターーーーーーーーッ!」 
 これを放って敵を蹴散らしたのだった。そしてヤンロンがだ。
「焼き尽くせ!」
 既にシャピロの戦艦は射程に入れてある。そうしてだった。
「メギドフレイム!」
 それでシャピロの旗艦を焼き尽くさんとする。炎が一気に駆け抜けた。
「な、何っ!?」
「シャピロ様、艦が!」
「これ以上は!」
「くっ、もたないというのか」
 部下達の言葉を聞いて歯噛みするシャピロだった。
「おのれ、こんな所で神である私が」
「いえ、まだです」
 しかしだった。ここでロッサが彼に言ってきた。
「まだ脱出できます」
「できるというのか」
「はい、まだです」
 こうシャピロに対して言うのである。
「ですからまだ」
「ではここはどうするのだ?」
「既に脱出用の戦闘機は用意してあります」
「だが今はだ」
 まだ言うシャピロだった。
「炎に包まれ今にもだ」
「確かに危ういです」
 それは彼も認めた。
「ですが」
「ですが、か」
「まだ間に合います。今こそ」
「わかった、信じよう」
 決断は早かった。
「今すぐにこの艦艇を脱出する」
「はい、それでは」
「神である私がここで倒れる訳にはいかない」
 ここでも己を神と言うシャピロだった。
「だからこそな」
「では貴方は神であられる為に」
「そうだ。今はここを去る」
 こう話してだった。彼等は戦線を離脱するのだった。メギドフレイムは確かに戦艦を焼き尽くした。しかし沈むその一瞬の間をついたのだ。
 シャピロはロッサと共に脱出した。二人だけでだ。
「くっ、一瞬でだと」
「悪運の強い奴だね、全く」
 ヤンロンとリューネが撤退する彼等を見て忌々しげに言い捨てた。
「しかもまた部下を見捨ててか」
「相変わらずの奴だね」
「俺が追う!」
 マサキがここでまた叫んだ。
「サイバードならまだ追いつける!」
「いえ、止めておきなさい」
「追ったらかえってまずいと思うわよ」
 だがその彼をテュッティとミオが制止した。
「シャピロに追いついてもすぐに敵が来るわ」
「一機で行ったら死んじゃうわよ」
「ちっ、無茶だってのかよ」
「そうよ、また機会があるわ」
「だから今は止まっておくことね」
「わかったぜ」
 マサキは無念そうだったがそれでも納得した。
「それにしてもフロンティアは無事だったんだな」
「うむ、無事であった」
 ティアンが答える。
「拙僧達が止めた」
「しかし。今回もでした」
 デメクサは珍しく真剣な顔であった。
「彼等は全てこちらに来ました」
「やっぱりね。これはいるわよ」
 シモーヌも言ってきた。
「フロンティアにね」
「そうか、やっぱりな」
 マサキはそれを聞いて納得した顔になった。
「いるんだな」
「イルイちゃん、やっぱりここにいるのね」
 プレシアも言う。
「フロンティアに」
「探すのは無粋だな」
「そうね」
 ロザリーはジノの言葉に頷いた。
「そんなことをしてもあの娘の為にはならないわ」
「それにだ」
 ジノはさらに言った。
「彼女の性格を考えればだ」
「もう出て行くかも知れないね」
 ベッキーはその危険性を視野に入れていた。
「これでね」
「そやな。自分のせいで敵が来た思うてな」
「将軍、では一体」
 エリスがロドニーに対して述べた。
「ここはどうすれば」
「どうしようもないやろな」
 ロドニーはもう止めることは諦めていた。
「あの娘もう出て行くと思うで」
「じゃあここはどうすればいい」
 ここまで聞いたファングが目を顰めさせていた。
「このままではだ」
「なるようにしかならないというのか」
 アハマドも表情は暗い.だが彼はこうも言った。
「これもアッラーの思し召しか」
「そうだ」
 ゲンナジーがここで言った。
「今はどうすることもできない」
「ここは行かせるしかない」
 ゼンガーは既に覚悟を決めていた。
「ガンエデンの思う通りにだ」
「そうだな。友の言う通りだ」
 レーツェルがそれに賛成して述べた。
「我々は行かせるしかない」
「残念だがな」
 ゼンガーもそれは納得したわけではなかった。しかしであった。
「行かせる」
「後は運命が導いてくれる」
 レーツェルは言った。
「我々がこれから切り開く運命がだ」
「では今はここは」
「行かせるしか」
「それしかないのね」
 イルイがいることは察していた。だが彼等は今は行かせることを選ぶしかなかった。彼女がいることをわかっていてもだ。それでもだった。
 こうして戦いが終わってだ。彼等はフロンティアに静かに戻った。そしてそのまま下がろうとする。だがそこには彼女はいなかった。
「では行くか」
「そうね」
「これで」
 次の戦いに考えを及ばせるのだった。次の戦いにだ。
「さて、これからだが」
「はい」
「次ですね」
「次は問題だ」
 マーグが語る。
「ギシン家の勢力圏だ」
「マーグさんの家ですよね」
「つまりは」
「そうだ」
 まさにそこだというのである。
「今そこは完全にバルマー帝国の勢力圏にある」
「じゃあ完全にそこに」
「バルマーの勢力圏ってことは」
「そうだ。バルマー軍の一個方面軍がいる」
 その彼等がだというのだ。
「バルマー帝国中銀河方面軍だ」
「それが展開しているんですか」
「これから行く先に」
「バルマー帝国の一個方面軍だ」
 マーグはこのことを強調して言った。
「わかるな」
「はい、確かに」
「あの軍がですか」
「それはかなり」
「手強い」
 マーグはまた言った。
「注意してくれ」
「わかりました」
「それなら」
「しかし」
 ここで言ったのはケンジだった。
「ギシン家なら」
「むっ!?」
「マーグの軍だ」
 このことを言うのであった。
「それならマーグ、君が影響を及ぼすことは」
「それは無理だ」
「無理だというのか」
「そうだ、それはできない」
 こう話すのであった。
「私としても残念だがな」
「戦うしかないのか」
 これが出て来た答えだった。
「結果として」
「そうだな。やるしかないか」
「バルマーの一個方面軍が相手ね」
「また七個艦隊が」 
 そしてその中核もわかっていたのだった。
「ヘルモーズか」
「そしてズフィルード」
「何か連中もあれじゃねえか?」
 ここで甲児が言った。
「何かよ、ギルギルカンみたいになってきてねえか?」
「認めたくないがそうだな」
 竜馬は何故かここでこう言った。
「どうもな、それはな」
「だよな。毎回恒例で出て来るしな」
「それにだ」
 さらに言うのだった。
「ギルギルカンだってな」
「リョウ、それは言うな」
 隼人がそれを止めた。
「本当に出て来るぞ」
「そうだよな。何か言ったら出て来るしな」
 弁慶も本能的にそう察していた。
「どういう理屈かわからないけれどな」
「出て来るものは出て来るからな」
 武蔵も言う。
「何故かわからないけれどな」
「そうだ。言えば何故か出て来る」
 鉄也もこれまでのことはよく覚えていた。
「気をつけないとな」
「そうだな。ではこの話は終わりにしよう」
 大介が上手くまとめた。
「いつも見る顔だしね」
「だよな。それで大介さん」
「うん、甲児君」
「もうヘルモーズのことはわかってるしな」
「そうだな。それはな」
 大介も甲児の言葉に頷く。
「確かにね。巨大で耐久力もあるけれど」
「攻撃は当てやすいからな」
「相手にはし易いよな」
「それに敵将のこともわかってきた」
 鉄也も話す。
「ジュデッカ=ゴッツォ達のこともな」
「それにズフィルードもだしな」
 宙はズフィルードについて述べた。
「あのマシンのこともいい加減把握してきたぜ」
「いや、待て」
 だがここで大文字が出て来た。
「確かに彼等はそうだが問題はだ」
「問題は?」
「っていいいますと」
「敵の指揮官だ」
 それだというのである。
「指揮官が問題だ」
「ギシン家の人よね」
「それなら」
「その敵将次第だ。その質によって戦いが大きくなる」
「辛い戦いになるかも知れませんか」
「それなら」
 こう話してであった。皆それぞれ話すのであった。
「マーグさん何か知ってるんじゃ?」
「ギシン家のことなら」
「いや、申し訳ないがだ」
 そのマーグが無念そうに話すのだった。
「私は長い間幽閉されたり洗脳されていた。ギシン星には幼い頃より連れられてから入ったことはない」
「じゃあ何も知らないんですか」
「自分のお家のことでも」
「申し訳ない。だがズールという男が治めていたと聞いている」
 この男の名前が出て来た。
「おそらくはその男がこれからの私達の相手だ」
「ズール?」
「どういう奴ですか?それは」
「どうも圧政者らしい」
 マーグはそうだと話した。
「バルマー帝国の中でというわけだ。それに」
「それになんですか」
「まだ何か」
「グラドス軍も協力しているらしい」
 グラドスの名前も出るのだった。
「あの者達もだ」
「グラドスってことは」
「ハザルもですか」
「はい、おそらくは」
 今度はロゼが出て来て言った。
「ハザル=ゴッツォとズールは親しい関係にありますから」
「そうなんですか」
「それはまたどうしてですか?」
「ズールはバルマーにおいて所謂地方政権としてかなり悪辣な所業を行っています」
「そのズールとハザルの利害が一致した?」
「それでなのかしら」
 皆ロゼの話を聞いて述べた。
「それで協力している?」
「そうなのかしら」
「おそらくは」
 こう話すロゼだった。
「ハザルもまた中央政権において地方の指示が欲しいようですし」
「そしてズールはより一層の権限の強化を望んで」
「その為にハザルと組んだ」
「そういうことなのね」
「おそらくは」
 こう述べるロゼだった。
「ですから今度の戦いはです」
「半分バルマーとの総力戦か」
「二個方面軍が相手か」
「まずいわね」
 皆その顔が険しくなる。
「一個方面軍でも苦労したのに」
「それが二個となると」
「大丈夫かしら」
「向こうの敵が我々だけだったらわからないだろうな」
 今言ったのはイルムである。
「若しそうだったらな」
「ああ、そうか」
「そうですよね」
 皆その言葉に頷いた。
「バルマーも敵は私達だけじゃない」
「宇宙怪獣もいればプロトデビルンもいる」
「それにゼントラーディやメルトランディも」
 彼等の敵も多いのである。
「そうか、じゃあ向こうのあいてもしないといけないから」
「それならこっちに全戦力を向けてくることはない」
「それなら」
「そういうことさ。敵もそこが泣きどころだからな」
「よし、それならだ」
 リンも言ってきた。
「我々はまずは進んでだな」
「バルマーがあちこちの敵の相手をしている間に倒すって訳さ」
 イルムの今度の言葉は軽いものだった。
「そういうことで行こうぜ」
「よし、それなら」
「行くか」
 こうして彼等の方針が決まった。ロンド=ベルはギシン家の勢力圏に入った。そこはタケルにとってもマーグにとっても運命の戦いであった。


第二十一話   完


                      2010・4・21 

 

第二十二話 グラドスの圧政

            第二十二話 グラドスの圧政
   ギシン家の勢力圏に入ったロンド=ベル。まずは静かだった。
「まずは星系の一つに向かうが」
「はい」
「そこからですね」
「そこにはグラドス軍がいる」
 ブライトが一同に述べた。
「あの者達がだ」
「えっ、グラドス!?」
「もう出て来るんですか」
「そうだ。心構えは出来ているな」
 こう問うのであった。
「もうそれは」
「ええ、まあ」
「できてはいますけれど」
 しかしだというのである。
「けれどあの連中ですか」
「あの連中の相手ですか」
「容赦する必要はない」
 こう言うブライトだった。
「いいな、それは」
「ええ、それはわかってます」
「安心して下さい」
 皆それはもうわかっていた。
「もう何度も戦っていますしね」
「ただ。問題は」
「嫌な奴等ですよ」
「全く」
 こう口々に言うのである。
「自分達だけを偉いと思って」
「やるのは虐殺とか文化破壊ばかりですから」
「そんな連中ですからね」
「捕虜は取らない」
 ブライトはグラドス戦にしか言わないことをあえて言った。
「コクピットを狙って撃墜しろ。いいな」
「おうよ。全員地獄に叩き落としてやるぜ!」
「僕のミョッルニルも今血が欲しがってるからね!」
「全員殺す」
 オルガ、クロト、シャニの目は血走っている。
「あいつ等とやり合うのは一番楽しいぜ」
「遠慮なく抹殺できるからね」
「一人も逃さない」
「では行くとしよう」
 こうしてロンド=ベルはその惑星に向かった。するともう彼等が展開していた。
「来たな、地球人共」
「我が偉大なるグラドスに歯向かう愚か者達が」
「今こそ裁きを与えてくれる!」
「相変わらずの奴等だな、おい」
「そうだな」
 スティングはその彼等を冷めた目で見ながらアウルの言葉に応えていた。
「進歩ないんだな」
「馬鹿だからか?」
「自分達だけが偉いと思っているからだろうな」
 彼は実に素っ気無く述べた。
「それでなんだろうな」
「おいおい、相変わらず嫌な奴等だな」
 アウルはスティングの言葉を受けて言った。
「じゃあいつも通り何の容赦も必要ないな」
「そういうことさ。さて、コクピットの位置はもうわかってるしな」
「楽な相手ではあるよな」
「ステラも戦う」
 当然ステラもいる。
「このまま倒す」
「よし、行くか」
「今からな」
「おい、御前等」
 ロウが三人に対して言ってきた。
「いいな、グラドスが相手だ」
「全力で叩き潰せだよな」
「コクピットを容赦なく撃ち抜いていいんだよね」
「それはな。ただ暴走はするな」
 これは注意するのだった。
「それはわかっているな」
「ああ、わかってるさ」
「戦いはあってもな」
 こう言ってであった。彼等はそのグラドス軍に向かう。ロンド=ベルはブライトに言われるまでもなかった。最初から容赦することはしなかった。
「おらおら、死ね!」
「抹殺!必殺!滅殺!」
「地獄に行け」
 オルガ、クロト、シャニは実際に派手に暴れていた。前の敵を次々と倒していく。
 クロトのレイダーガンダムは敵の中に入ってそのミョッルニルを振り回しそのコクピットを砕いていく。
「そこにいるのはわかってるからさあ!」
 その血走った目での言葉だ。
「何の容赦もしないからね!」
「ぐはあっ!」
 今一機がコクピットである頭部を叩き潰された。首がなくなった形になる。
 クロトはその首なし死体を思いきり蹴飛ばした。それで別のグラドス機にぶつける。
「うわっ!」
「仲間の屍抱いてさ!」
 その敵機に一気に接近してである。
「御前も死ねよ!」
「ぐはっ!」
 上からミョッルニルを振り下ろしそのうえでコクピットを潰した。確実に仕留めた。 
 シャニのフォピドゥンも暴れる。その巨大なビームを容赦なく放つ。
「これがロンド=ベルか!?」
「何という強さだ!」
「気付くのが遅い」
 グラドス兵への言葉だ。
「そして俺御前等大嫌い」
 この感情も隠そうとしない。
「死ね」
 またビームを放ってであった。数機一気に吹き飛ばす。 
 そして空いた場所に飛び込んで切り込む。鎌でコクピットを横薙ぎにする。
 頭を半分斬られた形で倒れる。他の機体も斬っていく。
「こ、こいつ・・・・・・」
「何という強さだ」
「俺確かに強い」
 シャニもそれは言う。
「しかし」
「しかし?」
「何だというのだ」
「御前等弱い」
 彼等に対しても言ったのだった。
「呆れる程度弱い。雑魚だ」
「何っ、我等が雑魚だと!?」
「その言葉許さん!」
「野蛮人の分際で!」
「野蛮人は御前等」
 言葉を返すシャニだった。
「御前等だ」
「何っ、何を根拠にだ!」
「その言葉許さんぞ!」
「俺達他の人間の文化や文明を壊さない」
 シャニが言うのはこのことだった。
「しかし御前等それをする」
「劣った存在を倒して何が悪い!」
「そうだ、それこそが我等の使命だ!」
 これが彼等の言い分だった。
「劣った文化や文明を破壊し優れた文明で教化する!」
「それの何処が悪い!」
「ああ、悪いさ!」
「げふっ!」
 言っている側からクロトがその敵機のコクピットを蹴り潰した。即死だった。
「文化は同じ物差しじゃ計れないんだよ!」
「き、貴様」
「我等の同胞をよくも無惨に」
「蹴り潰したというのか・・・・・・ガハッ!」
「僕はシャニとは違うんだよ!」
 今度はミョッルニルで叩き潰したのであった。
「御前等の汚い言葉なんて聞くつもりはないからね!」
「話は一応聞いてやるぜ!」
 オルガはこう言うのだった。
「聞いてから地獄に送ってやるぜ!」
「やれオルガ」
「言われなくてもな!」
 こうシャニに返してだった。
 総攻撃に入る。全ての攻撃をグラドス軍にぶつける。
「おらおらあっ!死ね!」
「ぐわっ!」
「げっ!」
 コクピットがまとめて吹き飛ばされる。そうして倒すのだった。
「グ、グラドス軍が・・・・・・」
「瞬く間に・・・・・・」
「御前等弱過ぎるんだよ!」
 一方的に攻撃を続けるオルガだった。それはまさに殺戮だった。
「弱い癖に偉そうに言うな!」
「おい、また今回滅茶苦茶暴れてるな」
 ロウは縦横無尽に暴れ回る三人を見て呟いていた。
「俺の十倍は戦ってるな」
「十倍で済むか?」
 それと言ったのはイライジャだった。
「こっちの三人も凄いがな」
「ああ、ステラ達か」
「グラドスが相手になると違う」
 こちらの三人もそれは同じなのだった。
「桁外れだ」
「そうだな。俺も実際な」
「違うか」
「この連中だけは許せないからな」
 言いながらその巨大な剣を振るう。そのうえで敵を薙ぎ倒していく。イライジャも敵機のコクピットを撃ち抜いていく。倒れるのはグラドス軍ばかりだった。
「余計にな」
「そうだな。全くだ」
「御前もかなり派手に暴れてるな」
「俺もグラドスは嫌いだ」
 イライジャもこの感情を隠さない。
「だからだ」
「ああ、どのみち捕虜は取らないんだ」
「全滅させる」
 この場合は文字通りのことである。
「いいな、このままだ」
「そのつもりだ、最初からな」
「行くぞ」
 彼等も攻める。敵は次々と倒れていく。
 三時間程戦うとであった。グラドス軍は残り僅かになっていた。その彼等はここであえて動きを止めてこう言ってきたのであった。
「もう終わりだ」
「降伏する」
「そちらの指示に従う」
「嘘だな」
 だが大河はその彼等を見てすぐに言い切った。
「それは」
「やはりそうですか」
「見るのだ」
 こうスタリオンに言って敵軍を指差すとだった。彼等の戦艦の主砲はこちらに向いていた。そしてその手に持っているビームライフルもだった。
「油断させて攻撃するつもりだ」
「またなのですか」
「そうだ、まただ」
 先の戦いのことで既に学んでいたのである。
「またしようとしている」
「それじゃあここは」
「やっぱり」
「このまま攻撃する」
 大河は言った。
「いいな」
「はい、それじゃあ」
「このまま」
「何っ、捕虜を攻撃するというのか」
「投降するというのだぞ!」
 グラドス軍の方から抗議が来た。
「ロンド=ベル、まさか」
「それ程非道だというのか」
「うるせえんだよ!」
 シンが速攻で攻撃を仕掛けた。ドラグーンでコクピットをまとめて吹き飛ばす。
「手前等の魂胆はわかってるんだよ!」
「投降を受け入れたその瞬間に攻撃を仕掛けるつもりだな」
 レイもドラグーンを放ちながら言う。
「それはもう見抜いていた」
「うっ、それは・・・・・・」
「その通りだな。ならばだ」
 こう言ってであった。彼もまたグラドス軍を容赦なく攻撃する。
 他の面々も同じだった。結果としてグラドス軍は一機もいなくなった。残った将兵は一人もいなかった。皆倒されたのである。
「戦闘終了デス」
「よし」
 大河はスワンの言葉に頷いた。
「これでいいな」
「はい、それでは」
「惑星に降下する」
 それも言うのだった。
「グラドス軍が残っていれば掃討戦に移る」
「わかりまシタ」
 こうしてロンド=ベルは今度は惑星に降下した。だが戦いは行われなかった。
 残っているグラドス軍は僅かであった。そしてその彼等もだ。
 投降しようとしてきた。だがここでも同じだった。
「戦闘終了」
「完全にね」
 ルナマリアとメイリンが素っ気無く言った。惑星にいるグラドス軍も全滅した。
 そしてその惑星の有様はだ。酷いものだった。
「やることは何処でも同じなんだな」
「そうね」
 皆その有様を見て言う。文化は徹底的に破壊されていた。
 そして今残っていたグラドスの非戦闘員達が狩り出されていた。そのうえで次々と裁判にかけられ処刑されていた。全員である。
 だがロンド=ベルの面々はそれを見ても何とも思わない。むしろその処刑に対して拍手喝采を浴びせていた。やれというのである。
「ふん、所詮はグラドス人だからな」
「あれだけやったしな」
「当然の結果よ」
「自業自得」
 今までのグラドスの悪行を見てのことだった。誰も処刑されていくグラドス人に同情する者も止めようという者もいなかった。
 だがエイジはその中でだ。難しい顔をしていた。
「エイジ、どうしたの?」
「やっぱり」
「うん、少しね」
 デビットとロアンに対して答えた。
「彼等のしてきたことは許されることじゃないけれどそれでも」
「だが因果応報だ」
「当然の結末だよ」
 二人もまたグラドス人への処刑を止めようとはしない。
「どれだけ惨たらしく殺されてもな」
「仕方ないことだよ」
「グラドス人は一人残らずああなるんだね」
「エイジは別だ」
「僕達の仲間じゃないか」
「仲間」
 その言葉は聞いた。しかしだった。
「けれどグラドス軍は」
「そうさ、敵さ」
「それも汚いね」
「汚い敵なんだ」
「やってきたことを考えるんだ」
「そういうことだよ」
 二人で話したのだった。
「あの連中は銀河にいてはならないからな」
「だからね」
「グラドス人の全てが悪い人間じゃなかったら」
 エイジはこうも言った。
「こんなことにはならなかった。いや」
 ここで思い直した。
「全員がそうじゃないんじゃないだろうか。若しかして」
「とっとと地獄へ落ちろ!」
 ディアッカが引き立てられていくグラドス人達に対して怒った声をかけていた。彼等は項垂れてそのうえで処刑場に向かっている。
「あそこまでやって助かるなんて思うんじゃねえ!」
「そうだ、今この星の者達は当然の権利を果たしているのだ」
 イザークも冷たい声で言う。
「この連中はこうなるべきだ」
「そういうことだ。グラドス人なんてな」
「そうだな」
「一人もいなくなるべきなんだよ」
 二人の考えは一致していた。
「こんな連中な」
「この星でも圧政を敷き自分達はやりたい放題をしていたんだな」
「はい、そうです」
 ニコルがアスランに話す。
「特権階級として。やはり文化を破壊して」
「処刑も当然だな」
「僕もそう思います」
「グラドス人の様な連中がいるからな」
「銀河が乱れるんですよ」
 彼等も言うのだった。
「しかし。子供も全員処刑するんだな」
「ええ」
 見れば処刑場に引き立てられていくのは大人だけではなかった。
「そうですね」
「子供も同じか」
「全く同じことをしていたみたいですよ。この星の人達を殺しても捕まらなかったですしね」
「なら仕方ないな」
 アスランとは思えない程冷たい言葉だった。
「それならな」
「はい、グラドス人は銀河にいてはいけません」
 ニコルはまた言った。
「ですから」
「それに俺達が止めても」
「はい、この星の人達の気持ちは収まりません」
 その問題もあるのだった。
「ですから」
「見ていよう。もっとも俺にも止めるつもりはないけれどな」
「ええ」
 こうしてこの星のグラドス人は一人もいなくなった。皆処刑された。そしてこの星の市民達は自由を取り戻した。そうしてであった。
 ロンド=ベルは彼等の協力も得ることになった。このこと自体はよかった。
 だがエイジの顔は晴れなかった。どうしてもであった。
「まあわかるけれどな」
「気を取り直してね」
「う、うん」
 周りの言葉に応えはした。
「そうだね。それはね」
「じゃあ飲もうな」
「今からね」
「そうだね」
 一応は応えたのだった。
「それじゃあ」
「よくあることだ」
 その彼に言ってきたのはカクリコンだった。
「戦争に敗れた圧政者はああなる」
「ああ、ですか」
「そうだ。俺達も一歩間違えればああなっていた」
 ティターンズ出身ならではの言葉だった。
「ああな」
「そうですか」
「そうだ。俺達はそれを考えれば運がよかった」
「そうだな」
 ジェリドもカクリコンのその言葉に頷いた。
「下手したら本当にな」
「軍法会議にかけられてもおかしくなかったな」
「そういうことだ」
 カクリコンの言うことはこのことだった。
「幸い色々あってな」
「俺達は不問で済んだがな」
 そうした意味では確かに運がよかった。
「上層部の責任になったがな」
「俺達だって毒ガスを撒く作戦の指揮官だったからな」
 ヤザンの顔が珍しく歪んだ。
「その責任はあったからな」
「しかしあんた達は」
 カミーユがここで言ってきた。
「それに反対していたんじゃないのか?」
「確かに反対はしていたさ」
 ライラがカミーユの言葉に応える。
「私等にしても軍人だよ。そういう作戦はやるべきことじゃないからね」
「俺達は戦うのが仕事だからな」
 ジェリドも言う。
「それで毒ガス撒けっていうのはな」
「誰も好きでしたりするものか」
 カクリコンはまた言った。
「だが。それでも指揮を執ったのは事実だ」
「それはですか」
「そうだ。その責任はある」  
 また言うカクリコンだった。
「それを問われても文句は言えなかった」
「我々にしろだ」
「それは同じだ」
 ラムサスとダンケルも話す。
「その責任はあるからな」
「それはわかっていた」
「ジャミトフ=ハイマンやバスク=オムだけじゃないのか」
 カミーユはそれを聞いてまた述べた。
「そういうことか」
「そういうことだ」
 カクリコンはまたカミーユに話した。
「仮にも将校だからな」
「圧政者は敗れれば糾弾される」
 エイジはこのことを心に刻むことになった。
「それじゃあグラドスでなくても」
「俺達もグラドスは大嫌いだがな」
 ジェリドの言葉だ。
「連中だけじゃない」
「グラドスでなくてもか」
「そうさ、グラドスに限ったことじゃない」
 ジェリドはエイジに対して話す。
「ああいう行動が問題なんだよ」
「だからグラドス人は処刑される」
「私等も撃つってわけだね」
 ライラは簡潔に述べた。
「そういうことさ。たったそれだけだよ」
「よし、それならだ」
「それなら?」
「わかったな」
 カクリコンの言葉だ。
「割り切ることだ。御前は御前だ」
「僕は僕」
「俺達はこれからもグラドス軍には容赦することはない」
 カクリコンはそれは断った。
「しかしそれでもだ」
「僕はですか」
「御前はそういうことは絶対にしない」
 それはもうわかっているのだった。
「だからだ」
「悩むことはねえからな」
 ヤザンは笑って述べた。
「特にな。おめえはおめえなんだよ」
「じゃあこのままここにいて」
「帰れとか出て行けなんて言う奴はいないさ」
 それは確かに言うジェリドだった。
「というか俺も個人的にな」
「個人的に?」
「御前がいないと寂しくなるからな」
 こうエイジに告げるのである。
「それはな」
「何でですか?それは」
「雰囲気が似てるからだよ」
 だからだというのである。
「全然似ていない筈だけれどな」
「そういえば確かに」
 言われてそれに頷くエイジだった。
「ジェリドさんとは気が合いますし」
「何かが一緒っぽいな」
「そういう奴は幾らいてもいいものさ」
 ヤザンも笑っていた。
「俺にしてもな」
「あんたそういう相手結構いるからね」
 ライラがそのヤザンに突っ込みを入れた。
「確かに羨ましいことだね」
「へへへ、タップもヂボデーもいい奴だぜ」
「私もエクセレン大尉と」
 サラもいた。
「気が合って」
「あんた達もそっくりだからね」
 ライラの目はいささか羨望が入っていた。
「全くね。そういう相手がいるってのはね」
「まあ自慢になるがな。いいものだぜ」
「そうだな」
 ヤザンとジェリドの言葉である。
「俺なんかそれどころかな」
「ああ、他の世界にもだったな」
「おうよ、世話焼きの緑色の烏か弁慶みたいなのになってな」
「信号の男ではなかったのか?」
 さりげなくカクリコンが突っ込みを入れる。
「確かな」
「そういえばそっちの記憶もあるな」
 心当たりの多過ぎるヤザンだった。
「あっちはまた壮絶に馬鹿な世界だったな」
「あの世界の警察は大丈夫なんでしょうか」
 サラは真剣に心配している。
「あそこまで無能で」
「俺も実は不安に思っていたんだよ」
 ヤザンも真顔である。
「幾ら何でも毎回誰もいない場所に交番置かないよな」
「そうですよね。それで誰も来ないなんて」
「馬鹿過ぎるだろ」 
 ヤザンはそのことを真剣に心配していた。
 そのうえでユウキに対しても言った。
「そう思わないか?御前もよ」
「俺ですか」
「心当たりあるんだろ?」
「残念ですがあります」
 いささか不本意そうな返答だった。
「気の大臣として」
「ぞよとか言っていたな」
「はい」
 ユウキはこのことも認めた。
「あの世界はあの世界で面白いのですが」
「そうだよな。かなりな」
「俺もあの世界は知っていますけれど」
 ブリットも登場した。
「確かに面白い世界ですよね」
「おう、御前は蝙蝠だったな」
 ヤザンはそのブリットに対して言った。
「風呂の中でくつろいだりしていたよな」
「ええ、間違ってもレオンさんとは似ていません」
「待て、そっくりだぞ」
「どう聞いても」
 皆それを聞いてすぐにそのブリットに突っ込みを入れた。
「同じ声っていうか」
「本当に」
「気にしているんだよ」
 実はブリットもそうなのだった。
「同じ声の人がああした立場にいるとどうも」
「同じ声じゃないから」
「雰囲気がそっくりなだけだから」
「そこは注意してな」
 皆ブリットの今の言葉を必死に訂正させた。
「あとカーラもそういえば」
「歌を歌っていたし」
「そうだよな」
「ええ、鏡の世界で戦う話よね」
 しっかりわかっているカーラだった。
「十三人でね」
「丸わかりすぎるな」
 ヤザンはカーラに対しても突っ込みを入れた。
「っていうか隠すつもりないだろ」
「今更隠してもね」
 カーラの言葉は開き直りだった。
「皆わかってるし」
「わかり過ぎっていうか」
「もうばればれだし」
「例えば」
「そうね」
 皆今度はユンを見て言うのだった。
「河原の人と柚子の人の関係って」
「あれですよね」
「はい、皆さんの言葉はわかってます」
 ユンは観念した顔であった。
「私は確かにですね」
「あと凱君達も」
「確かに」
「うっ、それは恋とか姫の話か」
 凱はそれを言われてギクリとした顔になっていた。
「あれは多分別人だ。名前が違う!」
「あれっ、けれど声は」
「もう誰も否定できないけれど」
「あとアレンさんも」
「気にするな」
 アレンは表情こそ壊していないが顔中から滝の様に汗をかいている。
「あれは俺とは関係ない。全くの別人だ」
「何かかなり強引?」
「っていうか」
「いや、俺ではない」
 尚も言うアレンだった。
「あれは絶対に違う」
「そうかな」
「あと卑弥呼も」
「あの変態爺さんにしか聞こえないわよね」
 アスカはムキになっていた。
「あの声って」
「相変わらず素敵だわ」
 レイは頬を赤くさせていた。
「例えどの様な役でも。素敵な方ね」
「レイってそんなにあの人が好きなんだ」
 シンジも少し唖然としている。
「ううん、どうなのかな」
「まあ恋も人それぞれやで」
 トウジは今はレイの側に立っている。
「人の恋路っちゅうのはな」
「けれど。それでもあれは」
「まあな。色々あるからな」
「ここにいる人達もそういう人多いみたいだね」
 ふとこんなことを言うシンジだった。
「そういえば昔きゃんきゃん何とかで光ちゃんの声聴いたような」
「あれはCDだ」
 何故か力説する光だった。
「私は本編とは関係ないぞ」
「ってあったんだ」
「あっ、それは」
 言ってから気付いたことだった。
「それはその」
「何かそれを言ったら」
「皆結構」
「脛に傷あるから」
「そうね」
 タリアもそれを言う。
「だからそれは言わないでおきましょう」
「ええ、そういうことで」
「この話はなしで」
「さて、何はともあれね」
「次の戦いですね」
「次の惑星に」
「まだバルマーの正規軍は出ていませんし」
 彼等の存在もあった。
「中銀河方面軍との戦いはまだね」
「はい、これからですから」
「気を入れなおしていきましょう」
 こう話して次の戦いに心を向ける。戦いはまだこれからだった。


第二十二話   完


                         2010・4・24    

 

第二十三話 解放

               第二十三話 解放
 ロンド=ベルはさらに進む。その中でだ。
「とりあえず中銀河方面軍については」
「何かわかった?」
「マーグさん、ロゼさん、知ってますか?」
 二人に尋ねるのだった。
「どういう相手ですか?」
「メインの戦力は」
「ギシン家の兵器が主になっている」
 まずはこう話したマーグだった。
「ギシン家のだ」
「っていうとロゼさんのゼーロンみたいなの?」
「そういう感じですか?」
「はい、そうです」
 その通りだと答えるロゼだった。
「その通りです」
「じゃあ精神攻撃とか来るかな」
「そうよね」
「もう充分に」
「それで数は?」
 次はその数も問われた。やはり戦いは数である。
「数はどうなんですか?」
「どんな感じですか?」
「ギシン家の兵器の数は多くはない」
 マーグはそれはないという。
「しかしその他の兵器はだ」
「多量にあるんですね」
「例によって」
「そうだ、それは注意してくれ」
 それを言うマーグだった。
「数は健在だ」
「何かバルマーも数で来るよな」
「というかそういう国よね」
「質より量って感じで来るからね」
「毎回毎回」
「だからそれには気をつけてくれ」
 マーグの話は続く。
「数で来られるのは他のバルマー軍と同じだ」
「わかりました、それなら」
「これまで通りの戦いになりますね」
「対応も」
「それで敵は何処にいます?」
「これから二日行った場所にもう展開しているわ」
 マリューが皆に告げる。
「惑星の前にね」
「そこはどういう星ですか?」
「どういった場所ですか?」
「この惑星ですか」
 ロゼがマリューの指し示したその星を見て言ってきた。
「ここは」
「あれっ、どうしたんですかロゼさん」
「何かあったんですか?」
「私の生まれ故郷です」
 そこだというのであった。
「まさかこの星で」
「ってロゼさんの生まれ故郷って」
「そこだったんですか」
「はい」
 まさにそこだと答えるロゼだった。
「そうですか。今度はこの星での戦いになるのですね」
「ロゼさん、それなら」
「行きましょう」
「ロゼさんの故郷の解放です」
 皆こうロゼに話す。
 そしてロゼもだ。それに応えて言ってきた。
「そうですね。では私も」
「行こう、ロゼ」
 マーグもロゼに注げてきた。
「ギシン家との戦いになるが」
「そのズールとの」
「ズールですか」
 ズールと聞いてだった。皆またマーグに対して問うた。
「それでどういう相手なんですか?ズールっていうのは」
「ギシン家の人らしいですけれど」
「それでもマーグさんが御存知ないって」
「訳がわからないですし」
「私も知りたいが中々情報が入らない」
 マーグも困っていたのだ。
「どういった者なのかな」
「それがわからないとなると」
「少し対応に困りますね」
「指揮官がわからないのなら」
「とりあえずは威力偵察の意味もあるかな」
 ノイマンはかなり過激なことを言った。
「今は」
「威力偵察ですか」
「それもなんですね」
「まずは敵を知る」
 ノイマンはまた言った。
「それを知る為の戦いだ」
「わかりました」
「じゃあその為にも」
「派手にやってやるか!」
 こんなことを言って戦いに挑む彼等だった。すぐに殴り込みに近い形で攻め込む。かなり強引な威力偵察ともなったのであった。
 その軍を率いているのは青い肌のいかつい大男だった。
「ロンド=ベルが来たか」
「はい」
「間違いありません」
 部下達がその大男に対して告げる。見ればかなり独特のシルエットのマシンばかりである。
「それでゴッチ閣下」
「ここはどうされますか?」
「決まっている」
 ゴッチと呼ばれた大男はすぐに答えた。
「戦う。それだけだ」
「はい、それでは」
「すぐにですね」
「全軍戦闘用意だ」
 まずはこう述べたのだった。
「そしてだ」
「援軍ですか」
「それを呼びますか」
「そうだな」
 意外と冷静なゴッチだった。
「それではワール司令に援軍の要請をせよ」
「そしてこの惑星からも」
「兵を呼びますか」
「そしてだ」
「はい、そして」
「どうされますか?」
「ジュデッカ=ゴッツォ達も呼べ」
 彼等もだというのだ。
「あの七個艦隊もだ」
「あの方々もですか」
「御呼びするのですね」
「そうだ、誰でもよい」
 誰かまではいいというのだ。
「来ればな。それでよい」
「ではあの方々も」
「すぐに御呼びしましょう」 
 方針がこれで決定した。そうしてだった。
 自分達の惑星に来るロンド=ベルを迎え撃つ。彼等から見たロンド=ベルは正面から急襲してくる。その勢いはかなりのものだった。
「何だ、あの軍は」
「数は僅かだというのに」
「こちらに正面から来るだと!?」
「何を考えている!?」
「噂通りか」
 だがゴッチはそれを見て言うのだった。
「ロンド=ベルは数以上の力を持っている」
「数以上のですか」
「そういえば常に何十倍もの敵を相手にして」
「それでも勝っていますが」
「そうだ、実際の数の百倍の強さがある」
 まさにそれだけの強さがあるというのだ。
「だからこそか」
「では我々は」
「今は」
「包囲し叩き潰す」 
 ゴッチの言う作戦はそれだった。
「援軍が来ればその兵も足す」
「はい、それでは」
「その様に」
「では戦闘開始だ」
 ゴッチはまた命じた。
「いいな、このままだ」
「全軍攻撃開始!」
「敵を包囲せよ!」
 バルマー軍はゴッチの指示のまま動きはじめた。しかしであった。
 ロンド=ベルの動きは速かった。彼等の予想以上にだ。
「何っ!?」
「敵の動きが!?」
「速い!」
 それが言葉にも出ていた。
 ロンド=ベルは敵が包囲するよりも先にだ。まずはその右翼を攻撃したのだ。
「右に来ました!」
「敵が一丸となって!」
「くっ、ではだ!」
 悲鳴めいた報告を聞きながらだった。ゴッチは指示を出した。
「右だ!右に戦力を集めろ!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「包囲するのを察していたか」
 ゴッチは指示を出してからそうして言うのであった。
「おのれ、考えたな」
「ではどうされますか」
「ここは」
「包囲は止めだ」 
 それはもう放棄したのだ。
「だが」
「このままですね」
「戦力を右に集中させて」
「正面から押し潰す!」
 変更させた作戦はそれだった。
「数を背景にだ。いいな」
「はっ!」
「了解です!」
 こうしてだった。バルマー軍はその数を背景に正面からの攻勢に出た。そうしてそのうえでロンド=ベルを押し潰しにかかったのである。
 ところがであった。ロンド=ベルはそれに対してだった。
「よし、敵は一つのポイントに集まったぞ!」
「かかったな!」
 こうそれぞれ言うのだった。
 そしてだ。間合いを計ってだ。その間合いに入ったところで。
「撃て!」
「全軍ありったけの攻撃を撃ち込め!」
「容赦するな!」
 指示が飛ぶ。そしてである。
 ロンド=ベルの最初の総攻撃が仕掛けられた。それがだった。
 バルマー軍の動きは止まった。完全にだ。
「何っ、この攻撃は」
「何だこの火力は」
「まさかここまでとは・・・・・・」
 はじめて見るロンド=ベルの火力に呆然となっていた。
「我等の動きが止まった」
「どうする?」
「閣下、ここは」
「どうされますか!?」
「怯むな!」
 ゴッチが言ったのは積極策だった。
「いいな、怯むな!」
「ではこのままですか」
「攻めるのですね」
「そうだ、数は力だ」
 真実ではある。
「そしてだ。このまま再びだ」
「包囲ですか」
「それをですね」
「方法は幾らでもある」
 ゴッチは決して頭の硬い男ではなかった。柔軟性も併せ持っていた。だからこそ今すぐに戦術を変換させてだ。攻撃を仕掛けるのであった。
「いいな、また囲む」
「攻撃を受けているそこを重点として」
「そのうえで」
「そうだ、敵が攻撃を集中させているならば」
 その場合はというのだ。
「それを逆手に取る。そしてだ」
「援軍が来たならば」
「さらなる攻勢をですね」
「ワール司令からはどう仰っている」
 そちらを確認することも忘れない。
「そして惑星からは」
「はい、間も無く到着されるとのことです」
「惑星からの援軍はあと数分です」
「よし、ならばだ」
 そこまで聞いてだった。ゴッチは決めた。完全にだ。
「攻める、いいな」
「了解です」
 こうしてバルマー軍はロンド=ベルを囲もうとする。しかしであった。
 ロンド=ベルはその包囲にかかる敵軍にさらに攻撃を仕掛けた。一点集中攻撃である。
「包囲には突破だぜ!」
「こうすればいいのよ!」
「その通りだ!」
 エイブもゴラオンの艦橋から指示を出す。
「オーラノヴァ砲発射用意!」
「艦長、それをですか」
「はい、今こそその時です」
 だからだとエレに対しても答える。
「ここはお任せ下さい」
「わかりました。ではここは」
「はい、やらせてもらいます」
 こうしてゴラオンは敵の密集ポイントに艦首を向けてだ。その主砲を放つ。
「撃て!」
「わかりました!」
「では!」
 艦の乗組員達が応える。そのうえで白い光の帯が放たれた。それで敵軍に大きな穴を開けてみせたのだった。
 ゴラオンだけではなかった。グランガランもだ。ハタリは艦を敵軍に突っ込ませた。
「シーラ様、危険ですがお許し下さい」
「元より危険は覚悟しています」
 シーラも厳しい顔で応える。
「ですから」
「有り難き御言葉。それでは」
「敵をあえて引き寄せてですね」
「そうです」
 またシーラに答えるハタリだった。
「敵が来たところをオーラバルガンで斉射を仕掛けます」
「はい、それでは」
「敵が来るなら来るで戦い方があります」
 これまでの戦いで身に着けたことだった。
「ですから」
「ではお任せします」
 シーラも腹を括っていた。
「ここは」
「これより敵軍に向かう!」
 ハタリは実際にグランガランに指示を出した。
「そしてだ。集まって来た敵を撃て!」
「はい!」
「了解です!」
 艦のクルーもそれに応える。そうしてだった。
 周りに群がる様にして来たその敵達にオーラバルカンを放つ。それで敵をまとめて撃墜するのだった。立体的な構造のグランガランならではの攻撃だった。
 そして他の者達も果敢に突撃してだ。敵を薙ぎ倒していく。
「遅いんだよ!」
 トッドがハイパーオーラ斬りを横薙ぎに放つ。それで敵をまとめて撃墜する。
「ダンバインはパイロットの能力に大きく影響するんだよ」
「そうだがな」
「あんたさらに強くなってるな」
 その彼にアレンとフェイが突っ込みを入れる。彼等はズワースに乗っている。
「しかも波に乗ってきているな」
「いい感じにな」
「わかってきたんだよ」
 トッドは二人にこう返した。その間も剣を振るっている。
「俺はな」
「俺は?」
「何だってんだ?」
「ショウとかどうとか関係ないんだよ」
 言うことはこれだった。
「聖戦士ってのは何かを守る為に戦うものだってな」
「ほお、言葉通りだな」
「それがわかったんだな」
「ああ、何となくだがな」
 わかったというのである。
「わかってきたぜ」
「そうだな。自分の為に戦うよりもな」
「誰かの為に戦う方が気分がいいしな」
 実は二人もそれがわかってきていた。
「じゃあ俺達もだな」
「ロゼのお嬢ちゃんの為に暴れてやるか」
「一応俺も」
 トカマクもいた。
「やらせてもらうしな」
「ああ、御前さんもいたな」
 トッドは彼の声を聞いてやっと気付いた様に言葉を出した。
「そういえばそうだったな」
「おい、忘れてたのかよ」
「っていうか目立たないからな」
 トッドの返事は身も蓋もないものだった。
「どうしてもな」
「幾ら何でもそりゃ酷いだろ」
 トカマクはトッドの言葉に途方に暮れた顔になった。
「俺だってよ。これでも頑張ってるんだぜ」
「まあ専用のカラーのダンバインにも乗ってるしな」
「これ結構使いこなすの難しいからな」
「そうなのよね」
 マーベルがトカマクのその言葉に頷いた。
「オーラ力がかなり影響するオーラバトラーだし」
「だろ?だから他のオーラバトラーに比べて操りにくいんだよ」 
「そうね。確かにね」
「マーベルもトッドも凄く上手く乗りこなしてるけれどさ」
「御前さんも結構やってるじゃないか」
 トッドはその彼に対してこう告げた。
「オーラもはっきりしてるしな」
「まあ慣れてはきてるしさ」
 自分でもそれは感じていた。
「だから頑張ってるからな」
「もっと頑張ってくれよ」
「おい、もっとかよ」
「敵の数は多いんだよ」
 言っているそばからもう来ていた。前にも横にも上にもだ。無論下にも。
「だからだ。いいな」
「わかってるよ。じゃあこのまま倒して」
「正面突破だな」
 バーンもいる。
「この戦い、貰った」
「そういえば旦那も変わったよな」
 トッドはバーンも見ていた。
「昔はそれこそギラギラして余裕なんかこれっぽっちもなかったのにな」
「あんたもね」
 マーベルはすぐにトッドにも言った。
「かなり酷かったわよ」
「へっ、あの時の俺とは違うぜ」
「そういうことよ。バーンもそうなのよ」
「そういうことかよ」
「そうよ。わかりやすく言えばね」
 そうだというのである。
「バーンもそういう意味で成長したのよ」
「本当の騎士殿になったのかね」
「騎士か」
 バーン本人の言葉だ。
「その様なものにこだわっていた時もあったな」
「じゃあ今は違うってのかい?」
「いや、騎士は騎士だ」
 今もそれは否定しなかった。
「だが」
「だが?」
「騎士とは何かだ」
 バーンが今言うのはこのことだった。
「ただ意地や誇りだけのものではない」
「それがわかったのかよ」
「そうだ、わかった」
 言いながらその剣を振るい敵を倒していく。
「騎士とは戦えぬ者の為に戦う者だ」
「へえ、キザなことを言うね」
「だが今はそう考えている」
 否定しないのだった。
「私は最早誇りの為には剣を持たない」
「じゃあ今はなんだな」
「そうだ、今はあの惑星を解放する為だ」
 ロゼの故郷であるその惑星を見ての言葉だ。
「その為にだ」
「よし、じゃあ俺もだ」
「そうね。それじゃあね」
 トッドとマーベルも続く。彼等は一気に敵軍を突破した。
 そうして反転してだ。その乱れた陣にさらに攻撃を浴びせる。そうしてその陣に合流する様に惑星から来た援軍も同時に叩くのだった。
「惑星の援軍まで」
「共に攻撃されています」
「予想外だったな」
 これはゴッチも想定していなかった。
「まさかこう来るとはな」
「どうしましょうか、ここは」
「ワール司令からの援軍はまだ」
「ならばだ」
 また戦術を換えるゴッチだった。
「守りに入る」
「防衛ですか」
「それだというのですか」
「そうだ」
 まさにそれだというのだ。
「今はだ。いいな」
「はい、それでは」
「今はそうして」
「援軍を待つ」
 ゴッチはこう判断した。
「いいな、それでだ」
「了解です。ではここは何とか」
「待ちましょう」
 こうしてバルマー軍は援軍を待つ為に方陣を組んだ。そのうえで戦い続ける。そしてだった。
 遂に来たのだった。援軍がだ。
「来ました!」
「援軍です!」
 すぐにバルマー軍から歓声が起こった。
「何とか持ちこたえました」
「ではまたですね」
「いや、守る」
 ゴッチは攻勢は否定した。
「今は守る」
「えっ、攻められないのですか」
「ここでは」
「そうだ、守る」
 また言う彼だった。
「我等が敵を引きつけてだ。そうして」
「ワール司令の軍が攻める」
「そうするというのですね」
「その通りだ。だからこそだ」
 守るというのであった。
「わかったな。そうするぞ」
「了解です、それでは」
「今は」
「全軍このまま方陣を組む」
 あらためて指示を出した。
「そしてだ。敵を引きつけるぞ」
「勝利の為に」
「では」
 こうしてゴッチの軍勢は守り続ける。そしてその彼の軍に向かうようにしてワールの軍が動いていた。
「司令、間に合いました」
「何とか持ちこたえています」
「ゴッチ閣下も健在です」
「うむ」
 端整な顔の青年が応える。見れば彼も独特の艦に乗っている。
「そうだな。それではな」
「行きますか」
「すぐに」
「行く。しかしだ」
「何でしょうか、ワール司令」
「何か」
「確かに急行する」
 それはするというのだ。
「しかしだ。気をつけるのだ」
「といいますと」
「何が」
「敵は必ずこちらに来る」
 それをもう呼んでいるのだった。
「だからだ。それは覚悟しておくのだ」
「はい、わかりました」
「それでは」
 部下達もそれに応えてだった。一直線にロンド=ベルに向かう。そしてだった。
 ワールの読みは当たった。見事にだ。
「まずは彼等だな」
「はい」
「狙いましょう」
 こう言ってそのうえで攻撃を仕掛けるロンド=ベルだった。
 ゴッチの軍から離れてだ。そのうえで攻撃に掛かる。
「抑えは一部だ」
「主力は新手の援軍に向かう」
「それでいいな」
 こう指示が出されていた。
「そしてそのうえで倒す」
「いいな」
「敵の援軍をだ」
「わかりました」
「それじゃあ」
 全員それに応えてだった。そのワールの軍に向かう。ワールはすぐに陣を組んだ。攻撃用から防御用に即座に切り替えさせたのである。迅速だった。
「何っ、守るか」
「敵が守りに入った!?」
 レイとハイネがそれを見て言う。
「そうか。それならだ」
「迂闊に攻めるのは危険だな」
「まずいな、これは」
 アーサーはそれを見て困った顔になっていた。
「ここで守りに入られると」
「いえ、気にすることはないわ」
 だがタリアはここでこう言うのだった。
「確かに迂闊に攻めるのは危険よ」
「じゃあ今は」
「それでもよ」
 しかしここで言うのであった。
「立ち止まっても何にもならないわよ」
「じゃあ攻めるしかないんですか」
「そうよ、このまま攻撃よ」
 これがタリアの指示だった。
「いいわね、今はね」
「攻撃って。守りに入っていてもですか」
「そうよ、二手に分かれるわ」
 こうも言った。
「左右から同時に攻撃を浴びせるわ」
「積極攻撃なんですね」
「そうよ。それがどうかしたの?」
「いえ、艦長も過激だなと思いまして」 
 見ればアーサーの顔は少し驚いた顔になっていた。
「ここで積極攻撃とは」
「当然でしょ。ここは一気に倒さないと」
 タリアは落ち着いた声で述べたのだった。
「駄目だからね」
「駄目なんですか」
「後ろにもいるのよ」
 ゴッチの軍勢のことである。
「彼等はね。それだったらね」
「そうですか。後ろにですか」
「ええ、後ろよ」
 そのゴッチの軍の話である。
「わかったらね。積極的に仕掛けるわよ」
「そして反転してまたあの軍もですか」
「戦術は素早く動いてこそよ」
 所謂兵は神速を尊ぶであった。
「それが一番いいのだからね」
「その通りだな」
 フォッカーがタリアのその言葉に頷いた。
「ここは一気に攻めてまた反転してだな」
「そしてまた反転するわよ」
 再度だというのであった。
「今の敵をもう一度叩くことになるわ」
「何か忙しいですね」
「敵を翻弄させるつもりでね」
 それも意図にあるのだった。
「わかったわね。そういうことよ」
「わかりました。しかし激しい戦いが続きますね」
 アーサーはここまで話を聞いて呟いた。
「俺の天敵に似てますね」
「あの913の相手ね」
「何でかわからないですけれど狙われてるんですよ」
 何故かこの話もするのだった。
「あいつ死んだと思ったのに。何でなんでしょうか」
「さあ。一つ言えることはね」
「言えることは?」
「彼、生きてるから」
 言うことはこれだった。
「あのヒーローは何度死んでも生き返る運命なのよ」
「滅茶苦茶鬱陶しいですね、それって」
「まあ世界が違うから私にとってはどうでもいいけれどね」
「俺も関係なかった筈なんですよ」
 実際にそうだったのだ。
「けれど何か。取り憑かれている感じで」
「難儀な話ね」
「そうですよ。そう思いますよね」
 アーサーはここで金竜に対して問うたのだった。
「大尉も」
「ああ。しかしだ」
「しかし?」
「前から思っていたんだがな」
「俺もだ」
 ヒューゴも出て来た。
「俺達も似ているな」
「そうだよな。そっくりだな」
「あっ、そういえば確かに」
 言われたアーサーも気付いたことだった。
「俺達も似ていますよね」
「そうだな、日本にも愛着を感じるしな」
「いい国ではあるしな」
 何故か話題は日本のことにもなった。
「あの国にもまた行きたいな」
「刺身でも食うか」
「うんうん、日本酒も美味しいしね」
「あんた達本当に同一人物じゃないの?」
 タリアも三人に対して突っ込みを入れた。
「話を聞いていても誰が誰だかわかりにくいけれど」
「けれどそういう艦長もじゃないですか」
「そうそう」
 出て来たのはレミーだった。
「似てるからね、私達って」
「確かにね。あとジオンの」
「わかるわ。キシリア=ザビだったわね」
「私も考えてみれば色々あるのよね」
「というかあり過ぎじゃないのか?」
 真吾がそれに突っ込みを入れた。
「レミーにしても。俺もそうだけれどな」
「そうそう、そこで自覚を忘れたら駄目だからな」
 キリーも言ってきた。
「俺もそうだしな」
「まあそれはいいことではあるな」
「その通りです」
 今出て来たのはルリだった。
「孤独よりはずっといいです」
「そういえばルリちゃんはね」
「言わないで下さい」
 タリアにこれ以上言わせなかったのだった。
「気にしています」
「そうなの。それじゃあこの話はこれでね」
「御願いします。それではです」
「ええ、それじゃあね」
「軍を二手に分けます」
 素早くその話になった。そうしてだった。
 実際に軍を左右に分けてだ。それぞれ斜め上から狙うのであった。
 こうして敵軍に同時攻撃を浴びせてだ。一気に突き崩したのである。
「何っ、二手に別れた!?」
「まさか!」
「いや、そのまさかだ」
 ワールは驚く部下達に対して告げた。
「見ればわかることだ」
「ではここはどうすれば」
「どうされますか」
「守るしかない」
 こう言うワールだった。
「今更下手に動いても仕方がない」
「だからですか」
「ここは」
「そうだ、守る」
 そしてまた言った。
「陣を整えてだ。いいな」
「わかりました。それしかありませんか」
「今は」
「大変だがだ」
 それでもだというのである。
「左右それぞれに守りを固める」
「ではそうした方陣をですね」
「組みましょう」
「よし、ではだ」
 こうしてだった。彼等はそのまま守りを固める。そのうえでロンド=ベルを迎え撃つ。
 ロンド=ベルはそのまま突き進む。確かに目の前に方陣はある。しかしだ。
「急ごしらえか!」
「それなら問題ないわね!」
 こう言ってだった。すぐに攻撃に入る。
 まだ充分に備えが出ていない敵を撃つ。左右同時にだった。
「よし!」
「これで!」
「いけるわ!」
 ワールの軍勢は一気に突き崩してだった。そのうえで戦闘不能寸前に追いやった。
 だがワール自身は冷静だった。そのうえで言うのであった。
「一旦退け」
「えっ、ですが」
「ここは」
「いい、退くのだ」
 あくまでこう言うのであった。
「わかったな。退くのだ」
「そして再編成ですか」
「そうされるのですね」
「その通りだ」
 また言ってみせたのだった。そうしてである。
 一旦退いた。だがここでワールは読み間違えた。
「いいか」
「!?」
「どうされたのですか、今度は」
「敵はこのまま来る」
 こう読んでいたのである。
「それを引き擦り込むのだ」
「そうされるのですか」
「今は」
「そうだ、そしてだ」
 ワールの言葉は続く。
「後方のゴッチの軍に伝えるのだ。今のうちに攻撃にかかれと」
「はい、それでは」
「その様に」
 こうしてだった。ワールの軍はロンド=ベルを引き込もうとする。しかしだった。
 ロンド=ベルは来なかった。それどころか反転したのであった。
「司令、敵が」
「反転しました」
「くっ、そう来たか」
 ワールは彼等の動きを見て歯噛みした。
「まさか反転してか」
「後方に向かうようです」
「今動いたゴッチ閣下の軍勢に」
「そうだ。そうするというのか」
 それを見ながらの言葉だった。
「まずい、これは」
「どうされますか、ここは」
「敵は既に」
 ゴッチの軍勢に向かっていた。速さはかなりのものだった。
「向かっています」
「我等は」
「止むを得ん」
 ゴッチはここでまた指示を出した。
「はい、ここでは」
「どうされますか?」
「進撃だ。追うぞ」
 そうするというのだった。
「いいな、まずはだ」
「はい、それでは」
「ここは」
「敵の動き、速いな」
 ワールの眉がしかめられていた。
「そして想像以上に強いな」
「はい、想像以上に」
「これは」
 彼等はそのまま向かうがゴッチの軍勢は既に突き破られていた。そうしてだった。
 ゴッチの軍はかなり数を減らしていた。ワールはその彼等と合流した。
「大丈夫だったか」
「はい、何とか」 
 ゴッチはこうワールに対して答えた。
「ただ。軍は」
「いい。だがあれがロンド=ベルか」
 己の旗艦の艦橋での言葉だった。
「噂以上だな」
「はい、確かに」
「侮ったつもりはなかった」
 彼もそこまで愚かではなかった。
「だが。戦術もかなりのものだな」
「迂闊でした」
「だからそれはいい」
 謝らなくてもいいというのである。
「それよりもだ」
「それよりもですか」
「そうだ、戦うぞ」
 こう言うのであった。
「今からな」
「わかりました」
 ゴッチの返答も早かった。
「それでは」
「少し戦うがだ」
 ここでワールはこうも言った。
「だが」
「だが?」
「劣勢ならば惑星に降下する」
 そうするというのだ。
「それでいいな」
「そのうえでなのですね」
「そうだ。まだ戦う」
 そこまでしてもだというのだった。
「最後までだ」
「また随分と粘られるのですね」
「ズール様の御命令だ」
 ワールの表情が変わった。
「だからだ」
「ズール様のですか」
「そうだ、だからだ」
 その強張った表情での言葉だ。
「戦う。いいな」
「わかりました」
 それに頷くゴッチだった。
「それでは」
「うむ、それではな」
 こうしてであった。ロンド=ベルと再び戦いをはじめた。
 しかしであった。最早勝敗は決していた。
 ロンド=ベルは激しい攻撃に出ていた。最早バルマー軍の相手にはならなかった。
「な、何っ!?」
「強い!」
「前線が突破されました!」
 こう叫び声が上がる。
「敵が。まだ」
「来ます!」
「それだけではありません!」
「勢いがさらに増しています!」
 ただ攻めるだけではなかった。
「ロンド=ベルの勢いがこのまま」
「激しく攻めてきます」
「このままでは」
「くっ、仕方がない」
 ワールもその攻勢を見て決めたのだった。
「ここはだ」
「はい、撤退ですね」
「今は」
「そうだ、惑星に撤退する」
 こう言うのだった。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
「また」
 こうして彼等は惑星に戻った。宇宙での戦いはロンド=ベルの勝利に終わった。
 その降下を受けてだ。ロンド=ベルの者達も決めた。
「降下ですね」
「俺達も」
「その通りだ」
 大河が腕を組んで一同の問いに答えていた。全員戦闘の直後でまだ展開している。
「各員それぞれの艦艇に戻ってくれ」
「さあ、久し振りの地上戦だぜ!」
 ゴルディマーグがここで言う。
「激しくやってやるぜ!」
「そうですね。彼等が地上での戦いを望むなら」
 ボルフォッグもだった。
「我々も向かいましょう」
「ああ、そうするぜ」
「よし!」
 凱がここで叫ぶようにして言った。
「行くぞ!いいな!」
「了解です!」
「それなら!」
「全員で降下する!」
 また言う凱だった。
「そしてだ。一気に勝負を決めるぞ!」
「この戦いで勝てば」
「次はですね」
 氷竜と炎竜も当然ながらいる。
「ロゼさんの惑星の解放ですか」
「遂に」
「その通りだ」
「この惑星の戦いに勝てば」
 風龍と雷龍もいる。
「一つの正念場だ」
「この戦いもまた」
「ねえ、ルネ姉ちゃん」
「いいでしょうか」
 光竜と闇竜はルネに問うていた。
「ギシン家の戦力だけれど」
「兵器が大きいですね」
「そうね」
 ルネもそのことははっきりと感じ取っていた。
「そしてあの敵の司令官の旗艦も」
「あれか」
 ルネにマーグが応えてきた。
「あの戦艦か」
「ああ、あの戦艦はあんた達のとはちょっと違うね」
「ワールだ」
 マーグはその敵の司令官の名前も言ってみせた。
「あれに乗っているのはワールだ」
「ワール?」
「誰ですかそれは」
「バルマー軍中銀河方面軍副司令官」
 マーグは彼の役職も話した。
「そこにいるのだ」
「中銀河方面軍のですか」
「副司令官ですか」
「ロゼと同じだ」
 マーグはわかりやすいようにこうも話した。
「ロゼとな」
「そうですね、ロゼさんも副司令官ですし」
「でしたら」
「そういうことだ。その権限は大きい」
 マーグはこのことも話した。
「もう彼が出て来たのか」
「敵も本気ってことですね」
「つまりは」
「その通りだ」
 まさにそうだというのである。
「彼等もだ。本気なのだ」
「本気ですか、向こうも」
「それだけ」
「そうだ、本気だ」
 また言うマーグだった。
「間違いなくな」
「だからこそまだ戦う」
「そういうことなんですね」
「ロゼ、行こう」
 マーグは今度はロゼに対して声をかけた。
「君の惑星を取り戻しにだ」
「はい」
 ロゼもマーグのその言葉に小さく頷いた。
「それなら。今から」
「では各員いいな」
 また大河が声をかけてきた。
「それぞれの艦に戻ってくれ」
「ええ、そうして」
「それからですね」
「降下する」
 実際にそうするというのだった。
「そして彼等と雌雄を決しよう」
「兄さん、彼等はまだ」
「マーズ、これも戦いだ」
 マーグは今度は弟にも告げた。
「最後の最後まで。戦うというのもだ」
「最後の最後まで」
「おそらくはズールの命令だ」
 ズールの名前も出したのである。
「あの男のだ」
「ズールの」
「そうだ、ズールのだ」
 彼はまた言った。
「あの男の命令で間違いない」
「そうですね」
 テッサがマーグの今の分析に頷いた。
「副司令官でありながら前線に出てそのうえでここまで戦うとなると」
「ズール、捨て駒にするつもりか」
 マーグの顔がここで曇った。
「己の片腕ですら」
「片腕とは思っていないのだろう」
 宗介の言葉だ。
「若しくはだ」
「若しくはか」
「片腕は他にあるから」
 こう言うのだった。
「だからこそ。副司令であろうともだ」
「過酷に扱えると」
「捨て駒の様に」
「そうだ、そういうことだ」
 宗介は冷徹に分析していた。
「己しかない相手かも知れないがな」
「どっちにしてもいけ好かない相手だね」
 メリッサは宗介の言葉を聞きながら顔を曇らせていた。
「それならばな」
「そうですね、確かに」
「だとすると」
「それにだ」
 宗介の言葉は続く。
「犠牲も厭うことはないようだな」
「その通りだな」
 彼の言葉に刹那が頷く。
「だからこそ撤退を許さずだ」
「戦わせ続けるということだ」
「それじゃあよ」
 小鳥は眉をしかめさせて述べた。
「こっちはそれに対して殲滅戦を挑むしかないのね」
「ああ、そうだ」
「それしかない」
 実際にこう答えた宗介と刹那だった。
「敵が要地にいてあくまで戦うというならだ」
「それしかない」
「ちっ、わかったぜ」
「だったら仕方ないわね」
 皆これで意を決した。そうしてだった。
「早く戻って」
「それで降下ね」
「急いでくれ」
 大河が急かしてきた。
「いいな、すぐにだ」
「はい、わかってます」
「それじゃあすぐに」
「よし、乗り込めばだ」
 大河はその先も既に考えていた。
「一気に降下する。集結してだ」
「そしてそこで、ですね」
「また戦いですね」
「降下してすぐに戦いになるだろう」
 こうも読んでいる大河だった。
「ならばだ。いいな」
「はい、じゃあ」
「それなら」
 まずは艦に戻った。そうしてだった。
「全軍降下だ!」
「了解!」
「はい!」
 こうして今度は惑星での戦いになるのだった。戦いはまだ終わらなかった。


第二十三話   完


                                     2010・4・27
 

 

第二十四話 姉と妹と

               第二十四話 姉と妹と
 降下準備に入る。その中には当然ロゼもいる。
 だが彼女はこの中でだ。今一つ浮かない顔をしていた。
「あれ、ロゼさん」
「どうしたんですか?」
「何かあったんですか?」
「いえ」
 その浮かない顔で返したのだった。
「ただ」
「ただ?」
「故郷に帰られるんですけれど」
「そこに何が」
「故郷には妹がいます」
 妹がいるというのである。
「今。どうしているか」
「妹さんおられたんですか」
「はい」
 いるというのである。
「ルイといいます」
「へえ、ロゼさんに妹さんが」
「そういえばね」
「お姉さんらしいしね」
 それも言うのだった。
「しっかりしてるしね」
「そうそう」
「そうですか?」
 だがロゼはそれを聞いてもこう言うだけだった。
「私は。別に」
「いや、本当に」
「そのうえ何か初々しいしね」
「何時まで経っても」
「ちなみに私も一応お姉さんだぞ」
 何故かナタルは自分から言ってきたのであった。
「兄がいるがな」
「弟さんおられたんですか」
「困ったお姉さんですね」
「待て」
 今のヒカルの言葉にはすぐに突っ込み返した。
「私は困った姉なのか」
「そうだよな。生真面目過ぎるしな」
「生真面目っていくぜ」
 リョーコだけでなくイズミも話した。
「駄洒落ではなく今度は物真似」
「イズミ、キバは先約がいるから駄目だぞ」
「そう」
「それってやっぱり俺だよな」 
 自覚しているブリットだった。
「この場合の先約ってな」
「そうだよな、それってな」
「やっぱりな」
 皆で言うのだった。言うまでもなくだった。
 そしてである。彼等はさらに話すのであった。
「それでナタルさんってなあ」
「融通利かないしな」
「すぐにてんぱるところあるし」
「ずっごい純情だし」
「皆好き放題言うな」
 ナタル本人も何も言えなくなっていた。
「私はそこまでおかしいのか」
「おかしくはないですけれど」
「それはないです」
 このことにはそう言われるのだった。
「ただ。お姉さんらしいなって」
「実はいい意味ですから」
「実はなのか」
 また首を傾げさせるナタルだった。
「だといいのだがな」
「けれどお兄さんいたんですか」
「そうだったんですね」
「そうだ。兄もいる」
 ナタルはこのことも真面目に話した。
「私の兄も弟も軍人なのだ。父もな」
「軍人の家なんですね」
「そうだったんですね」
「そうだ。他の仕事を知らないということもあるがな」
「それでお姉さんとしてなんですけれど」
「やっぱりらしいなって思うんですよ」
 さらに話す彼等だった。ナタルに対してだ。
「ナタルさんらしいって」
「お姉さんだって」
「ううむ、そういえばだ」
 ナタルはここでちらりとロゼを見た。そのうえでまた言うのだった。
「私とロゼはだ」
「似ていますね」
「そうだな」
 そしてお互いでも言う。
「姉か。一口に言うがな」
「そうですね。色々とありますね」
「妹さんにはもう長い間会っていないな」
 ロゼに対して問うたのだった。
「そうだな」
「はい、もうかなり」
 実際そうだというのであった。
「長い間本星にいて軍役についていましたので」
「そうだったな。そして今はここにいるしな」
「やはり心配です」
 困った顔での言葉だった。
「今どうしているのか」
「それに今戦いがはじまる」
 ナタルはこれからのことも見ていた。
「それもあるしな」
「はい、バルマー軍にいるのかそれとも」
「それとも?」
「市民としているのか。ですがこの場合は」
 今のロゼの言葉を聞いてだ。皆あることに気付いて述べた。
「ああ、そうか。バルマーって封建社会だから」
「ロゼさんって一個方面軍の副司令でしたし」
「それだと」
 さらに話される。
「貴族ですよね、それもかなり位の高い」
「やっぱりギシン家と近いんですか」
「はい、近いです」
 ロゼもそのことを否定しなかった。
「純粋なバルマー人でもあります」
「そうだよな。それだったらやっぱりな」
「家柄もあるんですね」
「ロゼさんって」
「ですから私は別に」
 また言うロゼだった。
「そういうのはないですから」
「家柄は何の関係もない」
 マーグも話してきた。
「それよりも本人の資質だ」
「それを考えてもね」
「だよなあ」
「ロゼさんだけじゃなくてマーグさんも」
「そうよね」
 あらためて言うのだった。
「司令官に相応しいよね」
「能力だって凄いしね」
「だよね」
「私を認めてくれるのは有り難い」
 マーグはその彼等に静かに述べた。
「それではだ。私も戦っていいな」
「はい、勿論ですよ」
「一緒に戦いましょう」
 全員での言葉だった。
「今から降下してね」
「降下ですね」
「そうだな。行かせてもらう」
 マーグは真面目な顔で述べた。
「今からだ」
「はい、それでは」
「今から」
「そしてだ」
 また言うマーグだった。
「この星を解放しよう」
「はい、是非」
「何があっても」
「では諸君」
 大文字が告げてきた。
「攻めるぞ。いいな」
「降下してから凄いことになるな」
「そうよね」
 また話すのだった。
「敵だって馬鹿じゃないし」
「備えは当然だよな」
「来るのはわかってるし」
「そうですね。しかし」
 ここで言ったのはルリだった。
「敵の戦術はあまりと言えばあまりですね」
「そうよね。この場合は惑星の軍も含めて撤退するわよね」
「はい、そうです」
 こう言ってユリカに対して頷いたのだった。
「ここで惑星戦をするというのはです」
「殆ど無駄に損害を出すだけだ」
 ダグラスはさらに言った。
「こちらにも損害を出させるということでもあるがな」
「つまりは消耗戦というわけだな」
 アルフレッドはこう表現した。
「向こうの戦力は惑星のは捨て駒だ」
「捨て駒か」
「そうなるんですね」
「普通はこうしたことはなしない
 ミナもそれははっきり言った。
「あそこまですることはだ」
「しかし。それでもするというのは」
「敵の司令官は犠牲を厭わないのでしょうか」
「若しくはそんなことはどうでもいいかだね」
 ユウナはあえて素っ気無く言ってみせたのである。
「それよりも自分が勝つかどうかっていう相手なのかもね」
「つまり自分の為には他人を捨石にできる」
「そうした相手なんですか」
「とんでもない奴じゃないのか?」
 ここまで聞いてマリンは述べた。
「それならな」
「そうよね。そういう考えなのだったら」
「今回の相手は確かに」
「ズールだったわよね」
 相手についても話される。
「どういう相手か知らないけれど」
「それでもそういう相手なら」
「これからもこうした戦いが続くのか」
「それだけではないのかも知れないわ」
 今言ったのは華都美だった。
「謀略を仕掛けてくる可能性もあるわ」
「謀略ですか」
「それもですか」
「ええ、暗殺なり何なりね」
 その危険を察していたのである。
「そうしたことにも警戒しないといけないのかも知れないわ」
「ああ、そういえばだけれど」
「バルマー軍は今までそうしたことしなかったよね」
「確かにね」
 ラオデキアやマーグを思い出しての言葉である。
「それはしなかったし」
「けれど司令官の嗜好にもよるから」
「それなら」
「そうよ、それよ」
 また話す華都美だった。
「気をつけてね。それも」
「わかりました、じゃあそれも」
「今度も」
「よし、それなら」
 そして降下した。すると予想通りだった。
「来たか」
「やっぱりね」
「もう来たのか」
 誰も目の前に展開している敵を見ても驚いていなかった。そうしてである。
 戦闘命令が下された。迅速そのものだった。
 先に動いたのはロンド=ベルだった。
 そのまま突き進む。そのままバルマー軍に総攻撃を浴びせる。
「いいか!」
「はい!」
「まずはミサイルですね!」
「そうだ」
 フォッカーはマックスと柿崎に対して返す。
「最初が肝心だ。派手に撃ち込むだ」
「そしてそれからですね」
「突っ込みますね」
「そうだ。おい輝」
 彼に対しても告げるのだった。
「わかっているな」
「はい、それは」
「ならそれでだ」
 また話す彼だった。
「一気に行くぞ。いいな」
「わかりました」
「まずはミサイルを撃ち込み敵陣を崩す」
 そうするというのだ。
「そしてそれからだ」
「ええ、格闘戦ですね」
「そのうえでさらに暴れるんですね」
「そうだ、そうする」
 実際にこうまたマックスと柿崎に述べた彼だった。
「それで食い破るぞ」
「了解」
「わかりました」
 こうして向かう。そこでだ。
 フォッカーは輝に対しても言うのだった。
「おい、輝」
「はい」
「まず御前が行け」
「先陣ですね」
「ああ、御前しかいない」
 こう告げたのである。
「いいな、まずは御前だ」
「それで敵に大ダメージをですか」
「ああ、頼んだぞ」
 また言うフォッカーだった。
「御前が一番槍だ」
「はい、それじゃあ」
 こうして輝が最初にミサイルを放つ。それで敵に大穴を空けるのだった。
 ミサイルが無数に放たれそれぞれが複雑な動きをしてだ。敵をまとめて撃墜する。輝の放ったミサイルはその正確さをさらに高めていた。
 そしてだ。それを放ってから今度はガウォークになった。
 そのガウォークの姿で敵の中に踊り込む。ガンポッドを乱射してそれでも倒していく。
「な、こいつ等」
「さらに強くなってないか!?」
「しかも素早いぞ!」
 その彼等を見ての言葉だった。
 守ろうとする。しかしその攻撃力と機動力に翻弄される。
 どうにもならない様な状況だった。損害ばかり増える。
 ワールもそれを見てだ。深刻な顔になっていた。
 しかしそれでも戦いを投げ出さない。こう指示を出すのだった。
「陣を幾重に敷け」
「陣をですか」
「幾重もですね」
「そうだ、そうする」
 こう言うのだった。
「いいな、それで守るぞ」
「そしてそのうえで、ですね」
「惑星の残っている戦力を全て」
「そうだ。ところでだ」
 ここでワールは周りに問うた。
「ラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォ達はどうしているか」
「あの方々ですか」
「そうだ。あの者達はどうしているか」
 このことを問うのだった。
「今はだ。どうしている」
「こちらに来てはいるのですが」
「しかしです」
「間に合わないかと」
「そうか」
 それを聞いてまずは頷くワールだった。
「やはりな」
「反乱が別の星系で起こっています」
「ですから」
「何っ、反乱がか」
 ワールはそれを聞いてすぐに眉を顰めさせてきた。
「反乱がだというのか」
「はい、そうです」
「そこで」
「反乱が起こっているのか」
 また言う彼だった。
「最近我等の管轄区でも頻発しているな」
「やはり銀河辺境方面軍の壊滅が影響しています」
「そのせいかと」
「そうか、一個方面軍の崩壊がそこまで影響するか」
 それを聞いてまた言うワールだった。
「そしてそれによってか」
「はい、あの方々は動けません」
「しかも複数の星系においてです」
「くっ・・・・・・」
 それを聞いてワールは今度は歯噛みした。
「それでか。七個の艦隊が全て動けないというのか」
「そうです、直属の艦隊しかです」
「動けません」
「決断する時が来るか」 
 ワールはまた言った。
「それではか」
「はい、今はです」
「ここは防ぐしかありません」
「我等だけで」
「それでか。反乱を鎮圧するまでの間にロンド=ベルを引きつけるか」
 それだというのだ。
「それの意味もあってか」
「それがズール様の御考えなのですね」
「それでなのですか」
「ではここは」
「我々は」
「そうだ。出来るだけ戦う」
 ワールは意を決した。その間に陣を組んでいた。
「しかしだ。時が来ればだ」
「はい、その時は撤退ですね」
「この星から」
「責任は私が取る」
 こうまで言うのだった。
「いいな、それでだ」
「はい、それでは」
「そうさせてもらいます」
 部下達も頷いた。そうしてだった。
 彼等はそのまま戦う。惑星の他の軍も来た。そのうえで戦い続ける。
 広大な平原で両軍は戦い続ける。ロンド=ベルは攻めバルマー軍は防ぐ。その中の攻防は確かにロンドベル優勢のまま進んではいた。
 だがその中でだ。マーグは言うのだった。
「これは時間稼ぎだな」
「時間稼ぎ!?」
「それなのですか」
「そうだ、やはりそれで間違いない」
 こう言うのであった。
「それはだ。だが」
「だが?」
「といいますと」
「何故時間稼ぎをするかだな」
 マーグはそれも見ていたのだ。
「それが問題だな」
「この辺りのバルマー軍にも何かとあるのですか」
「そうなのですね」
「そうだ、それだ」
 また言うマーグだった。
「それも調べておくか」
「そうだな」
 大文字もマーグのその言葉に頷いた。
「今回の戦いは威力偵察の意味もあったがだ」
「はい」
「だからこそですね」
「敵を知り己を知れば百戦危うからずだ」
 孫子の言葉だった。
「だからこそだ」
「はい、調べておきましょう」
「是非」
「この宙域のバルマー軍の兵器はわかった」
 まずはそれを見る戦いであった。
「そして次はだ」
「はい、情報収集ですね」
「この星の戦いの後は」
「そうだ、戦いを止めてそれにかかる」
 そうするというのだ。
「それで宜しいかと」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
 これからの方針も決めた。そうしてだった。 
 彼等は攻め続ける。バルマー軍は防戦一方だ。しかし粘り強く生き続けている。
 その中でワールはゴッチと共に指示を出し続けていた。
「もうすぐだ」
「粘れ!」
 ゴッチもまた前線で叫んでいた。
「もう少しだ、耐えろ!」
「は、はい!」
「わかっています!」
 彼等は何とか耐えていた。必死である。
 そしてだ。その幾重もの方陣を突破されながらもだ。何とか踏ん張っていた。
 損害は増える。ロンド=ベルも容赦しない。
「行くわよバーニィ!」
「ああ、クリス!」
 バーニィがクリスの言葉に応えていた。
「ここはね!」
「やってやるさ!」
 こう言ってビームライフルを放つ。それも一撃や二撃ではない。
 何度も放ってだ。敵を倒していく。
 クリスも同じだ。バズーカから何かを放った。
 しかし核ではない。それで撃ったのは。
 爆裂弾だ。バルマー軍に大穴を開けた。
 ロンド=ベルはそのまま潰していく。だがそれで終わりではなかった。
「敵の戦力は!?」
「はい、四割減っています」
「これまで出て来た戦力全てで」
 グローバルにクローディアとキムが答える。
「あともう少しです」
「敵の勢いはかなり減っています」
「防戦であってもだな」
 守りにも勢いが必要だということだった。
「減っているな」
「はい、それでは」
「どうされますか?」
「一気に攻める」
 そうするというのだ。
「いいな、全軍攻撃だ」
「はい、それでは」
「今からですね」
「全軍に告ぐ」
 グローバルは冷静に告げてきた。
「このまま正面から一気に攻める」
「決着をつけるんですね」
「それでしたら」
「そうだ」
 まさにその通りだという。
「いいな、総攻撃だ」
「よし、それならだ」
「今から攻めましょう」
「まずは攻撃陣形を組んでくれ」
 最初は攻めないというのだ。
「それからだ。整えてだ」
「そうして総攻撃ですね」
「そのうえで」
「そうだ、攻める」
 また言う彼だった。
「整えてからだ」
「では迅速に整えましょう」
 未沙の言葉だ。
「そしてそのうえで」
「そうだ。迅速に整える」
 また言う。これで決まりだった。
 全軍すぐに陣を整える。そうしてだった。
 ロンド=ベルは迅速に陣を整える。そして正面から攻撃を仕掛けた。
 それでバルマー軍をこれまで以上に突き崩す。勝敗は決したかに見えた。
 だがそれでもバルマー軍は粘る。彼等も一糸だった。
「まだだ!」
「まだ退くな!」
 ワールとゴッチが命じる。
「いいな、まだだ!」
「踏ん張れ!」
「司令。今第五艦隊から連絡が入りました!」
「第三艦隊もです!」
 このことが言われるのだった。
「反乱を鎮圧しました!」
「第一艦隊間も無くです!」
「第七艦隊もです!」
「そうか」
 ワールはそれを聞いてまずは頷いた。
「それではだな」
「はい、そろそろです」
「時が来ました」
「わかった。それではだ」
 ワールはまた言った。そうしてであった。
 全軍にだ。命じようとする。
「では全軍を集めよ」
「そしてですね」
「撤退ですね」
「撤退する前にまずは物資も回収する」
 それもだというのだ。
「いいな、一旦後方に下がる」
「はい、わかりました」
「それでは」
「そのうえで撤退する」
 整然と撤退するつもりであった。
「いいな、それでだ」
「はい、それでは」
「これより」
「殿軍は私が」
 ゴッチが名乗り出て来た。
「務めさせてもらいます」
「頼んだぞ」
 こう話して撤退にかかろうとする。しかしだった。
 それどころではなかった。何故ならだ。
「司令、大変です!」
「後方にです!」
 部下達が言ってきたのである。
「敵です!」
「敵が来ました!」
「何っ!?」
 それを聞いたワールも思わず声を返した。
「馬鹿な、ロンド=ベルは」
「いえ、違います」
「彼等とは違います」
 それは否定されるのだった。
「彼等ではありません」
「別の勢力です」
「レジスタンスか」
 ワールは顔を顰めさせて言った。
「奴等か」
「はい、おそらくは」
「あの連中です」
 部下達も忌々しげに言う。
「あの連中が後方の基地を攻撃しています」
「最早陥落寸前です」
「くっ、そうなのか」
 それを聞いて歯噛みするワールだった。
「それではだ。一刻の猶予もない」
「即座に撤退ですか」
「このまま」
「そうだ」
 まさにそうだというのである。
「わかったな、ここはだ」
「わかりました」
「それでは」
 皆それに頷いてだ。即座に惑星から姿を消した。ワープを使ったのだ。
 こうしてロゼの故郷は解放された。まずは勝利を収めたのだった。
 その彼等にだ。通信が入って来た。
「あの」
「はい」
 ヘンケンがそれに応える。
「何でしょうか」
「我々はこの星のレジスタンスの者ですが」
「レジスタンスのですか」
「そうです」
 こう言ってきたのである。
「この星の自由の為に戦っていたのですが」
「そうだったのですか」
「貴方達のおかげで解放されました」
 こうヘンケン達に言うのである。
「有り難うございます」
「いえ、それは」
「それでなのですが」
 レジスタンスの者達はあらためて言ってきた。
「あの、貴方達は一体」
「我々は、ですか」
「どういった方々なのでしょうか」
 それを問うてきたのである。
「何故我々の星を解放してくれたのですか?」
「我々はロンド=ベルといいます」
 また話す彼等だった。
「それが我々の部隊名です」
「ロンド=ベルというと」
 その名前を聞いであった。リーダーと思われる年長の者の言葉だった。
「まさかと思いますが」
「まさか?」
「あのバルマー軍外銀河方面軍を壊滅させたですか」
「はい、我々がそうです」
 まさにそうだと答えるのだった。
「我々がそうなのですが」
「そうですか。貴方達がですか」
 リーダーの男はそれを聞いてまた頷いた。
「まさか。この様な場所で」
「色々とありまして」
 ヘンケンはまずはこう述べたのだった。
「話せば長くなります」
「長くですか」
「お話しても宜しいでしょうか」
「はい、御願いします」
 こう答えるリーダーだった。
「そのお話。どうか聞かせて下さい」
「わかりました、それでは」
 こうして彼等にこれまでの話を聞いた。
 そうしてだった。レジスタンスの者達はこう言うのだった。
「そうだったのですか。それでなのですか」
「それでこの星まで」
「そうだったのですか」
「はい、そうです」
 今度はアキラが答えていた。
「それでなのです」
「しかし。驚いたのはです」
「ロゼもそちらにいたとは」
「それにギシン家の長だったマーグまで」
「私も今ではバルマー帝国と戦う身」
 マーグも言ってきたのだった。
「そうした意味では君達と同じだ」
「まさか」
「そうだったのか」
 皆それを聞いてあらためて頷くのだった。
「それでここまで」
「そうだったのですか」
「それに」
 ロンド=ベルの面々を聞いてだ。また話したのだった。
「あのロゼまでとは」
「ロゼもだったのですか」
「貴方達と共に」
「ロゼがどうかしたのですか?」
 タケルは彼等の言葉を聞いて怪訝な顔になってだ。そうして問うたのである。
「一体。何が」
「ロゼはこの星の生まれでした」
「しかしです。身よりもなくです」
「そして彼女のたった一人の妹を育てる為にです」
 こう話していくのだった。
「バルマー軍に入りました」
「そのロゼもですか」
「ここに」
「ええ、色々ありましたが」
 こう話すのだった。
「しかし今では我々と共にいます」
「ロンド=ベルにです」
「しかし。ロゼは純粋なバルマー人なんですよね」
 ここでアムロが彼等に問うのだった。
「それで妹さんを育てる為にだったのですか」
「丁度ロゼの家は没落していまして」
「それで」
 貴族といえど没落する。そういうことなのだ。
「ズールの家に資産を騙し取られて」
「それで両親も失いです」
「その為家は没落していました」
 そうであったというのである。
「そのせいでロゼは軍に入りました」
「そういうことだったのです」
「それで」
「そうだったのですか」
「ロゼも色々あったのですね」
「というよりは」
 皆ここでロゼを見る。そうしての言葉だった。
 そしてだ。また話すのだった。
「苦労人だったんだな」
「本当に」
「いえ、それは」
 自分ではそれを否定しようとするロゼだった。
「それは別に」
「いえ、それはないです」
「姉さん」
 しかしだった。ここでレジスタンスの方から美しい少女が出て来た。何処かロゼに似た少女である。その彼女が出て来てそれで言ってきたのである。
「隠しても無駄よ」
「ルイ・・・・・・」
「私もここにいるから」
「貴女も、どうして」
「私、決めたの」
 こう言うのである。
「姉さんのいた軍が壊滅したと聞いたその時にね」
「その時になの」
「そうなの、それは」
「私も戦おうって」
 そうだったというのだ。
「そう決めてレジスタンスに入ったの」
「そうだったの」
「それまで私は姉さんに護られていたけれど」 
 そう感じていたのだ。
「けれど。私はもう」
「戦うと決めたのね」
「そうなの。そして姉さんもだったのね」
「ええ」
 妹の言葉を受けてだ。こくりと頷いたのだった。
「そうよ、そして今はね」
「バルマー帝国と戦うのね」
「私はもう迷わないわ」
 目は妹を見ている。そのうえでの言葉だった。
「何があっても」
「そう。だったら」
「貴女と同じよ。私はこの星と、そして」
 言った。完全にだ。
「マーグ様の為に。戦うわ」
「そう、わかったわ」
 ルイもそれを聞いてだ。そして頷いた。
 そのうえでだ。また姉に告げるのだった。
「なら。私達は同じね」
「そうね。同じね」
「私達は今は一緒よ」
 二人で話すのだった。
「同じ目的の為に戦っているのね」
「じゃあ姉さん」
「ええ、ルイ」
「もうすぐ行くのよね」
 こう姉に問うた。
「もう、行くのね」
「ええ」
 ロゼはルイの今の言葉にこくりと頷いた。
「そうよ。また別の星に行くわ」
「そしてバルマー軍を倒すのね」
「まずはズールを」
 倒すというのだった。
「倒すわ。絶対にね」
「わかったわ。それじゃあね」
「また会いましょう」
 妹のその確かな目を見ての言葉だった。
「また。そして何時かね」
「もう一度一緒に暮らしましょう」
 妹の言葉だ。
「もう一度ね」
「ええ、待ってるわ」
 ロゼも微笑んでルイに返す。
「子供の頃の様に一緒にね」
「ええ、また」
 こう言葉を交える姉と妹だった。ロンド=ベルはすぐに次の戦場に向かった。そして再び宇宙の長い旅路に入った。だがここで、であった。
 ロゼはすぐにだ。周りを囲まれてこう言われたのだった。
「いやあ、ロゼさんもね」
「隅に置けないっていうか」
「そうよね」
「あんな大胆な告白するなんて」
「もうびっくり」
「えっ、告白ですか!?」
 だがそれを言われたロゼは唖然とするばかりである。
「私が告白ですか。何時」
「だから。妹さんとお話してたその時ですよ」
「ほら、マーグさんの為にって」
「言ってたじゃないですか」
 皆めざとくこのことを聞き逃さなかったのである。
「いや、あれはちょっと驚きましたよ」
「あそこで衝撃の告白だなんて」
「大胆過ぎますよ」
「私は別にそれは」
 今度は真っ赤な顔になるロゼだった。
「あの、そんなことは」
「いやあ、もうわかってましたから」
「そう、わかってましたよ」
「それはね」
「わかっていた」
 そう言われてさらに狼狽するのだった。
「あの、それは」
「だってねえ」
「もう態度に出ていたから」
「それでね」
 わかるというのだった。
「ですから安心して下さい」
「そうそう、それにね」
「それに?」
「誰もロゼさんのこと悪く思っていませんから」
 こうも言うのだった。
「それは安心して下さいよ」
「応援してるんですからね」
「皆でね。是非ですよ」
「是非、ですか」
「そうです、是非です」
 周りの言葉は続く。
「マーグ様を離さないで」
「ハッピーエンドまでいって下さいよ」
「期待してるんですから」
「はあ」
 そう言われても呆然となったままのロゼだった。
 しかしだ。一応はこう言った。
「有り難うございます」
「そうですね、ですから応援してますからね」
「このままずっとですよ」
「ずっとですか。それでは」
 ロゼも意を決した。顔を真っ赤にさせて必死の表情になってだ。
「私頑張ります」
「そうですよ。頑張って下さいね」
「絶対に」
 そんな話をしてだった。そのうえでまた別の戦場に向かうのだった。


第二十四話   完


                        2010・5・1 

 

第二十五話 ハザルの策謀

                 第二十五話 ハザルの策謀

「そうか」
「うむ」
 巨大な何か機械を思わせる外見の男がだ。モニターに映るハザルと話をしていた。漆黒のその仮面、いや機械の顔にそれとマントを羽織っている。そういう男だった。  
 その男がハザルに対してだ。言っているのである。
「グラドス軍は壊滅した」
「所詮は捨て駒だ」
 ハザルもそれを聞いてどうということはなかった。
「なくなればその後を補充するだけだ」
「それだけだな」
「そうだ、それだけだ」
 まさにそれだけだというのだ。
「結局のところはな」
「グラドス軍はか」
「そうだ」
 また答えるハザルだった。
「それだけだ。そしてズール卿よ」
「うむ」
「貴殿の軍もだな」
「そうだ、敗れた」
 ズールの言葉も素っ気無い。
「結局のところだ」
「損害は大きいか」
「どうということはない」
 それを聞いて全く驚かないズールだった。
「それにだ。戦力はまだある」
「ではそれでいいのか」
「そうだ、それでいい」
 ズールの言葉は続く。
「まだ七個艦隊もある」
「直属艦隊の損害は大きくともか」
「そうだ、その程度だ」
 ハザルと同じ様な言葉だった。
「そういうことだ」
「ふむ。やはり卿らしい」
 ズールを認める言葉だった。
「それでいい」
「そう言うのだな」
「そうだ。しかし」
「しかし?」
「ロンド=ベルの次の動きはわかっているな」
「ロンド=ベルか」
「そうだ。よければだ」
 ハザルはさらに言ってみせたのだった。
「俺の軍もまた向かわせるが」
「援軍か」
「どうだ、それは」
 また言うのだった。
「遠慮なく何でも言ってくれ」
「いや、それはいい」
 だがここでズールはこう言うのだった。
「私だけでどうとでもできる」
「だからだというのか」
「そうだ、だからいい」
 また言うズールだった。
「卿の申し出は有り難いと言っておくが」
「それでもか」
「そうだ、私だけであの者達を殲滅する」
「ではここは見させてもらうぞ」
「好きなだけ見るがいい」
 仮面を思わせる顔なので表情は見えない。しかしなのだった。
 そしてだ。さらに言うのだった。
「私があの者達を倒すところをだ」
「待て」 
 ハザルの顔が歪んでいた。不機嫌なものになっている。
「ロンド=ベルを倒すというのか」
「そうだが。それがどうした」
「あの連中は俺の獲物だ」
 こう言うのである。
「俺のだ。このハザル=ゴッツォのだ」
「そして父上に認められたいというのか」
「何っ!?」
「気に障ったか?違うか」
「貴様、俺を愚弄するというのか」
「愚弄と思ったか」
 ズールは言葉に嘲笑を含ませていた。それを見せながらの言葉である。
「そう思うということはやましいことがあるのだな」
「それ以上言うとだ」
 ハザルの目が明らかに怒っていた。そしてである。
「俺が貴様を直々に倒しに行くぞ」
「ほう、私をか」
「貴様のことは知っている」
 ハザルも負けてはいなかった。
「貴様のことをだ。これでわかるな」
「ふむ。私をか」
「いいな、これ以上言うとだ」
「貴様と戦うのも面白いがだ」
 ズールは言葉を微妙に変えてきた。そのうえでだった。
「だがそれでもだ」
「それでもか」
「今はこれで止めておこう」
 これで実際に止めたのであった。
「今我等が戦っても何の意味もない」
「少なくとも俺は今貴様と戦うつもりはない」
 ハザルも言う。
「今はだ」
「今はか」
「そうだ、今はだ」
 また言うのだった。
「貴様の命置いておく」
「そうか。いいのだな」
「しかしだ。ロンド=ベルはだ」
「来るのだな」
「そうだ、貴様が何と言おうとだ」
 こう言ってであった。遂にハザルは言うのであった。
「ロンド=ベルを倒させてもらう。いいな」
「どうしても来たいというのなら何も言わない」
「援軍という形でいいな」
「いいだろう、しかしその後でだ」
「先程の言葉、取り消すなら何もしない」
 また怒りを露わにするハザルだった。
「しかし取り消さないのならばだ」
「言っておく。私はだ」
「貴様は。何だというのだ」
「この宇宙を支配する者になる」
 不遜そのものの言葉だった。
「そう、ありとあらゆるものをだ」
「ふん、バルマーは父上のものになる」
 だがハザルも負けてはいなかった。
「貴様が掴むものではない」
「だといいがな。だが」
「今度は何だ」
「人形、か」
 不意にこんなことを言ったズールだった。
「人形だな」
「!?どういう意味だ」
 ハザルはズールの今の言葉にいぶかしむ顔で返した。
「人形だと?」
「わからなければいい」
 ズールも今は言おうとはしなかった。
「どうということはないことだ」
「そうなのか」
「では待っている」
 また言うズールだった。
「今は共にロンド=ベルと戦おう」
「そうだな。今はな」
 こうして二人は話を終えた。そのうえで今は戦いに向かうのだた。
 ロンド=ベルはロゼの故郷から今度はギシン星に向かっていた。軍議の後で敵の本拠地を衝いて一気に終わらせることになったからである。
 その進撃途中でだ。タケルが不意に言うのだった。
「ズールか」
「どうしたの、タケル」
「いや、どういう相手かと思ってね」
 こうミカに返すのだった。
「一体ね。どんな奴かね」
「敵として、っていうことね」
「そうなんだ。一体どういう相手かな」
 そのことをまた言うタケルだった。
「ギシン家の人間ということは俺達と同じ人類なのだろうけれど」
「超能力者とは聞いている」
 こう答えたのはマーグだった。
「それもかなりのだ」
「そうか、俺達と同じ」
「そしてだ」
 しかしだった。マーグはさらに言ってきたのである。
「その力はかなりのものだ」
 こうも言うのである。
「気をつけるのだ。そしてだ」
「そして?」
「その性格はわかるな」
「部下を平気で切り捨てられる」
「そうだ、どんな作戦でもする男だ」
 そのことは先の戦いでわかっていることだった。嫌になるまでだ。
「目的の為ならか」
「そうだな」
 ナオトがケンジの言葉に頷いていた。
「あの星での戦いを見る限りはな」
「何をしてもおかしくはないな」
「必要とあれば。そうだね」
 アキラも考える顔になっている。
「俺達を惑星ごと爆破してもおかしくないね」
「何かとんでもない奴なんだね」
 ナミダも難しい顔になっている。
「ズールって奴は」
「ゼゼーナンともまた違うんですね」
 今言ったのはゼオラだった。
「ああしたのとは」
「あいつは結局何もわかってなかったけれどな」
 アラドも言う。彼は小者だったというのだ。
「けれどズールは、なんだな」
「まだズールについては何もわかってはいない」
 リーがここで彼等に対して言ってきた。
「敵のことはかなり聞いたがだ」
「あの、それでリー艦長」
「それでもギシン星に向かうんですよね」
「それでもですか」
「そうだ、向かう」
 また言うリーだった。
「今ここで向かい決着をつけなければ」
「そうですね、駄目ですね」
 ケンジもリーのその言葉に頷く。
「今が好機ですし」
「敵の間合いに入る」
 リーはまた言った。
「敵の戦力や配置が変わらない今のうちにだ」
「じゃあ今から」
「行くとしよう」
 タケルとマーグの言葉だ。
 こうして彼等はギシン星に向かうのだった。そしてだ。
 前方にレーダー反応があった。それは。
「むっ!?」
「来たな」
 彼等はすぐに戦闘態勢に入った。
 しかしだ。ここで誰もがいぶかしむ顔になった。敵軍の中にいたのは。
「あれはディバリウム!?」
「間違いない」
「何故ここに?」
「しかも」
 他にもいた。それは。
「ヴァイクラン!?」
「それまでいたのか」
「ということは」
「いや、それだけではない」
 ここで今度は大文字が言ってきた。
「見るのだ、諸君」
「!?左からも」
「敵が!」
「そうだ、そしてその敵はだ」
 それを見るとだった。彼等は。
「ギシン系の兵器ですね」
「それを出して来たのですか」
「では前にいるのは」
「あれはハザル=ゴッツォの軍だ」
 それはわかったのだ。
「そして左にいるのはだ」
「ギシン星の軍ですね」
「それが来たのですね」
「挟み撃ちですか」
「そうだ、それでは諸君」
 また言う大文字だった。
「ここは戦術を選ぶことになる」
「どちらを攻めるかですね」
「そうだ、それだ」
 大文字はサコンにも答えた。
「今回はだ」
「どうしますか?それで」
「ここは。どういった作戦で」
「守る」
 そうするというのだ。
「我々は今はだ」
「では陣を整えて」
「それで迎え撃つんですね」
「ここは」
「そうだ、そうする」
 まさにそうだというのである。
「ここはだ。そうするぞ」
「はい、それでは」
「その様に」
 こうしてであった。彼等はそのまま迎撃に向かわずに方陣を組んだ。そのうえで守りを固めてだ。前方、左方から来るバルマー軍を迎え撃つ。
 その中でだ。まずハザルがエイスに対して言った。
「ではエイスよ」
「はい」
「このまま攻めるぞ」
「わかりました」
「あのフロンティアについてだが」 
 彼は残忍な笑みを浮かべながら言うのだった。
「あのまま破壊してもよい」
「宜しいのですね」
「死んでは何もわからない。そしてだ」
「そして?」
「死体は爆発に巻き込まれ宇宙に散った」
 それで終わりだというのだ。
「これでわかったな」
「わかりました。それでは」
「御前はフロンティアに向かえ」
 またエイスに告げたのだ。
「そして俺があの連中を倒す」
「ハザル様がですか」
「少し遊んでみたくなった」
 ここでは余裕も見せたのである。
「あの下等な連中とな。遊んでやることにする」
「ハザル様の御趣味ですか」
「下等な連中だから相手にせずともいいのだがな」
 こうも言ってみせるのである。
「しかしだ。それでもだ」
「お遊びですね」
「そういうことだ。では遊ぶぞ」
「お楽しみ下さい。それでは」
「うむ、それではだ」 
 こうして彼等はそのままロンド=ベルに向かうのだった。
 そのまま一直線に向かいだ。ロンド=ベルに攻撃をはじめた。
 そしてギシン系の軍もだ。ロンド=ベルに攻撃を開始した。
 その中でハザルはワールに対して命じた。
「いいか」
「はい、何でしょうか」
「囲め」
 そうしろというのである。
「敵を包囲しそのうえでだ」
「倒すというのですね」
「ここで一兵残らず殲滅する」
 ハザルはこうまで言った。
「いいな、一人残らずだ」
「一人残らずなのですね」
「そうだ、殲滅する」
 また言うハザルだった。
「いいな、それでだ」
「はい、それでは」
「御前達はここでは俺の指示に従え」
 自信に満ちた言葉だった。
「いいな、俺の指示にだ」
「ハザル司令、それでは」
「我々は」
「文句があるのか?」
 恫喝だった。
「では聞こう」
「はい」
 ゴッチが応えていた。
「俺は誰だ」
「はい、ハザル=ゴッツォ様です」
「そうだな。俺がそのハザル=ゴッツォだ」
「その通りです」
「ではわかるな」
 不遜な顔での言葉だった。
「ここはだ」
「ズール様も認めておられるのですね」
 ワールはこのことを念押しした。
「このことは」
「ズールとは既に話をしている」
 その通りだというのである。
「わかったな。それではだ」
「わかりました。それでは」
「我々は」
 二人もそれでは頷くのだった。そうしてだった。
 彼等はハザルの指揮の下ロンド=ベルを包囲するのだった。
 それに対してロンド=ベルはだ。方陣を組んだ。
「囲むのはわかってるんだよ!」
「もう予測済みよ!」
 こう言いながらだった。
「それにフロンティアを狙うのもだ!」
「それならね守るだけだ!」
「よし、全軍この方陣で戦うぞ!」
 ブライトも指示を出す。
「いいな、それではだ」
「はい、それでは」
「今は」
「よし、戦うぞ!」
 こうしてだった。そのまま戦う。しかしであった。
 ここでディバリウムの動きを見てだ。ダイテツが言った。
「あの機体、気をつけることだな」
「警戒ですか」
「そうだ、気をつけなければならないようだ」
 こうテツヤにも言う。
「どうやら我々の中にあるものを狙っているな」
「といいますと」
 エイタがダイテツの今の言葉に問うた。
「ここでは何をするつもりでしょうか」
「わからん。だがディバリウムならだ」
「はい、それなら」
「広範囲への攻撃も可能だ」
 既にこれまでの戦闘でわかっていることである。
「そう、広範囲のな」
「ではここは」
「我々をまとめてですか」
「元々その為の兵器ですしな」 
 ショーンの言葉である。
「それも充分考えられます」
「いえ、むしろです」
 今度言ったのはレフィーナだった。
「ここは我々ではなくです」
「我々ではなくか」
「はい、シティやフロンティアを狙うことも考えられます」
 こう言ったのである。
「ですからここは」
「絶対に近付けてはならないか」
「そう考えます」
「よし、それではだ」
 そこまで聞いてだ。ダイテツは一つの決断を下した。
「ここはだ」
「どうされますか?」
「足止めを向かわせよう」
 そうするというのだ。
「誰かいるか」
「足止めですか」
 出て来たのはデメクサだった。
「なら私が」
「頼めるか」
「はい、やってみます」
 いつもの落ち着いた調子である。
「そうさせてもらいます」
「わかった、では頼むぞ」
「はい、それじゃあ行ってきます」
 こうしてデメクサが足止めに向かった。そしてその間にもだ。
 包囲する敵の動きは激しい。この世が終わった様な攻撃だ。
 しかしロンド=ベルは見事耐え切っている。そうしてだ。
「敵の数が減ってきたわね」
「そうね」
 美穂の言葉にサリーが頷く。
「それならここは」
「もう少しかしら」
「それに」
 さらに話が為されるのだった。
「勢いも弱くなってきたし」
「これならもう少しかしら」
「はい、それでいいと思います」
 エキセドルも答えてきた。
「ただ」
「ただ?」
「どうしたんですか?」
「疑問がないわけでもありません」
 こうも言うのである。
「どうもです」
「疑問っていいますと」
「何がですか?」
「何故彼が出て来たのでしょうか」
 これが彼の疑問だった。
「ハザル=ゴッツォがです」
「そういえばそうですよね」
「どうしてなんでしょうか」
 美穂もサリーもそれについて言う。
「何故ここにまで」
「外銀河方面軍なのね」
「そうです、それがわかりません」
 また言うエキセドルだった。
「何故ここにいるのかです」
「バルマー帝国の中で何か起こっているのかしら」
 今言ったのはミリアである。
「それでなのかしら」
「それで?」
「ええ、それでなのかしら」
 こうマックスにも言うのだった。
「それでハザル=ゴッツォも」
「腹黒い奴だしな」
 イサムのこの言葉は偏見から来るものだったが事実だった。
「何か企んでるんじゃねえのか?」
「それでここにもか」
「ああ、そうじゃないのか?」
 こうガルドにも返す。
「どっちにしても碌な理由じゃないだろ」
「そうだろうな」
 そしてガルドもそう見ているのだった。
「あの男はな。そういう男だ」
「へっ、企んでのこのこ出て来たんならよ」
 霧生は不敵に笑って言う。
「ここで一気に始末してやるぜ」
「それはいい考えだけれど」
「軽率なことはできないわよ」
 その彼にレトラーデとミスティが言う。
「あのヴァイクランは合体したSRXを倒してるんだし」
「油断のならない相手なのは間違いないわ」
「今は下手に攻めないってことかよ」
 霧生とて馬鹿ではない。二人の話を聞いてすぐに言った。
「そういうことかよ」
「ええ、まだね」
「迂闊に攻めない方がいいわ」
「それはあのディバリウムもだな」
 ジノはデメクサが足止めをしているその機体を見ていた。
「デメクサは賢明だ。今は戦わず攻撃を避けることに専念している」
「そうだな。今はあれでいい」
 ファングもそれを見て述べた。
「まだよくわかっていないからな」
「そういうことだ。だが」
 ここでジノの目が光った。
「あのマシンに乗る男。エイスだったか」
「あの男か」
「あの男、何を考えている」
 目を険しくさせての言葉だった。
「フロンティアを狙っているのはわかるが」
「何かあるんでしょうか」
 プレシアもそれをいぶかしんでいる。
「フロンティアに」
「我々の今の後方基地だが」
 ファングは軍事的に考えていた。
「そこを潰すつもりか」
「それやったらもっと大勢で来るやろ」 
 ロドニーはこう言う。そしてだ。
「一機だけやったらそれこそ暗殺やで」
「暗殺!?」
「暗殺というと」
 その言葉にだ。全員が言葉を止めた。
 そしてだ。エリスが彼に問うのだった。
「将軍、暗殺といいましても」
「フロンティアにバルマーの奴等が暗殺するような奴がおるかやな」
「それは有り得ませんが」
 こう言うのだった。
「そう、とてもです」
「そやな。フロンティア叩き潰すんやったらもっと堂々としてる」
 ロドニーはこのことを指摘する。
「そやからそれはないで」
「そうですね、とても考えられません」
「何でや?あれ一機でも確かに戦力あるけれどな」
「しかし一機だったら殆ど」
「というかそのまま暗殺だしね」
 ベッキーとシモーヌも言う。
「そんなことするっていうのは」
「後ろめたいことがあるんでしょうね」
「何かあるな」
 また言うロドニーだった。
「あの連中、変なこと考えてるで」
「よし、それじゃあ」
 今度動いたのはロザリーだった。
「私手が空いたからそっち行くわ」
「そっちとは?」
「だからデメクサのフォローよ」
 こうジノにも返すのである。
「一人だけじゃ辛いかも知れないしね」
「そうか。では頼めるか」
「任せてよ。隙があったら倒すしね」
「そうしてくれ。それではだ」
「はい、それでは」
 こうしてだった。二人でエイスに向かうのだった。そうしてだ。
 流石に二人ではエイスも分が悪い。ハザルもそれを見てだ。
「エイスよ」
「はい」
「できるか」
 こう彼に問うたのだ。
「今フロンティアに攻撃できるか」
「一度なら」
 エイスもハザルに対して答える。
「可能です」
「ではそれで仕留めろ」
 こう命じるのだった。
「いいな、後はどうとでもなる」
「それでは」
 こうしてだった。そのまま前に出てだ。
 デメクサとロザリーが止めようとする。しかしだった。
「速い!?」
「何、この動き!」
 こう言うのだった。そしてだ。
 一気に攻撃を放とうとする。しかしだ。
「マサキ!」
「フロンティアが!」
 クロとシロがマサキに叫ぶ。
「今のうちに行かないと!」
「サイバードになってだニャ!」
「ああ、わかってる!」
 マサキも彼等に応える。そうしてだった。
 サイバードになってエイスのディバリウムの前に出た。そして彼の攻撃に対してだ。
「サイフラーーーーーーッシュ!」
「!!」
「何っ、ここでだと!」
 エイスだけでなくハザルもそれを見ていた。そうしてだ。
 その緑の光でディバリウムの広範囲攻撃を相殺した。そうしてみせたのだ。
「よかったニャ」
「ああ、何とか間に合ったニャ」
「おい、手前!」
 ここでマサキがエイスに対して言う。
「よくもやってくれたな!どういうつもりだ!」
「見たままだ」
「何っ!」
「俺はフロンティアを攻撃しようとした」
「それだけだってのかよ」
「そうだ、それだけだ」
 そうだというのである。
「だが。失敗したな」
「それでどうするってんだ?」
 サイバードをサイバスターに戻している。そのうえでバニティリッパーを右手に持っている。今にも戦おうとしているのはそこから明らかだった。
「戦うのなら相手をしてやるぜ」
「いや、俺の今の任務はそれではない」
「ないというのかよ」
「作戦は失敗した。それならだ」
「それなら。何だってんだ?」
「戻る」
 一言だった。
「それではだ」
「マサキ、こいつは」
「逃がしたら後が面倒ニャぞ」
 クロとシロがここでまた言う。
「サイバスターなら追いつけるニャ」
「追うニャぞ」
「ああ、わかってるぜ」
 マサキも強い言葉になっている。
「それじゃあな」
「エイスよ」
 そのハザルの言葉だ。
「今は帰れ」
「左様ですか」
「作戦は失敗だ」
「申し訳ありません」
「今はいい。まだ機会がある」 
 こう言うのである。
「処罰もなしだ」
「有り難き御言葉。それでは」
「全軍帰還する」
 そしてこうも言うのだった。
「いいな、それではだ」
「ハザル様、それでは」
「我等もでしょうか」 
 ここでワールとゴッチがハザルに問うた。
「帰還といいますと」
「やはり」
「そうだ。戦力も失っている」
 見れば六割をなくしている。損害としては無視できるものではない。それを見ての言葉だ。
「これ以上の戦闘は無意味だ。いいな」
「はい、それでは」
「我々もまた」
「全軍撤退だ」
 また言うハザルだった。
「いいな、それではだ」
「全軍撤退せよ」
「殿軍は俺が務める」
 ゴッチは自ら後詰を申し出る。そのうえで戦場を後にするのだった。
 ロンド=ベルは結果として勝利を収めた。しかしである。
 エイスのあの行動にだ。全員で言うのだった。
「間違いなく何かあるな」
「そうだな」 
 ティアンの言葉にアハマドが頷く。
「あれはな」
「何故フロンティアに一機であそこまでこだわるかだ」
「どう見てもだ」
 ヤンロンも言う。
「刺客の様に見えた」
「刺客。そうね」
「そういった感じだったわね」
 リューネだけでなくテュッティもそこに頷く。
「あれはどう見てもね」
「フロンティアへの刺客」
「けれどそれがおかしいのよ」
「そうですね」
 ウェンディはセニアの言葉に頷いていた。
「フロンティアにバルマー帝国が気になるような要人はいないから」
「補給基地を叩くのならともかく」
「それなら他にやりようがあるわよ」
 サフィーネも今は真剣な顔だ。
「私達ごと吹き飛ばすとか。私達を引き離してとか」
「そっちの方が絶対に有効だよね」
 テリウスもそれを言う。
「普通に考えたら」
「じゃあ作戦そのものが普通じゃないのよね」
 ミオはテリウスの今の言葉に言い加えた。
「つまりは」
「その通りですね」
「結果としてそう考えられます」
 フレキとゲリもこう話す。
「彼等の今の作戦はです」
「通常にある作戦ではありません」
「となるとです」
 ランシャオも言う。
「やはり暗殺やそういった類の作戦でしょうか」
「ほな誰や?」
「誰暗殺するねん」
「そこが問題やで」
 ジュン、チョーサク、ショージである。
「何処の誰を暗殺するねんや」
「フロンティアとバルマーの因果関係は?」
「それがそもそもわからんで」
「こういう時シュウの奴だったら絶対に答えを言うんだがな」
 マサキの言葉である。彼は考える顔になっている。
「しかし今度ばかりはな」
「シュウ様はここにはおられることはありませんわ」
 モニカの文法は相変わらずである。
「そう、今はこことは別のまた変わった場所におられると思わないわけでもありません」
「だから文法滅茶苦茶じゃねえかよ」
 リョーコは珍しく彼女に突っ込みを入れた。
「とりあえず何て言ったんだ?」
「要するにシュウさんはここにはいないということよね」
「シュウーーーっと飛んでく」
 ヒカルに続いてイズミも言う。
「つまりは」
「鉄人二十八号」
「イズミさん、ですから無理があり過ぎですよ」
 ジュンが突っ込みを入れる。
「もうそれは」
「何ていうか」
「強引にも程があるし」
「それはまあ置いておいて」
 皆話を強引に進めてきた。
 あらためてだ。アラドが言った。
「それで前言ったけれどな」
「ああ、あれ?」
「イルイちゃんがって?」
「まさかとは思うけれどな」
 首を捻りながらの言葉だった。
「それはな。ないか」
「そうよね。幾ら何でもね」
「けれど俺見たんだよな」
 ゼオラにも言うのだった。
「実際にこの目でよ」
「だからイルイちゃんは地球にいるのよ」
 ゼオラはそれをまた言う。
「それでどうしてここにいるのよ」
「じゃああの娘は誰だったんだ?」
「他人の空似じゃないの?」
 それではと返すゼオラだった。
「オウカさんもそう思いますよね」
「ええ、確かにね」
 オウカもゼオラと同じ意見だった。
「流石にそれは有り得ないわ」
「ええ、本当に」
「いえ、けれど」
 だが今度はラトゥーニが言う。
「イルイちゃんは神様だから」
「有り得るっていうの?」
「可能性はかなり低いけれど」
 ラトゥーニも実際にだ。こう言うのだった。
「若しかしたら」
「しかしです」
 神代が真面目な顔で話す。
「フロンティアの市民の人達はシャトルでしか行き来できませんし」
「じゃあやっぱりないよな」
「そうよね」 
 皆もその言葉に頷く。
「どう考えても」
「それはないよな」
「そうよね」
 また話す彼等だった。
「それにイルイちゃんだったとしてもな」
「バルマー帝国とは関係ないし」
「だよな。関係ないんじゃないか?」
「フロンティアとはやっぱり」
「いや、待て」
 しかしだ。ここでリーが言って来た。
「だとするとあの敵の動きは何だ」
「何かって」
「あのディバリウムですか」
「明らかにフロンティアを狙っていた」 
 リーの言葉は鋭い。
「しかも一機でだ」
「じゃあ何の目的で?」
「それなら」
「目的があるのは間違いない」
 リーが言うのはそれだった。
「彼等はフロンティアにだ」
「だとすれば一体」
「それは」
「また来るな」
 また言うリーだった。
「その時にわかるかも知れない」
「そうだな」
 テツヤがリーの言葉を最後まで聞いて述べた。
「目的があるのなら絶対にまた仕掛けて来るな」
「そしてだ」 
 さらに言うリーだった。
「戦いの中でゲリラを仕込ませて来ることもだ」
「フロンティアにですか」
「どさくさに紛れてですね」
「それは有り得るな」
 ケンジが腕を組んで言った。
「GGGでの時と同じく」
「あの時か」
 その時は敵として戦ったマーグが応えた。
「あの時私達は超能力を使って忍び込んだが」
「はい、そのことですが」
 ロゼも話に加わってきた。
「バルマー軍にはまだ優れた超能力者がいます」
「なら彼等も参加して」
「そのうえで」
「来る危険はあります」
 また言うロゼだった。
「その時に」
「よし、わかった」
 グローバルはここまで聞いて判断を下した。
「それならだ」
「それなら?」
「どうしますか?」
「戦いの中も後もフロンティアの中を警戒しておこう」
 そうするというのである。
「ここはだ」
「はい、わかりました」
「それなら」
 皆それに頷く。そうしてだった。
 全員でこれからのことを見ていた。バルマーとフロンティアのこともだ。あらゆる事柄が混沌として混ざり合い大きなうねりともなっていた。


第二十五話   完


                         2010・5・4       

 

第二十六話 暗黒の皇帝

                 第二十六話 暗黒の皇帝

        「それではだ」
「はい」
 ワールがグールと話している。
「ハザルはそうしたのだな」
「左様です」
 こうズールに話していた。
「何かおかしいとは思いますが」
「そうだな」
 ズールもワールの言葉に頷く。
「普通はあの時は」
「ロンド=ベルに何かあるのか」
「裏切り者のマーグとロゼ、それにマーズがいますが」
「あの男には関係ない」
「はい、確かに」
「あの男は強欲だ」
 ハザルへの言葉に他ならない。
「そして己のことしか考えない男だ」
「はい、確かに」
「その男が我等の為に何かをするか」
「それは考えられません」
「そうだ、絶対にだ」
 ある意味においてハザルのことをよくわかっているズールだった。
「それはない」
「その通りです。それに狙ったのは連中の居住区域です」
「補給基地を狙ったのではないな」
「ならば一部隊を向かわせるでしょう」
 さらに話すのだった。
「ですから。一機だけとは」
「しかも向かったのはエイス=ゴッツォだな」
「はい」
 まさに彼だった。
「あのエイス=ゴッツォです」
「あの男はハザルの腹心だ」
「その腹心を向かわせるとなると」
「やはり相当なことだ」
 こう言うのだった。
「一機で向かうとなるとだ」
「そのエイスが一機で」
「何かある。ではだ」
「どうされますか、今度は」
「様子を見る」
 そうするというのである。
「今はだ。様子を見る」
「そうなのですか」
「バレンとグールも出す」
「はい」
「あの者達も連れて行け」
 こうワールに言うのだった。
「よいな、それではだ」
「はい、それでは」
「そしてその分あの男から目を離すな」
「わかりました」
「そして私も向かおう」
「何とっ」
 今のズールの言葉にはだ。思わず驚きの声をあげたワールだった。
 そのうえでまた彼に問うた。
「ズール様もですか」
「そうだ、ただしだ」
「ただし?」
「影だ」
 それは影だというのである。
「私の影を行かせる」
「そうされるのですか」
「そうだ、そうする」
 言葉は決意そのものだった。
「それでわかったな」
「わかりました。それでは」
「ジュデッカ=ゴッツォ達の用意はいいな」
「はい、次の戦いには」
 今の戦いには、とは言った。
「充分に間に合います」
「では今はハザルの方が問題だな」
「何を考えているかですね」
「それを見る。いいな」
「はい、それでは」
 こうして彼等の方針は決まった。彼等は今はロンド=ベルよりも友軍である筈のハザル達の方が問題だった。彼等も彼等で動いていた。
 そしてだ。ロンド=ベルもだ。彼等も次の戦いを待っていた。
 ギシン星にそのまま向かっている。その中でだ。
「フロンティアへの護りは?」
「安心していいわ」
 ミサトが応える。
「それの手配はしておいたから」
「そうですか、それなら」
「今は」
「敵は絶対に来る」
 今言ったのはだ。一目で階級がかなり上だとわかる軍人だった。
 その彼がだ。重厚な声で言ったのである。
「諸君はそれに備えておいてくれ」
「あれっ、貴方は」
「誰ですか?」
 皆その髪の毛の薄い彼に顔を向けて問うた。
「フロンティアの方ですよね」
「そうですよね」
「美知島征太という」
 こう名乗るのだった。
「階級は中将だ」
「中将閣下ですか」
「そうなのですか」
「そうだ、これから宜しく頼む」
 彼の方からの言葉だ。
「それでだ」
「はい、それでは」
「フロンティアはですか」
「至る場所に兵を配しておいた」
 美知島はこう一同に話した。
「無論戦いの中でまた見回りになるがだ」
「有り難うございます、それなら宇宙での戦闘中は」
「宜しく御願いします」
「頑張ってくれ。それではな」
「はい、それでは」
「行って来ます」
 その言葉を聞いて安心した彼等だった。そうしてである。
 彼等は今は進軍を続けていた。すると次の日にだ。
「レーダーに反応です」
「右です」 
 アドレアとナタルが言う。
「そして左にもです」
「それぞれ斜め前に出ています」
「やはり来たな」
 ヘンケンはそれを聞いて呟いた。
「それで右は」
「ハザル=ゴッツォの軍の様です」
 ナタルが答える。
「そして右はです」
「そうか」
「ギシン系の戦力です」
「今度は分かれてか」
「分進合撃でしょうか」 
 ここでナタルは言った。
「今回は」
「いや、それはその通りだが」
「何か違うのですか」
「どうやら仲違いでもしたな」
 ヘンケンはそう察したのだった。
「何かな」
「仲違いですか」
「そうだ、同じバルマー軍でもだ」
「はい」
「それぞれ思惑がある」
 指摘するのはこのことだった。
「だからだ。それが衝突したかだ」
「それともですか」
「一方が察して離れたから」
 こうも言ってみせた。
「どちらかだな」
「ではそれによりですか」
「そうだ、分かれている」
 ヘンケンはあらためて言った。
「それによってだ」
「では艦長」
 ここまで聞いてだ。沈黙していたアドレアが問うてきた。
「ここは」
「まずは一方を叩くとしよう」
 ヘンケンは言った。
「そしてその一方はだ」
「はい、その一方は」
「どちらでしょうか」
 アドレアだけではなくナタルも問うた。
「ギシンでしょうか。それとも」
「ハザル=ゴッツォの軍でしょうか」
「ここはハザル=ゴッツォだ」
 ヘンケンはこう二人に告げた。
「いいな、そちらにだ」
「外銀河方面軍にですか」
「そちらに」
「見たところヘルモーズはいない」
 このことも何気に大きかった。
「今回はあの男の直属艦隊だけの様だな」
「七個艦隊は本来の持ち場に残っているのだろう」
 マーグはこう指摘した。
「今はな」
「そうか、そうなのか」
「だがズールは違う」
 彼等はだというのだ。
「あの男の軍は違う」
「はい、そうですね」
 マーグの言葉にロゼが頷いた。
「ここは彼の勢力圏ですから」
「間違いなく本気で来る」
 戦力的にはという意味であった。
「間も無くヘルモーズ達が来てもおかしくはない」
「つまりだ」
 ここまで聞いた神宮寺が述べた。
「ここはまずは戦力が少ない方を先に叩くのか」
「そういうことになるな」
 ヘンケンが神宮寺の言葉に応えた。
「ギシン系の軍はまだ出て来るだろうからな」
「それじゃあ今はですね」
「あのハザル=ゴッツォの軍を」
 麗とマリも言う。
「それにフロンティアのこともありますし」
「ここは」
「そうですね。あのことは忘れてはいけませんね」
 猿丸もそれを言う。
「あの時と同じことをしてくるならです」
「間違いなく何かあるね」
 洸も言った。
「フロンティアに」
「それを見極める為にもだ」
「はい」
 洸はヘンケンの言葉に頷いた。
「まずは外銀河方面軍を」
「そうするとしよう」
「それでは全軍」
 ナタルがあらためて言う。
「外銀河方面軍に向かう」
「了解です」
「それなら」
 こうしてであった。ロンド=ベルはハザルの軍に向かう。そのハザルもそれを見てだった。
「ふむ」
「ここは」
「わかっている」
 こうエイスにも返した。
「エイス、いいな」
「はい」
「御前の任務は前と同じだ」
「フロンティアをですね」
「そうだ、破壊しろ」
 告げた言葉はこれだった。
「いいな、跡形もなくだ」
「わかりました」
「遠慮することはない」 
 酷薄な笑みでの言葉だった。
「戦闘中でのことだ。おられるのは知らなかった」
「はい」
「これで何の問題もない」
「ハザル様は一時謹慎になりますが」
「何、どうということはない」
 実に素っ気無いハザルの言葉だった。
「あくまで一時のことだ」
「左様ですか」
「そうだ、一時的なことだ」
 ハザルの酷薄な笑みはそのままだった。
「そのリスクの分はある」
「それでは」
「そうだ、わかるな」
 また言うハザルだった。
「その様にだ」
「それでは」
「全軍に告ぐ」
 エイス専用の回線を切ってからの指示だった。
「これよりロンド=ベルに向かう」
「はい」
「それでは」
 この言葉と共にであった。
 そしてだ。ロンド=ベルに向かう。忽ちのうちに激しい戦いがはじまった。
 その中でエイスはだ。影の様に動いた。
 フロンティアに向かおうとする。だがそれは既にだった。
「来たな」
「ええ」
「やはり」
 ロンド=ベルの面々はそれを察していた。そのうえでの言葉だった。
「フロンティアに」
「やはり一機だけ」
「よし!それならだ!」
 それを受けてだった。一機動いた。
 それはダイターンだった。一直線にディバリウムに向かう。
 そのうえでだ。彼と対峙してそのうえで言うのであった。
「一つ聞きたいことがあるんだけれどね」
「何だ?」
「一体何を考えているんだい?」
 万丈は余裕のある顔で問うてみせた。
「君はどうしてそんなにフロンティアにこだわるのかな」
「答えるつもりはない」
 エイスの返答は素っ気無いものだった。
「全くだ」
「そうかい、答えないのかい」
「その義務はない」
 だからだというのだ。
「そのつもりはない」
「まあそれならそれでいいよ」
 万丈はそれを聞いても態度を変えない。
「別にね」
「いいというのか」
「実際話すとは思ってなかったしね」
「だからか」
「そうさ、君達の今までのパターンから見て」
 そのうえでの想定だったのだ。
「絶対にそれはないと思っていたさ」
「だからか」
「さからだよ。そして」
 顔が真剣なものになった。そうしてだ。
「フロンティアはやらせないよ」
「貴様を倒せということか」
「どうしてもフロンティアに行きたいならね。それでわかったね」
「わかった。しかしだ」
「しかし?」
「それは無謀な」
 こう万丈に言うのだった。
「それはだ。無謀だ」
「無謀だってのかい」
「俺のディバリウムを一機で倒すことはだ」
 言うのはこのことだった。
「それはできはしない。とてもだ」
「さて、それはどうかな」
 万丈の言葉には余裕が戻った。
「それはね。どうかな」
「どうかというのか」
「そのディバリウムは見たところ一機で多くの敵を相手にするものだね」
 その通りだった。
「その通りだね」
「見ていたのか」
「何度も戦っているからね。わかるさ」
 また言葉に余裕を見せていた。
「それに」
「それにか」
「君はいつも一機で行動するからね」
「それでもわかったか」
「わかったよ、今もそうだしね」
 そしてだった。次に言う言葉はだ。
「君を相手にするのなら一対一の方が勝手がいいしね」
「だからこそ貴様一人で来たというのか」
「そういうことさ。それでいいかな」
「行くぞ」
 言葉に感情はないが攻撃的な言葉だった。
「それではだ」
「やあやあ遠からん者は聞け!近くば寄って目にも見よ!」
 ここで万丈は名乗りを挙げた。
「世の為人の為バルマーの野望を打ち砕くダイターン3!」
「おっ、出たか」
「久し振りね、あの言葉」
 皆もそれを聞いて言う。
「この日輪の輝きを恐れぬならかかった来い!」
「死ね」
 こう言ってだった。エイスのディバリムがビームを広範囲に放った。だが万丈はそれをあっさりとかわしてみせたのであった。
 エイスはそれを見てだ。言うのだった。
「かわしたか」
「巨体と思って甘く見ないことだね」
 不敵な笑みでの言葉だった。
「こうしたこともできるんだよ」
「そうなのか」
「そうだよ、こうしてね」
 それも言うのだった。
「君の攻撃もそう簡単には当たらないと」
「しかしだ」
「しかし?」
「最後に勝つのは俺だ」
 これがエイスの言葉だった。
「それは言っておく」
「それじゃあ。今はね」
「行くぞ」
 また攻撃を仕掛けるエイスだった。万丈のダイターンと一対一で闘う。その間にロンド=ベルはハザルのぐんと全面対決に入っていた。しかしである。
 ワールはそれを見てだ。二人の美女に言うのだった。
「グール」
「はい」
「バレン」
「ここに」
 二人はそれぞれワールの言葉に応える。
「わかっているな」
「はい、それではすぐに」
「参りましょう」
「いや、まだだ」
 しかしだった。ここでワールは言うのだった。
「まだ動きはしない」
「動かれないのですか」
「それは」
「そうだ、まだだ」
 それをまた言うのだった。
「まだ動きはしない」
「では何時なのですか」
「それは」
「今七個艦隊を呼んでいる」
 ここでこう言ってみせたのである。
「それが戦場に着いてからだ」
「ではここは」
「留まっておくというのですね」
「今はだ」
 また言う彼だった。
「いいな、留まる」
「よし、それなら」
「今は」
「英気を養っておくのだ、いいな」
「畏まりました」
 ゴッチも言う。
「では」
「そうだ。しかしハザル=ゴッツォ」
 目の前で戦う彼の軍を見てまた言うワールだった。
「やはり。企んでいるな」
「はい、確かに」
「それは」
 グールとバレンも答える。そのうえで今は積極的に動かない。
 やがて情勢が変わった。ハザルの軍が押されだした。
 彼はそれを見てだ。すぐに判断を下した。
「今日はこれで終わりだ」
「それではここは」
「撤退ですか」
「そうだ、退く」
 こう部下達に答えるのだった。
「いいな、それではだ」
「はい、それでは」
「これで」
「ハザル様」
 エイスもここでモニターに出て来た。
「ではこれは」
「うむ、今はこれでいい」
 彼にも撤退を許すのだった。
「さがれ、いいな」
「わかりました」
 こうしてハザルの軍は撤退した。そうしてであった。
 彼等の軍が去るとだった。戦場に新たな群が姿を現した。
「!?この数は」
「間違いない!」
「来たわね!」
 誰もがレーダーを見て叫んだ。そして。
 バルマーの大軍がまた出て来た。そこにいるのは。
「ヘルモーズか」
「しかも七隻共来るなんて」
「ここで」
「我等の分身が世話になったようだな」
「話は聞いている」
 エペソとラオデキアであった。
「それは存分にな」
「銀河辺境方面軍を壊滅させたそうだな」
「ああ、そうさ!」
 エイジが彼等に答える。
「俺達がやってやったぜ!」
「そうか、やはりな」
「確かに聞いた」
 ジュデッカ=ゴッツォ達もそれに応える。
「既に調べはついていた」
「それを実際に汝等の口で聞いた」
「ならばだ」
「それで間違いないな」
 七人がそれそれ言うがだ。区別はつきにくかった。声も外見も、それこそ髪の色以外は全て同じなのだ。それで区別するのは容易ではなかった。
「それではだ」
「戦わせてもらう」
「よいな」
「何か同じ奴が言ってるようにしか聞こえないけれどね」
 ルナがこのことを実際に言う。
「それでもよ。いいかしら」
「よかろう。来るがいい」
「相手をしてやろう」
 その態度はまさに全く同じだった。
「ではだ」
「戦いをはじめよう」
「待て」
 しかしであった。ここでまた声がしたのだった。
「私もいるのだ」
「むっ、来られたのですか」
「ここに」
 ジュデッカ=ゴッツォ達はその言葉に顔を向けた。
 そしてだった。その大軍の中に巨大な漆黒の男がやって来た。それはまるで機械に見えた。機械がマントを羽織っているかの様である。
 その男が今名乗った。
「我が名はズール」
「ズール!?」
「この軍の指揮官の」
「あいつが!?」
「そうだ、私がそのズールなのだ」
 ズール自身もこう言ってみせたのだった。
「全てを支配する者だ」
「誰事を」
 サンドマンがその彼に対して返した。
「宇宙は誰のものでもない」
「では誰のものだというのだ」
「誰のものでもない」
 彼は己の持っている理想をここで述べてみせた。
「全ての者のものだ」
「戯言を」
 ズールはサンドマンのその言葉をせせら笑ってみせた。
「銀河は、いや宇宙は優れた者の為にあるのだ」
「ではそこに至るまでにいる者は」
「やっぱり」
「そうだ、奴隷でしかない」
 はっきりと言い切ってみせてきていた。
「所詮はだ」
「それならだ」
 ダバがそのズールに言い返す。
「俺のヤーマン族もだというのか!」
「ふむ。カモン=マイロードか」
 そのダバを見ての言葉だ。
「知っているぞ」
「知っているというのか、俺を」
「無論だ」
 号ガンナ返答だった。
「知らぬ筈がない」
「そのうえで言うか!」
 何時になく感情を見せているダバだった。
「奴隷だと!」
「従うならよし。逆らうならだ」
 一応区切ってはいた。
「奴隷にして使う。それだけだ」
「くっ・・・・・・」
「ダバ、よせ」
 ギャブレーがさらに言おうとするギャブレーを止めてきた。
「あの男とはそもそも考えが違う」
「だからなのか」
「そうだ、だからだ」
 こう言うのであった。
「これ以上は言っても無駄か」
「そうか、それなら」
「どちらにしろ戦いは避けられない」
「ああ、そうだな」
 ギャブレーに対してラー=カイラムからキャオが答えた。
「どっちにしろ敵の大ボスが出て来たからにはな」
「それは避けられはしない」
「それならね」
「行くぞ」
 アムとレッシィも言う。
「ここで決着といきたいわね」
「あのズールを倒してな」
 今ワールの軍とそのズールの大軍が合流した。そうしてであった。
 ロンド=ベルに迫る。戦いは第二幕だった。
「いいか!」
「はい!」
「総攻撃を続けろ!」
 ブライトの指示だった。
「数は向こうが圧倒的だ」
「ええ、確かに」
「バルマーの七個艦隊勢揃いですし」
「ここでも」
 それぞれ言うのだった。
「それならですね」
「もう遠慮なしに」
「補給タンクは山程ある」
 シナプスも言ってきた。
「それこそ一分で全て撃ち尽しても構わない」
「それですぐに補給ですね」
「そうして戦えってことですね」
「その通りだ」
 まさにそうだというのだった。
「わかったな。それではだ」
「わかりました」
「それなら!」   
 こうして迫るバルマー軍に総攻撃を浴びせる。ダバもだ。
「ダバ、あれを使うのね」
「ああ、そうする!」
 こうエリスにも答える。そしてだ。
 巨大なバスターキャノンを構えてだ。
 それを放った。巨大な一条の光が敵を切り裂く。
 それで数多くのマシンと戦艦が数隻沈んだ。しかしだった。
 敵はまだ来る。数は健在だった。
「数が」
「まだ来るかよ!」
「よし、それならだ!」
 エリスとキャオが叫ぶその中でだ。また言うダバだった。
 再びバスターキャノンを放つ。それでまた敵を撃つ。
 そのうえでだ。ダバはキャオに対して言ってきた。
「キャオ!」
「ああ!」
「エネルギータンクを出してくれ!」
 こう彼に言うのだ。
「こっちにだ!早く!」
「ああ、そっちだな!」
「一個じゃない!」
 しかも一個ではないというのだ。
「あるだけだ!出してくれ!」
「他の奴のものか」
「当たり前でしょ!」
「私達も戦っているのだぞ!」
 アムとレッシィが叫ぶ。二人もそれぞれバスターキャノンを放っている。
 誰もが総攻撃を放ってだ。エネルギーも弾薬もかなり消耗していた。
 だがそれだけのものはあった。二時間程度戦うとだ。バルマー軍も次第にその数を減らしてきていた。
 それを見てだ。ダバは言った。
「よし」
「ダバ、どうするの?」
「ヘルモーズを狙う」
 見れば一隻射程に入っていた。
「バスターランチャーなら」
「そうね、いけるわね」
「一撃で決める」
 こう言ってであった。狙いを定めてだ。構えて撃った。
 それが貫きだ。ヘルモーズは動きを止めた。
「やったか!?」
「いや、まだだ」
 撃ったダバがキャオに対して言った。
「まだ撃沈していない」
「まだだってのかよ」
「そうだ、大破しただけだ」
 それだけだというのだ。
「それだけだ」
「そうなのかよ」
「そうだ、まだ撃つ」
 こう言って再び構えようとする。しかしだった。
 そのヘルモーズは姿を消した。撤退であった。
「撤退!?」
「間違いない」
 ダバが驚くエリスに対して答えた。
「ここでは撤退するか」
「ズフィルードは出さないの?」
「ああ、それちょっとないだろ」
 キャオがまた言ってきた。
「今敵のラスボスが出てきてるってのによ」
「どういうことだ?」
 ギャブレーもそれがわからなかった。
「敵の総司令官が出てだ。決戦ではないのか」
「それはわからないがだ」
 レッシィは冷静に述べてきた。
「けれどね」
「けれど?どうしたのよ」
「ここでズフィルードが出ないのはいいことだね」
 割り切っての言葉だった。
「それはね」
「そうだな」
「ええ、確かにね」
 アムは彼女の言葉に素直に頷いていた。
「そのこと自体はね」
「ならそれに乗らせてもらう」
 また言うレッシィだった。
「ここはだ」
「そうだな。じゃあここはヘルモーズを撤退させていこう」
 ダバが頷いてだった。
 そのうえでロンド=ベルはヘルモーズを狙っていく。そうしてだ。
 七隻のヘルモーズが全ていなくなった。後はだ。
「数もかなり減ったし」
「後はあいつか」
 ズールを見ての言葉だ。
「あいつを倒して」
「それで」
「マーグ様」
 ロゼがマーグに言ってきた。
「私がまず引き付けます」
「ゼーロンでか」
「はい、その間に」
「そうだな」
 ここでケンジも出て来た。
「コスモクラッシャーもいる。これで引き付けて」
「タケル、御前はだ」
「その間に頼むな」
 ナオトとアキラも言ってきた。
「それであいつを倒せ」
「いいな、それで」
「そうだね、僕達五人だし」
「やれるわ」
 ナミダとミカもそれに賛成した。そうしてだった。 
 まずゼーロンとコスモクラッシャーが動いてであった。それでズールを引き付ける。
「来たか」
「ズール、貴方が」
「話は聞いている」
 自分の方に飛んで来るロゼのゼーロンを一瞥しての言葉だった。
「裏切ったのだな、マーグ共々」
「真実を知っただけです」
 こう返すロゼだった。冷静にだ。
「ただそれだけです」
「詭弁だな。だがいい」
 ズールの言葉がここで変わった。
「何故ならだ」
「何故だと?それは」
「貴様は今私によって倒される」
 だからだというのだ。
「だからいいのだ」
「そう言うのですか」
「そうだ。裏切り者を許す訳にはいかん」
 こう言ってであった。破壊光線を放つ。しかしそれはあえなくかわされてしまった。
「ほう」
 それを見てだ。ズールはまた言うのだった。
「今のをかわしたか」
「それが何か」
「見事だ」
 こうは言った。
「その動きは褒めておこう」
「それはですか」
「そうだ。しかしだ」
 だが、だった、ここで言い加えてきたのだった。
「最後には敗れる。こう言っておこう」
「貴方によってですか」
「私はこの宇宙の支配者になる男だ」
 これがズールの野望だった。
「その私にだ。貴様は殺されるのだ」
「何というプレッシャーだ」
 彼を見てだった。クワトロが呟いた。
「あそこまでのプレッシャーはだ」
「そうだな。そう感じたことはない」
 ハマーンも言う。
「それだけの力の持ち主か」
「そういうことになる。二人共いいか」
 クワトロは今度はタケルとマーグに対して言った。
「用心することだ」
「用心ですか」
「ズールとの戦いは」
「気持ちはわかる」
 こう言いもした。
「だが、だ」
「落ち着いてですね」
「それでなのか」
「そうだ。あのズールという男」
 ズールを見ながらの言葉だ。その彼をだ。
「どうやら尋常な人物ではない」
「確かに」
「超能力もかなりのものだ」
 タケルとマーグがまた話す。
「それを考えると」
「この戦い、容易ではないか」
「容易な戦いなぞありはしない」
 ハマーンらしい言葉だった。
「それも踏まえておくことだ」
「わかりました」
「それならだ」
 コスモクラッシャーも前に出てそのうえでズールの目を引く。その間にだった。
 二機のゴッドマーズが前に出て。そしてだった。まずマーグがタケルに言った。
「いいか、マーズよ」
「うん、兄さん」
「合わせる」
 そうするというのである。
「完全にだ。いいな」
「わかったよ、兄さん」
 タケルも兄のその言葉に頷いてだった。
 そうしてだ。一気に前に出てだ。
「今だ!」
「よし!」
 二人の動きが重なった。そうしてだ。
 二機のゴッドマーズが同時に光を放った。
「マーズフラッシュ!」
「マーズフラッシュ!」
 それでズールを撃った。
「うっ、これは」
「そうだ、ズール!」
 マーグが動きを止めたズールに対して告げた。
「こうして動きを止めてだ」
「そして!」
 タケルも続く。そのうえでだ。
 同時に剣を抜く。そして。
「今だ、兄さん!」
「よし、マーズ!」
「ダブルファイナル」
「ゴッドマーーーーーーーズ!!」
 二人同時に切り裂く。右と左から。それはズールといえど受けきれるものではなかった。
 切り裂かれたズールはあちこちから火を噴いた。そうしてだ。
 そのまま大爆発を起こす。これで勝負は決した。
「何っ、ズール様がか!」
「敗れたというのか」
「まさか」
 バルマー軍はこれで完全に浮き足立った。ここでだ。
「今だな」
「はい」
「そうですね」
 トーレスとサエグサがブライトの言葉に頷いた。そうしてだ。
「一気に勝敗を決する」
「はい、この戦いはこれで終わりですね」
「ここでの攻勢で」
「そうだ、終わる」
 はっきりと言うブライトだった。
「いいな、それではだ」
「はい、全軍総攻撃!」
「一気に勝負を!」
 二人はブライトの言葉を受けてだ。そのまま攻撃に出た。これでバルマー軍は壊走し勝敗は完全に決したのであった。
 残ったのはワールと指揮官達、そしてその僅かな部下達だった。他は碌に残っていない。
 ワールもここで止むを得なく撤退を命じた。しかしここで。
「ロンド=ベルよ」
「何っ!?」
「その声はまさか」
「そうだ、私だ」
 こう言ってであった。彼が出て来た。
 何と宇宙空間にその巨大な姿を見せてだ。そうして言うのだった。
「あれで倒したと思っていたのか」
「違ったっていうのね!」
 アスカが忌々しげに返す。
「それでそんな派手な映像で出て来たっていうのね!」
「全てわかっているのだな」
「わからないものですか!」
 怒った声で返すのだった。
「そんなこと。わからない筈ないでしょ!」
「元気がいいな地球人というものは」
「いや、アスカは特別なんだけれど」
「そんなことは言わなくていいのよ!」
 シンジにも噛み付かんばかりだ。
「大体私は普通よ!」
「その割には凄い闘争心だけれど」
「っていうか何処の山の猿なんだよ」
 甲児も呆れて言う。
「ったくよ」
「そういうあんたは馬鹿猿じゃない」
 いつものやり取りだった。
「全く。ノミ取りでもしていなさい」
「うるせえ!風呂は毎日入ってるぞ!」
 論点がずれていた。
「俺はな!ちゃんと清潔にしてらあ!」
「お風呂は当然でしょ」
 アスカの言葉は厳しいままだった。
「大体ね。あんたはね」
「不潔だっていうのかよ」
「馬鹿だから」
 不潔ではなくそれだというのだ。
「まず頭悪いから。どうしようもないわね」
「あのな、俺はこう見えても手造りで円盤作られてるんだよ」
「ああ、あのUFOね」
「どうだ。凄いだよ」
「全然凄くないわよ」
 また言い返すアスカだった。
「あんなのあたしだって作られるわよ」
「無理だな」
「いいえ、出来るわ」
「手前には絶対無理だ」
 まだ言う甲児だった。
「それはな」
「ふん、何時か絶対に造ってやるわよ」
 そんな話をしながら全員でそのズールを見ていた。彼は言うのだった。
「先程倒したのは私の影だ」
「影だったというのか」
「あれだけの強さの相手が」
「そうだ、私の影だ」
 また言うのだった。
「それに過ぎない。私を本当に倒したければだ」
「へっ、言われなくてもな!」
「今からギシン星に出向いてやるからな!」
「その時にその首貰うさ」
 ケーンとタップ、ライトの言葉だ。
「いいな、それでだ!」
「その首洗っていやがれ!」
「この戦いで御前の戦力もかなり減ったしな」
「生憎だが戦力はまだある」
 ズールはライトの言葉に応える形になっていた。
「我が軍にはだ」
「えっ、まだかよ」
「あれだけ倒してもまだかよ」
「また戦力があるのか」
 ケーン、タップ、ライトは彼の今の言葉に驚きの声をあげた。
「糞っ、どうやらこの軍隊もよ!」
「数だけは本当に凄いな!」
「銀河辺境方面軍と同じか」
 今度は忌々しげに言う三人だった。そうしてだ。
 ズールはだ。ここで言うのだった。
「ではギシン星に来るのだな」
「言われなくとも」
 タケルの声だった。
「そこに行き貴様を」
「ふふふ、そしてマーズよ」
「何だ!?」
「貴様の身体だが」
 彼への言葉だった。
「わかっているな」
「反陽子爆弾か」
「そうだ、貴様からそれを取り除きたければだ」
「貴様を倒すしかないんだな」
「その通りだ。ならば来るのだ」
 また言ってみせるズールだった。
「貴様の命は私が持っているのだからな」
「くっ!」
「待て、マーズ」
 マーグは激昂しようとする弟を宥めた。そのうえでだった。
 ズールに向き直ってだ。そうして問うのだった。
「今はだ」
「追うべきじゃないっていうのかい」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだ。
「ここはだ」
「罠がある!?」
「充分考えられることだ」
 それを警戒してのことだというのだ。
「それにだ。おそらく本体は今はいない」
「そうですね、それは間違いありません」
 ロゼもここで言った。
「ここで影を出してきたということは」
「本体はギシン星にいる」
 また言うマーグだった。
「それは間違いない」
「じゃあ今は」
「追うべきではない」
 またタケルに告げた。
「わかったな」
「ああ、それじゃあ」
 彼もそれに頷いた。そうしてだった。
「今は」
「そうだ。まずは戻ろう」
 軍はだというのだ。
「そしてまた進もう」
「帰ろうか、艦に」
 こうしてだった。戦いを終えてそのうえで再び艦艇に戻りフロンティアに入った。そこでだ。
 フロンティアの中でだ。万丈が言った。
「間違いないね」
「このフロンティアにですね」
「いますか」
「ありますか」
「うん、いるにしろあるにしろね」
 万丈は皆に答えていた。
「ここにはあの男が気になるものがあるね」
「ハザル=ゴッツォはだ」
 ここで言ったのはヴィレッタだ。
「ああした男だ。野心家だ」
「野心家のうえにまだあるね」
「そうだ。策謀家でもある」
 そうだとも万丈に話すのだった。
「そして何もなければ動くような男ではない」
「無駄な動きはしないってことだね」
「そうだ。間違いないな」
 また言うのだった。
「どうやら侵入者はいなかったそうだが」
「侵入者の危険もある」
「そうなるのか」
「それも考えておくことだ」
 また言うヴィレッタだった。
「今はなかったにしてもだ」
「そうですね。今は」
「フロンティアに何があるかまだわかりませんけれど」
「それでも」
 こう話されるのだった。
「それでも何をしてくるかわからないから」
「今はですね」
「用心して」
「用心はしていく」
 ヴィレッタの言葉は鋭い。そしてだ。
「だがだ。進撃は続けるべきだ」
「このままギシン星にまで」
「第一の敵はズールですか」
「それは変えたら駄目だな」
 ケンジは真面目な顔で話す。
「絶対に」
「ハザル=ゴッツォの軍は第二攻撃目標でしかない」
 それに過ぎないというのだ。
「第一はやはりギシン星、そして」
「ズールの軍」
「それだな」
 アキラとナオトもそれを言う。
「あの連中を倒さないと」
「今は」
「そうね。それが第一ね」
 ミカもここで頷いた。
「まずは。何といってもね」
「よし、それなら」
「今は」
 皆顔をあげた。そうしてだった。
「フロンティアのことは万全に護りつつ」
「そのうえでギシン星を目指そう」
「今は」
 こう話をしてだった。彼等は戦いに向かう。あらためてギシン星に進路を定める。ズールとの決戦をそこに見ていた。


第二十六話   完


                          2010・5・8 

 

第二十七話 ワールの意地

                    第二十七話 ワールの意地
「よいな」
「はい」
「わかっています」
「無論です」
 ワールの言葉にだ。カッチ、バレン、グールが応えていた。
「間も無く来ます」
「ロンド=ベルがです」
「ここに」
「決戦だ」
 彼は三人に対して言った。
「いいな、決戦だ」
「ギシン星に来る前に」
「ズール様の御手をわずらわせる前に」
「我等の手で」
「既に七個艦隊は再編成してある」
 あの七個艦隊もだというのだ。
「彼等と共にだ。ロンド=ベルを撃つ」
「さもなければですね」
 グールの顔が曇っていた。
「我々が」
「そうだな」
 カッチもだ。曇った顔で言うのだった。
「ズール様はそうした方だ」
「そうだな」
 バレンも頷く。
「厳しい方だ。失敗は許されぬ」
「倒さなければ死だ」
 ワールがまた三人に告げた。
「我等のだ」
「粛清の対象とならない為にも」
「ここは何があっても」
「絶対に」
「そうだ。それにだ」
 ワールはさらに言う。
「意地があるな」
「武人の意地」
「それですね」
「無論です」
 三人も伊達に軍を率いているわけではない。だからだった。
「だからこそ今は」
「何があろうとも」
「勝たなければなりませんね」
「その通りだ。勝つ」
 ワールの言葉には決意があった。
「いいな、それではだ」
「よし、行こう」
「それではだ」
「今は」
 こう話してだった。ワールはまた言った。
「いいか」
「むっ、これは」
「杯ですか」
「そして酒ですか」
「まずはこれで意をあげるぞ」
 こう三人に告げた。
「いいな、勝利を我が手に」
「はい、勝利を我が手に」
 三人も言うのだった。そうしてだった。
 杯の中の酒を飲みそうして意を決するのだった。
 ロンド=ベルでは神代が皆に話していた。忍者の服を着てだ。
「つまり。至る場所に潜んでいる可能性はあります」
「そうなのです」
 めぐみもだった。彼女も黒装束で皆に話していた。
「忍術はそうした術ですから」
「刺客にもなります」
「そうだよな」
「それはな」
 皆でこれで話すのだった。
「これまでのことも考えたら」
「絶対に何か仕掛けて来るだろうし」
「その時は」
「例えばですけれど」
 また話すめぐみだった。
「シュバルツ=ブルーダーさんも忍者ですし」
「あの変態ね」
 ここでまた強烈な拒否反応を見せるアスカだった。
「あれはまた極端でしょ」
「ですが忍者なり工作員は何処からでも来ます」
「そして潜みます」
 神代の背には忍者刀まである。
 そしてだ。その手に手裏剣を出してみせた。星に似た形のそれをだ。
「これですが」
「あっ、手裏剣」
「それですか」
「これも先に毒を塗ればです」
「凄い威力がある」
「そうなのね」
「はい、そうです」 
 その通りであるというのだ。
「こんな小さな武器でもです」
「はい、そうですね」
 ボルフォッグも説明する側にいる。
「私も手裏剣を使いますからよくわかります」
「暗殺用の武器かあ」
「手裏剣って」
「俺のサザンクロスナイフも手裏剣だけれどな」
 今言ったのは甲児だ。
「マジンガーのな」
「マジンガーに今乗ってるのは俺だわさ」
 ボスが名乗ってきた。
「兜、御前はマジンカイザーじゃねえか」
「おっと、そういえばそうか」
「そうだわさ。けれど手裏剣は確かにそうだわさ」
「だよな、かなり効果があるんだよな」 
 また言う甲児だった。
「威力もそこそこでな」
「しかし現実の手裏剣はです」
 これを言うボルフォッグだった。
「そうした為に使うものです」
「そして背中のその刀も」
「忍者刀も」
「はい、そうです」
 今度は神代が答えた。
「暗殺や様々な道具に使えます」
「殆ど十徳ナイフなんだな」
 今言ったのはサンシローだった。
「つまりは」
「おい、サンシロー」
「ここでそれか」
 リーとピートは十徳ナイフに突っ込みを入れた。
「幾ら何でもだ」
「例えが古くはないか」
「あれっ、そうか?」
 だがサンシローには自覚がなかった。
「俺はそうは思わないけれどな」
「せめてサバイバルツールと言え」
 サコンも言う。
「今はだ」
「そんなものもあるのかよ」
「はい、これです」
 ブンタがその様々な刃や穴があるカードの様なものを出してみせた。
「これもあります」
「へえ、こんなのなのか」
「すげえ便利そうだな」
 ヤマガタケも言う。
「これってよ」
「俺はいつも十徳ナイフを使ってるけれどよ」
 そうだというのである。
「駄目か、それは」
「駄目じゃないけれど」
「幾ら何でも古過ぎるし」
「そうよね」
 皆それを言うのだった。
「ちょっとねえ。かなりっていうか」
「まあそれでも使えることは使えるけれど」
「懐かしいし」
 それを話してだった。
 そしてだ。皆で話すのだった。
「まあとにかく。忍者の刀って色々使えるのね」
「それも工作の道具に」
「そういうことなんだ」
「はい、そうです」
 また話す神代であった。
「こうした道具を持って潜入していることも考えられます」
「超能力者もいるし」
「余計に厄介よね」
「そうだな」
 マーグもここで頷く。
「どういう方法でも忍び込めるものだ」
「宇宙空間でもかあ」
「難しいな」
「そういえばそういう宇宙生物いたよな」
「ああ、ビーグルとかいう船だったっか?」
「その世界でね」
 こんな話にもなるのだった。
「出てたよな」
「そういうの」
「ああいうの出たら怖いよな」
「そうよね」
「流石にそういうのはいないみたいだけれど」
「色々なのがいても」
「その色々なのにしてもよ」
 今言ったのはエリスだった。
「皆同じよね」
「同じ?」
「どういうこと?それ」
 エリスの言葉にヒギンズとユングが問うた。
「それは」
「同じっていうと」
「この三人が同じとかじゃねえよな」
 シンはまずはこう冗談めかして言った。
「まさかとは思うけれどよ」
「じゃあシンとエイジは同じになるよ」
 ヒメはそのエイジにこう告げた。
「勇とサイも」
「だよな。だから違うか」
「うん、違う」
 また言うヒメだった。
「それは」
「じゃあ何が同じなんだ?」
 エイジはここであらためて腕を組んで言った。
「それだったらよ」
「だから。私やチャムは違うけれど」
「っていうと雰囲気じゃない」
「そうだよな」
 皆それはわかった。
「けれど何が同じ?」
「それだったら」
「地球人もバルマー人もゾヴォーク人も」
 彼等がだというのだ。
「それにバックフラン人もそうじゃない」
「あっ、確かに」
「言われてみたら」
「そうよね」
 皆言われてこのことに頷いた。
「地球人とバルマー人だけじゃなくて」
「ゾヴォークだってそうだったし」
「誰もがね」
 皆それに気付いたのだった。
「同じよね」
「そうそう、考え方まで」
「よく考えたら」
「私達の世界やバイストンウェルもだったな」
 ロジャーも考える顔で呟く。
「そういえば」
「何もかも」
「そうか」
「そうだ、何もかもだ」
 また言うロジャーだった。
「私達は」
「違う世界はパラレルにしても」
「バイストンウェルにしても」
 この二つの世界についてはこうわかっていた。
「それは置いておくしても」
「宇宙の人類は殆ど同じ」
「これって一体」
「どういうことかしら」
「何かルーツの関係?」
 今言ったのはダバだった。
「それなら」
「ルーツっていってもよ」
 その彼にキャオが言ってきた。
「俺達は元々ヤーマンにいたよな」
「ああ」
 ダバもそのことはよくわかっていた。
「それでも生物学的にはバルマーと同じだよな」
「少し背が大きいけれどね」
 リツコがこう言い加えはした。
「それでも同じよ」
「地球人やバルマー人と」
「そしてゾヴォークとも」
「おまけにバックフラン人とも」
 彼等の話も出た。
「何もかもが同じ」
「そういうことなの」
「それはどうしてかしら」
 今首を傾げさせたのはドロシーだった。
「考えてもわかりにくいわね」
「あのゼゼーナンにしてもハザル=ゴッツォにしてもだ」
 万丈が腕を組みながら述べた。
「考えは悪い意味で僕達と一緒だった」
「ああ、三輪長官とかと」
「同じ」
「確かに」
 このことも話すのだった。
「何もかもが同じ」
「性格だって」
「能力もそうだしね」
 ミサトは能力についても指摘した。
「超能力の有無とかニュータイプはあるにしてもね」
「全てが同じ」
「そういうことなのね」
「同じ人間なんだ」
「それは間違いないわ」
 ミサトはまた言った。
「ただ、ルーツははっきりしないわね」
「今後はそれについて考えることになります?」
 マヤがミサトに対して突っ込みを入れた。
「そのことも」
「そうよ、それも」
 ミサトはマヤの言葉に答えた。
「考えていくことになるわね」
「あれっ、そういえば」
 今シンジがふと言った。
「ズフィルードですけれど」
「あれがどうしたのよ」
 アスカがそれに反応を見せる。
「あの敵の恒例のボスキャラが」
「あれってバルマーの創世神だったよね」
「ああ、そやったな」
 トウジがシンジの今の言葉に頷いた。
「そういうことやったな」
「しかも何か絶対神っぽいよね」
「絶対神っていったら」
「つまりは」
 ケンスケとヒカリもここであることに気付いた。
「ユダヤ教とかキリスト教の?」
「ああいうのかしら」
「似てない?何か」
 また言うシンジだった。
「本当に」
「そうね」
 レイはシンジの今の言葉に頷いた。
「そういえば確かに」
「何でかな、これって」
 シンジは考える顔になっていた。
「それに十二支族だったっけ」
「そうだ」
 マーグも答えた。
「霊帝の下の十二支族だ」
「それってヘブライの」
「ああ、それな」
「前から思ってたけれど」
「何か似てるし」
「そっくりだったし」
 皆またそれぞれ言うのだった。
「それに何か相手の名前もどうも」
「ヘブライっぽくない?」
「何か」
 そのことも話す彼等だった。今度はバルマーの言葉についてだ。
「ラオデキアとかエペソとか」
「その名前って」
「ヘルモーズなんて名前も」
「それも」
「バルマー帝国はヘブライ?」
 こんな説も出て来た。言ったのはミヅキだった。
「まさかと思うけれど」
「いや、それはないでしょ」
「そうよね、それは」
「幾ら何でも」
 皆それは否定しようとする。
「ちょっと。地球とバルマーの文化や宗教が同じ?」
「そんなのちょっと」
「有り得ないっていうか」
「そうよね、それは」
「かなりっていうか」
「いや、考える必要はあるかも知れない」
 だがここでレーツェルが言った。
「若しかしたらだ」
「まさか、そんな」
「そんなことがある?」
「バルマーと地球が」
「それは今すぐわかることではない」
 レーツェルはここでこうも言った。
「ゆっくりと考えればいい」
「そうですか。それじゃあ」
「今はとりあえず」
「戦いですね」
「それですね」
「そうだ、それに専念することだ」
 レーツェルもそうするべきというのだった。
「今はだ」
「わかりました、それじゃあ」
「そうしましょう」
 こう話してだった。彼等は戦いに思いを馳せる。そのうえでギシン家に向かう。
 そのギシン星に間も無くの場所でだ。そこでだ。
「敵です」
「来ました」
 すぐに報告があがった。偵察に出ていたジュンコとマーベットからの報告だ。
「どうします?それで」
「ここは」
「答えはもう出ている」
 その二人にオリフアーが言葉を返した。
「それは既に」
「戦いね」
「そうだ、それしかない」
 こうラー=カイラムの艦橋とモニターで話すのだった。
「それで敵の規模は」
「七個艦隊よ」
 ジュンコが言ってきた。
「ヘルモーズが七隻いるわ」
「そうか」
「そして」
 今度はマーベットが報告してきた。
「ワール副司令の艦もいるわ」
「そうか、それではだ」
 その報告を聞いたマーグの言葉だった。
「ワールも腹を括ったな」
「腹を括った!?」
「どういうことですか、それは」
「ズールは冷酷な男だ」
 彼はそこから話すのだった。
「敵に対してだけでなく味方に対してもだ」
「ってことは」
「これ以上の失敗は」
「そうだ、粛清の対象になる」
 それだというのだ。
「だからだ。ワールもここで決戦を挑むつもりなのだ」
「そういえばよ」
 またマーベットが報告してきた。
「ギシン系の兵器もかなりの数よ」
「そうか、やはりな」
「数、百万以上よ」
「百万か」
「副司令官の数にしては」
「多い?」
 このことについても考える。
「やっぱり」
「多いよね」
「確かに」
「やはり決戦か」
 オリファーもここで言う。
「最初のな」
「最初の、なのね」
「ああ。本当の決戦は何と言ってもギシン星だ」
 そこだとマーベットにも返す。
「そこになるにしてもだ」
「決戦は一度だけじゃない」
「何度もある」
「そういうことなんですね」
「そういうことになる。それではだ」
 皆オリファーの言葉に応える。
「はい、じゃあ」
「決戦ですね」
「最初の」
「そうだ、最初のだ」
 こう言ってだった。まずはそのマーベットとジュンコを戻させた。そうしてだった。
 彼等は全軍で向かう。そのうえでだった。
 バルマー軍を迎え撃つ。既に全軍戦闘態勢に入っていた。
「いるな」
「ああ」
「ヘルモーズが七隻に」
 まずはそのヘルモーズが目についたのだった。
「それにギシン系の兵器」
「それが百万か」
「ワールの艦は後方にいる」
 マーグが指差すようにして言った。
「そこで全体の指揮を執るようだな」
「何か本気ですね」
「ああ、ワールにしてもな」
「敵も揃っている」
「本当に決戦か」
 そしてだった。ワールの方も言うのだった。彼はまずカッチに対して話す。
「いいか」
「はい」
 カッチが彼の言葉に応える。そしてバレンとグールもそこにいた。
「ワール様、ここは」
「何としても」
「そうだ。退くことは許さん」
 ワールはそのバレンとグールに対しても話す。
「この戦いはだ」
「生きるなら戦う」
「それだけですね」
「そうだ、それしかない」
 また言うのだった。
「何があってもだ」
「戦いに勝つ」
「それしかですね」
「では閣下」
 カッチも言ってきた。
「中軍は私が受け持ちます」
「右は私が」
「私は左を」
 バレンとグールも既に配置についている。
「お任せ下さい」
「是非」
「閣下、それではです」
「我々はそれぞれの場所を受け持ちます」
「それで宜しいですね」
「頼んだぞ」
 ワールはジュデッカ=ゴッツォ達に対しても答えた。
「この戦い、全員の奮闘にかかっている」
「はい、だからこそ」
「我々の命、閣下にお任せします」
「それでは」
「行くぞ」
 こう言ってだった。彼等も攻撃を向かわせるのだった。
 そしてロンド=ベルもだ。動いた。
 敵の動きを見る。このうえでミネバがハマーンに問う。
「ハマーン」
「何でしょうか」
「ここは中央突破かしら」
「いえ、今はそれよりもです」
「それよりも?」
「今は三方から来ています」
 こう言うのだった。
「しかも同時にです」
「同時になのね」
「ですから。今はです」
「今は?」
「この動きを見ます」
 こう言ってだった。
「敵はほぼ横一列ですね」
「横一列に来る」
「ミネバ様はどう御考えでしょうか」
 ハマーンの方からの言葉だった。
「この場合は」
「そうね、ここは」
「ここは?」
「敵が横一列に来るのなら」
 そこからの話だった。
「ここは」
「ここは?」
「左に動きましょう」
 そうするというのだった。
「左にね」
「左にですか」
「このまま前に進んでも囲まれるだけだわ」
 こう言うのだった。
「だからね。今は」
「左に進んで、ですね」
「ええ、左に進んでそして」
 ハマーンに対して話し続ける。
「そのうえでね」
「横から攻撃されますね」
「ただ、このまま動いてもやられるわ」
 ミネバはこのこともわかっているのだった。
「だからダミーを出して」
「ダミーをですか」
「それを出しましょう」
 ハマーンに対して話を続ける。
「そしてそれで相手の目をくらませて」
「そのうえで左にですね」
「そう、回り込むのよ」
 ミネバは言いながらグワダンの艦橋のモニターに映るその敵を見ていた。それはやはり一列だった。一列のままそのまま進んで来るのだった。
「それでいいかしら」
「はい」
 ハマーンの顔が微笑んでいた。
「それではその様に」
「いいのね、それで」
「ミネバ様の仰る通りです」
 また話すハマーンだった。
「ここはそれで行くべきです。ただ」
「ただ?」
「このまま回り込んでも動きを察知されます」
 ハマーンはこのことも言った。
「ですからここは徹底したジャミングも行いましょう」
「ミノフスキー粒子をなのね」
「敵は焦っています。そこまで考えは回っていない模様です」
「ではそれを衝いて」
「はい、ダミーの姿を見せて」
 まずはそうしてだというのだ。
「我々の姿は隠してです」
「それで攻めるのね」
「そうしましょう、宜しいでしょうか」
「そうね。そこまで考えは回らなかったわ」
 ミネバはグワダンの艦橋において頭を少し下げてしまった。
「私は」
「いえ、そうではありません」
 そうではないというのだ。
「ミネバ様、よくぞそこまで見られました」
「そこまでなの」
「はい、この戦いはこれで勝てます」
 温かい言葉だった。ミネバを本当に見ているからこその言葉だった。
「お任せ下さい」
「じゃあこのまま」
「はい、全軍左へ!」
 ハマーンが指示を出す。
「ダミーを出す。そして我々の姿はミノフスキー粒子で消す!」
「了解です」
 応えたのはイリアだった。
「それではその様に」
「そして我々は」
「攻めますね」
 ランスとニーも問うのだった。
「百万の兵に切り込む」
「これから」
「そうだ、敵の数はいつも通りだ」
 今更百万の敵を前にしても恐れる彼等ではなかった。これまでその程度の戦いは繰り広げているからだ。それで恐れる筈もなかった。
「だからだ」
「わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はミネバとハマーンの作戦通りに動いた。そのままダミーを出し姿を消した。そうしてバルマー軍はそのダミーに近付く。
 ダミーは今は動かない。ワールはそれを見ても気付かなかった。
「引き寄せて迫るか」
「どうやら」
「このまま」
 ワールに対してバレンとグールが答えた。
「では我々はです」
「彼等を一気に」
「そうだ、一気に殲滅する」
 ワールは言い切った。
「いいな、百万の兵全てを投入してだ」
「一撃で屠りましょう」
 カッチも言ってきた。中軍を率いる彼もだ。
「このまま」
「ではこのまま」
「敵を」
 こうして彼等は気付かないまま攻撃に入る。気付いていないのは敵についてだけではなかった。
 そしてだ。そのまま攻めるとだった。
 一撃で終わった。何もかもが。
「!?」
「何っ!?」
「手応えがない」
「しかも」
 ダミーはダミーだ。攻撃を受ければそれで消える。只のバルーンに過ぎないからだ。
 それで攻撃をしてもだった。何にもなりはしなかった。ワールはこの時になって気付いたのだった。
「まさか」
「はい、どうやら」
「そのまさかのようです」
 ジュデッカ=ゴッツォ達がここでワールに言った。
「我等は欺かれていました」
「これはダミーです」
「そして」
 ここからだった。彼等は既に察していた。
「来ます」
「今にでも」
「くっ、全軍周囲に警戒を張れ!」
 ワールはすぐに全軍に告げた。
「敵が来るぞ!」
「!?閣下!」
「右です!」
 彼等から見てだった。ロンド=ベルはそこにいた。
 そしてだ。彼等は姿を現すと共にだった。彼等の総攻撃にかかった。
「迂闊だったな」
 その先頭にはハマーンがいた。彼女はファンネルを放った。
 それですぐに敵を屠る。一気にだった。
 無数の爆発を前にしてだ。ハマーンは言うのだった。
「ミネバ様の作戦、必ず成功させる」
「はい、ハマーン様」
 マシュマーがここでハマーンの後ろから応える。
「それではここは」
「行くんですか、マシュマー様」
 ゴットンは少し及び腰だった。
「まさかと思いますけれど」
「ゴットンよ、敵は決戦を挑んでいるのだ」
 完全にいつものマシュマーだった。
「それではそれを受けないでどうする」
「やっぱりなんですね」
「そうだ、行くぞゴットン!」
 言ってる側から動くマシュマーだった。
「勝利を我が手に!」
「だから何で毎回こうして派手な戦いになるんですか!」
「派手で上等だよ!」
 キャラもいつも通りだった。
「あはははははははは!行くよ!」
 派手にファンネルを放つ。そして彼女も敵を屠るのだった。
「さあて、楽しいパーティーのはじまりだよ!」
「パーティーって」
「ゴットン、来るのだ!」
 マシュマーからも言うのだった。
「さもなければ置いていくぞ!」
「わかりましたよ」
 渋々頷くのだった。
「それじゃあ」
「今こそ決戦の時!」
 マシュマーのテンションはさらにあがる。
「ライトよ、行くぞ!」
「ああ、俺なんですか」
「そうだ、私に近いものを感じるからだ」
「ここでそのネタは」
「いいではないか」
 何故か笑うマシュマーだった。
「こういうのが面白いのだからな」
「そういうものですかね」
「ネタを出せる相手がいてこそではないか」
 まさにその通りだった。
「違うか?こういうネタを言えるのもだ」
「それはその通りですね」
「わかったらゴットン」
「はい」
「行くぞ」
 こう言ってそれから攻撃にかかるのだった。ロンド=ベルは一気に攻撃にかかる。キャラもゲーマルクのそのファンネルを放つのだった。
「行きな!」
「う、うわっ!」
「何だあの数は!」
 ゲーマルク特有のマザーファンネルを中心としたチルドファンネルも入れた特別な攻撃だった。それによって敵を一機ずつ撃ち抜いていく。そのファンネル達を縦横に扱ってみせるキャラの技量も流石であった。
 戦いは一転してロンド=ベルのものになった。彼等はそのまま勢いを得て敵を次々と薙ぎ倒していく。勢いはもう抑えられなかった。
 百万の大軍は瞬く間にその数を減らしていく。それでだった。 
 ヘルモーズ達も敵に向かうのだった。だが。
「くっ、この戦い方」
「慣れているな」
「このヘルモーズとの戦いに」
 彼等は目の前の敵の動きを見てすぐにそれを察した。
「どうやらな」
「やはりそれだけの場数を踏んできているか」
 主砲を出してもそれは当たらない。逆に攻撃を受ける始末だ。
 そしてだ。ここでワールが言ってきた。
「いいか」
「はい」
「何でしょうか」
「ここは頼めるか」
 こう言うのだった。
「ここはだ。いいか」
「ズフィルードになるのですね」
「それですね」
「そうだ、それだ」
 まさにそれだというのだった。
「それを頼めるか」
「わかりました」
「では」
 すぐに頷く彼等だった。
「その様に」
「そうさせてもらいます」
「頼んだぞ。それではだ」
 ここまで言ってであった。彼等はロンド=ベルに向かう。そのうえで攻撃にかかろうとする。そにカッチやバレン、グール達も来た。
「閣下、ここは」
「我々も」
「前線に」
「うむ、そうだな」
 ワールは三人に対しても頷いた。
「ここはな。そうしよう」
「はい、では」
「このまま行かせてもらいます」
「御言葉に甘えまして」
「私も行く」
 そして彼自身もこう言うのだった。
「態勢を立て直しそのうえで向かうぞ」
「では」
「そうして」
 こうしてだった。彼等は総力戦に移った。それでロンド=ベルを覆そうとする。戦いをそれで自分達のものにしようとする。しかしだった。
 彼等はそのまま押し切られていく。最早ロンド=ベルの勢いは止められなかった。
「ハマーン」
「はい、ミネバ様」
「グワダンも前に行かせるわ」
 こう言うのだった。
「それでいいわね」
「はい、御気をつけて」
 それでいいと答えるハマーンだった。
「前にヘルモーズがいます。それに御注意を」
「ヘルモーズがなのね」
「はい」
「それが来ますので」
 このことを伝えるのを忘れなかった。
「あの敵の旗艦はかなりの戦力ですから」
「そして沈めたその後も」
「そうです、ズフィルードもです」
 ハマーンの話は続く。
「最後の切り札もいますので」
「わかったわ。じゃあ」
「まずは一気にヘルモーズを攻めて下さい」
 ハマーンは的確にアドバイスを下した。
「そしてそのうえで」
「ズフィルードを」
「はい、その様に」
「わかったわ。じゃあ」
 こうしてだった。ミネバのグワダンは前に出る。そしてだった。
「主砲前方に」
「わかりました」
「目標は敵の旗艦ですね」
「ええ、そうよ」
 こうランスとニーにも答える。
「前方のヘルモーズにね」
「既にかなりのダメージを受けています」
「それでは」
「ええ、いけるわね」
 ミネバはその前方のヘルモーズの巨体を見据えながら述べた。
「この一斉発射で」
「照準は定めました」
 今度はイリアが報告してきた。
「ではミネバ様」
「そうね」
 その報告に頷く。そして。
「主砲一斉発射!」
「主砲一斉発射!」
 攻撃命令はイリアによって復唱される。そうしてだった。
 グワダンの主砲が火を噴きヘルモーズを撃ち抜いた。これでだった。
 その巨体が完全に動きを止めた。そうしてだった。
 その中からあのマシンが姿を現してきた。ズフィルードだった。
「出て来たわね」
「はい、ズフィルードです」
「来ました」
 こう述べるランスとニーだった。
「どうされますか」
「あの相手には」
「ハマーンの言った通りよ」
 言いながらハマーンのその言葉を思い出していた。
「そのままよ」
「はい、それでは」
「ここは」
「ズフィルードに集中攻撃を」
 そうせよというのだった。
「いいわね、各機で」
「はい、わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。各機で囲む。それが至る場所で見られていた。
 遂に七機のズフィルードが全て出た。そしてだった。
 そのズフィルード達も集中攻撃を受けていく。彼等が出ても劣勢は覆せない。
 だがその中でだ。ジュデッカ=ゴッツォ達はワールに言ってきた。
「閣下、ここはです」
「我等にお任せを」
「ですから」
「だからどうだというのだ」
 だがワールの言葉は険しかった。
「それでだ。どうだというのだ」
「どうだといいますと」
「それは」
「ですから」
「撤退せよというのだな」
 彼等の言いたいことは既に察していたのである。
「そういうことだな」
「はい、そうです」
「その通りです、ここは」
「撤退して下さい」
 ワールの予想通りだった。こうそれぞれ告げる彼等だった。
「我等が足止めします」
「ギシン星に落ち延びて下さい」
「そしてそこで再び」
「閣下、ここはです」
「そうしましょう」
 バレンとグールも言ってきた。
「ズール様には我々がとりなします」
「ですからどうか」
「撤退して下さい」 
 カッチも言ってきた。彼等はワールを撤退させ再び戦うことを望んでいた。
 しかしであった。ここでワールは言うのだった。
「いや」
「いや!?」
「いやといいますと」
「それはしない」
 要するに撤退はしないというのだった。
「私もここで戦う、最後までだ」
「ですがこのままではです」
「そうです」
 バレンとグールはなおも言う。
「ですからここは」
「どうか」
「何度も言うがそれはしない」
 ワールはあくまでこう言うのだった。
「何があろうともだ」
「撤退はされないとなると」
「最後まで、ですか」
「ここで」
「そうだ、最後まで戦う」
 今そのことをはっきりと言うのだった。
「ここで倒れようともだ」
「どうしてもですか」
 ヒルデルヒアが問うてきた。
「それは」
「そうだ、勝利か敗北か」
 二元論さえ言ってみせる。
「それだけだ」
「わかりました」
 最初に頷いたのはカッチだった。
「では。我等もまた」
「全軍攻撃に移る」
 ワールも己の乗艦を前に出しながら述べた。
「いいな、それではだ」
「はい、それでは」
「このまま残った全軍で」
「ロンド=ベルに向かう」
 具体的な攻撃目標まで告げたのだった。そして。
 そのまま総攻撃に移る。全軍一丸となった攻撃だった。
 ロンド=ベルからもそれはわかった。バルマーのその最後の大攻勢がだ。
「おいおい、ここでかよ!」
「攻勢かよ!」
「全軍一丸なんてな」
「そう来たか」
 それを見てだった。ダイテツは冷静に述べた。
「ならばだ」
「艦長、それではここは」
「どうされますか?」
「決まっている」
 冷静に答えるダイテツだった。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「どうしましょうか」
 テツヤとエイタが問い返す。
「攻撃ですか、それとも」
「守りでしょうか」
「勢いを殺してはならない」
 ダイテツの最初の返答はこれだった。
「だからだ。ここはだ」
「攻勢ですか」
「それですね」
「決してだ」
 それは念押しだった。
「ここで若し守りに入ればだ」
「数に劣る我々は」
「このまま、ですか」
「そうだ、倒されるのは我々だ」
 そうなるというのである。
「だからだ。いいな」
「はい、それでは」
「わかりました」
 こうしてだった。彼等はそのまま攻勢を続ける。まずはだ。
「ズフィルードだ!」
「ズフィルードをまず倒せ!」
「いいな!」
 こう命令が出されていく。
 そしてそのままにだ。七機のズフィルード達に攻撃が集中した。
 それによって遂に動きが止まった。それでだ。
「くっ、閣下」
「申し訳ありません」
「我々はここで」
「そうか」
 ワールは彼等のその言葉を受けて述べた。
「御苦労だった」
「ではお先に」
「先にいっています」
「うむ、後で私もいく」
 ワールはこうその七人に告げた。
「先に楽しくやっていてくれ」
「わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はそのまま炎の中に消えていく。七機のヘルモーズがまず撃墜されたのだった。
 しかしだ。まだ敵はいた。
「次に出て来たのはギシン系の兵器だな」
「はい」
「それですね」
 グローバルに対して艦橋から返答が来た。
「彼等も倒さなければ」
「勝利を掴めません」
「よし、それではだ」
 それを聞いてだった。グローバルも言うのだった。
「このまま攻撃を続ける」
「わかりました」
「それでは」 
 こうしてだった。彼等はそのギシン系の軍にも攻撃をはじめる。敵の本軍にだ。
 まずはカッチだった。
「斗牙、いいな!」
「うん、エイジ!」
 二人で息を合わせていた。
「あの硬そうな奴をだ!」
「これで!」
 グラヴィオンのソードが唸りだった。彼が乗っている艦艇が上から下に両断された。それで終わるだった。
 カッチは炎の中で部下達に問うた。
「いけるか」
「残念ですが」
「それは」
 艦橋は既に炎の中に包まれている。それではだった。
「最早無理かと」
「艦は今にも」
「そうか、わかった」
 それを聞いて静かに頷く彼だった。
「それではだ」
「司令、どうされますか」
「ここは」
「ならばどうしても仕方あるまい」
 達観した言葉であった。
「最早な」
「ではここは」
「動かれないですか」
「潔さも大事だ」
 腕を組んでの言葉だった。
「それではな」
「はい、では我々も」
「御供致します」
 部下達もそれに頷いてだった。静かな顔になって死を待つのだった。やがて艦全体が炎に包まれてだ。彼は壮絶な戦死を遂げるのだった。
 そしてだ。バレンとグールもだった。
 彼等の艦艇もそれぞれだ。ダイモスとダルタニアスの攻撃を受けてだった。炎に包まれていた。
 その中でだ。それぞれ直属の部下達に告げた・
「総員退艦せよ」
「しかし閣下は」
「どうされるのですか?」
「私はいい」
 こう言うのだった。
「私はだ。いい」
「バレン様、それでいいとは」
「グール様、まさか」
「ええ、そうよ」
「その通りよ」
 笑顔でそれぞれの艦橋において言うのだった。
「我々はここで逃れても敗北している限りは粛清よ」
「それならばね」」
「わかったわね」
「はい、それでは」
「ここで」
 部下達はだ。二人のその言葉に頷いてだった。
「我々も御供致します」
「宜しいでしょうか」
「何っ、卿等もだと」
「しかしそれは」
「いえ、構いません」
「望むところですから」
 誰もが微笑んで言うのだった。
「我々もまた」
「御一緒させて下さい」
「そう、そこまで言うのならね」
「わかったわ」96
 二人も部下達のその言葉と心を受けた。
「それならね」
「共に」
「有り難うございます、それでは」
「行きましょう」
 彼女達の艦も沈んだ。そしてだった。
 残りはワールだった。既に軍は殆どいなくなっている。
 それでもだ。彼は戦い続けていた。
「まだだ!まだ戦え!」
「はい、わかっています!」
「ここは」
「最後まで戦うのだ」
 強い言葉だった。
「いいな、最後までだ」
「そしてギシン家の誇りを」
「奴等に見せてやりましょう」
「そうだ、そうするのだ」
 これがワールの考えだった。
「今はだ。いいな」
「では全軍ここで」
「突撃ですか」
「そうだな」
 部下達の言葉を受けるのだった。そしてだ。
 彼等はそのまま突撃を敢行する。命を捨てていた。
 ロンド=ベルはそれを見てだ。すぐに動いた。
「いいか!」
「はい!」
「ここはどうされますか」
「このまま攻める」
 今指示を出したのは大河だった。
「そうする。いいな」
「これまで通りですね」
「勢いを殺さずに」
「その通りだ。そしてだ」
 ここで大河は彼に言った。その彼は。
「凱君」
「ああ」
「頼んだぞ」
 こう言うのだった。
「いいな、ここはだ」
「あの敵艦をですね」
「そうだ、頼んだぞ」
 大河はまた凱に告げた。
「君に任せる」
「わかりました」
 それでいいと返した凱だった。
「それでは!」
「おう、脇は任せな!」
「私も参ります」
 ゴルディマーグとボルフォッグが左右を固める。そのうえで突き進む。
 そうしてだった。ガオガイガーはその手にあれを出してきた。それは。
「ブロウクンマグナムッ!!」
 それを放ったのだった。拳は激しく回転しながら敵艦を貫いた。それで終わりだった。
「ぐっ・・・・・・」
「勝負あったな」
 凱は動きを止めたワールに対して告げた。
「これで。終わりだな」
「よし、終わりだ」
「確かにな」
 それに頷いてだった。艦内を見る。
 次第に炎に包まれていた。最早手遅れなのは間違いなかった。
「見事だった」
「わかっているのならだ」
 凱はその彼に対してまた告げてみせた。
「脱出しろ」
「何っ!?」
「脱出しろと言った」
 こう言うのだった。
「今ならまだ間に合う筈だ。脱出しろ」
「馬鹿なことを言う」
 これがワールの返答だった。
「その様なことを言うとはな。獅子王凱もその程度か」
「どういうことだ」
「この期に及んでその様なことはしない」
 不敵な笑みと共の言葉だった。
「今更な」
「死ぬっていうんだな」
「そうだ」
 笑みはそのままだった。
「それも喜んでだ」
「馬鹿な、その様なことをしても」
「今は何もならねえだろうがよ」
 ボルフォッグとゴルディマーグも彼に言う。
「貴方は最早戦ってもです」
「何にもならねえぜ」
「帝国。いやズール様は非常に厳しい方だ」
 ワールはまた言った。
「だからこそだ」
「脱出はしないのか」
「しようがしなかろうが今の私に待っているのは死だ」
 これを言うのだった。
「それならばだ」
「死を選ぶっていうんだか」
「そうだ、わかったな」
「ああ、わかった」
 凱もそれで頷くのだった。
「それじゃあな。あんたの好きにするんだな」
「それではだ。ロンド=ベルの諸君」
 微笑んでだった。
「さらばだ」
「ワール、それではだ」
「マーグ殿か」
 今二人は互いに話していた。
「無事だとは聞いていた」
「私は今は地球人としてここにいる」
 こう彼に告げるのだった。
「それでいいな」
「卿の選んだ道だ。私から言うことはない」
「何も言わないというのか」
「そうだ、それはしない」
 炎の中に包まれながらも言うのだった。
「気が済むまで進むがいい」
「そうさせてもらう」
「ではロンド=ベルの諸君」
 いよいよであった。
「さらばだ、先に待っている」
 こう言って炎の中に消えた。その戦艦も撃沈された。これがバルマー軍七個艦隊の崩壊だった。そしてワール達も死んだのだった。
 それが終わってからだ。マーグは一同に話した。
「それでだが」
「はい」
「いよいよですね」
「ギシン星に向かおう」
 こう言うのだった。
「それでいいな」
「ええ、そうですね」
「これでギシン星への障害はなくなりましたし」
「それなら」
「先に行こう」
 また言うのだった。
「そして決戦だ」
「ワール、見事だったぜ」
 今言ったのは洸だった。
「敵であってもな」
「そうだな。しかしな」
「しかし?」
 神宮寺の言葉も聞くのだった。
「ミスター、何かあるのかい?」
「いや、ズールのことだ」
 完が得る顔で言う神宮寺だった。
「あいつもバルマー星人だったな」
「ああ、そういえば」
「そうよね」
「ギシン家の人だし」
 皆も神宮寺の言葉に応えてそれぞれ言う。
「姿形は。それだったら」
「けれど何で宇宙にいたの?」
「異常な巨体だったしな」
「あれって」
「脳だけ移植させた?」
 今言ったのはマリだった。
「それじゃないかしら」
「そのケースも考えられますが」
「どうですかね」
 麗と猿丸がそのマリに対して言う。
「ただ。普通のマシンではないでしょう」
「それは何となくわかりますが」
「そうよね。あれはマシンじゃなかったら」
 また言うマリだった。
「何なのかしら」
「それも次の戦いでわかる」 
 マーグがここでまた一同に話した。
「その為にもだ」
「はい、行きましょう」
「ギシン星に」
「これで帝国軍の方面軍は二つ目か」
 ヴィレッタがここで言った。
「五つあるうちの二つだ」
「二つの方面軍が崩壊したら」
「バルマーも尋常ではいられませんよね」
「間違いなく」
「そうだ、それは間違いない」
 ヴィレッタは一同にも述べた。
「間違いなくだ」
「よし、それなら」
「ここは何があってもよね」
「だよな」
 皆それぞれここでまた話し合う。
「ギシン星を解放して」
「ズールを倒さないと」
「残るバルマーの方面軍ですが」
 ロゼもここで話す。
「外銀河方面軍、近銀河方面軍、それに」
「それに」
「あと一つは」
「本星防衛軍、この三つです」
「あと三つか」
「次の戦いに勝ったら」
 一同の心にもそのまま入る言葉だった。
「またバルマー帝国との戦いに勝利に近付く」
「いよいよ」
「そうなります。ただ」
「ただ?」
「何かあるんですか、まだ」
「近銀河方面軍はポセイダル家が率いています」
「ポセイダルが」
 それを聞いたダバの顔が曇った。
「あの連中がか」
「はい、そして外銀河方面軍はおわかりですね」
「ああ、あそこはな」
「もう充分過ぎる程に」
「あいつが」
「そうです、ハザル=ゴッツォです」
 その彼だというのだった。
「そして本星の軍はです」
「あの軍は?」
「どうなんですか?」
「本星の防衛を司るだけあってその質も量も他の方面軍とは比較になりません」
 そうだというのである。
「他の四つの方面軍を合わせただけの戦力があります」
「えっ、そんなにですか」
「そんなに凄いんですか!?」
「はい、かなりのものです」
 こう話すのだった。
「ですから。本軍と戦うにはです」
「かなりの覚悟が必要か」
「そうよね」
 こう話をするのだった。バルマーについてだ。
 そしてそのままだ。彼等は話すのだった。
「戦うのはまだ先にしても」
「そのことはわかっておくか」
「ええ」
「それではだ」
 また言うマーグだった。
「ギシン星にだ」
「よし!」
 こうして全軍ギシン星に向かう。彼等の戦いはまた一つの正念場を迎えていた。


第二十七話   完


                            2010・5・13 

 

第二十八話 ギシン星での戦い

                 第二十八話 ギシン星での戦い
 ロンド=ベルはギシン星に近付いている。その中でだ。
「来るか?」
「そろそろだよな」
「ああ、来るな」
「絶対にね」
 誰が緊張の中にいた。
「絶対に来るぞ」
「周辺の星域に」
「かなりの軍が」
「おそらく宇宙での戦いになる」
 シナプスもそう見ていた。
「間違いなくだ」
「ええ、そうですね」
「間違いなく」
「それなら」
「諸君、いいか」
 シナプスはまた全員に告げた。
「宇宙での戦いの用意だ」
「はい」
 皆それに応える。そのうえで決戦の準備に入る。
 その中でだ。タケルはふと言うのだった。
「いよいよだけれど」
「どうしたの、タケル」
「いや、バルマー帝国だけれど」
 ここでミカにも話すのだった。
「思ったより雑多な軍だって思ってね」
「色々な勢力を取り込んできた国だからな」
 ケンジはこうタケルに言うのだった。
「それも当然だろうな」
「当然か」
「そうだな、征服が国是の国だからな」
「考えてみれば当然だね」
 アキラとナオトも話す。
「ギシン星の勢力もだ」
「いるだろうね」
「けれどさ。今のタケル兄ちゃんの言葉って」
 ナミダがそこを指摘した。
「それとは別のことに聞こえるけれど」
「うん、実はね」
 その通りだというタケルだった。
「皇帝の下に絶対の権力でまとまっている訳じゃないんだね」
「その通りだ」
 マーグがタケルの今の言葉に答えた。
「バルマー帝国は確かに専制国家だ」
「うん」
「しかし皇帝の下に全てがまとまっている訳ではないのだ」
「つまり様々な勢力がある」
「そういうことになるんですね」
「そうだ、例えばユーゼス=ゴッツォだが」
 マーグは彼の話もした。
「あの男についても知っているな」
「はい、確かに」
「それは」
「帝国に対する造反を考えていたな」
 ここでユーゼスのことを話すのだった。
「帝国の支配は実際のところ弱まってもきている」
「キャンベルもボアザンも独立したし」
「考えてみれば」
「長年に渡るゼントラーディ、メルトランディとの戦いもあった」
 それもだというのだ。
「当然宇宙怪獣やガイゾックとの戦いもあった」
「戦争をそれだけしていれば」
「勢力も弱まるか」
「そういうことですね」
「その通りだ。バルマー帝国は長年に渡る戦争で勢力を弱めているのだ」
 それは間違いないというのだった。
「そしてズールもまた」
「ああ、そういえばあいつ」
「何か宇宙の支配者になるとか言ってるし」
「それなら」
 そうしたことを考えればだった。
「じゃああいつもやっぱり」
「造反を考えているのか」
「地方領主から」
「そうだと思う」
 また言うマーグだった。
「戦略的にはお互いに争ってくれてもいいが」
「それもいいですけれどね」
「けれど今は」
「もう戦うしかないしな」
「ここまで来たら」
 それはもうないというのだった。それでだった。
 彼等はそのままギシン星に向かう。しかしあった。
 ギシン星周辺の宙域には誰もいなかった。そう、誰もいなかったのだ。
「あれっ!?」
「いない!?」
「どういうこと!?」
 皆このことにまずは唖然となった。
「まさか逃げたとか」
「いや、それはないだろ」
「流石に」
 撤退の可能性はすぐに否定された。
「じゃあ一体」
「何処に?」
「敵は」
「惑星にいるみたいデス」
 スワンが報告する。
「どうやら」
「じゃあ惑星での戦い?」
「まさか」
「いえ、そのまさかの様です」
 今度はスタリオンが言ってきた。
「彼等はそれを望んでいるようです」
「そこまで戦力がないとか?」
「まさか」
「まだかなりある筈だよな」
「ええ」
 それも考えられなかった。
「それで何でなんだ?」
「惑星での戦いなんて」
「ズールは何を考えてるんだ」
「それはわからないが」
 それでもであった。
「行くか、それなら」
「ええ、そうね」
「それならそれで」
 しかし決断は必要だった。そうしてだった。
「全軍いいか」
「はい」
「降下ですね」
 このことをお互いに確認し合う。
「今から」
「行きますか」
「ただしね」
 ここで言ったのはルネだった。
「絶対に何かあるよ」
「そうよね」
「この場合は常にですね」
 光竜と闇竜が彼女の言葉に応える。
「それならここは」
「慎重にですか」
「警戒するけれど派手にいくよ」
 そうするというのだった。
「虎穴に入らずばっていうじゃないか」
「そうするの」
「ここは」
「ええ、そうよ」
 また言うルネだった。
「降下、周りに気をつけてね」
「はあい」
「わかりました」
「では諸君!」
 大河が命じる。
「総員降下に移る!」
「了解!」
「殴り込みだぜ!」
 こうして全軍で降下する。その場所は市街地だった。そこはだ。
「この星の首都ですね」
「そうか、ここがか」
「はい、ここです」
 ロゼがマーグに答える。
「早速いい場所に着きましたね」
「そうだな。それではだ」
「来たよ!」
 ヒメがここで叫ぶ。
「敵がもう来たよ!」
「ああ、四方八方からな!」
「もう待っていたって感じね」
 勇とカナンが言う。
「それならすぐに」
「ここはもう」
「面白い、派手に暴れてやるか!」
「ジョナサン、派手にやるのはいいが」
 シラーがジョナサンに対して言ってきた。
「わかっているな」
「ああ、慎重さもってことだな」
「そういうことだ」
 まさにその通りだというのである。
「わかっているな」
「わかってるさ。しかし」
「しかし?」
「やっぱりあの皇帝陛下はいないな」
 それを見ての言葉だった。
「来ているのは雑魚連中だけだな」
「そうだな」
 クインシィもそれを見て言う。
「ここでの戦いは楽か」
「数は多いですよ」
「それはな」
 カントとナッキィがこのことを注意する。
「それは忘れたら駄目ですけれど」
「これといった指揮官はいないな」
「どういうことだ」
 ヒギンズもそれを見て難しい顔になっている。
「ここでズールがいないのは」
「逃げたとかじゃないな」
「ああ、それはないな」
 ナンガとラッセはそれを否定した。
「ここにいるか」
「隠れているか」
「隠れている、かな」
 勇はそれではないかと考えたのだった。
「ここは」
「そうなの」
「ああ。そして俺達を見ているんだ」
 険しい顔でヒメにも答えるのだった。
「それで何か仕掛けて来るんだろうな」
「コロニー落としでもするのかね」
 今言ったのはハッターだった。
「それだったら」
「それもあるな」
 テムジンはその可能性を否定しなかった。
「我々を惑星ごとだ」
「惑星ごとかよ」
「ここの市民はどうなるんだよ」
「そんなのはどうでもいいのだろう」
 テムジンは感情を込めない言葉で言った。
「それはだ」
「何て野郎だ」
「そういう奴かよ」
「そういう手合いも一杯いるけれどね」
 フェイもそれは素っ気無く告げた。
「さて、どうしようかしら」
「コロニーが来てもな!」
 今叫んだのはエイジだった。
「俺が速攻で叩き落してやるぜ!」
「それは絶対に無理でしょ」
 ルナが素っ気無く突っ込みを入れた。素っ気無い言葉がそれぞれの口から続く。
「幾ら何でもコロニーを撃ち落すのは」
「いや、俺が止める」
 アポロがいた。
「アクエリオンでだ」
「そうだな。アクエリオンならな」
 シリウスもそれに同意できた。
「それも可能だ」
「そういえばそうだったよな」
「確かにね」
 エイジとアポロもそれに頷く。
「じゃあそうした時は」
「御願いするわね」
「任せておくんだな」
 こう返すアポロだった。
「ここはだ」
「アクエリオンならできるかもね」
 シルヴィアは今一つ自信がないようではある。
「多分だけれど」
「いや、できる」
 不動は断言した。
「だからだ。それは安心していい」
「そうなんですか」
「できますか」
「人はやろうと思えば何でもできる!」
 暴論だった。
「だからだ!できるのだ!」
「そういうものですか」
「そういうものだ!」
 テッサにも断言するのだった。
「だからだ。まずはやるということを考えるのだ!」
「作戦以前の問題では?」
「作戦はまず思うことからはじまる」
 不動の強引な言葉は続く。
「なればなる!」
「はあ」
「だからだ!まずは戦いそして来たら止める!」
「止まらなければその時は」
「撃ち落す!」
 強引な言葉は続く。
「わかったな。それで行く!」
「バルディオスもある」
 マリンは冷静に述べた。
「それならいけるか」
「頼みましたよ、その時は」
「絶対に」
「わかったよ。それじゃあ」
「全軍攻撃開始!」
「やってやるか!」
 こうしてギシン星においての決戦がはじまった。その戦いはというとだ。
 かなり激しい戦いになった。敵の数は流石に多かった。
 しかしであった。敵には弱点があった。 
 これといった指揮官がいないのだ。宗介は冷静に敵に照準を合わせてだった。
 射撃を行いそれで倒すのだった。まずは一機だった。
「動きが悪いな」
「ああ、そうだね」
 メリッサが応える。頷きながら彼女も射程を合わせてそのうえで一機撃墜した。
「狙いを定めて安心して撃てるね」
「この戦いはな」
「楽だね」
 それを言うのだった。
「ただ」
「ただ?」
「敵の数は相変わらずだね」
 カントとナッキィの指摘通りだった。
「それはね」
「確かにな」
 それにクルツも頷く。当然彼も戦闘の中にいる。
「それはあるな」
「やっぱり用心は必要だってことだね」
「しかしだ」
 だがここで宗介が言った。
「勝てる」
「ああ、そうだね」
「この戦いはね」
「戦いには勝てるな」
 ベルファルガンはこう述べた。
「それはな」
「しかしそれからか」
「ああ。やはりそうなるだろうな」
 ベルファルガンもそう見ているのだった。
「この戦いは」
「そうか、それなら」
「ここは」
「守りを固めた方がいいな」
 宗介は冷静に述べた。
「そのうえで戦う方がいいか」
「はい、その通りだと思います」
 テッサから通信が入ってきた。
「皆さんここはそうして下さい。陣を組んでです」
「そのうえで戦う」
「そういうことなら」
 全軍すぐに陣を組んだ。円陣になる。そうしてだった。
 そのうえで敵を防ぎながら戦う。敵はそれに対して無闇に攻撃を浴びせるだけであった。これではもう勝敗は明らかであった。
 半日程戦ってだ。敵はもう殆どいなくなっていた。それでだった。
 既に正面に千程度いるだけだった。その千の敵もだ。
 一気に潰した。それで終わりだった。
「終わりか」
「そうよね」
「これで」
「一応は」 
 しかしだった。ここで彼等は身構えていた。
 するとだった。ここでだ。
「ふふふふふ」
「来たな!」
「来やがったな!」
「やっぱりね!」
 その声を聞いてもだ。誰もが言うのだった。
「ズール皇帝!」
「遂にここで!」
「そうだ、私だ」
 まさにその彼だった。彼がいたのはだ。
 ギシン星の空にいた。そこを覆って巨大な姿をさらしていた。それは。
「ホノグラフィーか」
「そうね」
「あれは」
「その通りだ」
 ズールもそれは否定しなかった。
「これは私の幻影だ」
「やっぱりそうかよ」
「はったりだっていうのね」
「それでどうするつもりだ!」
「一つ言っておこう」
 そのズールからの言葉である。
「私は今宇宙にいる」
「宇宙に!?」
「じゃあ今ここにいるのは」
「貴様等の戦いは全て見せてもらった」
 ズールは既にその言葉を勝ち誇ったものにさせていた。
「全てだ」
「手の内を見る為に!?」
「その為に」
「その通りだ」
 まさにそうだというのだった。
「それによってだ」
「くっ、しまった」
「そんなことを」
「そうだ、最早貴様等に勝利はない」
 こう告げるのだった。
「万に一つもだ」
「おいおい、万に一つだって?」
「じゃあ確実ね」
「そういうことだな」
 ゴーショーグンの面々は今のズールの言葉にも明るく返す。
「俺達に無理だっていうのなら」
「せめて兆分の一って言わないとね」
「まあそれでも無理だけれどな」
「余裕か」
 ズールは三人のその言葉を聞いて返した。
「それでもか」
「そういうことさ。じゃあ今から」
「余裕で勝ってあげるから」
「楽しみにしておいてくれな」
「その通りだ。万に一つだと?」
「それがどうしたというのだ」
「所詮その程度ということか」
 カットナル、ケルナグール、ブンドルの三人も言う。
「では今から宇宙に行く」
「少し待っておくがいい」
「せめて兆分の一の危機でなければ乗り越えるに値する美しさではないな」
「それじゃあ。ズールだったわね」
 シルヴィアも上を見上げて問う。
「今からそっちに行ってあげるからね」
「首を洗って待ってなさい!」
 ゼオラも言い返す。
「今からね!」
「既に港は発見しています」
 フェアリは既にそれを押さえていた。
「それでは今すぐに」
「よし、じゃあな」
「行きましょう」
 男秋水と女秋水が言った。そうしてだった。
 二人だけでなく全員がだ。その港に向かいだ。
 すぐに向かおうとする。しかしズールは何もしようとはしないのだった。
「動かない!?」
「これは一体」
「何故!?」
「言った筈だ」
 ズールはそのまま宙に己の姿を見せている。
「貴様等は宇宙で倒すとな」
「だからだってのかよ」
「それで」
「それでなの」
「そうだ、私の力を見せてやろう」
 余裕に満ちた言葉は変わらない。
「そこでだ」
「ズール、今度こそ貴様を」
 タケルは怒りに満ちた目でそのズールを見上げていた。
「倒す、何があろうとも!」
「マーズか」
「そうだ、御前を倒す男だ」
「ここで一つ貴様に言っておくことがある」
「何っ!?」
「マーグもいるな。ならば余計にいい」
 彼も見て言うのだった。
「御前達の両親を殺したのは私だ」
「何っ!?」
「まさか」
「霊帝は殺すつもりはなかった」
「しかし貴様は」
「まさか」
「そうだ、私が隙を見て殺したのだ」
 そうしたというのである。
「そして私は今この星を己のものにしている」
「貴様!」
 そこまで聞いてだった。激昂する声をあげるタケルだった。
「父さんと母さんの仇!」
「私が憎いか」
「そうだ、憎い!」
 怒りに満ちた声だった。
「何があろうとも!貴様を倒す!」
「倒すというのか」
「今からそこに行く!そして!」
「ならば来るがいい」
 ここでも自信に満ちている言葉だった。
「私の前にだ」
「その言葉、忘れるな」
 こう言ってだった。そうしてであった。
 彼等はそのままそれぞれの艦に入る。すぐに大河が指示を出す。
「では諸君」
「はい」
「それじゃあ」
「行くとしよう。この惑星での最後の戦いだ」
 こう告げるのだった。
「いいな、それではだ」
「タケルさん、それじゃあ」
「今から」
「うん」
 今は冷静さを取り戻していた。そのうえで応えていた。
「わかってるよ」
「マーズ、いいか」
 マーグもここで言う。
「私もいる」
「兄さんも」
「両親を殺されたのは私も同じだ」
 双子である。それは当然のことだった。
「だからだ」
「そうだね。それじゃあ」
「共に行こう」
 また言う彼だった。
「それでいいな」
「そうだね。だったら」
「ズールは私達で倒す」
 マーグははっきりと言い切った。
「いいな、それではだ」
「そうだね。俺だけじゃない」
「そして御前は一人でもない」
 マーグはこのことも告げた。
「わかったな、それではだ」
「じゃあ行こう」
「ズールとの最後の戦いだ」
 それはもうはっきりしていた。そうしてだった。
 宇宙に向かう。その動きは早かった。
 ディアッカはその中で言うのであった。
「しかしよ。俺気になるんだけれどよ」
「何がなんだ?」
「いや、あのズールっておっさんな」
 彼のことだとアスランに返す。
「宇宙空間にも出てたよな」
「ああ」
「普通の人間じゃないよな」
 このことを言うのだった。
「あれがパイロットじゃないとなるとな」
「ガルーダみたいに機械とか?」
 今言ったのはジャックだった。
「そういうのかな」
「何か人間だというのではなかったか?」
 イザークはこのことを指摘した。
「そういうことではなかったのか」
「そうでしょうか。若しかしたら」
 ニコルは首を傾げさせながら述べた。
「ゴッドマーズと同じではないでしょうか」
「ゴッドマーズとですか?」
「同じっていいますと」
「少し考えていますけれど」
 ニコルはフィリスとエルフィに対して述べた。
「それは」
「どういうことですか?」
「いえ、六体のマシンが集まっているとか」
 ニコルはその可能性を考えていた。
「そういうことじゃないですかね」
「マシンがですか。確かに」
 シホもここで言った。
「その可能性はありますね」
「ギシン星の兵器の最大の技術だからな」
「それは」
 今度はミゲルとハイネが話す。
「それがあの男に使われていないとは」
「少し思えないか」
「ではズールのマシンもか」
 イザークもここで言う。
「ゴッドマーズと同じくそれぞれのパーツに分かれてか」
「そうだとしたらそれを操るズールは」
 アスランは考える顔で述べる。
「かなりの超能力者か」
「じゃあ前の戦いの時は」
「手加減していた!?」
「そういうこと?」
 皆ここでこうそれぞれ言った。
「あんなものじゃない」
「それだけ恐ろしい相手なの」
「その可能性はある」
 また言うアスランだった。
「少なくともあそこで出した本気はまだ本気じゃなかった」
「それはかなり
「洒落にならないし」
「そうよね」
 誰もが口々に言って行く。そうしてだった。
 そのズールが待っている宇宙に出た。すぐにだ。
「敵は!?」
「まだ!?」
「はい、いました」
 マヤが報告する。そうしてだった。
「よし、今からそこに」
「向かって」
「叩き潰してやるぜ、ズール!」
 今ズールとの決戦が近付いていた。戦いも一つの山場に入ろうとしていた。


第二十八話   完


                          2010・5・15 

 

第二十九話 銀河へはじめての笑顔を

               第二十九話 銀河へはじめての笑顔を
  敵軍はそこにいた目の前にだ。
「数は?」
「五十万です」
 マヤはすぐにミサトに報告した。
「それだけです」
「数はそれ程じゃないわね」
「そうですね」
「さっきは合わせて百万は優に超えていたけれど」
 ミサトはここで考える顔になった。
「あれが主力だったのね」
「その主力を全てぶつけても尚それでも」
 カワッセがここで言った。
「それでも勝利を得られるものがあるというのですね」
「そうですね。その切り札は」
「あの男ですか」
「そう考えていいと思います」
 前のその敵軍を見ながらの言葉だった。
「ズール自身がです」
「そういうことですね」
「それにしても」
 今言ったのはシーラだった。
「ズールという男は部下を平気で捨て駒にできるのですね」
「そうですね」
 ミサトもシーラもだ。その顔を曇らせていた。
「それは間違いありませんね」
「そういう男ですか」
「やはりこのままにしてはいけないでしょう」
 ミサトは彼女にしては珍しく敵の性格を問題にしていた。
「さらに大きな権力を握ればそれだけ」
「罪もない人々が」
「彼によって死んでいきます」
 だからだというのである。
「ですから」
「はい、だからこそ」
「倒さなければなりません」
「それならです。ただ」
「ただ?」
「先程からよからぬ気配を感じます」
 ここでこう言うのだった。
「何かしらの」
「そうですね」
 ここでエレもモニターに出て来て言う。
「これは一体」
「わかりません。ただ」
「はい、幾つかありますね」
「そうですね。幾つか」
「幾つか?」
「幾つか感じます」
 こう言うのだった。二人共だ。
「これは一体」
「何か。これは」
 シーラも言うのだった。
「ゴッドマーズが邪なものになったような」
「はい、そんな感じです」
「えっ、ゴッドマーズが」
「邪になっただと!?」
 そのゴッドマーズに乗るタケルとマーグも驚きの声をあげる。
「それは一体」
「どういったものなのだ?」
「わかりません。しかしです」
「複数感じるのは確かです」
 エレとシーラはここでも二人に言うのだった。
「何故かはわかりませんが」
「ズールと同じものを」
「兄さん、これは一体」
「宇宙に出る時少しそうした話が出たが」
 マーグはこのことを弟に話す。
「それはまさか」
「何だというのだろうか」
「少なくとも今ここでわかる話じゃないみたいだね」
 いぶかしむ二人に万丈が言ってきた。
「まずはその前にね」
「戦うしかないか」
「そういうことか」
「そういうことさ。戦いを進めていけばズールは出て来るよ」
 こう話すのである。
「その時にね」
「よし、それならだ」
「今は行くか」
 こうしてだった。二人を含めてロンド=ベルの戦士達は戦いに向かう。そしてだった。
 敵軍が来た。数はやはり五十万だった。
「数としては多くないか」
「そうね」
 セシリーがシーブックに対して答えた。
「けれど今回は」
「うん、ズールが出て来る」
「決戦よ」
 このことを言うのだった。
「だからね。余計にね」
「うん、気が抜けないよ」
「おい、シーブック」
 ビルギットもここで声をかけてきた。
「敵が早速来たぜ」
「向こうから来たか」
「いるわよ」
 今度はアンナマリーが言う。
「ズールがね」
「ズールがいるか」
「やっぱり」
「そうですね。ここはです」
 カラスは乗艦からその敵軍を見て述べた。
「正面から一気に突破するべきですね」
「正面突破か」
「ここはか」
「はい、機動力を活かしてです」
 こうザビーネとドレルにも話す。
「まずは正面突破をしてです」
「それからだな」
「さらに仕掛けるか」
「そうです、仕掛けます」
 こう話すのだった。
「敵陣を混乱させそのうえで」
「幾度も突撃し突破する」
「今回はそれか」
「はい、それで如何でしょうか」
 ここまで話したうえで二人に問う。
「今回の作戦は」
「そうだな。敵は数が多く手強いマシンが多い」
「それに指揮官も気になる」
「では。それでは」
「よし」
「それで行こう」
 二人もそれに賛成した。これで決まりだった。
 ロンド=ベルは正面から攻める。そしてそのまま。
「全軍攻撃開始!」
「今からだ!」
 こう言ってそのまま突撃する。そしてだ。
 カラスの指示のまま敵陣の突破にかかる。一点を集中的に狙う。
「主砲、一斉発射です」
「小隊単位で吹き飛ばすか」
「それによってか」
「そうです。敵の数も同時に減らします」
 こう言ってまた指示を出すのだった。
 それに伴い主砲を放ってだ。敵の小隊をそれで薙ぎ倒した。
 それで勢いが得られた。そのままだった。
 敵を一気に攻めてだ。まさにだ。
「よし!」
「これでだ!」
 このまま攻める。それで正面突破を果たした。
 ズールはそれを見てもだ。何ら動じたところはなかった。
「そうか。そうするか」
「陛下、ここはです」
「どうされますか?」
「よい」
 返答は一言だった。
「これでいい」
「これでいいとは」
「それは一体」
「精々暴れさせるのだ」
 余裕に満ちた言葉だった。
「今はな」
「精々ですか」
「そうされるのですね」
「そうだ、好きなだけ暴れさせろ」
 こう言ってありのままさせる。ロンド=ベルは何度も突撃を行い敵の数も減らしていく。そして敵は何時の間にかズールと側近達だけになっていた。
「やいズール!」
「これで終わりね!」
「これで!」
「終わりだというのか」
 ロンド=ベルの者達の言葉も受けてもだ。ズールは平然としたままだった。そのうえでの言葉だった。
「貴様等がだな」
「何っ!?」
「何寝言言ってるんだこいつは」
「狂ったってのかよ」
 ロンド=ベルの面々はそれを聞いて思わず言った。しかしだった。
「狂ってはいない」
「じゃあ何だってんだ!?」
「それじゃあ」
「これからはじまるのだ」
 こう言うのだった。
「これから。私の支配する宇宙がだ」
「私達を倒してだというのか」
「そうだ」
 マーグにも言葉を返す。
「その通りだ」
「果たしてそうできるかな」
 それを聞いてもだった。マーグも負けていなかった。
 それでだ。全身に力を込めて言うのであった。
「さて」
「マーズ、いいな」
「うん、兄さん」
 真剣そのものの顔で兄の言葉に頷くのだった。
「それじゃあ」
「来るか、ズールよ」
「ロンド=ベルの戦士達よ、見るがいい」
 ズールがこう言った。するとだった。140
「これが私の力だ」
「なっ、何!?」
「これは!?」
 誰もがそれを見て驚いた。何とだ。
 ここでズールが何人も出て来たのだ。その数はだ。
「六人のズールだと」
「出て来たというのか!?」
「ここで」
「さて、ロンド=ベルの戦士達よ」
 六人のズールが同時に話す。
「覚悟はいいな」
「まさかこれがか」
 バーンがその六人のズールを見て呟く。
「女王達の見たものか」
「いえ、違います」
「どうやら」
 しかしであった。シーラもエレもバーンの今の言葉に首を横に振った。
 そしてである。こう言うのだった。
「より邪悪なものです」
「その力です」
「邪悪な力だと!?」
「これよりもってのかよ」
 それを聞いてだ。ショウとトッドは言うのだった。
「この六人のズールよりも」
「まだ何かあるってのかよ」
「どうやら答えはだ」
「戦ってか」
 最初に身構えたのは二人のゴッドマーズだった。
 そしてだ。それぞれズールに向かう。
「いいな、マーグよ」
「うん、兄さん」
 お互いを見ながら言葉を交えさせる。そしてだった。
 まずは二人がそれぞれズールに向かう。そして」
「おい、健一!」
「そうだな、豹馬」
 豹馬と健一がお互いに言葉を交えさせた。
「俺達もな」
「倒すか」
 こうしてだった。コンバトラーとダイモスもそれぞれズールに向かうのだった。
 最後は万丈だった。ザンボットの三人に声をかける。
「いいね、君達もだよ」
「ああ、あの糞むかつく野郎をだよな」
「ここで一体ずつ受け持って」
「それで倒すんですね」
「それでどうかな」
 こう三人に言うのだった。
「君達さえよければね」
「答えはもう出てるぜ!」
 勝平が最初に応えた。
「こんな奴よ!さっさと倒しておしまいにしようぜ!」
「そうだな、それが答えだな」
「誰でもそう思うわね」
 宇宙太と恵子も彼の言葉に続く。
「よし、それならだ」
「ザンボットも行きます」
「ワン!」
 最後に千代錦が吠えた。これで決定だった。
 こうして六体のマシンがそれぞれズールに向かう。その中でタケルは自分の前にいるズールに対して問うのだった。彼を見据えてだ。
「ズール!」
「マーズか」
「そうだ、貴様は何を考えている」
 こう彼に問うのだ。
「貴様のせいで多くの血が流れた!それで何を考えている!」
「知れたことだ」
 ズールはゴッドマーズの剣をかわしながら言葉を返す。
「最早な」
「知れたこと!?」
「そうだ、知れたことだ」
 こう言ってからであった。
「言った筈だ。宇宙を私のものにするとな」
「その為に他の人達を犠牲にするというのか!」
「その通りだ」
 平然と返した返答であった。
「他の者なぞだ。私の糧でしかない」
「貴様!」
「何故怒る」
「何っ!?」
「何故怒る必要がある」
 こうタケルに言うのだった。
「怒る必要があるのか」
「何が言いたい!」
「力こそが正義だ」
 ズールはここでこう言うのである。
「力があるものが全てを手に入れるものだ」
「ではズールよ」
 今度はマーグが彼に問うた。
「一つ聞こう」
「何をだというのだ?」
「貴様には力があるというのか」
「そうだ」
 平然とした返答だった。
「その通りだ」
「そうか、力があるのだな」
「そうだ、ある」
 また言うズールだった。
「この宇宙を治めるに相応しい力がだ」
「貴様の言葉はわかった」
 こう返すマーグだった。
「確かにな」
「ではどうするというのだ?」
「貴様の言葉確かめさせてもらう」
 言いながら彼のゴッドマーズも攻撃を続ける。そうしてだった。
「いいな」
「何をするつもりだ、今度は」
「知れたこと。戦うまでだ」
 そうするというのである。
「それだけだ」
「そして私を倒すか」
「貴様自身が今言ったことをそのまま証明してやろう」
「ああ、そうだな」
「今ここでだ!」
 豹馬と健一がここで叫ぶ。
「健一、あれを見せてやりな!」
「豹馬もだ!」
 お互いに言い合いだ。そうしてだった。
「いいな!皆!」
「ええ、いいわ!」
「何時でもな!」
「やってやるたい!」
「行きましょう!」
 豹馬の言葉にだ。ちずると十三、大作、小介が応える。
 そしてだ。ボルテスでもだった。
「健一、今だ」
「あの技を使いましょう」
「今ここで、でごわす!」
「兄ちゃん!」
「ああ、わかっている!」
 健一が一平、めぐみ、大次郎、日吉の言葉に応える。そしてだ。
「超電磁タ・ツ・マ・キーーーーーーーーーーッ!」
「天空剣!」
 お互いに技を出してだった。まずはそれでそれぞれの敵の動きを止める。
 そうしてだった。そのうえで。
「行くぜ皆!」
「超電磁ボオオオオオオオオオルッ!」
 コンバトラーの形が変わりボルテスが剣からボールを放った。そして。
「超電磁スピーーーーーーン!!」
「天空剣ブイの字斬りーーーーーーーーーーっ!!」
 攻撃を放つ。ドリルの様になったコンバトラーが突っ込みボルテスが天高く飛ぶ。
 そしてだ。ズールを貫き叩き斬る。これで、であった。
「よし!」
「まずは二人だな」
 それぞれ目の前のズールを倒したうえでの言葉だった。
「後はだ」
「皆、頼んだぞ」
「よし、それじゃあ」
「次は俺達だ!」
 万丈と勝平がここで言う。
 ダイターンとザンボットが動いてであった。
「君達、今度はね」
「ああ、わかってるさ」
「俺達の前の奴を倒す」
「それぞれで」
「タッグで戦うのもいいけれどね」
 ここでこうも言う万丈だった。
「けれどね、今回はそっちの方がいいからね」
「ワン!」
 千代錦が応えてであった。そうしてだ。
「さてと、それじゃあ」
「万丈様」
 ここでギャリソンから通信が入った。
「宜しいでしょうか」
「何だい、ギャリソン」
「この後ですが」
「戦いの後だね」
「はい、既にお食事の用意ができております」
 ここでもいつものスタイルを崩さないギャリソンだった。
「ですからお楽しみにして下さい」
「メニューは何だい?」
「舌平目のムニエルです」
 それだというのである。
「万丈様の好物の」
「うん、それはいいね」
「それに羊のスネ肉を焼いていますので」
「さらにいいね」
「サラダはシーフード、スープはコンソメです」
「最高だね」
 ここまで聞いてさらに御満悦な様子だった。
 しかしだ。ここで兵左衛門が言うのであった。
「しめ鯖は駄目かのう」
「ちょ、ちょっとそれはね」
 万丈はしめ鯖にはぎくりとした顔で言うのだった。
「遠慮しておくよ」
「鯖は嫌いなのかのう」
「この前当たったから」
 だからだというのである。
「ええと、結構前だったかな」
「あれ、そんなことあったの」
「覚えてないわよね」
 ビューティーとレイカがここで言う。
「そういうこともね」
「あったのかしら」
「あったよ。それでね」
「私が代役を務めさせてもらいました」
 ギャリソンがまた言ってきた。
「そういうこともありました」
「だから鯖はちょっとね」
 また言う万丈だった。
「悪いけれどね」
「そうなのか。残念じゃのう」
「ま、まあとにかくね」
 万丈は何とかここで話を戻してだった。
 そうしてであった。
「それじゃあギャリソン」
「はい」
「今から決めるよ」
 こう言ってである。そして。
「日輪の力を借りて!今!必殺の!」
 そしてだった。
「サンアタアアアアアアアアアアック!」
 ダイターンの額からそのサンアタックを放ってだった。
 それがズールを撃った。それで動きを止めて。
「ダイターーーーーンクラァーーーーーーーッシュ!!」
 これで一撃で両足で蹴り抜く。これで決めた。
 そしてだ。ザンボットもだ。
「おい勝平」
「ここはね」
「ああ、あれだな」
「そうだ、あれだ」
「あれで決めるわよ」
 宇宙太と恵子がそれぞれ彼に言う。
「イオン砲でもいいけれどな」
「ここはね」
「ああ、あの技で決める」
 こう言ってであった。そうしてだ。
「こんな奴には盛大にあの技だ!」
「ガイゾックにも頭にきたけれどな」
「こいつにもね」
「こういう奴にも頭にくるぜ」
 三人はズールに対して明らかに怒りを感じていた。
「自分だけがいいってのかよ!」
「力があればか」
「そういう考えが戦争を起こすのよ!」
 こう言って否定するのだった。
「それも手前勝手な戦争をな!」
「貴様みたいな奴だけは!」
「許さないから!」
 そしてであった。ザンボットのその額の三日月がだ。
「ザンボットムーーーーーンアタアアアアアック!」
 その三日月に両手からのエネルギーが宿ってだ。そして。
 三日月から光が放たれ螺旋状に動いてだ。ズールを直撃した。
 ズールの後ろに三日月が浮かんだ。それで決まりだった。
「よし!」
「決まりだ!」
「やったわ!」
 三人の声があがる。そのズールもまた爆発し消えていく。
 これで、であった。
「さて、後はね」
「ああ、後はな」
「タケルさんとマーグさんだな」
「御二人だけね」
 三人は万丈に対して応える。
「しかし。何かな」
「ああ、手応えがないよね」
「どうしてかしら」
「まさか」
 ここで万丈も言う。
「ズールは何か切り札を持っているのかな」
「切り札ですか」
「そうじゃないとおかしいね」
 こうギャリソンにも返す。
「この手応えのなさは」
「といいますとそれは一体」
「さてね。けれどそれがわかるのももうすぐだよ」
 こう言うのであった。
「それもね」
 万丈は明らかに何かを察していた。そうしてだった。
 タケルとマーグもだ。それぞれの目の前のズールと対峙してだった。
 マーグがその中でタケルに対して言う。
「いいか、マーズ」
「うん、兄さん」
「ここで決める」
 弟に告げる言葉はこれだった。
「いいな、ここでだ」
「決めるんだね」
「わかっているな」
 ゴッドマーズのその剣が煌いた。
 そのうえでだ。まずは光を放った。
「マーズフラッシュ!」
「マーズフラッシュ!」
 それぞれのゴッドマーズから光を放つ。
 それによってズールの動きを止めてだった。剣を一閃させる。
「ファイナルゴッドマーズ!」
「ファイナルゴッドマーズ!」
 動きが合っていた。そのうえでズールを斬るのだった。
 最後の二人のズールもこれで倒れた。他の敵もいなくなっていた。
 しかしだ。クェスがここで言った。
「!?来た!」
「クェス、どうした!」
「アムロ、来るわ!」
 こうアムロに言うのだった。
「敵が!」
「敵!?」
「ええ、来るわ!」
 また言うのだった。
「それも幾つも」
「まさか・・・・・・!?」
 しかしだった。ここでアムロもだった。
 感じ取ったのだ。それを。
「これは・・・・・・確かに」
「ええ、これは」
「来たのかよ!」
 カミーユとジュドーもだった。
「凄まじいプレッシャーが」
「まさか、これは」
「いや、間違いない」
「そうだな」
 クワトロとハマーンもだった。
「出て来るな」
「あの男が再び」
「まさかそれは」
「ズール!?」
「ここで!?」
 誰もが驚きの声をあげたその時だった。不意にだ。
「そうだ、ここでだ!」
「今ここにその真の姿を見せよう!」
「このわしのだ!」
「ズール!」
 マーグがその声を聞いて言い返した。
「これは一体どういうことだ!」
「ふふふ、それを見せてやろう」
 ズールの声だった。紛れもなくだ。
「わしのその真の姿をだ」
「真の姿!?」
「まさかそれは」
 マーグだけでなくタケルも声をあげた。彼等は同時に察したのである。
「私達と同じ」
「言われているそれか」
「そうだ」
 こう言ってであった。宇宙に。
 六体のマシンが出て来た。そうしてだ。
「ゲシュタルト1、メタール!」
 まずは一人だった。
「ズールの頭を形作る!」
「ゲシュタルト2、ボーテ!ズールの胴を!」
「ゲシュタルト3、スナッパー!ズールの右手を!」
「ゲシュタルト4、ナッカー!ズールの左手を!」
「ゲシュタルト5、ボーテ!ズールの右足を!」
「ゲシュタルト6、ボーテ!ズールの左足を形作る!」
 彼等はそれぞれ名乗った。そしてそれがだ。
 一つのズールとなた。ここに彼がまた姿を現したのである。
「我等六体が揃い!」
「ズールとなるのだ!」
「やはりか」
 マーグはその復活したズールを見て呟いた。
「ズール、それが貴様か」
「そうだ」
 紛れもないズールの声だった。最早聞き間違えようがなかった。
「そしてだ。言っておこう」
「何をだ」
「わしの支配する宇宙がここからはじまるのだ」
 こう言うのである。
「今ここからだ」
「はじまるというのか」
「貴様等は決してわしには勝てん」
 戦いはまだである。しかしズールは既に勝ち誇っていた。
「何があろうともだ」
「勝てないというのか」
「そうだ」
 このことをまた言ってみせるのだった。
「それを言っておこう。そしてだ」
「そして?」
「今度は何だ!」
 マーグだけでなくタケルもズールに対して返す。
「何だというんだ!」
「貴様等は決して許しはしない」
 今度は殲滅宣言だった。
「そう、何があろうともだ」
「何があろうともか」
「俺達を」
「一人残らず倒してくれよう」
 このことを言って引かなかった。
「今ここでだ」
「おう!そんな言葉はな!」
 ズールの言葉に甲児が激昂した声で返す。
「もう飽きる程聞いてるぜ!」
「そうよ、そんな言葉今更ね!」
 さやかも彼に続く。
「何ともないってことを見せてやるわよ!」
「いや、待ってくれ」
「皆、ここはだ」
 だがここでタケルとマーグが一同に言う。
「俺達に任せてくれ」
「やらせてくれ」
「ああ、そうか」
「二人で決着をつけるのね」
 甲児とさやかが二人の言葉を聞いて述べる。
「それならな」
「任せたわよ」
「ああ、済まない」
「この男だけは私達が」
「マーグ様!」
 ここでロゼがマーグに対して言ってきた。
「ここは私も」
「いや、ロゼ」
 自分を気遣うロゼにだ。優しい声で返すマーグだった。
「任せてくれ」
「どうしてもですか」
「そう、どうしてもだ」
 微笑んでさえいる言葉だった。
「ここは任せてくれ」
「左様ですか。それでは」
「そこで見ておいてくれ」
 こうロゼに注げる。
「どうか」
「はい、それでは」
 ロゼもマーグの言葉を受けた。そして心もだ。
 それならばだ。もう答えは出ていた。
 彼女も動かなかった。そうしてである。
 マーグは今度はだ。タケルに声をかけるのだった。
「マーズよ」
「うん、兄さん」
「行くぞ」
 こう弟に言うのだった。
「ここで命が尽きようともだ」
「ズールだけは」
「倒す!」
 タケルもまた言う。
「何があろうとも!」
「よし、それなら!」
「行くぞ!」
「ああ、兄さん!」
 二機のゴッドマーズが動いた。そこにズールの攻撃がかかる。
 光線を次々と出す。それは。
「!?何だありゃ!」
「あの光線は!」
 威力だけではなかった。数もだ。
「嵐かよ、あれは」
「あんなのを受けたら」
「幾らゴッドマーズでも」
「いや、動くな」
 ケンジがここで一同に言う。
「これはタケルとマーグの戦いだ」
「だから」
「ここは何があっても」
「そうだ、動いてはならない」
 まさにそうだというのである。
「何があろうともだ。いいな」
「あ、ああ」
「それなら」
 アキラとナオトがまず頷いた。
「今はここで」
「動かずに」
「見守りましょう」
 ミカもだった。腹を括った。
「何があろうとも」
「そうだね、大丈夫だね」
 ナミダも息を飲みながらだ。こう言うのだった。
「タケル兄ちゃんとマーグさんなら」
「ええ、そうね」
 ロゼは心から心配する顔だった。それでもだった。
「マーグ様と。タケルさんなら」
「ロゼ」
 その彼女にだ。ミカが優しい声をかけてきた。
「この戦いが終わったら」
「えっ!?」
「一番先に行くといいわ」
 こう彼女に言うのである。
「最初にね」
「最初に」
「そう、最初にね」
 こう言うのである。
「行くといいわ」
「あの、それは」
「おいおい、ここまで来て」
「最後まで言わせないでよね」
「そうそう」
 皆戸惑いロゼに微笑んで言う。
「皆わかってるんだから」
「だからね」
「私は」
「嫌って言っても背中押してあげるわよ!」
 アスカの言葉だ。
「こっちはマーグさんとタケルさんの話の余韻がまだ残ってるんだからね!」
「愛はこの世で最も尊いものです」
 ルリの言葉だ。
「私もそれがよくわかりました」
「だからですか」
「はい、愛はどんな困難も貫くものです」
 これがルリがわかったことだった。
「一矢さんもタケルさんも見せてくれました」
「タケル、見ていたな!」
 ダイゴウジがタケルに対してここで言う。
「一矢の奴のそれをな!」
「うん、そして」
「御前もだ。御前も俺達に見せてくれた!」
「まさか本当になるとは思わなかったからな」
 サブロウタはシニカルな微笑みだったが目は温かかった。
「いや、いいもの見せてもらったよ」
「だからですよ」
「また。見せてもらいたい」
 ジュンとナガレも言う。
「いえ、見られますね」
「今からな」
「貫き通せ!」
 今叫んだのは一矢だった。
「その想いをだ!」
「は、はい」
 ロゼは一矢のその言葉に頷いた。そうしてだった。
「それなら。私も」
「ずっと見てたんだからな」
「ロゼさんの心は」
「だったら」
「あとは成就させるだけです」
 ユリカの言葉も温かい。
「ですから。いいですね」
「わかりました」
 目が潤んでいた。そのうえでの言葉だった。
「それでは私も」
「何か応援せずにいられない奴っているんだよ」
「見ているとどうしてもね」
「そうせずにはいられない」
 リョーコにヒカル、イズミも言うのだった。
「一矢の奴にタケルの奴にな」
「それにロゼさんもですよ」
「純粋過ぎるから」
 三人もロゼの純粋さがわかっていた。そうしてである。
 誰もが戦いを見守った。二人の闘いをだ。
 確かに攻撃は受ける。だが、だ。
 それでも立っていた。満身創痍となろうともだ。
 そしてである。ズールに近付いてだ。
「兄さん!」
「行くぞ!」
 動きが完全に合さった。一つになった。
 そのうえでだ。二人同時に仕掛ける。最早ズールの攻撃はどうでもよかった。
「マーズフラッシュ!」
「マーズフラッシュ!」
 二人同時に放つ。それでズールの動きを完全に止めた。
「むっ!?わしの身体が」
「これだけではない!」
「まだだ!」
 そしてだ。二人同時に剣を抜いてだ。
 そのうえでだ。言うのであった。
「いいな、これでだ」
「うん、これで」
 タケルがマーグの言葉に応える。そうしてだ。
「行くぞ!」
「ダブルファイナル!」
 その最後の剣がだ。同時に一閃された。
「ゴッドマーーーーーーーーズ!!」
 それでズールを左右から切り裂いた。これで決まりだった。
「うう・・・・・・」
「勝負ありだな」
「これで・・・・・・!」
「何故だ」
 最早死を待つばかりだった。そのうえで言うのだった。
「何故わしが。こうも簡単に」
「志があるからだ」
「だから俺達は勝てた」
 二人はこうそのズールに返す。
「そういうことだ」
「ズール、貴様よりも遥かに重く大きな心があるからだ」
「何だ、それは」
 それが何か。ズールは断末魔の中で問う。既にその巨体のあちこちから火を噴いている。
「何だというのだ」
「この世の人々を、そして平和を」
「守ろうという心だ!」
 それだと返すのである。
「それがあるから私達は勝てたのだ」
「だからこそだ」
「戯言を言うものだ」
 ズールはこの期に及んでもだった。それを認めようとしなかった。
 そしてだ。こう言うのだった。
「人が何だ、平和が何だというのだ」
「しかし貴様は敗れた」
「それが答えだ」
 こう返す二人だった。勝者がどちらかは言うまでもなかった。
 そしてだ。遂にズールは炎に包まれた。その中でだ。
「無念・・・・・・」
 この言葉を最期にして消え去った。ギシン星での戦いは完全に終わった。
 そしてマーグのところにだ。すぐにロゼが来て。そのうえで。
「マーグ様!よくぞ!」
「ロゼ・・・・・・」
「はい、マーグさん」
「あとは二人きりにしてあげるから」
「それじゃあね」
 皆あえてだった。微笑んで二人だけにするのだった。
「じゃあ戦いも終わったし」
「パーティーにするか」
「コンサート開くぜ!」
 バサラがここで言う。
「いいな、皆俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
「あたしも歌うわよ!」
 ミレーヌも名乗りを挙げる。
「もう今最高にご機嫌なんだから!」
「ああ、今日は派手に騒ごうぜ!」
「それならね!」
 こうしてだった。全員で賑やかなパーティーに繰り出す。今一つの闘いが終わった。
 そしてだ。そのパーティーの中でだ。
「ねえマーグさん」
「ロゼさんも」
「こっちに来て、こっちに」
「さあさあ」
「何だ?」
「一体何が」
 二人は引き立てられるように案内されながら言うのだった。
「何があるのだ?」
「あの、いきなり」
「いきなりも何もね」
「今回の主役じゃない」
「そうそう」
 そしてだ。ルリが言うのであった。
「お二人のこれからの為に」
「これからというと」
「何が」
「将来のことです」
 ルリのぽつりとした言葉が続く。
「そう、将来です」
「将来だと!?」
「あの、それは」
「何時にされますか」
 ルリはまたぽつりとした口調で問うてきた。
「それで」
「待て、何をだ」
「一体何ですか?」
 二人は話がさっぱりわからずこう問い返した。
「話がわからないのだが」
「ですから何時とは」
「結婚です」
 まさに単刀直入だった。
「結婚は何時にされますか」
「結婚!?」
「そ、それは」
 マーグは驚いた顔になりロゼは耳まで真っ赤になった。
「話がわからないが」
「あ、あの。私はですね」
 そしてだ。ロゼはしどろもどろで言うのだった。
「まだ十七ですけれど」
「それは知っています」
「それなら。そんな話はまだ」
「それはいいのです」
 ルリはここではいささか強引だった。
「気にしてはいけません」
「いけないって」
「ですから何時にされますか」
 ルリはあくまでこう問うのだった。
「一体何時に」
「そう言われましても」
 ロゼは真っ赤になったままで返す。何とかという調子で。
「私にしても。それは」
「それは?」
「戦いが終われば」
 何気に爆弾発言であった。
「考えてますけれど」
「全ての戦争が終わってからですね」
「はい、そうです」
 見事な誘導尋問であった。
「ですから。今はとても」
「では戦いが終われば」
「その時は私から言わせてもらいます」
 爆弾発言は続く。ただし本人に自覚はない。
「何があっても。それで」
「結婚されますね」
「絶対に離れませんっ」
 こうまで言い切った。
「それこそです。何があろうとも」
「わかりました」
 ここまで聞いてだった。ルリはこくりと頷いたのであった。
 それからだ。また言うのだった。
「では。その御心受け取りました」
「頑張ってね、ロゼさん」
「何があっても幸せになってね」
「マーグさんと」
「あの、何でそうなるんですか?」
 ロゼはまだ自覚がなかった。
「私は。そんな」
「今はっきりと仰いました」
 見ればだった。ルリは微笑んでさえいた。
「ロゼさん御自身が」
「わ、私が」
「私達何も言わなかったし」
「なあ」 
 秋水兄妹が言う。
「もうロゼさんから自然に」
「言いまくってたし」
「うう、それは」
「皆何を言っているんだ?」
 ただしであった。まだマーグはわかっていなこあった。
「一体全体」
「あっ、マーグさんはわからなくていいです」
「別に」
「ロゼさんのお話ですから」
「そうか」
 しかもそれで納得するマーグだった。
「ならいいが」
「まあロゼさんを好きなのは事実だからいいか」
「そうよね。それはね」
「しっかりしてる人だし」
 マーグが信頼されている理由であった。
「ちゃんとしてるから」
「それはまあね」
「何とかね」
 こう話してであった。とりあえず納得する一同だった。
 しかしである。皆ここでまた話をすうrのだった。
「じゃあ戦争が終わったら」
「一矢さんとエリカさんのこともあるし」
「幸せ満載ね」
「そうね」
「幸せは掴むものだからな」
 一矢も微笑んでいる。
「思えばタケルがマーグを救い出して」
「マーグがロゼを導いたな」
「そうね。それでロゼさんはその手で幸せを、なのね」
 京四郎とナナも温かい目になっていた。
「そうだな、そうなる」
「いい話よね」
「そうだな。愛は絶対に勝つんだ」
 その勝利者の言葉だ。
「何があっても」
「ああ、俺もそれがわかった」
「私もよ」 
 京四郎とナナはまた一矢の言葉に応えた。
「ロンド=ベルに入ってな」
「そうよね」
「ギシン星もこれから大変だろうがな」
 大文字はふとこう言った。
「だが。必ずやり遂げる」
「そうですね。それは」
 ロゼが彼のその言葉に応える。元の顔に戻ってだ。
「必ず」
「ロゼ君も信じているな」
「はい、妹達がいます」
 だからだというのだ。
「ですから必ず」
「よし、ならここはだ」
 また言う大文字だった。
「すぐに別の場所に向かおう」
「別の惑星ですか」
 レオンがその言葉に応えた。
「そこを目指せと」
「はい、ここはギシン星の方々のものです」
 この辺り全てがだというのだ・
「ですから」
「そうですか。それでなのですね」
「ここに留まるべきだと思われますか」
「いえ」
 大文字の言葉には首を横に振ってみせたのだった。
「私のこの辺りはです」
「そう思われますね」
「はい、ですから」
「はい、それではです」
「新たな惑星を目指しましょう」
 レオンからの言葉だった。
「我々に相応しいその惑星を」
「では諸君」 
 ジェフリーも全軍に告げる。
「パーティーの後で新たな場所に向かおう」
「楽しんだ後で」
「新天地を探しにですか」
「そうだ、敵はまた出て来るだろうが」
「今度は何が出て来るでしょう」
 ふと慎悟が述べた。
「一体どの勢力が」
「そうね。ハザル=ゴッツォの軍かムゲ帝国軍は絶対に出て来ると思うわ」
 神代はこう見ていた。
「彼等はね」
「そうですか、彼等はですか」
「私はそう思うわ」
 こう話すのだった。
「他にも色々といるけれど」
「プロトデビルンにバジュラもだよな」
 今言ったのは勝平である。
「そういう奴は何時出て来るかわからねえからな」
「そうだな。四つのうち一つは絶対にな」
「出て来るわよね」
 宇宙太と恵子もこう話す。
「最悪全てもな」
「その可能性もね」
「乱戦か」
 一太郎がそれを聞いて述べた。
「その可能性も高いか」
「うむ、残念じゃがその通りじゃ」
 兵左衛門はその通りだと答えた。
「何が出て来てもおかしくはないのが宇宙じゃしな」
「じゃあどいつもこいつも叩き潰してやるわよ」
 アスカの言葉は単純明快ですらあった。
「出て来た奴を片っ端からね」
「アスカ、随分熱いね」
「マーグさんとロゼさんのハッピーエンド見たからね」
 だからだというのである。
「だからね」
「それでなんだ」
「そうよ、だからよ」
 こうシンジにも言うアスカだった。
「あんなの見たら何かこっちだってね」
「やる気になったんだ」
「いつもよりさらにね」
 血の気の多い彼女らしい言葉だった。
「さあ、私も誰かいい人見つけようかしら」
「ああ、そうするといい」
 タケルがそのアスカに声をかけた。
「アスカもな。戦争が終わったらな」
「そうですよね」
 アスカも彼の言葉には素直に微笑んだ。
「タケルさんみたいに」
「やっぱりタケルさんには優しいんやな」
「あんなの見せられたら応援しないではいられないわよ」 
 だからだとトウジにも返した。
「タケルさんも一矢さんも」
「真心っちゅうわけやな」
「タケルさんも一矢さんもそれが凄過ぎるのよ」
 そうだというのである。
「本当にね」
「そやな。それは事実やな」
「凄すぎるわよ、本当に」
 こうまで言うのだった。
「タケルさん達は」
「そういう人を好きになればいい」
 レイの言葉だ。
「そして愛すればいい」
「こんな人達滅多にいないのに?」
「それでも。愛すればいい」
 レイはこう言うのだった。
「そうすればいい」
「見つけろってことね」
「そう」
「それ自体が難しいけれど」
「私の場合は」
 ここでレイの言葉が変わった。そうしてだった。
「マスターアジア様が」
「あんたも相変わらずね、それは」
「素敵過ぎるから」
 レイの目には今爽やかに笑うマスターアジアがいた。
「あの方は」
「これって純愛っていうの?」
 アスカの今の言葉には疑問符があった。
「やっぱり」
「そうじゃないのかな」
「今度は捻り褌に胸に極小ブラにタキシードの究極変態になったのに」
「おい、何だそりゃ」
「想像することを頭が拒んでるんだけれど」
「どういう格好なんだよ」
 皆アスカの今の話に首を捻ることになった。
「そういえばアレンさんも」
「そうよね」
「何か辮髪でビキニのオカマさんみたいに思えてきたし」
「おい、待て」
 流石にこう言われるとだった。アレンも穏やかではいられなかった。それですぐに言うのだった。
「何だその変態は」
「何か最近そう思えるんですよ」
「気のせいですか?」
「どっかの学校で校長先生やっていた記憶は」
「忍者ならある」
 こっちの方を答えるのだった。
「そこにはマーグや豹馬がいたな」
「むっ、そうだな」
「確かデブの忍者だったよな」
 マーグと豹馬もそこには頷けるものがあった。
「神風の術だったか」
「何か懐かしいよな」
「私もいたわね」
「そうだね」
 フォウとミンが自分から言ってきた。
「あの学校に」
「何か懐かしい話だけれどね」
「しかしオカマはない」
 これは断言するアレンだった。
「そこまで変なオカマはだ」
「そういえば俺もだ」
 今度はシローが言い出してきた。
「医者王だったか」
「ええ、それですね」
「未完で終わったな」
 アズラエルと凱も出て来た。
「いや、あの世界はどうも」
「嫌な記憶があるな」
「その嫌な記憶の双璧っていえば」
 ユンがそのアレンとここにはいないマスターアジアを見て述べた。
「やっぱり。アレンさんと」
「何か言ったか、影が薄い女」
 アレンも負けじとユンに言い返す。
「御前もあの世界ではだな」
「はい、何かそうなんですよね」
「白馬だけだったな」
「殆どネタなんですよ。困ったことに」
「しかしどういう世界なんだ?」
 シローがそこを指摘する。
「あっちの世界も滅茶苦茶みたいだな」
「その様だな」
 ヒイロもここで出て来た。
「俺はあの世界では悪役だったか」
「俺名前違ってたよな」
 何故かムウも登場した。
「けれど皆わかるんだよな」
「あれは不思議だな」
「そうですよね」
 ミリアルドとガムリンも出て来て言う。
「誰でもわかるからな」
「本当に」
「だって声でわかりますから」
 今突っ込みを入れたのはリリーナだった。
「ほら、スワンさんも違う名前で」
「貴女もデス」
 スワンはそのリリーナにこう返す。
「私だけではありまセン」
「うっ、わかってたんですか」
「わかりマス。声で」
「もうこれ位にしません?」
「そうだよな」
 今度はダコスタとディアッカが出て来た。
「僕も結構気になるお話ですし」
「俺もな。やばい感じだしな」
「皆そうした世界にも縁があるからね」
 今言ったのはミオだった。
「私なんか実は忍者になっててさ」
「モロバレっていうか」
「素の名前はないでしょ」
「そうなのよね。あっちの世界では失敗しちゃった」
「その世界のことわかるわ」
 アイナの言葉だ。
「私は月の女神だったかしら」
「もう何が何だか」
「カオス過ぎるし」
 こんな話をしているうちに次の戦いに向かうことになった。また旅立つ彼等だった。


第二十九話   完


                          2010・5・20
 

 

第三十話 ファーストアタック

            第三十話 ファーストアタック
    その日はシェリルのコンサートだった。
「おっ、招待状来てるぜ」
「そうね」
 百枚単位でロンド=ベルに来ていた。
「凄いな、是非にって」
「来てくれって言ってますよ」
 ミシェルとルカが弾んだ声で言う。
「どうする?皆それで」
「行きますか?」
「いや、俺はいい」
 最初に言ったのはオズマだった。
「そういうのは好きじゃない」
「そういえばそうですよね」
「少佐ってそうしたコンサートとかは」
「アイドルは趣味じゃない」
 そうだというのである。
「だからだ。当直に入らせてもらう」
「わかりました。じゃあ」
「僕達は」
「俺もだな」
 アルトもだというのである。
「当直をやらせてもらうな」
「そうか、御前もか」
「残るんですね」
「どうもな」
 流石にシェリルとのことは言うことはできなかったのであった。
「だからな」
「よくわからないけれどな」
「残られるんでしたらそれで」
 これで話が終わった。そうしてであった。
 殆どのメンバーが出ることになった。当直は僅かであった。
「残ったのはおっさんと変わり者ばかりか?」
「そうみたいだな」
 皆大型バスに乗り込みながらコンサート会場に向かっていた。
「残ったのっていったら」
「アムロさんとかちょっとヤングじゃない人と」
「機械な人達と」
 ボルフォッグやテムジンといった面々である。
「それに他は」
「隔離されてる人達だけか」
「彼等は今絶対安静です」
 アズラエルがここで言う。
「全く。薬を投与しなくてもあれですか」
「酒飲んで大暴れして」
「また営倉行きか」
「あれには呆れたし」
 オルガ、クロト、シャニは酒癖も悪かった。
「いきなり車乗って二百キロで一晩かっとばすなんて」
「何考えてるんだか」
「本当よね」
 そんな話をしながらコンサート会場に向かってだ。シェリルのステージを見る。
 そこにはランカもいた。ロンド=ベルの言葉を聞いてすぐに声をかけてきた。
「あっ、来られてたんですね」
「おお、ランカちゃん」
「来てたんだ」
「最近有名になってきたみたいだね」
「いえ、まだまだですよ」
 少し謙遜して言うランカだった。
「私なんか全然」
「そうなの?」
「結構売れてますよね」
「そうですよね」
 こうランカに告げる彼等だった。
「CDもヒットチャートに出て来たし」
「スポットライトにも選ばれて」
「そうそう」
「それでもシェリルさんと比べれば」
 そのシェリルはまだステージにいない。
「ですから」
「まあランカちゃんはランカちゃんで頑張ればいいし」
「そうよね」
 そんな話をしてだった。皆ではじまるのを見ていた。そしてシェリルが出て来てだ。
「シェリルーーーーーーーーーッ!」
「皆ーーーーーーーーーーッ!!」
 そのシェリルが叫ぶ青い軍服を模した衣装だった。
「文化してるーーーーーーーっ!?」
「おーーーーーーっ!」
「それじゃあ行くわよ!」
 こう叫んでだった。早速歌いはじめる。
 二曲三曲となってきた。しかしであった。
 ロンド=ベルの面々の携帯が一斉に鳴った。それこそは。
「げっ、こんな時に」
「これ!?」
「これかよ」
 それで、だった。一斉に席を立つ。そうしてだった。 
 慌しくバスに乗ってそのうえで各艦に戻りだった。
「敵ですか」
「今度は何処ですか?」
「ムゲ帝国だ」
 答えたのはシナプスだった。彼は残っていたのである。
「奴等が来た」
「ああ、ムゲですか」
「予想していましたけれど」
「来たんですね」
「そうだ、来た」
 まさにその彼等だというのであった。そうしてだ。
「数は三十万」
「三十万ですか」
「それだけですね」
「総員出撃してくれ」
 シナプスは数を告げてすぐに命令を出してきた。
「いいな、すぐにだ」
「はい、それじゃあ」
「すぐに」
「しかしなあ」
 ここでぼやいたのはフィジカだった。
「コンサートはまあ。後で動画サイトで観るか」
「そうだな。コンサートの動画はすぐに配信されるからな」
 金竜が彼の言葉に応える。
「それを待てばいい」
「ええ、それで我慢します」
「というかフィジカ」
 ドッカーがここで彼に問うてきた。
「御前家庭もあるだろ」
「まあそうだけれどさ」
「それでそれはまずいだろ」
「アーチストは別にいいじゃないか」
 それはいいというのであった。
「それはさ」
「まあそうか?奥さんが文句言わないといいけれどな」
「そうか。それじゃあ」
「今は」
 そんな話をしてであった。全員で出撃する。そのムゲ帝国軍の指揮官は。
「久し振りだな」
「またあんたかよ」
「ったくよ、コンサートを邪魔してくれてよ」
「全く、迷惑なんだから」
 シャピロだった。誰もが彼の顔を見てうんざりとなっていた。
「本当にね」
「何で出て来たんだよ」
「一体何を言っている」
 事情を知らないシャピロがここで彼等に問う。
「何をだ」
「ああ、あんたには関係ないから」
「ただ、今回特にむかついてるだけで」
「それだから」
「理由がわからんな」
 シャピロだけがいぶかしんでいた。
「何を言っているのだ、さっきから」
「とりあえず戦うからな」
「それじゃあな」
「いくわよ」
 ほぼ問答無用であった。そのうえで向かってだ。彼等から戦いをはじめた。
 そのうえで攻撃を仕掛ける。敵を次々と倒していく。
「御前等のせいでな!」
「折角のコンサートが!」
「糞っ、忌々しい!」
 こう言いながら敵を薙ぎ倒していくのだった。
「折角楽しんでいたのに!」
「それでどうしてなのよ!」
「出て来やがって!」
「!?シャピロ様」
「これは」
 部下達もここで言った。
「敵の様子が妙です」
「いつもと違います」
「何があったのでしょうか」
「私にもわからん」
 シャピロがわかる筈のないことだった。
「だが」
「だが?」
「何が」
「今のロンド=ベルは普段以上に士気が高い」
 これはわかっているのだった。
「だからだ。用心してかかれ」
「はい、それでは」
「ここは慎重に」
「あの少女を手に入れる」
 それは忘れていなかったのだった。
「絶対にだ。いいな」
「では」
「今から」
 こうしてだった。彼等は今回は全軍で慎重に進む。ロンド=ベルとの戦いもあまり激しくはない。それを見て大河も言うのであった。
「こちらの怒りで慎重になっているな」
「そうですね」
 スタリオンが彼の言葉に頷く。
「今は」
「ならばこちらも同じだ」
「慎重にかよ」
「そうだ、慎重に進める」
 火麻に対しても答えた。
「いいな、ここはだ」
「どうもそういう作戦は得意じゃねえんだがな」
 攻撃的な彼らしい言葉だった。
「やっぱりよ。派手にぶちかまさねえとな」
「やっぱりそうなんだね」
 ルネが彼に対して言う。
「参謀らしいっていえばらしいね」
「俺は攻撃型の参謀なんだよ」
「攻撃的過ぎるだろ」
「なあ」
「最初参謀に思えなかったしな」
「そうよね」
 皆火麻について話す。
「そういう人だからなあ」
「今耐えられるか?」
「無理かもね」
「いや、無理だろ」
「じきに切れるさ」
 こう話されるのだった。
「いつものパターンでな」
「それに乗る面子も多いしなあ」
「いちいち挙げられないまでに」
「くそっ、こんな大人しい戦いできるかよ!」
「ああ、全くだ!」
 早速甲児とシンが切れていた。
「大河さん!ここは積極攻勢だよな!」
「いつも通りな」
「絶対切れると思ったけれどやっぱりね」
 アスカが呆れた声で二人に言った。
「本当にね」
「いや、そう言うアスカも」
「何よ」
「今うずうずしてるんじゃないの?」
 シンジの言葉である。
「その気配に満ち満ちてるよ」
「うう、何でわかったのよ」
「だってねえ。同じだから」
「私達とね」
 アムとレッシィがそのアスカに言ってきた。
「今かなりイライラしてるから」
「全力で戦いたいのだがな」
「まあいつもの展開だとな」
 ここで言ったのはダバである。
「別の敵が出るんだけれどな」
「というと今回は」
「どの勢力が出るんだろうね」
「私の予想だが」
 ギャブレーの言葉である。
「プロトデビルンかバジュラだ」
「バジュラ?」
「それが出て来るっていうのか」
「その二つのいずれかだな」
 こう見ているのだった。
「おそらくな」
「じゃあどっちが出てきてもいいようにしよう」
 エリスの言葉である。
「心構えをしておくとそれで違うわ」
「そうだな」
 ダバがエリスのその言葉に頷いた。
「それはしておこう」
「ダバっていこういう時真面目よね」
「そうよね」
「本当にな」
 皆ダバのその言葉を聞いて述べた。
「じゃあ何が出てきてもいいように」
「身構えておくか」
「その時はやるからな!」
 エイジがここで叫ぶ。
「敵が二つなら派手にやれるしな」
「何でこの手の声だとこうなるのかしらね」
 ミヅキは首を捻りながら述べた。
「全く」
「声は重要だぞ」
 クランがそのミヅキに言う。
「それで私も色々決まっていたりするからな」
「そうそう、わかります」
 ミリアリアがクランのその言葉に頷く。
「クランさんの言ってること。本当に」
「そりゃそうだろうね」
 サイがクランのその言葉に頷く。
「だってクラン大尉とミリアリアって」
「そっくりだからなあ」
 トールもそれを言う。
「何もかもな」
「だよなあ。まあ似ている人が多いのっていいけれど」
「その通りだ。だが俺はだ」
 宙の言葉である。
「正反対だからな、性格も何もかもな」
「おいおい、それは俺のことか?」
 アムロが笑いながら言ってきた。
「俺のことだよな」
「ああ、悪いけれどな」
 まさにその通りだという宙だった。
「アムロ中佐とはな。同じものは感じるけれどな」
「確かにな。さて」
 ここでまた言うアムロだった。顔が真面目なものになる。
「来たな。七時の方角だ」
「七時!?」
「そこに」
「そうだ、そこからだ」
 こう言うのだった。
「そこからだ。このプレッシャーは」
「はい、バジュラですね」
 トビアにもわかったのだった。
「これは」
「バジュラ!?」
「そっちか」
「ギャブレー殿」
 バーンがそのギャブレーに声をかけた。
「貴殿の予想通りだったな」
「何となく思っただけだったがな」
 実は結構勘だったのである。
「しかし。それが来たならばだ」
「戦うのだな」
「そうさせてもらう」
 返答は一言だった。
「このままな」
「そうだな。それではだ」
「行くとしよう」
「うむ」
 こうしてそのバジュラの軍勢を見る。その攻撃はだ。
 ロンド=ベルだけでなくムゲ帝国軍にもだ。両方向けてきた。
 その攻撃を受けてだ。シャピロは言うのだった。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「どうされますか」
「バジュラだったな」
 その敵のことを問うのだった。
「今の敵は」
「はい、確か」
「そういう名前でした」
「そのバジュラにもだ」
 名前を確認したうえでの言葉だった。
「兵を向けるのだ」
「ロンド=ベルだけでなくですか」
「彼等にも」
「そうだ、そうする」
 こう言うのだった。
「いいな、それではだ」
「はい、では」
「今は」
「そうしろ。では戦力を二つに分ける」
 こうして彼等は兵を左右に分けた。そのうえで戦う。そしてであった。
 戦いは激しさを増してきていた。それこそがだった。
「よし、来た!」
「これこそがな!」
「燃えてきたぜ!」
 ロンド=ベルの熱い面々がバーストしてきた。
「いっちょ派手にいくか!」
「音楽もかかってるしな」
「ああ、シェリルちゃんのな」
「シェリルのか」
 アルトがその言葉に反応を見せた。
「あいつのか」
「ああ、だからやるぜ!」
「もう派手にな!」
「叩き潰してやるか!」
 こうしてだった。両軍に攻撃をはじめた。
 火麻もだ。楽しそうに言う。
「潰せ!やれ!」
 最早指揮の言葉ではなかった。
「両方共だ、いいな!」
「両方共だね」
「まずはバジュラだな」
 敵の優先順位はつけていた。しっかりとだ」
「いいな、奴等からだ」
「ああ、わかったよ」
 ルネは微笑んで彼の言葉に応えた。そのうえでこう言うのだった。
「やっぱりね」
「何だってんだ?」
「あんたはそうじゃないとね」
 こう言うのである。
「派手にやらないとね」
「俺らしくねえっていうのか」
「ああ、そういうことだよ」
 彼が言いたいのはそういうことだった。
「あんたはね」
「よし、それならだ!」
 ルネの言葉にさらに波に乗るのだった。
「もっとやってやるか!」
「ああ、行くか!」
 凱も言う。
「まずはバジュラだ!」
 ロンド=ベルはバジュラを優先的に攻撃していた。その中でだ。アルトも攻撃に加わっていた。そのコクピットの中には。
「何だ、御前もかよ」
「先輩もでしか」
「ああ、そうさ」
 憮然とした顔でミシェルとルカにも答える。
「悪いか?」
「いや、別にな」
「たまたまとは思いますけれどね」
「だがな」
「そうですよね」
 そして二人でも話をするのだった。
「素直じゃないものだ」
「先輩ってそういうところありますからね」
「何が言いたい」
 アルトの顔はさらに憮然としたものになった。
「全く。何なんだ」
「まあ気にするな」
「そうですよ」
 しかし二人はこう冷静にアルトに返してだった。
「それよりもな」
「何か出て来ましたよ、バジュラから」
 見るとだ。かなり巨大な戦艦がバジュラの軍にいた。そうしてだ。
 それがロンド=ベルの方に向かって来てだった。
「ふむ」
「来ましたよ、艦長」
 ボビーが艦長のジェフリーに対して笑顔で言ってきていた。
「大きいのが」
「そうだな。それでは」
「あれをします?」
 オカマ言葉で問うのだった。
「それじゃあ」
「そうだな。面白いな」
 ジェフリーも彼の言葉に不敵に返す。
「それではな」
「艦長、しかしそれは」
 艦橋に来ていたキャスリンが抗議めいて言ってきた。
「あまりにも」
「あまりにも。何だ」
「はじめてではないのですか?」
 一体何をするかだ。既にそれを察していたのである。
「ですからそれは」
「危険だというのか」
「はい、そうです」
 慎重派で真面目な彼女らしい言葉だった。
「あまりにもです」
「危険か」
「まあ言われてみればそうよねえ」
 ジェフリーだけでなくボビーもそのことは認めた。
「確かに今までしたことはない」
「これがはじめてなのよ」
「ですから。今は」
 そのことを根拠に言うキャスリンだった。
「するべきではありません」
「貴官の言いたいことはわかった」
 ここまでは暗視を聞いて返した言葉だった。
「それはだ」
「では早速」
「だからこそだ」
 しかしだ。ここで彼は言うのだった。
「やるべきだ」
「えっ!?」
「敵を驚かせその意表を衝く」
 これがジェフリーの考えだった。
「そのうえで我々の攻撃の凄さを見せ付けるのだ」
「そんな、若し失敗すれば」
 キャスリンはジェフリーの言葉を聞いてだ。思わず言い返した。
「只では済みません」
「失敗すればか」
「はい、そうです」
 やはりキャスリンはここでも慎重派であった。
「ですからそれは」
「あらあら、そんなことをしてもよ」
 しかしここでボビーは言うのだった。
「つまらないわよ」
「つまらないかどうかで戦争はしません」
 まだ真面目であった。
「確実に勝利を収めないと」
「そうだ、確実な勝利だ」
 ジェフリーもそのことには頷いた。
「その為にだ」
「今ここで、ですか」
「いいか、変形する!」
 こう命令を出した。
「いいな、そしてだ!」
「ファーストアタック行くわよ!」
 ボビーの声が野太いものになった。
「いいわね、それで!」
「はい!」
「待ってました!」
「やりましょう!」
 モニカにミーナ、それにラムが笑顔で応えてだった。
「戦闘形態に変形します!」
「そしてランチャーで一気に」
「あの戦艦を!」
「例え小さくともだ」
 ジェフリーはマクロスクォーターを指して言った。
「この艦が何故マクロスと呼ばれているか見せてやろう」
「その通りですね」
「何かロンド=ベルにいると」
「こういうのが普通になってきますから」
 三人娘も完全に乗り気だった。そうしてだ。
「各員安全区域に入りました!」
「変形用意完了!」
「攻撃用意完了です!」
「よし、それではだ」 
 巨大なキャノンが構えられる。ジェフリーはその中でまた言った。
「メガマクロスキャノン」
「はい、メガマクロスキャノン」
「発射ですね」
「そうだ、撃て!」
「撃て!」
 ボビーにより攻撃が復唱されてだ。そうしてだった。
 巨大な一条の光が放たれてだ。バジュラの大群を一掃した。そのうえで敵の巨大戦艦も消し去った。まさに一撃でそうしてしまったのである。
 それを見てだ。味方のロンド=ベルの面々もまずは唖然となった。
「おいおい、こんな切り札があったのかよ」
「これはまたな」
「凄いもんだな」
「全くね」
 口々に言う。しかしその口元はだ。
 笑っていた。そうして次に取るべき行動もわかっていた。
「よし、僅かな部隊をバジュラの掃討に置いてだ!
「主力はムゲ帝国軍に!」
「一気に決めろ!」
 こう言ってである。すぐにムゲ帝国軍に総攻撃を浴びせる。
 ムゲ帝国軍もマクロスクォーターの攻撃に唖然となっていた。それが隙になった。
 一気に攻められてだ。それで勝敗が決してしまった。
「シャピロ様、軍の数は半分を切りました」
「このままでは」
「くっ、またしてもか」
 シャピロもその状況に歯噛みするしかなかった。
「まさかまだあの様な切り札を持っているとは」
「軍は完全に浮き足立っています」
「最早満足に戦える状況ではありません」
 このこともシャピロに告げられた。
「ここは一体」
「どうされますか?」
「止むを得ん」
 シャピロは苦い顔で答えた。
「それではだ」
「はい、それでは」
「ここは」
「撤退だ」
 この決断を下すしかなかった。
「わかったな。このまま撤退する」
「わかりました」
「ではここは」
「全軍速やかに戦場を離脱する」
 シャピロはこうも告げた。
「わかったな、それではだ」
「了解です」
「殿軍は私が」
 部下の一人が申し出てだ。そのうえで戦場を離脱していく。ここでの戦いもこれで終わった。ロンド=ベルがその攻撃で流れを掴んだうえでの勝利だった。
 そしてだ。敵がいなくなった時だ。それぞれのコクピットにはまだ。
「ああ、まだやってくれてるな」
「そうね」
「シェリル=ノームが」
「皆、いい!?」
 そのシェリルの声もしてきた。
「コンサートはまだ続くわよ」
「えっ、まだやるのか?」
「まだやってるの」
「私達の為に戦ってくれているロンド=ベルの人達」
 彼女はここで彼等のことを言うのだった。
「その人達が戻ってきてくれるまでね。少し待っていてね」
「っておい!」
「こんなこと言ってくれてるじゃない」
「これマジ!?」
 誰もがその言葉に喜びの声をあげる。
「あのシェリル=ノーズがだよ」
「私達を待ってくれてるって」
「嘘みたいじゃない」
 そうとなればだ。答えはもう決まっていた。
「よし、それなら」
「すぐに戻りましょう!」
「それでコンサートに戻って」
「シェリルの音楽を!」
「総員に告ぐ」
 ここでまたジェフリーの命令が来た。
「どうしても残りたい者以外はだ」
「はい、それ以外は」
「どうしますか?」
「コンサート会場に戻れ!」
 これが命令であった。
「いいな、すぐにだ!」
「了解!」
「じゃあすぐに!」
 こうしてであった。全員すぐにシェリルのコンサートに戻った。それが今の彼等だった。
 そしてその中にはだ。アルトもいた。彼はミシェルとルカにその両手を掴まれてだ。そのうえでコンサート会場まで連行されていたのである。
「俺もかよ」
「ああ、御前は絶対だよ」
「来てくれないと話になりませんから」
 笑顔でアルトに言う二人だった。
「さあ、それじゃあな」
「行きましょう」
 こうしてであった。本当に強制連行される彼だった。
 そのコンサート会場にロンド=ベルの面々が来るとだ。皆拍手で迎えてくれた。
「よし、もう一方の主役が来てくれたな!」
「私達の為に戦ってくれて有り難う!」
 拍手と共の言葉だった。
「さあ、それじゃあシェリル」
「ええ」
 休憩してジュースを飲んでいたシェリルがグレイスの言葉に応える。
「いよいよね」
「決めるのね」
「勿論よ」
 ステージ衣装を格好よく着ての言葉だった。
「今からね。最後の戦いよ」
「このコンサートでなのね」
「そう、次のコンサートもまた戦いだけれど」
 強い笑顔での言葉だった。
「今のコンサートはこれでね」
「終わらせるのね」
「はじめるのと終わらせるのが一番エネルギーを使うのよ」
 こうも言うシェリルだった。
「だから余計にね」
「そうね。それじゃあね」
「行って来るわ」
 戦う顔での言葉だった。
「それじゃあね」
「ええ、それじゃあね」
 今は笑顔で見送るグレイスだった。少なくとも今はそうだった。
 そしてステージに戻った。シェリルはだ。皆に対して言った。
「皆、待っていてくれて有り難う」
 これは自分自身への言葉ではなかった。
「どうもね。それじゃあね」
 その観客席を見る。するとだった。
 ランカがいた。その彼女と目と目が合った。そうしてであった。
「皆で歌って。これからはね」
「はい・・・・・・」
 ランカは今の言葉が誰にかけられたものなのかすぐにわかった。そうしてであった。
 彼女も口を開いた。そのうえで歌うのであった。
 その歌声を聴きながらだ。アルトは呟いた。
「これが歌か」
「ああ、そうさ」
「これがシェリルさんの」
「心の歌なんだな」
 ミシェルとルカに返した言葉ではなかった。
「そうなんだな」
「どうだ?感じたか?」
「先輩も。やっぱり」
「ああ、感じた」
 こう返しはした。
「はっきりとな」
「そうか、じゃあな」
「最後まで聴きましょう」
「ああ、聴く」
 真面目な顔でこくりと頷いてみせた。
「ここまで来たらな」
「ああ、覚悟決めなよ」
「それじゃあね」
「うっ・・・・・・」
 三人の横ではキャスリンが。ついつい口を手で押さえていた。
 ボビーはその彼女を見てだ。からかって言ってきた。
「あらあ、おめでだ?」
「違います」
 すぐにむっとした顔で返すキャスリンだった。
「マクロスの動きが激しくて」
「酔ったのね」
「はい」
 そうだというのだった。
「少し」
「あらあら、あの程度で酔うなんてね」
「駄目だともいうのですか?」
「まだまだ鍛える必要があるわねえ」
 こう言うのであった。
「これからね」
「鍛えるとは」
「これからいつも艦橋よ」
 そしてこう言ってきたのだった。
「それでどうかしら」
「えっ、あの艦橋にですか」
「そうよ。それでどうかしら」
「それは・・・・・・」
「勿論無理にとはいわないわよ」
 それはしないというのだった。
「貴女の自由よ。ただ」
「ただ?」
「それじゃあ貴女は満足しないのではなくて?」
 そうではないかというのであった。
「だって。貴女もね」
「私も?」
「そっかは言わないわよ。ただ」
「ただ?」
「彼はまだ吹っ切れていないみたいよ」
 思わせぶりな笑みと共の言葉だった。
「どうやらな」
「言っている意味がわかりません」
 わざと強気な顔になっての言葉だった。
「一体何を」
「何ももそうももないわよ」
 ボビーの顔が悪戯っぽい笑みになっていた。
「わかるんだから」
「何のことか」
「まあまあ。少なくともね」
 顔は笑っていた。しかし目の光が輝いてだった。
「今の彼よりはずっといいわよ」
「今の」
「彼は止めておきなさい」 
 よく見ればだった。今のマルコの目は笑っていなかった。
「わかったわね」
「止めておくとは」
「そうよ。あれは悪い男よ」
 そうだというのである。
「だからね。止めておきなさい」
「それはどうしても」
「そうよ、どうしてもね」
 まさにそうだというのだった。
「わかったわね」
「彼は」
「曲者よ」
 ボビーはまた言った。
「それもかなりのね」
「切れ者だとは思いますが」
「切れ者じゃなくて曲者よ」
 ボビーはキャスリンのその言葉を訂正させた。半ば無理にだ。
「男を見抜く目も育てることね」
「目を」
「あたしから言うことはそれだけよ。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「歌を聴きましょう」
 前を見ての言葉であった。
「いいわね、ゆっくりとね」
「わかりました」
「あらあら、やるわね」
 ボビーの顔はにこやかなものになっていた。
「デュエットだなんて」
「デュエット!?」
「ほら、見て」
 うっとりとした顔でアルトに話す。
「今のシェリル=ノームをね」
「シェリルを」
「それとランカちゃんもね」
 彼女もだというのである。
「ほら、よく見なさい」
「よく」
「そう、よくよ」
 また言ってみせる。するとだった。
 シェリルとランカは共に歌っていた。視線を絡み合わせて。
 アルトもそれを見てだ。少し思うのだった。
「あれは」
「わかったわね。今の歌が」
「あ、ああ」
 戸惑った顔であったがそれでも頷きはした。
「言葉じゃ言い表せないけれどな」
「感じるだけで充分よ」
 それだけでだというボビーだった。
「それだけでね」
「感じるだけでか」
「そう、本当に大切なものに言葉はいらないわよ」
「何かマルコさんの言葉ってな」
「時々哲学的になりますよね」
「恋愛は哲学よ」
 ボビーはミシェルとルカに応えた。
「だからよ。あたしはいつも哲学の中にいるのよ」
「それを考えたらボビーさんは哲学者なんですね」
「そうなりますね」
「そうよ。あたしは愛の哲学者」
 自分でもこう言う。
「わかっておいてね」
「はい、それは」
「わかりました」
 そんな話をしてだった。そのうえでだ。
「じゃあ俺達も今は」
「音楽を聴かせてもらいますね」
「アルト、いいな」
「聴きましょう」
「わかった」
 アルトは再度二人の言葉に頷いた。しかし今度は憮然とした顔ではなかった。
 真剣な顔で頷いて。そうしてだった。
「それじゃあな。真面目にな」
「ああ、聴こうぜ」
「静かに」
「心か」
 アルトはこれまでの言葉を心の中で反芻しながら述べた。
「それがか」
「恋愛は哲学よ。それに」
 ボビーはまた話す。
「音楽も哲学なのよ。覚えておきなさい」
「今はよくわからない」
「後でわかるわよ。だからね」
「覚えておくことか」
「そういうことよ。いいわね」
 そんな話をしたうえでだ。シェリルとランカの歌を聴くアルトだった。今はそうしていたのだった。


第三十話   完


                              2010・5・23  

 

第三十一話 ハイスクール=クイーン

             第三十一話 ハイスクール=クイーン
「ふう」
「美味いな」
「そうね」
 皆で話していた。
「この酒はな」
「コーラでカクテルにしてもね」
「いけるんだな」
「ああ、そうだな」
 こうそれぞれ話すのだった。
「甘いのが余計にな」
「いいよな」
「甘いお酒って美味しいけれど」
「コーラは余計にね」
 こう話をしながらだ。さらに飲んでいくのだった。
 そしてだ。コウがここで言う。
「それでさ」
「御前人参酒飲まないんだな」
「人参なんか別にいいだろ」
 キースへの言葉はこれだった。
「人参食べなくても別に生きていけるだろ」
「まあそれはそうだけれどな」
「ウラキの人参嫌いは全然変わらないな」
 モンシアも呆れていた。
「ったくよお、ちょっとはよ」
「食べろっていうんですか?」
「そうだよ。人参は身体にいいんだぞ」
 言いながらその人参酒を飲むモンシアだった。
「それもかなりな」
「わかってますよ。けれどそれでも」
「やれやれ、どうしてもか」
「それも変わりませんね」
 ヘイトとアデルもここで言う。
「人参はどうしてもか」
「食べられないし飲めませんか」
「お酒にしてもやっぱり」
 実際にだ。目の前の人参酒には手をつけようともしない。
 そのうえでだ。今はブラッディマリーを飲んでいた。トマトをだ。
 そしてだ。こう言うのである。
「他の野菜や果物は好きだからいいじゃないですか」
「それはそうだがな」
 バニングもそれは認めた。
「だがな」
「だが?」
「嫌いな食べ物があるというのは悲しいことだ」
 そうだというのであった。
「それだけ美味いものがわからないのだからな」
「だからですか」
「しかし食べられないのなら仕方がない」
 こうも言うのだった。
「それはだ」
「はあ」
「まあいい。それでだが」
 バニングは氷が入ったグラスの中にバーボンを入れていた。
「まずは飲もう」
「とにかく今はですね」
「酒を」
「飲む時に飲む」
 ヘイトとアデルにも言う。
「それがストレス解消の秘訣だ」
「そういうことですね。じゃあ俺も」
 モンシアはニコニコとしながら飲んでいる。
「楽しみますか」
「そうですね。そういえば俺達今度は」
「うむ、ある星に向かっている」
 彼等に美知島が言ってきた。
「ガリア4にだ」
「確かゼントラーディの人達がいるんですよね」
「そこは」
「そうだ。彼等の軍がいる」
 こう一同に話すのだった。
「そこにシェリル=ノームが慰安に行く」
「それで俺達は」
「その護衛ってことですね」
「そういうことになる。これも重要な仕事だ」
 こうも話すのだった。
「宜しく頼むぞ」
「ええ、わかりました」
「それじゃあ」
 こう返してであった。全員そのガリア4に向かうのだった。
 その中でだ。アルト達は自分達が入っているフロンティアの学園の階段のところでだ。弁当を食べながら話をしていた。
「いよいよ明日ですね」
「そうだよな」
 ミシェルがルカの言葉に応えていた。
「本当にな」
「そうですね。シェリルさんがガリア4に行って」
「ランカさんはファーストコンサートで」
 ナナセもいた。彼女は親友のランカのことを話した。
「何かと凄い日になりそうですね」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「問題はガリアの方ですね」
 そちらだというのだ。
「ゼントラーディの人達の中でかなり減った強硬派がまだいまして」
「その連中が問題か」
「はい、どうしてもシェリルさんの歌を聴きたいって言いまして」
「それでなんだな」
「はい、それでなんです」
 こう話すのだった。
「シェリルさんが今回」
「厄介な話だな」
「シェリルさんも大変なんですね」
 ナナセはその話を聞いて心配する顔で述べた。
「ランカさんも大変ですし。お忙しいでしょうね」
「それじゃあ」
 ここでだ。ランカの声が聞こえてきた。
「私今日は休んだ方がよかったのかしら」
「あっ、ランカさん」
「今日はね」
 見ればランカも階段に座っていた。そのうえで楽しげに笑っていた。
「それにシェリルさんもいるし」
「えっ!?」
「それ本当ですか!?」
「本当よ」
 にこりと笑って答えるランカだった。
「昨日携帯のメール貰ってね」
「げっ、メル友なのか」
「あのシェリル=ノームと」
「そうなの。シェリルさんって凄くいい人よ」
 ランカだからこそわかることだった。
「優しくて気がきいて」
「高慢ってイメージあったけれどな」
「実際は違うんでしょうか」
「我儘女だよ」
 アルトはむくれて言う。
「あいつはな」
「御前はそう言うんだな」
「シェリルさんには」
「そうだよ、あいつはそんな奴だよ」
 また言うアルトだった。
「とにかくな。あいつはな」
「今日から学校に来るのよ」
 また言ってきたランカだった。
「ほら、実際に」
「えっ、あれかよ」
「あのリムジンが」
 こうしてであった。学園がさらに五月蝿いものになった。
 ロンド=ベルの面々も同じ学校に通っている。その彼等がだ。
 驚いた顔でだ。そのシェリルを見て言う。
「何てこった」
「シェリル=ノームまでこの学校に来るなんて」
「どういうことなんだ?」
「これってラッキーなのかね」
 黒い詰襟を着ているディアッカが言った。制服はかなり自由になっている。
「トップアイドルが転校して来るなんてよ」
「そうじゃねえのか?やっぱり」
「普通に考えたらな」
「ベタな展開だしな」
 ケーンにタップ、ライトはこう話した。彼等も学生服姿だ。
「とはいえな」
「ここまでベタだとな」
「呆れるものもあるな」
「全くだ」
 イザークもいる。
「只でさえ賑やかなこの学園がさらにな」
「しかもこの学園って」 
 ミレーヌはセーラー服姿だった。
「中等部と高等部一緒だし」
「そうなのよね。あたしも何かいるし」
 アスカもいる。
「一応大学出てるんだけれど」
「じゃあ御前おばさんだったのか」
 シンがまた言った。
「若作りでも中は婆だったんだな」
「ちょっと、それどういう意味よ」
「だから大学出てるんだろ」
「ええ、そうよ」
「じゃあ婆だよ」
 完全にいつものシンだった。
「見事にな」
「飛び級したのよ。しかしそれにしてもね」
「今度は何だよ」
「あんたとは一度本気で決着つけないとね」
「俺は今でもいいんだがな」
「やるっての?」
「ああ、そっちさえよかったらな」
 こう言い合いながらいつも通り殴り合いの喧嘩に入る二人だった。本当にいつも通りだ。
 ジュドーもそれを見ながらだ。呆れながら言う。
「この連中本当に喧嘩好きだよな」
「そうね。何か山猫同士の喧嘩みたいね」
「全くね」
 ルーもエルも呆れている。
「この二人だけは」
「カガリもだけれど」
「ああ、そのカガリもな」
「大変なことになってるよ」
「あっちもね」
 ビーチャにモンド、イーノが言ってきた。
「ほら、そっちでな」
「エイジと喧嘩しているから」
「もう一人と」
 見ればそちらはだ。噛んでさえもいる。完全にそんな喧嘩になっていた。
 だが皆その喧嘩を止めようとはしない。そうしてであった。
 シェリルは学校に入った。そしてである。
「えっ、パイロットスーツをですか」
「ええ、着たいんだけれど」
 にこりと笑ってルカに言うのである。
「いいかしら」
「いいって」
「宣伝も兼ねてね。いい?」
「宣伝って」
「ロンド=ベルと私のね」
 その両方だというのだ。
「それでいいかしら」
「あの、そう言われましても」
「いいではないか、別にな」
 教師で来ているクランが躊躇するルカに言ってきた。
「それはな」
「いいっていうの」
「そう、いいじゃない」
 今度はシェリルからの言葉だった。
「借りるだけだから」
「壊さないで下さいよ」
 ルカは心配する顔で述べた。
「それは頼みますよ」
「わかってるわよ。それじゃあね」
 こうしてルカからそのパイロットスーツを借りてであった。あらためてそれを着てみた。そして彼女が最初にやらされたことは。
「卵!?」
「ああ、卵だ」
「それな」
 アルトとミシェルが話す。
「それを掴む練習だ」
「いいな」
「あのね、馬鹿にしてるの?」
 シェリルは二人にこう返した。
「あのね、卵なんてね」
「いいからな」
「まずは掴む練習をね」
「私を誰だと思ってるのよ」
 いつもの言葉も出た。
「シェリル=ノームよ。これ位はね」
「うむ、ではやってみてくれ」
 冷静に言ったのはミナだった。彼女も教師である。
「それではな」
「わかったわよ。じゃあ」
 早速だった。握り潰してしまった。
「牛丼に使えたな」
「そうよね」
 凱と命がそれを見て言う。
「折角の卵だがな」
「残念だけれど」
「何よこれ」
 シェリルはその割れた卵とその中身を見て顔を顰めさせていた。
「何で潰れたのよ」
「パイロットスーツは力加減が大変なんですよ」
 ルカがここで説明する。
「だからなんです」
「そうだったの」
「まあ卵で汚れるのは何とかなりますけれど」
「それはいいんだ」
「諦めてますから」
 こう斗牙にも答える。
「既に」
「そうなんだ。だから」
「仕方ないです」
 完全に諦めているルカだった。
「もうそれは」
「それじゃあ後で手入れを」
「します。絶対に」
「けれど今は」
「諦めてます」
「諦める必要はないわよ」
 そのシェリルの言葉である。
「とにかくよ。こうして」
「あっ、また」
「潰れた」
 今度は先を押しただけである。それでもだった。
「何かオムレツ食べたくなったけれど」
「こうなったらねえ」
「どうしようもないし」
「いっそのことゆで卵なんてどうだ?」
「ああ、それいいな」
 ディアッカの言葉にエイジが応える。
「じゃあそうするか」
「ああ、それでどうだよ」
「馬鹿にしないでよ」
 しかしその言葉はシェリルをさらにムキにさせるだけだった。
「そんなことを言ってもよ」
「じゃあどうするんだよ」
「まだやるのかよ」
「そうよ、できるまでやるのよ」
 完全にムキになった顔だった。
「それじゃあね。このままできるまでね」
 こうして卵を潰し周りまで卵まみれにしていくのだった。そうしてやっと何とか握れるようになったところで止めてだ。卵を落とす為にシャワー浴びていた。
「それにしてもシェリルさんって」
「物凄く本気でしたね」
「当たり前よ」
 こうランカとナナセにも答えるのだった。
「それもね」
「当たり前なんですか?」
「さっきのも」
「そうよ。何でも真剣にやって身に着ける」
 シャワーを浴びながらの言葉である。
「それが私なのよ」
「そうなんですか」
「それで」
「そうよ、そうしないと何でもできないのよ」
 こうも言うのであった。
「それこそね。それは」
「それは?」
「貴女も同じでしょう?」
 ランカへの言葉だった。
「そうよね」
「はい、それは」
 ランカもその言葉に頷く。
「その通りですね」
「そういうことよ。だからさっきもね」
「真剣にですか」
「できるようになるまでやる」
 シェリルはまた言った。
「そういうことなのよ」
「わかりました。そういうことですか」
「そうよ。明日ファ^ストコンサートよね」
「はい」
「できるようにまでなってよ」
 そうだというのだ。
「そのうえでだからね」
「だからですか」
「明日のコンサート、必ず成功させなさい」
 微笑んでの言葉だった。
「いいわね」
「はい、わかりました」
「絶対にね」
「ランカさん凄いんですよ」
 今度はナナセが言ってきたのだった。
「本当に」
「努力したってことね」
「はい、それこそ血の滲む様な」
「なら余計に頑張ることね」
 シェリルはこうも述べてみせた。
「貴女の目指すものを手に入れる為にね」
「はい、明日は」
 そんな話をしてだった。シャワーを浴び終えて今度は洗濯に入る。しかしこの時だった。
「あれっ?」
「どうしたんですか?」
「どうしてこんな場所に」
 それを見てナナセに返す。
「いるのかしら」
「何がいたんですか?」
「あれ。私が飼ってるのだけれど」
 緑の可愛い目のリスを思わせる小動物を抱いて言うランカだった。二人は既に制服に着替えている。
「何でここに」
「あの動物は」
「あっ、内緒にしてて」
 すぐにナナセに口止めを頼んだ。
「このことは」
「は、はい」
「ばれたらやっぱりね」
「まずいですよ」
 ナナセもそれを言う。
「一日の間奉仕活動とか」
「そうよね、やっぱり」
「ですから」
 ナナセは右目をウィンクさせてきて述べた。
「絶対に」
「有り難う、本当に」
「お互い様ですから。それにしても」
「それにしても?」
「見たことのない生き物ですね」
 首を傾げさせながらの言葉だった。
「その動物は」
「何なののかしら」
「さて。それで」
「それで?」
「シェリルさんのところに行かれましたし」
「あっ」
 そしてであった。その謎の生き物はシェリルのところに来てだった。何と彼女の濃いピンクのショーツの中に入って。そのうえで外の廊下に出た。
「あっ!」
「んっ、何だこれ」
「何かしらね」
 カミーユとファがそれを見て言う。
「急に出て来たけれどな」
「布?」
「私のショーツよ!」
 扉が開いてシェリルが言ってきた。
「今脱いだばかりの!」
「えっ!?」
「嘘でしょ」
「本当よ!」
 こう言って一旦扉を閉める。扉の向こうは大騒ぎになった。
「な、何だってーーーーーーーー!!」
「それは本当か!?」
「嘘でしょ、それって!」
 動物はショーツを被ったまま跳ねていく。そしてその間にだ。
 シェリルはとりあえず服を着てだ。すぐに追いかけはじめた。
「な、何か」
「凄いことになりましたね」
 ランカとナナセは呆然としたままだった。こうして大騒動になった。
 学園の中を駆け巡るシェリルの速さはかなりなものだった。その彼女がだ。
 格納庫に来てだ。そうしてだった。
「あれ、何処?」
「何っ!?」
「あれ!?」
「そう、あれよ」
 こうアルトとミシェルに問うのだった。
「あれは何処なのよ」
「いきなりあれって言われてもよ」
「訳がわからないんだけれどな」
「だから。あのスーツよ」
「えっ、スーツ!?」
 そのパイロットスーツを磨いているルカが顔を向けてきた。
「もう使わないんじゃないんですか?」
「予定が変わったのよ」
 かなり強引に言う。
「だからね」
「だからって」
「あのよ、話がな」
「わからないんだけれどな」
 ルカだけでなくアルトとミシェルが言ってきた。
「そもそもだよ」
「何で必要になったんだ?」
 ミシェルがこう言った時だった。不意にコンテナの上にだ。
 ショーツが見えた。ミシェルは顔を顰めさせて言うのだった。
「俺も疲れてるのかな」
「どうしたんだ、一体」
「ショーツが見えたんだよ」
 こうアルトにも話す。
「どうやらな」
「ショーツ!?」
「ああ、女もののな」
 このことも話した。
「何だありゃ」
「何だって言われてもな」
「えっ、ショーツ!?」
 それを聞いてもアルトはいぶかしむだけだったがシェリルは違った。
 顔色を変えてだ。すぐにルカが磨いていたそれを奪い取る様に借りてだった。
 そのうえで。一気に追った。
「そこね!」
「そこねっておい」
「ああ、いきなりな」
「何がどうなったんだ?」
 アルトもミシェルも呆然とするばかりだった。しかしだ。
「あの」
「んっ、ルカ」
「どうしたんだ?」
「あの人、シェリルさんだけれど」 
 その彼女のことを話すルカだった。
「今パイロットスーツリミッター外してますよ」
「何っ!?」
「それはまずいだろ」
 こんな話をしてだった。三人はシェリルを必死に追うのだった。
 そのシェリルはだ」明らかに暴走していた。
 壁にぶつかりそれでも先に進んで。直角に曲がっていく。
「何か凄いわね」
「はい、確かに」
 テッサも呆然としながら小鳥の言葉に応える。
「学校じゃ平和って思ったけれど」
「比較的」
 二人はお揃いのセーラー服で話をしていた。
「まさかこんなことになるなんて」
「何ていいますか」
「困ったことになったな」
 ここで宗介が真面目に言ってきた。
「これは」
「そうよね。シェリルさんも心配だし」
「学校も」
「それだけではない」
 だが宗介はこうも言うのだった。
「大変なことが起こった」
「まだ何かあるの?」
「そうだ。フロンティアのコンピューターに異変が起こった」
 今のは大文字の言葉だ。校長でもある。
「急なバグでな」
「バグ!?」
「といいますと」
「コンピューターウィルスか」
 こう言うのである。
「そのせいでだ。システムが異常を起こし」
「はい」
「それで」
「それにより予備戦力として置いていたモビルスーツが自動操縦で動きだしたのだ」
「モビルスーツですか」
「それが」
 ここで小鳥とテッサも事情がわかったのだった。
「ということは」
「ここは」
「そうだ、総員出撃だ」
 また話す大文字だった。
「そちらに兵を回してくれ」
「わかりました」
「それでは」
「シェリル君はだ」
 シェリルのことも話しはした。
「アルト君達に任せておこう」
「アルトになの」
 小鳥はそれを聞いてまた言った。
「ここは」
「縁だ。任せるとしよう」
「そうですね。それではですが」
 テッサはアルトと聞いてすぐに言った。
「アルトさんとミシェルさん、それにルカ君ですね」
「後はオズマ少佐に頼むことにする」
「はい、わかりました」
 テッサはセーラー服のまま敬礼をする。これで決まりだった。
 こうしてだ。全軍その無人のモビルスーツ部隊に向かう。そのモビルスーツは。
「バーザムにマラサイにそれにガザか」
「それとギルドーガ」
「それか」
「ダナン=ゲーになの」
 皆そのモビルスーツ達を見て述べた。
「何か雑魚ばかりっていうか」
「数も一千」
「いつもより多くないわね」
「多くても困りますけれど」
 ウッソが真面目に応えてきた。
「フロンティアの中での戦いですし」
「そうね。下手な攻撃はできないわね」
 ジュンコも真面目な顔で述べた。
「壁面にも当たればそれで」
「はい、ですから余計に」
「よし、それならだ」
 オリファーがここで判断を下した。
「ここは銃撃戦は駄目だ」
「そうね。接近戦を主にね」
 それでいくと。マーベットも頷いた。
「それでいいわね」
「何かあまりやったことのない戦い方だけれどな」
「確かにな」
 オデロとトマーシュは少し戸惑いを覚えていた。
「それはな」
「少し弱ったな」
「難しく考えることはない」 
 だがここでヘンケンが言う。
「そのまま接近してだ」
「そのうえで、ですか」
「切り込んで切ればですか」
「それでいい。戦艦はできないがな」
「それで今回出撃していないんですか」
「それで」
「そうだ」
 こう二人にも答えた。
「残念だがな」
「仕方ありません」
 ナタルはそれについてはこう述べるだけだった。
「今は」
「そうだな。ここは見るだけにするか」
「ええい、それは嫌なのじゃ!」
 アスカは我儘を言っていた。
「わらわもじゃ!戦うのじゃ!」
「自分だけ見ているというのは」
 イーグルも少しぼやきが入っていた。
「あまり好きになれませんね」
「NSXのマシンはもう全部壊れたしな」
「だからね」
 ジェオとザズもあまり面白くなさそうである。
「ここはな」
「見ているだけしかできないし」
「けれど見守るのも戦いですよ」
「その通りじゃな」
 シャンアンはサンユンのその言葉に頷いた。
「ですから今は」
「見守りましょうぞ」
「わかっててもなあ」
「ちょっとね」
 タータとタトラもあまり面白くなさそうである。
「うち等も出んとな」
「何か悪いわ」
「その分後方の用意をしておけばいい」
 クリフはこう言うのだった。
「今はだ」
「その通りですね」
 ブライトであった。
「出撃できなくともです」
「やるべきことはある」
「はい。では出撃できない者はだ」
 ブライトはその彼等に指示を出した。
「いいか」
「はい」
「ここは」
「補給任務に当たれ」
 こう言うのだった。
「いいな。そしてだ」
「さらにですか」
「今度は」
「食事の用意もすることだな」
 それもだというのだった。
「サンドイッチなりお握りなりだ」
「戦闘食の用意」
「それを」
「少し違うな。後の話だ」
 だがブライトはこう述べた。
「いいな、戦いの後だ」
「その時にですか」
「終わってから」
「皆で、ですか」
「そうだ。酒も用意しろ」
 これを言うことも忘れなかった。
「オードブルもだ」
「つまり終わったら」
「その後は」
「いつも通りですか」
「そうだ、宴会だ」
 ブライトもかなり話がわかるようになっていた。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
「すぐに」
「あっ、すいません」
 ここでシンジがそのブライト達に言ってきた。
「一ついいですか?」
「どうした、シンジ」
「はい。サンドイッチですけれど」
 ブライトに対してエヴァのコクピットから話す。
「できればスパムサンドもお願いします」
「スパムサンドか」
「それとフライドチキンも」
 それもだというのだ。
「よかったらそれで」
「わかった。それではだ」
 ブライトも微笑んでだ。シンジのその言葉を受けるのだった。
「用意しておこう」
「すいません、じゃあお願いします」
「何、その程度はな」
 いいと返すブライトだった。
「いいことだ。ではスパムサンドとフライドチキンだな」
「はい」
「用意しておく。確かにな」
「最近この二つに凝ってまして」
「全くねえ。あんた最近結構食べ物に五月蝿いわよね」
「そういうアスカだって」
 アスカにも言い返す。
「あれじゃないか。スパゲティとかマカロニとかラザニアとか」
「パスタ?」
「パスタにやけに凝ってるじゃないか」
 こう言うのである。
「それもかなり」
「ドイツ人だからね」
「パスタはイタリアじゃないの?」
「ドイツ人は本能的にイタリアが好きなのよ」
 これがアスカの言い分だった。
「食べ物は美味しいしあの爽やかな気候といい」
「いいんだ」
「そう、いいのよ」
 アスカははっきりと言い切る。
「イタリアがね。もう大好きなのよ」
「ええと、イタリア人っていったら」
「誰かいたか?」
「日本人が大半でアメリカ人に中国人?」
 ロンド=ベルの人種構成はそうなっている。
「ドイツ人にロシア人いるけれど」
「テュッティさんフィンランド人で」
「ユンが韓国人?」
「ティアンさんはタイ人」
「あれっ、イタリア人は?」
「あっ、いますよ」
 名乗ってきたのはニコルだった。
「一応ルーツはそっちです」
「ああ、そうだったね」
 タリアも彼の言葉に頷く。
「ニコルのルーツは」
「はい、そうです」
「そして私もだ」
 ブンドルも名乗り出てきた。彼も出撃していない。
「私もイタリア人だ」
「それを考えればだ」
「イタリア人というのもな」
 カットナルとケルナグールがブンドルの名乗りを聞いてそれぞれ述べる。
「かなり厄介だな」
「全くだ」
「マドモアゼルアスカ」
 何故かフランス語でアスカを呼ぶ。
「では私が極上のパスタを用意しておこう」
「いいんですか?」
「私は女性の頼みは断らない」
 優雅な笑顔で述べるのだった。
「女性は尊い。そしてその女性の為に尽くす。それこそがだ」
 いつもの言葉だった。
「美しい・・・・・・」
「また言うし」
「今学校の中は美しい状況じゃないような」
 シェリルの騒動はまだ続いている。
「それでもですか」
「やるんですね」
「あれもまた美しい」
 ブンドルは今のシェリルの状況も肯定した。
「そうは思わないか」
「まあ何といいますか」
「それは」
 皆ブンドルの今の質問には口を濁す。
「普段ならともかく」
「今は」
「あの美しさがわかるのもまた美なのだ」
 まだこう言うブンドルだった。
「それではだ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
「パスタを作っておく」
 このことは忘れていなかった。
「ではその間にだ」
「はい、戦いを終わらせますんで」
「それじゃあ」
「パスタはトマトとガーリックと茄子」
 レイがぽつりと言う。
「それとオリーブオイル」
 まだ肉を食べない彼女だった。
 何はともあれロンド=ベルは戦いだ。シェリルは暴走し続けていた。
「そこね!」
 校舎の一角に影を見てだ。すぐにそこに向かう。
 だが直角になっている場所で曲がりきれずに壁に激突する。見事な大穴が開いた。
「うわっ・・・・・・」
「これはまた」
「豪快ね」
 普通の生徒達がこれに唖然となる。
「何ていうか」
「あれがシェリル=ノーム」
「パワフルだよなあ」
「全く」
 誰もが唖然となる。そしてであった。
 シェリルの追撃は続きそれは遂に屋上まで来た。そしてだった。
 ショーツを被ったままの生き物は飛んだ。シェリルも跳ぶ。
「甘いわよ!」
 こう叫んで、である。そのショーツを捕まえようとする。
 そしてそれは成功した。ショーツを手に取った。
 だが謎の生き物は何処かに消えていた。シェリルだけだった。
 そのまま落ちようとする。咄嗟にスカートを庇う。
「きゃっ!」
「おい!」
 だがここでアルトがパイロットスーツで現われた。そうしてだった。
「えっ、アルト?」
「おい、何やってるんだ」
 空を飛びながらシェリルをお姫様抱っこしながらの言葉だった。
「何を追ってたんだ」
「ショーツよ」
 ありのまま言うシェリルだった。
「それをね」
「ショーツ!?」
「そう、ショーツよ」
 それをだというのだ。
「私のショーツを取り戻したのよ」
「何でそれでこんな騒ぎになるんだ」
「だって。あれ脱ぎたてだったのよ」
 ありのまま言うにも程があった。
「だからよ」
「御前その言い方は止めろ」
「事実よ」
「御前はありのまま過ぎるんだよ」
 少し怒った顔で注意する。
「全く。少しはだな」
「今はいてないし」
「だからもっとオブラートに包め」
 声が怒ってきていた。
「全く。恥じらいがな」
「別にいいじゃない。私は私よ」
 不敵な笑みでアルトに返す。
「シェリル=ノームよ」
「今それを言う時か?」
「そうよ。まあとにかくね」
「ああ」
「助かったわ。有り難う」
 アルトは今気付いたがだ。シェリルはパイロットスーツを着ていない。実は跳躍してショーツを手に取った時にスーツが今までの出鱈目な使い方で故障してだ。地面に落ちてしまったのだ。下ではそのスーツを抱いて泣いていた。
「うう、折角色々チューンアップしたのに」
「修理するしかないな」
「はい・・・・・・」
 がっくりとしながらミシェルに応えていた。
 そんな状況だった。そうしてだ。
「それでだけれど」
「今度は何だ?」
「これからどうするの?」
 自分を抱いたまま空を飛ぶアルトに対して問うた。
「これからだけれど」
「これからか」
「そうよ、これからよ」
 それを問うのである。
「一体どうするの?」
「何時までも空を飛んでる訳にはいかないでしょ」
 楽しげに笑ってこう問い返す。
「そうでしょ?それでどうするの?」
「まずは降りるか」
 こう答えたアルトだった。
「それじゃあな」
「ええ、それじゃあね」
 そして着地するとだ。すぐにそこにミシェルとルカが来てだ。二人に対して言うのだった。
「よお、丁度よかったな」
「戦闘も終わりました」
「何っ、もうか」
「随分と早いわね」
「旧式のモビルスーツばかりだったしな」
「それに数も少なかったですし」
 こうアルトとシェリルに話すのだった。
「だからな。もうな」
「終わりました」
「そうか。そうなのか」
「ああ、それでな」
「今から勝利を祝ってパーティーですけれど」
 話はそこに移った。
「どうだい?今から」
「御一緒に」
「そうだな」
 アルトがその言葉に応えた。
「じゃあ今からな」
「ああ、行くか」
「そうしますか」
「御前も来るのか?」
「勿論よ」 
 シェリルも笑ってアルトに答える。
「行かせてもらうわ。御礼は歌よ」
「そうか。じゃあランカも呼んでな」
 こんな話をして戦いの後のパーティーに向かうのだった。そしてだ。
 その呼ばれたランカがナナセと共にパーティーの場に行く時だ。その時だった。
「あれっ?」
「ランカさん、どうしたんですか?」
「この子戻って来たけれど」
 あの緑の生き物がだ。ランカの胸元に飛び込んできたのだ。ランカもその生き物を抱き締める。
「物凄い騒ぎを起こして」
「そうですよね」
「どうして戻って来たのかしら」
「それも謎ですし」
「しかし」
 そうしてだった。
「戻って来たのならね」
「それでいいですよね」
「シェリルさんには悪いことしたけれど」
 それについては悪いと思ってはいた。
「それでもね」
「後で謝っておきましょう」
「うん」
 こうしてだった。二人はシェリルに謝罪した。そんなことでとやかく言うシェリルではなくこの話はあっさりと終わったのであった。
 ある場所でだ。ブレラはグレイスと会っていた。そうしてだ。
 まずはグレイスが言ってきた。
「それにしても」
「縁だというのか」
「会うことはないと思っていたわ」
 思わせぶりな笑みと共の言葉だった。
「二度とね」
「俺もだ」
「そうよね。地球に残ったから」
「しかし会うとはな」
「縁ね。いえ」
「いえ?」
「運命かも知れないわね」
 思わせぶりな笑みはそのままだった。
「これはね」
「運命か」
「本来なら会う筈がなかったのに再会した」
 こうも話すのだった。
「これは運命ではないかしら」
「そしてその運命をか」
「どう使うかね」
 思わせぶりなその笑みに含ませているものがさらに深いものになった。
「果たして」
「一体何を考えている」
「何を?」
「そう、何をだ」 
 グレイスの目を見ての問いだった。
「一体何を考えている」
「別に。と言ったら」
「嘘だな」
 グレイスの言葉に合わせてのことだった。
「それは。嘘だな」
「そうね。嘘になるわね」
 そしてグレイスもそれを否定しなかった。
「生憎だけれどね」
「一つ聞こう」 
 今度はブレラからの問いだった。
「あの娘をどうするつもりだ」
「シェリルのことかしら」
「そうだ、シェリル=ノームだ」
 その彼女のことだという。
「あの娘をどうするつもりだ」
「いい娘よ」
 笑っていた。目以外は。
「とてもね」
「本心からの言葉と思っていいのか」
「いいわよ。本当にそう思っているわ」
「どういう意味での言葉だ」
「あら、まだ言うのかしら」
「言いはしない」
 そうではないといってだった。
「聞いているのだ」
「疑ってるのかしら、私を」
「貴女がただ人を使いはしない」
「私がね」
「利用する為だ。何に利用する」
「そうね。ここはね」
「ここは」
「面白い趣向を考えているのよ」
 やはりであった。グレイスの目は笑っていない。醒めたその目でさらに言うのだった。
「これからのことをね。それに」
「それに、か」
「ランカ=リー」
「!?」
「貴方もよく知っているあの娘だけれど」
「ランカをどうするつもりだ」
「あの娘はもっともっと大きくなるわね」
 思わせぶりな言葉はそのままだった。
「そう、大きくね」
「なるとすればどうする」
「どちらがいいかしら」
 目だけは笑っていない笑みはそのままであった。
「果たしてね」
「ランカに何かをすれば」
「安心して。悪いようにはしないわ」
 一応それは否定するのだった。
「決してね」
「信用できると思うのか」
「信用するしかないでしょうね」
 余裕だった。それを背景にしてブレラに対していた。
「貴方は」
「くっ・・・・・・」
「そうでしょう。だからね」
「では俺に何をしろという」
「その時になったら言うわ。その時にね」
「・・・・・・・・・」
 ブレラは沈黙してしまった。グレイスはその彼にさらに告げる。
「話は終わりよ。それで」
「それでか」
「楽しい長い旅になりそうね」
 そしてこう言ってみせたのである。
「どうやらね」
「貴女はそうでもだ」
「あら、貴方もよ」
「俺は」
「妹さんと一緒にいられるじゃない」
 追い詰められた感じの相手を余裕で囲みながらの言葉だった。
「それが悪いのかしら」
「妹・・・・・・」
「悪い話じゃないわよ、本当にね」
 こう言ってみせてであった。二人は何処かで話をしていた。それは誰にも気付かれずわかるものではなかった。そして誰にも知られることなく別れた。
 そうしてだ。ロンド=ベルはフロンティアと共にさらに進んでいた。
「進路そのまま!」
「全速前進!」
 この指示の下だった。彼等は先に進むのであった。


第三十一話   完


                          2010・5・27 

 

第三十二話 ファステスト=デリバリー

                第三十二話 ファステスト=デリバリー
「いよいよね」
「ああ」
「昨日あんな騒ぎがあったけれど」
「全ては予定通りね」
 ロンド=ベルの面々はそれぞれこう話していた。
「シェリルさんがね」
「入ることになったか」
「ガリア4に」
「そういえば」
 そしてであった。皆ここでだ。テムジンに注目して言うのだった。
「テムジンさんって以前そこにいたんですよね」
「ガリア4に」
「そうですよね」
「ああ、そうだ」
 テムジンも皆の問いに答えて話す。
「地球に来るまではな。あそこにいたんだよ」
「それじゃあ御存知ですよね」
「どんな星ですか?」
「それで」
「一言で言うとやばい星だな」
 これがテムジンのコメントだった。
「かなりな」
「やばいっていうと」
「そんなに寒いんですか?」
「それか暑いか」
「生き物が棲めないとか」
「確かに自然もあまりよくないな」
 テムジンは周りの話に対してこうも述べた。
「あそこはな。けれどな」
「けれど?」
「まだあるんですか」
「第三十三海兵部隊ってのが護ってるんだがな。この部隊がな」
「第三十三海兵部隊だと」
「あそこか」
 それを聞いてだ。ガルドとカムジンが声をあげた。
「あの部隊はあそこにいたのか」
「何かえらい場所に飛ばされたって聞いたけれどな」
「ああ、そこだったんだよ」
 テムジンはこう二人にも話す。
「そこにな。飛ばされてな」
「隔離されているのか」
「ていよくな」
「隔離って」
「そんなにやばい部隊だったんだ」
「そこまで」
「ああ、その通りさ」
 テムジンはまた皆に答えた。
「もうな。強硬派がやたら物騒でな」
「何時反乱を起こしてもおかしくない」
「そういう部隊ですか」
「俺も昔は強硬派にいたんだがな」
 テムジン自身もなのだという。
「しかしな。それでもな」
「地球に来てですか」
「変わったんですね」
「奴等のやり方はあんまりだったからな。考え方もな」
 話すその顔には嫌悪があった。
「だからな」
「そうか、そんな部隊か」
「そんなところにシェリルさんが行って」
「大丈夫かしら」
「一応若しもの時の為に」
 ここでシホが言う。
「出撃準備をしておきます?」
「そうだな、それがいいね」
 輝は彼女のその言葉に頷いた。
「今はね」
「よし、それじゃあ何があってもいいように」
「出撃準備はしておくか」
「そういうことね」
「それがいいな」
 テムジンもそれに賛成する。
「何をやらかしてもおかしくない奴があそこには集まってるからな」
「だからですか」
「余計に」
「ああ、気をつけるんだな」
 また言うテムジンだった。
「よくな」
「わかりました、じゃあ」
「何があってもいいように」
 準備はしておく彼等だった。そうしてだ。
 護衛役のアルトがだ。まずガリア4に着陸した。すぐにブリタイに似た指揮官とエキセドルに似た参謀らしき者が笑顔で出迎えてきた。
「おお、よく来られました」
「ようこそ」
「はじめまして」
 そしてアルトはコクピットを開き彼等に敬礼で応えた。
「ロンド=ベルの早乙女アルト少佐です」
「オゴタイです。階級は少佐です」
「ジェベです。階級は大尉です」
 二人はそれぞれ氏名と階級を名乗ってきた。
「宜しく御願いします」
「この度はどうも」
「はい、それではですが」
「ランカ=スターは」
「もうすぐです」
 こう答えるアルトだった。
「今こちらに着陸しますので」
「そうですか。それでは」
「待たせてもらいましょう」
 二人の顔には笑顔が浮かび後ろに並んで控える巨大な兵士達のそれぞれの顔にも笑顔が浮かぶ。そのまま楽しいコンサートになるかと思われた。
 そしてだ。シャトルも来た。
「おお、あれにか!」
「あれに乗っているだな!」
「シェリル=ノームが!」
 兵士達の顔がさらに晴れやかなものになる。
「さて、それじゃあだ!」
「デ=カルチャ!」
「デ=カルチャだ!」
 こう言って騒ぎだした。そしてだ。
「来たぞ!」
「着陸した!」
「いよいよ」
「シェリルが来る!」
 こう話していよいよ待つ。しかしであった。
 シェリルが姿を現す。笑顔で手を振ったその瞬間だ。
「!?」
「どうしたんだ!?」
「急に」
 何とだ。シェリルがふらつき倒れてしまったのだ。グレイスが慌てて助け起こす。
「おい、どういうことだ!?」
「何があった!?」
「どうしたんだ!?」
 それを見たゼントラーディの軍に動揺が走った。
「おい、歌えるのか!?」
「何があったんだ!?」
「シェリルが倒れたぞ!」
「どういうことだ!」
 そしてであった。動揺はだ。
 すぐにオゴタイへの批判につながった。
「おい、どうなるんだ!?」
「シェリルが歌えないのかよ」
「約束が違うだろ」
「待て」
 だがここでだ。オゴタイは言うのだった。
「待ってくれ、すぐにフロンティアに連絡する」
「そんなに待てるかよ!」
「どれだけ待ったと思ってるんだ!」
「これ以上待てるか!」
 中にはこうしたことを言う者もいた。
「ここはな、こうなったらな!」
「ああ、無理にでも歌ってもらうぞ!」
「声だけでもな!」
「くっ、このままでは」
「いけませんな」
 ジェベがオコタイに応える。そうしてだった。
 一部の過激派が暴徒化した。しかもであった。
 プロトデビルンまでもがだ。出て来たのだ。
「これはまさしく」
「ゴガア!」
「偶発美!」
 ガビルとグラビルだった。
「ここで相応を叩く、いいなグラビル!」
「ガオオオオオオン!!」
 こう叫んで戦いを行おうとしてきたのだった。
 オゴタイはそれを見てだ。すぐに言う。
「すぐにフロンティアに連絡を」
「はい」
「最早シェリル=ノームだけの問題ではない」
 迫り来るプロトデビルンの大軍を見ながら述べた。
「だからだ」
「はい、それでは」
 ジェベが頷いてだった。すぐにフロンティアに連絡を入れた。それを聞いたテムジンはすぐに言うのだった。だがその顔には浮かないものがあった。
「あの連中が反乱を起こすのは読んでいたさ」
「それはか」
「けれどプロトデビルンは」
「予想外だった」
 まさにそうだというのだった。
「まさかここで来るなんてな」
「じゃあここは一体」
「どうしたらいいのか」
「一体」
「すぐに出撃するしかない」
 グローバルはこう判断を下した。
「プロトデビルンがいるのならな」
「それはその通りだな」
 テムジンはプロトデビルンについては賛成の言葉で返した。
「けれどな。ゼントラーディはどうなんだ?」
「ゼントラーディの人達ですか」
「あの人達は」
「確かに荒くれ者ばかりさ」
 テムジンもそれは認めた。
「それはな」
「けれどですね」
「それでも」
「そうさ、歌さえ聴けばそれで落ち着く」
 このことを指摘したのであった。
「しっかりとな」
「歌、ですか」
「それじゃあ」
「よし、俺が行く」
 バサラが名乗り出てきた。
「俺の歌を聴かせてやるぜ!」
「いや、待て」
「あたしもそうしたいけれど」
 だがそのバサラにレイとミレーヌが言ってきた。ビヒーダもいる。
「プロトデビルンもいる」
「あたし達はそっちに行かないと」
「へっ、それがどうした!」
 こうしたことを聞かないのはまさにバサラだった。
「俺の歌はな!どっちにも聞かせてやるぜ!」
「あんただったら本当にやれそうだな」
 テムジンもバサラのその言葉は認めはした。
「だがな。確実にいかないとな」
「ここは駄目ですよね」
「今は」
「そうさ、言葉は悪いがな」
 そしてであった。言うことはだ。
「保険だ」
「保険!?」
「保険っていうと」
「ファイアーボンバーにマイクもいるさ」
 テムジンは彼のことも頭の中に入れていた。マイクのこともだ。
「けれどな、プロトデビルンの数を考えるとな」
「もう一つ歌える人が多い」
「そういうことですか」
「ああ、そしてだ」
 さらに言う彼だった。
「そしてそれはだ」
「はい、その人は」
「誰ですか?」
「誰かいるか?」
 ところがであった。テムジンの言葉がここで変わった。
「誰かな。いるか?」
「誰かっていいますと」
「ええと、ここは」
「います?」
「誰か」
 テムジンだけではなかった。具体的に誰かというとだ。いないのだった。
「ロンド=ベルには歌える人が多いですけれど」
「それでも。咄嗟にとなると」
「ちょっと」
「いないですよね」
「フロンティアには誰かいないか?」
 テムジンはここで言った。
「そういえばあの娘はな」
「ランカちゃんか?」
「彼女ですか」
「ああ、ランカ=リーだったな」
 テムジンはミシェルとルカの言葉を受けてその名前を思い出したのだった。
「あの娘。いけるか?」
「今コンサートだけれどな」
「けれどもうすぐ終わる筈です」
 二人はここで話したのだった。
「今すぐに迎えに行って」
「そのうえで」
「ああ、早いうちに頼むぜ」
 テムジンは真面目な顔で話す。
「いいな、それじゃあな」
「はい、それじゃあ」
「今は」
「まずはプロトデビルンだ」
 またグローバルが言う。
「彼等を何とかしなければならない」
「はい、それじゃあ」
「すぐに」
「総員降下」
 この命令はそのまま下した。
「いいな、それではだ」
「プロトデビルンはどちらにしろ叩かないと」
「そういうことですね」
「ファイアーボンバーは基本的にそちらに向かってもらう」
 バサラはそこだというのだ。
「わかったな」
「はい、それなら」
「今は」
 こうしてであった。全軍降下に入る。そうしてであった。
 プロトデビルンとの戦いに入る。しかしだ。
 暴徒化しているゼントラーディの一部にはだ。兵は向けなかった。
「今は相手にするな!」
「それでいいですね」
 フォッカーとエキセドルの言葉だ。
「ゼントラーディは無視していい」
「それよりもプロトデビルンです」
「よし!」
 それを聞いてだ。マックスが動く。
 ミリアもいる。二人で動きを合わせてだった。
「ミリア」
「ええ、マックス」
 こう話してであった。二人で敵軍に突込みだ。
 ミサイルを一斉に放つ。そのうえでだ。
「行け!」
「これで!」
 反応弾だった。それを放ち敵軍に大穴を空けた。
 プロトデビルンへの攻撃は苛烈だった。彼等にほぼ全軍を向けていたからだ。
「何かね」
「そうね」
「機械めいた敵もいるわね」
「機械生命体かしら」
 リツコはこうミサトに返した。
「それかかなり高性能の超AIかしら」
「多分AIね」
 ミサトはそれだと見たのだった。
「その証拠に脱出反応はないわ」
「確かに」
「人が乗っているのなら絶対に脱出反応はあるから」
 これはプロトデビルンでも同じだった。
「それがかなり少ないってことは」
「そういうことね」
「そうね。だからこれだけの数もあるんでしょうね」
 プロトデビルンのその大軍も見ていた。
「だからこそ」
「そうでしょうね」
 スメラギもミサトのその言葉に頷いてきた。
「人にも限りがあるから」
「機械ですか」
 留美はそれを聞いてだ。少し暗い顔になった。
「何か。それは」
「どうしたの?一体」
「いえ、ゾンダーでしたね」
 留美がここで言うのは彼等のことだった。
「こちらの世界にいたあの」
「そうね。GGGが以前戦っていた」
「それです。あまり好きになれなかったので」
「話を聞いてなのね」
「あまり。そういう存在は」
「そうでしょうね。ただ」
「ただ?」
「そう深く考えても仕方ないわね」
 スメラギはこう言うのだった。
「今はね」
「仕方ないですか」
「ええ、それはね」
 また話すスメラギだった。
「それよりもね」
「今の戦いにですね」
「そういうことよ。余計な感情は消してね」
「わかりました。それでは」
「バサラ君達も頑張ってるし」
 見ればだ。軍の先頭に立って歌っていた。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーっ!」
「バサラさんはいつも通りですね」
「彼はあれでいいのよ」
 スメラギは頬を緩ませ留美に告げた。
「あれでね。だから私達もね」
「いつも通りですね」
「戦いましょう、それでいいわね」
「わかりました」
 留美も頷いてだ。そうしてであった。
 今はプロトデビルンとの戦いに専念していく。そのことは今は考えていなかった。
 そしてだ。ランカはだ。
 コンサートが終わってすぐにミシェルとルカに呼ばれたのである。
「御願いできるか」
「すぐに」
「ガリア4にですね」
 二人の話を聞いてだった。ランカも問う。
「そこにですか」
「今アルト大変なんだ」
「アルト君が!?」
「それにシェリルさんもです」
 二人はすぐに彼等の名前を出した。
「ゼントラーディの軍勢が反乱を起こしてな」
「御願いできますか、だから」
「は、はい」
 その二人の名前を聞いたらだ。頷くしかないランカだった。
 こうしてだ。二人はランカと共にすぐにガリア4に急行するのだった。
 その中でだ。アルトは今は何とか敵をかわしていた。
「こっちか?」
「いや、いなかったぞ」
「こちらにはな」
 こうそれぞれ話してその場を立ち去るゼントラーディ軍の兵士達だった。
「じゃあ何処にだ」
「何処に行った、あの人間は」
「危ないところだったな」
 アルトは物陰に隠れていた。それで難を逃れたのだ。
 反乱は続き三つ巴になっていた。ゼントラーディ軍に至っては分裂していた。
「くっ、こんな時に」
「まずいことになりましたね」
「全くだ」
 オゴタイはジェベの言葉に難しい顔になっていた。
「この状況ではな」
「反乱の鎮圧どころではありません」
「プロトデビルンの相手が先だ」
 こう言うのだった。
「今はな」
「まずはプロトデビルンの鎮圧ですね」
「火薬庫も維持してな」
 オゴタイはそれも忘れていなかった。
「そのうえでな」
「はい、それでは」
 彼等も苦しい状況だった。ロンド=ベルに協力していてもそれでもだった。
 そしてだ。アルトは何とか己の機体に辿り着いた。しかしだ。
「いたぞ、そこだ!」
「そこにいたぞ!」
「すぐに捕まえろ!」
「ちっ、しまった!」
 見つかってだ。つい舌打ちしたのだった。
「あと少しで」
「御前は人質だ!」
「人質を逃がしてたまるか!」
 こう言って一斉に捕まえようとする。しかしであった。
 ここにだ。青と緑のバルキリーが来たのだった。
「ミシェル、ルカ!」
「待たせたなアルト!」
「大丈夫ですか!?」
「ああ、何とかな!」
 こう彼等に返す。
「生きている、それで助けに来たのか!?」
「ああ、御前をな!」
「そして皆さんも」
 言葉を返してだ。そのうえでだ。
「切り札を持って来たからな」
「この騒ぎを終わらせる切り札です」
「切り札!?」
「ああ、これだ!」
「聴いて下さい!」
 ミシェルのバルキリーのコクピットが開いた。そうしてだ。
「皆聴いてーーーーーーーーっ!!」
「何っ、まさか!」
「ああ、そのまさかだぜ!」
「来てもらいました!」
 コクピットからコンサートの服のままだった。ランカが出て来た。そしてそのうえでだ。
 歌いはじめた。空いたキャノピーから歌う。それがゼントラーディの将兵にも聴こえた。
「!?あの声は」
「歌だ!」
「ああ、歌だ!」
「間違いない!」
 反乱を起こしている側の勢力がこれで変わった。
 銃を止めてだ。一気に歓声をあげたのだ。
「デ=カルチャー!」
「歌だ!」
「ああ、歌だ!」
「文化だ!」
 こう叫んでだった。戦いを止めたのだった。そうしてだった。
 ゼントラーディの反乱は一気に終わった。それは一瞬だった。
 ランカはミシェルのバルキリーが降下してそのうえで今は滑走路で歌っていた。そこにアルトが駆け寄る。
「おい!」
「何?」
「何もこうもない!何考えてる!」
 こう言ってランカを叱るのだった。
「その格好でキャノピーを開いて歌う奴があるか!」
「だって。急だったから」
「急も何もない!無茶をするな!」
「おいおいアルト」
「それはないですよ」
 今はプロトデビルンと戦っているミシェルとルカがここで言ってきた。
「ランカちゃんはな」
「先輩の為にここに来てくれたんですよ」
「何っ!?」
「そうだよ。御前がゼントラーディの反乱軍に捕まってな」
「シェリルさんのことも聞きまして」
「そうだったのか」
 それを聞いてだ。アルトも驚きを隠せなかった。
「それでか」
「ああ、そうだ」
「それで来てもらったんですよ」
 また話す二人だった。
「わざわざここまでな」
「危険を顧みずに」
「嘘だろ、おい」
 今度のアルトの言葉はこうしたものだった。
「俺とシェリルの為に」
「ああ、だからな」
「邪険にしたらよくないですよ」
「わかった」
 それを聞いてであった。アルトも言った。
「ランカ、悪かったな」
「ううん、いいの」
 しかしランカは微笑んで首を横に振った。
「それは別に」
「いいのか?」
「いいの。アルト君が無事だったから」
 その微笑みのまま話すランカだった。
「私はそれでね」
「そうか、そうなんだな」
「うん。それでね」
 ランカはここで話を変えてきた。
「ゼントラーディの人達は静かになったわよね」
「ああ、そうだな」
「それじゃあ今はどうしようかしら」
「ここは戦場だ」
 まだプロトデビルンとの戦いは続いていた。かなり有利になっていてもだ。
「だからだ。まずは乗れ」
「バルキリーに?」
「ああ、乗れ」
 こうランカに言うのだった。
「いいな、すぐにだ」
「わかったわ。それじゃあ」
「それからまずは避難する、いいな」
「ええ」
 ランカを乗せてだった。そのうえで飛び立つ。しかしここでだ。
「御前は」
「んっ、確か」
「必殺美!」
 こう言ってアルトに襲い掛かるのだった。
 そしてだ。ガビルのその攻撃がだ。アルトのバルキリーを掠めた。
「おい、アルト」
「大丈夫ですか?」
「少しまずいことになった」
 アルトは難しい顔でミシェルとルカに返した。
「エンジンをやられた」
「おい、それじゃあ」
「すぐに脱出を」
「いや、不時着する」
 そうするというのだった。
「今はだ」
「そうか。ランカちゃんがいるからな」
「それでなんですね」
「ああ、済まない」
 こう言ってであった。戦場を離脱するのだった。
 そしてだ。ロンド=ベルはだ。
「よし、行くぞ!」
「このままな!」
「後は手前等だけだ!」
 そのままプロトデビルンに向かう。そのうえで戦局を一気に決めたのだった。
 ゼントラーディの軍勢もだ。彼等に全面協力となっていた。
「歌を聴いたんだ!」
「満足させてもらったしな!」
「それじゃあ思う存分」
「戦わせてもらうぜ!」
 それまで反乱を起こしていた兵士達も皆協力していた。オゴタイはそれを見て満足した顔であった。そしてその顔で言うのであった。
「いい流れになったな」
「はい」
 ジェベが彼のその言葉に頷く。
「やはり歌の力は偉大です」
「確かに。その通りです」
「あの反乱を起こしていた者達ですらだ」
「その矛を収めました」
 ランカが歌っただけでだ。それだけであった。
「見事にです」
「よし、それではだ」
「このまま戦おう」
 こうしてであった。戦いはそのまま順調に行く。ガビルはそれを見てだ。グラビルに対して言うのだった。
「グラビル、ここはだ」
「ガオオオオン!」
「撤退するぞ」
 こうもう一人の自分に対して言う。
「ここは撤退美でいく」
「ガオオオオン!」
 グラビルもそれに応えてであった。
 そのまま姿を消していく。瞬く間にであった。
 そして最後にだ。ガビルが言った。
「ではロンド=ベルの戦士達よ」
「ああ、撤退するんだな」
「そうなのね」
「撤退美を極める」
 ここでも美であった。
「そういうことだ。また会おう」
「ああ、じゃあな」
「また会おうな」
 こう話してであった。彼もまたグラビルと共に撤退したのだった。
 そしてであった。ロンド=ベルの面々はだ。
「アルト!」
「無事ですか?」
「ああ、何ともない」
 ミシェルとルカにすぐに返答が返ってきた。
「とりあえずな」
「そうか、生きてるんだな」
「ランカさんもですね」
「二人共無事だ」
 またアルトの言葉が返ってきた。
「それは安心してくて」
「それは?」
 オズマがその言葉に反応した。
「それはか」
「厄介な場所に不時着しました」
 こうオズマに答えるアルトだった。
「ジャングルの中か」
「そうです。かなり厄介なことに」
「わかった」
 それを聞いてだ。まずは頷いたオズマだった。
「それではだ」
「はい」
「ランカは無事だな」
 このこともあらためて確かめるオズマだった。
「そうだな」
「ええ、大丈夫です」
「ではランカを頼む」
 言うのはこのことだった。
「宜しくな」
「ええ、じゃあ」
「すぐに行く」
 こうも言うオズマだった。
「そちらにな」
「すいません」
「謝ることはない」
 また言ってであった。今この話は終わった。
 そしてオズマはすぐにだ。自分のバルキリーを向かわせた。
「いいな、行くぞ!」
「アルトを探しにですね」
「それにランカちゃんも」
「そうだ、あの二人をだ」
 また言う彼だった。ミシェルとルカに対してもだ。
「助けに行く」
「よし、じゃあ俺も」
「行きます」
 こうしてであった。彼等はすぐに向かうのだった。
 そしてだ。ロンド=ベルの他の者達もだ。
「よし、すぐにだ」
「捜索隊を出して」
「オズマさん達にも」
 こう話して兵が出される。そしてだ。
 アルトとランカはジャングルの中でだ。バルキリーから降りた。
 そのうえで周りを見る。その周りはだ。
「何もないみたいだな」
「何か出そうだけれど」
「武器はある」
 アルトはこうランカに告げた。
「だから猛獣が来てもな」
「安心していいのね」
「俺から離れるな」
 こうも告げたのだった。
「わかったな」
「ええ、じゃあ」
「助けは必ず来る」
 励ましの言葉も出した。
「だからだ。落ち着くんだ」
「うん」
「ここから動かない方がいいか」
 そしてアルトはこうも言った。
「それよりも助けを待つ方がいいか」
「待つのね」
「そっちの方がいいか?」
 また言うアルトだった。
「今は。よしっ」
 こうしてだった。今はそこに留まることにした。
 その彼等の前にだ。現われたものは。
「アルト君」
 最初に気付いたのはランカだった。
「あれだけれど」
「どうしたんだ、一体」
「ほら、あれ見て」
 こう言うのであった。
「目の前に」
「何っ、あれは」
 ここでアルトも見た。それは。
「マクロス、馬鹿な」
「どういうことなの、これって」
 二人はジャングルの中に聳え立つマクロスを見て驚きの声をあげざるを得なかった。また一つ何かが動こうとしていたのだった。


第三十二話   完


                             2010・5・31
 

 

第三十三話 メモリー=オブ=グローバル

           第三十三話 メモリー=オブ=グローバル
「戦いは終わったのにな」
「ああ」
「まさかアルトがねえ」
「大丈夫みたいだけれど」
「ああ、命に別状はない」
 フォッカーがそれを保障する。
「怪我もないようだ」
「そうなんですか」
「それならいいですけれど」
「それでランカちゃんも」
「勿論怪我はない」
 フォッカーはそれも保障した。
「それじゃあ行くか」
「探索ですね、それじゃあ」
「今から」
「ゼントラーディの人達も協力してくれるそうですよ」
 レトラーデがここでこう話した。
「あの人達も」
「えっ、そうなの」
「それは心強いですね」
「はい、そうです」
 こう皆に話すのだった。
「有り難いことに」
「何か凄いことになったよな」
「っていうかあの人達普通にいい人達なんじゃ」
「そうよね」
「協力してくれるなんて」
「当然のことだ」
 ここでオゴタイが出て来た。
「諸君等に協力するのは」
「当然なんですか」
「それって」
「歌を聴かせてくれた」
 最初に言うのはこのことだった。
「それにだ。暴動も抑えてくれた」
「それもですか」
「それで」
「そうだ、それでだ」
 また話すオゴタイだった。
「君達に協力させてもらおう」
「有り難うございます、それじゃあ」
「是非」
 こう話してだった。ゼントラーディも捜索隊を出した。残った面々はここでまた話す。
「それでシェリルさんはどうなったんだ?」
「シェリルさん?」
「あの人?」
「そう、あの人どうなったんだ?」
 シンがここで皆に尋ねる。
「風邪か何かで倒れたんだろ?確か」
「ああ、そうらしいけれどな」
「何か」
「それもかなりの高熱らしいけれど」
「大丈夫なのかよ」
 それを問うシンだった。
「それで」
「とりあえず安静らしいわ」
 今言ったのはメイリンだった。
「けれど命とかそういうのはないらしいから」
「そう。ならとりあえず安心ね」
 それを聞いてほっとした顔になるツグミだった。
「熱だけなら」
「しかしシェリルさんもな」
「無理し過ぎなんじゃ」
「そうよね」
「かなりね」
 皆今度はシェリルの話もする。
「いつも物凄く忙しいし」
「それでもずっと努力する人だし」
「あれでね」
「だからこんな時には」 
 こうなるというのである。
「そうなるってことか」
「つまりは」
「体調管理もしっかりしないとな」
 そしてエイジも言った。
「やっぱりそれが大事だからな」
「あんた風邪ひくの?」
 そのエイジにアスカが問うた。
「そもそも」
「ああ、ちゃんとひくぜ」
「何とかは風邪ひかないっていうけれど」
「何っ!?」
 また売り言葉に買い言葉だった。
「今何て言ったよ」
「馬鹿って言ったのよ」
 アスカもこう返す。
「あんたにね」
「手前、言うにこと欠いてよくも」
「何度でも言ってやるわよ。馬鹿は風邪ひかないのよ」
 また言うアスカだった。
「絶対にね」
「どうやら死にたいらしいな」
「死ぬ!?馬鹿こそ死になさいよ」
「俺は馬鹿じゃねえ!」
「いいえ、馬鹿よ」
 また言うアスカだった。
「それ以外の何だってのよ」
「やっぱり死ね!」
 こうして闘いに入る両者だった。待っている面々もそんな感じだった。
 この中でだ。マヤはモニターの前に座って報告を聞いていた。
「どうやらここにいるな」
「そこにですか」
「ああ、このジャングルにな」
 報告していたのはハヤトだった。
「いるみたいだな」
「アルト君からの連絡通りですね」
「すぐに細かい捜索に入るな」
「はい、御願いします」
「バルキリーは破損してるみたいだったな」
 カイも言ってきた。
「そうだったな、確か」
「はい、そうです」
 マヤもその通りだと答える。
「その通りです」
「そうか、それなら」
「この辺りをじっくりと調べさせてもらうよ」
「戦闘機はこうした時結構面倒だからな」
 スレッガーもいた。
「小さいから目立たないからな」
「そうなのよね。モビルスーツ以上に」
 セイラも言う。
「小さいから」
「まあレーダーもかけてるからな」
 それも忘れていなかった。
「さて、調べるか」
「ああ、そうだよな」
「それじゃあ」
 こう話してだった。彼等は捜索に入った。そしてだ。
 もう一組マヤに通信を入れてきた。
「ジャングルに入ったからな」
「今から捜索に入るわ」
「それでいいわね」
 霧生とレトラーデ、それにミスティであった。
「アルトとランカちゃんな」
「今から探させてもらうわ」
「私達もね」
「はい、御願いします」
 マヤは彼女達にも頼むのだった。
「そういうことで」
「ああ、他には誰かいるか」
「私達の他にジャングルに入ったのは」
「誰かいるかしら」
「カイさん達が」
 マヤは彼等だろ正直に話した。
「入られました」
「そうか、じゃあ」
「私達もね」
「今からね」
「アルト君もですね」
 ここでまた話すマヤだった。
「ひょっとしたらバルキリーから離れているかも知れませんから」
「ああ、それはな」
「確かね」
「有り得るわね」
 三人もその可能性を否定しなかった。
「それならな」
「本人達も探さないとね」
「バルキリーだけでなく」
「多分そんなに離れていないと思います」
 マヤはこうも話した。
「バルキリーから」
「それならいいがな」
 そんな話をしてだった。アルト達の捜索が行われていた。その時彼等は。
 今水を浴びていた。アルトは紫のトランクス一枚になってだ。そのうえで頭から水を被っていた。
「この水はな」
「どうしたの?」
「飲まないと大丈夫だからな」 
 こう言うのである。
「飲まないとな」
「それ以外はなのね」
「水質チェックはしたからな」
 そのうえでの言葉だった。
「だからな」
「そうなの」
「ああ。それにしても」
「それにしても?」
 ここで話が変わった。
「何だな」
「うん」
「あのマクロス」
「グローバル艦長の乗ってるのと同じタイプ?」
「ああ、第一世代のだ」
 その時のものだというのである。
「それでも随分年代が経ってる感じだな」
「どうしてあそこにあるのかしら」
「さてな」
 アルトにもそこまではわからなかった。
「ただな」
「ただ?」
「ガリア4に駐留しているゼントラーディ軍も知らないみたいだしな」
「そうよね。それは」
「ゼントラーディもここに来て日が浅いらしいしな」
 このことはもう知っているのである。
「それでも。あんなのがあるなんてな」
「ええ。有り得ないかしら」
「有り得ないことじゃないさ」
 アルトはそれはそうではないという。
「けれどな」
「けれど?」
「何であれを最初に見た時あんなに騒いだんだ?」
 彼が今言うのはこのことだった。
「それは何でなんだ?」
「御免なさい、自分でも」
「わからないか」
「ええ」
 こう答えるランカだった。
「私。そうした記憶は」
「ないか」
「そうなの。だから」
 また言うランカだった。
「だから」
「そうか」
「自分でもどうしてかわからないの」
 こうも話す。
「そうした記憶がないのは」
「思い出す必要がないからだろ」
 アルトはそのことはこう言ってフォローした。
「それはな」
「そうなの。だから」
「そうさ。よしっ」
 ここでだ。水を浴び終えた。
 そうして身体を拭く。しかしこの時だ。
 ランカはだ。こう彼に言ったのである。
「あの」
「あの?」
「髪くくらせて」
 こう言ったのである。
「アルト君のその髪」
「これか」
「そう、それくくらせて」
 これが彼女の今の願いだった。
「それは駄目かしら」
「いや、頼む」
 それを受けてのアルトの言葉だった。
「それじゃあな」
「ええ、じゃあ」
 こうしてだった。アルトは座りランカはその髪を後ろからくくった。そうしてそれからだった。アルトはそのランカにこうも言ってきたのである。
「しかし御前な」
「私?」
「ああ、びっくり箱みたいな奴だな」 
 微笑んでの言葉だった。
「本当にな」
「びっくり箱?」
「最初に会った時からな。何をするかわからないからな」
 こう彼に言うのである。
「本当にな。凄い奴だよ」
「私は別に」
「この後でコンサートもあるんだろう?」
「ええ」
「間に合わせるからな」
 こうランカに言うのである。
「楽しみにしてろよ」
「うん、有り難う」
「バルキリーも思ったより故障が少ないしな」
「そうなの」
「ああ、充分飛べる」
 こう言うのであった。
「充分な」
「そう、よかった」
「じゃあまずはバルキリーに乗って」
「帰るのね」
「帰らないとはじまらないだろ」
 だからだというのだ。
「そうだろ?それは」
「そうね、確かに」
「だから戻るぞ」
 また微笑んだ声を出すアルトだった。
「それじゃあな」
「ええ、じゃあ」
 こんな話をしてからだ。バルキリーに戻る。しかしここでだ。
 服を着たアルトにだ。ランカが赤い顔で言ってきた。
「あの」
「あの?」
「ちょっと」
 こう言ってきたのである。
「いいかしら」
「どうしたんだ?」
「すぐに戻るから」
 俯いた顔での言葉だった。
「だからね」
「おい、離れたらまずいぞ」
 アルトはここでは鈍感だった。
「そんなことをしたら」
「違うわよ」
 しかしここでだった。ランカは言うのだった。
「それは、その」
「その?」
「トイレなの」
 顔を真っ赤にしての言葉だった。
「それでなの」
「そ、そうか」
「すぐに戻るから」
 ランカはまた言った。
「それじゃあ」
「ああ」
 こうしてだった。ランカは茂みに向かった。ジャングルの中には緑の蜥蜴や二本足の二足動物もいる。しかしその他は至って平穏だった。 
 だがその平穏はだ。突如として崩されてしまった。
「!?ランカ!」
 ランカの悲鳴を聞いてだ。銃を手にそちらに向かう。しかしそこに彼女はいなかった。
「まさか・・・・・・」
 目の前にあるそのマクロスを見てだ。アルトは何かを直感していた。
 その頃シェリルはだ。カーテンの中で着替えていた。その彼女に背を向けたままだ。ミシェルが彼女に対して言うのであった。
「どうしてもか?」
「ええ、風邪はなおったから」
 シェリルは着替えながら答える。
「行くわ」
「そう、行くのか」
「絶対にね。ただ」
「今度は何だ?」
「悪いわね、残ってもらって」
 今度はミシェルへの言葉だった。
「自分もアルトは探したかったんでしょ?」
「否定はしないさ。けれどな」
「けれど?」
「命令だからな」
 だからだというのだった。
「これもな」
「だからいいの」
「仕方ないな。それでな」
「ええ、それで?」
「今から行ってだ」
 ミシェルはそこから話した。
「マネージャーには言ってるのか?このこと」
「言ってると思う?」
「いいや」
 言葉だけで首を横に振ってみせた。
「そうは思えないな」
「じゃあそう思っておくといいわ」
「どうしても行くんだな」
「ええ、何があってもね」
 この言葉と共にだ。カーテンを開いた。見れば今のシェリルはパイロットスーツを着ていた。その見事な体型がスーツに完全に覆われている。
「行くわよ」
「若しマネージャーに言ったら?」
「殺すわよ」
 これが返答だった。
「言っておいたわ」
「そうか、わかったよ」
「そういうことよ」
「それはわかったさ。ただ」
「ただ?」
「操縦はできるのか?」
 今度聞くのはこのことだった。
「それはどうなんだ?」
「できるわ。ちゃんと授業で習ってるじゃない」
「本当に強気だな」
「やれることを絶対にやり遂げる」
 シェリルの言葉がさらに強いものになった。
「それが私だからね」
「やっぱり強いねえ」
「わかったら行くわよ」
「ああ、それじゃあな」
 こうして二人も行くのだった。しかし二人が出てすぐにだった。  
 そのミシェルにだ。オズマから通信が入ってきた。
「御前はこのまま捜索を続けてくれ」
「何かあったんですか?」
「また敵軍が来た」
 こうミシェルに話すのである。
「今度はバッフクランだ」
「連中ですか」
「そうだ、五十万だ」
 数も告げられた。
「それで捜索隊は御前だけにしてだ」
「そのうえで今からですね」
「わかったな」
「了解」
 こう元気よく返すミシェルだった。
「そういうことで」
「二人を頼んだ」
 オズマの今度の言葉は明らかに本音だった。
「それじゃあな」
「はい、そういうことで」
 こう話してだった。ミシェルはそのまま捜索隊に残った。ロンド=ベルはそんな話をしているうちにだ。バッフクラン軍と対峙していた。
 そのうえでだ。総攻撃にかかっていた。
「くそっ、今大変なのに!」
「アルトがいるのにな!」
「ここで来るか!」
「貴様等の事情は知らん」
 ギジェが指揮官だった。
「だが、だ」
「何だってんだ?」
 この彼にコスモが言い返す。
「今度は一体」
「その巨神」
 彼が見ているのはイデオンだった。
「一体何処まで。ゲッターの力も気になるが」
「イデオンがどうしたのよ」
「やはりかなりの力があるな」
 こう言うのであった。
「イデの力というものは」
「それがどうかしたのよ」
 カーシャは気の強い言葉で彼に返す。
「あんたに関係あるの?それが」
「関係はない」
 こうは返すギジェだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「いや」
 コスモの問いにだ。言葉を一旦打ち消した。
 そしてそのうえでだ。また言うのだった。
「何でもない」
「何よ、一体」
 カーシャはむっとした顔で返す。
「何が言いたいのよ」
「それはともかくとしてだ」
 モエラがここで言ってきた。
「まずはこの連中との戦いを終わらせないと」
「アルト達のことね」
「やっぱり気になる」
 モエラは彼等のことを気にかけていたのである。
「だからここは」
「そうだな」
 コスモがその言葉に頷いた。
「やっぱりここはな」
「それを優先させたい」
「そうね。私も」
 カーシャも頷く。イデオンとしてはそれで決定だった。
 そしてだ。イデオンはだ。
 一歩前に出る。そのうえで前の敵を叩く。
「よし!」
「一気に叩くわよ!」
 こう話してだ。そのまま敵を倒していく。
 その戦いの中でだ。ロンド=ベルはバッフクラン軍と戦っていく。
 そしてその時だ。ブレラはだ。
「いいかしら」
「?」
「今戦闘中ね」
「そうだ」
 謎の通信の声に応えていた。戦闘中にだ。
「今はだ」
「そう。それじゃあ今はいいわ」
「今はか」
「ええ、そちらに専念して」
 こう言うのである。
「今はね」
「それでどうするんだ?」
「後で頼むわ」
 こう言って今は通信を切るのだった。だが彼が誰かと話をしていたのは確かだった。
 グレイスは一人でジャングルにいた。そしてだ。
 人間とは思えない跳躍を見せてそのマクロスのところに行ってだ。そうしてそのうえでマクロスの前に来て。右手を伸ばすと異様な触手が数本出て来た。
 そしてその右手の触手を中に入れてだ。何かをしようとしていた。
 アルトはマクロスの中にいた。そしてそこで見たものはだ。
「何だ、ここは」
 研究室らしきものの中を見てだった。そこは。
「最近使われたばかりなのか?ここは」
 そしてだ。バジュラの標本も見た。水槽の中のだ。
「何でこんなものまで」
 その次はだ。
 何と今度はランカの写真だ。誰かと一緒だ。それを見てまた言った。
「ランカ!?まさか」
 ランカのことも思い出したのだ。彼女がいた第百十七捜索船団だ。彼女以外は消息を絶ったというだ。その船団を思い出したのである。
 すると目の前のボードに書いてあった。その数字がだ。
「第百十七・・・・・・。このマクロスが」
 彼は気付いたのだった。
 ランカもだ。気付くとそこは。
 何か幻想的な場所だった。蓮を思わせる葉の上にいた。そして前には。
 バジュラがいた。そのうえで虫、それも水棲のものを思わせる卵を産んでいた。ランカはそれを見てあることを悟ったのである。
「そう、ここで」
「おい、ランカ」
 アルトの通信が入った。
「生きているのか!?大丈夫か!?」
「う、うん」
 すぐアルトに答えるランカだった。
「大丈夫だけれど」
「場所はわかった」
 その通信からである。
「今すぐそこにいる」
「バルキリーで?」
「そうだ、今行く」
 バルキリーはマクロスの前に置いていた。いざという時に準備しておいたのだ。
「そこにだ」
「ええ、けれど」
「けれど?」
「気をつけて」
 こうアルトに言うのだった。
「ここにはバジュラが卵を産んでるから」
「マクロスの中にか!?」
「うん、だから」
 気をつけてというのである。
「それは」
「わかった、それじゃあだ」
 すぐにその廃棄されたマクロスから出てバルキリーに乗る。そのうえでランカを救いに向かおうとする。しかしその前にだった。
「ちっ、出て来たか!」
「どうしたの?」
「バジュラだ!」
 ランカの問いに答える。彼の前にバジュラの大軍がいたのだ。
「バジュラの大軍だ!」
「バジュラの!?」
「この連中が先だ!」
 こう言うのだった。
「済まない!」
「いえ、いいわ」
 ランカはそれはいいとした。
「けれど」
「けれど、何だ?」
「死なないで」
 アルトに言う言葉はこれだった。
「絶対にね」
「ああ、わかってる」
 強い言葉での返答だった。
「それはな」
「ええ、絶対にね」
「くっ、それにしても」
 ランカとの通信を一旦切るとだった。目の前のその大軍と戦う。
 確かにアルトも善戦した。しかしだった。
「何て数だ」
 こう言って歯噛みするのだった。
「この数だと」
「おい、アルト」
 しかしだった。ここでだ。
 ミシェルから通信が来たのである。
「生きてるか!?」
「ミシェルか」
「ああ、俺だ」
 こうアルトに返す。
「どうやら生きてるみたいだな」
「何とかな」
「私もいるわよ」
「何っ、その声は」
「そうよ、私よ」
「シェリル、まさか」
 驚いた顔での言葉になっていた。
「風邪はどうなったんだ?」
「そんなのもう治ったわよ」
 いつもの調子で返したのだった。
「もうね」
「もうか」
「そうよ、もうね」
「よく言うよ」
 ミシェルは彼女の前に苦笑いしていた。
 そうしてだ。そのうえで言うのだった。
「しかしあいつの周りは」
 まずはシェリルを思い出し。次にランカだった。
「頑固な女ばかり集まるな」
 こう思ったところでクランも思い出してだ。戸惑いも覚えた。
 だが二機になった。それで助かりはした。
 しかしまだ数は多い。しかもであった。
 海からバジュラの戦艦が次々と出て来たのだ。
 それを見て一人グレイスは笑っていた。
「まずはこれでいいわ。これでね」 
 こういい残して何処かに消えた。その彼女の行方をわかっている者は一人もいなかった。当然ながらその行動についてもである。
 バッフクランとの戦闘はだ。そのバジュラの大軍の登場によって中断されてしまった。
 バッフクラン側がだ。狼狽しだしたのだ。
「ここでこの数は」
「まずい」
「確かに」
 まず将校達が狼狽しだした。そしてだ。
 指揮官であるギジェに対して言うのだった。
「閣下、ここは」
「やはい」
「既に数も半数を切っています」
「このままでは」
「わかっている」
 こう返すギジェだった。
「ここはだ」
「はい、撤退しかありません」
「やはり」
「あの敵。バジュラといったな」
 彼等のことはもうわかっていたのだ。
「ここで彼等と戦うわけにはいかない」
「はい、それでは」
「今は」
「そうだ、撤退する」
 こう決断を下したのである。
「いいな」
「はい、それでは」
「今より」
「全軍撤退だ」
 こうしてだった。バッフクラン軍は撤退していった。残るロンド=ベルはだ。
 そのままバジュラの大軍と戦いに入る。しかしだった。
「何だ、この数は」
「これだけの大艦隊がここにか」
「来たってのかよ」
「いや、これは」
 ここでオゴタイが言ってきたのだった。
「どうやら違う」
「違う!?」
「というと」
「このガリア4にいたのだ」
 こうロンド=ベルの面々に話すのである。
「だからこそここに」
「これだけいたんですか」
「そうだったんですか」
「そうだ、だからだ」
 それを聞いてだ。ロンド=ベルの面々はその掃討ををはじめようとする。それと共にだ。
「アルトだ!」
「アルトは!?」
「無事か?」
「ああ、俺はだ」
 返事が返って来た。
「何とかな」
「そうか、よかった」
「じゃあランカちゃんも」
「いや」
 しかしだ。ここでアルトは言うのだった。
「敵の中だ」
「敵!?」
「どういうことなんだ、それって」
「そうだ、詳しい話は後だ」
 まずはこう言ってからだった。そしてだ。
「とにかく今はだ!」
「あれだな」
 ここで言ったのは何とブレラだった。
「あの巨大な戦艦の中だな」
「何っ、わかるのか!?」
「何となくだがな」
 こうアルトにも答える。
「わかる」
「そうなのか。実はランカはだ」
 敵の中でだ。とりわけ巨大な、異様なシルエットの戦艦を指し示しての言葉だった。
「あの中だ」
「ア=バオア=クーみたいだな」
「そうですね」
 そのシルエットを見てスレッガーとセイラが言った。
「そういう感じですよね」
「そうだな」
「そしてあそこにか」
 オズマの言葉だ。
「ランカがか」
「はい、そうです」
「大体わかった。それならだ」
 オズマのバルキリーがここで前に出た。そうしてた。
「行くぞランカ!」
「えっ、隊長」
「一体何を」
「知れたことだ!」
 こうミシェルとルカに答えるのである。
「ランカは俺が救い出す!」
「そんな、相手はあのデカブツですよ」
「無茶過ぎます!」 
 ミシェルもルカも何とか彼を止めようとする。しかしだった。
 オズマは速かった。止めることは無理だった。
「ランカ、今行くぞ!」
「隊長!」
「アルト、ここは任せろ!」
 アルトの言葉も今は意味がなかった。
「俺が行く!」
「お、おい何なんだよ」
 アルトも今の事態には唖然となる。
「隊長がランカを大事にしてるってのはわかってたけれどよ」
「そうだな、それでもな」
「これは。かなり」
 ミシェルもルカも唖然となるばかりだった。
「しかし。これは」
「また極端過ぎます」
「おい、まずいぞ」
 ヘンリーもここで言ってきた。
「この状況はだ」
「ええ、隊長が」
「危険です!」
「助けに行くぞ!」
 ヘンリーはそのバルキリーを駆った。
「今すぐにだ!」
「はい!」
「それじゃあ!」
「これはまた」
 カナリアも今の事態には呆然としていた。
「変なことになったわね」
「そうだな。だがだ」
 クランがカナリアのバルキリーの横に来た。
「ここはやるぞ」
「はい、それでは」
「我々も」
 ネネとララミアも頷く。そうしてだった。
「行きましょう」
「私達も」
「オズマだけで行かせてはならん!」
 クランは今は戦友を助けることに専念していた。
「いいな!」
「はい!」
「了解です!」
「こうした時これは便利ね」
 カナリアは己が乗るモンスターを駆っていた。
「機動力もあるから」
「確かにそうですよね」
「そのケーニッヒモンスターは」
 マックスと柿崎も続いている。
「普通のモンスターって機動力がありますから」
「俺達のデトロイトってそれがありませんからね」
「あれはあれでいい機体ばかりなんだがな」
 フォッカーはどちらかというとデトロイトを庇っていた。
「しかしな。機動力は確かにないからな」
「それが難点ですね」
 ミリアもここで言う。
「どうしても」
「そうだな。けれどあのケーニッヒモンスターは違う」
 輝は少し羨ましそうだった。
「特にこうした時は」
 彼等は時としてデトロイトに乗る。それでこうしたことも考えられるのだ。
 その時だ。ブレラにまた通信が入って来た。
「いいかしら」
「何だ?」
「ランカ=リーだけれど」
「今から救い出す」
「その身柄を全力で確保すること」
 こう言ってきたのである。
「しかし」
「しかし?」
「それが不可能ならそれをしなくてもいいわ」
「いいのか」
「それはそれでやり方があるから」
 これがブレラへの言葉だった。
「わかったかしら」
「ランカは俺が護る」
 ブレラはこう声の主に返す。
「それは言っておく」
「好きにするといいわ。ただし命令は伝えたわ」
「わかった」
「その為に貴方はここにいるのよ」
「このロンド=ベルに」
「そうよ。そして」
 さらに言うその主だった。
「いいかしら」
「わかった」
 それに頷きだった。バジュラとの戦いに向かう。その彼にまた言う声だった。
「そして」
「そしてか」
「既にスイッチは押しておいたわ」
 こう言うのである。
「ここでも戦いはもう少しよ」
「惑星ごと滅ぼすか」
「ええ、そうよ」
 こう話してだ。通信を切った。そうして。
 十分程してだ。それが来た。
「何だありゃ」
「黒い衝撃波!?」
「爆発か!?」
「いや、違う!」
 それを見てだ。全員に動揺が走る。
「ブラックホールみたいなものだ」
「あれに飲み込まれたらそれでは」
「惑星ごと」
「おい、どうする!」 
 ここでゴウが叫んだ。
「ここはだ、どうすればいいんだ!」
「わからない。けれど」
「このままじゃ」
 ケイとガイも言う。
「私達も」
「巻き込まれるぞ」
「そんなことになってたまるか!」
 ゴウがここで激昂する。
「俺達だけじゃない!この星にいるゼントラーディの人達だって生き物達だっているんだぞ!」
「じゃあどうするの?」
「ここは」
「ゲッターだ!」
 彼は言った。
「この真ドラゴンの力でだ!やってやる!」
「よし、それなら!」
「今はな!」
「行くぞドラゴン!」
 こう真ドラゴンに対して叫ぶ。
「いいな、このままだ!」
ええ、それじゃあ」
「今からな!」
 真ドラゴンを突き進ませてだ。そうして。
 その黒い衝撃波に対してだ。真ドラゴンの力を放った。
「これで!」
「これなら!」
「やれるか!」
 ゲッターの力を全て放出せんとする。
「真ドラゴン!いけえええええーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 その力を放って一気に衝撃波と消したのだった。だが。
 真ドラゴンはそれで力を失いだ。大地に落ちていく。
「おいゴウ!」
「大丈夫!?」
「あ、ああ」
 ゴウは仲間達に対して答えた。
「何とかな。まだ少し位なら飛べる」
「よし、それなら」
「今は下がれ」
「いいな」
「ああ」
 こうして真ドラゴンは下がった。そのうえでだった。
 衝撃波は消した。しかしここで。
 バジュラ達がだ。宇宙に出て行ったのだ。
 あの巨大なバジュラもだ。宇宙に行く。
「ちっ、追え!」
「逃がすな!」
 全員でこう叫ぶ。
「宇宙だ!」
「宇宙に!」
「しかしそれでも」
「一旦シャトルを使わないとここは」
「宇宙に出られませんが」
「いや、待ってくれ」
 だがここでレオンが言ってきた。
「一つ方法がある」
「方法が?」
「ありますか」
「はい、あります」
 また話すレオンだった。
「フェードアウトを使い一気に」
「行きますか」
「このまま」
「そうだ、それで行く」
 こうしてだった。彼等は一旦集まった。そうしてである。
「フロンティアごとフェードアウト」
「それですね」
「今から」
「それによってバジュラの前に出ればいい」
 これがレオンの考えだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「今より」
 こう話してだった。まず姿を消すのだった。しかしだ。
 アルトはその中でだ。苦い顔をしていた。
「あの戦艦の中に入ってだ」
「ああ、やろうぜ」
「ランカちゃんを」
 ミシェルとルカが彼に言う。
「絶対に助け出せよ」
「先輩、本当に」
「わかっている」
 アルトも二人のそのことばに頷く。
「絶対にそうしてやる」
「わかっているならいい」
「やりますよ」
「絶対にそうするのよ」
 ここでシェリルも彼に言ってきたのだった。
「いいわね、ランカを助けなさいよ」
「絶対にか」
「失敗したら許さないからね」
 こうも言うのであった。
「その時は覚悟しなさい」
「ああ、わかってる」
 それもだというのだ。アルトも本気である。
「それならな。今からな」
「そろそろフェードアウトだ」
「いよいよですね」
「いいか」
 無理に止められて今ここにいるオズマがここで言う。
「奴等の前に来たらすぐにだ」
「ええ、すぐに」
「絶対に」
「ランカを助け出す」
 また話す彼等だった。
「いいな」
「俺が行きます」
 アルトはここでも名乗り出る。
「そして絶対に」
「いや、俺が行く」
 だが今度はオズマも引かない。
「そしてランカを救う」
「いえ、俺です」
 何とアルトも引かない。
「俺が行きます」
「何かな」
「そうですね」
 また言うミシェルとルカだった。
「次の戦いもな」
「熱くなりますね」
「熱くて構わん!」
 オズマはやはり普段の冷静なオズマとは違っていた。
「ランカの為だ!」
「そうだ!」
 そしてそれはアルトもだった。
「ランカの為なら!」
「何時でも行ってやる!」
 こう叫んでだ。フェードアウトから出た。そこは。
 宇宙空間だった。そこに彼等もいた。
「すぐに決戦だな」
「そうなるわねえ、ここは」
 ボビーはグローバルの言葉にすぐに頷いた。
「ここは」
「うむ、ジェフリー君」
「はい」
 ジェフリーも応えて頷く。
「決戦だな」
「思わぬ戦いですが」
「それでもだ」
 こう言ってだった。いよいよであった。
「決戦に赴くぞ」
「いいな、諸君」
「ああ、言われなくてもな!」
 ここでも真っ先に叫ぶアルトだった。
「ランカ、今から行ってやる!」
「先に俺が助け出す」
 何気にオズマも言う。
「いいな」
「ええ、じゃあ先を争う形になりますが」
「行くぞ」
 そしてだ。二人に続いてだ。
「俺もだ」
「何っ!?」
 ヘンリーは彼の姿を見て驚きの声をあげた。
「御前もかよ」
「行かせてもらう」
 誰もが意外に思った。ブレラも出て来たのだ。
「それでいいか」
「ま、まあな」
「助っ人の数は多い方がいい」
 ヘンリーに続いてクランも一応こう言った。
「しかし。御前がか」
「おかしいか」
「意外だからな」
 実際にこう話すヘンリーだった。
「普段は冷静に動くからな」
「俺は冷静だ」
「そうか?」
「そうだ、冷静だ」
 こう言うだけであった。
「だから安心していてくれ」
「ならいいがな」
「では総員出撃だ」
 クランはあらためて全員に告げた。
「幸い全員コクピットに乗ったままだ。すぐに行くぞ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 こう話してだ。全員で出撃する。戦いは宇宙でも行われるのだった。


第三十三話   完


                          2010・6・4
  

 

第三十四話 マザーズ=ララバイ

               第三十四話 マザーズ=ララバイ
「いいか」
「はい」
「何時でも」
「まずは作戦から話す」
 ジェフリーが全軍に話す。
「バジュラ達を退けだ」
「まずはですね」
「それからですね」
「そしてだ」
 ジェフリーの説明は続く。
「そのうえで敵の巨艦の中に入る」
「そしてランカちゃんを」
「それから」
「そうだ、救出する」
 このことも話される。
「わかったな、それでだ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「まずは全軍で周りのバジュラを倒す」
 そうするというのである。
「それからだ」
「では。今から」
「行きましょう」
 こう話してであった。全員でその彼等に向かう。戦いは早速はじまった。
 その中でだ。ふとイサムがガルドに言ってきた。
「なあ」
「何だ」
「この連中ってな」
 もう目の前に迫ったバジュラ達を見ての言葉だった。
「戦う度に強くなってないか?」
「そう思うか」
「ああ、御前はどう思う?」
 こうガルドに問うのである。
「この連中な。そう思わないか?」
「そういえばそうだな」
 ガルドもイサムのその言葉に頷いた。
「少しずつだがな」
「抵抗力があがってるのか?」
「それに攻撃力もだ」
 そういったものがだというのだ。
「戦術も。脳がないにしてな」
「ああ、何かあるな」
「そうだな。戦術もある」
 ガルドはこのことを指摘した。
「本当に脳がないのか」
「どうだろうな。そもそもだ」
「脳味噌がなくて動くの?」
「そうした動物もいることにはいるけれどね」
 レトラーデとミスティも話す。
「それでも何か」
「ええ、動きはしっかりしてるわね」
「何か中心にいるのか?」
 霧生はいぶかしながらも述べた。
「向こうにな」
「巨大な頭脳か」
 金竜が言った。
「この連中を操る」
「そうでなければ少し説明がつきませんね」
「確かに」
 ドッカーとフィジカは金竜のその言葉に頷いた。
「バジュラの動きは」
「そうとしか思えませんし」
「だとしたら一体」
 ガムリンも言う。
「そこにいるのは」
「まさかとは思うけれどよ」
「あの戦艦かな」
 マックスは柿崎の言葉に応えてその巨艦を見た。今ランカが中にいる巨艦をだ。
「あそこにいるのかね」
「あれがバジュラの総旗艦なら」
「バジュラの親玉か」
 フォッカーは目を鋭くさせて述べた。
「それがいるか」
「あの巨大戦艦こそが」
「それでしょうか」
 輝とミリアもその巨艦を見据えていた。バジュラの中心にだ。その巨体を見せている。
「敵の頭脳」
「それも兼ねている」
「それなら厄介じゃないの?」
 ミレーヌは顔を曇らせていた。
「あんなの。どうやって相手したら」
「今までああした巨艦も相手はしたがな」
 レイはこう言いはしたがだった。
「それでもな。かなり慎重にやらないとな」
「そうよね、ランカちゃんもいるし」
 また言うミレーヌだった。
「本当に慎重にいかないと」
「その必要はねえ!」
 だがここで横紙破りが出て来た。
「ランカを助け出すなんか造作もねえ!」
「何でそう言えるのよ」
「助ける気があるからだ!」
 バサラはこうミレーヌに返す。
「その気さえあればな!絶対にできるんだよ!」
「じゃあどうするつもりだ?」
 レイはこうバサラに問い返した。
「ここは」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!!」
 叫びながら一気に前に出る。
「耳があるなら聴け!容赦しねえぜ!」
「相変わらずなんだから」
 ミレーヌはその言葉を聞きながら呆れはした。
「けれど。そうよね」
「ああ、ここは行くしかない」
 レイも続く。
「いいな、ビヒーダ」
「・・・・・・・・・」
 ビヒーダは無言で頷く。これで決まりだった。
 一気に突き進んでだ。そうしてバジュラ達にもその歌を聴かせる。
 するとだ。バジュラの動きが怯んだ。少しではあるがだ。
「音楽は効く!?」
「まさか」
「バジュラにも」
「俺の歌を聴けない奴はいねえ!」
 バサラはギターを奏でながら叫ぶ。
「だからだ!どいつもこいつも聴きやがれ!」
 これでバジュラの動きを狂わせていた。そうしてだ。
 ロンド=ベルはだ。この動きを見逃さなかった。
「よし!」
「今だ!」
「ここで!」
 こう言ってであった。一気に切り込む。後は壮絶な総力戦だった。
「陣は崩すな!」
「このまま攻めろ!」
「一斉攻撃だ」
 こう指揮が整然と飛ぶ。
「そのうえでだ」
「あの巨大戦艦に向かう」
「いいな」
「ええ、了解です」
「わかってますよ」
 返答も一つしかなかった。
「ここはね」
「そして中に入って」
「本当にランカちゃんを」
「何があっても救うわよ」
 マリューの言葉である。
「それが男の子よ」
「あの、私達女ですけれど」
「それでもいいんですか?」
「今のお言葉は」
「ああ、この場合性別はないわ」
「そうなんですか」
「ないんですか」
「全員漢よ」
 こうも言うのであった。
「漢って」
「それなんですか」
「男じゃなく」
「漢と書いて男と読む」
 マリューは言う。
「そういうことよ」
「はあ」
「じゃあ漢と書いて女ってのも」
「それもありですか」
「勿論よ。この場合は侠気だから」
 それであると断言していた。
「それの問題よ」
「侠気ですか」
「それがあるかどうか」
「今の侠気は決まっているわ」
 不敵に笑っての言葉だった。
「わかるわね」
「ええ、まあ」
「つまりここは」
「ランカちゃんをですね」
「救い出すこと」
 まさにそれだというのだ。
「それよ」
「だから漢だろ」
「そうきますか」
「女の子も今は漢になりなさい」
 マリューはまた言ってみせた。
「わかったわね」
「はい、じゃあ」
「今は」
「囚われのお姫様を救い出すわよ」
 マリューの言葉は本気であった。
「皆でね」
「了解です!」
「それじゃあ!」
「まずは巨艦!」
 攻撃目標はもう決まっていた。
「一気に行くか!」
「言われなくても!」
 彼等はバジュラ達を一掃させながらそのうえで突き進む。そうしてであった。
「よし、これで!」
「巨艦が見えてきた!」
「少佐!アルト!」
 すぐに二人に声がかかる。
「いいですね!」
「今から!」
「いいな、アルト」
「はい」
 アルトはオズマの言葉に小さく頷く。
「今からだ」
「敵の中に」
「入りそしてだ」
「ランカを救い出す」
 もうそれは既に決まっていることだった。
「そういうことだ。行くぞ」
「俺が救い出します」
 こうそれぞれ話してだった。今その巨艦の中に飛び込もうとする。
 その進路はだ。ミシェルがライフルで開けた。
「よし、これでいいな」
「ミシェルか」
「済まないな」
「囚われのお姫様を救うメルヘンはこうじゃないとな」
 彼はそのライフルで敵を撃墜しながらだ。不敵な言葉で言うのだった。
「協力する騎士は必要だろ」
「何言ってるのよ」
 しかしその後ろからシェリルの声がした。
「マクロスクウォーターに戻る直前は気絶しかけてたじゃない」
「あれはだな」
「幾ら敵の攻撃を後ろに受けてもよ」
 見ればだった。ミシェルのバルキリーはかなりのダメージを受けていた。
「それでも気絶しそうになるのはね」
「よくそれで大丈夫でしたね」
「私が咄嗟に操縦したからね」
 こうルカに話すのだった。
「だから助かったのよ」
「そうだったんですか」
「まさに間一髪よ」
「しかし俺もすぐに気付いたぜ」
「助かったっていうの?」
「ああ、俺もマクロスにぶつかるつもりはないからな」
 だからだというのである。
「だからだよ」
「あら、言うわね」
 シェリルはそんなミシェルの言葉を聞いて楽しげに笑うのだった。
「本当に危なかったのに」
「危なかったが生きてるさ」
「私がいなくてそれが言えたかしら」
「言えるさ。今だってな」
「じゃあ見せてみなさい」
 また言うシェリルだった。
「もっとね」
「わかるさ。それじゃあな」
 そうしてだった。巨艦の一点に攻撃を浴びせる。それによってだ。
 そこに穴が開いた。その大きさはだ。
「これ位ならいいか?」
「ああ、充分だ」
「バルキリー一機が通れるならな」
 こう答える二人だった。
「では今からだ」
「中に行かせてもらうぜ」
「絶対にですよ」
 ルカが強い声で告げる。
「ランカさんを」
「わかっている」
「絶対にな」
 二人の言葉はルカのそれよりも強かった。
「すぐに戻る」
「ランカと共にな」
 こうしてだった。二人は巨艦の中に入る。そしてその頃。
 ランカは巨艦の中にいた。そして戦いを見ていた。
 その戦いを見てだ。悲しい顔で言うのだった。
「止めて、こんなの」
 戦いを好まない彼女がだ。それを見て何も思わない筈がなかった。
 悲しい顔でだ。こう言うのだ。
「こんなことをしても何も」
「ランカ」
 しかしだ。その彼女に誰かが声をかけてきた。
「歌を」
「えっ!?」
「貴女は歌を」
 こう言ってきたのだ。見ればだ。
 巨大な幻影らしきものがいた。彼女によく似た緑の髪と優しい顔のだ。その彼女が優しい声で彼女に対して言ってきたのである。
「歌うのです、そして」
「貴女は」
「歌を」
 また言う彼女だった。
「それを歌って」
「一体・・・・・・」
 ランカがその幻影と話している時だった。遂に二人がそこに来た。
「ランカ!」
「来たぞ!」
「お兄ちゃん、それに」
 ランカは二人を見た。そこには。
「アルト君!」
「ああ、来たぞ!」
「今ここにだ!」
 二人で言う。言いながら周りに来るバジュラ達を倒している。
「今そこに行く!」
「待っていろ!」
「駄目!」
 しかしだった。ここでランカは二人に言うのだった。
「戦ったら駄目!」
「何を言っている?」
「戦うな?」
「そう、駄目!」
 また言うランカだった。
「戦ったら駄目!バジュラとは!」
「何を言っているんだ」
「そんなこと出来る筈ないだろうが」
 二人は怪訝な顔でランカに返す。その間にも戦闘を続けている。
「とにかく今はだ」
「そこに行くからな」
 戦いながらそのうえで向かうのだった。しかしだった。
 もう一機来た。それは。
「!?あれは」
「ブレラのか」
「間に合ったな」
 ブレラは冷静に来てだ。そのうえでランカのいるカプセルの様なものを左手に取った。そうしてそれから外に向かうのだった。
「これでいいな」
「ランカが助け出されたか」
「しかし何時の前に」
「こちらブレラ=スターン」
 ブレラは二人に構わず通信を入れた。
「ランカ=リーの身柄は確保した。今から敵艦の中を出る」
「くっ、あの男」
「本当に何時の間になんだ」
 オズマとアルトは歯噛みするばかりだった。今はだ。
「仕方ない。何はともあれランカは救出された」
「撤退しかないか」
「そうだ、行くぞ」
 オズマは釈然としないがそれでもランカに告げた。
「いいな、それではだ」
「はい、わかりました」
 こうしてだ。彼等も脱出する。こうしてその後で。
 巨艦はマクロスクウォーターに照準を合わせられていた。
「二人も脱出したな」
「はい!」
「今です!」
「確かに脱出しました!」
 三人娘がジェフリーに対して答える。
「では艦長」
「今からですね」
「あの巨艦を」
「そうだ、沈める」
 実際にそうするというのだった。
「それではだ」
「了解!」
 ボビーが応えてだ。そのうえで。
「マクロスアタック!」
「ファイアーーーーーッ!!」
 その攻撃が放たれてだ。光が巨艦を貫いた。これで全ては決まった。
 巨艦はあちこちから火を吹き出して爆発していく。その頃にはもう敵も殆ど残ってはいなかった。
 惑星も無事だった。そしてランカも。彼等にとっては満足のいく結果だった。
 だがアルトはだ。残ったバジュラ達を掃討し戦いが終わってもだ。晴れない顔であった。
「どうした?アルト」
「バジュラはまだ残っているけれどな」
「まだ繁殖している星はあるらしいし」
 ここで仲間達が彼に話す。
「しかしそれでも」
「ランカさんのこと?」
「それ?」
「いや、それはもうどうでもいい」
 こう返すアルトだった。
「ただな」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「バジュラと俺達だ」
 彼が今考えているのはこのことだった。
「あの時ランカは俺達と戦うなと言ったんだ」
「おいおい、幾ら何でもそれは」
「無理でしょ」
「そうよね」
「バジュラって頭ないしね」
「だから」
「しかしランカは言った」
 また深刻な顔で話すアルトだった。
「そうな」
「こういうことじゃないのか?」
 そのアルトに言ってきたのはだ。テムジンだった。
「俺が前から聞いた言葉だ」
「ああ、それは?」
「宇宙は二つの種族が生きられる程広くはない」
 こう話すのだった。
「こう聞いたことがあるんだがな」
「二つの種族が」
「それが正しいかどうかはわからないぜ」
 テムジンはここで前置きもした。
「しかしな。実際にな」
「そうかも知れないっていうのか」
「ひょっとしたらな。まあランカちゃんは優しいからな」
 テムジンもランカのそれは認めた。
「だからそう言ったんじゃないのか?認めたくないからな」
「宇宙に二つの種族は生きられないか」
「まあ俺達は同じ人間だ」
 テムジンはゼントラーディもメルトランディもそれだと看破した。
「しかしそれでもだ。宇宙怪獣とかバジュラはな」
「それにプロトデビルン」
「そうした相手は」
「あの連中とは無理だな」
 テムジンはこう仲間達にも話した。
「間違いなくな」
「そうか」
「俺はそう思う」
 また言うテムジンだった。
「それはな」
「そういうものか」
「まああれだ。少なくともああした連中とは共存は無理だ」
 また話すテムジンだった。
「それはわかっておくんだな」
「そうか」
「ああ、それでだ」
 テムジンはここで話を変えてきた。
「ここはだ」
「ここはか」
「酒でも飲むか」
 これを勧めるのだった。
「飲むか?今から」
「あ、ああ」
 アルトもそれに頷く。
「それじゃあ今からな」
「飲んで楽しめばいいさ」
 また言うのであった。
「じゃあ。戦いも終わったしな」
「そうですね、それじゃあ」
「これから」
「さて、何飲む?」
「これなんかどうかしら」
 ここでテュッティがあるものを出してきた。それは。
「ウォッカ!?」
「それですか」
「ゲンナジーの推薦なのよ」
「・・・・・・うむ」
 そのゲンナジーが重厚な顔で頷いていた。
「そうだ」
「ああ、ゲンちゃんロシア人だからね」
 ミオがそのゲンナジーを見て納得する。
「だからウォッカなんだ」
「ウォッカは心の友だ」
 ゲンナジーはこうも語る。
「これを飲めれば漢字だ」
「ええと、アルコール度は」
「九十七度」
「九十七度って」
「それって凄過ぎるんですけれど」
 皆その度数にまずは唖然となる。
「本当ですか?」
「そんなお酒あるんですか?」
「ある」
 ゲンナジーの返答は一言であった。
「ロシアにはある」
「随分いかれた酒だよなあ」
「そんなの飲む?」
「ロシア人って」
「飲まないと生きていられない」
 ゲンナジーの今度の言葉はこれだった。
「ロシアは寒いからだ」
「ああ、そうでしたね」
「ロシアって寒かったですね」
「確かに」
 皆言われてこのことに気付いた。
「だからなんですか」
「それだけ強いお酒をですか」
「飲むんですね」
「その通り」
 ゲンナジーの言葉は簡潔である。
「これを飲めば漢だ」
「それ以前に火吐けるよな」
「吹いて火を点けたら」
「それで」
 殆ど漫画であるがその通りだった。
「おっそろしいお酒もあるわね」
「全く」
「で、これ水割りですか?」
 ミシェルがこう問うた。
「やっぱり」
「いや、カクテルだな」
 アレルヤはそれではないかと考えた。
「さもなければとても」
「普通はそうだよな」
 それはアポロも考えることだった。
「そうじゃないととてもな」
「飲めないよな」
「だよなあ」
「九十七度って」
 しかしである。ゲンナジーはここでまた言うのであった。
「そのままだ」
「えっ、そのままって」
「ってことは」
「まさか」
「そうだ、ストレートだ」
 そうするというのである。
「そのまま飲む」
「九十七度のお酒をですか」
「ストレートで飲むんですか」
「それがロシア」
「そうだ、ロシアだ」
 また言うゲンナジーだった。
「飲むか」
「いえ、ここはカクテルで」
「ちょっと、抵抗がありますから」
「ですから」
 皆それは流石に止めた。
 そのうえでだ。それぞれそのウォッカを水や氷で割ったりカクテルにしてそのうえで飲みはじめる。そしてその味はというとだ。
「これならな」
「飲めるよな」
「確かに」
 流石にストレートは無理であった。
「これなら飲める」
「大丈夫大丈夫」
「ストレートは無理だけれど」
「いや、飲める」
 また話すゲンナジーだった。
「飲もうと思えば飲める」
「飲めます?」
「本当に?」
「ロシア人は飲める」
 実に乱暴な主張にだ。皆は聞こえた。
「だからだ。大丈夫だ」
「いえ、大丈夫じゃないですから」
「遠慮します」
 皆それは断るのであった。
「俺達ロシア人じゃないですから」
「私ロシア人だけれど」
 ここで名乗り出たのはユングだった。
「わかってると思うけれど」
「俺もだけどな」
 トカマクも出て来た。
「一応ウォッカ飲めるよ」
「ストレートでね」
「だからロシア人限定ですから、それって」
「ちょっと飲めませんよ」
「無理ですから」
「そうだったのか」
 今複雑な顔をしたのはマイヨだった。
「ウォッカをストレートはロシアだけだったのか」
「そうだったみたいね」
 リンダも困った顔になっている。
「世界ではなかったの」
「ロシアの飲み方を広めるか」
「ええ、絶対に」
「皆、いいか」
 ゲンナジーが音頭を執る。
「それではだ」
「そうだな。ここはロシア人同士でだ」
「仲良くね」
 マイヨとリンダが音頭を取る。そしてロシア人同士集まる。
「ウォッカをストレートで飲もう」
「是非ね」
「しかし。ロシア人って本当に」
 ノリコはウォッカを美味しそうにストレートで飲むユングを見ながら述べた。
「お酒強いわね」
「だから寒いからよ」
 カズミがそのノリコに話す。
「それでなのよ」
「やっぱりですか。お酒がないとやっていけないから」
「わかりました」
 あらためて頷くノリコだった。
「ロシアのことは」
「じゃあノリコ」
 ユングはにこやかに笑ってノリコに声をかけてきた。
「一杯どう?」
「あっ、私はちょっと」
 苦笑いで応えるノリコだった。そしてこう言った。
「カクテルで」
「あら、大人しいわね」
「ちょっとね」
 こう言ってであった。
「止めておくわ」
「そうなの、じゃあ私はこのままトカマクとね」
「一緒に飲むか」
 トカマクは笑顔でユングに応える。
「ロシア人を集めてね」
「ロシア人にお酒はなくてはならないものよ」
 ユングはこう主張する。
「だからこそね」
「これが飲めないなんてね」
 トカマクもウォッカをストレートで美味そうに飲んでいる。
「悲しいね」
「そうよね、本当に」
「恐るべし、ロシア人」
「全く」
 皆これに唖然となる。そんな戦いの後の一場面だった。
 そしてだ。ブレラはだ。一人の紫の髪の男と話をしていた。
「上手くいったわね」
「いったか」
「ええ、いったわ」
 何故かだ。男の口調は女のものだった。それで話すのである。
「あれでよしとするか」
「ガリア4はいいのか」
「ガリア4以外にも巣はあるわ」
 こう言うだけだった。
「だから。いいわ」
「そうか」
「それでもゲッターの力は予想外だったけれどね」
「あれはな。確かにな」
「バジュラにとってあれは驚異になるわ」
「では今のうちに」
「何とか私達のものにしたいけれど」
 男はここでこう述べた。
「それはどうかしら」
「好きにすればいい」
 今はこう言うだけのブレラだった。
「制御できればな」
「してみせるわ」
「してみせるか」
「そうよ、必ずね」
 言葉が不敵なものになっていた。
「そうするわ」
「ならそうするといい」
 ブレラはその言葉に素っ気無く返した。
「俺は特に何も言わない」
「そうなの」
「俺はこのまま続けさせてもらう」
 主張はこれだけだった。
「このままな」
「それじゃあこれかもなのね」
「ランカを護らせてもらう」
 これがだ。今の彼がすることだというのであった。
「それでいいな」
「ええ、いいわ」
 男もそれを許すのだった。
「それじゃあね」
「わかった。それではな」
「話はこれで終わりよ」
 男は微笑みを見せてもきた。
「それじゃあね」
「帰るのか」
「待たせている娘がいるから」
「彼女を何時まで利用する」
 ブレラは彼を見てだ。問いもしてきた。
「何時までだ。何時までそうする」
「利用できるまでよ」
 唇の左端を歪めさせての言葉だった。
「それまでよ」
「それまでか」
「手駒は利用できるだけ利用する」
 また言った。
「それが基本ではなくて?」
「好きになれないな」
 ブレラはその言葉には眉を僅かに顰めさせて返した。
「その考えは」
「あら、そうなの」
「どうしてもな」
 そうだというのだった。
「好きになれない」
「別に貴方に気に入ってもらう為にしているのじゃないから」
「だからいいのか」
「そうよ。それじゃあね」
「あの娘は御前に捨てられたら」
「その時は終わりよ」
 男の言葉は素っ気無い。
「それでね。終わりよ」
「それでもいいのだな」
「何度も言うけれどね」
 前置きする言葉はこれだった。
「いいわよ」
「よくわかった。それではな」
「ええ、それじゃあね」
「仲間達のところに戻る」
 こう告げて彼から踵を返した。
「これでな」
「仲間、ね」
 男はブレラの今の言葉に今度は唇の右端を歪めさせた。そのうえでの言葉だった。
「馴染んでるわね」
「悪いか」
「いいえ、ただ」
「ただ、か」
「バジュラとあの娘のことを忘れてなければいいわ」
 今言うのはこれだけであった。
「それだとね」
「それでいいのか」
「ええ、今はね」
 こう言うのであった。
「それだけでいいわ」
「そうか」
「そしてね」
 男はまた話した。
「時が来ればね」
「わかった、それではな」
「そういうことでね。それじゃあ」
 男はここまで話して姿を消した。後に残ったブレラも今は静かにしていた。戦いはこれで終わった。しかしまだ謎はくすぶり続けていた。


第三十四話   完


                          2010・6・7     

 

第三十五話 混戦

                 第三十五話 混戦
「で、今度は」
「何処に行ってるんだ?」
「進路は?」
「今のところ新天地を探している」
 ジェフリーがロンド=ベルの面々に答える。
「これまで通りだ」
「これまで通りですか」
「それは」
「そうだ、これまで通りだ」
 何も変わらないというのである。
「これでわかったな」
「ええ、そういうことですか」
「じゃあまた敵が来ればその時に、ですね」
「戦うってことですね」
「成程ね」
 エヴィータはここまで聞いて頷いた。
「敵が来ればまた叩く。誰であっても」
「とりあえずバルマー軍の勢力圏じゃないですよね、これから入るのは」
「違いますね」
「一応いないわね」
 ボビーが答える。
「あくまで今のところはだけれど」
「帝国軍は方面軍を二つ失っているわね」
 アマリアはそれを指摘した。
「残るは三つね」
「近銀河方面軍、外銀河方面軍、そして帝都防衛軍だな」
 ヴィレッタが述べた。
「残るはこの三つだ」
「この三つだけ」
「そしてそのうちの二つは動けない」
「そういうことか」
「そうだ、まさにその通りだ」
 また答えるヴィレッタだった。
「今動けるのは外銀河方面軍だけだ」
「じゃあ今は安心していい?」
「バルマーに対しては」
「少なくとも」
「だとすると」
 今度言ったのはオリヴィエである。
「プロトデビルンと宇宙怪獣になるかな」
「そうだな、バジュラも今のところ大きな巣はないみたいだしな」
 ムハンマドがこのことを指摘する。
「今はやはりプロトデビルンと宇宙怪獣だな」
「それとバッフクランかしら」
 シルヴィアは彼等も警戒していた。
「つまり神出鬼没の勢力が相手になるのね」
「それと」
 ハサンも述べる。
「ムゲ帝国かな、出てきそうなのは」
「そういえば」
「そうね」
 雲儀と走影が顔を見合わせる。
「何か動きがおかしかったな」
「このところどうもね」
「動きがおかしいか」
「そういえば」
 ザイオンとレイがそれに頷く。
「何かフロンティアを狙ってる?」
「確かに」
「そんな感じだよな」
「どういうこと?」
「少なくとも今はね」
 ここで言ったのは華都美だった。
「迂闊な行動を避けて慎重にね」
「そうあるべきですね」
「まだ誰も出ていないし」
「それにだ」
 今度言ったのはクリアリアだ。
「まだ何が出て来るかわからない」
「絶対に何かが出て来るにしても」
「どの勢力がか」
 ここでギルとレドンも話す。
「ではどの勢力が出て来てもいいように」
「備えはしておくか」
「よし、それならだ」
 テムジンが言った。
「あらゆる場合と想定するべきだな」
「何か面倒臭そう」
 フェイはその言葉には反論する。
「もっと楽にいかない?」
「戦いに楽も何もあるものか」
 ハッターはそれにはかなり懐疑的に返した。
「苦労して勝つものだ」
「けれど苦労して負けてもね」
「仕方がないわよ」
「それはね」
 ジェニファーとシルビー、それにデボラが言ってきた。
「あらゆるケースを考えることは大事でもね」
「苦労しても負けるわよ」
「それは覚えておかないと」
「何だ、じゃあどうすればいいんだ」
 ハッターは三姉妹の言葉を受けて困惑しだした。
「苦労しないと勝てないのにか」
「的確な苦労をすることだ」
 だがここでテムジンが話した、
「そうすればいい」
「的確な苦労ねえ」
「それですか」
「今はそれなんですね」
「そうだ、的確な苦労だ」
 テムジンはまた話した。
「それでわかったな」
「じゃああらゆるケースを想定して」
「どんな敵が来ても」
「そうしますか」
「そうだな」
 こんな話をしてであった。彼等はそれぞれ話すのであった。
 そしてそんな話をしているとだった。二日後その敵が来た。
「敵です」
 ヒカリが報告する。
「宇宙怪獣です」
「奴等か」
「あいつ等が来たのか」
「そしてです」
 今度は美穂からだった。
「別の敵も来ています」
「げっ、もう一つ!?」
「今度は何処!?」
「バッフクランです」
 彼等だというのである。
「それぞれ我々に来ます」
「そして彼等同士でも小競り合いをしています」
 サリーが報告するのはこのことだった。
「つまりこのままですと」
「三つ巴ですね」
 エキセドルが冷静に述べた。
「これは」
「そのケースも考えていたがな」
 カムジンは少しぼやく感じである。
「しかし実際にこう来るとな」
「ああ、悪い話がまた来たぜ」
 今度はカチーナからの報告だった。
「後ろから今度はな」
「今度は?」
「どの勢力が?」
「プロトデビルンが来たぜ」
 そうだというのであった。
「あの美意識野郎とデカブツのコンビだぜ」
「おい、またか」
「またあのコンビか」
 皆カチーナの言葉にうんざりとしているとであった。早速ガビルが言っていた。
「行け!進撃美!」
「ゴガアッ!!」
 グラビルがそれに応えて叫ぶ。
「今度こそロンド=ベルを倒すのだ!」
「何かかなりやばいんじゃ」
「全く」
「そうよね」
「案ずることはない」
 だがここでだ。リーは一同に冷静に告げた。
「この程度のことはいつもの筈だ」
「確かに。言われてみれば」
「それじゃあここは?」
「方陣ですか」
「そうだ、守る」
 それだというのである。
「わかったな、それではだ」
「はい、それなら」
「今は」
 こう話してであった。彼等はすぐに方陣を組んだ。リーはハガネの艦橋からその陣を見てだ。冷静な顔でそのまま言うのであった。
「これでいい」
「冷静だな」
「いつものことだ」
 リーはブレスフィールドにも冷静に返す。
「最早な。この程度のことはだ」
「いつものことか」
「敵の数は」
「二百万です」
 ホリスが答える。
「三つの勢力を合わせてそれだけです」
「その三つも互いに争っている」
 リーはここでも冷静だった。
「我々はそれにも付け入ればいい」
「本当に慣れた感じね」
 アカネはそんなリーの言葉を聞いて頷いた。
「何かいつも通りで」
「そうよね」
 シホミもそう見ていた。
「けれど落ち着いていていいわね」
「戦場での狼狽は死に直結する」
 こうも言うリーだった。
「これはもう常識のことだ」
「それなら今は」
「余計に」
「そうだ、冷静にだ」
 また言うのであった。
「わかったな。後は各自に任せる」
「小隊単位で、ですね」
「それで各自」
「攻撃については任せる」
 リーの言葉は続く。
「わかったな」
「はい、了解です」
「それなら」
 こうしてだった。接近してくる三つの勢力を待ち構えるのだった。
 そして来た敵をだ。それぞれ攻撃する。
 戦闘がはじまるとだ。リーはここでもまた述べた。
「この方陣を回せ」
「回す!?」
「ここで」
「そうだ、回せ」
 また言うのであった。
「回転させる。それで三つの勢力にそれぞれ新手を繰り出す」
「そうか、あれか」
 テツヤがそれを聞いてすぐに頷く。
「カラコールか」
「そうだ、車懸かりだ」
 リーはテツヤにこう返した。
「それでわかったな」
「わかった。確かに今はあれがいいな」
「それで全ての戦力で敵に対する」
「そうだな。それではだ」
「総攻撃だ」
 こうしてであった。その方陣が動いた。
 陣はまさに台風であった。そしてだ。
「始終動け!」
「時計回りだ!」
「いいわね!」
 こう指示が飛びそうしてだった。
 ロンド=ベルは全軍右から左に回転してそうして敵を絶え間なく攻撃する。
 それにより三つの勢力を同時に相手にしていた。
「むうっ!」
「ゴガアッ!」
 ガビルとグラビルもそれを見て言う。
「これこそまさに」
「ガウ?」
「回転美!」
 それだというのだ。
「そういう戦術もあるのか」
「また貴様か!」
 ガムリンがそのガビルに対して返す。
「何処までも出て来るか!」
「何度でも出て来る!」
 そうだと返すガビルだった。
「不屈美!それを極める!」
「へっ、じゃあそうしな!」
 バサラは彼のその考えは認めた。
「俺も俺の歌を聴かせてやるぜ!」
「歌?」
 ガビルは歌には疑問の言葉で返した。
「御前はいつもそれを言うが」
「俺の歌を聴くか?」
「美なのか、それは」
 ガビルは今一ついぶかしむ感じだった。
「そうなのか?」
「美しいかどうかは聴いてみて理解しな!」
 これがバサラの言葉だった。
「俺の歌をな!」
「そうしたいけれどね」
 しかしだ。ここでミレーヌが言う。
「次の相手に向かうわよ」
「何っ!?」
「バッフクラン軍に向かいましょう」
 こう言うのであった。
「だって。この陣は右より左に回転して動いてるじゃない」
「おい、ここまで来てかよ」
「だから陣だから仕方ないのよ」
「俺は聴かせてやるんだよ!」
「だから人の話は聞きなさい」
 今更であった。
「いいわね、行くわよ」
「俺はここに残るぜ」
 やはり人の話を聞こうとしない。
「そしてこいつにな!」
「ああ、わかったわよ」
 ミレーヌも遂に諦めた。
「じゃあそうしておいて」
「おうよ!俺の歌を聴けーーーーーーっ!」
 こうして彼はプロトデビルンの相手に専念する。結果としてファイアーボンバー全員がそうしたのだった。
 そしてだ。他の者はそのままだった。
「よし、次だな!」
「はい、そうです」
 ディアッカにニコルが話す。
「次は宇宙怪獣です」
「それで今度は連中をこれでか」
 フリーダムの照準を見ながらの言葉だった。
「吹き飛ばすか」
「ミサイルでもいいのでは?」
 ニコルはディアッカのフリーダムを見て話す。
「まとめて撃破するのなら」
「ミーティアだからか」
「はい、どうでしょうか」
「そうだな」
 ディアッカもそれに頷いた。
「それもいいな」
「そう思われますね」
「ああ、デカブツは流石に無理だがな」
 それは置いておいて、だった。
「それでも雑魚をまとめて消そうと思ったらな」
「はい、そうしましょう」
「わかった」
 イザークも応えてきた。彼のジャスティスもミーティアと合体している。
「それならだ。ミサイルだな」
「ジャスティスは接近戦向きだけれどな」
「それもしてみせる」
 こう話すイザークだった。
「敵の戦艦にはな」
「戦艦は僕がやらせてもらいます」
 ニコルはそちらだというのだ。
「このデスティニーなら」
「ああ、頼むぜ」
「そちらはな」
 ディアッカもイザークもそれでいいとした。
「こっちはこっちで敵の数減らしておくからな」
「そちらは任せた」
「はい、それなら」
 その宇宙怪獣のところに来た。するとだ。
 ニコルは巨大なライフルを出してだ。大型の宇宙怪獣を一撃で沈めたのだった。
 その中でだ。ふとビーチャが言う。
「今回宇宙怪獣のあのデカブツいないな」
「ああ、そうね」
「合体型だね」
「あれはいないわね」
 エル、モンド、イーノがそれに頷く。
「そういえば確かにね」
「あれが宇宙怪獣では一番手強いけれど」
「それがいないのはいいね」
「ああ、それは助かるな」
「あれが一番厄介なのよね」
 ルーもそれにはほっとしていた。
「手強いししぶといし」
「あれがいないと全然違うね」
「ああ、楽になる」
 プルとプルツーも話す。
「高速型とかはいるけれど」
「あれがいないのはいいことだ」
「向こうのラスボスみたいなものなのか?」
 ジュドーはそれではないかという。
「あの戦艦ってよ」
「ああ、そうかもな」
「言われてみればそうですね」
「私達まだ見ていませんし」
 ジャックにエルフィ、フィリスも攻撃を加えながら話す。
「戦艦って言っていいのかわからないけれどな」
「何かそういう感じですね」
「ここぞという時に来ますし」
「宇宙怪獣は本能だけだけれど」
 カズミもここで話す。
「それでも。強弱によってランクはあるみたいだから」
「だから一番強いあれがですか」
「一番上になるんですね」
「そういうことですね」
「そうみたいね」
 カズミはまた話した。
「どうやらね」
「そうね。感じられる力も全く違うし」
 ラーダもそれを言う。
「何か違うわね」
「それにあの種類の個体自体も少ないわね」
 カズミはそこも見ていた。
「どうやら」
「まああんなのがうじゃうじゃ出て来ても困るけれど」
「確かに」
「それだけは」
 皆このことには納得した。
 そしてだ。彼等はそのまま車懸かりの攻撃を続けていく。そうしてだ。
 まずはプロトデビルンが退いた。
「これ以上の戦闘は意味がないが」
「ガウ」
「ならばだ。執るべき方法は一つ」
 ガビルはすぐに指示を出した。
「撤退!撤退美だ!」
「ガオオオオオオン!」 
 グラビルが応えてであった。全員戻る。そしてそれによって敵はあと二つになった。
 そしてだ。次はだった。
「ふむ」
「閣下、損害が七割に達しました」
「最早」
「わかっている」
 ハンニバルが答えた。
「撤退する、いいな」
「わかりました」
「それでは」
「宇宙怪獣まで出たとあってはな」
 それが理由だというのだ。
「それではだ」
「今は撤退ですね」
「これで」
「そうだ、全軍一旦下がる。 
 彼はまた話した。
「それではだ」
「はい、それでは」
「その様に」
 こう話してだった。バッフクランも撤退する。そして後に残ったのは。
「おいおい」
「連中が残ったのかよ」
「何だよ、これって」
「面倒ね」
「しかし仕方がないね」
 ここで言ったのは万丈である。
「最後まで残る勢力が出るのは当然だし」
「仕方ないですか」
「それじゃあ」
「うん、だからね」
 こう皆に話してだった。
「じゃあそろそろ車懸かりもいいかな」
「そうだな」
 それを指示したリーが応える。
「もうな」
「よし、それなら」
「もうこれで」
「後は」
「全軍突撃だ」
 リーが次に下した命令はこれだった。
「いいな、まずは一斉射撃だ」
「そしてそれから」
「全軍で突撃して」
「そして勝敗を」
「そうだ、そうする」
 まさにそれだというのだ。
「行くぞ、いいな」
「了解、それじゃあ」
「まずは一斉射撃で」
「そしてそれから」
「行くぞ」
 こうしてだった。すぐに陣を整えた。
 そのうえでだ。リーの指示通り一斉射撃を放った。
 それで敵の数を減らし動きを止めてからだ。突撃に移った。
「これで決まりだ!」
「一気にな!」
「決める!」
 その突撃でだ。勝敗は決した。
 宇宙海獣達はそのまま全滅した。残ったのは一体もなかった。
「宇宙怪獣はなあ」
「撤退しないからねえ」
「最後まで戦うから」
 皆戦いが終わってから疲れた顔になっていた。
「疲れるのよね」
「全く」
「大変よ」
 こう話すのだった。
「しかし戦いは終わったし」
「じゃあそれなら」
「一旦フロンティアに帰るか」
「そうね」
 こう話してであった。フロンティアに戻った。
 するとだ。レオンが言うのであった。
「悪いがだ」
「またですか」
「また来たんですか」
「そうだ、今度は帝国軍だ」
 敵が来たというのである。
「丁度ここから二日のところに来ているそうだ」
「そうですか、そこにですか」
「そこにいるんですね」
「私は文官だが」
 レオンは一応こう前置きする。
「しかしだ。それでもここはだ」
「そうですね、急襲ですね」
「今のうちに」
「そうだ。今のうちだ」
 ここで大河も言った。
「今のうちに攻める」
「そして一気に倒す」
「そういうことですね」
「よし、それならだ」
 皆もそれに頷いてだった。
「一気に決着をつけましょう」
「それでその帝国軍はですけれど」
「ハザルの軍ですか?」
「それとも他の方面軍ですか?」
「それが実はまだよくわかっていない」
 レオンの言葉はここで微妙なものになった。
「申し訳ないがな」
「ハザルの軍が他の軍か」
「それはよくわからないんですか」
「じゃあ一体どの軍なんだ?」
「それが問題ですけれど」
「それでもおおよその察しはつく」
 ここで言ったのはマーグだった。
「帝国軍はそれぞれの管轄区があるからな」
「あっ、それですか」
「それがありましたね」
「本国を護る軍は絶対に動けはしない」
 マーグが指摘するのはこのことだった。
「そしてここは中銀河方面軍の管轄ではない」
「というとここは」
「ハザルですか」
「連中ですね」
「おそらくな。壊滅した二個方面軍の再建にはまだ時間がかかる」
 マーグはこのことも話す。
「だとすればだ」
「ハザルしかない」
「そういうことですか」
「そうだ、そうなる」
 マーグはこう結論付けた。
「あそこにいるのはハザル=ゴッツォの軍だ」
「そうですか、ただ」
「そうよね。気になることはね」
「それね」
 ここでロンド=ベルの面々はふと気付いたのだった。
「ハザルも管轄があるのに」
「それで何で私達にここまで」
「本来の護りは?」
「していないように見えるよな」
「そうだな。おそらくそれはおざなりにしている」
 マーグもこのことを指摘した。
「外銀河の護りはな。だからこそバッフクランもここまで入ってきている」
「それってまずいよな」
「地球よりもバルマーにとって」
「絶対にな」
「それはそうだけれど」
 皆このことに気付いてさらに話す。
「バッフクランって銀河単位の勢力だしな」
「全力で向かわないといけないのに」
「けれど何で私達にここまでこだわるのかしら」
「それがわからないけれど」
「そうですよね」
 ロゼもだった。首を傾げさせていた。
「普通は。私達のことは誰かに任せて」
「そうしてバッフクランにあたる」
「そうなる筈なのに」
「どうして?」
「私達に戦力の殆どを」
「一つ仮定するとだが」
 ここで言うのはクワトロだった。
「外銀河にそれだけの備えがある」
「俺達に戦力を向けられるだけの」
「それだけのものが」
「そう、ある」
 こう話すのだった。
「だからこそ私達に戦力を向けているのだ」
「外銀河方面軍にもロンド=ベル討伐の命は下されている」
 マーグはここでこのことも話した。
「辺境方面軍の次にだ」
「ならそれですか?」
「その為に軍を?」
「備えを管轄区に置いたうえで」
「そうも考えられる」
 しかしここでだ。クワトロはさらに言ってみせた。
「しかしだ」
「しかし?」
「っていいますと」
「それではバッフクラン軍を防いでいる」
 クワトロもこのことを指摘する。
「既にだ」
「しかしそれはできていない」
「こんな場所にまで来られている」
「ということは」
 彼等はすぐに察した。となるとだ。
「バッフクランはあえて放置されていますね」
「そうなるよな」
「確かに」
 皆でこのことを話すのであった。
「それでいいのかな」
「よくないだろ」
「なあ」
「普通に」
「しかしそうしても手に入れたいものがあれば」
 今度はアムロが言ってきた。
「そうするんじゃないか」
「手に入れたいものがある」
「軍事技術?」
「ゲストやインスペクターと同じで」
「それ狙いかしら」
「いや、それならね」
 ここでケーラは異論を述べてきた。
「あの時SRX手に入れてない?」
「ああ、あの時に」
「そういえば」
 これに気付くのだった。
「言われてみれば」
「けれどリュウセイを挑発するみたいに言って終わり」
「そうだよなあ」
「SRX強奪とかしなかったし」
「アヤさんだけ手に入れたし」
「あれも不思議よね」
 今度はセシリーが話す。
「どうしてアヤさんを拉致したのかしら」
「あいつが凄い女好きとか?」
 今言ったのはビルギットだった。
「それはないよな」
「そうした話はな」
「聞いていません」
 マーグとロゼがそれは否定する。
「ハザル=ゴッツォは傲岸不遜な男だ」
「ですが個人的には清潔なのです」
 ハザルの数少ない美点だった。
「汚職や女色には縁がない」
「そして生活自体も極めて質素です」
「そうしたことで美女を手に入れる男ではない」
「それは絶対にありません」
「そうですか、それはないんですね」
 シーブックもそれを聞いて頷く。
「あの男にそれは」
「じゃああの時どうしてアヤさんを?」
「それに私達をどうして」
「ここまで狙うか」
「しかも」
 そしてであった。このことにも気付いたのだった。
「フロンティアを狙ってるよな」
「どうしてかな」
「それもわからないし」
「何かがあるのは間違いないしても」
「どうして?」
 そしてであった。さらに話すのだった。
「彼等は一体」
「何を考えているのかしら」
「それを確かめる為にも急襲を仕掛けるか」
 今言ったのはアムロだった。
「やはりここは」
「そうするか」
「そうね」
「ここは」
 皆もそれに頷く。そうしてだった。
「じゃあすぐに敵に向かいましょう」
「それで決着をつけましょう」
「そのうえで」
「よし、決まりだ」
 ブライトもここで言う。
「今からすぐにだ。帝国軍に向かう」
「了解です」
「今から」
 こう話してだった。彼等はまた戦いに向かうのであった。


第三十五話   完


                         2010・6・9 

 

第三十六話 混乱の宇宙

               第三十六話 混乱の宇宙
 バルマー軍に向かうロンド=ベル。その時彼等は隠密裏に進んでいた。
「しかしな」
「そうね」
「気付いているかどうか」
「気付かれたらいけない」
「確かに」
 こう話してだった。彼等はそのバルマー軍に向かうのだった。
 ここでだ。ふとラトゥーニが言った。
「ただ」
「ただ?」
「どうしたの?」
 その彼女にアラドとゼオラが問う。
「リュウセイさんにしたことです」
「あれか」
「あの時ね」
「はい、あれはわからないところがあります」
 こう二人に話すのだった。
「あの時。リュウセイさんを殺そうと思えば殺せました」
「ああ、何時でもな」
「それは楽に」
「しかししませんでした」
 言うのはこのことだった。
「それはどうしてでしょうか」
「遊び?」
 シャインはそれではないかというのだ。
「それでなのかしら」
「有り得るんじゃないのか?」
「そうですね」
 カチーナとタスクがそれに頷く。
「あいつの行動を見てたらな」
「そうした屑みたいなこともするよな」
「いや、それでもあれはおかしいわ」
 それに意を唱えたのはレオナだった。
「それにしては。何かを無理に引き出したいみたいな」
「そしてそれを奪うか」
 今言ったのはクォヴレーだった。
「そういうことか」
「奪う?」
「あそこで手に入れられたんじゃ?」
「それなら余計に」
「その手に入れたいものをさらに引き出す」
 ここでまた話す彼等だった。
まさかとは思うけれど」
「それって」
「まさか」
「そのまさかかも知れない」
 クォヴレーは言った。
「あの男の考えではな」
「腹黒いのは事実ね」
 オウカはハザルをこう見ていた。
「それもかなり。ただ」
「ただ?」
「何かあります?」
「器は小さいわね」
 オウカはハザルをこうも評した。
「あれでね」
「器は、ですか」
「小さいですか」
「心に余裕がないわ」
 こうも言う。
「そして部下を信用しない」
「だからああして」
「自分で動く」
「人望がないのは自分でも気付いているのでしょうね」
 辛辣だがその通りだった。
「実際のところね」
「しかしそれでも」
「そうよね」
 だがここでアラドとゼオラが言う。
「指揮官としてもパイロットとしても」
「手強いですよ」
「いえ、それでも」
 その二人にラトゥーニが話す。
「戦争は一人でするものじゃないから」
「そうね」
 オウカも彼女のその言葉に頷く。
「例えハザルだけが残っても仕方ないわ」
「一人になったら」
「その時こそ」
「そういうことよ。わかったかしら」
 これがオウカが出した結論だった。
「それにハザルが幾ら強くてもね」
「これまでの敵には」
「あれ位の強さは」
「いたわね、答えはまた出たわね」
「ええ、確かに」
「その通りです」
 アラドとゼオラはオウカのその言葉に頷く。
「そういうことですか」
「つまりは」
「特に恐れることはないわ。焦ったらかえって駄目よ」
「そうですわね」
 シャインはオウカのその言葉に頷いた。
「ここはあえて落ち着いて」
「いきましょう」
 こう話すのだった。そのうえで帝国軍に向かう。
 帝国軍は惑星の裏側にいた。ロンド=ベルはそこに回り込む。
 そうしてだ。一気に攻めた。
「よし、今だ!」
「全軍突撃!」
 こう叫んでだ。まさに一気だった。
 敵の指揮官は。これといった者ではなかった。
「司令、敵です!」
「敵が来ました!」
「何っ!」
 実際にだ。敵襲と聞いて狼狽する始末だった。
「何処から来た!」
「惑星の裏側からです!」
「そこからです!」
 部下達が彼に報告する。
「そして来たのは」
「何だ?プロトデビルンか?」
「いえ、ロンド=ベルです」
「あの者達です」
「くっ、気付かれたか」
 司令はそれを聞いて歯噛みした。
「我等が急襲を仕掛けるつもりだったが」
「どうしますか、ここは」
「援軍を要請しますか」
「ハザル司令に」
「いや、それには及ばん」
 彼はそれは否定した。
「我等だけで充分だ」
「左様ですか」
「そうだ、数においては勝っている」
 彼はそれを頼りとしていた。
「だからだ。このまま迎え撃つぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
 こうして彼等はロンド=ベルと戦う。しかしであった。
 ロンド=ベルは強かった。彼の予想以上にだ。
「駄目です、第一陣突破されました!」
「第二陣もです!」
 次々に悲観的な報告が来る。
「間も無く本陣にまで迫ります!」
「どうしましょうか!」
「うろたえるな!」
 かろうじてこう言うだけだった。
「ここはだ。うろたえるな!」
「は、はい」
「それでは」
「大丈夫だ、まだ数では勝っている」
 こう言うので精一杯であった。
「だからだ。ここは踏み止まれ」
「は、はい」
「それでは」
「今はその時だ」
 こうしてだった。帝国軍は劣勢のまま戦う。しかしここで。
 またしてもだ。敵が来たのだった。
「今度は宇宙怪獣です!」
「彼等もです!」
 バルマーから見て後方に出て来たのであった。
「その数六十万!」
「それだけいます!」
「六十万だと」
「はい、そうです」
「それだけいます」
 こう報告があがるのだった。
「どうされますか、ここは」
「ロンド=ベルの攻撃もさらに強まっていますが」
 撤退も考えた。しかしであった。
「戦う」
「戦われますか」
「まだ」
「ここで撤退してもハザル司令はお許しになられない」
 だからだというのだ。
「我等全員処刑されるぞ」
「確かに」
「ハザル司令ならば」
「あの方は恐ろしい方だ」
 部下には恐れられているのである。恐れられているだけだ。
「このまま退けば我等全員だ」
「兵士達はともかく」
「我等指揮官や参謀だ」
「そうだ、処刑される」
 部下を手駒としてしか扱わないハザルの性格はその部下達が最もよく知っていた。
「わかったな。だからな」
「はい、それでは」
「今は」
「戦うしかない」
 また言う司令だった。
「わかったな」
「それでは」
「今は」
 こうしてだった。帝国軍は挟み撃ちに遭いながらも戦い続ける。そしてロンド=ベルは。
「今度は宇宙怪獣か」
「また出て来たな」
「本当によく出るわね」 
 今更彼等にはこれといって驚いていなかった。
 そしてだ。タシロに問う。
「ここはどうしますか?」
「宇宙怪獣がまた来ましたけれど」
「ここでは」
「案ずることはない」
 彼も落ち着き払っている。
「宇宙怪獣が来ればその時はだ」
「はい、その時は」
「いつも通りですね」
「倒す」
 一言であった。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
「バルマー共々」
「全軍バルマーに対するのと同じだ!」 
 タシロはこう指示を出した。
「このまま敵を迎え撃つぞ!」
「はい!」
「了解です!」
 こう話してであった。彼等は戦闘を続ける。そこに宇宙怪獣が来た。
 彼等はまず帝国軍を蹴散らしてしまった。
 その司令が乗っていた戦艦はだ。宇宙怪獣の攻撃であえなく沈んだ。
「そ、総員退艦!!」
「は、はい!」
「脱出を」
「ここに至っては止むを得ない!」
 軍がほぼ消滅してからの判断だった。
「全軍撤退だ!」
「了解です!」
「それでは!」
 こうして全軍撤退する。後は宇宙怪獣との戦いだった。
 だがここでだ。グレイスがこっそり笑った。
「もっと面白くなるわよ」
 この笑みと共にであった。また出て来た。
 今度はバジュラだった。彼等であった。
「来たぞ!」
「今度はバジュラかよ!」
「やっぱりまだ巣があったのか!」
「バジュラを甘く見ないことね」
 彼等の言葉を何処からか聞きながらの言葉だった。
「そう簡単にはね」
「バジュラは右からか」
「そこからか」
 それでもだった。ロンド=ベルは冷静だった。
 タシロはだ。ここで指示を出した。
「まずは宇宙怪獣の陣を正面から突破する」
「宇宙怪獣をですか」
「このままですね」
「そうだ、そしてだ」
 さらに話すのだった。
「そこから右旋回しバジュラの軍をだ」
「彼等を叩く」
「そうするのですね」
「その通りだ」
 これが彼の戦術だった。
「わかったな。機動力を活用してだ」
「はい、それなら」
「今から」
「この戦いも勝てる」 
 タシロはこのことを確信していた。
「だからだ。行くぞ」
「はい、それでは」
「今から」
 こうしてだった。まずは正面突破を行った。
 それからだった。右から来ていたバジュラのその右から攻めるのだった。
「よし、これなら!」
「いける!」
 そのままありったけの攻撃をぶつける。それによってだ。
 宇宙怪獣だけでなくバジュラにも打撃を与えた。これで戦争は決まった。
 宇宙怪獣とバジュラは衝突し戦争になっていた。その両者にであった。
 もう一度攻撃を与える。それで、だった。
「勝敗は決したな」
「はい」
 副長はタシロのその言葉に頷く。
「これで」
「戦術だ」
 タシロは言った。
「それを使えばだ」
「例えどれだけ強敵であっても」
「勝てるのだ」
 こう言うのであった。
「こうしてな」
「そうですね。今敵はお互いに衝突していますし」
「そこを狙えばいい」
 その三つ巴の戦場の中での言葉だった。
「そういうことだ」
「その通りですね。それではこの戦いは」
「もらった」
 言い切った。
「この戦い、完全にだ」
「はい、それでは」
「今から双方に攻撃を加える!」
 タシロはこう命じた。
「それで勝敗を決する。いいな!」
「はい!」
「わかりました!」
 こうして宇宙怪獣とバジュラが衝突したそこに攻めた。それで勝敗を決し戦いを終わらせた。双方共かなりの損害を出し僅かな数だけが戦場を離脱した。 
 戦いが終わりだ。まず言ったのはマリーメイアだった。
「勝利の後は御馳走ですね」
「ええ、そうね」
 カズミが彼女の言葉に応える。
「さて、それなら」
「人参のケーキがあるわよ」
「今焼けたわよ」
 ニナとラーダが出て来た。
「皆でそれ食べましょう」
「今からね」
「あっ、人参のケーキ最高だニャ」 
 それに声をあげたのはクロだった。
「じゃあ頂きます」
「おい」
 ここでマサキが突っ込みを入れる。
「誰が誰か全然わからねえぞ」
「えっ、そうかニャ」
「わかると思うけれど」
 クロにタチヤナが加勢する。
「顔は全然違うし」
「その通りだニャ」
「だから声が同じにしか聞こえないんだよ」 
 マサキはそれを理由にする。
「あんた達本当に別人同士か?」
「そうですけれど」
「違うように見えるかしら」
 そのマリーメイアとカズミの言葉だ。
「それは御承知頂けると思っていましたが」
「そうよね」
 今度はミスティも加わった。
「この通りよ。私達は別人同士よ」
「いや、絶対に違う」
 刹那はそんな彼女達を見て断言する。
「あんた達は間違いなく同一人物だ」
「そうとしか思えないな」
 ロックオンも刹那の言葉に頷く。そうしてだ。
「そう思うよな、あんたも」
「ああ」
 頷いたのはクルツだった。
「どう見てもな」
「そうだよ、あんた達本当はクローンか何かじゃないのか?」
「そうとしか思えないがな」
 ラッセとサブロウタも言う。
「世の中似てる人間が多いにしてもだ」
「似過ぎっていうかな」
「いや、あんた等もかなり」
 その彼等にはアレックスが突っ込みを入れる。
「あれだけれどな」
「そうだよな。同じ人間に見える時あるからな」
 応えるのはスティングだった。
「世の中おかしなことがあるものだ」
「全くだぜ」
「それはギャグで言っているのか?」
 彼等に問うたのは黄金だった。
「あんた達もな」
「ああ、同じだろうがよ」
 ジェリドが出て来た。
「どっからどう見たってな」
「そうだな、同じにしか見えないな」
 ヤンロンも二人の言葉に頷く。
「これはな」
「全くですね」
 エイジまで出て来た。
「何かミイラ取りがミイラになってますね」
「それ自分で言ってておかしいと思わない?」
「あんた達も自覚ないでしょ」
 リューネとアレンビーであった。
「あんた達も同じだから」
「誰がどう見てもね」
「話がわからなくなってきたな」
 ヒイロがぽつりと言う。
「これは」
「そうだよな。何か声が似ている奴等ばかりだぜ」
「というか何かおかしいのでは?」
 今言ったのはテッサだった。
「世の中声が似ている人達もいます」
「そうよね。それはね」
 スメラギが何故か出て来た。
「言いっこなしでね」
「そうしないと」
「あれっ、テッサさんとスメラギさんって」
「そうよね」
「この組み合わせって」
 ところがこの二人もこの二人で、であった。
「プリキュア?」
「そんな感じ?」
「誰もそれ言ったらスネに傷ありませんか?」
 ユンの言葉である。
「ですからそれは」
「そうだよなあ、包丁とか」
「スクールだけでサマー、クロスじゃ脇役とか」
「そういうのは」
「だからなしにして下さい」
 ユンが一番困った顔になっていた。
「困りますから」
「それはそうとしてだけれどな」
 ムウが言う。
「とりあえずバジュラが出たよな」
「ああ、あれ」
「また出て来ましたね」
「ここで」
「それだ。あの時かなりやっつけたがな」
 ガリア4での戦いの時の話だ。
「それでもまだ出て来るなんてな、あれだけな」
「近くに巣がありますね」
 ルカの言葉だ。
「これは」
「問題はそれが何処か、だけれど」
 エルフィはそのことを指摘した。
「さて、何処かしら」
「近くの惑星かしら」
 キャシーがふと呟く。
「テレポートしてきたわけじゃないようだったし」
「それなら何処から」
「来たかだな」
 ドニーとジャンも話す。
「近辺の惑星の様だが」
「何処から来たか」
「少し調べてみる必要があるわね」
 ここで遥が言う。
「あれだけの数が来たから。すぐにわかるわ」
「よし、じゃあ今から」
「調べてですね」
「ええ、そうよ」
 遥はこう一同に話す。
「時間は少しだけで済むと思うわ」
「よし、じゃあそれまでは」
「一時休憩ですね」
「私だけでやっておくから」
 遥は皆に気を使ってこう申し出た。
「少しだけ待っておいてね」
「はい、それじゃあ」
「今から」
「さて、問題はどの惑星かだけれど」
「そうですよね」
 綾人がその遥に言う。
「またガリア4みたいな惑星でしょうか」
「今回はこの近辺には人がいる惑星はないけれどね」
 この場合はゼントラーディもメルトランディも入れての話だ。
「それでも。何処にいるか」
「それが問題ですか」
「さて、暫く部屋に入るから」 
 こう言って立ち上がる。
「まあジュースでも飲みながら調べるわ」
「じゃあ僕も」
 綾人はすぐに協力を申し出た。
「お手伝いさせて下さい」
「いいわよ、それは」
 しかし遥は微笑んでそれはいいとしたのだった。
「私一人で充分だから」
「充分ですか」
「そう、充分よ」
 人手はいらないというのだ。
「だからね。綾人君も休んでいて」
「はあ、それじゃあ」
「多分調べるのに三十分もかからなくて」
 その程度だというのである。
「そしてそれが終わったらね」
「終わったら」
「その惑星のことを葛城三佐に話して終わりね」
「ミサトさんにですか」
「そう、それで終わりだから」
 にこりと笑って綾人に話す。
「一人で充分よ」
「わかりました、それじゃあ」
「さて、と」
 ここまで話してであった。遥は微笑んで言う。
「コーラでも飲みながらパソコンを打っているわ」
「コーラより野菜ジュースの方がいいんじゃねえのか?」
 シンの言葉である。
「二十九歳なんていう立派なお年寄りなんだからよ」
 その瞬間だった。遥の目が赤く光ってた。
 十メートルはあった間合いを無視してだ。拳を繰り出したのである。
 それはシンの後頭部を打ちだ。一撃で終わらせた。
 気絶するシンを見てだ。一同は呆れた顔で言う。
「こいつは本当に」
「言わなくていいことばかり言って」
「いつもこうなるわね」
 こう言うのだった。
「やっぱり馬鹿なんだな」
「そうね」
「本当に」
「とりあえず医務室に放り込んでおくか」
 目を回して倒れている彼を見ての言葉だ。
「死なないまでも」
「そうだよな」
「一応はね」
 そうしてであった。シンは引き摺られて医務室に連行される。両手が床に引き摺られ実に無惨な姿のまま運ばれていくのであった。
 それが終わってからだ。遥はあらためて言った。
「じゃあ行って来るから」
「はい、じゃあ」
「御願いします」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか」
 遥は楽しそうに言う。
「どの惑星なのかね。問題は」
「できれば普通の惑星がいいですけれどね」
「本当に」
「火山が噴火しまくってるとか超惑星とかじゃなくて」
「すっきりした星が」
「けれどいい星だったら」
 ここでこうも話される。
「そもそもバルマーか誰かいるだろうけれど」
「まあそれはね」
「その場合はね」
 皆マリューのその言葉に頷く。しかし何はともあれだった。
「とりあえず今は」
「遥さん、御願いします」
「そういうことで」
「わかってるわ。それじゃあね」
「はい、じゃあ」
「後で」
 こうしてであった、遥は一人自分の部屋で調べるのだった。その結果その星のことがわかったのだった。本当にすぐのことだった。


第三十六話   完


                                      2010・6・11   

 

第三十七話 妖しい笑み

               第三十七話 妖しい笑み
「それでね」
「ああ」
「そういうことよ」
「そうだったのか」
「あそこにも巣を置いていたのよ」
 グレイスがブレラに話していた。
「実はね」
「それでか」
「それもガリア4と同じ規模のものをね」
「そこまでの巣をか」
「置いてあったのよ。他にも幾つもあるわよ」
 グレイスは笑っていた。しかし目は笑っていない。
「そう、幾つもね」
「そしてそれを使ってか」
「私はやってみせるわ」
 その笑っていない目での言葉だ。
「あのことをね」
「あくまでそうするか」
「そうするわ。そしてブレラ=スターン」
 彼の名前を呼んでみせた。
「貴方もね」
「そうだ」
 ブレラの返答は決まっていた。
「ランカをな。何があっても」
「凄いわね。その気持ち」
 ブレラのその強い意志を見ての言葉だ。
「何か」
「何か?」
「妹を護る兄みたいね」
 それだというのである。
「そんな感じね」
「そう思うか」
「見えないこともないわ」
 含み笑いと共の言葉だった。
「どうもね」
「ならそう思っておくといい」
 ブレラはそれはいいとした。
「別にな」
「気にしないのね」
「他人がどう思おうと構いはしない」
「それはどうでもいいのね」
「全くな」
 そうだというのだった。
「意に介したりはしない」
「わかったわ。それじゃあ貴方はね」
「ランカのことは好きにさせてもらう」
 また言うのだった。
「まさかここで会うとは思わなかったが」
「人は会うものよ」
 グレイスはこのことはこう話した。
「会うべき人とはね」
「会うべきならばか」
「そう、会うのよ」
 そうだというのである。
「それは言っておくわ」
「だからランカと会えたのか」
「その巡り合わせを大事にしなさい」
 またブレラに話す。
「いいわね」
「ではそうさせてもらう」
 こうしてだった。また頷くブレラだった。そうしてだ。
「それではだ」
「帰るのね」
「そうだ、仲間達と約束がある」
 こう言って一歩動いた。
「だからだ」
「仲間、ね」
 それを聞いてシニカルな笑みを浮かべるグレイスだった。
「貴方にもできたのね」
「おかしいか」
「いえ、それは別に」
 それはいいというのだ。
「けれど。変わったわね」
「俺がか」
「ええ、かなり変わったわ」
 こう話すのである。
「それもかなりね。ただ」
「ただ?」
「目的を忘れないようにね」
 それはだというのであった。
「わかっていると思うけれど」
「無論だ」
 ブレラの返答はすぐに出された。
「それはだ」
「そう。それならいいけれど」
「俺を疑うのか」
 ブレラの目が鋭くなった。
「この俺を」
「疑いはしないわ。ただ」
「ただ?」
「気になっただけよ」
 それだけだというのである。
「ただそれだけよ」
「そうか、それだけか」
「わかってくれていたらいいわ。じゃあ私もそろそろ行かないといけないから」
「マネージャーの仕事か」
「その仕事があるから」
 だからだというのである。
「今は行かせてもらうわ」
「ではお互いにな」
「また会いましょう」
 こう話してだ。お互いに別れるのだった。
 そうしてだ。グレイスと別れたブレラは仲間達のところに戻った。そこにはアークエンジェルの面々がいた。当然ながらキラもいる。
「あっ、ブレラさん」
「時間通りですよ」
「丁度今ですよ」
 そのキラに続いてサイとミリアリアも言う。
「相変わらず時間に厳しいですね」
「まるで時計そのものみたいに」
「時間は大事にする主義だ」
 そうだというのである。
「だからだ」
「そうですか、それでなんですね」
「いつもこうして」
 トールとカズイも話す。
「こうしていつも時間通りに」
「動かれているんですね」
「結果としてこれが一番生きやすい」
 ブレラはこうも話した。
「やってみるといい」
「そういうものなんですか」
 キラはそれを聞いて少し考える顔になった。
「それでなんですね」
「そうだ。しかし」
「しかし?」
「キラ、前から思っていたが」
 ブレラはそのキラを見て言うのだった。
「似ているな」
「はい、そうですね」
 キラもすぐに応える。
「前から思ってました」
「俺達は何か通じるものがある」
「ええ、本当に」
「それが不思議だ」
「私もクラン大尉と」
「僕は勇さんとだし」
 ミリアリアとサイも話す。
「それって取り立てて珍しいとは言えないけれど」
「そうだよなあ」
「しかしいいものだ」
 ブレラはそれはいいとした。
「似ている雰囲気の相手がいるとだ」
「はい、本当にそう思います」
 キラは微笑んでいた。
「ブレラさんがいてくれて本当に嬉しいです」
「そうそう、声が似ている相手がいると有り難いからね」
 サイはこのことも話す。
「ただ」
「ただ?」
「それで?」
 トールとカズイがそのサイに問う。
「俺そういう人いないから」
「俺何か最近ロシアがどうとか言われるし」
「そういえばそっくりじゃないの?」
 ミリアリアがここでそのカズイに言う。
「何か前から思ってたけれど」
「あっちの世界じゃ背が大きいんだったっけ」
「ディアッカもいなかったか?」
 ここでトールはこう話す。
「あと金竜大尉とさ。オズマ少佐に。マオさんやミハイルもいるし」
「何か一杯いない?」
「そうだよね」
 ミリアリアとサイも言う。
「あっちの世界の人も」
「カトルもあっちにいたような」
「何かその話ってややこしくなってるけれど」
「それもかなりな」
 キラとブレラは今度は除け者になっていた。しかしだ。
「マシンワールドなら違うのに」
「戦国時代でもな」
 そんな話をしながら全員で映画館に行くのだった。今はだ。
 そしてだった。ロンド=ベルがさらに進んでいるとだ。
 またバルマー軍が出て来た。今度の指揮官は。
「久し振りだな!」
「あっ、髭達磨」
「久し振りね、本当に」
「髭達磨ではない!」
 その男バラン=ドバンはすぐに反応を見せてきた。
「我こそはバラン=ドバンだ!」
「ああ、そうそう」
「バランさんだったわね」
「バラン家当主!」
 いつもの名乗りだった。
「よく覚えておくのだ!」
「だから覚えてますよ」
「しっかりと」
「こんな濃い人なんてとても」
「忘れられないから」
「しかし忘れていたではないか」
 バランはこのことを容赦なく突っ込む。
「違うか、それは」
「まあそれはそうだけれどさ」
「本当に久し振りに見たし」
「いや、本当に」
「トウマよ」
 バランはむっとした顔になってトウマに問うた。
「御前はわしのことを覚えておるな」
「ああ、しっかりとな」
 覚えていると返すのだった。
「っていうか忘れる方が無理だよ」
「ならばよし」
 バランはそれを聞いてまずは頷いた。
「それでな」
「あんたみたいに強烈なキャラを忘れるかよ」
「しかしこの者達は忘れていたぞ」
 バランはロンド=ベルの面々のことを話す。
「しっかりとな」
「まあそれはそれで」
「気にしないで下さい」
「気にするわ」
 むっとして返すバランだった。
「これで気にしないでどうするか」
「ううん、覚えてないと怒るんだ」
「そういう人だったんだ」
「これは新発見」
「確かに」
「武人は名を尊ぶものだ」
 その武人らしい言葉である。
「だからこそだ」
「そういうことですか」
「だからなんですか」
「左様、それでだ」
 また言う彼だった。
「わかったな。我が名はバラン=ドバン」
「ええ、完全に覚えましたから」
「安心して下さい」
「その言葉二言はないな」
 バランは一同にこのことを確認した。
「しかとな」
「ええ、安心して下さい」
「それは本当に」
 皆それは保障した。
「しかし。それでも」
「なあ」
「何ていうか」
「本当に久し振りだし」
「確かにな。それはその通りだ」
 このことはバランも認めた。
「本当に久し振りだな」
「で、何で最近出なかったんですか?」
「左遷されてたとか?」
「それとも書類でもなくしたとか?」
「ふん、わしは近衛軍の司令官ぞ」
 彼の本来の職責である。
「そちらの方でな」
「ああ、それでなんですか」
「それでいなかったのですか」
「そうだ、それでだ」
 また話すのであった。
「暫く御主等の前に出なかったのだ」
「成程、それで」
「そういうことだったんですか」
「左様、そしてだ」
 バランはさらに話す。そうしてであった。
「覚悟はいいな」
「覚悟?」
「戦うってことですか」
「そうだ、戦うのだ」
 これはもう言わずもがなであった。
「これからだ。逃げるのなら逃げればいい」
「ああ、それはないから」
「最初から考えてませんから」
 ロンド=ベルの面々もそれはしっかりと言う。
「それじゃあ今から」
「是非」
「よし、来るがいい!」
 バランは高らかに言う。
「トウマ、わかっているな!」
「ああ、わかってるぜ!」
 トウマも意気軒昂に彼に返す。
「久し振りに戦うか!」
「さて、漢と漢の戦いよ」
 バランも楽しそうに笑っていた。
「腕が鳴るわ!」
「よし、全軍攻撃開始!」
「正面からぶつかるぞ!」
 こうしてだった。両軍は激突した。
 お互いに激しい攻撃を繰り出す。バルマー軍の先頭にはペミドバンがいる。
「あのおっさん先陣切るか」
「指揮官自ら」
「武人は自ら剣を持つもの!」
 ここでもこんなことを言う。
「だからこそよ!」
「おもしれえ、それならだ!」
 勿論それに応えるのはトウマだった。
「行くぜおっさん!」
「うむ、来るのだ!」
 彼等の戦いを中心としてだ。両軍はぶつかり合う。その中でだ。
「力には力だ!」
「はい」
 レイヴンがサンドマンの言葉に頷く。
「では我が軍は今は」
「渾身の攻撃をぶつけ続けるのだ」
 そうしろというのである。
「グラヴィゴラス一斉射撃を続けよ!」
「わかりました。それでは」
「今はそれが最もいいのだ」
 サンドマンはこう断言さえする。
「わかったな。それではだ」
「了解です」
「一斉射撃を続けよ!」
 こうして総攻撃を続けてだった。その中でだ。
 ロンド=ベルは次第に押してきていた。質がものをいっていた。
「少しずつだけれど」
「そうですね」
 ルリがハルカの言葉に頷く。
「我々が押してきています」
「ここはどうするべきでしょうか」
「前進です」 
 ルリはメグミの問いにも答える。
「今はそれです」
「前進ですか」
「はい、そうです」
 ルリはまた話した。
「それが一番です」
「そうですね」
 ルリのその言葉にユリカも頷く。
「それなら」
「ううむ、今回も積極的だな」
 ナタルがナデシコの中での会話を聞きながら述べた。
「これはまた」
「しかしいつも通りですけれど」
「そうだな」
 その彼女にアドレアとヘンケンが言う。
「積極的なのは」
「これまでと変わらない」
「ロンド=ベルは積極攻勢が信条ですね」
 ハーリーも話す。
「やっぱり」
「言われずともだ!」
「ヤマダさんは少し自重して下さい」
 ルリはダイゴウジにはこう告げる。
「本当に撃墜されますよ」
「撃墜が怖くて戦っていられるものか!」
「じゃあ修理費はヤマダさん持ちですね」
 さらりときついことを言うルリだった。
「そういうことですね」
「お、おい待て」
 それを言われるとだった。ダイゴウジも困った顔になる。
「それは幾ら何でも」
「それならせめてナデシコのテリトリーから離れないで下さい」
 ルリが言うのはこのことだった。
「さもないと保障できませんから」
「エステバリスの問題点だな」
「そうだな。しかしだ」
 宗介も攻撃を繰り出しながら言う。
「戦艦から離れていては援護を受けられない」
「はい、それだけ危険になります」
 テッサもこのことを指摘する。
「御注意下さい」
「わかった。しかし」
「しかし?」
「今前進するのは止めた方がいい」
 こうテッサに言うのだった。
「今はだ」
「!?レーダーに反応よ」
 小鳥が言った。
「敵、バジュラよ」
「何っ、バジュラ!?」
「ここでまた出て来るなんて」
「何てこった」
 最後に言ったのはタシロである。
「まさかここで出て来るとはな」
「まあお決まりのパターンじゃないですか」
「敵が次から次に出て来るのは」
「それは」
「ううむ、そうだな」
 タシロも結局それで納得した。
「言ってみればな」
「それなら艦長、ここは」
「どうされますか?」
「今は守りを固める」
 方針が変わった。
「それでいいか」
「はい、いいと思います」
 ルリも彼の言葉に頷く。
「敵が帝国軍だけでなくなりましたから」
「そうだな。迂闊に前に出ずだ」
「了解」
「それじゃあ!」
 ロンド=ベルは前進を止めてだった。今は守りに入った。そのうえで攻撃をしてだ。
「かかって来い!」
「帝国でもバジュラでもね!」
 そしてだ。帝国軍もだった。
 バランはそれを見てだ。すぐに断を下した。
「ふむ、ここはだ」
「はい、司令」
「どうされますか?」
「ロンド=ベルとの戦いは中断する」
 そうするというのだった。
「まずはあの者達と戦う」
「確かバジュラといいました」
「あの連中は」
「今はその連中と戦う」
 これが彼の決断だった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「今より」
「ロンド=ベルの者達よ」
 そしてだ。バランはロンド=ベルに声をかけた。
「よいか、今は貴様等とは戦わん」
「えっ、本当に!?」
「戦闘終了!?」
「まさか」
「そうだ、今はだ」
 こう言うのであった。
「それでいいか」
「またいきなりね」
「そうだよな」
 トウマはミナキのその言葉に頷く。
「何でまたここで」
「急に」
「確かに貴様等は敵だ」
 バランもそれは言う。
「しかしだ」
「しかし?」
「というと」
「バジュラだったな」
 バランはその彼等を剣呑な目で見て話す。
「この連中だが」
「そっちを先に倒すってことか」
「そうだ」
 トウマに対しても話す。
「その通りだ。わかったな」
「ああ、いいぜ」
 トウマがバランのその言葉に頷く。
「それならな」
「よし、わかった」 
 二人の間は最早これで充分だった。そうしてだった。
 彼等は共にバジュラに向かうのだった。
「いいな、今はな!」
「停戦だ!」
「とりあえずだけれどな!」
 こう言い合ってだった。彼等はお互いにバジュラに向かう。
 そのまま激戦に入る。その中でバランはハンマーを縦横無尽に振り回す。
「さあ、来い!」
 鉄球を振り回しながらの言葉だ。
「小童共!」
「小童なのか?」
 その彼にトウマが突っ込みを入れる。
「この場合は」
「そうだ、小童よ!」
「何でかしら。バジュラってこれといって知能はないんじゃ」
「そういう問題ではない」
 バランはミナキに対しても言う。
「雑魚は小童なのだ」
「そういうことなんですね」
「そういうことだ」
 彼はまた言った。
「わかったな。だから今こうして小童達を始末する!」
「ああ、それならだ!」
 トウマも派手に暴れていた。拳でバジュラ達を次々と粉砕する。
「やってやるぜ!」
「うむ、今は共に戦おうぞ!」
 バランとトウマは横に並んでいた。
「よいな、それで!」
「ああ、戦うぜ!」
 二人を中心としてバジュラ達を叩き潰していく。それを見ながらであった。グレイスはフロンティアの中からこう呟いたのだった。
「これで終わりね」
 この言葉と共にであった。バジュラ達は姿を消したのだった。あっという間にだ。
「消えた!?」
「もうか?」
「そんな、やけにあっさり」
「だよな」
 ロンド=ベルも帝国もこれには拍子抜けした。
「何でこんなに急に」
「あっさり帰ったんだ?」
「今回は」
「まだ損害は半数を超えた位だったわよ」
 小鳥も首を捻っている。
「それでっていうのは」
「おかしいですね」
 テッサも首を捻っている。
「バジュラとの戦いは殲滅戦になりますのに」
「そうよね。どうしてかしら」
 小鳥はまた首を捻る。
「今回あっさりしているのね」
「それはわからないですが」
 ここでテッサは言った。
「ただ」
「ただ?」
「この辺りにもありますね」
 こう言うのだった。
「バジュラ達の巣が」
「そうだな。そしてだ」
 宗介も言ってきた。
「それを叩く必要がある」
「はい、後でここに開拓者が来た時の為に」
 テッサはその時のことも考えているのである。
「掃討しておきましょう」
「そこまでしなくてもって思わないでもないけれどね」
 レミーがふと言った。
「ちょっとね」
「おや、それはまたどういう風の吹き回しだい?」
「急に優しくなったな」
 慎吾とキリーがそれを聞いて言う。
「バジュラを倒せとか言うと思ったけれど」
「違うんだな」
「やっぱり生命だしね」
 だからだというのである。
「そうそう無闇に絶滅させるのもどうかって思ってね」
「気持ちはわかりますが」
 テッサは一応レミーのその考えは汲み取った。
「ですが」
「ですが、なのね」
「はい、生きるか死ぬかですし」
「そうだな。宇宙は思ったより広くないものだ」
 テムジンもここで言う。
「それを考えたらな」
「倒すしかあるまい」
「そうだな」
 カットナルとケルナグールも頷く。
「やはりここはだ」
「戦争あるのみよ」
「どちらが生き残るをかけた戦争というわけだ」
 ブンドルはいつもの様に気取っている。
「それもまた」
「美しい、か」
「お決まりのパターンだな」
 今度は慎吾とキリーが言葉を取った。
「まあそれは置いておいてだ」
「やっぱり戦いしかないな」
「そういうことなのね。仕方ないかしら」
 レミーもここで頷くのだった。
「こういう状況だと」
「その通りです。バジュラに会話は通じません」
 テッサはこの現実を指摘する。
「ですから」
「戦うしかないか」
 アルトの顔も険しいものになっていた。
「どちらが生きるか死ぬか、か」
「まあ人類だけってことになるな」
 テムジンは今度は軽い調子でアルトに話した。
「ゼントラーディとかメルトランディも入れてだがな」
「それはそうね」
 そのメルトランディのミスティが答える。
「あとあのゾヴォークもなのね」
「ああ、ゲストとインスペクター」
「あの人達も」
「バッフクランもそうなる?」
 彼等についても話される。
「それにバルマー帝国も」
「バルマーとは会話ができないからなあ」
「確かに」
 皆このことも言う。既にバルマー軍は何処かに行ってしまっている。撤退したのだ。
「バランさんなんかできそうなのに」
「今一つそれができないから」
「厄介だよなあ」
「全く」
 そのことを話すと困った顔になる。そうしてだった。
 そんな話をしてであった。彼等は今度は全員で話す。
「まずは何はともあれバジュラ」
「あの連中ンのこの辺りの巣を探して」
「そうして叩く」
「そうしましょうか」
「さて、それではです」
 またテッサが話す。
「まずは敵の巣を見つけ出しましょう」
「よし、それならとりあえずは」
「この辺りの星を調べて」
「そのうえで」
「編隊単位、いえ艦艇単位ですね」
 テッサはすぐにこう言い換えた。
「そのうえで探しましょう」
「了解、それなら今から」
「徹底的に調べて」
「バジュラの巣を叩くか」
「そうね」
 こう話してだった。彼等はまずはバジュラの巣を探すことになったのだった。
 戦艦は二隻で組んでそのうえで探す。その集結地点も決めてだ。
 そうしてだった。見つけたのは。
「ううむ」
「どうされました?アスカ様」
「やはりこの組み合わせか」  
 サンユンにNSXを見ながら話す。
「予期しておったが」
「予想されてたんですか」
「やはりあちらの世界からの縁じゃな」
 それによるというのだ。
「やはりそれでじゃな」
「しかしいいのではないですか?」
 今言ったのはシャンアンだった。
「別に困るものでもありますまい」
「それはそうじゃが」
「特に嫌いでもない筈ですが」
「むしろ気に入っておる」
 オートザムの面々はということだった。
「気心も知れておるしのう」
「そうそう。それで、ですから」
 また言うシャンアンだった。
「宜しいですね、アスカ様」
「うむ」
 アスカもこれで頷いた。
「その通りじゃ」
「しかし」
「しかし?」
「今度は一体何ですか?」
「バジュラの巣じゃ」
 話は本題に戻った。
「それじゃがな」
「それですか」
「バジュラですね」
「肝心のバジュラは何処じゃ?」
 二人にこのことを問うのだった。
「それで」
「今全員で探してます」
「我々もですよ」
 二人はすぐに言ってきた。
「ですからお待ち下さい」
「アスカ様も探しておられるではないですか」
「当然じゃ」
 それを聞いてまた言うアスカだった。
「わらわとてロンド=ベルじゃ。さすればじゃ」
「ではまずは落ち着いて下さい」
「はい、そうですよ」
 二人もまたアスカに話す。
「ですからここはですじゃ」
「宜しいですね」
「ううむ、わかっておるのじゃが」
 腕を組んで難しい顔になるアスカだった。
「しかし焦るのう」
「ではまずはこれを」
「はい、お腹を満腹にさせて下さい」
 今度はラーメンが出された。
「召し上がられてからごゆっくりと」
「考えて下さい」
「考えるも何も答えはもう出ておるわ」
 それはだというのだ。
「既にな。しかしそうじゃな」
「はい、お腹が空いてもよくありませんぞ」
「ささ、アスカ様は満腹の方が調子がいいですし」
「そうじゃな。さて」
 実際にそのラーメンを食べてだった。落ち着きを取り戻してだ。
 あらためて宙図を見る。そのうえで。
「調べた星は一つ一つバツをつけておるな」
「はい、それはもう」
「忘れていません」
「よきことじゃ。そしてイーグル殿」
「何でしょうか」
 童夢のモニターにそのイーグルが出て来た。
「何かあったのですか?」
「いや、そちらで何か手掛かりはあったか?」
 ここで問うのはこのことだった。
「それはあったか?」
「今のところはですね」
 残念な微笑みと共の言葉だった。
「それは」
「そうか、ないか」
「ただな。面白い星があったぜ」
「一つね」
 ジェオとザズもモニターに出て来た。そのうえでの言葉だった。
「それがな」
「この近くの惑星だよ」
「ふむ、左様か」
 アスカはここまで聞いて頷いた。
「ではその惑星を調べるとするか」
「はい、今そうしています」
 こう話してだ。そのうえで全員でその星を調べる。するとであった。
 すぐにだ。バジュラの大軍が出て来たのであった。
「思っていた通りですね」
「そうじゃな」
 アスカはイーグルの言葉に頷いた。
「やはり出て来よったわ」
「それでどうされますか?」
「一時撤退じゃ」
 そうするというのだった。
「このまま戦っても数が違い過ぎる」
「全滅ですね」
「そうじゃ。じゃから今は撤退じゃ」
 冷静に戦力を見極めての言葉だった。
「よいな、それでじゃ」
「はい、それでは」
 イーグルもそれに頷いてであった。そのうえで今は戦うよりも前に撤退した。
 そしてそのうえで集結してであった。その惑星に向かう。
「よし、それなら今から」
「その惑星に向かって」
「そうして」
 こう話してであった。
「バジュラの掃討だな」
「今は」
「こうした巣が幾つもある筈だな」
 今言ったのはジェフリーだった。
「この宇宙には」
「幾つもですか」
「あんなのの巣が幾つもって」
「難儀だな」
「確かに」
 皆このことには難しい顔になる。
「全く。これは」
「厄介だな」
 こう話してであった。全員で向かうのだった。
 バジュラとの戦いはまた正念場を迎えようとしていた。そしてそこまたあの男が姿を現わすのだった。己の野心の為に少女を得ようとして。


第三十七話   完


                         2010・6・14
 

 

第三十八話 シャピロ急襲

                第三十八話 シャピロ急襲
 そのバジュラの巣のある惑星の前まで来たのだった。
 すると早速バジュラの大軍が出て来た。
「ああ、来た来た」
「やっぱり」
「どれだけ出て来たのかしら」
「百万ですね」
 テッサが述べた。
「おそらくあれが全てです」
「この星にいるのはか」
「はい」
 こうアルトにも答える。
「その通りです」
「わかった」
 それを聞いてすぐに、であった。アルトは頷いた。
「それならだ」
「戦われますね」
「そのつもりだ。俺は行く」
 迷いを振り払おうとしているかの様な言葉だった。
「今からな」
「よし、それじゃあな」
「僕達もですね」
 それにミシェルとルカも続く。
「いっちょ叩き潰すか」
「気合を入れて」
「そうだな。だが」
 オズマが二人を見て言う。
「二人共随分変わったな」
「そういえばそうだな」
 クランもそれは頷く。
「ミシェルもクールなだけではなくなった」
「ルカも熱くなったものだ」
「そうか?俺は変わらないけれどな」
「僕もですよ」
 しかし二人に自覚はなかった。
「別にな」
「そうではないですよ」
「自覚していないのならそれでいいがな」
 オズマは今はそれを置いておくことにした。そうしてだった。
「ではな。行くぞ」
「了解」
 アルトが頷く。こうしてロンド=ベルはここでもバジュラとの戦いに入った。
 その中でだ。ふとハッターが言った。
「おかしいな」
「どうしたの?ハッちゃん」
「ハッちゃんではない」
 いつも通りフェイに返してからまた言う。
「バジュラが強くなってるな」
「バジュラが?」
「少しだが前より強くなってないか?」
「そういえばそうだな」
「確かに」
 ギルとレドンは前から来るバジュラの大軍をそれぞれ撃墜しながら応える。
「前のバジュラよりもな」
「手強くなっている」
「その通りだな。しかもだ!」
 ここで大声をあげるハッターだった。
「動きがいい。どうなっている?」
「気のせいじゃ。ないわね」
 それは今戦ってフェイにもわかった。
「それはね」
「しかもこの動きはだ」 
 テムジンは敵の動きを見ながら述べた。
「俺達の動きを知っているかの様だな」
「そうだな。知っているな」
 クリアリアもそれに気付いた。
「この動きは」
「けれどそれは有り得ないわ」
「そうね、それはね」
「絶対にね」
 三姉妹はそれは否定した。
「ここのバジュラとは二度目の戦いだけれど」
「しかも殲滅させているのに、前に戦った時は」
「それで私達の動きを知っているのは有り得ないわ」
「その通り!」
 ハッターもそこを指摘する。
「有り得ないことだ。絶対にだ」
「その通りよね、確かに」
 それにフェイも頷く。
「それは絶対にね」
「しかしこの動きはだ」
 だがテムジンは言う。
「明らかに俺達の動きを知っている」
「何でなんだ?」
 ハッターは帽子を飛ばしてそれで敵を破壊しながら首を傾げさせる。
「だとすると」
「それはまだわからないことだ」
 テムジンはこう彼に返す。
「だが」
「だが?」
「何かあるのは間違いない」
 こう言うのであった。
「それはだ」
「けれどそれがわかるのはまだ先なのね」
「そうだ」
 今度はフェイに返した言葉だった。
「その通りだ」
「まあ戦ってるうちにわかるかしら」
「いい加減だな、おい」
「ハッちゃんが言う台詞じゃないわよ、それは」
 すぐにハッターに言い返すフェイだった。
「いつも出たとこ勝負なのに」
「くううーーーーーーーっ、またしても口の減らない女だ!」
「あんた達そのやり取り好きね」
 アスカがそんな彼等に呆れながら突っ込みを入れた。
「毎回やってない?」
「それは気のせいだ」
 ハッターはすぐに気を取り直してアスカに返す。
「俺は常に進歩する男だ」
「そう自分では思ってるのよ」
「だから黙っていろ!」
 いい加減ハッターも切れた。
「俺は日々精進!そうしているのだ!」
「そうしているのなら戦え」
 テムジンの言葉は簡潔だった。
「いいな」
「わかってるぜ、ブラザー」
「バジュラがまた来たぞ」
 ここでバジュラの新手が来た。彼等はその敵とも戦うのだった。
 その中でだ。フロンティアは後方にあった。
 まさかそこにまで敵が来るとは思わず守りはほぼがら空きだった。しかし。
「!?レーダーに反応!」
「また敵が来ました!」
 美穂とサリーが叫ぶ。
「後ろからです!」
「また来ました!」
「後方ですか」
 エキセドルはそれを聞いて言葉を曇らせた。
「まずいですね、それは」
「このままではフロンティアが」
「どうしましょうか」
「すぐにフロンティアに向かいましょう」
 エキセドルはすぐに二人に答えた。
「至急にです」
「わかりました、それなら」
「今から」
「はい、急遽戻ります」
 また言うのだった。
「それでは今からフロンティアに」
「マクロス7は」
「はい、それで敵の数は」
 エキセドルはそれを問うのも忘れなかった。
「どれだけですか」
「千です」
「その程度です」
「少ないですね」
 少なくとも彼等が普段戦ってる数に比べてかなり少なかった。
「それだけですか」
「はい、それも小型のものばかりです」
「戦闘機や円盤の様な」
「ふむ」
 それを聞いてだ。エキセドルはまた述べた。
「おそらくそれは」
「それは?」
「何でしょうか」
「急襲ですね」
 それではないかというのである。
「これは」
「急襲!?」
「フロンティアをですか」
「フロンティアは今の我々の重要な拠点です」 
 このことは最早言うまでもなかった。
「そこを狙ってのことです」
「ではこの時を狙っていた」
「そうなるのですね」
「そうです。ただ」
 ここでエキセドルはまた言った。
「問題はそれがどの勢力か、なのですね」
「これはムゲ帝国です」
「間違いありません」
 美穂とサリーはレーダーの反応を見ながら述べた。
「それが一千です」
「後ろからです」
「ムゲ帝国ですか」
 それを聞いてまた考える顔になるエキセドルだった。
「考えていたと言うべきでしょうか。いや」
「いや?」
「何か」
「むしろ待っていたと言うのでしょうか」
 こう言葉を言い換えたのである。
「これは」
「待っていた、ですか」
「そうなんですか」
「はい、彼等は待っていました」
 エキセドルはまた述べた。
「ここは」
「待っていてそれで」
「フロンティアを」
「そういうことです。では」
「はい」
「今から」
「フロンティアに戻ります」
 こうしてマクロス7がフロンティアに戻った。そのうえで戦う。その指揮官は。
「シャピロ様、これでいいのですね」
「そうだ、これでいい」
 シャピロが傍らにいるロッサに答えていた。彼であった。
「この千の戦力でだ」
「フロンティアを攻略するのですね」
「いや、隠密に中に入る」
「隠密に?」
「そうだ、中に入る」
 こうロッサに言うのであった。
「そうするのだ」
「あの」 
 それを聞いてだ。ロッサは考える顔になって問い返した。
「フロンティアの中に何があるのでしょうか」
「一人の少女だ」
 シャピロは今度はこう答えた。
「それがいるのだ」
「少女がですか」
「その通りだ。その少女を手に入れる」
 シャピロはまた言った。
「私が神となる為にな」
「そう仰るのですね」
「全ては神になる為に」
 シャピロの言葉はあくまで自分に向けたものだった。
「その為にだ」
「シャピロ様が神になられる為に」
「あの少女は必要だ」
 真剣そのものの目だった。
「だからだ。わかったな」
「そしてその少女は一体」
「金色の髪を持っている少女だ」
 こう言うだけだった。
「何、すぐにわかる」
「すぐになのですね」
「そうだ、すぐにわかる」
 彼はまた言った。
「だからだ。中に入るぞ」
「それでは」
 こう話してだった。彼等はそのままフロンティアに入ろうとする。
 それはレオンも見ていた。その彼にだ。
「大変なことになろうとしています」
「はい」
 エキセドルの通信に頷いていた。
「今ここで敵に襲われてはひとたまりもありません」
「いえ、御安心下さい」
 しかしここで彼は言った。
「それにつきましては」
「安心していいとは」
「こうした時に備えて切り札を用意していました」
 こう話すのである。
「ですから」
「大丈夫なのですね」
「はい、御安心下さい」
 エキセドルに返す言葉はこうしたものだった。
「是非」
「左様ですか。それでは」
「では。将軍」
「はい」
 ここで彼の言葉に頷いたのは美知島だった。
「あれをですね」
「そうです、あれをです」
 彼に対してこう答えるレオンだった。
「その時だと思います」
「それでは」
 こうしてだった。そしてだ。
「発進用意だ」
「はい」
 美知島が命じてだった。遂に動いた。
 あるマシンが出て来た。それは。
「!?あれは」
「あれは一体」
 慎悟と神名はそのフロンティアから来たマシンはだ。それを見て言うのだった。
「スサノオに似てる!?」
「そうよね、あれは」
「けれど、まさか」
「有り得ないわ」
 二人は驚いた顔でそのマシンを見ていた。
「スサノオは一機の筈だけれど」
「そう、十二機のマシンのうちの一機として」
「いえ」
 しかしだった。ここで華都美が言うのだった。
「聞いたことがあるわ」
「聞いたことがある?」
「といいますと」
「スサノオの前に試作機が一機あったって」 
 それがあるというのだ。
「若しかしてそれじゃあ」
「試作機って」
「それがですか」
「ええ、けれど本当にあるとは思わなかったわ」
 それは彼も同じだった。
「まさか。しかもここで」
「十式オニクスという」
 ここで美知島が話した。
「それだ」
「十式オニクス!?」
「それがあのマシンですか」
「そうだ、それだ」
 こう慎悟と神名に対しても話す。
「今諸君等の援軍としてだ投入するのだ」
「援軍ですか」
「私達の」
「そうだ、その通りだ」
 また話す彼だった。
「それではオニクスよ」
「はい」
「わかりました」
 謎の二人がそれに頷いてだった。そうしてだった。 
 オニクスが動いてだ。彼等は攻めるのだった。
「!?強い」
「あの強さは」
 誰もがその強さに目を瞠った。ムゲ帝国軍のマシンを次々に倒していくのだ。
 それはだ。マクロス7から見てもだった。
「あの動きは」
「しかも攻撃力もかなりです」
「かなりの高性能です」
 エキセドルに美穂とサリーも話す。
「あの動きは一体」
「強さは」
「頼りにはなりますね」
 エキセドルもそのことは認めた。
「ですが」
「ですがですか」
「何かありますか」
「あのマシン、今は全くわかりません」
 こう言うのだった。
「一体何なのでしょうか」
「そうですね、あのマシンはスサノオに似ていますが」
「それでも。他のマシンよりも遥かに性能が高いです」
「あの性能は」
「ええ」
 レイがザイオンの言葉に頷く。
「このジュピター2よりも高い」
「それも遥かに」
「有り得ない」
「そうね」
 雲儀に走影が言う。
「我々のギガンティックの戦闘力は互いの力を使うことによるものだが」
「あのマシンはそれを一つも使っていない筈なのに」
「それであれだけの強さは」
「何だっていうの!?」
 誰もが首を傾げさせる。そうしてだった。
 戦闘はだ。瞬く間に終わってしまったのだった。
 ムゲ帝国軍はあえなく退けられた。そして。
 バジュラ達もだ。とりあえずは掃討したのだった。
「生命反応は消えました」
「そうか」
 大文字はサコンの報告に頷いていた。
「バジュラ達はか」
「そしてムゲ帝国軍もです」
 彼等も消えたというのである。見ればだ。
 シャピロとロッサだけがだ。撤退して言っていた。
「まさかな」
「はい」
「あの様なマシンがあるとは思わなかった」
 恨みに満ちた言葉だった。
「ロンド=ベル。何処までも愚弄してくれる」
「ですがシャピロ様、今は」
「わかっている」
 それはだというのだった。
「よくな」
「ではここは」
「撤退だ」
 二人だけになっての話だった。
「仕方ない」
「はい、それでは」
 こうして彼等は撤退した。オニクスによってあえなく撃退された形だった。
 そしてだ。バジュラ達もだった。
「どうします?博士」
「これからか」
「はい、宇宙にいるバジュラは全て倒しました」
 このことを言うのだった。
「惑星にいるバジュラは」
「そうだな、生命反応を確かめよう」
「はい」
「卵の一つもあればそれは倒すしかない」
 その場合はというのだ。
「しかしだ」
「なければですね」
「このままこの宙域を撤収する」
 これが彼の考えだった。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「今から調べよう」
 こうして調査するとだった。反応は全くなかった。
 それを確かめてだ。大文字は全員に命じた。
「それではだ」
「はい」
「この宙域から撤収ですね」
「そうするとしよう」
 こう言うのだった。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「別の場所に」
「この宙域は安全になった」
 それでいいというのだった。
「だからだ。いいな」
「そして、ですね」
 ここでサコンがまた言った。
「彼等を」
「うむ、そうだな」
 オニクスを見ての話になっていた。
「それも見よう」
「そうですね。ゆっくりと聞きたいですね」
 こうしてだった。全員オニクスの周りに集まった。そうしてだった。
 そのパイロット達を見てだ。神名が驚きの言葉をあげた。
「そんな・・・・・・」
「神名さん、どうしたんですか?」
「真名、それに」
 見ればだ。何処か神名に似た少女がいた。
 そしてだ。もう一人いた。
「真人君、貴方まで」
「一体誰なのですか?」
 慎悟にはわからなかった。彼女が何を言っているのか。
 それで問うた。しかしであった。
「いえ、何でもないわ」
「何でもって」
「妹です」
 しかしだ。ここでその真名が言ってきたのだった。
「神名お姉ちゃんの」
「えっ、妹!?」
「神名ちゃんの!?」
 皆それを聞いてまずは唖然となった。
「それってまさか」
「妹さんがいたなんて」
「ねえ」
「聞いてないし」
「そうよね」
「こんなことは」
 誰もが驚いてだった。そうしてだ。
 美知島がここでまた言うのだった。
「あえてこうした時の為に温存していたのだ」
「温存していた」
「そうだったんですか」
「そして秘密にしていた」
 こうも話す美知島だった。
「あえてな」
「隠していたのは済まない」
 レオンも話す。
「とりわけギガンティックの諸君には謝罪したい」
「それはいいけれど」
「そうね。隠している理由はわかるから」
 リリィとラヴィはそれはいいとした。
「けれど。あのオニクスというのは」
「あの戦闘力は」
「試作品で前以て全てのマシンの性能を集めて開発したものだ」
 そうだったというのである。
「実はそういうマシンなのだ」
「試作品」
「全てのマシンの性能を集めた」
 シンシアとダニエルがそれを聞いて言った。
「そしてその性能は」
「かなりだと」
「エネルギーやパワーの性能は後のギガンティックの比ではない」
 美知島の説明は続く。
「それだけに制御が難しいのだ」
「それじゃあその二人は」
「それを操ることのできる」
「そうだ、彼等もまた切り札だ」
 そうだというのである。
「これでわかってくれたか」
「成程、そうだったのですか」
「彼等が」
「そういうことだ」
「ううん、それでこうした時の為に」
「秘密にしておいたんですね」
「わかりました」
 皆これで納得したのだった。
「そういうことでよく」
「それなら」
「そしてだ」
 また話すのはレオンだった。
「彼等とオニクスは基本的に我々の指揮下にある」
「フロンティア軍のですか」
「そちらも」
「ギガンティックは全てロンド=ベルに編入させてもらっているがだ」
 それでもだというのだ。
「彼等については我々の手元に置かせてもらいたいのだが」
「はい、それは構いません」
 答えたのはブライトだった。
「貴方達には貴方達の都合がありまして」
「それでいいですね」
「はい、どうぞ」
 こう話すのだった。
「是非」
「わかりました。それでは」
 こうしてオニクスの存在が明らかになった。しかしであった。
 神名は暗い顔でだ。こう話すのだった。
「まさか。そんな」
「そんな?」
「真名がどうして」
 俯いてだった。慎悟に言うのである。
「生きていて。また戦うなんて」
「そのことですか」
「そんな筈がないのよ」
 暗い顔でまた彼に話した。
「そんな筈が」
「ですが」
「ええ、けれどね」
 また言うことになった。
「戦っている」
「何があるのかしら」
 また話す彼等だった。そうしてだ。
「一体これから」
「不安になります?」
「ええ」
 慎悟にその表情も見せる。
「とても」
「けれどそれでも」
「それでも?」
「戦うのね」
 神名への言葉だった。
「あの娘、そして彼も」
「彼もですか」
「もう。戦うことはない筈なのに」
 言いながら悲しい顔にもなっていた。
「それが今こうして」
「ああ、ここにいたか」
「いいかしら」
 しかしここで皆が来た。
「二人共とりあえず飲もうぜ」
「そして楽しみましょう」
 こう話すのだった。
「酒はあるしな」
「御馳走もな」
「スパムバーガー、あるけれど」
 セシリーがそれを言ってきた。
「どうかしら」
「スパムバーガーですか」
「それが」
「ええ、二人共食べる?」
 それをまた言うのだった。
「他のハンバーガーもあるけれど」
「じゃあそのハンバーガーを今は」
「食べます?」
「何か悩んでたみたいだけれど」
 シーブックは二人の顔を見ながら話す。
「それでも、ここはさ」
「食べて飲んで、ですか」
「そうしてなんですね」
「またあらためて考えばいいのよ」
 セシリーは微笑んで話した。
「だからね」
「そうだよな。空腹の中で悩んでもな」
「仕方ないしな」
 今話したのはシーブックとバーニィだった。
「だからここはな」
「何か食べようぜ」
「勿論ハンバーガー以外にもあるわよ」
 今言ったのはセシリーだった。
「だからね」
「ここでいつもならアヤさんがいるんだけれどな」
「それでも今はな」
 シーブックとバーニィはこのことにはかなり落胆していた。
「いないからな」
「残念だよな」
「ひょっとしてそれって」 
 慎悟もわかることだった。
「声の関係ですか?」
「声は重要よ」
「そうですよ」
 ここで出て来たのはレフィーナとサリーあった。
「似ているとそれだけでね」
「違うからね」
「御二人一緒ですか?」
「まさか」
 慎悟と神名だけではなかった。
「前から思っていたけれど中が同じとか」
「そういうのじゃないですよね」
「一応違うことになっているというか」
「違うから」
 二人はそれは否定した。
「私達は別人よ」
「一応ね」
「いえ、ですから同じものがあるんじゃ」
「本当に」
 二人はそれを話してだった。そうしてであった。
「僕達残念ですけれど」
「そういうのはありませんから」
「私なんてですね」
 ユンまで出て来た。
「違う世界のことでどれだけ」
「よくわかります」
「何故か」
 二人にもわかることだった。
「包丁持ったり白馬に乗っていたりとか」
「どちらもシリーズが進むごとに扱いが酷くなりますよね」
「そうなのよね。どうしたものかしら」
 困った顔で話すユンだった。
「白馬に乗ってると影が薄くなるし」
「っていうかある意味愛されてるんじゃ?」
「あの扱いは」
「そうかしら」
 これは本人には自覚のできないことだった。
「だといいけれど」
「俺なんかどうなる」
 今度出て来たのはアレンだった。
「俺は変態ではないぞ」
「あれはどっからどう見ても変態でしょ」
 アスカが横から出て来て言う。
「ピンクのビキニの筋肉ムキムキの辮髪だなんて」
「あれは流石にな」
「ないよな」
「きついっていうか」
「失明するっていうか」
「俺は平気だったがな」
 何故か凱が出て来た。
「俺はあの世界でも王だったな」
「ああ、医者王」
「それでしたね」
「変態爺さんもいたわよね」
 アスカの顔が引きつっていた。
「あのもう一匹の妖怪、あれよね」
「っていうかあれどう見ても」
「あの人だよな」
「そうよね」
「あれだけはないし」
「絶対に」
「師匠がいないのが救いか」
 ドモンが言った。
「ここに」
「お父様は死んだから」
 何故かラクスも言う。
「あの妖怪さんを見なくてよかったかしら」
「そうだな、あの二人は絶対に妖怪だ」
 フェイは断言していた。
「というかあんたあんなの左右に置いて平気だったのか?」
「何がだ?」
 凱だけが平然としている。
「何かおかしかったか?」
「ええと、何ていうか」
「この人だけは別格?」
「みたいな」
 皆凱のこの言葉には唖然となった。
「凄い大物」
「流石医者王」
「おい、だからこの世界じゃ勇者王だろ」
「あっ、そうか」
「俺もだしな」
 シローも難しい顔をしていた。
「何故かあの二人は平気だった」
「ははは、両手に華でしたね」
 アズラエルに至ってはにこにことしている。
「あの時は」
「ええと、アズラエルさん」
「今の言葉は正気かどうか疑いますけれど」
「冗談ですか?」
「はい、冗談です」
 この辺りは人柄の悪い彼らしかった。
「ですが楽しい世界でしたね」
「世界観滅茶苦茶にしてたけれど」
「それでもよかったんですか」
「俺にとってはトラウマなんだがな」
 アレンは憮然としていた。
「あれは」
「気持ちはわかる」
 今言ったのは忍だった。
「俺もああした世界に縁があるからな」
「はい、それにしても私は」
 ユンがまた暗い顔で話す。
「どんどんイメージがおかしくなってきています」
「っていうか弟さん好きですしね」
「ユンさんって」
 慎悟と神名がまた話す。
「それも変態的に」
「ですから」
「私も医者王さんみたいになれれば」
「しかし何なんだ?」
「最近どんどん世界が訳がわからなくなってるな」
 皆ここで首を捻る。
「まあ皆それぞれだけれどな」
「そうそう」
「例えば私にしても」
 クリスが出て来て言う。
「レイちゃんもわかることよね」
「わかります」
「そうよね、バーニィと一緒にかなり長い戦いをしていた記憶があるし」
「目が三つあったから」
「そうそう、他にも炎を使う騎士の隊長になったり」
「水被って女になったりね」
 サイシーが言ってきた。
「それもあったよね」
「ええ、とてもね」
「俺もな。何か信号みたいな警官になったりな」
 ヂボデーはぼやきだった。
「あれ、何だったんだ?」
「あれは酷かったわね」
 何故かプリシラが出て来て言う。
「私はプテラノドンだったけれど」
「それはいいことじゃ」
 兵左衛門も出て来た。
「わしも猫じゃった」
「ううん、何か皆さん」
「色々あるんですね」
「ない人の方が少ないから」
 今言ったのはシンシアだった。
「それはそれで面白いと思うわ」
「そうだな」
 その言葉に頷いたのはスレイだった。
「私もそう思う」
「それじゃあ今は楽しくやりましょう」
 マヤが明るく言う。
「戦いに勝ったことですし」
「はい、それじゃあ」
「乾杯ですね」
 慎悟と神名が頷いてである。そのうえで気を取り直したのだった。彼等の悩みは今は楽しみの中に忘れられるのだった。これからの戦いの為に。


第三十八話   完


                                      2010・6・17
   

 

第三十九話 運命の炎の中で

              第三十九話 運命の炎の中で
 バジュラ達との戦いを終えたロンド=ベル。そして今は。
「バッフ=クランだけれど」
「ああ、あの連中ね」
 カーシャがちずるの言葉に応えていた。
「どうかしたの?」
「イデオンにかなりしつこく向って来るわね」
「そうね、特にあのギジェって奴」
 ここでカーシャの顔が歪んだ。
「あいつが特に」
「特に侵略の意図はないみたいだけれど」
「ああ、そうだな」
 今のちずるの言葉に頷いたのはマリンだった。
「その意思は見られないな」
「会話ができる人達なのかしら」
 ちずるはここでこう言った。
「それなら」
「いえ、それは甘いわ」
「甘い!?」
「ええ、甘いわよ」
 カーシャは厳しい顔で言う。
「会話できるとかどうかなんて」
「けれどや。ものわかりのいい奴かておるやろ」
「そうですたい」
 十三と大作もここで言う。
「そやからそんな一方的に打ち切るのはや」
「よくないですたい」
「そうですね。見たところ」
 小介は冷静に分析していた。
「バッフクランの人達は冷静で理知的ですよ」
「何処がなのよ」
 あくまでその意見を聞かないカーシャだった。
「あの連中の何処が理知的なのよ」
「あの、カーシャ」
 流石にちずるも怪訝な顔になって言う。
「そう決め付けるのも」
「あの連中は違うわよ」
 言葉は強引なものになっていた。
「だからよ。そんなことはね」
「ないっていうの?」
「ええ、ないわよ」
 そうだというのだった。
「あいつ等を全員やっつけるまで私達の戦いは終わらないのよ」
「ああ、そうだ」
 ここでコスモも出て来た。
「あいつ等は白旗を見てそのうえで攻撃してきたんだ。そんな連中と話し合いなんてできるものか」
「白旗を見て」
「そのうえで」
「風習、じゃないよな」
 豹馬もふと考えた。
「それじゃないよな」
「絶対に違うわ」
 また言い返すカーシャだった。
「つまりバッフクランとは風習が違うってことよね」
「ああ、そうだ」
 豹馬もその通りだと言う。
「白旗だけでも色々な意味があったりするんじゃないのか?」
「残念だがそれはない」
 また言うコスモだった。
「それはな」
「そうかしら、本当に」
「違うかもな」
 ちずるも豹馬も彼等の言葉に頷けないところもあった。そうしたものも見ながらそのうえでそのバッフクラン軍について考えていたのだった。
 そしてだった。その彼等がだ。
「まずいな」
「来たか」
「ああ、来た」
 ハタリがベスに告げていた。
「奴等だ」
「相変わらず何処にでも出て来る奴等だな」
「全くですね」
 アズラエルが少し嫌そうな顔をして述べた。
「何かっていうと出て来ますしね」
「DSドライブも使っているんだがな」
 ベスは苦い声で言った。
「それでもこうして来るとは」
「若しかして」
 ここでジョリバも言ってきた。
「奴等の包囲網は何万光年もの範囲があるのか?」
「銀河に出た以上は」
 カララも暗い顔で話す。
「戦いは避けることはできないようです」
「勝手なことを!」
 コスモはそれを聞いて述べた。
「一方的に攻撃してくるのはバッフクランじゃないか!」
「そうよ!」
 カーシャもそれに続く。
「私達は被害者よ!」
「いや、待て」
 モエラがここでその彼等を嗜める。
「そんな話をしている場合じゃない」
「そうだな、今はそれどころじゃない」
 凱も言う。
「こんなところで立ち止まっている状況じゃないんだ」
「わかってるさ!そんなことは!」
 コスモは凱に対してもくってかかる。
「言われなくても!」
「ここはとりあえずだ」
 アムロが指示を出す。
「全機出撃し敵部隊を撃破しよう」
「そうですね」
「戦いは避けられませんから」
「そうだ、戦おう」
 アムロの指示と共に出撃する。するとだった。
 バッフクランの大軍が来た。その指揮官は。
「またあいつか」
「ええ、あいつね」
 コスモとカーシャはもう見ただけでわかるようになっていた。
「ギジェか」
「どうするの?コスモ」
「戦うしかない」
 コスモが出した答えはこれだった。
「あいつなら特にだ」
「そうね、やっちゃいましょう」
「来たか、巨神め」
 ギジェはそのイデオンを憎々しげに見ながら呟いていた。
「このガルボ=ジックを今までの重機動メカと同じだと思ってくれたら困る」
「!?あいつ」
「こっちに来たわ!」
「うろたえることはないさ」
 だがここでモエラが言った。
「これ位のことじゃね。そうだろ」
「あ、ああ」
「そうね」
 二人もモエラの言葉に頷きはした。
「それならここは」
「油断せずに」
「いつも通り戦おう」
 こう二人に言うモエラだった。
「それでいいよな」
「わかってる!」
 またすぐに切れるコスモだった。
「もう言われなくてもな!」
「そうよ!」
 そしてそれはカーシャも同じだった。
「一回言えばわかるわよ!」
「ああ、それなら」
 モエラもこれ以上言わなかった。そうしてだった。
 そのガルボ=ジックを迎え撃つ。すると。
「思考回路破壊ビームだ」
 ギジェはコクピットの中で話す。
「ゲル結界を張れ!」
 こう言って攻撃を出した。すると。
 何かビームのようなものが出てだった。イデオンを直撃した。
 するとそれだけでコスモの様子がおかしくなった。
「ぐっ!」
「何なの!?これ」
 そしてそれはカーシャもだった。
「急に頭痛が」
「お、俺もだ」
 そしてそれはモエラもだった。
「これは一体」
「!?あの攻撃は」
「一体」
 ロンド=ベルの他の者達は戦いながら不穏なものに気付いた。
「イデオンのパイロットの脳波が乱れてるわ」
「えっ、シェリルさん」
「それって一体」
 皆それに聞くとだった。シェリルは言った。
「バッフクランはイデの力が人に意志に反応することに気付いたのかも」
「何っ!?」
 ベスもそれを聞いて驚きの声をあげた。
「するとあれは」
「そう、間違いないわ」
 シェリルはベスに対しても話した。
「あの輝きはイデオンの為の兵器なのよ」
「そうか、それならあれは」
 ベスはここまで聞いて言った。
「イデの秘密がわかったからこそできた兵器なのか」
「そんな、それだったら」
 カーシャがそこまで聞いて言った。
「何処に逃げても追ってきて次々に新兵器を繰り出してきて」
「それなら?」
「勝てっこないじゃない!」
 たまりかねた口調だった。
「そんなの!」
「このゲル結界でパイロットの脳を直撃できればだ」
 焦る彼等とは正反対にギジェは成功を確信していた。
「巨神は無傷で手に入る」
「はい、そうです」
「いよいよです」
 部下達も彼に応える。
「そしてこれで」
「閣下」
「もうすぐだ」
 ギジェは満足した声を出した。
「正規軍を離れオーメ財団に身を寄せた私の苦労ももうすぐ報われる。
「くっ、ううっ・・・・・・」
「しっかりしろ、コスモ!」
 竜馬がコスモに対して言う。
「ここは踏ん張れ!」
「そうだ、敵の狙いはイデオンだ!」
 ブライトも言う。
「各機フォローに回れ」
「くっそおおおおっ!!」
 コスモが叫んだその時だった。
 不意にだ。イデのゲージが点灯したのだった。
「ゲージが点灯したわ!」
「いけるぞコスモ!」
 カーシャに続いてモエラも言う。
「パワーはあがっている!」
「頭痛メカめ!」
 コスモもここで言った。
「これ以上やらせるかよ!」
「何だとっ!?」
 ギジェはそれを見て驚きを隠せなかった。
「巨神め、まだ動けるのかっ!」
「やられてたまるかよ・・・・・・」
 そしてコスモは言った。
「やられて!」
「くっ!」
 ギジェはまたあの攻撃を放った。しかしだった。
 コスモはそれをかわしてみせた。イデオンを左にやって。
「かわした!?」
「二度も同じ手にやられるかよ!」
 彼は言った。
「正面にさえ入らなければな!」
「ええい、パイロットが死ぬまで時間がかかるのが欠点か!」
「今度はこっちの番だ!」
 そのまま攻撃を浴びせる。そうしてだった。 
 ミサイルでギジェノ機体を撃墜してみせたのだった。そのミサイルの連射でだ。
「見たか!」
「くっ、だが!」
 しかしギジェはまだ諦めていなかった。
「このままでは私を拾ってくれたダラム=ズバに面目が立たん!」
 だがこれで敵はとりあえず全滅させた。それでだ。
「とりあえずはだ」
「はい」
「一刻も早くここを離脱して、ですね」
「そうだ、他の場所に向かおう」
 ここに留まってもということだった。
「それでいいな」
「わかりました、それじゃあ」
「今から」
「DSドライブに入る」
 ベスが言った。
「全艦フィールドの中へ」
「全機回収したな」
「はい」
「大丈夫です」
「よし、行くぞ」
 こうして彼等は姿を消した。しかしだった。
 ギジェはそれを見ても諦めない。そうしてすぐに部下達に告げた。
「亜空間に逃げられたが」
「はい」
「しかしですね」
「追うぞ」
 こう部下達に告げた。
「すぐにダラム様に連絡を入れろ」
「はい」
「何と」
「決まっている。ロゴ=ダウの異星人を追撃する」
 まさにこれだった。
「何処へ逃げようと追い続けてやるぞ」
「では我々も」
「このまま」
「うむ、進むぞ」
 彼等も諦めていなかった。そうしてロンド=ベルの面々は。
 ある惑星に辿り着いた。そこは。
「あれっ、この惑星って」
「人がいるよな」
「ああ、間違いない」
「ここは一体」
「ベス君、いいか」
 ブライトもベスに対して問うた。
「ここが何処かわかるか」
「ここは惑星キャロルです」
「キャロルっていったら」
「そうだ、ソロ星よりも早く入植がはじまった星だ」
 こう慎悟にも答える。
「そこなのだが」
「しかしあの街は」
 神名は目の前にあるその街を見て言う。煙を吹き炎が見える。
「攻撃を受けた形跡が」
「とにかく降りてみよう」 
 大河がそれを言った。
「戦闘で傷ついた各艦の修理もある」
「そうですね、それじゃあ」
「今は」
 こう話してだった。彼等はそのキャロルに入った。
 そしてだ。ギジェはダラムと話をしていた。
「そうか、あの巨神は」
「残念ですが」
「ゲル結界をも跳ね除けたか」
「その通りです」
「こちらの注文通りの性能なのは有り難い」
 ダラムはそれはよしとした。
「だが。どう捕まえるかだな」
「しかし思うのですが」
 ここでギジェは言ってきた。
「宜しいでしょうか」
「何だ?」
「何故奴等は何故わざわざこの銀河へ出て来たのでしょう」
「あれだけの戦闘力と巨神が揃ったのだ」
 ダラムは力から考えた。
「まずはこの銀河の制圧だろう」
「この銀河のですか」
「そしてやがては我々の銀河にもだ」
「攻め入ってきますか」
「その可能性は高い」
 彼は言い切った。
「それもかなりな」
「ならば何があっても我々はあの巨神を」
「そうだ、手に入れないとならない」
「はい、まさに」
「しかしギジェ」
 ここでダラムの顔がいぶかしむものになった。
「伝説ではイデは善き心で輝くと言われているな」
「はい、そうでした」
「しかし我々はだ」
 今度は曇った顔になっていた。
「我々の戦いが善き力かというと」
「いえ、ダラム殿」
 ここでギジェは言った。強い声で。
「ズオウ=ハヒテル=ガンテの独裁を倒す為にはイデの力を」
「そうだな」
「はい、そうです」
「ドバ=アジバも同じだ」
 だアムはギジェの言葉をよしとしたようだった。
「我々はオーメ財団から巨神を手に入れよと言われて来ている」
「そうです」
「信じて戦うしかないな」
「そうかと」
「巨神を捕らえればだ」
 ダラムの言葉は続く。
「ハルルの鼻も明かせよう、追うか」
「是非共」
 こう話すのだった。そうして。
 キャラルではだ。クスハが命に問うていた。
「あの」
「どうしたの?クスハ」
「そういえばなのですけれど」
「ええ、何?」
「宇宙収縮現象ですけれど」
 彼女が今言うのはこのことだった。
「その中心地点は判明していますよね」
「そういえば」
 ブリットもその言葉に思い出した。
「それについてはどうなっていたんですか?」
「大体はね」
 命はこう二人の問いに答えた。
「雷牙博士達の計算のおかげでね」
「それだったらどうして」
 ブリットはいぶかしむ顔で述べた。
「そこへ直接ドライブは」
「それはあまりにも危険なんだよ」
 その雷牙博士が出て来て言ってきた。
「今の宇宙の状態ではね」
「ということは」
「不安定なんですか」
 クスハは言った。
「今の宇宙が」
「そういうことなんだ。こうして全員でやるのは短距離が精々なんだ」
 また言う博士だった。
「長距離はとてもね」
「危険な賭けなんだな」
 火麻も問うてきた。
「つまりは」
「マクロス7の船団もソロ星も」
「それに私達もだな」
 レオンも出て来た。
「妙に思っていたが」
「そう、全て宇宙収縮現象が原因みたいだね」
 雷牙博士は話す。
「その中心地店の中意気はさらに不安定なんだよ」
「じゃあそこにDSドライブで入ったら」
「下手をしたら」
「下手をしたら二度と通常空間に戻れないかも知れないんだ」
 こうクスハとブリットに話すのだった。
「とてもね」
「まずいな、それは」
 凱がここまで聞いて述べた。
「俺達がこうしている間にもソール11遊星主が宇宙を脅かしているのに」
「しかし他にもやらないといけないことが多過ぎる」
「そうだよな」
 タケルに豹馬が頷く。
「ズールにしろそうだった」
「他にもキャンベル星人とかボアザン星人とかいるぜ」
「宇宙怪獣やバジュラもね」
 ノリコも暗い顔で言う。
「敵も多過ぎるわ」
「焦っても仕方ないけれどね」
 ユングもこのことはわかっていた。
「けれど。どうしてもね」
「そうだな。しかしこの星は」
 隼人は降下して実際に街を見てみて言った。
「こっぴどくやられてるな」
「ああ、それも」
 弁慶も難しい顔になっている。
「ごく最近に攻撃を受けたな」
「誰なんだ、一体」
 武蔵はこのことを考えた。
「考えられる奴が多過ぎるぜ」
「地球を旅立って住める星を見つけて」
 コスモが怒っていた。
「やっと街を造ったっていうのに!」
「コスモ、落ち着け」
 竜馬が彼に声をかけてきた。
「ここは」
「御前等にわかるか!」
 だがコスモはここで激昂した。
「やっと完成した街が誰かに焼かれる悔しさと怒りが1」
 言うのはこのことだった。
「俺達もこんな風にバッフクランに追われたんだ!」
「それは」
「わかってたまるか!」
 コスモはさらに言う。
「この怒りが!悔しさが!」
「コスモ、止めるんだ」
 見かねたモエラが止めに入る。しかし。
「地球圏の人間に俺達の気持ちはわからんさ」
「あのな」
 神宮寺が少しうんざりした口調で言ってきた。
「いい加減その被害者面も飽き飽きしてきたんだがな」
「何っ!?」
「確かに私達は地球育ちです」
 麗も言う。
「ですが今こうして銀河に出ています」
「そうよね。つまりは」
 マリもそれに続く。
「皆同じよね」
「同じ!?俺達が」
「そうだよな、考えてみればな」
「そ、その通り」
 ゴルとガルも言う。
「一緒に行動するのもな」
「な、何かの縁」
「だからそんなにつっかかって何になるんだ?」
「あたし達は敵同士かい?」
 ジンとミンも言う。
「違うだろ?それは」
「そうだね。仲間じゃない」
「仲間・・・・・・」
「そうだな」
 コスモもモエラもここで矛を収めた。
「その通りだな」
「俺の言い方も悪かった」
「仲間内で争うよりもだ」
「ここは先にすべきことがあります」
 アルゴとジョルジュはそちらを見ていた。
「まずは生存者を見つけないとな」
「そこからですね」
 ここでだ。洸が戻って来て言う。
「駄目だ」
「こっちもだぜ」
「一人もだよ」
 ヂボデーとサイシーも戻って来た。
「生存者はいない」
「ああ、こっちもだ」
「全然だったよ」
「雷牙博士の分析だと」
 万丈も戻って来た。
「この攻撃はバッフクランだね」
「やっぱりこの星の人」
 トッポがここまで聞いて暗い顔で呟く。
「全滅しちゃったのかな」
「そんなことあるもんか!」
 すぐにデクが反論する。
「きっと何処かで生きてるさ!」
「おいらだってそう思いたいさ」
 トッポもこう返しはした。
「でも・・・・・・」
「いや、それでも」
「行くぞ、デク」
 言葉を弱くしたデクにコスモが言ってきた。
「誰かいるっていうんならな」
「うん」
「探すんだ」
 こう言うのだった。
「それでいいな」
「わかったよ」
 デクはまた頷いてみせた。
「それじゃあ」
「ああ、行くぞ」
 二人にモエラや洸達も同行した。そのうえで調査をはじめる。
 暫くするとだ。いきなりだった。
「!!」
「危ない!」
 光線銃の発射音だった。全員咄嗟に身構える。
「物陰に隠れろ!」
「負傷者はいるか!」
「くっ・・・・・・」
 コスモの声だった。
「しまった・・・・・・」
「コスモ、撃たれたのかい!?」
「あ、ああ」
 まずはこう応える。見れば左肩を右手で押さえている。
「かすっただけだがな」
「そう、かすったんだ」
「ちょっと血が出てるだけだ」
 手の指の間から実際に出てしまっていた。
「けれど命に別状はない」
「そうなんだ、不幸中の幸いだったんだ」
「何とかな。それで」
「うん、それで?」
「誰だ?撃ってきたのは」
 コスモが言うのはこのことだった。
「一体」
「あれか」
 モエラが銃撃が来た方を見る。
「あそこからだ」
「!?あれは」
「誰かいたぞ!」
 光と竜馬が言った。
「誰だ、あれは!」
「待て!」
「くっ!」
 するとだった。一人の女が出て来た。
 そしてまた銃撃してきた。だが今度は命中しなかった。
「くっ、こいつ!」
「バッフクランか!?」
「待ってくれ!」
 だがここでコスモが言った。
「この兵器はバッフクランのものじゃないぞ」
「あっ、そういえば」
 言われてデクも気付いた。
「これってそうだよね。むしろ地球のものだよ」
「そういえば」
「そうだな」
 洸と竜馬もそれに気付いた。
「この光線銃の光線は間違いない」
「地球の、人類のものだ」
「出て行け!」
 その女が言ってきた。
「御前達がキャロルを!」
「間違いないな」
「そうだな」
 凱がシローの言葉に頷いた。
「この人は間違いなく」
「地球人だ」
「銃を下ろしてくれないかな」
 コウが彼女に言う。
「俺達は地球人だ」
「えっ・・・・・・」
「そうだ、俺達は地球人だ」
 コスモも左肩を押さえたまま彼女に言った。
「あんたと同じで銀河に出て来た地球人さ」
「そうだったの・・・・・・」
 これが出会いとなった。彼等はその女と共に一旦皆のところに帰った。コスモはすぐにラポーから手当てを受けたのであった。
「さあ、これで大丈夫よ」
「有り難う、ラポー」
「流石ね」
 ミチリがそのラポーに対して言う。
「包帯を巻くの上手よね」
「私だって看護兵として訓練を受けてきたから」
 だからだというラポーだった。
「これ位は簡単よ」
「そうなの」
「そうよ、こうしたことは任せて」
 そしてコスモに対してこう告げた。
「かすっただけだから傷の心配はいらないわ」
「そうか、やっぱりな」
「ええ、そうよ」
「わかった。それじゃあだけれどな」
 コスモは自分のことから話題を変えた。
「あのキッチンって娘は何処に行ったんだ?」
「数少ない生き残りだからな」
 モエラはまずはこう話した。
「ベス達に状況を説明しているよ」
「そうか。じゃあ」
「待って、コスモ」
 カーシャは彼が椅子から立ち上がったのを見て問うた。
「何処に行くのよ」
「折角だからな」
 まずはこう言うのだった。
「俺を撃った娘と話をしてくる」
「話をって」
「いい機会だよ」
 微笑んでの言葉だった。
「だからさ。今からさ」
 こうしてだった。そのキッチンのところに向かう。皆その彼を見送ってからやれやれといった調子で苦笑いを浮かべて言うのだった。
「タフな奴だな」
「全くよ」
 カーシャはモエラの言葉に頷いた。
「昔からだけれどね」
「しかしああいう逞しさがないとな」
 だがここでモエラは言った。
「この先生きていけないからな」
「それはその通りね」
 そしてだった。また医務室に誰か来た。それは。
「あら、ファード」
「どうしたんだ?」
「う、うう・・・・・・」
 泣いていた。見れば膝をすりむいていた。皆それに気付いた。そしてラポーが彼に声をかけた。
「転んじゃったのね」
「うん・・・・・・」
「こっちにおいで」
 そのファードに優しい声をかけるのだった。
「手当てしてあげるから」
「おい、そんなことじゃ駄目だぜ」
 勝平がファードに対して言った。
「男がそんなことで泣いてたらよ」
「だって痛いんだもん」
「痛いのが何だってんだ」
 勝平はその彼にまた言った。
「俺なんかな、バイクで転んでもな」
「中一でバイクを乗り回すことの方がまずいだろ」
「そうよ」
 その彼に宇宙太と恵子が突っ込みを入れた。
「そっちの方がずっとな」
「問題ありじゃない」
「何だよ。無免許運転が悪いのかよ」
「こいつ、自覚してやってたのか」
「何て奴だ」
 皆これには呆れてしまった。そして未沙も言った。
「厳しく教育する必要がありそうね」
「げっ、藪蛇」
「藪蛇じゃないだろ」
「全くだ」
 皆その勝平にまた言う。
「何処に中学校一年でバイク乗ってる奴がいるんだ」
「そんなの何処にもいないぞ」
「ちぇっ、いいじゃねえかよ」
 勝平に反省の色はない。
「そんなのはよ」
「まあこいつはこうだからな」
「そうね」
 宇宙太と恵子はもうそのことには言おうとしなかった。
 そうしてだった。あらためてファードに顔を向けて話した。
「ファードはすぐ泣くからな」
「それは仕方ないわよ」
「うう・・・・・・」
「しかしだ」
 だがモエラはその彼に厳しいことを言った。
「これからもっと一人で生きていく力をつけていかないといけないんだぞ」
「うん・・・・・・」
「そんなことでどうする!」
 こうファードに対して言うのだった。
「ファード、それでも男か!」
「でも・・・・・・」
「怪我をすれば確かに痛いさ」
 また勝平が言ってきた。152
「けれどな、それでもな」
「それでも?」
「それをぐっと我慢するのが男なんだよ」
 こう言うのだった。
「それがなんだよ」
「それじゃあだけれど」
「そうだ」
 ここでプルとプルツーが言うのだった。
「私達はいいの?」
「アーシェラはどうなる?」
「泣いていいの?」
 そのアーシェラも言ってきた。
「それじゃあ」
「い、いや」
「それはよ」
 そう言われるとだった。モエラも勝平も弱ってしまった。
「そうしたことはだ」
「言ってないけれどよ」
「男か女かなんて」
「そうだ、間違っているぞ」
 プルとプルツーの顔はむっとしていた。
「そんなの関係ないじゃない」
「女でも痛い。そして我慢してはいけないのか?」
「そういう訳じゃないんだが」
「あのさ、それは」
「何かおかしいこと言ってるわよね」
「全くだ」
 モエラと勝平は完全に劣勢だった。しかしだった。
 ミチルが優しい微笑みでだ。ファードに言っていた。
「いい、ファード」
「うん」
「女の子は男の子に比べて泣き虫なのよ」
「そうなんだ」
「そうよ。だからね」
 目線も彼に合わせての言葉だった。
「男の子まで泣いたら女の子は困るのよ」
「困るんだ」
「慰める役がいなくなるでしょ」
 だからだと話すミチルだった。
「だから男の子は強くなくちゃね」
「でも僕・・・・・・」
「何時までもベソベソしてるな!」
 またモエラが言ってしまった。
「しっかりしろ、ファード!」
「うう・・・・・・」
「だからモエラさんと勝平は今は」
「静かにしていて」
 宇宙太と恵子がいい加減止めてきた。
「今はな」
「御願いだから」
「しかし」
「急には無理よ」
 ラポーも言う。
「それはね」
「しかしこんな弱虫じゃ」
「一人で立って」
 ラポーも優しくファードに対して言った。
「いいわね」
「うん・・・・・・」
「甘やかし過ぎじゃないのか?」
 モエラはそのラポーにも言う。
「それは」
「時と場合によるわ」
 しかしラポーはこうモエラに返すのだった。
「頭ごなしはよくないわ」
「そうかな」
「っていうか今のモエラさんって」
「そうだな」
 プルとプルツーも言う。
「ムキになってるし」
「少し言い過ぎだ」
「しかし俺は」
「それもわかってるわ」
 ラポーはそれについても頷いた。そして。 
 あらためてファードを見てだ。また告げた。
「でもね、ファード」
「うん」
「モエラお兄ちゃんや勝平お兄ちゃんの言う通りなのよ」
「強くなるの?」
「そうよ、強くならないとね」
「うん・・・・・・」
 力ない頷きだった。ファードはまだ弱かった。
 そしてコスモは。その少女キッチンと話していた。
「キッチ=キッチンだったよな」
「ああ」
 キッチンはコスモのその声に応えていた。
「あんたかい」
「俺はユウキ=コスモ」
 まずは自分の名を名乗った。
「ソロ星の移民団の生き残りさ」
「ソロ星の?」
「そして今はイデオンのパイロットをやっている」
 こう話すのだった。
「ロンド=ベルでな」
「そうか、ロンド=ベルだったのか」
「今は宇宙に出ているんだ」
 このこともキッチンに話した。
「それでここに来たんだ」
「さっきは御免よ」
 キッチンは先程の発砲のことを謝罪した。
「つい」
「いいさ」
 コスモは微笑んでそれはいいとした。
「あんなのは掠り傷さ」
「けれどさ」
 ここでキッチンは言ってきた。
「あんた達のせいで」
「俺達の?」
「そうさ。それであのバッフクランって異星人が攻めてきたんじゃない?」
「えっ・・・・・・」
「大体の話は聞いたよ」
 キッチンはこうも言ってきた。
「あんた達の艦の艦長からさ」
「ベスから」
「ブライト艦長からもね」
 ロンド=ベルではアムロと並ぶ有名人である。
「バッフクランがあんた達を追ってることも」
「聞いたのか」
「きっとキャラルは同じ地球人ってことで」
 キッチンは暗い顔で述べた。
「それで攻撃を受けたんだよ」
「いや、それは」
 コスモは必死にそれを否定した。
「そんなことはないよ」
「ならいいけれどさ」
 キッチンはコスモの話を一応受け入れた。
「ただ」
「ただ?」
「軍人だったあたしの父も死んだわ」
「そうか・・・・・・」
「他にも沢山の人が」
「そうか・・・・・・」
「だからさ。悪いけれどさ」
 キッチンの目に明らかな嫌悪が宿っていた。
「出てって欲しいんだ、すぐさ」
「すぐか」
「ああ、悪いけれどね」
「わかったさ」
 コスモは苦い顔で答えた。
「艦の修理が終わったらすぐに」
「もう遅いけれどね」
「・・・・・・仕方ないか」
 コスモは歯噛みして言った。
「これも」
「色々あったみたいだね」
「俺達だって好きで戦ってる訳じゃない」
 それを言うのだった。
「やられるか、やるしかない。それだけなんだ」
「あんた達の戦い、終わりは来るの?」
「わからない」
 キッチンのその問いにも首を横に振るばかりだった。
「それは」
「そうなのね」
「バッフクランは必死にイデオンを欲しがっている」
「それならさ」
 それを聞いてだった。キッチンは言った。
「そのイデオンってのを渡したらいいんじゃないの?」
「それも考えたさ」
 コスモは暗い顔で答えた。
「だけれどな」
「駄目なんだね」
「もう俺達はイデに取り込まれたみたいなんだ」
「イデに?」
「そのイデオンさ」
 それだと説明した。
「今更イデオンを渡すこともできない」
「それでも渡せば?」
「渡したって皆殺しに遭うだけだ」
 それだけだというのだった。
「そうしてもな」
「あのさ」
 ここまで聞いてだった。キッチンはコスモに対して言った。
「よかったらだけれど」
「ああ。何だ?」
「その話聞かせてくれないかい?」
 こうコスモに対して告げた。
「もう少しさ」
「えっ、嘘だろ」
「本当だよ、ちょっとね」
「キッチン・・・・・・」
 二人の間にだ。何かが加わった。そしてソロシップの格納庫では。
 カーシャがだ。周囲を見回しながらデクに問うていた。
「ねえデク」
「何、カーシャ」
「コスモは何処に行ったのよ」
 問うのはこのことだった。
「イデオンの整備も手伝わないで。何処に行ったのよ」
「それは」
「ロンド=ベルはもうすぐこの星を発つのよ」
「ラー=カイラムか何処かじゃないの?」
 テクノが答えた。
「他の船なんじゃないのかい?」
「それならすぐに呼ばないと」
「あっ、そういえば」
 ここでデクが言った。
「キッチンと街で話してたよ」
「また!?」
 それを聞いてだった。カーシャは呆れた声を出した。
「この星に来てからずっとじゃない」
「ずっとって?」
「ずっとあの娘にべったりじゃない!」
 こう言って怒るのだった。
「イデオンの整備もしないで!」
「そりゃさ」
 ここでモンドが言った。
「コスモだってさ」
「そうよね。カーシャのヒステリー聞くよりもね」
 エルも言う。
「キッチンといる方がいいわよね」
「そうだよな」
「確かにな」
 ビーチャとイーノは二人のそのことばに頷いた。
「只でさえカーシャってカリカリしてるのにな」
「特に最近は」
「何だっていうのよ」
「こういう状況での出会いだしね」
 ルーも楽しげに話す。
「お互いロマンスを感じてるとかね」
「ふむ、それはまた」
「面白いね」
 マシュマーとキャラもその話に微笑む。
「それも有り得ることだ」
「ロンド=ベルにはそうしてできたカップルも多いしね」
「特に俺とか言うんだよな」
「っていうかシンは特別凄かったよ」
 キラがそのシンに言う。
「あの時はさ」
「御前だって協力してくれただろうがよ」
 シンはこうそのキラに言い返す。
「ベルリンでな」
「だって。本当に一途だったし」
 だからだというキラだった。
「本当にさ」
「しかし状況が状況よ」
 今言ったのはカララだった。
「彼女が私達と一緒に来る気がなかったなら」
「その時は」
「やっぱり」
「ええ、別れるしかないわ」
 カララはこう一同に話した。
「それが彼等の前にある運命なのでしょうね」
「カララさん、悲しいこと言わないでよ」
 ジュドーがそのカララに話した。
「戦いさえ終わればコスモさんだってこの星に戻って来られるんだろ?」
「ええ、そうだけれど」
「ジュドーの言う通りだぜ」
 ケーンもジュドーについた。
「生きていればきっとさ」
「そうだよな。生きていれば絶対にな」
「また会うことはできる」
 タップとライトも言う。
「だから今はさ」
「明るく考えないとな」
「そうね。こんな状況だから余計に、よね」
 カララは彼等の言葉を受けて考えをあらためた。
「貴方達の様に前向きでないとね」
「テクノ、こっちに来てくれ」
 ジョリバはテクノを呼んでいた。
「いい機会だから例のやつをいじってみる」
「ああ、わかった」
「例のやつって?」 
 デクは彼等の話を聞いて問うた。
「それって何?」
「ソロシップの奥の方にあった大砲だよ」
 テクノが答えた。
「それだよ」
「そんなものがあったのね」
 リンダもこれには少し驚いた。
「ソロシップには」
「本体が床に半分埋まっててな」
 ジョリバが話す。
「エンジンの部品だと思ってたんだ、最近まで」
「そうだったんですか」
「何か凄い話ですね」 
 シーブックとトビアが頷くとだった。警報が鳴った。
「!?まさか」
「バッフクランですか!?」
 そのシーブックとトビアが叫んだ。こうしてまた戦いとなるのだった。


第三十九話   完


                                       2010・6・21  

 

第四十話 イデへの心

              第四十話 イデへの心
「いいな」
「はい」
「今からですね」
「後詰でバラム隊が来る」
 ギジェの率いる軍だった。それが星に来ていた。
「それまでに我々だけで異星達を討つ」
「そして巨神を」
「我等の手で」
「そうだ」
 まさにその通りだと。ギジェは部下達に告げた。
「それでいいな」
「はい、それでは今から」
「総員攻撃開始!」
 ギジェの指示が出された。これが合図になった。
 ロンド=ベルも出撃する。しかしソロシップだけは。
「むっ!?」
「閣下、どうされました?」
「何か」
「巨神が出ていない」
 ギジャが最初に気付いた。
「それにあの艦もだ」
「そうですね。動きませんね」
「一隻だけ」
「何があった?」 
 そのソロシップではだ。ベスがハタリに対して問うていた。
「まだか!?」
「駄目だ、ゲージがあがらん」
「イデオンは!?」
 ベスはイデオンについても問うた。
「イデオンはどうなんだ!?」
「まだだ」
 ハタリはイデオンに対しても答えた。
「コスモの出撃準備がまだだ」
「何かあったのか!?」
 光はそれを聞いて本気で心配した。
「コスモさんに」
「どっかで油売ってんじゃないの?」
 アスカは光とは違っていた。
「どうせね」
「そう?怪我とかじゃ」
「先程の怪我が悪化していなければいいのですが」
 海と風はそうではないかと心配した。
「そうなったらね」
「大変ですけれど」
「大丈夫よ、それは」
 何故かここで必死に否定するアスカだった。
「あいつそんなにヤワじゃないわよ」
「だった何でそこまで慌てるんだ?」
 闘志也が聞かなくていいことを聞く。
「一体全体」
「何でもないわよっ」
 アスカは闘志也に対してムキになって返した。
「別にね」
「そうか?」
「そうよ。とにかく何処に行ったのよ」
「あのキッチンって子のところじゃないかな」
 斗牙の言葉だ。
「多分だけれど」
「何ですって!?」
 それを聞いて怒ったのはルナだった。
「この非常時に何エイジみたいなことやってんのよ!」
「おい、何で俺なんだよ!」
「だってあんたいつもお姉ちゃんお姉ちゃんって」
「姉ちゃんはもう見つけたから言ってねえだろ!」
「この前までそうだったじゃない」
「一体何時の話なんだよ」
 二人はグラヴィオンの中で喧嘩をはじめた。
「一体全体」
「あのさ、二人共さ」
 その彼等のタケルが言ってきた。
「ここはさ」
「あっ、そうか」
「そうよね」
 言われてやっとはっとした。
「バッフクランの奴等を」
「何とかしないと」
「何時言おうかと気になっていたが」
 ビリーもこれには実は頭を抱えていたのだ。
「タケル君、よく言ってくれた」
「よし、不死身のパトリック様出撃だぜ!」
「撃墜されるなよ」
 カティは部下にこう言う。
「何かと危ないのだからな」
「大丈夫ですよ、大佐」
 しかしパトリックの返答は能天気なものである。
「今日も大活躍してきますよ」
「全く。どうしていつもこうなのだ」
「とにかくだ」
 オズマが言う。
「まだキャラルに多くの市民が残っているぞ」
「そうだよな」
 キースがその言葉に頷く。
「とにかく今は戦わないと」
「各機に告ぐ!」
 クワトロの言葉だ。
「街を守れ!」
「了解です!」
「それならば」
 アポリーとロベルトが応えた。
「ここは市街と」
「そしてソロシップと」
「あの頭痛メカもいる」
 アルフレッドは素早く敵のマシンを見ていた。
「用心しろよ」
「そうですね。それじゃあ」
「散開して行くぜ!」
 キラとシンが応えてだ、戦いに入った。
 そしてだ。市街地ではだ。キッチンとコスモがいた。
「また来たのね」
「キッチン!」
 コスモが顔を歪めさせるキッチンに対して告げた。
「生き残った人を連れてソロシップに行くんだ!」
「ソロシップに?」
「そうだ、今すぐに」
 こう告げるのである。
「さもないと」
「御免」
 しかしだった。キッチンはここでコスモに対して謝罪するのだった。
「そうするべきなんだけれどね」
「じゃあどうして」
「あたしこの星を捨てる訳にはいかないのよ」
「えっ!?」
「だってね」
 微笑んでだった。そのうえでの言葉だった。
「キャラルはあたし達の星だから」
「だからか」
「うん、だからね」
 それでだというのだった。
「それで。悪いけれどね」
「そうか・・・・・・」
「御免ね、あたし何があっても残るよ」
 微笑んでコスモに言うのだった。
「このキャラルにね」
「・・・・・・わかった」
 ここまで聞いてだ。コスモは頷いてみせた。
「それならな」
「それなら」
「守ってやるよ」
 こうキッチンに対して言うのだった。
「このキャラル!身体を張って守ってやる!」
「コスモ・・・・・・」
「安心してくれ、俺は戦う」
 強い声でキッチンに対して告げた。
「それじゃあな」
「御願い・・・・・・」
 走り去るコスモへの言葉だった。そして。
 激しい戦闘がはじまっていた。ソロシップにも攻撃が加えられる。
「くっ、まだか!」
「まだだ、イデオンもだ!」
「くっ、コスモ!」
 攻撃を受ける中でだ。ベスはハタリの言葉を受けながら言っていた。
「早く戻って来い!そしてだ!」
 そして中では。
「きゃあっ!」
「怖い・・・・・・」
 アーシュラとファードが泣いていた。
「怖いよ・・・・・・」
「ロッタ、リン」
 レイカが二人に対して言っていた。
「子供達を安全な場所に」
「そうね。こっちよ」
「来て」
 二人はそれを受けてだ。すぐに子供達を連れて行く。
「アーシュラ、ファード」
「こっちだから」
「リン」
 ロッタはその中でリンに対して言った。
「ルウを御願い」
「ええん、じゃあ」
「ファード、行きましょう」
 ラポーがファードの手を取った。
「こっちよ。急いで」
「で、でも・・・・・・」
「行こうよ」
 アーシュラもファードに対して言う。
「早く」
「けれど・・・・・・」
「何やってんだよ!」
 トッポがそのファードにたまりかねて言った。
「腰でも抜けたのかよ!」
「怖い、怖いよ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ」
 ビューティがそのファードに対して言った。
「今は」
「おいファード!」
 そこにだ。偶然モエラが来た。そうしてファードに怒った。
「御前はさっきの話が何もわかってないのか!」
「モエラ・・・・・・」
「アーシュラだって頑張ってるのに御前は!」
「モエラ!」
「でも、でも・・・・・・」
「そんなことでどうする!」
「モエラ、待って!」
 ラポーがここでも注意した。
「小言ばかりじゃファードみたいな子は」
「こいつを見てるとイライラしてくるんだ」
 しかしモエラはまだ言う。
「昔の俺みたいでさ」
「順々に教えていかないと」
「駄目だっていうのかい?」
「ええ」
 そうだというラポーだった。
「だからね」
「くっ、わかったよ」
 モエラも今は頷くしかなかった。そうしてだ。
 ファードに顔を向けてだ。こう告げた。
「アーシュラに負けるなよ」
「・・・・・・・・・」
「負けないわよね。ファード」
 ラポーはここでも優しかった。
「そうよね」
「う、うん」
「バッフクランが俺が叩く」
 モエラはまたファードに対して告げた。
「ファード、御前は皆を頼むぞ」
「うん、じゃあモエラ」
 ファードはここでだ。モエラにあるものを差し出した。それは。
「これ持って行って」
「これは」
 モエラはその人形を見てだ。すぐに気付いた。
「ファードが大事にしている人形じゃないか」
「うん、これがなくてもね」
 そして言うのだった。
「僕、頑張るよ」
「いいのか?」
「うん」
 モエラに対してこくりと頷いてみせた。
「大丈夫だからよ」
「よし、わかった」
 モエラもだ。意を決してその人形を受け取った。
「なら行って来る」
「行ってらっしゃい」
「はじめは辛いかも知れないけれどな」
 ファードの心を見てだ。モエラもここで優しい顔になって告げた。
「頑張るんだ」
「うん」
「そうよ、ファード」
 ラポーもファードに対して告げる。
「男の子だからね」
「わかったよ、ラポー」
「じゃあ皆を頼んだぞ」
「うん、モエラもね」
「頑張ってきてね」
「ああ、それじゃあな」
 モエラは二人の言葉を受けてだ。笑顔で戦場に向かった。そうして。
 ファードはモエラがいなくなるとだ。ラポーに対して問うた。
「ねえ、ラポー」
「どうしたの?今度は」
「ラポーってね」
 そのラポーを見ながらの言葉だ。
「モエラのこと好きなの?」
「えっ!?」
「それはどうなの?」
 こう彼女に問うたのである。
「それは」
「それは言わないでね」
 ラポーはくすりと笑ってファードに告げた。
「今はね」
「今はなの?」
「そう、今はね」
 今はこう言うだけだった。
「それで御願いね」
「うん、わかったよ」
 ファードはよくわからなかったがこう返した。
「僕今は黙っているよ」
「この戦いが終わったら」
 ラポーは一人決意していた。
「きっとね」
 そしてだ。コスモがようやく来たのだった。
「済まない!遅れた!」
「何遅れてるのよ!」
 そのコスモにカーシャが怒る。
「キッチンなんて子と!」
「あれ?ヤキモチかよ」
「おふざけじゃないの!今戦争してるのよ!」
 こう言って感情を隠す。
「あんたもそれわかってない訳じゃないでしょ!」
「ま、まあそれはな」
「本当に何やってるのよ」
 また怒るカーシャだった。
「いつものコスモじゃないみたいよ」
「悪い、本当に」
「よし、行くぞ」
 二人にモエラが言ってきた。
「出撃が遅れた分は戦いで取り戻すぞ」
「え、ええ」
「そうだな」
「俺がいる限りだ」
 モエラの言葉が強くなる。
「ソロシップは守り抜いてみせる!」
「どうしたんだモエラ」
 コスモは彼が普段と様子が違うことに気付いた。
「急にそんなことを言って」
「何かおかしいのか?」
「守り方が気に入らないのか?」
 怪訝な顔でモエラに問うのだった。
「今の守り方が」
「いや、そうじゃないがな」
「じゃあどうしたんだ?」
「俺は今まで人間の運命を悪い方に考えていた」
「運命?」
「ああ、悪い方に考え過ぎていた」
 ラポーやファードとの話を受けてのことである。
「だがそれももう止めた」
「何をなの?」
 デクが問うた。
「よくわからないんだけれど」
「俺はいい運命もあることがわかったんだ」
 微笑んでの言葉だった。
「だからな」
「いい運命が?」
「ラポーなんて子がいることに気付かなかった」
 今度の言葉はこれだった。
「今までな」
「ラポーのことが好きなのか」
「駄目か?」
「いや」
 コスモはそれはいいとした。しかしだった。
「ただな」
「ただ。何だよ」
「いきなりだったからな」
 それで驚いていたのである。
「それでな。ちょっとな」
「おかしいのかよ」
 驚いている顔のコスモに対しての言葉だ。
「それが」
「まあいい。じゃあ行くか」
 コスモが言った。
「それならな」
「そうね。とにかく今はね」
「行こう、皆を守りに」
 カーシャとモエラは彼の言葉に頷いてだった。
 そのうえで出撃した。すぐに竜馬が言ってきた。
「コスモ、大丈夫か?」
「ああ、勿論だ」
 コスモは微笑んで彼の言葉に返した。
「キャラルは俺が守ってみせる!」
「何かコスモまで張り切ってるね」
 デクも当然イデオンの中にいる。
「何か別人みたいだよ」
「巨神、来たか」
 ギジェがそれを見て言う。
「ならばだ。行くぞ!」
「キッチン、見ていてくれよ」
 コスモはギジェのマシンを観ながら呟いていた。
「俺がキャラルを、君を守ってみせる!」
「コスモ、来たわよ!」
「ああ!」
 そしてカーシャの言葉に応えだった。戦いに入るのだった。
「やらせるか!」
「むっ!?」
 ギジェはイデオンの攻撃を受けてだ。まずは驚いた。
「このガルボ=ジックでさえもパワー負けするのか?」
「よし、あの頭痛メカはイデオンに任せて!」
「俺達は他の奴等を!」
「やりましょう!」
 イデオンの参戦を受けたロンド=ベルは一気に攻勢に出た。
 そのうえでだ。攻撃を加えているとだ。不意にサイがマリューに言ってきた。
「艦長、敵です!」
「バッフクランなの?」
「はい、機体識別反応はそれです」
「大気圏外から降下してきます!」
 ミリアリアも言う。
「数、かなりです!」
「そう、いつものパターンね」
 マリューももう敵の援軍には慣れていた。
「それならね」
「このまま戦闘ですよね」
「動きますか?」
 カズイとトールがこのことを確認する。
「敵の援軍に対しても」
「場所は変えますか?」
「戦闘は当然継続よ。場所はこのままでいいわ」
 マリューは素早く二人に返した。
「それよりも。数は」
「かなりですね、これは」
 マヤの苦い声が聞こえてきた。
「百万です」
「また随分来たなあ」
 トールがそれを聞いてぼやいた。
「百万って」
「いつものことだけれどね」
 ルナマリアもこう言うがぼやきが入っている。
「それでも。百万はね」
「戦うしかないですね」
「そうなんだよな」
 サイは前を見ているがカズイは少しうんざりとした顔になっていた。
「結局そうしないと」
「キャラルの人達に迷惑がかかりますしね」
「本隊はこちらのようですね」
 ノイマンも言う。
「どうやら」
「そうね。ソロシップはまだ動けないし」
 マリューはソロシップをモニターで見ながら言った。
「それならここは」
「戦うしかありませんね」
「正念場ね」
 マリューは微笑んで言った。
「これで何度目かわからないけれど」
「はい、まさしく」
「皆、いいわね」
 マリューはあらためて全員に告げた。
「正念場よ、気合入れて戦って」
「了解!」
「百万、もう慣れたぜ!」
「慣れたくはなかったけれどね!」
 何気に本音が出ていた。そうしてその新手の大軍にも攻撃を向けるのだった。
 その中でだ。ダラムがギジェに対して問うた。
「敵は強いか」
「申し訳ありません」
「いや、いい」
 それはいいというのだった。
「だが。攻撃目標を絞るぞ」
「巨神とロゴ=ダウの艦にですね」
「そうだ、ここで勝負を決する」
 彼は言った。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「全軍かかれ!」
 ダラムは命じた。
「そのうえで戦いを終わらせるぞ!」
「やらせてなるかよ!」
 しかしコスモはその迫り来る彼等とも果敢に戦う。
「やらせて!」
「コスモ・・・・・・」
 キッチンもそれを見ていた。彼女はその他のものも見ていた。
「くっ、こいつ!」
「巨神、確かに強いな」
 ダラムはギジェと共にイデオンを攻撃しながら言った。
「しかしだ」
「これまでの重機動メカよりも動きがいい!」
「軍のくれるメカと同じだと思われては困る!」
 ダラムは笑いながら言った。
「ましてや私はガンガ=ルフに慣れている!」
「くっ!」
「これで終わらせる!」
 そのままイデオンに突き進む。しかしであった。
 ロンド=ベルの他の者達はイデオンに突き進むその大軍に総攻撃を仕掛けたのだ。
「コスモ達をやらせるか!」
「私達を無視できる筈ないでしょ!」
 こう言ってだ。側面から総攻撃を浴びせ切り込む。これで敵の数を減らしていた。
 それによってバッフクラン軍は今にも崩壊しそうになる。しかしだった。
「まだだ!」
「まだ戦われるのですね」
「そうだ」
 ダラムはこうギジェに答えていた。
「ここで退いては私の男が立たん!」
「では閣下、今は」
「決めてやる!」
 こう叫んでだ。イデオンに突進した。
「コスモ、来るぞ!」
「くっ、何てしぶとい奴だ!」
「遅いぞ巨神!」
 そうしてだった。イデオンに攻撃を浴びせたのであった。
「くっ!」
「Bメカにダメージよ!」
 モエラが声をあげカーシャが叫んだ。
「モエラ、テクノ、大丈夫か!?」
「俺は大丈夫だ」
 まずテクノが言ってきた。
「しかしモエラが!」
「余計な心配はするな!」
 ここでそのモエラが言ってきた。
「奴を倒す方が先だ!」
「それにコスモも!」
 今度はデクが言ってきた。
「大丈夫なの?」
「そんなことを言っている場合じゃない!」
 自分の怪我はいいとしたのだった。
「今は!」
「コスモ、また来たわよ!」
 無事だったカーシャが叫ぶ。
「あのでかいのがまた!」
「また来たか!」
「もらったぞ巨神!」
「舐めるなーーーーーーーーーーっ!!」
 ミサイルを浴びせた。それによってだった。
「ダラム様、大変です!」
「どうした!?」
 同乗する兵士の言葉に問い返す。
「重機動メカのコントロールが効きません!」
「くっ、止むを得ん!」
 それを聞いてだ。ダラムも決断を下した。
「機体は破棄する!」
「はい!」
 こうして破棄されたマシンがだ。ある方向に向かった。
「まずい!」
「あそこにはキャラルの人達がいる!」
 ルネと凱がそれを見て言う。
「このままでは!」
「誰か止めろ!」
「行こう!」
「ああ!」
 すぐにヒメと勇が向かおうとする。
「ブレンなら!」
「届いてむせる!」
 それで行こうとする。しかしだった。
 間に合わなかった。それよりも先だった。
「!!」
「何っ!」
「キッチン!」
 街に落ちてしまった。そうして。
「そんな・・・・・・」
「こんなことって・・・・・・」
「キッチン・・・・・・」
 ロンド=ベルの面々は誰もが愕然としていた。時にコスモはだ。
「嘘だろ・・・・・・」
「けれどコスモ」
 カーシャも何とか気を使う。
「けれど」
「キッチンーーーーーーーーッ!!」
「!?イデのゲージが」
「最高に!?」
「いけるぞベス!」
 それを見てハタリが叫んだ。
「ソロシップのパワーも上がっている!」
「いけます!」
 そしてベスも言った。
「脱出するなら今です!」
「よし、敵もかなり倒した!」
 百万以上いた敵も半数以上を失っていた。大河がそれを見て言った。
「総員帰還!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「DSドライブでキャラルを離脱する1」
「待ってくれ!」
 だがここでコスモが叫んだ。
「キャラルの人達はどうするんだよ!」
「駄目だ・・・・・・」
 そのコスモに万丈が首を横に振って応えた。
「生存者はいない」
「そ、そんな・・・・・・」
 カガリがそれを聞いて唖然となった。
「誰一人もか」
「私達のせいなのか?」
 グラハムも暗い顔になってしまっていた。
「この星に降りた為か」
「けれどそれでもだ」
 万丈もその言葉は何時になく重い。
「ここで足を止める訳にはいかない」
「バッフ=クランはまた来る」
 マーグが言う。
「だから今は」
「くっ、異星人め逃げる気か!」
 ギジェがそれを見て言う。
「私は行く!」
「!?閣下」
「一体何処に」
「私は巨神を手に入れる!」
 こう部下達にも言うのだった。
「まだだ!」
「ぐっ・・・・・・」
「おいモエラ!」
 テクノはモエラに必死に声をかける。
「しっかりしろ!」
「俺は大丈夫だ」
 まだこうは言えた。
「それよりソロシップを」
「ソロシップをか」
「そうだ、早く」
 こうテクノに言う。
「今のうちに」
「わかった、そうだな」
「話は聞いた」 
 ジョリバがすぐにテクノに返してきた。
「コスモ!」
「ああ!」
「イデオンガンを使え!」
「イデオンガン!?」
「ソロシップに積まれていたものだ!」
 こうコスモに答えた。
「どうやらイデオンの武器らしい!」
「しかしジョリバ」 
 だがここでテクノが言う。
「テストもまだなんじゃ」
「構うものか!見るんだ!」
「くっ、またか!」
 テクノはまた来たバッフクランの大軍を見て歯噛みした。
「また来たか!」
「バッフクランの奴等をやれるなら何でも使ってやる!」
「そうだな」
 コスモはテクノのその言葉に頷いた。
「今は」
「それならコスモ」
 カーシャがそのコスモに対して言う。
「今は」
「そうだ、モエラもそれでいいな」
「ああ・・・・・・」
 傷を抑えながら何とか頷いたモエラだった。
「それでいこう」
「!?巨神め」
 ギジェはそれを見て言った。
「何をする気だ?」
「ニューロ加速器よし!」
 モエラが言う。
「発振係数!」
「八十五パーセント、良好!」
 カーシャも言う。
「波動ガンセット!」
「いけーーーーーーーーーーーーーっ!」
 イデオンが持つその巨大な砲が攻撃を放った。それでだった。
 バッフクラン軍は消え去った。その一撃でだ。
「ば、馬鹿な・・・・・・」
「あれがなのか」
 ギジェもダラムもこれには呆然となった。
「あれがイデの」
「発現なのか」
「恐ろしいな」
「全くだな」
 アムロも宙も驚きを隠せないでいた。
「一撃であれだけの部隊をか」
「あれがイデの力なのかよ」
「無限力・・・・・・」
 シェリルもそれを見て呟いた。
「あれこそが」
「バッフクランが後退していくぞ」
 しかしだった。ギジェはまだ突っ込む。
「まだだ!」
「くっ!」
 しかしだった。彼はイデオンの拳を受け撃墜された。
「ギジェ!くっ、駄目か」
 ダラムは彼が死んだと確信した。その機体はもう四散していた。
「止むを得ん、今は」
「何、まさか」
 しかしギジェは生きていた。そして脱出したところで自軍の撤退を見たのだ。
「私は見捨てられたのか。・・・・・・ダラムめ」
 そして彼はだ。咄嗟に行動を取った。
「こうなってはな」
「おい、モエラ!」
 テクノは笑顔でモエラに声をかけていた。
「やったぞ、俺達は生き残った!」
「・・・・・・ああ」
 モエラは青い顔で彼の言葉に応えた。
「この光が」
「ああ、この光がだ」
「俺達の運命を変えていく光だ」
 こう言って微笑み。そしてだった。
「おいモエラ!モエラ!」
 モエラは目を閉じた。眠るようにして。
「モエラーーーーーーーッ!!」
 返答はなかった。これで終わりだった。
「じゃあモエラは」
「一命は取り留めたわ」
 リオがリョウトに話していた。
「けれどもうパイロットとしては」
「無理なんだね」
「生きているだけでも奇跡だって話よ」
 リオはこうリョウトに話す。
「普通はね。ああなったら」
「生きていられないんだね」
「当分絶対安静でもう二度とイデオンはおろかパイロットにもなれない」
「そこまで酷い怪我なんだ」
「だから生きてるのが不思議な位よ」
 リオはまたこう話した。
「そんなのだから」
「そうなんだ」
「助かっただけでもよかったわね」
 エレナは顔を伏せてこう述べた。
「まだね」
「そうか。そういえばコスモは大丈夫なのか?」
 タスクがふと言った。
「あいつも怪我してるよな」
「今輸血してるわ」
 カーラが話した。
「カララさんが血液型が同じだったから」
「何っ!?」
 ユウキはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「カララさんのか」
「さっきの戦闘で怪我人がかなり出たじゃない」
 カーラはそのユウキに対して話した。
「それでO型の血が不足していてね」
「それでか」
「検査したらカーラさんの血は私達と同じだったってわけなのよ」
 ユウキだけでなく一同にも説明する。
「地球人のO型そのものだったのよ」
「そうだったのか」
「まさか別の銀河の人が」
 ブリットとクスハも驚きを隠せない。
「俺たちと同じ血だったなんてな」
「そうよね。けれどカララさんも」
「僕達と同じなんだね」
 リョウトが微笑んで言った。
「つまりは」
「そうね。そうよね」
 リオはリョウトのその言葉に頷いた。
「完全にね」
 皆そのこともわかった。そうして。
 ジョリバがカミーユ達に話していた。
「イデオンも随分と傷付いちまったな」
「ああ、それでも」
 カミーユはジョリバのその言葉に応えていた。
「あのイデオンガンの力は」
「凄かったな」
「あまりにもな」
「イデオンガンは誰かが隠したみたいにソロシップの中にあったわ」
 シェリルがここでこのことを話した。
「これを間違った使い方をすればね」
「その時は」
「そうなるんですか?」
「私達は不幸になるんじゃないかしら」
 こう二人に言うのだった。
「そんな気がするわ」
「いえ、シェリルさん」
 だがここでカミーユはその彼女に話した。
「今は自信を持って下さい」
「自信を?」
「はい、俺達は今は敵を倒してでも進まないといけないんですよ」
 こう話すのだった。
「だから今みたいなことを言わないで下さい」
「不幸とかね」
「そうです。皆が不安になります」
 だからだというのである。
「ですから」
「そうね」 
 シェリルもカミーユのその言葉に頷いた。
「気をつけるわ」
「はい」
「そうね」
 ここでリツコも言ってきた。
「イデの調査では貴女が一番なんだから」
「私がなのね」
「そうよ。この武器の使い方も含めてね」
「ええ」
「期待しているから」
 微笑んでの言葉だった。
「頼んだわ」
「そうさせてもらうわ」
「じゃあシェリル」
 ジョリバが言ってきた。
「俺達はイデオンのメンテに入るからな」
「わかったわ」
「イデオンガンの調査は任せるからな」
「ええ、それじゃあ」
「ただしね」
 ここで言ってきたのはマーベットだった。
「仕事熱心もいいけれど」
「何?」
「あまり根を詰め過ぎないでね」
 こう言ってきたのである。
「それは気をつけて」
「どういうこと?それは」
「一つのことに熱心過ぎる人って不意に崩れる時があるから」
 マーベットはこう話すのだった。
「だからね」
「それでなの」
「それは気をつけて」
「そうならない為にはな」
 加持が笑いながら言ってきた。
「酒がいいな」
「お酒ね」
「あれを飲んで気晴らしするといいんだよ」
「そうね。そういう時のお酒だからね」
 シェリルもそれはわかった。
「それじゃあそうさせてもらうわ」
「疲れた時とかはな」
「そういうことね。じゃあね」
 こう話してだった。シェリルは別れた。そのうえで一人でイデオンガンを見ていた。そうしてそのうえで難しい顔になっていたのである。
「とはいってもこの力は」
 イデオンガンの力はもう見た。そのうえでの言葉だ。
「人が使うには巨大過ぎるかもね・・・・・・んっ!?」
 ここで気付いたのだった。
「誰!?」
「心配する必要はない」
 誰かが出て来た。それは」
「大人しくしてくれれば手荒な真似をするつもりはない」
「貴方は確か」
 シェリルも知っている者だった。
「カララを追っていたバッフクランの」
「ギジェ=ザラルだ」
 ギジェは自ら名乗った。
「バッフクランの者だ」
「まさかまたカララを連れ戻す為に」
「違う!」
 だがギジェはそれを否定した。
「私は知りたいのだ」
「えっ!?」
「私は知りたい、イデの何たるかを」
 それをだというのだ。
「そして」
「そして!?」
「イデが示すという善き力をだ」
「それを知りたい為に」
「私はここに来た」
 こう言うのだった。
「あえて。ここにだ」
「ギジェ=ザラル・・・・・・」
「私も偽りを言うつもりはない」
 彼はまた言った。
「頼む、それではだ」
「・・・・・・・・・」
 また運命に導かれた者が来た。運命はあらゆる者を巻き込みそのうえで。巨大な渦を作りその中でまた何かを動かしているのであった。


第四十話   完


                                        2010・6・25    

 

第四十一話 潜む者達

                  第四十一話 潜む者達 
 シェリルの部屋でだ。彼等は話をしていた。
「ギジェ」
「ああ」
「食事を持って来たわ」
 こう言って彼に食事を出していた。パンにソーセージ、目玉焼き、それにサラダとスープ、コーヒーといった直食のメニューだった。
「これでいいかしら」
「済まない」
 しかしギジェは手を止めていた。シェリルはそれを見て問うた。
「どうしたの?」
「むっ?」
「毒は入っていないわよ」
 それは断ったのである。
「そんなことはしないから」
「入っていても構わんさ」
「それはいいの?」
「ただ」
「ただ?」
「私は敵の施しを受けてまでイデの何たるかを知りたい」
 彼が言うのはこのことだった。
「その己の執着心が情けない」
「それが貴方の密航の理由?」
「既に言った通りだ」
 彼はまた言った。
「イデのことを知りたいのだ」
「それを」
「そうだ、私はあまりにも失敗を重ね過ぎた」
 これはバッフクランでのことである。
「しかしだ。巨神、イデオンと戦えば戦う程だった」
「興味をなのね」
「私はイデオンのこと、イデのことを知りたくなった」
「だからここに」
「そうだ。その為に生き恥を晒そうが構わん」
 こうまで言った。
「フォルモッサ=シェリルよ」
「ええ」
「イデの何たるかを教えて欲しいのだ」
「知ってどうするの?」
 シェリルは今度はこのことを問うた。
「それで」
「どうなるものでもない」
 ギジェは目を閉じて答えた。
「しかしだ。私は善き力の何たるかをイデが示すのならそれを」
「見たいと」
「そうだ、見たいのだ」
「善き地下の示す善き力の示しを」
「そうではないか。善き力は貴方達か」
 そしてだった。
「バッフクランなのか」
「どちらなのか」
「若しかしたら共に悪しきものかも知れないし善きものかも知れん」
 今の彼にはだ。バッフクランでさえも善かどうかわからなくなっていた。
「私はそれを知りたいのだ」
「そうなの」
「そしてだ」
「ええ」
「私のことを上官に報告するのか」
「今のところそのつもりはないわ」
 シェリルはそれは否定した。
「それはね」
「済まない」
「ただ」
 しかしだった。シェリルはここでまた言った。
「私だって考えが変わるかも知れないわ」 
 そのギジェを見ての言葉である。
「それでもいいのね」
「構わん」
 ギジェは短い言葉で答えた。
「生きるも死ぬも貴女に任せた」
「そうなの」
「私は今や捕虜以下なのだからな」
「わかったわ。それじゃあ」
「行くのか?」
 立ち上がったシェリルを見ての言葉だ。
「何処かに」
「ええ、キャラルで死んだ人達の合同葬があるから」
「それでか」
「また。戻って来るわ」
 こうしてだった。シェリルは部屋を後にした。一人になったギジェは目を閉じて。そして言った。
「俺は破廉恥な男かも知れん・・・・・・」
 しかし今はであった。それでも彼は選んだのだった。
 フロンティアの中でだ。その合同葬が行われていた。
「惑星キャラルの市民達に哀悼の意を表して」
 大統領自ら葬儀にあたっていた。
「各員黙祷」
「・・・・・・・・・」
 その言葉に従いだった。全員黙祷する。それが終わってからだった。
 ラポーがだ。心配する顔でファに問うのだった。
「モエラは」
「大丈夫よ、順調に回復しているわ」
「そうなの」
「ただ。もうね」
「イデオンには乗れないのね」
「もうそれは無理よ」
 こうラポーに話すのだった。
「それはね」
「そう。けれど助かったのね」
「何とかね」
「わかったわ」
「じゃあ僕が」
 ここでファードが言った。
「僕がモエラの分まで戦うよ」
「イデオンに乗るのか?」
「できたら」
 そうすると。コスモにも答えた。
「駄目かな」
「そうだな。誰もいなければ」
 その場合はというのだった。
「頼むぞ」
「うん、それじゃあ」
 その合同葬が終わってからだった。竜馬がコスモに問うてきた。
「まさかと思うが」
「キャラルのことか?」
「ああ、あれはイデのせいと思っているか?」
「・・・・・・確かにイデオンがあって」
 コスモは竜馬のその問いに答えて言った。
「それで俺達はバッフクランに追われている」
「ああ」
「結果的にキッチンは死んだ」
 このことは認めた。しかしであった。
「だがな」
「だが、か」
「ああ、俺はそんなものに屈しない」
 こう言うのだった。
「屈してたまるか!イデに取り込まれたことが運命だったとしても」
「それでもだな」
「ああ、それを変える為に戦ってやる!」
「そうか」
 竜馬はここまで聞いて黙った。だが今度はコスモが問い返した。
「待てよ」
「んっ!?」
「人に話を振っておいてそれだけかよ」
 怪訝な顔で問い返したのだった。
「違うだろ?そっちも」
「コスモ、俺達も御前と同じかも知れん」
「どういうことだ?」
「俺達も逃れられない大きな力に翻弄されている」
 こう話すのだった。
「そして武蔵を失うところだった」
「あいつをか」
「そして銀河に出た今俺達はその力に恐怖しつつあるんだ」
「その力はまさか」
「ああ、そうだ」
「そうか、あれだな」
「ゲッター線だ」
 彼等も悩み恐怖を感じていた。そして。
 シェリルはだ。ギジェに問うていた。
「バッフクランではイデをどういったエネルギーと考えているのですか?」
「第六文明人の意志の集中です」
 ギジェは素直に答えた。
「それだと」
「第六文明人の」
「そう、数十億の」
 それだというのだった。
「それではないかと」
「それについてはです」
 シェリルもここで答えた。
「我々も同様の結論に辿り着いています」
「そうなのですか」
「はい、そうです」
「それではですが
 ギジェはここでさらに話した。
「イデは我々の意志さえ取り込んでいっているのではないかと考えています」
「確かに」
 シェリルもそれで頷いたのだった。
「でなければイデオンは動かなかった。
「しかし先日でのイデオンの力は想像を絶するものでした」
「イデオンガンが」
「イデの力があれ程までだったとは」
「戦いが激しくなったからでしょうか」
 シェリルはそれについてこう考えた。
「だからこそ」
「いや、そうではなく」
「違うと」
「はい、この軍にこそ問題があります」
 そうだというのだった。
「ロンド=ベルでしたね」
「はい」
 部隊の名前もここで確認された。
「その通りです」
「この軍の自衛力が拡大したからでしょう」
「ということは」
 ここでだ。シェリルも気付いた。
「自衛本能の強い子供達や赤ちゃんの存在が」
「子供や赤ん坊」
 ギジェもそれに反応した。
「確かに我々にはその発想はなかった」
「試してみる価値はありそうね」
「ええ、確かに」
 二人は頷き合った。そのうえでだ。その胸の中に策が宿った。
 そしてラー=カイラムの食堂ではだ。キースが言ってきた。
「イデオンガン、物凄かったな」
「そうですね」
 頷いたのはトビアだった。
「あれを使いこなせたらかなりの戦力になりますよ」
「そうだな、あれは桁違いだ」
「殆ど戦略兵器だからな」
 ジェリドとヤザンは軍人としての視点から話していた。
「どんな相手でもな」
「倒せるぜ」
「いや、そうだろうか」
 しかしだった。カミーユは懐疑的な言葉を出した。
「本当に」
「どうしたんだよ、急に暗くなって」
「あれは凄い兵器だぜ」
 ジェリドとヤザンはそのカミーユに対して言った。
「それは御前にもわかるだろう?」
「見たんだしな」
「確かに俺達はイデオンガンに助けられた」
 カミーユはそれは認めた。
「だがあの力」
「あの力?」
 コウが問う。
「イデオンガンのあの力か」
「あの力は使っていいのだろうか」
「それはどういう意味だ」
 バニングがそれを問うた。
「一体」
「イデの力が人の意志に反応して」
 カミーユはバニングの言葉に応えて話す。
「その源がイデオンを作った第六文明人の意志というのは」
「そんなのもう」
「言うまでもないだろ」
「そうよね」
「いや、待て」
 しかしだった。ここでハマーンが言ってきた。
「私は感じた」
「えっ!?」
「ハマーンさんが」
「そうだ、イデオンのゲージが光った時だ」
 まさにその時というのだ。
「第六文明人の意志のようなものをだ」
「それは人の怨念でしょうか」
 ナタルは首を傾げながらハマーンに問うた。
「そういったものでしょうか」
「何度も言うが私はまだ二十一だ」
 敬語を使ってきたナタルにまずこう告げる。
「それはわかっていてくれ」
「あっ、これは失礼」
「誰も信じてくれないがな」
「そ、それは」
「まあ今はいい」
 話がややこしくなるからだった。
「そういったものではなかった」
「といいますと」
「どういったものですか?」
「意志自体は我々と同じようなものだ」
 こう全員に話す。
「恨みや憎しみだけに固まったものではなかった」
「しかしあの時のイデは」
 それでもカミーユは言う。ニュータイプの中でも傑出した者だけが感じられるものだった。
「凄まじいまでの怒りのエネルギーに満ちていた」
「ということは」
「コスモの怒りにイデが反応した?」
「そういうこと?」
「おそらくそうだな」
 クワトロもそれで頷いた。
「そうなっていくな」
「そうですか」
「それに反応して」
「しかしよ」
 ここで言うのはモンシアだった。
「あいつの怒りでイデがコントロールできるんなら」
「ああ、そうだな」
「そうなりますね」
 ヘイトとアデルもそれに頷く。
「イデの力は戦力として計算できる」
「そうなりますよね」
「いえ、それは」
 しかしだった。ここでクスハが言った。
「コスモ君の怒り、いえ」
「いえ!?」
「私達の怒りや憎しみがコントロールできるなら」
「クスハ、ちょっと待ってくれ」
 ブリットがそのクスハに問うた。
「それはイデは俺達全体の意志に反応しているってことか?」
「そうよ。そして戦いが続き」
 語るクスハの顔が真剣なものになる。
「私達が怒りや憎しみで満たされたら」
「そうだな」
 今度がアムロが言ってきた。
「イデはあの時以上の力を発揮するだろう」
「それは・・・・・・」
 それを聞いたコウは絶句してしまった。クワトロも言う。
「その力が向けられる先は私達かも知れない」
「そうだな」
 バーンが彼の言葉に頷いた。
「ハイパー化と同じだな」
「そうだ、怒りや憎しみはその者自身を滅ぼす」
 クワトロが指摘するのはそのことだった。
「バーンは助かったがな」
「私は運がよかった」
 バーンは自分でこう言った。
「あの時はまずあのまま死んでいた」
「ジェリルの様にか」
 ショウは彼女を思い出した。
「そういうことだな」
「そうなったイデは」
 カミーユがここでまた言う。
「人間が制御できることはできないだろう」
「しかしよ」
 ジュドーがカミーユの今の言葉に返した。
「今更イデオンを封印するってことも」
「無理だね」
「そうだな」
 キャラとマシュマーの言葉だ。
「そんなことをしたら戦力ダウンだからね」
「バッフクランの者達に遅れを取ることになる」
「どうやら」
 ショウがここまで聞いて言った。
「俺達は銀河に出ても憎しみの環の中から抜け出せないのかも知れないな」
「確かにそれは」
「自分の生まれた星も見えず太陽の光も届かない地に出て見ても同じだ」
 ショウは溜息と共に話した。
「人のエゴは変わらない」
「地球から離れて銀河に出ても」
「それでも」
「人の革新は地球を振り切っても起きないのかもな」
「そうかも知れないな」
 クワトロもサングラスの奥で考えていた。
「地球をなくしても。結局は同じなのかもな」
「そうだな。重要なのは人の心だ」
 アムロはその一点を指摘した。
「それこそが問題だからな」
「しかし憎しみの環なんてな」
「飲み込まれても仕方ないし」
「確かに」
 皆それはわかっていた。
「この広い宇宙の中で生きていくには」
「人と人のつながりが必要なんだ」
 プレアとカナードが話す。
「それがないととても」
「生きていられない」
「他人との関係を求めるから」
 今行ったのはトビアだった。
「エゴが生まれるのかも知れないですね」
「けれどそれを越えたら」
 ウッソも言う。
「何かが見つかりますね」
「じゃあ今は生き抜いて」
「そして人の可能性を」
「戦いの向こうに見える未来を」
「絶対に」
「そうだな」
 クワトロはここで頷いた。
「私達はかつてない試練の前にいる」
「そしてその一歩目を踏み出した」
「そうだ、前に行くべきだ」
 アムロに対しても言う。
「何があっても」
「じゃあイデの力もまた」
「知ったうえで」
「それで、ですね」
 こう話してだった。彼等は進むことを決意した。
 そしてその時だ。フロンティアの片隅でまた話が為されていた。
「姫様」
「ええ」
「やはりこの船団はバッフクランに追われていますね」
「そうね。ただ」
「ただ?」
「ここの人達はやってくれるわ」
 微笑んでいる言葉だった。
「必ずね」
「地球人に心をお許しになるのは」
「いけないのに」
「利用こそすれそれ以上の意味なぞ必要はありません」
「しかし彼等は」
「彼等は?」
「正しいものを持っています」 
 こう返すのだった。
「ですから」
「確かにそうですが」
 相手もそれは認めた。
「ですが姫様」
「ええ」
「今我々はです」
 ここで自分達のことも話すのだった。
「何としても本星へ帰還してです」
「そのうえで、ですね」
「はい、ハザル様の動きとその父君であるシヴァー閣下の件を陛下に」
「御報告しなければいけませんね」
「シュムエルの通信機の修理ももうすぐ終わります」
 こうも話された。
「この注域の我が軍とも連絡が取れます」
「そしてその時が」
 声に悲しいものが宿った。
「私の自由な時間が終わる時なのね」
「はい」
 そのことは肯定された。
「その通りです」
「・・・・・・わかりました」
 無念そうな声だった。そうしてだった。声達は何処かに消えた。フロンティアの中でもだ。多くの者がそれぞれ動いているのであった。
 竜馬はこの時大空魔竜の格納庫にいた。その彼にだ。
「どうした?」
「ゲッターの整備なら終わってるぞ」
 そこに隼人と弁慶が来て言う。
「それでどうしたんだ?」
「何かあったのかよ」
「真ゲッターに異常はないか?」
 竜馬は真剣な顔で二人に問うた。
「それは」
「ああ」
「特に問題はないけれどな」
「そうか」
 そしてだ。彼は考える顔で二人に言った。
「なあ」
「どうしたんだ、急に」
「畏まってよ」
「真ゲッターの力はこんなものだろうか」
 こんなことを言うのだった。
「果たして」
「リョウ、御前」
「俺達は、いや俺は」
 そしてだった。彼はまた言った。
「真ゲッターの力を引き出せていない」
「考え過ぎじゃないのか?」
「いや、違う」
 自分でそれを否定した。
「それは俺の中でゲッター線への疑念が出て来ているからだ」
「だからだってのかよ」
「そうだ、またな」
 こう弁慶にも返す。
「それでだろうな」
「よせよ」
 ここで隼人が彼を止めに入った。しかしだった。
「イデオンを見ろ」
「イデオンか」
「ゲッター線が暴走すればあれ以上のことが起きるかも知れない」
「それは」
「しかし」
「おい、何話してんだよ」
 ここで武蔵も来た。
「三人でよ」
「武蔵か。御前も聞いてくれ」
「?何だよリョウ」
「はじめてゲッターに乗った時はだ」
 竜馬の話はここで遡った。
「恐竜帝国から早乙女研究所やミチルさんを守る為だった」
「懐かしい話だな」
 武蔵もその時のことを思い出して話した。
「あの時か」
「ゲッターは俺達に力を貸してくれた」
「そうだったな」
「それでおいら達はロンド=ベルで戦ってきた」
 隼人と武蔵もそれに頷く。
「あの時はな」
「迷わずにな」
「だがその力は俺達を戦いに駆り立て」
 その武蔵を見て言った。
「御前は危うく」
「おいおい、あの時は仕方ないだろ?」
 武蔵もこう言って竜馬を止めようとする。
「それにおいらは今こうしてここにいるぜ」
「生きてるじゃないか」
「シュウ=シラカワに助けられてな」
「しかし」
 だが竜馬はまだ言う。
「俺は今ゲッター線が怖い」
「リョウ・・・・・・」
「そうなのか」
「ハチュウ人類がゲッター線で滅亡したように」
 言葉は何時しか最悪の事態を想定していた。
「何時か俺達も」
「おい、何でだよ」
 弁慶がすぐに問い返した。
「ゲッター線は人類を進化させる力があるんだぞ」
「若しもだ」
 しかし竜馬の言葉は続く。
「俺達がゲッター線にこの宇宙に相応しくない生物とされたら」
「それは」
「その時は」
「あの光は恐竜帝国と同時に俺達をも滅ぼそうとしていたら」
 こう考えずにはいられなかった。今の彼は。
「俺は・・・・・・」
「リョウ・・・・・・」
「それは」
 こう話している時だった。警報が鳴った。
「敵襲!?」
「バッフクラン!」
「もう来たか!」
「戦いか」
 竜馬は普段の戦いに向かう顔ではなかった。悩みと共に向かうのだった。
「敵、来ました」
「フロンティア、GGG艦隊、シティの退避完了しました」
「わかったわ」
 タリアがアーサーとメイリンの言葉に応えていた。
「では全機発進」
「はい、ただ」
「イデオンは駄目なのね」
「残念ですけれど」
 アーサーも首を捻って述べた。
「今は」
「モエラがもう二度と乗れないからね」
「はい、それで」
「わかったわ。今は仕方ないわ」
 タリアもそれはわかっていた。だからこう言うのだった。
「それじゃあね」
「イデオン抜きで、ですね」
「そうよ。勝つわ」 
 強い顔で述べた言葉だ。
「それでいいわね」
「はい、わかりました」
 こう話してだった。戦闘態勢に入る。そこには竜馬もいた。
「おい、リョウ」
「ああ」
 武蔵の言葉に応える。
「大丈夫なのか?」
「確かに俺はゲッター線を恐れている」
「ああ」
「だが」
 しかしというのだった。
「俺達は戦わないといけない」
「それかは」
「地球で待っている人達の為にも」
 こう隼人にも返す。
「地球を守ることを約束したんだからな」
「ああ、その通りだ」
 弁慶が頷いてみせた。
「それならな」
「今は余計なことを考えるな」
 隼人もこう声をかける。
「わかったな」
「そうさせてもらう。それじゃあな」
「総員迎撃用意!」
 ブライトの指示が下った。そしてそのバッフクラン軍が出て来た。
「ワフト宙域だな」
「はい」
「その通りです」
 ダラムに部下達が答える。
「ここがです」
「まさに」
「厄介な場所で追いついたな」
 ダラムは部下達の報告を受けて一旦溜息混じりに言った。
「ここが巨神との決戦の場か」
「そしてです」
「ハルル様から送られたあれですが」
「うむ」
 また部下達の言葉に応えた。
「あれだな」
「ギド=マック及びガルボ=ジックですが」
「配置につきました」
「ハルルも可愛いところがある。いや」
 すぐに考えを変えてこう述べた。
「違うな」
「違いますか」
「それは」
「おそらくだが」
 こう前置きしてからの言葉だった。
「軍とオーメ財団の間に何かあったな」
「といいますと」
「それは」
「手を組んだということでしょうか」
 一人が言ってきた。
「そういうことでしょうか」
「そんなところだな」
 ダラムはその言葉を受けて述べた。
「ならばだ」
「はい、それならば」
「ここは」
「私の面子の為にもここで勝負をつけよう」
 そうするというのだった。それと共に心の中で呟く。
(その時はハルルの前に胸を張って立つこともできよう」
「ダラム=ズバ」
 ギジェはその彼の兵の動かし方を見て呟いた。
「勝負に出るか」
「各機に告ぐ」
 そのダラムが指示を出す。
「攻撃を開始せよ!」
「はい!」
「それでは!」
「巨神が出ないのなら燻り出してやれ!」
 こうも言った。
「そしてだ」
「そして」
「今度は一体」
「この宙域には鉱物生命体ヴァンテがいる」
 この存在についても言及した。見れば宙域は岩石まみれだ。
「エネルギーを消耗する。短期決戦でいくぞ!」
「了解です!」
「それでだ!」
 こうして彼等はロンド=ベルに向かうのだった。
 それはロンド=ベルも同じだった。その時だ。
「!?ここの岩石は」
「ああ、間違いない」
「生きている!?」
 彼等もそれに気付いたのだった。
「鉱物生命体か!?」
「まさか」
「それなのか」
「しかも」
 万丈の目が鋭くなる。
「この連中は僕達の機体のエネルギーを吸収している」
「まずいな、それは」
 神宮寺もその目を険しくさせる。
「戦闘より前にエネルギー切れになるな」
「そうだね。迂闊にしていたら」
 洸もその言葉に頷く。
「ここはね」
「ジョリバ!」
 コスモはソロシップで叫んでいた。
「イデオンは出せないのかよ!」
「今は無理だ」
「何でだよ!」
「モエラの代わりにBメカを操縦できる奴がいないんだ!」
 だからだというのである。
「だから今は」
「ちっ、他に誰かいないのかよ!」
「だったら俺がやるよ!」
 名乗り出たのはデクだった。
「俺だって越すもの横で戦ってきたんだ!」
「あんたには無理よ!」
 それはカーシャが止めた。
「サブパイロットならともかく」
「そうだ。その気持ちは有り難いが」
 ジョリバの顔は難しいものになっていた。
「それ以前の問題としてな」
「んっ、どうしたんだよ」
「さっきからゲージが全くあがらないんだ」
 こうコスモ達に話すのだった。
「参ったことにな」
「何だよ、それ」
 コスモはそれを聞いてすぐに言った。
「前の戦いでパワーを使い過ぎたっていうのか!?」
「それはわからん」
 ジョリバは即答はできなかった。
「だがイデオンは出せん」
「くそっ!」
 コスモはこう言われて足で床を蹴った。
「これじゃあキッチンの仇を討つこともできないじゃないか!」
「今は耐えるしかないの?」
「残念だがな」
 ジョリバはカーシャにも話した。
「今はな」
「そんな、イデはどうしたのよ」
 そんな話をしているとだった。
「シェリルさん!」
「何、ロッタ」
「ルウを一体何処に」
 こうそのシェリルに問うのだった。
「連れて行く気ですか?」
「これには理由があるのよ」
「理由?」
「申し訳ない、お嬢さん」
 ここでギジェが拳銃を持って出て来た。
「こちらの言う通りにしてもらおう」
「貴方はバッフクランの」
「皆に言ってもいいわ」
 シェリルは覚悟を決めた顔で言ってきた。
「別にね」
「シェリルさん、一体」
「でもね」
「でもね?」
「一つ聞いて」
 こうロッタに言うのだった。
「いいかしら」
「何を」
「イデの力を知る為にはね」
「はい」
「ギジェ=ザラルという人がソロシップにいた方がいいかも知れない」
 こう話すのだった。
「これだけは忘れないで」
「済まない、シェリル」
「けれど」
 ロッタはそこまで聞いて顔を強張らせて言った。
「カララを殺そうとした女よ」
「そうだったわね」
「それでもいいのですか?」
「ええ」
 いいというのだった。
「そんなことはもう問題じゃないから」
「問題じゃないって」
「私はだ」
 そしてギジェもロッタに言ってみせた。
「自分の生死にはこだわってはいない」
「命には」
「だからだ」
 こう言うのであった。
「どうか私を」
「・・・・・・・・・」
 ソロシップの騒ぎの最中も戦いは激しくなる。そして。
「ベス、まただ!」
「今度は何だ!?」
「重力震だ!」
「何っ、じゃあ」
「また何か来る!」
「バッフクランの援軍か!?」
 ベスはこう思った。しかしだった。
 それは違った。今度来たのは。
「宇宙怪獣!」
「こんなところにまで!」
「ちっ、厄介な時に!」
 これには誰もが嫌な顔をした。
「出て来るなんてな」
「相変わらず嫌な時に出て来る」
「ねえ」
 ここでだ。あの少女が褐色の肌の少女に問うていた。
「ルリア」
「はい、アマルナ様」
「通信機の修理は終わらないの?」
「まだです」
 その美少女ルリアがまだ幼さの残る可憐なアマルナに対して答えていた。
「それは」
「そう、今はなのね」
「宇宙怪獣は何処にでも出ます」
「つまりは最悪の場合このまま」
「いえ、そうはなりません」
 アマルナを必死に励ましてきた。
「ですからここは」
「わかったわ。ここは耐えるわ」
「そうして下さい」
 こう話しながらフロンティアに潜み続けていた。そして。
「宇宙怪獣まで出て来るなんてな」
「前門の虎後門の狼ですね」
 神宮寺と麗が話していた。
「そうだな、本当にな」
「まさに」
「この混沌」
 刹那もここで言う。
「混乱の銀河の縮図だな」
「おい、大変だぞ!」
 コスモがここでまた叫ぶ。
「宇宙怪獣まで出て来たぞ!」
「コスモ!」
 ここでシェリルが来た。
「イデオンを出すわよ!」
「えっ、シェリルさんがBメカに?」
「私も行きます!」
「ロッタも!?」
 カーシャの声だ。
「一体どうなってるの、これって」
「気持ちは有り難いが」
 ジョリバがここで言う
「今イデオンは」
「いえ」
「いえ?」
「ゲージが点いたわ」
 カーシャがそれを見て言う。
「今点いたわ」
「えっ!?」
「どういう理屈か知らないが」
 コスモも言う。
「戦えるならそれでいい!」
「それでいいのか」
「ああ、いい!」
 こうそのジョリバに話す。
「シェリルさん、頼んだぞ!」
「さあ、急いで」
「済まない」
「何っ!?」
 ジョリバはその人影を見て思わず言った。
「馬鹿な、あんたは!」
「話は後よ!」
 だがシェリルが強引に進める。
「今は!」
「何がどうなっているんだ」
 ジョリバも唖然としていた。
「これは」
「イデオン出る!」
 コスモが叫ぶ。そうしてだった。
 イデオンが出撃した。誰もがそれを見て言う。
「コスモ!」
「やれるのか?」
「ああ!」
 コスモははっきりと仲間達に答える。
「キッチンの仇を討つぞ!」
「駄目だ、コスモ」
 しかしカミーユは言った。
「それじゃあ・・・・・・」
「行く!」
 しかしコスモの耳には入らない。彼はそのまま戦いに向かう。
 そしてだ。ダラムもまた。
「巨神が出たな」
「はい」
「今ここに」
 部下達が彼の言葉に応える。
「出て来ました」
「間違いありません」
「よし。特別攻撃隊を出せ」
 ダラムはここで命じた。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
 そしてそれをイデオンに向かわせるとだった。
「頭痛メカか!」
「ええ、あれよ!」
 コスモとカーシャがその一軍を見て言う。
「また出て来たのか」
「鬱陶しいわね」
「気をつけろ」
 そして、だった。
「奴の発するゲル結界はパイロットの脳を直接攻撃する」
「えっ、貴方は」
「バッフクランのギジェという奴か!」
 カーシャとコスモはその声からわかった。
「どうしてここに?」
「イデオンの中に!」
「コスモ、来るよ!」
 しかし話している余裕はなかった。デクが言う。
「前から!」
「くっ、来たか!」
 そのガルボ=ジックの攻撃を受けてしまった。
「くっ!」
「ああ!」
 するとだ。共に乗っていたルウが声をあげた。
「あう・・・・・・ああん!」
「ああ、ルウ!」
「何ッ、ルウ!?」
 コスモは今度は鳴き声とロッタの言葉でわかった。
「どうしてルウまで!?」
「ああん!」
 ルウが泣きだした。
「ああーーーん!」
「シェリル!」
 ギジェがシェリルに対して問う。
「イデオンのゲージは!?」
「これは」
 シェリルがゲージを見る。すると。
 四段階だった。何とだ。
「パワーが上がっているわ」
「そうか」
「ルウの純粋な防衛本能にイデが反応したんだわ」
「シェリルさん、それだったら」
 ここでロッタもわかった。
「それを確かめる為にルウをイデオンに?」
「ええ、そうよ」
「馬鹿な!」
 それを聞いた竜馬が叫んだ。
「生き残る為に赤ん坊を戦場に連れ出すなんて!」
「そうだな、確かにな」
「それはな」 
 隼人と弁慶も難しい顔を見せる。
「褒められたものではないな」
「そうだよな」
「俺は認めない!」
 竜馬は激昂していた。
「そんなやり方は認めない!認めるものか!」
「おいリョウ!」
 武蔵がその竜馬を止める。
「迂闊に近付くな!」
「うおおおおおおっ!」
 しかし彼はガルボ=ジックの一軍に向かい斧を振るってだ。何機か撃墜してそのうえでイデオンにいるコスモに対して言うのだった。
「コスモ!」
「あ、ああ」
「今のうちに離脱しろ!」
「リョウ、御前・・・・・・」
「赤ん坊の涙でイデを引き出すようなやり方はだ!」
 その竜馬の言葉だ。
「俺は認めない!」
「そう言うのか」
「俺はイデの力やゲッター線がなくても」 
 言葉に迷いはない。
「絶対に皆を守ってみせる!」
「!?一体」
「これは」
「何だ!?リョウの真ゲッターが」
 その真ゲッターにだ。異変が起こっていた。
「このあがり方は」
「尋常じゃない」
「何なんだ。これは」
「何が起こっているんだ?」
「リョウ!」
「落ち着け!」
 そしてだった。竜馬は真ゲッターが放つその光に包まれた。
 気付いた時そこは不思議な空間だった。
 足元がない。緑の光の中にいた。そして目の前に誰かがいた。
「流竜馬」
「誰だ!?」
「聞きたいことがある」
 こう言ってきたのだった。
「御前は幾多の次元で戦ってきたな」
「未来にそしてゴウ達の世界か」
「そうだ」
 まさにそこだという。
「あらゆる世界の御前もだ」
「あらゆる世界の!?」
 竜馬はここからすぐにあることを察した。
「じゃあ他のパラレルワールドの俺もまた」
「そうだ。ゲッター線と共に生きる人間として選ばれた」
 そうだというのである。
「だが何故だ」
「何故!?」
「何故この宇宙での御前は受け入れない」
「ゲッター線をか」
「そうだ。何故受け入れようとしない」
 こう彼に問うてきていた。
「それは何故だ」
「なら教えてくれ」
 竜馬はその存在に対して問うた。
「ゲッター線とは何なんだ!?」
「ゲッター線はか」
「そうだ。俺達はゲッター線に取り込まれた存在なのか!?」
「進化はだ」
 その存在は竜馬の言葉を受けて話をはじめてきた。
「自らの手で勝ち取るものだ」
「自分の手で」
「そうだ。ゲッター線は導き手に過ぎない」
「勝ち取るものなのか」
「ゲッター線は何もしない」
 存在はこうも話した。
「ただ」
「ただ?」
「御前と共にあるだけだ」
 そうだというのである。
「そしてだ」
「そして?」
「急げ」
 竜馬への言葉だった。
「この宇宙にも審判の時が近付いてきている」
「審判の時!?」
「アポカリュプシス」
 彼は言った。
「それに打ち勝つのはゲッター線ではない」
「俺達なのか」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだった。
「ゲッター線と共にある人間の心だ」
「しかしだ」
 竜馬は新たに生まれた疑念に対してまた問うた。
「アポカリュプシスとは何だ!?」
 問うのはこれについてだった。
「それは何を意味するんだ!?」
「運命と戦え」
 彼はこの事には今は答えなかった。しかしこう告げるのだった。
「どの次元、どの世界でも」
「どの次元でも世界でも」
「それこそが生命あるものの使命」
 これが彼の言葉だった。
「だからこそだ」
「それでなのか」
「流竜馬、戦え」
 彼はまた竜馬に告げてきた。
「仲間達と共にだ」
「あ、ああ」
 そして戻った。元の世界だった。そこに戻るとすぐにであった。
「行くぞ皆!」
「リョウ!」
「見ていろコスモ!」
 こうコスモに対して言い返す。
「俺はゲッター線に負けない!」
「いけるんだな!」
「ああ、俺はゲッター線と共に運命に立ち向かう!」
 これが今の彼だった。
「行くぞゲッター!」
「よし、リョウ!」
「やってやろうぜ!」
 すぐに隼人と弁慶が声をかけてきた。
「ここはな!」
「派手に行こうぜ!」
「ああ、真シャイイイイイイイイイインスパアアアアアアアアアアアアアアクッ!!」
 巨大な緑の光の球を放った。それでだった。
 バッフクランの敵軍を一撃で部隊単位で吹き飛ばしたのだった。
「すげえ・・・・・・」
「どうやらこれはな」
 武蔵がそれを見て言う。
「リョウと一緒に真ゲッターも吹っ切れたようだな」
「隼人、弁慶、武蔵」
 竜馬はその武蔵にも声をかけてきた。
「俺はもう迷わない」
「わかったんだな」
「何かが」
「俺はゲッター線に」
 まず言うのはやはりゲッター線についてだった。
「宇宙の定めた運命にあがらってみせる!」
「ああ!」
「わかった!」
「そうするんだな!」
 三人もそれに応える。
「そして宇宙怪獣もバルマーも」
「何もかもだな」
「そうだ、その為にだ」
 竜馬の言葉は強いままである。その為の力を貸してくれ!」
「おう!」
 最初に応えたのは弁慶であった。
「その言葉待ってたぜ!」
「リーダーは御前だ」
 隼人も言う。
「俺達は地獄の底まで御前と一緒だからな」
「勿論だ!」
 武蔵も言う。
「そんなの最初からな!」
「そうか、来てくれるか」
「HAHAHA、そんなの自明の理デーーーーーーーーーース!」
 最後にジャックが叫ぶ。
「全員でやっつけるデーーーーース!」
「けれど」
 だがここでカーシャが言った。
「今Bメカにはバッフクランが」
「カーシャ」
 そのカーシャにシェリルが言う。
「ギジェは純粋にイデの行く末を見たいだけなのよ」
 こう主張するのだった。
「それに彼の力は」
「どうだっていうの!?」
「イデオンにとっても重要な筈よ」
「そんな筈ないじゃない!」
 しかしカーシャはそれを信じようとしない。
「何言ってるのよ!」
「止めろカーシャ」
 コスモも見かねて止める。
「そいつだって半端な気持ちでイデオンに乗った訳じゃにだろうさ」
「じゃあいいっていうの?」
「ロッタ、いいな」 
 しかしロッタにこうも告げた。
「監視は任せた」
「監視ね」
「ギジェが少しでもおかしな真似をしたら」
 その時はというのだ。
「躊躇わず撃て!」
「え、ええ」
 ロッタもその言葉に頷く。
「わかったわ」
「ロッタさん」
 ギジェもここで言うのだった。
「私のことで気に入らないことがあればだ」
「その時は」
「一発とは言わない」
 言葉には覚悟があった。
「十発でも二十発でも撃ってくれていい」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 ロッタは彼のその言葉にも頷いてみせた。
「その時はね」
「手間をかける」
「ギジェ、いいな」
 コスモはギジェにも声をかけた。
「死にたくないのなら手を貸してもらうぞ」
「その時はだな」
「そうだ、相手が同じ星の人間でもな」
 それでもだというのだ。
「そうさせてもらうからな」
「その覚悟はできている」
 ギジェも真面目な顔で応える。
「既にだ」
「当てにさせてもらう!」 
 こうしてだった。敵の数機を瞬く間に撃墜した。
 ここでだ。カーシャがギジェに対して問うた。
「どう!?」
「どう、とは?」
「自分と同じ星の人間を撃墜した感想は」
「カーシャ!」
「私は生き恥を晒してまでここにいる」
 だがギジェはこう言うだけだった。
「今は自分の目的の為に戦うだけだ」
「そうだっていうのね」
「そうだ」
 また答えるギジェだった。
「それだけだ」
「・・・・・・わかったわ」
 カーシャも今は黙った。そうしてだった。
 コスモはイデオンをダラムの機体の前に進ませた。
「姑息な先方が通用するかよ!」
「馬鹿な」
 ダラムはそのイデオンを見て驚きの声をあげた。
「ワフト宙域にあってもこれだけのパワーを!?」
「驚いているみたいね」
「そうですね」
 ダラムの驚愕はシェリルとロッタにもわかった。
「今のイデオンに」
「はい、間違いなく」
「この様な巨神はだ」
 ダラムは狼狽しながら言う。
「この世にあってはならん!」
「行くぞ!」
 コスモは突撃する中で叫んだ。
「敵の旗艦を静めれば勝負はつく!」
「死なば諸共ーーーーーーーーーっ!!」
 こう叫んでイデオンに特攻する。しかしだった。
「コスモ!」
「ああ、あれだな!」
「そうよ、イデオンガンよ!」
 カーシャが告げていた。
「それしかないわ!」
「そうだな。よし!」
 イデオンにそのイデオンガンを構えさせた。
「これで!」
「ええ、撃って!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 光が襲った。それでだった。
 既に激戦で戦力の殆どを失っていたバッフクラン軍はほぼ消滅した。ダラムもまた。
「馬鹿な・・・・・・」
 旗艦もイデオンガンの直撃を受けてしまっていた。
「これだけの戦力を集めても巨神とロゴ=ダウの異星人には勝てぬのか」
「閣下、最早」
「脱出も」
「わかっている」
 部下達の言葉にも覚悟を決めた言葉で返す。
「済まない、ハルル」
 これが最後の言葉だった。
「私はやはり君に相応しい男では・・・・・・」
 こうして炎の中に消えた。戦いはこれで終わった。
「ダラム=ズバ・・・・・・」
 ギジェは彼の死を見届けたうえでその名を呟いた。
「これで終わりか」
「バッフクランの旗艦が沈んだな」
 バニングも言っていた。
「これでな」
「そうだな。これでまずは終わりだ」
 シナプスもそう見ていた。
「バッフクラントはここではな」
「後は宇宙怪獣ですね」
「まだかなりの数がいます」
 パサロフとジャクリーンが言ってきた。
「今度はそちらに全力を向けましょう」
「すぐに」
「わかっている。それではだ」
 シナプスも二人のことばに頷く。そうしてだった。
 今度は宇宙怪獣に向かう。その時にだ。
「行くぞ、リョウ」
「今度は宇宙怪獣だ」
 隼人と弁慶が竜馬に言ってきた。
「敵はまだまだ多い」
「だからな」
「ああ、わかっている」
 竜馬も二人のその言葉に頷く。
「それじゃあな」
「むっ!?」
 この時だった。ギジェはそのゲージを見て思わず声をあげてしまった。
「これは!?」
「ゲージがあがった!?」
 シェリルもそれを見て言う。
「まさか、これって」
「イデがゲッター線というものに反応しているのか!?」
 ギジェは驚きを隠せなかった。
「まさか」
「うっ!?」
「どうしたのい、洸」
 マリはいきなり声をあげた洸に対して問うた。
「何か感じたの?」
「あ、ああ」
 彼は頭を右手で押さえながらマリに答えた。
「ライディーンからの警告!?」
「ライディーンからの!?」
「イデとゲッター線のことか!?」
 すぐにこう察したのだった。
「まさか」
「なにっ、これは」
「何が起こるんだ!?」
 竜馬もコスモもこれからのことは全く予想できなかった。
「ゲッターの力が上がっている」
「一体」
「!?コスモ!」
 カーシャが言ってきた。
「イデオンガンが!」
「どうしたんだ!?今度は!」
「凄いパワーよ!」
 イデオンガンに篭っていくそのパワーを見ての言葉だった。
「まさか、これって」
「一体何が起こるんだ!?」
「ま、真ドラゴン!」
 ゴウもここで思わず声をあげた。
「どうしたんだ!?この力の上昇は」
「真ドラゴンもかよ」
 武蔵の乗るブラックゲッターもであった。
「ゲッターの力があがってる。何だってんだ!?」
「わからん、ただこれは」
「そうですね、好機です」
 ジャクリーンがシナプスに対して答える。
「宇宙海獣達に攻撃を仕掛け」
「一気に壊滅させる!」
 彼は言った。
「イデオンガンを撃て!」
「それで宇宙怪獣を」
「そうだ、そしてその後でゲッターを中心として全軍で攻撃を仕掛ける!」
 そうするというのだった。
「わかったな。それでだ!」
「了解!」
「それなら!」
 こうしてだった。まずはイデオンガンが放たれた。
 そこからゲッターを中心として宇宙怪獣に突撃を仕掛けてだ。戦いは終わった。
 そして戦いを終えてもだった。彼のことは終わりではなかった。
 カララがだ。彼を何度もひっぱたいていた。彼は身動き一つしない。
「・・・・・・・・・」
「カララ、止めろ!」
 ベスがカララを止めに入った。
「いい加減に」
「ベス、やらせなさいよ!」
 しかしカーシャがそのベルを止める。
「バッフクランなのよ!」
「だからだというのか」
「そうよ、バッフクランのギジェ=ラザルなのよ!」
 カーシャはあくまでこう主張する。
「死刑にすればいいのよ!」
「しかしそれは」
「どうしたっていうのよ!」
 戸惑うベスにさらに言う。
「この人自分から言ったじゃないの!」
「それはそうだけれど」
「それでも」
「私達と一番戦った人よ!」
 カーシャはこうも行った。
「一番強敵だった人よ!なのにおめおめと生き恥を晒して」
「そしてだというのか」
「敵に許してくれって来る破廉恥な男なのよ!死刑にして当然でしょ!」
「何を言われようと構わん」
 そのギジェの言葉だ。
「イデの力が現われるということはどういうことか」
「それをどうだっていうのよ!?」
「それを見たい」
「死んじゃえ!」
 カーシャはギジェ本人に対しても言った。
「あんたなんか自分で死んじゃえ!」
「笑ってくれて構わん」
 ギジェは静かに目を閉じて述べた。
「イデが現われるまでは生き延びさせてくれ」
「そうしてくれっていうのか」
「今は」
「そうだ。諸君等は私にとってそういう敵だったのだ」
「イデは善き力によって現われる」
 ベスはここで言った。
「伝説にはそうある」
「・・・・・・・・・」
「しかしだ」
 ベスの言葉は続く。
「私達の貴方への憎しみはどうなる」
 彼はこのことも言った。
「憎しみも悲しみも晴らせぬ我々は貴方と同じに」 
 ギジェを見ながら話す。
「苦しく、惨めでもある」
「すまない・・・・・・」
 ギジェは今はこう言うしかできなかった。
「だが今の私は償う術を知らないのだ」
「コスモ君」
 マイヨがここでコスモに問うた。
「君はどう思う」
「ギジェのことですか」
「そうだ」
 まさにその彼のことだという。
「どう思う」
「少なくともパイロットとしての腕は認めます」 
 こう答えるコスモだった。
「さっきの戦闘でも随分と助かりました」
「そうか」
「冗談じゃないわよ!」
 カーシャは今のコスモの言葉にすぐに言い返してきた。
「あいつはバッフクランなのよ!」
「それを言えばだ」 
 そのマイヨがカーシャに言ってきた。
「私はギガノス軍にいたが」
「けれど」
「俺はティターンズだったしな」
 ジェリドも出て来た。
「随分とやりあったんだがな」
「そうだな。私もだった」
「私もだな」
 バーンとギャブレーも出て来た。
「敵味方は流転する」
「そういうものではないのか」
「それにカーシャ」
 エマもカーシャに対して言う。
「彼に裏切る気があったらね」
「あったら?」
「その機会は幾らでもあったんじゃないかしら」
「けれどそれは」
「いや、僕もエマ中尉に同感だ」
 万丈も言ってきた。
「それにあの涙」
「涙!?」
「同じ男として信頼に値するな」
「そんなセンチメンタリズム」
 カーシャはあくまで強情である。
「あたしには理解できないわ」
「星が違うのもいいんじゃないのかい?」
 万丈はまたカーシャに言ってきた。
「今更」
「今更って?」
「タケルやマーグをどう思うんだい、カーシャは」
「仲間よ」
 はっきりと答えた。
「それ以外の何者でもないわよ」
「そういうことさ。仲間だろ?星は違っても」
「けれど」
「そういうものさ。そんなことはもうどうでもいいんだよ」
「そうだな」
 コスモが遂に頷いた。
「そろそろすっきりさせようぜ。そうだな」
「そうだな?」
「っていうと」
「コインでも投げてな」
 こう皆に言うのであった。
「表が出たらギジェは味方、裏が出たら」
「下らないことを!」
「あのな、もういい加減にしろよ」
 エイジがうんざりした顔でカーシャを止めてきた。
「違う世界の俺達なんか本当にどうなるんだよ」
「それとこれとは話が別よ」
「まあいいじゃないか」
 コスモはそのエイジも止めた。
「これですっきりするんだからな」
「コインでだな」
「さっきの話の続きだけれどな」
 コスモは言う。
「裏が出たら裏切り者だ」
「そうか」
「それでいいな」
 コスモは周りを見回して全員に問うた。
「それで」
「ええ、いいわ」
 頷いたのは小鳥だった。
「公平だしね」
「疑わしきは罰せず、だな」
 ベスも言う。
「俺達は凡人だ、どちらかにはっきりさせたい」
「それじゃあな。行くぜ」
「わかった」
 最後にギジェが頷いた。そうしてだった。
 投げられたコインが落ちた。その面は。
「表だ」
「ああ」
「あんたは仲間だ」
 ギジェを見ての言葉である。
「これではっきりしたな」
「こんなことでいいの、大事なことを」
「じゃあまだ裏切り者っていうのか?」
「それは・・・・・・」
 さしものカーシャも口ごもってしまった。
「もう」
「俺は信じるさ」
 コスモは言った。
「今のギジェはな」
「済まない、コスモ君・・・・・・」
「では行こう」
 ブライトが最後に言った。
「我々の目指す先に」
 あえて多くは言わなかった。そのうえで次の戦場に向かうのであった。


第四十一話   完


                                      2010・6・30        

 

第四十二話 因果の海で

                第四十二話 因果の海で
 ギジェが加わったロンド=ベルはだ。まだ航海の中にあった。
「バッフ=クランは来るかな」
「来るんじゃないの?やっぱり」
「そうだよなあ」
 皆こんな話をしていた。
「しつこいからなあ」
「いつもな」
「追撃したら執拗だし」
「そう思っておくべきだな」
 ベスの言葉であった。
「最悪の事態を考えて行動するのは常識だ」
「戦争のだな」
「そうだ」
 まさにそうだというのである。
「だからだ。バッフ=クラン軍は必ず来る」
「そうだな。彼等は来る」
 今度はギジェの言葉だ。
「私がいるということも既にだ」
「察しているっていうのか」
「それもある」
 コスモに対しても返す。
「私は彼等にとっては裏切り者になってしまったからな」
「裏切り者か」
 カクリコンはその言葉に顔を向けた。
「そういうことになるか」
「バッフ=クランは裏切り者を許すことはない」
「まあよくある話だね」
 ライラは裏切り者の話には特に思うことはなかった。
「それはね」
「悪役みたいだがそれは当然だ」
 ドレルは冷静に述べた。
「組織を維持する為にだ」
「そうだな。それにギジャ殿はバッフ=クランでも指揮官だったな」
「うむ」
 ギジェはザビーネの言葉に頷いて応えた。
「多くの部下達を率いてきた」
「それなら余計にか」
「そうだ、だからだ」
 また話すギジェだった。
「彼等は今大軍を送り込んでいる筈だ」
「忙しい奴等だな」
 ヤザンはそれを聞いて述べた。
「バルマーや宇宙怪獣とも戦争やってるのにか」
「他にはプロトデビルン達もいます」
「彼等も敵は多いです」
 ここでラムサスとダンケルも話してきた。
「しかし我等にも多くの戦力を割く」
「尋常なものではありません」
「力のかなりの部分を割いているわよね」
 マウアーの言葉だ。
「バッフ=クラン自体の力をね」
「戦争は金がかかるからな」
 ジェリドも言う。
「それを考えたらあの連中も相当な力を使ってるな」
「そのまま消耗させればいいか?」
 今の言葉はコスモのものだ。
「バッフ=クランは」
「そうすれば自滅するか」
 モエラの言葉だ。
「戦いを続けているうちに」
「相手を自滅させるのも戦略よね」
 カーシャがふと言った。
「やっぱり」
「そうなるわね」
 シェリルもそれに頷く。
「力を消耗させてね」
「じゃあそれで行くか?」
 こすもはまた言った。
「ここは」
「しかしだ」
 今度はギジェだった。
「バッフ=クランは銀河一つを完全に手中に収めているのだ」
「ああ、あんた達の銀河を」
「そこをか」
「それだけにかなりの力がある」
 また言うのだった。
「それはわかっておいてくれ」
「ううん、かなりな」
「難しいわよね」
「そうだよな」
 皆バッフ=クランの戦力を聞いてまた考える顔になってしまった。
「少なくとも今の追っ手は何とかしないと」
「かなりの数が来てるだろうし」
「それにこっちの目的地もあるしね」
 こんなことも話した。
「キャンベル星に行かないと」
「それとボアザンも」
「目的地は遠いがな」
 今言ったのは京四郎である。
「それでも進まないといけないからな」
「確かに」
「だから余計に」
「しかし焦っても仕方ないな」
 一矢も出て来た。
「星間連合には間違いなく近付いているんだしな」
「ガルーダの祖国か」
 豹馬の顔がここで鋭くなった。
「あいつの国にか」
「ガルーダ、見事な奴だったな」
 洸は彼のことを思い出していた。
「敵とはいえな」
「ああ、あいつは心があった」
 豹馬もまたガルーダのことを話す。
「その心と共に死んだんだ」
「ロボットであってもか」
 タケルも考える顔になる。
「心があればか」
「そうだ、心だ」
 マーグも言ってきた。
「人という存在を決定するのは心だ」
「心ですか」
「生物として人であろうともだ」
 マーグは今度はロゼに話す。
「心が人でなければ人ではないのだ」
「ではズールは」
「人ではなかったのだ」
 ズールについてはそうなるいのだった。
「人の心がなかったからだ」
「そうなりますか」
「私は人でありたい」
 これは己に向けた言葉だった。
「是非な」
「はい」
 ロゼもマーグのその言葉に頷いた。
「私もです」
「ロゼ、何があろうともだ」
「わかりました」
 二人は頷き合う。そこには確かな絆があった。
 そしてナタルがだ。ここで一同に告げた。
「それでだが」
「はい、ナタルさん」
「何かあるんですか?」
「お茶を淹れたのだが」
 言うのはこのことだった。
「飲むか」
「お茶ですか」
「紅茶ですか?」
「いや、抹茶だ」
 それであった。
「茶道のお茶だ。どうだ」
「日本のですか」
「あの緑の」
「お茶菓子もある」
 ナタルはそれもあるのだと話す。
「和菓子だがどうだ」
「いいわね」
 マリューはその組み合わせを聞いて微笑んだ顔になった。
「お抹茶は身体にいいし眠気も取れるしね」
「いいこと尽くめってわけですね」
「つまりは」
「そうよ。ただしね」
 マリューはここで言い加えた。
「正座はしないわよね」
「はい、それは」
 ないと答えるナタルだった。
「ごく普通にお椀で」
「飲めばいいのね」
「私も正座は苦手ですし」
 ナタルはこうも言った。
「ですから」
「あら、貴女も正座は駄目なの」
「慣れません」
 マリューにまた答えた。
「あれはどうしても」
「そうよね。慣れるには時間がかかるわよね」
「というよりあの座り方は」
 ナタルの言葉は曇っていた。
「どうしても慣れません」
「そうそう。あれはとてもね」
「日本人は不思議です」
「また随分と言うな」
 その日本人の一矢の言葉である。
「武道じゃ普通に正座するんだがな」
「生憎だが私は日本人ではないのだ」
 まさにそのままのナタルの今の言葉だった。
「抹茶は好きだが正座は駄目だ」
「あくまでお茶だけですか」
「そうだ。とにかくお茶を淹れた」
 こうナナにも話す。
「皆で飲もう」
「そうですね。是非しましょう」
 アズラエルもにこやかに笑って話す。
「お茶は百薬の長ですし」
「おっさん、それ酒だろ?」
「お茶じゃないじゃない」
「間違い」
 すぐにオルガ、クロト、シャニが突っ込みを入れる。
「お茶ってそんなに身体にいいのかよ」
「僕も嫌いじゃないけれどさ」
「菓子も好きだ」
「お茶はいいものですよ」
 アズラエルはその三人に対しても笑顔を向ける。
「侘び寂びですし」
「日本の心だな」
 サンドマンも出て来た。
「ではだ。ここはだ」
「皆で飲むとしよう」
 レイヴンもいた。
「戦いの前にな」
「眠気を醒ますだけではないな」
 ロジャーが二人の言葉を聞いて述べた。
「心を和やかにさせる意味もあるのか」
「その通りだ」
 ナタルもそうだとロジャーに話す。
「お茶はその意味でもいいものだ」
「そういうことか。それならだ」
「ロジャーさんもどうか一つ」
「言葉に甘えよう」
 こうナタルに返す。
「それではな」
「私も」
 今度はリンダであった。
「いいですか?」
「勿論だ。皆で飲もう」
 ナタルは彼女にもこう返した。
「その為だからな」
「そうですか。それじゃあ」
「美味しいものは皆で楽しむもの」
 ドロシーの言葉だ。
「だからなのね」
「味は一人だけで楽しむものじゃない」
 ロジャーも言う。
「出来るだけ多くの者で楽しまなければな」
「それじゃあ皆でね」
「飲もう」
 こんな話をして今はリラックスしている面々だった。しかし次の日はだ。
「来たか!」
「数二百万!」
「包囲されています!」
 こう言葉が飛び交っていた。
「四方八方から来ます」
「DSドライブは今は」
「わかった」
 大河はそこまで聞いて頷いてみせた。
「諸君、ここはだ!」
「はい!」
「どうしましょうか!」
「まずは耐える!」
 そうするというのだった。
「いいな、耐えて戦う」
「まずはですか」
「耐えるんですね」
「DSドライブができるまで待つ」
 これが彼の考えだった。
「そしてその後でだ」
「一気に逃げる」
「そうするんですね」
「そのうえでボアザンに向かう」
 彼はまた己の考えを告げた。
「わかったな」
「わかりました」
「それなら」
「我等の生きるも死ぬもここにある!」
 大河の言葉は何時になく強いものだった。
「諸君、それではだ!」
「はい!」
「ここは!」
「生きる為に耐えるのだ!」
 声がさらに強いものになっていた。
「わかったな!」
「では長官!」
 スワンが大河に言う。
「全軍で!」
「包囲している敵を迎え撃つ!」
「了解デス!」
 こうしてだった。彼等はその二百万の大軍を迎え撃った。すぐにその大軍が四方八方から殺到しそのうえでロンド=ベルに攻撃を仕掛けてきた。
「撃て!」
「撃ちまくれ!」
 バッフ=クラン軍の将兵達が口々に叫ぶ。
「ここでロンド=ベルを倒せ!」
「そして巨神を手に入れろ!」
 そして、であった。
「裏切り者を許すな!」
「何があろうともだ!」
「やはりな」
 ギジェはその彼等の言葉を聞いて呟いた。
「私もまた、か」
「あんたも始末するつもりなんだな」
「そうだ」
 こうコスモに対しても返す。
「それがバッフ=クランの鉄の規律だからだ」
「随分と厳しいんだな」
「国家、そして文明を維持する為にはだ」
 だがギジェの言葉は冷静だった。
「それも必要なのだろう」
「何よ、それって」
 カーシャはギジェのその言葉に対して言い返した。
「滅茶苦茶じゃない」
「そう思うのか」
「当たり前よ。裏切り者は許さないって」
「では聞くがだ」
「何よ」
 今度はギジェの言葉に返していた。
「何かあるの?」
「君達は裏切り者を許すか」
 こうロンド=ベルの面々に問うのだった。
「その時はだ」
「裏切り者を?」
「自分達への裏切りをだ。許すか」
「馬鹿なこと言うんじゃねえよ」
 彼のその言葉に反論したのは忍だった。
「俺達はシャピロの野郎を絶対に許しはしねえ」
「そうだな」
「ああ、あいつだけは許さねえ」
 忍は忌々しげな口調でギジェに述べていた。
「絶対にだ」
「そういうことだ。シャピロ=キーツだったな」
 ギジェはシャピロのその名前も口にしてみせた。
「調べさせてもらった」
「それでどうだっていうのさ」
「嫌な男だな」
 沙羅に告げた言葉はこれだった。
「己が神になろうというのか」
「その為に理由をつけてあたし達を裏切ったんだよ」
 沙羅もありのまま話してみせる。
「あいつはそういう奴だったんだよ」
「私もそう見られているのだ」
 ギジェはロンド=ベルの面々に簡潔に述べてみせた。
「己の私利私欲の為にだ」
「バッフ=クランを裏切った」
「そういうことか」
 雅人と亮はすぐにこう察した。
「成程、そうなんだ」
「そう思われているというのか」
「裏切りは常に個人的な感情によるものだ」
 ギジェは今度は真理の一つを話していた。
「公で裏切る者なぞいない」
「そういえばあんたも」
「結局のところは、だな」
「私はギジェへの興味を抑えられない」
 まさにその通りだというのである。
「そういうことだ」
「けれどそれでも」
 レイは敵軍に攻撃を浴びせながらギジェに対して告げた。
「貴方は今ここにいる」
「むっ!?」
「私達と一緒にいる」
 彼女が言うのはこのことだった。
「それは否定できない」
「それはか」
「そう、否定できない」
 また言うのだった。
「私達の仲間であることは」
「自身の文明を裏切った私がか」
「そう。貴方は仲間」
 レイはこのことを繰り返して言ってみせる。
「そのことは」
「否定できないというのか」
「それにイデオンに興味があるならよ」
 ミレーヌも彼に言ってきた。
「イデオンと一緒に入る限り裏切らないってことよね」
「確かに」
 それはまさにその通りだった。
「私は。イデと共にいたい、だから」
「ならそれでいいじゃない」
 ミレーヌはあっけらかんとして述べてみせた。
「難しく考えずにね」
「そうなのか」
「そうよ。それじゃあ今はね」
「うむ、生き残る為に」
「耐えましょう、数は多いわ」
「大丈夫だよ」
 グレートゼオライマーに乗っているマサトの言葉だ。
「この戦い、生き残れるよ」
「ええ、マサト君」
 未久が応えた。
「DSドライブの発動はもうすぐよ」
「あと三分だね」
「それ位なら耐えられるから」
 だからだというのである。
「充分に」
「敵の数もかなり減らしたし」
 ここで、だった。グレートゼオライマーのメイオウ攻撃が炸裂した。そうしてそれによってバッフ=クラン軍のかなりの数を倒していた。
「これなら」
「あと二分よ」
 時間はさらに進んだ。
「二分だけだから」
「生きられるね」
「ええ、そうよ」
「いいか、皆」
 ベスもまた仲間達に告げる。
「あと二分耐えれば生きられる」
「ボアザン方面に向かおう」
 モエラがソロシップの艦橋から告げる。
「DSドライブで」
「そういうことだ。今は耐えるんだ」 
 こうして戦いだった。二分経った。
「よし、今だ!」
「皆集まれ!」
「DSドライブ発動!」
 ロンド=ベルの面々は一斉に集結した。そうしてだった。
 光の中に消えた。その後にはバッフ=クラン軍だけが残された。
 しかし彼等はだ。至って冷静であった。そうして。
「よし、それではだ」
「はい」
「友軍に連絡ですね」
「各宙域の軍に連絡しろ」
 指揮官の言葉だ。
「そしてロンド=ベルが出て来た宙域の軍がだ」
「彼等を迎え撃つ」
「作戦通り」
「そうする。いいな」
 こう言うのであった。
「今はだ」
「了解です、それでは」
「各宙域の軍に連絡します」
「我等の包囲網を甘く見ないことだ」
 指揮官は苦いがそれでも確かな顔で言っていた。
「そう易々と逃しはしない」
「その通りです」
「巨神を今度こそ」
「手に入れてみせる」
 光が消えていくのを見送っての言葉だった。
 ロンド=ベルが出た場所にはだ。やはりであった。
「ユウナ様、これは」
「まさか」
「ああ、もう言わなくていいよ」
 ユウナはうんざりとした顔でトダカとキサカに返した。
「バッフ=クラン軍だね」
「その数百万です」
「後方にいます」
「じゃあまずは反転だね」
 ユウナはうんざりした顔だったが指示は的確だった。
「ここは」
「そうですね、そして」
「迎撃ですね」
「けれどそれでもだよ」
 ユウナはトダカとキサカにさらに言う。
「ここはまたね」
「DSドライブで振り切りましょう」
「それしかありません」
「今は続けて戦う訳にはいかないからね」
 だからだというのだ。
「じゃあベス君、そういうことで」
「わかっています」
 ベスは強い声でユウナの言葉に応える。
「七分待って下さい」
「七分か」
 それを聞いたアルトの顔が険しくなる。
「連戦だ。辛いか?」
「何、いつものことだからな」
「そうですね」
 ミシェルとニコルが笑って言う。
「気にすることはないさ」
「いつも通りやりましょう」
「そういうことだな、それではだ」
 バーンは既に剣を持っていた。ズワースのその手に。
「七分、戦うとしよう」
「総員戦闘用意」
 シーラが指示を出す。
「DSドライブ発動まで耐えましょう」
「させるか!」
 ショウは早速敵を切り裂いていた。それが合図になる。
 激しい戦いが行われる。だが七分経った。
「よし、七分!」
「全員集結しろ!」
「DSドライブ発動だ!」
 これで敵を振り切ったかに思えた。しかしであった。
 出て来たその次のポイントに。やはりいた。
「くっ、ここにもか」
「いる!?」
「どういうことなんだ、これって!」
「まさかこれは」
 ここで察したのはアムロだった。
「バッフ=クラン軍はその数を使って俺達を包囲し待ち受けているのか」
「それってどういうことなの!?」
 セイラがそのアムロの言葉に問い返す。
「数を使ってって」
「バッフ=クラン軍は数が多い」
 セイラに返した言葉だ。
「それを使って広範囲に陣を敷いたんだ」
「それでかよ」
「だからここにも」
「ああ、そうだ」
 カイとハヤトにも答えてみせる。
「だからここにもいるんだ」
「ちっ、数は圧倒的だからな」
「伊達に銀河単位の軍じゃないか」
 カイとハヤトは舌打ちしながら述べた。
「それならまたDSドライブで逃げてもか」
「やって来るっていうのか」
「そうだろうな」
 リュウも苦い顔になっていた。
「俺達はこの広い包囲網を突破できるかどうかだ」
「突破するしかないけれどな」
 スレッガーは結論から話した。
「そしてボアザンに向かわないとな」
「そういうことだな」
 ブライトもスレッガーのその言葉に頷いた。
「例えバッフ=クラン軍がどれだけいようともだ」
「それならどうしますか?」
 セイラは今度は無頼とに対して問うた。
「ここは」
「ベス」
 ブライトはまずベスに問うた。
「今度のDSドライブは」
「六分です」
 それだけかかるというのだ。
「それだけかかります」
「そうか、六分か」
「はい、六分です」
 また言うのだった。
「六分待てばです」
「わかった、なら六分だけ戦う」
 ブライトはベスの話を聞いてあらためて述べた。
「そしてまたDSドライブで移動する」
「わかりました」
「フロンティアの長距離ワープもいいがだ」
 そのことも一応は考慮していた。
「しかし」
「そうだな。あれはDSドライブに比べて時間がかかる」
 フォッカーがその問題点を指摘した。
「それならな」
「ここはDSドライブが一番だ」
 結局はここに結論がいく。
「しかし。例え包囲網を突破してもだ」
「バッフ=クラン軍は追ってくるな」
 アムロはこのことも考えていた。
「大軍がな」
「どのみち戦わなければならないな」
「それならですけれど」
 アイナが言ってきた。
「いいでしょうか」
「アイナ、何か考えがあるのか?」
「ええ」
 シローに対しても答える。
「敵を引きつけて一気に倒せばいいんじゃないかしら」
「一気にか」
「ええ、一気にね」
 そうすればと言うのだった。
「それでどうかしら」
「そうだな」
 アイナの言葉に頷いたのはハマーンだった。
「悪くはないな」
「ハマーンさんもそう思われますか」
「賛成だ。敵はどちらにしろ倒さなければならない」
 ハマーンもまたこの結論を出した。
「それならばだ」
「はい、それなら」
「今はDSドライブで移動するがだ」
 それでもだというのだった。
「敵を引きつけて倒す」
「それならだ」
 今度はバニングが言う。
「四度目の移動の後でだ」
「その後で、ですね」
「そうだ、あらかじめDSドライブでの移動ポイントを大きく出す」
 そうすると。コウに対して話す。
「そしてそこに移動してだ」
「そこで敵を殲滅する」
「然るべき場所で」
「そのポイントを探しそこに移動する」
 また言うバニングだった。
「戦うことに適したポイントでだ」
「よし、それなら」
「そこは」
 話が動いた。しかも大きく。
「ここだな」
「そこですか」
「そこに移ってですか」
「そうだ、そこで戦う」
 エイブだった。彼があるポイントをモニターに出してみせた。
 見ればそこはだ。アステロイドが中心にある場所だった。
「アステロイドの中に入りそこで敵を迎え撃つ」
「あっ、バルマーの基地もありますね」
「しかも」
 何とそうしたものもあったのだ。
「アステロイドの中に」
「しかも廃棄されている」
「ここでエネルギーや弾薬の補給もできそうですね」
 皆このことにも気付いた。
「この基地なら」
「しかし」
 ここで言ったのはヴィレッタだった。
「この基地は」
「知っているのか」
「ああ。バルマー帝国の重要な補給基地の一つだ」
 そうだとレーツェルに答える。
「その基地が何故空になっているのだ」
「おそらく宇宙怪獣の襲撃を受けたのだろうな」
 レーツェルはこう予想を立てた。
「それでだ」
「宇宙怪獣か」
「今はよくあることだ」
 レーツェルノ言葉は冷静なものだった。
「さもなければプロトデビルンかだ」
「どちらにしてもあそこにいる帝国軍はやられたってことか」
 勇は冷静に言った。
「そういうことか」
「そうなるわね。それじゃあとにかく」
 カナンの言葉は。
「あの基地を目指しましょう」
「次の次のDSドライブで」
「そしてバッフ=クラン軍を」
「おそらくはです」
 ルリも予想を立てる。
「今ここにいるバッフ=クラン軍は主力の一つです」
「バッフ=クラン軍の主力の一つ」
「それだけの規模なのか」
「そうです。ですから」
 そしてルリの次の言葉jは。
「ここで彼等を叩けば以後の戦局に大きく影響します」
「そうですね。おそらくその主力は」
 ユリカもだった。その頭脳を働かせた。
「私達ロンド=ベルに対するものです」
「なら余計に叩いておいたら」
「暫くバッフ=クラン軍に悩まされることはない」
「それなら」
「決まりですね」
 また冷静に言うルリだった。
「彼等をあの場所で叩きましょう」
「よし、それなら」
「敵を誘い寄せて」
 こうしてだった。まずは六分戦い次のDSドライブに入った。そしてそれからあらためてその四番目の戦場での戦闘に入った。
 その中でだ。アランがベスに対して問う。
「何分だ」
「今度は八分だ」
 ベスはアランの問いにも答える。
「それだけかかる」
「そうか、八分か」
「しかしだ。居場所を知らしめるならばだ」
 バッフ=クラン軍にという意味である。
「十分以上だな」
「よし、わかった」
 それを聞いてだ。ベスはまず頷いた。
 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「なら十二分でいいか」
「それ位だな」
「その十二分の間にポイントを派手に知らしめてくれ」
 そうしてくれとベスに告げる。
「いいか」
「わかった、ならそうする」
「そしてだ」
 それからだというのであった。
「彼等を引き寄せてそのうえで倒す」
「バッフ=クラン軍を」
「まずはここで戦う」
 しかしその前にであった。目の前の敵であった。
「それでいいな」
「よし、それなら!」
「ここでもやってやるぜ!」
 第四の戦場でも激しい戦いを繰り広げる。そして十二分後。
「DSドライブ発動させる!」
「よし、今だ!」
「行くわよ!」
 全員すぐにその第五のポイントに向かう。ものの見事にであった。
 辿り着いたそこは基地だった。アステロイドの中央のだ。
「ここで布陣するぞ」
「はい」
「すぐにですね」
「そうだ、すぐにだ」
 ブライトはこう全員に指示を出す。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「すぐに」
 こうしてロンド=ベルはすぐに基地を中心としてアステロイドに布陣した。それからすぐだった。
「来ました」
「数にして三千万」
「四方八方から来ます」
「多いな、やはり」
 マシュマーが報告を聞いて述べた。
「敵の数は」
「あら、怖いっていうのかしら」
 そのマシュマーにキャラが笑いながら言ってきた。
「今更」
「それはない」
 マシュマーはそれは否定した。
「ただ、な」
「ただ?」
「ここで一つの決戦と思うとだ」
「緊張するっていうのね」
「数はガルラ帝国のことを思えばどうということはない」
 こう言うとだった。ゴットンも言ってきた。
「あれは桁外れでしたしね」
「あの世界の宇宙規模だったからな」
 そのガルラ帝国全軍を倒したのも彼等だった。
「だからだ。これだけの数でもだ」
「けれど三千万ですか」
「バッフ=クラン軍のおよそ五分の一だ」
 ギジェの言葉である。
「オーメ財団をも合わせてな」
「まさに主力」
「そういうことですね」
「イデノゲージがあがってきている」
 ギジェはそのゲージも見ていた。
「どれだけ激しい戦いになるか察しているのか」
「そうだろうな、今はな」
 コスモもそのギジェに対して告げる。
「三千万だからな」
「じゃあ戦いましょう」
 カーシャはもう戦いに目をやっていた。
「三千万でも戦わないと」
「そうよね」 
 ノリコがそのカーシャの言葉に頷いた。
「はじまらないわね」
「ノリコ、ここはね」
 カズミがそのノリコに声をかけてきた。
「宇宙怪獣と戦うのと同じよ」
「あの時とですか」
「数は問題ではないわ」
 敵の数はというのだ。
「それよりもね」
「私達自身が」
「そうよ、最後まで戦えるかどうか」
 カズミが今考えているのはこのことだった。
「それが問題なのよ」
「わかったわ、お姉様」
 ノリコはカズミのその言葉に頷いた。
「それなら」
「最後までよ」
「はい」
 あらためて彼女の言葉に頷く。そうしてだった。
「ガンバスターのこの力」
「見せてあげましょう」
「諸君!」
 タシロも叫ぶ。
「三千万、多くはない!」
「よし、楽に倒してやるぜ!」
「それなら!」
 こうしてだった。その三千万のバッフ=クラン軍との決戦に入るのだった。 
 バッフ=クラン軍は包囲し一斉に潰そうとする。しかしであった。
「照準はもう定めるな!」
「はい!」
 ホリスがリーの言葉に頷いていた。
「それよりもですね」
「撃て!弾幕を張れ!」
 これがリーの今の指示だった。
「そして敵を少しでも多く倒せ!」
「わかりました!」
「撃てるだけ撃て!」
 こうも言うのだった。
「いいな、そうしろ!」
「了解です!」
「敵が数で来るならだ」
 リーはハガネの一斉射撃を見ながら言う。その中で多くの敵が火の玉となっていた。
「こちらはだ」
「質だな」
「そうだ」
 ブレスフィールドにも言葉を返す。
「質では負けてはいない。むしろ」
「むしろか」
「勝っている」
 こうまで言うのだった。
「完全にな」
「それでか」
「この戦い勝つ」
 勝てる、ではなかった。これだった。
「間違いなくな」
「それではだ。今はだ」
「再び一斉射撃だ」
 また攻撃命令を出した。そうしてだった。
 前の敵を一掃する。そしてまた来た敵を倒すのだった。
「スーパー稲妻」
「キーーーーーーーーーーーーーック!!」
 ガンバスターが蹴りを放つ。それで敵をまとめて叩き潰していた。
 そしてドモンもだった。
「超級覇王!」
 そして放つ技は。
「幻影弾-------------ッ!!」
 それでやはり敵を粉砕していく。バッフ=クラン軍は万単位で粉砕されていた。
「な、何て奴等だ!」
「三千万の大軍を粉砕していく!」
「巨神だけではないのか!」
「私達を甘く見ないことね!」
 ノリコが狼狽する彼等に対して言う。
「三千万でも四千万でもね!」
「私達は敗れはしないわ!」 
 カズミもいた。
「何があろうとも!」
「この戦い、勝つわ!」
「くっ、それでもだ!」
「我等にも意地がある!」
 バッフ=クランの面々も下がろうとはしなかった。次々に攻撃を仕掛ける。
「伝説の巨神を手に入れる!」
「絶対にだ!」
「それならだ!」
 またドモンが動いた。
「この俺を倒してからにしろ!」
「ドモン!」
 そのドモンにレインが言う。彼女もライジングガンダムに乗っている。
「サポートは任せて!」
「レイン!」
「横から来る相手は私が引き受けるわ」
 言いながらその薙刀で敵を両断していく。
「だからね」
「済まない」
「ふむ、ドモン殿よ」
「波に乗ってるね」
 キメルとアレンビーも来た。
「この戦い、一つの正念場」
「だから余計になのかしら」
「いや、俺はどんな戦いであろうともだ」
 ドモンはその二人に対して告げる。拳で敵機を吹き飛ばしながら。
「全力で戦う。それだけだ」
「それだけか」
「そうなのね」
「そうだ。例えどうした戦いでもだ」
 彼は言うのだった。
「この拳を振るうのみ!」
「よし、さすればだ!」
「私達も!」
 キメルもアレンビーもだった。動いた。
 杖で敵を潰しフラフープで切り裂く。
「この程度の敵なぞ!」
「どれだけいても怖くはないわよ!」
 そしてイデオンもであった。
 イデオンガンを出す。そうしてだった。
「ギジェ、ゲージは?」
「充分だ」
 こうコスモに答えるギジェだった。
「マックスになっている」
「そうか、それなら」
「いけるわね、コスモ」
 カーシャも言ってきた。
「ここは」
「ああ、やるぞ!」
 コスモの声がうわずった。
「イデオンガン、発射だ!」
「これがイデの力なのか」
 ギジェはBブロック左座席で呟いた。
「何処まで恐ろしい力なのだ」
「いけーーーーーーーーーーーーっ!!」
 その攻撃が放たれてだった。また多くの敵が消えた。
 暫くするとだった。バッフ=クラン軍は消えていた。全機である。
「三千万の大軍がか」
「消えた」
「遂に・・・・・・」
 戦闘は一日続いた。その結果だった。
 戦場にいるのはロンド=ベルの面々だった。彼等以外にはいなかった。
「やりましたな」
「うむ」
 ダグラスはベンの言葉に頷いた。
「我々は勝った」
「バッフ=クラン軍の大軍との戦いに」
 勝ったというのだった。
「よし、それではだ」
「はい、まずは軍を集結させて」
「休息を取ろう」
 ダグラスもだった。一日かかった戦闘で疲労の極みにあった。
 それでこの指示を出した。そうして。
「その後でボアザンに向かうとしよう」
「わかりました」
「ダグラスさん、ですが」
 しかしここでだ。命が彼に言ってきた。
「今のこの場所ですけれど」
「何だ?」
「ボアザンと少し離れています」
 そうだというのだった。
「少し遠回りになってしまいますが」
「仕方ないな」
 ダグラスはそれを聞いて少し残念そうな顔になった。
「しかしそれでもだ」
「それでもですね」
「ボアザンに向かうしかない」
 こうスタリオンにも話す。
「多少の遠回りでもな」
「そうですね。その通りです」
 スタリオンもダグラスのその言葉に頷いた。
「それでは休息の後で」
「ボアザンに向かう」
 ダグラスはあらためて言った。
「その際だ」
「その際?」
「休息は無理に取らせる」
 これはベンへの言葉だ。
「それはいいな」
「わかりました」
「飲んだり騒いだりすることは許さん」
 ここを強調するダグラスだった。
「とにかく寝ろ」
「しかし宴会はどうしマスか?」
 スワンは少し真剣にこのことを尋ねた。
「恒例のそれは」
「その後だ」
 後だというのだった。
「休息の後だ」
「それからデスか」
「とにかく無理にでも休ませることだ」
 ダグラスはこのことを強調した。
「これからの為にだ」
「わかりました、それでは」
 ベンは敬礼と共にあらためて応えた。
「そうしましょう」
「さて、私もだ」
 ダグラスの顔が一気に疲れたものになった。
「休むとしよう」
「お疲れ様でした」
「あの悪ガキ共は絶対に寝かせる」
 誰なのかは最早言うまでもなかった。
「一日の戦闘は疲れるからな」
「そうですね。本当に」
 応える命もかなりの疲労が見られた。
「それじゃあ今は」
「当直以外は休息を取れ」
 具体的な指示だった。
「いいな、すぐにだ」
「はい、戦闘終了」
 命がこのことを告げる。
「皆さんゆっくりと休んで下さい」
 こうしてバッフ=クラン軍との激しい戦いは終わった。そうして戦士達は今は穏やかな休息に入るのだった。次の戦いに備えて。


第四十二話   完


                         2010・7・28 

 

第四十三話 ただ母星の為に

               第四十三話 ただ母星の為に
   バッフ=クランとの死闘を終えたロンド=ベルはまたボアザンに向かっていた。その中でこんな話をしていた。
「バジュラってなあ」
「彼等ですか」
「ああ、あいつ等だよ」
 エイジがルカに対して言っていた。
「何か少しずつ強くなってきてるよな」
「はい、確かに」
「効果的な攻撃とかないのか?」
 そしてこんなことも言うのであった。
「ちょっとな」
「といいますと」
「ビームとか何でもいいんだよ」
「とにかくですか」
「ああ、あの連中に対する決定的な攻撃な」
 ルカに対してさらに話していた。
「そういうのねえのかよ」
「探せばある」
 宗介の言葉だ。
「必ずだ」
「探せばか」
「そうだ、ある」
 宗介はまた言った。
「弱点のない存在なぞいないからだ」
「それはその通りだな」
 弾児もそれには同意する。
「生き物なら弱点は絶対にある」
「ただ問題はだ」
 今度はマリンが言うのだった。
「その弱点が何かまだわからないことだ」
「探すしかないな」
 黄金も考える顔だ。
「何とかな」
「それは何だ?」
 ジークも考える顔になっている。
「一体」
「精神攻撃とか?」
 サリーは首を傾げさせながら述べた。
「けれどバジュラは脳はないのよね」
「それで精神攻撃はないだろ」
 エイジもそれは否定した。
「やっぱりな」
「そうなるのね」
「何か他の攻撃だろ」
 エイジはこう主張するのだった。
「あの連中にはな」
「だとしたら何かしら」
 ソーマも来た。
「それが効く攻撃は」
「それも検証してみる必要があるわね」
 スメラギは腕を組んで考える顔になっていた。
「これから」
「その通りですね。そうした意味ではです」
 留美もまたスメラギと同じ表情になっていた。
「バジュラも厄介な相手ですね」
「その通りだな。徐々に強くなっているしな」
 グラハムもそれは気になっていた。
「気をつけていくか」
「はい、確かに」
「今は」
 ハワードとダリルが彼の言葉に頷く。そうしてだった。
 ボアザンに近付こうとしていた。しかしであった。
「あれっ、こっちは」
「どうした?」
 ブライトがトーレスの言葉に問うた。
「何があった」
「いえ、ここですけれどね」
「うむ」
「キャンベル星の方ですね」
 そちらだというのである。
「どうやらそっちに流されていたみたいです」
「宇宙潮流か」
「気付かないうちにですけれどね」
 それによってだというのだ。
「それでキャンベル星の方に」
「そうか、わかった」
「それでどうしますか?」
 サエグサがブライトに対して問うてきた。
「ボアザンに進路を戻しますか」
「いや、待て」
 ブライトはそれは止めたのだった。
「それよりもだ」
「この進路ならですか」
「そうだ、先にキャンベルを叩こう」
 こう言うのであった。
「そうなればだ」
「わかりました、それでは」
「それにだ」
 ブライトの言葉は続く。
「敵もボアザンに向かうと思っている筈だ」
「はい、その通りです」
 応えてきたのはモニカだった。マクロスクウォーターの艦橋からだ。
「敵はボアザン近辺に戦力を集結させています」
「その裏を衝く形になる」
 それもあるというのだった。
「だからこそだ」
「それで、ですか」
「今は」
「そうだ、キャンベルに向かう」
 また言うブライトだった。
「ここはだ」
「わかりました、それでは」
「このままキャンベルに進みましょう」
 ミーナとラムも応える。そうしてだった。
 キャンベルに向かう。そしてそこに近付くとだった。
「敵です」
「前方にいます」
「数は」
 ジェフリーはミーナとラムに問い返した。
「どれだけだ」
「少ないですね。一万です」
「それだけです」
「そうか、わかった」
 ジェフリーは二人の言葉を聞いて満足した顔で頷いた。
「どうやらキャンベルからあがってきた迎撃戦力だな」
「そうですね。それで間違いありません」
 モニカもこうジェフリーに答える。
「それでは今は」
「このまま戦闘に入る。いいな」
「わかりました」
 こうして前方のその敵に向かおうとする。しかしだった。
「!?」
「向かって来ないだと」
「まさか」
 皆このことに眉を顰めさせた。
「何故だ、何故迎撃に来ない」
「どういうことだ」
 そしてだ。通信が来たのだった。
「ロンド=ベルの方々でしょうか」
「あれっ、通信!?」
「しかもかなり友好的な感じだけれど」
「はい、我々はです」
 モニターに出て来たのはだ。温厚な顔をしたキャンベル星人の者だった。
「キャンベル星の者です」
「俺達と戦うつもりか?」
「いえ」
 豹馬のその問いに首を横に振るのだった。
「そのつもりはありません」
「そうなのかよ」
「我々は女帝ジェネラに反対する者達です」
「むっ、そういえばだ」
 ここでマーグが気付いた顔になって述べた。
「キャンベル星においてもジャネラに反発する勢力は多いと聞いていたが」
「私達もまた、です」
 そうだというのだった。
「女帝の圧政と侵略主義に反対しております」
「それで何でここにおるんや?」
「それですが」
 十三のその問いにも答えるのだった。
「今我々は追われています」
「女帝の軍にかいな」
「はい」
 また十三の問いに答えてきた。
「そうです。それで」
「大変でごわすな」
 大作はそんな彼等に素直に同情した。
「それでは今は」
「はい、何とか逃れようとしていたのですが」
「そこで私達に会った」
 ちずるが言った。
「それでなの」
「私達も戦えます」
 見ればであった。キャンベル星の兵器に乗っている。
「ですからここは」
「いえ、待って下さい」
 小介がここで止めた。
「おそらく追っ手はかなりの数です。貴方達だけで対抗できないでしょう」
「それでもです」
「僕達も協力します」
 こう申し出るのだった。
「ここはです」
「ああ、任せておけよ」 
 豹馬も笑顔で名乗り出る。
「どちらにしろ今からキャンベル星に向かうところだったからよ」
「それで、ですか」
「今から」
「ああ、向かうぜ」
 笑顔でキャンベル星人達に向かう。
「まずは追っ手を倒そうぜ」
「待て」
 だがここでだ。ハマーンが言ってきた。
「そう簡単に信じてもいいものか」
「罠かも知れないというのね」
「はい、この者達がです」
 ハマーンはそのジャネスに反対しているという彼等の軍を見ながらミネバに答えた。
「そうである可能性もあります」
「考え過ぎではなくて?」
「そうであればいいのですが」
 それでもだというのだ。
「しかしここはです」
「警戒すべきだと」
「はい、そうです」
 その通りだというのだった。
「ここはです」
「それじゃあここはどうすればいいの?」
「念の為に監視役を置きましょう」
 そうするというのだ。
「彼等に何があってもすぐに対処できるように」
「その時の為になのね」
「はい」
 まさにそうだというのだ。
「そうですね。それは」
「適役がいるかと」
「それにつきましては」
 ランスとニーがここで出て来た。
「マサト君とロジャー氏です」
「この二人ならどうでしょうか」
「そうだな」
 ハマーンは二人の名前を聞いて考える顔になって述べた。
「あの二人ならな」
「はい、彼等の中に置きです」
「ことがあれば対処してもらいましょう」
「わかった」
 ハマーンは二人のその言葉に頷いた。そうしてだった。
 マサトのグレートゼオライマーとロジャーのビッグオーがキャンベル星人の軍の中に入る。一応名目は彼等への援護となっていた。
 そうしてそのうえでだ。キャンベル軍の追っ手を迎え撃った。
「十万です」
「来ました」
「来たわね」
 ボビーは正面を見据えながら述べた。
「十万ね」
「おそらく今の間にも戦力をキャンベル星に戻してきています」
 エキセドルはこう話すのだった。
「間違いなく」
「この間にですか」
「今も」
「はい、その前にです」
 エキセドルは美穂とサリーに答え続ける。
「我々はあの十万の軍を倒しです」
「そのうえで彼等より先にキャンベル星を解放する」
「そうするというのですね」
「その通りです」
 これがエキセドルの考えであった。
「そうしましょう」
「よし、それなら」
「今のうちだな」
「十万、軽いな」
 彼等にとってはだった。そうしてすぐにその敵に向かう。
 十万の敵にすぐに攻撃を仕掛けた。
 スサノオもだ。その敵に向かう。
「いい、慎悟君」
「はい」
 慎悟は真名のその言葉に頷く。そうしてだった。
 右手のその剣で敵を一閃する。それでまず一機撃墜した。
「まずは一機ね」
「ええ、まずはね」
「そしてここから」
「倒していきましょう」
 彼等だけではなかった。ロンド=ベルの面々は敵を次々に倒していく。気付けば十万の大軍はその殆どを倒されてしまっていた。
「何と、あれだけの大軍を」
「一瞬にですか」
 驚いたのは一万の彼等である。
「まさか本当に一瞬で」
「倒されるとは」
「まあこの程度ならね」
 セルゲイがここで彼等に応える。
「いつものことだし」
「これがいつもとは」
「これだけの戦いがですか」
「はい、そうです」 
 タチヤナもその彼等に応える。
「ですから御気になさらずに」
「何と、それがロンド=ベルの戦いなのですか」
「そこまで激しい戦いを」
「だから驚く必要はないよ」
「全くです」
 また言うセルゲイとタチヤナだった。
「ところでこれで戦いは終わったけれど」
「御願いできますか」
 そしてあらためて彼等に言うのだった。
「キャンベル星までの案内を」
「それを」
「あっ、はい。それならば」
「お任せ下さい」
 すぐに答えてきた彼等だった。
「どうかここはです」
「道はよく知っていますので」
「そうですか。それなら」
「是非」
 今度は雲儀と走影が応えてきた。
「御願いします」
「キャンベル星までの案内を」
「我々の他にも抵抗勢力はいますし」
「彼等とも連絡を取りましょう」
「他にもいるのか」
「そうみたいね」 
 ザイオンとレイが彼等の言葉を聞いて述べた。
「それならだ」
「味方は多い方はいいし」
「そうね」
 華都美もその意見に頷く。
「それじゃあ」
「はい、わかっています」
「すぐに連絡を」
「ただ」
 ハマーンはここでふと言った。
「罠でなければいいがな」
「何だよ、まだ疑ってるのかよ」
「警戒はしておくべきだ」
 こうジュドーにも返す。
「その可能性がゼロでない限りはな」
「じゃああれかよ。俺達を安心させて一気にか」
「それも有り得る」
 やはりこう言うのだった。
「注意しておくことだ」
「そうか。それならな」
「ましてやここは敵地だ」
 このこともハマーンを警戒させていた。
「何があるかわからないのだからな」
「まあ考え過ぎだと思うがね」
「そうですね。ここは信じましょう」
 ダバも言ってきた。
「この人達を」
「甘いと思うがな」
「人はできるだけ信じたいですから」
 ダバの考えだった。
「ですから。ここは」
「そうか。それでか」
「はい、この人達を信じましょう」
 温和な顔で語る。
「ここは出来るだけ」
「そうだな。俺もそうするぜ」
 ジュドーはダバに賛成した。
「確かな証拠っていうと困るけれどな」
「いえ」
 しかしだった。ここでシーラが言ってきた。
「大丈夫です」
「大丈夫なのですか」
「はい、安心して下さい」
 こうカワッセにも述べる。
「この方々の中には邪なものはありません」
「そうですか。それなら」
「はい、それでは」
「そうか。邪なものはないか」
 ハマーンはそれを聞いてまずは安心した。
「ならいいがな」
「どうやらジャネラの圧政は相当なものですね」
 ロゼはこのことを見ていた。
「次々に軍が来ています」
「キャンベル星人の反乱軍がか」
「ええ、見て」
 こうタケルにも話す。するとだった。
 確かにだった。次から次に軍が来る。それはかなりの数だ。
「もうこれだけの軍が」
「凄いな、三十万はいるな」
 盾人はその軍を見て言った。
「それにまだ来る」
「戦力以上の意味がある」
 今言ったのはガスコンだ。
「これはな」
「心か」
 弾児はそれだと見抜いた。
「それでか」
「そうだ、それだ」
 まさにそれだというガスコンだった。
「キャンベルの戦い、勝てる」
「心が離れては勝てる戦いはありません」
 エレは静かな声で述べた。
「ですから。この戦いはおのずと決まっています」
「そうですな。その通りです」
 エイブがエレの言葉に応える。
「それでは。我等も」
「はい、進みましょう」
 こう促すのだった。
「これから」
「キャンベル星へ」
 こうしてだった。ロンド=ベルはキャンベル星人の反乱勢力と合流しながら星に向かう。その途中も解放軍が次々と来ていた。
「何か凄いことになってよな」
「そうだな」
 マーグが豹馬の言葉に頷いていた。
「まさかこれ程までとは」
「百万超えるんじゃねえのか?」
「百万を超えるのはいいけれど」
 ちずるはそれはいいとした。
「けれどね」
「何だよ、何かあったのかよ」
「二人共声がそっくりだから」
 ちずるが今言うのはこのことだった。
「どっちがどっちか。口調でしかわからないけれど」
「そういえばそうだな」
 マーグもちずるのその言葉に頷く。
「私と豹馬の声は似ているな」
「そっくりにしか思えないわ」
「自覚はしている」
 こう言うのだった。
「というよりかは今した」
「俺もだよ。何かマーグとは別人の気がしないしな」
「そうですよね。それは」
「私達もですし」
 ロゼとファーラもだった。
「別の世界にいたというのに」
「別人の気がしません」
「ああ、そういえば二人共」
 ハヤトがその二人を見ながら言ってきた。
「あれだよな。フラウにも似てるよな」
「っていうかそっくりじゃないのか?」
 カイも首を捻りながら話す。
「カーシャはミライさんそっくりだしな」
「そうだよな。似ているよな」
「そういうカイさんだってあれだよな」
 豹馬がそのカイに言った。
「勝平のツレだったあいつに」
「ああ、それだけでわかるさ」
 充分にだった。
「あいつか」
「似てるよな、本当に」
「言われるさ。俺もそういう相手が多いんだよ」
 カイはこう話す。
「それでなんだよ」
「俺なんか特にそうだしな」
 サンシローだった。
「一体どれだけいるのかわからない位だ」
「それって羨ましいんだけれど」
 アウルだった。
「スティングにもステラにもいて俺はいないから」
「そういえばそうだよな」
「そうよね」
 そのスティングとステラも出て来た。
「俺にはアレックスさんがいるからな」
「ステラ多過ぎる」
「羨ましいぜ、それってよ」 
 アウルは心からそう思っていた。
「ったくよ、キラにもそういう相手がいるしよ。ミリアリアだってサイだってな」
「言っても仕方なく・・・・・・はないな」
 ムウもこれは言えなかった。
「俺も結構いるしな」
「そういえば貴方他の世界でキラ君に思いきり殴られてなかったかしら」
「ああ、漢祭りだよな」
 マリューにその世界のことを話すムウだった。
「サンダースさんがなあ。坊主をこれでもかって殴り飛ばしてな」
「あれ凄いわよね」
「大将死ぬんじゃないかって思ったぜ」
 ムウの口調は何処かその世界のものになっていた。
「死なないけれどな」
「私は私でね」
 カナンまで来た。
「軍神になってるし」
「軍神、そうだな」
 今度はトロワだった。
「俺もあの世界は好きだ」
「若草色好きよね」
 カナンはそのトロワに問うた。
「そうよね」
「好きだ」
 実際にそうだと答えるトロワだった。
「落ち着く色だ」
「何か滅茶苦茶なことになってるな」
 バルトフェルドもいた。
「僕は僕で何かやたら巨大な天下人だしねえ」
「あれはおかしいのではないですか?」
 ラクスでさえ突っ込むことだった。
「誰だと思いましたし」
「そうですよね。あれは私も驚きました」
 今度はユンだ。
「思わず白馬に乗りたくなりました」
「それで影が濃くなるのかい?」
「いえ、ならないです」
 バルトフェルドの言葉に悲しい顔で返すユンだった。
「どうしてもなりません」
「そういえばハムにされていましたね」
「あれは悲惨でした」
 レフィーナにも答える。
「私は。あの世界では」
「学校の世界でもかなりまずくないかい?」
 今突っ込んだのはクルツである。
「包丁をピークに今攻略対象じゃないだろ」
「夏の日々からそうなんですよね」
 また悲しい顔になるユンだった。
「どうしたものでしょうか」
「そのうちいいことあるわよ」
 エリエラが言う。
「きっとね」
「そのうちですか」
「まああれだけれどな」
 今度は黄金が言う。
「運命ってあるけれどな」
「運命ですか」
「ああ。例えばテッサさんはな」
 黄金はそのテッサに対して話していた。
「参謀とか指揮官になる運命なんだろうな」
「そうなる、ですか」
「そういうのに向いてるしな」
 彼女の素養を見抜いた言葉だった。
「タイプ的にな」
「有り難うございます」
「そうだよな、確かに」
「テッサさんはね」
「落ち着いてるしな」
 錫石に青銅、黒銅もそうだという。
「ゴライオンはゴライオンで向き不向きがあるし」
「そういうのもやっぱり」
「運命なんだろうし」
「運命か」
 甲児がここで言った。
「まああるけれど俺は強引に変える方だよな」
「御前はそれでいいだろうな」
 闘志也はその甲児に話した。
「運命って結局自分で切り開くものだしな」
「ああ、だから俺は拳でやってやるぜ」
 甲児らしい言葉だった。
「これからもな」
「それで暴走はしないでね」
 さやかはそれは釘をさした。
「甲児君よくやるから」
「ちぇっ、わかってるよ」
 そう言われると少し弱るのだった。
「さやかさんは相変わらず厳しいな」
「甲児には少し厳しくしないとね」
 マリアも笑って話す。
「それでもへこたれないし」
「何だよ、マリアも言うのかよ」
「けれど兜って実際で」
「馬鹿でやんすから」 
 ヌケとムチャは容赦がない。
「かなり言ってもそれでも」
「わからないでやんすよ」
「御前等まで言うのかよ」
 甲児はさらに不機嫌になった。
「ったくよ、何だってんだよ」
「気にしろだわさ」
 ボスもこんな有様だ。
「ちょっとは」
「そうよね。少しはね」
 小鳥も周りの言葉に頷く。
「反省してもらわないとね」
「それは御前もだ」
 カティはパトリックを見ていた。
「少しはな」
「えっ、俺ですか」
「いつも何を考えて生きている」
 こう彼に問う。
「何をだ」
「そんなの決まってるじゃないですか」
 パトリックの返答は即座であった。
「何言ってるんですか」
「何をだと?」
「そうですよ、大佐のことですよ」
 こう来た。
「それ以外の何だっていうんですか」
「待て」
 カティは彼のその言葉を受けてまずは一呼吸置いた。
「御前の言葉は聞いた」
「はい」
「前から何度も聞いていた」
 それだけラブコールを受けているということである。
「そして返答もその都度しているな」
「今度こそ御願いします」
「では言おう」
 こほんと咳払いをしてそのうえで、だった。
「私の返答はだ」
「大佐の返答は」
「目を覚ませ!」
 言いながらいきなりハンマーで殴る。
「馬鹿も休み休み言え!」
「ちょっと、いきなりハンマーですか!」
「今度こそ息の根を止める!何が私のことで一杯だ!」
「だって事実ですから!」
「事実も何もあるか!」
 また殴るカティだった。
「不死身だろうと何だろうと地獄に落としてやる!」
「ちょ、ちょっと大佐!」
「ここは押さえて!」
 周りも慌てて彼女を止めに入る。
「大佐御乱心!」
「何とかしろ!」
 こんな騒動を起こしながら先に進むのだった。何はともあれキャンベル星解放の戦いは今はじまったばかりであった。だが確実な一歩を踏めた。


第四十三話   完


                                         2010・7・31  

 

第四十四話 キャンベル星人、立つ

          第四十四話 キャンベル星人、立つ
「ジャネス様、反乱勢力がです」
「次々と結集しております」
 ワルキメデスとダンゲルがジャネスに告げていた。
「その数百万以上」
「しかもロンド=ベルまでです」
「抜かったか」
 ジャネスは二人の報告を受けて顔を顰めさせていた。
「まさか我等の方に先に来るとはな」
「進路からまずはボアザンと思ったのですが」
「予測が外れました」
 二人もこう述べる。
「何とか軍をこちらまで戻せましたがかなりの強行軍でした」
「またズ=ザンバジル皇帝からも」
 この名前も出て来た。
「どうか戻って来て欲しいと言ってきています」
「あれだけの戦力を集結させておきながら」
「捨て置け」
 ジャネラは素っ気無く答えた。
「あの男はな」
「見捨てるのですか」
「そうせよと」
「所詮小者」
 彼のことはよくわかっている言葉だった。
「いずれは切り捨てるつもりだった」
「ではまずは我等の戦力でロンド=ベルを」
「そうするのですね」
「そうだ、まずはロンド=ベルを倒す」
 何につけ最初は彼等だった。
「そしてそれと共にじゃ」
「反乱勢力を一掃し」
「我等の万全の支配をですね」
「左様、そうする」
 また言うジャネスだった。
「ボアザンはその後でどうとでもなる」
「確かに。ボアザンに人はいません」
「あの皇帝も小者です」
 二人もまたズ=ザンバジルのことはよくわかっていた。
「では。まずは全軍を以ってですね」
「ロンド=ベルと反乱勢力を」
「出撃せよ」
 ワルキメデスとダンゲルに告げた。
「よいな、すぐにだ」
「はい、それでは」
「今より」
 こうして彼等はロンド=ベルへの迎撃に出陣した。また戦いが迫っていた。
 ロンド=ベルの周りにはだ。大軍が集結していた。
 どれもキャンベル星人の軍だ。その数は。
「おい、百万超えたぜ」
「凄いですね」
 ディアッカにルカが応えていた。
「ここまで集まるなんてな」
「予想外ですね」
「そうだよな。まあそれだけな」
 ディアッカはここで冷静に分析をして述べた。
「あのジャネラっておばさんのやってることが酷いんだろうな」
「それで、ですか」
「やっぱりそれでだろ」
 こう話すのだった。
「さもなければここまで反乱軍が多くなるか?」
「そうよね。幾ら何でもこれって」
「多過ぎるし」
「まだ来るし」
 アサギとマユラ、ジュリもそれを見て言う。
「百万、いえ二百万は来るわよね」
「そうよね、どんどん集結してるし」
「最後には」
「あとボアザンもあれだしな」
 今度はジャックが言った。
「政治滅茶苦茶だしな」
「そうですよね。どちらも自分のことしか考えない独裁者がいますし」
「そうした意味ではバルマー以下ですし」
 フィリスとエルフィもそこを指摘する。
「おのずと反乱も増えます」
「問題はそれに対する対処ですが」
「武力で制圧しかないな」
 ミゲルの言葉だ。
「そうした手合いのすることはな」
「政治家として最低最悪だがな」
 ハイネも駄目出しだった。
「そんなことではな」
「全くだ。ではこの戦いはだ」
 レイは冷静に告げていた。
「勝つ。負ける要因がない」
「そうなるのか?」
「なるよ、絶対にね」
 いぶかしむカガリにユウナが話してきた。
「漫画の悪い領主をやっつけるみたいなものだよ」
「ああした感じか」
「こう言うとわかりやすいよね」
 あえてカガリにわかるように話すユウナだった。
「そういうことなんだ」
「ううむ、では私達は悪者を倒す正義の味方か」
「結果としてはそうなるね」
 実際にそうだと話す。
「まあ問題はね」
「問題は?」
「そうなるにはだよ」
 さらに話すユウナだった。
「色々と条件があるんだよ」
「条件とは?」
「まず勝ったからといって調子に乗らない」
 最初に言うのはこのことだった。
「次の戦争があるしね」
「ボアザンか」
「確かに僕達はキャンベル星の解放も目的だよ」
「も、か」
「そう、究極の目的はわかってると思うけれど」
「宇宙の崩壊を止めることだな」
 カガリもそれはわかっていた。
「それだな」
「そう、それを忘れずにね」
「つまりキャンベル星での戦いはほんの一つに過ぎないんですね」
 フレイはカガリよりもわかっていた。
「だから次の戦いの為に」
「そう、慢心してはいけないんだ」
 ユウナはあらためて話した。
「まだまだ先があるからね」
「そういうことか」
「そう、そして」
 ユウナはさらに言った。
「慢心しておかしな行動はしないこと」
「それか」
「そう、行動は謹んで」
 ユウナはこのことも話す。
「特に船の外ではね」
「つまりあれですか」
 またわかったフレイだった。
「いつも艦内でしているみたいなどんちゃん騒ぎはですか」
「その後の馬鹿騒ぎもね」
 それもであった。
「絶対に外ではしないこと」
「ロンド=ベルの評判が落ちるからですね」
「何も自分達から評判を落とすことはないからね」
 ユウナは政治家として語っていた。
「そういうことだから」
「ではこれまで通り艦内で騒ぐぞ」
 カガリはユウナの言葉をこう割り切っていた。
「それでいいんだな」
「出来ればカガリはね」
「私は?」
「檻の中に入っていて欲しいだけれどね」
 こんなことを言うのだった。
「本当にね」
「おい、それはどういう意味だ」
「そんなの決まってんだろうがよ」
 最高のタイミングだった。シンである。
「もうよ」
「何だというんだ?」
「猿は何処に入るんだよ」
 いきなりこれだった。
「何処にだよ」
「檻だ」
「だからだよ。猿は檻の中に入るんだよ」
 いつもの売り言葉だった。
「わかったか、この雌猿」
「よくわかった」
 カガリもその言葉に頷く。
「それではだ」
「何だ?やろうってのか?」
「遺書を書け!」
 いきなりこれだった。
「今日という今日は殺してやる!」
「面白い、決着つけてやるぜ!」
 お互いの胸倉を掴み合っていた。
「ここでだ、死ね!」
「今日こそは終わらせるからな!」
「何でこの二人って」
 フレイは今日は傍観者になるつもりだった。
「こうまで仲が悪いのかしら」
「五月蝿い、禿!」 
 シンは何故かフレイをこう罵った。
「ヒス起こしてばかりでないでたまにはまともな料理作れ!」
「何ですってえ!?」
 これでフレイも参戦が決定した。
「言ったわね、カガリ助太刀するわよ!」
「うむ、二人でこの不埒者を始末するのだ!」
「よし、二人がかりで充分だ!」
 それで臆するシンではなかった。かくして壮絶な、猫の喧嘩の様な有様になった。
 皆そんな三人から離れる。そのうえでごく普通にお喋りを続ける。
「いつものことだからねえ」
「慣れましたね」
 輝がユウナに対して言う。
「いい加減」
「全く。カガリも相変わらずだね」
 一応声だけは嘆いてはいる。
「喧嘩っ早いねえ」
「そうは言っても止めないんですね」
「絶対に」
「止める時は止めるよ」
 ユウナは一応周りにはこう答えた。
「けれどね」
「殴られるからですね」
「それで」
「何度殴られたか」
 仲裁に入っていつもだったのだ。
「わからない位だからねえ」
「だから今はですか」
「見ているだけ」
「それに徹するんですね」
「うん、今はね」
 実際にそうするというのだった。
「そうさせてもらうよ」
「まあそれが一番ですね」
「確かに」
 皆何だかんだでユウナのその判断に賛成した。
「今は三人で、ですからね」
「二対一」
「かなり物騒な喧嘩ですし」
 シンはカガリ、フレイと取っ組み合い、掴み合いの喧嘩をしている。服も髪もボロボロになっている。
「あんな中に入ったらそれこそ」
「何がどうなるかわかりませんよ」
「ぶっちゃけあれだしね」
 ユウナはこんなことも言った。
「喧嘩をしなかったらカガリじゃないよ」
「それがなかったらですか」
「そこまで言いますか」
「あれなんだよね。昔から手がつけられなくて」
「はい、全く」
「ご幼少のみぎりからそうでした」
 トダカとキサカもユウナの後ろからしみじみとした口調で語る。
「まず手が出られますし」
「マナーやそういったものは全く覚えてくれませんし」
「いや、本当にこんなのだったからねえ」
 その喧嘩をするカガリを見ての言葉である。
「けれどそれもね」
「はい、是非婿にという方が出られましたから」
「有り難いことに」
「あの、待って下さい」
 アスランはここで三人に視線に気付いた。
「何でそこで俺なんですか」
「アスラン君、頼んだよ」
 ユウナはこれ以上はないまでに温かい目で語ってみせた。
「カガリのことをね」
「ですから何でそんな」
「頼んだぞ」
「心からの御願いだ」
 トダカとキサカも言う。
「これでオーブは安泰だ」
「磐石だな」
「いやあ、肩の荷が下りたよ」 
 ユウナはとても明るい声で言った。
「オーブの一番の悩みが解消するからね」
「全くですね、ユウナ様」
「では地球に戻ったら婚礼の準備を」
「うん、しよう」
 ユウナ達は勝手に話を進めていた。
「仲人は僕がするからね」
「ではパレードや式典の細かい部分は我々が」
「国を挙げて行いましょう」
「だから何でそうなるんだ」
 アスランはもう何を言っていいかわからなかった。
「ユウナさん達はどうしても俺とカガリを結婚させたいのか?」
「そうじゃないのか?」
 今言ったのはナガレだった。
「だからこそ。これだけな」
「迷惑だよ」
 アスランの紛れもない本音だ。
「結婚なんてまだ」
「まだか」
「はい、そうです」
 こうナガレに話す。
「だって俺まだ十代ですし」
「昔は十代で結婚していたが」
「昔は昔じゃないですか」
「確かにそうだがな」
「それじゃあやっぱり」
「しかしだ。君はどう思っている」
 ナガレはここでアスラン自身に問うた。
「君はだ」
「俺は、ですか」
「そうだ。君はどう思っている」
「どうって言われますと」
「大事なのは君がどう思っているかだ」
 またアスランに対して問うた。
「それはどうなのだ」
「それは」
「君が憎く思っていないならだ」
 それならばというのだ。
「わかるな」
「それじゃあ俺は」
「とりあえず周りは気にするな」
 他ならぬユウナ達のことだ。
「君が決めることだ」
「わかりました。それじゃあ」
 そんな話をしながらだった。彼等はキャンベル星に向かっていた。そしてそのキャンベル星の手前まえ来た時だった。
「前方に敵」
「多いです」
 すぐにこう報告が入った。
「敵の数五百万」
「それだけいます」
「五百万となるとだ」
 大文字がそれを聞いて言う。
「今のキャンベル軍の主力だな」
「そうですね。間違いなく」
 サコンが大文字の言葉に応える。
「状況から考えても」
「それに対して我々はだ」
 大文字はあらためて述べた。
「まず解放軍が二百万」
「そして我々です」
「数としては劣勢だ」
 それは覆い隠せぬものだった。数のことはだ。
「だが。それでもだ」
「はい、勝機はあります」
 サコンは言った。
「この戦い、必ず」
「それではですが」
 金色の髪と髭の重厚な顔立ちの男が大空魔竜のモニターに出て来た。彼はであった。
「デウス殿」
「はい」
 こう大文字にも応える。
「どうされるのですか、この戦い」
「はい、宜しいでしょうか」
 まずはこう述べるのだった。
「貴方達解放軍はこのまま正面から攻めて下さい」
「キャンベル軍の主力にですね」
「そうです。そうして下さい」
 まずはそうしてくれというのだった。
「そして我々はです」
「貴方達は一体どうされるのですか」
「我々は我々で戦わせてもらいます」
 そうするというのだった。
「それでお任せ下さい」
「わかりました」
 それに頷くデウスだった。そうしてであった。
 戦いがはじまった。まずワルキメデスとダンゲルが動いた。
「よし、全軍前に進め!」
「いいな!」
 その正面の解放軍を見てであった。
「そしてそのうえでだ」
「叛徒共を全員倒せ!」
 こうしてそのまま軍を進ませる。それに対してだ。
 解放軍は迎撃の陣を敷く。それで迎え撃とうとする。
「いいか、まずはだ」
「はい、ここは」
「どうされますか」
「守るのだ」
 デウスはこう同志達に対して告げていた。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「ここは」
 こうしてだった。彼等はそのキャンベル軍を迎え撃つ。忽ちのうちに激しい戦いがはじまった。両軍の間に多くの炎が飛び交う。
「撃て!撃て!」
「一機も逃すな!」
「退くな!」
 お互いに命令を出し合う。
「防げ!」
「攻めろ!」
 五百万と二百万の軍が攻防を繰り広げる。まずはキャンベル軍が優勢に見えた。
「ふん、数で優勢ならばだ」
「そのまま押せる!」
 ワルキメデスとダンゲルはそれぞれ言っていた。
「このまま押し潰せ!」
「いいな、そして我等の支配を磐石にせよ!」
 また指示を出す。
「そしてロンド=ベルだ」
「あの者達も倒せ!」
「!?そういえばだ」
 先に気付いたのはワルキメデスだった。
「ロンド=ベルの姿が見えぬな」
「そういえば」
 次にダンゲルも気付いた。
「何処だ、何処にいる」
「この戦場にいる筈だが」
 彼等の姿が見えないことに疑念を抱いたその時だった。不意にだ。
「司令、大変です!」
「後方です!」
 報告が届いた。
「後方に敵です!」
「あれは!」
 そしてだ。彼等にとって最も聞きたくない名前が出された。
「ロンド=ベルです!」
「後方から来ます!」
「くっ、そういうことか!」
「後ろからか!」
 ワルキメデスもダンゲルもここで気付いた。
「後方に回り込んでそのうえでか」
「攻めて来るか!」
「よし、成功だ!」
 ここでだ。フォッカーが叫んだ。ロンド=ベルは全軍でキャンベル軍の後方に出ていた。そしてそこから攻めようというのである。
「全軍このまま総攻撃だ!」
「敵軍を一気に叩き潰せ!」
「総攻撃だ!」
 こう言ってであった。そのキャンベル軍に総攻撃を浴びせた。
 カチーナもだ。最早当たるを幸いに撃ちまくっていた。
「もらった!どんどん叩き落してやるぜ!」
「あの、隊長」
 その彼にタスクが言う。
「無茶苦茶なことしてません?」
「何がだよ」
「前の敵をとにかく撃って斬っていますけれど」
 それが彼女の今の戦いだった。
「そんなことをしたら」
「いいんだよ」
 だがカチーナはそれにこだわらなかった。
「今はな。これでいいんだよ」
「いいんですか?」
 レオナもその言葉には首を捻る。
「照準を定めなくて」
「照準はもう自然に定まってるんだよ」
 そうだというのだ。
「敵が前にいればな!」
「何か納得できるようなできないような」
「そうよね」
 二人はもう何と言っていいかわからなかった。
「一理あるかな?」
「そうも思えるし」
「まあとにかくここは」
「戦いを優先させないと」
「その通りよ」
 ラーダもいる。
「今は絶好の勝機にあるから」
「はい、それじゃあ」
「私達も」
「突撃だ!」
 またカチーナが叫ぶ。
「いいな!」
「まあそれしかないですしね」
「やっぱり」
 タスクもレオナも彼女に続くしかなかった。そうしてだ。
 キャンベル軍は挟み撃ちを受けてだ。忽ち大混乱に陥った。
「くっ!防げ!」
「敵を防げ!」
 ワルキメデスもダンゲルも必死に指示を出す。
「ここは負けられん!」
「いいか!だからだ!」
「ですが司令」
「今の我が軍は」
 その彼らに部下達が言ってきた。
「混乱に陥っています」
「このままでは」
「くっ、態勢を立て直せ!」
「それではだ!」
 こう言うしかなかった。しかしだ。
「いいか!」
「このまま敵軍の中で暴れ回れ!」
 ロンド=ベルはこう言って敵軍の中を食い破り続けていたのだ。
「前からは解放軍が攻めている!」
「このままいけば勝てる!」
「はい、それなら!」
「こうして!」
 皆それに頷いてだった。命令通りに動く。
 そのロンド=ベルの中からの攻撃を受けてだ。キャンベル軍の混乱に拍車がかかる。それはどうしようもない程だった。
「損害が三割を超えました!」
「第五軍壊滅です!」
「撤退は許さん!」
「ジャネラ様の御命令だ!」
 ワルキメデスとダンゲルの言葉だ。
「だからだ。防げ!」
「最後の一兵になるまで戦え!」
「若し撤退すればだ」
「その時はだ」
 言うまでもない。だが語られた。
「我等全員命はない」
「それはわかっておけ」
「は、はい」
「それではまことに最後の一兵まで」
「そうだ、戦う」
「いいな」
 二人はまた部下達に告げた。
「それではだ。一刻も早く態勢を立て直せ!」
「そして勝つ!」
 こう叫んでそのうえで戦う。戦いは熾烈なものになった。 
 だがその中でだ。ロンド=ベルの強さは圧倒的だった。その圧倒的な強さを発揮して五百万の敵を瞬く間に倒していく。
 そしてだ。遂にであった。
「くっ、来たか!」
「コンバトラーか!」
「ああ、そうだ!」
 豹馬がワルキメデスとダンゲルの兄弟に対して言う。
「ここで決着をつけてやるぜ!」
「くっ、させるか!」
「我等の意地見せてやる!」
 二人はそれぞれが乗るグレイドルをコンバトラーに向かわせる。
 そしてその二隻で倒そうとする。しかしだ。
「豹馬さん」
「ああ、小介」
「ここはやりますね」
「ああ、あれだ」
 こう小介に言うのだった。
「グランダッシャーだ!」
「はい、やりましょう」
「それではやるばい」
 大作も言う。
「グランダッシャー、それを」
「ほなや!」 
 十三も当然いる。
「豹馬、仕掛けるんや!」
「ああ、行けっ!」
 光の道が放たれた。それが二隻の戦艦を捉えた。
「!?この光は」
「何だ?我等を捉えたぞ」
「今よ、豹馬!」
 今度はちずるが言う。
「やりましょう!」
「ああ、行けコンバトラーブイ!」
 豹馬が叫んでだった。今コンバトラーは車両の形になった。
 そのうえでその光の道を通りだ。攻撃を浴びせる。
「グランダッシャーーーーーーーーーッ!!」
「!?来た!」
「くっ、逃れられん!」
 その攻撃は避けられなかった。そうしてだった。
 そのコンバトラーの体当たりが二隻の戦艦を直撃した。それによってだ。
 彼等のグレイドルはそれぞれ火を噴いた。その中でだ。
「おのれ、コンバトラーブイ」
「最早これまでか」
「キャンベル星を解放するからな」
 豹馬はコンバトラーの姿を元に戻して述べた。
「それを邪魔するならだ。俺達は負けないんだ!」
「キャンベル星に必要だというのか」
「貴様等が」
「そうだ、女帝ジャネラ!」
 彼女のことも言ってみせる。
「あいつも倒すぜ!」
「くっ、ジャネラ様」
「申し訳ありません」
 その名前を聞いてだ。二人は言うのだった。
「我等、ここで倒れます」
「御武運を」
 こう言ってだった。彼等は炎の中に消えたのだ。
 これでキャンベル星を前にした戦いは終わった。そうしてだ。
「降下だ」
「そうですね、いよいよ」
「キャンベル星に」
「どんな星なんだ?」
 このことも話されるのだった。
「それで一体」
「あっ、そういえばどんな星かは」
「全然聞いてないけれど」
「一体どんな?」
 ロンド=ベルの面々はここで首を傾げさせた。
「どういった星なんだろう」
「よく知らないけれど」
「いい星です」
 デウスがその彼等に答えた。
「緑も豊かで水も豊富です」
「緑も水も」
「そうなんですか」
「はい、貴方達のおられる惑星の多くと同じです」
 デウスはこうも話した。
「とてもいい星です」
「それならその星に」
「今から」
「はい、行きましょう」
 こうしてだった。全軍でキャンベル星に降下するのだった。
 それには解放軍も一緒だった。その二百万の大軍もだ。
「貴方達もですか」
「一緒にですか」
「当然です」
 デウスはこうロンド=ベルの面々に答えるのだった。
「キャンベル星の解放は我等の宿願なのですから」
「だからですか」
「それでなのですね」
「そうです」
 デウスの返答は毅然としていた。
「だからこそです。行きましょう」
「かなりの戦いになるかしら」
 ちずるは大空魔竜の中でふと呟いた。
「キャンベル星での戦いも」
「どやろな」
 十三はちずるのその言葉にまずは首を傾げさせた。
「それは」
「わからないっていうの?」
「わい等がさっき倒したのは連中の主力やろ?」
「ええ、そうだけれど」
「主力を倒したんやで」
 指摘するのはこのことだった。
「そやったらや。もう主力はや」
「そうですばい」
 大作も十三の言葉に頷く。
「倒したばい。それで残っているといったら」
「数としては多くはありませんね」
 小介もそう分析していた。
「確かに。数はです」
「じゃあこのまま楽勝か?」
 豹馬はかなり楽観的だった。
「勢いでいけるか?」
「いえ、その考えは危険です」
 小介は決して油断していなかった。
「質はわかりません」
「質かよ」
「はい、質の問題です」
 そこを指摘するのだった。
「残ったキャンベル軍の質がです」
「はい、それについてですが」
 デウスもここで言ってきた。
「確かにキャンベル軍の主力は崩壊しました」
「そうだよな」
「しかし。女帝ジャネラの親衛隊はいます」
 そうだというのである。
「その彼等の質はです」
「問題なんだな」
「はい、ですから注意して下さい」
 こうロンド=ベルの面々に話す。
「最後の戦い、決して容易ではありません」
「へっ、望むところだぜ」
 それを聞いても豹馬の強気は変わらない。
「それならその親衛隊もな」
「倒すというのですか」
「ああ、やってやらあ」
 こう言うのだった。
「一気に降下してジャネラを倒すぜ」
「そう簡単にいくと思ってるの?」
「簡単じゃなくてもやってやるんだよ」
 ちずるに対しても言う。
「そうしてキャンベル星に平和を取り戻すんだよ」
「そこまで仰るのですか」
 デウスも今の言葉には息を呑んだ。
「我々の為に」
「こうなりゃ乗りかかった船だ」
 そのデウスに不敵に笑ってもいた。
「やってやるぜ。そして倒してやるぜ!」
「わかりました」
 デウスはその意気を受けて頷いた。
「それでは今から」
「行くぜ!」
 こうしてだった。いよいよキャンベル星に乗り込むのだった。
 その頃ジャネラはだ。既に迎撃態勢を整えていた。
「来るのじゃな」
「はい」
「遂にです」
「わかった」
 部下達に対して悠然と答える。
「それではだ。わらわも出る」
「陛下もですか」
「出陣されるのですか」
「恨み重なるロンド=ベル」
 既に彼女にとってはそうであった。
「ここで倒してくれよう」
「だからですか」
「この戦いには御自身が」
「そしてじゃ」
 さらに言うジャネラであった。
「叛徒共も来ておるな」
「その数二百万です」
「かなりの数ですが」
「その者達もじゃ」
 酷薄な笑みと共に出した言葉だ。
「全てこの手でじゃ」
「成敗されると」
「だからこそですか」
「左様、だからこそ出よう」
 ジャネラはまた言ってみせた。
「わかったな。これで」
「はい、それでは」
「我等も」
「残っている兵を全て出すのじゃ」
 命令は簡潔であった。
「そしてじゃ。勝つのじゃ」
「そして宇宙を」
「ジャネラ様のものに」
「宇宙は誰のものか」
 ジャネラはこのことについても言った。
「答えよ。誰のものか」
「決まっていることです」
「それにつきましては」
 こう答えが返ってきた。
「ジャネラ様のものです」
「それに他なりません」
「そうだ、わらわのものだ」
 こう答えるジャネラだった。
「だからじゃ。叛徒もロンド=ベルの者共もじゃ」
「はい、それでは」
「今より」
「掃討する」
 ジャネラは告げた。
「それでよいな」
「今よりです」
「我等のはじまりです」
 こう話してだ。彼等は戦いに向かうのだった。キャンベル星においても最後の戦いがはじまろうとしていた。ここでもであった。


第四十四話   完


                       2010・8・3         

 

第四十五話 キャンベル解放

             第四十五話 キャンベル解放
 ロンド=ベルと解放軍がキャンベル星に降下した。そこは海の上だった。
「それじゃあここから」
「ジャネラの王宮に?」
「行くんですよね」
「はい」
 デウスが彼等の問いに答えた。
「これよりです。道案内はお任せ下さい」
「御願いします。それじゃあ」
「これから」
「そしてです」
 ここでだ。デウスはさらに言うのだった。
「キャンベル星にも我等の同志はいます」
「この星にもですか」
「おられるんですか」
「それは一体誰ですか?」
 問題はこれだった。
「一体誰が」
「どういった人が」
「はい、それは」
 そうしてだった。その彼がモニターに出て来た。
 その彼を見てだ。ロンド=ベルの面々の多くが驚いた。
「な、何っ!?」
「嘘でしょ!?」
「どうしてあんたが」
「どうしてここに」
「?どうしたのだ?」
 その彼はだ。驚く彼等にいぶかしむ顔で返した。
「私はこの方々とは初対面だが」
「初対面じゃねえだろ」
 豹馬がその驚いた顔で彼に告げた。
「ガルーダ、お前死んだんじゃなかったのか?」
「いや、アンドロイドだったんじゃ」
「それが何故?」
「コピーがまだあった?」
「それがここに」
「いや、私は生粋のキャンベル星人だ」
 その男ガルーダはこう語るのだった。
「そうなのだが」
「キャンベル星人」
「そういえば喋り方が少し違う?」
「そうよね」
 このことも話すのだった。
「だって。あのガルーダの一人称は余だったけれど」
「このガルーダは私だし」
「そこが違うよね」
「そうよね」
「一体何を言っているのだ」
 ガルーダは今度は狐につままれたような顔になっていた。
「この方々は」
「だからな。俺達は地球でだな」
「地球で?」
「アンドロイドのあんたと戦ったんだよ」
「ということは」
 ここでガルーダもわかった。
「あれか。オレアナの手によって私のアンドロイドが造られていたのか」
「そういうことね」
 ちずるもそれで頷いた。
「とどのつまりは」
「そうか。オレアナらしいな」
 それを聞いて納得したガルーダだった。
「私はあの女と過去何度も戦ってきたからな」
「そうだったんですか」
「そんな因縁があったんですか」
「それへの仕返しか」
 ガルーダはこう悟った。
「そういうことだな」
「何かオレアナらしいよな」
「そうよね」
「あいつらしいし」
「そういうことするって」
 オレアナの性格はである。誰もがよく覚えていた。それを考えると当然の結論だった。
「けれどそのオレアナも死んでるし」
「まさかオリジナルのガルーダがいるとは思わなかったけれど」
「しかも味方だなんて」
「少なくとも敵ではない」
 ガルーダもそれは保障する。
「諸君等と戦う理由はない」
「それじゃあ一緒にですね」
「戦いましょう」
「それじゃあ」
「うむ。それではだ」
 ここでだ。ガルーダの姿が変わった。
 そのうえでだ。あの鳥人の姿に変わった。
「その姿にはなれるんですね」
「オリジナルでも」
「それは変わりなしですか」
「そうだ、これは私の特殊な能力だ」
 それによってであるというのだ。
「それで変わったのだ」
「キャンベル星人の中ではかなり特殊な能力です」
 デウスがこう話す。
「このガルーダだけができるのです」
「本当にガルーダっていうか」
「そのまま」
「声だってね」
「確かに」
「あっ、そういえば」
 声でだ。皆気付いた。
「ガルーダとワルキメデスの声ってそっくり」
「それにリヒテルさんやハイネルさんとも」
「そうそう、そっくりだし」
「同一人物にも見えない?」
 皆で言う。そして洸も言った。
「シャーキンの声もだな」
「ああ、クロッペンの声だな」
 弾児も話す。
「この声も多いんだな」
「そうよね」
「何か知らないがだ」
 ガルーダは今度は首を傾げさせていた。
「私の声は似ている者が多いのだな」
「まあ声についてはですね」
「色々そういう人多いですから」
「心当たりある相手ってそいじょそこいらに幾らでも」
「そうだよな」
 皆で話すのだった。そうしてだった。
 そんな話をしながら向かう。そうするとだった。
「解放軍万歳!」
「我等に自由を!」
「そして平和を!」
 キャンベル星の市民達だった。彼等は歓呼の声でロンド=ベルの者達と解放軍を迎えるのである。それは大きな声だった。
「やっぱりね」
 万丈はその声を聞いて言った。
「こうだろうと思ったよ」
「ということは」
「ジャネラは支持されていない」
「むしろ憎まれている」
「そういうことか」
「その通りさ」
 万丈は仲間達にも答えた。
「ジャネラみたいな人間はね。民衆の支持はないものだよ」
「じゃあこの戦いは」
「勝てますね」
「ジャネラには」
「勝てるよ」
 それは確実だというのだった。
「間違いなくね」
「そうですか、勝てますね」
「もう戦力もないですし」
「それなら」
「勝てるよ。簡単にね」
 造作もないというのだ。
「手の平を返すようなものだよ」
「また随分と楽に言うな」
 宙がその彼に対して突っ込みを入れた。
「ジャネラも必死だぜ」
「何、僕達はこれだけの人間がいる」
 まずはロンド=ベルの面々だった。
「それに解放軍もいて」
「この人達も」
「キャンベルの市民達も」
「それに対してジャネラは一人」
 こう言い切った。
「一人、相手はそれだけだよ」
「そう考えたら楽だよな」
「本当に手の平を返す感じ」
「そうよね」
 皆このことがわかった。そうしてだった。
「よし、王宮にこのまま進撃して」
「ジャネラと最後の戦いだな」
「そうだな」
「よし、すぐに決めてやるぜ!」
 豹馬はその右手を拳にしていた。
「ジャネラ、一撃で仕留めてやる!」
「そうだな。キャンベル星の人達の為にも」
 健一も彼の言葉に頷く。
「ジャネラとの戦い、すぐに終わらせよう」
「よし、それなら」
「今から」 
 こう話してだった。彼等は王宮の前に来た。するとだった。
「来たな、ロンド=ベル」
「ジャネラか」
「出て来たか」
「手前がか」
「そうだ、わらわがだ」
 そのジャネラがだ。ロンド=ベルの前にいた。
「女帝ジャネラだ。宇宙の支配者だ」
「おいおい、こういう奴は絶対にこう言うな」
 勝平はジャネラの言葉を聞いて述べた。
「本当にな」
「そうだよな。お決まりだよな」
「全員考えることが同じなのね」
 宇宙太も恵子も彼の言葉にうなずく。
「器も知れてるしな」
「確かに」
「じゃあいつも通り倒してやるぜ!」 
 勝平はまた叫んだ。
「おい、手前の相手は俺だ!」
「いや、それは違う」
「残念だけれどね」
 宇宙太と恵子が勝平に突っ込みを入れる。
「今度のメインはだ」
「コンバトラーよ」
「ああ、そういえばそうか」
 言われて思い出した勝平だった。
「じゃあここは」
「俺達の相手は周りの連中だ」
「それでいいわよね」
「ああ、数は少ないがな」
 見ればだ。敵の数はいつもよりは少なかった。
「一万かそれ位か」
「この位なら」
「すぐだな」
 ロンド=べルの面々は言った。
「ジャネラを倒してそれで」
「終わりね」
「終わるのはだ」
 だがそのジャネラにしても敗れるつもりはなかった。こう言うのだった。
「御前達だ」
「だから台詞が古典的なのよ!」
 ミレーヌがその彼女に言い返した。
「もう言うことわかって面白くないわよ」
「何っ!?」
「あんたみたいなね」
「わらわみたいだと」
「そうよ、そういう奴はいつもそう言うのよ」
 何度も聞いてきたから言えることだった。
「それで自滅するのよ」
「自滅するだと。無礼な」
「ええ、するわ」
 また言うミレーヌだった。
「現に今もね」
「今どうだというのじゃ」
「実際にそうなっているじゃない」
 それは現在進行形だというのだ。
「見なさいよ、周り」
「むっ!?」
「あんたを守る人はそれだけ?」  
 数はだ。もう殆どなかった。
「そして敵は。見なさいよ」
「倒せ!暴君を倒せ!」
「女帝ジャネラ!もう消えろ!」
「死ね!いなくなれ!」
「キャンベル星からいなくなってしまえ!」
「これがよ」
 また告げるミレーヌだった。
「あんたの敵よ。キャンベル星の人達殆ど全てを」
「それがどうしたというのじゃ」
 しかしジャネラはそれを言われても平然としていた。
「それがじゃ。どうしたというのじゃ」
「どうしたっていうのかよ」
「そうじゃ。どうしたというのじゃ」
 今度はバサラに告げていた。
「民は支配するもの。力でな」
「へっ、こいつはやっぱり何もわかってねえな」
 バサラも言い切った。
「俺の歌でどうなるか見せてやるぜ!」
「歌で何ができる」 
 ジャネラは歌についても理解していなかった。
「それでじゃ。何ができる」
「それは今見せてやるぜ!」
 これがバサラの返答だった。そしてだ。
 既に戦闘ははじまっていた。一万の親衛隊はロンド=ベルによって既に半数まで減らされていた。その半数に対してだった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!!」
「!?この歌は」
「何だ?」
 親衛隊の者達はだ。その歌を聴いて動きを止めた。
「この歌はまさか」
「我々の歌」
「キャンベル星の歌か」
「ああ、それだ!」
 まさにその通りだと言うバサラだった。
「あんた達の歌だ。聴きな!」
「ちょっとバサラ」
 ミレーヌがその彼に問うた。
「何でこの歌なの?」
「何でかってか」
「そうよ。何でこの歌なのよ」
「キャンベル星の人達だからだ」
 だからだというのである。
「それでだ。それでこの歌だ」
「それでなの」
「この星の人達の昔の歌さ」
「何処で聴いた、その歌は」
 レイがそのバサラに問うた。
「一体何時だ」
「さっきな。解放軍の人達にな」
「あの人達から聴いたのか」
「いい歌だったからな。覚えたんだよ」
「何時の間になのよ」
 これにはミレーヌも呆気に取られた。
「あんたいつも突拍子もないけれど」
「俺に常識は通用しねえ!」
 これは誰もがその通りと頷くことだった。
「だからだ。俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!」
「もう滅茶苦茶ね」
 ミレーヌにしてみれば呆れるしかなかった。
「何が何だか」
「しかしだ」
 だがここでレイがミレーヌに言う。
「この歌でだ」
「この歌で?」
「明らかに何かが変わろうとしている」
 こう言うのだった。
「見ろ、親衛隊の兵士達がだ」
「えっ、嘘」
 これにはだ。ミレーヌは驚いた。
 親衛隊の将兵達は次々と武器を捨ててだ。解放軍に投降しだしたのだ。
「そうだ、俺達はな」
「キャンベル星人なんだ」
「それ以外の何でもない」
「そうなんだ」
 こう口々に言ってであった。
「だからもう」
「この戦いは止めよう」
「キャンベル星人同士で戦っても」
「もう何の意味もないんだ」
 バサラの歌でだ。そのことを思い出したのである。
 そしてだ。彼等は全員武器を捨てた。誰一人として残ってはいなかった。
「何っ、まさか」
「これが歌の力だ!」
 バサラはギターを手に唖然とするジャネラに告げた。
「わかったな。これがだ!」
「おのれ、何ということだ」
「これでわかったでしょ」
 ミレーヌもそのジャネラにまた告げた。
「こういうことなのよ」
「まだだ」
 しかしだ。ジャネラはまだ諦めていなかった。
 そしてだ。巨大な戦艦に乗ってだ。戦場に姿を現してきた。
「その戦艦は」
「何だ?」
「セントマグマ」
 ジャネラは自分からその戦艦の名前を話した。複数の紅い竜の頭を持つ戦艦だった。
「これがその戦艦の名よ」
「へえ、それがかよ」
 豹馬がそれを聞いて言った。
「今から俺達に倒される戦艦の名前だな」
「まだ戯言を言うか」
「戯言じゃねえよ」
 それは違うとだ。豹馬は告げた。
「事実だ。それなら今からそれを見せてやろうか」
「ふん、わらわ一人で貴様等を全て倒してやろう」
 そしてだ。こうも言うのだった。
「再び。この星を治めようぞ」
「愚かな」
 ガルーダはジャネラのその言葉を聞いて呟いた。
「まさに裸だな」
「確かに」
 デウスもガルーダのその言葉に頷いた。
「女帝ジャネラ。その最期が迫ろうとしている」
「見させてもらおう」
 ガルーダは冷静な口調で述べた。
「その最期をな」
「今から」
「悪いな」
 豹馬はその彼等に話した。
「こいつは俺達がやらせてもらうぜ」
「うむ、頼む」
 ガルーダもそれでいいとした。
「我々はだ。それでだ」
「いいんですね」
「諸君の力があってこそここまで来られた」
 ガルーダはちずるの言葉にも応えた。
「だからだ。ジャネラは任せた」
「わかりました。それなら」
「よし、行くぜ!」
 豹馬は仲間達にも告げた。
「この戦い、終わらせるぜ!」
「ほなやろか!」 
 十三が応えた。
「このアホなおばちゃん始末するで!」
「それならですばい」
 大作もいる。
「ここは一気に」
「そうですね。それでは豹馬さん」
 小介は豹馬に告げていた。
「ここはお任せします」
「ああ、じゃあやるぜ!」
 そしてであった。コンバトラーはそのセントマグマに向かった。
 ジャネラは一人だけ艦にいる。その中から自ら操縦する。
「喰らえ!」
 ビームを繰り出す。しかしそれは。
「こんな攻撃な!」
「当たる筈ないわよ!」
 コンバトラーはそのビームをあっさりとかわした。右に動いてだ。
 そのうえでだ。豹馬とちずるが言うのだった。
「さて、それならな」
「今度はこっちの番ね」
「一撃で決めてやるぜ」
 豹馬の言葉は冷静なものだった。
「このコンバトラーの渾身の技でな!」
「渾身の技だというのか」
「せめて苦しまないようにしてやる」
 これは豹馬のせめてもの情けだった。
「喰らえ、超電磁タ、ツ、マ、キーーーーーーーーーーーーッ!!」
「むっ!?」
 最初はだ。それだった。コンバトラーから出された凄まじい竜巻がセントマグマを捉えた。それは到底かわしきれるものではなかった。
 それを受けてだ。セントマグマは完全に動きを止めた。
「くっ、これは」
「止めだ!それでだ!」
 コンバトラーが動いた。変形してだ。
「超電磁スピーーーーーーーーーンッ!!」
 その渾身の一撃だった。それを放った。
 セントマグマはもう動けなかった。そしてそのセントマグマをコンバトラーが貫いた。豹馬の言葉通りまさに一撃だった。
「ぐっ・・・・・・」
「言ったな、これで終わりだ!」
 攻撃を終え変形を戻した豹馬の言葉だ。
「女帝ジャネラ、観念しやがれ!」
「おのれ、わらわはまだ」
 しかしだ。ジャネラはまだ諦めていなかった。
 そうしてセントマグマを動かそうとする。しかしだった。
「動かぬ!?何故じゃ」
「当たり前だろ」
 豹馬はそれを当然だというのだ。
「動かなくてな」
「何っ!?」
「コンバトラーの渾身の攻撃だったんだ」
 まず言うのはこのことだった。
「それを受けて無事でいられるか」
「だからだというのか」
「ああ、そうさ」
 まさにその通りというのである。
「それを受けて無事でいられる奴なんかいねえ。それにだ」
「それにだというのか」
「ジャネラ、手前は既に敗れていたんだ」
「既にだと」
「俺達には皆がいる」
 仲間達がだ。全てがだというのだ。
「しかし手前は一人だ」
「それがどうかしたのか」
「それがもう負けてるってことなんだよ」
「何が言いたいのじゃ」
「言ったままさ。手前は一人で宇宙の支配者になろうとした」
 このことを指摘するのだった。
「一人じゃ何もできないんだよ。絶対にな」
「宇宙の支配者は一人。それがどうかしたのか」
「それがわかってないことでもう負けてるんだよ」
 言う。だからジャネラはわかっていなかった。
 その証拠にだ。こう言うのだった。
「まだだ、まだわらわはじゃ」
「どうするってんだ?」
「貴様等を倒し。そして宇宙を」
「やれるものならやってみな」
 豹馬も遂に突き放した。
「動けるんならな」
「動いてみせよう」
 こう言いはした。しかしであった。
「むっ!?」
「動けないよな」
 豹馬はわかっているかのように言葉を返す。
「やっぱりな」
「何故じゃ、これは」
「超電磁スピンを受けたんだ。当たり前だろう」
「馬鹿な、あれしきの攻撃で」
「あれしきじゃねえ」
 またジャネラに告げた。
「俺達の、そしてキャンベル星の人達の願いが篭った攻撃だったんだ」
「何っ!?」
「それがそう簡単なものじゃねえんだよ」
 こう言うのである。
「手前なんかにはわからねえだろうがな」
「くっ、戯言を」
「俺の言葉が戯言だったら動ける筈だよな」
「そうね」
 ちずるも豹馬のその言葉に頷く。
「けれど今は」
「終わりだ、女帝ジャネラ」
 豹馬の今の言葉は引導だった。
「そのまま地獄に落ちろ」
「おのれ、そこまで言うか」
 艦橋も炎に包まれてきた。それでもジャネラは諦めない。
 まだ動かそうとする。尚もだった。
「ならばその無礼、命をもって」
 償わせようとする。しかし。
 炎に包まれたのだった。彼女自身もだ。
 そうして死んだ。女帝も遂にここで倒れた。
「終わりましたな」
「うむ」
 デウスがガルーダの言葉に頷いていた。
「これで完全にだ」
「キャンベル星は解放されました」
 ガルーダは感慨を込めて述べた。
「そして次はです」
「次はか」
「このもたらされたものを守りましょう」
 こう言うのであった。
「我々が」
「そうだな。そうしよう」
 デウスもがルーだのその言葉に頷く。
「我々の手で」
「何があろうとも」
「それじゃあ後は任せていいよな」
 豹馬がその彼等に問う。
「これからはな」
「そうさせてもらいたい」
 こう豹馬に返すガルーダだった。
「君達によってもたらされた平和だがな」
「いや、それは違うぜ」
「違う?」
「ああ、あんた達が立たないとな」
「そやな」
「その通りばい」
 ここで十三と大作も言う。
「わい等もここまで戦えへんかったわ」
「キャンベル星の人達もいたからですばい」
「その通りです」
 小介も話す。
「皆さんがいてこそです」
「そうなのですか」
 それを聞いてだ。デウスは不思議な顔になった。
「我々は殆ど何もしていないのですが」
「いや、この声ですが」
 しかしだった。大文字がここでデウスに話す。
「お聞き下さい」
「むっ!?」
「このキャンベル星の人達の声をです」
 聞けばだ。それはかなりのものだった。
「この声こそが証です」
「この声がですか」
「はい、自由と解放を求める声が勝利を掴んだのです」
「そうですよ。皆さんが動かれたからこそ」
 ちずるもここで話す。
「私達も戦えました」
「そういうことだよ。だからだよ」
 また言う豹馬だった。
「俺達はやれたんだよ」
「わかった。それではだ」
 ガルーダがここで頷いてみせた。
「この貰ったもの守らせてもらおう」
「ああ、そうしてくれ」
 こうしてだった。キャンベル星の戦いは終わった。ジャネラは倒れそのうえでだ。彼等は次にはボアザン星に向かうのであった。
 ボアザン星に向かう時にだ。豹馬が言う。
「ガルーダってな」
「ああ」
「あの人?」
「何かね」
「同じにしか見えないっていうか」
「確かに」 
 こう話すのである。
「アンドロイドとオリジナルは」
「全然区別がつかない」
「その通りよね」
「俺あれには驚いたぜ」
 豹馬はまた話す。
「生きていたのかって思ってな」
「生きていたんじゃなくて」
「この場合は修理された?」
「そうだよな」
 それではというのだ。
「だって。アンドロイドだったんだから」
「何人も出て来たし」
「だから」
 それでそうだというのだ。
「まあオリジナルがいたのはね」
「聞いてなかったし」
「びっくり」
「生身の人間って」
「いたのね」
「しかもいい奴だしな」
 豹馬はこのことも話した。
「アンドロイドのガルーダも敵ながら見事だったけれどな」
「そこもオリジナルに忠実に造ったのかな」
「そうかも」
「やっぱりね」
 皆そう考える。そうしてだった。
「そして今度はボアザン」
「そこね」
「ボアザン星での決戦かあ」
「どうなるやら」
「後、そういえば」
 ここでだ。ある人間の顔が浮かんだ。
「ハイネルさんどうしてるかな」
「最近出て来ないけれど」
「生きてるかしら」
「どうかな」
 生死すら不明になっていた。
「あの人だから死んでないと思うけれど」
「まさかとは思うし」
「リヒテルさんもね」
「大丈夫だ」
 だが健一がここで皆に話した。
「兄さんは必ず戻って来る」
「戻って来る」
「そう言えるのね」
「はっきりと」
「何となくだがな」 
 こう前置きはした。
「それでもわかる。兄さんもボアザンに来ている」
「リヒテルもだな」
 今度は一矢が言った。
「あいつもだ。ボアザンに来ている」
「御前もわかるんだな」
「ああ、俺も何となくだがな」
 京四郎に返した言葉である。
「あいつも来ている」
「それじゃあボアザンの戦いは本当に」
「決戦?」
「今度もまた」
「決戦になるのは最初からわかっている筈じゃないか?」
 健一はここでも皆に話した。
「向こうも後がないんだからな」
「ああ、そういえば」
「あの連中も次は自分だってわかってるし」
「それならね」
「やっぱりそうなるか」
「そうよね」
 こう話すのだった。皆でだ。
「じゃあボアザンの総戦力が相手」
「それなら本気でかかって」
「ボアザンもまた」
「解放か」
「そうか」
 また話す。
「しかし敵の指揮官ってどうなんだ?」
「そっちは」
「確か皇帝のズ=ザンバジルが敵だけれど」
「どんな奴?」
「それで」
「大した者ではない」
 マーグが一同に話す。
「女帝ジャネラは人望はないが狡猾で抜け目のない人物だった」
「けれどズ=ザンバジルは」
「そういうことですね」
「無視しているに等しかった」
 そこまでだというのである。
「取るに足らない。小者だ」
「そうですか、それだったら」
「烏合の衆」
「幾ら数が多くても」
「それだったら」
「よし、それならだ」
 また言う一矢だった。
「ボアザンの戦い、一気に終わらせるぞ」
「無論そのつもりだ」
 大河も言ってきた。
「我々の敵はボアザンだけではないのだからな」
「そうですね、それは」
 命が大河のその言葉に頷いた。
「宇宙怪獣やプロトデビルンもいますし」
「それにバジュラもだな」
 これはアルトの言葉だ。
「バルマーだって健在だしな」
「そして十三遊星主だ」
 凱は彼等も忘れていなかった。
「あの連中とも決着をつけないといけないからな」
「敵はまだまだ多いのは確かね」
 命はこのことを結論として述べた。
「だからこの戦いに時間をかける余裕はないわ」
「そういうことだな、よし」
 また言う凱だった。
「行くか、ボアザンに」
「何か嫌な予感してきたんだがな」
 今言ったのは宙である。
「オルバン大元帥みたいな奴じゃねえか、ズ=ザンバジルって」
「ああ、そんな気がするな」
「そうね」
「確かに」
 皆このことには何故か納得できた。
「あれは酷かったけれど」
「今度も何か」
「そんなの?」
「小者っていうし」
「実際に器の小さい男だ」
 またこのことを話すマーグだった。
「オルバンのことは私も覚えている」
「あれは酷い奴でしたね」
「全く」
「小者だったしずるいしせこいし」
「もう最低でした」
「同じだな」
 マーグの言葉である。
「あの者達はな」
「やっぱりですか」
「同じタイプなんですね、オルバン大元帥と」
「そういうことだ。資質もだ」
 マーグは彼の能力についても話す。
「どうということはない」
「やっぱり」
「そういうことなんですか」
「能力も小者なんですね」
「そう思ってくれていい」
 また話すマーグだった。
「敵としてはどうということはない」
「それではだ」
 ここまで聞いてだ。ブライトが話した。
「また市民が立つな」
「ボアザンの市民がですか」
「彼等が」
「立つ。間違いない」
 ブライトは断言さえした。
「そうした者が支配が崩れるとだ。必ず叛乱が起こる」
「革命」
「それですね」
「そういうことだ。革命にもなる」
 ブライトは革命についても述べた。
「キャンベル星と同じだ」
「そういえばボアザンって」
「貴族制だったよね」
「確かね」
「それもかなり厳しい」
 ボアザンの特徴である。それが彼等の統治の特徴にもなっているのだ。
「それでボアザン貴族っていったら」
「ジャンギャルとカザリーン以外はどうってことなかったし」
「ハイネルさんは例外として」
 ハイネルはだ。あくまで純粋にボアザン貴族主義の高潔さを信じていた。だが彼の様な人材は本当に僅かでしかないのである。
「そんな社会だったら」
「本当に楽にね」
「潰せるわね」
「進むだけだ」
 ブライトの言う言葉はそれだけだった。
「進めばそれでだ」
「ボアザンも崩れる」
「そうなりますね」
「そういうことだ。それではだ」
 ブライトの言葉がまた出される。
「ボアザンに向かおう」
「はい、それでは」
「このまま」
 こうしてだった。彼等はボアザンに向かう。またしても革命が起ころうとしていた。


第四十五話   完


                       2010・8・6
    

 

第四十六話 もう一つの母星ボアザン

            第四十六話 もう一つの母星ボアザン
 ボアザンに向かう時にだ。健一が言った。
「そういえばあの星は」
「そうでごわすな」
「父さんのね」
「そうだ、生まれた星だ」
 このことを大次郎と日吉に話すのである。
「そして俺達にとっては」
「もう一つの母星でごわすな」
「そういうことだよね」
「父さん」
 彼はここで父に顔を向けた。彼の両親も共に来ているのだ。
「ボアザンのことは」
「全てが懐かしい」
 まずはこう言う博士だった。
「真にな」
「そうなんだ」
「私は角がないばかりに幽閉されズ=ザンバジルが皇帝となった」
「それがそもそもの間違いだな」
 一平は忌々しげに言い切った。
「角のあるなしで差別するってのがな」
「そうよね、本当にこれまで戦ってきたボアザン貴族って」
 めぐみも言う。
「人間としては酷かったし」
「能力もだな」
 一平は完全に駄目だしだった。
「どうにもならない奴等ばかりだった」
「そうだな。しかし」
「しかし?兄さん」
「どうだっていうの?」
「ズ=ザンバジルが倒れた後は」
 こう弟達に話す健一だった。
「どうなるんだ」
「どうなるって?」
「それって」
「どういうこと?」
「だから。革命が起こった後のボアザンだけれど」
 このことを皆にも話すのである。
「どうなるんだろうな」
「キャンベル星にはガルーダやデウスさんがいてくれてるけれど」
「ボアザンには」
「そうよね」
「誰かいないかしら」
「いや、一人いるだろ」
 ここで言ったのはダッカーだった。
「ちゃんとな」
「一人って?」
「それって一体」
「誰?」
「ハイネルだよ」
 彼だというのである。
「あいつがいるだろ」
「兄さんが」
「そうさ、あいつがいるだろ」
 こう健一にも話すのだった。
「あいつがいるからな。だから大丈夫だろ」
「いや、兄さんは」
 だが健一はここで難しい顔になる。
「そうしないと思う」
「しないんだ」
「兄さんは死に場所を求めているのかも知れない」
 健一はフィジカにも述べた。
「あの時。父さんや俺達と戦っていることを知ってから」
「そうかも知れないわね」
 めぐみも難しい顔で彼の言葉に頷いた。
「あの人は。そういう人だから」
「ズ=ザンバジルを倒したその時に」
 健一はさらに話した。
「死ぬのかも知れない」
「リヒテルもだな」
 一矢は彼の名前も出した。
「リヒテルも。己の過去を悔いている」
「だからこそ全てが終わったら」
「己の為すべきことを果たしたと考えたら」
「その時は」
「そうだ、死ぬかも知れない」
 また言う一矢だった。
「その時こそ」
「あの二人は似ている」
 今言ったのは京四郎だった。
「生真面目で高潔だ。そして周りが見えていない」
「周りが見えていない」
「それもあると」
「それが問題だ。自分達がやるべきことがわかっていない」
 こう指摘するのだった。
「それがだ」
「それってつまりは」
 ナナが彼に問い返した。
「ハイネルさんのやるべきことはボアザンを解放してからもあるってこと?」
「さっきダッカーの旦那が言ったな」
 京四郎はこうナナに話した。
「そういうことだ」
「それなの」
「そうだ、ハイネルのやるべきことはそこからが本当だ」
「そしてボアザンを導くのね」
「それができることはあいつしかいない」
 京四郎は言い切りさえした。
「俺はそう思うがな」
「となるとだ」
 一矢もここであることがわかった。
「リヒテルもまた」
「そうよね」
「そうなるよな」
 皆もここでわかった。
「バームを導けるのって」
「あの人しかいない」
「だから終わりじゃない」
「リヒテルはそれに気付いていないんだ」
 一矢はまた言った。
「自分のするべきことに」
「一矢さんとエリカさんが架け橋になって」
「そしてリヒテルさんが導く」
「そういうことなのね」
「俺も今わかったような気がする」
 一矢は言うのだった。
「リヒテルは。今死んだらいけない」
「兄さんも」
 健一も言った。
「ここで死んだらいけない。ボアザンの為にも」
「その通りだな。ハイネルは死なせてはいけない」
 剛博士も言った。
「何としても」
「よし、それなら」
「二人に会ったら」
「絶対に死なせるか!」
「ボアザンとバームの為に!」
 こう決意してだ。彼等はボアザンに向かう。そうしてだった。
 やがてボアザン星の手前に来る。そこでだ。
「来ました!」
「ロンド=ベルです!」
「奴等がです!」
 ボアザン軍の間で報告が飛び交う。
「遂に来ました」
「司令、ここは」
「どうされますか」
「決まっている」
 こう答えたのは人相の悪い角のある男だった。
「奴等を迎え撃つ」
「ではグルル将軍」
「予定通りですね」
「奴等にあの罠を」
「仕掛けますね」
「そうする。いいな」
 こう部下達に言うのだった。
「準備はいいな」
「はい、既に」
「万端整っています」
「後は奴等が来た時に仕掛けるだけです」
「それだけです」
「よし」
 そこまで聞いて満足した顔で頷くグルルだった。そうしてだった。
 彼等は布陣しロンド=ベルを迎え撃つ。そこに彼等が来た。
「数は四百万か」
「じゃあ後は本星に残っているんだ」
「そういうことね」
 皆このことを冷静に分析した。
「ただ。何かね」
「余裕がある?」
「確かに」
 布陣するボアザン軍を見てこのことを察したのである。
「罠があるか?」
「若しかして」
 すぐにこのことを見抜いたのである。
「だとすればその罠って」
「一体何?」
「何も見つからないけれど」
「若しかすると」
 ここで言ったのはスワンであった。
「あれデス。ここは前に出るべきかも知れまセン」
「前にですか」
「ここは」
「はい」
 また答えるスワンだった。
「前進あるのみデス」
「そうだな」
 その言葉に大文字が頷いた。
「あの悠然とした布陣から間違いなく罠を仕掛けている」
「しかし奴等の前には絶対に何もないな」
 火麻も言う。
「随分と戦闘機飛ばしてるしな」
「じゃあ前に進めばそれでいい」
「この戦いは」
「それじゃあいつも通りだな」
 火麻はそれを聞いて言った。
「前に進むんならな」
「随分簡単に言うな」
「そうよね」
 皆そんな彼の言葉を聞いてひそひそと話す。
「あの人らしいけれどね」
「まあ確かに」
「それは」
「らしいならそれでいいな」
 気にしていない火麻だった。
「じゃあ行くぜ!一気にな!」
「それしかないしね」
「それじゃあ」
 こうしてロンド=ベルは前に出る。するとだった。
 後ろにだ。あるものが出て来た。
「素粒子!?」
「あれか」
「あれが罠か」
 素粒子の渦がだ。彼等の後ろに出て来たのである。
「あれで俺達を潰そうっていうのか」
「何かって思ったけれど」
「あれだったのね」
「成程」
「さあ退きたいなら退くがいい」
 グルルだけは自信に満ちていた。
「その時は貴様等の最後だ」
「やれやれだな」 
 今言ったのは真吾である。
「それじゃあ簡単じゃないか」
「そうよね、退かなかったらいいし」
「単純明快」
 レミーとキリーも言う。
「前に出て戦う」
「それだけだよな」
「その通り!退くことはない!」
 ケルナグールの辞書には最初からない言葉だ。
「行くぞ、一気に叩き潰す!」
「その通りだ。前に行くのみだ」
 カットナルも同じ意見だった。
「あの連中の考えに乗る必要はない」
「愚かな。あの様な罠なぞだ」
 ブンドルの言葉はいつもと逆だった。
「美しくない」
「うわっ、何かテンション下がる」
「ブンドルさん、その言葉はちょっと」
「止めた方がいいですよ」
 全員で彼に突っ込みを入れる始末だった。
 そしてだ。ミンはだ。チェーンソーを振り回していた。
「ほらほら、前に出て切り刻んでやるよ!」
「その通りだな。釘が美味いぜ」
「お、おでも行く」
 ゴルとガルもいつも通りだった。
「じゃあ。派手に暴れるか」
「ま、前に出ればいいだけ」
「大体前に出てナンボってのが俺達なんだけれどな」
 ジンの突っ込みは実に冷静だった。
「あの連中は何を勉強していたんだ」
「ははは、成績の悪い生徒にはお仕置きだ!」
 グン=ジェムは勝手に先生になっていた。
「さて、これが最初のお仕置きだ!」
「ぐはっ!」
 いきなり円盤を一機真っ二つにした。これが合図だった。
 ロンド=ベルは攻撃に移る。全軍による突撃だった。
「前に!前に!」
「それでいいんだからな!」
「楽なものだぜ!」
「くっ、どういうことだ!?」
「退かないだと!?」
「我等のこの数を前にしてもか!」
 ボアザンの将兵達は退くどころか突撃を仕掛ける彼等に驚愕した。
「何という奴等だ」
「素粒子を恐れないというのか」
「死ぬのが怖くないのか?」
「死ぬことがか」
 アランが彼等の言葉を受けて言う。
「それがか」
「そうだ、貴様等は怖くないのか」
「戦いの中で死ぬことがだ」
「それがだ」
「この戦いで死ぬ要因はない」
 アランは落ち着いた声でこう彼に返した。
「だからだ。怖れてはいない」
「死なないだと!?」
「この戦いでだというのか」
「そうだ、我々が死ぬのは運命によってだ」
 アランはこうも言った。
「貴様等如きに倒されることはない」
「おのれ、我等を愚弄するのか」
「誇り高きボアザンを」
「愚弄するか」
「愚弄も何もな」
「そうだな」
 男児が盾人の言葉に応えた。
「こんな連中相手だとな」
「数もどうということはない」
「おのれ、やはり愚弄か」
「我等を愚弄するか」
「ああ、何度でも言ってやるぜ!」
 盾人は言いながらバルディオスの剣を振るう。それで前にいる敵を倒していく。
「手前等には負けはしないぜ!」
「くっ、ならばだ!」
「ここで死ね!」
「その言葉後悔させてやる!」
「それは無理な話だ」
「生憎だがな」
 そしてだ。ここであらたな声がした。 
 それは二つだった。二つの声が告げるのだった。
「貴様等にはそれはできぬ」
「大義なき者達にはだ」
「!?その声は」
「まさか」
「兄さん!?」
 最初に言ったのは健一だった。
 そしてだ。一矢もだ。
「リヒテルか!」
「そうだ、久しいな健一よ」
「竜崎一矢、さらに腕をあげたようだな」
 二人であった。そのそれぞれのマシンにも乗っている。
「我が守護神ゴードルと共に」
「我が友の開発したこのゾンネカイザーと共に」
 二人はそれぞれ言う。
「今再び!」
「戦場に帰って来た!」
「くっ、プリンス=ハイネルか!」
「グルルよ」
 ハイネルは彼を見て呻くような声を出したグルルを見て言った。
「悪いことは言わぬ、降伏するのだ」
「何っ!?」
「この者達は貴様の敵う相手ではない」
 こう告げるのだった。
「貴様はだ。降伏し静かな余生を送れ」
「私を馬鹿にしているのか」
「馬鹿にはしていない」
 ハイネルはそうではないと返した。
「事実だ。事実を言っているのだ」
「そんなことはない!」
 まだ言う彼だった。
「私はこの者達を倒す!必ずだ!」
「言ったな」
 まずは聞いたハイネルだった。
「それならばだ。見せてもらおう」
「見ているがいい。ロンド=ベルの後は貴様だ」
「私か」
「皇位を狙う逆賊め」
 ハイネルはボアザン貴族の者にこう思われているのである。
「皇帝陛下にかわり成敗してくれるわ」
「ズ=ザンバジルか」
 ハイネルの言葉が冷たいものになった。
「あの様な男に忠誠を尽くすか」
「何が言いたい」
「あの男にあるのは己のみ、国のことなぞ頭にはない」
 彼もまたズ=ザンバジルのことがわかっていた。
「その様な男に皇帝でいる資格はない!」
「おのれ、やはり皇帝陛下を愚弄するか!」
「愚弄ではない。事実を言ったまでだ」
 ハイネルの言葉は続く。
「それがわからぬ貴様もまたそれまでの男だな」
「まだ言うのか」
「安心するのだ、これ以上は言わぬ」 
 やはりハイネルの言葉は冷たい。
「貴様の最期を見届けさせてもらうだけだ」
「では見るがいい」
 半ば売り言葉に買い言葉だった。
「その後で貴様を成敗してやろう」
「できるのならばな」
「ではハイネルよ」
 同志であるリヒテルの言葉だ。
「この戦い、見届けさせてもらおう」
「うむ、余もそのつもりだ」
 こう応えてだった。彼等はロンド=ベルの面々にも言ってみせた。
「ではロンド=ベルの者達よ」
「そなた達の戦いも見せてもらおう」
 彼等への言葉はこれだった。
「それではだ」
「我々は今は何もしない」
「それなら兄さん、見ていてくれ」
「俺達の今の戦いを」
 健一と一矢が二人に応える。
「今からだ」
「その戦いを見せてやる!」
「そうだ、それでいい」
 一矢の今の言葉を受けてだ。リヒテルは微かに笑った。
「さらによき男になったな」
「リヒテル・・・・・・」
「エリカの目は間違ってはいない」
 妹のことも出した。
「そなたの様な者がいれば宇宙は救われようぞ」
「ならそうしてやる!」
 そして一矢も言った。
「その為に今この戦いを見せてやる!」
「俺達の戦いを!」
「今ここで!」
 こうしてだった。ロンド=ベルはさらに突撃を仕掛けた。その突撃を受けてだ。ボアザン軍は遂に総崩れになってしまったのである。
 そしてだ。グルルにはだ。ボルテスが向かう。
「敵将グルル!」
「逃がさないわよ!」
 彼の乗るスカールークを見据えて健一とめぐみが言う。
「降伏しないんだな」
「それなら」
「降伏なそありはしない!」
 グルルは彼等に対しても言った。
「このグルル!貴様等なぞに!」
「それならだ」
「仕方ないわ」
 二人が言った。そうしてだった。
 ボルテスが跳んだ。その手にはあの剣がある。そして。
「秘剣!」
「むっ!?」
 スカールークでは最早かわせなかった。
 剣が切り刻む。ブイの字に。
「ブイの字切りーーーーーーーーーーーっ!!」
「ぐっ、これは」
「これで最後だな」
「そうでごわすな」
「この戦いはね」
 一平に大次郎、日吉はこのことを確信した。
「敵将グルル!」
「終わりでごわす!」
「さあ、脱出しろ!」
「おのれ、おのれ地球人共」
 だが彼はだ。艦橋で呪詛の言葉を出すだけであった。
「この恨み、必ずや」
「脱出はせぬか」
 ハイネルはその彼を見てまた言った。
「愚かな、死ぬべきでない時に命を捧げるに値しない者の為に死ぬとはな」
「ボアザン帝国ばんざーーーーーーーーい!!」
 こう叫んで死んだ。その時にはもう戦いは終わっていた。
 誰もいなかった。既にだ。
「勝ったな」
「そうだな」
 まずはハイネルとリヒテルが言った。
「この戦いはまずだ」
「勝利を収めることができた」
「このままいけるだろう」
 今度はハイネルだけが言った。
「ボアザンは解放される」
「兄さん、聞きたいことがある」
 そしてだ。健一がそのハイネルに問うた。
「兄さんはどう思っているんだ」
「何をだ?」
「ボアザンのことをだ」
 問うのはこのことだった。
「兄さんの生まれ育った星に対してだ。どう思っているんだ?」
「何を言うかと思えばだ」
 ハイネルはにこりともせず弟の言葉に応えた。
「その様なことか」
「そうだ、どう思っているんだ」
「決まっている、母なる星だ」
 教科書の回答だった。
「それ以外の何でもない」
「それだけなのか」
「それだけだが」
「他にも思うことはある筈だ」
「リヒテル、違うか」
 一矢はリヒテルに問うた。
「御前もまた。それだけなのか」
「バームのことか」
 リヒテルは一応は彼の言葉に返した形だった。外見はだ。
「そのことか」
「バームの人達は今迷ってもいる」
「そなた達が火星に導いてくれたのではなかったのか」
「違う、今の彼等にはもう一人必要なんだ」
「誰がだ?」
「御前だ!」
 他ならぬ彼なのだというのだ。
「今のバームには御前が必要なんだ」
「戯言を」
「嘘じゃない、バームに戻るんだ、リヒテル」
 こう彼に告げるのだった。
「戦いが終わったその時にだ」
「兄さんもだ」
 健一もここで兄にまた告げた。
「ボアザンに。あの星の人達の為に」
「その資格はない」
 だがハイネルはこう言うのだった。
「余にはな。その資格はない」
「何故そう言うんだ」
「余は罪を犯し過ぎた」
「余もだ」
 リヒテルも言った。
「その余がだ。何故ボアザンに戻れる」
「バームの者達にどうして顔を向けられようか」
「難しい話だな」
 ガムリンは二人のその心がよくわかった。
「二人にとっては。過去のことは」
「ボアザンは他の者によって導かれる筈だ」
「ハレックがいる、御前とエリカもいる」
 二人はあくまでこう言う。
「余がいる必要はないではないか」
「それは違うのか」
「違う!」
「そんなことはない!」
 健一も一矢もまた言った。
「兄さんがいなければボアザンは」
「バームの人達はどうなるんだ!」
「忘れたのか、健一よ!」
「竜崎一矢よ、あの戦いのことを!」
 二人の言葉が荒いものになった。
「御前と余はかつてどれだけ剣を交えた」
「余は一体どれだけの血を流させた!」
「うっ・・・・・・」
「しかし。それでも」
「話はそれまでだ」
「もう話すことはない」
 二人は相手がそれぞれ口ごもったところで強引に話を終わらせた。
「いいな、それではだ」
「また会おう」
「兄さん、待つんだ!」
「リヒテル、話はまだある!」
「余にはない」
「これ以上はだ」
 やはり二人は話を聞こうとしない。そうしてだった。
「ボアザンを頼んだ」
「いいな」
「何故だ、どうしてわからないんだ」
「リヒテル、御前がいなければバームはどうなるんだ」
 しかし二人はそのまま消えた。話を聞こうとはしなかった。
 そうしてだった。戦場にはロンド=ベルだけが残った。彼等はだ。
「ボアザンに向かおう」
「そうだな」
「ここはだ」
 こうそれぞれ話してであった。再び進撃をはじめようとする。
 だがその中でだ。健一も一矢も浮かない顔をしていた。
 その彼等にだ。万丈が声をかけた。
「行こうか」
「あっ、ああ」
「そうだな」
「まずはボアザンを解放しよう」
 あえて微笑んで二人に告げたのだった。
「それでいいかな」
「わかっている。勿論な」
「俺達の目的の一つだからな」
「それならいいよ。行こう」
 万丈はまた二人に告げた。
「ボアザンにね」
「それでは諸君」
 シナプスが指示を出した。
「ボアザンに進路を戻す」
「了解です」
「それでは」
 こうして彼等はボアザンに進路を取った。だがその心にはだ。釈然としないものが残っていた。それはどうしても消せないものだった。


第四十六話   完


                        2010・8・9       

 

第四十七話 二人の決断

               第四十七話 二人の決断
 ロンド=ベルはボアザンまであと僅かの場所にまで迫っていた。
「もうすぐ降下か」
「そうだな」
「本当にいよいよ」
「これでまた戦争が一つ終わるね」
「そうね」
 このことはいいとした。しかしであった。
「それでもなあ」
「ボルテスチームと一矢さん」
「どうなの?」
「今は」
「まずいな」
 神宮寺が一同に答えた。
「今の状況はな」
「やっぱりお兄さんのことが」
「それにリヒテルさんのことが」
 皆そうなっている原因はもうわかっていた。
「二人共どうして」
「確かに俺達は過去剣を交えた」
「けれどそれでも」
「過去は過去なんじゃ」
「そうよね」
「二人にとっては違うんだろうな」
 今言ったのはシローだった。
「二人共誇り高いからな。過去の自分の過ちを許せないんだ」
「そうね、それは間違いないわ」
 アイナがシローのその言葉に頷いた。
「それによって犯した罪のことを」
「けれど過去は過去なんじゃ」
「そうよね」
 今言ったのはミゲルとカレンである。
「割り切れないのかな」
「その辺りは」
「それができないからだな」
 サンダースはこれまでの人生経験から語っていた。
「ああして。生きるしかないんだ」
「突っ張ってる?」
「つまりは」
 皆ここまで聞いてこう考えた。
「だから今も」
「そうやって?」
「ああしてるのかしら」
「間違いありませんな」
 ノリスは危惧した言葉を出した。
「そしてこのままですと」
「死に場所を求めているな」
 シローはこのことを見抜いた。
「そしてそれはボアザンだ」
「ちょっと、冗談じゃないわよ」
 アスカがそれを聞いて言った。
「何であの人達が死なないといけないのよ」
「ほんまや。過去は過去やで」
 トウジもそれを言う。
「今を生きるのに必要あるかい」
「その通りよ。死ぬなんて言うんならね」
 アスカはかなり感情的になっていた。
「あたしが殺してやるわよ」
「殺したら駄目じゃない」
 シンジはわかっていて合わせて突っ込みを入れた。
「死なせたくないのに」
「その意気で止めるのよ」
 アスカもわかっていて返す。
「あの人達、死なせないわよ」
「じゃあどうやって?」
 そのアスカに突っ込みを入れたのはフェイだった。
「どうやって二人を止めるのよ」
「決まってるわよ、考えを変えてもらうのよ」
 アスカはフェイにも言葉を返した。
「二人にね。それしかないじゃない」
「正解ね。けれど」
 今度はレイが言った。
「それは難しいわ」
「可能性がゼロでも気合入れてゼロコンマで可能性を作ってよ」
 アスカは熱くなって力説する。
「それを百にまでするのがあたし達じゃない」
「そうだ、その通りだ!」
 ハッターはアスカのその言葉に大いに頷いた。
「なら今もだ!」
「その通りだ。可能性は作るものだ」
 テムジンもその通りだと言う。
「この戦いもまただ」
「そういうことよ。やってやるわよ」
 アスカは力瘤を入れて語る。
「あの二人、今度会ったら見てなさいよ」
「何か倒すみたいな口調ね」
「そうだね」
 ヒカリとケンジがそんなアスカを見て話す。
「けれどそれでも」
「そうしないとね、本当に」
「そういうことよ。理屈じゃないわよ」
 アスカは熱いままだ。
「やってやるわよ」
「そういうことだね」
 万丈がアスカのその言葉に頷いた。
「それじゃあボアザンに来たら」
「よし、それなら二人に」
「話そう」
「来たらですけれど」
「いや、来るよ」
 万丈はこのことは確信していた。
「あの二人は来るよ」
「死に場所を求めて」
「その為に」
「うん、絶対に来るよ」
 万丈はまた言った。
「そしてね。僕達はその二人を」
「説得する」
「そうするんですね」
「いや、心をぶつけるんだ」
 だが万丈は違う言葉を出した。
「そうするんだ」
「心?」
「心をですか」
「うん、そうだよ」
 にこりと笑って一同にまた話した。
「それをね」
「心を」
「それを」
「どう思ってるんだい?」
 万丈はまた彼等に問うた。
「それで君達は一体」
「死んで欲しくない」
「例え何があろうとも」
 健一と一矢が答えた。
「兄さんは兄さんだ」
「リヒテルは。死んではいけない」
「そう、それだよ」
 また話す万丈だった。
「その考えを。心をね」
「兄さんにぶつける」
「そうするべきか」
「そういうことだよ。飾る言葉は余計だよ」
 万丈は微笑んでそれはいいとした。
「必要なのは心なんだよ」
「そしてその心をぶつけて」
「あの二人を」
「わかったね。それじゃあ」 
 こうしてだった。そのボアザンに向かおうとする。しかしであった。
「!?レーダーに反応」
「宇宙怪獣です」 
 マヤとトウジが言った。
「数は一千万」
「ボアザンに向かっています」
「まずいな」
 タシロがそれを聞いて述べた。
「ここでそれか」
「艦長、どうしますか」
 副長がタシロに対して問うた。
「ここは一体」
「仕方ないな」
 タシロはまずはこう返した。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「宇宙怪獣に向かおう」
 これが彼の判断だった。
「いいな、宇宙怪獣にだ」
「宇宙怪獣にですか」
「最早ボアザンは解放されたも同じだ」
 彼もまたこのことを確信していたl。
「しかし宇宙怪獣はそうはいかん」
「そうです、その通りです!」
「宇宙怪獣は!」
 ノリコとカズミも言ってきた。
「宇宙怪獣を放っておいたらボアザンの人達が」
「ですからここは」
「その通りだ。それではだ」
 タシロは二人の言葉を受けてまた言った。
「諸君、いいな」
「はい、ここは」
「まずは宇宙怪獣を」
「全軍宇宙怪獣を迎撃する!」
 今ここに実際に命令を出した。
「よいな、それではだ!」
「了解です!」
「全軍攻撃開始!」
「宇宙怪獣だ!」
 こうしてだった。彼等はボアザン星に降下せずにまずは宇宙怪獣の大軍に向かった。宇宙怪獣は既に布陣し展開していた。
「いるな」
「うわ、相変わらずの数」
「何時見ても多いな」
 皆その大軍を見て言う。
「これだけの数があるなら」
「遠慮はいらないな」
「よし、行くぜ!」
 そしてだ。洸も言うのだった。
「ライディーンが怒っている」
「やっぱり。宇宙怪獣を見て」
「そうだな。やっぱりライディーンは宇宙怪獣を警戒している」
 こうマリにも述べる。
「それは間違いない」
「そしてその宇宙怪獣をだな」
「今ここでまた」
「ああ、倒す」
 今度は神宮寺と麗に答えたのだった。そうしてだ。
 まずは弓をつがえだ。それを放った。
「ゴオオオオオオオオッドゴオオオオオオオガン!!」
 それで数機倒した。これが合図になった。
 綾人もだ。ラーゼフォンの中から言う。
「僕だってここで」
「おい綾人」
 彼には豹馬が声をかけた。
「ラーゼフォンも感じているってのか?」
「うん、何かね」
 こうその豹馬に答える。
「感じているよ、強いものを」
「そうか、前からラーゼフォンとライディーンって似てると思ったけれどな」
「似てるね」
「そうだな、似てるよな」
 また言う豹馬だった。
「だから感じるんだな」
「宇宙怪獣、危険な存在だね」
 綾人はこちらの世界の人間になったかのように話す。
「放っておいたらいけないよ」
「大体何でこの連中は出て来たんだ?」
 宙はそれを問題にしていた。
「何でなんだ?」
「そういえばどうやって誕生したんだ?」
「それがわからないのよね」
「そうそう」
 皆宇宙怪獣の起源は知らなかった。
「生物だし絶対にルーツがあると思うけれど」
「それもはっきりしない」
「何なのかしら」
「どういった存在?」
 それが不明なのだった。全くである。
 しかしだ。今はそれよりもだった。その宇宙怪獣の相手であった。
 彼等も向かって来る。やはり数を頼りに来る。
 だがロンド=ベルはその彼等にも向かい。次々と倒していた。
 その戦場にだ。二人も来た。
「ボアザンに向かわずにか」
「まずはそこに来た」
「そうするのか」
「それがそなた等の選択か」
「リヒテル、それにハイネルか」
 京四郎が二人のマシンを見て言った。
「来たか」
「聞こう、何故だ」
 ハイネルの言葉だ。
「何故そなた達はまずボアザンに向かわなかった」
「何故宇宙怪獣と戦っている」
 リヒテルもそのことを問う。
「ボアザンは目の前だというのにだ」
「先に宇宙怪獣を倒すというのか」
「決まっている!それは!」
 最初に答えたのは健一だった。
「そのボアザンの為だ!」
「そのボアザンの?」
「ボアザンの為だというのか」
「ああ、そうだ」
 今度は一平が答えた。ボルテスもまた宇宙海獣達を次々と倒している。
「その為だ、ボアザンの為だ!」
「そうよ、この宇宙海獣達を放っておいたら」
 めぐみも言う。
「ボアザンは大変なことになるわ!」
「既にボアザンに兵はいない」
「既にな。もういはしない」
 ハイネルとリヒテルがこのことを指摘した。
「キャンベル星と同じく次々と兵達も目覚めた」
「残る兵は僅かだ。解放は間違いないというのにか」
「間違いないからでごわす」
「そういうことだよ」
 大次郎と日吉の言葉だ。
「それよりも宇宙怪獣でごわす!」
「この連中をボアザンに行かせるか!」
「ズ=ザンバジルと宇宙怪獣を戦わせることもできた」
 ハイネルはこうも話した。
「それは考えなかったのか」
「そんなこと考えるものか!」
 一矢の返答である。
「ボアザンの人達をこんな連中の前に晒せるか!」
「それが理由か」
 リヒテルは一矢のその言葉をしかと聞いた。
「それがだというのだな」
「そうだ、その通りだ!」
「俺達はボアザンの人達の為にも戦う!」
 健一と一矢は同時に言い切った。
「それが俺達だ!」
「ロンド=ベルだ!」
「ボアザンの為にもか」
「戦うというのだな」
「そして生きる!」
 健一はさらに続けた。
「ボアザン星の人達を守り戦う為にだ。生きる!」
「そういうことだ。俺も同じだ!」
 一矢は叫びながらだ。目の前にいる宇宙怪獣の合体型にだ。あの技を出した。
「ダブルブリザアアアアアアアアアドッ!!」
「むっ!」
「あの技かか!」
「そうだ、あの技だ!」
 一矢は二人にも応えた。そうしてだった。
 その技を出した。
「ファイアアアアアアアアストオオオオオオオオオム!!」
 炎も出した。そして。
「必殺!烈風!!正拳突きイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」
 それで宇宙怪獣を一気に突き破った。それで決まりだった。
「強い・・・・・・」
「また腕をあげたな」
 二人は一矢のその技を見てあらためて言った。
「それがか」
「今の御前の心か」
「ああ、そうだ」
 まさにその通りだと答える一矢だった。
「これでわかってくれたか」
「兄さん、俺もだ!」
 一矢もだった。今その剣でだ。
「天!空!剣!」
 その剣を高々と振りかざして宇宙怪獣に襲い掛かる。
 そして切り抜き。言った。
「ブイの字斬りーーーーーーーーっ!!」
「健一、御前もまた」
「余達に見せるか」
「兄さん、リヒテル!」
 健一もまた二人に対して告げた。
「俺の、俺達の言いたいことはわかる筈だ!」
「そうでごわす、兄さんは!」
「死んじゃいけないんだ!」
 大次郎と日吉も続く。
「ここは生きるでごわす!」
「ボアザンの為にも!」
「・・・・・・そうか」
 ここでだ。遂にハイネルは言った。
「そこまで言うか」
「何度でも言う!そして見せてやる!」
 これもまた健一の言葉だ。
「俺の、俺達のこの心を!」
「だから兄さん、どうか!」
「死ぬなんて思わないでくれよ!」
「・・・・・・わかった」
 ここでだ。ハイネルは遂に頷いた。
「弟達よ。それではだ」
「兄さん、やっと」
「わかってくれたでごわすか」
「そうなんだね」
「その通りだ。御前達の心、確かに余に届いた」
 その言葉に曇りはなかった。
「そしてだ。余も決めた」
「よし、それなら!」
「今から一緒でごわす!」
「ボアザンに!」
「行く、そして生きよう」
 彼はまた言ってみせた。
「そしてそこで余の決意を見せよう」
「余もだ」
 今度はリヒテルが言った。
「余もだ。その心を見せよう」
「リヒテル、御前もなんだな」
「ハイネルと同じだ、そなた等の心がわかった」
 だからだというのである。
「共にボアザンに向かい。そこで余の決意を見せよう」
「生きてなんだな」
「死なぬ」
 リヒテルもまた断言だった。
「やはり余もまた」
「そういうことだ、リヒテル」
 他ならぬ一矢の言葉だ。
「過去を悔いているな」
「その通りだ」
「なら余計にだ」
「生きるのか」
「そうだ、生きろ」
 一矢の言葉は変わらない。
「わかったな。生きろ」
「わかった。それではだ」
「そしてバームの民を導いてくれ」
「地球人との架け橋はか」
「俺とエリカがやらせてもらう」
 それはだというのだ。
「それに御前は一人じゃない」
「バームに戻ってもか」
「ハレックもいる。バームの人達がいる」
 彼等がだというのだ。
「その人達が御前を待っているんだ」
「余を。同胞達がか」
「そういうことだ。死ぬな」
「そうだな。それではだ」
 これで完全に考えが決まったのだった。
 ハイネルもだった。あらためて弟達に話していた。
「健一、大次郎、日吉」
「ああ、兄さん」
「そうでごわすな」
「これからだね」
「ボアザンの夜明けがはじまる」
 彼は既にそれを見ていた。
「そしてそれをか」
「兄さんが導くんだ」
「新しいボアザンをでごわす」
「その為にも」
「見せよう、世のあらたな決意を」
 彼もまた言い切った。
「それではな。ボアザンに参ろうぞ」
「よし、じゃあ皆」
「ああ、わかっている」
「行きましょう」
 一平とめぐみが頷く。健一のその言葉に。
「いよいよボアザンだ」
「戦いも終わったし」
 既にだった。宇宙海獣達は殲滅していた。憂いはもうなかった。
 それならばだった。彼等は安心してボアザンに向かうのだった。最早憂いはなかった。あるのは夜明け、二つの民の夜明けだけだった。


第四十七話   完


                       2010・8・11    

 

第四十八話 崩れ落ちる邪悪の塔

       第四十八話 崩れ落ちる邪悪の塔
 ロンド=ベルはハイネル、リヒテルと共にボアザンに向かう。その途中はだ。
「迎撃はないな」
「そうね」
「一度も」
 それは全くなかったのである。そしてだ。
 ここでもだ。彼等を迎える者達がいた。
「来たぞ!」
「ロンド=ベルだ!」
「遂に来たぞ!」
 ボアザンの市民達だった。軍もいた。
「それでは我等も!」
「ああ、行こう。祖国の為に!」
「ボアザンの為に!」
「立ったか」
 ハイネルがその彼等を見て言った。
「ボアザンの者達もまた」
「キャンベル星と同じだな」
 剛博士がそれを見て言った。
「ここでもまた」
「ええ、そうね」
 妻が夫のその言葉に頷いた。
「皆が立ち上がったのね」
「自分の手で掴み取らなければ何にもなりはしない」
 博士はまた話した。
「そう、自由も全ても」
「俺達はその力添えでしかないんだな」
 それはよくわかっている健一だった。
「この人達の。立ち上がった人達の」
「そういうことだ。よいか健一」
 ハイネルが弟に告げる。
「ズ=ザンバジルを見よ」
「あの皇帝を」
「それでわかる筈だ」
 彼はゴードルの中から話していた。
「真とは何かをな」
「真が」
「逆の意味でだ。それを見ることになるだろう」
 こう話すのだった。
「わかったな。それではだ」
「よし、じゃあ見せてもらう」
 健一も兄のその言葉に返す。
「その真を」
「女帝ジャネラも醜かったけれど」
 ふと言ったのはちずるだった。
「あの皇帝もなのね」
「そうね。それは間違いないと思うわ」
 めぐみは彼女のその言葉に頷いた。
「あの皇帝も同じでしょうから」
「その通りだ。その醜さも見ることだ」
 その通りだと返すハイネルだった。
「余は既に覚悟はできている」
「へっ、もうその醜さには慣れてるぜ」
 豹馬は少し虚勢を張っていた。
「もうな。覚悟して行くぜ」
「そうだな。この戦いは醜さを見る為の戦いでもあるんだ」
 一矢も覚悟している顔だった。
「人間の」
「そうだったな。人間だな」
 今のはリヒテルの言葉だ。
「我々は同じ人間だったな」
「生物学的にもそうなっている」
 ヴィレッタがこのことについて話した。
「確かに角や翼があってもだ」
「それでもだな」
「そうだ。同じ人間から進化している」
 そうだというのである。
「そうした意味でだ。宇宙にいる人間は同じなのだ」
「それがわかっていない奴もいる」
「そういうことだな」
 一矢と健一が話した。
「ボアザンでもまたそれは同じだな」
「そうした人間が醜さを晒すんだな」
「あっ、そういえばですけれど」
 ラトゥーニが言ってきた。
「ハザル=ゴッツォも」
「ああ、あいつか」
「あいつもそういえば」
「選民思想の塊だよな」
「そうよね」
 皆このことに気付いた。
「バルマー十二支族の人間だからって」
「それで自分以外を徹底的に見下して」
「嫌な奴だよな」
「全く」
 こう口々に話す。そしてであった。
 その中でだ。ふと話したのはアレルヤだった。
「あいつは大嫌いだ」
「そうなのか」
「うん、生理的に受け入れない」
 こうティエリアにも話す。
「声が似ていることもあって」
「また声になるのね」
 今困った顔をしたのはスメラギだった。
「ううん、どう思うテッサちゃん」
「そうですね。羨ましいです」
 テッサもこう言うことだった。
「私達にとっては」
「そうよね。私達にとっては」
「二人でいても」
「いや、スメラギさんとテッサの二人もな」
 ロックオンが突っ込みを入れた。
「何か感じるよな」
「ああ、そうだよな」
 サブロウタがロックオンのその言葉に同意する。
「あれだろ。別の世界でな」
「そうだよ。俺とサブロウタの旦那とかラッセさんとかな。クルツさんとかな」
「ここにはいないけれどリュウセイもな」
 サブロウタはその名前も出した。
「無茶苦茶そういうのあるしな」
「御苦労、感謝するって言葉もだな」 
 ロックオンはこんな言葉も出した。
「これは別の世界での話か」
「そうだな。この言葉も好きだしな」
「何か強烈にわかる言葉だな」
 ヤザンが二人の今の言葉に突っ込みを入れた。
「俺も何か鬼だった奴と組んでたしな」
「あいつやっぱり鬼になれたのか」
「そりゃよかったな」
 ロックオンとサブロウタはそのことを素直に喜んでいた。
「鬼になりたかったからな」
「運動音痴だったからな」
「ああ、本当によかったぜ」
 ヤザンはそのことを心から喜んでいた。
「俺と組んでる時とはまた別の記憶だけれどな」
「そうだったわね。私も彼は知ってるわ」
 今度はセシリーが出て来た。
「もやしとかもんの話でね」
「確かそっちにも関係者出てなかったかな」
 今言ったのはマサトである。
「ええと、白鳥の」
「おい、あいつかよ」
 その名前を聞いて言ったのはオルガだった。
「俺あいつと因縁があったんだよ」
「ああ、あれだね」
「鏡の世界」
 クロトとシャニが述べた。
「そっちだよね」
「御前の知ってる世界は」
「あそこでよ。俺は弁護士でよ」
「こいつが弁護士かよ!」
 それに驚いたのは全員だった。
「一体どんな世界なんだ!?」
「無法世界かよ」
「冗談抜きでそんなのだったな」
 オルガもこのことは認めた。
「もうな、野獣みたいなキングコブラがいたりよ。どう見たっていかれてる虎がいたりよ」
「うわ、かなり嫌そうな世界」
「確かに」
 皆それを聞いて言った。
「そのキングコブラって絶対に会いたくなさそうな奴みたいだし」
「虎よ」
「おうよ、白鳥もな」
 その白鳥の話だった。
「俺をやたら敵視していてよ。大変だったんだよ」
「そりゃ日頃の行いのせいじゃないのか?」
 今突っ込んだのはエイジだった。
「御前そっちの世界でもガン使ってただろ」
「ああ」
「俺も何かそっちの世界じゃガン使ってたんだよ」
 こう話すのだった。
「だからわかるんだけれどな」
「その縁でかよ」
「御前かなりとんでもないことやってただろ」
「好きな言葉は濡れ手に粟だった」
 とんでもない言葉であった。実際にだ。
「だからな」
「それじゃあ恨み買って当たり前だよ」
「そうなるのかよ」
「そうだよ。しかしあっちの世界ってよ」
「色々あるからな」
 ブリットが応えた。
「俺もな。少しな」
「わかるよな」
「ああ、わかる」
 こうエイジに答えるブリットだった。
「面白い世界だがな」
「蝙蝠だったか。御前の相棒は」
「半分か。吸血鬼だった」
 ブリットはエイジだけでなく皆にも話した。
「そうだったな」
「それであれだったわよね」
「もう一人凄い人がいて」
「753だったっけ」
 この数字が出て来た。
「かなり奇想天外な人だったらしいけれど」
「その人は?」
「いや、無茶苦茶な人だったな」
 実際にこう言うブリットだった。
「もう何もかもが壮絶だったよ」
「その人死ななかったんだよな、確か」
「死にそうだったのね」
「ああ、結局最後まで生き残ったよ」 
 ブリットはその人についても話した。
「最初死ぬかなって思ったんだけれどな」
「ううん、しぶといなあ」
「あの人は特にそうだったし」
「ブリット君は死なないと思っていたけれど」
「俺が死んだらあいつが変身できないからな」
 ブリットは笑いながら話した。
「それはやっぱりな」
「そっちの世界もそっちで色々あるからな」
「だよな」
「こっちも世界もあるけれど」 
 ここで話が戻った。
「声が似てるとそれだけで」
「私何か最近というか前からですけれど」
 今度はユリカだった。
「ええと、ナタルさんとフレイちゃんとステラちゃんと。他にはフィルちゃんに後は」
「待て、何人いるんだ?」
 ナタルが突っ込みを入れた。
「私も前から気になっていたが」
「あんた達声似てる人多過ぎよ」
 二人に突っ込みを入れたのはミサトだった。
「次から次に増えてるじゃない」
「それとユングもね」
 メイシスも言う。
「私は一人なのね」
「それは私のことね」
 出て来たのはリツコだった。
「メイシスに会って驚いたけれどね」
「そうね。私達仲よくなれたのはね」
「似ているからね」
 二人で言い合うそのメイシスとリツコだった。
「まさかそうした人がいるなんて思わなかったから」
「そうよね」
「しかし。本当に多いよな」
 アキトはユリカを見ながら呟いた。
「ユリカに似てる人ってな」
「一番数多いんじゃないのか?」
「そうかもな」
 ダイゴウジがサブロウタの言葉に答える。
「俺達もだがな」
「まあそうだけれどな」
「ううん、私どういうわけかエマさんはわかるとして」
「私ですよね」
 リィナがハルカの言葉に応えていた。
「それって」
「そうよ。私達似てるわよね」
「そう思います」
 実際にそうだと返すリィナだった。
「それでなんですけれど」
「それで?」
「今度エマさんも交えて何か作らない?」
「お料理ですか」
「ええ。何か作りましょう」
 こうリィナに提案するのだった。
「それでどうかしら」
「そうですね。それじゃあ」
 こんな話をするのだった。そしてである。彼等は宮殿に向かうのだった。
 その宮殿ではだ。卑しい外見の男が喚いていた。
「何故だ!」
「何故かとは」
「一体?」
「何があったのですか?」
「何故軍がこれだけしかいないのだ!」
 男はこう周りに喚いていた。
「何故だ、これだけしかいないのか!」
「陛下、残念ですが」
「これだけです」
「集まったのはです」
 こう周りの者達が述べる。
「その他の者は皆反乱軍に加わりました」
「それで一万程度しか」
「その他は全て」
「何をやっておるか!」
 皇帝ズ=ザンバジルは遂に激昂した。
「皇帝たるわしの危機にだ!これだけだというのか!」
「陛下、大変です!」
 ここで家臣の一人が駆け込んできた。
「敵が」
「叛徒共か!皆殺しにせよ!」
「いえ、違います」
 そうではないと。その家臣は述べた。
「それだけではなくです」
「まさか、それは」
「はい、ロンド=ベルです」
 この名前が出された。
「あの者達が来ました!」
「おのれ、ならばだ!」
 皇帝はそれを聞いてすぐにまた怒鳴った。
「軍はいるな」
「はい、一万ですが」
「それだけがいます」
 臣下の者達が答える。
「ではその一万で」
「奴等を迎え撃つのですか」
「そうだ、そしてその間にだ」
 まだ言う皇帝だった。
「わしは逃げるぞ」
「えっ!?」
「陛下、今何と」
「何と仰いましたか?」
 今の彼の言葉にはだ。周りの者も唖然となった。
「陛下はボアザンの皇帝ですが」
「その陛下がボアザンを離れられるのですか」
「しかも今ですが」
「何と仰いましたか?」
 唖然とした顔のままで皇帝に問い返した。
「逃げられるとは」
「まさかとは思いますが」
「我等の聞き間違いでは」
「聞こえなかったのか、逃げるのだ」
 だが皇帝はまた言うのだった。
「そしてそこで再起を図るのだ」
「は、はあ」
「左様ですか」
「そうなのですか」
 最早完全に呆れ返ってしまった。どうにもならなかった。
 皇帝は実際に逃げた。部屋から去る。臣下の者達は最早何を言っていいのかわからなかった。
 その一万の軍がロンド=ベルに向かう。しかしであった。
 ハイネルが前に出た。そうしてだった。
「ボアザンの者達よ!」
「プリンス=ハイネル!?」
「まさか。ここまで来たのか」
「ボアザンに戻ってきたのか」
 その一万の兵が彼の姿を見て言った。
「そして何故ここに」
「我等の前に出て来た」
「何のつもりだ」
「知れたこと、汝等は何の為に戦う」
 こう彼等に問うのだった。
「それは何故だ」
「何故というと」
「ボアザンの為だ」
「違うというのか」
「そうだな、ボアザンの為だ」
 ハイネルもその言葉には頷いた。
「しかしだ」
「しかしだと」
「どうだというのだ」
「何が言いたい」
「皇帝ズ=ザンバジルは何だ!」
 彼のことを言うのだった。
「あの男は何だ!」
「皇帝ではないのか」
「そうだ、それ以外の何でもない」
「今更何を言うのだ」
「そもそも御前は逆賊ではないのか」
「いや、逆賊はズ=ザンバジルだ」
 また言い返すハイネルだった。
「あの男こそがだ。ボアザンに対する逆賊だ!」
「何っ、陛下が賊だと!?」
「それはどういう戯言だ!」
「正気なのか!」
「あの男は今まで何をしてきた!」
 言いながらだった。ゴードルの右手にある剣で前を指し示した。そこには宮殿があり異様なまでに高く聳え立つ黄金の塔があった。
「その塔は何だ!」
「何を言うか、ボアザンの誇りだ」
「ボアザンの塔だ」
「陛下が築かれたな」
「それはあの男が己の為に建てさせたものだ」
 塔を指し示しながらまた言うのだった。
「多くの民の血と汗と命を搾り取ってだ」
「それだというのか」
「あの塔が」
「そうだ、あの男は己のことしか考えておらぬ」
 そしてだ。こうも告げた。
「何故今この戦場に姿を現わさぬ!」
「!!」
「それは」
「そうだな。あの男は逃げた!」
 ボアザンの兵達に話す。
「そなた等を見捨ててだ。己だけが逃げたのだ!」
「まさか、そんな筈がない」
「陛下が国を見捨てるなぞ」
「有り得ないことだ」
 兵達はハイネルの言葉を信じようとしなかった。しかしだった。
 ここでだ。宮殿の中から臣下の者達が言う声が聞こえてきた。
「陛下、お一人だけ逃げられるとはどういうことですか!」
「一体何処に行かれるのですか!?」
「港も既に占領されております!」
「それではとても」
 この言葉こそが何よりも証だった。
 兵達もそれを聞いてだ。遂にわかった。
「俺達は。それでは」
「今まで何もわかっていなかったのか」
「ボアザンの真の敵は」
「やはり」
「これでわかったな」
 ハイネルはしかとした声で再び兵士達に告げた。
「ボアザンの真の敵が」
「はい。これで」
「それでは我々もまた」
「ボアザンの為に」
「では武器を捨てよ」
 ハイネルの今の声は穏やかなものだった。
「わかったな」
「・・・・・・わかりました」
「では。ボアザンの為に」
 こうしてだった。一万の兵も投降した。戦いはこれで終わった。
 かに見えた。だがここで無数の円盤がロンド=ベルの周りを囲んできた。
「伏兵か!?」
「まさか」
「案ずることはない」
 ハイネルはロンド=ベルの面々にも落ち着いた声で返した。
「無人機ばかりだ」
「無人なのか」
「そうなのね」
「すぐに倒せる。それよりもだ」
 ハイネルは視線を前にやった。そしてだった。
 塔に向かいだ。剣を一閃させた。それで塔は真っ二つになり崩れ落ちたのだった。
 無人の円盤達も一瞬で全て撃墜された。そしてだった。
 宮殿にだ。あの男が出て来た。身体に財宝をこれでもかと巻いている。
「ええい、何故誰も来ぬのだ!わしの危機に!」
「叔父上・・・・・・」
 ハイネルはその皇帝を見て流麗な顔を歪ませた。
「何をしておられるか」
「最早何も終わりじゃ!こうなったらどうとでもなれ!」
「それがボアザンの皇帝の姿か!」
 ハイネルは思わず叔父を叱り飛ばしてしまった。
「最期は皇帝らしく誇りを守られよ!」
「貴様、ハイネルか!」
 皇帝は彼の姿を見て言った。
「そうじゃ、貴様じゃ!貴様がボアザンを滅ぼしたのじゃ!」
「そう思われるのか」
「全ては貴様のせいだ!皆の者、ハイネルこそが全ての元凶ぞ!」
 皇帝の今の言葉を聞いてだ。流石に誰もが呆れた。
「あれが皇帝か?」
「どうだっていうんだ?」
「あれは」
「どうにもならないわね」
 呆れているのはロンド=ベルの面々だけではなかった。
 ボアザンの民も捕らえられている貴族達も投降した兵達も解放軍達もだ。誰もが呆れ果てていた。
 そしてだ。ハイネルもだった。
「ボアザンはこれまでこの様な蛆虫に蝕まれていたのか」
 苦々しげに歯噛みするとだった。ゴードルを出てだ。剣を投げた。
「うっ・・・・・・」
 剣は皇帝の喉を貫いた。これで終わりだった。
「せめて苦しまぬように死ぬのだ」
 ハイネルは皇帝だった男を見下ろして告げた。
 そしてだ。前に向き直りこの場にいる全ての者にだ。また剣を振るった。
「なっ!?」
「角を」
「右の角を切った!?」
「何故だ」
「皆の者、聞け!」
 ハイネルがまた告げてきた。
「これよりボアザンは貴族制を廃止する」
「貴族制を」
「だから角を」
「しかし」
 だが中にはだ。それでも疑問を口にする者がいた。
「何故右の角だけを切った?」
「左は残して」
「それは何故だ」
「正しきボアザン貴族の心」
 だがハイネルは言うのだった。
「それは忘れてはならん」
「正しきボアザン貴族主義の心」
「それをだというのか」
「そうだ!」
 まさにそうだというのだった。
「それを忘れない為にも。余波は左の角は置く!」
「そうか」
 健一もここで全てがわかった。
「兄さんはその為に左の角を」
「ハイネル、それでだな」
 剛博士も言った。
「だから御前は右の角だけを」
「誓おう、余はこのボアザンを正しく導く!」
 ハイネルの言葉は続く。
「階級を廃し誇りを忘れずにだ。導こう!」
「ハイネル様!」
「それでは!」
 その言葉を聞いてだ。ボアザンの者達も喜びの声をあげる。
「今こそ我等の真の主に!」
「その御心と共に!」
「そうだ、来るのだ!」
 ハイネルも彼等のその言葉に応える。
「正しきボアザンの為に!」
「ボアザン万歳!」
「ハイネル様万歳!」
 ボアザンの者達は次々に讃える言葉を口にした。
 こうしてボアザンでも戦いは終わった。ハイネルはボアザンの新しい皇帝となりこの星を導くことが決まった。そうしてであった。
「それではな、健一よ」
「ああ、兄さん」
 当然ハイネルはボアザンに残った。そうしてだった。
 ロンド=ベルの者達はまた旅に出ることになった。必然的に別れることになった。 
 だがその別れの場ではだ。誰もが明るい顔のままであった。
「また会おう」
「健闘を祈る」
 両者は互いに微笑み合いながら話をしていた。
「次にボアザンに来る時はだ」
「楽しみにしているよ」
 健一はこう兄に告げた。
「正しい姿に生まれ変わったこの星を見ることを」
「そうしてもらいたい。ではリヒテルよ」
「うむ」
 ハイネルは今度は盟友に顔を向けた。相手もそれに応える。
「余もこれで一旦火星に戻る」
「そうするのだな」
「そしてだ」
 さらに言うリヒテルだった。
「バームの者達をだ」
「導くのだな」
「それが余の役目だからな。また会おう」
「そうだな。我等は長い間道を誤っていた」
「だがそれも終わった」
 二人は互いに話していく。
「これからはだ。それぞれの民達と共に生きよう」
「そうしよう。互いにな」
「ではさらばだ」
 ハイネルの方から言った。
「また会おう」
「うむ、その時を楽しみにしている」
 こう言葉を交えさせてだった。両者は別れた。リヒテルも火星に向かった。こうしてロンド=ベルは再び旅に出るのであった。
「さて、キャンベル星もボアザン星も解放された」
「それじゃあ後は」
「ソール遊星かな、いよいよ」
「遂に」
 皆それぞれ話す。しかしだった。
 ここでだ。レオンが一同に言ってきた。
「それでだが」
「はい」
「何かあったんですか?」
「君達に頼みがあるのだが」
 こう言うのであった。
「またバジュラが何時来るかわからないな」
「あっ、そうですね」
「あいつ等のことがあったんだ」
「まだかなりいたよな」
「というか連中のこと全然わかってないし」
 皆このことも思い出した。
「あの連中のことですか」
「どうするかですね」
「それについてだ」
 また言ってきたレオンだった。
「君達に頼みがある」
「そうなのだ」
 ここで美知島も出て来た。
「是非君達の力が必要なのだ」
「是非って」
「そこまでなんですか」
「一体何をされるんですか?」
 こう疑念も持つのだった。
「私達全員ですよね」
「そこまでって」
「バジュラの殲滅ですか?」
「言うならばそうだ」
 まさにそうだと返す美知島だった。
「これからの我々の為にもだ」
「僕達の為ですか」
 応えたのは慎悟だった。
「それだからこそ」
「そうだ、君達の為でもある」
 レオンは慎悟の言葉にも応えた。
「結果としてそうなる」
「そうなんですね。それじゃあ」
 華都美もここで頷いた。
「私達も是非」
「そうしてくれるか。それではだ」
「はい、一体」
「何をされるんですか?」
「実はヒントを見たのだ」
 また言うレオンだった。
「リン=ミンメイ、そしてファイアーボンバーの諸君からだ」
「何だ?俺達かよ」
 それを聞いて声をあげたのはバサラだった。
「俺達の歌にかよ」
「かつて歌によって戦いを終わらせてきた」
「俺は戦い嫌いだしな」 
 バサラもレオンの言葉に応えて言う。
「だから歌うんだよ」
「バジュラにも同じだ」
「バジュラにも?」
「そうだ。歌で彼等を攻める」
 そうするというのである。
「それがこれからのバジュラへの作戦だ」
「倒すとかより歌で奴等との戦いが終わるんならな」
 バサラはいぶかしみながらもレオンの言葉を聞いていた。
「ただな」
「ただ、か」
「俺はバジュラを倒すことには反対だぜ」
「それはわかっている」
「わかってるっていうのかよ」
「だから君達ファイアーボンバーにはやってもらうことはない」
 それはないというのだった。
「別の歌手がすることになるだろう」
「別の歌手?」
「それって一体」
「誰?」
 皆そのことについても考えだした。
「それが問題だけれど」
「ええと、ファイアーボンバーじゃない」
「じゃあ一体」
「誰?」
「それじゃあ」
「既にそれは決めている」
 また言うレオンだった。
「こちらでだ」
「っていうと」
「ええと、フロンティアの人かな」
「そうなるかな」
 皆大体察したのだった。
「ってことはシェリルさん?」
「そうよね」
「多分だけれど」
「いや、彼女ではない」
 だがレオンはそれは否定した。
「シェリル=ノームではない」
「えっ、シェリルさんじゃないんですか」
「そうなんですか」
 皆それを聞いて今度は驚いた顔になった。
「それじゃあ誰なんですか?」
「シェリルさんじゃないとすると」
「一体誰が」
「誰が歌うんですか?」
「そうか」
 だがアルトだけはだ。ここでわかったのだった。
「あいつだな」
「君はわかったようだな」
「ああ、わかったぜ」
 実際にそうだとレオンに返しもした。
「ランカだな」
「そう、ランカ=リーだ」 
 レオンもまた彼女の名前を出した。
「彼女に歌ってもらうのだ」
「ランカちゃんがって」
「また急に」
「そうよね。確かに最近人気急上昇だけれど」
「何でシェリルさんじゃなくて」
「細かいことはまた後で話す」
 少なくとも今ではないという美知島だった。
「とにかくだ。それでだ」
「はい、ランカちゃんが歌う間」
「バジュラから彼女を守るんですね」
「そういうことですね」
「その通りだ。頼むぞ」
 また言う美知島だった。
「それでだ」
「直接の護衛はオニクスが務める」
「えっ!?」
 それを聞いて声をあげたのは卯兎美だった。
「またあれを動かすんですか」
「そうだ。この際は仕方がない」
 美知島はその卯兎美に答えた。
「だから真人君と神名君にはまた活動してもらう」
「けれどそれは」
「ええ」
 卯兎美だけでなく華都美も暗い顔になった。
「あの二人にとっては」
「今は」
「大丈夫だ、悪いようにはならない」
 レオンはその二人にも話した。
「治療やアフターケアの態勢も万全だ」
「だからなんですか」
「それで」
「そうだ、我々としてもその辺りは考えている」
 レオンはここで笑ってみせた。だが目は笑ってはいない。
「安心して欲しい」
「・・・・・・だといいんだがな」
 ここで言ったのはバサラだった。
「まああんたを信じさせてもらっていいんだな」
「是非そうしてもらいたい」
 レオンはバサラにこう返しもした。
「そうしてくれるか」
「ああ、わかったぜ」
 また頷くバサラだった。
「それじゃあな。協力させてもらうぜ」
「フロンティアの為だ」
 今度は真剣そのものの言葉だった。
「諸君、頼んだぞ」
「バジュラだろうが何だろうがな!」
 バサラがまた言う。
「俺の歌で戦いを終わらせてやるぜ!」
「あんたって本当に何時でもそうなのね」
 ミレーヌはここでもバサラに対して告げた。
「相手が誰でも」
「耳さえあればな、いや」
「いや?」
「何もなくても俺の歌は届くんだよ!」
 そうだというのである。
「俺の歌はな!耳がなくても聴かせてやるぜ!」
「無茶を言うわね」
「全くだな」
 ミレーヌだけでなくレイも呆れていた。
「そこでそんなこと言うなんてね」
「御前だけだぞ」
「俺はありきたりの方法じゃ止められねえぜ!」
 相変わらず人の話を聞かない。
 だがここでだ。ふとこうも言ったのである。
「しかしな」
「どうしたのよ」
「レオンさんだったな」
 そのレオンのことを言うのである。
「あの人妙だな」
「妙って何が?」
「何か考えてねえか?」
 こう言うのだった。
「妙にな」
「妙にねって?」
「だから。ただバジュラを何かしようっていうんじゃねえんじゃねえのか?」
 こう読んだのである。
「そんな気がするんだけれどな」
「そうなの?」
「何かそう思うんだよ」
 またミレーヌに話す。
「俺の気のせいか?」
「ううん、どうなのかしら」
 ミレーヌもバサラの言葉に首を捻った。
「それは。ただ考えてるのは間違いないでしょうけれど」
「それはってんだな」
「だって責任ある立場じゃない」
「まあそれはな」
「だからよ。他にも色々と考えてるんじゃないの?」
「だといいんだがな」
 こんな話をしてだった。バサラは今のレオンに首を傾げさせていた。そのうえで今度はだ。バジュラに対して再び戦うことになったのだ。


第四十八話   完


                    2010・8・14        

 

第四十九話 ランカ=アタック

             第四十九話 ランカ=アタック
 ロンド=ベルの進路はそのままだった。向かう先は三連太陽である。
 そしてだ。その中でだった。
「何か行く先にまたか」
「ああ、バルマー軍があるな」
「そうね」 
 こう口々に話していた。
「今度は近銀河方面軍か」
「バルマーの中枢近くを通るが」
「問題はそこだな」
「そうね」 
 そしてだ。そこにいるのはだ。
「ポセイダル家か」
「そうですね」
 ダバがここで言った。
「オルドナ=ポセイダルとですね」
「遂に決着をつける時だな」
 ギャブレーの目が光った。
「あの者達ともな」
「そうね。そういえばポセイダル軍だけれど」
 アムがここで皆に話した。
「地球での戦いで相当戦力を消耗したんじゃないの?」
「いや、特にそうではない」
 だがそれはレッシィが否定した。
「あれは戦力を貸していただけだ」
「あれでなの?」
「マーグが率いていた軍のことだな」
「ええ」
 アムもその通りだというのだ。
「あの時だけれど」
「あの時もその前の戦いでもだ」
「戦力の一部なの?」
「十三人衆だった私も戦力の一部しか知らなかった」
 こう話すレッシィだった。
「主力は規模としてはだ」
「やっぱりあれ?これまでの方面軍と同じ?」
「そうだ」
 まさにその通りだというのである。
「七個艦隊ある」
「で、ヘルモーズも七隻ってわけね」
「それはもうわかるな」
「定番だからね」
 こうレッシィに返したアムだった。
「バルマー軍のね」
「そう。ポセイダル軍の他にね」
「バルマー軍もいる」
 また言うレッシィだった。
「それはわかっておいてくれ」
「じゃあまた派手な戦いになるわね」
「そうだな」
 ダバもアムに続いた。
「だが。ここでだ」
「ペンタゴナを解放してだ」 
 また言うギャブレーだった。
「そしてポセイダルを倒そう」
「そういえばだけれど」
 ここで言ってきたのはリンダだった。
「オルドナ=ポセイダルは女の人だったわよね」
「ああ、そうだ」
 その通りだと答えるダバだった。
「オッドアイのだ。銀色の女だ」
「そうなの」
「それがどうかしたのかい?」
「いえ、何かロゼさんがね」
「はい」
 そのロゼが出て来て言ってきた。
「妙な話を聞いたことがあります」
「妙な?」
「はい、オルドナ=ポセイダルは男だと」
 こう言うのだった。
「聞いたことがあります」
「馬鹿な、そんな筈がない」
 ギャブレーがそのことを否定した。
「ポセイダルは女だ。それは間違いない」
「しかしです」
 だがここでさらに言うロゼだった。
「バルマーの中枢ではそうした話が実際にされていました」
「その通りだ」
 マーグも出て来て話すのだった。
「詳しいことは霊帝とその僅かな重臣だけが知っていることだが」
「ポセイダルが男だっていうのかい」
「そうだ」
 マーグはダバにも話した。
「そのことを私も聞いた」
「私もです」
 ロゼがまた話す。
「聞いています」
「あくまで不確かな情報だがそれでもだ」
「ポセイダルが男って」
「どういうことだ」
 このことにアムとレッシィも難しい顔になる。
「そんな筈がないけれど」
「まさかとは思うが」
「それにです。オルドナ=ポセイダルはです」
「これは確かな根拠のある話だ」
 二人はさらに言ってきた。
「人間とは思えないまでに生きています」
「このことは知っていると思うが」
「そうよね」
「そういえばそうだな」
 リリスの言葉にダバは頷くことになった。
「何か薬を使っているとは思っていたけれど」
「確かに異様な長寿だ」
「オルドナ=ポセイダルには謎が多い」
 また言うマーグだった。
「十二支族の者であってもだ」
「何か十二支族っていっても結構色々あるんだな」 
 今言ったのは弾児である。
「一つじゃないんだな」
「ああ、そうだよな」
 それに盾人も頷く。
「どうもそれぞれの家の力が強いんだな」
「だが霊帝はそれ以上の力を持っている」
 マーグはこのことを話した。
「それはかなりのものだ」
「バルマー帝国、まだその全貌はわからないけれど」
「どんな国なんだ」
「そして霊帝は」
「どれだけの存在なんだ」
「若しかするとだけれど」
 ふとドロシーが言ってきた。
「その霊帝自体は大したことないかも知れないわ」
「その帝は?」
「大したことがない?」
「まさか」
「ただ単なる推察だけれど」
 一応こう断りはしたドロシーだった。
「けれどそれでも。バルマー帝国とはこれまで何度も戦ってきた」
「思ったことは確かに数は多い」
 ロジャーもこのことは指摘した。
「しかしだ」
「しかし?」
「何だっていうんですか?」
「空洞を感じた」
 ロジャーの指摘はこれであった。
「何かしらの空洞をだ」
「空洞を?」
「それをなんですか」
「そうだ、感じた」
 また言うロジャーだった。
「その力は強いが虚ろだ。それを感じた」
「そうだね。確かにバルマー帝国は強いね」
 万丈もそれは確かだとした。
「けれどね。人がいないような」
「そういえばクローンとか多いよな」
「だよね」
「それと無人機とかが」
 皆バルマーのこのことに気付いていった。
「司令官はあのジュデッカ=ゴッツォばかりだし」
「妙に人がいない感じが」
「してならないし」
「実はだ」
 今度話してきたのはヴィレッタだった。
「バルマー帝国はこれまでの戦いで衰微もしているのだ」
「ああ、やっぱり」
「そうだったのね」
「それでか」
 皆ヴィレッタのその話を聞いて納得したのだった。
「何か言う程のものがないと思ったら」
「衰微していた」
「そういうことか」
「成程ね」
「そしてだ」
 ヴィレッタはさらに話すのだった。
「宇宙怪獣の最大拠点が母星に近い」
「それってまずいんじゃ」
「そうよね」
「ちょっと」
「洒落にならないんじゃ」
 皆話してそのうえでまた考える。
「何かバルマーも問題あるみたいな」
「敵は多いしそのうえ」
「種族としても衰えてる?」
「そんな感じ?」
「否定できないな」
 ヴィレッタの言葉はこれだった。
「今のバルマーは」
「そうですよね、やっぱり」
「そんな風に感じます」
 皆もここで話すのだった。
 そしてだ。ふとミシェルが言った。
「そういえばだけれどな」
「どうかしたんですか?」
「いや、歌うのはランカちゃんだろ?」
 彼が言うのはこのことだった。
「それだけれどな」
「そのことですか」
 それを聞いてだ。ルカも考える顔になった。
「そういえばそうですよね」
「御前も知らないのか」
「はい、ちょっと」
 こうミシェルに述べるのだった。
「僕もそれが不思議でして」
「普通ここはあれだろ」
 デュオも怪訝な顔で話す。
「シェリルさんだよな」
「俺もそう思う」
 ウーヒェイも同じ考えだった。
「何故シェリル=ノームではない」
「人気だけではない。実力も確かだ」
 トロワもこのことを認めた。
「それを考えればだ」
「そうだよね。ランカちゃんが決して悪いという訳ではないけれど」
 カトルも妙に思っている。
「それでも。シェリルさんではないのは」
「噂だが」
 ここではノインが言ってきた。
「シェリル=ノームは今病気だしいな」
「あっ、そういえば」
 ヒルデが彼女の言葉にふと気付いた。
「最近テレビに出ないわよね」
「それでだったのか?」
「それでランカちゃんなのか?」
「シェリルさんが歌えないから」
「そうじゃないかしら」
 皆今度はシェリルについて考えるのだった。
「大丈夫かな」
「そうよね」
「ちょっと心配だけれど」
「何の病気かしら」
 皆話す。次第にシェリルのことが心配になってきた。
 そのシェリルはだ。今は病院の中にいた。そうしてだった。
 グレイスが横にいてだ。その彼女と話していた。
「もういいわよね」
「あら、起きたいのかしら」
「ええ、もう大丈夫よ」
 こうグレイスに言うのだった。
「だからね。退院させて」
「駄目よ、それは」
 しかしグレイスはその彼女を止めた。
「まだよ」
「だから病気のことはもう大丈夫よ」
「それでもよ。たまには休みなさい」
「たまには?」
「そうよ、たまにはよ」
 微笑んでの言葉だった。
「わかったわね」
「何よ、こんなところに閉じ込めておくつもり?」
「何なら寝たら?」
「充分過ぎる程寝たわよ」
 グレイスの話を聞こうとしないシェリルだった。ここでシェリルの血の入った管にそっと手をやる。するとそこに触手が出て密かに取ったのだった。
「だから。もうね」
「退院したら嫌という位仕事を入れるわ」
 グレイスはまたシェリルに話した。
「だから。いいわね」
「仕方ないわね。そこまで言うのなら」
 シェリルもようやく納得した。そしてだった。
 グレイスはシェリルの前から去りそのうえで屋上に出た。外はもう夜だった。
「それにしてもね」
「そうだな。思ったよりも」
「しぶといわね」
「シェリル=ノーム」
 グレイスは何人かと話をしていた。だがその姿は見えない。
「一度廃棄したのに」
「まだ生きているなんて」
「どういうことかしら」
「想像以上よ」
「そうね。けれどもういいわ」
 ふとだ。あの血が入った管を出したのだった。
「これでね」
「廃棄する」
「そうするのね」
「ええ、そうよ」
 まさにその通りだというのだった。
「そして後は」
「ランカ=リー」
「彼女が」
「そういうことよ。さようなら」
 血の入った試験管を下に捨てた。屋上にだ。
 捨てられたそれはすぐに小さな機械に回収された。それで終わりだった。
 そして次の日だった。もう来たのであった。
「バジュラです」
「来ました」
 マクロスクォーターから報告があがった。
「その数百万」
「すぐに迎撃準備ですね」
「ここは」
「そうだ。そしてだ」
 今度はジェフリーも話してきた。
「あれだな」
「ランカちゃんですね」
「これから仕掛けますか」
「いよいよ」
「そうだ。しかし」
 ジェフリーはふとその眉を顰めさせてきた。
「ブレラ=スターンも護衛か」
「ですよね。オニクスだけじゃなくて」
「ブレラ君までつけるなんて」
「どういうことかしら」
「そんなこと知るものか」
 ふとオズマがマクロスクォーターのモニターに出て来たのだった。
「ふざけた話だ」
「やっぱり反対なんですね」
「妹さんを使うことは」
「そうなんですか」
「当然だ」
 忌々しげな口調でモニカ達にも返す。ミーナとラムもいる。
「レオン=三島。どういうつもりだ」
「仕方ないと言えるかしら」
 ここでカナリアが言った。
「歌が効果があるのなら」
「仕方ないか」
「気持ちはわかるわ。けれどね」
「それはわかっているつもりだ」
 ここでオズマも言った。
「だが。それでもだ」
「感情はそうだっていうのね」
「そうだ」
 まさにその通りだった。
「どういうつもりだ、全く」
「今は抑えておくことだ」
 そのオズマにジェフリーが告げた。
「それしかない」
「くっ・・・・・・」
 ジェフリーもこれ以上言えなかった。そうしてだった。
 バジュラとの戦闘に入る。クランが部下達に告げた。
「ネネ、ララミア!」
「はい!」
「わかっています、中尉!」
「守るだけだ!」
 こう部下達に話すのだった。
「いいな、今はだ」
「はい、ランカ=リーが出て来るまで」
「それまでは」
「そうだ、守るのだ」
 また話す彼女だった。
「わかったな」
「バジュラの軍は凄い数ですけれど」
「守るんですね、今は」
「そうすれば勝てる」
「この戦いは」
「だといいのだがな」
 今一つ確信を持てないクランだった。
「バジュラにな」
「そうだよな」
 クランにヘンリーも応えてきた。
「歌の効果は否定しないがな」
「ランカ=リー。いいのか」
 クランもまたランカについて考えた。
「それで」
「来ました!」
「バジュラ、正面からです!」
 ネネとララミアが言ってきた。
「では守りましょう」
「今は」
「うむ、守るぞ!」
 こう話してだった。ロンド=ベルは今は守るのだった。
 そのまま守って一時間程経った。そこでだった。
「行くぞ」
「うん」
 ランカはブレラの席の後部座席にいた。護衛はオニクスである。
「それじゃあ」
「護衛は任せて下さい」
「僕達に」
 神名と真人がランカに言ってきた。
「バジュラは近寄らせません」
「ですから」
「え、ええ」
 二人のその言葉に頷くランカだった。
「御願いします」
「そしてだ」
 今度はブレラも話してきた。
「俺がいる」
「ブレラさんが」
「そうだ、守る」
 彼にしては珍しく感情の入った言葉だった。
「だからだ。安心しろ」
わかりました。それじゃあ」
 こう話してだった。彼等はそのままバジュラの大軍に向かう。そうしてだった。
 そのバジュラの大軍に対してだ。歌ったのだった。
「!?」
「まさか本当に」
「ああ、これは」
「バジュラの動きが止まった!」
 皆その光景を見た。
 ランカの姿はホノグラフィーで巨大になって戦場にも出ていた。浮かんでいた。
「まさか効いている」
「本当に」
「間違いない!」
 そしてだ。ここでジェフリーが命じた。
「全軍攻撃だ!」
「了解!」
「今ですね!」
「この機に一気にバジュラ達を倒す!」
 ジェフリーは言い切った。
「わかったな、今だ!」
「よし、全軍突撃!」
「勝つぞ!」
「バジュラにも!」
 こうしてだった。勝敗は一気に決した。ロンド=ベルはバジュラの大軍を一気に粉砕した。全てはランカの歌の効果であった。
 そして戦いが終わってだ。オズマはキャスリンに話していた。
「効果あったな」
「ええ、そうね」
「忌々しいことだ」
 ここでふと顔を左に背けるオズマだった。
「全くな」
「やっぱりね」
「一体何を考えている」
 また言うオズマだった。
「ランカを前線に出してまでか」
「正直フロンティアも必死なのよ」
 キャスリンは今はフロンティアの側に立って述べた。
「バジュラに対してね」
「それはわかるがな」
「とにかくどうにかしないといけないからね」
 それはというのである。
「そういうことだから」
「それでか」
「それでよ。けれど私もね」
 今度は自分の意見であった。
「今回のことはね」
「賛成できないか」
「反対よ」
 もっとはっきりとした言葉だった。
「それにだけれど」
「それにか」
「ランカちゃんのマネージャーだけれど」
「あのゼントラーディの社長だったな」
「それが代わったのよ」
「何っ!?」
 今の言葉にまた声をあげたオズマだった。
「事務所が変わったのか」
「どうも。レオンが動いたらしくて」
 これまで出すのを控えていたがここで出したのである。
「それでね」
「それでか」
「それで今のマネージャーは」
 ここからもだった。オズマにとっては驚くべきことだった。
「彼女よ。グレイスさんよ」
「あのシェリル=ノームのマネージャーのか」
「どういうことなのかしらね」
 キャスリンにしてもわからないことだった。
「シェリル=ノームのマネージャーがなったのは」
「俺に聞かれてもな」
「わからないわよね」
「御前もわからないか」
「少し調べようと思ってるわ」
 そしてオズマにこう話すのだった。
「協力してもらえるかしら」
「状況によるな」
 オズマは今は即答しなかった。
「その時次第だ」
「そうなの」
「だが考えさせてもらう」
 こうも言ったのだった。
「よくな」
「そうして。できるだけね」
「わかった。それではな」
「ええ。それでだけれど」
 ここで話を変えてきたキャスリンだった。
「これから時間はあるかしら」
「飲みに行くつもりだった」
 こう答えるオズマだった。
「それがどうかしたか」
「そう。だったらね」
「ああ」
「お酒と一緒にケーキはどうかしら」
 微笑んで彼に言ってきたのだった。
「ケーキは」
「ケーキか」
「そうよ、パインケーキよ」
 くすりと笑ってもみせたのだった。
「久し振りに焼いたのよ。どうかしら」
「そうだな。それじゃあな」
「ワインだったらお酒と一緒にいけるわよね」
「ワインはいい酒だ」
 オズマは今はにこりとしていなかった。
「それなら。飲むか」
「二人分あるから」
「用意がいいな」
「足りなければ幾らでもあるから」
「さらに用意がいいな」
「それじゃあ。そういうことね」
「行くか」
 オズマから言ってだ。そのうえで二人である場所に向かった。そのうえで二人でだ。動くのであった。


第四十九話   完


                      2010・8・16   

 

第五十話 グッバイ=シスター

           第五十話 グッバイ=シスター
 ミシェルはだ。今クランと会っていた。場所は屋外のレストランだった。
 そのクランがだ。むくれていた。
「一体何の用だ」
「何の用かって?」
「そうだ、何の用だ」
 こうミシェルに言うのである。
「私は忙しいのだぞ」
「忙しいって今日お互いに非番だろ」
 ミシェルは少しきょとんとした顔で言葉を返した。
「それでか?」
「それでもだ。私は忙しいのだ」
「ああ、そういえば」
 ここでクランは言った。
「あれだったな。大学に通ってるんだよな」
「シティ7のな」
「それで今はフロンティアのか」
「そうだ。それで何の用だ」
 また言うクランだった。
「何故ここに呼んだ」
「まあ大した用じゃないんだけれどな」
 ミシェルは普段の態度のままである。
「ちょっと気になることがあるんだよ」
「気になることか」
「御前の声ってあれだよな」
 声の話だった。
「ミリアリアちゃんと同じだよな」
「その話か」
「似てるなんてものじゃないだろ」
 また言うのであった。
「そう思うんだがどうなんだ?」
「そう言う御前は何だ」
 クランも真剣な顔で返す。
「御前の声もだ。ティエリアそっくりではないか」
「そうなんだよな。ルカもルカであれだしな」
「斗牙だな」
「そうだよな・・・・・・んっ!?」
「どうした?」
「おい、あれ」
 レストランの下を指し示すのだった。
「隠れるぞ」
「何かわからないがわかった」
 クランはミシェルのその言葉に頷いた。
「それではな」
「ああ。あれを見ろ」
 二人は隠れてミシェルのその指し示したものを見た。
「ルカが」
「あの車は」
 見れば政府の車だった。しかも多くの黒い服の男達も一緒にいる。一目見ただけで尋常な様子ではないのがわかる。ルカはその車に乗った。
「どういうことだ、これは」
「わからない。フロンティアの政府と接触しているのは間違いないが」
「それだけだな。一体何なんだ?」
 今はそれはわからなかった。だが二人はそれを見た。 
 そしてである。オズマはだ。キャスリンの部屋で彼女と話をしていた。彼はまずは自分が今食べているそのパインケーキのことを話した。
「久し振りだがな」
「どうだったかしら」
「いいものだな」
 こう言うのだった。
「料理の腕は落ちていないな」
「そう。それはよかったわ」
「俺が作るとどうもな」
 ここで苦笑いを浮かべるオズマだった。
「まずいと言われるからな」
「妹さんになのね」
「どうしたものかな」
 困った顔での言葉だった。
「これは」
「やっぱりあれじゃないかしら」
「あれか?」
「センスね」
 キャスリンはこの言葉を出してきたのである。
「それね」
「センスか」
「ええ、それよ」
 また言うキャスリンだった。
「それが必要なのよ。料理にもね」
「御前に教えられた通りしたのだがな」
「それでも駄目なのよ」
「駄目か」
「だから。オズマには料理のセンスがないのよ」
「元々料理はしなかったがな」
 このことを認めもした。
「そういうことか」
「そうよ。それで私のケーキだけれど」
「ああ」
「有り難う」
 微笑んでの言葉だった。
「全部食べてくれて」
「美味かったからな」
 また話すオズマだった。
「だからな」
「そういうことなのね」
「それでだがな」
 ここでオズマは話を変えてきた。
「いいか」
「ええ、あのことね」
「やはりあれか。レオン三島か」
「間違いないわ」
 キャスリンはこうオズマに返した。
「彼がね。関わっているわ」
「そうか。やはりな」
「まだ何を考えているかはわからないけれど」
 それはだというのであった。
「それに」
「それにか」
「彼は危険なのかも知れないわ」
 ふとキャスリンの顔が曇った。
「それもかなり」
「婚約者じゃないのか」
 オズマはこのことを指摘した。
「それでもか」
「ええ。野心家だから」
 言葉は現在形だった。
「それが魅力だと思えたのよ」
「そうか」
「けれど。調べれば調べる程ね」
「危うい男だな」
「それがわかってきたわ。どうもね」
 こう言ってだ。キャスリンはその整った顔をさらに曇らせた。
「このままでは何をするかわからないわ」
「中将との関係も気になるな」
「美知島中将ね」
「オニクスと一緒にな。何を考えている」
「オニクスには今全てのギガンディックの性能を集めているわ」
「何っ?」
 それを聞いて声をあげたオズマだった。
「全てのか」
「そうよ。これまでギガンティックは互いの性能を互換してきたわね」
「ああ」
「それがあのシリーズの強さだったけれど」
「それを全てか」
「何を考えているのかしら」
 また言うキャスリンだった。
「彼も中将も」
「俺も動く」
 ここでオズマは言った。
「今から言って来る」
「めぼしい場所があるのね」
「それを見つけた」
 こうキャスリンに話す。
「すぐに行って来る」
「気をつけてね」
 キャスリンの言葉は真剣なものだった。
「それは御願いね」
「わかっている。それじゃあな」
「ええ。それじゃあね」
 こうしてだった。オズマは何処かに向かった。その時拳銃を忘れなかった。
「ランカ・・・・・・」
 妹の名前を車の中で呟く。
「御前は俺が守る」
 こう決意してだった。そのうえで向かうのであった。
 アルトは壁と壁の間をよじ登ってそうして。ランカの部屋に入った。その彼をランカが出迎えるが彼の顔は浮かないものであった。
「ったくよお」
「どうしたの?アルト君」
「これじゃあ間男だよな」
「そうかしら」
「そうだよ。変な感じだよ」
 こうランカに言うのだった。
「全くな」
「けれどブレラさん達がいるから」
「それとオニクスのあの二人か」
「そうなの。ずっとボディーガードをしてくれていて」
「ちょっとやり過ぎじゃないのか?」
 こうも言うアルトだった。
「ここまでしないと会えないなんてな」
「やっぱりそう思うのね」
「ちょっとな。それでだけれどな」
「うん」
「話って何だ?」
 こうランカに問うのだった。
「携帯じゃ話せないことって何だ?」
「ちょっと待って」
 ここでランカは言った。
「アルト君はコーヒーだったわよね」
「ああ」
「それ持って来るから」
 こうしてだった。コーヒーとチョコレート菓子が持って来られた。そのうえでテーブルに座って二人で話す。そこであの緑色のペットが来た。
「この子だけれど」
「おい、それは」
「うん、ずっと飼ってるの」
 こうアルトに言うのだった。アルトはそれまで部屋の中のランカがオズマと一緒にいる写真を見ていたがそちらに視線を集中させた。
「この前から」
「見つかったらやばいぞ」
「わかってるけれどそれでも」
「それでこの子のことをっていうんだな」
「私が面倒見れない時は御願いできる?」
 アルトに対して申し出る。
「その時は」
「ああ、いいさ」
 二つ返事で答えるアルトだった。
「御前にとって大事なものだよな」
「ええ」
「じゃあそうさせてもらうさ」
「有り難う、アルト君」
「いいさ。それじゃあこのコーヒー飲んだらな」
「どうするの?」
「帰る」
 返答は一言だった。
「そうさせてもらう」
「そうなの。帰るの」
「ああ。ところでランカ」
「何?」
「バジュラのことだけれどな」
 今度は自分が話したいことを言うのであった。
「あれでいいのか?」
「歌うこと?」
「ああ。御前はあれでいいんだな」
 ランカの目を見て問うのだった。
「兵器になることで」
「うん」
 ランカはアルトのその言葉にこくりと頷いた。
「いいよ、私は」
「そうか、いいのか」
「だって。それで皆助かるよね」
「ああ、バジュラの動きが止まっただろ」
「ええ」
「それに何か向こうの攻撃や守りまで弱まったしな」
 アルトはランカにこのことも話した。
「皆助かったって言ってるさ」
「なら私はそれでいいから」
「それでか」
「皆が喜んでくれるならそれでいいから」
 微笑んでの言葉だった。
「それでね」
「そうか。御前はいいんだな」
「うん、だったら」
「そうか、わかった」
「アルト君はどう考えてるの?」
 ランカもまたアルトに問うてきた。
「それで」
「俺か」
「バジュラについて。やっぱり考えてるよね」
「ああ、俺はな」
「アルト君は?」
「どっちかが滅びるまで戦うんだと思っている」
 こう真剣な顔で言うのである。
「俺はな」
「そうなの」
「二つの種族が互いに生きよう、栄えようと思ったら」
「うん」
「そこで争いが起きる。そして生き残るのは」
 ここからさらに真剣な顔で言うのだった。
「どちらかだ。共存はないんだ」
「そう思うのね」
「違うか、それは」
「それは私にもわからないけれど」
 ランカもまた難しい顔になっていた。
「けれど。ゾヴォークの人達とは和解できたじゃない」
「同じ人間だからな」
「バジュラとは無理なのかな」
「無理だな」
 やはりこう言うアルトだった。
「奴等には知性自体がないからな」
「難しいのね」
「宇宙怪獣と同じだ」
 彼等の話も出した。
「あの連中とも。どちらが滅びるまでな」
「それと同じなのね」
「そう思う、俺はな」
 こんな話をしていた。そしてルカはレオンと話をしていた。その中でレオンに言われていた。
「これがあればだ」
「バジュラに対抗できるんですね」
「そうだ。協力してくれて有り難う」
 レオンは口元だけで笑って述べた。
「これで我々は戦える」
「いえ、僕は」
「当然のことをしたまでだというのか」
「フロンティアの人達の為にも」
 その為だというのである。
「だからです」
「そうか。それでか」
「僕はそれだけです」
 また言うルカだった。
「それじゃあ」
「ならいい。それでだが」
「それで?」
「君にはこれからも協力してもらいたいがいいか」
「フロンティアの為なら」
 こう限定しての返答だった。
「させてもらいます」
「よし。ではな」
 こんな話をしていた。レオンはその後スーツの男と会った。それは。
 髪を外すとだ。すぐにグレイスになった。その彼女とも話した。
 そしてだ。オズマはだ。ある場所に忍び込もうとしていた。 
 拳銃が手にある。それを手に入ろうとするとだ。
「待て」
「!?貴様は」
 ブレラだった。彼もいたのである。
「何故ここにいる」
「ここには大切なものがあるからだ」
「ランカのだな」
「知っているんだな」
「だからこそここにいる」
 こう答えるブレラだった。
「そしてだ。ここから先には行かせない」
「いいのか、俺も今度はだ」
 拳銃を出しながら言う。
「意地でも通らせてもらう」
「ランカの為にか」
「そうだ、ランカは俺の妹だ」
 このことを言うのだった。
「だからだ。何があっても守る」
「妹だからか」
「それならだ」
 ここでだ。ブレラも前に出た。二人は対峙しはじめた。
 その中でだ。ブレラも言うのであった。
「俺もランカを守る」
「何ッ、それは何故だ」
「御前と同じだ」
 こう言うのである。
「だからだ」
「同じ、まさか」
「ランカは俺が守る」
 その時ブレラの胸で何かが光った。それはペンダントだった。
 そのペンダントを見てだ。オズマは気付いた。
「まさかそれは」
「そのまさかだとしたらどうする」
「何があった」
 オズマはそのブレラに問うた。
「ランカに、そして御前に」
「話すことはない」
 それは言おうとしなかった。
「去れ。俺が言うことはそれだけだ」
「去るつもりもない」
 オズマも退かなかった。
「絶対にだ」
「そうか。それならだ」
「やるか」
 二人は戦おうとした。しかしそこで、だった。 
 二人の携帯がそれぞれ鳴った。二人同時に出るとだった。
「仕方ないな」
「今日はこれで終わりだな」
 言葉もそれぞれだった。
「まずはバジュラだ」
「行くとしよう」
 こうしてだった。彼等はそのままそこから離れて出撃する。バジュラの一軍が再びロンド=ベルに対して突き進んできたのである。
 それを見てだ。ジェフリーは言った。
「総攻撃だな」
「はい」
「わかったわ」
 その言葉にキャスリンとボビーが応える。
「では全軍」
「やるわよ!」
 こうしてロンド=ベルはいきなり総攻撃を仕掛けた。しかしであった。
「!?思ったより減ってないな」
「ああ、確かに」
「どういうことなんだ!?」
「これは」
「まさか。やっぱり」
 ここでルカが言った。
「バジュラはこちらの攻撃に耐性を持つんです」
「何っ、それだとだ」
 クランがそれを聞いて言う。
「我々が倒せば倒す程バジュラは強くなるのか!?」
「はい、そうなります」
 こう言うのだった。
「ですから。今も」
「そうか、だからレオンさんはそれを察して」
「それで」
 ここで一同も気付いた。
「ランカちゃんの歌を」
「それでか」
「けれど」
 しかしだった。今ランカはいなかった。
「ランカちゃんは!?」
「一体何処に」
「いや、わからない」
 オズマが言う。
「何処にいるかはだ」
「じゃあ一体どうすれば?」
「バジュラは迫っているのに」
「どうすれば」
 ロンド=ベルは少なからず困惑していた。そしてだ。レオンはそんな彼等を見ながらそのうえでグレイスと話をするのであった。
「飴と鞭ですが」
「今は飴よ」
「飴ですか」
「あの娘へのね」
 悠然と笑っての今のグレイスの言葉だった。
「それなのよ」
「ではロンド=ベルにとっては」
「鞭になるわね」
 笑みはそのままである。
「そうなるわね」
「やれやれ、それでもいいのですね」
「ええ、いいわ」
 また言うグレイスだった。
「ロンド=ベルはね」
「相変わらず恐ろしい人だ」
 こう言うレオンも笑っている。
「敵に回したくはないものだ」
「どういたしまして」
 そんな話をしながら戦局を見ていた。戦局はロンド=ベルの面々が当初考えていたよりもさらに苦戦していた。その原因もわかっていた。
「ちっ、ランカちゃんがいないとな」
「それにバジュラの耐性があがってる」
「何てこった」
「反応弾とか受けてもまだ生きてる奴いるぜ」
 皆少なからず焦りを感じはじめていた。
「数も多いしな」
「援軍も来たわよ」
 ここで言ったのはルナマリアだった。既にビームライフルを壊れんばかりに放っている。
「二倍になったわね、数が」
「ここで一気に潰すつもりか」
 レイがその援軍を見て呟いた。
「それがバジュラの考えか」
「冗談じゃないわよ」
 今言ったのはメイリンである。
「ちょっと、そう簡単にやられるつもり!?」
「まさか」
 彼女に応えたのはアズラエルである。
「何故僕達がここで死ななくちゃいけないんですか」
「だったらここは」
「踏ん張りどころですね」
 アズラエルも何時になく真剣な面持ちだった。
「まあ常になのですが」
「じゃあアズラエルさん」
 ここで同じクサナギに乗っているユウナが彼に言ってきた。
「ここはですね」
「はい、ここは」
「防火活動手伝って下さい」
 彼が言うのはこのことだった。
「今大変なんで」
「そんなに大変ですか」
「もう猫の手が借りたい位なんですよ」
「トダカさんやキサカさんはどうしたんですか?」
 クサナギを実際に動かしている軍人二人である。
「そういえば姿が見えませんが」
「とっくに出払ってますよ」
 ユウナは困り果てた顔で言った。
「あちこち被弾してもうそっちに行って」
「それで僕もですか」
「とりあえず僕は艦橋にいないといけないんで」
 一応彼が指揮官であるのだ。
「それでなのですが」
「今クサナギはそんなに危ないんですか?」
「沈みたいですか?」
 ユウナの返答は実に切実であった。
「それならいいですけれど」
「わかりました。じゃあ行ってきます」
「そういうことで。沈まない為にも」
 クサナギはこんな状況だった。だがそれはクサナギだけではなかった。バジュラの攻撃にどの者も必死であった。そして。
 マクロスクォーターにバジュラが一機来た。
「なっ!?」
「一機だけ!?」
「特攻!?」
「いかん!」
 それを見てジェフリーも言った。
「迎撃せよ!対空戦闘用意!」
「は、はい!」
「わかりました!」
 すぐにキム達が応える。しかしであった。
「間に合いません!」
「このままでは!」
「くっ、各員衝撃に備えよ!」
 こう命じたその時だった。
 そのバジュラの前にだ。オズマのバルキリーが来た。そして。
「させるか!」
「えっ、少佐!」
「まさか!」
「くうっ!」
 攻撃を受けた。しかしであった。
 返す刀でそのバジュラをダガーで切った。それでバジュラを倒したのだ。
「なっ、ビームダガーで!?」
「少佐、大丈夫ですか!?」
「まさか!」
「まさかもこうしたもない!」
 オズマは立っていた。そのうえでアルト達に言うのだった。
「攻撃がききにくくてもだ!」
「戦う」
「そういうんですね」
「反応弾が駄目ならミサイルだ!」
 まずはそれだというのだった。
「それが駄目ならガンポッド、それが駄目ならだ!」
「ダガー」
「そして」
「拳もある。全てを使って倒す!」
 オズマはそこに気迫を見せていた。
「それだけだ。何を使ってでも倒す!」
「何故そこまでして戦うのよ」
 キャスリンが思わずオズマに問うた。
「死ぬつもり!?貴方実際に」
「市民の為、仲間の為」
 そのオズマの言葉だ。
「そして惚れた女の為に戦う!それが男だ!」
「えっ・・・・・・」
 キャスリンはすぐにわかった。それが誰のことかをだ。
「オズマ、そんな・・・・・・」
「全軍いいか!」
 オズマは今度は仲間達に対して叫んだ。
「全力でバジュラを倒す!いいな!」
「そうだな。いいこと言うぜ」
 最初に笑って応えたのはフォッカーだった。
「そう来ないとな。じゃあ俺もだ!」
「どうするっていうのかしら」
「クローディア、御前の為に戦う!」
 こうそのクローディアに対して言うのである。
「いいな、それで!」
「ええ、いいわよ」
 クローディアも笑って返した。
「それならね」
「ああ、行くぜ!」
 こうして彼もバジュラに向かう。アルトとミシェルも。
 まずはミシェルが言った。
「ロックだねえ」
「演歌だろ、あれは」
 こうミシェルに返すのだった。
「だがな。それでもな」
「ああ、俺達にも火が点いたぜ」
 二人はモニターで顔を見合わせて笑っていた。
「行くか!」
「一気にな!」
 しかしだった。ルカだけが遅れていた。
「おい、ルカ」
「行くぞ」
「は、はい」
 今一つ浮かない顔で二人に応えるのだった。
「それじゃあ」
「行くぜ、それじゃあな」
「この戦い、決めるぜ」
 二人はそのままルカと共に戦場に向かった。戦いはオズマの気迫に触発されたロンド=ベルの炎の如き攻撃で決着がついた。そしてその後。
「さて、勝ったし」
「後はこれだな」
 全員でランカの歌を聴く。コンサートに来ているのだ。
 そこにはオズマもいる。隣にいるのはキャスリンだ。
「ねえオズマ」
 キャスリンはそのオズマに対して声をかけた。
「さっきの話だけれど」
 だが返事はない。そして彼を見ると。背中から血を流しその中で倒れ伏していた。
 病院でだ。ミシェルが言っていた。
「あのまま死んでたら最高だったんだがな」
「全くよ」 
 キャスリンがその彼に憮然とした顔で返す。
「本当に。何考えてるのよ」
「まあ生きていて何よりさ」
 今度は笑って言うミシェルだった。
「俺もそう簡単には死ねないな」
「誰も死んだら駄目よ」
「誰もですか」
「そうよ。ロンド=ベルは誰かが死ぬことが許されない場所みたいだから」
「そうみたいだな」 
 ここでモエラも出て来て言うのだった。
「俺だってあの時は死んだと思ったんだがな」
「俺なんか本当に天使が見えたよ」
 トールも出て来た。
「それでもここにいるからな」
「人間って中々死なないものだよなあ」
「確かに。僕も一回死ぬところでしたし」
 ニコルも言う。
「この部隊はとにかく死なない人ばかりですね」
「誰かが死んで嬉しい奴なんているかよ」
 今言ったのはジェリドだ。
「俺は撃墜はされても死なないようにしてるんだよ」
「そういえばジェリドさんって」
「確かに」
「ティターンズ時代何度も撃墜されて」
「それでも今ここにいるから」
「不死身?」
 こんな言葉まで出て来た。
「ひょっとして」
「機体も色々と乗り換えてるし」
「適応力も凄いのね」
「人間タフでないと生きられないんだよ」
 そのジェリドの言葉だ。
「これでもテキサス生まれだからな。タフさには自信があるぜ」
「そうだな。それはよくわかる」
 応えたのはグン=ジェムだった。
「わしもドラグナーの小僧達に何度も撃墜されてるしな」
「っていうかおっさんよくあれで生きてたよな」
「全くだよ」
「おっさんも不死身なんじゃないのかね」
 ケーンにタップ、ライトがそのグン=ジェムに突っ込みを入れる。
「まあ金竜大尉も生きてるしな」
「この部隊とにかく人が死なないのがいいのよ」
「本当にな」
「あの変態爺さんとか妖怪忍者はそれこそブラックホールの中に落ちても生きてそうだけれど」
 アスカはここで忌まわしげに言った。
「死んで欲しいんだけれどね」
「アスカってまだあの人達嫌いなんだね」
「っていうか常識ないのは嫌いよ」
 こうシンジにも言う。
「全く。流石にここまでは来ないでしょうけれど」
「来るんじゃないかな」
 だがシンジはこう見ていた。
「あの人達だと」
「げっ、来るの」
「他の世界でも普通に来たんだし」
 シンジはその時のことを話した。
「だからここにだって来るんじゃないかな」
「うっ、否定できないわね」
 アスカは顔を顰めさせて言葉を出した。
「あそこまでの変態や妖怪だと」
「けれどシュバルツさんってドイツの人なんだよね」
「ドイツに忍者はいないわよ」
「じゃああれは何なの?」
「知らないわよ。胡散臭い強さだし」
 強さは認めていた。
「変態爺さんに至っては使徒を素手で破壊してたし」
「あれはびっくりしたわね」
 ミサトもその時のことを思い出して苦笑いになっていた。
「最初見た時は我が目を疑ったわ」
「BF団以上だったし」
 リツコも言う。
「あの恐ろしい破壊力はね」
「まあ何はともあれよかったわね」
 ミサトは今度は優しい微笑みになっていた。
「少佐が無事でね」
「そうね、それはね」
「次の戦いは無理だけれど復帰は早いわよ」
 ミサトは微笑みのまま話す。
「安心してね」
「そう。それならね」
 そしてだった。オズマは病室でだ。泣いているランカに抱き締められていた。
「何やってるのよ、何かあったらどうするのよ」
「済まないな」
「済まないじゃないわよ、全く」
 こんなことを話していた。そうしてである。
 同じ病院でだ。シェリルがグレイスと会っていた。
「そういえばこの病院だったわね」
「ええ、そうよ」
 真剣な顔でグレイスに言葉を返している。
「知らないってことはないわよね」
「勿論よ。知っていたわ」
 こうシェリルに返す。
「それはね」
「私達、どうやら」
 シェリルはまた言ってきた。
「じっくりと話す必要があるみたいね」
「そうね」
 グレイスもシェリルのその言葉を受ける。
「私もそう思っていたわ」
「思っていたのね」
「ええ」
 悠然と返しすらする。
「そうよ。それじゃあ」
「ええ、それじゃあ」
 その場で向かい合い話をはじめる二人だった。シェリルの運命もまた動こうとしていた。


第五十話   完


                         2010・8・19    

 

第五十一話 トライアングラー

          第五十一話 トライアングラー
 まずはだ。シェリルから話してきた。
「どうしてなのかしら」
「どうしてとは?」
「どうしてランカのマネージャーになったの?」
 問うのはこのことだった。
「それに私を病院に閉じ込めて。どういうつもりかしら」
「それね」
 何でもないといった口調だった。
「そのことなのね」
「そうよ、どうしてなのかしら」
 こうグレイスに問うのだった。
「それにランカをバジュラに使って。私じゃないっていうの!?」
「ええ」
「私じゃなくて。何故ランカなの?」
「貴女はね」
 グレイスは悠然とだ。見下すようにしてそのシェリルに告げてきた。
「自分ではアーチストと思っているわね」
「ええ、そうよ」
「けれど所詮はアイドルなのよ」
 こう告げるのであった。
「ランカとはまた違うわ」
「私がランカとは違う」
「そう、貴女は今まで自分一人でやってきたと思っている」
「そうよ」
 その自負こそが彼女を支えているものだった。
「ギャラクシーのあの中から一人でね。違うっていうのかしら」
「あのスラムで私が貴女を見つけなかったらどうだったかしら」
 だがグレイスはそのシェリルにさらに言うのだった。
「その時は」
「うっ・・・・・・」
「わかっている筈よ。あのゴミ箱を漁っていた貴女を私が見つけて」
 その時の記憶がだ。シェリルを襲っていた。
「そして今に至るわね」
「けれどそれは私の歌が」
「ではもう一つ言うわ」
 言おうとするシェリルを遮っての言葉であった。
「貴女は私が拾った後暫く入院していたわね」
「スラムで弱っていた身体を回復させる為だった筈よ」
 これはシェリルの記憶の中でそうなっていることだ。
「違うというの?」
「違うわ。貴女は病気なのよ」
 こう彼女に告げるのである。
「そう、その病気は薬がないと生きられないもの」
「薬が・・・・・・」
「私が密かに投与してきた薬がないとね」
 グレイスの口元に妖しい笑みが宿った。
「つまりわかるかしら」
「何がだというの?」
「貴女は終わりなのよ」
 今度は目元も笑った。やはり妖しいものである。
「歌手としても生命的にも」
「そんな、私は」
「一人で生きるというのね」
「ええ、生きてみせるわ」
 必死の顔での言葉だった。
「貴女がいなくてもね」
「どうかしら」
「見ていなさい、それをね」
 こう言ってグレイスの横を通り過ぎようとする。しかしであった。
 グレイスは後ろからその彼女を捕らえてだ。耳元に囁くのであった。
「甘く見ないことね」
「何ですって!?」
「貴女は私がいないと生きられない」 
 こう囁くのである。
「そう、そして私に捨てられた貴女は終わりなのよ」
「くっ・・・・・・」
「さようなら、シェリル=ノーム」
 何の温かみもない蔑みに満ちた言葉であった。
「残された時間を楽しみなさい」
 こう言い捨てて解放するのだった。後に残ったシェリルは何処かへと消えていった。
 病院から帰ったロンド=ベルの面々はルカのことが気になった。それでだった。
 バジュラについて調べていた。そこでだった。
「結局わかったことはだ」
「ああ」
「あまりないですよね」
 皆サコンの言葉に応える。
「何が何なのか」
「これまでわかっていることだけしかわからないし」
「何なんだ、って話だけれど」
「そもそも」
 ここで言ったのはラトゥーニだった。
「急に出て来た生命体ですよね」
「そうだな」
「確かにね」
 彼女の言葉にラウルとフィオナも頷く。
「記録に出て来たのはな」
「本当に急よね」
「私達の世界にもいなかったわよね」
 ティスはここでラリアーとデスピニスに問うた。
「あんな生き物」
「記憶にないね」
「データにもなかったわ」
 そのラリアーとデスピニスも答える。
「あんな生き物は見たこともないし」
「私達の世界には本当に」
「俺達の世界にもだ」
 フォルカも言うのだった。
「あんな生き物はいなかった」
「その通りだ。見たこともない」
 アルティスも話す。
「他の世界の生き物の可能性もあるが」
「私達の世界でもないわ」
 ラミアも否定してきた。
「他の世界の存在ではないみたいね」
「そうだな。だとすればだ」
 アクセルもここで言った。
「この世界の生き物だ」
「けれどデータが少な過ぎますわ」
 シャインも首を傾げさせる。
「あのバジュラに対しての資料は」
「やっぱりあれかね、第一一七船団」
 ミシェルがそこに言及した。
「そこに関係あるのかね」
「可能性としては一番妥当ね」
 プロフェッサーもミシェルの言葉に続く。
「やっぱり。あの船団が」
「何かわかってる?それで」
 樹里はそこに言及した。
「そっちの船団の」
「いや、全然」
「何一つとして」
 エドとジャンが答える。
「これまでわかってること以外には」
「何も」
「ギャラクシーとバジュラでぐぐってみたらどうだい?」
 今言ったのはアレックスである。
「それで何か出て来るかもな」
「ネットでか」
 フェイがアレックスの言葉に問う。
「そういえばシェリルの病気も気になるわ」
「?そういえば」
「あの病気もおかしい?」
 ジュゼとイワンがこのことに気付いた。
「何か調べるべき?」
「そちらも」
「只の風邪とも思えない」
 ハンスは難しい顔になった。
「それは一体」
「まあとりあえずだけれど」
 エルフィが言う。
「ギャラクシー関連で検索してみましょう」
「わかった」
 クランが彼女の言葉に応える。そうして検索するとだった。
 あるサイトが出て来た。それは。
「あれっ、このサイトは」
「あの病気の?」
「そうだな」
 キャシーとドニー、それにジャンが言う。
「何で出て来たのかしら、このサイト」
「ギャラクシーで検索して」
「何故?」
「それに」
 ソーマがそのサイトを見て言った。
「この女の人、まさか」
「!?おい!」
「まさかこの人」
「ああ、間違いない!」
 全員で驚きの声をあげる。
「グレイスさん!?」
「どういうことなんだよ、これ」
「一体」
 全員で驚きの声をあげる。そしてだった。
 サイトを見ていて一人の少女が治療を受けている姿が目に入った。その少女は。
「おい、あの娘だよな」
「そうだな」
 ビリーも驚愕した顔でパトリックの言葉に頷く。
「シェリル=ノームだよな」
「間違いない」
「何なんだ?これって」
「一体」
 皆そのサイトを見れば見る程困惑を覚えた。
「グレイスさんとシェリル=ノームにどういう関係が」
「これって」
 皆そのサイトを見ていぶかしむものを感じた。そして。
 シェリルは雨の街を彷徨っていた。そうするしかなかった。
 頭の中でグレイスの言葉が巡り回る。それに怯え憔悴していた。
 そのうえで倒れる。だがそこに。
「おい」
「えっ・・・・・・」
 アルトだった。日本の油紙の傘をさしている彼が来たのである。
「どうした、一体」
「私は・・・・・・」
「とにかく雨にあたったら駄目だろ」
 こう言ってシェリルを自分の傘に入れる。そして。
 車を呼んでそれで基地に戻る。そうしたのだった。
 ロンド=ベルの面々は嫌な予感を感じていた。
「何だろうな、これ」
「ああ」
「絶対に何かあるわね」
「というか」
 彼等はそれぞれその予感の中で話していく。
「シェリルさんの病気ってやっぱり」
「まだ完治していない?」
「おそらくは」
 こう考えていくのだった。
「そしてグレイスさんがその鍵を握っている」
「そういえば」
 ここで言ったのはテッサである。
「前から思っていたことですがあの人についてわかっていることは僅かです」
「あれっ、シェリルさんのマネージャーじゃ?」
「そうじゃないの?」
「では何故ここにおられるのでしょうか」
 そのサイトは明らかに医学に関するものであった。しかもかなり高度なだ。
「こうした研究に携わっておられたのでしょうか」
「そもそも我々はギャラクシーのことも知らない」
 カティの言葉だ。
「それも全くだ」
「聞いている話だけだし」
「そもそも今はどうなった?」
「ギャラクシーって」
「若しかしたら」
 今言ったのは慎悟である。
「大変なことになっているのかも」
「大変なこと!?」
「まさかそれって」
「宇宙怪獣、いえバジュラに」
 言ったのはそちらであった。
「襲われてもう」
「そういえば連絡ないし」
「ギャラクシーからは一度も」
 皆もこのことに気付いたのだった。
「それってどういうことなんだろう」
「本当に何かあったとしたら」
「連絡ないのも当然だし」
「それなら。やっぱり」
「憶測で話すのはあれだけれど」
 今言ったのは未沙だった。
「可能性はあるわよね」
「はい、宇宙には色々いますし」
「それなら」
 皆不吉なものを感じていた。その時ルカはだ。レオンとまた会っていた。
「君の立案した作戦だが」
「はい」
「私の考えに賛同してくれた」
 ルカを見ながらの言葉である。
「こう考えていいのだね」
「そうです」
 レオンの問いにこくりと頷く。今二人はレオンの執務室にいる。
「それは何故だ」
「何故とは?」
「フロンティアの為かね」
「はい、そして」
「そして?」
「大切な人の為です」
 ナナセのことを思い出しての言葉であった。
「だから」
「それでなのか」
「はい、その為にバジュラを」
 また言うルカだった。
「倒さないと」
「バジュラ以外にも脅威はいあるがまずはだな」
「そうです、ですから僕は」
「その気持ち受け取らせてもらった」
 静かに言うレオンだった。
「それではな」
「はい、それじゃあ」
 ルカもルカで動いていた。そうしてであった。 
 オズマは今はキャサリンと行動を共にしていた。私服姿の彼女は袖のない赤い上着にミニスカートとかなり露出の多い姿である。
 その姿で外見はデートを装いながら。二人で調べていた。
「ねえ」
「ああ、そうだな」
「最初はまさかと思っていたわ」
 まずはこう言うキャサリンだった。
「けれどこれはね」
「俺もまさかとは思った」
 オズマも声にいささか狼狽があった。
「あいつはあそこまで考えていたのか」
「これは何とかしないといけないわ」
「しかもあいつだけじゃない」
 オズマはまた言った。
「美知島中将も一緒とはな」
「つまり政府と軍の高官が結託したのよ」
「ギャラクシーのな」
「こんなことを許せば大変なことになるわ」
 キャサリンはその目に確かな危機感を見せていた。
「だからここは」
「ああ、阻止するぞ」
「私達でね」
 彼等も危機を感じていた。そしてである。
 ランカはフロンティアの中であるものを探していた。ブレラも一緒だ。
「見つかりました?」
「いや」
 ブレラはランカのその言葉に首を横に振った。
「いない」
「そうなんですか」
「他の場所を探すとしよう」
 ブレラはランカにこう提案した。
「いいな」
「はい、それじゃあ」
「それじゃあ?」
「その前にソフトクリームを食べませんか?」
 こうブレラに提案したのである。
「ちょっと疲れましたし」
「ソフトクリームですか」
「甘いものはお嫌いですか?」
「いや」
 そのランカを見ながら述べた。
「むしろ好きだ」
「はい、それじゃあ一緒に」
「食べるとするか」
 二人も二人で何かを探していたのであった。シェリルは今はロンド=ベルの中にいた。そこでミシェル達に対して話をしていた。
「アルトには内緒でね」
「言わないでってか」
「どうしてもか」
「ええ、そのことはね」
 こうミシェルとクランに話すのである。
「私は大丈夫だから」
「いや、それは違う」
 クランはシェリルの今の言葉はすぐに否定した。
「御前はあの病気に」
「それでも今は大丈夫よ」
 まだ言うシェリルだった。
「だからね」
「本当にか?」
「信じてくれないのね」
「御前という人間は信じる」
 クランはそれはだというのだった。
「だが。御前の今の言葉はだ」
「信じないというのね」
「私は強がりは信じない」
 だからだというのである。
「だからだ」
「そうだというのね」
「今は安静にしていろ」
 クランの言葉は今は半ば強制だった。
「わかったな」
「つまり今はここにいろってことなのね」
「薬のことは安心しろ」
 シェリルにこのことも話すのだった。
「それはだ」
「何とかなるとでもいうのかしら」
「その通りだ、ここはロンド=ベルだ」
 断言であった。
「サコンもいれば赤木博士もいる。他にも大勢いるんだ」
「その人達が私の薬を」
「作ってくれる。だから今はここにいろ」
「そうだな」
 ミシェルもクランのその言葉に頷いた。
「今はだな」
「そしてだ」
 クランがまたシェリルに対して言う。
「そして?」
「逃げるな」
 シェリルの見ての言葉だった。
「いいな、逃げるな」
「逃げるなっていうのね」
「正面から向かえ、いいな」
「え、ええ」
 シェリルもクランのその言葉に頷いた。
「わかったわ」
「私が言いたいのはそれだけだ」
 クランはここで一呼吸置いたのであった。
「いいな」
「私は逃げないわ」
 また言うシェリルだった。
「絶対にね」
「そうしろ、いいな」
 ここで微笑んだクランであった。そしてだ。
 不意に警報が鳴った。それは。
「敵!?」
「敵襲!?」
「まさか!」
「またバジュラか」
 今言ったのはミシェルだった。
「それなら行くか」
「そうだな。総員出撃だな」
「やるぞ」
 ミシェルは強い言葉でクランに告げる。
「また強くなってるだろうがな」
「それでも倒すだけだ」
 クランの言葉も強気である。
「シェリルはここにいろ、いいな」
「ええ、待ってるわ」
 こうしたやり取りの後でだ。戦士達は戦場に向かう。
 当然ランカにも声がかけられる。彼女は今度は地上から歌うことになった。
「ペットのことは後だ」
「うん」
 共にいるブレラの言葉に頷くランカだった。
「そうね。それじゃあ」
「それよりもだ」
 ここでブレラはさらに言ってきた。
「御前の歌だが」
「私の?」
「御前は誰の為に歌う」
 こう彼女に問うのだった。
「何の為にだ」
「誰に、何の為に」
「そうだ、目的のない歌は歌うな」
 これがランカへの言葉だった。
「いいな」
「目的があって歌う・・・・・・」
「バジュラを倒す為か、違うな」
「うん、それは」
「なら御前は誰かの為に歌っているな」
 あらためてランカに問う。
「ならその誰かに御前の歌を届けろ、いいな」
「そうよね」
 ランカの顔は戸惑ったものから次第に明るくなってきた。
「じゃあ私は。あの人の為に」
「歌え、いいな」
「有り難う。それにしてもブレラさんって」
「何だ」
「お兄さんみたいです」
 ブレラに顔を向けてにこりとして話したのだった。
「何か。本当に」
「兄か」
「私が勝手にそう思ってるだけですけれど」
「いい」
 だがブレラはそれを許した。
「それならそれでな」
「そうなんですか」
「では戦いだ」
 また言うブレラだった。
「御前は俺とオニクスが守る。安心しろ」
「はいっ」
 こうしてだった。ランカも彼女の戦いに向かう。歌でだ。
 ロンド=ベルはバジュラの大軍の前に布陣した。そこにはルカもいる。
 そのルカにだ。ミシェルが言ってきた。
「おいルカ」
「はい」
「俺達は仲間だからな」
 微笑んで彼に告げるのだった。
「一人で背負い込むなよ」
「えっ・・・・・・」
「何かあったら言ってくれ」
 微笑んだままの言葉だった。
「それでいいな」
「は、はい」
 ルカも少し明るい顔になって頷いた。
「それじゃあ」
「そういうことだ。なら行くか」
「そうですね。少佐は今は出られませんけれど」
「今絶好調のエースがいるしな」
 ここで二人でアルトを見た。
「あいつがいてくれるからな」
「俺か」
 アルトは彼等のその言葉を受けて述べた。
「俺がそれなのか」
「ああ、そうさ」
「やっぱりアルト先輩は頼りになりますよ」 
 二人同時に微笑んでそのアルトに言う。
「だから今回もな」
「宜しく頼みますよ」
「ああ、わかった」
 アルトも何だかんだで彼等のその言葉に頷く。
「それじゃあな」
「行くぞ」
「この戦いも勝ちましょう」
 ロンド=ベルは艦隊の前に布陣した。そこで艦隊の援護を受けながらバジュラの大軍を迎撃する。そうして十分経った時だった。
「来たか!」
「ランカちゃんの声だ!」
「これで勝てる!」
「ああ!」
 全員の士気があがった。
「それじゃあ行くか!」
「バジュラの士気も下がったしな!」
「一気に行くぜ!」
「やるか!」
 そうしてだった。彼等は一気に攻めた。
 その中でだ。エキセドルも言う。
「いいですか」
「はい」
「主砲をですね」
「はい、撃ちます」
 こうだ。美穂とサリーに話す。
「今が好機です」
「そうですよね。今撃てば」
「バジュラ達も」
「その通りです。ただ」
 ここでエキセドルは言うのだった。
「どうも不思議に思うのですが」
「不思議とは?」
「何が」
「バジュラ達の出て来るタイミングです」
 エキセドルの言うのはそこだった。
「それなのですが」
「それがどうかしたんですか?」
「何があったのですか?」
「何か見計らったように出ます」
 こう話すのだった。
「私の気のせいでしょうか」
「そういえばそうですね」
「キャンベル星やボアザン星との戦いの時には出ませんでしたし」
「それが急にですから」
「一時物凄く出て来たのに」
「誰かが操っているのでしょうか」
 エキセドルはこんなことも言った。
「若しかして」
「誰か?」
「誰かがですか」
「そう、だとしたら誰でしょうか」
 また言うエキセドルだった。
「私達の行動を知る誰かでしょうか」
「ううん、何か不思議ですよね」
「私達の行動を知っている誰かですか」
「少し考えてみるべきかも知れません」
 エキセドルは実際に考える顔であった。
「これからのことは」
「はい、それじゃあ」
「今は戦闘に専念してですね」
「そうします」 
 こうしてマクロス7は変形しそのうえで主砲を放った。それによりバジュラ達の軍の中に穴が開いた。ロンド=ベルはそこに一気に突っ込んだ。
 それで勝負を決めた。バジュラの大軍を殲滅した。これで終わった。
 そして戦いが終わってからだ。戦士達はランカのコンサートに出た。その場所はだ。何とアルトやランカ達の通っているその学校だった。
「何かな」
「そうよね」
「俺達の学校でのコンサートってな」
「ちょっと変わった感覚だよね」
「確かに」
 ジュドーにエル、ビーチャ、モンド、イーノが話す。
「普通ないよな」
「ライブはあるけれどね」
「じゃあそんな感じか?」
「そう考えればいいのかな」
「バサラさんの時みたいに」
「バサラさんはまた特別だしね」
 ここで言ったのはルーである。
「あの人はまた何処でもライブやりだすから」
「バサラは特別なの?」
「そうだったのか」
 プルとプルツーは今のルーの言葉に応えて話した。
「あれが普通じゃなかったの」
「歌手は何時でも何処でも歌うのではなかったのか」
「あれっ、それが当たり前だろ?」
 当のバサラもこう話す。
「それがな」
「絶対に普通じゃないわよ」
 今言ったのは海だった。
「バサラさんはデビューの時から見ていたけれど驚くことばかりだから」
「そうですわね。バサラさんはかなりダイナミックですわ」
 風も言う。
「それがいいのですけれど」
「私そんなバサラさんが好き」
 光はにこにことしてバサラを見ている。
「歌手はそうじゃないと駄目だと思う」
「おお、わかってるじゃねえか」
 バサラは光のその言葉に機嫌をさらによくさせる。
「じゃあ今もな」
「何するつもり、この人」
 アスカも少し引いている。
「毎回何かやらかす人だけれど」
「よし!飛び入りだぜ!」
 こう言ってだった。ギターを持ってステージに飛び上がる。
 そのうえでだ。ランカの横に来て言うのだった。
「ギターの助っ人、いいか!」
「えっ、熱気バサラさん!?」
「ああ、そうさ!」
 笑顔でランカに応える。
「俺のギターについて来れるか!?」
「ついていきたいです」
「よし、それならだ!」
 ここでバサラはさらに話すのだった。
「俺のギターでランカちゃんの歌を聞けーーーーーーーっ!!」
 こう話してであった。ランカの歌に合わせてギターを奏でるのだった。
 これにはだ。誰もが唖然となった。
「なっ、何っ!?」
「何あれ!?」
「バサラさん、また奇想天外ね」
「何ていうか」
「バサラさんらしいけれど」
「何ていうか」
「全く。何をするかと思えば」
 ミレーヌも呆れていた。
「何馬鹿やってるのよ」
「だがこれでいい」
「いいの?」
「そうだ、バサラはこれでいい」
 言うのはレイだった。
「ここは特にだ」
「そういうものなの」
「御前は行かないのか?」
 そのうえでミレーヌに問うのだった。
「それで」
「あたしも行けっていうの?」
「そうだ。どうするのだ?」
「そうね。ここは」
 自然とだ。身体が動いたのだった。
「どうするのだ」
「行くわよ」
 ミレーヌもステージに向かった。そうしたのであった。
 ルカはナナセと共にいる。歌を聴きながら彼女の話も聞いている。
「ランカさんのペットがですか」
「はい、いなくなったんですよ」
 こうルカに話すナナセだった。
「実は」
「そうなんですか」
「それでなんですけれど」
「はい」
「これがそのペットです」
 持っていたスケッチ用紙にその姿をさらさらと描いた。
「こんな感じなんです」
「えっ!?」
 その絵を見てだ。ルカの目が止まった。
「これですか」
「はい、そうなんですけれど」
「これはまさか」
 ルカの脳裏でレオンと会って話をした時のことを思い出していた。その時に見たバジュラの幼生の姿がだ。まさにそれであったのだ。
「バジュラが」
「バジュラが?」
「いえ、何もありません」
 ナナセに言うわけにはいかなかった。だから話を止めた。
「それじゃあですね」
「はい、それじゃあ」
「ランカさんの歌聴きましょう」
 こう言うのであった。
「今は」
「わかりました。それじゃあ」
 二人はこうして歌を聴くことに専念した。そうしてだった。
 コンサートは二人の飛び入りもあり盛り上がっている。アルトはそれを学校の屋上から聞いていた。ミシェルも彼と共にいる。
「なあアルト」
「何だよ」
 まずはこうミシェルに問うたのだった。
「何でここでなんだ?」
「ここでって?」
「何でここなんだ?」
 またミシェルに問うのだった。
「屋上なんかでよ」
「ここが一番聴けるからな」
「だからか」
「ああ、それにだ」
 ミシェルはアルトにさらに話した。
「じっくりと話せるしな」
「話せる?」
「わかるだろ」
 アルトに顔を向けてきての言葉だった。
「幾ら御前でもな」
「何かだよ」
「ランカちゃんの気持ちだ。この歌はな」
 そしてアルトに話すのだった。
「御前への歌なんだよ」
「俺の・・・・・・」
「そう、御前へのだよ」
 こうアルトに話す。
「この歌も前の歌もだ」
「・・・・・・・・・」
「その前の歌もだ。全部そうなんだよ」
「俺の為だってのか」
「そうだよ、御前への歌なんだよ」
 アルトにさらに話す。
「わかったな。全部なんだよ」
「それじゃあ俺は」
「御前も気持ちをしっかり決めろ」
「俺の・・・・・・」
「どうするかな。多くは言わないぜ」
「おい、ミシェル」
 アルトはそのミシェルに顔を顰めさせて言ってみせた。
「御前が言うのかよ」
「俺がか」
「いつも三股とか四股の御前が言うのかよ」
「ああ、言うさ」
 ミシェルは悪びれずに返した。
「何故ならな」
「ああ」
「パイロットだ。後腐れのない相手だからな」
「だからいいのかよ」
「そうだ。けれそ御前は違う」
 アルトを見据えての言葉だった。
「御前はな」
「違わないだろうがよ」
 アルトは憮然として返した。
「俺だってな」
「御前はそれ以上に役者だ」
「御前もそう言うのかよ」
「言うさ。俺だってな」
 ふとだ。ミシェルの顔が変わった。
「そろそろな」
「そろそろ?」
「いや、何でもない」
 自分の話は何とか止めた。
「とにかくだ。決めろ」
「俺はか」
「ああ、決めろ」
 またアルトに告げた。
「いいな。それじゃあな」
「おい、何処に行くんだよ」
「ちょっと用事を思い出した」
 こう言ってその場を後にしようとするミシェルだった。
「だからだ」
「それで行くのかよ」
「決めるのは御前だ」
 アルトに背を向けながらまた彼に告げた。
「御前自身だからな」
「俺自身か」
「そういうことだ。それじゃあな」
 これでだった。ミシェルは今はアルトの前から姿を消した。その彼と入れ替わりの形でだ。彼の前に姿を現したのは。
 オズマとキャサリンはレオンの執務室にいた。そこで彼と対峙していた。
「また物騒な感じだな」
「感じじゃない」
「そのものよ」
 不敵に笑うレオンにこう返す二人だった。
「クーデターとは思い切ったことを考えたらな」
「もう証拠は掴んだわよ」
「そうか」
 レオンは自分の席に座ったまま冷静に応える。
「もうなのか」
「言い逃れはできないぞ」
「もうね。証拠は保存もしておいたから」
「それはわかった」
 やはり落ち着いているレオンだった。
 そしてだ。こうも言うのであった。
「では私が美知島中将を同志としていることも」
「無論だ」
「そしてロンド=ベルもなのね」
「如何にも。そこまで知っていたか」
「全てな」
「掴んだわよ」
「では私をどうするのかね?」
 レオンはあらためて二人に問い返した。
「一体どうするのか。聞きたいものだ」
「そんなのはもう決まってるわ」
 キャサリンの声は激昂したものだった。
「レオン=三島補佐官」
「うむ」
「貴方を告発します」
 彼を指差しての言葉である。
「国家転覆罪、そしてテロ計画の容疑で」
「容疑ではないな」
「ええ、容疑だけれどもう全てわかっているわ」
 キャサリンは強気に彼に告げる。
「何もかもね」
「宜しい、それではだ」
「もう逃げられんぞ」
 今度はオズマが彼に告げた。
「大人しくすることだな」
「ふむ。それではだ」
「同行してもらおう。裁判が待っているぞ」
「極刑は免れないわよ」
 キャサリンの言葉も鋭い。
「覚悟することね」
「極刑か。確かにな」
 レオンは不敵な声でまた告げてみせた。
「このままではそうなる」
「観念したのかしら」
「だったらすぐに来い」
「しかし。遅かったようだ」
 不敵なのは笑みもであった。
「既に計画は実行に移している」
「何っ!?」
「まさか」
「さて、はじまりだ」
 レオンは不敵に笑って二人に告げた。
「これからがだ」
「何っ、まさか」
「それは」
 今まさに何かが起ころうとしていた。ロンド=ベルにとってこれまた運命の大きな歯車であった。それが彼等をまた動かそうとしていた。


第五十一話   完


                      2010・8・22       

 

第五十二話 ダイアモンド=クレバス

           第五十二話 ダイアモンド=クレバス
 レオンはだ。不敵なままオズマとキャサリンに対していた。己の席から身動き一つしない。まさに余裕そのものと言ってもいい態度であった。
「さて、これからはだ」
「まさか、貴様」
「既に」
「その通りだ。さて」
 ここでだ。彼はキャサリンを見て告げた。
「キャサリン、残念だが」
「何だっていうのよ」
「婚約は解消だ」
 こう彼女に告げたのである。
「今それを告げよう」
「そんなのこっちからお断りよ!」
 キャサリンも怒った顔で彼に返した。
「誰が、もう」
「久し振りにかつての恋人と会って気持ちが変わったか」
「そうね」
 キャサリンはそのことを否定しなかった。
「実際にそうなるわね」
「そうか、やはりな」
「一回別れてそれで再会して会ったのよ」
 そうだというのだった。
「彼のよさがね」
「やれやれ。愁傷だな」
「愁傷じゃないわ。わかったのよ」
「何がだね?」
「私の本当の心がよ」
 こうレオンに告げる。
「そして貴方という人間もね」
「私もか」
「貴方は。女一人手に入れられない男よ」
 それがレオンだというのだ。
「そして何もかもを手に入れられないわ」
「馬鹿なことを。私はフロンティアを正しく導く」
「そうできると思っているのだな」
「如何にも」
 倣岸そのものの口調でオズマにも返す。
「それは私しかいない」
「そう思っているのなら自分だけそう思っていろ」
 オズマの彼への言葉は冷たかった。
「そうな」
「凡人にはわからないことだ、私の崇高な理想と目指す場所がだ」
「聞いたわね、オズマ」
「ああ」
 二人はここで態度を少し変えた。
「そうしたことを言ってね」
「何かを為した者なぞ一人もいない」
「私は違うのだがな」
 やはりであった。レオンはわかっていなかった。
「それを今言っても仕方ないか」
「貴方と。そして美知島中将」
「即刻裁判所に来てもらおうか」
「そうはいかないと言った筈だ」
 レオンの今の言葉と共にであった。部屋の中に兵士達が雪崩れ込んできた。見ればどの兵士もその手に銃を持ち武装している。
「なっ」
「兵士が。ここに」
「私には同志がいると言ったのは君達だが」
 レオンは二人がその兵士達に囲まれるのを見ながらまた告げた。
「そう、それは」
「美知島中将か」
「彼が」
「そうだ」
 そしてだった。ここでその美知島が部屋に入って来た。兵士達を連れて悠然と部屋に入って来てだ。二人の前に来たのだった。
「私がいることを忘れた筈ではないがな」
「ここにまで来るとはな」
「意外だったわ」
「君達の動きは全て監視していた」
 その美知島の言葉だ。
「だからだ。ここに来たのだ」
「くっ、それでか」
「それでここに」
「さて、形勢逆転だな」
 また言うレオンだった。
「君達を反逆罪で告訴するとしよう」
「生憎だがな」
「甘く見ないことね!」
 ここでだ。二人は周りの兵士達をすぐに倒した。そうしてだった。
 部屋を飛び出る。それはまさに一瞬のことだった。
「し、しまった!」
「逃げられた!?」
「まさか!」
「追うのだ」
 美知島は狼狽する兵士達に冷静に告げた。
「すぐにだ」
「は、はい」
「それでは」
「そして補佐官」
「うむ」
「そろそろですな」
 こうレオンに告げる。レオンもそれに返す。
「報告が入って来る頃です」
「そうだな。それはそろそろか」
「そうかと」
「むっ」
 ここでだ。レオンの席の電話が鳴った。彼はそれに出た。
「私だ」
「補佐官、大変です」
「成功したな」
「いえ」
 しかしであった。ここでこう言われたのである。
「それが」
「まさかと思うが」
「バジュラが突如出て来ました」
「何っ!?」
 レオンの眉が動いた。
「大軍です。狙撃手はそれに襲われ」
「失敗したのか」
「殺されました」
 そうだというのである。電話の向こうの声は。
「それで。作戦自体が」
「それでバジュラはどうしている」
「今ロンド=ベルが迎撃に出ています」
 そうなっているのだという。
「ですから動きは何とか」
「そうなのか。そしてだ」
「はい」
「大統領は」
 このことも尋ねることを忘れなかった。
「大統領は何処だ」
「今避難中です」 
 電話の向こうの声はこうレオンに告げた。
「あの場所に」
「そうか」
 それを聞いて静かに頷くレオンだった。
「わかった」
「はい、それでは」
「後は私が行う」
 彼はこう相手に告げた。
「君達はすぐにバジュラにあたってくれ」
「わかりました、それでは」
「バジュラは何としても退けるのだ」
 彼もこのことは念頭に置いていた。
「わかったな」
「了解です」
 こう話してだった。すぐに電話を切る。そのうえで美知島に顔を向けるとだ。その彼の方から言ってきたのであった。
「やはりこれは」
「彼女だろうな」
「どういうつもりでしょうか、ここで動くとは」
「わからん、だがだ」
「はい。今もまた好機です」
 美知島はここでも落ち着いてレオンに告げた。
「すぐに大統領の先回りをしましょう」
「そうだな。そしてあの二人は」
「既に兵を向かわせております」
 彼もその動きは迅速だった。
「ですから」
「我々は、か」
「大統領に向かいましょう」
「よし、わかった」
 美知島の言葉に頷き。兵士達にも言う。
「それでは行くぞ」
「はっ」
「それでは」
 こうしてであった。彼等は大統領のところに向かう。陰謀はそのまま進展していた。
 そしてである。フロンティアの中では死闘がはじまっていた。
「トオッ!!」
 ドモンが空中を跳ぶ。その蹴りでバジュラを一体粉砕した。
「この程度で!」
「そうだ、やらせはしない!」
 マーグも衝撃波を出してバジュラを撃つ。
「バジュラであろうが何であろうがだ」
「兄さん、俺も!」
 タケルも衝撃波を繰り出した。
「戦う、ここで!」
「そうだ、マーズよ」
 マーグはその弟に対して述べたのだった。
「この戦いは一歩も退けない」
「市民の命がかかっている」
「だからこそだ」
 見れば実際に彼等は市民の盾となり戦っていた。
「ここはな」
「その通りですね」
 ロゼはあの蝶の形の衝撃波を出していた。
「バジュラといえど超能力には」
「超能力がなくてもだ!」
 カミーユは鋭い直感でバジュラの反応を見抜いた。
「いる場所さえわかれば!」
「その通りだな」
「どうってことはないぜ!」
 テムジンとハッターもそこにいた。
「例え市街戦といえどだ」
「ノープロブレム!」
「まずはフロンティあの中のバジュラを一掃しましょう」
 レインも銃を手に戦っている。
「そしてそれから」
「そうね。絶対に外にもいるわよ」
 アレンビーが戦場を舞いながら言った。
「だからそっちもね」
「まずは中だ!」
 またドモンが一体蹴り倒す。
「中を倒してだ!」
「ええ、それじゃあ」
「今は!」 
 彼等はまずその敵を倒した。そうしてであった。
 外に向かう。そしてやはりだった。
「ちっ、来ていやがったか」
「数にして二百万」
「完全包囲ってかよ」
 彼等が外に出たその時にはもうロンド=ベルはフロンティアごとバジュラ達によって包囲されてしまっていた。それも完璧にである。
「中を倒しても外がいる」
「そういうことかよ」
「けれどな!」
 だからといって怯む彼等ではなかった。
「ここ退けるか!」
「一歩も引かないわよ!」
「包囲されていようともされなくてもね!」
 かえって士気をあげる。そうしてであった。
「全軍防衛用意」
「はい!」
「わかりました!」
 皆ブライトの言葉に頷く。そのうえで戦闘に入るのだった。
 その中でだ。クランが言う。
「ここは」
「どうしたんだ?」
「元の身体に戻る」
 こうミシェルに言ったのである。
「いいな、ここはだ」
「メルトランディか」
「中での戦闘は終わった」
 このことも話す。
「それならばだ。そして一気にだ」
「そうだな」
 ミシェルもクランのその言葉に頷く。
「じゃあ今からカプセルの中に行くか」
「それでだ」
 ここでクランの言葉が変わってきた。
「ミシェル、いいか」
「どうしたんだ、今度は」
「御前はアルトに話したな」
「シェリル=ノームとランカちゃんのことか」
「そうだ、それで御前はどうする?」
「俺か?」
「御前の愛は何処にある」
 問うのはこのことだった。
「ミシェル、御前の愛は何処にある」
「・・・・・・さてな」
 ミシェルは少し考えてからこう返した。
「何処かに置いてきたのかもな」
「傍にあるのではないのか」
 クランはさらに問うてきた。
「御前のすぐ傍にだ」
「そうだな。あったらな」
「どうする?その時は」
「この戦いが終わったら言うさ」
 これがミシェルの返事だった。
「それでいいか」
「・・・・・・わかった」
「カプセルのある場所はまだバジュラの大軍がいる」
「まだ中にいるのか」
「あそこだけはな。俺はバルキリーで行く」
 彼の乗るその青いバルキリーでだというのだ。
「御前は今からそっちに向かえ。いいな」
「わかった。それならだ」
「よし、俺が行く」
「僕もです」
 アルトとルカも名乗り出てきた。
「俺達は仲間だ。だからだ」
「反対はしませんよね」
「いいのか?はっきり言って辛い戦いだぜ」
「一人ならそうかもな」
「けれど今は三人ですから」
 笑ってこう返してみせる二人だった。
「大丈夫だ、やれる」
「心配無用ですよ」
「そう言うか。それじゃあな」
「ああ、行くぜ!」
「今から!」
 こうしてだった。三人はバルキリーに乗ってそのうえでフロンティあの中からカプセルのある場所に向かうクランと合流する。そこでも激しい戦いに入る。
 クランが来た。ミシェルはその彼女に問うた。
「市民の人達は?」
「損害は軽微だ」
 こう述べるクランだった。
「ドモンやテムジン、それにタケル達がいてくれたからな」
「そうか。ガンダムファイターはこうした時有り難いな」
 ミシェルはそれを聞いて胸を撫で下ろしていた。
「生身で戦える人間も必要だな」
「そうだな、本当に」
「お陰で市街地の損害も大したことなかったみたいですし」
「それは気にする程ではない」
 クランもそう話す。
「中にいるバジュラもここに潜入した連中以外は全て倒した」
「それでドモンさん達は」
 ルカは彼等について尋ねた。
「今はどうしていますか?」
「うむ、もうすぐ外に出る筈だ」
 こうルカの問いに答えるクランだった。
「外での戦闘もこれで楽になる筈だ」
「そうだな。それじゃあな」
 ここでアルトが意を決した声を出した。そうしてだった。
「ミシェル!」
「ああ!」
「御前のやるべきことをやる為にな!生き残るぞ!」
「おい、聞いていたのかよ」
 ミシェルはアルトの今の言葉に少し拍子抜けしたような顔になった。
「さっきの話を」
「聞こえてたさ」
「僕もです」
 ルカも言ってきた。
「大声で話してましたから」
「それで来たんだよ」
 アルトは少し笑ってこのことも話した。
「だからだ。死ぬなよ」
「絶対にですよ」
「ああ、わかったぜ」
 ミシェルも今は笑った。
「じゃあ生き残るか」
「よし、それならだ!」
「やりましょう!」
 三人は部屋の中のバジュラ達との戦闘に入った。クランも己のカプセルの中に入る。二人の部下はバルキリーに乗って戦っていたが彼女はそちらを選んだのだ。
 そしてカプセルの中で大きくなっていく。だがそこにだ。
「くっ、やらせるか!」
 クランの入っているそのカプセルに一体のバジュラが迫った。
 そのバジュラにだ。ミシェルは狙撃を放った。それでクランのカプセルには近寄らせない。
 だが的は多かった。次々と来る。ミシェルは何時しかクランのカプセルの傍に己のバルキリーを陣取らせたのであった。
「ミシェル、御前」
「言ったろ、答えを言うってな」
 こうそのカプセルの中のクランに告げる。
「だからだ」
「御前は、まさか私を」
「答えは後だ」
 今は何としても言おうとしないのだった。
「それでいいな」
「そうだな。わかった」
 クランもその言葉に頷いた。
「では。後でだ」
「そういうことでな」
 二人は頷き合う。その中で死闘を繰り広げる。まずは前から来た。
「ちっ!」
 ミシェルはその一体を撃ち落した。しかしだった。
「!」
 その後ろからだった。別のバジュラが来たのである。
「ミシェル、後ろだ!」
「何っ!?」
「後ろから来たぞ!」
「くっ!」
 それは避けられなかった。ミシェルのバルキリーをそのバジュラの攻撃が貫いた。
「ぐっ!」
「ミシェル!」174
「くそっ!!」
 それは倒した。しかしだった。
 別のバジュラがクランのカプセルに向かう。ミシェルはそこに突き進もうとする。
「こうなれば!」
「ミシェル!よせ!ライフルだ!」
「弾切れだ!」
 そうなったというのだ。
「こうなりゃこれしかない!」
「馬鹿な、死ぬ気か!」
「惚れた相手の為に命を賭ける!」
 彼もまた言った。
「それが男だからな!」
「ミシェル、御前・・・・・・」
「させるか!」
 そのバジュラに体当たりを仕掛けようとする。しかしであった。
 突如そのバジュラがだ。爆発して四散したのであった。
「何っ!?」
「誰だ、アルトかルカか!?」
 しかしだった。二人はそれぞれの持ち場で手が一杯であった。どう見ても二人ではなかった。
「じゃあ一体」
「誰なんだ、今のは」
「よし、間に合ったね」
 その声はだ。
「間一髪だったけれど」
「マックス中尉」
「中尉なんですか」
「そうだよ」
 見ればだ。カプセルにもう一機の青いバルキリーがいた。紛れもなくマックスのものだった。
「危ないと思って来たけれどね」
「その通りだったわね」
 ミリアの赤いバルキリーもだった。
「けれどこれでね」
「何とか助かったわね」
「折角の見せ場だったんですがね」
 ミシェルはその二人に軽口で返した。
「お株を奪われちゃいましたね」
「あれっ、そうかな」
「その心は見せてもらったけれど」 
 二人もそのミシェルに軽口で返す。
「それで充分だよ」
「それよりもミシェル」
 ミリアが彼に声をかける。
「怪我の方は?」
「そんなのは・・・・・・ぐっ」
 しかしであった。ここで彼は呻き声をあげた。背中から血が流れていた。
「何ともないぜ」
「いや、それは信じられないね」
「傷は深いわね」
 二人にはもうわかっていることだった。
「無理は禁物だよ」
「ここは下がって」
「撤退は」
「じゃあそこから動かないことだ」
「私達が行くから」
「ミシェル、大丈夫か!?」
「先輩!」
 ここでアルトとルカも来た。
「こっちは何とか倒した!」
「傷の方は」
「どうやら休めってことらしいな」
 ここで遂に観念したミシェルだった。
「今の俺は」
「そういうことだよ。よくやったよ」
「好きな相手の為にね」
「それは俺が言おうと思っていた台詞なんですがね」
 苦笑いでミリアに返した。
「アルトとルカに」
「えっ、僕もですか!?」
「ナナセちゃん大事にしなよ」
 そのルカに微笑んで告げた。
「いい娘だしな」
「まさか。そのことまで」
「そうさ。大事にしなよ」
 また言うミシェルだった。
「俺はちょっと戦線離脱になるからな」
「よし、ミシェル」
 ここでクランがカプセルから出て来た。
「済まない、後は任せてくれ」
「ああ」
「そしてだ」
 すぐにメルトランディ軍専用の機体に乗り込みながらまたミシェルに言う。
「御前の言葉だが」
「それか」
「確かに受け取った」
 こう言うのであった。
「そういうことだ」
「そうか」
「とりあえず今は撤退してくれ」
 クランも彼にこう告げた。
「それ以上の戦闘は命にかかわる」
「かもな、これはな」
「御前に死なれたら困る」
 心から心配する言葉だった。
「だからだ。下がってくれ」
「ああ、わかった」
 ミシェルはクランの言葉に最も従順だった。
「それじゃあな」
「うむ、それではな」 
 こうしてミシェルは戦線を離脱した。彼はそのまま入院することになった。戦闘はさらに続く。そしてその中でだった。 
 アルトがだ。バルキリーからあの歌声を聴いた。
「何っ、これは」
「はい、間違いありません」
 ルカが彼に応える。
「ランカさんです」
「あいつ、歌うっていうのかよ」
 アルトはランカの歌声を聴きながら呟いた。
「この状況で」
「いや、この状況だからだよ」
 輝が彼のところに来て言ってきた。
「だからなんだ」
「この状況だから!?」
「そう、今フロンティアも俺達も危機的な状況にある」
 このことは否定できなかった。
「だから彼女は。自分の出来ることをしようとしているんだ」
「それでか」
「アルト、ここはだ」
 輝は彼にさらに言うのだった。
「わかるな」
「その気持ちを汲み取ってか」
「戦うんだ」
 輝はアルトにこう告げた。
「ここは。いいな」
「ああ、わかってるさ」
 アルトもその言葉に頷く。
「それじゃあな!やってやるさ!」
「はい、バジュラの動きが鈍ってきました!」
 ルカが言った。
「ランカさんの歌声のお陰で!」
「それなら行くか!」
 アルトが真っ先に出た。
「フロンティアもそこにいる人達も皆!」
「そうだ、守ろう!」
「その為の歌だから」
 マックスとミリアも続く。戦いは一気に動いた。
 ロンド=ベルの攻撃はランカの歌に支えられてだ。一気に勢いづいた。そうしてそのうえでだ。バジュラ達を何とか退けたのであった。
「やったな」
「ああ」
「何とかな」
 皆まずは胸を撫で下ろした。
「フロンティアの損害も最低限だったしな」
「そっちもよね」
「危うかったけれど」
「けれど」
 ここでだった。クローディアが言った。
「エネルギーや水がかなり出てしまったのよ」
「かなりですか」
「そんなに」
「それが問題になるわね」 
 クローディアの言葉は楽観したものではなかった。
「早いうちに何とかしないと駄目だけれど」
「まあそれは後の話だな」
 フォッカーはそれはまずはいいとした。
「ただな」
「ただ?」
「今度は一体」
「大統領は何処にいるんだ?」
 彼が疑問に思うのはこのことだった。
「今は何処にいるんだ?」
「それなのですが」
「今は」
 美穂とサリーがここで応える。
「わかりません」
「避難されたようですが」
「バジュラにやられたか」
 金竜はこのことを危惧した。
「まさかとは思うが」
「いえ、それはないわ」
 それはレインが否定した。
「中にいたバジュラは全て倒したから」
「じゃあどうなったんだ?」
「無事なのか?それで」
「すぐに大統領と合流するべきだな」
 シナプスの言葉だ。
「人を送るか」
「わかった、それならだ」
「私達が行くわ」
 ロジャーとドロシーが名乗り出た。
「それでいいか」
「私達が大統領のところに行くわ」
「そうだな」
 サンドマンは二人を見て言った。
「君達に頼もう」
「ではすぐに行く」
「大統領官邸に」
「そこですが」
 ルリもその二人に言う。
「秘密の道があります」
「抜け道か」
「それがあったの」
「はい、今わかりました」
 ルリの目が金色になっている。ハッキングの結果だった。
「ですからそこに向かって下さい」
「そうか、それではだ」
「そこに行かせてもらうわ」
「マップは御二人の携帯に送らせてもらいました」
 抜かりのないルリだった。
「では」
「よし、それではだ」
「行って来るわ」
 こうしてであった。二人は大統領のところに向かった。そしてアルトも。
「御前はランカちゃんのところに行け」
「えっ?」
「心配なんだろう?早く行け」
 金竜の言葉である。
「だからだ。すぐにな」
「いいのかよ、それで」
「駄目なら最初から言いはしない」
 こう返す金竜だった。
「そういうことだ」
「そうか。それでなのか」
「さあ、行くんだ」 
 ダッカーも微笑んで彼に告げる。
「待ってるぜ」
「わかった」
 こうしてだった。アルトも向かった。ルカもであった。
「負傷者は多いんだよな」
「残念ですがそちらはかなりです」
 ガムリンがフィジカに答える。
「死者こそ少なかったのですが」
「そうか、大変なのは変わりないんだな」
「ナナセさんも無事だといいのですが」
 ガムリンは彼女のことを心から心配していた。
「激しい戦いでしたし」
「そうだよな。本当に大丈夫かな」
 こんな話をしていた。そしてだった。
 フィジカ達の危惧は当たった。ナナセは病院にいた。
「そんな、大丈夫なんですか!?」
「はい、命に別状はありません」
「それについては」
 医師と看護婦がルカに対して答える。
「ですがそれでもです」
「意識がです」
「そんな、それじゃあ」
 意識不明ということにだ。ルカは絶望を感じざるを得なかった。
「ナナセさんは・・・・・・」
「それでなのですが」
「どうされますか?」
 医師達は項垂れる彼に問うてきた。
「お知り合いの方ですよね」
「枕元に行かれますか?」
「・・・・・・お願いします」
 項垂れたままだったがそれでも頷いたルカだった。
「是非」
「はい、わかりました」
「では。こちらです」
 そのベッドに寝ているナナセと会った。彼女は点滴を受けマスクをさせられていた。そして目を開こうとしないのであった。決して。
 大統領はだ。秘密の自動道路を通って先に進んでいた。
「大統領、もうすぐです」
「ここまで来ればです」
「まずは安心だな」
 ボディーガード達の言葉に応える。
「まずは」
「はい、そうです」
「ですから」
 周りは武装した彼等が護衛している。既に銃を抜いている。
「執務室に入られたら」
「すぐにですね」
「非常事態宣言だな」
 彼も言った。
「ここは」
「閣下」
 そしてだった。タバコを吸おうとしたところで前から声がした。
「御無事でしたか」
「レオン君か」
「はい、御無事で何よりです」
 まずは慇懃に返す彼だった。
「心配しておりました」
「うむ、それでだが」
「はい」
「すぐに非常事態宣言を行う」
 大統領はこう彼に告げた。
「いいな、それで」
「わかりました。ただ」
「ただ。どうしたのかね」
「後は私にお任せ下さい」
 にやりと笑ってだ。大統領に告げた。
「どうか」
「!?どういうことだね、それは」
 大統領が煙草に火を点けた瞬間だった。全ては終わった。
 そしてだ。オズマとキャサリンがその場に向かっていた。
「早く行かないとな」
「ええ」
 キャサリンはオズマのその言葉に頷いていた。
「お父様が」
「ああ、あいつは絶対にやる」
 オズマは確信していた。
「だからだ」
「そして自分が権力の座について」
「そんなことさせてたまるか」
 オズマの偽らざる本音であった。
「絶対にだ」
「ええ、だからこそ」
 こうしてその隠された通路に向かう。しかしだった。
 手遅れだった。もう倒れてしまっていたのだ。
「なっ・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
 オズマは呆然となりキャサリンは立ち尽くす。全ては遅かった。
 そしてだ。ランカはだ。今はアルトと共にいた。彼と学園で会ったのだ。
「アルト君、どうしてここに?」
「残っている奴がいないか気になってな」
「それでなの」
「ああ、それで御前がいたんだけれどな」
「ねえ、アルト君」
 ここでそのランカが俯いて彼に言ってきた。
「あのね、私ね」
「どうしたんだ?」
「ずっとあの子探していたの」
「あのペットか」
「うん、それで今さっき見つけたわ」
 こう言うのであった。
「けれど」
「けれど。どうしたんだよ」
「見て」
 するとだった。マンタを思わせる緑の生物が出て来た。それは。
「なっ、バジュラだと!?」
「待って!」
 アルトが銃を構えたところで彼を止めた。
「撃たないで!」
「しかしこいつは」
「この子は悪くないの!」
 こう言ってそのバジュラの前に立つ。
「だから撃たないで!」
「こいつはバジュラだ」
 だがアルトも言う。
「生きるか死ぬかなんだよ、もう」
「けれどこの子は」
「くっ・・・・・・」
「それでね。私考えたんだけれど」
 ランカは再び俯いた。そのうえでアルトに話す。
「これからは」
「どうだっていうんだ?」
「俺と共に旅をすることになった」
 ここでだ。ブレラが出て来た。
「この銀河をな」
「旅!?何を言ってるんだ」
「何もない。旅だ」
 こう返すブレラだった。
「それがランカの為だ」
「そうなの」
「馬鹿な、それじゃあ何処に行くっていうんだ」
「さようなら」
 ランカはアルトに別れの言葉も告げた。
「さようなら、アルト君」
「さよならって御前、本当に・・・・・・」
「この子と一緒に行くから」
 その緑のバジュラを見ての言葉だ。
「だからアルト君、さようなら」
「ランカ・・・・・・」
「今まで楽しかった、本当に有り難う」
「お、おい!」
 だがアルトの最後の言葉は届かなかった。ランカは急に姿を消した。ブレラもあのバジュラもいなかった。全ては夢幻の如くであった。


第五十二話   完


                        2010・8・25
        

 

第五十三話 ノーザン=クロス

             第五十三話 ノーザン=クロス
 戦いは終わった。しかしであった。
「えっ、オズマさんとキャサリンさんが!?」
「行方不明!?」
 皆その報告を聞いて驚きの声をあげた。
「一体何処に」
「何処に行ったのかしら」
「しかも」
 話はまだ続く。
「グラス大統領が死んだ」
「えっ!?」
「大統領が!?」
「嘘・・・・・・」
「いや、皆」
 ここでキラがその皆に言う。
「残念だけれど本当みたいだよ」
「おい、これ何だよ」
「マジかよ」
 スティングとアウルが自分達の携帯を見て驚きの声をあげた。
「ニュースになってるぜ」
「バジュラにやられたって!?」
「それおかしい」
 だがステラがこう言った。
「フロンティあの中のバジュラはステラ達が皆倒した」
「ああ、そうだよ」
「その通りだよ」
 スティングとアウルはステラのその言葉に応えて言った。
「それもすぐにな」
「大統領官邸まで行った奴はいなかったぜ」
「それもだ」
 今度はロウが言う。
「道にしてもだ。大統領官邸への道にバジュラはだ」
「一匹も来なかった」
 今指摘したのはレイである。
「あくまでコンサート会場周辺だけだった」
「確かに大統領はコンサートに出席しようとしていたぜ」
 霧生もそれはよく覚えていた。
「けれどバジュラが来てすぐに避難したしな」
「安全圏まで車で脱出されていたわ」
 ミスティが証人になる。
「だから。そんなことは」
「どう考えてもおかしいですよね」
 レトラーデは明らかに疑念を抱いていた。
「これは」
「まさかと思うけれど」
 ボビーが不安な顔になって述べた。
「二人はそれに関係して行方不明なのかしら」
「それだったら心配ですね」
 ダバの顔も曇っている。
「ここは御二人を探しましょう」
「じゃああたし行って来るわ」
 ボビーは自分から名乗り出た。
「ダーリンが心配だし」
「あれ、ボビーさんって確か」
 ここでショウがボビーの今の言葉に突っ込みを入れた。
「オズマさんは諦めたんじゃ」
「諦めてはいないわ」
 ボビーはそれは否定した。
「ダーリンはノンケでしょ」
「ええ」
「あたしはそうした相手は見ているだけでいいのよ」
「それだけでいいんですか」
「愛は見守るものよ」
 そしてこうも言う。
「そんな無理強いな愛はもう卒業してるのよ」
「大人なんだな」
「そうだな」
 アレンとフェイはそんなボビーの言葉を聞いて素直に賞賛した。
「あんた、いい男だよ」
「心は成熟したレディーなんだな」
「有り難う、二人共」
 ボビーはその二人に素直に礼を述べた。
「とにかくあたし行って来るわ」
「それなら俺が同行します」
「私も」
 ショウとチャムが名乗り出た。
「一人より二人の方が探しやすいですし」
「それに二人に何かあったら」
「御願いできるかしら」
 ボビーはその二人の申し出にまずは問うた。
「貴方達の力を貸してくれるかしら」
「そのつもりです」
「じゃあすぐに行こう」
「ええ、わかったわ」
 こうしてであった。ボビーは彼等と共にすぐにオズマとキャサリンの捜索に向かった。そしてその頃ミシェルやナナセは。
「俺はまだいいけれどな」
「その傷でか?」
「すぐに復帰できるからな」
 こう病院のベッドから傍にいるクランに言ったのである。
「だからだよ」
「すぐに復帰するつもりか」
「ああ、そうさ」
 また言うミシェルだった。
「そのつもりだよ」
「御前はあくまで戦うつもりか」
「惚れた相手の為にな」
 今度は微笑んでの言葉だった。
「そうするさ」
「全く。御前も案外頑固だな」
「そうかもな。それでなんだけれどな」
「うむ。今度は何だ?」
「あいつは大丈夫なのか?」
 まずはこう問うた。
「あいつは」
「あいつとは誰のことだ?」
「ルカだ。大丈夫か?」
「まずいな」
 クランの顔がここで曇った。
「正直なところな」
「そうか」
「ずっとナナセに付きっきりだ」
 こう言うのであった。
「ずっとな」
「そうか」
「それにだ」
 クランはさらに言う。
「思い詰めた顔になっている」
「そうだろうな、それは」
「何か早まりそうで心配だ」
「見てやってくれるか?あいつを」
 ミシェルはここでこうクランに頼んだ。
「俺が動けるようになるまでな」
「それまでの間か」
「動けるようになったら俺も行く」
 そしてこうも言う。
「だからその間は頼む」
「わかった、それではだ」
「ああ。ランカちゃんも消えたらしいな」
「そうだ、何処にいるのかわからない」
「何かこの戦い色々あったな」 
 ミシェルもここで暗い顔を見せた。
「俺達もフロンティアもこれからどうなるんだろうな」
「私にもわからない」
「俺もだ」
 二人はこれからのことに不安を感じていた。これからの自分達のこともフロンティアのこともだ。それははっきりとした不安であった。
 その中でだ。フロンティアで一つの出来事が起こっていた。
「さて、それではだ」
「はい」
「皆それで納得してくれたな」
「議会だけでなく軍もです」
 美知島がレオンに話していた。
「文官の最高位であり補佐官である貴方が大統領になられることにです」
「暫定ではあるがな」
「それはそうですが」
「しかし大統領であることには変わりない」
 レオンはこう言って口元だけで笑ってみせた。
「この私がな」
「では閣下」
 美知島はレオンをあえて大統領とは呼ばずにこう呼んだ。そのうえでだった。
「今からは」
「うん、やるべきことは多い」 
 レオンは笑みを消して彼の言葉に応えた。
「まずはだな」
「非常事態宣言ですね」
「最高のな。そしてだ」
「はい、そして」
「彼等もだな」
 目を光らせての言葉だった。
「来てもらうとしよう」
「そうしてそのうえで」
「バジュラを倒し新天地を手に入れる」
 こう言うのだった。
「そうするとしよう」
「それではグレイス氏は」
「終わりだ」
 返答はこれだけだった。
「それで頼む」
「わかりました、それでは」
「そしてランカ=リーの代わりだが」
 それについても話す彼だった。
「いるか」
「彼女しかいませんが」
 これが美知島の返答だった。
「最早」
「そうか、やはりな」
「あの混乱の中で小さな事務所に入りそのうえで街で歌っているそうです」
「ほう、そうなのか」
「今テレビにも出ています」
 ここでテレビの電源を入れるとだ。シェリルがいた。
 かつての様に歌っている。だがその雰囲気はだ。前とは違っていた。
 レオンはその彼女を見てだ。興味深そうに言うのであった。
「ふむ、いいな」
「ではやはり彼女ですね」
「データも見た。やはり彼女しかない」
「はい、それでは」
「全ては決まりだ」
 今度も素っ気無い言葉ではあった。
「駒は揃った。後はそれを動かすだけだ」
「はっ」
 美知島はレオンに対して敬礼をした。そうしてであった。
 シェリルは夜にはある場所に戻っていた。アルトもそこに入るのだった。
 だがここでだ。兄弟子である早乙女矢三郎がいた。穏やかな目に淡い茶色の髪の好青年であった。和服が実によく似合っている。
 彼はアルトを見てだ。そのうえで彼に言うのであった。
「ようこそ」
「・・・・・・いたのかよ、兄さん」
「戻って来られて何よりです」
 こう言うのであった。
「本当に」
「・・・・・・そうなのかよ」
「一度は私達と決別して地球に残られたというのに」
「何で宇宙で出会ったのかって思ったさ」
「ですがそれが運命なのです」
 矢三郎はアルトを見たまま話す。
「貴方の」
「運命か」
「話は聞いています。異なる世界にも行かれたそうですね」
「ああ」
「そちらの世界でも戦われこちらの世界でも」
「ずっと戦ってきた」
 アルトの返す言葉はこうしたものだった。
「だから俺は」
「いえ、貴方は役者です」
 ここで矢三郎の目が確かなものになった。
「あの一つの場で全てを支配する恍惚は御存知の筈です」
「しかしそれは」
「貴方は必ず歌舞伎を変えられる役者になります」
 アルトのその才を知っての言葉である。
「ですから。ここに戻って来られたのです」
「けれど今は」
「今は?」
「シェリルはここにいるんだよな」
「はい」
 矢三郎はその問いには静かに頷いて答えたのだった。
「その通りです」
「大丈夫なのか、それで」
「今は安静にしておられます」
「会いたい、いいか」
 切実な顔でかつての兄弟子に告げる。
「それは」
「どうぞ」
 そして彼もだ。それを穏やかに受けた。
「お入り下さい」
「いいのかよ」
「何度も申し上げますがここは貴方の家です」
 だからだというのである。
「ですから。何時でもお帰り下さい」
「それでかよ」
「何度も申し上げますが待っていました」
 そしてこうも言うのであった。
「ですから」
「・・・・・・そうか」
 こうしたやり取りの後でだ。アルトは家に入った。そうしてそのうえでだ。畳と障子の部屋で和服を着て夜の中にいるシェリルと会うのであった。
「アルトなのね」
「・・・・・・ああ」
 シェリルの問いに答えた。
「また歌うんだってな」
「自然にね。そういうことになったわ」
 こうアルトに話すのだった。二人は屋敷の縁側に出て話す。
「そうね」
「そうか」
「そうなの。やっぱり私は歌うのね」
「いいんだな、それで」
 アルトはシェリルの横顔を見て問うた。
「御前はそれで」
「私には歌しかないみたいだから」
 シェリルの笑みは何故か寂しげなものだった。
「だからね」
「けれど御前は」
「話、聞いたの」
「何か悪いのはわかるさ」
 それでだというのだ。
「詳しくは聞かないさ。それでも御前は」
「いいわ、それでも」
 だが、だ。シェリルはこう言うのであった。
「私はね」
「最後まで歌うのか」
「・・・・・・ええ」
 また俯いての言葉だった。
「ただね」
「ただ。何だ?」
「今幸せよ」
「幸せなのか?今は」
「だって。傍にいてくれるから」
 シェリルは今はあえて横を振り返らなかった。
「だからね」
「それでか」
「それでよ。ねえ」
「ああ」
「このままこの時間が続くかしら」
「続くだけ続けたいのか?」
 アルトはシェリルに問い返した。
「御前は」
「そう思ってるけれど」
「ならそうすればいいさ」
 これがアルトの返事だった。
「俺はそう思う」
「そうなの。じゃあ」
「ああ、こうしていたいんだよな」
「ええ」
「いいぜ、そうしなよ」
「有り難う・・・・・・」 
 二人は今は共にいた。そうしてであった。
 シェリルは次の日レオンの執務室でルカと話した。当然レオンも一緒である。
「つまりシェリルさんはです」
「ええ」
「そのウィルスが体内に入っていて」
「それでなのね」
「もう脳に達しています」
 そうなっているというのである。
「そうなればもう」
「楽しい?」
 ここで説明するルカに言うのだった。
「御前は死ぬんだって難しく言って」
「それは・・・・・・」
「もうわかっているわよ」 
 強い言葉だった。
「それはね。けれどそれでも」
「いや、話はこれからだ」
 今度はレオンが言ってきた。
「いいだろうか」
「どうしたっていうの?」
「今の君の歌の発する波長はそのウィルスの影響で変わっている」
「ウィルスのせいで?」
「そうだ。そしてその波長はだ」
「ええ」
「彼女と同じだ」
 こう話してみせた。
「あの我々を裏切ったランカ=リーとだ」
「じゃあ私の歌は」
「はい、切り札になります」
 ここでまた言うルカだった。
「バジュラ用の」
「そうなの」
「はい、それでなのですが」
「頼めるだろうか」
 今度は二人での言葉だった。
「これからのことを」
「このフロンティアの未来の為に」
「フロンティアね」
 ここでだ。シェリルはまずルカを見て言った。
「貴方やアルトは元々ロンド=ベルだったわね」
「はい」
「それでもいいのね」
「そのつもりです」
 覚悟を決めた言葉だった。
「だからこそここにいます」
「そうなの。それでなのね」
「僕はフロンティアの、そして彼女の為に戦います」
「わかったわ。じゃあ私は」
「いいね、それで」
 レオンはまたシェリルに問うた。
「君はそれで」
「いいわ。それじゃあね」
「よし、それでは話は決まりだ」
「最後の最後まで。歌わせてもらうわ」
 シェリルも戦う決意を固めた。また一つ何かが動こうとしていた。
 そしてである。ボビーとショウ達はだ。遂に彼等を見つけたのだった。
「ショウ、ボビーさん、あれ」
「ああ、間違いない」
「やっと見つけたわ」
 二人はチャムの言葉に応えて述べた。
「二人共無事だったんだな」
「まずはそれが何よりよ」
「オズマさん、キャサリンさん」
 チャムが二人に声をかける。二人は物陰に隠れている。
「大丈夫?」
「その声は」
「リリスちゃん?」
 キャサリンはここでついつい間違えてしまった。
「そうだな、その声は」
「来てくれたの、まさか」
「悪いけれどリリスじゃないわ」
 チャムは二人のその言葉にはむくれて返した。
「私の姿見てわかるでしょ」
「ああ、チャムか」
「貴女だったのね」
「そうよ」
 機嫌をなおしてまた応える。
「元気なのね、それで」
「ああ、身体はな」
「けれど」
「けれど?」
「話したいことがある」
 オズマはいささか沈んだ顔で述べた。
「それでいいか」
「はい、お願いします」
 ショウが彼の言葉に応えた。
「それで何が」
「まずは戻りましょう」
 今度はボビーが提案した。
「それからゆっくりとね。どうやら」
「どうやら?」
「ダーリンはまだ大丈夫だけれどキャサリンが」
 彼女を見ての言葉であった。
「だからね。今はね」
「そうですね。キャサリンさんは何か」
「今にも倒れそうだけれど」
 ショウとチャムもここで気付いたのだった。
「それじゃあロンド=ベルに戻って」
「話はそれからね」
「ええ、じゃあ戻るわよ」
 また言うボビーだった。
「ロンド=ベルにね」
「済まない」
 オズマはそのボビーに礼を述べた。
「キャサリン、それじゃあな」
「ええ」
 こうして二人はロンド=ベルに戻った。そうしてそのうえでだ。詳しい話をするのだった。
「そうか」
「おかしいとは思っていたがな」
 まずはレイヴンとサンドマンが話した。
「あの男がか」
「実行犯だったか」
「ああ、そうだ」
 オズマは一同にさらに話す。
「レオン=三島がだ」
「殺した」
「大統領を」
「間違ってもバジュラじゃない」
 オズマはこのことを断言した。
「あいつがやった」
「それでお父様は」
 キャサリンも普段の気丈さはない。
「私達が駆け付けた時にはもう」
「いいわ」
 その彼女にボビーが優しく声をかけた。
「言わなくても」
「大尉・・・・・・」
「一番辛いのは貴女よ」
 目もだ。優しいものになっていた。
「だからね。言わなくていいわよ
「すいません・・・・・・」
「御礼はいいわよ」 
 こう言ってキャサリンの頭を撫でる。
「頑張ったわね」
「・・・・・・・・・」
 キャサリンは何とか涙をこらえた。そのうえでだった。
 大文字がだ。全員に告げてきた。
「諸君、そのレオン=三島からだ」
「はい」
「何かあったんですか?」
「あいつから」
「ロンド=ベルを統合軍に編入させるとこのことだ」
「統合軍と!?」
「まさか」
 皆大文字の言葉にまずは驚きの声をあげた、
「独立部隊の俺達にかよ」
「配下になれ!?」
「冗談じゃないわよ!」
「そうよ!」
 一斉に反論する彼等だった。
「よりによってあんな奴と」
「そんなことできるか!」
「ふざけるんじゃないわよ!」
「諸君等はそう考えているな」
 大文字はこう彼等に言った。
「それは確かに聞いた」
「それでどうするんですか?」
「あの、まさかと思いますけれど」
「本当にレオン=三島にですか?」
「つくんですか?」
「それだが」
 ここでだ。大文字はさらに話した。
「我々は今決断を迫られている」
「あいつにつくかそれとも」
「そういうことですよね」
「そうだ、まずはだ」
 大文字はさらに言った。
「オズマ少佐、グラス中尉」
「はい」
「私達ですね」
「そうだ。君達はその証拠を持っているな」
 大統領暗殺についてのである。
「そうだな」
「はい、それは」
「あります」
 その通りだというのである。
「パソコンには落としてあります」
「何時でも送信もできますが」
「それならそれを送信してくれ」
 大文字の決断は迅速だった。
「ロンド=ベル全員にだ」
「全員にですか」
「それを」
「そうだ。そして」
 大文字の言葉は続く。
「全員に判断をしてもらおう。それぞれな」
「それぞれですか」
「俺達自身が決める」
「そうしろっていうんですか」
「そうするとしよう」
 大文字の言葉は強いものだった。
「だからだ。わかったな」
「ええ、わかりました」
「それならですね」
「今から」
「そうする。いいな」
 こうしてであった。すぐにオズマとキャサリンが全員にそのデータを送信した。それを見てだ。ミシェルとクランが話した。
「そんなことだったなんてな」
「ああ、これは考えなかった」
「まあ今の俺はな」
 ここでだ。ミシェルは諦めた声を出した。
「ここで絶対安静だったな」
「暫くはな」
「動けないからな」
 その諦めた声での言葉だった。
「絶対にな。仕方ないな」
「そうだ。では御前は」
「ここに残るさ」
 これがミシェルの決断だった。
「また縁があればあっちに戻れるしな」
「そうか」
「クラン、御前はどうするんだ?」
 クランに顔を向けて問うた。
「それでどうするんだ?」
「私か」
「ロンド=ベル、好きだろ」
 クランに顔を向けての言葉である。
「だったらな」
「確かにロンド=ベルは好きだ」
 クランもそれは認めた。
「それはだ」
「そうか。それならな」
「それなら?」
「行くんだな、ロンド=ベルに」
 こうクランに告げた。
「今のうちだぜ、行くんならな」
「しかしだ」
 だが、だ。クランはそのミシェルを見て告げた。
「御前はもっと好きだ」
「俺はか」
「そうだ、御前は今動けないな」
「ああ」
「その御前を放って行けるものか」
 濡れた目でミシェルを見てだ。そのうえでの言葉だった。
「そういうことだ」
「そうか。俺の為か」
「今行ったな。縁があればまた一緒になれるとな」
「ああ、行ったさ」
「私も同じだ。ここは残る」
 クランは断言した。
「御前と共にだ」
「わかった。じゃあ俺も今はフロンティアの人達の為にな」
「戻るか」
「他に誰が残るかな」
「それはわからない。だが私は残る」
「そうか。それじゃあな」
「宜しく頼む」
 二人で言い合う。そうしてであった。
 ルカもだ。決断したのであった。
「ナナセさん、ずっと傍にいますから」
 まだ起きない彼女の枕元でだ。こう言うのだった。
 アルトもだった。その己の携帯を見て言う。
「残る、あいつの為に」
 彼も判断した。そうしてであった。
 そしてだ。ギガンティックの面々はだ。美知島に告げられていた。
「君達の場合は問題はないな」
「はい」
「確かに」
 まずは乗っている面々が応えた。
「元に戻るだけですね」
「統合軍に」
「そういうことだ。ではまた宜しく頼む」
 こう彼等に告げる美知島だった。
「そういうことでな」
 ここまで話してその場を後にするのだった。しかしだ。
 彼等だけになるとだ。華都美が全員に言うのだった。
「携帯からメールは受け取ったわね」
「ええ」
「確かに」
 雲儀と走影が応えた。
「補佐官がですか」
「大統領を暗殺して自分が」
「証拠は見たわ」
「今ね」
 リリィとラヴィーナも話す。
「それでどうするか」
「そういうことよね」
「統合軍に戻るか」
「ロンド=ベルに残るか」
 ザイオンとレイもいる。
「それだが」
「一体どうするか」
「また言うけれど補佐官が大統領を暗殺したのよ」
 華都美はまたこのことを話した。
「そして自分が政権に就いたのよ」
「そいつが俺達をか」
「自分の手駒にするつもりか」
 ムハンマドとパパスは明らかに表情を曇らせていた。
「気に入らない話だな」
「全くだ」
「それでどうします?」
 卯兎美もここで言う。
「私達は」
「私はもう決めているわ」
 今言ったのは華都美だ。
「ロンド=ベルに残るわ」
「残るんですね」
「長官は」
「ええ、残るわ」
 レオーネとルクレツィアにも述べた。
「皆は皆でそれぞれ決めて」
「答えは出てるわ」
「私もよ」
 エヴィータとアマリアが立ち上がった。
「私は残るわ」
「ロンド=ベルにね」
 彼女達は残留を選んだ。
「あの補佐官の手駒になるのは気に入らないわ」
「だからね」
「僕もだよ」
「私も」
 セルゲイとタチヤナも立ち上がった。
「フロンティアは統合軍に任せたらいいよ」
「あのオニクスもあることだし」
 二人もこう言って決断を述べたのだった。
「それじゃあやっぱり」
「ここは」
 エレオノールとミハイルである。
「ロンド=ベルに?」
「僕達の行く先は」
「私はそう思うわ」6
 華都美は今度は一同に述べた。
「このまま利用されてもいいことはないわよ」
「大統領を暗殺した男の手駒になったら」
「その行く末は」
「私達もロンド=ベルも同じよ」
 また言うのであった。
「最後には、ね」
「始末されてか」
「それで終わり」
「最後は」
「そうならないと思う人は残って」
 華都美はここで決断を促した。
「フロンティアにね。私は止めないわ」
「答えは出ているわ」
「私もですよ」
 シンシアとダニエルもここで立ち上がった。
「私はロンド=ベルに残るわ」
「そのうえで戦います」
 そしてだった。残っている面々も全て立ち上がった。当然慎悟と真名もだ。
「僕も」
「私も。ただ」
「ただ?」
「神名に会ってきます」
 そうするというのである。
「それであの娘と真人も」
「二人共なのね」
「何とか説得してみます」
 こう言うのである。
「二人共」
「大丈夫なのね」 
 華都美はその真名を見て問い返した。
「二人は」
「できるかどうかわかりませんけれどそれでも」
「わかったわ。それじゃあね」
「いいんですね、それで」
「ええ、貴女が望むようにしなさい」
 穏やかな笑みと共の言葉だった。
「そしてね」
「はい、二人を何としても」
 こうしてであった。真名は二人の説得に向かった。慎悟と卯兎美も同行している。
「真名さん、それじゃあ」
「今から御二人のところにですね」
「ええ、今からよ」
 行くというのである。
「行くわ。場所はね」
「そういえば二人のいる場所は」
「フロンティアの地下深くでしたね」
 慎悟達は言った。
「一体そこでどうしているのか」
「一切わかっていませんよね」
「ランカさんはブレラさんと何処かに行ってしまったけれど」
 このことも話される。
「けれど。それでも二人はまだ残っているから」
「そうですよね。それとオニクスは」
「まだ残っています」
「そして二人も」
 オニクスのパイロット、今から彼等が向かうその相手だ。
「いるわ。だからね」
「じゃあ今から行きましょう」
「二人を説得してそうして」
 こうしてであった。彼等はそのフロンティアの奥深くまで来た。そこはだ。
 完全に機械の部屋だった。床も壁も何もかもがだ。三人はそのさらに奥に入る。そうするとそこにその二人がいたのであった。
「姉さんね」
「ええ、神名」
 真名は彼女に対してすぐに言った。
「私がここに来た理由だけれど」
「何なの?」
「今すぐここを出ましょう」
 こう妹を見て言う。
「そしてロンド=ベルに行きましょう」
「ロンド=ベルに」
「今度大統領となるレオン=三島は貴方達を利用しようとしているのよ」
 真人を見ての言葉であった。
「ただそれだけなの。だから」
「それでここを出てなのね」
「ええ、私達と一緒に」
「その為に来ました」
 慎悟も言う。
「ですからここは」
「いいえ」
 しかしであった。真名は感情が見られない言葉で話してきた。
「私はここから出ない」
「えっ、出ない」
「どうしてですか!?」
「私はオニクスに乗ってそれで戦う」
「それが僕達の使命だから」
 真人も言ってきた。
「だからここに残る」
「フロンティアに」
「だから貴方達は利用されようとしているんですよ!」
 慎悟は彼にしては珍しく強い言葉を出した。
「ですからもうここから」
「出て、それで私達と一緒に」
「行かないわ」
「何を言われてもね」
 しかし二人の無機質な言葉は変わらない。
「ここに残って戦う」
「そうするよ」
「まさか」
 そんな二人を見てだ。卯兎美はあることを察した。
「二人共オニクスに」
「えっ、オニクスに」
「何かあるんですか!?」
「聞いたことがあります。オニクスはギガンティックの中でもとりわけ性能が高いですね」
「ええ」
「確かに」
「そしてその高性能故にです」
 その話が続く。
「乗っているパイロットにかなりの負担を抱えそして取り込んでしまうと」
「じゃあ二人は」
「そのオニクスに」
「まだ確証はありませんが」
 それでもだ。彼女は察していた。
「それでもです」
「じゃあ今の二人は」
「説得は」
「残念ですが」
 それは無理だというのだった。
「仕方ありません。それに」
「それに?」
「今度は一体」
「見て下さい」
 ここでだった。卯兎美の腕時計から警報が鳴っていた。
「あらかじめ進路に警報機を仕掛けておいたんですけれど」
「じゃあここに」
「追っ手が」
「おそらくレオン三島補佐官の」
 卯兎美はこのことも察していた。
「それで間違いありません」
「わかったわ。それじゃあ」
 それを聞いてだ。真名はすぐに動いた。
 今着ている高校の制服を肩に手をかけて一気に脱ぐ。すると忍者のそれを思わせるレオタードとストッキングの姿になったのだった。
「二人共私から離れないでね」
「えっ、真名さん」
「その姿は」
「私はこうした意味でも慎悟君のパートナーなの」
 こう言うのである。背中には刀がある。
「守るわ。何があっても」
「それじゃあ僕達は」
「今すぐここからですね」
「仕方ないわ」
 まだ目の前にいる妹達を残念な目で見ながら述べた。
「また。機会があれば」
「わかりました」
「それしかありませんね」
「行きましょう」
 また言う真名だった。
「それじゃあね」
「はい」
 こうしてだった。三人は止むを得なく神名達の前から去った。そうしてそのうえでロンド=ベルの艦隊のところへ向かう。だが地上に出たところでレオンの手勢に囲まれたのであった。
 四方八方にいる。突破するのは容易ではなさそうだった。
 真名は背中の刀に手をかけた。それで後ろの二人に告げる。
「私が請け負うから二人はその間に」
「いえ、僕も戦います」
「私もです」
 しかし二人は銃を出して留まる態度を見せた。
「真名さんだけ戦わせません」
「絶対に」
「けれどそれは」
「パートナーじゃないですか」
「仲間ですよ」
 二人はここで微笑んでみせた。
「ですからここは」
「三人で」
「有り難う」
 その言葉を受けてだ。真名はつい顔を綻ばさせた。
 そのうえで三人で戦おうとする。しかしであった。
 ここで助っ人が来た。それは。
「三人共、こっちだ!」
「こっちに来い!」
 一矢と京四郎である。その二人だった。
「何か嫌な予感がして来たが」
「ドンピシャだったな」
「一矢さん、京四郎さん」
「来てくれたんですか」
「ああ、早くこっちに来い」
「皆もいるぞ」
「は、はい!」
「わかりました!」
 三人は二人の助けを受けて何をか囲みを突破した。そしてその時グレイスも。 
 隠れている場所を完全に武装した兵士達に取り囲まれた。そのうえで指揮官である将校に対してこう告げられたのであった。
「大統領閣下よりの伝言です」
「何かしら」
「銀河の支配者は一人で充分とのことです」
 こう告げるのであった。
「そういうことです」
「同感ね」
 グレイスはその言葉に微笑んでみせた。そうしてであった。
 レオンは演説をしていた。ボビーがそれをマクロスクウォーターの艦橋のモニターから見てだ。そのうえで苦笑いを浮かべて言うのであった。
「いやーーーんな空気ね」
「そうですね」
「何か」
 ミーナとラムも言う。
「真相がわかると」
「何だか」
「全くだな。さて」
 ここでジェフリーが問う。口にはパイプがある。
「どれだけ来た」
「ほぼ全員です」
 モニカが彼の問いに答える。
「スカル小隊の三人と。クラン中尉はおられませんが」
「そうか、わかった」
「それでは艦長」
「全員乗ったな」
「今慎悟君達がグランガランに乗り込みました」
 ミサトが報告してきた。
「これで全員です」
「わかった。それではだ」
「出航ですね」
「シティも一緒だ。まあ元に戻ったな」
 こうも話すジェフリーだった。
「そう考えると楽だな」
「そういえばそうよね」
 ボビーもここで笑って話した。
「フロンティアから離れてね」
「諸君、いいか」
 ジェフリーはその全員に告げた。
「我々はこれから海賊になる。行くぞ野郎共!」
「おう!」
「行きましょう!」
 こうしてだった。全員で出航した。
 そうしてである。彼等は出航したのだった。しかしだ。
 その後ろからだ。彼等が来た。
「追っ手です」
「フロンティアの軍です」
「そうか」
 ジェフリーはその報告を冷静に受けていた。
「早速追ってきたか」
「そして」
 さらにであった。
「二機います」
「あら、あの二人ね」
 それを聞いてすぐに察したボビーだった。
「坊や達はせっかちなのね」
「艦長、どうしますか」
 キャサリンがジェフリーに問うた。
「ここは」
「決まっている」
 これが彼の返答だった。
「それはだ」
「決まっていますか」
「一戦交えてそれで下がるぞ」
「わかりました」
「ではだ。何人か出撃しろ」
 今回は総員ではなかった。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「今からね」
 ボビーも頷いてだった。それでだった。
 オズマ他数人が出撃する。オズマはまずはルカに言った。
「どうした?悩んでいるな」
「えっ・・・・・・」
「それで残ったってことか」
「僕は別に」
 ルカはオズマのその言葉を否定しようとした。
「何もありません」
「それならもっと毅然としていろ」
 こうルカに言う。
「悩んでも仕方ない」
「ですがそれでもです」
 ルカは半ば居直ったようにして言ってきた。
「僕は。フロンティアと」
「それが御前の選んだ道なのか」
 オズマはまたルカに問うた。
「それが」
「はい、そうです」
「なら胸を張れ」
 また告げるオズマだった。
「いいな。正しい道だと思うのならな」
「隊長・・・・・・」
「そしてだ」
 今度は赤が入ったバルキリーを見て言うのだった。
「御前はどうなのだ、アルト」
「くっ、俺か!」
「そうだ。御前は何の為に戦っている」
「何であんたがそう言えるんだ!」
 こう言って反論するアルトだった。
「あんたが、何でだ!」
「俺がか」
「あんたは何の為に戦っている!」
 オズマにそのまま問い返す。
「あんたはだ。何の為にだ!」
「それはもうはっきりしている」
「はっきりしている!?」
「そうだ、俺は女の為に戦っている」
 そうしているというのである。
「俺の大切な女達の為にな」
「なっ、女達の」
「あいつは自分の道を選んだ」
 オズマはこうも言うのだった。
「御前はどうなんだ」
「俺はだってのかよ!」
「そうだ、御前は自分で道を選んでいるか」
 交戦しながら問い返す。
「流されてはいないか」
「くっ、それは」
「言っておくことはこれだけだ」
 こう話してであった。
 オズマとアルトの機体が交差した。オズマは機体を逆さにしている。それでだ。アルトを見上げる形になってそのうえで見合うのだった。
「また会おう」
「まただってのかよ!」
「多分な。すぐに会うことになる」
 こう話すのだった。
「それではだ」
「ちっ、何だってんだよ」
 今のアルトは歯噛みしかできなかった。
「どいつもこいつも。ロンド=ベルに行きやがって」
「まさかギガンティックの方々まで行かれるとは」
 ルカも困った顔で話した。
「ロンド=ベルで残ったのは」
「まずは俺達だな」
「それとミシェル先輩とクラン大尉だけですよね」
「ああ、そうだな」
「これからが心配ですが」
「心配しても仕方がないな」
 こう言うアルトだった。
「だからな。いいな」
「はい、そういうことですね」
「俺達はパイロットだ」
 このことを言うアルトだった。
「だからな」
「フロンティアの為に戦いましょう」
「ああ」
 彼等はこう言うしかなかった。とてもである。そうしてであった。
 ランカはだ。宇宙空間に漂っていた。バジュラも一緒である。
 その中でだ。ブレラのハーモニカを聞いていた。
「懐かしい・・・・・・」
「懐かしいか」
「うん、このハーモニカの音」
 それを聴きながらの言葉である。
「とても懐かしい」
「そうか」
「何処かで聴いたような」
 さらに話すランカだった。
「遠い昔に」
「俺もだ」
「ブレラさんも?」
「そうだ、俺もだ」
 彼もだというのだ。
「それでだが。これからは」
「これから?」
「何処に行く」
 あらためてランカに問う。
「これから」
「この子が行きたい場所に」
 あの緑のバジュラを見ての言葉である。
「そこに」
「そこにか」
「うん、そこに行こう」
 こうブレラに話す。
「それは駄目かしら」
「いや」
「いや?」
「わかった」
 これが彼のランカへの返事だった。
「それではそこに行くか」
「有り難う、それじゃあ」
「礼はいい」
 それはだというのだ。
「俺もそこに行きたいからだ」
「ブレラさんもなんですか」
「今行きたくなった」
 そうだというのである。
「だからだ」
「わかりました。じゃあ」
「行くか」
「はい」
 こうしてだった。彼等はそこに向かうのだった。銀河で戦士達は歌に導かれて。そのうえで今は旅路についているのであった。


第五十三話   完


                       2010・8・29
 

 

第五十四話 ギャラクシーへ

                第五十四話 ギャラクシーへ  
 フロンティアから離れたロンド=ベルはだ。今はあてもない旅をしていた。
「フロンティアから離れて三日かあ」
「早いね」
「そうだよな、あんなことがあっても時間は経つ」
「そうだよな、本当に」
「何かこれって」
「しかも」
 ここで言ったのはラウルである。
「俺達一応三連太陽に向かってるよな」
「ええ、そうよ」
 フィオナが双子の兄の問いに答える。
「そうしてるわよ」
「何かまだ実感が沸かねえな」
 ラウルは双子の妹の言葉にこんなことを言った。
「ちょっとな」
「そうね。何かまだ遥か先みたいよね」
「実際距離はどうなんだ?」 
 ラウルはその距離について尋ねた。
「あとどれだけあるんだ?」
「まだまだあるわよ」
 答えたのはミナキである。
「残念だけれど」
「ああ、やっぱりね」
「距離は随分とあるってのはわかってたけれど」
「それでもやっぱり」
「かなりの距離かあ」
「成程ね」
 皆その言葉に頷く。
「じゃあ当分航海は続くか」
「何時バジュラとかプロトデビルンが来るかわからないけれど」
「宇宙怪獣とかな」
「覚悟はしておくか」
 それはだというのである。
「それで何か見えました?」
「敵、いました?」
「何か」
「結構凄いの発見したぞ」
 ここでマサキが出て来て言ってきた。
「移民団だ」
「移民っていったらマクロスの?」
「その船団?」
「それがか」
「ああ、それだ」
 まさにそれだという。
「それに出会えたぜ」
「それまでが大変だったニャ」
「全くだニャ」
「全くマサキは」
「いつもいつも」
「何だってんだよ」 
 マサキは己のファミリア達に返した。
「今回は方向間違えなかったぞ」
「それはヒイロがいたからニャ」
「そのお陰だニャ」
 こう言うクロとシロだった。
「何度間違えそうになったか」
「もう呆れたニャ」
「何にもならなかったらいいだろうが」
 無理矢理そういうことにする彼だった。
「そうだろ?それはよ」
「ああ、わかったニャ」
「もうそれでいいニャ」
 匙を投げた感じの二匹だった。
「まあとにかくだニャ」
「その船団ニャが」
 二匹は皆に話をはじめた。
「何でもギャラクシーというニャ」
「かなり大きいニャぞ」
「えっ、ギャラクシー!?」
「それって」
 皆その名前を聞いてだ。すぐに声をあげた。
「あれだよな。シェリルのいた」
「ああ、あそこだよ」
「消息不明になったって聞いたけれど」
「大丈夫だ。生命反応は多い」
 ヒイロが出て来て話す。
「それはだ」
「全滅はしていないんだ」
「じゃあ安心?」
「それじゃあ」
「だが」
 ここでまた言うヒイロだった。
「かなり危うい状況の様だ」
「危ういって?」
「そんなに?」
「市街の損害も多いようだ」
 まずはそれだというのだ。
「そして」
「そして?」
「軍の数も少ない」
 それもだという。
「ほぼ残っていないような」
「えっ、それってまずいよな」
「ああ」
「すぐにギャラクシーに行かないと」
 皆それを聞いてすぐに口々に言った。
「さもないとギャラクシーが」
「全滅するわよ」
「そうなんだよ。だからな」
 ここで言うマサキだった。
「すぐに向かおうぜ、ギャラクシーにな」
「俺もそうするべきだと思う」
 ここでヒイロがまた言う。
「さもなければだ」
「よし、決まりだ」
「ギャラクシーに行こう」
「早く」
 皆こう言ってであった。ギャラクシーに向かうことにした。
 その時にだ。ふとラーダが言ったのである。
「ギャラクシーね」
「何かあったのですか」
「そこに」
「何かあるような気がするのよ」
 こうラトゥーニとシャインに言うのである。
「何かがね」
「そういえばギャラクシーの戦力って」
「何かありましたっけ」
「ギャラクシーといえば」
 ここで言ったのは慎悟だった。
「スコープドッグがあったような」
「スコープドッグ?」
「っていったら」
「人が乗る小型のマシンよ」
 ここで華都美が話す。
「ギャラクシーはそれが戦力なのよ」
「小型のマシンっていったら」
「オーラバトラーみたいな感じかな」
「そうよね」
 皆まずはそれを連想した。
「何かよくわからないけれど」
「まずはギャラクシーに向かおうか」
「そうしないとはじまらないし」
 こう話をしながらギャラクシーに向かう。
 そしてだ。その時にだ。
「そういえばあいつの声ってな」
「ああ」
「ブリットにな」
「そっくりだよな」
 そのことに気付いたのである。
「前は蝙蝠かって思ってたんだけれどな」
「あいつにも似てるよな」
「確かに」
「そうだな」
 本人もここで頷く。
「それにグレイス=オコナーもね」
「アイナさんに似てるよね」
「テュッティさんにも」
「ええ、そうね」
「似てるわね」
 その二人もここで頷いたのだった。
「前から思っていたけれど」
「初対面だけれど」
「似ている人って色々な立場でいるのね」
 今言ったのはミレーヌである。
「私にはいないけれど」
「俺もだぞ」
 バサラもであった。
「ガムリンは何人でもいるのにな」
「金竜さんやフィジカさんもね」
「そういえば私は」
 サリーはここでレフィーナを見た。
「最初に会った時から他人とは思えませんでした」
「そうそう。私達もなのよね」
 そのレフィーナも応えて言う。
「何かが似ていてね」
「そうですよね」
「ううむ、似ている人間が多過ぎるな」
 今言ったのはナガレだった。
「一体何人いるんだ」
「私もです」
 ユリカも出て来た。
「ナタルさんといいフレイちゃんといいステラちゃんといい」
「本当に見分けられない時あるからな」
 今言ったのはシンだった。
「フレイとステラとおばさんはわかるんだよ」
「何でわかるのよ」
 フレイがそのシンに問う。
「私とステラちゃんの違いって」
「フレイは何かあれだよ」
「だからあれって何よ」
「もうな。猿みたいな獰猛さがあるからな」
「ちょっと待ちなさいよ」
 猿と言われてだった。すぐに言い返すフレイだった。
「誰が猿よ、誰が」
「御前に決まってるだろうがよ」
 臆することなく言うシンだった。
「だからわかるんだよ。ステラと赤毛の猿二号の違いはよ」
「ふうん、二号ねえ」
 今度はアスカだった。
「あたし茶髪だけれど一号はあたしよね」
「ったりめえだろ。猿は猿だ」
「よし、聞いたわ」
「確かにね」
 アスカとフレイが一列に並んだ。
 そのうえでだ。シンに襲い掛かる。
「一回死になさい!」
「容赦しないわよ!」
「おお、やってやらあ!」
 また喧嘩を買うシンだった。
「久し振りの喧嘩だ、やってやるぜ!」
「待て」
 しかしであった。ここで言う者がいた。
「今何と言った」
「何かも何もおばさんって言ったんだよ」
 シンは二人と取っ組み合いをしながらナタルに言い返した。
「だってよ。二十五の立派なおばさんじゃねえかよ」
「そうか」
「もう肌も曲がり角でな。後は婆さんになって歯も抜けてな」
「よし、全部聞いた」
 ナタルはその右手に何かを出してきた。 
 見ればそれは。携帯電話であった。
「携帯電話?」
「何、あれ」
「何でここで出たの?」
「どうして?」
「これは只の携帯電話ではない」
 ナタルはその携帯の他にベルトも出してきた。
「シン=アスカ、貴様にこのベルトを付けさせてやる」
「へっ、そのベルトはあれだろ」
 シンはそのベルトを見て悪びれずに言った。
「携帯番号555だろ」
「ああ、あれね」
「着けたら変身できるやつ」
「それなんだ」
「それを着けたら俺は変身できるんだよな」
「無理にでも着けさせてやろう」
 ナタルは凄みのある顔で言ってきた。
「さて、それではだ」
「へっ、それならだ」
 ナタルからそのベルトを受け取った。そうしてだった。
 着ける。ただし番号は。
「んっ、この番号って」
「何よ」
「何だってのよ」
「913じゃねえかよ」 
 こうアスカとフレイにも言う。
「555でも333でもねえんだな」
「いいから着けるのだ」
 ここでまた話すナタルだった。
「遠慮せずな」
「何だよ、おばさんって言われたのに随分温厚だよな」
「普段ならここから凄まじい総攻撃だけれどな」
「それが今回は贈りものって」
「何でかしら」
 皆も何故かわからない。しかしであった。
 シンはその番号を入れてみる。そしてだ。
「変身!」
 右手に携帯を持ちそれを顔の前でみせてだ。そうしてベルトに着けた。
 するとだ。すぐに激しい衝撃に襲われた。
「ぐ、ぐわああああああああっ!!」
「あれっ、苦しみだしたし」
「何でよ」
「何があったんだ?」
「そのベルトはだ」
 ここで言うナタルであった。
「特定の者でないと身に着ければ死ぬ」
「死ぬって」
「それってつまり」
「そう、呪いのベルトだ」
 それであるというのだ。
「さて、それを着ければどうなるかな」
「死ぬんじゃないの?」
「流石にね」
 アスカとフレイは実に冷めている。
「まあ今までのことを考えれば」
「自業自得だし」
「私をおばさん呼ばわりした罪は重い」
 ひとえにそこに理由があった。
「たっぷりと苦しんでもらうぞ」
「ぐ、ぐわあああああ・・・・・・」
 その衝撃が終わった。だがシンは何とか生きていた。ナタルはそれを見てまた言った。
「流石にコーディネイターの中でもトップクラスか、しぶといな」
「何か凄いベルトがあるな」
 アスランがそのベルトを手に取って呟く。
「これを身に着けられる人間はどういう人間なんだ?」
「あれじゃないの?」
 ルナマリアもそのベルトと携帯を見ながら話す。
「性格がいっちゃってる人とかなんじゃ」
「そうだな。どうもそんな気がするな」
「だからこれどっちにしてもとんでもないベルトよ」
 それは間違いないのだという。
「あまり触らない方がいいかもね」
「それもそうだな」
「けれど携帯って結構あるわね」
 カーラはその携帯の一つを手に取っていた。
「これは何が出来る携帯かしら」
「ああ、それは」
 その携帯を見て話したのはキラだった。
「マシンワールドと関係がある携帯だね」
「それなの」
「うん、それでこっちはマジトピアでこっちは百獣の世界で」
「多いわね、本当に」
「そうだよね。僕もマシンワールドには縁があるから」
「私はあれなのよね」
 カーラも話すのだった。
「ミラーワールドだけれど」
「歌だったっけ」
「そう、それでね」
 こうキラに述べるのだった。
「わかるのよ」
「それも縁だよね」
「縁って大事よね」
 ここでこうも言うカーラだった。
「そっちの世界との縁もね」
「本当にね」
「それでシン」
 ルナマリアが呆れながらシンに対して言う。
「生きてる?」
「当たり前だろうがよ」
 こう返して起き上がるシンだった。
「これ位で死んでたまるかよ」
「普通死んでるよな」
「ああ」
「灰になってな」
 皆そんな彼を見て言う。
「それでも五体満足か」
「コーディネイターってだけじゃねえな」
「元々の生命力が高いんだな」
「そうなのね」
「おい、待てよ」
 ここでクレームをつけるそのシンだった。
「俺への心配の言葉が今まで一つもねえぞ」
「ああ、そうか」
「そういえばそうだよな」
「今気付いたけれど」
 皆の言葉は実に素っ気無い。
「それで大丈夫か?」
「何ともない?」
「それで」
「ああ、何ともねえよ」
 赤い軍服があちこち焦げていて顔もそうなっているがそれでもだった。
「幸いな」
「じゃあいいじゃないか」
「無事なんだし」
「それじゃあそういうことでね」
「よかったよかった」
「ちっ、何か全然心配されてねえな」
 肌でそれを察するシンだった。
「何でなんだよ」
「だってあんたいつも自業自得だから」
 今彼に言ったのはルナだった。
「どうしてもね。そうなるわよ」
「それでかよ」
「そう、そういうこと」
 こう話すのだった。
「毎回毎回本当に口悪いわね」
「それが俺なんだよ」
 全然悪びれていないシンだった。
「俺はな」
「それでまた墓穴掘るのね」
 今度は小鳥が言う。
「懲りないわね」
「糞っ、何か俺ボロクソだな」
「だからあんたは自業自得なの」
 また言う小鳥だった。
「それでなんだけれど」
「ああ、それで何なんだよ」
「そろそろギャラクシーよ」
 話がそこに戻った。
「用意はいいわよね」
「ああ、わかった」
 シンが最初に頷いた。
「じゃあ合流の準備だな」
「そういう時に出て来るからな」
 今言ったのはオデロだった。
「どの敵もな」
「そうだな。まず出て来るな」
 トマーシュもそう見ていた。
「敵がな」
「問題は何が出て来るかだな」
 オデロはこのことを考えていた。
「バジュラか?それとも宇宙怪獣か?」
「それかプロトデビルンか」
 敵はかなり多い。
「どれかだな」
「幾つも出て来ることもざらだしな」
 オデロはこのケースも考えていた。
「これはまた洒落にならない戦いになるかもな」
「そうだね。敵は多いね」
 今言ったのはウッソだった。
「出て来そうな敵だけでも」
「バッフ=クラン軍の心配もあるわね」
 ジュンコは彼等のことを述べた。
「彼等も何処にでも出て来るから」
「その心配がないのはバルマーだけか」
 オリファーは考える顔で述べた。
「あの連中だけか」
「バルマーは今五個方面軍のうち二つなくなったからな」
 今話したのはバーニィである。
「その分力を失ってるのが大きいよな」
「そうよね。ハザル=ゴッツォは気になるけれど」
 今度はクリスである。
「それでもバルマーは今はね」
「特に気にすることないよな」
「後は」 
 さらに話すバーニィだった。
「ムゲ=ゾルバトス帝国はどうなんだろうな」
「ああ、あの連中もいたよな」
「最近静かだけれどな」
「どうなんだろうな」
 彼等のこともここで考えられる。
「とりあえず今は出て来ないな」
「けれど何時かはね」
「あの連中と」
 決着をつけなければならないというのは彼等もわかっていたのだ。
「シャピロは絶対に来る」
「そうね」
 忍と沙羅がまず話す。
「あいつはね。絶対に来るよ」
「そしてその時はな」
 忍はその右手を拳にして強い顔で言った。
「あいつを倒す、俺がだ」
「うん、それは俺達の仕事だよね」
「やはりな」
 雅人と亮も話す。
「あの連中の相手はね」
「その時はやらせてもらう」
 こう話してであった。
 そのうえでだ。彼等は敵と戦う用意もしていた。
 そしてだ。遂にギャラクシーに来たのであった。
「あれっ、思ったよりもな」
「ああ、荒れてないよな」
「市街地は無事?」
「とりあえずは」
「それじゃあ」
 皆まずはギャラクシーの市街のエリアを見て話す。そこはフロンティアと同じ構造で中が見えるものだった。だがフロンティアより大きい。
「けれど端々は荒れてるよな」
「ああ」
「結構」
「戦闘は激しかったみたいね」
「しかしそれだと」
 今言ったのはロザリーだった。
「そうして守ってるのかしら」
「ああ、ギャラクシーの戦力って」
「そのスコープドッグはあるけれど」
「その他にはね」
「これといってなかったし」
「そうだよな」
 このことも話すのであった。 
 そしてだ。そのギャラクシーにさらに接近するとだった。
「レーダーに反応!」
「やはりな」
 それを聞いて静かに頷くジノだった。
「来たか」
「宇宙怪獣です」
 ザッシュが言った。
「それが来ました」
「そうか、奴等か」
 ファングはそれを聞いて鋭い顔になった。
「奴等が出て来たか」
「ライディーンの反応が凄い」
 洸は今そのライディーンに乗って話した。
「やっぱり。宇宙怪獣か」
「あの連中とも決着をつけないといけないけれどね」
「ああ、その通りだ」
 ハッターは珍しくフェイの言葉に同意していた。
「それならだ、行くぞ!」
「さて、ギャラクシー防衛ね」
 こう言ってフェイも動く。そしてだ。
 全軍でギャラクシーに向かう。しかしだった。
「!?」
「まだ戦力が出ない」
「どういうことなんだ、一体」
「そのスコープドッグは?」
 皆それを見ていぶかしむのだった。
「まさかと思うがもうやられたのか?」
「けれどそれだとギャラクシーは」
「今は」
「大丈夫だ」
 しかしだった。ここでそのギャラクシーから通信が来た。
「ギャラクシーは無事だ」
「男の声」
「そうだよな」
「間違いない」
「誰なんだ、それで」
「キリコ=キューピー」
 彼は名乗った。
「それが俺の名前だ」
「キリコ=キューピー!?」
 今言ったのはアムロだった。
「あの一年戦争のか」
「ああ、間違いないな」
「あの伝説の」
 カイとハヤトも話す。
「まさかこんな場所にいるなんてな」
「移民船団に入ったとは聞いていたけれど」
「ええと、キリコ=キューピーって?」
「誰ですか、それ」
「聞いたことないですけれど」
 殆どの面々がこう言うのだった。
「一年戦争の時って」
「そんな人いたんですか?」
「全然知らないですけれど」
「存在は極秘だったからな」
 アムロがこう皆に話す。
「俺達も星一号作戦の時にその存在を聞いただけだったんだ」
「けれど今ここでな」
「名前を聞いたんだ」
「本当にな」
 カイとハヤトだけでなくリュウも話す。
「レッドショルダーか」
「ああ、ここで会うなんてな」
 スレッガーも言う。いつもの余裕は今はあまりない。
「全く。出会いってのはわからないね」
「それでだが」
 またそのキリコの声が来た。
「協力してくれるというのか」
「はい」
 セイラが答えた。
「その為に来ました」
「そうか、それならだ」
 また言うキリコだった。
「宜しく頼む」
「わかった」
 ブライトが頷いて応えた。
「では全軍ギャラクシーの軍と合流する」
「了解です」
「わかりました」
 トーレスとサエグサも頷いた。そうしてだった。
 彼等は向かおうとする。しかしここでだ。
「軍か」
「そうですか」
「そちらの軍と合流させてもらいます」
「軍はない」  
 こう返すキリコだった。
「最早な」
「えっ、軍はないって」
「本当!?」
「まさか」
「俺以外は全て死んでしまった」
 こう話すのであった。
「誰もがだ」
「まさか一人で戦ってるんですか!?今」
「まさかと思いますけれど」
「御一人で」
「そうだ」
 驚くべき返答だった。
「今はそうしている」
「嘘・・・・・・」
「御一人でギャラクシーをですか」
「守っておられるんですか」
「噂通りだな」
 ここでまた言うアムロだった。
「異能力者キリコ=キューピー」
「それが仇名なんですね」
「キリコさんの」
「その通り名が」
「ああ、そうなんだ」
「物凄い通り名ですね」
 こんな言葉も出た。
「それって」
「そうだよな」
「しかしそんな人が出て来るって」
「またとんでもないことになってる?」
「確かに」
 そしてであった。そのギャラクシーにだ。
 スコープドッグが出て来た。周りにはかつてマシンだったと思われるものの残骸が転がっていた。
 その中からだ。またあの声がした。
「キリコ=キューピーだ」
 一同のモニターにだ。白い髪の痩せた顔の男が出て来た。
「君達は」
「ロンド=ベルだ」
 アムロが彼に答える。
「貴方がキリコ=キューピーだな」
「そうだ。そして貴官は」
「アムロ=レイだ」
 アムロもまたここで名乗る。
「ギャラクシーに来たが頼めるか」
「いいだろう」
 まずはこう返すキリコだった。
「それではだ。宜しく頼む」
「ギャラクシー政府の代表者は」
「大統領がおられる」
 こうクワトロにも述べるキリコだった。
「だが軍で戦えるのは今では俺一人だ」
「一人で戦ってるって」
「嘘だろ?」
「宇宙怪獣とか相手に」 
 皆まだこのことが信じられなかった。
「相手はした」
「一人で、ですか?」
「やっぱり」
「いや」
 しかしキリコは言った。
「前の戦いで俺以外は全て戦死してしまった。前の戦いでだ」
「そういうことだったんですか」
「それで一人で」
「そういうことだ。宇宙怪獣が相手だった」
 そのことも話すキリコだった。
「それでだ」
「バジュラは」
「バジュラもだ。来た」
 それについても答える。
「それは後で話す」
「そうですか。それじゃあ」
「詳しい話は後で」
「まずはですね」
「目の前の敵を」
 こうしてだった。彼等はキリコと共にその敵と戦うことにした。その敵は。
「プロトデビルンか」
「奴等が来たのか」
「あの連中も知っているのだな」
 またギャラクシーからキリコが言ってきた。
「そうか」
「他にもバルマー帝国とも戦いました」
「とにかく色々な連中と」
「とにかく話は後で」
 話はここまでにした。そしてだった。
 そのままプロトデビルンの軍に向かう。その数はだ。
「五十万か」
「本格的な軍じゃない?」
「そうだよな」
 皆このことを本能的に悟った。そうしてだった。
 彼等はそのまま敵に向かう。プロトデビルンの軍勢に向かう。当然キリコのスコープドッグもだ。
「えっ、速い!?」
「敵の動きを完璧に見切ってる!?」
「それに敵を一撃で」
 倒していくのだった。見事なまでの動きと攻撃だ。
 五十万のプロトデビルン達はすぐに倒された。それで終わりだった。
 ロンド=ベルはそのうえでギャラクシーに入った。そこはだ。
「かなり荒れてるな」
「ああ、何とか残ってるって感じだよな」
「本当にな」
 市街地も荒れていた。そこがフロンティアとは違っていた。
 そしてだ。キリコがここで話した。
「それでだが」
「はい」
「それで」
「ギャラクシーは御覧の有様だ」
 まずはギャラクシーについての話だった。
「戦力は俺一人だ」
「危ないところだったんですね」
「本当に」
「その通りだ。バジュラから何度も攻撃を受けていた」
 そしてだ。こう話すのだった。
「第一一七船団と同じ運命を辿るところだった」
「第一一七船団ですか」
「あの船団のことは時々聞いていました」
「フロンティアで」
「聞いていたか」
 キリコはここで彼等の言葉に目をやった。
「そちらでもか」
「はい、そうなんです」
「それでバジュラとも戦いましたし」
「それも何度も」
「こちらも同じだ。奴等は急に出て来た」
 こう話すキリコだった。
「そう。考えればだ」
「考えれば!?」
「どうしたんですか」
「一体」
「グレイス=オコーナーか」
 この名前を出すのだった。
「あの女がシェリル=ノームと共にギャラクシーを去ってからだった」
「その時からですか」
「バジュラが出て来た」
「あれっ、そういえば」
「フロンティアも!?」
 ここで彼等も気付いた。
「あの人が来てから急に!?」
「バジュラが出て来た!?」
「そうよね」
「あの人がフロンティアに来てから」
「まさか」
 ここでだ。呟いたのはキャサリンだった。
「あの人はバジュラと関係があるんでしょうか」
「そうだな。確かに」
「考えてみれば」
「あの人が出てからバジュラが来ている」
「何故だ」
「まさか」
「その可能性はある」
 また話すキリコだった。
「あの女が関係がある」
「それを考えると何か辻褄が合う?」
「バジュラについては」
「前から不思議に思っていたのですが」
 ルリがここで言った。
「バジュラは脳がありませんね」
「そうですよね、脳がありません」
「それでも生きている」
「しかも考えている」
「どうして生きているのか」
「しかも群で生きている」
 考えれば考えれる程謎であった。まさにであった。
 そしてだ。今度はテッサが言った。
「若しかして」
「若しかして?」
「何かあるんですか、バジュラに」
「バジュラは細菌と似た存在なのではないでしょうか」
 こう話すのだった。
「それで群棲して攻めて来るのでしょうか」
「群棲ですか」
「ううん、そういえば」
「そうかも知れませんね」
「そういう感じですし」
 ロンド=ベルの面々はギャラクシーに入ってまた一つの謎にあたった。そしてそれについて深く考えることになった。
 ギャラクシーの大統領とも会った。ここで大河が提案した。
「よければここにいる間ですが」
「はい」
 中肉中背の黒人の大統領だった。穏やかそうな老人である。
「どうして頂けるのでしょうか」
「こちらの防衛を請け負いたいのですが」
 こう話すのだった。
「それは宜しいでしょうか」
「是非」
 大統領にとってはむべもない返答だった。
「ギャラクシーは御覧の通り危機的な状況です。是非」
「わかりました、それではです」
 大河はまずはこの申し出を受けてもらった。そうしてだった。
 ここで大河はさらに話すのだった。
「それでなのですが」
「はい、何でしょうか」
「フロンティアと合流して頂けないでしょうか」
 さりげなく提案した。
「これから」
「フロンティアとですか」
「今フロンティアも危機的な状況です」
 このことも話す。
「そしてギャラクシーもですね」
「その通りです」
「ではここは一つ一つ行動しては危険です」
 だからだというのだ。
「それでどうでしょうか」
「わかりました」
 大統領はこの提案にも頷いた。ギャラクシーにとっては今は藁をも掴みたいという気持ちだったのだ。それだけ危機であったのだ。
 それで頷く。大河にさらに言ってきた。
「それでなのですが」
「はい」
「フロンティアは何処にあるかおわかりですか」
「無論です」
 また答える大河だった。
「それは我々が案内させて頂きます」
「そうですか。それは何よりです」
「こちらには高性能のレーダーがありますので」
 これもロンド=ベルの技術である。
「ですから御安心下さい」
「はい、それでは」
「しかし」
 ここでこの話をすることも忘れなかった。
「そのフロンティアの政権ですが」
「何かあったのですか」
「今の大統領レオン=三島は危険です」
「レオン=三島といいますと」
 大統領もその名前に反応を見せた。
「あれですね。大統領補佐官だったあの」
「はい、その彼です」
「その彼が大統領にですか」
「大統領を暗殺して政権に就いたのです」
 大河が話すのはこのことだった。
「それで今に至るのです」
「何っ、大統領をですか」
「はい」
 また答える大河だった。
「その通りです」
「まさかとは思いますが」
「そのまさかです。証拠もあります」
 ここでだ。その証拠を書類にしたものを出す。それを大統領に見せたのだ。
 大統領もそれを見てだ。政治家として察した。そのうえでの返答だった。
「わかりました」
「おわかりになって下さいましたか」
「はい、間違いありませんね」
 こう大河に述べた。
「これは」
「それではですが」
「我々は今のフロンティア政府を認めません」
 毅然とした言葉であった。
「例え何があろうともです」
「ではフロンティアとの合流は」
「現政権を何とかしたうえで、ですね」
 それでだというのである。
「そしてそのうえで」
「そうなりますね。何はともあれです」
「これからフロンティアに向かいましょう」
 今度は大統領からの言葉だった。
「そうしてそのうえで、です」
「新天地も目指しましょう」
 キリコの言葉だ。
「ここは」
「そうだな。それがいいな」
「はい、それでは」
「よしっ」
 大統領はあらためて決断を下した。
「それではだ。ギャラクシーに向かおう」
「有り難うございます」
「いや、当然のことだ」
 こう大河にも返す。
「フロンティアのその事態は見過ごしておけん」
「だからなのですか」
「レオン=三島、ここは事実を明らかにせねばな」
「はい、では」
「ギャラクシーはこれからフロンティアに向かう」
 また言うのであった。
「今からだ」
「わかりました」
「それでは」
 閣僚達も頷きそれでだった。彼等はそのフロンティアに向かうのだった。
 この時そのフロンティアではだ。アルトが部下達を連れて訓練を行っていた。
 ここでだ。部下の一人が楽しげな声で言ってきた。
「ねえ隊長」
「何だ?」
「話は聞きましたよ」
 こう言ってきたのである。
「隊長シェリル=ノームと付き合ってるんですって?」
「ば、馬鹿を言え」
 慌ててそれを否定するアルトだった。
「それはだな」
「嘘なんですか?」
「俺も聞きましたよ」
 別の部下も言ってきた。
「それでロンド=ベルに加わらなかったって」
「それで残ったって」
「そんなことはない」
 何とか事実を隠そうとする。事実はより複雑であるがだ。
「とにかくだ」
「とにかく?」
「今は訓練中ですか」
「それにバルキリー乗りのジンクスを知らないのか?」
 こう部下達に言うのだった。
「バルキリー乗りはな」
「ええ」
「それでそのジンクスっていうのは」
「女のことでからかうとだ」
「ええと、確か」
「柿崎さんですか」
 彼等もおぼろに思い出してきた。
「あの人ですよね」
「確か」
「そうだ。撃墜されるんだ」
 アルトが言うのはこのことだった。
「何処からともなくな」
「まさか・・・・・・あっ!?」
「どうした!?」
 部下の一人の今の言葉に嫌な予感がした。
「まさか撃墜されたのか!?」
「い、いえあれは」
「何だ。生きてるのか」
「あれ、シェリル=ノームですよ」
「何っ!?」
 見ればだ。カタパルトで手を振っていた。それも笑顔でだ。
「迎えに来てくれたんですね」
「じゃあ本当だったんですね」
「そ、それはだな」
 いよいよここでバツの悪い顔になるアルトだった。
「まああれだ」
「じゃあそういうことで」
「これ以上は言いませんから」
 部下達は笑ってこんなことを言ってきた。
「撃墜されたくはないですしね」
「そういうことで」
「全く。撃墜されても知らないぞ」
 憮然とした顔で言うアルトだった。だがシェリルのその迎えには笑顔になった。
 そして自分の部屋で二人で料理を作ってだ。彼女と話すのであった。
「今じゃ滅多に入らない新鮮な食材だからな」
「そうよね」
「しかしシェリル」
「どうしたの?」
「御前料理できたのか」
 包丁を持つ彼女を見ての言葉だ。
「ちゃんと」
「私だって女の子なのよ」
 少しむっとした顔で返すシェリルだった。
「それは少しはね」
「できるのか」
「そうよ、できるわ」
 こうアルトに話すのだった。
「一応は、だけれど」
「一応は、か」
「そうよ。それに悔しいじゃない」
 こんなことも言ってきた。
「私も何もできないと」
「それもあるか」
「あるわ。うっ」 
 しかしここでだ。その包丁で指を切ってしまった。
「あっちゃ~~~~、やっちゃった」
「だから言わないことじゃない」
 すぐに絆創膏を出すアルトだった。
「ほら、使え」
「え、ええ」
 二人はこうした中で料理を作ってだった。そのうえで二人で同じテーブルに座る。その料理は中々手の込んだものだった。
「よくできてるじゃない」
「そうか?」
「アルトの癖に生意気よ」 
 冗談めかしてこんなことを言う。
「男なのにこんなにできるなんて」
「一人暮らしをしているからな」
「それでなの」
「ああ、できるようになった」
 こう話すのであった。そのうえでだ。
「しかしシェリル」
「何?」
「確かにアルコールじゃないけれどな」
 シャンパンを飲むそのシェリルを見ての言葉だ。彼女はどんどん飲んでいた。
「それでもその飲み方は」
「いいのよ」
「いいって何がだ」
「ずっとこういうのに憧れてたの」
 ここでだった。幼いスラムの日々で上に見える窓から見た別の家の団欒の姿を思い出した。それは幼い彼女にとっては別の世界のことだった。
「ずっとね」
「憧れか」
「そうよ。誰かと一緒に楽しく御飯を食べることがね」
「今までなかったのか」
「なかったわ。温かい場なんてね」
 寂しい顔になっての言葉だった。
「なかったわ」
「今の事務所の社長さんはどうだ?」
「いい人よ。徳川さんもね」
「ああ、あのゼントラーディの演歌歌手の人か」
「とてもいい人よ。だから今は幸せよ」
「そうか。ならいいんだがな」
「じゃあどんどん食べましょう」
 シェリルの方から言ってきた。
「楽しくね」
「ああ、わかった」
 アルトはシェリルのその言葉に頷き彼もその温かい場を楽しんだ。それが終わってからであった。
 シェリルはソファーの上でまどろんでしまった。酔ってのせいだ。
 そのシェリルを見てだ。アルトは呟くのだった。
「らしくないぜ」
 苦笑いと共にであった。こう呟いたのだ。
 そしてクランはだ。ミシェルと病室で話していた。
「それでだが」
「ああ」
「あのグレイスの行方がわからなくなった」
「そうなのか」
「何処に行ったのかわかりはしない」
 こうミシェルに話す。
「フロンティアにいるのは間違いないのだが」
「消されたか?」
 ここでこう言うミシェルだった。
「大統領にな」
「そう思うか?」
「いや」
 ミシェルはここで己自身の言葉を否定した。
「それはないな」
「そうだな。あいつは生きている」
「そう簡単に死ぬ様な奴じゃないな」
「では何処にいる?」
 クランはこのことを考えていた。
「一体何処に」
「もうすぐ俺も退院できるしな」
「探すつもりか」
「ああ、そうする」
 こうクランに話す。
「一人より二人の方が楽だしな」
「済まない」
「そんな言葉はいいさ。ただ」
「ただ。何だ?」
「第一一七船団といいギャラクシーといい」
 ベッドの中のミシェルの顔は深刻なものだった。
「全部あいつがやってきたのか」
「そうかも知れないな」
「だとしたらとんでもないことだしな」
「そうだな、実にな」
「それを調べていくか」
「うむ。ただしだ」 
 クランは強い顔と声になっていた。
「このことはだ」
「まだ誰にもな」
「言ってはならないぞ」
「わかってるさ。俺達だけの秘密だ」
「そういうことだ」
「それじゃあさらに調べていくか」
「うむ、そうしよう」
 こうしたことを話していた。彼等も彼等で動いていた。
 運命の歯車は動き続けていた。そしてそれがだ。アルト達をその中に引き込んでいくのであった。彼等が気付かないうちに。


第五十四話   完


                       2010・9・2
        

 

第五十五話 トゥルー=ビギン

                 第五十五話 トゥルー=ビギン
 グレイスはだ。一人ほくそ笑んでいた。
「これでよしね」
 何かを見ながら笑っていた。
「後はそちらに向かうだけね」
 こう言ってであった。そのうえでこれからのことを見据えていた。
 そしてだ。フロンティアではだ。
「酸素も水もない」
「全ては残り僅か」
「このままではだ」
「やがてどうしようもなくなる」
「もう後がない」
「どうするべきか」
 閣僚達がこう話していた。
「こうなれば地球政府に連絡するか」
「ギブアップするというのか?」
「ここで」
「それも一つの手だ」
 こう言う者もいた。
「どのみちこのままでは持たない」
「もう酸素マスクが必要になってきたしな」
「食料も。プラントのダメージが大きい」
「どれもこれも」
「戦力もなくなってきた」
「大丈夫だ」
 しかしここでレオンが言うのであった。
「もうすぐで辿り着けるのだからな」
「その新天地に!?」
「そう言われるのですか、閣下」
「そうだ。我々は順調に向かっている」
 レオンは余裕のある笑みでこう話す。
「案ずることはない」
「それは一体」
「何処なのですか?」
「すぐにわかることだ」
 今は言おうとはしなかった。誰にもだ。
「だが。新天地は間も無くだ」
「我等の約束の地」
「そこが」
「今順調に向かっている」
 レオンの余裕の笑みは変わらない。
「そこに行くとしようではないか」
「ではここはです」
「信じさせてもらいます」
 こう言う閣僚達だった。ここではレオンの弁舌が勝った。
 そしてである。アルトはだ。
 レオンに呼ばれてだ。彼の話を聞いていた。
「来てもらって悪いね」
「いえ」
 まずはこうしたやり取りからだった。
「それで話とは」
「うむ。他でもないのだが」
 まずはこう前置きしてだった。
「ランカ君のことだ」
「あいつの・・・・・・」
「そう、彼女だ」
 そのランカの名前を聞いてだ。アルトの顔が変わった。
「あいつがどうしたんですか?」
「バジュラについて調べているうちにだ」
「バジュラに?」
「面白いことがわかったのだ」
 こうアルトに話すのだった。
「そうだね、ルカ君」
「はい」
 ここでルカも来た。
「先輩、バジュラですが」
「ああ」
「まず脳がありませんよね」
 彼もまたこのことを話すのだった。
「そうですよね」
「ああ、確かにな」
「けれど生物です」
「そう、そこだ」
 レオンもこのことを指摘してきた。
「我々はどんな生物でも脳があれば意思を感じられる」
「ええ、そうですけれど」
「しかしバジュラにはない」
 またこのことを話す。
「しかし彼等は生物だ」
「そしてです」 
 ルカもさらに話す。
「コミュニケーションをバジュラ達の間で取っていますね」
「ああ、それは間違いない」
 アルトもそれはわかっていた。
「だからこそ強くなってな」
「互いに情報を伝え合っています」
「それはどうしてなんだ?」
「神経と同じなんです」
「神経とか」
「そう、こう考えてくれ」
 またレオンが言ってきた。
「細菌と同じだろ」
「細菌とですか」
「そうだ、バジュラは言うならば細菌なのだ」
 こう話すのである。
「バジュラのその因子に感染されればだ」
「シェリルさんです」
 ルカは彼女のことを話に出した。
「シェリルさんはその因子に感染されていまして」
「あいつの病気はそれだったのか」
「そうです。それが脳に達した時」
 その時だというのだ。
「つまりは」
「ああ、わかるさ」
 ここからはアルトも察した。嫌になる程だ。
「そういうことなんだな」
「そうです。そして」
「そして?」
「それが先天的に感染している場合はです」
「先天的に!?」
「バジュラと意思を共有できるのだ」
 レオンが言った。
「そうなるのだ」
「けれどそんな奴は」
「いや、いる」
 レオンの言葉が鋭くなる。
「いるのだ」
「そう、ランカさんです」
 ルカも話してきた。
「ランカさんこそがその先天的にです。バジュラの」
「あいつが・・・・・・まさか」
「では聞こう」
 レオンは驚きを隠せないアルトに話す。
「何故彼女の歌がバジュラに効果があった」
「それなのか」
「そしてどうして彼女はバジュラに走ったか」 
このことも話す。
「それは何故かだ」
「考えれば考える程妙に思えまして」
 ルカも深刻な顔になっている。
「ランカさんの歌も調べた結果」
「それがわかってたのかよ」
「そうです。ランカさんと今のシェリルさんの歌の波長が同じでしたから」
「それでか」
「はい、わかりました」
 こう話すルカだった。
「それでなのです」
「そうだったのか。あいつが」
「それでだ」
 レオンがここでまた話す。
「ランカ君はバジュラと意思を共有できる。つまりは」
「バジュラの側に立って」
「そうだ、バジュラの尖兵となる」
 そうなるというのだ。
「そしてだ。我々の前に立ちはだかるのだ」
「ですから先輩」
 ルカの言葉が強いものになる。
「ここは」
「倒すしかないのか」
「我々は生きなければならない」
 これがレオンの意志だった。
「そう、何としてもだ」
「僕達が生きるかバジュラが生きるかなんです」
 ルカもレオンと同じ考えになっていた。
「ですからもう」
「ランカをか」
「時間はあまりない」
 レオンの言葉はアルトの逃げ道を塞いだ。
「決断してくれ給え」
「・・・・・・・・・」
 アルトはその言葉に沈黙してしまった。今の彼にはそうなるしかなかった。そうしてである。ロンド=ベルはその時には。
 フロンティアに向かっていた。しかしであった。
「あれっ、前方に」
「何かあります」
「あれは」
 ここでだった。レーダーに反応を見たのだ。
 マヤがだ。いぶかしみながら話す。
「フロンティアはまだ先なのに」
「何があったの?」
「まさかと思うけれどバルマー軍の基地かしら」
 ミサトとリツコが言う。
「それは覚悟していたけれど」
「ここでなのね」
「いえ、違います」
 マヤはそうではないと話す。
「これは」
「船団の残骸ですね」
 ケンジが話す。
「これは」
「船団のねえ」
「何かしら」
「一度調べてみるか」
 今言ったのはダグラスだった。
「時間はまだあるしな」
「そうですね」
 ベンもダグラスのその提案に頷いた。
「その船団がどうしたものかまずは見てからですね」
「はい、モニターに出します」
 リンダが言った。
「それでは」
「うむ、頼む」
「それでは」
 ダグラスとベンがリンダのその言葉に頷きだった。
 そのうえでモニターに映し出されたそれを見るとであった。それは。
「むっ、これは」
「マクロスの?」
 二人はすぐにそれを察したのであった。
「その船団のものではないのか?」
「そうですね、あの形状は」
 それがわかったのは二人だけではなかった。他の面々もだった。
「どうしてこんな場所に?」
「それにあれって」
「どの船団なんだ?」
 彼等が次に疑問を持ったのはこのことだった。
「ええと、あれは」
「番号が書いてあるな」
「ああ、あれは」
「一一七!?」
 この数字が見られたのだった。そしてだ。
「第一一七調査船団!?」
「まさかあれが」
「行方を絶ったっていう」
「あの船団が」
「長官」
 スワンがすぐに大河に問う。
「ここは」
「うむ、すぐに調査にあたろう」
 大河もすぐに決断を下した。
「それではな」
「よし、それではだ」
「すぐに中に入りましょう」
 オズマとキャサリンがここで話す。
「絶対に証拠がある筈だ」
「バジュラに関するね」
「そうだな。必ずある」
 ジェフリーも言う。
「それならだ」
「ならすぐに行きましょう」
 サコンも話す。
「バジュラに対して調べる為にも」
「そうね。ただ」
 ここでセニアが難しい顔になった。
「第一一七調査船団ってバジュラに関係あるのよね」
「それだったら」
「まさか」
「ええ、そのまさかよ」
 セニアは皆にも言う。
「ここで出て来る可能性は考えた方がいいわね」
「それならだけれど」
 ここでテリウスが提案する。
「船団の周りは僕達で護衛してね」
「調査するメンバーは中で調査する」
「そういうことにしようか」
「ええ、それでいきましょう」
 皆もテリウスのその言葉に頷いた。そうしてであった。
 ロンド=ベルはギャラクシーと船団を囲む様にして布陣した。そうして船団の中にだ。調査にあたるメンバーが入った。
 そしてそのロンド=ベルの中でだ。
「ちぇっ、俺達は外かよ」
「中にいる方が面白そうなのに」
「残念だ」
 オルガとクロト、シャニが苦い顔で言っている。
「何かよ、調べるっていうのはよ」
「知的で面白そうなのにね」
「どうして俺達じゃない」
「だって君達あれじゃない」
 その三人に言ったのはサブロウタである。
「すぐ暴れるだろ?」
「それの何が悪いんだよ」
「戦争って暴れるものじゃない」
「その通りだ」
「だからそれが駄目なんだよ」 
 サブロウタは三人にこう話す。
「調べるのに暴れてどうするんだよ」
「ちぇっ、それでかよ」
「何か凄く面白くないね」
「全く」
「旦那もだけれどな」
 サブロウタはここでダイゴウジも見る。
「旦那も暴れるの好きだろ」
「それが戦争だ」
 やはりそうだというのである。
「この拳でやってやる!」
「だからなあ。まあ中に入ったメンバーは妥当だよな」
「というかインテリ系のメンバーばかりなんだけれどね」
 ハルカが言ってきた。
「インテリ系のね」
「そうそう、確かに」
「その通りね」
「あの顔触れで」
 皆も話す。そうしてであった。
 調査のメンバーが中に入ったところでだった。
「レーダーに反応です」
「よし、ドンピシャ」
「来るなっての」
 こんな言葉も出た。
「全くな」
「こういう予想は当たるからなあ」
「ほぼ確実に」
「そうみたいね」
 セニアも船団の中から話す。
「来たしね、実際に」
「そうね。ただ」
 ここで言ったのは未沙だった。
「タイミングがよ過ぎるわね」
「タイミングね」
 セニアもその言葉に反応を見せた。
「そういえばいつもそうよね」
「今回は特によね」
 キャサリンも言う。
「まるで見計らったようにね」
「やっぱり誰かが何かを見ている?」
「バジュラと関係がある?」
 皆それぞれ考えだした。
「そのうえで私達にバジュラを差し向けている」
「だとすれば誰が?」
「一体誰が」
「答えは出る」
 今言ったのはヒイロだった。
「それも一つしかない問題だ」
「そうだな。それはだ」
「彼女ね」
 ノインとヒルデも言う。
「彼女しかいないわね」
「一人。そうね」
「グレイス=オコーナー」
 今この名前を出したのは加持だった。
「もうそれしかないよな」
「そうね。もうこれで完全に決まりね」
 ミサトも真剣そのものの顔だ。
「彼女は間違いなくバジュラと密接な関わりがあるわ」
「そして第一一七調査船団を滅ぼして」
「ギャラクシーも襲い」
「フロンティアまでも」
「そうして」
 さらに話される。
「何かを手に入れようとしている?」
「その何かが問題だけれど」
「それが一体何か」
「それだよな」
 皆戦闘に入る直前の中で考えていた。その時だった。
 遂にバジュラ達が来た。そしてだった。
「よし!ここはだ!」
「全方位に攻撃開始!」
「バジュラを船団の残骸に近寄らせるな!」
「絶対にだ!」
 こうしてだった。彼等はそのまま攻撃を仕掛ける。それでバジュラを船団に近寄らせない。
 ギュネイはだ。ファンネルを放っていた。
「弱点をつけば幾らしぶとくてもな!」
 こう言ってであった。バジュラを次々と撃墜する。
「こうして撃墜できるんだよ!」
「やるねえ」
 加持がその彼を見て言う。
「さらに腕をあげたね」
「そう言ってくれるか」
「前から言おうと思ってたんだがな」
 加持はギュネイに飄々と話し続ける。
「あんたと俺って似てるよな」
「そうだな」
 ギュネイもそのことを否定しない。
「俺も思っていた」
「別人の気がしないね」
「それでだが」
 ここでこんなことも話すのだった。
「マサトとマシュマーと。そしてジェリドはな」
「ははは、そうだな」
 加持はギュネイの今の言葉に顔を崩して笑った、
「仲間って意識があるな」
「それとカミーユにクリスもだな」
「思わぬ関係だな」
「ただフォルカは敵だな」
「ムウは味方って意識がしないな」
「待て」
 クリフがそんな二人を見て言ってきた。
「その世界は私はあまりいい思い出がないが」
「私はヒロインだったわね」
「そうそう」
 サラとエクセレンが言う。
「あの世界ではどうやら」
「蓬莱山でね」
「あの世界は鎧を着て戦っていたな」
「今となっては懐かしい思い出だな」
 こう話すギュネイと加持だった。
「面白い世界だったな」
「今となってはな」
「今度はその世界なのね」
 ノリコは二人の会話に少し呆れた様子だった。
「お姉様、ギュネイさんと加持さんって確か」
「ええ、そうよ」
 カズミはノリコの言葉にすぐに頷いたのだった。
「私が猫になる世界だったかしら」
「あたしは関係ないニャよ」
 何故かクロが言う。
「確かにカズミさんには親近感があるニャ。それでもニャ」
「何かお姉様に似てる人も多いのよね」
 ノリコはこのことも感じていた。
「それでギュネイさんと加持さんって」
「あれか?黒豚か?」
 加持が応えた。
「凄く感じているぞ」
「あたいが変態妹だったかい?」
 何故かミンが参戦する。
「それとフォウがな」
「私なのね」
「あたいとフォウも似てるしな」
「同一人物じゃないのかい?」
 万丈が彼女に突っ込みを入れる。
「僕の妹だったかな」
「あはは、何かそんな気がするね」
 ミンも万丈の今の言葉に笑う。
「それでマサトがあれだよな。近眼でさ」
「僕そっちの世界でもカズミさん達と縁があったんだ」
 マサトもここで何となく感じたのだった。
「前から思ってたけれどカズミさんと僕って因縁ない?」
「あるわね」
 何故かラーダが答える。
「間違いなく」
「ううん、人間の縁って不思議だな」
「というよりは声だな」
「そうね」
 カティとアイナが言う。
「私もノリコやハーリーとはだ」
「姉妹に感じるわ」
「私は」
「僕ですね」
 トビアがレイの言葉に頷いた。
「そうですよね。お湯を被れば」
「水を被れば」
「なりますよね」
「同じ人間になるわ」
「おい、これどうなってるんだ?」
 今言ったのはサンシローだった。
「俺も閉所恐怖症で暗所恐怖症だった気がするんだが」
「それはまた違う世界の筈よ」
 今言ったのはレミーだった。
「まあ言うとややこしくなるけれどね」
「俺はそっちの世界にも出ていたな」
「俺はどうだったかな」
 真吾とキリーも言う。
「よく出ていたものだよ」
「端役で出ていた気がするんだがな」
「まあ俺も出ていたな」
 宙までだった。
「虎のパンツの忍者だったな」
「何だよ、その設定」
 カイが突っ込みを入れる。
「いや、俺はまああれだけれどな」
「ああ、カイはそうだよね」
 ハヤトがそのカイの言葉に頷く。
「あっちの世界じゃね」
「女好きだったしな、かなりな」
「だからもうそれ言わないでおこうぜ」
 サンシローはいたたまれなくなっていた。
「俺達はもう無茶苦茶だったからな」
「全くだな」
「同感だ」
 竜馬と一矢が彼の言葉に頷く。見れば洸やフォッカーもいる。
「俺達もあの世界の記憶があるからな」
「世紀末救世主の世界といいな」
「ここで話を終わるか?」
 首を捻って言うスレッガーだった。
「俺も出てなかったかね」
「出てたんじゃないですか?」
 セイラはこの彼にこう返す。
「私は烏天狗でしたけれど」
「他の人間も知らないか?」
「知っています」
 心当たりがあった。
「充分に」
「何か話がややこしくなってきたな」
 アムロが首を捻る。
「さて、根性なしのボクサーの話で終わってだ」
「そうですね、中佐」
 キムが彼のその言葉に頷く。
「福音は勝利の後で」
「よし、そうするか」
 戦闘をしながらの会話だった。戦闘はかなり激しい。バジュラ達は次から次に出て来る。そしてそれと同時にであった。
 船団の中でだ。調べている面々が見つけたのだった。
「これって」
「ああ、出て来たな」
「グレイス=オコーナー」
 残骸の中のコンピューターや資料室を調べていてだった。
「これだ」
「すぐに調べましょう」
「これで間違いないわ」
「そうね」
 そうしてだった。彼等は見つけ出した資料を全て持ってそのうえで船団を出たのだった。
 彼等がそれぞれの艦に戻ってもだ。戦闘はまだ続いていた。
「その資料を持って生かして帰すつもりはない」
「そういうことか」
「やっぱりな」
 ロンド=ベルの面々はここでまた確信した。
「あいつ、わかってるな」
「だからこそここで」
「攻めて潰すか」
「そのつもりか」
「しかしな!」
 ここで叫んだのはオズマだった。
「俺達もやらなければいけない。行かせてもらう!」
「ああ、数は二百万!」
「まだ来ます!」
「それでも!」
 彼等は戦うと決意した。そうしてだった。
 果てしなく攻め寄せるバジュラと戦っていくのであった。
 ランカはその時。やはりブレラと共に宇宙を旅していた。
 その中でだ。彼女は彼に話していた。
「あの」
「どうした」
「すいません」
 こうブレラに言うのである。
「巻き込んでしまって」
「いい」
 だがブレラはこう返すのだった。
「気にすることはない」
「そうなんですか」
「俺もこうするつもりだった」
「ブレラさんも」
「御前を守ると言ったな」
「はい」
「だからだ」
 それでだというのである。
「それにだ」
「それに?」
「俺も見てみたい」
「バジュラと。私達の」
「今はそう考えている」
 不思議と穏やかな言葉であった。
「考えが変わってきた」
「変わってきた?」
「俺はサイボーグだ」
 例えか現実かわからない言葉だった。
「戦うだけの存在だ」
「そうだったんですか」
「だからそれ以外の感情は持たなかった」
 こうランカに話すのだった。
「しかしだ。今はだ」
「変わられたんですね」
「ランカ、御前の歌を聴いて変わった」
 その変わった原因が何かも話す。
「だから今ここにいて。そして」
「そして?」
「御前を心から守りたくなった」
 それでだというのだった。
「それでいいか」
「はい、御願いします」
 ランカも優しい笑顔で彼の言葉に頷く。
「それじゃあ」
「行くぞ。もうすぐだ」
「もうすぐって?」
「母星だ、バジュラの」
 そこだというのだ。
「もうすぐそこに入る」
「そしてそこで」
「バジュラと話せるな」
「はい」
 ブレラの言葉にこくりと頷いて答える。
「できます、人間とバジュラは話し合えます」
「そうだな」
「本来は戦い合う存在じゃありません」
「そこが宇宙怪獣と違うな」
「宇宙怪獣は何か違うと思います」
 ランカも宇宙怪獣はこう見ていた。
「バジュラとは別に」
「別にか」
「何か得体の知れないものがあると思います」
 こう話すのであった。
「それが何かまでは。言葉では中々出せませんが」
「そうだな。宇宙怪獣はな」
「バジュラと違って最初から全てを破壊しようとしていますよね」
「そして生きて増えている」
「一体どんな存在なのでしょうか」
「俺もそれを知りたい」
 彼等と何度も戦ってきたからだ。それでブレラも言うのだった。
「宇宙怪獣についてはな」
「ええ、本当に」
「だがバジュラは違うか」
「宇宙怪獣とは何かが明らかに違います」
 またこのことを言うランカであった。
「ですから今から」
「ああ、行こう」
「はいっ」
 こうして二人はブレラのバルキリーである惑星に接近した。しかしであった。
 母星に近付くとであった。まずは、であった。
「来たな」
「バジュラがですか」
「そうだ、バジュラの迎撃隊だ」
 かなりの数のバジュラが二人の乗るバルキリーの前に来た。
「どうする?」
「歌わせて下さい」
「歌か」
「はい、歌です」
 まさにそれであった。
「歌えば。きっと」
「そうだな、バジュラはわかるな」
「だからカイ君」  
 バルキリーの傍にいるあの緑のバジュラを見ての言葉だ。
「そこにいて。そして聴いて」
「バジュラ、聴くといい」
 ブレラもここで呟く。
「ランカの歌をな」
「じゃあ」
 ランカはコクピットを開けて歌おうとする。しかしであった。
 突然その緑のバジュラが口の辺りにある一本の触手を伸ばしてきた。そうしてだった。
「何っ!?」
「えっ、カイ君!?」
 ブレラだけでなくランカも驚きを隠せなかった。
「どうしてなの?」
「一体どういうつもりだ!?」
 ブレラはその緑のバジュラに捕らえられたランカを救い出そうとする。
「何故ランカを」
「決まっているわ」
 そしてここで、であった。
「これからの為よ」
「何っ、大佐!?」
「ええ、そうよ」
 謎のバルキリーが来ていた。そうしてだった。
 グレイスの言葉がだ。聞こえてきたのである。
「どう?楽しかったかしら」
「楽しかった。何がだというのだ」
「兄弟での逃避行は」
 グレイスは笑って彼に告げた。
「どうだったかしら」
「何っ、兄弟!?」
「そうよ、意識では忘れてしまっていたみたいね」
「そんな馬鹿な・・・・・・」
「馬鹿なじゃないわ。本当のことよ」
 グレイスの声は悠然として笑ってさえいた。
「全てね」
「くっ、じゃあ俺は」
「そうよ。今まで泳がせていたのよ」
 まさにそうしていたというのだった。
「あの忌々しい虫達の本星に辿り着くまでね」
「それでどうするつもりだ」
「どうする、ね」
「そうだ、どうするつもりだ」
 こうグレイスに問うのである。
「ランカを。一体」
「彼女は切り札よ」
 完膳に兵器を見ている言葉だった。
「私達のね」
「私達だというのか」
「そうよ。母星にフロンティアを引き付けてそのうえで倒して」
 それからであった。
「そしてね」
「まだあるというのか」
「私は女王になるのよ」
 こう悠然と話すのであった。
「バジュラの、そして銀河を操る兄弟にね」
「そんなことをさせるかっ」
 ブレラがはじめて激昂した。
「ランカは俺が」
「俺が?」
「俺が守ると言った」
 こう返してであった。
「だから。俺は」
「何かしら」
 グレイスの言葉は今も冷たいものだった。
「私と戦えないのは忘れたのかしら」
「くっ・・・・・・」
「諦めなさい」
 上からだ。完全に見下した言葉だった。
「もうね」
「そしてランカもか」
「彼女は頂いていくわ」
 こう彼に告げた。
「それじゃあね」
「くっ、俺は・・・・・・」
「好きにしなさい。今までランカを護ってくれた御礼にね」
「そんなものはいらんっ」
「いいえ、あげるわ」
 有無を言わさない、その口調でだった。
「何処にでも行きなさい。好きな場所にね」
「余裕か」
「そうよ。まずはロンド=ベルでも連れて来るのね」
 あからさまな挑発だった。
「すぐ近くにいるし」
「ロンド=ベルを倒すつもりか」
「銀河に支配者は一人で充分よ」
 かつてレオンに代理人を通して言われた言葉をそのまま出してみせた。
「私一人でね」
「ロンド=ベルは貴様と違う」
「ええ、違うわ」 
 酷薄な笑みと共の言葉であった。
「だから私は彼等を排除するのよ」
「果たしてそれができるか」
「それも見せて御覧なさい」
 ここでも挑発する言葉であった。
「できるのならね」
「くっ・・・・・・」
「さあ行きなさい」
 ブレラに行くように急かしせしてみせた。
「早いうちにね」
「必ず戻って来る」
 こう言ってであった。ブレラは己のバルキリーを反転させた。
「そう、必ずだ」
「ええ、待っているわ」
 こうしてであった。ブレラはロンド=ベルのところに向かった。そうしてあった。
 グレイスは密かにフロンティアに情報を流した。するとだ。
 すぐにレオンがそれを聞いてであった。
「そうか、遂にか」
「はい、遂にです」
「わかりました」
 彼の腹心達が次々に告げる。
「バジュラの母星が」
「先程先遣の無人偵察機からの情報です」
「よし、わかった」
「行かれますか」
「それで」
「当然だ」
 レオンの返答は決まっていた。
「そしてその母星だが」
「はい」
「その星ですね」
「緑はあるか」
 まずはこれを問うた。
「そして水は」
「どちらも豊富です」
「まさに地球と同じです」
「そこまでです」
「そうか、それならばだ」
 腹心達の言葉にだ。レオンはさらに意を決した。
 そうしてであった。彼は指示を出した。
「すぐにその星に向かう」
「わかりました」
「それでは」
「そしてだ」
 彼はさらに言った。
「そここそが我等のフロンティアだ」
「そして約束の地ですね」
「遂に見つけましたね」
「見つけた。長い旅だった」
 まずは感慨を述べた。
「しかしそれもこれで終わる」
「バジュラとの戦いも」
「これで」
「全てを終わらせる。これでだ」
 こうしてであった。フロンティアはその母星に向かうことになった。そしてそれはだ。
 アルト達にも伝えられた。ミシェルとルカ、そしてクランにもだ。フロンティアの軍全てにだ。非常事態が告げられたのであった。
「いよいよだな」
「そうですね」
 ルカはミシェルのその言葉に頷いた。
「先輩は退院してすぐですね」
「ああ、それは構わないさ」
「いいんですか」
「身体の方は問題ない」
 微笑んでルカに話す。
「やってやるさ」
「そうですか。それじゃあ」
「ミシェル、それでも無理はするな」
 クランがその彼に言ってきた。
「それはいいな」
「やれやれ、心配性だな」
「御前は無茶をする」
 あの時の話だった。
「だから余計に言っておく」
「安心しな。俺は絶対に死なないさ」
 ミシェルは真面目な顔でクランに話した。
「それは言っておくからな」
「ああ、そうしてくれ」
「それでだ」
 クランはここでアルトに顔をやってきた。そのうえでだった。
「アルト」
「ああ」
「御前はどうして戦うのだ?」
 問うのはこのことだった。
「それは何故だ」
「俺か。俺は空に憧れていた」
「空にか」
「役者の家に生まれた」
 このことも話すのだった。
「けれどな。空に憧れてだ」
「地球に残ってか」
「それでパイロットになった」
 それでだというのだ。
「それで戦っている」
「そうだったのか」
「中尉、貴女は」
「私か」
「そうだ。中尉は何故戦っているんだ?」
 こうクランに問い返すのだった。
「それはどうしてなんだ?」
「私は軍人の家に生まれた」
 クランはここから話した、
「それが当然だと思っていた」
「それでなのか」
「だが御前は」
「空に憧れて。そして」
 アルトはここでさらに話した。
「あるものを見た」
「あるものをか」
「多くのものを。ロンド=ベルにいてな」
「そしてあの二人もか」
「シェリルもランカも」
 あの二人を思い出しながらさらに話す。
「あの二人を見てな。それでだ」
「変わったのだな」
「変わった。そしてだ」
「そしてか」
「そうだ、ランカは」
 ランカのことも話した。
「あいつは今バジュラと共にいる」
「はい」
 ルカが彼のその言葉に頷いた。
「そして今」
「若しだ」
 アルトはルカに応える形でさらに話した。
「若しあいつがバジュラに利用されるのなら」
「その時は一体」
「どうするんですか?」
 ミシェルとルカが彼に問う。
「御前は」
「まさかと思いますけれど」
「いや、そのまさかだ」
 アルトは毅然として言った。
「俺はランカを殺す」
「しかしそれは」
「先輩にとって」
「それでもだ」
 アルトの言葉は変わらない。
「その時はだ」
「そうなのか」
 クランは俯いて彼の話を聞いた。そうしてだった。
「それがなのだな」
「ああ」
「それが御前の愛なのだな」
「そうかもな」
 アルトはこのことを否定しなかった。
「それでも俺は戦う」
「俺は」
「僕は」
 ミシェルとルカはそれぞれの愛とここで見合った。
「その為にな」
「戦うんですね」
「そうだな。だからこそ残ったのだからな」
 そしてクランもだった。
「このフロンティアに」
「生きるか死ぬかの戦いなのはいつもだけれどな」
 アルトはまた言った。
「けれど今度の戦いは」
「そうだな」
「本当に」
 そんな話をする四人だった。そして。
 シェリルはその話を陰で聞いていた。そうしてだった。
「わかっていたけれどね」
 こう呟いてサングラスをかけてだった。その場を後にしたのであった。
 全てがまたはじまろうとしていた。それは決して終わりではなかった。


第五十五話   完


                       2010・9・6
  

 

第五十六話 終局

                第五十六話 終局
 ロンド=ベルはだ。何とか生き残った。
「やれやれだな」
「全く」
「死んだ奴はいるか?」
 このチェックもされる。
「洒落にならない激しい戦いだったけれどな」
「誰かいるか?」
「大丈夫?」
「撃墜された機体はなし」
 まずはこのことが確かめられる。
「それにパイロットの戦死者もなし」
「クルーも」
「重傷者もなし」
「奇跡ね」
「そうだな」
 皆本当にそう思うのだった。
「あの状況でそれはな」
「ガルラ帝国との決戦並に激しい戦いだったな」
「全くだぜ」
 戦いを思い出しての言葉である。
「それでだけれどな」
「ああ」
「それで?」
「わかったよな」
 問うのはいきなりであった。
「第一一七調査船団のことは」
「ああ、わかった」
 カナリアが答えてきた。モンスターからの通信だ。
「今ここにキャサリンがいる」
「そう。それでキャサリンさん」
「どうなんですか?それで」
「バジュラは」
「ええ、まずはね」
 ここでだった。キャサリンは話すのだった。
「バジュラは独自の。思念をお互いに送って意志を疎通しているわ」
「やっぱりそうなんですか」
「それもはっきりしたんですね」
「それが」
「そうよ。それでね」
 キャサリンはさらに話す。
「バジュラの生態は蜂に似ているわね」
「蜂ですか」
「それなんですか」
「そうよ、それよ」
 こう一同に話す。
「つまり女王がいるわ」
「女王のバジュラ」
「クイーンバジュラですか」
「つまりは」
「そうよ。クーンバジュラね」
 まさにそれであるというのである。
「それがいるわね」
「それがバジュラの母星にですね」
「いるんですね」
「つまりは」
「そうよ、いるわ」
 また話されるのだった。
「そしてその星はね」
「それはこちらでわかった」
 キリコだった。
「我々が今から向かう星だ」
「そこがバジュラの星」
「そここそが」
「それじゃあ」
「決戦となるな」 
 キリコは簡潔に言った。
「そこでバジュラとだ」
「いえ、それがなのよ」
 ところがだ。今度はリツコが一同に話してきた。
「どうやらね」
「どうやら?」
「どうしたんですか、リツコさん」
「バジュラは元々それ程攻撃的な生物ではないみたいなのよ」
「えっ、あれで?」
「あれでなんですか?」
「まさか」
「いや、その通りだ」
 サコンも言ってきた。
「バジュラは本当にだ」
「好戦的じゃないんですか」
「好戦的な存在じゃない」
「証拠は」
「ある。データにだ」
 それもあるというのだ。
「間違ってもこれまでの様なことはしない種族らしい」
「しかしそれでも今まではどうして」
「物凄く攻撃的だったんですけれど」
「それはどうしてなんですか?」
「つまり。あれです」
 猿丸であった。
「操っている存在がいるんです」
「グレイス=オコナー」
「あいつか」
「やはり」
「彼女はバジュラの習性に気付きそれを利用しようとしています」
 猿丸はまた話した。
「そしてそのうえで」
「何をするつもりなんだ?」
「それで」
「自分がバジュラを支配し銀河の支配者になろうとしています」
 そうだというのだ。
「それがわかりました」
「胡散臭い奴だと思っていたがな」
 ロウがここで言った。
「そういうことだったか」
「そうだな。しかしそれがわかればだ」
 イライジャも言う。
「何をするかもな」
「はっきりしたな」
「あいつを倒す」
「ここは」
「その通りよ。皆いいわね」
 ミサトが確かな顔で一同に話す。
「私達の敵はバジュラではないわ」
「グレイス=オコナー」
「あいつがですね」
「そうよ。それじゃあね」
 ミサトは話をさらに続ける。
「これからの方針は」
「まず母星に言ってだな」
 加持も言う。
「そしてそのうえで」
「そこに来るグレイス=オコナーを倒す」
「そうするか」
「よし、作戦決定だ」
 グローバルが言った。
「それでいいな」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 こうしてであった。彼等はその星に向かうのだった。そうしてであった。
 バジュラの大軍と対峙した。そしてそこに。
「来たな」
「ええ」
「フロンティアも」
 そのフロンティアも来た。役者は揃った。
 その中でだ。シェリルは言っていた。
「来たのね」
「ああ」
 アルトだった。彼はシェリルの楽屋に来たのである。
「もう出撃の時間じゃないの?」
「それでもいいか?」
「我儘ね」
 アルトに対してすっと笑って返した。
「意外と」
「今まで我儘って言われたことはないんだがな」
「あら、そうだったの」
「そうだ。それでな」
「一つ言っておくわ」
 シェリルの方からだった。
「もうこれで終わりにしましょう」
「終わり?」
「そうよ。恋人ごっこはね」
 笑顔でアルトに話す。
「もうこれでね」
「ごっこだったのかよ」
「そうよ。それでね」
「今度は何だ?」
「生き残ったら、お互いに」
 こう話してであった。
「その時は」
「ああ、その時は」
 ここで、であった。シェリルは自分の顔を前に出してだ。アルトの唇と己の唇を重ね合わせたのだった。
 それが終わってからだ。またアルトに告げた。
「それじゃあね」
「ああ、それじゃあな」
「ランカちゃんを御願い」
 笑顔で彼女の名前も出した。
「絶対に助け出してね」
「絶対にか」
「助け出さないと許さないから」
「そうしろっていうんだな」
「そうよ、絶対によ」
 またこの言葉を出してみせる。
「絶対によ。わかったわね」
「ああ、わかった」
 アルトも頷く。そうしてだった。
「じゃあな」
「ランカちゃんみたいないい娘はいないわよ」
 また微笑んでランカのことを話すシェリルだった。
「それにね」
「ああ」
「こんないい娘もいないから」
 微笑んで自分のことも言う。そうしてだった。
 アルトの出撃を己の場で見届けてそのうえで、だった。
「あたしの歌を聴けーーーーーーーーーーーーっ!!」
 ステージにダイブしてガウンを脱いで軍服の衣装になってだ。そうしてそのうえで歌うのであった。
 その時だ。慎吾は神名とスサノオの中で話をしていた。
 神名がだ。彼に言うのだ。
「あのね、慎吾君」
「はい」
「隠していたことだけれど」
 こう前置きしての話だった。
「真名は私に告げていたの」
「何てですか?」
「若し自分がオニクスに取り込まれて」
「はい」
「悪いことをしたその時は」
 その時はというのだ。
「自分を殺してくれってね」
「そう頼んでたんですね」
「私は暗殺やそうしたことも学んできたわ」
 神名は自分のことも話した。
「そう、慎吾君を守る為に」
「僕を守る為に」
「身に着けてきたわ。けれど」
 顔が曇る。そのうえでの言葉だった。
「私にはできないわ」
「そうなのですか」
「ええ、できないわ」
 また言う神名だった。
「真名は私の妹、それに真人君も知っているから」
「だから。それで」
「私には真名の命を奪えない」
 神名のその声が震えている。
「どうしても、それは」
「それじゃあ」
「それじゃあ?」
「助け出しましょう」
 これが慎吾の考えだった。
「真名さんを。そして真人さんを」
「救い出すのね」
「オニクスに捉われていても」
 それでもだというのだ。
「助け出しましょう」
「そうするのね」
「はい、そうします」
 確かな言葉だった。
「だって。ギガンティックは誰かを守る為の力ですから」
「慎吾君・・・・・・」
「そうよ」
 ここで華都美が二人に言ってきた。
「その通りよ、慎吾君」
「華都美さん・・・・・・」
「二人共オニクスからあの二人を救い出して」
 慎吾だけでなく神名にも告げる。
「いいわね、絶対によ」
「はい」
「わかりました」
 華都美の言葉に二人で頷く。
「それなら今から」
「行きます」
「オニクスはフロンティアにいるわ」
 そこにだというのだ。
「フロンティアの軍がいるけれど」
「フロンティアの軍に手を出す必要はない」
 今言ったのはジェフリーである。
「味方だ。向こうはどう思ってるかわからんがな」
「けれどですよ」
 ここで反論するのは柿崎だった。
「向こうは攻撃して来ますよ」
「そうです。それはどうしますか?」
 マックスもこのことを問う。
「こちらは攻撃しないんじゃあまりにも無茶です」
「心配無用!」
 だがここで大河が言う。
「既にその備えもある」
「その備えとは」
「一体」
「それを今から言おう」
 こう言ってであった。彼はすぐにだ。
 命とスワンに対して告げた。
「二人共、いいな」
「はい」
「あれデスね」
「そうだ、時は来た!」
 確かな声で叫ぶ。
「あのデータをフロンティアの全てのパソコンに転送するのだ!」
「了解!」
「送信です!」
 そうしてであった。あのデータがフロンティアの全てに伝えられた。
 するとだ。彼等の動きが止まった。
「なっ、何!?」
「グラス大統領はバジュラに殺されたのじゃない!?」
「今の大統領にだって!?」
「それにこの資料は」
「データも」
 レオンの直接の関与を示すあらゆる証拠も送られていた。
「こんなに正確だと」
「ああ」
「間違いないよな」
「そうだよな」
「じゃあやっぱり」
「あれは」
 特にだ。軍の間で動揺が走っていた。
 そしてだ。レオンの周りでもだ。
「大統領、これは」
「一体どういうことですか!?」
「これは真実なのですか!?」
「まさか」
「馬鹿を言い給え」
 何とか落ち着きを保って言う彼だった。
「これはロンド=ベルの工作だ」
「いえ、しかしです」
「ここまで確かな資料はです」
「そうはありません」
 こう言う彼等だった。
「ですからこれは」
「やはり」
「そうとかしか」
「くっ・・・・・・」
 レオンは取り繕うことができなくなり歯噛みした。そしてであった。
 同じく関与を暴かれた美知島はだ。部下達に静かに告げていた。
「オニクスもだ」
「はい」
「オニクスは」
「稼動を停止させる」
 そうするというのである。
「パイロットの二人は自由にしてあげるのだ」
「では彼等の戦いは」
「もう」
「そう、終わりだ」
 穏やかな声で話す。
「君達もだ。君達を更迭する」
「更迭!?」
「ですが」
「君達は何も知らなかった」
 これは事実である。彼の部下達は彼とレオンの企みのことを何も知らなかった。彼はこのことを今はっきりと言ったのである。
「私の独断でしたことだ」
「しかし閣下」
「それでも」
「君達は既に更迭、今の役職から解任した」
 まだ言う美知島だった。
「では。さようなら」
「閣下・・・・・・」
「それでは」
「別れを言うのは一度だけだ」 
 美知島はこれ以上言おうとしなかった。
「それでは。いいな」
「はい・・・・・・」
「では閣下」
 部下達は一斉に立ち上がって彼に対して敬礼した。そうしてだった。
「さようなら」
「これで」
「うむ」
 美知島も返礼した。そうしてであった。
 部下達が部屋を後にするとだ。部屋の中から銃声が聞こえた。それで終わりであった。
 そしてこのことがレオンに伝えられるとだ。彼はさらに窮地に陥っていた。
「くっ、私はだ」
「詳しいことはです」
「後でじっくりと御聞きします」
 腹心達も全員捕らえられている。そのうえで兵士達に銃を向けられている。そうして告げられるのだった。
 これでレオン達は終わった。するとだ。
「こちらフロンティア」
「宜しいでしょうか」
「うむ」
 ギャラクシーの大統領が彼等の言葉に応える。
「何だろうか」
「これより我が軍はです」
「ロンド=ベル及びギャラクシーの軍と合流させて頂きます」
「宜しいでしょうか」
「よし、それではだ」
 大統領は彼等の言葉を受けた。そうしてであった。
「これから共に戦おう」
「はい、それでは」
「今より」
 こうしてであった。彼等の問題は終わった。そして。 
 オズマは三人とクランのところに来てだ。声をかけた。
「スカル1より各機に!」
「は、はい!」
「それじゃあ」
「俺達の敵はバジュラではない!」
 まずはこう彼等に言うのだった。
「それを言っておく」
「えっ、バジュラじゃない!?」
「まさか」
 それに驚いたのはアルトとルカだった。
「そんなことは」
「有り得ません」
「いや、そうだ」
 だがまだ言うオズマだった。
「すぐに話す。まずはだ」
「まずは」
「一体」
「あの戦いだ」
 見ればだ。フロンティアにいるオニクスの周りにだ。無数の無人機が展開していた。フロンティアの予備のバルキリーやモビルスーツ達だ。
「ええと、数は?」
「千か」
「何だ、少ないわね」
 ロンド=ベルの面々はその無人機の軍を見てそれぞれ言う。
「それ位なら一気に」
「バジュラの攻撃はあしらって」
「それであのオニクスをだよな」
「そうね」
 皆こう話してだった。
 そのうえでだ。慎吾と神名に対して言う。
「いいな」
「あの二人をね」
「絶対に助け出せよ」
「何があってもね」
「はい、わかりました」
「それなら」
 慎吾と神名も頷いてだ。そのうえでオニクスに向かう。
 そうしてオニクスはだ。スサノオを待っていた。
「来たね」
「ええ」
 真名は真人の言葉に頷いた。
「今からはじまるわ」
「僕達の戦いがね」
「いや、待て」
「もういいのよ」
 しかしだ。その二人にフロンティアの司令部から通信が入った。
「君達の戦いは終わったんだ」
「もうフロンティアを守らなくていいから」
「早くそこから降りるんだ」
「そして戦争からも」
「いやです」
「それは聞けません」
 しかしだった。ここで二人は言うのだった。
「僕達はこのオニクスに残ります」
「そして戦い続けます」
 そうするというのである。
「それが僕達の使命ですから」
「ですから」
「何っ、馬鹿な」
「もう戦いはしなくていいのに」
 フロンティアの司令部もこのことに驚きを隠せない。
「それで何故」
「まだ戦うというの?」
「これはです」
 ここで言ったのは卯兎美であった。
「御二人がオニクスに囚われているのです」
「オニクスに!?」
「まさか」
「オニクスはギガンティックの中でも特殊です」
 そうだというのである。
「その力は絶大ですが」
「ですが」
「しかし何かがあると」
「そうです。パイロット達を取り込んでしまうのです」
 こう話すのだった。
「そして戦いに駆り立てます」
「そんな、ギガンティックの中でもオニクスはパイロットの気力体力を特に消耗させるマシンだ」
「それに乗り続けていれば」
「そうです、やがて死んでしまいます」
 そうなるというのである。
「ですからここは」
「だから行きます!」
「私達が!」
 慎吾と神名が前に出る。当然スサノオに乗っている。
 そしてだ。オニクスの前に来てだ。
「真人さん」
「真名」
 それぞれ二人の名前を呼ぶ。
「もう戦う必要はありません」
「そうよ、だから」
「オニクスから降りて下さい」
「もうこれで」
「まさか。何を言ってるんだよ」
「私達は戦わないといけないのよ」
 あくまでこう言う真人と真名だった。
「そう、絶対に」
「だからまだ」
「くっ、これなら」
「このままだと」
 二人はそれを聞いてだ。いよいよ覚悟を決めた。
 そうしてであった。意を決してだ。
「神名さん」
「ええ」
 二人で息を合わせてだった。そして。
「オニクスを行動不能にして」
「それからね」
「はい、二人を助け出しましょう」
「それから」
「いい?二人共」
 華都美も話す。
「ここはね」
「はい、まずはオニクスをですね」
「行動不能にして」
「それからよ」
 また話すのだった。
「二人を助け出して」
「助け出すのは任せろ!」
 名乗りを挙げたのは宙だった。
「俺ならそれができる!」
「宙さんがですか」
「してくれるんですね」
「ああ、鋼鉄ジーグならだ」
 それができるというのである。
「だからだ。任せてくれ」
「はい、それならです」
「御願いします」
「しかし。その前にだ」
 ここで宙は言うのだった。
「頼んだぞ」
「はい」
「やります」
 二人は意を決してだった。オニクスに向かう。そうしてだった。
 オニクスがまずは剣を出して来た。
「くっ!」
「早い!」
「やらせないよ」
「絶対に」
 攻撃を繰り出した真人と真名の言葉である。
「戦ってそして」
「フロンティアを守るから」
「違う!」
「真名、それは違うの!」
 二人は剣を受け止めたうえで二人に訴える。
「戦うことは必要なんだ」
「けれどそれでも」
 それでもだというのである。
「これ以上オニクスに乗って戦っても」
「それは」
 こう言ってであった。そのうえでだ。
 再びスサノオの剣を繰り出す。しかしそれもまた受け止められる。
 それでもだ。慎吾と神名はまだ言った。
「二人共そこから降りるんだ!」
「早く!」
「いや、僕達はフロンティアを守るから」
「だから」
「くっ、やっぱり二人共」
「ええ、間違いないわ」
 慎吾と神名はここであらためてわかった。
「オニクスに意識を奪われている」
「それなら」
「足だ!」
 今叫んだのはだ。
「足を狙うんだ!」
「えっ、セルゲイ」
「足?」
「そうだ、足なんだ!」
 セルゲイはまた叫んだ。
「足を狙え!」
「そうだな、ここはだ」
「それがいい」
 雲儀とザイオンもセルゲイの言葉に頷く。
「それで動きを遅くするんだ」
「まずはな」
「は、はい」
「それなら足を」
 二人は彼等のその言葉に頷いた。そしてだった。
 一旦飛び退いてだ。間合いを開けた。それから。
 下に向かって突き進む。そしてだった。
「これで!」
「どう!?」
 剣を下に思いきり払う。横薙ぎにだ。
「これなら!」
「きっと!」
「くっ!」
「間に合わない!?」
 その攻撃にはだ。真人と真名も対処しきれなかった。かろうじて両足を断ち切られることだけを避けるのが精一杯の状況だった。
 右足の足首が断ち切られた。足首が吹き飛ぶ。
「しまった!」
「足が!?」
「よし、後は!」
「一気に!」
 これでスサノオは勢いづいた。それでだった。
 慎吾は本能的にだ。そうした。
「神名さん」
「ええ、慎吾君」
「これで決めます」
 こう言ってだった。体勢を崩したオニクスに対してだ。
 剣を一閃させた。頭から一気に両断する。
「何っ、馬鹿な!」
「コクピットに達するぞ!」
「死ぬぞ!」
 これにはロンド=ベルの面々も驚いた。
「慎吾、何を考えてるんだ!」
「神名も!」
「いえ、大丈夫です」
「いけます」
 しかし二人はこう言うのだった。
「これで!」
「止めます!」
 そしてであった。そのコクピットの手前で剣を止めたのだった。
 オニクスは動けなくなった。その時だった。
 宙が前に出た。無論鋼鉄ジーグになっている。
「宙さん!」
「ああ、ミッチー!」
 美和に対しても応える。
「ここは任せろ!」
「ええ、見事果たして」
 これが美和の言葉だった。
「そうしてね」
「安心しろ、俺はサイボーグだ」
 宙は己のこのことを言った。
「戦う為に生きている。しかしだ」
「しかし?」
「それは人を助け世界を守る為の戦いだ!」
 この言葉と共にであった。一気に突っ込んでだ。
 オニクスのそのコクピットのところに来てだ。一気にこじ開けた。
「よし!」
 パイロットスーツの二人を救い出す。そうしてであった。
「これでいい」
「あっ、まさか・・・・・・」
「私達を」
「ああ、そうだ」
 その通りだと返すのだった。
「見た通りだ」
「けれど僕達は」
「オニクスに操られて」
「それがどうしたんだ」
 鋼鉄ジーグの姿での言葉だった。
「もう御前達はオニクスから離れたんだ」
「ですがそれでも」
「私達は」
「いえ、違います」
「そうよ。違うのよ」
 二人にだ。慎吾と神名が言う。
「過ちを犯してもこれからです」
「これから償えばいいから」
「そう、なんだ」
「姉さん、これからなのね」
「そうよ」
 姉は妹に対して優しく微笑んで述べた。
「その通りよ。だから」
「そうなの」
「話は後だ」
 宙が二人に告げた。
「二人共今は下がるぞ」
「私も行くわ」
 美和もついてであった。そのうえで二人を安全な場所までやる。オニクスのことはこれで終わった。後はその姿がフロンティアにあるだけだ。
「さて、これで」
「そうだな」
 しかしだった。戦いはまだ行われていた。
「あいつだな」
「そろそろ出て来るよな」
「あいつ?」
 アルトは仲間達の言葉に怪訝な顔をした。
「あいつって誰だ?」
「すぐにわかる」
 オズマがいぶかしむ彼に答える。
「御前も知っている奴だ」
「まさか」
 ここで言ったのはミシェルだった。
「あいつかよ」
「そうだな」
 クランも彼のその言葉に頷く。
「予想通りならな」
「ああ、間違いない」
 また言うミシェルだった。
「やっぱりそうなったな」
「うむ」
「あの」
 ルカは二人の話がわからず思わず問い返した。
「さっきから一体何を」
「おい、アルト」
「いいか」
 二人はルカに答える前にアルトに言っていた。
「敵はあの娘じゃない」
「別にいる」
「あの娘じゃない。まさか」
「ああ、そうだ」
「それはわかっておけ」
「そしてだ」
 オズマも彼に言ってきた。
「バジュラでもない」
「えっ、そんな」
 ルカはオズマの今の言葉に驚きの声をあげた。
「そんな筈がありません」
「説明が必要だな」
「はい、御願いします」
「まずだ」
 オズマは一呼吸置いてから述べはじめた。
「グレイス=オコーナーだ」
「あの人が」
「今からそっちのバルキリーのコンピューターにデータを送る」
 その方が話が早いからだった。
「それを見るんだ」
「は、はい」
「アルト、御前にもだ」
 彼にもであった。
「今から送るぞ」
「わかりました」
「ミシェル、クラン」
 二人にも声をかけた。
「御前達はもうわかっていたようだな」
「はい、ある程度はですけれど」
「調べていました」
 こう返す二人だった。
「けれどそのデータを」
「見せてくれますか」
「わかった」
 オズマは二人に対しても答えた。既にバジュラの大軍は彼等の前に展開している。
 それを見据えながらだ。彼等はまずは送られたそのデータを見た。そこには。
「人類を一つに」
「それが目的だったんですか」
「そう、聞こえのいい言葉だな」
 オズマはデータを見て驚愕するアルトとルカに答えた。
「しかし実際はだ」
「そうよ。例えばね」
 ここで話すのはボビーだった。
「いけてる相手を見て素敵って思うわよね」
「まあ大尉の場合はな」
「男性ですけれどね」
「そうよ。あたしの場合はね」
 ボビーはくねっとした動作でその通りだと答える。
「その通りよ。けれどね」
「ええ、けれど」
「そこに、ですよね」
「それを他人にわかられるのよ。それって嫌でしょ」
「バジュラの習性を利用して」
「そうしてですからね」
 二人もその顔を曇らせて話す。
「それは即ちだ」
「一人の人間の思うがままになるってことですよね」
「そうよ」
 キャサリンも言う。
「彼女が目指しているものはそれよ」
「グレイス=オコーナー」
「そんなことを考えていたんですか」
「バジュラは彼女に利用されているだけだ」
 ジェフリーも言ってきた。
「全てはだ」
「あの女の思惑だったのか」
「人類を支配する為の」
「そうだ。だからだ」
 巨大なランカの幻影が彼等の前に出て来た。
「あのランカもだ」
「俺達の敵じゃない」
「そうなんですね」
「何度も言うぞ」
 オズマの言葉は強い。
「バジュラは本当の敵じゃない」
「ええ」
「むしろそれは」
「バジュラの女王と融合し全人類を己の手中に収めようとする女」
 その女こそがだった。
「グレイス=オコーナーだ」
「あの女、許せねえ」
「そうですね」
 アルトもルカも明らかな怒りを見せていた。
「出て来い、そしてだ!」
「ここで倒してしまいましょう」
「いや、待て」
 だがここで彼等に声をかける男がいた。
「倒さなければならないのは確かだ」
「あんたは誰なんだ?」
 アルトはその男に問うた。
「ギャラクシーの人間だよな」
「そうだ。俺はキリコ=キューピー」
 こう名乗る彼だった。
「スコープドッグのパイロットだ」
「あの伝説の異能力者か」
「まだ生きていたのか」
 ミシェルとクランは彼の姿を見て声をあげた。
「あんたも加わったんだな」
「ロンド=ベルに」
「いや、俺はギャラクシーに留まったままだ」
 そうだというのである。
「まだロンド=ベルにはいない」
「そうなのか」
「しかし私達の仲間だな」
「そうだ」
 その質問には頷いたのだった。
「それは確かだ」
「それでキリコさん」
「貴官は何か知っているのか」
「グレイス=オコーナーは本体を持っている」
 彼が言うのはこのことだった。
「今戦場に出るのは仮の身体なのだ」
「何っ、仮だと!?」
「仮なんですか!?」
「そうだ、仮だ」
 こうアルトとルカに話すのだった。
「仮の身体なのだ」
「じゃあその本体は」
「一体何処に」
「ギャラクシーの何処かにある」
 そうだというのである。
「今俺が探している」
「そうだったのか」
「キリコさんがですか」
「本体を倒さない限りは同じだ」
 キリコは言った。
「あの女は何度でも復活する」
「何度でもか」
「同じになるんですね」
「そうだ、しかしだ」
 オズマがここでまた二人に話す。
「俺達はここでだ」
「グレイス=オコーナーを倒す」
「そうですね」
「あの女はバジュラと融合する」
 そうなるというのである。
「バジュラの女王とだ」
「そして人類の女王になるってことか」
「全てを支配する女王か」
 ミシェルとクランも遂に全てがわかったのだった。
「ぞっとしない話だね」
「全くだ」
「人類の未来の為だ」
 オズマの言葉はここでも強い。
「いいな、行くぞ」
「ええ、それじゃあ」
「今から」
「ランカは敵ではない!」
 オズマはその巨大なランカを見ていた。
「いや、むしろだ」
「そうだ、むしろな!」
「ランカちゃんはな!」
「アルト、あんたが助け出しなさい!」
 ロンド=ベルの仲間達が彼に告げる。
「それが御前のここでの務めだ!」
「わかってるでしょうね!」
「ああ、わかった!」
 アルトも確かな顔で応える。
「それならな!」
「よし、それならだ!」
「僕達も行きます!」
 ミシェルとルカの機体が彼の機体に続く。
「アルト、援護するぜ!」
「それでいいですよね!」
「済まない!」
 アルトも二人のその言葉を受ける。
「それならだ!」
「さて、囚われのお姫様の救出だ」
「今からですよね」
「そういうことだ。いいかアルト」
 オズマも彼に続いていた。
「ランカは御前に任せた」
「少佐・・・・・・」
「あいつはもう俺の手を離れた」
 微笑んでいた。そのコクピットの中で。
「御前の手の中にあるんだ」
「そうだな。それじゃあな」
「もう一度ランカさんを」
「やってやる!」
 また叫ぶアルトだった。
「ランカ、行くぞ!」
「よしっ!俺も行くぜ!」
 バサラもいた。
「俺の歌はな!」
「まさかと思うけれどバジュラにも!?」
「ああ、そうだ!」
 こうミレーヌに言うのである。
「俺の歌は特別だからな」
「一体どんな歌なのよ」
「俺の歌は常識じゃねえ!」
 バサラはまた言った。
「シェリルと一緒にな。あいつ等に俺の歌を聴かせてやるぜ!」
「全く、いつもこうなんだから」
「ああ。しかしだ」
 そのミレーヌにレイが言う。ビヒータも一緒である。
「わかるな」
「どういう訳かね」
「ここはだ。バサラの思うようにだ」
「やるべきよね」
「そして俺達もだ」
 彼等もだというのだ。
「いいな、ミレーヌ」
「ええ、わかったわ」
 何だかんだで笑って返す彼女だった。
「今からね」
「ファイアーボンバーのライブだ!」
 二人で言う。
「いいな、バサラ!」
「あたしも行くわよ!」
「ああ、来い!」
 バサラもその二人に告げる。
「バジュラにもランカにもだ!」
「ええ!」
「俺達の歌をな!」
「聴かせてやるぜ!!」
「さて、あの女はだ」
 ここでレイが言う。
「バジュラのクイーンと融合するな」
「そうですね」
 エキセドルが彼の言葉に応える。
「バジュラはクイーンを中枢としています」
「つまりクイーンと融合すればか」
「バジュラを操れます。そして」
 さらにであった。
「人間もまた。全ての人間を」
「ふざけた話だ」
 オズマがここまで聞いて顔を顰めさせた。
「全くな」
「その通りです。ですが」
「ああ、それは俺達が止める」
 こういうことだった。
「あいつを倒してだ」
「本体は俺が探し出す」
 キリコも言ってきた。
「皆少し待っていてくれ」
「いや、待ってくれ」
 だがここでアルトがキリコに言った。
「それぞれが別々に倒すよりもだ」
「それよりもか」
「そうだ、本体とクイーンと融合している身体を同時に倒すんだ」
 そうするというのである。
「そうすればどうだ」
「そうだな。あの女のことだ。融合体だけになってもまだ蘇る可能性がある」
「だからだ。ここは同時にだ」
「わかった」
 キリコが頷いた。
「それではだ」
「そうしてくれるんだな」
「そうする」
 無口だが確かな言葉だった。
「これからな」
「よし、それじゃあだ」
「間も無くあの女が出て来る」
 キリコはまた言った。
「頼んだぞ、アルト」
「ああ、任せてくれ!」
「よし、行くぜ!」
「今から!」
 ミシェルとルカが彼に続く。そうしてであった。
 一直線に進みだ。まずはランカに向かう。
「ランカ!見ていろ!」
「あんたはアルトが救い出してくれるからな」
「絶対にですよ」
「だがその前にだ」
「ああ、あいつだな」
「あの女を」
 こう言って探そうとする。しかしであった。
 三人の前にだ。ブレラが出て来た。
「行かせはしない」
「くっ、御前かよ!」
「そうだ、俺はランカと共にいる」
 こう言ってであった。アルト達の前に来る。
「何があろうともだ」
「それがランカを苦しめることになってもか!」
「ランカは苦しむことはない」
 ブレラはそのこと自体を否定すうr。
「決してだ」
「そんな筈があるか!」
 アルトはそのブレラに言い返す。
「俺は!俺はランカを!」
「そうだ!」
 ここでオズマが追いついてきた。
「他の敵は俺達に任せろ!」
「そうだ!俺達がいるからな!」
「主役はヒロインを助けに行け!」
「ヒーローらしくね!」
 他の仲間達も言ってだった。そしてだ。
 アルトは見た。全てをだ。
「あれは」
「あれは?」
「あれはランカじゃない!」
 そのランカの幻影を見てのアルトの言葉である。
「だからだ。撃ってくれ!」
「よし、それならだ!」
「行きますか!」
 ボビーがジェフリーに対して問う。
「あれを!」
「そうだ。主砲発射用意!」
 それであった。そうしてだ。
 マクロスクウォーターが変形した。そして。
 その主砲をランカの幻影に放つ。するとだ。
 ランカの姿が消えてだった。そこにだ。
「あれは」
「あれはギャラクシーの!?」
「そうだ、かつて廃棄した一部だ」
「それがまだ」
「そうか、そこか」
 それを見てだ。キリコもわかったのだった。
「奴はそこにいるのか」
「キリコさん、じゃあ」
「そっちは御願いします!」
「任せろ」
 こうしてだ。キリコはその中に飛び込んだのだった。
 グレイスもだ。それを見てだった。
「ここで全てを決めるわ」
 身体の至る場所から無数の触手を出してであった。
 それで融合したのだった。
「はじめるわよ」
 何かが出ようとしていた。遂にバジュラとの因果が終わるのであった。


第五十六話   完


                         2010・9・10
 

 

第五十七話 アナタノオト

               第五十七話 アナタノオト
「シェリル!」
「ええ!」
 アルトは今度はシェリルに声をかけていた。
「歌ってくれ!」
「今まで以上になのね」
「そうだ、歌ってくれ!」
 こう言うのだった。
「あいつの為に!」
「ランカちゃんの為に」
「ランカは今助けを求めている」
 ランカの歌もだった。今戦場に聴こえていた。
「だからだ。お前の歌も必要なんだ!」
「わかったわ」
 シェリルもアルトのその言葉に頷く。
「それなら!」
「よし!俺達もだ!」
「ええ!」
「やるぞ!」   
 ファイアーボンバーもだった。戦場で演奏をしていた。
「シェリルとデュエットだ!やるぜ!」
「そうね、最高のコンサートよ!」
 バサラとミレーヌは今バルキリーで背中合わせになった。そうしてギターとベースを演奏させてだった。
 音楽を奏でる。それはだ。
「うっ、これは!?」
 ブレラに異変が起こったのだった。
 そしてだ。彼の目の色が変わった。
「うう、まさか俺は」
 そのまま彼はバルキリーを何処かにやった。そして。
 虚空の中にいるランカのところに来てだった。
「ランカ」
「お兄ちゃん!?」
「ああ、今の歌でだ」
 こう妹に言うのだった。
「奴の束縛から解放された」
「それでなのね」
「そうだ、そしてランカ」
「ええ」
「歌うんだ」
 優しい声での言葉だった。
「御前の歌を」
「ええ、それじゃあ」
 そうしてだった。ランカも今呪縛から解放されたのだった。
 己の歌を歌う。それは。
 シェリルの歌とも合さりだ。全てを変えていった。
「何っ、バジュラが!」
「バジュラ達が戻っていく」
「まさか本当に」
「バジュラ達は敵じゃなくて」
「分かり合える存在だった・・・・・・」
「そうだったの」
 このことを誰もがその身で感じ取った。
「じゃあ俺達の本当の敵は」
「そうね」
「それは」
「そうだ、あの女だ!」
 ジェフリーが言う。
「バジュラの女王と融合しただ。グレイス=オコナーだ!」
「だよな、あいつだけだ!」
「あいつさえ倒せばそれで!」
「この戦いは終わる!」
「これで!」
 全軍でグレイスに向かおうとする。そしてだった。
 戦場にだ。何かが出て来た。それは。
 漆黒で複数の翼を持つ堕天使だった。それが出て来たのだった。
「あれか」
「あれがグレイス=オコナーの」
「あの女の力か」
「そうよ、神の力よ」
 その中にいるグレイスが絶対者の笑みを浮かべて言う。
「私の力なのよ」
「ふざけるな!」
「そうよ!」
 その堕天使にだ。ロンド=ベルの総攻撃が浴びせられた。
「何が神だ!」
「そんな言葉飽きる程聞いてるわよ!」
「そしてな!そういう奴はな!」
「いつもやっつけられているのよ!」
 こう叫んでの総攻撃だった。しかしだ。
 それを全て受けて倒れてもだ。すぐに復活してくるのだった。
「残念ね」
「くそっ、復活かよ!」
「死なないっていうのね!」
「そうよ」
 グレイスの絶対の自信は変わらなかった。
「見ての通りよ」
「やはり融合体と本体を同時に倒さないと」
「駄目なのか」
「さあ、ここで倒れなさい」
 その堕天使の翼が光った。そうしてロンド=ベルを撃つのだった。
 アルトはだ。今心の中で二人と話していた。
 まずは二人がだ。話していた。
「シェリルさん」
「ええ、ランカ」
「来てくれたんですね」
 ランカからだった。
「私の為に」
「そうよ。もう私は長くは生きられないけれど」
「いえ、大丈夫です」」
「気休めはいいわ」
「バジュラは人を殺したりはしません」
「それじゃあ私のこの病気は」
「消えます」
 そうなるというのだ。
「シェリルさんはバジュラをわかってくれましたね」
「ええ」
「そしてバジュラもシェリルさんをわかりました」
「それでなの」
「その病気はお互いを受け入れた時に消えるものなんです」
 それをだ。ランカが話す。
「私も最初はそうでしたから」
「そういえば貴女は先天性の」
「ですが私はあい君と出会えて」
「そうしてなのね」
「はい、それで」
 だからだというのである。
「ですからシェリルさんも」
「そうなのね」
「だから二人で」
 またシェリルを誘う。
「飛びましょう」
「二人で」
「そうだ」
 ここでアルトが出たのだった。
「御前達は俺の翼なんだ」
「翼」
「私達が」
「そうだ、だから二人共」
「一緒に」
「貴方と」
「そうだ、生きよう」
 これがアルトの二人への言葉だった。
「今から」
「ええ、わかったわ」
「私も」
 シェリルもランカも頷いた。
「私達、そうね」
「そうですよね」
 またお互いも見るのだった。
「私は今は貴女がいたからこそ飛べるわ」
「私は貴女がいたから飛べて」
「同じね」
「そうですね」
 お互いを認め合う言葉であった。
「だからここは」
「二人で」
「アルトの翼になりましょう」
「そして」
「ええ、飛ぶわ」
「三人で」
 こう話してだった。アルトに向き直る。そうして。
「アルト」
「アルト君」
「ああ、行く!」
 アルトも意を決した声で返す。そしてだ。
「飛ぶ!これからこの銀河を!」
「ええ、そして歌を!」
「歌を歌って!」
 三人は今その世界に戻った。そうして。 
 アルトは戦場を飛ぶ。その中でだ。
 彼の横にブレラの機体が来た。
「ブレラ・・・・・・」
「ランカの場所はわかっているな」
「ああ」
 彼のその言葉に頷いてだった。
「それはもうな」
「わかった。それならだ」
「あそこだ!」
 ギャラクシーの廃棄されたその残骸の一部だった。
「あそこにだ。ランカはいる!」
「よし、それならだ」
「御前も。ランカを愛しているんだな」
「ランカは俺の妹だ」
 こう答えるブレラだった。
「そして兄の俺から言う」
「何だ?」
「ランカを頼んだ」
 兄としての言葉だった。
「そういうことだ」
「わかった」
「だからだ。絶対に助け出せ」
 また彼に告げた。
「いいな」
「わかっている。ランカ!」
 その残骸に向かってであった。
 そしてそこにまずはビームを放った。それからだ。
 空いたその空間に飛び込む。そこにだった。
 束縛されているランカを見つけ出した。バルキリーのコクピットを飛び出てだ。彼女を救い出したのであった。
「来たぞ、ランカ!」
「アルト君・・・・・・」
「後はわかってるな」
「ええ」
 アルトのその言葉にこくりと頷く。
「それじゃあ」
「皆に聞かせるんだ」
 また言うアルトだった。
「それじゃあな」
「うん、それじゃあ」
「歌うんだ」
「ええ、私歌うわ!」
 ランカの手にはだ。既にマイクがあった。
「この私の歌で!」
「ランカ!」
「シェリルさん!」
 二人も息を合わせる。そして。
「銀河に響いて!」
「私達の歌!」
 今戦場を歌が満たす。それを聞いてだ。
 綾人が話すのであった。
「この歌は」
「どうしたの?」
「全てを変えます」
 こう遥に話すのだ。
「そう、歌は全てを変えます」
「それはこの世界でも同じなのね」
「あらゆる世界がそうです」
「音で、音楽で変わる」
「はい」
 遥の言葉に対してこくりと頷く。
「その通りです」
「そしてその変わった先には」
「僕達の、この世界の人達の世界があります」
「それなら」
「行きましょう、遥さん」
 ラーゼフォンの中から彼女に言う。
「この世界の為に」
「ええ、皆の為に」
 二人も前に出る。グレイスの周りには彼女が生み出した無数のモビルスーツやバルキリーが無人で展開している。他のマシンもだ。
「今そんなものが出てもだ」
「何ともないのね」
「そうだ」
 こう小鳥に答える。宗介だった。
「どうということはない」
「まさかここでドクーガの戦闘機なんてね」
「しかしどうということはない」
「ふむ。かつて使ってきたマシンと戦うとはだ」
「複雑な気持ちだな」
「確かにな」
 カットナル、ケルナグール、それにブンドルも話す。
「しかし戦い方はわかっている」
「それならばだ」
「造作もないこと」
「他にもいるわ」
「あれはキャンベル星の軍のマシンね」
 宗介と小鳥はそうした敵とも戦っていた。
「だが数があるだけだ」
「どうということはないわね」
「周りの敵はどうということもない」
 また言う彼だった。
「しかし」
「しかし?」
「問題は女王だ」
 彼もまたグレイスを見ていた。
「あいつをどうするかだ」
「アルト君、いいわね!」
 小鳥はそのアルトに対して通信を入れた。
「そこのむかつく女王様、やっつけちゃって!」
「ああ、わかってる!」
「そうすればこの戦い、終わるわ」
「そしてだ」
 今度はキリコであった。
「こちらももうすぐだ」
「あっ、キリコさん」
「あの女の本体の場所がわかった」
 そうだというのである。
「今そこに近付いている」
「えっ、そうなんですか」
「ギャラクシーのことなら隅から隅までわかる」
 キリコは冷静に述べる。
「何処までもな」
「凄いですね、それって」
「そしてだ」
 キリコは今ある扉の前にいた。そのうえでまた言う。
「早乙女アルト」
「ああ」
「女王を撃てるか」
「ああ、撃てる」
 アルトもこう答える。
「今すぐにもな」
「アルト君、お腹だよ」
「お腹?」
「そう、お腹よ」 
 ここでランカが言ってきたのだった。
「バジュラはお腹で歌うのよ」
「バジュラも歌うのか」
「そうなの。バジュラは歌でお互いを引き寄せ合って。それで」
「それでか」
「お互いに交わるのよ」
 そうだというのである。
「お互いに遠い星に離れたそれぞれのバジュラ達とね」
「へえ、そういう習性だったんだ」
「成程ね」
「それでなの」
 皆それを聞いて頷くのだった。
「バジュラも生物だったんだ」
「それを考えると」
「それでバジュラはね」
 ランカはそのバジュラの話も続ける。
「私達人間がどういう存在かわからないから」
「それで襲い掛かって来ていた」
「そうだったんだ」
「そう、本当は争いを好まない種族なのよ」
 そうだというのである。
「巣のテリトリーに来たら攻撃するミツバチと同じか」
「そうなるわね」
「それでバジュラのことばわかり私に来てもらって」
 ランカの話は続く。
「それで人間のことを知ったの」
「じゃあ今のバジュラは」
「だからそれで」
「そう、敵じゃないよ」
 現にだった。今彼等は人間とは戦っていない。そうしてであった。
 グレイスに向かっている。今ではだ。
「けれどバジュラのそうしたことを知ったあいつは」
「自分が利用する為に」
「それでバジュラを操って」
「俺達もか」
「そうだったのね」
「そうだ」
 ブレラが彼等のその問いに答える。
「だからあの女は今まで俺達に攻撃を仕掛けてきていた」
「それも含めて許せるか」
 アルトは今そのグレイスが操る堕天使を見据えながら話す。
「こいつだけは」
「戯言を」
 グレイスの怒りの言葉が来た。
「これこそが人類の理想の進化だというのに」
「違う!」
 アルトはグレイスの今の言葉をすぐに否定した。
「それは違う!」
「それが戯言だというのよ」
「御前は自分が銀河を、人間を支配する為にバジュラを利用しようとしているだけだ!」
「まだ言うというのね」
「何度でも言う!」
 そうだというのだ。
「御前はそれだけだ!人間のことは考えていない!」
 そしてさらに言う言葉は。
「自分のことだけだ!」
「くっ、まだ言うのね」
「何度でも言ってやるって言ったな。御前はそれだけだ」
「その言葉、許せないわ」
「それは俺もだ」
 言いながらだ。彼は射程を構えた。バトロイド形態になってだ。
「貴様のその目論見、今ここで潰してやる!」
「人間は一人だ」
 ブレラも言う。
「それは変わらない」
「しかしだ」
 ここでアルトもだった。
「一人だからこそだ」
「そうだ」
「一人だからこそ一人ではいられない」
「他の人間が必要なのだ」
「だからこそだ!」
 今グレイスに対して照準を定めた。
「今ここで貴様を撃つ!」
「くっ・・・・・・」
「覚悟しろ!」
「そこだな」
 キリコもここで扉を開いた。そこにだった。
 グレイスがもう一人いた。堕天使の中にいるもう一人の彼女と同じくである。無数の触手を出してその中で融合しているのであった。
「いたか、やはりな」
「くっ、キリコ=キューピー」
「終わりだ」
 キリコは冷たく彼女に言い放った。
「貴様もここでだ」
「異能力者でもわからなかったのね」
「わかっているからだ」
 これはアルトと同じであった。
「貴様を倒す」
「くっ、そうは・・・・・・」
 その触手をさらに出してキリコを襲おうとする。しかしであった。
 キリコは手に持っているビームガンでその触手を全て撃ち落してしまった。全てだ。
「撃ち落しただと!?」
「無駄だ」
 キリコは淡々とした調子で驚くグレイスに告げた。
「貴様では俺は倒せぬ」
「馬鹿な、私は」
「貴様は女王にはなれない」
 キリコの今度の言葉は冷たいものであった。
「絶対にだ」
「何故そう言えるというの。私は」
「貴様の器はわかっている」
「この私の器を」
「貴様が考えているのは己のことだけだ」
 そこまで見抜いていたのだ。
「そうした人物は人の上には立てはしない」
「くっ、キリコ=キューピー」
「死ぬのだ」
 照準をグレイスの左胸に合わせた。そうして。
「アルト」
「ああ」
 アルトに通信を入れる。彼もそれに返してきた。
「見つけたんだな」
「御前と同じだ」
 こうアルトに言うのであった。
「今から心臓を撃ち抜く」
「そして俺もまた」
「そうだ、行くぞ」
「俺もまた今」
「撃て」
 アルトに告げた。そのうえでトリガーを引いた。
 アルトもだ。今目の前にいるグレイスに対してビームを放ったのだった。
「行けーーーーーーーーーーーーっ!!」
「おのれ、私はまだ」
 しかしだった。グレイスはその最後の瞬間でも諦めてなかった。そのうえで何とか生き残ろうとする。
 だがそれは叶わずだ。本体もバジュラを操っている身体もだ。どちらも射抜かれてしまったのだった。
「終わりだ!」
「これで全てな」
 アルトとキリコが同時に告げた。
「貴様は所詮だ!」
「何もわかっていなかった」
「何故、この私が」
「御前はバジュラを利用しようとしていただけだ」
「己の為だけにな」
「私が。この私が導いてこそ」
 グレイスはその断末魔の中で話した。
「人類は正しい繁栄を迎えるというのに」
「生憎だが人は一人だ」
 その彼女にブレラが告げた。
「そして一人だからこそだ」
「どうだというの、その一人だからこそ」
「その別の人間を愛せるのだ」
「愛、戯言ね」
 グレイスにとってはだった。
「所詮そんなものを信じるから人は」
「御前はその愛に破れたんだ」
 アルトがまた告げた。
「俺達が誰かを想う気持ちにな」
「そんな筈がないわ。私はまだ」
「無駄だ、御前はもう終わりだ!」
 アルトの言葉は叫びになっていた。
「それで立てるとというのならもう一度俺が倒してやる!」
「なら。私は」
 もう一度戦おうとするがそれでもだった。
 動けない。そうして。
 崩れ落ちていく。その彼女にシェリルが告げた。
「グレイス、貴女は」
「シェリル、まさか病気は」
「そうよ、克服できたわ」
 その証拠に毅然として立っている彼女だった。
「私がバジュラを受け入れたことでね」
「そんなこと、有り得る筈が」
「あるわ。貴女は愛を否定したけれど」
「そうよ。そんなものは」
「あるわ。私も、そしてバジュラ達の間にも」
「バジュラにも・・・・・・」
「それがわかったから私は病を克服できた」
 そうだというのである。
「そういうことよ」
「くっ、神に見限られても生きているなんて」
「貴女は神じゃないわ」
 そのシェリルがまた告げた。
「只の人よ」
「この私を。そう言うとは」
「貴女に見出されたことは感謝するわ」
 それはだと返す。
「だから」
「だから・・・・・・」
「さようなら」
 こう告げてだ。シェリルの言葉は終わった。
 その言葉を受けたグレイスは炎の中に包まれた。その最後の言葉は。
「私は。私こそがこの宇宙を・・・・・・」
 その言葉と共に消えたのだった。後には何も残らなかった。
 バジュラは人類と和解し彼等の周りを舞う。その中でだ。
 フロンティアとギャラクシーの市民達はその惑星に入ってだ。入植することになった。そしてだ。
「レオン=三島は自害したか」
「ああ、さっきな」
「自分でケリをつけたらしい」 
 レオンの死のことがロンド=ベルにも伝わっていた。
「それじゃあ葬儀か」
「嫌な奴だけれど」
「死んだか」
「そうだよな」
 死んでしまえばだった。そこには名残惜しさもあったのだった。
 国家元首はギャラクシーの大統領が務めることになった。そうしてだ。
「えっ、キリコあんたも」
「俺達と一緒にか?」
「ロンド=ベルに来るの」
「そうなんだ」
「そうだ」
 その通りだと返すキリコだった。
「それは駄目か」
「駄目じゃないけれど」
「それでも」
「いいんですか?」
 皆そのキリコを見て驚いていた。
「ギャラクシーに留まらずに」
「この星に残られないんですか」
「どうして」
「この星の護りは既にある」 
 キリコは驚く彼等にこう返すのだった。
「フロンティアの戦力とバジュラがいる」
「いえ、そうじゃなくて」
「あの、ですから」
「俺達とって」
「この星に残らないで」
「構わない」
 その問いにも素っ気無く答えたのだった。
「また戻って来ることはできる」
「だからなんですか」
「それで」
「それよりもだ。ソール十一遊星主のことだ」
 彼が言うのはこのことだった。
「それを放っては置けない。俺も行かせてもらう」
「異能力者キリコ=キューピーも参戦か」
「ああ、そうだな」
「凄いことになったね」
 キリコのその申し出を受け入れての言葉だった。
「それじゃあ宜しく御願いします」
「俺達と一緒に」
「戦いましょう」
「ああ」
 こうしてキリコはロンド=ベルに加わった。そうしてであった。
 シェリルとランカもだ。こう言うのだった。
「あの、よかったらシティ7に」
「一緒に行っていいかしら」
「えっ、御二人もですか!?」
「いいんですか!?」
「この星に留まらなくて」
「ええ、いいのよ」
「私達も決めたんです」
 こうロンド=ベルの面々に返す二人だった。
 そしてだ。二人はさらに話すのだった。
「私達の歌で銀河を平和にしたいの」
「バサラさんみたいに」
「そうか、それならだ」
 バサラは二人の言葉を聞いて満面の笑顔になった。
「俺は賛成だぜ」
「そうだよな。そこまで言うんならな」
「二人も歓迎しようぜ」
「ええ、そうね」
「それだったらね」
 二人もロンド=ベルに受け入れられた。そしてだった。
 アルトはだ。こう言うのだった。
「そうか」
「そうかってよ」
「あの、それだけですか?」
 ミシェルとルカがそのアルトに突っ込みを入れた。
「二人共。わかるだろ」
「先輩を」
「わかってるさ。わかってるからなんだよ」
「わかってるから」
「それで」
「今は何も言わない、いや言えない」
 アルトは真剣そのものの顔で言った。
「しかしな。それでも二人が決めたことなら」
「受け入れる」
「そうなんですね」
「そうする。そして最後まで二人と一緒にいる」
 そうするというのである。
「選ぶのは。その時が来ればだ」
「そうか、わかった」
「先輩、それなら僕達は」
 ミシェルとルカはアルトのその言葉を受けて頷いた。
「御前のその考えを尊重するからな」
「それでいいですね」
「悪いな。ところでルカ」
「はい」
 話はルカにも及んだ。
「ナナセちゃんはどうなったんだ」
「目を覚ましました」
 ルカの顔が急に晴れやかになる。まるで雨が止んだかの様に。
「それで彼女もですね」
「あの娘も?」
「僕達に同行してくれるそうです」
「へえ、そうなのか」
「そりゃよかったな」
「はい、本当に」
 満面の笑顔でアルトとミシェルに話す。
「マクロスクウォーターのオペレーターの一人になりました」
「それはいいな」
「そうだな」
 アルトとミシェルはそのことはよしとした。しかしであった。
「声。混乱しそうだな」
「もっとな」
 このことを話すのだった。
「俺はいないけれどな」
「俺とティエリアよく間違える奴いるしな」
「そういえば僕も斗牙君と」
 この二人には実感としてわかることだった。
「ナナセちゃんの声も多いからな」
「同じ感じの声の人がな」
「例えば私とかですよね」
 ユリカが何処からか出て来た。
「他にもナタルさんにステラちゃんに」
「声の似ている人多過ぎるんだよな」
「ナナセさんとミスマル艦長の場合は」
「けれど嬉しいですね」
 ユリカはこのことを素直に喜んでいた。
「そうした人が来てくれるのは」
「いいよな、それは」
 アルトは何故か嫉妬めいたものすら感じていた。
「俺もそうした相手がいればな」
「まあ気を落とすな」
「悪いですけれどそれしか言えません」
 ミシェルとルカには余裕があった。
「そのうちな」
「先輩にも」
「いるか?いればいいんだがな」
 アルトは今度は苦い顔になっていた。
「本当にな」
「まあとにかくな」
「行きましょう」
 こう話してだった。彼等は旅を再会するのだった。その目指す先はだ。
「さて、次は」
「ああ、そうだな」
「いよいよ」
「三連惑星だ」
 そこであった。
「その途中にも色々あるだろうけれどな」
「それでもな」
「いよいよだよな」
「ああ」
「まずは何が出て来るかな」
「さてな」
 そう考えてもであった。
 具体的にはといっても。やはり多過ぎた。
「宇宙怪獣か?」
「それともプロトデビルンか」
「何だろうな」
「こういう連中はいつも出て来るからな」
「来るなって言われてもね」
 いささか自分達の都合で話していた。
「その連中がな」
「それにまだポセイダルだったか?」
「ああ、バルマーの」
「あの連中もいたよな」
「ああ」
 彼等のことも話される。
「敵は多いよな」
「相変わらずな」
「けれどどの敵が出て来てもな」
「戦いしかないしな」
「結局はね」
 これが結論であった。
「それじゃあまずは」
「三連惑星にまで」
「向かうか」
「よしっ」
「今からね」  
 こう話してだった。彼等は再び戦場に向かうのだった。そして次の戦場ではだ。再び激しい戦いが待っていたのだった。だがそれでも向かう彼等だった。
 

第五十七話   完


                        2010・9・14 

 

第五十八話 見つかりし巫女

               第五十八話 見つかりし巫女
 銀河を進むロンド=ベルの中でだ。またあの話が起こっていた。
「えっ、また?」
「またシティ7にいたの」
「その二人」
「ああ、間違いないぜ」
 トウマがこう皆に話すのだった。
「実際に見たからな」
「それでなの」
「それでいたっていうの」
「その二人」
「やっぱりあの屋敷にいたぜ」
 トウマは皆に話す。
「シティ7の外れにあるあそこにな」
「おかしいですね」
 それを聞いたエキセドルが話す。
「シティ7の市民は完全に把握されています」
「そうよね」
「もうそれはね」
「把握しやすいし」
 皆この事情もわかっていた。
「何しろ宇宙の外には出られないしね」
「シティっていっても島に似てる感じだし」
「それだからね」
「やっぱりね」
 こうした事情からだった。シティ7の人口統計や誰がいるかの把握は非常に容易なのである。
 それでだ。それがあらためてわからないのだった。
「それで何でかしら」
「あそこに二人がいるって」
「有り得ないよね」
「そうだよな」
「元々はです」 
 ここでさらに話すエキセドルだった。
「あの屋敷は市長の官邸になる筈でした」
「シティ7のですよね」
「そうですよね」
「その通りです。しかしです」
 エキセドルはここでまた言った。
「今シティ7に市長はいませんので」
「そういえばエキセドルさんが?」
「エキセドルの兼任?」
「実はそうなっています」
 そうだというのである。
「私は軍属なので市長にはなれないのですが」
「それでもですか」
「今は」
「出航の時からそうした余裕がなく」
 シティ7の複雑な事情も話される。
「そうしてです」
「ううん、シティ7も大変ですね」
「全くですね」
「それで官邸は空いたままだったのです」
 話が屋敷のそれに戻る。
「そうした事情だったのです」
「成程ね」
「そうだったんですね」
「じゃあそこに今いるのって」
「一体誰かな」
「浮浪者とか?」
 こう言ったのはルナマリアだった。
「そうした人?」
「いえ、ですからそれはありません」
 エキセドルがそれを否定した。
「浮浪者ということはです」
「シティ7の人のことは全てわかっているからですか」
「そうです。シティ7には今のところ浮浪者はいません」
 その通りだというのである。
「ですからそれは」
「じゃあ誰かな」
「不良が居場所にしてるとか?」
「あっ、それ有り得るよな」
「確かにね」
 皆次に考えたのはこのケースだった。
「それって問題だよな」
「そこで何やってるかわからないし」
「殺人とかあったらやばいぜ」
「そうよね」 
 皆こう考えてだした。そうしてだ。
 皆で話してだ。あることを決めた。
「お屋敷の中に入るか」
「そうだよな。それで誰かいるか確かめて」
「若し不良とかがいて悪さをしていたら」
「その時は」
 話が物騒な方向にも向かう。
「容赦なく懲らしめてやらないとな」
「そうだよな」
 こう話してだった。彼等は人選から屋敷に向かった。その選ばれたメンバーはだ。
「俺か」
「私なのね」
 まずはトウマとミナキだった。
「何かそんな予感はしてたけれどな」
「私は全然だったけれど」
 二人の予感はここでは全く違っていた。
「それでもな」
「そうよね」
「決まったからにはな」
「やらせてもらいましょう、トウマ」
 ミナキから言ってだった。その他にはだ。
「行くか」
「ああ、そうだな」
「いざな」
 ヒイロにデュオ、ウーヒェイが揃って話す。
「何がいるかわからない」
「用心しねえとな」
「その通りだ」
 そしてだ。この三人の他にはだ。
 トロワとカトルもいる。トロワがそのカトルに対して問う。
「ところでだ」
「何かあるの?」
「今回はマグアナック隊は来ないのだな」
 トロワが問うのはこのことだった。128
「今は」
「ああ、来てくれるよ」
 ところがカトルはにこりと笑って言うのであった。
「ちゃんとね」
「どうしてだ」
「僕が呼べばそれでね」
 来るというのである。
「ちゃんと皆来てくれるよ」
「そうか」
「いや、そうかって問題じゃないだろ」
「そうよ、何よそれ」
 ラウルとフィオナもいた。
「前から不思議に思ってたけれどな」
「マグアナック隊っていつもいきなり出て来るからね」
「あれいつも何処にいるんだ?」
「そうそう。いきなりだし」
「あれっ、いつもダイダロスにいますけれど」
 その二人にも穏やかに返すカトルだった。
「それはもう御存知ですよね」
「いや、あれもかなり妙だけれどな」
「カトルが呼べばすぐに全機出て来るし」
 これも謎であった。
「だからそれってさ」
「どういう理屈なのよ」
「それに今も皆出て来るんだろ?」
「それもわからないし」
「まあそれを言えばな」
「あんたもね」
 二人は今度はティスに顔を向けた。彼女とラリアー、デスピニスも一緒だった。
「御前のあの巨大なマシンもいきなり出て来るよな」
「呼べばね」
「あれは別の世界から来てるのよ」
 こう説明するティスだった。
「これでわかるでしょ」
「ああ、それでか」
「それでなのね」
 ラウルとフィオナもそれに頷くのだった。
「あのでかいマシンはそれか」
「成程ね」
「あたしの場合はそれで説明がつくでしょ」
「そうだね」
「私もわかったわ」
 ラリアーとデスピニスも彼女のその説明に頷くのだった。
 しかしだ。ティスもまた言うのだった。
「それでカトルだけれど」
「ですから皆待機してくれているから」
「それで説明がつかないのよ」
 こうカトルに返す。
「どう考えてもね」
「そうなのかな」
「一人や二人じゃないじゃない」
 ティスはこのことを指摘した。
「四十人よね」
「うん、そうだよ」
「男四十匹マグアナック隊って自称してるけれど」
 マグアナック隊からの言葉だ。
「それでも。多いわよね」
「うん、一個小隊だね」
「そうよね」
 ラリアーとデスピニスも話す。
「それを考えたらね」
「やっぱり。無理があるわ」
「世の中ってのは色々あるけれど」
「それでもね」
 また話すラウルとフィオナだった。
「この話は謎だよな」
「それにマグアナック隊の人達って」
 彼等の謎はまだあった。
「撃墜されないよな」
「絶対にね」
「弾にも当たらないだろ」
「常に戦場にいてもね」
 それもあった。
「あれ、どういう現象なんだよ」
「凄い不思議なんだけれど」
「それはですね」
 このことについても説明するカトルだった。
「皆腕がいいから」
「だからそういう問題じゃねえだろ」
「攻撃されてないような気もするし」
 フィオナはこんな疑念も抱いていた。
「どうしてもな。あの人達はな」
「おかしなことだらけよ」
「マイクの兄弟もそうだよな」
「そういえばそうよね」
 トウマとミナキはマイクの兄弟達のことも話す。
「戦場にいてもな」
「攻撃受けないけれど」
「どうしてだろ」
「そうよね」
「一体どうしてかしら」
 こう話していた。不思議なこともあるのだった。
 しかしだ。ここでだった。敵が来たのであった。
「宇宙怪獣か」
「奴等か」
「何か久し振りね」
 宇宙怪獣の反応を見ての言葉だ。
「しかし。あの連中ここにまで出て来るなんて」
「何処にでも出て来るんだな」
「この銀河のあちこちに」
「そういえば」
 ここでタシロが言った。
「前から思っていたのだがな」
「どうかしましたか?」
「いや、宇宙怪獣はいきなり出て来たな」
 それを言うのだった。
「何の前触れもなくだ」
「そういえばそうですね」
 ここで副長も気付いたのだった。
「どんな生物にも進化のルーツはありますが」
「そうだな」
「しかし宇宙怪獣は」
「急に出て来た。しかもだ」
 タシロの宇宙怪獣への指摘は続く。
「数が爆発的に増えているな」
「その生態も異様ですし」
「惑星に巣食いそして餌食としていく」
 その宇宙怪獣の不気味な習性だった。
「こんな生物は他にはいない」
「その通りです」
「そんな奇怪な生物が果たして存在し得るか。いや」
 タシロは言った。
「何故存在しているのだ」
「謎ですね、確かに」
「謎は多いな、宇宙怪獣にも」
「全くですね」
「しかし今は謎は置いておく」
 それは後だというのだった。
「全軍出撃だ」
「了解」
「それでは」
 タシロの言葉を受けてだ。ロンド=ベルは全軍を挙げて出撃したのだった。ライディーンが彼等を見て激しく反応を示すのだった。
「ライディーン、それならだ」
「いい、洸」
 マリがライディーンに乗る洸に対して告げた。
「ゴッドボイスは」
「ああ。最近全然使っていないな」
「あれは使わない方がいいと思うわ」
「そうですね」
 麗がマリの言葉に頷く。
「あの力は。洸さんの寿命を縮めます」
「そうだな。ここぞという時以外にはな」
 神宮寺も言う。
「あれは使うな」
「その方がいいか」
「そうよ。御願いね」
 マリの言葉はかなり切実なものだった。
「私悪い予感がするし」
「そうですね。それにです」
 猿丸もここで話す。
「今はゴッドボイスを使わなくても充分戦えますね」
「それでなのか」
「洸さんも実際にこの長い戦いでゴッドバードはかなり使ってますね」
「ああ」
「しかしゴッドボイスはどうですか?」
「殆ど使っていないな」
 自分でもこのことに気付いた。
「そういうことか」
「はい、そういうことです」
 まさにその通りだというのだった。
「そこに答えがあります」
「しかしその時はか」
「必ず来ます。ですが」
「ですが?」
「おそらくその時はゴッドボイスを使うよりも重大な時です」
 そうだというのである。
「その時になればライディーンが教えてくれるでしょう」
「わかったよ。それじゃあ」
「はい、そういうことで」
 こう話してだった。洸達は敵を待つ。宇宙怪獣達はいつもの大軍でだ。ロンド=ベルに襲い掛かって来た。
「さて、それじゃあな」
「やるか」
「ええ」
「数は」
 マヤがだ。ここで全員に話した。
「二百万です」
「何か相変わらず宇宙怪獣は」
「かなりの数だよな」
「全く」
 完全に慣れた口調だった。そしてだった。
 迫り来る宇宙怪獣達を引きつけてだ。総攻撃を浴びせたのだった。
 それによってまずは勢いを止めた。しかしだった。
 宇宙海獣達は次から次に来る。その勢いは止まらず幾ら倒されてもやって来る。二百万という数を使っての攻撃であった。
 彼等はその宇宙怪獣達と戦う。それに専念していた。
「攻撃は単調ね」
「ええ、そうね」
 カズミはユングのその言葉に頷いた。
「宇宙怪獣らしくね」
「本能だけの攻撃ね」
「そうね。だから楽だけれど」
 ユングはここでこう言った。
 それでだ。ガンバスターは攻撃を仕掛けるのだった。
「お姉様、あの敵ね」
「ええ、あれよ」
 敵の中の合体型を見据えてだった。ノリコはカズミに対して言ったのだった。
「あの敵を倒しましょう」
「それじゃあ仕掛けるわ」
「ノリコ、何をするのかしら」
「これでどうかしら」
 こう言ってだった。バットを出してだ。
「バスターホームランでどう?」
「ええ、そうね」
 ノリコのその言葉に頷く。
「ここはね。それでいきましょう」
「わかったわ、じゃあ!」
 そしてだ。二人で攻撃を放つのだった。
「バスターホームラン!」
「やるわよ!」
 バットから打球を放ってだ。宇宙怪獣を撃つ。それは一撃で宇宙怪獣のその巨大な身体を貫いてだ。葬り去ったのであった。
「よし、やったわ!」
「いえ、まだよ」
 カズミは喜ぶノリコの手綱を握り締めた。
「敵はまだ多いわよ」
「そうね。じゃあ」
「勝って兜の緒を締めろよ」
 この辺りはやはりカズミだった。
「いいわね」
「わかったわ。お姉様」 
 ノリコはカズミの言葉を受けて気を引き締めなおす。そのうえで再び戦いに向かう。しかしだった。彼女達はあくまで宇宙怪獣に専念していた。
 それでだ。後ろには気付いていなかった。彼等がいたことにだ。
「よし、いいな」
「はい」
 ロッサがシャピロの言葉に頷く。
「今こそですね」
「奴等は宇宙怪獣に気を取られている」
「そこを衝けば一気に」
「そうだ、あの少女を奪える」
 こう言うのだった。
「いいな」
「わかりました。それでは」
「行くぞ」
 ロンド=ベルの後方にだ。僅かな数で向かうのだった。
「なっ、ムゲ=ゾルバトス帝国か!?」
「ここで出て来るのか!?」
「くっ、しまった!」
「シャピロ、手前か!」
 忍はダンクーガから叫んだ。
「手前なんだな!」
「藤原か。相変わらずだな」
「手前、性懲りもなく!」
「話は後だ」
 いつも通りの高みに立った言葉だった。
「まずは目的を果たさせてもらう」
「目的を!?」
「そうだ、私が神になる為のな」
「愚かな」
 アランはシャピロのその言葉を一蹴した。
「まだそんなことを言っているのか」
「アラン=イゴールか」
 シャピロは彼も見据えて言う。
「貴様も健在か」
「貴様はまだわかっていないようだな」
 アランはそのシャピロの対して返す。
「自分というものが。いや」
「いや?」
「何もかもわかっていないな」
「戯言を言うものだな」
 シャピロの傲慢はここでも変わらない。
「だが貴様等にはわからないことだ」
「わかりたくもないね」
 今度は沙羅が言った。
「あんたの考えなんてね」
「そうだよ、どうせさ」
「御前は自分のことだけしか考えていない」
 雅人も亮も彼のことはもうわかっていた。
「それしかないんだから」
「聞くまでもない」
「愚か者達にはわからないことだ」
 また言うシャピロだった。
「だが、だ。ロッサよ」
「はい」
「やるのだ」
「わかりました」
「くっ、奴等シティ7に!」
「入ったわ!」
「誰か!」
 何人かが実際に向かおうとする。
「誰かシティ7に!」
「奴等を入れるな!」
「急げ!」
「よし、俺が!」
 最初に動いたのはだ。シンだった。
「俺が行く!いいな!」
「いや、待て」
 しかしだった。ここでテムジンが彼を止めた。
「俺が行く」
「テムジンさん!?」
「俺が行きそのうえで奴等を止める」
 こう言うのだった。
「中に入られるのは間に合わない」
「くっ、それでも中に入ったらな!」
「いや、シン待って」
 キラがシンを止めた。
「君のインパルスデスティニーよりもバーチャロンのテムジンさんの方がいいよ」
「キラ、何でだよ」
「小さいからだよ」
 ここでは大きさが問題だった。
「だからね。それに」
「それに?」
「君、シティの中でも派手に攻撃を仕掛けるよね」
 シンの気性の激しさは戦闘にもはっきりと出ていた。
「そうするよね」
「悪いのかよ、それが」
「それ、シティに影響出るから」
「ちっ、だからかよ」
「僕もね」
 それは自分もなのだった。
「ストライクフリーダムでもね」
「御前のもかよ」
「うん、止めておくよ」
 そうだというのである。
「僕もいざとなったら頭に血が昇るしね」
「仕方ねえな」
「退路を断つべきだね」
 キラはここで冷静に述べた。
「そうしよう」
「あの神様とか言うアホの退路をだな」
「そう。それにしても」
「何だよ、今度は」
「シンも嫌いなんだね」
 こうそのシンに言うキラだった。
「あのシャピロ=キーツは」
「ああ、大嫌いさ」
 その通りだと返すシンだった。
「ああいう自分だけ高みに立った奴はな」
「そういうところシンらしいね」
「ああ、まだカガリの方がましだ」
 そしてこんなことも言った。
「馬鹿でもそういうところは全然ないからな」
「そうだね。ただ」
「ただ。何だよ」
「そのカガリもいるからね」
 こう言うとだった。そのカガリのストライクルージュが暴れていた。
 シンを狙ってだ。撃とうとしていたのだ。
「やっぱりあいつは一度殺す!誰が馬鹿だ!」
「ですからカガリ様!」
「味方撃ったら駄目ですよ」
「そうですよ」
 アサギにマユラ、ジュリが必死にそのカガリを止めている。それを見てだった。
「いつもだな」
「シンもね」
 キラは呆れた声でシンに返した。
「まあとにかく。退路を断ちに行こう」
「ああ、そうだな」
「僕達二人いればあれ位の数だったらね」
「いけるか」
「何とかね」
 いけるというのだった。
「じゃあ行こうか」
「わかった。じゃあな」
「ちょっと待ってよ」
 しかしだった。ここでアカツキに乗るフレイが言ってきた。
「そうしてもらいたいのは山々だけれどね」
「そうはいかないって?」
「こっちも大変なのよ」
 こう二人に言うのだった。
「宇宙怪獣の相手が。わかるでしょ」
「仕方ないね」
「ちっ、じゃあそっちで暴れるか」
「ここはテムジンさんに任せるしかないわ」
 これがフレイの判断だった。
「カガリ、あんたもよ」
「くっ、仕方ないか」
「ええ、じゃあ戻って」
「わかった、それならだ」
 こうしてだった。彼等は前線に向かうのだった。
 そしてだった。そのシティ7の中でだった。
 テムジンはシャピロの戦闘機を追っていた。だが向こうの方が先に行っていた。
「遅いな」
「くっ、間に合わなかったか」
「さて、それではだ」
 ここでだ。シャピロはその戦闘機を止めた。
 そしてだ。その少女を見つけたのだった。
「いたな」
「はい、確かに」
 隣の機体にいるロッサが述べた。
「あの少女ですね」
「そうだ、あれだ」
 見ればだ。そこにいたのは。
「あれがガンエデンの巫女だ」
「貴女は」
「シャピロ=キーツ」
 シャピロはその少女イルイに対して名乗ってみせた。
「神の名だ」
「神の・・・・・・」
「さて、私と共に来るのだ」
 こう言ってだった。戦闘機から波状のビームを放ってだ。イルイを捉えたのだった。
「民間人、いやあれは」
「覚えているな、マシンよ」
「ガンエデンの巫女か」
 テムジンもだ。イルイのことは覚えていた。
「まさかシティ7にいたのか」
「そうだ。御前達はどうやら気付いていなかったようだな」
「地球にいると思っていた」
「だがそれは違っていたのだ」
 そうだというのである。
「そして今私の手にある」
「そうはさせん」
 テムジンは前に出ようとする。しかしだった。
 その前にだ。ムゲ帝国軍の戦闘機達が来たのだった。
「むっ!?これは」
「この者達と戦うのだな」
 シャピロはこう言ってロッサと共にフロンティアを立ち去ろうとする。
「わかったな」
「逃げるつもりか。部下を盾にして」
「人が神を守るのは当然のことだ」
 シャピロは臆面もなくこう返した。
「だからだ」
「神か」
 テムジンはシャピロのその言葉に対して反応を見せた。
「神だというのか。貴様が」
「その通りだ。私は神だ」
 テムジンに対しても言うのだった。
「この私がだ」
「貴様は神ではない」
 テムジンもまた同じ考えだった。
「所詮は人だ。それに過ぎない」
「何度も言うが愚か者にはわからんことだ」
 やはりわかっていないのだった。
「所詮はな」
「そう言うと思っていた。それではだ」
「むっ!?」
「この程度の数で止められるとは思わないことだ」
 戦闘機達を倒していく。それでシャピロを追おうとする。
 しかしだ。テムジン一人で相手をするには数が多過ぎた。倒すのには問題はないがそれでもだ。時間がかかってしまっていたのだ。
 それでだ。シャピロとロッサはその間に撤退を終えたのだった。
「これでよし」
「ではシャピロ様」
「うむ、去るとしよう」
「わかりました」
 シャピロは悠然としてロンド=ベルから離れたのであった。
 そしてだ。その頃にはだ。
 ロンド=ベルと宇宙怪獣との戦いも終わっていた。ロンド=ベルの勝利に終わっていた。
 しかしであった。彼等はテムジンからだ。その話を聞いたのだった。
「えっ、イルイちゃんが!?」
「シティ7にいたって?」
「何か見たって人はいたけれど」
「本当に」
「そうだ、いた」
 テムジンはこう彼等に述べた。
「そしてだ。俺は」
「いや、それは違うだろ」
「そうよ。イルイちゃんはいるなんてね」
「あくまで見間違いだって思ったし」
「だから」
 皆こう言ってテムジンは責めなかった。それよりもだった。
 問題はだ。イルイのことだった。
「どうする?それで」
「シャピロの野郎にさらわれるなんてな」
「ああ、これはまずいよな」
「確かに」
 このことを危惧せずにはいられなかった。そしてだった。
「よし、こうなればだ」
「はい」
「救出ですね」
 皆葉月博士の言葉に応える。
「それならこれから」
「あいつを引き摺り出してですね」
「そうして」
「いや、引き摺りだすことはない」
 博士はそれはいいというのだった。
「向こうから来るからだ」
「あっ、確かに」
「あいつはプライド高いですからね」
「いつも自分から出向いてきますし」
「それなら」 
 彼等はこれまでの幾度の戦いでだ。シャピロのことをわかっていた。そのプライドに凝り固まった性格のことをよくわかっていたのである。
 それならばだ。彼等は言った。
「よし、それならここは」
「待ちますか」
「ちょっとの間だけ」
「そしてその時だな」
 忍がここで言った。
「あの野郎、今度こそ叩き潰してやるぜ」
「そうだ、藤原」
 博士はその忍を見て述べた。
「あの男は君が倒すのだ」
「博士、それでいいんだな」
「君しかいない」
 忍しかというのである。
「それはだ」
「当たり前だ、あいつだけはな」
 忍の敵愾心が極限まであがっていた。
「このダンクーガの、俺達の力で叩き潰してやるぜ!」
「そろそろあいつとも決着を付けるべきだしな」
 カイがここで言った。
「あれだろ?バルマー戦役の頃からの因縁だったよな」
「ええ、そうなんですよ」
「実は」
 カミーユとカツがそうだと述べる。
「何度か死んだと思ったんですが」
「その都度ああして」
「懲りない野郎だな。しかしな」
 それでもだと。カイは話した。
「あいつもそろそろいいだろ」
「年貢の納め時ってことだね」
「もういいだろ」
 カイはハヤトにも言葉を返した。
「あいつの話をこれ以上聞くのもな」
「そうだね。もう聞き飽きたしね」
「神だのそんなのどうでもいいんだよ」
 カイの口調は忌々しげなものだった。
「もうな」
「その通りだな」
 リュウもカイのその話に頷いた。
「ああした奴が成功した試しはないからな」
「今まで何度もそういう奴が失敗してきたのは見てきたしな」
 スレッガーも言う。
「あいつもそのパターンを辿ってもらうか」
「それならですね」
 セイラはここでも真面目だった。
「今から行きましょう」
「ふむ。アルティシアもやる気だな」
 クワトロはそんな妹を見てぽつりと呟いた。
「戦うべき時だとわかっているからだな」
「そうだな」
 アムロがクワトロのその言葉に頷いてみせた。
「そしてそれはだ」
「私も同じか」
「そういうことだと思うが?」
 悪戯っぽく笑って彼に問い返した。
「違うか?それは」
「いや」
「いや、か」
「おそらくはその通りだ」
 口元とサングラスの奥の目を笑わせての言葉だった。
「やはり私もそうだ」
「ならこれから行くか」
「あの少女を救いにだな」
「イルイちゃんをな」
「人間は。全ての人類はだが」
「ああ」
「やはり狭い中に生きているのだ」
 こう言うクワトロだった。
「だから己が神だ、万能だと思い違いもする」
「そのシャピロ=キーツのようにな」
「しかし違うのだ」
「人は人だな」
「そして神は絶対者でもない」
 それも否定するのだった。
「それは全く違うものだ」
「しかしあいつはそれがわかっていないな」
「ああ、全くな」
 そうだというのだ。
「わかっていないからこそだ」
「ならだ。シャア」
「うむ」
 その呼び名にも笑顔で応えた。
「あの男にそれを見せることとしよう」
「教えるとは言わないんだな」
「上から目線はもう卒業した」
 これが今のクワトロだった。
「己だけ高みに立ってもだ」
「どうにもならないか」
「所詮それは自己満足でしかない」
 そうだというのである。
「何の進歩もないものだ」
「しかし今はか」
「そうだ。私もまた同じだ」
 こう言うのであった。
「同じ人間なのだからな」
「では同じ人間としてだ」
「戦おう、これからもな」
 こう話してであった。彼等は戦場に向かうのであった。
 銀河は今は穏やかではなかった。そしてさらなる戦乱がその銀河を覆おうとしていた。戦いは何時終わるともなく続いていくのだった。


第五十八話   完


                      2010・9・17 

 

第五十九話 囚われの心、叫ぶ時

              第五十九話 囚われの心、叫ぶ時
 シャピロはイルイを捕らえてだ。そのうえで、であった。
「それではだ」
「これからどうされますか」
「今はまだ手元に置いておくだけだ」
 こうロッサに話す。
「それだけだ」
「では時が来れば」
「そうだ、使う」
「わかりました。しかし」
「しかし。何だ」
「いえ、まだ子供です」
 ロッサはイルイのことを言い顔を曇らせるのだった。
「まだ。子供ですね」
「外見はな」
 だがシャピロはこうロッサに返した。
「しかし実はだ」
「違うと仰るのですね」
「そうだ。我等より遥かに長く。いや」
「いや?」
「文明ができる遥か前から生きているようだ」
 そうだというのである。
「どうやらな」
「そうなのですか」
「そうだ。これでわかったな」
 あらためてロッサに告げる。
「あの少女を子供と思わないことだ」
「左様ですか」
「それにだ」
 シャピロはここでさらに話した。
「例え子供であってもだ」
「子供であっても」
「それが何の理由になる」
 こう言うのであった。
「私が神になる為にだ。それがなにになるのだ」
「子供であろうともですか」
「人は神の為にあるものだ」
 シャピロの考えがそのまま出ている言葉だった。
「人はだ。だからだ」
「誰であろうともですか」
「使える者は使う」
 そうだというのである。
「それだけだ」
「そう仰るのですか」
「それだけだ。そしてだ」
「はい、そして」
「ロンド=ベルに兵を向けるぞ」
 今度は戦争のことだった。
「いいな」
「神になられる為の最大の障壁をですね」
「取り除いておく。いいな」
「わかりました」
 ロッサは頷きはした。だがその心の中にだ。シャピロに対する疑念が芽生えていた。そしてそれは消えることがないものだった。
 ロンド=ベルは三連惑星に向かい続けていた。その中でだ。
 ふとだ。レイが言った。
「シャピロ=キーツか」
「うん、彼だよ」
 マサトが彼に答える。
「神になろうとしている彼だよ」
「その彼か」
「うん、そうなんだ」
 その通りだというマサトだった。
「神になろうとしてね」
「時としてそういう者はいるな」
「そうだね。ただ」
「ただ?」
「自分で自分のことはわかりにくいものだよ」
 マサトはここでこう話した。
「実際にはね」
「そうだな。それはその通りだ」
 レイもこのことは頷けた。
「ラウもそうだった」
「ラウ=ル=クルーゼだね」
「ラウは自分が見えず他の誰かを憎むしかできなかった」
 それがクルーゼだった。
「けれどそれは」
「何にもならなかったね」
「ただ。ラウはこうも思っていたと思う」
「こうとは?」
「俺には自分のようになるなと」
 そうだというのである。
「思っていた筈だ」
「破滅するなということだね」
「己が見えないと時に破滅する」
 レイは言った。
「それが世界や他の者の災厄となる場合は」
「そしてシャピロ=キーツも」
「間違いない」
 レイの言葉は確信だった。
「間も無く破滅する」
「そうなるね、いよいよ」
「ラウにとって死は救いでもあった」
 レイはまたクルーゼのことを話した。
「その証拠にラウの最期の顔は」
「覚えているんだね」
「わかる。もう一人の俺だったから」
 それでだというのだ。
「よくわかる」
「そうだったんだ」
「ラウが今までした中で最も安らかな顔だった」
「そして旅立てた」
「しかしあの男は」
「そうはならないね」
「なる筈がない」
 レイはシャピロについては突き放していた。冷たくすらある。
「待っているのは裏切りだけだ」
「裏切り?」
「裏切りって?」
 ここで他の面々がレイに問う。
「何に裏切られるの?」
「一体どういうことだよ、それって」
「まずは人だ」
 レイは最初はそれだというのだ。
「そして夢にだ」
「夢にもって」
「やっぱり神にはなれないか」
「そうだと思ったけれど」
「自分自身にもだ」
 レイはまた述べた。
「全てに裏切られ死んでいく」
「惨めだな、そりゃまた」
 バサラがここまで聞いて話した。
「全てに裏切られるなんてな」
しかし自業自得だ」
 レイの言葉はやはり冷たい。
「あの男はそれからそうしたことを味わうことになる」
「へっ、そんなのどうでもいいぜ」
 忍がここで言った。
「シャピロは俺が潰す」
「忍さんがか」
「それじゃあ」
「ここは任せますね」
「忍さんに」
「ああ、任せろ」
 忍は強い声で皆に応えた。
「あいつは今度こそ俺が倒す」
「じゃああいつが出て来たらその時は」
「一気に倒すか」
「今度こそな」
「本当に」
 こう話してだった。敵を待つのだった。そしてだ。その次の日だった。
「レーダーに反応です」
「ああ、来たか」
「やっぱりな」
「それで相手は」
「どの軍ですか?」
 皆で報告したミドリに問うた。
「やっぱりあれですか?ムゲ帝国軍ですか?」
「連中か?」
「はい、そうです」
 その通りだった。彼等だった。
「ムゲ帝国軍です。数は五十万です」
「五十万か」
「少ない?」
「そうだよな」
 既に彼等にとっては数はそれだけのものだった。
「どうせそれだけでいいと思ってだろうな」
「傲慢な奴だからな。そうだろうな」
「そうよね。あいつの考えそうなことだし」
「それなら」
 皆で話してだった。そのうえでそのムゲ帝国軍への迎撃に入る。そして彼等の出た方向に向かって布陣するとだ。その彼等が来たのだった。
「さて、ロンド=ベルの諸君」
「ああ、やっぱりな」
「シャピロね」
「本当によそう通りだね」
 シーブックにセシリー、アンナマリーが話す。
「さて、それじゃあ」
「ええ。狙うはね」
「シャピロだけね」
「無駄なことを言う。
 シャピロはそんな彼等の言葉を受け流していた。
「私を倒せる者なぞいはしないのだ」
「だからな、そうした台詞はな」
「もう聞き飽きたっての」
「あんただけで何回言ってるのよ」
「私を他の愚か者達と同じにするか」 
 シャピロの顔に怒りが見えた。
「愚かな」
「キーツ、愚かなのは貴様だ」
 アランが彼に冷たく言い放った。
「何もわかっていないのだからな」
「イゴール、前にも言ったがだ」
「そのことか」
「そうだ、それにだ」
 シャピロはさらに言うのだった。
「私は神になる為の力を手に入れたのだからな」
「やい!そのことだけれどな!」
「そうよ!」
 アラドとゼオラが彼に抗議した。
「イルイちゃんを利用しようなんてな!」
「何を考えてるのよ!子供なのよ!」
「子供であろうともだ」
 シャピロは彼等に対してもその傲慢を見せた。
「私に尽くすのは当然だ」
「何でだよ」
「何でそう言えるのよ」
「私が神だからだ」
 だからだというのである。
「人は神に尽くし全てを捧げるものだからだ」
「くっ、こいつ・・・・・・」
「本当に最低ね」
 この言葉に怒りを覚えたのは二人だけではなかった。
「何処までも自分しかないか」
「そして他人はどうでもいい」
「それが本当によくわかるな」
「全くだな」
 忌々しげな口調でだ。それぞれ話す。
 そしてであった。
「全軍攻撃目標は一つだ!」
「シャピロ=キーツ!覚悟しろ!」
「首を洗ってそこにいろ!」
「いいわね!」
 こう言ってであった。ムゲ帝国軍に突き進む。そうしてであった。
 彼等を次々に薙ぎ倒してだ。一直線に進む。
 その中でだ。ブライトが言った。
「一斉射撃だ!」
「はい!」
「目標は」
「定めるな!」
 こうトーレスとサエグサに言う。
「敵は前にいる。前の敵を倒せ!」
「はい、それでは」
「撃て!」
 そうして前の敵を薙ぎ倒してだ。彼等も進むのだった。
 あの冷静なリーもだ。今は違っていた。
「敵は容赦するな!体当たりも構わん!」
「えっ、艦長」
「今何て」
 ホリスとアカネもこれには唖然となった。
「あの、今のハガネでの体当たりは」
「無理があるわよ」
「無理を承知で言っているのだ」
 やはり普段のリーとは違っていた。
「とにかくだ。シャピロ=キーツをだ」
「倒すんですね」
「このハガネで」
「連邦軍の頃から嫌な男だった」
 リーはシャピロに関する嫌悪感も見せた。
「利己主義的でだ。己しかなかった」
「じゃあ今と全然変わらなねえじゃねえか」
 ハガネのモニターにカズマが出て来て言う。
「それだったらよ」
「それはそうだがだ」
「さらにってんだな」
「昔以上に酷くなっている」
 リーは忌々しげに言い捨てた。
「最早容赦することはない」
「そうか、じゃあ俺があいつを倒してもいいんだな」
「駄目だ」
 リーの返答は一言だった。
「それは駄目だ」
「おい、何でだよ」
「あの男を倒すのは私だからだ」
 だからだというのである。
「あの男、必ず沈める」
「おい、艦長」
 カズマも今のリーにはいささか引いている。
「あんた本当にリー大佐か?」
「そうだがどうした」
「全然言うことが違ってるじゃねえかよ」
 このことを突っ込まずにはいられなかった。
「あの冷静さは何処に行ったんだよ」
「それとこれとは別だ」
 こう言ってであった。ハガネをさらに前にやる。
「行け、後ろを振り向くな!」
「そうでないとな」
 ブレスフィールドは笑っていた。
「面白くはない」
「副長、いいか」
 ブレスフィールドは何時の間にかハガネの副長になっていた。
「シャピロ=キーツには一撃でだ」
「倒すのか」
「ハガネの体当たりでだ」
 またそれだというのだ。
「一気に行くぞ」
「おい、だから体当たりはだな」
「構わん!」
 またカズマに言い返す。
「多少ダメージを受けてもだ。あの男を完全に葬るのだ!」
「よし!そうでないとな!」
 そんなリーを見て熱くなるのはカチーナだった。
「面白くないぜ!」
「そうですね、隊長」
 ラッセルも普段のラッセルではなかった。強気だ。
「ここは派手に攻めないと!」
「前に出て来るなら出て来い!」
 派手に暴れ回り周りの敵を倒しながら叫ぶ。
「そのそばから潰してやるぜ!」
「敵はあそこだ!」
 今度はカイが言う。
「あの戦艦だ!」
「よし、シャピロ!」
「死にやがれ!」
 全軍で突き進む。それを見てだ。
 シャピロはいつもの決断を下したのだった。
「撤退する」
「それでは」
「私以外の軍はここに残れ」
 平然と言い放った。
「そして私の盾となれ」
「で、では我々の撤退は」
「どうなるのでしょうか」
「決まっている。死ぬまで戦うのだ」
 部下達に平気な顔で告げた。
「よいな」
「で、ですがそれでは」
「我々は」
「死ぬのだな」
 何でもないといった口調である。
「そうするのだ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・左様ですか」
「ではだ。私は撤退する」
 こう言って己の乗艦だけを戦場から下がらせるのだった。
 それを見てだ。ロンド=ベルは尚も追いすがろうとする。しかしだった。
「逃がすかよ!」
「くっ、しかし」
「間に合わないか」
「また逃げられるなんて・・・・・・」
「ならそれでいいぜ!」
 マサキが激昂した声をあげた。
「この連中をかわりに倒すだけだ!」
「マサキ、熱くなり過ぎだよ」
 テリウスが呆れながらその彼に言った。
「気持ちはわかるけれど」
「おいテリウス御前もだよ」
「僕も?」
「どんどん撃って敵を倒せよ」
 そうしろというのである。
「御前も戦いには随分慣れてるだろ」
「まあそれはね」
 テリウスも数多くの戦場で戦ってきた。それならだった。
「それでなんだ」
「ああ、じゃあやれ!」
「わかったよ。それじゃあ」
 照準を前にいる一隻の戦艦に合わせてだった。
 そのうえでリニアレールガンを放つ。一撃で戦艦の側面を貫いてだった。真っ二つにしたのだった。
 その他にもだ。足止めをする敵軍を倒してだ。全滅させた。
 しかしであった。残ったのはだ。
「ちっ、シャピロの野郎」
「相変わらず動きが速いな」
「逃げ足だけはね」
「本当にね」
 実に忌々しげに話す。それでもシャピロは戻って来ないのはわかっていた。
 やがて落ち着いてだ。そうしてだった。
「次か」
「そうね」
「次の戦いだな」
「その時に」
「私感じるわ」
 ここでクスハが言った。
「イルイちゃんが」
「ああ、そうだな」
 ブリットが彼女の言葉に頷いた。
「俺達に助けを求めている」
「私達を信じているわ」
 そうだというのだ。
「仲間だから」
「そうだよな。仲間だからな」
「ええ、絶対に助けましょう」
 クスハの言葉が強い。
「次こそは」
「そうだな。それでだけれどな」
「どうしたの?」
 クスハはブリットのその言葉に問い返した。
「何か考えがあるの?」
「ああ。シャピロはああいう性格だよな」
「ええ」
「自分以外の存在を徹底的に馬鹿にしている」
 それこそがシャピロだった。
「それで自分以外の人間のやることは」
「見えないのね」
「そこを衝かないか?」
 これがブリットの提案だった。
「そうすれば若しかして」
「あの男は元々切れ者なんだがな」
 今話したのはテツヤだった。
「それでもな。ああいう性格だからな」
「他人のすることは見ない」
「見ようともしない」
「ああ、そうだ」
 その通りだというのだ。
「そこがあいつの欠点だ。自分では気付いてないがな」
「よし、じゃあそこを衝いて」
「今度こそは」
「イルイちゃんを」
「待ってて」
 クスハの言葉はここでも強かった。
「絶対に助けてあげるから」
「ああ、本当にな」
 ブリットがクスハのその言葉を受けて頷く。彼等は策を考えだしてきていた。
 そうしてである。ハザルはその時。
「ふむ。ムゲ帝国がか」
「・・・・・・・・・」
 エイスが彼の前にいる。
「わかった。ではエイス」
「・・・・・・・・・」
「その時になれば動くぞ」
「動く」
「そうだ、動く」
 こう彼に言うのである。
「あの男に渡していい存在ではない」
「そういうことだよね」
 ここで孫光龍が出て来た。
「やっぱりね。あの娘は欲しいよね」
「孫、何時からいた」
「いやいや、さっきからだよ」
 孫は明るい顔で彼に返す。
「本当だよ、これは」
「ふん、まあいい」
「それでだけれど」
 孫はその明るい調子でハザルに対して言うのだった。
「いいかな」
「何をだ」
「だからだよ。そろそろまた動くんだよね」
「そのつもりだ」
 こう返すハザルだった。
「何か問題があるか」
「ないよ」
「なら何故言う」
「いや、気になってね」
「気になるだと」
「そう、あの少女」
 そのイルイのことだった。
「かなり凄い力を持っているけれどね」
「それはもう知っている」
 ハザルはつまらなさそうに孫に言葉を返した。
「それがどうしたのだ」
「いやいや、あまりにも凄い力はね」
「どうだというのだ?」
「使いこなせない場合だってあるかもね」
 何気なくを装って言ったのであった。
「そう、例えば」
「例えば、か」
「子供に武器は扱えないよね」
 孫の顔が一瞬だが変わった。ドス黒くなった。
「過ぎた武器はね」
「・・・・・・孫、貴様」
 ハザルの顔にも怒気が浮かんだ。
「何が言いたい」
「いやいや、怒る必要はないよ」
「俺を愚弄する気か」
 こう言って怒りを見せるハザルだった。
「そうなら容赦はしないぞ」
「安心してくれ。それはないから」
「ならいいがな」
「まあとにかくね」
 孫はあらためてハザルに言う。
「その少女を手に入れてからは」
「ああ。父上にお渡しする」
「宰相であるシヴァー=ゴッツォにね」
「そうだ。俺はその為に今動いているからだ」
 そうだというのである。
「だからこそだ」
「忠誠心ってやつかい?」
「違うな親子だからだ」
「親子だからかい」
「父上は俺の唯一の肉親だ」
 こう孫に話す。
「そしてだ」
「うん、そして」
「俺がこの世で唯一敬愛する方でもあるのだ」
「その父上の為にってことか」
「その通りだ。俺はあの少女を手に入れる」
 そうしてであった。
「そして父上こそがだ。この銀河を統一されるのだ」
「成程ね」
「その為にだ」
 ハザルの言葉は続く。
「あの少女は必要なのだ」
「その力がね」
「サイコドライバー」
 ハザルはまた言った。
「その鍵がな」
「よくわかったよ、じゃあ僕も」
「御前も働くのだ」
 命令であった。
「いいな」
「仰せのままに」
 こうハザルに返す。しかしであった。
 最後にだ。一礼する時に邪な笑みを浮かべてみせた。それを隠して今は消えるのであった。


第五十九話   完


                     2010・9・19  

 

第六十話 イルイの言葉

          第六十話 イルイの言葉
 ロンド=ベルは航路はそのままだった。しかしだ。
「何時来てもいいようにしないとね」
「ああ、そうだな」
「シャピロのことだ、また来るからな」
「だよな、いきなり来るぜ」
「いつも通りな」
 シャピロのことがよくわかっていた。それでだった。
 彼等は警戒を怠らない。無論他の敵にもだ。
「宇宙怪獣とかプロトデビルンは?」
「今のところ気配はないわ」
 サリーが答える。
「そういった相手はね」
「そうか。暫くはシャピロ以外は敵は来ないか」
「そうね」
「最近バッフ=クランも大人しいし」
「ああ、あの連中もな」
 ここでバッフ=クラン軍のことも思い出すのだった。
「そういえばあの連中ってな」
「ああ、かなり理性的だよな」
「確かに」
「我々はだ」
 そのバッフ=クラン人のギジェが話す。
「好戦的ではないつもりだ」
「そうだな」
 コスモもそのことは認めた。
「カララさんもそうだがバッフ=クラン人は決して好戦的じゃないな」
「まずは話し合いが第一だ」
 ギジェはまた言った。
「それで話が済むならそれに越したことはない」
「そうですよね、やっぱり」
「まずは話し合って」
「それでですよね」
 皆もギジェのその言葉に頷くのだった。
「けれど何で戦争になったんだろう」
「バッフ=クラン軍ともそこまで」
「白旗のせいで」
「我々も知らなかった」
 ギジェの顔が苦いものになった。
「まさか白旗がそちらで話し合いを表すものだとはな」
「それはこちらもだ」
 ベスが言った。
「まさかな。白旗が相手を侮辱するものだとはな」
「文化の違いね」
 カララはそれだというのだった。
「そのせいね」
「それのせいで戦争になった」
「因果なことだよな」
「そうよね」
 皆このことについて考えてだ。それぞれ深刻な顔になった。
「話し合いで済んだ話が」
「ここまでこじれて」
「お互いに多くの血を流して」
「それで得たものは」
「何もないし」
「それはこれからではないだろうか」
 ギジェはここでまた言った。
「我々は今確かに戦っている」
「ああ」
「それはな」
 否定できない事実だった。
「しかしそれでもだよな」
「また話し合いができるよな」
「時が来れば」
「必ずそうなる。そして」
 ギジェがまた話す。
「それはイデの意志ではないだろうか」
「イデの?」
「イデオンの?」
「そんな気がする」
 ギジェは考える顔で述べた。
「あくまで私の考えだがな」
「まさかと思うけれど」
「そうだよな」
「イデはそういうことを考えているのかな」
「そこまで」
「いえ、それは有り得るわ」
 カララが話す。
「イデは人間と同じ考えを持っているようだから」
「じゃああれか」
 モエラはそれを聞いて言った。
「イデオンはまさしく神なのか」
「巨神」
「まさしく」
「そうかも知れない。そんな気がする」
 モエラはこう皆に話した。
「違うかも知れないがな」
「ううん、どうなのかしらね」
 セニアも腕を組んでいる。
「有り得ることかしら」
「ヴォルクルスとはまた違うけれど」
 サフィーネは彼女がかつて仕えていた邪神を引き合いに出して話す。
「ああいう存在なのかしら」
「意識の集合体らしいし」
「そうなのかな」
「けれど邪悪なものじゃないのは間違いないし」
「シュウでもいれば何か言うかも知れないんだがな」
 マサキはこんなことも言った。
「あいつはここぞって時にしか出ねえからな」
「そうそう。あの人ってそうよね」
 ミオもマサキのその言葉に頷く。
「肝心な時に颯爽って感じで出て来てね」
「基本的にキザだな」
 イルムは彼をこう看破した。
「ミステリアスな存在を気取ってるな」
「しかもそれが様になるし」
「何ていったらいいか」
「ずるい存在よね」
「全く」
 ロンド=ベルの者達もシュウにはこんなふうに考えていた。そうしてだ。
 クスハはだ。ブリットを交えてアラド達と話していた。
「それでだけれど」
「ああ、イルイちゃんだよな」
「あの娘よね」
「地球にいた筈なのに」
 クスハは目を伏せて言った。
「どうして宇宙に」
「その前にどうしてフロンティアにいたんだろうな」
「そしてシティ7に入って」
 アラドとゼオラも首を傾げさせている。
「超能力で移動したのか?やっぱり」
「それかしら」
「多分そうだな」
 ブリットは二人のその説に頷いた。
「それで宇宙に出たんだ」
「やっぱりそれか」
「それでなのね」
「そして問題はだ」
 ゼンガーもいる。彼は腕を組んでいる。
「その目的だ」
「イルイ=ガンエデン」
 ククルはその正式な名前を述べた。
「地球を愛し守る存在だが」
「それがどうして」
「どうして宇宙に出たのかしら」
 アイビスとツグミもいる。
「地球を離れて」
「何をするつもりなのかしら」
「何も目的がなくてする筈がない」
 スレイは断言した。
「そこまでのことは」
「只の家出とかじゃないからな」
「それは当たり前でしょ」
 ゼオラはアラドの今の言葉には口を尖らせる。
「家出ってイルイちゃん家族いないでしょ」
「いや、俺達が家族だろ」
「だからよ。私達が家族ならよ」
 アラドのその言葉を受けてだった。
「何で宇宙に」
「家族だからか」
 ゼンガーがここでまた言った。
「我々が」
「俺達が気になって?」
 ブリットはゼンガーの言葉を受けて述べた。
「それで?」
「それで地球を出た?」
「いや、それにはちょっと」
 ツグミがアイビスに言ってきた。
「私達が宇宙に旅立つ前からもうフロンティアにいたみたいだけれど」
「そうだな。だとすればだ」
 スレイが考える顔で話した。
「その家族は誰だ」
「俺達以外の家族」
 ブリットも考える顔になる。
「誰なんだ、それは」
「いるとしたらね」
「そうだ。それは誰なんだ」
「ううん、まさか」
 クスハは考える顔になってだ。皆に話した。
「イルイちゃんって女の子よね」
「そのことに何かあるのか」
「ひょっとしたらだけれど」
 こう前置きしての言葉だった。
「イルイちゃんの他にもう一人」
「もう一人?」
「もう一人って?」
「ガンエデンがいるとしたら」
 これがクスハの今の考えだった。
「それに会いに行くとか」
「もう一人のガンエデンって」
「つまり男の」
「そのガンエデン」
「有り得るな」
 ゼンガーはここでまた言った。
「イルイ=ガンエデンだけで存在できるのか」
「女の子だけで」
「それは」
「雌雄は必ず必要なものだ」
「じゃあやっぱり」
「もう一人いる?」
「ガンエデンが」
「その男の」
「そう考えていい」
 ゼンガーはまた言った。
「何処にいるかはわからないが」
「ううん、何か謎が謎を呼んで」
「どうなるかわからないっていうか」
「そんな感じ?」
「そうよね」
「どうにも」
 皆ここで首を傾げさせてしまった。
 それでだ。クスハが言うのだった。
「ねえ。それじゃあ」
「ああ」
 ブリットがそのクスハに応える。
「イルイを助け出して。どうしてなのかな」
「聞きたいわね」
 こう話しながらだった。航海を続ける。そうして。
 次の日だった。やはり彼等は来た。
 しかも三将軍が全員いた。ギルドロームがシャピロに問う。
「シャピロよ」
「何だ」
「その少女がか」
 彼はイルイを手元に置いたままであった。
「その少女が我等の帝国をか」
「そうだ、永遠の繁栄に導く」
 表向きはこう言っているシャピロだった。
「そして皇帝陛下もだ」
「そうか。それならよいがな」
「わしも異存はない」
 ヘルマットも言う。
「それならばな」
「しかしだ」
 デスガイヤーは異論を述べてきた。
「そうしたまだ年端もいかぬ娘を利用するというのはだ」
「生憎だがそんなことを言っている場合ではない」
 シャピロはそのデスガイヤーを愚弄したようにして言葉を返した。
「今はな」
「ロンド=ベルに勝つ為にか」
「そうだ」
「その娘の力をか」
「使い。そして他の全ての勢力を滅ぼす」
 あくまでそういうことにしているシャピロだった。
「そのうえでだ」
「この世界の宇宙を我等のものとする」
「そうするか」
「そうだ。これでわかったな」
 また三将軍達に述べた。
「それではだ」
「ふん、まあいいだろう」
「戦うことにはやぶさかではない」
 ギルドロームとヘルマットが言った。
「では、だ」
「進撃を開始するとしよう」
「デスガイヤー将軍」
 ロッサが彼に声をかける。
「行かれないのですか」
「わかっている」 
 憮然としているがそれでも頷く彼だった。
「行く、それでいいな」
「はい、それでは」
「ヘルマット将軍の軍は中央だ」
 シャピロが指示を出す。
「そしてデスガイヤー将軍が右」
「わしが左か」
「そうだ。そう布陣する」
 ギルドロームに告げた。
「そして三方から同時に攻撃をする」
「よし、ではだ」
「攻めるとしよう」
 こうしてムゲ帝国軍の攻撃がはじまった。その攻撃は三方から囲み同時攻撃を仕掛けるものであった。その攻撃がはじまりだった。
 ロンド=ベルはだ。まずはであった。
「敵の左翼だな」
「ああ、ギルドロームだな」
「あいつは残しておくと厄介だからな」
「また罠か何か精神攻撃を仕掛けて来るしな」
「最初に潰しましょう」
 それぞれ言ってであった。ギルドロームの軍勢に全力で向かう。
「一気に倒せ!」
あいつの軍はすぐに潰す!」
「よし!」
 その言葉通りであった。実際に総攻撃を浴びせてギルドロームの軍勢を薙ぎ倒していく。ギルドロームはそれに対してであった。
「機雷を撒け」
「機雷をですか」
「そうだ、撒くのだ」
 こう部下達に命じるのだった。
「それで敵の行く手を阻みながら戦うのだ」
「了解です」
「それでは」
 部下達が頷いてだった。すぐに機雷が撒かれる。
 それでロンド=ベルの足止めをしようとする。しかしだった。
「甘いんだよ!」
「そうよ、それならそれでよ!」
 広範囲攻撃ができるマシンがだった。
 ハイメガランチャーやファンネルでだ。機雷を攻撃で一気に潰す。そうして機雷原を潰してだった。さらに前進するのだった。
「機雷なんてな!」
「潰せばどうということはないのよ!」
「そうよ、こうしてよ!」 
 クェスもヤクト=ドーガのファンネルを放つ。
「行けっ、ファンネル達!」
 それで機雷をことごとく潰す。しかもだ。
「もう一撃!」
「何っ、まただと!?」
「また放った!?」
 ムゲ帝国軍の将兵達はクェスの今の攻撃に驚きを隠せなかった。
 一度に二回ファンネルを放ってだ。そのうえで機雷を潰したのだった。
 それで進路を大きく開けた。そうしてだった。
「よし、今だ!」
「一気に行くぞ!」
「馬鹿な、何故だ」
「何故一度に二回も攻撃を」
「しかもだ」
 彼等はここでロンド=ベルの動きを見た。
 見ればだ。彼等の倍の速さで動いている。その攻撃もだ。
「まるで二回移動しているようだ」
「そうだな、この攻撃は一体」
「簡単な理屈だ」
 こう話したのはエイジだった。
「僕達の腕があがったんだ」
「腕があがっただと」
「それでなのか」
「そうだ、それでこれまでより倍の速さで動き攻撃できるようになったんだ」
 所謂二回ができるようになったのだ。
「それでだ」
「くっ、これまでの戦いでか」
「そこまで強くなったというのか」
「そのことに今頃気付くなんてね」
 アレンビーは半ば呆れながら言った。
「ちょっと鈍過ぎない?」
「いえ、アレンビー」
「違うのレイン」
「大抵は向こうは気付く前に倒してるから」
「それでなの」
「ええ、だから」
 レインが話すのだった。
「それにムゲ帝国軍との攻撃は」
「そういえば久し振りよね」
「だから知らない相手も多いのよ」
「そういうことだったの」
「ええ」
 そうだというのである。
「だからよ」
「わかったわ」
「それじゃあいいわね」
「ええ、またやるわ」
 こう言ってであった。ノーベルガンダムを動かしてだ。
 そのフラフープとリボンでだ。敵を薙ぎ倒すのだった。
 ギルドロームの軍勢は退けた。そうしてだった。
「よし、次は」
「ヘルマットの大軍よね」
「相変わらず多いよな」
「ああ」
 皆その大軍を見てまずはこう話す。
「それじゃあ今から」
「攻めるか」
「そうね」
「とにかく数を減らすことを考えるか」
 念頭に置くのはこのことだった。
「それなら」
「これまた一気に」
「やるか!」
 こう言ってであった。全軍で敵を小隊単位で潰していく。
 ヘルマットはそれを見て部下達に命じた。
「いいな」
「はい、包囲してですね」
「そのうえで」
「そうだ、殲滅する」
 彼らしい作戦だった。
「そしてそのうえでだ」
「奴等を数で押し潰す」
「今度こそ」
「わかればすぐにかかれ」
 ヘルマットはまた命じた。
「いいな、全軍でだ」
「了解です」
 こうして彼等はロンド=ベルを取り囲みそのうえで倒そうとする。しかしそれに対してだった。
 ロンド=ベルはその機動力を活かしてだ。彼等の中を縦横無尽に暴れるのだった。 
 一つの敵を倒せばまた別の敵を倒す、そうしていってた。
「敵の陣を食い破れ!」
「いいな、それで!」
「はい、わかりました」
「それでは!」 
 彼等は全軍で敵の中を動き回りそうして倒していった。
 ヘルマットの軍もこれで突破した。最後は。
「将軍、来ました」
「ロンド=ベルが」
「よし」
 それを見て部下達の言葉も受けて頷くデスガイヤーだった。
 彼はだ、自ら戦闘に立って部下達に命じた。
「続け!」
「はい!」
「正面からですか」
「そうだ、少年から戦う!」
 これが彼の考えだった。
「それでいいな」
「わかりました」
「では我々もです」
「将軍に続きます」
「ギルドロームとヘルマットは既に戦場を離脱しているな」
 デスガイヤーは同僚達のことも尋ねた。
「既に」
「はい、御二人共既にです」
「離脱されてます」
 その通りだというのであった。
「ではこれより」
「我が軍は正面からロンド=ベルと」
「そして勝つ」
 彼は言った。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。デスガイヤーの軍とも戦闘に入った。今度は正面から激しくぶつかり合う派手な戦闘だった。
「こいつは相変わらずだな」
「そうだよな」
「力技か」
「それも正々堂々とね」
「数は敵の方が上です」
 テッサがこのことを話す。
「それならです。我々は」
「どうするの?」
「まずは防ぐべきです」
 こう小鳥に述べた。
「そしてです。機を見てです」
「攻めるのね」
「はい」
 小鳥の言葉に頷く。
「そうしましょう」
「よし、じゃあ宗介」
 小鳥は宗介に声をかけた。
「わかったわね」
「わかった。それにだ」
「それに?」
「俺もあの娘を救いたい」
 そうだというのである。
「是非な」
「あんたもそういう感情あるのね」
「少なくともあのシャピロという男は好きにはなれない」
「っていうかあんな奴誰でも嫌いでしょ」
 小鳥も彼は嫌いだった。
「正直なところ」
「僕もだね」
 エイジもだった。
「あんな人間は。やっぱり」
「じゃあここはあいつをやっつける前にね」
 小鳥がここでも言う。
「今戦っている敵をね」
「倒そうか」
 こうしてだった。彼等はデスガイヤーの軍と戦う。まずは引き付けてだった。
 そしてだ。そのうえでだ。  
 守りを固めて敵の数を減らしてだった。
「よし、今だ!」
「今ね!」
「全軍攻撃して下さい!」
 テッサも言う。
「そして一気に突き崩します!」
「よし、来た!」
「それなら!」
 突撃に入る。一点集中攻撃を浴びせた。
 それでデスガイヤーの軍を突き崩してだ。彼も破ったのだった。
「くっ、まさかここでも敗れるとはな」
「将軍、最早です」
「これ以上の戦闘は」
 彼の部下達が言ってきた。
「一刻も早く撤退を」
「そうしましょう」
「退くしかないか」
 デスガイヤーは彼の言葉を歯噛みしながら聞いていた。
「ここは」
「既にギルドローム将軍もヘルマット将軍も撤退されてます」
「ですから」
「わかった」
 苦い顔だがそれでも頷いた。
「それではな」
「はい、それでは」
「今より」
 こうしてだった。彼もまた撤退した。残るはだ。
 シャピロだけだった。忍が彼に叫ぶ。
「やい、シャピロ!」
「藤原か」
「そうだ、今度こそ手前を倒す!」
 ここでも敵愾心を露わにしている。
「覚悟しやがれ!」
「いつもの言葉だな」
 シャピロもまたここでも上から目線だった。
「全く以てな」
「本当にあんたは何もわかってないね」
 沙羅はそんな彼を冷めた目で見ている。
「何もかもね」
「凡人に私の考えはわかりはしない」
 あくまでこう言う。
「神の考えはな」
「神は神でも鼻紙じゃねえのか?」
 今言ったのはジャーダである。
「所詮はそうだろ」
「まあそんなところだろうね」
 ガーネットが彼の言葉に頷く。
「あんな奴はね」
「ああ、だからどうってことはないさ」
「そう思います」
 ラトゥーニも同意する。
「ああした人は実際にはどうということはありません」
「一撃で終わらせようよ」
「そうだな」
 雅人と亮も強気である。
「それで今度こそね」
「こいつの話も終わりだ」
「手前は俺達が倒す」
 忍はダンクーガを前にやった。
「いいな、これでだ」
「甘いな」
 しかしだ。シャピロはここで言うのであった。
「今は貴様等と戦うつもりはない」
「何っ!?」
「私は神だ」
 またしてもこの言葉だった。
「神は己に歯向かう者を許しはしない」
「ではだ」
 ユウキが彼に言ってきた。
「御前は今から俺達にその神罰を与えるのか?」
「それにはその為のものがある」
 こうユウキに返すシャピロだった。
「それを持って来たその時にだ」
「つまりあれね」 
 カーラは彼女なりにシャピロの言葉を要約してみせた。
「私達をやっつけるものがないから今は帰るっていうのね」
「帰るっていうか」
「そうよね」 
 リョウトとリオはこう言うのだった。
「撤退?」
「また」
「次の時を楽しみにしておくのだ」
 シャピロは何と言われても平気な様子であった。
「私はこれで帰るとしよう」
「そうはさせるかよ!」
 忍が追おうとする。しかしだった。
 シャピロの戦艦が戦線を離脱していく。そして残ったムゲ帝国軍もだ。
 全て戦場を離脱する。その時だった。
「・・・・・・けて」
「!?その声は」
 クスハは確かにその声を聞いた。
「イルイちゃん、やっぱり」
「・・・・・・すけて」
「ええ、わかったわ」
 クスハはその言葉に頷く。そうしてだった。
「今度で。絶対にね」
「聞こえたんだな、クスハ」
 ブリットはクスハの今の言葉に問い返した。
「そうなんだな」
「そうなの。確かに」
 その通りだと返すクスハだった。
「聞いたわ」
「そうか。それだったら」
「今度で。絶対に」
「シャピロ=キーツの手から」
「取り返しましょう」
 クスハはそう決めていた。
「本当にね」
「ああ。それにしても」
「それにしても?」
「あのシャピロ=キーツは」
 ブリットが今話すのは彼についてであった。
「本当に何もわかっていないんだな」
「そうね」
 クスハもブリットのその言葉に頷いた。
「何もわかっているようでね」
「何もわかっていない。それに」
「ええ、それに」
「何も見えていない」
「また見えているつもりになっていて」
「何一つわかってもいないし何も見えていないな」
「絶対に負けられないわね」
 クスハはシャピロに対しても意を決していた。
「あの人にだけは」
「いや、絶対に負けない」 
 ブリットはこう返したのだった。
「あんな奴には」
「負けられないじゃなくて?」
「そう、負けないんだ」 
 ブリットが今言う言葉はこれであった。
「俺達は少なくとも自分達を人間だと考えている」
「それはね」
 言うまでもないことだった。その通りである。
「そしてそのうえで何もかも見ている」
「けれどあの人は」
「自分を神と見てそれで思い上がっている」
 その増長と傲慢こそがだ。シャピロなのである。
「そんな奴には絶対に」
「負けはしないっていうのね」
「そういうことさ。だから俺達は絶対に負けないんだ」
「その通りだ」
 二人のその言葉に応えたのはシリウスだった。
「私もそう思う」
「シリウスさんも」
「そう考えてるんだな」
「その通りだ。天使であろうとだ」
 これはだ。シリウスが自分自身で感じ取った言葉である。
「人なのだ」
「そうですね、心が人なら」
「それで人だから」
「その通りだ。力が多少あっても同じだ」
 これもシリウスが自身で感じ取ったことあだ。
「全てな」
「じゃあシリウスさんも」
「あいつには」
「負ける筈がない」
 シリウスも確信していることだった。
「己が神と称し他者を見下すだけの輩にはな」
「そういうことだな。では次だ」
 不動が言った。
「次の戦いで決めるとしよう」
「よし、潰してやるぜ!」
 アポロが叫ぶ。
「あの大馬鹿野郎をな!」
「まさかと思ったけれど」
 シルヴィアは首を傾げさせて述べた。
「アポロよりずっと酷い馬鹿がいたなんてね」
「それがあの男だな」
「馬鹿っていうか」
 兄に応えてさらに話す。
「愚かって言うのかしら」
「そうだ、あの男は愚かだ」
 そうだというのである。
「何も見えていないのだからな」
「そうなるのね」
「その通りだ。愚か者には敗れる筈がない」
 また言うシリウスだった。
「そういうことだ」
「では次だ」
 不動がまた言った。
「次で少女を救い出す!」
「あの、司令」
「ここで大音声なんですか」
「そうするんですか」
「そうだ!」
 また叫ぶ彼だった。
「戦の後こそ身を引き締めるのだ!」
「何かわからないけれどね」
「じゃあそうなんでしょ」
「じゃあ次の戦いに備えて」
「気合を入れなおしてね」
 こんな話をしてから休む彼等だった。そのうえで次の戦いに備えるのだった。
 その次の戦いの相手はだ。もう決まっているようなものだった。
 彼等はシャピロに対してだ。決意をあらたにしていた。
「いい加減もうここでな」
「そうね、潰しておかないと」
「ムゲ=ゾルバトス帝国も」
「倒しておくか」
「決着をね」
「それがいいな」
 葉月博士は皆の言葉に頷いた。
「敵勢力は潰せる時に潰す」
「そうでないとあれですよね」
「戦いが長引きますし」
「ですから」
「次で」
「その時が来たな」
 また言う博士だった。
「では。そういうことでだ」
「ええ、シャピロとの戦いも」
「これで」
「終わらせるか」
「遂に」
 こう話してだった。そうしてだった。
 次の戦いに決意を固める。決着に向けて。
 それでだ。アラドはゼオラと話していた。
「なあ」
「どうしたの?」
「いや、クスハさんも言ってたけれどさ」
「イルイちゃんのことね」
「やっぱり許せないよな」
 アラドは珍しく険しい顔になっていた。
「あいつのやっていることは」
「シャピロ=キーツね」
「ああ、絶対に許せない」
 こうゼオラに言うのだった。
「俺も。イルイちゃんは絶対にな」
「そうしましょう、絶対にね」
「ゼオラもそれでいいんだな」
「当たり前でしょ」
 ぴしゃりとした言葉だった。
「だって。イルイちゃんじゃない」
「ああ」
「それだったら。やっぱり」
「助けたいよな」
「そうよ。だから」
「やるか」
「絶対にね」
 こう話してだった。彼等も決意をあらたにするのであった。シャピロとの最後の戦いの時が今迫っていた。


第六十話   完

 
                      2010・9・22        

 

第六十一話 神になろうとした男

         第六十一話 神になろうとした男
「いよいよだな」
「ああ」
 サンシローが一矢の言葉に頷いていた。
「シャピロの野郎をな」
「ここで遂にだな」
「おそらくだけれどな」
 今言ったのは竜馬である。
「あいつも総力で向かって来るな」
「そうだな。ただ」
 ここで言ったのはアランである。
「狙う敵は一人だ」
「シャピロだけか」
「あいつだけなんですね」
「そうだ、あいつだ」
 また言うアランだった。
「キーツだけを狙ってそれで倒せばそれで終わる」
「あいつとの戦いを」
「今度こそ」
「ああ、やってやるぜ」
 忍も言う。
「俺は絶対に生き残ってだ」
「勝つんだね」
「当たり前だろ?」
 こう沙羅にも答える。そしてだ。
 彼はまただ言った。
「あいつを真っ二つにしてそれで終わりにしてやるぜ」
「そうだな」
 アランはその彼の言葉を聞いて微笑んだ。そうしてだった。
「藤原らしい言葉だ」
「俺は俺だよ」
 こう返す忍だった。
「それ以外の誰にもなれねえさ」
「いや、なれるだろ」
 ここで言ったのはジュドーだった。
「違うか?それはよ」
「まあ御前にはなれるな」
 忍もこうジュドーに返す。
「それと竜にもな」
「二極神な」
「なれるな」
「そうだよな」
「何かこの二人もな」
 アランはそんな彼等を見ながらまた言った。
「縁が深いな」
「ああ、縁は前から感じてたぜ」
「しっかりとな」
「そうか。それでだが」
 アランはここで話を変えてきた。
「データはもう揃えてある」
「へっ、そんなのよりもな」
 ここでも忍であった。
「力だ。それで倒すぜ」
「まあ忍はね」
 沙羅が呆れた顔で彼を見て話した。
「どうせそのデータを活かせないだろうけれどね」
「まあそうだろうね」
「今までデータを使ったことはなかった」
 雅人と亮も話す。
「忍っていつも直感だけで戦うから」
「闘争心のままな」
「おい、何だよそれはよ」
 忍はその彼等の言葉に反論した。
「揃いも揃ってよ」
「いや、この場合は仕方ない」
 ナガレがこう返すのだった。
「今までの行動を見ていればな」
「ちっ、随分な言われようだな」
「藤原の場合はだ」
 ここでまた言うアランだった。
「戦いの先に明確なビジョンを持つことが必要だな」
「どういうことだよ、それってよ」
「つまりだ」
「ああ」
「戦いが終わった後を考えろということだ」
 彼が言うのはこのことだった。
「何かの目的がありそれを勝ち取る為にだ」
「それでかよ」
「そうだ。それで戦いは起こる」
 こう話すのだった。
「その勝ち取ったものをどう活かすかがだ」
「大事だってんだな」
「それが最も重要なのだ」
 そうだというのである。
「わかっているな」
「次の戦いの後か」
 話を聞くサンシローも難しい顔になる。
「俺もだな」
「やっぱり御前はあれか」
「復帰だな」
 ピートとリーが話す。
「プロ野球にか」
「肩も完治したからな」
「ああ、そのつもりだ」
 サンシローは真面目な顔で述べた。
「今度こそな」
「そうですね。僕も水泳に」
「俺はどうしたものか」
 ブンタとヤマガタケも話す。
「戻りますか」
「力士に戻るのもな」
「何か皆色々あるんだね」 
 沙羅は少し寂しい顔になって呟いた。
「そうなんだね」
「おい、沙羅」
 忍が沙羅に声をかけようとする。しかしだった。
 沙羅はだ。こう言うのだった。
「あたしは先に休んでる」
「先にかよ」
「ああ、クーガーの整備は終わってるからね」
 こう言ってだった。立ち去るのだった。それを見てだ。
 まずはだ。ヒイロが話した。
「おかしいな」
「ああ、無理もないな」
「そうだな」
 その彼にデュオとウーヒェイが応えた。
「決戦だからな」
「ムゲ帝国とな」
「間違いなくそのせいだ」
 また言うヒイロだった。
「それでだ」
「シャピロ=キーツ」
「彼ですね」
 トロワとカトルも話す。
「当然だな」
「そうですね、複雑な心境になられるのも」
「ここは私が行こうか」
 ノインが気を利かして言った。
「今からな」
「いや、それはいい」
 止めたのはアランだった。
「適役がいる」
「そうだな」
 ノインは彼の言葉にすぐに察しをつけた。
「それではな」
「藤原、任せた」
「俺かよ」
「そうだ、獣戦機隊のリーダーは御前だ」
 これを話すのだった。
「隊員の精神的ケアも大事な任務だぞ」
「あ、ああ。わかった」
 忍も彼のその言葉に頷いた。
「だったらな」
「ねえ忍」
「早くしてくれるか」
 雅人と亮が真剣な顔で話してきた。
「沙羅があのままじゃね」
「俺達全員の士気に関わる」
「ああ、わかってるさ」
 こう返す忍だった。
「リーダーとして気合を入れて来るぜ」
「あれっ?」
「何かおかしい?」
 皆ここでふと不思議に思った。
「普段リーダー風なんて吹かせないのに」
「それでも何で?」
「おかしいよな」
「そういえば」
「成程ね」
 しかしここでミサトがくすりと笑った。
「そういうことね」
「ええ、そうね」
 リツコも同じ顔で笑っている。
「そういうことね」
「あの子もわかってきたのね」
「野暮だとばかり思っていたけれど」
「何だ?おばさん連中が騒ぎだしたぞ」
 また言うシンだった。
「歳食っててそれでぼけたか?」
 数分後。シンは残骸になっていた。 
 二人はその残骸を踏みつけながらだ。言うのであった。
「じゃあこれからはね」
「見所よ」
 こう言うのであった。
「じゃあ皆、今からね」
「決戦に備えてね」
 こう言うのであった。そして沙羅は。
 一人になっていた。そして考えるのだった。
「シャピロ」
 この男のことをだ。
「あたしにとってあんたとの戦いが全てだった」
 こう呟くのだった。
「でもそれももうすぐに終わる。そしてあたしは」
「おい」
 そしてだ。ここでだった。
「沙羅」
「何だ、あんたなの」
「何だはねえだろ」
 まずはこう返す彼だった。
「心配して来てやったってのによ」
「心配?」
「ああ、そうだよ」
 ここから口ごもる彼だった。
「あのな、それでな」
「それで?」
「俺はリーダーとしてな。その、な」
「有り難うね」
「ああ、それでもな」
「それでも?」
「やっとって感じだな」
 こう言うのであった。
「本当にな」
「やっとなのね」
「ああ、確かに経験は積めた」
 忍はここでこう言った。
「戦い、そして人間としてのな」
「そうね。それはね」
「しかしな」
 そしてであった。
「代わりに色々なものも失っちまったな」
「そうね。けれどそれでもね」
「それでもかよ」
「ええ、あたしにとっては必要な時間だったわ」
 沙羅の言葉である。
「充分ね」
「時間が全てを忘れさせてくれるってのか」
「アランが言ってたじゃない」
「あいつがか」
「ええ。それでね」
 そしてだ。沙羅は言った。
「あたしもね」
「ああ」
「戦いの後のことを考えることにしたのよ」
「けれどな」
「何?」
「それでもどうするんだ?」
 沙羅への今度の問いはこれであった。
「その時もう奴はいねえぜ」
「そうね」
 沙羅もそのことは認めた。
「それはね」
「それでもかよ」
「その時あんたはいるじゃない」
「!?まさか御前」
「若しこの戦いで生き残ったら」
 驚いた顔になった忍にだ。笑顔でまた言った。
「パーーーッとやりましょう」
「皆で?」
「そう、皆でよ」
 手を上に大きく振っての言葉だった。
「楽しくやりましょうよ」
「あ、ああ」
 ここで忍も頷いた。そしてだ。
「それじゃあな」
「それでいいわよね」
「ああ、派手にやってやるぜ!」
 沙羅も忍も吹っ切れた。その時だった。
 ロッサがだ。シャピロに告げていた。
「シャピロ様」
「ロンド=ベルか」
「はい、彼等です」
「今どうしている」
「アステロイドベルトに入ろうとしています」
 そうだというのだった。
「そうか、わかった」
「では、だ」
 ここでだ。シャピロは言った。
「神の子はだ」
「あの娘は」
「誰にも渡さん」
 このことをまた言った。
「例え相手が誰であろうともだ」
「しかしです」
 ここでだ。ロッサの顔が曇った。
 そうしてだ。こう言うのだった。
「その娘はまだ幼く」
「黙れ!」
「うっ・・・・・・!」
 ロッサの頬を叩いてだ。傲然として問うのだった。
「ロッサよ」
「は、はい」
「貴様は私に仕えているのだ」
「仕えて・・・・・・」
「そうだ」
 完全に見下ろした目だった。
「それ以外の何者でもない」
 そしてこう言った。
「神に意見するな」
「・・・・・・貴方は」
「何だ、まだ言うのか」
「参謀は不要なのですね」
 彼女もようやくわかった。
「愛を必要としないように」
「何?」
「つまり貴方は」
 シャピロを見据えていた。それまでの目ではなかった。
「誰も必要とされていない。そうですね」
「女だな」
 やはりわからないシャピロだった。
「所詮な」
「そう言われますか」
「感情の先に強引に相手の考えを引き出そうとする」
「それが悪いと言われるのですね」
「愚かだ」
 一言だった。
「神にそれ以上の口出しは許さん」
「・・・・・・・・・」
 ロッサは無言で立ち去った。しかしだ。
 シャピロはイルイを見てだ。傲然としたまま言う。
「神の子を手に入れた今」
「貴方は」
「私は神となるのだ」
 イルイの言葉も聞いてはいない。
「あの日あの場所で聞いたハーモニーは」
「それは」
「この私を導く銀河からの啓示」
「違うわ」
「私は選ばれるべくしてだ」
 イルイの言葉は何も耳に入っていない。そもそも彼女が言葉を出しているということすらだ。今の彼には気付かないものであった。
「神となるのだ」
「神とは」
「さあ来いロンド=ベル」
 己だけであった。
「御前達は神の記憶の中に残された数少ない汚点だ」
「それは貴方の」
「アステロイドベルトで御前達を葬りだ」
「思い上がり」
「バルマー帝国へ飛び」
 既に己の中だけでできていた。
「もう一人の神を殺しそして」
「無理、貴方には」
「そして私が銀河の意志と一つになるのだ!」
「何もわかっていない・・・・・・」
 ただシャピロだけがわかっていなかった。何もかも。
 そしてそのアステロイドベルトに三将軍を擁して決戦を挑むのだった。
「やっぱり出て来たな」
「そうだな」
「予想通りね」
「全くね」
 ロンド=ベルの面々は冷静そのものだった。
「まあここでね」
「あいつを倒して」
「清々しましょうよ」
「本当にね」
「ロンド=ベルよ」
 だがシャピロだけは違っていた。
「この星屑が御前達の墓場だ」
「はい、言った」
「もう聞き飽きたこの手の言葉」
「陳腐ね、全く」
 自信に満ちたシャピロと違いだ。彼等は冷めていた。
 そしてそれはだ。彼等も同じだった。
「ではだ、三将軍よ」
「・・・・・・・・・」
「御前達の働きに期待する」
 彼等はだ。この言葉と共に戦場を離脱しはじめたのだった。
 それを見てだ。シャピロは眉を顰めさせて彼等に問い返したのだった。
「何のつもりだ」
「ふん、誰が貴様なぞにだ」
「その通りだ」
「戦うつもりはない」
 これが彼等の言葉だった。
「貴様の為に戦う心も命もない」
「貴様の下らぬ復讐劇なぞだ」
「貴様だけでしておくのだ」
 三将軍はシャピロに冷たく言い放った。
「ではな。勝手に戦うがいい」
「地球人は地球人同士血を流し合え」
「健闘は祈ってやろう」
 こう言い捨てて自分達の軍と共に戦場を去った。残ったのはシャピロと彼の周りにいる百万近い無人操縦の軍だけであった。他には何もなかった。
「まあそうなるよな」
「そうよね」
「所詮はな」
 また言うロンド=ベルの面々であった。
「所詮裏切り者だし」
「しかも私利私欲で裏切ってね」
「故郷を売ったような奴だし」
「つまり売国奴だな」
 シャピロをだ。容赦なく評する。
「そんな奴の末路なんてな」
「まあこんなものね」
「無様って言えば無様だけれど」
「自業自得ね」
「全くもってね」
「おのれ・・・・・・」
 だがシャピロは見えていない。
「この私を裏切るとは身の程知らずだ」
「おやおや、熱くなってるし」
「まだわかっていねえな」
「ああいうのを本当の馬鹿っていうんでしょうね」
「そうね」
「いいだろう・・・・・・」
 シャピロは一人になってもまだ言っていた。
「ロンド=ベルとバルマーを倒した後はだ」
「何するって?」
「それで」
「何をかしら」
「ムゲ=ゾルバトス帝国よ」
 彼等にもその怒りの矛先を向けていた。
「御前達も神の力で滅ぼしてやる!」
「あっ、そう」
「じゃあ精々頑張れば?」
「精々ね」
 ロンド=ベルの言葉は今の彼には聞こえていない。そしてであった。
 ロッサもだ。
「三将軍が動いたわね。それなら」
 己の行動に移った。シャピロに気付かれないようにして。
 そしてだった。シャピロはロンド=ベルに対しても言うのであった。
「来たな」
「ずっと見てたぜ」
「そうよ、ずっとね」
 まずはこう返す彼等であった。
「じゃあ本当にね」
「ここで終わりにしてあげるわよ」
「シャピロ!」
 忍も彼に言う。
「逃げ出さなかったことは褒めてやる!」
「藤原か」
「バルマー戦役から続いた俺達の戦いの決着」
 そのシャピロを見据えて告げる。
「今日ここでつけてやる!」
「いいだろう」
 シャピロは彼の言葉を受けて言った。
「御前達に神が生まれる瞬間を見せてやる」
「相変わらずだね」
 沙羅の言葉も冷めていた。
「あんたはね」
「あのな」
「一つ言っておくわよ」
「何をだ」
「もうあんたには何もないのよ」
 こう彼に言うのだった。
「そう、何もね」
「何を言うかと思えばだ」
 シャピロは沙羅の今の言葉に冷笑で返した。
「戯言を」
「いや、今の沙羅の言葉は戯言じゃねえ」
 甲児であった。
「手前のことを神だと思ってる奴にな」
「何だというのだ?」
「碌な奴はいねえんだよ」
「神様を気取るんならな!」
 サンシローも言う。
「ちっとはいいことをしてみやがれ!」
「ふん」
 だがシャピロは彼等にも返した。
「御前達は神に突いて根本的にはき違えている」
「何っ!?」
「どういうこと、それは」
 鉄也とジュンがいぶかしむ。するとであった。
 シャピロはだ。こう言うのだった。
「神の存在とはだ」
「何だ?」
「何だってんだ?」
「あらゆる者の干渉を受けない存在であり」
 そしてであった。
「同時にあらゆる者の運命を握る絶対者なのだ」
「ああ、そうなんだ」
「ふうん」
「はい、駄目」
「零点というかマイナス一億点」
 殆どの人間は話を聞いてこう言い捨てた。
「勝手にそう思っていたら?」
「自分一人でね」
「神の行為に善意はない」
 だがシャピロはまだ言うのだった。
「何故なら神の存在こそが全てを超越した絶対の真理だからだ」
「あ、あのボス」
「今の言葉って」
「あ、ああそうだよな」
 ヌケにムチャ、ボスは彼の言葉の意味が言葉ではわからなかった。
「つまりでやんすよ」
「それって」
「あいつ自分が馬鹿だって言ったんだよな」
 三人はこう考えたのだった。
「そういうことだよな」
「え、ええ。そう思うでやんすよ」
「あっしも」
「何かそれはわかったぜ」
「ああ、その通りだボス」
 忍も彼等に言う。
「そんなことを言い出す野郎はな」
「物凄い馬鹿でやんすね」
「しかもおまけに」
「とんでもない奴だよな」
 こう言う三人であった。
「色々こういう奴は見てきたでやんすが」
「どいつもこいつも」
「最低だったよな」
「こいつはとんでもねえ悪党だ」
 忍はそのシャピロを嫌悪に満ちた目で見据えていた。
「その存在が許せねえ!」
「己の存在と絶対とするエゴ」
 亮もだった。
「見過ごすわけにはいかんな」
「そしてそのエゴによりだ」
 アランも言う。
「どれだけの人間が傷つき、死んでいったことか」
「それがわからないっていうんなら!」
 雅人も激昂している。
「俺達が教えてやる!」
「その通りさ!」
 沙羅も同じだった。
「あんたの存在は許されないってね!」
「これ以上は為しても時間の無駄だ」
 シャピロの耳にはだ。既にそんな言葉は入らなくなっていた。
 それでだ。こう言うのであった。
「貴様達の存在をこの宇宙から抹消することでだ」
「あいつまだ言うんだな」
「本当だニャ」
「同じようなことばかりだニャ」
 マサキにクロとシロが言う。
「何か飽きてきたな」
「そうだニャ、いつもいつも同じことばかりニャ」
「あくびが出るニャ」
「というかあいつのやってることって」
「そやな」
「めっちゃ恥ずかしいことばかりやで」
 ジュンにチョーサク、ショージもミオの周りで話す。
「自分が神になりたいから地球裏切って」
「バルマーについてわい等に負けて」
「そんでムゲ帝国に拾われて」
 そこからまだ続いた。
「で、今度は利用していた相手に見捨てられて」
「今はほんま一人やで」
「わいああなったら恥ずかしゅうて死んでまうわ」
「そうよね。ああなったら人間終わりよね」
 ミオもシャピロには嫌悪の目を向けていた。
「完全にね」
「ほな師匠」
「あいつのことはここで」
「終わりにしましょ」
「勿論よ。全然面白くない相手だし」
 ミオもシャピロはそう見ていた。
「さっさと終わらせましょう」
「大言壮語は結構」
 レーツェルもシャピロをそう見ていた。
「実力が備わっているのならばな」
「貴様の底はわかっている」
 フォルカは見抜いていた。
「やれるものならやってみせるのだな」
「その神の力!」
 ブリットが気合を入れた。
「俺達が否定してやる!」
「そしてイルイちゃんを!」
 クスハは彼女のことを考えていた。
「返してもらいます!」
「行くよ雅人、亮!」
「ああ!」
「わかっている」
 二人は沙羅の言葉に頷く。そして。
 忍もだ。今叫んだ。
「これが御前との最後の戦いだ!」
 そしてこの言葉だった。
「やってやるぜ!」
「総員攻撃開始!」
「目標敵旗艦!」
 こうしてシャピロとの最後の戦いがはじまったのだった。
 戦いはいきなりロンド=ベルが敵を薙ぎ倒してはじまった。
「所詮無人機なんてな!」
「幾ら数が多くても!」
「どうってことないわよ!」
「その通りだね」
 万丈もダイターンの中で言った。
「この程度じゃね。百万いても一千万いてもね」
「どうってことはありませんね」
 綾人も言う。
「これが神の力ですか」
「どうだい、綾人君」
 万丈は彼に問うた。
「神の力は」
「空しいですね」
 彼はこう考えていた。
「あの時、僕もそうした存在になりましたけれど」
「力はね」
「けれど心は人のままでした」
 そうだったというのである。
「だから。遥さんのところに戻れました」
「そうだったね。君は神じゃなかった」
「はい」
「人間だった」
「そうですね。人を愛せる人なんですね」
「けれどあいつは違う」
 他ならぬシャピロのことである。ダイターンハンマーを振り回し周りの敵を薙ぎ倒しながら綾人と話している。
 綾人も弓矢を放ってだ。敵を倒しながら万丈と話していた。
「あいつは自分だけなんだ」
「エゴイストですね」
「このうえないね。最悪のエゴイストだよ」
「最低ですね」
「そうだね。人間としてね」
「確かに」
「さて、それじゃあ」
 シャピロの旗艦が見えてきた。そこでだった。
「行こう」
「はい、道を開けましょう」
 二人で突っ込んでだった。旗艦の周りの敵を倒してだ。そして。
「さあ、やるんだ!」
「今です!」
 二人でダンクーガに叫ぶ。ダンクーガはその剣で周りの敵を真っ二つにしていた。そのダンクーガに対して声をかけたのである。
「あいつは君達がだ!」
「決めて下さい!」
「よし、わかったぜ!」
 忍が応えてだった。そして。
「いっけええええええーーーーーーーーーっ!断空砲!!」
 それを放ちだった。旗艦を貫いたのだった。
 一撃だった。旗艦は動きを止めた。
「敵の旗艦が止まったわ!」
「やったか!?」
 美和と宙が言った。
「これで」
「あいつも」
「いや、まだです!」
 だがここで遥か言った。
「まだ何かが」
「来るぞ!」
 アランが言うとだった。爆発するその旗艦からだ。
 出て来た。青いマシンがだ。
「あれは」
「ああ、シャピロだね」
「そうだね」
「間違いない」
 獣戦機隊の面々がそれぞれ言う。
「ほら、見て」
「うん、沙羅」
「あの右肩だな」
 雅人と亮は彼女の言葉にそのマシンの右肩を見たするとだった。
 小刻みに震えていた。それを見てだった。忍が言った。
「あいつに飛行訓練を受けてた時だったな」
「思い出したね、忍」
「機嫌が悪いか興奮している時はな」
 その時はというのだ。
「ああして決まってな」
「あれがあいつの癖なんだよ」
 沙羅が言った。
「あいつは今」
「死ね・・・・・・」
 そのシャピロの怒りに満ちた声が来た。
「この私を完全に怒らせたな」
「御得意の神を気取った台詞かい、シャピロ」
「結城、貴様・・・・・・」
「生憎だね。今のあんたはね」
「何だというのだ」
「神というよりは悪魔さ」
 それだというのだ。
「それがいいところさ」
「自分で出て来た度胸は認めてやる!」
 忍も彼に言う。
「だがな!」
「何だというのだ」
「そいつが運の尽きだ!」
 忍は完全に燃え上がっていた。
「来やがれ!」
 そして叫ぶ。
「バルマー戦役の時の様に返り討ちにしてやるぜ!」
「そうです」
 エターナルの艦橋からラクスが言った。
 既にその目には表情がない。発動している。
 その顔でだ。彼女は言うのだった。
「人はあくまで人です」
「ああ、そうだよ」
「その通りだよ」
「神ではありません」
 ラクスは仲間達にもこう返した。
「そして神とはです」
「どういったものか」
「それは」
「あくまで人を愛し慈しむものです」
 そういったものだというのだ。
「その無限の愛情で」
「じゃあシャピロは」
「やっぱり」
「己が神でありたいと思っているだけです」
 まさに切り捨てた。言葉で。
「ただ。それだけです」
「だよな。神なんかじゃない」
「例えどんな力を持っても」
「あいつは神なんかじゃない」
「そうね」
 このことがだ。彼等にもよくわかった。そしてだ。
 ラクスはだ。シャピロをこう評した。
「小さい人です」
「確かに」
 バルトフェルドもラクスのその言葉に頷く。
「己の為だけに他人を犠牲にするような奴は」
「そうした人こそ。倒れるべきなのです」
 グラドス人に対するのと同じ言葉であった。
「ですから」
「ならここは」
「はい、増援が来ます」
 既にそれを察しているラクスだった。
「ですから」
「総員あらためて迎撃用意!」
 バルトフェルドが指示を出す。
「僕もあいつは嫌いでねえ」
「やはりそうですか」
「何か彼を思い出すというかね」
 こう笑いながらダコスタに返した。
「あの、ほら」
「ああ、あの人ですね」
「そう。変態仮面君ね」
 よりによってこの呼び名であった。
「あれだよね。彼だよな」
「ううん、やっぱりそうですか」
「そう、彼だよ」
 ラウ=ル=クルーゼであった。
「何処か似てないかい?」
「目指しているもの、目指していたものは違いますが」
「けれど似ているね」
「はい、確かに」
「だから嫌いなんだよ」
 バルトフェルドはまた言った。
「ああした上から目線の人間はね」
「それは私もです」
「所詮同じなんだよ」
 これがバルトフェルドの持論であった。
「人間っていうのはね」
「同じですね、本当に」
「コーディネイトが何かっていうとね」
「何でもありませんね」
「指の形が違うとか。髪の色が違うとか」
 例えは些細なものだった。
「そんなことに過ぎないからね」
「ええ、人は同じですから」
「生まれた星や世界が違っても同じなんだよ」
 この考えにも達している彼等だった。
「それがわかっていないのはね」
「小さなことですね」
「その通り。それじゃあ」
「はい」
「増援を叩き潰すとしよう」
 実に素っ気無い言葉だった。
「今からね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。シャピロのそのデザイアーの周りで全軍構えた。するとだった。
「よし、ラクスの予想通り!」
「見え見えなんだよ!」
「もうお決まりだな!」
「ふむ」
 しかしそれを見てだった。シャピロは言うのだった。
「ロッサめ、所詮は私から離れることができんか」
「こいつまだ言うんだな」
「そうだな」
 盾人と弾児も呆れている。
「自分がここまでわからないのもな」
「本当に喜劇だな」
「小者だ」
 ガスコンも太鼓判を押すまでに。
「所詮はな」
「じゃあ今から」
「また倒しますか」
「無人機を」
 彼等は戦闘に入る。そしてだった。
 そのロッサはだ。離れた場所から冷たい目で彼を見ていた。
「精々頑張りなさい、シャピロ」
 もうそこには一片の愛情も残っていなかった。
「貴方が奴等を足止めしている間に私は」
「藤原、結城」
「何だ?」
「何だってのよ」
「そしてロンド=ベルよ」
 右肩を震わせたまま。憎悪に満ちた声を出していた。
「ここから手前は」
 今言ったのは。ヤザンだった。
「御前達の存在を抹消してやろうと言う」
「御前達の存在を抹消してやろう!」
 そのものずばりだった。
「この私がな!と言う」
「この私がな!・・・・・・なっ!?」
「ほれ、予想通りだったな」
 不敵に笑ってみせるヤザンだった。
「もう手前の言うことも考えることも丸わかりなんだよ」
「くっ・・・・・・」
「何もかもがな」
「つまりだ。御前さんはもうな」
 ジェリドも完全に馬鹿にした調子だった。
「終わりってことなんだよ」
「おのれ、まだ言うのか人間共が」
「俺は確かに人間さ」
 それを隠そうともしない今のジェリドだった。
「それはあんたもだ」
「何だと、神であるこの私をまだ」
「だからあんたは神じゃねえんだよ」
 やはり見下している。
「人間なんだよ、しかも下らない奴だな」
「おのれ、貴様もまた」
「ああ、悪いがあんたの相手は俺じゃねえ」
 シャピロに向かわず他の敵を倒しているのであった。
「おい、行けダンクーガの兄ちゃん達よ」
「ああ、わかってるぜ」
 忍がだ。また前に出てだ。
「行くぜ沙羅!」
「忍!」
「今こそ俺達の怒りの炎であいつの野望を焼き尽くす!」
「シャピロの奴を」
「そうだよ、沙羅!」
 雅人も沙羅に言ってきた。
「その為にここまで来たんだろ!」
「ああ、その通りさ」
「沙羅、心を澄ませろ」
 亮は彼女の心を見ていた。
「そして澄んだ心でだ」
「その通りだ」
 アランのブラックウィングが今合さった。ファイナルダンクーガになった。
 その力の中でだ。アランはさらに言ってきた。
「御前の中には全ての熱い想いが入っているのだ!」
「皆・・・・・・」
「用意はいいよな!」
 忍も当然いる。
「沙羅!」
「ああ!」
「奴をぶっ飛ばすぜ!」
「そうだね、やるよ忍!」
 沙羅にもう迷いはなかった。そしてだった。
 そのまま向かうのであった。シャピロは。
「愚かな、やはり神に歯向かうか」
「覚悟しやがれシャピロ!」
 忍が今突っ込む。仲間達、そしてダンクーガと共に。
「やあああああああってやるぜ!」
「ならばだ」
 シャピロも動いた。そして。
 その目が光りだ。攻撃を放った。
 光がダンクーガを襲う。しかしだった。
 それはだ。断空砲に一閃されて消されてしまった。
「何っ!?」
「残念だったな!」
「私の攻撃を無効化したというのか」
「手前の癖がな!」
 忍は目を怒らせる彼にまた返した。
「機体にまで出てるんだよ!」
「何っ!?」
「あんたはいつもそうさ」
 沙羅も彼に言う。
「他人を見下してばかりで」
「それがどうしたというのだ」
「自分の欠点には目をつぶる!」
 まさにシャピロである。
「気付きもしないんだ!」
「己を知れば百戦危うからず」
 亮もいる。
「その言葉、忘れたようだな」
「孫子か」
 今まさに思い出した。その通りだった。
「それか」
「所詮はあんたは」
 雅人はよりはっきりしていた。
「人間なんだよ!」
「シャピロ=キーツ!」
 アランも今彼を見据えている。
「貴様の野望はここで潰す!」
「だが、私はこれからだ」
「だから何度目だっての」
「その言葉」
 またロンド=ベルの面々の冷めた言葉だ。
 そしてだ。ゼンガーとレーツェルが告げた。
「御前は自分の欲望に勝てなかった」
「我々に傲慢な神なぞ必要ない」
 二人も言う。
「それこそが未熟である証拠!」
「そのこと理解してもらおう!」
「私の運命も存在も否定する気か・・・・・・」
「小器!!」
 ゼンガーは一喝した。
「所詮はその程度!」
「おのれ・・・・・・」
「いっけえええええ!!」
 そしてだ。断空砲のフォーメーションが来た。
 それの直撃を受けた。デザイアーが大破する。
「やったか!?」
「これで!」
 しかしだった。シャピロは生きていた。そしてだった。
「まだだ!」
 気力を振り絞って立ちだ。また蘇ってきた。
 その彼を見てだ。誰もが目を瞠った。
「まだ戦う気なの!?」
「この意志と執念が」
「奴の力なのか」
「それなら!」
「話は簡単だぜ!」
「ああ、そうだ!」
 忍は仲間達に答えた。
「倒すだけだ!」
「そうだね、確かにね」
「それしかないよね」
「全くだ」
 沙羅達は彼のその言葉に頷いた。そうしてだった。
「じゃあ忍」
「今度でね」
「決めるぞ」
「ああ、シャピロ!」
 剣を構えながらの言葉だった。
「これで終わりだ!」
「まだだ・・・・・・!」
 しかしシャピロはまだ言う。
「私はまだ倒れる訳にはいかない!」
「はい、神だからだよな」
「それしかないからね、こいつ」
 ロンド=ベルの面々の言葉は冷たい。
「けれどそれもこれで」
「遂に」
「この私を認める全ての者にだ」
 これがシャピロの本音だった。
「鉄槌を下すまでは!」
「手前は自分が認められないことをひがんでるだけだ!」
 忍はその彼をこう言い捨てた。
「そんな下らねえ奴に負けてたまるか!」
「藤原、まだ私を愚弄するか!」
「愚弄!?真実を言ってるだけだ!」
 そう言いながらだった。剣を構えてだった。
「シャピロ、これで終わりだ!」
「むっ!?」
「俺達の怒りを」
 こう言ってだった。
「俺達の本当の力をここで!」
「よし!」
「あれだね!」
「あの技を!」
「ああ、アグレッシブモードチェンジ!」
 五機に分かれた。そしてだ。
 それぞれの機体でだ。デザイアーに攻撃をかけた。 
 五つの方向からの体当たりはだ。シャピロもかわせなかった。
「ぐっ!?」
「これが俺達の獣の力だ!」
 忍はその鷲で体当たりを仕掛けていた。それが止めだった。
「どうだ、シャピロ!」
「おのれ・・・・・・」
 しかしだった。彼はまだ言うのであった。
「私はまだ・・・・・・」
「観念しな!」
 その彼に沙羅が言う。
「あんたの野望はこれで終わりだよ!」
「まだだ!」
 シャピロはまだ諦めていなかった。そしてだ。
「くっ!」
「!?逃げた!」
「この期に及んでかよ!」
「何て往生際の悪い奴だ!」
 皆これには呆れた。しかしだった。
 すぐに冷静になってだ。その逃げ先を探した。
 それがアステロイドベルトにある。廃棄された基地だった。
「バルマー帝国の基地だな」
「そうね、あれはね」
「かつてはそうだった場所か」
「あいつはあそこに」
「それではだ」
 葉月博士が言った。
「皆、いいな」
「ええ、じゃあ」
「あそこに入って」
「それで」
「幸い大きな基地だ」
 博士はこのことも確かめていた。
「このまま中に入りだ」
「そしてですね」
「そのうえで」
「今度こそあの男を倒す」
 そうするというのだった。
「それでいいな」
「ええ、それしかありませんしね」
「それなら」
「総員突入だ」
 博士は指示を出した。
「いいな」
「よし、覚悟しやがれ!」
 忍がまた叫んだ。
「手前のその往生際が悪いのもうんざりだぜ!」
「全くだよ」 
 沙羅も言う。
「いい加減終わりにしたいけれどね」
「ああ、けれど今度こそ本当に終わりだ」
 忍はその辛そうな顔の沙羅に告げた。
「いいな、だからな」
「わかってるさ、それはね」
 こう言葉を交えさせてだった。彼等は基地の中に入った。そしてそこがだ。遂に神になろうとした男の墓標になるのであった。


第六十一話   完


                                        2010・9・26
       

 

第六十二話 シャピロの末路

             第六十二話 シャピロの末路
 基地に入るとだ。敵がもういた。
「また無人機か」
「そうね」
「やっぱり人は残ってないんだな」
「あいつの周りには」
「シャピロ・・・・・・」
 沙羅はダンクーガの中で呟いていた。
「決着をつけるのに誰の手も借りないよ」
 こう呟くのだった。
「あたし自身でケジメをつけるよ」
「!?危ねえ!」
 先頭を行くダンクーガに攻撃が来た。忍はdナンクーガをすぐに動かしてそれをかわした。
 そしてだ。攻撃がした方を見るとだ。デザイアーがそこにいた。
「藤原、よくかわしたな」
「シャピロ、そこか!」
「流石は野獣の本能を宿した獣戦機隊の者だ」
 こう言うシャピロだった。
「それは褒めてやろう」
「手前に褒められても嬉しくとも何ともないぜ」
「そしてだ」
 また言うシャピロだった。
「貴様等には罰を与える」
「またかよ」
「だから何度言えば気が済むんだよ」
「全く」
 ロンド=ベルの面々もいい加減突っ込み疲れてきていた。
「そればっかりだし」
「他には言葉ないのかな」
「神様って言う割にはボキャブラリーがね」
「ないっていうか」
「この私を認めず、この私の意に沿わなかった貴様等には絶望を味あわせてやろう」
「この状況でかよ」
 シンが言った。
「どうやってだよ」
「残ってるのはあんただけじゃない」
 ルナマリアも言う。
「無人機も。残り十万ってところね」
「へっ、十万なんかな!」
「僕達なら!」
「一瞬で終わる」
 オルガ、クロト、シャニも言う。
「おっさん、あんた馬鹿にも程があるな!」
「っていうか自分のことわかってないしね!」
「馬鹿の極み!」
「おのれ、人間共が」
 シャピロはその三人にも怒りの目を向けた。
「貴様等も私を」
「やっぱりあんたは変わってないよ」
 沙羅がその彼にいった。
「そうやって自分の力を過信するところはね」
「私がバルマー帝国軍にその身を寄せた時」
 その沙羅を見据えての言葉だった。
「御前はそれについてこられなかった」
「ああ、あの時かい」
「そうだ、あの時だ」
「あの時のあたしはどうかしていたのさ」
 今はこう言う沙羅だった。
「地球を異星人に売り渡そうとするなんてね」
「あの時にだ」
 だがシャピロはまだ言う。
「御前と私を結ぶ赤い糸は断ち切られたのだ」
「いい加減にしなよ!」
 沙羅は言い捨てた。
「そんなものは最初からないんだよ!」
「何っ!?」
「あんたは神なんかじゃない!あたし等と同じ人間だよ!」
「では教えてやろう」
「何をだよ」
「私が神に選ばれた者である理由をだ」
 それを言うというのである。
「今からだ」
「へえ、何だいそれって」
 沙羅も一応聞く素振りは見せァ。
「ただね」
「ただ。何だ」
「生きるか死ぬかはこのあたしに選ばせてもらうけれどね」
「私は地球にいた頃だ」
 シャピロは話をはじめた。
「ある場所で神の音」
「神の音?」
「何それ」
 ロンド=ベルの者達もこれにはいぶかしんだ。
「何か気になるな」
「そうね。やっぱりね」
「様々な音色を持った宇宙音を聴いたのだ」
「それがか」
「神の」
「その調べは宇宙の平和のハーモニーと言ってもいい」
 シャピロは言うのだった。
「そして私は知った」
「何をなんだ?」
「それで」
「この銀河を司る絶対的な存在」
 こう話すシャピロだった。
「言い換えれば運命というものをだ」
「絶対的な存在」
 沙羅もそれを聞いて呟く。
「運命・・・・・・」
「その調べはだ」
「ああ」
「何だってんだ?」
「私に教えてくれたのだ」
「教えた?」
「まさかそれが」
「その乱れがだ。銀河に終焉が迫っていることを」
「銀河の終焉!?」
「それこそが」
「俺達が目指している」
「その頃だった」
 シャピロは自分だけで話していく。
「帝国軍が地球にやって来た」
「その時だったのか」
 マーグがそれを聞いて言った。
「貴様が聴いたのは」
「地球の運命は動きだした」
 そうだったというシャピロだった。
「これが神の啓示でなくて何なのだ」
「さてな」
「手前のわかるものじゃないかもな」
「そして宇宙の神は私に言ったのだ」 
 シャピロはさらに話す。
「宇宙のハーモニーは破壊された」
「それでなのか」
「こいつがこうなったのは」
「成程ね」
「シャピロ、この私が神となり」
 そしていつもの言葉だった。
「この宇宙を取り押さえろとな」
「それでなのかい」
 沙羅が彼に言い返す。
「地球を捨てて今に至るのかい」
「奴等についたのはだ」
「どうしてなんだい?」
「この銀河の情報を集める為に過ぎない」
「利用するつもりだったのかい」
「そうだ」
 それだけだというのだ。
「所詮は捨て駒だ。私にとってはな」
「御前もな」
「そうだったけれどな」
 ここでも冷たいロンド=ベルの言葉だった。
「所詮こんな奴はな」
「誰も切り捨てるさ」
「そしてだ」
 だがシャピロはここでも彼等の言葉を聞かない。
「私はムゲ帝王と出会い地球にだ」
「地球に?」
「っていうと」
「宇宙の神に接触する為の鍵を見つけた」
 そうだったというのだ。
「それこそがだ」
「あの子だね」
 沙羅はすぐに察した。
「イルイだっていうんだね」
「そうだ、あの娘こそだ」
 シャピロはその通りだと返した。
「神の子だ。そして」
「そして?」
「それと共にある私はだ」
 言った。まただ。
「神の力を手にするのだ!」
「そんなことはさせないさ!」
「ああ、そうだ!」
 沙羅だけでなく忍も言う。
「シャピロ、あんたを知ってね」
「何だ、一体」
「一つだけ喜びを見つけたよ」
 こう彼に告げるのだった。
「それはね」
「何だというのだ」
「あたしが」
 沙羅自身がというのだった。
「あたしがあんたと殺すというね!」
「無駄だ!」
「何だって!?」
「ここに置いているマシンはだ」
 その少なくなったマシン達のことだ。
「私が選んだ最強のマシン達ばかりだ!」
「むっ!?」
「見ろ、このマシン達を!」
 見ればだ。サイコガンダムやデストロイガンダム、その他にはグレートマジンガーやゲッターのコピーまである。そうしたものばかりだった。
「このマシン達に貴様等は勝てはしないだろう」
「おい、そこの大馬鹿野郎」
 ディアッカが敵愾心を剥き出しにして彼に言う。
「手前何もわかってねえんだな、本当に」
「何っ!?」
「今時こんなのな!」 
 言いながら前にいるデストロイガンダムの一機に照準を合わせる。
 そしてだ。フリーダムの一斉攻撃を浴びせたのだった。
 七色の光が巨大なガンダムを狙いだ。そして。
 一気に貫いた。後に残ったのは爆発だけだった。
 一機いきなり撃墜してみせてから。またシャピロに返した。
「どうってことねえんだよ!」
「馬鹿な、そのガンダムは」
「俺達はな、数えきれない程の戦場を潜り抜けてきたんだよ」
「そうだ、それこそ貴様が経験したことのないような戦いをだ!」
 ここでイザークも言う。彼はサイコガンダムを真っ二つにしていた。
 その大爆発の前でだ。彼は言うのだった。
「その中で強くなってきた!」
「それでどうして今時こんな連中にやられるんだよ!」
「ましてよ!」
「そうだ!」
 プルとプルツーはグレートマジンガーの編隊を次々と撃墜している。そのファンネルで。
「中に鉄也さんや竜馬さん達がいるならともかく」
「誰もいないのではどうということはないんだよ!」
「くっ、馬鹿な」
「馬鹿なじゃないよ」
 沙羅が苦い顔になるシャピロに対して言った。
「あんたがわかっていないだけなんだよ、何もかもね」
「おのれ・・・・・・」
「覚悟はいいかい?」
 冷たい言葉だった。
「これで終わるよ」
「おのれ、何時の間にここまで」
 ファイナルダンクーガはもうデザイアーの前まで来ていた。そうしてだった。
 デザイアーの攻撃をかわしそのうえで、だった。
「行くぞ皆!」
「ああ!」
「あれだね!」
「あの技でか」
「こいつの止めにはあれが一番だ」
 こう仲間達に返してだった。そして。
 その断空剣を抜き。そのうえで。
「愛の心にて」
「悪しき空間を断つ!」
「行け、藤原!」
「こいつで止めだ!」
 剣から赤い一条の光が放たれ。それを大きく振り被り。
 そしてだった。一気に振り下ろしたのだった。
「ファイナル断空光牙剣!」
「これは!」
 それでデザイアーを両断した。光が過ぎ去った。
 その一撃でだった。全ては終わった。
「お、おのれ・・・・・・」
「観念しな、シャピロ!」
「いや、まだだ」
 デザイアーが大破してもだ。彼は諦めようとしなかった。
 まだ動こうとする。執念だけは見事だった。
「私は、まだ・・・・・・」
「悪いけれどね」
 ここで一機のムゲ帝国のマシンが出て来た。
「それでは困るのよ」
「何っ!?」
「ふふふ、シャピロ」
 ロッサだった。彼に対して言うのだった。
「あの沙羅という娘と顔を合わせるのがそんなに嫌なのかしら」
「ロッサ、貴様か」
「神を名乗る男にしては」
 完全に見下した言葉だった。最早そうなっていた。
「無様な結末ね」
「貴様、何をしに来た」
「お別れを言いに来たの」
 そうだというのだった。
「貴方にね」
「何っ!?」
 ゼイ=ファーからのビームでだった。全ては終わった。
「ぐあっ!」
「愚かな男ね」
 今は笑っていた。馬鹿にした笑みだった。
「陛下は最初から貴方なぞ信用してはいなかったわ」
「お、おのれ・・・・・・」
「三将軍もね」
 彼等もだというのだ。
「信用していなかったわ」
「馬鹿な、私はあの連中を」
「騙せていた?それが甘いのよ」
「甘いというのか、この私が」
「貴方のその野心は誰が見てもすぐにわかるわ」
 ロッサのこの言葉には誰もが納得した。
「そうだよなあ」
「それにどういう奴かもな」
「すぐにわかるしな」
「見え見えだし」
「ちゅうかあいつあれでばれてないと思ってたんか?」
 ロドニーはここまで言う。
「アホやろ、そりゃ」
「愛を捨て去ってこそ神になり得る」
 シャピロの言葉をそのまま返していた。
「確かそう言ったわね」
「それがどうした」
「けれどそうかしら」
「私の言葉に誤りがあるというのか」
「愛を捨てることなく超えたところに」
 これはロッサの言葉だ。
「神がある。違うかしら」
「私の言葉を否定するか、女ごときが」
「捨てる捨てないというところにこだわったところに」
 ロッサの言葉はだ。まさに断罪であった。彼女は今それをしていた。
「貴方の支配者としての限界があったのよ」
「神に限界なぞ・・・・・・」
「貴方は神ではないし」
 口から血を流し苦悶の表情のシャピロへの言葉だ。
「所詮」
「所詮というか」
「貴方は陛下の偉大な力を超えられなかったのよ」
「うう・・・・・・」
「そして」
 さっと動いてだ。ある少女を捕らえた。それは。
「目的は神の子か」
「そう」
 まさにその通りだというのだった。
「陛下はこの娘を手に入れる為に」
「どうしたというのだ」
「地球に軍を送り込んだのよ」
「では私は最初から」
「そうよ、捨て駒だったのよ」
 それに過ぎないというのだった。
「残念だったわね」
「くっ・・・・・・」
「この娘は私が陛下の下に届けるわ」
「おのれ、それは」
「安心して死になさい」
 このうえなく冷たい言葉をだ。ロッサも出した。
「シャピロ、私が愛するには足りない男だったわ」
 この言葉をかけてから姿を消すのであった。そして。
 残ったシャピロはだ。息絶えようとする中で言うのだった。
「天よ砕けよ!宇宙よ、御前は再び」
「!?こいつ」
「まさか」
 彼の変化に誰もが気付いた。
「断末魔で」
「遂にか」
「暗黒の世界に姿を隠せ!神が今ここに誕生し」
「狂ったな」
「ああ、今完全に」
「終わった」
 最早だ。シャピロはそうなってしまっていた。
 その狂気の中でだ。さらに叫ぶのだった。
「神が自らの裁きでこの世界を無のものとする」
「いや、それは最早」
「できないよ、少なくともあんたにはね」
「よいか宇宙よ!」
 叫び続けるシャピロだった。
「今こそ神の足下にその永遠なる魂を委ねるのだ!」
 後は狂気の笑いだけだった。それを見てだ。
 沙羅はだ。忍に言った。
「消し飛ばしていいよ」
「ああ、わかった」
 ファイナル断空砲が放たれた。それで終わった。
「あんた、馬鹿だよ・・・・・・」
「沙羅・・・・・・」
「総員撤退だ」
 葉月博士が命じた。
「これでな」
「はい、それじゃあ」
「これで」
 総員基地を去る。基地は爆発しそのままシャピロの墓標となった。そしてであった。
「後は」
「そうよね」
「イルイちゃんが」
「どうしよう」
「話は簡単だぜ」
 今言ったのは宙だった。
「俺達が連中の城に殴りこんで叩き潰せばいいんだよ」
「そうするっていうのね」
「ああ、そうだ」
 こう美和にも返す。
「今からな」
「それはその通りにしても」
「それでも」
「それでも?」
 宙は周りの雰囲気の変化に気付いた。
「何があるんだ?」
「ムゲ帝国って何処にあるんだ?」
「一体」
「そうだったな」
 その言葉を聞いてだ。宙も顔を歪めさせた。
「それがわからなかったな」
「ああ、そうなんだよ」
「今まで向こうから来るだけで」
「こっちは全然わからなかったし」
「連中の本拠地が何処にあるのか」
 そうなのだった。ここでこのことがあらためてわかったのだった。
 しかしだ。ここで言ったのは。
 ヴィレッタだった。彼女が出て来てだ。
「それならだ」
「大尉、まさか」
「考えが」
「一応はな」
 あると言ってだ。話をはじめるのだった。
 沙羅はだ。この時医務室にいた。
 気付けばだ。ベッドの中だった。
「ここは」
「気付いたな」
 すぐに忍が声をかけてきた。仲間達もいる。
「よかったな」
「大空魔竜の医務室だよね」
「ああ、そうだ」
 忍が答える。
「そこさ」
「一体何が」
「御前はあの戦いの後だ」
 アランが話してきた。
「気を失いここに運び込まれたのだ」
「そうだったんだ」
「うん、そうなんだ」
 雅人も話してきた。
「俺達がここまで運んだんだよ」
「有り難う・・・・・・」
 そのことに素直に礼を言った。
「おかげで助かったよ」
「最後の戦いだったからな」
 亮がシャピロとのことを話した。
「張り詰めていたものが切れたんだろうな」
「そう、それでシャピロは」
「今度こそな」
 忍が話す。
「完全に消し飛んだぜ」
「・・・・・・そう」
「しかしな」
 ここでまた言う忍だった。
「センチな気分になっている時間はないぜ」
「えっ!?」
「そのムゲ帝国のことだ」
「連中のことが」
「ああ、あいつ等ともな。決着をつけねえとな」
 忍は強い表情になって話した。
「最後の戦いにな」
「そうだね、それがあったね」
「ああ、じゃあ行くか」
「そうだね。それじゃあ」
 こう話してだった。沙羅は再び起き上がりだ。戦いの場に向かうのだった。
 ヴィレッタは一同に話していた。
「まずはだ」
「ああ」
「それで一体」
「どうやってムゲ帝国のところまで」
「敵が出て来たその時にだ」
 ヴィレッタはそこから話す。
「まずは退ける」
「勝つってことかよ」
「そうだ、そしてだ」
 マサキに応えながら話していく。
「それを追撃してそのうえでだ」
「ムゲ帝国に入る」
「そうするんですね」
「そうだ、敵が入るその瞬間に我々も入る」
 まさにそうするというのである。
「これでどうだ」
「ううん、それしかないですよね」
「そうだよな、向こうの場所がわからないし」
「危険だけれどそれしかない」
「一か八かだけれど」
「危険は承知だ」
 ヴィレッタは既にそれは考えていた。
「だが。それでもだ」
「ムゲ帝国を倒さないといけない」
「そしてイルイちゃんを救い出す」
「絶対に」
「その通りだ。ではいいな」
「はい」
「それなら」
 皆それでいこうと覚悟を決めた。しかしその時だった。
 不意にだ。彼等の前にだった。巨大な黒い穴が出て来た。
「!?穴!?」
「まさか」
「これは」
「うっ・・・・・・」
 そしてだった。ここでだ。クスハが頭を両手で抑えだ。苦しい顔を見せた。
「イルイちゃん!?」
「間違いない・・・・・・」
 ブリットもだった。クスハと同じことになっていた。
「イルイ、そうなのか」
「ムゲ帝国の世界へ」
「俺達を導いているのか」
「だから」
「どうする?」
 ここで言ったのは凱だった。
「この穴に入るか?皆で」
「はい、その通りです」
 そしてだ。新たな者が出て来たのだった。
「ここはそうしなければなりません」
「出て来やがったな」 
 マサキが彼のその姿を見て言った。
「シュウ、相変わらずいいところで出て来るな」
「ふふふ、私は時を見る男ですから」
 シュウはいつもの笑みでマサキに返した。
「だからですよ、マサキ」
「あの穴のことはよくわかってるんだな」
「はい」
 まさにそうだというのだった。
「存じているつもりです」
「あの穴の向こう側にか」
「ムゲ帝国の宇宙、そしてムゲ=ゾルバトス皇帝がいます」
 シュウはこう一同に話す。
「あの中にこそです」
「そう、それだったら」
 ミサトが言った。
「迷う必要はないわね」
「そうね」
 カナンもその言葉に頷く。
「それなら。やっぱりここは」
「全軍突入だ」
 タシロが言った。
「いいな、それで」
「はい、それなら」
「今から」
「待ってろよムゲ野郎!」
 忍はここでも叫んだ。
「今度はこっちが手前の家に乗り込んで暴れてやるぜ!」
(シャピロ)
 沙羅は心の中でシャピロの名前を出していた。
(ムゲを倒せばあんたとは本当にさよならだよ)
 こう呟いていた。
(それまではあんたのこと)
 そしてだ。次の心の中の言葉は。
(覚えておいてやるよ)
 こう呟いてだった。戦場に向かうのだった。
 雅人と亮はだ。二人で話をしていた。
「シャピロも馬鹿だったね」
「ああ、力だけではな」
「何にもなりはしない」
「人の心はどうすることもできん」
 二人でこう話すのだった。
「それだけじゃね」
「何にもなりはしない」
「では皆さん」
 シュウは一同に促した。
「行きましょう」
「はい、シュウ様」
「いざ」
 モニカとサフィーネが彼の言葉に応える。
「参らないわけではないですがいざ参りましょう」
「ムゲ帝国との決戦の場に」
 このこと自体はよかった。しかしであった。
 モニカの今の言葉にはだ。さしものシュウも突っ込まずにはいられなかった。
「あの、モニカ」
「はい?」
「また文法がおかしいのですが」
「あら、そうであるのではないのではありませんか?」
「何が言いたいんだ?」
「さあ」
「最早何が何だか」
 皆もモニカの今の言葉には唖然だった。しかしとにかくだった。
 今その中に入るのだった。ムゲの宇宙に。


第六十二話   完


                                   2010・9・28   

 

第六十三話 ムゲ宇宙での戦い

                 第六十三話 ムゲ宇宙での戦い 
 そこにはだ。紫と銀の機械を思わせる男がいた。
 そしてその前にだ。三将軍が集まっていた。
「ご苦労だったな」
「はい」
「有り難きお言葉」
 まずはこう返す三人だった。
「しかし陛下」
「我々はあの者達との戦いで」
「相当数の戦力を失いました」
 このことには項垂れる彼等だった。
「これは我等の失態」
「真に申し訳ありません」
「だが目的は果たした」
 皇帝はそれでいいというのだった。
「それならばだ」
「よいのですか」
「それでは」
「そうだ。あの男」
 シャピロのことである。
「所詮はな」
「はい、最後の最後までです」
「気付きませんでした」
「全くもって」
 こうそれぞれ言うのだった。
「陛下の手の中で踊っていたことには」
「馬鹿な男よ」
「全くだ」
 三人共シャピロへの嫌悪と侮蔑を隠そうともしない。
「案内役の地球人ごときがだ」
「裏切り者風情が」
「我等を指揮するなぞ」
 こう言っていってだった。
「我々を指揮するなぞ」
「分不相応にも程がある」
「何が神だ」
 まさに全否定であった。
「思い上がりもはなはだしい」
「全くだ」
「無様な末路を遂げたようで何よりだ」
「それでだ」
 ここでまた皇帝が言った。
「もうすぐだ」
「はい、もうすぐ」
「何が」
「ロッサがあの娘を連れて戻って来る」
 言うのはこのことだった。
「そうなればあの宇宙に用はなくなる」
「では」
「最早」
「そうだ、二つの世界をつなぐ回廊をだ」
 それをだというのだ。
「閉じるとしよう」
「はっ」
「わかりました」
「そしてだ」
 皇帝の言葉がここで変わった。
「御前達もだ」
「むっ、まだ何かありますか」
「それは」
「長旅の疲れもあろう」
 落ち着いた言葉になっていた。
「御前達もゆっくりと休むがいい」
「はっ、それでは」
「御言葉に甘えて」
 ギルドロームとヘルマットはこれで下がった。しかしだった。
 デスガイヤーだけは残っていた。皇帝はその彼に声をかけた。
「デスガイヤーよ」
「はい」
「不満があるようだな」
 こう彼に声をかけたのである。
「そうだな」
「いえ、その様なことは」
「隠す必要はない」
 皇帝はその彼にまた言った。
「長い付き合いではないか」
「勿体なき御言葉」
「貴様の考えていることはわかる」
 そうだというのだ。
「あのダンクーガなるマシン」
「御存知でしたか」
「そしてロンド=ベルだったな」
 彼等の名前も出すのだった。
「あの者達と決着を着けたいのだな」
「いえ、ですがそれは」
 デスガイヤーは己を押し殺してそのうえで答えた。
「諦めております」
「いや」
「いや?」
「貴様のその望みだが」
 皇帝はその彼に告げるのだった。
「どうやら叶えられそうだ」
「何ですと!?」
「我々は奴等を見くびり過ぎていたようだ」
 こう彼に話すのだった。
「奴等はこの宇宙に向かって来ている」
「そういえば奴等は」
「何度か他の世界にも行っているようだな」
「はい、それが窺えます」
「数が急に増えているからな」
「はい、一瞬で」
 そこからわかるというのだ。
「ですから」
「面白いではないか」
 皇帝の声が笑っていた。
「あの宇宙にこれ程までの強敵がいようとは」
「では陛下」
「二人も入れてだ」
 皇帝はさらに話した。
「四人でまた思う存分戦おうではないか」
「我等で再び」
「さあ立てデスガイヤー」
「はっ」
 控えていたが今ここで立つのだった。そしてだった。
「有り難き御言葉」
「嬉しいのだな」
「身に余る光栄です」
 ここまで言う彼だった。そしてだった。
「このデスガイヤー若き日を思い出し」
「うむ」
「思う存分戦う覚悟」
「ふふふ、言ったな」
「はい、ダンクーガよ」
 立ち上がるとだ。そこにダンクーガを見ていた。
「貴様等はこのデスガイヤーが倒す!必ず叩き潰すぞ!」
「それでこそデスガイヤーだ」
「燃える、燃えるぞ!」
 その喜びを完全に解き放っていた。
「戦いの血が騒ぐ!」
「ギルドロームとヘルマットにも伝えよ」
「はっ」
「奴等を盛大に迎えるとしよう」
 こうしてだった。全軍で出るのだった。
 そこにだ。ロッサも来た。
「ロッサよ」
「はっ、陛下」
 皇帝の言葉に応えたのだった。
「ルーナ=ロッサ只今帰還しました」
「御苦労だったな」
「有り難うございます」
 まずはこのやり取りからだった。
「ご所望の娘はここに」
「その娘だな」
「はい、その通りです」
「よくやった」
 皇帝はロッサにまた労いの言葉をかけた。
「褒めてつかわそう」
「有り難き御言葉。それでは」
 イルイを皇帝の下に届けようとする。しかしだった。
 突如としてだ。暗黒の世界が動いた。
「!?」
「何だこれは」
「一体」
 三将軍達がいぶかしむ声をあげた。そこにだった。
「ま、まさか」
「あの連中、もうか」
「来たか」
「なっ、何だ!?」
 ロッサは己の艦の中で驚きの声をあげていた。
「これではもたない!」
「!あれは」
「光!」
 ムゲ帝国軍の将兵が前を見て言う。そこから。
 ゲートが開きだった。そこから。
 ロンド=ベルが来た。すぐに布陣する。
 ロッサはその彼等を見てだ。また叫んだ。
「な、何故ここに」
「・・・・・・・・・」
 そしてイルイは光の玉になって艦の外に出た。そうしてだった。
「!?一体何処に!」
「あれは!」
 レーツェルその光の玉を見て言う。
「イルイか」
「あれがだな」
 そしてそれは皇帝もだった。
「鍵となる娘か」
「イルイちゃん!」
 クスハも叫ぶ。その光の玉はだ。
 何処かに消えた。そしてだった。
 ロッサはその一部始終を見て呆然となっていた。
「鍵が、陛下が求めておられた鍵が」
「最後の最後でか」
 皇帝はそれを見ても冷静だった。
「鍵は去ったか」
「しかしよ」
 甲児が言った。
「イルイの奴は何処に行ったんだよ」
「いや、それよりも今はだ」
 だがここでアムロが言った。
「目の前の敵だ」
「ああ、そうだな」
 甲児もその言葉に頷く。見るとだった。
 既にかなりの数の敵がだ。展開していた。
「おいおい、すげえなこりゃ」
「そうね」
 ジュドーとルーが言う。
「着いた途端にお出迎えかよ」
「準備万端ね」
「しかしここって」
「何?」
 ビーチャとイーノは眉を顰めさせている。
「ねっとりとしたな」
「嫌な感じがするけれど」
「人がいないってのに」
「人の感覚がして」
 エルとモンドも言う。
「悪意っていうかね」
「真っ暗な中にね」
「悪意の塊・・・・・・だな」
「そうね」
 カミーユとフォウも気付いていた。
「憎しみや悲しみ、怒り」
「そういったマイナスの想念が渦巻いてるわ」
「別にな」
 忍もだった。
「太陽が輝いて花が咲き乱れてるとかな」
「そういうのは考えなかったのね」
「ああ、そうだ」
 ヒメにもこう返す。
「しかしここはあまりにもな」
「まるで地獄だね」
 沙羅も顔を顰めさせる。
「死神達がパーティーをはじめそうだよ」
「ちょっと、沙羅」
 雅人は怖がっていた。
「止めてよ、そんなの」
「辿り着いた場所がだ」
 亮も暗い声であった。
「ここか」
「戦ってそれで辿り着いたのがね」
「地獄ってわけだな」
 沙羅と忍がまた言った。
「地獄を見る為に戦ってきたんじゃないけれどな」
「戦いの向こうには幸せがな」
「ああ。明るい光がね」
「あるんじゃないかって思ってたんだがな」
「いや、それは違う」
 アランがここで二人に言った。
「この先にそれはある」
「そうですね」
 シーブックはアランのその言葉に頷いた。
「ここでの戦いに勝って」
「そうだよな。さっさとこんなところはよ」
 ビルギットが言う。
「おさらばしようぜ」
「悪意があまりにも渦巻いていて」
 セシリーも表情を暗くさせている。
「気持ち悪いし」
「来たなダンクーガ」
 その彼等にギルドロームが告げてきた。
「そしてロンド=ベルよ!」
「ギルドロームか」
「そして他の三人も」
「勢揃いか」
「如何にも」
「その通りだ」
 ギルドロームとヘルマットも言ってきた。デスガイヤーとギルドロームはそれぞれのマシンに乗っておりヘルマットは戦艦の中にいた。
「これまでの敗北はだ」
「この戦いでだ」
「必ずや注ぐ」
「今!」
 特にデスガイヤーが燃えていた。
「貴様たちをこの地獄の底へ!」
「また地獄かよ」
「もうわかってるのにね」
「永遠の苦しみの中へ沈めてくれる!」
「やれるもんならやってみやがれ!」
 忍はそのデスガイヤーの言葉に返した。
「地獄とか悪夢とかそんなハッタリに騙されてたまるか!」
「藤原中尉」
 アンナマリーが彼に言う。
「いつものあれを」
「頼んだぜ!」
 ハッターも言ってきた。
「ここはな!」
「ああ、ここ一番だ!」
 忍もリクエストに応える。
「行くぜ皆!」
「よし!」
「それじゃあ!」
「ムゲ野郎、覚悟しろ!」
 そうしてだった。
「やってやるぜ!」
「よし来た!」
 こうしてムゲ帝国軍と最後の戦いに入ろうとする。しかしだった。
 暫く戦っているうちにだ。あることに気付いたのだ。
「!?何か」
「これって」
「身体の自由が」
 このことに気付きだしたのだ。
「まさかこれは」
「またあいつが」
「あのギルドロームが」
「どうだ、地球人よ」
 実際にだ。彼はこう言ってきたのだった。
「我等の宇宙と我が術の力は」
「くっ、やはりか」
「あいつが」
「そうして」
「その通りだ」
 まさにそうだというのだった。
「我が術でだ。貴様等を倒そう」
「あの機体からか」
 カミーユも言う。
「何らかの力で俺達の精神を攻撃しているのか」
「けれどそれなら」
 ウッソがカミーユに続く。
「僕達の精神力で押し切れば」
「いや、それはどうもだ」
 だがそれにだ。オリファーが言う。
「望み薄だな」
「えっ、どうしてですか、それは」
「ここは俺達の宇宙じゃない」
 だからだというのだ。
「この悪意に満ちた宇宙の力をだ」
「この宇宙の力を」
「奴が利用しているならだ」
「くっ、そうですね」
 ここでウッソもわかったのだった。
「その効力は以前の比ではありませんね」
「だからだ、ここはだ」
「地の利は向こうにあるのね」
 マーベットも言った。
「そういうことね」
「中々以上に厄介な話ね」
 ジュンコも顔を曇らせて言う。
「それは」
「そしてだ」
 ギルドロームはさらに言ってきた。
「我が術はこれだけではないぞ」
「!!」
「ぐっ!!」
 何人かの動きが止まったのだった。
「だ、駄目だ・・・・・・」
「仲間は・・・・・・」
「仲間は攻撃できない」
「!?おいオルガ」
「クロトもシャニも」
「急にどうしたのよ」
 まずはその三人に異変を見たのだった。
「いきなり動きを止めて」
「何があったんだ?」
「あんた達も活躍してもらわないと困るんだけれど」
「ふむ、流石に味方を攻撃することはないか」
 ギルドロームがここで言った。
「そうか」
「!?手前まさか」
「今度は」
「そうだ、仲間内を仕向けさせたのだがな」
 それだというのである。
「だがそれには耐えるか」
「ブライト艦長」
 クレフが不吉な顔でブライトに言ってきた。
「これはだ」
「まさかあのギルドロームが」
「そうだ、間違いない」
 こう話すのだった。
「強力な志向性の思念を送ってだ」
「それによって」
「我々の頭の中に敵の印象を刷り込みだ」
 そうしているというのである。
「無差別な攻撃衝動を引き出している」
「このままでは危険です」
 プレセアも言ってきた。
「今は皆耐えてくれていますが」
「このまま続けば」 
 アルシオーネも話すのだった。
「同士討ちになります」
「その危険は否定できません」
「その前にだな」
 ランディスが言った。
「あの男を討つしかないな」
「そうよ、やっちゃいましょう」
 プリメーラがランディスの横で彼に告げた。
「さもないと皆が」
「そうだな。だが」
「だが?」
「あの男に辿り着くまでがだ」
 それまでがだと言うのだ。
「厄介なことだ」
「じゃあどうすればいいの?」
「まずはあの男の前の敵を倒す」
 剣を手にして言う。
「全てはそれからだ」
「そうだ、やるんだ!」
 光が彼の言葉に応えた。
「さもないとこの戦い!」
「そうね。意地の見せどころね」
 海も言う。
「あいつをやっつけないとね」
「私達が」
 風もだった。
「負けてしまいますから」
「精神攻撃とは不届き千万なのじゃ!」
 アスカには流石に効いていなかった。童夢の中で足をばたばたさせて怒っている。
「あの緑の男、容赦せぬぞ!」
「はい、ではアスカ様」
「ここは」
 そのアスカにシャンアンとサンユンが言う。
「あの男を倒しましょう」
「まずはそうしないと」
「当然じゃ。行くのじゃ!」
 アスカが言うとであった。
 イーグルもだ。ジェオとザズに話す。
「意識を保つだけでも大変ですが」
「確かにな」
「おいら頭が凄く重いよ」
 こう返す二人だった。
「だがそれでもな」
「ここはね」
「攻撃目標はあの男です」
 こう言ってだった。NSXを前に出す。
 タータとタトラも無事だった。二人もであった。
「いったらんかい!」
「あら、タータも平気なのね」
「当たり前や!あんな気色悪い攻撃に負けるかい!」
 こう姉に返すタータだった。
「あの連中、さっさといてこましたる!」
「そうね。じゃあ私達もね」
「いてこましたるわ!覚悟せんかい!」
 三隻の戦艦が最初に動いてだった。攻めるのだった。
 その中でだ。カルディナがアスコットとラファーガに話す。
「なあ、この戦いな」
「そうだね」
「想像以上に辛い戦いになるな」
「とにかくや」
 カルディナは珍しく暗い顔になって話す。
「あのひび割れた顔の奴何とかせんとな」
「そうだね、蝙蝠みたいなのも赤いのも気になるけれど」
「まずはあの男だな」
「そういうこっちゃな。ここは正念場やな」
 こう話してだった。彼等も精神を使うのだった。
 何とか前進する。しかしそこにムゲ帝国の大軍が来る。
「くっ、何て数なんだ!」
「やっぱり多いな!」
「数こそが力だ!」
 ヘルマットが言ってきた。
「この数でだ。押し潰してやる!」
「五月蝿いんだよ!」
 闘志也がヘルマットに言い返す。
「いちいちな!手前なんかに言われなくてもな!」
「まあ待て闘志也」
「ここは落ち着け」
 ジュディと謙作が彼に言う。
「動揺したらまた仕掛けられるぞ」
「それを忘れるな」
「くっ、忌々しい奴等だぜ」
 それを聞いて静かになるしかない謙作だった。しかしである。
 ダイターンがだ。何とかギルドロームの前に来たのである。
 そしてだ。こう彼に言うのだった。
「中々面白い真似をしてくれたね」
「気に入ってもらえたか」
「嫌な思いはさせてもらったよ」
 これが万丈の返事だった。
「さて、それじゃあね」
「それではだと?」
「決めさせてもらうよ」
「ふん、馬鹿め!」
 ギルドロームが攻撃を放った。
「貴様にこのわしが倒せるか!」
「倒すよ、絶対に」
 こう彼に言うのだった。
「何があってもね」
「ほざけ!」
 万丈とギルドロームの戦いになっていた。
 そしてだ。クサナギがヘルマットの戦艦と対峙していた。
 キサカとトダカがだ。こうユウナに言ってきた。
「まさかと思いましたが」
「我々が敵の将軍の一人の相手です」
「ううん、何かあまり有り難くないねえ」
 弱気な顔を見せるユウナだった。
「っていうかさ。貧乏くじじゃないかな」
「はっきり言えばそうですね」
 アズラエルがその通りだと答える。
「戦艦対戦艦自体が珍しいですし」
「誰でもいいから相手を譲れるかな」
「おい、待て」
 カガリがそのユウナにクレームをつけてきた。
「何で御前はそんなに弱気なんだ?」
「あっ、カガリ」
「敵の将軍を一人倒せるんだぞ。絶好の機会なんだぞ」
「武勲を挙げるってことかな」
「強い敵と戦いたくはないのか」
「戦艦の役目はマシンのフォローなんだけれど」
 ユウナは正論を言っていた。
「それで何で戦艦と戦うのかと」
「いいだろう。クサナギだってこれまで戦艦を沈めてきている」
「それはそうだけれどね」
「じゃあ何でそんなに弱気なんだ?」
「だってエネルギーが減ってるから」
 それが今の弱気の理由だった。
「ここでまずったら。動けなくなるけれど」
「そんなことは気にするな!」
 実にカガリらしい言葉だった。
「一撃で決めろ!それはいけるな!」
「まあそれはね」
 ユウナもそれは大丈夫だと答える。しかしだ。こうも言うのだった。
「ただね」
「ただ。何だ?」
「外すとだよ、その攻撃を」
「ああ、どうなるんだ?その場合は」
「終わりなんだよ」
 そうだというのである。
「それで。エネルギー切れになって」
「後は弾数の兵器だけか」
「それも今かなり使っちゃってるしねえ。だから今は」
「それでも戦うしかないだろう?」
 カガリの辞書に退くという言葉はない。
「違うのか?」
「簡単に言ってくれるね」
「いえ、ここはカガリさんの言う通りですね」
 ところがだった。アズラエルは彼女のその言葉に頷いたのだった。
「やはり」
「あの、それじゃあ」
「一撃にかけましょう」
 こうユウナに話した。
「ここは」
「それしかないんだね」
「はい、まさにそれしかです」
「仕方ないね。けれど」
 ここでユウナの顔が川変わった。
「それならね」
「はい、では」
「よし、エネルギーを集中させて」
 ユウナは遂に指示を出した。
「本当に決めるよ」
「はい、それでは」
「今より」
 キサカとトダカが応えてだった。
 クサナギはヘルマットの戦艦に照準を合わせた。そうしてであった。
 デスガイヤーの相手はだ。彼だった。
「確かダルタニアスだったな」
「ああ、そうだ!」
「俺達だ」
 盾人と弾児が答える。
「俺達で不足とは言わせないからな!」
「ここで倒してやる!」
「ガオオオンン!」
 獅子も吼える。三者一体になっていた。
 デスガイヤーはその彼等を見て言うのだった。
「そうだな」
「どうなんだ、それでよ」
「相手にとって不足はない」
 これが彼の言葉だった。
「俺の全力の相手にな」
「容赦はしねえぜ!」
 盾人は完全に燃え上がっていた。
「力と力の勝負だ!いいな!」
「望むところだ。来い!」
「おう!ダルタニアスの力見せてやるぜ!」
 三将軍達との決戦もはじまった。そうしてだった。
 ロンド=ベルはエネルギーの減少に動けなくなったメンバーを抱えながらも善戦していた。そうして遂にであった。彼が倒れたのだった。
「よし、今だ!」
「むっ!?」 
 万丈はギルドロームの一瞬の隙を見つけて動いた。
 出すのは。あの技だった。
「日輪の力を借りて今!必殺の!」
「ええ、万丈!」
「決めて!」 
 ビューティとレイカが彼の動きを見て言う。
「それで」
「この戦いを終わらせて!」
「サンアタアアアアアアアアアアアック!」
 ダイターンの額から日輪が放たれた。それはギルドロームを撃った。
 そしてその彼にだ。止めが来た。
「ダイタアアアーーーーーーーーーーーンクラアーーーーーーーーーーーッシュ!」
 これで決まりだった。ギルドロームはその動きを完全に止めてしまった。
「ば、馬鹿な!」
「馬鹿なじゃないよ、これは現実だよ」
 こう返す万丈だった。
「御前は負けた。この僕にね」
「この宇宙でわしが負けるなどと」
「悪意を操る者の末路はこんなものさ」
 万丈はまだ諦めない彼に告げた。
「じゃあ諦めるんだね」
「うおおおおおおおおおっ!」
「御前の思い通りになる理性なんてね」
 万丈は断末魔の彼に最後に告げた。
「僕達は最初から持ってはいないのさ」
「ふ、ふう」
「これで何とかね」
「助かった」
 オルガ達動けなくなった三人がこれで楽になった。
 そしてだ。次はだ。
 デスガイヤーだった。ダルタニアスと激しい死闘を繰り広げている。
 だがここでだ。盾人は仲間達に言うのだった。
「おい」
「あれだな」
「ガオオオオン!」
「そうだ、あれで決めるぜ!」
 こう彼等に返してだった。
 そのうえでだ。必殺技に入った。
「行くぜモヒカン野郎!」
「むっ!?」
「これがダルタニアス最大の攻撃だ!」
 こう叫んでであった。その攻撃を放った。
「超空間エネルギー解放!」
「くっ、これは!」
「喰らえええええええええええーーーーーーーーーーっ!!」
 恐ろしいまでのエネルギーがデスガイヤーを襲う。それは彼をしても到底さけきれるものではなかった。
 それを受けてだ。デスガイヤーも動きを止めた。
「さ、再生が追いつかん!」
「よし、やったぜ!」
「ああ、これでな!」
「このままでは!」
「観念しな!」
 盾人がその彼に言う。
「手前の望む力と力の真っ向勝負」
「貴様等は勝ったというのか」
「ああ、そうだ!」
 その通りだと返したのであった。
「勝ったのは俺達だ!」
「これで全ては終わりだ」 
 弾児も言う。
「観念するのだな」
「うおおおおっ!!」
 デスガイヤーも断末魔の声をあげる。
「ムゲ陛下に栄光あれーーーーーーーーっ!!」
 これで終わったのだった。彼もまた。
 そしてだ。クサナギもまただった。照準を合わせそのうえで。
「撃て!」
「撃て!」
 一斉射撃を放った。まさに渾身の攻撃だ。
 それはだ。ヘルマットの旗艦を撃ち抜いた。ユウナはそれを見て叫んだ。
「よし、やった!」
「はい、確かに」
「間違いありません」
 トダカとキサカが彼に言う。
「これで」
「あの戦艦も終わりです」
「うん、一時はどうなるかと思ったけれどね」 
 ユウナもほっとした顔になっていた。
「いやあ、上手くいってよかったよ」
「全くです。さて」
 ここでアズラエルが言ってきた。
「後は最後の言葉を聞くとしましょう」
「ああ、いつものあれだね」
「敵の最後の言葉を聞く」
 アズラエルは微笑んでユウナに話す。
「これは勝者の務めですから」
「アズラエルさんが仰ると意地が悪いようですね」
「ふふふ、そうでしょうか」
 そしてだ。ヘルマットは実際にこう言ってきたのだった。
「おのれロンド=ベル!」
「ふむ、やはりですね」
 アズラエルはヘルマットのその言葉を聞いて言った。
「こうして最後には」
「そうですね。断末魔の」
「言葉が」
 キサカもトダカもそのアズラエルに返す。
「聞こえますね」
「では。我々は務めを果たしましょう」
「覚えているのだ!」
 旗艦が爆発した。そうして。
「ぎゃああああああっ!!」
 ヘルマットも死んだのだった。三将軍は全滅した。
 既にムゲ帝国軍の戦力も殆どなくなっていた。しかしだった。
 ロンド=ベルは油断していなかった。彼を待っていた。
「さて、それではだ」
「そうだね」
 大介が鉄也の言葉に応える。
「ムゲ=ゾルバトス皇帝」
「彼だけですね」
「とんでもねえ奴なのは間違いねえな」
 甲児もいつもの強気ではなかった。
「あれだけの連中を束ねていたんだからな」
「そうね。どんな能力かしらね」
 マリアも強気はのトーンが弱くなっていた。
「悪意の塊とかじゃないかしら」
「だとしたらこの戦いは」
「そうね」
 ジュンはさやかの言葉に頷いた。
「さっきの戦いが前座みたいなものになるでしょうね」
「ええ、そうよね」
「来るわね」
 そしてひかるも言った。
「いよいよ」
「うっ・・・・・・」
 ここでフォウが声をあげた。
「何これは。この意志は」
「あの城から」
 ファも一同もだ。ここで暗闇の前に城があることが気付いた。彼等の世界の西欧の城に似ている。
「来ているわ。これまでとは比べ物にならない位の悪意の覇道が」
「くっ、私達も」
「ええ」
 ニュータイプでないノインとヒルダも感じ取っていた。
「この悪意を」
「感じ取って・・・・・・」
「ここまで来れば」
 マリーメイアも言った。
「物理的な力ですね」
「そうだな。遂に来るか」
 ゼクスも言った。
「ムゲ=ゾルバトス皇帝」
「来るよ忍!」
「ああ」
 忍は沙羅の言葉に応えた。
「遂にね!」
「ラスボスのお出ましかよ!」
 そしてであった。遂にだ。彼が出て来たのだった。
「愚か者達が」
「あいつがか」
「あの機械みたいな奴がか」
 皆その男を見て言うのだった。
「ムゲ=ゾルバトス皇帝」
「遂に出て来たってわけか」
「この私の宇宙の聖域に踏み込み」
 皇帝は言うのだった。
「この私を怒らせてしまったことを後悔させてやろう」
「いや、まだだ」
「俺達は」
「手前を倒す!」
 必死に闘志を振り起こしての言葉だった。
 そうしてだ。向かおうとする。しかしであった。
 皇帝はだ。その彼等に言うのだった。
「肉体よ滅びるがいい」
「むっ!?」
「何だって!?」
「獣性を超え人知を超え」
 そしてだった。
「神とならん」
「それは俺達の」
「そうだな」
 雅人と亮が気付いた。
「ダンクーガの」
「それを言うのか」
「それが御前達の精一杯の進化、ダンクーガに託した願いであったとしたら」
 そうだったらというのだ。
「それは地球人の底知れぬ無知というもの」
「俺達がそうだというのか」
「そうだ。何故ならだ」
 アランに返しての言葉だった。
「御前達地球人の理想の進化の究極こそがだ」
「何だというのだ?」
「この私だからだ」
 こう言うのであった。
「その証を今見せよう」
「!?」
「これは」
「まさか!」
 落雷と共にであった。彼等が出て来たのだった。
「闇の帝王、ドクターヘル」
「竜魔帝王」
「無敵戦艦ダイ、じゃあ帝王ゴールも」
「ダリウス大帝まで」
 彼等が出て来たのである。
「まさか生きていた!?」
「いや、違う」
「それはないだろ」
 ケーンの言葉をタップとライトが否定する。
「ここは宇宙が違うんだぜ」
「それを考えたらな」
「じゃあこれは何なんだよ」
「蘇ったのか」
 マイヨが言った。
「つまりは」
「ということは」
「これは」
「あの皇帝が」
 プラクティーズの三人は皇帝を見ながら話した。
「蘇らせたというのですか」
「そんなことができる」
「有り得ないことですが」
「そうだよ。俺達は不死身だけれどな」
「そう言っても問題ないからな」 
 スティングとアウルの言葉だ。
「けれど蘇るっていうのは幾ら何でもな」
「反則だろ、それは」
「確かにやっつけた筈なのに」
 ステラも言う。
「どうして」
「これは手品だ!」
 断言したのは豹馬だった。
「幾ら何でも有り得ねえだろ!」
「ああ、そうだ!」
 健一も彼の言葉に同意して頷く。
「そうでないと説明がつかない!」
「撃墜されても生き残るのは俺の十八番だがな」
 ジェリドも当然ながら言う。
「死んだら終わりだぞ!」
「その通りだ。何故生きている」
 マシュマーもいぶかしんでいる。
「ゴットン、御前も何度か撃墜されているがわからないか」
「何でそこで撃墜される話が出て来るんですか」
「死にそうになってからこそわかることだと思うが」
「わかる筈ないじゃないですか」
 こう返すゴットンだった。
「実際に死んでないんですから」
「それもそうか」
「死ぬのは一回だけですよ」
 彼もその考えだった。
「何処かの聖闘士の世界じゃわからないですけれどね」
「そうだな」
 ゴットンの言葉に頷いたのはアムロだった。
「俺達が今までに倒した敵が蘇ったのか」
「ムゲ野郎!」
 忍が叫ぶ。
「どんな手品を使いやがった!」
「この宇宙にはだ」
 皇帝は忍の言葉に答えてきた。
「現世に恨みを残し死んでいった者達の魂が集まる」
「えっ、それって」
「まさか」
「つまり」
「御前達に理解できる言葉を使うなら」
 実際にこう返してきた皇帝だった。
「ここは悪霊の集う世界だ」
「そういえばよ」
 トッドも敵軍を見て眉を顰めさせている。
「ゲア=ガリングもいるな」
「ビショット=ハッタは諦めていないか」
 ショウもその巨大な戦艦を見て言った。
「まだ」
「ドレイクやショットはいないね」
 チャムはそれを確かめた。
「これって成仏したっていうのかな、日本の言葉じゃ」
「ああ、そうだ」
 その通りだと返すショウだった。
「そういうことだ」
「糞っ、ジェリルもいるな」
「やっぱり成仏してなかったのかよ」
 アレンとフェイは暗い顔になっていた。
「どうしたものだ、これは」
「ここでもケリをつけろってことかよ」
「シロッコか」
 カミーユはジ=オマークツーを見ていた。
「彷徨っているのかよ、まだ」
「ドゴス=ギアは二隻だね」
 ライラも普段の落ち着きが少し消えている。
「面倒な相手だね、気分的に」
「幸いなのはザビ家の方々がおられないことか」 
 ハマーンはこのことに安堵していた。
「ミネバ様のことを思えばそれでいい」
「ってよハマーンさんよ、そんなこと言ってる場合じゃねえぜ」
「あのドルチェノフいるんだぜ」
「あのギルガザムネでよ」
 ケーン、タップ、ライトがここでまた言う。
「あの連中やっつけないといけないんだぜ」
「いいのかよ、それは」
「洒落にならない相手なんだけれどよ」
「大した相手ではなかろう」 
 ハマーンはその三人に落ち着いて返す。
「所詮小者だ」
「糞っ、シンクレアまでいやがるか」
 黄金は彼を見ていた。
「鬱陶しいな」
「イノベイターに風見博士、ヴィンデル=マウザーにアーチボルト」
 ある意味において錚々たる顔触れであった。
「ゼゼーナンにウェンドロ、何だグレースまでいるぜ」
「嫌な奴ばっかりね」
「全く」
 皆この顔触れに辟易さえしていた。
「よくもこれだけ集めたっていうか」
「そういう奴だからここにいるんでしょうけれど」
「それでも」
「この戦い、嫌らしい戦いになりそうだよな」
「この者達はだ」
 また皇帝が言ってきた。
「その恨みと憎しみによりだ」
「成仏せずにかよ」
「それで」
「そうだ、決して安らぎを得ることはない」
 そうだというのである。
「私はその者達に器を用意してやっただけだ」
「ズールまでもが」
 タケルが嫌悪感に満ちた顔を見せていた。
「いるなんて」
「死んでいった者を蘇らせる」
 マーグが言う。
「その気様は何者だ」
「私が何者かということか」
「そうだ、私達の宇宙の者はないことはわかった」
 それはだというのだ。
「だが。それだけでは説明にならない」
「そう考えているのだな」
「その通りだ。そしてだ」
 マーグはまた皇帝に問うた。
「貴様は一体何者なのだ」
「私はだ」
 皇帝はマーグの言葉に応えて話してきた。
「怨念を力に変えることができる者だ」
「怨念をか」
「そうだ、言うならばだ」
 そして自ら言うのだった。
「究極の進化を遂げた者だ」
「究極の進化だと?」
 隼人がその言葉に反応を見せる。
「そう言うのか」
「如何にも」
 その通りだというのだ。
「この私がだ」
「それでは」
 今度はロゼが問うた。
「御前は神とでもいうのか」
「いや、それは」
「違うわ!」
 ブリットとクスハがロゼの今の言葉を否定する。
「そんな筈がない!」
「こんな邪悪の塊みたいな人が神だなんて」
「その通りだ」 
 皇帝も自らこのことを認めた。
「私は神ではない」
「では何なのですか!」
 慎悟が言った。
「貴方は一体」
「神とは別の力」
 それが何かというとだった。
「真理の下に辿り着けなかった者の力を使っているだけに過ぎない」
「真理の下に辿り着けなかった」
 神代はそれを聞いていぶかしんだ。
「何なの、それは」
「我が力は強大ではあるが」
 これは言う。
「だが運命という真理の前にはだ」
「運命!?」
「まさか」
「それにふあふれ伏さざるを得ない」
 こう言ってであった。
「銀河の終焉という運命の前には」
「それじゃあ」
 ここで兎卯美が気付いた。
「それこそがアポカリュプシス」
「そしてそれを導く運命」
 華都美も言う。
「それこそがアカシック=レコード」
「だからだ」
 皇帝の言葉は続く。
「私は次元を超えて鍵を求めたのだ」
「鍵!?」
「それは」
「強念の力」
 それであるというのだ。
「私はそれを欲する」
「それでイルイちゃんを!?」
「手に入れようと」
「あの娘の力を使えば因果律を操り」
「そしてか」
「それによって」
「運命を変えられる。私は死と再生の輪廻を超えた永遠の存在となる」
 ここまで聞いてであった。アズラエルが言った。
「結局は絶対者になるということですね」
「そうだよな、これって」
「つまりは」
 誰もがここでわかった。
「シャピロとは違った意味で」
「とんでもねえ奴じゃねえか」
「こりゃ放ってはおけないな」
「どっちにしろね」
「ああ」
 皆このことを確かめ合った。そしてだ。
 忍がここでまた叫んだ。
「五月蝿え!」
「むっ?」
「さっきから聞いてりゃ手前勝手なことばかり言いやがって!」
「ダンクーガの者か」
「要するにあれだろうが!」
 皇帝を指差しての糾弾だった。
「手前は自分が助かりたいから地球を襲いイルイをさらったんじゃねえか!」
「それの何が悪い」
「確かに手前は神じゃねえ」
 忍の言葉は続く。
「悪魔でもねえ」
「私はどちらでもない」
「そうだ、手前は只の」
 そして言った言葉は。
「下衆野郎だ!」
「そうだな」
「その通りだよな」
「こいつは」
 ロンド=ベルの者達もここでわかったのだった。
「只の悪霊だ」
「それ以外の何でもない」
「それなら」
 こう話してだった。
「負けてたまるか!」
「こんな奴に!」
「絶対に!」
 こう言ってであった。再び戦いに向かうのだった。
 皇帝はその彼等に言った。
「話は終わりか」
「何っ!?」
「何ですって!?」
「無力な人間達よ」
「無力はどうかはだ」
 鉄也が言った。
「御前自身が確かめるのだな」
「行くぜ幽霊の大将!」
 甲児も叫ぶ。
「お仲間の亡霊達と一緒にあの世に送ってやるぜ!」
「そうだな。ここはだ」
 大介もだった。
「この悪霊達を倒そう」
「そしてそのうえで」
「あいつも」
「あの悪霊の親玉を!」
 当然皇帝を見ていた。
「倒してやる!」
「絶対にだ!」
「あいつの後ろにな」
 忍がまた言った。
「悪霊は渦巻いているんならな」
「ああ」
「そうだったら」
「俺は祈るぜ」
 こう言うのである。
「力を借りるぜ!」
「力を?」
「誰に」
「俺達の為に死んでいった人達の力をな!」
 それをだと言うのだ。
「そしてあいつを潰してやるぜ!」
「よし、それなら!」
「私達も!」
「やってやるぜ!」
 またこの言葉が出た。
「これがムゲとの最後の戦いだ!」
「そうね、これで!」
「終わりだぜ!」
 こう話してだった。彼等は戦うのだった。ムゲ帝国との最後の戦いを。


第六十三話   完


                     2010・10・3

        

 

第六十四話 失われた者達への鎮魂歌

             第六十四話 失われた者達への鎮魂歌
 暗闇の中に浮かぶ城を前にしてだった。ロンド=ベルの者達は皇帝と亡霊達を見ていた。
「数は?」
「百万」
「それ位です」
 まずは数について確かめられた。
「多いか?」
「いや、少ないな」
「そうだな」
 すぐにこう思い直したのだった。
「数の問題じゃない」
「今の俺達は」
「倒す!」 
 この言葉が出された。
「それだけだ!」
「ああ、やってやる!」
「絶対に!」
 そしてだ。クスハもだった。
「許さない!」
「強念の力を持つ者か」
「私達の力が」
「そう呼ばれるのならそうだろうな!」
 ブリットもであった。
「けれどそれは今は」
「どうでもいい!」
「どうてもいいというのか」
「貴方の理屈なんてどうでもいい」
「そんなのは俺達に何の意味もない!」
 二人は明らかに激昂していた。そしてだった。
「私達は絶対に!」
「貴様を倒す!」
「私を倒すどうするつもりだ」
 皇帝は二人にこのことを問う。
「何をするつもりだ」
「イルイちゃんを!」
「返してもらう!」
 そしてだった。忍もだ。皇帝を見て言うのだった。
「くそっ、こいつ」
「そうだね」
「一体何者なんだってんだ」 
 沙羅と共に言うのだった。
「見れば見るだけ得体の知れないものを感じやがる」
「これは一体」
「精神エネルギーだ」
 亮が言った。
「奴が持っているものはだ」
「精神エネルギーっていったら」
 雅人はこの言葉でわかった。
「つまり俺達のいつもの」
「怒りだね」
 沙羅も気付いた。
「あたし達の怒りを奴にぶつけて」
「そうだ、それだ」
 アランも一緒だった。
「俺達の怒りを皇帝にぶつける。いいな」
「愚かな」
 皇帝はそれを聞いても動じない。
「まだ無駄な抵抗をしようというのか」
「その言葉も今まで何十回と聞いてるんだよ!」
 忍は既に獣になっていた。
「ダンクーガが生き残るか手前が死ぬか」
「どちらかだというのだな」
「ああ、そうだ!」
 まさにその通りだった。
「答えは二つに一つだ!」
「それは私の中で既に出ている」
「それを今から見せてやる!」
 気力がだ。さらにあがる。そしてだった。
「銀河分け目の大勝負!」
「ああ!」
「今からそれを!」
「俺達で」
「やあってやるぜっ!!」
 ダンクーガが先頭に出た。それを受けてだった。
 ロンド=ベルは突撃をはじめた。最早戦術は不要だった。
 トッドがリムルに言ってきた。
「なあ姫さん」
「はい」
「またあれを沈めるんだな」
「やらせてもらいますか」
 リムルはこうトッドに問い返した。
「それを」
「ああ、やりな」
「有り難うございます」
「あのお袋さんはここでも死ぬべきなんだよ」
 トッドの言葉が苦いものになっていた。
「それがあの人の因縁ってやつさ」
「因縁・・・・・・」
「業かも知れねえな」
 こうも言い換えたのだった。
「それはな」
「そしてその業は」
「娘であるあんたが振り払うんだ」
「それが私の使命なんですね」
「まあそういうこったな。やりなよ」
「・・・・・・はい」
 リムルはトッドの言葉に頷いた。そしてだった。
 ジェリルのハイパーレプラカーンにはだ。ショウが向かう。
「こいつは俺が・・・・・・!」
「ショウ、多分強さはあの時のままだよ」
「ああ、わかってる」
 チャムにこう返す。それはもう承知していた。
「それはな」
「それじゃあ」
「斬る!」
 一言だった。
「あいつの業、俺が斬ってやる!」
「うん、そうしよう」
 その彼の後ろにだ。二機のズワースが来た。それに乗っているのは。
「アレン、それにフェイ」
「よお」
「俺達も来ていいか?」
 二人はこうショウに言ってきたのだった。
「あいつとの戦いな」
「参加させてくれるか」
「いいのか?仲間だったんじゃないか?」
「だからな」
「思うところがあってな」
 二人はこうショウに答えた。
「それでだ」
「駄目か?」
「いや、わかった」
 ショウはその二人に言葉を返した。
「それならな」
「仲間だったからな。いい加減あいつをな」
「解放してやりたくなってな」
「業からか」
「そういうことだ。もうあいつは眠るべきだ」
「ここでそうさせてやるさ」
 こう言ってだった。三人でハイパーレプラカーンに向かうのだった。
 カミーユはだ。シロッコに向かっていた。
「シロッコ、やはり妄執に捉われていたのか」
「カミーユ」
 フォウが横から彼に言ってきた。
「わかってると思うけれど」
「ああ、俺は捉われない」
 こうフォウに言葉を返した。
「絶対にだ」
「そしてこの戦いを」
「終わらせる、絶対に」
 彼等もそれぞれの戦いに向かっていた。百万の大軍と正面からぶつかってだ。
 激しい戦いだった。しかしである。
「雑魚はまとめて潰せ!」
「とにかく数を減らせ!」
 まずは彼等だった。
「数を減らしてだ!」
「そして!」
 目指す敵は彼等以外になかった。
「蘇ってきた奴等をな!」
「一人残らずぶっ倒してやる!」
「ラウ、いないか」
 レイはこのことに少し安堵していた。
「眠ったんだね、あれで」
「そうね、どうやらね」
 タリアがそのレイに応えてきた。
「彼は。もうね」
「二度と起きることはない」
「そして貴方は貴方の人生を生きられるわ」
 そうだというのだった。
「これで」
「俺の人生を」
「もう貴方はラウ=ル=クルーゼじゃないわ」
「レイ=ザ=バレル」
「ええ」
 その名前だというのだ。
「だからね」
「わかった。それではだ」
「前よ」
 あらためて彼に言った。
「いいわね、ドラグーンでね」
「倒す・・・・・・!」
 そのドラグーンを放って敵を倒していく。プロヴィデンスレジェンド、その力は彼によって、レイ=ザ=バレルによって戦場に発揮されていた。
 そしてであった。まずはだ。
 ダリウス大帝が倒れたのだった。
「よし!やったぜ!」
「ああ!」
「まずはこいつだ!」
 リーとピートがサンシローに続く。
「これで終わりですね」
「このややこしい奴とな」
「ええ、そうね」
 ブンタにヤマガタケ、それにミドリも言う。そしてサコンもだった。
「蘇えろうとも。敗れる時は敗れるのだ」
「じゃあサコンよ」
「ああ、戦いはまだ続いている」
 こうサンシローに返す。
「頼んだぞ」
「任せとけ!どいつもこいつも倒してやるぜ!」
 こう言ってだった。戦場でさらに暴れる彼等だった。
 そしてだ。帝王ゴールもドクター=ヘルも次々と倒れていく。
 アーチボルトもだ。今死んだ。レーツェルが真っ二つにしていた。
「くっ・・・・・・」
「私の因縁は」
 彼を斬ってだ。レーツェルは言った。
「これで完全に終わった」
「馬鹿な、私は・・・・・・」
 アーチボルトは再び死んだ。周りでも死闘が続いている。
 その中にだ。一機のマシンが出て来た。
「僕達も!」
「戦わせて下さい!」
 真人と神名だった。
「もう一度」
「皆さんの為に!」
「えっ、神名!?」
 神代が妹の姿を見て驚きの声をあげた。
「どうして戦場に」
「見てばかりじゃ駄目だから」
 だからだというのであった。
「だから私も」
「けれどもう貴女は」
「身体のことなら大丈夫よ」
「僕もね」
 真人も言ってきた。
「それはもう」
「何の心配もいらないよ」
「だからだというのね」
「ええ」
 妹が姉に対して答えた。
「だから。心配しないで」
「そう、わかったわ」 
 姉もここで頷いた。そして慎悟も真人に尋ねた。
「いいんですね、それで」
「うん、悪いけれどマシンは君達がかつて乗っていた」
「スサノオを」
「これでいいのね」
「はい」
 慎悟の返答は微笑みだった。
「では一緒に」
「うん、戦おう」
 こうして二人も再び戦場に立った。戦いはこれで勢いが戻った。
 ロンド=ベルは百万の大軍を倒していって。遂にだった。
 皇帝一人だった。残るはだ。
「さて、死に損ない共は全部倒したし」
「後はな」
「あいつだけだ!」
 その皇帝だけがだ。戦場にいたのだった。
 その彼にだ。ダンクーガが向かった。
「手前は俺達が!」
「タンクーガか」
「覚悟しやがれ!」
 忍が言うのだった。
「このダンクーガの力見せてやるぜ!」
「一つ言っておく」
「何だ!?」
「私をあの者と同じにしないことだ」
 こう言うのだった。
「シャピロ=キーツとだ」
「あいつか」
「あの男は所詮は小者だった」
 これは皇帝から見てもだった。
「あの様な者とは同じにしないことだ」
「へっ、最初からそのつもりはねえぜ」
 忍の返答はこれだった。
「手前は手前だ!」
「そうか」
「だから倒してやる。行くぜ!」
「ならば来い」
「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
 叫んでだ。剣を振るう。そうして激しい戦いを繰り広げた。
 一時間程戦った。双方傷が深くなっていた。しかしであった。
 皇帝はだ。ここで攻撃を繰り出してきた。暗闇がダンクーガを襲う。
「!?これは」
「何なんだよ」
 亮と雅人がその攻撃を見て言う。
「暗闇が来る」
「まさかこれって」
「いかん!」 
 アランが危機を察した。
「あの暗闇が来る前にだ」
「忍!」
 沙羅は忍に叫んだ。
「ここで決めないと!」
「ああ、あれしかねえ!」
 忍もわかっていた。そうしてだった。
「皆行くぜ!」
「ああ、いいよ!」
「ここでだね!」
「あれで決める」
「それならだ」
「ファイナル断空砲!」
 今白い光が起こった。それが突き進み暗闇を切り払う。
 そしてそのまま。皇帝を貫いたのだった。
「よし、これで!」
「終わった!」 
 勝利を確信した。実際に皇帝は動きを止めてしまっていた。
 だがそれでもだった。皇帝はまだ言うのだった。
「この宇宙の私を倒すことは出来ぬ」
「ええっ!?」
 マヤがそれを見て叫んだ。
「エネルギーが皇帝から」
「間違いありません!」
 メイリンもだった。
「何、これって」
「ま、まさかこれは」
 クリフも顔を青くさせている。
「悪霊の力なのか!?」
「そんな筈がありません」
 アルシオーネが師の言葉を否定しようとする。
「あれだけの攻撃を受けてまた立てるとは」
「その通りだ。だが」
 クリフはそれでも言うのだった。
「あの男はまだ」
「まさか」
 アキトが言った。
「俺達の力では無理だっていうのか?」
「運命は御前達を試そうとしているが」
 その皇帝の言葉だった。
「それも無駄だったのだ」
「おい、待て!」
 忍がその皇帝に問うた。
「それはどういう意味だ!」
「死にいく者に語る言葉はない」
 皇帝は答えようとはしない。
「ロンド=ベルよ。悪霊にその身を委ね永遠に覚めぬ悪夢の中で散るがいい」
「ちいっ!!」
 その彼にだ。ファイナルダンクーガがまた迫った。
「忍!」
「何をするつもりだ!?」
「俺は諦めねえ!」
 こう返す彼だった。
「こんな野郎に負けちまったらな!」
「!?」
「負けたら」
「俺達の為に死んでいった人達に申し訳が立たねえ!」
 こう言うのである。
「そうなったらな!」
「そ、そうだよな」
「ここで負けたら」
「それで終わりだ」
「これまでのことも」
「負けてたまるか!」
 忍はさらに叫んだ。
「絶対にだ!」
「愚かな」
 皇帝はその忍を見て言った。
「まだ無駄な抵抗をしようとするのか」
「それが無駄かどうかな!」
「今見せてあげるわよ!」
「俺達の心!」
「今ここで!」
 誰もが叫んでだった。そうしてであった。
「俺達の為に死んでいった人達の心も」
「その想いも」
「見せてやる!」
 こうしてだった。何かがタンクーガに宿った。
「何だこれは」
 皇帝もその何かを見た。
「ダンクーガに力が集まっていく」
「悪霊が存在するのなら」
 今言ったのはモニカだった。
「真理の下に辿り着いた魂も力として存在します」
「まさかそれが」
 セニアが双子の妹に問うた。
「神の力なの?」
「それはわかりません」
 モニカもそこまではわからなかった。
「ただ」
「それでもなのね」
「はい、それが今ダンクーガに力を与えようとしています」
 そうしているというのだ。
「それは間違いありません」
「そういうことね」
「この力まさか」
 皇帝も今は狼狽を隠せない。
「この者達は絶対運命をも切り開くというのか」
「獣の怒りを超え」
 何かが言った。
「人の憎しみを超え」
「!?何だ」
「何かが言っている」
「この声は」
「神の戦士として再生せよ!」
「神の戦士」
 忍がその声を聞いた。他の者もだ。
「神の戦士」
「それが俺達か」
「超獣機神ダンクーガとして!」
「ああ、わかったぜ!」
 忍にだ。何かが宿った。そしてだ。
 絶叫してだ。そして。
「喰らいやがれ!」
 切り裂きそのうえで砲撃を浴びせた。それでだった。
 さしもの皇帝も完全にだ。滅んだのだった。
「うおおおおおおおっ!」
「よし、やったぜ!」
「これで!」
「今の一撃はだ」
 ゼンガーがその皇帝の最期を見て言った。
「周囲の悪霊まで断ち切った」
「それなら」
「これで」
「そうだ、勝負ありだ!」
 まさにそうであった。
「この戦い終わった!」
「よし、やった!」
「俺達はまた勝ったんだ!」
 勝利に湧き返ろうとする。しかしだった。
 世界が揺れはじめた。急にだった。
「な、何だ!?」
「これは一体」
「何が起こるってんだ?」
「宇宙の終わりです」
 モニカがここでまた話す。
「皇帝が死ねば。この宇宙は彼が創り出したものですから」
「えっ、何だって!?」
「それじゃあ私達は」
「これで」
「ロンド=ベルよ」
 皇帝が最期の言葉を言ってきた。
「御前達はだ」
「ちっ、まだ生きてやがるのかよ」
「何てしぶといのよ」
「銀河の終焉を見る者だ」
 こう彼等に言うのだった。
「御前達こそがだ」
「そりゃどういう意味だ」
「ふふふ、精々あがくがいい」
 忍の問いに今は答えなかった。
「御前達が終焉を止められるならば」
「手前、一体」
 皇帝はここで爆発して消えた。それと共にだった。
「こ、今度は何だ!?」
「世界が!」
「白い光に」
 包まれてだった。そうしてだった。
 彼等は宇宙に戻っていた。彼等の宇宙にだ。誰もがいた。
「無事か」
「ああ」
「何とか」
「生きてるぜ」
「それでここは?」
「元の場所だな」
 クワトロが最初に気付いた。
「あのアステロイドだ」
「じゃあ完全に戻ってきたんだ」
「本当に」
「誰も死んでないな」
 アムロがこのことを確かめた。
「それに一機も失っていないな」
「ああ、けれどよ」
 カイがそのアムロに言う。
「もう弾薬もエネルギーもないぜ」
「皆だ」
 ハヤトも言う。
「幸い今は敵は近くにいないがな」
「シティ7を呼んだぜ」
 スレッガーが話す。
「補給はそれでしてもらえる」
「じゃあ一件落着か?」
「とりあえずムゲ帝国は」
「ああ、そうだな」
「これでね」
 皆このことにほっとする。リュウもだった。
「本当に死ぬかと思ったがな」
「はい」
 セイラはリュウのその言葉に頷いた。
「帰ってこれない危険はです」
「充分過ぎる程あったからな」
「だが俺達は何とか生きて帰って来た」
 アムロはこのことを言う。
「運がよかったのだな」
「そうかね」 
 だがここでだ。沙羅が言った。
「あたし達戦いに勝ったのかね」
「おい、沙羅」
 その沙羅に忍が言う。
「御前何言ってんだよ」
「そうは見えないからね」
「見えないって何でだよ」
「皆ボロボロじゃない」
 このことを話すのだった。
「力尽きてね」
「それでか」
「それで何で勝ったって言えるのさ」
 こう言うのだった。少し微笑んで。
「若しここに何か来たらね」
「終わりだな、確実に」
「それで勝ったなんてね」
 だからだというのである。
「言えないんじゃないのかい?」
「いや、我々は勝った」
 だがここでだ。葉月博士が言った。
「ムゲ帝国は滅んだ。また一つ敵を倒した」
「じゃあ勝ったんだね」
「そうだ、勝った」
 博士はこう沙羅に言うのだった。
「それが何よりの証拠だ」
「そう、なのかい」
「今は休むとしよう」
 博士の声が優しいものになった。
「是非な」
「そう。それじゃあ」
「シティ7が来た」
 そのシティ7がだ。来たのだった。
 皆その中に収納されてだ。今は休んだ。その後だった。
 アラドがだ。皆に問うていた。
「それでイルイちゃんは?」
「どうなったの?」
 ゼオラも一緒である。
「一体何処に」
「無事なの?それで」
「ああ、何とかな」
 彼等に話すのはユウキだった。
「無事だ」
「それにちゃんと私達と一緒にいるわよ」
 カーラはこのことを話した。
「安心してね」
「そうか、よかった」
「それを聞いてほっとしました」
 二人はこのことを聞いてまずは胸を撫で下ろした。そのうえでの話だった。
「で、今は」
「どうしてるの?」
「まだ寝てるよ」
「ずっとね」
 今度はリョウトとリオが話す。
「昏睡状態になっててね」
「起きるのはまだ先みたい」
「そうなんですか」
「今は」
「けれど命に別状はないからさ」
「また起きるわよ」
 タスクとレオナが話す。
「力を使い過ぎたせいらしいしな」
「それが回復したら」
「ということはだ」
「そうですよねえ」
 アーウィンとグリースがここで言った。
「俺達をここまで出してくれたのは」
「イルイちゃんですよねえ」
「ああ、そうだ」
「その通りだ」
 その二人にイルムとリンが話す。
「ムゲの宇宙からな」
「私達全員をね」
「またそりゃ凄いことしてくれたな」
「あの宇宙からなんて」
 ヘクトールとパットも驚きを隠せない。
「けれどあの娘がそうしなかったら」
「私達は今頃」
「そうだ、間違いない」
「あの宇宙で皇帝と一緒にね」
 ジェスとミーナが言う。
「死んでいた」
「本当に死なば諸共でね」
「何ていうか凄い力だな」
「ああ、そうだな」
 アークライトとエルリッヒが話す。
「それがこっちの世界の神様の力か」
「想像以上だ」
「けれどそれで」
「あの娘は」
 セレインとリッシュはそのイルイのことを心配していた。
「起きられなくなった」
「それが今か」
「この戦いなんですけれど」
「俺達はずっとだったんだ」
 クスハとブリットが話す。
「イルイちゃんに何度も助けられました」
「それはサイコドライバーの力とは関係なく」
「あの娘の優しさか」
「それによってだな」
 ブラッドとカーツがこのことを察して言った。
「助けてきたのか」
「そういうことか」
「じゃあやっぱり」
「あの娘は」
 マナミとアイシャが言う。
「私達の為にも」
「この銀河に」
「そういう娘だからね」
 アイビスが言った。
「他にも目的があるんだろうけれど」
「そうですね。その目的も問題ですけれど」
 ツグミが話す。
「まずはあの娘を守りましょう」
「今度は私達がだな」
 スレイがツグミの言葉に応える。
「イルイを」
「そうしよう、絶対に」
「ああ」
 スレイはアイビスの言葉にも応えた。
「必ずな」
「これからはね」
「それでなのですが」 
 ここでセラーナが出て来た。
「これからのことですが」
「うむ、それか」
 ハマーンは妹の言葉に応えた。
「やはりか」
「このまま三連惑星に向かいます」
 この予定は変わらなかった。
「ただ。その進路にです」
「今度は誰がいるのだ?」
 ククルが問う。
「バルマーなのか」148
「はい、そうです」
 まさにその彼等だった。
「行く先にその勢力圏があります」
「そうか、やはりな」
 それを聞いて頷くハマーンだった。
「そして今度はどの軍だ」
「近銀河方面軍だ」
 ヴィレッタが言った。
「ポセイダル家の軍だ」
「ポセイダルか」
 ダバがそれを聞いて強い顔になった。
「そういえばこの進路は」
「そうだ、ヤーマンに向かっている」
 こうダバに話すヴィレッタだった。
「いよいよだな」
「そうですね」
 ダバは意を決した顔になっていた。
「ポセイダルとも決着をですか」
「そうだな、遂にだな」
「ええ」
 レッシィとアムも言う。
「ポセイダルともだ」
「決着をつける時になったのね」
「思えば長い戦いだったな」
 ギャブレーはこれまでのことを振り返っていた。
「あの者達との戦いも」
「ってあんたはね」
「最初敵だったじゃない」
「そうそう」
「何感慨に耽ってるんだか」
 皆そのギャブレーに突っ込みを入れる。
「私達と何度戦ったか」
「それ忘れてるとは言わせないわよ」
「全く、この旦那は」
「何考えてんだか」
「随分な言われようだな」
 ギャブレーは皆の言葉に憮然となる。
「今ではこうしてロンド=ベルにいるというのに」
「まあ仕方ないな。それよりもな」
 キャオが出て来た。
「今度でポセイダルの奴等とも決着か」
「そうだよな」
「遂にな」
「じゃあ一気に決めようぜ」
 こう言うキャオだった。
「もうな」
「ああ、そうだな」
「これでね」
「今度で」
「オルドナ=ポセイダル」
 ダバはこの名前を呟いた。
「ここであいつを」
「そしてあいつを倒してそのうえでね」
 エリスが言う。
「三連惑星によね」
「そっちの方を先にしてもいいんじゃないですか?」
 ダバはこんなことも言った。
「ここは」
「いや、どちらにしろだ」
 リーがそのダバに話す。
「ポセイダルも倒さなければならない敵だ」
「そういうことですか」
「それにだ。ここで迂回すれば遠回りになる」
 リーはこのことも話した。
「合理的ではない」
「じゃあこのまま」
「どちらにしろバルマー軍は叩く必要がある」
 また言うリーだった。
「そういうことだ」
「有り難うございます」
「礼はいい。それではだ」
 リーは冷静なまま全員に述べた。
「このままポセイダル軍の勢力圏内に向かうとしよう」
「そういえばヘビーメタルと戦うってな」
「ああ、久し振りだよな」
「確かに」
 皆ここで気付いた。ポセイダル軍との戦闘は長い間なかった。このことを思い出したのである。
「ええと、ビームコーティングしてあるから」
「それは用心して」
「その他はモビルスーツと似てるよな」
「そうだったわね」
「まあそれでも」
 ここで言ったのはコウだった。
「ダバ達のエルガイムとか見てるからわかるけれどな」
「だよな。戦い方はな」
 キースもコウに応えて話す。
「もうわかってるしな」
「問題は敵の戦術だ」
 バニングはそれを問題にしていた。
「十三人衆がどう来るかだ」
「ううむ、それなのだが」
 ギャブレーが難しい顔になって話す。
「正直なところその十三人衆でもだ」
「十三人衆でも?」
「何かあるの?」
「オルドナ=ポセイダルに会えるのは僅かだった」
 そうだったというのである。
「高位の者達だけだったのだ」
「当然私なんかはね」
 かつて十三人衆だったレッシィの言葉だ。
「会うどころじゃなかったさ」
「十三人衆って言ってもそうだったんだ」
「色々とランクとかがあったんだ」
「あのギワザになるとだ」
「かなり違ったけれどね」
 二人はここでギワザの名前を出した。
「あの者はかなりの権限を持っているしな」
「十三人衆の実質的なリーダーでもあるしね」
「それとあの連中もいるよな」 
 今言ったのはタスクだった。
「ジュデッカ=ゴッツォの連中も」
「やっぱりあの連中はな」
「いるよな」
「ポセイダルの傍にな」
 もうこれは当然のことだった。
「じゃあ今度も」
「ヘルモーズとズフィルードもか」
「出て来るか」
「そうだよな」
「まあこれで三度目だからな」
 今言ったのはカチーナである。
「慣れてはきたな」
「それはそうだよな」
「ヘルモーズも何度も沈めてきたし」
「やり方はわかってるから」
「戦い方も」
「問題はポセイダルだけか」
 そのポセイダルのことも話す。
「あいつは一体何者なんだ?」
「バルマーの十二支族ってことは知ってるけれど」
「ダバ、それで知ってるか?」
「どんな奴か」
「俺も詳しくは知らないんだ」
 ダバは仲間の問いに申し訳ない顔で答えた。
「実は」
「えっ、知らないって」
「そうだったの」
「オッドアイの銀色の女」
 彼はまずこう話した。
「そして独裁者でもある」
「それでヘビーメタルに乗る?」
「いざという時は」
「多分。けれどヘビーメタルに乗っているのを見た者はいない」
 ダバの話ではこういうものだった。
「そうなっているんだ」
「一切が謎に包まれた独裁者か」
「何なんだろうな、本当に」
「何者なのか」
「敵を知り、というが」
 今言ったのはブライトだった。
「情報が少な過ぎる。問題だな」
「しかし行かなければならない」
 シナプスはこのことを指摘した。
「それはな」
「迂回したら異様に遠回りになるし」
「それしかない」
「結局のところは」
「まずは入りそのうえで一戦交えるか?」
 これはグン=ジェムの言葉だ。
「そうすればよくわかるぞ」
「乱暴だけれどそれしかないか」
「そうね、今は」
 皆彼のその乱暴な主張に頷くしかなかった。
「とにかく。ポセイダル軍の勢力圏に入って」
「そのうえで戦うか」
「それからよね」
「よし、全軍何はともあれ進撃することだ」
 リーがここでまたこう話した。
「いいな」
「ええ、それじゃあ」
「今から」
 こうして多くの謎を抱えているポセイダル軍との戦闘に入るのだった。彼等の戦いはまだ続くのだった。果てしない戦いであった。


第六十四話   完


                                      2010・10・6      
 

 

第六十五話 奇妙な動き

                 第六十五話 奇妙な動き
「それでイルイちゃんは?」
「ああ」
「何とかね」
 アラドとゼオラがラトゥーニの問いに答えていた。
「回復はしてきたさ」
「まだ起きられはしないけれど」
「そう、よかった」
「相当なエネルギー使ったからな」
「それは仕方ないわ」
 こう話す二人だった。
「ただな、やっぱりな」
「シティ7にだけれど」
「いるのね」
 ラトゥーニは二人の言葉からすぐに察して述べた。
「誰かが」
「ああ、それが誰かわからないけれどな」
「二人いるわ」
 アラドとゼオラはまた話した。
「シティの住民票にも載ってない人が二人もな」
「イルイちゃん以外に」
「それは誰ですの?」
 シャインはこのことを問題にした。
「一体」
「普通はシティにいるのなら誰かわかるのに」
「そうですわ。それで誰かわからないというのは」
「矛盾している」
 こう話すラトゥーニだった。
「幾ら何でも」
「それも一回真剣に調べてみないとな」
「そうよね」
 アラドとゼオラも言う。
「正直バルマーのスパイとかだったらな」
「問題だし」
「それは有り得るな」
 ここでスレイが出て来た。
「今すぐには無理だが時を見て何人かで探すか」
「そうだね。それがいいね」
 アイビスもスレイのその提案に賛成した。
「とりあえず次の先頭が終わった辺りかな」
「そうね。その時にイルイちゃんが目覚めていれば」
 ツグミはイルイのことも念頭に置いている。
「協力してもらえるかしら」
「そうですね。それに私達も出て」
「それで探すか」
 クスハとブリットも話す。
「誰がいるかわかりませんけれど」
「怪しい奴ならその時は」
「ああ、やってやろうぜ」
 トウマの言葉だ。
「スパイだったら大変だしな」
「そうね。ただ」
 ここでミナキが首を捻る。
「スパイにしては動きがないような」
「そういえばそうだな」
 クォヴレーはミナキのその言葉でそのことに気付いた。
「少なくとも誰も何かを調べられた形跡はない」
「これだけ勘の鋭い面々がいるのにね」
 セレーナもこのことを指摘する。
「おかしいって言えばおかしいわね」
「ではスパイではないのか」
 ゼンガーもその可能性を考える。
「そうなるのか」
「スパイじゃないとしたら」
「一体何かしら」
「まさかイルイちゃんと同じ?」
「そういう相手かしら」
 こうも考えるがだった。誰も答えは出せなかった。そうしてであった。
 ふとだ。リーが周りに言われていた。
「艦長って何か」
「最近声変わったよな」
「そうそう」
「急にね」
「それは気のせいだ」
 リーは何故かバツの悪い顔で述べた。
「おそらくな」
「おそらくって」
「何でそこではっきりしないんですか?」
「それ自体がちょっと」
「そうだよな」
「私は私だ」
 こう主張する彼であった。
「別に声はだ」
「何か龍が中に八匹いる人みたいな声になってるし」
「あっ、そういえば」
 今言ったのは小鳥である。
「私もその声に心当たりあるわ」
「俺もだ」
 マサキも声をあげた。
「何でだろうな」
「まあそれは言わないようにしないか」
 ナガレは何処かバツの悪い顔になっている。何故か彼もである。
「どうもな。そちらの世界もな」
「そういえばナガレさんってそこじゃあ」
「仮面被ってません?」
「そうそう」
「だから言わないようにしよう」
 あくまでこう言うナガレだった。
「そういうことはだ」
「脛に傷持ってるからね」
 アムもであった。
「私もそっちの世界じゃね」
「そうよね。私も」
 未久もであった。
「ちょっと以上に」
「困るから」
「あの頃からだったわね」
 ミサトもであった。
「私がお母さんになりだしたの」
「ええ、確かに」
 マリューも出て来た。
「最初はヒロインだったのに」
「今じゃね。すっかりね」
「皆そうなるのよね」
 今言ったのはレインであった。
「私だってお母さんの時多いから」
「声のせいでそうなるのかしら」
「だとしたら困ったことだけれど」
「というか言ったら駄目なことじゃないですか?」
 エリスが難しい顔になっていた。
「ええと、私もですね。劇団じゃ」
「それ言ったら洒落にならないよ」
 フィジカがそのエリスを止める。
「俺だってそっちには色々とあるから」
「というか本当に皆色々あるな」
 コスモが言った。
「俺だってな。海の王子やら何やらで」
「原作じゃあんた死んでるわよ」
 カーシャの突っ込みである。
「アニメじゃ生きてるけれど複雑な結末だったわね」
「あれは」
「よく知ってるな、そんなこと」
「知ってるわよ」
 カーシャはこうコスモに返した。
「だってあんたってそもそもあれが」
「何か古い話になってるな」
「そうだな」
 アムロと宙が出て来た。
「そんな古い時代の話だとな」
「わからない人も多いだろ」
「そういうあんた達は」
 カーシャはこの二人にも言った。
「あれよね、野球の時は」
「うっ、それか」
「それを言うか」
「言うわよ。私の弟で」
「そ、そうだったな」
「思えば懐かしい話だ」
「アニメじゃ最後アメリカに行ってるわよね」
 カーシャの突っ込みは二人にも容赦がなかった。
「覚えてるわよね、このこと」
「忘れられるものじゃないからな」
「全くだ」
 何故か二人の言葉はここでは一致していた。
「俺はあの時から燃えていたからな」
「後で聖闘士やった時もだったな」
「っていうかアムロ中佐と宙さんって」
「その時から健在だったんですね」
「何ていうかあの目が燃える漫画で」
「かなり名前が知れてますよね」
 このことは皆知っていた。最早言うまでもないまでだった。
 そしてだ。ミサトが言う。
「あとタキシード好きですし」
「仮面もですね」
 マリューも言った。
「中佐も宙君も」
「それも好きだから」
「あの、二人共」
「ちょっとそれは言えんやろ」
 その二人に遥とタータが言葉を入れた。
「二人だって。まあ」
「うち等もやけれど」
「そうよね。月に水に」
 プレセアも話す。
「私は木で」
「それで私が火で」
「私が金ね」
 エリスとサフィーネが続いた。
「ダイアナさんが海でひかるさんが冥で」
「シンジ君が天だったわよね」
「僕だけ男なんですけれど」
 そのシンジがこう言いはした。しかし彼自身がこう言ってしまった。
「けれど違いますよね」
「そうよね。それはね」
「違わないというわけではないような気もしないわけではありません」
 セニアとモニカも出て来た。
「私達だってそっちの世界はね」
「縁があるようなないような」
「いや、あるよ皆」 
 カツだった。
「僕もみたいだし」
「というかそっちの世界もな」
 今言ったのはアスランである。
「皆色々と関わりあるからな」
「そういうあんたもな」
 カイがそのアスランに突っ込みを入れた。
「俺が鷹であんたが魚でな」
「うっ、その通りです」
「まさかその後で別の世界で蝿になるなんてな」
 またこの話が出て来た。
「あれはよかったのか?あんた的に」
「ええ、まあ」 
 いいというのだった。
「タケルさんや甲児さんもいましたし」
「わしもいたぞ」
 兵左衛門だった。
「あの猫はよかったのう」
「ううむ、私は蝙蝠だったが」
 クワトロもいた。
「鮫にもなったな。忍者の時は」
「何か色々皆出てるんだな」
「確かに」
「結構以上に」
 誰もが感心することだった。お互いだったからだ。
 そしてだ。ここでユリカが皆に告げてきた。
「それで皆さん」
「ああ、ステラちゃん」
「ナタルさん、何かあったんですか?」
「どちらでもありませんよ」
 ユリカはまずはこう一同に返した。
「お約束ですけれどね」
「うっ、素で間違えたし」
「本当にそっくりだから」
「艦長に似てる人多いから」
 これもよく言われることだった。
「ついつい」
「すいません」
「いえいえ、ロンド=ベルではそれは勲章ですから」
 にこりと笑ってそれはいいというユリカだった。そのうえでまた皆に言うのだった。
「そろそろポセイダルの勢力圏に入って一日ですよ」
「一日かあ」
「早いよな」
「そうだよな」
 皆このことを再確認して言い合った。
「今のところ平和だけれど」
「何時出て来るかわからないよな」
「そうそう、ポセイダル軍だけじゃなくて」
 ここが彼等の置かれている立場の複雑なところであった。
「何時何が出て来るか」
「宇宙怪獣なりプロトデビルンなり」
「何でもね」
「しかも」
 ここでさらに話す。
「こうした話をしたらいつもだしね」
「最高のタイミングで出て来るからね」
「待っていたみたいに」
「今回もひょっとして」
「出る?」
 冗談半分の言葉だった。この時は。
 しかしここでだ。警報が鳴ったのだった。皆ここで言う。
「うわっ、予想通り!」
「まさにお約束!」
「言ったそばから!」
 皆この展開にも慣れていた。
「それで何処の勢力だよ!」
「ポセイダルか!?」
「それとも宇宙怪獣かプロトデビルンか」
「バッフ=クランか!」
「プロトデビルンです」
 エキセドルが出て来て言う。
「彼等です」
「奴等がですか」
「出て来たんですか」
「はい、そうです」
 エキセドルはまた一同に言った。
「それでは皆さん」
「ええ、総員出撃ですね」
「ここは」
「それしかありませんよね」
「おわかりなら話は早い」
 エキセドルの言葉も予定調和だった。
 こうしてだった。総員出撃する。するとそこにいたのは。
「久し振りだなロンド=ベル!」
「手前生きてたのかよ」
「俺はそう簡単に死にはしない!」
 こうカムジンに返すガビルだった。グラビルもいる。
「そう、これぞ不屈美!」
「また美なんだな」
 カムジンはそれを聞いて冷静に述べた。
「こいつも変わらねえな」
「全くだな。まあ元気そうだな」
 フォッカーの言葉だ。
「喜んでいいかどうかはわからんがな」
「俺は喜んでいる!」
 そのガビルの言葉だ。
「御前達とまた戦える、戦闘美!」
「だからもう美はいい!」
 イザークがたまりかねた口調で返す。
「いい加減そこから離れろ!」
「俺から美を取れば何が残る!」
 そのガビルの反論である。
「そこには何も残りはしない!」
「なら無理にでも黙らせてやる!」
 イザークも言い返す。
「この俺がだ!」
「銀髪の少年か」
「それがどうかしたか!」
「いい、これぞ頭髪美!」
 それにも美を言うガビルだった。
「戦いがいがあるというもの!」
「ガオオオオオオオン!」
「見よ、グラビルも喜んでいる!」
 ガビルは己の分身も見て話す。
「俺とグラビルは一心同体、まさに同じなのだ」
「同じ、そういうことね」
 セニアはガビルの言葉からあることがわかった。
「あの二人実は同じよ」
「同じ!?」
「同じっていうと」
「そうよ、分身ね」
 それだというのだ。
「身体は別々だけれど。同じ存在なのよ」
「じゃあ本当に一心同体?」
「そういう関係なのね」」
「そういうこと。私も今わかったわ」
 セニア自身そうであった。
「あいつ自身の言葉でね」
「そういう奴等だったんだ」
「成程」
「ということは」
 そこから一つの答えが出た。
「あいつ等のうちどっちかを倒せば」
「もうそれで」
「もう一方も終わりってことか」
「そういうことよ。だからね」
「よし、目標を絞るか」
「両方一辺にじゃなくて」
「ここは」
 ふたりのうちどちらかを倒すことになったのだった。そうしてであった。
 彼等はそのままプロトデビルンの軍勢に向かう。ガビルもそれを見てそのもう一人の自分であるグラビルに対して声をかけた。
「ではグラビルよ」
「ガオオオオン!」
「行くとしよう」
「ガオオオオン!」
「自ら敵の中に飛び込む、突撃美!」
「へっ、美っていうのはな!」
 その彼等にだ。バサラが突っ込んだ。
「色々あるぜ!例えばな!」
「例えば。何だ」
「音楽だ!」
 バサラはここでもその手にギターを持っている。それをだ。
 奏でながらだった。歌うのだった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーっ!!」
「むっ!?」
「遠慮はいらないぜ。思う存分聴きやがれ!」
「地球の男、御前はここでも」
「ああ、歌うぜ!」
 バサラはガビルに対して言った。
「だからだ、聴きやがれ!」
「相変わらず面白い男だ」
 ガビルはそのバサラを見て笑った。そうしてだった。
「では俺が行こう」
「聴きやがれ!」
 二人の戦いになった。そしてグラビルにはだ。ミレーヌが向かった。
「あんたの相手はあたしよ!」
「ガオオオオオオオン!」
「バサラだけじゃないわよ」
 彼への対抗心も出していた。
「それを聴かせてあげるわよ!」
「ううん、ミレーヌもあれで結構」
「そうよね。バサラに似てるよね」
「確かに」
 皆その彼女を見て言うのだった。
「何だかんだでね」
「結局のところはね」
「似た者同士なのね」
「聞こえてるわよ」
 ミレーヌもその彼等に言い返す。
「あのね、何処が似てるのよ」
「いや、似てるだろ」
「そうよね」
「よく見たら」
「うう、あくまでそう言うのね」
「まあとにかくだ」
 レイがここで入って来た。
「ミレーヌ」
「歌えっていうのね」
「そうだ、今は歌え」
 実際にこうミレーヌに言う。
「わかったな、そうしろ」
「わかったわよ。それじゃあね」
「この戦いは早いうちに終わらせるべきだ」
 レイはこのことも話した。
「だからだ。一気にいきたい」
「そうね、ここは」
「やっぱり」
「何時ポセイダル軍が来てもおかしくないからな」
「連中まで来るとね」
「余計にややこしくなるし」
 皆レイの言葉からこう考えていった。
「ならその前に」
「まずはこの連中を倒して」
「何時来てもいいようにして」
「私達がいるってことはもう向こうもわかってるわよね」
 アムもこう話した。
「そうよね、やっぱり」
「それは間違いないな」 
 レッシィも言う。
「特にこの戦いでだ。わからない筈がない」
「それじゃあここは」
「そうだ、戦いはすぐに終わらせる」
 言いながら実際にだ。レッシィはバスターランチャーを放ちそれで敵の戦艦を一隻屠った。一条の光が戦艦の腹を撃ち抜いていた。
 戦艦はそこから真っ二つになり炎の中に包まれていく。それを見てだった。
「こうしてね」
「そうね。じゃあ私もね」
 アムのエルガイムもバスターランチャーを構えた。そうしてだった。
 その光を放ってそうしてだった。敵を数機単位で倒した。
 戦いは続く。プロトデビルンの軍勢は次々に減っていく。しかしだった。
「くっ、まだこんなにいるのか」
「まだ五十万もいるのか」
「多いね」
 こう言ってだった。敵のその多さに辟易していた。だがだった。
「それでもな」
「まだだ」
「諦めるか!」
「やってやるわよ!」
「いいぞ、この戦い」
 ガビルもその彼等を見て機嫌をよくさせた。
「最後まで諦めずに戦う、それこそはだ」
「それこそ?」
「何だっていうんだ?」
「闘志美!」
 今度の言葉はそれだった。
「いいぞ、燃えてきた!」
「燃えてきたってのか?」
「あんたも!」
「そうだ、燃えてきたのだ!」
 まさにそうだというのだった。
「いいぞ、これはいい!」
「こいつ、意外と熱い奴なのか?」
 バサラもここでこのことを察した。
「若しかしてな」
「そうかもな」
 アルトが彼のその言葉に頷いた。
「これは」
「へっ、これはいいぜ」
 バサラはそのことがわかって笑みを浮かべた。そうしてだった。
 ギターを持ったままだ。また歌うのだった。
「おい、そこの美野郎!」
「俺のことか」
「もっと聴け!」
 これが彼の言葉だった。
「この俺の歌をな!」
「いいだろう、それではだ」
 ガビルもバサラのその言葉に対して笑みで返す。
「俺にその音楽美を見せるのだ!」
「歌は見せるもんじゃねえ!」
 こう言い返すのがまさにバサラだった。
「聴かせるもんだ!」
「それだというのだな」
「ああ、そうだ!」
 こう言ってだった。実際に歌ってだ。
 ガビルとぶつかり合う。二人の戦いだった。
 その中でだ。両軍との戦いが続いてだった。
 カワッセがだ。シーラに言った。
「シーラ様」
「どうしたのですか?」
「やはり来ました」
 こうシーラに告げるのだった。
「敵です、この反応は」
「ポセイダル軍ですか」
「はい、その数二十万」
 それだけだというのだ。
「来ました」
「方角は」
「我が軍から見て三時です」
 そこだというのだった。
「そこにです」
「そこにですか」
「どうされますか、ここは」
「そうですね」
 それを聞いてだった。シーラはすぐに述べた。
「ここはです」
「迎撃ですか」
「いえ、この気配は」
 シーラは独自の気配を察してだ。そうしてであった。
「私達のところには来ません」
「そうなのですか?」
「躊躇っています」
 また言うシーラであった。
「本来は私達の方に行きたいようですが」
「それでもですか」
「はい、来ません」
「それは何故でしょうか」
「他の目的があるようです」
 シーラは目を閉じていた。そうしながら何かを感じ取っていた。彼女のその力を使ってであった。
「それが何かまではわかりませんが」
「そうなのですか」
「ですから。備えはです」
「いいのですね」
「はい、いいです」
 また話すシーラだった。
「プロトデビルンに専念するだけで」
「わかりました」
 カワッセはシーラのその言葉に頷いた。そしてだ。
 ロンド=ベルの面々もその軍勢を見た。エリスがダバに言った。
「ねえ、敵の旗艦は」
「ああ、そうだな。傍にオージェがいる」
 ダバはエリスのその言葉に応えた。
「つまりあれは」
「ギワザの船よね」
「そしてあのオージェはネイだ」
 このことも察して話す。
「そして他にもいるな」
「十三人衆のほぼ全てだな」
 ギャブレーもここで話す。
「揃っているな」
「そうだな。けれど」
 ダバはその彼等を見ながら話していく。
「こっちには来ないな」
「そうね。何かすぐに向こうの方に行くけれど」
「どういうことなんだ?一体」 
 ダバはいぶかしまざるを得なかった。ギャブレーもだった。
「おかしいな。十三人衆の仕事は我々と戦い倒すことの筈だが」
「シーラ王女の言う通りに何かあるのか」
 ダバはいぶかしんで話した。
「これは」
「何かあるな。ただ」
「ただ?」
「今彼等は私達と戦うつもりはない」  
 ギャブレーはこのことを言うのだった。
「それはだ」
「ないのね」
「それは間違いない。そうだな」
 ギャブレーはエリスに応えながらさらに話すのだった。
「これは私達にとっては好都合か」
「さしあたってプロトデビルンに専念できるな」
「だからだ」
 こうダバに話す。
「これでいい」
「そうだな。後のことは後で考えるべきだな」
「何か行き当たりばったりじゃないの?それって」
「いや、それでいいだろ」
 キャオがいぶかしむエリスにこう話した。
「まずはこの戦いを乗り切らないといけなんだしな」
「だからなのね」
「ああ、だからだよ」
 こう話すのだった。
「まずは目の前のことだよ」
「それじゃあ」
「ポセイダル軍のことは後で考えるんだ」
 ダバもそのエリスに話した。
「とにかく今は」
「この美とか騒いでる人達をなのね」
「そうしよう、今は」
 こうしてだった。彼等は戦っていってであった。遂にだった。
 グラビルがだ。叫んだ。
「ガオオオオオオン!」
「グラビル、そうなのか」
 ガビルはそのグラビルを見て言った。
「限界美だな」
「ガオオオオン・・・・・・」
「そうか、わかった」 
 そのグラビルの絶叫を聞いての言葉だった。
「それではだ」
「ちょっと待てよ」
 ジュドーはそのガビルに突っ込みを入れた。
「御前今の言葉わかったのかよ」
「わかったがどうしたのだ」
「何でそれでわかるんだよ」
 言い返すジュドーだった。
「ただ叫んでるだけだろうが」
「それは当然のことだ」
「当然って何がだよ」
「我等は一心同体。だからだ」
「つまりあれね」
「そうね」
 ルーとエルがここでわかった。
「言葉はいらないっていうのね」
「そういう関係なのね」
「そうだ。心が通い合っている。これこそだ」
 また言うガビルだった。
「心通美!」
「また美かよ」
「本当に好きだよね」
「そうだよね」
 ビーチャにモンド、イーノもいささか呆れていた。
「何でもかんでも美ってな」
「好き過ぎるよね」
「癖なんてものじゃないね」
「何度も言うが美は全てだ」
 ガビルはこう言ってはばからない。しかし今はであった。
「ではグラビルよ」
「ガオオオオオン」
「戻るとしよう。では今より」
「言うよ、絶対に」
「そうだな」
 プル、プルツーもわかっていた。
「またね」
「美だな」
「撤退美を開始する!」
 本当に言った。そうしてであった。
 プロトデビルンの軍勢は撤退したのだった。それでだった。
 ロンド=ベルは戦いを終え集結してだ。そのポセイダル軍のことを話した。
「しかしあの動きは」
「明らかにおかしい」
「そうよね」
「私達を見ても何もしないなんて」
「しかも」
 おかしいことはそれだけではなかった。
「あの顔触れで」
「ギワザもネイもいたよな」
「マクトミンもな」
「それで?」
「何もしなかったって?」
 おかしいと思うのはこうしたことからもだった。
「考えれば考える程」
「何かおかしい」
「そういえば」
 ここでだった。ユンがダバに問うた。
「あの、ダバさん」
「はい」
「ここってポセイダルの独裁体制ですよね」
「はい、そうです」
 その通りだと答えるダバだった。
「その通りです。ポセイダルによって何もかもが支配されています」
「そうですよね。それならああいう時は間違いなく攻めて来るのに」
「私達は敵ですからね」
 レフィーナも言う。
「ポセイダルにとっては紛れもなく」
「それでどうして」
 ユンは首を傾げさせた。
「あの時来なかったのでしょうか」
「若しかすると」
 ここでショーンがふとした感じて言ってきた。
「そのポセイダルの独裁体制が」
「はい」
「何か」
「異変が起こっているのかも知れませんな」
 こう言うのだった。
「若しかすると」
「異変がですか」
「それがですか」
「はい、若しかしたらですが」
 これがショーンの説だった。
「その可能性は否定できないかと」
「ううむ、そういえばだ」
 ギャブレーが考える顔で述べた。
「ギワザだが」
「その十三人衆のリーダー格の?」
「何かとずる賢そうな」
「あの者は何か含むところがあったな」
「そういえばそうだね」
 レッシィも言ってきた。
「あいつは一回私に声をかけてきたしね」
「私にもだ」
 ギャブレーにもだというのだ。
「何かあれば自分につくようにな」
「あれはまさか」
「じゃああれなの?」
 アムは二人の言葉からすぐにあることを察して言った。
「自分が権力を握ったらその時はって」
「っていうと?」 
 キャオも己の考えを話す。
「謀反とか反乱とか。それはないか?」
「いや、ひょっとしたら有り得るのかもな」
 ダバが考える顔で言った。
「それも」
「じゃあそれで?」
「今は俺達に手を出さなかった?」
「今はとりあえず」
 ロンド=ベルの面々はダバの言葉を受けてそれぞれ話した。
「その理由は」
「戦力温存かしら」
「そのせいで?」
「というとここは」
 考えはさらに進んでだった。
 今度はトカマクが言った。
「俺達がポセイダル本軍と戦うとお互いが潰し合いになるよな」
「若しそのギワザが反乱を起こすのなら敵が潰し合ってくれて好都合」
「そうなるよな」
「やっぱり」
 皆こう考えていく。そうしてだった。
「とりあえずどうする?」
「ここは」
「何か手はあるかな」
「一つ派手にしてみませんか?」
 ダバの提案だった。
「一度」
「派手っていうと」
「どうするんだよ」
「戦争でも売るの?」
「はい、売ります」
 まさにその通りだというのだった。
「それも派手にです」
「それで売る相手は」
「一体誰なんだ?」
「どっちに売るんだ?」
「ポセイダルかそれともギワザか」
「ここはポセイダルです」
 その彼等だというのだった。
「おそらく彼等は僕達が侵入してきたことに気付いています」
「それは間違いないよな」
「さっきあれだけ派手に戦ったし」
「若しギワザがそれで差し向けられていた軍を率いていたとしたら」
「もう既に」
「それは間違いないわね」
「だとすればまたすぐに来ます」
 ダバはこう皆に話していく。
「それで僕達はそのポセイダル軍と戦います」
「そうなればポセイダル軍がギワザを呼ぶ」
「けれどそれでも来ないか来てもすぐに帰ったら」
「間違いない」
「そういうことか」
「はい、そうです」
 これがダバの作戦だった。
「これでどうでしょうか」
「そうね」
「いける?」
「敵の情勢を探るには」
「そうよね」
 皆それぞれ顔を見合わせて話す。そうしてだった。
 ダバのその提案に頷くことにした。そのうえでだった。
「じゃあここはそれで」
「行こうか」
「まずは見極めないとね」
「その為にも」
「はい、ではそれでいきましょう」 
 ダバは皆が賛成してくれたので微笑んだ。そうしてだった。
「それなら」
「それではこのまま進むか」
 ベンが言った。
「そして敵との遭遇を待つか」
「そうしましょう。実はです」
 ダバは今度はベンに話すのだった。
「レジスタンスの勢力もあるのですが」
「君達の同志か」
「はい、そんなところです」
 こうベンに答える。
「その勢力がある惑星はまだ先ですし」
「ではまだただ進むだけでいいな」
「はい、それで御願いします」
 それでいいというのだった。
「それじゃあこれから」
「うむ、行こう」
 ベンがまた言ってだった。ロンド=ベルはまずは進むのだった。だがただ進むのではなくだ。あえて進む、戦略あっての航行であった。
 その中でだ。ふとプルとプルツーが言った。
「じゃあ落ち着いたし」
「そうだな」
 二人で息を合わせての言葉だった。
「お風呂入ろう」
「そうするべきだな」
「おいおい、またかよ」
 ジュドーは二人のその言葉にいささか呆れた声を出した。
「本当に好きだな」
「だって気持ちいいんだもん」
「奇麗になるぞ」
「けれど入り過ぎだろ」
 こう言うジュドーだった。
「一日に何度入ってるんだよ」
「昨日は四回?」
「そうだったな」
 出撃とトレーニングと睡眠以外は全部と言ってよかった。あと食事である。
「それ位だよね」
「ああ、確かな」
「そんなに奇麗にしてどうするんだ」
「だって女の子は奇麗にしろって」
「皆言うぞ」
「いや、それはそうだけれどな」
 ジュドーもこのこと自体は否定しなかった。
「それでもな。一日一回でいいだろ」
「そんなの汚いよ」
「最低三回だ」
「一回でいいんだよ。それに洗濯はな」
 ここからが問題だった。
「一週間に一回でいいんだよ」
「それ最低よ」
「そうだ、不潔だ」
「何だよ、不潔だっていうのかよ」
「何か男ものの下着干すの少ないけれど」
「それでだったのだな」
 このことは相変わらずだった。
「ジュドー今トランクス何日目?」
「一体どれ位穿いている」
「三日前に替えたばかりだよ」
 こう返すジュドーだった。
「それが悪いのかよ」
「だから毎日洗う」
「そうだ、洗え」
「そうよ、お兄ちゃん達って」
 リィナも出て来た。
「洗濯は全然しないから。自動洗濯機一杯あるのに」
「面倒臭いんだよ」
「お風呂は無理に放り込んでるけれど」
 その一日一回の理由がこれでわかった。
「全く。こうなったら」
「どうするってんだよ」
「お兄ちゃんごと洗濯機に放り込むわよ」
 こんなことを言うのだった。
「こうなったら最終手段よ、覚悟してよね」
「なっ、俺は服じゃねえぞ」
「じゃあ毎日洗濯して。いいわね」
「ちぇっ、そこまでしなくてもよ」
「さもないとトランクス一枚に剥いて」
 リィナは過激だった。
「それでお風呂に放り込んでそこに服も洗剤も入れて」
「それで洗うってのかよ」
「そうよ、私本気だからね」
「そんなことで本気になるな」
「とにかく洗濯は毎日にして」
 これに尽きるリィナだった。
「わかったわね」
「うう、わかったよ」
「じゃあビーチャさんとモンドさん、イーノさんにも言ってね」
 この三人もだった。
「何気にケーンさん達もだし」
「皆不潔」
「最悪だな」
 また言うプルとプルツーだった。
「洗濯だって毎日ちゃんとしないと」
「汚いぞ」
「汚い汚いってよ」
 まだ言うジュドーだった。
「ったくよ。昔の人は一生に数える程しか入らなかったんだぞ」
「だからそれは問題だから」
 妹もまだ返す。
「わかったわね、それで」
「くそっ、厄日だ」
「お兄ちゃんの為よ」
「ああ、そうなのかよ」
「そうよ、だからね」
「洗濯もしろってんだな」
「そういうこと」
 まさにその通りだった。
「はい、じゃあ早速」
「う、うわっ!」
 妹にトランクス一枚にされるジュドーだった。そうした中でもだ。彼等は次の戦いに向かう。ペンタゴナでの戦いははじまったばかりだった。


第六十五話   完


                                      2010・10・11 

 

第六十六話 確信になる疑惑

                 第六十六話 確信になる疑惑
 ふとだ。ニコルが言った。
「あの」
「はい、何かあったんですか?」
 その彼にカトルが言葉を返す。
「だとすれば一体」
「カトル君がさっき弾いていた曲ですが」
 カトルはピアノの前に座っている。その彼に声をかけたのである。
「あれは確か」
「はい、ワーグナーです」
「そうですよね、ローエングリンですよね」
「結婚の曲です」
 ローエングリン第三幕のはじめの曲である。あまりにも有名な結婚の曲だ。
「それです」
「いいですね、あの曲は」
「そうですよね。アークエンジェルの武器の名前にもなってますしね」
「ははは、そうですね」
 ニコルはカトルの今の言葉に笑った。
「そういえば」
「ええ。本当に」
「そのアークエンジェルをかつては沈めようとしていたんですね」
 ニコルは今度は己の過去を思い出した。
「それが今では」
「そのアークエンジェルに乗ることもあったりして」
「そうですよね。不思議ですよね」
「本当に」
「普段はここにいても」
 彼等が今いるのはシティ7である。ロンド=ベルの面々も普段はここにいることも多いのである。
「アークエンジェルに入ったりしますからね」
「本当に人間の運命ってわかりませんよね」
「そうだよね」
 シンジもにこりとしてやって来た。
「僕だってね。何時の間にかここにいて」
「そうですよね。シンジ君も」
「最初僕達は敵同士だったしね」
「そうだったよね」
 シンジはカトルのその言葉にも応えた。
「色々あったよね、これまで」
「そうだよね。その間に」
「その間に?」
「カトル君に他に何かあったかな」
「マグアナック隊の人達も来てくれて」
 彼が言うのはその面々のことだった。
「皆で楽しくやるようになったりね」
「ああ、あの人達ですか」
「そういえばサンドロックカスタムになってから来てくれるようになったんだよね」
「昔からあの人達には助けてもらっていて」
 カトルは優しい笑顔になって話す。
「そうして今も」
「あれかなり羨ましいんだけれど」 
 アスカも来た。
「全く。どうしてあんたとマイクだけ」
「まあそれは何ていうか」
「けれどいいわ」
 アスカは珍しく優しい笑みになっていた。
「あんたならね」
「僕なら?」
「そうよ、あんたならね」 
 いいというのである。
「マイクもね。いいわよ」
「何でいいの?」
 シンジがそのアスカに問うた。
「カトル君とマイクは」
「キャラクターよ」
「キャラクター?」
「そうよ。これがあんたとかシンだったら許せないのよ」
「僕だったら」
「あんたは誰かに頼ったら駄目よ」
 シンジにはきっぱりと言い切るアスカだった。
「そこからまたなよなよになるんだから」
「なよなよって」
「だから駄目。あんたは一人でやるって決めないと駄目になるからね」
「それでなんだ」
「そういうことよ。それでね」
「うん」
「シンは問題外よ」
 シンにはより厳しかった。
「あいつはね。もう一人で暴れるし」
「暴れる。そうですね」
 ニコルはアスカの今の言葉に思わず笑ってしまった。それから言うのだった。
「シンの戦い方は本当に凄いですからね」
「最近じゃ遠くからもだけれど」
 インパルスデスティニーのその武器故である。
「基本は敵に殴り込んでもうあの手からビーム放ったりでしょ」
「確かにそうですね」
 ニコルも言う。
「僕今デスティニーに乗っていますがあれはそういう戦い方ですし」
「そんなので何人もなんていらないでしょ」
「一機でかなりの戦力ですしね」
「だからいいのよ。それでも」
「それでも?」
 シンジがアスカの今の言葉に問うた。
「何かあるの?」
「あいつはまあそう簡単に死なないし」
 アスカが今言うのはこのことだった。
「それでもいいのよ」
「簡単に死なないから?」
「そう、死んだら何にもならないじゃない」
「確かにそうだよね」
 カトルもアスカのその言葉に頷いた。
「死んでどうにかなるものじゃないから」
「だからあいつも死んだら駄目よ」
 アスカは真面目な顔になっている。そのうえでの言葉だった。
「それに」
「それに?」
「それにって?」
「ほら、ステラ助けた時よ」
 この時のことも話すアスカだった。
「あの時は本気で死ぬなって思ったわよ」
「あの時のシンは凄かったですね」
「そうだね」
 ニコルとカトルもあの時のことを思い出しながら話す。
「普段から熱くなりやすいシンですけれど」
「あそこまでは」
「キラも凄くいいアシストしたしね」
 シンジは彼のことも話した。
「そのおかげでね」
「あの時。よくステラを助けたわよ」
 アスカは明らかに感心していた。
「っていうか助けられなかった時は」
「その時は?」
「何かするつもりだったの?」
「あの馬鹿ぶっ殺すつもりだったわよ」
 本気の言葉だった。
「もう絶対にね」
「絶対になんだ」
「あそこまでいって助けられなかったってないでしょ」
 アスカはその本気の言葉でさらに言う。
「そうでしょ?やっぱり囚われのお姫様を助け出してこそよ」
「若しかしてさ」
 シンジはアスカの今の言葉を聞いて言った。
「アスカってさ」
「何よ」
「シンのこと結構好き?」
 少し戸惑いながら彼女に問うた。
「そんなこと言うなんて」
「ば、馬鹿言わないでよ」
 アスカのその顔が崩れた。
「そんなこと。あんな奴はね」
「あと甲児さんやケーンさんは?」
「どいつもこいつも大嫌いよ」
「エイジ君も?」
「勿論よ」
「けれどタケルさんは?」
「あの人は別よ」
 彼のことを話すことについては素直だった。
「あと一矢さんもね」
「やっぱり。一途だから?」
「一途過ぎるじゃない」
 それが心配とまでいった顔になっての言葉だった。
「あんまりにも」
「一途過ぎるんだ」
「あんなにマーグさんやエリカさんのことを想って」
「確かに。あれは」
「素晴しいですね」
 ニコルとマーグも同意だった。
「僕は一矢さんのことは実際に見ていません」
「けれど話には聞いてますね」
「はい、一矢さんの高潔さがわかりました」
 こう言うニコルだった。
「本当に」
「だからよ。あそこまで想われてる相手も幸せよ」
「マーグさんにエリカさんだね」
「そうよ。しかもあそこまで素晴しい人達によ」
 アスカはあくまで言う。
「そんなに想われて。あれでハッピーエンドに終わらないなんてね」
「その選択肢はないんだね」
「なるべくしてなったのよ」
 これがアスカの主張だった。
「ああいうふうにね」
「タケルさん、そして一矢さんだからこそ」
「そういうことよ。それにね」
「うん」
「何ていうかね。ああしたことってね」
「ああしたことって?」
「自分もって思わない?」
 アスカの顔が赤くなっていた。
「自分も。ああいうハッピーエンドになれたらって」
「そうですよね。僕もそう思います」
「ニコル、あんたもなの?」
「人として当然だと思いますよ」
 そこまでだというのだ。
「やっぱり」
「そうなのね」
「アスカさんも。ですから」
「あたしも?」
「そうした風に想える相手か、想ってくれる相手ができれば」
「あたしは無理よ」
 アスカのその顔が苦笑いになった。そうしてだった。
「どうしてかっていうとね」
「どうしてかっていいますと?」
「あの人達みたいに立派じゃないわよ」
 だからだというのである。
「それでどうして。あんな風に」
「そう言われるんですか」
「シンだってよ」
 ついつい彼のことも言ってしまった。
「ステラに言った言葉だけれど」
「あれだよね」
 カトルがそのことに応えた。
「君は死なない、って」
「ええ、あの言葉よ」
「君は俺が護るからって言ったあの時ですね」
「あんな言葉普通は言えないわよ」
 アスカはこのことをだ。痛い程わかっていた。だからこそ今言うのだった。
「あそこまでの言葉。咄嗟にね」
「咄嗟に、ですよね本当に」
「シン君だったら」
「そこまでステラを想ってるってことよ」
 アスカは何故かここでは顔が曇っていた。
「あんなに一途に純粋にね」
「じゃああの時のシンも」
「絶対にああなるものだったのよ」
 こうシンジに言った。
「ハッピーエンドにね」
「そうなるべきだったんだね」
「そういうことよ。それでね」
「うん」
「ダバさんもよ」
 アスカは彼もだというのだ。
「あの人だって苦労したじゃない」
「クワサンさんのことで」
「そうよ、苦労の先には幸せがあるのよ」
 アスカは明らかに力説していた。
「だからね。絶対にね」
「アスカさんって」
「そうだよね」
 ニコルとカトルはそんな彼女の話を聞きながらにこりと笑って述べた
「本当に」
「優しいですよね」
「な、何馬鹿言ってるのよ」
 アスカの二人に対する反応は予定調和だった。
「あたしはね、そんなことはね」
「ないっていうの?」
「そうよ。ダバさんはね」
 そのダバのことを話に出して言い繕う。
「やっぱり。素晴しい人だから」
「幸せになって当然っていうんだね」
「そうよ。このペンタゴナだって」
 アスカはペンタゴナの話もした。
「そうなるべきなのよ」
「ええ、確かに」
「その通りだね」
 ニコルとカトルは強い顔でアスカの今の言葉に対して頷いた。
「ポセイダルの圧政を終わらせて」
「そのうえで」
「やってやるわよ」
 アスカの右手が拳になった。
「この戦いもね。派手に暴れるわよ」
「アスカも闘争心がどんどん高くなってるね」
 シンジはアスカにこのことを突っ込んだ。
「最後はどうなるのかな」
「どうにもならないわよ」
「ならないの?」
「別にガンダムファイターになるんじゃないし」
「そうなんだ」
「あたしはあんな変態にはならないから」
 ここでは露骨なまでに嫌悪感を見せる。
「それはね」
「変態ってやっぱりマスターアジアさん?」
「最近出てないけれどね」
 見てないという意味である。
「それでも何時出て来てもおかしくないし」
「例えばペンタゴナでの戦いとかに?」
「出る危険あるし」 
 アスカはこのことを真剣に危惧していた。
「もういきなりだからね。あの人は」
「そんなに警戒することないじゃない」
「するわよ」
 まだ言う彼女だった。
「もう一人いるし」
「シュバルツさんだね」
「何であんなことができるのよ」
 そのシュバルツについても言うのだった。
「忍者だなんて」
「忍者は普通にいるじゃない」
 シンジは平然と話した。
「神代さんだってそうだし」
「あの娘は普通じゃない」
「普通に忍者ってこと?」
「そうよ、めぐみさんもね」
 彼女の名前も出す。
「普通に忍者じゃない」
「じゃあシュバルツさんは?」
「あれは妖術っていうの」
 そこまでだというのである。
「あんな変態そのもの技。妖術じゃない」
「そうかな。格好いいけれど」
「あんた、本当にセンス最低ね」
「そうかな。綾波だっていいって言うし」
「あの娘もおかしいのよ。あんな変態爺さんが素敵だなんて
「僕も格好いいと思うけれど」
「全然格好よくないわよ」
 あくまでこう主張するアスカだった。
「っていうかあの変態爺さん、いい加減何とかならないかしら」
「多分無理だと思うよ」
 こんな話をする彼等だった。そうしてだ。
 ロンド=ベルは前方にあった宇宙ステーションに攻撃を仕掛けた。そこには帝国軍の戦力が駐留し展開しようとしていたのである。
「都合がいいな」
「そうだね」
 ダバはギャブレーのその言葉に頷いた。
「本当にね」
「ではあの基地に攻撃を仕掛けるのだな」
「うむ、そうだ」
 ダイテツがギャブレーに対して答える。
「そのうえで様子を見るとしよう」
「果たして十三人衆が本当にやって来るか」
「やって来て俺達と戦うのか」
「それを見極める為にも」
「その展開によって今後の動きが決まる」
 ダイテツのその目が光った。
「我々のその動きがだ」
「そうですね。ポセイダル軍が一つになって我々に来るか」
 テツヤもここで言った。
「それとも分裂しているかで」
「一丸となって来たら手強いですね」
 エイタもその場合については考えていた。
「けれど分裂していたら」
「それだけ楽だ」
 こう言うテツヤだった。
「敵がいがみ合ってくれればな」
「その場合だが」
 ダイテツはここで言うのだった。
「我々は反乱軍を狙わない」
「まずはですか」
「彼等はですね」
「そうだ、まずは放置する」
 そうするとだ。ダイテツはテツヤとエイタに話した。
「そのうえで正規軍と戦う」
「まずは奴等の戦力を弱める」
「そういうことね」
 ラウルとフィオナも察しをつける。
「連中が弱まれば反乱軍が動くからな」
「正規軍を倒しにね」
「今バルマー帝国自体が力を弱めています」 
 フェアリがこのことを指摘した。
「それが彼等の問題です」
「既に二つの方面軍が崩壊か」
 男秋水が言った。
「やっぱりでかいよな、これって」
「そうよね。五つのうちの二つだからね」
 女秋水も話す。
「これってやっぱり」
「我々の予想以上に大きいと思います」
 フェアリはまた言った。
「だからこそ反乱も起こるのでしょう」
「バルマーも磐石じゃない?」
 今言ったのはトウマだった。
「本当に」
「磐石ではないことは間違いないな」
 それはカイも言った。
「実際に反乱も見られる」
「ユーゼスか」
 クォヴレーの顔が曇った。
「あの男か」
「過去にそうしたこともあった。だからこそね」
「そうだよな」
 皆ここで話す。そうしてだった。
「それじゃあここは」
「あの基地を一気に」
「攻めてそうして」
「様子を見るか」
「そうしましょう」
 それぞれこう話してだった。そのうえで戦いに赴くのだった。
 ステーションに向かうとだ。すぐにヘルモーズが一隻に多くの軍勢が出て来た。
「司令、ここは」
「どうされますか?」
「既に援軍は要請しているな」
 司令官はペルガモだった。その彼が部下達に問うた。
「そうだな」
「はい、それは既に」
「要請しています」
 部下達もすぐに話してきた。
「ギワザ閣下に既に」
「ですからここは」
「わかった。それではだ」
 ペルガモはそれを聞いて頷いた。それからだった。
「戦闘用意だ。その援軍と共にだ」
「ロンド=ベルを討つ」
「ここで遂に」
「そうする。奴等を倒すのは余だ」
 ペルガモはこうも言った。
「よいな、それで」
「はい、では」
「我等もまた」
「総員出撃!」
 ペルガモが指示を出してであった。
 バルマー軍はすぐに展開する。そうしてロンド=ベルとの戦いに入る。
 その時にだ。ペルガモはしきりに周囲を見る。ヘルモーズの中からだ。
 まずはだ。三分経った。
「まだか」
「はい、まだです」
「来られません」
「そろそろだと思うが」 
 神経質そうな表情での言葉だった。
「そうですね、時間的には」
「もうすぐだと思いますが」
「待つか」 
 ここでは落ち着いていた。
「そうするとしよう」
「はい。ロンド=ベルの攻撃は激しいですが」
「まだもちます」 
 それにより既に軍の二割が倒されていた。
「それでもですね」
「まだ」
「そうだ、待つ」
 また言うペルガモだった。
「そうするぞ」
「待ってそのうえで」
「援軍と共に」
「疲れ切った奴等を討つ」
 これがペルガモの作戦だった。そうしてだ。
 己の軍にだ。こうも言った。
「陣を整える」
「守りの陣ですか」
「ここは」
「その通りだ。守るぞ」
 こう言ってなのだった。彼等は守り続けた。
 それからまた三分経った。しかしであった。
 ギワザの軍はまだ来ない。その間にもだ。
「行けっ!」
「ファンネル達!」
 ギュネイとクェスが同時にファンネルを放ってそれで敵を一掃していく。ファンネルは乱れ飛びそのうえで敵を屠っていくのだった。
 それを見てだ。ペルガモは遂に焦りを覚えていた。
「まだか」
「は、はい」
「まだです」
「一機も見えません」
「何故だ」
 その眉が歪みだしていた。
「何故まだ来ない」
「何かあったのでしょうか」
「これは」
「わからん。しかしだ」
「はい」
「しかし?」
「この戦いはまずい」
 戦局を見ての言葉だった。
「最早一個艦隊ではロンド=ベルの相手はだ」
「できませんか」
「それは」
「できないな」
 ペルガモは断言した。
「これまで七個艦隊を一度に相手にしても勝ってきているな」
「はい、確かに」
「既に方面軍を二つ倒しています」
「だからか」
 ペルガモはそれでも冷静なままだった。そのうえでの言葉だった。
「これだけの強さは」
「勝利により経験を積んでいる」
「そうだというのですね」
「その通りだ」
 こう言うペルガモだった。
「今のあの者達の戦いが何よりの証拠だ」
「閣下、既にです」
「艦隊の損害が尋常ではありません」
「どれだけだ」
 その損害の割合を問うた。
「どれだけやられた」
「六割です」
「間も無く七割に達します」
「そうか、わかった」
 ここまで聞いてだった。すぐにだった。
 ペルガモはだ。残った者達に言うのだった。
「撤退する」
「ここはですか」
「その様に」
「ポセイダル様の下に戻るぞ」
 こう部下達に言うのだった。
「いいな、それで」
「わかりました、それでは」
「無念ですが」
「致し方ない。しかし」
 だが、だった。ここでペルガモはこうも言うのだった。
「十三人衆だが」
「確かに」
「あの者達は一体」
「どうしたのでしょうか」
「敵か」
 ペルガモは最初にこう考えた。
「それでか」
「敵ですか」
「というと宇宙怪獣」
「それともプロトデビルンか」
「それと戦ってですね」
「そうだ。そして若しくは」
 さらに言うペルガモだった。
「反乱か」
「反乱ですか」
「それを考えているというのですか」
「あの者達は」
「有り得る」
 ペルガモのその顔がきぐするものになっていた。そのうえでの言葉だった。
「それもまた、だ」
「確かに。ユーゼス=ゴッツォの例もありますし」
「それは」
「その通りだな。特にギワザだが」
 やはり最初に言われるのは彼だった。
「あの男は特にだ」
「信じられませんか」
「やはり」
「そうだ。何かあればだ」
「はい、何かあれば」
「その時は」
「討つ」
 ペルガモは言った。
「余のこの手でだ」
「しかし今は」
「仕方ありませんな」
「撤退する」
 また言うのだった。
「よいな」
「では宇宙ステーションは放棄し」
「そのうえで」
 こうしてだった。ペルガモが率いる軍は撤退したのだった。そうしてだった。 
 ロンド=ベルはその宇宙ステーションに入った。そこに入るとすぐにそのステーションの中を調べる。そうしてそのうえでだった。
 刹那が言った。
「足掛かりには少し物足りないな」
「確かにね」
 ティエリアが彼の言葉に頷いた。
「この基地の規模はね」
「そうだ。少し物足りない」
 刹那はまたこう言った。
「バルマー軍と戦うにはだ」
「惑星を一つ解放できたらいいけれど」
 アレルヤはこう言った。
「それはどうかな」
「おい、ダバ」
 ロックオンがダバに声をかけた。
「そうした星はあるか?」
「俺達に協力してくれそうな惑星か」
「ああ、そういう星はあるか?」
 こう彼に問うのだった。
「ペンタゴナに」
「ないと言えば嘘になるね」
 こう答えたダバだった。
「それはね」
「っていうとどの星だ?」
「ヤーマンだ」
 そこだというのである。
「惑星ヤーマンは反ポセイダル勢力が多い。あそこを解放できれば」
「我々にとって大きな力になるな」
 レッシィも言った。
「間違いなくな」
「そうよね。私達前はヤーマンにいたしね」
「何か大昔に感じるけれどな」
 アムとキャオの言葉だ。
「あの時も色々あったわよね」
「そうだよな」
「あそこが一番いいだろうな」
 ギャブレーも賛成の言葉を述べてきた。
「それではだ。ヤーマンに向かうとしよう」
「わかったわ。それじゃあダバ君」
 スメラギがダバに対して言ってきた。
「ここはね」
「ここは?」
「ヤーマンへの道を案内して欲しいけれど」
 これがスメラギの彼への言葉だった。
「御願いできるかしら」
「はい」
 ダバはすぐに答えてきた。
「わかりました。それならすぐに」
「御願いね」
 こうしてロンド=ベルはダバの道案内の下ヤーマンに向かうことになった。その途中だった。刹那がふとこんなことを言うのだった。
「ダバにとってはだ」
「俺にとっては?」
「故郷だったな」
「ああ、そうさ」
 彼のその言葉に応えるダバだった。
「それはその通りさ」
「そうだったな」
「そうした意味では懐かしいかな」
 ダバはこんなことも言った。
「故郷に帰れてね」
「そうか」
「けれど」
 しかしだった。ダバはここでこう言うのだった。
「今は懐かしさよりも」
「ポセイダルを倒すことか」
「そうさ。俺達はペンタゴナじゃずっと戦ってきたんだ」
「その様だな」
 グラハムが出て来て言う。
「君達の戦いもかなり激しかったようだが」
「多くの仲間が死にました」
 ダバはグラハムにも答えた。
「そして。地球に流れる形で来て」
「そうだったのか」
 これは本質的に別の世界の住人であるグラハムは知らないことだった。話には聞いているがそれでもだった。
「君達も苦労したのだな」
「いえ、それは別に」
 ダバはこうグラハムに返した。
「ありませんでした」
「普通だったのか」
「普通じゃないですけれど今こうしてここにいますから」
 それでだというのである。
「僕は別に苦労は」
「そう言うのはですね」
 留美がそのダバに言ってきた。
「戦いに勝って言うべきですね」
「戦いに勝って」
「まずは勝ちましょう」
 士気を鼓舞する為の言葉だった。
「ポセイダルに」
「そうですね。それじゃあ」
「それに一つ確実なことがわかった」
 ここで言ったのはセルゲイだった。
「十三人衆だったな」
「はい」
「あの者達は間違いなく反乱を考えている」
 これまで疑念だったことを話すのであった。
「その証拠に先の戦いでは姿を現さなかった」
「それでなんですね」
「そうだ、間違いなく反乱を考えている」
 セルゲイはまたこう言った。
「これがどう影響するかだ」
「さしあたってはあれだよな」
 パトリックが話す。
「敵が減ってくれてるな」
「それは確かに」
「ありがたいことに」
 ハワードとダリルがパトリックの言葉に頷いた。
「彼等の軍が来ていればです」
「どちらの戦いもより激しくなっていたことは間違いありません」
「ヘビーメタルはあれだったな」
 ジョシュアも話す。
「ビームコートがしてあるんだったな」
「ああ、そうだぜ」
 キャオがジョシュアの言葉に答えた。
「だから結構厄介だぜ」
「それはダバ達のマシンを見ればわかるけれど」
 ソーマが言った。
「実際に戦うとなると」
「厄介な話になるな」
 アンドレイは難しい顔になっていた。
「敵にするとなると」
「実弾兵器があるにはある」
 ビリーは皆にこのことを話した。
「けれどそれでも」
「腕の立つ奴は切り払いますね」
 綾人の言葉だ。
「それも簡単に」
「ネイ=モー=ハンには注意して下さい」
 ダバはこの女の名前を出した。
「マシンの性能もかなりですし」
「げっ、あいつまだ生きていたのかよ」
 ビルギットがうんざりした顔と共に言った。
「しぶといな、おい」
「いや、オージェいましたし」
「ですから間違いなく」
「生きてますよ」
 周囲がこう言う。
「だから余計にです」
「気合を入れて進まないと」
「どっちにしろギワザ達とも戦わないといけないし」
「ですから」
「そうなんですよね」
 ダバがまた難しい顔で話した。
「結局のところは彼等とも」
「まあさしあたっては双方の分裂を利用して」
「そうして戦いを進めていこうか」
「それにはまず」
 話がここで具体的なものにもなった。
「ヤーマンを解放して」
「そのうえでポセイダル軍を倒すか」
「そうするか」
「それでダバ」
 ルイスがダバに問うた。
「ヤーマンまであとどの位なの?」
「三日だよ」
 ダバはこうルイスに答えた。
「三日でヤーマンに着くよ」
「そう、わかったわ」
「では三日後だ」
 刹那の目が鋭くなった。
「ヤーマンに入りだ」
「解放して」
「そのうえで」
「そこからポセイダル軍とか」
「決戦ね」
「ただ。ギワザをどうするかだな」
 レッシィがここでこう言った。
「あいつをどうするか」
「そうだな。あの男は小心で狡猾だ」
 ギャブレーも言う。
「そう簡単に出ては来れまい」
「じゃあ出て来ない?」
「容易には」
「そう思う」
 ギャブレーはまた言った。
「ギワザはそういう男だ」
「そうだよな。何度か戦ったけれどな」
「あいつはそういう奴だよな」
「ええ、じゃあやっぱり」
「そう簡単には出てこない」
 こう話してだった。これで結論が出たのだった。
「まずはポセイダル軍だよな」
「そうだな、連中を叩いて」
「頃合いを見計らって出て来たギワザを」
「その時に」
「そうだね、それがいいね」
 ダバも仲間達のその言葉に頷いた。そうしてだった。
「それじゃあとりあえずは」
「軍を進めて」
「そうして」
「それじゃあヤーマンにですね」
 また言うダバだった。
「そしてそのうえで」
「ヤーマンに降下して」
「戦うか」
 こう話をしてであった。ロンド=ベルはヤーマンに向かう。それが今の彼等だった。


第六十六話   完


                     2010・10・14
 

 

第六十七話 リトル=セイ

                第六十七話 リトル=セイ
 ヤーマンに向かうロンド=ベル。その彼等を見てだった。
「よく動いてくれるな」
「はい」
「その通りですね」
 ギワザにだ。ネイとマクトミンが答える。
「ポセイダルの艦隊を一個潰してくれました」
「その艦隊の七割を」
「いいことだ」
 二人の報告を受けてだった。ギワザはさらに喜んで。
 そのうえでだ。彼は言った。
「今はだ。様子見だ」
「はい、そうしてですね」
「時を見て」
「ポセイダルを倒す」
 そうするというのだった。
「そうするぞ。いいな」
「はい、それでは」
「今は兵を養いましょう」
「その他にもやることがあるがな」
 ギワザはこんなことも口にした。
「フル=フラットとも話をしておこうか」
「あの女ともですか」
「話を」
「そうだ、しておくとしよう」
 こう言ってだった。ギワザも動くのだった。ペンタゴナは今複数の勢力が複雑に絡み合い戦い合う、そうした場所になってしまっていた。
 ヤーマンに辿り着いたロンド=ベルはだ。まずは星の周りを探索した。
「敵はいないな」
「はい」
「一兵も」
 大文字にミドリとサコンが答えた。
「宇宙怪獣やプロトデビルンも今は」
「いません」
「そうか、それは何よりだ」
 それを聞いて安心した言葉を出した大文字だった。
 そのうえでだ。彼は言った。
「では諸君」
「降下ですね」
「いよいよ」
「そうだ、全軍降下しよう」
 ロンド=ベルはすぐに降下用意に入る。しかしここで、だった。
「敵が誰か出て来るかな」
「どうだろうな。これまでこういう時はな」
「大抵来たけれどな」
「そうそう」
 彼等もかなり慣れていた。ある意味において。
「惑星に降りる時と宇宙に出る時な」
「そういう時は毎度だし」
「じゃあ今度も」
「来る?」
「ここぞとばかりに」
「そうだな。用意はしておこう」
 ブライトがここで言った。
「何しろ毎回のことだからな」
「総員出撃用意だな」
 アムロもそのブライトに話した。
「ここは」
「そうする。ではいいな」
「ああ、わかった」
 アムロはブライトに頷いた。そうしてだった。
 全軍何時でも出撃できる態勢になった。だがその時はだった。
 結局敵は来ずにだ。普通に惑星に降り立つことができた。
「あれっ、これだけ?」
「意外とあっさり?」
「そうよね」
「何、これ」
「こんなので終わり?」
「ひょっとしたら」
 ここで言ったのはだ。ラトゥーニだった。
「降りたその場所にいるとか」
「来る?」
「まさかここで」
「待っていて」
「それで」
「それはあるかも」
 また言うラトゥーニだった。
「やっぱり」
「有り得るわね」
 オウカが彼女の言葉に頷いた。
「いつもそればかりだと芸がないから」
「そうか。それじゃあ」
「用心はしておくか」
「念の為に」
 皆も彼女の言葉に頷きそうしてだった。出撃態勢はそのままにしていた。そして案の定だった。惑星に降り立つとそこにだった。
「おい、いたぜ!」
「何だよ。完全に包囲されてるじゃねえかよ!」
「まさに悪い予感は当たる」
 ケーンにタップ、それにライトが軽く言った。
「ったくよお、ある意味でお約束だよな」
「こういう時にこそ出るっていうんだな」
「そしてここは」
「お約束だけれどね」
 ミサトが言ってきた。
「総員出撃よ」
「あっ、やっぱり」
「ここはそれですよね」
「敵がいるとなると」
「御名答。勿論君達も出てね」
 ミサトはにこりと笑ってドラグナーの三人に話した。
「そういうことだから」
「ちぇっ、ヘルモーズはいないみたいだけれどな」
「それでも敵はうじゃうじゃいるしな」
「ううむ、大小合わせてどれ位かな」
 そのドラグナーの三人が言うとだった。ルリが言ってきた。
「敵の一個艦隊規模です」
「一個艦隊か」
「それにヘルモーズがいないとなると」
「戦力としては前より低いよな」
「そうよね」
 皆ここでこう話すのだった。
「じゃあ敵としては」
「普通通り戦えばいいかな」
「ここは」
「問題は」
 ここで言ったのはエリスだった。
「この敵だけじゃないよね」
「そうだな。それは間違いない」
 ダバがそのエリスに話す。
「まだ来るな」
「ヤーマンが戦場になるんだな」
 キャオも言った。
「メインの」
「そう考えてもいいだろうな」
 ダバはキャオにも話した。
「ここで。バルマー軍を何個艦隊規模で倒すと思う」
「そうしてヤーマンを解放して」
「あらためてポセイダルの本軍って訳だな」
「ああ、そうなる」
 ダバはエリスとキャオに対して答えたのだった。
「それじゃあここは」
「ダバ、行こう」
「頑張ってくれよ」
 エリスはダバと共にいた。キャオはメカニックなので出撃はしない。
 まずはそれぞれの戦艦の周りに出撃する。それからだった。
「よし、それではだ」
「はい」
「これからですね」
「方陣を組む」
 ダイテツの命だった。そうしてだった。
 戦艦はすぐに集結そする。その周りにだ。
 マシンが集まってだ。方陣を組んでポセイダル軍を迎え撃つ。
 ヘビーメタルもいればバルマーのマシンもある。完全な混成軍だった。
「そっちを先に狙います?」
「ここは」
「そうね、ここはね」
 ミサトが問いに答える。
「まずはバルマーのマシンね」
「そっちですか」
「ここは」
「ええ、そうしましょう」
 こう言うのだった。
「ポセイダルのマシンは後でいいわ」
「戦いに慣れてビームの狙いがよくなってからね」
 リツコがそれが何故かを言った。
「そういうことよね」
「ええ、そうよ」
 ミサトはその通りだと答えた。
「それでいきましょう」
「わかったわ。それじゃあね」
「そういうことでね」
 こうしてまずはバルマーのマシンを撃墜していった。そうしてだった。
 次にヘビーメタルだった。だがその彼等もだ。
「へっ、こうなったらな!」
「全然気にならないわよ!」
「ビームコートでもオーラバリアでもな!」
「狙いさえ定めれば!」
 こう言ってだった。ヘビーメタルも次々に撃墜していく。その中でだった。
 ふとだ。カチーナが言った。
「おかしいな」
「気付いたか」
「ああ、敵の司令官がいねえな」
 こうカイに言うのだった。
「どうもな」
「そうだな。今の敵には司令官がいない」
 カイも言った。
「指揮官はいるようだが将官クラスの者がいないな」
「どういうことだ、こりゃ」
 また言うカチーナだった。
「これだけの規模の軍なのに将官クラスがいねえなんてよ」
「あのシリーズはいねえのかよ」
 エイジの言葉だ。
「声も顔も全部同じのあの連中はよ」
「ああ、ジュデッカ=ゴッツォの連中か」
「そうだよ、あいつ等な」
 こうシンにも返す。
「いねえのかよ、ここには」
「どういう訳かいないみたいだな」
 こう答えたシンだった。
「ここにはな」
「おかしな話だな」
 エイジはいぶかしみながら呟いた。
「あの連中がいないなんてな」
「そうよね」
 ルナも首を傾げさせる。
「普通はわんさと出て来るのに」
「策があるのかも」
 今言ったのはリィナだった。
「ここは」
「有り得るな」
「そうね」
 エイジとルナもそれは否定できなかった。
「それかどっか別の相手と戦ってるとかな」
「その可能性もあるわね」
「あっ、これは」
 そしてだった。ここでだった。
 テセラがグラヴィゴラスから言ってきた。
「ここから北に少しいった場所で戦闘が行われているようです」
「戦闘?」
「それがなの」
「はい、そうです」
 こうエイジとルナに答える。
「そのせいでしょうか」
「そうね」
 ミヅキがテセラのその言葉に頷いた。
「多分主力は私達に向けて司令官はね」
「そちらにですね」
「惑星の中だから多分ヘルモーズではないわね」
 それはないというミヅキだった。
「大気の多い惑星だし」
「そう考えるとあれですね」
 エイナが言ってきた。
「ヘルモーズも不便なところがある戦艦ですね」
「そうだな。地球の様な星では使えない」
 レイヴンもこのことを話す。
「それを考えると不便だな」
「そうですよね、やっぱり」
「だがこれはかえって好都合だ」
 レイヴンはここでこうも話した。
「この周囲の敵を一気に殲滅するとしよう」
「はい、それじゃあ」
「すぐに」
「いいか、諸君」
 サンドマンも全ての者に声をかける。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「このままですね」
「敵を倒す。そして北に向かおう」
 こう言ってだった。グラヴィゴラスの主砲を放たたせる。戦いはロンド=ベル有利に進んでいた。
 一時間程戦うとだ。敵はあらかた倒されていた。そしてである。
 残った敵は戦線を離脱していく。サンドマンはそれを見てまた言った。
「それではだ」
「ここは追撃でしょうか」
「やはり」
「そうだ」
 その通りだとだ。チュクルとクーキーに答える。
「ではだ」
「敵をこれから追い」
「そのうえで」
「北に向かう」
 サンドマンはまた言った。
「いいな、北だ」
「おい、ちょっと待ってくれよ」
 アレックスがそのサンドマンに言ってきた。
「北って言ったよな、今」
「その通りだ」
「敵を追撃するのに北かよ」
「そうだよな。これは」
「ちょっとわからないけれど」
「いいのかな」
 ジュゼとイワン、ハンスも微妙な顔になる。
「敵が何処に逃げるかわからないのに」
「北に行くって断言するのは」
「無謀なんじゃ」
「いや、北だ」
 今言ったのはシンルーだった。
「敵は北に逃げる。間違いなくだ」
「あっ、そうね」
 ここでわかったのはだ。エルフィだった。
「敵の司令官がいるから」
「その通りだ」
 また答えたサンドマンだった。
「だからだ。我々は北に向かえばいい」
「そういうことですか」
「それなら今から」
「北に」
「そして敵を」
「倒すか」
 皆こう言ってだ。動きはじめたのだった。
 敵は一目散に撤退をはじめた。その方角はやはり。
「うわ、ドンピシャ」
「本当に北にだし」
「嘘みたい」
「けれどこれって」
「そうよね」
 彼等はこの状況にだ。笑顔になって話した。
「これは楽だよな」
「元々進撃方向だし」
「それならこのまま進んで」
「敵を倒していくか」
「そういうことだね」
 キャシーが先陣を切った。
「このままね。行くよ」
「わかった。それならだ」
「我々もだ」
 彼女にだ。ドニーとジャンが続いた。
「敵の数を次々と減らしだ」
「北に向かおう」
「じゃあ綾人君」
 八雲はマクロスの艦橋にいた。そこから彼に声をかける。
「一緒にね」
「はい、行きましょう」
「その意気だよ。今戦うとそれだけ後に影響するからね」
 こう言うのであった。
「頑張ろう」
「わかりました」
「それにしても。ポセイダルかあ」
 八雲は彼女について少し考える顔になった。そのうえでこう言うのだった。
「どうもね」
「何かありますか」
「いや、その統治だけれど」
 傍らにいるキムにこう返すのだった。
「あまりにもね」
「あまりにもとは?」
「男性的じゃないかなって思うんだよ」
「男性的ですか」
「非常に強権的で独裁体制を敷いているね」
「はい」
 キムも彼のその言葉に頷く。
「そうですね。それは」
「ポセイダルは女性だと聞くけれど」
「しかしその統治は」
「非常に男性的だね」
 八雲はまた言った。
「女性のそれに思えないよ」
「エカテリーナ女帝と比べればどうでしょうか」
 キムはここでこの名前を出した。ロシアの有名な女帝である。
「戦争もしましたし圧政も敷きましたが」
「けれどあの女帝もね」
「彼女もですか」
「あれで非常に文化を愛したけれど」
 このことでも有名な女帝であった。名君と言われているのは事実だ。
「それでも。ポセイダルは」
「そういえば」
 ダバもここで気付いた。
「機械的な圧政です、ポセイダルのそれは」
「文化はないよね」
「はい、全く」
 それはないというのだった。
「そうしたことには興味すらないようです」
「そこが気になるね」
 八雲は考える顔になって述べた。
「若しかしたらポセイダルはって」
「まさか、そんなことが」
「まあ考え過ぎだろうね」
 八雲もこう言うことだった。
「幾ら何でもね」
「そうですよね、ちょっと」
「ただ」
 だが、だった。八雲はここでこうも言うのだった。
「可能性としては有り得るかもね」
「有り得ますか」
「それも」
「零じゃない程度だけれどね」
 それでもだというのである。
「それはね」
「ううん、どうなんでしょうか」
「それは」
「本当に有り得ることには」
「だから僕も普通に考えてないと思うよ」
 八雲自身もその可能性は殆ど考えていなかった。
「まあそれよりもね。今は」
「はい、北に」
「北に行きましょう」
 こうしてだった。彼等は北に向かいながら追撃を仕掛ける。そしてだった。
 敵に追いつくとだ。そこにだった。
「くっ、来たか」
「はい、ヒラデルヒア閣下」
「奴等が来ました」
「こんな時にか」
 ヒラデルヒアは明らかに歯噛みしていた。
「レジスタンスの掃討も終わっていないというのに」
「ここでロンド=ベルの相手もとは」
「ついていませんね」
「仕方がない」
 ヒラデルヒアは苦い顔で部下達の言葉に頷いた。見れば彼は今は普通のバルマーのマシンに乗っている。そこから全体の指揮を執っていたのだ。
「こうした時にな」
「外銀河方面軍や近衛軍の装備があれば」
「一機でレジスタンスを殲滅できたのですが」
「我等には」
「ないものを言っても仕方がない」
 また言ったヒラデルヒアだった。そしてだだった。
「ここはだ」
「はい、どうするかですね」
「それがですね」
「今は」
「そうだ、それが問題だ」
 こう言うのだった。
「わかったな。それではだ」
「今戦力はこれだけです」
「撤退してきた戦力を合わせても」
「そうか」
 ここでその戦力を見る。するとであった。
 残っている戦力は。ヒラデルヒアの顔をさらに苦いものにさせるものだった。
「二割もいないな」
「随分やらましたな」
「確かに」
「致し方ない」 
 彼は決断を下した。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「どうされますか」
「撤退だ」
 彼もこの指示を出すしかなかった。
「この場所から撤退する」
「わかりました。それでは」
「ここは」
「そしてエペソ=ジュデッカ=ゴッツォの艦隊と合流する」
 そうするというのだった。
「それでいいな」
「わかりました、そしてですね」
「戦力の建て直しを」
「それもする。いいな」
 こう命じてだった。彼等はロンド=ベルが来る前に撤退した。そうしてだった。
 そこに来たロンド=ベルが見たものは。彼等だった。
「この人達も健在で何よりね」
「そうだな」
 アムとレッシィが笑顔で話す。
「リトル=セイ」
「生き残っていたか」
「お久し振りです」
 ダバが彼等に挨拶をした。
「僕です、ダバ=マイロードです」
「何っ、ダバか」
「生きていたのか!?」
「まさか」
「はい、話せば長くなりますが」
 ダバはこう前置きしてから話をはじめた。
「僕は無事です」
「俺もな」
 キャオも出た。
「無事だぜ」
「御前等、本当に」
「生きていたのか」
 レジスタンスの方から驚きの声があがる。
「まさかと思ったがな」
「いや、全くだ」
「生きていて何よりだ」
「本当に久し振りだな」
「全くだな」
 ギャブレーも出る。
「懐かしいな、この惑星も」
「何で御前が一緒にいるんだ?」
「そうだ、どうしてだ」
「それはだ」
 ここでギャブレーは言った。
「色々あってだ。仲間になった」
「仲間!?」
「ダバ達とか」
「そうだ」
 まさにその通りだと返すのだった。
「紆余曲折の末だ」
「本当か?」
「いや、ギャブレーだぞ」
「嘘を吐ける程頭がいい訳でもないしな」
「そうだな」
「というとだ」
 ギャブレーにとっては不本意なところから彼等はわかったのだった。そのうえでだった。納得した顔であらためて言ってきたのだった。
「やはりそうなのか」
「今はダバ達と共にか」
「信じられんな」
「あの食い逃げ男が」
「随分と古い話を知ってるな、おい」
 これに突っ込みを入れたのはコウだった。
「もうそんなの皆忘れてたぞ」
「そうだよな。何時の話だよってな」
 キースも言う。
「そんな話だよな」
「全くだよ」
「本当にそうだな」
 ギャブレーも当然ながら不愉快そうな顔であった。
「よくもそんな昔のことを」
「その気持ちわかる」
「私もだ」
「わいもやで」
 バーンにサンドマン、ロドニーも頷く。
「そんな話しはな」
「今更と思うが」
「人間しつこいと嫌われるで」
「全くですね」
 マックスも三人のその言葉に頷く。
「僕もそう思いますよ」
「おい、待て」
「何だあんた達は」
「一体何者なんだ?」
 レジスタンスの面々は今度は彼等に尋ねた。
「ギャブレーのそっくりさんなのか?」
「本当に別人か?」
「顔は違うが同一人物ではないのか?」
「似ているどころではないぞ」
「ああ、それ禁句だからな」
 彼等に言ったのはムウだった。
「俺も心当たり多い話だしな」
「というか一体何人が心当たりあるのかしら」
 ミリアリアにもわからない話だった。
「かくいう私もだし」
「そうだな」
 クランがミリアリアのその言葉に頷く。
「よくわかるぞ、その気持ち」
「そうですよね」
「まあとにかくです」
 ダバがレジスタンス達に話す。
「僕達はです」
「ああ」
「それで共闘してるんだな」
「数もえらく増えたな」
「お話すればとても長くなります」
 ダバも言うことだった。
「何しろ色々な世界、色々な惑星を巡って数えきれないだけの戦いを繰り広げてきましたから」
「どれ位だい?」
「百回や二百回じゃないな」
「その倍はです」
 こう答えるダバだった。
「戦ってきました」
「じゃあ四百はか」
「それだけ戦ってきたのか」
「はい」
 その通りだというのだった。
「それだけは」
「またそりゃ多いな」
「そういえばエルガイムマークツーも何か凄くなってるな」
「ああ、数えきれないだけの戦いを潜り抜けてきた」
「そんなものがあるよな」
「他のマシンもだ」
 彼等はヘビーメタルだけを見てはいなかった。他のマシンもだった。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「その言葉信じるぜ」
「ダバの言葉だしな」
「やっぱりな」
「有り難うございます」
 ダバは彼等のその言葉に笑顔になった。
「じゃあこれからは」
「一緒に戦ってくれるか?」
「よかったら」
「こちらこそ御願いします」
 ダバからも言うのだった。
「それなら」
「ああ、それじゃあな」
「この惑星の、そしてペンタゴナの解放の為に」
「一緒に戦おう」
 こうしてだった。ロンド=ベルはレジスタンスの協力をとりつけたのであった。そしてその後でだ。ギャブレーは酒を飲みながらぼやいていた。
「何故今頃あの話がだ」
「皆忘れていたよね」
「なあ」
 エリスとキャオが話す。
「そんな昔のこと」
「完全にな」
「っていうかそんなことがあったんですか」
 今言ったのは沙慈だった。
「僕初耳ですよ」
「俺も」
「僕も」
 大島と高須もだった。
「ロンド=ベルに入ってから結構経つけれどな」
「そうだよね」
「っていうかそんなことがあったのね」
「ギャブレーさんって三の線の素質あるって思ってたけれど」
 ユミとカオリも知らないことだった。
「それにしても食い逃げって」
「ちょっと」
「まあそれは言わないでおこう」
 サンドマンはここでもギャブレーを庇う。
「彼には彼の事情があったのだ」
「自己弁護じゃないですよね」
 紅龍にはそうとしか聞こえなかった。
「あの、本当に」
「それは違う」
 サンドマンは一応否定はした。
「私はあくまで彼の名誉を考えてだ」
「嘘だよなあ」
「なあ」
「どう見ても」
 だが殆どの面子はその言葉が信じられなかった。
「だってな。サンドマンさんとギャブレーさんって」
「そっくりだからな」
「何もかもがな」
「バーンさんもだし」
「ロドニーさんとかマックスさんも」
「こう言われたことがある」
 ギャブレーの不本意な言葉は続く。
「私が何処かの総帥に似ているとな」
「あっ、そういえばレーサーにも似てるよな」
「あの日本人なのにイギリス人って言い張る」
「あの人に」
「そうだよな」
「そっくり」
 こんな話にもなった。
「そういえばギャブレーさんに似てる人もな」
「あちこちにいるし」
「そうそう」
「どれだけいるんだって感じで」
「しかし食い逃げはなあ」
 またこの話になった。
「久し振りに聞いたっていうか」
「知らない人も殆どだったし」
「ちょっとなあ」
「まあそれはいいとしてな」
 今話したのは盾人だった。
「レジスタンスの人達と協力関係になれたのはよかったよな」
「そうだな」
 弾児もその言葉に頷く。
「それはな」
「ああ、よかったよ」
 また言う盾人だった。
「これってかなり大きいぜ」
「この惑星を解放する為だけではないな」
 ガスコンも話す。
「このペンタゴナ全体においてだ」
「はい、その通りです」
 ダバはガスコンのその言葉に頷いたうえで話す。
「ペンタゴナはポセイダルの圧政の下にあります」
「そこに大きな楔を打ち込める」
「だからこそか」
「それで」
「この協力関係は大きいのね」
「その通り。まずはこの惑星ヤーマンを解放して」
 ダバはまた話した。
「そうしてそのうえで」
「ペンタゴナをか」
「本当に」
「そうしよう、これから」
 こう話すダバだった。皆酒を飲みながら陽気かつ真剣に話していた。
 そしてだ。その中でだった。ブライトが言うのだった。
「先程レジスタンスのリーダー達と話してきたがだ」
「はい」
「作戦が決まったんですか?」
「そうだ、決まった」
 その通りであった。
「まずはここから北西に向かいだ」
「そこですか」
 ダバはブライトのその言葉にすぐに反応を見せた。
「そこにです」
「そうね、この惑星でのポセイダルの最大の基地があるわね」
「まさに心臓のだ」
 アムとレッシィも言った。
「あそこを攻略したらね」
「最早この惑星に敵はない」
「そこを攻略することになった」
 その通りだと話すブライトだった。
「これからだ」
「それで道案内はですか」
「レジスタンスの人達が」
「それも決まった」
「そうですか。じゃあ」
「今からですね」
「総員明日から出発する」
 ブライトはまた話した。
「いいな、それではだ」
「はい、それじゃあ今はですね」
「ゆっくり休んで」
「食べて飲んで」
「英気を養って」
 彼等が実際に今していることであった。
「そうしてそのうえで」
「出発ですね」
「よし、それならだ」
 早速ワインを飲みはじめるギャブレーだった。ボトルごとラッパ飲みである。
「早速そうさせてもらおう」
「おい、ちょっと待て」
「あの、ギャブレーさん」
 タスクとレオナがその彼に突っ込みを入れた。
「あんた確か貴族だったんだよな」
「そうですよね」
「その通りだ」
 平然と答えるギャブレーだった。
「それがどうかしたのか」
「それでその飲み方って」
「ちょっと」
「本当に貴族なのか?この人」
 アルトは真剣に疑っていた。
「その飲み方で」
「れっきとした家系図もあるが」
「いや、そういう問題じゃなくてな」
「ちょっと品性が」
「そう見えないんですけれど」
 ミシェルとルカもこのことを真剣に疑っていた。
「その食い逃げといい」
「かなり」
「気にするな」
 しかしだった。ギャブレーは居直ったのだった。
「些細なことだ」
「いや、違うだろ」
 今度はダイゴウジが突っ込んだ。
「俺でもそんな飲み方は滅多にしないぞ」
「全くだ。幾ら旦那でもな」
 サブロウタは彼の側についた。
「そんなことはな」
「滅多にしないぞ」
「幾ら何でもそれはないだろ」
 サブロウタはまた言った。
「あんた本当に貴族なのかよ」
「だから家系図はだ」
「それってどうとでもなりますよ」
 メグミが突っ込みを入れた。
「実は」
「そうよね。ちょいちょいと書き換えればいいからね」
 ハルカもだった。
「もうそれだけでね」
「では私の家系が偽りだというのか」
「嘘でなくても相当変な貴族じゃないのか?」
「そうよね。ワインラッパ飲みは」
「普通しない」
 リョーコ、ヒカル、イズミの連続攻撃だった。
「どんな貴族なんだよ」
「帝国騎士とかじゃなさそうだし」
「貴人じゃなくて奇人」
 こんなことまで言われる始末であった。
「そういえばだけれど」
「どうしたんですか、アキトさん」
 ジュンはアキトに問い返した。
「ギャブレーさんに何かありました?」
「確かアマデウスっていう映画で」
 アキトは古典的名作映画を話に出した。
「あれでモーツァルトがワインをそういう感じで飲んでたけれど」
「モーツァルトが?」
「そうだったんだ」
「あの人が」
 一同はモーツァルトと聞いて態度を少し変えた。
「じゃああれ?」
「結構礼儀正しい?」
「そうなる?」
「モーツァルトか」
 ギャブレーもその名前に得意な顔になった。
「いいことだ。彼は天才だ」
「あんたモーツァルト知ってるのね」
「ギャブレー殿に紹介してもらった」
 不敵な顔でアムに返す彼だった。
「あれは・・・・・・いいものだ」
「それは私の言葉だが」
 すかさずそのギャブレーが突っ込みを入れた。
「別の存在だが私の言葉なのだが」
「うむ、済まない」
「こらこら、人の台詞を取るな」
「それはよくないぞ」
 カットナルとケルナグールもそのギャブレーに言う。
「違反行為だ、違反だ」
「それはするべきことではない」
「済まない」
 これにはギャブレーも反省した。申し訳ない顔になる。
「確かにな。それは許されないことだ」
「わかればいいのだ」
 今度彼を擁護したのはバーンだった。
「そういうことだな」
「本当にこの人達って連携いいよな」
 エイジはある意味感心していた。
「俺もそうだけれどな」
「ああ、そうだな」
 シンがエイジのその言葉に頷く。
「何となくわかるぜ、それはな」
「あんた達も中身は同じなんじゃないの?」 
 ルナマリアが二人に突っ込みを入れた。
「実際のところは」
「いや、違うからな」
「中身の話はするなよ」
 エイジとシンはそれは言うなとした。
「絶対にな」
「御前だってそれ言ったらまずい節があるだろ」
「まあそうだけれどね」
 ルナマリアもそれは否定しなかった。
「メイリンってそういえば」
「ええ、そうね」
「わかります」
 メイリンだけでなくクスハも頷くことだった。
「私達も」
「他人とは思えません」
「こういうことってあるからねえ」
 ルナマリアは自分の頭に右手を置いて考える顔になっていた。
「私達の間じゃ普通に」
「だから言うなよ」
「っていっても皆普通に話すがな」
 エイジとシンがまた言う。
「それでだけれど」
「うん、アマデウスだね」
 ビリーがアキトの言葉に応える。
「それだね」
「それでモーツァルトがそうやって飲んでたけれど」
 また話すアキトだった。
「モーツァルトってね。人格はね」
「滅茶苦茶だったわね」
 リンダが話した。
「破綻してると言っていい位に」
「何っ、ではモーツァルトの飲み方は」
「普通しねえっての」
 トッドが言った。
「あんた軍の将校がそんな飲み方したらまずいだろ」
「ううむ、そうだったのか」
「だから駄目だって言ってるじゃない」
 エリスがギャブレーを注意した。
「そうした飲み方は」
「ううむ、駄目なのか」
 ギャブレーは腕を組んで考えながら述べた。
「私のこれは下品だったのか」
「残念ですがそうですね」
 これはジョルジュの言葉だ。
「ムッシュギャブレー、ここはエレガントにです」
「あんたが言うと説得力あるな」
「そうだよな」
 イサムとフィリオが彼に話す。
「その面持ちでだとな」
「余計にな」
「とにかく最低限の品性は守るようにな」
 今度はマシュマーだった。
「私とエチケットを学ぼうか」
「貴殿とか」
「うむ、それはどうだ」
 こう彼に言うのだった。
「私と共にだ」
「御願いします」
 今言ったのはハッシャだった。
「うちのかしらを最低限の紳士に」
「こら、ハッシャ」
 ギャブレーはかつての手下に注意する。
「何を言うのだ、一体」
「ですから言ってるじゃないですか」
「何時言った、それは」
「さっきですよ」
 ハッシャは悪びれずに話す。
「言ったじゃないですか」
「それは今さっきという意味か」
「その通りですよ。とにかく普通にコップかグラスで飲みましょうよ」
「わかった」
 ギャブレーは憮然としながらも答えた。
「そうだな。そうするか」
「はい、飲んで飲んで」
「それじゃあ」
 大ジョッキにワインが注がれていく。それを持たされてだ。
 ギャブレーはワインを飲んでいく。飲み方はともかく飲む量はだ。それはいいというロンド=ベルだった。そんな彼等であった。


第六十七話   完


                     2010・10・17  

 

第六十八話 密約

                第六十八話 密約
 ロンド=ベルはだ。敵の基地に向かっていた。その中でだった。
「ねえダバ」
「いいか?」
 皆ダバに問うのだった。
「それでだけれど」
「敵の基地のことだけれど」
「敵の基地のことを?」
「うん、そこ」
「ヤーマンで最大の基地よね」
「そうよね」
 このことも話すのだった。
「それでどの基地は」
「実際どんなところなの?」
「一体全体」
「どういった場所?」
「それは」
 その基地について話をはじめるギャブレーだった。
「三個艦隊規模の戦力が集結てきて」
「三個艦隊」
「それだけのものが」
「それにね」
 ダバの言葉はさらに続く。
「補給施設や整備、それに後方施設も充実していて」
「それもなの」
「そうしたものもなの」
「うん、無理をすれば四個艦隊規模の戦力も収容できて戦えるんだ」
 そうした場所だというのである。
「それはこのヤーマンに展開している全軍になるかな」
「ということは」
「その基地に攻め込むと」
「すぐに決戦?」
「この星での」
「そうなるかもね」
 ダバもその可能性は否定しなかった。
「俺達のことは向こうもよく知ってるだろうし」
「じゃあ本当に」
「派手な戦いになりそうね、暫く振りに」
「そうだよな」
 皆ダバの話を聞いてそれぞれ話した。
「結構楽しみよね」
「そうね」
 ミスティはレトラーデの言葉に笑顔で頷いた。
「この戦いはね」
「何かそういう気分になってくるわね」
「戦うなら派手にか」
 霧生も二人のその言葉を聞いた。
「そして敵の戦力を一気にか」
「敵の戦力は一気に叩く」
 今言ったのはグローバルだ。
「戦略戦術の基本だ」
「はい、そうですね」
「それは」
 キムとクローディアが彼の言葉に頷く。
「ならここは」
「敵に攻め込んで」
「一気にですね」
「勝負を決めると」
「いつも通りだ」
 グローバルはこうも言ってみせた。
「諸君、それでいいな」
「ギワザの戦力も出て来ないしね」
 レッシィはもうこのことは確信していた。
「丁度いいね」
「あの連中とはまた決着をつけるとして」
「まずはこの惑星か」
「四個艦隊潰せばな」
「かなりいけるわよね」
「そうよね」
 皆こう話す。そうしてであった。
 基地に向かっていく。そして基地まであと一日の場所に来るとだった。
 そこに敵がいた。今度はだ。
「よく来たな、ロンド=ベルよ」
「確かエペソ=ジュデッカ=ゴッツォだったかな」
 万丈が彼の顔を見て言った。とりわけ髪の色をだ」
「そうだったね」
「如何にも」
 こう返す彼だった。
「余はエペソだ」
「わかったよ。悪いけれどね」
「他の者達と顔が同じだからか」
「それでわかりにくいからね」
「我等は元々は兄弟だった」
 エペソはここでこう言ってきた。
「七兄弟だったのだ」
「へえ、そうだったんだ」
「オリジナルはまだラオデキア以外は存在している」
 このことも言うエペソだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「だが、だ。それだけではない」
「クローンもか」
「では貴様等もまた」
「そうだ」
 その通りだというエペソだった。
「我等はオリジナルではないのだ」
「まあそうだろうね」
 万丈はエペソのその話を聞いて納得した顔で頷いた。
「それはそうなるね」
「わかるというのか」
「うん、わかるよ」
 また答える万丈だった。
「だって君達はこれまで何度も倒してるからね」
「ふん、そのようだな」
 エペソは万丈のその言葉に応えて述べた。
「余も倒されてきているな」
「その通りだよ」
「しかしだな」
「しかし?」
「それだけではないな」
 また言うエペソだった。
「オリジナルがいることも察していたな」
「それもね」
「やはりそうか」
「バルマー戦役の最後の時に」
 話はそこまで遡るのだった。
「オリジナルのラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォに会っているからね」
「その時に察したのか」
「そう、君達にはそれぞれオリジナルがいる」
 このことをだというのである。
「何となくだけれど察しはついていたよ」
「そうだったというのか」
「うん、ただ」
「ただ、今度は何だ」
「神の色以外は全て同じとはね」
 万丈はここでは少し苦笑いになった。
「それはどうもね」
「それがどうかしたのか」
「いや、確かに兄弟って思ってね」
 それも言うのだった。
「あまりにもそっくりだからね」
「そういうことか」
「さて、話はこれで終わろうか」
「それではだ」
「はじめようか」
 万丈の言葉が合図になった。そうしてだった。
 ロンド=ベルと帝国軍の戦いがはじまった。その中でだった。
 まずはだ。ロンド=ベルが前に出た。そうしてだった。
 そのまま敵軍に突き進む。その先頭には万丈がいる。
 彼はだ。仲間達に対して言った。
「この戦いだけれど」
「ああ」
「どうするんですか?」
「そんなに暴れる必要はないよ」
 そうだというのであった。
「ここではね」
「あれっ、そうなのかよ」
「ここではなの」
「これは前哨戦だからね」
 これが理由だというのである。
「だからだよ」
「前哨戦だから」
「それで」
「本番は次だからね」
 万丈の目がここで光った。
「だからだよ」
「次が」
「次こそが」
「うん、そうだよ」
 また言う万丈だった。
「ここはね。そういうことだからね」
「とはいってもだ」
「そうよね」
 スレイとツグミがここで話す。
「問題は向こうがどう思っているかだが」
「それよね、やっぱり」
「向こうは本気で向って来るかもしれない」
「その場合はどうするんですか?」
「ああ、その時はね」
 万丈は余裕のある顔で二人に返した。
「それに合わせるよ」
「敵にか」
「そうするんですか」
「こっちも全力でぶつかって」
 そうするというのである。
「それで倒すだけだよ」
「それだと」
 今度はアイビスが言ってきた。
「いつもと同じなんじゃないのか?」
「そうかも知れないね」
 それを否定しない万丈だった。
「正直なところね」
「そういうことか」
「そう、そういうことだよ」
 万丈はまた言ってみせた。
「それじゃあ敵が来るなら」
「派手に倒すんだね」
「まあ基地から敵が来れば倒せばいいし」
 それも考えている彼だった。
「その時はね」
「そういうことならだ」
「私達もね」
 スレイとツグミも続いた。
「戦わせてもらうか」
「ここで決戦になったら」
「ただ。基地を陥落させるのは絶対だからね」
 万丈はここはしっかりと言った。
「それはわかっておいてね」
「そうですね」
 ダバが万丈のその言葉に頷いた。そしてだった。
 彼等はそのまま突き進みだ。一斉射撃を浴びせた。
「よし!」
「これで!」
「まずは一撃!」
 その一撃でだ。かなりの数の敵を倒した。
 しかしそれでもだ。エペソは動揺を見せない。部下の言葉を聞いてもだ。
「敵の先制攻撃です!」
「戦力の五パーセントを失いました!」
「これは」
「動じることはない」
 こう部下に返す彼だった。
「ここはだ」
「し、しかし司令」
「この戦いはです」
「基地を守る為の戦いです」
「ですから」
「それでもいいのだ」
 また言う彼等だった。
「ここはだ」
「よいのですか」
「ここは」
「それでも」
「そうだ、我等の役目はだ」
 彼は部下達に対してさらに言うのだった。
「ここで時間を稼ぐことなのだ」
「時間をですか」
「そうなのですか」
「そうだ、今は時間を稼ぐのだ」
 また告げたのだった。
「よいな、それによってだ」
「それによってですか」
「ここは」
「次ですね」
「次の戦いに向けてですね」
「そうだ、次の基地での戦いだ」
 まさにその戦いだというのだった。
「次の戦いでは四個艦隊に」
「四個艦隊といいますと」
「それは」
「まずこの余だ」
 エペソは自らの名前を出した。
「そしてヒラデルヒア」
「そしてですね」
「次は」
「ラオデキアだ」
 やはり彼であった。
「この三人にだ」
「もう一人の方は」
「それは誰ですか」
「一体」
「サルデスだ」
 彼だというのである。
「彼にも来てもらう」
「サルデス様の艦隊も入れてですね」
「合わせて四個艦隊で」
「その艦隊でロンド=ベルをですか」
「ここは」
「既にサルデスに連絡はしている」
 エペソはこのことも話した。
「基地の上に降下するとのことだ」
「では奴等が基地に来た時にですね」
「上からですね」
「攻めると」
「そうなのですね」
「その通りだ」
 エペソは笑みを浮かべることなく言ってみせた。
「これでわかったな」
「はい、それでは」
「ここは適度に戦い時間を稼ぎ」
「そうしてですね」
「そのうえで」
「その通りだ」
 また言った彼だった。
「わかったな、ここは余が言うまで戦うのだ」
「そしてそのうえで」
「その時が来ればですね」
「基地まで撤退する」
 これがエペソの作戦だった。
「マシンは基地にある。安心するのだ」
「はい」
「マシンもありますか」
「基地には」
「その四個艦隊の補充分は充分にある」
 エペソの言葉に自信が宿る。そしてだった。
 彼等は今は踏み止まるのだった。そのうえでロンド=ベルと戦う。しかしだった。
 その中でだ。ダバは敵の指揮官を探していた。エペソをである。
「敵の指揮官は」
「そうよね、何処なのかしら」
「敵将を倒すと一気に楽になるからな」
 こうエリスに返す彼だった。
「だからここは」
「絶対に見つけないと」
「エリス、わかるかい?」
 ダバはエリスに尋ねた。
「敵の指揮官が何処にいるのか」
「そう言われても」
 だが、だった。エリスの返答は弱いものだった。その弱い声でダバに対してこう言ってきたのであった。
「普段の戦いだとね」
「ああ」
「ヘルモーズに乗ってるじゃない」
「あの巨大戦艦に」
「それでヘルモーズを撃沈したら」
「ズフィルードが」
「だからわかりやすかったのよ」
 そうだったというのである。
「けれど今は」
「そうはいかないからな」
「ええ」
「難しいか」
「御免なさい」
「ならここは」
 ダバはだ。ナデシコを見た。そうしてだった。
「ルリちゃん」
「はい」
「ハッキングは」
「少し待って下さい」
 ルリの返答はこうであった。
「もう少し」
「時間がかかるのかい」
「時間よりもです」
「それよりも?」
「ナデシコが移動しますので」
 それを優先させるというのだった。
「ですからここは」
「そうか、わかった」
「もう少しだけですが」
「そして移動してそこから」
「敵軍を攻撃します」
 参謀としての言葉だった。
「それでダバさんは」
「うん、どうすればいいんだい?」
「ナデシコの前には出ないで下さい」
 それはだというのである。
「そこにはです」
「グラビティブラストだね」
「それで一気に倒します」
 だからだというのだ。
「ですから前にはです」
「うん、わかったよ」
「じゃあルリちゃん御願いね」
「はい」
 ルリはエリスにも答えた。
「それでは」
「よし、じゃあ俺も」
「ダバはどうするの?」
「これを使う」
 バスターランチャーを構える。そうしてだった。
 エネルギーを集中させてだ。一気に放ったのだった。
 すると光が一気に通り抜けてだ。前にいる敵をまとめて消し去ったのだった。
 それが終わってからだ。また言うのだった。
「これでよし、だな」
「敵の数減らすの?」
「敵の指揮官がわかっていないならこれしかないからね」
 だからだというのだ。
「ここは」
「そうよね。まずはね」
「けれど。それでも」
「それでも?」
「やっぱりこれは凄いな」
 バスターランチャーを見ての言葉である。その攻撃を放っただ。
「一撃でまとめて消し去ってくれるからな」
「そうよね、本当にね」
「これで倒していって」
 ダバはさらに話す。
「この戦いにも勝つんだ」
「それで次よね」
「次の戦いに勝てれば」
 ダバの言葉がさらに強いものになった。
「いよいよヤーマンが」
「私達の手に戻るのね」
「ああ、そうだ!」
「その通りだ!」
 レジスタンスの方から声がした。彼等もダバ達と共に戦場にいるのだ。
「ヤーマン解放だ!」
「次でだ!」
「そうね、遂になのね」
 エリスも言うのだった。
「次の戦いで勝てばね」
「絶対に勝とうぜ」
 キャオの言葉だ。
「そうしてよ、本当にヤーマンをな」
「ああ、その通りだ」
 ダバはキャオのことばにも頷いてみせた。
「そしてそれからだ」
「ポセイダルもやっつけてね」
「ペンタゴナを全て解放するんだ」
 こう話してだ。彼等は敵を倒していく。それを見てだ。
 エペソは部下達に問うのだった。
「今の損害はどれだけだ」
「損害ですか」
「我々の」
「そうだ、どれ位だ」
 こう彼等に問うのだった。
「我々の今の損害はだ」
「四割です」
「今はです」
「そうか、四割か」
 それを聞いてまずは頷いた彼だった。そうしてだった。
「四割が失われたか」
「まだ戦われますか」
「ここは」
「まだだ」
 エペソは鋭い目になって部下達に答えた。
「まだサルデスの艦隊は来ていないな」
「残念ですが」
「まだ衛生上に来てはいません」
「もう少しです」
 部下達はサルデスの艦隊についてもこう答えたのだった。
「それはです」
「そうか、もう少しか」
「ではサルデス様の艦隊が来られれば」
「その時にですね」
「その時に撤退する」
 エペソはこう部下達に話した。
「わかったな」
「わかりました、そしてですね」
「それからですね」
「そうだ、それからだ」
 まさにその時だというのであった。
「だからまだここに残るぞ」
「わかりました」
「それでは」
「今は残りましょう」
 二人で話してだ。彼等は戦線に残る。そうしてだった。
 彼等は戦い続ける。その中でだ。
 ルリがハッキングを行った。目が金色に光る。それを見てである。 
 彼女はすぐに皆に告げた。
「わかりました」
「敵の指揮官の機体が!?」
「じゃあどれが」
「どのマシンが」
「マシンではありませんでした」
 こう皆に言うルリだった。
「敵艦です」
「戦艦!?」
「じゃあどの艦!?」
「一体」
「あれです」
 こう言ってだ。地上用のその敵艦のうちの一隻を指し示す。各員のモニターにその敵艦がはっきりと映し出されていた。
 それを指し示しながらだ。ルリは話すのだった。
「あの艦です」
「あれか」
「あれなのね」
「あの艦に敵の指揮官が」
「エペソ=ジュデッカ=ゴッツォが」
「はい、います」
 まさにそこにだというのだった。
「ですからここはです」
「敵を追い詰めてそうして」
「倒す」
「それでここでの戦いを終わらせる」
「そういうことなのね」
「その通りです。指揮官の戦艦を沈めれば敵軍は撤退します」
 こう話すのだった。
「ですから」
「よし、それなら」
 最初に応えたのはダバだった。
「あの戦艦に今から」
「行くのですね」
「多少無理でも行くさ」
 そうするというのだった。
「今から」
「けれどダバ」
 だがここでだ。アムが彼に言ってきた。
「距離あるわよ」
「そうだな」
 レッシィも言う。彼女達とギャブレーはダバと同じ小隊である。だからだった。
「だからここは」
「迂闊には攻められないぞ」
「その通りだ」
 ギャブレーも言うのだった。
「ここは慎重に行くべきだな」
「けれど今は」
 ダバは三人に対して眉を顰めさせて返した。
「このヤーマンを」
「焦らないの」
「そうだ、それは駄目だ」
 アムとレッシィはそのダバに対してまた言った。
「焦ったら成功することもしないわよ」
「次があるんだ」
「次が」
 ダバは二人のその言葉に動きを止めた。
「次がか」
「そうよ、だから基地を陥落させるんでしょ?」
「それならだ」
 言うことはこのことだった。
「なら次があるじゃない」
「だからだ。焦ることはない」
「そういえば」
 二人に言われてだ。ダバは考える顔になった。エルガイムマークツーのコクピットの中でそうした顔になっていたのである。
 その彼にだ。ギャブレーもまた言ってきたのだった。
「ここでの戦いは決戦ではない」
「決戦じゃない」
「そうだ、決戦じゃない」
 まさにそれだというのである。
「だからだ。ここは無理はするな」
「それじゃあ今は」
「ゆっくりといこう」
 最後にエリスが言った。
「いいわね、それで」
「そうだな」
 ダバはここでだ。頷いたのだった。
 そのうえでだ。彼は言った。
「ここはいいか」
「そういうことだな」
「無理をする時じゃないからな」
 ギャブレーとキャオが彼にまた言う。
「次で決めればいいことだ」
「落ち着いていこうぜ」
 こんな話をしてだった。彼等は進んでだった。
 敵を倒していきだ。遂にだった。
 エペソがだ。報告を受けたのだった。
「来たか」
「はい」
「今到着しました」
 部下達がこう報告してきた。
「衛星軌道上に到着されました」
「それではここは」
「撤退ですね」
「そうだ。最早ここで敵を足止めする理由はなくなった」
 サルデスは満足した顔で話す。
「わかったな。それではだ」
「はい、それでは」
「今から」
 こうしてだった。エペソの艦隊は撤退したのだった。戦いは遂に基地の攻防に移ることになった。
 そしてその時だ。遠く離れた場所では。
 ギワザがだ。宇宙が見える白い部屋で青い髪の女と会っていた。
 大人の色香を漂わせながらも落ち着いた雰囲気の女だ。涼しげな青い目に整った顔立ちをしている。すらりとして白い上着とズボンという格好だ。その女と会っているのだった。
 まずギワザがだ。彼女に言った。
「クラン=クラン殿」
「うむ」
「私がこのサードスターに来た理由だが」
「それはわかっている」
 こう返すクランだった。
「その為にコアム、いやヤーマンで戦っているポセイダル軍を見殺しにしているのだな」
「見殺しだというのか」
「違うというのか」
「そうだ、違う」
 ギワザは笑みを浮かべて答える。二人が向かい合って座るその席にはそれぞれグラスが置かれている。そういったものを前にしての会話だった。
「それはだ」
「では何だというのだ?」
「私は最初からポセイダル軍だったつもりはない」
「だからか」
「そうだ、だからだ」
 こう答えるのだった。
「ペンタゴナはペンタゴナの者が治める」
「ペンタゴナのか」
「ポセイダルはバルマーの者だな」
 ギワザはこう言うのだった。
「そうだな」
「そう思っているのか?」
 だが、だった。フラットはここでこんなことを言うのだった。
「本当に」
「何が言いたい」
「さてな。私はただ言っただけだ」
 いぶかしむギワザに多くのことを言わなかった。
「それだけだ」
「そうなのか」
「そうだ。だがポセイダルを倒すならだ」
「うむ」
「勝手にすればいい」
 フラットは今はこう言うだけだった。
「そうな。勝手にするといい」
「そうか、いいのだな」
「私は確かにサードスターを与えられている」
「そしてか」
「だが今はだ」
「今は、か」
「ポセイダルとは縁はない」
 こう言うのだった。
「少なくとも心はだ」
「そう言えるのだな」
「その通りだ。ではだ」
「うむ、では」
 ギワザもフラットも言ってだった。そうして。
 二人は今は別れた。だが密約は確かだった。その密約と共にだ。彼等も動くのだった。


第六十八話   完


                      2010・10・20 

 

第六十九話 真の名前

              第六十九話 真の名前
「そうか、今はか」
「はい」
「奴等はペンタゴナにいます」
 キャリコとスペクトラがハザルに報告していた。
「そしてそのうえで」
「ポセイダル軍と戦闘中です」
「そうか、わかった」
 ハザルはそれを聞いてまずは納得したのだった。
「それではだ」
「どうされますか、今は」
「ペンタゴナに向いますか」
「いや、それはまだだ」
 ハザルはこう二人に答えたのだった。
「まだ動きはしない」
「では傍観ですか」
「今は」
「そうだ、傍観だ」
 まさにそうだというのである。
「ペンタゴナには介入しない」
「左様ですか」
「今はなのですね」
「ポセイダルについても気になるところがある」
 ハザルはここでいぶかしむ顔になって述べた。
「少しな」
「気になることがですか」
「あるのですか」
「ポセイダルは女だな」
 言うのはここからだった。
「そうだな」
「はい」
「その通りですが」
「女なのか」
 彼はいぶかしむ顔のままこう述べた。
「本当にだ」
「といいますと」
「ポセイダルに何かあるのですか」
「あの統治は男のものではないのか?」
 ハザルが指摘するのはこのことだった。
「どうもそう思うのだが」
「男のものですか」
「そう思われますか」
「そうだ、俺にはそう思える時がある」
 奇しくも彼もそう見ているのだった。
「どうなのだ、それは」
「ははは、面白い見方だね」
 ここで孫が出て来た。
「それはまた」
「貴様、また急に出て来たな」
「僕は神出鬼没が取り柄でね」
 飄々とした感じで言う彼だった。
「それでここでもね」
「出て来たというのか」
「そういうことだよ。それでね」
「それで。何だ」
「とにかくペンタゴナには介入しないんだね」
「好きなようにやらせる」
 ここでもこう言うハザルだった。そしてだ。
 そのうえでこう言うのだった。
「それでだが」
「はい」
「では」
「問題はそれからだ」
 こう述べるのだった。
「奴等とポセイダル軍の戦いが終わってからだ」
「それからどうされますか」
「一体」
「まずポセイダル軍が勝てば」
 彼はその場合から話す。
「奴等はおそらく鍵を手に入れる」
「鍵を」
「あの少女を」
「そして逃げているあの我儘な姫もだ」
 この言葉も出すのだった。
「そこにだ」
「一気に攻めて」
「そしてですか」
「元々怪しい動きの多い奴等だ」
 ハザルはポセイダルについてこうも言うのだった。
「謀反の意志ありと言って攻め滅ぼす」
「では今は」
「用意をですね」
「そうだ、そうする」
 この場合におけるハザルの考えだった。
「その場合はだ」
「成程ね」
 孫は彼の言葉をまずは聞いた。そうしてだった。
 そのうえでだ。またハザルに対して問うのだった。
「それじゃあだけれど」
「ロンド=ベルが勝った場合か」
「そう。その場合はどうするのかな」
「同じだ」
 孫にすぐにこう返すハザルだった。
「同じなのだ」
「じゃあロンド=ベルを倒すんだね」
「無論だ。そしてまた手に入れる」
 こう言うのだった。
「あの連中をだ」
「確かにどちらにしても同じだね」
「お互いに潰し合わせるに限る」
 ハザルは気取った感じで述べた。
「虎が二匹いればその時はな」
「いや、お見事」
 孫はハザルの話をここまで聞いたうえで手を叩いてみせた。
「それこそが戦略だね」
「皮肉か?」
「いやいや、事実だよ」
 笑顔でこうも言ってみせる彼だった。
「本当にね」
「そう言えるのだな」
「うん、それでね」
「それでか」
「その時は勿論僕も出させてもらえるよね」
 ハザルに対して問うのだった。
「そうだよね」
「当然のことだ」
 ハザルはその孫に対して傲然とした態度で返した。
「貴様は何だ」
「真龍王機の操者だよ」
「そしてどの軍にいる」
「ゼ=バルマリィ帝国軍外銀河方面軍」
「そうだな。ではだ」
 孫自身にここまで確認させてからだった。また言うハザルだった。
「俺の命令に従うのだ」
「そういうことなんだね」
「そうだ。ではいいな」
 また孫に言うのだった。
「俺の命令に従え」
「それじゃあ次の戦いにね」
「出ろ、いいな」
 これがハザルの言葉だった。
「わかったな」
「うん、いいよ」
「ふん、それにしてもだ」
「今度は何だい?」
「調子に乗るなよ」
 不意にだ。ハザルのその目が鋭いものになった。そうしての言葉だった。
「いいな」
「おや、厳しいね」
「俺はマーグとは違う」
 彼の名前もここで出すハザルだった。忌々しげにだ。
「あの様に甘くはないぞ」
「甘いね」
「そうだ、あの様な裏切り者とだ」
 違うというのである。
「違うとだけ言っておく」
「また念入りだね」
「ではだ。次だ」
 ハザルはこのことを念押ししてきた。
「それまでは戦力を整えるぞ」
「予備戦力もですね」
「用意しておくのですね」
「そうだ、金は幾らでもある」
 資金は潤沢だというのだ。
「傭兵をどんどん雇え。いいな」
「傭兵か」
 不意にバランも出て来た。
「どうもな、それはな」
「ハザル、何が言いたい」
「正規軍がいるのにか」
「それだけで足りるものか」
 バランに対してもだ。傲慢な調子だった。
「兵は多ければ多い程いいのだ」
「我が帝国軍に相応しい質を尊ぶべきだがな」
「司令官は俺だ」
「ではその権限で決めるのだな」
「そういうことだ。黙っていてもらう」
 ここでも傲慢なままのハザルだった。
「例え貴様でもだ」
「ではいい。好きなようにするのだ」
「ふん、ではエイスよ」
「・・・・・・・・・」
 エイスは喋らない。ただハザルの後ろに控えているだけである。だがそれでも確かにその場にいてだ。ハザルに応えるのだった。
「貴様は奴等を見張っておけ」
「・・・・・・・・・」
「ポセイダルもロンド=ベルも両方だ」
 こう言い加えもした。
「わかったな」
「・・・・・・・・・」
「さて、後は高みの見物だ」
 これ以上にないまでに高みに立っての言葉だった。
「どちらが潰れるかだな」
「そうだね。ここは」
 孫は彼とは全く違い楽しげな笑みで言うのであった。
「多分」
「多分。何だ」
「いやいや、何でもないよ」
 孫は飄々とした笑みで彼に返した。
「それじゃあね」
「ふん、ここでもか」
「では僕もまた」
 孫は一人その場から姿を消す。そしてだった。
「休ませてもらおうかな」
「戦力の調達及び募兵はお任せ下さい」
「そちらは」
 キャリコとスペクトラの言葉である。
「次の作戦行動までには」
「必ずや」
「しておけ。そしてだ」
 ハザルの言葉は強い。
「若し失敗すればだ」
「は、はい」
「その時は」
「覚悟しておけ」
 二人を見下ろしてだ。ハザルは言う。
「俺は失敗に関して寛容ではないことはわかっているな」
「無論です」
「それは」
 二人もだ。ハザルの今の言葉には明らかな怯えを見せていた。実際にだ。ハザルは失敗した部下を容赦なく打つことでも知られているのだ。
 その彼が動くように言うのだった。しかしだった。
 孫はその彼を何処か冷ややかに、笑って見ているのだった。
 ロンド=ベルの動きは素早かった。基地の前まで迫っていた。
 そしてである。ダバはこう言うのだった。
「いよいよだな」
「そうね」
 リリスはダバのその言葉に頷いた。
「これでこのヤーマンもね」
「いや、リリス」
 ダバの言葉はここで強いものになった。
「ヤーマンじゃないだろ」
「ヤーマンじゃない?あっ」
「そうだ、コムなんだ」
 そこだというのだ。
「コムなんだ、この星は」
「そうだったね。ここってコムだったね」
「この星はコムなんだ」
 また言うダバだった。
「そうなんだ」
「そしてだな」
 キャオもここでダバに言ってきた。
「ダバ、御前もな」
「俺も」
「ダバ=マイロードじゃなくてな」
 こうダバに話すのだった。
「そうだよな」
「いや、キャオそれは」
「まあいいじゃねえか。クワサンも戻ってきたしな」
 彼女の名前も出しての言葉だった。
「そうだよな」
「クワサンも」
「ああ。だからいいだろ?コムに来たんだ」
 彼もだ。もうヤーマンとは言わないのだった。そしてこの名前で呼ぶのだった。
「コムだからな」
「だからっていうんだな」
「ああ、カモン=マイロード」
 その名前で呼ぶのだった。
「その名前はどうだい?」
「いや、俺は」
「いいっていうのかよ」
「ああ、いい」
 これがダバの言葉だった。
「俺はカモン=マイロードというよりも」
「ダバ=マイロードか」
「今はその名前で生きたい」
 こう言うのだった。
「それは駄目かな」
「それで戦うんだな」
「銀河の戦いはポセイダルとの戦いで終わりじゃない」
 そうだとも話すダバだった。
「だから。俺はまだ」
「それでダバ=マイロードなんだな」
「そうだ」
 まさにそうだというのである。
「それでなんだ」
「わかったぜ。じゃあダバ」
 キャオは彼はこの名前で呼んでみせた。
「行こうぜ」
「コムを解放する戦いに」
「ああ、行こうぜ」
 キャオはこう自分が今いるゴラオンから話すのだった。
「今からな」
「敵の艦隊は」
 ここでだった。ふとギャブレーが話すのだった。
「三個だな」
「いや、残念だが違う」
 レッシィがそのギャブレーに言ってきた。
「もう一個艦隊だ」
「上か」
 ギャブレーはすぐにわかった。
「上にいるのだな」
「そうだ、上にもう来ている」
 こう話すレッシィだった。
「上にだ。来ている」
「では降下か」
「そうさ。その時はどうするかはもう」
「無論わかっている」
「それならいいがな」
「敵も馬鹿ではない」
 このことが前提にあった。ジュデッカ=ゴッツォの者達との戦いも数多く経てきた。だからこそわかってきていることなのである。
 それでだ。ギャブレーは言うのだった。
「その程度はしてくる」
「そうだな。それではだ」
「おそらく横か後ろだ」
 ギャブレーは今度は方角を述べた。
「そこから来るな」
「ではだ」
「警戒しながらね」
 アムも言ってきた。
「そういうことね」
「そうだな」
 エイブがダバ達のその言葉に応えた。そうしてだった。
 エレに身体を向けてだ。こう言うのであった。
「それではここは」
「慎重に、ですね」
「迂闊に攻めては後ろや横から攻められます」
 だからだというのである。
「ですからここは」
「わかりました。それでは」
「はい」
「全軍進撃を開始します」
 それはだというのである。
「しかしです」
「慎重にか」
「いつもみたいに激しく攻めるんじゃなくて」
「後ろから攻められたら厄介だしね」
 ガラリアの言葉だ。
「背中から撃たれたら誰だって終わりさ」
「その通りだな」
 ロジャーがガラリアのその言葉に頷いた。
「それをされると思うだけで影響が出る」
「それが今なのね」
 ドロシーがロジャーのその言葉に問うた。
「つまりは」
「そういうことだ。それではだ」
「ええ」
「普段より穏やかに行くとしよう」
 ロジャーは言いながら僅かに出ただけだった。他の者達もだ。
 そうしてである。進むとだ。
 早速前方のバルマー軍もだ。迎撃態勢に入るのだった。
 まずラオデキアが言った。
「来たな」
「うむ」
「そうだな」
 ヒラデルヒアとエペソが応える。
「では我々はだ」
「ここを守りだな」
「まずは守るだけでいい」
 ラオデキアはまた言った。彼等は今はヘルモーズにはいない。それぞれの指揮官用の地上戦艦に乗っている。そうしているのだ。
「そしてやがてだ」
「サルデスの艦隊が降下する」
「あの者達の側面及び後方に」
「そうすれば勝機が見える」
 こう言うラオデキアであった。
「ではだ。その時までだ」
「守るとしよう」
「ここはな」
 こう話してだった。彼等も積極的には攻めず守りを固めるだけであった。そうしているのだった。
 両軍の戦いは静かであった。ロンド=ベルはいつもの様に派手に攻めない。
 それでだ。モンシアがたまりかねてこんなことを言った。
「ちっ、何か面白くねえな」
「いつもと違うからだな」
「だからですね」
「ああ、そうだ」
 その通りだとだ。ヘイトとアデルにも答える。答えながらディジェの拡散ミサイルを放っている。だが積極的に斬り込むことはしない。
「確かにモビルスーツはある程度距離を置いて戦うものだがよう」
「まあ仕方ないな」
「何時後ろから来るかわかりませんから」
 二人もこう言って今は遠距離攻撃に徹している。
「今は我慢するんだな」
「じっくりといきましょう」
「仕方ねえな」
「これも戦いだ」
 バニングもだった。やはり遠距離攻撃に徹している。
 GPー01を鮮やかに動かす。しかし斬り込まずだ。ビーム攻撃に徹するのだった。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「モンシア、ヘイト、アデル」
「ええ」
「はい」
「何でしょうか」
 三人に声をかけたのだ。彼等もすぐに応えてきた。
「今は迂闊に動かずにだ」
「こうしてですね」
「距離を置いて」
「それで戦うんですね」
「それだけではない」
 彼はさらに言うのだった。
「警戒を怠るな」
「何時降下してくるかわからない」
「だからですか」
「それで」
「そういうことだ。そして来ればそこをだ」
 バニングのその言葉が強いものになった。そうして言うのであった。
「狙い撃て。いいな」
「敵が動く前にってことですね」
 キースがこうバニングに問うてきた。当然彼も突っ込んではいない。距離を置いて戦っている。
「そういうことですよね」
「そうだ、これはモビルスーツだけではない」
「他のマシンもですか」
「そうだ」
 またキースに対して答えるのだった。
「絶対にだ。陣を崩すな」
「崩したら負けですね」
 コウも言葉は強いものだった。
「その時は」
「そういうことだ。僅かな乱れが敗北につながる」
 バニングの言葉は短いが確かなものである。
「そのことはわかっておくことだ」
「そうですね。この戦いは」
「乱れたらそこをやられますよね」
 クリスとバーニィもそれがわかっていた。やはり彼等も突っ込まない。
「それならここは」
「本当にじっくりと」
「そうすることだ。いいな」
 バニングの指揮は的確だった。彼は部下達をあえて突っ込ませない。そのうえで遠距離攻撃に徹するのだった。 
 だがそれでも前面では接近戦が得意なマシンが暴れ回っている。
 バーンがだ。敵をまとめて両断しながら言うのだった。
「これでいいな」
「上出来だな」
 その彼にニーが言ってきた。
「だがそこから突き進まないのか」
「わかっているからだ」
 だからだとだ。ニーに返すバーンだった。
「この戦いは迂闊に前には進めぬ」
「何かバーンらしくないけれど」
 キーンはそんなバーンに少し驚いていた。
「けれどその通りね」
「今は来る敵だけを倒す」
 やはりわかっているバーンだった。
「そうするだけだ」
「そうだな。それがいいな」
「ここはそれが一番だな」
 アレンとフェイもだった。
「じっくりとだな」
「来た奴等だけを斬っていくか」
「まあ俺はそっちの方がいいかな」
 トカマクは少し遠慮したような言葉を出していた。
「ダンバインって遠距離攻撃もできるけれどさ」
「しかしよ、やっぱり接近戦メインだぜ」
 トッドがそのトカマクに言う。
「サーバインなんかは特にな」
「いや、サーバインはそもそも遠距離攻撃用の武器はない」
 そのサーバインに乗るシオンの言葉だ。
「だから元から無理だ」
「まあ仕方ないわよね」
 彼と共にいるシルキーもそれはだというのだ。
「これはね」
「オーラバトラーにはオーラバトラーの戦い方があるのよ」
 マーベルの今の言葉こそ正論だった。やはり彼女もダンバインに乗っている。三機のダンバインがそれぞれ戦場にいるのである。
「接近戦をするものなのよ」
「その通りだな」
 ショウはマーベルの言う通りだと返した。
「だから今は」
「けれどショウ」
 それでもだった。マーベルはこうも言うのだった。
「あまり前に出たら」
「ああ、わかってる」
 ショウもこのことはわかっていた。それでだった。
 前に出ずだ。そうしてだった。来る敵だけを倒すのだった。
「こうしていく、今は」
「ショウ、そういえば」
 リムルもいた。
「もうすぐね」
「ああ、そうだな」
 また言うショウだった。
「上から来る頃だな」
「時間的にはね」
 タイミングを見てのやり取りだった。
「来る頃ね」
「来たらその時は」
「その時もだ」
 カワッセがショウ達に言ってきた。
「迂闊に前に出るな」
「わかりました」
「それなら」
 こう話してだった。彼等は戦い続ける。その時にだった。
 衛星軌道上にいるサルデスがだ。己の部下達に話した。
「いいな」
「はい」
「それではですね」
「そうだ、降下する」
 まさにそうするというのだった。
「今からだ」
「わかりました」
「それでは」
「全軍降下だ」
 また言う彼だった。そうしてだ。
 バルマー軍は降下した。そしてであった。
 ロンド=ベルの側面や後方に降りる。それはだ。
「来ましたね」
「はい」
 カワッセは今度はシーラに応えていた。
「それではですね」
「はい、彼等には遠距離攻撃ですね」
「わかりました。それでは」
「今から」
 こう話してだった。彼等はサルデスの艦隊には遠距離攻撃を出すのだった。そうしてそのうえで彼等を次々と倒していく。
 それを見てもだ。サルデスは己の戦力をさらに降下させていくのだった。
「怯むことはない」
「このままですね」
「降下していくのですね」
「そうだ、降下していく」
 また言う彼だった。
「いいな、そして余もだ」
「司令もですか」
「降下されるのですか」
「ここは」
「ヘルモーズは使えないがだ」
 それでもだというのだ。
「それでもだ」
「はい、ヘルモーズは今全てポセイダル様の下に集結させています」
「ですから今は」
「使えませんが」
 こうした事情故でだった。
「しかし戦艦があります」
「それで、ですね」
「降下ですね」
「その通りだ。では行くぞ」
 こう話してだった。サルデスも降下した。彼はロンド=ベルの後方に出た。 
 そしてそこからだ。己の部下達に命じるのだった。
「それぞれロンド=ベルに向かえ」
「はい、わかりました」
「ではそうしてですね」
「攻撃を」
「そうする」
 そしてだった。彼はここでエペソ達とも連絡を取った。
 モニターを通じてだ。彼等と話すのだった。
「来たぞ」
「うむ、それではだ」
「時が来たな」
「今だな」
「余の艦隊が側面と後方から攻める」
 こう三人に話すのだった。
「汝達はだ」
「護る。このままな」
「いいな」
「それでだな」
「そうだ、護っていればいい」
 彼等はだというのだ。その基地に展開している戦力はだ。
 そしてサルデスはだ。自ら攻めるというのだった。
「では戦うとしよう」
「うむ、それではだ」
「ここでロンド=ベルを抑えてだ」
「我がバルマーの脅威を取り除くとしよう」
 彼等はあくまでバルマーの臣であった。ポセイダルの臣ではなかった。
 そうしてだった。さらに戦うのだった。
 その中でだ。ロンド=ベルは戦っていた。だが彼等も攻めない。
 迫る敵だけを倒してだ。そうしていくのだった。ダバもその中で言う。
「敵も考えたな」
「そうよね」
 リリスもダバのその言葉に頷くのだった。
「ここはね」
「とりあえず迫って来る敵だけを倒そう」
 これがダバの考えだった。
「そうしていこう」
「少しずつなのね」
「そう、少しずつだ」
 少なくとも一気にというのではないのだった。
「普段とは違うけれどな」
「そうよね。普段は一気に攻めるけれど」
「今は倒すんだ」
 また言うダバだった。
「今はな」
「ううん、何かこういう戦いって私達あまりしないわよね」
「そうなんだよな。だからもどかしい気持ちはあるな」
「そうよね」
「けれどここはじっくりと戦わないとな」
「敵の数、減ってるよね」
 リリスはこのことが気になったのだった。
「少しずつだけれど」
「そうだな。減ってるよな」
「そうなの」
「そう思うけれどな」
 こう話すのだった。
「けれど」
「けれど?」
「まずはここは」
 ダバは敵の動きを見た。それも全体をだ。
「側面や後方の敵は攻めてきて」
「そうよね」
「けれど前の敵は来ない」
「前を攻めたいのにね」
「それをどうするかだよな」
 考える顔になっていた。
「ここは」
「なあダバ」
 ここでもキャオがダバに言ってきた。
「ここはな」
「ここは?」
「攻めるべきじゃねえのか?」
 こんなことを言う彼だった。
「敵の数は普段より少ないけれどな」
「ああ」
「それでもこうちまちま戦ってても敵の戦力は補充されてるぜ」
「補充、そういえば」
「基地にあれだぜ。敵の予備戦力があるぜ」
 そうだというのだった。
「パイロットがいる限りな。どんどん出て来るぜ」
「じゃあどうすれば」
「だから攻めるべきなんだよ」
 またこう言うキャオだった。
「そっちの方が俺達向きだしな」
「話はわかるけれど」 
 だが、だった。ダバの顔は暗かった。言葉もだ。
「それでも今は」
「横や後ろから来る敵はな」
「そっちはどうするの?」
「それには抑えを置くんだよ」
 キャオはリリスにも答えた。
「それで他の奴等でな」
「基地を攻めるのね」
「そうするんだな」
「ああ、これでどうだよ」 
 リリスだけでなくダバにも話した。
「それならな」
「ううん、それなら」
「残す人間は」
 リリスとダバはだ。さらに話すのだった。
「精鋭よね」
「とっておきのメンバーを置くか」
「まあ大体決まってるけれどな」
 キャオはそれはだというのだった。
「腕の立つのから四分の一置いてな」
「四分の一か」
「ああ、それで残る四分の三、いや」
「いや?」
「一気に倒すんなら五分の四か?」
 キャオは数字は変えてきた。
「それだけ向けるか」
「そうするのか」
「ああ、それで基地を一気に陥落させるんだよ」
 まさにロンド=ベルの戦いだった。それこそがだ。
「それでどうだよ」
「そうだな」
 大河がだ。キャオのその言葉に応えた。そうしてであった。
「ここはそうするか」
「俺の考えでいいんですか」
「やはりここはだ」
 大河は強い言葉であった。その言葉で話す。
「積極的にいくべきだな」
「はい、ですから」
「よし、諸君!」
 大河はキャオに話してから一気に全員に告げた。
「五分の一を抑えに置く」
「はい!」
「それで、ですね」
「残りで敵の基地を陥落させる」
 そうするというのだった。
「基地にはマシンが多くある。敵機は次々に補充されていく」
「けれどそれを一気に攻めて」
「そうして」
「そうだ、陥落させる!」
 まさに勢いで攻めるというのである。
「それでいいな」
「了解です!」
「それなら!」
「攻撃開始!」
 大河の言葉が告げられてであった。そうしてだった。
 ロンド=ベルは精鋭だけをサルデスの艦隊の抑えに残してだ。主力を基地に向けた。そしてそこにいる三個艦隊と戦うのだった。
 その攻撃を見てだ。まずはヒラデルヒアが言う。
「まさかと思ったが」
「奴等が来たことか」
「それか」
「数では我等が上だ」
 こうエペソとラオデキアに返すのである。
「だがそれでもだ」
「攻めてくるか」
「囲まれていても」
「その勇気は認める」
 それはだというのだ。
「だが、だ」
「予備戦力はある」
「そうだな」
「それを使いだな」
「戦うとしよう」
「今はな」
 こうしてだった。彼等は次から次に撃墜されるとパイロットを乗り換えさせてそのうえでだ。しぶとく戦い続けロンド=ベルを迎え撃つのだった。
 だがそれでもだ。少しずつではあったが。
 ロンド=ベルが押してきた。そうしてだった。
「よし、もっとだ!」
「もっと撃て!」
「撃墜しろ!」
 ロンド=ベルの面々はさらに勢いに乗っていた。その中にはダバもいた。
「よし、これなら」
「そうね」
 リリスも彼に言う。
「いけるわよね」
「ああ、いける」
 その通りだとだ。リリスに返すダバだった。
「敵が予備戦力を出してきてもだ」
「ええ」
「それ以上倒せばいいだけだ」
 いつものロンド=ベルのやり方であった。
「そうすればいいだけなんだからな」
「そうよね、やっぱり」
「積極的にいく時はいかないと駄目なんだ」
 そしてこうも言うダバだった。
「今も。だから」
「うん、じゃあダバ」
 ここでもバスターランチャーを出して。そして。
 一気に撃つ。ヘビーメタル達だけでなく戦艦も貫くのだった。
「よし!」
「これでいいわね」
「ああ、それでいいんだ」
 まさにそうだというのだった。
「こうして倒していって」
「それで敵を最後まで倒して」
「コムの戦いにも勝つ!」
「うん、そうしようダバ!」
 二人が話しているその先では。あの三人が暴れていた。
「おらおら!」
「やっぱり戦いは派手にやらないとね!」
「面白くない」
 オルガ、クロト、シャニはまさに水を得た魚だった。縦横無尽に暴れ回る。
「出て来るなら出て来やがれ!」
「片っ端から抹殺してやる!」
「死ね」
 こんな調子だった。そしてである。
 アルフレドもだ。大体同じだった。
 前にいるアトールをだ。ビームで撃墜して言うのだった。
「よし、この程度ならな」
「何でもないんですね」
「つまりは」
「そうだ」
 こうキーエンスことキースとボーマン=オルセンに答える。
「何ということはない」
「そうですか。ヘビーメタルでも」
「ビームコートがあってもですか」
「急所を撃ち抜けばそれで終わりだ」
 そうだというのである。
「それでだ」
「まあ幾ら守っても」
「それ以上のダメージを受ければ」
 二人もこのことはわかっていた。実際にそれぞれビーム攻撃でヘビーメタルを数え切れないだけ撃墜してきているからだ。それで、である。
「どうしようもありませんしね」
「そういうことですね」
「そういうことだ。それじゃあ」
「ええ、俺達も」
「やります」
 二人も敵にビームで攻撃を仕掛けて急所を貫く。彼等の攻撃も激しいものだった。
 スティングはだ。オールレンジ攻撃を仕掛けていた。その中で言うのだった。
「それぞれ合う攻撃していけばいいよな」
「まあそうだな」
 その彼にアウルが答える。彼は変形させていない。
「結局のところはな」
「カオスガンダムは変形した方がいい場合多いんだよな」
「アビスは水じゃないとそれやっても駄目だからな」
「そうだな。それはな」
「そうしたところは羨ましいな」
 言いながらその戟で敵を真っ二つにする彼だった。
 そしてだ。ステラもだった。
 ガイアガンダムを獣の形にしてだ。そのうえで攻撃して言うのだった。
「ステラはこうする」
「ああ、それでいいぜ」
「地上だとそれでいいからな」
「うん。ただ」
「ただ?」
「どうしたんだよ、今度は」
「シンには負ける」
 彼の名前をここで出すのだった。
「どうしても」
「シンは。まあな」
「ありゃまた違うからな」
 二人もシンについてはこうだった。
「あのガンダムはな」
「攻撃力が違うからな」
「じゃあステラもあのインパルスデスティニーに乗れば」
 ステラはこんなことも言ってきた。
「あんな活躍が」
「いや、流石に無理だろ」
「だからシンはパイロットとしても違うんだよ」
「そうなの」
「そうだよ、あれは天性だからな」
「コーディネイター云々抜きにしてもな」
「そうだな」
 イライジャが三人の話を聞きながら頷いた。
「あいつの強さはな。もう何かが違う」
「本当に天才なんだろうな」
 ロウもシンはそう見ていた。
「あれはな」
「そうだな。あそこまで戦えるのはだ」
「パイロット能力ではキラよりも上だろうな」
 そこまでいっているというのである。実際に今もシンは先頭に立ってだ。まさに鬼神の如き凄まじい戦いぶりを見せているところだった。
「本能的なものだろうな」
「ああ。今思えばな」
「何だ?」
「あいつだからだな」
 こう言うイライジャだった。
「あいつだからステラをな」
「助け出せたか」
「あいつだけじゃないがな」
 キラも見る。彼もまた戦っている。
「それでも。あいつのあの激しさがな」
「ステラを救い出せんだな」
「そう思うだろ」
「ああ、確かにな」
 ロウもだった。同じ意見だった。
「そう思う。俺もな」
「やっぱりそうか」
「あいつはステラに相応しい奴だ」
 そこまで言うロウだった。
「っていうかあいつ以外にはな」
「やれないっていうんだな」
「ステラ達はな」
「弟や妹か」
「もうそうなっているからな」
 だからだというのであった。
「ちょっとやそっとの奴にはな。やれないな」
「そういうことだな」
 こう話しながらだ。彼等も戦っていく。そしてであった。
 遂にだった。基地でだ。
「くっ、まさかな」
「あれだけの予備戦力をか」
「全て撃墜してしまったか」
 三人のジュデッカ=ゴッツォ達がそれぞれ歯噛みしていた。
「今残っている戦力だけか」
「そうだ、これだけだ」
「それで終わりだ」
 エペソとラオデキアがヒラデルヒアに答える。
「もうありはしない」
「この星の戦力はもうだ」
「そうか、わかった」
 ヒラデルヒアはここまで聞いて頷いた。そうしてだった。
 そのうえでだ。二人に対して言う。
「それでなのだが」
「これからのことか」
「どうするか、か」
「ここから半数の戦力を失えばだ」
 その時はというのだ。
「考えるべきだと思うが。どうだ」
「そうだな。それはな」
「最早。それ以上の戦闘はな」
 エペソとラオデキアもそれぞれ考える顔になって述べる。
「意味がなくなる」
「無駄な損害を増やすだけだ」
「サルデスの艦隊のダメージも大きい」
 足止めを受けている彼等もだ。派手にやられているのだ。足止めをしているロン=ベルの精鋭達の強さは尋常なものではなかった。
「ここで四個艦隊全てを失えば」
「今後の戦略に支障をきたす」
「十三人衆の者達の動きも気になる」
 三人はそれぞれモニターから話す。
「ではだ、頃合を見てだ」
「うむ、撤退だな」
「そうするとしよう」
 こう決めてだった。サルデスにも連絡を取るのだった。その時にだった。
「よし!」
「これなら!」
 洸のライディーンと綾人のラーゼフォンが背中合わせになってだ。それぞれ弓を放った。
 その弓達がだ。ラオデキアの周りのバルマー軍のマシンを全て撃墜したのだった。168
「くっ、汝等もうここまでか」
「そうだ、来たんだ!」
「覚悟しろ!」
「最早戦力も」
 ここで周りを見るラオデキアだった。するとだ。
 明らかにだ。半数を切っていた。それを見てだった。
「第七艦隊、ここで撤退する」
「そうか」
「わかった」
 エペソとヒラデルヒアは彼のその言葉を受けた。そうしてだった。
「我等もだ」
「これでだ」
「撤退する」
「コムから一時撤収する」
 こうしてだった。彼等も撤退するのだった。
 三個艦隊の撤退を見てだ。サルデスもだった。まずは己の部下達に話す。
「よいな」
「はい、既に損害は六割に達しています」
「これ以上の戦闘は無意味です」
「無駄な損害を増やすだけかと」
 口々にこう述べる部下達だった。
「では閣下」
「我等も今は」
「このコムから」
「退く」
 まさにそうするというラオデキアだった。そうしてだった。
 彼等の艦隊も撤退した。これで決まりだった。
 コムは解放された。基地はロンド=ベルが入りだ。レジスタンス達と握手をするのだった。
 そしてだ。ダバがまず言った。
「これでまずはです」
「コムの解放か」
「まずは一つだよな」
「そうよね」
「はい、そうです」
 ダバはまた仲間達に答えた。
「コムは解放されました」
「そうだ、これでだ」
「コムが我々の手に戻ったんだ」
「遂にな」
 レジスタンスの者達の声は明るいものだった。
「ダバ、あんたとあんたの仲間達のお陰だ」
「あんたがいたから解放できたんだ」
「ああ、そうだ」
「その通りだ」
「いや、俺は」
 しかしだった。ダバはここで謙遜を見せた。そのうえでの言葉だった。
「特に何も」
「そうそう、そこでそう言うのがな」
「ダバなんだよ」
「そうだよな」
 だがレジスタンスの面々はダバのその謙遜に笑顔になって言うのだった。
「そこで俺がやったって言うのはキャオだよな」
「おい、キャオいるか?」
「それで」
「ああ、いるさ」
 苦笑いと共に答えてきたキャオだった。
「ちゃんとな」
「何だ、そうなのか」
「じゃあ聞いたか?今の言葉」
「やっぱり」
「聞いたさ。全くな」
 苦笑いはそのままのキャオだった。
「俺っていつもそう言われるんだよな」
「ある意味人徳じゃないのか?」 
 こう突っ込みを入れたのはヤザンだった。
「それってな」
「これって人徳なのかよ」
「少なくとも嫌われてないみたいだぜ」
 ヤザンはこのことも指摘してみせた。
「それはわかるだろ」
「そりゃそうだけれどな」
「俺もそうだと嬉しいしな」
 何故かそんな顔も見せるキャオだった。
「御前が人気あるとな」
「ああ、それはわかる」
 キャオはヤザンの今の言葉に納得した顔で頷いた。
「俺もヤザンさんが人気あると嬉しいしな」
「自分のことみたいにな」
「そうだよな」
「というよりかね」 
 ライラがここでその二人に突っ込みを入れた。
「あんた達の会話って一人で二役やってるようにしか聞こえないんだがね」
「いや、そうじゃないのか?」
「なあ」
「この人達の場合は」
 皆もその二人を見て言う。
「俺もなあ」
「人のこと言えませんけれどね」
 ミシェルとルカだった。
「けれどさっきのはな」
「本当に一人で会話しているように聞こえましたし」
「ではこれもか」
「どう?」
 レッシィとリリスだった。
「私達もだ」
「一人二役に聞こえる?」
「聞こえるな」
 ユングが二人に対して答えた。
「どう聞いてもな」
「うん、私もそう思う」
 次はクェスだった。
「というか区別つかないし」
「そういうことは止めた方がいいな」
「そうよね」
 ヒギンズとチャムである。
「それをやると混乱してしまう」
「だから止めた方がね」
「いや、あんた達もだろ」
 甲児がそのユング達に突っ込みを入れた。
「誰が誰なのか本当にわからなかったぜ、今のは」
「まあとにかくあれよ」
 アスカだった。
「戦いは終わって基地占領したし」
「あっ、そうだ」
「今思い出したけれど」
「そうだよな」
「基地占領したんだ」
 皆声のことで混乱していてこのことをすっかり忘れてしまっていた。
 そのうえでだ。それを思い出してだ。
「じゃあこれからは」
「この星を拠点にして」
「いよいよポセイダル?」
「あいつとの直接対決に向かうのね」
「そうするべきですね」
 レフィーナが言った。
「ここは」
「そうですね。既に四個艦隊にダメージを与えています」
 ショーンも考える顔になっている。
「それならです。ここは」
「ポセイダルの本拠地に向けて進撃ですね」
 また言うレフィーナだった。
「これからは」
「さて、問題はだ」
 ブレスフィールドはポセイダル以外の存在も見ていた。
「そのギワザ達十三人衆だな」
「あの連中がどう動くか」
「そうだよな」
「それが問題だよな」
「どう来るんだろうな」
「まあいつか絶対に来るだろ」
 今言ったのはアラドだった。
「俺達がポセイダルを倒すか」
「ポセイダルの戦力が決定的に弱まった時ね」
 ゼオラはその時のことを仮定して述べた。
「そういう時よね」
「だよな。まあ絶対に出て来るよな」
「ええ、絶対にね」
 ラトゥーニもそこを言う。
「頃合いを見計らってね」
「じゃあその時に倒せばいいんじゃないのか?」
 アラドの言葉は実に簡潔だった。
「あまり難しく考えることは」
「それはどうかしら」
 そのアラドに今言ったのはオウカだった。
「そう簡単にはいかないかも知れないわよ」
「どうしてなんですか、それは」 
 ゼオラはそのことをオウカに尋ねた。
「簡単にっていいますと」
「ポセイダルではなく私達を狙ってくる可能性もあるわ」
 そのケースを考えてだったのである。
「その場合はどうするかよ」
「つまり私達が弱まった時」
「その時に十三人衆が私達を襲う」
「そういうこと?」
「この場合は」
「ええ、そうよ」
 そうだと。オウカは今度は皆に話した。
「その場合はどうするかも考えないとね」
「ううん、その場合か」
「私達が弱まったその時に」
「どうするのか」
 アラドだけでなくゼオラとラトゥーニも考える顔になった。
 そのうえでだ。三人はそれぞれ話す。
「それだよな」
「そうした時に襲われたら確かに危ないわね」
「エネルギーや弾薬がない場合にも」
「そうしたことにならない為にはね」
 ここでだ。オウカはまた言った。
「私達ではなくね」
「奴等を戦わせる?」
「そうするってこと?」
「それがベストね」
 これがオウカの考えだった。
「ポセイダル軍と十三人衆をね」
「そうして戦わせて」
「そこを狙う?」
「そうするってこと?」
「つまりは」
「それでどうかしら」
 また言うオウカだった。
「問題は十三人衆が何処に隠れているかだけれど」
「あの連中が隠れている場所?」
「そこ?」
「そこなの」
「ええと、そこって」
「何処なのか」
 皆ここであらためて考えることになった。
「それが問題だけれど」
「レッシィさん、ギャブレーさん」
 ここで白羽の矢が立ったのは元十三人衆のこの二人だった。
「知ってます?そうした場所」
「ペンタゴナにありますか?」
「そう言われてもだ」
「少しな」
 だが、だった。二人はここで困った顔になるのだった。
「ギワザは狡賢い男だ」
「隠れ家なぞどれだけあるかな」
「わからないんですか」
「そうなんですね」
「とにかくあいつは狡賢い奴だからね」
 レッシィはこのことを強く話すのだった。
「本当に何処に隠れているかわからないよ」
「けれど」
 だが、だった。オウカがここでまた言う。
「ギワザの軍は大軍ね」
「はい、そうです」
 今答えたのはダバだった。
「一個艦隊程は普通にいます」
「一個艦隊ね」
「そうです」
「それなら隠すのにも限度があるわね」
 オウカはこう考えるのだった。
「そうね、一個艦隊になると簡単には隠れられないわ」
「それではです」
 オウカの今の言葉にだ。ラトゥーニが言ってきた。
「作戦を変更するべきですね」
「作戦を?」
「オウカ姉さんは今ポセイダル軍と十三人衆を戦わせようと考えておられますね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ。オウカははっきりと答えた。
「そうしてそのうえで私達が残った方をね」
「それでお互い戦うとは限りません」
「ううん、様子見をする可能性も高いわね」
「そのギワザの性格では充分に考えられます」
 また言うラトゥーニだった。そしてだ。
「ですからここは」
「ここは」
「私達の方から十三人衆の基地を見つけ出し」
 こう言うのだった。
「そしてそこで十三人衆を倒すべきです」
「やられる前にやれっていうんだな」
「ええ」
 アラドの言葉にも答えた。
「その通りよ」
「そうか、わかった」
 ここで頷いたアラドだった。
「それならだ」
「それでいいわね」
「ああ、いい」
 実際にそうだと答えたアラドだった。
「じゃあそうするか」
「下手に策を仕掛けるより攻める」
 クォヴレーも言った。
「その方がいいな」
「そうね。言われてみればね」
 オウカも柔軟に考えて述べたのだった。
「その方がいいわね」
「それじゃあですね」
 ゼオラはそのオウカに笑顔で話す。
「ここは十三人衆の基地を探して」
「少なくとも一個艦隊規模の戦力が駐留する場所となると」
「限られてくるな」
「そうだな」
 レジスタンスの面々がここで話す。
「とりあえずその基地は全て割り出してみる」
「少し時間がかかるがいいか」
「ええ、御願いします」
 シャインが彼等の申し出に答えた。
「では私達はその間は」
「まあ休んでいてくれ」
「プールにでも行ってな」
「そこでな」
「プールか。いいな」
 今言ったのはアラドだった。
「最近泳いでないしな。丁度いいな」
「泳ぎも大事よ」
 その彼にゼオラが告げる。
「何があるからわからないから」
「海に不時着とかか」
「惑星での戦いだってあるし」
 今の戦いが実際にそうだった。
「そういう時はね」
「だよなあ。じゃあ」
「水泳も頑張らないと」
「わかったよ。ただ」
「ただ?」
「ゼオラってな」
 その大きな胸を見ての言葉になっていた。
「泳ぎ、得意か?」
「また何でそんなこと急に言うのよ」
「いや、その胸がな」
「胸が?」
「邪魔にならないかって思ってさ」
 アラドが言うのはこのことだった。
「それは大丈夫なのかよ」
「なっ、何言ってんのよ!」
 そう言われて顔を一気に真っ赤にさせたゼオラだった。
「そんなのね。ある訳が」
「ないか」
「ないわよ。そりゃバタフライの時とかは」
 それでも自覚はあった。
「気になるけれど」
「そうなのよねえ」
 エクセレンが出て来た。
「おっぱいって結構ね。邪魔になっちゃうのよねえ」
「そ、そうなのか?」
 その言葉に焦るのはアイビスだった。
「私にはわからない話だ」
「まあそれはいいです」
 ラトゥーニはかなり苦しそうである。
「というかそれ言ったら戦争になりますから」
「まあそれは置いておいて」
「とりあえず宇宙に出るか」
「そうしようぜ」
 何はともあれロンド=ベルはレジスタンスの面々と別れて宇宙に出た。そうして今度はギワザ達十三人衆の本拠地を探すのだった。


第六十九話   完


                                       2010・10・25
 

 

第七十話 猜疑心

                   第七十話 猜疑心

「うわっ、これはまた」
「何ていうか」
 皆シェリルの水着姿に唖然となる。
「只の白のビキニなのに」
「もうはちきれんばかり」
「そこまでいく!?」
「っていうか規格外」
「グラビアの仕事にも自信があるのよ」
 プールサイドのシェリルは実に誇らしげである。
「しかもこれでもバージンよ」
「えっ、そうだったんですか」
 彼女の言葉に熊のキャラクター柄のビキニのゼオラが驚く。彼女もまたその胸はかなりのものだ。
「シェリルさんって」
「意外かしら」
「意外っていうか」
「嘘だよなあ」
「ねえ」
「それって」
 殆どの面々がそれを信じようとしなかった。
「ランカちゃんならともかく」
「シェリルさんがって」
「それって」
「けれど事実よ」
 少なくとも嘘を言うシェリルではなかった。
「これはね」
「ううん、そういえばロンド=ベルって」
「そういう経験のある人少ない?」
「ねえ」
「考えてみれば」
 皆考えてみればだった。
「ある人もいるけれど」
「ない人は徹底してない」
「そうよね」
「例えば」
 ここで皆ロゼを見た。彼女は黒い露出がやけに多い黒のワンピースだ。腹部がかなり露わになっている。それが目立っている。
「ロゼさんもやっぱり」
「どう考えてもだよな」
「ロゼさんって真面目だし」
「そうよね」
「は、はい」
 そのロゼも真面目な顔で言ってきた。
「実は私は。まだ」
「やっぱりね」
「そういうことですか」
「予想通り」
「そういえば」
 ここで言ったのはランカだった。彼女はフリルのついたピンクのビキニだ。実に可愛らしい。
「何処かで聞いたんですけれど」
「んっ、何が?」
「どうかしたの?」
「そういうことはルージュの色でわかる」
 不意にこんなことを言う彼女だった。
「聞いたことがありますけれど」
「ああ、それね」
 マーベルがランカのその言葉に応える。露出の多い黄色のビキニだ。
「よく言われることではあるわね」
「そうですよね」
「一説にはそうね」
 こう話すマーベルだった。
「実際はどうかわからないけれど」
「そうなんですか」
「まああれよ」
 ここでマーベルは言葉を変えてきた。
「他人のそういうことはね」
「検索するのってよくないよな」
「そうだよな」
「やっぱりね」
「そういうことはね」
 皆ここでそういうことはどうかということになった。そしてだ。
 あらためて女性陣が見られる。するとだった。
 ラトゥーニは。何と。
「うわっ、スクール水着」
「それは反則だろ」
「せめてワンピースじゃないと」
「そうだよなあ」
 皆それを話す。しかし当人はこう言うだけだった。
「おかしい?」
「おかしいっていうかやばい」
「そうだよな」
「どう考えてもね」
「これって」
 皆こう話す。そのラトゥーニを見ながらだ。
 そしてそのうえでさらに見るとであった。やはりその姿は。
「危ないよなあ」
「下手なビキニよりもなあ」
「危険な香りがするし」
「やばいって」
「そうなの」
「そうした意見もあるわ」
 レイが出て来た。彼女は黒ビキニだ。胸が結構ある。スタイルはいい。
「そう、水着は体形がはっきり出るから」
「そういう綾波もな」
「そうだよね」
 そのレイの後ろでトウジとケイスケが話す。
「スタイルよくなったよな」
「それもかなりね」
「そう」
 だがレイには自覚がなかった。こう返すだけだった。
「私、そうなの」
「スタイルがいいことはそれだけで武器よ」
 アスカは見事な白のワンピースだ。胸が半分以上見えている。
「胸が大きい小さいだけじゃなくてね」
「胸かあ」
「小さくてもなあ」
「そうそう、いいよな」
「確かにね」
 皆胸の小さいこともまたいいということもわかってきた。
 ラトゥーニを見てだ。また話すのだった。
「胸が大きいことは素晴しい」
「けれど胸が小さいこともまた」
「同じだけ素晴しい」
「そういうことよね」
「そうだよな」
「ふん、胸だけじゃないのよ」
 アスカはその目立つ胸を前に大きく出していた。
「全体を見て言うべきなのよ」
「けれどアスカちゃんはね」
 横からレインが来た。コバルトブルーのビキニから見事な胸と脚が出ている。
「胸を張り過ぎよ」
「そうですか?」
「そういう姿勢なのね」
「まあ。何ていうか」
「こいついつも威張ってるからな」
 ここで言ったのは甲児だった。
「だから自然とそんな姿勢になるんだよ」
「そんな訳ないでしょ」
 アスカは甲児のその言葉に反論した。
「あたしが何時威張ってるのよ」
「って御前自覚ないのかな」
「そんなのないわよ」
 堂々と言うアスカだった。
「最初からそんなことないんだし」
「あの、アスカ」
 シンジがたまりかねた顔でアスカに告げてきた。
「あまりそういうことは」
「何よ、言うなっていうの?」
「ここは謙虚にね」
「あたしは何時でも謙虚よ」
 やはりアスカである。
「こんなレディーを捕まえてね」
「レディーなのか?」
 タスクも思わず突っ込みを入れる今の言葉だった。
「どう考えてもな」
「何だっていうのよ」
「ジャジャ馬だろ」
「ジャジャ馬!?」
「そうだろ、どう考えてもな」
「失礼なこと言うわね」
 アスカはタスクのその言葉に突っ込みを入れた。
「よくもまあそんなことを」
「いや、それは」
「かなり当たってるだろ」
「なあ」
「アスカってどう考えてもな」
「ジャジャ馬だろ」
「なあ」
 皆こう話す。まさにそうだというのだ。
 そしてだ。アスカ自身にだ。こう話すのだった。
「なあ、落ち着いてな」
「毎回毎回喧嘩しても仕方ないだろ」
「だからな」
「何だっていうのよ」
 皆に止められていささか面白くないアスカだった。
「あたしってそんなにトラブル起こしてるの?」
「起こしてるよな」
「なあ」
「どう考えてもな」
「すぐ突っかかるしな」
 それがまさにアスカだった。
「特にシンとな」
「殆ど毎日喧嘩してるしな」
「よく続くよ」
「他にもケーンとか甲児とか」
「相手も多いし」
「けれどそれでも」
 ここでシンジがこんなことを言った。
「あれだよね。何か険悪なものはないんだよね」
「実は」
 レイがぽつりとした口調で話す。
「アスカは」
「アスカは?」
「皆が好きだから」
 こう指摘するのだった。
「険悪なものはないの」
「そんな訳ないでしょっ」
 アスカは白々しい言葉で打ち消そうとした。
「あたしはね、そんなことは全然」
「いや、あるだろ」
「そうだよな」
「どう見てもな」
「そうよね」
 皆わかっていた。そのうえで言うのだった。
「アスカは素直じゃないからなあ」
「それもかなり」
「何て言えばいいのかな」
「つむじ曲がり?」
 今言ったのは斗牙だった。
「それかな」
「こういう場合は臍曲がりっていうのよ」
 ルナがその斗牙に話す。
「どっちかっていうとね」
「ああ、そうなるんだ」
「そういうこと」
「まあアスカのお臍は曲がっていないけれど」
 今言ったのはミヅキである。
「それでも性格がね」
「根はいい人なんですけれどね」
 エイナは既にこのことがわかっていた。
「そこがどうしても」
「何か滅茶苦茶言われてるわね」
 アスカもそれはよくわかった。
「何でそこまでなのよ」
「っていうかさ」
 シンジもその彼女に言う。
「アスカってやっぱり」
「何よ、今度は」
「少し素直になったらいいんじゃないかな」
 こう言うのだった。
「それで大分違うと思うけれど」
「そうね」
 レイもシンジのその言葉に頷く。
「そうしたら本当に」
「そうだよね、本当に」
「ふん、あたしはあたしよ」
 やはりこう言うアスカだった。
「あくまで我が道を行くわ」
「そうなんですかあ」
 今出て来たのはグレースだった。
「アスカちゃんってしっかりしてるんですねえ」
「有り難う、グレースさん」
 アスカは彼女には笑顔だった。
「何かグレースさんに言ってもらえたら凄く嬉しいわ」
「いえいえ、それは」
「あたしもやっとわかってきたわ」
 笑顔のまま言うアスカだった。
「似ている相手がいてくれてるってね」
「有り難いですよね」
「それはね」
 レイがアスカのその言葉に頷いた。
「私もわかるわ」
「そうよね」
 クリスがレイの言葉に笑顔で応える。
「私もレイちゃんと一緒だとね」
「何かさ。クリスさんってさ」
 シーブックの言葉だ。
「あれだよね。レイちゃんと全然個性が違うけれど」
「似てるでしょ」
「はい、そっくりです」
 まさにそうだと返すシーブックだった。
「そういうことですね」
「そうだよな。俺も何か」
 バーニィはシーブックを見ていた。
「シーブックとはな」
「ええ、親近感沸きますよね」
「ははは、そうだよな」
「それで」
 レイはクリスを見た。見ればだ。
 彼女と同じ水着だ。サイズが違うだけだった。それを見てだった。
「お揃い」
「意識した訳じゃないけれどね」
「無意識のうちにそうなった」
 こう言うレイだった。
「つまりはこういうこと」
「そうよね、とどのつまりはね」
「似ている相手がいるって有り難いよな」
 今言ったのはヘクトールだった。
「俺もつくづく思うよ」
「そうだな」
 アーウィンが彼のその言葉に頷く。
「寂しくなくなる」
「ううん、それでもよ」
「複雑な気持ちになる時はあるわね」
 パットとミーナが言う。パットはコバルトブルーのビキニ、ミーナは紫のワンピースだ。ミーナのワンピースはかなりのハイレグだ。
「どうしてもね」
「自分がわからなくなったり」
「ううん、私にはそれはわからないけれど」
 黄緑のワンピースのスメラギは難しい顔でベンチにいる。
「ただ。皆」
「皆?」
「皆って?」
「スタイルいいわね」
 嘆息と共の言葉だった。
「本当にね」
「そう言うスメラギさんだってね」
「そうよね」
「何ていうか大人の女性?」
「その雰囲気醸し出してて」
「色気が」
「そうかしら」
 スメラギは皆のその言葉には首を傾げさせて返す。
「私は別に」
「いえ、かなりですよ」 
 留美がそのスメラギに言う。彼女は紅のビキニだ。そう言う彼女にしてもだ。スタイルは暴力的なまでにいいのであった。彼女もなのだ。
「それは事実です」
「けれどもう歳だしね」
「って何言ってるのよ」
「そうよ」
 ミサトとリツコだった。ミサトは白のビキニ、リツコは黒のビキニである。
「私達なんてそれ言ったらよ」
「かなりまずいのよ」
「そういえば私達って」
「そう、同年代じゃない」
「そこのところ宜しくね」
 こうスメラギに返す二人だった。
「その貴女がそんなこと言ったらよ」
「私達の立つ瀬がないから」
「けれど二人共」
 スメラギはその二人のスタイルを見ていた。そのうえでの言葉だった。
「かなり」
「どうなの?」
「どうっていうの?」
「いいじゃない」
 これがスメラギの感想だった。
「グラビアできるわよ」
「まさか。そこまではね」
「いかないわよ」
 今度は二人が苦笑いになった。
「私達じゃあね」
「とてもね」
「いえ、ミサトもそうだけれど」
 スメラギは今はどちらかというとリツコを見てだ。こう言うのであった。
「その黒ビキニとね」
「黒ビキニと?」
「白のお医者さんの服はまずいでしょ」
「そうかしら」
「目のやり場に困るわ」
 実際にスメラギの顔は少し苦笑いになっていた。
「どうしてもね」
「そうなの」
「そうよ。女の私だってそうだから」
「ええ」
「男の子だったら余計にそうなるわ」
「水着と白衣ってそんなに効果あるのかしら」
「ええ、間違いないわ」
 メネシスがリツコに言ってきた。彼女は白のワンピースである。
「何となくわかるわ、私にもね」
「メネシスが言うのなら」
 何故かここですぐに納得したリツコだった。
「そうなのね」
「納得してくれたのね」
「何となくだけれど」
 そうだというメネシスだった。
「わかるわ」
「そうなのね」
「それでだけれど」
 メネシスはここで話題を変えてきた。
「これからだけれど」
「これから?」
「泳ぎましょう」
 リツコを誘う言葉だった。
「これからね」
「あっ、そうね。折角プールに来たんだし」
「泳ぎましょう。身体を動かすのもいいことよ」
「そうね。スポーツも美容にいいしね」
「それで身体動かして筋肉痛なんだな」
 シンがここでも余計なことを言う。
「もういい歳だからな。二日後辺りに来てそっから苦しみ抜くな」
「はい、死んでなさい」
 リツコはそのシンを即座に蹴り飛ばした。そのでプールに放り込んだ。
 そしてその頭を掴んでだ。水の中に沈めるのだった。
「何が言いたいのかしら、一体」
「ガブ、ゲボッ」
「お姉さんわからないわ。言ってくれるかしら」
 暗い怒りをたたえた笑みでそうしている。
「早く。言ってくれないかしら」
「やっぱりこうなるのよねえ」
 黒ビキニのルナマリアが呆れている。下着そっくりのビキニだ。
「シンって。本当に口悪いんだから」
「っていうか毎回言うなこいつは」
 カガリも言う。黄色のワンピースである。
「本当に懲りないな」
「まあ溺れて死ぬ奴じゃないし」
「いい薬だな」
 こんなことをしながらプールで骨休みをした一同だった。そしてだ。
 偵察に出ていたフェイからだ。報告が来た。
「基地、見つけたわよ」
「おっ、見つけたか」
「早いな」
「はい、見つけました」
 ボルフォッグも出て来て皆に報告する。
「場所はサードスター近辺の小惑星です」
「そこにか」
「そこにいるのか」
「規模にして二個艦隊」
 その数も既にわかっているというのだ。
「それだけの戦力がいます」
「そうか、わかった」
 ダグラスがその報告に頷いた。そしてだった。
 一同に対してだ。こう言うのだった。
「では諸君、今よりだ」
「その小惑星に向かって」
「そのうえで、ですね」
「十三人衆を倒すべきだ」
 こう話すのだった。
「すぐにな」
「けれど」
「そうだな」
 ここでアムとギャブレーが難しい顔を見せた。
「サードスターの近くね」
「そこなのか」
 二人が問題にしているのはそこだった。
「あそこは」
「少しまずいな」
「どうしてなんだい?」
 大介がその二人に尋ねる。
「そのサードスターに」
「そこにはポセイダルの腹心の一人がいる」
 こう話したのはレッシィだった。
「フル=フラットという女がいるのだ」
「フル=フラット?」
「っていうと」
「誰、それ」
「あっ、話してなかったか」
 レッシィはここで意外といった顔を見せた。
「あの女のことは」
「初耳?」
「そうだよな」
「ちょっと」
 皆こうレッシィに返すのだった。
「どういう奴なの、それで」
「ポセイダルの腹心っていうけれど」
「それで」
「動いたことはない」
 こう話すレッシィだった。
「だが、だ。多くの戦力も持っている」
「その戦力でか」
「俺達を攻めてきかねない」
「そういうことなのね」
「そうだ。それが問題だ」
 その通りだと話すレッシィだった。
「あの女の動向がだ」
「しかしだ」
 今言ったのはスレッガーだった。
「どっちにしろ十三人衆は潰しておくべきだろ」
「それはその通りだ」
 レッシィもスレッガーの言葉に応える。
「放置してはおけないからな」
「じゃあここはどうするんだ?」
「やはり行くべきだろうな」
 リュウはこう主張する。
「放ってはおけないだろう」
「ですが私達が十三人衆と戦ってる間に」
 セイラはあえて最悪の事態を想定して述べた。
「後方から来たら」
「挟み撃ちかよ」
「そうなるな」
 カイとハヤトも言う。
「そうなったらやばいな」
「そうだな。その危険もあるよな」
「いや、ここは」
「そうだな」
 だがここでアポリーとロベルトが言う。
「あえて虎穴に入るか」
「そうして戦うべきじゃないのか」
「おいおい、またそりゃ」
「過激にいくんだな」
 カイとハヤトは二人のその主張に驚いた。
「挟み撃ちになってもか」
「それでも十三人衆の軍を叩くのか」
「そうでもなければ駄目だな」
 クワトロはかつての部下達の意見に賛成したのだった。
「ここはな」
「そう言うんだな」
「そうだ」
 アムロに対しても言った。
「さもないと十三人衆が何時隙を見せて窺うかわからない」
「それを防ぐ為にも」
「今あえて危険を冒して」
「そういうことか」
「ここは」
 皆クワトロの話を聞いて述べた。
「あえて危険を承知で」
「一気に叩くか」
「そうするべきか」
「それが妥当だと思う」
 また言うクワトロだった。
「後ろから敵が来ればだ」
「その時は」
「どうするんですか?」
「一体」
「まずその前に十三人衆の軍を全て倒す」
 クワトロの主張はここでは過激だった。
「そしてそのうえでだ」
「フル=フラットの軍をですね」
「返す刀で」
「そうするのはどうだ」
 ここでは一同に問うのだった。
「迅速に戦うということだ」
「失敗した時のことは考えない、か」
「どちらにしても敗北すれば終わりだ」 
 アムロにこの現実を話した。
「違うか、それは」
「いや、その通りだ」
 アムロもそれは否定しない。
「俺達の戦い自体がな」
「では答えは出たな」
「そうだな」
 アムロもここで頷いた。そうしてだった。
 彼等は十三人衆のその隠された基地に向かった。そこに近付くとだ。
 すぐに敵が出て来た。アステロイド帯に入るとすぐだった。
 左右からだ。伏兵だった。
「迎撃に出て来たな」
「そうだな」
 キャオがダバの言葉に頷く。
「こういう展開はいつもだな」
「そうだな。それじゃあ」
「勿論総員出撃だ」
 今言ったのはカイである。
「いいな」
「ええ、それじゃあ」
 まずはダバが彼に対して頷いた。
「行かせてもらいます」
「頑張れよ、ダバ」
 パイロットでないキャオは彼を見送るのだった。そうしてだった。
 ロンド=ベルは迎撃に来た軍勢に向かう。その数はだ。
「数はそんなに多くないな」
「そうだな。二万?」
「それ位だよな」
「援軍が来るかも知れないけれど」
 その危惧はしていたがだった。
「けれどさしあたっては」
「二万?」
「それ位よね」
「やっぱり少ないな」
 こう話すのだった。そしてだ。 
 左右から来る敵に対して備える。その指揮官は。
「ネイだね」
「ああ、そうさ」
 不敵な声がレッシィに返ってきた。オージェがいた。
「久し振りだね」
「ふん、生きていたんだね」
「生憎ぴんぴんしてるさ」
 こう言うネイだった。
「この通りね」
「誰も喜んではいない」
「そうよ」
 レッシィだけでなくアムも彼女に言う。
「ずっと見なくて清々していたのにね」
「そういえばそうだよな」
 キャオもここで言う。
「地球での戦いからこのかたずっとだったからな」
「そもそも十三人衆自体がな」
「久し振りに戦うよな」
「そうよね」
「確かに」
 皆もここで言うのだった。そうなのだった。
「それでも全員健在?」
「チャイ=チャーとかリョクレイ=ロンとか」
「テッド=デビラスもいたっけ」
「ワザン=ルーンも」
「ああ、そうそう」
 勝平も言う。
「あの妖怪人間みたいなのいたよな」
「誰だそれ」
「顔は何か思い浮かべるけれど」
 宇宙太と恵子も首を傾げさせていた。
「ええと、名前は」
「何とかいったわよね」
「リィリィのことだね」
 ネイがその三人に答える。
「リィリィ=ハッシーだね」
「ああ、それそれ」
「そいつだよ」
「名前忘れてたわ」
 ザンボットチームはネイのその言葉に頷く。
「あいつな。何かいやらしくてな」
「顔は覚えてたんだよ」
「けれど名前は」
「あいつも健在だよ」
 こう言うネイだった。
「勿論他の連中もね」
「チャイ=チャー死んでなかったか?」
「生きてたのかよ」
「しぶといなあ」
「死んでてもいいのに」
 実に冷たい彼等である。十三人衆には。しかもである。
 ここでまた、だ。一人思い出したのだ。
「あの変なのいたよな」
「何か戦いになると急にハイテンションになる」
「どっかオカマめいた」
「あいつは?」
「マフ=マクトミンかい」
 また答えるネイだった。
「あいつもいるさ」
「本当に十三人衆全員健在かあ」
「いなくてもいいのに」
「全く」
「全然困らないし」
「ふん、勝手に言ってるんだね」
 ネイはここではこう言った。
「それでだよ。覚悟はいいね」
「来るか」
「やっぱりな」
「攻めて来るってんだな」
「そうね」
「死んでもらうよ」 
 サイズを一閃させてからの言葉だった。
「いいね、それじゃあ」
「ネイ様、それでは」
「我々も」
 アントンとヘッケラーもいた。ネイの左右に控えている。
「行きましょう」
「そしてこの者達を退け」
「ああ、頼むよ」
 ネイは彼等には穏やかだった。
「この連中を倒してそれでね」
「そうしてポセイダルも倒して」
「そのうえで」
「ギワザ様の為にね」
 彼の名前も出した。
「やるんだよ、いいね」
「わかりました。それでは」
「今より」
「全軍攻撃開始」
 ネイが指示を出した。
「サードスターに連絡を取ってるね」
「はい、それは既に」
「フラット様には」
「わかったよ。じゃあね」
 こうしてだった。彼等は戦闘に入ったのだった。
 アステロイドに入りそうしてそこからゲリラ戦めいた戦術を展開する。それに対してだ。
 ロンド=ベルはその彼等にだ。ここは散開したのだった。
「小隊ごとに散開です」
「はい」
「そうしてですね」
「個々で敵にあたります」
 エキセドルはこう美穂とサリーに話す。
「それでいいですね」
「わかりました、それでは」
「マクロス7も」
「マクロス、マクロスクウォーターと共にです」
 決して一隻にはなろうとしなかった。
「彼等にあたります」
「それで一気にですね」
「倒すのですね」
「こうした相手にはその方が速く済みます」
 だからだというのだ。
「この戦術でいきましょう」
「はい、それでは」
「それで」
 こうしてだった。彼等もまた散開して敵に挑む。その中でだ。
「撃て!撃て!」
「狙いは外すな!」
「正確にだ」
 カットナル、ケルナグール、ブンドルが指示を出していた。
「一機も逃すな!」
「いざとなれば体当たりだ!」
「美しくかつエレガントにだ」
 それぞれの言葉でだ。倒せというのである。
 その中でだ。ブンドルはふと言うのだった。
「しかしだ」
「んっ、ブンドル」
「どうしたのだ、一体」
「うむ。サードスターだったな」
 彼はそこの話をするのだった。
「まだ動きはないな」
「そうだな、そういえば」
「来ないな」
 カットナルとケルナグールも彼の言葉に頷く。
「まだな」
「来ないな」
「若しかしたらだ」 
 ブンドルはここで一つの仮定を口にした。
「最初からそうなのかもな」
「動かないというのか」
「そうだというのだな」
「若しかするとだがな」
 あくまで仮定だというのであった。
「そうなのかもな」
「何か意図があってか」
「それでなのか」
「だとすればだ」
 ここでさらに言うブンドルだった。
「その意図も気になるところだ」
「ううむ、そうだな」
「言われてみればだ」
 二人も彼の言葉に考える。
「我等はそのフル=フラットにとっては敵だ」
「それは間違いない」
「若しギワザが反乱を企てているならだ」
「そのギワザ共々我等を討つ好機」
 二人はこう考える。これは当然のことだ。
「若しギワザと組んでいるならばだ」
「友軍を助けるもの」
「そうだな」
 その通りだとだ。ブンドルも言うのだった。
「しかしフル=フラットはそれをしないな」
「どちらのケースであっても動かない」
「それは何故だ」
「何を考えてだ」
「一体」
「それはまだわからないがだ」
 それでもだとだ。ブンドルは言うのだった。
「だが。フル=フラットにはフル=フラットの考えがある」
「だから今は動かない」
「そういうことか」
「そしてどうやらだ」
 ここでまた言うブンドルだった。
「ポセイダルの求心力は明らかに低下している」
「反乱を企てられるということ自体がそうだな」
「その証明だな」
 二人もこのことはよくわかったのだった。
「だが。それ以上にだな」
「あのギワザという男」
 次はだ。彼について考えられていく。答えはすぐに出た。
「切れ者なのは確かだがな」
「人望はないな」
 このことをだ。見抜いたのだ。
「器は小さいな」
「そうだな」
「では、だ」
「大した敵ではないな」
「この数がその証だ」
 ブンドルは周りのヘビーメタル達を見て言う。確かにその数は彼らがこれまで戦ってきた中ではごく少数の規模でしかなかった。
 それを見てだ。彼はまた言うのだった。
「器にはそれだけの水しか入らないものだ」
「そういうことだな」
「それではだ」
「この戦いは楽に勝てる」
 ブンドルは素っ気無く言った。
「どうということはない」
「そしてか」
「返す刀でポセイダルをだな」
「その通りだ。行くとしよう」
 こう話してであった。彼等は目の前の敵にだ。
「よし!」
「突撃を仕掛けよ!」
「あの戦艦を狙うのだ」
 こう言ってラムで前方にいる敵艦に突き進む。そうしてだった。
 ラムで一気に突き崩し真っ二つにしたのであった。
 戦いはロンド=ベル有利だった。しかしだ。
 ネイは果敢に戦う。一歩も退く素振りは見せない。
「まだまだ!」
「くっ!」
 ダバのエルガイムマークツーにビームを連射する。ダバはそれを何とかかわした。
「何て速さだ」
「ダバ、しかも」
 リリスが横から彼に言う。
「狙いがかなり」
「ああ、正確だな」
「腕、あげてるわよね」
 リリスはこのことを指摘した。
「間違いなく」
「そうだな。以前よりもな」
「もう戦いは決着がついてるのに」
 既にその軍はかなり減っている。勝手に戦場を離脱する者も出ていた。
「ネイ様、申し訳ありません!」
「最早これ以上はです!」
「もちません!」
 こう言ってであった。次々に戦場を離脱していっていた。
 軍は崩壊していた。だがそれでもだった。ネイは残っていた。
「ネイ様がおられるなら」
「我等もだ!」
 アントンとヘッケラーもだった。残っている。そのうえでネイと共に戦っているのだ。
「悪いね」
「いえ、ネイ様の為ならです」
「例え何処であろうとも」
 彼等はネイへのその絶対の忠誠を見せるのだった。
「残りそしてです」
「戦います」
「私もね」
 そしてそれはネイもであった。
「ギワザ様の為ならね」
「はい、戦いましょう」
「まだ」
「まだ戦うつもりかよ」
 キャオはそんな彼等を見て呆れた言葉を出した。
「何て奴等だ」
「けれどキャオ」
「これはまずいぞ」
 アムとレッシィがそのキャオに言ってきた。
「あの三人、何とかしないと」
「先に進めないのだが」
「いや、それには及ばん」
 しかしだ。ここでギャブレーが言うのだった。
「全くだ。及ばん」
「ギャブレー、それはどうしてなんだ?」
「知れたこと。エネルギーも弾薬もなくなる」
 彼はこうダバの問いに返した。
「そうなればオージェといえどだ」
「そうか、そうだったな」
 ダバも言われてそれに気付いた。
「どんなマシンもエネルギーがなくなれば」
「これでわかったな」
「ああ、よくわかった」
「ではだ」
「エネルギー切れまでやらせるか」
「ここは」
 こうしてだった。ネイにはとにかく攻撃させた。ダバはそれを避けるのだった。
 避けるだけでもだ。それは至難の技だった。
「流石だな」
「そうね」
 リリスがダバに言う。
「もうかなりね」
「辛いものがあるな」
 こう言いながらだった。かわすので必死だった。
「流石にネイが相手だとな」
「うん、けれどね」
「かわすだけなら」
 できるというのだった。
「やってみせる」
「一発でも当たったらまずいけれどね」
 それでもだった。ダバはネイの攻撃をかわし続けた。そしてだった。
 遂にだ。ネイのオージェで異変が起こったのだった。
「ちっ、もうエネルギーがないね」
「ではネイ様」
「これで」
「仕方ないね」
 忌々しげな口調だがヘッケラーとアントンに答えた。
「退くよ」
「はい、それでは」
「今より」
「残ってる奴等にも伝えるんだよ」
 こう言うのも忘れなかった。
「いいね」
「はい、既にです」
「退かせています」
 二人はこうネイに答えた。
「では」
「これで我等も」
「撤退するよ」
 こうしてだった。彼等も戦場から離脱しようとする。しかしであった。
「今だな」
「攻撃?」
「ここでするんだね」
「戦術で最も難しいのは撤退だ」
 ギャブレーはアムとレッシィにこう話した。
「だからだ。今こそだ」
「ネイ達を捕まえる」
「そういうことだね」
「あの女を捕虜にできれば大きい」
 ギャブレーもまたネイの実力はよくわかっているのである。
「パイロットとしてだけでなく戦術指揮官としてもね」
「そうね。それじゃあ」
「今こそね」
「ダバ、まだいけるか」
 ギャブレーはここでダバに対して問うた。
「ネイのオージェだ。捕らえられるか」
「やってみる」
 これがダバの返答だった。
「とりあえずは」
「私も行こう」
 ギャブレーも自らのアシュラテンプルを出した。
「後の二人も厄介だしな」
「そうね。ここはね」
「私達もだな」
 アムとレッシィも出る。そうしてだった。
 彼等は一気にネイ達を囲もうとする。そうしてだった。
 一気に取り囲む。そのうえで言うのだった。
「ネイ=モー=ハン、降伏するんだ!」
「降伏!?この私がかい」
「そうだ」
 ダバはこうネイに告げるのだった。
「もう囲まれている。無駄な抵抗をしても」
「ふん、ふざけるんじゃないよ」
 ネイはきつい顔でダバに返す。
「私を誰だと思ってるんだい」
「何っ!?」
「ネイ=モー=ハンだよ」
 これが彼女の返答だった。
「降伏なんてするものか」
「それが御前の考えか」
「ああ、そうさ」
 その通りだというのである。
「そうじゃないって言えば嘘になるね」
「そうなのか」
「それでもね」
「完全に包囲はした」
 アムとギャブレーがネイに対して言う。
「あんたもう終わりよ」
「それでは撃墜するだけだ」
「撃墜される位ならしてやるよ」
 包囲されてもだ。やはりネイは強気だった。
「さあ、どいつから死にたいんだい?」
「流石だな」
 これにはレッシィも関心するしかなかった。思わず言ったのだった。
「この状況でこう言うとはな」
「けれどレッシィ」
 キーンがそのレッシィに対して言う。
「このままじゃ何にもならないわよ」
「そうだ。降伏しないというならだ」
 ニーはこの場合採られる対策を述べた。
「撃墜するだけだ」
「そのうえで生きてたら捕虜にだな」
 トッドはクールに述べた。
「まあ生き残るさ、普通にな」
「それならだ」 
 ショウも前に出る。
「ここは一気に」
「いや、皆待ってくれ」
 しかしだった。ここでダバが言うのだった。
「ネイ、どうしても降伏しないんだな」
「そうさ」
 その通りだとだ。はっきりと返すネイだった。
「何度も言うよ」
「そうか、わかった」
「わかったならどうするんだい?」
「帰るといい」
 何とだ。ダバはこうネイに対して言うのだった。
「ギワザのところにな。そしてまた会おう」
「っておい」
「敵をか!?」
「敵を返すのか!?」
「ここで」
「ここで撃墜するのが妥当だけれど」
 驚く仲間達にだ。ダバはまずこう言った。
「けれど。それよりも今は」
「こいつとこのまま戦っても下手に暴れるだけだしな」
「損害でかくなるよな」
「ああ、エネルギー切れでも鎌振り回されたらやばいしな」
「そういうことか」
「あっ、ちょっと違うんだ」
 ダバはそれは否定した。
「つまり。俺は」
「あたしの時と同じだね」
 ここで言ったのはレッシィだった。
「つまり。そういうことだね」
「うん、それでいきたいんだ」
 ダバはそのレッシィに対して答えた。
「どうかな、それで」
「やばいと思うけれどね」
 まずはこう返すレッシィだった。
「こいつは虎みたいなものだよ。倒せる時に倒さないとね」
「けれど無理矢理捕虜にしても何か」
 よくないというのである。
「責任は俺が持つ。今度戦場で会ったら俺が相手をする」
「言うねえ」
「そう来たのね」
 ここで功を奏したのはダバの人徳だった。仲間達の彼への信頼だった。
「じゃあ乗った」
「あんたのその考えにな」
「それでいくからね」
「そういうことでな」
「皆、有り難う」
 ダバも彼等に対して礼を述べた。
「それじゃあネイ達は」
「ああ、次に会った時はな」
「宜しく頼むわよ」
「任せたからな」
「わかってるさ。じゃあネイ」
 あらためてネイに顔を向けてだ。そして言うのだった。
「ここは帰るといいよ」
「逃がすっていうのかい」
「ああ、そうなるな」
 それを否定しないダバだった。
「それじゃあ」
「礼は言わないよ」
 ネイは傲然としてダバに返した。
「それは言っておくよ」
「それでいいさ」
 それに構わないダバだった。
「けれどまた会った時は」
「ふん、絶対に殺してやるからね」
 敵意を露わにしてだった。ダバに告げた。そうしてであった。
 ネイ達は戦場を離脱したのだった。誰もそれを追わなかった。
 そのうえでだ。ロンド=ベルは一旦集結しそのうえで先に進むのだった。
 その中でだ。リリスがダバに言ってきた。
「ねえ、ダバ」
「次の戦いのことだよな」
「うん、絶対にね」
 まずはこう言うリリスだった。
「出て来るから、ネイが」
「間違いないね」
 それはわかっているダバだった。
「先陣を切ってやって来るだろうな」
「それでもいいのね」
「わかってのことだから」
 だからだというのである。
「それは」
「そう。それならいいけれど」
「それでだけれどよ」
 ここでキャオが言う。
「連中そろそろ主力出してくるよな」
「ああ、そうだよな」
「そろそろだな」
 キャオの言葉にキースとビルギットが応えた。
「奴等も負ける訳にはいかないからな」
「そうだよな」
「じゃあそろそろ決戦か?」
 今言ったのはアルフレドだ。
「腕が鳴るな」
「小悪党だけれどな、相手は」
 今言ったのはディアッカだった。
「ただ。そこそこ強かったからな」
「あっ、そういえば私達って」
「そうよね」
 フィリスとエルフィがあることに気付いた。
「ポセイダル軍とは殆ど」
「戦ってないし」
「今こうして激しく戦ってますけれど」
「十三人衆とここまで戦うのは」
 シホとジャックも話す。
「ありませんでしたし」
「ギワザって奴もあまり知らないし」
「しかしそれでもだ」
 イザークは目をきつくさせて話す。
「ヘビーメタルのことはおおよそわかった」
「それはそうですね」
 ニコルはイザークのその言葉に頷く。
「確かに」
「まあそんなに無闇に怖がる必要はないな」
「それはしなくていい」
 ハイネがミゲルに話す。
「しかしだ」
「油断はか」
「へっ、相手が誰だろうとな」
 シンはいつも通りだった。
「一気に叩き潰すだけだぜ」
「なあ、こいつってな」
「そうだよね。俺達もだけれど」
「確か士官だよね」
 そんなシンを見てビーチェとモンド、イーノが話す。
「それでこんなに作戦立案能力ないのってな」
「相手のことを全然調べない感じだし」
「いいのかな、こんなので」
「パイロット以前にね」
「無茶苦茶やるしね、いつも」
 ルーとエルも呆れている。
「突き進むだけだし」
「困った話よね」
「ああ、こいつ実技だけだから」
 ルナマリアも言う。
「学校の成績は酷いのよ」
「それでアカデミートップか?」
 ジュドーはこの現実に首を傾げさせた。
「それもかなり凄い話だな」
「お兄ちゃんも似たようなものじゃない」
 リィナが兄に突っ込みを入れる。
「この前のテストの補習は?」
「再テストになったよ」
「それじゃあ全然同じじゃない」
「気にするな、それは」
「それでだが」
 今度はレイが言う。
「次の戦いだが」
「ああ、それな」
「それだよな」
 シンとジュドーがレイの言葉に返す。
「やっぱりあの金色が出て来るよな」
「間違いなくな」
「いや」
 だが、だった。ここでレイは言うのだった。
「若しかしたら違うかもな」
「違う?」
「違うって?」
「そのギワザという男だ」
 レイはダバに対して問うていた。
「確か猜疑心が深い男だったな」
「ああ、その通りだ」
 こう答えるダバだった。
「それはな」
「それならだ」
「それなら?」
「あの女はもう前線には出ないかもな」
 こう言うのであった。
「二度とな」
「っていうと」
「粛清?」
「それ?」
「そう、それだ」
 こう話す皆にも話すのだった。
「敵に囲まれてそれで逃がされたのだ」
「敵に寝返ったと考えて」
「それでか」
「ああ、そういえば」
 ここで言ったのはコウだった。
「そんな作戦もあったよな」
「あれっ、心当たりあるのね」
 ダイアンがそのコウに問い返す。
「ひょっとして」
「ダイアンさんもそうじゃないかな」
 こう返すコウだった。
「それは」
「ああ、銀河とか英雄とかの世界ね」
「そっちの世界の話でさ」
「おい、ここでその話か」
 二人に突っ込みを入れたのは鉄也だった。
「心当たりがあるから止めておけ」
「その通りだな」
 何故か大文字も出て来た。
「ううむ。私もその記憶があるがな」
「だからそれは言わないでおくことだ」
 今言ったのはジェリドだった。
「さもないと洒落にならないぞ」
「そうだな。まああの金色の女は確かにやばいな」
 カイも言う。
「ギワザってのが疑い深い奴だとな」
「それはそれで好都合じゃないのか?」
 今言ったのはトッドだった。
「敵同士殺し合ってくれるんならな」
「そうよね。あまり奇麗な話じゃないけれど」
「敵同士戦ってくれるのならね」
「いいのね」
「それで」
 皆それに納得しかける。しかしだった。
 ダバはだ。難しい顔になっていた。そのうえで言うのだった。
「ううん、どうもそういうのは」
「いい話じゃない」
「敵同士が争うって」
「この場合はね」
「いい流れじゃない」
「いや、それはどうも」
 そうではないとだ。ダバは言うのだった。
「ネイがそれによって疑われて死ぬのなら」
「それか」
「そのことなのね」
「ああ、どうもな」
 彼が気にかけているのはこのことだった。
「それがどうしても」
「ううん、けれどそれもよ」
 キャオがまたダバに言う。
「仕方ねえだろ。ギワザの奴がそういう奴なんだからな」
「けれど」
「気にするなって」
 こう言ってダバをフォローする彼だった。
「気にしても仕方ねえぞ」
「そういうものかな」
「そうさ。まあとにかくな」
「ああ」
「行こうぜ」
 ここではダバを引っ張った。
「次の戦いにな」
「わかったよ、キャオ」
 ここでは彼の言葉に頷くダバだった。そのうえで戦いに向かうのだった。
 そしてだった。レイの予想は当たった。基地に戻ったネイはだ。すぐに取り囲まれたのだった。
「!?何だこれは」
「一体」
 まずはヘッケラーとアントンが声をあげる。
「どういうことだ」
「何のつもりだ」
「残念なのだが」
 マクトミンが三人に対して言う。彼が銃を向けている兵士達を率いているのだ。
「君達に少し聞きたいことができたのだよ」
「聞きたいこと!?」
「何だそれは」
「とぼけるつもりか」
 ここでだ。ギワザが出て来た。後ろには他の十三人衆が連なって控えている。
「御前達は寝返ったな」
「寝返った!?」
「ギワザ様、どうしてその様なことを」
「まだ言うか」
 ギワザの言葉は冷たかった。
「貴様等はロンド=ベルに包囲されたな」
「それはそうですが」
「しかしです」
「何故あそこで捕虜にされなかった」
 ギワザが言うのはこのことだった。
「それは内通していたからだな」
「馬鹿な、そんな」
 ネイが声をあげた。
「ギワザ様、我々は」
「言い訳無用!」
 ギワザはネイに対しても告げた。
「騙されはせぬ。今よりだ」
「今より」
「まさか」
「貴様等三人を処刑する」
 こう彼等に告げたギワザだった。
「敵に内通した罪だ、覚悟しろ」
「馬鹿な、これは」
 ネイもこの展開には呆然となった。だが銃口は明らかに彼女に向けられていた。絶体絶命の危機に陥っていることは間違いなかった。


第七十話   完


                                     2010・10・29 

 

第七十一話 内紛

              第七十一話 内紛
「貴様等三人を今この場で銃殺にする」
 ギワザがまた言った。
「よいな」
「はい」
 マクトミンはいぶかしみながらもギワザの言葉に答えた。
「ただ」
「ただ。何だ」
「一度調べられては」
 このことも言うのを忘れなかった。
「そうされては」
「この者達が白かどうかか」
「はい」
 言うのはこのことだった。彼はネイが裏切ったとは考えていないのだ。
「それはどうでしょうか」
「その必要はない」
 しかしギワザの返答は変わらない。
「この者達は間違いない」
「裏切ったというのですね」
「そして平然と我等の中に入りだ」
 ギワザはその言葉を続ける。
「中から食い荒らすつもりなのだ」
「馬鹿な、そんな」
 ネイがそれを必死に否定する。
「私はギワザ様の為に」
「黙れ!」
 だが、だった。ギワザはネイの言葉を否定した。
「そんな筈があるものか!」
「何故その様なことを」
「何度も言う。何故包囲されて逃がされた」
「ですからそれは」
「それこそが裏切りの証!」
 ギワザはそう決めつけていた。
「ネイ!貴様を今ここで処刑する!」
「うう・・・・・・」
「ネイ様、ここは」
「止むを得ません」
 アントンとヘッケラーがネイに言ってきた。
「一時ここからです」
「去りましょう」
「ギワザ・・・・・・」
 だが、だった。ネイは今明らかに怒っていた。信じていた、愛していた者に信じてもらえなかった怒りがだ。彼女を覆っていた。
 それでだった。すぐに銃を抜いたのだ。
「最早こうなれば!」
「何をする!」
「殺してやる!」
 怒りに燃えた目での言葉だった。
「ここで!このあたしが!」
「いかん!」
「ネイ様、いけません!」
 アントンとヘッケラーがここで動いた。
 彼等は銃を抜いてだ。それを乱射した。
「うわっ!」
「なっ!」
 それで何人から傷ついた。それからだった。
 アントンがだ。懐に手を入れてだ。
 何か四角いものを出してそれを床に投げ付けた。それで煙幕を張ったのだった。
「去りましょう!」
「ここは!」
「ギワザ!ギワザ!」
 だが、だった。ネイは完全に我を失っていた。
 あくまでギワザを殺そうとする。その彼女にだった。
 ヘッケラーがそっと近付きだった。当身を浴びせた。
「うっ・・・・・・」
「申し訳ありません」
「ではヘッケラー」
「うむ」
 アントンの言葉に応える。そしてだった。
 彼女を担いでだ。その場を逃げ出したのだった。
 煙幕が消えた時三人の姿はなかった。ギワザは右手を負傷していた。
 傷口を左手で押さえながらだ。彼は言った。
「追え!」
「は、はい!」
「それではすぐに」
「殺せ!見つけ次第殺せ!」
 傷が彼の怒りを増幅させていた。
「いいな、すぐにだ!」
「わかりました」
「それでは」
「御前達も行くのだ」
 十三人衆にも命じた。
「そして殺せ。いいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はネイ達を追う。その中にはマクトミンもいる。
 彼だけはいぶかしむ顔だった。だがそれでも追っ手に加わるのだった。
 ネイ達は何とか格納庫まで来た。そしてだった。
「行くぞ」
「うむ」
 アントンとヘッケラーが頷き合う。彼等はまずオージェの中にネイを入れた。
 そして自動操縦にしてからだ。二人もそれぞれの機体に乗り込む。
 それから入り口をパワーランチャーで吹き飛ばしてだ。外に出たのであった。
「まさかこうなるとはな」
「無惨な話だ」
 こう言いながらも逃げていく。彼等はまずは生き長らえた。
 その頃ロンド=ベルはギワザの本拠地に向かっていた。その中でだ。
「あれっ」
「どうしたの?」
 タリアがメイリンに問うた。
「何か見つけたの?」
「前方から何か来ます」
 メイリンはこう報告するのだった。
「三機です」
「三機だけなの」
「はい、三機だけです」
 それだけだというのだ。
「それだけです」
「敵かしら」
「偵察部隊ですかね」
 アーサーがここで言う。
「それですかね」
「偵察部隊ね」
「その可能性もありますけれど」
「そうね。けれど多分違うわ」
 タリアは首を少し傾げさせながら述べた。
「あれはね」
「違いますか」
「偵察部隊にしては」
 タリアはモニターに映るその三機の駒を見ながら述べる。
「一直線よね」
「そういえば」
「突撃して来るみたいにね」
「突撃って」
「そうでしょ?凄く速いでしょ」
「はい、確かに」
「どう見ても偵察のそれじゃないわ」
 こう言うタリアだった。
「あれはね」
「じゃあ何でしょうか」
「多分」
「多分?」
「逃げてるわね」
 目を鋭くさせての言葉だった。
「あれはね」
「逃げてるんですか」
「そう思うわ」
「じゃあ脱走兵ですか?」
 メイリンが言った。
「あの三機は」
「そうみたいね。それでメイリン」
「はい」
「どのマシンかわかるかしら」
 こうメイリンに言うのだった。
「そろそろ」
「はい、ちょっと待って下さい」
 まずはこう返すメイリンだった。
「今調べます」
「ええ、御願いね」
「ただの兵士ですかね」
 アーサーは首を捻りながら言った。
「それで戦局がまずいからとか」
「ううん、それで私達に投降かしら」
「そうじゃないですかね」
「そうね。多分そうね」
 タリアも今はその考えになった。
「即断はできないけれどね」
「ええ、じゃあ捕虜にして」
「後で後方に移送ね」
「レジスタンスの人達に連絡もしないといけませんね」
「それは後でね」
 こんな話もした。そしてであった。
 映像が出た。それを見てだった。皆驚いた。
「えっ、あれって」
「オージェ!?」
「しかもあの二機は」
 その左右の二機も見られた」
「バッシュだけれど」
「ってことは」
「あの三機は」
「間違いありません」
 ダバも強い顔で言う。
「あれはネイです」
「それにアントンとヘッケラー」
「そうだな」
 アムとレッシィも言う。
「あの三人よね」
「どういうことだ、一体」
「まさかと思うけれど」
 タリアは今は眉を顰めさせていた。
「彼等が脱走したのかしら」
「あの、普通の兵士じゃなくてですよね」
 アーサーも今は呆然となっている。
「あの三人がって」
「一体何があったのかしら」
「わかりません。ただ」
 ダバがタリアに対して言う。
「これは只事ではありません」
「そうね、十三人衆の中でとんでもないことが起こってるわね」
「だとしたらそれは」
「レーダーに反応多数!」
 メイリンが叫ぶようにして報告する。
「三機の後ろから来ます!」
「追っ手!?」
「まさか」
 そのまさかだった。大軍がだ。三機の後ろに出て来たのだ。
「速い!」
「じゃあやっぱり」
「あれは追っ手か」
 その通りだった。チャイが先頭に立ち己が率いる軍に対して言っていた。
「いいか、三機共だ」
「撃墜ですね」
「そうですね」
「そうだ、そうしろ」
 こう命じるのである。
「いいな」
「はい、それでは」
「照準に入り次第ですね」
「撃て」
 チャイはまた命じた。
「わかったな」
「しかしだ」
 そのチャイにだ。ワザンが言ってきた。
「あの三人、特にネイがだ」
「何が言いたい」
「裏切ったのか」
 彼もまたそのことが信じられないのだった。
「やはりここは」
「ギワザ様の御言葉を疑うのか」
 チャイはここではギワザをバックにして言った。
「そうするというのか」
「いや、そうではない」
 ワザンはそれは否定した。
「では、か」
「そうだ。殺す」
 チャイは鋭い顔になって言い切った。
「そして私はこの戦いの後でさらにだ」
「ではだ」
 ワザンの方からの言葉だった。
「ネイ達はだ」
「裏切り者は殺す」
 あえてこう言うチャイだった。
「裏切り者はな」
「それだけか」
「ネイ達は裏切り者だ」
 チャイもおおよそ察していたがそれでもこう言うのだった。
「だからだ」
「そうか」
「ワザン、あんたはどうなんだい?」
 リィリィがワザンに問い返す。
「その辺りは」
「私か」
「そうさ、あんたはどうなんだい?」
 また問う彼女だった。
「そこは」
「私はだ」
「戦うだけかい?」
「そうだ」
「ふうん、そうかい」
「軍人は与えられた任務を全うする」
 ワザンの言葉は味気ないものだった。
「それだけだ」
「ふうん、よくわかったよ」
 あえて深くは問わないリィリィだった。
「その辺りはね」
「そうなのか」
「テッドもだね」
「・・・・・・・・・」
 だがテッドは答えないのだった。無言で頷くだけだった。だがリィリィはそれをよしとした。
「わかったよ」
「それにしてもだ」
 リョクレイも言う。
「クワサンは今どうしているのだろうな」
「さてね」
 リィリィは彼女には無関心であった。
「あんな奴のことはどうでもいいさ」
「そう言うのだな」
「だってそうだろ?あれはポセイダルの手駒だっただろ」
「そうだ」
 それはリョクレイも否定しない。
「その通りだ」
「ならもうどうでもいいさ。あたし達にはね」
「その通り」
 無論マクトミンもいた。
「我々はただ戦うのみだ」
「あんたが言うと何か不気味だね」
「そうかな?ふふふ」
「ほら、やっぱり不気味だよ」
「私は楽しんでいるのだよ」
 自分ではこう言う彼だった。
「それだけだよ」
「だといいんだけれどね」
「さて、ネイ=モー=ハンの向こうにロンド=ベルがいる」
「倒すだけだ!」
 チャイが叫ぶ。
「あの連中への雪辱を果たしだ」
「立身出世かね?」
 マクトミンはチャイにはいささか冷淡であった。
「そう言うのかね?貴殿は」
「何か問題があるか」
「いや」
「ないな」
「貴殿がそれを望むなら望むといい」 
 マクトミンはそれには興味がないようであった。
「好きなだけな」
「十三人衆に止まらぬ」
 チャイの野心はそれよりも上だというのだ。
「やがて。ペンタゴナ軍の総司令官か首相にだ」
「まあ頑張るのだな」
「好きなだけね」
 リィリィも言う。その間にだった。
 十三人衆率いる反乱軍はネイ達に迫る。それを見てだった。
 まずダバが出撃しようとする。
「お、おいダバ!」
「まだ出撃命令は!」
「けれど。どちらにしろ」
「まあそうだけれどな」
「十三人衆次は私達に来るけれど」
 キャオとアムはダバを止めながらも彼の言葉に頷く。
「ネイ達を倒したらな」
「すぐにでもね」
「それに」
 ダバは今は前を見据えていた。そのうえでの言葉だった。
「ここでネイ達を見過ごすことは」
「できない」
「そう言うのね」
「それに俺のせいでああしたことになったとしたら」
 責任感も見せる彼だった。
「余計に」
「わかったぜ、それじゃあな」
「行きなさいよ」
 ここで二人はそのダバから手を離したのだった。そのうえで言うのだった。
「戦いの後の修理は任せな」
「私も出撃するからね」
「あのですね」
 ここでベンが彼等の前に出て来て告げる。
「もう三十秒待って頂ければです」
「そうしたら一体」
「どうなるの?」
「出撃命令が出ます」
 こうダバとリリスに答えるベンだった。
「ほら、もう」
「あっ、確かに」
「今」
「総員いい?」
 ミサトの声が全員に伝わる。
「あの人達、あのままじゃ駄目よね」
「ああ、そうだ!」
「その通りよ!」
 誰もが彼女のその言葉に頷く。
「一気に出てそれで」
「あんな奴等蹴散らしてよ!」
「義を見てせざるは勇なしなり」
 京四郎はこう言ってからニヒルに笑う。
「俺も変わったかな」
「しかもあの連中絶対に私達のところにも来るから」
 ミサトはこの現実も話した。
「だから余計にね」
「はい、やりましょう」
「ここは」
「じゃあ総員いいわね」
 あらためて言う彼女だった。
「出撃よ」
「了解!」
「それじゃあ!」
「今から!」
「こういうことです」
 ここでダバにまた言うベンだった。
「では。それでは」
「曹長、すいません」
「何、軍規を守っただけです」
 ベンは穏やかに笑ってこう言うだけだった。
「それでは今から」
「はい、行って来ます」
「ダバ」
 その彼にだ。クワサンも声をかけてきたのだった。
「それじゃあね」
「ああ、オリビー」
 ダバも微笑んで彼女に応える。
「言って来るよ」
「ええ」
 彼を見送ってだった。クワサンも微笑むのだった。
 こうして全員出撃する。そうしてだった。
 レッシィとギャブレーがネイ達に通信を入れた。
「おい、ネイ」
「ここはだ」
 まずはこう声をかけるのだった。それからだった。
「いいね」
「共闘だ」
「ふん、よく言うね」
 だが彼女の言葉はきついものだった。
「誰のせいでこうなったと思ってるんだい」
「済まない」
 その言葉にはダバが応えた。
「まさかこうなるとは」
「悪いって認めるのかい?」
「それで許されると思っちゃいない」
 こうも言うダバだった。
「しかしそれでも」
「ふうん、そう思ってるんだね」
「ああ、そうだ」
 率直に答えたダバだった。
「そして今は」
「わかったよ」
 不意に出た言葉だった。
「それじゃあね」
「何っ、それは」
「どういうことよ」
 ギャブレーとアムがネイの今の言葉に問う。
「意味がわからないが」
「あんた何が言いたいのよ」
「アントン、ヘッケラー」
 だがネイは二人の言葉に今は答えずにだった。
 二人に声をかけてだ。そのうえでだった。
「ここはだ」
「はい、わかりました」
「そうされるのですね」
「追っ手の奴等を返り討ちにするよ」
 こう二人に告げた。
「いいね、それで」
「わかりました」
「それでは」
 二人も彼女の言葉に頷く。そうしてだった。
 三人で小隊になりだ。そのうえで陣を組んだ。
「さあ来い!」
「我等とてただやられるつもりはない!」
 アントンとヘッケラーが言う。
「ここで一機でもだ」
「多く撃墜してみせよう」
「素晴しい」
 カラスはその彼等を見て感嘆の言葉を漏らした。
「ああするべきですね、まことに」
「そうなんですか、先生」
「そうですよ、トビア君」
 こうトビアに対しても話す彼だった。
「人は最後まで諦めてはいけません」
「あえて戦うこともですね」
「はい、必要なのです」
 そうだというのである。
「それが優れた者の証の一つなのです」
「最後まで諦めない」
「最後の最後までです」
 こうも話す彼だった。
「そうあるべきなのです」
「そうなんですね」
「はい」
 またトビアに話す。
「トビア君もですよ」
「最後の最後まで戦う」
「決して諦めてはいけません」
「わかりました。それなら」
「どうも私もここに来て考えが変わりましたが」
 それは認めるカラスだった。
「しかし。諦めないというのはです」
「変わらないか」
「それはか」
「どうしてもです。変わりませんね」
 ザビーネとドレルにも答える彼だった。三人が乗るその戦艦の中でもだ。
「ではここはです」
「攻撃だな」
「射程に入れば」
「そうです。広範囲の攻撃でいきましょう」
 こうして彼等も攻撃を続ける。だが相手はだ。
 チャイはあくまでネイ達に固執していた。
「まだだ!狙え!」
「狙え?」
「ネイ=モー=ハン達をか」
「そうだ、あの女を粛清するのだ」
 あくまで彼女にこだわる彼だった。
「そうすれば私は」
「しかしだ。それはだ」
「今はそれよりもだ」
 ワザンとリョクレイがその彼に言う。
「ロンド=ベルだ」
「あの者達の相手をするべきだ」
「いや、まだだ」
「まだだというのか」
「しかしこの戦局は」
「ロンド=ベルなぞどうとでもなる」
 まだこう言うチャイだった。
「それよりも今は」
「こりゃ駄目だね」
 リィリィはもう匙を投げてしまっていた。
「ねえ、ネイ達はチャイに任せてさ」
「そうだな」
「我々はだ」
 ワザンとリョクレイはここで頷いた。そうしてだった。
 全軍でだ。ロンド=ベルに向かおうとする。チャイはその彼等に抗議しようとする。
「待て!何をするつもりだ!」
「そのままだよ」
 マクトミンがそのチャイに答える。
「今はロンド=ベルの相手が先決なのでね」
「しかし。それは」
「しかしも何もない。よく見るのだ」
 彼も今の事情はよくわかっているのだった。
「ネイ=モー=ハン達はどうとでもなるのだ」
「些細なことだというのだ」
「如何にも」
 そうだと言うのだった。
「我々は今はロンド=ベルを相手にするべきだ」
「いや、ここはだ」
「ならば貴殿だけでやるのだな」
 マクトミンは突き放しさえしてみせた。
「思う存分な」
「おのれ、あくまで私のやり方を否定するのか」
「そうだな。否定になるな」
 マクトミンも言う。
「それならだ」
「くっ、では私は」
「まだだ」
 まだ言う彼だった。
「私は。あの女を」
「それはいいがだ」
 マクトミンはまた彼に言う。
「貴殿一人でネイ=モー=ハンを倒せるのか」
「何っ!?」
「彼女をだ。それはどうなのだ」
「ふん、わかった」
 こう返すチャイだった。忌々しげな口調でだ。
「それではだ。今はな」
「そうするといい。貴殿では彼女の相手は無理だ」
「おのれ・・・・・・」
 チャイは歯噛みする。しかしだった。
 彼はマクトミンの言葉に頷くしかなかった。こうしてネイは今はとりあえず安心することができた。彼女への追っ手はロンド=ベルに向かったからだ。
 ロンド=ベルと彼等の戦いは激しいものになる。しかしだった。
 ここでだ。カラスが策を仕掛けた。
「さて、ここはです」
「どうするのだ」
「一体」
「横からですね」
 こうザビーネとドレルに話す。
「横から突き崩しましょう」
「敵の側面に軍を向けるか」
「そうするのだな」
「いえ、それはおそらく見破られてしまいます」
 そうではないというのである。
「ですからここは」
「一体どうするのだ」
「それで」
「まず敵を引き付けます」
 最初にそうするというのである。
「そしてです」
「我等の中央が退きか」
「そうしてか」
「はい、そうしてです」
 また言う彼だった。
「そのうえで、です。側面からです」
「攻撃を開始する」
「そうするのか」
「見たところ彼等の中で突出している軍があります」
 チャイの軍であった。彼はここでも功を焦っている。
「ですからここはです」
「あえて突っ込ませ陣を崩しか」
「そのうえでか」
「側面を攻撃しましょう」
 こう言うのだった。そしてだ。
 ザビーネとドレルもだ。暫し考えてからこう答えたのだった。
「そうだな、それがいい」
「今はな」
「賛成して頂けますね」
「うむ、それではだ」
「仕掛けるとしよう」
「はい、それでは」
 こうしてだった。彼等は一旦敵の攻撃に退いてみせた。中央がだ。
 それを見てだ。チャイが叫ぶ。
「攻めろ!今だ!」
「どう思う」
「そうだな。これはだ」
 だが、だった。ワザンとリョクレイは冷静である。それでだった。
「迂闊に動くべきではないな」
「そうだな」
「その通りだね」
 リィリィも二人のその言葉に頷く。
「ここは動いたら駄目だね」
「よし、それではだ」
「待つとしよう」
「チャイ=チャー」
 マクトミンも再びチャイに告げる。
「ここは動くべきではないな」
「またそう言うのか」
「死にたければ行くといい」
 これが彼への言葉だった。
「好きなだけな。骨は拾おう」
「くっ・・・・・・」
「さて、どうする」
 また彼に問う。
「ここは」
「・・・・・・わかった」
 ここでもだった。彼は頷くしかなかった。
「それではだ」
「今は重要な時かというとだ」
 マクトミンは戦術自体は冷静であった。
「そうではない」
「そうだな。今はな」
「まだ後がある」
「そういうことだ。今はそれ程焦ることはない」
 こう言ってだった。積極的な攻撃を止めたのだった。
 そのうえで次第に損害が増えていくのを見てだ。今度はワザンが言った。
「この辺りが限度か」
「そうだね」
 リィリィが応えた。
「ここはそうするべきだね」
「後詰はわしが引き受ける」
 そのワザンが申し出る。
「それでいいか」
「いやいや、ここは私が引き受けよう」
 しかしだった。マクトミンが申し出るのだった。
「ここはだ」
「そうするのか」
「そうだ。戦えるということは有り難いことだ」
 彼はそれを望んでいた。出世よりもだ。
「だからだ。それでいいか」
「どうしてもというのか」
「少なくとも貴殿に何かあっては困る」
 ワザンに対しては思いやりを見せていた。
「御子息のことがあるからな」
「だからか」
「だからだ。ここは任せてもらおう」
「わかった。それではだ」
 こうしてだった。マクトミンが後詰を引き受けたのだった。 
 ポセイダル軍は徐々に撤退していく。そうしてであった。
 彼等は戦場から離脱した。後には誰も残ってはいなかった。
 ネイは生きていた。無事生き残っていたのだ。
 その彼女にだ。ダバが声をかけた。
「ネイ」
「助けられたみたいだね」
 ネイはそのダバに対して言った。
「どうやらね」
「そうです、我々はです」
「彼等に助けられました」
 アントンとヘッケラーも言う。
「恩ができましたが」
「どうされますか」
「あたしは恩は忘れないさ」
 ネイも誇りがある。だからこそこう言うのだった。
「それにね。やっぱりね」
「ギワザですね」
「あの男に対して」
「そうさ、やってやるよ」
 これがネイの今の言葉だった。
「あいつはあたしのこの手でな」
「そうしてですか」
「だからですか」
「そうさ、そうしてやるよ」
「復讐か」
 ダバがネイの話をここまで聞いて呟いた。そうしてだった。
 彼はあらためてネイに声をかけた。
「それはいいがだ」
「何だい?」
「よかったら俺達と一緒に」
「戦えってのかい」
「行き場があればいいけれど」
「生憎だけれどないよ」
 口の端を少し歪めての返答だった。
「そんなのはね」
「じゃあ本当によかったら」
「ちょっと、ダバ」
「幾ら何でもこの女はだ」
 アムとレッシィがそのダバに言ってきた。
「私達を一番苦しめた相手じゃない」
「何をしてくるかわからないぞ」
「いや、それでも」
 だがここでもだった。ダバは言うのだった。
「俺はやっぱり」
「信じたいというのね」
「そう言うのか」
「そうなんだ。それでいいかな」
「ううん、そうね」
「ダバがこう言ったら引かないからな」
 二人もダバの性格はわかってきていた。ならばだった。
 それでだ。彼の考えに頷いたのだった。
「それならね」
「思う通りにするといい」
「そうだな。私も思うが」
 今度はギャブレーが言う。
「ネイは裏切りをする人間ではない」
「そう言うんだな、あんたは」
「そうだ。確かに敵としては手強い」
 キャオに対する言葉だった。
「だが。それでもだ」
「人間としてはなんだな」
「そこまで悪い人間ではない」
 そうだというのである。
「決してな」
「じゃあここは?」
「本人達さえよければ」
「そうよね」
「いつものパターンだけれど」
「そうなるよな」
「じゃあ」
 皆少し小声になってネイ達に尋ねる。
「あの、よかったら」
「本当にそちらがそうされるのならですけれど」
「どうですか?」
「私達と一緒に」
「ギワザに」
「そうだね」
 ネイは一呼吸おいてから答えた。
「それじゃあね」
「そうですね、我々もです」
「ネイ様がそうされるのならです」
 アントンとヘッケラーも言う。
「喜んでです」
「共に」
「そうかい、わかったよ」
 ネイも二人の言葉を受けてあらためて頷いた。そうしてであった。
 彼女もロンド=ベルに加わったのであった。アントンとヘッケラーもだ。
 それでだ。ネイはダバに言うのだった。
「まあ何だね」
「どうしたんだ?」
「いや、奇妙なことになったって思ってね」
 こう言うのである。
「どうもね」
「俺達と一緒に戦うことがか」
「そうだよ。前まで敵同士だったじゃないか」
 このことだった。話すのはだ。
「それがこうして。今はね」
「それは私もだが」
 ギャブレーも出て来た。
「何度ダバ達と戦ったか」
「あの時しつこかったな」
「そうですよねえ」
「何度も出て来た」
 リョーコとヒカル、イズミも話す。
「こいついい加減死ねって思ったよ」
「海水浴の時にばったり会ったりもしたし」
「色々あった」
「あの時は会いたくて会ったのではない」
 ギャブレーはバツの悪い顔で話した。
「全く。運命はわからないものだ」
「ギャブレーも悪い奴じゃなかったのがよかったな」
「全くだ」
 サブロウタとダイゴウジもいる。
「かなり抜けてるけれどな」
「しかし悪い奴ではない」
「これでもポセイダル軍では有望株だったのだぞ」
 ギャブレーの表情はそのままだ。
「十三人衆にも入ったしな」
「まあできることはできたね」
 ネイもそれは認める。
「確かにかなり間抜けだけれどね」
「だからそれは」
「しかしな。悪い奴じゃないのは確かだね」
「そう言ってくれると有り難いがな」
「そのあんたもとはね」
 ネイは今度はギャブレーを見て話す。
「全くね。どうだというんだよ」
「運命とはわからないものだな」
 ギャブレーは今度は考える顔になっている。
「場所を変えて貴女とまた戦友同士になるとはな」
「人間の運命とはだ」
「本当にわからないな」
 アントンとヘッケラーもこのことを実感していた。
「しかしギワザはだ」
「あそこまで猜疑心が深いとはな」
「そうだね」
 ネイはここでは曇った顔になった。
「あたしも見誤っていたよ」
「そのギワザさんですが」
 ここでテッサが出て来て言う。
「どうもかなり焦っておられますね」
「焦ってる?」
「そうなんだ」
「はい、焦っています」
 こう一同にも話すのである。
「それもかなりです」
「二個艦隊規模の戦力は既にあるが」
「それでもなのか?」
 アントンとヘッケラーは怪訝な顔でテッサに問い返した。
「戦力はさらに集まっていたが」
「それでも焦っているのか」
「おそらく戦力をさらに集めたいのでしょう」
 テッサはく予測するのだった。
「今以上にです」
「そしてですか」
「そうしてなのですか」
「とにかく戦力を集めようとです」
 テッサの話は続く。
「焦ってますね」
「その通りだよ」
 ここでまた言ってきたネイだった。
「あいつはとにかく戦力をかき集めてたよ」
「そういうことですね」
「ああ。けれど」
 ネイはテッサを見てだ。彼女に問うた。
「それがどう関係あるんだい?」
「戦局とですね」
「あいつの焦りがだね。関係あるのかい?」
「はい、あります」
 その通りだというテッサだった。
「その焦りが今隙を作らせています」
「隙を?」
「それが今?」
「できてるっていうんですか」
「そうです。基地の方で動きがありました」
 テッサは言った。
「どうやら全軍を挙げてです」
「俺達を潰しに来た!?」
「そうだってのかよ」
「そりゃまた速いな」
「っていうか基地で地の利を活かして戦わないのかよ」
「普通そうしない?」
 皆怪訝な顔で話す。
「やっぱり焦ってるのね」
「そういうことかあ」
「それで今こうして出て来た」
「つまりは」
「迎撃に出ます」
 また言う彼だった。
「よし、それじゃあ」
「今から攻めるか」
「出て来たところをね」
「はい、そうしましょう」
 実際にそうすると言うテッサだった。
 そしてだ。彼女はここでこうも話すのだった。
「そしてそのうえで」
「そのうえで?」
「何か仕掛けるんですか」
「ここは」
「そうすると」
「そうです。戦力の一部を敵の後方に回します」
 策だった。彼女は言うのだった。
「焦っている敵を引き受けそうしてですか」
「戦力の一部を後ろに回して」
「挟み撃ちですね」
「いえ、それよりもです」
 違うとだ。テッサは話すのだった。
「ここは敵のさらなる焦りを誘いたいです」
「沙羅に焦らせる?」
「そうするんですか」
「つまりは」
「はい、敵軍は浮き足だったところにです」
 また話す彼女だった。
「さらに攻めましょう」
「そうよね。それで戦いは終わるわね」
 小鳥も言った。
「十三人衆との戦いわね」
「そうだ。また一つ敵を倒せる」
 宗介も言う。
「だからだ。それでいくべきだな」
「はい。しかし」
 ここでまた言うテッサだった。今度は怪訝な顔になってだ。
「サードスターは動きませんね」
「そのフル=フラット?」
「何か独自の勢力になってるだっけ」
「確か」
「はい、そうです」
 またダバが仲間達に話す。
「彼女のことは俺もよく知らないですけれど」
「それでもなんだ」
「独自の勢力になって」
「そうしてなの」
「つまりは」
「はい、そうです」
 また話すダバだった。
「これまで動いたことはありません」
「けれどあれなんでしょ?」
 ミレーヌがダバに尋ねた。
「ポセイダルの派閥よね」
「それはその通りなのですが」
「動いたことないの」
「これまで一度も」
 またミレーヌに話すダバだった。
「ありません」
「ううん、何それ」
 今言ったのは小鳥だった。考える顔になっている。
「何かね。おかしくない?」
「予備戦力ではないでしょうか」
 テッサはこう考えたのだった。
「ここぞという時に投入する」
「そうでしょうか」
「その可能性もありますが」
 こうダバにも話すテッサだった。
「如何でしょうね」
「そうですね。その可能性はありますね」
 その通りだと返すダバだった。
「有り得ますね」
「若しくは完全に第三勢力となっているかですね」
「ああ、言っておくよ」
 テッサにだ。ネイが言ってきた。
「ギワザとフル=フラットは密約を結んでいたよ」
「えっ、じゃあやっぱり」
「完全に第三勢力になっていた?」
「それにポセイダルを裏切ってる」
「そうなるよな、やっぱり」
「そうよね」
 それぞれ話す。そうしてだった。
 ネイはここでまた話すのだった。
「ギワザは保険でポセイダルとあたし達との戦いの推移を見守るつもりだったんだろうね」
「そして勝った方につく?」
「つまりは」
「そう考えていた」
「そうよね」
「それだと」
「だろうね」
 ネイもそう考えるのだった。
「そう考えるのが妥当だね」
「じゃあやっぱり」
「フル=フラットは今は様子を見ている」
「動かない」
「そういうことか」
 皆それぞれフル=フラットのことを考えていく。そうしてだった。
 ここでだ。結論がダバから出た。
「とりあえずフル=フラットが動く前にです」
「まずはギワザを叩くか」
「ここで決着をつけるか」
「そうする?」
「やっぱり」
「はい、そうしましょう」
 また言うダバだった。
「ここは」
「ええ、それじゃあ今は」
「ギワザとの決戦に専念して」
「そうするか」
「そうよね」
「敵は一つずつ叩く」
 戦略の常識も述べられる。
「そういうことだよな」
「うん、じゃあ」
「ポセイダルを倒す前にもフル=フラットをどうかする前にも」
「まずギワザを」
 こうしてだった。彼等はギワザがいるその基地に向かうのだった。ここでもまた決戦が行われるのだった。新たな仲間達と共に。


第七十一話   完


                         2010・11・3  

 

第七十二話 潰える野心

             第七十二話 潰える野心
「何っ、ネイ達はか」
「申し訳ありません」
「残念ですが」
「くっ、何ということだ」
 歯噛みして呟くギワザだった。
「そしてロンド=ベルがか」
「あの三人と合流してそのうえで、です」
「この基地に迫ってきています」
「今もです」 
 そうだというのである。
「それでなのですが」
「ここは一体」
「どうされますか?」
「言うまでもない」
 ここでは冷静に答える彼だたt。
「ここは全軍を挙げてだ」
「迎撃ですね」
「そうされますね」
「そうだ、そうする」
 こう十三人衆の面々に答えるのだった。
「わかったな。それではだ」
「はい、それでは今より」
「出撃ですね」
「ロンド=ベルを倒せばだ」
 また言うギワザだった。
「後はポセイダルもだ」
「そうですね。ロンド=ベルのマシンを手に入れればです」
「その戦力でどんなこともできます」
 兵士達が言う。
「ではギワザ様、今より」
「総員でロンド=ベルを倒しましょう」
「無論私も出る」
 他ならぬギワザ自身もだというのだ。
「サージェ=オーパスの用意をしておけ」
「それでは」
「今より」
 こうしてだった。ギワザの軍は全軍でロンド=ベルの迎撃に向かう。しかしそれがテッサの読み通りとはわかっていなかったのだった。
 そしてだ。ロンド=ベルはだ。ギワザの軍のいる基地に向かっていたのだった。
 その中でだ。テッサが言う。
「おそらく敵はです」
「そうですね」 
 シーラが彼女の言葉に応える。
「全軍で基地を出てそうして」
「私達に向かっています」
「ではここは」
「精鋭部隊は分けましょう」
 テッサは言った。
「そして彼等が来て戦闘をはじめ」
「それからですね」
「彼等が私達に肉薄し総力戦を挑んだ時です」
 まさにその時だというのだ。
「その時にです」
「わかりました。それでは」
「今はこのまま向かいましょう」
 こうしてだった。彼等はそのまま戦いに向かう。そこでだった。
 彼等の仲間となったネイがだ。愛機のオージェを見て言うのだった。
「このオージェもね」
「はい」
「かなり変わりましたね」
「一気に改造がいったね」
 こうアントンとヘッケラーに話すのだった。
「最高段階までね」
「それは我々もです」
「同じです」
 こう言う二人だった。
「バッシュもアシュラテンプルもです」
「かなりの改造ができました」
「武器まで一気に最高段階にです」
「いきました」
「資金はあるんだね」
 こう話すネイだった。
「ロンド=ベルは」
「倒してる敵の数が違うからな」
 マリンがこう彼等に話す。
「それでだ。資金はかなりある」
「それでなのかい」
「何しろ敵の数がな」
「普通に二十万や三十万だからな」
「それだけ得られる資金は多くなる」
 闘志也にジュリイ、謙作も言う。
「敵の数は多いと大変だがな」
「それだけ得られるものも多い」
「それでだ」
「これだけの資金があるってんだね」
 ネイは彼等の話を聞いて納得した。
「そういうことだね」
「それに我等も入りか」
「そうしてだな」
「あとここにいれば撃墜数も洒落にならない位に増えるぜ」
 今言ったのはエイジだった。
「それも楽しみにしておけよ」
「まああたしはね」
 ネイはその撃墜数の話には笑って返す。
「これまでの戦いでかなりあるぜ」
「こちらもだ」
「同じくだ」
 アントンとヘッケラーもだというのだ。
「宇宙怪獣達とは常に戦ってきた」
「だからな」
「ああ、宇宙怪獣な」
 勝平がそれを聞いて言うのだった。
「あんた達も奴等と戦ってるんだな」
「宇宙怪獣はどんな奴とも敵か」
「そういうことなのね」
 宇宙太と恵子もいう。
「要するにだ」
「それで貴方達も」
「宇宙怪獣を放っておいたら洒落にならないからね」
 これがネイの言葉だった。
「だからだよ」
「どの国でもそれはか」
「変わらないか」
「絶対にか」
「どうしようもないか」
「それなら」
 こう話してだった。それでなのだった。
 宇宙怪獣についても考えるのだった。
「連中は放置しておいたら滅ぼされる」
「それでか」
「どうしてもか」
「戦わないといけないのか」
「それにね」
 ネイはさらに言うのだった。
「ガイゾックも来たことがあったしね」
「ガイゾック?」
「あれっ、ブッチャーってここにも来てたんだ」
「そうだったんだ」
「ブッチャー!?」
「誰だ、それは」
 アントンとヘッケラーはそれを聞いて首を傾げるのだった。
「聞いたことのない名前だが」
「何者だ、それは」
「あれっ、ガイゾックだろ?」
「それでブッチャーを知らないのか」
「どうしてなの?それは」
「そのことですが」
 ロゼが出て来て話す。
「実はガイゾックはそれぞれのバンドック単位で動いていまして」
「ああ、あの土偶の」
「あれ一隻ごとにか」
「動いてたんだ」
「じゃああの中の」
 ガイゾックについてだ。さらに話される。
「マザードールか」
「あれ単位で動いてたんだな」
「そういうことなんだ」
「そういうことか」
「はい、我々も彼等と交戦したことがあります」
 ロゼはこのことも話した。
「ガイゾックもまた放置してはおけませんし」
「連中ってそんなに多かったんだ」
「あれ単位で動いてたって」
「じゃああれ?宇宙怪獣とかと似たような存在?」
「そうよね」
「そうなるな」
 そうだとだ。マーグも話すのだった。
「あの時は特に何も思わなかったが」
「ううん、そういえばあの時な」
「そうだな」
「そんなこと言ってたわね」
 ザンボットチームの三人も考える顔で言う。
「あの連中ってそんな奴等だったんだな」
「最初は何かと思ったが」
「ああして。危険だとみなした文明を攻撃する為に宇宙を彷徨ってたのね」
「正直言ってね」
 ここで話す万丈だった。
「あの連中は自分だけの正義で動いてるだけだけれどね」
「それで勝手にその文明を悪とみなして」
「そのうえで攻撃する」
「そういう奴等だったんだ」
「成程ねえ」
「だから僕はあの時ああ言ったんだ」
 万丈はあの時のガイゾックとの最後の戦いのことを話した。
「間違っていなかったと思うけれどね」
「ああ、あの時はな」
「万丈さんの言う通りだったしな」
「あいつの言ったことはただの独善」
「そうでしかないよな」
「さて、それでだけれど」
 また言う万丈だった。
「ガイゾックはまだいるのかな」
「いや、もういない筈だよ」
「あの連中はな」
 ネイとマーグが話す。
「ガイゾックはもう全部やっつけちまったよ」
「バルマーにかなりの数が来てその時にな」
「ああ、やっぱり」
「バルマーも狙われてたんだ」
「成程なあ」
「そうだったのね」
「それは全て倒した」
 また話すマーグだった。
「だから安心していい」
「もうガイゾックは出ないか」
「そうよね」
「じゃあ安心か」
「ガイゾックは」
 こう話してだった。このことには安心した。そうしてだった。
 そのままギワザの軍に向かう。やがて。
「レーダーに反応です」
「正面からです」
「来ています」
 報告があがった。そしてだった。
 その正面にだ。彼等が姿を現したのだった。
「規模にして二個艦隊か」
「それだけいるよな」
「そうだな、二個艦隊ってところか」
「つまりは」
「あれで全軍だよ」
 ネイが言った。
「ギワザの軍のね」
「じゃあ伏兵はいないんだね」
 万丈がネイに問う。
「つまりは」
「ああ、そうさ」
「それじゃあこのまま?」
「戦えばいいか」
「そうなるよな」
 皆で話す。
「まずはあの連中を引き付けて」
「そうしてそれから」
「挟み撃ちね」
「そうなるな」
「それで御願いします」
 作戦を考えたテッサからも言ってきた。
「多分それでいけますから」
「そうだな」
 宗介がテッサのその言葉に頷く。そうしてだった。
 彼等はそのままだ。陣を敷きギワザの軍を迎え撃つのだった。
 そこにだ。ギワザ達が攻め寄せる。彼はだ。
「先陣はだ」
「はい」
「誰でしょうか」
「マフ=マクトミン」
 彼の名を呼ぶ。
「行くがいい」
「畏まりました」
 マクトミンはすぐにその言葉に頷いた。
 そして実際に先陣となる。その後ろからだ。
 主力部隊が来る。彼等はそのままロンド=ベルに向かう。
「来るか」
「いよいよだな」
 アントンとヘッケラーが言う。
「ギワザとの最後の戦いだな」
「ここでか」
「あいつはあたしが倒すよ」
 ネイは鋭い目で言った。
「いいね」
「はい、わかっております」
「それは」
 二人はネイのその言葉に頷いた。そしてだ。
 迫り来る彼等にだ。攻撃を仕掛ける。
「行けっ!」
「貴様等に怨みはないがな!」
 こうそれぞれ言いパワーランチャーを放ちだった。
 ヘビーメタル達を次々と倒す。戦いがはじまった。
 ギワザは戦端が開いたのを見てだ。また命じた。
「波状攻撃を仕掛けるのだ」
「それでなのですね」
「ここは」
「正面から奴等を潰す」 
 モニターで戦局を見ながらの言葉だ。
「そうするぞ」
「はい、わかりました」
「では今は」
「十三人衆それぞれの軍を次々とですね」
「奴等に当てる」
 まさにそうするというのである。
「いいな」
「了解!」
「それでは!」
「私も行く」
 ギワザ自身もだというのだ。
「サージェ=オーパスを前に出せ」
「いいのですか?敵は」
「かなりの強さですが」
「承知のうえだ」
 ギワザは落ち着いた声で言う。
「それにだ。この戦いはだ」
「決戦ですね」
「まさに」
「ロンド=ベルを倒さずしてポセイダルを倒せはしない」
 こうも言うのである。
「だからだ。いいな」
「はっ、それでは」
「この艦もまた」
 こうしてだった。ギワザ自ら前線に出る。彼等も必死だった。
 ギワザの軍は一気に攻める。それを受けてだ。
 テッサはすぐに指示を出した。
「それではです」
「一時退く」
「そうするのね」
「ここで」
「押されるようにです」
 その退き方も話すのだった。
「敵の攻撃を受けてそれが押されて」
「それで倒す」
「そうするというのですね」
「ここは」
「そうだ、それで倒す」
 こう話してだった。彼等は徐々に退くのだった。それはだ。
 まさに押されているように見えた。実際にチャイがそれを見て言う。
「いけるな」
「敵は我等の攻撃に押されている」
「そうですね」
「ここは」
「そうだ、勝てる」
 また言うチャイだった。
「今こそだ。総攻撃だ」
「ではギワザ様にすぐ」
「お伝えしましょう」
「それでいいな。それではだ」
 こうしてだった。彼等はすぐにギワザに伝えた。するとだ。
 ギワザはすぐに指示を出した。
「全軍ここが勝機だ」
「では、今こそですか」
「総攻撃ですね」
「そうされるのですね」
「そうだ、そうする」
 こう言ってであった。彼も総攻撃を決定した。
 全軍でロンド=ベルを押そうとする。勢いを得ていた。
 その勢いでロンド=ベルを潰そうとするがだった。
 彼等は受けていた。その勢いをだ。
「まだまだ!」
「負けるものか!」
 ジョナサンとシラーが剣から光を放ちそれで敵を貫く。
 そうしてだった。敵を防ぐのだった。
「よし、いい感じだな」
「そうだね。順調だね」
 二人で言う。
「奴等、いい具合に攻めてくれる」
「このままいけば」
「そろそろだな」
「そうだね」
 機が来ようとしているのを感じていた。そしてだった。
 ギワザの軍の勢いを完全に止めてしまった。
「くっ、何故だ!」
「どうしてこれ以上攻められん!」
「何という奴等だ」
「しぶといな」
「しかしだ」
 リョクレイがここで言う。
「このままいける。一点集中攻撃だ」
「そうしてですね」
「倒す」
「ロンド=ベルを」
「そうするのですね」
 こう話してだった。そしてだ。
 彼等はそのまま攻め続けるのだった。だがここでだ。
 彼等の後ろにだ。来たのであった。
「後方です!」
「後方に敵!」
「来ました!」
「何っ!?」
 それを聞いてだ。ギワザが驚きの声をあげた。
「馬鹿な、伏兵だというのか」
「どうやらその様です」
「まさかと思いましたが」
「間違いありません」
 部下達がそれぞれ報告する。
「ギワザ様、どうされますか」
「ここは」
「後方の敵は」
「止むを得ん」
 苦い顔での言葉だった。
「後方にも兵を向けよ」
「誰を向けますか、それで」
「ここは」
「一体誰を」
「ワザン=ルーンだ」
 彼だというのである。
「いいな、すぐに向かわせろ」
「はい、それでは」
「今すぐにワザン様を」
「後方に」
「まずは前の敵を倒してだ」
 ギワザは最低限の冷静さを保っていた。
「そして後方の敵だ」
「それをですね」
「一気に倒す」
「後で」
「そうする。いいな」
 こう話してであった。
 ワザンの軍を向けようとする。しかしだった。
「やらせるか!」
「そうよ、やっちゃえ!」
 ショウのビルバインがオーラ斬りを放つ。それで敵を数機まとめて真っ二つにする。
 そのうえでだ。さらに突き進むのだった。
「ここはだ!」
「そうね、どんどん倒してね」
「この戦いにも勝つ」
「そうしないとね」
 こうチャムと話してだった。
 ビルバインは突き進む。そしてだ。
 アムロも来た。フィンファンネルが放たれる。
「行けっ!」
 そのフィンファンネルでだ。ヘビーメタル達を撃墜していく。
 そうしてだ。彼もまた前に出るのだった。
「後ろを取った時点で決まっていた」
「そういうことだな」
 クワトロもいる。
「この戦い、我々の勝利だ」
「それならシャア」
 アムロは彼に対して言う。
「ここはだ」
「一気にやらせてもらう」
 彼のナイチンゲールもファンネルを放つ。それでだ。
 敵を小隊単位で撃墜する。そしてだった。
 そのうえでだ。彼は言うのだった。
「さて、それではだ」
「一気に進むか」
「君と同じだ」
 シャアもアムロに対して言う。
「この戦い、勝たせてもらう」
「そうするか」
 最早ロンド=ベルの勢いは止められなかった。そうしてだ。
 ギワザの軍は前と後ろから次々と倒されていく。前方のロンド=ベルの部隊も反撃に出た。そうしてそのうえでだった。
 ギワザの軍を倒す。一気にだった。
「ギワザ様、戦力がです」
「損害が五割を超えました」
「これ以上の損害はです」
「今後にも支障が」
「くっ、止むを得ん」
 ギワザは苦い顔で言った。
「ここはだ」
「どうされますか、ここは」
「まだ戦われますか」
「それとも
「一時撤退だ」
 そうするというのである。
「いいな、基地までだ」
「わかりました。それでは」
「ここはですね」
「撤退ですか」
「左翼が空いている」
 見ればだった。そこがだった。
 そこに入ってだ。撤退するというのである。
「いいな、そこから退くぞ」
「わかりました」
「では我々も」
「損害が七割に達しました」
 遂にだった。この報告がギワザをさらに焦らせた。
 そしてだった。遂にであった。
 撤退に入った。ギワザが真っ先にであった。
「急げ、いいな」
「は、はい」
「それでは」
「逃げ遅れた者は置いていけ」
 見捨てるというのである。
「いいな」
「は、はい」
「それでは」
「今すぐにですね」
「とにかく生き残る」
 自分自身への言葉だった。
「いいな、そうしろ」
「わかりました」
「では全軍にはそう伝えます」
「後詰はだ」
 それでもだった。それを命じるのは忘れなかった。
「誰がいる」
「それは私が務めましょう」
 マクトミンだった。
「戦えるならです」
「頼めるか」
「はい」
 微笑みと共の言葉だった。
「そうさせてもらいます」
「わかった。それではだ」
 ギワザもその言葉を受けた。そうしてだった。
 彼は真っ先に逃げようとする。しかしだ。
 その前にだ。エルガイムマークツーが来たのだった。
「何っ!?」
「ダバ、今よ!」
「わかってるさ」
 こうリリスに返すダバだった。
 そしてだ。すぐにバスターランチャーを構える。
 それを放つ。まさに一瞬だった。
 一条の光がギワザのサージェ=オーパスを貫いた。それで終わりだった。
 戦艦は炎に包まれだ。ギワザもだった。
「くっ、脱出を」
「む、無理です」
「最早それは」
「炎が各所に」
「馬鹿な、私が」
 ギワザは呆然としながら言う。
「私がここで。死ぬというのか・・・・・・」
「沈みます!」
「もう駄目です!」
 周りの断末魔の叫びが響く。そしてだ。
 ギワザは己の乗艦と共に消えた。それで全ては終わりだった。
 チャイ=チャーもだった。ネイのオージェのサイズを受けてだった。
「終わったね、チャイ=チャー!」
「お、おのれ・・・・・・」
 チャイは口から血を漏らしながら呻く。
「私が、こんなところで・・・・・・」
 だが彼もこれで終わりだった。炎に包まれ消え去った。
 ポセイダル軍の指揮はワザンが受け継いだ。彼はすぐに言った。
「最早これ以上の戦闘は無意味だ」
「それではだ」
「どうするというのだ」
 マクトミンとリョクレイが彼に問う。
「ここは」
「撤退もままならなくなったが」
「降伏する」
 これが彼の決断だった。
「最早だ。それしかあるまい」
「兵達を助けるにはか」
「それしかないか」
「これ以上の戦闘は無駄な犠牲を出すだけだ」
「確かに。それは」
「その通りだ」
 二人も頷く。そしてだ。
 リィリィとテッドもだ。頷くのだった。
「それじゃあね。それでいいよ」
「・・・・・・・・・」
「わかった。それではだ」
 こうしてだった。ワザンはロンド=ベルに降伏を打診した。するとだった。
 大河がそれを受けて言うのだった。
「それではだ」
「降伏を受諾しますか」
「うむ、そうする」
 こうスタリオンに答える。
「無駄な戦闘はしないに限る」
「そういうことですね。それでは」
「戦闘は終わりだ」
 また言う大河だった。
「十三人衆の軍は武装解除し受け入れる」
「わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。十三人衆の軍は降伏したのだった。そしてだ。
 まずはだ。戦死者が確認されたのだった。
「ギワザにチャイか」
「あの連中は死んで」
「他の十三人衆は生き残ったか」
「そうなのね」
「それでだけれど」
 さらに話されるのだった。
「生き残った面々は?」
「一体どうするの?」
「それで」
「兵士や下士官はそのまま郷里に帰ってもらうそうです」
 ダバが言ってきた。
「武装を全て解除したうえで」
「レジスタンスからはそう言ってきたのよ」
「それでだ」
 アムとレッシィも皆に話す。
「それでね。兵隊とかはね」
「帰ってもらうことになった」
「将校はどうなるんだ?」
 今問うたのはマサキだった。
「あの連中は放置か?」
「将校は武装解除までは同じだがな」
 ギャブレーが答える。
「だが。志願者は帰ってもらいだ」
「そうでない人間は」
「収容所?」
「そうなるの?」
「いや、そうした人間はいなかった」
 そうだというのだ。
「どうやらポセイダルへの不信は軍にも拡がっているようだ」
「だからギワザについた」
「それでか」
「そういうことなのね」
「その通りだ。今はだ」
 また言うギャブレーだった。
「最早ポセイダルの崩壊は近いな」
「成程ねえ」
「そうなるのか」
「もう」
「レジスタンスに加わりたいという者までいる」
 そうした人間もいるというのだ。
「どちらにしろ処罰される者はいない」
「それは何より」
「後は十三人衆だけれど」
「そっちは?」
「どうなるの?」
「リィリィは故郷に帰るってさ」
 アムが話す。
「軍を辞めてね」
「そうか、まずは一人か」
「退役ってことか」
「それは何よりだな」
「テッドもだ」
 今度はレッシィが話す。
「ワザン=ルーンと共にな。故郷に戻るそうだ」
「十三人衆ももう戦うことはないか」
「そういうことか」
「つまりは」
「それに」
 そしてだった。さらにであった。
 リョクレイがだ。ここで出て来たのだった。彼は言う。
「クワサン=オリビーはいるか」
「クワサン?」
「ここに?」
「そうだ。いるか」
 こう問うのである。
「ここに」
「いるが」
 ダバがいささか警戒する顔で彼に答えた。
「それでどうしたいんだ?」
「会いたい」
 こう答えるリョクレイだった。
「ここはな」
「会って何をするつもりなんだ?」
「そうだよな」
「一体何を?」
「何を考えてるんだ?」
「安心しろ。武装は解除されている」
 ここでこう言うリョクレイだった。
「変な真似はしない」
「だといいけれどな」
「そのつもりだったら」
「別に」
「それは安心してくれ」
 また言うリョクレイだった。
「わかってくれるか」
「わかった」
 ダバが頷く。
「ただ。立会わせてくれるか」
「無論だ」
 リョクレイはこうダバに答える。そうしてだった。
 クワサンが連れて来られる。そして。
 リョクレイは彼女の前に行きだ。頭を深々と下げた。それから言うのだった。
「申し訳ないことをした」
「えっ、謝ったの!?」
「まさか」
「まさかと思うけれど」
 皆このことに呆然となった。
「謝るって」
「何でなの?」
「何かあったの?この二人に」
「だとしたら一体」
「命令とはいえだ」
 リョクレイは顔をあげてからクワサンに話す。
「監視役になっていた。申し訳ないことをした」
「そうだったのか」
「そういえばそうよね」
「クワサンの監視役って」
「この人だったんだ」
「そうそう」
 ここで皆このことを思い出した。そうしてである。
 リョクレイは謝罪したのだった。そして謝罪を受けたクワサンはだ。こう言うのだった。
「いいわ」
「許してくれるのか」
「私は。今はお兄ちゃんといるから」
 だからだというのだ。
「だからいいわ」
「そう言ってくれるのだな」
「過去はもう終わったこと」
 いささか虚ろだがそれでも言った言葉だった。
「だから」
「かたじけない」
 今度はこう言うリョクレイだった。
「それではだ」
「それでこれからどうするんだ?」
 キャオがそのリョクレイに問うた。
「これからは」
「故郷に戻る」
 これがリョクレイの返答だった。そしてだった。
 彼もまた姿を消した。十三人衆は解体状態になった。
 しかしだ。最後の一人が出て来て言うのであった。
「では私はだ」
「あれっ、確かこの人って」
「マフ=マクトミン?」
「その人よね」
「故郷には帰らないのかな」
「どうなのかな」
「帰るつもりはない」
 実際にそうだと答えるマクトミンだった。
「これからはだ」
「どうするんですか?」
「それで」
「君達と戦わせてもらいたい」
 こう申し出てきたのだ。
「是非な」
「えっ、一緒にって」
「つまりロンド=ベルに入るんですか」
「つまりは」
「そういうことですよね」
「その通りだ」
 微笑んで言うマクトミンだった。
「それでいいか」
「どうする?」
「ううん、敵であってもどんどん入って来るのが私達だけれど」
「それじゃあそうしてもらう?」
「やっぱり」
「そうだな」
 ここでは大文字が決断を下した。
「いいだろう。ダブルスパイというのも考えられないしな」
「ポセイダルを裏切ってギワザにですしね」
「それに裏切った理由は」
「何だったのかしら」
「知れたことだ。そちらの方が戦えるからだ」
 それだからだと言うのだった。
「十三人衆は劣勢だからな」
「凄い理由だよな」
「全く」
「凄い話だな」
「そこまで戦いが好きなんだ」
「戦いは私の生きがいだ」
 実際にそうだとだ。本人も言う。
「だからこそだ」
「生きがいねえ」
「そうだったんだ」
「それがこの人の」
「それだったんだ」
 皆それを聞いて言うのだった。
「けれど何かね」
「また変わった人が来たっていうか」
「ううん、どんどん色々な人が集まるけれど」
「どうなるのかな、これから」
「わからなくなってきたけれど」
「まあ悪くなることはないな」
 凱が言った。
「それはな」
「ないのですか」
「それは」
「そうだ、ない」
 炎竜と氷竜にも断言する。
「個性的な顔触れが集まってもな」
「その通りですね」
 アズラエルも出て来た。
「個性のある顔触れが揃うのは悪いことではありません」
「しかしアズラエルさんは」
「それでも」
 風龍と雷龍は彼には少し厳しかった。
「あまりにも個性が」
「強過ぎますが」
「そうですかね」 
 しかも自分ではこう言う彼だった。
「僕は特に」
「いや、強いぞ」
「どう見てもな」
 凱とシローが彼に突っ込みを入れる。
「似ているだけによく感じる」
「どうしてもな」
「そこまでなのですかね」
 まだこんなことを言うアズラエルだった。
「僕の個性は」
「少なくともまともな人間か?あんた」
 ゴルディマーグの指摘は身も蓋もない。
「超能力とかそんなのないよな」
「いえ、全く」
 それはないというのだ。
「魔術も身に着けてませんしニュータイプでも何でもありませんよ」
「けれど身体頑丈よね」
「異様なまでに」
 光竜と闇竜がアズラエルのその不死身さまで言う。
「何食べても死なないし」
「不死身なのでは?本当に」
「おやおや、それはいいことなのでは?」
 余裕の声で二人にも返すアズラエルだった。
「何を食べても平気なのは」
「それでもマイクもびっくりしたもんね」
 今度はマイクだった。驚いた目になっている。
「あんな辛いものをよく平気で」
「しかも甘いものは異常に甘いですし」
 ボルフォッグは彼の食べるデザートを指摘した。
「それで平気なのですから」
「まさかと思うがな」
 宙は真剣な顔になっている。
「あんたサイボーグとかじゃないよな」
「そう言われることもありますね」
「BF団とも縁があったよな」
「僕は攻撃される側でしたが」
「しかしあったな」
 宙はそのこと自体を問題にしていた。
「じゃああんたやっぱり」
「身体的には普通ですよ」
 一応こう言いはするアズラエルだった。
「胃は頑丈かも知れませんがね」
「それでもか」
「普通の人間だって言うんだな」
 また凱とシローが言う。
「あんたにはどうも他人の感じはしないがな」
「それでも普通じゃないのはわかるが」
 まだ言う二人だった。そうしてだった。
 何はともあれだ。彼等はこのことは確かめていた。
「ギワザも死んで」
「敵がまた一つ増えたな」
「そうよね。それじゃあ」
「次は」
 こう話すのだった。そしてだった。
 ダバがまた皆に話す。
「それで次は」
「いよいよポセイダル?」
「倒しに行く?」
「これから」
「いや、まだだよ」
 ポセイダルにはまだ行かないというのだ。
「まだ行かないといけないところがあるよ」
「行かないといけないところ?」
「っていうと?」
「何処?」
「何処に行くんだよ」
「サードスター」
 そこだというのだ。
「今からそこに行こう」
「っていうとあのフル=フラット?」
「その人のところに?」
「今から」
「行くんだ」
「そう、そこにしよう」
 また言うダバだった。
「ポセイダルのところに行く前にね」
「そういえばフル=フラットって」
 キーンがそのダバに問う。
「どういった人なの?」
「かつてポセイダルの近衛隊の司令官だったらしい」
 こうキーンに答えるダバだった。
「ただ。それ以外は」
「知らないの?」
「知られていないんだ」
 そうだというのである。
「その他のことは殆ど」
「知らない?」
「そう、誰も彼女のことは知らないんだ」
 また話すダバだった。
「誰もね」
「その通りだ」
「それはな」
 ギャブレーとレッシィも言ってきた。
「十三人衆だった我々もだ」
「あの女のことは一切知らされなかった」
 そうだというのである。
「だが。かなりの権力を持っている」
「それは確かだ」
「ポセイダルも特別扱いしている」
「あの星を自分のものにもしている」
「ということは」
 ここまで聞いてだ。ヒメが言った。
「やっぱり私達の敵なのね」
「そうだな。それはな」
 勇もヒメのその言葉に頷く。
「それは間違いないな」
「そうよね。やっぱり」
「ただ」
「ただ?」
「何もわかっていない敵というのは厄介だな」
 勇はこのことに不安を感じていた。
「どういった戦いになるかな」
「けれど行くしかないわ」
 カナンはこの現実を話した。
「それはね」
「そうよね。それはね」
「行くしかないな」 
 ヒメと勇も頷く。そしてだった。
 ロンド=ベルはギワザの基地に入りそこで補給や整備を整えてからだ。反転してサードスターに向かうのだった。そこでまた一つの謎を知るのだった。


第七十二話   完


                         2010・11・6 

 

第七十三話 フル=フラット

            第七十三話 フル=フラット
 フル=フラットのいるサードスターに向かうロンド=ベル。その途中でだ。
 また、だ。ダバが言うのだった。
「サードスターにある戦力ですが」
「ああ、それな」
「一体どれだけ?」
「どれだけいるんだ、それで」
「おそらくだけれど」
 確証のない予想である。それでも言うのだった。
「ポセイダルは主力は常に自分の手許に置いているから」
「今じゃその七個艦隊?」
「ジュデッカ=ゴッツォ達が率いているその連中?」
「その七個艦隊?」
「あの連中か」
「彼等は間違いなくポセイダルのところにいる」
 ダバはこのことは断言できた。
「それがポセイダルの率いる軍の主力なのは間違いない」
「じゃあフル=フラットのところには」
「ポセイダルの主力はいない」
「そうだよな」
「やっぱり」
「そう思う」
 また皆に話すダバだった。
「だから数はあまり気にしなくていい」
「数はか」
「それは大してか」
「気にしなくていい」
「そうなるのね」
「ただ」
 数は大したことはないとした。しかしそれでもだった。ダバは言い加えるのだった。
「質は問題かも知れない」
「近衛兵だから」
「それでか」
「それでなのね」
「敵の質は」
「それは問題か」
「多分」
 ここでもはっきりとは言えないダバだった。予想でしかない。
 しかしその予想をだ。彼は言うのだった。
「そして一気に決着をつけないと」
「ポセイダルが兵を向けて来るか」
「そうなれば厄介だし」
「短期戦にしないと」
「まずいよな」
「そうよね」
「そういうことだから」
 これがダバの言いたいことだった。
「皆、今度もまた激しい戦いになるだろうけれど」
「それでもか」
「ここは」
「行くか」
 こう話してだった。彼等はそのサードスターに向かった。するとだった。 
 急に目の前にだ。宇宙怪獣の大軍が出て来たのだった。その数は。
「百二十万です」
「くそっ、よりによってかよ」
「こんな時に出て来るなんて」
「忌々しいな」
「しかしだ」
 それでもだと。タシロが全員に告げる。
「宇宙怪獣は放ってはおけない」
「放っておくとそれだけ惑星を破壊していく」
「恒星を巣にして」
「だから」
「ここは戦闘に入る」
 タシロは決断を下した。
「いいな、それでだ」
「わかりました」
「それしかありませんね」
「やっぱり」
 皆もそれで納得した。そしてだった。
 総員出撃してだ。宇宙怪獣に向かうのだった。
 数は確かに多い。しかしだった。
「あれ?あの挟み撃ちにするのはいないな」
「合体型だよな」
「あれはいないわね」
「そうだな」
 このことに気付いたのである。
「他にも強いのはあまり」
「数だけか、今度の宇宙怪獣」
「確かに数は多いけれど」
「質は大したことないか」
「そうよね」
 このことがわかったのだ。するとだ。
 タシロがまた皆に告げてきた。
「諸君、ここはだ」
「はい」
「どうされますか?」
「宇宙怪獣を倒す」
 彼が選んだ選択肢はこれだった。
「それでいいな」
「そうですね」
「やっぱりそれしかありませんよね」
「それ以外には」
 こうそれぞれ言ってだ。タシロの言葉に頷いた。
 そしてそのうえでだった。すぐに出撃してだ。
 宇宙海獣達に向かう。しかし彼等の動きは。
「?俺達には来ないな」
「サードスターに向かってるけれど」
「これってまさか」
「あの星を?」
 サードスターを狙っていることを察知したのだった。見ればだ。
 実際に彼等を無視してサードスターに向かっていた。
 それを見てだ。副長がタシロに問うた。
「それでもですね」
「無論だ」
 タシロの返答はここでも変わらない。
「サードスターにも一般市民がいるな」
「はい」
 ダバがタシロの問いに答える。当然彼も出撃している。
「その通りです」
「ならばだ。ここはだ」
「やっぱり宇宙怪獣をですね」
「倒す」
 やはり返答はこれだった。
「それでいこう」
「わかりました。それじゃあ」
「全軍突っ込め!」
 タシロの声が強いものになった。
「そしてそのうえでだ」
「はい、サードスターの一般市民を」
「是非救いましょう」
「何があっても!」
 ロンド=ベルは宇宙怪獣の大軍に突っ込んだ。その中にはガンバスターもあった。
 ノリコがだ。カズミに対して言う。
「お姉様、それじゃあ」
「ええ、ノリコ」
 カズミもその彼女の言葉に応える。
「今からね」
「行くのね」
「勿論よ。それでね」
「はい」
「わかっているわね」
 そのノリコへの言葉だった。
「仕掛ける技はね」
「あれですね」
「あれをまず仕掛けるわ」
「わかりました」
 ノリコはカズミのその言葉に頷く。そしてだった。
 ガンバスターが身構える。その全身に力を込める。
 ノリコもカズミも同じ構えになっている。ノリコが叫んだ。
「スーパー」
「稲妻」
 カズミも続く。その技は。
「キーーーーーーーーーーーーーーーック!」
 今渾身の蹴りを宇宙怪獣の大軍に向けて放ったのだった。
 瞬く間に彼等の陣を突き破りその後ろに無数の火球を作り出す。それが合図になった。
「よし、行くぞ!」
「敵の数決して多くない!」
「このまま突き進め!」
「一機もサードスターには行かせるな!」
 こう口々に叫んでだ。突撃しながら攻撃を繰り出していく。
 それで宇宙海獣達を倒していく。するとだ。
 ここでようやく宇宙海獣達も反転してきたのだった。
 後方からの攻撃を無視できなくなった。それでだった。
 彼等は反転をはじめたのだ。しかしだった。
「ここだ!」
「反転するところをですね」
「そうだ、狙い撃て!」
 タシロは副長に応えながら全軍に指示を出す。
「そうしろ。いいな!」
「了解です。それでは」
「この艦も同じだ」
 こうも言うのだった。
「いいな、反転する敵をだ」
「攻撃するのですね」
「一機でも多く沈める!」
 彼の考えが如実に出た言葉だった。
「主砲及び魚雷発射用意!」
「了解!」
 こうして彼等も攻撃を繰り出す。そうしてだった。
 反転してくる宇宙海獣達をその隙があるところで撃墜し撃沈していく。これでロンド=ベルは戦場での主導権を完全に握った。
 後はただひたすら攻めるだけだった。気付けばだ。
 宇宙海獣達はその数を大きく減らしていた。タシロがそれを見てユングに問う。
「ユング君」
「はい」
「今敵はどれだけ残っているか」
「十万を切りました」
 それだけだというのだ。
「そして残りもです」
「間も無くだな」
「ほぼ全て倒せるかと」
「わかった。それではだ」
「どうされますか、ここは」
「さらに攻めることにしよう」
 これが彼の判断だった。
「やはりここはだ」
「徹底的にですね」
「そうするべきだ。それではだ」
 こうして彼等はさらに攻撃を続けてだ。宇宙海獣達を殲滅してしまった。
 残った。それこそ一万や二万にも満たない敵だけが戦場を離脱していく・その敵達を見てだ。タシロが言った。
「これで救われたな」
「はい、サードスターが」
「完全に」
「まずはよしとしよう」
 満足してもいるのだった。
「宇宙怪獣達との戦いはまだ続くがな」
「それで艦長」
「いいでしょうか」
「ここは」
「むっ、何だ?」
 周りの言葉を聞く。するとだった。
 前にだ。今度はポセイダル軍の反応があった。それを言われたのだった。
「これか」
「はい」
「また戦闘ですね」
「ここは」
「そうだな」
 落ち着いた声で応える彼であった。
「止むを得ん。それではだ」
「引き続き戦闘用意ですね」
「そういうことで」
 彼等は戦いに入ろうとする。しかしだった。
 ここでだ。そのポセイダル軍の方から通信が入って来たのだ。
「待ってくれ」
「待ってくれ?」
「待ってくれって?」
「一体何?」
「何があるんだ?」
「我々は戦うつもりはない」
 こう言ってきたのである。
「君達とだ」
「おいおい、そりゃまたな」
「見え透いた謀略だよな」
 カイとハヤトが言う。
「そんなこと言ってもな」
「すぐに後ろからだな」
「それは安心していい」
 だがその相手はそれを否定してきた。
「我々は君達を相手にするのには数が足りない」
「数はか」
「それはなんだ」
「そうだ、だからだ」
 それでだというのだ。
「君達を相手にするつもりはない」
「じゃあ何でなんだよ」
「どうして僕達の前に出て来たんだ」
 カイとハヤトはその相手に問うた。
「大体あんたな」
「何者なんだ、一体」
「フル=フラット」
 こう名乗ってきた。そしてだった。
「それが私の名前だ」
「フル=フラット!?」
「あのフル=フラットがここで出て来るなんて」
「一体これは」
「どういうことなんだ」
「まずは来てくれるだろうか」
 全員のモニターに青い髪の女が出て来た。
「サードスターにだ」
「おいおい、また露骨だな」
「全くだな」
 今度はジェリドとカクリコンが言う。
「そうしてそのサードスターでだな」
「仕掛けるんだな」
「安心するのだ。それはない」
 それも否定する彼女だった。
「何ならだ」
「何なら?」
「何ならっていうと」
「一体」
「君達の艦の中に入ろう」
 こう話してきたのだ。
「それなら信用できるか」
「あたし達の中に入ってみせてっていうんだね」
 ライラの目がここで光った。
「自分をあえて敵の中に置いてみせてだね」
「信用してもらうってことかい」
 ヤザンも言う。
「まあよくある話だな」
「しかし少佐、そこまで言うのなら」
「これはです」
 ラムサスとダンケルがそのヤザンに話してきた。
「この女の言うことは」
「完全に信用できないという訳ではないのでは」
「そうかも知れないわね」
 マウアーは二人の言葉に傾いてきた。
「それじゃあここは」
「話だけでも聞いてみるべきか」
 マシュマーはこう考えた。
「やはり」
「そうだね。こっちの中にいるんならね」
 キャラが言うのはこのことだった。
「何があってもすぐにやれるからね」
「また物騒な言葉ですね」
「けれど事実だよ」
 キャラは笑ってゴットンに答えた。
「それもね」
「つまりそうしたらですか」
「安心できるんだよ。交渉もね」
「どうもあまり好きなやり方ではないがな」
 マシュマーはここでは自分の主義をもとにしていた。
「だがそれもな」
「仕方ないってことですね」
「そういうことになる」
 こうゴットンにも告げてだ。彼も賛成したのだった。
 そしてであった。フラットはラー=カイラムの中に入った。その中において彼女の側近達と共にロンド=ベルの面々と会うのであった。
 すぐにだ。アムが皆に話す。
「身体検査は念入りにしたから」
「何も持ってはいなかった」
 レッシィも話す。
「まさか全部脱ぐなんて思わなかったけれどね」
「あたし以上だよ」
「そうでもしないと信じてもらえないだろう」
 素っ気無く答えるフラットだった。
「違うか、それは」
「いや、その通りだな」
 ダバがフラットのその言葉に頷いてみせた。
「やっぱり。そうでもしてもらわないと」
「だからだ」
 フラットは落ち着いた声で述べた。
「そうさせてもらった」
「それはわかったわ」
「何も持っていないことはだ」
 アムもレッシィもそれは認めた。
「けれどよ」
「だからといって信用したわけではない」
「それはわかっている」
 フラットも返す。
「元より信用してもらうつもりはない」
「随分とドライだな」
 アムロはそんな彼女の言葉を聞いて言った。
「割り切っていると言うべきか」
「私という人間を信用しなくともいい」
 フラットは今度はこう言った。
「しかしだ」
「しかしなんだな」
「私の言葉は信じてくれ」
 自分で言う彼女だった。
「それだけだ」
「言葉と人間性は同じじゃないのか?」
「なあ」
「それってな」
 皆それを聞いてそれぞれ言う。
「けれど言葉だけか」
「それは信じろっていうのね」
「それだけは」
「そういうことだ。それで頼む」
 フラットは落ち着いた言葉で話してきた。
「いいだろうか」
「そうだな」 
 マイヨがフラットのその言葉に応えた。
「私もそれは腑に落ちないが」
「それでもなのですね」
「大尉殿、ここは」
「この女の言葉を」
「そうだ、信じることにしよう」
 そうするというのだった。プラクティーズに対して返す。
「私はそうする」
「私もだな」
 クワトロもだった。
「少なくとも君の言葉には嘘はないな」
「君、か」
「何か不都合があるのか?」
 クワトロは自分の二人称の話もした。彼女へのだ。
「見たところ君は私より年下のようだが」
「外見はそうだな」
 それはだというのだ。
「確かにな。しかし」
「しかし?」
「実年齢は違う」
 こう言うのであった。
「私はこれでもかなりの年齢だ」
「ああ、婆さんなんだな」
 それを聞いたシンの言葉だ。
「つまりは。ナタルさんと同じだな・・・・・・ぐふっ!?」
「一つ言っておく」
 ナタルがシンにスリーパーホールドをかけながら告げる。顔は阿修羅のものになっている。
「口の悪い者は長生きできはしない」
「あががががががが・・・・・・」
「こいつ何時になったら学習するのかしら」
「そうよね」
「本当に進歩ないから」
 アサギ、マユラ、ジュリはそんなシンに完全に呆れていた。
「毎回毎回袋にされてるのに」
「そうやって女の人の年齢言うのって」
「禁句なのに」
「何、それはいい」
 しかしだった。フラットはそれはいいというのだった。
「実際に私は相当な年齢なのだからな」
「一体幾つ位なのかしら」
 アルシオーネが怪訝な顔になっていた。
「本当に外見からじゃわからないけれど」
「ううん、若作りとかとちゃうよな」
 カルディナは自分で言ってそれを否定した。
「魔法とかやないし」
「私と同じ位の年齢かも知れないが」
 クレフである。
「だが。それはどうして外見を保っているかだ」
「バイオリレーションだ」
 それだと言ってきたのだった。
「実はな」
「バイオリレーション?」
「何、それ」
「若さを保つ機械?」
「そういう装置かな」
「やっぱり」
 皆ここで話した。
「っていうことは」
「つまりは」
「そういうこと?」
「やっぱり」
「簡単に言えばそうなる」
 実際にフラットもそうだと話してきた。
「肉体の若さを維持する装置だ」
「ああ、それを使ってなんだ」
「それでその若さなんだ」
「成程ね」
「それでだったんだ」
 皆ここで納得したのだった。そしてだ。フラットはさらに話してきた。
「そしてこれはだ」
「そういえば」
 ダバがふと気付いたのだった。
「ポセイダルも。かなり長い間ペンタゴナに君臨しているが」
「そうだ、彼女もだ」
「やはり」
「バイオリレーションを使っている」
 そうだというのである。
「それで若さを保っているのだ」
「それでなのか」
「そしてポセイダルを倒すにはだ」
 ここからが問題だった。
「そのバイオリレーションを破壊することだ」
「それか」
「それがあいつを倒す為にやるべきこと」
「そうするべきか」
「ここは」
「わかってくれただろうか」
 フラットはロンド=ベルの面々に対してあらためて尋ねた。
「私の言葉は」
「少なくとも言葉は信じられるようになりました」
「それはな」
 タトラとタータが彼女に返す。
「そのお顔を見れば」
「そしてバイオリレーションの話を聞けばな」
「事実って大きいからね」
 今言ったのは海だった。
「まあ言っちゃいけない事実もあるけれど」
「シンさんって」
 風はまだナタルに締められているシンを見ている。
「正直なんでしょうか」
「正直はいいことだ」
 光は正論を話はした。それはだ。
「そうじゃないのか?シンさんは悪いことをしたのか?」
「本当のことを変に言うからああなるのよ」
 今言ったのはプリメーラだった。
「私だってあんなこと言われたら怒るわ」
「そうそう」
 プリメーラの言葉にアクアが頷く。
「その通りよ。私だって二十三だし」
「えっ、ハマーンさんより年上!?」
「嘘っ!?」
「ハマーンさんがまだ二十一っていうことが」
「嘘みたいだし」
「そこまで恐ろしいことなのか」
 そのハマーンが驚く一同に突っ込みを入れる。
「私がまだ二十一ということが」
「いや、まあ。何ていうか」
「あまりにも貫禄がありますから」
「しかも指揮能力高いですし」
「そういうの見てたら」
「本当に」
「そうか」
 今は静かに返すハマーンだった。
「認めたくないものだな。己の外見のことは」
「それは私の台詞の筈だな」 
 クワトロがそのハマーンに突っ込みを入れた。
「しかし。気にしているか」
「流石に実際の年齢より上には思われたくはない」
 これがハマーンの本音だった。
「それはな」
「そうか」
「それで話を戻そう」
 ハマーンはここでは仕切りを見せた。そしてフラットにまた顔を向けた。
「それでフラット殿」
「うむ」
「貴殿はポセイダルとの戦いに協力してくれるのか」
「いや」
「それはないか」
「協力はしない」
 それはいいというのである。
「ただ。ポセイダルにも協力はしない」
「中立?」
「つまりは」
「そういうことですか」
「私の戦力は解体させる」
 彼女のその権力基盤の一つについても話した。
「それもだ」
「戦力もって」
「それもって」
「そこまでするんですか」
「もう何の意味のないことだ」
 だからだというのだ。
「最早ポセイダルの統治は終わるのだからな」
「だからですか」
「ここは」
「そうするんですね」
「戦力を解体ですか」
「将兵は全て故郷に戻ってもらう」
 そうするともいうのである。
「そしてだ」
「中立を保つんですか」
「つまりは」
「そういうことだ。サードスターも放棄する」
 今度はそれだった。
「そのうえで君達の戦いを見守ろう」
「それだけではありませんね」
 今度はダバが問うた。
「貴女の考えは」
「ポセイダルとの戦いの時にまた言おう」
「その時にですね」
「また君達に話す」
 そうするというのである。
「まずはポセイダルのところに行くのだな」
「わかりました」
 ダバはフラットのその言葉に頷いた。そしてだった。 
 ロンド=ベルの方針が決まった。まずはだった。
「ポセイダルの星に向かうか」
「そうだよな」
「まずはな」
「それであいつの前に出るか」
 そうするとしてだった。
 彼等は一旦サードスターに入った。もうそこではフラットの言葉通り戦力が解体され星もフラットの手から離れていた。レジスタンスの勢力の手になっていた。
 彼等はそこで補給と整備を受けてだった。
「じゃあここからな」
「ポセイダルの星かあ」
「いよいよだよな」
「ああ」
「それで」
 しかもだった。ここでだ。
 フラットを探すとだ。彼女は彼等の前にいたのだった。
 そしてそのうえでだ。彼等に話してきた。
「それではだ」
「ええ」
「貴女は今は見守るんですね」
「俺達の戦いを」
「そうさせてもらう」
 やはりこう答えるフラットだった。
「君達の健闘を祈る」
「わかりました」
「じゃあ今から行きますので」
「ポセイダルのところに」
「その時にわかる」
 フラットは彼等にこうも話したのだった。
「全てがな」
「全てがですか」
「その時にですね」
「そういうことだ」
 やはりここでは多くを言わないフラットだった。しかしである。
 ロンド=ベルは出撃した。ポセイダルの星に向かってだ。
 一応フラットも同行している。だが彼女は。
「あれっ、ヘビーメタルもですか」
「乗られないんですか」
「それも」
「そうだ、私は最早戦うことはない」
 だからだというのである。
「それでだ」
「まあそれでいいですけれどね」
「それじゃあ」
「俺達が戦いますし」
「そうでしたら」
「あくまで私はだ」
 またこのことを言うフラットだった。
「戦いはもう捨てたのだ」
「そして見るんですか」
「これからのことを」
「そうされますか」
「私のバイオレーションは持っている」
 それはだというのだ。
「だが。もう長生きするつもりもない」
「じゃあどうするんですか?」
「そのバイオレーションは」
「捨てるんですか?」
「徐々に使う回数を減らして少しずつ老いていく」
 そうするというのである。
「そして穏やかに死んでいくとしよう」
「この戦いの後はですか」
「そうされますか」
「もう」
「そうさせてもらう。全てが終わった後でな」
 これがフラットの考えだった。彼女はその心を隠棲に向けていた。
 そこに消えようとする中で言うのであった。彼女のこれからをだ。
 その彼女を乗せたままポセイダルとの決戦に向かうロンド=ベルだった。また一つ戦いが終わろうとしていたのであった。それは確かだった。


第七十三話   完


                         2010・11・9        

 

第七十四話 ポセイダルの謎

                第七十四話 ポセイダルの謎
 ロンド=ベルはポセイダル軍の本拠地に向かっていた。その途中でだった。
「多分来るだろうな」
「そうだよな」
「迎撃にな」
「絶対にな」
 口々に言うのであった。
「ポセイダル自身は出ないにしても」
「あの連中がな」
「出て来るよな」
「その通りだな」
 こう話しているとであった。不意にだ。
 通信が入って来た。そして長い金髪に髭とサングラスの男が出て来たのだった。
「いいだろうか」
「貴方は」
 ダバが彼の顔を見て言った。
「アマンダラさんですね」
「久し振りだな、ダバ=マイロード君」
「ええ、どうしてここに」
「君達がペンタゴナに戻ってきたと聞いてだ」
「それで挨拶にですか」
「通信を入れさせてもらった」
 そうだというのである。
「友達が増えたようだな」
「ええ、まあ」
 応えはするダバだった。
「その通りですけれど」
「しかしどうしたのかな」
 ここでアマンダラはこう彼に問い返した。
「今一つ浮かない感じだが」
「僕達の行動は隠密の筈です」
「そう思っていたのか」
「思っていたとは?」
「君達は目立ち過ぎる」
 アマンダラが言うのはこのことだった。
「それで隠密というのはな」
「無理があるというんですか」
「そういうことだ」
「だから今僕達に通信をですか」
「それで挨拶をということだ」
「わかりました」
 腑に落ちない顔だが頷くダバだった。
「そのことは」
「わかってくれたようで何よりだ」
「それでもです」
 ダバはその顔でさらに言ってきた。
「貴方は確かに僕達にエルガイムマークツー等を贈ってくれました」
「別に感謝してくれなくてもいいがな」
「そのことには感謝しています」
 それでも言うのがダバだった。律儀である。
「ですが。それ以前とそれ以後でこれといってお付き合いはないですが」
「特に君達がいなくなっていた間はな」
「地球にいました」
 このことも言うダバだった。
「それでいませんでした」
「地球にか」
「御存知なのですか、地球のことは」
「一応はな」
 そうだというアマンダラだった。
「聞いたことがある」
「そうだったんですか」
「美しい星だそうだな」
「はい」
 ダバはアマンダラのその言葉に頷いてみせた。
「その通りです。青くとても」
「是非一度言ってみたいものだな」
 こんなことも言うアマンダラだった。
「機会があればな」
「それでなのですが」
 また言うダバだった。
「貴方が僕達に挨拶をされる理由は一体」
「何、何でもない」
 アマンダラはここではこう返した。
「ただ気が向いただけだ」
「それで、ですか」
「そうだ。それではだ」
「また、ですか」
「また会おう」
 アマンダラは表情を見せないまま述べた。
「すぐにな」
「すぐにですか」
「そう、すぐにだ」
 何かがあるような言葉だった。
「また会おう、ダバ=マイロード君」
「ええ、また」
 ダバも言葉を返してだった。今は別れたのだった。そしてその後でだ。ロンド=ベルの面々がそのダバに対して問うのだった。
「今のは一体?」
「知り合いみたいだけれど」
「あの人って」
「誰なの?」
「アマンダラ=カマンダラさんっていうらしいけれど」
「アマンダラ商会のオーナーです」
 まずはこう答えるダバだった。
「所謂武器商人でして」
「ああ、そういう人なんだ」
「悪く言えば死の商人か」
「つまりは」
「そういうことか」
「正直なところあまり好きにはなれません」
 実際に顔を曇らせているダバだった。
「何か。妙なものを感じますし」
「ペンタゴナで有数の資産家ではあるんだよ」
 キャオもそのアマンダラについて話す。
「けれどな」
「けれどか」
「胡散臭い奴か」
「つまりは」
「そういうことなのね」
「ああ、正直言って胡散臭い奴だぜ」
 また皆に話すキャオだった。
「裏じゃそうやって武器の横流しとかやっててな」
「何だ、そういう奴か」
「わし等みたいに堂々と商売はしておらんのか」
「美しくないな、それは」
 カットナル、ケルナグール、そしてブンドルの言葉だ。
「確かに胡散臭いのう」
「全くだ。ああいう奴は信用できんぞ」
「ダバ君の見方は正解だな」
「と、胡散臭い人たちが言ってもなあ」
「説得力ないんだけれどな」
「この人達自覚しないのよね」
 そんな三人を見て真吾とキリー、レミーが言う。
「そもそもあんた達も裏の仕事してるだろ」
「ドクーガってそうなんだろ?」
「確かに表の仕事にも精を出してるけれど」
 ここで今度はドラグナーの三人も言ってきた。
「眼帯で肩に烏とかなあ」
「青い肌とかなあ」
「マントを羽織って艦橋に立つとか」
 彼等はドクーガの面々の姿や服装を指摘するのだった。
「滅茶苦茶胡散臭いしな」
「突っ込んでくれっていうアピールだよな」
「どう見てもそうとしか思えないんだけれどな」
「ええい、黙っておれ!」
「わし等の何処が怪しい!」
「私の如き美形を捕まえてそう言うとは」
「無礼にも程があるぞ」
「そうじゃ、かみさんはわしの顔をいつも褒めてくれるぞ」
「美がわからないということは悲しいことだ」
 こんなことを主張する始末であった。しかしであった。今度は全員でだった。その怪しい三人についてあれこれと話すのだった。
「いや、どう見てもなあ」
「あの奥さんもかなりの趣味だよなあ」
「美っていうよりは」
「っていうか何で烏?」
「お小遣い貰い過ぎだし」
「あとクラシック聴くのもいいけれどあからさまに変な雰囲気醸し出してるし」
 とにかく滅茶苦茶に言われる三人であった。
 しかしである。今度はアムとレッシィがアマンダラについて話すのだった。
「ポセイダル軍相手に商売もしてるしね」
「正直信用はできないな」
「まあ私達にはかなり安く売ってくれるけれど」
「それでも。どうもな」
「しかも氏素性がはっきりしない」
 ギャブレーも皆に話す。
「怪しい人物なのだ」
「身元もはっきりしないんだ」
「それで大金持ちって」
「何かもうそれだけで」
「怪しいよなあ」
「全く」
 皆で話すのであった。そしてである。
 アマンダラが通信を入れてきた次の日であった。前方にであった。
「レーダーに反応だよ」
「来たみたいだぜ」
「そうみたいだね」
 イーグルがジェオとザズの言葉に頷く。
「ポセイダル軍かな、やっぱり」
「だろうな。それでだ」
「ヘルモーズはいるだろうね」
 イーグルが言うとであった。その通りだった。
 童夢の艦橋でだ。チャンアンがアスカに告げていた。
「ヘルモーズが七隻来ています」
「ふむ、また七隻か」
「はい、左様です」
「じゃあアスカ様」
 今度はサンユンだった。
「ここはやっぱり」
「戦うしかないであろう」
 これがアスカの返答だった。彼女もわかっていた。
 ロンド=ベルはすぐに出撃した。しかしここで、であった。
 フラットがグランガランの艦橋で暗い顔になっていた。シーラがそれに気付いて彼女に問う。
「あの、何か」
「いや、少しな」
「少し?」
「アマンダラ=カマンダラの名前の方がいいわけではないわね」
 こう呟く彼女だった。
「それならどうして」
「どうして?」
「いや、何でもない」
 また誤魔化した彼女だった。
「とにかく今は」
「戦闘ですね」
「そうだ。健闘を祈る」
 一応彼等にエールを送りはした。
「それではな」
「やっぱり出撃せずにですか」
「そこに残ってですね」
「ここは」
「先に言った通りだ」
 これがフラットの返答だった。
「そういうことだ」
「まあそれならそれでいいですけれどね」
「こっちもそれならそれで戦いますし」
「俺達だけで」
 こう言ってであった。彼等は戦闘用意に入った。
 そのうえで敵を見る。その彼等は。
「やっぱりな」
「ヘルモーズが七隻」
「奴等ね」
「ロンド=ベルの者達よ」
 一人がモニターに出て来た。それは。
「余は第五艦隊司令官スミルナ=ジュデッカ=ゴッツォである」
「知ってるよ」
「あんたのクローンとも何度も戦ったしね」
「それはね」
「そうか」
 そう言われてもだった。そのスミルナは動じてはいない。どうやら自分自身がクローンであるということを自覚しているようである。
 そしてその自覚をそのままにだ。彼は言うのだった。
「それでは話が早い」
「そうだな」
 今度はペルガモであった。
「我等七個艦隊全てでだ」
「汝等の相手をしてやろう」
 テアテラもいた。当然ラオデキア達もいる。
「それでいいな」
「嫌だって言っても来るんだろう?」
「もうわかってるわよ」
 ジャーダとガーネットが彼等に言う。
「それならだよ」
「遠慮なく相手してやるわよ」
「よかろう」
 ラオデキアも応える。
「では汝等の戦いをここで終わらせてやろう」
「行くぞ」
「それではだ」
 他のジュデッカ=ゴッツォ達も言ってだった。
 七個艦隊が一斉に動いてきた。その陣は。
 ラオデキアの第七艦隊を軸にしてだ。右翼と左翼が動いてきた。
「第一、三、五艦隊は右からだ」
「うむ」
「わかった」
「それではだ」
 それぞれを率いるジュデッカ=ゴッツォ達がラオデキアの言葉に応える。
「第二、四、六艦隊は左からだ」
「そうだな」
「そうしてあの者達をだ」
「討つ」
 ここでもそれぞれのジュデッカ=ゴッツォ達が応えた。そしてであった。
 彼等はロンド=ベルに迫るのだった。
 ロンド=ベルもそれを見てだった。迎撃に入る。
「さてと、囲んでくるな」
「そうね、ここはね」
「間違いないな」
「そう来るわね」
 誰もがそれを確信する。そしてだった。
 敵の動きをまた見てだった。
「さて、どう来るかだよな」
「多分中央を攻めたら左右から囲んできて」
「右を攻めたら左から」
「右を攻めたら左から」
 このことは実に容易にわかった。それでだった。
「一気に七個艦隊の攻撃を受けるのも愚」
「ならどうする?」
「ここは?」
「答えは簡単です」
 ここで言ったのはエキセドルだった。
「敵に囲まれる前に陣を崩すだけです」
「そうですね。ここは」
「それが一番ですね」
 美穂とサリーが彼の言葉に頷く。
「じゃあ艦長、ここは」
「やっぱり」
「はい、まずは正面から突っ込みます」
 そうするというのだった。
「そして扇の要を崩します」
「わかりました。それなら」
「今から」
「全軍突撃です」
 実際にこう命じた彼だった。
「そして一気に突き抜けます」
「そしてそれからですね」
 金竜の目が鋭くなっていた。
「さらなる攻撃に」
「その通りです。では行きましょう」
 こうしてだった。ロンド=ベルはそのまま突っ込む。その先頭にいるアスカがだった。
 エヴァのATフィールドを持ってだった。一気に横薙ぎにする。
「ATフィールドの使い方はこうするのよ!」
 これで敵を数機まとめて潰すのだった。実に派手なはじまりだった。
「どうよ!」
「いや、どうよって」
「相変わらず無茶な攻撃やな」
 シンジとトウジはアスカの今の攻撃にいささか呆れていた。
「まあ確かに威力はあるけれど」
「最初からそれかい」
「今のあたしはちょっと気合が違うわよ」
 既に気力がかなり上がっているようだった。
「もうね。暴れたくて仕方がないのよ」
「それいつものアスカじゃないの?」
「そやな」
 また突っ込みを入れる二人だった。
「暴れたくて仕方がないって」
「いつもやないか」
「今日はちょっと違うのよ」
「だからそうは見えないし」
「全然な」
「けれどそうなの」
 反論になっていないがそれでも言うのがやはりアスカだった。
「普段より調子がいいのよ」
「それがわからないし」
「何でなんや」
「そろそろポセイダルとの戦いも終わるって思ったらね」
 アスカはまた言った。
「こう。自然にね」
「ああ、それでね」
「そういやポセイダルとの戦いも長いな」
「ダバさん達との付き合いも長いし」
 それもあったのだった。
「そういうことも思うとね」
「気力があがるんだね」
「自然に」
「そうなのよ。だからね」
 今度はライフルを構えてだった。マシンガンの如く放つ。
 それでまた次々と倒してだ。言うのであった。
「こうして派手にやりたくなるのよ」
「それはいいけれど」
 レイがそのアスカに言ってきた。当然彼女も戦っている。
「注意はして」
「注意って何によ」
「弾数」
 レイが指摘するのはこれだった。
「派手に戦うのなら余計に」
「うっ、そんなのわかってるわよ」
「じゃあ何でそこで詰まるのかな」
「それは気のせいよ」
 強引に言い切るアスカだった。
「それはね」
「まあ気をつけてね」
「わかってるわよ」
 また言い返す。
「とにかく。まずは突っ切ってね」
「それからだね」
 こうしてロンド=ベルは攻撃を仕掛けてだった。
 一気に第七艦隊を突っ切る。ラオデキアの周りもかなりの損害が出ていた。
 彼はヘルモーズの中にいる。そこから言うのだった。
「いきなり来たな」
「はい、我が艦隊はかなりの損害を受けました」
「しかしまだ戦力は健在です」
「わかっている」
 ラオデキアは部下達に冷静に返す。
「それはな」
「ではここは」
「どうされますか」
「案ずることはない」
 やはり冷静に返す。
「あの者達はすぐに戻って来る」
「ではそこをですか」
「再びですね」
「攻めると」
「そういうことだ」 
 やはりラオデキアの言葉は冷静である。
「ではだ。よいな」
「はい、それでは」
「七個艦隊全てを集め」
「そのうえで」
「包み込ませぬのならそれでやり方がある」
 ここでは冷静な彼だった。
「正面からだ。全ての戦力でだ」
「潰しましょう」
「それでは」
「それでいいな」
 ラオデキアは他の司令達にも問うた。
「ここは」
「うむ、そうだな」
「機動力を使い包み込ませぬのならだ」
「それならそれでやり方がある」
「正攻法だな」
「そういうことだな」
 ラオデキアは自身と同じ顔の彼等に返した。
「それではだ」
「戦うとしよう」
「ではな」
 こうして彼等は七個艦隊全てを集結させた。そのうえで反転してくるロンド=ベルに正面から向かおうとする。しかしなのだった。
 それこそまさにであった。
「よし、やった!」
「集まって来るんならな!」
「こっちの思う壺よ!」
「正面から全力で一気にやれるぜ!」
「その通りです」
 エキセドルも言う。
「では皆さん」
「一気に、だよな」
「正面から敵の戦力をまとめて」
「それで」
「殲滅します」
 エキセドルは言い切った。
「そうしましょう」
「では艦長」
「マクロス7もですね」
「はい」
 エキセドルは美穂とサリーの言葉にも応えた。
「御願いします」
「ではマクロス7変形です」
「主砲発射用意」
 その巨大なライフルから光が放たれだった。
 敵軍が薙ぎ倒されていく。その他にもだった。
「敵がこう集まっているとな!」
「かえってやりやすいっての!」
「しかも正面から余計にね!」
「狙いを定める必要もなし!」
 誰もが広範囲攻撃を繰り出し敵を薙ぎ倒していくのだった。
 ポセイダル軍はその数を瞬く間に減らしていく。それを見てだった。ラオデキアがまた言った。
「ここはだ」
「どうされますか」
「我が軍が押されていますが」
「まずヘルモーズはそのままにする」
 こう部下達に話す。
「ヘルモーズは艦長が指揮にあたれ」
「では司令は」
「余はズフィルードで出る」
 そうするというのである。
「ヘルモーズと合わせてだ。ロンド=ベルにあたる」
「何と、そうされますか」
「核を外して」
「そのうえで」
「普通にやっていては勝てはしない」
 それを確信している言葉だった。
「だからだ」
「左様ですか」
「それでは我々も」
「今からは」
「この艦を頼んだ」
 ラオデキアは部下達に告げた。
「それではな」
「わかりました。それでは」
「司令、御健闘を」
「今より」
「では我々もだ」
 他のジュデッカ=ゴッツォ達も言ってきた。
「行くとしよう」
「それがいいな」
「七機のズフィルードと七隻のヘルモーズ」
「それでだ」
「勝つぞ」
 こうしてだった。七機のズフィルードが出た。そうしてだった。
 彼等は迂回しだした。ヘルモーズはそのままだった。
 それを見てだ。エキセドルはすぐに察した。
「ふむ。これは」
「一体どういうことでしょうか」
「ズフィルードが出てきましたけれど」
「まず残った戦力で前から攻撃を仕掛けです」
 そうしてだというのだ。
「そして後ろからです」
「ズフィルードですか」
「それでなのですね」
「その通りです」
 こう美穂とサリーに話す。
「それが彼等の狙いです」
「それじゃあ今は」
「後ろを何とかしないと」
 二人はエキセドルの言葉を受けて早速言うのだった。
「挟み撃ちにされます」
「それは防がないといけないですよね」
「はい」
 エキセドルもこくりと頷く。
「その通りです」
「ではここは一体」
「どうされますか?」
「二手に分けるのも愚です」
 それはしないというのだ。
「ズフィルードに戦力を振り分けるとそれだけ敵主力への戦力が減ります」
「そうですよね」
「ですからそれは無理ですよね」
「ここは」
「ちょっと」
「はい、かえって劣勢になります」
 戦力の分散を避けるというのである。
「ですからここは」
「はい、ここは」
「どういった戦術を」
「正面です」
 返答は一言だった。
「正面の敵をです」
「一気に攻め潰すんですね」
「まずはですか」
「はい、ヘルモーズも沈めます」
 その七隻の戦艦もだというのだ。
「そしてそれからです」
「ズフィルード攻略ですか」
「そうされますか」
「はい、それでいきます」
 こうしてだった。エキセドルの言葉通りに戦うのだった。
 まず一気に攻めてだ。ヘルモーズの周りの敵を減らしていく。
「くっ、怯むな!」
「まだだ!」
「まだ持ちこたえろ!」
「司令達が後ろに回られるまでだ」
「それだめだ」
 指揮官達が叫ぶ。しかしだった。
 彼等はそのまま崩れていく。そしてだった。
 遂にヘルモーズにも攻撃が及んだのだった。
「集中攻撃だ!」
「ありったけの攻撃をぶつけろ!」
「いつも通りな!」
 既にヘルモーズの攻略方法はわかっていた。とにかく周囲を囲んでダメージを与えるのだ。巨大戦艦への攻略である。
 そうして一隻、また一隻と沈めていく。無論周りの戦力もだ。
「よし、これはな」
「いい感じね」
「思った以上に」
「いける?」
「ああ、ズフィルードが向かっているけれどな」
 それでもなのだった。
「やっぱりジュデッカ=ゴッツォ達がいないとな」
「その分楽?」
「あの連中指揮官として手強いし」
「それでかな」
「そうね」
 フェイがここで話す。
「指揮官の質は大事だから」
「ああ、それでか」
「普段より楽に感じるのは」
「相手がヘルモーズでも」
「そうよね」
「そういうことか」
「ええ。だから今は」
 また言うシンルーだった。
「このまま一気に敵を潰して」
「そうしてか」
「ズフィルードを相手にする」
「このまま」
「はい、それでいきます」
 また言うエキセドルだった。
「では皆さん」
「よし!倒すか!」
「今からな!」
「一気に!」
 こうしてだった。まずは敵の主力を殲滅した。無論七隻のヘルモーズもだ。
 そしてそれからだった。後方に回り込むつもりが戦局の変化で急にロンド=ベルに向かってきたズフィルード達に向かうのだった。
「くっ、速いな」
「流石ロンド=ベルと言うべきか」
「そうだな」
 ジュデッカ=ゴッツォ達がそれぞれ言う。
「主力部隊を先に一気に倒してか」
「そして我等を次に倒す」
「口で言うのは容易い」
「だがそれをできるのはだ」
 どうかというとだった。
「相当なものだ」
「そう容易にはできない」
「その通りだな」
「しかしだ」
 それでもなのだった。彼等にも意地があるのだった。
「我等もただ敗れる訳にはいかない」
「そういうことだ」
「ではな」
「行くとしよう」
 そのままロンド=ベルに向かう。そうして戦いに入るのだった。
 ズフィルード達はだ。忽ちのうちに囲まれてしまった。それでもだった。
「来るがいい」
「このズフィルードの強さ見せてやろう」
「汝等がどれだけ強かろうがだ」
「我等も敗れるつもりはない」
 こう言ってだった。それで戦うのだった。
 彼等とて七機しかおらず囲まれてはだ。劣勢も止むを得なかった。
 それで次から次にだ。ダメージを受けていく。
 それを見てだ。ヴィレッタが彼等に言った。
「降伏しろ」
「降伏しろというのか」
「我等にか」
「そう言うのか」
「そうだ」
 その通りだというのである。
「その通りだ。それならば命は助かる」
「戯言を言うものだ」
 ラオデキアの言葉だった。
「我等はバルマーの臣だ」
「そうだ、それでどうしてだ」
「何故降伏することがある」
「それは決してだ」
「言う筈がないだろう」
 他のジュデッカ=ゴッツォ達も言う。
「我等は何があろうと最後まで戦う」
「貴様等を倒す」
「それは言っておく」
「意地と誇りか」
 ヴィレッタは彼等が何故まだ戦うのかわかっていた。それでだった。
 その彼等を見てだ。一端目を閉じそこからまた言うのだった。
「わかった。それではだ」
「では来るのだ」
「我等は最後まで戦う」
「例え何があろうともだ」
「最後の最後までだ」
 こう言ってだった。本当に最後の最後まで戦いだった。七人全てが散華した。これでこの宙域での戦いが終わったのであった。
「見事だな」
「ああ、そうだな」
「本当にね」
「敵とはいえだ」
 誰もがその彼等に賞賛の言葉を惜しまなかった。
「何度戦っても立派だな」
「バルマー帝国にも人がいる」
「それは間違いないな」
「確かにね」
「見事だ」
 ここでフラットが彼等に言ってきた。
「これで残るはポセイダルの直属軍のみだ」
「そうですね」
 ダバはそのフラットに応える。
「これでいよいよですね」
「そうだ。だが気付いただろうか」
 ここでフラットはこんなことを言ってきたのだった。
「あることにな」
「あの連中バルマーの人間だって言ってたよな」
 キャオがそれを指摘してきた。
「つまりそういうことだな」
「そういうことだ。それにだ」
 まだあるのだった。
「ヘビーメタルは一機もなかったな」
「バルマーのマシンだけだったわね」
「そうだったな」
 今度はアムとレッシィが話す。
「ってことはジュデッカ=ゴッツォ達は」
「ポセイダルとは疎遠だったのか」
「そういうことだ。あの者達はあくまでバルマーの臣だ」
 フラットは二人に対しても述べた。
「ポセイダルの臣ではなかったのだ」
「そもそもポセイダルはだ」
 今度言ったのはギャブレーだった。
「確か一人でこのペンタゴナを統一したのだが」
「そうだ。その通りだ」
 フラットもギャブレーのその言葉に頷いてみせる。
「そうなっているな」
「だが違う?」
「そういうこと?」
「つまりは」
「そうだ。実はあの時には私もいた」
 フラットの言葉がさらに真剣なものになる。
「ポセイダルのペンタゴナ統一の戦いの時にはな」
「じゃあポセイダルのことはよく知ってる?」
「つまりは」
「そういうことですよね」
「その通りだ。そしてだ」
 フラットはさらに話していく。
「そこからバルマー軍を呼び寄せたのだ」
「そういえばポセイダルも十二支族だったっけ」
「ポセイダル家よね」
「確か」
「けれどバルマー軍は後でって」
「妙な話よね」
「確かに」
 皆このことにも気付いたのだった。
「バルマー軍を後で呼び寄せるって」
「普通に戦わないで自分達だけでそうやってって」
「何でかな」
「それは」
「最初から独立を考えていたのだ」
 ここでまた話すフラットだった。
「バルマーからのな」
「それがポセイダルの考えだったんですね」
「それでなんですか」
「あえてバルマーの戦力は最初外して自分の地盤を築いて」
「そのうえで」
「自分が統治をする」
「巧妙よね」
 わかってきたのだった。ポセイダルのことがだ。
 そしてだった。さらにだった。
「じゃあポセイダルにとっては」
「さっきの戦闘は好都合でもある&」
「目付け役かも知れないジュデッカ=ゴッツォ達が消えて」
「それで」
「そうだ。機会があればだ」
 ここでまた話すフラットだった。
「ポセイダルはあの者達を排除しようとしていた」
「俺達はその手伝いをした?」
「つまりは」
「そういうことだよな」
「これって」
「何か」
「だがそれでもだ」
 また話すフラットだった。
「君達にとってはそうしなければならなかった筈だ」
「バルマー帝国を倒すには」
「そういうことよね」
「つまりは」
「それって」
「その通りだ」
 そうではないかと言うフラットだった。
「そうだな」
「ええ、確かに」
 ダバが応えた。
「その通りです」
「君達はバルマーもまた相手にしなければならないからな」
「はい、その通りです」
 また応えるダバだった。
「バルマー帝国は僕達を侵略しようとしていますから」
「その彼等を倒さなければな」
「それが終わらないというのなだ」
「つまりそういうことだ」
 フラットもダバのその言葉を認める。
「だからここのバルマー軍を倒さなければならなかったのだ」
「そういうことですね」
「そうよね。結局は」
「避けられない戦いだったな」
 アムとレッシィはここでも話した。
「どっちにしろ戦わないといけない相手だったのね」
「ここでもな」
「そしてだな」
 ギャブレーは今の戦いの先について述べた。
「次の戦いだな」
「そのポセイダルですか」
「残る戦力はどれだけだ」
「残念だが多い」
 フラットはギャブレーにも話してきた。
「ヘビーメタルが揃っている」
「数は」
「百万だ」
 それだけいるというのだ。
「無人機を含めてだ」
「人は少ないんだな」
 キャオはこのことに突っ込みを入れた。
「そっちは」
「そうだ。ポセイダルの統治は己が絶対者となる統治だ」
 フラットの言葉はここでは一際冷たいものになっていた。
「だからだ」
「それで、ですか」
「無人機が多い」
「自分以外は治めるだけだから」
「それで」
「より言えば人を信じることもない」
 フラットはポセイダルについてさらに話してきた。
「それでだ」
「無人機でも構わないってことか」
「要するには」
「だからか」
「それで」
「そういうことだ。無人機ならばだ」
 フラットは今度は無人機について話した。
「君達にとっては造作もない相手だな」
「そうだな」
 ブレアがフラットのその言葉に応えた。
「人間が相手ならともかくだ」
「無人機なら平気だよな」
「動き単純だしな」
「反応も悪いし」
「攻撃も下手だし」
「あの連中なら」
 これは誰もがだった。今更無人機なぞ恐れることはなかった。
 それでだ。さらに話していくのだった。
「じゃあな」
「とりあえず相手はポセイダルだけか」
「そうなるよね」
「それじゃあ」
「あいつだけを倒せば」
「そういうことだ」
 フラットが微笑んだ。そのうえでの言葉だった。
「次の戦いでの戦い方がわかったな」
「ああ、ポセイダルだけを倒す」
「次の戦いではな」
「そうするか」
「一気に」
「では行こうかね」
 ネイだった。
「これから。そのポセイダルを倒しにね」
「はい、それでは」
「我々も」
 ここでだった。アントンとヘッケラーも出て来た。それでネイに応える。
「まさかポセイダルとこうも早く戦うとは思いませんでしたが」
「それでもですね」
「ああ、行くよ」
 最早完全にロンド=ベルの一員になっているネイだった。そしてそれはアントンとヘッケラーも同じだった。もうそうなっていたのだ。
 そしてだ。三人だけではなかった。
「ふふふふふ」
「あっ、マクトミンさん」
「貴方もですか」
「戦うってことですね」
「つまりは」
「その通りだ」
 マクトミンは楽しげな笑みを浮かべながら仲間達の言葉に応える。
「それでは。楽しませてもらおう」
「何か結局マクトミンさんって」
「そうよね」
「戦い好きなんだ」
「何よりも」
「しかしこれは言っておこう」
 マクトミンは彼等に対して言ってみせた。
「私は戦いは好きだがだ」
「ええ」
「それでもですか」
「そうだ。戦いは好きだが残虐ではないのだ」
 そうではないというのである。
「無駄な殺生はしない」
「それは踏まえてるんですね」
「ちゃんと」
「私は軍人だ。軍人とはそういうものだ」
 こう言うのであった。
「殺戮は好まないのだよ」
「生粋の軍人かあ」
「そういうのっていいよね」
「うんうん」
「見直したわ」
「ふふふ、ならいい」
 マクトミンは見直したという言葉に笑顔を見せた。
「では諸君。今からだ」
「そうだな、今からな」
「行くか」
「ポセイダルとの決戦にな」
 こうしてだった。彼等はその戦いに向かうのだった。ポセイダルとの戦いも遂に終止符が打たれる時が来たのであった。


第七十四話   完


                        2010・11・12 

 

第七十五話 隠れていた者

               第七十五話 隠れていた者
 ロンド=ベルは遂にポセイダルの本拠地まで来た。そうしてだった。
 フラットがここでだ。彼等に告げた。
「ポセイダルの本拠地だが」
「はい」
「それは何処ですか?」
「この惑星の何処に」
「ここだ」
 惑星の地図の一点を指差しての言葉だった。
「ここにある」
「そうですか。そこですか」
「そこなんですね」
「そうだ。ポセイダルはここにいる」」
 フラットはこうも話した。
「わかったな」
「ええ、よく」
「わかりました」
 皆フラットのその言葉に頷く。そうしてだった。
 惑星に降下した彼等はその基地に向かう。その途中は海を進んでいた。
「海ならな」
「来る敵も少ないしね」
「ヘビーメタルは海ではあまり戦えないし」
「それに市街戦とかにもならないし」
「ここはこの方がいいよな」
「だよな」
 だからなのだった。彼等は今は海中を進んでいた。無論警戒は怠らないがそれでもなのだった。進撃はかなり楽なものだった。
 そしてだった。基地まで少しの場所まで来たのだった。ここでまた言うフラットだった。
「いいな」
「今からか」
「行くか」
「これからだよな」
「いよいよ」
「そうだ。それではだ」
 フラットは彼等に対して告げてだ。そうしてだった。
「私はこれからまた沈黙に入らせてもらう」
「そういうことですね」
「あとは俺達の戦いだよな」
「そうね」
「遂に」
 こうしてだった。彼等は海から出た。目の前には巨大な港があった。
 そしてそこにだ。基地も見えた。それも巨大な基地だった。
「あそこにポセイダルがいるんだな」
「だよな」
「あいつを倒せば本当に」
「ポセイダルとの戦いも終わりだよ」
「遂に」
 こう話したうえでだった。
 彼等は港に向かう。するとすぐにだった。
「レーダーに反応!」
「その数百万!」
「基地まで続いています!」
 こうした報告が矢次早に来た。
「既に陣を整えてきています!」」
「ここはやはり」
「すぐに」
「そうだ、総員戦闘用意!」
 ブライトが応えた。
「港に上陸しそこから基地を目指す。いいな!」
「了解です!」
「それなら!」
 こうしてだった。両軍の最後の戦闘がはじまったのだった。
 ロンド=ベルはすぐに全機出撃しそのうえでだった。港を目指すのだった。
 その中には無論ロジャーもいる。ビッグオーの中でドロシーの言葉を受けていた。
「ロジャー」
「どうした、ドロシー」
「目の前の敵だけれど」
「ポセイダル軍か」
「ええ、彼等」
 その彼等のことを言うのだった。
「機械ね」
「実際に無人機が殆どだな」
「いえ」
「いえ?」
「そうじゃないわ」
 こうその独特の無機質な声で話してきた。
「人間もいるけれど」
「彼等もか」
「ええ、機械」
 そうだというのである。
「機械になっているわ」
「心がなくなっているか」
「それがポセイダルの統治なのね」
「そういうことになるな」
 ロジャーもドロシーの今の言葉に頷いた。
「結局のところは」
「そういうことね」
「それがポセイダルという女か」
 ロジャーもここでさらに悟ったのだった。
「そうだな」
「駄目ね」
 ドロシーはこう言い切った。
「それじゃあ」
「そう思うか」
「私はアンドロイドだけれど」
 このことを前置きしてだった。
「それでもわかるわ」
「それでは駄目ということがか」
「ええ」
 ロジャーに対してこくりと頷いてみせてだった。また言うのだった。
「人は人だから」
「機械ではないな」
「そう、だから」
「その通りだな。人間とはだ」
「人間とは?」
「心があるものだ」
 このことはロジャーもわかっていることだった。
 そしてだ。こうも言うのだった。
「どんな形や姿をしていてもだ」
「していても?」
「心が人間ならばだ」
 彼は言う。目の前に近付いてきた敵の大軍を見ながらだ。
「それで人間なのだ」
「それでだというのね」
「私はそう思う」
 こうも言うのだった。
「それが人間だとな」
「そうなのね」
「そうだ。そしてだ」
「そして?」
「君もだ」
 ドロシーを見てだった。
「ドロシー、君も人間なのだ」
「いえ、私は」
「心がある」
 彼が指摘するのはこのことだった。
「だからだ。君は人間なのだ」
「そうなの」
「そう考えるが。違うか」
「わからない」
 ドロシーは表情のない顔で述べた。
「私にはそれは」
「わからないか」
「けれど考えることはできる」
 それはだというのだ。
「そうかも知れない」
「そう考えてくれるんだな」
「ええ。じゃあロジャー」
「行くか」
 言いながらだ。ヘビーメタルの小隊に照準を合わせる。
 そのうえでミサイルを放ってまとめて倒す。彼等もまた戦っていた。
 戦局はロンド=ベル有利だった。百万の敵でもだ。
「所詮この程度じゃな」
「ああ、無人機じゃな」
「どうってことないな」
「今更ね」
 そうなのだった。最早無人機では彼等の相手は無理だった。
 それで次第に押していく。それでだった。
 三時間程でもう敵基地の中枢に近付いてきていた。敵の数もだ。
「半分は倒したな」
「だよな、五十万な」
「後残りは五十万ってとこか」
「大したことないか?」
「雑魚はな」
 とりあえず普通の軍はであった。
 だが彼等は油断していなかった。何故ならだ。
「それでポセイダルだよな」
「何時出て来るんだ?」
「それで」
「今にも出てきそうだが」
「一体」
「おそらくは」
 ここでまたダバが言うのだった。
「もうすぐか」
「もうすぐなの?」
「ああ、俺達は基地の中枢に近付いている」
 こうリリスにも話す。
「それなら」
「ポセイダルが遂に」
「逃げるとは思えない」
 ダバはその可能性はないと言うのだった。
「逃げるよりも」
「攻めて来るわよね」
「ポセイダルの性格を考えれば」
「そうよね。ポセイダルだから」
「ああ、絶対にうって出て来る」
 ダバは確信していた。
「俺達の前に」
「じゃあ何処から出て来るかしら」
「多分」
「多分?」
「基地の中枢だ」 
 そこだというのだ。見れば中枢は無数の砲台やミサイルランチャーがある。そこからも攻撃を繰り出してきているのは言うまでもない。
「あそこだ」
「あそこに」
「あそこで己を護りながら戦う筈だ」
「じゃああそこに近付けば」
「間違いなく出て来る」
 ダバはまた断言した。
「あそこに」
「じゃあ行こう」
「そう、そしてポセイダルを倒す」
 皆ダバの言葉に応えてその基地の中枢に迫る。そしてだった。
 最初に中枢に近付いたのは。彼等だった。
「よし、来たぜ!」
「いよいよだな」
「ポセイダルが」
 アウルにスティング、それにステラだった。無論イライジャもいる。
 彼等は中枢に近付くとだった。イライジャが指示を出した。
「まずはだ」
「ミサイルランチャーとか砲台ですね」
「それをですね」
「そういったものを潰す」
 その通りだとスティングとアウルに答える。
「いいな、それで」
「了解」
「それならですね」
「ステラもだ」
 彼女にも声をかけるイライジャだった。
「いいな」
「うん」 
 ステラはイライジャのその言葉にこくりと頷いた。
「それなら」
「余計なものをまず消す」 
 だからだというのだ。
「そうしてだな」
「はい、そうです」
 ダバはここではイライジャに対して応えた。
「まずはそういったものを御願いします」
「了解した。ただ」
 イライジャはしかしとも言う。
「今はだ」
「今は?」
「どうするんですか?」
「ここは」
「基地の中枢に迂闊に近付くな」
 こう三人に告げた。
「いいな」
「ポセイダルが何時出て来るかわからない」
「そういうことですか」
「つまりは」
「その通りだ」
 まさにそうだと言ってだった。彼も実際にビームライフルで砲台を一つ破壊した。三人もそれに続いて遠距離攻撃で砲台等を破壊していく。
 砲台もミサイルランチャーも全て破壊した。するとだった。
「来たか」
「!?その声は」
「間違いない」
 ネイとマクトミンが声をあげた。
「ポセイダルだよ」
「遂に出て来たか」
 彼等が言うとであった。黄金のヘビーメタルが姿を現した。それを見てだった。
 まずはアルトが言った。
「ネイのオージェに似ているな」
「そうだな」
 ミシェイルがアルトの言葉に応える。
「というよりはそっくりだな」
「そうだな。ということは」
「そうさ、レプリカだよ」 
 ネイが二人に対して述べた。
「あたしのオージェはね」
「じゃああれですか」
 ルカがネイに対して問うた。
「あの黄金のヘビーメタルがオリジナルですね」
「そうさ、名前はオージ」
 その名前も言うネイだった。
「伝説のヘビーメタルだよ」
「まさかそれが残っていたとはな」
 こう言ったのはマクトミンだった。
「そして動いているとは」
「あれっ、実在が疑われていた?」
「まさか」
「あのヘビーメタルって」
「そんなのだったんだ」
「そうさ」
 ネイは今度は仲間達に答えた。
「ポセイダル自ら戦場に立つなんてことがもう考えれなかったからね」
「それでだ。まさかまだあるとはな」
 マクトミンもまた言う。
「そう考えていてのことだった」
「それであのマシンの性能は?」
 コウはそれが気になっていた。
「どんな感じなんだ?」
「絶対に洒落にならない強さだぜ」
 キースがそのコウに返す。
「もうわかるだろ、それは」
「言われてみればそうだな」
 コウもキースの言葉に納得した顔で頷く。
「それも」
「だろ?まあ碌でもない強さだぜ」
「それならばだ」
 バニングは二人の会話から一つの決断を下した。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「一体」
「どうされますか?」
「そうだ、周囲を囲んでそうして倒していく」
 こうするのだった。
「それでいいな」
「まあそれしかないですね」
「結局はそうですね」
「敵は殆ど倒しましたし」
 ヘイトにモンシア、アデルも言う。
「じゃあここは」
「周囲を包囲して」
「そのうえで」
「総員オージを包囲する」
 バニングはあらためて指示を出した。
「しかしだ」
「バスターランチャーには注意ですね」
「そういうことですね」
「あれには」
「そうだ、密集はするな」
 それはだというのだ。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「それならです」
「散開しつつ包囲して」
「あのオージを」
 こうしてだった。方針が決まったのだった。
 全員でオージを散開しつつ包囲してだった。一気に攻めるのだった。
 その中心にはだ。ダバがいた。彼はポセイダルに対して問う。
「ポセイダル?」
「カモン=マイロードか」
 この名で問うのだった。
「遂にここまで来たか」
「そうだ、御前と戦う為にだ」
 それでだというのだった。
「ここまで来たんだ」
「それはわかった」
「わかった!?」
「聞いた」
 こうダバに言うのだった。
「話はな」
「しかしなんだな」
「貴様の言葉は覚えるに値しない」
 ダバに言い返してきた。
「そういうことだ」
「ならそれでいい!」
「いいのだな」
「ポセイダル、貴様を倒してだ!」
「そうよ。ペンタゴナを解放するわ!」
 リリスも言う。こうしてだった。
 全員でポセイダルのオージに攻撃を仕掛ける。しかしだった。
「くっ、素早い!」
「何て速さなの!」
 オージは巧みに攻撃をかわす。そうしてだった。
 ロンド=ベルの攻撃をかわす。右に左に。
「甘いな」
「甘いかよ!」
「そうだ、甘い」
 ムウのレジェンドのドラグーンをかわしながら彼に言い返す。
「この程度の攻撃で私はだ」
「倒せないって言うんだな」
「如何にも」
 その通りだというのである。
「そういうことだ」
「くっ、流石はラスボスだな」
 ムウは苦い顔で呟いた。
「そう簡単にはってことかよ」
「それはわかっているのでは?」
 ガムリンがその彼に問う。
「ポセイダル軍との最後の戦いですし」
「まあそれはそうだけれどな」
「じゃあ別に今言っても」
「それでも言うんだよ」
 まだ言うムウだった。
「ったくよ、最後の最後位な」
「楽にっていうんですね」
「そうだよ、勝ちたいよ」
 また言う彼だった。
「この状況はな」
「まあそれでもだな」
 今言ったのはキースだった。エメラルドグリーンのメビウスで突っ込む。
「数撃てばな」
「当たるってのかよ」
「弾幕だよ、弾幕」
 ムウに具体的に話す。
「それで行こうぜ」
「ちっ、陳腐だがそれしかないか」
「そういうことさ。それじゃあな」
「ああ、じゃあな」
「やるか」
「そうするか」
 こうしてだった。彼等はとにかく集中攻撃を浴びせていく。その中でだった。
「段々だけれどな」
「そうよね」
「あいつの動きが何か」
「わかってきたよな」
「ええ」
 何度も何度もかわされているうちにだったのだ。
 癖がわかってきた。そういうことだった。
「よく右に動く?」
「っていうかあれって」
「何か」
「クワサンの動きに似てる?」
 このことに気付いたのである。
「クワサンのヘビーメタルの操縦がずっと上手くなったみたいな」
「そうした動きだよな」
「だよな」
「そういうことか」
 ここで言ったのはナタルだった。
「クワサン=オリビーへの刷り込みはだ」
「それはポセイダルをベースにしていたのか」
「はい」
 ヘンケンの問いにもこくりと頷いて返す。
「そうではないでしょうか」
「成程。それではだな」
「クワサン=オリビーの動きをサンプルとして考えて」
「それで攻撃を仕掛けるか」
「はい、そうしてはどうでしょうか」
「よし、わかった」
 ヘンケンはナタルのその提案に頷いた。
「それではだ」
「そうしてくれますか」
「そうする。それではだ」
 ヘンケンは今度はアドレアに声をかけた。
「いいか」
「了解、コンピューターで照合を出します」
 こう言ってなのだった。すぐにコンピューターに入力をしてだった。
 ラーディッシュにそのデータを入力してだ。オージにあらためて攻撃を放った。
「これなら!」
「むっ!?」
 ラーディッシュの主砲がオージを撃った。まだ動きを止めないがそれでもだった。
「当たったよな」
「ああ、かわしきれなかったな」
「確かに」
 ロンド=ベルの面々はそれを見て言う。
「じゃあこっちも」
「クワサンのデータを入れて」
「そうして戦うか」
「これから」
 こうしてだった。彼等は全員自機にクワサンのデータを入力した。そのうえであらためて攻撃を仕掛けるとなのであった。
 次々と当たるようになった。しかもだ。
 オージの攻撃もだ。かわせた。
「本当にそうだったんだな」
「クワサンの洗脳はポセイダルだったんだ」
「やっぱり」
「そうだったの」
「そういえば」
 ダバも気付いたのだった。
「ポセイダルはオリビーを通じて俺を見ていたな」
「だから余計になのね」
「ああ、だからだ」
 こうリリスに話すのだった。
「だからオリビーは」
「何かポセイダルも」
「好きになれないな」
 ダバはここで顔を曇らせて言った。
「こうしたやり方は」
「うん、私も」
 それはリリスも同じだった。
「こんなやり方は」
「許せない、それならだ」
「ダバ、いいか」
 ここでギャブレーが彼に声をかけてきた。
「クワサン殿の動きならばだ」
「ギャブレー君、何か考えがあるのか」
「あるからこう言ってきたのだ」
 そうだというのである。
「それでだ。いいか」
「わかった」
 ダバもギャブレーのその言葉に頷いた。
「それじゃあ今から」
「動きを合わせるぞ」
 またダバに告げた。
「それでいいな」
「わかった。じゃあ合わせる」
「バスターランチャーだ」
 ギャブレーは早速そのバスターランチャーを出した。ダバもだ。
 それで二人で動きを合わせてだ。そうしてだった。
「これで!」
「この戦いは終わりだ!」
 こう叫んでバスターランチャーを放った。それでだった。
 二条の光がポセイダルに迫る。それは。
「くっ!」
「終わりだオルドナ=ポセイダル!」
「これでだ!」
 二人は勝利を確信して叫んだ。そして。
 二条の光がオージを貫いた。その動きが完全に止まった。
「やった!」
「これで!」
「ここでの戦いは終わりね!」
「いや」
 勝利に沸き返ろうとする彼等にだ。フラットが言ってきたのだった。
「残念だがそうではない」
「えっ、フラットさんそれでも」
「もうオージは動きませんけれど」
「それでもですか?」
「まさかまだ」
「この時まで待っていた」
 フラットはいぶかしむ彼等にまた言うのだった。
「実はだ」
「待っていたって」
「ポセイダルを倒すことを?」
「それなら別に何も言う必要ないんじゃ」
「ねえ」
「違う」
 また言い返すフラットだった。
「あのポセイダルはポセイダルではない」
「!?まさか」
 その言葉にだ。ショウがすぐに察した。
「影武者か」
「わかったようだな」
「よくあることだからな」
 ショウはこうフラットに言った。
「そうしたことは」
「そうだ。それでだ。彼女は」
「その通りだ」
 ここでだ。何処からか声がしてきた。
「フラット、やはり私を裏切ったな」
「貴方ね」
「そうだ」
 そしてだった。角が生えた白いヘビーメタルが出て来た。それは。
「あれは」
「どうしたの、レッシィ」
「あのヘビーメタルは」
「そういえば見たことのないやつだけれど」
 アムは強張る顔のレッシィとは違いいぶかしむ顔だった。
「何、あれ」
「ブラッドテンプルではないのか」
「ブラッドテンプルって確か」
「そうさ、ポセイダルが聖戦の時に使っていたっていうあれさ」
「あのA級ヘビーメタルが!?」
「まさか現存しているなんて」
「何っ、じゃああれは」
「そう、そのまさかだ」
 そこに乗っていたのはだ。彼だった。
「アマンダラ=カマンダラ!」
「じゃああんたが!」
「本当のポセイダルっていうのかよ!」
「つまりは!」
「その通りだ」
 その男アマンダラ、真のポセイダルからの言葉だった。
「私がオルドナ=ポセイダルなのだよ」
「じゃああの女は」
「一体」
「ミアン=クウ=ハウ=アッシャー」
 フラットが言った。
「それが彼女の名前だ」
「何ッ、その名前は」
 ギャブレーがその名前を聞いて言った。
「あのテンプルナイツの」
「かつての私と同じくな」
「自分の側近を影武者にしていたのかよ」
「つまりは」
「それでか」
「自分は影で」
 皆それは納得した。しかしだった。
 ここでだ。ダバが言うのだった。
「しかしだ」
「どうしたんだ、ダバ」
「どうして俺達に補給をしていたんだ」
 こうキャオにも話す。
「ポセイダルが。どうしてなんだ」
「それを決まっている」
 そのポセイダルの言葉だ。見ればその顔は若い。髭も付け髭だった。サングラスも外した彼は整った顔の青年に他ならなかった。
「カモン=マイロード君」
「その名前で呼ぶか!」
「そうだ。その理由はだ」
 ポセイダルは話してきた。
「戦争をコントロールする為だ」
「戦争を!?」
「その通りだ。世界の活性化の為にはだ」
 ポセイダルはそこから話すのだった。
「反乱勢力が必要なのだよ」
「それが俺達だっていうのか」
「そういうことだ」
 傲然とした言葉だった。
「その通りだよ」
「おい、ふざけんじゃねえぞ!」
「そうよ!」
 彼の言葉に真っ先に言ってきたのは甲児とアスカだった。
「手前何様なんだよ!」
「神にでもなったつもり!?」
「人間は人間だ!」
 光もだった。
「そんな考えは間違ってる!」
「そうだ!」
 ダバも言う。
「それは傲慢だ!」
「君もそう言うのか」
「その為に何人の命が失われたと思っているんだ!」
 ダバは激昂していた。しかしだった。
 ポセイダルは平然としてだ。こう言うのであった。
「そんなものはだ」
「何だというんだ!」
「感傷に過ぎんよ」
 こう言うだけだった。
「全ては正しき支配に必要な行為なのだ」
「おいおい、こいつはよ」
「ああ、そうだよな」
「色々な意味で最低みたいだな」
 ケーンにタップ、ライトも嫌悪を見せる。
「傲慢もここまで来るとな」
「もう服着てそれが歩いてるって感じだよな」
「全くだな」
「アマンダラ=カマンダラ」 
 ダバは彼をこの名前で呼んだ。
「神になったつもりか!」
「その通りだよ、カモン君」
 アマンダラはこの名前で呼ぶ。
「私は神なのだ」
「言うものだな」
 サンドマンの目に冷たいものが宿った。
「それを言ったものはだ」
「一つの種類しかない」
 マイヨもだった。
「私達は見てきたのだからな」
「そうだ。しかしだ」
「あの男は気付いていない」
 彼等はもうわかっていることだった。だがポセイダルだけはそれを知らずにだ。今度はその女、ポセイダルだった女に言うのであった。
「ミアンよ」
「・・・・・・・・・」
「神の鉄槌をだ」
「手前が下すっていうのかよ」
「その通りだよ」
 忍にも同じく超だった。
「それを受けてもらうのだ、君達に」
「シャピロと同じだな」
「ああ、そうだね」
「全くね」
「そのままだな」
 沙羅、雅人、亮も同じ考えだった。
「こいつは。何処までも」
「ああいう類の奴なんだね」
「同じ穴の狢か」
「藤原、しかしだ」
「ああ、わかってるさ」
 忍はアランの言葉に応えた。目はその男を見据えたままだ。
「こいつは俺達の獲物じゃねえ」
「そういうことだ」
「やれよ、ダバ」
 こう言ってだ。そのダバを見るのであった。
「ここはな」
「では行くのだ」
 ポセイダルの声がミアンに向けられた。しかしだった。
 ここでだ。フラットが言った。
「お待ちなさい」
「んっ!?」
「フラットさん!?」
「ミアン=クウ=ハウ=アッシャー!」
 彼女への言葉だった。
「もうお止めなさい」
「フラットか」
「それ以上その男に尽くすことはありません」
 こうミアンに告げるのだった。
「最早」
「フラット?」
 そしてだった。ミアンも反応を見せたのだった。
「フル=フラット?」
「そう、私です」
 また声をかけるフラットだった。
「貴女と共にテンプルナイツとして戦った」
「あの」
「そう、フル=フラットです」
「フラット・・・・・・」
 その名前を聞いてだった。さらに言うミアンだった。
「ああ・・・・・・」
「あれっ、変わった!?」
「だよな」
「何か反応が」
「変わった!?」
「ここで」
 ロンド=ベルの面々もそれに気付いた。そしてであった。
 見続けているとだ。ミアンの言葉がさらに出た。
「何故私はここに」
「何っ、これは」
 ここでポセイダルも言うのだった。
「バイオリレーションの効果が切れたというのか」
「そう、私は」
 ミアンもポセイダルを見て呟く。ここでフラットはさらに彼女に話す。
「もう止めましょう」
「止める」
「そう、あのポセイダルは昔のポセイダルではありません」
 こう話すのだった。
「己の野望の為に人を踏みにじり」
「だよなあ」
「どう見てもな」
「そういう奴にしかな」
「見えないわよ」
 誰もがポセイダルを見抜いてしまっていた。
「あいつはな」
「最低の人間の一つよ」
「最早な」
「そうなってるわね」
「それを恥じない」
 フラットの言葉はその中でも続いていた。
「その様な男にこれ以上自分の運命を委ねることはないのです」
「フラットよ」
 ポセイダルはそのフラットを見据えて言ってきた。
「サードスターとその治外法権を与えていたな」
「はい」
 フラットもそれは認めた。こくりと頷いてみせる。
「その通りです」
「それでか」
 ポセイダルの言葉には怒りが含まれていた。
「永遠の若さも与えてやった恩を忘れて」
「与えてやる、ね」
「そこですね」
 卯兎美が華都美に話していた。
「そこにこそですね」
「ええ、ポセイダルという人間の心が出ているわ」
 見れば華都美の顔には嫌悪が出ていた。
「あからさまにね」
「そうですね、本当に」
 そしてだった。フラットも言い返していた。
「それが傲慢だというのです」
「何っ!?」
「昔の貴方はそんなことはなかった」
「私に反逆するというのか」
「貴方を見ることがそれというのなら」
「おのれ・・・・・・」
 フラットが今いるグランガランに向かおうとする。しかしであった。
 彼は既に囲まれていた。完全にだ。
「おいおい、行かせないっての」
「行きたいってのならよ」
「俺達を倒してもらおうか」
「ここはね」
「おのれ、ミアン」
 ミアンのオージを見る。しかしだった。
 彼女もだ。動かないのだった。
「何をしている」
「ポセイダル様、私は」
「ロンド=ベルの者達に神の鉄槌を下すのだ」
「まだ言ってるのか、こいつは」
 宙も完全に呆れていた。
「神様気取りもいい加減にしやがれってんだ」
「けれど自分ではわかっていないのね」
「ああ、そうだな」
 美和にも答える宙だった。
「手前だけはな」
「今まで何度も見てきた姿だけれど」
「滑稽だな」
「ええ、そうね」
 まさにそうだった。本人が気付かないだけでだ。
 それでだった。ミアンも言うのであった。
「私はもう」
「何だというのだ」
「疲れました・・・・・・」
 こう言ってだった。オージがブラッドテンプルから離れていく。
 そしてそのうえでだ。動かなくなったのだった。
「これでもう・・・・・・」
「バイオリレーションの支配を受け付けないというのか」
「もう私は」
「これはどういうことだ」
「もうお止め下さい」
 そのミアンの言葉だった。
「これ以上戦ってもです」
「どうだというのだ」
「何になりましょう。もう」
 そしてだ。ミアンの次の言葉は。
「全ては終わったのです」
「終わったというのか」
「彼等には勝てません。それに仮に倒したところで」
「馬鹿な!」
 そこから先の言葉は言わせなかった。彼自身の為に。
「まだ負けてはおらん!」
「おわかりになられませんか」
「この私にバイオリレーションがある限り」
 あくまでそれにこだわるのだった。
「負けることは有り得ん!」
「まだおわかりになられませんか」
「邪魔立てするというのならだ!」
「だからよ」
「それはもうできないっての」
 オージの周りもだった。ロンド=ベルの面々が囲んでしまった。それで彼女を攻撃させずポセイダルの動きを封じてみせたのである。
「もうあんたにはな」
「何の力もないっての」
「只の裸の王様なんだよ」
「もうな」
「おのれ、貴様等・・・・・・」
「バイオリレーション・・・・・・」
 ミアンもその装置について言った。
「そんなものがなくとも私は貴方に・・・・・・」
「おのれ、おのれ!」
「さあ、もういいな」
「おっさん、覚悟はいいな」
「話したいことは終わったか?」
 ロンド=ベルの面々が彼を囲んだうえで言ってきた。
「もう終わらせるからな」
「それでいいよな」
「これでな」
「貴様等・・・・・・」
「終わりだポセイダル!」
 ダバが彼に告げた。
「貴様は完全にだ!」
「まだ言うのか」
「おい、ダバ!」
 キャオがここでダバに言ってきた。
「見つけたぜ!」
「そうか、キャオ」
「ああ、後ろだ」
 こうダバに告げるのである。
「あいつの後ろにあるぜ」
「そうか、それならだ!」
「何っ、まさか」
「そうだ、そのまさかだ!」
 言いながらだった。素早い動きでブラッドテンプルの後ろに回った。その動きはポセイダルでも見切れないまでだった。
「速い!?この私よりも」
「だから言った筈だ!」
 振り向こうとする彼への言葉であった。そして。
 エルガイムマークツーの手にマインを持ってだ。それをブラッドテンプルの後ろにある巨大な装置に対して投げ付けたのであった。
「よし!」
「くっ、やらせはしない!」
 ポセイダルは何とか防ごうとする。しかしそれは間に合わない。 
 マインがその装置を直撃してだ。破壊してしまったのだ。
 装置が破壊された瞬間にだ。ポセイダルの様子が一変した。
「ぐわああああああああ・・・・・・!」
「えっ、まさか」
「ポセイダルが!?」
「急に老けていくけれど」
「これって」
「老化だ」
 フラットが驚くロンド=ベルの面々に対して話した。
「バイオリレーションが破壊されたことによってそれを留めることができなくなったのだ」
「その永遠の若さを」
「それでか」
「ああなったんだ」
「今は」
「そうだ、それでだ」
 また話すフラットだった。
「ああして。今まで止めていた老化が急激に進行しているのだ」
「じゃああのまま?」
「あいつは死ぬ?」
「年老いて」
「死ぬまではいかないがだ」
 それでもだというのである。
「少なくともその力は相当落ちる」
「そうか、それなら」
「後はもう」
「止めをさすだけか」
「そうですよね」
「そういうことだ。それではだ」
 フラットは今度はだ。ダバに顔を向けて言うのであった。
「わかっているな」
「はい」
 ダバも彼女の言葉にこくりと頷く。
「俺がですね」
「君にはそれをする資格がある」
 こうダバに告げるフラットだった。
「そして権利もだ」
「権利も」
「ヤーマン王家の者として」
 権利の根拠はこれであった。
「そしてポセイダルに対して立ち上がった者として」
「だからこそ」
「そうだ、君が全てを終わらせるのだ」
 ダバに言った。そしてダバもだ。
 ここでもバスターランチャーを出した。そしてだ。
「これで!」
「くっ、カモン=マイロード!」
「終わりだ。行けーーーーーーーーーっ!」
 その砲撃によってだった。ブラッドテンプルを撃ち抜いた。
 光が貫きそうしてだった。ヘビーメタルは動きを完全に止めてしまった。
 各部から火花を出しながらだ。ポセイダルは言う。
「このブラッドテンプルが、私が敗れるだと」
「御前はその傲慢さ故に敗れたんだ!」
 こう言い返すダバだった。
「これで全ては終わりだ!」
「馬鹿な・・・・・・うおおおおおおおっ!!」
 炎に包まれてだった。ポセイダルは姿を消した。
 ブラッドテンプルも爆発し全ては消え去った。これがペンタゴナの戦いの終わるだった。
「終わったな」
「そうね」
「これでね」
 皆このことにまずは一つの終焉を感じていた。
「それでフラットさん」
「貴女はどうされるんですか?」
「それで」
「前に言った通りだ」
 こう返すフラットだった。
「私は人目につかない場所で隠棲させてもらう」
「そうされますか」
「もう」
「これで、ですか」
「そうだ。ミアンと共にゆっくりと過ごさせてもらう」
 見ればミアンはまだ生きていた。オージもかろうじて動くようである。
「二人でな。静かに死に入ることにする」
「そうされるのか」
 ギャブレーが感慨深い顔で彼女の言葉を聞いていた。
「貴女は」
「もう何も望むものはない」
 全てを悟った達観した言葉だった。
「だからだ。それではな」
「ああ、それじゃあな」
「お元気で」
「これで」
 ロンド=ベルの面々も別れの言葉を出す。そうしてであった。 
 フラットはミアンと共に何処かに消えた。残ったのはロンド=ベルだけだった。
 生き残ったポセイダル軍の者達も投降し武装解除された後で基地に入る。そこで整備と補給を受けながらだった。ダバが言うのだった。
「オルドナ=ポセイダル」
「ああ、死んだな」
「これで遂にね」
 キャオとアムが彼の言葉に応える。
「こえでもうな」
「終わったな」
「ペンタゴナを裏から操り全てを支配しようとしていた」
「とんでもない奴だな」
「ええ。けれど」
 ここで言うのはアムだった。
「可哀想な人だったのかも知れないわね」
「えっ、何でだよそれって」
 キャオはアムの今の言葉に思わず問い返した。
「あいつが可哀想なんだよ」
「だって。信じられるのはね」
 アムはキャオに応える形でさらに話すのだった。
「誰もいなくて」
「それでか」
「愛していた筈のミアンまでああして操っていたのよ」
「信じられるのは」
 レッシィがここまで聞いて言う。
「自分だけか」
「ええ、そうじゃない」
「独裁者の典型的なタイプね」
「だからそう思うんだけれどね」
「そうね。けれど」
 今言ったのはリリスだった。
「ポセイダルも最初はああいう人じゃなかったと思うの」
「そうだな」
 リリスの今の言葉に頷いたのはダバだった。
「バルマー人自体が。元々はな」
「そうよね、やっぱり」
「俺もそう思う」
 こう話すダバだった。
「けれど権力を握ってそれに固執するあまり」
「それでね」
「ああなったしまったんだな」
 そのことにだ。皆思うところがあった。そこに見たものはアムの言う通りのものだった。なれの果てを見て思ったことであった。
 そしてだった。再び旅に出る時にだ。ブライトがダバ達に話してきた。
「ダバ君」
「はい」
「今まで協力してくれて有り難う」
「いえ、こちらこそ」
 お互いへの礼からだった。
「これでペンタゴナは自由になります」
「そうだな。そして」
「そして?」
「これから先の戦いはだ」
「はい、わかっています」
 ダバは確かな顔でブライトの言葉に頷いた。
「宇宙の為の戦いですね」
「ペンタゴナは解放されたがそれでもな」
「宇宙の為の戦いは続きますね」
「共に来てくれるか」
「勿論です」
 返答は一つしかなかった。
「だからこそここにいるんですから」
「そうか、だからか」
「はい、それではこれからも」
「宜しくな」
 こう言葉を交えさせてであった。
 ペンタゴナを離れる彼等はだ。いよいよその目的地に向かうのだった。マクトミンがこの話をミリアリアから聞いて言うのであった。
「ふむ、三連のか」
「はい、そこで宇宙の危機が迫っていますので」
「ポセイダルの話が小さくなるな」
 マクトミンは話を聞いてこう言った。
「かなり大きな話だと思っていたのだがな」
「全くだね」
 ネイもそれに頷く。
「宇宙の危機かい。そう来るとね」
「途方もない話になるがな」
「しかしです」
「宇宙の危機はそのままペンタゴナの危機になります」
 今言ったのはアントンとヘッケラーだった。
「このまま向かいです」
「そして我々も」
「それはわかってるよ」
 ネイはすぐにその二人の言葉に応えた。
「充分にね」
「はい、それではです」
「我々も」
「乗りかかった船だよ」
 これがネイの言葉だった。
「それでいいね」
「はい、こうなればです」
「最後までロンド=ベルにいましょう」
「ペンタゴナの護りも既にあるしな」
 マクトミンはそれについては危惧していなかった。こう言うのであった。
「レジスタンスの者達がそのまま政府軍となった」
「それにポセイダル軍の残りも入ったしね」
「だからそれは気にしなくていい」
 こうネイにも言う。
「確かに宇宙怪獣やプロトデビルン達もいるがな」
「それでもだね」
「その通りだ。何とかなる」
 それでいいというのであった。そしてだった。
「さて、その三連太陽だが」
「これから向かいます」
 遥が述べた。
「最早そこまでに何の障害もありません」
「いよいよですね」
 綾人の顔が真剣なものになっていた。
「僕達のこの長い旅の一番の目的が遂に」
「そうね。いよいよだね」
 エルフィが言ってきた。
「長かったね、ここまで」
「ええ、本当に」
 それは八雲も言う。
「本当に長い戦いでしたけれど」
「とにかく色々な戦いがあったわね」
 キムも今は感慨に耽っている。
「それでもいよいよ」
「まあそれで終わりじゃないけれどね」
 今言ったのは海だった。
「バルマー帝国もいるし」
「プロトデビルンもだな」
「それとバッフ=クランもですわ」
 光と風はそうした勢力のことを考えていた。
「戦いはまだまだだ」
「続きますわね」
「それによ」
 プリメーラはその顔を怒らせていた。
「あの連中」
「あの連中?誰だ?」
「グラ何とかっていたじゃない。バルマーに」
 その顔で光に返すのだった。
「あいつ等が一番むかつくわ」
「そうだな。あの連中もいたな」
 ランティスがプリメーラのその言葉に応えた。
「グラドスが」
「あっ、こりゃまずいで」
 カルディナがゴラオンのモニターを見ながら言った。
「丁度進路にグラドスの本星あるで」
「何っ、それならだ!」
 それを聞いて叫んだのはジュドーだった。
「グラドスの奴等まとめて殺してやるぜ!」
「おいおい、また随分と過激だな」
 カミーユがいささか引きながらそのジュドーに言った。
「殺すのか」
「あいつ等だけは許せないからな」
 だからだと答えるジュドーだった。
「それはカミーユさんだって同じだろ?」
「確かにな」
 それは否定しないカミーユだった。
「あの連中は俺も好きにはなれない」
「だからだよ。殺してやるんだよ」
 ジュドーも怒りを露わにさせていた。
「地球でのことは忘れないからな」
「少なくとも捕虜を取るつもりはないな」
 カミーユも言う。
「やってやるか」
「そうですね」
 ラクスもだった。
「グラドス人は。銀河にとって有害でしかありません」
「ああした考えでいる限りはですね」
 バルトフェルドもラクスと同じ考えだった。
「それじゃあ。グラドス軍が出て来たら」
「はい、倒しましょう」
 ダコスタも頷く。そうしてだった。
 彼等はグラドスとの戦いも念頭に置きながら三連惑星に向かうのであった。戦いは一つは終わったが。また一つの戦いがはじまろうとしていたのだった。


第七十五話   完


                         2010・11・18
 

 

第七十六話 突きつけられたもの

                第七十六話 突きつけられたもの
 三連惑星に向かうロンド=ベル。その中でだった。
 ギャブレーがだ。一同に話をしていた。
「グラドスは我々もよく知っていた」
「いい意味ではなくだが」
 マクトミンも言うのだった。
「非常に高慢で嫌な奴等だった」
「ペンタゴナにも応援で来ることがあったが」
「その中でだ。実に好き勝手やってくれた」
「忌々しいことにな」
 こう二人で話すのだった。ペンタゴナでの彼等のことをだ。
「捕虜は皆殺しにする」
「文化は破壊する」
「知っていると思うがな」
「とにかく酷いものだった」
「何処でも同じなんだな」
 神宮寺がそれを聞いて言った。
「あの連中は」
「そうだ」
 ギャブレーは神宮寺に対しても答えた。
「あのままだった」
「最低ですね」
 麗も悪感情を隠さない。
「まさに」
「そうよね。あの連中なら」
「容赦してはいけませんね」
 マリと猿丸がここで言った。
「捕虜にしようとしても油断して後ろから撃ってくるし」
「そうした人達ですから」
「あの連中程嫌な奴等はいないね」
 ネイも忌々しげな口調だった。
「だからポセイダルも奴等はあまり入れようとしなかったんだよ」
「ああ、バルマーの中でも嫌われてたんだ」
「その通りです」
 ロゼがコウに答えた。
「マーグ様にしても私にしてもです」
「使いたくなかった」
 実際にそうだとだ。マーグも話す。
「戦場以外の行動があまりにも酷かったからな」
「そうした相手ですから」
 ロゼもその顔に嫌悪を見せていた。
「正直嫌な戦いになりますね」
「いや、話は簡単だ」
 フォッカーは全てを決めた顔だった。
「もう腹をくくるんだな」
「腹をってことは」
「つまりは」
「今回も」
「皆殺しにするしかないからな」
 これがフォッカーの考えだった。
「まあそれでもだ」
「嫌じゃないですしね」
「あの連中の相手は」
「もうあっさりと殺しちゃって」
「あんまりな奴等だからな」
 フォッカーも彼等を嫌悪していた。それならばであった。
「正直。何をしても良心に呵責を感じないな」
「最低な奴等ですからね」
「本当にね」
 フィリスとエルフィも言う。
「むしろ放っておいたらそれだけで」
「彼等に殺される人達が出ますから」
「あの連中って確か」
 ジャックが忌々しげな顔で話した。
「占領した星の人口の三割を殺したりしたんだっけ」
「えっ、三割!?」
「そこまで殺したって」
「そうだったんだ」
 皆このことにはだ。唖然となった。
「とんでもない奴等だな」
「バルマー軍の中でもそこまでって」
「ちょっと」
「ないよな」
「だが事実だ」
 ヴィレッタがここで話す。
「そしてその星の文化を徹底的に破壊した」
「それは忘れないんだ」
「本当に戦争以外のことで最悪な連中だよな」
「全くな」
「最低ね」
「だからこそですね」
 ラクスがここでも話した。
「彼等は。何があっても」
「殺すしかないわね」
 タリアの今の言葉には悲しみはなかった。むしろ悪を憎むものがあった。
 そしてその声でだ。彼女はこう言うのであった。
「一人残らずね」
「よし、それではだ」
 ここでだった。グローバルが言った。
「戦いになればだ」
「はい」
「どうしますか」
「その時は」
「核を使う」
 それをだというのだった。
「いいな、それでまとめて倒すのだ」
「そうですね。それがいいですね」
 輝もグローバルの言葉に頷く。
「相手が相手ですから」
「それではだ。全軍に核兵器を渡す」
 グローバルは言い切った。
「いいな、それではだ」
「はい、それでは」
「行きますね」
 こうしてだった。彼等は核まで装備してだった。そのうえで向かうのだった。
 するとだ。前方に出て来たのであった。
「早速出て来た?」
「グラドス軍かよ」
「じゃあ一気に潰すか」
「皆殺しにしてやりましょう」
 こう話してだった。彼等はそのまま進もうとする。しかしだった。
「あれっ、これって」
「この反応って」
「グラドスと違う?」
「これは」
 見ればだった。彼等はだ。
「プロトデビルンです」
「指揮官はどうやら」
「あれみたいですけれど」
 ここで話したのはヒカリとケイスケ、それにマヤだった。
「いつも美って言ってる」
「でかいのもいますよ」
「二人一緒に」
「ははははは、久し振りだなロンド=ベル!」
 そのガビルからも言ってきたのだった。
「ここで巡り会ったのも運命美!」
「ああ、そうだな!」
 バサラがガビルのその言葉に応える。
「あんたと会うのも何かの縁だぜ!」
「熱気バサラか!久しいな!」
「元気そうで何よりだぜ!」
「それでは御前の美を見せてもらおう!」
 実に楽しそうに話す二人だった。
「その情熱美をな!」
「ああ、見せてやるぜ!」
 バサラが真っ先に出撃した。そしてだった。 
 ギターを手にしてだ。歌いはじめた。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーっ!」
「ちょっとバサラ」
 ミレーヌが次に出て来てだ。バサラに言うのだった。
「いつものことだけれど」
「んっ、どうしたんだ?」
「あんた何考えてるのよ」
 こう呆れて言うのだった。
「そもそもどうしてここにプロトデビルンがいるか考えないの?」
「そりゃスピリチアが欲しいからだろ」
 何といった顔で返すバサラだった。
「だからだろ?」
「それはそうだけれど」
「じゃあ話は簡単だろ。この連中にはな」
「歌うっていうの?」
「ああ、そうだ!」
 まさにその通りだとだ。楽しげに笑って言うバサラだった。
「この連中に俺の歌を聴かせてやるぜ!」
「あっきれた」
 実際にこう言ってしまうミレーヌだった。
「全くあんたは」
「じゃあ御前は行かないのかよ」
「そういう訳にいかないでしょ」
 ミレーヌも何だかんだであった。
「行くわよ、それで歌うわよ」
「そうだな」
 ここでレイも来た。
「無鉄砲だが今はそれが一番だ」
「何かいつもこうなのよね」
 ミレーヌは今度はぼやくのだった。
「バサラって」
「しかしだ」
「しかしなのね」
「バサラはそれだからいい」
 そうだというのだった。
「バサラらしい」
「そうなるのね」
「では聞くがだ」
「ええ」
「バサラが大人しかったらどうだ」
「そんなの想像もできないわよ」
 これは誰もがだった。考えもできないことだった。
「ちょっと。そんなのは」
「そういうことだ」
「つまりは。だから」
「俺達はそのバサラをフォローする」
「・・・・・・・・・」
 ビヒーダが無言で頷く。
「それで行くぞ」
「全く。破天荒なんだから」
「行くぜ!」
 しかしバサラは人の話を聞かない。全く、でった。
「美を見せてもらうぜ!」
「敵同士であってもだ」
 ガビルも実に楽しそうである。
「その心、美しい」
「そう言ってくれるか」
「これこそまさに」
 その彼の言葉を受けてだ。全員で言うのだった。
「はい、こっからだよな」
「いつものあれだな」
「ああ、それじゃあな」
「今度の美は」
「宿敵美!」
 これであった。
「敵であろうとも美はあるものだ!」
「随分と変わった美だな」
 アルトもそれを聞いて言う。
「宿敵も美しいのか」
「そうだよな。本当にな」
「何でも美ですよね」
 ミシェルとルカも言う。
「聞いていて慣れたけれどな」
「それでも今回は随分ユニークですね」
「変わっているのもまたいい」
 しかもガビルは彼等の話を聞いていた。
「異形美!これだ!」
「今度はまだわかるな」
「そうね」
 オズマとキャサリンのやり取りだ。
「今の言葉はな」
「まだ何とかね」
「ではグラビルよ」
「ガオオオオオオン!」
 グラビルがガビルの言葉に応える。
「そしてバルゴもだな」
「行かせてもらおう」
「生きていて何よりだ」
 ガビルは微笑みバルゴに対して話す。
「死んだと思ったがな」
「どういうことか生きている」
 こう言うバルゴだった。
「それは何よりだ」
「全くだな。それではだ」
「うむ、今度はロンド=ベルだ」
 こうしてだった。彼等の方からロンド=ベルに向かうのだった。
 両軍の戦いがはじまる。その中でだった。
 バサラがギターをかき鳴らす。愛機の中でだ。
「よし、歌うぜ!」
「ええ、バサラ!」
 ミレーヌも彼の横に来ている。
「こうなったら乗るわよ!」
「よし、俺について来い!」
「何言ってるのよ。ついて来るのはね」
「何だってんだよ」
「あんたよ!」
 今はミレーヌもハイテンションになっていた。
「いいわね、それは!」
「言うな、それはまた」
「ええ、言うわよ」
 実際にそうだというのであった。
「今はね」
「そうかよ、それじゃあな!」
「それじゃあ。何だっていうのよ」
「競争だ!」
 これがバサラの言葉だった。
「どっちが凄いかな!」
「何かこの二人って」
「そうだよな」
「結局似た者同士?」
「やっぱり」
 皆そんな二人を見て言うのだった。
「どっちも人の話聞かないしね」
「それも全然」
「そうだな」
 黄金もここで言う。
「ミレーヌもあれでな」
「人の話聞かないのよね」
 ファーラは困った顔で話した。
「耳に入らないっていうか」
「本当にバサラさんそっくりですよね」
 ロゼがファーラに応える。
「考えてみたら」
「結局は似た者同士ということかな」
 タケルもそう考えているのだった。
「やっぱり」
「けれどだよな」
「そうだな」
 リョーコとノインがここで話す。
「ミレーヌの声はな」
「他に似ている者がいないな」
「あっ、そういえば」
「そうですね」
 ファーラとロゼもそれに気付いたのだった。
「私達は何か」
「他人に思えませんけれど」
「あたし達もなんだよな」
「そうだな」
 それはリョーコとノインもだった。
「他人には思えないからな」
「はじめて会った時からそう思っていた」
「まあとにかくな」
「戦うか」
「そうだ、戦うのだ!」
 ガビルからの言葉だった。
「正々堂々と。これこそ!」
「おいおい、またかよ」
「また言うのね」
「ここで」
「騎士美!」
 今度はこれだった。
「騎士道精神で戦おう!」
「ガオオオオオン!」
「そうだな。それではな」
 グラビルとバルゴもそれに続いてだった。
 彼等は派手に戦う。正面から激しい戦いを繰り広げる。
 一進一退の戦いだった。しかしだった。
 エイジのレイズナーマークツーがだ。発動した。
「よし、やってやる!」
「エイジ、いけるか」
「ああ、いける!」
 こう黄金にも返す。
「これならだ!」
「そうか、それなら見せてもらうぜ」
「この速さなら」
 その本来の強さが発揮された。それでだった。
 レーダーにも捉えられないその動きで敵機をい次々と撃墜していく。その速さはもうプロトデビルン達ですらかわせないものだった。
 彼等の数は次第に減っていく。それを見てだった。
「今だよな」
「ああ」
「ここで一気に仕掛けて」
「それなら」
 こうしてだった。ロンド=ベルも一気に攻勢に移った。
 その攻勢により敵軍を突き崩した。バルゴがそれを見てガビルに言う。
「どうする」
「戦局のことか」
「そうだ、かなりまずいのではないおか」
「確かにな」
 ガビルもそのブイ=マックスを発動させているレイズナーマークツーを見て言う。
「ここはな」
「撤退か」
「そうするしかあるまい」
 ガビルもここで決断を下した。
「最早な」
「ではだ。一時退きだ」
「アニマスピリチアを補給してだ」
「またロンド=ベルと戦うとしよう」
「そうだな」
 こうしてだった。彼等はすぐに撤退した。戦いはこれで終わりだった。
 ロンド=ベルは周辺を警戒しながら集結しまた航海を続けようとする。しかしここで、だった。
「気になるな」
「んっ、エイジどうしたんだ?」
「何かあったの?」
「いや、グラドス軍が来なかった」
 彼が今言うのはこのことだった。
「一機も」
「ああ、そうだよな」
「そういえば」
「一機も来なかったな」
「奴等は」
「あれじゃないでしょうか」
 ここで言うのは洸だった。
「他の場所に出ているとか」
「いや、それにしてはだ」
「そうですね」
 その彼には神宮寺と麗が告げた。
「ここはグラドスの本拠地だ」
「主力が置かれている筈です」
「はい、グラドスも本拠地を護らないといけませんから」
 猿丸も話すのだった。
「ここにいる数が最も多い筈です」
「それでいないのって?」
 マリも怪訝な顔になっている。
「何かあるわよね、やっぱり」
「まさか」
 ここでまた言うエイジだった。
「グラドス軍は先程のプロトデビルン達に」
「やられた?」
「まさか」
「あの連中に」
「だから彼等はいた」
 エイジも考える顔になっている。
「そうじゃないかな」
「それはいいことだな」
 それを聞いて笑ったのはだ。ジャーダだけではなかった;。
 ほぼ全員がだった。それを聞いて笑顔になっていた。そのうえで言うのだった。
「グラドスの連中がそうなったのならな」
「いいことだよな」
「全く」
「それはね」
「そのまま滅んでろ」
「そうそう」
 誰もがグラドスを憎んでいた。これは当然だった。特にだった。
 カガリはだ。怒りを思い出して言っていた。
「あの連中だけは一人残らず消し去ってやる」
「労力を惜しんでは駄目だね」
 ユウナも珍しく彼女に同意する。
「核もあるしね」
「ユウナさんがそう言うって」
「ちょっとないよなあ」
「っていうかユウナさんも怒ってる?」
「やっぱり」
「うん、怒ってるよ」
 実際にそうだと。本人も言うのだった。
「正直に言うとね」
「そうですよね。じゃあ私達も」
「奴等が滅んだのならいいか」
「そうだよな」
「ただ」
 しかしだった。エイジはここでまた言うのだった。
「確信はまだできないから」
「じゃあ調べるか」
「敵の基地とかそういうの」
「特に本星な」
「そこを」
「最初から調べるつもりだったし」
 敵を知れば、ということだった。偵察も調査も基本である。
 それであらためて話は決まった。それでだった。
「じゃあ各部隊に分かれて」
「偵察を出していって」
「グラドスの本拠地全体を調べるか」
「よし、じゃあな」
 こうしてすぐに偵察や調査が開始された。そしてであった。
 すぐにだ。このことがわかったのだった。
「基地は大抵破壊されているな」
「しかも徹底的に」
「兵士一人いないぜ、何処もな」
 まずは基地だった。
「死骸一つねえ」
「マシンも全部破壊されてるし」
「何もかもが」
「こっちもだ」
 そして他の基地もだった。
「随分やられてるな」
「こりゃかなりだな」
「もう使えないぜ、この基地」
「ここまでやる?」
 そうした報告が相次ぐのだった。
 そしてだった。それはだ。
「あれ?この星も」
「ああ、この星も」
「ここもだ」
「あれっ、何処も?」
 何とだった。惑星もスペースコロニーもだ。何処にも誰もいなかったのだ。
「プロトデビルンがやったのか?」
「じゃあ今までのあの戦力は」
「殆どグラドスから補充していた?」
「つまりは」
「そうみたいだね」
 エイジもここで言った。
「それで今まで」
「そうだったんだ」
「あれだけの戦力を維持していた」
「ここから主にか」
「それでか」
「けれど」 
 しかしだった。ここでこのことがわかるのだった。
「もう人いないからプロトデビルンも戦力の補充はできないよな」
「だよなあ。もうな」
「これで」
「バルマーの他の勢力圏とかは守りも固いし」
「ゲストとかインスペクターも」
「だから」
 こう話していくのだった。
「だからもう連中も」
「戦力の供給源がなくなれば」
「それで」
「しかしな」
 だが、だった。ここで豹馬が言うのだった。
「何でここなんだろうな」
「ああ、それはやっぱり」
「グラドスだから」
「それに尽きるよな」
「だよなあ」
「それしか」
 ないというのであった。誰もがだ。
「ああいう連中だし」
「それならな」
「やっぱりプロトデビルンだってな」
「攻めるよな」
「頭にくるし」
「そういうことだな」
 皆ここで納得したのだった。そしてであった。
 偵察を終えてだ。その結果は。
「全滅だよ」
「何処もかしこも」
「誰一人して残ってないし」
「マシンも一機も」
 ないというのであった。しかしだった。
 ここでエイジが話してきた。
「いえ、それでもです」
「まだ残ってるんだ」
「連中もしぶとく」
「っていうと」
「それは何処なんだ?」
 皆あらためてだった。エイジに尋ねた。
「やっぱりグラドスの本星?」
「そこ?」
「そこにいるんだ」
「はい、そこしかありません」
 その通りだと答えるエイジだった。
「元々グラドス人は本星に集まっています」
「じゃあ基地とか他の惑星は」
「ただの出先機関とか殖民先?」
「それだけだったんだ」
「やっぱり」
「はい、そうです」
 エイジはまた答えた。
「ですからグラドスの損害はこれでも軽微です」
「じゃああれだな」
 それを聞いたタケルの言葉だ。
「ここはそのグラドスの本星を攻めて」
「それで一気にケリをつけるか」
「だよな。じゃあ」
「ここは」
 こう話してだった。彼等の方針がまた決まった。
 そしてであった。エイジの案内の下そのグラドス本星に向かうのであった。
 その中でだ。ジェリドが不機嫌そのものの顔で言うのだった。
「まああれだな」
「そういうことか」
「ああ、正直あの連中はな」
 その顔でカクリコンに話すのであった。
「好きにはなれないな」
「俺もだ」
「そうか。やっぱり御前もか」
「俺は軍人だ」
「俺もだ」
 二人のこの認識は強かった。
「元々ジャマイカン少佐達のやり方もな」
「俺達は反対だったからな」
「だからグラドスはな」
「そういうことだな」
「好きになれる筈がないんだよ」
 これがジェリドの結論だった。
「絶対にな」
「そのグラドス軍だが」
「エイジの話じゃ連中の母星に集結していたな」
「元々あそこにだったね」
 ライラも話に加わってきた。
「奴等が移住したんだね」
「そうらしいな」
「バルマーの本星からな」
 ジェリドとカクリコンはこうライラに答えた。
「何かグラドス家も十二支族らしくてな」
「それでだ」
 こう話すのであった。
「バルマーの中でもかなりの力を持っている」
「そうなる」
「だからなんだね」
 ライラはここまで聞いてわかったのだった。
「連中があそこまで偉そうなのは」
「中身は全然ねえがな」
 ヤザンは辛辣だった。
「結局のところはな」
「そうですね。それは」
「確かに」
 ラムサスとダンケルもこのことは強く感じていた。
「彼等は戦闘力は高くありません」
「決してです」
「あれね。口で言う程のことはないわね」
 マウアーもそう感じているのだった。
「マシンの性能も活かしきれていないわ」
「はい。ただ」 
 サラはあることを警戒していた。それは。
「彼等は一般市民でも誰でもです」
「酷いことするからね」
 カツも今はその顔に嫌悪感を見せている。
「それが問題だよね」
「だよなあ、それは」
「本当にね」
「毎回毎回そうだし」
「だからこっちも徹底的にやってるし」
 そうする理由があるということだった。
「あの連中だけは放っておいたら何するかわからないから」
「ああ、降伏した傍方から攻撃してきたしな」
「そういうこともしてきたからな」
 そんな彼等だった。何はともあれその本星に向かう。
 しかしその中でだ。騒ぎが起こるのであった。
「痛っ」
「むっ、済まない」
 シティ7の中でだ。トウマが誰かとぶつかったのだ。
 すぐに謝罪の言葉が返って来た。女の声だった。
「怪我はないか」
「あ、ああ」
 それはないというのだった。
「軽く当たっただけだしな」
「そうか」
「ああ。だから気にしないでくれ」
 こう返すトウマだった。
「別にな」
「そうか。ならいいがな」
「ああ。しかしあんた」
「何だ?」
 見ればだ。緑の澄んだ目に浅黒い肌とはっきりとした顔立ち、紫の髪という姿だった。白い服と赤紫の帽子が印象的である。
 中性的な趣の女だった。トウマはその彼女を見て言うのだった。
「はじめて見る顔だな」
「そうか」
「しかし。何か違うんだよな」
 彼は本質的にこのことを察していた。
「何処かな」
「何処かとは」
「いや、それはわからないけれどな」
 トウマはいぶかしむ顔になっている。
「ここで会ったのも何かの縁だ。名前聞かせてくれないか」
「私の名前か」
「ああ、何でいうんだ?」
 こう彼女に問うのだった。
「それで。何て名前なんだ?」
「ルリアだ」
 まずはこう名乗る彼女だった。
「私の名前はルリア=カイツという」」
「ルリアさんか」
「そうだ」
 あらためて名乗る彼女だった。
「覚えておきたければそうするといい」
「ああ。じゃあ今度は俺の番だな」
 今度はこう言うトウマだった。
「俺の名前はな」
「何というのだ?」
「トウマっていうんだ」
 まずはこう名乗る彼だった。
「トウマ=カノウっていうんだ」
「そうか、トウマか」
「よかったら覚えておいてくれよな」
 笑顔で話す彼だった。
「そういうことでな」
「うむ。ではまたな」
「縁があればな」
 これでお互い別れようとした。しかしであった。
 今度はだ。ヴィレッタが来たのだった。彼女はまずトウマに声をかけた。
「ここにいたのか」
「あっ、ヴィレッタさん」
「急に姿が見えなくなったから探したがな」
「ちょっと人と話をしてまして」
「人とか」
「はい、この人とですけれど」
「むっ!?」
 ヴィレッタもルリアを見た。するとだった。
 その顔を強張らせてだ。こう言うのであった。
「まさか。貴様は」
「くっ、こんなところで会うとはな」
 お互いに言うのだった。ヴィレッタもルリアも。
「ルリア=カイツ。何故ここに」
「ヴィレッタ=パゾム。いるのはわかっていたが」
「んっ。何だ?」
 トウマも二人のやり取りをみてまた察したのだった。
「妙な感じだな」
「あっ、トウマここにいたのね」
 今度はミナキが来た。
「何処に行ったのかしらって思ったけれど」
「ああ、ちょっとな」
「ちょっと?」
「俺のことはいいとして」
「いいって。そういう訳にはいかないじゃない」
「いや、ちょっとな」
 口ごもるような調子になっていた。
「あれなんだよ。今な」
「あれっ、ヴィレッタさんもここに」
「何か知り合いらしいんだよ」
 トウマはヴィレッタとルリアを見ながら放すのだった。
「どうやらな」
「知り合いって?」
「それがどうもな」
「どうもって」
「まさかと思うけれどな」
「そのまさかだ」
 ヴィレッタもここでトウマに話してきた。
「それだ」
「ってことは」
「そうだ、この女はバルマーの者だ」
 このことを言うのだった。
「それも十二支族の者だ」
「えっ、十二支族って」
「あの!?」
 それを聞いてだ。トウマだけでなくミナキも驚きを隠せなかった。
「まさかと思いましたけれど」
「バルマーのあの支配者層の」
「そうだ。何故ここにいる」
「それは」
「そしてだ」
 ヴィレッタはルリアにさらに問う。
「御前がそこにいるということはだ」
「何だというのだ」
「まだいるな」
 こう問うのだった。
「アルマナも」
「それは・・・・・・」
「逃がしはしない」
 隙は見せなかった。
「背を向ければその時はだ」
「わかっている」
 忌々しげだがそれでも答えるルリアだった。
「それはだ。私も背を向けるつもりはない」
「ではいいな」
「仕方あるまい。だが」
「アルマナの安全はか」
「それは守ってもらおう」
 こうヴィレッタに言うのだった。
「約束できるか」
「安心しろ。ロンド=ベルはだ」
 他ならぬ彼等のことだ。
「私と同じくバルマーの者も多い」
「それでだというのか」
「捕虜にすることはあっても捕らえることはない」
 また言うヴィレッタだった。
「安心することだ」
「その言葉信じさせてもらう」
 ルリアもここで話した。
「それではな」
「ではアルマナと共にだ」
 来いというのだった。これで話は決まった。
 かくしてルリアはそのアルマナと共にロンド=ベルの面々の前に出ることになった。それを聞いてであった。
 トウマとミナキはだ。二人で話すのだった。
「何か大変なことになってきたな」
「そうね。まさかシティ7にバルマーの人が潜り込んでたなんて」
「しかもな」
 トウマは首を傾げながら話す。
「十二支族か」
「マーグさんもそうだけれど」
「今回は潜り込んでたからな」
「事情が違うわよね」
「ああ、だからな」
 それでだというのであった。
「どうなるんだ、これは」
「別に命を取ったりはされないみたいだけれどね」
「それでも。これはな」
「まずいわよね」
「ああ、本当にどうなるんだろうな」
 それがわからないからこそ困る彼等だった。グラドスでの戦いは思わぬイレギュラーをも抱え込んでしまうことになったのであった。


第七十六話   完


                      2010・11・21
 

 

第七十七話 バルマーの巫女

              第七十七話 バルマーの巫女
 ルリアと共に連れて来られたのはだ。幼い顔をした少女だった。青い目に金髪の短い髪を持っている。小柄な身体を白と紫のアラビアのそれを思わせる服で包んでいる。
 その彼女がだ。こう言うのであった。
「アルマナ=ディクバーです」
「それとこっちのルリアって人がか」
「シティ7に潜り込んでたの」
「十二支族の人が」
「何とまあ」
 皆まずはこのことを驚くのだった。
「信じられないな」
「そうだよな」
「これって」
「どうやって潜り込んだんだよ」
「それはだ」
 ルリアが答えたのだった。
「密かに小型船でだ」
「接岸してそれで」
「潜り込んだ」
「そうしてか」
「その通りだ。かなり前からそうしていた」
 こう話すのだった。
「気付かれないように細心の注意を払った」
「そうだったのですか」
 エキセドルがそれを聞いて頷いた。
「フロンティアからとも思ったのですが」
「シティだ」
 そのことははっきりと答えるルリアだった。
「それで中に入った」
「その目的は何かしら」
「それが一番気になるな」
 クスハとブリットがここで話す。
「どうしてバルマーから出たのかしら」
「それはどうしてなんだ?」
「そのことですが」
 アルマナがだ。答えてきたのだった。
「実は。バルマーのしきたりが嫌になって」
「そうだ、それだ」
 ルリアもアマルナのその言葉にすぐに応えた。
「それでなのだ。我々はだ」
「抜け出したのです」
「そうだったんだ」
「それで」
「シティ7に潜り込んだ」
「そうだったんだ」
「成程」
 殆どの面々はそれで納得した。しかしだった。
 万丈は二人を見ながらだ。こう言うのだった。
「まああれだね」
「何だ、一体」
「よくある話だね」
 思わせぶりな顔での言葉だった。
「それはね。よくあるね」
「何が言いたい」
「いや、別に」
 あえて言わない彼だった。
「何でもないよ」
「なら何故言う」
「いや、別に」
「そうね。言わない方がいいことってあるからね」
 エクセレンも何故かにこにことしている。
「まあスパイじゃないみたいだし」
「スパイにしちゃ衣装が派手だよな」
「特にそっちのアマルナさん」
「見るからにお姫様だし」
「身元もはっきりしてるし」
 身元についてはだ。彼等が答えた。
「間違いない」
「何処からどう見てもです」
 マーグとロゼだった。特に十二支族のマーグが言うのだった。
「この娘はアマルナ=ディクバーだ」
「そしてルリア=カイツです」
「その通りだ」
 ここでヴィレッタも言う。
「変装についてもチェックしたがだ」
「紛れもなく本人さん達なんですね」
「やっぱり」
「その通りだ。間違いない」
 また言うヴィレッタだった。
「この二人はそれだ」
「そうなんですか」
「それじゃあこの人達ってやっぱり」
「バルマーのお姫様」
「偉い人達なんですね」
「そんな人達がスパイっていうのは」
 皆その可能性について考える。するとだった。
「有り得ないよな」
「どう考えても」
「それは」
「やっぱり」
「間違ってもそれはない」
 ルリアも言う。
「マシンは一機持ってきているがだ」
「それでもですか」
「スパイじゃない」
「まあ確かに」
「こんなあからさまな人達っていませんし」
「やっぱり」
「スパイじゃないのは間違いないね」
 万丈はここでも話した。
「そういう人達じゃないよ」
「じゃあ只の密航者か」
「だよね」
「バルマーってだけで」
「それだけだね」
「そうだ。そしてだ」
 ルリアからの言葉だった。
「どうするつもりだ」
「貴様等をか」
「そうだ、どうするつもりだ」
 険しい顔で問うのであった。
「我々をだ」
「どうするつもりか」
 キョウスケが彼女の言葉に応える。
「それか」
「そうだ、処刑か」
 こう問うのだった。
「それとも拷問か。どちらだ」
「覚悟はできています」
 アルマナも覚悟を決めた顔で言ってきた。
「見つかればその時は」
「安心しろ。それはない」
「ないとは」
「まさか」
「何度も言うがそれはない」
 また言うキョウスケだった。
「それはヴィレッタ大尉が約束していたな」
「では信じろというのか」
「そうだ。そんなことはしない」
 キョウスケはそれは否定するのだった。
「決してだ」
「まさか。そんな」
「だって君達は敵の軍人じゃないしね」
 万丈が言うのはこのことだった。
「それで何かをするのはないよ」
「まああれね」
 エクセレンがまた言う。
「常に監視は置かせてもらうけれどね」
「それだけだというのか」
「そうだよ。不服かな」
「いや」
 万丈の言葉にだ。戸惑いながらも応えるルリアだった。
「本当にそれでいいのか」
「おっ、そう来たの」
「意外といった面持ちだな」
「そうだ、意外だ」
 エクセレンとキョウスケに返すルリアだった。
「信じられないが」
「監視だけでいいってことが」
「それがか」
「我々はバルマーの者だ」
 やはりこのことが問題だった。
「それでなのか」
「それを言ったなあ」
「そうよね」
 アラドとゼオラが苦笑いで言ってきた。
「うちの部隊なんてそれこそ」
「どうしようもなくなるから」
「処刑を覚悟していました」
 アルマナの言葉がそれが嘘ではない証拠に強張っていた。
「ですがそれでいいとは」
「逃げられないしな」
「そうよね」
「シティからは」 
 ロンド=ベルの面々はこのことも話した。
「それじゃあ監視でも充分過ぎる程だし」
「処刑なんてしたらそれこそ」
「ねえ」
「そもそもだ」
 レーツェルが二人に言ってきた。
「ここにもバルマーの者がいるな」
「同じということか」
「如何にも」
 レーツェルもルリアの言葉に答えた。
「その通りだ」
「それでなのか」
「その通りだ。そしてだ」
「うむ」
「君達のマシンは預からせてもらう」
 それはだというのであった。
「小型艇もだ。それはいいな」
「当然のことだな」
 それには驚かないルリアだった。
「逃げられないようにということだな」
「そういうことだ。もっとも」
 レーツェルはここで二人を見て言った。
「その心配もないようだがな」
「我々が逃げ出さないということか」
「君達は既にバルマーから脱出している」
 レーツェルはこのことを指摘した。
「それでここまで来たな」
「その通りだ」
「何故脱出したか」
 レーツェルはこう続けた。
「それは問わない」
「いいというのか」
「そうだ、それはどうでもいいことだ」
 意に介さないというのであった。
「だが。ここが安全だと思っているのは間違いないな」
「如何にも」
 その通りだと述べるルリアだった。
「それはだ」
「ではだ。君達が逃げることはない」
 レーツェルはまた言ってみせた。
「逃げても行くあてがないのだからな」
「そういうことだな。ではだ」
「うむ、それではだ」
 こうしてだった。二人は監視付きでシティ7に留まることになった。そしてだった。
 その監視がだ。問題なのだった。
「さあ、テレビだ」
「そうですね。もうすぐですよ」
「ゲキガンガーはじまるぜ」
 ダイゴウジにアキト、それにサブロウタだった。三人は二人のいる屋敷のリビングでだ。テレビを観ながらこんなことを話していた。
「今週はどうなるだろうな」
「先週凄いところで終わりましたしね」
「期待できるぜ」
「ゲキガンガーが勝つ!」
「ええ、最後は絶対に」
「どういう勝ち方するかだな」
 三人の頭の中にあるのはアニメだけだった。そんな彼等を見てだ。
 ルリアは怪訝な顔になって言うのだった。
「あれは監視か」
「はい、監視です」
 ルリもいた。彼女はルリアの横でジグソーパズルをしながら応えるのだった。
「これがです」
「そうは見えないが」
「そうでしょうか」
「それで貴殿もか」
 ルリアはルリにも問うた。
「監視しているのか、私達を」
「その通りです」
 相変わらずジグソーパズルをしている。
「ですからここにいます」
「とてもそうは見えないが」
「そうでしょうか」
「全くな。若しもだ」
「はい、貴女達が暴れたりした時ですね」
「その時はどうするつもりだ」
 ルリアは真剣そのものの顔でルリに問うた。
「その場合はだ」
「どうもしません」
「どうもだと」
「寝てもらいます」
 こう言うだけのルリだった。
「催眠ガスは用意してありますので」
「手荒な真似はしないということか」
「して欲しいですか?」
「いや?」
 ルリアは首を横に振って応える。彼女もそれは望んではいなかった。
「そんな筈がない」
「そういうことです」
 こう返すルリだった。相変わらずパズルをしている。
「私達も手荒な真似はしません」
「バルマーであってもか」
「同じ人間ですから」
 それがそうする理由であった。
「ですから」
「そういうことか」
「はい、それでなのですが」
「今度は何だ」
「ルリアさんでしたね」
 彼女への言葉であった。
「最初に御会いした時から思っていたのですが」
「何が言いたい」
「貴方にはオルガさんと同じ匂いを感じます」
「オルガだと」
 その名前を聞いてだった。ルリアの目が微妙に光った。
 そしてだった。いぶかしむ顔になって話すのだった。
「オルガ=サブナックか」
「あの人が緑なら」
「うむ」
「貴女は白ですね」
 色の話であった。
「そうなりますね」
「確かにな。その通りだ」
 それを否定しないルリアだった。
「あの男が牛ならだ」
「貴女は白鳥ですね」
「自分でもそう思う」
「鏡はお好きですね」
 今度はこう言ってきたルリだった。
「そうですね」
「嫌いではない」
 ルリアもそのことを認める。
「実際にな」
「そうですね。やはり貴女は」
「鏡の中に縁があるか」
「おそらくは」
 そうだというのであった。
「貴女はそうした意味でオルガさんと似ています」
「あの世界は好きだ」
「かなりですね」
「他にもアンドロイドとも言われる」
 今度はこんなことを言うルリアだった。
「そうともな」
「そうですね。それに」
「それにか」
「アスカさんのお姿も好きですね」
「それもわかるのか」
「おおよそのことは」
 そうだというルリだった。
「察することができました」
「ううむ、私のことはわかるのか」
「ですから。監視にしてもです」
「それで監視というのか」
「はい」
 その通りだとも話す。
「そういうことです」
「ではだ」
 ここでまた言うルリアだった。
「私はだ」
「どうされますか、これから」
「DVDを観る」
 彼女が言うのはそれだった。
「そうだな、ここは」
「鏡の世界での戦いでしょうか」
「いや、服の話だ」
 そちらだというのだった。
「若しくはそちらの学校の話だな」
「どちらかにされますね」
「学校の話は農業をやっていたがな」
「そちらにも縁のある方がおられますね」
「確かにな」
 また頷くルリアだった。
「今度は電車か」
「服の方にはおられませんでしたね」
「そうだな、いなかったな」
 そちらにはなのだった。
「だが。いい話だった」
「ええ、確かに」
「では。ここはだ」
「どちらにされますか」
「どちらとも観る」
 両方をだというのだ。
「別にそれで構わないな」
「はい、どうぞ」
 ルリは特に反対しなかった。
「私は特に何も言いません」
「しかしテレビはな」
 アキト達がアニメを楽しそうに観ている。それではなのだった。
「他のもので観るか」
「パソコンを使われますか?」
「使っていいのか」
「どうぞ」
 勧めさえするルリだった。
「何ならお貸ししますが」
「いや、それはいい」
「持たれていますか」
「それ位持っている」
 そうだというのであった。
「だからだ。それはいい」
「わかりました。それでは」
「しかしな」
「しかしとは」
「本当に寛容なのか油断しているのか」
 考える顔になっての言葉だった。
「どちらなのだ」
「どちらでもお好きな方を選んで下さい」
「油断だと捉えてもいいのか」
「はい」
 その通りだというのであった。
「どうぞです」
「そうか。それではだ」
「どちらにされますか?」
「寛容なのだな」
 そちらを選んだルリアだった。
「やはり」
「そう思われますね」
「ああ」
「確かにそうですね」
 それを自分でも認めるルリだった。
「それは」
「自覚しているのか」
「常識で考えてです」
 ルリはここから話すのだった。
「こんなことは有り得ません」
「そうだ、とてもだ」
「しかしそれがロンド=ベルなのです」
「貴殿等というのか」
「そうです。私も含めて」
 そしてだった。ルリは言った。
「馬鹿な人達ばかりですから」
「馬鹿だからか」
「馬鹿だから。そうしています」
「褒められたものではないと思うが」
「しかし。だからこそ」
「言いたいことはわかった」
 ルリアも話を聞いていてだ。察したのである。
「だからこそここまで来られたのだな」
「何とかですか」
「言われてみればそうか」
 ルリアもここで頷いた。
「貴殿等にはバルマーはだ」
「はい」
「敗れ続けている」
 言うのはこのことだった。
「それは何故かと私なりに考えていたがだ」
「私達が馬鹿だからだというのですね」
「そうだな。それだけに一途だ」
 そのことにも気付いたルリアだった。
「だからこそだな」
「皆さん、本当に素晴しいことを果たされてきています」
「素晴しいことをか」
「誰もが見届けたくなる愛も」
 一矢とエリカのことだった。タケルとマーグもである。
「誰かの為に命を差し出さんとすることも」
 シンとステラだ。
「そのどれもです」
「素晴しいことなのだな」
「はい。私はそういったものを見てきました」
 何時しかだ。ルリは微笑んでいた。
「ですから。こうして貴女にお話できます」
「そういうことだな」
「そしてなのですが」
 ルリの言葉は続く。
「これからも。同じです」
「馬鹿でいるのだな」
「そうです。私達は」
「ではだ」
 ルリアはだ。そのルリの言葉に応えて話した。
「私はだ」
「はい、ルリアさんは」
「それを見させてもらおう」
 微笑んでいた。彼女も何時しかそうなっていた。
「是非な」
「わかりました。それではですね」
「とりあえずパソコンを開かせてもらう」
「はい、どうぞ」
 ルリアもまたロンド=ベルから何かを見ようとしていたのだった。
 そしてだ。その中でだった。警報が鳴ったのだった。
「観終わってすぐか」
「丁度いい時間ですね」
 アキトがダイゴウジに言う。
「本当に今ですからね」
「観終わって何よりだがな」
「どうも腑に落ちないな」
 ここでサブロウタも言った。
「見透かされてたみたいでな」
「確かにな。相手にな」
 ダイゴウジも難しい顔になっている。しかしであった。
「行くか」
「はい」
「じゃあすぐにな」
「それではです」
 ルリもまた言う。
「ナデシコに向かいましょう」
「うん。ところで」
 アキトがルリに対して言う。
「その人達はどうしようか」
「ナデシコに来てもらいましょう」 
 ルリは冷静な調子でアキトに答えた。
「ここは」
「このお家じゃなくてだね」
「はい、一応監視ですから」
 このことは忘れていないルリだった。
「ですから」
「わかったよ。それじゃあね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。彼等はアマルナとルリアを連れてナデシコに向かった。ナデシコに入るとだった。
「すぐに全軍出撃です」
「すぐにですね」
「はい、敵がこちらに来ています」
 ユリカがルリに応える。
「数は百万です」
「それで相手はどの勢力ですか?」
「宇宙怪獣です」
 今度は答えたユリカだった。
「その数で来ています」
「何っ、宇宙怪獣だと」
 それを聞いてだった。ルリアが顔を顰めさせた。
「ここにもいるのか」
「宇宙怪獣は何処にでもいますから」
 ルリは冷静にルリアに話した。
「ですから」
「だからなのか」
「はい、遭遇すれば戦います」
 簡潔の述べるルリだった。
「それだけです」
「しかしだ」
「しかし?」
「ここはグラドスの勢力圏だ」
 ルリアが言うのはこのことだった。
「ここでグラドス軍と宇宙怪獣が戦えばだ」
「そうですね。私達にとっては悪くない話ですね」
 ルリもルリアのその言葉に応えて言う。
「敵同士が戦力をすり減らしてくれるのですから」
「では何故それをしない」
「そうです。宇宙怪獣から退いてです」
 アマルナもここでルリに言ってきた。
「彼等をお互いに戦わせればいいのではないでしょうか」
「ですがそれをするとです」
 ルリはアマルナに対しても述べた。
「宇宙怪獣は一般市民のいる惑星に襲い掛かる危険がありますから」
「ではまた言おう」
 ルリアはルリの今の言葉にも言った。
「貴殿等はグラドスが嫌いだったな」
「その通りです」
「彼等は虐殺と文化破壊を常としている」
「それで私達も彼等には容赦しません」
 ルリの返答は淡々とさえしていた。
「それはその通りです」
「では何故余計に」
「一般市民に損害が出るからです」
「だからだというのか」
「はい」
 ここではだ。返答の言葉が強いものになった。
「だからこそです」
「信じられない。グラドス人からは捕虜を取らない貴殿等が」
「しかし一般市民に危害が出るのはです」
「許せないか」
「そうです。私達の敵はあくまでグラドス軍です」
 軍だというのだ。
「例え彼等にどれだけ容赦のない攻撃を加えてもです」
「そうか。一般市民はか」
「彼等には決して危害を加えません」
 こうまで言うルリだった。
「それが及ぶようなこともです」
「しないか」
「それでは駄目でしょうか」
「奇麗事だ」
 まずはこう言って否定してみせたルリアだった。
「その様なことをしても彼等は喜ばない」
「それもわかっています」
「それでもするのか」
「そうです、それでもです」
「言うものだ。それならだ」
 ルリアはだ。決意した顔で言ってきた。
「私はだ」
「ルリアさんは?」
「貴殿等のその戦い見せてもらおう」
 こう告げるのだった。
「それでいいな」
「はい、それではです」
 ルリアの言葉を聞いてもだ。ルリは冷静なままだった。そしてであった。
 ルリアだけでなくアルマナにもだ。こう告げるのだった。
「艦橋にどうぞ」
「そこで一体」
「何をされるのですか?私達に」
「私達の戦いを見てもらいます」
 これが二人に告げた言葉だった。
「今から」
「そしてか」
「何かを感じ取って頂ければです」
「わかった。それではだ」
「そうさせてもらいます」
 ルリアだけでなくアマルナも応えた。こうしてだった。
 全軍で出撃し宇宙怪獣に向かう。戦闘自体はオーソドックスなものでありロンド=ベルにとっては極めて順調に進んでいく。 
 だがアマルナは。それを見てルリアに声をかけたのだった。
「あの、ルリア」
「はい」
 ルリアも彼女の言葉に応える。
「何でしょうか」
「今の戦いですが」
 目の前で起こっているその戦いのことだった。
「彼等はあくまで」
「そうですね。戦っていますね」
「グラドスの市民の為に」
「それがわかりません」
 今度はルリアが言った。
「彼等はです」
「敵ですね」
「紛れもなく」
 こうアマルナに答えるルリアだった。
「しかしです。それでも」
「彼等はこうして」
「戦っています」
「何故なのか。それがです」
「アマルナ様もですね」
「はい、わかりません」
 まさにそうだというのであった。
「少なくともバルマーでは考えられないことです」
「ましてグラドスです」
 実はだ。ルリアにしてもグラドスが嫌いであった。
「バルマーの中でもとりわけ傲慢な者達だというのに」
「感謝するということが彼等にはありませんね」
「決してです」
 こうアマルナにも言うのが何よりの証拠だった。
「それは有り得ません」
「しかし今こうして」
「どうやら彼等は」
 ルリアは考えてだ。あることに気付いたのだった。
「私達にはないものを持っているようですね」
「私達にはないものを」
「それを見る必要があるのかも知れません」
 そしてこう言うのだった。
「どうやら」
「では私達は」
「ここで見させてもらいましょう」
 アマルナに対して告げた。
「それでどうでしょうか」
「はい」
 アマルナもだった。考える顔でルリアの言葉に答えたのだった。
「それではです」
「そうされますね」
「それがいいと思います」
 彼女も考えたうえで決めたのだった。
「ですから」
「はい、それでは」
「それでルリア」
 ここでだ。アマルナは彼女に囁くのだった。
「あのボンボンは今は」
「とりあえず動きはないようです」
「そうなの」
「はい、それでも油断はできませんが」
 こうアマルナに返すルリアだった。
「ハザル様は」
「あんなのに様付けしなくていいわ」
「しかし」
「いいのです」
 あくまで言うアルマナだった。
「私が言っているのですから」
「左様ですか」
「あんないけ好かない男」
 アルマナはさらに言う。
「どういうことはありません」
「しかしハザル殿も」
 さりねがくアルマナを気遣ってこう言うのだった。
「変わられました」
「その様ですね。聞くところによると」
「かつて私はあの方のお傍にいました」
 アルマナはこのことも話すのだった。
「その時はあの様な方ではなく」
「どういった者だったのですか?」
「朗らかで素直な方でした」
 そうだったというのだ。あのハザルがだ。
「しかしそれがです」
「ああしてですか」
「歪んでしまわれました」
「今のあの男はです」
 アルマナが話すのは今のハザルだった。
「ただの傲慢な権力志向の塊です」
「それは否定できません」
「貴女もですね」
「どうしても。それは」
 そうだというのだった。
「悲しいことに」
「それはやはり宰相のシヴァー=ゴッツォのせいでしょうか」
「思えばシヴァー様も」
「そうですね、彼も」
「何か。変わられました」
「何かが急に」
「バルマーに何かが起こっています」
 ルリアはそのことを察していた。
「アルマナ様、ですから余計にです」
「そうですね、今はバルマーを離れて」
「そして御覧になられるべきです」
「バルマーの正しいあり方を」
「是非共」
 こんな話をしていたのだった。そしてだ。
 戦いは終わった。結局はロンド=ベルの勝利に終わったのだった。
「百万か」
「多かったけれど何かな」
「宇宙怪獣の中でも強い奴いなかったわよね」
「あの高速のとか合体のとか」
「そうした洒落にならないのが」
 いないのだった。
「だから楽だったよな」
「小さいのが殆どだったし」
「普段ならもっと洒落にならない質なのに」
「どういうことなんだ?」
「これは」
 ここでだった。オオタが言った。
「我々を足止めしてだ」
「?中佐、それって」
「まさか」
「そのうえで」
「そうだ、グラドスの本星を狙っているのだ」
 そうだというのだった。
「奴等は本能だけだが本能的に戦略を理解しているな」
「そうですよね」
「攻め方が合理的ですし」
「だったら今回も」
「そうして」
「私もグラドス人がどうなろうと知ったことではない」
 オオタもまたグラドス人を嫌い抜いていた。彼等を知っているからだ。
「しかしだ。彼等を放置していればだ」
「他の星の人達にも危害が及びますね」
「だからこそここは」
「グラドスの本星に向かい」
「それで」
「宇宙海獣達を倒す」
 実際にこう告げたオオタだった。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 こうしてだった。ロンド=ベルはグラドスのその本星に向かうことになった。だがここでだった。
 エイジはだ。暗い顔でロアンやディビットに話すのだった。
「前から気になっていたけれど」
「うん」
「どうしたんだ、一体」
「皆グラドス人には徹底しているね」
 話すのはこのことだった。
「容赦なく。倒してるね」
「それは仕方ないよ」
 ロアンはこうエイジに答えた。
「だってね。彼等は今まで」
「わかってるよ」
 エイジも応えはした。
「それはね」
「そうだよね。グラドス人が地球や銀河の各地でやってきたことはね」
「絶対に許されることじゃない」
 ディビットは忌々しげな口調だった。
「例え何があってもな」
「エイジもそう思うね」
「うん」
 答えるしかないエイジだった。確かにそれはわかっていた。
 しかしだった。彼は。
「けれど僕は」
「グラドス人の血を引いている」
「そのことか」
「うん、確かに僕も彼等は許せない」
 この考えは確かにあった。
「けれど。それでもね」
「やり過ぎだっていうんだね」
「俺達のやり方が」
「皆。グラドス軍は容赦なく殺しているから」
「けれど。そうしないとね」
「あいつ等は油断したら捕虜にしても攻撃してくるからな」
 これで既に実際に経験してわかっていることだった。だから二人も言うのだった。
「それに彼等は他の文明や文化を破壊する」
「それも知っているだろ?御前も」
「知っているよ、彼等の卑しい性格もね」
 それもわかっているエイジだった。
「けれど。それでも」
「グラドス軍はそのコクピットを確実に潰す戦い方は」
「好きじゃないんだな」
「戦争は人が死ぬものさ」
 また言うエイジだった。
「けれど。それでも僕達は」
「仕方ないじゃない」
 今度はシモーヌも加わってきた。
「だからグラドス軍よ」
「グラドス軍だから」
「そしてグラドス人よ」
 さらに言えばこうなることだった。
「放っておいたら何をするかわからないから」
「だから」
「そうよ、私達が正しいかどうかはわからないわ」
 それはだというのだ。
「けれど。このまま放っておいたらよ」
「どうなるかわからない」
「そう、銀河全体が大変なことになるわ」
 そのグラドス人によってというのだ。
「だから。グラドス軍に限っては確実に殺さないといけないのよ」
「ラクスだって言ってるだろ?」
 デビットはラクスの名前も出した。
「銀河の平和の為にはな」
「グラドス軍は殺すしかない」
「そういうことだよ」
 デビットもまた同じ考えなのだった。
「あのゴステロとか見ろよ」
「結局あれがバルマー人なんだよ」
 ロアンも続く。
「彼等がどれだけ奇麗事を言ってもね」
「結局はそういう連中なんだよ」
「ゴステロ」
 エイジは彼のことを思い出していた。悪逆非道を極め最期は無様な末路を辿ったあの男のことをだ。
「確かに彼は酷い男だった」
「そうだろ?」
「その通りだよね」
「けれど」
 それでもだというのだった。
「それでも地球人の中にもああした人物はいたね」
「そうだな」
 エイジの今の言葉に頷いたのはアスランだった。
「そうした人間も多くいた」
「ウルベ=イシカワ、ドルチェノフ、ルーザ=ルフト、三輪防人」 
 挙げていくときりがなかった。
「竜魔帝王も酷かったな」
「オルバン大元帥も」
「ズ=ザンバジルも」
「どいつもこいつもな」
「最低だったよな」
「シャピロもな」
 彼の名前も出た。
「あいつも酷かったよな」
「ゼゼーナンとかな」
「地球人に限らず酷い奴は酷いよ」
「全く」
「それと同じなんじゃないかな」
 また言うエイジだった。
「グラドス人にも。ひょっとしたら」
「へっ、いる訳ねえだろ」
 そのことを頭から全否定したのはトッドだった。
「あの連中の何処にそんなよさがあるんだよ」
「そういえばトッドさんって」
「一番グラドスを嫌ってる部類よね」
「確かに」
「ああ、そうだろうな」
 そのことを自分でも否定しないトッドだった。
「俺は正直グラドスの奴等はな」
「大嫌いですか」
「そうなんですね」
「一人残らす叩き斬ってやるさ」
 実際にそうしてやると言うトッドだった。
「戦争だしな、そうしてやるさ」
「だよなあ、連中は特にな」
「碌なことしないし」
「絶対に虐殺とか文化の破壊とかするから」
「正直存在しちゃいけない連中だよな」
「全く」
「確かにそうだ」
 エイジは仲間達の言葉にまた述べた。
「彼等は許されない者達だ。しかし」
「しかし?」
「どうだっていうんですか、それで」
「グラドスは」
「僕達は。それでもやりすぎているのかも知れない」
 一人こう言うのだった。
「若しかしてだけれど」
「だったらどうだっていうんだよ」
 シンが怒って言ってきた。
「あの連中は普通に核攻撃だってするんだぜ」
「それは知っているさ」
 プラントへの攻撃のことだ。シンはそのことを忘れていなかった。
「もうすぐで父さんや母さん、マユが死ぬところだったんだ」
「シンは家族の為に戦ってるからなあ」
「やっぱり余計に」
「許せないよな」
「あいつ等は一人残らず俺が殺してやる」
 シンのその目が赤くなっていた。
「そして二度とプラントに攻撃できないようにしてやる」
「シンの気持ちはよくわかる」
 エイジも共にいたからだ。わかることだった。
「けれど。それでも」
「殺すなっていうのかい?」
「違う、彼等の過ちは正すべきだ」 
 それはだというのだ。
「けれど。それでも」
「それでもって」
「じゃあ一体何を」
「するっていうんだよ」
 皆でエイジに問うのだった。そしてエイジも答える。
「彼等の全てを否定するのじゃなく」
「肯定すべきところは認める?」
「そういうこと?」
「グラドス人にもまともな人間はいる筈なんだ」
 こう言うエイジだった。
「だから。そうした人達は」
「殺さない?」
「そうするっていうんだ」
「つまりは」
「うん、罪を犯した人間は裁かれるべきだ」
 エイジもこのことは否定しない。
「けれど。他者を認め他の文化を認めるのなら」
「そうしたグラドス人は罪に問わない」
「殺しもしない」
「それでいいんじゃないかな」
 こう皆に話すのだった。
「それは甘いかな」
「甘いな」
 それを最初に否定したのはディアッカだった。
「あのな、子供の絵本を取り上げてその目の前で燃やすような連中だぜ」
「そうだったな、子供が林檎を盗んだといってだ」
 イザークも話す。
「その子供を切り殺したこともあった」
「母親を処刑する時は子供も一緒に処刑しましたし」
 ニコルも苦い顔になっている。
「そうした相手ですから」
「容赦することはないだろ」
 また言うシンだった。
「そんな奴等一人たりともな」
「ああ、そうだ」
「そうよ」
「シンの言う通りだよ」
「あんな奴等絶対にな」
「生かしておけるか」
 とにかくグラドスに対しては強硬な彼等だった。
 しかしだ。ここでロジャーが出て来て話すのだった。
「だが、だ」
「だが?」
「だがっていうと?」
「ロジャーさん、一体」
「どうしたんですか?」
「私も彼等には一切容赦していない」
 彼もまたグラドス軍相手には確実にコクピットを潰していた。それは事実だった。
「だが。それでもだ」
「それでも?」
「それでもっていうと」
「あまり度が過ぎるとだ」
 どうかというロジャーだった。
「虐殺になる。それでは彼等と同じだ」
「そのグラドスと」
「あの連中と同じ」
「俺達が」
「そうなってしまう恐れがある」
 そうだというのだった。
「これまでのグラドス軍は全てどうにもならない物達だったがな」
「一万人いて一万人があんな連中だったからなあ」
「もう全員な」
「とんでもない奴等じゃない」
「そうだよな」
「本当に」
「だからそれは事実だ」
 また言うロジャーだった。
「しかしだ。烏は黒いものだな」
「えっ、烏って」
「ええと、どうして烏なんですか」
「急に」
「しかしだ。この烏が黒いという命題は覆せるのだ」
 ロジャーはこんな話をはじめたのだった。
「その中に白い烏がいればだ」
「白い烏って」
「それがいれば」
「それでなんですか」
「その何万何億の烏の中に一羽白い烏がいればだ」
「じゃあグラドス人も?」
「あの連中の中に一人でも素晴しい人がいれば」
 ロンド=ベルの面々も考えていく。
「それでグラドス人が誰もがどうにもならないっていうのは」
「変わるってことなんだ」
「その通りだ」
 こう話すロジャーだった。
「それによってだ。変わるものだ」
「ううん、そうなんですか」
「あのグラドスに一人でもそうした人がいれば」
「悪でなくなる」
「そうなるからこそ」
「そしてだ」
 さらに言うロジャーだった。
「白い烏は必ずいるものだ」
「じゃあグラドスにはもう」
「戦うからには容赦しなくても」
「それでも。やり過ぎは避けて」
「戦うべきだと」
「そう思うのだがな」 
 ロジャーは静かな声で述べた。
「どうだろうか」
「難しいよな」
「ああ」
「あの連中の中に一人の聖人がいればそれでいい」
「その考えはな」
「ちょっとな」
 ドロシーがだ。ここでロジャーに問うてきた。
「ロジャー」
「私自身どう思っているかだな」
「ええ。難しいと思っているのね」
「その通りだ」
 そのことを否定しないロジャーだった。
「いると確信しているがそれでもだ」
「彼等との戦いでは」
「文化を破壊してきた者、虐殺してきた者は許さない」
 その彼等はだというのだ。
「何があろうともだ」
「けれどそうでないグラドス人は」
「手出しをしてはならない」
 それは絶対というのだった。
「私達のこれまで通りだ」
「まあな。一般市民への攻撃なんてな」
「最初からするつもりなんてないし」
「それだけは絶対にな」
「どうしても」
 こう話す彼等だった。それはなのだった。
「しちゃいけないだろ」
「そうよね」
「軍人以外にはね」
「それがわかっているうちは大丈夫だ」
 ロジャーはその考えに賛同してみせた。
「しかしそれを忘れればだ」
「俺達が嫌っているそのグラドスと同じになっちまう」
「そういうことですね」
「つまりは」
「その通りだ。罪は罪だ」
 また言うロジャーだった。
「だが。だからといって何をしていいということではない」
「何ごとも限度がある」
 ドロシーが呟く。
「じゃあエイジ」
「はい」
「そうした考えでいいわね」
「すいません」
 エイジはほっとした顔になっていた。そうして話すのだった。
「じゃあグラドスとのこれからの戦いは」
「戦いは容赦しない」
「けれど奴等と同じことはしない」
「絶対に」
「何があっても」
 このことを誓い合うのだった。そうしてだった。
 グラドスの母星に向かう。彼等の進路は決まっていた。
 そんな中でだった。ハザルはその彼等を見ながら言うのだった。
 彼の今の場所は何処かわからない。しかしここでハザルは話す。
「ふむ、これはだ」
「おや、動きがあったのかい?」
「面白いことになっている」
 こう孫に返すハザルだった。
「今ロンド=ベルの奴等はグラドスにいるな」
「彼等を助けには行かないんだね」
「そのつもりはない」
 冷酷に言い捨てるのだった。
「全くだ」
「おやおや、彼等はもう用済みかい?」
「その通りだ」
「成程ね。まあ頃合いではあるね」
「所詮手駒に過ぎない」
 ハザルはまた言った。
「それならばだ」
「じゃあここでグラドスには滅んでもらって」
「精々あがいてもらう」
「ロンド=ベルにはそれからだね」
「俺にとって余計なものとなった駒を潰してもらう」
「けれどその他にね」
 ここでまた言う孫だった。
「彼等、遂に会ったよ」
「巫女にか」
「うん、僕達の巫女にね」
 こうハザルにはなるのだった。
「それがいいのかな」
「いい。今はな」
「けれどなんだね」
「その時になれば動く」
 ハザルの言葉は落ち着いていた。
「それだけだ」
「成程ね。じゃあその時の準備は」
「今からしていく。おそらくだ」
「おそらくは?」
「奴等はそのまま三連太陽に進む」
 そうなるというのだ。
「そこで共倒れになるか立ち上がれないまでにやられる」
 そうなると見ているのだった。
「そしてそこでだ」
「僕達が止めをさす」
「鍵も手に入れそして巫女もね」
「共々消えてもらう」
 こう話すハザルだった。
「そうする」
「ふうん、かなりいい流れだね」
「その通り進む」
「だといいけれどね」
 孫はふとこんなことを言った。
「その通りに進めば」
「何が言いたい」
 ハザルは孫の今の言葉に鋭い目を向けた。
「俺の作戦にケチをつけるのか」
「いいや、別に」
 孫は笑顔でそれは否定した。
「そのつもりはないよ」
「ふん、ならどうして言う」
「まあ言葉のあやってことね」
「今は許す」
 鋭い顔のままでの言葉だった。
「しかしだ」
「しかし?」
「次はない」
 これが孫への今の言葉だった。
「それは言っておく」
「おやおや、相変わらず厳しいねえ」
「俺を誰だと思っている」
 まだ言うハザルだった。
「俺は十二支族のゴッツォ家の嫡男だぞ」
「それはわかっているよ」
「だからだ。その俺への反論は許さん」
 これがハザルの主張であった。
「わかったな」
「わかったよ。それじゃあね」
「今は奴等を始末する用意をする」
 ここまで言って孫に背を向けた。そのマントが翻る。
「わかったな」
「了解。それじゃあ」
「バラン達に伝えておけ」
 孫への命令だった。
「方面軍を全て集結させよとな」
「外銀河の防衛はどうするのかな」
「構わん」
 いいというのだった。
「そんなものは今はだ」
「いいんだね、それも」
「そうだ、そんなものはどうでもいい」
 やはりそれは今はいいというハザルだった。
「わかったな。それではだ」
「わかったよ。じゃあ伝えておくよ」
「そうしておけ。ではだ」
 こうしてハザルは孫の前から姿を消した。孫は最初はにこやかだった。しかしだ。
 彼が姿を完全に消すとだ。愚弄する笑みを浮かべて言うのであった。
「まあ、お人形君は今のうちに働いてもらわないとね」
 こう呟いてだった。彼のまた姿を消した。残ったのは誰もいなかった。


第七十七話   完


                      2010・11・26
 

 

第七十八話 白い烏

                 第七十八話 白い烏
 ロンド=ベルはグラドス本星に向かい続ける。その中でだった。
「白い烏なあ」
「ロジャーさんの言う」
「そんなの本当にいるのかね」
「あのグラドスに」
 彼等はそのこと自体を疑っていた。
「あんな奴等にね」
「一人でもいればいいっていうけれど」
「その一人がいるかどうか」
「疑問だよな」
「確かに」
 こう話す彼等だった。しかしなのだった。
 ここでドロシーが来てだ。彼等に言った。
「一人はいるわ」
「いるか?」
「あんな奴等に」
「そう、どんな見事なものでも僅かな歪みがあるから」
 こんなことを言うドロシーだった。
「それは歪みしかないものでも同じ」
「正反対にか」
「正しいものがある」
「その歪みの中にも」
「そういうことなんですね」
「そう」
 その通りだと頷くドロシーだった。
「その通り」
「じゃあグラドスにもいい奴がいるんだ」
「何か会ったことないけれどな」
「一人もな」
「本当にいないからな」
「見事なまでに」
 彼等が会ったそのグラドスの面々の中ではなのだった。
「これまで相当倒してきてるのにな」
「ゴステロとか死鬼隊は最悪だったけれど」
「その中でも」
 ゴステロは死しても尚彼等にそこまでの印象を与えていたのだった。
「あそこまでえげつない酷さの奴はな」
「あれがグラドスってイメージあるけれど」
「ああ、それ俺もだ」
「私も」
「あれがグラドスの標準だと思ってたし」
「完璧に」
 実際にそう感じている面々だった。
「あの連中ってなあ」
「やっぱりな」
「けれどそんな連中でも」
「白い烏はいる」
「そうなんだな」
「ドロシーやロジャーさんの話だと」
 二人の言葉もなのだった。彼等の中に強く残っているのだ。
「じゃあやっぱり」
「ここはそれを信じて」
「それで行くか」
「グラドスまで」
「それとだけれど」
 ここでだ。今度はアーサーが皆に話してきた。
「多分本星に行けばね」
「宇宙怪獣とかプロトデビルンもか」
「出て来るんだな」
「あの連中も」
「うん、実際これまで出て来たしね」
 ガビルや彼等のことだ。
「だからグラドスとの戦闘も考えないといけないけれど」
「あの連中もか」
「じゃあ四つ巴になるのも」
「考えないといけないか」
「そうなるよな」
「いや、それだけじゃないかも」
 ここで言ったのはメイリンだった。
「そこにバッフ=クランとかハザル=ゴッツォなんてことも」
「うわ、どうなるそれって」
「物凄い混戦になりそうよね」
「そうだったな」
「バッフ=クランはない」
 だがだった。ギジェがそれを否定した。
「彼等は前の戦いでかなりの損害を被ったからな」
「そういえば随分倒したしな」
「それでか」
「じゃあ今は連中については安心か」
「そうだよな」
「そうだ、それにバッフ=クランもだ」
 ギジェの彼等についての話も続く。
「宇宙怪獣やプロトデビルンと戦っている」
「ああ、連中も敵多いんだ」
「そうだったんだ」
「当然バルマー軍とも戦闘中だ」
 ギジェはこのことも話した。
「だからだ。彼等は今戦力の再編成と補充に忙しいのだ」
「じゃあ後はハザル=ゴッツォ?」
「あいつは何時来るかわからないよな」
「あんな奴だし」
「企んでいると考えてな」
「ああ、妥当だな」
 皆それを聞いてだ。こうも考えていくのだった。
「用心していくか、あいつにも」
「あの孫光龍もいるしな」
 ブリットはここで目を鋭くさせた。
「あいつも怪しい奴だ」
「今一つよくわからない人だけれど」
 クスハはその目を不安げなものにさせていた。
「私達の敵なのは間違いないけれど」
「敵といっても色々いるからな」
 ブリットもまた話す。
「あの男は。特に」
「ええ、何かの考えがあるけれど」
「そこも見極めないとな」
「それを考えたら私の相手は」
「俺もか」
 セレーナとクォヴレーはこう考えた。
「わかりやすいわよね」
「そうだな」
「あのスペクトラっていうのはね」
「キャリコだったか。俺を憎んでいるのがわかる」
 それがよくわかるというのだ。
「それならね」
「俺のところに突き進んで来る」
「そこを相手してやれば」
「済むことだな」
「俺は」
 そしてだった。トウマも言うのだった。
「バラン=ドバンだな」
「あの人はもっとわかり易いわよね」
 ミナキがそのトウマに話してきた。
「トウマのことをね」
「相手だと思っているからな」
「そしてトウマも?」
「ああ」
 ミナキのその言葉に頷くのだった。
「俺も。そう思っている」
「そうなのね、やっぱり」
「本当にあいつを倒したくなった」
 トウマの目が燃えてきていた。赤くだ。
「この俺が」
「ならトウマ」
 ミナキが彼に言ってきた。
「何があってもね」
「ああ、俺は勝つ」
「その姿見させてもらうわ」
「頼む」
 そんな話をする彼等だった。グラドスに向かいながら様々なことを考えていた。そうしてそのうえでさらに進むのだった。
 そしてだった。グラドスの星まであと五日の距離まで来た。そこでだった。
「レーダーに反応です」
「どの相手だ」
「はい、これは」
 トーレスがブライトの問いに答える。
「プロトデビルンです」
「というと指揮官は」
「また会ったなロンド=ベル」
 ガビルが自分からモニターに出て来て話す。
「こうして会う。それこそはな」
「何だ?」
「何だよ、今度は」
「遭遇美!」
 それもまた美なのだった。
「実にいいものだ」
「何でもかんでも美なんだな」
「ああ、こいつだけは」
「そうなんだな」
 皆それを聞いてだ。こう言った。
「とにかく何でもかんでも美だけれど」
「今回は違うよな」
「なあ、どう考えても」
「それに」
 見ればだ。丁度グラドス軍もいた。彼等と交戦中だったらしいのだ。
 それでだ。グラドス軍を見るとだ。既に壊滅状態だった。
「司令、ロンド=ベルまで来ました」
「ここはどうされますか」
「一体」
「逃げることはできない」
 ゲイルだった。彼がこのグラドス軍の指揮官だったのだ。
 その彼がだ。強い言葉で部下達に告げるのだった。
「決してだ」
「決してですか」
「それは」
「確かにそうですね」
「そうだ、我等がここで退けばだ」
 見れば彼等の後方には民間人の船が多くあった。彼等は。
「本星への避難民達はどうなる」
「彼等がですね」
「プロトデビルン達に」
「襲われますね」
「だからだ。ここは退くな」
 また言うゲイルだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「ここは例え何があろうとも」
「退きません」
 部下達もここで言った。
「ロンド=ベルが来ても」
「それでもですね」
「そうだ。しかし」
「しかし?」
「司令、今度は一体」
「何でしょうか」
「我々は今まで地球人を野蛮だと思っていた」
 そのロンド=ベルを見ながらの言葉だった。
「ずっとな」
「事実そうではありませんか」
「地球人は好戦的で野蛮です」
「ゾヴォークの物達が怠惰である様にです」
「そしてバルマーの臣民達の多くが愚かであるように」
 これがグラドスの考えなのは事実だった。
「ですからそれはです」
「わかっていることでは」
「いや、どうやらだ」
「どうやら」
「といいますと」
「ロンド=ベルはだ」
 その彼等についての言葉だった。
「違うのかもな」
「普通の地球人とですか」
「違うと仰るのですか」
「司令は」
「そうだ、違うようだ」
 また話すゲイルだった。
「若しかするとな」
「そうでしょうか」
「所詮地球人です」
「他にもペンタゴナの者もいますが」
「所詮はグラドスではありません」
「バルマー十二支族直系ではありません」
「我等と違います」
 選民思想に基づいてだった。彼等は言っていく。
「確か我等と地球人のハーフもいますが」
「それでも半分だけです」
「後の半分が野蛮な地球人のものです」
「その程度ですが」
「グラドスが高貴なのか」
 ゲイルはこのことにも疑念を抱きだしていた。
「ゴステロはどうなのだ」
「あの男はです」
「例外です」
「グラドスの恥です」
 彼についてはこう述べるのだった。
「我等の中でも劣等な物達です」
「ですからそれはです」
「違いますから」
「いや、おそらく違う」
 また言うゲイルだった。
「所詮。我等も同じだ」
「グラドス人も地球人もですか」
「同じだと」
「まさか」
「他の星の物達もだ」
 ゲイルの言葉は続く。
「やはり同じなのかもな」
「ううむ、幾ら司令のお言葉でもです」
「果たしてそれはどうなのか」
「言えません」
「いえ、かなり疑問です」
「そうだろうな」
 ゲイルもそれを否定しないのだった。
「私も実はだ」
「司令もですか」
「確かには仰れないですか」
「このことは」
「確証は持てない。しかし」
 しかしというのであった。ここでだった。
「ここではだ」
「はい、ここでは」
「どうされますか」
「戦う」
 これは絶対だというのだった。
「市民達は必ずだ」
「護りますね」
「そうされますね」
「そうだ、そうする」
 こうしてだった。彼は戦いを選んだのだった。 
 ガビルはだ。その彼等を見てグラビルに話してきた。
「グラビルよ」
「ガオオオオオン!」
「そう思うか」
 彼はグラビルの叫び声を聞いて頷くのだった。
「御前もまた。我が分身よ」
「ひょっとして話通じてる?」
「まさかと思うけれど」
「あれで」
 ロンド=ベルの面々はその二人の会話を見て言う。
「それじゃあだけれど」
「ここは」
「どうしようかしら」
「安心するのだ。我等は一心同体」
 ガビルはその彼等に応えてきた。
「会話はこれで充分だ」
「通じてるみたいだな」
「そうですね」
「どうやら」
「そしてだ」
 ガビルはグラビルにさらに話してきた。
「あの者達のその志」
「ガオオオオン」
「あれこそまさに精神美!」
 ここでも美だった。
「その心意気に応えよう!」
「ガオオオオオオオオオオオン!」
「ではだ!」
 ガビルは早速彼等に向かうのだった。そしてだった。何と援軍を出してその戦力を三倍にしてからだった。
「全軍グラドスに向かう!ロンド=ベルには目をくれるな!」
「くっ、来たか!」
「まずいぞ、今の状態であの数は」
「防ぎきれない!」
「司令!」
 慌てたグラドスの物達はだった。すぐにゲイルに指示を仰いだ。
「このままでは我等を全滅させてです」
「そのまま市民達に襲い掛かります」
「ですからここは」
「どうされますか」
「ここは」
 ゲイルもそれはわかっていた。しかしだった。
 どうしていいかわからなかった。だがここでロンド=ベルを見てだった。
 彼等に通信を入れた。それでなのだった。
「いいだろうか」
「あっ、御前は!」
「地球圏での戦いで会ったよな!」
「グラドスの司令官!」
「そうだよな!」
「そうだ」
 ゲイルも彼等の声に対して頷いてみせた。
「私はグラドスの司令官の一人だ」
「ゲイルさん、貴方だったんですね」
「そうだ、エイジ久し振りだな」
「はい」
 まずはこの二人のやり取りからだった。
「そうですね。本当に」
「今の状況は見ているな」
 ゲイルは単刀直入に言ってきた。
「我が軍は今危機的な状況に陥っている」
「ああ、そうだな」
 ミシェルが素っ気無く返した。
「物凄い数の敵に攻められようとしているな」
「このままでは軍だけでなくだ」
 ゲイルはさらに話すのだった。
「民間人達にも被害が出る」
「で、それで?」
 今返したのは黄金だった。
「何が言いたいんだ」
「済まないがここはだ」
 ゲイルは一呼吸置いた。そのうえでだった。
「我々と共闘してくれるか」
「共闘?」
「バルマーと?」
「市民の為だ」
 その彼等の為だというのである。
「彼等の為にだ。ここは私達を助けてくれないか」
「何でなんだよ」
「何でグラドスを?」
「過去のことはわかっている」
 ゲイルは冷たい彼等にまた話した。
「だがそれでもだ。ここは市民達の為に我々を助けて欲しい」
 こう言うのだった。しかしであった。
 まずはディアッカだった。彼が怒った声で言ってきた。
「おいおい、黙って聞いてりゃな!」
 その声で言うのだった。
「随分虫のいいこと言ってくれてんじゃねえか!」
「そうだ!」
 次はイザークだった。
「どの口で言っている!」
「俺はな、見たんだよ!」
 ディアッカの怒りの言葉が続く。
「御前等に絵本を取られて目の前で燃やされて泣いている子供をな!」
「虐殺している姿も見た」
 京四郎も言う。
「罪の無い一般市民をな」
「一体何人殺したんだ!」
「そうよ、地球だけでもね!」
 ラウルとフィオナも責める。
「そして文化を奪ってくれたな!」
「どれだけのことをしてきたのよ!」
「銀河中で色々してくれたね!」
「それは知っているぞ」
 ネイもマクトミンも彼等を嫌悪していた。
「それであんた達が危機になれば言うなんてね」
「幾ら何でも図々しいだろう」
「そのまま死ね!」
 今叫んだのはジャーダだった。
「手前等グラドスはな!」
「構うか!グラドス人なんか滅んでしまえ!」
「御前等が皆殺しになった後でプロトデビルンの相手をしてやる!」
「御前等が生き残ったら御前等をだ!」
「市民には何もしないけれどな!」
「全軍進撃停止します」
 エキセドルも今言った。
「プロトデビルンに備えましょう」
「ふむ。確かにあの司令官は見事だ」
 そのプロトデビルンのガビルも言うのだった。
「だが、だ」
「ガオオオン」
「グラビル、御前もそう思うな」
 こうグラビルにも言う。
「グラドスは醜い。美はない」
「ガオオオオオン!」
 同意しているようだった。
「皆始末する。清掃美!」
「ああ、グラドス人なんて銀河から消えろ!」
「いなくなれ!」
「御前等何をやってきた!」
「御前等のことなんか知るか!」
 ロンド=ベルのほぼ全員がだった。こう言うのだった。
 獣戦機隊やガンダムチーム、それにシン達はだった。自分達からグラドスに向かおうとさえしていた。
「この連中から先に倒せばいいだろ!」
「プロトデビルンよりもな!」
「とっとな!」
「いや、ここは待ってくれ」
 しかしだった。ロジャーがその仲間達に話すのだった。
「いいか」
「?ロジャーさん」
「一体何を」
「どうされるというのですか」
「まさか」
「そうだ、先日話したな」
 こう仲間達にまた話すのだった。
「白い烏だ」
「そのことですか」
「グラドスにも白い烏はいる」
「それですか」
「けれどそれは」
 皆ロジャーの言葉を否定しようとする。しかしだった。
「あの連中あんな図々しいこと言ってますし」
「ですからそれは」
「もういいじゃないですか」
「そうですよ」
「見捨てましょう」
「いや、違う」
 まだ言うロジャーだった。
「あの司令官こそはだ」
「ゲイルさんですか」
「そうだ、烏だ」
 こうエイジに述べたのだった。
「グラドスの白い烏だ」
「あの人が」
「彼は恥を忍んで我々に救いを求めてきた」
 ロジャーはだ。ゲイルのことを見抜いていたのだった。
「それはまさにだ」
「白い烏」
「あの人がグラドスのですか」
「それなんですね」
「そうだ、白い烏はいた」 
 また言うロジャーだった。
「あの場所にだ」
「じゃあやっぱり」
「グラドスも俺達と同じなんですか」
「人間なんですね」
「いいものも悪いものもある」
「その通りだ。誰もが同じなのだ」
 ロジャーはこうも言った。
「人間なのだ」
「それじゃあ今は」
「グラドスをですね」
「助けるんですね」
「やっぱり」
「そうしなければならない」
 今度の言葉は義務のものだった。
「人間だからな」
「何か腑に落ちないけれどな」
「それはあるがな」
 ディアッカとイザークは不満を言いはした。
「けれど人間だったらな」
「助けるしかない」
「どんな姿形でも」
 ニコルも呟く。
「心が人間ならですね」
「それなら人間でしたね」
 シホがそのニコルの言葉に続く。
「そうでしたね」
「よし、それじゃあ」
「今はな!」
「行くか!」
「ここは!」
「わかりました」
 停止命令を出したエキセドルの言葉だった。
「それでは全軍」
「はい、そうですね!」
「それじゃあ!」
「進撃です。これより我々は」
 エキセドルは言葉を続けていく。
「グラドス軍を助けです」
「一般市民を助ける」
「プロトデビルンと戦って」
「はい、彼等に攻撃を仕掛けてです」
 そのことによってというのだった。
「そうします。それでいいですね」
「了解」
「それじゃあ」
「いいのか、本当に」
 ゲイルは彼等の決定に戸惑いながら問うた。
「君達は本当に」
「決めたことだ」
 ロジャーがその彼に答える。
「我々は決めたのだ」
「いいのか、本当に」
 まだ戸惑いを見せるゲイルだった。
「確かに願い出たが。それでも」
「僕も信じられません」
 エイジの言葉だ。
「けれど。グラドス人も人間ですから」
「だからこそか」
「はい、そしてそれを見せてくれたのは」
 エイジはモニターのゲイルを見て彼に話す。
「ゲイルさん、貴方です」
「私なのか」
「貴方がです。見せてくれましたから」
「それでか」
「そうだ、それでです」
 こうゲイルに話すのだった。
「それでロジャーさんが」
「見せてもらった」
 今度はロジャーがゲイルに話す。
「君のことをな」
「貴方が我々を」
「私も今までグラドス人は忌むべき存在だと思っていた」
 そうだったともいうのだ。
「だが。君を見てだ」
「考えが変わったというのか」
「如何にも。幾万幾億の黒い烏の中にだ」
 彼にもこう話すのだった。
「一羽の白い烏を見ればだ」
「どうなるのだ」
「それだけで烏は黒いという定義が壊れる」
「だからです」
 またエイジがゲイルに話す。
「僕達は今は」
「私はその様な人間ではないが」
「今の言葉だ」
 またゲイルに言うロジャーだった。
「人間だからだ」
「だからか」
「我々もまた。戦わせてもらう」
「じゃあロジャー」
 ドロシーがそのロジャーに声をかけてきた。
「ここは」
「そうだ。ビッグオー」
 そのビッグオーを操りながらだ。ロジャーは言った。
「ショータイム!」
 この言葉を合図にしてだった。ロンド=ベルはプロトデビルンの大軍に攻撃を仕掛けるのだった。
 全軍を挙げて突撃する。そしてだった。
「俺はな!」
「むっ、熱気バサラか」
「そうさ、俺の音楽を聴けばな!」
 こうガビルに言うのだった。
「それでわかるんだよ!」
「何がわかるのだ」
「人かどうかな!善悪なんてチャチなものだからな」
「それが貴様の考えか」
「そうさ、さあ聴け!」
 ここでも派手にギターをかき鳴らして叫ぶ。
「俺の歌をな!」
「ではだ」
 ガビルはバサラのその言葉を聞いて楽しそうに笑って言ってきた。
「我はどうなのだ」
「さてな。俺の歌を聴くか!」
「うむ、聴かせてもらおう」
 ガビルも彼の言葉に乗った。
「これからな。どうするグラビル」
「ガオオオオオオン!」
 これが彼の返答だった。
「そうか、我と同じか」
「聴くって言ってんだな」
「そうだ、ではだ」
「ああ、俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!」
 バサラの音楽も戦場で鳴る。それを聴いてであった。
 グラドスの物達もだ。それぞれ言うのだった。
「あれが地球の音楽か」
「何と・・・・・・」
「聴いているだけで力が出て来るぞ」
「あれがか」
「地球の音楽なのか」
「あれっ!?」
 そんな彼等を見てだ。ふとサイシーが言うのだった。
「何か変わった?」
「ああ、グラドスの奴等な」
 ヂボデーも気付いたのだった。
「雰囲気がな」
「バサラの音楽を聴いてだな」
「そうですね」
 アルゴとジョルジュも言う。
「士気があがっている」
「彼の音楽が届いていますね」
「バサラの音楽ってそこまで凄いんだ」
 アレンビーははっきりと驚いている。
「グラドス軍にまで届いて動かすって」
「いや、バサラだけじゃない」
 輝はだ。プロトデビルンに攻撃を仕掛けながら言う。
「他の音楽もなんだ」
「音楽にそこまでの力がある」
「文化に」
「だからここは」
 さらに言う輝だった。
「二人共、いけるかな」
「はい、何時でも」
「歌えるわよ!」
 ランカとシェリルがだ。既にスタンバイしていた。
「それならシェリルさん」
「ええ、ランカ」
 そして二人で言い合う。
「ここはですよね」
「私達もね」
「歌ってくれるんだな」
 アルトも二人に言う。
「ここは」
「ええ、そうするわ」
「私達だって。歌を聴いてもらいたいからね」
「よし、それならな!」
「ええ、今から聴いて!」
「私達の歌をね!」
 マクロスクウォーターからその音楽が聴こえてきてだった。
 それがプロトデビルン、そしてグラドス軍を撃ちだ。戦局さえ変えてきていた。
「不思議だ。こうした歌を聴いていると」
「何か。これまでの自分達が」
「ああ、間違っていた」
「そのことに気付く」
 こう言ってだった。彼等は今地球を認めはじめていた。
 そしてだ。プロトデビルン達の動きが鈍くなりだった。
「よし、今だ!」
「これならね!」
「やれる!」
「決める!」
 そしてだった。ゼンガーが斬艦刀を構えてだった。 
 一気に振り下ろしてだ。敵艦を両断したのだった。
 両断された敵艦は爆発して宇宙の中に消える。そしてそのうえでだった。
 ロンド=ベルは攻撃を強めプロトデビルンの大軍からグラドス軍に合流した。それを見てだった。
 ガビルが言った。
「見事だ。これはだ」
「ああ、今度は何の美だ!」
「音楽美!見せてもらった!」
 それだとバサラに言うだった。
「では我々は今は去ろう」
「帰るってんだな」
「音楽か。どうやらこれは」
「んっ、俺の歌に惚れたか」
「まだそこまではいっていない」
 こうバサラに返しもするガビルだった。
「だが、だ」
「だが?」
「若しかするとな」
 思わせぶりな言葉であった。
「これが我等を変えるもやもな」
「こいつ、何か感じ取っているか」
「そうみたいですね」
 フィジカが金竜の言葉に頷く。
「何かはわからないですけれど」
「そうだな」
「ではここはだ」
 また言うガビルだった。
「退こう。撤退美!」
「ガオオオオオン!」
 こうしてプロトデビルン達は撤退した。そして残ったのはだ。
「・・・・・・・・・」
「ゲイルさん」 
 エイジが沈黙している彼に声をかけた。
「いいでしょうか」
「うむ」
「僕達も。これまでグラドス人はです」
「野蛮と思っていたか」
「残虐と思っていました」
 彼にしろそうだったというのだ。
「この身体に半分流れている血もまた」
「疎ましかったのだな」
「その通りです。けれど今は変わってきています」
「そう思わなくなってきているか」
「その通りです」
 こうゲイルに話すのだった。
「変わってきています」
「そうなのか」
「それでですが」
 ここでエイジはゲイルに問うのだった。
「今グラドスはどうなっているのでしょうか」
「状況は芳しくない」
 ゲイルは暗い顔で答えた。
「正直なところな」
「そうですか」
「プロトデビルンだけではなくだ」
「宇宙怪獣もですね」
「そうだ。知っていたのだな」
「はい」
 エイジはゲイルの言葉に険しい顔で応えた。
「戦いましたから」
「それでか」
「その二つの勢力に一度に攻められていますか」
「それで本星にまで退かざるを得なくなっている」
 それが今の彼等の状況だというのだ。
「それで我々も今だ」
「そのグラドスの市民達をですね」
「そういうことだ。既に多くの者が犠牲になっている」
 ゲイルはこのことも話した。
「そのうえで」
「えっ、まだあるのかよ」
「それだけでも大変なのに」
「それにまだって」
「内部分裂も起こってしまった」
 そうなってもいるというのである。
「こうした状況に危機感を持った急進派が分裂したのだ」
「それ一体何を?」
「どうしようと」
「バルマーの兵器も全て押収しそれで戦おうとしているのだ」
「おいおい、それはないだろ」
 それを聞いてすぐに言ったのは豹馬だった。
「そんなことしたら今はいいとしてもだ」
「そうよ。バルマー帝国が黙っていないし」
「そうよね、それは」
「ちょっと」
「それだけではない」
 ゲイルの言葉はまだ続く。
「彼等はグラドス人以外の者、バルマー人の本来同胞の者まで戦場に駆り立てて戦わせるつもりだ」
「少しでも戦力が欲しいから」
「だからか」
「そしてだ」
 ゲイルはまだ言うのだった。
「それは若い男だけでなくだ」
「老若男女構わず」
「戦場に立たせるってか」
「グラドス人が生きる為に」
「他の連中は犠牲にしてか」
「それを主張している一派の中心人物は」
 誰かというとだった。
「ル=カインだ」
「ああ、あいつかよ」
「あいつだったらな」
「そうだよな。言うよな」
「ああいう奴だからな」
 皆ル=カインの名前を聞いて納得した。彼のことはよく知っていた。だからそういうことをしても全くおかしくはないと確信できたのだ。
 そしてだ。そのうえでロンド=ベルの面々は話をした。
「そんなことをしてもな」
「ああ、今若し生き残れたとしても」
「後で他の星の連中がどれだけ怒るか」
「バルマーだってな」
「しかも何だ?それって」
「自分達さえよければいい?」
 そこにだ。エゴイズムを感じていたのだった。
「それだよな」
「何か滅茶苦茶酷いよな」
「あいつらしいけれど」
「よくそんな非道なこと考えられるよな」
「全く」
「それでだ」
 また話すゲイルだった。
「私はそれに反対してだ」
「当然ですね」
「やっぱりグラドスにもしっかりとした人いるんだ」
「ゲイルさんみたいに」
「私だけではない」
 ゲイルはまた言った。
「私以外にもだ」
「いるんですか。そういう人がまだ」
「グラドス人に」
「アルバトロ=ミル=ジュリア=アスカ」
 この名前を聞いてだ。エイジは思わず言ってしまった。
「姉さん!?」
「そうだ、エイジ」
 ゲイルもまた彼に告げる。
「君の姉でありそして私の婚約者でもある彼女がだ」
「ゲイルさんと同じくですか」
「私達は他の星の、グラドス人の物達はだ」
 どうしようと考えているのかを話すのだった。
「巻き込みたくはない。当然バルマーの兵器もだ」
「手をつけないで」
「自分達だけで戦われるんですね」
「そのつもりだ。これはあくまで私達の戦いだ」
 毅然として話すのだった。
「それでどうして。そんなことをするのだ」
「じゃあ他の星の人達は」
「どうされるんですか?」
「安全な場所に避難してもらう」
 これがゲイルの考えだった。
「宇宙怪獣やプロトデビルンのいない場所までな。そう考えている」
「いや、それは無理だな」
 ところがバルトフェルドがその考えに異議を示してきた。
「こう言っては悪いけれどね」
「無理だというのか」
「この状況でかい?」
 バルトフェルドはそこから話した。
「避難させられるというのかい」
「それは」
「それよりもここは」
 そしてだった。バルトフェルドはこう言うのだった。
「その彼等を守った方がいいね」
「彼等も」
「そう。その方がずっと安全だよ」
「我々が守るのだな」
「具体的に言えば宇宙海獣達を倒すんだね」
「そうして攻めてそのうえで」
「そうした方がいいね」
 彼はこうゲイルに話した。
「それでどうかな」
「策を授けてくれるというのか」
 ゲイルはバルトフェルドのその言葉にいささか驚いていた。
「グラドスに対して」
「そこまで驚くことかい?」
「我々は敵同士だ」
「確かにね」
「その敵に策を授けるというのか」
「確かに敵同士だよ」
 それは否定しなかった。バルトフェルドもだ。
「けれどね」
「しかしだというのか」
「そうだよ。僕達は市民を助ける為にね」
「そうするというのか」
「さもないと市民達に無駄な犠牲が出るからね」
 そしてだった。バルトフェルドはこうも言うのだった。
「グラドス人以外にもね」
「私はです」
 ラクスも出て来て言う。
「グラドス人は嫌いですが」
「それでも。一般市民は関係ないから」
 キラもだった。
「だから。ここは」
「是非。他の人達も御願いします」
「わかった。それではだ」
 そこまで言われてだった。ゲイルも決断した。
「私はそれで行こう。だが」
「だが?」
「だがっていいますと?」
「ジュリアにも話をしておかなくてはならない」
 またこの名前が出て来た。
「彼女にもだ」
「姉さんにも」
「そう、軍事は私が担当しているがだ」
「政治はそのジュリアさんって人が?」
「そうなってるんだ」
 ロンド=ベルの面々もここでグラドスの状況を察してきた。そしてだった。
 あらためてだ。彼等は話すのだった。
「じゃああいつのところは?」
「ル=カインのところは?」
「あいつが独裁体制敷いてるとか?」
「そんなところ?」
「その通りだ」
 ゲイルの言葉ははっきりとしていた。
「ル=カイン派は全てあの男が統括している」
「文字通りの独裁者かあ」
「何かわかりやすいっていうかね」
「そうだよな」
「つまりは」
「そういうことか」
 ロンド=ベルの面々も納得する。ル=カインについてはだ。
 そしてだった。そのうえでだった。
「じゃあ今はとりあえず」
「ゲイルさん達とはどうしよう」
「それで」
「エイジ」
 マーグが彼に声をかけてきた。
「君はどう思う」
「僕はですか」
「そうだ、君はどう考えている」
 こう話すのだった。
「このことについてだ」
「だよな、エイジはグラドスの血も引いてるし」
「ここはやっぱり」
「エイジがどう考えているか」
「それよね」
「そういうことだ」
 また声をかけるマーグだった。
「どう考えている」
「・・・・・・僕は」
 熟考してからだった。エイジは言った。
「皆の気持ちもわかる」
「どれだけグラドスを嫌ってるか
「それだよなあ、やっぱり」
「まあそれは」
「グラドスは間違っている」
 それは否定しない。できなかった。
「けれど。市民達、そして罪のないグラドス人もいるんだ」
「そしてゲイルさんやエイジのお姉さんみたいな人もいる」
「それなら」
「ここは」
「ゲイルさんと姉さんさえよかったら」
 この前提があるがそれでも言うのだった。
「僕達はグラドスの危機も救うべきだと思う」
「このグラドスにいる他の星の人達も」
「全てよね」
「それは」
「うん、グラドス人も他の人達も全て救わないといけないと思う」
 これが彼の考えだった。それを聞いてだった。
 これまでグラドスに激しい敵意を見せていた面々もだ。言うのだった。
「エイジが言うんならな」
「そうだよな」
「それなら」
「ル=カイン達は別にして」
「ゲイルさん達は」
「そうよね」
 彼等も今はだった。怒りを収めていた。グラドスの中の白い烏を見たからだ。 
 そのうえでだった。こう話し合うのだった。
「もう。グラドス人だからって無闇に激しい攻撃を浴びせるのは」
「止めた方がいいよな」
「確かにとんでもない奴も多いけれど」
「それでも」
「ゲイルさんみたいな人達は」
「じゃあ皆、それでいいね」
 またエイジが皆に問うた。
「今から僕達は」
「宇宙怪獣とプロトデビルンを退ける」
「グラドスの市民達の為に」
「過去を忘れて」
「いいのか、本当に」
 ゲイルの顔は信じられないといったものだった。
「我々に対して」
「正直言ってな」
 ディアッカだった。その最初に言った彼だ。
「俺はまだグラドスは嫌いさ」
「俺もだ」
 イザークも言う。
「けれどな。戦えない人達を守るのはな」
「義務だからな、俺達の」
「だからなのか」
「そうだ、我々が戦う意義」
 サンドマンだった。
「それは戦うことができない物達の為に戦うこと」
「だからだ。貴殿等が気にすることはない」
 レイヴンも話してきた。
「そういうことだ」
「それではだ」
 サンドマンのステッキが回転した。そのうえで。
「諸君!」
「ええ、グラドスの本星に行って」
「そこに来る奴等をまとめてですね」
「倒す」
「途中で会っても同じだ」
 また言うサンドマンだった。
「倒す、いいな」
「我々に協力してなのか」
「結果としてそうだな」
 アルトもまたゲイルに話す。
「あんた達の為になる」
「済まない・・・・・・」
「礼はいい。それよりもだ」
「皆を助けましょう」
 オズマとキャサリンも話してだ。そのうえでだった。
 彼等はゲイル達に協力して戦うことになった。これまでの因縁を忘れて。そのうえで義の為に戦う決意を固めてそうするのだった。


第七十八話   完


                                          2010・11・30
  

 

第七十九話 グラドスの聖女

                  第七十九話 グラドスの聖女
「急展開だよな」
「そうね」
 アイナがシローの言葉に応えていた。
「こんなことになるなんてね」
「想像していなかったよ」
「私はです」
 ノリスも出て来て話す。
「グラドスは殲滅するしかないと思っていました」
「殲滅ね」
「はい、どちらかが滅びるまで」
 ノリスはアイナに対しても述べた。
「そこまで戦うしかないと考えていました」
「けれどそれが」
「はい」
 ノリスはアイナに対して頷いてからまた述べた。
「大きく変わりました」
「まさかグラドスの為にグラドスと共闘するなんて」
「本当に意外だよ」
 それをシローも言う。
「どうなってるんだって思うさ、俺も」
「しかしだ」
 ここで三人の前にだ。葉月が出て来て話す。
「思えばそれは必然だったのだ」
「必然だったんですか」
「グラドスを助けることが」
「そうだ、我々は戦えない人達を守る為に戦っている」
 葉月もまたこのことを言う。
「だからだ。それはだ」
「あのグラドスの為に戦う」
「それもまた」
「確かに彼等の罪は許されない」
 それはだというのだ。
「しかしだ。罪を犯していない者もいる」
「全てのグラドス人がそうじゃない」
「だからなんですね」
「グラドス人全てを裁くことはできない」
「こういうものがある」
 今度出て来たのはサンドマンだった。
「ゴヤの絵だが」
「ゴヤ!?」
「あのスペインの画家ですね」
「確か」
「そうだ、彼は多くの絵を残してきた」
 その多くはグロテスクなものが多い。とりわけ人の顔がそうだ。そこから人間の内面を描いていたとも言われている。そうした画家だ。
「その中に二人の男が戦う絵がある」
「その絵に一体」
「何が」
「その絵は脚が埋まり逃げられないようになっている」
 そうした絵もだ。ゴヤにはあるのだ。
「そして男達は戦っている」
「どちらかが死ぬまで戦うしかない」
「そういうことなんですね」
「つまりは」
「しかしだ」
 ここでまた言うサンドマンだった。
「戦うだけではないのだ」
「他にも取るべき手段がある」
「そういうことなんですね」
「そうだ、戦いを止め」
 彼はさらに言った。
「そして握手をすることなのだ」
「理想ではあるな」
 葉月は一旦こう言った。
「だが。それを目指さなければ」
「何も生まれはしない」
「そうなんですね」
「そういうことだ。現実がある」
 サンドマンは今度は現実を話してきた。
「現実だけでは世界はただ不毛になる」
「そして理想だけでは」
「夢想になってしまう」
「そうだ、現実と理想を上手く組み合わせるのだ」
 サンドマンの言いたいことはそういうことだった。
「そしてそれによってだ」
「世界を変えられる」
「全てを」
「その通りだ。その二人の巨人はだ」
 ゴヤの話に戻った。
「戦い、殺し合うだけではなかったのだ」
「手を握り合うこともできた」
「それができたんですか」
「それは地球とグラドスなのだ」
 そうだというのであった。
「我々の関係はそうなのだ」
「そういうことですか」
 ノリスはサンドマンの話を最後まで聞いてから述べた。
「殺し合うだけではない」
「その通りだ。私も今まで気付かなかった」
 サンドマンの今の言葉には自責があった。
「グラドスは滅ぼすしかないと思っていた」
「いや、それはもう」
「ロンド=ベルでも殆ど全員だよな」
「ああ、そうだよな」
「そう思ってましたよ」
 他の面々も出て来てだ。そうして言い合う。
「グラドスだけはって思って」
「もう許せないと思って」
「それで」
「今まで戦ってきたから」
「しかしそれは間違いだった」
 サンドマンは話した。
「手を握り合うこともできたのだ」
「だからですね」
「今、こうしてグラドス軍と一緒に戦うんですね」
「和解して」
「そういうことだ。わだかまりはある」
 それは消せなかった。どうしてもだ。
「しかし。それでもだ」
「ロンド=ベルとして」
「武器を持てない人の為に」
「今は」
「そういうことだ。それではだ」
「ええ、行きましょう」
「本星に」
 彼等はグラドスの本星に向かうのだった。旅路は静かなものだった。
 だがその中でだ。ミサトはマリューと共に飲みながら話をしていた。
「ねえマリュー」
「どうしたの?」
「最近あれじゃない?」
 ビールを飲みながらマリューに言うのだった。
「ビールのおつまみだけれど」
「今日はチヂミね」
「何か油っこいのが多いわよね」
 そのチヂミを食べながらの言葉だった。
「昨日はお好み焼きだったし」
「その前は焼き餃子で」
「さらにその前はハンバーガーでね」
「カロリー多いのばかりね」
「太りそうね」
 そしてこんなことも言う。
「こりゃまずいかも」
「確かにそうですよね」
 エクセレンもいる。当然彼女も飲んで食べている。
「ビールって油っこいものが合いますしね」
「けれどそれが毎日だと」
「やっぱりまずいわよね」
「ですから」
 アクアもいた。やはり飲んでいる。
「明日は枝豆にしません?」
「枝豆?」
「あっさりとなのね」
「はい、それだとカロリー少ないですし」
 だからだというのだ。
「それでどうですか」
「いいわね、それね」
「明日は枝豆ね」
「決まりですね。じゃあ明日は枝豆で」
「そして明後日は」
 エクセレンはさらに話を進ませた。
「お豆腐なんてどう?」
「あっ、あれもカロリー少ないし」
「ビールに合うし」
「ですよね。湯豆腐でも冷奴でも」
「お酒に合うから」
「それもいいわね」
 ミサトとマリューはビールをがぶ飲みしチヂミを貪りながら応えていた。
「じゃあ明日と明後日はそれでいって」
「ヘルシーにいきましょう」
「それで今日はね」
 今日の話になった。
「このチヂミを食べてね」
「楽しくいきましょう」
「いいですよね、これって」
 アクアもまたそのチヂミを食べていた。
「キムチにも合いますし」
「そうそう。食べやすいし」
「簡単にできるしね」
「だからおつまみにも最適だし」
「いいわよね」
 こんな話をしてだった。そうしてだった。
「さて、じゃあね」
「今度はね」
「どのチヂミにする?」
「これなんてどう?」
 積み重ねられているチヂミの中から大きいのを一枚取り出してだった。
「これを四等分してね」
「それで食べてね」
「そう、それでどうかしら」
「いいんじゃないの?」
 真っ赤な顔でいいとするミサトだった。
「それでね」
「そうね。ところで」
 ここで言うマリューだった。
「チヂミじゃない」
「はい」
「それが何か」
「ユン呼ばない?」
 マリューはここでこう言うのだった。
「今からね」
「あっ、そうですね」
「それいいですね」
 それにアクアとエクセレンも頷く。
「韓国人ですしね」
「丁度いいですよね」
「それによ」
 マリューはこんなことも話した。
「チヂミって美味しいから」
「それが何か」
「ありますか?」
「これだけあってもすぐになくなるしね」
 そこまで食べているのだった。四人共だ。
「だから。焼き手が欲しいし」
「そうですか。それじゃあ」
「早速呼びますか」
「ええ、いい考えね」
 エクセレンとアクアだけでなくミサトも満面の笑みで頷く。
「それじゃあ早速」
「あの娘も呼んで」
「そうして」
 こうしてだった。四人はユンも呼んだ。彼女は。
「ええと、何かあったんですか?」
「あっ、いらっしゃい」
 ミサトはにこやかに笑って彼女を出迎えた。
「今飲んでるんだけれど」
「はい、それはわかります」
 見てすぐにわかることだった。まさに一目瞭然だ。
「そのことは」
「じゃあ一緒に飲みましょう」
「そうですね。それじゃあ」
「そうそう。入って入って」
「席は用意したし」
「それじゃあね」
 こうしてだった。四人は焼き手も手に入れてまた飲むのだった。そうしてだった。
 皆それぞれ飲み食いを楽しんだ次の日だった。
「レーダーに反応です」
「えっ、今ですか?」
「今来たんですか」
「そうなんですか」
「参ったな」
 皆この状況にはだった。難しい顔になっていた。
 見れば誰もが青い顔である。その理由は。
「痛たたたたたたた・・・・・・」
「頭が痛い・・・・・・」
「気分が悪い・・・・・・」
「二日酔いで」
 それでなのだった。ほぼ全員が頭を抱えていたのだ。
「あの、それで敵に遭遇するのって」
「あとどれ位ですか?」
「一体」
「五時間後です」
 ヒカリも青い顔で答える。
「六時間後かも」
「よし、じゃあ今はとりあえず」
「身体動かして汗かいて」
「そっからサウナに行って」
「ちょっと酒抜くか」
「そうしよう」
「全員急げ」
 サンドマンだけは平気だった。
「そうして酒を抜いてだ」
「はい、戦闘ですね」
「それを」
「総員まずはランニングだ!」
 かなり乱暴な酒の抜き方だった。
「そしてそのうえでだ」
「サウナに入って完全に酒を抜いて」
「そのうえで」
「そうだ、各員戦闘配置に着く」
 サンドマンはまた言った。
「わかったな」
「はい、それじゃあとにかく」
「走ってサウナに入って」
「酒抜きますから」
 まずはそこからだった。そうしてだった。
 ロンド=ベルは各員戦闘配置に着いた。その頃にはだった。
 目の前にだ。宇宙怪獣の大軍がいたのだった。
「数多いなあ」
「相変わらずだよなあ」
「全く」
 皆今はいい顔をしている。油さけ抜けきっている。
「で、その数はどんだけ?」
「どれだけいるのかな」
「一億」
 ヒカリもすっきりとした顔で言う。
「その数一億」
「一億っておい」
 すぐにトウジが突っ込みを入れた。
「今までよりずっと多いやろが」
「多いなんてもんじゃないよな」
 ケンスケもヒカリの横でぼやく。
「これは辛い戦いになるな」
「ったく、宇宙怪獣ってのはね」
 アスカは苦い顔でぼやく。
「何でこんなにうじゃうじゃいるのよ」
「けれど。ここはね」
 シンジも酒は抜けているが浮かない顔になっている。
「戦うしかないよ」
「そうね」
 それにレイが頷く。
「それじゃあ。ここは」
「皆いいかしら」
 ミサトも今は酒は残っていない。
「敵は私達には気付いていないわ」
「母星にまっすぐ向かっているよな」
「完全にやるつもりだな」
「だよな、あれは」
「グラドスを」
「それなら」
 エイジの言葉だった。
「ここは後ろから一気に」
「そうだ、急襲する」
 そうするとだ。レイヴンも言う。
「そうして戦いの流れを掴んでだ」
「そうして攻めるんですね」
「今は」
「その通りだ。それでいいな」
「はい、それじゃあ」
「それで」
 皆異論はなかった。それで決まりだった。
 そしてゲイルもだ。こう皆に話すのだった。
「では我々もだ」
「我々も?」
「っていうとゲイルさん達も」
「私達と一緒に」
「宇宙海獣達と」
「当然のことだ」
 しっかりとした声で返すゲイルだった。
「それもだ」
「当然って」
「私達はいいですけれど」
「ゲイルさん達は」
「そのままでいてくれても」
「そういう訳にはいかない」
 また言うゲイルだった。
「宇宙怪獣はグラドス本星に向かっているのだからな」
「だからですか」
「ここは」
「そうだ、それに」
 彼はさらに言うのだった。
「君達と共に戦いたい」
「私達とですか」
「一緒にですか」
「戦いたいんですか」
「君達の心を見た」
 ゲイルの声はここでは強いものになった。
「だからだ。その君達と共にだ」
「はい、わかりました」
「それなら」
「一緒に」
「行こう、それではな」
「さて、戦うことは決めた」
 マクトミンは冷静な調子で述べたのだった。
「しかしだ。敵の数は一億だ」
「あの連中が一億だからなあ」
「多いよな」
「やっぱりね」
「その数は」
「容易な戦いではない」
 マクトミンはまた言う。
「それでも戦うのならだ」
「やっぱり後ろから急襲しかないね」
 ネイも言う。
「それで一気に敵の数を減らしてね」
「戦いの主導権も手に入れる」
「そういうことだね。じゃあね」
「うむ、行くとしよう」
 ロンド=ベルはゲイル達と共に敵の大軍に向かう。そうしてだった。
 後方からだ。一気に襲い掛かったのだった。
「よし、今だ!」
「貰った!」
「これなら!」
 こうそれぞれ叫んでだった。
 敵軍に総攻撃を浴びせる。その背にだ。
 ビームもミサイルもファンネルもあらゆる攻撃がだった。敵の大軍にぶつけられた。 
 不意を衝かれた宇宙怪獣達は瞬く間にその数を減らしていく。そしてだった。
 彼等は反転してきた。ところがだった。
 ロンド=ベルはそこにも攻撃を浴びせた。かなりの速さだった。
「反転してもな!」
「そこが隙だらけなんだよ!」
「これなら!」
 その敵をだ。さらに撃つのだった。
 どの宇宙怪獣も次から次に倒していく。だが彼等の数は多かった。
 どれだけ倒されても一億の数は脅威だった。彼等は数を頼りに反転を成し遂げそのうえでロンド=ベルに向かってきた。
 その敵にだ。ロンド=ベルはだ。
「来たな」
「まあ予想通りの展開だな」
「それならだ」
「今は」
 こうしてだった。彼等はその向かって来る宇宙怪獣達にも攻撃を仕掛けるのだった。
 戦いの勢いはロンド=ベルのものだった。ダルタニアスもいる。
「それじゃあな」
「ああ、やるか」
「ガオオオオオン!」
 剣人の言葉にだ。弾児とベラリオスが応える。
「この剣でな」
「ガオオオオン!」
「あのデカブツを真っ二つにしてやる!」
 こう言ってだった。合体型の一機に突っ込んでだった。
 上から下にその剣を振り下ろす。それで真っ二つにしてみせたのだ。
 それを見てだ。驚いたのはグラドス軍だった。
「な、何っ!」
「宇宙怪獣の中でも最も強力なあれをか」
「一撃でだと」
「何という強さだ」
「あれっ、何かおかしいか?」 
 だが剣人は素っ気無い顔で彼等に返すのだった。
「こんなこと普通だろ」
「そうだな」
 弾児も話す。
「いつもしていることだな」
「いつもだと」
「あれだけ巨大な相手を真っ二つにするのもか」
「いつものことだというのか」
「それがロンド=ベルか」
「地球人の力なのか」
「やはりだ」
 そしてだった。ゲイルも言うのだった。
「ロンド=ベル、そして地球人はだ」
「恐ろしい力を持っている」
「そういうことですね」
「彼等は決して劣ってはいない」
 それを言うのだった。
「そして決して野蛮でも無知蒙昧でもない」
「そうですね。確かに」
「だからこそ彼等は今戦っていますね」
「グラドスの為に」
「我々はそれに気付いていなかったのだ」
 ゲイルの言葉にだ。暗いものが宿っていた。
「地球人のな。そのことにな」
「ええ、確かに」
「それがわかりました」
「ようやく」
「間違っていた」
 こうも言うゲイルだった。
「我々はな」
「はい、それではですね」
「今から我々も」
「考えをあらためて」
「ジュリアは正しかった」
 ゲイルはまた言った。
「まことにな」
「そうなりますね」
「やはりジュリア様はわかっておられたのですか」
「全て」
「私が白い烏だとする」 
 ロジャーに言われたそのことを自分でも言うのだった。
「ならばジュリアは」
「はい、あの方は」
「何になるでしょうか」
「黄金の翼だ」
 それだというのであった。
「彼女は黄金の翼だ」
「そうだというのですね」
「あの方は」
「翼だと」
「そうだ、黄金の翼だ」
 そしてだ。ゲイルはそれが何なのかも話すのだった。黄金の翼がだ。
「グラドスを正しく導くな」
「ではそれによってですね」
「我等グラドスは生まれ変わる」
「これから」
「だからこそ戦おう」
 ゲイルは自ら向かうのだった。その敵の大軍にだ。
「行くぞ」
「はい、それでは」
「今から」
 こうしてだった。彼等もまた戦う。その宇宙怪獣の大軍とだ。
 その彼等を見てだ。トビアが言う。
「信じられませんね」
「そうだな」
 シーブックがその彼のその言葉に頷く。
「俺達とグラドスがこうして共闘するなんてな」
「そうですよね。まさかこんなことになるなんて」
「ただ」
「ただ?」
「これは必然なんだろうな」
 シーブックはここでこう言うのだった。
「やっぱりな」
「必然だったんですね」
「グラドスといっても悪人ばかりじゃないんだ」
 シーブックはこのこともトビアに話した。
「銀河に。いていいんだ」
「害にしかならないんじゃない」
「それがわかった」
 そうだというのだった。
「俺も。ようやく」
「僕もです」
「そうだな。じゃあトビア」
「はい」
「戦おう」
 こう言うのだった。そしてだった。
 F91のヴェスパーでだった。宇宙怪獣の高速型を撃ち抜いてそれで沈めたのだった。
「よし!」
「やりますね」
「少なくとも宇宙怪獣は」
「はい、放ってはおけませんからね」
「一気に倒す」
 そうするというのだった。そしてであった。
 トビアもだ。そのビームサーベルを縦横に振るい。周りの宇宙怪獣を次々と屠っていく。戦いは完全に勢いのままになっていた。
 勝利はすぐにであった。宇宙怪獣の大軍も倒してだった。そのうえでだった。
 あらためてゲイルとだ。話をするのだった。
「それでなんですが」
「本星のことか」
「はい、もうすぐですよね」
「そこに辿り着くのは」
「近いですよね」
「そうだ、近い」
 その通りだとだ。ゲイルも答える。
「それでなのだが」
「それで?」
「それでっていいますと」
「何かありますか」
「そのジュリアからだ」
 ジュリアの名前をだ。ここでも話すのだった。
「話がしたいと言ってきている」
「姉さんから」
 エイジがそれを聞いてだ。声をあげたのだった。
「僕達に」
「どうする?」
 ゲイルはその彼に問うた。
「ここは」
「本星に来ればですね」
 こう話すエイジだった。
「そこで、ですね」
「そうだ、そこで正式にだ」
 ゲイルはこうエイジに答えた。
「君達と話がしたいそうだ」
「わかりました」
 エイジはだ。彼のその言葉に応えて言うのだった。
「それなら」
「わかった。ではジュリアに伝えておこう」
「会談のことを」
「それを」
「そこであらためて決まるだろう」
 また言うゲイルだった。
「これからのことがな」
「正式な講和ですね」
「このことが」
「今また話が決まりました」
 グラドスの士官の一人がここで言ってきた。
「グラドスはゾヴォークと講和しました」
「ボアザン、キャンベルともです」
 この報告も入って来た。
「それにバルマーからの独立です」
「全て決まりました」
「話が早いな」
 ゲイルもそれを聞いて述べる。
「何もかもな」
「話というものはだ」
 ここで話すのはグローバルだった。
「動く時は一気に動くものだ」
「一気になんですね」
「それが動く時はですか」
「そうなるんですね」
「その通りだ。それはグラドスも同じだ」
 こう話すグローバルだった。
「だからこそだ」
「じゃあグラドスはこれから」
「平和路線を辿るんですね」
「これまでの抑圧路線から」
「そうなるんですか」
「それがジュリアの考えだ」
 ゲイルは驚きながら言うロンド=ベルの面々にまた話す。
「彼女と。そして私達のだ」
「そのグラドスなら信用できる?」
「だよな」
「ル=カイン達が今は出てるし」
「それなら」
「今のこの人達は」
「信じなくてもいい」
 ゲイルは覚悟を決めた言葉で述べた。
「会談もだ」
「はい、会談もですよね」
「どうされるんですか」
「君達のところに来て話したいそうだ」
 こうも話すのだった。
「そう言ってきている」
「何とまあ」
「敵地に入ってですか」
「そのうえで、なんですね」
「話をですか」
「それでいいか」
 ゲイルはロンド=ベルの面々にまた話した。
「そうして会談をだ」
「こちらとしては異論はない」
 グローバルが答えた。
「では。そちらの本星に着いたらだ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
「そうしましょう」
 こうしてだった。彼等はそれでジュリアと会うことになったのだった。程なくして本星に来てだった。そのうえで話をするのだった。
 マクロスにだった。彼女が来たのだった。
 一隻の小さい船に乗ってだ。そうして来てであった。
「戦艦じゃないのか」
「本当にあんな小さな船で来るなんて」
「本気なんだ」
「俺達と話がしたいって」
「そうだったんだ」
「ジュリアは嘘を吐かない」
 ゲイルがそのことを保証する。
「それではだな」
「はい、それではですね」
「今からですね」
「ジュリアさんと」
 その彼女がだ。マクロスの中に入った。そこにロンド=ベルの主だった面々、それにエイジとゲイルが集まるのだった。
 青く長い髪に気品のある美しい顔立ちの彼女が来た。そしてだった。
「姉さん、久し振りだね」
「ええ、エイジ」
 まずは姉弟の再会からだった。
「貴方とこうして会うなんてね」
「思いも寄らなかったね」
「そうね」
 こう話すのだった。
「それではだけれど」
「うん、わかってるよ」
「ゲイル、有り難う」
 次にはゲイルに顔を向けて優雅な微笑みを向けたのだった。
「ここまで。市民達とこの人達を連れて来てくれて」
「いや、私はだ」
「貴方は?」
「何もしていない」
 こう彼女に言うのだった。
「何もだ」
「そうなの」
「全ては彼等がしてくれた」
 ロンド=ベルの面々に顔を向けての話だった。
「彼等がな」
「そうなのね」
「そうだ。それでだが」
「ええ」
「彼等とな」
「その為に来たから」
 ジュリアの言葉が毅然としたものになる。
「是非ね」
「うむ、それではな」
「はじめまして」
 ジュリアはロンド=ベルの面々に顔を向けた。そうして話すのだった。
「私がジュリアです」
「はい、お話は聞いています」
 グローバルが応えたのだった。
「それではですね」
「それでは」
 こうしてだった。彼女とロンド=ベルの面々の会談がはじまるのだった。そうしてそのうえでだった。重要なことが決まったのだった。


第七十九話   完


                      2010・12・2  

 

第八十話 講和成立すれども

             第八十話 講和成立すれども
 ジュリアはだ。こう話すのだった。
「私の考えはです」
「はい」
「講和ですね」
「そうです」
 その通りだとだ。ロンド=ベルの面々に答える。
「そしてこれまでのグラドスの方針は全て捨てます」
「そして融和路線ですか」
「全ての文化、文明に対して」
「グラドスは間違っていました」
 ジュリアはこのことも言った。
「これまでの。抑圧政策や虐殺は誤りでした」
「それはいいんだけれどな」
 ディアッカが出て来て言う。
「それは」
「それはといいますと」
「だからだよ。あんた達のしてきたことをな」
 ディアッカはこのことをジュリアに言うのだった。
「認めてな」
「はい」
 ジュリアの返答は清らかなものだった。
「グラドスは誤っていました」
「それを認めてか」
「グラドスはその行いを正さなければなりません」
 そうだというのだった。
「それがこれからの私達の務めです」
「謝罪しろとか強要するつもりはない」
 イザークもそれは否定する。
「だが。注意しておくことだ」
「それか」
 ゲイルも彼が何を言いたいのかはわかっていた。
「そうして何かを強要する者がいてもだな」
「おかしくはない。人に謝罪を強要する者はだ」
 イザークはその言葉を続けてきた。
「いるからな」
「そうですね。そしてそうした人は」
 ニコルも言う。
「その魂胆によからぬものがあるものです」
「自分は絶対に謝罪などしない」
 アスランも出て来た。
「何があろうともな」
「そうした奴には注意しろよ」
 ディアッカはまた彼等に話した。
「それはな」
「わかっている」
 ゲイルが答えた。
「それはだ」
「ならいいがな。じゃあな」
「話を続けるか」
「そうしてくれ」
 ディアッカはここで一旦引っ込んだ。そしてだった。
 そのうえでだった。ジュリアはまた話すのだった。
「貴方達はそれでなのですね」
「その通りだ」
 ロジャーが答えた。
「君達との共闘を申し出たい」
「グラドスの市民達の為に」
「君達にとってはとても信じられないことだな」
「はい」
 それは否定しないジュリアだった。
「やはり。とても」
「それはわかる。しかしだ」
「信じてよいというのですね」
「むしろ信じて欲しい」
 これがロジャーの言葉だった。
「グラドスの市民達の為だ」
「一つ御聞きしたいのですが」
 ジュリアはそのロジャーを見て問うのだった。
「私達がしたことを知っていて」
「そうして助けることか」
「それは何故ですか。その様なことを」
「我々が戦う理由はだ」
 ダイテツだった。
「それは人々を護る為だ」
「だからですか」
「そうだ、だからだ」
 それでだというのである。
「だから我々は戦うのだ」
「グラドスの為にも」
「これでわかってくれるか」
 ダイテツはまたジュリアに問うた。
「我々が何故そうするのかを」
「はい」
 ジュリアもダイテツの言葉にこくりと頷いた。
「私も。貴方達を見ていましたから」
「それでだな」
「そうです。ですから」
「行動は言葉よりも重い」
 サンドマンだった。
「そういうことだな」
「それではだな」
 ゲイルがまた言ってきた。
「これからはだ」
「はい、これからは」
 エイジが応える。
「一緒に」
「グラドスの為に」
 ゲイルとエイジが握手をしてだった。それで決まったのだった。ロンド=ベルとグラドス穏健派は共に戦うことになったのである。
 だがここでだ。ゲイルが深刻な顔をして言ってきた。
「宇宙怪獣は退けたが」
「後はプロトデビルンですね」
「それとル=カインですね」
「プロトデビルンは」
 ここで話したのはキャサリンだった。
「自分達から来るわね」
「そうか、それじゃあ」
「今はね」
「あの連中は待ってそれで迎撃する」
「そうしようか」
「それと」
 プロトデビルンだけではない。もう一つの敵についても話される。
「ル=カインはそれで」
「どうしようか」
「あいつは今何処で何してるんだ?」
「それが問題なんだけれど」
「ゲートの近辺に基地を置いてそこにいる」
 ゲイルが面々に説明する。
「グラドスの刻印の辺りにだ」
「ああ、あのゲート」
「あれってここにつながってたの」
「そうだったんだ」
「そうだ、そこに軍を置いている」
 そうしているというのである。
「そしてそこからだ。グラドスを手中に収めた後で」
「また地球に来るつもりか」
「それを狙ってか」
「あそこから」
「懲りない奴だな」
「ル=カインは銀河を己のものにしようと考えている」
 また話すゲイルだった。
「そしてその為には」
「地球の軍事力か」
「それを狙ってか」
「何か予想通り」
「絵に描いた様な野心家」
 まさにそれだとだ。全員で忌々しげに言うのだった。
「じゃあそんな奴はもう」
「ゲートごとやっつけるか」
「そうしないとね」
「また地球に被害が出るし」
「それなら」
 ル=カインに対する対処も決まったのだった。そうしてだ。
 ロンド=ベルはグラドス軍と共に本星に集結してだ。プロトデビルン達が来るのを待っていた。その中においてであった。
 彼等はだ。ここでだった。
 ゲイルが率いるグラドス軍を見ながら話すのだった。
「なあ」
「それでだけれどな」
「だよな。確かにグラドス軍と講和したけれど」
「それでも」
 問題があった。それについての話も為されていた。
「戦犯とかどうなるんだろうな」
「いや、グラドスのやったことって戦争犯罪じゃないからな」
「それとは別の犯罪行為だからな」
「虐殺とか文化破壊って」
「どうなるんだ?」
 この問題について話されるのだった。
「戦争犯罪じゃないから」
「そっちは一般法での問題になるけれど」
「それに問われてる連中はどうなるんだ?」
「一体」
「そのことだが」
 ゲイルがだ。このことについてもロンド=ベルに説明してきた。
「そうした者は殆どがル=カイン派に行ってしまった」
「裁判に問われて処刑されるよりはってことか」
「それでか」
「向こうに行った」
「そういうことなんだ」
「その通りだ。それでだ」
 こう話すのであった。
「彼等の殆どはそちらに流れた」
「じゃあ残りは?」
「あっちに流れなかった人は?」
「どうなったのかしら」
「全員裁判にかけられ罪を償った」
 ゲイルは簡潔に述べた。
「そうなった」
「じゃあそっちの問題は」
「ル=カインを叩き潰せばそれで終わり」
「簡単になったんだな」
「その通りだ。ル=カインもまた同じだ」
 彼もだというのだ。
「犯罪行為に問われている」
「あいつはなあ」
「ゴステロも酷かったけれどな」
「あいつが指揮官だったし」
「率先してやってたし」
 このことをだ。ロンド=ベルの誰もが覚えていた。
 それでなのだった。彼等も言うのだった。
「じゃあ。そこに集まってるのなら」
「もうその時にね」
「まとめて成敗してやるか」
「その犯罪者共を」
 最早だ。彼等の中でル=カイン派は戦士でも軍人でもなかった。忌むべき犯罪者、それ以外の何者でもなくなっていたのである。
 そうしてだった。待っているうちにであった。
 そのプロトデビルン達が来た。指揮官はやはり。
「ふふふ、ここに来ていたか」
「ああ、また美野郎か」
「やっぱり来たな」
「あのでかいのも」
「いつも一緒なんだな、本当に」
 ロンド=ベルの面々の言葉はクールだった。
「で、ここに来たか」
「いよいよ本星を狙いに」
「その通り」
 ガビルからも答えが返ってきた。
「ここで勝つにしろ負けるにしろだ」
「最後の戦いか」
「そういうことね」
「この方面の戦力はこれで終わりだ」
 ガビルからの言葉だった、
「だからだ」
「それでか。ここでの決戦ってことか」
「それを挑みに来たのかよ」
「私達に」
「御前達がいるとは知らなかった」
 これはガビルの計算外のことだった。
「だが。それでもだ」
「戦う」
「そう言うんだな」
「つまりは」
「如何にも。そして」
 さらにだ。ガビルは言ってきた。
「決戦美、今ここに!」
「ガオオオオオオオオン!」
 グラビルもであった。そうしてだった。
 プロトデビルン達は向かって来た。ロンド=ベルもだった。
 宇宙ステーションから出る。そして。
「全軍出撃だ!」
「戦闘用意!」
 こうしてだった。彼等も出撃してだった。
 戦いに入る。無論ゲイル達も一緒だ。
 共同して敵にあたることはだ。ここでもだった。ゲイルが部下達に言う。
「いいか」
「はい」
「それではですね」
「我等も共に戦う」
 彼は言った。
「命を賭けてだ」
「友軍の為に」
「今ここで」
「戦いたくない者は下がっていい」
 ゲイルは強制はしなかった。
「しかしだ。その心があればだ」
「はい」
「その時は」
「私と共に戦おう」
「グラドスの為に」
「そして銀河の為に」
 こうしてだった。グラドス軍もロンド=ベルと共に戦うのだった。
 ロンド=ベルはそのグラドス軍と共にだ。本星の前で方陣を幾つか組んだ。
 そのうえでだ。マリューが言った。
「さて、これからね」
「そうですね」
 ノイマンが彼女に応える。
「こうして守りは固めましたが」
「相手はどう来るかね」
「はい、それです」
 そのプロトデビルン達だというのだ。
「相手がどう出るかですね」
「今までの戦術ですと」
 ミリアリアも戦術を理解しだしていた。
「プロトデビルンはすぐに突撃してきますが」
「だよな、プロトデビルンってな」
 トールもそれを言う。
「何かあったらもうすぐにだからな」
「突撃してくるね」
「戦術ってあまりなかったよな」
 これはサイもカズイも把握していることだった。
「だから今も」
「守っていていいですかね、このまま」
「そうだな」
 ラーディッシュからヘンケンも言ってきた。
「ここはな。そう来るな」
「それではですね」
「ここはこのまま守りましょう」
 アドレアとナタルがヘンケンのその考えに賛同して話す。
「要は本星に行かせなければいんですから」
「相手を退けさせることが」
「つまりだ」
 結論を述べたのは大文字だった。
「我々は勝つ必要はない」
「勝つんじゃなくて負けない?」
「この戦いって要するに」
「そういう戦いなんだ」
「少なくとも今の戦いはそうだな」
 アルフレッドも頷く。
「勝つ必要はない」
「守るだけでいい」
「そういうことなんだ」
「結局は」
 他の面々も彼の言葉に頷いてだった。そうしてだった。
 彼等は守りを固める。それに対してだ。
 ガビルはだ。本星ではなく彼等に向かうことにしたのだった。
「グラビルよ」
「ガオオン」
「ここはまずは敵を倒そうぞ」
「ガアオオン?」
 それは何故だというのだった。
「敵がいては中々エネルギーの吸収に専念できない」
 まずはその理由からだった。
「そしてだ」
「ガオオオン」
 そして、という意味での叫びだった。
「敵と戦う喜び、戦闘美」
 また美であった。
「それを楽しもうぞ」
「ガオオオオオン!」
 頷いてからの叫びだった。これで決まりだった。
 二人が率いるプロトデビルン達はそのままロンド=ベルに突っ込む。こうして戦いになったのだった。 
 それを見てだ。エキセドルが言った。
「では皆さん」
「ここはですね」
「慌てることなくですね」
「その通りです」
 美穂とサリーに対しても述べry。
「方陣を崩さずにです」
「敵の消耗を待つ」
「今は」
「そうしましょう。それでいいですね」
「何か面白くねえな」
 エキセドルの言葉を聞いてだ。バサラは顔を顰めさせて言うのだった。
「そういうのってな」
「あんた別に戦わないじゃない」
「俺は戦いは嫌いだ」
 ミレーヌに返す。とにかく言うことは一貫しているバサラだった。
「けれどな」
「けれどってそれで何なのよ」
「俺の歌はな」
 その彼の歌だというのだ。
「聴かせてこそなんだよ」
「だから前に出るのね」
「俺の辞書にはな」
 今度は辞書だった。
「そうした退くとか止まるって言葉はねえんだよ」
「最初からそんな言葉ないでしょ」
 ミレーヌはここでは突っ込みに徹していた。
「あんたの場合は」
「おうよ、自然に身体が出るんだよ」
 それこそがバサラだった。
「もうな、後ろに下がったことなんて一度もねえんだ」
「止まることは?」
「それもねえ」
 やはりそうであった。
「だから今もな」
「まさかと思うけれど」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!!」
 ここでもこう叫ぶバサラだった。そしてギターを手にして。
 一機でプロトデビルン達に突っ込む。歌いながら。それを見てだった。
 グラドス軍はだ。唖然となっていた。驚きを隠せない。
「な、何っ!?」
「一機でだと!?」
「しかも何の武器も持たずにか」
「歌で突っ込むだと」
「何なのだ、あいつは!?」
「わからん」
 ゲイルもだった。見るのは今がはじめてでないがそれでもだった。
 唖然としてだ。こう言うのだった。
「地球人の中にはああした行動を取る人間もいるのか」
「彼は特別よ」
 エクセレンが驚く彼に話す。
「ああしたことって普通はしないから」
「そうなのか」
「し、しかしあれは」
「武器も持たないでだ」
「ああして敵の中に突っ込むとは」
「正気なのか、彼は」
「そうだ、正気だ」
 今度はキョウスケだった。
「あれがあいつのやり方だ」
「信じられんな」
 ゲイルはまた言った。
「地球人といえばだ」
「劣った文化しか持っていなくて好戦的」
「そういう認識だったんですよね」
「グラドスじゃ」
「その認識は誤りだとわかった」
 このことも言うゲイルだった。
「だが。しかしだ」
「ああしたことはですね」
「なかったっていうんですね」
「やっぱり」
「グラドスでも」
「有り得ない」
 また言うゲイルだった。
「戦いの場においては武器を持つものだからな」
「だからそれが常識なんですよ」
「地球でもね」
「普通はそうなんですよ」
「けれどバサラは」
 彼はだというのだ。
「ああしてですね」
「戦いを終わらせる為に歌うんですよ」
「そうして一気になんです」
「動くんです」
「歌で戦いを終わらせる為に」
 歌と聴いてだった。また驚くグラドスの面々だった。
「何という男だ」
「歌で戦いを終わらせるだと」
「無謀だ」
「無謀にも程がある」
「有り得ない」
 グラドスの者達はこうまで言うのだった。
「そんなことできる筈がない」
「戦いは歌で終わりはしない」
「できる筈がない」
「そうだ、不可能だ」
「いや、できる」
 しかしだ。アルトが彼等に話した。
「俺達は今までそれを見てきた」
「それをか」
「できると」
「歌で戦いを止めることが」
「できるのか」
「後でデータを渡す」
 アルトはまた彼等に話した。
「リン=ミンメイ、それとシェリル=ノームとランカ=スター」
「その三人のことをか」
「我々に」
「それを渡すからな」
 こう言うのだった。
「その時にある程度はわかる筈だ」
「それに」
 輝はだ。今を話すのだった。
「今もだしね」
「今も!?」
「今もとは」
「まさか」
「ここでもだというのか」
「ああ、そうさ」
 輝はまだ驚いているグラドスの面々にまた話す。
「ここでも見させてもらうよ」
「信じられないことばかりだ」
「何から何まで」
「それが地球人なのか」
「歌で戦いを終わらせるだと」
「その様な途方もないことをしたのか」
「馬鹿げている」
 こうしてだった。バサラが突っ込みだ。プロトデビルン達の中で歌うのだった。
 そしてマクロスクウォーターでもだ。
 既にステージが用意されている。まだスポットライトがあたっていないそこで。
「ランカ」
「はい、シェリルさん」
 二人は背中合わせに立っていた。
「あたし達の歌でね」
「ここでもですね」
「ええ、戦いを終わらせましょう」
「はい」
 二人でだ。こう言い合うのだった。
「この戦いもまた」
「じゃあいいわね」
「はい!」
 二人に七色の光が来た。そしてだった。
「聴いて皆!」
「あたし達の歌を!」
 その光の中でだった。二人は歌うのだった。
 その歌はだ。戦場に鳴り響いた。無論バサラの歌もだ。
 その歌がだ。彼等も打った。
「な、何だと!?」
「この歌を聴くと」
「そ、そうだな」
「力がみなぎってくる」
「何処からか」
「何だ、この歌は」
 まずはバサラの歌だった。それを聴いてだった。
「聴くとそれだけで身体が違う」
「戦えるぞ、何時までも」
「そんな気にさせてくれる」
「この歌は一体」
「何だというのだ」
「これは」
「それが俺の歌だ!」
 バサラが驚くグラドス軍に話す。
「俺の歌はな!違うんだよ!」
「聴けばそれでというのか」
「力がみなぎってくる」
「そういう歌だと」
「そう言うのだな」
「ああ、そうだ!」
 その通りだというのだった。
「そしてだ!」
「そして」
「何だというのだ、今度は」
「一体」
「今度は何だというのだ」
「俺だけじゃねえ!」
 こう言うのだった。
「ランカとシェリルの歌もだ。聴け!」
「!?この歌もまた」
「かなりのものだな」
「凄まじいまでに気力があがる。それだけじゃない」
「体力も回復してくる」
「まさにそうしたものだな」
「不思議な歌だ」
 グラドスの将兵達も驚きを隠せない。しかしだった。   
 実際に気力があがりだ。それが戦局にも影響を与えていた。
「動ける」
「しかも攻められる」
「ただ歌を聴いただけなのに」
「ここまでだというのか」
「地球の歌は」
「ああ、そうだ!」
 バサラが答える。
「これが俺達の歌だ!」
「そして地球の文化か」
「何という力があるのだ」
「信じられん」
「ここまでとは」
 彼等はその中で認識しだしていた。その地球の文化の凄さをだ。
 そしてだった。彼等はだ。
「戦うぞ!」
「いいな!」
「グラドスを守る!」
「負けてたまるか!」
 こう言い合いだ。戦う決意をさらに固めるのだった。
 戦いはロンド=ベルだけでなくグラドス軍も極めて高い士気を保ちだった。そうしてプロトデビルン達を防いでいた。それを見てだった。
 ガビルはだ。こう言うのだった。
「見事だ」
「こいつ本当にあっさり認めるよな」
「ああ」
「敵のことでもな」
「普通に」
「俺は敵であろうとも」
 そのガビルの言葉だった。
「誰であろうと認めるのだ」
「まあそれはいいけれどな」
「いいことだけれどな」
「敵でも否定するってのはな」
「しかしな」
 それでもだというのだった。彼等はだ。
「それでもな。違和感あるよな」
「こいつの言うことって癖あるからな」
「それもかなり強いし」
「何かっていうとあれだし」
「そう、誇りだ」
 ロンド=ベルの面々をよそにだ。ガビルは言葉を続けていく。
「誇り、即ち」
「よし、出るな」
「今度もまたな」
「さて、今回は何よ」
「何美よ」
「尊厳美!」
 これであった。
「かぐわしい。その美だ!」
「それ前に言わなかったか?」
「そんな気がするな」
 ミシェルとクランが言う。
「まあ何でもかんでも二文字の後で美だからな」
「限られてくるな」
「それもまた美なのだ」
 へこたれないガビルだった。
「それを様式美という」
「それはよく聞きますね」
 今度はルカが突っ込みを入れる。無論戦いながらだ。
「その言葉は」
「定まっているものにも美はある」
 そしてこうも言うガビルだった。
「美は全てにあるものなのだ」
「かなり独特の哲学だけれど」
「頷けるものはあるな」
「そうだよな、敵とはいえ」
「っていうと」
 ここでだ。ロンド=ベルの面々も気付いたのだった。
「俺達もあいつと同じか?」
「個性が際立ってないだけで」
「それは」
「まあいいか」
「なあ」
 そしてだった。彼等もそれを受け入れるのだった。
「とりあえずあいつは敵だけれどな」
「別に卑怯でも卑劣でもないしな」
「絶対に正面から来るし」
「だよな」
 こう話してだった。戦いを続ける。敵の変態が来てもだ。
「よし、撃て!」
「ミサイル一斉発射!」
「美しく」
 カットナル、ケルナグール、ブンドルが言ってであった。
 三人の戦艦からミサイルを放つ、それで、であった。
 敵をまとめて倒す。戦艦も前線で戦っている。
「ふむ、順調だな」
「うむ、上手くいっているな」
「いいことだ」
 そしてこう話す三人だった。
「いい具合に進んでいる」
「敵の数を減らしていってな」
「守りはこれでいい」
 だが、だった。ここでだった。
 ケルナグールがこんなことを言い出したのだった。
「しかしなあ。わしはどうもだ」
「やはりか」
「守るのは嫌いなのだな」
「わしの性に合わぬ」 
 やはりであった。守るのはケルナグールにとってはそうなのだった。
「こう一気に攻めなければだ」
「わかっておる。しかしだ」
「今は仕方がない」
 カットナルとブンドルが彼を止める。
「それは御主もだ」
「承知しているな」
「ううむ、それでもだ」
 難しい顔をする彼だった。
「わしはどうもな」
「全く。たまにはいいではないか」
「守るのもな」
「そういうものか。前に出ぬのもか」
「そういう戦いもあるぞ」
「わかっていると思うのだがな」
「わかってはいる」
 それは彼もわきまえている。だがそれでもだった。
 腑に落ちないといった顔でだ。彼は諦めて言った。
「後で少し暴れるとするか」
「トレーニングでもしておけ」
「ケルーナでな」
「そうする。それではな」
 こう話してであった。ケルナグールは今は我慢していた。
 そしてであった。戦いが進むとだった。
 損害はプロトデビルンにとって無視できなくなってきた。それでだ。
 ガビルがグラビルに対して言ったのだった。
「グラビルよ」
「ガオオオオオン」
「これ以上の戦闘は無意味」
 そして言う言葉は。
「撤退美を遂行する」
「ガオオオオン」
「また機会がある。その時にまた戦うとしよう」
 こう言ってだった。彼等は撤退を決めたのだった。
 決めると動きは速かった。すぐにであった。
 プロトデビルン達は姿を消した。グラドス本星前での戦いは終わった。
 それからだった。グラドスの兵士達はロンド=ベルの面々に対して言うのだった。
「それでなのだが」
「いいだろうか」
「彼の音楽を」
「あの二人の歌をだ」
「聴きたいのだが」
「是非」
 こう言うのであった。
「頼む、頼めた義理ではないが」
「それでもだ」
「聴かせてくれるか」
「あの曲を今も」
「あの歌を」
「ああ、いいぜ」
 バサラ本人が笑顔で答える。
「俺の歌は誰もが聴く歌だからな。いや」
「いや?」
「いやというと」
「誰であろうと聴かせる歌だ」
 これこそが熱気バサラだった。
「この俺の歌はな。それだ!」
「聴かせてくれるか」
「それなら」
「頼む!是非だ」
「聴かせてくれ!」
「よし、聴け!」
 バサラも彼等に応える。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「おおっ、聴くぞ!」
「その歌を!」
「今から!」
 最早グラドスも何も関係なかった。バサラの歌は彼等を変えた。
 そしてだった。シェリルとランカの歌もだ。グラドスに知られるようになっていた。本星でもだ。
「一変しました」
 ジュリアがこのことをエイジ達に話すのだった。
「誰もが。地球の文化をです」
「認めるようになったんだね」
「ええ。本当に一変したわ」
 こうエイジにも話すジュリアだった。
「あれだけ頑なだったのに」
「本当にいいものは誰もがわかるものなんだ」
 これがエイジの言葉だった。
「だから」
「それでなのね」
「それで姉さん」
 今度はエイジからの言葉だった。
「僕達もね」
「貴方達も」
「うん。グラドスの文化を見せてもらいたいけれど」
 それをだというのだった。
「それはどうかな」
「ええ、いいわ」
 笑顔で応えるジュリアだった。
「是非ね」
「そうするべきだったのね」
 こんなことも言うジュリアだった。
「グラドスは」
「相互理解はだ」
 クワトロがそのジュリアに話す。
「銀河を平和にするのだ」
「この銀河を」
「グラドスもその中にいる資格がある」 
 クワトロはこうも話す。
「相手を認めるならば」
「そうすれば」
「それで」
 他のグラドスの者達も話していく。
「我々もまた」
「相手を認めることか」
「俺達もだな」
 今言ったのはデビットだった。
「これまでグラドスの奴等をぶっ殺すことだけしか考えてなかったけれどな」
「そうだね。それは違っていたんだ」
 ロアンもわかったのだった。
「何にもならないんだ」
「グラドス人を銀河から消せばそれで終わるかも知れない」
「けれどそれは何の解決にもならない」
「銀河の本当の平和の為には」
「だからこそ」
 お互いに言い合う。ロンド=ベルもグラドスも。
「お互いを知るか」
「そうよね」
「そうしよう」
 彼等は真実を知ったのだった。こうして人類とグラドスは真の道を知りそうしてそれを歩むことになったのだった。全てはここからだった。 
 グラドスの本星に入ってだ。アムロが見たものは。
「成程な」
「何かあれだよな」
「そうだね」
 アムロと共にいるカイとハヤトも話す。
「地球とは違うけれどな」
「根本は同じみたいだよな」
「そうだな」
 アムロも二人のその言葉に頷く。
「グラドスも同じだな」
「てっきりどれだけ違うかって思ってたけれどな」
「案外似ている部分が多いかな」
「それは当然だな」
 スレッガーもいた。
「考えてみればな」
「考えてみればですか」
「ああ、考えてみればいい」
 スレッガーはこうセイラに話す。
「俺達とグラドス人の外見だがな」
「殆ど同じですね」
「そういうことさ。同じだろ」
 また言うスレッガーだった。
「姿形が同じならな」
「文化文明も似たものになりますか」
「結局はそういうことさ」
 スレッガーの言葉が続けられる。
「簡単に言えばな」
「それに」
 今度はリュウが話す。
「文化や文明はだ」
「同じ物差しでは計れませんね」
「そういうことだな」
 ハヤトに返すリュウだった。
「どれが優れているか劣っているかはな」
「ありませんか」
「そう思う、俺はな」
 これがリュウの考えだった。
「グラドスも地球もない」
「そうなんですか」
「ですね」
 アムロも頷く。
「地球もグラドスもありませんね」
「だよな。これまでかなり倒してきたけれどな」
 カイも話す。
「それはそうだよな」
「グラドスも地球もない」
「じゃあそこにあるのは」
「思想の違い」
「それなんですね」
 ロンド=ベルの面々はグラドス本星の中でそれをあらためて認識した。
 そしてだった。さらにであった。
「そういえばジュリアさんって誰かに似てない?」
「ゲイルさんもだよな」
「ええと、あれは」
「確か」
 そしてだった。この名前が出て来た。
「ミュージィ=ポー?」
「あのショット=ウェポンと一緒にいた」
「あの女に何か」
「似てるかな」
「それでゲイルさんは」
 今度は彼だった。
「あの声、シュバルツさんだよな」
「そうそう、あの人」
「もうそっくり」
「よく聞いたら本当に」
 皆そのことに気付いたのだった。
「そう考えてみれば」
「グラドス人も地球人とかと変わらないか」
「ただ。住んでいるところが違うだけ」
「それだけよね」
「やっぱり」
「声、ね」
 今言ったのはマーベルだった。
「私も早瀬大尉と似たものを感じるからわかるわ」
「マーベルの場合はそっくりだしな」
 ショウもそのマーベルに話す。
「俺も雅人やトロワとそうだけれどな」
「何ていうかこういう話したら」
「もう何が何だか」
「わかることはわかるけれど」
「カオスになるのよね」
「どうしても」
「私なんか」
 ユンだった。
「すぐ包丁とか白馬の話になりますから」
「お腹切られて死んだ記憶あるとか?」
「首切られたっていうのも」
「どれも嫌な話ですね」
 実際にその顔を曇らせているユンだった。
「どうしても」
「まああれだよ」
 マサキがそのユンのフォローに入った。
「そっちの世界も色々あるからな」
「そういえばマサキそっちに縁あったっけ」
「何か仙人じゃなかった?」
「子供みたいな顔した」
「そうよね」
「何か」
「ああ、言われることあるぜ」
 マサキも不承不承ながら頷くのだった。
「それはな」
「私もだ」
 オオタコーチだった。
「あちらの世界は知っている」
「俺もだな」
 凱もであった。
「そこでも王だったか」
「勇者王じゃなくて?」
「何王?」
「それじゃあそっちの世界じゃ」
「何になるんですか?」
「確か医者だったか」
 凱はそれだと話すのだった。
「そっちでも光になれって言ってたな」
「確か」
 突込みを入れたのはシーラだった。
「あちらの世界では凱さんは主人公だったのでは」
「ルートによってはそうだったな」
 こう返す凱だった。
「俺もな。何かとな」
「色々あるってことか」
「だよな。ここにいる面々だってな」
「名前を変えてたりして」
「そうそう」
「そうね」
 ドロシーもいた。
「私も言われるわ」
「私もデス」
 スワンも何気に自白する。
「違う名前でというだけで」
「そちらの世界にもいると言われるわ」
「声だけでわかるって言われますよね」
 ユンも困った顔でまた言う。
「私は河原じゃなくて柚木じゃないかって」
「いや、わかるよな」
「だよなあ。っていうか」
「何気にこういう話になったら」
「困る人いるけれど」
 皆そういうことになると困っていくのだった。
 そしてだった。さらに話すのだった。
「まあ言ってしまったらきりないけれど」
「そのままでも出てる場合あるし」
「ちょっとやばい作品でもね」
「だよなあ」
「男の人も女の人も」
「何かにつけて」
 そしてだった。そんな話をしながらグラドスを見回っていくのだった。
 その結果彼等は多くのことがわかった。そのことに満足してロンド=ベルの各艦に戻る。そこでまた話をしていくことになった。
「面白かったよな」
「何かと色々わかったし」
「だよなあ」
「勉強になったよ」
「そうだな」
 ブライトも彼等の言葉に頷く。彼もグラドスを見てきたのだ。
「グラドス。我々と比して決して優れてはいない」
「ええ、確かに」
「それは間違いありませんね」
「それに」
「劣ってもいない」
 ブライトは彼等に対してこうも話した。
「文化はそれぞれ違う。優劣はない」
「向こうも今それを勉強してるんですね」
「シティ7で」
「そこで」
「そうだ」
 その通りだと返すブライトだった。
「今そうしているところだ」
「俺達と同じで」
「そうしていって」
「そういうことなんですね」
「相互理解を含めて」
「それからですか」
 話が進んでいくのだった。
「本当の平和が実現するんですね」
「お互いを認めていって」
「そこからなんですか」
「認めることだな」
 ブライトの言葉は哲学的な色彩も帯びてきていた。
「そういうことになる」
「ですね」
「じゃあ俺達ももっと」
「グラドスのことを学びますか」
「そうしていけばいいんですね」
「これからもだ」
 ブライトの言葉が続く。
「グラドスのことを学んでいくとしよう」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「作戦は」
「ゲートに向かう」
 作戦はそうするというのだった。
「いいな」
「そしてそこにいるル=カイン立ちと決着を」
「それでグラドスでの戦いは終わりですね」
「それで」
「ゲートについてだが」
 それについて話すのはヘンケンだった。
「破壊することになった」
「それでバルマーに利用されることを防ぐ」
「その為ですね」
「だからですね」
「その通りだ」
「わかりました」
 こうしてであった。グラドスでの最後の作戦が決定したのだった。
 そのうえでロンド=ベルはゲートに向けて出撃する。そこでだった。
「ル=カインか」
「それにグラドス強硬派」
「連中とも最後の戦いか」
「そうね」
 一行はこのことにも感慨を感じていた。
「長い戦いだったけれどな」
「それもこれで終わりだよな」
「そうだよな、完全にな」
「次の戦いで」
「また一つの戦いが終わるんだ」
 エイジもそれは同じだった。それを言うのだった。
「いよいよ」
「戦いが一つずつ終わってくな」
「そうだよな」
「銀河は平和になっていってるのかな」
「どうなのかしら」
「平和は手に入れるもの」
 今言ったのはゲイルだった。
「そういうものだな」
「そうですね。確かに」
「俺達、随分長い間戦ってきましたけれど」
 ロンド=ベルの面々も彼のその言葉に頷く。
「それでも。本当に」
「これで終わりですね」
「グラドスに平和が戻りますね」
「そうだ」
 また言うゲイルだった。
「では行くとしよう。平和を手に入れる為に」
「はい」
「それじゃあ」
 こうしてだった。彼等も最後の戦いに向かうのだった。このグラドスでの最後の戦いに。


第八十話   完


                        2010・12・7 

 

第八十一話 ゲート前での決戦

               第八十一話 ゲート前での決戦
 ロンド=ベルとグラドス連合軍はル=カイン達がいるゲートの前に向かっていた。その時にだった。
 同行しているジュリアがだ。弟であるエイジに言うのだった。
「エイジ、いいかしら」
「姉さん、一体どうしたんだい?」
「彼はわからなかったのね」
 こう悲しい顔で言うのだった。
「そうだったのね」
「ル=カインかい」
「ええ、彼は」
「そうだね。わからなかったんだね」
 エイジも暗い顔で姉の言葉に頷く。
「そのことが」
「地球人もグラドス人もない」
 ジュリアが言うのはこのことだった。
「そのことが」
「けれどそれは」
「ええ」
「僕達も中々わからなかったことなんだ」
 エイジは真剣な顔で話した。
「だからこそお互いに殺し合ってきた」
「そうね。だからこそ」
「僕は今までグラドス人は」
「貴方にある半分は」
「ゴステロみたいな奴ばかりだと思っていた」
 その彼の名前も出すのだった。
「あんな奴ばかりだと思っていたんだ」
「そうだったのね」
「皆同じだった。だから確実に仕留めてきた」
「いつもコクピットを狙い撃ちにしていたそうね」
「確実に殺す為に」
 それがロンド=ベルのグラドスに対する戦い方だった。
「そうしてきたんだ」
「私達も。多くの人達を虐殺して」
 そうしてだというのだ。
「そして文化を破壊してきたわ」
「そうだったね。本当に」
「けれどそれは間違いだった」
「僕達も間違っていた」
 姉と弟はお互いに言い合う。
「彼はそのことがわからない」
「そうなんだね」
「もう無理なのかしら」
 ジュリアは暗い顔のまま述べた。
「あの人はあのまま」
「そうだろうね。死ぬね」
 それは間違いないとだ。エイジは確信していた。
「ル=カインとして」
「彼として」
「死ぬよ。この戦いで」
「わかったわ」
 姉と弟は彼との戦いの前にそのことを話すのだった。そしてだった。
 ゲート前の基地に来た。するとだった。
 そこにはだ。もうグラドスの大軍が集結していた。彼等を見てだった。
「ル=カイン、いるな」
「何だ」
 そのル=カインの愛機が出て来た。そのうえでゲイルの言葉に応えるのだった。
「私に用か」
「最早全ては決している」
 ゲイルはこう彼に告げるのだった。
「それでもか」
「戦うかというのだな」
「そうだ、戦うのか」
 また彼に問うた。
「そうするのか」
「そうだと言えばどうする」
 ル=カインはゲイルのその言葉に平然と返した。
「それは貴様とて同じだろう」
「そうだな。私もその為にここに来た」
「私は戦う」
 それをまた言うル=カインだった。
「最後の最後までな」
「他の者達もか」
「この者達はどれも罪に問われる者達だ」
 そこから逃げてなのだ。今のル=カインの周りにはそうした者も多いのだ。
「それで何故降る」
「大人しく罪に服するつもりはないか」
「罪、何が罪だ」
 ル=カインは今度はこう返すのだった。
「劣った文明や人種を滅ぼして何が罪だ」
「やはりな。そう言うのか」
「何度でも言おう」
 またゲイルに告げる。
「私は貴様等を滅ぼしグラドスを掌握してだ」
「そしてそのうえでか」
「この宇宙をグラドスのものにする」
 これがル=カインの望みだった。
「そしてそのうえでだ」
「その劣った人種や文化とやらをか」
「全て滅ぼす」
 彼はまた言った。
「必ずな」
「愚かな」
「やっぱり何もわかっちゃいないな」
「そうね」
 そんな彼の言葉を聞いてだった。
 ロンド=ベルの面々は冷めた調子で言うのであった。
「こいつはやっぱり」
「死ぬしかない?」
「そうよね」
「こうなったら」
 こう話すのだった。そしてだ。
「じゃあ今から」
「攻める?」
「それじゃあ」
「今から」
「よし」
 こうしてだった。彼等は攻撃態勢に入った。そうしてだった。
「ゲイルさん、それじゃあ」
「今からね」
「攻めましょう」
「最後の戦いよ」
「よし」
 こうしてだった。彼等はそのままル=カインの軍との戦いに入るのだった。
 既にだ。ル=カインは出撃していた。しかしだった。
「まずはこれだけですか」
「援軍は後で」
「そうするのですね」
「予備戦力は温存しておく」
 ル=カインはこう周りの部下達に答える。
「だからこそだ」
「そういうことですか」
「それでは今はですね」
「我々だけで」
「その通りだ。ではいいか」
「はい、わかりました」
「それでは」
 こうしてだった。彼等も迎撃用意に入るのだった。
 両軍は激突に入った。まずはだった。
 ル=カインがだ。自ら銃を放つのだった。
「くっ、前線に自ら出てか!」
「戦うか」
「そう来るか」
「私は退くことはしない」
 こう言うル=カインだった。前線で戦いながら。
「何があろうともだ」
「その心意気だけは褒めてやるぜ!」
 忍がそのル=カインに対して言う。吼える様な声でだ。
「だがな、手前の罪はな!」
「どうだというのだ」
「消せはしねえぜ!」
 次はこう言うのだった。
「それは言っておくからな!」
「面白い。ではだ」
 ル=カインは前線に立ち続ける。そのうえでだった。
 彼もまた自ら戦う。その彼の前にだった。
 エイジが来た。そのうえで向かう。
「ル=カイン!」
「聖女の弟か」
「もうこれで最後だ」
 レイズナーマークツーを駆りながらの言葉であった。
「ブイマックスを使えば」
「それか」
「如何に貴方とて」
 一気に発動させて倒そうとする。しかしだった。
「甘いな」
「何っ!?」
「ブイマックスを持っているのはだ」
 どうかというのである。
「御前だけではない」
「何っ!?」
「私もまた」
 こう言うとであった。何と。
 彼の乗るその黄金のマシンもだった。急に。
 動きが速くなった。そのうえでエイジに向かう。
「くっ、まさか!」
「そう、そのまさかだ」
 こう返すル=カインだった。
「私もまたそれを使えるのだ」
「何てことだ」
「戦いはこれからだ」
 ル=カインも引かない。
「この私の、グラドスの力見せてやろう」
「ああ、見せてもらうぜ!」
 今のル=カインの言葉に応えたのはジュドーだった。
「手前が強いのはわかった」
「それはだというのか」
「ああ、しかしな!」
 ここでさらに言うジュドーだった。
「わかったのはそれだけだ」
「どういうことだ、それは」
「手前は強いだけだ」
 これがジュドーの言葉だった。
「ただそれだけの奴だ」
「どういう意味だ、それは」
「手前は何もわかっちゃいねえ」
 ジュドーはル=カインに対して告げる。
「何一つとしてな」
「わからん」
 これがル=カインの返答だった。
「私の何がわかっていないのだ」
「そう言うこと自体がだよ」
 こう返すジュドーだった。
「手前は全くわかっていねえんだよ、地球のこともグラドスのこともな」
「馬鹿な、地球なぞだ」
 ル=カインもまたジュドーの言葉を全否定して返す。
「所詮は我等とは違う。列島人種ではないか」
「どうやら何を言っても駄目のようね」
 シモーヌも完全に諦めた口調だった。
「この人にはね」
「どれだけマシンの性能が高くても」
 エイジがル=カインに向かいながら突き進む。
「それだけじゃ勝てはしない」
「そうだな。それは同意する」
 ル=カインがまた言ってきた。
「何故ならだ」
「何故なら?」
「グラドス人はバルマーの直系」
 ル=カインの主張の原点はここにあった。
「その我々に地球人が勝てる筈がない」
「それじゃあ見せてやるぜ!」
 今叫んだのは甲児だった。
「手前の言葉が正しいかどうかな!」
「全軍倒せ!」
「容赦するな!」
 グラドス軍に対して総攻撃を浴びせる。その攻撃の激しさは。
 グラドス軍は秒刻みでその数を減らしていく。そしてだった。
 瞬く間にだ。その数を半数まで減らしていた。その彼等だ。勝平が言う。
「これまで何度も見せてやったよな!」
「ワン!」
 横の千代錦も続く。
「俺達は手前等に劣っちゃいねえんだよ!」
「ワンワン!」
「グラドスがどうとかで人の優劣が決まってたまるかよ!」
 これが勝平の言葉だった。
「決まるのは他のことなんだよ!」
「それは何だというのだ」
「心だ!」
「それが決めるのよ!」
 宇宙太と恵子もル=カインに言う。
「そんなものに優劣を求めるなんてな!」
「あんたは只の馬鹿よ!」
「私を愚弄するのか」
「愚弄ではないぞ」
 グン=ジェムは目の前のグラドスの敵機のコクピットを上から真っ二つにした。そうしてそのうえで彼もまたル=カインに言うのだった。
「それはな」
「おのれ、どの者も」
「あえて言おう」
 ギャブレーもだった。
「貴様は我々ペンタゴナの者をどう思っていた」
「今度は貴様等か」
「そうだ、我々をどう思っていた」
「それを聞きたい」
 ダバも彼に問う。
「俺達はグラドスにとっては何だった」
「そして僕達もだね」
 大介もであった。
「どう思っていたかな、一体」
「知れたこと、地球の者達と同じだ」
 ル=カインの言葉は変わらない。
「我等グラドス以外の者は全てだ」
「結局そうなのね」
 マリアも呆れる他なかった。
「こいつ等ってそうした選民思想と差別思想しかないのね」
「そうだな。偏見の塊だ」
 大介の言葉も厳しい。
「いや、偏見が服を着て歩いているようなものだ」
「そういう奴等なのよね、どう見ても」
「ふざけるな。では言おう」
 ル=カインは顔を歪めさせて言い返す。
「貴様等はお互いに争い殺し合い」
「それかよ」
「何かいつも聞くな」
「そうだよな」
「毎度毎度」
 ロンド=ベルの面々の言葉は冷めていた。
「それで何だよ」
「何だってんだよ」
「それで」
「そして多くの命を奪い種族を滅ぼし文化を破壊してきたな」
 ル=カインの主張だった。
「その愚か者達がだ。何故我等グラドスと同じなのだ」
「そのことだけれどね」
 万丈であった。彼が反論に出た。
「もう僕達はわかってるんだよ、このことも」
「何っ!?」
「同じだってね。もうわかってるんだよ」
「それもだというのか」
「では言おう」
 万丈はだ。ル=カインを全否定しながら言い切った。
「君達グラドス人がしてきたことは何かな」
「何っ!?」
「征伐とか大義名分を立ててそれで侵略を繰り返し」
 そのことをだ。指摘するのだった。
「そのうえで虐殺を行い文化を破壊してきたね」
「愚か者共への裁きだ」
 これもまたル=カインの言い分だった。
「そして劣った文化を破壊し我々の優れた文化を教えてやるのだ」
「ある星じゃ人口の三割を殺したね。市民達を」
「それの何処が悪い!」
「そうだ、愚か者達を!」
「君達邪魔だよ」
 万丈は傍にいるグラドスの者達が喚くとだった。ダイターンハンマーを振った。
 それでコクピットを叩き潰してだ。黙らせたのだった。
「五月蝿いから永遠に黙っていてくれるかな」
「その行動こそがだ」
 ル=カインは万丈の今の行動を批判しようとする。
「貴様等の野蛮な証拠だ」
「へっ、よく言うぜ」
「全く。自分達のことを棚にあげて」
「それでそう言うなんてね」
「何が華麗なんだか」
「薄汚い奴よね」
「本当に」
 全員でだ。そのル=カインを批判し返す。万丈も言う。
「少なくとも僕達は罪のない者や市民には何もしないよ」
「我等だけだというのか」
「そう、己が優れていると根拠なく妄想し」
 そのル=カイン達への言葉だ。
「そのうえで多くの罪のない人達を殺戮し文化を破壊する愚かな悪人達」
「それが我等だというのか」
「その通り!世の為人の為」
 万丈の名乗りがはじまった。
「悪き者達を滅ぼすダイターン3!」
 そして次の言葉は。
「この日輪の輝きを恐れぬならかかって来い!」
「おのれ、それならばだ」
 ル=カインも彼の名乗りを受けてだ。そしてだった。
「カルラ、ギウラ、ズールの軍を呼べ」
「はい」
「わかりました」
「それでは」
「全ての戦力を投入する」
 彼は言うのだった。
「いいな、そうしてだ」
「決戦ですか」
「遂にですね」
「いよいよ」
「我等の全ての戦力を投入する」
 その通りだとだ。ル=カインは断言した。
「いいな、そしてだ」
「は、はい」
「それでは」
「今から」
「全軍攻撃に移る!」
 ル=カインは援軍を得てさらに指示を出した。
「そしてロンド=ベルもグラドスの裏切り者達をだ」
「はい、わかりました」
「では!」
 こうしてだった。ル=カインは全ての戦力を投入してロンド=ベルに突っ込む。しかしであった。
「よし、今だ!」
「撃て!」
「前面に一斉射撃!」
 この言葉と共にであった。ロンド=ベルは一斉射撃を繰り出しそてでそのグラドス軍の動きを止めた。そしてそのうえで、であった。
「突撃だ!」
「これで終わりだ!」
 その突撃はだ。最早グラドス軍に防げるものではなかった。
 彼等は散々に打ち破られだ。総崩れになった。
「全軍の損害、八割を超えました」
「残る機体も最早です」
「損傷を受けていない機体も艦艇もありません」
「このままでは」
「・・・・・・わかった」
 ル=カインは苦い顔で述べた。
「それではだ」
「はい、それではですね」
「撤退ですか」
「そしてその先は」
「ゲートだ」
 そこだというのであった。
「ゲートにまで撤退するぞ」
「刻印まで」
「そしてですか」
「最後の戦いを」
「私は諦めん」
 彼には意地があった。それは間違いないことだった。
「この程度ではだ」
「では。その為にも」
「今はですか」
「ゲートまで」
「総員撤退する」
 ル=カインはまた残っている者達に告げた。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。彼等は撤退するのだった。そしてであった。
 残ったロンド=ベルとゲイルの軍はだ。すぐに彼等の撤退先を把握したのだった。
「ゲートか」
「そしてそこでか」
「最後の戦いか」
「奴等と」
「それならばだ」
 ゲイルが厳しい顔で述べた。
「そこまで行こう」
「そうですね。それじゃあ」
「今からゲートに向かい」
「そこで本当に決着をつけましょう」
「いよいよ」
 こうしてだった。彼等は一旦集結しそのうえでだった。彼等が撤退したそのゲートに向かうのだった。そこで決着をつける為に。
 その中でだ。万丈とエイジが話していた。まずエイジが言った。
「それでですけれど」
「さっきの戦いでの話かい?」
「はい、あの時のル=カインとの話ですけれど」
「僕もね。怒ってるんだ」
 万丈はエイジにまずこう述べた。
「正直なところね」
「彼等にですか」
「ゼゼーナンを思い出すよ」
 この男の名前も出した。
「ル=カインはあの男と同じだね」
「偏見の塊ですか」
「そう、無闇に自分達が優れていると思っていて」
「その実は」
「何てことはない。下らない男さ」
 そうだとだ。万丈は言い切ったのだった。
「そうした奴こそが問題なんだよ」
「ではル=カインはやはり」
「うん、倒そう」
 これも既に出ている結論だったがあえて言ったのであった。
「この銀河の為にね」
「そうですね。けれどグラドス人も」
「同じだね」
 万丈はこのことも話した。
「やっぱりね」
「そうですよね」
「善人もいれば悪人もいるんだ」
「どちらも」
「そう、どちらも」
 万丈の言葉である。
「いるんだよ」
「ずっと自信が持てませんでした」
「そのことにだね」
「ええ。どうしても」
 これがエイジの言葉である。
「そのことに」
「気持ちはわかるよ」
「わかってくれますか」
「僕だけじゃないさ」
 彼だけではないと。こうも話すのだった。
「それは皆もだよ」
「皆が」
「そう、ロンド=ベルの皆が」
 彼等がだというのだ。
「だからね」
「それはわかっています」
「嫌でもわかるね」
「僕はロンド=ベルにいる時一度でも」
「嫌がらせや侮辱を受けたことはなかったね」
「全くです」
 それはなかったというのであった。
「それは一度も」
「そういうことさ。皆君個人は認めていたんだ」
「僕は」
「グラドス人は違っていたけれどね」
 彼等に対してはだというのだ。
「けれど今は」
「今は違いますね」
「そう、違うよ」
 万丈はこのことを断言してみせた。
「皆グラドス人が変わったからね」
「それで、ですね」
「そうだよ。グラドス人には善人もいれば悪人もある」
 またそのことを話す万丈だった。
「そういうことをね」
「わかりました」
 エイジの言葉がはっきりとしたものになった。
「それじゃあ」
「さて、それでだけれど」
「それで」
「これからはね」
 万丈の話が変わってきた。
「ゲートに向かうけれど」
「はい、ゲートに」
「とりあえず時間は少しあるよ」
「少しですね」
「そう、少しね」
 あるというのである。
「それでだけれど」
「何かあるのですか」
「お酒は飲めないけれどね」
 それは断る万丈だった。
「けれど戦いの前に」
「何かありますか」
「どうかな。ギャリソンの料理でも」
 これが万丈の提案だった。
「今お菓子を作ってるけれどね」
「お菓子ですか」
「ケーキを作ってるんだ」
 万丈は微笑んで話した。
「そう、チョコレートケーキをね」
「あっ、チョコレートですか」
 それを聞いてエイジの顔が晴れやかになった。
「それはいいですね」
「チョコレートケーキは好きかい?」
「実は」
 その通りだというのだった。
「ですから」
「そう。それでね」
「はい、それで」
「チョコレートケーキに」
 他にもあるというのだ。
「コーヒーもあるよ」
「いいですね」
 コーヒーと聞いてだ。エイジはさらに笑顔になった。
「それはさらに」
「コーヒーも好きなんだね」
「実は地球に来て」
 そこからの話だった。
「その二つを最初に食べまして」
「思い出の味ってことかい」
「はい、ですから」
「成程ね」
「グラドスにはない味でした」
 こうまで言うエイジだった。
「いや、本当に」
「グラドスにはケーキはないのかい?」
「残念ですが」
 そうだというのである。
「それはありません」
「そういえばグラドスの食文化は」
 万丈はこんなことも考えるのだった。
「どうなっているのかな」
「一番近いのはです」
「近いのは?」
「イギリスの料理です」
 この話が出た。
「あれが一番近いです」
「それは酷いね」
 それを聞いた万丈の言葉だ。
「とても」
「はい、地球に来てです」
「美味しいものを知ったんだね」
「味は塩とお酢だけで」
 エイジはそのグラドス料理についての話を開始した。
「肉は黒焦げ、何もかもどろどろに煮て」
「そのままイギリス料理だね」
「味がありません」
 そこが問題なのだった。
「本当に」
「あまり食べたくないね」
「はい、それで地球の味を知って」
「それにのめり込んだんだね」
「そこでイギリスの料理を食べました」
 そこからあらためてなのだった。
「懐かしいでした」
「懐かしかったんだね」
「しかし味わいたくはなかったです」 
 このことも言われるのだった。
「残念でした」
「気持ちはわかるよ」
「あの、イギリスは」
「うん、あの国の料理は駄目だよ」
「やはりそうなんですね」
「その味は覚えておいてもいいけれど」
 しかしだというのであった。
「また味わいたくはないね」
「絶対に」
「そういうことだよ。それじゃあね」
「はい、それでは」
「今はケーキを食べよう」
「コーヒーもですね」
「イギリスで食べていいのは紅茶だけだよ」
 万丈は言い切った。
「正確には飲むんだけれどね」
「それだけですか」
「そう、それだけだよ」
 あくまでその紅茶だけだというのだ。
「後は。そうだね」
「イギリスでは他に何を食べればいいのでしょうか」
「他の国の人間がいるレストランに入るべきだね」
「そういうことですか」
「そう、そういうこと」
 万丈は話すのだった。
「わかったね」
「困った話ですね」
「まあ日本にいればいいよ」
 万丈が話に出すのはその国だった、
「日本ならね」
「日本ですか」
「そう、日本は好きかな」
「はい、好きです」
 エイジはにこりと笑って述べた。
「とても」
「そういうことだね。それじゃあ」
「それではこれから僕がいただくのは」
「日本のケーキだよ」
 まさにそれだというのであった。
「そして日本のね」
「コーヒーですね」
「じゃあ。食べようか」
「わかりました」
 エイジはにこりと笑って頷いた。
「それでは」
「量は多いよ」
「量もですね」
「デコレーション一個分だよ」
「それは凄いですね」
 エイジはその量も聞いて声をあげた。
「食べがいがあります」
「それだけ楽しみになってきたってことでいいかな」
「はい、余計に」
 まさにそうだというのであった。
「それでは」
「じゃあね」
 こんな話をしてだ。リラックスできたエイジだった。そのうえでグラドス軍との最後の戦いに向かうのだった。ゲートにおいての。
 そしてケーキの場ではだ。全員いた。
「よお、エイジ」
「来たか」
「さあ、皆で食おうぜ」
「それじゃあな」
「コーヒーもあるぜ」
「うん」
 笑顔で微笑んで応えるエイジだった。
「それじゃあね」
「このケーキ美味いよな」
「そうですね」
 ミシェルとルカが話す。
「流石ギャリソンさんのケーキだな」
「確かな腕ですね」
「そうね」
 ここにはシェリルもいる。ランカもだ。
「後でダイエットが大変だけれど」
「それでもですね」
 そのランカも言う。
「これは食べないと」
「ケーキは麻薬よ」
 今言ったのはエマである。
「目の前にあったらどうしてもね」
「エマさんってケーキお好きですよね」
「それもかなり」
「ええ、大好きよ」
 ファとフォウにも述べる。
「もうおやつはこれよ」
「とかいいながら他の甘いものも」
「お好きですよね」
「人間あれよ」
 エマは開き直ったかの様に言ってみせるのだった。
「甘いものがあればね」
「甘いものがあれば」
「どうなんでしょうか」
「幸せになれるのよ」
 そうだというのである。
「それだけでね」
「それだけでって」
「それはまた」
「事実よ」 
 エマは強引に中央突破に出た。
「それはね。事実だから」
「えっ、そうきました?」
「強引に」
「強引でも事実よ」
 中央突破したならもうそのままだった。
「それはね」
「甘いものがあればですか」
「幸せですか」
「その通りよ。それじゃあ」
 エマは勢いのまま微笑んで述べた。
「ケーキを。今からね」
「わかりました」
「それじゃあ」
 こうしてだった。エマだけでなく全員でそのケーキを楽しむのであった。そうして彼等は英気を養う。グラドスとの最後の戦いに向けて。


第八十一話   完


                      2010・12・9
 

 

第八十二話 相応しい末路

                第八十二話 相応しい末路
 ル=カインはだ。ゲートの傍にいた。そしてそこでだ、
 己の傍にいるカルラに対して問うのだった。
「戦力はどの程度だ」
「はい、ここに来られた戦力はです」
「うむ、どの程度だ」
「一万程度です」
 それ位だというのだ。
「あの戦いで八割を失いましたが」
「それでさらにか」
「脱落者が出ました」
 カルラはこう話す。
「それでこれだけです」
「そうか。では仕方がないな」
「仕方ありませんか」
「この状況ではな」
 現状を踏まえての言葉だった。
「致し方ない」
「左様ですか」
「それではだ」
 ル=カインはあらためて言った。
「その残った一万の将兵達に告げるのだ」
「何とでしょうか」
「我等はどちらにしても処刑が待っている」
 これまでのグラドス軍での一連の罪によってである。
「最早生きる道はない」
「戦う以外にはですか」
「あの者達を退け。そして」
「そして」
「ゲートを使い逃げ延びる」
 これがル=カインの今の考えだった。
「わかったな」
「そして太陽系の何処かの惑星を占拠して」
「そこを拠点にしたまた一度だ」
「そうですね。今はそれしかありませんね」
「では。いいな」
「はい、わかりました」
 カルラは機体の中で敬礼をして応えた。彼等も最後の戦いの決意をしていた。
 その彼等がいるゲートにだ。ロンド=ベルは確実に向かっていた。
 その時だった。サンドマンが言うのだった。
「ゲートだが」
「はい」
「あのゲートですね」
「あそこが何か」
「おそらくだ」
 彼はメイド達の言葉に応えて話すのだった。
「彼等はいざとなればあのゲートから脱出する」
「それで太陽系に逃れる」
「そうする可能性がありますか」
「やはり」
「間違いなくそうする」
 サンドマンは断言さえした。
「生き残る為にな」
「ではゲートは」
「どうしましょうか」
「それを防ぐ為には」
「止むを得ないがだ」
 ここでサンドマンはまた言った。
「彼等を逃す訳にはいかない」
「それじゃあですね」
「今は」
「それは」
「そうだ、ゲートを破壊するしかない」
 こう言うのであった。
「仕方ないことだ」
「そうですね。それは」
「やっぱり」
「グラドス軍が太陽系に出て拠点を築かれると」
「話が複雑になる」
 サンドマンは話した。
「だからだ。ここはだ」
「わかりました」
「それなら」
「まずはゲートを」
「諸君、それでいいだろうか」
 サンドマンはロンド=ベルの仲間達に問うた。
「ここはだ」
「そうだよな。今はな」
「あの連中を太陽系に行かせたらそれこそ」
「何処かの星を占領されてそこからまた戦争を挑まれるよな」
「そうなったら」
「一般市民に危害が」
 彼等のそうした行動を危惧しての言葉だった。
「じゃあここはやっぱり」
「ゲートを破壊して逃げ道を塞いで」
「そのうえで」
「徹底しているな」
 それを聞いてのだ、カイの言葉である。
「それはまた」
「けれどカイさんもそう思いますよね」
「ここはやっぱり」
「ゲートを破壊しないと」
「さもないと」
「無論だ。わかっている」
 その彼等にこう返すカイだった。
「グラドスの刻印、ゲートの力を考えればな」
「実はです」
 エイジが話してきた。
「あの刻印についてですが」
「んっ、何かあるのか?刻印に」
「あのゲートに」
「あの刻印は外見は巨大ですが」  
 どうかというのである。110
「攻撃には脆いです」
「じゃあ攻撃を仕掛ければそれで」
「それで終わりなんだ」
「一撃で」
「本当に一撃で終わりです」
 そうだというのである。
「あの周囲のリングの中央をビームか何かで攻撃すれば」
「壊れる」
「そうだっていうんだな」
「はい、そうです」
 また答えるエイジだった。
「ですから」
「よし、なら話は早いよな」
「そうよね」
「それじゃあ」
 こうしてだった。彼等の作戦は決まった。まずはなのだった。
「ゲートを破壊して」
「そうしてそのうえで」
「残ったグラドス軍の残党と」
「最後の決戦を」
「それで」
 作戦を決めた。そのうえでだった。
 ロンド=ベルとゲイルが率いる軍勢はだ。ル=カインの軍勢を偵察により見つけたのだった。
「ゲートの左側だな」
「そこに集結しているのね」
「じゃあその裏を衝いて」
「一気に右側から」
「いや、それもいいがだ」
 ギリアムがだ。こう言ってきたのだった。
「それよりもだ」
「それよりも?」
「っていうと」
「何か策があるんですか」
「それは」
「ゲイル殿の軍と我々をだ」
 ギリアムはこう話していく。
「二手に分ける」
「そうして一体」
「どうされますか?」
「ここは」
「どういった戦術を」
「よし、それならだ」
「今からそうして」
 皆それぞれ言う。
「攻めるか」
「それじゃあ」
 こうしてだった。彼等は戦術を決めた。そうしてまた向かうのだった。
 そこに近付くにつれだ。エイジもゲイルも。明らかな緊張を感じていた。
 それでだ。ゲイルがこうそのエイジに言うのだった。
「大丈夫か」
「はい、何とか」
 こう返すエイジだった。
「落ち着いています」
「そうか。ならいいがな」
「ゲイルさんはどうですか?」
「少し辛いか」
 これがゲイルの言葉だ。
「どうもな」
「そうなんですか」
「最後の戦いかと思うとだ」
 ゲイルはその思い詰めた顔で話した。
「そうならざるを得ない」
「それではですね」
「それではか」
「これはどうでしょうか」
 こう言ってだ。エイジはあるものを出してきた。それは。
 数枚の札だった。細く薄く小さい。銀紙に包まれたその数枚の札をゲイルの前に差し出してだ。あらためて言うのであった。
「噛んでみますか」
「噛むものか」
「はい、どうでしょうか」
 またゲイルに問うたエイジだった。
「これを噛まれますか」
「何だこれは」
「ガムです」
 エイジはそれだというのである。
「地球の食べ物です」
「ガムか」
「紙から取り出して」
 実際に出してみせるエイジだった。中からコーヒー色の板が出て来た。
「これをですね」
「食べるのか」
「いえ、噛みます」
 そうするというのである。
「噛んでそれで甘さを味わうんです」
「飲み込まないのだな」
「はい、噛み続けます」
 あくまでそうするというのである。
「それがこのガムなんです」
「面白いものだな」
「地球にあるお菓子の一つで」
「成程な」
「どうですか、それで」
「貰おうか」
 こう答えたゲイルだった。
「それではな」
「はい、それじゃあ」
 ゲイルはそのガムをエイジから受け取って口の中に入れる。エイジもそうした。そのうえでそれぞれそのガムを噛んでみるとだった。
 ゲイルがまず言った。
「ふむ。これは」
「どうですか?」
「いいものだな」
 目を細めさせての言葉だった。
「実にな」
「気に入ってくれましたね」
「地球のものはどれも美味いな」
 今度はこう言う彼だった。
「このガムは特にだ」
「特にですか」
「いい」6
 また言ったのだった。
「緊張もほぐれるしな」
「眠気醒ましにもいいですよ」
「そうだな。噛んでいればそれで眠気が取れるな」
「その為のガムもありますし」
「そうか。それではだ」
「このガムを噛んで」
「戦いに向かうか」
「そうしましょう」
 こんな話をしていたのだった。そうしてだった。
 ゲイルの軍がだ。ゲートに向かうのだった。それを見てだった。
 ル=カインはだ。すぐに決断を下した。
「それではだ」
「はい」
 カルラが応える。
「ゲートを守りそしてだ」
「あの愚か者達をですね」
「一人残らず倒す」
 こう返すル=カインだった。
「わかったな」
「わかっています。それでは」
「全軍迎撃用意」
 ル=カインは指示を出した。
「そのうえでゲートを守るぞ」
「わかりました」
「それでは」
 部下達が応えてだった。そのうえでだった。
 ゲイルの軍とル=カインの軍が衝突する。ゲートの前でだ。
「ゲートを守れ!」
「ここは何としてもだ」
「いいな!」
 こうル=カイン側の指揮官達が言う。
「そうしてだ」
「奴等を退け」
「太陽系に逃れるのだ」
 これが彼等の目的だった。しかしだった。
 ゲイルもだ。粘るのだった。
「いいか、我々はだ」
「はい」
「どうしますか」
「ゲートを攻めることはない」
 それはないとだ。ゲイルは言うのだった。
「それはだ」
「左様ですか」
「そうするというのですね」
「そういうことだ。今はだ」
 また言う彼だった。
「彼等を引き付ける」
「わかりました」
「では」
「そうしましょう」
 こうしてだった。彼等は防戦に努める。ル=カインの軍は今は守りに専念していたのだった。
 両軍の戦いは膠着状態に陥っていた。その中でだった。
 ル=カインが前に出た。そしてだった。
「行くぞ」
「なっ、来た!?」
「あの機体が」
「来たぞ!」
 彼はブイマックスを発動させた。それによってだった。
 ゲイルの軍を蹴散らしていく。一機、また一機とだ。
 それを見てだった。ゲイルに指示を仰ぐ声が集中してきた。
「閣下、ここは!」
「どうしますか」
「一体」
「私が出る」
 こう答える彼だった。
「それではだ」
「左様ですか」
「では御願いします」
「それでは」
「うむ、そうだな」
 こうしてだった。彼が前に出る。そしてなのだった。
 両者の戦いがはじまった。ゲイルが攻撃を浴びせる。しかしだった。
 ル=カインはかわす。攻撃は当たらない。
「甘いな」
「やはりな」
 それを見ても動じないゲイルだった。
「ブイマックスには効果がないか」
「一つ言っておく」
 ここでこう言うル=カインだった。
「ブイマックスに効果があるのはだ」
「何だというのだ」
「ブイマックスだけだ」
 これが彼の言葉だった。
「それを言っておく」
「そう言うのか」
「そうだ。エイジは何処だ」
 こうゲイルに問う。
「今何処にいる」
「それはすぐにわかる」
 今は言わないというのだった。そしてだ。
 ル=カインとの戦いが続く。その中でだった。
 ゲイルのマシンは次第に傷ついていく。劣勢は明らかだった。
「このままではか」
「そうだ、貴様は終わりだ」
 こうゲイルに言うル=カインだった。
「それを言っておく」
「そうだな。私では無理だ」
 それはゲイルも認める。しかしだった。
 ここでだ。彼等が来た。
「し、司令!」
「大変です!」
「後方にです!」
 ル=カインの部下達が悲鳴をあげる。
「敵です!」
「あれは」
「まさか」
 ル=カインもだ。その顔に狼狽を見せて言った。
「あの者達がここで」
「ロンド=ベルです!」
「来ました!」
「奴等が!」
 そしてだった。そのロンド=ベルが後方に姿を現したのだった。
「よし、間に合ったな!」
「これでだ!」
「俺達の勝ちだ!」
「貰った!」
 こう口々に言ってだった。敵の後方を衝く。それでだった。
 ロンド=ベルはだ。一気に攻めてだった。
 グラドス軍を倒していく。その勢いはかなりのものだった。
「くっ、強い!」
「駄目だ、勝てん!」
「勢いが強過ぎる!」
 グラドス軍はその数を減らしていく。そしてだった。
 カルラが迎撃に出た。しかしだ。
 デビットがだ。その彼女のマシンに狙いを定めた。
「終わりだ!」
「何っ!?」
「隙だらけなんだよ!」
 こう言ってだった。そのマシンのコクピットを貫いたのだった。
 それで動きが止まった。カルラ自身も攻撃を受けだ。ゆっくりと前に崩れ落ちていく。
「お、おのれ・・・・・・」
「これで御前も終わりだな」
「何故だ・・・・・・」
 カルラは死相を浮かべながらデビットに対して問う。
「何故我々が」
「御前がやられたのは感情的になり過ぎていたからだ」
「感情的にだと」
「そうだ。だからだ」
 それでだというのである。
「狙いを定められた」
「くっ・・・・・・」
「そしてだ」 
 さらに言うデビットだった。
「御前等が敗れるのはだ」
「それはどうだというのだ」
「その偏見故だ」
「ヘンケンだというのか」
「グラドス至上主義という偏見だ」
 それだというのである。
「それ故に敗れたのだ」
「我々こそは」
 だが、だった。カルラは断末魔の中でも言うのだった。
「この銀河を」
「それが誤りだ。わからないのだな」
「誤りだと」
「グラドス人も俺達も同じだ」
 彼が言うのはこのことだった。
「だからだ。それで敗れるのだ」
「まさか。私が」
「死ぬんだな」
 デビットの言葉はあっさりとしたものだった。
「そのままな」
「グ、グラドスに」
 断末魔の中で。カルラは言う。
「栄光あれ・・・・・・」
 これが最後の言葉になりだ。彼女は爆発の中に消えた。これで戦局はグラドス軍にとってさらに厄介な状況となったのだった。
「し、司令カルラ閣下が戦死されました」
「後方はもう支えられません」
「どうされますか」
「戦線を縮小する」
 これが彼の出した結論だった。
「今はだ」
「戦線の縮小ですか」
「今は」
「そうだ。そしてだ」
 その言葉が続けられる。
「双方を愛手にする」
「愚か者達も」
「ロンド=ベルも」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだった。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
「今は」
「そうしましょう」
 こうしてだった。グラドス軍は少し退く陣を整えようとする。しかしだった。
 ここでだ。ユンが言った。
「レーダーに反応です」
「レーダーに!?」
「はい、グラドスのものではありません」
 こうレフィーナに報告する。
「これは」
「宇宙怪獣かしら」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのだった。
「来ました」
「まだこの辺りにいたのね」
「相変わらずしぶといですな」
 ショーンもここで言う。
「宇宙怪獣も」
「そうですね。しぶとくなくていいのですけれど」
 こんなことも言うレフィーナだった。
「けれど今は」
「はい、彼等ともまた」
「戦いましょう」
「それでは」
 彼等とも戦う決意を固める。しかしだった。宇宙怪獣達はだ。妙な動きを取ったのだった。
 姿を現すとだ。すぐにグラドス軍の後方に回ってきたのである。
「あれっ!?」
「何でなんだ?」
「グラドスの方に行ったぞ」
「どういうつもりなんだ」
 ロンド=ベルの面々はそれを見ていぶかしむ。
「俺達の方には来ない」
「何考えてるんだよ」
「あの連中は」
 しかしだった。ここでタシロが言うのだった。
「そういうことか」
「えっ、艦長」
「っていいますと」
「何かわかったんですか!?」
「敵は弱い方から叩く」
 タシロは強い声で言った。
「そういうことだ」
「じゃあ弱っているグラドス軍から倒す」
「そういうことなんですね」
「つまりは」
「そうだと思う。まずはグラドス軍を倒し」
 タシロはその宇宙怪獣達の動きを見ながら述べた。
「そしてそのうえでだ」
「こっちですね」
「こっちに来ますか」
「それから」
「そうなるな。間違いなくだ」
 ここまで予測してからだ。そのうえでまた言う彼だった。
「それではだ」
「はい、それじゃあ」
「ここはですね」
「どうしますか?」
「グラドスとはこのまま戦う」
 彼等とはそうするというのだった。そしてだ。
「そして宇宙怪獣ともだ」
「戦いますか」
「そうするんですね」
「それじゃあ」
「そうだ。それでいいな」
 あらためてだった。ロンド=ベルの面々に尋ねた。
「異論はあるか」
「いえ、別に」
「やっぱりここはそれですね」
「それが一番ですね」
 反論はなかった。誰もがだった。
 こうしてだった。宇宙怪獣達を見つつグラドス軍への攻撃を続ける。それはゲイルの軍もでありその戦いの中でのことだった。
 ゲイルがだ。ゲートに攻撃を浴びせてだった。
 ゲートが破損しだ。派手な爆発を起こしそうして壊れたのだった。
 それを見てだった。グラドスの将兵達の間に絶望が走った。
「何と・・・・・・」
「我等の最後の希望が・・・・・・」
「消えた・・・・・・」
 こう言ってだ。落胆しきったのだった。
 そしてそこにだ。宇宙怪獣達が襲い掛かるのだった。
「う、うわあああああああっ!」
「た、助けてくれーーーーーーっ!」
 しかしその絶叫は断末魔でしかなかった。
 グラドスの将兵達は一人また一人と喰われていく。そして。
 ギウラとズールの乗るディマージュは。
「これで!」
「終わりよ!」
 ロアンとシモーヌがそれぞれ攻撃を浴びせてであった。
 どちらもコクピットから真っ二つにされ。断末魔の声を出すのであった。
「ば、馬鹿な・・・・・・」
「ここで朽ちるとは・・・・・・」
「野蛮人共に」
「この我々が」
「野蛮、ね」
「その言葉だけれどね」
 彼等を屠ったロアンとシモーヌはだ。冷たい調子で返すのだった。
「そっくりそのまま」
「あんた達に返すわ」
「何っ、我等が野蛮だと」
「グラドス人がだというのか」
「そうだよ」
「その通りよ」
 やはり二人の返す言葉は冷たい。
「他の文化を認めないで相手を一方的に否定する」
「それこそが野蛮というのよ」
「くっ、この我々を否定し」
「そう言うのか」
「言ってもわからないようだしね」
「話すだけ無駄な連中なのはわかっていたけれど」 
 それでも話した。そうしてであった。
 彼等も死んだ。残るはだ。
 グラドス軍の将兵達はロンド=ベルだけでなく宇宙怪獣達からも攻撃を受けていき数える程しか残らなくなった。だがその中にはだ。
 ル=カインもいた。その彼はだ。
「まだだ」
「まだですか」
「戦われますか」
「最後の最後まで戦う」
 こう残っている部下達に言うのだった。
「偉大なるグラドスの戦いを見せてやる」
「偉大、ね」
 その彼の言葉にだ。ギュネイがシニカルな反応を見せた。
「あんたいつもそう言ってたけれどな」
「違うというのか」
「ああ、違うね」
 これがギュネイの返答だった。
「あんた達を下劣だとは思ったことはあっても」
「下劣だと、我等が」
「そうさ。偉大とは思ったことはないな」
 これがギュネイの彼への言葉だった。
「一度もな」
「一度もだというのか」
「そうさ。あんたもそのお仲間も下らない奴等だよ」
 見事なまでの全否定だった。
「取るに足らない下品な奴等だったよ」
「私を愚弄するのか」
「愚弄なんかじゃないわよ」
 今度はクェスが忌々しげに告げる。
「事実よ。紛れもないな」
「くっ、貴様等・・・・・・」
「さあ、死にな」
「さっさとね」
 二人はそれぞれファンネルでル=カインのザカールの周りの敵機を倒していく。
「それじゃあ後は」
「あんただけだけれどね」
「まだだ・・・・・・」
 彼は最後の意地を見せようとする。しかしだった。
 その後ろからだった。宇宙怪獣合体型が来てだった。
「!?」
「なっ、あれが来たかよ!」
「ここで!」
 一気にだ。左右からサンドイッチにされたのだ。
 それも一度や二度ではない。何度もだ。ザカールはそれを避け切れなかった。
「う、うぬううううううっ!」
「死んだか」
「これで」
 多くの者がそう見た。
「ル=カインの奴もこれで遂に」
「死んだ!?」
 誰もがそう思った。だが。
 彼はその攻撃を受けてもまだ生きていた。満身創痍でもだ。
 ふらふらになりながらもだ。前に出て言うのだ。
「私は。野蛮人共になぞ」
「そうか、もういい」
 その彼の前にだ。エイジが来て告げる。
「ル=カイン、もう御前はだ」
「何だというのだ」
「死ね」
 血だらけになっている彼にだ。一言告げた。
「これでだ」
「ま、まだだ」
 動けなくなってもだ。彼は言うのだった。
 それでだった。何とか前に出ようとする。だが。
 エイジの攻撃がコクピットを貫いた。彼の額もまた。
 それで動きを完全に止めてだ。ゆっくりと銀河の奥底に落ち。爆発の中に消えた。これが華麗と言われた男の末路であった。
「無様だな」
「そうだね」
「これでね」
 ロンド=ベルの面々はその死についても冷たかった。
「最後位潔くしていればいいのに」
「最後の最後まで偉そうに言って」
「それでああした最後って」
「何だかね」
「僕も思うよ」
 彼を倒したエイジも言う。
「ル=カイン、下らない男だったよ」
「全くだな」
 彼の言葉にゲイルも頷く。
「だが、これでだ」
「はい」
「グラドスの恥は全て消えた」
 こう言うゲイルだった。
「その過ちもだ」
「そうですね。グラドスはあらためて新たな道を歩めますね」
「そのことにも気付いた」
 ゲイルの声は澄み切っていた。
「それではだ。今はだ」
「そうですね。残っている宇宙怪獣をですね」
「倒そう。そして」
「このグラドスでの戦いを終わらせましょう」
「グラドス軍、完全に消滅しました」
 一機もだというのである。副長の報告である。
「残るはです」
「宇宙怪獣だな」
「はい」
 副長はタシロの問いにも答えた。
「残るはです」
「そうか、それならばだ」
「後はですね」
「全軍攻撃だ」
 こう言ってだった。そうしてであった。
 彼等はそのまま宇宙怪獣との戦いに入った。エイジとゲイルは肩を並べて戦っている。
「じゃあゲイルさん」
「そうだな。ここはだ」
「はい、グラドスの為に」
「銀河の為にな。共に戦おう」
 こうしてだった。彼等は共闘し無事宇宙怪獣の大軍を倒した。戦いはこれで終わった。
 それで終わらせてからだった。彼等は一旦本星まで戻る。そこで整備と補給を受けてだった。
「行くのね」
「うん、行くよ」
 エイジはこうジュリアの言葉に頷く。
「三連惑星にね」
「そこに行ってそれで」
「銀河を救いに行って来るよ」
 そうするというのである。
「もうね。グラドスでの戦いは終わったしね」
「それでなのね」
「うん、行って来るから」
 姉に対して微笑んで話すのだった。
「今からね」
「そう。それじゃあ私達は」
「このグラドスをだね」
「まずはバルマーから独立するわ」
 そこからだというのだ。
「そうしてそのうえでね」
「新しい道を歩むんだね」
「バルマーの下で選民思想に染まっていたこそこそが誤りだった」
 ゲイルも気付いていることだった。
「だからそれから脱却する為にもだ」
「その為にも」
「そうだ。我々は独立する」
 彼は言い切った。
「そうして自分達の力だけで正しき道を歩むのだ」
「そうしていくつもりよ」
 ジュリアもまた言う。
「だから。私達は」
「わかったよ」
 エイジは微笑んで二人の言葉を認めた。
「じゃあ僕達は離れた場所からね」
「ええ、見ていて」
「これからの我々を」
「そうさせてもらうよ。それじゃあね」
 こう別れの挨拶をしてだった。エイジは今は姉達と別れた。そうしてそのうえでグラドスを発ち三連惑星へと向かうのであった。
 それは当然ロンド=ベル全軍もである。その彼等がだ。
「しかしな」
「そうね」
「何ていうかね」
 まずはこうしたやり取りからだった。
「グラドス人にもいい人がいたって」
「ゲイルさんやジュリアさんみたいな人がいるんだって」
「それがわかるなんてな」
「思わなかったわ」
「だよなあ」
 皆あらためてこのことを話すのである。
「ゴステロみたいな奴ばかりじゃなかったんだ」
「普通の人だって沢山いたし」
「他の星の人間や文化を受け入れる人もいる」
「そうだったんだ」
「そして」
 そうしてだった。アルマナとルリアのことも考えて話すのだった。
「あの二人だってね」
「バルマー十二支族の人達でも」
「ああいう人達だっている」
「そういうものか」
「そういえばな」
 そしてだ。トウマがあることに気付いた。
「バラン=ドバンだって特にな」
「そうね。あの人は」
 ミナキも彼のその言葉に頷く。
「人間としてはね」
「見事な武人だよな」
「それは間違いないわね」
「どの星の人間も同じなんだな」
 トウマはあらためて言った。
「いい奴もいれば悪い奴もいる」
「そういうことなのね」
「それでだよな」
 また言うトウマだった。
「色々なことを考えていかないとな」
「いけないわよね」
「ああ、そう思うよ」
「どの者の心にもだ」 
 ゼンガーも言う。
「善と悪がある」
「その二つがですか」
「同時にある」
「そうなんですね」
「そうだ。至極稀にどちらか一方が完全に勝っている場合もある」
 そうした人間もいるというのである。
「だが、だ。殆んどの者はだ」
「善と悪を一緒に持っていて」
「その中で揺れ動いている」
「そういうものなんですね」
「つまりは」
「その通りだ。だからこそだ」
 ゼンガーは腕を組んでだ。そうして語るのだった。
「グラドスもまた、だ」
「善い人もいれば悪い人もいる」
「そうなるんですね」
「俺もこのグラドスに来るまでわからなかった」
 そのゼンガーにしてもだというんどあ。
「気付こうともしなかった」
「けれど気付いたら」
「そういうことなんですね」
「見えてくる」
「そうしたことまで」
「その通りだ。見えてきた」
 実際にそうだというのである。
「そしてその見えるものはだ」
「はい、それは」
「どういったものですか?」
「いいものだな」
 こう言うゼンガーであった。
「実にな」
「そうですね」
 エイジがゼンガーのその言葉に頷く。
「見えてきたものがこんなに奇麗とは思いませんでした」
「それがわかった」
 また言うゼンガーだった。
「そうした戦いだったな」
「そうですね。それでなんですけれど」
「何だ」
「三連惑星ですけれど」
 その話をする彼だった。
「一体どういった戦いになるでしょう」
「それはわからない」
 大河が答えた。
「それはまだだ」
「しかしですね」
「それでもですね」
「行かないといけませんね」
「どうしても」
「そうだ、行こう諸君」
 大河のその言葉が強くなる。
「我々の今回の旅の本来の目的を果たしにだ」
「長かったな」
 凱の言葉には感慨が篭っている。
「ここまで」
「それで凱」
 その凱にだ。命が声をかけてきた。
「いいかしら」
「ああ、何だ?」
「護君はどうしているのかしら」
 彼女が考えているのはこのことだった。
「今は」
「あいつも戦っているんだ」
 凱は少し俯いて答えた。
「あいつの戦いを」
「そうしているのね」
「間違いない」
 今度は断言した。
「あいつも。俺達と同じ様に」
「ソール十一遊星主達と」
「その護を助けに行く戦いでもあるんだ」
 凱はこうも言った。
「俺達の今度の戦いは」
「そうね。世界を救う為でもあるし」
「護を助ける戦いでもあるんだ」
「一人の男の子を助けられないで」
 シローが言った。
「世界は助けられないよな」
「そうね」 
 アイナがシローのその言葉に頷く。
「それはね。その通りね」
「だから行かないといけないな」
「そうなるわね、やっぱり」
「あの時の護のレプリカは」
 凱は地球でのかつての戦いのことも思い出していた。
「尋常な強さじゃなかった」
「ええ、本当にね」
 命が彼の今の言葉に頷く。
「あそこまでの強さがあるなんて」
「あれだけのレプリカを作り出せる相手だ」
 凱の言葉は真剣なものだった。
「激しい戦いになるな」
「そして苦しいものになるわよね」
「それでも勝つんだ」
 決意そのものの言葉だった。
「そうして世界を」
「ええ。何があってもね」
「そうしないとね」
 ルネもここで言う。
「悲しんだままの人だっているんだから」
「猿頭寺さんか」
「あの人が」
 二人も彼のことに気付いた。
「そういえばあの人は最近は」
「全然喋らなくなったわね」
「色々と思うことがあるんだよ」
 ルネもそれがわかっているのだった。
「だからね。どうしてもね」
「言葉がなくなる」
「そうなるのね」
「けれどそれもね」
 ルネの言葉は続く。
「もうすぐ終わるよ」
「俺達が戦いを終わらせて」
「それでなのね」
「ああ、それでだよ」
 まさにそれによってだというのである。
「わかったらね」
「この戦い、何があっても」
 凱はまた言った。
「ソール十一遊星主を倒す」
「その通りだ。では諸君」
 大河も全員に告げる。
「最早我々の進路にあるのはだ」
「何もない」
「そうですね」
「三連惑星だけ」
「後は」
「そうだ。そこに行き銀河を救う」
 彼は言った。
「この世界をだ」
「長かったね」
 ユングの言葉にも感慨が篭っている。
「その間色々なものを見てきたけれど」
「最大の目的が終わるわ」
 カズミもだった。感慨を感じているのは。
「遂にね」
「まだバルマーがあるけれどね」
「それでもよ。終わるわ」
「三連惑星のことが」
「遂にね」
「それじゃあですね」
 ノリコも言う。
「本当にその為にも」
「ええ、ノリコ」
「行くわよ」
 カズミとユングはここでは笑顔になる。
「そしてね」
「護君も助けましょう」
「何か男の子を助けるって」
 ノリコはだ。二人とはまた違う笑顔になっていた。
「ヒーローみたいね」
「そうね。女の子だけれど」
「ヒーローになれるのね」
「助けるのはお姫様じゃないけれど」
 ノリコはこうも言う。
「それでも。なれるのね」
「そうなるのね。これって」
「何か面白いわね、そう考えると」
「まあそれを言ったらヒーローは凱さんだけれど」
 やはり彼だというのである。
「私達も」
「ヒーローの仲間になるかしら」
「この場合は」
「そうですね。それでも」
「ええ、行くわよ」
「そして勝つわよ」
 それは絶対にだというのであった。
「この戦い。激しくなるわね」
「いつも通りね」
「激しい戦いは本当にいつもですね」
 それはノリコも受け入れていてわかっていた。
「何度死ぬかって思ったかわかりませんよね」
「よくそれで皆今まで死ななかったものね」
「モエラだって生きてたし」
 三人でそんな話もするのだった。
「私と似てる子達もそういう娘いるし」
「私もね」
「御二人共そういう娘多いですよね」
「まあそれはね」
「否定できないけれどね」
 二人はここで苦笑いになってそれぞれ述べた。
「声のことはどうしてもね」
「何ていうか」
「私もだったりしますけれど」
 そして実はノリコもなのだった。
「ハーリー君にミーナさんに」
「ノリコも結構そういう人が増えてきたし」
「そうしたことでも寂しくなくなってきたわね」
「最初は寂しかったですよ」
 こんなことも言うノリコだった。
「だって。私本当に一人で」
「私は。確か」
 カズミはここで己の記憶を辿った。そのうえでの言葉である。
「ニナさんもいたし」
「私もクェスちゃんがいたわね」
「他にも何人もいてくれてたし」
「そうよね。私達は」
「似ている人って有り難いのよね」
「何かとね」
 二人で話していってだ。そうしてであった。
 あらためてだ。二人で話した。
「それじゃあ今は」
「その皆と一緒にね」
「行きましょう」
「決戦の場にね」
「はい、それじゃあ」
 ノリコも二人の言葉に頷く。
「三連惑星へ」
 こうしてだった。ロンド=ベルはその目的に向かうのだった。
 決戦の一つがだ。また行われようとしていた。


第八十二話   完


                   2010・12・15 

 

第八十三話 失われる闘志

              第八十三話 失われる闘志
 三連惑星にだ。遂に来たその時だった。
「あれっ、ここは」
「まさか」
「そんなことが」
「そんなことがあるなんて」
 誰もがだ。驚愕を隠せなかった。
「地球って」
「そんな筈がないのに」
「どうしてなんだ!?」
「地球が目の前に」
 誰もがそれを見ていた。地球をだ。
「そんなことは有り得ない!」
「けれど実際に目の前には」
「大きさや質量は!?」 
 雷牙が調べだした。
「それに大気成分は」
「どうなんですか、それは」
「全部まさかと思いますけれど」
「地球と」
「・・・・・・信じられない」
 雷牙の声が呆然となっていた。
「全て同じだ」
「同じ!?そんな」
「おい、それじゃあだ!」
 火麻がその狼狽した声で話した。
「俺達は地球に戻って来たのか!?」
「それは有り得ない」
 大河がそれを否定した。
「絶対にな」
「しかしよ。あれはどう見てもよ」
「だが実際にだ。あれは」
「方位は違う」
 ここでまた雷牙が言う。
「完全にだ」
「それじゃああの星は」
「三連惑星!?」
「間違いなく」
「そこなんですか」
 誰もがさらに狼狽する。そしてだった。
 その謎の星からだ。何かが来た。
「長官!」
「どうした、牛山君」
「あの星から通信です」
 牛山がこう言ってきた。
「どうされますか」
「モニターに映してくれ」  
 大河はすぐに答えた。
「いいな、すぐにだ」
「わかりました。それじゃあ」
 こうしてモニターが開かれる。するとそこには。
「ようこそ」
「えっ、また!?」
「何で貴女が!?」
「貴女は確かあの時代に」
「どうして・・・・・・」
「そんな筈がない」
「そうだ、有り得るものか!」
 猿頭寺とルネも叫ぶ。
「パピヨンはオービットベースで」
「死んだ筈だ!」
「そのことですが」
 しかしだった。ここでそのパピヨンが話してきた。紛れもなく彼女だった。
「全てはこちらでお話します」
「全て!?」
「こちらって」
「どういうことなんだ!?」
 誰もがいぶかしまざるを得なかった。そしてだ。
 凱もだ。怪訝な顔で話すのだった。
「それって」
「一体」
「そっちっていったら」
「まずは大気圏に降下を」
 パピヨンはまた一同に言ってきた。
「御願いします」
「ううむ」
「間違いありまセン」
 雷牙とスワンが話す。
「この宙域はやっぱりだね」
「宇宙収縮現象の中心点です」
「ではやはり」
 大河もここまで聞いて確信せざるを得なかった。
「この場所は」
「長官、どうしましょう」
「ここは」
「降下しますか?」
「やっぱり」
「行くしかあるまい」
 大河の決断も一つしかなかった。
「我々の長い旅の目的地はここなのだからな」
「それじゃあ今は」
「降下ですね」
「今から」
「そうだ、そうする」
 こうしてだった。彼等は降下するのだった。そうしてだった。
 降下するとやはりそこは地球と同じ地図だった。しかもだ。
 調べてみてだ。そしてわかったことは。
「地表各地の映像を分析しましたが」
「どうなんだ、それで」
「同じです」
 ボルフォッグはこう凱に答える。
「色素の低下以外は地球と全く同じものです」
「どういうことなんだ」
 凱もまたこう言うしかなかった。
「地球と同じなんてことがある筈がない」
「そうだよな、それはな」
 ゴルディマーグもそれを言う。
「有り得ないぜ、それって」
「しかもだ」
 凱はここでさらに言う。
「どうしてパピヨンが」
「お待ちしておりました」
 そのパピヨンが一同のところに来て言ってきた。
「ロンド=ベルの皆さん」
「パピヨン・・・・・・」
 ルネがその彼女を複雑な顔で見ている。
「あんた本当に」
「なあ、確かな」
 ジュドーもいぶかしむ顔だった。
「死んだよな、あの人」
「忘れていないな」
「そんなこと有り得ませんよ」
 ジュドーはすぐにカミーユに言い返す。
「人が死んで。忘れられる筈がない」
「確かにあの時に死んでいる」
「間違いない」
 アポリーとロベルトもそれを言う。
「あの男の子。護君だったな」
「彼の偽者が現れた時にだ」
「ではあの人は」
 カミーユは警戒する顔になっている。
「一体。何だというんだ」
「パピヨン」
 凱もまた警戒する顔だった。
「君は護と同じ」
「ええ」
 何とだ。パピヨンは頷いてきたのだった。
 そしてだ。彼女はあらためて言うのだった。
「その通りです」
「そんな」
「まさか」
「それって」
「この星全体が」
「そうだっていうんですか」
「私も」
 パピヨンはまた言ってきた。
「この星も」
「この星も?」
「つまりそれって」
「やっぱり」
「はい、偽物です」
 この星もだというのだ。
「複製された」
「レプリジンか」
 大河はここまで聞いて険しい顔になった。
「それだな」
「おい、もう何だってんだよ」
 火麻はたまりかねた声で言った。
「ちんぷんかんぷんだぜ」
「この地球全部が」
 ルネは今は険しい顔になっている。
「そうだっていうんだね」
「護君のお父さんのレプリジンは」
 命がその時のことを思い出して話す。
「ソール十一遊星主の手先だったわよね」
「それじゃあ」
「この星も」
「まさか」
「全てはです」
 また話すパピヨンだった。
「パスキューマシンが発動してしまったことが原因なのです」
「それは」
 万丈もその時のことを思い出して言う。
「君があの子のレプリジンによって」
「はい」
「命を落とした時だね」
「その時にです」
 パピヨンは万丈の言葉に応えてさらに話してきた。
「地球から遠く離れた」
「この三重連太陽系にです」
「このコピーされた地球が」
「誕生した」
「そういうことなんですね」
「そうですですが」
 このレプリカの地球のことをだ。パピヨンは話す。
「生体物質はかなり不安定でした」
「それはなんですか」
「不安定だったんですか」
「それで」
「私以外の複製された人達は全て消滅してしまいました」
 そしてだった。
「オービットベースはです」
「えっ、それもあったんですか」
「オービットベースも」
「存在していたんですか」
「はい、ですが」
 そのオービットベースがどうなったかも話される。
「それもまた」
「消えた!?」
「まさかと思うけれど」
「オービットベースも」
「軌道をそれ」
 レプリカの地球のそれをというのだ。
「宇宙空間の闇の中で」
「そうなんですか」
「それでパピヨンさんは」
「ここまで」
「何とか逃れました」
 そうだったというのである。
「けれどここにも人は存在していませんでした」
「その通りだな」
 マリンが答えた。
「調べたが人は。それに」
「動植物も殆どいない」
「脊椎動物は何も」
「原始的な生物ばかりで」
「その数だっていないと言っても同じだし」
 そうした星なのだった。
「昆虫も少ないよな」
「細菌はいても」
「生き物の匂いがしない?」
「そんな星だよな」
「それがここです」
 そうだとだ。パピヨンの話は続く。
「けれど私は」
「どうしていたんだい?」
 猿頭寺が恋人に優しい声で問う。
「君はここで一体どうして」
「自家発電の設備のあるここに」
 彼等が今いる場所だというのだ。
「GGGのセンターにおいて」
「ここでか」
「生きていたんだ」
「そうして」
「そうです。何時か」
 さらに話すパピヨンだった。
「助けが来ることを信じて」
「パピヨン・・・・・・」
「バスキューマシンはです」
 パピヨンは今度はそれについて話してきた。
「物質復元装置の中枢回路です」
「そうだったな」
 大河がその言葉に頷く。
「確かにな」
「それだけでは完全な復元はできません」
「じゃああんたもだな」
 火麻がそのパピヨンに問う。
「完全じゃないんだな」
「その通りです。護君も」
「そうだったんだ。あの彼は」
 スタリオンがそれを聞いて考える顔になった。
「完全ではなかった」
「その通りです」
「あれで完全でなかったとはね」
「いや、それはわかる」
 実際にそのレプリカと戦った凱の言葉だ。
「実際の護はずっと強い」
「ずっとなんですか」
「強いって」
「あれ以上に」
「護には勇気がある」
 それが強さの源だというのだ。凱が話すにはだ。
「その勇気があいつを強くしているんだ」
「けれどその勇気がないレプリカは」
「ただ力を持っているだけ」
「本当の強さじゃない」
「そういうことなんですね」
「そうだ」
 まさにその通りだと答える凱だった。
「だからあいつは強くなかった」
「成程、それでか」
「それで強くはない」
「そういうことなのね」
「だから今のパピヨンの言葉はわかった」
 凱ならば特にであった。
「そういうことなんだな」
「はい、そして」
 パピヨンはここで話をこう変えてきた。
「私の特殊能力」
「センシング=マインド」
「それですよね」
「あの力ですよね」
「はい、そうです」
 まさにそれだと答えるパピヨンだった。
「それでわかったことは」
「一体」
「それは」
「何なのですか?」
「貴方達のことです」
 それであった。
「貴方達が本物の地球からやって来たこと」
「それはか」
「わかってくれたんですね」
「そうなんですね」
「はい。そして」
 まだあった。それは。
「本物の私はもう存在していない」
「そのこともですか」
「わかったんですか」
「パピヨンさんご自身のことも」
「そのことも」
「わかりました」
 こうだ。パピヨンは答えるのだった。
「その二つがわかりました」
「納得のいく説明だ」
 大河がここまで聞いたうえで頷いてみせた。
「我々がここに来たのはだ」
「宇宙収縮現象の真実を確かめる為でした」
 スタリオンも話す。
「それでここまでだ」
「来たのですから」
「けれど」
「そうだな」
 しかしだった。ここで命と凱が顔を見合わせだ。そのうえでパピヨンに問うのだった。
「本物の護君は?」
「ソール十一遊星主達は」
「わかりません」
 パピヨンは残念な顔で答えたのだった。
「私には」
「疑ったらあれだけれどね」
「そうよね、ルネ姉ちゃん」
「そうしたことはやはり」
 ルネと光竜、闇竜が話をしてだった。
「まさかとは思うけれどね」
「パピヨン姉ちゃんが敵の手先の訳が」
「私も信じたいですが」
「いや」
 しかしだった。ルネはここで首を横に振った。そしてだった。
 パピヨンの目を見る。その奥までだ。
 そしてだった。暫く見詰めてからだ。こう彼女に告げた。
「わかったよ」
「ルネ・・・・・・」
「あんたは嘘をついちゃいない」
 それを見切ったのである。
「あんたはパピヨンだ」
「認めてくれるのね」
「ああ」
「信じてくれるのね」
「そうだよ。だから今言うんだよ」
 これが今のルネの考えだった。
「だからなんだよ」
「ルネ、それじゃあ」
「お帰り
 ルネは微笑んで告げた。
「お帰り、パピヨン」
「只今・・・・・・」
 ルネは涙を浮かべながら返す。
「只今、ルネ」
「ああ、お帰り」
「光竜」
「そうね」
 闇竜と光竜もだ。ここでわかったのだった。
「あの方は間違いなく」
「ルネ姉ちゃんだよね」
「間違いありませんね」
「そうですね」
 彼女達もそれがわかったのだった。そしてだ。
 氷竜と炎竜もだ。そのことを喜ぶのだった。
「よかったな」
「そうだね。何か」
「何か?」
「僕も泣けてきたな」
 こう言う炎竜だった。これは風龍と雷龍、マイクもであった。
「幸せが戻った」
「帰るべき人が帰った」
「これっていいことだもんね!」
 こう三人で言い合うのだった。
 猿頭寺もであった。ここで。
「パピヨン・・・・・・」
「ええ・・・・・・」
「よかった、本当によかったよ」
「御免なさい、本当に」
「いいよ。帰ってきてくれたから」
 彼はそれだけで満足だった。
 そしてだ。その二人を見ながらだ。万丈が言った。
「さて、これでよしだけれど」
「よしだけれど?」
「ああ、そうか」
「あの連中がいましたね」
「ソール十一遊星主が」
「あの連中がまだ」
「うん、その通りだ」
 万丈は彼等のことを皆に話すのだった。
「けれどこれはね」
「これは?」
「っていいますと」
「まだ何か」
「悪くないはじまり方だよ」
 これが万丈の今の言葉だった。
「いや、かなりいよ」
「そうですね。そう言われたら」
「今は」
「何か気持ちよくはじめられますね」
「これまでになく」
「どうせはじめるのなら」
 万丈はまた言う。
 コスモはだ。ふとだった。
 その場から去ろうとする。そこをカーシャに呼び止められる。
「何処に行くのよ」
「ちょっとな」
 苦笑いでの返答だった。
「外にさ」
「外にって。どうしてなのよ」
「どうもこういうシーンは苦手なんだよ」
 だからだと。その苦笑いで話すのだった。
「だからちょっとさ」
「それで外になのね」
「それに丁度いい機会だよ」
 同時にこんなことも言う。
「ここが地球のコピーっていうんならな」
「外を歩いて調べるのね」
「そうさ。あの人の話なら」
 パピヨンのことである。
「邪魔者もいなさそうだしな」
「そうね。確かにね」
「だから外に出るよ」
 また話すコスモだった。
「今から少しだけな」
「じゃあ私も」
「おい、カーシャもか」
「そうよ。悪いかしら」
「別にそうは言ってないだろ」
 コスモもそうではないと返す。
「じゃあ一緒に行くか」
「ええ、それじゃあね」
「ああ、俺も」
 デクもここで出て来て言う。
「一緒に行こうよ」
「仕方ないな。それじゃあな」
 こうしてだった。三人で外に出るのだった。そうして三人は外を見るのであった。
 そんな三人を見てだ。竜馬が言う。
「何だかんだで」
「そうだな」
 隼人が彼の言葉に頷く。
「あいつ等もだな」
「この星に興味があるんだな」
「レプリカはレプリカだが」
 それでもだとだ。隼人は言う。
「ここは地球だからな」
「そうだよな。静かだしな」
 弁慶もいる。
「何か外も面白そうだな」
「じゃあ一旦出てみるか?」
 武蔵がこう三人に提案した。
「おいら達もね」
「そうね。ソール十一遊星主もいないし」
 ミチルが武蔵のその提案に賛成する。
「休憩できそうだし」
「じゃあマリ」
 洸は早速だった。
「俺達も何処かに出かけようか」
「そうね。ピクニックにでもね」
 笑顔で応えるマリだった。
「行きましょう」
「よし、それじゃあな」
 一行はリラックスしだしていた。しかしだった。
 万丈はだ。ギジェと話すのだった。そのこととは。
「ではやはり」
「そうだ」
 ギジェはこう万丈に返す。二人は今ソロシップのギジェの部屋にいる。
「バッフ=クラン軍もだ」
「この宙域に」
「来ている」
 ギジェは言い切った。
「彼等の行動範囲は広いからな」
「そうしてここに」
「しかも」
 ここでだ。ギジェはこうも言った。
「イデの力はどうやら」
「彼等を引き寄せている」
「そんな気がする」
 彼のイデへの関心はさらに強くなっていたのだ。
「それを考えればだ」
「そうだね。確かにね」
 万丈も彼のその言葉に頷いた。
「あの力は騒動を好むようだしね」
「だからだ。それは」
「だとしたら。ここでもやはり彼等と」
「戦うことになる」
 ギジェはこのことを既に受け止めていた。そのうえで、だった。
「それでだが。万丈君」
「はい、今度は」
「君はイデの力をどう捉えている」
 彼が今尋ねるのはこのことだった。
「それについては」
「貴方と一緒かな」
「私とか」
「善い力とも悪い力とも考えてはいないよ」
「ではやはり」
「イデが第六文明人の意志の集合体だからかな」
 それが理由だというのだ。そう考える。
「人の意志には」
「善も悪もない」
「だから僕は」
「君は」
「イデの発動に何らかの方向性があるとしたら」
「それは人の意志だな」
「うん、そしてこの場合は」
 こう前置きしてからの言葉だった。
「人のエゴに近いものじゃないかな」
「人のか」
「あまりいい言葉じゃないけれどね」
「だがわかりやすい」
 だからいいというのだった。
「そういうことか」
「そんな気がするけれどね。つまり」
「つまり?」
「イデには何らかの目的意識があって」
 完全に人の心と同じだと見ていた。
「それを達成すべく僕達を動かしているのかも知れない」
「私達をか」
「うん、どうかな」
「面白い理論だな」
 ギジェは万丈の考えをこう言って肯定した。
「神話や伝承の現代解釈に近いものがあるな」
「そこまで哲学的かな」
「そう思う。私は純粋に興味があるが」
「けれど貴方のその考えも」
「いいか」
「そう思うよ。それで」
 万丈はだ。丁度部屋に入ってきたシェリルに顔を向けた。そのうえで彼女にも問うた。
「シェリルさん、貴女は」
「私なのね」
「はい、どう考えていますか?」
「イデについてよね」
「はい、それは」
「まだよくわからないわ」
 これが彼女の意見だった。
「深くはね。ただ」
「ただ?」
「女性に近いかしら」
 彼女はこう言うのであった。
「イデは」
「女性ですか」
「母性に似たものを感じるわ」
 これが彼女の見方だった。
「何処となくね」
「イデが女性」
「イデは意志の集合体だけれど」
 シェリルもこのことは把握しているのだった。
「それでも。その中の女性的なものが」
「大きいと」
「そう思えるの」
 これがシェリルの見方だった。
「それが違うかしら」
「いや、間違いではないな」
 ギジェが彼女のその考えを認めて言った。
「おそらくな」
「貴方もイデはそうだと思うのかしら」
「男性か女性まで考えてはいなかった」
 こう言ってからだった。
「だが。気味の言葉を聞いて考えてみるとだ」
「そう思えるのね」
「そうだな。女性だな」
 ギジェは考える顔で述べた。
「イデは。だからこそ」
「だからこそ?」
「子供により反応するのか」
「そうかも知れないわ」
「どちらにしろだね」
 万丈が二人に話す。
「このことはもっと深く考えてみる必要があることだね」
「ええ、そうね」
「その通りだな」
 二人も彼のその言葉に頷く。そうした状況だった。
 レプリカの地球への調査は続いていた。その時だった。
 猿頭寺がだ。パピヨンに対して話していた。
「今のところ何もわからないけれど
「そうね。今はね」
「けれどね。パピヨン」
「どうしたの?」
「僕は満足しているよ」
 こう彼女に言うのだった。
「今はとてもね」
「満足?どうしてなの?」
「どんな形であれ」
 彼女を見てだ。そのうえでの言葉だった。
「君がいてくれるからね」
「私が・・・・・・」
「うん、それだけで十分だよ」
 優しい顔での言葉だった。
「それでね」
「有り難う。けれど」
「けれど?」
「注意していて」
 パピヨンはここでこう言うのだった。
「これから。何かが起こるわ」
「まさか君のセンシング=マインドが」
「知らせているの。これからとてもよくないことが起こると」
「よくないこと?」
「それが何かはまだわからないけれど」
「確かに」
 猿頭寺もだ。一応はこう言った。
「不安材料は多いね」
「ええ、だから」
「ただ。今は」
「今は?」
「ちょっと眠いね」
 見ればだ。猿頭寺の目がかなり眠そうであった。
「どうしてかな。急にね」
「ちょっと頑張り過ぎたんじゃないかしら」
「そうかもね。それに」
 パピヨンを見ての言葉だった、
「君にまた会えて。気が緩んだかな」
「そうなのね」
「そうだと思うよ」
「だといいけれど・・・・・・あっ!?」
「どうしたの?」
「い、いえ何も」
 口ではこう言ってもだった。
(センシング=マインドが感じた)
 そうなのだった。
(勇者王の)
 そしてその時だった。警報が鳴った。
「レーダーに反応です!」
「レーダーに?」
「はい、大気圏外からの敵です!」
「そうなんだ」
 反応がだ。明らかにいつもの彼ではなかった。
「慌てることはないよ」
「えっ!?」
「じゃあとりあえず」
「とりあえずって」
 パピヨンは唖然となった。それはだ。明らかに彼女が知っている猿頭寺ではなかったからだ。
 それに呆然とする。しかし彼はまた言うのだった。
「大河長官に連絡しよう。焦ることはないよ」
「敵が来たのに・・・・・・」
 そしてなのだった。それは彼だけではなかった。
 敵は大気圏内に降りてきた。やはりバッフ=クランの軍勢だった。
「財団だな」
 ギジェが彼等を見て言う。
「オーメ財団の軍だ」
「あの連中?」
「バッフ=クランの系列の」
「その通りだ。彼等か」
 ギジェは考える顔になっていた。
「彼等も動くな。かなり」
「では皆いいな」
 ここでアムロが指示を出す。その指示は。
「深追いはするな。さっさと片付けて帰ろう」
「何っ!?」
 その言葉に驚いたのはルネだった。慌ててアムロに問う。
「待ってくれ、中佐」
「どうしたんだい、一体」
「どうしたって?」
「だから今だ」
 ルネはアムロに対してさらに言う。
「さっさと片付けてって」
「いや、ルネさんここは」
 カミーユがだ。彼女に言う。
「もう戦いはこりごりだよ」
「何っ!?カミーユ」
 戦場においては攻撃的なカミーユの言葉には思えず。ルネは唖然となった。
 そのうえでだ。口を大きく開きながら彼に問うた。
「あんたまで一体」
「そうだな」
 今度はコスモだった。
「戦ってばかりじゃ何の解決にもならないしな」
「おかしいぞ、これは」
 ギジェは普通だった。
「どういうことだ、一体」
「ねえカトル君」
 シンジは温厚な顔でカトルに声をかける。
「久し振りにアンサンブルでもどうかな」
「いいですね。それじゃあ」
 カトルもシンジににこやかに返す。
「トロワもフルートを」
「わかった」
 トロワもその提案に頷く。
「それではだ」
「僕もピアノを」
 ニコルもだった。
「演奏しますか、後で」
「じゃあ俺もな」
 ディアッカまでだった。
「得意の日舞を見せてやるぜ」
「おい、どうなってんだよ」
「おかしい、これは」
 シンとカガリも驚きを隠せない。
「皆戦闘中だぞ」
「何を言っているんだ」
「そうよ、ちょっと待ちなさいよ」
「戦わないと駄目よ」
 アスカもレイも言う。
「そんなの財団の連中をやっつけてから」
「しないと」
 しかしだった。他の面々はだった。
「じゃあ眠くなったし」
「そうだよな。もう」
「休むか」
「そうしようか」
「何を言っているんだ皆!」
 凱が必死に皆に叫ぶ。
「今は戦闘中なんだぞ!」
「あっ、そうだよな」
「あれっ、俺達一体」
「どうしちゃったの?」
「間違いない」
 万丈が呟く。
「この症状はやはり」
「とにかく今はだ!」
 ドモンが叫ぶ。ガンダムファイターの面々は健在であった。
「一気に退ける。いいな!」
「おう、やってやるぜ!」
 獣戦機隊も無事だった。
「まとめて一気にだ」
「皆行くぞ!」
 宙が皆を引っ張る。
「そうして勝つぞ!」
「あ、ああ」
「わかった」
「それじゃあ」
 こうしてだった。戦い何とかだ。財団の軍は退けたのだった。
 彼等は戦力の八割を失い撤退した。それを見てだった。
「ふう、やっと片付いたよ」
「そうね」
 カーシャがデクの言葉に頷く。
「やあね、戦いって」
「全くだ」
 コスモが彼女の言葉に応える。
「だがこれで終わりだな」
「待て、どうしたのだ」
 ギジェは怪訝な顔で仲間達に問うた。
「これは一体」
「じゃあ帰ったらね」
 しかし周りは違った。ミサトもにこやかに言う。
「パーティーよ」
「よし!アイスクリームだ!」
 光がミサトの今の言葉に飛び跳ねる。
「食べるぞ!」
「お、おい!」
「おかしいもんね」
 ゴルディマーグとマイクがそんな皆を止めようとする。
「どうしちまったんだよ、皆」
「さっきからやる気全然ないみたいもんね」
「凱、これは」
「わからん」
 凱もだ。ルネにこう返すしかなかった。
「何が起きているんだ、これは」
「凱、聞こえるかい?」
 万丈がここで通信を入れてきた。
「無事かい?」
「万丈、そっちは」
「悪いけれどそうでもなさそうだ」
 彼もであった。
「どういった手段かわからないけれど」
「どうなっているんだ、これは」
「この星に来てからだな」
 万丈は怪訝な顔で凱に話す。
「僕達の闘志や気力が失われつつある」
「何だって!?」
 ルネがそれを聞いて言った。
「それで皆」
「そうみたいだね。どうやらまともに動けるのは」
 万丈は周りを見回す。そのうえでまた言う。
「僅かなメンバーだけみたいだ」
「万丈!」
「大丈夫かい!?」
「済まない」
 こう言ってだった。彼も崩れ落ちようとする。
「僕もこの眠気に」
「お、おい!」
「あんたまで寝たら!」
「後は・・・・・・頼む・・・・・・」
 万丈も崩れ落ちた。そうしてだった。
 残った二人はだ。とりあえずどうするかを話すのだった。
「どうする、凱」
「幸いGGG宇宙センターは見つかった」
 今だ。パピヨンから報告があがったのだ。
「そこに皆を運ぼう。話はそれからだ」
「ああ、わかったよ」
 とりあえず彼等は仲間達を宇宙センターに運んだ。その時だった。
 宇宙ではだ。戒道がいた。そうしてそのレプリカの地球を見て言うのだった。
「そうか。あれは地球なんかじゃない、あれは」
 その彼のところにだ。謎の光が来たのだった。
「!?御前は!」
 そこにはだ。もう一人の彼がいた。それは。
「アベル、御前が」
「アルマ、ここに来たのですね」
「御前達を倒す為に来たんだ」
 こうアベルに返すのだった。
「けれど」
「けれどとは?」
「有り得ないと思っていた」
 ここではこう言う彼だった。
「遊星主が全員揃うなんてことは」
「そう思っていたのですね」
「だけど御前が存在している」
 そのアベルを見ての言葉だった。
「それならだ!」
「話はそれだけですか」
「何っ!?」
 いきなりだった。接近されて。
 戒道はそのみぞおちを打たれた。それによてだった。
「ぐっ・・・・・・」
「さあアルマ」
 アベルは気を失おうとする彼に囁いた。
「一緒に来てもらいますよ」
「J・・・・・・ラティオ・・・・・・」
 ここでも何かが起ころうとしていた。そしてセンターではだ。
 大河達が話をしていた。火麻がその大河に対して問う。
「なあ」
「どうしたんだい?」
 明らかにいつもの大河の口調ではなかった。
「この地球のことかい?」
「そうだ。どう思う」
「うむ」
 大河は問いに応えて話しはじめた。その言葉は。
「科学に支配されない自然の姿といったところかな」
「御前もそう思うんだな」
「ああ、穏やかだ」
「そうだな」
 火麻もだ。いつもの熱さはなかった。
 穏やかな調子でだ。こう言うのだった。
「すっげえ敵と戦うことになると思ってたんだがな」
「ところがだね」
「ああ、拍子抜けしたな」
 こう言うのであった。
「どうもな」
「それでだけれど」
 雷牙も来て話す。
「さっき猿頭寺君から報告があったけれど」
「うむ」
「どんな報告だ?」
「宇宙収縮現象が僕ちゃん達の太陽系に影響を及ぼすには」
 どうだというのだった。
「まだ時間があるようだね」
「そうか。それではだ」
「急ぐ必要はないな」
 こう言う二人だった。
「では今は」
「休息だな」
「そうするか」
「ああ、それがいいな」
 どう見ても普通の彼等ではなかった。そしてだ。
 スタリオンもだ。電話が鳴ったのを受けて話を聞いてだ。こう言うのだった。
「ロンド=ベルが帰還しました」
「それなら」
 スワンも何故か顔がほっとして赤い。
「皆でお出迎えしまショウ」
「さて、休暇だ」
 大河はまた言った。そしてだった。
 戻ってきた勇者ロボの面々はだ。驚くしかなかった。
「ワッツ!?」
「だからだよ」
 牛山がマイクの問いに答えていた。
「フルメンテをするんだよ」
「今から!?」
「そんな馬鹿な」
 風龍と雷龍が言う。
「財団はまだいるかも知れない」
「それなのに今それとは」
「わかりません!」
「どういうことなんだ!?」
 氷竜と炎竜もだった。
「今ここでそれをすれば」
「僕達は戦えない」
「君達のAIは一時シャットダウンするよ」
 だが牛山はまだ言うのだった。
「だからね」
「ですからそれは」
「待ってよ!」
 闇竜と光竜は牛山を必死に止めようとする。
「ですから今それは」
「無茶苦茶よ!」
「だから今のところここは平和じゃないか」
 牛山の言葉もだ。妙に呑気なものだった。
「だからいざという時までパワーを温存しておくんだよ」
「あの、それは」
 ボルフォッグは何とか冷静さを保っていた。彼でようやくだ。
「GGGの決定ですか!?」
「その通りだ」
 大河は彼等の前にも来た。
「我々は今こそだ」
「今こそ!?」
「何だと」
「反省すべき時なのだ」
 これが彼の今の言葉だった。
「この先ソール十一遊星主が出たとしても」
「どうするってんだ!?」
 ゴルディマーグが問うた。
「一体」
「平和的解決に臨むのが理想的である」
「えっ!?」
「嘘だ!」
「そんなことができる筈がない」
「そうです、それは」
 炎竜達四人がすぐに言った。驚きの声でだ。
「あのソール十一遊星主達がです」
「話し合いなぞに応じるとは思えません」
「平和的解決なぞ」
「とても」
「出来る訳ないもんね!」
 それをマイクも言う。
「あの連中、平和なんて考えてないもんね!」
「その通りよ!」
「平和を考えない者もいます!」
 光竜と闇竜もだった。
「その様なことを望まれても」
「相手は決して」
「おい、長官どうしたんだよ!」
 ゴルディマーグは大河自身に対して叫ぶ。
「そんな訳わからないこと言ってよ!」
「皆さん、どう思われますか!?」
 ボルフォッグは大河以外の者に問うた。
「長官の今のお言葉だ」
「長官、同感です」
 しかしだった。ブライトが最初に言った。
「やはりここはです」
「そうですね」
 マリューもだった。
「私は今までやってきたことを思い出すと」
「全くです」
 ユウナも続く。
「どうしてもですね」
「後悔で胸が一杯になります」
「けれどそれもね」
「ええ、終わりよ」
 ミサトとリツコは場違いなまでに温厚な笑顔であった。
「これからはね」
「ラブアンドピースよ」
「!?これは」
 しかしだった。ここでアズラエルが呟いた。
「皆さんどうも様子が」
「おかしいな」
 アランが彼の言葉に頷く。
「これは最悪の事態を考えてだ」
「はい、動くとしましょう」
 二人は今は一歩退いた。そのうえで身を隠すのだった。
 しかし騒動は続く。大河はこうも言うのであった。
「戦いはよくない」
「ですから今は!」
「そんなことを言っている場合では!」
「よって武力は封印する」
 大河は最早聞く耳を持っていなかった。そしてだった。
 彼は遂に言ってしまった。
「作戦名は」
 それは。
「平和が一番だ」
「お、おい!」
「待って下さい!」
「どうしたんですか皆さん!」
「この状況は!」
「どう考えてもおかしいもんね!」
 勇者ロボ達は必死に言おうとする。しかしだった。
 雷牙もだ。にこやかに言うばかりであった。
「もう決まっちゃったことなんだよ」
「それでは牛山君」
「はい」
 牛山は大河の言葉に頷いた。
「シャットダウンだ」
「わかりました」
 こうしてだった。勇者ロボ達は動きを止めたのだった。止められてしまったのだ。
 そして凱もだ。命にだ。唖然となっていた。
「だからどういうことだ!」
「どういうことって?」
「命、一体何を言っているんだ」
 こう命に言っていた。
「今は本当に」
「だから、もう戦う必要なんてないのよ」
 彼女も呑気な調子でこう言うのであった。
「もうね」
「馬鹿な、それは」
「ねえ凱」
 凱の話を聞かずにだ。勝手に言ってきたのだった。
「この服似合う?」
「何時またバッフ=クランやソール十一遊星主が来るかわからないんだぞ!」
 彼はあくまで戦いのことを主張する。
「それで何故」
「大丈夫よ」
 しかし命は変わらないのだった。
「凱は心配性なんだから。うふふ」
「命・・・・・・」
 しかしここでだった。光った。
 その光を受けてだ。凱は言った。
「間違いない、これは」
 何か。彼はすぐにわかったのだった。
「Gストーンの輝き」
 まさにそれであった。
「俺を呼んでいる?」
「ねえ凱」
 命は相変わらずだった。その中でもだ。
「今日は思いっきりね」
「どうだっていうんだ」
「美味しい手料理作ってあげるからね」
「あの輝きすらわからないのか、今は」
 凱はそのことに絶望しそうになる。しかしだった。
 心を振り絞ってだ。命に告げた。
「命」
「何なの?」
「俺は御前にだけはわかって欲しいんだ」
 切実な顔での言葉だった。
「それだけは言っておく」
「わかってるわよ」 
 こう言ってもだった。次の言葉は。
「蒟蒻は嫌いなのよね」
「そうだ。しかし今は」
「凱が好きなものをいーーっぱい食べさせてあげるからね」
「行って来るよ、命」
 別れを告げてだ。彼は戦場に向かうのだった。一人だけの戦場にだ。
 そしてルネもだった。感じ取っていたのだった。
「何だこの」
 その感じ取ったものは。
「Gストーンが疼く様な感じは」
 彼女もだ。凱と同じものを感じ取っていたのだ。
 そしてその彼女の傍で爆発が起こった。そのうえで。
「久し振りね」
「何っ、貴様は」
「そうよ。青の星の子猫ちゃん」
 あの女がだ。出て来たのだった。
「ソール十一遊星主か!」
「私の名前はピルナス」
 自分から名乗ってきたのだった。
「美しさと快楽の女神」
「随分と立派な司るものだね」
「そうね。それじゃあ」
 ピルナスはだ。余裕の笑み共にこう言ってきた。
「調教開始よ!」
「そうはいくか!」
 その言葉を受けてだ。ルネは
「イークイップ!」
 戦う姿になろうとする。そしてだった。
 その姿になりだ。ピルナスと対峙するのだった。
「勝負だ、ソール十一遊星主!」
 こう叫んで攻撃を仕掛けようとする。しかしだった。
 ピルナスの手に持っている鞭が動いた。まるで蛇の様に。
 そのうえでルネを打ってだ。悠然として言うのであった。
「いい格好ね」
「くっ、身体が」
「そうよ。もう貴女は自分では」
 どうかというのであった。
「指一本動かすことはできないわ」
「何っ、まさかその鞭に」
「そうよ。そして」
 その言葉をだ。続けてであった。
「調教をはじめましょう」
「くっ!」
「苦痛と快楽は紙一重」
 その鞭を手にして。妖艶な笑みを浮かべていた。そのうえでルネを見てであった。
「それじゃあね」
「一体何が目的だ」
 ルネは動けないが心は折れていなこあった。それでこう問い返すのだった。
「御前達は一体」
「うふふふふ、それはね」
「それは!?」
「貴女をね」
「あたしをかい」
「悪い子にしてあげちゃうことよ」
 ルネもまた危機に陥っていた。状況は所々で悪化していた。
 凱は宇宙センターのオペレーションルームに来ていた。様々な装置やコンピューターがあるその部屋の中でだ。パピヨンの話を聞いていた。
「それならだ」
「そうです」
「何かが起きていることは間違いないんだな」
「はい、ですか」
「ですが!?」
「私のセンシング=マインドをもってしても」
 それでもだと。パピヨンは凱に話すのだった。
「それが何なのか」
「わからないのか」
「まだ」
 そうだというのだった。
 しかしだった。ここでパピヨンはこうも言った。
「ですが」
「ですが!?」
「感じます」
 こう言うのであった。
「貴方が信じてきたものを信じられなくなった時に」
「その時に」
「はじまるのです」
 こう凱にだ。話すのである。
「貴方自身の戦いが」
「俺自身の戦いが!?」
「ええ、忘れてはいけません」
 凱にこうも告げる。
「貴方が信じる」
「俺が信じる」
「勇気ある誓いを」
「・・・・・・わかった」
 凱はパピヨンの今の言葉に静かに頷いた。そのうえでだった。
 彼女にだ。あらためて告げた。
「それじゃあ俺は」
「はい、急いで下さい」
 パピヨンの顔も切実なものだった。
「嫌な予感がします」
「行って来る」
 凱はそのまま宇宙ステーションを出てだ。そのうえで宇宙に出た。そうしてだ。彼の運命の決戦に向かうのだった。その宇宙に出たのであった。


第八十三話   完


                                        2010・12・19  

 

第八十四話 勇者王、最期の刻!

               第八十四話 勇者王、最期の刻!
 宇宙に出るとだ。彼等がもういた。
「来たな、ガオファイガー」
「待っていたぞ」
「御前達か」
 凱はその彼等に対して告げた。
「御前達がシール十一遊星主か!」
「如何にも」
 あの男がだ。凱に対して述べてきた。
「よく来た、獅子王凱」
「俺の名前も」
「あらためて挨拶しよう」
 こう言ってきたのだった。
「我が名はパルパレーパ」
「我が名はピサ=ソール」
 そして他の者達もだった。
「ペルクリオ」
「プラヌス」
「ポルタン」
「ペチュルオン」
「ピーヴァータ」
 それぞれ名乗っていく。
「そして僕」
「御前もか」
「そう、アベル」
 アベルもいた。そしてだった。
「僕もいる」
「赤い星の指導者も」
「そう。僕もここにいる」
「答えろ」
 凱はだ。その彼等に対して問うた。
「御前達の真の目的を!」
「目的か」
 パルパレーパが彼に応える。
「それか」
「一体何だ、それは」
「僕達の真の目的は」
 アベルが話してきた。
「三重連太陽系の復活」
「まさかそれが」
「そう、それだけです」
 こう凱に話すのだった。
「それ以外には特に」
「ではだ!」
 凱の言葉は荒いものになっていた。
「パスキューマシンで地球を複製した目的は何だ」
「単なる事故です」
「事故だと!?」
「はい、偶然です」
 それだというのである。
「ただそれだけなのです」
「ではだ」
 凱の問いはさらに続く。
「宇宙収縮現象との関係は何だ」
「それは」
 またアベルが答える。
「パスキューマシンは貴方達の太陽系に溢れる暗黒物質のみを回収し」
「暗黒物質を!?」
「はい、そして再生活動を行っているだけです」
 こう凱に話すのだった。
「それだけです」
「そういうことか」
「はい」
「暗黒物質は宇宙全体を支える」
 凱もだ。わかってきたのだった。
「言わば風船の中の空気か」
「簡単に例えればそうなります」
「失われれば当然」
「宇宙は収縮します」
 そしてだとだ。アベルはさらに話してきた。
「僕達の宇宙を再生する為には仕方のないことでしょう」
「俺達を犠牲にしてか」
「僕達にも生きる権利があります」
 これが彼等の主張だった。
「ですから」
「共存することは出来る筈だ!」
 凱の主張はこれだった。
「それは受け入れないのか!」
「機界昇華にも衰えずです」
 話はそこからはじまっていた。
「活動を続けてきたのです」
「だからだというのか」
「そうです」
 アベルは引く様子すら見せない。
「もう後へは退けません」
「それは何故だ」
「Zマスターの抗体」
 話はまた戻っていた。
「ラティオも同じことを言っていました」
「護もか」
「はい、そうです」
「それではだ!」
 凱は無二の戦友のことも問うた。
「護は何処だ!」
「ラティオですか」
「そうだ、一体何処にいる!」
「さてな」
 パルパレーパが答えてきた。
「それは言うつもりはない」
「貴様!」
「さて」
 アベルがまた話してきた。
「ここまで来てくれたのです」
「戦うか」
「そうです。貴方のお相手もしなければ」
 マシンが出て来た。それは。
 モビルスーツもあれば機械獣もいた。オーラバトラーもヘビーメタルもだ。あらゆるマシンが出て来たのだった。
 凱はそのマシン達を見てだ。こう言った。
「レプリジンか!」
「貴方の相手にしては多過ぎるかも知れませんが」
「俺は」
 凱はだ。その敵を前にして言った。
「何が正義なのか俺にはわからない」
「正義はですか」
「しかしだ」
 だがそれでもだというのだ。
「守るべきものの為に」
「その為に」
「そして信じてきたものの為に」
 こう言っていくのだった。
「そして」
「そして?」
「勇気ある誓いの為に!」
 これは忘れなかった。やはり彼は獅子王凱だった。
「俺は御前達と戦う!」
「よく言った、青の星の勇者よ」
 パルパレーパが彼の言葉をうけた。
「貴様の戦いぶりを見せてもらうぞ」
「行くぞ!」
 一機だがそれでも敵の大軍に向かう。そうしてだった。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
 拳を振るい放ち。膝を使いだった。そのレプリカンを全て倒すのだった。
 それを見てだ。アベルが言ってきた。
「中々やりますね」
「まだだ!」
 傷つきながらもだ。凱は負けてはいなかった。
「来い!」
「その心は見事です」
 アベルはそれは認めた。
「ですが」
「ですがか」
「はい、独りでは」
 どうかというのだった。
「そろそろ限界では?」
「くそっ・・・・・・」
「人はあまりにも弱過ぎる」
 またパルパレーパが言ってきた。
「独りでは何もできない」
「言うのか」
「力を合わせる協調性もない」
 その言葉が続く。
「悲しき生命体、御前達には生き残る資格さえない」
「俺達はだ」
 彼だけではないというのだ。
「地球を出てここまで来た」
「それがどうしたのだ」
「俺達は勇者だ!」
 まさにそれだというのである。
「戦うことを止めたらこれまでのことが無駄になる!」
「だからどうだというのだ」
「俺は戦う!」
 言葉が一人称になっていた。
「例えどうなってもだ!」
「それは違うわ」
 しかしだった。ここでだった。
 レイが来た。彼女のエヴァと共にだ。
「それは」
「レイ!」
「俺もだ!」
「来たぞ!」
 シンとカガリもだった。そして。
 ダンクーガに鋼鉄ジーグもいる。他には。
 ガンダムファイター達にバーチャロンもだ。彼等が来たのだ。
「俺達はな!」
「戦える!」
「来てくれたのか」
「はい、僕達は何とか」
 クサナギも来ている。だが乗っているのはアズラエルだけであった。
「来れましたがね」
「うおおお!やるぜ!」
「どんな敵も必殺!」
「死ね」
 この三人もであった。
「何かよくわからねえけれどな1」
「皆戦う気なくなったよ」
「おかしなことだ」
「むっ?」
 アベルがその彼等を見てパルパレーパに問う。
「あの連中にはパレッス粒子は効いていないのですか」
「どうやらな」
 パルパレーパも彼に答える。
「その様だ」
「そうですか。しかし今はですね」
「そうだ、相手は今は一人だけだ」
「ガオファイガー」
「奴だけを倒す」
「ではお任せします」
 アベルからパルパレーパに告げる。
「ここは」
「わかっている。それではだ」
「はい」
「ケミカルフュージョン!」
 こう叫んでだ。彼もまた姿を変えた。
 その彼の戦う姿になってからだ。こう凱に言ってきた。
「ではだ」
「御前もフュージョンができるのか」
「そうだ。では来い、青い星の勇者よ」
 こう凱に対して告げる。
「御前の無力さを教えてやろう」
「凱、負けるんじゃねえぞ!」
 宙がその凱に叫ぶ。
「ここはな!」
「ああ、わかっている」
 無論凱もそのつもりはなかった。だからこその言葉だった。
「それはな」
「頼んだぜ。他の奴は俺達がな」
「引き受けるからな」
 シンも言う。
「あんたはその歯医者にだけ専念してくれ」
「済まない」
「礼はいい!」
 それはカガリがいいとした。
「まずは勝ってからだ!」
「勝ってからか」
「その通りです」
 アズラエルは冷静に凱に話す。
「いいですか、ライオンロボ君」
「あ、ああ」
「僕達がここで勝たないと」
 どうなるかというのである。
「全ては終わりですね」
「ああ、確かに」
「ではです」
 ここまで言ってだった。アズラエルはクサナギを動かしてであった。
「行きましょう」
「ああ、それじゃあな」
 こうしてだった。残されたメンバーだけで向かうのだった。
 戦いがはじまった。その中でだ。
 凱とパルパレーパが対峙する。そして。
「青き星の勇者よ」
「来い!」
「貴様の命運もここまでだ!」
「黙れ!」
 凱は負けてはいなかった。傷ついていてもだ。
「御前を倒してだ」
「どうするというのだ」
「皆を、そして命を救ってみせる!」
 全身に覇気を込めての言葉だった。
「そうしてだ!」
「それならばだ」
 パルパレーパもそれを受けて言う。
「貴様に物質世界の掟を教えてやる」
「掟だと」
「そうだ、このゴッドアンドデビルで」
 構えに入った。まるでヘルアンドヘブンであった。
「この技でだ」
「ならばこっちも!」
 凱もであった。ヘルアンドヘブンの構えに入ったのだった。
 そのうえでだ。パルパレーパに対して言う。
「ガオファイガー最大の技で受けて立つ!」
「行くぞゴッドアンドデビル!」
「ヘルアンドヘブン!」
 両者がぶつかり合う。戦場に凄まじい衝撃が走った。
 そしてだ。双方爆発しながら大きく後退した。その衝撃により。
「ぬおおおおおおおおおっ!」
「ぐうううっ!」
「力は互角」
 アベルが両者のその激突を見て言う。
「まさに」
「負けるな凱!」
 宙が凱荷対して叫ぶ。
「後一歩で御前の勝ちだ!」
「ああ、わかった!」
 凱もだ。宙のその言葉を受けた。
 それでだ。再び突き進もうとする。しかしそこで、であった。
 両者の間にだ。緑の光球が現れた。オルガがそれを見て言う。
「おい、あれは」
「護かな?」
「似ている」
 クロトとシャニも言う。彼等はシンやカガリと共に先陣を切って暴れている。
「だとしたら凱の助っ人か?」
「レプリカの可能性もあるけれど」
「何だ、一体」
「いえ、あれは」
 しかしだ。レインがその光球をよく見て言った。
「もっと大人よ」
「あれは」
 そしてだ。凱もその光球を見て言う。
「護じゃない!」
「・・・・・・・・・」
「カイン!」
「今だ!」
 驚いたその時に隙ができた。そしてだ。
 パルパレーパはその隙を見逃さなかった。それでだ。
 一気にだ。ゴッドアンドデビルを繰り出し。それでだった。
「ぐわっ!」
「お互いを否定しなければだ」
 ガオファイガーを吹き飛ばしたうえでの言葉だった。
「存在し得ない」
「そうだというのか」
「勝者は神となり敗者は悪となる」
 意識を失おうとする凱への言葉だった。
「それが物質世界の掟だ」
「くっ・・・・・・」
 ガオファイガーはそのまま崩れ落ちた。それこそがだ。
「お、おい!」
「ガオファイガーが負けたって!?」
 ヂボデーとサイシーも思わず絶叫した。
「こんなことってよ」
「まさか・・・・・・そんな・・・・・・」
 他の面々も唖然となる。しあkしだ。
 アベルは冷静なままだ。パルパレーパに対して告げるのだった。
「これで目的は達しました」
「ガオファイガーは倒した」
「はい、では引き上げましょう」
「わかった。それではな」
 彼等は帰る。しかしだ。
 残された面々はだ。慌ててそのガオファイガーに集まる。
「だ、大丈夫か!?」
「生きているか!?」
「どうなの!?」
 とにかく凱の生死が気懸かりだった。そしてだ。
 その彼等のところに今度はだ。通信が入ってきたのであった。
「聞こえますか」
「あんたは」
「パピヨンさんか」
「はい」
 彼女だった。彼女が残された彼等に通信を入れてきたのである。
「ガオファイガー、凱さんは」
「負けた」
「生きているかどうかさえ」
「それも」
「そうですか。けれど今は」
 パピヨンは辛い顔になった。しかしそれでも彼等に告げるのだった。
「今はそれよりもです」
「ああ、一体」
「どうするんだ?」
「それで」
「まずはガオファイガーと凱さんを御願いします」
 回収するということだ。それは忘れていなかった。
「そして皆さんを治療しましょう」
「これどうなってんだ?」
 バサラがパピヨンに問うた。彼も戦場にいたのだ。
「皆急にやる気をなくしたんだけれどな」
「残ったのはサイボーグの俺やバーチャロン達に」
「そうだな、俺とレイちゃんもだな」
 宙とハッターも話す。
「無闇に血の気の多い面々ばかりだ」
「あと変態のアズラエルさんだけだな」
「変態だけ余計です」
 アズラエルはすぐにハッターに抗議した。
「とにかく僕も無事ですがね」
「動ける方はすぐにポイント一一一五ね」
 パピヨンは彼等にまた告げた。
「来て下さい」
「わかった。それじゃあな」
「今から」
「急いで下さい」
 パピヨンの言葉は切実だった。
「凱さんが倒れた今」
「そうだよな」
「もうな」
「こうなったら」
「残された時間はあと僅かしかありません」
 こうしてだった。彼等は宇宙センターに戻った。そうしてなのだった。
 中に入ると大河達はだ。さらにだらけていた。
「よう、宙君」
「まあ御前もゆっくり休めや」
「あの火麻参謀までがかよ」
 宙はだらけきった顔の彼等に唖然となってしまった。
「どうなってんだよ、本当に」
「まあまあ、ここは休んで」
 雷牙も同じであった。
「ゆっくりとね」
「博士までとは」
 アズラエルも眉を顰めさせている。
「どうなってるんでしょうか」
「これはパレッス粒子の影響です」
 パピヨンがここで話した。
「それによってです」
「パレッス粒子!?」
「っていうと?」
「それは一体」
「何なのよ」
「神経細胞を極度にリラックスさせるケミカル物質です」
 それだというのである。
「この星全体にそれが充満しています」
「それでか」
「皆こうして」
「腑抜けになって」
「それで」
 残された面々はだ。これでわかったのだった。
「それでこんなことにか」
「何てこった、これじゃあ」
「戦えないじゃないか」
「ソール十一遊星主、おそらくは」
 パピヨンは話を続ける。
「彼等の中にケミカル攻撃を得意とする者がいたのでしょう」
「あいつか」
 ドモンの目がここで光った。
「あの凱を倒した」
「そうですね。間違いありませんね」
「奴だ」
 ジョルジュとアルゴも言った。
「パルパレーパといいましたね」
「あの男の仕業だな」
「私は学生の頃幻覚性物質の実験によりです」
 パピヨンは今度は自分のことを話した。
「センシングマインドを身につけました:
「じゃあそれによって」
「あんたは無事か」
「そうなんだ」
「はい、その為特殊化した神経ネットワークはパレッス粒子の影響を受けずに済んだようです」
 こう話すのだった。
「しかし」
「他の奴等はか」
「それを受けて」
「それで」
「はい。そしてです」
 パピヨンはさらに話していく。
「粒子の影響を受けない勇者ロボ達は隊員達によってその機能を封印されました」
「残ったのは俺達だけか」
「どうするんだよ、これじゃあ」
「俺達だけで何とかするか」
「こうなったら」
「救いはです」
 パピヨンはここでシンたガンダムファイター達を見て言った。
「極端に好戦的な人や特異体質の人は無事でした」
「それが僕という訳ですね」
 ここでまた出て来るアズラエルだった。
「成程、そういうことですか」
「っていうかあんたどういう体質なんだ?」
 宙は真顔でそのアズラエルに問うた。
「そもそも」
「さて、自分でもわかりませんが」
「特異体質かよ」
「そうですねえ。前から生命力には自信がありましたが」
「それでよくコーディネイターのこととやかく言えたな」
 シンも唖然となっている。
「あんたも大概じゃないか」
「自覚はありませんでしたが」
「BF団にも入団できただろう」
 カガリはここまで言う。
「そこまでの体質だと」
「かくいう貴女もそこまで闘争心が高いということなのですが」
 キラは闘志をなくしているがカガリは健在だった。それを見ればだ。
「どうなのでしょうか、それは」
「そ、それはそうだが」
 否定できなかった。本人もだ。
「後いたのは」
「私だ」
 サンドマンであった。レイヴンも一緒だ。
「私は大丈夫だ」
「だからグラヴィゴラスは動ける」
「エイジもか」
「ああ、何とかな」
 激しい気性の彼も大丈夫だった。
「それと斗牙も何とかだったけれどな」
「僕の場合は性格的にかな。そういうのが効果がなかったみたいなんだ」
「それでか」
 シンは二人の言葉を聞いてそれで納得した。そしてだ。
 あらためてサンドマンとレイヴンを見てこんなことを言った。
「あとこの人達は」
「私に下手な粒子は効果がない」
「私もだ」
「つまりあれか」
 ここからがシンの真骨頂だった。
「アズラエルさんと同じ変態なんだな」
「待て、何故そうなる」
 レイヴンはすぐに突っ込みを入れる。
「私達が変態だというのか」
「その仮面を見たらな」 
 そうだというのがエイジの主張だった。
「ちょっとそうとしかな」
「だからこれはだ」
「まあ無事で何よりだよ」
 シンはこのことは素直に喜んでいた。
「今は本当に一人でもそうした人が欲しいからな」
「そういうことだな」
 ロジャーもいた。勿論ドロシーもだ。
「私も性格的に粒子は大丈夫だった」
「元々の性格がとても冷静だと」
 ドロシーの言葉だ。
「効果がないみたい」
「だからレイもか」
 カガリもここでどうしてレイが大丈夫なのかわかった。
「こうして無事なのか」
「私。動じることないから」
 実際にこう話すレイだった。
「それは多分」
「私もです」
 ルリも出て来た。ナデシコも何とか動いていたのだ。
「極端に冷静か極端に好戦的ですと」
「あれって効果がない」
「つまりは」
「そうだと思います」
 これはルリの予想だった。
「ですから。ここにいる方々は」
「俺にしてもそうだな」
「私もだな」
 シンもカガリも自覚はあった。
「ドモンさん達にしても」
「闘争心の塊だからな」
「後は俺達だな」
 テムジンが言う。バーチャロン達は全員無事である。
「機械にはか」
「私も」
 そしてドロシーだった。
「機械にはあの粒子は効果がない」
「それで俺もか」
 宙は普段と全く変わらない。
「因果か。これは」
「俺は何でなんだ?」
 バサラはここでルリに問うた。
「戦いは好きじゃないんだがな」
「バサラさんはその熱さのせいではないかと」
「熱さか」
「はい。バサラさんは特別な方です」
 まさにそうだというのである。
「そう。エリカさんを想う一矢さんのその熱さに匹敵するまでの」
「それでか」
「一矢さんは眠っておられますが」
 彼と万丈はだ。そうなってしまっているのだ。
「ですが貴方は大丈夫だったのですね」
「まあな。それじゃあどうするかだな」
「はい。それでバサラさん」
 ルリはここでバサラに対してこう言った。
「私が見たところですが」
「ああ。何だ?」
「その熱さに答えがあると思います」
 ルリはバサラを見ながら話す。
「ですからここはです」
「何だ?歌えってのか?」
「はい」 
 まさにだ。その通りだというのである。
「貴方が影響を受けない。その理由がその熱さにあるとすれば」
「俺が歌ってそうして」
「全てがわかる筈です」
「わかった。それじゃあな」
 バサラは断ることはしなかった。快諾であった。
 それでだ。そのギターを手に取ってそのうえで。
 歌いはじめる。それを聴いてだ。パピヨンが冷静な面持ちで話すのだった。
「皆さん」
「ああ、この歌をどうするんだ?」
 宙がパピヨンに対して問う。
「sろえで」
「私はここで彼の歌を分析します」
 具体的にはそうするというのである。
「そう簡単にはあの粒子を分解するのは不可能でしょう」
「そうでしょうね」
 それはルリも見ていることだった。
「あのパルパレーパという男、尋常ではないでしょう」
「ですがバサラさんの発する何かをです」
 それをだというのだ。
「分析すればそこからです」
「御願いします。では私達は」
「この施設の防衛を御願いします」
 こうルリ達に言うのであった。
「敵が来た場合は」
「任せてもらおう」 
 サンドマンが応えた。
「それは引き受ける」
「そしてだが」
 レイヴンはここでだ。彼女のことを思い出した。
「ルネがどうなったのだ」
「そういえばそうだな」
 ここで宙も気付いた。
「俺や凱が動けるってことはあいつも大丈夫の筈だ」
「そうね。私もだから」
 ドロシーもここで言う。
「それで彼女は」
「ルネもまた戦闘中です」
 パピヨンが答える。
「ソール十一遊星主を追っています」
「そうか。あいつもか」
「はい。彼女もまた」
 そうだとだ。宙に話すのだった。
「そうしています」
「わかった。じゃあ俺達もな」
「そしてです」
 パピヨンは宙達にさらに話した。
「Gストーンの導きに従い戦っている人は」
「まだいるのか?」
「はい、もう一人」
「一体それは誰でしょうか」
 アズラエルが少し考える顔になって問うた。
「僕達の他にといいますと」
「勇者王は敗れ」
「残念なことです」
 アズラエルは今それを心から無念に思っていた。
「彼の敗北は何よりもです」
「そして戒道幾己君も行方が知れません」
 彼もであった。
「ですが希望はまだあります」
「希望!?」
「それは一体」
「はい、それは」
 言おうとした。しかしここでだった。突如として警報が鳴った。
「何だ!?」
「この警報は」
「敵!?」
「衛星軌道上に敵艦多数です」 
 パピヨンがレーダーを見てすぐに言う。
「所属は不明です」
「不明!?」
「バッフ=クランじゃなくて!?」
「複数の勢力と思われます」
「いや、待て」
 ふとだ。レイヴンがあることに気付いて言った。
「この宙域は時空が歪み容易には近付けなかった筈だ」
「はい、それはその通りです」
「では何故だ」
 レイヴンはこのことを問うた。
「ここまで容易に複数の勢力が来たのだ」
「おい、パピヨンさん」
 宙も彼女に問うた。
「あんたのセンシング=マインドとやらでわからないのかよ」
「詳しいことは何も」
 パピヨンは申し訳なさそうに答える。
「ですが」
「ですが?」
「この戦い」
 そのものについての言葉だった。
「何者かの意志」
「意志!?」
「意志っていうと」
「それもとてつもなく巨大な意志が働いているように思えるのです」
「まさかそれが」
「アポカリュプシス?」
「その」
 彼等は戦う前に考えるのだった。そうせざるを得なかった。
 そしてだ。命はだ。一人残ってだった。
「凱、貴方はもう」
 彼のことを考えていた。
「私はかつての戦いで機界新種によって無敵の生命体と化した」
 このことを悲しい顔で語るのだった。
「その時の浄解によって私もセミ=レヴォリュダーとして生まれ変わっていたの」
 今その事実を呟く。
「そのお陰で一度はパレッス粒子に侵食されたけれど」
 しかしなのだった。
「自己修復することはできたわ」
 そして。
「私は最後の希望を追いかけてみる。貴方の意志を受け継ぎたいから」
 そうして歩みはじめる。そこにだった。
 緑の光が来た。それは。
「!?まさか」
「やっぱり」
「護君・・・・・・」
 彼だった。光になり来たのだ。
「本物の護君ね」
「命姉ちゃん・・・・・・」
 護もまた彼女に応える。
「今まで何処にいたの!?皆心配したのよ」
「御免なさい・・・・・・」
 命の咎める声には項垂れるしかなかった。
「凱が、今は・・・・・・」
「凱兄ちゃんだけじゃない」
 護は項垂れたまま言う。
「戒道も」
「戒道君まで・・・・・・」
「命姉ちゃん、急ごう」
 それでもだ。彼は言った。
「もう僕達に残された時間は僅かしかないんだ」
「僅かって・・・・・・」
 今また戦いがはじまろうとしていた。決して終わりではなかった。最後の希望への戦いだった。


第八十四話   完


                                      2010・12・22   

 

第八十五話 ベスの選択

               第八十五話 ベスの選択
 黒髪のだ。流麗な顔立ちの男がそこにいた。
「それではここにだな」
「はい、そうです」
「ジュデッカ=ゴッツォ様」
 見ればだ。その男はジュデッカ=ゴッツォ達と全く同じ顔であった。
「ロンド=ベルがいます」
「そしてバッフ=クラン軍もです」
「双方がです」
「好機だ」
 ジュデッカ=ゴッツォはそうした報告を受けて述べた。
「今こそな」
「双方を倒すですね」
「その好機だと」
「そうだ。それではだ」
 彼はだ。あらためて命じてきた。その命令は。
「全軍戦闘用意」
「はい」
「わかりました」
「どちらも一気に叩く。いいな」
「わかりました、それでは」
「今より」
 こすいてだった。彼等はすぐに攻撃にかかった。そして。
 バッフ=クランの戦艦ドロワ=ザンがあった。その艦橋でだ。将校の一人がハルルに報告していた。
「ハルル様」
「どうなったか」
「はっ、できました」
 将校は敬礼してから彼女に述べた。
「時空の歪みを突破できました」
「そうか。それではだ」
「はい、あの星のです」
「いるのだな」
 こう言う彼女だった。
「ロゴ=ダウの異星人と巨神が」
「どちらもです」
 こう答える将校だった。
「先遣隊からの戦闘の報告が入っています」
「わかった」
 また答えるハルルだった。
「それではだ」
「僥倖だ」
(だが)
 ハルルは今心の中でも喋っていた。
「それはな」
(あの巨神のお陰でダラム=ズバと再会できた」
「一度は見失いながらも」
(巨神の力で)
 心の中での言葉は続いていく。
(ダラムは死んだ)
 このことがであった。
(私はダラムの死に顔を見られなかった)
 心の中で悔悟していた。
(再度の言葉を聞くこともできなかった。それが)
 実際に心の中で呟いた。
(悔いだ)
 だがそれは心の中に隠してだった。将校に話すのだった。
「こうして再び発見できたことはだ」
「僥倖ですね」
「その通りだ。この機はだ」
 どうかというのだった。
「逃すわけにはいかぬ」
「それではです」
 ハンニバルもいた。彼の言葉だ。
「ハルル様、ここは」
「攻撃だ」
 ハルルもまた命じた。
「わかったな」
「心得ました」
 すぐに応えるハンニバルであった。
「では全艦で以て」
「うむ」
「攻撃を仕掛けます」
「そうするのだ」
 こう決めたその時にであった。またハルルのところに報告が来た。
「ハルル様!敵です!」
「敵だと」
「はい、こちらに接近中の艦隊があります」
「となるとだ」
 ハルルはその報告を聞いて述べた。
「我々とほぼ同時にこの宙域に来たか」
「それで間違いないかと」
「バルマー帝国だな」
 ハルルはすぐに察しをつけた。
「そこだな」
「そこですか」
「そうだ。それではだ」
 ハンニバルに顔を向けて。それでだった。
「ハンニバル」
「はっ」
「御前は奴等を迎え撃て」
 バルマーにだというのだ。
「私も後で向かう」
「それでは」
 その複数の勢力が集まってだ。ここでも激しい戦いになろうとしていた。
 ルネは今は敵を追っていた。ソール十一遊星主をだ。
 そこで地球で言うパリに来た。そこは。
「モン=サンミッシェル」
 そこに来ていたのだ。
「聖なる城砦。ここで」
 携帯に似た機械を見ながらの言葉だった。
「あの女に取り付けていた発信機の反応が途絶えている」
 それで警戒していた。そこにだった。
 何者かがいた。それは。
「あんたは」
「女か」
「確かソルダートJだったね」
「如何にも」
 彼だった。まさにそのJだった。
「私はJだ」
「あんたも来ていたんだね、ここね」
「そうだ。そういう御前は」
 今度はJが問う番であった。実際に彼はルネに問うた。
「Gストーンのサイボーグだったな」
「ああ、そうさ」
 その通りだと返すルネだった。
「まずは願いがある」
「願い?」
「そこにあるキーをだ」
 見れば彼は動けないでいた。光に縛られていた。その彼が言ってきたのだ。
「Gストーンを使ってだ」
「どうしろっていうんだい?」
「私のこの戒めを解いてくれ」
 こう言うのであった。
「この忌々しい光の縄をな」
「ああ、わかったよ」
 ルネも断るつもりはなかった。それでだ・
 緑の光をキーにかける。それで光が消えてだ。
 Jは自由になった。そのうえでルネに言ってきた。
「礼を言う」
「礼なんていいよ」
「そうなのか」
「ああ、それはね」
 いいという彼女だった。
「気にしないでいいよ」
「そうか。それではだ」
「今度は何だい?」
「青の星の者だったな」
「ああ、そうだよ」
 その通りだというルネだった。
「あたしの名前はね」
「何というのだ?」
「ルネ」
 まずはこう名乗った。
「ルネ=カーディフ=獅子王」
「獅子王だと」
「ああ。覚えておきな」
「そうか。わかった」
「今度はあたしが尋ねるよ」
 ルネは強い声でJに告げた。
「いいね」
「うむ。何をだ」
「ソール十一遊星主は何処だい?」
 問うのはこのことだった。
「一体何処なんだい?」
「知ってどうする」
 まずはこう返すJだった。
「そのことを」
「知ってかい」
「そうだ。奴等は不完全なプログラム」
 Jはルネに対して話す。
「それを止めるのはだ」
「あんただっていうんだね」
「如何にも」
 そうだというのである。
「アベルの戦士である私の役目だ」
「止める?」
「そうだ」
 また答えるJだった。
「どうやってだい?」
「それは」
 言おうとした。しかしだった。
 突如爆発が起こった。それを見てだ。
 ルネはすぐに動いた。変身したのだ。
「イークイップ!」
 そのうえで戦闘態勢に入る。その彼女の前に出て来たのは。
「ソール十一遊星主!」
「うっふふふふふふふ」
 ピルナスだった。妖しい笑みと共にまた出て来たのだ。
 彼女はその妖しい笑みと共にだ。こうルネに言ってきた。
「嬉しいわあ、子猫ちゃん」
「嬉しいだって?」
「そうよ。わざわざ会いに来てくれるなんだ」
「会いたくはなかったがね」
「けれど来てくれたわね」
 それを言うピルナスだった。
「それならよ」
「それなら?」
「もっともっと悪い子にして欲しいのね」
 こうルネに告げるのだった。
「仕様のない子ね」
「ふん、あたしをね」
「子猫ちゃんを?」
 ルネの強い言葉にも余裕で返すピルナスだった。
「あの時倒せなかったのを地獄で後悔しな」
「地獄?」
「そう、地獄だよ」 
 それだとだ。剣を構えながらピルナスに告げる。
「今から送ってやるよ。覚悟しな」
「それでなのね」
 そう言われてもピルナスの余裕は変わらない。
「子猫ちゃんの隣に死神がいるのね」
「死神?」
「よけろ!」
 ここでJが叫んだ。本能的にだ。
 ルネは後ろに飛び退いた。彼女が今までいた場所に鎌が一閃された。
 そしてだ。そこにだ。不気味なフードの者がいたのだった。
「何時の間に!」
「そいつの相手はだ」
 ここでJが出て来た。
「私だ」
「あんたがかい」
「そうだ。ラディアントリッパー!」
 こう言って戦う姿になってだった。その死神に向かうのであった。
 ルネとピルナスも戦闘に入る。その中でだった。ピルナスがこう言ってきた。
「やるじゃないの、子猫ちゃん」
「同じ相手に!」
 剣を繰り出しながらの言葉だった。
「何度もやられてたまるか!」
「いい心掛けよ。けれど」
「何だってんだい!」
「これでお別れね」
 ここでこう言ってきたのである。
「折角のラブコールだけれどね」
「ラブコール!?」
「そうよ。だけれど」
 それでもだというのだ。
「遊んでる時間はもうないみたい」
「どういうことだい?それは」
 その言葉にいぶかしんでいるとだった。
「それはね」
「!!」
 ここでだった。二人の動きが止まった。
 動かそうとしてもだ。どうしてもであった。
「これは」
「動けない・・・・・・!」
「やはり貴方は不良品の様ですね」
 今度はだ。アベルが出て来て言うのだった。
「J0002」
「それはどうかな」
 しかしだった。Jは動けないがそれでもだった。そのアベルに対して言うのだった。
「不良品は貴様だ」
「僕だと」
「そうだ、ソール十一遊星主」
 まずはこう呼んでだった。
「アベルよ」
「アベル!?」
 ルネがその言葉に反応を見せた。
「それがこいつの」
「そうだ。所詮はコピーだ」
 それに過ぎないとも話すJだった。
「我が友のな」
「そうか、そうなんだね」
「僕が不良品かどうかは」
 アベルはそう言われてもだ。まだ冷静であった。 
 機械そのものと言ってもいい。その口調でまた言うのだった。
「貴方達もです」
「どうするというのだ」
「アルマの様にしてあげましょう」
「何っ!?」
 アルマと聞いてだ。Jの声の色が変わった。
「アルマに何をした」
「すぐにわかります」
 アベルが二人に迫ろうとする。だがここでまた、だった。
 アベルをだ。緑の光が撃った。
「くっ!?」
「誰だっ!?」
「一体!?」
 ピルナス達がその光を見て声をあげる。するとだ。
「ルネ、助けに来たわ!」
「命っ!?」
「私だけじゃないから!」
 そしてだ。彼も来たのだった。
「はあーーーーーっ!」
 護も来た。彼は既に翼を生やしている。
 そして緑の光をだ。ピルナス達に向かって放つのだった。
「くっ!」
「まだこんな隠し球があったんですね」
 ピルナス達はその光をかわしながら言った。
 そして護はだ。ルネとJにもその光をあてた。するとだ。
「動けるね」
「緑の光の力か」
「うん、これ大丈夫だよね」
 二人はこれで助かった。それを見てだった。ピルナス達はそれぞれ言うのであった。
「これはまた」
「やりますね」
 そしてだった。彼等は姿を消すのであった。
「じゃあ今は」
「これで」
「待て!」
 ルネは去ろうとする彼等を追おうとする。
「逃がさないよ!」
「待って!」
 しかしだった。その彼女を命が呼び止める。
「今は脱出が先よ!」
「それがなんだね」
「ええ、だから」
「Jも急いで!」
 護は彼にも声をかける。
「準備はできてるよ!」
「あれか」
「うん、Jジュエルを持つ者をね」
 そのJを見ながらの言葉だった。
「待ってるよ」
「あの場所でか」
「そう。地下深く隠された白き箱舟がね」
「ジェイアーク!」
 そしてだった。彼等はそこを脱出してだ。
 その舟に乗った。それは。
「ジュエルジェネレーター正常稼働中」
 トモロもいた。
「それではです」
「これがジェイアークかい」
「そうだ」
 Jは共にいるルネに対して答える。
「この箱舟こそがだ」
「敵にやられちまったって聞いたけど」
「この舟が沈めば」
 どうなるか。Jは話すのだった。
「私も生きてはいない」
「だからなんだね」
「そういうことだ」
「僕もね」
 ここでだ。護も言うのだった。
「一緒に敵のES兵器ここに転送されただけなんだ」
「ここにだね」
「うん、この三重連太陽系にね」
 まさにここであった。
「それだけだったんだ」
「どうやら本物みたいだね」
 ルネもここでわかったのだった。
「安心したよ」
「僕の偽物まで」
「今はそのことはいいわ」
 命は落ち込もうとする護を庇った。
「それよりね」
「そうだな。それではだ」
 Jがだ。護に対して問うてきた。
「ラティオよ」
「うん」
 その名で呼んだうえで、であった。
「聞きたいことがある」
「戒道のことだね」
「そうだ。アルマはどうした」
「それは」
 要領を得ない返事だった。
「僕にも」
「そうなのか」
「御免なさい」
「謝ることはない」
 Jはそれはいいとしたのだった。
「御前の責任ではないのだからな」
「大丈夫よ」
 命はここでも護に話す。
「凱も戒道君もきっと何処かで」
「そう簡単にやられる奴等じゃないよ」
 ルネもそれを言う。
「だから絶対にね」
「そうだね。じゃあ」
「今はそれよりもだよ」
「J」 
 そしてだった。ここでトモロが彼に言うのであった。
「急接近する物体を感知」
「何っ!?」
「あれは」
 見ればだ。モニターにであった。
 巨大な、そして禍々しい戦艦があった。色は紫である。
「あの戦艦は」
「間違いない」
 Jとトモロがそれぞれ言う。
「ソール十一遊星主の艦」
「ピア=デケム」
 その艦だというのだ。
 その艦を見てだ。Jはすぐに言った。
「反中間子砲だ」
「それを」
「そうだ。全砲門開け!」
 攻撃に移ろうとする。ところが。
 アベルがだ。ジェイアークのモニターに出て来て言うのであった。
「お待ちなさい」
「またかい!」
 ルネがその姿を見て忌々しげに言う。
「出て来たってのかい!」
「そんなことをすればです」
 ここでだ。彼は言うのだった。
「こちらの生体コンピューターが傷つくことになります」
「生体コンピューター!?」
「まさかそれは」
「そうです。それで宜しいのですか?」
 モニターにだ。今度はだ。
 彼の姿が映し出された。十字架にあるが如く両手を鎖で吊り下げられている彼は。
「戒道!」
「何故だ!」
 護とJがそれぞれ驚きの声をあげる。
「まさかソール十一遊星主に」
「捕らえられたのか」
「ジェイアークは無傷で取り戻します」
 ここでまた言ってきたアベルだった。そしてだ。
 ピア=デケムに顔を向けてだ。その名を呼ぶとだ。戦艦が動き。ジェイアークに対して向かってきたのである。
 それを見てだ。ルネがJに問うた。
「どうするんだい、ここは」
「止むを得ない」 
 Jの返答はは無念そのものだった。
「ここはだ」
「下がるんだね」
「離脱するしかない」
 実際にこう言う彼だった。
「それではだ」
「ああ、それじゃあね」
「全速だ」 
 あらためてトモロに告げた。
「あの戦艦を振り切る!」
「了解」
 トモロも応えてだった。今は彼等は戦場を離脱するしかなかった。
 そしてステーション内ではだ。宙が苦い顔になっていた。
「まずいな、頭数がな」
「そうだな。とてもな」
 バサラが彼に応えて言う。
「足りないからな」
「けれどよ、このままじゃよ」
「どうしようもないよ」
「やるしかない」
 オルガにクロト、シャニがその宙に言ってきた。
「俺達もいるからよ」
「やれることなら何でもね」
「する」
「それではです」
 アズラエルが彼等のその言葉を受けて言う。
「寝ていなさい」
「何っ、何もするなっていうのかよ」
「それってあんまりじゃないの!?」
「何かさせろ」
「出番はすぐにきますよ」
 アズラエルは不平を述べる彼等にまた話した。
「そう、すぐにね」
「戦いかよ」
 シンはその出番が何によるものかすぐに察した。
「敵が来るっていうんだな」
「その複数の勢力が」
「それを相手にするにはだ」
 レイヴンが難しい声で述べてきた。
「やはり私達だけではな」
「へっ、何百万でも来いってんだ」
 シンはあくまで強気であった。
「俺がまとめて相手してやるぜ」
「それではだ」
 ここでだ。誰かが来た。それは。
「俺もやらせてもらおう」
「えっ、クォヴレー」
「無事だったのかよ」
「無事ではない」
 それは否定する彼だった。
「まだ意識がはっきりしないところがある」
「けれど出て来たって」
「どういうことだ」
「彼女の話ではだ」
 ここで言うのはパピヨンのことだった。
「今はだ」
「今は?」
「っていうと」
「持ち直してきている」
 そうだというのであった。
「少しずつだがな」
「だからか」
「こうしてあんたも」
「来られたのか」
「俺だけではない」
 ここでまた言うクォヴレーだった。
「他にもだ」
「えっ、じゃあ」
「皆も!?」
「そうだ。しかしだ」
 だが、というのであった。
「万全ではない」
「どちらにしろだ」
 それを聞いてだ。ロジャーが言った。
「今敵に襲われたならばだ」
「ひとたまりもない」
「そういうことね」
 彼の言葉にドロシーも頷く。まさにその通りであった。
 そしてだ。宙がそのクォヴレーに対して言うのだった。
「悪いがだ」
「ああ。何だ」
「この基地のレーダーシステムを動かすのを手伝ってくれ」
「それをか」
「衛星軌道上に複数の組織の艦隊が出て来た」
「ということはだ」
 それを聞いてだ。クォヴレーはすぐに幾つかの勢力を出した。
「バルマーかバッフ=クランか」
「あとはプロトデビルンと宇宙怪獣」
「どれも厄介だな」
 シンとカガリも言う。そしてだ。クォヴレーはすぐに返答を述べてきた。
「わかった」
「そうしてくれるか」
「それじゃあすぐに」
「今からはじめる」
 実際にクォヴレーはすぐにレーダーについた。そうしてだった。
 それを見るとだ。
「艦隊同士が戦っているな」
「それで勢力は」
「どの勢力同士が」
「一つはバッフ=クランだ」
 クォヴレーはすぐに答えた。
「もう一つはバルマーだ」
「あの連中ね」
 フェイがそこまで聞いてこう述べた。
「そういえばお互いに仲悪かったわね」
「これは好都合だな」
 テムジンはこの状況でも冷静であった。
「今はお互いに潰し合ってくれればだ」
「俺達にとってはいい話だな」
 ハッターも言う。とりあえずは彼等にとっていい状況だった。
 しかしだ。ここでクスハも来た。そうして彼女はこう皆に言うのだった。
「ですが」
「ですが?」
「っていうと」
「今の私達の相手はやっぱり」
「そうだな」
 ブリットも来て言う。
「銀河全体を破壊しかねない」
「ソール十一遊星主です」
「その連中を何とかしないといけないな」
 ブリットはクスハのその言葉に頷いた。
「今は」
「じゃああれね」
 レインが二人の話を聞いて述べた。
「それぞれの人達が争っている状況じゃないわね」
「はい、そうです」
「やはり今は」
 クスハとブリットはレインにも述べた。そうした話をしているとだ。
 ノイズが入った。皆それにも反応を見せた。
「今度は何だ!?」
「一体」
「通信だな」
 ライデンがそれを見て述べた。
「この基地から誰かが外へ向かってだ」
「通信を送っている?」
「そうなんだ」
「それってまずいわよ」
 アレンビーがそれを聞いて困った顔になっていた。
「バッフ=クランやバルマーにあたし達のことを知られたら」
「すぐに調べよう」
「ああ」
 そうしてだ。全員で調べにかかるのだった。誰がそれを送っているのか。
 オペレーションルームでだ。二人が話していた。
「姫様」
「ええ」
「付近に我が帝国の部隊が来ていましたので」
「あのぼんぼんの軍ではないわね」
「ジュデッカ=ゴッツォ殿の軍です」
 ルリアがこうアルマナに答えていた。二人がこの部屋にいたのである。
「軍務大臣の」
「そう。あの方ならね」
「帝国に対する忠誠心は絶対です」
 ルリアがそれを言う。
「それにです。私達にもです」
「敬意を払ってくれていましたね」
「ですから無碍には扱われない筈です」
「そうですね。それでは」
「今から」
「けれど」
 しかしだった。ここでアルマナは困ったような顔を見せてだ。ルリアに話すのだった。
「けれど」
「けれどとは」
「よかったのかしら」
 ついつい地の言葉を出してしまっていた。
「こんなに大胆に行動して」
「ご心配なく」
 しかしだ。ルリアは微笑んでアルマナに放すのだった。
「ロンド=ベルですが」
「あの人達ですね」
「この星の大気に混入された物質によって無力化していますから」
「あれが役に立ちましたね」
 ここで微笑むアルマナだった。
「ルリアの用意してくれていたマスクが」
「当然です」
 ここでだ。ルリアも微笑むのだった。
「姫様を危険にさらさない為に」
「私の為にですか」
「そうです。その為に私はです」
 どうしているか。それを話すのであった。
「常に細心の注意を払っていますから」
「有り難うございます」
「礼には及びません」
 そんな話をしていた。そこでだった。
 扉が開いてだ。クスハとブリットが飛び込んできたのだった。
 二人はすぐに銃を構えてだ。彼女達に告げた。
「動かないで下さい!」
「大人しくしてくれ!」
「しまった!」
 ルリアはそれを聞いて苦い声を出した。
「既に身体の自由を取り戻していたか」
「えっ、まさか」
「貴女達が」 
 二人を見てだ。クスハとブリットは思わず声をあげた。
「アルマナさん」
「ルリアさんが」
 いたのは二人だった。そうして。
 戦闘用意も進められていた。その中でだ。イーグルがジェオとザズに尋ねていた。
「状況はどうですか?」
「出撃は何とかできるな」
「それはね」
 二人はそれはいけるというのだった。
「しかしな。俺達もだがな」
「皆吐き気とか頭痛がね」
「そうですか。そうした状況ですか」
「サコンさん達の話だとな」
「普段の八割程度の戦闘力らしいよ」
 三人の話を聞いてだ。アスカが言った。
「それでは負けてもおかしくないぞ」
「はい、それでは」
「敵の数も多いようですし」
 シャンアンとサンユンがそのアスカに述べる。
「状況は芳しくありませんな」
「二つの勢力を戦うとするならば」
「困った話じゃ」
 アスカも腕を組んで困った顔になるしかなかった。しかしだ。ここでタータがこう言うのだった。
「けどうち等の今の相手はそっちの連中やないからな」
「あら、タータもわかってるのね」
「当たり前や、姉様」
 こう姉に返すのだった。
「うち等の今の相手はあのけったいな連中や」
「ソール十一遊星主ね」
「あの連中を何とかせんと」
「こっちの世界が」
「消えるな」
 クリフが深刻な目で述べた。
「宇宙収縮現象だったな」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。プレセアが答えた。
「それを止めなければ」
「ですからここはです」
 アルシオーネが話す。
「とりあえず彼等とはです」
「話し合いだよね」
「それしかないで、今は」
 アスコットとカルディナもいた。
「戦うばかりじゃないからね」
「今はそんな状況ちゃうから」
「だからだな」
 ラファーガは彼等を見ていた。
「君達が」
「わかっています」
「それは」
 ベスとカララがラファーガのその言葉に応える。
「バッフ=クラントの交渉は」
「やらせて下さい」
「しかしだ」
 ここで言ったのはコスモだった。
「上手くいくのか?」
「今はやるしかない」
 ギジェがそのコスモに言う。
「銀河の全ての生命の為に」
「バッフ=クランだって」
 シェリルもここで話す。
「私達と同じように理性を持っているわ」
「だからなんだな」
「ええ、そうよ」
 こうコスモにも話すのだった。
「話し合いは無駄ではないと思うわ」
「シェリル、済まない」
「ギジェ」
 シェリルは今度はギジェを見てだ。話すのだった。
「貴方やカララを見ればね」
「私をか」
「そうなのですね」
「信じられるわ。今はね」
「そうね。ずっと胡散臭く思ってたけれど」
 カーシャがだ。意外な言葉を出した。
「今はね」
「あとオペレーションルームのことだけれど」
 今度はその話だった。コウが話してきた。
「あの娘達はクスハとブリットがそのまま監視についたよ」
「そうなのですか」
 ラトゥーニがそれを聞いて述べた。
「ではとりあえずは」
「安心だね」
「しかしそれによってだ」
 ラミアは深刻な顔を見せていた。
「我々の居場所を知られてしまった」
「その見返りが欲しいな」
 アクセルが本音を述べた。
「ここはな」
「殺すとかは仰らないのですね」
「俺も変わった」
 微笑んでだ。シャインに対しても話す。
「そこまでは言わない」
「そうなのですね」
「殺しても何にもならない」
 ラミアもそれはどうかというのだった。
「確かにそれよりもだ」
「あの帝国の情報は少ない」
 リーはこのことを懸念していた。
「今はその方が得策だ」
「しかしよ。それってよ」
 カズマがそのリーに言う。
「この戦いを切り抜けてからだよな、艦長さん」
「忌々しいがその通りだ」
 リーもそれは認めた。
「生き残ってからだ」
「ソール十一遊星に敗れたら」
「銀河が消滅するのよ」
 ゼオラがこうアラドに話す。
「あんたも御飯食べられなくなるわよ」
「げっ、それは勘弁」
「それならわかるわよね」
「ああ、よくな」
 アラドもゼオラに頷いて答える。
「そう言われたらな」
「艦隊こっちに来てます」
 今言ったのはミヒロだった。
「ステーションに」
「ドロワ=ザンね」
 カララがモニターに映るその巨艦を見て言った。
「ハルル姉さんね」
「まずいな」
 ギジェも深刻な顔になる。
「あの方が来られると」
「そうなのですか」
「そのハルルという人物が来ると」
「危険なのですか」
 プラクティーズの三人がそのギジェに問うた。
「というとその者」
「かなりの名将ですか」
「そうだと」
「そうだ。立派な方だ」
 ギジェはその深刻な顔で答えた。
「将として。まさにバッフ=クランの宝だ」
「その名将が来た」
 マイヨも真剣な顔になっている。
「バッフ=クランも本気か」
「しかもだ」
 ギジェはここでさらに話した。
「カルルの姉君だ」
「えっ!?」
「姉妹!?」
「カルルさんの」
 皆このことに唖然となった。
「じゃあ骨肉の争いかよ」
「しょっちゅうだけれどここでなんて」
「何か最悪」
「嫌な戦いになるよな」
「そうよね」
「それだけではない」
 ギジェの話はさらに続くのだった。
「我々がかつて退けたダラム=ズバはだ」
「ああ、あの」
「あの戦いも激しかったけれど」
「あの人と関係者?」
「何かあったんですか?カララさんのお姉さんって」
「ハルル様の想い人だったのだ」
 そうだったというのである。
「しかもハルル様は情念の強い方だ」
「じゃあ俺達を狙うだけじゃなくて」
「敵討ちもあって」
「俺達に来る」
「そうだってのね」
「そうだ。これは実にまずい」
 ギジェもだ。深刻な顔を元に戻せない。
「どうしたものか」
「通信が入ってきました」
 ここで皆に話すヒカリだった。
「モニターに出ます」
「げっ、向こうから!?」
 彼女の横にいるケイスケが思わず声をあげてしまった。
「これって本当に」
「マジやな、あちらさん」
 トウジも覚悟するしかなかった。
「洒落にならんことになりそうやな」
「ふん、来るなら来いよ」
 アスカは次第に持ち前の闘争心を取り戻してきていた。
「誰であろうとね」
「そんなこと言ってマスターアジアさん来たらどうするの?」
 その彼女にシンジが突っ込みを入れる。
「あの人何時何処に出て来るかわからないけれど」
「否定できないのが忌々しいわね」
 アスカは彼のことが実によくわかってきていた。
「世界が違っても平気で来るからね」
「シュバルツさんもね」
「だから変態って嫌いなのよ」
 アスカはまだ二人をそう見ていた。
「常識を無視するから」
「まあ僕はあの人達好きだけれど」
「はいはい、あんたも変態」
「何でそうなるんだよ」
「変態を好きな奴は変態よ」
 だからだというのである。
「あんな変態爺さんと変態忍者の何処がいいのよ」
「本当にあの人達が嫌いなんだね、アスカって」
「幽霊とか妖怪は許せてもあの二人は許せないのよ」
 実際にこう言うのであった。
「全く。素手で使徒を破壊するし」
「最早人間ではありませんね」
 ルリもそれは断言する。
「確かに使徒と人間はDNAは近いですが」
「あの爺さん実は人間じゃないでしょ」
 アスカは本気で言っている。
「光の巨人とかマスクドライダーとかじゃないの?」
「そういえばサイボーグって噂あったよな」
「そうだったな」
 アキトとダイゴウジもそれを話す。
「そんな人だから」
「何がどうなってもな」
「いいか?」
 モニターには何時の間にか赤い髪の如何にも気の強そうな女がいた。
「ロゴ=ダウの異星人達よ」
「あっ、あんたがハルルさん」
「そうなんですね」
「あんたがそのカララさんの」
「そうだ、いいかロゴ=ダウの者達よ」
 ハルルは真剣な顔でロンド=ベルの面々に言ってきた。
「今からだ」
「お待ち下さい、お姉様」
「カララか」
「はい、私です」
 モニターでだ。姉妹は話すのだった。
「お久し振りです」
「恥知らずにもまだ異星人と共にいるのか」
「はい・・・・・・」
「何処までアジバ家の名に泥を塗れば気が済むのだ!」
 ハルルは怒りを露わにさせている。
「この愚か者が!」
「お姉様、いえ」
「いえ、何だ」
「バッフ=クラン艦隊司令ハルル=アジバ」
 姉をあえてこう呼ぶのであった。
「私はカララ=アジバとしてでなくです」
「では何として私の前にいる」
「この銀河に生きる一人の人間として」
 それでだというのだ。
「バッフ=クランに和平を申し込みます」
「何っ!?」
「既にお気付きでしょう」
 眉をぴくりと動かした姉にさらに話していく。
「この宙域、この銀河に不自然な歪みが発生していることを」
「そのことか」
「やはりお気付きでしたね」
「少しな。しかしだ」
 今度はハルルがカララに問う。
「それが御前の言う和平とどう関係があるのだ」
「これはソール十一遊星主による宇宙収縮現象が原因なのです」
「ソール十一遊星だと?」
「はい、彼等は宇宙の暗黒物質により失われた」
 カララは話していく。
「自らの母星を再生させようとしているます」
「そうだというのか」
「そしてその結果としてです」
「この銀河がか」
「はい、消滅の危機を迎えようとしています」
 こう言ったところでだ。バッフ=クラン軍の将校の一人がハルルに言ってきた。
「ハルル様」
「そのことを計算したのだな」
「はい、計算の結果」
 どうだというのである。
「カララ様の仰っていることは嘘ではないようです」
「そうなのか」
 それを聞いてからだ。ハルルはカララに対して言うのであった。
「そのソール十一遊星主を倒す為に手を貸せというのか」
「いえ」
「違うというのか」
「私はです」
 カララはこう姉に話す。
「この和平を一時的なものとするつもりはありません」
「ではどうだというのだ」
「この銀河は様々な脅威に満ちています」
 カララが言うのはこのことだった。
「そしてそれはです」
「それは」
「バッフ=クランの銀河とも無関係ではないでしょう」
 こうハルルに話すのである。
「ですからこのことをです」
「私にどうせよというのだ」
「ドバ総司令にお伝え下さい」
 彼にだというのである。
「そして我々と和平を」
「ふざけるな!」
 だが、だった。これまで話を聞いていたハルルの声が荒くなった。
「その様な世迷いごとに付き合うつもりなぞ毛頭ない!」
「お姉様!」
「御前の言う脅威なぞだ」
 どうだというのである。
「バッフ=クランの総力を挙げれば恐れるに足りん!」
「しかしそれは」
「それよりも恐れるべきは」
 何かというのである。
「御前達と巨神の力よ!」
「馬鹿な」
 今度はベスが言ってきた。
「我々が立ち向かわなければならない脅威とは」
「どうだというのだ」
「人知を超えた存在だというのに」
「あいつは」
 コスモが忌々しげに言う。
「自分の星のこと、いや」
「そうね。もっと酷いものよ」
 カーシャはモニターのハララを忌々しげに睨んでいる。
「あいつに今あるのは」
「自分の復讐のことしか頭にないんだよ!」
「へっ、こうしたことも同じかよ」
 ジェリドも忌々しげな口調だ。
「人間のこうした感情ってのはよ」
「エゴか」
 ハマーンも嫌悪を露わにさせている。
「それは消せないな、容易には」
「ベス、どうするんだ!?」
 コスモはベスに問うた。
「向こうは仕掛けてくるぞ!」
「ここは」
「どうするんだ!?」
「応戦しては今までの繰り返しだ」
 ベスは今決断した。
「話し合いを続けるぞ」
「えっ、何言ってるのよ!」
 それを聞いてだ。カーシャが言った。
「このままじゃ的になるだけよ!」
「ぎりぎりまで耐えるんだ!」
 ベスはまた話した。
「いいな、ここはだ!」
「けれど今は!」
「殺し合うのはイデの導きだとしても」
 それでもだというのだ。
「我々はそれに従う訳にはいかない!」
「とか何とか言ってる間に!」
 今叫んだのはカズイだった。
「今度はバルマーが来たよ!」
「それはまずいぞ!」
 勇がそれを聞いて焦った声を出す。
「ここでこれは」
「そうだね、カズイ」
「いや、俺は勇だ」
「あっ、御免」
 ついいつい間違えたカズイだった。
「っていうか今はそんな場合じゃないね」
「そうだね。ちょっとね」
 サイ本人の言葉だ。
「バルマーまで来るなんて」
「どうしよう、ここは」
「両方相手にするしかない?」
「今は」
「地球の者達だな」
 ここでジュデッカ=ゴッツォがモニターに出て来た。
「余はゼ=パルマリィ帝国軍務大臣ジュデッカ=ゴッツォである」
「ジュデッカ=ゴッツォ!?」
「ラオデキア達とそっくりだけれど」
「まさか」
「安心しろ。あの者達には既にオリジナルが存在している」
 ジュデッカがこう話してきた。
「余の弟達だ」
「何っ、そうだったのかよ」
「道理で似ていると思ったら」
「クローンじゃなかったのね」
「如何にも」
 そうだとだ。答えてきたジュデッカであった。
「皆健在だ。ラオデキアのオリジナルは汝等との戦いで死んだがな」
「ああ、あの時にか」
「バルマー戦役の時に」
「あの時で」
「今本国に入るラオデキアはクローンだ」
 そうだというのである。
「そしてだ。余が来たということはだ」
「そのバルマーの本軍かよ」
 イサムが忌々しげに言った。
「それが来たってのかよ」
「覚悟するがいい」
 ジュデッカの声に不敵な笑みが宿る。表情だけではなかった。
「バルマー本軍、これまでとは違うぞ」
「ちっ、こんな時にかよ」
「最悪の事態ね」
 今ロンド=ベルはこれまでにない危機を迎えようとしていた。彼等は果たしてどうなるのか、神でさえもわからない状況になろうとしていた。


第八十五話   完


                                       2010・12・27

 

 

第八十六話 銀河が消滅する日

           第八十六話 銀河が消滅する日
 ハルルはだ。バルマーの軍を見て言った。
「奴等ともだ」
「戦いますか」
「そうされるというのですね」
「そうだ。共に我等の敵だ」
 そうした意味でロンド=ベルと同じだというのである。
「だからだ。いいな」
「わかりました。それでは」
「今より」
「戦闘用意に入れ」
 明らかにやるつもりだった。しかしだ。
 ロンド=ベルはだ。バルマーに対してもだ。話し合いに入っていた。
「宇宙収縮現象か」
「そうだ」
 ジュデッカにはヴィレッタが話していた。
「そちらではもう気付いているか」
「我々を侮らぬことだ」
 これがジュデッカの返答だった。
「その様なことは既に把握している」
「それならだ」
「しかしだ」
 だが、だった。ここでジュデッカは言うのであった。
「一時的にしろ和平なぞするつもりはない」
「何っ!?」
「バルマー帝国に和平という言葉は存在しない」
 そうだというのである。
「戦い、征服し従える。それだけだ」
「けれどよ、今は!」
「そんな状況じゃないのよ!」
 アラドとゼオラがモニターのジュデッカに叫ぶ。
「銀河が崩壊するんだぞ!」
「消えてなくなるのよ!」
「我がバルマーの力を以てすれば」
 言うことはハルルと全く同じであった。
「その様なこと正すのはどうということはない」
「分からず屋だね、どうにも」
 万丈の言葉は皮肉そのものだった。
「自分を過信したら確実にしっぺ返しを受けるんだけれどね」
「地球人共よ、汝等はただ攻めるのみ」
 それだけだというのである。
「それではだ。行くぞ」
「くっ、結局こうなるのか」
 ベスは双方と戦闘に入ることになり歯噛みするしかなかった。
「避けたかったが」
「仕方あるまい」
 ギジェもだ。無念さをその顔に見せている。
「ベス君、それではだ」
「止むを得ないか」
「さて、こうなってはだ」
 マクトミンも言う。
「戦いしかあるまい」
「おっさん、戦えるよな」
「案ずるな。私は何時でも大丈夫だ」
 マクトミンはこうジュドーに返した。
「では。行くとしよう」
「よし、こうなったらやってやる!」
「最後の最後まで!」
 こうしてロンド=ベルも出撃しようとする。しかしであった。
 バッフ=クラン、バルマーの両軍でだ。異変が起こった。
 突如としてだ。彼等の後方から謎の大軍が出て来てだ。攻撃を仕掛けてきたのである。
「ハルル様!」
「何だあの敵は!」
「わかりません」
 ハンニバルはまずこうハルルに答えた。
「しかし我が艦隊がです」
「押されているのか」
「はい」
「相手は何者だ」
 ハルルが問うのはこのことだった。
「宇宙怪獣か、それともプロトデビルンという者達か」
「そ、それが」
 しかしだった。ハンニバルは口ごもって言うのであった。
「様々な勢力が入り混じりです」
「何っ!?」
「我々の機体もあります」
「バッフ=クランのものもか」
「はい、その為どの勢力なのか判別がつきません」
「一体どういうことだ」
 そしてだった。バルマー軍もであった。
「司令、大変です!」
「敵が次から次に来ます!」
「その数が尽きません!」
「馬鹿な、まさかこれは」
 ジュデッカはすぐに状況を理解して言った。
「ソール十一遊星主か
「どうしますか、ここは」
「戦われますか」
「それとも」
「敵の数はどれだけいる」 
 ジュデッカがまず確かめるのはこのことだった。
「一体どれだけだ」
「ざっと見ただけで一千万です」
「それだけいます」
「この状況で一千万か」
 それだけだと聞いてだ。彼は決断を下した。
「わかった。それではだ」
「はい、それでは」
「どうされますか」
「全軍この戦域から離脱する」
 そうするというのであった。
「よいな。後詰は余が務める」
「司令がですか」
「そうされるというのですか」
「このヘルモーズは只のヘルモーズではない」
 見ればだ。通常のヘルモーズの倍はあった。実に巨大なヘルモーズである。
「そう容易には沈まん」
「だからですか」
「それで」
「ではよいな」
 こう部下達に告げた。
「全軍撤退だ」
「了解」
「わかりました」
 彼等はすぐに撤退に入る。そしてそれはバッフ=クランも同じであった。
「この状況ではどうにもならない」
「わかりました。では」
「撤退する」
 ハルルはこうハンニバルに告げた。
「いいな」
「はい、わかりました」
「後ろは私が受け持つ」
 彼女もこう言ってだ。退くのだった。
 こうしてベースの上に展開するロンド=ベルの軍だけになった。しかしだ。
「おいおい、この数は」
「凄いわね」
「ちょっとやそっとじゃ」
「戦い抜けないかな」
「諸君、手当たり次第に攻撃を仕掛けよ」
 ダイテツがこう彼等に命じた。
「とにかく敵を倒せ。エネルギーや弾薬はベースに幾らでもある」
「だからですか。ここは」
「まず敵の数を減らす」
「そうしろっていうんですね」
「敵を倒して気力をあげるのだ」
 ダイテツは具体的に述べた。
「いいな、ここはだ」
「そうして少しずつこちらの有利にしていく」
「それが今ですか」
「とりあえずは」
「まずは戦え」
 何につけてもそれだというのであった。
「そして生きろ。いいな」
「よし、それならだ!」
 マサキがここで叫ぶ。
「やってやらあ!幾らでも来やがれ!」
「とりあえずまずはカロリックミサイルニャ」
「それとバニティリッパーニャ」
 クロとシロがそのマサキに話す。
「あたし達はまだ出られないニャ」
「暫くはそれで我慢するニャ」
「ちっ、仕方がねえな」
 言ってもどうしようもないことだった。そうしてだった。
 全員ベースを取り囲み迫って来る様々な敵達を見る。それは。
「モビルスーツもあれば」
「オーラバトラーもあるし」
「メガノイドまでいるね」
「レプリジンか」
 彼等は敵が何なのかわかった。
「それかよ」
「ここでもそれで来たか」
「それに」
「パレッス粒子の影響がまだ残っています」
 エキセドルがここで言った。
「それが厄介ですね」
「しかしここまで来たらな」
 フォッカーも既に出撃している。
「そうも言っていられないからな」
「確かに。それは」
「戦うしかないってな」
 フォッカーの言葉は実に簡潔だった。
「じゃあやってやるか
「さて、地獄の一丁目」
「毎度のことだけれど」
「今度はその中でもヘビーな方だな」
 キリーとレミー、真吾はいつも通りであった。
「この最悪のコンディションの中で」
「果たして何処まで戦えるか」
「勝利の女神は微笑んでくれるか」
「そんなものはこの手で掴むものではないか」
「そうよ、まさにその通りよ」
 カットナルとネルナグールは変わっていない。
「わし等さっきの戦いにも参加できたしな」
「わしもよ」
「私もだったな」
 ブンドルもであった。
「所詮。美にはどういったものも勝てないのだ」
「つまりあれか?さっき戦えた人達って」
「ちょっと変わった人達多いんだ」
「この人達といい」 
 そのドクーガの面子を見ながら。皆話していく。
「アズラエルさんとかねえ」
「やっぱり変態さんだと何かが違うんだ」
「普通の人じゃないから」
「成程ねえ」
「失礼な言葉ですね」
 変態と言われてだ。アズラエルも流石に穏やかではなかった。
「僕はこれでも普通ですよ」
「いや、ある意味ニュータイプより凄い人ですから」
「本当に普通の人間なんですか?」
「前から不思議に思ってましたけれど」
「ですから僕は至って」
「絶対に違いますよね」
「そうよね」
 その彼に今度はノリコとカズミが言う。
「けれど。お陰でさっきは戦えたんですから」
「それもよかったのじゃ」
「まあ確かにそうですね」
 アズラエルもそれは認めた。そしてであった。
「では皆さん」
「はい!」
「じゃあここは」
 ノリコとカズミがそれぞれ言う。
「努力と根性!」
「チームワーク!そして」
「勇気です!」
 二人に続いて竜馬と護も言った。
「戦うとしよう!」
「最後の最後まで!」
「各機連携を忘れるな!」
 アムロがここで指示を出す。
「普段の力が出せない分を互いでカバーし合うんだ!」
「はい!」
「わかりました!」
「行くぞ地球の勇者達!」
 Jもいた。
「ソール十一遊星主を殲滅する!」
「行くわ、凱」
 命が呟く。
「貴方の分まで戦うから。だから」
 凱のことを想い。言うのだった。
「無事でいて」
「来たぞ!」
「行くぞ!」 
 戦闘がはじまった。レプリジンは数で来る。しかしロンド=ベルは陣を組みだ。彼等を防ぎ倒していく。そうしてかなり減らした時だった。
 敵の増援がだ。出て来たのであった。
「波状攻撃か」
「そうね」
 ノインとヒルデがその大軍を見て言う。
「弱った相手にそれか」
「セオリー通りね」
「普段はあまり思わなかったが」
「けれど今は」
 トロワとカトルも言う。
「辛いものがあるな」
「確かに」
「敵の戦力は底なしか」
「みたいだな、こりゃ」
 ウーヒェイとデュオはある意味覚悟を決めていた。
「このまま戦いが長引けばだ」
「数で押されるかもな」
「だが退くとだ」
 どうなるか。ヒイロはわかっていた。
「それで終わりだ」
「ステーションを奪われだ」
 それはゼクスが話す。
「そのまま敵の思うままだ」
「ソール十一遊星主が姿を現さない限り」
 Jも話す。
「この戦いも前哨戦に過ぎない」
「連中がいてこそか」
「本番ってことか」
「つまりは」
「だがこのままでは」
 敵との戦いが続く。最早泥沼であった。
 その彼等を見てだ。ピルナスがアベルに告げた。彼等はある場所から戦いを見ていた。
「中々やるわね」
「そうですね」
 アベルがピルナスのその言葉に頷く。
「第一陣だけでなく第二陣も退け」
「もう五回攻めているけれどね」
「凌いでいます」
「それでどうするの?」
「どうするかですか」
「ええ、ここはね」
「これだけ抵抗するならです」
 アベルはここで言った。
「仕方ありません」
「切り札投入ね」
「はい」
 まさにそうだというのである。
「粉々にしてあげましょう」
「そうね。一思いにね」
「光になってもらいましょう」
 こうしてだ。戦場にあるものを出した。それは。
「あれは」
「ガオファイガー!?」
「まさかレプリカか!?」
「あれは」
「いや、違う」
 ここでルネが言った。
「あれはレプリカじゃない」
「っことは」
「誰かが動かしてる!?」
「あのガオファイガーを」
「凱さん以外の人が」
 皆最初はそう思った。しかしであった。そのガオファイガーの中からだ。声がしたのであった。
「破壊せよ」
「!?」
「この声は」
「まさか」
「破壊せよ破壊せよ」
 また声がした。声の主は明らかであった。
「うおおおおおおおお!」
「凱!」
 命がその声の主の名を呼んだ。
「本当に凱なの!?」
「何で凱が」
「ああしてあそこに」
「いるんだ?」
「多分」
 驚くロンド=ベルの面々にだ。護が話す。
「戒道と同じなんだ」
「あの子と同じ!?」
「それじゃあ」
「利用されてるんだ!」
 護は忌々しげに叫んだ。
「くっ、何てこった」
「こんなことになるなんて」
「凱!」
 今度はルネが彼に叫ぶ。
「目を覚ませ!」
「無駄だ」
 しかしだった。それを否定してだ。パルパレーパが出て来たのだった。
「その男が私が埋め込んだケミカルボルトの支配下にある」
「ケミカルボルト!?」
「それで凱が」
「こんなことに」
 今の凱を見てだ。誰もが唖然となっていた。
「誰よりも正義を愛していて」
「地球の為、人々の為に戦っていたのに」
「あれじゃあ」
「鬼よ」
 青くなってだ。こう言っていくのだった。
「それも悪鬼だ」
「あれじゃあ」
「破壊せよ破壊せよ破壊せよ」
 凱は鬼気迫る顔で呟いていた。
「何もかも」
「どうする!?ここは」
「戦うか?やっぱり」
「それしかないのか?」
「ここはだ」
 しかしだった。バニングがここで言うのだった。
「各機がオファイガーを攻撃しろ」
「凱をですか!?」
「倒すっていうんですか」
「ここで」
「そんな・・・・・・」
「いや、違う」
 バニングはそれは否定した。
「倒しはしない」
「じゃあどうするんですか?」
「倒さないっていっても」
「攻撃はするんですよね」
「そうですよね」
「動けなくする」
 これがバニングの今の考えだった。
「わかったな。そういうことだ」
「駆動部をですか」
「狙ってですか」
「そうして」
「仲間を殺しはしない」
 バニングもそれは言う。
「だが、だ。このまま放っておけばだ」
「どうしようもない」
「だからですね」
「ここは」
「その間にだな」
 大河もここで言った。
「総員ベースから退避だ」
「何があるかわからないですしね」
「連中、次に何を仕掛けてくるか」
「わからないですから」
「用心しておこう」
 だからだという大河であった。
「わかったな、諸君」
「はい、それじゃあ」
「駆動部を狙って」
「それで動きを止めて」
「そうして」
 こうしてだった。ガオファイガーに照準を合わせてだった。
 アムロがだ。フィンファンネルを放った。
「これでだ!」
「アムロさん、頼みます!」
「ここは!」8
「凱、これでどうだ!」
 複数のフィンファンネルを放ちながら言うのだった。
 ファンネル達はそれぞれガオファイガーを取り囲みだった。それでだった。
 ガオファイガーの手足を全て撃ち抜いた。そうしたのだった。
「よし、これでどうだ!」
 アムロは攻撃を放ってから言った。
「凱、目を覚ませ!」
「うおおおおおおおおおっ!」
 しかしだった。凱は。
 それでも動く。ダメージを受けてもまだだった。
「お、おい!まだかよ!」
「まだ動けるってのかよ」
「こうなったら」
 ロンド=ベルの面々にだ。苦渋の色が浮かんだ。
「もうこれは」
「破壊するしかないか!?」
「跡形も残らない程完全に」
 覚悟しようとしてきた。
「敵の増援もまだ来てるし」
「だよな」
「それに悪鬼と化したガオファイガー」
 まさに凱のことだ。
「この状況じゃやっぱり」
「凱を」
「そうするしかないのかよ」
「おい、それは駄目だぜ」
 パトリックがそれを否定する。
「あいつはこの俺より不死身だろ?ここでそんなことをしたらよ」
「ではどうする」
 カティがそのパトリックに問う。
「何か考えがあるのか」
「俺が行きますよ」
 パトリックは不敵に笑ってカティに返した。
「ここはこうなったら」
「貴様がか」
「ええ、行きますよ」
 また言うパトリックだった。
「俺は奇跡を起こす男ですからね」
「それで死んだらどうするつもりだ」
「ですから俺は不死身ですから」
「不死身なら大人しくしていろ」
 カティの言葉が厳しい。
「まだ命の賭け時ではない」
「今じゃないって」
「何かおかしい」
 カティは今はそのガオファイガーを見ていた。そのうえでの言葉だ。
「ガオファイガー。何か動きが」
「そういえば」
 ここでだ。ジュドーがそのガオファイガーを見た。そうしてだった・
「これは」
「ジュドー、感じたか」
「ええ、まさかと思いますけれど」
「そうだな」
 カミーユもジュドーに対して頷く。
「凱さんは多分」
「正気を保っている」
「何だって!?」
 それを聞いてだ。輝が驚きの声をあげた。
「凱は。大丈夫なのか」
「そうみたいですね」
 今度は洸が気付いた。
「凱さんの意志は俺達と戦うことを拒んでいます」
「うん、そうみたい」
「そのようだ」
 プルとプルツーも言う。
「けれど誰かが」
「操っている」
「!?ってことは」
 ファが気付いたのは別のことだった。
「凱さんは」
「そうですね。自分が仲間を傷つけていくところを」
 シーブックがそのファに答える。
「見せ付けられています」
「な、何よそれ!?」
 フレイがそれを聞いて怒りを露わにさせた。
「そんなことされてるの!?凱さんは」
「おい、ソール十一有星主の誰だ!」
 ディアッカも言う。顔を顰めさせて。
「こんな悪趣味なことをしやがるのは!」
「全くだ」
 イザークも同じだった。
「これは。許せん!」
「おや、これは」
「そうですね」
 その彼等を見ながらだ。またピルナスとアベルが話す。
「もてなしが不十分だったみたいだね」
「ならばです」
 ここでまた動くアベルだった。
「ここは」
「どうするんだい?それで」
「ゲストをさらに追加しましょう」 
 こう言ってだった。今度は。
「勇者ロボ!?」
「今度はそれって」
「何なんだよ」
「こんなの有り得ないだわさ!」
 ボスも今自分達の前に出て来た勇者ロボ達を見て言う。
「あいつ等は今ベースで」
「そうでやんすよ。まだ動けないでやんすよ」
「それでどうして」
 ヌケとムチャもそれを言う。
「こうして俺達の目の前に出て来るって」
「何が何だか」
「つまりあれは」
 鉄也はすぐに事情を察した。
「レプリジンか」
「今度はそう来たか」
「随分しみったれた奴等だな、ソール十一遊星主ってのは」
「だよな」
「全く」
 皆彼らに怒りを感じていた。そして。
 凱がだ。ゴルディマーグに向かった。そのレプリジンの。
「!?あいつまさか」
「ゴルディマーグでか!!?」
「仕掛けるってのかよ!」
 何をするのか。皆すぐにわかった。
「くそっ、ゴルディオンハンマーを受けたら!」
「ベースもそれこそ一撃だ!」
「まずいぜこれって!」
「ど、どうすればいいのよ!」
「あんずるな」
 しかしだった。ここでJが前に出るのだった。
「ここは私が行く!」
「えっ、Jさんがって」
「一体何を」
「どうするんですか!?」
「こうするのだ!」
 自分の船をだ。ガオファイガーに向かわせる。そうしてだった。
「ガオファイガー!」
「うおおおおおっ!」
「貴様を止めるには最早これしかない!」
 こう叫んでだった。特攻しようというのだ。
「今!この全てを賭けよう!」
「ジュエルジェネレーター」
 トモロもここで言う、
「限界突破」
「よくて相打ちか」
 Jはトモロの言葉を聞きながら述べた。
「この状況では」
「駄目だよ、それじゃあ!」
「見方が甘かったか」
 Jは今そのことをわかった。
「この勝負を制したとしても」
「そうだね」
 共にいるルネが応える。彼女も今ジェイアークに乗り込んでいるのだ。
「次があるからね」
「後に控えている連中の相手をする余力はない」
「百パーセントの確率を超えた敗北」
 アベルが言った。
「ゆっくりと味わって下さい」
「おいJ!」
 鋼鉄ジーグが向かおうとする。
「今行くぞ!」
「来るな!」
 しかしだった。Jはその宙に言うのだった。
「来るな、私達だけでやる!」
「何っ、死ぬぞ!」
「そのままでは!」
「こうなれば」
 Jはだ。凄まじい衝撃の中で言うのであった。
「貴様達に希望を託すしかない」
「だからだってのか」
「それで今はそうして」
「自分達だけで」
「後は任せた」
「御願イシマス」
「それじゃあね」
 トモロとルネも言う。命は既にベースに避難している。
「これで・・・・・・」
「後は残る!」
 最後にJとルネが叫んだ。そのうえでガオファイガーに特攻する。しかしだった。
「そうはさせん!」
 パルパレーパがだ。凱を動かしたのだった。
「!?ガオファイガーが」
「進路を変えた!?」
「こっちに来るぞ!」
「ベースに!」
 そうしてだった。今まさにベースにハンマーが振り下ろされようとする。しかしだった。
 勇者ロボ達がだ。ガオファイガーとゴルディマーグを囲んだのだった。
「えっ、レプリジンが!?」
「これどういうこと!?」
「もう意識はない筈なのに」
「どうして」
「こんなコマンドに!」
「負けはしない!」
 まずは炎竜と氷竜が叫ぶ。
「僕達にも!」
「まだ残っているものはある!」
「その通りだ!」
「まだだ!」
 雷龍と風龍もだった。
「それがある限り!」
「正義の為に!」
 そしてだった。闇竜と光竜も。
「AIを改造されようとも」
「メモリーは残ってるわ!」
「それなら」
「私達は最後の力で!」
「例え複製であっても!」
「俺達は勇者だ!」
 ボルフォッグとマイクである。
「それならば正義の為に」
「戦うんだっぜ!」
「馬鹿な!」
 その彼等にJが叫ぶ。
「どけ!バラバラになるぞ!」
「あんた達全員死ぬよ!」
 二人はこう彼等に告げる。
「だからだ、ここは!」
「あたし達に任せな!」
「心配無用!」
「覚悟は既にできてます!」
 しかし彼等もこう言って引かない。
「ですからここは」
「僕達が!」
「盾になります!」
「敵に利用されるのなら!」
「そうして光にあった方が!」
「ましよ!」
「その通りです!」
 その言葉を聞いてだった。ゴルディマーグも。
「俺もだ!」
「ゴルディマーグ!?」
「やっぱりあんたも」
「その心は」
「おうよ!そのままだぜ!」
 彼もやはり勇者ロボだった。レプリジンであっても。
「その心見せてやるぜ!」
「凱兄ちゃん!」
「凱!」
 その彼等を見てだ。護と命は必死に彼に声をかけた。
「御願いだから!」
「目を覚まして!」
「勇気を取り戻せ!」
 それをだ。ルネも叫んだ。
「ここはだ!」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
 そしてレプリカのゴルディマーグも。
 必死に抵抗を見せてそうしてだった。動きを止めようとして叫ぶのだった。その全身に力を込めて。
「このままやらせてやるかよ!」
「!?これは」
「マズイデス」
 Jとトモロも言う。
「まずい!」
「爆発シマス!」
「ゴルディオンハンマーが爆発する!?」
 ミサトはその危機を察した。
「そうなったら」
「全艦退避!」
 ブライトは即座に決断を下した。
「急げ!」
「りょ、了解!」
「け、けれど」
「凱!」
 ロンド=ベルの面々はガオファイガーを見た。退避する中でも。
「大丈夫か!」
「生きていて下さい!」
 こう言ってであった。凱の無事を祈るのだった。
 その彼等を見てだ。パルパレーパが言う。
「こうなったか」
「少し残念だったわね」
 ピルナスもいた。無論アベルや他の者達もだ。
「オービットベースを失ったのはね」
「戦略拠点に使えたがな」
「ええ、それがね」
「ロボット共のAIを完全に操作するにはな」
 パルパレーパは今度はこのことについて話した。
「やはり時間が不足していたな」
「そうね。やっぱり」
「だが」
 それでもだ。パルパレーパはまた話した。
「エヴォリューダー凱」
「あの男ね」
「あの男に打ち込んだケミカルボルトは完全」
 その自負があるのだった。
「あの男の意志が幾ら強くともだ」
「それでもね」
「そうだ、その肉体という物質はだ」
 彼等にとってはだ。肉体はそういうものでしかなかった。
「我が手中から逃れる術はない」
「そしてです」
 ここでアベルが口を開いた。
「こちらの戦力は無尽蔵です」
「そうね」
「それもまた大きい」
「でははじめましょう」
 アベルは仲間達に話した。
「私達の目的、三重連太陽系の復活を」
「今こそね」
「行うとしよう」
 彼等は勝利を確信していた。その時が来ることをだ。そうしてロンド=ベルをだ。今度こそ完全に倒すつもりでいるのであった。


第八十六話   完


                                        2010・12・31      

 

第八十七話 降臨!!ジェネシックガオガイガー

             第八十七話 降臨!!ジェネシックガオガイガー
                              降臨!!ジェネシックガオガイガー
 闇の中でだ。凱は自問していた。
「何故だ」
 こう。己にだ。
「何故戦う。もう戦う意味も」
 己に対して問い掛けていく。
「勇気ある誓いも。全て失われたというのに」
「ううん、それはね」
「違うわ」
 その彼にだ。二人が答えてきた。
「何も失われてはいないよ」
「凱、貴方は一人ではないわ」
「護、命」
 彼等だった。凱に語り掛けてきたのは。
「俺は・・・・・・」
「思い出して、凱兄ちゃん」
「そうよ」
 二人の言葉は何処までも優しい。
「あの日のことを」
「皆で誓いを立てたあの日々を」
「凱兄ちゃんの信じた誓いは」
 護はそのことを凱荷は為す。
「皆と一緒に戦った時は」
「あの時間は」
「無意味なものなんかじゃないんだ」
 そうだというのである。
「絶対に」
「しかしあのカインが」
 凱は護のその言葉を否定しようとする。
「あのカインが。俺に生命の力を与えてくれたカインが」
「信じて」
 護の言葉には切実さもあった。
「三重連太陽系が昇華された時」
「あの時か」
「Gストーンはもがきあがく生命の力として造られたんだ」
「護・・・・・・」
「私に生きる希望を与えてくれた人」
 命もだった。
「凱、貴方よ」
「命・・・・・・」
「僕はね」
 護はまた彼に語り掛ける。
「生命を護る為に生まれてきたから」
「俺は」
 そして凱は。自分から言った。
「生命を奪うものと戦う為に生きてきた」
「その凱を助ける為に」
 命が言うのはこのことだった。
「私も生き続ける」
「だから」
 護は。また凱荷は為した。
「戦う、凱兄ちゃん」
「護・・・・・・」
「本当の勇気を見つける為に」
「本当の勇気・・・・・・」
「ええ、一緒に戦いましょう」
 命も護に続く。
「真実を探しに行こう」
「俺をまだ」
 凱はその二人の言葉を聞いて呟いた。
「凱兄ちゃんにしかできないことなんだよ」
「俺にしか」
「そうよ、だって凱は」
 命も護もだ。二人で言った。
「勇者なんだから!」
「俺をまだ」
 その凱はだ。まだ立ち上がっていなかった。
「勇者と呼んでくれるのか。複製とはいえ」
「あの時だね」
「あの時のことを」
「そうだ。仲間達を救えなかったこの俺を」
「皆が自分の生命を犠牲してでも護ろうと思ったもの」
「それはね」
「凱兄ちゃんがね」
「貴方が皆に教えてあげたものなのよ」
「それは」
「勇気よ」
 その言葉を聞くとだった。凱の心が遂に動いた。
 そうしてだ。彼は言った。
「帰りたい」
「そうなんだね」
「帰りたいんだね」
「俺のいるべき場所へ」
 そこへだと。彼は確かに言った。
「そして取り返したい」
「うん、そして」
「それは
「勇気ある誓いを」
 それをだと言った。そしてだ。
 それを聞いた護がだ。笑顔で彼に話した。
「勇気さえあればね」
「勇気さえあれば」
「奇跡だって起こせるよ」
「絶対に」
「クーラティオ」
 まずは護と命だった。
「テネリタース」
「セクティオ」
「サルース」
 そしてだ。遂に凱も。
「コクトゥーラ」
 この言葉と共にであった。彼等を光が包み込み。何かが語り掛けてきた。
「再生の力を止めるもの。それは」
 まずはだ。こう三人に告げるのだった。
「それは破壊の力」
「それがか」
「破壊の力がなんだね」
「破壊は新たなゼロへの希望」
 それはだ。こう言うのだった。
「無限なる可能性への挑戦」
「まだ生きてるのね」
 命が言った。その時だった。
「ガオオオン!」
「ギャレオン!?」
 彼の咆哮が聞こえた。見れば彼もいた。
「ここは一体」
「Gクリスタル」
 護が言う。
「ここは」
「Gクリスタル?」186
「かつて三重連太陽系が機界昇華された時」
 話はそこにはじまるというのだ。
「緑の星の指導者カインは」
「カインが」
「あの人がなのね」
「最後の希望を託して遺産を遺していた。それが」
 護はだ。こう二人に話した。
「ギャレオンなんだ」
「そうだったのね」
「ギャレオンもまた希望だったんだな」
「うん、それで」
 護は二人にさらに話していく。
「機界昇華は終わり」
「そうして」
「あの連中がか」
「うん、三重連太陽系はソール十一遊星主による再生プログラムを始動したんだ」
 ここで彼等の名前が出た。
「Zマスターに対してJ達、つまりソルダート師団率いるアーク艦隊があったように」
「そしてギャレオンも」
「あいつもまた」
「ギャレオンは遊星主に対するアンチプログラムなんだ」
 このことをだ。護は今話した。
「そうだったんだ」
「Jと同じだったのか」
「うん」
 凱にまた答えた。
「そうだったんだ」
「じゃあ」
 ここで命も言う。
「ギャレオンは元々は」
「そうだよ」
「ゾンダー用に造られたのではなかったのね」
「Zマスターの侵攻が激しかったから」
 護はまた話した。
「それで本来の目的とはね」
「違う使い方をしていたのね」
「そうだよ。だから」
 それでだと。護の言葉は続く。
「僕達は呼ばれたんだよ」
「護君達が」
「ギャレオリア彗星の彼方にあるこの場所に」
 今彼等が戦う。その戦場にだというのだ。
「そして」
「そして?」
「真実を知ったんだ」
「そうしてずっとだったのね」
 命はここでまたあることがわかった。
「遊星主達と戦い続けていたのね」
「そうなんだ」
 護はここでは申し訳なさそうな顔になった。
「ギャレオンを元のプログラムに戻す為に」
「護もか」
「うん、ここから動けなくて」
 そしてだ。凱と命に謝るのだった。
「今まで御免なさい」
「いや、いい」
「それはね」
 そしてだ。二人はその護を微笑んで許すのだった。そうしてだった。
「俺達はやっぱりな」
「間違ってなかったのね」
「間違ってなかったって?」
「護を信じて」
「それでね」
「凱兄ちゃん、命姉ちゃん・・・・・・」
 護は今心から喜びを感じていた。最も信頼する二人にこう言われてだ。
 それで感涙しそうになる。しかしだった。
「いや、間違いだ」
「!?」
「その声は!」
「外ではだ」
 パルパレーパだった。彼が来て三人に言うのだった。
「貴様達の仲間がそろそろ最期を迎えようとしている」
「ソール十一遊星主!」
「こんなところまで!」
「僕を自由にしておいたのは」
 護も厳しい顔になってパルパレーパに言う。
「この時の為だったんだね!」
「そうだ」
 そしてだ。パルパレーパもその通りだというのだ。
「我等の原動力」
「それは」
「貴様等のGストーンを超えたラウドGストーン」
 それだというのだ。
「その為だ」
「くっ、それで僕を」
「俺達をか!」
「だが」
 しかしだった。ここでパルパレーパの言葉が変わった。
「唯一」
「唯一!?」
「というと一体」
「Gクリスタルの放つジェネシックオーラの前ではだ」
 パルパレーパの言葉が続く。
「その力を失ってしまう」
「そうか、それでなんだ」
 護はそこまで聞いて全てを理解した。
「Gクリスタルのエネルギーがギャレオンに充填される瞬間だけ」
「その時にか」
「そうなのね」
「うん、ジェネシックオーラの放出が止まる」
 こうだ。凱と命に話した。
「だから」
「まさに今がだ」
 パルパレーパが構えに入った。そして。
「Gクリスタル陥落の時だ!」
「くっ!」
「ソールウェーブ発射!」
 その攻撃が放たれた。
「命!護!」
「凱!護君!」
「二人共ここは!」
 三人はその衝撃に耐えながら言い合う。
「僕から離れちゃ駄目だよ!」
「ああ!」
「ここは!」
 彼等も戦っていた。そしてだ。
 ベースのあった宙域から後方に撤退したロンド=ベルはだ。追撃してきたレプリジンの大軍と対峙していた。その彼等の状況は。
「ちっ、何とかエネルギーとか弾薬は確保できたけれどな」
「ある程度以上持って来れたけれどね」
 ビーチャとエルが話している。当然彼等も出撃している。
「これだけの数が相手だとな」
「ちょっと以上に辛いわね」
「何か正念場ばかりで」
「精神的にも辛いね」
 モンドとイーノは疲れを感じてきていた。
「そろそろ終わりにしないと」
「もうもたないよ」
「ええ、それに」
 ルーも今は眉を顰めさせている。
「凱さんのことも気になるし」
「信じるしかないだろ」
 こう言ったのはジュドーだった。
「あの人がそう簡単に死ぬかよ」
「ああ、Gクリスタルもあるんだ」
 見ればだ。それもあった。ルネが言ったのだ。何とか持って来られたのだ。
「まだ。やれるよ」
「いや、これは」
 だが。Jがこう言うとだった。
「まさか」
「!?」
「これは!」
 そのGクリスタルにだった。爆発が起こったのだ。
「Gクリスタルが!」
「くっ、やはり」
 Jがその爆発を見て歯噛みする。
「遊星主に侵入されていたか」
「あら」
 その彼らを見てだ。ピルナスが言うのだった。
「あちらを気にするなんて」
「そうですね」
 アベルが応える。
「まだ余裕があるようね」
「流石はソルダート師団の生き残りです」
「貴様等・・・・・・」
「しかし貴方達はもう後がなく」
 アベルの言葉には絶対のものが既にあった。
「一方の我々は無傷です」
「だからかよ」
「勝つっていうのね」
「そうです」
 まさにそうだとだ。ロンド=ベルの面々にも答えるのだった。
「遠慮なく止めを刺して差し上げましょう」
「まだだ!」
「そうだ、まだだ!」
 しかしだった。彼等は戦おうとする。無論J。
「トモロ!いいな!」
「了解」
「全砲門開け!」
 こう命じるのだった。
「反撃するぞ!」
「そうはさせません」
 しかしだった。アベルはここでまた言うのだった。
「アルマ、Jジュエル凍結コマンド」
「・・・・・・・・・」
 捕らえている戒道に告げるとだった。それでだった。
 Gストーンが輝きだ。Jの戦艦は。
「何だ!?何が起きているんだ!?」
「Jジュエルのパワーが失われていく」
「何だって!?」
「まさか、奴等」
 ジェイアークの動きが止まる。それを見てだ。
「ではピア=デケム」
「とどめだよ!」
 ピア=デケムがアベルとピルナスの言葉に応えて戦艦を動かしだ。ジェイアークを撃つのだった。
「くっ!」
「まずい、このままじゃ!」
「赤の星の主である私に本気で勝てると思っていたのですか、J002?」
 アベルはこう重傷を負ったJに告げた。
「アルマの調整に時間を要しましたが」
「アルマのか」
「はい、ジェイジュエルを制御した事でプロテクトも解除しました」
「くっ、アルマをよくも」
「さあ、ジェイアーク」
 アベルは今度はトモロを見ていた。
「トモロ0117を改造し御前を我等の戦力に加えてあげましょう」
 だがここでだ。そもトモロが言うのだった。
「J]
「どうした、トモロ」
「Gクリスタルより」
 彼もまたダメージを受けながらも言っていた。
「Gパワー」
「Gパワーが!?」
「どうした!?」
 Jだけでなくルネも問う。
「一体」
「何が」
「反応あり」
「何っ!?」
「それは!?」
 するとだった。戦場にだ。176
 緑の光の球がだ。出たのだった。
「あの緑の光は!?」
「護!?」
「無事だったのかよ!」
 皆彼も出て来たのを見て思わず叫んだ。
「心配したんだぞ!」
「今まで一体何処に」
「話は後で!」
 今はその余裕はないというのだった。
「それよりもあの光は」
「・・・・・・・・・」
「あれは!?」
 カインだった。その中にいたのは。
「父さん!?いや、違う!」
「行け!」
 そしてだ。パルパレーパも出て来たのだった。
「その力我等のものに!」
「手前またかよ!」
「今度は何しようっていうの!」
「フュージョンだ!」
 今度はギャレオンを出してだ。命じるのだった。
「そして今こそだ!あの者達を全て!」
「くっ!ガオファイガーでかよ!」
「私達を!」
「さあ、死ぬのだ!」
 彼もまた自分達の勝利を口にした。しかしだった。
 その時。勇者が現れた。
「そうはさせない!」
「むうっ!?」
「あれは」
 その彼はだ。まさしく。
「凱!」
「やっぱり生きていたのかよ!」
「本当に!」
「ああ、皆済まなかった」
 その凱がだ。今戦場に現れたのだ。既にあの黄金の鎧を身にまとっている。
「だが俺はもう!」
「よし!凱が戻って来たぞ!」
「もうこれで勝った!」
「凱が戻ってきて」
「もう負ける筈がない!」
「ギャレオンは知ってるんだ!」
 護もこで叫んだ。
「本当の勇者を!」
「馬鹿な!」
 ここで叫んだのはパルパレーパだった。
「ケミカルボルトから開放される肉体なぞ」
「そうだね、これは」
「一体」
「有り得ない!」
「勇気ある誓いがだ!」
 凱は驚くパルパレーパ達に対して言い返す。
「肉体の常識を超えたんだ!」
「凱・・・・・・」
「凱兄ちゃん・・・・・・」
「命、護」
 凱は二人に対しても言った。
「有り難う」
「いいえ、私の方こそ」
「よく戻って来てくれたよ」
 二人にとってもだ。こう言うべきことであった。
「凱、よく本当に」
「また」
「もう大丈夫だ!」
 凱はまた叫んだ。そうしてだった。
「ジェネシックオーラ!」
「!!」
「光が!」
 Jとルネがそれを見て叫んだ。
「何が起こる」
「一体」
「うおおおおおおおっ!!」
 光が放たれだった。カインの緑の球を退けたのだった。
 その凱にだ。Jが言ってきた。
「獅子王凱よ」
「Jか」
「うむ、復活したようだな」
「ああ、俺はもう迷わない」
 こう彼に返す凱だった。
「敵が何であろうと」
「ソール十一遊星主であろうともだな」
「俺がエヴォリューダーであることが」
 それこそがだと。彼は言うのだった。
「勇気そのものの証なのだから」
「やはり」
 ここでだ。パルパレーパが言った。
「創造主と破壊神は相容れぬ運命」
「自分達が神様だってのか」
「そう言うのね」
「そうだ」
 パルパレーパはこうロンド=ベルの面々に返した。
「我々は神だ」
「この言葉また聞いたな」
「っていうか何度目だよ」
「自分を神だっていう奴」
「シャピロといいポセイダルといい」
「もう幾らでもいるよな」
「全く」
 彼等にとってはだ。まさに聞き飽きた言葉だった。
 しかしだ。パルパレーパは傲然とした言い切るのだった。
「神だけが創造を行うことができる。我等の太陽系もだ」
「違う!」
 凱もまた。そのパルパレーパに対して言い返した。
「それは傲慢だ!」
「傲慢だというのか」
「そうだ。自分達のエゴを優先させ」
 こうパルパレーパにまた言う。
「そしてだ!」
「そしてだというのか」
「他の者達の存在を消し去る!それこそが傲慢だ!」
「やはり貴様は」
 パルパレーパはその凱の言葉を受けてまた言った。
「破壊神なのか」
「違う!俺は神じゃない!」
 凱はだ。それを否定した。
「俺はだ!」
「何だというのだ」
「今それを見せてやる!」
 こう叫んでだ。そうして。
「ギャレオーーーーーーーーン!!」
「ガオオオオオオン!」
 彼を呼び。そして。
「フュゥゥゥジョォォォォン!!」
「ガオファイガーか!?」
「いや、違う!」
「あれは!」
「ガイガァァァァァァッ!!」
 様々なものが凱の周りを取り囲み台風の如く動き回りだ。そうして。
 全てが合体した時。そこにあったのは。
「ガオファイガーじゃないぞ」
「あれは一体」
「何だ、あれは」
「今度の凱は」
「凱兄ちゃんは」
 護がここで驚くロンド=ベルの面々に話した。
「勇者はGクリスタルのエネルギーを得た」
「そのエネルギーを得て」
「そうしてなのか」
「あの姿に」
「新生ギャレオンとフュージョンして」
 どうなったのかを。今話すのだった。
「新たなる能力を秘めた」
「それは!?」
「その存在が」
「あれか!」
「そう、ジェネシックガイガー!」
 黒と金の。まさに獣の中の獣を思わせる姿のその新たな姿を見ての言葉だった。
「それになったんだ!」
「ジェネシックガイガー」
「あれが」
「何か凄いオーラ」
「ああ、感じるな」
「凄いな、これは」
 実際に凱もこう言うのだった。
「エネルギーが身体中にみなぎるぜ」
「新しいガイガーだな」
「それこそが」
「そう、そして」
 護はまた彼等に言う。
「あれが本物のガイガーなんだ!」
「護!」
 その凱が護に言ってきた。
「命を頼んだぞ!」
「うん!」
「よかった、凱・・・・・・」
 命は涙さえ流していた。彼の今を見てだ。
 そうしてだった。護は命を連れて後ろに下がっていく。また戦いがはじまろうとしていた。
「おのれ!」
「命、いいか」
「ええ、凱」
 彼は今は自分に迫るアベル、赤い球体を見ながら命と話していた。
「後でゆっくりと話がしたい」
「後でね」
「そう、後でだ」
 必ず帰って来るというのである。
「待っていてくれ」
「うん、それじゃあ」
「よし!それなら!」
「うおおおおおおおおおっ!」
 その拳を赤い球体に繰り出す。すると。
「うっ!」
「これまでとは違う!」
 こうアベルに言う凱だった。
「俺はもう!」
「何という強さか」
「蘇ったようだな」
 ここでJも言った。
「貴様等の天敵が」
「そうだね」
 Jの言葉にルネが頷く。
「熱いね」
「熱いか」
「ああ、身体も心も」
 彼女は笑顔になっていた。凱の復活と新生がそうさせていたのだ。
 そしてだ。アベルは。
「ここは」
「どうするのだ」
「ソールウェーブを集中させるのです」
 こうパルパレーパに告げるのだった。
「出力はこちらが上です」
「わかった、それではだ」
「御願いします」
「ケミカルフュージョン!」
 彼も変身した。あの姿にだ。
「パルパレーパ」
「来たか!」
「ソールウェーブ発射!」 
 彼はすぐにそれを放った。そうしてだ。
 ジェネシックガイガーを撃つ。今度は凱が退いた。
「くっ!」
「凱!」
「大丈夫か!」
 仲間達が彼に叫んだ。
「いけるか」
「どうなんだ!?」
「再生の力を止めるもの」
 ここでだ。何処からか声がしてきた。
「それは破壊の力」
「!?この声は」
「一体」
「今度は誰だ!?」
「誰なんだ?」
「破壊は新たなゼロへの希望」
 声はだ。驚くロンド=ベルの面々をよそに言い続けてきた。
「無限なる可能性への挑戦」
「そう、それなら」
 そこまで聞いてだ。命が言った。
「私も」
「命姉ちゃん!?」
「凱を、護君を、皆を!」
 彼女がだ。ボタンにその拳を叩き付けた。
「ジェネシックドラーーーーイブ!」
「来た!」
「それが!」
「今こそ!」
 そうしてだった、凱のその周りにエネルギーが広がり。
 さらに多くのものが合わさってだ。さらに雄雄しく猛々しい姿になりだ。それは。
「あれは!?」
「あれこそが」
「そう、あれは」
 ここでまた言う護だった。
「最強の破壊神」
「あれがか」
「あれがなのか」
「その最強の破壊神」
「あれこそが」
「勇気の究極なる姿」
 それだとだ。護はロンド=ベルの面々に話していく。
「僕達が辿り着いた大いなる遺産」
「それか」
「あれが今の」
「そう、その名は」
 名前をだ。護が叫んだ。
「ジェネシックガオガイガー!!」
「うおおおおおおおっ!!」
 凱がだ。今ソール十一遊星主に叫んでだ。
 攻撃を繰り出し。そうして言った。
「俺は貴様等を破壊する!」
「そうなれば」
 アベルも彼の言葉を受けて言う。
「我々もです」
「どうするってんだ、今度は!」
「姑息な手ばかり使って!」
 ロンド=ベルの面々が彼に言う。
「だがな、もうな!」
「負けないからな!」
「暗黒物質の回収に使っていた」
 それをだというアベルだった。
「パスキューマシンの力を使わなければ」
「パスキューマシン!?」
「それは何だってんだ?」
「止められないようですね」
 こう言ってだった。アベルは。
「ジェネシック!」
 こう叫んだ。そしてだ。
「ピサノール!」
「・・・・・・・・・」
「その力を我等の為に解放しなさい!」
「!?ピサノール!?」
「ピサノールって何だ!?」
「一体」
 ロンド=ベルの面々がいぶかしむとだった。不意に。
 太陽がだ。急に熱と輝きを強くしたのであった。
「太陽が!?」
「ルネ、違う!」
 Jがそのルネに言う。
「あれは太陽ではない」
「何だって!?」
「あれこそがだ」
 そしてだ。彼はこう話すのだった。
「再生マシン、ピサノールの本体だ!」
「再生マシン!?」
「そうさ」
 ピルナスが妖しい笑みで話してきた。
「ピサノールの光ある限り」
「何だってんだ!?」
「それで」
「私達は死なないのさ」
 こう言うのだった。そしてだ。
 光の中でだ。これまで以上の大軍が出て来たのだった。
「数にして一千万です」
「それだけいマス」
 命とスワンが言ってきた。
「おそらく。あれだけじゃないです」
「他にも来マス」
「いや、大丈夫だ」
 しかし凱はこう言った。
「無限に再生されるならだ」
「そうだよな」
「幾ら蘇ってきても」
「俺達は」
 ロンド=ベルの面々も言う。
「それでもだよ」
「構うものか!」
「もうな!」
「ここまで来たら!」
「俺達はそれを破壊し続けるだけだ!」
 凱がまた叫んだ。
「幾らでもな!」
「無駄なことを」
「無駄なんかじゃない!」
 護がそのアベルに返した。
「絶対にやれるんだ!今の凱兄ちゃん達なら!」
「ジェネシックオーラの無限波動は」
 また言う凱だった。
「貴様等の存在を許しはしない!」
「現実を直視するのです」
 だがアベルの言葉は冷たいものだった。
「ジェネシックよ」
「限りある生命しか持たぬ者達よ」
 そしてパルパレーパもまた。
「不死身の我等とどう戦う?」
「勝利をこの手に掴むまで!」
 だが凱も皆もだった。
「俺の勇気は死なない!」
「俺達だってな!」
「何があってもな!」
「死ぬものか!」
「絶対に!」
「悲しき破壊神」
 凱のことに他ならない。
「無駄なことを」
「無駄ではない!」
「何っ!?」
 大河の声だった。そうしてだ。
 パピヨンもだ。モニターに出て来て言うのだった。
「間に合いましたね」
「パピヨン!」
「凱さん、よくぞ」
「ああ、パピヨンもだな」
「はい、それでは皆さん」
「はい!」
 ボルフォッグだった。彼が最初だった。
「復活です!」
「遅れてすいません!」
「けれど何とか!」
「まだはじまっていないか」
「本当にぎりぎりだったようだな」
 氷竜に炎竜、風龍に雷龍だった。
「そうね」
「よかったです」
 光竜に闇竜だった。
「もう許さないもんねーーーーーーーー!!」
「これまでの借り返してやるぜ!」
 マイクとゴルディマーグもいた。全員であった。
「GGG全員復活です!」
「ああ、よく戻ってきてくれた!」
 凱がボルフォッグに笑顔で応える。
「これで完全に勝てる!」
「我々は」
 ここで大河がアベル達に言ってきた。
「君達にだ」
「私達に」
「何だというのだ」
「その勇気を試された」
 そうだというのである。
「パレッス粒子で神経を侵され」
「あれで終わる筈だった」
 パルパレーパの言葉だ。
「完全にだ」
「平和を望む心を利用された」
 大河の言葉はまだ続いていた。
「戦うことだけが勇気ではない」
 そうだとも言う。
「だが」
「だが、ですか」
「そこでさらに言うのか」
「そうだ、戦わざることも」
 こう言うのであった。
「勇気とは言えない!」
「ああ、そうだ!」
「それがわかっているから!」
「俺達も!」
「ここに!」
「諸君!」
 声をあげたロンド=ベルの面々にも話していた。
「今ここに宣言しよう!」
「ああ!」
「今こそな!」
「それを!」
「我々は戦う!」
 これが大河の宣言だった。
「それが我々の信じた勇気の誓いである以上」
「それ以上はな!」
「絶対にな!」
「戦う!」
「何があっても!」
「そうだ!」
 その通りだと言ってだった。最後の言葉は。
「生命ある限り!」
「おい、いいな!」
 火麻もいた。いつもの彼だった。
「最強勇者ロボ軍団!」
「はい!」
「行くんだな!」
「ああ、そうだ!」
 こう彼等に言ってだった。
「出撃!」
「全軍攻撃開始!」
「攻撃目標ソール十一遊星主!」
 こうロンド=ベルの面々も次々に言っていく。
「そしてだ!」
「勝利を我が手に!」
 こうしてであった。遂に決戦がはじまるのだった。
 ロンド=ベルは全軍でその一千万の大軍に向かう。パルパレーパがその彼等を見てだ。これまで通りの態度でこう言うのだった。
「そうだ、それでいい」
「そうですね」
 アベルもそれに応える。
「弱過ぎてはです」
「倒すに値しない」
「ではここは」
 アベルが同胞達に告げてきた。
「まずは様子を見ましょう」
「うむ、それではな」
「今はね」
 こうしてだった。ソール十一遊星主達は今は姿を隠したのだった。
 戦いがはじまろうとしていた。その中でだ。
「行くぞ、女」
「ああ」
 ルネがだ。ジェイアークの中でJに応えていた。
「この船でね」
「無理ならばだ」
 Jはこうルネに言うのだった。
「ジェイアークから降りるよ」
「いや、いけるよ」
「大丈夫なのか」
「あんたと同じだよ」
 不敵に笑ってだ。こう彼に言うのであった。
「J、あんたとね」
「そう言うのか」
「そうさ。だからね」
「女、いやルネよ」
「行くよ」
 ルネの方からの言葉だった。
「あたし達はまだ負けちゃいないよ」
「うむ、その通りだ」
「無駄な真似を」
 ここでまた言うアベルだった。
「アルマによってJジュエルの力を凍結した今」
「そのことか」
「そうです。何が出来るのです?」
「簡単なことだ」
「簡単だと」
「そうだ、御前達を倒しだ」
 こうアベルに返すJだった。
「そのうえでJジュエルの凍結を解き」
「そうして?」
「アルマを取り返すだけだ」
「言葉では簡単ですが」
「そうしてみせる!」
「あたし達がね!」
 Jとルネが今炎になった。そうしてだった。
「一斉射撃!」
「了解」
 トモロが応える。そのうえで一斉射撃が繰り出される。
 それが合図となってだ。両軍の戦いがはじまったのだった。
 戦いがはじまってだ。一時間程した時だった。
「随分減らしたよな」
「ああ、もうな」
「十分の一位にまではやったな」
 ケーンにタップとライトが話す。
「派手にやったからなあ」
「そうだな。俺達頑張ったな」
「ああ、しかしここでなんだよなあ」
「その通りです」
 ルリが出て来て三人に言ってきた。
「レーダーに反応です」
「よし来た!」
「来たけれど全然嬉しくないぜ!」
「全くだね、こりゃ」
 三人は呆れながら言う。
「しかしそれでも」
「ここはな」
「踏ん張りどころだね」
「はい、御願いします」
 そしてだ。ルリはこう言った。
「根性です」
「根性って」
「ルリルリがその言葉出すのね」
 メグミとハルカが今のルリの言葉に少し驚いていた。
「何か変わりましたね、ルリちゃんも」
「それもかなりね」
「皆さんのお陰です」
 ルリは微笑んでこう言うのだった。
「だからです」
「今は凱さんを見て」
「それでなのね」
「あの人は絶対にやってくれます」
 彼への信頼をだ。ここで見せてだった。そのうえでだった。ユリカに言うのであった。
「では艦長」
「はい、ナデシコもですね」
「前に出ましょう」
「わかりました。それなら」
「総攻撃です」
 敵がどれだけようともだった。彼等も引かない。そしてだった。
「ドリルニーーーーーーーーーーーーッ!!」
 凱がだ。その攻撃をパルパレーパに直撃させた。それでだ。
 パルパレーパは爆発しながら大きく吹き飛んだ。それを見てだった。
「やったか!?」
「これで!」
 皆勝ったかと思った。しかしであった。
「まだだ!」
「くそっ、まだ死なねえか!」
「しぶとい!」
「パルパレーパ=プラジュナー!」
 こう叫んでだった。彼は復元するのだった。
「まさか」
 それを見てだ。凱も言う。
「さらにパワーアップしたのか!?」
「教えてやろう」
 パルパレーパがだ。凱荷言うのである。
「貴様等には生きる資格なぞないことを!」
「黙れ!」
「そんな台詞これまで飽きるまで聞いたぜ!」
「理屈もな!」
 誰もがすぐに言い返す。
「手前如きにな!」
「俺達の命についてとやかくな!」
「言われてたまるか!」
「俺達はだ!」
 そしてだ。彼等は言うのであった。
「今この瞬間も生きている!」
「それを誰かが認めない!」
「そんなのはね!」
「間違ってるのよ!」
「生きる資格」
 そして凱であった。
「それはもがきあがくことでだ」
「どうだというのだ、それで」
「勝ち取るものだ!」
 そうしたものだというのである。
「それが生きる資格だ!」
「ならばだ」
 パルパレーパは何を言われても変わらない。
「創造主たる我々が」
「神がか!」
「そうだ。神がだ」
 まさしくだ。己をそれだと言ってであった。
「それを教えてやろう!」
「また倒してやる!パルパレーパ!」
「破壊神よ」
 その凱に他ならない。
「いや滅びを呼ぶ悪魔よ!」
「悪魔か!この俺が!」
「神に逆らう者こそが悪魔」
 それでだというのだ。
「その悪魔こそが貴様だ!」
「上等だ!」
 凱はその誹りを正面から受け下がらなかった。
「ならこの悪魔が神を倒す!」
「去れ!」
 戦いはまだ続く。それはさらに激しくなっていくのであった。


第八十七話   完


                                     2011・1・4
 

 

第八十八話 不死鳥は炎より

              第八十八話 不死鳥は炎より
「これでだ!」
「終わりだ!」
 ジェイアークがピア=デケムに一斉射撃を浴びせた。それによってだ。
 大破させる。しかしそのすぐ傍からだ。復活してくるのだった。
「くっ、まだか!」
「まだ立ち上がるってのかい!」
「無駄だとわかっているのに」
「全くですね」
 ここでも言うピルナスとアベルであった。
「随分と一生懸命ね」
「そうですね。それならばです」
 アベルが言うのであった。
「こちらも少しはです」
「本気を出すのですね」
「はい」
 そうだとだ。表情を変えずにピルナスに話してであった。
「そうしなくては可哀想ですしね」
「くっ、こいつ」
「何処まで傲慢なんだ」
 その傲慢さにだ。ロンド=ベルは誰もが嫌悪を感じた。
「これが神を気取った奴の果てか」
「それだってのかよ」
「いえ、私達は神です」
 まだこう言うアベルであった。
「ではその神の力をです」
「見せてあげるわよ」
「ギガ=フュージョン!」
 まずはこう叫んでだった。そうして。
「ピア=デケム=ピーク!?」
「変形しただと!?」
「戦艦が人型に」
「そうなったってのかよ」
「ここで」
「そうです。これこそがです」
 驚く彼等にだ。またアベルが言ってきた。
「このピア=デケムの真の姿です」
「さあて、それじゃあ」
 ピルナスが妖艶な笑みで述べてきた。
「誰から血祭りにあげちゃおうかしら」
「それは決まっています」
 アベルはピルナスに話した。
「やはりここはです」
「そうね。J002ね」
「はい、彼しかいません」
「それならね」
「今から」
 彼等はすぐにだ。ジェイアークに向かう。そうしてであった。
「それではです」
「覚悟しなさい」
 その巨体で体当たりを仕掛ける。するとだった。
 それでジェイアークは後ろに大きく吹き飛んだ。大破寸前だった。
「くっ!」
「J!」
「ルネさん!」
 仲間達が二人の名前を叫ぶ。
「無事か!?」
「トモロも!」
「生きているのか!?」
「な、何とかね」
「機能シテイマス」
 すぐにルネとトモロの返答が来た。
「Jもね」
「無事です」
「さあ、いいかしら」
 ピルナスがそのルネに言ってきた。
「甘えた声で泣きなさい」
「何っ!?」
「貴女は獅子なんかじゃなくて」
 戦艦のその中でだ。鞭を手に言うのである。
「子猫ちゃんなんだから」
「貴様、まだあたしを」
「何でも言うことを聞くと仰い!」
「誰が!」
 ルネはだ。そのピルナスを睨み返して言った。
「言うものか!」
「そうだ!」
 Jもそれに続く。
「戦士として誇りを捨てる位ならだ」
「どうだっていうのかしら」
「私は戦って死ぬ!」
 こうルネに言うのである。
「それ位ならばだ!」
「J・・・・・・」
「暗い迷宮を彷徨い続け」
 そうしながらだと。彼は過去を振り返りながら話していた。
「ようやく私はだ」
「J・・・・・・」
「あんた、そうして」
「そうだ、戦士として大空を羽ばたくことができた」
 こう仲間達にも話す。
「だからだ」
「それでか」
「今も」
「私は戦う」
 こう言ってであった。そして。
「死ぬのは御前達害虫を駆除してからだ!」
「駆除ねえ」
「そうだ、駆除だ」
 ピルナスにも言い返す。
「御前達はだ。私が駆除する」
「それじゃあ」
 ここでだ。ピルナスは動いた。そうして。
「こうすることかしら」
「くっ!」
「攻撃するってことよね」
 ピア=デケムの言葉と共に無数の艦載機が出てだ。ジェイアークを攻撃したのであった。
「そうよね」
「おのれ・・・・・・」
「さあ、ソルダートJと子猫ちゃん」
 ルネもであった。
「仲良く炎の中で燃え尽きなさい!」
「熱い」
 しかしだ。その猛攻の中でルネは言うのだった。
「熱い。何でかね」
「熱いか」
「ああ、もう何も感じちゃいないのに」
 こうJにも返す。
「どうしてなんだろうね、これは」
「私にとってはだ」
 Jはここでルネにこう言うのだった。
「いつものことだ」
「これがだってのかい」
「そうだ。そしてだ」
「そして?」
「一つだけわかっている」
 声はだ。諦めているものではなかった。
「それはだ」
「それは?」
「不死鳥は」
 彼は言った。
「炎の中から蘇る!」
「炎の中から」
「私は諦めない!」
 そしてだ。こうも言うのであった。
「何があろうともだ!」
「だからだね」
 彼の言葉でだ。ルネもわかった。
「この熱さは」
「そうだ、だからこそだ」
「それなら!」
 ルネはだ。もう一度立ち上がった。炎の中で。
 立ち上がりだ。その彼等を見てだ。
「何だ?パワーが戻ってる!?」
「まさか」
「いや、そのまさかだ」
「これは」
 誰もがだ。それを見て話した。
「これは一体」
「何でだ?」
「あの状況で」
「まさか」
 そしてだった。J自身が言うのだった。
「Gストーンのハイパーモードがだ」
「それが?」
「そうだ、それがJジュエルを復活させたのか」
 こうルネに話すのだった。
「これは」
「共鳴することで」
 そしてだ。それを聞いてルネも考えた。
「お互いがパワーアップしている!?」
「こんな現象ははじめてだ」
「そうだね」
 見れば二人は手を握り合っている。ルネはその手を見てまた言った。
「この手を離せば」
「離せばか」
「また消えちまいそうだね」
 こう言うのだった。
「それだけでね」
「そうだな。確かに」
「けれどね」
 そしてだ。ルネはここでこうも言った。
「死ぬのはね」
「そうだな。それは」
「害虫駆除が」
「終わってからだ!」
 二人で同時に言う。またともろも。
「凍結プログラム解除」
 ジェイアークのだった。するとだ。
 ジェイアークがだ。また動きだしたのであった。その中で。
「行くか」
「ああ」
「大丈夫だな」
「凄い衝撃だけれどね」
 それでもだと。不敵に笑ってJに返した。
「それでもね」
「それではだ。行くぞ」
「ああ」
「メガフュージョン!」
 二人同時に叫んでであった。
 ジェイアークが変形した。この艦も人型になったのだ。
「何っ!?」
「ジェイアークもだって!?」
 アベルとピルナスが驚きの声をあげた。
「ジェイアークが」
「ピア=デケムと同じように」
 変形したことにだ。驚きを隠せなかったのだ。しかしであった。
 ロンド=ベルにとってはだ。これもまた希望であった。
「よし!これは!」
「最強コンビの誕生だ!」
「まただ!」
「誕生だぜ!」
 そして二人もであった。
「ソール十一遊星主!」
「今度こそアルマを返してもらおう!」
 そうしてだった。その攻撃は。
「ルネ、しっかり捕まってろ」
「ああ」
 二人で言い合っていた。心を重ねて。
「あんたを信じてるよ」
「それならだ」
「ジェフェニックス!」
 手をつなぐ二人の間に炎が宿り。それが。
 不死鳥となった。それがだ。
「不死鳥は!」
「炎の中から!」
「蘇れる!」
 不死鳥が向かいだった。そして。
「これが私の!」
「力だ!」
 それがピア=デケム=ピークを撃った。その一撃で戦艦は動きを完全に止め各部から炎を出した。致命傷は明らかであった。そして。
「アルマ!」
「無駄です」
 ここでだ。またアベルがJに言うのだった。
「こちらのダメージはです」
「今度は何をしたというのだ!」
「アルマに直接伝わるように調整しておきました」
 そうだというのであった。
「ですからお好きなだけ攻撃して下さい」
「くっ、こいつ・・・・・・」
「何て野郎だ」
「何処まで卑劣だっていうの」
「一体・・・・・・」
 ロンド=ベルの面々がだ。さらに怒りを覚えた。
「こういう奴にも何度も会ってきたけれど」
「本当に何度会っても」
「許せねえ・・・・・・」
「こいつ等も」
「近付けば馬鹿力で」
 ルネは戦艦を見て言っていた。
「離れれば艦載機で」
「しかもだ」
 Jも言う。
「アルマを奴の腹から抜き出そうにもだ」
「それもなんだね」
「この艦の一撃ではだ」
 それではというのだ。
「あの装甲を貫通させることはできん」
「じゃあどうするんだよ」
「ここは」
「戒道君は」
「構わん」
 しかしだ。Jはこう仲間達に答えた。
「このまま攻撃を続ける」
「な、何っ!?」
「このままだって!?」
「嘘だろ、そんなことしたら」
「あの坊主が」
「構わんと言っている!」
 だが。Jの返答は強かった。
「それでもだ!」
「アルマを殺す気ですか、J」
「そうだ」
 こうアベルにも答えるのだった。
「殺す気だ」
「えっ・・・・・・!?」
「J、本気かよ」
「あんたまさか」
「アルマも戦士だ」
 これがだ。Jの仲間達への返答だった。
「我等が敗北してまでだ」
「それでか」
「そういうことね」
「生き残りたいとは思わない筈だ」
「わかった」
 最初に彼に頷いたのはキリコだった。
「その言葉。受けた」
「そうだね」
 そしてだ。ルネも頷いたのだった。
「Jの言う通りにしよう」
「け、けれどよ」
「それでも」
「そんな・・・・・・」
 殆どの面々は尻込みする。特にだった。
「そ、それはやっぱり」
「駄目なの、慎悟君」
「は、はい」
 彼はだ。こう真名に返すのだった。
「どうしても」
「気持ちはわかるわ。けれど」
「仕方ないんですね」
「ええ。それはやっぱり」
 ここでだ。真名は辛い顔で言うのだった。
「私達、ガオガイガーのことはよく知らないけれど」
「それでもですね」
「絆はわかるわよね」
 真名が言うのはこのことだった。
「それは」
「確かに。そう言われますと」
「私達のそれと同じ、いえそれ以上に深いかも知れないわ」
「それでもなんですね。Jさんは」
「ええ、多分ね」
「感じます」
 シーラもだ。言うのだった。
「彼から。悲しみのオーラが」
「そうですね。これは」
「彼が一番辛いのです」
 エレと共にこのことを話すのだった。
「最も」
「それでも。ここはあえて」
「それならここは」
「Jさんの為にも」
「あの戦艦を」
 誰もがだ。決断するしかなかった。そして彼等は決断したのであった。
「よし、それなら」
「やるか」
「今は」
「感謝する」
 ここでだ。Jも彼等に礼を告げた。
「勇者達よ」
「いや、いいさ」
「心がわかったから」
「だから」
「それよりも!」
 彼等は今為すべきことをだ。見出したのだった。
「自分から神を名乗る奴に碌な奴はいねえ」
「こいつはもう法則だな」
「何処までも卑怯な」
「許せん!」
「貴様等、ここでだ!」
「完全に破壊してやる!」
 戦士達の心に炎が宿った。
「今ここでだ!」
「完全に!」
「弱者は滅びる!」
 だが、だ。パルパレーパの言葉は不変だった。
「それが物質世界の掟だ!」
「ならばその掟諸共!」
 凱が言い返す。
「俺は貴様等を破壊する!」
「死があるからこそだ!」
 Jもいる、
「生命はもがき生きようとする!」
「ましてや戦いにおいてはだね!」
「尚更だ!だからこそ!」
 Jはルネの言葉を受けながら続ける。
「死を超越したと驕り再生に身を任せている貴様等なぞに」
「負ける道理はないさ!」
「ジェネシックオーラと俺の勇気が溢れる限り」
 凱もここでまた叫ぶ。
「貴様達は消滅する!俺のこの力によって!」
「皆いいな!」
「ああ!」
「雑魚は俺達が引き受ける!」
 皆勇者達に告げる。
「だから凱、御前は!」
「Jとルネは!」
「あのパルパレーパに!」
「ピア=デケムに!」
「わかった!」
「済まない!」
 彼等もその言葉を受けてだ。一気に突き進むのであった。
 ジェネシックガオガイガーがパルパレーパと対峙する。すぐにであった。
「こうなればだ」
「何をするつもりだパルパレーパ!」
「神の鉄槌を見せよう」
 こう言ってなのだった。
 背中にあるものが分解されそのうえで彼の前で合さりだ。銃の様なものになった。
「銃!?」
「ちがう、あれは」
「砲!?」
「それか!」
「神の裁きだ」
 またこう言うパルパレーパだった。
「それで貴様を裁こう」
「面白い!それならだ!」
 凱もそれを受けてだった。
「ヘルアンドヘブン!」
「ゴッドアンドデビル!」
 両者が向かい合い。そして。
 同時に攻撃に移った。互いに突撃する。
「うおおおおおおおおっ!!」
「受けるのだ!」
 その激突の後でだった。残ったのは。
「ぐうっ・・・・・・!」
「凱!」
「やった、凱が!」
「凱が残ったぞ!」
 ジェネシックガオガイガーであった。残ったのだった。
「見たか!」
「ラウドGストーンのパワーを」
 パルパレーパは大きく吹き飛び致命傷を受けながらも言うのだった。
「プラジュナーの無限出力を上回る筈がない」
 これが彼の主張だった。
「何故だ」
「何故かか」
「貴様のパワーは何処から来る!」
「まだわからないのか!」
 こう返す凱だった。
「ゾンダーメタルがだ」
「あれがだというのか」
「ストレスをエネルギーに変換する物質だったように」
 彼は既にこのことを知っていた。
「Gストーンも!」
「それもか」
「そうだ!ユウキをエネルギーに変える生命の宝石だ!」
 まさにそれだというのである。
「エヴォリュダー」
「今度はそれか」
「Gストーンとサイボーグが融合した超進化動力体」
 凱のその言葉が続く。
「俺自身にユウキが満ち溢れている限り」
「そうだ!凱にそれがある限りな!」
「決して!」
「何があろうとも!」
 仲間達もここで言う。
「絶対に!」
「負けるものか!」
「Gストーンの原石Gクリスタルの力を受け継ぐ」
 それは何かというと。
「ジェネシックガオガイガーの力は」
「それはか」
「無限を超えた絶対勝利の力だ!」
「おのれ!」
「俺達は銀河全ての生命を背負ってここにいる」
 凱はその覚悟も見せた。
「だから負ける訳にはいかないんだ!」
「くうっ!」
 パルパレーパも今は歯噛みするしかなかった。そして。
 J達もであった。ルネが彼に告げた。
「J、今だよ!」
「わかっている!」
 彼も彼女の言葉に応えてだった。そのまま突き進み。
「ここはだ!」
「あれだよ!」
「!いけません!」
 その二人を見てだ。ボルフォッグが叫んだ。
「その敵はまだ!」
「よし、今ね!」
「はい」
 再び不死鳥になる二人を見てだ。ピルナスとアベルがそれぞれ言う。そしてだ。
 戦艦が動きだ。一斉に艦載機を放ってきた。
「これで!」
「私達の勝ちです」
「それはどうか!」
 しかしだ。艦載機を放つその瞬間に動きを止めた戦艦にだ。Jが言うのだった。
「その程度の罠はだ!」
「こっちだって承知なんだよ!」
「何っ、一体」
「これは」
「おおおおおおおおおおお!」
「不死鳥は一羽じゃない!」
 二人は一撃目で艦載機を蹴散らしだ。もう一撃で。
 その戦艦の中央を叩いたのだった。そしてそれだけではなかった。
「トモロ!」
「了解」
 トモロはだ。常に彼と共にあった。
「メイン動力炉全開」
「よし!」
「ジェネレイティングアーマー出力全開」
 そして」
「全リミッター解除」
「行くぞ!」
「この一撃で!」
 ピア=デケムに体当たりをしてだ。その胸に飛び込み。
「よし、これで!」
「どうだ!」
「なっ、アルマを」
「奪い返したってのかい!?」
「そうだ」
 その通りだとアベルとピルナスに返すJだった。ジェイアークの手の中にはその彼がいた。
「パルス=アベル」
 アベルを指しての言葉だった。
「アルマは確かに返してもらったぞ」
「おのれ、まだ」
「そうだ。貴様を倒さぬ限り」
 Jもまた戦意を見せるアベルに返す。
「この戦い終わりはしない!」
「けれどこれで」
「ああ」
「もうな」
「敵は」
 丁度この時だった。彼等の周りの敵はだ。
 一機もいなくなっていた。それで誰もが言うのであった。
「終わりだよな、これで」
「流石に」
「もう飽きるまで倒したし」
「流石に」
「言った筈です」
 だがここでまたピア=デケムが出て来た。アベルとともにだ。
「私達を倒すことはできないと」
「何っ、まだかよ!」
「また出て来た!?」
「ってことは」
「また」
「その通りだ」
 そしてだ。パルパレーパもまた立ち上がってきた。彼も生きていたのだ。
「最後に勝つのは我々神だ」
「なら教えてやる!」
 凱がここでも彼と対しながら言い返す。
「御前達は神などではない!」
「まだそう言うか」
「それを見せてやる!」
「ならば来い」
 そしてだった。彼等はまた。
「ヘルアンドヘブン!」
「ゴッドアンドデビル!」
 お互いに突っ込む。そうしてであった。
 またしても互いに吹き飛び合った。
「ぐっ!」
「うおおおおおおおっ!」
「相打ち!?」
 誰もが最初はそう思った。
「ここは」
「いや、違う!」
「凱が!」
「あの苦しみ方は!」
「くっ・・・・・・!?」
 見ればだ。凱の様子がおかしかった。異様に苦しんでいたのだ。
「こ、これは」
「攻撃と防御を兼ね備えたヘルアンドヘブンとて」
 今度はパルパレーパが話すのだった。
「推進システムには僅かな隙が生じる」
「まさかその隙に」
「あいつは」
「そうだ。ジェネシックも所詮は物質!」
 これが彼の狙ったところだった、
「ケミカルナノマシンの点滴を受けては勇気どころではあるまい1」
「不純物が身体の中に・・・・・・くわああっ!」
「まだわからんか」
 パルパレーパがここでも凱に告げる。
「貴様の命運は既に決していたのだ」
「そうだと言うのか!」
「仲間達はどうした!」
 パルパレーパの言葉が続く。
「力を合わせることもできない弱き者達にだ」
「何だという!」
「生きていく資格なぞ摘み取れるものか!」
「くっ、まだだ!」
 何とか立ち上がろうとする凱だった。しかし。
「うっ!」
「凱!」
「どうした!」
「勇気が身体が砕かれる!」
「滅びの悪魔よ、去れ!」
 再びゴッドアンドデビルが浴びせられようとする。それを見て。
「くっ、凱!」
「今行くぞ!」
 最初に動いたのは甲児と鉄也だった。
「雑魚は後回しだ!」
「まずは凱を!」
「そうだ、僕も行くぞ!」
 そして大介もだった。
「凱君、頑張るんだ!」
「待って、これは!」
 だがここで。マリアが三人に叫んだ。
「レーダーにまた反応が!」
「何だ!?また援軍かよ!」
「構うものか、今はだ!」
「凱君を先にだ!」
「諦めるな健一」
「そうだ、竜崎一矢よ!」
 あの二人の声がした。
「他の敵は余達に任せよ!」
「御前達はそのまま仲間を救え!」
 ハイネルとリヒテルだった。そして彼等の軍もいた。
「兄さん!?」
「リヒテル、来てくれたのか!」
「宇宙の危機、そして御前達の危機に駆けつけずどうする」
「我等とて宇宙にいる者だ!」
 これが二人のことばだった。
「御前達は行くのだ!」
「宇宙収縮現象を止めるのだ!」
「また無駄死にする者達が来ましたか」
「無駄死にかどうかそれは貴様等にはわからん!」
「生命の尊さを知らぬ貴様等にはな!」
 二人はアベルにも返した。
「決して負けはせぬ!」
「それを見せてくれよう!」
「無駄なものは無駄なのです」
 しかしまだこう言うアベルだった。
「我々には・・・・・・!?」
「何だい、これは!」
 ここでだ。ピア=デケムが突如として攻撃を受けた。そしてだ。
 今度はバッフ=クラン軍が来た。そこにいるのは。
「姉さん!?」
「カララよ、今はその命預けておく!」
 旗艦からだ。ハルルが言ってきたのだった。
「今はそれよりもだ」
「わかってくれたというの!?」
「違う。私達の当面の最大の障害を排除するのだ」
 これが彼女の返答だった。
「それだけだ」
「けれどそれでもなのね」
「今は御前達と戦うつもりはない」
 断言であった。
「それは間違いない」
「そう、有り難う」
「礼を言われることもない」
 それもいいというのだった。
「それだけだからな」
「これも」
 ギジェがそのハルルの言葉を聞きながら呟く。
「イデの導きによるものか」
「応戦です」
 アベルはバッフ=クラン軍についてもこう言った。
「我々の目的の障害となるものはです」
「全部だね」
「はい、全てです」 
 その通りだと。ピルナスにも言う。
「排除します」
「そういうことね。じゃあ」
「この連中は全然わかってねえな」
 バサラが見据えながら言った。
「何一つとしてな」
「皆死にたくないんだ!」
 コスモがバサラの言葉を代弁する形になっていた。
「皆生き延びたいんだよ!」
「そうだ!」
 竜馬も言う。
「俺達の生命は一つしかない!」
「だからこそ価値がある」
「そういうことだよな」
 隼人と武蔵も同じであった。
「そのたった一つの生命で」
「俺達は生きて」
「こうして必死でそれを守る為に戦うんだ!」
「無限に再生される生命があるとすれば」
 ヒイロも言う。
「それは偽りだ」
「凱、聞こえるか!」
 宙は彼に叫んだ。
「皆生きる為に戦っているぞ!」
「そうだ!」
 アルトもであった。
「諦めている奴なんか誰もいない!」
「皆が勇気と共にあるわよ!」
「私達もです!」
 シェリルとランカはもうステージにいた。
「だからこうして」
「歌います!」
「皆がね!」
「勇気と共にだ!」
 ルネとJもだった。
「ここにいるんだ!」
「勇者だ!」
「だからこそ私達も」
「今こうしてここにいて」
「そして戦い」
「諦めない」
 氷竜、炎竜、風龍、雷龍だった。
「Gストーンにそれが伝わる」
「皆の勇気が」
「我々にも」
「今確かに」
「何て暖かいの」
「そして美しい」
 光竜も闇竜もそれを感じ取っていた。
「これが勇気の力なのね」
「あらゆるものよりも美しい」
「私にもわかりました」
「そうだもんね!」
 ボルフォッグとマイクもだった。
「全てのGストーンがリンクするkとおを!」
「勇気がパワーをくれるもんね!」
「行くぜ!」
 最後はゴルディマーグだった。
「ここまで来て負けることはないぜ!」
「立て、勇者よ!」
「今コソデス」
 Jとトモロが凱に告げる。
「勇気と共に!」
「ソシテ勝利ヲ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 その勇者が。今再び立ち上がった。
「よし、やったぜ!」
「流石凱だ!」
「勇者だ!」
「本当の勇者だ!」
「馬鹿な!」
 パルパレーパはそれを必死に否定しようとする。
「ケミカルナノマシンが効かぬ筈がない!」
「俺は超人エヴォリュダー」
 凱はこうその彼に返した。
「ウィルスの書き換えは完了した!」
「何っ、それでは」
「そうだ!」
 またパルパレーパに告げる。
「そっちに返すぜ!」
「ぬおおおおおっ!!」
「喰らえーーーーーーーーーーーっ!」
 両者激突し。再び吹き飛び合った。パルパレーパは態勢を立て直しそのうえでだ。あらためてこう言うのだった。彼も不屈である。
「不滅なるエネルギー」
「それがか!」
「これこそが正義なる神の力だ!」
「むっ!」
 今度は彼から凱に体当たりする。そうしながら。
「絶対勝利!」
 それこそがだと言う。
「それは神の力だ!」
「ぬうっ!」
「大丈夫だ!」
「勇気と共に!」
「勇気を忘れるな!」
 仲間達がまた彼に言う。
「勇気は不滅だ!」
「決して!」
「凱!」
 そして命もだった。
「勇気の力を!」
「命・・・・・・」
 彼も命のその言葉を聞いた。そして。
「そうだったな」
「ええ、だから」
「見せてやる!」
 凱のその心にさらに勇気が宿った。
「本当の勇気の力を!」
「ええ、見せて!」
「ふん、それならばだ!」
 パルパレーパも言うのであった。
「見せてもらおうか!」
「うおおおおおおおおおっ!」
「なっ、これは!?」
 激しい衝撃と共にであった。パルパレーパは吹き飛びだった。
「御前達がだ!」
 凱はだ。激しい攻撃に転じていた。
「GGGを封じようとしたのも!」
「どうだというのだ!」
「Gクリスタルに近付けなかったのも!」
 攻撃しながら言葉を続ける。
「ガオファイガーを孤立させたのも!」
「むうっ!」
「俺達の地球に直接攻撃しに来なかったのも!」
「どうだというのだ!」
「全てが御前等が恐れていたからだ!」
「一体何をだ」
 攻撃されながらもだ。パルパレーパは凱に問うのだった。
「それは」
「Gストーンの力を高め!」
 それが何か。既にわかっている凱だった。
「ラウドGストーンの力を超える!」
 攻撃はこの間にも続いている。
「勇気から生まれる」
「くっ、言うか」
「このエネルギーを!」
「ほざけ!」
 ここでパルパレーパは激昂した声を出した。
「神が恐れるものなどない!」
「いや、ある!」
 すぐにそれを否定する凱だった。そして。
「おおおおおおおおおおっ!」
 ヘルアンドヘブンを出しそれでさらに大きく吹き飛ばしてからだった。
「これがだ!」
「ぬうう・・・・・・」
「Gストーンを持つべき勇気ある者の」
 そしてそれこそがだと。凱は言った。
「絶対勝利の力だ!」
「しかしだ!」
 だが、だった。ここでもパルパレーパは立ち上がるのだった。
「完全勝利」
「まだ立つか!」
「そうだ、それこそがだ」
 修復しながらだ。彼は言うのであった。
「神の力だとな」
「貴方達の負けです」
 そしてアベルも言うのだった。
「所詮神には」
「さて、それはどうかな」
「やっぱり気付かなかったようだね」
 ここでJとルネが彼等に言ったのだった。
「我々のことに」
「その傲慢さ故にね」
「何っ!?」
「来たぞベス!」
 ハタリがベスに告げる。
「今だ!」
「よし、皆ソロシップの周りに集まれ!」
 ベスもすぐに言う。
「ショートDSドライブで敵の中枢に飛ぶぞ!」
「何っ!?」
「それでは」
「我々が何の為にだ」
 グローバルが彼等に言う。
「GGG艦隊を離脱させたかだ」
「正確な座標がわかればね」
 リツコも言う。
「歪んだ時空間でも跳躍が可能となるのよ」
「GGG艦隊の先行はその為ってことよ」
 ミサトもであった。
「そういうことだったのよ」
「くっ、ここは!」
「行かせはしません!!」
 ピルナスとアベルはすぐにピア=デケムを向かわそうとする。しかしだった。
「誰でもいい!」
 ブライトが指示を出す。
「近くにいる機体はソロシップを守れ!」
「全艦、砲撃!」
「よいな!」
 バッフ=クランもハイネル達もだった。
「攻撃目標は黒い艦だ!!」
「狙え!」
「くっ、これでは!」
 近寄れなかった、アベルも今は歯噛みするしかなかった。
「近寄れません」
「今だ、ハタリ!」
「おう!!」
 こうしてだった。彼等はショートDSドライブでそこに向かう。遂にソール十一遊星主とのだ。最後の戦いの時が来ようとしていたのだった。


第八十八話   完


                                    2011・1・7 

 

第八十九話 超勇者黙示録

             第八十九話 超勇者黙示録
 彼らが来た世界。そこは。
 白い墓標のようなものが下に連なる。そんな異様な白い世界だった。
「ここが敵の中枢か」
「みたいだな。それにしても」
「この足元は一体」
「何だ?」
「どうやら」
 ここで言うのはボルフォッグだった。
「この宙域全てが物質復元装置なのです」
「奴等のか」
「そうか、ここがか」
「ここが敵の」
「ここまで来るとは思いませんでした」
 アベルがだ。その戦艦で出て来た。
「予想外でした」
「そうだな」
 そしてパルパレーパもであった。
「神をここまでてこずらせるとはな」
「ですがそれも最後です」
「ここが貴様等の墓場になる」
「来たか!」
「ソール十一遊星主!」
「ここで!」
「いいか、皆!」
 ベスが仲間達に言う。
「ここはだ!」
「ああ、ここは」
「どうすればいいんだ、俺達は」
「奴等を倒すにしても」
「すぐに復活するしな」
「あのポイントだ!」
 ある点をだ。コンピューターで指し示して話すのだった。
「あのポイントに凱を到達させる!」
「そうすればいいんだな!」
「そうすれば奴等は」
「ここで」
「そうだ、この戦いが終わるんだ」
 あえてこの表現を使うベスだった。
「この長い。ソール十一遊星主との忌々しい戦いも」
「よし、それならな」
「絶対に!」
「やってやるわよ!」
 皆言う。そうしてであった。
「全軍突撃!」
「凱をあそこまで行かせろ!」
「いいな!」
 嫌でも気合が入った。そこでだ。ボルフォッグも言うのだった。
「急いで下さい!」
「何だ、ボルフォッグ」
「何かあるの?」
「計算の結果ですが」
 それでわかったというのである。
「我々に残された時間はです」
「ああ」
「それは一体」
「何時までなんだ?」
「四分です」
 それだけだというのだ。
「それを過ぎれば」
「どうなるんだ、その時は」
「一体」
「おそらく銀河は」
 ボルフォッグの説明が行われる。
「その時空間を維持できる限界を突破し」
「それでか」
「遂に」
「はい、宇宙収縮現象がはじまります」
 彼等の最も恐れるそれがだというのだ。
「この宙域以外は全て無へと収縮されるでしょう」
「それってつまり」
「消滅かよ!」
「冗談じゃねえ!」
「誰がそんなこと!」
「それなら!」
 彼等はだ。すぐに決断を下した。
 それでだ。凱に顔を向けて言うのだった。
「凱さん!」
「ここは!」
「やるぜ!」
「やります!」
 皆一斉に言う。
「エスコートするんなら!」
「地獄まで!」
「お付き合いしますよ!」
「ガオガイガーはだ」
 クワトロも何時になく熱く言う。
「ポイントを目指すことだけ考えるのだ」
「じゃあ皆は」
「私達はだ」
 そのクワトロの言葉である。
「周辺の敵の相手をする」
「道は開けさせてもらう」
「我々でな」
 アポリーとロベルトも言う。
「だからここは」
「それだけを考えてくれ」
「頼んだぜ勇者!」
「この戦いは!」
 甲児と鉄也も告げてだった。そのうえで。
 彼等は突撃をはじめた。その中にはジェイアークもいる。そこでルネが言うのであった。
「それにしても」
「どうした、ルネ」
「あのポイントにガオガイガーが到達したら」
「その時はか」
「何が起こるんだろうね」
 彼女が今思うのはこのことだった。
「一体」
「それはわからんが」
 だが、と返すJだった。
「だが今はだ」
「それでもだね」
「その作戦に全てを賭けるしかない」
「強力なレプリションエネルギーを放つ」
 まだアベルは言う。
「恒星サイズのピサ=ソールにはです」
「その通りだよ」
 ピルナスも続く。
「何があろうともね」
「誰であろうと」
 彼等は言うのであった。
「近付くことさえできません」
「最後に勝つのは」
「私達です」
 アベルはだ。確信していた。
「絶対にです」
「行くぞ!」
 だが凱はだ。彼等のその言葉を否定した。
「俺達の生命の最後のあがき」
「あがきですか、所詮は」
「そして」
 だが、だった。凱の言葉はそれだけではなかった。
「勇気の結晶を見せてやる!」
「行くぜ凱!」
「今から!」
 両軍の最後の死闘がはじまった。そしてコスモは。
 イデオンのゲージを見てだ。忌々しげに呻いた。
「くそっ!」
「どうしたの、コスモ」
「何かあるのか」
「イデオンガンなら」
 こうだ。カーシャとギジェに返すのである。
「この宙域一体を吹っ飛ばせるのに!」
「そうね、イデオンガンならね」
「それが可能だ」
 それは二人もわかっていた。それもよくだ。
「それであんな奴等」
「何ともなるのだが」
「ギジェ、パワーは上がらないのか」
 焦った顔でギジェに問う。
「ゲージは」
「駄目だ」
 ギジェは腹立たしげに首を横に振って言う。
「とてもではないが」
「そうなのかよ」
「イデオンガンもソードも使えん」
「肝心な時にこんなのなんて」
 カーシャも忌々しげな顔になっている。
「イデは銀河が消滅してもいいっていうの!?」
(若しかすると)
 ここでだ。ギジェはこう考えたのだった。
(イデは、無限の力の意志は)
 それはだというのだ。
(それを望んでいるのかも知れない)
「急げ!」
「前にいる奴等は吹き飛ばせ!」
「とにかく進め!」
「あのポイントまで凱を!」
「行かせろ!」
 イデオンのそうした状況をよそにだ。彼等は必死に戦っていた。
 そのうえでだ。ポイントに向かう。だが。
「させん!」
「また御前か!」
「ここは通す訳にはいかん」
 パルパレーパがだ。大軍を率いて彼等の前に立ちはだかるのだった。
「言った筈だ」
「また神かよ!」
「そう言うのかよ!」
「このワンパターン野郎!」
「あんたはそれしか言えないの!?」
「完全勝利」
 しかし彼は言った。
「それは神の力だとな」
「俺も言った筈だ!」
 凱も臆していない。
「絶対勝利!」
「貴様はそれを言い続けるか」
「それは勇気ある者のものだとな!」
「勇気が導く力!」
「それを見せてやるよ!」
 Jとルネも言ってだった。
 彼等は突き進みだ。そうして。
 一気にパルパレーパ以外の敵を潰してだ。そうして。
「よし、遂にだ!」
「あと一分です!」
 道が開いたところでカララが叫ぶ。
「凱、早く!」
「わかっている!」
 凱もだ。カララに返す。
「今からそこに!」
「そのポイントに!」
「そこだあああああああああああああっ!」
 そのポイントに到達した。遂にであった。
「ガオガイガーがポイントに到達したぞ!」
「よし、後はだ!」
「彼等だ!」
「彼等が全てを!」
 そこに出て来たのは。その切り札であった。
「GGG!」
「何をする気だ!?」
 アベルとパルパレーパがそれぞれ言う。
「ここで」
「どうするのだ」
「カイン!」
 アベルはとりあえずは手を打つことにした。カインを召還した。
 緑の球が出て来た。その中にであった。彼がいたのだ。
「カイン!」
「凱兄ちゃん、任せて」
 護がここで凱に言う。
「ここはね」
「やるんだな、護」
「うん」
 その通りだと。凱に頷いてみせた。
「だからね」
「わかった、それならな」
「行って来るよ」
 彼も緑の光になり。カインの前に出た。そしてだった。
「緑の星の守護神」
 こうカインを呼ぶ。怒れる顔で。
「僕は貴方を許さない、絶対に!」
「誰なんだ、あいつは」
「一体」
 皆いぶかしんでいると。彼が言うのだった。
「あれはカイン」
「戒道!?」
「大丈夫なの!?」
「うん、何とか」
 ふらつきながらもだ。彼は壁に手をやって立ちながら話すのだった。
「それであれは」
「カインっていうけれど」
「けれどあれは」
「やっぱりカインじゃ」
「緑の星の指導者」
 戒道はこう話す。
「そしてラティオの父親」
「護の!?」
「けれどそれでどうして!?」
「あの連中と一緒にいるの?」
「それは」
 皆このことにいぶかしむ。
「何か話がおかしいだろ」
「辻褄が合わないぜ」
「前にもあの人と会ったけれど」
「その時は」
「そう、けれどあのカインは」
 戒道が話そうとする。だがその前にだ。
「カイン」
 護が言うのだった。
「貴方はいちゃいけないんだ」
「いちゃいけないって」
「それにあの護、何か」
「いつもと違う」
「顔が険しい」
 皆もこのことに気付く。
「あんな護はじめて見るけれど」
「自分のお父さんなのに」
「どうして?」
「お父さん、カインを基にして造られたプログラム」
 また護が言った。
「ペイ=ラ=カイン!」
「イミテーション!?」
「あのカインも」
「偽物!?」
「そうだったんだ」
「そう」
 その通りだとだ。戒道も話す。
「ソール十一遊星主が造り出した」
「またあいつ等か」
「何処までもいやらしい奴等だぜ」
「全くだ」
「そんなことまでしていたのかよ」
「ゲム=ギル=ガン」
 その間にも。レプリカのカインが詠唱していく。
「ゴー=グフォ」
「クーラティオー!」
 護も返す。
「テネリタース」
「護の戦いか」
「あれが」
「あいつの」
「そう、彼も戦っている」
 そうだと答える戒道だった。
「あれが」
「護、頑張れよ」
「ここはね」
「絶対に」
「サルース」
「ヴィータ!」
「コクトゥーラ!」
 そしてだ。優勢になったのは。
 護だった。その緑の光がカインを圧倒したのだった。
「!!」
「皆の勇気が僕にも力をくれる!」
 それを感じ取りながら。彼はさらに攻めた。
「消えろ、ペイ=ラ=カイン!」
「!!」
 そしてだった。緑の光の一方が消えたのだった。
 その中にいる偽物のカインもだ。その中にであった。
「護!」
「凱兄ちゃん!」
 その勝利の後でだ。両者は互いに言い合った。
「御前の勇気確かに受け取ったぞ!」
「うん、じゃあ次は」
「俺の番だ!」
 そのことがだ。誰よりもわかっていての言葉だった。
「ここで絶対に!」
「うん、頼んだよ!」
「急いで下さい!」
 パピヨンも彼に言ってきた。
「バスキューマシンのチャージはもうすぐ終了します!」
「そうか」
「はい、生命を賭けて」
 パピヨンもまた必死であった。
「Gストーンエネルギーシステムに接触した命さんの」
「命の」
「そのもたらしてくれた情報です」
 パピヨンはこう凱に告げる。
「それを無駄にしないで下さい」
「わかった!」
 凱もだ。その言葉を受けた。
「命!」
「凱!」
「御前の勇気も受け取った!」
「ええ、御願い!」
「今だ!」
 大河もだった。ここで。
「我等勇気ある者!」
「よっし!」
「俺達だって!」
「皆で!」
「ここは!」
 ロンド=ベル全員にだ。今勇気が宿った。既に宿っていたものが燃え上がったのだ。
「何があっても!」
「負けるか!」
「負けてたまるか!」
「勝つ!」
「絶対に」
「最大の使命を果たす時が来た!」
 まさ叫ぶ大河だった。
「総員フォーメーションG発令!」
「出番だぜゴルディマーグ!」
「よっしゃ!」
 ゴルディマーグが火麻に応えて出て来た。
「遅れてきた分調整はばっちりだぜ!」
「ああ、気合入れてやれ!」
「行くぜ!」
 ゴルディマーグも叫んでいた。
「ジェネシックガオガイガー!」
「ああ、ゴルディマーグ!」
「俺を使え!」
「おう!」
 二人は共に一つになり。そしてだった。また大河が言う。
「スワン君!」
「ハイ!」
「あのキーを!」
「イエッサー!」
 スワンもそれに応える。そして今そのキーを出してであった、
「人類の英知と勇気ある誓いの下に!」
「ゴルディオンクラッシャー発動承認!」
 大河の血もまた。燃え上がっていた。
「これが勝利の鍵だーーーーーーーーーーーっ!!」
「パルパレーパ!」
 発動されパピヨンの右手がそれを叩き出した時。アベルが告げた。
「ここは!」
「うおおおおおおおおおっ!」
 パルパレーパが凱とゴルディマーグに向かう。それを見てだった。
 ゴルディマーグが凱に告げる。
「来やがったぜ!」
「ああ!」
「我々の力なくして」
 アベルがその中でまた言う。
「人類はアポカリュプシスを乗り切ることはできません!」
「むっ!?」
 それを聞いてだ。反応したのはヴィレッタだった。
「今何と」
「破壊の後の再生を司るのは」
 アベルの言葉は続く。
「我々ソール十一遊星主でなくてはならないのです!」
「うるせえ!」
 だがカズマが彼に反論する。
「御前等のやろうとしていることなんてな!」
「どうだというのですか」
「知ったことじゃねえ!」
 これがカズマの主張だった。
「その為に奪われる生命を守る為にだ!」
「その為にだと」
「俺達は戦ってるんだ!」 
 そしてだ。他の彼等もだった。
「そうだ!」
「そんなことなんてな!」
「エゴなんだよ!」
「手前等の独善なんだよ!」
「所詮ね!」
 誰もがもうこのことをわかっていた。彼等とのこれまでの戦いの中でだ。
 そしてだ。凱に告げたのだった。
「行け、凱!」
「御前に全てを賭ける!」
「その力で!
「全銀河を消滅させようとする者を!」
「私達の未来の希望を摘もうとする者を!」
 こう口々に告げるのだった。
「叩き潰せ!」
「その手で!」
「勝利を!」
「勇気を掴むんだ!」
「凱兄ちゃん!」
 そして護もだった。
「約束したよね!」
「遊星主の本体を!」
「ピサ=ソールを!」
「ぶっ壊せ!」
 Jとルネも凱に叫ぶ。
「今ここで!」
「勝つんだ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 凱はだ。今黄金のハンマーを手にした。
「全てのGストーンを!」
「全ての勝利を!」
「そして銀河を!」
「その手で!」
「頼みましたよ」
「頑張ってね」
「負けないで」
「ガッツ・・・・・・だっぜ!」
 勇者ロボ達も今全てを託していた。そして。
 凱が。パルパレーパにハンマーを振り下ろし。
「凱!やっちゃええええええええ!」
「そうだよ、ここで!」
 命と護もだ。彼に叫んでいた。
「私達の力で!」
「銀河を救うんだ!」
「俺は一人じゃない!」
 黄金の光の中で。彼は感じ取っていた。
「俺達は」
「ああ、俺達は!」
「何があっても!」
「絶対に!」
「一つだああああああああああああああああああああああああっ!!」
 そのハンマーがパルパレーパを、そして彼等を直撃し。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「!!」
「俺達の勝利だ!!!!」
 凱が光の中で叫び。今。
 ソール十一遊星主達がその光の中に消えていっていた。
「これが物質世界の掟」
「三重連太陽系が滅びる」
 パルパレーパとアベルが呟いた。
「我々が」
「ここで」
「滅びてはいない」
 だがその彼等にだ。戒道が告げた。
「パル=ス=アベル」
「その名前は」
「君のことだ」
 目の前のアベルのことだというのである。
「赤の星の指導者アベルを基に造られたプログラム」
「それが僕だと」
「そう」
 護も彼に話す。
「三重連太陽系はちゃんと再生してるんだ」
「嘘だ、それは」
「嘘じゃない」
 こう言ってさらに話すのであった。
「ギャレオリア彗星の彼方に。百五十億年の時をかけて」
「百五十億年の」
「生命を持たない遊星主達がもっとも恐れた勇気の力に満ちて」
 彼等は光の中に消えていく。今壮絶な戦いが終わった。
 そしてパピヨンは。猿頭寺と共にいた。しかしだ。
 彼は泣いていた。そうしてパピヨンに言うのだった。
「パピヨン・・・・・・」
「泣かないで」
 パピヨンは優しい声をかけた。
「これでいいのです」
「いいんだね、それで」
「物質に永遠があってはならないのですから」
 これがパピヨンの言葉だった。
「ですから」
「じゃあ君は」
 彼はだ。パピヨンのその言葉を受けて問うた。
「精霊達のところに行くのかい?」
「いいえ」
 それは否定してであった。
「耕助」
「僕に」
「そう、貴方の中に」
 こう告げるのであった。
「永遠に」
「パピヨン・・・・・・」
「Gクリスタルは」
 クリスタルについても話すのだった。
「三重連太陽系の人達から作られた」
「そうだったんだね」
「生命の結晶」
 それだというのだ。
「Gストーンを持つ者は生命のエネルギーを携えた本当の勇気を」
「それを」
「使える者」
 こう彼に話すのだった。
「私達生命ある者は皆同じ力を持っています」
「その力を」
「だから」
 微笑はそのままだった。
「この先に訪れる困難も」
「僕達のその困難もまた」
「それも勇気さえあれば」
「勇気さえあればなんだね」
「そうです。乗り越えられます」
 まさにだ。天使の言葉であった。
「信じています。人がその勇気で」
「勇気で」
「アポカリュプシスさえも乗り越えることを」
 こう告げてだった。パピヨンは光の中に消えた。優しい笑みで。
「護・・・・・・」
「戒道・・・・・・」
 二人は目を覚まして。お互いの名前を呼んだ。
「大丈夫だったんだね」
「君も」
「よかったデスね」
 スワンがその二人を見て微笑む。
「二人共気付いたみたいデスネ」
「いいかな」
 スタリオンが二人に話してきた。
「今この次元宇宙はね」
「はい、この宇宙は」
「どうなっているんですか?」
「ES空間ごと消滅しようとしているんだ」
 こう話すのだった。
「そうなろうとしているんだ」
「何故かっていうと」
 牛山も二人に話す。
「ギャレオリア彗星はもう存在していないからね」
「つまりだ」
 火麻は何時になく穏やかだった。
「俺達はここから出られないってことだ」
「この次元が消滅」
「それじゃあ僕達は」
 二人もそれを聞いて理解した。
「僕達はここから」
「戻れないんだね」
「しかしだ」
 雷牙が落ち込む二人に話す。
「僅かながら希望は残っておる」
「希望が?」
「残ってるんですか」
「そう、それは」
 猿頭寺だった。
「ゲートを利用するんだ」
「ゲート!?」
「それをなんですか」
「ジェイアークのESミサイルでね」
 それを使うと。二人に説明する。
「ゲートへアクセスするルートを造ることができるんだ」
「そんなことがですか」
「できるんですね」
「もっとも」
 雷牙がまた言ってきた。
「そのルートの大きさは」
「どれ位ですか?」
「それで」
「直径一メートル」
 それを聞いてだ。二人の顔に絶望が走った。
「そんな、じゃあ」
「とても」
「保持できる時間は二秒間だけだがな」
 雷牙は驚く二人にさらに話す。
「さらに」
「さらに、ですか」
「まだあるんですか」
「そのルートを作り出す為には」
 その為にだと。彼は二人にさらに話す。
「ロンド=ベルの全エネルギーが瞬間的に必要とされるんだ」
「だからこそ」
 大河は微笑んで二人に話した。
「我々は君達二人に未来を託す」
「僕達に」
「それを」
「これは君達に与えられた」
 大河は微笑みながら話していく。
「君達にしかできない重要な任務なんだ」
「そういうことだ」
「二人共、今までよく戦ってくれたな」
「有り難う」
 誰もが笑顔で二人に話す。
「君達の勇気を」
「私達は忘れないからね」
「いいものを見させてもらったよ」
「本当に」
「グッドラック!」
 まずはマイクが告げた。
「また何時か」
「会おう」
「星の海で」
「絶対に」
「迷子にならないようにね」
「気をつけて」
 六体の竜達も今は笑顔だ。
「達者でな!」
「何時までも」
「ガオオオオオン!」
 ゴルディマーグ、ボルフォッグに続いてギャレオンもであった。
「この宇宙で起こった出来事を」
「地球に伝えてくれよ」
「それで帰ったらな」
「お父さんとお母さんに」
「只今って言うのよ」
 誰もが。心からの笑顔だった。
「お袋さん達によろしくな」
「一杯食べて大きくなれよ」
「身体は毎日鍛えろよ」
「勉強も忘れるな」
「友達を大切にね」
「ガールフレンドもね」
「アルマ」
 Jもだ。残るのだった。
「ではだ」
「J・・・・・・」
「戦いは終わった」
 彼もまた。別れを告げるのだった。
「御前はもうアベルの戦士として生きる必要はない」
「親を大切にな」
「J、ルネ・・・・・・」
「貴方達はね」
 命もだ。言葉を贈る。
「三重連太陽系を受け継ぐ地球の子供よ」
「勇気ある誓いと共に」
 凱もであった。
「いいな、進め」
「勇気ある誓いと共に」
「勇気ある誓いと共に」
 二人が楚の言葉を繰り返す。
「勇者達に敬礼!」
「彼等は我々の生きた証だ」
「その旅立ちを」
「皆で!」
「皆!」
「本当に有り難う!」
「さあ、行くんだ」
 凱が最後に優しい声をかけてだ。それで終わりであった。
 ゲートが開き二人がそこを通り。そうして。
「ゲート消滅」
「これで終わりか」
「そうだな」
「心残りがないって言えば」
「嘘になるけれど」
 それでもだった。彼等は誰もが満足していた。
「あの二人が無事ならな」
「それでいいよな」
「だよな」
「わしもそう思う」
「俺もだぜ」
 グン=ジェムとジェリドだった。
「子供の為に命を捨てるのも」
「悪いことじゃないな」
「心残りはあって当然だ」
 刹那はそれを受け入れていた。
「それもだ」
「不死身の俺の最期としちゃいいな」
 パトリックは微笑んでいた。
「じゃあ、これでな」
「ふふふ、見事だったぞ」
 しかしだ。ここでだった。誰かの声がしてきた。
「銀河消滅の危機を救ったのはな」
「!?この声は!」
「ハザル=ゴッツォか!?」
「まさか!」
「その通りだ」
 ハザルがだ。今彼等の前に現れたのだった。
 大軍を連れてだ。そうしてだった。
「銀河を救った褒美にだ」
「くっ、貴様まさか」
「ここで」
「そうだ、俺が直々に相手をしてやろう」
 こう彼等に告げるのであった。
「誰も知らない空間で朽ち果てていくよりもだ」
 自信に満ちた傲慢さは相変わらずであった。
「一思いに生命を絶たれる方がマシだろう?」
「手前、そう来るか」
「それでここに」
「もうすぐ幕が開く」
 彼は言うのだった。
「そう、絶望の宴の幕がな」
 戦いは終わらなかった。異空間でだ。今再び死闘がはじまるのだった。


第八十九話   完


                                     2011・1・10
 

 

第九十話 巫女の秘密

                第九十話 巫女の秘密
 ハザルはだ。彼等に告げるのだった。
「では今からだ」
「戦いかよ」
「まさかな」
「ここでまた戦うなんてな」
「予想外だったぜ」
「戦いではないな」
 ハザルは既に勝ち誇っていた。
「貴様等は処刑されるのだ」
「手前にっていうのかよ」
「そう言うのね」
「如何にも」
 こう彼等に返してであった。
「貴様等には六段の陣を用意しておいた」
「六段!?」
「そんなにかよ」
「我が外銀河方面軍の全力だ」
 ハザルはまた言ってきた。
「その全ての戦力で貴様等を倒してやろう」
「ちっ、こっちだってな」
「意地があるんだよ!」
「だから貴様等は!」
「絶対に!」
 こうしてだった。ハザル達との戦いがはじまろうとしていた。その時にだ。
 セレーナはアルマナ達に闘いのことを告げていた。それを聞いたあまる名は驚きを隠せなかった。
「そんな」
「ここにハザル様が」
 ルリアも驚いている。
「来られるなどとは」
「一体どうして」
「そういうことよ」
 セレーナは二人に話していた。
「私達は閉鎖空間の中に取り残されてね」
「この暗闇の世界に」
「この中にですね」
「このまま終わっちゃうって思ったんだけれどね」
 しかしなのだった。
「あのハザルってのが来てね」
「理由がわからない」
 ルリアは真顔で言った。
「私達はここにいればもう」
「そうよね。それでよ」
 セレーナの口調が変わった。そうしてだった。
 ルリアにだ。こう言ってきたのだった。
「ちょっといいかしら」
「我々を尋問する気か?」
「っていうかね」
 それは違うと言ってからだった。
「あのハザル=ゴッツォだけれど」
「あの方か」
「何か裏ありそうなんだけれど」
 こう言うのだった。
「何かね」
「裏が」
「それが」
「あいつ何かね」
 今だった。ハザルの声がしてきた。
「預かりものを返してもらおう」
「ああ、これこれ」
 聞こえてきたその言葉を指し示してさらに話す。
「これよ。これってあんた達でしょ
「それ以外に考えられないのです」
 ヴィレッタもいた。
「違うでしょうか」
「連中が私達に攻撃を仕掛けてくるのは」
 セレーナはここでまた言った。
「あんた達を救出する為よね」
「バルマーの姫君を」
「果たして」
 だが、だった。アルマナは暗い顔で言うのだった。
「救出ならいいのですが」
「姫、それは」
「言ってはならないと」
「冗談でもです」
 厳しい声で告げるルリアだった。
「そうしたことは」
「確かに。迂闊でした」
「御気をつけ下さい」
「ええ、わかったわ」
「そういえばね」
 セレーナが再び声をかけてきた。
「あんた達ってどうしてロンド=ベルに密航したのかしらね」
「あっ、そういえば」
「そこがな」
「気になってたけれど」
「そうそう」
 皆もここで言う。
「どうしてなんですか?それは」
「一体何故俺達のとこに」
「何でなんだろうな」
「敵地にわざわざ」
「それは」 
 アルマナは周囲の言葉に圧されだった。そうしてだった。
 言おうとする。しかし。
「・・・・・・・・・」
「言えないかしら」
 そう思っても。セレーナの今の態度は穏やかだった。
「だったら別にいいけれど」
「自由が」
 だが、だった。ここでアルマナは意を決した顔で答えてきた。
「それが」
「自由が?」
「自由が欲しかったんです」
 こう話すのだった。
「それが」
「自由って」
「ええ、だから」
「姫様」
 またルリアが止めようとする。
「それ以上は」
「いえ、ルリア」
 しかしだった。アルマナは今はもう既に覚悟を決めていた。それならばだった。
「もうここは」
「お話されますか」
「ええ、そうします」
 こう言ってだった。ロンド=ベルの面々と向かい合った。そのうえでだった。
「セレーナ」
「ええ」
「私はです」
 ここから話すのだった。
「私は本星にいる時には」
「お姫様だったのよね」
「帝都の一室から外へ出ることは許されませんでした」
「けれどそれは」
 セレーナはすぐに返した。
「あんたが身分の高い人間であるからでしょ」
「いいえ」
 だが。アルマナはここで首を横に振るのだった。そのうえで話すのだった。
「確かに私はゼ=バルマリィ帝国十二支族に通ずる出自ですが」
「そうよね」
「私が姫と呼ばれるのは」
「十二支族だけじゃなくて?」
「神体ズフィルードに捧げられる身であるからです」
「ズフィルード」
 それを聞いたヴィレッタの眉がぴくりと動いた。そのうえでアルマナを見ながら呟く。
「この少女が創世神ズフィルードの巫女」
「捧げられるって」
「それじゃあ」
「生贄!?」
「つまりは」
「十七歳の誕生日を迎えた日」
 アルマナの話は続く。
「私の身体は」
「生贄だからこの場合は」
「だよなあ」
「そのズフィルードに?」
「そうなるよな」
「その通りです」
 アルマナはロンド=ベルの面々の言葉にこくりと頷く。
「そしてその精神は」
「どうなるの?」
「それで」
「その精神は」
「永遠の生命を得ます」
 そうなるというのだ。
「私は」
「けれど生贄だよなあ」
「どう見てもな」
「今だにそんな話があったなんて」
「何か」
「口を慎んでもらいたい」
 ルリアは動揺する彼等に強い言葉をかけた。
「ズフィルードの巫女に選ばれることはだ」
「意味があるんだな」
「つまりは」
「そういうことだよな」
「ねえ」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだった。
「どれだけの意味を持つか」
「巫女誕生の神託が下るのは」
 アルマナの話が続く。
「帝国の歴史の中でも百数十年ぶりのことでした」
「そんなにかよ」
「百数十年って」
「そこまで」
「そんなに間隔が」
「それはつまり」
 また話すアルマナだった。
「創世神ズフィルードの加護が」
「それがか」
「どうなるんだ?」
「一体」
「帝国全土にあまねく降りることと同義なのです」
 こう話すのだった。
「そういうことなのです」
「けれど生贄だから」
「自分の生命は」
「だよなあ」
「絶対にな」
「捧げるってなあるよな」
「巫女はです」
 だがアルマナは彼等に話した。
「臣民の希望を集める存在であり」
「よくある話だよな」
「だよな」
「古代なんかにはな」
「付きものの」
「そんな話だよ」
「創世神の寵愛を受けて永遠を生きる神の子なのです」
 アルマナは話していく。
「貴方達がその力で地球の人達を守るようにです」
「それと同じ?」
「つまりは」
「そういうことなんだ」
「私もその身によって」
 アルマナは話していく。
「バルマー帝国に繁栄をもたらすことができるのです」
「話はわかったわ」
 ここまで聞いて言うセレーナだった。
「けれどね」
「けれど?」
「科学的には私達よりずっと進んでるバルマー帝国がね」
 こう言うのであった。
「そんな風習が残ってたなんてね」
「そのことだが」
 またルリアが出て来た。
「話させてもらおう」
「ええ、じゃあ」
「御願いします」
「地球人から見ればだ」
 ルリアはその話をはじめた。
「風習などという言葉で片付けられるようだな」
「ええ、それは」
「その通りです」
「俺達の中じゃ」
 実際に彼等もこう話す。そしてだ。
 ダバ達もこう言うのだった。
「ペンタゴナにはそんな風習はな」
「ええ、もうないわ」
「聞いたこともない」
 ダバにアムとレッシィが答える。
「今そんなのが残ってるなんて」
「有り得ない話だ」
「グラドスでもです」
 エイジも話す。
「そんなことはもう」
「私は知ってはいた」
 バルマーの中枢にいたマーグはだった。
「だが。巫女の存在は中々公にはされない」
「つまり秘密だったんですね」
「それだけ」
「そうだ。アルマナ殿とは実際に会ったことがなかった」
「そうですね」
 それはアルマナも認めることだった。
「私も。マーグさんとは」
「会ったことがなかったな」
「はい、そうです」
「生贄だとは聞いていたがな」
 そこまで秘密の存在だったというのだ。そしてだ。ルリアがまた話してきた。
「だが、ゼ=バルマリィ帝国はだ」
「ええ、帝国は」
「どうなんですか?」
「既に霊力の存在を解明しているのだ」
「これもその通りだ」
 マーグがまた話を捕捉する。
「十二支族で司る家とそうでない家があるが」
「それを活かす術を知っている」
「そうだったんですか」
「バルマー帝国はそんなことまで」
「けれど」
 しかしだとだ。ここでセレーナは言う。
「それでも生きている人間が犠牲になるなんてね」
「あの、どうしてですか?」
「どうしてって?」
「何故私に対してそこまで同情的なのですか?」
 怪訝な顔になって彼等に尋ねるのだった。
「それがわからないのですが」
「貴方達の優しさ故だな」
 ルリアが察して言ってきた。
「それはわかるが」
「創世神に捧げられることは光栄に思います」
 また話すアルマナだった。
「ですが」
「ですが?」
「ですがって」
「私はあまりにもこの世界のことを知らなさ過ぎました」
 アルマナはここでこのことも話した。
「だから私は陛下に一年の期限付きで外の世界に触れることをお願いしたのです」
「陛下!?」
「陛下っていったら」
「あの」
「はい、そうです」 
 その通りだと返してからまた話すアルマナだった。
「ゼ=バルマリィ帝国の統治者、霊帝ルアフ様です」」
「あの、か」
「霊帝ルアフ」
「あの」
「待て!」
 ロンド=ベルの面々が霊帝の名前を口にするとだ。ルリアは不意に怒りだした。
 それでだ。こう言ってきたのだった。
「みだりにその名を口にするな!」
「お、おいおい」
「そんなに急に怒らなくても」
「また急に」
「そんなに神聖な存在なんだ、バルマーじゃ」
「そうだ」
 それを言うルリアだった。
「それはわかってもらおう」
「え、ええ」
「じゃあまあ」
「それは」
 彼等もルリアのその剣幕に押され頷く。それしかなかった。
 そしてだ。ヴィレッタはやり取りの中で考えていくのだった。
(宇宙怪獣やバジュラの活性化)
 まずはそれだった。
(巨人族とプロトデビルンの侵攻さらには別銀河、別次元からの敵)
 敵は実に多かった。バルマーもだ。
(霊帝がそれを見越し銀河の力を集めようとしたのは全てズフィルードの神託があったゆえか)
「それでね」84
 また話すセレーナだった。
「気になることは」
「何でしょうか」
「どうやってここに来てるのよ」
 こうアルマナ達に尋ねるのだった。
「あんた達の国の軍隊。どうしてなのよ」
「この程度の次元錯綜なぞ」
 ルリアが話すのだった。
「我が帝国の科学力なら問題にならない」
「ああ、それでか」
「それでなのね」
「それでここまで」
「そうだ」
 こう話すアルマナだった。
「あの刻印もだ」
「グラドスの刻印か」
「あれも」
「その通りだ。任意の地点に座標は設定できない」
 それはまだだというのだ。
「しかし二点を結ぶ術は確立しているのだ」
「何ていうか」
「そうね」
「バルマーの力がまた」
「ここでわかったっていうか」
「まあここはとりあえず」
「奴等とな」
 ハザル達のことについても話をするのだった。
「戦わないといけないしな」
「どうしてもか」
「あんた達のことも話しておくぜ」
 今彼等に話したのはラウルだった。
「せめてあんた達は無事でいられるだろ」
「そうであればいいがな」
 しかしルリアの返答は暗い。
「無事な」
「何よ、その言葉」
 フィオナはルリアの今の言葉に口を尖らせる。
「大事な巫女なのに巻き添えにしたりする筈ないじゃない」
「それはそうだが」
「じゃあ大丈夫だろ」
「そうよ、あんた達はね」
 あくまでこう言うラウルとフィオナだった。
「だから安心しろよ」
「話はしておくからな」
 こうしてだった。彼等は全員出撃した。その時にだ。大文字がサコンに尋ねた。
「サコン君」
「はい」
「次元境界線の揺らぎはどうなっている」
「依然として安定しません」
 サコンはこう答えた。
「これは外部から何らかの力が加わっているせいかと」
「それでか」
「はい、おそらくそれは」
「奴等だな」
「そうだな」
 サンシローとリーは前のバルマー軍を見据えながら言った。
「あいつ等がそうしているな」
「それで俺達をか」
「いよいよですね」
「奴等との戦いかよ」
 ブンタとヤマガタケも言う。
「バルマー外銀河方面軍と」
「戦いかよ」
「地球どころか通常空間への帰還も絶望的だが」
 ピートは覚悟を決めていた。
「むざむざとやられるか!」
「総員戦闘配置!」
 大文字が指示を出した。
「諸君、全力であたるぞ!」
「希望を捨てるな!」
 タリアも言う。
「外から敵が来るなら」
「脱出方法がですね」
「ええ、あるわ」
 こうアーサーにも答える。
「だからね」
「そうですね。じゃあ希望を捨てないで」
「ちょっとでも希望があれば」
 ユウナも言う。
「諦めるなってのがこれまでの戦いでの教訓だね」
「確かに。これまで何度もこうした状況になりましたし」
「我々は」
 トダカとキサカも続く。
「なら我々も」
「今は」
「希望は捨てないことだね」
 また言うユウナだった。
「じゃあやろうか」
「けれど」
 ここでだ。シェリルが難しい顔で述べた。
」三重連太陽系に辿り着けたのがイデの導きなら」
「それならですか」
「今回はなんですね」
「ええ、この閉じられた空間で私達が滅ぼされるのもイデの」
 こう言うのであった。
「導きかも知れない」
「だったらどうだってんだよ」
 しかしここで闘志也が言った。
「それならな」
「それなら?」
「イデの導きだろうとな」
「そうだな、それでもな」
「それに屈しはしない」
 ジュリイと謙作も言う。
「そんなことでも」
「俺達は!」
「確かに今回の一連の事件はね」
「僕達が及びもつかない何かが噛んでるみたいだけれど」
「それでも」
 ティス、ラリアー、デスピニスもだった。
「はい、そうですかってね」
「僕達も素直に」
「従う訳にはいかないです」
「そうだっていうのね」
「そうよ、それがロンド=ベルでしょ」
「僕達、デュミナスに助けてもらったこの命を」
「そう簡単に捨てる訳にはいかないから」
「そうだな」
 Jもここで頷いた。
「その通りだ」
「J、まさか」
 凱がそのJに尋ねた。
「俺達にか」
「言葉は不要だ」
 こう返すJだった。
「全銀河の為に戦ったお前達の志、確かに受け取った」
「それをか」
「ならばだ」
 そしてまた言うJだった。
「赤の星の戦士としての使命を果たした今、私とジェイアークの力をだ」
「それをか」
「そうだ、御前達に貸そう」
「済まない」
「礼はいい」
 彼もこう返すのだった。
「では今よりな」
「随分と長い付き合いだったがな」
 宙は既に鋼鉄ジーグとなっていた。そのうえでの言葉だった。
「こうしてまともに話すのはな」
「そうだよな。何か」
「新鮮だよな」
「今までなかったよな」
「確かに」
「まあこんな状況だからな」
 イサムは笑いながら話すのだった。
「短い付き合いになるかも知れないがな」
「それでもだ」
 ガルドはいつもの無愛想な調子だ。だがそれでも言うのだった。
「宜しく頼む」
「こちらこそだ」
 Jもその仮面の下で微笑んでいた。
「地球の戦士達よ」
「おい、凱」
「ああ」
 ゴルディマーグは凱に言った。
「ゴルディオンクラッシャーは。わかってるよな」
「ああ、勿論だ」
 こう返す凱だった。
「一回の出撃でな」
「使えるのは一度だ」
 それだけだというのだ。
「使い方間違えんじゃねえぞ!」
「了解だ!」
「それじゃあな!」
「今からな!」
「派手に暴れてやる!」
「いい気合だ」
 ハザルが出て来た。そのうえでの言葉だった。
「それは認めてやろう」
「ハザル!」
「来たってのかよ!」
「第一陣は手前かよ!」
「馬鹿を言え」
 彼等の今の言葉には嘲笑で返したハザルだった。
「俺が相手をするにはだ」
「まだだってのかよ」
「そう言うのかよ」
「そうだ。俺は最後だ」
 そしてこう言うのであった。
「第六陣にいる」
「そこでトリってんだな」
「大物ぶってやがるな」
「ああ、全くだ」
「御前達の最期は見てやる」
 傲慢さを見事なまでに変えない。
「安心するのだ」
「この野郎・・・・・・」
「相変わらずむかつく野郎だ」
「こうなったらここで」
「やってやるか」
 殆どの面々が向かおうとした。しかしであった。
 大文字がだ、ここで彼等を止めた。
「待て、攻撃はだ」
「っと、そうか」
「そうだったな」
「あの姫様がいたよな」
「そうだった」
 ここでそのことを思い出した彼等だった。
「それならここは」
「ちょっと舞って」
「それで」
「そうだ。そうしよう」
 こうしてだった。大文字がハザルに通信を入れた」
「ゼ=バルマリィ帝国外銀河方面軍司令ハザル=ゴッツォ」
「何だ?」
「応答を問う」
 こう通信を入れたのだった。
「こちらはロンド=ベル代表大文字洋三」
「何の用だ」
「貴官との交渉を希望する」
「ふん、言いたいことはわかっている」
 こう傲慢に返すハザルだった。
「アルマナ様を人質にして俺達を引き揚げさせるつもりか」
「相変わらずひねた野郎だな」
「全くだぜ」
「この性格、シャピロに匹敵するな」
「嫌な奴だ」
 ロンド=ベルの面々は誰もがこう思った。
「こんな奴との交渉なんてな」
「できればしたくないけれど」
「今は仕方ないか」
「あの姫様の為に」
「姑息な連中だな」
「遺憾ながらその通りだ」
 大文字も今は耐えていた。
「それで返答は」
「断る」
「何っ!?」
 これにはだ。さしもの大文字も唖然となった。
「今何と言った」
「断ると言ったのだ」
 不遜な笑みと共の言葉だった。
「俺もできることなら姫様をお救いしたい」
「嘘だな」
 ヴィレッタはすぐに見抜いた。
「その言葉は」
「だが奴等は姫を盾に取りだ」
 ハザルはあえてひねくれた解釈をしてみせた。
「こちらを背後から討つ気だろう」
「手前ふざけるな!」
「誰がそんなことするかよ!」
「やるんなら正面からだ!」
「倒してやる!」
「その手に乗るわけにはいかん」
 ロンド=ベルの面々の抗議をよそに言葉を続けるハザルだった。
「我々は帝国と陛下の為に敗北は許されないのだ」
「ハザル、貴様!」
 ロゼも思わず抗議した。
「何を言っている!」
「全軍攻撃開始だ!」
 だがハザルはまだ言う。
「我等の希望たるズフィルードの巫女を奪いし卑劣な輩を叩き」
「それも偽りだな」
 マーグも見抜いたのだった。それを。
「この銀河が帝国の為にあることを教えてやるのだ!」
「姫様がおられるのを知っていながら」
 ルリアも怒りを見せていた。
「攻撃を仕掛けるとは!」
「まあ上手くいく相手じゃないけれどな」
 アルトも目を怒らせている。
「しかし。こう来るとはね」
「あの銀髪はこれで完全に悪党になったわけだ」
 ミシェルも今は感情を見せている。
「なら俺達はナイトって訳だ」
「お姫様の為に戦う」
 ルカが言った。
「そういうことなんですね」
「ここで全てを出し切る」
 ここで言うオズマだった。
「いいな」
「よし!」
「やってやらあ!」
「ここで!」
「ではだ」
 ハザルは。ヴァイクランからエイスに告げた。
「エイス、いいな」
「・・・・・・・・・」
「まずは貴様の戦力で奴等を消耗させる」
 こうエイスに話すのだった。
「そのうえでだ。後に任せろ」
「了解」
「では俺は本陣に戻る」
 そしてこうも告げたのだった。
「後は任せた」
「ミッションスタート」
「あの蝶みたいなのもいるな」
「そうね」 
 皆エイスのそのマシンを見て言った。
「あれは厄介だな」
「あちこちに攻撃を仕掛けてくるから」
「だよな」
「案ずるな」
 しかしだ。ここでゼンガーが言うのであった。
「あの男は私が引き受ける」
「私もいる」
 レーツェルもであった。
「我等二人でだ」
「あの男の相手をしよう」
「そうか、それではだ」
 ヴィレッタは彼等のその言葉を受けて言った。
「我々は他の敵に向かおう」
「うむ、頼む」
「そうしてくれ」
「全て消去する」
 最後にエイスが言った。そうしてであった。
 彼等は異空間での戦いをはじめた。すぐに激戦になった。
「弾幕だ!」
「とにかく前を撃て!」
「敵の数を減らせ!」
「まずはそれからだ!」
 指示が飛ぶ。そうしてであった。
 ロンド=ベルは前から力押しで来るバルマー軍を倒していく。その中にはだ。
 セレーナもいた。彼女は。
「何かね」
「どうしたの、セレーナ」
「今乗ってるソレアレスだけれどね」
 話は機体についてであった。
「もうそろそろね」
「限界?」
「そうみたいね」
 こう言うのであった。
「この戦いでもうね」
「そんな、けれど」
「後は何に乗ろうかしら」
 それでもだった。セレーナは諦めていなかった。
「とにかく何でも乗ってね」
「戦うんだね」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「俺もだ」
 クォヴレーも言ってきた。
「最早ベルグバゥではだ」
「駄目なのかよ」
「限界なのね」
「戦いの中で傷つき過ぎた」
 こうアラドとゼオラに述べる。
「これが駄目になればだ」
「何かマシンあったか?」
「ええと、ヒュッケバインなかったかしら」
 二人は少し慌てながら話す。
「最初の型のがね」
「あれかよ」
「丁度二機あったから」
「じゃあセレーナさんとクォヴレーにか?」
「一機ずつね」
「あるのならそれに乗る」
 これがクォヴレーの言葉だった。
「俺はそうしてだ」
「そういうことね。諦めるわけにはいかないからね」
 微笑んで言うセレーナだった。
「今はね」
「その通りだ」
「ここはまさに意地を見せる場所だ」
 ゼンガーとレーツェルはエイスと戦い続けていた。彼を自分達から離させない。
「この敵は我等が引き受ける!」
「だからこそ今のうちにだ」
「ああ、わかったぜ!」
「派手にやってやらあ!」
「どうなるかわからなくても」
 それでもだというのだ。
「俺達は戦う!」
「そして勝つ!」
「絶対に!」
 それを言い合いだ。戦うのだった。
 バルマー軍は攻撃を受けてだ。次第に劣勢になった。それを見てだった。
「エイスよ」
「・・・・・・・・・」
「頃合いだ。退け」
「これで」
「戦いはこれからだ。ゆっくりと楽しむことだ」
 ハザルはこうエイスに告げるのだった。
「だからだ。いいな」
「了解」
 エイスは彼の言葉に頷いてだった。そうしてだった。
 退きはじめる。彼が後詰となった。それを見てロンド=ベルの面々も動こうとする。
「よし、逃げはじめたな!」
「今だ!」
「追うぞ!」
「追撃だ!」
「いや、待て」
「迂闊に動くべきではない」
 だが、だった。血気にはやり追撃を仕掛けようとする面々にはだ。ゼンガーとレーツェルが止めた。
「あのマシンは広範囲への攻撃を得意とする」
「下手に仕掛ければ大きな損害を受ける」
「けれどよ。ここは」
「あいつを倒せたら」
「それだけでも大きいし」
「絶対に」
「いや、ここは動くな」
 リーも冷静に言ってきた。
「我々の敵はまだいるのだ」
「だからですか」
「ここはなんですね」
「そうだ、動くな」
 リーはあらためて告げた。
「敵はまだ五つの陣がある。それを全て倒さなくてはいけないのだ」
「ああ、そうだったな」
 カズマがそのことに気付いた。
「じゃあ今はか」
「そうだ。これでわかったな」
「ああ、わかったぜ」
 カズマは実際にそうだとリーに返した。
「それじゃあ今はな」
「全軍陣を整えるのだ」
 リーはすぐに命じた。
「今はだ」
「了解」
「それじゃあ」
 こうしてだった。彼等は今は追わずにだ。軍を集結させた。そうしてそのうえで簡単な整備と補給を受けだ。次の戦いに備えるのだった。
 その時だ。一時帰還したツグミがマクロス7の基地であるものを見つけた。
「あれっ、これは」
「あっ、これですか」
「このマシンですね」
「ええ。これは何なの?」
 ツグミは美穂とサリーに尋ねた。
「こんなマシンも地球に出る時に積んでいたの」
「そうなんです。実は」
「けれど誰のも乗れそうでなくて」
「それで置いていたのね」
「はい、そうです」
「このまま置いていても仕方ないけれどね」
 美穂とサリーはいささか困ったような顔でまたツグミに話した。
「誰か乗れればいいんですけれど」
「セレーナに合いそうだけれどね」
「そうね」
 ツグミはその赤と銀の人型のマシンを見て二人に応える。
「この形はね。見たら兵器も」
「あの人向きですよね」
「やっぱり」
「ええ、確かにね」
 その通りだというのであった。
「それじゃあ。勧めてみましょう」
「はい、それじゃあ」
「後で」
 こうしてであった。セレーナにだ。その機体が紹介されたのだった。
「私に?」
「ええ、そうよ」
 ツグミが笑顔で彼女に話す。
「貴女さっきもう今の機体が限界だって言ってたわね」
「ええ、確かにね」
 それはその通りだと答えるセレーナだった。
「乗り換えたいって思ってたところだけれど」
「それじゃあ丁度いいんじゃない?」
「ここで、なのね」
「ええ、細かい調整はまだだけれど」
「そうね。それでもね」
「状況が状況だから」
 ツグミの言葉も真剣なものだ。
「少しでもいい機体をね」
「そういうことね。とりあえずはだけれど」
「ソレアレスでいくのね」
「あの娘は最後の最後まで乗るわ」
 愛機への愛着に他ならなかった。そrを魅せるのであった。
「だからね」
「そう。わかったわ」
「それでいいわよね」
「ええ。そのかわりね」
「そのかわり?」
「死なないでね」
 こうセレーナに言うのだった。
「何があってもね」
「大丈夫よ。まだやりたいこと一体あるし」
「だからなのね」
「ええ、こんなところじゃ死なないわ」
 笑顔で言うセレーナだった。
「それは安心して」
「安心させてもらうわ。それじゃあね」
「ええ。それじゃあね」
「とりあえずはこの機体は何時でも出られるようにしておいて」
「いざという時にはね」
「それでよ。今は」
「今は?」
 セレーナが問うとだった。ツグミはこのことを話してきた。
「名前よ」
「ああ、この娘の名前ね」
「ええ。何がいいかしら」
「そうね。アレグリアスかしら」
 不意にこの名前を出したセレーナだった。
「その名前でどうかしら」
「アレグリアスね」
「そんな感じだから」
 それでだというのだ。
「だからこの名前でどうかしら」
「そうね。いい感じね」
 ツグミも微笑んでそれでいいというのだった。
「その名前でね」
「そう。じゃあこれで決まりね」
「ええ、それじゃあね」
「さて。名前も決まったし」
「お腹空いてない?ちょっと」
 今度はセレーナからだった。
「今だけれど」
「そうね。それはね」
「戦ったし。だから」
「じゃあ何か食べようかしら」
「御握りがいいわね」
 それだというのだった。
「手軽くね」
「わかったわ。あれならすぐに作られるしね」
「それでね」
「すぐに皆で作ってそれでね」
「食べましょう」
 こんな話をしてであった。二人は今は軽い食事に向かうのだった。
 そしてエイスが撤退してだ。バルマー軍はその彼を交えて軍議を開いていた。
 ハザルにそのエイス、それとバラン、孫、キャリコ、スペクトラにジュデッカ=ゴッツォ達だった。彼等が円卓に座って話し合っていた。
「さて、予定通りだ」
「では次は」
「そうだ、スペクトラよ」
 ハザルは彼女を見て告げた。
「御前が行け」
「わかりました」
「いいか、とにかく敵の数を減らせ」
 彼が言うのはこのことだった。
「敵を消耗させるのだ」
「そうして戦力を奪っていき」
「やがて止めを刺す」
 ハザルは酷薄な笑みを浮かべて言った。
「そうするのだからな」
「わかりました。それでは」
「第二陣はそれでいい」
 スペクトラに任せるというのだった。
 そしてだ。次にキャリコを見て告げた。
「第三陣は御前だ」
「はっ」
「作戦はスペクトラと同じだ」
「敵の戦力を次第に」
「消耗させることだ」
 言うのはやはりこのことだった。
「そして第四陣は孫光龍」
「楽しませてもらうよ」
「第五陣は」
「わしだな」
 バランが自ら名乗り出た。
「あの小童とまた戦うか」
「そして最後は俺だ」
 ハザル自身も言うのだった。
「七隻のヘルモーズと共にな。そして」
「・・・・・・・・・」
 エイスはだ。彼の隣にいた。そのエイスを見ながらまた言うのだった。
「貴様もだ」
「了解」
「さて、俺のところまで来られるか」
 ハザルは今度は不遜な笑みを浮かべていた。
「来たその時はこの俺水から奴等に引導を渡してくれよう」
「そうなれば最高だね」
 孫がここでまた言ってきた。
「お父上にとってもいいはなむけになるね」
「そうだ。父上にとってだ」
 ハザルは父という言葉にまた笑みを浮かべた。
「最高のお土産になる」
「そういうことだね。君にとってもいいことだよ」
「そしてだ」
 さらに言うハザルだった。
「サイコドライバーもだ」
「あの少女だね」
「あの連中と共にいるのは間違いない」
 こう言うのだった。
「ならばだ。ここでだ」
「あの少女も一緒にね」
「手に入れるとしよう」
 こう言うのだった。
「是非な」
「いいことだよ。それじゃあ僕は」
「孫、わかっているな」
 孫に対しても高圧そのものの態度は変えない。
「御前もまた俺の手駒なのだ」
「ははは、それはわかっているよ」
 孫も彼の言葉に笑顔で返す。
「だからここにいるんだしね」
「わかっていればいい」
 やはり高圧そのものであった。
「それではだ。これからだ」
「あらためてね」
「第二陣出陣だ」
 ハザルはスペクトラに対して告げた。
「行け、いいな」
「はい、それでは」
 スペクトラも一礼して応える。こうしてであった。
 戦いは続く。それはセレーナにとっては。新たな出会いの時でもあった。


第九十話   完


                                      2011・1・14

 

 

第九十一話 アレグリアス

               第九十一話 アレグリアス
「ううん、これは」
「やっぱり」
「何ていうか」
 皆クスハの握った御握りを前にして難しい顔になっている。
「独特だよなあ」
「形も色も」
「青い色の御握りって」
「こっちは緑だし」
 そうした御握りであった。
「俺はじめて見たよ、四角い御握りって」
「僕もです」
「私も」
 皆まさにどん引きである。
「食べて大丈夫かな」
「いや、大丈夫じゃないだろ」
「だよなあ」
「これは」
 こう言ってだ。皆食べようとしない。しかもだ。
 それはクスハのものだけではなかった。見ればだ。
 ラクスのものもあった。それも酷いものだった。
「何、これ」
「虹色の御握りって」
「こんなのどうやって作れるの?」
「あなたの知らない世界」
「そんな感じだけれど」
「はい、皆さんどうぞ」
 しかしだ。ラクスはにこりと笑って引いている彼等にこう言うのであった。
「召し上がって下さい」
「私も握ったのよ」
 ミナキも出て来た。
「これね」
「うわ・・・・・・」
 トウマは思わず言ってしまった。
「蛸の足の先が出てるよ」
「御握りに蛸!?」
「しかも足が先に出てるって」
「何、これ」
「御握りどころかたこ焼きですらないみたいだけれど」
「これじゃあ」
 皆も言う。殆どの御握りは食べられるものだ。しかし一部の面々が作ったものがだ。あまりにも酷い状況になってしまっているのだった。
「ユリカさんのこれも」
「えげつないけれど」
 そちらは黒焦げであった。
「何処をどうやったらこんな御握りが」
「ただ具を入れて握るだけだよな」
「そうそう、それが御握り」
「シンプルかつ美味しい」
 御握りの長所である。
「それなのにこれって」
「何ていうか」
「食べたら次の戦闘は」
「完璧駄目だよな」
「ああ、死ぬぞこれ」
「絶対に」
 殆どの面々は見ただけで逃げようとしている。しかしだ。
 オルガ、クロト、シャニはだ。全く平気であった。
 それぞれその異形の御握り達を両手に持ってだ。貪るのだった。
「美味いぜ、どれもこれも」
「うん、最高だね」
「生き返る」
「そうですね」
 そしてアズラエルもだった。全く平気である。
「まずは何かを食べないとお話になりません」
「そうだよ。ここはもりもり食ってよ」
「バルマーの奴等抹殺しないとね」
「だから食う」
「前から思ったいたことなんですけれど」
 ニコルはそんな彼等を見て引きながら言うのだった。
「この人達僕達よりよっぽど凄いですよね」
「あんなの食って何ともねえからな」
 ディアッカは核心を衝いていた。
「普通の人間じゃねえかもな」
「そうですよね、やっぱり」
「普通の奴がこんなの食ったら」
 ディアッカは普通の御握りを食べている。カガリの握った形の悪いものだ。ただし悪いのは形だけだ。他は至って普通である。
「死ぬぜ」
「フレイさんのも」
「あれ、御握りじゃねえだろ」
 オレンジに輝いている御握りだった。
「何なんだよオレンジって」
「さて。僕にも何が何だか」
「近くに寄っただけでもな」
「危険そうですね」
「殆ど兵器だな」
 しかしその兵器もであった。彼等は平然と食べていくのであった。まさに無敵であった。
「まだあるか?」
「どんどん頂戴、美味しいよ」
「幾らでも食える」
 三人は全く平気である。当然アズラエルもだ。
 彼等は平気だ。しかしだ。
 スティングとアウルはだ。普通の御握りを食べていた。リンダが握ったものだ。
「何か俺達ってな」
「至って普通だよな」
「ああ。あの連中元から無茶苦茶だからな」
「俺達は元は普通だったから」
「身体の頑丈さが尋常じゃないんだな」
 シーブックはこう分析した。
「そういうことだね」
「ニュータイプやコーディネイターでも無理だよな、あれは」
「サイボーグでも」
「俺でもあれは駄目だろうな」
 そのサイボーグの宙もであった。
「あんなものを中に入れればだ」
「破壊されます?」
「やっぱり」
「ああ、そうなるな」
 こうスティングとアウルに話すのだった。
「つまりあの三人とアズラエルさんはな」
「普通の人間じゃないんですね」
「元から」
「そういうことになるな」
「しかしまああれだな」
 バサラは普通に食べている。
「食い物は粗末にしちゃいけないからな」
「あんたも食べてるのね」
「ああ。食わねえとギターが弾けないからな」
 こうミレーヌに答える。
「だから俺も食うぜ」
「まずは食べてなのね」
「そうだ、腹の中に入れてからだ」
 金竜はユンの握ったキムチ入りの御握りを食べている。
「また戦いだ」
「そういうことですね」
「そうだ。しかし」
 ここでだ。金竜は難しい顔になって述べた。
「あの男は」
「ハザル=ゴッツォ」
「あの男ですね」
「そうだ、あいつだ」
 こうフィジカとドッカーにも返す。
「あいつは何故バルマーの姫を」
「あいつの言うことは何か」
「妙に違和感を感じるんですけれど」
「そうだな。何か別の考えがあるな」
 それは金竜も察していた。
「それがな」
「あいつは碌な奴じゃない」
 ユウキはそれを察していた。
「これまでのことでそれがな」
「わかるわよね」
「ああ、その通りだ」
 こうカーラにも言う。二人も御握りを食べている。
「これまででわかるな」
「何なのかしらね、あの傲慢さ」
 カーラも眉を顰めさせながら言う。
「自分達のお姫様にもああだし」
「何か。あの態度って」
「最初からアルマナさん達を見捨てるつもりだったとしか」
 リョウトとリオも眉を顰めさせている。
「そんな感じに思えるけれど」
「そうね。迷いもなくっていうか」
「だからだ。人を迷いもなく切り捨てられる奴はだ」
 ユウキはそれを言うのだった。
「間違いなく碌な奴じゃない」
「そういうことなんだね」
「あのハザルっていう男は」
 リョウトもリオもユウキのそうした話を聞いていた。そのうえで今は御握りを食べていた。
 そしてその中にはだ。二人もいた。
 二人はだ。ミナキの握った御握りをだ。美味しそうに食べている。皆それを見て言うのであった。
「まさかと思うけれど」
「美味しいとか?」
「あの御握りが」
「美味いが」
 実際にこう言うルリアだった。
「そうは思わないのか」
「はい、とても美味しいですけれど」
 アルマナも言う。
「皆さんどうして」
「いや、まあ」
「何ていうか」
「それはその」
「ちょっと」
 これが通常の味覚と胃袋を持つ面々の言葉だ。
「ま、まあ何ともなかったら」
「どうぞ」
「お好きなだけ」
「一杯ありますし」
 こう言って逃げるのであった。そしてルリアは。何故かオルガと喧嘩をはじめた。
 御握りを取り合ってだ。こう言うのだった。
「待て、それは私のだ」
「俺のだ」
 一つの御握りを巡って睨み合っている。
「俺が見つけたんだからな」
「私が先に手を取った」
「見つけたのは俺なんだよ」
「いいや、私だ」
 こう言い合ってだった。そうして。
 こんなことまで言い出すのであった。
「そういえば貴様は」
「ああ!?そうだよな」
 お互いに何かに気付いたようである。
「白鳥かよ」
「緑の牛だな」
「ここで会ったが百年目だ!」
「黙れ、この金欲弁護士が!」
 妙な言い争いに入るのだった。
「今度こそな!後腐れのないように!」
「成敗してやる!」
 喧嘩をはじめた。それを聞いてだ。アキトが言うのだった。
「鏡の世界だね」
「そうみたいね」
 キーンが彼の言葉に頷く。
「私もちょっとだけわかるから」
「モンスターだったっけ」
「ええ。それであそこにいた気がするから」
 それでだというのである。
「何かね」
「僕は電車の世界で」
「そっちだったのね」
「クライマックスってね」
 こんなことを言うのだった。
「そうだったけれど」
「それってかなりよくない?」
「けれど結構扱いが悪かったような」
「それでも主役だったらいいじゃない。私なんて変な叫び声だけで」
「ううん、それはちょっとあれだね」
「そうでしょ?だからよ」
 こうアキトに話すキーンだった。
「メインだったら最高よ」
「けれどキーンさんって確か」
 不意にミオが出て来た。
「理事長と生徒会長やってなかった?」
「うっ、それは」
「私その学校にいて」
「その話をここで出すのね」
「あとお姫様もやってたわよね」
「あっ、それでしたら」
 今度はカトルが来た。
「僕も関係ありますよね」
「あたしもだよな」
「私もね」
 リョーコとジュンコも出て来た。
「いやあ、プリティサミーって面白かったな」
「あの時は科学者だったわね」
「ううん、あの時はねえ」
 エクセレンまで登場する。
「レインにかなり困らさせられたっけ」
「むっ、それは私の言葉よ」
 レインは笑いながらエクセレンに返す。
「それを言ったらね」
「あっ、そうだっけ」
「そうよ。まああの世界はあの世界でね」
「懐かしいわね」
「しかし。皆色々な世界に関わってるな」
 カミーユがこんなことを言った。
「俺最近悪い天使になったみたいだしな」
「天使か」
 何故かここでオズマが言う。
「それは俺もだ」
「オズマさんは天使というか騎士なんじゃないんですか>」
「一応そうなっているからな」
 こう言うオズマだった。
「まあ何はともあれだ」
「ええ。まずは御握りを食べて」
 カミーユはファから直接その御握りを受け取って食べている。
「それからですね」
「その通りだ」
「あたし思うんだけれどな」
「どうしたのだ?」
 ノインがリョーコの言葉に応える。
「何かあったのか」
「いやさ、マリュー艦長とかミサトさんの声ってな」
「二人の声がどうかしたのか」
「その声の人達って料理下手じゃね?」
 こう言うのである。
「あたしそんな気がするんだけれどな」
「そういえばそうだな」
 それにノインも頷く。
「考えてみればな」
「そうだろ?何でだろうな」
「逆に遥さんだと」
 今度は遥を見るリョーコだった。綾人に自分の握った御握りを手渡している。
「そういうのがなくてな」
「私お料理はそんなに」
「それでもさ。マリュー艦長とか」
「ええ、お料理は大の苦手よ」
 自分で言うマリューだった。
「軍にいるし」
「私もよ」
 ミサトも居直っている。
「そんなの。ビールとレトルトと」
「二人共それじゃあだな」
 それを聞いてだ。また言うシンだった。
「三十超えたら。つまりもうすぐぶくぶくとだな」
「はい、そこから先はね」
「言ったらどうなるかわかってるわね」
 急に鬼の顔になる二人であった。
「戦いで死ぬ前にね」
「死んでもらうわよ」
 本気の言葉だった。
「わかってると思うけれど」
「いいかしら」
「あの、二人共」
 遥がここで二人を止めて言う。
「既にアルゼンチンバックブリーカーしてるけれど」
「あら、そうだったの」
 マリューがシンをそうしていた。
「無意識のうちにしていたわ」
「私もよ」
 今度はミサトがシンをカナディアンバックブリーカーでしめている。
「何か身体が勝手にね」
「そうしてるわね」
「ううん、気持ちはわかるけれど」
 それはわかるという遥だった。
「それでもね」
「まあねえ。スタイルはね」
「気をつけてるし」
 一応こんなことを言う二人だった。
「これでもよ」
「ビールばかりでもね」
「そうよね。お肌にもね」
 遥もそれは同じだった。
「私達の歳になるとね」
「お肌がお水はじくなんてこともないし」
「全然ね」
「ったくよ。本当に戦いの前に死ぬところだったぜ」
「普通死んでるよ」
 キラがシンの介抱をしながら突っ込みを入れる。
「背骨折られてて」
「ああ、恐ろしい技だぜ」
 その二つのバックブリーカーのことである。
「プロレスってのは怖いな」
「他にも怖い技一杯あるしね」
「ああ、じゃあとにかくな」
「御握り食べてね」
「戦うか」
 そんな話をしていた。その中でだ。
 セレーナはだ。ツグミから説明を受けていた。
「じゃあ何時でもね」
「ええ、いけるわよ」
 こうセレーナに話すツグミだった。
「だから安心してね」
「ええ、ソレアレスが駄目になっても」
「戦えるから」
 二人はそんな話をしていた。そうしてだ。敵の第二陣が来たのであった。
「来たなあ、次が」
「敵がまた」
「さて、それじゃあ」
「また」
「総員出撃して下さい」
 レフィーナが告げた。
「また。戦闘です」
「よし、それじゃあね」
 こうしてだった。セレーナが応えてだった。
 彼等はすぐに戦闘に向かう。既に敵はすぐ傍まで来ていた。
「では隊長、ここは」
「正面からですね」
「そうだ、このまま攻める」
 スペクトラだった。彼女が指揮官だった。
 その彼女がだ。こう部下達に言うのだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「今から」
「あの女は私がやる」
 セレーナにだ。強烈な憎しみを向けていた。
「いいな」
「はい、それでは」
「我々は」
「御前達は他の敵を倒せ、いいな」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。バルマー軍から動いてであった。ロンド=ベルを攻める。
 ロンド=ベルはだ。その彼等に対してだ。
「方陣ですね」
「それですね」
「はい、まずは守りましょう」
 ルリがユリカに話していた。
「そうしてそのうえで」
「頃合いを見てですね」
「攻勢に移ります」
 これがここでのユリの策だった。
「そうしましょう」
「わかりました。それでは」
 こうしてだった。彼等は今は敵を迎え撃つのだった。そうしてその数を少しずつ消耗させていく。
 だがその中でだ。スペクトラは。
「いるか!」
「私のことかしら」
「そうだ、そこにいたな」
 セレーナを見て言うのだった。
「それではだ」
「何かあんたいつもそうね」
 セレーナはそのスペクトラを見ながら話す。
「私に来るわね」
「貴様だけは私が倒す」
 こう言ってであった。
「何としてもだ」
「言うわね。けれどね」
「けれど。何だ」
「私もそう簡単にやられるつもりはないから」
 余裕の微笑みを作っての言葉だった。
「それはわかっておいてね」
「ふん、あがくか」
「あら、人間あがいてこそよ」
 早速攻撃が来たがそれをかわしながら言う。
「そうであってこそよ」
「醜いものだな」
「醜いっていうかそれが素直なのよ」
「何処がだ」
「あんただってあがいてるしね」
 懐に飛び込む。そうして鞭を繰り出しながら言ってみせる。
「今もね」
「私があがいているだと。戯言を」
「これが戯言じゃないからね」
「何処がだ、私が嘘を言っているのか」
「嘘じゃなくてね」
 そうではないと告げてからだった。
「自分で気付いてないだけよ」
「まだ言うのか」
「だから。あんた今私を倒そうとしてるわね」
「それがどうした」
「それがあがいてるってことよ」
 こう彼女に言うのであった。スペクトラにだ。
「そうして私を倒そうって必死に向かうのがね」
「ではだ。どうするつもりだ」
「私もあがくのよ」
 そうするというのである。
「そして倒されないようにするのよ」
「ならばそうしてみるのだな」
 ヴァルク=イシャーの右手に剣を出しての言葉だ。
「この私の手から逃れてみよ!」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 セレーナも攻撃を繰り出す。
「こうしてね!」
「くっ!」
 両者の攻撃がぶつかり合う。二人の戦いも激しくなってきていた。
 その中でだ。戦局は膠着していた。
「今はです」
「我慢する時ですね」
「はい、こうして攻防が拮抗している時こそです」
 ルリはここでもユリカに話していた。
「耐えてです」
「そして機を見て」
「仕掛けます」
 こう言うのであった。
「その為にも今はです」
「わかりました」
 ユリカもルリのその言葉に応えて頷く。
「それでは」
「あとは」
 ルリはここでセレーナとスペクトラの戦いを見た。
「セレーナさんは」
「援護射撃はできますか?」
 ユリカはすぐにルリに問うた。
「セレーナさんの」
「いえ、それは」
「それは?」
「止めた方がいいです」6
 こう言って止めたのであった。
「アイビスさん達がおられます」
「だからですか」
「はい、そうです」
 こうしてだった。ナデシコは二人の戦いへの介入はしなかった。そしてだ。
 アイビス達もであった。動かなかったのだ。彼女達は彼女達の敵を倒していた。
 その中でだ。スレイがツグミに問う。
「これでいいのか」
「セレーナへの援護をしないことね」
「そうだ、あの女は強い」
 スペクトラのことに他ならない。
「それでだ。放っておいてだ」
「ええ、大丈夫よ」
 ツグミは確かな声で答える。
「今のあの娘なら」
「死なないっていうんだね」
 アイビスもツグミに問うた。当然彼女も他の敵と戦っている。
「絶対に」
「絶対よ」
 アイビスにも確かな声で返した。
「だから安心して」
「ツグミがそこまで言うならね」
「信じよう」
 二人も彼女の考えを受け入れた。そうしてであった。
 彼女達はセレーナを見守りながら自分達の戦いを行っていく。戦場での戦いをだ。
 セレーナはその間に。ソレアレスにかなりのダメージを受けていた。
「つうっ、やっぱり強いわね」
「私を侮ってもらっては困る」
 こう返すスペクトラだった。
「貴様とは浅からぬ因縁だがな」
「そうね、あんたに私のいた部隊を壊滅させられたしね」
「あの時に貴様も殺しておくべきだった」
 忌々しげに言うスペクトラだった。
「そうでなければ今な」
「こうして楽しい思いはしなかったっていうのね」
「違うな、それは」
 言葉の忌々しげなものがさらに強くなった。
「私をわずらわせる女狐め」
「どう?美人の狐でしょ」
「ふん、顔はどうでもいい」
「じゃあ身体かしら」
「そんなものには興味がない」
 スペクトラはあくまでこう言うのだった。
「私が興味があるのはだ」
「何だっていうのかしら」
「貴様の命だ」
 それだけだというのである。
「貴様のそれを貰いたいだけだ」
「そういうことなのね」
「死んでもらう」
 憎しみそのものの言葉をだ。今出した。
 そしてそのうえでだ。一旦距離を放してだった。
「何をするのかしらね」
「セレーナ、気をつけて」
 アルマが彼女に言う。
「何か様子が違うから」
「そうね。これまでの攻撃とは違うわね」
「うん、だから」
 こう言ってセレーナに注意を促す。そしてだった。
 スペクトラは。その攻撃を繰り出すのであった。
「さあ、受けるのだ!」
「来た!?」
「セレーナ、かわして!」
「わかってるわ、けれど!」
「遅い!」
 そしてだ。その攻撃を放ったのだった。
「ヤラー=イリュージョン!」
「くっ!」
 それを受けてだ。ソレアレスは大きく吹き飛ばされたのだった。
「勝負あったな」
「ま、まだ・・・・・・」
「セレーナ、大丈夫!?」
「私はまだ生きてるわよ」
 こうアルマに返すのだった。
「生きているのならね」
「そうか、それならだ」
 それを受けてだ。スペクトラが言ってきた。
「ここで止めを刺しておこう」
「生憎ね。首を切られても動いてみせるわ」
 不敵な笑みでスペクトラに返すセレーナだった。
「そう簡単には死なないわよ」
「何故そこまでして生きようとする」
 スペクトラはそれをセレーナに問うた。
「最早機体は動かないというのにだ。それでもか」
「決まってるわ、それはね」
「それは?」
「あんたを倒す為よ」
 憎悪をだ。ここで見せたのだった。
「隊長と皆の仇であるあんたをね」
「私をか」
「仇を討つまでは。絶対にね」
「ふん、ならば余計にだ」
 ヴァルク=イシャーの右手にだ。また剣を持っての言葉だった。
「ここで止めを刺しておこう」
「セレーナ、ここは本当に」
「いいえ、大丈夫よ」
 不敵な笑みをだ。パートナーにも向けるのだった。
「切り札があるから」
「切り札!?それじゃあ」
「ええ、ツグミ!」
「ええ、セレーナ!」
「あれに乗り換えるわ、出して」
「了解、それなら!」
 すぐに応えるツグミだった。そうしてだ。
「発進、アレグリアス!」
「何っ、ここで出すのか!?」
「まさか!」」
 スレイもアイビスも驚きを隠せない。
「宇宙空間での乗り換えか」
「幾ら何でも無茶だ、それは」
「無茶!?大好きよ」
 不敵な笑みで返すセレーナだった。
「危険を承知でね。戦ってるんだから」
「馬鹿な、それだけのダメージを機体に受けているんだ!」
「あんただって無事じゃないだろ!」
「言った筈よ。首が外れても動いてみせるってね」
 二人にもだ。セレーナはこう言うのだった。
「そうよね」
「くっ、本当に命は惜しくないのか」
「死んでもいいっていうんだね」
「だから私は死なないのよ」
 それをまた言うセレーナだった。
「絶対にね」
「・・・・・・わかった。それならだ」
「好きにするんだね」
 二人も遂に頷いた。
「やってみろ」
「あんたのしたいようにね」
「ただしだ」
「いいね、約束だよ」
 二人は切実な顔でセレーナに告げた。
「死ぬな」
「死んだら許さないからね」
「わかってるって言ってるじゃない」
 顔だけは明るく見せるセレーナだった。
「それじゃあね。見せてあげるわ」
「セレーナ、それじゃあ」
「アルマ、一世一代の賭けよ!」
 アルマに対しても告げた。
「ソレアレスからね!」
「アレグリアスに」
「一気に乗り換えるわよ!」
「ラジャー!」
 こうしてだった。セレーナはアルマと共に宇宙空間に出た。そしてだ。
 そこに赤い機体が来た。それこそ。
「アレグリアス出ました」
「セレーナ、今だ!」
「早く!」」
 ツグミに続いてスレイとアイビスが叫ぶ。
「乗れ!」
「さもないと!」
「よし、いったわ!」
 セレーナはアレグリアスのコクピットに手をつけた。そしてだ。
 アルマと共に中に入りだ。そうしてだった。
「よし、これで!」
「行けるね!」
「機動させるわよ!」
「うん、すぐに!」
 こうしてだった。アレグリアスがだ。動きだしたのであった。
「何っ、まさか」
 それを見てだ。スペクトラも驚きを隠せなかった。
「まさか。動くというのか」
「そうよ、見ての通りよ」
「そんな筈がない」
 彼女は今自分が見ているものを信じようとしなかった。
「宇宙にマシンを出してすぐにとは。ましてだ」
「私がこうしてマシンを動かせることね」
「ダメージはかなりの筈だ」
 その手応えは確かにあった。
「それで何故だ」
「私は不死身なのよ」
 ここでも不敵な笑みを作ってみせて告げたのだった。
「だからよ」
「また戯言を。不死身というのならだ」
「ええ、見せてあげるわね」
「来い!今度こそだ!」
「やっつけられるのはあんたよ!」
 こうしてだった。二人は再び激突するのだった。
 今度はだ。セレーナが押していた。
「くっ、この機体」
「いい感じね。しっくりくるわ」
 セレーナは鞭を振るいながら言う。
「このアレグリアスはね」
「そうだね。合ってるね」
「私にね」
 アルマにも気軽な言葉を返す。
「この機体なら」
「いける?」
「ええ、いけるわ」
「ふざけるな!私を甘く見るな!」
 今の言葉にだ。スペクトラは激昂を見せた。
 そしてだ。再び剣を振るう。
「これで。貴様を」
「倒そうっていうのね」
「死ね!本気で止めを刺してやる!」
「セレーナ!」
「来るぞ!」
 スレイとアイビスがセレーナにまた叫んだ。
「気をつけろ!」
「ここは!」
「わかってるわよ。何度でも言うわ」
 セレーナはだ。鋭い目になった。
 そのうえで口元に微笑みを浮かべて。そしてだった。
「アルマ、このマシンだけれど」
「うん、どうしたの?」
「とっておきの技があるわね」
 こう彼に言うのであった。
「そうね」
「それは」
「プリズムファントム、モードLで!」
 左右にだ。無線のオプションを出してだ。
 両手からそれぞれの剣を出してであった。
「これで!」
 まずはそのオプションを飛ばす。そのうえでヴァルク=イシャーに突っ込み。同時攻撃を繰り出したのであった。
「どうかしら!」
「セレーナ、まさか今のが」
「そうよ、それよ」
 にこりと笑ってアルマに返すセレーナだった。
「切り札よ」
「乗ってすぐに出せるなんて」
「つまりそれだけ私がこの機体に合ってるってことね」
「このアレグリアスとだね」
「ええ、そしてこれでね」
 あらためてスペクトラのヴァルク=イシャーを見る。するとだ。
「あいつはここではね」
「もうけりはついたね」
「どう?まだやる?」
 セレーナはあらためてスペクトラに問うた。
「私はいいけれどね」
「おのれ、生意気な」
「生意気じゃないわよ。あんたの機体じゃもう無理でしょ」 
 それを見越しての言葉に他ならない。
「そうでしょ、それは」
「くっ、ならばだ」
「逃げるのならどうぞ」
 あえて挑発的に言うセレーナだった。
「今は追わないっていうか追えないしね、こっちも」
「ふん、どちらにしろ貴様はだ」
「ここで死ぬっていうのね」
「そうだ、死ぬ」
 こうセレーナに告げるのを忘れない。
「間違いなくだ」
「一つ言っておくわ」
 セレーナは不敵な笑みと共にまた彼女に言った。
「あんた達は通常空間からこっちに来ているわね」
「それがどうした」
「それは帰れるから来ているのね」
 そのことを指摘したのだった。
「そうよね。だから私達を倒しに来たのよね」
「それがどうした」
「あんた達が行き来できるってことは」
「まさかと思うがな」
「そのまさかよ」
 今度は余裕の笑みであった。
「私達もそれができるのよ」
「地球人共にできるものか」
「その偏見が全ての元凶ってのも言っておくわね」
「何処までも口の減らない女だ」
「伊達に特殊部隊にはいなかったわ」
 ここではだ。スペクトラに対して憎しみもかいまだが見せた。
「言葉も戦いに使うのよ」
「それを言うか」
「言うわ。それじゃあさっさと逃げるのね」
「覚えておくことだ」
 スペクトラは今はこう言うしかできなかった。そうしてだ。
 彼女は自身が率いる軍にだ。こう告げるのだった。
「ではだ」
「撤退ですか」
「ここは」
「戦力はどれだけ残っている」
 スペクトラは部下達にこのことも尋ねた。
「一体どれだけだ」
「三割程度です」
「そこまで倒されました」
 こう答える彼等だった。
「ですからもうです」
「これ以上の戦闘は」
「潮時だな」
 スペクトラはこう結論を出した。これで全てが決まった。
 彼女は軍と共に撤退した。これで第二陣との戦闘は終わった。
 しかしこれでだ。戦いは終わりではないのだった。
「六段だったよな」
「ああ、あいつ言ってたよな」
「確かにね」
 ロンド=ベルの面々は休憩中にこう話すのだった。
「じゃああと四段か」
「四回も戦わないといけないんだな」
「大丈夫かな」
「とりあえずエネルギーと弾薬はあります」
 八雲がそれは大丈夫だと話した。
「ですから戦うことはできます」
「何とかですね」
「それは」
「そうです。ただし」
 それでもなのだった。問題はそこではなかった。
「ここから脱出しなければです」
「また来るよな」
「絶対に」
「あいつ等幾らでも」
「そしてここにいる限りは」
 八雲はさらに話す。
「やがては」
「食べ物がなくなって」
「遂には」
「餓死、ですね」
 最悪の末路が言葉となって出た。
「それしかありませんね」
「えっ、それってないよ」
「そうだぜ、ちょっとそれはよ」
 アラドと甲児が思わず声をあげた。
「俺飯食わないと死ぬんだぜ」
「俺だってよ。五人分食わないとちょっとな」
「これは」
 八雲は彼等の話を聞いてだ。真剣な顔になって言った。
「最後は近いかも知れませんね」
「あの、八雲さん」
 キムが思わず突っ込みを入れた。
「そこで真剣に言ったら」
「駄目だったかな」
「本当になってしまいますから」
 だから駄目だというのである。
「食べ物はまだありますけれど」
「けれど。皆よく食べるから」
「ですから本当のことでも言わないで下さい」
「おい、君も今言ったじゃないか」
 レイヴンがそのキムに言う。突込みが突っ込みを呼ぶ。
「只でさえ我々の部隊には大食漢が多いというのに」
「レイヴンさんも言っていますけれど」
 エマが彼に言うのだった。
「ですから。ここから脱出することですね」
「そうだ。それだ」
「でしたら落ち着いてですね」
「ちょっと、エマさん俺マジなんですよ」
 アラドは真剣な顔で言う。
「本当に食わないと死んじゃうんですよ」
「これ本当なんです」
 ゼオラがそのアラドのフォローに来た。
「この子食べないと駄目ですから」
「だから大丈夫だからね」
 エマは困った顔で二人に話す。
「二人共落ち着いてね」
「これが落ち着ける状況ですか」
「食べられないなんて」
「何か状況を履き違えていないか?」
 マシュマーが騒ぐ面々を見て首を捻る。
「問題はそこではないだろう」
「つまりあれですよね」
 ゴットンは冷静だった。
「ここから脱出できないと先はないってことですよね」
「そうだ。食べられないという問題ではないだろう」
「おい、だから餓死するんだぞ!」
 甲児はマシュマーにもくってかかる。
「そうなったらあんたもハマーンさんへの忠誠がな」
「何っ、それは大変だ!」
 こう言われると我を失うマシュマーだった。
「ゴットン、何としてもここから脱出するぞ!」
「結局こうなっちゃうんですね」
「私は生きて戦う義務がある!」
 マシュマーも騒ぐ。
「その為にはだ!何としてもここからだ!」
「ですからここは騒いでもですね」
「バルディオスでは何とかできないかな」
 マリンはふとこう思った。
「その転移能力で」
「流石にこれだけの部隊は無理だな」
 大河が彼に述べた。
「それは諦めるぞ」
「そうなんですか。それじゃあ」
「今ある機体や艦艇でできるとすれば」
 こう考えるとであった。それは。
「イデオンだったら」
「あの力だったら」
「若しかしたら」
「駄目だ、それが」
 ギジェが言うのであった。
「ゲージがあがらん」
「いつも思うけれど肝心な時に動かないよな」
「余計な時に動くからなあ」
「いつもいつも」
 イデオンへの評価が決まりだしていた。
「じゃあ今は」
「とりあえず戦う?」
「それしかないかあ」
「ハザル=ゴッツォから聞き出す?」
「あいつを倒してから」
「どっちにしても倒すしかないか」
 これが答えだった。
「とりあえずは勝ち進んで」
「そうするか」
「やっぱり」
 こう話してであった。彼等は今は戦うしかなかった。そんな状況だった。 
 とりあえず今は食べられた。アラドはこのことに少し安心していた。
「よかったよ、今すぐじゃないんだな」
「そうね。それは何よりね」
 ゼオラもそのことにはほっとしていた。
「よかったわね、アラド」
「うん、それじゃあまた後で」
「食べましょう」
 完全に姉になっているゼオラだった。
「それでアラド」
「んっ、飯は後だよな」
「だから御飯じゃなくて」
「じゃあ何なんだよ」
「クォヴレーのことよ」
 彼のことを話すのだった。
「何かこの戦いで様子がおかしくない?」
「様子が?」
「うん、何かそんな気がするけれど」
「気のせいじゃないよな」
「多分ね」
 怪訝な顔でアラドに話す。
「あの様子じゃね」
「わかった。じゃあ俺もな」
「一緒に見てくれる?」
「何かあってからじゃ遅いからな」
 アラドも今は真面目な顔になっている。
「それじゃあな」
「ええ、それで御願いね」
「わかってるさ。それでさ」
「今度は何なの?」
「ラトゥーニやオウカ姉さんにも声かけとくか」
 こう言うのだった。
「あの二人にもな」
「クォヴレーに何かあったらってことね」
「あいつ一人じゃ駄目な時だってあるしな」
「その時に備えてね」
「俺達二人で大抵はどうにかなってもな」
 アラドはここでは慎重であった。
「けれどそうじゃない時はな」
「そうね。それじゃあね」
「ああ、話しておいていいよな、二人に」
「ええ、そうしましょう」
 ゼオラもアラドのその言葉に頷いた。
「若しもの時はね」
「そうして絶対に最悪の事態は避けないとな」
「その通りね」
 こんな話をする二人だった。そうしてだ。
 キャリコがだ。ハザルに話していた。
「では今より」
「うむ、第三陣出陣だ」
「はっ、それでは」
「しかしだ」
 ここでだ。ハザルはこう言うのを忘れなかった。
「無様な真似はするな」
「無様なですか」
「貴様は奴等の戦力を消耗させることが仕事だ」
 彼にしてもそうだというのである。
「そしてそのうえでだ」
「頃合いを見てですね」
「退け。残った軍は俺の率いる第六陣に入れる」
「第一、第二の陣と同じく」
「そうだ、そうする」
「それでは」
「そういえばロンド=ベルにはだ」
 ここでこうも言うハザルだった。
「貴様が狙っている者がいたな」
「あの男のことですか」
「そうだ、あの男は御前の好きにするがいい」
「ではこの手で」
「倒したければ倒せ」
 それはいいというのであった。
「わかったな。そうするのだ」
「はっ、それでは」
「俺はここに残り奴等のあがく姿を見続ける」
 その余裕は変わらない。
「それではだ」
「はっ、では今より」
 こうしてであった。彼が出陣した。戦いはまだ続くのだった。


第九十一話   完


                           2011・1・19 

 

第九十二話 イングラムの心

              第九十二話 イングラムの心
 アルマナはだ。セレーナに声をかけていた。
「あの」
「何?」
「大丈夫ですか?」
 気遣いは見せていた。
「その、あれだけのことがあって」
「心配しなくていいわ」
 それはいいというのだった。
「ただね」
「ただ?」
「あんたのその心遣いだけれど」
「はい」
「そんなのはいいから」
 こう言うのだった。
「正直言ってね」
「えっ、どうしてですか?」
「そういうのは反吐が出るのよ」
 これがセレーナへのアマルナの言葉だった。
「あんた、私を哀れだとか思ってるでしょ」
「いえ、それは」
「自分で気付いていなくてもそうなのよ。そうして上から見られるのはね」
 どうかというのであった。
「好きじゃないから。いいから」
「じゃあ今は」
「もういいから」
 こう言ってアマルナを退けるのだった。
「これ位の怪我はね。自分でなおせるからね」
「そうですか」
「ええ、そうよ」
 きつい顔でアマルナを拒むのだった。そうしてであった。
 自分で実際に怪我をなおした。そうしたのであった。
 そんな彼女を見てだ。カガリが言った。
「何かな」
「嫌なものを見たっていうのかい?」
「私もああしたところがあったか」
 アマルナを見ての言葉だった。
「ああして。上からの哀れみは」
「そうだね。カガリもねえ」
 ユウナがだ。カガリに自分が思ったことをありのまま話した。
「ちょっとね」
「あったんだな」
「なかったとは言えないね。オーブの後継者だからってね」
「そうか、やっぱりそうなんだな」
「うん、誇りは大事だよ」
 ユウナはそれは必要だとした。
「けれど己を高みに立てて何かをするのはね」
「よくないか」
「驕りはね。いいものを生まないよ」
「それでなんだな」
「そういうことさ。まあカガリは最初からそうしたことはあまりなかったから」
「そうか」
「うん、今は全く気にしなくていいから」
 こう彼女に話すのだった。
「ただ。カガリはカガリで」
「私は。何だ」
「もう少しおしとやかになってくれないとねえ」
「そんなことはどうでもいいだろう」
 そのことは完全に否定するのだった。
「私はこれでもだ」
「けれどカガリって」
 ミネバが彼女に言ってきた。
「ちょっと」
「もう少しレディーとしてのたしなみが必要だな」
 ハマーン参戦であった。
「全く。そんなのではだ」
「そうですよね。僕もこれでは先が思いやられて」
 今度は溜息になるユウナであった。
「御婿さんが来てくれるやら」
「えっ、それもう決まってるんじゃないの?」
 ミネバはその話になるときょとんとした顔になって述べた。
「アスランなんじゃ」
「ああ、そうだったそうだった」
 ユウナはミネバのその言葉にすぐに明るさを取り戻した。
「彼がいたんだ。いやあよかったよかった」
「何か凄く嬉しそうだな」
「当然だよ。国家元首に伴侶がいないってお話にならないよ」
 だからだというのであった。
「アスラン君はオーブの救世主だよ」
「あの、俺一言もいいって言ってないですけれど」
 アスラン本人が出て来て言う。
「何でもう決まってるんですか?」
「国家の為には犠牲も必要でね」
「俺は犠牲なんですか」
「尊い犠牲だよ」
 何故か遠い目をしてみせるユウナだった。
「有り難う、君のことは忘れないよ」
「俺生きてますから。っていうかですね」
「うん、っていうか?」
「あの、ユウナさん達が勝手に決めてるんじゃ」
「いえ、ご安心下さい」
「そんなことはありません」
 今度はトダカとキサカが出て来た。
「しっかりとプラントとはお話しています」
「そのことはしっかりしていますので」
「えっ、プラントと!?」
 それを聞いてこれまで以上に驚くアスランだった。
「何時の間にそんなことが」
「いやあ、プラントも話のわかる人がいてくれてね」
「御蔭で我々もです」
「肩の荷がおりました」
 ユウナにトダカとキサカが続く。
「ああ、式を挙げる場所ももう決まっているからね」
「アズラエルさんも出席して下さいますし」
「華やかなものになりますね」
「そうですねえ。いい式になりそうですね」
 そのアズラエルもにこやかに出て来た。
「地球に戻った時が楽しみですよ」
「ですから何時の間にそんな話が」
「だから。君がうんと言うとは思えなかったんでね」
「私達が政治的に話を進めました」
「そういうことです」
 平気な顔で言う三人だった。
「よかったよかった」
「では戦争が終わりましたら」
「オーブはすぐに祝賀ムードですね」
「人の話聞いてないんですね」
 最初から聞くつもりのない三人だった。とにかく話はそれで進めていた。
 しかしそのユウナ達にだ。ロジャーが言うのだった。
「祝福の用意はいいのだがな」
「わかってるよ。まずはだよね」
「その通りだ。何とかして脱出しないとな」
「このままじゃ本当にね」
「終わってしまう」
 ロジャーはドロシーにも応えた。
「我々は今は篭の中の鳥だ」
「そうですね。まだ敵は来ますし」
 キラもそれを言う。
「何とか。生き残りながら脱出しないと」
「脱出の方法は必ずある」
 それはだとだ。ブレラも言う。
「絶望はこの場合はだ」
「何にもならないですね」
「そうだ。前を向かなければだ」
 ブレラはこうキラに話すのだった。
「どうにもならない」
「ええ、それじゃあ」
「まだ食いものはふんだんにあるぞ」
 グン=ジェムは皆にそれを言う。
「人間食えるうちは負けはしないからな」
「そうだね。まだまだこれからだよ」
「戦って戦ってな」
 ミンとガナンである。
「生き抜くんだよ」
「いいな、それで」
「あ、ああ」
「それしかないしな」
 ゴルとジンも言う。
「お、おで絶対に生き残る」
「生き残るからには奴等を倒すだけだな」
 これが彼等の考えだった。
「それしかないからな」
「結局はそうだな」
 アレンもグン=ジェム達のその言葉に頷く。
「生き残らないと脱出だっててきないしな」
「そうだな。しかしあれだな」
 フェイが言う。
「こんな状況にも慣れてきたな」
「毎回ピンチの連続だからなあ」
 ミシェルはそのことをこう話す。
「それじゃあな」
「全くだ。この部隊はこんなことばかりだ」
 クランも彼のその言葉に同意する。
「お陰で息が休まる暇もない」
「それで次はどの部隊が来るんだ?」
 今言ったのはヤザンである。
「俺の予想じゃ仮面の男の方だな」
「あの男がですか」
「次の相手ですか」
「ああ、さっきは女の方だっただろ」
 こうラムサスとダンケルにも話すヤザンだった。
「それじゃあ次はな」
「男の方だと」
「そう仰るのですか」
「あの胡散臭い龍の奴や髭のおっさんは後だな」
「孫光龍ですね」
 クスハがその彼のことを脳裏に浮かべた。
「彼が」
「そういえばあいつの行動もわからないことばかりだな」
「ええ、そうよね」」
 クスハはブリットに対して答えた。
「何か。謎だらけで」
「そもそも何者かすらわからない」
「地球人だというのにバルマーに協力しているし」
「あれは何故だろう」
「あれっ、そういえば」
 ここでふとシンジが言った。
「父さんも言ってたこととバルマーって何か似てるような」
「碇博士だね」
「はい、そうです」
 アキトに対しても述べる。
「冥王計画は人類補完計画が失敗した時の保険でしたね」
「うん。けれど僕もあの人の言っていることはね」
「そうですか」
「よくわからないところがあるね」
 実際にそうだというのだった。
「どうにもね」
「それに」
 シンジはここで難しい顔になって述べた。
「若しかしたらですけれど」
「若しかしたらって?」
「父さん生きているかも知れません」
 こうアキトに話すのだった。
「ひょっとしたら」
「まさか、そんな」
「はい、まさかと思いますけれど」
「そういえば碇司令はあの時」
 アキトもシンジの言葉に続いて言う。
「死んだということになっているけれど」
「死体は見つかっていないんです」
「そしてレイちゃんがいる」
「私はあの時の私と違うから」
 そうではないというのである。
「だからそれは」
「確証は得られないけれどね」
「それでもですね」
「うん、怪しいね」
 こうシンジに話すアキトだった。そんなことも思うのであった。
 そしてそんな話をしているうちにであった。
「敵が来たな」
「ああ」
「また」
 そうなのだった。敵の第三陣が来たのである。
 その指揮官はというと。
「やはりな」
「そうだ、俺だ」
 キャリコがだ。クォヴレーに対して言うのであった。
「俺が貴様を倒す」
「生憎だがそのつもりはない」
「貴様の意志なぞ関係はない」
 キャリコも負けてはいない。こうクォヴレーに返すのだった。
「ここでだ。倒してだ」
「どうするつもりだ」
「俺のこの存在を確かなものにするのだ」
 こう言ってであった。軍を進ませる。こうして戦いがまたはじまった。
「こうあれこれ来るとな」
「疲れるか」
「少しな」
 アポロはこうシリウスに返した。
「そっちはどうなんだよ」
「私はまだ大丈夫だ」
「そうか、タフってやつか?」
「私は第一陣との戦いでは殆ど出撃していなかったからな」
 それでだというのだ。
「だからそれ程はだ」
「そうなのかよ」
「御前も少しは休め」
「そうよ」
 シルヴィアもアポロに言う。
「たまには休まないとね」
「そういうのは俺の性分じゃねえんだよ」
「そんなこと言っていてもだ」
 だがシリウスはその彼にまた言う。
「疲れは蓄積する」
「この戦いまだ先は長いんだから」
「それで休めっていうのかよ」
「いい加減俺にも出撃させろっての」
 ピエールも彼に言ってきた。
「わかったな」
「ちぇっ、じゃあ俺は今回は休憩かよ」
「代わりは俺だ」
「俺も入ろう」
 グレンも出るというのだった。
「アクエリオンは乗り換えができるからな」
「こうした場合は楽だな」
 シリウスは二人にも述べた。
「では私も」
「待って、シリウス」
 その彼には麗花が声をかけてきた。
「次は私が」
「出るのか」
「ええ、出させて」
「わかった、それならだ」
 シリウスも真面目な顔で頷いた。
「私は今回は休ませてもらおう」
「ええ、それじゃあ」
 こうしてだった。彼等はそれぞれ乗り換えながら戦うのだった。皆それぞれ工夫して戦い続ける。そしてクォヴレーはというと。
 ベルグバゥで戦い続ける。しかしキャリコは。
 その彼に対してだ。戦いを優勢に進めるのだった。
「どうした。動きが悪いぞ」
「くっ・・・・・・」
「その機体では最早限界だな」
「いや、まだだ」
 クォヴレーもここで意地を見せようとする。
「まだ俺はだ」
「戦うというのか」
「少なくとも貴様には負けはしない」
 こう言うのであった。
「絶対にだ」
「ふん、それならばだ」
「意地を見せろとでも言うのか」
「そんなことは言うことはない」
 キャリコは仮面の下からクォヴレーを嘲笑して述べた。
「せいぜいあがくのだな」
「言うのはそれか」
「そうだ、あがいて死ね」
 これが彼の言葉だった。
「そして俺を楽しませるのだ」
「貴様がこの俺にこだわる理由」
 クォヴレーは戦いながらキャリコに言う。
「それは何故か」
「何故だというのか」
「俺を倒さなければ貴様自身の自己が成り立たないからだな」
「何っ!?」
「それは貴様自身が言っている」
 彼のその言葉からそれを見抜いているのだった。
「他ならない貴様がな」
「俺はイングラム=プリスケンではない」
 キャリコは言われる前から自分で言った。
「だからこそ貴様を」
「生憎だが俺もだ」
「何だというのだ」
「クォヴレー=ゴードンだ」
 己の名を言ってみせたのだった。
「そういうことだ」
「何が言いたい」
「言ったまでだ」
 多くは言わないのだった。
「それだけだ」
「ふん、強がりか」
「そう思うのは貴様がそう思いたいだけだ」
「何っ?」
「貴様はそう思わなければ生きていられないからそう言うのだ」
「まだ言うか」
「何度でも言う」
 戦いは劣勢だがそれでもだ。彼は負けてはいなかった。
 そしてそのうえでキャリコの攻撃を受ける。それで。
 大きく吹き飛んだ。それを見てだった。
「よし、今だ!」
「来るか」
「遂に貴様を倒す!」
 キャリコのヴァルク=バアルが分身した。そしてだ。
 集中的な攻撃を放つ。それは。
「ヤラー=イリュージョン、受けよ!」
「これで俺を倒すか」
「そうだ、死ね!」
 言いながらだ。キャリコは攻撃を放ち続ける。
「これで俺は自分自身を!」
「俺はまだ」
 だが、だった。クォヴレーはここで言うのだった。
 激しい攻撃を受けて機体は大破した。そして。
 意識が混濁していく。混沌に落ちていく。だがその中で。
「誰だ」
 クォヴレーはその混沌の中で何者かを見ていた。
「誰だ、そこにいるのは」
「俺だ」
 こう返すのだった。
「俺の名前は」
「イングラム=プリスケンだな」
 クォヴレーは自分からその名を言ってみせた。
「そうだな」
「そうだ。わかるか」
「わかる。あの時御前は俺と」
「俺は実体をなくしてしまっていた」
「そうだったな」
「しかしだ。俺のやらなければならないことを果たす為にだ」
「その為に俺と一つになった」
 クォヴレーはこうその男イングラムに言った。
「そうだな」
「その通りだ。御前には悪いことをした」
「いや、いい」
「いいのか」
「あの時の俺は只の人形だった」
 こう彼に述べるのだった。
「しかしあの時からだ」
「クォヴレー=ゴードンになったか」
「そうだ、そして俺は御前でもあるのだな」
「そうなる。俺と御前は同じだ」
「では俺のやるべきことは」
「因果律を守ることだ」
 クォヴレーはその因果律について問うた。
「因果律?」
「簡単に言えばあらゆる世界の秩序を守ることだ」
「それか」
「俺はバルマー戦役では何とか生き残った」
「そうだったのか」
「だが。ガンエデンとの戦いで実体を失いだ」
 そしてだというのだ。
「その意識だけをアストラナガンに残していた」
「そして俺と会ったのだったな」
「アイン=バルシェムだった御前にだ」
 その時の彼にだというのだ。
「そしてその御前と融合してだ」
「そして再び」
「因果律を守る為に意識がここにある」
「俺の中に」
「だからだ。クォヴレー=ゴードンよ」
 その彼に言う。
「御前は俺として。因果律の為に」
「戦えというのか」
「今御前に俺の最後の力を任せる」
「最後の力?」
「アストラナガン。それをだ」
 彼が意識を移していたそれをだというのだ。
「渡す。それで戦うのだ」
「だが俺の機体は今は」
「その機体にアストラナガンの力を移す」
 またクォヴレーに述べたのだった。
「その力で戦え」
「それが俺の運命か」
「受けるか」
 イングラムはクォヴレーにこのことも問うた。
「このことを」
「俺は心のない人形だった」
 クォヴレーはこのことからイングラムに話した。
「しかし今はある」
「そうだ、今言葉を出しているのが何よりの証だ」
「ならば俺は。クォヴレー=ゴードンとして」
 そしてだ。さらに言うのだった。
「イングラム=プリスケンとして」
「戦うのだな」
「そうする。御前のその最後の力も受けよう」
「わかった。それならばだ」
 こうしてだった。遂に。
 ベルグバゥの姿がだ。変わっていく。
 翼が生えだ。悪魔を思わせる姿になっていくのだった。
「な、何だ!?」
「ベルグバゥの姿が変わっていく」
「悪魔か、ありゃ」
「い、いやあれは」
「まさかと思うけれど」
 何人かがだ。気付いたのだった。
「アストラナガン!?」
「姿形は全然違うけれど」
「何か似ている」
「そうだよな、あれは」
「あのマシンが」
 そしてだった。その姿になりだった。
「アストラナガン」
「じゃああいつまさか」
「イングラムだったのか!?」
「ひょっとして」
「おそらくはな」
 ここでだ。クォヴレー自身も言うのだった。
「俺は。イングラム=プリスケンでもあった」
「でもあったって」
「何かそれって」
「どういうことかわからないけれど」
「いや、まさか」
 ここで言ったのはレイだった。
「俺と同じなのか」
「クローン!?」
「まさか、そんな」
「クォヴレーがって」
「いや、そうだ」
 本人がだ。こう言ってきたのだった。
「俺はバルシェムだった」
「じゃあ人造人間だった!?」
「つまりは」
「そういうことかよ」
「そしてだ。俺は地球圏に来た時にイングラム=プリスケンと融合した」
「その精神がだな」
 また言うレイだった。
「それがだな」
「レイはクルーゼのクローンだけれど」
「じゃあクォヴレーはその精神がイングラム少佐と融合してる!?」
「つまりは」
「そうなる」
 まさにそうだというのであった。
「それが俺だ」
「じゃあそのマシンは」
「アストラナガン?」
「形は違っていても」
「そうだ、イングラム=プリスケンの剣」
 クォヴレーはアストラナガンをこう表現した。
「それを俺もまた手にしたのだ」
「じゃあその剣は」
「まさにそのアストラナガン」
「その名前は」
「ディスアストラナガン」
 クォヴレー自身がその名前を言った。
「このマシンの名前だ」
「何か凄いことになってきたな」
 アラドも今は唖然となっている。
「まさかクォヴレーがイングラム少佐とな」
「そうね。けれど」
「けれど?」
「これでクォヴレーが誰なのかはわかったわ」
 ゼオラはアラドにこのことを話すのだった。
「そしてね」
「そして、かよ」
「彼、クォヴレーは信用できるわ」
 そのクォヴレーを見ての言葉だった。
「こうして。自分自身のとても言えないようなことまで私達に話してくれたから」
「だからこそっていうんだな」
「ええ、今の彼は仲間よ」
 はっきりとだ。ゼオラは断言した。
「私達とね」
「そうだな。俺達の仲間だ」
 アラドもだ。ゼオラのその言葉に頷いた。
「イングラム少佐である以上にな」
「ええ、じゃあアラド」
「わかってるさ、ゼオラ」
 二人は息を合わせた。そうしてだった。
 二人はそのままクォヴレーのところに向かう。そのうえで彼に言った。
「おい、クォヴレー!」
「私達も今から」
「好意は受け取っておく」
 クォヴレーは彼等のその言葉を背に受けながら述べた。
「だが」
「だが?」
「だがっていうと?」
「ここは俺にやらせてくれ」
 こう二人に言うのだった。
「ここはだ」
「じゃあそいつはか」
「貴方が一人で」
「そうだ、そうでないとこいつも満足しない」
「その通りだ」
 キャリコ自身もこう答えるのだった。
「俺は。貴様以外と今は戦うつもりはない」
「そうだな。だからこそだ」
「そうか。じゃあな」
「私達も今は」
 二人はクォヴレーのその心を受け取った。そうしてだった。
 クォヴレーの戦いに加わることは止めだ。別の敵に向かうのだった。
「敵が多いってのはな」
「この場合は有り難いわよね」
「ああ、それじゃあな」
「行きましょう、他の相手の前に」
 こうしてだった。二人は今はクォヴレーに任せた。そのクォヴレーは。
 キャリコに対してだ。こう言うのだった。
「貴様と俺は違う」
「それは言うまでもない」
「しかし貴様は俺がいなくては生きられはしない」
 告げるのはこのことだった。
「俺の中にあるオリジナルの貴様がいなくてはだ」
「俺はオリジナルを倒してはじめて俺になれるのだ」
 仮面の中でだ。こう言うのであった。
「だからこそだ」
「だから俺は貴様とは違うのだ」
「だからだと!?」
「俺は貴様がいなくとも生きられる」
 キャリコに対して告げる。
「その通りだ」
「ならばその証拠を見せてみるのだな」
 こう言って斬りつける。しかしそれは。
 ディスアストラナガンの鎌で受け止める。そうしてみせてだった。
「では見せてやろう」
「何っ!?」
「俺のその証拠をだ」
 言いながら一旦キャリコのヴァルク=バアルから間合いを離してだった。
 その胸を開き。そこからだった。
 エネルギーを蓄える。それと共に。
「か、髪が!?」
「クォヴレーの髪が!」
 ロンド=ベルの面々はここでまた驚くことになった。
 白い彼の髪が青くなった。その青こそは。
「イングラム少佐の髪だな」
「ああ、間違いない」
「一度あの髪になったけれど」
「ここでも!?」
「じゃあその力も」
 そしてだ。キャリコも驚きを隠せなかった。
「くっ、オリジナルの力か」
「俺と。イングラムの力だ」
 こう返すクォヴレーだった。そのうえでだ。
「エンゲージ」
 胸にエネルギーがさらに集められていく。
「ディス=レヴよ」
 まずはこう言ってだった。
「その力を解放しろ!;テトラクテュス=グラマトン!」
「!?それは」
「さあ、時の流れを垣間見ろ!」
 キャリコに対して言った。
「アイン=ソフ=オウル!」
 クォヴレーの身体にイングラムの精神が重なった。その表情も。
「貴様、やはり!」
「デッド=エンド=シュート!!」
 そしてその光が一直線に放たれだ。キャリコのヴァルク=バアルを貫いたのだった。
「くっ!」
「これで終わりだな」
 大破したそのヴァルク=バアルを見ての言葉だ。
「貴様もな」
「おのれ、まだだ」
「まだやるというのか」
「くっ、俺はまだ」
 実際にまだクォヴレーに向かおうとする。しかしだった。
 ここでだ。エイスが出て来た。そのうえでだった。
「撤退するのだ」
「しかし、今は」
「最早戦力の七割を失っている」
 気付けばそれだけなのだった。
「だからだ。いいな」
「くっ、止むを得ないということか」
「その通りだ」
「わかった、それではだ」
「戦略目的は達した」
 キャリコの仮面は何時しか割れていた。だがエイスはその素顔を見てもだ。全く動じずそのうえでこう彼に言うのであった。
「だからだ」
「わかった、それではだ」
「撤退するぞ」
「また会おう」
 キャリコはクォヴレーに忌々しげに告げた。
「それではな」
「その次に会った時代にだな」
「貴様を倒す。必ずだ」
 こう告げてだ。彼は自身が率いる軍と共に撤退した。第三陣との戦いもこれで終わった。それで、であった。
 皆クォヴレーに対してだ。口々に声をかけて言うのだった。
「まさかな」
「クォヴレーがイングラム少佐だったなんてな」
「そんなことになってたなんてな」
「これは考えなかったからな」
「俺も今わかった」 
 クォヴレー自身もこう話す。
「そのことがな」
「そしてアストラナガンの力も得た」
「そうなんだな」
「そうだ」
 このことについても答えるクォヴレーだった。
「だが。俺は今は」
「今は?」
「今はっていうと?」
「俺の為すべきことがわかった」 
 こんなことも言うのだった。
「それもだ」
「それもだって」
「それは一体何なんだ?」
「為すべきことって」
「つまりは」
「番人だ。俺はそれだった」
 こう仲間達に話すのだった。
「それがわかった」
「番人!?」
「番人っていうと」
「それって」
「それはまたわかる。だがあの男は倒す」
 キャリコのことである。
「必ず」
「ああ、それは頼んだぜ」
「本当にね」
 アラドとゼオラがその彼の言葉に応えてきた。
「それが御前のやらなくちゃいけないことの一つだろうからな」
「だから自分でね」
「そうさせてもらう」
 クォヴレーは二人に対しても表情を変えずに述べた。
「俺のこの手であの男は」
「あいつもやっぱり」
「イングラム少佐みたいだけれど」
「そうだ、あの男もだ」
 実際にそうだというのだった。
「そうした意味で俺と同じだ」
「やっぱりな。そうなんだな」
「クォヴレーと。だから」
「俺達は同じだ。だが違う」
 ここでだ。クォヴレーはこうも言った。
「俺とあの男は違う」
「その通りだ」
 レーツェルが彼のその言葉を認めてきた。
「君は確かに彼と融合した」
「それでもだな」
「しかし君は君だ」
 こうクォヴレーに話すのだった。
「それは間違いのない事実だ」
「だから俺は」
「君は君の意志で動くことだ」
 これがレーツェルの言うことだった。
「わかったな」
「わかった。それではだ」
「ああ、それじゃあ」
「またこれからもね」
「共に戦わせてもらう」
 クォヴレーからアラドとゼオラに述べた。
「それでいいな」
「ああ、勿論だよ」
「それじゃあね」
 こうしてだった。絆も深める彼等だった。
 そしてそんな話をしたうえでだ。今度はブリットが皆に話した。
「これで第三陣は退けて」
「あと三つ」
「それを倒せばいよいよ」
「あいつよね」
「ハザルね」
「嫌な奴だね」
 今言ったのはアレルヤだった。
「あのハザルという男は」
「何だ?嫌いなのか」
「近親憎悪みたいなのも感じる」
 アレルヤはこう話した。
「あの男には」
「まあそれはな」
「言うとややこしいから」
「自分の中で収めて」
「そうしていった方がね」
 皆そのアレルヤに言っていく。
「いいから」
「その通りだ」
 カミーユがここでアレルヤに言ってきた。
「俺も感じるがな」
「君もなんだ」
「そうだ。ウルベ=イシカワという男に対してもだったし」
 まずは彼だった。
「それに孫光龍にもだ」
「あっ、そういえばカミーユさんとあの人って」
 クスハも言われて気付いた。
「何処か」
「そうよね。似てるのよね」
 メイリンも言ってきた。
「不思議と」
「どうしてなんでしょうか」
「いや、あんた達もでしょ」
 アスカは二人に突っ込みを入れた。
「何かね」
「似てます?私達」
「まあ自覚はしてるけれど」
「そうよ。そっくりさんじゃない」
 こうまで言うのであった。
「違うのは外見だけで」
「ううん、自覚はしていても」
「こうしてお互いで見ると」 
 余計に自覚せざるを得ないのだった。
「そうよね」
「どうしてもね」
「それが敵と味方にいるってことよね」
 アスカはかなり単純に言ってみせた。
「つまりはね」
「そうなるね」
 アレルヤもアスカのその言葉に頷く。
「だから僕はあの男を」
「まあ気にしたら負けだな」
 ロックオンはそのアレルヤをフォローした。
「だからそんなことはな」
「意識せずにだね」
「戦うことだな」
 彼が言うことはアスカ以上に単純にしてみせたものだった。
「だから御前とあの男は違うんだからな」
「それでだね」
「ああ、それでだよ」
 まさにその通りだというのである。
「それじゃあな」
「うん、わかったよ」
「さて、それでだけれど」
 ティエリアが話を進めてきた。
「また次が来るね」
「第四陣か」
「敵の」
「今度は」
「次の指揮官は」
「!?」 
 ここでだ。クスハが何かを感じ取った。そのうえでの言葉だ。
「まさか、次は」
「ああ、間違いない」
 ブリットも言うのだった。
「あいつが来る」
「そうね。あの人が」
「孫光龍が」
「あの人が」
「今度はあいつかよ」
 それを聞いてだ。言ったのはカズマだった。
「嫌な奴が来るな」
「その氏素性も目的もわからない奴がかよ」
「来るってのか」
「今度はあいつが」
「はい、来ます」
 クスハは眉を顰めさせて述べた。
「あの人が」
「そういえばあいつは」
「そうだよな」
「そういえば」
 皆ここで孫についてこう言っていく。
「クスハとブリットに物凄くこだわってるし」
「何か執念めいたっていうか?」
「そんな感じだよな」
「表には出さないけれど」
「妙に」
「いや、それでも」
 ここでだ。言ったのはブリットだった。
「俺達の龍王機や虎王機にはそれ以上に」
「むしろそちら?」
「そっちにあるよな」
「その関心が」
「そういえば」
 皆ブリットの言葉にそれも気付いた。
「じゃあ一体」
「あいつはどうしてクスハ達にこだわるのか」
「それもちょっと気になるよな」
「どうしても」
「とにかく謎の多い奴だな」
 これはキョウスケが出した結論だ。
「それは間違いない」
「あと気になるのは」
 エクセレンは考える顔で述べた。
「彼の顔とか雰囲気ってね」
「何かあるのか」
「中国系のものじゃないのよね」
 こうキョウスケに話すのだった。
「孫っていうと中国人の名前でしょ?」
「ああ、そうだ」
「それで古代中国のマシンに乗っているけれど」
「それでもか」
「中国の趣きは全然感じないのよ」
 このことを指摘するのだった。
「っていうかむしろ」
「ヘブライか」
 キョウスケも言った。
「それか」
「そんな感じしない?何か」
「そういえば」
「あの二人って」
「そうよね」
「そんな感じあるし」
「何処か」
 他の面々もここで気付いた。
「少なくとも金髪だし」
「中国系じゃないよな」
「立ち居振る舞いといい」
「全くかけ離れてるし」
「あれは」
「はい、違います」
 その中国系のリオが言ってきた。
「彼の物腰は明らかに中国のものではありません」
「ええと、じゃあやっぱりヘブライ?」
「そっち?」
「つまりは」
「あの人って」
「何者なんだ、一体」
 孫についてかなりの疑念が出ていた。そしてだ。
 その孫はだ。電気鞭でキャリコとスペクトラを撃つハザルを見ながらだ。こう言うのだった。
「随分と厳しいねえ」
「役立たず共に容赦はしない」
 ハザルは二人を鞭で打ちながらこう返す。
「これは当然のことだ」
「人造人間だからじゃないのかい?」
「ふん、バルシェム達はだ」
 その彼等についてだ。忌々しげに言うのだった。
「所詮は人形だ」
「意識を持たないっていうんだね」
「そうだ、所詮はそうだ」
 こう言うハザルだった。
「俺の手駒に過ぎん」
「じゃあその手駒には、だね」
「使えなければ消す」
 ハザルは冷酷に言い切った。
「それだけだ」
「成程ね」
「だがもういい」
 ハザルはここで手を止めた。
「これ位にしておこう」
「そうだね。人形といえど」
 孫はハザルを見ながら言う。
「大切にしないとね」
「孫、貴様もだ」
「僕もっていうと?」
「若し手を抜けばだ」
 その時はというのだ。
「同じだぞ」
「おやおや、特例はないのか」
「俺の前にはそれはない」
 こう言ってそれを否定するハザルだった。
「このハザル=ゴッツォにはな」
「宰相の息子としてだね」
「そしてこの方面軍の司令官だ」
 こうも言うのであった。
「その俺の前にはだ」
「わかったよ。それじゃあね」
「第四陣は御前だ」
 ハザルはまた孫に告げた。
「すぐに出撃しろ」
「わかってるさ。それじゃあ」
「御前達はだ」
 鞭打ったキャリコとスペクトラにも言う。
「残してある予備戦力を全て呼び寄せよ」
「ここにですか」
「この次元に」
「そうだ。そのうえで俺の軍と合流させる」
 こうも話した。
「わかったな、今すぐにだ」
「はっ、それでは」
「今より」
 二人も応える。そうするしかなかった。そのうえでだった。
「呼び寄せて参ります」
「それでは」
「今は許してやる」
 ハザルは二人にも傲慢な態度を見せる。
「しかしだ。次はないぞ」
「・・・・・・承知しております」
「それは」
「ならばだ」
 ハザルはあらためて二人に告げる。
「すぐに予備戦力を集めだ」
「そのうえで次の戦いの用意を進めます」
「今より」
「奴等はどちらにしろ終わりだ」
 今度はロンド=ベルについて述べた。
「篭の中の鳥だ」
「それはその通りだね」
 また横から孫が言ってきた。
「何時でも殺せるね」
「その通りだ。楽しませてもらおう」
「それじゃあ僕が今からね」
「そうだ、行け」
「僕は僕でやることがあるし」
 飄々とした言葉であった。
「だからね」
「やることか」
「そうだよ。僕にもあるんだよ」 
 笑顔も飄々としている。しかしだ。
 一瞬だけ顔に凄みのある笑みを浮かべた。ハザル達が気付かないにしてもだ。
「何かとね」
「ふん、ならばそれをするのだな」
「そうさせてもらうよ」
 飄々とした仮面に戻った。
「ではね」
「さて、第四陣の次はだ」
「次は」
「第五陣はバラン=ドバンだ」
 彼だとだ。エイスに答えるのだった。
「あの男だ」
「既に彼は」
「出陣の準備に入っているか」
 エイスに応えながら述べた。
「伊達に武人を気取っている訳ではないな」
「では」
「奴にも好きにさせる」
 こう言うのであった。
「精々武人を気取るのだな」
「そうさせると」
「武人なぞ何になる」
 そうした存在にもだ。ハザルは侮蔑を向けるのだった。
「戦いは勝てばいいのだ。何をしてもな」
「手段は選ばない」
「そうだ、武だのそんなものにこだわるつもりはない」
 傲慢な笑みと共に言う。
「下らぬことだ」
 こう言ってだった。バランも嘲笑するハザルだった。彼は何処までもハザル=ゴッツォだった。それだけは確かなことであった。


第九十二話   完


                        2011・1・23
     

 

第九十三話 真の龍神

            第九十三話 真の龍神
 アルマナはだ。この時ルリアと話していた。
「セレーナさんでしたね」
「あの赤い女ですか」
「はい」
 その通りだというのである。
「私に。あの時」
「無礼な言葉です」
 ルリアは嫌悪を露わにさせていた。
「姫様にあの様な」
「いえ、私は」
 しかしだった。ここでアルマナは深刻な顔でこう言うのだった。
「若しかしたらです」
「若しかしたら」
「自分では気付いていなかったかも知れません」
「何にでしょうか」
「己の。傲慢さに」
 それにだというのだ。
「気付いていなかったのかも知れません」
「姫様はその様なものは」
「それはハザルと比べてですね」
 アルマナは彼の名前も出した。
「あの男と」
「それは」
「確かにあの男の傲慢さはあまりにも目につきます」
 同じバルマー人から見てもそうなのである。
「しかし。私もまた、です」
「同じだと仰るのですか」
「結果としてそうだと思います」
 こうルリアに話すのだった。
「それで。あの時あの方にです」
「あれは優しさではないのですか、姫様の」
「いえ、哀れみでした」
 それだというのである。
「上から下への」
「そうだったというのですか」
「そうです。私はそれに気付いていませんでした」
 アルマナは自省しながら述べていく。
「これまでは」
「それはあの女の邪推では」
「違うと思います。やはりです」
「違うというのですか」
「そうです。私はこうしてバルマーの外に出て世界を見たいと思いました」
「はい」
「そして多くのものを知りました」
 少なくともかつての如き視野の狭さはないというのだ。
「このこともまたです」
「そのうちの一つですか」
「そう思います。私は気付かないうちに傲慢になっていました」
 こう言うのである。
「そのことに今気付きました」
「そうですか」
「セレーナ=レシタールさんですね」
 あらためて彼女の名前も話した。
「あの方と。またお話がしたいです」
「姫様・・・・・・」
 アルマナも多くのものを学んでいた。ロンド=ベルにおいてだ。
 そしてであった。戦いはだ。
 第四陣が来た。その指揮官は。
「あいつか」
「そうね、やっぱりね」
 ジェスとパットが忌々しげな顔で言っていた。
「クスハの予想通りだな」
「来たわね」
「孫光龍に真龍王機か」
「厄介な相手ですう」 
 アーウィンとグレースは冷静である。
「敵の数はこれまで通りだが」
「あのマシンは手強いですよお」
「やれやれだな」
「そうね」
 ヘクトールとミーナも話をしている。
「こうして連続で攻撃を仕掛けてな」
「こっちの戦力を消耗させる作戦ってことね」
「敵の戦術はわかっているんだがな」
「こちらの打つ手はない」
 イルムとリンは難しい顔になっている。
「最後のあのむかつく大将を引きずり出してやるしかないからな」
「そうしてここから脱出する方法を見出すしかな」
「そういえばだけれどな」
 ここで言ったのは盾人だった。
「ネオ=グランゾンだとこんな空間でもすぐに出られるんだったよな」
「ああ、その通りだ」
 マサキが答えた。
「あのマシンはまた特別だからな」
「そうだな。ネオ=グランゾンは俺達の世界もパラダイムシティも自由に行き来していた」
「それならだな」
 ジュリイと謙作もそれはわかった。
「こうした世界にもか」
「何の問題もなくだな」
「それどころか俺達全員もだな」
 闘志也も言う。
「元の世界に返せるな」
「そういうこと前やったしね」
「そうだったね」
 ティスとラリアーもそのことに頷く。
「それだったらこっちの世界からあたし達を」
「返せる」
「じゃああの人がいれば」
 デスピニスも話す。
「私達は」
「けれどな、シュウは何を考えてるかわからねえ奴だからな」
 やはりだった。マサキはこのことをよくわかっていた、
「俺達がこんな状況でもな」
「助けに来るとはニャ」
「想像できないニャ」
 クロとシロが主に続く。
「あいつは自分の考えでしか動かないニャ」
「だから今回も。助けに来るとは思えないニャ」
「それははっきりと言えるわね」
 今言ったのは小鳥だ。
「あの人そういう人ではないわね」
「そうですね。御自身のしっかりとした考えをお持ちですから」
 テッサもこう考えていた。
「ですから」
「少なくともだ」
 宗介はこう言った。
「期待はしないことだな」
「何か絶望的な言葉ね」
「しかし現実だ」
 彼は小鳥にもこう返した。
「それよりもだ。俺達はだ」
「今は戦って生き残るしかないのね」
「その通りだ。わかったな」
「そうだな」
 キリコが宗介のその言葉に頷いた。
「それではだ」
「戦うか、最後の最後まで」
「今は」
 こう話してだった。そのうえでだ。
 彼等はその敵の第四陣と対峙する。そこにいる孫がだ。
 クスハとブリットが乗るその真龍神機を見て言うのだった。
「いやいや、無事で何よりだよ」
「やはり出て来たんですね」
「孫光龍!今度こそ!」
「そうそう、僕もね」
 孫は余裕のある態度で二人に言葉を返した。
「そろそろ決着をって考えてるしね」
「それは俺達もだ!」
 ブリットが言った。
「ここでだ」
「おや、君達もかい」
「そうだ、絶対にだ」
 こう孫に返す。
「決着をつけてやる」
「いいねえ、その意気だよ」
 孫はブリットの言葉を受けて明るい笑顔をしてみせた。
「そうでないと僕もね。やりがいがないよ」
「やりがい!?」
「そうだよ。戦いも楽しまないとね」
 こうクスハにも返す。
「折角なんだし」
「そう言うのか」
「そうだよ、それじゃあ」
 孫の顔がだ。ここで一変した。
 あの凄みのある顔になってだ。二人に言うのだった。
「・・・・・・死ね」
「あの顔だよな」
 バサラはその顔を見逃さなかった。
「あの顔があいつの本性だな」
「さっきの顔がなの」
「ああ、あいつ飄々ってしてるけれどな」
 バサラは見抜いたのだった。一瞬でだ。
「実際は違うからな」
「実際の顔は?」
「だから今さっきのあれだよ」
 こうミレーヌに話すのだった。
「凄い顔してただろ」
「ええ、確かに」
「あれがあいつの本性なんだよ。あいつはとんでもない奴だな」
「これまでよくわからない相手だったけれど」
「そうして俺達に見せなかったんだよ」
 その本性をというのだ。
「けれどな。それはクスハとブリットにとっちゃな」
「危険ね」
「ああ、気をつけないとな」
 バサラの目も警戒するものになっていた。
「あの二人、危ないぜ」
「何か凌げればいいけれど」
 ミレーヌも不安を感じた。その中でだった。
「ここは」
「あの二人ならやるがな」
 やれる、でもなかった。バサラは断言したのだった。
「絶対にな」
「絶対になの」
「伊達にここまで生き残ったわけじゃないからな」
「それを言えば皆そうじゃないの?」
「ああ、皆そうだよ」
 バサラはミレーヌの言葉にそのまま返した。
「これまで。滅茶苦茶な戦いばかり繰り広げてきてな」
「生きてきたから」
「だからあの二人も大丈夫だ」
 こう言うのである。
「絶対にな」
「その言葉信じていいのよね」
「俺が嘘を言ったことがあるか?」
「いえ、ないわ」
 バサラに限ってそれはない。ミレーヌもそれはわかっていた。
「それはね」
「そういうことだよ。それじゃあな」
「今はあの二人は」
「俺の歌を聴かせてやる!」
 これがバサラの選択だった。また手にギターを持っている。
「それで心を奮い立たせるんだ!」
「そこはやっぱりあんたね」
「俺は戦いは嫌いだ!しかしな!」
 バサラはミレーヌだけでなく周囲に対して叫び続ける。
「仲間を応援するのはやるからな!」
「そうね。じゃああたしもね!」
「クスハ!ブリット!」
「この歌を聴いて!」
 二人の演奏がクスハ達にも届く。それを聴いてブリットがクスハに言う。
「クスハ」
「ええ、ブリット君」
「この歌が俺達への」
「そうね。何よりの励ましだわ」
 二人もそれがよくわかった。そしてだ。
 そのうえで孫の真龍王機に向かう。それを受けてだ。
 孫もだ。こう二人に言ってきた。
「さて、それじゃあだけれど」
「それじゃあ?」
「どうだっていうんだ?」
「君達にも教えてあげないとね」
 余裕の中にだ。殺意を込めた言葉だった。
「真の龍神の名に相応しいのがどちらかをね」
「孫光龍、貴方が」
「真だっていうのか!」
「君達の運命は次の二つのうちどれかだよ」
 孫は二人にこうも言ってみせた。
「僕に殺されるか」
「何っ!?」
「若しくは自決するかだよ」
 ブリットに応える形での言葉だ。
「そのどちらかだよ」
「くっ!」
「その言葉!」
 だが、だった。二人はこう返すのだった。
「そっくりそのまま返します!」
「大人しく降伏しろ!」
 こう返すのだった。
「さもないと私達にも!」
「考えがある!」
「言ってくれるねえ」
 孫の目にこれまで見せなかったものが宿った。
「寄せ集めのガラクタ超機人が」
「寄せ集めだと!」
「それは違います!」
「じゃあ何だっていうんだい?」
「四神の魂が一つになったのがこの」
「真龍虎王だ!」
「そう、それだよ」
 孫は二人のその言葉に言ってきた。
「真の名を冠する龍神は二つも必要ないんだよ」
「それで俺達を」
「ここでというのですか!」
「そうだよ。この閉じた世界で」
 孫は二人にさらに言う。
「君達と四神の魂は永遠に彷徨うがいい」
「それは!」
「絶対になるものか!」
「まあそう言うと思っていたよ」
 わかっていると返す孫だった。
「それならね」
「ええ、こちらも!」
「それなら!」
「行くよ!」
 こうしてだった。二人の戦いがはじまるのだった。
 孫はだ。早速鱗を飛ばしてきた。
「さあ、まずは挨拶からだよ!」
「こんなもの!」
「今更!」
 二人はそれをすぐに叩き落した。そうしてだった。
 あらためてだ。虎の姿になりだ。
「クスハ、ここは俺が」
「ええ、ブリット君」
 こう話してだ。そのうえで向かうのだった。
 そこに真龍王機の炎が来た。
「これでジ=エンドだ!」
「まだだ!」
 それをかわしてだ。そのうえで向かいだ。
「ブリット君、敵は」
「どうしたんだ、クスハ」
「龍だから」
 クスハはブリットにこのことを言うのだった。
「その弱点は決まっているわ」
「まさか」
「そう、そのまさかよ」
 こうブリットに言うのである。
「あの場所よ」
「わかった、それなら」
 それを受けてだ。ブリットは身構えた。そうしてだ。
 真龍王機の喉にだ。その剣を突きつけたのだった。
「うっ、これは!」
「よし、これなら!」
「どうです!?」
 二人はその喉を攻撃してから言った。
「龍の弱点は!」
「その逆鱗だ!」
 そこを攻撃されてだ。孫も真龍王機も動きを止めた。それを見てだ。
 クスハとブリットは勝利を確信した。
「やったな、クスハ」
「ええ、ブリット君」
 こう二人で言い合うのだった。
「これで、やっと」
「孫光龍との戦いも」
 しかしだった。それでもだ。
 真龍王機はそこにいた。そしてだ。孫がこう言ってきたのだった。
「ふふふ、やってくれたね」
「くっ、まだか!」
「戦うというのですか!」
「こうなったらね」
 孫の顔にあの笑みが宿った。そのうえでの言葉だった。
「僕もこの龍を制御できないよ」
「!?真龍王機の力が」
「あがっていく!?」
 二人もだ。そのことがわかった。
「これは一体」
「あれだけのダメージを与えたというのに!」
「さて、龍の怒りを静めたければ」
 孫はその笑みで言う。
「君達がその生命を差し出すことだよ」
「どういうことだ!?これは」
「何故これまで以上に力が」
「これまでは力をセーブしていたんだよ」
 そうだというのである。
「けれど本気で怒ってしまったからね」
「それでだっていうのか!?」
「これだけの力は」
「さて、じゃあ行こうか」
 炎が吐き出された。それは今まで以上のものだった。
「くっ、これは!」
「駄目、まだ!」
「さあ、この真龍王機に跪くんだ」
 孫は傷ついた二人にまた言ってきた。
「君達の生命を差し出せば」
「終わりだっていうのか!」
「それで!」
「ああ、そうだよ」
 その通りだというのであった。
「この宴の幕を閉じることができるんだよ」
「くっ、このままじゃ」
「私達は」
 二人も負けようとしていた。しかしだ。
 凱がだ。その二人に言ってきた。
「クスハ、ブリット!」
「凱さん!?」
「一体」
「そんな奴の言葉に耳を貸すな!」
「そうだ!」
 一矢もだった。
「孫光龍!」
「おや、ダイモスの」
「御前の口車には乗せられはしない!」
「二人共行くんだ」
 万丈は二人に声をかける。
「いつもの笑顔と勇気でね」
「おやおや」
 孫は彼等の言葉を聞いていつもの飄々としたものを見せる。
「御仲間かな」
「いいか、各機に告ぐ!」
 フォッカーも参戦してきた。
「ここはだ!」
「ええ、わかってます」
「あの龍を!」
 マックスとミリアがフォッカーに応える。
「叩き落しますよ」
「そしてクスハもブリットも」
「おい、そこのでかい龍!」
 霧生は今にも向かおうとしている。
「二人はやらせないからな!」
「そうだ、諦めるな!」
 豹馬もコンバトラーを動かす。
「そうしなかったらいいからな!」
「え、ええ」
「わかった。それなら」
「いいねえ。麗しい絆だよ」
 孫はそんな彼等の言葉を聞いて述べた。
「けれどそれもね」
「それも?」
「どうだというんだ!」
「圧倒的な力の前には何の意味もないけれどね」
 こうロンド=ベルの面々に告げるのだった。
「そんなものはね」
「ステラ、あの男」
「ああ、そうだな」
「前から思っていたけれど」
 ステラの言葉にだ。スティングとアウルが頷く。
「いけ好かないなんてものじゃないな」
「生理的にくるな」
「大嫌い」
 ステラも言った。
「クスハもブリットも護る」
「ああ、やらせるかよ!」
「ここは!」
「君達の相手は彼等だよ」
 だが、だった。孫はここで率いている軍をロンド=ベルに全て向けた。
「精々頑張るんだね」
「くそっ、このボルサリーノ!」
 ロウが彼等を叩き斬りながら忌々しげに叫ぶ。
「何処までもむかつく奴だ!」
「そうだな。こいつはな」
 イライジャはライフルで敵を撃ち落している。
「何かあるな」
「人間、ただのそれじゃないな」
「おそらくだが」
 イライジャの言葉が続く。
「ガンエデンとだ。俺達が思っているよりもだ」
「関係が深いってのか?」
「そうだ」
 こうエドにも答える。
「かなりな」
「ううん、そしてクスハちゃんに絡むのは」
「その辺りも考える必要があるな」
「そうかもな」
 こう話をしてだ。今は彼等の敵と戦うのであった。
 そしてだ。その中でだった。
 クスハ達はだ。孫に対してだった。
 また立ち上がる。そうして言うのであった。
「まだです」
「この程度で!」
「いいねえ。あがくんだね」
 孫は凄みのある笑みを露わにさせている。
「それならね」
「こいつ!まだか!」
「二人を!」
「簡単に殺すつもりはないよ」
 こうロンド=ベルの面々にも言う。
「それだけ僕達の怒りは大きいからね」
「まだだ!」
「まだ!」
 それでも二人は立ち上がりだ。そのうえで。 
 立ち向かう。そうして攻撃を仕掛ける。その攻撃は。
「ブリット君」
「ああ、クスハ」
 二人で呼吸を合わせる。そうしてだった。
「ここはあの技で!」
「あれしかない!」
 二人の気がこみ上げる。そうしてであった。
「勝負です!」
「行くぞ孫光龍!」
 真龍虎王もだった。その気を燃え上がらせてだ。
 その二つの甲を放った。
「行って!武鱗甲!」
「そして!」
 まずはそれを飛ばしてだ。その喉から。
「必殺!竜王逆鱗光!」
「これならだ!」
 その光が甲に反射され真龍王機をあらゆる方角から撃つ。それを放つとだった。
 さしもの孫も動きを止めた。そうして言うのだった。
「やるね。けれど」
「けれど?」
「まだやるのか?」
「そうさ。君達のその優しさ」
 それを言うのであった。
「それ故に君達は生きていけないんだよ」
「そんなことはない!」
「そうです!」
 ブリットもクスハもすぐに言い返す。
「俺達は!」
「超機人に選ばれた戦士です!」
 言うのはこのことだった。
「正義の為ならだ」
「この命を捨てる覚悟があります!」
「僕に倒されるっていうんだね」
「例えそうなっても」
「私達の魂は」
 負けていなかった。その心は。
「四神の心と共にだ!」
「次の戦士に引き継がれます!」
「いいねえ、そしてだね」
 孫はその二人の言葉を受けながら先に言ってみせた。
「悪を倒すっていうんだね」
「何時かは必ず!」
「そうしてみせます!」
「ならばだよ」
 そこまで聞いてだ。孫はまた言った。
「君達の望む通りにね」
「また来るぞ、クスハ」
「ええ、ブリット君」
「その肉体を消滅させてあげよう」
 また素顔を出し。そして龍の口に光をこもらせる。
 だがそれを見てだ。ゼンガーが言った。
「友よ!」
「うむ!」
 レーツェルが応える。
「今こそだ!」
「我々の動く時だな」
「そうだ。孫光龍よ!」
 ダイゼンガーがその巨大な剣を構えた。
「させん!この剣を受けよ!」
「友よ、乗れ!」
 アウゼンザイガーが馬の姿になっている。
「このトロンベに!」
「そしてあの男を!」
「断ち切るのだ!」
「いえ、待って下さい!」
「ここは!」
 しかしだった。その剣は他ならぬ二人が止めた。
「俺達が!」
「私達がやります!」
「やるというのか」
「君達で」
「はい、させて下さい!」
「ここは!」
 こうゼンガーとレーツェルに言うのである。
「何としても」
「私達だけで!」
「・・・・・・わかった」
 ゼンガーはだ。その彼等の心を受けた・ 
 そしてだ。静かにこう返すのだった。
「この戦い、御前達に任せた」
「私もだ」
 レーツェルもであった。
「その男をだ」
「倒すのだ」
「はい、すいません」
「それなら」
「その心があればだ」
「必ず果たせる」
 二人も任せた。するとだ。
 クスハとブリットをだ。これまでよりさらに気が覆う。
「四神招魂!」
「真龍虎王!」
「四神の魂と俺達二人の想い!」
「今ここに!」
 二人だけではなかった。四神もだった。
 その六つの心が合さり。今遂にであった。
「行くぞ、ここで!」
「この力、受けるのです!」
「おのれ!」
 棒を受けた。それで突進を防がれた孫だった。
「クスハ=ミズハ!ブルックリン=ラックフィールド!」
「俺達は最早!」
「負けません!」
「やってくれたね」
 孫が怒りをこれ以上はないまでに露わにさせていた。
「君達は!」
「孫光龍!」
「ここが!」
 二人は構えを取りながら言う。
「貴方と私達の!」
「決着の場だ!」
「しかしね」
 孫の言葉が変わった。
「君達だってわかっている筈だ」
「何をだ」
「何が言いたいというのだ」
 ゼンガーとレーツェルが孫に問い返す。
「ここまで来て命乞いではあるまい」
「それはないな」
「安心してくれていいよ、僕はそういうことはしないさ」
 それはないと。孫自身も言う。
「ただね。地球も銀河もね」
「それか」
「その話か」
「そうさ。滅びるのは時間の問題だよ」
 こう話すのだった。
「それわかっているだろう?」
「だとしてもだ」
「我々は逃げはしない」
 こう言う二人だった。
「貴様の様にだ」
「それはしない」
「逃げる?」
 孫はその逃げるという言葉に反応を見せた。
「この僕が?」
「そうだ、地球が滅びると勝手に決めつけだ」
「敵に寝返る」
 二人はこのことを指摘した。
「それの何処が逃げていない」
「何処がだ」
 そしてだ。レーツェルが彼に告げた。
「どうやら御前はだ」
「むっ?」
「少しも変わっていないようだな」
「おやおや、どうやら」
 レーツェルのその言葉を聞いてだ。孫はおどけたものを装って言ってきた。
「驚いたよ」
「何にだ」
「あれから随分と経ったのにね」
 こうレーツェルに話すのだった。
「君の家系には僕との戦いが残っていたんだね」
「どうやらな」
「凄いことだよ。だが」
「だが?」
「その系譜も今日で途絶えるよ」
 またレーツェルに告げた。
「君が僕を怒らせたからね」
「やはりな」
 レーツェルは孫のその言葉を冷静に受けて述べた。
「己の過ちを認めぬか」
「まあいいさ」
 しかしだった。ここでだ。
 孫は真龍虎王の前から退いた。そのうえでこう言うのだった。
「今日はこれでね」
「何っ、撤退か!?」
「ここで」
「そうさ。戦力も減ったしね」
 今回もだった。バルマーはその戦力を大幅に減らしていたのだった。
「ここが潮時だね、今回は」
「待て!」
「逃げるのですか孫光龍!」
「冗談はよして欲しいねえ」
「冗談?」
「何を言うんだ!ここまで来て!」
「僕は冗談も今は言わないよ」
 それも否定するのだった。
「ただね」
「ただ?」
「何だというんだ!」
「僕達の決着をつける場所はここではないんだよ」
 こう言うのである。
「ここではね」
「何っ!?」
「じゃあそこは」
「もっとも君達がそこまで来れるか」
 それはだというのだ。
「それは関知しないけれどね」
「何処だ、そこは」
「一体」
「僕が話すことはこれで終わりだよ」
 孫は話を切ってきた。
「それじゃあね」
「待て、孫光龍!」
「話はまだ!」
「悪いけれど僕が話すことはこれで終わりだよ」
 こう言って取り合わない彼だった。そのうえで撤退をはじめていた。
「それじゃあね」
「くっ、まさか!」
「まだ決着の時ではないっていうの?」
「そうだよ。僕と決着をつけたければ」
 その二人にまた言う孫だった。
「そこまで生き残るんだね」
「手前、また逃げるのかよ!」
「何て奴なの!」
 ロンド=ベルの言葉をよそにだった。彼は撤退した。
 こうして第四陣との戦いも終わった。しかしであった。
「あの野郎、また逃げやがって」
「逃げ足も速いわね」
「しかも相変わらず煙に巻く言葉ばかりで」
「読めない奴よね」
「全く」
「あえてそうしているのだ」
 レーツェルがここでその彼等に述べた。
「その素顔を見せないようにな」
「素顔?あれですよね」
「クスハ達その戦いで見せたあの」
「あの素顔が」
「あれなんですね」
「そうだ。あの男はそうして悦に入っているのだ」
 レーツェルは血脈の記憶から語っていた。
「己を隠し。それによってな」
「何かそれで自分を特別だって思っている?」
 フェイが言った。
「まさか」
「あっ、そういえば何か」
「そんな感じが」
 アレックスとジュゼも言う。
「そうして自分を高みにおいて」
「他を下に見る」
「そんな匂いが」
「ただよっている?」
 イワンとハンスもだった。
「あの男から感じるのは」
「そうしたものが」
「そうだ、その通りだ」
 レーツェルは彼等のその言葉を認めて頷いた。
「あの男はそうしているのだ」
「何か嫌な奴ですね」
「そうね」
 リオはリョウトのその言葉に頷いていた。
「そういうのは何か」
「好きになれません」
「そしてあらゆるものを隠しているな」
「それもあれなのね」
 ユウキとカーラは孫について考えて述べた。
「それも己を高みに置くものか」
「自分が満足して、なのね」
「何かを知っていてそれを隠す」
 ゼンガーも述べる。
「それは特別に思えるものだ」
「そして特別なものを持っていると思えばだ」
 また言うレーツェルだった。
「そこから己を高みに置いて考えられるのだ」
「ううん、自己満足なんですね」
「結局は」
 タスクとレオナはこう考えた。
「あの男はそんな感じなんですね」
「突き詰めて考えると」
「だからだ。あの男はだ」
「決して勝てないのだ」
 ゼンガーとレーツェルはここで言い切った。
「クスハとブリットにはだ」
「何があろうともだ」
「私達にですか」
「勝てないんですね」
「そうだ、勝てない」
「君達が負けることはない」
 ゼンガーとレーツェルはその二人にも答えた。
「次の戦いにもだ」
「その。あの男が言う決着の時にもだ」
「辿り着けてそして」
「私達は勝つんですね」
「その通りだ」
「君達は既に勝っている」
 二人にこうも告げたのだった。
「あの男は逃げているがだ」
「君達は前に向かっている」
 正反対であった。まさにだ。
「既にその違いが出ている」
「それでどうして敗れるというのだ」
「けれどあいつは」
「あの力は」
 それでもだった。ブリットもクスハも警戒の念を捨てていなかった。
「圧倒的です」
「そう簡単には」
「確かに勝つのは容易ではない」
 それはレーツェルもわかっていることだった。
「しかしだ。それでもだ」
「勝てるんですか」
「私達が」
「やがてわかることだ。心が向かっていればだ」
「逃げる者に敗れはしない」
 レーツェルとゼンガーは今度は言い切った。
「その四神の力でだ」
「御前達は勝つ」
「わかりました。それなら」
「俺達も」
 クスハとブリットはここでだった。確かな声になった。
 そしてその声でだ。こう答えたのである。
「あの男に勝ちます」
「絶対に」
「そうだ、その意気だ」
「心だ」
 二人はまた彼等に告げた。
「それさえあればだ」
「あの様な男に敗れることはない」
「さて、それでだけれど」
 話が変わった。今言ったのは小鳥である。
「とりあえず敵の第四陣は退けたわね」
「はい、残り二つです」
 テッサが彼女の言葉に答える。
「第五陣と第六陣ですね」
「いよいよって感じだけれど」
 小鳥の言葉に緊張が宿りだしていた。
「ただね」
「正念場はこれからだ」
 宗介がこう返す。
「後になれば後になるだけだ」
「敵は強いってことね」
「特に最後だ」
 宗介の言葉には楽観はない。シビアなものである。
「最後の戦いはだ」
「激しくなるのね」
「まだヘルモーズが一隻も出て来ていません」
 テッサはそのことを指摘した。
「おそらく。第六陣にです」
「あのデカブツがまとめて」
「出て来るか」
 メリッサとクルツが言った。
「戦力はその為に温存している」
「最後に止めを刺す為にかよ」
「じゃああれね」
 キャシーが彼等の話を聞いて言う。
「第五陣にもあの戦艦はまだ」
「そうね。出て来ないわね」
 エルフィが答える。
「まだね」
「じゃあ第五陣はまだいけるか?」
「何とかな」
 ドニーとジャンは次に来る彼等のことを考えていた。
「戦力的にはまだ」
「大丈夫か」
「いや、楽観はできないだろう」
 それはセルゲイが否定した。
「第五陣の将はおそらくだ」
「あいつか」
 今言ったのはトウマだった。
「バラン=ドバン。あいつか」
「トウマとの因縁の相手だな」
「そうだよな」
 グラハムとパトリックがそれに応えて言う。
「その男が出て来るか」
「今度は」
「だったらトウマにとっては」
「そうですね」
 アンドレイとソーマもここで話す。
「辛い戦いになるな」
「間違いなく」
「望むところだ!」
 しかしだった。トウマはその闘志を見せるのだった。
「あいつと戦えるのならな!」
「いいんだな、それで」
「ああ、それでいい」
 実際にそうだと一矢にも返す。
「それならな。やってやる!」
「いい覚悟だ。それでいい」
 京四郎は彼のその意気をよしとした。
「なら。やって来い」
「ああ、全力でな」
「トウマ、大雷鳳だけれど」
 ミナキが彼にマシンのことを話す。
「どうやら。まだ秘められた力があるわ」
「秘められた力?」
「そうなの。それを使えば」
「バラン=ドバンにも」
「勝てるわ」
 そうだというのである。
「やってみる?それは」
「ああ、勿論だ」
 選択肢はなかった。他にだ。
「俺はやる。やってやる」
「わかったわ。それじゃあ」
「ミナキ、マシンの調整は頼むな」
 二人は今や完全に一つになっていた。
「そしてそれで」
「ええ、勝ちましょう」
「絶対にな」
 それを言い合うのだった。二人で。
 そのうえでだ。ロンド=ベル全員がだった。
「また出るか」
「ああ、次の戦いにな」
「すぐに来るからな」
 敵がだ。そうだというのであった。
「それなら迎え撃って」
「倒してやる!」
「絶対に!」
「あと二つ!」
 こうした言葉も出た。
「二つ勝てば!」
「ここから出られるんだ!」
「絶対に!」
「諸君!」
 グローバルも言う。
「運命は自分達で切り開くものだ」
「ええ、ですから」
「今も」
「切り開くとしよう」
 実際にだ。そうするというのである。
「いいな、それではだ」
「はい、それじゃあ」
「そろそろ燃料とか弾薬もね」
「危なくなってきたかな」
「ちょっとな」
 こんな話も出た。
「けれど連中をぶっ潰せる程度にはあるし」
「それなら最後の最後まで」
「やってやるか!」
「意地でもね!」
「よし、やるぞ!」
 カガリも威勢のいい声で言う。
「絶対に生き残る!」
「心配しなくても御前は絶対に生き残るからな」
 シンが久し振りにカガリに言う。
「安心していいからな」
「むっ、それはどうしてだ?」
「馬鹿世にはびこるっていうだろうがよ」
 だからだというのだ。
「そりゃ絶対に死なねえよ」
「待てっ、それでは私が馬鹿になるぞ」
「だから馬鹿じゃねえかよ」
 シンはこう返す。
「御前が馬鹿じゃなくて誰が馬鹿なんだよ」
「何っ!久し振りに何を言うんだ!」
「おうよ、何度でも言ってやるよ、馬鹿ってな!」
「馬鹿と言う奴が馬鹿だ!」
「じゃあ馬と鹿だ!」
 こう言い換えたシンだった。
「それでいいな!」
「同じだ、それは!」
「じゃあ何がいいんだ!フールか!」
「英語にしただけだろ!」
「どっちにしろ同じだからいいだろ!」
「やっぱり御前死ね!」
「おう!やるのか!」
 こうして取っ組み合いの喧嘩になる二人だった。どんな状況でもとにかく仲の悪い二人である。
 そしてだ。ユウナが呆れて止めに入ろうとするが。両頬に二人の拳を受けた。
「邪魔だ!」
「すっこんでろ!」
「うっ、これはかなり」
 殴られたユウナはよろめいた。二人は今殴り合いしている。
「殴りまくって御前を馬鹿にしてやる!」
「元からの馬鹿を大馬鹿にしてやるよ!」
 こんな有様だ。二人の喧嘩は続く。
 そんな中でだ。トダカとキサカに両端から支えられたユウナはだ。殴られた両頬をそのままにして悠然としてこう言うのであった。
「まああれだね」
「あれとは」
「痛くはないのですか?」
「これで痛くなかったらかえって怖いよ」
 これがユウナの返答だった。
「むしろね」
「カガリ様にお力がない」
「そしてシン君にも」
「あの二人はロンド=ベルでも屈指の闘争心の持ち主だからね」
 このことは誰もが認めるところだった。
「ソール十一遊星主の粒子にも影響されなかった」
「確かに。まさに野獣の如く」
「見事に全く影響を受けていませんでした」
「そんな二人が喧嘩してるうちはね」
「まだ安心ですね」
「士気は」
「そうだよ。それじゃあ次もね」
 ユウナは微笑みながら言った。
「頑張ろうか」
「はい、それでは」
「最後の最後まで諦めずに」
「今まで絶望的な状況は数え切れない程経験してきたしね」
 そしてだ。ユウナはあの時のことも話した。
「いやあ、本当に白昼の残月にオーブを半壊させられた時はね。どうしようかって思ったし」
「僅か一人によって瞬く間にでしたから」
「あの時代は」
「全く。BF団は人間じゃないよ」
 ユウナは半分以上そう思っていた。
「一体何だったんだろうね。彼等は」
「そうですね。彼等は」
 タリアも来て言う。
「身体能力を極限まで引き出していたのでは」
「それでも宇宙空間で普通に行動できます?」
 ユウナはこのことを指摘した。
「確かプラントは直系の怒鬼に宇宙からでしたよね」
「はい、我が目を疑いました」
 タリアもその時のことはよく覚えていた。
「まさか、あの様なことが」
「使徒でもないですし」
 とはいっても若しかしてと思っているユウナだった。
「彼等は一体」
「わかりません。国際エキスパートと彼等の戦いも終わりましたが」
「ビッグファイアもですね」
「どうやら死んだようです」
 こうユウナに話す。
「最後のバベルの篭城戦で」
「そうですか。遂にですか」
「実在していましたし」
 実はビッグファイアは実在すら疑われていたのである。
「そしてその彼も倒れあの戦いも終わっていますので」
「本当に彼等は何者だったのかは」
「謎に包まれています」
 そんな話もした。そうしてであった。
 彼等は次の戦いに向かうのだった。そこでトウマは。戦士として人間として大きく成長することになる。だがそれはまだはじまっていなかった。


第九十三話   完


                                     2011・1・27
     

 

第九十四話 炸裂!神雷

              第九十四話 炸裂!神雷
 バランはだ。出撃しながら難しい顔をしていた。部下達もその彼に問う。
「バラン様、一体」
「どうされたのですか?」
「いや、何もない」
 だがバランは答えようとしなかった。
「別にな」
「この戦のことですか」
「ロンド=ベルをこうして攻めることについて」
 だが、だった。その部下達が言うのだった。
「それについてですね」
「よく思われていませんか」
「ハザル様はどうも」
「抵抗できぬ者、弱い者に対しても容赦されません」
 話は自然にハザルへの批判になっていっていた。
「武器を持たぬ者であっても平然と攻撃されます」
「そうして多くの者を虐殺されています」
「あれは。武人としては」
「どうなのでしょうか」
「口を慎め!」
 しかしだった。バランはその彼等を一喝した。
「上官への批判は軍律で禁じられておる。それを忘れるな!」
「は、はい」
「申し訳ありません」
 部下達もその言葉で畏まる。
「失礼しました」
「それでは」
「そうよ。決して言うでもない」
 バランは厳しい顔で彼等にまた告げた。
「わかったな」
「了解です」
「それでは」
「それではだ」
 そう告げてからだった。バランは彼等にあらためて言った。
「今よりだ」
「はい、今よりですね」
「ロンド=ベルを」
「我等で殲滅する」
 こう告げるのだった。
「よいな、それは」
「はい、それでは」
「今より」
 こうしてだった。彼等もロンド=ベルに向かう。そうしてだ。
 トウマもだ。今まさに出撃しようとしていた。ミナキに対して言っていた。
「それじゃあな」
「ええ、トウマ」
「バラン=ドバンと決着をつけてやる」
 彼の目には強い決意があった。
「ここでだ!」
「それでトウマ」
 ミナキはそのトウマに言った。
「大雷鳳の力だけれど」
「その隠された力のことだよな」
「ええ、それはどうやらね」
「何かわかったのかい、それで」
「どうも。貴方に関係あるわ」
 こうだ。トウマを見ながら話すのだった。
「貴方のその力とね」
「俺と?」
「大雷鳳は貴方とシンクロしてるから」
 そうした意味ではエヴァと同じである。
「その貴方が。力を極限まで出せば」
「大雷鳳もなんだな」
「ええ、力を出すわ」
 そうだというのである。
「極限までね」
「わかった。それならな」
 トウマもだ。それを聞いて言った。
「俺は俺の力を極限まで出す」
「そうすれば大雷鳳も」
「そしてその力で」
「バラン=ドバンを倒すのね」
「ああ。あいつには負けられないからな」
 それでだというのである。
「バラン=ドバンには」
「ライバルってやつだな」
 その彼にこう言ってきたのはマサキだった。
「つまり。そうなるよな」
「ライバルか」
「ああ、そうだろ?」
 マサキはまたトウマに言ってみせる。
「負けられないって思うんだからな」
「そうなるんだな。そういえば」
 トウマははじめてこのことに気付いた。
「俺とあいつは」
「それじゃあな」
「ああ、意地でも負けられないな」 
 トウマの気合がさらに高まった。
「バラン=ドバンにはな」
「その意気だ。じゃあ行くか」
 マサキは微笑んでトウマに告げた。
「奴との戦いにな」
「ああ。待ってろよバラン」
 トウマの目が意を決したものになっていた。
「今度こそ決着をつけるからな」
 こう言ってだった。彼は戦場に向かうのだった。
 ロンド=ベルが出撃した時にはだ。既にであった。
 バランがだ。大軍と共に彼等の前に展開していた。そうしてだ。
「トウマ、おるか!」
「ああ、いるぞ!」
 トウマも彼に言葉を返す。
「ここにな!」
「腕をあげたか!」
 バランが彼に問うのはこのことだった。
「どうだ、それは」
「少なくとも多くの戦いを経てきた」
 これがトウマの返答だった。
「前の俺とは違う!」
「それではだ」
 それを聞いてだ。また言うバランだった。
「その今の貴様を見せてもらうぞ!」
「よし、来い!」
 トウマは身構えながら返した。
「今度こそ!」
「決着をつけようぞ!」
 こうしてだった。両軍が互いに前に出て激突した。五度目の戦いがはじまった。
 そのうえでだ。バランはだ。
 一直線にトウマに向かいだ。その鉄球を振り下ろした。
「受けるがいいっ!」
「何のっ!」
 トウマはそれを右にかわした。そのうえで言う。
「この程度!」
「そうか、かわせるか」
「ああ、見えていた」
 バランのペミドバンを見据えながらの言葉だった。
「よくな」
「ふむ。前は違っていたな」
 ドバンもそれを聞いて言う。
「この攻撃ならばだ」
「俺はやられてたってんだな」
「わしはこえまで多くの戦いを経てきた」
 バランはトウマにこのことも話す。
「その中であの攻撃をかわせたのは」
「どうだってんだ?」
「御前がはじめてだ」
 こう彼に話すのだった。
「それを言っておこう」
「そうだったのか」
「しかし」
 バランの目が強くなった。
「わしのこの攻撃をかわしたということはだ」
「ああ、俺だってな!」
「これまで以上のものを見せようぞ!」
 バランもまた。燃えていた。
「そしてそのうえで御前をだ!」
「行くぞバラン=ドバン!」
 二人は正面から力と力でぶつかり合う。そしてだ。
 バランの部下達がだ。こう指示を出すのだった。
「いいか、我等もだ!」
「このまま正面から敵に向かう!」
「正々堂々と戦え!」
「バルマーの武人らしくだ!」
 彼等もだ。やはりバランの部下だった。その言葉にそれが出ていた。
 ロンド=ベルもだ。それを受けてだ。
「正面から来るか」
「はい、そうですね」
 シホがイザークに応える。
「それなら」
「よし、行くぞ!」
 イザークはジャスティスを前に出した。シホもそれに続く。
「正面からの戦いなら望むところだ!」
「そこんところはらしいな」
 ディアッカはそうしたイザークを見て微笑んでいた。
「トウマに影響されたか?」
「されていないと言えば嘘になる」
 実際にそうだというのである。
「やはりな」
「やっぱりな。まあ俺もな」
「ディアッカもですか」
「ああいう奴見てるとな」
 ディアッカは笑顔のままニコルに返した。
「つられるよな、どうしても」
「はい、確かに」
 ニコルもだ。その顔が微笑んでいる。
「トウマさんみたいに。正面から戦う人を見ていますと」
「気持ちがよくなるんだよな」
「そうですよね。本当に」
「俺もだな、それは」
 ジャックもだというのだ。
「つられるっていうかな」
「そうですね。今のトウマさんを見ていると」
「私達も」
 フィリスとエルフィも微笑んでいる。
「やらなければと思えて」
「それでつい」
「そういうことだな」
「だからいいのよ」
 彼等にビーチャとエルが言ってきた。
「自然と前に出られるっていうかな」
「そんな気持ちになってね」
「ううん、俺も何だか」
「普段はこうなるのに時間がかかるのに」
 モンドもイーノも既に前に出ている。そのうえで攻撃をしている。
「やるよ!」
「やれるね!」
「ああ。いい感じだ」
「いい戦いができるな」
 ハイネとアスランだった。
「この戦い」
「やれる!」
「それでだけれど」
「この戦いの後だな」
 プルとプルツーだった。
「今度は第六陣よね」
「次の敵はいよいよだな」
「そうね。最後ね」
 ルーが二人に応える。
「敵の本陣よね」
「じゃあかなり強い?」
「そうだな。あのヘルモーズもいるしな」
 プルとプルツーもわかってきていた。
「これまで一隻も出て来ていないし」
「それなら。出て来るな」
「そうだな。確実だよなそれは」
 ジュドーの目が強くなる。
「あの戦艦か」
「何度相手にしてもなのよねえ」
 ルナマリアが困った顔になって述べる。
「ただでさえタフなのにね、あの戦艦」
「しかも沈めればだ」
 レイも何度も見てきて把握している。
「そこからズフィルードが出て来る」
「だからっていってな!」
 だが、だった。シンは変わらない。
「あの連中でも何でもな!」
「倒すんだな」
「ええ、そうしますよ」
 こうカミーユにも返す。
「誰であろうとね!」
「よし、その意気だ」
 カミーユはシンのその闘志を認めて述べた。
「それでいくぞ」
「ええ、それじゃあ」
「さて、それじゃあアークエンジェルも」
 マリューは戦う彼等の後ろから指示を出す。
「前に出すわよ」
「前にですね」
「今から」
「ええ、そうよ」
 微笑んでサイとトールにも返す。
「それでいいわね」
「はい、じゃあ」
「今から」
 二人もそれに応える。そうしてだった。
 アークエンジェルも前に出る。そしてだ。マリューが前を見て言う。
「じゃあ砲撃よ」
「方角は?」
「決まってるわ。広範囲に」
 こうカズイに答える。
「狙いは定めなくていいわ」
「そうですね。これは」
 カズイも前方の映像を確認して言う。
「狙わなくても。撃てば」
「当たるわ。敵の数が多いのっていいわね」
「いい。そうですね」
 ミリアリアは少し考えてから述べた。
「絶対に何処かに当たりますから」
「それに今は狙っていたらかえって駄目よ」
 マリューはそこまで考えて判断しているのだ。
「こうした状況じゃね。かえって敵に当たらないわ」
「その通りですね。こうした場合は」
 ノイマンもそれがわかっていた。
「その敵にばかり注意がいきますし」
「そんなことをするよりもね。もうまとめてよ」
 こうしてだった。アークエンジェルは広範囲攻撃でだ。敵を次々に倒していく。アークエンジェルだけでなくだ。戦い全体はロンド=ベル有利に進んでいた。しかしであった。
 トウマとバランの戦いはだ。まさに一進一退であった。
 バランが鉄球を横から繰り出す。
「むんっ!」
「トウマ、来たわ!」
「ああ!」
 ミナキの声に応えてだ。そうしてだ。
 すぐに上に跳んだ。それでかわしたのだった。それを見てまた言うバランだった。
「今のもかわしたか」
「かわすだけじゃない!」
 そこからだ。トウマは蹴りを放った。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
「ぬうっ!?」
「受けろ!この蹴り!」
 こう叫びながらだった。
「これで決める!」
「まだだ!」
 だがだった。ペミドバンはその蹴りを右手で受け止めた。それでダメージを最低限に収めたのだった。
 それを見てだ。蹴りを放った姿勢のまま驚きの声をあげるトウマだった。
「何っ!?今の蹴りを!」
「確かにいい蹴りよ!」
 それはバランも認めた。だが、だった。
「しかしだ!」
「しかし!?」
「それではまだわしを倒せんわ!」
 大雷鳳のその足を掴んでだ。そうして。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「ぐうっ!」
「トウマ!」
「もう一度来るがいい!」
 こう叫んでだ。大きく後ろに投げ飛ばしたのだった。
 大雷鳳は宙に降り立った。態勢を立て直して再びバランに言う。
「くそっ、あの蹴りでも駄目か!」
「だから足りんと言っている!」
 まだ言うバランだった。
「もう一度だ、来い!」
「ならだ!」
 トウマは再び向かう。両者はそのまま拳と拳の応酬に入った。
 まさに力と力の激突だった。そして。
 両者は満身創痍になった。だがそれでも立っていた。
 トウマ自身もバラン自身も傷だらけになっている。そうしてだった。
「そうだ、これだ」
「これだっていうんだな」
「わしの求めている戦いはこれなのだ」
 バランは満足した声で言うのだった。
「正々堂々と力でぶつかり合う戦いだ」
「武人って訳だな」
「そうよ。このバラン=ドバン!」
 彼自身がどうかというのである。
「決して卑怯未練はせぬ!」
「ああ、それならだ!」
「トウマ、御前もだな!」
「俺もだ!正々堂々と正面からだ!」
 二人はだ。今同じになっていた。
「御前を倒す!必ずだ!」
「ならばだ。わしも見せよう」
 ペミドバンは鉄球を取った。そしてだ。
 それを中心に大きく旋回していく。それで。
 大雷鳳を撃った。今のはかわせなかった。
「ぐわっ!」
「どうだ、この攻撃は!」
 バランは攻撃を放ってから問うた。
「これで最早立てまい!」
「ううう・・・・・・」
「トウマ、まさか」
 ミナキはそのトウマを見てだ。蒼白になった。
「大丈夫!?返事をして!」
「ああ、大丈夫だ!」
 しかしだった。そのトウマの声が返って来た。
「俺はまだいける!」
「そうなのね。よかったわ」
 ミナキは彼の言葉にほう、と安堵した。
「一瞬どうなったのかって」
「ああ。しかしな」
「しかし?」
「もう俺も余裕がない」
 顔から血が流れていた。だが顔は死んではいない。
「やるしかない」
「その大雷鳳の秘められた力を」
「ああ、出す!」
 まさにそれをだというのだ。
「そして俺は勝つ!」
「勝つのね」
「バラン=ドバンに勝つ!」
「わかったわ。じゃあトウマ」
 ミナキもだ。彼の言葉を受けて決めた。
「私もね」
「一緒になんだな」
「ええ、大雷鳳のその力」
「引き出す!」
「そして!」
 二人の心が今重ね合った。
「この戦い!」
「勝ちましょう!」
 そしてだ。二人がだった。
「うおおおおおおおお!」
「むっ!?」
 バランもそれを見て言う。
「トウマ、貴様まさか」
「ああ、そのまさかだ!」
 こうバランにも返すトウマだった。
「今ここに!俺の全ての力!」
「来るか!」
「ダイナミックライトニングオーバー!」
 大雷鳳が輝く。
「その力!」
「プラズマドライブ!」
 ミナキも全てを解放した。
「フルバースト!」
「この生命全てを賭けて!」
「ええ、トウマ!」
 ミナキもだ。今感じていた。
「感じるわ、貴方を」
「この俺の全ての力!」
「その力で!」
「俺は勝つ!」
「ええ!」
「今極める!」
 マシンが今光になった。そしてだ。
 白い神鳥になり。ペミドバンに激突する。
「臨界百パーセント突破!けれど!」
「大雷鳳の限界を超えた一撃!」
「なっ、何い!!」
「これが俺達の!」
「私達の!!」
「最強の一撃だ!」
「これなら!」
 ペミドバンがひしゃげる。そして。
「俺達の勝ちだ!!」
「ぬううううううううっ!!」
 遂にだ。バランが退けられた。致命傷を受け吹き飛ばされる。
「わしを。ここまでだと!」
「どうだ!」
「やりおるわ!」
 こう返すバランだった。彼はまだ生きていた。
「わしをここまでやるとはな」
「どうだ、まだやるか」
「ふふふ、面白い!」
 それでもだ。バランはまだ言うのだった。
「こうでなくてはな!」
「ああ、どちらかが倒れるまで!」
「やるぞ!」
 二人はまた言い合う。
「ここで決着をつける!」
「その通りよ!」 
 しかしだった。両者は今はだ。
 動けなかった。動けなくなっていた。
「くっ、限界か」
「先程の一撃で」
「あの攻撃でか」
「神雷よ」
 ミナキがトウマにあの技の名前を告げた。
「あれは」
「そうか。神雷か」
「ええ、あれはね」
「そうだな。まさにそれだな」
 その名前にだ。トウマも納得した。
「あれはな」
「ええ。それでね」
「今は動けないんだな」
 トウマはミナキに問うた。
「大雷鳳は」
「限界を突破して。それにダメージも受けていたから」
「そうか。じゃあもう」
「今は動けないわ」
 そうなのだった。
「残念だけれどね」
「くっ、仕方ないか」
「わしもだ」
 そしてそれはバランもだった。
「貴様の一撃でこれ以上は動けん」
「そうなのか」
「ふん、わしの負けだ」
 バランは潔くそれを認めた。
「忌々しいがな」
「御前の負けだというのかよ」
「左様、わしは貴様の攻撃でここまでやられた」
 だからだというのだ。
「これを負けと言わずして何という」
「しかし俺も」
「ふん、攻撃を繰り出してそれは負けではない」
 こう彼に返すバランだった。
「そういうことよ」
「しかし俺達は今は」
「動けぬな」
「ああ。じゃあこれ以上の勝負はな」
 できなかった。とてもだ。
「俺は引き分けだって思うんだけれどな」
「いや、わしの負けだ」
 バランはこう言って引かない。
「それは事実だ」
「頑固だね、あんた」
「ふふふ、よく言われるわ」
 笑って返すバランだった。
「だがそれで結構」
「結構なのかよ」
「わしはそれでいい。とにかく今はだ」
「ああ、俺の勝ちなんだな」
「そういうことよ」
 こう話しているとだ。そこにだ。
 バランの部下達が来てだ。そうして彼に対して言ってきた。
「バラン様、ここはです」
「もうお下がり下さい」
「是非共」
 こう彼に告げるのだった。
「次があります」
「ですからここは」
「御願いします」
「撤退か」
 バランは彼等の言葉を受けて述べた。
「それか」
「はい、そうです」
「ここは是非です」
「御下がり下さい」
「言っても聞かぬな」
 部下のこともだ。彼はよくわかっていた。
「そうだな」
「御言葉ですが」
「その通りです」
 彼等もそれを否定しない。
「では我等がペミドバンを運びますので」
「バラン様はそこにいて下さい」
「宜しいですね」
「わかった。それではだ」
 バランも頷いてだ。そうしてだった。
 彼は部下達に運ばれ撤退した。そして他の軍もだった。
 撤退してだ。これで第五陣との戦いは終わったのだった。
「ふう、凄い戦いだったよな」
「そうよね」
「トウマとバラン」
「本当に」
 ロンド=ベルの面々は二人の戦いについて話す。
「あそこまでの戦いをするなんて」
「ちょっと予想外」
「あそこまで凄い戦いなんて」
「ちょっとねえ」
 こう話すのであった。そしてだ。
 トウマはだ。今完全に脱力していた。疲れきっていた。
「大丈夫、トウマ」
「ああ、何とかな」
 心配するミナキにも言葉を返す。
「次の戦いもいけるからな」
「けれど無理はしないでね」
「ああ、わかってる」
 こう返すトウマだった。
「それはな」
「絶対にね」
「ただ。ちょっとな」
「ちょっと?」
「元気の出る飲み物が欲しいな」
 笑ってだ。こう言うのだった。
「今はな」
「元気がなの」
「何かないか?」
 こうミナキに問う。
「スタミナドリンクでもさ」
「ええと、ドリンクなら」
 ミナキが探そうとするとだ。そこにだ。
「おおトウマ」
「御疲れさん、さっきは」
「凄かったぞ」
 オルガにクロト、シャニが来たのだった。
「俺マジで感動したぜ」
「あんな凄い戦いするなんてね」
「見直した」
「あ、ああ」
 トウマはその三人にも応える。
「俺も。どうなるかって思ったけれどな」
「それでな。身体疲れてるだろ」
「それだったらな」
「これ飲め」
 三人はここでだ。不気味な青緑色のドリンクを出してきたのだった。
 コップの中に入っているそれはだ。沸騰していた。何故かだ。
「あのよ」
「何だ?」
「どうしたんだよ」
「言え」
「それ、誰が作ったんだよ」
 ドン引きしながら三人に問うトウマだった。
「一体。そのドリンク」
「ああ、合作なんだよ」
「ミスマル艦長とクスハとラクスと」
「あとフレイ。ミサトさんやマリュー艦長」
 ある意味豪華な顔触れである。
「美味いぜ」
「僕達も飲んだよ」
「凄く元気が出る」
「いや、あんた達は特別だろ」
 こう返すトウマだった。
「そんなの飲んだらよ」
「だから大丈夫だって」
「人間こんなのじゃ死なないよ」
「実際に美味い」
 だが三人は自分達を基準にして返す。
「だから飲めよ」
「もう元気爆発だよ」
「すぐに飲む」
「くっ、こいつ等人の話聞かないのかよ」
「聞かないんじゃなくて聞けないな」
 ブレラが言った。
「それだ」
「って尚悪いじゃないかよ」
「まあそのドリンクはだ」
「飲まない方がいいよな。やっぱり」
「死ぬぞ」
 こうトウマに忠告するブレラだった。
「間違いなくな」
「だよな。ちょっとなあ」
「あの三人は特別だ」
 オルガ達三人を見ての言葉だ。
「だからだ。一緒に思うな」
「そうだよな。じゃあそのジュースは」
「絶対に飲むな」
 それが結論だった。
「いいな」
「じゃあ何を飲めばいいんだろうな」
「これだ」
 ブレラがあるものを差し出してきた。それは一本のスタミナドリンクだった。
 それを差し出してだ。またトウマに話した。
「これを飲めばいい」
「スタミナドリンクで大丈夫なのか?」
「安心しろ。これはいい」
 そのドリンクはだというのだ。
「一本飲めばそれでいける」
「ああ、それじゃあな」
「飲むか?」
「頼むな」
 トウマも微笑んでだ。そのドリンクを受け取った。
 そのうえで飲む。するとすぐにだ。
「あっ、本当にな」
「元気が出たな」
「ああ、出た」
 実際にそうだというのである。
「これはいいな」
「だから薦めた」
「それでか。悪いな」
「それならそれを飲んでだ」
「ああ、また戦うな」
「そうしろ。いよいよだからな」
 ブレラはクールだがそれでも気合を入れていた。
「最後の戦いだ」
「ここでの最後の戦いか」
「奴等からこの世界から別の世界に行き来できる力を手に入れだ」
「ああ、帰るか」
「元の世界にな」
 気合が入ったトウマに述べるのだった。
「いいな、それならな」
「やってやるさ。絶対にな」
「ではだ」
 ブレラから言った。
「行くぞ」
「ああ、それじゃあな」
 こう話してであった。彼等はまた戦いに向かうのだった。
 そしてその後ろではだ。オルガ達がトウマに問うていた。
「おいトウマ」
「このジュース飲まないの?」
「どうするんだ」
「あっ、忘れてた」
 トウマは三人の言葉でその不気味なジュースのことを思い出した。
「それだよな。そのジュースな」
「御前が飲まないんだったらな」
「僕達が飲むよ」
「それでいいな」
 こう言う三人だった。
「で、どうするんだ?」
「それでだけれどさ」
「飲むのか」
「ああ、もういいよ」
 体よく断るトウマだった。
「そっちはな」
「何だよ、美味いのによ」
「身体にもいいのに」
「勿体ない」
「ああ、悪いけれどな」
 またこう言う彼だった。
「あんた達に譲るな」
「そうか。それじゃあな」
「僕達が貰うね」
「そうする」
 三人も言う。
「こんなに美味いジュースないのにな」
「勿体ないよ」
「そう、飲まなければ損」
「ちょっとな」
 トウマもその三人に応える。
「さっき飲んだしな、もう」
「普通のなんか飲んでも面白くないだろ」
「そうだよ。折角の特製ジュースなのに」
「最高の一品」
「あの連中は違う」
 また言うブレラだった。
「特別だ」
「人間だよな、普通の」
「そうはなっている」
 しかしというのであった。
「だが頑丈さは明らかに違う」
「コーディネイター以上に頑丈よ」
 プロフェッサーがここで言う。
「調べたけれどね」
「やっぱりそうなんですか」
「頑丈さと身体能力は尋常じゃないわ」
「じゃあ一種の超人なんですね」
「そうよ。そういうところだけはね」
 こう話すのであった。
「普通ではないわ」
「ううん、何なんでしょう」
 樹里もそこが疑問だった。
「あの三人って」
「絶対に普通の人間じゃないけれどね」
「それは間違いないよな」
 ジョージとグレンもそれは感じ取っていた。
「けれど。何者かっていうと」
「普通じゃないのはわかっても」
「僕より体力ありますよ」
「僕よりもだ」
 プレアとカナードがこう話す。
「反射神経だってそうですし」
「尋常なものじゃないから」
「多分だけれど」
 ジェーンがここで自説を展開する。
「あの三人はそもそもがそうした能力が傑出してるのよ」
「そいうなのか」
「ええ、多分ね」
 ミナにも述べる。
「そういうタイプの超人なのよ」
「じゃあ薬なんて使わなくても」
 ジャンも言う。
「元々ああだったのか」
「薬物投与は必要なかったか?」
「それでは」
 ミハイルとバリーが話す。
「アズラエルさんはそれならどうして」
「薬物投与をしたんだ」
「まあ色々ありまして」
 そのアズラエルの言葉だ。
「コーディネイターに匹敵するだけの力を発揮してもらいたくてです」
「いや、既にあれは」
「ある意味コーディネイターとかニュータイプだし」
「全然違う意味で」
 全員でアズラエルに突っ込みを入れる。
「何があっても死なないし」
「闘争心も桁外れだし」
「野獣みたいだし」
「あれじゃあ」
「本当に色々と実験していまして」
 また話すアズラエルだった。
「それでまあ。薬物投与もしていたんですよ」
「まさかな」
「そうよね」
 ここで話すのはジョシュアとリリアーナだった。
「パルパレーパの粒子も効かないなんて」
「その時点でまともじゃないし」
「僕もでしたけれどね」
 それはアズラエルも同じであった。
「ああいうのは関係ないんですよ、僕も」
「よく考えたらあんたも普通じゃないしな」
「本当に普通の人間なんですか」
「そうなっています」
 アズラエルは平然とジョシュアとリリアーナに返す。
「何ならDNA鑑定をして頂ければ」
「あのですね、それですけれど」
 シンジがDNAについて言ってきた。
「使徒もマスターアジアさんもDNAは人間なんですよ」
「何故そこでマスターアジアまで入る」
「納得できるがな」
 グラキエースとウェントスがシンジに突っ込みを入れる。
「それならBF団もか」
「あの連中もか」
「多分。そうだと」
「あの変態爺さんねえ」
 アスカの拒絶反応は何があっても消えない。
「今どうしてるのかしら」
「多分」
 レイが不吉な予言をした。
「今この世界に来ようとしてる」
「んな訳ないでしょうが!」
 アスカはそれを即座に否定した。
「ここは別次元よ!幾らあの変態爺さんでも来られる筈ないでしょうが!」
「けど前来たやろ」
 そのアスカにすぐに突っ込みを入れるトウジだった。
「あの別の世界でアル=イー=クイスと戦ってた時」
「あれね」
「そや。だからや」
「あの爺さん冗談抜きで人間じゃないでしょ」
 アスカは絶対に信じようとしない。
「多分あれよ。使徒なのよ」
「いや、それはないから」
「じゃあ何だっていうのよ」
「人間じゃないかな」
 こう答えるシンジだった。
「やっぱり」
「あのね、普通人間は素手で使徒を倒せないわよ」
 アスカはまだ常識にこだわっている。
「それもね。あんな風によ」
「まだあのこと忘れられないんだね」
「絶対に忘れられないわよ」
 断言さえする。
「パナマ運河でもいきなり出て来たしね」
「あれは俺も驚いたぞ」
 イザークも言ってきた。
「何だとな」
「そういえばあんたもあの時にいたのよね」
 アスカはそのイザークに気付いた。
「あの頃からも最初に会った時も河童だったけれど」
「おい待て」
 イザークは河童という言葉に即座に反応した。
「今何と言った」
「だから河童じゃない。銀河童」
「貴様!まだ言うか!」
「何度も言うわよこの銀河童!」
「それだけは言うな!この赤猿!」
「誰が猿よ誰が!」
「御前だ!今度こそ死ね!」
 二人は取っ組み合いに入った。
「殺す!何があろうとも!」
「やってやるわよ!死ぬのはあんたよ」
「何か久し振りに喧嘩するね、この二人」
「そうね」
 そんな二人を見て話すシンジとレイだった。
「何か辛い状況だけれど僕達って」
「いつも通りね」
「じゃあいけるかな」
 シンジはぽつりと言った。
「この戦いね」
「安心していいわ」
「いいんだ」
 レイの言葉に応える。
「状況はやっぱりかなりだけれど」
「じゃあ碇君は」
「僕は?」
「諦めてる?」
 レイはいつもの淡々とした口調でシンジに尋ねてきたのだった。
「今。諦めてる?」
「いいや、諦めてないよ」
 シンジはそのことをすぐに否定した。
「だって。諦めるにはね」
「早いわね」
「絶対に最後の最後まで諦めないよ」
 こうも言うのだった。
「だってさ。諦めたらそれで終わりじゃない」
「その通りよ」
「それに僕達は生きているんだ」 
 シンジは言葉を続ける。
「シン君だったっけ。生きている限り明日はあるってね」
「だから諦めないのね」
「そうさ。元の世界に絶対に帰られるよ」
 シンジはこのことも確信していた。
「だから。今はね」
「そう。その通りよ」
 レイの顔が微笑みになった。
「安心して。この次元からは絶対に帰られる」
「そうだね。バルマー軍が行き来できるってことはね」
「私達も絶対に。そう」
「そう?」
「あの男」
 こう言うレイだった。
「いるわね」
「ハザル=ゴッツォだね」
「あの男は私達を徹底的に見下しているから」
 これはもう言うまでもなかった。誰もがわかることだった。
「その私達にやられる位なら」
「逃げるかな」
「絶対にそうするから」
「じゃあその時に僕達は」
「そう、帰られる」
 これがレイの読みだった。
「あの男を追い詰めればそれいけるから」
「わかったよ。それじゃあね」
「戦おう」
 レイはまた言った。
「このまま」
「うん、それじゃあね」
「それにしても」
 レイはここであらためてシンジの顔を見た。そのうえでこうも言ってきた。
「碇君も本当に変わった」
「あれっ、そうかな」
「前は何かあるとすぐに閉じこもってた」
「そうだったね。前の僕はね」
「けれど今は違う」
 こう言うのであった。
「今の碇君は絶対に諦めない」
「ずっとね。戦ってきて」
 シンジはだ。微笑みになって話した。
「その中で物凄く色々なことがあったじゃない」
「ええ」
「必死に生きて。必死に戦う人達を見てきたから」
「ロンド=ベルの人達」
「ほら、一矢さんなんかそうじゃない」
 シンジは彼の名前を出した。
「一矢さんは絶対に諦めなかったよね」
「そうね。あの人は」
「本当に一途で。必死にエリカさんのことを想って」
「一矢さんは素晴しい人」
「そうだよ。ああした人を見ていたらね」
「碇君も」
「一矢さんにはなれないよ」
 彼にはというのである。
「あそこまで素晴しい人には。それに」
「それに?」
「僕は僕だし。けれどそれでもね」
「あの人みたいに諦めないことはできる」
「諦めたらエリカさんは一矢さんの手に戻らなかったよ」
 それも事実だった。彼が諦めたならだ。それで終わりだったのだ。
「シン君だって。あの時」
「ステラちゃんを」
「そうだよね。あの時のシン君の言葉忘れられないよ」
 ベルリンの戦いの時のことだ。
「君は俺が守るって。あの言葉」
「そうね。諦めなかったから」
「シン君だってステラちゃんを取り戻せたんだよ」
「それじゃあ私達も」
「うん、諦めることなくね」
 微笑んで言った。
「戦おう、次も」
「ええ、それじゃあ」
 二人は決意をあらたにしていた。シンジも大きく変わっていた。少なくともかつての彼ではなかった。見事な成長を遂げていた。
 バルマーではだ。遂にだった。
 ハザルがだ。不遜な笑みで言っていた。
「そうか、バランもか」
「はっ、敵にです」
「敗れました」
 バルシェムの面々が彼に報告する。
「こうして五つの陣が退けられました」
「後は」
「ふん、まさか俺が直々に出るとはな」
 不遜な笑みは変わらない。
「だが、それならばだ」
「ヴァイクランですね」
「あれを」
「そうだ。俺はあれで出撃する」
 まさにそうだというのだった。
「そしてそのうえで奴等に引導を渡そう」
「ハザル様、それでは」
「我々も」
 ジュデッカ=ゴッツォ達もいた。やはり七人いる。
「出撃致します」
「それで宜しいでしょうか」
「無論だ」
 言うまでもないといった口調だった。
「御前達も出ろ、いいな」
「はっ、それでは」
「今から」
「さて。御前達がまず出撃してだ」
 ハザルは言葉を続ける。
「そして俺もだ」
「本陣をですね」
「率いられると」
「外銀河方面軍の残りを全て投入する」
「そしてそのうえで」
「この戦いに」
「そうだ、勝つ」
 言い切った。
「いいな。そうするぞ」
「了解です」
「それでは」
「しかしだ」
 だが、だった。ここでハザルの顔が曇った。
「孫達は元の世界に戻ったままだ」
「それぞれの機体の損傷が思ったより酷く」
「まだ修理中です」
 バルシェム達が答える。
「ですから今はです」
「出撃できません」
「ふん、まあいい」
 ハザルはそれを聞いて一応は納得した。
「それでは俺とエイスでだ」
「・・・・・・・・・」
 彼はだ。既にハザルの傍らにいた。
「いいな、行くぞ」
「御意」
「ヴァイクランの真の姿を見せるかも知れん」
 ハザルはこんなことも言った。
「その時はだ。いいな」
「了解」
 エイスは頷いてだ。そうしてであった。
 遂にハザルが出撃した。だが彼は知らなかった。この出撃が彼にとって最後の出撃になることをだ。何一つとして知らなかったのである。


第九十四話   完


                                     2011・1・31 

 

第九十五話 戦士達の危機に

             第九十五話 戦士達の危機に
 遂にだった。彼が出て来た。
「来たか!」
「ハザル=ゴッツォ!」
「遂に!」
 ロンド=ベルの面々はヴァイクランの姿を見て口々に言う。
「アヤ大尉の仇」
「SRXを倒した男」
「絶望の宴の本当のはじまりだ」
 ハザルはその彼等に傲慢そのものの顔で告げた。
「御前達にとってのな」
「残念だがそうはならない」
 サンドマンが彼に告げた。
「ハザル=ゴッツォだったな」
「貴様は確か別の世界の」
「そうだ。サンドマンという」
 サンドマンは自ら名乗った。
「私もこれまで多くの者を見てきたがだ」
「何だというのだ」
「御前の様な男には何もできはしない」
 こうハザルに告げるのだった。
「それを言っておく」
「ふん、何かと言えば負け惜しみか」
 少なくともハザルはそう感じ取った。
「下らんな。別の世界の輩も」
「私は負け惜しみを言う趣味はない」
 既にだ。サンドマンはハザルを圧倒していた。だがハザルはそれに気付かない。
「勝利は我等の手にある」
「ではだ」
 ハザルはその言葉を受けて言った。
「御前達のその勝利を見せてもらうとしよう」
「それではです」
「我々が」
 七隻のヘルモーズがだ。戦場に出て来たのだった。
「また出て来たな」
「バルマー軍のお約束ね、あの戦艦は」
「そうね、あれはね」
 皆最早ヘルモーズを見ても驚かなかった。
「じゃああれを倒してからね」
「あいつとの決戦はそれからね」
「倒せればな」
 ハザルはその彼等に告げてきた。
「俺が相手をしてやろう」
「よし、言ったな!」
「それならだ!」
「待ってなさいよ!」
 また口々に言うロンド=ベルの面々だった。
「この戦い絶対に!」
「勝ってみせる!」
「生き残るのは俺達だ!」
「何があっても!」
 こうしてだった。ロンド=ベルと第六陣の戦いがはじまった。だがハザルはだ。
「さて、それではだ」
「後方に」
「そうだ。俺の出番はまだ先だ」
 こうエイスに言うのだった。
「本陣の戦力を率いてそのうえでだ」
「ヘルモーズが全て沈められたならば」
「その時に出よう」
 そうするというのであった。
「それでいいな」
「御意」
 ここでも頷くだけのエイスであった。仮面の下の顔は見えない。
 ハザルは下がりだ。戦場から姿を消した。
「高みの見物ってことかよ」
「ここでもまたか」
「何処までも嫌な奴ね」
 それを見てまた全員で言う。
「まあそれでも」
「この戦いで最後だから」
「倒してやるからな!」
「いいわね!」
 こうして第六陣との戦いがはじまった。まずはだ。
 七人のジュデッカ=ゴッツォ達がだ。それぞれのへルモーズから言ってきた。
「さて、それではだ」
「汝等とははじめて会うがだ」
「ああ、そうなんだよなあ」
「そういえば」
「そうよね」
 誰もが彼等の言葉にそのことに気付いた。
「あんた達自体と会うのは」
「これがはじめてなんだ」
「あんた達とはな」
「余達のクローンとは会っているな」
「そうだったな」
 ジュデッカ=ゴッツォ達もそのことはわかっていた。
「余達も同じだが」
「それでもだな」
「そうそう、クローンなんだよな」
「それがそれぞれの艦隊の指揮官になってるんだったよな」
「バルマー帝国はな」
「そういうことだ」
 ラオデキアであった。
「余にしてもそうだ」
「あんたと一番よく会ってるけれどな」
「実際のところな」
「バルマー戦役の頃からだったしな」
「そう思うと縁がある」
 ラオデキアは余裕と共に述べてきた。
「つまり余は汝等に数多く敗れてきたことになる」
「あんた自体とはこれからだけれど」
「結果的にはそうなるよな」
「何ていうか微妙な話だけれど」
「それでも」
「そうだ。しかしだ」
 ラオデキアの言葉がここで強いものになった。そのうえでの言葉だった。
「今度はそうはいかぬ」
「勝つっていうんだな」
「そちらが」
「左様。バルマーの為にだ」
 決してだ。ハザルの為ではなかった。
「汝等にここで引導を渡そう」
「よいな」
「そうするぞ」
 他のジュデッカ=ゴッツォ達も言ってきた。そうしてであった。
 七隻のヘルモーズから艦載機が出てだ。ロンド=ベルに向かうのだった。
 それを見てだ。まずはイーグルが言った。
「はじまりですね」
「ああ、敵の最後の陣との戦いか」
「まあ本陣がまだあるけれどね」
 そのイーグルにジェオとザズが応える。
「それでもこの戦いはな」
「勝たないといけないからね」
「はい、ではNSXもです」
 他ならぬ彼等の乗る艦である。
「前に出しましょう」
「ああ、そうしてな」
「敵を倒していこうね」
 こうしてだった。NSXが前に出るとだ。
 アスカがだ。それを見てシャンアンとサンユンに言った。
「では童夢もじゃ」
「はい、それでは」
「前に出しましょう」
 二人もそれに応える。
「そうしてできるだけです」
「敵を倒していきましょう」
「いつもじゃが今回ものう」
 アスカは不敵な、それでいて子供っぽい笑みで述べた。
「積極的にじゃな」
「そや、そうせなな!」
 タータがアスカに応える形で言った。
「姉様、うち等もや!」
「そうね。ここはね」
 タトラは妹のその言葉に頷いていた。
「やっぱり。前に出ないとね」
「それで敵を倒してや」
「あのハザル=ゴッツォだけれど」
 タトラも彼にはいい顔を見せない。
「私も」
「嫌いやな」
「ええ、好きにはなれないわ」
「うちはあいつ大っ嫌いや」
 タータはここまで言う。
「ああいう奴許しておけるかい」
「そうよね。やっぱりね」
「引き摺りだして謝らせたるわ」
「それだけでいいの?」
「ほなあの頭虎刈りや」
 それで終わるのがタータだった。
「そうしたるわ」
「虎刈りなの」
「そや、虎刈りや」
 まさにそうだというのである。
「そうしたるわ!」
「あらあら、タータも相変わらずねえ」
「相変わらず?」
「それで済ませるところが」
「そうですよね。何かタータさんは」
 遥が二人に言う。
「お優しいから」
「虎刈りって最高にきついやろ」
「いえ、ああした人物にはです」
「もっときついお仕置きでもいいと思うわ」
 遥とタトラはこうタータに話す。
「それを虎刈りだけというのは」
「やっぱり優しいと思うわ」
「そうかなあ。きついと思うけれどな」
 自分ではそのつもりのタータだった。
「そこがちゃうんかな」
「そう思いますけれど」
「何か遥に言われるとそんな気になるな」
 彼女にだというのだ。
「姉様と同じだけな」
「どうしてですか、それは」
「何か似てるからやろな」
 それでだというのである。
「そう思えるんや」
「私もそうですけれどね」
 そしてそれは遥もだった。
「何かそう思えます。タータさんでしたら」
「同じものを感じるからなあ」
「そうですよね。何故か」
「私なんかそれを言ったら」
 タトラはであった。
「テュッティさんにアイナさん達が」
「多いで、姉様は」
「そう思います」
「いいことよね、やっぱり」
「羨ましいと思うわ」
「そうですよね」
 それも言うタータと遥だった。そんな話をしながらだった。
 ロンド=ベルは突撃してだ。バルマーの大軍を正面から倒していく。囲まれてもだ。
「よし、それならだ」
「はい、ここはですね」
「あの陣ですね」
「そうだ、円陣だ」
 クワトロがアポリーとロベルトに述べていた。
「そうすればいい」
「了解です。それでは」
「今は」
「幾ら数が多くともだ」
 最早誰もそのことに焦ることはなかった。
「戦い方はある」
「はい、そうです」
「その通りです」
 アポリーもロベルトもクワトロのその言葉に応えてだった。
 すぐにクワトロと共に動く。ロンド=ベル全体もだ。
「何っ、早い」
「もう陣を組んだというのか」
 ジュデッカ=ゴッツォ達は彼等がすぐに円陣を組んだことに驚きの声をあげた。
「ロンド=ベル伊達にだな」
「これまでの六つの陣を破ってきたわけではないか」
「しかしだ。我等にもだ」
「バルマーの誇りがある」
 それならばというのだ。
「そうしてきてもだ」
「怯むつもりはない」
 こう言ってだった。その軍で包囲を続けてだった。
 全軍で攻撃を仕掛ける。そうするのだった。
 しかしだ。やはりロンド=ベルは強い。数を減らしていくのはバルマー側だった。
「まだだ!」
「この程度で!」
「やられるか!」
 こう言ってだ。さらに攻撃を加えるロンド=ベルだった。
 戦局はここでも彼等に傾いていっていた。そしてだ。
 遂には七隻のヘルモーズと近接の戦力だけになったのだった。
「さてと、後は」
「いつも通りあの巨艦を沈めて」
「それからだよな」
「それもいつも通りね」
 こう話してだ。そうしてであった。
 円陣を解いてだ。ヘルモーズ達に向かうのだった。
 集中攻撃を浴びせる。それによってだ。
 ヘルモーズ達を沈めていく。一隻、また一隻とだ。
「ヘルモーズもか」
「こうも簡単に沈めていくか」
「そうするか」
「だから慣れてるんだよ!」
 カズマが彼等に言い返す。
「あんた達のことはな!」
「ふむ。それではだ」
「我等の切り札もか」
「わかっているのだな」
 ジュデッカ=ゴッツォ達がそれぞれ言う。
「このズフィルード」
「倒せるというのだな」
「これもまた」
 今度は七機のズフィルードだった。ヘルモーズ達から出て来たのである。
 ジュデッカ=ゴッツォ達はだ。その中から問うのであった。
「汝等の戦力を見てその都度強くなるこのマシン」
「それも倒せるというのだな」
「今回も」
「ええ」
 セツコが答えた。
「倒してみせるわ。今回もね」
「ふむ。言うものだ」
「無論余達も油断はしていない」
「しかしそれでもだな」
「倒せるというのか」
「倒す!」
 ゼンガーの言葉だ。
「必ずだ!」
「そして帰らせてもらう」
 レーツェルも友に続く。
「我々の世界にだ」
「ふむ。それならばだ」
「余達にその力見せるがいい」
「存分にな」
 こうしてだった。今度はズフィルード達との戦いだった。だがそれもだ。
 ロンド=ベルはなれた動きで彼等を囲んでだ。一機、また一機と倒していくのだった。
 そうして瞬く間にだ。七機のズフィルードを全て倒したのだった。
「何っ!?ズフィルードがこうも簡単にだと」
「倒されるというのか」
「まさか」
「だから慣れてるって言ってるだろ」
「それはね」
 こう返すカズマとミヒロだった。
「これまで随分戦ってきたんだからな」
「それじゃあわかるわよ」
「ふむ。進化にもだ」
「汝等は勝てるというのだな」
「ああ、そうだ!」
「その通りよ!」
 ラウルとフィオナが言った。
「俺達にはな!」
「進化も意味はないわ!」
「どうやら。地球人はだ」
「我等の予想以上だな」
「そうだな」
 彼等もこのことがだ。今わかったのだった。
「いいだろう。それではだ」
「汝等を認めよう」
 そしてこうも言うのだった。
「その力、見事だ」
「それならばできるな」
「この世界から出ることもだ」
「だが、だ」
 炎に包まれるマシンの中でだ。彼等は言うのだった。
「戦いはこれからだ」
「それはわかっておくことだ」
「つまりあれか?」
 言い返したのはイルムだった。
「ハザルの野郎にはってのかよ」
「ふっ、それは違う」
「それは言っておこう」
 ところがだった。彼等はイルムにこう返すのだった。
「我等が忠誠を誓うのはバルマー帝国だ」
「我が国にだ」
「成程な」
 それを聞いてだ。リンはあることを悟った。
「どうやらあの者達はバルマーには忠誠を誓っていても」
「ああ、そうだな」
 イルムも彼女の言葉に応える。
「ハザルの野郎にはな」
「忠誠を誓っていないな」
「所詮その程度の奴だってことだな」
 イルムはここからハザルの度量も見抜いたのだった。
「人望は全然ないな」
「そうだな、全くな」
 彼等が言葉に出さずともだ。それを悟ったのである。
 そしてそのうえでだ。あらためてジュデッカ=ゴッツォ達の話を聞くのだった。
 彼等はだ。まだ言うのだった。炎に囲まれながらも。
「バルマー本国艦隊はこんなものではない」
「その質と量は我々の比ではない」
「それは言っておく」
 このことを話すのであった。
「本国の戦力こそが我等の切り札だ」
「その戦力には勝てるものではない」
「決してな」
「それは言っておく」
「そうか、話はわかった」
「よくな」
 イルムとリンが彼等に応えて頷いた。
「そうしてか。御前達はこれで」
「去るのだな」
「そうさせてもらおう」
「ではだ」 
 七機のズフィルードが完全に炎に包まれた。その中でだ。
「ゼ=バルマリィ帝国万歳!」
「帝国に栄光あれ!」
 こう叫んでだ。そのうえで炎の中に消えるのだった。
 七個艦隊が全て消え去った。それを見てだ。イルムはまた言った。
「見事な奴等だったな」
「そうだな。あの者達はな」
 リンがイルムの言葉に応える。
「敵ながら見事だ」
「しかしな。次の奴はな」
「最悪だ」
 リンの声が忌々しげなものになった。
「あのハザル=ゴッツォはな」
「そうだな。あいつだけは許せるものがないからな」
 イルムの言葉にも怒気が宿る。
「あいつは武人でも何でもないな」
「その通りだ。言うならばだ」
「何なんだ?あいつは」
 イルムのその言葉がいぶかしむものになった。
「一体何て言えばいいんだろうな」
「人形か」
 リンがふとした感じでこう述べた。
「あの男は。人形か」
「人形!?」
「そんな感じがするがな」
「言われてみればそうか?」
 イルムもリンのその言葉に考える顔になった。
「あいつは。そうした奴か」
「何故かわからないがそうした感覚がある」
 また述べるリンだった。
「妙なな」
「そうだな。あいつは何なんだ?」
 また言うイルムだった。
「何者なんだ、一体」
「?ですから」
 アルマナが怪訝な顔で言ってきた。
「帝国宰相シヴァー=ゴッツォの息子ですが」
「それもただ一人のです」
 ルリアも言ってきた。
「そうした方ですが」
「それはそうなのだが」
「何かおかしな感じがするんだよな」
 その二人にこう返すリンとイルムだった。
「空虚な感じがする」
「言ってることはむかつくことばかりだけれどな」
「しかしだ。その中にはだ」
「自分の意志らしきものが感じられないんだよ」
「そうですか?」
「我々は特に」
 バルマーの二人はそれを感じていなかった。それも全くだ。
「傲慢な男ですが」
「あの方は確かな意志で」
「だといいのだがな」
 マイヨもだ。リンとイルムの言葉に傾いていた。そうして言うのだった。
「あの男は。何かが違う」
「人形ねえ。言い得て妙か」
 ジェリドも鋭い顔になって述べた。
「あんた達強化人間って知ってるか?」
「地球の技術ですね」
「それですね」
 二人はジェリドの言葉にすぐに答えた。
「確か。薬物投与等によって特別な力を引き出す」
「そうしたものでしたね」
「私がそうなのよ」
 フォウが述べてきた。
「実はね」
「私もよ」
 今度はロザミアが述べてきた。
「少し違うけれどステラちゃん達もね」
「それには入るわね」
「昔のこいつ等は感情的にはかなりあれだったんだよ」
 ジェリドがまたここで話す。
「それにな。あいつは似てる感覚がするんだよな」
「だからこその人形」
「そうだというのですか」
「少なくともあいつは自分の意志で動いてないな」
 ジェリドもそれは見抜いていた。
「そうした意味で人形だな」
「そうなのですか」
「あの方は」
「それでだ」
 ジェリドがここでまた言う。
「来るぜ、そのお人形さんがな」
「ああ、そうだね」
「敵の本陣がだな」
 ライラとカクリコンが彼のその言葉に応える。
「それなら次で」
「終わらせるとするか」
「あの男」
 マシュマーの目も鋭くなった。
「私もまた許せぬ」
「やっぱりアヤさんのことですか」
「それだけではない」
 こうゴットンにも返す。
「武器を持たぬ者も平然と手にかけるその行動がだ」
「許せませんか」
「私はそうした輩が最も嫌いだ」
 マシュマーらしい言葉だった。
「許せん。できればこの手でだ」
「そういうことでしたら」
 ゴットンはだ。微笑んでそのマシュマーに言ってきた。
「私もご一緒させて下さい」
「むっ、御前もなのか」
「何か変わりましたよ」
 マシュマーにこうも話すのだった。
「ああいう人間とか見ていたら許せませんよ」
「そうなのだな」
「ええ、それじゃあですね」
「それでは。その言葉を受けよう」
「そうしてくれますか」
「そのうえでいくとしよう」
 マシュマーは前を見据えた。そうしてだった。
 そこから敵が来るのを待った。するとだ。
 その前にだ。彼等が来たのであった。
「大物のお出ましだね」
「そうですね」
 イリアがキャラに応える。
「敵の司令官が」
「出て来るよ、やっとね」
 こうだ。そのハザルと彼の直属軍を見ながら述べるのだった。
 そしてだ。そのハザルが言ってきた。
「さて、それではだ」
「おい、そこの銀髪野郎!」
 忍がハザルに対して言う。
「どういうつもりだ!」
「何がだ」
「手前等は確か俺達の戦力を利用するつもりだったな」
「如何にも」
 平然として答えるハザルだった。
「その通りだ」
「では何故だ」
「そうだね。考えてみればおかしな話だよ」
 沙羅も言った。
「それがこうしてここで殲滅するなんてね」
「方針転換?」
 雅人はそれではないかと考えた。
「それでここで俺達を」
「だとすればその理由は何だ」
 亮も考えていく。
「この男がそうする理由は」
「それだな」
 アランも続けた。
「この男、何を考えている」
「ふん、本来ならばだ」
 ハザルはその傲慢な笑みで言ってきた。
「貴様等の如き下賤の者に言うことではないが」
「ごたくはいいんだよ!」
 忍は彼に敵愾心を露わにさせていた。
「そんなことはな!早く言え!」
「そこにいる裏切り者達は少なくともそうだったな」
「私か」
 マーグが堪えた。
「私のことだな」
「そうだ。生き恥を晒している貴様だ」
 そのマーグだというハザルだった。
「貴様はそう考えていたな」
「少なくとも私はだ」
 マーグはそのハザルを見据えて言い返した。
「御前の様に非道をしたりはしない」
「ふん、甘いな」
「甘いか、私が」
「バルマー人以外の者の命なぞ何の価値があるというのだ」
 こうマーグに言うのだった。
「そうではないのか」
「貴様のその下劣な言葉に頷くものはない」
 マーグの返答は厳しいものだった。
「何一つとしてな」
「裏切り者に相応しい言葉だな」
「少なくとも御前と同志になったつもりはない」
「そう言うのだな」
「何度も言おう。そしてだ」
 マーグの言葉は続く。
「貴様のその答えを聞こう」
「全ては父上の御考えだ」
 それだというのだった。
「宰相である父上。シヴァー=ゴッツォ閣下のな」
「また親父かよ」
 今言ったのは盾人だった。
「何かっていうとそうだな」
「そうだな。これは本当にな」
 弾児はここで確信した。
「この男はな」
「ああ、人形だな」
「その父親のな」
「黙れ!」
 ハザルの声が荒いものになった。
「俺は人形ではない!」
「ふん、自覚はないってか」
「まあそうだろうな」
「こういう奴ってのは」
「自分で自分のことはわからないからね」
「だよね」
 その彼等にだ。ハザルは怒りを露わにしてきた。
「その言葉、後悔させてやる」
「やるってのか?」
「それじゃあ」
「もう決まってることだけれどね」
「死ぬがいい!」
 彼等の戦いもはじまった。そしてその時。
 地球ではだ。二人の少年達が言っていた。
「早くしないと!」
「あの人達が!」
「わかっている」
 重厚な顔立ちの黒人である。その地球統合政府主席がだ。彼等と会っていた。そのうえでその二人の少年、護と戒道に対して応えていた。二人は地球に戻られたのだ。
「まずはよく帰ってくれた」
「はい」
「僕達は」
「天海護君」
 まずは彼の名前が呼ばれた。
「そして戒道幾己君」
「それでなんですけれど」
「僕達が通ってきたあのルートを」
 二人は必死に主席に訴える。
「あそこを分析すれば!」
「閉鎖空間への入り口も特定できます!」
「御願いします!」
「どうか!」
 二人はさらに訴える。
「凱兄ちゃん達を!」
「ロンド=ベルの人達を!」
「無論だ。彼等は人類の英雄だ」
 主席もだ。二人にすぐに答えた。
「彼等はこの地球と銀河を救う為の希望なのだから」
「主席」
「来てくれたか」
「はい」
 ここで姿を現したのは。彼だった。
「この子達の話を聞いて調べましたが」
「そうか、早いな」
「何、大したことではありません」
 シュウだった。こう主席に対して述べるのだった。
「彼等のことを考えれば」
「そう言ってくれるか」
「ええ。それでなのですが」
 シュウの話は続く。
「閉鎖空間と通常空間の接点はほぼ特定できました」
「そうか、それでは」
「私が行ってもいいのですが」
 シュウはここでこんなことも言った。
「ネオ=グランゾンで」
「ではすぐにそうして」
「いえ」
 しかしだった。主席の言葉はここでは断ったのだった。
「私よりもです」
「閉じられた空間に救援を送り込むことができる者がいるのか」
「その通りです」
 思わせぶりな微笑と共の言葉だった。
「その役目を果たすべきはです」
「そうか、彼等だな」
「はい、彼等であるべきです」
 こう主席に話すのだった。
「是非共。ここは」
「では遂に」
「既にパイロット三名と機体」
 それがだというのだ。
「到着しています」
「ではすぐにだな」
「その通りです」
「あの少女がもたらした一筋の光明」
 主席の言葉も熱さがこもってきている。
「それを活かせるかどうかに」
「人類の命運はかかっています」
「失礼します」
 ライだった。彼が来た。
「主席、只今より」
「うむ、頼めるか」
「はい」
 ライはだ。敬礼しながら主席に応えた。
「かかります」
「彼等を救ってくれ」
「わかっています。私も彼等を何としても」
「ああ、そうだな!」
「私もだ」
 リュウセイとだ。レビも来た。この二人も主席に敬礼してから言う。
「この戦い、絶対に!」
「仲間を救い出す!」
「その意気です。それでは」
 シュウもだ。ここでこう言った。
「私も行かせてもらいましょう」
「シラカワ博士もか」
「あんたもかよ」
「今はそうした時です」
 だからだというのである。
「私もまた行きましょう」
「ああ、それじゃあな」
「頼む」
 リュウセイとレビが彼の言葉に応える。こうしてであった。
 戦士達が救援に向かう。敗れた者達がだ。再び勝利を手にし仲間を助け出す為に。また戦場に赴くのだった。あらたな決意を胸にして。


第九十五話   完


                                     2011・2・3   

 

第九十六話 見参!!バンプレイオス

                第九十六話 見参!!バンプレイオス
 ロンド=ベルとハザル直属部隊との戦闘がはじまっていた。
 その中でだ。ハザルはエイスに問うていた。
「まだ予備兵力はあるか」
「充分に」
「そうか、ならいい」
 それを聞いて満足した顔になってまた言うハザルだった。
「奴等は最早エネルギーも弾薬も残り僅かだ」
「さすれば」
「このまま押し潰す」
 数でだというのだ。
「そうする。いいな」
「御意」
「ではだ。このまま攻めていく」
 正面からの力押しだった。
「それではエイスよ」
「はっ」
「前線の指揮は御前が執れ」
 他ならぬ彼がだというのだ。
「俺もまたゴラー=ゴレムと共に攻撃に入ろう」
「それでは」
 こう話してだった。彼等はロンド=ベルに数を頼みに攻撃を仕掛けていた。その中でだ。
 ロンド=ベルは次第に追い詰められていた。だがだった。
「ここで諦めてもな!」
「何にもならないんだよ!」
「それなら!」
「勝ってやるわよ!」
 こう叫んでだ。意地を見せていた。
 だがエネルギーと弾薬がだ。次第に不安になってきているのも確かだった。
「流石にこれだけ戦ったらなあ」
「そろそろまずいか?」
「ここはもう一か八か」
「あの銀髪の首を狙って?」
「突撃か?」
「そうだな」
 刹那が最初に頷いた。
「ここはそれだ」
「僕もそう思うよ」
「俺もだ」
 アレルヤとロックオンが彼の考えに続いた。
「じゃあ刹那」
「フォローは任せろ」
「済まない」
 刹那は二人のバックアップを受けて前に出ようとする。そこにだ。
 ティエリアも来てだ。彼に言ってきた。
「僕も行こう」
「御前もか」
「ああ。君だけでは駄目だとしても」
 その場合でもだと。彼は言うのだった。
「僕達が全員なら」
「いけるよ」
「あいつの首を取る位ならな」
「そうだな。そしてあいつが逃げようとする時にだ」
 実は彼もハザルはいざとなれば逃げると見ていた。その時にだというのだ。
「元の世界に共に行く」
「そうしよう、絶対にね」
「それならだ。まずはあの銀髪野郎のところにな」
「行かないといけないからね」
「では行く」
 刹那の目に炎が宿った。静かな炎が。
「そして・・・・・・生きる!」
「ははははははは、無駄だ!」
 その刹那にだ。ハザルが嘲笑を浴びせかけた。
「御前達は俺に近付くことすらできん!」
「あくまでそう言うのだな」
「何度でも言おう!そして近付けたとしてもだ!」
 それでもだというのである。
「俺のヴァイクランは倒せん!絶対にだ!」
「そうだな、絶対だ」
 刹那はハザルのその言葉は認めた。それはだ。
「だが、絶対なのはだ」
「何だというつもりだ」
「御前が倒されるということだ」
 それがだというのである。
「それが絶対だ」
「言うか、雑魚共が」
「雑魚と思って侮らないことだ」
 既にだ。四機のガンダムがヴァイクランに向かって突進していた。その中での言葉だった。
「俺は。できはしないことは言わない」
「ほざけ!俺のこの手で葬ってやろう!」
 ハザルもだ。ヴァイクランを動かしてきた。そのうえでだった。
「そうしてやれば本望だろう!」
「御前を倒す」
 また言う刹那だった。
「必ずだ」
 両者が激突しようとしていた。しかしだ。
 この時にだ。何かが起こった。
 両軍の間にだ。亀裂が生じたのである。
「何っ、亀裂!?」
「時空から!?」
「まさか」
「いや、そのまさかだ!」
 ロンド=ベルの面々がそれを見て驚きの声をあげた。
「空間が切り裂かれている!」
「何だ!?刃か!?」
「まさか!」
「ふはははははははははははははは!」
「間に合ったようだな!」
 何とだ。そこからだ。二人の戦士達が出て来たのだ。
 マスターアジアとシュバルツ=ブルーダーだ。彼等がそれぞれのガンダムに乗って現れたのである。
「ドモン、無事か!」
「師匠!」
「私達が来たぞ!」
「兄さん!」
 ドモンがその彼等に応えた。
「まさか。この空間に」
「そうよ。誰が何処におるかなぞ」
「私達にとっては容易に察せられることだ」
 彼等が何故異空間にいるのか、それで察したというのである。
「そしてこの程度の空間」
「行き来するのは造作もないこと」
「そうか、師匠達の力を以てすれば」
 ドモンはそれで納得していた。
「できることか!」
「んな訳ないでしょうが!」
 しかしだ。アスカは絶叫してそれを否定した。
「あたし達がここにいるだけじゃなくて空間を超えたって!?」
「そうよ!!」
「その通りだ!!」
 胸を張って答える二人だった。
「わし等の力ならば!」
「どうということはない!」
「ええい、今度はどんな常識を無視したのよ!」
 アスカが言うのはこのことだった。
「この変態コンビ!あんた達のその理屈を聞きたいわ!」
「そんなことはどうでもいい!」
 これで終わらせるシュバルツだった。
「理屈では何も生まれはしない!」
「そうよ、理屈なぞ捻じ伏せるものよ!」
 これが二人の主張だった。
「必要なものとはだ!」
「心だ!」
 それだというのである。
「何かを為さんとする心!」
「それこそが最も必要とするものだ!」
「まあまさかって思ってたけれどね」
 アスカの声が少し落ち着いたものになっていた。
「とにかくよ。あたし達を助けてくれるの」
「その通りよ」
 何故か微妙に邪悪に見える笑みを浮かべるマスターアジアだった。
「御主等、ここで死んではならん」
「だからこそ私達は来たのだ」
 シュバルツは覆面のままだ。
「それではだ!」
「共に戦おう!」
「御願いします!」
 シンジが彼等に応える。
「そして僕達もこの力の限り!」
「うむ!少年よ」
「その心だ!」
 二人はシンジのその意気を認めたのだった。
「ではそのままだ!」
「前に進むのだ!」
「はい!」
 シンジも彼に応える。そうしてだった。
 彼等もロンド=ベルと共に戦う。素晴しい援軍だった。
 そしてだ。レイは。
 マスターアジアを見て。何処かうっとりとしていた。
「何時見ても。素敵ね」
「だからあんたの趣味おかしいから」
 そのレイにアスカが突っ込みを入れる。
「変態じゃない。何処がいいのよ」
「あの方は変態じゃないわ」
 夢を見ている様な声だった。
「素敵な方だから」
「素敵ねえ」
「ええ、強くて立派で」
「強いのは確かね」
「己の道を歩まれていて」
「もう何でもぶっ壊して進んでるって感じだけれどね」
「ああいう方と」
 そしてだ。レイは遂に言った。
「一緒になりたいわ」
「はいはい、おのろけはそこまで」
 話を強引に打ち切ろうとするアスカだった。
「戦うわよ」
「未熟未熟!」
「甘いぞ!」
 二人が率先して暴れ回っていた。
 その超絶的な戦闘力でだ。バルマーのマシンを次々と撃破していく。
 二人だけでだ。かなりの戦力だった。
「この程度ではだ!」
「私達の相手はできはしない!」
「くっ、何だあの連中は!」
 ハザルは暴れ回る彼等を見て怒りの声をあげる。
「誰か止めろ!」
「し、しかし司令!」
「あの強さでは」
「最早どうしようも」
「黙れ!」
 部下達の言葉はだ。完全に否定した。
「俺に口ごたえは許さん!すぐに止めろ!」
「は、はい!」
「それでは!」
「地球人なぞ何だというのだ!」
 ここでも偏見を露わにさせた言葉を口にする。
「遅れを取るな!」
「ふん、ハザル=ゴッツォ!」
「そう簡単にはやれないって言ったろ!」
 ロンド=ベルの面々がその彼に言う。
「俺達だってな!」
「意地があるってね!」
「また言ってあげましょうか!」
「俺を愚弄するつもりか」
 ハザルのその顔が怒りに歪む。
「地球人風情が!この俺を!」
「だから手前みたいな奴には負けねえんだよ!」
「手前みたいな小者にはな!」
「絶対にね!」
「許さん!最早!」
 完全に激昂した。そうしてだった。
 ヴァイクランを前に出す。それでロンド=ベルを倒そうとする。しかしだった。
 そこでだった。また時空に異変が起こったのだった。
「な、何だ!?」
「またか!?」
「また何かが来る!?」
「一体誰が!?」
 まずロンド=ベルの面々が言う。
「これはまさか」
「援軍が」
「馬鹿な!」
 そしてだ。ハザルも驚愕の顔で言う。
「これはクロスゲートと同じだ!」
 何かが時空を切り裂く。そしてだった。
 彼等を白い光が包み。それが消えた時には。
「ここは!?」
「星があるぞ!」
「真っ暗闇じゃない!」
「それに」
 しかもだった。そこでは。
「全てのセンサーが正常に作動している」
「じゃあ俺達は」
「ああ」
「間違いない!」
 彼等の中にだ。喜びが沸き起こった。
「戻ったんだ!」
「元の世界に戻ったぞ!」
「通常空間に!」
「ああ、戻ったんだ!」 
 そのことをだ。彼等はわかった。そしてだった。
「一体誰がこんなことを」
「まさかな」
「そうね」
 ここで言ったのはマサキとセニアだった。
「シュウがか?」
「今は」
「有り得るけれど」
 その二人にテリウスが話す。
「けれど今回は違うかも知れないね」
「それでも関わってるだろうな」
「そうよね、クリストフはね」
 それは確信している二人だった。
「あいつはいつもこういう時に出て来るからな」
「そういう奴だからね」
「おやおや、御言葉ですね」
 その声もしてきた。
「貴方達ならそう言うと思っていましたが」
「やっぱりかよ!」
 マサキがその声に応えて言う。
「シュウ!何処だ!」
「何処にいるのよ!」
「こちらに」
 言葉と共にだ。戦場にあの青い威圧的なマシンが姿を現した。
 それはだ。誰もが知っているマシンだった。
「ネオ=グランゾン!」
「やはりな!」
「シュウ=シラカワか!」
「ここで出て来たか!」
「私だけではありませんよ」
 そのシュウがだ。こう彼等に話すのだった。
「来たのは」
「!?どういうことだ?」
 マサキがそれを聞いて怪訝な顔になった。
「御前だけじゃないってのか」
「はい、そうです」
 その通りだと答えるシュウだった。そしてだ。
 彼はだ。さらにこう話すのだった。
「こうして皆さんをこちらの世界に戻したのもです」
「そいつだってんだね」
「そのもう一つの存在がか」
 リューネとヤンロンが言った。
「誰かわからないけれどね」
「相当な力の持ち主か」
「皆さんがよくご存知の方です」
 こう話すシュウだった。
「それは」
「一体誰なのかしら」
 ミオが首を傾げる。
「それじゃあ」
「待たせたな皆!」
「今来たぞ!」
 今度はだ。懐かしい声だった。そしてだ。
 巨大なマシンが姿を現した。青く巨大な目をしただ。そのマシンが今姿を現したのである。
「リュウ!」
「ライ!」
「それにレビか!」
「ああ、今来たぜ!」
 リュウセイがだ。仲間達に言う。
「戦いにな!」
「あのシルエットは」
「そうだな」
 コウが輝に応える。
「細かい形状が違っているが」
「間違いない」
「遂に完成したか」
 ヴィレッタもだ。そのマシンを見て言う。
「SRX、再び」
「よし、行くぜ皆!」
「再会の挨拶は後だ!」
 リュウセイとライが言う。
「まずはこの連中を!」
「倒す!」
「アヤの仇」
 レビも言う。
「ゴラー=ゴレムを討つ!」
「SRXだと!」
 これまで見ていたハザルがまた声をあげた。
「馬鹿な!」
「そう言うんだな!」
「以前の戦いでだ!」
 その本人だからこそ言えることだった。
「完全に叩き潰した筈だ!この俺が!」
「ハザル=ゴッツォ!」
 ライがハザルに言う。
「俺達はだ」
「何だというのだ!」
「御前を倒すと言う今日という日を待ちわびていた!」
「くっ!」
「多くの人達を殺し」
 そしてだというのだ。
「アヤ大尉の命を奪った貴様をだ!」
「俺をだというのか!」
「俺達がこの手で倒す!」
「思い知るがいい!」
 レビも彼に言う。
「御前達が利用した地球人の力を!」
「ふん、しかしだ!」
 だが、だった。まだ言うハザルだった。
「鳴り物入りで登場したのはいいがだ!」
「何っ!?」
「どう言うつもりだ!」
「肝心なところが抜けていたようだな」
「くっ、俺のことか!」
「そうだ、リュウセイ=ダテよ!」
 彼を指し示しての言葉だった。
「念動力はどうだ!」
「畜生!」
「ないな。それではだ」
 再び勝ち誇った声で言うハザルだった。
「その機体の力を引き出すことはできない!」
「違うな」
 だが、だった。そのハザルにライが告げた。
「ハザル=ゴッツォよ」
「何だ?負け犬」
「御前は間違っている」
 こうハザルに告げるのだった。
「リュウは目覚めさせていないだけだ」
「何っ!?」
「その念動力をだ」
「ふん、負け惜しみか」
「負け惜しみかどうかはすぐにわかる」
 確信を以て言うライだった。
「それはな」
「では見せてもらおう」
 ハザルはこうライに返した。
「是非共な」
「やってやらあ!」
 リュウセイも彼に応えて叫ぶ。
「そして手前を倒してやる!」
「リュウセイ、気持ちはわかる」
「けれど」
 ブリットとクスハが彼を止めてきた。
「今はだ」
「怒りの炎は出しては駄目よ」
「その通りよ」
 ヴィレッタも彼に告げた。
「今はその怒りの炎を」
「これを」
「身体の内に溜めておきなさい」
 これがリュウセイへの言葉だった。
「いいわね」
「あ、ああ」
 三人に言われてだ。リュウセイも落ち着きを取り戻した。
 そうして落ち着くとだ。今度はエキセドルがハザルに問うた。
「御聞きしたいことがあります」
「何だ?」
「貴方達バルマー帝国はです」
 その帝国自体への問いだった。
「私達を銀河制覇の駒とすることが目的だった筈です」
「その通りだな」
 マーグもここで言う。
「私もそう命じられた」
「はい、そうです」
 ロゼがそのマーグに述べた。
「私も。だからこそマーグ様に」
「しかしだ」
「そうですね」
 エキセドルはマーグにも応えながら述べた。
「ですが貴方は今ここで私達を滅ぼそうとしています」
「どうしてなんだ?」
「急に方針を転換したのか?」
「まさか」
「そしてだったな」
 ヘンケンだった。
「我々と戦って来た筈だ」
「その通りだ」
 ハザルもそれは認めた。しかしだった。彼はここでこうも言うのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「しかしというと」
「我々ゴラー=ゴレムはもう一つの任務を負っていたのだ」
「それはまさか」
「そうだ、察したな」
 ヴィレッタに対して答えたのだった。
「サイコドライバー、イルイ=ガンエデンの捕獲だ」
「やはりそれか」
「イルイ=ガンエデン?」
 それを聞いてだ。ルリアとアルマナがいぶかしむ顔になった。
「確かあの巫女は」
「はい、そうです」
 そしてだ。二人で顔を顰めさせて話しをした。
「既に地球での戦いで」
「死んだ筈です」
「しかし生きている」
「話を聞いてもまさかと思いましたが」
 二人はそこから疑念を覚えた。彼女達にとっては極めて重大な。
「まさか」
「ハザル、貴方は」
 そしてだ。ハザルを見て言うのだった。
「陛下に偽りの報告を」
「帝国の臣民が!」
「五月蝿い姫様だ」
 こう返すハザルだった。
「御前はやはりここで消えてもらおう」
「ハザル=ゴッツォ!」
「この逆臣!」
「イルイ=ガンエデンはルアフを倒す切り札となる」
 遂にその望みを露わにさせるハザルだった。
「神体ズフィルードを制御できるのはだ」
「完成されたサイコドライバーだけ」
「だからこそ」
「そうだ。忌々しいことにだ」
 ハザルのその言葉がさらに続く。
「今銀河にいる完成されたサイコドライバーは」
「陛下と」
「彼女だけだと」
「そうだ、霊帝ルアフとあの小娘だけだ」
 こう言い切ったのだった。
「だからこそ必要なのだ!」
「謀叛、それを企むとは!」
「バルマーがはじまって以来なかったことを!」
 ルリアとアルマナは驚きを隠せない。そしてだ。
 ロンド=ベルの面々はここでだ。いぶかしみながら話すのだった。
「何でなんだ?」
「そうだよな」
「バルマーの連中がどうしてガンエデンのことを知ってるんだ?」
「どうしてだ、それは」
「あの口ぶりだと」  
 そしてだ。彼等も気付いたのだった。
「バルマーの本星にもガンエデンがあるような」
「そんな話だよな」
「そうとしか思えないよな」
「どう聞いても」
「その通りだ」
 ハザルはいぶかしむ彼等に答えた。
「御前達がガンエデンと呼んでいるあのシステムはだ」
「まさか」
「それじゃあ本当に」
「我等の母星にもあれと同じものがあるのだ」
 こう答えたのだった。
「そっくりそのままのものがな」
「やっぱりな」
「それでか」
「けれど。同じものがあるって」
「何だ、そりゃ」
「地球とバルマーは同じだったのか?」
「そうしたところが」
 そしてだ。彼等はこうも話すのだった。
「何か余計に話がわからなくなってきたけれど」
「地球とバルマーが同じ?」
「まさか」
「!?だとすると」
「そうよね」
 ブリットとクスハはこの中でだ。このことに気付いた。
「あの孫光龍がバルマーについたのは」
「もう一つのガンエデンにしたがって」
「それでか」
「それでああして」
「違うところはある」
 また話すハザルだった。
「御前達のガンエデンは数万年眠っていたな」
「ああ、そうだ」
「それはね」
「その通りだ」
 こう返すロンド=ベルの面々だった。
「けれどバルマーは」
「そうじゃない」
「そう言うのか」
「そうだ。我が帝国のシステムはだ」
 どうかというのである。
「その代行者と共に稼動し続けているのだ」
「で、その代行者が」
「奴等の君主」
「帝国の統治者霊帝」
「その名もルアフか」
「そうだ。そしてだ」
 ハザルはさらに話す。
「我々はそのシステムをズフィルードと呼んでいる」
「ズフィルード!?」
「俺達が戦ってきた艦隊司令の機体か」
「あのジュデッカ=ゴッツォ達の」
「あれは」
「真のズフィルードを模したものだ」
 それだと話すハザルだった。
「御前達は中途半端な覚醒だったとはいえ」
「あの戦いか」
「イルイとの」
「あの時か」
「そうだ、ガンエデンを倒すだけの力を持っている」
 こうロンド=ベルの面々に話すのだった。
「それでだ」
「何だよ、今度は」
「一体何を言うつもりだよ」
「それで」
「俺に降りだ」
 他ならぬ彼にだというのだ。
「共に諸悪の根源である霊帝ルアフを討とうではないか」
「ハザル=ゴッツォ、貴方は!」
「自分の言っていることがわかっているのですか!」
 その彼にだ。アルマナとルリアが言った。
「貴方は恐れ多くもです」
「陛下に叛旗を翻しているのですよ!」
「バルマー開闢以来の悪事!」
「それを!」
「黙れ!」
 だが、だった。ハザルは二人に対して怒鳴った。
「俺は最初からその為に銀河の辺境まで来たのだ」
「地球に」
「あの星に」
「そうだ、我が父君」
 自分からだ。彼の名前も出した。
「帝国宰相シヴァー=ゴッツォ閣下の御命令によりな!」
「黒幕は宰相だったのですか」
「シヴァー殿が」
「そこまで知った者を生かすにはそれなりの条件がある」
 ハザルはまたロンド=ベルの面々を見た。
「わかるな。
「こいつ、何処まで俺達を利用する気か」
「何て野郎だ」
「こいつだけは」
 そしてだ。まず宙が言った。
「ハザル=ゴッツォ!」
「返答だな」
「その霊帝ルアフってのがどういう野郎かは知らねえ!」
 まずはこう言う彼だった。
「だがな!」
「だが、何だ」
「一つだけはっきりしていることがある!」
 こうハザルに言う。
「それはだ!」
「それはか。聞いてやろう」
「手前がとんでもねえド悪党だってことだ!」
「いい加減にしなさいよこの卑怯者!」
「僕達の、他の人の」
「命を何だと思ってるのよ!」
「そんな申し出は絶対に受けない!」
 アスカとキラも拒絶した。
「そんなことは絶対に!」
「何があろうとも!」
「御前のエゴでな!」
 コスモもだった。
「俺達の命が振り回されてたまるかよ!」
「そのルアフってのが地球に仕掛けてくるんならな!」
 今度はジュドーだった。
「俺達で相手をするだけだぜ!」
「ああ、そうだ!」
「自分の星の権力争いは勝手にしろ!」
「他の星を巻き込むな!」
「ふざけるな!」
 そしてだ。鉄也はこう言った。
「御前達はだ」
「今度は何だ」
「自らの野望の為に何をしてきた」
「何をだと言うつもりだ?」
「多くの人達の命や幸せを奪った!」
「そんな貴方を!」
 ノリコもだ。怒りを露わにさせている。
「私達は絶対に許しはしない!」
「黙って聞いていれば」
 ハザルの本性が出ていた。ここでもだ。
「この俺に舐めた口を利いてくれる!」
「言ったな!」
「それが手前の本心だろうが!」
「俺達を駒にしか思ってない!」
「他人そのものをね!」
「寝起きのガラクタを倒した位でいい気になるな!地球人風情が!」
 ハザルの本性が露わになり続ける。
「言うね」
「そうだな」
 アムとレッシィがここで言った。
「結局私達ペンタゴナの人間もね」
「奴にとっては一緒だな」
「そうよね。同じ下等な存在」
「そうでしかないな」
 このことがよくわかったのだった。誰にもだ。
 そのハザルがだ。さらに言うのだった。
「俺の申し出を断った罰だ!」
「おいおい、自分勝手もここに極まれリだな!」
「申し出だ!?何処がだ!」
「御前のは間違ってもそうじゃない!」
「恫喝だ!」
 まさにそれだと返す彼等だった。
「貴様はただ自分だけを高みに置いて!」
「そのうえで他人を虐げているだけだ!」
「そんな奴の言葉なんて!」
「誰が聞くものか!」
「御前達はここで消滅させてやる!」
 まだ言うハザルだった。
「チリ一つ残さずにな!」
「どうやらな」
「そうだな」
 ここまで聞いてだ。イサムとガルドが言う。
「野郎の本性がさらにな」
「出て来たな」
「結局こういう奴なんだな」
「それがよくわかったな」
「御前達を片付けたらだ!」
 ハザルの傲慢な激昂が続く。
「次は地球だ!」
「ほら来た」
「そう言うか」
「俺達の星を滅ぼす」
「そんなところでしょうね」
「地球に住む全ての人間を滅ぼしてやる!」
 やはりだった。ハザルはこう叫んだ。
「虫けらの様にな!」
「リュウ」
 ライはハザルの言葉が終わったと見て彼に声をかけた。
「わかるな」
「ああ、あいつはとんでもない下衆だ」
 リュウセイもまたハザルがどういった人間か理解したのだった。
「最低のな」
「そうだ、だからだ」
「こいつには負けねえ」
 リュウセイは確信と共に言った。
「絶対にだ」
「そうだ。わかったな」
「こいつが殺してきた多くの人達」
 リュウセイは彼等のことを考えて述べる。
「アヤにも活きる権利はあった」
「そうだ」
「それを奪う権利はこいつにはねえ」
「絶対にだ」
「そんなことがわからねえ奴に!」
 リュウセイはわかった。完全にだ。
「俺が負ける訳がねえ!」
「リュウ!」
 レビもだ。ここでリュウセイに声をかけた。
「行くぞ!」
「ああ、わかってる!」
「そしてこの男を!」
「ハザルの野郎を!」
 二人で言っていく。
「倒す!」
「必ずな!」
 こうしてだ。バンプレイオスが突き進んでだった。
 拳でヴァイクランを殴った。するとだ。
「ぐっ!」
 ヴァイクランの巨体が吹き飛んだ。ハザルは何とか踏み止まりながら怒気をあげた。
「この俺を!」
「だからどうした!」
 こう返すリュウセイだった。
「御前がそんなに偉いっていうのか!」
「力を失った御前如きが俺に」
 ハザルは憎しみを見せていた。
「父上から賜ったヴァイクランに傷をつけるとは!」
「笑止だな」
「そうだな」
 それを聞いたライとレビの言葉だった。
「ヴァイクランがどうした」
「そのマシンが」
「貴様等も言うか!」
「ああ、何度でも言ってやる」
「貴様の気が済むまでな」
「許さんぞ虫けら共!」
「おい、言っておくがな!」
 忍がハザルに叫んだ。
「それはこっちの台詞だぜ!」
「何だと!」
「御前という存在を許せばだ!」
 カミーユもだった。
「俺達の今までの戦いが全て無意味になる!」
「人の命の価値がわからぬ御前はだ」
 サンドマンは冷静な怒りを見せている。
「何があろうと許さん」
「いいだろう」
 そう言われてもだ。まだわからないハザルだった。
 そしてだ。こう返すのだった。
「宴の幕を開けてやる」
「その言葉もな!」
「何度も聞いたぜ!」
「飽きたっての!」
「そうだ」
 光もだ。ハザルを許せなかった。
「御前は必ず倒す!」
「そうよ!皆生きてるのよ!」
「それがわからない人はです!」
 海と風だった。
「間違ってる!」
「それは絶対に言えます!」
「ハザル!俺は、俺達は!」
 リュウセイもだ。凄まじい気を放っている。
「御前には絶対に屈しない!」
「ふん」
 しかしだった。ここでハザルは落ち着きを少し取り戻してだ。こうリュウセイに言うのだった。
「勘違いするなリュウセイ=ダテ」
「何!?」
「エツィーラの奴は御前達を力の天秤を揺らす存在だと言っていた」
 彼女の名前を出したのだった。
「それはあの女の買い被りだったようだ」
「エツィーラ」
「っていうとあの」
「惑星ラクスの遺跡で会ったあの女」
「バルマーの女」
「あいつが?」
「そうだ」
 その通りだというハザルだった。
「あの女がだ。エツィーラ=トーラーという」
「バルマーの神官長です」
 ロゼが仲間達に説明した。
「十二支族の嫡流です」
「じゃあバルマーの高官の一人か」
「それもかなり高位の」
「そうだ。その権限は尋常なものではない」
 マーグもこう話す。
「あの女だったか。あの時あそこに来ていたのは」
「信じられません」
 ロゼも今は首を捻っている。
「あれ程の方が帝都を離れられるとは」
「何があったのだ」
「俺達のことを調べていたみたいだが」
 シローが言う。
「一体何を知っていたんだ、あいつは」
「その答えはだ」
 ハザルの言葉に傲慢が戻っていた。
「貴様らが知る必要はない」
「何っ!?」
「どういうことよ、それは」
「一体」
「何故ならだ」
 傲慢な笑みと共にだ。彼は何かを出してきた。
「無限の力を発動させる鍵は俺も持っているのだからな」
「!?この力は」
「まさか」
「この男も」
「そうだっていうのか!?」
「ハハハハハハハ!その通りだ!」
 ハザルは勝ち誇った笑いと共に答えてみせた。
「このヴァイクランは俺の念動力を増幅し」
「まさかと思ったが!」
「こいつもまたか!」
「そうだ、それを力と変える機体だ!」
 そうだというのだった。そしてまたリュウセイに言ってきた。
「どうだリュウセイ=ダテ!」
「それを見せるってのか!」
「そうだ!貴様の失った力」
 それだとだ。また告げるハザルだった。
「アカシックレコードにアクセスするサイコドライバーの力だ!」
「アカシックレコード!?」
「まさかニャ」
「それはニャ」
 マサキにクロとシロが言った。
「サイバスターのアカシックバスターの」
「それニャ!?」
「いや、どうやら違うな」
 マサキはだ。こうクロとシロに話した。
「それ以上みたいだな、ありゃ」
「じゃあ一体何ニャ!?」
「その力は」
「わからねえ。ただ」
 それでもだというのだ。
「あの力はな」
「とんでもない力ニャ」
「それは間違いないニャ」
「そうだ。ありゃとんでもねえ力だ」
 それはわかるのだった。そしてだ。
 その力でだ。ハザルはリュウセイに向かって来た。
「御前は目障りだ!」
「そうだってのか!」
「そうだ!だからこそここで消えてもらうぞ!」
「そんな力!」
 だが、だった。ここでリュウセイはこう叫んだ。
「欲しくねえ!」
「何っ!?」
「そんな人殺しの為の力なんてな!」
 また言うのだった。
「俺は欲しくねえ!」
「何だと!?この力を否定するのか!」
「うおおおおおおっ!」
 また拳を繰り出してだ。迫るヴァイクランを退けたのだった。
 ヴァイクランは吹き飛ばされながらも態勢を立て直す。そのうえでまた言うハザルだった。
「出来損ないが!またしても!」
「俺はそんな力よりも!」
 リュウセイはだ。さらにヴァイクランに向かいながら叫ぶ。
「仲間を皆を守る力だ!」
「仲間か!戯言を!」
「その力こそが!」
「くっ!」
 ハザルは再び力を出してバンプレイオスに向かおうとする。しかしだった。
 彼の横にエイスが来てだ。こう告げたのだった。
「司令」
「何だ、エイス」
「ここは一時後退を」
「力を使い過ぎているというのだな」
「はい」
 まさにその通りだというエイスだった。
「ですからここは」
「だが、だ」
 しかしだ。ハザルはまだ言う。
「ここで奴等を始末しなくてはだ」
「ですがこれ以上は」
「ふん、わかった」
 多少不満を見せながらも頷くハザルだった。
 そのうえでだ。あらためてリュウセイに告げた。
「リュウセイ=ダテよ。命拾いしたな」
「逃げるのかよ!」
「待ちやがれ!」
「次だ」
 リュウセイは追おうとする。しかし間に合わない。そのリュウセイへの言葉だった。
「次の機会に決着をつけてやる」
「それで余裕を見せてるつもりかよ!」
 そのハザルにトウマが叫ぶ。
「御前のことはもうわかった!」
「何だと?」
「御前はただの小者だ!次に来てもだ!」
 トウマはだ。堂々と言い切った、
「俺達には勝てない!絶対にだ!」
「その言葉、覚えておくぞ」
「小者の言葉だな」
 ミゲルはハザルの今の言葉をこう評した。
「取るに足らないものだな」
「確かにね」
 セラーナも同意だった。
「所詮は。この程度なのね」
「ふん、それまで恐怖と絶望に怯えるがいい」
 ハザルだけがわかっていない。
「ではだ」
「くっ!」
「ああ、熱くならなくてもいいぜ」
 リュウセイをケーンが止めた。
「次に絶対に倒せるからな!」
「けれどよ、あいつは!」
「だから落ち着けって」
「皆そうしてるじゃないか」
 タップとライトも彼に言う。
「だから次な」
「次にやればいいんだよ」
「くっ、そうだってのかよ」
「じゃあまずは各艦に戻りましょう」
 カナードが音頭を取った。
「それからですね」
「そうだな。次に備えてだな」
 劾が頷いてだった。そうしてだった。
 彼等は一旦戻った。彼等が帰還した銀河は無限の瞬きを見せている。それこそがだ。彼等の帰還を祝福する花束に他ならなかった。


第九十六話   完


                                    2011・2・7 

 

第九十七話 サイコドライバー

                  第九十七話 サイコドライバー
「おや、どうしました?」
 他のものよりさらに巨大なヘルモーズの司令室においてだ。孫が明るい声でハザルに問うていた。
「ご機嫌が宜しくないようですが」
「下がれ」
 ハザルは不機嫌そのものの声でその孫に告げた。
「余計な媚は不要や」
「媚ですか」
「そうだ。御前はエツィーラとつるんでいればいい」
 こう孫に対して言う。
「それでいいのだ」
「これは異なことを」
 しかし孫はいつもの態度でこう返すのだった。
「私はゴラー=ゴラムの一員です」
「そう言うのか」
「はい、貴方の忠実な部下でございます」
 言葉ではこう言う。
「それは先の戦いでも明らかではないですか?」
「では聞こう」
 ハザルは鋭い目で孫に問うた。
「御前の血族はだ」
「はい」
「そして御前のマシンはだ」
 真龍王機についてもだった。
「地球のガンエデンに付き従うものだったな」
「はい、その通りですよ」
「ガンエデンの代行者を追う俺に忠誠を誓う」
 そのことについてだった。彼はさらに問う。
「裏があってのことだな」
「否定はしません」
「認めたか」
「ですがそれは過去の話です」
「過去のものだというのか」
「はい、そうです」 
 こうだ。孫はいつもの飄々とした調子で述べる。
「私の先祖も真龍王機も」
「どちらもか」
「いわばガンエデンに力で抑えられていました」
 そうだったというのである。
「ならばです」
「より大きな力が現れたならばか」
「そちらにつくのが道理というものでしょう」
「それが俺ということか」
 その孫を見ながらの言葉である。
「このハザル=ゴッツォだというのか」
「そのつもりですが」
「そうか」
 ハザルは暫し考え込んだ。そしてそのうえでだ。
 孫に対してだ。あらためて言うのだった。
「いいだろう」
「有り難うございます」
「御前にはあの二人を任せる」
「龍と虎の」
「好きにしろ。だがだ」
「あの坊やをですね」
「あいつは俺が始末する」
 リュウセイにだ。ただならぬ憎悪を見せての言葉だった。
「それは言っておく」
「わかりました。それではです」
 孫も彼のその言葉を受けて話す。
「司令のお力を拝見させてもらいます」
「うむ、そうしろ」
「無限の力である絶対運命」
 孫の言葉が続く。
「アカシックレコードに選ばれし者」
「それが俺だな」
「サイコドライバーの力を」
「言われるまでもない」
 ハザルも彼の言葉を受けて話す。
「俺はシヴァー=ゴッツォの息子」
「はい」
「ハザル=ゴッツォだ」
 ここでもだ。己のその拠って立つ自負を見せた。
「父上の為にもだ」
「そのサイコドライバーで」
「奴等を消滅させてやる」
 そしてだ。横にいるエイスを見た。
「エイスよ」
「はい」
「御前の力を使うことになるかも知れん」
 彼にも告げた。
「準備をしておけ」
「了解です」
「では私はこれで」
 孫はここで退室した。そしてそのまま艦を出てだ。
 今度はだ。エツィーラとだ。ある場所で話すのだった。
「来たんだね」
「ええ、そうしました」
「相変わらずだね」
 エツィーラはこう孫に言うのだった。
「腰が軽いな」
「そういう性分でしてね」
 そう言われてもだ。孫は平然としている。そのうえでこう彼女に返した。
「御気に召しませんか?」
「いや」
 だが、だった。エツィーラはそうではないというのだった。
「その己に忠実なところはね」
「如何ですか?」
「嫌いじゃないね」
 こう言うのだった。
「いいね、そういうところは」
「左様ですか」
「それでだけれどね」
「司令のことですね」
「ああ、どう思う?一体」
「そうですね。同じだと」
 エツィーラを見ての言葉だった。
「神官長と」
「あの子はその為にね」
「用意された存在」
「シヴァーが用意した鍵だからね」
 それだというのだ。
「やってもらわないと困るね」
「クロスゲートの制御についてはほぼ成功しているようですが」
「あれだね」
「はい、あれについては」
「あれが限界だろうね」
 エツィーラの言葉は見限ったものだった。
「おまけにあの地球の坊やとの戦いでね」
「リュウセイ=ダテですね」
「ああ。神経を消耗しているよ」
 このこともだ。指摘するのだった。
「所詮はまがいものだよ」
「そう仰いますか」
「アカシックレコードにアクセスする鍵としては使い捨てレベルだね」
「それは手厳しい」
「しかしそっちもそう見ているだろう?」
 孫にだ。笑いながら問うた。
「そうじゃないかい?」
「さて、それは」
「まあいいさ。とにかくね」
「次の戦いですね」
「面白いものが見られそうね」
 こう言うのであった。
「これはね」
「あの二人の」
「そのどちらでもいい」
 エツィーラの笑みがさらに深くなる。
「私に見せておくれ。この銀河の全てを」
「では今は」
「そうさせてもらうよ」
 こんな話をしていた。そうして。
 アルマナとルリアはだ。宴の場に案内されていた。マクロス7のシティの中華レストランに皆が集まってだ。そのうえで御馳走を食べていたのだった。
「銀河にも戻れたし」
「整備も補給も万全になったし」
「後はいよいよ」
「あの連中を倒して」
「一気に行くか!」
「ああ!」
 彼等の士気がだ。最高にまであがっていた。
「生きて帰るか!」
「ここまで来たんだしな!」
「リュウセイ達も戻って来た!」
「それなら!」
「あの」
 アルマナはその底抜けに明るい彼等に驚きながら尋ねた。
「皆さん。確かに銀河に戻れました」
「ああ、だからな」
「今こうして祝ってるんだけれどな」
「そこのことをね」
「ノンアルコールだけれど」
「またすぐ戦いになるから」
「次はいよいよ最後の戦いなのですが」
 アルマナが言うのはこのことだった。
「それでどうして。そこまで」
「明るいっていうのか」
「いよいよ敵の本物の総攻撃だってのに」
「ここまで明るい」
「それだよな」
「そうです。それでそこまで喜んでいいのでしょうか」
「やるからだ」
 ヒイロがアルマナにこう答えた。
「俺達は必ずだ」
「必ずですか」
「そうだ、やる」
「次であいつ等を倒す」
 シオンも言った。
「だからな。その決意を固めてるんだ」
「そうだというのですか」
「うん、そうだよ」
 万丈も笑顔で話す。
「だから今はね。こうして騒いで」
「そうだったのですか」
 アルマナは全てがわかった。そうしてだった。
 おずおずとした動作でだ。こう言ったのだった。
「すいません、私は」
「姫様、それは」
 ルリアが驚いて彼女に言う。
「地球人に詫びるなど」
「それは」
「いえ」
「いえ!?」
「はい、そうです」
 こうルリアに話すのだった。
「私達は感謝しなければなりません」
「感謝ですか」
「この気高い席に呼んでもらったことを」
 それをだというのだ。
「そうしなければなりません」
「左様ですか」
「この方々の謝意の表れなのです」
「今こうしてここにいることが」
「そうです。私は」
 アルマナはだ。すぐに言葉を言い換えた。
「私達は」
「私もですね」
「はい、バルマー帝国のアルマナではなく」
「同じクルリアではなく」
「一人の人間としてです」
 こう話すのだった。
「彼等に感謝しその思いを受け取るべきです」
「そうだというのですか」
「私は今そう考えます」
「何か変わったわね」
 セレーナはアルマナの今の言葉を受けて言った。
「姫様もね」
「そうでしょうか」
「ええ。あとね」
 ここでセレーナはこうも話した。
「私達は絶対にあんたを守るからね」
「私をですか」
「そこの白鳥さんもね」
 ルリアを見ても話すのだった。
「ちゃんとね。あの銀髪からね」
「見返りはないぞ」
 ルリアは強い目をしてこう返した。
「そんなものを期待しても」
「ああ、そんなんじゃないんだよ」
 ムウがそれを否定する。
「何ていうかな」
「あれだろ?つまりな」
 サブロウタが話す。
「あんた達がシティに入ったのは」
「それがどうかしたのか」
「俺達に助けを求めてって意味もあっただろ」
「それは」
「そのことは」
「無意識のうちでもそう思ってたところがあるんだろうな」
 こう二人に話すのだった。
「それだったらな」
「助けを求めてきたならだ」
 ダイゴウジも言う。
「それを放っておくことはできないからな」
「だから安心してくれないかな」
 アキトも優しい声で話す。
「俺達は貴女達を守るから」
「ルリア」
 アルマナはここまで聞いてだ。沈黙したルリアに声をかけた。
「どう思いますか」
「素直に申し上げて宜しいでしょうか」
「今はそうするべきだと思います」
 アルマナは穏やかに笑ってルリアに告げた。
「ですから。是非」
「それでは」
 姫に言われてだ。彼女はロンド=ベルの面々に向かい合ってだ。こう述べた。
「済まない」
「ああ、宜しくな」
「それじゃあな」
「恩に着る」
 こう言うのであった。これで決まりだった。 
 そしてだった。アルマナにだ。クスハがあるものを差し出したのだった。それは。
「どうぞ」
「これは」
「おむすびっていいます」
 にこりと笑ってだ。御飯を三角にして海苔で包んだものを差し出したのだった。
「美味しいですよ」
「地球の食べ物ですね」
「お口に合うかどうかはわかりませんけれど」
「結ぶ」
 アルマナはこの言葉について言った。
「縁起のいい言葉ですね」
「地球の日本ではです」
 OVAが話す。
「この食べ物には特別な思いを込めるものです」
「アルマナさんにはですね」
 クスハ自身が握ったおにぎりだった。その中身は。
「女の子らしくチョコむすびと梅ジャムむすびを」
「おい、待て」
「何、それ」
 ヒューゴとアクアがその御握りの具に唖然となる。
「それが御握りなのか」
「どんな創作料理なのよ」
「そんなものを食えば」
「とても」
 二人は止めようとする。しかしだった。
 アルマナ達は先に食べてしまった。そして言うのだった。
「美味しいですね」
「そうですね」
 その恐ろしい御握りを食べながら。にこにことしているのだった。
「この味は」
「馴染みますね」
「お、おいキラ」
「そうだねシン」
 シンとキラが二人で唖然となっている。
「あのピンクの馬ですら殺せる代物を」
「平気で食べるなんて」
「ちょっと待ちなさいよ」
 フレイが今のシンの言葉にすぐに反応してきた。
「あんた今何て言ったのよ」
「ああ、そのピンクの馬じゃねえか」
「誰が馬よ、誰が!」
「その髪型と頭の中身がそうなんだよ!」
「人を馬呼ばわりとはいい度胸ね!」
「じゃあ鹿もつけてやるよ!」
「それどういう意味よ!」
 フレイがシンの胸倉を掴む。シンも掴み返す。
「私が馬鹿だっていうの!?」
「じゃあ何て呼べってんだ!」
「あんた一回死になさい!」
「そっちこそな!」
 二人はそのまま喧嘩に入る。この二人の仲も悪い。
 キラも引きながら苦笑いである。そしてこんなことを言った。
「このカードの喧嘩って結構久し振りなんじゃ」
「止めるつもりはないのか?」
「だって。止めに入ったら絶対に二人から殴られますから」
 こうクランに答えるのだった。
「蹴りもあるし」
「まあそうだな。この二人の喧嘩は見境がないからな」
「けれど。シンってよく喧嘩しますね」
「全くだ。それは同意だ」
「死ね、この馬女!」
「くたばりなさい辰の子太郎!」
 二人の喧嘩もはじまった。しかし皆それは放置している。
 そしてだ。クスハは今度は。茶を差し出したのだった。
「今度はお茶を」
「お茶ですか」
「はい、私特製の健康茶です」
 それだというのだ。
「どうぞ」
「いい香りですね」
「おい、蝿が落ちたぞ」
 アポロが茶の周りを飛んでいた蝿が落ちたのを見て言った。
「まさかあの茶の匂いで」
「間違いないな」
 シリウスもそれは見ていた。
「あの茶のせいだ」
「バルサンみてえだな、そりゃ」
「飲むと確実に死ぬな」
 皆そのことを確信した。しかしであった。
 二人はだ。それを飲んでも平気であった。
「美味しいですね」
「身体の底から活力が蘇るようだ」
 こう言う有様だった。
「流石健康茶というだけあって」
「見事だ」
「宇宙の神秘かしら」
 ユングはこう言うのであった。
「これは」
「ちっ、美味いもの食いやがってよ」
「そうだよ。クスハの料理って最高なのに」
「羨ましい」
 オルガ、クロト、シャニは違っていた。
「あの白鳥女、むかつくぜ」
「オルガあの女嫌いなんだね」
「前から」
「何かいけ好かないんだよ」
 実際にこう言うオルガだった。
「あの女はよ」
「私もだ。前に何かあったな」
「ああ、あったな」
 お互いに言い合いだす二人だった。
「鏡が絡んでな」
「御前あの時詐欺師だっただろ」
「そんな覚えはないが」
「やたらと俺に絡んでくれたな」
「あれは貴殿が敵を作り過ぎたせいだ」
 こんなことを言い合う二人だった。アズラエルはラクスの作ったサンドイッチを食べながらこんなことを言った。
「二人共妙な縁がありますからね」
「そういうあんたもだな」
 シローがそのアズラエルに突っ込みを入れる。
「何かとあるだろ」
「それは否定できませんね」
「わかるさ、それは」
 この二人にもだった。それがあるのだった。
 その中でだ。メイリンがクスハに言った。
「あんた多分だけれど」
「どうしたの?」
「帝国の人達と上手くやっていけるよ」
「そうみたいね」
 にこりとして応えるクスハだった。
「私もそうなりそうで何よりだわ」
「ううん、似てるから甘えてちょっと皮肉言ってみたけれど」
 メイリンは苦笑いだった。
「これはちょっとね」
「天然ね」
 ミリアリアが言った。
「クスハはやっぱりね」
「そうみたいね」
 そんな話をした。そしてだ。
 リュウセイがだ。アルマナ達に問うた。
「なあ。それでだけれどな」
「はい」
「何かあるのか?」
「あのハザル=ゴッツォのこと。教えてくれないか」
 こう二人に頼み込むのだった。
「よかったらな」
「姫様、どうされますか」
 ルリアは怪訝な顔になりアルマナに問うた。
「ここは」
「わかりました」
 アルマナはいいとした。
「それでは」
「左様ですか」
「ハザルは陛下へ叛旗を翻しました」
 今までとは一転してだ。アルマナの顔は険しい。
「それを知った私達は」
「決して生かすことはない」
「ならばこの方々にお話することは」
「陛下を御守りすることになりますね」
「そうです、ですから」
「わかりました」
 ルリアも頷いた。そうしてだった。
 アルマナは話す姿勢を見せた。すぐにヴィレッタが問うた。
「あのゴラー=ゴラムは私も知りませんでした」
「あくまで秘密部隊でしたから」
「だからですか」
「はい」
 まずはこのことからだった。ヴィレッタはさらに問う。
「そして彼等は霊帝を倒す為に動いているのですか」
「おそらくは」
 そうだというのだった。
「ガンエデンの代行者を探していたのも」
「イルイちゃんを」
「それも」
「じゃあ」
 ロンド=ベルの面々もここでわかった。
「はい、同じくガンエデンの代行者である」
「そちらの霊帝にか」
「対する為に」
「その為にか」
「そう思います」
「やはりそうか」
 ここでヴィレッタは納得して頷いた。
「覚醒したサイコドライバーとガンエデンでもなければ」
「霊帝には対抗できない」
 ライも言った。
「だからですね」
「そうだ。おそらくはな」
「ハザル=ゴッツォはです」
 アルマナの話がさらに続く。
「本星で宰相を務めるシヴァー=ゴッツォの息子です」
「たった一人のか?」
 今問うたのはアラドだった。
「ひょっとして」
「はい、そうです」
 アルマナはアラドの問いにも答えた。
「彼は子供には恵まれませんでした」
「それであいつがか」
「あそこまで幅を利かせてるんだな」
「嫌な奴だと思ってたけれどな」
「虎の威を借る何とやらか」
「昔は違ったというのに」
 ここでルリアがこんなことを言った。
「しかし今は」
「ルリア」
 アルマナがそのルリアを止めた。
「気持ちはわかりますが」
「すいません」
 こうして彼女の話は止めた。そのうえでだ。
 アルマナはだ。さらに話すのだった。
「帝国軍外銀河方面軍司令官でもあります」
「それでか」
「あれだけの軍を率いているのか」
「それはわかっていたけれど」
「あの部隊は」
 ゴラー=ゴレムの話にもなった。
「一体何なんだ?」
「それで」
「やけに強いけれど」
「そのゴラー=ゴレムはです」
 アルマナはその部隊についても話した。
「シヴァー=ゴッツォの直属部隊です」
「ああ、そうか」
「じゃあ黒幕はそいつか」
「そのシヴァー=ゴッツォ」
「帝国宰相の」
「おそらくは」
 そうではないかというのであった。
「宰相である彼はです」
「自らの権力を使い」
 アルマナだけでなくルリアも話す。
「着々と独自の戦力を蓄えていたようです」
「つまりは私兵だね」
 万丈はこう看破した。
「そうなるね」
「はい、結果として」
「その通りです」
 二人も万丈の言葉にこう答えた。
「バルシェムと呼ばれるあの部隊の兵達はです」
「全て人工培養されたクローン兵士と聞きます」
「じゃあ」
「そうだな」
 プルとプルツーがここで顔を見合わせる。
「アクシズと」
「同じだな」
「あれは誤りだった」
 ハマーンは難しい顔で言った。
「グレミーも愚かなことをした」
「あれっ、あの部隊はあんたが作らせたんじゃなかったのか」
「私はクローンは好まぬ」
 ハマーンは毅然としてジュドーに返した。
「戦いとは生身の人間が戦うものだ」
「だからか」
「そうだ。だからそれは好まぬ」
 また言ったのだった。
「あの叛乱の時にあの男がしたのだ」
「そうだったのかよ」
「しかし。同じことをする者がいるとはな」
 ハマーンのその目に普段以上に険が宿っている。
「因果なものだな」
「シヴァー=ゴッツォはです」
 ある魔なの話が続いていた。
「宰相であると同時にです」
「同時に?」
「っていうと」
「帝国最高の科学者でもあります」
 そうした人物だというのだ。
「ゴラー=ゴレムの平気は全て彼の設計によるものです」
「何だよ、それじゃあよ」 
 ここまで聞いてだ。リュウセイが忌々しげに言った。
「裏から糸を引いてよ」
「そうだな」
 レビもだ。忌々しげに言う。
「そして最後に全てを持ち去ろうとするのは」
「ユーゼス=ゴッツォと同じだぜ」
「あの男ですか」
 ルリアはその名前に反応した。
「銀河辺境方面軍第七艦隊の参謀だった」
「ああ、あいつだよ」
「彼はそのゴッツォ家の者です」
 こう話すのだった。
「クローンではなくです」
「じゃあそのシヴァーってのが地球に目をつけたのも」
「地球にこだわったのも」
「それでか」
「そうだな」
 ヴィレッタが言った。
「バルマー戦役から封印戦争」
「そしてその後の冥王星での戦いから今までか」
 クォヴレーも続く。
「全ての戦いは」
「一本の線で結ばれているな」
 また言うヴィレッタだった。
「銀河の中心と辺境に分かれた二つのガンエデンによって」
「二つのガンエデンか」
「それによってか」
「私達の全ての戦いは一つに」
「結ばれていたんだ」
「ゼ=バルマリィと地球」
 アルマナは考える顔になっている。
「この二つの星にどの様な因果があるのでしょうか」
「今はな」
 だがここでだ。リュウセイが意を決した顔で言った。
「そんなことはどうでもいい」
「それはですか」
「どうでもいいと」
「ああ、次の戦い」
 言うのはその戦いのことだった。
「それに勝たないとな」
「はい、その通りです」
 これまで沈黙していたシュウが出て来て話す。
「何にもなりません」
「ゴラー=ゴレムは全戦力で来る」
 ヴィレッタはそのリュウセイを見て話す。
「そこがリュウセイにとっても正念場になる」
「俺の、なんだな」
「いいか、リュウ」
 ライも普段以上に真剣だ。
「この戦い必ずだ」142
「ああ、勝つ」
 こう話してだ。彼等は宴の後で出撃した。そしてだった。
「来いゴラー=ゴレム!」
「こっちは準備万端整ってるんだ!」
「何時でも来やがれ!」
「やってやらあ!」
「宇宙に帰ることはできた」
 ヒイロはそれはいいとした。
「だが。生きて帰るのはだ」
「これからだな」
「そうだ」
 こうマサキにも言うのだった。
「全てはそれからだ」
「へっ、じゃあやってやるぜ!」
 マサキも気合が入った。
「あの銀髪野郎をぶっ潰してな!」
「マサキも本気だニャ」
「気合充分だニャ」
「当たり前だ!ここは死に場所じゃねえ!」
 マサキはクロとシロにも言う。
「絶対に生きて帰るからな!」
「そうだな。じゃあ俺もだ」
 霧生もいる。
「ゴラー=ゴレムの奴等全滅させてやるぜ!」
「しかし。何かこの三人もねえ」
 ここでミオがこんなことを言った。
「似てるよね」
「そうですなあ」
「何か外見は違っても」
「中身は同じ」
 三匹のカモノハシ達が言う。
「まさにその通り」
「いや、見れば見る程」
「そっくりなこの三人」
「だからそれは言うなよ」
 マサキもこの三匹のファミリアにはバツの悪い顔になる。
「それ言ったらおしまいだろうがよ」
「そういえば私もだニャ」
「おいらもニャ」
 そしてそれはクロとシロもなのだった。
「マリーメイアさんと」
「カトルとだニャ」
「だから言うなって。そもそもクロなんてそっくりさんどれだけいるんだよ」
 こう言うとだった。何故かカズミがこんなことを言った。
「それを言ったらね。ちょっとね」
「あっ、お姉様って前から思ってたけれど」
「クロちゃんと似てるでしょ」
「他にはニナさんやラーダさんにも似てますよね」
「ええ、よく言われるわ」 
 ノリコに苦笑いで答えるのだった。
「他にも。結構ね」
「私もハーリー君と」
「そういうことは言ったらきりがないから」
「そうですね。本当に」
「だからその話はするなって」
 マサキはノリコにも言った。
「本当にキリがないからな」
「全くだ」
 レイヴンも参戦してきた。
「私もそう思うぞ」
「そうだな。そしてだ」
 ここでヒイロがまた言った。
「来たぞ」
「よし、最後の戦いだな!」
「ハザル=ゴッツォ!今度こそ!」
「倒してやるぜ!」
 彼等の前方にだ。遂にゴラー=ゴレムが姿を現したのだった。そしてその中心にはだ。やはりあの男が愛機と共にそこにいた。
「ハザル=ゴッツォ!」
「さて、いいな」
 ハザルが怒りに満ちた目でリュウセイに応えて言う。
「御前達のだ」
「最後だってんだな」
「そうだ、ここで終わらせる」
 こう言うハザルだった。
「実際にな」
「望むところだ!」
「しかしね」
「ところが」
 ここでゴーショーグンの三人が言った。
「ことの結末はだ」
「あんたの思い通りになるかどうかは」
「それはわからないぜ」
「ほう、そう言うのか」
 ハザルも三人のその言葉に目を向けた。
「では聞かせてもらおうか」
「おや、話に乗ってきたな」
「ふざけるなとでも言うかって思ったけれど」
「まあ意外な展開だな」
「そのおとぎ話がどうなるかな」
 こう言うハザルだった。
「是非聞かせてもらおう」
「ああ、そう来たか」
「傲慢さを見せてきたってわけね」
「そういう選択肢もあったな」
 そう言われてもだ。真吾達の余裕は変わらないのだった。
 そしてだ。ここで言ったのは凱だった。
「正義は勝つ!」
「正義か」
「そうだ、悪に屈しはしない!」
 こう言うのであった。
「絶対にだ!」
「僕達がそれを身を以て教えてやろう!」
 万丈も言った。
「ハザル=ゴッツォ!」
「手前はどう見ても悪党だ!」
「しかも上にドがつくね!」
「それならだ!」
「俺を倒せるというのだな」
 ハザルは彼等の言葉を聞き終えてから。また言った。
「いいだろう。では見せてもらおう」
「よし、やってやるぜ!」
 忍も叫んだ。
「手前こそな!ここで死にやがれ!」
「では見せてやろう」
 ハザルの余裕は変わらない。
「俺の力、サイコドライバーの力をな!」
「今度こそ手前を倒す!」
 リュウセイが応える。
「大尉の仇!」
「全軍攻撃開始!」
 こうしてだった。ロンド=ベルが前に出てだった。
 両軍の戦いがはじまる。そこでまた、だった。
 ハザルがだ。リュウセイに対して言うのであった。
「あれだけ痛めつけてやったというにか!」
「あれ位でやられてたまるか!」
 これがリュウセイの反論だった。
「俺は諦めねえ!」
「諦めないというのか」
「そうだ、何度倒されようとも!」
「その通りだ!」
 レビも言う。
「俺達は!」
「この生命ある限り立ち上がり」
「手前に俺達の受けたこの痛み!」
「倍にして返そう!」
「ならばその心をだ!」
 ハザルも前に出て言う。
「この戦いで完全に砕いてくれる!」
「行くぞハザル!」
 パンプレイオスがだ。まずはミサイルを出した。
「リュウ、あれか」
「ああ、あれだ!」
 こうライに返す。
「あれでまずは!」
「わかった、それではだ」
「テレキネスミサイル!」
 無数のミサイルが一旦上に放たれ。そこから分かれてだ。
 雨となって降り注ぎ。それでヴァイクランを撃つ。
「くっ、これは!」
「これならどうだ!」
 リュウセイはミサイルを放ったうえでハザルに問うた。
「これならな!」
「ふん、程度ではだ!」
「まだやるってんだな!」
「そうだ、俺に敗北はない!」
 こう言ってのことだった。
「俺に敗北なぞあってはならんのだ!」
「!?」
「あれは!」 
 ここでだ。ブリットとクスハが声をあげた。
「サイコドライバーの力!?」
「それを!」
「俺はハザル=ゴッツォ!」
 己の名を口にした。
「シヴァー=ゴッツォの息子!」
「駄目だ、リュウセイ!」
「避けて!」
 二人はすぐにリュウセイに注意を促した。
「今のあいつは」
「危険よ!」
「何っ!?」
 リュウセイもだ。今それを感じ取ったのだった。
「この力は」
「父上の銀河制覇の力となるサイコドライバーだ!」
 ハザルからだ。無限と思われるエネルギーが放たれてだ。そしてだった。
「あの力をまた」
「ここで出すというのか」
「あの男!」
 リュウセイだけでない。ライもレビも言う。
「あの力は」
「どこまであるんだ!」
「見せてやる!」
 ハザルは力を出しながら叫ぶ。
「俺のサイコドライバーの力を!」
「避けろ!」
「危険よ!」
 ブリットとクスハがまたリュウセイに告げた。
「さもないとあの力で」
「リュウセイ君も!」
「いや、違う!」
 しかしだった。ここでリュウセイは言った。
「俺は避けない!」
「何っ、けれどそれは」
「死ぬわ!リュウセイ君が!」
「大丈夫だ!俺は死なない!」
 こう二人にも、仲間達にも言うのだった。
「そしてハザル!」
「何だ!」
「そんな力は必要ない!」
 こう叫んでだ。そしてだった。
 リュウセイはバンプレイオスをヴァイクランにさらに突っ込ませた。そしてだった。
 拳で吹き飛ばしてだ。また叫んだ。
「何がサイコドライバーだ!」
「ぐっ!?」
「何が神の力だ!」
 言いながらだ。その攻撃を続ける。
「そんなものがなくたってな!」
「どうだというのだ!」
「俺には仲間がいる!」
 こう主張するのだった。
「戦う心がある!」
「それでどうするというのだ!」
「戦う!」
 これがリュウセイの言葉だった。
「それがあれば戦える!」
「くっ!」
 最後の一撃が繰り出された。それでヴァイクランは大きく吹き飛ばされた。
 かなりのダメージなのは事実だった。動きが鈍くなっていた。
 だがそれでもだ。ハザルはまだ言うのだった。
「まだだ!」
「まだやるっていうのか!」
「まだ終わってたまるか!」
 こうだ。まだ言うのだった。
「エイス!」
「・・・・・・・・・」
「俺の下に来い!」
 こうだ。エイスを呼ぶのだった。
 するとだ。ハザルのヴァイクランとエイスのディバリウムがだった。
 合体した。そして一つの姿になったのだった。
「何っ!?」
「合体した!?」
「まさか!」
「あの二体のマシンが」
「そんな」
「見たか!」
 ハザルはそのマシンに乗りながらだ。勝ち誇って言うのだった。
「これが俺とヴァイクランの真の力だ!」
「その合体した姿がか!」
「それだってのかよ!」
「そうだ。ゲドル=ヴァイクラン!」
 その機体の名も告げた。
「御前達の機体を研究して造り上げたものだ!」
「俺達の!?」
「じゃあゲッターやコンバトラーなんかを参考にして」
「そのうえで造り上げたってのかよ!」
「如何にも。これこそが最強のマシンだ!」
 そのゲドル=ヴァイクランがこそだというのだ。
「この力で貴様等を倒す!」
「俺達のマシンを研究してか」
「そうして造り上げた」
「あれがあのマシン」
「ゲドル=ヴァイクランだってのかよ」
「あの男、ユーゼス=ゴッツォはだ」
 ここで彼の名前が出て来た。
「面白いデータを残してくれた」
「面白い!?」
「何がだ!?」
「あの男が残したデータ」
「それは」
「御前達地球人の力」
 まずはそれだというのだ。
「もう一つの死海文書とガンエデンだ」
「もう一つの死海文書!?」
 ミサトはそれを聞いてすぐに声をあげた。
「まさかバルマー帝国にもあれがある!?」
「みたいだな」
 加持も言う。176
「どうやらな」
「じゃあますます」
「そうね」
 リツコはミサトのその言葉に頷いた。
「私達と似ているわね」
「ガンエデンと共に」
「それに」
「それに?」
「碇司令だけれど」
 リツコはここで彼の名前も出した。
「若しかしてだけれど」
「生きている?」
「そんな気がするわ」
 こう話すのだった。
「まさかとは思うけれどね」
「俺もな」
 加持もまた話す。
「これまでは死んだと思っていたけれどな」
「加持君もなのね」
「けれど死体がないんだ」
 加持が指摘するのはこのことだった。
「死体がな。見つかってないんだよ」
「そういえばそうね」
 ミサトも加持のその言葉に頷く。
「司令は。そうした意味では」
「行方不明だな」
「ええ」
「そして行方不明は生きている可能性もある」
 こうも話した。
「そうなるな」
「確かにね。それはね」
「少なくとも司令は行方不明だ」
 それは間違いないというのだった。
「死んだことは確認されていない」
「それが事実ね」
「ああ、それはな」
「じゃあまさか」
「まだ」
「俺もまさかと思うけれどな」
 こうは言ってもだ。加持の顔は曇っていた。
「ひょっとしたら」
「じゃあ何を考えているのか」
「何処かで動いているのか」
「気になるところだな」
 ゲンドウについても話されるのだった。そして。
 ハザルはだ。そのゲドル=ヴァイクランでバンプレイオスに向かった。
「死ねっ、リュウセイ=ダテ!」
「また来やがったか!」
 リュウセイも受けて立とうとする。
「それならな!ここで!」
「御前のことは父上から何度も聞かされてきた」
 こうだ。ハザルは突き進みながら言うのだった。
「銀河の辺境にだ」
「それがか!」
「そうだ。サイコドライバーとして覚醒しつつある奴がいる」
 そしてそれが誰かというと。
「一人は御前だ」
「俺に。そして」
「クスハ=ユズハ、貴様もだ!」
「私も!?」
「そうだ、銀河に三人もいらん!」
 ハザルは断言した。
「サイコドライバーは俺一人で充分だ!」
「だからかよ!」
「私達を!」
「そうだ、俺は決めた!」
 こうだ。そのリュウセイとクスハに叫んだ。
「貴様らを抹殺することを!」
「ちっ!」
「やらせはしません!」
 クスハが前に出てだ。ゲドル=ヴァイクランに対しようとする。
「貴方がそのつもりなら!」
「何っ!?クスハ!」
「貴方の様に他人を犠牲にしても何も思うことのない人に!」
 クスハもだ。力を見せていた。
「決して。やられはしません!」
「抜かせ!小娘が!」
 ハザルがサイコドライバーの力を出した。そしてクスハも。
「うおおおおおおおっ!」
「くっ!」
 そしてだ。その二つの力が共鳴し衝突する時にだ。
 皆感じた。その念を。
「な、何だこりゃ」
「このドス黒い念は」
「あいつの念かよ」
「ハザル=ゴッツォの」
「これがあいつの」
「あいつの心だってのか」
 皆ここでだ。ハザルのそれを知ったのだった。
「何て暗いんだ」
「これがあいつの正体か」
「あいつの心」
「あいつはサイコドライバーを使って」
「暴走しかけている」
「念がさらに強くなっている!」
「何だよこりゃ・・・・・・」
 リュウセイもだ。ハザルのその念を感じてだ。唖然として言った。
「あの野郎、傲慢の裏にはこんなものがあったのかよ」
「歪み、それもこの上ない」
 レビもだ。頭を両手で押さえて言う。
「くっ、何という暗さだ」
「ちっ、この暗さがあいつをあそこまで歪めてたのかよ」
 リュウセイはだ。今それがわかった。
「ハザル、手前はそういう奴だったのかよ」
「ふん、貴様等は今はこうして止める!」
 二人はまずは置くというのだ。
「その前にだ!」
「!?あの野郎!」
「シティ7に向かうぞ!」
「まずい、あそこには!」
「市民が!」
「そしてアルマナが!」
 皆それを察してだ。慌ててシティに向かおうとする。
 しかしだ。それは間に合わなかった。
「ま、まずい!」
「どうしてもかよ!」
「あの姫さんを!」
「消すつもりなのね!」
「全ては父上の御為に!」
 ハザルはここでも暗い情念を見せる。
「アルマナ、死んでもらう!」
「くっ、間に合わん!」
「ぬかったか!」
 マスターアジアとシュバルツが今出て来た。しかし遅かった。
「ここからではだ!」
「今から行こうとも!」
「仕方ありませんね」
 しかしだ。まだシュウがいた。
 彼はだ。ネオ=グランゾンのリミッターの一つをここで外した。そうして言うのであった。
「ここは私が」
「御主人様、やっちゃうんですね」
「彼をあのままにしてはおけません」
 そのハザルを見てだ。チカに答えた。
「ですから」
「そうですよね。いけ好かない奴ですし」
「人間性も好きにはなれませんがその行動がです」
「好きになれませんか」
「所詮人形です」
 何かを知っている言葉だった。
「人形のまま。眠ってもらいましょう」
「はい、それじゃあ」
 ネオ=グランゾンが一気に動こうとする。しかしだった。
 その前にだ。シティの前方にだ。バルマーのマシンが現れたのだった。
「あれは!?」
「アルマナが!?」
「まさかあのマシンの中に」
「あの姫さんが」
「私も一緒だ」
 ルリアの声がここでしてきた。
「私は。常に姫様と共に」
「ほう、アルマナ」
 ハザルは己の前に出て来た彼女を見て笑みを浮かべた。
「自ら出て来るとは潔い」
「戻れ姫さん!」
 リュウセイがアルマナを止めようとする。
「ハザルはあんたを殺す気だ1」
「いえ、これ以上はです」
 だが、だった。アルマナはこうリュウセイに返した。
「私を匿っていては」
「どうだってんだ!」
「皆さんに迷惑がかかります」
 こう言うのであった。
「ですから」
「健気だな姫よ!」
 ハザルはその決意したアルマナに対して言った。
「自らを犠牲にしてこの場を収めようというのか1」
「黙りなさい、ハザル=ゴッツォ!」
 アルマナはそのハザルを一喝した。
「ここに宣言します!」
「ほう、何をだ!」
「霊帝ルアフの名の下に」
 まずは彼女の仕える皇帝の名前からだった。
「ズフィルードの巫女である私が」
「どうするというのだ、それで」
「アルマナ=ディクヴァーが」
 他ならぬ彼女自身である。
「ここで逆賊ゴラー=ゴレムを討ちます!」
「結構なことだ!」
 ハザルはその傲慢さでアルマナに返した。
「それでこそバルマーの臣民の希望だ!」
「ふむ。ここはです」
 シュウがアルマナの言葉を聞いて述べた。ネオ=グランゾンは停めている。
「暫く見させてもらいましょう」
「あれっ、行かないんですね」
「彼女の決意を見ます」
 こうチカに述べた。
「そうさせてもらいます」
「だからですか」
「はい、ただいざとなればです」
「出られるんですね」
「あの方は死なせてはなりません」 
 そのアルマナを見ての言葉だった。
「ですから」
「わかりました。それじゃあ」
 チカも主の言葉に頷いた。そうしてだった。
 彼等は見守った。その間にだ。
 アルマナは共にいるルリアに対して謝りの言葉を述べたのだった。
「御免なさい、ルリア」
「何故謝罪されるのですか」
「こんなことになってしまって」
「いえ、それは」
「いいのですか?」
「姫と共に陛下に仇なす逆賊を討つなぞ」 
 そのことをだ。微笑んで言うのだった。
「光栄の極みです」
「だからですか」
「はい、例え相手があの男でも」
 複雑な顔でだ。ハザルを見ての言葉だった。
「私は一歩も引きません」
「わかりました。それでは」
「はい、共に」
 こうしてだった。二人も戦う決意をした。そしてそこに。
 バンプレイオスが来た。このマシンだけは間に合った。
「させるかよ!」
「!?リュウセイさん」
「来たというのか!?」
「ハザル!」
 こうだ。ハザルを見据えながら言うのだった。
「手前の好きにはさせねえ!」
「どけ!貴様は後だ!」
 だが、だった。ハザルは彼を退けようとする。
「アルマナの後で相手をしてやる!」
「何でも手前の思い通りになると思うなよ!」
 今はだ。カの方が勝っていた。
「アヤの為、他の皆の為にも!」
「何だというのだ!」
「手前は絶対に許さねえ!」
「今だ、ルリア!」
 ヴィレッタは両者が戦闘に入ろうとするところでルリアに声をかけた。
「今のうちに!」
「え、ええ!」
 ルリアはアルマナを庇い咄嗟にマシンを動かした。そうして何とか逃れた。
 シティにはマスターガンダムにガンダムシュピーゲル、それにネオ=グランゾンがついた。鬼の如き万全の備えを敷いたのであった。
 だがハザルはシティに構わずだ。そうしてだった。
「俺に敗北は許されない!」
「まだ言うってのかよ!」
「俺は勝つ!」
 目が血走っていた。
「勝つのだ!勝たなくては!」
「!?またこいつ」
「いかん、危険だ!」
 リュウセイとライも気付いた。
「また力が」
「暴走しだしている!」
「勝たなくては!俺は!俺は!」
「コアであるパイロットの念動力の暴走は!」
 ヴィレッタがどうなるかを話す。
「そのままあの機体の暴走を意味する!」
「何っ!?それじゃあ」
「あのままだと!」
「そうだ、危険だ!」
 ヴィレッタはこう仲間達にも話す。
「リュウセイ!」
「何だ!?一体!」
「逃げろ!」
 ヴィレッタは今度はリュウセイにこう告げた。
「あまりにも危険だ!」
「くっ、けれどよ!」
「戦うことは何時でもできる!」
 ヴィレッタは躊躇するリュウセイにまた言った。
「しかし今はだ!」
「生きろってのか!」
「その為に避けろ!」
 リュウセイにこうも告げる。
「いいな!」
「わ、わかった!」
 リュウセイも遂に頷いた。そうしてだった。
 バンプレイオスを避けさせようとする。だが。
 ゲドル=ヴァイクランは止まらない。ハザルはその中で叫んでいた。
「消えろ!消えろ!」
「まずいぞリュウ!」
 マイがそれを見て言う。
「あの男!」
「ちっ、間に合わないか!」
「リュウセイ=ダテ!」
「くっ!」
 リュウセイは覚悟を決めた。そしてだった。
 避けることを止めてだ。ゲドル=ヴァイクランに突き進んだ。
「こうなったらな!」
「死ね!」
「いかん!」
 ヴィレッタはそれを見てだ。危機を確信した。しかしだった。
 何かがだ。ここで起こったのであった。


第九十七話   完


                                  2011・2・12
 

 

第九十八話 人形の末路

           第九十八話 人形の末路
 ハザルと激突するリュウセイ。その彼から。
「!?これは!」
「まさか!」
「あの力は!」
 リュウセイはだ。その力でだ。 
 ゲドル=ヴァイクランを吹き飛ばした。そうしてだった。
 そのうえでだ。自分自身が気付いたのだった。
「まさか、俺に」
「そうだな」
 ライがその彼に言う。
「力が戻ったな」
「サイコドライバーの力が。俺に」
「そうだ、リュウ」
 ライはあらためて彼に対して言った。
「御前は再び目覚めたんだ」
「俺のサイコドライバーの力が」
「最早あいつに負ける道理がない」
 吹き飛ばされたそのハザルを見ての言葉だった。
「もうな」
「これでアヤ大尉の、多くの人達の仇を」
 リュウセイにとってはサイコドライバーの力なぞどうでもよかった。大事なのは。
「討てるんだな」
「そうだ、では行くぞ」
「ああ、ハザル!」
 そのハザルに対しての言葉だった。
「もう手前には負けねえ!」
「くっ、この俺に地球人風情が!」
「ハザル=ゴッツォ!」
 アルマナも出た。ルリアと共に。
「私達もです!」
「姫様、それは」
 ヴィレッタがその彼女を止めようとする。
「危険です」
「いえ」
 しかしだとだ。アルマナは強い声で返した。
「私も貴方達と共にです」
「戦われますか」
「そうです」
 こうだ。強い声で言うのだった。
「これはバルマー帝国での争いでもあるのです」
「その通りですね」
 ルリアも彼女のその言葉に頷く。
「それで私達が何もしないということは」
「できることではありません」
「では姫様」
「はい、ルリア」
 二人で顔を見合わせて話す。
「決着は」
「私達の手で」
「アルマナ!」
 そのアルマナに対してだ。ハザルが言う。
「遂に地球人に降ったか!」
「黙りなさいハザル!」
「くっ!」
 最早だ。アルマナはハザルを圧倒していた。その器で。
「先にも言った通りです!」
「俺を討つというのか!」
「霊帝ルアフの名の下に」
 それをだ。ここでも言うのだった。
「私は貴方を討ちます!」
「へえ、これはまた」
 セレーナがそんなアルマナを見て言う。
「急に。美人さんになったな」
「美人にですか」
「美人は心からなるものよ」
 セレーナは笑ってアルマにこう話した。
「だからね。今のあのお姫様はね」
「美人ですか」
「とびきりのね。これは負けるかも」
 こんなことをだ。さりげなく言ったのだった。そしてだ。
 ハザルはまだ立ち上がりだ。怒りに満ちた目で言う。
「俺に歯向かう者はまとめて消してやる!」
「ああ、できればな!」
「手前がな!」
「そんなことができればな!」
 ロンド=ベルの面々もだ。最早誰一人ハザルに負けてはいなかった。
「手前みたいな奴にな!」
「負ける筈がねえ!」
「それを今ここで!」
「教えてやるぜ!」
「かかって来い下郎共!」
 ハザルだけが喚く。
「ここが貴様等の墓場だ!」
「そうはいくかよ!」
 トウマもハザルに言う。
「最早手前はな!」
「また終わりだというつもりか!」
「その歪んだ心と共にこの宇宙に沈みやがれ!」
 こうだ。バルシェム達を倒しながら言うのだった。
「そのままな!」
「シヴァー閣下に必要なサイコドライバーは俺だけでいい!」
 こう執念めいた声で言う。
「他の奴等は消し去ってくれる!」
「そんなこと手前にできるか!」
「どんな小さな命だろうとだ」
 ヒイロも言った。
「生まれたからには生きる権利がある」
「虫ケラが!まだ言うか!」
「だがそれすらわからない貴様はだ」
「何だというつもりだ!」
「その存在を許されない」
「ああ、その通りだぜ」
「貴様は悪でしかない」
 デュオとウーヒェイも嫌悪の目で述べた。
「手前みたいな奴はな」
「ここで倒されるべきだ!」
「おのれ、おのれ!」
 サイコドライバーをさらに増幅させる。しかしだ。
 それを見てだ。カトルが言った。
「もうあのまま」
「滅びるしかないな」
 トロワがそのカトルに応える。
「最早な」
「そうですね。彼は」
「滅びるのは貴様等だ!」
 こう言ってだ。またリュウセイに向かう。
「まずは。貴様だ!」
「どんな理由があろうとも!」
 レビがそのハザルに告げる。
「貴様のしたことはだ!」
「ふん!」
「許されはしない!」
「うおおおおおおおっ!」
 バンプレイオスの手からだ。光が放たれた。
 それが貫きだった。またゲドル=ヴァイクランの動きが止まった。
「うぐっ!」
「・・・・・・・・・」
「まだ。あの力も」 
 ハザルはここでイデオンを見て言った。
「父上のものにする」
「手前には無理だ!」
 コスモがこう言い返した。
「自分の力も制御できないような奴にだ!」
「そうよ!」
 カーシャも言う。
「イデの力なんてね!」
「コントロールできるものか!」
「まだ言うのか!」
「俺達は手前に屈しはしない!」
「何があろうともだ!」
 今度はギジェだった。
「イデにも悪意にも!」
「決してだ!」
「おのれ、カトンボ共が!」
「余裕がなくなった途端にぶち切れかよ!」
 イサムも彼に言う。
「小さい器だな!」
「地球人の分際でこの俺を愚弄するか!」
「そんな大声で言ったらな!」
 最早だ。イサムもハザルの器を見極めていた。
「御前さんの小さな器がひっくり返ってこぼれちまうぜ!」
「その命がな」
 ガルドもであった。
 だがそれでもハザルは向かおうとする。それを遠くから見てだ。
 孫はだ。軽く言い捨てた。
「もう終わりだね」
「所詮この程度だね」
 レツィーラも言った。
「あの男も」
「そうだね。じゃあエイスも」
「そろそろだね」
「喰らえっ!」
 またしてもだ。バンプレイオスが攻撃を放った。
 今度はだ。
「こっちから仕掛ける!」
「ティーリンクコンタクト!」
「行け、リュウ!」
「行けーーーーーーーーーっ!!」
 これまでにない光だった。
「ガウンサイドジェノサイダーーーーーーーーーーーッ!!」
「うおおおおおおおおおおっ!!」
 これでだ。ディバリウムと切り離されたのであった。
 ヴァイクランだけに戻った。これを受けてだ。
 エイスが戦線を離脱した。それを見たハザルが驚きの声をあげた。
「どうしたエイス、俺の元に戻って戦え!」
「へっ、残ったのは御前さんだけだな!」
 トッドがそのハザルに告げた。見れば戦場に残っているのは彼だけだった。他のバルシェムも全員撃墜されるか彼を見捨てて逃げ去っていた。
「どうするつもりだ、まだやるってのかい?」
「ふざけるな!」
 そのハザルが叫んだ。そしてだった。
「この程度で!」
「何っ!?」
「まだかよ!」
「まだやるってのかよ!」
「俺とヴァイクランが落ちるか!」
 こう叫んでだった。またサイコドライバーの力を出したのだった。
「あの野郎、バケモノか?」
「いや、自分の命を削って戦っているんだ」
「今のあいつは」
「そうしているんだ」
 それがだ。わかったのだった。
「あの野郎、そうして」
「そこまでして戦うってのかよ!」
「何て執念だ!」
「くっ!」
 ここでだ。アルマナが叫んだ。
「まだ戦うというのですか」
「もう止めて下さい!」
 ルリアがだ。ここで叫んだ。
「ハザル様、もう」
「黙れ侍従!」
 しかしハザルはそのルリアにまた怒鳴った。
「何時までも俺の付き人のつもりでいるな!」
「ですが!」
「御前の姉貴面はもう見飽きた!」
 全てを否定する言葉だった。
「二度と見たくもない!」
「!?これは一体」
 クスハはその二人のやり取りを見てだ。怪訝な顔になった。
 そのうえでだ。ルリアに対して問うた。
「どういうことなのですか?」
「私は実は」
 ルリアはだ。それを受けて真実を話した。
「アルマナ様にお仕えする前はです」
「あいつの従者だったってのか?」
「はい」
 こうアラドに答えた。
「お仕えしたといってもハザル様が子供時代のことですから」
「あいつが子供の頃っていったら」
「遊び相手?」
「そんなところ?」
「はい、そうです」
 こうロンド=ベルの面々にだ。難しい顔で答えた。
「そうでした」
「そうだったんだ」
「あいつにもそんな頃があったんだな」
「考えてみればその通りだけれど」
「けれどなあ」
「今のあいつを見たら」
「とても」
「あの頃の貴方は」
 ルリアはだ。その悲しみを抑えられくなっていた。それが顔にも出ていた。
「無邪気によく笑う子供だったというのに」
「ええい、黙れ!」
 ハザルはルリアのその言葉を必死に否定する。
「俺は強くなった!」
「そう言うんだな」
「その通りだ!」
 リュウセイにもだ。ムキになって返す。
「俺は強くなった!父上の為に!」
「ここでもか」
「そうだな」
 ライとレビも言った。
「父親か」
「あの男にはそれしかない」
「まさにな」
「人形だ」
「それが俺の生きている証だ!」
 ハザルは言い切った。しかしであった。
 ゼンガーがだ。こう彼を切り捨てた。
「惨めなものだな」
「何っ!?」
「力に溺れ」
 まさにそのハザルに他ならない。
「己の存在する意味を見失ったか」
「黙れ、力こそが正義だ!」
 まだ言うのであった。
「それがこの銀河の絶対の真理だ!」
「ああ、その論理だとな!」
 今言い返したのはだ。トッドだった。
「御前さんは悪だ!」
「まだ言うのか!」
「御前さんはここで俺達に負ける!だから悪だ!」
「その歪んだ心!」
 ショウも告げる。
「正義の筈がない!」
「あのオーラは」
 シーラもだ。ハザルのその力を見て言う。
「ハイパー化するものです」
「そうですね。オーラバトラーに乗っていれば」
 エレもだった。ハザルの今の有様から述べる・
「間違いなくそうなっています」
「そして彼を待っているのは」
「破滅ですね」
「完全なる」
「貴様のその歪んだオーラ!」
 ショウがまたハザルに叫ぶ。
「断ち切られる運命にある!」
「俺もだ!」
 リュウセイがだ。バンプレイオスを前に出した。
 そしてそのうえでだ。ライとレビに対して言う。
「ライ!レビ!」
「わかっている」
「今度こそだな」
「終わらせる!」
 こう叫ぶ。そして。
 その手に剣を出した。それは。
「この剣でな」
「いけるな、リュウ」
「その剣、使いこなせるな」
「使いこなしてやる!」
 これがリュウセイの返答だった。
「そして今度こそ!」
「よし、わかった」
「ならだ、やれ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 リュウセイは叫んだ。そして。
 バンプレイオスのその手にだ。巨大な剣を出した。
 それを構えてだ。今大きく振りかざした。
「受けろハザル!」
「剣如きで俺が敗れるものか!」
「手前のその歪んだ全て、この俺が!」
「死ねっ、リュウセイ=ダテ!」
「効くかよ!」
 バンプレイオスはヴァイクランのそのビームを全て弾き返してしまった。
「何っ、ヴァイクランの攻撃を!」
「念動フィールドだ!」 
 まさにそれの力だった。
「最早手前の攻撃は通じねえ!」
「おのれ、まだだ!」
「これで最後だ!」
 そしてだった。その剣を振り下ろし。
「喰らえ天上天下!!」
 その剣の名を今叫ぶ。
「念動無双剣!!」
「ぐわあああああああああああああっ!!」
「終わりだ、ハザル=ゴッツォ!!」
 遂にであった。ヴァイクランは縦に両断された。
 それで完全に動きを止めた。今度こそだった。
「馬鹿な、こんな馬鹿なことがあってたまるか!」
「馬鹿なじゃねえ!」
 バンプレイオスは剣を構えたままだ。そのうえで言うリュウセイだった。
「手前は負けだ!完全にだ!」
「俺はハザル=ゴッツォだ!」
 しかしまだハザルは言う。
「選ばれたサイコドライバーがこんなところで!」
「何っ、まさかあいつ!」
「まだ!」
 勇とヒメが叫ぶ。まだサイコドライバーを出そうとしていたのだ。
「もうそんな力はない筈だ!」
「それでもなんて!」
「今度こそあいつは」
「死ぬよ、絶対に」
「ハザル様、もう!」
 ルリアがだ。必死の顔で訴える。
「お止め下さい」
「こうなったら!」
 ダバがエルガイムマークツーのバスターランチャーを構えた。
「これで!」
「ああ、止めだ!」
「今度こそくたばりやがれ!」
「成仏しろ!」
 皆それぞれ構える。しかしだった。
 戦場にだ。バランが出て来たのだった。
「あれは」
「ペミドバン。バランかよ」
「そうだ、トウマよ」
 バランはミナキとトウマに対して答えた。
「銀河に戻ってきたな」
「ああ、それであんた一体」
「うむ、用があってな」
 こうだ。アルマナ達を見て言った。
「それで来た」
「迎えか」
「うむ、その通りだ」
 こうゼンガーにも答えた。そしてそのうえでだ。
 アルマナ達にあらためて述べた。
「よくぞご無事で」
「バラン殿」
「来て頂いたのですか」
「遅くなり申し訳ありませぬ」
 バランはそのことは謝罪した。
「ですが今こうして参上しました」
「有り難うございます」
「姫様は御無事です」
「それはなにより。そして」
 二人との話を終えてだ。ロンド=ベルの面々に対してあらためて述べた。
「地球の戦士達よ」
「どうしたんだ?」
「願わくばだ」
 こうトウマに述べた。
「ここからは我等にこの男の処遇を委ねて頂きたい」
「おいおい、そんなことできるかよ!」
「そうよ!」
 すぐにラウルとフィオナが反論した。
「そいつは今まで俺達を散々いたぶってくれた奴だぜ!」
「しかもどれだけの人が死んだか!」
「それを考えたらな!」
「許せるものですか!」
「その通りだ」
 ミリアルドも同じ意見だった。
「その男の罪は重いと言う他ない」
「それを見逃せっていうのはな」
 ミシェルもであった。
「ちょっと虫がいいな」
「同じバルマー人っていっても」
 キラも難しい顔になっている。
「納得できません」
「それともあれ!?」
 アスカも怒りを露わにさせている。
「今更見逃せってやっぱりバルマーの人間ってことよね!」
「否定はせぬ」
 ハザルは無念の顔で答えた。
「それはだ」
「しかしってのか」
「どうしてもここはか」
「そいつを」
「そうだ。同じ星の人間としてだ」
 ハザルを見てだ。彼は言った。
「このまま坊が」
「坊!?」
「坊って」
「あんたこいつを知ってるのか」
「まさか」
「ハザルが倒されるのは見るに忍びない」
 こう言った。それを見てだ。ゼンガーが彼に言った。
「バラン=ドバン、まさか」
「・・・・・・・・・」
「泣いているんだな」
 トウマにもだ。それがわかった。
「そうなんだな」
「バラン殿はです」
 ここでまたルリアが話す。
「ハザル様の武術の師なのです」
「そうだったのかよ」
「それでか」
「笑うがいい」
 こう言うバランだった。
「ロンド=ベルの者達よ」
「そう言うのかよ」
「そうだ、笑え」
 こうトウマにも言う。
「このバラン、この歳まで幾多の戦場を駆け巡ってきた」
「それでもだっていうんだな」
「それでもだ」
 まさにそうだと返してだった。
 バランはだ。無念に満ちた言葉で言う。
「たった一人の弟子すらまともに育てることはできなかった」
「バラン・・・・・・」
「それがこのわしよ。情けない限りよ」
「諸君」
 ここでだ。言ったのはグローバルだった。
「司令を倒されたゴラー=ゴラムはだ」
「そうですね。最早一兵もいません」
「戦場に残っているのは彼だけです」
 未沙とクローディアも言う。
「それではです」
「これ以上の戦闘は」
「そうだ、こちらの損害を招くだけだ」
 これがグローバルのここでの言葉だった。
「だからここはだ」
「おい、待ってくれよ」
「そうよ」
 シンとカーシャが異を述べる。
「じゃあこいつをよ」
「このまま見逃すっていうの?」
「こんな奴見逃しても」
「何にもならないわよ」
「いや、それはだ」
「違うな」
 二人にはアスランとコスモが話した。
「この男は最早どちらにしてもだ」
「祖国の裏切り者だろ?」
「ま、まあそれはな」
「その通りだけれど」
 これはだ。二人にもわかることだった。アスランとコスモは二人にさらに話す。
「もうゴラー=ゴレムさえ地球から退けば」
「帝国は地球に出だしはしない筈だ」
「若しもです」
 アルマナも言う。
「決着を私達に委ねて頂けるなら」
「その時はです」
 ルリアも話す。
「私達は本星に戻り」
「宰相の企みを陛下にお話します」
「そしてその上で陛下に」
「貴方達と話し合いの場を持つことをお勧めします」
「そう言うのね」
 セレーナがそれを聞いて応えた。
「御姫様達が」
「是非。御願いします」
「それで」
「お気付きの筈です」
 アルマナは心から憂慮する顔で述べた。
「この銀河を襲う未曾有の危機を」
「そのことか」
「はい、宇宙怪獣にプロトデビルン」
 クォヴレーに彼等から話した。
「別の次元や世界からの敵」
「多かったな、そういえば」
「それもかなりな」
 ロンド=ベルの面々には非常に心当たりのあることだった。彼等こそがその別の次元、別の世界で戦ってきた者達だからである。
「これはです」
「これは?」
「これはっていうと」
「神代の頃から伝えられているアポカリュプシスです」
 この言葉が出て来たのだった。
「それの到来でしょう」
「アポカリュプシス?」
「何だそりゃ」
「一体」
 殆どの者が首を傾げさせた。
「何かよくわからないけれど」
「一体」
 シュウはその中で沈黙していた。あえて言わないのであった。
 その彼にだ。チカが声をかけた。
「御主人様はおわかりですよね」
「おやチカ、気付かれましたか」
「だってあたしは御主人様のファミリアですから」
 だからだというのである。
「わかりますよ。けれど今はなんですね」
「はい、あえてです」
「わかりました。御主人様らしいですね」
「ふふふ、どうでしょう」
 含み笑いと共に今は言わない彼だった。
 その間にもだ。アルマナとロンド=ベルの会話は続いていく。
「それでそのアポカリュプシスって」
「何なの?」
「禍々しいイメージはするけれどな」
「その全容はわかっていません」
 アルマナはここでこう言った。
「伝承では全ての終わりとはじまりと言われ」
「終わりとはじまり?」
「それだって?」
「はい、銀河の終焉を意味すると言われています」
 こう言われるとだ。多くの者が何となくだが理解した。
「銀河の終焉」
「それがアポカリュプシス」
「それだっていうの?」
「銀河の終焉が」
「はい、そうだと言われています」
 アルマナはこう答えた。しかしだ。
 ここでだ。謎の声がしてきて言うのであった。
「けれどね」
「!?」
「何だ?」
「この声は」
「あいつか!?」
「あの女神官」
「ええ、そうよ」
 その通りだという返答だった。
「そしてその答えじゃね」 
 その声は言うのだった。
「不十分ね」
「エツィーラではないか」
 バランが彼女とそのマシンを見て言う。
「何故ここに」
「どうしてここに来たのかな」
 万丈がエツィーラに問うた。
「企みがあってのことなのはわかるけれどね」
「やはり気付いていないようね」
 エツィーラはこう彼等に返した。
「自分達がその全ての終わりとはじまりである」
「そのアポカリュプシスのかい」
「そうよ。鍵であることをね」
「!?どういう意味だよそりゃ」
「俺達が鍵だって」
「一体」
「どういうことなんだ?」
「訳がわからねえけれどな」
「それって」
「わからないならいいわ」
 エツィーラはいぶかしむ彼等を小馬鹿にしたように述べた。
「どうやら御前達が宇宙収縮現象を止めたところで」
「ソール十一遊星主」
「あの連中かよ、今度は」
「あの連中を止めても」
 エツィーラのその言葉が続けられる。
「銀河はまた少し終焉に向けて流れだしたのだから」
「待て、エツィーラよ」
 バランがその彼女に対して言う。
「御前もシヴァーに加担して陛下に叛旗を翻すつもりか」
「さてね」
 エツィーラはバランに対しても小馬鹿にした口調だった。
「私が興味があるのは」
「何だというのだ」
「この銀河を終焉に導くものの存在だけよ」
 こう言うのであった。
「残念ながらその坊やは」
「ハザル坊のことか」
「その鍵になる前に壊れちゃったけれどね」
「貴様、一体」
 バランが言った時にだった。
 エイスのディバリウムが出て来た。そうしてだった。
 動かないハザルのヴァイクランにだ。攻撃を仕掛けたのだった。
「何とっ!?」
「・・・・・・・・・」
 これにはだ。バランも驚いた。そうしてだった。沈黙しているエイスに対して問うた。
「貴様、どういうちもりだ」
「な、エイス」
 ハザルもだ。瀕死であるが彼に問うた。
「何を・・・・・・する」
「不要になったおもちゃを処分するだけだ」
「!?その声は」
 ハザルはその声に驚愕を覚えた。
「まさか」
「そうだ」
 そしてだった。その仮面を外すとだった。
「何っ!?馬鹿な」
「ハザルがもう一人!?」
「そんな、馬鹿な」
「じゃああいつは」
「ハザル=ゴッツォのクローンだったのか!?」
「違うな」
 エイスが驚く一同に述べた。
「俺とこいつ、どちらがオリジナルというものでもない」
「クローンじゃない?」
「っていうと」
「じゃあ何なんだ?」
「双子!?」
「まさか」
「俺達は閣下の手によって作られたのだ」
 こう答えるエイスだった。
「ハイブリッドヒューマン=タイプPDだ」
「何だと!?」
 これを聞いてだ。バランも驚きの声をあげた。
「坊が。まさか」
「このことは閣下の友人である御前も知らなかったな」
「馬鹿な、初耳だ」
「閣下は来る日に備え」
 エイスの言葉が続く。
「自分の意のままに動く戦力を必要とした」
「それがか」
「手前等だってのか」
「そのプロジェクトの一つが」
 エイスは淡々と話していく。
「霊帝に対抗する為の人工サイコドライバーだ」
「人工サイコドライバー」
「それがか」
「この連中だっていうのか」
「そしてだ」
 さらに話すエイスだった。
「並行して銀河の各所からだ」
「サイコドライバーをか」
「集めてたってのか」
「そうだ。素質を持った人間を集めもした」
 そうだったというのだ。
「貴様等の中にもいたな」
「俺かよ」
「そして私も」
 リュウセイとクスハが言ってきた。
「それだっていうのかよ」
「そうなのですね」
「そうだ。だが」
 エイスはまた言った。
「最終的にはだ」
「最終的には?」
「どうだっていうんだ?」
「閣下が作り出した人工ドライバー」
 こう言うのであった。
「それがもっとも優秀だったということだ」
「それがか」
「あんただってのね」
「そういうことなのね」
「そうだ。そしてだ」
 エイスはあらためてハザルを見る。そうしてそのうえで彼に告げた。
「壊れた貴様はだ。出来損ないはだ」
「嘘だ!」
 まだそれを否定するハザルだった。
「この俺が人工生命体であってたまるか!」
「事実だ」
「人形であってたまるものか!」
 エイスにどれだけ言われても否定しようとする。
「俺はハザル=ゴッツォだ!」
「そうだ、その通りだ」
 バランもそれを言う。
「この者は。ハザル坊だ」
「帝国宰相シヴァー=ゴッツォの息子だ!それ以外の何でもない!」
「御前はそういう風に育てられた」
 だがエイスは無機質に告げる。
「そうしたモデルだったのだ」
「それでは」
 ルリアもそれを聞いて唖然として言う。
「私が遊び相手として付けられたのも」
「察しの通りだ」
「やはり」
「こいつには人間らしい感情というものを植えつけてみたかったらしい」
「くっ!」
 バランはエイスの今の言葉に顔を背けさせた。
 そうしてだ。忌々しげにこう言い捨てた。
「シヴァー、見損なったぞ!」
「バラン、あんた」
「言うな、トウマ」
 バランはトウマの同情は拒んだ。
「わしはそうしたことは受けん」
「そうなんだな」
「察してくれ」
「ああ、済まない」
 二人も話していた。そしてエイスも。
「俺はその下らない茶番を横から観察させられることでだ」
「それでか」
「それでだっていうのね」
「情愛というものの馬鹿らしさ」
 まずはそれであった。
「その非生産性を知り」
「こいつ、人間じゃねえな」
 ヘクトールはエイスの今の言葉を聞いて言い捨てた。
「機械だな」
「否定はしない」
 エイス自身もこう返す。
「俺は機械的に任務を遂行することを仕込まれた」
「嘘だ、嘘だ!」
 ハザルは尚も否定しようとする。
「俺は、俺は父上の」
「見苦しいぞ」
 エイスはハザルの顔で機械的に告げた。
「御前が失敗作であることは既に証明された」
「俺は!」
「ヴァイクランから降りろ」
 エイスは尚も機械的に告げる。
「その機体は俺のものだ」
「嘘だ!俺は父上の子供だ!」
 最後の最後までだ。ハザルは否定しようとする。
「ハザル=ゴッツォだ!」
「消えろ」
 最後にはこう告げてだった。サイコドライバーを放ってだ。
 それによってだ。ハザルを破壊したのだった。
「ぎゃあああああああああああ!」
「ハザル!」
「ハザル様!」
 バランとルリアがハザルに問う。しかしだった。
 最早返答はなかった。ハザルは完全に沈黙していた。ヴァイクランの機体でだ。視点が定まらない顔で完全に崩れ落ちてしまっていた。
「・・・・・・死んだというのか」
「まさか。ハザルさまが」
「おもちゃは完全に破壊した」
 エイスの言葉は素っ気無い。
「今俺が完全に破壊した」
「完全にだと」
「ではハザル様は本当に」
「そうだ、死んだ」
 こうだ。崩れ落ちているハザルを機械的に見ながら言うのであった。
「完全にだ」
「くっ、何と惨い」
「そこまでするなんて」
「やはり感情を処理できなかったか」
 唖然とする二人をよそにだ。まだ言うエイスだった。
「所詮は出来損ないか」
「手前、まさか」
 トウマはそのエイスに対して怒りを見せていた。
「ハザルを挑発する為に素顔を!」
「策略だ」
 それに過ぎないというのであった。
「それだけだ」
「おのれ!」
 バランもだ。ここで前に出ようとする。
「エイス=ゴッツォ、許さん!」
「バラン=ドバンよ」
「何だというのだ!」
「俺達のことを霊帝に報告するのならいい」
 見ればだ。何時の間にかだ。
 エイスの周りにだ。キャリコとスペクトラもいた。孫もだ。
「貴様等、まさか全員」
「そうだよ。実はね」
 孫が明るくバランに返す。
「僕達は最初からそのつもりだったんだ」
「誰があの様な男に忠誠心なぞ持つものか」
「全くだ」
 キャリコとスペクトラはハザルについて言っていた。
「同じ人形だというのにだ」
「それを知らず我々を愚弄してくれたな」
「つくづく人望のない男だったんだな」
 アーウィンはそんなハザルをこう評した。
「そうだったんだな」
「否定はしないよ」
 孫がアーウィンに対して答える。
「正直嫌な相手だったからね」
「そういうあんたはどうなのよ」
 ミーナが目を顰めさせて孫に言い返した。
「如何にも腹に一物だけれど」
「さて、どうかな」
 孫はミーナの言葉にはとぼけて返す。
「案外素直かも知れないよ」
「いや、それはないな」
「絶対にね」
 誰もがそれは否定した。そしてエイスは。
 バランにだ。また告げるのだった。
「今更言っても遅いだろうがな」
「貴様・・・・・・」
「くそっ、ここで!」
 リュウセイがバンプレイオスを前に出そうとする。
「このまま見逃すかよ!」
「ロンド=ベルよ」
 だが、だった。エイスはここでそのリュウセイに言うのだった。
「御前達の力は見せてもらった」
「それがどうした!」
「しかしだ」
 だが、というのであった。
「俺達が戦う場所はここではない」
「何っ!?」
「じゃあ何処だっていうんだ!」
「ゼ=バルマリィ帝国」
 ハザルは己の祖国の名を言ってみせた。
「そこだ」
「何っ!?」
「手前等の祖国じゃねえか!」
「そこに来いっていうのかよ」
「まさか」
「そのまさかだ」
 だがエイスはこう返すのだった。
「そこに来るのだな」
「貴方は」
 アルマナは眉を顰めさせてエイスに問うた。
「本星を戦いの場にする気ですか」
「もう一つだ」
 しかもというエイスだった。
「ここまで生き残った褒美をやろう」
「何だよ、今度は」
「一体何だ?」
「それで一体」
「情報だ」
 それだというのであった。
「御前達の仲間アヤ=コバヤシは」
「大尉が?」
「どうだっていうんだ?」
「シヴァー閣下が預かっている」
 淡々と言った。だがその言葉は。ロンド=ベルの面々にとってはまさに驚くべきことだった。
「た、大尉が!?」
「生きているだって!?」
「そしてバルマーにいるって」
「まさか」
「俺は嘘は言わない」
 ここでも機械的な言葉であった。
「あの程度の能力者でもだ」
「大尉がか」
「どうだっていうんだ?」
「実験サンプル程度の使い道はあるらしい」
 やはり他の者を機械とみなしていた。
「だが、だ」
「何だってんだ、それで」
「今度は」
「人間の形を留めているかは保証できんがな」
「貴様、やっぱりここで!」
「そうだ、倒す!」
 リュウセイとレビが激昂する。しかしだった。
 エイスはその彼等をよそにだ。撤退するのであった。
「また会おう」
「それじゃあね」
 エツィーラも告げる。他の者達も彼等にしたがって撤退に入る。
「期待しているよ」
「何についてですか?」
「御前達がアポカリュプシスを導くことをね」
 こうシンジに告げてであった。彼女も撤退した。
 他の面々も同じだった。戦場に残ったのはロンド=ベルの面々だけだった。
 彼等は遂に憎むべき敵ハザル=ゴッツォを倒した。しかしであった。その彼等の中には謎が残っていた。
「俺達が銀河の終焉を導く?」
「どういうことなんだろう」
 シンとシンジが話す。
「さっぱりわからないぜ」
「うん、どうして僕達が」
「はったりだろう?あのおばさんのな」
 豹馬はそう考えた。
「どうせな」
「そうだな。地球の為に戦っている俺達が」
 タケルも話す。
「どうして銀河を破壊するんだ」
「大体私達にはよ」
 ルナも言った。
「そこまでの力はないわよ」
「いえ、それはどうでしょうか」
 だが、だった。ここでシュウが彼等に話すのだった。
「そう考えるのは早計ですよ」
「っていうと」
「まさか」
「その力って」
「やっぱり」
 シュウの言葉を受けてだ。彼等もわかった。
「イデか」
「それがか」
「銀河を滅ぼす力」
「そういえば」
 考えていけばだ。さらにであった。
「ゲッター線やビムラーだって」
「他の力だって」
「下手をしたら」
「そうだよな」
「イデと同じ位危険だよな」
「そうかも」
 こう話すのだった。そうしてだった。
 アルマナがだ。また話すのだった。
「あのエツィーラ=トーラーですが」
「あの女かよ」
「あの赤い髪の派手な女」
「あいつか」
「彼女は帝国の祭司長の地位にあります」
 アルマナはまずそのことを話した。
「トーラー家の者として」
「そうだったな」
 ここで言ったのはレビだった。
「そして」
「んっ、レビどうしたんだ?」
 リュウセイがレビのその忌々しげな口調に気付いて問うた。
「何かあるのかよ」
「いや、別に」
 レビはすぐに表情を消して言葉を返した。
「何もない」
「別に何もないんだな」
「そうだ、何もない」
 あくまでこう言うのであった。
「気にしないでくれ」
「わかった、じゃあそれならな」
「ああ」
「そしてです」
 アルマナの話はさらに続いていた。
「旺盛な知識欲を持っています」
「祭司長であるが故に」
「それでか」
「彼女はここ数年はです」
 こう話していく。
「無限の力にその全てを注ぎ込んでいたのでしょう」
「だからか」
「あんなことを言ってたんだな、あいつ」
「それでか」
「その彼女の言葉ですから」
 アルマナはまた言った。
「そこには何らかの根拠があるのでしょう」
「まずはです」」
 今言ったのはエキセドルだった。
「情報を整理しましょう」
「はい」
「全てはそれからです」
「私もです」
 ここでだ。アルマナの顔が意を決したものになった。
「私も皆さんと同じです」
「同じ!?」
「同じっていうと」
「一体」
「生まれた星を愛しています」
 こうした意味でだというのであった。
「その平和と繁栄を守る為にです」
「その為にだっていうのか」
「じゃあ姫さんも」
「俺達と同じく」
「まさか」
「はい、戦います」
 こう答えるのだった。
「そうさせてもらいます」
「姫様」
 そのアルマナにだ。ルリアが声をかけた。
「御見事です」
「有り難うございます、アルマナ」
「では及ばずながら私も」
「共に歩んでくれるのですね」
「是非。そうさせてもらいます」
 こうアルマナに話すのだった。
「決意させてもらいました」
「左様ですか」
「はい、その様に」
 二人が誓い合うとだった。彼もであった。
「姫様のお覚悟は」
「バラン、貴方もですか」
「はい、このバランもしかと受け取りました」
 こう言うのであった。
「バラン=ドバンとペミドバン」
「貴方だけではなくですね」
「左様です、陛下と姫様の為に」
 こうアルマナに言うのであった。
「生命を懸けて戦うことを誓います」
「頼りにさせてもらいます」
 アルマナはバランだけでなくルリアも見ていた。
「貴方達のことを」
「はい、是非共」
「そうして下さい」
 こうしてであった。彼等も誓い合うのだった。
 そしてだ。アルマナはロンド=ベルの面々と向かい合う。そうして言うのであった。
「セレーナさん」
「あら、私なの」
「はい、そして皆さん」
 優しい微笑みでだ。彼等に話すのだった。
「また何時か会える日を楽しみにしています」
「ええ、こっちもね」
 セレーナも微笑みで応えた。
「そうさせてもらうわ」
「それではまた」
「行くんだな、あんたも」
 トウマはバランに声をかけた。
「また」
「トウマよ」
 バランもだ。彼に対して言う。
「御主の拳とわしの鉄球」
「ああ」
「武人として雌雄を決したかったな」
「そうだな」
 トウマはここで微笑んでだ。バランに言葉を返した。
「是非共な」
「しかしそれは戦場では叶わぬな」
「残念だけれどな」
「この後御主等とわし等がどの様な道を行くかは知らぬ」
 それはわからないというのである。
「だが」
「ああ、それでもだな」
「御主等が帝国とわしの前に立ちふさがることになれば」
「その時こそだな」
「雌雄を決しようぞ」
「じゃあ。またな」
「うむ、また会おうぞ」
 こうしてだった。アルマナ達はロンド=ベルの面々と別れた。そしてだ。
 そのうえでだ。マスターアジアとシュバルツもであった。
「ではわし等もだ」
「帰らせてもらおう」
「師匠、兄さん」
 ドモンが二人に声をかける。
「地球に戻るんだな」
「うむ、地球にも守りが必要だ」
「だからこそだ。帰らせてもらおう」
「そうか、それじゃあな」
「またな」
「会うとしよう」
 こうして彼等も地球に帰ろうとする。しかしだ。 
 ふとだ。リィルがこんなことを言った。
「ここから地球に。どうして帰るのかしら」
「それは簡単だ」
「次元を超えて一気に戻る」
 要するにワープするというのである。
「そうすればだ」
「地球にも一瞬だ」
「そうなんですか」
「我等の力を以てすればな」
「次元を超えることもたやすい」
「だからそれもう人間の力じゃないから」
 アスカがここでも二人についてこう忌々しげに言う。
「全く。変態は無敵ね」
「ううん、やっぱり凄い人達だなあ」
 だがシンジは憧れを見せている。
「そこまでできるなんてね」
「人間かどうかって疑問はないのね」
「疑問って?」
「わからないんならいいから」
 もう強くは言わないアスカだった。流石に諦めていた。
 何はともあれ彼等も帰った。そしてシュウもだ。
「では私も」
「御前も帰るんだな」
「はい、私の仕事は終わりましたので」
 こうマサキに述べるのだった。
「ですからこれで」
「それでまた出て来るんだな」
「時が来れば」
 思わせぶりな笑顔での言葉だった。
「そうさせてもらいます」
「ああ、じゃあまたな」
「はい、また御会いしましょう」
 二人の別れはこれで終わりだった。そうしてだ。
 ロンド=ベルの面々だけになってだ。彼等はあらためて話をするのだった。
「帝国にも分かり合える人はいるんだな」
「だよな」
「戦い以外の解決の道もな」
「あるよな」
「絶対に」
「それに」
 そしてであった。彼等が見るのは。
「銀河の終焉か」
「アポカリュプシス」
「それだよな」
「それが何か」
「気になるな」
 このことを話すのだった。
「行く手に何が待っていようともな」
「立ち止まる訳にはいかないし」
「最後の最後まで」
「やるか」
「戦おうな」
 こう話をするのであった。
「絶対に」
「それに大尉だって」
 アヤの話も為される。
「生きているんだ」
「それならな」
「もう迷うことはないな」
「何とかして救い出そう」
「絶対に」
 あえてだ。強く言う彼等だった。
「バンプレイオスもある」
「大尉が乗るべきマシンも」
「それもあるから」
「だから」
「そのバンプレイオスだが」
 ライが仲間達に話す。
「機動兵器であると同時にだ」
「同時に?」
「あの次元を斬った力」
「それなのね」
「そうだ、ゲートにアクセスする力も持っている」
 まさにそうだと話すライだった。
「念動力をT-LINKシステムで増幅し」
「そしてか」
「その力で」
「サイコドライバーの域まで高めることでそれが可能となる」
 こう話していく。
「それができる」
「じゃあリュウセイだけじゃなくてか?」
「クスハも乗れる?」
「バンプレイオスに」
「いや、それは無理だ」
 ライはそれはできないと話した。
「バンプレイオスはリュウの為のマシンだ」
「専用機か、つまりは」
「そうなんだ」
「そしてだ」
 ここでさらに言うライだった。
「バンプレイオスは一つ特徴がある」
「特徴?」
「特徴っていうと」
「分離はできない」
 それはだというのだ。
「それあ無理だ」
「あっ、そうなんだ」
「そういえば分離してないよな」
「確かに」
「それは」
「元々あのSRXは」 
 ライはあのマシンについての話もした。
「エックスタイプの名前が示すようにだ」
「試作型だったんだな」
「そうだったの」
「あの強さで」
「そうだった。しかしだ」
 ライはさらに話す。
「完成型の設計、開発はかなり早い段階から進められていた」
「とはいってもな」
 リュウセイも話をしてきた。
「随分と難航してたらしくてな」
「それで今まではか」
「出ていなかった」
「そうだったのね」
「ああ、俺達の復帰もそれでな」
 遅れたというのである。
「本当に危ないところだったぜ」
「それでどうして合体と分離はないんだ?」
 竜馬がこのことを尋ねた。
「SRXの特徴の一つだったが」
「本来はそのつもりだった」
「けれどそれがか」
「できなくなった」
「そうなんだ」
「完成を急ぎ」
 ライはその理由についても説明した。
「機体強度を重視した為にだ」
「分離はできなくなった」
「そういうことなんだ」
「本来は各Rマシンの合体も為された」
 このことも話される。
「しかし今はその分離機能は封印している」
「成程なあ」
「そういう事情があってか」
「合体したままだったんだ」
「それで分離はできない」
「それが今のSRXなんだ」
「そういうことだ」
 ライも話す。そしてであった。今度はだ。マイヨが言った。
「もっとも驚いたのはだ」
「閉鎖空間のことだよな」
「そうだ。あれは何故できた」
 マイヨはこうリュウセイに問う。
「あそこまでの力は」
「バンプレイオスには二十六の秘密があってな」
「待て」
 レビがリュウセイの今の言葉に突っ込みを入れる。
「三番目をここで出すか」
「駄目か?」
「電車や蝙蝠の関係者がいるぞ」
 何気なくマサトやアスランを見るレビだった。
「それでもするか」
「俺だって関係者だぞ」
「そういえば電車だったか」
「そうだよ。御前だって戦隊で関係なかったか?」
「そうかも知れないな」
「少なくともブレラはあっただろ」
「ジョーカーだったな」
 そのブレラが応える。
「俺はあの時緑色だった」
「だろ?ほら、カナンさんとかコウさんとかな。カミーユさんなんかラスボスだっただろ」
「よく知ってるな」
 カミーユも呆れる程だった。
「あれは俺も楽しめたが」
「俺の話も知ってたのか」
 コウも驚いている。
「リュウセイはこうした話には強いからな」
「全くね。驚く他ないわ」
 アイナは関係ないといった顔だったがリュウセイは彼女にも言った。
「いや、アイナさんだってな」
「そうだったわね。アイナさんもね」
 カナンは友人を見つけた顔で言った。
「出たのね、遂に」
「ま、まあそれはね」
 照れ臭そうに言うアイナだった。何気に多くの人間が心当たりのある話になっていた。
 そしてだ。話は戻ってだ。ライがまたはアン巣。
「あの力、次元斬はだ」
「文字通りだな」
「次元斬」
「それか」
「空間を切り裂き任意の空間と直結させる力だ」
 ライはそれだと話した。
「それを使えるのはリュウだけだ」
「こいつだけがか」
「それができるんだな」
「やっぱり」
「そうだ。そしてそれは」
 ここでだ。ライの話が大きく変わった。
「イルイ=ガンエデンの協力によってできた」
「えっ!?」
「イルイちゃんの!?」
「今シティにいるのに」
「何時の間に地球に」
「どうして」
「彼女は神だ」
 そのことに最初に気付いたのはクワトロだった。
「神の力ならばだ」
「銀河中を瞬時に移動できる」
「そういうことですね」
「そうだ、それも可能だ」
 まさにそれだというのだった。
「それによってだな」
「その彼女の協力によってだ」
 ライはさらに話す。
「レビにXNディメンション、つまり」
「ゲートへのアクセスの仕方を」
「教えてそうして」
「バンプレイオスが」
「そういうことだ。それでだ」
 それでだというのだった。
「そしてあの娘はだ」
「メッセージを残してくれた」
 レビも話す。
「ナシムの子よ」
「ナシム!?」
「ナシムって何だ!?」
「一体」
「それはわからない。だが」
 レビはいぶかしむ仲間達にさらに話す。
「この銀河を救って下さい。こうメッセージを残した」
「そのメッセージを残して」
「今ここにいる?」
「いや、もういないかもな」
「だよな。また何処かに行っている」
「そうかも」
 何となくだがだ。誰もがそう察したのだった。そのうえでさらに話していく、
「けれど銀河を救う」
「その言葉は多分」
「アポカリュプシス」
「それよね」
「間違いなく」
「しかしな」
 ここで言ったのは忍だった。
「そのアポカリュプシスの正体はわかってないんだぜ」
「そうだな。それは」
 ニーも彼のその言葉に頷く。
「正直何一つとして」
「終焉、結末というが」
 大介も言う。
「それが何の為に起き何が起こるのかは」
「わかっていないよな」
「全然」
「あの女が知っているのか」
 金竜が言う。
「あのエツィーラ=トーラーが」
「俺達がアポカリュプシスを導く」
「その存在だと」
「あの言葉か」
「じゃああの婆に直接聞いてやればいいさ」
 シンの言葉だ。
「とっ捕まえてな。俺はああいう婆が大嫌いなんだよ」
「御前誰でも嫌いだろ」
 今シンに突っ込みを入れたのは闘志也だった。
「誰が相手でも喧嘩するしな」
「俺は別にそこまではよ」
「まあとにかくだ」
「戦うしかないか」
「今は」
 それは確かだった。彼等の戦いはまだ続くのであった。


第九十八話   完


                                      2011・2・18       

 

第九十九話 プロトデビルン再び

             第九十九話 プロトデビルン再び
 ハザルとの戦いは終わりアヤが生きていることもわかった。しかしであった。
 ロンド=ベルの面々にはだ。謎が残されていた。
「結局な」
「そうだよな」
「謎は全然解決してないよな」
「何だ?それでアポカリュプシスって」
「一体」
「若しかすると」
 ここで言ったのはユングだった。
「宇宙怪獣のことかしら」
「あいつ等が?」
「そのアポカリュプシス?」
「それだっていうの?」
「そもそも宇宙怪獣はどうして生まれたのかよ」
 ユングはこのことについても言及した。
「それも謎よね」
「そういえば何か自然発生したいみたいな」
「そんな感じで出て来たよな」
「本当に急に」
「何時の間にか」
「しかも幾ら倒しても出て来るわね」
 ユングの指摘は続く。
「飽きる程ね」
「っていうか嫌になってくるな、奴等は」
「洒落にならない位強いし」
「しかも本能だけとはいえ生物だし」
「それも考えたら」
「あの連中がアポカリュプシスなら」
 ユングはさらに話す。
「説明がつくけれど」
「バルマーもゾヴォークも悩まされてたっけ。そういえば」
「ゼントランディやメルトランディにも襲い掛かってるんだっけ」
「はい、その通りです」
 エキセドルも答える。
「非常に厄介な相手です」
「銀河のあらゆる存在にとっての脅威」
「恒星に棲み付いて全てを破壊する」
「それが終焉をもたらすのなら」
「やっぱり?」
「宇宙怪獣がアポカリュプシス?」
 皆この考えを抱きだした。
「じゃああの連中を倒すことが」
「アポカリュプシスを救う?」
「そうなる?」
「その可能性はあるわね」
 ユングがまた話す。
「そう考えると妥当だし」
「じゃあ俺達のこれからの相手は」
「連中?」
「宇宙怪獣?」
「そうなる?」
「いや、皆待ってくれ」
 ここでフォッカーが出て来た。
「他にもだ。敵はいるぞ」
「プロトデビルンですか」
「あの連中ですね」
「そうだ、奴等もアポカリュプシスである可能性はある」
 フォッカーはこう話すのだった。
「それは忘れるな」
「確かに。奴等もですね」
「その行動が不可解なところがありますし」
「出自なんか特に」
「それだと」
「そういうことだ。現に連中との決着はついていない」
 フォッカーはこのことも話した。
「余計にだ。奴等の存在はだ」
「忘れたらいけませんね」
「むしろ。今は」
「バルマーとのことや宇宙怪獣も気になりますけれど」
「あの連中をどうするか」
「それですよね」
 こう話していくのだった。彼等はプロトデビルンもまた警戒した。
 そうした中でだ。まずは進路を決める必要があった。
「とりあえずどうする?」
「どの勢力を相手にするか」
「それだけれど」
「大尉のことが心配だな」
 ここで言ったのはタシロだった。
「しかもバルマー本星の位置もわかった」
「はい、これまでの帝国との戦いで得た多くの宙図にです」
 副官がここで話す。
「その場所は判明しています」
「ここからでも行けるな」
「充分です」
 副官は確かな声でタシロに答えた。
「長距離ワープも可能です」
「わかった。それならだ」
「進路決定ですね」
「バルマー本星に向かう」
 タシロは強い声で言い切った。
「諸君、それでいいな」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はバルマー本星に向かうのだった。進路はそこに決まった。
 その中でだ。ふとコスモが言った。
「なあ、今の状況だけれどな」
「今の状況って?」
「いや、バッフクランの連中がな」
 コスモがカーシャに話すのは彼等のことだった。
「何処まで攻め込んでるかな、この銀河に」
「ううん、かなり深くじゃないかしら」
 カーシャはコスモの言葉に考える顔になって述べた。
「だって。私達がいた星にまで来ていたんだし」
「あの時は先遣隊でもか」
「ええ。かなり深くじゃないかしら」
「だとしたらまさか」
「そうだ、主力は銀河中央に向かっている」
 ギジェがここで二人に話してきた。
「目標はバルマー本星だ」
「そこにか」
「目指してるのね」
「その主力部隊はおそらく」
 ギジェはさらに話す。
「今は銀河の中枢に達しようとしている」
「じゃあバルマーとも」
「交戦状態に入ってるのね」
「その可能性は高い」
 その通りだというのである。
「そしてそうなればだ」
「どちらが倒れるか」
「そうした話なのね」
「だとするとだ」
 ベスが暗い顔になって述べてきた。
「大尉は。最悪」
「戦いに巻き込まれてか」
「そうならなければいいが」
 こうモエラにも返す。
「そうなる前にだ」
「迅速にバルマー本星に向かうか」
「正直話し合いで解決できるかどうかはわからない」
 ベスは楽観していなかった。バッフクランとのことからだ。
「だがそれでもだ」
「行くしかないな」
「そうだ。今の俺達は」
「その通りだな」
 アランが彼等の前に出て来た。
「結果論だがそうだ」
「バルマー帝国か」
 コスモは彼等のことを考えその目を鋭くさせた。
「奴等ともこれまで色々あったな」
「そうね。ハザルのこと以外にもね」
 カーシャもそのことを言う。
「マーグさんだってポセイダルだって」
「本当に色々あった。俺達の宿敵だ」
「だよね。けれど何か近いものも感じるし」
 デクはこう話した。
「妙な相手ではあるよね」
「妙なか」
「うん。そんな気がするよ」
 デクはコスモにもこう話した。
「外見が近いせいかも知れないけれど」
「近いっていえば」
「そうだな」
 カララとギジェがここで話す。
「私達バッフクラン人と地球人も」
「近いな」
「むしろ殆ど変わることがないのかしら」
「生物的にも思考的にもな」
「似た者同士だからだな」
 今言ったのはアランだった。
「余計に争うことになるのだ」
「若しかして」
 ここで言ったのはリュウセイだった。
「イデだよな。それってな」
「それって?」
「それっていうと?」
「何かお互いを争わせてるのか?」
 こう皆に話すのだった。
「俺達とバッフクランをな」
「そうかもな」
 ギジェはそれを否定しなかった。真剣に考慮する顔でだ。
「それもだ。有り得る」
「そのイデの意思ってやつでな」
「イデは正直今も殆ど何もわかってないわ」 
 シェリルがこのことを話す。
「どういったものかもね」
「何もかもですか」
「わからない」
「それがイデなんですね」
「そうよ。その謎もわかればいいけれど」
「ですね、本当に」
「それは」
 こんな話をしてだ。彼等はバルマー本星に向かう。その中でだ。
 不意にだ。警報が鳴り響いた。
「来たか!?」
「バルマーか宇宙怪獣か」
「それとも」
「プロトデビルンです!」
 サリーが全員に告げる。
「彼等が来ました!」
「後方からです!」
 美穂も言う。
「その数五十万!」
「よし、わかった!」
「それならね!」
「今から!」
「総員出撃です」
 エキセドルがこの言葉を告げた。
「シティ7を守りながら戦闘に入ります」
「了解!」
「それならね!」
 こうしてだった。ロンド=ベルは全員出撃してだった。シティを護衛しながら布陣した。その彼等の前に姿を現したプロトデビルンは。
「またあいつか」
「本当によく出て来るな」
「全くだよ」
「またあいつか」
「その通りだ。こうしてまた巡り会えた」
 ガビルがだ。上機嫌に彼等に告げる。当然グラビルも一緒だ。
「運命美!」
「おい、その美は前に言ったぜ」
 バサラが冷静に彼に突っ込みを入れる。
「二回言ってもいいんだな」
「一向に構わない」
 そうだというガビルだった。
「様式美もまた美の一つ」
「まあそうだな」
「おい、それで納得するのか」
 宙はバサラのその言葉に驚いて突っ込みを入れた。
「相変わらず何かが違うな」
「俺はそれでもいいと思うからな」
 バサラはこう返すだけだった。
「あいつがいいっていうんならいいだろ」
「そういうことかよ」
「まあそうだな」
 そんなやり取りの後でだった。ガビルは。
「さて、それではだ」
「やるってんだな」
「今回も」
「全軍攻撃美!」
 ガビルが指示を出した。
「グラビル、我等も行くぞ!」
「ガオオオオオオオン!」
 グラビルも応えてだ。そうしてであった。
 彼等も戦いに入る。それはかなり激しいものだった。
 その中でだ。バサラは歌い続けていた。
 そのうえでガビル、グラビルの前にいる。ガビルはそのバサラに対して言う。
「そこの御前」
「ああ、何だ?」
「御前は歌っているのだったな」
「それが俺のやり方だからな」
「ふむ。貴様のその歌」
 それを受けながらだ。彼は言うのであった。
「妙に心地よい」
「そう思うんだな」
「このガビル、そこに美を見出そう」
 楽しげに笑いながらだ。こう言ったガビルだった。
「音楽美というのか」
「何とても言ってくれていいぜ」
「それを感じる」
 こんな話をしながらだ。彼等は戦っていた。そしてだ。
 次第にプロトデビルンの数が減ってきていた。それを見てだ。
 グローバルが言った。
「彼等の今回の襲撃はだ」
「はい」
「どういったものだと思われますか」
「緒戦だ」
 未沙とクローディアにこう述べた。
「それだな」
「では彼等の襲撃は」
「これからですか」
「そうだな。またすぐに来る」
「では艦長」
「今は」
「勝てても油断しないことだ」
 帽子の奥のその目が光る。
「決してな」
「わかりました。それでは」
「警戒体制はこのままですね」
「何時でも敵が襲ってきていいようにしておこう」
 そしてだ。グローバルはこうも言った。
「デトロイドも何時でも出せるようにしておこう」
「モンスターもですか」
「あの機体も」
「そうだ。動けるデトロイドは全てだ」
 まさにそうだというのである。
「出せるようにしておこう」
「総力戦ですね」
「それでは」
「そうだ」
 また答えるグローバルだった。
「またしてもだがね」
「その状況が続きますね」
「今は」
「仕方がない。今は正念場だ」
 グローバルは未沙とクローディアにこうも話した。
「御互いにな」
「プロトデビルンにとってもですね」
 今言ったのはエキセドルだった。マクロス7からモニターを通して話す。
「彼等にとっても」
「おそらく。そうだろう」
「若し彼等がそのアポカリュプシスと関係があれば」
「ああ、それはないだろうな」 
 だが、だった。バサラがそれを否定した。
「あの連中はそのアポカリュ何とかとは無関係だな」
「わかるのですか、そのことが」
「ああ、何となくだけれどな」
 それでもだ。わかるというのである。
「あの連中、いつも美とかいう奴いるだろ」
「あの彼ですか」 
 ガビルのことはだ。エキセドルも知っているのだった。何度も戦ってだ。
「そういえば前の戦いでは」
「俺の音楽に反応したからな」
「そこからおわかりになられるのですか」
「音楽がわかる奴に悪い奴はいねえよ」
 これはまさにバサラの持論である。
「だからな。あの連中はな」
「アポカリュプシスではありませんか」
「あの女が言うにはアポカリュプシスだったよな」
「はい、そうです」
「あれは何か禍々しいものを感じるんだよ」
「しかしプロトデビルンからは」
「全く感じないな、俺は」
 バサラはだ。己が感じ取ったことをそのまま話した。
「だから。俺が見たところ奴等は」
「アポカリュプシスとは関係がない」
「むしろどっかで理解し合える存在かもな」
「そうなのですか」
「俺はそう考えるぜ」
「バサラが言うとな」
 今言ったのはキャオである。
「妙に説得力があるんだよな」
「普通の奴が言ったら暴論だがな」
「しかしこいつが言うとな」
 アレンとフェイもバサラがわかってきていた。
「こいつの直感はな」
「確かなことを当てるからな」
「俺はただ思ったことを言ってるだけだけれどな」 
 バサラにはだ。少なくとも自惚れてはいない。彼にはそれはない。
「今度だってそうだぜ」
「その直感が凄いのよ」
 クェスもこう言う。
「異常に鋭いから、バサラのは」
「だからな。他の奴が言ったら暴論なんだよ」
 ギュネイもこのことを話す。
「けれどバサラが言うとな」
「説得力があるんだよな」
 ビルギットが唸る。
「これまでその直感が外れたことないからな」
「そうね。バサラの勘は違うわ」
 唸っているのはアンナマリーもだった。
「ニュータイプ、いえそれ以上のものがあるわね」
「ニュータイプな」
 この言葉にだ。バサラも反応した。
「何か一時妙にバケモノじみて言われてたけれどな」
「実際そうでもないよな」
「そうよね」
「カミーユさんが言ってたな」
 今言ったのはディアッカだ。
「勘がいいだけだってな」
「ああ。それでもその勘にしてもだ」
 他ならぬそのカミーユが話す。
「やっぱり。バサラにはな」
「負けるんですね」
「バサラの勘は何かが違うんだ」
 カミーユはキラにもこう話す。
「超絶的な勘だよ、本当に」
「そのバサラが言うと」
「じゃあやっぱり」
「プロトデビルンはアポカリュプシスではなくて」
「また別の存在か」
「普通に銀河にいる」
「つまりあれ?」
 今度はミレーヌが話す。
「プロトデビルンはアニマスピリチュアをどうにかすればいいのね」
「それは何とかなるな」
 バサラは今は断言した。
「間違いなくな」
「なるのね」
「あいつは俺の音楽を聴いたんだ」
 そこからまた話すバサラだった。
「だったらな。そこからな」
「ううん、何とかなるんだったら」
「やっぱり何とかしたいよな」
「そうよね」
「できるんなら」
「それで」
 皆も言う。そうしてだった。
 彼等はプロトデビルンについても考えるのだった。そしてだ。
 その中でだ。彼等の中でまた騒動があった。
「だから俺人参は駄目だから」
「えっ、人参パンもですか?」
「駄目なんですか?」
 皆コウが昼食の人参パンを食べないことを見て言った。
「美味しいのに」
「そうよね」
「人参パンって」
「けれど食べられないんだよ」
 困った顔で話すコウだった。
「どうしてもね」
「人参駄目っていったら」
「ええと、他に誰かいたかしら」
「探したら結構いない?」
「そうよね」
 実はコウ以外にはだ。これといっていないのだった。
「うちの部隊って何でも食べる面々ばかりだし」
「中にはそれどころじゃない面子もいるけれど」
「何かが嫌いな人ってね」
「結構少ない?」
「確かに」
「レイちゃんはお肉は駄目だけれどね」
 クリスがこのことを話した。
「それはどうしてもね」
「はい」
 その通りだと答えるレイだった。
「それは駄目です」
「けれど他は」
「いないよな」
「むしろ何が食えないんだて面子はいるけれど」
「それでも」
 いないというのである。そしてだ。
 今のメニューを見るとだ。それは。
「人参パンにミルクに」
「海草サラダにジャガイモと玉葱のスープ」
「それと羊の炙り焼き」
「鰯を煮たものに」
「デザートは林檎」
「こんな感じよね」
「鰯というのは」
 今話したのはアポリーだった。
「頭から食べるものだな」
「そうだな。それがいいというな」
 このことに応えるロベルトだった。
「実際に美味いものだ」
「鰯を頭からか」
 レビもその鰯を食べている。ただ彼女は後ろから食べている。
「それが美味いのか」
「鰯を頭から食えば頭がよくなるっていうよな」
 勝平がそれを話す。
「俺いつも食べてるからな」
「じゃあ食べても同じか?」
「そうよね」
「それじゃあね」
「勝平がそれしてだから」
「意味ないよな」
「絶対にね」
「ちぇっ、俺の何処が悪いんだよ」
 勝平は皆に言われていささか苦い顔になった。
「俺が馬鹿だっていうのかよ」
「まあそう言うな」
「いつものパターンでしょ?」
 宇宙太と恵子がその彼をフォローする。
「その分骨が丈夫になってるからいいだろ」
「そっちに栄養がいってるのよ」
「何かそれじゃあよ」
 勝平も二人の話からあることを察した。それは。
「俺が実際に馬鹿みたいじゃねえか」
「だからそうじゃない」
 ここでアスカが言う。
「あんたが馬鹿じゃなかったら何なのよ」
「何っ!?今何て言ったよ」
「馬鹿って言ったのよ」
 アスカはまた言った。
「あんたがね。馬鹿も馬鹿、大馬鹿じゃない」
「俺の何処が馬鹿だ!」
 遂に怒った勝平だった。
「許さねえぞおい!」
「何よ、やろうっての!?」
「ああ、やってやらあ!」
 いがみ合いに入る二人だった。
「この赤猿!言われておけばな!」
「赤猿ってのは何よ、赤猿は!」
「赤い服着てるから赤なんだよ!」
「あれはプラグスーツっていうのよ。覚えておきなさい!」
「何?プロトタイプドム!?」
「そんな訳のわからないのと一緒にしないで欲しいわね!」
「わかった、じゃあやっぱり赤猿だ!」
 勝平はここにこだわる。
「御前は猿だ、この猿女!」
「あたしが猿ですって!?よくも言ってくれたわね!」
「何度でも言ってやらあ!この猿女!」
 こうしてだった。二人は見事取っ組み合いの喧嘩に入るのだった。
 それを見て。宇宙太が呆れながら言った。
「この二人もな」
「仲悪いわよね」
 恵子も呆れた顔になっている。
「そういう組み合わせだけれど」
「それでもな。何かっていうとな」
「結構喧嘩するわね」
「ああ、本当に仲の悪い奴等だ」
 それに尽きるのだった。
「この連中はな」
「アスカって誰ともこうだけれどね」
「猿っていうよりかはな」
 宇宙太もここで言う。
「まあ。言わないでおくか」
「猛獣だよな」
 代わりにシンが言った。
「こいつはこれだよ。猛獣だよ」
「俺はそこまで言うつもりはなかったぞ」
 宇宙太はシンに唖然として言った。
「トラブルメーカーって言うつもりだったんだよ」
「そんな上等なもんじゃねえよ。こいつは猛獣だよ」
「猛獣って」
「それ以外の何だってんだよ。まあうちにはもう一匹それがいるけれどな。いや、二匹か」
「その二匹は誰なんだ?」
 勇がシンに問うた。
「それじゃあ」
「そりゃよ、オーブの金髪の猿に連邦軍のピンク色の駄猫だよ」
 やはりこの二人だった。
「あいつ等なんてよ。それこそよ」
「待て、そこで言うか」
「何ですってえ!?」
 その二人が出て来て抗議する。
「私達が猿だと」
「猫って何よ、猫って!」
「そのものだろうがよ」
 その二人にも言うシンだった。
「頭の中のレベルがまんまじゃねえかよ」
「猿だというのか!」
「猫だって!」
「そうだよ、二人共な!」
「よし、話は聞いた!」
「それならよ!」 
 二人はここまで聞いてだ。完全にいきり立ちだ。
 シンに飛び掛る。そしてシンも受けて立つ。
 そのうえで喧嘩に入る。そんな彼等を見て一同は呆れ返って言う。
「全く。飯の時にもなあ」
「何時でも何処でも喧嘩する奴等だな」
「特にシンとカガリな」
「仲悪いよな、本当に」
「アスカも参戦してるし」
 常にこの三人と揉めているシンだった。
「しかし。三対一か」
「シン不利だけれどな」
「それでも互角だからな」
「ある意味凄いよな」
「そうよね、猛獣三人相手なのに」
「全然平気って」
「シンは特別なんです」
 シホがここで話す。
「アカデミーでもパイロット能力と戦闘能力はダントツでした」
「戦闘能力もか」
「それも」
「はい、直感で動きますし」
 まさにシンらしいことだった。
「力も凄いですし素早いですし」
「だからか」
「あんだけ強いのか」
「それでなんだ」
「格闘の訓練で敗れたことはありません」
 そこまで強いというのだ。
「ですから。カガリさん達を相手にしてもです」
「全然平気か」
「成程ねえ」
「それでなんだ」
「あれだけの数相手にして平気なのは」
「それでか」
 皆だ。そんなシンを見てあらためて納得するのだった。そして話をしている間にもだ。シンと三人の喧嘩というか噛み合いは続いていた。
「あんた今度こそ死になさい!」
「この私が引導を渡してくれる!」
「ここでね!」
「ああ、やれるものならやってみろ!」
 シンは一歩も引かない。見事ですらある。
「答えは聞いてない!」
「ああ、出て来たね」
 マサトが今の言葉に突っ込みを入れる。
「今の言葉はね」
「ああ、そうだよな」
「もう言ったら丸わかりの」
「まさにあの台詞」
「ここで出るなんて」
「いかんでごわすよ」
 大次郎もそのことにはいい顔をしない。
「例えばおいどんがシンタローーーさーーーんと言うでごわす」
「おい、それだけは止めろよ」
「絶対にな」
 霧生とマサキが速攻で大次郎に言う。
「その言葉を聞くとな」
「金縛りに遭うんだよ」
「その通りでごわす。だから自重しているでごわす」
「不気味な言葉だ」
 ヒイロも言う。
「二度と聞きたくはない」
「何かこの三人にとってはねえ」
「そうだよな」
「トラウマになってるんだな」
「やっぱり」
「気持ちはわかるな」
 今言ったのはカイだ。
「誰だってそんなのはあるからな」
「そういえばカイもだな」 
 盾人がそのカイに話す。
「俺と一緒で。無類の女好きと思われていたよな」
「俺はそこまで女好きじゃないけれどな」
 カイの言葉がぼやきになっている。
「全くよお。何でそうなるんだよ」
「仕方ないな、それは」
 突込みを入れたのはサンシローだ。
「俺達だってな。それこそな」
「色々あるよな。サンシローさん達は特に」
「一矢さんに竜馬さん」
「フォッカー少佐にって」
「それこそ何人も」
「私も多いんですよね」
 笑顔で話すのはユリカである。
「リィルちゃんもそうですし」
「それを言うとな。実際に困るものがある」
 ナタルもであった。
「雰囲気が似ている相手はな」
「いるなあ。誰にも」
「僕も実は」
 アレルヤが暗い顔になっている。
「あのハザルに」
「敵のことは言わない方がいいぜ」
「言うと落ち込むからな」
「それこそ何人いるかな」
「わからないからな」
「サンドマンさんなんか特に」
「いいのだ」
 だがサンドマン本人は全く気にしていない。
「それが面白いのだ」
「あの、それは」
 ブリットが言う。今は仮面での言葉だ。
「言うと複雑になる言葉ですから」
「そうですよ。キバの人ですよね」
「その真似だが」
「何か余計に話がややこしくなってきたな」
「もう滅茶苦茶っていうか」
「雰囲気の話をするとなあ」
「ややこしくなるし」
「誰でもだし」
 本当に誰でもであった。
「わしにしてもじゃ」
「あっ、爺ちゃん」
 兵左衛門まで出て来た。
「常に猫じゃらしを前で振られてしまうがだ」
「ゲキだよな」
「それだよな」
「絶対に」
「全く。困ったものじゃ」
「兵左衛門さんそれだけじゃないし」
 彼にしても厄介ごとが多いのだった。
「ネタ、多いよなあ」
「わしの眼鏡何処じゃ?とか」
「そういうの次から次にだから」
「本当にね」
「どれだけあるのやら」
 そうなのであった。彼もまた然りなのだった。
「私何処かで兵左衛門さんの声聞いたことあるのよね」
「そうそう、そうなんですよ」
 ノリコとトビアが同時に言う。
「八宝とかどうとか」
「その感じで」
「あっ、そういえば私そこじゃトビア君とも」
「ですよね。何かずっと一緒にいたような」
「クリスさんと入れ替わりになったわよね」
「はい、なりました」
 こう二人で言い合うのだった。
「だからクリスさんとは」
「私あまり出番なかったんじゃ」
 クリスは苦笑いと共に話す。
「あちらの世界では」
「それでも一緒だったから」
「そうでしたよね」
「ううん、確かにね」
 クリスもそのことは否定しない。
「あの世界もあの世界で楽しかったって記憶があるわ」
「アイナさんやカティさんもいたし」
「そうね。姉妹でね」
「三人一緒にいたな」
 そのアイナやカティも乗る。
「結構仲のいい姉妹で」
「いい感じだった」
「ああ、大佐もそういうのあるんですね」
 不死身のパトリックが出て来た。
「成程、やっぱり大佐はいい人なんですね」
「何故そういった言葉になる?」
「何となくです」
 それでだとだ。平然と返すパトリックだった。
「御気になさらずに」
「気にしないでいられるものか」
 カティの返答は極めて冷静なものである。
「全く。私はだな」
「俺大佐がいないと駄目ですから」
 素直でないカティをよそにさらに言うパトリックだった。
「その代わり大佐の為なら火の中水の中」
「勝手にしろ」
 一応口ではこう言う彼女だった。
「全く。何だというのだ」
「まあ何ていうか」
「皆久し振りにハメ外してるか?」
「そうよね。何か」
「今の感じって」
 皆もだ。久し振りにリラックスしている。それは確かだ。
「今の雰囲気ってな」
「いいよな」
「ずっと。十一遊星主やハザルとの戦いで」
「色々あったから」
「ちょっとな。緊張が続いたから」
「途中何度か息抜きしたけれど」
 それでもだった。本格的にはなのである。
「今はなあ」
「本当にリラックスしててな」
「いい感じだよな」
「とてもね」
 自然とだ。微笑みさえ浮かべていた。
「この感じだと」
「まだ戦えるっていうか」
「まだまだこれからっていうか」
「そう思えるよな」
「本当にね」
「俺はあれだけれどな」
 ここでオルガが言った。
「あの白鳥女だけは今度会ったらな」
「また言うんだね、あいつのこと」
「しつこい」
 クロトとシャニがそのオルガに突っ込みを入れる。
「オルガあいつと相性悪いね」
「最悪」
「おうよ、あいつとは何時か必ず決着をつけるぜ」
 こうまで言うのであった。
「絶対にな」
「この人達は仲が悪いのか」
 光がそんなオルガを見て言う。
「オルガさんとルリアさんは」
「ううん、別の世界の因縁がね」
「関係ありますわね」
 海と風もそれを話す。
「私はそういうのはこっちの世界ではないみたいだけれど」
「けれど。しがらみは誰もがありますわね」
「私なぞどうなるのだ」
 クリフであった。
「冥神になったのだぞ」
「ああ、それ俺もだよ」
 ジュドーもだった。
「ちょっとな。洒落にならないものがあるんだよな」
「悪役の話はだ」
「止めにしよう」
「それがいいな」
「同意だわ」
 カミーユにコウ、それにジンにカナンだった。
「その話をすると俺も困るからな」
「そうした人間も多いのよね」
 困った顔で話すカナンだった。
「私なんか顔も出したから」
「顔もって」
「そういえばそうか」
「和服着てねえ」
「あれは驚いたね」
「本当に」
「だから止めましょう」
 カナンは困った顔になっていた。
「洒落にならないから」
「そうだよなあ。いい役にしても」
「結構古傷だったりするし」
「洒落にならない傷ねえ」
「あるから」
「また言っちまうんだろうけれど」
 こうした言葉も何気に出る。
「まあそれは言わないで」
「とにかく。お昼食べて」
「プロトデビルンとの戦いだな」
「それのこと考えましょう」
 こう話してだった。とりあえず食事を終わらせる。そうして今度は作戦会議に入るのであった。


第九十九話   完


                     2011・2・22    

 

第百話 捕虜解放

                  第百話 捕虜解放
 プロトデビルンとの戦いについて考えるロンド=ベル。その彼等の調査が進みだ。
 それでだ。すぐにその本拠地がわかったのだった。
「えっ、バロータですか」
「そこにですか」
「奴等の本拠地がですか」
「そこにあるんですね」
「そうだ、そこにある」
 まさにだ。そこにだというのだ。話すのは大文字である。
「今からそこに向かうとしよう」
「わかりました。じゃあ今からですね」
「そのバロータに向かって」
「そうしてですね」
「奴等を倒すんですね」
「決戦ですね」
 こうしてだった。彼等はそのバロータに向かうことになった。それでだ。
 ここでだ。彼等はまた話をするのであった。
「バロータなあ」
「そういえば何回か話出てたっけ」
「詳しい場所がわからなかっただけで」
「それだけだったよな」
「そうよね」
 こんな話をしてだった。彼等もであった。
 バロータに進む。その中でだった。あることも話された。
「そういえばプロトデビルンの軍ってな」
「そうそう、洗脳した人間使ってるんだよな」
「その戦力を俺達に向けてるんだよな」
「じゃあその洗脳を解けば敵の戦力も減るし」
「それにその人達も助かる」
「いいこと尽くめじゃないか?」
 このことに気付いたのだ。
「じゃあ今度からは」
「そうする?」
「敵を取り除く?」
「そうしようか」
「ここは」
「それだと」
 ここでだ。また話をするのであった。
「いや、待て」
「待てって?」
「何かあるの?ひょっとして」
「その洗脳した人達に」
「何かあるんだ」
「ある」
 話したのは金竜だった。強い声で言う。
「洗脳している連中は必ず何処かに集められている筈だ」
「ああ、そうですね」
 ドッカーが金竜のその言葉に頷いた。
「いつも出撃させてる筈もないですし」
「戦力を置く場所が必要だな」
「予備ですね」
「そうだ、その予備戦力を多く場所がある」
 また話す金竜だった。
「そこを襲い敵の戦力を一気に減らすべきだ」
「いい考えですね」
 フィジカも金竜のその言葉に頷く。
「それじゃあ今は」
「よし、じゃあ敵のその本拠地を襲って」
「敵の戦力を一気に減らそう」
「そして洗脳されている人達も解放しましょう」
「ただ。問題はです」
 ここで言ったのはガムリンだった。
「その惑星の場所ですね」
「問題はそこだよな」
「どの星に洗脳した人達を置いているか」
「何処なのかだけれど」
「何処かな、一体」
「その星は」
「とりあえず?」
 今言ったのはだ。ミレーヌだった。
「敵の動きを見ればわかると思うけれど」
「戦力を出している場所がそこだよな」
「本拠地かも知れないけれど」
「けれどそれならそれで」
「敵の動きを見るか、まずは」
「プロトデビルンの」
 こうしてだった。彼等の動きも決まったのだった。
 とりあえずプロトデビルンとの戦いはなかった。だがその動きは見ていた。
 バロータ星系の場所はもう確認していた。それを見るとだ。
 彼等はある星から出撃している。その星は。
「第四惑星だな」
「そうですね。そこから出撃していますね」
「それならそこに入って」
「そのうえで」
「いきなり敵の本拠地に殴り込むのね」
 今言ったのはだ。プロフェッサーだった。
「派手な戦いになりそうね」
「正直成功率は低いです」
 ルリがこう話す。
「可能性はです」
「殆どないとか?」
「やっぱり」
「〇・〇〇〇〇十三パーセントです」
 それだけだというのであった。
「ないに等しいですね」
「何か俺達ってこんなのばっかじゃねえか?」
「作戦の可能性全然ないよな」
「本当に全く」
「これじゃあとてもなあ」
「成功しないっていうか」
「けれどそれでもな」
 彼等はだ。それでもだというのだった。
「やらないといけないな」
「ああ、それじゃあ」
「やるか、第四惑星への殴り込み」
「洗脳している人達の為に」
「ここは」
「よし、わかった」
 ここで頷いたのはだ。全員であった。
「やってやるか」
「それならもう腹括ってな」
「そのひでえ確率を百パーセントにするか」
「そうするか」
「その通りですね」
 ルリもだ。ここで微笑むのだった。
「どれだけ可能性が低くても。成功させるのが私達ですね」
「そういうことだからな」
「それならな」
「一気に突入して」
「解放して一気にな」
「離脱するか」
「そうしましょう」
 こう話してだ。作戦が決まったのだった。
 全軍密かに第四惑星に向かう。そうしてだった。
 惑星の裏側からだ。降下した。
「いいか、洗脳されている人達の場所を突き止める!」
「エネルギー反応の高い場所だ!」
「そこに行き一気に!」
「解放してそして!」
「離脱だ!」
 指示が次々に下る。
「そうするぞ!」
「いいな、行くぞ!」
「今からだ!」
「出撃だ!」
 こうしてだった。彼等はだった。まずはエネルギー反応を見た。するとだ。
 惑星のあるポイントにだ。それがあった。
「あったな」
「ああ、あそこか」
「あそこに行ってそうして」
「解放だ」
「いいな」
「そうするぞ」
 こう話してだった。彼等はだ。
 そのポイントに向かう。しかしそこには既にだ。
「やはり来たな!」
「ガオオオオオン!」
「げっ、あの美野郎!」
「それにあのでかいのも!」
「またいやがったか!」
「あの二人かよ!」
 ガビルとグラビルだった。いるのは彼等だった。
「あの連中かよ」
「糞っ、腐れ縁にも程があるだろ」
「全くよ、ここでもかよ」
「奴等と戦うんだな」
「さて、戦いだ!」
 だが、だ。ガビルは上機嫌で言うのであった。
「この戦いは防衛美!」
「どういう意味だよ、それ」
「守る美しさ?」
「それ?」
「その通りだ。そして御前達は攻撃美!」
 しっかりとだ。ロンド=ベルの面々にも言うのだった。
「そうなるのだ」
「防衛美に攻撃美」
「つまり攻防かよ」
「そう言うんだな」
「じゃあ俺達だって」
「ここは」
「戦う気がないならここには来ないな」
 また言う彼だった。
「それならだ」
「よし、来るぞ!」
「それなら!」
「やるぞ!」
「ここは!」
 こうしてだった。ロンド=ベルはガビル達に向かう。両軍の戦いがここでもはじまった。
「よし!突入するぜ!」
「ちょっと、バサラ!」
 ここでもだ。ミレーヌはバサラに言う。
「一機で突っ込むつもりなの!?」
「ああ、おかしいか?」
「おかしい以前の問題でしょ」
 ミレーヌは常識から話す。
「普通そんなことしないでしょ」
「俺には普通なんてないんだよ」
「またそう言うのね」
「そうだよ。俺は俺だ!」
 ここで高らかに叫ぶ。ギターも出す。
 それを奏でながらだ。彼はあの台詞を叫んだ。
「俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
「来たな熱き男よ!」
 ガビルも嬉しそうである。
「御前の美、また見せてもらおう!」
「おう、どんどん聴け!」
 バサラもガビルのその言葉を受ける。
「遠慮なくな!」
「そうさせてもらおう!」
「あの二人って」
「だよな」
「あれで案外な」
「馬合ってるよな」
 その二人を見て周りも言う。
「さりげなく言葉も訂正してるし」
「訳のわからない関係だな」
「本当にな」
 こんな話をしているうちにだった。戦いがさらにだった。
 激しくなる。だがロンド=ベルは少しずつ目的地に向かっていた。
「よし、もうすぐだ!」
「もうすぐ辿り着く!」
「そうしたら捕虜の人達を解放して」
「撤退だ!」
「待て」
 ここでだ。言ったのはギジェだった。
「一つ聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「聞きたいことって?」
「一体それ何ですか?」
「急にまた」
「今回捕虜になっている物に地球の者は少ない」
 ギジェが言うのはこのことだった。
「我等の同胞も多いだろう」
「ああ、バッフクランな」
「そういえば多いですよね」
「プロトデビルンって連中とも戦ってるし」
「それならですね」
「やっぱり」
「そしてだ」
 しかもだ。まだあるのだった。
「バルマー帝国もいるし」
「後はグラドスに」
「ゾヴォークの人達もいるし」
「ゾヴォークはいいとして」
 彼等はだ。いいとした。
「ボアザンにキャンベルの人達もいるし」
「他にはゼントラーディとか?」
「色々な人がいるよな」
「やっぱり」
「その中で問題はだ」
 ギジェが指摘するのはだった。
「バッフクランやバルマーの者達はいいか」
「あの連中か」
「ギジェさんやカララさんの同胞ですよね」
「あの人達も」
「私達の同胞かどうかは今は置いておこう」
 ギジェが言いたいことはそこにはなかった。
「彼等は敵だ」
「ええ、確かに」
「それはその通りです」
「そのことですか」
「そうだ。敵であろうとも解放するのだな」
 ギジェの言葉が具体的なものになった。
「また敵になろうとも」
「そんなこと関係ねえよ」
「このままプロトデビルンに洗脳されて利用されるよりな」
「そんなこと全然な」
「いいからな」
 こう話す彼等だった。
「敵とかそんなのな」
「関係ねえよ、今更」
「そうそう」
「気にしないですから」
「捕虜を解放すればまた敵に回る」
 ギジェはまた話した。
「それでもいいのだな」
「だからいいんだよ」
 答えたのはコスモだった。
「そんなこと今更な」
「そんな問題ではない」
 ベスもだ。わかってきたのだ。
「他ならないギジェを見てわかった」
「私をか」
「そうだ。わかったんだ」
 こう話すのだった。
「だからここはだ」
「敵とかそんなの関係ねえ!」
「バッフクランだろうがバルマーだろうが!」
「関係ないから!」
「わかった」
 ここまで聞いてだ。納得した顔で微笑むギジェだった。
 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「では私はもう何も言わない」
「そうか、それなら!」
「一気に行くぜ!」
「そして奴等を倒す!」
「プロトデビルンの奴等を!」
「面白い、来るのだ!」
 ガビルがその彼等を受けて立つ。
「戦う、これこそ戦闘美!」
「また美かよ!」
「それでも今はな!」
「一気に行くぜ!」
「覚悟しやがれ!」
 そこは洞窟だった。そこを目指すのだった。
 彼等は洞窟の前に来た。するとだ。
 一気にだ。バサラが突っ込んだ。
「ここで歌えばいいんだな!」
「ああ、歌ってくれ!」
「一気にな!」
「やってくれよ!」
「よし!いいか皆!」
 バサラはここでもギターを構えた。ミレーヌとレイ達も一緒だ。
「ライブの開始だ!」
「ええ、何時でもいいわよ!」
「派手に奏でるぞ!」
「・・・・・・・・・」
 こうしてだった。ファイアーボンバーのライブがはじまったのだった。
 演奏がはじまるとだ。自然にだ。
 捕虜達は少しずつ目覚めてだ。そうしてだった。
「な、何だ?」
「俺達どうしてこんなところにいるんだ?」
「ここは何だ?」
「何処なんだ?」
「それにこの連中」
「ああ、そうだな」
 彼等はだ。ここで言うのであった。
「ロンド=ベルか!」
「敵だ!」
「何故こんなところに!」
「一体どういうつもりだ!」
「話は後です!」
 綾人がその彼等に告げる。
「今は脱出する方が先です!」
「脱出?そういえば」
「ここってプロトデビルンだよな」
「ああ、そうだな」
「俺達この連中に捕まってたんだ」
「そうだったんだ」
 このことにも気付く。そしてだ。
「糞っ、こうなったら!」
「あの連中ぶっ倒して!」
「脱出するぞ!」
「すぐにな!」
「何だ、この連中」
 ここでだ。火麻が言った。
「俺達とリアクション変わらないよな」
「ああ、何かな」
「外見も言葉遣いもな」
「バッフクランでもバルマーでも」
「全然な」
 このことに気付いたのだった。他の面々もだ。
「変わらないんだな」
「そうなんだな」 
 このことにも気付いたのだった。そしてである。 
 あらためてだ。凱が彼等に叫ぶ。
「皆で脱出するぞ!」
「あ、ああ」
「そういえばそれだな」
「とにかく今はここから脱出しないとな」
「話がはじまらないな」
「そうだ。脱出だ!」
 また叫ぶ凱だった。
「わかったな!」
「皆洗脳が解けたな!」 
 バサラがこのことを確認する。
「それならだ!」
「あんた達は早く脱出してくれ!」
「ここは俺達が後詰になる!」
「今はな!」
「だから早く脱出を!」
 こう捕虜達に告げる。それを受けてだ。
 彼等も脱出する。それでだった。
 まずはプロトデビルンの機体に乗っている彼等を脱出させる。それからだ。
 彼等もだ。敵と戦いながらだ。少しずつ脱出するのだった。
「後詰か」
「そういえばいつも真っ先に突っ込んでるけれど」
「こうして後詰になるのって」
「結構難しいよな」
「何か」
「いや、かなり難しいぞ」
 今話したのはテツヤだった。
「後詰の経験はあるが。やはり慣れないな」
「確かに。これは」
「しかも追いすがって来るのがあの連中だし」
「中々やばいな」
「ここは」
「そんなの気にするこたあねえ!」
 ここでも叫ぶバサラだった。ギターを手にしている。
「追いすがるならな!」
「歌か」
「それかよ、ここでも」
「歌売ってんだな」
「その通りだ!どいつもこいつもな!」
 そしてだった。この言葉だった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!」
「その通りだ!」
 応えたのは大河だった。
「諸君、バサラ君の歌を聴きだ!」
「そのうえでですか」
「この戦場から脱出する」
「そうするんですね」
「その通り、全員脱出する!」
 一人残らずだというのであった。
「いいな、この惑星からだ!」
「了解!」
「それなら!」
「全員で脱出だ!」
「この惑星からな!」
 こうしてだった。戦いながらだ。彼等は撤退するのだった。
 次第にだ。戦場を離脱してだった。
 最後にだ。一斉攻撃を放った。それでプロトデビルン達の軍を退けた。 
 それを受けてだ。ガビルは。
「むっ、これでは」
「ガオオオオオン!」
「そうだ、グラビル怯んではならない」
 数が減ってもだ。それでもだった。
「このまま追うぞ」
「ガオオオン!」
「この星を出ようとも」
 それでもだというのであった。
「あの者達を追うぞ」
「ガオオオオオン!」
「それこそ追撃美!」
「よし、来るなら来やがれ!」
 バサラもガビルのその言葉を受ける。
「俺達は今は逃げきってやる!」
「次の戦いの為にね!」
 ミレーヌもだ。そこにいた。
「今は!」
「逃げ切ってやるぜ!」
 ロンド=ベルは全軍だ。戦場から離脱したのだった。
「そして次の戦いの為に!」
「生きてやるわよ!」
「絶対にな!」
「皆、いいかい!?」
 万丈もここで言う。
「捕虜の人達を護衛するんだ!」
「了解!」
「それを忘れたらね!」
「お話にならないですよね」
「やっぱり」
「そう、それも忘れないことだ」
 こう言うのであった。
「いいね、それは」
「了解です」
「何はともあれあの美野郎の軍勢は振り切りましたし」
「それならですね」
「後は」
「そうだ、この惑星から離脱する」
 グローバルが述べた。
「いいな、今からだ」
「了解です」
「それじゃあですね」
「今から」
 こうしてだった。彼等は第四惑星から離脱するのであった。
 だが、であった。離脱してもだ。彼等は安心してはいなかった。
「まあ捕虜の人達は解放したけれど」
「けれどよね」
「この人達をどうするか」
「それだけれど」
「それは安心することだ」
 その捕虜の責任者、バッフクラン軍の将軍だった者が言ってきた。
「安全圏まで出られたらだ。後は自力で脱出できる」
「大丈夫だっていうんですか」
「そうなんですか?」
「大丈夫なんですか」
「そうだ、我々とてだ」
 こう話す将軍だった。
「それだけの能力はある」
「まあ移動用の艦船もありますし」
 プロトデビルンのその船のことだ。
「それを使ってですね」
「移動できるからですか」
「それで、ですね」
「そうだ。そのことは心配無用だ」
 見ればだ。他の者達もそうだというのであった。
「我々は安全圏まで脱出できればだ」
「後はそれぞれの場所に戻られる」
「諸君等にそこまで迷惑はかけぬ」
「それは安心してくれ」
「わかりました」
 ベスが応えた。
「それではそうさせてもらいます」
「うむ。それにしてもだ」
 将軍はそのベスにだ。こう言うのであった。見れば武骨な顔をした如何にも軍人といった顔立ちの男である。
「君達は我々を助けてくれたがだ」
「そのことですか」
「それは何故だ」
 将軍にしてもだ。そのことを聞かずにはいられないのだ。
「何故我々を助けた」
「そうだ、我々は君達の敵だ」
「それ以外の何者でもない」
「何故敵の我々を助ける」
「それはどうしてだ」
「助けずにはいられないからだよ」
 答えたのはコスモだった。
「だからだよ」
「だからだというのか」
「ああ、そうだよ」
 また言うコスモだった。
「そりゃあんた達は俺達の敵さ」
「うむ、その通りだ」
「けれどな。あんた達はプロトデビルンに利用されていた」
「それでなのか」
「そのあんた達を救えば結果的に奴等の力も削げる、それにだよ」
 ここでだった。話の核心を話すのだった。
「あんた達があのまま利用されるのを見るのもな」
「忍びなかったか」
「そう思ってくれていいさ」
 コスモはここでは幾分素直でなかった。
「俺が言うのはそれだけさ」
「そうか」
「それよりもよ」
 今度はカーシャだった。彼女は将軍に問うのだった。
「あんた達食べ物とか水はあるの?」
「あっ、そうだよな」
「プロトデビルンってものは食わないから」
「水とかは?」
「そういうのはあるんですか?」
「大丈夫ですか?それは」
「安心するのだ」
 こう答えた将軍だった。
「それもある」
「あるんですか、ちゃんと」
「じゃあそのこともですね」
「心配はいらない」
「そうなんですか」
「そうだ、それもある」
 また言う将軍だった。
「そのことも安心していい」
「じゃあまあ」
「とりあえず安全圏までってことで」
「送らせてもらいます」
「そういうことで」
 こう話してだった。彼等はだ。
 解放された捕虜達を安全圏まで送るのであった。そうしたのである。
 その中でだ。コスモはだ。先程の己の言葉を反芻していた。その彼にだ。
 グン=ジェムがだ。声をかけたのだった。
「どうした、元気がないな」
「ああ、おっさんか」
 コスモは彼をこう呼んだ。
「ちょっとな」
「さっきの言葉だな」
「ああ、実はな」
 こう答えるコスモだった。
「俺自身の言葉だけれどな」
「それでも自分でああ言ったことがだな」
「俺はずっとバッフクランの奴等とも戦ってきた」
 コスモはまず彼等から話した。
「それにバルマーともな」
「そうだな。長い間な」
「けれど。さっきはそんなことは構わないと言った」
 そしてそれはなのだった。
「自然と言葉に出た」
「つまり心からの言葉だな」
「俺は自然とバッフクランの奴等を憎いと思わなくなっているんだ」
 そのことにだ。今時分でも気付いたのである。
「不思議な話だよな、この俺が」
「何、全く不思議ではないぞ」
「そうなのか?」
「そうだ。全く不思議ではない」
 また言うグン=ジェムだった。
「わしにしてもだ。変わった」
「そういえばおっさんは最初の頃は」
「ギガノスの汚物と言われてな。暴れ回ったものよ」
 顔を崩してだ。こうコスモに話すのだった。
「随分とな」
「けれど今はここにいるよな」
「このロンド=ベルにな」
「それが変わったってんだな」
「今ではわしもあの小僧達と共に戦っている」
「ケーン達か」
「そうだ、あの小僧達とな」
 親しみを込めてだ。ケーン達をこう呼ぶのだった。
「戦っている。共にな」
「かつては敵同士でもか」
「それと同じだ。イデオン自体がそうだな」
「ああ。カララさんにギジェに」
 二人の顔がだ。実際にその瞼に浮かぶ。
「バッフクラン人ともな」
「そういうことだ。同じなのだ」
「そうだってんだな」
「これで話がわかったな」
「ああ」
 コスモはグン=ジェムのその言葉に頷いた。
「そういうことなんだな」
「そうだ。ではだ」
「では?」
「どうだ、飲むか」
 豪快にだ。笑っての言葉だった。
「そうするか、今から」
「おいおい、ここで酒かよ」
「何だ?飲めないのか?」
「いや、好きだけれどな」
 ロンド=ベルで酒を飲まない人間はいない。見事なまでにいない。
「それでも。今はな」
「敵が何時来るかわからないからか」
「そうだよ。だから酒はまずいだろ」
「わかった。では酒はなしだ」
「何か食うんなら別だけれどな」
 それはいいというのである。
「それで何を食うかだけれどな」
「豚の丸焼きがあるぞ」
 これまた豪快な料理であった。
「どうだ、一気に食うか」
「おい、また凄いボリュームだな」
「戦いだからこそ食う。違うか」
「それはそうだけれどな。それでも」
「何だ?足りんか?」
 豚の丸焼きでだ。こう言うのであった。
「では牛の丸焼きだな」
「っておい、大きくなってるのかよ」
 これにはコスモも驚く。
「おっさんどんだけ食うんだよ」
「だから言っているだろう。食わんとだ」
「戦えないっていうんだな」
「そうだ。だから食うぞ」
「ラーメンか何かにしないか?」
 コスモが言う料理はそれだった。
「そんな豪快なのは今はな」
「駄目だというのか」
「ああ。ちょっとな」
「そうだな。ラーメンも悪くないな」
 グン=ジェムもだ。それで頷くのであった。
「ではだ。十杯程食うとするか」
「量は変わらないんだな」
「だから言っているだろう。食わないとだ」
「戦えないっていうんだよな」
「イデもそうではないのか?」
 ここでこんなことも言うグン=ジェムだった。
「食わんと動けんだろう」
「いや、イデは意志だからな」
 ここでは真面目に答えるコスモだった。
「だからそういうのはな」
「ないか」
「ちょっと。ないな」
 また言うコスモだった。
「飲んだり食ったりするのはな」
「そうか。なら仕方ないな」
「そういうことでな。じゃあホウメイさんとアキトのところまで行ってな」
「うむ、ラーメンをな」
「一緒に食おうか」
「丁度いい、他の面子も呼ぶぞ」
 グン=ジェムは笑いながらこんなことも言った。
「食うのなら大勢の方がいい」
「そうだな。それはな」
 コスモもその言葉には笑顔で返す。
「本当にその方がいいな」
「呼べる奴を全員呼んでだ。行くぞ」
「ああ、それじゃあな」
「よし、行くぞ」
 グン=ジェムは早速たまたまそこにいたモエラに声をかけた。
「ラーメンをだ。食いに行くぞ」
「何か変わった組み合わせだな」
 モエラはまずは二人を見てこう言った。
「コスモとグン=ジェムさんかよ」
「まあ確かにな」
「普通はない顔触れだな」
 それは二人も認める。
「けれどそれでもな」
「今はこうしているのだ」
「そうか。それでラーメンか」
 モエラは二人の話を聞いてから述べた。
「じゃあ今からな」
「食いに行こうぜ」
「他の連中も誘ってだ」
「わかった。それじゃあな」
 モエラも快く頷く。そうしてであった。
 彼等もだ。戦いの前に食事を楽しむのだった。戦いの合間のだ。些細な息抜きであった。


第百話   完


                      2011・2・24 

 

第百一話 安全圏まで

                第百一話 安全圏まで
 捕虜を解放したロンド=ベルはだ。
 そのまま第四惑星から離れる。一旦であった。
「バロータから離れるんだな」
「とりあえずは」
「そうするんですね」
「そうだ、まずはだ」
 ブライトが一同に話す。6
「彼等を安全な場所まで誘導しなければならない」
「そうしてですね」
「そのうえであらためて」
「バロータに入る」
「そうするんですね」
「その通りだ。一旦バロータから離れる」
 また言うブライトだった。
「わかったな」
「了解です、それじゃあ」
「今は離れて」
「捕虜だった人達を誘導して」
「そして安全な場所で、ですね」
「御別れですね」
 こう話しながらだ。彼等はその場所に向かう。その中でだ。
 ガムリンがだ。こんなことを言うのだった。
「とりあえずはいいとして」
「追っ手だな」
「はい、彼等は来ますね」
 こうリーに話すのだった。
「やっぱり。追ってきていますね」
「間違いなくな」
 リーの答えはこうしたものだった。
「来ているな」
「そうですね、やはり」
「それで来てるのはやっぱり」
「あいつだよな」
「他に考えられませんね」
 アルトの言葉にミシェルとルカが言う。
「あのいつも美とかいう奴な」
「それとデカブツだな」
「あの二人ですね」
「一応人間になるのか?」
 クランはそのことを問題にした。
「一方は完全に怪獣ではないのか?」
「一応一心同体なるからな」
「そうなるんじゃないですか?」
 グラビルについてミシェルとルカが話す。
「凄いあやふやだけれどな」
「はっきり言えないですけれど」
「まああの美野郎もな」
 アルトが首を捻りながら話す。
「結構以上にな。わからねえ奴だからな」
「わかるのはあいつだけだな」
「バサラさんだけですね」
 彼だけだというのだ。
「あいつはまた独特だからな」
「はい、あの人だけの世界を持っています」
「正直熱気バサラはね」
「私達にないものを持ってます」
 それはシェリルとランカが見てもだった。
「けれど。あの何ていうか横紙破りなのがね」
「物凄く大きいと思います」
「あの早瀬大尉に勝てる数少ない人間だからな」
 こう言って賞賛するのはエイジだった。
「いやあ、本当にすげえよ」
「だよな。あの年増の小言おばさんにも勝てるんだからな」
 シンがまたしても余計なことを言う。
「俺には無理だぜ。そろそろ更年期障害のな」
「おい、シン」
 クランがそのシンを咎める。
「また御前はそうして。いらぬことを」
「そうだよ。いい加減にしないと」
「また本人が来るぞ」
 キラとブレラも彼を止める。
「いつもそのパターンで痛い目に逢ってるじゃない」
「だからだ。ここはだ」
「っていうか同じ声で言うなよ」
 シンはキラとブレラにそこから突っ込みを入れた。
「どっちがどっちか全然わからねえだろうが」
「いや、そうは言ってもだよ」
 ガムリンもそのシンを注意する。
「君はちょっと。本当に口が」
「おばさんなのは確かだろうがよ」
 まだ言うシンであった。
「もうよ。見事なよ」
「死ぬな、こいつ」
 クランはここでシンの行く末を確信した。
「こんなことを言うからな」
「そうね。ここはね」
「ちょっと離れるべきですね」
 シェリルとランカもこれから何が起こるかわかった。
「もうすぐね」
「そうですね。いつものパターンだと」
「へっ、おばさんは今艦橋で当直だぜ」
 シンはそれを知っているのだった。
「それでどうしてよ。ここまで来るんだよ」
「そう言うがだ」
 オズマも一応シンを咎めはする。
「いつもそう言って後ろから来ているな」
「だから御前もう言うな」
 アルトも真剣に言う。
「本当にどうなっても知らないぞ」
「じゃあ本当にあの更年期のヒステリーおばさんが来るか賭けてやろうか?」
 シンだけが余裕だ。
「まあおばさんだけれど耳だけは凄いからな」
「駄目だ、こいつ」
「また死ぬな」
 トールもサイも匙を投げた。
「いつもいつもこうやってな」
「自分から死にに行くけれど」
「馬鹿か?本当によ」
 ロックオンも呆れている。
「俺こいつ程自滅する奴はじめてだぜ」
「久し振りに会ったけれどな」
 リュウセイもであった。
「こいつは全然変わらねえな」
「本当にザフトのアカデミーで首席だったのか?」
 ここまで言ったのは宗助だった。
「アスランより上だったのだな」
「だからパイロット能力と戦闘能力が凄いんだよ」
 ディアッカはそれで首席になったと話す。
「ペーパーテストは。勘が凄かったからな」
「とにかく獣じみてるから」
 ルナマリアもそれを話す。
「それで首席だったのよ」
「じゃあ人間としては馬鹿なのね」
 小鳥はあっさりと切り捨てた。
「本物の馬鹿ってことね」
「否定しない」
 イザークも断言であった。
「ザフトでも俺の母上に同じことを言ってだ」
「あの時は凄かったですね」
 ニコルはその時のことを思い出していた。その顔が青くなっている。
「普段は静かなあの人が」
「延髄斬りの後ジャイアントスイングがはじまった」
 レイがその状況を話す。
「そして龍虎乱舞から覇王至高拳が三発放たれた」
「おい、死ぬぞそれ」
 全員が突っ込みを入れた。
「何だよ、それ」
「っていうかそこまでやられてたのかよ、ザフトでも」
「それでこれなんだな」
「全然反省しないんだな」
 皆あらためてシンに呆れる。
「何処まで馬鹿なんだ、本当に」
「毎回毎回残骸になってるのに」
「こうしている間にも絶対に」
「来るっていうのにな」
「まああれだよな。おばさんって嫌だよな」
 その懲りないシンはまだ言う。
「肩凝りやら何やらでよ。ストレス溜まってるんだよな」
「あっ、これって」
 セシリーがここで感じ取った。
「まずいわね」
「よし、恒例行事か」
「じゃあまあやばいから離れて」
「そろそろだし」
 皆シンから距離を置くするとだ。
 まだ言っているシンの後ろにだ。黒いシルエットが現れた。目だけが異様に赤く輝いている。
 そしてだ。後ろから手を伸ばしだ。
 彼の頭を掴む。そのまま握り潰さんとする。
「や、やっぱり出た!」
「予想してたけれど怖いぞおい!」
「た、大尉!何時からそこに!?」
「いらしてたんですか!?」
「今来たばかりよ」
 未沙であった。シンの頭を掴みながら言う。
「けれど。会話は全部ね」
「聞こえてたんですか」
「あの、ここシティなんですけれど」
「マクロスの艦橋じゃないですけれど」
「それでもなんですか」
「ええ、全部聞こえていたわ」
 宇宙空間を隔てていてもであった。
「全部ね」
「そ、そうだったんですか」
「す、凄い耳ですね」
「何か超能力者みたいですけれど」
「そういう話は全部聞こえるのよ」
 あまりにも超絶的な未沙の耳である。
 そしてだ。そのシンに対して言うのであった。
「さて、誰がおばさんかしら」
 凄みのある笑みでの言葉だ。
「聞きたいわね。誰かしら」
「そんなの決まってるだろ」
 しかしシンも負けない。
「俺の頭を今掴んでる人だよ」
「そしてその名前は?」
「早瀬未沙ってんだよ」
 最後まで言った。これで全ては決まった。
 シンはその場で残骸にされた。後にはボロ雑巾の様になったその残骸が放っておかれていた。
 皆それを見てだ。呆れながら言うのであった。
「だから止めたのになあ」
「何でいつも言うかねえ、こいつは」
「予想通りの展開だけれど」
「本当に進歩ねえな」
「全く」
 とはいっても誰もシンに同情しない。本当に自業自得だからだ。
 だがそんな話をしている間にもであった。彼等はバロータ星系からの離脱を進めていく。その中でだ。
 美穂がだ。サリーに尋ねるのであった。
「ねえ。これでね」
「ええ。プロトデビルンの予備戦力よね」
「もう。殆ど残ってないわよね」
 サリーに尋ねるのはこのことだった。
「捕虜の人達は全部解放したから」
「そうよね。今はね」
「じゃあ安全圏まで誘導して解放したら」
 それからのこともだ。美穂は話すのだった。
「それからいよいよ」
「プロトデビルンともね」
「決着をつける時なのね」
「そうなるわね」
「はい、そうです」
 二人にエキセドルが話す。
「いよいよその時です」
「来ていますか」
「あのプロトデビルンとも」
「本当に」
「ただしです」
 ここでエキセドルの言葉が引き締まる。
「予備戦力がなくなってもです」
「それでもですね」
「手強いですね」
「やっぱり」
「はい、油断は禁物です」
 まさにそうだというのである。
「それは気をつけて下さい」
「そうですよね。予備戦力がなくなっても」
「それでもですよね」
「まだ彼等の戦力はありますから」
「ですから」
「はい、そうです」
 また言うエキセドルだった。
「おそらく。百万以上います」
「百万以上ですか」
「まだかなりの勢力ですね」
「それだけの数だからこそ」
「それで、ですね」
「気を引き締めていきましょう」
 エキセドルの言葉は真剣そのものだ。
「では。今は」
「はい、それでは」
「追っ手に警戒しながら」
 彼等は安全圏に向かう。その中でだ。
 遂にだ。後方からだった。
「レーダーに反応です!」
「えっ、やっぱり来たの!?」
 メイリンの声を聞いてだ。アーサーが声をあげた。
「来ないで欲しかったのに」
「けれどレーダーに反応が」
「あるんだね、そうなんだね」
「はい、そうです」
 まさにその通りだというのである。
「レーダーは嘘はつきません」
「そうだよね。じゃあ」
 アーサーは溜息を吐き出す。それと共にであった。
 仕方なくだ。こう話すのだった。
「じゃあ。迎撃だね」
「それしかないわね」
 タリアもここで話す。
「戦わないと捕虜の人達も私達もね」
「同じですね。じゃあ」
「ええ、行くわよ」
「では」
 アーサーは表情を元に戻していた。戦う時の顔だ。
 その顔でだ。彼は言うのだった。
「総員出撃」
「よし、わかった」
「それではだな」
 金竜とヒューゴがアーサーのその言葉に応える。
「では行くか」
「そうするか」
「うん、何か君達に言われると元気が出るよ」
 二人に言われてはだった。アーサーも元気を出す。
「それじゃあ。頑張っていこうかな」
「よし、その意気だ」
「行くぞ」
「何かアーサーさんも」
 メイリンは二人の言葉に元気になったアーサーを見て呟いた。
「雰囲気が関係あるんですね」
「そうよ。同じ感じの相手がいればそれだけでね」
 タリアも心当たりがある様に話す。
「元気が出るものよ」
「そうなんですよね。本当に」
 アーサーは今度はタリアににこやかに返す。
「いや、雰囲気が似てるのっていいですよね」
「そうね。本当にね」
「私もそれは同意ですけれど」
 実は彼女もなのだった。
「クスハちゃんを見てると」
「ですよね。私達も何か」
「気が合うのよね」
「それなら気が合う者同士仲良くね」
 どうするか。タリアはさらに話す。
「ここは戦うわよ」
「了解です!」
「それなら!」
 こうしてだった。ロンド=ベルは捕虜達を護る陣になってだ。そのうえで追撃してきたプロトデビルン達を迎え撃つ。彼等をだ。
 その指揮官はというとであった。
「またまたこいつか」
「続くな、おい」
「次から次に」
「よくもまあ」
 ガビルだった。今回もなのだった。
 当然グラビルもいる。彼等はここでも一緒であった。
「行くぞグラビル!」
「ガオオオオオオン!」
 グラビルがガビルのその言葉に応える。
「仕掛ける。これこそだ!」
「これこそ?」
「何だってんだ、それで」
「今回は何の美だ?」
「何だってんだ?」
「強襲美!」
 それであった。今回の美は。
「そのうえで捕虜達を奪い返させてもらうぞ!」
「よし、来るな!」
「それならだ!」
「防いでやる!」
「絶対に!」
 こうしてだった。彼等はだ、敵を迎え撃つのであった。
 ただしだ。今回もであった。
「いいな、諸君」
「はい、今回もですよね」
「攻めるんじゃなくて」
「退く」
「そうしながら戦うんですよね」
 こうジェフリーに対して述べるのだった。
「ここはそうして」
「そのうえで捕虜の人達を安全な場所まで、ですね」
「誘導する」
「それが目的ですよね」
「その目的を忘れないことだ」
 また言うジェフリーだった。
「わかったな」
「了解です」
「それなら今は」
「何とか安全圏まで」
「下がりましょう」
「っていうか」
 ここで敵軍を見る。そのガビル達をだ。
 見事なまでに一直線にだ。ロンド=ベルに向かって来る。そこに戦術はなかった。
「突撃!突撃美!」
「ガオオオオオン!」
「ゲペルニッチ様の為に、捕虜達を取り戻すのだ!」
「連中考えなしにきますし」
「ここは仕掛けますか?」
「そうしませんか?」
「そうだな。確かにな」
 ジェフリーも彼等のその言葉に頷く。
「それがいいな」
「じゃあ機雷出しますか?」
「それを撒布しますか?」
「それはどうでしょうか」
「いや、それよりもだ」
 だが、というのだった。ジェフリーは考える顔で述べた。
「ここはネットを仕掛けるとしよう」
「ネットですか」
「それで足止めをしてですか」
「そのうえで」
「そうする。ここで大事なのは彼等の動きを止めることだ」
 まさにそうだというのである。それだとだ。
「だからだ。ここはだ」
「そうですね。機雷よりもここはネットの方がいいですね」
「じゃあそれを仕掛けて」
「それで防ぎますか」
「連中を」
「よし、決まりだ」
 ジェフリーはまた言った。
「ネットを用意する、いいな」
「了解です」
「それならすぐに」
「ネットを用意しましょう」
 こうしてだった。彼等はネットを放った。それにだった。
 ガビル率いるプロトデビルンの大軍をだ。それで止めたのだった。
「くっ、これは!」
「よし、かかったな!」
 それを見てだ。ロンド=ベルの面々は喜びの声をあげた。
「これで足止めができる!」
「捕虜の人達も撤退させられる」
「今のうちにな」
 彼等の撤退も急がせる。そのうえでだ。
 ネットを脱出した彼等にだ。総攻撃を仕掛けるのだった。
「いいか、諸君!」
「はい!」
「ここはですね!」
「戦うのは三分だけだ!」
 また指示を出すジェフリーだった。
「そして三分が終わればだ」
「捕虜の人達と合流して」
「そのうえで、ですね」
「安全圏まで」
「そうだ、退く」
 そうするというのだ。
「それでいくぞ」
「ただしです」
 ここでだ。エキセドルも言うのだった。
「敵の数はできるだけ減らしておきましょう」
「追撃の敵は少ない方がいい」
「そういうことですね」
「はい、そしてです」
 さらにであった。エキセドルが言うのはこのこともあった。
「これからの戦いの為にもです」
「敵の数を減らす」
「それもありますね」
「戦いはここだけじゃありませんから」
「そうです。今は敵の数をできるだけです」
 減らすというのであった。戦略的な目的でもだ。
「ここの敵は七割です」
「七割を減らせば」
「後がかなり楽だからこそ」
「そうしますか」
「そうしましょう。それが目標です」
 こうしてだった。ロンド=ベルはその三分の間にだ。プロトデビルンの軍勢と懸命に戦うのだった。
 一斉攻撃が続く。お互いにだ。
「突撃だ!突進美!」
「今度はその美かよ!」
「美っていっても豊富なんだな!」
「それは褒めてやるぜ!」
「しかしな!」
 ガビルに言い返しながらだ。その中でだ。
 ロンド=ベルは攻撃を続ける。エネルギーも弾丸も気にしない程だ。
 それを放ってだ。彼等は戦うのだった。
 バサラはだ。ミレーヌと共に飛びだ。
 ここでもギターを鳴らして歌う。その中でだ。
 ミレーヌはだ。バサラに対して釘を刺していた。
「いい、三分よ」
「一曲あるかどうかだな」
「ええ、一曲で終わりよ」
 こう彼に言うのであった。
「わかったわね」
「わかったさ。三分を過ぎたらな!」
「ライブは終わりよ!」
 バサラにわかりやすいようにとの言葉だった。
「わかったわね!」
「ああ、わかったぜ!」
 バサラもミレーヌに応えてだ。それでだ。
 派手に歌う。敵の中を飛び回りながら。
 その歌を聞いたプロトデビルン達はだ。動きを止めていく。それはかなりの効果があった。
 それを見てだ。グラビルが自然にだ。
 前に出ようとする。しかし。
 そのグラビルにだ。バサラは単身向かうのだった。
「よし、俺の歌を聴きに来たな!」
「ちょっと、バサラ!」
 そのバサラをだ。ミレーヌが止めようとする。
「まさかあいつに」
「ああ、聴かせてやる!」
 ここでもだ。やはりバサラはバサラだった。
「あいつにもな!」
「相変わらず無茶ね」
 ミレーヌはここでも呆れてしまった。
「武器持たないで突っ込むんだから」
「武器?そんなのいらねえからな」
「あんたの武器は歌ね」
「ああ、そうだ」
 まさにその通りだとだ。自信に満ちた笑みで言い切る。
「これだよ。これがな」
「あんたの武器ね」
「その通りだ。だからやるぜ!」
 激しいテンションで言う。
「あのデカブツにもな!俺の歌をな!」
「じゃあ三分よ!」
 もうミレーヌも止めない。時間を告げるだけだ。
「三分で。歌ってよ!」
「ああ、歌ってやるぜ!」
 バルキリーをドリルの如く回転させながらだ。そのうえで言う。
「俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
 彼も歌う。そしてだ。
 シェリルとランカもだ。ステージにいた。
 そのうえでだ。シェリルが隣にいるランカに告げる。
「いい、今回はね」
「三分ですね」
「短いわ。けれどそれでも」
「はい、歌いましょう」
 こうだ。ランカもシェリルに言う。
「ここは。絶対に」
「そうよ。いい、皆!」
「聴いて!」
「あたし達の歌を!」
「ここでも!」
 二人もだ。マクロスから歌う。それでプロトデビルン達に聴かせる。
 彼等の歌がだ。次第にだった。
 プロトデビルン達を止めだ。そこに。
 ロンド=ベルの攻撃が来る。それでだった。
 ロンド=ベルはだ。彼等に対して。その目標を達成した。
「七割です!」
「よし、いったな!」
「目標達成か!」
「それで時間は!?」
「それは」
「三分です」
 述べたのはエキセドルだった。
「今で三分です」
「丁度か」
「じゃあもうこれで撤退か」
「そうするか」
「そうしようか」
「はい、既に捕虜の方々も安全圏に達しようとしています」 
 彼等もだ。そうなっているというのだ。
「目的は達しました。それならです」
「よし、撤退だな」
「もうこれでな」
「戦うことはないし」
「それなら」
「全軍撤退します」
 イーグルが指示を出した。
「速やかに艦艇に戻って下さい」
「急ぐのじゃぞ」
 アスカは彼等に急ぐように話した。
「敵は待ってはくれぬぞ」
「はよ帰ってくるんやで!」
「待ってますね」
 タータとタトラも彼等に声をかける。
「時間はないで!」
「帰ったらお茶にしましょうね」
「何かあの姉妹ってな」
「そうよね。いつも思うけれど」
 ロンド=ベルの面々はその二人を見てだ。戻りながらこう話すのだった。66
「正反対だよなあ」
「見事なまでに」
「タータさんの声ってそういえば」
 皆ここで遥を見た。彼女をだ。
「似てるしなあ」
「そうよね。何気に」
「そっくりだったりするし」
「否定できないわね」
 その遥も苦笑いであった。
「タータちゃんとはね。不思議な縁を感じるわ」
「そやそや。うちもそう思うわ」
 そしてそれはタータもであった。
「ほんまよお似てる思うわ。自分でもね」
「そうよね。何かね」
「そうなんだよなあ」
「この二人もなあ」
「本当に似てるな」
「ちょっとな」
 そしてだ。タトラもであった。彼女もだ。
「アイナさんやテュッティさんもだけれど」
「十七歳の声?」
「全力で否定したいけれど」
「それよね」
「そんな声だから」
「はい、私は十七歳なんですよ」
 タトラもにこりと笑ってこう話す。
「永遠の十七歳なんです」
「まあ十七歳と何ヶ月?」
「それでいいか」
「本人もああ言ってるし」
「それなら」
 無理矢理納得する彼等だった。そんな話をしながらの撤退だった。
 そしてだ。バサラもだ。
 グラビルが大きく揺れ動いていた。バサラのその音楽を受けてだ。
 それを見てだ。バサラも言うのであった。
「よし、俺の歌が届いてるな」
「もう一押し?」
「ああ、いけるぜ!」
 言いながらギターを持ちなおすのだった。
「もう一曲!いくぜ!」
「悪いけれどそれは無理よ」
 しかしだ。そのバサラにだ。マヤが告げる。
「バサラ君もミレーヌちゃんも帰って」
「んっ?三分か?」
「もうですか」
「ええ、そうよ」
 まさにだ。その三分だというのだ。
「三分になったから。それじゃあね」
「ああ、ミレーヌちゃんいいか?」
「少しいいかな」
 シゲルとマコトがここでミレーヌに話す。
「バサラをだけれど」
「絶対に連れて帰ってね」
「絶対にですか」
「いや、バサラはわからないから」
「急に突拍子もない行動に出るからね」
 彼等から見ればだ。バサラの行動はそうしたものに他ならなかった。
「だからね。ここはね」
「宜しく頼むな」
「いい?バサラ君」
 マヤも心配そうにバサラに声をかける。
「今回は絶対に戻って来てね」
「何か俺全然信用ねえな」
「常識に捉われなさ過ぎるのだ」
 今言ったのはイリアだ。
「全く。常にだからな」
「いや、そう言うイリアさんの格好もかなり」
「軍人の軍服かな」
「違うだろ、あれ」
「ロック歌手のステージ衣装だろ」
「そうだよな」 
 多くの人間がそれではというのだった。
「ちょっとなあ」
「あれはないよな」
「軍服にはとても」
「洒落にならないから」
「私のことはいいだろう」
 イリアは彼等にたまりかねた口調で返した。顔もそうなっている。
「アクシズはそれでもいいのだ」
「軍服に統一ないんだ」
「それもまずいよな」
「ザフトも結構怪しいけれど」
「軍服改造してた奴もいるから」
「正確に登録はされてるわよ」
 今度はルナマリアがたまりかねた口調になっている。
「それに今はタイツはいてるから」
「タイツなあ」
「スカートの下にタイツか」
「何気に多いよな」
「確かに」
 今度はタイツの話にもなる。
「エマさんもそうだし」
「ハマーンさんもタイツ好きだし」
「女の人のタイツはいいよな」
「だよな」
「男のタイツは駄目だけれど」
 それはしっかりと否定される。そんな中でだ。
 彼等は撤退していくのであった。バサラもあらためて言われる。
「で、いいわね」
「ああ、撤退だよな」
「いい?ここは絶対に撤退するわよ」
 ミレーヌが彼に釘を刺す。
「わかったわね」
「わかってるさ。それじゃあな」
 こうしてであった。バサラも今回は素直に頷いてであった。
 そのうえでだ。彼も戦場から離脱する。だがその時にだ。
 グラビルに目をやってだ。そうして彼に言うのだった。
「おい、そこのでかいの!」
「ガオッ!?」
「まただ!また俺の歌を聴かせてやるからな!」
「ガオオオオオン!」
 グラビルも彼の言葉に応える。そうしてだった。
 バサラは一気に戻ってだ。マクロス7に着艦した。その時にはだ。
 捕虜達もだ。安全圏に入っていた。その彼等がロンド=ベルに言う。
「まさか敵に救われるとは」
「地球人にな」
「予想外だ」
「本当にな」
 彼等は口々にだ。こう言うのだった。
「しかし本当にな」
「あんた達に救われたんだな」
「今こうしてな」
「そうなんだよな」
「地球人も」
 そしてだ。彼等はだ。このことに気付いたのだった。
「悪い奴等じゃない」
「劣ってもいない」
「そうなんだな」
「人間か」
「人間なんだな」
 このこともだ。わかってきたのだった。
「俺達と同じな」
「人間なんだな」
「生まれた星は違っても」
「同じなんだな」
「それは俺達もわかったことだ」 
 彼等に応えたのはコスモだった。真剣な顔だ。
「あんた達も。俺達と同じだったんだな」
「人間だったのね」
 カーシャも話す。
「そうだったのね」
「姿形が多少違ってても」
「別の銀河にいても」
「同じか」
「そうだったのか」
 御互いにだ。それを理解したのだった。そしてだ。
 捕虜達はそれぞれの場所に戻っていく。彼等はこうして元の場所に帰った。そしてだ。
 別れの後でだ。再びであった。
「じゃあ。あらためてな」
「ああ、バロータにまたな」
「殴り込みだな」
「そして今度こそな」
 今度こそ。何をするのかも言い合う。
「プロトデビルンとの戦いも終わらせるか」
「奴等、ぶっ潰すぜ」
「本当に今度で」
「何があっても」
「ああ、ちょっと待ってくれるか?」
 意気あがる彼等にだ。バサラが声をかけた。
「ぶっ潰すっていうのはな」
「それは?」
「駄目っていうの?」
「ひょっとして」
「ああ。プロトデビルンともな。和解できるからな」
 それでだというのだ。彼は潰すというのには反対なのだった。
「倒すとかそういうのは止めておくか」
「それはか」
「止めてか」
「じゃあ一体?」
「どうやって話し合うんだよ、連中と」
「それなら」
「話し合うんじゃねえよ」
 そうではないというバサラだった。
「言葉よりもずっといいのがあるからな」
「ああ、歌かあ」
「それだよな、やっぱり」
「歌だよな」
「ああ、その通りだ」
 まさにだ。その歌だというのである。
「あのでかいのも俺の歌を聴いたんだ。だから絶対にな」
「そんなことができるのだろうか」
 それに異議を呈したのはシリウスだった。
「歌で。本当にプロトデビルン達との戦いを」
「正直難しいと思うけれど」
 シルヴィアも信じていなかった。
「幾ら何でも」
「しかしだ。私達も今までバサラを見てきた」
「そうなのよね、それよ」
 しかしだ。ここで二人はこうも言うのだった。
「若しかしたら。本当にだ」
「それができるかも知れないわね」
「少なくともやってみる価値はあるよな」
 アポロは乗り気だった。彼はだ。
「実際にな。歌でな」
「よし、それじゃあ行くぜ」
 バサラは威勢よく言った。
「連中との戦い、俺の歌で終わらせてやるぜ!」
「本気で言うから凄いのよね」
 ミレーヌはこう言いながらもバサラの傍にいる。
「けれど。ここまできたらね」
「ああ、やるぜ!」
 また言うバサラだった。
「じゃあ今はな」
「今は?」
「飯にしないか?」
 それはどうかというのである。
「殴り込んで歌う前にな」
「ああ、食事か」
「そういえば第四惑星に突入して脱出するまで」
「全然食ってなかったよな」
「そうだったよな」
 皆このことに気付いた。そうしてだった。
 不動がだ。豪快にこの料理を出してきた。
「ならばちゃんこだ!」
「何でちゃんこなんだ?」
「この人いつもいきなり言うけれど」
「どうしてちゃんこなんだよ」
「意味がわからないけれど」
「ちゃんこは身体にいいからだ」
 それでだというのである。
「それに皆でたらふく仲良く食べられる」
「それでちゃんこなんですか」
「じゃあ。お野菜に」
「鶏肉に魚も用意して」
「それで食べるか」
「そうしようか」
 皆何だかんだで乗る。そしてだった。
 全員でそれぞれ鍋を囲んだ。そのうえでだ。 
 材料を次々と入れて食べていく。その中でだ。
 皆でだ。鍋をつつく。バサラが鶏肉を食べながら言う。
「こうした鍋もいいよな」
「あれ、そういえばバサラって」
「いつも滅茶苦茶食べてるけれどスタイルいいよな」
「俺達もそうだけれど」
「バサラもだよなあ」
「もう如何にもシンガーって感じで」
「すらっとしてるな」
 皆バサラのそのスタイルを見ながら話していく。
「やっぱり歌か」
「歌うからか」
「それでカロリー消費してるんだな」
「だからか」
「ああ、そうだろうな」
 自分でもそれに頷くバサラだった。
「俺も実際な。歌った後かなり腹減るからな」
「だからか」
「歌ってカロリー消費するんだな」
「じゃあダイエットにもいい?」
「そうなんだな」
「そういえば私も」
 ミレーヌもここで言う。
「ライブの後はお腹減るわね」
「ファイアーボンバーのライブは凄いのよね」
 小鳥もそれを見て知っていた。
「跳んだりはねたりだし。暴れ回るし」
「バサラもミレーヌもテンション高いんだよな」
「凄い勢いだからな」
 皆もそれを話す。
「だからか。歌った後って」
「カロリー消費するんだな」
「そういうことなんだ」
「そうだろうな。まあ俺は別に食事制限はしていないけれどな」
 実際にそうだというバサラだった。
「というか食わないとな。身体がもたないからな」
「そうそう。とてもね」
 ミレーヌもだった。
「食べないと死ぬんだよ」
「体重の半分はね」
「それは嘘でしょ」
 アクアがすぐにミレーヌに突っ込みを入れる。
「体重の半分はモグラじゃない」
「まあそれは誇張ですけれど」
「それだけ沢山食べてるってのはわかるけれどね」
 そしてだ。アクアはこんなことも言った。
「私は食べても。背は変わらないのよね」
「じゃあ何が変わるの?」
 プリメーラがそのアクアに尋ねた。
「食べて」
「胸なのよね」
 連邦軍の軍服の上からもだ。それがはっきりわかった。
「そっちが大きくなるのよ」
「胸か」
「そういえばアクアさんの胸ってな」
「日増しに大きくなるよな」
「いつも派手に動くし」
「というか動き過ぎ」
「そっちが大きくなるのよ」
 少し困った顔で話すアクアだった。
「何でかしらね」
「私はそういうのないのよね」
 プリメーラは残念そうに話す。
「胸って大きくならないのよ」
「プウ」
「モコナもらしいわよ」
 プリメーラはモコナのその言葉を翻訳して話した。
「というかモコナ何も食べないのよね」
「それはそれで恐ろしい話ね」
 アクアはそれを聞いて述べた。
「どういう身体の構造なのかしら」
「それが私にもわからないのよ」
 こんな話をしながらだ。皆でちゃんこを食べるのだった。
 そして食べ終わってからだ。それからだった。
「最後はどうする?」
「おうどん?それともお餅?」
「で、雑炊」
「どれにしたものかな」
「それぞれの鍋で分けていい」
 刹那が話す。
「それでだ」
「ああ、それだと皆好きなの食べられるな」
「別に統一することないしな」
「じゃあそれぞれの鍋でうどんなりお餅なり入れて」
「雑炊もな」
「そっちも入れるか」
 雑炊のことも話すのだった。
「鍋の後は。そういうのを食べないとな」
「食べた気がしないからな」
「じゃあ。最後は最後で」
「そうしようか」
 こう話してだった。そのうえでだ。
 彼等は最後の最後までちゃんこを楽しんだ。そうしてだった。
 腹ごしらえを済ませてだ。あらためて戦いに向かうのだった。


第百一話   完


                       2011・2・28  

 

第百二話 合体ガビグラ

               第百二話 合体ガビグラ
 ロンド=ベルは再びバロータ星系に入った。するとだ。
 すぐにだ。敵の存在を確認したのだった。
「また随分と早いな」
「そうだな」
 ロウがエドの言葉に頷く。
「それだけ敵も必死ってことか?」
「予備戦力がもうないからな」
 そう察する彼等だった。
「じゃあ。ここはな」
「もう戦いだな」
 こんな話をしてだ。警戒態勢に入るのだった。
 その中でだ。イライジャが偵察から帰って来て話す。
「遭遇まで二時間だ」
「二時間か」
「少し時間があるな」
「敵はあの二人だ」
 まずはだ。彼等だというのだ。
「いつも美と言う奴と。でかいのだ」
「あの二人なあ。いつも来るな」
「プロトデビルンって二人だけか?」
「まさかな」
「他はシビルとかもいるけれど」
「今残っているのは二人だけか?」
「ひょっとして」
 こう話しているとだ。ここでだ。
 サンドマンがだ。彼等に話すのだった。
「いや、まだいる」
「あれっ、プロトデビルンってまだいるんですか」
「あの二人以外にも」
「そうなんですか」
「まずはだ。そのシビルだ」
 サンドマンは最初に彼女の名前を出した。
「それに前に戦った二人だ」
「ああ、ギギルにバルゴっていう」
「あの連中もですね」
「そういえば連中まだ生きてましたっけ」
「どっちも」
「後、連中のボスか」
 その存在についても話される。
「ゲペルニッチ」
「これで六人」
「いや、あの美野郎とでかいのは一心同体だから五人か」
「五人だけか?」
「私もそう思っていた」
 だが、だった。サンドマンはここでさらに話すのだった。
「彼等は五人とだ。しかしだ」
「しかしですか」
「まだいるんですか」
「連中は」
「はい、以前のラクスで手に入れた古文書の解読の結果ですが」
 エキセドルもそれを話す。
「プロトデビルンは七人いるとわかりました」
「じゃあ後二人?」
「二人いるんですか」
「まだ。他にも」
「はい、二人です」
 また言うエキセドルだった。
「二人いるのです」
「その二人が問題だよな」
「ああ、どういった奴かな」
「どうせとんでもない奴等だろうけれど」
「それでも」
「おそらくはです」
 エキセドルがここで彼等に話す。
「宇宙空間でそのまま行動できます」
「シビルと同じで」
「それが可能なんですね」
「後の二人も」
「そう思っておくべきです」
 エキセドルの言葉は学問的なものだった。
「それもまた」
「了解です」
「じゃあ。どんな奴が出て来てもですね」
「驚かないようにして」
「そうしますか」
「今は」
「はい、それではです」
 こう話している間にだった。既にだ。
 敵はそこまで来ていた。それを受けてだ。
「では今から」
「総員出撃か」
「いつも通り」
「ああ、行くぜ!」
 バサラはもう己のバルキリーに乗り込んでいた。勝手に出撃しようとさえしている。
「今からな!」
「っておい!勝手に出撃するな!」
「幾ら何でもそれは止めろ」
 すぐにダッカーと金竜がそのバサラを止める。
「とりあえず指示を待て」
「システムがオールグリーンになってからだ」
「俺は待つのが嫌いなんだけれどな」
「あの、バサラさん」
「それは幾ら何でも」
 美穂とサリーもこれには呆れる。
「少しだけですから」
「待っていて下さい」
「ああ、それじゃあな」
 バサラもそこまで言われてはだった。とりあえず落ち着いた。
 そしてそのうえでだった。彼は今は待つのだった。
 そしてだ。バサラの番はだ。
「では御願いします」
「どうしても行かれたいみたいですし」
 マクロス7からだ。最初に出ることになった。
「システムオールグリーンです」
「では熱気バサラさん、どうぞ」
「よし、行くぜ!」
 いつものテンションで出撃するバサラだった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「では次の方御願いします」
「順次出撃して下さい」
 こうしてだった。彼等は次々に出撃するのだった。
 全機出撃するとだった。もうそこにはだ。
 プロトデビルンの大軍が展開していた。そして。
「よし、また会ったな!」
「やっぱりなあ」
「あの連中かあ」
「一心同体コンビ」
「本当に元気だな」
「そう、再会美!」
 今度の美はこれだった。
「銀河で再会する。これもまた美!」
「いい加減強引になってきてるよな」
 サブロウタがこんなことをぼやいた。
「何でもかんでも美だからな」
「そうだな。自覚していないところがまただな」
 ダイゴウジも呆れている。
「俺もあそこまでは無理だ」
「しかもよ。あいつの声ってよ」
 リョーコが首を捻りながら話す。
「フィジカさんにも似てるしな」
「そうだ、それにだ」
 ノインもであった。
「あの声にだ。私は聞き覚えがある」
「だよな、あたしもだよ」
 リョーコはノインのその言葉に頷いた。
「桜の木がどうしたってな」
「その世界だったな」
「何かその世界ってね」
 エルもそれについて話す。
「私も妙に愛着あるけれど」
「何とか大戦か?」
「そうだったな」
「今度はそっちの世界なんですね」
 ヒカルが少し楽しそうに話す。
「何か私達って色々な世界に関係があるんですね」
「そう。私も」
 イズミもであった。
「世界は石灰では覆えない」
「おい、そこで石灰が出る意味がねえぞ」
 リョーコはいつも通りイズミに突っ込みを入れる。
「何でなんだよ」
「何となく」
「何となくでその強引な駄洒落かよ」
「石灰一」
「ああ、もうういいからな」
 このやり取りからであった。とりあえずだ。
 両軍は対峙に入った。するとすぐにだ。
 マックスがだ。フォッカーに尋ねた。
「少佐、ここは」
「そうだな。一気にいくべきだな」
「それでは反応弾をですね」
「ああ、全機いいな」
 バルキリーに乗っているパイロット達への言葉だった。
「最初から反応弾だ」
「それで吹き飛ばしますか」
「そうしますか」
「そうだ、一気にな」
 そうするというのだ。そしてだった。
 バルキリーだけでなく全機体でだ。一気に進むのだった。
「よし、今から!」
「この戦いは一気に終わらせるぜ!」
「そうするわ!」
「来たか」
 ガビルはその彼等を見てだ。まずは余裕だった。
 そのうえでだ。グラビルに顔を向けて言うのだった。
「ではグラビルよ」
「ガオオオオオン!」
「まずはいつも通りいくぞ」
 そしてだ。ここでもだった。
「普通美だ!」
「普通にも美があるんだ」
「そうみたいですね」
 ジュンがアキトの言葉に頷く。
「どうやら」
「何か色々な美があるんだな」
「ある意味凄いと思います」
 ルリでさえ認めることだった。
「純粋美はわかりますが」
「純粋美?」
「っていうと?」
「それは」
「一矢さんです」
 彼こそがだ。その純粋美だというのである。
「一矢さんこそが純粋美です」
「俺がか」
「はい、その御心がです」
 これまでの一矢を見ての言葉である。
「まさに。そうです」
「俺は別に」
「私がそう思っているだけですから」
 ルリは微笑んでだ。こう一矢に述べた。
「気にしないで下さい」
「そうか。それなら」
「はい、それでは皆さん」
 ルリがあらためて言う。
「このまま。一気に総攻撃に移りましょう」
「ありったけの攻撃で!」
「決めるか!」
 こうしてだった。彼等はプロトデビルンの大軍に突進してだ。
 そのうえでだ。最初からだった。
 派手に攻撃を仕掛ける。それでいきなり戦いの主導権を握った。
 ガビルとグラビルにもだ。攻撃が集中する。
「何か何度も顔を見合わせてるとなあ」
「妙に愛着もわくけれど」
「それはそれこれはこれよ!」
「覚悟しやがれ!」
「ふむ、見事な攻撃だ」
 ガビルはその豪雨の如き攻撃を避けながら言う。
「グラビルも攻撃を受けているな」
「ガオオオオオン!」
「このままでは危ういな」
 こう言うのであった。
「それではだ」
「それでは?」
「っていうと?」
「切り札でもあるのかよ」
「まさか」
「そう、ある」
 まさにあると答えるガビルだった。
「このガビルとグラビルはまさに一心同体」
「だからだってのか?」
「切り札があるってのかよ」
「そのデカブツと一緒に」
「じゃあ何なんだ、その切り札っていうのか」
「それはだ」
 ガビルもだ。いぶかしむ彼等に答える。
「今から見せよう」
「!?何だ!?」
「何だ、一体」
「何をするっていうんだ!?」
 見ればだ。彼等はだ。 
 接近し合いだ。合さった。そして。
 それぞれが一つになった巨大な姿になった。そしてだ。
 グラビルと一緒になったガビルがだ。こう言った。
「これこそ合体美!」
「いや、美はわかったからな」
「それで何だよ、それは」
「その巨大な姿はよ」
「何だっていうのよ」
「ガビグラ!」
 二人の名前が一つになったような名前であった。
「これが我等の名前!」
「ガビグラっていうのかよ」
「一つになったらその名前になるんだな」
「何か。別々になってるよりもな」
「強そうだし」
「ああ、実際にそうだな」
 ライトがここで言った。
「マギーちゃんに調べてもらったけれどな」
「ああ、それ使うの久し振りだな」
「そうだよな」
 ケーンとタップがそのライトに言う。
「敵を偵察するそれな」
「使うの本当に久し振りだよな」
「というか俺も最近使った記憶なかったな」
 ライト自身もそうなのだった。
「まず攻撃だったからな」
「慣れた相手ばかりだったしな」
「それもあったよな」
「そのせいだな。まあとにかくな」
 ライトは二人に応えながらあらためて話す。
「あの合体だけれどな」
「美野郎とデカブツな」
「その合体は」
「どんな奴なのよ」
「こんなのだよ」
 全員にデータを送る。するとだった。
 そのデータはだ。誰もが見て眉を顰めさせるものだった。
「強いな、これは」
「確かに。別々の時よりもずっと」
「厄介な相手になるな」
「そう簡単には勝てないか」
「みたいだな」
 こう話すのだった。それぞれ。
「折角敵の数を減らしたってのに」
「ここでこれは」
「辛いわね」
「こんなデカブツが出て来たか」
「かなり」
「いや、平気だぜ!」
 こう言ったのはバサラだった。
「こんなのな!全然な!」
「あのデカブツもかよ」
「ひょっとして歌で」
「何とかするって?」
「その通りだ!」
 ここでもだ。バサラはバサラだった。
「誰だろうがな!俺の歌でな!」
「そうか、そうだな」
 輝がだ。最初に頷いたのだった。
「例え相手が誰であろうとも。俺達は」
「諦めたらいけないってことだな」
 ヒビキも言う。
「つまりは」
「そうさ。じゃあバサラ」
「ああ、それでいいよな」
 バサラは今度は輝に対して述べた。
「一つになってもな!俺の歌で!」
「わかったわ。それじゃあね!」
 ミレーヌもだ。彼のところに来た。
 そしてレイもだ。ファイアーボンバーが揃ってだった。
「いいか!ここでもな!」
「あたし達の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「よかろう、では聴かせてもらおう!」
 そのガビグラも笑顔で彼等に応える。
「一つになった我々に!その音楽美!」
「ああ、行くぜ!」
「聴かせてあげるわよ!」
 こうしてだ。ファイアーボンバーとガビグラの戦いがはじまった。
 そしてだ。そのうえでだった。
 ガビグラが攻撃を仕掛ける。しかしだ。 
 バサラはそれをバルキリーを左に逸らさせてかわす。そしてだ。
 ギターを鳴らす。そのうえで歌だった。
「どうだ、これで!」
「おお、来るぞ!」
 ガビグラもだ。その歌を聴いて言う。
「これだ!これこそがだ!」
「何だってんだ!?言ってみな!」
「至高美!」
 それだというのである。
「最高の美、これこそがだ!」
「そうか、美だってんだな!」
「その通りだ!聴かせてもらおう!」
 これがガビグラの言葉だった。
「その至高の美を!」
「わかったわ、じゃあバサラ!」
 ミレーヌもだった。ベースを手に演奏する。
「あたしもとことんまでやるわよ!」
「音楽か、これこそは」
 ガビグラはその音楽を感じながら言った。
「我等を。若しや」
「どうやら予想通りだったみてえだな」
 バサラはだ。ここで楽しげに笑って言った。
「この連中もな」
「プロトデビルンも?」
「ああ、音楽がわかる!」
 こう言うのだった。
「俺の歌がな!わかるんだよ!」
「そういえばあのギギルだったかしら」
 ミレーヌが彼の名前を出した。
「あいつもそんなの言ってたわよね」
「そうだろ。プロトデビルンも人間もないんだ」
 こう言うのだった。
「誰だって音楽も歌もわかるんだよ!」
「それならまさか」
「ああ、そのまさかだ」
 また言うバサラだった。
「もっとな、歌ってやるぜ!」
「全く。いつもそうなんだから」
 こんなことを言いながらもだ。ミレーヌは笑顔だった。
 そしてその笑顔でだ。ベースを鳴らしだ。
「けれどそのバサラだからね。やっぱりね」
「歌うってんだな!俺と一緒に!」
「そうさせてもらうわ、とことんまでね!」
 こう話してだった。そうしてだ。
 彼等はガビグラにその音楽を聴かせる。するとだった。
 やがて彼はだ。満足した顔で話すのだった。
「素晴らしい。実にいい」
「満足したのか?」
「まさか」
「そうだ。満足美!」
 また話すバサラだった。
「熱気バサラよ。素晴らしい音楽だった」
「へっ、おめえもわかったみたいだな」
「そしてだ。我はこの音楽に魅了された」
 その満足している顔で話していく。
「今は退こう」
「そうするんだな」
「そうさせてもらう。それではだ」
 こうしてだった。彼はだ。
 二つに戻った。ガビルとグラビルにだ。
 そのうえでだ。ガビルがグラビルに告げた。
「ではグラビルよ」
「ガオオオン!」
「撤退するとしよう。最早戦う理由はない」
 こう己自身に言うのだった。
「それでは。今は去ろう」
「ガオオオン!」
「熱気バサラよ、また会おう!」
 バサラにも告げる。
「その音楽美、また聴かせてもらおう!」
「ああ、何時でも聴かせてやるぜ!」
 バサラも笑顔で彼に返す。
「思う存分な!」
「楽しみにしている。では撤退美だ!」
 こうしてだった。ガビルはグラビルと共にその場を後にするのだった。
 そしてそのうえで戦場を離脱してだった。後に残ったのはロンド=べルだけだった。
 その彼等がだ。話すのだった。
「しかし今は」
「どうする?」
「このまま進むしかないけれど」
「とりあえずかなりエネルギーも消費したし」
「弾薬もな」
「それだったら」
 いきなりの進撃はだ。どうかとなるのだた。
「じゃあ今はな」
「集結してそれで」
「補給を受けるか」
「そうするか」
「そうだ、そうする」
 ヘンケンもだ。それだというのだった。
「今ここで下手に進撃をしても危ういしな」
「そうですね。今は」
「下手に動けないですし」 
 ナタルとアドレアも艦長のその言葉に頷く。
「補給を受けてからでも遅くはありません」
「かえってエネルギーや弾薬がないとやばいですし」
「その通りだ。では全軍一旦集結だ」
 実際にこう言うヘンケンだった。
「わかったな。そして補給を受けてからだ」
「また進撃ですね」
「そうしますね」
「そうする。それではだ」
 こう話してだ。それでだった。
 ロンド=ベルは一旦集結してだ。そのうえで補給を受ける。それと共に休息も取る。その中でだ。
 シェリルがだ。こうランカに話していた。
「正直。あれで終わるとは思わなかったわね」
「バサラさんですか」
「ええ。あのでかいのに歌を聴かせてね」
「それで終わりでしたから」
「それは本当に予想してなかったわ」
 ランカに対して話す。
「正直。あたしでは無理だったわね」
「そうですね。それは私もです」
 ランカもだ。真剣な顔で話す。
「あんなことは。とても」
「バルキリーの操縦だけじゃなくて」
「あの音楽自体が」
「やっぱり。熱気バサラね」
 シェリルは真顔だ。口元には微笑みもある。
「凄いなんてものじゃないわ」
「そうですね。ひょっとしたら」
「あの歌でプロトデビルンとも、っていうのね」
「できますよね」
 こうシェリルに問うランカだった。
「バサラさんだったら」
「そうね。あの人ならね」
「じゃあ私も」
 ランカはだ。意を決した顔になって述べた。
「バサラさんには適わないですけれど」
「そうね。それでもね」
「二人で。歌いしょう」
「そうさせてもらうわ。実はね、私ね」
 ここでは微笑んでだ。シェリルは話した。
「本人見るまであの人にも勝てるって思ってたのよ」
「バサラさんにですか」
「ええ。けれどあそこまでの人はね」
「勝てないですか」
「ある意味において超人ね」
 バサラをこうまで評するのだった。
「あそこまでできるなんてね」
「確かに。私だってとても」
「人にできないことができる人よ」
 バサラはだ。まさにそうだというのだ。
「私達もそうなれるかしらね」
「無理だと思います」
「おいおい、そんなの全然平気だぜ?」
 その本人が来て二人に告げる。
「いいか?歌ってのはな」
「あっ、熱気バサラ」
「来られたんですか」
「ちょっとな。それでな」
 どうかとだ。彼は二人に話す。
「あれなんだよ。音楽ってのは」
「音楽は」
「どうかっていうんですか」
「そうだよ。突き破るものなんだよ」
 それが音楽だというのである。
「そうすればいいんだよ」
「突き破る」
「そうすることがですか」
「だからなれるとかなれないじゃないからな」
 バサラはそれを否定した。
「突き破るんだよ」
「目の前にあるものを」
「限界をですよね」
「そういうことだよ。なれないんじゃなくてなるんだよ」
 他ならぬだ。バサラ自身の言葉だ。
「できないって思ったことなんてないしな」
 そもまたバサラだった。
「何でもできるんだよ」
「そうだな。そう思わないとな」
 アムロも来てだ。バサラのその言葉に頷いた。
「何もできないな」
「そう思うからな。だから俺は歌うんだよ」
 今は何でもないといった調子で語る彼だった。
「そして俺の歌を聴かせるんだよ」
「じゃあ私達も」
「限界は思わないってことなのね」
 ランカもシェリルもここでわかったのだった。
「そうして一直線に」
「歌うといいのね」
「そういうことだよ。まあこれからもな」
 バサラの言葉がここで変わった。
「俺はそうするしな」
「一直線に突き破っていく」
「そうされるんですね」
「ああ、それが俺のやり方だからな」
 こう言うのであった。ここでもだ。
「じゃあ。またな」
「あれっ、何処に行くの?」
「何か用事でも」
「別にないさ」
 微笑んでシェリルとランカに答えるのだった。
「ただ。ふらっとな」
「気が向いて」
「それでなんですか」
「ああ、それでだよ。それじゃあな」
 こうしてだった。バサラはふらりとその場を後にした。そしてだ。
 シティの路上でだ。いきなり単独ライブをはじめたのである。
「いいか皆!」
「あっ、熱気バサラだ!」
「路上ゲリラライブか!?」
「それか!?」
「ああ、その通りだぜ!」
 まさにだ。そうだというのだった。
 そしてだ。彼はここでもこう叫んだ。
「いいか皆!」
「ああ、何時でもな!」
「いいわよ!」
「俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
 高らかにだ。こう叫んでだった。
 路上ライブをはじめる。それを聞いてだ。 
 今回はクローディアだった。彼女が来て咎めるのだった。
「ちょっと、何をやっているのよ」
「んっ?ライブだぜ?」
 平然と答えるバサラだった。
「それがどうしたんだよ」
「どうしたのではなくてよ」
「別にいいじゃねえかよ」
「許可は得ているの?」
「何だよ、それ」
 平然として返すバサラだった。ここでもだ。
「だから許可ってよ」
「全く。いつもそうだから」
 未沙と同じ様な口調になっている。
「世話が焼けるわね」
「で、クローディアさんもかよ。止めろっていうんだな」
「そうよ。言っても聞かないでしょうけれど」
 それはもう確信していることだった。
「わかったわね。止めなさい」
「ああ、それじゃあな」
 珍しくだ。人の話を聞いたように思える言葉だった。
 しかしだ。その予測は脆くも砕かれてしまった。
 バサラはだ。すぐにこう言うのだった。
「じゃあ別の場所でするな」
「何でそうなるのよ」
「俺の歌は何時でも何処でもなんだよ」
 やはりだった。バサラはバサラだった。
「だからだよ。歌うぜ」
「だから許可は得ているのって聞いてるのよ」
「だからそんなの必要なのかよ」
 相変わらずの口調であった。
「俺はそんなの構わないけれどな」
「構いなさい。許可はね」
「じゃあ今くれるってのか?許可ってのをよ」
「ええ、どうするのそれで」
「じゃあくれ」
 あっけらかんとさえしている口調だった。
「その許可ってのをよ」
「はい、じゃあこれ」
 クローディアは早速ペンとサインの書類を出してきた。
「これにサインしてね」
「わかったよ。それにサインすればいいんだな」
「それさえしてくれればいいから」
「サインペンねえか?」
 ここでこんなことも言う彼だった。
「サインだったらそれでするだろ」
「そういうサインじゃないから」
 憮然として返すクローディアだった。
「このペンでいいのよ」
「何だよ、面白くねえな」
「面白いかそういうのじゃなくてよ。早くサインしなさい」
「わかったよ。それじゃあな」
 こうしてだった。バサラはサインしてからだ。そのうえでだ。
 また歌うのだった。今はだ。己の道を行き歌うバサラだった。


第百二話   完


                       2011・3・3
 

 

第百三話 双子のプロトデビルン

             第百三話 双子のプロトデビルン
「それではだ」
「はい、それではですか」
 ガビルがだ。ゲペルニッチに応えていた。彼の他にはだ。
「あの者達を」
「出撃させるとしよう。そしてだ」
 ここでだ。ゲペルニッチはもう一人を見た。彼こそは。
「バルゴよ」
「はい」
 バルゴだった。彼は生きていたのだ。
「御前も出撃するのだ」
「はい、わかりました」
 ゲペルニッチのその言葉に頷いて答えるバルゴだった。
「それでは。あの二人と共に」
「そうするのだ。そしてだ」
 今度はだ。ガビルを見ての言葉だった。
「ガビルよ。それでだ」
「アニマスピリチュアのことですか」
「歌か」
「はい、あの地球の者が出すそれはです」
「御前にそれを与えたというのか」
「この上ないまでのものを」
 まさにだ。そうだというのである。
「私に与えました」
「そうか。その地球の者の名前は」
「熱気バサラといいます」
「熱気バサラか」
「あのシビルやギギルにも影響を与えたあの男です」
「そうか。あの男か」
 それを聞いてだ。ゲペルニッチの仮面の裏側の顔が変わった。
 そのうえでだ。あらためて彼に言うのであった。
「ではガビルよ」
「はい」
「今は休め」
 こうガビルに告げるのだった。
「グラビルと共にな」
「そして休息美の後は」
「また。働いてもらう」
 ガビルに対してまた話す。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
 こう話してだった。彼等もまたこれからのことを決めるのだった。そしてだ。
 ロンド=ベルもだ。バロータ本星にだ。着々と向かっていた。
 その中でだ。彼等はだ。何時でも出撃できるようにしていた。
 格納庫に集まってだ。そしてだった。
 そこでだ。非常食を食べながらあれこれと話していた。
「何時来るかな」
「わからないからな」
「そうだよな。ここは敵の本拠地だしな」
「何が来るかだよな」
「プロトデビルンの誰か、だよな」
 こう話しながらだ。警戒しつつ食事を食べていた。それはだ。
 乾パンにだ。御握りだ。それにだ。
 ソーセージやザワークラフト、そしてレトルト食品だ。そうしたものを食べながら話しているのだ。
 その中でだ。ふとアレンがフェイに言った。
「ティターンズと共同作戦だった時もこうして食ってたな」
「ああ、あの頃もそうだったな」
 フェイも彼のその言葉に頷く。
「ただあの頃はな」
「ジェリルもいたがな」
「あいつがおかしくなったのはあの頃からだったな」
 フェイは少し寂しい顔になって述べた。
「それでな。遂にはな」
「ハイパー化してな」
「ああなっちまったからな」
「あれはな」
 アレンもだ。寂しい顔になって話した。
「仕方なかったか?」
「そうだな。ああなるしかなかったからな」
「あそこまで暴走したらな」
「結果としてな」
「何か凄いことになってたんだな」
 トカマクは乾パンをかじりながら二人の話を聞いて述べた。
「俺がいない間に」
「っていうかあんたいきなり出て来たし」
「いないっていうかな」
「何処にいたんだよ」
「バイストンウェルにいたんじゃなかったのか?」
「ああ、いたよ」
 その通りだと答えるトカマクだった。
「そこで今も乗ってるダンバインが落ちて。気付いたらな」
「こっちの世界にいたのかよ」
「そうだったのかよ」
「それ前に話したけれど」
「実際にそうだったんだな」
「そうだよ。それで今ここにいるんだよ」
 このロンド=ベルにだ。いるというのだ。
「本当に気付いたらな」
「俺もだ」
 シオンもここで言ってきた。
「ラバーンとの戦いが終わった時にだ」
「その時にか」
「気付いたらか」
「ここにいたのかよ」
「こっちの世界に」
「そうだ。何度考えてもわからないけれどな」
 シオンはだ。実際に考える顔になっていた。
 そしてその顔でだ。彼はあらためて話すのだった。
「どうも。この世界を軸としてな」
「色々な世界が絡まり合ってるよね」
 シルキーも話す。
「そうなってるよね」
「そうだな。本当にな」
 ショウもここで言う。
「バイストンウェルだけじゃなくて」
「あたし達の世界もだしね」
「そうだね。僕達もこの世界に関わってる」
「これも」
 ティスとラリアー、デスピニスも話す。
「修羅の人達だってそうだし」
「エリスさん達や。ラ=ギアスも」
「それに。エイジさんやアポロさんの世界も」
「色々な世界が複雑に絡まってないか?」
 首を傾げさせて言ったのは甲児だった。
「何かよ。一つになっちまうみたいにな」
「多くの世界が一つに?」
「一つになっていってる?」
「そうなってるっていうのね」
「俺の考え過ぎかも知れないけれどな」
 甲児は考える顔で述べた。
「ただ。そんな気がするんだよな」
「それは考え過ぎではないのかも知れない」
 今言ったのはシリウスだ。
「私達の世界は。言うならば作り物の世界だった」
「そうだな。一万二千年ごとに作り変えられるな」
 ロジャーがシリウスの言葉に応える。
「パラダイムシティと同じくな」
「アル=イー=クイスは管理する」
「若しかしたら」
 ここでだ。ドロシーも言ってきた。
「あのアル=イー=クイスは」
「あの神達か」
「誰かに操られていたのかも知れないわ」
 ここでこう言うのだった。
「そうなっていたのかも知れないわね」
「じゃあそれは一体」
「誰が?」
「誰が操っていたんだ?」
「あの連中を」
「それはわからないわ」
 ドロシーはそのことには答えられなかった。
「けれど」
「けれど」
「ひょっとしたら」
 こう仲間達に話すのだった。
「私達はかなりの相手と戦っているのかも知れないわね」
「かなりって何だよ」
 そのドロシーに問うたのは豹馬だった。
「まさか神様だっていうのかよ」
「少なくともアル=イー=クイスはそう言えたが」
 今言ったのは万丈だった。
「それより高位の神様かな」
「イルイちゃんみたいな?」
 ちづるが考える顔で述べた。
「あの娘みたいな」
「そういえばバルマーにはもう一体のガンエデンがあるんだったな」
 今言ったのはトウマだった。
「ハザルの奴が言ってたけれどな」
「もう一体のガンエデンか」
「まさかそれが?」
「その高位の神かな」
「それなのかしら」
「どうだろうな」
 ロジャーは考える顔になって述べた。
「私はガンエデンのことはよくは知らない」
「世界が違いますからね」
「だからですね」
「そうだ。しかし聞いた限りではだ」
 そうしたところからだ。彼は分析して話す。
「ガンエデンは世界を超える存在ではないな」
「そこまでの力はないですか」
「そうなんですか」
「力はあるかも知れない」
 ロジャーはその可能性は否定しなかった。
「しかしだ。彼女だったな」
「はい、イルイちゃんです」
「イルイ=ガンエデンですから」
「彼女にそうした意志はない」
 ロジャーはイルイの性格を読み取ったうえで話すのだった。
「あくまで地球とそこにいる人類のことだけを考えているのだから」
「他の世界への干渉はですか」
「それはない」
「そう考えられるんですね」
「私はそう見る」
 こう話すロジャーだった。
「それが正しいかどうかはわからないが」
「いや、そうだな」
 ロジャーの言葉に頷いたのはアムロだった。
「俺も考えてみたが」
「やっぱりイルイちゃんはですか」
「そうしたことはしない」
「そう思われるんですか、中佐も」
「ああ、そう思う」
 実際にそうだと答えるアムロだった。
「イルイは他の世界への干渉はしないな」
「じゃあ一体?」
「アル=イー=クイスの後ろにいるとしたら」
「どんな奴なんだろうな」
「洒落にならない奴なのは間違いないな」
 こう言ったのは勝平だった。
「世界を普通に何度もぶっ潰したりするんだからな」
「それを考えたらか」
「とんでもない力と考えの奴か」
「そうなるか」
「まあどんな奴でもな」
 マサキが言う。
「世界を潰そうってんなら相手をするしかないけれどな」
「そうね。そんな奴ならね」
「倒すしかない」
 リューネとヤンロンがマサキのその言葉に頷く。
「さもないとあらゆる世界がね」
「崩壊させられる」
「けれどそんな奴がいるかどうかはニャ」
「はっきりとは言えないニャぞ」
 クロとシロはそれを言う。
「本当にいたら確かにとんでもない話ニャ」
「今は推定の段階ニャ」
「結局はそうね」
 それはウェンディもその通りだという。
「けれど想定するのは悪くないわね」
「実際にいた時に対応できるからだね」
「はい、そうです」
 テリウスにも答えるウェンディだった。
「ですからあらゆる事態を想定するといいです」
「成程ね。これまで色々あったしね」
 テリウスは腕を組んで述べた。
「まあ何が起こってもね。何が出て来てもね」
「驚かないようにはしておくか」
「そうね」
「目の前の敵にしても」
 プロトデビルンに対してもそうだというのだった。
「どんなとんでもないのが出て来ても」
「それで一々驚いてたらな」
「話にならないし」
「だから」
 こんな話をしてだ。そのうえでだった。
 彼等は先に進む。するとだ。
 まずはだ。あの男が出て来たのだった。
「あっ、御前確か」
「惑星ラクスの時の奴か」
「生きていたのね、やっぱり」
「死んでなかったのかよ」
「そうだ。俺は生きている」
 実際にそうだとだ。バルゴは彼等に言う。
「そしてだ。今こうしてだ」
「俺達と戦うってんだな」
「そうするのね」
「その通りだ。今度こそ貴様等を倒す」
 月並みな台詞だがそれでも言うのだった。
「覚悟するんだな」
「覚悟なんてな!」
 アルトがそのバルゴに言い返す。
「こういう時にするもんじゃないんだ!」
「ではどういう時にするものだ」
「もっとな。大事な時だ」
 こうバルゴに言う。
「俺達はここで負けるか!」
「そうだな。まだ先があるからな」
「ここで負ける訳にはいかないですね」
 ミシェルとルカも続く。
「じゃあアルト、今はか」
「覚悟はしないんですね」
「覚悟はしないが命は賭けるからな」
 それはだというのだ。
「さもないとかえって死ぬからな」
「その通りだ。これは戦争だ」
 オズマがアルトのその言葉に告げる。
「決して気を緩めるな」
「そうだ、いいなミシェル」
 クランはミシェルに対して言うのだった。
「こんなところで死ぬな。いいな」
「わかってるさ。俺だってまだ色々とやりたいことがあるしな」
「やりたいこと?」
「とりあえず中尉とミリアリアの関係について知りたいな」
 笑ってだ。こんなことを言うのだった。
「あとルカと斗牙の関係もな」
「僕もなんですか」
「ああ。どういう関係なんだ?」
 ルカに対しても笑顔で問う。
「実際にな」
「僕達は別に」
「関係ないけれど」
 ルカだけでなく斗牙もそれを言う。
「そうですよ。いた世界も違いますし」
「確かに似たものは感じるけれど」
「そう言う御前はどうなのだ」
 クランはミシェルに対して問う。その彼にだ。
「ティエリアと間違えてしまったではないか」
「おっと、俺もか」
「そうだ。他人のことを言えるのか」
 こうミシェルに言うのだった。
「言えないのではないのか」
「言われてみればそうか。俺もだったな」
「そうだな。それはな」
 そのティエリアも加わる。
「僕達は。何故かわからないが」
「通じるものは感じるよな」
「確かにな」
「それを言うとだ」
 金竜である。
「俺はヒューゴだけでなくあのプロトデビルンにも感じるのだがな」
「何かもう敵味方入り混じって」
「凄い話になるよな」
「そうよね」
 そこまでだ。話は拡がっていた。
「確かにあのプロトデビルンとは」
「大尉は浅からぬ縁があるような」
「あとヒューゴも」
「また会うとは思っていた」
 金竜はバルゴを見ながら話す。
「それならだ」
「よし、行くぞ」
 バルゴもここで告げる。
「全軍攻撃だ」
「よし、俺達もな!」
「行くか!」
「一気にな!」
 こう叫んでだった。そのうえでだ。
 両軍は戦闘に入った。プロトデビルンは正面から大軍で攻める。それに対してだ。
 ロンド=ベルは陣を整える。そのうえでだ。
 先に敵を前に進ませてだ。そうして。
 射程に入ったところでだ。総攻撃を浴びせた。
 それで戦いの主導権を握る。そのうえでだ。
 波状攻撃に移る。攻撃を仕掛けてだ。
 すぐに次の攻撃を浴びせる。それでプロトデビルン達を押していた。
 しかしだ。その中でも彼等は油断していなかった。
「来るよな」
「ああ、絶対にな」
「来ない筈がないよな」
「この状況で」
 勘でだ。彼等は察していたのだ。
「残る二人か」
「プロトデビルンの最後の二人」
「一体どんな奴だ?」
「出て来るのは」
 警戒しているとだ。そこで、だった。
「レーダーに反応です」
「二体です」
 トーレスとサエグサが言った。
「七時の方向です」
「そこから来ます」
「そうか、来たか」
 それを聞いてだ。ブライトは冷静に述べた。
「最後のプロトデビルン達だな」
「どうしますか、艦長」
「ここは」
「戦うしかない」
 ブライトの解答は落ち着いたものだった。
「ここはな」
「わかりました。それじゃあ」
「奴等ともですね」
「どういった相手かだ」
 ブライトが考えているのはこのことだった。
「それが問題だ」
「確かにそうだよな」
「その通りですね」
 カイとハヤトがブライトのその言葉に頷く。
「レーダーの反応はどうなんだ?」
「大きさは」
「はい、かなり大きいです」
「相当なものです」
 トーレスとサエグサは二人の問いにこう答えた。
「戦艦クラスはありますね」
「尋常なものじゃないです」
「それが来ます」
「二つです」
「どんな奴だ?」
 リュウは二人の報告を聞いて首を捻った。
「一体。本当に」
「だからそれがプロトデビルンなんだろうな」
 スレッガーはいささか割り切った調子である。
「そうした訳のわからないのがな」
「そうなるんですか?」
 セーラはいぶかしむ顔でそのスレッガーに問うた。
「彼等は」
「極論だが連中はどうもわからないからな」
 スレッガーは首を捻りながらセーラに話す。
「だから。幾らでかくてもな」
「有り得ますか」
「そもそも生身で宇宙空間にいるんだからな」
 リュウはここでこのことを話した。
「考えてみればそれ自体がな」
「そうね。やっぱりね」
「あるよね」
 ケーラとザズがリュウのその言葉に頷く。
「姿が巨大でも」
「それもね」
「とにかく。戦艦クラスの大きさよね」
 マリューはその大きさについて述べた。
「となると」
「倒すのは容易じゃないわね」
 ミサトは顔を曇らせてマリューに話した。
「ちょっちやばい相手かもね」
「そうね」
「しかしやるしかないからな」
 スレッガーがここでいったのは正論だった。
「向こうもそのつもりだしな」
「じゃあ迎え撃ちましょう」
「そのプロトデビルンもね」
 マリューとミサトが最後に言った。そしてだ。
 そのプロトデビルンを待つ。するとだ。
 彼等はだ。そこでだ。異様な二人のプロトデビルンを見るのだった。
「何だありゃ」
「でかいのはわかってたけど」
「あれ何?」
「一体」
 巨大な彼等はだ。それぞれ。
 金色、そして緑色の異様な姿のプロトデビルン達だった。その姿は。
「蜘蛛かよ」
「何かそんな感じだよな」
「足はないのか」
「じゃあ完全に宇宙とか空とか」
「それ用の奴等か」
「そうなんだ」
「ゴラムとゾムドだ」
 ここで言ったのはバルゴだった。
「これがその者達の名だ」
「ゴラムとゾムドか」
「それがこの連中の名前かよ」
「それじゃあよ」
 バサラがバルゴに問う。
「あれか?金色のがゴラムだってのか」
「そうだ。そしてだ」
「緑色がゾムドってんだな」
「その通りだ。そう覚えておくのだ」
「わかったぜ。どっちがどっちかはな」
「この二人が出たからにはだ」
 どうだとだ。バルゴはさらに話す。
「貴様等もこれで終わりだ」
「そうなればいいわね!」
 ミレーヌが強気の言葉でバルゴに言った。
「あたし達だってね!」
「その歌で戦うつもりか」
「そうよ、やってやるわよ!」
「僕も!」
 ここで出て来たのは綾人だった。
「歌なら。僕も」
「そうね。綾人君」
 遥はだ。その綾人に話す。
「貴方も。歌を力にできるから」
「プロトデビルン達にも」
「ええ、力を出して」
 こう彼に告げた。
「御願いね」
「わかりました、それじゃあ」
 綾人も言葉を受ける。そうしてだった。
 彼等はだ。そのゴラムとゾムドにも向かう。しかしだ。
 巨体は伊達ではなかった。幾ら攻撃を浴びせてもだ。
「くっ、、駄目だ!」
「幾ら攻撃を浴びせても」
「びくともしねえじゃねえか!」
「何だこいつは!?」
 こう言ってだ。彼等も驚きを隠せない。
「巨体だけはあるよな」
「こりゃ尋常ややり方じゃ倒せないぜ」
「どうする?こりゃ」
「向こうの攻撃も激しいし」
 彼等も攻撃を受けているだけではない。反撃もしてくる。それを何とかかわしながらだ。ロンド=ベルは攻撃を続けていく。
 しかしだった。その中でだ。
 バサラは己のバルキリーを突撃させ。そうしてだった。
「御前等もな!」
「何っ、まさか」
「ああ、どんな奴だってな!」
 こうだ。バルゴに対して告げる。
「俺の歌を聴かせてやるぜ!」
「くっ、この男正気なのか」
「残念だがその通りだ!」
 ガムリンがそのバルゴに言った。
「この男熱気バサラはだ」
「何だというのだ」
「一切の常識が通用しない男だ!」
 確かにだ。それはまさにその通りだった。
「そして全てを突き破り成し遂げる男だ」
「だからだというのか」
「そうだ、この戦いもだ」
 どうかというのである。
「成し遂げる!己の目指すものをだ!」
「くっ、ゴラム!ゾムド!」
 バルゴは咄嗟に彼等に声をかける。しかしだ。
 彼等はだ。バサラの歌を聴いてだ。
 そのうえで身体が揺らいでいた。それを見てだ。
「まずい!」
 バルゴが情勢を判断した。その判断は。
「撤退だ」
 こう言ってだ。そうしてだった。
 彼等と共にだ。戦場を退くのだった。そうしたのである。
 それを見てだ。バサラが言った。
「何だよ、これって」
「これって?」
「歌はこれからだったのによ」
 こうだ。残念そうに述べたのだった。
「それで急に帰るのはないだろ」
「全く。こいつは」
 それを聞いてだ。誰もが呆れた。
「ここでもそう言えるのかよ」
「その根性というか周りに動じないというか」
「あくまで己の道を行けるのはな」
「やっぱり凄いわね」
「全く」
 呆れながらもだ。バサラを認めるのだった。
「けれど。それでも」
「それだけのものがあるから」
「この戦いだってね」
「やっていける?」
「そうよね」
「そうだ、やれるぜ」
 その通りだとだ。話すバサラだった。
「次もな」
「じゃあまあ」
「とりあえずは補給と整備を受けて」
「また進撃するか」
「そうするか」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 とりあえずは戦いが終わってだ。彼等は再集結してだ。そのうえで整備と補給を受けた。それを行ってからだ。再びであった。
「進撃再開ですね」
「また」
「そうだ。再開させる」
 その通りだと述べる大河だった。
「我々は立ち止まってはならないのだ」
「だからですね」
「また。進撃を開始して」
「そのうえで」
「敵の本拠地を目指し。攻略する」
 既にだ。その戦略は決定していたのだ。
 そうした話をしてだ。そのうえだった。
 彼等はさらに進んでいく。それを見てだ。
 ゲペルニッチはだ。バルゴ達を集めてだ。また話をしていた。
 そこでだ。まずはバルゴを見て言うのだった。
「迎撃に失敗したな」
「申し訳ありません」
「いや、それはいい」
 彼の失態を許す。それからまた話す。
「問題とすべきはだ」
「それは一体」
「あの熱気バサラという男」
 彼のことをだ。ここで話すのだった。
「何者かのか」
「わかりません。ただ」
「あの歌というものを使ってだな」
「はい、我々を脅かします」
「そうか。脅かすか」
 ゲペルニッチはそれで納得しかけた。しかしだ。
 ここでだ。ガビルが彼に話した。
「いえ、ゲペルニッチ様」
「何だ、ガビルよ」
「あの歌というものはです」
「脅かすものではないというのか」
「はい、むしろです」
「むしろか」
「そうです。あれは」
 彼が思ったことをだ。そのまま話す。
「我々に何かを与えています」
「与えるだと」
「そう思います」
 こう話すのだった。
「あの歌というものはです」
「そういえばだ」
 ここでゲペルニッチは考えてから述べた。
「シビルとギギルだが」
「あの者達ですか」
「あの者達もだな」
 彼等の名前を出したうえでだった。
「あの男の歌に触れて変わったな」
「裏切りました」 
 バルゴが忌々しげに述べる。
「我等を」
「今どうしているかわからないがな」
「ですが裏切ったのは事実です」
「その裏切った理由も歌にあるのか」
 こう考えるのであった。
「そうだというのだろうか」
「ではゲペルニッチ様、歌は」
「やはり何かあるな。それは間違いない」
 彼等も気付きだしていた。その歌にあるものにだ。戦いが続く中でだ。ロンド=ベルもプロトデビルンもだ。互いに何かを感じだしていたのだった。


第百三話   完


                       2011・3・5 

 

第百四話 七人のプロトデビルン

                第百四話 七人のプロトデビルン
 ロンド=ベルはバロータ星系をさらに進んでいく。その中でだ。
 綾人がだ。こんなことを言うのだった。
「こっちの世界に来てだけれど」
「んっ、どうしたんだ?」
「何かあったの?」
「うん、正直こんなに激しい戦いになるとは思わなかったよ」
 こう仲間達に話すのだった。
「僕達の世界よりまだ激しい戦いにね」
「そうですね。確かに」
 彼の言葉に頷いたのは八雲だった。
「僕達の世界も激しい戦いでしたが」
「この世界のそれは」
 キムも言う。
「何か。様々な勢力が絡み合っていて」
「壮絶なことになってますね」
「ですから余計に」
 こう話すキムだった。
「そう思えますね」
「ただ。これって」
 今話したのはルナだった。
「あれよね。特異点のせいよね」
「ええ、それね」
 ミヅキもそれに頷く。
「そのせいで。色々起こってたのよね」
「ゼゼーナンだったな」
 レイヴンはいささか忌々しげに言った。
「小者だったが。やってくれた」
「しかしだ」
 ガスコンはだ。ここでこう言うのだった。
「ゼゼーナンは確かに小者だ」
「それは否定できないよな」
「弱かったしな、あいつ」
「戦略とか戦術も駄目だったし」
「部下にも見捨てられたし」
「駄目過ぎたけれど」
 彼についてはだ。誰もが酷評だった。
「けれどっていうんだよな」
「ここは」
「そうだ。小者は小さな結果しか残さない」
 ガスコンがここで言うのはこのことだった。
「それはどうしようもないことだ」
「蟹は己の甲羅に似せて穴を掘るだな」
 京四郎が言った。
「そういうことだな」
「その通りだ。だが今はだ」
「銀河単位どころじゃないよな」
「バッフクランも来てるし」
「何か神様まで出て来てるし」
「これって何か」
「尋常じゃない?」
「洒落にならない流れになってるけれど」
「特異点だけじゃなくて」
「他にやっぱり何かいる?」
「とんでもないのが」
「あれだぜ。これって」
 今言ったのアラドだった。
「あちこちの世界行くわ。そこでも戦うわだろ?」
「それで皆集まってるし」
 ゼオラも言う。
「もう特異点どころじゃな」
「なくなってるわよね」
「そうだよ。ゼオラなんてな」
「私!?」
「そっくりさんが増えるしよ」
 こんなことをだ。羨ましそうに言うアラドだった。
「フェアリさんやシルヴィアさんとかな」
「何でその話になるのよ」
「オウカ姉さんなんか相当多くなったしな」
 言うのはこのことだった。
「ったくよ、羨ましいよな」
「あんたはどうだっていうのよ」
「だからいないんだよ」
 アラドは本当に羨ましそうである。
「一人もよ」
「確かに私そっちでは寂しくなくなったけれど」
「そうだよな。増えたもんな」
「けれどそれってね。縁だから」
「縁なのかよ」
「沢山いる人は一杯いるから」
 それは本当にその通りだった。
「言っても仕方ないじゃない」
「多い奴はそう言えるんだよ」
「そんなこと言ったらユングさんやフォッカー少佐はどうなるのよ」
「別格だろ。あの人達は」
「アムロ中佐なんて」
 彼のことも話に出る。
「宙さんだけでも。存在感凄いじゃない」
「確かに圧倒的だけれどな」
「声の問題じゃないでしょ。キャラよ」
「キャラか」
「HAHAHA、その通りデーーーース」
 ジャックがだ。笑いながらアラドに話してきた。
「ミーもピートとミスターにそっくりと言われますが」
「いや、ジャックさんはもう」
「ジャックさんだけで」
 どうかというアラドとゼオラだった。
「充分ですから」
「目立ってます」
「そういうことデーーース、大事なのは自分自身なのデス」
 これが彼の言いたいことだった。
「そんなことを気にするミスターアラドはいけません」
「駄目なんだ、俺って」
「そう、自分が大きくならなくてはいけないデーーーーーーース」
 こうアラドに話す。
「それには頑張ることデス」
「そうだよな。それはな」
 アラドもだ。それには頷く。
「俺も。自分自身をしっかりさせるか」
「そうしなさい。大体アラドはね」
 ここでお姉さんになるゼオラだった。
「何をするにも。子供だから」
「俺は子供かよ」
「そうよ。子供よ」
 まさにだ。そうだというのである。
「しっかりしなさい。何かにつけてもね」
「わかってるよ。けれどな」
「けれど。何よ」
「夜はゼオラの方が駄目じゃないか」
 こんなことを言うのだった。ここでだ。
「全然頼りなくてよ。俺がリードしてよ」
「それは当然じゃない」
 ゼオラも言い返す。
「男の子が夜に女の子をリードしなくてどうするのよ」
「そう言うのかよ、夜は」
「そうよ。本当はお昼もそうしないといけないの」
 そしてだ。ゼオラは遂に言ってしまった。
「夜だって。最初は私が教えてあげたんじゃない」
「まあそれはそうだけれどな」
「手を取り足を取って。私だってはじめてだったけれど」
「おい、待て」
 ここでだ。突っ込みを入れたのはだ。
 グン=ジェムだった。彼が言ったのだった。
「御前等今何の話をしている」
「何かって?」
「っていいますと?」
「夜に教えたとか何の話をしているのだ」
 彼が言うのはそのことだった。
「そんなことをここで話すな。皆いるんだぞ」
「何って。ダンスですけれど」
「フォークダンスの」
 二人はきょとんとしてグン=ジェムに返す。
「それですけれど」
「私達夜に踊るじゃないですか」
「何っ、それのことか」
「はい、そうです」
「何だと思われたんですか?」
「ま、まああれだ」
 照れ臭そうな顔になってだ。左手の人差し指で顔をかきながら言うグン=ジェムだった。
「それならいいけれどな」
「あの、大佐」
「何かあったんですか?」
「わからないならいい」
 それ以上は言わない彼だった。そしてだ。
 話が一段落したところでだ。言ったのはだ。
 アーサーだった。彼が言うことは。
「とりあえず。これからだけれど」
「いよいよプロトデビルンもな」
「総攻撃で来るよな」
「プロトデビルンも揃ったし」
「それならな」
「来るよな」
「絶対に」
 こうだ。皆も話す。
「いざとなれば全員で」
「今いるのは五人か、向こうにいるのは」
「ボスのゲペルニッチも含めて」
「五人だよな」
「その五人が来るかもな」
「洒落にならない戦いになるかも」
 そのことをだ。危惧してなのだった。
「ううん、プロトデビルンともいよいよ」
「正念場か」
「遂にそうなるんだよな」
「連中との戦いも」
「この戦いってやっぱり」
 彼等の今の戦いを突き詰めて考えていくとだ。やはりだった。
 皆でバサラを見てだ。そうして言うのだった。
「バサラが中心だよな」
「何か。思いきり引っ張ってくれてるよな」
「そうよね。私達が今ここまで来られたのって」
「プロトデビルンとの戦いはやっぱり」
「バサラがいたからこそ」
「そうよね」
「それでここまでだったよね」
 こう話す。そしてだった。
 そうした話を聞くとだ。バサラはだ。
 本人は何でもないといった調子でだ。こう言ったのだった。
「戦いなんかよりもな」
「歌か」
「それが大事だっていうのね」
「ああ。俺の考えは変わってないからな」
 それはだ。今もだというのだ。
「俺の歌で戦いを終わらせるんだよ」
「プロトデビルンとの戦いもか」
「そうするっていうんだな」
「つまりは」
「そうだよ。それは変わらないからな」
 こう話すのだった。
「連中ともそうだよ。そのゲペルニッチにもだ」
「あいつにもか」
「やっぱり歌か」
「それを聴かせるっていうのね」
「そうなのね」
「そうだよ。それは変わらないからな」
 やはりだ。それは普遍だというのだった。
「絶対にな」
「バサラはそうじゃないとな」
 今言ったのは輝だった。
「かえって怖いな」
「あくまで己の道を行くか」
「確かに。そうじゃないとな」
「バサラらしくないっていうか」
「そうじゃないバサラって」
「想像できないし」
「しかもそれが凄いことになってるしな」
 これもだ。その通りなのだった。
「ラクスでもそうだったしな」
「歌って凄いんだな」
「それだけの力があるんだな」
「私も。実は」
 ここでだ。ラクスが言うのであった。
「バサラさんの歌には影響を受けました」
「おっ、そうだったのかよ」
 バサラはラクスのその言葉を受けて楽しげな顔を見せた。
「俺の歌、聴いてたんだな」
「はい。ですがバサラさん程にはなれないですね」
 少し苦笑いを浮かべてだ。言うラクスだった。
「バサラさんはある意味超人です」
「俺は普通だぜ」
「それは絶対にないな」
 即座に否定したのは闘志也だった。
「ここまで凄い奴滅多にいねえよ」
「俺もはじめて見た」
 マリンもこう言う。
「正直驚いた」
「まあこっちの世界も変わった奴多いけれどな」
 黄金はこのことは否定しなかった。
「サンドマンさんだって凄い人だしな」
「ある意味変態的なところあるよな」
「確かに。何か声といい」
「ギャブレーさんやバーンさんと同じで」
「ロドニーさんも」
「わいもかいな」
「個性的どころじゃないっていうか」
 彼等もかなりのことを言う。
「滅茶苦茶なところ多いしなあ」
「その中でもサンドマンさんってかなり」
「奇想天外?」
「そんな感じ?」
「私はそこまで変わっているのか」
 自分では自覚していない彼だった。
「そうだったのか」
「はい、ちょっと」
「何ていうか」
「まあ。その、あれです」
「サンドマンさんもある意味超人っていうか」
「じゃあバサラと同じか?」
「それで何かをできる人?」
 確かにだ。何かをできる人間なのは事実だった。
 そのサンドマンがだ。気を引き締めて一同に告げた。
「では諸君、あらためてだ」
「敵の本拠地にですね」
「向かうんですね」
「おそらく敵はその本拠地の前で決戦を挑む」
 それを読んでの言葉だった。
「だが。その前にだ」
「迎撃ですね」
「それがあるんですね」
「決戦の前に」
「そうだ、それがある」
 これがサンドマンの読みだった。
「それに対してどうするかだ」
「じゃあ俺達もですね」
「絶対に引けないですね」
「敵が迎え撃つなら」
「俺達は」
 考えはもう決まっていた。それでだった。
 彼等はそのまま進む。そしてだ。
 その前にだ。彼等がいた。
「来たな、ロンド=ベルよ」
「待っていたぞ」
 まずはガビルとバルゴが言うのだった。
「さて、それではだ」
「戦うとしよう」
「ガオオオオオオン!」
「我々もいる」
「楽しませてもらう」
 グラビルも当然いる。そしてだ。
 ゴラムとゾムドもだ。言ってきたのだった。しかしだ。
 彼等のその言葉を聞いてだ。ロンド=ベルの面々は驚きを隠せなかった。
「えっ、あいつ等喋れたのか」
「そうだったのかよ」
「そうだ。知らなかったか」
「そのことは」
「この前喋ってなかったからな」
「なあ」
「それじゃあな」
 彼等はこう口々に言うのだった。
「気付く筈ないしな」
「そうか、喋れたのか」
「そうだったの」
「あらためて知ってもらおう」
「このことはな」
 二人も彼等に言う。そしてだった。
 綾人がだ。彼等に言った。
「俺も、この戦いは」
「むっ、どうやら御前もまた」
 ガビルはその綾人に気付いて述べた。
「音楽美を持っているな」
「バサラさんみたいにはいかないけれど持っている」
 実際にそうだと言う綾人だった。
「だから。俺も!」
「うむ、その音楽美聴かせてもらおう」
 ガビルは今度は彼に関心を向けるのだった。
「是非共な」
「全軍攻撃開始!」
「やってやるぜ!」
 こうして両軍の戦いがはじまった。両軍共だ。
 互いに前に進みだ。そのうえでだった。
 激突した。プロトデビルンの軍勢は彼等を前面に出して戦う。その強さは。
「戦場美、いつもいいものだ!」
「この戦いは退くつもりはない!」
「ガオオオン!」
 まずはだ。この三人が暴れる。そしてだ。
 ゴラムとゾムドもだった。前面に出てだった。
 ロンド=ベルの面々に派手な攻撃を浴びせる。それを受けてだ。
 ロンド=ベルもその動きが止まった。そこにだ。
 綾人がラーゼフォンを突っ込ませてだった。
「俺の声で!」
「ふむ、いい声だ」
 ガビルがその声を聴いて言った。
「御前も。どうやら」
「どうやら?何だっていうんだ」
「確かな美を持っている」
 そうだというのだ。
「過去に。貴重な経験があったか」
「それがわかるっていうのか」
「ある程度だがわかる」
 また言うガビルだった。
「その歌を聴けばだ」
「歌でわかる」
「人生美!」
 ガビルの今度の美はこれだった。
「それもまたよし!」
「何かいつもの美だけれど」
「それでもね」
 エルフィとキャシーがここで言う。
「何か。綾人君のことがわかったみたいね」
「そうね」
「人生美か」
「それだというのか」
 ドニーとジャンも話す。
「それもあるのか」
「また一つわかったな」
「その人生を感じさせる美、見事だ」
 ガビルは満足した声で話す。
「貴様の美もまた堪能させてもらおう」
「なら俺は!」
 綾人の目が赤くなった。そうなってだ。
 そのうえでだ。彼はさらに歌う。そうしたのだ。
 ガビルとグラビルの動きはそれで止まった。そしてだ。
 ゴラムとゾムドにはだ。バサラ達が向かっていた。
「幾ら身体が大きくてもな」
「意味がないというのか」
「そう言うのか」
「歌は聴こえるからな!」
 バサラがここで言うのはこのことだった。
「俺には関係ねえ!」
「ふむ。そう言うか」
「わからない男だ」
 彼等もだ。バサラのそれは理解できなかった。
「だが。それでもだ」
「我等の前に立ちはだかるのなら」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!!」
 いつものバサラの言葉だった。
「この歌!御前等も聴け!」
「バサラ、あたし達もいるわ!」
「伴奏は任せろ」
「・・・・・・・・・」
 ミレーヌ達も続く。
「いけるわよね、それで」
「今は」
「ああ、充分だぜ!」
 高らかに応えるバサラだった。
「それならな!ここでもパーティーだぜ!」
「ええ、やるわよ!」
 ミレーヌが応えてだ。そうしてだった。
 彼等も歌う。しかしだった。
 バルゴに対してはだ。誰も回せなかった。
「まずいな」
「そうね」
 マックスとミリアが今の状況を話す。
「あのプロトデビルンに音楽を回せない」
「ランカちゃん達は全体に回ってるし」
「御免なさい、今は」
「そこにまで手が回らないわ」
 ランカとシェリルが申し訳なさそうに言う。
「できれば。そのプロトデビルンにも歌えれば」
「それができれば」
「仕方ない。ここは」
「私達で足止めするしかないわね」
 二人が行こうとする。彼等が戦っているその場所から離れてだ。
 だがここでだ。思わぬ援軍が来たのだった。
「待て、バルゴ!」
「!?」
「何だ!?」
「誰だ!?」
「貴様の相手は俺がする!」
 こう言ってだ。出て来たのはだ。
 ギギルだった。彼が愛機と共に出て来たのだ。
 そしてそのうえでだ。バルゴの前に来たのである。
「ギギル、やはり生きていたのか」
「そうだ。俺は何とか生きていた」
 そうだとだ。バルゴに言うのだった。
「そして今ここに来た」
「それは何故だ」
「シビルの為だ!」
 まさにだ。彼女の為だというのだ。
「俺は決めた!シビルの為に戦う!」
「馬鹿な、あの裏切り者の為にだと」
「俺も同じになったからな」
「裏切り者にか」
「それなら同じだ。俺はシビルの為に命を捧げる!」
 以前のギギルとはだ。全く違う言葉だった。
「俺の突撃ラブハートを見せてやる!」
「ああ、そうしようぜ!」
 バサラがだ。そのギギルに応えた。
「よし、じゃあここはだ!」
「熱気バサラ、俺も一緒に戦っていいのだな!」
「戦うんじゃねえ!」
 バサラはそれは否定する。
「歌うんだ!」
「歌うのか」
「そうだ、歌え!御前の歌を!」
 ギギルにもだ。言うことは同じだった。
「全力でぶつかって手に入れるんだ!」
「よし、わかった!」
 ギギルも応えてだ。そうしてだった。
 バルゴに向かう。そのうえで彼を止めるのだった。
 プロトデビルン達が止まりだ。その間にだ。
 バロータ軍全体がだ。押されていた。
 ロンド=ベルの攻撃はだ。ここでも激しかった。
 それでだ。彼等の数を瞬く間に減らしていた。
「よし、やれる!」
「この戦いも!」
「やってやるわよ!」
「終わらせてやる!」
「むう、これは」
「窮地美だな」
 バルゴとガビルがそれぞれ言う。
「この状況ではな」
「これ以上の戦闘は無理だ」
 こう判断して。そしてだった。
 彼等は同胞達にだ。こう告げた。
「こうなっては仕方がない」
「グラビル、いいか」
「ガオオオオオオオオン!」
 まずはグラビルが応えた。そしてだ。
 ゴラムとゾムドもだった。彼等もだ。
「では。次だな」
「本星でだな」
「そうだ、戦うとしよう」
「決戦美だ」
 二人はそれぞれ話してだ。そうしてだった。
 全軍に撤退を命じた。これでここでの戦いは終わった。
 だがそれでもだ。ロンド=ベルの面々はだ。
 難しい顔になっていた。それは新たに加わったギギルの話を聞いてだ。
「シビルってあの娘よね」
「ああ、そうだ」
 その話の中でバサラがミレーヌに話していた。
「あのプロトデビルンの娘がな」
「今も銀河を旅していたの」
「そうだ、そしてだ」
 ギギルがバサラを見ながら話す。
「御前にまた会いたいと言っていた」
「俺にねえ」
「御前の歌を聴きたいと言っていた」
「それは願ったり叶ったりだけれどな」
 バサラにしてはそれこそが望む展開だった。そのことには楽しげに笑ってみせる。
「俺だってやりがいがあるぜ」
「そうだな。それではだ」
「それでシビルは今何処にいるかだな」
「さっきも話したがだ」
 どうかというのだ。
「俺も今シビルが何処にいるかわからない」
「けれど。シビルは絶対にバサラのところに来るからなのね」
「そうだ。だからここに来た」
 ロンド=ベルにだというのだ。
「俺はシビルと会う為に生きている」
「そうだな。そして」
「そして?」
「それを貫くんだよな」
 バサラがだ。ギギルに問うたのである。
「それをな。これからもずっとな」
「そのつもりだ」
 ギギルは確かな言葉でバサラに答えた。
「俺は。あくまでシビルを」
「そうか、それじゃあな」
「どうしろという、御前は」
「俺は何もしないさ」
 バサラは自分はそうだというのだ。
「そして何も言わないさ」
「そうか」
「あんたの道はあんたで選べ」
 そうしろと。バサラはギギルにその全てを任せていた。
 そしてだ。そのうえでだった。
 彼はだ。そのギギルに対してまた言うのだった。
「俺はそのあんたにな」
「歌か」
「ああ、そうさ」
 まさにだ。その歌だというのだ。
「歌うぜ。そのあんたの為にな」
「歌は。俺に、いや俺達に」
「俺達?」
「っていうとギギルさんだけじゃなくて?」
「ギギルさんも?」
「そうなのか」
「そうだ。俺達全員だ」
 まさにだ。彼等全員だというのだ。
「俺達プロトデビルンは。どうやら音楽でだ」
「それによってか」
「スピリチアを得る」
「どうやら」
「それがわかってきた」
 ギギルだけなのだ。そしてだ。
 彼はだ。また言うのだった。
「だから。シビルと共に歌を聴きたい」
「歌、凄い力ね」
「そうですね」
 そのことを。今シェリルとランカも実感した。
 それでだった。二人もだ。
「私達も。それなら」
「これからも」
 こう話してだ。二人は歌を歌うことを決意した。
 彼等はギギルを加えたうえでさらに進む。そこでだった。
 歌を聴き続ける。様々な歌を。それはブンドルもだった。
 ブンドルは今次から次に音楽を聴いていた。クラシックの曲をだ。
 カットナル、ケルナグールも共にいる。そのうえでだ。
 ブンドルに対して。こう問うのだった。
「ブンドルよ、これもだな」
「この歌もまたいいというのだな」
「そうだ。二人もわかる筈だ」
 彼は優雅に聴きながら彼等に問うた。
「こうした歌の素晴らしさも」
「確かにな」
「それはその通りだ」
 二人もだ。それを否定しなかった。
「実にいい歌だ」
「これは何だったか」
「ヴェルディ、椿姫第四幕より」
 男と女の。二重唱だった。今の曲は。
「パリを離れてだ」
「あの音楽家にしては静かな曲だな」
「そんな歌だな」
 カットナルとケルナグールは音楽家の名前を聞いてまずはこう述べた。
「美しい」
「そして清らかだな」
「ヴェルディは激しいだけではない」
 それに留まらない。ブンドルは話す。
「静も持っているのだ」
「併せ持っている」
「そうなのだな」
「確かに劇的な音楽が多いが」
 それでもだというのだ。
「これもまたヴェルディなのだ」
「そうか」
「いいものだな」
「そう思うな。では今はこの曲を聴こう」
 ブンドルは優雅なまま話す。
「三人でな」
「わし等もだな」
「そうしていいのだな」
「長い付き合いだ」
 それはまさにその通りだった。
「それではだ。こうしたこともな」
「いいか」
「そうなのだな」
「無論二人の好きな音楽も聴くといい」
 ブンドルはこうも話した。
「そうして。今は過ごそう」
「歌、いいものだな」
「それもな」
 三人も今はその音楽の中にいたのだった。
 そしてだ。その中でだった。ケルナグールが話した。
「わしは確かに戦いが好きだ」
「それでもか」
「うむ、それでもだ」
 こうカットナルに話すのだった。
「しかし熱気バサラのあの意気はだ」
「認めるのだな」
「認めるしかあるまい」
 こうまで言うのだった。
「あれは戦いではないが戦いだ」
「そうだな。あれはな」
「戦い、そして一気に掴むものだ」
 まさにそれだというのだ。
「それがあの男だな」
「熱気バサラだな」
 そしてだ。カットナルも言うのだった。
「あの男、見ていて嫌いになれぬ」
「そうだな。とてもな」
「あのまま手に入れるべき男だ」
 その目指すものをだというのだ。
「そうあるべきだ」
「そうだな。実にな」
「確かに。熱気バサラはだ」
 ブンドルもだ。ここで言う。
「あの情熱、そして気迫」
「そういったものが全て」
「言うのだな」
「そう、あれこそが」
 構える。薔薇も出す。そのうえでだった。
「美しい・・・・・・」
「その通りだな」
「今回は見事に決まったな」
「あの男もまた美だ」
 また言うブンドルだった。
「最高の美なのだ」
「最高だな」
「そこまでだというのだな」
「そうだ。その美に巡り会えたこと」
 ブンドルの言葉は続く。
「私の最高の幸せの一つだ」
「わし等も色々とあったがな」
「何時の間にか宇宙の彼方まで行っているがな」
 それでもだというのだ。
「多くのものを得たな」
「学ばさせてもらっている」
「ドクーガが滅び。美が残った」
 こうも言い合う。
「私達の中にだ」
「ではブンドルよ、次は」
「何の曲を聴くのだ?」
 ここでその歌が終わった。そこでだった。
 二人はだ。ブンドルに対して次の曲を尋ねるのだった。
「わしの曲にするか?」
「どうするのだ?」
「別に構わないが」
 ブンドルは優雅な姿勢のまま話す。
「そうだな。ここはだ」
「何にするのだ」
「それで」
「プッチーニがいいか」
 今度の曲はだ。この作曲家のものだというのだ。
「蝶々夫人はどうだ」
「ある晴れた日にか」
「それだな」
「それでいいな」
 二人も頷くのだった。それでだった。
 おおよそのことが決まった。その歌になった。
「ではな」
「今度はその曲にしよう」
「歌手だが」
 ブンドルはここでこのことを問題にした。
「誰にするかだが」
「そうだな。蝶々夫人か」
「それならばだ」
「カラスがあるが」
 マリア=カラスのことだ。二十世紀で最も有名な歌手の一人だ。
「他にもあるが」
「ここはカラスでなくともよいのではないか?」
「他の歌手でもだ」
 二人はこう述べた。
「どの歌手かというと困るが」
「他でもな」
「ここは一つ聴き比べをするか」
 ブンドルはふとこう言った。
「そうするか」
「いいな、それは」
「それではだ」
 二人もそれに乗った。そしてだ。
 三人でそのCDの中の聴き比べをする。そうして時を過ごすのだった。
 彼等は進んでいく。そうしてだ。バサラはその中でもバサラだった。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!!」
 ライブを続けていた。だがそれを見てだ。
 ふとだ。未沙が言った。
「ずっと。あのテンションが続けばいいけれど」
「倒れるっていうの?」
「何かそう思ったのよ」
 こうクローディアに話すのだった。
「バサラ君のテンション見てたらね」
「確かに凄いテンションだけれどね」
「それがずっと続くのかしら」
 また言うのだった。
「急に倒れたりしたら」
「エネルギー切れね」
「それで済めばいいけれど」
 ふと危惧したのだった。しかしだった。
 その危惧は不幸にして当たった。それが近付こうとしていた。誰も気付かないうちに。


第百四話   完


                      2011・3・9
 

 

第百五話 銀河に死す

             第百五話 銀河に死す
 ロンド=ベルはだ。遂にだった。
 バロータ本星の前にだ。来たのだった。
「やっぱり捕虜を解放したのが効いたよな」
「ああ、予備戦力がなくなったからな」
「だからな」
「それで上手くいったよな」
「本当にね」
「そのせいで敵の迎撃も少なかったし」
 それがだ。戦略的に非常に大きかったのだ。
 それでだ。彼等はここまで順調に来られた。そのうえでだ。
 エキセドルがだ。指示を出した。
「それではです」
「全軍出撃ですね」
「そうされますね」
「はい」
 その通りだとだ。美穂とサリーに答えた。
「これが最後の戦いになります」
「プロトデビルンとの」
「いよいよですか」
「そうです。ただ」
 ここでまた言うエキセドルだった。
「迎撃に来るでしょう」
「はい、わかりました」
「では」
「だからこそです」
 エキセドルの言葉は冷静だった。そしてだ。
 そのうえでだ。全員に対してだ。
「全軍出撃しましょう」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。全軍でだった。
 出撃する。そこにだった。
 プロトデビルン達の大軍が来た。その指揮官達は。
「来たな」
「予想通りだけれど」
「あの四人か」
「出て来たんだな」
「その通り!」
 ガビルが応える。
「防衛美!それだ!」
「ガオオオオオオオン!」
「よし!健在みたいだな!」
 ガビルとグラビルにだ。バサラが応える。
「じゃあ俺もな!美に応えるぜ!」
「来るのだ熱気バサラ!」
 ガビルも上機嫌で応える。
「その音楽美また楽しみにしているぞ!」
「ガビルよ」
 その彼にだ。バルゴが問うた。
「何故だ」
「何故かとは?」
「何故そこまで音楽に熱中している」
 彼が問うのはそのことだった。
「アニマスピリチアよりも」
「感じるのだ」
 ここでガビルは答えた。不敵な笑みと共にだ。
「音楽に。それと同じものをだ」
「まさか。それは」
「いや、感じる」
 確かにだ。それを感じるというのだ。
 そしてだ。そのうえでだった。
 彼はだ。バルゴに対しても言うのだった。
「バルゴよ。それではだ」
「それではか」
「そうだ、聴くのだ」
 こう言うのだった。
「音楽をだ、いいな」
「わからんな」
「わからんか」
「音楽に何があるのだ」
 バルゴはいぶかしんでいた。明らかにだ。
「言っている意味がわからん」
「わかる。聴けばな」
「全く。何だというのだ」
「貴様だけではない」
 バルゴだけではなかった。ゴラムとゾムドにもだった。
「二人もだ」
「その音楽とやらをか」
「聴けというのか」
「そうだ、聴くのだ」
 音楽をだというのである。
「わかったな」
「何故だ、それは」
「そこまで言うのか」
「そうだ。聴くとわかる」
 これがガビルの言葉だった。
「わかったな」
「わかるとは思わぬがな」
「私もな」
 二人はガビルのその言葉にいぶかしむ。いぶかしむばかりだった。
 しかしだ。それでもだった。ガビルはだ。
 あくまで音楽を聴けというのだ。しかしだ。
 バルゴはその彼にだ。こう言うのであった。
「今は戦いだ」
「それをするというのだな」
「それは不服か?」
「いや」   
 それはないと答えるバルゴだった。
「俺は戦いは好きだ」
「では異論はないな」
「そうだ。だが」
「また歌か」
「聴くのだ。いいな」
 あくまでこう言うのであった。戦いの中でもだとだ。そうしてであった。
 彼等はロンド=ベルに向かう。戦いがここに幕を開けた。
 その中でだ。ギジェが言った。
「まずいな」
「まずいって?」
「イデが反応した」
 ゲージを見ながらだ。カーシャに話したのである。
「まさかとは思うが」
「別の敵が来るってこと?」
「可能性はある」
 こう話すのだった。
「少なくとも油断はできない」
「ここで敵っていったら」
「宇宙怪獣とか?」
 デクはそれを予想した。
「それが来るのかな」
「あの連中は何処にでも出て来るからな」 
 コスモは不満に満ちた顔で述べた。
「それもあるな」
「そうね。腹が立つけれど」
 カーシャも不満を露わにさせている。
「あの連中かも知れないわね」
「それかバルマーかバッフクランか」
 ベスも言う。
「どの相手だ」
「レーダーに反応です」
 ここで言ったのはメイリンだ。
「十時の方角からです」
「来たか!」
「イデの反応通りかよ!」
「全く。相手はどれだ?」
「どの勢力だ!?」
 皆それを確かめようとする。するとだ。
 出て来たのは。彼等だった。
「バッフクラン!」
「奴等か!」
「ここで!」
「まさかここでロンド=ベルと会うとはな」
 ハンニバルが言う。指揮官は彼だった。
「あのプロトデビルンとやらを征伐に来たが」
「はい、予想外でした」
「これは」
 参謀達が彼に応えて述べる。
「しかし司令、これはです」
「好機であります」
「わかっている。いいか」
 ここで言うハンニバルだった。
「どちらも叩くぞ」
「はい、ではこのまま」
「攻撃ですね」
「そうする。いいな」
 こうしてだった。彼等もまた戦場に来る。そしてだった。
 三つ巴の戦いがはじまった。どの軍も二つの敵を一度に相手にしている。
「乱戦は避けろ!」
「陣は崩すな!」
 その中でブライト達が指示を出す。
「敵に囲まれるな!」
「はぐれるな!」
「突撃は禁止だ!」
 こう指示を出してだ。方陣になってだった。彼等は戦っていた。
 そしてだ。その中でだ。
 バサラはだ。高らかに言うのであった。
「よっし!プロトデビルンだろうがバッフクランだろうがな!」
「歌ね」
「そうだ、聴かせてやるぜ俺の歌!」
 こう言うのだった。
「思う存分な!」
「しかしバサラ」
 ガムリンがそのバサラに言う。
「今はだ」
「迂闊に飛び出すなってんだな」
「そうだ。今は乱戦だ」
 それでだというのだ。
「飛び出すな。いいな」
「まあ仕方ねえな」
 ここでは素直なバサラだった。
「じゃあ今はここで歌うか」
「プロトデビルン達は自分達から来る」
 それでだというのだ。
「迂闊に出る必要はない」
「とか何とか言ってる間によ」
 ミレーヌが話す。
「もう来たから」
「確かにな」
 レイも言う。
「むしろ好都合か」
「ああ、好都合だ!」
 そしてバサラはその通りだと述べる。見ればガビル達は自らバサラのところに来ていた。
「じゃあやってやるぜ!」
「いくわね、バサラ」
「ああ、聴け!」
 プロトデビルン達への言葉だ。
「俺の歌をな!」
「ふん」
 バルゴが醒めた声を出してバサラのその前に来た。
「歌に何の力があるのだ」
「そうだ。歌とは何だ」
「何の価値があるのだ」
 ゴラムとゾムドも言う。
「必要なものはアニマスピリチア」
「それだけだというのに」
「歌になぞ」
「何の価値があるのだ」
「それはすぐにわかる」
 また告げるガビルだった。
「戦えばな」
「何度もそう言うがな」
「本当なのかどうか」
 他の面々はだ。懐疑的な言葉だった。
 そしてその懐疑的なままでバサラ達に向かう。すると。
「!?」
「何だ、これは」
「一体」
 彼等もだ。それぞれ感じたのだった。
「これまでに感じたことのない感覚」
「何とも言えない」
「おかしいのか?」
「いや、おかしくはない」
「むしろ」
「この感覚は」
 どうかと。バサラの音楽を聴きながら述べていく。
「妙だな」
「満ちる様な気持ちだ」
「アニマスピリチアを得る様な」
「そうだ。むしろだ」
 ガビルもその彼等に話す。
「これはだ」
「アニマスピリチアよりも」
「さらにだな」
「満たされる」
 それを感じるのだった。バサラの音楽にだ。
 そしてだ。彼の音楽だけではなかった。
「あたしもいるわよ!」
「私も!」
「あたしもね!」
 ミレーヌにだ。ランカ、シェリルもだ。彼女達もだった。
 その歌を聴くとだ。さらにだった。
「素晴らしい」
「何かが違う」
「そうだ、満たされていくばかりだ」
「これがまさか」
「音楽だというのか」
「その力だというのか」
「若しかするとだ」
 ガビルもその満たされる中で言う。
「音楽美はだ」
「大きいものか」
「我々にとっては」
「アニマスピリチアよりも」
「だからではないのか」
 また言うガビルだった。
「シビルが去りギギルが彼等についたのは」
「音楽故に」
「だからか」
「それ故に」
「あながち間違いではあるまい」
 ガビルの言葉がまた出た。
「それもな」
「そうか歌か」
「あれがあれば」
「我々は」
「後はゲペルニッチ様がどう思われるかだ」
 問題はだ。それだけだというのだ。
「我等は大きく変わるのかもな」
「人間ってのはな!」
 また言うバサラだった。
「変わる為にいるんだよ!」
「その為だというのか」
「ああ、それもいい方向にな!」
 こうバルゴ達に言うのである。
「間違っていると思ったらなおせばいいだけだ!」
「!?バサラって」
「だよな」
「人間は正しい方向に歩めると思ってるんだな」
「そうなんだ」
「けれどそうだよな」
「ああ、バサラだよ」
 彼らしいというのである。誰もが。
「そうだな。それだから」
「ここまで来られたそうなるな」
 皆またバサラに頷くものを見た。そして。
 戦場に誰かが来た。それは」
「バサラ!」
「!?シビル!」
 ギギルが彼女の姿を見て言った。
「来たのか!」
「ギギル、生きていた」
「そうだ、俺は生きていた!」
 高らかにだ。こうシビルに話すのだった。
「御前の為に!生きていたんだ!」
「ギギル・・・・・・」
「そして御前の為にここにいる!」
 また言う。
「御前と共にいる!」
「ギギル、わかった」
 シビルも彼のその言葉を受けた。そして。
 バサラの傍らに来た。そのうえで戦おうとする。
「シビル、バサラと一緒に」
「いや、シビル違うぜ!」
 バサラはそのシビルに話すのだった。
「アニマスピリチアとかそんなのはな!」
「そんなのは?」
「俺には関係ねえ!関係あるのは!」
 それは何か。ギターで答えてみせた。
「これだ!」
「歌!?」
「そうだ。パワートゥーザドリーム!」
 この歌の名前を言う。
「俺の歌だ!」
「バサラの歌」
「どいつもこいつも聴きやがれ!そしてシビル!」
「何?」
「疲れてるな。それならだ!」
 いつも以上に力の入った演奏をだ。シビルに聴かせるのだった。
「これで元気になれ!」
「バサラ・・・・・・」
「俺の歌、存分に受け取れ!」
 こう言って演奏を続けた。しかしだ。
 その演奏の激しさ、これまでの疲れ故か。彼は急に眠りに入ってしまったのだ。
「バサラ!?」
「まさか」
「死んだ!?」
「嘘だろ!?」
 これにはだ。誰もが驚きを隠せなかった。 
 だがバサラは確実にだ。倒れてしまった。返事はなかった。
「バサラ、死んだ?」
 シビルもだ。驚きの声をあげる。
「死んだ、そんな」
「・・・・・・・・・」
 そのバサラからの返事はない。そして。
 それがわかったシビルはだ。嘆きの声をあげた。
「バサラ生きる!アニマスピリチアいらない!」
「そんな筈ないわよ!」
 ミレーヌも今の事態を必死に否定する。
「バサラがそんな、死ぬなんて!」
「生きる!生きる!」
「嘘だって言ってよ、ねえバサラ!」
「コオオオオオオーーーーーーーーッ!!」
 二人の嘆きが戦場に響き渡る。それを見てだ。
 ガビルがだ。同胞達に言った。
「最早だ」
「この戦いはだな」
「そうだ。今は退くべきだ」
 こう言うのだった。
「あの男はいなくなった。それではだ」
「戦う意味がない、いや」
「そうだ、ここにいる意味はない」
 これがガビルの言葉だった。
「去ろう。そして」
「我等の本星において」
「音楽美を聞こう」
 こう言ってだ。彼等は撤退した。しかしだ。
 その彼等と入れ替わりにだ。今度は。
 宇宙怪獣が出て来た。そうしてだった。
 ロンド=ベルはバサラを欠いた状態で再び三つ巴の戦いに入った。激しい戦いが続く。
「くっ、バサラがまずいってのに」
「今度は宇宙怪獣だなんて」
「どうすればいいんだよ」
「こんな状況でも戦わないといけないのね」
「これどないしたらええんや」
 トウジも思わず呻いた。
「洒落ならんで」
「何言ってるのよ。これ位の戦い今までも何十回もあったじゃない」
 そのトウジにアスカが言う。
「そうじゃないの?」
「それはそやけどな」
「バサラさんがいなくてもね!」
 それでもだと。アスカは強気を見せる。
「戦わないとどうするのよ!」
「その通りね」
 レイがアスカのその言葉に頷いた。
「ここは絶対に」
「バサラさんの為にも」
「戦うしかないわ」
 シンジにも述べるレイだった。
「大丈夫、バサラさんは死なない」
「そうだね。絶対にね」
「だから。戦う」
「そういうことね。いいわね!」
 アスカはあらためてトウジに叫んだ。
「ここは戦い抜いてそうしてよ!」
「生き残るんやな」
「それで。プロトデビルン達との戦いを終わらせるのよ」
「そうだ、絶対にだ」
 ガムリンも強い声で言う。
「皆、ここは戦おう」
「そうだな。それに」
 ここでギジェがイデのゲージを見ながら言った。
「イデのゲージがあがっている」
「!?じゃあ」
「ここでまさか」
「またイデオンが!?」
「何かが起こるの!?」
「な、どうしたんだ!」
 一同が何かを察した時にだ。コスモが驚きの声をあげた。
「イデオンが急に」
「!!これは!」
 そしてだ。アムロもだった。 
 勘が。ニュータイプのその勘が教えた。そしてだ。
 彼はだ。全員に叫んだ。
「総員ここから去れ!」
「!!」
「中佐、一体!」
「何が起こるんですか!?」
「それはわからない。だが」
 しかしだというのだ。
「急いでこの宙域から去るんだ!」
「よし、それではだ」
 ブライトが無二の親友の言葉に応えた。
「総員各艦に戻れ!」
「戦闘中ですが」
「それでもですか」
「そうだ、戻れ!」
 それでもだとだ。ブライトの言葉も真剣だ。
「何かが起こる。すぐにワープに移る!」
「な、何だというのだ」
 ギジェもイデオンの中で声をあげる。
「まさか。これがイデの」
 そして言う言葉は。
「発動だというのか」
「イデオンソード!?まさか!」
 イデオン以外のマシン、バサラのバルキリーはミレーヌのバルキリーが無理にマクロス7に入れた。彼等が乗艦して各艦がワープに入る。
 その中でイデオンはイデオンソードを放った。そしてだ。
 宇宙怪獣もバッフクラン軍もだ。全てだった。
 惑星を真っ二つにして。そうして。
 何もかもを破壊したのだった。それで戦いは終わった。
 そして気付いた時にはだ。イデオンは。
 ロンド=ベルの面々がワープしたその先にいた。そしてギジェが皆に話す。
「恐ろしいまでの力だった」
「ああ、本当にな」
 コスモも話すのだった。
「惑星が真っ二つになっちまった」
「星が一つか」
「イデオンソードで」
「イデオンにはそこまでの力があったのか」
「まさか。それだけの力が」
「敵は全滅した」
 ギジェはこのことも話した。
「ハンニバルも。その中で」
「そうか、あいつも」
「死んだんだな」
「そうなのね」
「敵は一機も残らなかったわ」
 カーシャも話す。唖然とした顔で。
「本当にね」
「イデの力か」
「それによってだよな」
「本当に恐ろしい力だな」
「全くだな」
 皆で言うのだった。
「何なんだろうな、あれは」
「どんどんわからなくなってきたな」
「凄まじいのはわかるけれど」
「その実態が」
「確かにだな」
「神か」
 それではないかという言葉も出た。
「若しくは悪魔か」
「神か悪魔かというのなら」
 ここでギジェも言う。
「イデは悪魔かも知れないな」
「そう思うのね」
「あの力を見ればだ」
 ギジェはこうシェリルに言うのだった。
「そう思える」
「悪魔の力」
「それに近いかも知れない。だが」
「だが?」
「それでいて人間めいたものも感じる」
 こうも言うのだった。
「そうしたものも」
「そうだな。ギジェの言う通りかも知れない」
 コスモがギジェのその言葉に頷いた。
「イデの力は」
「コスモはそう思うのね」
「あ、ギジェと同じだ」
 彼はこうカーシャに答えた。
「カーシャはどうなんだ?」
「そうね。女性じゃないかしら」
 カーシャはそれではないかちうのだ。
「イデの力って」
「女性的か」
「そういえば何か」
「子供に反応するような?」
「そうしたこともあったしね」
「だよね」
 ロンド=ベルの面々もここで気付いてきた。
「イデの力って一体」
「何なのか」
「そしてどうなるのか」
「さっぱりわからないしね」
「下手をしたら」
 今度言ったのはマサトだ。
「イデの力で」
「どうしたの、マサト君」
「うん、それが暴走すれば」
 こう美久に応えて話すのだった。
「それが。破局になるかも知れないね」
「破局に」
「その可能性はあるかも知れない」
 こう話すのだった。
「イデの力は」
「あと。話は変わるけれど」
 ここで言ったのはシェリルだった。
「バサラさんは」
「大丈夫なんですか、それで」
「難しいわね」
 項垂れた顔でランカに応える彼女だった。
「目が覚めないわ」
「まさかこのまま」
「最悪の事態も」
「それも?」
「予断を許さない状況です」
 エキセドルもこう話す。
「目覚めてくれることを祈ります」
「そうなんですか」
「バサラならって思うんですけれど」
「本当に目覚めて欲しいですね」
「全くです」
 こう話す彼等だった。決戦を前にしてだった。彼等は不安の中にその身を置いていた。
 そしてバロータ本星にだ。彼女が来ていた。
「戻って来ていたのか」
「バサラ、助けたい」
 シビルがだ。ゲペルニッチに対して言っていた。
「だから」
「馬鹿なことを。あの男なぞ何だというのだ」
「バサラ、凄い」
 シビルはこう言って引かない。
「その歌、シビルに届いた」
「歌だと」
「そう、歌」
 それだというのである。
「バサラとその歌」
「それを守りたいというのか」
「だから戻って来た」 
 ゲペルニッチに対して告げる。
「シビル、バサラ助けたい」
「それで私をどうするつもりだ」
「戦い止めさせる」
「アニマスピリチアを手に入れることを止めるというのだな」
「そう。止めないといけない」
 シビルはさらに言う。
「それが今のシビルの考え」
「愚かだな」
 ゲペルニッチはシビルのその考えを一蹴した。そしてだ。
 彼女に対してだ。こう言うのだった。
「それならばだ」
「それなら」
「来るのだ。そしてだ」
「ゲペルニッチ倒す」
「そうしてみるのだ。私を倒してからだ」
「わかった。それなら」
 彼等の戦いがはじまった。双方でだ。動きがありながら最後の戦いを迎えるのだった。


第百五話   完


                                        2011・3・11 

 

第百六話 復活を信じ

                 第百六話 復活を信じ
 敵の本星に向かう中でだ。
 マクロス7の集中治療室の中で。ミレーヌ達は項垂れながらバサラを見ていた。
 彼はベッドの中で目を閉じている。いつもの言葉はない。
「バサラ・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 返答はない。眠っているだけだ。
 しかしそれでもだ。ミレーヌはだ。彼に呼びかける。
「クライマックスに謳えないんじゃしょうがないじゃない」
「それで博士」
 ガムリンは千葉に対して問う。
「バサラの容態はどうなんだ?」
「それは」
「言えないのか?」
「自発呼吸なし」
 千葉も項垂れて話す。
「脈拍二十五、体温三十二度」
「まずいわね」
 それを聞いたリツコが述べた。
「そのままだと」
「あと数日しか」
 千葉もそれを言う。
「もたないだろう」
「そんな、それじゃあ」
「バサラは」
「我々もあらゆる手段を尽くした」
 それでもだというのだ。
「しかし彼は」
「ねえおじさん」
 アーシュラがここで千葉に問う。
「バサラ、目を覚まさないの?」
「どうなの?それは」
「起きるよね」
「また歌ってくれるよね」
「そうだよね」
「ラポー君」
 アーシュラ以外の子供達も見てだ。千葉は怪訝な顔でラポーに尋ねた。
「この子達はソロシップの」
「はい、すいません」
 まずは謝罪するラポーだった。
「どうしてもバサラのお見舞いをすると言って」
「それで来たんだね」
「そうです」
 まさにそれでだというのだった。
「付いてきました」
「バサラはソロシップの子供達の間でも人気があるんだね」
「ソロシップだけではありません」
 カララが言う。
「どの艦でも彼の回復を祈っています」
「そうなんだ」
「その通りだ」
 ハマーンもここで話す。
「ミネバ様も仰っていたが」
「あの娘も」
「そうだ。この戦いの中で勇気と希望を与えてくれる」
 バサラの歌がだというのだ。
「素晴らしいものだ」
「あたしも好きだね」
 キャラもいる。そのうえでの言葉だ。
「魂があるからね」
「大丈夫だよね?」
 ファードが切実な顔で千葉に尋ねる。
「バサラはきっと目を覚ますよね」
「それは」
「大丈夫だよ」
 口ごもってしまった千葉に代わってだった。
 ガムリンがだ。優しい笑顔でファードに話した。
「バサラは遅刻はするけれど」
「それでも?」
「ステージをすっぽかしたことはないから」
 だから大丈夫だというのである。
「安心していいよ」
「本当?」
「ああ、本当だよ」
 また優しい声で告げるガムリンだった。
「だから君達も」
「僕達も」
「バサラのことを信じてやってくれ」
「そうですね。バサラさんは」
 ラクスも話す。
「必ず。戻って来られます」
「じゃあ今は」
「バサラを待つか」
「そうだよな」
「こいつを信じて」
「そうしようか」
 それで意見がまとまったのだった。
 そしてだ。マクロス7のブリッジでは。
 エキセドルがだ。こう述べていた。
「ゲペルニッチはです」
「彼は?」
「一体何があるのですか」
「最後のプロトデビルンには」
「吸収型といいますか」
 こうした不吉な言葉が出て来たのだ。
「あらゆる生命体からスピリチアを」
「それを?」
「どうすると」
「無限に吸収し続けていく」
 そうしていくというのだ。
「スピリチアのブラックホールの様な存在です」
「それがゲペルニッチなんですか」
「そうなんですか」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのである。
「それがゲペルニッチです」
「スピリチアのブラックホール」
「そんなのが存在するなんて」
 ミサトとマリューが言った。
「洒落にならないわね」
「流石にね」
「それでは」
 今度はだ。レフィーナが話す。
「この戦いもですね」
「ええ、負けたら」
「それで終わりね」
 ミサトもマリューも言う。
「その時点でね」
「銀河が」
「銀河の全ての生命体がです」
 エキセドルもここで話す。
「死滅してしまうかも知れません」
「ブラックホールに飲み込まれて」
「そうしてか」
「死ぬんだな」
「全て、皆が」
「しかし」
 ここで言ったのはブライトだった。
「ゲペルニッチがだ」
「あいつが?」
「あいつがっていうと」
「銀河の全スピリチアを吸収してしまえば」
 彼が言うのはこのことだった。
「それで彼も食料を失うのでは」
「じゃあ自滅するか?」
「その時点で」
「食うものがなくなればな」
「やがては」
「誰だってそうなるよな」
「どんな生物でも」
 これは誰にもわかることだった。そしてだ。
 ブライトはだ。さらに言うのであった。
「それならばだ」
「だからでしょう」
 ここでまた話すエキセドルだった。
「彼等がスピリチアファームを造っていたのは」
「つまりあれは」
「牧場だったんだな」
「だからファームか」
「成程」
「その安定供給を求めていたのでしょう」
 これがエキセドルの分析だ。
「だからこそです」
「それを阻止するには」
「一体どうするか」
「それは」
「この選択肢は認められませんが」
 エキセドルはこう前置きしたうえで述べた。
「メガロード船団やシティ7の市民達をです」
「あいつに引き渡す?」
「スピリチアファームとして」
「そうするのもですか」
「考えられると」
「認められませんね、これは」
 また言うエキセドルだった。
「とても」
「ええ、ちょっと」
「それはなあ」
「絶対に駄目だよ」
「何があっても」
 誰もがこう返すのだった。
「俺達ならともかく」
「一般市民の人達までっていうのは」
「そんな、生贄には」
「とてもね」
「はい、ですから駄目です」
 また言うエキセドルだった。
「論外です」
「しかし何らかの対策を講じなくてはならんぞ」
 兵左衛門が言う。
「さもなければだ」
「結局は同じか」
「皆スピリチアファームか」
「それ送りだよな」
「あいつの餌に」
「人間の自由か」
 大文字の言葉だ。
「若しくは銀河の安全かだ」
「二つに一つか」
「このままだと」
「どっちかか」
「ここは」
 だが、だ。千葉が言うのだった。
「今こそサウンドバスターでは?」
「サウンドバスター?」
「それを使う?」
「ここで、ですか」
「そう、アニマスピリチアは」
 千葉は皆にさらに話す。
「スピリチアレベルが極めて高い反面」
「その反面?」
「一体何が」
「何があるんですか?」
「プロトデビルンにとっては危険な存在の筈」
 こう睨んでの言葉だった。
「毒にもなる存在だと思うんだ」
「劇薬ってことですか」
「奴等にとっては」
「そうですか」
「そう、若し」
 千葉の言葉が続けられる。
「バサラ君がそれなら」
「あいつを使って」
「そうして」
「そのうえで」
「プロトカルチャーの時代に」
 千葉の言葉はここで一旦遡った。
「アニマスピリチアが彼等の自由を奪って」
「封印できたみたいに」
「同じようにして」
「封じ込める」
「それができるんですね」
「そう確信するよ」
 微笑んで話す千葉だった。
「バトル7のガンシップとフォールドシステムの改造だけれど」
「マクロス7の?」
「それをして」
「そのうえで」
「歌エネルギーを超空間変調させ」
 そうしてだというのだ。
「彼等の体内に直接送り込めば」
「そうなれば」
「あの連中が」
「身体の内側から歌を」
 つまりであった。
「アニマスピリチアを細胞の隅々まで浸透させるんだ」
「ああ、シビルの時みたいに」
「そうして」
「動けなくする」
「行動不能にですね」
「そう、それでいける筈だ」
 ここまで話した千葉だった。
 しかしだった。彼はすぐに暗い顔になった。そしてだ。
 彼はだ。こう言うのだった。
「ただ」
「だよなあ。肝心の」
「バサラが」
「あれじゃあ」
「ちょっと」
「そう、それだけはどうしようもなくて」
 千葉が暗くなったのはこのせいだった。
「どうしようもなくて」
「じゃあここは」
「どうしよう」
「力技か?」
「それかシェリルとランカ」
「あの二人頼りか」
「あの二人の力も絶大です」
 エキセドルはそれはわかっていた。
「若しかすると」
「成功するか?」
「それなら」
「それで」
「どちらにしてもだ」
 大河が決断を下した。
「ここはだ」
「行くしかないですね」
「逃げたらもうそれで」
「終わりですね」
「だからこそ」
「そうだ、我々は行くしかないのだ」
 彼は言った。
「最早だ」
「そうだ、皆行こう」
 光が言った。
「バサラさんは絶対に戻って来るよ」
「そうだな。あの男はな」
 クリフもだ。バサラを考えて頷いた。
「必ず。そうする者だ」
「ほな。いこか」
「それしかないのだからな」
 カルディナとラファーガも言う。
「気合入れてな」
「勝つしかない」
「じゃあ今から」
「あらためて」
 アスコットもアルシオーネも。真剣な顔で。
「敵の本星に行って」
「そうして」
「プロトデビルンに対してだ」
 また言う大河だった。
「最終作戦を発動する」
「了解」
「わかりました」
 皆それに頷く。こうしてであった。
 彼等は作戦を発動した。そのうえで敵の本星に向かう。そlの前には。
「来たな」
「予想通りね」
「これでもかって位にいるよな」
「最後だから」
「来たな、ロンド=ベル」
 ガビルがだ。いつも通り彼等に話す。
「この場所に」
「ああ、来たぜ!」
「この戦いを終わらせる為にね!」
「だから来たのよ!」
「これぞ洞察美!」
 その美だというのだ。
「ここに来ることを呼んでいた!」
「じゃあ最後まで読みきれるんだな!」
 アルトがそのガビルに問う。
「俺達の最後の動きまで!」
「無論だ。それこそが美なのだから」
「じゃあ見切ってみやがれ!」
 アルトもだ。気合が入っていた。
「そう簡単にはいかないからな!」
「そうだよな。俺だってな!」
 柿崎もだ。ここで言う。
「最後の最後まで、生きてやるぜ!」
「いいか!」
 フォッカーが告げる。
「ここでは敵に構うな!」
「了解!」
「わかってます!」
「俺達の目的はあくまで本星への降下だ!」
 それだというのだ。
「残された時間は少ないんだ!」
「そうですね。だからこそ」
「敵に構わずに」
「そうして」
「目標地点、降下地点まで行け!」
 これがフォッカーの今の命令だった。
「全員だ!生きてな!」
「わかってます!」
「それは!」
「じゃあ生きろ!」
 フォッカーはまた言った。
「生きてこの戦いを終わらせろ!」
「そうですね、全員で」
「この戦いを」
「俺達の任務はだ」
 フォッカーの話は続く。
「バトル7をポイントまでエスコートすることだ」
「護衛ですか」
「俺達全員で」
「了解!」
 頷いてだ。そしてだった。
 戦いに入る。その敵を倒しながら。
 その中でだ。エキセドルがまた話す。
「五分です」
「五分!?」
「五分っていうと」
「五分以内に到達しなければなりません」
 つまりだ。タイムリミットだというのだ。
「それ以上かかればです」
「作戦失敗ってことか」
「五分」
「短いか?」
「いや、充分だ」
 こう言ったのはガムリンだ。
「それだけあればな」
「そうだな、それだけあれば」
「辿り着けるな」
 金竜とフィジカも頷く。
「五分あれば」
「充分過ぎる位か」
「その通りだな」
 ドッカーもだ。彼等の言葉に頷いた。そしてだった。
 彼等はさらに進む。その中でだ。
 ガムリンはだ。言うのだった。
「今は」
「どうした、ガムリン」
「いえ、戦いに専念しようと思いまして」
 こう金竜に話すのだった。
「それだけです」
「そうだ、余計なことは考えるな」
 まさにその通りだと述べる金竜だった。
「いいな、絶対にだ」
「わかってます」
「生き残れ」
 金竜はガムリンにまた話した。
「そうしろ、いいな」
「了解です」
「それが俺達の今の最大の義務だ」
 生き残ること、まさにそれがだというのだ。
「わかったな」
「はい」
 こんな話をしてだ。彼等はだ。
 戦っていく。そのうえで目的地に向かう。
 そしてだ。遂にだった。
 彼等は辿り着こうとしている。だが、だった。
 その前にだ。プロトデビルン達が殺到するのだった。
「ここは行かせはしない!」
「ガオオオオオオン!」
 ガビルとグラビルが言う。
「ここで防ぐ!防衛美!」
「ガオオオオオン!」
「貴様達の相手は!」
「私達が!」
 こう言ってだ。マックスとミレーヌが向かうのだ。
 二人で彼等を足止めする。しかしだ。
 さらにだ。バルゴもいた。だが彼には。
「御前の相手は俺だ!」
「また御前か」
「シビルの為だ!」
 こう叫んでだ。ギギルが彼に向かうのだった。
「俺は、戦う!」
「愚かな。あの女はだ」
「もう死ぬというのか」
「そうだ、ゲペルニッチ様によってな」
 殺される、そう言うのである。
「あの女ではゲペルニッチ様には勝てはしない」
「くっ!」
「いや、望みを捨てるな」
 ギギルに今言ったのはギジェだった。
「今はだ。そう簡単にはだ」
「シビルは生きているというのか」
「そうだ、どうやら私もだ」
 ここでだ。ギジェはふと思ったのだ。その思ったことを言う。
「本来なら死ぬ筈だったのだろう」
「本来は?」
「だが生きている」
 こう言うのである。
「そして君もだ」
「俺もまた」
「私は君は死んだと思った」 
 あのラクスの時にだ。そう思ったというのだ。
「しかし君は今も生きているな」
「その通りだ。俺はここにいる」
「それは彼女も同じだ」
「シビルもか」
「だから今は望みを捨てないことだ」
 こう話すのである。
「わかったな」
「その言葉信じていいのだな」
「信じたくないのならそれでいい」
 ギジェもだ。それならそれでだというのだ。
 そしてだ。彼はまた話した。
「だが。信じてくれるのならだ」
「それならばか」
「希望を持ってくれ」
「わかった」
 そこまで聞いてだ。頷いたギギルだった。
 そのうえでだ。あらためてバルゴに言い返すのだった。
「バルゴ、俺はだ!」
「シビルが生きているとと言うのだな」
「そうだ、死ぬ筈がない!」
 断言であった。まさにだ。
「俺は信じる!シビルを!」
「そうか、それならだ」
「貴様はどうするのだ」
「あの男はまだ目覚めないのだな」
 バサラのことをだ。ふと話したのである。
「その様だな」
「それは」
 口ごもるギギルだった。しかしだ。
 バルゴはだ。その彼に対してまた言うのだった。
「ならそれでいい」
「いいだと?」
「あの男はそう簡単に倒れる男ではない」
 それを見越しての言葉だった。
「また起き上がる時を楽しみにしている」
「バルゴ、まさか御前も」
「少なくとも音楽に興味が出て来た」
 それについてはというのである。
「それならばだ」
「待つというのか、貴様も」
「ゴラムとゾムドも同じだ」
 見ればだ。彼等も戦場にいる。
「我々はあの男を待っているのだ」
「まさか。御前達も」
「少なくとも音楽に見るべきものは見た」
「その通りだ」
「我々もだ」
 ゴラムとゾムドも話す。
「熱気バサラ必ずだ」
「目覚めるな」
「そんなの当然でしょ!」
 ミレーヌがその彼等に話す。
「バサラがね、そう簡単にね!」
「ではそれを見せてもらおう」
「是非な」
 こう言ってだ。彼等は今は。
 ロンド=ベルの前に立ちはだかる。戦うことは忘れていなかった。
 そうして戦いだ。その中で。
 彼等は戦っていく。そして。
 遂にだ。目的地に来たのである。
「よし、何とかな!」
「到着したぞ!」
「後は!」
「降下します!」
 美穂が言った。
「これよりです!」
「敵の本星に!」
 サリーも言う。
「では後は」
「よし、いいか諸君」
 グローバルが言う。
「我々もだ」
「はい、降下ですね」
「今から」
「そうだ、いいな」
 こうしてだった。彼等も降下する。全員各艦に入ってだ。
 その降下の中でだ。彼等は話すのだった。
「いよいよね」
「ええ、そうね」160
 アルシオーネがレインの言葉に頷く。
「プロトデビルンとの決戦だけれど」
「絶対に勝たないといけないわ」
 アルシオーネはここでこう言うのだった。
「レインもそう思うわね」
「ええ、ただ」
「ただ?」
「アルシオーネも随分変わったわね」
 彼女を見てだ。微笑んでこう話したのだ。
「前は。もっとネガティブだったのに」
「そうね。言われてみればね」
「前から貴女のことはよく見ていたけれど」
 レインは微笑みのまま話していく。
「それでも。確かにね」
「変わったのね」
「ええ、いい方に変わったわ」
 そうだというのである。
「明るくなったわ」
「何か。ここにいたら」
「明るくなれるのね」
「貴女もいるし」
 今度は彼女がレインを見て微笑んで話すのだった。
「だからね」
「そうよね。私達ってね」
「他人の気がしないから」
「御互いにね」
「そういえばこの二人も似てるんだよな」
 イサムが二人を見て話した。
「俺と王子様と同じでな」
「そうだな、同じだな」
 その王子がイサムの言葉に頷く。
「不思議なことに」
「性格は全然違うのに似ているからな」
「ちょっとそれを言ったらさ」
「私達もなのだが」
 アスコットとカティだった。
「性別まで違うのに」
「似ているものを感じる」
「俺この前本当に間違えたんだぞ」
 パトリックも証言する。
「何で大佐とアスコットがそっくりだって思えるんだよ」
「いや、実際そっくりだから」
「もうそのまま?」
「別人に思えないっていうか」
「そうだよな」
 しかも他の面々もこう言うのだった。
「タトラさんとアイナさんとか」
「あら、そういえば」
「その通りね」
 彼女達もだった。
「そっくりなのよね」
「私達も」
「まあ言えばきりないけれど」
「本当に多いからなあ」
「サンユン君とプレシアちゃんも」
 今度はこの二人だった。
「性別は違っても」
「そっくり」
「同一人物?」
「そうかもね」
「あとは」
「ラファーガさんとパサロフさんもだし」
「世界は違えど」
 それでもなのだった。
「似てる人達って多いよなあ」
「尋常じゃなく」
「私はいない」
「わたくしもですわ」
 ここで悲しい顔になるのは光と風だった。
「残念だ」
「本当に」
「俺はだ」
 ランティスはというと。
「いるか」
「そうだな。お互いにな」
 マイヨが応えるのだった。
「自分自身かと思ったな」
「全くだ
 そんな話をしながらだった。彼等はゲペルニッチのところに向かうのだった。
 そのゲペルニッチは。シビルに対して告げていた。
「もうすぐだ」
「もうすぐ?」
「そうだ、もうすぐだ」
 その今戦っている彼女に言うのである。
「我が本体も蘇る」
「本体?本体は」
「もうすぐわかる」
 こう言ってだ。彼女に一撃を浴びせる。最後の戦いが迫ろうとしていた。


第百六話   完


                                       2011・3・15
  

 

第百七話 真の姿

                    第百七話 真の姿
 ロンド=ベルは遂にバロータ本星に辿り着いた。そこは。
「雪と氷に覆われた大地が」
「ここがか」
「プロトデビルンの本拠地」
「そうなのね」
 その大地を見ながら口々に言うのだった。
「この惑星の地下にか」
「プロトデビルン達が封印されていて」
「それにさらわれた人達も」
「その残りの人がいんだな」
「レーダーに反応です」
 ここでマヤが言う。
「周囲に降下してきます」
「やっぱり来たか!」
「予想通りね!」
 そのバロータ軍だった。彼等であった。
「プロトデビルンも勢揃いか」
「最後の最後でクライマックスってかよ」
「演出が凝ってるねえ」
「全く」
「好都合だ」
 ここでこう言ったのはジェイである。
「どうせ片付けなければならない相手だ」
「だからか」
「そうだ。一度に出て来てくれれば」
 ジェイはこうルネに話す。
「手間が省けるというものだ」
「随分と楽観的な意見だな」
 それを聞いてシローが述べた。
「簡単な相手ではないんだけれどな」
「では退かれますか?」
 ノインがこうそのシローに問うた。
「ここは」
「まさかな」
 彼は笑ってそれは否定した。
「ゲペルニッチを倒さなければ終わりなんだ」
「はい、この銀河が」
「あいつが。目を覚ませば」
 どうなるか。当然ながら彼等もそれを聞いているのだ。
「何もかもが」
「それでは」
「戦う!」
 選択肢は一つしかなかった。
「絶対にだ!」
「そうだな。不利でもな」
「勝負をかけるしかないのよ」
 オリファーとマーベットも話す。
「今はな」
「選択肢は一つしかないのよ」
「辛いけれどね」
 ジュンコはこのことを話した。
「予想以上よね」
「はい、残念ですが」
 マヤがジュンコのその言葉に応える。
「予測の百四十パーセントを超えています」
「凄いな」
「全くだな」
 オデロもトマーシュも言葉がない。
「派手にやり合ってるとは思ったけれどな」
「そこまでだったか」
「じゃあこの戦いは本当に」
 ウッソが決意した様な顔で述べる。
「退いたら負けですね」
「そうだな。前に出て戦うしかないんだ」
 シーブックもウッソと同じ表情である。
「そして勝つしかないんだ」
「感じます」
 ここで言ったのはだ。セシリーだった。
「この嫌な気配は」
「ええ、そうですね」
「これは」
 ウッソとシーブックが応える。他のニュータイプの面々もだ。
「目覚めようとしている」
「間も無く」
「奴が動き出す前に」
 カミーユが険しい顔で言う。
「何としても本体を叩かないと」
「けれどカミーユ」
 ファが暗い顔で彼に話す。
「サウンドブラスターも使えないし」
「援軍もだな」
「辛い戦いになるわ」
「わかってるさ。けれど」
「けれど?」
「それはいつもだからな」
 カミーユはこうファに話すのだった。
「今更言ってもな」
「そうね。言われてみればね」
「やるしかないんだ」
 これがカミーユの今の言葉だった。
「いつも通りな」
「あたしが歌うわ!」
「私もね!」
「私もです!」
 ミレーヌにシェリル、そしてランカだった。
「サウンドバスター作戦、任せて」
「いいのですね」
 エキセドルがそのミレーヌに問う。
「サウンドバスターの歌エネルギーが」
「わかってます!」
 それでもだと返すミレーヌだった。
「けれど」
「けれどですか」
「はい、歌いたいんです」
 こう言うのである。
「バサラがいなければその分まで!」
「だからなのですね」
「はい、あたしはファイアーボンバーです!」
 また言うミレーヌだった。
「ファイアーボンバーが生き甲斐だから!」
「歌われますか」
「ここで歌わなかったら」
 どうなるか。それも話すミレーヌだった。
「今歌わなかったら」
「どうなると」
「今まで大事にしていたものが全部なくなっちゃうから!」
「大袈裟だな」
 こう突っ込みを入れたのはレイだった。
「そこまでだというのか」
「ええ、そうよ」
 まさにその通りだと認めはする。しかしだ。
「それでも」
「わかった。それじゃあな」
 レイもミレーヌのその言葉を受けた。そしてだ。
「俺もだ」
「・・・・・・・・・」
「一緒に来てくれるのね」
「俺もファイアーボンバーだ」
「・・・・・・・・・」
 無論ビヒーダもいる。無言であるが。
「それならな」
「有り難う・・・・・・」
「礼はいい」
「そうなの」
「行くぞ、そして歌うぞ」
「何があってもね」
「いいか、諸君」
 グローバルがここで話す。
「全部隊でバトル7を援護する」
「そしてですね」
「然るべき場所に」
「あそこです!」
 千葉がここで言う。
「あのポイントに入って歌えば」
「サウンドバスター作戦が成功する」
「この作戦が」
「ああ、そうだ」
 千葉はロンド=ベルの仲間達に答える。
「あの場所に辿り着いて歌えば」
「よし、それなら!」
「あのポイントまで行って!」
「そして歌うんだ!」
「それしかない!」
「ただし」
 ここでまた言う千葉だった。
「現在の戦力では」
「今の俺達じゃ」
「どうだっていうんですか?」
「戦えるのは六分だけだ」
 それだけだというのである。
「それが限界なんだ」
「六分か」
「さっきよりは多いよな」
「じゃあ充分ね」
「そうだな」
 今更だ。時間にはこだわらなかった。それでだ。
「六分もあるんだ!」
「やってやらあ!」
「それだけの時間があったら!」
 こう話してだった。全軍で向かうのだった。
 その彼等にプロトデビルンの大軍が攻撃を仕掛ける。しかしだ。
「マクロス7を守れ!」
「全部隊でだ!」
「この程度の数!」
「今更どうってことあるかよ!」
 こう言いながらだ。戦うのだった。
 そのうえで徐々にポイントに近付く。その中でだ。
「ふむ」
「どうしたのだ、ガビル」
 バルゴがガビルの言葉に気付いた。
「何かあったのか」
「どうやらだ」
 ガビルがだ。そのバルゴの問いに答えた。
「我々は変われるな」
「変われるだと?」
「そうだ、変われる」
 こう言うのである。
「若しかするとな」
「変わる、どういうことだ」
「それはこれから次第だ」
「意味がわからないぞ」
「やがてわかる」
 しかしガビルはまだこう言うのだった。
「若しかしたらな」
「ふん、それではだ」
「待つか」
「見させてもらおう」
 バルゴもだった。こう言ってだ。
 そのうえで戦いを続ける。そうするのであった。
 ロンド=ベルは彼等の攻撃を退け振り切りだ。そのうえで。
 そのポイントに近付く。すると。
 そこにだ。禍々しい形をしただ。巨大な戦艦が出て来た。
 それを見てだ。ギギルが言う。
「あれはだ」
「何なの、あれは」
「プロトデビルンの旗艦だ」
 こうミレーヌに話すギギルだった。
「あれがだ」
「じゃああそこにか」
「ゲペルニッチってのがいるんだな」
「あの中に」
「そういうことだ」
 また言うギギルだった。
「あの中にだ」
「あのサイズだ」
 シナプスが言う。
「破壊するのは困難だな」
「そうですね」
 バニングもだ。そう見るのだった。
「容易ではありません」
「くそっ、こんな時にか」
「あんなデカブツが出て来るなんてな」
「どうする?ここは」
「かわすか?それでポイントに」
「それは無理だな」
 シンルーが言った。
「あそこまで大きいとな」
「じゃあやっつけるしかないの?」
「そう思う」
 シンルーはこうルナに返した。
「ここはな」
「やるしかないってのね」
「ちっ、時間大丈夫かよ」
「間に合わせるしかないですね」
 エイナがエイジに言う。
「ここは」
「へっ、いつも通りかよ」
「ミレーヌさん、ここは」
 ガムリンがだ。ミレーヌに対して言う。
「自分達に任せて下さい」
「ガムリンさん」
「自分はです」
 悔やむ顔でだ。彼はミレーヌに話す。
「バサラに嫉妬していました」
「嫉妬!?」
「自分は最低です」
 こうだ。苦い声で言うのである。
「だから、せめて」
「ガムリンさん、あたし」
そしてだ。ミレーヌも彼に告げる。
「御免なさい」
「はい」
「あたし、ガムリンさんのこと大好きです」
 こう告げるのだった。
「本当に、本当に大好きです」
 言葉を続けていく。
「けれど」
「けれど?」
「気付いたんです」
 その言葉が変わった。
「バサラが」
「あいつが」
「バサラのことを同じ位好きだってことに」
 そのことにだ。気付いたというのだ。
「ですから」
「わかりました」
 ガムリンはミレーヌのその気持ちを受けた。そのうえでの言葉だった。
「では今は」
「今は?」
「歌うんだ」
 これが彼のミレーヌへの言葉だった。
「今一番大切なことは」
「それは」
「バサラの為に歌うことだ」
 まさにだ。それだというのだ。
「あいつの分まで」
「はい、わかりました」
 ミレーヌもだ。素直に頷いた。そうしてだ。
 彼女はだ。澄み切った顔になって言った。
「あたし、絶対に」
「いいか、ミレーヌ」
 レイもミレーヌに対して言う。
「中尉の気持ちを無駄にするな」
「うん、わかってるわ」
「そしてだ。必死に歌え」
「ええ、じゃあ」
「びびってる余裕はないぜ!」
 豹馬もミレーヌに告げる。
「どうせ最初から無謀な戦いなんだからな!」
「この場合は一つしかない」
 マーグも前を見据えている。
「前に進むだけだ」
「そうですね。それしかありませんね」
 ロゼもマーグのその言葉に頷く。
「ここは」
「各機に告げる」
 ジェフリーが指示を出す。
「敵巨大戦艦を破壊し」
「そしてですね」
「そのうえで」
「バトル7の進路を確保する」
 今はだ。そうするというのだ。
「わかったな」
「了解!」
「それなら!」
 こうしてだった。そのうえでだ。
 彼等は巨大戦艦にも突き進む。そしてだ。
 派手な攻撃を浴びせる。次から次にだ。
 だがそれでもだ。戦艦は沈まない。そこに浮かび続けている。
「おいおい、しぶといな」
「ヘルモーズよりまだだな」
「ああ、しぶといな」
「本当にな」
「こんなにしぶといのかよ」
「けれどな!」
 それでもだというのだった。
「こっちだって意地があるからな!」
「進ませてもらうぜ!」
「絶対にな!」
 こうしてだ。彼等は意地で戦艦に攻撃を浴びせる。
 そしてだ。戦艦の動きを止めている間に。
 遂にだ。バトル7がだった。
「よし、やったぞ!」
「到達したぜ!」
「後は!」
「歌だ!」
 まさにだ。それだというのだ。
「ミレーヌ、今よ!」
「あんたの歌で!」
「サウンドバスターを!」
「ええ、わかってるわ!」
 ミレーヌも応えてだ。そうしてだ。
 彼女はベースを奏ではじめる。そのうえで歌いはじめる。
「これで。本当に」
「そうはさせん」
 だが。巨大戦艦の中から声がした。
 そしてだ。あの戦艦がだった。
 それまで受けた攻撃をものともせずだ。ミレーヌに向かって来たのだった。
「なっ、ミレーヌに!?」
「来てるぞ!」
「まずい!」
「このままじゃ!」
「さあ、決まるのかロンド=ベル!」
 ガビルが叫んだ。
「貴様達が敗れるかそれとも!」
「負けるか!」
「こんなところで!」
 こう叫んでだ。そのうえで。
 全員で総攻撃を浴びせた。それでだ。
 ゲペルニッチの巨大戦艦をだ。遂に沈めたのだった。
「やったな」
「ああ、これでな」
「ゲペルニッチも」
「完全に」
 倒したとだ。誰もが思った。
 しかしだ。ここで、であった。
 その破壊させた戦艦の中からだ。恐ろしいものが姿を現した。それは。
「な、何だよあれ!?」
「あれがまさか」
「あいつか!?」
「あのプロトデビルンの」
「そうだ」
 またギギルが仲間達に話す。
「あれがゲペルニッチだ」
「あれが生物か!?」
「一つの生物なのか!?」
「まさか」
「ゲペルニッチ様が完全復活する時が来た!」
 またガビルが言う。
「これぞ完全復活美!」
「くそっ、折角戦艦を沈めたってのによ!」
「まだ来るっていうの!?」
「何てこった」
 誰もがだ。唖然となる。
「あんなのが出て来るなんて」
「どうしたらいいんだ」
「いえ、まだです」
 だが、だった。エキセドルがここで言うのだった。
「絶望する時ではありません」
「じゃあここは」
「あれですか」
「歌ですね」
「それを」
「はい、そうです」
 その通りだと述べるのである。
「彼もプロトデビルンであるならです」
「サウンドバスターですね」
「それが有効の筈だから」
「ここは」
「それで」
「決めます」 
 実際にこう言う彼だった。そしてだ。
 ミレーヌはだ。再びベースを構えた。
 その上で。演奏をはじめた。
「バサラ。聴いてね」
「では。開始です」
 エキセドルも彼に合わせて言う。
「サウンドバスターです」
「発射します!」
「今より!」
 こうしてだった。そのサウンドバスターが。
 マクロスキャノンを通じてだ。ゲペルニッチに浴びせられた。それを受けると。
「うおおおおおおおおおっ!!」
「!?ゲペルニッチ様!」
「まさか、これが」
「サウンドバスター!?」
「それだというのか!」
 プロトデビルン達も驚くを隠せない。
「何という威力だ」
「あのゲペルニッチ様が」
「苦しんでおられる、いや」
「違う」
 見ていてだ。そのことに気付いたのだ。彼等もだ。
「悦んでおられる」
「あの攻撃により」
「まさか、あれは」
「我等と同じものを感じているというのか」
 そしてだ。それを見てだ。
 千葉もだ。拳を握り締めて言う。
「信じられない!」
「そうですね、これは」
「想定以上です」
「そうだ、期待以上のパワーだ」
 こう美穂とサリーに述べる。
「これ程までとは」
「あれがミレーヌちゃんの力なのね」
「そうですね」
 シェリルとランカも彼女のその歌を聴いて言う。
「あそこまでなんて」
「本当に凄いです」
「ええ、けれど」
「けれど?」
 ランカはここでシェリルの言葉が変わったことに問い返した。
「何かありますか?」
「ミレーヌちゃんだけれどね」
「はい、ミレーヌちゃんですか」
「前から何か思ってたけれど」
 こう前置きしての話だった。
「マックスさんとミリアさんに似てるわね」
「そういえば」
 言われてだ。ランカも気付いたのだ。
「御二人の姪御さんですよね」
「姪っていうより親子みたいね」
 そちらだというのだ。
「何かそんな感じね」
「そうですね、本当に」
 こんな話もしていた。その中でだ。
 エキセドルはだ。期と見てだ。
 美穂とサリーにだ。さらに言うのであった。
「それではです」
「サウンドバスターですね」
「もう一撃を」
「はい、そうします」
 それを放つというのだ。
「そうすれば。より」
「あのゲペルニッチが」
「追い詰められますね」
「この作戦は何としても成功させなければなりません」
 この前提があるからだというのだ。
「ですから」
「了解です」
「それでは」
「再び発射です」
 また言うエキセドルだった。そうしてだ。
 サウンドバスターが再度放たれる。すると。
 エキセドルがだ。こう叫んだ。
「うおおお!ゾクゾクッ!」
「よし、効いているぞ!」
 ギギルがそれを見て言う。
「確かにだ!」
「じゃあこのままいけば」
「勝てる!」
「この戦いにも!」
「そうだ、ミレーヌ=ジーナス!」
 ギギルはミレーヌに対して告げる。
「このままだ!歌え!」
「ええ、わかったわ!」
「御前の歌が銀河を救うんだ!」
 こう告げるのである。
「だからだ、歌え!」
「歌うわよ!このままずっとね!」
 しかしだ。この時だった。
 ゲペルニッチがだ。変貌したのだ。
「な、何だ!?」
「あいつ、一体!?」
「これは!」
「うおおおおおおおおおっ!!」
 全身からエネルギーを放つ。それでだ。
 バトル7を撃つ。それでだった。
「大変です!」
「ガンシップの歌エネルギー交換システムが!」
 美穂とサリーがすぐにエキセドルに報告する。
「損傷しました!」
「大破です!」
「まずい、このままでは!」
 千葉がだ。それを聞いて言った。
「サウンドバスターが」
「すぐに修復を」
 エキセドルは冷静だった。そうした状況でもだ。
 そしてだ。彼は問うのだった。
「ミレーヌさんは」
「無事です」
「ファイアーボンバーは」
「そうですか。それでは」
「しかしです」
「敵が」
 美穂とサリーがまた報告する。
「異変が起こっています」
「これは!」
「!?」
 見ればだ。ゲペルニッチがだ。
 急激にだ。その周辺にエネルギーを膨張させていた。
 それを見てだ。がビルが言う。
「これはまずい」
「どうなっているのだ、ガビル」
「これは」
 ゴラムとゾムドがガビルに問う。
「ゲペルニッチ様は一体」
「どうされたのだ」
「暴走されているのだ」
 そうなっていると。ガビルは二人に話した。
「これは美ではない!」
「違う!」
 ゲペルニッチも叫ぶ。
「これでは夢の崩壊!」
「夢の崩壊!?」
「それだと」
「スピリチアドリーミングがだ!」
 ゲペルニッチはさらに叫ぶ。
「ぐおおおおおおおお!」
「何だ、このパワーは」
 千葉はそのゲペルニッチを中心としたエネルギーの崩壊を見て言う。
「一体何が」
「これでは夢が」
 ゲペルニッチはまた言った。
「スピリチアファームが崩壊する!」
「おかしい、これは!」
 ガビルも再度言う。
「ゲペルニッチ様が狂乱の美!」
「ガオオオオオオン!」
「このままでは!」
「うおおおおおおおお!」
「いい加減にしろ!」
 レイがだ。暴走するゲペルニッチに対して叫ぶ。
「このバケモノが!」
「・・・・・・・・・」
 ビヒーダも共にいる。無言ではあるが。
「これ以上大切なメンバーを傷つけさせるか!」
「・・・・・・・・・」
「行くぞビヒーダ!」
「!!」
 無言で頷き。そしてだ。
 レイはミレーヌから離れだ。ゲペルニッチに己の機体を接近させた。
 そのうえでだ。ドラムを鳴らす。
「これでどうだ!」
「・・・・・・・・・」
「何と、これは」
 千葉がそれを見て再び言う。
「歌エネルギーだ」
「それなのですね」
「はい、ビヒーダのドラムで」
 その力でだというのだ。
「彼女のドラミングが歌エネルギーを生んでいます!」
「ミレーヌ!」
 レイは今度はミレーヌに対して叫んだ。
「下がれ!」
「でも!」
「ここは俺達に任せるんだ!」
 レイもこう言って引かない。
「だからだ!中尉!」
「はい!」
 ガムリンに対しても叫ぶ。
「ミレーヌを頼むぞ!」
「わかりました、それでは」
「今はこいつを止めることだ!」
「マックス!」
「わかっている!」
 マックスはミリアに対して頷いてみせる。
「こいつをこのまま放っておけば」
「それだけで」
「全銀河のスピリチアを吸い尽くされてしまう」
 その危惧がだ。全員の心を包んでいるのだ。
「だからだ、ここは」
「ええ、何があってもね」
「倒すしかない」
「総員攻撃を集中させろ!」
 火麻も叫ぶ。
「あらゆる手段を使ってゲペルニッチを倒せ!」
「核を用意しろ!」
「それも使うんだ!」
 切り札まで出される。そうしてだった。
 ゲペルニッチにだ。全員が渾身の攻撃を浴びせる。しかしだ。
 それでも彼は立っている。微動だにしない。
「な、何だよ」
「核も打ち込んでるんだぜ」
「それでも全然平気じゃねえか」
「何だあいつ」
「ポジトロンライフルでも駄目なんて」
 シンジも唖然となっている。
「こんなバケモノ、はじめてだよ」
「はじめてでもやるしかない!」
 ドモンはこの状況でも闘志を失っていない。
「ここはだ!必ずだ!」
「そうですね。負けたら駄目ですよね」
 シンジもすぐに気を取り直した。
「それなら」
「俺もやる」
 クォヴレーもいる。当然ながら。
「何としてもこいつを」
「いかん!全員一旦離脱しろ!」
 ガビルが同胞達に告げる。
「このままでは!」
「どうした!」
「これは」
「一体」
「五十万年周期の到来だ」
 それだと告げるのである。
「スピリチアンブラックホールだ」
「あれか」
「あれだというのか」
「このままでは銀河のスピリチアが吸収されてしまう」
 撤退しながらだ。同胞達に話すのだ。無論その同胞達も退いている。
「全銀河の終末美だ」
「最早止められぬ」
 ゲペルニッチも暴走の中で呟く。
「ゲペルニッチは崩壊した」
「では今のゲペルニッチ様は」
 バルゴが撤退しながら呆然として言う。
「何だというのだ」
「全ては闇の導きに身を任せてしまった」
「総員一旦撤退だ!」
 ガビルがグラビルと合体しながら指示を出す。
「少なくとも今は生き延びろ!生存美!」
「くっ、わかった」
「こうなれば」
 こうしてプロトデビルン達も撤退する。そして残ったのは。
 そのゲペルニッチとロンド=ベルだった。ロンド=ベルはその巨大化してしまったゲペルニッチを前にしていた。その中においてだ。
 エキセドルがだ。こう呟いたのだ。
「もう終わりですかな」
「まさか、ここで」
「終わりなんて」
 危機が迫ろうとしていた。全銀河の。


第百七話   完


                                       2011・3・17

         

 

第百八話 銀河に響く歌声

               第百八話 銀河に響く歌声
 ゲペルニッチは暴走した。そしてだ。
 全てを包み込もうとしていた。まさにそれは。
「ブラックホールだな」
「ああ、まさにな」
「それ以外何て言えばいいかな」
「わからねえな」
 ロンド=ベルの面々もこう言うのだった。
「あんなのがいたら」
「ちょっと。どうすれば」
「けれど。このままだと」
「そうだよな」
「あいつを何とかしないと」
「とんでもないことになるぞ」
「特攻か?」
 ここで言ったのはだ。ジェリドだった。
「それしかないか?」
「そうかもね」
 ライラが彼のその言葉に頷く。
「あたし達全員でね」
「ここは命賭けるしかないだろうな」
「そうだな。それならばだ」 
 マシュマーもだ。意を決した顔になっている。そして言うのだった。
「私もまた覚悟を決めるとしよう」
「よし、それなら私も」
 ミネバもだ。幼いながらもだった。
「行くわ、絶対に」
「いえ、ミネバ様はです」
 ハマーンはその彼女を止めに入った。
「ここからお下がり下さい」
「命はっていうのね」
「そうです。ミネバ様はまだ」
「いいのよ。だって」
「ですがというのですか」
「ハマーンも皆も命がけなのに私だけ何もしないなんて」
「だからですか」
「逃げないわ」
 強い顔でだ。こう言うのである。
「何があってもね」
「わかりました。それではです」
 ハマーンはミネバのその言葉と心を受けた。そのうえでだ。
 微笑んでだ。こう彼女に言うのであった。
「この戦い、何がありましても」
「ええ、勝ちましょう」
「そうです。それにしてもミネバ様も」
「私が?どうしたの?」
「立派になられました」
 微笑をそのままにしての言葉だった。
「御見事です」
「だよな。ミネバちゃんも変わったよな」
 ジュドーがここで言う。
「何か柔らかくなったよ」
「私は最初からそう思っていたが違うのか」
「ああ、前は結構肩肘張ってたんだよ」
 ジュドーはこう光に話す。
「けれど。それが随分とな」
「そうか。私はどうも」
「どうもって何かあったのかよ」
「ノヴァを思い出した」
 ミネバを見てだというのだ。
「似ている感じがしてだ」
「それ言ったらハマーンさんとマウアーさんなんかどうなるんだよ」
「それもそうか」
「そうだよ。俺だってな」
「忍さんとそっくりだな」
「だからそれ言ったらきりないんだよ」
「私は違うと思うがな」
 イリアがこんなことを言った。
「それは言っても仕方ないがな」
「私もだ」
 実はそれは光もだった。光は少し項垂れた顔になっている。
「どうしてもいないんだ」
「それは気にしない方がいいと思うけれど」
 ミネバは光に優しく声をかけた。
「時々違う名前で出ている人もいるし」
「私ね」
「私デスね」
 何故かドロシーとスワンが反応を見せる。
「そうね。違う名前でね」
「いやらしい世界にね」
「それはジュドーさんもよね」
「何でそんなこと知ってるんだよ」
 ジュドーはそのことを指摘されて困った顔になる。
「誰だってそんなことはあるけれどな」
「それ言いながら俺を見るのかよ」
「俺もか」
 マサキとムウがジュドーの視線に抗議する。
「あれか?恋とか姫とか」
「その世界のことを言いたいのか」
「その世界のことは言わないで欲しいんだがな」
 アレンも言う。
「俺はあの世界ではな」
「あれだよな。ビキニで辮髪のな」
「凄いなんてものじゃないからな」
「あれはないと思った」
 アレンは真顔で言っている。
「しかもだ。象徴みたいな存在になったからな」
「あの世界のな」
「インパクトのせいでな」
「しかもだ」
 さらになのだった。その世界については。
「凱もいるからな」
「ああ、俺もその世界は知っている」
 その凱も出て来た。
「いい世界だな」
「凱さんはいいですけれど」
 ユンはしょんぼりとした顔で話す。
「私なんか。影が」
「じゃああれか?学園生活がいいか?」
「そっちはどうだよ」
「包丁持ってますけれどね」
 こうマサキとムウに返すユンだった。
「それも何か」
「ユンも色々あるからな」
「違う名前といいな」
「はい。有り過ぎます」
 その違う名前の話のことがだというのだ。
「けれど一応柚木じゃないですからね」
「それ誰か信じるのか」
「もう信じてくれる人いなくなりました」
 アレンにしょんぼりした顔に戻って話す。
「一人も」
「俺もだ。すぐにわかったそうだ」
「最近そういうのすぐにわかるわ」
「困ったことデス」
「そうなのよね」
 ドロシー、スワンに続いて何故かプリシラも出て来た。
「私も何か」
「というかそういう人間多くないか?」
 こう言ったのはジュドーである。
「普通にちょっと危ないだけだったらミネバちゃんだってな」
「えっ、私もなの」
「他にもミオとかな」
「あれっ、乱れとかからくりとかばれた?」
「声でわかるんだよ」
 だからわかるというのである。
「テュッティさんだってな。アリスなソフトの世界に縁があってな」
「何か凄いことになってるな」
 光も唖然となっている。
「私はそうした世界には縁がないが」
「あればあるで面倒だから」
 ドロシーがその光に話す。
「違う名前でもすぐにわかる世界だから」
「ううむ、気をつけないとな」
「ユンみたいになるわ」
「それはドロシーさんもです」
 困った顔で返すユンだった。確かに大変な状況だがそれでもだ。彼等はまだリラックスしていた。極限まで追い詰められたものはなかった。
 そしてだ。バトル7での集中治療室ではだ。
 ミレーヌがだ。バサラに怒鳴っていた。
「バサラ、何時まで寝てるのよ!」
「・・・・・・・・・」
 返事はない。全くだ。
「いつもならとっくに飛び出してる癖に!」
「そうね」
 それはだ。未沙も同意だった。彼女も来ているのだ。
「あれだけ無鉄砲なのに」
「それなのに何でまだこんなところにいるのよ!」
 こう言って怒るミレーヌだった。
「皆頑張ってるのに!起きなさいよ!」
「バサラが起きなければ」
 ガムリンも苦い顔で言う。
「こんなに。寂しいものなのか」
「バサラ、バサラ!」
 必死にバサラに訴えるミレーヌだった。
「ファイアーとかボンバーとか言ってよ!」
「頼みのサウンドバスターもオシャカだしな」
 柿崎がぼやく。
「バサラもこれか。どうすりゃいいんだ」
「諦めるのか?」
「いえ、流石にそれはないですよ」
 柿崎はすぐにフォッカーに返した。
「諦めたらですよね」
「そうだ、そこで終わりだ」
「今まで諦めてこなかったですからね」
 そうした意味でだ。柿崎もロンド=ベルだった。
「ですから」
「そういうことだ。じゃあな」
 こう話していた。そして再びだった。
 彼等はゲペルニッチに向かう。慌しい補給を受けたうえでだ。
 その彼等にだ。ゲペルニッチが叫ぶ。
「うおおおおおおお!もう止められぬ!」
「やるってのかよ!」
「あくまで!」
「最早終焉への道は止められぬ!」
 こう叫ぶのだった。しかしだ。
 ここでだ。戦場にあの歌が聴こえてきたのだった。
「!?」
「まさか」
「この歌は」
「ああ、けれど」
「間違いない」
「あの歌だ!」
 全員でだ。言うのだった。
「リン=ミンメイの歌だ」
「愛、覚えてますか」
「あの歌だ」
「それがここで」
「そうか、ミンメイは」
 ここでだ。輝が言う。
「ゲペルニッチに捕らえられていたんだ」
「けれど今こうして」
「銀河の為に歌うんだな」
「俺達の為に」
「今ここで」
「おお、これは」
 エキセドルがだ。言った。
「デカルチャー」
 そしてだ。その歌によってだ。
 空気が変わった。まさに一変だった。
「効くな、この歌!」
「ああ、地獄に女神だ!」
「勇気が湧いてくる」
「こんなに優しい歌なのに」
 誰もがだ。喜びと共に言うのだった。
「戦う力を与えてくれる」
「この歌があれば」
「やれる!」
「例えどんな状況でも!」
「勝てる!」
「絶対に!」
 そしてだ。ゲペルニッチもだった。その歌を聴いてだ。言うのだった。
「おお、このスピリチア」
「あいつもか」
「聴いてるんだな」
「何と優しく温かいのだ」
「やれる!」
「ああ、やれる!」
 心がだ。戻ってきていた。
「勝利の女神の歌があるんだ!」
「それなら!」
「いけない筈がない!」
「おお、これこそだ!」
 ガビルも満面の笑みで言う。
「グラビル、わかるな!」
「ガオオオオオオオン!」
「そうだ、これこそ美だ!」
 こう言うのだった。
「美そのものとしか言い様がない!」
「そうだな、これは」
「美だ」
「そのものだ」
 他のプロトデビルン達もそうだと言う。
「この美があるなら」
「我々はもう」
「アニマスピリチアは」
 見出そうとしていた。彼等も。
 そしてだ。フォッカーが輝に言う。
「輝!」
「はい、わかってます!」
 輝は明るい声で応える。
「必ず。ミンメイを!」
「よし、その意気だ!」
「はい!」
「スカルリーダーより各機へ!」
 フォッカーの言葉も弾んでいる。
「最後の意地を見せる時だ!行くぞ!」
「了解です!」
「それなら!」
 形勢が変わった。まさに一変だった。
 ロンド=ベルはゲペルニッチに再び向かおうとする。その中でだ。
 ミレーヌはだ。またバサラに告げた。
 バルキリーからだ。彼女は叫ぶのだった。
「バサラ、聴こえる!?」
「・・・・・・・・・」
「ミンメイさんも歌ってるよ!」
 こう訴えるのだった。
「だからあたし達も行こう!」
 なおもだった。彼に訴える。
「あたし達も皆と一緒に歌おう!」
「そうだ、バサラ!」
 ガムリンもだ。彼に対して叫ぶ。
「俺も歌うぞ!」
「ああつぃも!」
「ねえバサラ!」
 アーシュラは治療室からバサラに訴える。
「歌ってよ!」
「そうだ、歌え!」 
 カガリも言う。
「歌わないと今からそこに乗り込むぞ!」
「私もよ!」
 フレイもだった。
「本気で乗り込むわよ!」
「殴り飛ばしてでも起こすからな!」
「覚悟しなさいよ!」
「そうだ!起きないと駄目だ!」
 エリスも言う。
「その音楽で!ここは!」
「エリスって本当に違うよね」
「そうだね」
 エルとベルがそのエリスを見ながら話す。シーラの周りを飛びながらだ。
「マシンに乗ったらね」
「性格変わるから」
「やっぱり火星の影響かしら」
「そうじゃないかな」
「ですが。ここはです」
 そのシーラの言葉だ。
「バサラさんは起きる時なのです」
「よし、今から乗り込む!」
「バトル7までね!」
「あの、カガリ様それは」
「幾ら何でも」
「無茶ですけれど」
 アサギにマユラ、ジュリがそのカガリを止めようとする。
「今戦闘中ですよ」
「それで乗り込むって」
「戦闘中ですから幾ら何でも」
「うっ、仕方ないか」
 ここでやっと立ち止まるカガリだった。
「では仕方がない。後でだ」
「そうね。後でね」
「ったくよ。何処まで頭ねえんだよ」
 シンがいつものタイミングで言う。
「やっぱり猿だな。中国でパンダより貴重な金色の猿だな」
「五月蝿い!人を珍獣扱いするな!」
「頭の出来は珍獣クラスの馬鹿だろうがよ!」
「何っ、御前の方こそ馬鹿だ!」
「御前に言われたかねえ!」
 また喧嘩をはじめる二人だった。戦闘中でもだ。
「手前、今日という今日はだ!」
「やるか!」
「やってやる!決着をつけてやる!」
「望むところだ!」
「おい、止めろ」
 ここで第三者の声がした。
「喧嘩は止めろ!俺の歌を聴いてな!」
「えっ、歌って」
「歌っていうと」
「まさか」
「起きた!?」
「バサラが!?」
「皆情けない顔してやがんだ」
 バサラはベッドから起き上がっていた。既にだ。
 そのうえでだ。仲間達に言うのだった。
「辛気臭え顔なんてな。俺が消してやるぜ!」
「起きたんだな!」
「バサラ復活か!」
「遂に!」
「ああ、何かわからねえがちょっと寝てたみたいだな」
 彼にとってはその程度だった。そしてだ。
 ギターを手に取ってだ。もう治療室から出てだ。格納庫に向かっていた。
 そして出撃してだ。ギターをかき鳴らす。
「ホーリーロンリーナイト!」
「あの曲か!」
「最初は!」
「ああ、皆待たせたな!」
 バサラはバルキリーを駆りながら皆に叫ぶ。
「俺はここにいるぜ!」
「熱気バサラだ!」
「復活か!」
「バサラの歌だ!」
「歌が聴けるんだ!」
「!!」
 花束の少女もだ。彼を見ながら笑顔になった。
 そしてだ。バサラはギターを鳴らしながら再び叫んだ。
「行くぜ!ファイアーボンバー!」
「バサラ、聴いて!」
「この歌をな!」
 合流した彼にだ。ミレーヌとレイが告げる。
「この歌よ!」
「わかるな!」
「ああ、リン=ミンメイだな!」
 わからない筈がなかった。彼もだ。
「ここにいたのか!俺は運がいいぜ!」
「そうよ!人類のディーヴァとデュエットよ!」
「やれるな!」
「やってやるぜ!俺も歌うぜ!」
「よし、行くわよ!」
「派手にな!」
「トライアゲインだ!」
 今度の曲はこれだった。バサラの独壇場だった。
 それを奏で歌う。だが、だ。
 ゲペルニッチはだ。まだ完全にはだ。
 受け入れていなかった。それでこう言うのだった。
「無駄だ」
「何だ?あんた誰だよ」
「我が名はゲペルニッチ」
 こう名乗り返す彼だった。
「プロトデビルンの長だ」
「ああ、あんたがそうだったのかよ」
「今さらアニマスピリチアなぞ」
「そんなことはやってみなけりゃわからねえぜ!」
 バサラは彼にもいつもの調子だった。
「行くぜ、ゲペ野郎!」
「行くというのか」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーーっ!」
 さらにだ。歌うとだ。
 ギギルが言う。
「来たな」
「ああ、来た!」
「来たぜ!」
「どんどん燃えてきたぜ!」
「イッツジャストアロックンロール!」
 マイクもだ。人型になって叫ぶ。
「ブラザー達、やろうぜ!」
「イエーーーーーーーーッ!!」
 彼の兄弟達も叫ぶ。舞台は最高潮だった。
「最高にのれるぜ!」
「この歌があれば!」
「終わる!」
「この戦いは!」
「山よ!銀河よ!」
 バサラもだった。興奮の坩堝にある。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!!」
 そこにだ。何かが来た。それは。
「あれは」
「シビル!」
 ミレーヌとバサラが彼女の姿に気付いた。
「あの娘、生きてたの」
「何でここに来たんだ?」
「ゲペルニッチ」
 シビルはだ。ゲペルニッチに対して言うのだった。
「御前を消す」
「無駄なことを」
 ゲペルニッチは彼女にも絶望を見せて告げる。
「既に夢は破れた」
「夢は」
「そうだ、最早だ」
 こうシビルに言うのである。
「無の暗黒を消し去ることはできぬ」
「そんな筈は」
「無理だ」
 ゲペルニッチは彼女に言わせない。それよりも先に言うのだ。
「最早な」
「シビル!」
 だが、だ。バサラが言葉を遮られた彼女に声をかけた。
「来い!」
「バサラ・・・・・・」
「俺のところにだ!来い!」
「バサラのところに」
「そうだ、来い!」
 こう言うのであった。
「いいな、すぐにだ!」
「無駄の終焉に辿り着いたのか、シビル」
 これがゲペルニッチの見方だった。
「最早全ては」
 だが。二人はだった。
「シビル!」
 またバサラが彼女を呼んだ。
「来い!」
「バサラ!」
「俺のところに来るな!」
「絶対に!」
「よし、それならだ!」
 ここでだ。バサラはだ。何とだ。
 はじめての曲を出した。それは。
「トライアゲイン!」
「!!おい!」
「この曲!」
「これまで以上に凄いぜ!」
 誰もがだ。まずは驚きの声をあげた。
「この曲を聴いてると」
「何かそれだけで」
「ああ、違う」
「心から沸き起こるものがあるな」
「これがか」
「人間の力なんだな」
 それをだ。実感しているのだった。
 そしてだ。彼等は言うのだった。
「トライアゲインが」
「どんな状況でも立ち向かう」
「再び立ち上がってか」
「まさに俺達の曲だな」
「そうだよな、この曲は」
「よし!」
 それがわかってだった。彼等は一気にだ。
 ゲペルニッチに総攻撃を浴びせる。最早勝利は目の前だった。
 そしてだ。バサラもだ。
「歌うぜシビル!」
「コオオオオオオオオオオオッ!」
「クライマックスだ!ゲストも入れてな!」
「ええ、バサラ!」
「アンコールの分も歌え!」
「!!」
「わかってるぜ。ファイアーーーーーーーーッ!!」
「ボンバーーーーーーーッ!!」
 ミレーヌも続いてだ。そうして。
 その音楽がゲペルニッチを直撃したのだった。
 ゲペルニッチはだ。今変わったのだった。
「うおおおおおおおおっ、これは!」
「よし、ゲペ野郎!」
 バサラが彼を呼ぶ。
「来い!」
「来いというのか」
「そうだ、俺達の世界に来い!」
 こう彼を呼ぶのだ。
「今ナ!」
「この背筋を染めていく刺激の色は!」
「ゲペルニッチ・・・・・・」
「これが我が歌にも」
 シビルに応える形でだ。彼は言うのだった。
「無の暗黒より生まれ出ずる清水の如き市ピリチアの奔流。これこそ」
「何だってんだ、それは!」
「まごうことな約束のスピリチアクリエーション!」
 それだとバサラに答える。
「それだ!」
「これは!」
 ガビルもだ。言う。
「身体を駆け巡るソクゾク美!」
「ガオオオオンン!」
 グラビルも叫ぶ。ギギルもだ。
「これだ!この音楽だ!」
「何と、最早」
「我々はアニマスピリチアはいらない」
「音楽があれば」
 バルゴ達も言う。その中で。
 ゲペルニッチの姿がだ。次第にだった。
「ゲペルニッチが小さくなっていく」
「終わったな」
「ええ、そうね」
 ミレーヌはレイに対して頷いた。
「これで。この戦いは」
「完全にな」
「ステージが終わったぜ」
 バサラはだ。こう言うのだった。
「いい歌だったぜ、シビル」
「バサラ・・・・・・」
「それにゲペルニッチ」
 彼にも声をかける。
「ロンド=ベルの皆もな」
「最高だったわ」
 未沙もだ。思わず言った。
「これだけの音楽を聴けたなんて」
 こうして戦いが終わった。ミンメイも囚われていた人々も救われた。そしてだ。
 千葉がだ。そのミンメイのところに駆け寄りだ。こう言うのだった。
「あの」
「はい?」
「私はマクロス7の軍医で千葉といいます」
 まずは名乗ってだった。
「宜しければミンメイさんのサインを」
「おいおい、抜け駆けはなしだよ」
「そうだよ、折角リン=ミンメイに出会えたのに」
「それで抜け駆けはないわよ」
「順番を守ってね」
「そうしよう」
「あの、ロンド=ベルの方々がここまで来られるなんて」
 ミンメイはそのことを驚いていた。
「まさか」
「いや、事実だよ」
 輝がだ。そのミンメイに笑顔で話す。
「やっと。再会できたね」
「輝・・・・・・」
「君の歌で皆が」
「助かったっていうのね」
「うん、救われたよ」
 まさにだ。そうだというのである。
「こうしてね」
「私の歌で」
「そう、本当にね」
「いえ」
 ところがだ。ミンメイはこう言うのだった。
「私も。捕らえられていた人達を助けてくれたのか」
「それは?」
「輝、そしてロンド=ベルの方々です」
 まさにだ。彼等だというのである。
「そして銀河も救われました」
「そんな、銀河もなんて」
「いえ、事実です。ですから」
 ここまで話してだ。ミンメイは笑顔でだ。彼等に対して。
 頭を下げ。こう言った。
「有り難うございました」
「有り難う・・・・・・」
「捕らわれていた人達を代表してお礼を述べさせて頂きます」
 こう言うのだった。彼女は救われだ。ロンド=ベルに保護された。
 捕らわれていた人達は解放されそれぞれの場所に戻る。その中で。
 バサラはだ。ゲペルニッチと向かい合いだ。笑顔で話すのであった。
「ゲペルニッチよ」
「うむ」
「中々だったぜ、御前の歌」
 こう告げるのである。
「本当にな」
「私はわかったのだ」
「自分のことがだな」
「そうだ。我が身の内にもアニマスピリチアの扉がある」
 それがだ。わかったというのだ。
「尽き果てた夢のかけらの落とし子」
「それは誰にでもあるんだ」
「その通りだな」
「貴方達は歌を」
 ミンメイもそこにいる。そうして彼に話すのだった。
「自分の心の底から湧き上がる何かを形にする術を知りました」
「そうだな。それもまた」
「それこそが生きていく力」
 ミンメイは話す。
「貴方達の言うスピリチアなのでしょう」
「そうね、それこそがね」
「スピリチアだったんです」
 シェリルとランカも笑顔で話す。
「長い間探してたみたいだけれど」
「やっと見つかったんですね、それが」
「そうだな」
 ゲペルニッチは二人に対しても頷いた。
「ようやくな。そして」
「そして?」
「そしてっていうと」
「それを教えてくれた御前達に礼を言う」
 ゲペルニッチは微笑んでいる。そのうえでの言葉だ。
「人間達よ。今はだ」
「ああ、今度は何だ?」
「アポカリュプシスは間近に迫っている」
 このことをバサラ達に話した。
「心して戦うがいい」
「それでだけれどな」
 バサラがここでゲペルニッチに問うた。
「聞きたいことがあるんだけれどな」
「うむ。何だ」
「そのアポカリュプシスって何なんだ?」
 問うのはそのことだった。
「銀河の終焉とか全ての終わりとはじまりとか。どういう意味なんだよ、これって」
「我々の知識もだ」
 だが、だった。ゲペルニッチの言葉はこうしたものだった。
「御前達と同じ程度でしかない」
「知ってるのはここまでってんだな」
「そうだ。しかしだ」
「しかし?」
「我々が器となっているこのエビルなるものはだ」
 それについてはだ。話せたのだった。
「アポカリュプシスに対するものとして造られたらしい」
「プロトカルチャーがあれだったわよね」
 シェリルが話す。
「宇宙怪獣に対抗する為に巨人兵士を生み出したのよね」
「それでエビルはさらなる力」
 ランカも話す。
「じゃあアポカリュプシスは宇宙怪獣のことですか?」
「それの襲撃なの?」
 ミレーヌもグババと共に首を傾げさせながら問う。
「それなのかしら」
「わからない」
 ゲペルニッチはそれについて答えられなかった。
「だが」
「だが?」
「全てを包み込む果て無き力が」
 それがだというのだ。
「我々をこの宇宙に呼び込み」
「そしてなんだな」
「そうだ、御前達のスピリチアを集めよと言った」
 こう話すのだった。
「そうしていたのだ」
「何だ?妙な話になってきたな」
「そうですね」
 これはだ。バサラにもミンメイにもわからなかった。
「何かおどろおどろしいな」
「何なのでしょうか」
「我々はその力にあがらい」
 そうしてだと。スピリチアについての話をした。
「それの定める運命から逃れる為にだ」
「今までか」
「あのスピリチアファームを」
「そうだ。自らの楽園を造ろうとしたのだ」
 まさにそうだというのである。
「我が夢だった」
「まあな。何かわからねえが」
「御話して下さり有り難うございます」
 これで話は一旦終わった。そしてだ。
 シビルがだ。バサラに対して言うのだった。
「バサラ」
「ああ、シビル」
「御前ノ歌忘レナイ」
 こうバサラに対して告げる。
「有り難う」190
「こちらこそな」
 しかしだ。ここでだ。
 ゲペルニッチがだ。そのシビルに言うのだった。
「シビルよ」
「?」
「御前はアニマスピリチアと共に行け」
 こう彼女に告げるのである。
「いいな」
「ケドソレハ」
「いいのだ」
 微笑んでだ。シビルに告げるのである。
「生きたいように生きるがいい」
「生キタイヨウニ」
「それこそがスピリチアパラダイスだ」
「ゲペルニッチ様!」
「そしてだ」
 彼女だけではなかった。さらにだ。
 ガビルにもだ。声をかけるのだった。
「ガビルよ」
「はい」
「無論グラビルもだ」
 彼もであった。
「行くがいい」
「ガオオオオオン!」
「おお、こりゃいいな」
 バサラはゲペルニッチの話を聞いて笑顔になった。
「こりゃまた賑やかになるな」
「そうだな。御前達には美がある」
 そのガビルの言葉である。
「ロンド=ベルで究極の美を求めるとしよう」
「うむ、そうするのだ」
 ゲペルニッチは彼のその背を押した。
「是非な」
「そうさせてもらいます」
「嘘、凄いことになったけれど」
 ミレーヌもこれには唖然となる。
「ギギルさんだけでなくシビルにこの二人もって」
「いや、我等は一心同体だ」
 ガビルはこのことは断るのだった。
「それはわかっていてもらおう」
「そ、そうだったわね確か」
「我等は共に美を求めているのだ」
「しかし。仲間になるのは」
 ガムリンもだ。唖然としたものを見せている。
「予想していなかった」
「ガムリンだったな」
 ガビルはそのガムリンにも声をかけた。
「そうだったな」
「ああ、そうだけれどな」
「宜しく頼むぞ」
 笑ってだ。ガムリンに言うのである。
「御前があの健康美に放つ美」
「何っ、まさかもうそれに」
「見せてもらうぞ」
「気付いていたっていうのか」
「?何に?」
 気付いていない娘がここでガムリン達に問う。
「気付いていないんですか?」
「あっ、いや」
 彼女の言葉にだ。ガムリンは狼狽を見せた。
「何でもありません」
「何もないんですか」
「はい、そうです」
 必死の顔でこう言うのであった。
「ですからご安心を」
「わかりました。それじゃあ」
「さて」
 最後にゲペルニッチが言う。
「それでは我々はだ」
「ああ、これからどうするんだ?」
「最早銀河に用はない」
 こうバサラに答えるのだった。
「歌こそ真のスピリチアパラダイスなのだから」
「じゃああれか。これからは歌を聴いてなんだな」
「そうして生きていく」
 実際にそうするというのである。
「だからだ。これでだ」
「ああ、また縁があればな」
「さらばだ」
「では我々も」
「ゲペルニッチ様と共に」
「歌を求めていきましょう」
 バルゴ、ゴラム、ゾムドも言ってだ。そうしてだった。
 プロトデビルン達は何処かへ消えた。それを見送ってだ。
 勝平がこう言った。
「何かな」
「そうだな。あれだけ暴れ回ってな」
 宇宙太も彼に応える。
「銀河中でな」
「それでああもあっさりだとな」
 流石の勝平も唖然としていた。
「何て言えばいいんだ?」
「とりあえずもう人を襲ったりはしないけれど」
 恵子もだ。少し戸惑っている。
「けれど。何か」
「どうも。嵐の様だったな」
 こう言うのは一太郎である。
「あっという間に去ってしまったな」
「しかしだ」
 その彼等にガルドが話す。
「彼等は俺達にとって敵だったが」
「それでもだな」
「そうだ。自らが生きていく為の手段だった」
「つまりあれか」
 ここでイサムが言う。
「自然の摂理って訳だな」
「そうなる」
「けれどそれもだな」
「彼等は自分でスピリチアを生み出せるようになった」
「だからこれで終わりだな」
「そうなる」
「これで一件落着か」
「そうなるな」
 ヒビキとネックスも話す。
「色々あったけれどな」
「プロトデビルンとも終わりだ」
「それでとにかくは」
 シルビーも話す。
「いいステージだったわね」
「ああ、本当にな」
 バサラがシルビーのその言葉に頷いた。
「最高だったな」
「バサラさん」
 ミンメイもバサラに声をかける。
「貴方の歌、よかったです」
「そりゃどうも」
 返答は素っ気無い。しかしだ。その顔を見てミレーヌが言うのだった。
「あっ、バサラ今」
「何だよ」
「照れてるでしょ」
 その赤くなった顔を見ての言葉だ。
「ガラにもなく」
「おい、それはな」
「違うっていうの?」
「まあそれはな」
 否定できなかった。その通りだからだ。それでこう言うのだった。
「流石に俺でもな」
「ミンメイさんが相手だと?」
「そうなるだろ。やっぱりな」
「まあそうだけれどね」
 そしてそれはだ、ミレーヌも同じだった。
「どうしてもね」
「そういうことだよ」
「ですが」
 ここでまた言うミンメイだった。
「私達のステージはこれで終わりではありません」
「そうね。まだね」
「やらなければならないですね」
 シェリルとランカが言う。
「銀河ね」
「そこで」
「それが歌ってるぜ」
 バサラは二人に対しても言う。
「今もな」
「これで何はともあれ」
 キャサリンが話す。
「プロトデビルンとの戦いも終わったわ」
「しかしな」
 ヘンリーである。
「アポカリュプシスは結局」
「謎なのよね」
 それはボビーも指摘する。
「結局何だってのかしら」
「少なくとも宇宙怪獣はだ」
 クランは彼等について言及した。
「全ての生命体の天敵だ」
「そうですね、まさに」
「放置していてはです」
「銀河の終焉につながるわ」
 ネネにララミア、カナリアが話す。
「ですが。終わりはわかるのですが」
「はじまり?」
「これは何かしら」
「あの帝国の伝承ではあれだったな」
 ジェフリーもそのことについて話す。
「全ての終わりとはじまりと言っていたが」
「宇宙怪獣は全部終わらせるだろ」
 アルトにはそうとしか思えなかった。無論他の面々もだ。
「破壊しかないだろ、奴等は」
「そうよね。それではじまり?」
「これって一体」
「どういうことなのかしら」
 モニカにもミーナにもラムにもわからない。
「矛盾してるわね」
「破壊と創造っていっても」
「宇宙怪獣には破壊しかないけれど」
「連中にはまともな知性もないしな」
「本能だけですからね」
 ミシェルとルカも宇宙怪獣に言及した。
「それではじまりってのは」
「考えられないです」
「そのことですが」
 ここでだ。彼女が出て来たのだ。
 イルイだ。彼女はこうロンド=ベルの面々に話す。
「全ての鍵を解く鍵は」
「その最高の鍵!?」
「っていうと」
「それは一体」
「ゼ=バルマリィ帝国にあります」
 こうだ。大人のイルイが話すのである。
「そこにです」
「イルイちゃん」
「まさか」
「はい」
 クスハとブリットの言葉に対してこくりと頷くのだった。
「目覚めました」
「そうだったの」
「それで今こうして」
「そうです。そして」
 イルイはだ。さらに話すのだった。
「何故私がそのことを知っているかですね」
「そうだよ、どうしてなんだ?」
「何か凄い謎があるみたいだけれど」
 アラドとゼオラもだ。イルイに問う。
「それは何なんだ?」
「本当にどういったものなの?」
「まず私のことからお話させてもらいます」
 そこからだというのである。
「私は惑星防衛システムガンエデン」
「そうだな」
 その言葉に頷いたのはレーツェルだった。
「貴女は。そうだった」
「はい、それと同時に」
 どうかとだ。話すのだった。
「貴方達の知る小さなイルイです」
「そのイルイ=ガンエデンとしての言葉だな」
「そうです」
 その通りだとだ。ゼンガーにも答えるのだった。
「その私の言葉ですが」
「聞かせてもらえる?」
 アイビスが真剣な顔でイルイに言った。
「是非共ね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。イルイの話がはじまる。それもまた、だ。大きなうねりなのだった。


第百八話   完


                                  2011・3・21 

 

第百九話 二つの星

                   第百九話 二つの星 
 刹那がだ。こちらの世界の面々に尋ねる。イルイの前でだ。
「前から気になっていたが」
「イルイちゃんのことだよな」
「そうだ。彼女のことだ」
 今目の前にいるだ。その彼女のことだというのである。
「話は聞いたが」
「大体そのままだぜ」
 こう話したのはトッドだ。
「御前さんも知ってる通りだ」
「それがガンエデンか」
「ああ、そうさ」
 その通りだと話すトッドだ。
「星全体を封印してそれで護る存在だったんだよ」
「それで色々あって戦ったんだよな」
「そうだ」
 ゼンガーがヘクトールに答える。
「そうした戦いだった」
「で、その娘がシティにいて?」
「今こうした話になってる」
「要約すればそうなるよな」
「そうよね」
「サイコドライバーも関係して」
 その話も出た。
「妙に複雑になってるけれど」
「とりあえずその戦いで死ななかったのは」
「確かだよな」
「それで何でシティにいたんだ?」
 この疑問を言ったのはだ。ディアッカだった。
「イルイちゃん地球にいたよな」
「はい、間違いなく」
 その通りだと述べるニコルだった。
「ですが何故か」
「神様だから宇宙空間を超えられた?」
 こう言うのはシホだった。
「だからでしょうか」
「目的は何かだな」
 ミゲルがそれを話す。
「その宇宙に出た目的は」
「それがかなり疑問だが」
「どういう目的?」
「一体」
 誰もが首を捻ることだった。そしてだ。
 答えはだ。出ないのだった。その中でだ。 
 甲児だ。彼が言うのである。
「けれどな、間違いなくな」
「そうよね。イルイちゃんよね」
 その通りだと述べるさやかだった。
「あの娘は間違いなくね」
「俺達の知っているな」
 そんな話をしてだった。そのうえでだ。
 全員緊急ブリーフィングに入る。その中で大文字が言う。
「今回はだ」
「ええ、イルイちゃんのですよね」
「その娘の」
 イルイもだ。その場にいるのだった。
「持っている情報からですね」
「これからの行動についてですよね」
「そのことを話すことにする」
 まさにそうだと答える大文字だった。
「それでいいな」
「ええ、わかりました」
「それなら」
 こうしてだ。緊急ブリーフィングに入ったのだった。イルイがまず話す。
「あの、皆さん」
「ああ、イルイちゃん」
「どうしたんだ?」
「今までご迷惑をかけてすいません」
 子供の姿で謝った彼女だった。
「本当に」
「私はです」
 イルイが話すのだった。その彼女がだ。
「私は皆さんの知るイルイです」
「そうだよな。それはさ」
「私達にもわかるわ」
 アラドとゼオラが彼女に答える。
「間違いなくな」
「イルイちゃんよね」
「けれどです」
 それでもだというのだ。ここでだ。
「同時に私の中にです」
「イルイちゃんの中に?」
「っていうと?」
「ガンエデンの意識も存在しています」
 こう話すのだった。
「その二つがです」
「つまりこういうことだというの?」
 スレイがここで言った。
「ガンエデンの意識とイルイの意識が」
「ではそれだと」
 ツグミが話す。
「二重人格ってことかしら」
「いえ」
 それはだ。違うというイルイだった。
「私とガンエデンは一つの身体を共有しています」
「一つの身体になのね」
「はい」
 今度はアイビスに答えるイルイだった。
「今こうして皆さんとお話しているのは」
「イルイちゃんよね」
「はい、私の意識です」
 それは間違いないというのだ。
「私の中のガンエデンの意識は今は」
「今は?」
「今そのガンエデンは」
「皆さんの声を聞いています」
 そうだというのである。
「私と同時にです」
「そうなんだ」
「そういう意味で一緒なんだ」
「イルイとガンエデンって」
「そうだったんだ」
「それで聞きたいけれど」
 ドロシーが問うや。
「貴女は私達の敵なのかしら」
「待て、ドロシー」
 ロジャーがそのドロシーに対して言う。
「その表現は率直過ぎる」
「そうなのね」
「あまりにもだ」
「いえ、それもです」
 だがここでイルイが答える。
「ガンエデンが地球を封印しようとしたのは」
「事実ね」
「はい、今ここにおられる方の多くと戦ったことも」
「事実ね」
「ですから」
 このことは認めるイルイだった。そしてだ。
 今度はだ。鉄也が問うた。
「ガンエデンだが」
「彼女ですね」
「再び地球を封印するつもりなのか」
「いえ」
 そのことには首を横に振るイルイだった。
「もうそれはありません」
「そうなのか」
「本体とバラルの園を失いました」 
 その封印しようとした戦いにおいてだ。
「それではです」
「もうできないか」
「不可能になりました」
 まさにそうだというのである。
「事実上」
「ではもう一つ聞きたい」
 今度は大介だった。
「君とガンエデンの今の目的は」
「今ここにいることですね」
「そうだ。それは何故か」
 大介が尋ねるのはこのことだった。
「何故宇宙にいるのだ、このシティに」
「ガンエデンは答えを探していたのです」
「答え?」
「ガンエデンはその手段はともかく」
 そのガンエデンについての話だった。
「地球防衛の為のシステムですね」
「それはそうよね」
 ひかるもイルイのその言葉に頷く。
「だからあの時動いたんだし」
「そうね。そのこと自体は妥当ね」
 ジュンはガンエデンを軸にして考えて述べた。
「ガンエデンにしてみれば」
「その彼女がです」
 さらに話すイルイだった。
「水からが使命を果たすことが不可能になり」
「そして?」
「それで一体どうして」
「シティに」
「ガンエデンの剣を探していました」
 そうだったというのだ。
「自身の代わりに使命を果してくれる者達をです」
「それでだったのか」
「わざわざシティに潜り込んで」
「そうして」
「それでよ」
 マリアが問う。
「答えは出たの?それが誰かっていうのは」
「出ました」
 それはもう出たというのである。
「地球を守る剣はです。見つけました」
「じゃあそれは」
「一体」
「誰なんだ?」
「何か予想がつくけれど」
「貴方達です」
 他ならぬだ。彼等だというのだ。
「ロンド=ベルです」
「俺達か」
「じゃあ俺達って」
「ああ、選ばれたんだな」
「ガンエデンに」
「あの時と同じで」
「けれどそれは」
 ここで言ったのは真吾だ。
「悪い言い方をすれば自分の都合が悪くなって」
「そうよね。そのお役目をね」
「俺達に押し付けたってことになるよね」
 レミーとキリーも話す。
「今一つね。何ていうか」
「面白くない話だな」
「そうだな。それだとだ」
 ショウも眉を曇らせて話す。
「俺達を利用しようとしたバルマー帝国と同じだ」
「すいません」
「ああ、君を責めている訳じゃない」
「そんなつもりはないから」
「レディーを泣かしたりはしないさ」
 グッドサンダーの面々はそれは否定した。
「けれど。色々あったからな」
「もう銀河中回ってるしね」
「長旅が続いてるからな」
「それにだ」
 今度は万丈が話す。
「ガンエデンに選ばれたことは」
「そのことはですか」
「僕達にとって無意味だよ」
 こう話すのだった。
「僕達は誰に言われるでもなく地球を守るつもりだからね」
「だからですか」
「うん、だから無意味なんだ」
 それでだというのだ。
「そして僕達は」
「さらにですね」
「この銀河の人達全ての」
「全ての」
「生命た平和を守りたいと思ってるんだ」
「そこまでなのですか」
「ガンエデン、聞いているね」
 万丈はそのガンエデンにも語りかけた。彼女も聞いているとわかってのことだ。
「僕達は自分自身の意志で戦っているんだ」
「そうだ。だからな」
 笑顔で話す豹馬だった。
「悪いがそれは余計だからな」
「有り難うございます」
 その言葉を聞いてだ。礼を述べるイルイだった。
「私、皆さんを信じてよかったです」
「俺達を?」
「っていうと?」
「はい、何故ならです」
 こう前置きしてだ。イルイはその話をはじめた。
「私達は今日までずっと地球の未来を考えてきました」
「地球を」
「俺達の星のことを」
「ガンエデンは地球を守る為に」
 ガンエデンのことも話すのだった。
「皆さんを従わせることを考えていた時期もありました」
「それでか」
「そうだね」
 勇とヒメがその言葉に対して言った。
「それであの時は」
「私達と」
「ですが最後にはです」
 また言うイルイだった。
「ガンエデンもわかってくれました」
「俺達のことを」
「そのことを」
「皆さんの平和を願う気持ち、そして」
 さらにであった。
「未来へ向かおうとする心を」
 その二つをだというのだ。
「ガンエデンもです。わかってくれたのです」
「だからか」
 ここで言ったのは忍だった。
「今俺達とこうして話をしてるってんだな」
「その通りです」
「成程な」
「ではだ」
 今度はレビだった。
「HNディメンションは」
「レビさんならと思ったからです」
「それでなのか」
「きっとその力を正しい方向に使い」
 そしてだというのだ。
「皆さんと助けてくれると信じていました」
「有り難う」
 レビはそのイルイに対して礼を述べた。
「御前のお陰でバンプレイオスは完成し」
 そしてだというのだ。
「こうしてここにいられることもできた」
「そう仰るのですね」
「そうだ。本当に有り難う」
「つまりだ。これは」
「ハッピーエンドか」
「そうよね」
「今は」
 そしてだ。クスハとブリットがだった。
「イルイちゃん」
「よく帰って来てくれたな」
「そう言ってくれるんですね」
「ええ、そうよ」
「お帰り」
 笑顔で言う二人だった。
「これからはね」
「ずっと一緒だからな」
「皆・・・・・・」
「よかったあ」
 リュウセイも笑顔で言う。
「こうなってな」
「愛する人達のところに帰られた」
 レビも言う。
「こんなにいいことはない」
「そうだな。そしてだ」
 ライはここでだ。この話をした。
「イルイ、いいだろうか」
「はい、あのことですね」
「そうだ、アポカリュプシスのことだ」
 他ならぬだ。そのことだというのだ。
「君はそれを解く鍵はバルマー帝国にあると言ったな」
「はい、そうです」
「それはどういうことだ、一体」
 ライはそのことを問うのだった。
「バルマー帝国にあるとは」
「それはです」
 イルイはその理由を皆に話しはじめた。
「ガンエデンは地球をアポカリュプシスから守る為に建造されたものだからです」
「じゃああれなのかしら」
 ノリコが問う。
「イルイちゃんはガンエデンの意識と一体化してるから」
「はい」
「アポカリュプシスが何なのか知ってるのね」
「残念ですが」
 ところがというのだった。
「ガンエデンの本体が破壊された時に」
「あの時か」
 洸の顔が曇る。
「あの時にまさか」
「メモリーの一部を破損してしまいました」
 それでどうなったかというと。
「ガンエデンを建造した者やそのシステムの全貌」
「そしてアポカリュプシスも」
「そういったものも」
「断片的な記憶しか残されていません」
「その失われた知識がバルマー帝国に関係ある?」
「あっ!?」
 ここでだ。全員気付いたのだった。
「そうだ、バルマー帝国にもだ」
「ガンエデンがあった!」
「ハザル=ゴッツォやアルマナ王女がな」
「言っていたぞ」
「そういうことか!」
「はい、その通りです」
 イルイもここで言う。
「ガンエデンは二体あるのです」
「だからか。あの帝国にか」
「その謎がある」
「アポカリュプシスの謎が」
「それが」
「二体のガンエデンが造られた経緯」
 その話にもなる。
「それは私にもわかりません」
「それでもか」
「二体のガンエデンの記憶」
「それを照らし合わせれば」
「それでか」
「アポカリュプシスの真相がわかるんだな」
「それじゃあ」
 答えがだ。実践の方法が出た。
「バルマー帝国に行って」
「そうしてそのガンエデンと会って」
「それで確かめるか」
「しかしだ。それはだ」
 マーグがここで話す。
「容易ではない」
「実はです」
 そのバルマーの中枢にいただ。マーグとロゼの話だ。
「ガンエデンは惑星防衛システムだ」120
「惑星外からの侵入者を迎撃するものです」
 このことは二人から話す。
「そのことは申し訳ないが今まで言いそびれていた」
「特に重要とは思っていませんでした」
「普通のシステムとしか思っていなかった」
「そこまでの謎があるとは」
「あれっ、じゃあそれってさ」
「そうでごわすな」
 日吉と大次郎が二人の言葉からあることに気付いた。
「マーグさんとロゼさんも知らないってことは」
「ガンエデンの詳細はバルマーの高官でも知らなかったでごわすか」
「少なくともアポカリュプシスというものはだ」
「全く知りませんでした」
 洸はなす二人だった。
「バルマー帝国は銀河の中心に位置している」
「外敵の脅威は地球とは比較になりませんでしたから」
「敵の多い国なのは事実だよな」
「それはそうだよな」
 このことはロンド=ベルの面々も実感していた。バルマー帝国の敵の多さはだ。
「それで生き残ってきたんだから」
「あのガンエデンは百戦錬磨か」
「そうよね」
「帝国ではだ」
 帝国出身のヴィレッタの言葉である。
「ガンエデンはズフィルードという名で神話に何度も登場する」
「つまりは」
「それだけ出番がおおかった」
「そういうことか」
「そうよね」
「じゃあ」
 そしてだ。さらにであった。
「それがズフィルード信仰になって」
「その代行者の霊帝が帝国を統治しているってのか」
「つまりバルマー軍は端末か」
「その霊帝の」
「そうなるな」
「そして」
 一矢が言った。
「自分の星なら無事でいいという考え方は」
「そのままだな」
 京四郎もやや忌々しげに話す。
「ガンエデンと同じだな」
「そうだな」
「真相を話してもです」
 またイルイが話す。
「帝国は我々に門を開かないでしょう」
「けれど今は」
 ここでクスハが希望を述べた。
「アルマナさんがいますから」
「あの人がだな」
「あの人が私達の橋渡しになってくれたら」
「ひょっとしたら」
「いけるか」
「それなら」
 あらためてだ。方針が決まったのだった。
「行くか」
「ああ、バルマーの本星に」
「今度は」
「幸いです」
 またイルイが話す。
「バルマーの本星はここから近いです」
「なら今からそこに行って」
「それで話をするか」
「今から」
 こうしてだった。彼等はそこに向かうことにしたのだった。
 その中でだ。ミサトがふとリツコに囁いた。
「ねえ、二つのガンエデンね」
「そうね。地球とバルマーにあるという」
「死海文書」
 二人はこのことを話すのだった。
「どう関係あるのかしら」
「銀河の中心と辺境の二つの星」
「私達と彼等の間にね」
「何があるのかしら」
 こんな話をしていた。そしてだ。
 彼等が目的地に定めたバルマー本星ではだ。
 ジュデッカ=ゴッツォがだ。エツィーラの話を聞いていた。
「これでいいな」
「うむ、これでいい」
 ジュデッカ=ゴッツォは満足している声で彼女に答えた。
「万全と言っていい」
「必勝というのだな」
「本星からネビーイームを移設させた以上はだ」
 それならばだというのだ。
「勝てる」
「流石だな」
 エツィーラは彼のその言葉を聞いて満足した声で述べた。
「帝国随一の忠臣と言われるだけはある」
「そして祭司長よ」
 今度はジュデッカ=ゴッツォがエツィーラに問うた。
「聞きたいことがある」
「何をだ?」
「あの者達のことだ」
 こう前置きしての問いであった。
「ロンド=ベルだが」
「奴等か」
「本当に来るのか」
 彼はこのことを問うた。
「バルマーに」
「来る」 
 エツィーラは断言した。
「間違いなくな」
「来るのか」
「シヴァー閣下のお話ではだ」 
 宰相である彼の言葉と聞いてだ。ジュデッカ=ゴッツォも身構えた。そのうえで聞くのだった。
「奴等はプロトデビルンを打ち破ったそうだ」
「何!?」
 それにはだ。彼も思わず声をあげた。
「あの悪魔達をか」
「そうだ。そしてこちらに向かっているという」
「何ということだ」
「確かに陛下は奴等を銀河に誘導し」
 今度は霊帝だった。
「邪魔者達を排除されようとしたが」
「毒を以て毒を制す」
「その考えでな。しかしだ」
「想像以上だな」
「そうだ、その力はだ」
 これは彼等にとってだ。まさにそうだったのだ。
「そして今度は我々だ」
「奴等の力は危険だったか」
 ジュデッカ=ゴッツォはやや険しい顔になって述べた。
「利用するには」
「やもな。奴等の中にはだ」
「他の世界の存在も多いな」
「そうだ。しかしだ」
「我がバルマーは」
 ジュデッカ=ゴッツォが言うのだった。
「外敵の進入は一度たりとも許してはいない」
「だからこそだ。卿にはだ」
「わかっている。このジュデッカ=ゴッツォ」
 己の名を名乗っての言葉だった。
「軍務尚書としてだ」
「防いでくれるな」
「何人たりとも陛下の治めるこの聖地」
 そここそはなのだった。
「ゼ=バルマリィに指一本触れさせぬ」
「では。尚書よ」
「うむ」
 御互いに言い合う。
「頼んだぞ」
「それではだ」
「そしてだ」
 さらにだとだ。ここで話すエツィーラだった。
「本星の護りはだ」
「近衛軍がだな」
「バラン殿がされる」
 その彼がだというのだ。
「安心されよ」
「そうだな。ところでだ」
「ところで。どうしたというのだ」
「そのバラン殿だが」
 ジュデッカ=ゴッツォはやや怪訝な顔で彼の名前を出す。
「近頃どうされたのだ」
「何かあったのか、バラン殿に」
「様子がおかしくないか」
 こうエツィーラに問うのだった。
「どうもな」
「それは気のせいではないのか?」
「そうだろうか」
「そうだ、おかしいところはない」
 ジュデッカ=ゴッツォに対して述べる。
「私の見たところはな」
「卿は医術にも秀でているが」
「その私が言うのだ」
「ならば問題はないか」
「私を信じて欲しい」
 高潔な祭司長としての言葉だった。
「是非な」
「卿を疑うことはない」
 それはジュデッカ=ゴッツォも言い切る。
「帝国の祭司長である卿はな」
「済まないな」
「いい。ではだ」
「健闘を祈る」
 こうしてだった。ジュデッカ=ゴッツォは出撃した。だが彼は気付いていなかった。彼が背を向けたエツィーラの顔はだ。彼の知らない顔を浮かべていることに。
 彼等は共に出撃した。そうしてだった。
 ロンド=ベルの前にだ。大軍と共に現れたのだった。
 その彼等を見てだ。ヴィレッタが言った。
「あれは」
「大尉、知っているのですか」
「あれはネビーイームだ」
 こうライに告げる。
「バルマー本星を護る十二の衛星の一つだ」
「それが今ここに」
「それを移動させるとはだ」
「何だよ、それってよ」
「そうだな」
 ここで言うのはカイとジェリドだった。
「アルテミスの何とかと同じじゃねえか」
「それを出してきたのか」
「何でその世界のことを知ってるんだ?」
 コウはそのことに首を捻る。
「よくわからないな」
「よく言えるわね」
 ダイアンがコウの今の言葉に唖然となっていた。
「それは幾ら何でも」
「俺帝国だから」
 コウはダイアンにはこう返した。
「同盟じゃないから」
「それはそうだけれどな」
「とにかくだ」
 ハマーンも言う。
「その首飾りの一つが来たのか」
「つまり敵さんは本気なのね」
 フェイはこう気楽に述べた。
「そういうことよね」
「そうなるな。そしてだ」
 テムジンが冷静に話す。
「あの要塞を突破しなければな」
「敵の本星には辿り着けない」
 レドンが話す。
「そうなるな」
「それなら!」
 ハッターはいつもの調子である。
「押して押して押し通ってやるぜ!」
「いや、待て」
 ギルがそのテムジンを止める。
「戦うだけではない」
「そうね。話し合いもね」
「必要よね」
「特に今は」
 三姉妹が話す。
「今の私達の目的はアポカリュプシスだし」
「その調査と阻止だから」
「帝国とは特にね」
「だからだ」
 クリアリアも話す。
「ここは戦いよりもだ」
「よくぞ来た」
 話し合いの道を模索する彼等にだ。声が届いた。
「地球の戦士達よ」
「その声は」
「ジュデッカ=ゴッツォか」
「出て来たってのか」
「帝国軍本星防衛軍司令官にして軍務尚書」
 己の役職を述べていく。
「ジュデッカ=ゴッツォだ」
「久し振りに出て来たな」
「それにあの女神官もかよ」
「帝国の大臣閣下達ってことだな」
「我等の導きに従いだ」
 ジュデッカ=ゴッツォが彼等に告げる。
「汝等は銀河を舞台に戦い勝利を収めてきた」
「それは違います!」
「その通りだ!」
 プレアとカナードが反論する。
「僕達は自分達の意志で」
「守るべきものの為に!」
「銀河に出ました!」
「そしてここに来た!」
「そう思いたくばだ」
 ジュデッカ=ゴッツォはその彼等に返す。
「それもよかろう」
「何処までも不遜ね」
 ジェーンはそのことに不快なものを見せた。
「本当にね」
「汝等の誇りまで否定する気はない」
「しかしってんだな」
「そうだな」
 エドとジャンが言い返す。
「そこからまた」
「言うんだな」
「汝等はその分を越えようとしている」
 言葉はロンド=ベルの面々の予想通りだった。
「それは許されない」
「言っておくわ」
 プロフェッサーがジュデッカ=ゴッツォに告げる。
「戦いに来たのではないのよ」
「何だというのだ」
「知っている筈よ」
 こう言うのであった。
「この銀河の危機について話したいけれど」
「バルマーの伝承ではです」
 今度はミサトが話す。
「それはアポカリュプシスと呼ばれていますね」
「・・・・・・・・・」
 エツィーラの眉が無言でぴくりと動く。だが誰も気付かなかった。
「地球とバルマーに残されたガンエデンの情報を照らし合わせれば」
「アポカリュプシスの全容とその対策を」
 ミナも話す。
「検討できるのではないか」
「つまりだ」
 エツィーラは無言だ。ジュデッカ=ゴッツォが話す。
「ガンエデン、つまりは」
「そうだ」
 ヴィレッタが返す。
「創世神ズフィルードの力を必要とする」
「ジュデッカ=ゴッツォ殿」
 大文字も話す。
「ことは銀河全体のことだ」
「だからこそだ」
 大河も続く。
「我々は帝国の統治者である霊帝ルアフとの会見を」
「それを希望する」
「何を言うか!」
 だが、だ。ジュデッカ=ゴッツォはだ。
 激昂してだ。こう言い返したのだった。
「地球人が!」
「何っ!?」
「いきなり何だよ!」
「汝等如きが陛下の名を口にするか!」
 それにだ。怒りを見せたのである。そしてだ。彼から言うのだった。
「無論我が帝国でもだ」
「バルマー帝国でも」
「アポカリュプシスについてはか」
「そうだ、調査が進められている」
 そうだというのである。
「そしてそれはだ」
「その実態は?」
「何だっていうんだ?」
「宇宙怪獣の異常発生だ」
 彼等だというのだった。
「それであるとな」
「やはりなのね」
 ウェンディがここで呟いた。
「宇宙怪獣はその発露の一つだったのね」
「そうみたいね」
 セニアも言う。
「怪しいとは思っていたけれど」
「そうですね。あの者達も」
「その一貫だったのね」
「それではだ」
 今度はだ。大河がエペソに対して言った。
「エペソ尚書よ」
「今度は何だ」
「同じ銀河に生きるものとしてだ」
 こう切り出したのだ。
「この巨大な危機にだ」
「共にというのだな」
「そうだ。それはどうだ」
「その必要はない」
「ないというのか」
「そうだ、我等にはだ」
 横のエツィーラの冷笑に気付かずに言うのだった。
「陛下がおられる」
「ガンエデンの力があればか」
 不動が少し忌々しげに言った。
「アポカリュプシスを逃れられるというのか」
「陛下は間も無く瞑想から戻られ」
 それからだというのだ。
「我等臣民をお救いになられる」
「この男、どうやら」
「そうね」
 シリウスとシルヴィアがそのことに気付いた。
「霊帝とやらに対して」
「絶対の中性を持っているのね」
「それまで本星を守るのが我等の務め」
 エペソは言った。
「何人たりとも陛下の元へは近付けん!」
「待て!」
 そのエペソにだ。アポロが問う。
「手前の話を聞いていたらな」
「何だというのだ!」
「自分の星の人間だけが助かればいいっていうのかよ」
「そうとしか聞こえない」
 マリンも言う。
「アポカリュプシスから逃れる術があるというのに」
「何故それを教えない」
 一矢も問うた。
「他の星の人間に」
「我等はだ」
 エペソの反論は。こうしたものだった。
「バルマーの人間だ」
「だからか」
「それでだっていうのかよ!」
「他の星の人間の生命なぞ何の意味も持たない」
「くっ、こいつ等」
「究極のエゴイストだな」
 ロンド=ベルの面々はここまで聞いて忌々しげに言い捨てた。
「結局自分達だけか」
「そういうことかよ」
「そうみたいだね」
 万丈が残念そうな顔で述べた。
「どうやらね」
「じゃあ万丈」
「ここはどうすべきなのかしら」
「僕に言わせてくれるかな」
 万丈はビューティーとレイカに対して言った。
「ここは。いいかな」
「ええ、じゃあ」
「御願いするわ」
「有り難う。ジュデッカ=ゴッツォ尚書」
「今度は何だ」
「どうやら僕達と貴方では道を違えるようだ」
 こうエペソに告げたのだった。
「残念だけれどね」
「こちらはそもそもそのつもりだ」
「そうだね。しかし」
「しかし。何だ」
「帝国の人間全てが貴方の様なエゴイストでないことを祈るよ」
「間違えるな、地球人よ」
「履き違える?」
 万丈はエペソの今の言葉に顔を向けた。
「それはどういうことかな」
「そうだ。余のあり方はだ」
 その考えについての言葉だった。
「宇宙の摂理に従ってのものだ」
「宇宙の摂理、ね」
「力のある者が生き残り」
 そしてであった。
「力なき者が滅ぶ」
「それが摂理だっていうんだね」
「帝国もその摂理の中で生きているに過ぎん」
「それならこうなるよな」
 今言ったのはケーンだった。
「俺達があんたに勝てばだ」
「どうだというのだ?」
「俺達の方に生き残る資格があるんだな」
「安心しろ」
「あんた達が勝つからかよ、それは」
「そうだ。その可能性は億に一つも有り得ない」
 こう言ってみせるエペソだった。
「何があろうともな」
「まあ理屈はそれ位にしてさ」
「極論を言うとな」
「俺達は生き残る為にな」
「今まで戦ってきた。そういうことだよ」
 タップとライトの言葉だ。
「結局はそうなんだよ」
「やっぱりな」
「ジュデッカ=ゴッツォ!」
 竜馬が彼の名を呼ぶ。
「この銀河と俺達自身が生き残る為にだ!」
「余と戦うというのか」
「そうだ、ここを通してもらう!」
「バルマー本星までだ」
「行かせてもらうぜ!」
 隼人と武蔵も言う。
「話し合いで終わればよかったがな」
「それが無理ならな!」
「よかろう」
 そしてだ。エペソもだった。
 退かなかった。こう彼等に告げるのだった。
「汝等にはだ」
「戦うってんだな」
「そうするっていうのね」
「今一度宇宙の摂理を教える必要がある」
 これが彼の言葉だった。
「思いあがった地球人よ」
「その言葉もな!」
「もう聞き飽きたよ!」
「汝等は所詮陛下のお心の中で活かされていることを知るがいい」
「残念だ」
 大文字は本心から言った。
「ジュデッカ=ゴッツォ尚書」
「何だというのだ?」
「貴方は道理をわきまえた人物だと思っていたが」
 だからこそ余計にであった。大文字は思うのだった。
「それは我々を上から見下ろした傲慢さ故の情けだったようだ」
「何とでも言うがいい」
 ジュデッカ=ゴッツォが傲然として言い返した。
「帝国と陛下と民を守ること」
「それがだというのだな」
「そうだ。それが余の誇りであり務めだ」
 まさにそうだというのである。
「バルマー本星防衛軍司令官、そして軍務尚書の名に懸けて」
「戦うってんだな!」
「それならよ!」
「バルマーを汚そうとする汝等をここで倒そう」
「総員戦闘配置だ!」
 アムロが指示を出す。
「敵軍と要塞を撃破しここを突破する!」
「ちっ、やっぱりかよ!」
 リュウセイが忌々しげに声をあげる。
「こうなっちまうのかよ!」
「諦めろリュウ」
 ライがそのリュウセイに言う。
「あの男はあの男の正義の名の下に戦っているんだ」
「だからだってのかよ」
「そうだ、こうなるしかなかった」
 ライにしても無念だがだ。受け入れるしかないことだった。言葉の端々にそうした感情が出ていた。
「仕方のないことだ」
「そしてだ」
 レーツェルも言う。
「そこには微塵の迷いも躊躇いもない」
「一切っていうんだな」
「だからこそ強いのだ」
「これまでの戦いのことは認めよう」
 エペソも己が率いる全軍を出しながら言う。
「だがこの軍とネビーイームに勝てるか」
「!?」
「これは!」
「あの光は!」
 いきなりネビーイームから光が放たれた。
「いかん!」
「総員回避!」
「避けろ!」
 すぐにだ。全員その光から身を逸らした。幸いにして誰も直撃を受けなかった。しかしだ。
「何てパワーだ」
「あんな切り札があるなんて」
「バルマー帝国の底力」
「侮れないわね」
「十二の白き護りが本星を離れたのははじめてのこと」
 ジュデッカ=ゴッツォは普通のものよりさらに巨大なヘルモーズから話す。
「ロンド=ベルよ」
「俺達か」
「俺達のことかよ」
「シヴァー閣下は汝等を我が帝国の歴史がはじまって以来」
 その長い歴史から見てだというのだ。
「最強最悪の敵と認めた様だ」
「シヴァー!?」
「あのハザル=ゴッツォの親父か」
「あいつが言っていた」
「ってことは!」
 ジュデッカ=ゴッツォの軍がだ。どうしてここにいるのか悟ったのだ。
「この軍はあいつの命令で動いてるってのか!」
「シヴァー=ゴッツォの!」
「そうだったのか!」
「その通りだ」
 それを否定しないエペソだった。
「陛下が瞑想に入られている間はシヴァー閣下が帝国を取り仕切られるからだ」
「だからだってのか」
「それでか」
「この男もネビーイームも来ている」
「そういうことかよ!」
「けれど」
 ここでだ。クスハがふと言った。
「アルマナさんは」
「どうやらそれは」
 ブリットがクスハのその言葉に応える。
「こいつを倒して聞き出すしかないようだ」
「創世神の名の下」
 ジュデッカ=ゴッツォが彼等に告げる。
「余とズフィルードが汝等に絶望を与えよう」
「へっ、その言葉もな!」
「今まで何度も聞いてるわよ!」
「自らの愚を悔やむがいい」
 こうしてだった。ネビーイームを前にしての戦いがはじまったのだった。
 その中でだ。エツィーラはだ。こうジュデッカ=ゴッツォに言うのであった。
「では私はだ」
「去るのか」
「見させてもらう」 
 そうするというのだ。
「この戦いをな」
「わかった。それではな」
「健闘を祈る」
 口ではこう言う。
「それではだ」
「うむ、ではな」
 彼女は戦場から姿を消した。これが合図になってだ。
 両軍は激突した。それからすぐにだった。 
 また光がだ。ロンド=ベルを襲った。
「くっ!またか!」
「回避しろ!」
 今回も何とか全員直撃を避けた。しかしであった。
 その攻撃を見てだった。彼等は言うのだった。
「あの攻撃が続くと」
「バルマーとの戦いどころじゃないな」
「下手すればこっちが撃たれて」
「一発でな」
「終わるよな」
「どうだ、神の雷は」
 ジュデッカ=ゴッツォが誇らしげに彼等に告げる。
「汝等への裁きの雷は」
「それがあれだってのかよ」
「霊帝の裁きの雷」
「それだっていうのね」
「そうだ」
 まさにだ。それだというのだ。
「これこそがだ。我等が霊帝陛下の力なのだ」
「じゃあ何なんだ?霊帝ってのは」
 ここで言ったのはジュドーだった。
「化け物か何かか?」
「そうね。これはね」
 セツコも言う。
「ここまでの力を持っているとなると」
「そんな感じだよな」
「人間には思えないわ」
「陛下は人でありながら人を超越しておられるのだ」
 これがジュデッカ=ゴッツォの言葉だ。
「くっ、それでか」
「それで戦うってのかよ」
「バルマーは」
「その我等に勝てるか」
 ジュデッカ=ゴッツォはそれも問うた。
「汝等がだ」
「このままだとな」
「あのネビーイームに撃たれて終わりだぞ」
「戦闘どころじゃない」
「どうすればいいんだ」
「ここは」
 しかしだ。ここでだ。 
 神代がだ。こう言うのだった。
「敵艦隊との戦闘は主力に任せて」
「主力にですか?」
「ええ、それでね」
 慎悟に対して話すのだった。
「一部のマシンの遠距離射撃で」
「ネビーイームを行動不能にするんですね」
「それしかないわ」
 こう話すのであった。
「さもないと。このままでは」
「そうね」
 神代の提案に頷いたのはだ。ユンだった。
「戦艦とかダンクーガとかでよね」
「ええ、考えてみれば」
 レフィーナも言う、
「ここはそれしかありません」
「はい、それでは」
「作戦変更です」
 レフィーナはすぐに全軍に告げた。
「主力はこのまま敵軍と戦います」
「はい」
「そうしてですね」
「一部の遠距離攻撃用の大火力を持つ戦艦及びマシンがです」
 その彼等でだというのだ。
「ネビーイームを攻撃します」
「その攻撃ポイントだが」
 サコンがだ。コンピューターで計算及び分析しながら話す。
「あそこだ」
「あそこか」
「あそこですね」
「そうだ、あそこだ」
 各機、各艦にデータを送りながらの言葉だ。
「あそこに集中攻撃を浴びせる」
「そうすればですね」
「敵の動きが止まる」
「あのネビーイームが」
「後は敵軍だけだ」
 こうも話すサコンだった。
「わかったな。それではだ」
「はい、それじゃあ」
「今から」
「まずは俺だな」 
 ロックオンが名乗りを挙げた。
「俺のガンダムならな。遠距離攻撃はお手のものだ」
「俺もだな」
 次はミシェルだった。
「狙撃なら任せてくれよ」
「ダンクーガもいけるからな!」
 忍も名乗りを挙げる。
「断空砲ならな!一撃だぜ!」
「俺も行きます!」
 シーブックもだった。
「ヴェスパーなら。遠距離攻撃も」
「イオン砲もいいよな」
「ああ、いけるぞ」
「こういう時のイオン砲じゃない」
 勝平に宇宙太と恵子が話す。
「わかったらな!」
「行くわよ!」
「ああ、わかった!」
 勝平も二人に応える。そして。
 戦艦はだ。この艦だった。
「ではエレ様」
「はい」
 エレがだ。エイブの言葉に応えていた。
「オーラノヴァ砲ならば」
「あの要塞も食い止められます」
「それではです」
「我々も」
「いいか、諸君」
 大河がその選抜された面々に告げる。
「一撃にかかっているのだ」
「ああ、わかってるさ」
「それはな」
 こう返すロックオンとミシェルだった。
「こうしたことはいつもだからな」
「任せてくれよ」
「それとね」
 ここで言ったのはミサトだった。
「もう一人必要ね」
「僕ですね」
「ええ、そうよシンジ君」
 そのシンジへ告げるミサトだった。
「ヤシマ作戦の時と同じよ」
「外さずに。一撃で」
「終わらせてね」
「わかりました。それなら」
「一撃で。確実に終わらせないと」
 どうなるか。ミサトはこのことも話した。
「こちらがやられるわ」
「ほんま難儀な話やな」
 トウジがたまりかねた様に述べた。
「狙撃かいな、それも全員が同じポイントに」
「そうよ。けれどこんなことはいつもだったわよね」
「ああ、そうだな」
 忍がミサトに答える。
「俺達の戦いってのはな。それが常だからな」
「だからよ。いつも通り頼むわね」
 あえてこう言うミサトだった。狙撃部隊をリラックスさせる為にだ。
「それで終わったらね」
「終わったら?」
「何ですか?」
「それもいつも通りよ」
 またこう言うのだった。
「パーティーよ。飲むわよ」
「本当にいつも通りね」
 ネメシスがそのミサトに言う。
「それだと」
「普段通りのことを気楽にやる、よ」
 またあえてこう述べるミサトだった。
「それで御願いね」
「じゃあいつも通りやらせてもらいます」
 実際にかなりリラックスしてきたシンジだった。
「少なくとも。自信はあります」
「自信過剰にならないようにね」
 アスカもだ。実にいつも通りである。
「あんた外したら一生言ってやるから」
「わかってるよ、それは」
「とりあえずですう」
 グレースである。
「リラックス、リラックスですよ皆さん」
「御前はリラックスし過ぎだ」
 アーウィンがそのグレースに突っ込みを入れる。
「もう少しだな」
「もう少し?」
「緊張できないのか?」
「グレースが緊張?」
「それって想像できないけれど」
 パットとミーナはこう言う。戦闘しながらだ。
「まあそれでもね」
「グレースはちょっと緊迫感が欲しいところだけれど」
「けれどそれだとな」
「グレースらしくない」
 ヘクトールとジェスはこう言う。
「だから今のままでいいだろ」
「グレースはグレースだ」
「まあそういうことでな」
「頼んだ」
 イルムとマオは狙撃隊に話した。
「あんた達にかかっているからな」
「この戦いはだ」
「わかってるって!決めてやるからな!」
 強い声で言う勝平だった。
「今から行くぜ!」
「はい、では皆さん」
「今から行くぞ」
 エレとエイブが告げてだった。
 特別に編成された狙撃隊は戦闘から離れる。そしてだった。
 然るべき場所からだ。一気にだった。
「あそこだな!」
「あのポイントを!」
「撃つ!」
「今だ!」
 一斉にだ。そのポイントを撃つのだった。
 全員外さなかった。そのポイントを貫いたのだ。
 それを受けてだ。ネビーイームは。
 動きを完全に止めた。その頃にはだ。
 バルマー軍の数はだ。半数まで減っていた。それを見てだ。
 ジュデッカ=ゴッツォは忌々しげに言うのだった。
「くっ、ネビーイームがか」
「尚書、いいだろうか」
 ここでエツィーラが彼の傍に現れた。
「折角のところだが」
「どうしたのだ?」
「宰相殿から撤退命令が出た」
 こう彼に告げた。
「ネビーイームが破壊されたならばだ」
「撤退せよというのか」
「そうだ、わかっただろうか」
「わかった」
 軍人としてだ。命令に頷く彼だった。
「それではな」
「うむ、撤退するとしよう」
「地球人達よ」
 彼はロンド=ベルの面々に対して告げた。
「ここは汝等の勝ちにしておこう」
「撤退するってのかよ」
「そうするってのかよ」
「余はまた汝等の前に来る」
 そのことを告げての言葉だった。
「では。それまでだ」
「帰らせてもらおう」
 エツィーラも告げる。
「これでな」
「あの女、一体」
 サンドマンがそのエツィーラを見て呟く。
「何を考えている」
「少なくともです」
 レイヴンがサンドマンに対して話す。
「よからぬことを考えているのはです」
「それは間違いないか」
「そう思います」
 こう話すのだった。
「この銀河にとってです」
「そうだな。若しかすると」
 どうかとだ。サンドマンはさらに話す。
「バルマー帝国の思惑とあの女の思惑はだ」
「違いますか」
「そうかも知れないな」
「何かあいつってあれだな」
 ここで話したのは豹馬だった。
「かなり露骨に企んでるよな」
「そうね。含むところありなのはね」
「バレバレやな」 
 ちずると十三も話す。
「それが何かはわからないけれど」
「碌なものやないで」
「そうですね。ただ戦いはこれで終わりです」
「ネビーイームも去ったですたい」
 小介と大作が話す。
「整備と補給の後で」
「また進撃たい」
「少なくともあれだけのダメージを与えたんだ。ネビーイームもな」
「暫くは使えないじゃろうな」
 一太郎と兵左衛門はそのネビーイームについて話す。
「次はあのジュデッカ=ゴッツォの軍と決戦だ」
「さて、どう戦い抜くかのう」
 こんな話をしてであった。
 ロンド=ベルのバルマー帝国本軍との最初の戦いは終わった。だがこれはだ。さらなる激しい戦いの第一幕でしかなかった。


第百九話   完


                                   2011・3・27

      

 

第百十話 バランの戦い

               第百十話 バランの戦い
 バルマー本星へ向かうロンド=ベル。まずは勝利を収めた。しかしであった。
 トウマがだ。ミナキに話していた。
「絶対に出て来るな」
「バラン=ドバンがなのね」
「そうだ、絶対に来る」
 こうミナキに話すのである。
「あいつは俺達の前に出て来る」
「そう。それならトウマ」
「またあいつと戦いたい」
 トウマは真剣な顔で述べた。
「絶対にな」
「わかったわ」 
 ミナキも真剣な顔でトウマの言葉に頷いた。
「トウマ、勝ってね」
「止めないんだな」
「わかったから」
 それでだというのだ。
「貴方のことが。それに」
「それに?」
「あの人のことも」
 バランのこともだ。わかったというのだ。
「だから。勝って」
「そうする。そして」
「あの人と語るのね」
「あいつは本物の武人だ。それならだ」
 トウマはバランを認めていた。明らかにだ。
「あいつと最後の最後まで話したい」
「いい考えだ」
 それを聞いたフォルカが言ってきた。
「トウマ、そうあるべきだ」
「あんたもそう言ってくれるんだな」
「修羅の世界は戦いの世界だった」
 まさにだ。それが全ての世界だったのである。
「その中で。俺達もだ」
「戦いの中でお互いを知ったんだったな」
「それを見てきたな」
 修羅界でのだ。その戦いをだというのだ。
「俺達のことも」
「ああ、見てきた」
 その通りだと答えるトウマだった。
「俺は修羅じゃない。だがそれでも」
「修羅でなくともわかる」
 また告げるフォルカだった。
「心と心だからだ」
「そういうことなんだな」
「修羅達も多くのことを知ったわ」
 メイシスの言葉である。
「多くの世界を巡り多くの戦いを経てね」
「修羅界以外の世界を知った」
 アルティスも話すのだった。
「最早修羅は戦いだけに生きる存在ではない」
「楽しみってやつもだな」
「それも知った」
 フェルナンドとアリオンもいる。
「けれどな。戦いからもな」
「得るものがある」
「だからね。トウマ」
 ミナキが再びトウマに告げる。切実な顔で。
「戦いに向かって。そして」
「ああ、語ってくるな」
「そうしてね」
 こんな話をするのだった。そうしてだ。
 偵察から帰って来たコウタとショウコが仲間達に話す。
「敵だ」
「前方にいるわ」
 そこにだ。彼等がいるというのである。
「数は前と同じ位ね」
「あのでかいヘルモーズもいる」
「ああ、やっぱりな」
「ジュデッカ=ゴッツォか」
「あいつかよ」
 皆それを聞いてそれぞれ言った。
「あいつが来るんならな」
「それならな」
「行くか」
「そうするか」
「どのみち戦うなら逃げる訳にはいかないし」
 こう話してであった。彼等はそのまま進む。そしてだ。
 遭遇予想ポイントになるとであった。
「よし、全軍出撃だ」
「総員戦闘配置」
 早速戦う陣形に入る。その彼等の前にだ。
 あの巨大なヘルモーズが出て来た。そしてだった。
「前回は不覚を取ったがだ」
「今度はどうだろうね」
 ジュデッカ=ゴッツォとレツィーラだった。彼等が言うのだった。
「今度はそうはいかん」
「こちらも援軍を呼んで来た」
「援軍!?そうか!」 
 トウマがその言葉にすぐに反応を見せた。
「あいつが来たんだな、やはり」
「むっ、わかるというのか」
「ああ、わかるさ」
 トウマはジュデッカ=ゴッツォに対して答えた。
「バランだな、バラン=ドバンだな」
「そうだ」
 まさにだ。その通りだと答えるジュデッカ=ゴッツォだった。
「読んでいたというのか」
「あいつなら出て来ると思っていた」
 ミナキに告げた言葉と殆ど一緒であった。
「必ずな!」
「そうか、それならばだ」
 ジュデッカ=ゴッツォは全軍を出撃させながら述べる。
「話は早いな」
「じゃあいいな」
 エツィーラも言う。
「バラン=ドバン、いいね」
「うむ!」
 こうしてだった。ペミドバンが戦場に姿を現したのであった。
 その姿を見てだ。と馬が言う。
「来たな、バラン!」
「黙れ!」
 しかしだ。ここでドバンはトウマに怒鳴るのだった。
「貴様にその名を呼ばれる筋合いはない!」
「何っ、どういうことなんだ!?」
「これは一体」
「トウマがわからない!?」
「まさか」
「わしはバラン=ドバン!」
 ドバンは名乗る。己から。
「陛下を御守りする近衛軍司令官よ!」
「それはわかっている!」
「わかっているならなぜわしの名を呼ぶ!」
「本当に俺を知らないのか!」
「知らん!」
 こう返すバランだった。
「貴様が帝国の敵だということはわかっておる!」
「くっ、まさか!」
「その様だな」
 ゼンガーが歯噛みするトウマに対して話した。
「あの男は今はだ」
「洗脳されているんですね」
「そうだ」
 まさにだ。その通りだというのである。
「今は御前の言葉も届かぬ」
「まさかあの女が」
「間違いないな」
 今度はレーツェルがトウマに答える。
「エツィーラ=トーラー、あの女がだ」
「くそっ、何て奴だ」
「しかしだ」
 ゼンガーは歯噛みするそのトウマに対して話した。
「その洗脳を解く方法はある」
「戦い、そして」
「勝つのだ。そしてその心をぶつけるのだ」
「それでバランはまた」
「行くのだ!」
 ここでゼンガーは確かな声で告げた。
「そして御前の心を見せるのだ!」
「わかりました、それなら!」
「だが覚悟するのだ」
 レーツェルはトウマに用心するように話した。
「今のバラン=ドバンはこれまでとは違う」
「確かに。この殺気は」
「その真の力を見せるだろう」
 バランのだ。それをだというのだ。
「わかっているならだ」
「前に突き進むのだ!」
「ああ、行くぜ!」
「行くぞ異星人共よ!」
 そのバランの言葉だ。
「これより先陛下には指一本も触れさせん!」
「なら来い!」
 トウマも受けて立つ。
「この大雷鳳でその鉄球を砕いてやる!」
「小童が!行くぞ!」
 こうしてだ。ここでも戦いがはじまるのだった。
 ジュデッカ=ゴッツォはだ。その中でだ。バランに対して声をかけた。
「バラン殿」
「何だ?」
「あの地球人の若者だが」
「知らんな」
 こうジュデッカ=ゴッツォに答えるバランだった。
「あの様な奴はな」
「そうか、知らないのか」
「うむ、知らぬ」
 また言う彼だった。
「誰か知らぬが馴れ馴れしい輩だ。しかし」
「しかし?」
「妙に気になる」
 その厳しい顔をいぶかしむものにさせての言葉である。
「わしが行くとしよう」
「貴殿が相手をするというのか」
「うむ、どうもだ」
 声もだ。いぶかしむものだった。
 そして目もだ。そうしたものでトウマを見て話すのだった。
「あの小童」
「地球人の様だな」
「妙に気になる」
 こうジュデッカ=ゴッツォに話す。
「だからだ。わしが相手をしよう」
「わかった。それでは私はだ」
「軍の指揮を頼めるか」
「承知した」
 こうしてだった。彼等は互いに役割を分担した。そのうえで戦いに向かう。
 そしてだった。バランはそのままトウマと激突したのであった。
「行くぞ小童!」
「ああ、俺のことを思い出せないのならな!」
 こう返すトウマだった。対峙し互いに突き進みながら言い合う。
「思い出せてやる!」
「貴様なぞ知らぬわ!」
「知らないってんならな!」
 拳を繰り出す。しかしそれは鉄球に止められた。
「強さは相変わらずってわけか!」
「この拳」
 バランは防いだその拳を見て言う。
「御主、できるな」
「ああ、強くなった」
 それでだというのである。
「あんたとの戦いでな」
「何度も言うがだ」
 今度はバランからの攻撃だ。トウマはそれを上に飛びかわした。
「わしは御主なぞ知らんわ!」
「だからこっちは知ってるんだよ!」
「何処で知った、わしを」
「戦場だ」 
 そこだというのだ。
「そこで知ったんだよ!」
「戦場でだというのか」
「ああ、そうだ!」
 こうバランに言う。また拳を繰り出す。
「あんたと何度も戦ったんだよ!」
「そういえばだ」
 拳をまた防いだ。しかしその拳を見てだった。
 バランは思った。その拳はだ。
「この拳の動きは」
「覚えてるっていうのか?」
「何処かで見たことがある」
 これがバランの今の言葉だった。
「見事な拳だな」
「そう言ってくれるんだな」
「小童、名前は何という」
「トウマだ!」
 その名を名乗ってみせた。
「トウマ=カノウだ!この名前も知らないっていうんだな!」
「むう、やはり知らぬ」
 こう言うだけのバランだった。
 だが、だ。ここで彼はこうも言った。
「しかしだ」
「しかしっていうんだな」
「その拳は何処かで見た」
 そのことは確かだと思えるのだった。
「何処であったか」
「じゃあ思い出せてやる!」
「ふん、それならばだ!」
 バランも受ける。トウマ自身を。
「わしに思いだせるのだ、トウマとやら!」
「ああ、やってやるぜ!」
 二人の一騎打ちだった。そしてその周りではだ。
 ロンド=ベルとバルマー軍が戦っていた。正面と正面でだ。
 ラーゼフォンが叫ぶ。その声を。
「ラアアアアアアアアアア!」
「!これは!」
「何だこの攻撃は!」
 それでだ。敵機が次々と粉砕される。
「これが地球人の力か」
「それだというのか」
「僕だって歌えるんだ!」
 こう言う綾人だった。
「バサラさんとは違うけれど。僕も!」
「そうよ、綾人君歌うのよ」
 遥がその綾人に言う。
「貴方も。貴方の歌があるから」
「だからですね」
「思えば。遠い場所に来たわよね」
 ふとだ。遥は微笑んでこんなことを話した。
「東京ジュピターから。他の世界の遥かな銀河まで」
「そうですね。確かに」
「そしてこうして戦って」
「何か凄い話ですよね」
「運命でしょうね」
 それをだ。運命だというのである。
「これもまたね」
「運命ですか」
「そう思うわ。それでね」
「それで?」
「最後はどうなるかわからないけれど」
 それでもだというのである。
「希望を忘れないでね」
「歌うんですね」
「ええ、そうしてね」
 こう綾人に話してだ。自分もだった。
 戦いを続ける。ロンド=ベルはバルマーの大軍を正面から受けそのうえで少しずつだが押していっていた。やはり彼等の力は強い。
 そしてだ。ジュデッカ=ゴッツォはだ。それを見て言うのであった。
「この者達の力は」
「前より強くなっているな」
「うむ、そうだ」
 こうエツィーラにも話す。
「さらにだ」
「戦えば戦う程ね」
「ここで食い止めなければならぬか。やはり」
「いや、それは違う」
「違うというのか」
「宰相殿の話ではだ」
 こう前置きして話すエツィーラだった。
「ここはまだ退いていい」
「いいというのか」
「本星まで退くことを許すとのことだ」
「馬鹿な、それではだ」
 ジュデッカ=ゴッツォはそれを聞いてすぐに言った。
「敵の侵入を許す。それでいいのか」
「その為のネビーイームではないのか?」 
 エツィーラは反論する彼にそれを出した。
「あの十二の護りはその為にあるのではないのか」
「あれか」
「あれが全てあればだ」
「そうだな。どんな軍でもだ」
「宇宙怪獣とて退けられる」
 彼等にとって今現在最大の脅威であるそれですらだというのだ。
「だからだ。この者達もだ」
「退けられるな」
「そういうことだ。だからこそだ」
「ここは退いてもいいか」
「わかったな、尚書よ」
「承知した」 
 ジュデッカ=ゴッツォは確かな言葉でエツィーラに返した。
「その時になればだ」
「撤退するといい」
「そうさせてもらう」
「本星防衛軍は我が帝国で最強の軍だ」
 そのジュデッカ=ゴッツォが率いる軍である。今のこの軍だ。
「他の四つの方面軍を合わせたよりもだったな」
「その通りだ。質、数共にだ」
 そのどちらでもだというのだ。
「上だ」
「その全軍とネビーイームで奴等を退けることは確実だな」
「できる。間違いなくな」
「ではだ。今はだ」
「危ういと見れば撤退していい」
「そういうことだ」
 こう二人で話をしていた。その中でだ。
 両軍は戦う。そしてトウマとバランもまた。
 トウマがだ。また拳を繰り出した。それは。
 バランとて防ぎきれなかった。あまりにも鋭い一撃だった。
 右肩に受けた。それでだった。
「くっ!」
「よし、決まったな!」
「この拳、まさか貴様は」
「トウマ、今よ!」
 ここでミナキがトウマに告げる。
「相手に隙ができたわ!」
「ああ、わかった!」 
 トウマもミナキのその言葉に応える。
「それなら!」
「決めて、ここで!」
「わかった、ここは!」
 叫び。そして全身から力を放って。
「飛べ!」
 まずはこう叫ぶ。
「雷よりも速く!強く!」
「ええ、その技で!」
「熱く!」
 光になった。そのうえでペミドバンにケリを繰り出し。
 それからだ。高く飛翔し急降下しその身体を掴み。
「超必殺!」
 何回も己を軸として振り回してから技の名前を叫んだ。
「ライジングメテオインフェルノ!」
 高く放り投げ己も再び飛び蹴りで貫く。それを決めたのである。
「これでどうだ!」
「ぬううっ、これは!」
「勝負あったな、バラン!」
「ぐおおおおおおおおおっ、まだだ!」
 だが、だ。ペミドバンはまだ立っていた。
 そしてだ。彼も己の力を振り絞った。そのうえでの言葉だった。
「わしは!わしは!」
「!!」
「何だ一体」
「どうしたってんだ!?」
「バラン=ドバンだ!」
 こう叫び己の全力を出して踏み止まる。そうしてだった。 
 再び立った。そしてそこでだった。
「むっ、ここは」
「ちっ、これは」
 エツィーラはそのバランを見て舌打ちする。
「シヴァーがバランに施した精神制御が解けたか」
「確かわしは」
 バランはいぶかしみながら呟く。
「本星に戻りシヴァーと」
「あんた、どうしたんだ?」
 トウマがそのバランに問う。
「急に静かになったけれどよ」
「むっ、トウマではないか」
 今気付いたといった言葉だった。
「何故わしはここにいるのだ?」
「あんた何も覚えてないのかよ」
「何故わしはここにいるのだ?どうやら御主と戦っていたな」
「それはそうだけれどよ」
「シヴァーめ、どうやら」
 戦場であることを察してだ。そこからだった。
 別のことも察した。そのうえで忌々しげに言うのだった。
「わしを洗脳しておったか、許さんぞ!」
「?バラン殿」
 エペソがいぶかしみながらそのバランに問うた。
「どうされたのだ、一体」
「ジュデッカ=ゴッツォではないか。御主もいるのか」
「いるも何も」
「何も?」
「今ここで本星への侵入を防ぐ為に共に戦っているのだが」
「何っ、本星にか」
「そうだ。ロンド=ベルが迫っているのだ」
 目の前のその軍に他ならない。
「知らぬというのか?」
「ううぬ、これはさらに許せん」
 バランは怒りに満ちた顔で言った。
 そしてだ。撤退しようとする。その彼にトウマが問うた。
「おい、待てよ」
「どうした、トウマよ」
「あんた今度は何処に行くんだよ」
 バランに対して問うのだった。
「本星に戻るのか?」
「そうだ」
 まさにその通りだと答えるバランだった。
「そしてだ」
「俺達のことか」
「左様、御主達は本星に向かっているのだな」
「ああ、そうだ」
 その通りだとだ。トウマは答えた。
「俺達の目的の為にだ」
「ならばだ」
「戦うっていうんだな」
「如何なる理由があろうとも」
 バランの言葉が強くなる。
「本星は陛下の治められる言わば聖地」
「だからだってんだな」
「何人たりとも侵入することはまかりならん!」
「どうしてもっていうんだな!」
「左様、トウマよ」
 彼の名を呼んでだった。
「このまま御主と御主の仲間達が進むならばだ」
「戦う」
「そう言うのね、あくまで」
「そうだ、わしが相手になろう」
 トウマだけでなくミナキにも告げる。
「わしは陛下を御守りする近衛軍の指揮官よ」
「バルマー人の誇りにかけて」
「あえてというのですか」
「わしはバラン=ドバンよ!」
 誇りをそのまま言ってみせるのだった。
「その名にかけて御主達を倒そう!」
「おい、待てよおっさん!」
「何だ、御主は」
「リュウセイ、リュウセイ=ダテだ!」
 その名前を言うのだった。
「ハザルの時には世話になったな!」
「そうか、あの時のか」
「あんたは自分の星さえ無事ならいいっていうのかよ!」
「それは違う」
「しかしそう言ってんじゃねえか!」
「わしはあくまでバルマーの臣」
 彼を彼たらしめているものだ。
「ならば陛下とその臣民を守るのが務めだ」
「そうだっていうんだな」
「まずがそれがある」
 こう言うのである。
「だからだ。わしはその為に戦うのだ」
「くっ、じゃあ結局は」
「仕方あるまい」 
 ライがそのリュウセイに話す。
「誰も同じだ。それはな」
「まず自分の星がってことはかよ」
「そうだ。俺達もだな」
「あ、ああ」
 そう言われるとだ。リュウセイも頷くしかなかった。
 考えてみればだ。彼もそうだからだ。
「それはな。やっぱり」
「誰もが同じだ、それはな」
「けれどよ、今はよ」
「それもその通りだ」
 今度はレーツェルがリュウセイに話す。
「その信念と志を返るにはだ」
「俺がやる!」
 またトウマが叫ぶ。
「バラン!あんたのその心をだ!」
「変えてみせるというか!」
「ああ、あんたならわかる筈だ!」
 こうそのバランに言うのである。
「今為すべきことがな!」
「面白い、ならば見せてみよ!」
 バランも受けて立つ。
「このわしにだ!」
「ああ、必ずな!」
 このやり取りが終わってだ。バランはだ。
 ジュデッカ=ゴッツォに対してだ。こう告げた。
「わしはこれでだ」
「撤退するのだな」
「済まぬ、急用故にだ」
 シヴァーのことは隠す。
「失礼する」
「わかった。それではな」
「武運を祈る」
「それではな」
 こうしたやり取りのうえでだ。バランは戦場を後にした。
 そしてだ。エペソはここで戦局を見た。見ればだ。
「損害が半数を超えたか」
「どうするつもりだ?」
「頃合いか。これ以上の戦いはだ」
「無駄に損害を出すだけだというのか」
「その通りだ」
 こうエツィーラに話す。
「だからだ。ここはだ」
「わかった。それではだな」
「全軍撤退する」
 機を見るに敏だった。彼は決断を下した。
 こうして撤退を開始した。その中でだ。
 エツィーラは姿を現しだ。ロンド=ベルの面々に告げるのだった。
「その力だ」
「その力だっていうのかよ」
「それが何だっていうのよ」
 ラウルとフィオナが彼女に返す。
「毎回出て来るけれどよ」
「それで訳のわからないことを言って」
「その力こそがアカシックレコードに見込まれたものの力よ!」
「!?こいつ」
「そうね」
 二人はエツィーラの今の言葉にあることに気付いた。
「言葉遣いが」
「普段と違うわ」
「まさかこれが」
「あの女の地だっていうの?」
「ハハハハハハハハ!」
 高笑いもするエツィーラだった。
「あんた達は戦えばいいんだよ!」
「戦うってね!」
「僕は最初からそのつもりだが」
「けれどそれが一体」
 ティス、ラウル、デスピニスが言い返す。
「急にテンションあがったけれど」
「何が言いたい」
「どういうことなのかしら」
「それが真実に近付く道だからね!」
 こう言ってであった。彼女はだ。
「本星で待ってるよ!」
「ここで倒してやる!」
「待ちなさいよ!」
 アラドとゼオラが追おうとする。しかしだった。 
 それより前にだ。間合いを一気に話してだ。エツィーラはまた言うのだった。
「その時に全ての鍵は開けられ」
「鍵だと」
 クォヴレーがその言葉に眉を動かした。
「鍵とは何だ」
「運命は私の前に姿を現すだろうさ!」
 最後にこう言って姿を消したのである。かくしてこの宙域での戦いは終わった。
 だが残されたロンド=ベルの面々はだ。狐に摘ままれた顔になってそれぞれ言うのだった。
「あいつ何なんだ」
「何か知ってるのか?」
「アカシックレコードについて」
「それは
「まさか」
 ここで話すのは華都美だった。
「この銀河を統べる無限の力?」
「絶対運命でしょうか」
 卵兎美も怪訝な顔で言う。
「それが」
「そしてサイコドライバーは」
「それを引き出す鍵なのでしょうか」
「じゃあ俺は」
 リュウセイが二人の話を聞いて呟く。
「その鍵だってことなのかよ」
「少なくともだ」
 クワトロが言った。
「この戦いにも勝った」
「じゃあまた整備と補給を受けて」
「本星に行く」
「そうするんですね」
「進路はこのままだ」
 ブライトが実際にこう話す。
「バルマー本星に向かう」
「距離は近くなっていますね」
 ユリカも今は真剣だ。
「いよいよです」
「銀河の中心にか」
「遂に辿り着くんだな」
「本当に」
 皆そのことに感慨も感じていた。かくして彼等はさらに進むのだった。
 その中でだ。シェリルがギジェの話を聞いていた。
「イデの力はだ」
「アカシックレコードと関係があるというのね」
「イデの力だけではない」 
 その他の力もだというのだ。
「ゲッター線やビムラー、Gストーン等もだ」
「そういったもの全てがなのね」
「この宇宙を統べる無限の力」
 それこそがだった。
「アカシックレコードが形を変えたものだ」
「イデもその一つ」
「そしてあの女」
「エツィーラ=トーラーね」
「あの女は我々をアポカリュプシスに導く者ではないだろうか」
 ギジェはこう仮説を述べた。
「さらにはアカシックレコードに見込まれた者と」
「言っていたわね」
「ではアカシックレコードこそはだ」
 何かというのだ。
「アポカリュプシスを発生させる力ではないだろうか」
「それならアポカリュプシスを回避するには」
「同時にその無限の力を解明しなくてはならないのではないだろうか」
「なら私がするべきことは」
「イデのさらなる解明を頼めるだろうか」
「そうね。ただ」
「ただ?」
 ギジェはシェリルのその言葉に問うた。
「何かあるのか」
「私もそれは続けているわ。けれど」
「進んでいないか」
「ええ、待っていて」
 こう言うのだった。
「時間がないこともわかっているけれど」
「ああ、それではだ」
「やっていくから」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 シェリルもイデに向かうのだった。これまで以上にだ。
 そうした中でだ。ロンド=ベルの面々は。
 やはり酒を飲んでいた。その中でだ。
 フレイがだ。ナタルにステラ、それにユリカといった面々を見てだ。こんなことを言うのだった。
「私って似てる人多過ぎじゃないの?」
「そうだな。それはな」
「その通りですね」
 カナリアとユリカがそれに応える。
「一体何人いるのか」
「わかりにくい位ですよね」
「一矢さんもそうだけれど」
 彼のことも言う。
「本当に何人いるのかしら」
「いることはいいことだろうがよ」
 反論するのはアルトだ。
「俺なんていないんだぞ、一人もな」
「そうだったの」
「そうだよ。キラはいるけれどな」
「俺のことだな」
 ブレラが出て来た。
「似ていないんじゃないかと言われているがな」
「いや、似てるだろ」
「性格全然違うけれど」
「どう見たってなあ」
「雰囲気同じだし」
「誰がどう見ても」
 キラとブレラはだ。そうだというのだ。
「だからそれ言ったらな」
「それこそ誰がどう見てもな」
「アスランと蝿と同じだろ?」
「ディアッカとどっかの国とか」
「シンと洟垂れ小僧とか」
 何故かそちらに話が向かう。
「一緒じゃねえか」
「そっくりにしか思えねえよ」
「そうか。そうなのか」
 そう言われてだ。頷きはするブレラだった。そうしてだ。
 彼はキラを見てだ。こう告げた。
「ではだ。宜しくな」
「はい、御願いします」
 キラは微笑んでブレラに返す。
「御館様の為に」
「尽くすとしよう」
「だからどうしてそうなるんだ?」
「意味不明だがわかるにしてもだ」
 アスランとライが突っ込みを入れる。
「俺も。あの世界はわかるが」
「バサラだな」
「俺もわかるぞ」
 アレンも名乗りをあげる。
「その世界のことはな」
「そういえばアレンさんって何か」
「どっかの世界で乙女になってませんでした?」
「違いました?」
「自覚はしている」
 否定しなかった。できなかったと言っていい。
「そちらもな」
「何かその世界は凄いことになってないか?」
 突込みを入れたのはシローだった。
「俺も言えた義理じゃないけれどな」
「俺もそう思うぞ」
 何故か言う宗介だった。
「どうもな。そちらはな」
「そうだな。俺もあの世界はあまり好きではない」
 イザークも出て来た。
「偽者ではないというのにだ」
「そうですね。それを言いますと」 
 リリーナは少し気恥ずかしそうである。
「きりがないですし」
「関係者は多いわ」
 ドロシーもリリーナに続く。
「そうね、ヒイロ」
「俺なのか」
「そう思わないかしら」
「残念だが思う」
 その通りだとだ。ヒイロも言うしかなかった。
「しかし。人間とは色々あるものだな」
「そうだな。先の戦国の話はだ」
「気になって仕方がない」
 トロワーとウーヒェイはそちらの世界に反応していた。
「俺は緑色だったのか」
「何故片目になっていたのかわからない」
「僕は僕で恋とか姫の世界が気になります」
 カトルも縁がある話だった。
「アニメ版だけ出ていたのですけれど」
「で、俺はクライマックスなんだな」
 デュオだけがそちらだった。
「そうなんだな」
「クライマックスなあ。あの世界な」
 ヂボデーが笑いながら話す。
「俺はおかんになってたな」
「ああ、あれね」
 サイシーがそれを聞いて応える。
「あれ面白かったよね」
「とにかく皆が皆色々あるわよね」
 レインはそのことをしみじみと感じていた。
「私はまあ。何ていうか」
「勝てるわね、新条君」
 マサキがぽつりと言った。
「懐かしいよな」
「それ言うのね」
「俺何かぼろくそだったしな、扱いが」
「ああ、それね」
 ザズが出て来た。
「何かさ、不幸を一身に集めてたよね」
「何であんなに不幸ばかり集めてたんだよ」
「日頃の行いだったのではないのか?」
 ギャブレーがそのマサキに言う。
「違うか、それは」
「おい、あんたが言うかよ」
「何だ?私が言ったら駄目なのか?」
「あんたが一番おかしなことやってただろうがよ」
「そんなことは知らないが」
「いや、知らない筈がないだろ」
 いささかムキになって言い返すマサキだった。
「あれだけのことしておいてよ」
「あれは凄かったわね」
 マリューもだ。そのことは知っていたのだった。
「何ていうかねえ。絵に描いた様な変態だったし」
「全くだな」
 今度参戦したのはだ。ライだった。
「あれは壮絶なものだった」
「しかし。何かな」 
 ここでふと言ったのはだ。今度は宙だった。
「俺達の記憶がごちゃ混ぜになっているのは何かあるのか?」
「あれ、それに何かあるの?」
「何かそうした話皆言い過ぎじゃないのか?」
 こう美和にも話す宙だった。
「それが妙に気になるんだよな」
「少なくとも他の世界を行き来することが多いね」
 今言ったのはアイビスだ。
「こうも色々な世界を互いに行き来するのは。かなり」
「そうだ。それ自体がおかしい」
 それをだ。宙は指摘する。
「何かあるのか」
「考え過ぎではないのか?」
 スレイはこう宙に返した。
「幾ら何でもな」
「だといいんだがな」
「まあとにかくですね」
 ツグミは話を戻してきた。
「今から。バルマー本星ですね」
「ああ、そうだな」
 宙もこのことにはそのまま頷く。
「戦力も桁外れに多いだろうな」
「何か俺達の世界の戦いみたいな感じか?」
 黄金はこう問うた。
「ああいう感じになるか?」
「その可能性は否定できない」
 ヴィレッタが真剣な顔で話す。
「バルマーだけではないからな」
「バッフクランか」
「連中も来るか」
「それと宇宙怪獣な」
「奴等もな」
 それぞれだ。ロンド=ベルの面々は考えはじめた。
「それならな」
「相当ややこしい戦いになるよな」
「バルマーだけじゃなくて四つ巴」
「そんな戦いになるんだな」
「その可能性は否定できないわね」
 それをだ。話したのは小鳥だった。
「何かもう鬼が出ても蛇が出てもって感じになってきたわね」
「正念場ですね」
 テッサはその状況をこう評した。
「ですが。ここはです」
「何とかバルマーの霊帝と話し合って」
「事態を解決しないとな」
「アポカリュプシスをね」
 最後はこうした話になった。こうしてだった。 
 彼等はバルマー本星に向かう。アポカリュプシスの回避を目指して。


第百十話   完


                        2011・3・30
 

 

第百十一話 神に守られし星

               第百十一話 神に守られし星
 バルマー軍の迎撃はなかった。それでだ。
 ロンド=ベルは順調に進めた。そうしてだ。
 イルイがだ。一同に話した。
「いよいよです」
「バルマー本星かあ」
「いよいよなんだな」
「そこにか」
「辿り着くんだな」
「思えば色々あったな」
 皆これまでのバルマーとのことを思い出して話す。
「あの連中ともな」
「バルマー戦役もあったし」
「それからも何だかんだで戦ってきたし」
「本当に長い戦いだったよな」
「奴等にとっても俺達にとっても」
「それでもな」
 こうだ。さらに話していくのだった。
「それが終わるんだな」
「話し合いで解決できてばな」
「それでいいよな」
「だよなあ」
 誰もがそれを期待していた。
「それで終われば」
「それに越したことないよな」
「けれど問題は」
 ここでだ。イルイが暗い顔で言う。
「霊帝ルアフが。私たちの話を聞いてくれるかどうか」
「それなのね」
 それを聞いてだ。クスハが言った。
「問題なのは」
「はい、一体どういった人なのか」
 イルイはそのことを話すのだった。
「一切が不明です」
「私もだ」
 マーグもここで話す。
「霊帝の姿を見たことは殆どない」
「私は一度もありません」
 ロゼに至ってはそうだった。
「私の様な者が会える存在ではありませんでした」
「えっ、ロゼさんでもか!?」
 それを聞いて驚きの声をあげたのは甲児だった。
「霊帝に会えなかったってのかよ」
「はい、そうです」
「驚いたな、それは」
 神宮寺もそれには驚きを隠せなかった。
「方面軍の副司令官でもか」
「私達は元々帝国では異端だったからだ」
 それでだとだ。マーグは話すのだった。
「十二支族の一家の長でもあってもだ。それならばだ」
「中々会えないってのか」
「じゃあ霊帝ってのは」
「相当偉い存在なんだな」
「帝国ではまさに神だ」
 そうだとだ。マーグは仲間達に話す。
「唯一にして絶対の存在だ」
「じゃあ生き神様なのか」
 こう考えたのは闘志也だ。
「そういう存在なんだな」
「否定はしない」
 これがマーグの返答だった。
「地球では。キリスト教という宗教があるな」
「あ、ああ」
「それか?」
「その宗教のことを言うのかよ」
「その前身と言ってもいいユダヤ教だが」
 マーグの話はそちらに移った。ユダヤ教にだ。
「似ているかも知れないな」
「そうね。それはね」
 ミサトもだった。マーグのその言葉に頷く。
「言われてみればね」
「似ているな」
「そうね」
 加持とリツコもそれを認めた。
「妙な位にだよな」
「ええ、ユダヤ教とバルマー帝国はね」
「もう一つの死海文書の話もあるしな」
「まるで鏡で合わせた様に」
「バルマー帝国の神は一柱だけだ」
 マーグはさらに話した。
「創世神ズフィルード、即ちだ」
「ガンエデン」
「それだけ」
「本当に唯一神なんだな」
「それがバルマーか」
 こう考えていくのだった。そしてだ。
 彼等はあらためてだ。霊帝のことを考えていく。彼こそは。
「つまりあれか?」
「霊帝はバルマーじゃ本当に生神様なんだな」
「そうなのね」
「そう考えてもらっていい」 
 その通りだとだ。マーグも述べる。
「それが霊帝ルアフだ」
「ルアフ、一体どういった者か」
「相当な力の持ち主らしいけれど」
「それこそ。星を護れるまでに」
「そこまでの人物だっていうのか」
「霊帝については謎に包まれている」
 マーグはこのことも話した。
「どういった人物かもだ」
「本当に謎が多いんだな」
「そうなのね」
「それが霊帝なんだ」
「十二支族の長でも。異端なら情報が入らない」
「そうした相手かあ」
「おそらくはです」
 ロゼも話す。
「バラン殿も詳しくは知らないでしょう」
「あのおっさんでもかよ」
「詳しいことは知らないってのか」
「そうなんだ」
「はい、おそらくは」 
 その通りだとだ。ロゼはさらに話した。
「御存知ありません」
「一体何者なんだ?じゃあ」
「霊帝っていうのは」
「全てが謎に包まれた大帝国の主」
「何と謎めいた存在なのか」
 どうしてもわからないままだ。彼等は本星に向かう。そしてだった。
 その本星ではだ。戦闘が行われていた。
 バッフクラン軍がだ。攻め込んでいた。そうしていたのだ。
「行け!このまま進め!」
「数で押せ!」
「数でなら負けてはいない!」
「このまま押し切れ!」
「くっ、ここまでとはな」
「予想以上の数だ」
 ここにも彼等がいた。エペソとラオデキアがそれぞれ言う。
 見れば七隻のヘルモーズがある。バルマー軍は彼等を中心として戦っているのだ。
「この数で来るか」
「しかもだ」
「駄目だ、止む気配はない」
 サルデスが言う。
「隕石雨はな」
「おのれ、小癪な」
 ヒラデルヒアも忌々しげに言う。
「この状況では」
「怯むな!」
 ここでだ。彼が戦場に到着した。
 ジュデッカ=ゴッツォがだ。七人に告げる。巨大ヘルモーズの艦橋からだ。
「いいな、退くな!」
「おお、尚書戻られましたか」
「ようこそ」
「よし、持ちこたえているな」
 ジュデカ=ゴッツォはまずはこのことをよしとした。
「よくぞ守ってくれた」
「ですが」
「このままではです」
「我等も」
「わかっている。バックフランめ」
 ジュデッカ=ゴッツォはそのバッフクラン軍を忌々しげに見て言う。
「自分達の銀河の戦力の殆どを投入してきたか」
「無駄なあがきだ」
 そのバッフクラン軍の指揮官が言う。
「既にこの銀河の半分はだ」
「貴様等の手中にあるというのか」
「そうだ、我が軍が展開している」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「後はこの本星さえ陥落させればだ」
「我等が終わりだというのだな」
「そうだ、終わらせてやろう」
 こうジュデッカ=ゴッツォに告げる。
「今ここでだ」
「各軍突撃だ!」
 別の指揮官が言う。
「防衛線を突破しだ」
「そしてですね」
「そのうえで」
「攻めるのですね」
「そうだ、敵本星へ降下する!」
 まさにだ。そうするというのだ。
「いいな、そうするぞ!」
「了解!」
「それでは!」
「ならん、させるな!」
 ジュデッカ=ゴッツォの声に緊張が走る。
「わかっているな、我等はだ」
「はい、有史以来です」
「本星に敵の侵入を許したことはありません」
 艦隊司令達が応える。
「ですからここは」
「何としても」
「そうだ、防ぐのだ」
 これはジュデッカ=ゴッツォの言いたいことだった。
「何としても陛下を御守りするのだ!」
「了解です」
「それでは」
「今は守る時だ」
 ジュデッカ=ゴッツォも覚悟を決めていた。
「守りきる時なのだ」
「では我々も」
「いざという時は」
 ズフィルードを出す覚悟をしていた。その中でだ。
 迫るバッフクラン軍をだ。雷が襲った。
 それも一個や二個ではない。十を超える光がだ。
 彼等を次々と撃ちだ。その数を減らしていく。
「な、何だ!?」
「この攻撃は一体」
「要塞の砲撃か?」
「それだというのか!?」
「あれこそは」
 エペソがそれを見て言う。
「ネビーイームの裁きの雷」
「では陛下が」
「霊帝ルアフ様が目覚められたというのか」
「遂にか」
「今こそそうされるというのか」
 バルマー軍の者達にだ。生気が戻っていく。
 そしてだ。こう口々に言うのであった。
「よし、勝てる!」
「我等の神が降臨された!」
「バルマーの救世の神が」
「戻られたのだ!」
 こう言って喜ぶ。そうしていた。
 その中でだ。彼等はだった。
 陣を再編成した。その彼等にだ。
 霊帝がだ。こう声をかけるのだった。
「バルマーを護る兵達よ」
「おお、ルアフ様」
「我等の前に姿を現されるとは」
「これは二年振りか」
「何ということだ」
 艦隊司令達が恍惚として言う。
「これで我等はだ」
「救われるのだ」
「この危機から」
「審判の日は近い」
 こう言うルアフだった。
「その時こそだ」
「はい、その時にこそ」
「我等はなのですね」
「選ばれると」
「バルマーの民はこの銀河に生きる唯一の民となろう」
「ルアフ様万歳!」
「バルマーに栄光あれ!」
 こうしてだ。ネビーイームの援護を受けてだ。
 隕石は全て叩き落しバッフクラン軍を退けた。バッフクラン軍はだ。
「くっ、これではだ!」
「止むを得ん、撤退するしかない」
「下がるぞ」
「ここから撤退だ」
 こうしてだ。彼等は大損害を受け撤退したのだった。そしてだ。
 ジュデッカ=ゴッツォ達は勝利の報告にルアフの前に来た。そこは玄室を思わせる巨大でかつ神々しさに満ちた部屋であった。
 その部屋の玉座に座りだ。ルアフは彼等に告げた。
「面を上げよ」
「はっ、それでは」
「御言葉に甘えまして」
 八人はそれを受けて顔をあげる。そうしてだった。 
 あらためてだ。ルアフの言葉を受けるのだった。
「さて、遂に来たね」
「バッフクラン軍が」
「彼等が」
「いや、彼等じゃないよ」
 ルアフはだ。それは否定したのである。
別の相手だよ」
「宇宙怪獣でもないですな」
 ジュデッカ=ゴッツォが言った。
「となると」
「そう、ロンド=ベルだよ」
 そのだ。彼等だというのだ。
「遂に来るんだね」
「あの者達がですか」
「そうだと」
「そう。そして」
 ルアフはここでだった。
 彼等にだ。別のことを尋ねた。
「宰相が何処だい?」
「シヴァー様ですか」
「あの方ですか」
「うん、何処にいるのかな」
 尋ねたのは彼のことだった。
「瞑想から目覚めてみれば彼の姿が見えなくてね」
「そういえば一体」
「どちらにおられるのか」
 八人の返答はあやふやなものになっていた。
 いぶかしみだ。互いに顔を見合わせながら話すのだった。
「おられぬな」
「確かに。何故だ」
「宰相殿がこの危機におられぬとは」
「一体どういうことなのだ」
「やはりね」
 ルアフはそれを聞いてだ。納得した様に呟いた。そのうえでこう言うのであった。
「姿を消しているんだね」
「私にネビーイームを一個授けて下さいました」
 ジュデッカ=ゴッツォはルアフにこのことを話した。
「ですが今は」
「では宰相殿は?」
「まさか」
「本星防衛の任務を放棄されたというのか」
「馬鹿な、あの方がか」
「あの方の忠誠は絶対だったのではないのか」
 シヴァーはだ。その忠誠でも知られていたのだ。
 だからこそだ。彼等も驚きを隠せずだ。口々に言うのだ。
「バルマーへの忠誠篤きことバラン様に匹敵する」
「そして臣民を想うこともだ」
「あの方がというのか」
「信じられぬ」
「それについてだけれどね」
 ルアフがその彼等に話す。
「彼の目指す先は多分」
「多分?」
「多分といいますと」
「それ以上だろうけれどね」
 思わせぶりな笑みと共の言葉だった。
「おそらくね」
「と申しますと」
「それは一体」
「君達が気にすることではないよ」
 こう言ってだ。八人の詮索を止めた。そのうえでだった。
 彼等にだ。あらためてこう話した。
「それよりも今日まで本星を守ってくれたことを」
「それをと仰いますか」
「このことを誉めてつかわそう」
「勿体なきお言葉」
「有り難うございます」
 この言葉にだ。感激を覚えない八人ではなかった。
 それでだ。礼の後でこう述べたのであった。
「既に民の多くは隕石雨を逃れる為にです」
「辺境の星に退避しております」
「シヴァーの手によってだね」
「はい、左様です」
「その通りです」
 すぐに答える彼等だった。
「それによってです」
「この星には戦える者だけが残っています」
「しかしこの本星はです」
「我等がです」
 ここでだ。彼等の言葉が強くなる。
「この本星防衛軍で、です」
「必ずや守り通してみせます」
「頼もしいね。何しろ」 
 八人の言葉と心を受けながら。ルアフはまた言ってみせた。
「僕にとって最大の敵がやって来るからね」
「ロンド=ベルが」
「あの銀河辺境の蛮族がですか」
「この本星に」
「不遜なことに」
「すぐに迎撃の準備を」
 ルアフは彼等にすぐに告げた。
「いいね、彼等を駆逐した後でね」
「はい、その後で」
「そのうえで、なのですか」
「我がゼ=バルマリィ帝国はこの銀河を一つにする」
 そうしてみせるというのだ。
「ゾヴォークやキャンベルを取り込んででね」
「おおい、遂にですか」
「創世神hがそのお力で我等を」
「御救いになられるのですね」
「その通りだよ」
(待っているよ、ナシムの子等)
 ルアフは心の中でも呟いた。
(そして決めよう。この銀河の終焉を乗り越えるのは)
 誰かというのだ。
(ナシムの子なのか、ゲベルの子なのかを)
 こうしてだった。彼等も決戦に赴くのだった。
 ロンド=ベルは遂にだ。本星のすぐ手前まで来た。
「来たなあ」
「ああ、バルマー本星」
「連中の本星はあそこか」
「あの星なのか」
「何か同じだな」
 今言ったのはサンシローだ。
「地球と大して変わらないな」
「大気等の状況は同じだ」
 ヴィレッタがサンシローにこう話す。
「そうしたものはな」
「そうなのか」
「そうだ。無論海もあれば気候もある」
 そうしたものも存在しているというのだ。
「地球とだ。地形以外は同じだ」
「それがバルマー本星か」
「あの星なのね」
「そうなのか」
「バルマー戦役からの戦いの元凶のか」
「本拠地なんだな」
 そんな話をしてだ。本星に近付く。その彼等の前にだ。
 バルマーの大軍が姿を現した。そのうえでだ。
 ジュデッカ=ゴッツォがだ。彼等に言うのであった。
「もうここまで来たというのか」
「ああ、そうだよ」
「ここまでな」
「来たぜ」
 その通りだとだ。彼等も返す。
「ここに来た理由はわかってるな」
「話し合いだな」
「そうだ、我々との会見に応じて頂けるか」
 大文字がロンド=ベルを代表して告げた。
「これからだが」
「会見か」
 ジュデッカ=ゴッツォが彼に応じる。
「何度も話しているそのことだな」
「そうだ、その返答は」
「その必要はない」
 返事は同じだった。ここでもだ。
「一切ない、その必要はだ」
「それは何故だ」
「我が帝国は唯一にして絶対の銀河の覇者だ」
 それが理由だというのだ。
「そのわれらが他の星の人間の言葉を聞くなぞあってはならないのだ」
「我等が聞くのは霊帝ルアフ様のお言葉のみ」
「それ以外にはないのだ」
 エペソやラオデキア達もここで言う。
「その我等がだ」
「どうして話を聞こうか」
「しかしだ」
 大文字はまた彼等に言う。
「貴方達も気付いていることだ」
「今の銀河のことか」
「そうだ、何かが起ころうとしていることを」
 彼はこう冷静に話していく。
「降り注ぐ隕石雨に異常発生する宇宙怪獣」
「そういったものを見てだな」
「それ等はある意志によるものであり」
 大文字はさらに話す。
「全ての生命体は力を合わせてそれに立ち向かっていく必要がある」
「それはだ」
 ジュデッカ=ゴッツォが大文字に反論する。
「我等が神ズフィルードによって為される」
「創世神ズフィルード」
 アムロがその名を呟く。
「バルマーのガンエデンか」
「だからだ。汝等と話し合いは不要だ」
 こう結論がだ。ジュデッカ=ゴッツォから出た。
「そしてだ。汝等はだ」
「既に我がバルマーの軍を多く崩壊に追いやった」
「多くの領土を失わせた」
「その汝等はだ」
「神罰に値する」
 エペソ達が言う。そうしてだ。
 ジュデッカ=ゴッツォがだ。ここでまた言った。
「だからこそだ。覚悟するのだ」
「ここで汝等を滅ぼす」
「チリ一つ残さずにな」
 こうそれぞれ言ってだ。軍を出してきたのだった。
 それを見てだ。ロンド=ベルもだった。
「仕方ないな」
「こうなったらな」
「実力行使しかないか」
「戦わないと生き残れない」
「それなら!」
 取る手段は一つしかなかった。そしてだ。
 その手段がだ。今取られたのだった。
「全軍出撃だ!」
「攻撃開始だ!」
「そして意地でもだ!」
「霊帝と会見するんだ!」
 実力行使だった。それを今決意したのだった。
 リュウセイもだ。こう皆に言う。
「行こうぜ皆!」
「ああ、わかってるって」
「ここはな」
「それしかない」
 サブロウタにラッセ、それにクルツが応える。
「行くとするか」
「ああ、長いバルマー戦役からの戦いもな!」
 リュウセイはロックオンにも告げた。
「ここで決着だ!」
「そうだな。そして」
 レビも言う。
「私自身の因縁も」
 こうしてだった。両軍は戦闘に入った。
 バルマー軍はその数を活かしてだ。
 ロンド=ベルを半月状の陣で囲みだした。そのうえで彼等を包囲殲滅せんとしていた。
「よいか、ヘルモーズを前に出すのだ」
「はい、そしてですね」
「その主砲で」
「撃つのだ」
 ジュデッカ=ゴッツォ達が艦隊司令達に命じる。
「いいな、そしてそれと共にだ」
「はい、奴等を包囲し」
「そのうえで」
「殲滅する」
 こう言うのであった。
「よいな」
「了解です」
「それでは」
 こうしてだった。彼等はロンド=ベルを包囲しようとする。そのうえでだ。
 十二の要塞も来た。それこそは。
「ネビーイームか」
「それも持って来たのね」
「しかも今度は一つじゃない」
 十二だ。全てあった。
「あんなので攻撃を受けたら」
「それで敵のこの数」
「洒落になってないな」
「どうするべきか」
「動くことだ」
 シナプスが言った。
「ここはだ。動きだ」
「敵を囲ませない」
「そして狙わせない」
「そうだ。全軍これより正面に向かう」
 まずは正面というのだ。
「そして中央突破を計りだ」
「敵の本星にですか」
「降下しますか?」
「いや、それをすればかえってまずい」
 それはしないというのだ。
「降下の時を狙われる。降下は戦いに勝ってからだ」
「それからですか」
「それから降下ですか」
「そうする。少なくとも敵を倒してからだ」
 降下をするというのである。
「わかったな。それではだ」
「中央突破をしてそれから」
「反転してまた向かう」
「そうしていくんですか」
「その通りだ。ではだ」
 こうしてだった。作戦が決定した。
 ロンド=ベルはそのまま全軍で正面に向かう。ヘルモーズの主砲が彼等を襲う。しかしだった。
 それはかわされる。それを見てだ。ラオデキアが言う。
「機動力を活かすか」
「そうだな、そして寡兵も」
「かえって活かしてか」
「そのうえで戦うか」
 他の艦隊司令達も口々に言う。
「どうやらここまで来たのはだ」
「運ではないようだな」
「陛下の仰る通りだ」
「この者達はだ」
 どうかというのである。
「我が帝国にとって最大の脅威」
「伊達に四つの方面軍を破ったわけではないか」
「それならばだ」
 彼等も覚悟を決めた。しかしだ。
 その彼等にだ。ルアフが言うのであった。
「いいかな」
「はっ、陛下」
「何でしょうか」
「今はズフィルードを出す必要はないよ」
 それはいいというのである。
「敗れたらね。ズフィルードシステムと一緒にね」
「共に」
「どうせよと」
「本星に戻ってくるんだ」
 そうしろというのである。
「いいね、そうするんだ」
「それで宜しいのですね」
 ジュデッカ=ゴッツォがルアフに問い返す。
「今は」
「うん、いいよ」
 ルアフの言葉は変わらない。
「それでいいからね」
「わかりました。それでは」
 こうしてだ。彼等の方針が決まったのだ。その中でだ。 
 ロンド=ベルの戦いが続く。彼等は機動力を活かしてバルマーの大軍を相手にしていた。
「よし、これで!」
「動き回ってれば当たらないってね!」
 これが彼等の狙いだった。そうしてだ。
 彼等は敵の数をだ。次第に減らしていった。それでだ。
 気付けば敵の戦力はだ。
「半分位だな」
「ああ、そうだな」
「それ位には減ったな」
「大体な」
 敵の数をだ。そこまで減らしたのだ。しかしだ。
 戦いはまだ続く。彼等の機動戦は続く。
 その中でだ。万丈は。
 ダイターンハンマーを振り回した。周りの敵を叩き潰していた。
「敵の数が多い時はやっぱりこれだね」
「万丈、いいか」
 マリンがその彼に声をかけた。
「敵の動きだが」
「そうだね。少しね」
「静かだな」
 このことにだ。彼は気付いたのだ。
「妙に。これは一体」
「普段のバルマーなら」
 何度も戦っているだけにだ。もうその手の内はわかっているのだ。
「それこそもっと攻めてくるのに」
「それがない」
「さて、何を考えているのかな」
 万丈は探る顔で言った。
「彼等は」
「へっ、何が来てもな!」
 忍が言う。
「一気に叩き潰してやるだけだぜ!」
「そう簡単に考えていいのか」
「かえってその方がいいね」
 いぶかしむマリンに万丈が話す。
「今はね」
「そうなのか」
「そうだよ。今は難しく考えない」
 また言うのだった。
「どうせまた考えないといけない時が来るんだ」
「その時がか」
「今敵のネビーイームは離れた場所にあるけれど」
 その通りだった。敵の人工惑星はどれも離れた場所にある。
 しかしだ。そのそれぞれが動いていた。次第にだ。
 彼等に近付いてきていた。それを見て言う万丈だった。
「ほら、来ているからね」
「まさか。要塞の砲撃で」
「僕達を殲滅するつもりだろうね」
「まずいですね、それは」
 ファーラがそれを見て言う。
「このままですと。敵の砲撃が」
「その前にケリをつけるか」
 黄金は短期決戦を主張した。
「ここは」
「そうしよう。だから考えるよりもね」
 万丈はまた言った。
「今は動くべきなんだ」
「そういうことか」
「うん、そうだよ」
 マリンに話してだ。そうしてであった。
 彼はハンマーを振るい続ける。それで左右の敵を粉砕していく。その彼等の攻撃は遂に。
 ヘルモーズにも及んだ。まずは七隻の戦艦がであった。
「くっ、それではだ」
「総員退艦せよ」
「そしてだ」
 彼等は口々に言う。
「ズフィルードシステムを持ってだ」
「本星に撤退する」
「そうするぞ」
 こう言って撤退する彼等だった。そしてだ。
 ジュデッカ=ゴッツォもだった。巨大ヘルモーズが撃沈されてだ。
 彼もまた撤退する。それと共にだ。
 バルマー軍もその数を大きく減らしたうえで撤退する。ロンド=ベルはまずは勝利を収めた。
「さて、敵は退けたけれど」
「これで本星に降下する?」
「いよいよ」
「それができればいいんだけれどね」
 ここでまた言う万丈だった。
「果たしてね」
「っていうとやっぱり」
「ネビーイームかあ」
「あれを何とかしないと」
「降下どころじゃないか」
「その通りだよ」 
 そしてだ。さらにであった。
 あの声が出て来た。それと共にだ。
 彼等の前に出て来たのはだ。あの女であった。
「エツィーラ=トーラー!」
「出て来たってのか!」
「ここで!」
「そうさ。あんた達を試させてもらいにね」
 それで出て来たというのである。
「私自らね」
「!?また!」
「また出て来た!」
 彼女の前にだ。バルマーの軍勢が出て来た。
 先程の本星方面軍より多くはない。しかしだ。
 結構な数の軍が出て来た。それを引き連れる形でまた言うエツィーラであった。
「私とこの軍だけじゃないよ」
「ネビーイームもかよ」
「敵さんの第二陣」
「それが出て来たってんだな」
「そういうことになるね」
 エツィーラは言う。その間にだ。
 十二のネビーイームが接近してきた。そしてだ。
 ここでだ。レビが不意に叫びだった。
「うっ!!」
「どうしたってんだ、レビ!」
「感じた」
 こうリュウセイに言うのであった。
「強大な念と共に」
「念と共に!?」
「アヤの念を感じた」
 それをだというのだ。
「ネビーイームの中に」
「ってことは」
「あのエイスって奴が言ってた様にか」
「大尉は生きている」
「そうだってのか」
「おそらくはだ」
 ヴィレッタもここで話す。
「ネビーイームの雷撃だが」
「そういえばそうね」
「そうだな」
 カナンとヒギンズがここで気付いた。
「バラルの園のものとね」
「同じだな」
「そうだ。その制御システムはだ」
 それを話すヴィレッタだった。
「同じものだろう」
「念動力を用いて」
「その照準や出力の調整を行っている」
 ナンガとラッセも言う。
「それがか」
「あのネビーイームの正体か」
「おそらくアヤは」
 レビがまた言う。
「そのコアに」
「わかるか、レビ」
 リュウセイはすぐにレビに問うた。
「その念を何処から感じたか」
「わからない。ただ」
「十二のネビーイームのどれかになんだな」
「違う」
 それはその通りだが、というのだ。
「もっとはっきりわかる」
「どのネビーイームにいるかがか」
「バンプレイオスのティーリンクセンサーと私の念を同調させれば」
 それによってだというのだ。
「わかる。それは」
「それは!?」
「あれだ!」
 ネビーイームの一つを指し示したのだ。一番奥のものだった。
「あのネビーイームだ!」
「あれか!」
「あれなのね!」
「あのネビーイームにアヤがいる」
 こう仲間達に話す。
「あの中にだ」
「それならな!」
 リュウセイが叫ぶ。
「行くぞ!バンプレイオスで救出する!」
「了解だ!」
「行こう!」
 ライとレビも応える。
「大尉を、今度こそ」
「死なせはしない!」
「気付いた様だね」
 エツィーラも彼等のやり取りを見て言う。
「どうやら」
「全軍でだ」
 大河が指示を出す。
「アヤ=コバヤシ大尉の救出を援護する!」
「了解!」
「それならだ!」
「やってやる!」
 全軍戦いの後だが士気は維持されている。そのうえでの言葉だった。
「覚悟しやがれ!」
「その防衛ライン突破してやるぜ!」
「できればね」
 エツィーラも受けて立つ。そうした言葉だった。
「このエツィーラ=トーラーを甘く見るんじゃないよ」
「言うものだな」
 マーグが彼女に返す。
「かつては徳の高い神官だった貴様も。今ではまさに魔女だ」
「確かに。以前とは全く違いますね」
 ロゼもそのことについて言う。
「まるで別人です」
「何があった」
「知ったのさ」
 そうだとだ。マーグ達に返すエツィーラだった。
「何もかもをね」
「知ったというと」
「まさか」
「察しがいいね。そうだよ」
 二人の言葉を受けてだ。また言うエツィーラだった。
「アポカリュプシスも。何もかもをね」
「では聞かせてもらおう」
 マーグはそのエツィーラを見据えてまた言った。
「アポカリュプシスのことをな」
「是非共」
「おっと、言ううもりはないよ」
 しかしそれは断るエツィーラだった。
「勿体ぶる訳ではないな」
「それとは違うというのね」
「その通りだよ。さて、捕らえている女だけれどね」
 エツィーラは話を変えてきた。アヤについてだった。
「助け出したければ。わかってるね」
「ああ、当然だ!」
 リュウセイが彼女に返す。
「御前の軍を倒して!そして!」
「ネビーイームを全て破壊する!」
 レビも言う。
「そうしてだ!大尉を!」
「アヤを救い出す!」
「その通りだ」
 ライもだ。当然そのつもりだった。
 そしてだ。三人はだ。バンプレイオスを駆りだ。
 今突進をはじめた。彼等を先頭にしてだ。 
 ロンド=ベルも突進する。そのうえでアヤを助け出す戦いをはじめるのだった。


第百十一話   完


                                  2011・4・3
 

 

第百十二話 取り戻した仲間

              第百十二話 取り戻した仲間
 ルアフがだ。己の玉座からバランに告げていた。
 バランは彼の前で頭を垂れ片膝をついている。その彼へ言うのであった。
「ジュデッカ=ゴッツォ達は敗れたよ」
「その様で」
「彼等には本星に戻るように言っておいたよ」
 何でもないといった感じで言うルアフだった。
「いざという時の為にね」
「陛下、それはです」
「ならないというのかな」
「私がいます」
 だからだとだ。バランは顔を上げて言った。
「このバラン=ドバンがです」
「なら君も出陣したいんだね」
「なりませんか」
 こうルアフに対して問う。
「私の。近衛軍の出陣は」
「君の忠誠は知っている」
 ルアフはまずは答えずにこう述べた。
「その絶対の忠誠をね」
「有り難きお言葉」
「そうだね。おそらくエツィーラは敗れる」
 それはもうだ。察しているというのである。
「彼女は軍の専門家ではないからね」
「はい、残念ですが」
「なら仕方がない。君もだ」
「出陣して宜しいのですね」
「うん、頼むよ」
 バランにこうも声をかけた。
「彼等を食い止めてくれ」
「はい、それでは」
「君がいるだけでも心強いよ」
 出陣するそのバランにだった。労いの言葉もかける。
「帝国随一の忠臣がね」
「勿体ないお言葉」
「では。出陣するんだ」
 ルアフ直々の言葉だった。
「君も。近衛軍もね」
「御意」
 こうしてであった。バランの出陣が決まりだ。近衛軍は宇宙に出る準備に問いかかった。その時だ。
 ロンド=ベルはだ。ネビーイームの集まりを前にしてだ。エツィーラの軍と戦っていた。その中でだ。
「遠距離用の平気でネビーイームを狙え!」
「他は敵軍に向かえ!」
「役割を分担しろ!」
 こう言ってだ。戦いをしていた。そうしてだ。
 ネビーイームを一個ずつ撃破していく。その攻撃はだ。
 的確だった。まさに各個撃破であった。
「要領さえわかればな」
「ああ、幾らネビーイームでもな」
「どうってことないな」
「そうね」
 そのことがだ。わかってきたのだ。
「懐に入れば攻撃されないし」
「反撃もしてこない」
「狙うべき場所を攻撃すればいいだけだから」
「結果として楽な相手よね」
「確かに」
「それよりも」
 それがわかっても。まだだった。
 エツィーラの軍がいてだ。何よりも。
「アヤのいるネビーイームまであと少しだ」
「あそこまで行けば」
「やっと大尉を」
「あの人を救出できるんだ」
 アヤのことだ。彼女のことが気掛かりだったのだ。
 ネビーイームを一個ずつ撃破しながら進む。その中でだ。
 リュウセイがだ。敵のマシンを叩き落しながら言うのであった。
「どけっ!」
「くっ、この地球のマシン!」
「何という強さだ!」
「このマシンを只のマシンと思うな!」
 リュウセイは驚くバルマー軍の面々に告げた。
「俺達四人のだ!心なんだよ!」
「四人だと!?」
「心だというのか!」
「そのマシンが!」
「ああ、そうだ!」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「そしてだ!」
「そして!?」
「まだ言うか!」
「俺達を止められることなんざ誰にもできねえ!」
 サイコドライバーの力を出しながらだ。リュウセイは言う。
「今の俺達をな!」
「そうだ、今はだ!」 
 レビもリュウセイに続いて言う。
「私達の絆には誰も入られない!」
「言うものだね」
 エツィーラが彼等のその言葉を聞いて言った。
「地球人ってのは熱くなりやすいけれどあんたは特別だね」
「それがどうした!」
「行くといいさ」
 アヤの場所にだ。行くのはいいというのだ。
「けれどね」
「何だというのだ?」
「まあいいさ。行けばわかるよ」
 今はだ。エツィーラはこう言うだけだった。
 そのうえで積極的には動かない。そしてである。
 リュウセイ達が十一個目のネビーイームを撃破したのを見た。その彼等にだ。
「その場所に着いたね」
「大尉!今行く!」
 リュウセイはバンプレイオスを駆る。そしてさらに突き進む。
「やっと、やっとだ!」
「これだ!」
「俺達は取り戻せる!」
 ライも今は熱い。その彼等がだ。
 最後のネビーイームに来た。そしてだ。
「大尉!」
「来たなリュウ!」
「ああ、遂にな!」
 リュウセイとレビが言い合う。
「後はこの中にだ!」
「行くぞ!」
ここは俺と隊長に任せろ!」
 ライがその二人を行かせる。
「御前達はだ!」
「わかった、頼んだぜライ!」
「ここはだ!」
「任せろ」
 こう返すライだった。
「ここはだ」
「ああ、じゃあな」
 こうしてだ。二人は要塞の中に入った。
 要塞の中は意外とシンプルだった。通路の中には敵兵もいない。
「ここはどうなってんだ?」
「どうやら精神コントロールで動く場所らしい」
「だから人間が一人もいないってのか」
「その様だ」
 レビがリュウセイに話す。二人は今その金属の廊下の中を駆け進んでいる。
「ここはだ。そうした場所だ」
「そうだってのかよ」
「そしてだ」
 さらに言うレビだった。前を指し示してだ。
「アヤはこっちだ」
「このままか」
「そうだ、この先にいる」
「わかった。ただな」
「ただ。何だ」
「この中に入った時はな」
 その時はだとだ。リュウセイは駆けながらいぶかしみ話す。
「アヤを感じたんだよ」
「今はどうだ」
「何かな」
 首を傾げさせる。だが、だった。
 彼等は先に進んだ。そしてだった。
 そこはだ。暗い玄室だった。その中にだ。
 カプセル状の水槽が見える。二人が今見たのはそれだった。
「何だここは」
「アヤ!」
 レビが彼女を呼ぶ。
「何処にいるの!?」
「ここよ」
 ここでだ。アヤの声がした。
「ここにいるわ」
「!?」
「何処だ!?」
「全ては遅過ぎたのよ」
 またアヤの声が二人に聞こえてきた。
「残念だけれど」
「、あ。まさか」
「それは」
 水槽の中にある闇。それを見てだった。
 二人は驚愕を覚えた。悪寒と共に感じ取ったのだ。
「今のアヤの」
「姿だというのか」
「バルマーに捕らえられた私は」
 水槽の中からだった。アヤの声が聞こえてきていた。
「その念動力の素質を買われ」
「まさか、奴等」
「アヤを」
「そうよ。実験体となり連日の過酷な実験で」
「身体が」
「嘘だ・・・・・・」
「本当のことよ」
 また言うアヤだった。
「それでも私は死ぬことを許されず」
「くっ、そんな・・・・・・」
「こんなことになるとは」
「こんな姿になってもバルマーの為に」
「アヤ・・・・・・」
「何ということだ・・・・・・」
「どうして早く来てくれなかったの」
 アヤの言う言葉ではない。だが今の二人は気付かない。
「私は」
「済まない・・・・・・」
「こうなるとは・・・・・・」
「リュウ」
 そのアヤの声がリュウセイを呼んだ。
「貴方はどうしてあの時」
「ハザルに」
「そうよ。どうして無謀に挑んだの?」
「それは・・・・・・」
「貴方のせいで」
 やはりだ。アヤの言葉ではない。
「私はこんな姿になってしまった」
「すまねえ、アヤ」
 リュウセイは謝るしかなかった。
「俺は、俺は」
「幾ら詫びられても」
 アヤのふりをした何かはまた言う。
「私はもう以前の私には戻れない」
「アヤ・・・・・・」
「レビ、本当なら」
 それはレビにも言ってきた。
「本来ならこれは貴女の役目」
「そうだった、それは」
「貴女が地球に入ったから」
 それでだというのである。
「その役目が私に回ってきたのよ」
「済まない・・・・・・・」
「貴女は今はマイ=コバヤシ」
 このことについても言う。
「レビ=トーラーでいられれば」
「ああ・・・・・・」
「貴女はレビ」
 また言うそれだった。
「レビ=トーラーでなくてはならない」
「そう、それは」
「そうでないと私は」
「私が、私が」
 レビ、いやマイ=コバヤシは自責の念に覆われてしまった。
「私の存在がアヤを・・・・・・うわあああっ!」
「いいのよ、レビ」
 それがまた言う。
「もう全てが終わったのだから」
「ああっ、あああああっ!」
「くっ、駄目だ!」
 苦しむマイを見てだ。リュウセイは気付いた。
「このままじゃマイは自分の念で押し潰されちまう!」
「それがこの子の運命なのよ」
「それでもだ!」
 リュウセイはだ。決意したのだった。
 そしてだ。それ、アヤのふりをする何かに対して言った。
「詫びて済むとは思わねえが」
「どうだというの?」
「今の俺にはこうするしかできねえ」
 こう言うのである。
「今はマイを救う」
「その子を?」
「そうだ、俺達の仲間で」
 そしてだ。アヤに対して言うのであった。
「御前の妹だからだ!」
「でもその子は」
「マイ、しっかりしろ!」
 リュウセイは苦しむマイを肩に担いだ。そうしてだった。
 彼女にだ。あらためて告げた。
「こっから脱出するぞ!」
「アヤ、アヤ・・・・・・」
「待ちなさい」
 また言うそれだった。
「貴方達は」
「さよならだ」
 リュウセイは苦い顔で彼女に告げた。
「アヤ・・・・・・」
「リュウ・・・・・・」
 こうしてだ。彼は最後のネビーイームから出た。そのうえでバンプレイオスに戻った。
 その彼にだ。ライが問うた。
「どうした、大尉は」
「アヤはいたのか」
 ヴィレッタもそのことを問う。
「大丈夫だったのか?」
「姿が見えないが」
「それよりもだ!」
 リュウセイはその二人に対して言う。マイを彼女のコクピットに入れながら・
「マイが大変なんだ!」
「マイが!?」
「一体どうしたというのだ」
「あああああああっ!」
 ここでだ。そのマイが叫んだ。
 そしてだ。その念が撒き散らされた。それを見てだ。
「!?これは」
「この念は」
「暴走している!?」
 わかる者が口々に言う。
「マイの念がか!?」
「そしてバンプレイオス自体も」
「まずい!」
「このままじゃ!」
「リュウ!」
 ライもリュウセイに言う。
「ここは」
「だ、駄目だ!」
 リュウセイもだった。今はとてもだった。
「今のマイはとても」
「くっ、それでは」
「このままだというのか!」
「いかんな」
 リーがそのバンプレイオスを見て歯噛みした。
「あのままでは四人共だ」
「ではどうするのだ」
「戦局にも影響が出る」
 リーはブルックフィールドに対して答えた。
「だが。ここは」
「リュウセイ達は撃てないか」
「ここまで来て撃てるものか」
 だからこその歯噛みだった。
「あの四人がいなくてはだ」
「そうですね。これは参りました」
 ホリスもこう言うしかなかった。
「手の打ちようがありません」
「マイ、落ち着いて!」
 クェスがマイに叫ぶ。
「このままじゃあんたが!」
「死ぬぞ!」
 ギュネイも叫ぶ。
「それでもいいのか!」
「こんな世界なんか、私なんか!」
 だが暴走しているマイは言う。
「皆消えてしまえ!このまま全て!」
「!?いかん!」
 ギジェがイデのゲージを見て声をあげた。
「ゲージが上がっている!今までにない程にだ1」
「何だって!?ここでか!」
「そうなったっていうの!?」
「そうだ、大変なことになるぞ!」
 こうコスモとカーシャにも言うのだった。
「一体何が起こるのか」
「くっ、どうなるんだ!」
「このまま!」
「止めるんだマイ!」
 リュウセイはこの中でもまだマイを止めようとする。
「さもないとこのまま!」
「うわあああああああっ!」
 暴走が続く。そしてそれを見てだった。 
 エツィーラが一人呟いていた。
「そうだよ、レビ」
 こうだ。妖しい笑みで呟いていたのだ。
「御前の心は私のもの」
 こう言っていた。
「私に見せておくれ、この銀河の終焉を導くものを」
「そうか」
 だが、だがここで新しい声が聞こえてきた。
「この女狐!」
「むっ!?」
「させん!」
 爆発が起こってだ。それでだった。
 エツィーラはそれから逃れる。それを見てだ。
「!?マイの動きが止まった!?」
「あの女のところで爆発が起こるとそれで」
「ということはまさか」
「あいつが」
「させん!」
 ルリアが愛機と共に姿を現した。
「貴様の思うようにはだ!」
「ルリア=カイツだね」
「如何にも」
 その通りだとだ。ルリアはエツィーラに答えた。
「私だ」
「止めて、マイ!」
 そしてだ。本当の声がマイに告げたのだった。
「これ以上は!」
「!?」
 それを聞いてだ。完全にだった。
 マイが止まった。それでだった。 
「バンプレイオスが止まった」
「あの声は」
「まさかと思うけれど」
「そうだ、そのまさかだ」
 ルリアがロンド=ベルの面々に応える。そしてだ。
 すぐにバンプレイオスのところに戻ってだ。彼女をマシンの手からバンプレイオスに引き渡した。
「アヤ!」
「アヤなのかよ!」
 マイもリュウセイもだ。驚きの声をあげた。
「まさか、本当に」
「生きていたのかよ」
「ええ」
 アヤもだ。涙ぐみながら答える。
「マイ、リュウ」
 そしてだった。
「ライ、隊長」
「大尉・・・・・・」
「よく戻ってきた」
「本当にアヤなのか」
 レビはまだ驚きを隠せない。呆然とさえしている。
「アヤが、本当に」
「御免ね、マイ」
 アヤはコクピットに入りながら彼女に答える。
「心配をかけて」
「アヤだ!」
 彼女の姿を見た。開かれたコクピットの向こうに。
「本物のアヤだ!」
「そうよ、マイ。今日までよく戦ってきたわね」
「ちっ、いいところで」
 エツィーラはこの事態に舌打ちをした。
「こうなるなんて」
「悪が栄えたことはない!」
 もう一人姿を現したのだった。
「エツィーラよ、それがこの宇宙の摂理だ1」
「バラン=ドバン!」
「左様、このバラン=ドバン!」
 ペミドバンがだ。今戦場に姿を現していた。
「ここに見参!」
「これはどういうつもりだい!」
「どうもこうもない!」
 これがバランの返答だった。
「わしはロンド=ベルと戦う前にだ」
「どうするっていうんだい」
「義によって貴様を討つ!」
 これがバランの言葉だった。
「そうする為に来たのだ!」
「しかしこれは」
「一体何故」
「アヤが戻って来たんだ?」
「ルリアさんの手から」
「それは」
 ルリアが説明するのだった。
「姫様の命に従いです」
「アルマナさんの」
「あの娘の」
「アヤ殿は私がシヴァーの下から救出しました」
 そうだったというのだ。
「それがバラン様のご助力故です」
「そうだったのか」
「それでか」
「アヤさんが戻って来られたそうだったのか」
「左様、義は絶対のもの」
 まさにバランの言葉だ。
「それは守らなければならぬ」
「そうだな、それはな」 
 トウマがバランのその言葉に頷く。
「何度も言うがわしはバルマーの臣よ」
「忠義か」
「そして武人の義よ!」
 それもあるというのだ。
「その為にエツィーラよ」
「あたしを倒すってんだね」
「許さん!」
 こう言うバランであった。
「よくもシヴァーと共にだ」
「ふん、言うね」
「わしをたばかりロンド=ベルと戦わせたな!」
「最初から戦うつもりだったじゃないのさ」
「それは違う!」
 エツィーラにまた言い返す。
「戦うのはわしの意志で戦うのだ。操られてではない!」
「一緒だと思うがね」
「ドバン家の魂の宿る」
 バランは見得に入った。
「このペミドバンの鉄球で御主等の邪な悪事を打ち砕いてくれる!」
「!?どういうことなんだ?」
「バラン様とエツィーラ様が現れているぞ」
「どういうことだ、これは」
「一体」
 エツィーラの兵達は二人のやり取りを見ていぶかしみだした。
「何があるのだ?」
「バラン様のお話だとエツィーラ様は」
「そうだな、まさかと思うが」
「謀反か?」
「それを企てておられるというのか」
「聞けい!」
 バランは彼等にも言った。
「銀河を覆い尽くさんとしている危急の事態はだ」
「今のこの隕石雨か」
「それに宇宙怪獣もか」
「そういったものがですか」
「そうだ、それ等はだ」
 どうかというのである。
「最早バルマーだけの問題ではない!」
「!?そこまでだというのですか」
「今の危機は」
「バルマーだけではないと」
「この銀河存亡の危機に」
 バランもようやくわかったのである。
「銀河を生きる我等全てが一つにならなければだ」
「どうしようもないと」
「そう仰るのですか」
「バラン様は」
「そうだ、未来はだ」
 その未来はどうかというのだ。
「闇に閉ざされん!」
「ではです」
「我々はどうすれば」
「どうすればいいのですか?」
「御主等は退くのだ」
 彼等にはだ。そうしろというのだ。
「よいな、それではだ」
「は、はい。わかりました」
「バラン様がそう仰るのでしたら」
「では我々はです」
「そうさせてもらいます」
「全てはバルマーと陛下の為」
 その忠誠はだ。まさに絶対であった、
「この女は許せぬ」
「くっ、じゃああれだってんだね」
「貴様はわしが成敗する!」
 またエツィーラに告げるバランだった。
「よいな、覚悟せよ!」
「くっ!」
「いや、待ってくれ!」
 だが、だ。そのバランにだ。
 リュウセイがだ。叫んだのであった。
「おい、バランのおっさん!」
「むっ、御主は確か」
「ああ、リュウセイ=ダテだ!」
 己の名も彼に叫ぶ。
「こいつは俺達の手で倒す!」
「先程のあれか」
「こいつは許せねえ」
 怒りをだ。エツィーラに向けての言葉だった。
「さっきはよくもやってくれたな」
「エツィーラ=トーラー!」
 マイはリュウセイ以上に怒りを露わにさせていた。
「よくも私のここロイ入り込んでくれたな!」
「大したことじゃないと思うがね」
「御蔭で思い出したよ!」
 うそぶくエツィーラにさらに言った。
「帝国で御前にされた数々の仕打ちをな!」
「言うねえ。実験してやっただけなのに」
「この女、やはり」
 バランはエツィーラの今の言葉から全てを察した。
「その心が歪みきっておったか」
「地球人を実験にして何か問題があるのかい?」
「じゃあ手前がなってみろ!」
 リュウセイがエツィーラのその言葉に言い返した。
「その手前がな!」
「誰がそうなるものかい」
 傲然として返すエツィーラだった。
「バルマー人は宇宙を治めるべき存在なのだからね」
「その貴様にだ!」
 マイがまたエツィーラに言う。
「ここで全てを晴らす!」
「ふん、それならだよ」
 エツィーラもだ。そのマイに返した。
「私に跪くんだね」
「何っ!?」
「レビ=トーラー」 
 その名をだ。あえて呼んでみせてであった。
「御前のトーラーの名前はね」
「何だという!」
「あたしが与えたんだよ」
 その赤い目に邪なものを宿らせての言葉である。
「そのあたしに跪くのは当然だよ!」
「ううっ!」
「さあ、跪くんだよ!」
 マイに念を送りながらの言葉だった。
「このあたしにね!」
「うううっ!」
「いえ、違うわ!」
 アヤがだ。苦しむマイを横に見ながらだ。エツィーラに対して言った。
「黙りなさい、レビ=トーラー!」
「何だってんだい?」
「ここにいるのは私の妹」
「妹ねえ」
「マイ=コバヤシです!」
「アヤ・・・・・・」
 その言葉にだ。マイは顔を向けて言った。
「私を」
「私の大切な妹を苦しめた御前は」
 アヤの念がだ。エツィーラのそれを押していた。
「絶対に許さない!」
「!?馬鹿な」
 今の事態にだ。エツィーラは思わず声をあげた。
「アヤ=コバヤシは中途半端な念動力者だった筈」
「そうだというのね」
「そうだ。何故だ」
 こうだ。エツィーラは狼狽しながら言う。
「何故ここまでの念を
「マイと二人なら!」
 そのアヤの言葉だ。
「幾らでも頑張れるのよ!」
「二人の念がシンクロしているのか」
 エツィーラはアヤの今の言葉からそれを察した。
「相乗効果を生み出しているというのか」
「私も貴女も」
 アヤは妹に顔を向けて言う。
「この念動力のお陰で辛い目に遭ってきたかも知れない」
「それは」
「けれどこの力があったから」
 その念動力がだというのだ。
「私と貴女はこうして心でも」
「姉妹になれたのだな」
「そうだ、だからこの力は」
「この念動力は」
「絆よ」
 それだというのだ。
「私と貴女のね」
「私とアヤの」
「そうよ。そうしてね」
 ここでだ。アヤはだ。
 ライに顔を向けてだ。こう告げるのだった。
「ライ、いいかしら」
「はい、何か」
「トロニウム円陣のコアボックスを開けて」
「トロニウムの」
「ええ、それをよ」
 こう告げるのである。
「それを開けて」
「わかりました、しかし」
「何をするかというのね」
「はい、それは一体」
「セットするのよ」
 これがマイの返答だった。
「バルマーから取り返したものをね」
「まさかそれは」
「そうよ、そのまさかよ」
 また言うアヤだった。
「トロニウムよ」
「馬鹿な、それは!」
 エツィーラはだ。トロニウムと聞いて驚きの声をあげた。
「霊帝打倒の切り札となるものだ!」
 だからこそだ。驚いているというのだ。
「シヴァー、それを奪われたというのか」
 こう考えた。最初はだ。
 しかしすぐにだ。シヴァーがそうした男ではないと考えなおしてだ。 
 あらためて思索に入る。そうして言う言葉は。
「奴か」
 エツィーラの脳裏にある者の姿が浮かんだ。
「奴の差し金か」
「セットしました!」
 ライがアヤに報告する。
「出力上昇中!」
「ええ、わかったわ!」
「八十、九十、百」
 次々にあがっていく。
「百二十突破!」
「いったわね!」
「今バンプレイオスに本当の火が!」
「行くわよリュウ、ライ、マイ!」
 アヤは三人に告げた。
「念動集中」
「サイコクラッチ接続」
 マイも操作する。
「ティーリンクオーバードライブ」
「トロニウムエンジンフルドライブ」
 ライがまた言う。
「いけるぞ!」
「アヤとマイの二人のシンクロした念がだ」
 ヴィレッタはその四人を見て言う。
「トロニウムを得たバンプレイオスの真の力を引き出す。
「よし、これならだ!」
「いけるわ!」
「これまでの比じゃない!」 
 ライ、アヤ、マイが言う。それを聞きながらさらに言うヴィレッタだった。
「そしてその力を束ねるのは」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 リュウセイからだ。凄まじいエネルギーが発せられた。
 それを発しながらだ。彼は言うのだった。
「いけるぜ!」
「くっ、この力は!」
「これでバンプレイオスは全力で戦えるぜ!」
「奴め、何を考えている」
 エツィーラはその真の力を発揮したバンプレイオスを見ながら忌々しげに言う。
「何故シヴァーの元からトロニウムを奪い」
「この力なら!」
 リュウセイがまた叫ぶ。
「何だってできる!」
「くっ、まさかその力で!」
「エツィーラ=トーラー!」
 リュウセイが彼女の名を言った。
「手前だけは許さねえ!」
「それなら来るっていうのかい!」
「ああ、やってやる!」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「今ここでな!」
「あたしを倒せると思ってるのかい!
 身構えはした。
「このエツィーラ=トーラーをね!」
「無駄よ!」
 今叫んだのはバランだった。
「エツィーラ、御主では勝てぬ!」
「何でそう言えるだい!」
「既に心で負けている!」
 だからだというのである。
「貴様のその邪悪に満ちた心では正義には勝てぬ!」
「邪悪っていうんだね!」
「左様、今の御主はまさに邪悪!」
 それ以外の何者でもないというのだ。
「その貴様に、今のその者達に勝てる道理はない!」
「くっ、そんな筈が!」
「天上天下!」
 リュウセイがまたここで叫ぶ。
「天下無双の力今悪に見せてやるぜ!」
「やれ、リュウ!」
 ラウルがそのリュウセイに叫ぶ。
「大尉の復帰祝いだ!」
「景気よくね!」
 フィオナも兄に続く。
「どかんといっちゃって!」
「ああ、何としてもな!」
「もうバルマーは目の前なんだ」
「だったら何としても!」
「未来の為に!」
 全員でリュウセイに声をかける。
「ここは!」
「頼んだ!」
「ああ、これで!」
 攻撃を仕掛けようとする。しかしだ。
 エツィーラもだ。その全身からだった。
 無数の光の球を出してだ。そこから光を放った。
「これならどうだい!」
「こんなもの!」
 あっさりとかわされた。今のバンプレイオスは巨体からは想像もできない速さだった。
「どうってことあるか!」
「ちっ、今のオウル=アッシャーをかわしたってのかい!」
「言った筈だ!」
 また叫ぶバランだった。
「今の貴様には勝てん!」
「ちっ、それならだよ!」
 まだ諦めないエツィーラだった。それでだ。
 今度は杖を剣にして剣を立ててそこから白い光を放つ。だがそれもだった。
 あえなくかわされる。リュウセイは全てをかわしてみせた。
「どれもこれもかわすってのかい」
「既に見切った!」
 リュウセイがまた告げる。
「御前の攻撃はだ!」
「今の二撃が最初だったってのにかい」
「そんなものどうということはない!」
 マイも言う。
「御前に受けた仕打ち!まとめて返してやる!」
「操り人形が」
 エツィーラの本心以外の何者でもない。
「生意気な口を聞いてくれるじゃないか!」
「その糸はとうに断ち切った!」
 だがマイはもう負けてはいなかった。
「私はだ!」
「そうよ、今のマイは!」
 アヤも言う。
「私達と絆にほって結ばれている!」
「アヤ・・・・・・」
「だからもう」
「そしてだ」
 ライも言うのだった。
「御前の望んだ身勝手なステージはだ」
「どうなるってんだい?」
「もうすぐ終わる」
 ライもだ。エツィーラには明らかな嫌悪を見せている。
「貴様の敗北というエンディングを迎えてな!」
「ライ・・・・・・」
「行くぜライ、アヤ、マイ!」
 最後にリュウセイが叫んだ。
「四人揃ったSRXチームと天下無双のスーパーロボットの力!」
 その二つによってだった。
「あいつに浴びせてやる!」
「くっ、この力は!」
「まずはこれだ!」
 バンプレイオスの全身からだ。無数のミサイルを放ってジェモーラを襲う。
「くっ、これは!」
「テレキネスミサイル!」
「何て数だい!」
 その数はエツィーラとしても避けられなかった。幾つか受ける。
 さらにだった。
「次はこれだ!」
「どれでいく、リュウ」
「今ので動きは止めた」
 その為の攻撃だったのだ。
「今度はこれだ!連続攻撃だ!」
「ハイパームデトロイダー!」
「敵機捕捉!」
「テレキネシスミサイル発射!」
 またミサイルを放ってだ。次は。
「行け!ガウンジェノサイダー!」
 バンプレイオスから光を放ってだ。撃ったのであった。 
 それでまたダメージを与える。しかしまだだった。
「フィールド収束!」
「マイ、ツインコンタクト!」
「わかった!」
 二つの刃が出て合わさりだ。巨大な剣になった。
 それを手に取りだ。また叫ぶ。
「切り裂け!バンプレイオス!」
「今度は剣だってのかい!」
「流星斬り!」
 それで両断にした。それで決まりだった。
 ジェモーラは動きを止めた。完全にだった。
「ちっ、これは・・・・・・」
「勝負ありだ!」
 またバランが叫ぶ。
「エツィーラ、貴様は敗れたのだ!」
「あたしが、地球人に負けたってのかい!」
「その心に負けたのだ!」
 それでだというのだ。
「それがわかったか!」
「くっ!まだだ!」
 しかしだ。まだ言うエツィーラだった。
 マシンが大破しながらもまだ立ってだ。そうしてだった。
「ここは撤退して機を」
「させるか!」
 しかしだ。リュウセイは見逃さなかった。
「手前だけは!ここで!」
「ひっ!」
「アヤ!マイ!」
 リュウセイは二人にも声をかけた。
「やってやれ!」
「わかった!」
「ここは!」
 二人も頷きだ。そうしてだった。
「エツィーラ=トーラー!あの時の恨み!」
「私達の念で!」
「ここで全て終わらせる!」
「邪悪を!撃つ」
 今まさに攻撃を浴びせんとする。しかしだった。
 その前にだ。エツィーラは逃げてしまった。そのまま何処かに消えてしまったのだった。
「消えたかよ!」
「逃げ足の速い奴だ」
 リュウセイとライが忌々しげに言う。
「あそこまで追い詰めたってのによ」
「去るとはな」
「しかしだ」
 悔しがる彼等にだ。ヴィレッタが言う。
「最早あの女に何の力もない」
「じゃあ無理して倒す必要はないってのかよ」
「そうだというのですか」
「左様、その通りだ」
 バランもリュウセイ達に話す。
「最早あの女はバルマーの民ではない」
「じゃああのままか」
「もう何の力もないのか」
「そうだ。今の戦い見事だった」
 それは認めるバランだった。そのうえでだ。
 彼等の前に近衛軍と共に立ちだ。こう告げたのである。
「そしてだ。よいな」
「あんたも戦うってんだな」
「その通りよ」
 こうトウマにも答える。
「このバラン=ドバン本星の最後の護りとして御主等に戦いを挑む」
「ああ、わかったぜ!」
 トウマが最初に彼の心を受けた。
「ならだ!ここはな!」
「来い!正々堂々と勝負しようぞ!」
 バランはまた告げた。
「そのうえで御主等を防いでみせようぞ!」
「じゃあ俺達もだ!」
 トウマも言う。
「あんたを倒して、行ってやるぜ!」
「来るがいい!」
 こうしてだ。本星の最後の護りとの戦いがはじまった。それはまさに拳と拳、戦士と戦士の戦いであった。それが幕を開けたのである。


第百十二話   完


                                      2011・4・6
     

 

第百十三話 拳と拳の戦い

                第百十三話 拳と拳の戦い
 バランはだ。近衛軍を率いたうえで言った。
「では行くぞ!」
「ああ、こっちもな!」
 トウマが彼の言葉を受ける。
「絶対に本星に行ってやるぜ!」
「そうだな。御主達ならば」
 バランもだ。そのことがわかってきたのだ。
「この銀河を救えるであろうな」
「あんたはどうなんだよ」
「わしはあくまでバルマーの臣」
 それは変わらないというのだ。
「それは変わらぬ」
「それがあんたの信念なんだな」
「そうだ」
 その通りだとだ。トウマに返す。
「それはわかるな」
「ああ、わかるようになったぜ」
 これがトウマの返答だった。
「それもな」
「トウマ、御主と出会えてよかったぞ」
 こうも言うのだった。
「御主はわしが出会った中で最高の漢よ」
「だっていうのかよ」
「そうだ、その御主と戦えること!」
 その鉄球を手に言う。
「我が誇りよ!」
「じゃあ誇りと誇りのな!」
「勝負よ、行くぞ!」
「ミナキ、行くぜ!」
「ええ、トウマ!」
 ミナキも彼の言葉に頷く。
「私も!貴方と共に!」
「済まない!」
「いえ、貴方と一緒なら」
 ミナキもだ。今心を言った。
「私も」
「そう言ってくれるんだな」
「そうよ。だからこの戦いは」
「勝つ!」
 トウマは断言した。
「バラン、あんたにだ!」
「ふむ」
 バランはそのトウマの言葉を聞いてだ。
 まずは目を閉じた。それからだった。
 目を再び開きだ。こう言ったのであった。
「トウマよ」
「ああ。何なんだ?」
「御主との戦いでわしは多くのことを知ったようだ」
 こう言うのである。
「地球人のこと、そして」
「そして?」
「銀河のことをだ」
 知ったというのだ。
「あれからわしは考えたのだ」
「前の戦いからだよな」
「そうだ、そしてわかった」
 こうだ。晴れ渡った声で言うのである。
「この銀河のこともだ」
「それでどうするのですか?」
 ミナキがそのバランに問う。
「貴方は」
「陛下がお許しになれば」
 その前提があればだというのだ。
「わしもまた銀河の為に戦いたい」
「けれど今はなんだあん」
「そうよ、わしはバルマーの臣」
 それはだ。やはり彼にとって絶対のことだった。
「どうしてもそれは守る」
「わかったぜ。ならな!」
「今はこうしてだ!」
「戦う!俺も!」
「バルマーに行きたくば!」
 二人の拳が交差する。
「このわしを倒していくがいい!」
「そうしてやるぜ!」
 こう言い合ってだ。拳を激突させる二人だった。
 その戦いの周りではだ。
 両軍も激しい死闘を展開していた。そしてだ。
 ゼンガーがだ。レーツェルに告げていた。
「友よ、いいな」
「うむ」
 レーツェルも彼の言葉に頷く。
「今ここでもだ」
「その力を振るう!」
「そして銀河の未来を!」
「切り開く!」
 こう言い合いだった。
 二人で敵軍の中に飛び込みだ。。荒れ狂うのだった。
 その巨大な斬艦刀が一閃させる度にだった。
 敵のマシンの首が、胴が腕が乱れ飛び艦が両断される。まさに嵐だった。
「なっ、あれがか!」
「地球のマシンだというのか!」
 近衛軍の精鋭達もだ。彼の戦いの前には言葉を失った。
「まさに鬼だ」
「あの力でこれまで戦ってきたのか」
「何という者達だ」
「参る!」
 そのゼンガーがまた言う。
「我は未来を切り開く剣なり!」
「慎悟君!」
 神代が彼に声をかける。
「私達も。いいわね」
「はい、神代さん」
 慎悟もその言葉に頷く。そうしてだった。
 二人も戦場で剣を振るう。戦いはロンド=ベルが一気に突撃をかけてだった。
 戦いを有利に進めていた。その中でだ。
 ルリアは動かない。その彼女にオルガが問うた。
「手前は戦わないだな」
「私は姫様の僕だ」
「だからだってのか」
「務めは果たした」
 そのアルマナの僕として、というのだ。
「ならば今はだ」
「傍観者でいるんだ」
「そうするんだな」
「そうだ」
 その通りだとだ。クロトとシャニにも答える。
「今はそうさせてもらう」
「ふうん、じゃあね」
「そっちには攻撃しない」
 二人もそれで納得した。こうして彼女は今は動かない。戦いはその間も続く。
 一時間程戦闘が続いた。その時戦場に声が響いた。
「バラン、もういいよ」
「!?そのお声は」
「戦闘は中止だ」
 その声が驚くバラン達に告げる。
「これでね」
「は、はい」
「それでは」
 近衛軍が動きを止めた。それを見てだ。
 ロンド=ベルもだ。ある予感を察してだ。動きを止めていた。
 その彼等にもだ。声がかけられたのだった。
「よく来たね。ナシムの子等よ」
「まさか」
「この声は」
「この強大な念は」
「間違いない」
 彼等はそれぞれ言った。
「このプレッシャー、あの時と同じだ」
「バランの園での」
「ということはあの」
「バルマーの統治者」
「霊帝ルアフ!」
「そう、僕がそのルアフだよ」
 銀河にその巨大な映像が浮かんだ。ルアフのだ。
 そのルアフがだ。ロンド=ベルの面々に話すのだった。
「バルマー帝国の唯一の統治者だよ」
「それではだ」
 アムロがだ。そのルアフに告げた。
「我々の話を聞いてくれるか」
「話を?」
「そうだ、我々はだ」
 アムロはそのルアフに対して話す。
「戦う為ではなくだ」
「別の理由で来たというんだね」
「この銀河を救う為にだ」
 その為にだというのだ。
「この星に来た」
「このバルマーまで」
「そうなのだ」
 クワトロも話す。
「この銀河を終焉から救う為にだ」
「僕の力が必要なのかな」
「まずは会談をしたい」
 クワトロは政治的に話した。
「そのうえで我々に力を貸して欲しい」
「そうだね」
 一呼吸置いてから。ルアフは答えた。
「君達はナシムの子だ」
「だからなんですね」
「そう。ならばこの出会いも運命だろう」
 こうシンジにも言う。そしてだった。
「いいだろう」
 こう言ったのだった。
「君達がゼ=バルマリィの地に降りるころを許そう」
「おい、話が決まったぜ!」
「ああ、これで遂に」
「俺達の戦いがまた一つ終わるんだ」
「バルマーとの長い戦いも」
「これでようやく」
「待っているよ、ナシムの子等」
 ルアフは喜ぶ彼等にまた告げた。
「そこで全てをはじめよう」
 こう話してだ。戦闘を終わらせたのだった。そうしてだ。
 ルリアがだ。彼等のところに来てだった。
 そのうえでだ。彼等に話すのだった。
「あの」
「ああ、ルリアさん」
「大尉のことは有り難うございます」
「本当に」
「いえ、そのことではなくです」
 ルリアはだ。こう彼等に話すのだった。
「貴方達のことですが」
「俺達の?」
「俺達のっていうと」
「一体何が」
「あるんですか?」
「アポカリュプシスのことです」
 そのことを話すのだった。
「そのことですが」
「何かわかったの!?」
 セレーナがすぐに問うた。
「まさか」
「はい、まず貴方達御自身のことです」
 そのことから話すのだった。
「陛下が仰っていました」
「あの霊帝が」
「俺達のことを」
「貴方達はあらゆる力を備えた」
 それが何かというのだ。
「銀河の特異点なのです」
「ふむ、特異美か」
「そうです」
 ガビルに対しても述べる。
「力が集中しています」
「ふむ。そうなのか」
「そしてそれはです」
 その力の集中が何かというのだ。
「それ自体がアカシックレコードの意志なのです」
「アポカリュプシスを引き起こす」
「その意志」
「そうです、言うならばカードを揃える為に」
 何をしたのかというのだ。
「あらゆる手を使って」
「それではだ」
「はい、イデに関してもです」
 こうギジェにも話す。
「同じなのです」
「そうだったのか」
「そうした意味で、です」
 ルリアの言葉は続く。
「貴方達は選ばれたと言えます。しかしです」
「しかし?」
「しかしというと」
「貴方達はその力を戦いに使われてきました」
「それはだ」
 ブライトが反論する。
「我々が生き残る為に止むを得なくだ」
「はい、しかしです」
「しかしというのか」
「そのこと自体がアカシックレコードの定めた真理に反していたのです」
 そうだったというのだ。
「力なき者は淘汰される」
「バルマーの論理」
「それか」
「それが宇宙の掟だからだというのです」
 それで話すというのだ。
「ですが貴方達は結果としてそれに逆らい」
「戦い続けた」
「それが」
「無限の力を浪費したことになるのです」
 こう話すのである。
「そういうことなのです」
「あの」
 ラクスがそのルリアに問うた。
「宜しいでしょうか」
「はい」
「どうしてなのでしょうか」
 こうルリアに問うのであった。
「それは」
「それはというと?」
「それで私達はアカシックレコードに反しているのですね」
「結果としてそうなるようです」
 こう話すルリアだった。
「例えとしてイデです」
「イデか」
「はい、それが一番わかりやすいと思います」
 コスモに対しても答えた。
「イデはアカシックレコードに最も忠実な力とのことです」
「じゃあまさか」
「それって」
「そうだな」
 イデオンとソロシップの面々は顔を顰めさせて話をはじめた。
「俺達の怒りと憎しみの念が」
「それを導いてしまった?」
「今の状況を」
「戦いに」
「それがです」
 または案スルリアだった。
「今の状況へと」
「何てこった」
 思わず言うタシロだった。
「そうなるとはな」
「そうですね。生きる為だったとはいえ」
 副長も言う。
「こうしたことになるとは」
「いえ、悲観することはないと思います」
 ルリアはそれはいいというのだ。
「おどらくどの星の者であっても結果は」
「それならそれで」
「銀河の生命体全てが失敗作になるんじゃ」
「だよな、やっぱり」
「それだと」
「それでだけれど」
 今度尋ねたのはセラーナだった。
「アポカリュプシスから逃れる術はないの?」
「それは」
 ここで顔を曇らせるルリアだった。そのうえでの言葉だった。
「ですがアポカリュプシスはです」
「それ自体は?」
「というと」
「先史文明の頃からその存在を予見さてていたそうです」
「っていうと」
「今までのあれか」
「時々出会った」
「惑星ラクスの遺跡」
「ライディーンの記憶」
「それに死海文書」
「そしておそらくはです」
 さらに話すルリアだった。
「ガンエデンもそうですし」
「そうだったのですか」
 イルイがそれを聞いて言った。
「私もまた」
「そう、あと貴方達が行ったという」
「補完計画ね」
 リツコが察して述べた。
「それね」
「はい、それもまた」
 補完計画もそうだったというのだ。
「アポカリュプシスへの備えだったのです」
「ひいては冥王計画も」
 マサトもわかったのだった。
「その為の」
「そうね。冥王計画は補完計画のスペアだったから」
「はい」
 マサトはミサトの言葉に応えて述べた。
「そうなりますよね」
「結果としてね」
「じゃあつまりは」
「全てはそれに備えて」
「それでだったのか」
「ガンエデンの惑星防衛システムも」
 イルイが言う。
「アポカリュプシスの為の」
「そうなります」
「それでだけれどね」
 アイビスがだ。ルリアに尋ねた。
「もう一つ聞きたいけれどいいかな」
「何でしょうか」
「私達の地球とバルマー帝国のことなんだけれどね」
 こう前置きして尋ねるアイビスだった。
「二つの星にガンエデンが存在する理由は?」
「それについてはです」
「それについては?」
「陛下に御聞き下さい」
 そしてくれというのだった。
「我が帝国の統治者、そしてです」
「もう一つのガンエデンに選ばれし神子」
「霊帝ルアフ」
「彼にか」
「はい、陛下に御聞き下さい」
 ルリアはそこまでは知らなかった。それでだというのだ。
「それで御願いします」
「わかりました。それなら」
「今から降下して」
「そのうえで」
「ひょっとしたらだけれど」
 ティスが話す。
「今のこの状況もよ」
「そうだね。あの人と力を合わせたら」
「若しかしたら」
 ラリアーとデスピニスも言う。
「乗り越えられるかも知れない」
「何とか」
「正直ね、あたし達別の世界の人間だけれど」 
 ティスはそれでもだというのだ。
「こっちの世界にも長いし」
「皆がいるから」
「その世界がなくなるのは」
 後の二人も同じ意見であった。
「嫌だから」
「何とかできたら嬉しいです」
「私の話はこれで終わりです」
 ルリアは話をこれで終わらせた。
「知っているのはこれで」
「いや、待ってくれ」
 だが、だ。トウマがここで彼女に言ってきた。
「アルマナさんはどうなったんだよ」
「姫様ですか」
「ああ、あの姫さんはどうなったんだ?」
「姫様はです」
 ルリアはそのことについて話をはじめた。
「今陛下に直接御会いしてです」
「その霊帝とだな」
「はい、そのうえで、です」
「俺達との会見をか」
「提言されています」
 こう話すのだった。
「今はそうされています」
「それなら」
 リョウトがそこまで聞いて言った。
「あの人の言っていたバルマーの為の戦いですね」
「我々がこの星に帰還してからでした」
 ルリアの話がここで変わった。
「隕石雨が現れました」
「それがか」
「じゃあそれもまた」
「アポカリュプシスの」
「シヴァーによりネビーイームの一つを失った本星はです」
 どうかと話すのであった。
「防衛システムが追いつかず」
「隕石がか」
「バルマーにまで」
「落ちたんですね」
「はい、姫様はそれを御覧になられ」
 どうしたかというのだ。
「アポカリュプシスを確信されました」
「そうでしょうね」
 ミナキがそれを聞いて言った。
「私もそう思いますし」
「はい、その回避の為にです」
「俺達とか」
「他の文明との協力を」
「そこに至った」
「そうです。全てはです」
 どうなのか。それも話すルリアだった。
「貴方達との出会いによるものです」
「わかった。それはな」
「はい」
「じゃあルリアさんはどうなんだ?」
 トウマは彼女自身にも問うた。
「あんたはどうなんだ?」
「私は?」
「ああ、今でもなのか?」
 きょとんとしたルリアに問うのである。
「バルマー以外の人間は対等には見られないか?」
「いえ、それは」
「なくなったんんだな」
「おそらくは」
 どうかとだ。彼女は話したのだった。
「私の中の下らない垣根は壊れていたと思います」
「垣根」
「それが」
「はい、貴方達はです」
 そのロンド=ベルの面々に言うのである。
「姫様を守る為に自分の身を投げ出してくれましたね」
「ハザルとの戦いの時」
「あの時に」
「それを見てからです」
 その時からだというのだ。
「私は。もう」
「そうか、有り難うな」
 トウマはここまで聞いて彼女に笑顔を見せた。
「そう思うようになってくれて」
「いえ、お礼はいいです」
「いいっていうのかよ」
「私もこの銀河に生きる人間の一人ですから」
 だからだというのだ。
「ですから」
「それでなんだな」
「はい、姫様もです」
 ルリアは彼女についても話した。
「勇気を出されました」
「霊帝に提言する」
「それが」
「我が帝国において陛下は絶対の存在です」
 まさにだ。生ける神だというのだ。
「その陛下に提言されるのですから」
「それなら俺達は」
「生きとし生ける者全ての為に」
「戦おう」
「何があっても」190
 こう決意してであった。
 彼等はバルマーに降下していく。最後にだ。
 トウマが乗り込んでいるクロガネも降下しようとする。しかしだ。
 まだ銀河にだ。バランが残っていた。その彼にだった。トウマが声をかけたのだ。
「あんたは来ないのか?」
「わしはだ」
「あんたは?」
「シヴァーに操られておった」
 そのことを悔やんでいるという言葉だった。
「逆賊にな」
「それは仕方ないんじゃないのか」
「陛下はそのわしに御心をかけて下さった」
 先の戦いのことだ。
「その陛下に今はだ」
「会えないっていうのかよ」
「うむ、わしはこの国を去る」
 こうまで言うのだった。
「結果としてそのお心に添えなかったのだからな」
「それは」
「ならばだ!」
 しかしだ。ここでだった。
 ゼンガーがだ。そのバランに言うのであった。
「戦うのだ!」
「戦えというのか」
「そうだ、戦うのだ!」
 こうバランに言うのである。
「己が今したい戦いをだ」
「御主、まさか」
「トウマよ!」
 ゼンガーは今度はトウマに対して告げた。
「わかっているな」
「あ、ああ」
 トウマも頷く。そうしてだった。
 クロガネを出る。ゼンガーも一緒だった。
 ダイテツがだ。その彼に問うた。
「後で来るな」
「はい、大雷鳳は大気圏突入可能ですから」
 だからだ。大丈夫だというのだ。
「心配無用です」
「わかった。それならばだ」
「先に御願いします」
「このダイゼンガーもだ!」
 ゼンガーの機体もだというのだ。
「宇宙の熱気なぞ問題ではない!」
「ふふふ、御主らしいな」
 バランはそんなゼンガーの言葉を聞いて笑った。
「その心で通るか」
「その通りだ。それではだ」
「立会人は御主だな」
「いえ、私もです」
 ミナキもいた。彼女はだ。
 雷鳳に乗っていた。それに乗りだ。
「戦えませんか。ここからです」
「トウマの力になるか」
「はい、大雷鳳の戦いを見させてもらいます」
 そうするとだ。ゼンガーに答えるのだった。
「トウマの戦いを」
「ミナキ・・・・・・」
「トウマ、バランさんと戦って」
 ミナキは切実な顔でトウマに告げた。
「そしてその人の心を」
「ああ、わかってるさ」
 トウマもだ。言うまでもなかった。
 それでだ。あらためてであった。
 バランを見据えてだ。そのうえで言うのであった。
「行くぞ、バラン」
「そうか。わしはこれから」
「その名を捨ててみるがいい!」
 ゼンガーは再びバランに告げた。
「そうして生まれ変わればだ!」
「今まで見えていなかったものがだな」
「そうだ、見えてくるものだ!」
 そうだとだ。断言する彼だった。
「人それを新生と呼ぶ!」
「御主、そこまでわしを」
「そしてそれを果せる者こそ!」
 今度はだ。トウマを見てであった。
「この男だ1」
「そうだな。トウマこそがだな」
「ならば戦うのだ!」
 またしてでもドバンに告げた。
「そして己の新生とせよ!」
「不思議なものだ」
 バランは笑みになっていた。自然にだ。
「先程まで闘志どころから」
「生きる意味もだな」
「それさえ失っていたがな」
 だが、だというのだ。
「御主の言葉とトウマを見ているとだ」
「今俺の名前を呼んだな」
「うむ、呼んだ」
 その通りだとだ。バランはトウマにも笑顔で返した。
「今確かにな」
「そうか。じゃあ俺も」
「わしの名を呼ぶな」
「ああ、バラン=ドバン!」
 実際に彼の名を呼んでみせたトウマだった。
「やるぜ、今こそ!」
「うむ、来るがいい!」
「この戦いであんたは生まれ変わるんだ!」
「礼を言うぞ!」
 ゼンガーとトウマ達への言葉だった。
「くすぶっていた燃えカスに火を点けたことはな!」
「そしてだな」
「そうだ。トウマよ!」
 トウマへの言葉だった。
「このバラン=ドバンとだ」
「そしてそのぺミドバンだよな」
「ドバン家の魂よ!」
 ペミドバンこそがだ。そうだというのだ。
「御主に打ち砕くことができるか!」
「ああ、やってやるさ!」
 トウマも彼のその言葉を受ける。
「そして勝つのはだ!」
「御主だというのか!」
「ああ、俺だ!」
 まさにだ。彼だというのだ。
「それを見せてやる!」
「来い!」
 両者は対峙しながら言い合う。
「我が鎖受けてみよ!」
「俺のこの拳をな!」
 こうしてだ。彼等は一騎打ちに入ったのだった。
 互いに一歩も引かず攻防を続ける。百合、二百合と重ねていく。だが二人は戦い続ける。
 そして千合に達した時だった。遂にだ。
 トウマがだ。ミナキに告げた。
「ミナキ、あれだ!」
「あの技ね、トウマ!」
「そうだ、バランにはあれだ!」
 まさにだ。その技だというのだ。
「あれで決める!それが最高の勝負の決め方だ!」
「そうねトウマそれじゃあ!」
「ダイナミックライトニングオーバー!」
 トウマは叫びはじめた。
「フルドライブ!」
 こう叫んでだった。
「プラズマドライブ!」
 ミナキもだ。ボタンを押した。
「フルバースト!」
「受けろバラン!」
 こうしてだった。
「俺の全てを賭けて!」
「ええ、トウマ!」
「ミナキ!大雷鳳は今!」
「舞って!最高の舞を!」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 跳んだ。そしてだ。
 神の鳥になりだ。ペミドバンに蹴りを浴びせた。
「せいやああああああああああああああっ!!」
「百パーセント突破!けれど!」
「これが俺の!」
 攻撃を浴びせてからだ。トウマは再び跳んだ。そしてだ。
 さらにだ。急降下で蹴りを浴びせてだ。
「限界を超えた一撃だ!」
「むうっ、前よりも!」
「受けろ、あんたの新生をーーーーーーーーーーーっ!!」
 再び蹴りを浴びせた。それを受けてだ。
 ペミドバンは大きく吹き飛ばされた。それでだった。
 勝負は決まった。まさにだ。
「俺の勝ちだな!」
「うむ、見事だトウマよ」
 バランは立ち上がった。そのうえでだ。
 トウマに対してだ。こう告げたのだった。
「貴様は勝った、このわしにな」
「ああ、これであんたもな」
「そうだな。しかしな」
「しかし。どうしたんだ?」
「よいぞ、この戦い!」
 笑ってだ。こう言うのだった。
「これこそが漢の戦いよ!これをしてこそよ!」
「そう言うのだな」
「トウマ、御主とはだ」
 そのトウマを見ての言葉だった。
「これからもだ」
「これからもなんだな」
「うむ、正面からこうして戦いたい」
 それがだ。彼の今の願いだった。
「それでよいか」
「ああ、何時でも受けてやるぜ」
 トウマも笑顔でバランに返す。
「あんたとの勝負はまさにな」
「漢の勝負だというのだな」
「だから。これからも頼むぜ」
「うむ、それではな」
「今わしの目は開いた」
 つまりだ。新生がなったというのだ。
「こうなればことの成り行きをだ」
「一緒に見るんだな」
「そうしようぞ。若しもだ」
 ここでだ。断りを入れるバランだった。
「御主等が陛下の敵となればだ」
「その時はか」
「トウマよ、もう一度互いの星と意地を賭けて死力を尽くして戦おうぞ」
「ああ、その時はな」
「そうしようぞ」
 こう言葉を交えさせてであった。
 彼等もバルマー本星に向かうのだった。その大気を超えて。
 ハガネの格納庫の中でだ。マイがアヤに話していた。
「アヤ、これで」
「御免ね、マイ」
 アヤはそのマイに謝罪の言葉を述べる。
「心配をかけて」
「ううん」
 それはいいとだ。マイはアヤに言う。
「アヤが生きていてくれたから」
「いいっていうのね」
「こうしてまた私達のところに帰ってきてくれた」
 そのことをだ。心から喜んでの言葉だった。
「それが嬉しい・・・・・・」
「マイ、これからはね」
 アヤは泣いていた。マイもだ。
「ずっと一緒よ」
「アヤ・・・・・・」
 二人は互いを抱き締め合う。それからだった。 
 アヤはリュウセイに対しても言うのだった。
「話は聞いたわ。貴方は立ち上がったのね」
「けれど俺は」
「いいのよ」
 彼が何を言うのかを察しての言葉だった。
「それはね」
「そうなのか」
「あの時は私もああしたから」
 だからだというのだ。
「それに今の貴方を見ればわかるわ」
「今の俺を」
「あの時の経験がリュウをね」
 どうしたかというのだ。
「より強くしてことがね」
「アヤ・・・・・・」
「只今、リュウ」
 彼にも言うのだった。
 そしてだった。次はだ。
 ライに顔を向けてだ。言うのだった。
「貴方もね」
「大尉・・・・・・」
「私がいない間は貴方がだったのね」
「俺は」
「チームをまとめてくれていたのよね」
 ライに謙遜はさせなかった。
「本当に有り難う」
「・・・・・・はい」
「こうして皆がまた揃うことができたわ」
「そうだよな」
 リュウセイもそのことを言った。
「これでな」
「皆、今日までよく戦ってきてくれたわ」
 アヤは笑顔でだ。ロンド=ベル全員に話した。
「けれどね」
「だよな、本当の戦いはな」
「これからだから」
「バルマーに乗り込むか」
「それとバッフクラン」
「宇宙怪獣も」
「アカシックレコード」
 単語が次々と出されていく。
「いよいよだよな」
「最後の戦いか」
「終わりのはじまりか」
「それ等に立ち向かうには」
 アヤの言葉がだ。鋭いものになっていた。
 その表情もだ。そのうえで言うのだった。
「私達は力を一つにして」
「そして戦う」
「それしかないな」
「バンプレイオスもだな」
 リュウセイも言った。
「力を一つにして」
「銀河の為に」
「戦おう」
「それにしても」
 皆で言い合う中でだ。ヴィレッタは。
 アヤを見ながらだ。いぶかしむ顔で言うのだった。
「アヤは精神制御を受けた様子はない」
「そういえばそうですね」
 彼女の言葉にだ。ウェンディが応える。
「肉体も無事ですし」
「バラン=ドバンに救われた」
「それも出来過ぎていますね」
「しかもトロニウムまで奪取してきた」
「いい条件が揃い過ぎている?」
「若しかして」
 ヴィレッタはその考えを続けていく。
「我々は何者かの思惑の中にいるのだろうか」
「だとするとそれは」
 疑念もあった。そしてそれはだ。一つの大きな謎でもあった。だがその謎の真相を知る者は。今ロンド=ベルにはいないのだった。


第百十三話   完


                                      2011・4・11 

 

第百十四話 アルマナの勇気

             第百十四話 アルマナの勇気
 巨大かつ壮麗な宮殿である。
 そここそが霊帝ルアフのいるバルマーの宮殿である。その玉座の間でだ。
 アルマナが頭を垂れていた。その彼女にだ。 
 玉座に座るルアフがだ。声をかけたのだった。
「顔をあげなよ、アルマナ」
「は、はい」
 アルマナはルアフに言われ顔をあげた。その彼女にルアフはさらに話すのだった。
「しかし驚いたよ」
「そ、それは」
「この星で僕に意見を言う者がいたなんてね」
 微笑みと共にだ。アルマナに話すのである。
「バルマー創世以来はじめてじゃないかな」
「ぶ、無礼は十分に承知しています」
「怯えなくてもいいよ
 震えるアルマナにこう声をかけた。
「咎めている訳じゃないからね」
「さ、左様ですか」
「うん、それどころかね」
「それどころか?」
「嬉しい位だよ」
 やはりだ。微笑んで話すのだった。
「それが銀河を見てきた君の姿なんだね」
「はい、私はです」
「色々な者と出会ったね」
「そしてそのうえで」
 アルマナはさらに話すのだった。
「その人達も生きていることを知りました」
「そうだね。そしてだね」
「はい、この銀河を救う為には」
 どうあるべきか。それを話すのだった。
「全ての人々の力を合わせるべきかと」
「バルマーだけではなく」
「その為に陛下の御力を」
 ルアフに対して告げた。
「どうかこの銀河にあまねく」
「どうやら君は」
 しかしだ。ここでだ。
 ルアフの口調が変わった。そのうえでの言葉だった。
「騙されてしまったようだね」
「えっ・・・・・・」
「他の星の者、特に地球人は」
 その彼等のことを話すルアフだった。
「このバルマーを銀河から消滅させようとしている者達なのだよ」
「そ、それは」
「我々とは互いを滅ぼし合うことを宿命付けられた種族なんだよ」
「どうしてですか、それは」
「ゲベルとナシムだよ」
 この二つの名をだ。アルマナに話したのであった。
「ゲベルの子とナシムの子は互いを滅ぼし合う宿命にあるんだよ」
「まさか・・・・・・」
「彼等がナシムを倒したなら」
 それなばだと。ルアフは話していく。
「彼等自身が守護者となり」
「そのうえで」
「そう、ゲベルの神子である僕と戦うことになる」
「陛下と」
「彼等をこの星に招いたのは」
 ルアフの言葉にだ。深いものが宿っていた。 
 そしてそれをアルマナに語るのだった。
「僕なりの決着をつける為さ」
「陛下の」
「そう、君も知っているね。地球のガンエデンは」
「あの方々に倒されたという」
「そう、それがナシムなんだ」
 こう話すのだった。
「ならば僕は」
「ですが陛下」
「僕は結論を出したよ」
 有無を言わさぬ口調だった。まさにだ。
「まだ言いたいことがあるのかい?」
「それは」
「話は聞いたよ」
 やはりだ。有無を言わせないルアフだった。
「幾ら君が神体ズフィルードに捧げられる身でも」
「は、はい・・・・・・」
「限度というものがあるんだ。それとも」
「それとも」
「今すぐ肉体を捨て」
 そしてだというのだ。
「その魂と念を永遠にズフィルードに納めるかい?」
「陛下、私に」
「君に?」
「真実を確かめる機会を」
「奇妙なことを言うね」
 ルアフはアルマナを一瞥してから述べた。
「僕の言葉に疑いを持ったのかい?」
「いえ、それは」
 バルマーにおいて霊帝は絶対の存在である。その筈がなかった。
 それで下がろうとする。しかしだ。
 そのアルマナにだ。ルアフはこう告げたのである。
「いいだろう」
「宜しいとは」
「その神をも恐れぬ君の君の勇気を買おう」
 こうアルマナに告げるのである。
「ズフィルードの裁きを下す前に」
「その前に」
「君に一度だけチャンスを与えよう」
「陛下・・・・・・」
「アルマナ、やってみるんだ」
 アルマナに再び告げてみせる。
「いいね」
「有り難うございます・・・・・・」
 アルマナは安堵し、そのうえで喜びに満ちた顔で述べた。だが。
 ルアフはこの時こう考えていた。その考えは。
「シヴァーのこともある」
 まずは彼のことを考えていた。
「僕の力を見せる必要があるようだ」
 そしてだ。こう呟くのだった。
「創世の神ズフィルード」
 まさにだ。彼そのものである。
「ゲペル=ガンエデンの力を」
 彼は何かを考えていた。そしてそのうえでだ。ロンド=ベルを待ち受けるのだった。
 ロンド=ベルは遂に帝都のすぐ傍まで達していた。フォッカーが映像を見ながら言う。
「人の気配がしないな」
「確かに」
「妙なことです」
 アイナとノリスがそれを見て言う。
「そういえばバルマーの市民の人達は既に」
「この星から退避しているとか」
「はい、そうです」
 彼等にだ。ルリアが答えた。
「シヴァーの手によってです」
「我々が帝都の市民を戦闘に巻き込むだからだろうか」
 大文字はこう述べた。
「それを考慮してか」
「いえ、それでしたら」
 だが、だった。ルリアはこう答えた。
「帝都とその近辺の臣民だけを避難させれば済みます」
「そうだね。それはね」
 ユウナがルリアのその言葉に頷いた。
「労力も少なく済むね」
「ですがシヴァーはほぼ全ての臣民をです」
 どうしたかというのだ。
「他の星へ避難させたのです」
「何の為だ」
 ランティスが言う。
「そこまでしたのは」
「セフィーロの時と似ておるか」
 クリフは自分達のことを思い出して話した。
「あの時と」
「そうですね。言われてみれば」
「同じパターンの気がするわ」 
 アルシオーネとカルディナも話す。
「それですと」
「ああいう危機を察してかいな」
「一体何の為に」
 ラファーガは首を捻っている。
「そこまで」
「わしとあ奴は昔からの付き合いだが」
 バランもその太い眉を顰めさせている。
「あいつの考えていることはわからぬ」
「帝国宰相であり」  
 サンドマンも言う。
「霊帝ルアフに叛旗を翻しているシヴァー=ゴッツォとその配下ゴラー=ゴレム」
「それが消息不明じゃ」
 兵左衛門もそのことを指摘する。
「妙な話じゃ」
「わしが己を取り戻した後にだ」
 バランはさらに話す。
「シヴァーの居城に乗り込んだのだが」
「その時にはか」
「もういなかったんだな」
「左様だ」
 その通りだというのだ。
「奴等は消えていた」
「それでなのです」
 アヤもここで話す。
「私がバランさんに」
「左様、客人の様な扱いであった」
 そこまでだったとだ。バランは話す。
「そこに残されておった」
「そうして助け出してもらいました」
「まるでわしにアヤ殿を保護させることが目的であるかの様に」
「おかしな話ですね」
 綾人がそこまで聞いて述べた。
「ハザル=ゴッツォのことを考えれば余計に」
「話が矛盾しとるで」
「そうね。確かに」
 タータとタトラもそれを言う。
「あのハザルを考えたら」
「矛盾しているわ」
「アヤさんの方で何かわかりますか?」
 セシリーがそのアヤに尋ねた。
「そのことについて」
「残念だけれど」
 アヤはまずはこう言った。
「私は何も」
「そうなんですか」
「わかりませんか」
「ええ。ただ本当にね」
 バランの言ったことはだというのだ。
「それは真実だから」
「ううん、あの男一体」
「どう考えているのか」
「全くわからなくなってきたけれど」
「本当にね」
 ここでだ。誰もわからなくなってしまったのだった。
 しかしだ。その中でだ。マックスが言った。
「しかしです」
「しかし?」
「しかしっていうと?」
「そのシヴァー=ゴッツォですが」
 話すのは彼のことだった。
「彼は常にいつも陰から動いてきましたね」
「そうなんだよな」
 シンが忌々しげに応えた。
「それが余計に腹が立つっていうか」
「コントロールしてっていうか?」
「そんな感じでね」
「やってきてくれたから」
「じゃあ今度も?」
「また?」
「そうじゃないでしょうか」
 マックスはまた話した。
「そこには何らかの目論見が」
「少なくともだ」
 今言ったのはだ。グローバルだった。
「彼女は我々と共にいる」
「イルイちゃんは」
「あの娘がいるというのは」
「まだ安心できますね」
「そのことは」
 このことはだ。安堵されるのだった。
 しかしだ。ここでだった。ラクスが言った。
「相手の意図がわからないのはです」
「それは危ないよな」
「やっぱり」
「それが気になるな」
「ですが」
 ラクスはまた言った。
「私達に残された時間は多くはありません」
「それならですね」
「はい、ここはです」
 ラクスはダコスタに応えてまた話した。
「霊帝に御会いするしかありません」
「あの帝にか」
「これまでの宿敵の君主に」
「あえて」
「信用するのは危ういにしてもだ」
 リーは鋭い目で述べた。
「行くしかない」
「ここは」
「絶対に」
「そうだ、まずは交渉するしかない」
 リーはこの現実を述べた。
「それしかない」
「そうしてアポカリュプシスへの対応を検討する」
「じゃあ今のうちに」
「行くか」
「そうだな」
 バランは難しい顔で述べた。
「それしかなかろう」
「バランさん」
 そのバランにだ。アヤが声をかけた。
「まさか霊帝に会うことを」
「いや、このバラン=ドバン」
 アヤの問いにだ。バランは静かに応えた。
「生まれ変わった身故」
「左様ですか」
「既に迷いも疑いも捨て去っておる」
 それはだというのだ。
「わしは陛下の命により帝国に害を為す者と戦ってきたが」
「それは今はか」
「違う」
「そうだっていうのね」
「左様、陛下がこの星に他の星の者をだ」
 その言葉を続けていく。
「入れられるとはな。まだ信じられぬ」
「若しかすると」
 ここで言ったのはヴィレッタだった。
「霊帝はです」
「陛下は?」
「我々との対面を望んでいたのではないでしょうか」
「何故そう言える」
「その根拠ですね」
「それはあるのか?」
 こうヴィレッタに問うバランだった。
「果たして」
「はい、バルマーと地球」
 ヴィレッタは彼に応えてさらに話す。
「二つのガンエデンです」
「そういったものがか」
「この二つの星は明らかに何らかの関係があります」
「そういえば」
 ここでミサトも言った。
「ハザル=ゴッツォもバルマーに」
「ええ、言ってたわね」
 リツコがミサトのその言葉に続く。
「死海文書がね」
「あるって」
「何度考えてもそっくりなんですよね」
 マヤもいぶかしみながら話す。
「ユダヤ教とバルマーって」
「そこに何かあるのかしらね」
「その可能性は捨てきれないわね」
「まあどちらにしろな」
 火麻もここで言った。
「全部あの霊帝さんに会えば明らかになるんだよな」
「そうだな。それは確かなことだ」
 カティもそれはだという。
「間違いなくな」
「同じ銀河に住む者達だ」
 今言ったのは大文字だった。
「過去の不幸な経緯を一時は忘れ」
「そうしてだよな」
「今はお互いの未来の為に」
「歩み寄って」
「そうして」
「解決するしかない」
「何しろだ」
 ベスはこの事実を出した。
「このバルマーにもアポカリュプシスの隕石が来ているんだ」
「それならな」
「これを無視できないよな」
「だよな」
「それじゃあ」
 こうしてだった。彼等はだ。 
 その帝都に向かうのだった。ふとだ。
 マーグがだ。このことを話した。
「そういえばだ」
「兄さん、どうしたんだ?」
「霊帝のことだ」
 彼のことをだ。マーグは話すのだった。
「この星に前にいた時だ」
「兄さんが俺達と戦う前のことだな」
「そうだ。その頃のことだ」
 その頃のことをだ。マーグはタケルに話すのだった。
 皆もいる。マーグは彼等にも話した。
「エツィーラ=トーラーが言っていた」
「あの女が」
「一体何と?」
「霊帝ルアフは神だと」
 こう言っていたというのだ。
「少なくともその心は正真正銘の」
「正真正銘の神?」
「っていうと?」
「どういうことなんだ?」
「心が神っていうと」
「それは私にもわからない」
 マーグもだ。いぶかしむ声だった。
「今ふと思い出した位だがな」
「私も陛下に御会いしたことは殆んどありませんし」
 ロゼがここでもマーグに続いて話す。
「あの方に御会いするには。やはり身分が」
「だからか」
「何もわからない」
「けれど正真正銘の神」
「それがか」
 だが、だった。誰もがこのことについても考えることになった。
「それが俺達を待つ霊帝ルアフ」
「そうだっていうのね」
「その人が」
 そんな話をしてだった。遂にだ。
 帝都まで来たのだった。地球のものとは違う古代ヘブライのそれを思わせる建物が並びその果てにはだ。とてつもなく巨大な塔を思わせる建物がある。
 その建物についてだ。バランが話した。
「あれがだ」
「バルマーの霊帝の宮殿」
「そうなのか」
「左様だ、あれがだ」
 雲にまで達していた。とてつもない高さだ。
「あれがそうなのだ」
「バベルの塔ね」
 ミサトはその宮殿を見て言った。
「それみたいね」
「そうね。確かにあれはね」
 リツコもミサトのその言葉に頷いて言う。
「そう見えるわね」
「神に近付こうとした塔」
「けれどそこにいるのは」
「正真正銘の神」
「それがどういうことなのかしらね」
 そしてだ。彼等のところにだ。
 映像が来た。そこにいたのは。
「アルマナさん!」
「姫様!」
 クスハとルリアが同時に声をあげた。
「お久し振りです」
「はい」
 アルマナはクスハの言葉に応えて述べた。
「ロンド=ベルの皆さん」
「はい」
「バルマー帝国へようこそ」
 まずは挨拶からだった。
「この都にとって貴方達はです」
「俺達は、か」
「そう言うんだな」
「はい、有史以来です」
 またこのことが話されるのだった。
「はじめての異星からの来訪者です」
「それでなのですが」
 大文字がそのアルマナに話す。
「貴女は今は」
「はい、私は」
「霊帝陛下の代理として来られたのですね」
「はい、そうです」
 アルマナは穏やかな笑みで彼のその言葉に応えた。
「今こうして」
「迎えに来られたと」
「その通りです」
 言いながらだ。彼女はロンド=ベルのところに一隻の戦艦と共に来た。そのうえで話をするのだった。
「だからこそです」
「左様ですか」
「よし、じゃあな」
「今回はだよな」
「戦いは避けられる」
「和平だ」
 この言葉も自然に出た。
「バルマーと和平だ」
「もう戦いは終わりなのね」
「この国とは」
「あの」
 しかしだった。
 アルマナがだ。こう問うてきたのだ。
「いいでしょうか」
「えっ!?」
「いいでしょうかって?」
「その前に答えて欲しいことがあります」
 アルマナの口調がだ。問い詰めるものになった。
 その口調でだ。彼等に問うのだった。
「貴方達はこの星、バルマーを消し去るおつもりですか?」
「えっ、何で!?」
「なにでそんな必要があるの?」
「どうして」
「貴方達は先に地球のガンエデンを倒しました」
 アルマナが言うのはこのことだった。
「そして次はです」
「バルマーのガンエデンを滅ぼすとか?」
「そう言いたいの?」
「違うのでしょうか」
「そんな筈がない!」
 ブリットがそれを否定する。
「俺達はあくまで話し合いに来たんだ!」
「そうだ、それは保障する!」
「私達は何度も言ってるじゃない!」
 リョウトとリオもそれを言う。
「ならどうして今アルマナさんをこうして受け入れるんだ!」
「話が矛盾するじゃない!」
「若し俺達がバルマーを滅ぼすならだ」
「今目の前のその塔みたいな宮殿を攻撃してるわよ!」
 ユウキとカーラがこう言う。
「まさに指呼の距離だ」
「バルマーの支配者がいるその宮殿をね!」
「バルマーの主権者は霊帝でしょ!」
「それならそいつを倒せば!」
 レオナとタスクはそのことを指摘した。
「それで終わりじゃない!」
「そんなのすぐにできるだろ!」
「そういえば」
 彼等の言葉でだ。アルマナも察した。
「この宮殿も皆さんの力なら」
「けれどそんなことをしても何の意味もないわ」
 クスハもまただった。アルマナに話した。
「私達は話し合いに来たのだから」
「剣は何の為にあるのか!」
 ゼンガーが言うのはこのことだった。
「それは護るべきものを護る為!」
「護るべきものを」
「今は銀河を護る時だ!」
「それなら」
「そうだ、今我等は剣を振るいはしない!」
 ゼンガーはアルマナに対して断言してみせた。
「このゼンガー=ゾンバルト、それを言おう!」
「ならそれは」
「そうだ。私達は決してそんなことはしない」
 ククルもそれは断言した。
「信じられぬか、我等の言葉」
「それは」
 アルマナも考えを変えようとした。その時だった。
 ルアフの声がだ。したのだった。
「アルマナ、騙されてはいけない」
「ルアフ様!?」
「そう、僕だ」
 その声と共にであった。
 ルアフが姿を現した。その映像をだ。
 その映像からだ。彼は言うのだった。
「ナシムの子よ、地球人よ」
「俺達のことか」
「そうだな」
 イルムとリンがその言葉を聞いて述べた。
「その俺達にか」
「こうしてまた語り掛けてきたか」
「よくぞこのゼ=バルマリィ帝国に来てくれたね」
 ルアフはこう彼等に告げた。
 そしてだ。さらに話すのだった。
「我が名はルアフ」
「だよな、前に映像で見たぜ」
「この星に降りる前に」
「バルマーの統治者にして創世神ズフィルードの神子」
 こうだ。堂々と名乗るのだった。
「民は僕を霊帝と呼ぶ」
「見た目は子供だよな」
「そうね」
 宙に美和が頷く。
「けれど実際は」
「そうとは限らないか」
「そう考えていいでしょう」
 シーラもそのルアフを見て言う。
「あの方はバルマー帝国の伝承によればです」
「神だから」
「だからこそ」
「ルアフ陛下」
 大文字が彼等を代表してルアフに対して声をかけた。
「御目にかかれたことを嬉しく思います」
「君がロンド=ベルの代表かな」
「そう考えて下さり結構です」
 こう返す大文字だった。
「地球連邦政府の使者として参りました」
「君達の話は聞いているよ」
 ルアフの言葉はここでは素っ気無かった。そのうえで言うのであった。
「といよりはね」
「といいますと?」
「バルマー創世の頃から生きる僕に」
 己をだ。そこから生きていると話すのだった。
「この銀河で預かり知らぬことはないよ」
「はったり、じゃないよな」
「そうね。まず違うわ」
 ユンがエイタに述べる。
「あの様だと」
「それじゃあやっぱり」
「あの威容」
 リーもそれに気圧されていた。
「やはり正真正銘の神か」
「だとするとあたし達はあれなの?」
「その神と話をしているんですか」 
 アカネとホリスがこう話す。
「今こうして」
「向かい合って」
「とにかくだ。今はだ」
 ブレスフィールドはこの中でも何とか己を保っている。そのうえでの言葉だった。
「話をするべきだ」
「そうですね。今は」
 シホミが父のその言葉に頷いた。
「それが先決です」
「そういうことだ」
「それではです」
 今度は大河がだ。ルアフに話す。
「陛下はこの銀河の危機についても御存知と思われますが」
「アポカリュプシスのことだね」
「はい、その危機に対して我々はです」
「僕と話をする溜めにだね」
「そうです、陛下の御力をお借りする為に参上致しました」
「アポカリュプシス」
 ルアフの口からそのことが語られようとしていた。
「それはこの銀河誕生の瞬間から定められた運命」
「あの女と同じこと言うな」
「そうだよな」
「あのエツィーラ=トーラーとな」
「人の歴史はそれから逃れる為に」
 ロンド=ベルの面々が言う中でだ。ルアフは言っていく。
「様々な手段を講じてきた」
「やっぱり知ってたんだな」
「そうね」
「じゃあ話は早いよな」
「このまま」
 誰もが期待した。そしてだ。
 ルアフはだ。こうも言うのだった。
「僕の使命もそのアポカリュプシスから臣民を守ることにある」
「それじゃあ」
「今こそ」
「俺達は」
「君達に言われるまでもない」
 ルアフは言い切った。
「僕はバルマーの民の為にその身を捧げるつもりだ」
「ああ、陛下」
「そう仰って頂けますか!」
 アルマナとバランが感激の涙を流した。
「これで銀河は」
「銀河は救われます!」
「二つのガンエデンの力が揃えば!」
 今言ったのはトウマだった。
「アポカリュプシスを乗り越える方法もきっと見つかる!」
「そうね、トウマ」
 ミナキもだ。希望の笑顔で言う。
「これで銀河は」
「助かるのね!」
「全銀河が一つに合わさるんだ!」
 サンシローも大喜びで叫ぶ。
「これで何も顔が救われるんだ」
「ふふふ」
 しかしだった。ここでだ。
 ルアフは妙な笑みを浮かべてだ。こう言うのであった。
「勘違いしないでもらいたいね」
「何っ!?」
 カティがそのルアフの言葉に目を止めた。
「何を言われるのでしょうか」
「勘違い!?」
「一体どういう意味ですか?」
 スメラギも留美もこれにはいぶかしむ。
「あの、今ここでそのお言葉は」
「どういうことなのでしょうか」
「ナシムの子等よ」
 彼等を全て一つにしての言葉だった。
「僕は何だと思うんだい?」
「バルマー帝国の霊帝では」
 グラハムがこう返した。
「そうではないと言われるのでしょうか」
「その通りだよ。僕はゲベルの子なんだ」
 これがルアフの言葉だった。
「ズフィルードはバルマーを守護するものだ」
「だからそれはわかっているのですが」
「何故今その言葉を」
「また言うんだ?」
 ブンタだけでなくだ。リーもヤマガタケもいぶかしむばかりだった。
「あの、ですから」
「我々は今こそ力を合わせ」
「銀河を救うんだぜ」
「銀河、ましてやナシムの子が住まう地球なぞ」
 そのルアフの音場だった。
「僕の知ったことではないね」
「そんな!」
「それでは!」
「バルマーの民達よ」
 そのルアフの言葉だ。
「我は霊帝ルアフ」
 こう言うとだった。宮殿の前にだ。
 バルマーの大軍がだ。姿を現してきたのだった。
「我の光の下に集え、民達よ」
「はっ、陛下」
「今ここに」
 現れたのは。彼等だった。
「くっ、バルマー本星防衛軍か!」
「それにエツィーラや近衛軍の残党もいやがる!」
「ズフィルードまでいやがる」
「しかも八機も!」
 その敵が出て来たのだ。そしてだ。
 ルアフはだ。彼等にこうも告げるのだった。
「そなた達には永遠の繁栄と銀河の覇道を約束しよう」
「御意」
「では我等、これより」
「ならん!」
 バランがジュデッカ=ゴッツォ達に対して叫ぶ。
「今は戦う時ではない!」
「バラン殿か」
 ジュデッカ=ゴッツォがそのバランに応える。
「それは不敬ではないのか」
「わしは陛下にお話がある!」
 バランはその彼に言い返す。6
「だからだ。そこはだ」
「残念だがそれはできない」
 ジュデッカ=ゴッツォはそれを突っぱねたのだった。
「我等にはだ」
「そう言うのか」
「そうだ、我等は帝国の臣」
 ジュデッカ=ゴッツォはバランに対して言い切る。
「例え卿といえどもだ。陛下の御前に行かせはしない!」
「くっ、だがわしはだ!」
「陛下への忠誠故だというのだな」
「そうだ、それはわかろう」
「だが陛下のお言葉は絶対だ」
 まさにだ。バルマーの者にとってはというのだ。
「だとすればだ。何としてもだ」
「そうか。だからだな」
「ここは通せぬ」
 どうしてもだと言ってだった。彼等はロンド=ベルの前に立つのだった。こうなってはだ。
 バランはだ。無念の声でこう言った。
「こうなってはわしはだ」
「あんたは下がっていてくれ」
 トウマがこうバランに告げる。
「いいな、ここは俺達が戦う」
「そう言うのか、トウマよ」
「あの霊帝には忠誠を抱いてるんだよな」
「無論、わしはバルマーの臣だ」
 だからこそだ。絶対だというのだ。
「そのわしが。どうして陛下の軍に」
「そういうことだよ。今は下がっていてくれ」
 こうバランに言うのである。
「わかってくれるか」
「わかった」
 バランも頷いた。そうしてだった。
 彼は今は戦場を離れた。ルリアもだ。
「姫様、それでは」
「戦いに巻き込まれるからだというのですね」
「はい、こうなっては仕方ありません」
「・・・・・・わかりました」
 こうしてだった。彼等も戦場から離れてだ。傍観者になるしかなかった。
 そしてだ。戦いがはじまろうとしていた。
「ナシムの子、地球人よ」
「どうしても。戦うか」
「そうだよ。悠久の時を越えて」
 こうゼンガーにも言うルアフだった。
「ゲペルとナシムの決着を着けよう」
「わかった。それではだ」
「総員出撃!」
「戦闘用意!」
 すぐに指示が出される。こうしてだった
 全員出撃する。そのうえでだった。
「くそっ、結局こうなるのかよ!」
「折角和平がなると思ったのに!」
「ここでもか!」
「ルアフ陛下」
 グローバルが最後にルアフに言った。
「残念ながらわれわれの会談は失敗に終わったようだ」
「その通りだね」
「だが」
「だが?」
「バルマー帝国の協力は得られずとも」
 それでもだというのである。
「我々はアポカリュプシスに屈するつもりはない」
「皆さん・・・・・・」
 アルマナはその言葉に心を見た。
「やはり貴方達は私が思った通りの」
「それでなのだが」
 ブライトもルアフに言う。
「ここはせめて」
「せめて?」
「我々がこの星を去ることを見逃してくれないだろうか」
「そうはいかないさ」
 ルアフは嘲笑するようにして返した。
「君達と僕が戦うのは定められた運命だからね」
「それでか」
「戦うっていうのか」
「絶対に」
「そうさ。ゲペルの子達よ」 
 また言うのだった。
「ナシムの子等を駆逐せよ」
「御意」
「それでは」
「ズフィルードの名の下に」
 こうしてだった。彼等は戦いに入るのだった。
 そのまま両軍は激しい戦いに入る。その中でだ。
「くっ、ズフィルードが八機かよ!」
「いつものことだけれど」
「これはなあ」
「辛いな」
「各個撃破です」
 カラスがその八機のズフィルードに苦戦する彼等に告げた。
「ここはそれです」
「一機一機倒していって」
「そのうえで」
「はい、そうです」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「ここはそれしかありません」
「唯一にして最良の方法」
「そうだっていうんですね」
「その通りです。では皆さん」
 こう言ってだった。実際にだ。
 ロンド=ベルはズフィルード一機一機に火力を集中させるのだった。その周りの敵は。
「これならだ!」
「どう!?」
 ギュネイとクェスがそれぞれファンネルを放つ。それでだった。
 バルマーのマシンをまとめて屠る。ファンネル達の動きはまさに生き物だった。
 そしてだ。周りの戦艦もだ。
「これでどうだ!」
 光がレイアースの剣を振り下ろさせる。まさに一刀両断だった。
 戦艦は腹から真っ二つになった。そうして爆沈していく。
 こうしてだ。ズフィルードにまで辿り着きだ。
 集中砲火を浴びせていく。それによってだ。
 一機、また一機と落としていく。その中でだ。
「くっ、おのれ!」
「我等を破るか!」
 ラオデキア達が忌々しげに言ってだ。撤退していく。
 彼等は次第にその数を減らしだ。遂にはだ。
 ジュデッカ=ゴッツォの巨大なズフィルードだけになった。人型のズフィルードだ。
 そのズフィルードでだ。ロンド=ベルに攻撃を仕掛けてくるのだ。
「では見せてもらおうか」
「俺達の戦いをか!」
「それをだって言うのね!」
「何故これまで我が国の軍を倒してこれたのか」
 彼が言うのはこのことだった。
「それを見せてもらおう」
「上等だ!」
「それならよ!」
「見せてやるぜ!」
 こう叫んでだ。彼等はだ。
 その巨大な、普通のそれの倍以上はある巨大なズフィルードに向かいだ。次々に攻撃を浴びせていく。しかしそのマシンはというと。
 幾ら攻撃を受けてもだ。倒れはしない。微動だいにしないのだった。
「強いな」
「何て耐久力なの?」
「これだけ攻撃を浴びせているのに」
「まだ倒れないなんて」
「生憎だが汝達ではだ」
 どうなのか。ジュデッカ=ゴッツォは言うのだった。
「余を倒すことはできはしない」
「そう言うんだね」
「そうだ」
 その通りだとだ、彼は万丈に対しても述べた。
「ならば汝ならそれを見せられるというのか」
「そうだね。やって見るよ」
 万丈は彼とそのマシンを見据えながら言ってみせた。
「それじゃあ今からね」
「では何をするつもりだ?」
「これだ、日輪の力を借りて!」
 その額に光を集めていく。そうしてだった。
「今必殺の!サンアタアアアアアアアアアアック!」
 こう叫び。さらにだ。
 その光をズフィルードに放つ。それで動きを止めた。 
 さらに跳びだ。両足を揃え。敵機に蹴りを入れたのだった。
「ダイタアアアアアアアアアンクラアアーーーーーーーーーッシュ!」
 この攻撃を受けてはだ。さしものズフィルードも。
 動きを止めた。そうしてだった。 
 ジュデッカ=ゴッツォもだ。忌々しげに言うのだった。
「くっ、まさかこうなるとは」
「脱出はできる筈だよ」
 その彼に告げる万丈だった。
「早く逃げるといいよ」
「情けをかけるつもりか」
「そう取ってもらってもいいさ。けれどね」
「けれど。何だ」
「少なくとも君達の命を取るつもりはないんだ」
 万丈はこうジュデッカ=ゴッツォに言うのである。
「そのつもりはないんだ」
「それは何故だ」
「確かに戦争さ。戦争は人が死ぬよ」
 万丈もだ。それは否定できなかった。
「けれどね」
「それでもか」
「不要な血を見る趣味はないんだ。だから速く脱出するといいよ」
「いいのだな。余はまた汝等の前に現れるぞ」
「そうしたらまた戦うまでさ。だからね」
「今は去れというのか」
「君がそうしたいのならね」
 こう言う万丈だった。そしてだ。
 ジュデッカ=ゴッツォもだ。頷いてこう返した。
「わかった。それではだ」
「脱出するんだね」
「そうだ。そしてだ」
「出て来るといいよ」
「陛下に指一本触れさせることはしない」
 それを言うのだった。
「すぐに現れよう」
 こうしてだった。彼も脱出するのだった。
 彼が脱出したその時にはだ。バルマー軍は全て倒していた。
「さて、あらためてな」
「霊帝と話をするか」
「向こうが受け入れてくれればだけれど」
「それでも」
 彼等は会見をまだ諦めてはいなかった。それで宮殿の前に集ろうとする。そして。
 アルマナもだ。こうルアフに言うのだった。
「陛下、戦いは終わりました」
「僕がまだいるよ」
「ですがここはです」
 ルアフに対して必死に言う。
「お考えを」
「変えよというのかい?」
「この銀河に生きているのはバルマーの者だけではありません」
 だからだというのだ。
「どうかここは」
「・・・・・・人が神に意見をするのかい」
 ここでルアフの言葉が変わった。そうしてだった。
 何かが起こった。そしてそれがだ。アルマナを襲うのだった。


第百十四話   完


                                       2011・4・14
  

 

第百十五話 霊帝ルアフ

              第百十五話 霊帝ルアフ
 アルマナを襲ったもの。それは。
 雷だった。それがアルマナが乗る戦艦を襲ったのだ。
「姫様!」
「アルマナ!」
「アルマナさん!」
「人間が神に意見をする」
 ルアフは落雷を落としたうえで言うのだった。
「あってはならないことなのさ」
「だからか!」
「だから今そうして!」
「アルマナさんを!」
「そうだよ」
 怒るロンド=ベルの面々にだ。平然として言うのだった。
「アルマナ、君は少し図に乗り過ぎたようだね」
「馬鹿な・・・・・・」
 バランはその落雷とルアフを見て唖然となっていた。
「陛下が姫様を」
「どうしだんだい、バラン」
「陛下!」
 バランはルアフに対して問うた。
「姫様はバルマーの希望ではなかったのですか!」
「アルマナを失おうとも」
 傲然な。そうした口調だった。
「代わりは幾らでもいるよ」
「代わりと仰いますか」
「この銀河に唯一無二な者」
 それは誰かというとだ。
「僕、ルアフだけだ」
「そんな・・・・・・」
「バラン、君も用済みだ」
 バランに対してもだ。こう言うのだった。
「ここで消えなよ」
「何て奴だ」
「とんでもねえこと言いやがる」
 これにはだ。ロンド=ベルの面々も唖然となった。
「あれだけ忠誠を尽くしたおっさんに」
「そんなことを言うなんて」
 しかもだ。ルアフの言葉はそれに終わらなかった。
 彼はだ。こうも言うのだった。
「シヴァーよってこの星から逃げ出した民も同様だ」
「自分の民までだっていうのかよ!」
「何十億の人達まで」
「そう言うなんて」
「アポカリュプシスに飲まれるがいい」
 こう言うのだ。
「僕はこの星に残りし者を守り」 
「そしてかよ!」
「どうするってんだ!」
「再びこのバルマーに銀河の覇道を歩ませよう」
「陛下!」
 たまりかねた様にだ。バランはまたルアフに問うた。
「陛下にとって民とは」
「民かい?」
「バルマーとは何なのです!?」
「僕の使命はバルマーの民を絶やさぬことだけだ」
 それだとだ。ルアフは答えるのだった。
「たった一人でも生き残らせれば僕の使命は果されたことになる」
「何十億が死のうともですか」
「一人一人の生死までは関知しないさ」
 こうだ。傲慢そのものの態度で言い放つのだった。
「兵も将も必要なら」
 それならばだというのだ。
「造ればいい」
「!?というと」
「やはりか」
「これまでのバルマーの将兵は」
「そうさ、そこにいる忠実な人形達の様にね」
 こうロンド=ベルの面々にも言う。
「七人のジュデッカ=ゴッツォ達は」
「あの七人はまさか」
「ジュデッカ=ゴッツォの」
「クローンだっていうのか」
「そうさ。クローンだよ」
 まさにだ。そうだというのだ。
「十二支族ジュデッカ=ゴッツォ家の主サルソ=ジュデッカ=ゴッツォね」
「そうか、オリジナルのラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォは」
「そうした意味でのオリジナル」
「最初に造られたあいつだったってのか!」
「それでか!」
「そう、人形なのだよ」
 こう言うルアフだった。
「僕のね」
「違う!」
 それを否定したのはだ。万丈だった。
「彼等は母星であるバルマーの為に力の限り戦ってきている!」
「そうだ!どのジュデッカ=ゴッツォもだ!」
「誰もが勇敢で忠誠を持っていた!」
「それを否定できるものか!」
「その魂は!」 
 どういったものか。戦ってきた彼等が最もよくわかっていた。
「人間と変わりない!」
「いや、あいつ等も人間だ!」
「人形なんかじゃない!」
「違うね」
 ルアフは彼等の今の言葉も否定した。
「所詮は造られた人形である以上」
「どうだっていうんだ!」
「それなら!」
「その生命になぞ意味はないよ」
 これがルアフの彼等への目だった。
「ただ僕の望むままに戦えばいいんだ」
「さっきから聞いていれば!」
「勝手なことばかり言ってくれる!」
「何が神だ!」
「神様だっていうんならな!」
「せめて信じている人達位守ってみせろ!」
「それが神様でしょ!」
 ロンド=ベルはルアフのその傲慢にだ。怒りを露わにさせた。
 そしてだ。彼等はここでわかったのだった。
「あの女の言ったっていうことってこれだったんだな」
「マーグさんが聞いたっていう」
「その言葉の意味が」
「今よくわかったぜ」
 それがだ。何かというとだ。
「人を人とも思わぬ傲慢さ」
「人の生命をものとしか見ない冷酷さ」
「人間の心を持たず全てを見下ろす」
「確かに神だ!」
 そうした意味での神だとわかったのだ。
「まさにな!」
「しかしな!」
 全員で言うのだった。
「俺達はそんな奴の!御前の!」
「その存在を認めない!」
「認めてたまるか!」
「御前は同じだ!」
 竜馬が叫んだ。
「地球のガンエデンだとだ!」
「むっ?」
「使命の前に真に大切にすべきものを忘れたな!」
「そうだ、欠陥品だ」
「なお悪いな!」
 隼人と弁慶も言う。
「御前はそれに過ぎない」
「あのガンエデンよりも遥かにタチが悪いだろうが!」
「そうだ、まだあのガンエデンは慈しみの心があった!」
 武蔵はそのことを指摘した。
「しかし御前にはそれがない!」
「僕がナシムの神子と同じというのか」
「尚悪いんだよ!」
 甲児も告げる。
「手前はな!」
「霊帝ルアフ!」
 タケルも告げる。
「御前に神を名乗る刺客はない!」
「貴方の様な人がいるから!」
 キラは彼を人と呼んだ。
「皆が不幸になるんだ!」
「ならば教えてあげるよ」
 ルアフはその彼等に対してだ。
「真の力を発揮したガンエデンの力を」
「じゃあ見せてみろ!」
「その神の力をね!」
「僕とゲペル=ガンエデンの力を!」
 こう言うとだ。何かが起こった。それは。
 サイコドライバーの共鳴だった。リュウセイがそれを受けて叫ぶ。
「なっ!これが!」
「霊帝の力か!」
 マイもリュウセイと同じく叫ぶ。
「まさかこれ程までとは」
「見ろ!」
 神宮寺が前を見て叫ぶ。
「あれは!」
「くっ、やっぱりいたのかよ!」
「バルマーにも!」
「あれが!」
 巨大な神が舞い降りた。それこそは。
「バラルの園で戦った」
「あのガンエデンがまた」
「バルマーのガンエデンか」
「あれが」
「そうさ」
 また言うルアフだった。
「これがゲペル=ガンエデン」
「ゲペル=ガンエデン」
「それがそのガンエデンの名前」
「そうなんだな」
「創世神ズフィルードの真の姿だ」
「あの姿」
 バランもそれを見て言う。
「わしもはじめて見させてもらう」
「へっ、名前が同じだけあってな!」
 豹馬が言う。
「地球のガンエデンとよく似てるぜ!」
「その通りだよ」
 神からだ。ルアフの声がした。
「地球のガンエデン」
「それとか」
「そのガンエデンが」
「ナシムとこのゲゲルは」
 どうかというのだ。
「同じ文明から生まれたものだからね」
「そうでしょうね」
 ミサトが鋭い目で応えた。
「察しはついていたわ」
「おや、もうだったのかい」
「地球とバルマー」
 ミサトは両者を一つにして放す。
「銀河の辺境と中心にありながら」
「そうだね。離れているのにね」
「この二つの星には共通項が多いわ」
 このことはだ。もうロンド=ベルの誰もがわかっていた。
「先史文明の遺産についても」
「あったよな、どれにも」
「地球とバルマーが同じ文明だって」
「それを裏付けるものが」
「かなり」
 それがどういったものかもだ。具体的に述べられる。
「二つのガンエデン」
「二つのクロスゲート、即ち刻印」
「二つの死海文書」
「それにアポカリュプシスの伝承」
「ここまであるから」
「そこから導き出される結論は一つ」
 ミサトの言葉が中心に入った。
「つまりそれは」
「その通りさ」
 ルアフ自身も言うのだった。
「わかっているね。ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「君達の結論には一つないものがあるよ」
 こう言うのである。
「確かに地球人とバルマー人はその祖は同じさ」
「この銀河において」
「確かに」
「そう、それにだよ」
 ルアフは言葉を続けていく。
「その口ぶりではね」
「口ぶり?」
「今度は何が言いたいんだ?」
「君達は本当に何も知らないんだね」
 こうだ。上から見下ろして言うのである。
「ナシムから言われてなかったんだね」
「あのガンエデンから」
「何も」
「そう、何もね」
 そうだというのである。
「知らされていなかったんだね」
「っていうとまだあるのか」
「今度は一体」
「何が」
「二体のガンエデンは地球で生まれたものなんだよ」
「まさか」
 それを聞いてだ。声をあげたのはダイテツだった。
「バルマーのガンエデンもまた」
「遥か過去」
 またルアフの言葉がはじまる。
「アポカリュプシスの前兆により」
「過去にもか」
「やはりあったのね」
「そう、それにより現存する人類の祖先は滅亡の危機に瀕した」
 そうなったというのだ。
「つまりそれは」
「俺達の祖先」
「プロトカルチャーと言われる種族」
「あの人達が」
「もっともその祖先もね」
 そのプロトカルチャー達もだというのだ。
「さrなる過去にね」
「えっ、もっと前にね」
「まだいたんだ」
「第一始祖民族と呼ばれる生命体により知性化されたそうだけれどね」
「プロトカルチャーの他にも」
「そのさらに過去にも」
「いたのかよ」
「死海文書も補完計画も」
 ルアフはそのことも熟知しているのだたt。
「そういった手段は全て彼等が残したものなのさ」
「その死海文書がどうしてだ?」
「地球とバルマーに」
「二つの星に」
「第一始祖民族の文化を受け継いだ彼等は」
 そのプロトカルチャーのことだ。
「この銀河のあらゆる場で繁栄を極め」
「それがか」
「あの遺跡か」
「そうなのね」
「そして徐々に自らの毒で滅びを招いていった」
 つまりだ。自滅だというのだ。
「その毒とは」
「楽すの遺跡にあったプロトカルチャー同士の戦い」
「それにゼントラーディの誕生」
「あとプロトデビルン」
「そういったものが」
「そんな醜い様に」
 ルアフはそれをそうだと断定して話していく。
「アカシックレコードはきっと絶望したんだろうね」
「その争う姿に」
「そして生物兵器を生み出す姿に」
「自分達が知恵を授けた生命体が互いに殺し合ってはね」
「そんなものを見たから」
「それで」
「!?待て」
 ここで言ったのはベスだった。
「アカシックレコード、イデの意思とは」
「おや、気付いたね」
「第一始祖民族」
「つまり第六文明人」
「あの連中こそが」
「イデだったっていうのかよ!」
「そう、彼等の意思の集合体」
 それこそがだと。ルアフは彼等に話す。
「それがイデなのさ」
「では生命体の知性化を行うゲッター線も」
「そして宇宙への旅立ちを促すビムラーも」
「他のあらゆる力は」
「それは」
「そしてアポカリュプシスの前兆が起こった」
 話はそこに戻った。
「もっともこの時は」
「その時は」
「その前兆は」
「見せしめの意味合いだったんだろうね」
 それに過ぎなかったというのだ。
「虚空からの破壊神」
「宇宙怪獣か」
「それもまた」
「アポカリュ于プシス」
「やはり」
「他の世界からの邪悪な意志」
「アル=イー=クイス等か」
 ロジャーがそれではと察した。
「あの者達か」
「彼等については知らないがね」
 ルアフはアル=イー=クイスについては知らないというのだった。
「他の世界とつなげるのもね」
「アポカリュプシスの一環」
「そうだったのか」
「しかし」
 ここでだ。彼等は話す。ただしルアフはその話を全く聞いていない。
「他のあらゆる世界も滅亡に瀕していた」
「この世界だけじゃなくて」
「それはどうしてなんだ?」
「他の世界からの侵略はわかるにしても」
「どの世界も崩壊しそうなんて」
「そんなことが有り得るのか」
「何故全部の世界が」
 このことに疑問を抱く。しかしルアフはそんなことは聞かずにだ。
 あらためてだ。ロンド=ベルの面々に話すのだった。
「そして隕石雨」
「そういったものによってか」
「地球に住んでいた御先祖様は」
「滅亡しそうになった」
「そうなのね」
「それに対して」
 ルアフはさらに話す。
「新たな種を育てそれを守るシステムを造り上げた」
「つまりそれこそが」
「ガンエデン」
「その二つのガンエデン」
「そうなるのか」
「もっともね」
 ルアフの話はここでまた続けられる。
「それだけじゃなくて」
「ガンエデンが唯一の策ではなく」
「その他にも」
「色々と」
「そう、巨大な宇宙船による地球脱出や」
 それもあったというのだ。
「第一始祖民族の遺した補完といった手段も講じていたようだね」
「じゃあこれまで見てきたものは」
「それが」
「あの海底の遺跡も」
「宇宙船だったのか」
「そうだったのね」
「その前兆で」
 どうなったのか。ルアフはこのことも話すのだった。
「人類の祖先はその九十九パーセント以上が失われたのさ」
「ほぼ全滅かあ」
「けれど僅かに残って」
「そうして」
「じゃあ俺達は」
 ここでまた気付いた彼等だった。
「その残り僅かの子孫か」
「そうなるのね」
「そしてそこから」
「ここまで増えた」
「そうだっていうのかよ」
「その直系もいるだろう?」
 ルアフはこのことも指摘した。
「確か地球では残った者達が」
「俺達のその祖先が」
「っていうと一体」
「直系とは」
「ある大陸に太陽の名を冠した帝国を築いたそうちゃないか」
「それがライディーンの」
 それを聞いてすぐに気付いた洸だった。
「そうだったのか」
「現存する多くの種族は」
 ルアフがまた言う。
「彼等の残した新たな種から生まれ」
「そうしてか」
「さらに」
「そう、育てられたのさ」
「俺達はガンエデンが育てた種の末裔」
「そうだったのか」
 このことまでだ。わかったのである。
「完成した二体のガンエデン」
「そのガンエデンが」
「一体どうなったんだ?」
 またルアフの話を聞く彼等だった。
「地球で生まれ」
「そうして」
「ゲベルとナシムは荒廃した地球を後にして」
 そうしたというのだ。
「新天地を目指し旅立った」
「じゃああのガンエデンは」
「一度地球を離れ」
「この星に来たんだ」
「バルマーに」
「そうさ。そしてね」
 さらにだ、どうなったかも話すルアフだった。
「彼等はこの星でバルマーの民を生み育てたんだ」
「そしてそれがか」
「創世なのね」
「バルマーの」
「そうさ。だからガンエデンは」
 どうなったのか。ルアフはさらに話す。
「創世神と呼ばれているのさ」
「そして今に至る」
「そうなんだ」
「数千年の時を経て」
 時間はだ。かなり長いものになった。
「この星にも人間が溢れ」
「そうしてか」
「そのうえで」
「失われた繁栄の時は徐々に取り戻しつつあった」
 そうなっていたというのだ。
「けれど」
「けれど!?」
「けれどっていうと」
「何かあったのかよ」
「そう、その頃に異変が起こったのさ」
 そうなったと話すルアフだった。
「愚かなことにナシムは」
「地球に帰ると言い出した」
「そんなところか」
「そうさ。まさに異変だね」
 ルアフは侮蔑した様に話す。
「我々の祖先の望郷の念がね」
「あのガンエデンにはあった」
「それでか」
「そうだそうね。けれどそうなっては仕方ないさ」
「あのガンエデンは地球に戻ってか」
「それでか」
 そのこともわかったのだった。
「ああなった」
「そうだったの」
「ナシムが地球へ帰還すると言い出したのさ」
 ルアフはその経緯についても話すのだった。
「ゲベルはナシムを見送った」
「それでか」
「あのガンエデンは地球に戻った」
「そうだったの」
「だが」
 ここでだ。ルアフの言葉が変わった。
「何時か二つの星が再び出会う為に」
「刻印か!」
 エイジがここで叫んだ。
「あれだというのか!」
「そう、ゲベルとナシムはお互いを結ぶ通路を作った」
 まさにだった。それが。
「わかるね、それは」
「クロスゲート!」
「グラドスの刻印か!」
「元々は第一始祖民族の遺産だった」
 今イデとなっている彼等のだという。
「人類の祖先はそれを利用していたようだね」
「それでか」
「そうしてなんだ」
「そのうえでか」
「ああして」
「そうだよ。それでね」
 ルアフはまた言った。
「ナシムはそれを使わず」
「それで銀河を横断した?」
「バルマーから地球まで」
「そうしたっていうの」
「その道中に地球の思い出を」
 その話にもなった。
「生き残った人類に伝えていったのさ」
「じゃあそれがか」
「伝承になって」
「それで地球は」
「色々な星に」
「そう、銀河に住む民にとって」
 その彼等にだというのだ。
「ある種特別な意味を持つようになったのさ」
「ゼントラーディの伝承だな」
 カムジンが言う。
「あのプロトカルチャーの星か」
「それなのね」
 ここで言ったのはレトラーデもだった。
「ガンエデンの言う地球の思い出」
「そしてゲベルは眠りについたんだ」
 ルアフの話がそこに戻った。ゲベルにだ。
「何時かナシムの子達がこの星に来ることを思いながら」
「この星、バルマーか」
「そういうことね」
「そう、自分と同じ力を持つ」
 それこそはだった。
「ナシムと雌雄を決する為に」
「!?待て」
「おかしいわね」
 ユングとカズミはルアフの今の言葉に眉を動かした。
「今の言葉は」
「一体どういう意味なのかしら」
「そうよ、ナシムのガンエデンは」
 それをノリコも言う。
「ただ地球に帰っただけじゃないの?」
「それがどうして」
「何時か戦うということになるのかしら」
 ユングとカズミはまた言った。
「話が合わないわ」
「それは」
「ガンエデンは惑星防衛システムだよ」
 ルアフが言うのはこのことだった。
「それは単体のものではなく」
「機動兵器」
「それではなく」
「そう、それに付随する全ての要素のことなんだ」
 それはだ。即ちだった。
「地球に帰ったナシムが己の戦力とした」
「あの三種類の僕か」
「鷲に鮫」
「それに豹」
「あの連中も」
「そう、それと移動要塞バラル」
 それもだというのだ。
「そしてこの星にあるのは」
「ネビーイームか」
「十二に」
「即ち地球自体がガンエデンシステムであり」
 そしてだった。さらにだ。
「このバルマー帝国自体もまたそうなのさ」
「ガンエデン」
「そうだっていうのか」
「その通り。これでわかったね」
「ナシムガンエデンが地球を守護する力として僕達の力を欲したように」
 マサトがそのルアフを見据えて言う。
「貴方もこの銀河を手中に収め」
「そうさ。力にするつもりさ」
「それでだったのか」
「さて、昔話は終わりだよ」
 ルアフはここで遂に話を終えたのだった。
「じゃあはじめようか」
「戦いを」
「それを」
「そう、運命によって定められた」
 それこそはだった。
「二つの星、二つの民の戦いを」
「嫌だとは言えないっていうんだな」
「ナシムを倒した君達は僕と戦う運命にある」
 こうリュウセイにも告げた。
「その証拠にね」
「この音か」
「これがガンエデンの」
「そう、ゲベルも言っているよ」
 他ならぬだ。彼自身がだというのだ。
「だからだよ。はじめよう」
「どうやら御前もだな」
 ハマーンがだ。そのルアフに対して言った。
「囚われているな」
「囚われている!?」
「そうだ、御前もだ」
 こうだ。ルアフに言うのである。
「私達は確かにそのナシムガンエデンを滅ぼした」
「君達自身が最もよくわかっていることだね」
「その時に私達はイルイを救い出した」
 ハマーンはこのことも告げた。
「ガンエデンに囚われていたな」
「ナシムに」
「御前もまた同じなのだ」
 見抜いていた。ルアフをだ。
「所詮はな」
「どういう意味だい?それは」
「御前もだ」
 ハマーンはルアフにさらに告げた。
「先史文明の遺したガンエデンシステムの妄執に取り憑かれているだけだ」
「何っ、僕が」
「その通りだ!」
 今度はカミーユが言う。
「御前はそうして戦っているだけだ!」
「それで神様を気取ってるだけなんだよ!」
 ジュドーも言った。
「御前も人形なんだな!」
「黙れ!」
 ルアフは彼等の言葉に激昂した。それでだった。
 雷をだ。ロンド=ベルに落とすのだった。
「くっ!」
「また雷か!」
「雷を落とすのは神だ!」
 その雷から言うのだった。
「僕は神!」
「神か!」
「それだっていうんだな!」
「そう、ゲベルガンエデンの神子!」
 それこそがだった。
「霊帝ルアフだ!」
「それなら聞いてやるぜ!」
 忍がそのルアフに言う。
「手前は神だっていうんならな!」
「どうだというんだ!」
「手前の国の人間は救わねえのかよ!」
「聞いていなかったのかい?」
 まただ。傲然とした態度に戻って言うルアフだった。
「このガンエデンがあれば」
「また新たな種族をか」
「創るっていうのかよ」
「それで」
「そう、だから民など必要ないのだよ」」
 これがルアフの言葉だった。
「僕とガンエデンがあればな」
「なっ、これが」
 ここまで聞いてだ。ルリアもバランもだ。
 唖然となった。そうして言うのだった。
「今日まで私達が信じていた」
「創世神だというのか」
「何ということ・・・・・・」
「ゆ、許せん!」
 バランのだ。義憤にだった。触れてしまっていた。
 それでだ。彼はルアフに問うのだった。
「ルアフ、答えよ!」
「僕を呼び捨てかい?民が」
「その民の言葉だ!」
 それだと言ってだ。バランはルアフに問うのだった。
「我等は御前にとって何なのだ!」
「言ったね。御前達の生死なぞ知ったことではないと」
 これがルアフの返答だった。
「それとも塵芥には僕の言葉が理解できないのかな」
「貴様っ!」
「許せねえ!」
 リュウセイもだ。激昂を見せる。
「こいつがバルマー戦役から続く戦いの元凶かよ!」
「それならだ!」
「倒す!」
「こいつだけは!」
「総員攻撃用意!」
 全員がだ。すぐに攻撃態勢に入った。
「あの神を倒せ!」
「傲慢な神を!」
「貴方だけは許せません!」
「絶対にだ!」
 クスハとブリットも言う。
「アルマナ姫を撃ち」
「そして御前とガンエデンの歪んだ使命の義正になった人達の為に!」
「ここは何としても!」
「御前を倒す!」
「滑稽だね」
 まだこう言うルアフだった。
「人間が神に挑むのかい」
「その通りですよ」
 何とだ。ここでだ。
 シュウが出て来た。ネオ=グランゾンと共にだ。
「霊帝ルアフ、その通りです」
「ネオ=グランゾン。シュウ=シラカワだね」
「はい、貴方が神ですか」
 冷笑を以ての言葉だった。
「そう仰るとは。これはまた」
「一つ言っておくよ」
 だがルアフはだ。彼とネオ=グランゾンを前にしてもその態度を変えない。
「僕の力はナシムの比ではないよ」
「彼女とはなのですね」
「そう、力尽くで神子と融合していたナシムとは違うよ」
 こう言うのである。
「僕とゲベルは完全に一つなのだから」
「それではです」
 シュウはだ。さらに前に出てルアフに告げた。
「私もまたお見せしましょう」
「そのネオ=グランゾンの力をかい?」
「かつて神を倒したこの力」
 ヴォルクルスのことに他ならない。
「お見せしましょう」
「おい、シュウ」
 マサキがそのシュウに対して言った。
「ここで出て来たのかよ」
「予想していましたか?」
「いや、もっと後だと思ってた」
 マサキは真顔でシュウに答えた。
「しかし手前が来たってことはあれか」
「はい、その時だと思いましたので」
 それでだと答えを返すシュウだった。
「私が。皆さんと共に戦うべき時だと」
「それで来たってんだな」
「左様です。それでなのですが」
「俺達とか」
「はい、共に戦わせてもらって宜しいでしょうか」
「断る理由はないさ」
 それはないと答えるマサキだった。
「今の手前はな」
「有り難うございます。それでは」
「しかし。知ってるんだな」
 マサキはシュウの参戦を受け入れてからだ。彼にあらためて問うのだった。
「俺達の目の前にいるこいつのことを」
「ガンエデンのことですか」
「ああ、知ってるな」
「知らないと言えば嘘になります」
 それを否定しないシュウだった。
「そういうことです」
「そうか。やっぱりな」
「その通りです。まずこの彼ですが」
 霊帝ルアフを一瞥して。そのうえでの言葉だった。
「どうということはありません」
「大した奴じゃねえっていうのか」
「彼は己がわかっていません」
 自分自身をだ。知らないというのだ。
「自惚れているだけの人間に過ぎません」
「僕は神だ」
 ルアフが顔を歪めさせシュウに反論する。
「それ以外の何者でもない」
「そうしたことを言う方はこれまで何人もいました」
 シュウは平然としてそのルアフに話す。
「ですがその誰もがです」
「誰もが。どうしたというのかな」
「御自身のことがわかっていませんでした」
 そうだったというのだ。
「何一つとしてです」
「それは僕もだというんだね」
「その通りです。貴方が絶対の神というのならです」
 シュウはルアフと対峙してだ。話していくのだった。
「私を倒せる筈です」
「君をかい?」
「そしてこのネオ=グランゾンをです」
 他ならぬだ。彼の乗るマシンをというのだ。
「倒せる筈です」
「造作もないことだね」
 これがルアフの返答だった。
「所詮君達にあるものは不完全なんだ」
「死海文書もだというのですね」
「そうさ。その証拠にナシムの子達は補完計画も冥王計画も失敗したじゃないか」
 このことを言うとだ。
 加持とマサトがだ。眉を顰めさせて言うのだった。
「ではこのバルマーの死海文書は」
「地球のものとは違う?」
「そうなるが」
「では向こうの死海文書は」
「さて、それにしても」
 ここでルアフはだ。バンプレイオスを見た。シュウを睨み据えながら。
「あのプロトカルチャーの歌は」
「何だ?俺にか」
「そうだよ、君にだよ」
 リュウセイに言うのであった。
「聴かせがいがあったようだね」
「どういうことだ」
「そこにジュデッカを操っていた裏切り者がいるね」
「私のことか」
「その通りだよ。君だよ」
 マイに対しての言葉だった。
「あれは巨人用の兵器としては有効だからね」
「ゼントラーディやメルトランディにか」
「そう、彼等にね」
 ルアフは今度はライに対して述べた。
「ユーゼフが彼女にプロトカルチャーの歌を聴かせてたんじゃないかな」
「やはり」
 アヤがここまで聞いて言った。
「帝国軍はプロトカルチャーの歌を知っていたのか」
「もっともね」
 ここでも傲慢を見せるルアフだった。
「ゲベル=ガンエデンがあれば歌等という不確かなものに頼る必要はないのだけれどね」
「さて、それはどうでしょうか」
 SRXチームの面々がルアフの言葉に激昂しようとする前にだ。
 シュウがだ。こう彼に言うのだった。
「それは」
「また君なのかい」
「それはこれかあはっきりとすることですが」
「聞くぞルアフ!」
 バランがルアフに問う。
「御前がわし等を導いてきたのは何だったのだ!」
「言うね、君も」
 ルアフは彼にも傲慢を見せる。
「神の意志を問うなんて偉くなったものだよ」
「答えよ。どういうことだ!」
「全ては大いなる意志」
 ルアフはこうバランに対して言う。
「まつろわぬ神の望みさ」
「まつろわぬ神!?」
「何だ、そりゃ」
「一体」
「そう言いましたか」
 一人だ。シュウだけが冷静だ。
「そこで」
「まさか君は」
「勿論」
 シュウの返答はこれだけだった。
 そしてだ。あらためてこう言うのであった。
「では。お話はこれまでということで」
「僕を倒すというのか」
「貴方を倒すことは実に容易です」
 シュウはその余裕をルアフに見せる。そうしてだ。
「まずは四機の魔装機神」
「俺達か」
「そしてヴァルシオーネ」
 次はリューネだった。
「そして私。六人で充分でしょう」
「六人で神である僕を倒すのかい?」
「そうです、六体の神がです」
 ガンエデンを倒すというのである。
「そうなります」
「戯言を。例え誰であろうとも」
「いや、やれるな」
「そうね」
 ここでだ。ヤンロンとリューネが言った。
「貴様を倒すことはだ」
「あたし達で充分だね」
「そうね。この程度の相手なら」
「どうということはないわ」
 テュッティとミオも続く。
「やれるわ」
「おつりが来るかもね」
「指一本触れることすらできないさ」
 ルアフだけはこう言う。
「君達にには」
「ああ、指一本触れなくてもな!」
 そのマサキの言葉だ。
「手前の倒し方は幾らでもあるんだよ!」
「言ってくれる。神に対して」
「ルアフ、手前は神じゃねえ!」
 マサキはルアフをこう一喝した。
「只の人間だ!」
「人間、この僕をそう呼ぶのか」
「ああ、手前のことが何もわかっちゃいねえ人間だ!」
 それだというのだ。
「それを今教えてやるぜ!」
「許さないぞ、最早!」
 ガンエデンの姿が変わった。あの竜の姿にだ。
 そしてそのうえでだ。マサキ達に炎を吐く。しかしだ。
「甘いですね」
「この程度な!」
 シュウもマサキも他の者達もだ。その炎はあっさりとかわした。そのうえで。
 一斉にだ。攻撃を放つのだった。
「火気、金に克し地を覆え!臨兵闘者皆列前行!」
「喰らいなっ!メビウスシェイド!」
「ロキの子、地を乱す者よ今こそ足かせから解き放ち我が敵を貪れ!」
「抜けば珠散る氷の刃!」
 四人がだ。一斉に攻撃を浴びせた。それでだ。
 神の身体が揺れた。大きくだ。
「なっ、まさか!?」
「そのまさかだ!」
「そう、指一本触れられないのは」
 マサキとシュウもだ。攻撃態勢に入りながら言う。
「手前だ!」
「それが今わかるのです」
「くっ、おのれ!」
「シュウ!」
「ええ、マサキ」
 そしてだ。最後はだ。
 二人が動きを合わせだ。そのうえでだ。
「いいですね、まずは私がです」
「縮退砲だな」
「それを浴びせます」
 ネオ=グランゾンのだ。最大の攻撃をだというのだ。
「そしてそれを浴びせてからです」
「俺がコスモノヴァでか」
「それで終わりです」
 ルアフがだ。倒れるというのだ。
「では。いいですね」
「ああ、わかったぜ!」
「それではです」
 ネオ=グランゾンにあの力が集りだ。そして。
「縮退砲、発射!」
「いっけえええええええーーーーーーーーーーっ!!コスモノヴァ!」
 黒い光と白い光が神を貫いた。それでだった。
 ガンエデンはだ。動きを止めたのだった。
「なっ、馬鹿な!」
「どうだ!」
「これが結果です」
「ガンエデンの力がこの程度である筈がないんだ!」
 こう叫ぶルアフだった。
「まさか、まさか!」
「ですからこれが結果です」
 またルアフに告げるシュウだった。
「私達の力を甘く見ないことです」
「くっ、こんな!」
「この世のお別れの言葉として覚えておいて下さい」
 シュウはそのルアフに告げた。
「神とはです」
「神とは?」
「人を見守り無限の慈愛を見せる存在です」
 それが神だというのだ。
「貴方は只の傲慢な神に過ぎません」
「傲慢な神、僕が」
「打倒されるべき存在でしかありません」
「シャピロの野郎と同じだぜ」
 今度は忍が言った。
「あいつとな!」
「あの小者と僕が同じだというのか」
「ポセイダルの方がいいのかい?」
 今度はレッシィが告げた。鋭い目で。
「どっちがいいんだい?」
「おのれ、僕をそこまで」
「さて、止めといきましょうか」
 シュウがだ。再び縮退砲を放ちにかかった。
「御覚悟を」
「こんな結果は認めない!」
 しかしだ。ルアフは言うのだった。
「僕は、僕はまだだ!」
「!?まさか」
「まだ戦うってのか!?」
「またここで!」
「いいでしょう。それならです」
 シュウはそのルアフに対して悠然と告げた。
「私は人を苦しませる趣味はありません」
「止めを刺すってんだな」
「最初からそのつもりでしたし」
 マサキに対しても答える彼だった。
「では。これで」
「くっ!こんな場所で!」
 ここでだ。ルアフはだ。
 突如として姿を消したのだった。ガンエデン諸共だ。
 それを見てだ。誰もが呆気に取られてしまった。
「なっ、逃げた!?」
「まさかと思うが」
「臣民を見捨てて」
「自分だけが」
「へっ、偉そうな口の割りにはな」
 イサムがその彼の有様を見て言う。
「往生際の悪い野郎だぜ!」
「しかしだ」
 ガルドがそのイサムに話す。
「このまま奴を逃がすとだ」
「左様、乱の火種が残る」
 メキルがそれを言う。
「それが厄介だ」
「じゃあ探さないと」
 アレンビーは早速周囲を見回しだした。
「何処にいるか」
「いや、感じる」
 ここで言ったのはマイだ。
「奴の念をだ」
「ということは」
「この近くにか」
「まだいるってのか」
「この星に」
「もう逃げる気力もない」
 宗介である。
「そういうことか」
「バラン殿、心当たりはないだろうか」
 レーツェルはすぐにバランに問うた。
「奴の逃げた先に」
「おそらくはだが」
 バランもレーツェルの言葉に応えて話す。
「ズフィルードの間だ」
「ズフィルードの間!?」
「っていうと一体」
「どうした場所なんだ?」
「はい、そこはです」
 ルリアがいぶかしみだした面々に話した。
「霊帝が瞑想する為の地下聖堂です」
「この宮殿のか」
「地下の」
「そこに」
「おそらくはだがな」
 バランがまた述べる。
「あ奴はそこに逃げた」
「それならだ」
「皆、行くか」
「その地下聖堂に」
「そして」
 それでだというのだ。
「バルマー戦役からの決着を」
「ここで」
「それでいいのですね」
 ヴィレッタは二人に尋ねた。
「バラン殿、ルリア殿」
「奴は神などではなかった」
 バランが苦い声で答えた。
「それどころか全ての元凶だった」
「もう我々にすがるものはありません」
 ルリアも言う。
「ならこの手で全ての決着を」
「わかったぜ、それじゃあな」
「今から一緒にな」
「行くか」
「はい」
 ルリアはロンド=ベルの面々に対して答えた。
「御願いします」
「待ってろよ霊帝!」
「御前とガンエデンによって引き起こされたこの戦いの決着を!」
「今ここで!」
「この手で終わらせる!」
 こうそれぞれ言ってであった。ロンド=ベルは宮殿に入った。そしてそこでだ。ルアフとの決着をつけるつもりだった。一連の戦いの。


第百十五話   完


                                         2011・4・19
    

 

第百十六話 壊れゆく人形達

            第百十六話 壊れゆく人形達
 ルアフは宮殿の中を逃げていた。
 身体がふらふらとしている。あちこちに傷を負っている。
 そうしてだ。呻きながら言うのだった。
「まさかゲベルガンエデンは僕を」
 よろめきつつ進みながらの言葉だった。
「力が」 
 そして言うのだった。
「力が抜けていく」
 言いながらもだ。地下聖堂へと進む。豪奢かつ壮麗な宮殿の中をだ。
 その彼の前にだ。彼女が現れたのだった。
「!」
「アルマナか」
「あの、陛下」
「生きていたのか」
「私も念者ですから」
 こう答えるアルマナだった。
「この位のことは」
「何故ここに来た」
「あの、陛下」
 傷を負っているルアフへの言葉だった。
「最早戦いの決着は着きました」
「いや、まだだ」
「ですから。もう何処かへと」
「落ち延びよというのか、僕に」
「あの方々も陛下がこの星を去られればです」
「そしてガンエデンを捨てればというんだね」
「はい」
 こくりと頷いてだ。霊帝に答えるのだった。
「ですから。もう」
「ズフィルードの巫女アルマナ=ティクヴァー」 
 しかしだ。ルアフは答えずにだ。
 彼女の名前を読んでだ。鋭い目になって言うのだった。
「御前の役目はだ」
「私の役目は」
「ズフィルードの力を維持する為に」
「ですからそれはもう」
「その魂を以て霊力を補充することだ」
 餌を見る目でだ。アルマナを見ながらの言葉だった。
「ならばアルマナ、御前のその魂」
「ひっ・・・・・・」
 怯えるアルマナを捕まえ。そうして。
「僕の為に使わせてもらおう」
 こうして聖堂に着いてだ。ルアフは何かの力を入れた。しかしだ。
「なっ・・・・・・」
「陛下!?」
「ま、間に合わないというのか」
 倒れ込みながらだ。言うルアフだった。
「力が、僕の力が抜けていく」
「これは一体」
「念を使い過ぎた様だな」
 ここで何者かの声がした。
「ルアフよ」
「貴様は」
「シヴァーか」
「如何にも」
 仮面の男だった。その男こそだ。
 シヴァー=ゴッツォだった。聖堂に彼が姿を現したのだった。
 彼はまずアルマナにだ。一礼してから述べるのだった。
「アルマナ姫もご健勝で何よりです」
「どうしてここに」
「シヴァー、貴様何故」
 ルアフは倒れ込みながらも彼に顔を向けて言った。
「ここに来たのだ」
「・・・・・・・・・」
 シヴァーはそのルアフに無言で歩み寄りだ。そうして。
 その身体を引き起こしてだ。思いきり殴り飛ばしたのだった。
「ぐはっ・・・・・・」
「無様だなルアフ」
 シヴァーは殴りつけたそのルアフに対して冷たく言った。
「これがバランの拳ならばだ」
「あの愚か者かい」
「貴様は血反吐を吐き息絶えていただろう」
「貴様・・・・・・」
「どうしたのだ、ルアフよ」
 シヴァーは冷たい怒りに満ちた目でそのルアフにまた言った。
「神ならばだ」
「そうだ、僕は神だ」
「その神の力でだ」
 また倒れ込んでしまったルアフを見下ろしながらの言葉だ。
「私に神罰を下してみよ」
「ならば・・・・・・うっ」
「できまい。その念を使い尽くした身体ではだ」
「おのれ・・・・・・」
「それは適わぬことだ」
「僕を、よくも」
「あの、シヴァー」
 アルマナがそのシヴァーに問うた。166
「これは一体」
「帝国の歴史の中で」
 シヴァーはそのアルマナに話すのだった。
「霊帝ルアフ、つまりはだ」
「今の」
「そうだ、今のガンエデンの神子が現れたのはだ」
 どうかというのだ」
「五百年前のことだ」
「えっ、そんな」
 それを聞いてだ。アルマナはだ。
 驚きの声をあげだ。シヴァーに問い返すのだった。
「霊帝ルアフはバルマー創世と共に誕生していたのでは」
「それは偽りの伝承だ」
「偽りの」
「全ては自らを神の位置に置く為に」
 そのルアフを見下ろしながらの言葉だ。
「このルアフが画策したことなのだ」
「そうだったのですか」
「そうだ、この男は神などではない」
 シヴァーはアルマナにそのことも話した。
「ただの」
「シヴァー、貴様」
 ルアフがそのシヴァーに対して問う。
「何を知った」
「何をか」
「そうだ、エツィーラとつるみ何を知った」
「このバルマーとガンエデンの全て」
 シヴァーはこう答えるのだった。
「そして」
「そして?」
「貴様が人間に過ぎないこともだ」
 それこそがだ。彼の言いたいことだった。
「全て知ったのだ」
「無礼な!」
 ルアフがシヴァーの今の言葉に怒りを見せる。
「僕は神だ」
「まだそう言うのか」
「ガンエデンの神子だぞ!」
「ならばだ」
 またルアフを殴るシヴァーだった。そのうえでの言葉だった。
「この老いた拳に何故屈する」
「うう・・・・・・」
「貴様が本物の神ならばだ」
 殴り続ける。そのうえでの言葉だった。
「貴様は人間として生まれ」
 言いながら殴っていくシヴァーだった。
「その念の力によってガンエデンに選ばれたに過ぎん」
「うう・・・・・・」
「では陛下は」
「何度も言うが人間だ」
 シヴァーはアルマナにも話した。
「所詮。同じ人間なのだ」
「では我々は」
「それよりもだ」
 シヴァーの言葉が変わっていた。その言葉は。
「わかるか、これが」
「シヴァー、貴方はまさか」
「私がどれだけの怒りと憎しみに耐え」
 ルアフを攻撃しながら言うのだった。
「今日という日を待っていたか!」
「うわあああああっ!!」
 ルアフを殴り続ける。また殴り飛ばした時にだ。
 アルマナがルアフの前に来てだ。彼を庇いながら言うのだった。
「止めなさい、シヴァー!」
「何をするか、アルマナ!」
「このままでは陛下は」
「そこをどくのだ!」
 これがシヴァーの返答だった。
「この男が神でないことはわかった筈だ!」
「しかしです!」
「しかし。何だ!」
「最早何の抵抗もできない人を尚も攻撃する」
 今のシヴァーを見ての言葉に他ならない。
「それが正しいのですか!」
「なら言おう!」
 シヴァーもだ。アルマナに激昂して返す。
「この男の名の下にだ!」
「これまでのことですか」
「そうだ、どれだけの臣民の血が流されたか」
 シヴァーが言うのはこのことだった。
「私はその悲劇の歴史を忘れはしない」
「これまでの戦いは」
「そうだ、帝国の繁栄を盾に」
 そしてだ。どうかというのだ。
「無意味な出兵や戦いを命じ」
「では今までのことは」
「守るべき筈の臣民に殉教を強いてきたものだ!」
 それがルアフのしてきたことだというのだ。
「それをしてきた者に!何が!」
「それは・・・・・・」
 ルアフが倒れ込みながらも言う。
「全ては」
「黙れルアフ!」
 またシヴァーがルアフを殴り飛ばした。彼の身体を掴んだうえでだ。
「貴様が虫けらの様に扱ってきた臣民達の前でその言葉が言えるのか!」
「僕は、か・・・・・・」
「御前は神などではない!」
 言う前にそれを否定した。
「御前は人間だ!」
「ば、馬鹿な。僕は」
「御前が神というならだ!」
 それはだ。何かというのだ。
「その傲慢さだけが正真正銘の神だ!」
「うう・・・・・・」
「私はだ!」
 シヴァーの怒りがさらに高まっていた。
「貴様を討つ為に自分の半生を費やしてきた!」
「それは何故なのですか」
「バルマーの為だ」
 これがアルマナへの返答だった。
「今こそこの男からバルマーを取り返す!」
「た、助けてくれ!」
 ルアフは這ってだ。そのうえで逃げようとする。
「僕を助けてくれ!」
「陛下・・・・・・」
「アルマナよ、見るがいい」
 シヴァーはその這ってでも逃げようとするルアフを指差しアルマナに告げた。
「この醜い姿をだ」
「今の陛下を」
「我等をたばかった偽りの神」
 その者こそがだ。
「霊帝ルアフの最期だ!」
「ゲベルよ!」
 ルアフは助けを求めだした。
「アウグストスよ!ズフィルードよ!」
 そういった者にだ。救いを求めていた。
「僕を助けて!僕を助けてくれえええっ!」
「消えろ、ルアフ!」
 シヴァーはそのルアフの背にだ。
 取り出した大剣を突き刺しだ。止めとしたのだった。
「これで終わりだっ!!」
「ああああ・・・・・・」
「これで終わったのだ」
 シヴァーはルアフが事切れるのを見届けてから言った。
「今からバルマーは過去からの支配を脱しだ」
「そうしてなのですね」
「新たな歴史を歩むのだ」
「ですが貴方は」
「私は。何だというのだ」
「それをするにはあまりにも」
 アルマナはさらに言おうとする。しかしだ。
 そこにだ。キャリコとスペクトラが来たのだ。彼等は素顔を晒している。
 そのうえでシヴァーの前に控えだ。こう言うのだった。
「閣下」
「ロンド=ベルが来ております」
「そうか。ルアフを追ってだな」
 それがどうしてか。シヴァーはすぐに察して述べた。
「それによってだな」
「おそらくは」
「それでかと」
「わかった。それではだ」
「迎撃の準備は既に完了しております」
「何時でも」
 二人はすぐにシヴァーに答えた。
「後は閣下の御命令だけです」
「それだけであります」
「キャリコ戦爵、スペクトラ戦爵」 
 アルマナは二人の素顔を見てだ。その目を驚かせていた。
 二人もそれに気付いてだ。彼女に言うのだった。
「姫、どうされました?」
「我々のことでしょうか」
「今の貴方達は」
「そうでしょう。今の私達はです」
「素顔なのですから」
 こう返す二人だった。
「驚かれるのも無理はありませんね」
「それは」
「申し訳ありません」
 アルマナは彼等に謝罪の言葉を述べた。
「それは」
「いえ、構いません」
「御気になさらずに」
 二人はそのアルマナに穏やかに返した。
「普段がそうでしたから」
「それも無理はありません」
「左様ですか」
「キャリコ、スペクトラ」
 シヴァーはその二人に指示を出した。
「御前達はエイスと共に奴等を迎え撃て」
「バルシェムの全軍を率いて」
「そのうえで、ですね」
「そうだ。そうして戦うのだ」
 そうしろというのである。
「私にはまだ時間が必要だ」
「了解しました」
「それでは」
 二人はこう応えた。そしてすぐにだった。
「私としましてもあの軍にはです」
「私もです」
 二人は同時に言うのだった。
「存在を許せぬ者がおりますので」
「戦わせて頂きます」
「存分に戦うがいい」
 シヴァーの彼等への言葉はハザルとは違っていた。
「戦い、勝利してだ」
「はい」
「そのうえで、ですね」
「そうだ。己の存在を確立せよ」
 こう告げるのだった。
「よいな」
「有り難き御言葉」
「それではその様に」
 一礼してからだ。二人はシヴァーの前から消えた。その二人を見送りながらだ。
 アルマナはだ。シヴァーを見て言うのだった。
「貴方は彼等を」
「人形に意味を与えることは生命を吹き込むことと同じだ」
 こうアルマナに答える彼だった。
「ハザルと同じだ」
「しかし貴方はハザルを」
「そのことについて答えるつもりはない」
 シヴァーはハザルについてはこう言うのだった。
「しかしだ。私はだ」
「どうだというのですか」
「私はそれをやったまでに過ぎない」
 キャリコとスペクトラ達のことに他ならない。
「そしてだ」
「あの方々ですか」
「霊帝ルアフを倒した今」
 どうかというのだ。
「後はこの星に降りた異物を排除する」
「では貴方もまた」
「全ては決められしこと」
 彼の中ではだった。
「そしてそれからはじまるのだ」
「貴方の言う新しいバルマーがだというのですね」
「そう。そして」
「そして?」
「アルマナ姫よ」
 彼女を見ての言葉だった。
「その為に力を貸してもらおう」
「貴方も。また」
 こうしてだった。シヴァーはアルマナを連れて何処かへと消えた。そしてその頃。
 ロンド=ベルは地下聖堂に来ていた。そこは。
「凄い場所だな」
「ああ、戦艦まで入られるなんてな」
「凄い場sとだな」
「しかも全部の戦艦が自由に動けるなんて」
「これがバルマー帝国の霊帝の宮殿か」
「そうなんだな」
「けれどよ」
「ここは」
 光竜と闇竜の声は曇っている。
「何か気持ち悪いわよ」
「不気味な場所です」
「センサーでは感知できない何かがです」
「この空間には存在しています」
「目にも見えないが」
「それでもここには」
 氷竜、炎竜、雷龍、風龍の言葉だ。
「聞こえませんし」
「匂いもありません」
「ですが間違いなく」
「この空間には」
「マイクも感じちゃってるもんね!」
 マイクも目を困らせている。
「ここ絶対にやばいもんね!」
「ああ、そうだな」
 ニュータイプのジュドーの言葉だ。
「ここには嫌な気が溜まってやがるぜ」
「表現しにくいですけれど」
 トビアもそれを感じ取っていた。
「ここには確かに」
「この感覚はあれだろ」
 忍の言葉だ。
「ムゲの時と同じだぜ」
「ムゲ=ゾルバトス帝国」
「あの時とか」
「そういえば確かに」
「この感触は」
「それだよな」
 誰もがだ。忍のその言葉に頷く。そうしてだ。
 沙羅がだ。言ったのである。
「この嫌な気配は本当にそうだね」
「ううん、嫌だなあ」
 雅人はあからさまに嫌悪を見せていた。
「あんな連中とまたなんて」
「全くだな」
 亮も同じ意見だった。
「できるなら断りたいがだ」
「生憎そうも言っていられん」
 アランの言葉だ。
「霊帝ルアフをここで倒さなければだ」
「そうですね。あの人は」
「放ってはおけない」
 キラとアスランも言う。
「またこの銀河で」
「戦いを起こしかねない」
「それでどうですか?」 
 カトルがマイに尋ねた。
「彼の気を感じますか?」
「いや、それが」
 だが、だ。マイの今の言葉はだ。
 今一つだ。要領を得ないものだった。
「この場に入ってから」
「何か変わったのですか?」
「念が途切れて」
「念が?」
「というと」
「何かあったのか、奴に」
 デュオとウーヒェイはそれを聞いて考える顔になった。
「死んだとかか?」
「かなりの傷だったが」
「そうですね。若しくは」
 シュウがここで言う。
「彼に」
「彼に?」
「というと」
「待て」
 皆シュウの言葉に顔を向けたところでだ。トロワが言った。
「誰かがいる」
「!?」
「誰だ?」
「ルアフか?」
 違った。それはだ。
 まずはあのマシンが出たのだった。
「ヴァイクラン!」
「というと」
「ハザル=ゴッツォのあのマシンに乗っているってことは」
「つまりは」
「そうだ、俺だ」
 エイスだった。仮面の男だった。
 彼が名乗りだ。そして。
 他のマシンも現れた。ゴラー=ゴレムだった。
「いたか」
「あんたもね」
 クォヴレーとセレーナは相手を見ていた。
「貴様もまた」
「ここで決着をつけるつもりなのね」
「そうだ、ここでだ」
「最後にさせてもらう」
 キャリコとスペクトラはそれぞれの相手に告げた。
「貴様との因縁」
「この場でだ」
「望むところだ」
「こっちもいい加減うんざりしていたしね」
 クォヴレーとセレーナも返す。
「この地下聖堂がだ」
「あんた達の墓場になるんだね」
「それはこちらの台詞だ」
「そのまま返させてもらおう」
 これが二人の返答だった。
「異空間ではそうはいかなかったが」
「ここでは違う」
「エイス=ゴッツォ!」
 ルリアは彼に問うた。
「シヴァー直属のゴラー=ゴラムは」
「何だというのだ」
「ルアフに叛旗を翻したのではなかったのか!」
「言うものだな」
「何っ!?」
「つい先程までは我等の陛下」
 エイスがここで言うのはルリアのルアフへの呼び方だった。
「しかし今ではルアフと呼び捨てか」
「奴のことがわかったからだ」
 こうエイスに返すルリアだった。
「あの男は。まさに」
「同じだ」
 エイスは今度はこう言うのだった。
「我等もだ。それは同じだ」
「同じ!?私と貴様等がか」
「そうだ。我等もまたあの男の正体がわかった」
 ルアフのだ。それがだというのだ。
「だからだ。こうしてだ」
「シヴァーに従うというのか」
「如何にも」
「それはわかった」
 大文字は彼等のその言葉は受けた。そのうえでだ。
 あらためてだ。エイスに問うのだった。
「ではエイス=ゴッツォよ」
「何だ」
「貴官等の目的は何だ」
 大文字がここで問うのはそのことだった。
「それはだ。一体何だ」
「多くは言わない」
 相変わらずだ。感情のない言葉だった。
「来い」
「戦うっていうのか」
「つまりは」
「そうだ」
 その通りだというのだ。
「そういうことだ」
「ちょっと待ってくれないかな」
 万丈がそのエイスに対して言った。
「僕達は霊帝ルアフを追ってここに来たんだ」
「それは知っている」
「そのルアフは」
 万丈は彼のヴァイクランを見据えながら話す。
「君達ゴラー=ゴラムにとっても敵じゃないのかな」
「敵の敵という訳か」
「味方とは言わないさ」
 万丈もだ。その考えはなかった。だがそれでも言うのだった。
「けれど。戦う必要はないんじゃないかな」
「確かにルアフは死んだ」
「そうか、死んだか」
「御前達が殺した」
「そういうことか」
 こう言いはしてもだ。ロンド=ベルの誰もがエイス達を責めなかった。
「自業自得か」
「当然の末路だよな」
「あんな奴はやっぱり」
「ああなるんだな」
「言っておこう」
 エイスがまたロンド=ベルの面々に話す。
「確かにルアフは我等の敵だった」
「しかし」
「俺達もか」
「そう言うのね」
「御前達も敵であることは同じだ」
 これがエイス達の考えだった。
「そしてだ」
「そして、か」
「あの男の命令か」
「シヴァー=ゴッツォの」
「俺が受けた命令はだ」
 それが何か。エイスは話した。
「ここで御前達を潰すことは」
「話は聞いた」
 フォッカーがそのエイスに言い返す。
「ただし何を考えているかは知らん」
「知ってもらうつもりはない」
「それならそれでいい」
 フォッカーもここでは多くを言わない。しかしだった。
 彼等は。あえてこうエイスに告げた。
「だが。俺達も進まねばならん!」
「では来い!」
「全軍攻撃用意だ」
 フォッカーが攻撃命令を出した。
「いいな、この戦いも勝つぞ」
「了解!」
「それなら!」
 こうしてだ。全軍出撃してだ。
 ゴラー=ゴラムとの戦いがはじまった。その最初にだ。
 エイスはだ。クスハを見て言うのだった。
「もう一人のサイコドライバー」
「何っ、一体」
「いい機会だ」
 こうクスハに言うのである。
「御前はスペアとして使わせてもらう」
「スペア!?」
「そうだ。閣下はだ」
 シヴァーのことをだ。言うのである。
「サイコドライバーを必要とされているからな」
「それを私に」
「そうだ。だからだ」
 それでだとだ。クスハに告げるのである。
「この戦いで捕らえだ」
「そんなことはさせない!」
 ブリットがそのエイスに言い返した。
「クスハは道具じゃない!」
「全ては閣下の為」
「ハザルも、あの男もそうだったというのか!」
「そうだ」
 感情は相変わらずない。その声でだ。ブリットに言うのである。
「役立たずの道具だった」
「あいつは確かに最低の奴だった!」
「許されないことをしてきました!」
 ブリットだけでなくクスハも言う。
「しかしあいつもだ!」
「父と思っていた相手に尽くしたというのに!」
「所詮は人形だ」
「その言葉、まだ言うか!」
「それならです!」
 二人はだ。同時にエイスに告げた。
「念の力を悪用とする貴様等を!」
「私達が討ちます!」
「そうだ、エイス=ゴッツォ!」
 一矢の言葉だ。
「人は愛によってだ!」
「愛か」
「そうだ、力を持ち誰かを守ろうと思う」
 まさにだ。一矢自身のことだ。
「そのうえで強い心を手に入れるんだ!」
「非生産的な話だな」
「そのことを知らない御前はだ!」
 エイスを見据えてだ。一矢は言うのだった。
「俺達に勝つことはできない!」
「ではそれが本当かどうか」
 エイスはまた言う。
「俺が証明してやろう」
「行こうクスハ!」
「ええ、ブリット君!」
 真龍虎王が前に出る。その中でだ。
 真虎龍王になりだ。ブリットが言う。
「この剣で御前を!」
「斬ります!」
 彼等の戦いがはじまった。そしてだ。
 リュウセイもだ。エイスを見据えて言っていた。
「確かにあいつは悪党だった」
「そうだな。最低のな」
「弁解できないまでにだ」
 ライとマイが彼の言葉に頷く。
「あの男はそれでもだ」
「戦士として戦った」
「それを馬鹿にすることはできねえ」
 リュウセイもだ。そのつもりはなかった。そしてだ。
 ゴラー=ゴレムの中に入りだ。彼等を倒しながら言う。
「この連中にも!俺は!」
「そうよ、リュウ絶対に」
「負けねえ!何があろうとも!」
「いいか、リュウ」
「ここでの最後の相手はだ」
「あの男よ」
「ああ、多分そうだな」
 リュウセイは仲間達の言葉に頷く。
「絶対に出て来るな」
「その時は御前に任せる」
 ヴィレッタはこうリュウセイに話した。
「頼んだぞ」
「了解、なら今は!」
 その剣に光を出してだ。ゴラー=ゴレム達を倒していくのだった。
 ロンド=ベルは全軍で彼等を倒していく。そしてだ。
 クォヴレーはやはりだ。彼と戦うのだった。
「貴様と俺、どちらが真なのかをだ」
「ここで確かにするというのだな」
「そうだ」
 これがキャリコの彼への言葉だった。
「その通りだ」
「そうだな。俺もそのつもりだ」
 キャリコもだ。彼に応えて言うのだった。
「俺は人形ではない」
「では何だというのだ」
「イングラム=プリスケンでもない」
 それも否定して言うのだった。
「それを確かにする為にだ」
「俺を倒してか」
「そうだ、俺は俺になるのだ」
「貴様にか」
「そうだ、今の俺はただの人形だ」
 実に忌々しげな言葉だった。
「だが、それがだ」
「俺を倒し」
「そうして俺自身になる」
 こう言ってだ。クォヴレーに攻撃を浴びせていく。
「その悪魔にも。俺は勝つのだ」
「悪魔か」
「そうだ、悪魔だ」
 そのだ。ディス=アストラナガンはそうだというのだ。
「その悪魔に俺は勝つのだ」
「悪魔ではない」
 クォヴレーはそのことを否定した。
「このマシンは悪魔ではない」
「では何だというのだ」
「かつては堕天使だった」
 アストラナガンのことに他ならない。
「しかし今は違う」
「悪魔でないなら何だ」
「ディス=アアストラナガンだ」
 それだというのだ。
「それ以外の何でもない」
「ふん、貴様もわからないのか」
「わかっていないのは貴様だ」
 キャリコのその攻撃をだ。剣で受けて言うのだ。
「貴様は何もわかっていない」
「わかっていないだと。俺が」
「そうだ。貴様と」
 そしてだというのだ。さらにだ。
「あの女もだ」
「あの女だと」
「そうだ、あの女もだ」
 スペクトラを見た。彼女はだ。
 セラーナと戦っていた。その彼女も言うのだった。
「私は貴様を倒しだ!」
「そしてだというのね」
「私になるのだ!」
 やはりだ。こう言うのだった。
「私自身になるのだ!」
「本当に同じこと言うわね」
「同じことだと?」
「そうよ。同じことをね」
 まさにだ。そうだというのだ。
「言うわね」
「キャリコというのかしら」
「そうよ。あいつと同じじゃない」
 セラーナが指摘するのはそのことだった。
「何もかもね」
「私達は人形」
 忌々しげにだ。スペクトラは言うのである。
「その私達が人形から人間になるには」
「私を倒さないといけないというのね」
「キャリコはあの男」
 クォヴレーのことに他ならない。
「そして私は」
「私だっていうのね」
「倒してやる」
 憎しみの言葉に他ならない。
「そして私になるのだ!」
「何か哀れになってきたわね」
「哀れにだというのか」
「そうよ、あんたがね」
 スペクトラを見ての言葉だ。その間にも攻防を繰り広げている。
 互いに剣を出し合いだ。受け合っての言葉だ。
「哀れになってきたわよ」
「私が哀れだというのか」
「そうよ。あんたは私がいないとあんたになれない」
「それはどういう意味だ!」
「言ったままよ!」
 こう返すセラーナだった。その攻撃を受けながらだ。
「あんたはそれでしかあんたになれないけれどね!」
「貴様はどうだというのだ!」
「私は私だけで私なのよ」
 それがだ。セラーナだというのだ。
「そこがあんたと違うのよ」
「何処が違う!私は人形から!」
「そう言うことが何よりの証拠よ!」
「まだ言うか!」
「何度でも言ってやるわよ!」
 言葉でも応酬を続けながらだ。戦う四人だった。そしてだ。
 その中でだ。他の面々もだ。
 ゴラー=ゴラム達と戦い続ける。その戦いは。
「何かこれまでと比べるとな」
「ああ、確かに個々は強いけれどな」
「それでもな」
「数が少ないから」
「まだ楽だな」
「数は力ですからねえ」
 アズラエルはクサナギの艦橋から素っ気無く言う。
「これまでの数は尋常じゃなかったですから」
「全くですよ。いやクサナギも」
 ユウナもアズラエルに続く。
「何度沈みかけたか」
「あの、それでユウナ様」
「それでなのですが」
 そのユウナにだ。トダカとキサカが声をかける。
「その都度騒がれるのはです」
「どうかと」
「いや、僕だってね」
「騒ぎたくはない」
「そう仰るのですか」
「そうだよ。騒ぐ趣味はないから」
 そうした趣味はだ。ないというのだ。
「騒ぎたくて騒ぐことはしないよ」
「昔からピンチになれば狼狽されますから」
「それで大騒ぎされて」
「癖なんだよねえ」
 普段は冷静なユウナであるがだ。それでもなのだ。
 危機になるとだ。こう騒ぐ彼なのだ。
「どうしてもね」
「その都度騒がしくなりますので」
「御気をつけ下さい」
「いや、わかってはいるんだよ」
 ユウナの言葉は言い訳そのものだった。
「それでもね」
「まあユウナさんが騒がないと」
 アズラエルはアズラエルで落ち着き過ぎである。
「何かしっくりいかないものがありますしね」
「貴方の場合は少し」
「落ち着き過ぎです」
 二人はこうアズラエルに話すのだった。
「何があっても動じられませんが」
「どういう心臓なのですか?」
「赤字決算を見れば心臓が止まりますよ」
 そうだというのである。
「それだけで」
「ううむ、赤字決算ですか」
「それですか」
「赤字決算ねえ」
 ユウナもそれについて言及するのだった。
「あれはもう見慣れたねえ」
「見慣れてるんですか」
「いや、あれなんですよ」
 ユウナは苦笑いと共にアズラエルに話す。
「オーブは今戦争が終わって復興中で」
「はい、全くです」
「その予算はもう」
 トダカとキサカも困った顔で話す。
「火の車ですから」
「困ったことに」
「いや、もう破綻寸前なんですよ」
 泣きながら笑って言うユウナであった。
「というか破綻してます」
「地球に帰ってからが大変ですね」
「先が思いやられます」
「国家元首もあれだしねえ」
 ユウナは余計なことも言った。
「いやあ、過労死が心配だよ」
「ユウナ様がおられなかったらオーブは」
「書類の仕事もまともな会談もできなくなりますし」
「いや、どうなるのか」
「心配です」
「おい、待て」
 カガリの声がしてきた。無論彼女も戦っている。
「何故そこで私が出るのだ」
「だから。カガリ経済とか財政とかわかるのかな」
「経済!?財政!?」
 いきなりだ。いぶかしむ言葉だった。
「何だ、それは」
「だからだよ。カガリは難しいことはわからないからね」
「それはどういう意味だ!」
 ユウナの今の言葉にだ。カガリは怒りの抗議の声をあげるのだった。
「私が馬鹿だというのか!」
「ええと、答えはね」
「言え!その答えは何だ!」
「シン君、答えてくれるかな」
「俺か」
「君は元オーブの市民だからね」
 それが理由だというのだ。答えるだ。
「だから頼めるかな」
「ああ、それじゃあな」
「うん、御願いするよ」
「わかったぜ。じゃあ答えるぜ」
 こう言って答えるシンだった。その解答は。
「こんな馬鹿いねえ!」
「それが答えか!」
「手前ちょっとは勉強しろ!小学校一年レベルの成績じゃねえか!」
「そこまで馬鹿ではないぞ!」
「馬鹿だろうが!」
 こう言い返すシンだった。
「この馬鹿!豆腐の頭に角打ちつけてろ!」
「そういう御前がそうなれ!」
「俺はアカデミー首席だ!」
「学業はどうだった!」
「実技が一番なんだよ!」
 こんな喧嘩をする二人であった。しかし言い合いながらもだ。
 戦いは続ける。そうして撃墜していくのだった。
 それを見てだ。ユウナはこんなことを言った。
「確かにカガリは頭はねえ」
「だが、というのですね」
「そうですね」
「うん。戦闘力は高いね」
 国家元首とはあまり関係のない能力はだというのだ。
「何だかんだでカリスマはあるし」
「はい。それはかなりあります」
「見事なまでに」
「国家元首としてはいいかな」
 それは認めるユウナだった。
「まあお婿さんも決まったしね」
「勇者がいますから」
「我々も安心できます」
「有り難う、アスラン君」
 彼であった。
「君のお陰でオーブは救われたよ」
「だから何で俺なんですか!」
 アスランは戦いながらコクピットから叫ぶ。
「何度も言いますけれどまだ俺はですね!」
「うん、地球から帰った時が楽しみだよ」
「まだ言われるんですか」
「まあその話は置いておいて」
 話が変わった。ここでだ。
 ユウナはだ。こんなことも言った。
「さて、戦いはね」
「そうですね。ここでの戦いも」
 アズラエルがユウナのその言葉に応える。
「いよいよ佳境ですね」
「はい、それじゃあ」
「残っている敵を一掃しましょう」
 アズラエルの今の言葉は素っ気無かった。
「これから」
「はい、それでは」
 こうしてだ。戦いはだ。
 掃討戦に入った。その中でだ。
 何機かディバリウムもあった。しかしどれもだ。 
 撃墜されてだ。残るはだ。
「御前だけだ!」
「やらせてもらいます!」
 ブリットとクスハがエイスに告げる。
「この戦いも」
「これで!」
「来い」
 彼等の戦いもだ。遂に最後の時を迎えていた。
 そしてだ。クォヴレーもだ。
 遂にだ。髪の色が変わった。
「貴様か」
「違う」
 こうキャリコに返す彼だった。
「何度も言うが俺はクォヴレー=ゴードンだ」
「またそう言うのか」
「何度でも言おう。しかしだ」
「しかし。何だ」
「因果律の番人だ」
 そのことは変わらないというのだ。そしてだ。
 その髪の色でだ。彼はキャリコに告げた。
「貴様も見るのだ」
「何っ!?」
「時の流れを。受けるのだ」 
 そしてだ。今それを放った。
「アインソフオウル!」
「あの攻撃か!」
「デッドエンドシュート!」
 世界が一変してだ。そうしてだ。
 ディス=アストラナガンから放たれた光がヴァルク=バアルを撃つ。そうしてだ。
 無数の赤い光の球が彼を覆い。そのうえで。
 魔法陣の中でだ。彼はその時代を迎えたのだった。
「うっ、まさか!」
「そのまさかだ」
 こう返すクォヴレーだった。
「貴様はこれで終わりだ」
「馬鹿な、俺は」
「一つ言っておく」
 クォヴレーはまだ起き上がろうとする彼にだ。こう告げたのである。
「貴様は既に人間だった」
「いや、俺は」
「その感情だ。それこそがだ」
「俺が。人間だと」
「その証だ」
 それだというのである。
「貴様は人形ではなかった。最初からだ」
「人間だったというのか」
「キャリコという人間だった」
 それだったというのである。
「そうだったのだ」
「では俺は。今まで」
「眠るのだ」
 また告げるクォヴレーだった。
「永遠にな」
「俺は、俺は・・・・・・」
 爆発の中に消えた。これでだ。
 キャリコは倒れた。それと同時にだ。
 スペクトラもだ。こうセラーナに言われていた。
「あんたともね!」
「何だというのだ」
「これで終わりよ!」
 一旦体当たりを仕掛ける。それによってだ。
 間合いを離した。そうしてだ。
「行かせてもらうわ!」
「くっ、まだだ!」
「こっちもね。悪いけれどね!」
 こう言ってだ。構えに入ってだ。
 舞いを舞う様にしてだ。ヴァルク=イシャーに向かいだ。
「いいわね、アルマ!」
「はい、セレーナ!」
 こう応えるエルマだった。そうしてだ。
「ここで終わらせないとね」
「それでいいんですね」
「仇を取るわ」
 スペクトラを見ての言葉だ。
「遂にね」
「長かったですね」
「そうね。随分と遠回りもしたわ」
 だがそれでもだというのだ。まさに人間の動きでだ。
「ルス=バイラリーナ=バリレ!」
「はい、あの技で!」
「こいつで!」
 一気に間合いを詰めた。そうしてだ。
「プリズムファントムモードエル!」
「ラジャー、アレグリアス!」
 二つの分身を放ち。そのうえでだ。
 切り刻み。最後に。
 大きく一閃した。それでだった。
「これで終わりね」
「ば、馬鹿な」
「あんたは。人として死ぬのよ」
「私が人間だというのか」
「あんたはそのことに気付かなかっただけよ」
 そのことを告げるのである。
「ただそれだけよ」
「私は、人間だったのか」
「証明できるわ」
「証明だと。そんなことが」
「あんたは私を憎んでだ」
 そのことを言うのである。
「人間は。憎しみという感情を持っているからよ」
「だから私は人間だったのか」
「そういうことよ。これでわかったわね」
「では、私は」
「アディオス」
 炎に包まれるスペクトラへの。別れの言葉だった。
「もう一人の私」
 最後は。振り切る様にして悲しみの言葉を言ってだ。そうしてだった。
 彼女も戦いを終えた。一つの戦いをだ。
 そしてブリットもだ。遂にだった。
「真虎龍王最大奥義!」
「ブリット君、あの技ね!」
「あの技で倒す!」
 こうクスハにも言う彼だった。
「いいな、クスハ!」
「ええ、ブリット君!」
 クスハもその言葉に頷く。
「虎王!」
 構え。全身に力をみなぎらせ。
「斬神陸甲剣!」
 ヴァイクランに突き進み。そうしてだった。
 大きく振り下ろす。そうしてだった。
 その一撃でだ。勝負を決めたのである。
 攻撃を受けたエイスはだ。沈黙していた。その彼にだ。
 ブリットが。こう告げた。
「勝負ありだ!」
「それに何の意味がある」
 だが、だ。エイスはこう返すのだった。
「貴様が勝ったことにだ」
「何っ!?」
「俺は命令に従い御前達と戦った」
 こうだ。機械的に言うのだ。
「そして」
「そしてだというのか」
「それに失敗した為生命活動を停止する」
「それだけだというのだ」
「そうだ」
 こう言うのである。仮面でだ。
「それだけの話だ」
「貴様はそれでいいのか!」
 ルリアがそのエイスに問う。
「生きる喜びも痛みも知らず!」
「俺はハザルとは違う」
 やはりだ。こう言うだけだった。
「俺の感情なぞない」
「ではもう」
「これで終わりだ」
 まるでだ。他者を評する言葉だった。
「完全にな」
 こうしてだった。ヴァイクランの爆発と共にだ。
 彼も消えたのだった。ゴラー=ゴレムは一人も残っていなかった。
 その戦場でだ。ルリアが言った。
「エイス=ゴッツォ、あの男は」
「最後まで機械であったか」
 バランも無念そうに言う。
「戦闘マシンであったか」
「思えば哀れなことですね」
「確かにな」
 バランはルリアのその言葉に頷く。その彼にだ。
 リュウセイがだ。こう言うのだった。
「けれどあいつだってな」
「その通りだ」
「あんな生き方を望んだ訳じゃねえんだ」
「わかるのだな、御主も」
「ああ、わかるさ」
 こうバランに返すリュウセイだった。
「わかるようになったさ」
「そういうことだな」
「そんな生き方しか教えられなかったんだ」
「奴もまた」
 バランは目を閉じて言った。
「シヴァーの犠牲者か」
「奴を許す訳にはいかねえ」
 リュウセイのその目に怒りが宿っていた。
「人の生命を弄ぶ様な奴は!」
「そしてシヴァーよ」
 バランはそこにいないシヴァーを見て言うのだった。
「今何を企む」
「やはりルアフの念は感じない」
 ここで言うマイだった。
「やはり。これは」
「そうだ」
 ここでだ。声がした。
「既に神は死んだのだ」
「貴様か!」
「如何にも」
 バランの問いにも応える。
「私だ」
「シヴァー、やはりここにいたか!」
「シヴァー=ゴッツォ!?」
「あの帝国宰相の」
「そして今回の戦いの黒幕」
「あいつが遂に」
「出て来るってのか」
 誰もがそのことに緊迫したものを感じた。そしてだ。
 洸がだ。こう言うのだった。
「この気配は」
「そうだ、念の力は感じねえ」
 リュウセイも言う。
「けれどこの気は」
「そうだな。俺達は前に会っている」
「あの男だ!」
 カミーユが叫ぶ。
「ユーゼス=ゴッツォか!」
「あの駒のことか」
 シヴァーはカミーユのその言葉に応えた。
「懐かしい名前だな」
「駒!?」
「ユーゼスを駒だというのか」
「あの男は私の細胞から造ったのだ」
 即ちだ。彼もだというのだ。
「私のクローンだった」
「だからか」
「似ているってのかよ」
「あいつと」
「野心を持っていたのは知っていた」
 シヴァーはそこまで見抜いていたのだ。
「バルマーを手に入れようとしているのはな」
「だからラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォを送り」
「そのうえで始末した」
「そういうことか」
「如何にも」
 こう答えるシヴァーだった。
「その通りだ。そしてだ」
「そして?」
「そしてというと」
「諸君等の来訪だが」
 話がそこに移った。
「それは心より歓迎しよう」
「好意だけでは言ってないわね」
 マリューがそれを聞いてすぐに言った。
「あの霊帝のことかしら」
「そうだ、諸君等の力があってこそ」
 それでだというのである。
「あの偽神を倒せたのだからな」
「あいつをか」
「まさか」
「そうだ。この国に巣食う偽の神はだ」
 シヴァーは己からそのことを話す。
「我が手によって滅んだ」
「己の主をか」
「自分達の支配者を」
「殺したってのか」
「何を驚くことがある」
 シヴァーは声をあげるロンド=ベルの面々に平然として告げた。
「諸君等も知っていた筈だ」
「ああ、手前があの霊帝を倒そうとしていたことはな」
「それは知っていたぜ」
「しかし」
「その手でか」
「自分達の神を」
 彼等が言うのはこのことだった。
「あの男は帝国の民にとって神だった筈だ」
「その威容の前にバルマーの者達は」
 どうなっていたか。そのことを話していく。
「心身の自由を奪われるまで萎縮していた」
「それなのに」
「自分の手で」
「奴は神などではない」
 このことをまた言うシヴァーだった。
「ただの人間だ」
「それはわかっていたが」
「それでもか」
「あいつを」
「只のガンエデンの神子として」
 シヴァーの話は続く。
「数百年の時を生きていたに過ぎん」
「それがあいつだったのか」
「霊帝ルアフ」
「そうした男だったのか」
「神の名の下に臣民の生命を弄んだ偽神」
 まさにだ。それだというのだ。
「それには当然の報いだ。違うか」
「そうか、死んだのか」
「地球とバルマーの因縁だった二つのガンエデン」
「その両方が」
「遂に」
「だとすると」
 そのことからだ。出される結論は。
「戦いは終わりなんだな」
「完全に」
「地球とバルマーの」
「それが」
「いえ、それはどうでしょうか」
 しかしだ。ここでシュウが言うのだった。
「では何故彼等は私達と戦ったのでしょうか」
「ゴラー=ゴラムね」
「はい、彼等です」 
 シュウはセニアの問いにすぐに答えた。
「何故彼等は私達と最後まで戦ったのでしょうか。それに」
「それに?」
「アルマナ姫は今何処にいるのでしょうか」
 シュウはそのことも話すのだった。
「あの方は一体何処に」
「そういえばだ」
 ルリアがここで言う。
「姫様はこの聖堂に向かわれたが」
「ということは」
「まさか、あいつが」
「今自分の手に持っている!?」
「そういうことか?」
「バルマーの巫女アルマナ=ディクヴァー」
 シヴァーもそのことについて話す。
「彼女はこれからのバルマーの覇道の為に力になってもらう」
「おい、待て!」
「じゃあ手前アルマナさんの力でか!」
「銀河を征服するっていうのか!」
「今の言葉はそうだな!」
「そう考えていいんだな!」
「その通りだ」
 シヴァーは彼等の問いに傲然として答えた。
「バルマーの栄光の歴史はだ」
「手前がか」
「創るっていうのかよ」
「私の手によって新たに創られるのだ」
 実際にその通りだと答えるシヴァーだった。
「先史文明の遺産さえも支配する新たな神の手でだ」
「シヴァー!」
 バランがそのシヴァーに対して言う。
「御前はその野望の為にか!」
「バランか」
「ルアフを殺すことを企みゴラー=ゴレムを組織したのか!」
「そうだ」
 その通りだとだ。シヴァーはかつての友に答えた。
「奴等は最後まで役に立ってくれた」
「ハザルはです」
 ルリアも言う。
「最後まで貴方を信じ貴方の為に戦ったのです」
「それを貴様は!」
 バランは怒っていた。明らかに。
「役に立ったの一言で済ますのか!」
「ハザルもエイスもだ」
 彼だけでなくだ。エイスもだというのだ。
「私が造った人造人間だ」
「それだけだと!」
「貴様は言い切るか!」
「その生き死にを決めるのは私だ」
 シヴァーの言葉は動かない。
「私が造ったのだからな」
「ではだ」
 バランは質問を変えた。
「ネビーイームを動かしたのも」
「あれも策だ
「我等がルアフと戦う為のか」
「そうだ、その為だ」
 その通りだというのだ。
「全てはな」
「では私を生かしておいたのも」
 今度はアヤがシヴァーに問う。
「それもまた」
「そうだ」
 また答えるシヴァーだった。
「諸君等に完全に力を発揮してもらう為にだ」
「その為に」
「したのだ。事実だ」
 リュウセイを見てだ。また話す。
「リュウセイ=ダテの能力は飛躍的な向上を見た」
「手前!」
「トロニウムまで渡ったのは誤算だったがな」
「話はわかったぜ」
 マサキがシヴァーを睨み据えながら言った。
「手前はルアフの位置に自分が取って代わろうっていうだけなんだな!」
「そうだニャ。どう考えても」
「そうとしか思えないニャぞ」
 クロとシロも言う。
「だからこいつは」
「ルアフと同じだぜ」
「違うな」
 それは否定するシヴァーだった。
「私はこの国を人間の手に取り戻す為に」
「あいつを倒した」
「そう言うのだな」
 リューネとヤンロンが言った。
「詭弁だけれどね」
「所詮はな」
「ただしだ」
 彼等の話は聞かずにだ。シヴァーはさらに言うのだった。
「帝国を栄華に導く新たな統治者」
「それがか」
「そいつは」
「新たな神」
 それがだ。誰かというとだ。
「それに相応しい唯一の人間は私なのだ」
「勝手な理屈を!」
 コスモがシヴァーに叫ぶ。
「誰が戦争を!流血を望むんだ!」
「人々に必要なものはだ」
 ゼクスも言う。
「栄光ではない。温かな平和だ!」
「それは君達には関係ないことだ」
 シヴァーはその彼等に告げた。
「バルマーのことは私が決める」
「御笑い草だな、これは!」
 エイジが忌々しげに返した。
「神様を倒した奴が今度は神様気取りかよ!」
「どうやらだ」
 クワトロは冷静だ。しかし言葉には怒りがあった。
「私達はまだ戦わなくてはならないようだ」
「シヴァー=ゴッツォ!」
 カミーユは叫んでいた。
「御前の野望でこの銀河にまた戦乱を起こさせはしない!」
「それが諸君等の返答か」
「その通りです!」
 レフィーナも強い言葉で返す。
「私達は貴方を!」
「やはりな」
 シヴァーはその言葉に返してきた。
「御前達に私の理想を理解するのは不可能か」
「理想って言うけれどね」
「どう聞いてもそれは」
「同じです」
 ティスにラリアー、デスピニスが言う。
「同じじゃない」
「あの男と」
「何が違うのです?」
「この宇宙はだ」
 だが、だ。シヴァーは言うのだった。
「統べる絶対の真理があるのだ」
「力だな!」
「あんたもそれを言うのね!」
「如何にも」
 秋水の兄妹にも答える。
「その摂理こそが全ての源だ」
「その力でか!」
「戦争をするだけじゃない!」
「それは違う」
 また言うシヴァーだった。
「その力でアポカリュプシスを押さえ」
 気付かないまま言うのであった。
「バルマーを繁栄に導く者」
「それがか!」
「あんただってんだな!」
「そうだ。この銀河を全てだ」
 シヴァーはそこまで見ていたのだった。
「新たなバルマーの神なのだ」
「シヴァー」
 バランがその彼に言う。
「御主は最早」
「バラン、聞いたな」
 シヴァーはバランに対しても言う。
「私は若き日の誓いをだ」
「果たしたというのか」
「そうだ、今」 
 こうバランに話すのである。
「この手でだ!」
「違うわ!」
 だが、だった。バランはだ。
 シヴァーを一喝してだ。こう告げたのである。
「シヴァー、貴様は道を誤ったわ!」
「何を言う、私は」
「貴様ならばだ!」
 バランは友としてだ。シヴァーに言うのだった。
「この星を真の意味で導けた!」
「そう言うのか」
「新たな歴史を、しかし今の貴様はだ!」
「既に言われていますが同じなのですよ」
 シュウも告げる。
「貴方が忌み嫌っていた彼と」
「ルアフとか」
「そう、そして」
「そして?」
「それ以上に危険な存在となっています」
 こうだ。今のシヴァーを看破してみせたのだ。
「そうなってしまっているのですよ」
「ではどうするというのだ」
「答えは決まっています」
 シュウは悠然と答えた。
「おわかりですね」
「俺達は銀河の未来の為にな!」
 マサキが言うのだった。
「手前を倒す!」
「それが答えか」
「あんたの手下はもういないよ!」
「最早御前一人だ」
 リューネとヤンロンも告げる。
「とはいってもここまで来たらね」
「退くつもりはないな、そちらも」
「私とてだ」
 シヴァーが彼等に応えて話す。
「諸君等を倒さずして覇道を歩めるとは思ってはいない」
「ならばここで!」
「やっつけてあげるわよ!」
 テュッティとミオも告げる。
「第二の霊帝ルアフ!」
「それ以外の何でもないから!」
「今の私には二つのものがある」
 その彼等にだ。シヴァーは告げるのである。
「神の器と神の巫女がだ」
「姫様!」
「おのれシヴァー!」
 ルリアとバランがまた彼に問う。
「姫様を捕らえたまま!」
「どうするつもりだ!」
「来るのだ」
 シヴァーは言う。
「今ここに」
「来る!」
「あれがか!」
 再びだ。あの神が姿を現そうとしていた。バルマーての戦いはだ。再び佳境に入ろうとしていた。新たな神との戦いがだ。はじまろうとしていたのだ。


第百十六話   完


                                         2011・4・25
    

 

第百十七話 まつろわぬ神

                  第百十七話 まつろわぬ神
 シヴァーは言う。
「さあ来るのだ」
「来るってのか!」
「またあいつが!」
「ゲベルよ!」
 シヴァーがその名を呼ぶとであった。再びだった。
 ゲベル=ガンエデンが姿を現した。そのうえであった。
 シヴァーは入り込む様にその中に入りだ。そうして言うのだった。
「では。新たな世界のはじまりだ」
「ああ、今度こそな!」
「バルマーとの戦いも終わりだ!」
「遂にね!」
「しかし。どうしてなのかしら」
 セツコがここでこう言った。
「彼には念動力はない筈なのに」
「そのことだが」
 シヴァーはそのセツコの言葉に答える。
「ユーゼス=ゴッツォのデータによってだ」
「あいつかよ!」
「手前のクローン!」
「あの糞野郎か!」
 ユーゼスを知る者達が忌々しげに言う。
「あいつと!」
「関係あるってのかよ!」
「奴の残したデータの中にだ」
 それが何かというのである。
「強念者を制御する方法もあったのだ」
「それで」
 ウッソはここで気付いた。
「貴方はアルマナ姫を」
「そうだ。アルマナはだ」
 今どうなっているかというとだった。
「今ゲベルを制御するコアとなっているのだ」
「やっぱりな!」
「それであの姫様をか!」
「捕まえてそして!」
「利用してるってのか!」
「この強念の力によって」
 それによってだというのだ。
「因果律を操り運命さえ統べ」
「そしてかよ!」
「手前はなるのか!」
「神に!」
「そうだ、この世界の神」
 まさにだ。それだというのだ。
「私はそれになるのだ!」
「ガンエデンはだ」
 今告げたのはキョウスケだった。
「戦うことを悔いた俺達の祖先達がだ!」
「そうだというのだ」
「平和への祈りを込めて造ったものだ」
「それを貴方は!」
「己の覇道の為に使うというのですね!」
 ラトゥーニとシャインはそのことを責める。
「それは絶対に」
「間違っています!」
「そう、平和の為にだ」
 だがシヴァーはまだ言う。
「このガンエデンを駆るのだ」
「いい加減屁理屈だな」
「全くだね」
 アハマドとシモーヌが忌々しげに言い捨てた。
「何を言われてもだ」
「己を曲げなくなっているわね」
「何もかもが同じだな」
「そうだな」
 刹那の言葉に宗介が頷く。
「あの男とな」
「霊帝とだ」
「力と平和と繁栄を手に入れるのだ!」
「ああ、もう飽きる程聞いたぜ!」
 今叫んだのはエドだった。
「遺言はもういいな!」
「これで終わらせます」
 デメクサも今は怒りを見せている。
「貴方は。ここで」
「総員攻撃開始です」
 エレが告げた。
「攻撃目標は」
「あのガンエデンですね」
 リムルも意を決している。
「そしてアルマナ王女を救い出しましょう」
「いいな!絶対に助け出すぞ!」
 霧生が言った。
「あの姫様を!」
「そして。いいわね」
 プロフェッサーも意を決していた。
「自分達の力でアポカリュプシスに向かうわ」
「貴方は間違えたのです」
 ラクスは悲しい声で彼に告げた。
「目的の為に人の心を失いました」
「僕達は戦う!」
 キラも言った。
「自分達の力で!」
「御前ともアポカリュプシスともな!」
 アルトも決めていた。
「そして勝つ!」
「では来るのだ、ロンド=ベルよ」
 シヴァーは圧倒的な気を発しながら告げた。
「そして雌雄を決するのだ」
「何度も言うが遺言は聞いた」
 テムジンは一言だった。
「その機能を停止させてやる」
「見てろ、手前を倒してな!」
 リュウセイが燃え上がっている。
「アルマナ姫を救い出してやる!」
「そうしたければ来い・・・・・・!」
「ああ、行ってやらあ!」
 こうしてだ。ガンエデンとの戦いが再びはじまった。早速だった。
 激しい死闘が展開された。ロンド=ベルは全軍で向かう。しかしだ。ガンエデンの強さは。
 炎を吐き光を発してだ。彼等を全く寄せ付けない。それは。
「なっ、この強さ!」
「霊帝の時以上!」
「何て強さだ!」
「こんなに強いなんて!」
「私が戦う理由はだ」
 何かというのをだ。シヴァーは戦いながら話す。
 神は戦場を舞う。そうしてロンド=ベルの面々を圧倒しながらの言葉だった。
「民に平和と反映をもたらす為にだ」
「その為にどれだけの人が死んだ!」
 コウは攻撃を浴びせながら糾弾した。
「これからもその人達を増やすのか!」
「すべては新しいバルマーの為」
 シヴァーの言葉は変わらない。
「彼等も浮かばれよう」
「その歪んだ考えこそだ!」
「あんたは統治者失格っていう何よりも証なんだよ!」
 カミーユとジュドーが責める。
「シヴァー=ゴッツォ!貴様は!」
「何もかわっていねえんだよ!」
「力こそがだ」
 だがシヴァーは彼等に炎、竜の口からの炎を浴びせながら言う。
「摂理だ。それがわからないのか」
「何度言ってもわからぬか!」
 バランがそのガンエデンにハンマーを振り下ろす。
「シヴァー、貴様は!」
「私と御前は同じ志だったな」
 そのバランを見てだ。シヴァーは言うのだった。
「しかし進むべき道が違ったな」
「貴様が誤ったのだ!」
「結果として御前は異星人と手を結び」
 シヴァーは彼に話す。
「私は偽神ルアフを倒す道を選んだ」
「シヴァー、御主」
「それだけのことだな」
「何故だ、何故道を誤ったのだ」
 バランは表情を咎めるものにして。シヴァーに問うた。
「御主は何故」
「話は終わりだ。バランよ」
 その鉄球を受けながら。バランに言うのだった。
「貴様もバルマーの平和を願うならばだ」
「それならばというか!」
「そうだ、己を貫くのだ」
 まさにだ。そうしろというのである。
「あの若き日の様にだ」
「ならばシヴァーよ!」
 再び鉄球を構えてだ。バランは叫ぶ。
「このバルマーの為に砕け散るがいい!」
「来るのだ。友よ」
 シヴァーも退かない。
「貴様が正しいのならだ」
「御主を倒せというのか!」
「そうだ、そうして示すのだ」
 これがシヴァーの今の言葉だった。
「そのことをだ」
「よかろう!」
 バランも受けて立つ。
「では見せようぞ!わしが正しいか!」
「私が正しいか」
「今それを見せる!」
 こう言い合いだった。彼等も戦う。そしてだ。
 リュウセイもだった。シヴァーに対して言うのだった。
「シヴァー!」
「リュウセイ=ダテか」
「ハザルはな!」
 彼のことをだ。シヴァーに言うのである。
「最後まで手前を信じてたんだぞ!」
「そうだ、そしてだ!」
 ライもそれを言う。
「そのうえで最後まで戦った!」
「確かにあいつは最低の野郎だった!」
 そのことは否定しなかった。
「だがそれでもな!」
「あいつは最後の最後までその信念の下に戦った」
「それについて何も思わねえのか!」
「あの男も唯の駒だったというのか!」
「如何にも」
 その通りだと答えるシヴァーだった。
「あの男を造ったのは私だ」
「我が子と偽ってか!」
 バランもそのことを責める。
「あの坊を最初からそれと見なしていたのか!」
「所詮はその程度だったのだ」 
 彼等と戦いながらだ。シヴァーは言うのである。
「あの男もまた、だ」
「エイスもか!」
 マイは彼について問うた。
「そして他のゴラー=ゴレムもか!」
「全て同じだ」
 やはりこう言う彼だった。
「私の駒に過ぎなかったのだ!」
「その考え!」
 アヤがその考えをだ。全て否定した。
「その考えこそが!」
「傲慢!」
 ゼンガーはそれだと断定した。
「それ以外の何ものでもあらず!」
「ああ、ハザルはハザルで必死に戦ったんだ!」
「その信じるものの為に!」
 アラドとゼオラもそのことを言う。
「そのあいつを裏切り!」
「そのうえで使い捨てにした貴女は!」
「許せねえ!」
「何があっても!」
 こう話してだった。彼等もだ。
 ガンエデンに攻撃を浴びせる。まさに集中攻撃だった。
 その攻撃を浴びせる中でだった。シヴァーは。
 次第にダメージを受けていった。それを見てだ。
 リーがだ。鋭い目で言った。
「効いているな」
「効果ありですか?」
「確かに」
「そうだ、出ている」
 それはだ。間違いないというのだ。
「ガンエデンとて絶対ではないのだ」
「じゃあこのまま」
「倒せる?」
「あのガンエデンもまた」
「倒せる」
「ここで」
「ああ、やれる!」
 今度はリュウセイが叫ぶ。
「このままな!」
「よいかリュウセイよ!」
 バランが彼に言う。
「ここでだ」
「ああ、わかってるさ」
「次の一撃で決めるのだ」
 こう言うのである。
「よいな、それではだ」
「ああ、ライ!」
「わかっている!」
「マイ!」
「決めるぞリュウ!」
「アヤ!」
「そうね、これで!」
 三人もリュウセイに応える。そしてだ。
 ヴィレッタもだ。リュウセイに対して言うのだった。
「いいな、今はだ」
「五人で」
「そうだ、私達五人の力で終わらせる」
 そうするというのだ。
「この戦いをだ」
「わかった!それならあれか!」
「そうだ、今こそだ!」
「あれで決めてやる!」
「行くぞ!」
 R-GUNが文字通り銃になった。そしてだ。
 その銃がバンプレイオスに持たれ。そうして。
「撃て!」
「ああ、撃つさ!」
 こう返すリュウセイだった。そしてだ。
 シヴァーのガンエデンに照準を定めた。そのうえで。
「終わりだシヴァー=ゴッツォ!」
「この一撃で!」
「終わらせる!」
「地球とバルマーの戦い!」
「その戦いがだ!」
 五人が同時に叫びだった。そのうえでだ。
 リュウセイはそのトリガーに指を置きだ。引きながら叫んだ。
「天上天下一撃必殺砲!受けろーーーーーーーーーーっ!!」
 今まさにその一撃が放たれだ。そうしてだった。
 ガンエデンを貫いた。その一撃を受けてだ。
 遂に神は動きを止めた。この神もだ。
「よし、やった!」
「これで!」
「終わった!」
「シヴァー、手前の野望も!」
「バルマーの戦いの歴史も!」
「終わったんだ!」
 誰もが叫ぶ。今その勝利を確信した。
 しかしだ。その時だった。
 不意にだ。聖堂がだ。大きく揺れだしたのだ。
「自身!?」
「まさかと思うが」
「いや、自爆か!?」
「何だ?」
「地上からですね」
 ここでシュウが言った。
「おそらくこれは」
「隕石雨ね」
 それだとセニアが話す。
「これは」
「そうです。それもこれまでになく大量のものです」
「どうやらだ」
 ガンエデンは墜ちていた。その中からだ。
 シヴァーが言うのだった。その仮面は割れだ。
 素顔が見えていた。白髪の初老の男だった。理知を窺わせる顔だ。
 その彼がだ。こう言うのだった。
「間に合わなかったな」
「シヴァー、御主素顔を」
 バランはその顔を見て驚きの声をあげた。
「出すのか」
「そうだ。それはだ」
「何故仮面をしていた」
 バランはそのこと自体から尋ねた。
「そもそもだ」
「我が大願」
 シヴァーもバランに対して話す。
「それを果たすまでは偽りの仮面を被り続けるつもりだった」
「バルマーを救うことか」
「そうだ、そうするつもりだった」
 こう友に話すのだった。
「だがそれももう終わりだ」
「シヴァー、御主」
「第一始祖民族の意思にはこの崇高な戦いもだ」
「イデか!」
 コスモがそれを聞いて言った。
「あの意思がか!」
「そうだ、あの意思はだ」
 どうかというのだ。
「この崇高な戦いも唯の醜い争いにしか映らなかったのだろう」
「随分とロマンチストだな。あんたは」
「全くよね」
 真吾とレミーが今のシヴァーの言葉に話す。
「戦争に崇高だの醜いだのってな」
「キザって言うかね」
「そんなこと言っても結局はな」
 キリーも言う。
「命の取り合いだからな」
「貴様程の男なら」
 ジェイも告げた。
「戦い以外の手段でこの星を導けた筈だ」
「そうやもな。しかしだ」
「しかしか」
「それももう遅い」
 こう言うシヴァーだった。
「最早な。そしてだ」
「そして。何だ」
「最早戦いは終わった」
 こう言ってだ。墜ちたガンエデンからだ。
 アルマナを出しだ。ルリアに送ったのだった。
 アルマナは光に包まれその中で眠っている。その彼女を受け取りだ。
「姫様、御無事で」
「行くがいい、バルマーの巫女よ」
 シヴァーはアルマナに対して告げた。
「その力、銀河の為に」
「シヴァー殿、貴女は」
「そして願わくばバルマーの民にもその加護を」
 こう告げたのを聞いてだ。バサラは言った。
「あんたの歌、確かに聴いたぜ」
「美だ」
 ガビルもだ。今はそれしか言えなかった。
「まさに美だった」
「シヴァー、御主は」
「さらばだ、バラン」
 友への最後の言葉だった。
「後は頼んだ」
「うむ、それではな」
「貴殿はこの星を救えたかも知れない」
 レーツェルも言葉を出した。
「だが。それでもだ」
「心無き力、それは」
 ゼンガーも言う。
「暴力でしかないのだ」
「共に生きる想いがあれば」
 ダイテツも今は沈痛な声だ。
「違う結末だっただろう」
「さらば、最後のガンエデン」
 ヴィレッタが告げる。
「これで完全に終わった」
「俺達はこれからは」
 リュウセイもだ。まるで鎮魂するかの如き顔だった。
「俺達の力で未来を切り開くんだ」
「その前に何があろうとも」
 トウマも言う。
「そうしていくんだ」
「では皆さん」
 シュウが最後に言う。
「この聖堂から去りましょう」
「ああ、それじゃあ」
「俺達はこれで」
「バルマーからも」
 こうしてだ。彼等は聖堂から去るのだった。そしてだ。
 その壊れゆく聖堂の中でだった。彼が出て来たのだ。
「どうやら」
 彼は言うのだった。龍の頭上から。
「僕のアシストも少しは役に立ったかな」
 こう言ってだ。そしてだった。
「霊帝ルアフ、それにシヴァー=ゴッツォ」
 彼等の名前も出す。
「まつろわぬ神は君達を見捨てた様だね」
 こう言ってだ。彼もそこから消えるのだった。
 そしてだ。地上に出たロンド=ベルは。
 隕石雨の中にいた。その状況は。
「だ、駄目だ!」
「このままではこの星が」
「持たないぞ!」
「早く脱出だ!」
「待って下さい!」
 ここでラクスが言う。
「まだこの星の人達が」
「えっ、いるのか!?」
「まさか」
「どうやら」
 このことにだ。ラクスは気付いたのだ。
「まだ残っているようです」
「くっ、ならばだ!」
 ベスがそれを聞いてすぐに言った。
「彼等も助けないと!」
「けれどこのままじゃ!」
「こっちも!」
「しかし、それでもだ!」
 ベスは既に決意していた。
「助けを必要とする人達は」
「その通りだ」
 大文字も言う、
「彼等を放っておくことは許されない!」
「各艦発進!」
 ブライトも指示を出した。
「可能な限りの人々を収容する!」
「了解です!」
「わかりました!」
 皆ブライトのその言葉に頷く。
「それならすぐに」
「できるだけ多くの人達を」
「その後の離脱は」
 ブライトはそのことも話した。
「各艦の判断に任せる!」
「よし!全員助けるぞ!」
「急げ!」
 皆それに動こうとする。だがここでだった。
 突如としてだ。何かが来た。それは。
「帝国軍!」
「くっ、こんなところで!」
「しかし!」
 それでもだった。今はだ。
「連中とことを構えている余裕はない!」
「それなら今は!」
「早くバルマーの市民達を!」
「助けるんだ!」
「応答を願う」
 その彼等にだった。
 ジュデッカ=ゴッツォの声だった。彼が言ってきたのだ。
「地球人達を」
「ジュデッカ=ゴッツォ、一体」
「何の用だ!」
「バルマーの民だが」
 彼等について話すのだった。
「こちらでも今収容中だ」
「えっ、まさか」
「じゃあ俺達とは」
「戦わない!?」
「何故我が同胞達を救う者達と戦う」
 これがジュデッカ=ゴッツォの言葉だった。見ればだ。
 七隻のヘルモーズもある。そして残っていたバルマーの軍もだ。
「その様な者はいない」
「じゃああんた達は」
「もう俺達とは」
「戦わない?」
「そうだ。戦いは終わった」
 こう言うのだった。
「全てはシヴァーの、いや宰相殿の考え通りだ」
「シヴァー=ゴッツォ、そんなことまで」
「あらかじめ手を打っていたっていうのか」
「あいつは」
「確かに道を誤った」
 バランが友のことを語る。
「だが。あ奴は純粋にだ」
「バルマーのことを考えていたんだな」
「そうしていたのか」
「そうだ。ではシヴァーの心受け取ろう」
 バランは確かな声で言った。
「そしてだ」
「残されたバルマーの人達を皆収容して」
「そのうえで」
「その間隕石雨は私が引き受けましょう」
 シュウが言った。
「このネオ=グランゾンで」
「やるっていうんだな」
「はい。戦いは終わりました」
 マサキはシュウにも応えて話す。
「それならです」
「じゃあその間にな」
「収容が終わりましたら」
 それならばだというのだ。
「また」
「また。何だ?」
「一つの運命が決するでしょう」 
 何故かこう言うシュウだった。その彼が隕石雨を止めている間にだ。バルマーの人たちは収容されだ。また一つの戦いが終わるのだった。バルマー帝国との戦いはだ。ここに完全に終わったのだった。


第百十七話   完


                                   2011・4・27  

 

第百十八話 死んだ筈の男

              第百十八話 死んだ筈の男
 バルマーとの戦いは終わり残された市民達も収容した。そのうえでだ。
「よし、今だ!」
「バルマーの艦隊も一緒にだ!」
「亜空間から超距離ワープだ!」
「急げ!」
 だが、だ。ここでだった。
 シュウがだ。仲間達に告げた。
「待って下さい」
「んっ、何だ?」
「どうしたんだ、一体」
「やはりですね」
 シュウは落ち着いた声で告げる。
「隕石雨が終わりました」
「あれっ、本当ですね」
 チカもそのことに気付いた。見ればだ。
 隕石雨は止まってしまっていた。急にだ。
「今まであんなに降り注いでいたってのに」
「もう一つの舞台の幕開けです」
 シュウは言うのだった。
「これから。それがはじまるのです」
「何だってんだ、その幕開けってのは」
 マサキがすぐにシュウに問うた。
「何かあるってのかよ」
「!?長官」
 スワンが不意に大河に告げた。
「バルマーの超高高度にです」
「どうしたのだ、一体」
「正体不明の物体が出現しまシタ」
「何っ、宇宙怪獣か?」
「いえ、違うようデス」
 そうではないというのだ。
「詳しい情報は不明デスが」
「はい、これはかなり」
 猿頭寺も言う。
「小規模の様です」
「まさか」
 加持がそこまで聞いてだ。
 顔を曇らせた。そうして眉を顰めさせて言うのだった。
「ここで、か?」
「タイミングとしては最高ね」
 ミサトがその加持に応えて言う。
「今まさにって感じじゃないかしら」
「そうね。やっぱりこれは」
「彼よ」
 ミサトはリツコにも答えた。
「間違いなくね」
「死んだと思ったわ、最初は」
「けれど誰も遺体を見ていないわ」
 ミサトはこの現実を話す。
「それならよ。死んではいなかったってことよ」
「そうなるのね」
「ええ。そしてこの星に潜んでいた」
 ミサトはさらに話していく。
「ユーゼス=ゴッツォの力を手に入れてこの星に辿り着き」
「そしてシヴァー=ゴッツォと密かに手を結んでいた」
「彼にその真意を隠してね」
「力を貸していたのね」
「地球の死海文書やその他の様々な資料」
 ミサトはリツコと共に話していく。
「そうしたものを携えてね」
「そうして彼の計画の成功に力を貸して」
「自分は。あの計画の完成を目論んでいたのよ」
「地球では為し得なかったあの計画を」
「今度は。銀河単位でね」
 こう二人で話してだ。そうしてだった。
 ミサトはだ。大河に対して言うのだった。
「あの、長官」
「どうしたのだ」
「その超高高度にですが」 
 そこのことをだ。話すのである。
「エヴァを先行させて宜しいでしょうか」
「エヴァをか」
「はい、四機のエヴァをです」
 真剣な顔でだ。大河に言うのである。
「そうして」
「よし、わかった」
 大河はそのミサトの顔を見てすぐに答えた。
「では今回の作戦はだ」
「はい、私が担当させてもらいます」
 そこまで決まってだ。こうしてだった。
 その超高高度にだ。エヴァが先行するのだった。それを見てだ。
 殆んどの面々がいぶかしむ。何故かわからないからだ。
「何か急に決まったな」
「ああ、ミサトさん何を考えてるんだ?」
「一体あそこに何がいるんだ?」
「長高高度に」
「一体」
「すぐにわかるわ」
 ミサトはいぶかしむ彼等にも話した。
「すぐにね」
「すぐにですか」
「それがわかるんですか」
「ええ。私の予想が正しければ」
「っていうと」
「何が」
「あそこにいるのは」
 自然と上を見上げて話すミサトだった。シュウはその彼女を見てだ。今は何も言わないのだった。
 そしてだ。ある場所でだ。
 彼等が話していた闇の中でだ。
「現れたみたいだよ」
「そうか、遂にか」
「使徒」
「あれがか」
「決断を迫っているよ」
 少年の声がだ。闇の中の彼等に話すのだった。
「カポカリュプシスに対する人類の答えをね」
「そうだな。そしてだ」
「おそらく動くな」
「あの男も」
 闇の中にいる者達がさらに話していく。
「ではいよいよか」
「時か来たな」
「再びあの時が」
「今度こそ真に」
「さて、どうなるかな」 
 少年の声は何処か期待する様なものだった。
「シンジ君、君達はどう答えを出すのかな」
 そしてだ。そのシンジ達はだ。
 その超高高度にいてだ。偵察をしていた。アスカがその中で言う。
「全くね」
「全くって。何や?」
「ミサトも人使いが荒いわよ」
 こうトウジに言うのである。
「あたし達だけで出撃って」
「まあ先発ってことやな」
「あんたはそれだけで済ませるの」
「考えても仕方ないやろ」
「仕方ないって?」
「そや。これも任務や」
 これがトウジの言葉だった。
「それとも仕事とか嫌やっていうんか?」
「そういう考えはないわ」
 アスカもだ。とりあえず怠けるつもりはなかった。
「けれど何かね」
「何か。今度は何や?」
「結構嫌な予感がするのよね」
「嫌な予感?」
「そうよ。ここで使徒だの変態爺さんだの妖怪忍者とか出たりとかね」
 アスカの苦手なものばかりだ。
「そういうの出そうなね」
「妖怪忍者?」
 シンジが反応したのはそこだった。
「誰、それ」
「あの覆面被った変態魔人よ」 
 とにかくこう言うアスカだった。
「いるでしょ、あたしと同じ国だって言い張ってる」
「あっ、シュバルツさんのことだったんだ」
「そうよ、ドイツに忍者はいないわよ」
「そういえばいる筈ないよね」
「そりゃ何かドクロの少佐はイタリア忍者だったわよ」
 アスカはこんな名前も出した。
「あれも滅茶苦茶な設定だったけれど」
「ドイツに忍者はもっとだよね」
「畳返しとかもするし」
 しかもガンダムでだ。
「あんなのとか出そうで怖いのよ」
「そんなこと言うたらほんまに出るで」
 トウジはこうアスカに言った。
「あの人達やったらな」
「否定できないのが怖いわね」
「そやろ。異空間さえ越えれるんやからな」
「バルマーまでなんかそれこそ」
「普通に来るやろな」
「あの妖怪忍者も嫌だけれど」
 アスカが最も苦手にしているのは。やはり彼だった。
「変態爺さんだけは御免ね。何で死なないのよ」
「死ぬのかな、あの人」
 シンジもそのことは疑問に思う。
「あまりそんな気がしないけれど」
「死んで欲しくないわ」
 何気に己の願望を言うレイだった。
「あの方だけは」
「この娘はこの娘で恋する乙女になってるし」
 アスカはそのレイを呆れる顔で見ている。
「とにかく。何がいるかね」
「来るわ」
 レイがこう言うとだった。彼等の前にだ。
 赤い鞭を持った様な。あれが出て来たのだった。
 その存在を見てだ。シンジが最初に言った。
「あれは確か」
「ネルフ本部に現れたあれじゃない」
 アスカも言う。
「あの使徒よね」
「うん、あれだよ」
「それに」
 しかもだ。まだいた。
「あそこにいる使徒は」
「あんたのエヴァが暴走して喰ったじゃない」
「何でおるんや!?」
 トウジもいぶかしむ声を出した。
「あの連中が」
「そういえば前からだったわよね」
 アスカはまた言った。
「使徒がどういう訳かよ」
「うん、何度も出て来て」
「考えてみれば妙やった」
「しかもバルマーにって」
 三人で言っていく。
「これって一体」
「どういうこっちゃ?」
「訳わかんないんだけれど」
「気をつけて」
 その彼等にだ。ミサトから通信が入った。
「他にも出て来るわよ」
「ミサトさん、他にもって」
「まさかこの使徒が?」
「出て来るっちゅうんかいな」
「多分ね」
 ミサトはレイも含めた四人にも言う。
「全部出て来るわ」
「まさか」
 そこまで聞いてだ。アスカは言った。
「それがわかってあたし達を」
「出撃させたんですか」
「全てはね」
 ミサトはシンジに応える形で彼等に話す。
「この戦いが終わったらはっきりするわ」
「この戦いが終わったら」
「また一つのことがですか」
「そう。だからね」
 それでだというのだ。
「今は目の前の敵に集中してね」
「わかりました。それなら」
「そうよね。使徒が相手なら」
「戦うしかないしね」
 トウジとアスカも納得した。しかしだ。
 レイは何も言わない。そのレイにシンジが声をかけた。
「綾波?」
「行きましょう」
 すぐにこう返してきたレイだった。
「碇君」
「う、うん」
 こうしてだった。彼等は使徒達との戦いに入った。その中でだ。
 まずは一体撃破した。その中でアスカが言った。
「所詮再生怪人よ。どうってことないわ」
「まあそやな。使徒が全部おってもな」
「今更って感じよね」
 アスカはこうトウジに返す。
「本当にね」
「そのまま倒していって」
 ミサトがまた彼等に言う。
「すぐに私達も到着するから」
「ええ。ただしよ」
 アスカはそのミサトに言うのだった。
「その時はよ」
「今回のことね」
「たっぷりと聞かせてもらうわ」
 モニターの向こうのミサトに対して言う。
「わかってるわよね」
「わかってるわ」
 こう話してだった。彼等は使徒達を倒していく。今更彼等の相手にはならなかった。使徒達はあっさりとだ。四機のエヴァに全て倒されてしまった。
「はい、終わり」
「ううん、あっさりと終わったけれど」
「あれよ。これは本題じゃないのよ」
 ミサトはいぶかしむシンジに話した。
「本題はあれよ」
「やっぱり」
「使徒が何でここに出て来るかよ」
 アスカが考えているのはこのことだった。
「前から使徒が時々出て来たことといいね」
「よくわからなかったけれど。それが」
「遂にわかる時が来たのかな」
「多分ね。そうなのよ」
「アポカリュプシスと関係あるんやろうな」
 トウジはこう察していた。
「それで使徒もな」
「その線、かなり濃いわね」
「少なくとも無関係とは思えないね」
 二人もこうトウジに返す。
「そうじゃないと使徒が復活してくるなんて」
「有り得ないから」
「・・・・・・・・・」
 彼等が話すその時だった。不意にだ。
 レイが彼等から離れる。シンジがその彼女を呼び止めた。
「待って、綾波」
「何?」
「一体何処に行くんだい?」
「そうよ、確かに敵は全部倒したけれど」
「まだ戦いは終わってないで」
 アスカとトウジもレイに声をかける。
「まだ何か出て来るかも知れないし」
「それにミサトさんから話も聞かんと」
「さよなら」
 しかしだった。レイはだ。
 その彼等にだ。こう告げるのだった。
「さよなら、碇君」
「えっ、綾波」
 名指しで言われてだ。シンジはだ。 
 きょとんとなったがすぐにだ。レイに問い返した。
「どういうことだよ、一体」
「あの人が呼んでるから」
「あの人!?」
「そう、だから」
 三人から離れながらだ。レイは言っていくのだった。
「さよなら」
「な、何よあいつ」
 アスカもだ。状況が把握できず言うのだった。
「何処に行く気なのよ」
「一体何やっちゅうんや!?」
 トウジもアスカと同じ考えだった。
「一体全体」
「あの人って」
 だがシンジはだ。その中でだ。
 眉を曇らせてだ。こう言うのだった。
「まさか」
「まさか!?」
「まさかっちゅうと」
「生きてたっていうの?まさか」
「だからそのまさかって何なのよ」
「誰やねん、一体」
 アスカとトウジはすぐにシンジにも問い返した。
「あの人とかじゃわからないでしょ」
「そや、誰か言わんと」
「父さんだよ」
 彼だというのだ。
「綾波を呼んだのは」
「ってちょっと」
「あの人はもう死んだやろが」
 二人もそう思っているのだった。
「バルマー戦役の時に」
「そのまま」
「行方を絶ったよね」
「ええ、死んでるじゃない」
「それがちゃうっていうんかい」
「誰も遺体を見ていないよ」
 シンジも今そのことに気付いたのだ。
「誰一人としてね」
「じゃあまさか」
「あの人が」
「それでこのバルマーに」
「おるっちゅうんかい」
「そうとしか考えられない」
 シンジは深刻になった顔で話した。
「とても」
「そういえばこの星にも死海文書があるっていうし」
「ガンエデンもあるし」
「だったらあの人が潜り込んでも」
「おかしくないんか」
「それで綾波は」
 シンジはさらに話していく。
「父さんのところに」
「何やっちゅうねん、おい!」
 トウジがシンジに問い返す。
「話がわからんわ!」
「そうよ、いきなり何よ!」
 そしてそれはアスカもだった。
「納得のいく話しなさいよ!」
「そう言われても僕も」
「あんたもって!?」
「話が全くわからないんだよ!」
 シンジは明らかに狼狽していた。
「どうして父さんが。それに綾波はやっぱり」
「いいからね!」
「いいから!?」
「敵が来るわよ!」
 アスカは本能的にその危険を察していた。
「あんたもわかるでしょ!」
「!?まさか」
「そうよ。碇司令がいるならよ!」
 それならばだと言うアスカだった。
「絶対にあの連中出て来るじゃない!」
「じゃあさっきの使徒達は」
「間違いないわね」
 アスカは鋭い顔で周囲を見回していた。
「それもね」
「エヴァの量産型まで」
「御約束の展開じゃない」
 アスカはこうも言った。
「それならよ。出て来るわよ」
「じゃあすぐに」
「戦うかい!」
「あんた達は引っ込んでいて」
 アスカはシンジだけでなくトウジにも言った。
「ここはね」
「えっ、けれど」
「量産型やろ」
「それがどうしたっていうのよ」
「だってアスカは」
「御前連中には」
「だからこそよ」
 アスカは声を荒くさせて二人に言い返した。
「絶対にやってやるんだから!」
「けれど僕達も」
「おるからな」
「精々あたしの活躍を見てなさい!」
 そしてだ。こんなことも言うアスカだった。
「あの変態爺さんにできてあたしに出来ない筈がないでしょ!」
「マスターアジアさんって量産型と戦ってたかな」
「それはなかったな」
 トウジがシンジに話す。
「使徒を素手でやっつけたことはあってもな」
「量産型とはね」
「なかったで」
「例えよ、例え」
 それだとまた言うアスカだった。
「だから。とにかくよ」
「アスカ一人で量産型を」
「全部倒すんやな」
「リターンマッチよ」
 それだというのだ。
「あの時の屈辱、晴らしてやるわよ!」
「じゃあこれからは」
「そうするんやな」
「そうよ、やってやるわよ!」
 こうしてだった。アスカはだ。
 その彼等に向かおうとする。するとだ。
「来た!」
「ほんまに来たな!」
 シンジとトウジが声をあげた。そこにだ。
 エヴァの量産型がだ。来たのである。
「じゃあアスカ」
「やるんやな」
「やってやるわよ!」
 完全にその気のアスカだった。
「絶対にね!」
「相変わらず異様な姿だけれどね」
「ほんまバケモンみたいやな」
 二人は量産型の姿も見ていた。
「多分。戦力も戦術もね」
「前と同じやな」
「あの時のあたしと今のあたしは違うわ」
 アスカはこうも言った。
「それも思い知らせてやるわ」
 こうしてだった。アスカはその量産型の群に向かう。そうしてだった。
 薙刀に銃をだ。縦横に使うのだった。
「これならどうよ!」
「やるけれどな」
「うん、そうだね」
 トウジの言葉にだ。シンジは頷くのだった。
「何か危ういな」
「トウジもそう思うんだ」
「力入り過ぎや」
 具体的な言葉だった。
「それがかえってあかんで」
「確かにアスカはあの頃とは段違いに強くなってるけれど」
「そやけどな」
「それでも。今のアスカは」
「精神的な問題やな」
「うん、余裕がなくなってるから」
「それがやばいで」
 二人はそう見ていた。
「どうなるかわからんで、これは」
「普通に戦ったら大丈夫だよ」
「普通にやったらな」
「うん、その場合はいけるけれど」
 そのことはだ。逆に言えばだった。
「けれど今の状況じゃ」
「周りが見えてないからな」
「戦いも余裕がないし」
「あのままやったら」
「まずいね」
「正直言うてな」
 こう話していく。そしてだ。
 その中でだ。急にだった。
「!?どうしたのよ!」
「えっ、まさか!」
「弐号機どないしたんや!」
 二人もだ。異変に気付いた。
 アスカの乗る弐号機がだ。急にだった。
「動かない!?どうして!」
「何があったんや!」
「どうしたのよ、動きなさいよ!」
 アスカも必死に弐号機に叫ぶ。
「ここで動かないとどうするのよ!」
「このままじゃ量産型に!」
「やられるで!」
 そのことをすぐに察しただった。二人はだ。
 すぐに自分達のエヴァを前に出そうとする。しかしだった。
 彼等のエヴァもだ。ここでだった。
「!?動かない!?」
「こっちのエヴァもかいな!」
「そんな、ここで動かないと!」
「アスカがやられるやろが!」
「動け!動いてくれ!」
「どないしたんや、これ!」
 三人共だ。狼狽を覚えた。そこにだ。
 アスカに量産型が迫る。しかしここでだ。
 ロンド=ベルが来た。そうしてだった。
「皆無事!?」
「ミサトさん!」
「シンジ君!」
 ミサトはまずは彼の名前を呼んだ。
「大丈夫!?」
「は、はい!」
 シンジはすぐにミサトに答えた。
「僕は大丈夫です!」
「トウジ君!」
「何とか生きてるで!」
 トウジもすぐに答える。
「俺はな!」
「アスカ!」
「どういうことよこれ!」
 これがアスカの返事だった。
「どうして動かないのよ!」
「エヴァが動かない!?」
「そうなのよ!」
 こう返すアスカだった。
「これってどういうことよ!」
「ここはね」
「ええ、そうね」
 ミサトはリツコの言葉に頷いた。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼女は決断を下したのだ。
「ここはです」
「どうしますか?」
「三機のエヴァは回収するわ」
 こうシゲルに答える。
「そうするわ」
「わかりました。それじゃあ」
「量産型は私達で迎撃するわ」
 敵はだ。そうするというのだ。
「それでいいわね」
「了解!」
 シゲルはすぐに答えた。
「それならすぐに」
「急いで。アスカが危ないわ」 
 今まさに量産型の群に攻められようとしていた。それを見てだ。
「だからね」
「了解です」
「それなら」
 こうしてだった。彼等はだ。
 すぐにエヴァを回収してだ。そのうえでだ。
 量産型にだ。出撃するのだった。
「この連中がか」
「あれなんですね」
 黄金と綾人が彼等を見て言う。
「エヴァの量産型か」
「それなんですね」
「ええ、そうよ」 
 その通りだと彼等に答えるミサトだった。
「彼等がね」
「誰も乗っていないんだな」
 アポロがこのことを尋ねた。
「そうなんだな」
「ええ、そうよ」
 そのことも話すミサトだった。
「シンジ君達のエヴァとはあそこが違うのよ」
「そうだったよな」
「言うならね」
 どうかというのだ。量産型は。
「生きている破壊マシンよ」
「そうなのか」
「それがあの量産型」
「ええ、そうよ」
 今度はシリウスとシルヴィアに話すミサトだった。
「それが量産型なのよ」
「厄介な存在だな」
 不動の言葉だ。
「話には聞いていたがだ」
「確かに。この連中は」
「かなり」
「それにだ」
 ここで言ったのはロジャーだった。
「綾波君は何処に行った」
「そういえばいないわね」
「彼女も出撃した筈だが」
「どうしたのかしら」
 ドロシーもそのことについて言う。
「一体」
「シンジ君、いいだろうか」
 ロジャーはシンジに対して尋ねた。
「彼女は何処に行ったのだ?」
「撃墜された訳じゃないわね」
 ドロシーはそれはないとした。
「その痕跡もないし」
「なら何処に行ったのだ」
「教えてくれるかしら」
「そのことですが」
 ミサトは二人にも話した。
「おそらくは」
「!?まさか!」
 ここで叫んだのはマサトだった。
「あの人が生きている!?」
「マサト君、一体」
 美久はそのマサトに対して尋ねた。
「何があったの!?」
「うん、碇博士が若しかすると」
「このバルマーにいるの?」
「そうかも知れない」
 こうだ。真剣な顔で言う彼だった。
「だからこうして量産機を」
「だとすると」
 アムロもだ。考える顔で話すのだった。
「彼もいてそして」
「ゼーレだね」
 万丈も言った。
「彼等もここにいるね」
「そうだとすればだ」
 アムロは量産機を見ながらだ。言うのだった。
「何はともあれ今のこの状況を」
「はい、まずはです」
 ミサトも話す。
「この量産機を倒しましょう」
「よし、それなら!」
「攻撃開始だ!」
「攻撃目標エヴァ量産機!」
「全部叩き落とすぞ!」
 こうしてだった。彼等はだ。
 その量産機に向かう。そうしてだ。
「よし、一つ!」
 ショウのビルバインが真っ二つにした。
「二つ!」
 ダイターンのサンアタックが決まった。
「三つ!」
 ゴッドガンダムのシャイニングフィンガーだ。
「四つ!」
 エルガイムマークツーが吹き飛ばした。
「五つ!」
 マジンカイザーが炎で焼き尽くす。
「六つ!」
 ハイニューガンダムのフィンファンネルが八方から狙って撃墜した。
「七つ!」
 メイオウ攻撃だった。
「八つ!」
 最後はだ。ダブルゼータのハイメガキャノンだった。
 それでだ。全て倒したのだった。
「これで終わりか?」
「何か変にあっさりしてるけれどな」
「この連中はしぶといけれどな」
「これで終わりか?」
「まさかな」
「いや、待て」
 しかしだ。ここでサンドマンが言った。
「これは」
「!?まさか!」
「また出て来たのかよ!」
「復活しやがった!」 
 そうなっていた。何とだ。
 倒した筈のエヴァがだ。全て復活してきたのだ。
 そしてだった。彼等はだ。
 ロンド=ベルに向かって来る。それを見てだ。
「まさかこいつ等」
「何度でも立ち上がるのか?」
「俺達が倒れるまで」
「それこそ何度でも」
「戦うっていうのかよ」
「ひょっとして」
「くそっ!」
 ここで碇の声をあげたのは甲児だった。
「何だってんだよ!」
「こいつ等まさか世界を食い尽くすまでか!」
「戦うってのかよ!」
「こうして!」
「いや、違う」
 だが、だ。ここでだった。
 万丈がだ。鋭い目で言うのだった。
「この連中、そしてその後ろにいる者達の目的は」
「それは!?」
「それは一体」
「とりあえずはです」
 ミサトはここで決断を下した。
「総員撤退です」
「撤退ですか!?」
「今は」
「このままでは埒が明かないわ」
 それでだというミサトだった。
「だから今は態勢を立て直して」
「それでなんですか」
「今は」
「このまま戦っても同じよ」
 ミサトはそう見てだ。そのうえでだった。
 彼等は撤退するのだった。バルマーでの予想外の戦いは続くのだった。
 そしてだ。その中でだった。ある場所ではだ。
 あの男がいた。そしてだ。
 レイを前にしてだ。こう言うのだった。
「レイ、来たな」
「・・・・・・・・・」
「遂にこの時が来た」
 こうレイに告げるのである。
「約束の時だ」
「約束の」
「そうだ、その時だ」
 こう話すのである。
「その時が来たのだ」
「このバルマーで」
「アダムは既に私と共にある」
 碇はこうレイに話すのだった。
「ユイと再び逢うにはこれしかない」
「あの人と」
「そうだ。アダムとリリスの禁じられた融合だけだ」
「そしてそれによって」
 ここでだ。何かが生物的にだ。
 一つになる音が聴こえた。それを聴いてだ。
 レイはだ。言うのだった。
「この音が」
「時間がない」
 碇はレイを見ながら話す。
「ATフィールドが御前の形を保てなくなる」
「じゃあ今から」
「はじめるぞ」
 冷酷な碇とは思えない。真剣な想いが見える顔だった。
 その顔でだ。彼はレイに告げるのである。
「ATフィールドをだ」
「それを」
「心の影を解き放て」
 これが彼の言葉だった。
「欠けた心の補完」
「それを今から」
「不要な身体を捨て」
 そしてだった。
「全ての魂を今一つにするのだ」
「そうして」
「そうだ、そしてだ」
「貴方はそれから」
「ユイの許へ行こう」
「・・・・・・・・・」
 レイは彼の言葉を黙って聞いていた。彼女は表情を見せなかった。ゲンドウと違いだ。
 そしてシンジはだ。グランガランの格納庫においてだ。ミサトに問い詰めていた。
「ミサトさん、一体」
「何が起こっているかよね」
「はい、どうなってんですかこれって」
 こうだ。狼狽した顔で真剣な顔のミサトに問うのである。
「一体何が」
「シンジ君いいわね」
「はい?」
「落ち着いて聞いてね」
 こう前置きしての言葉だった。
「これはね」
「これは?」
「何者か。おそらくは」
「父さんが」
「おそらくね。その人がね」
 あえて碇だと答えずにだ。そうして言うのだった。
「サードインパクトを起こそうとしているのよ」
「それをこのバルマーで」
「ええ、それも使徒ではなく」
 彼等ではなくとだ。ミサトは話していく。
「エヴァを使ってね」
「あのサードインパクトを」
「地球では上手くいかなかったわ」
 地球ではというのだ。
「それでもね。今はね」
「このほしで」
「バルマー戦役の時にもそれは起ころうとしていたわね」
「はい」
 その時のことはだ。シンジもよく覚えていた。
 それでだ。彼は言うのだった。
「あの時のことを」
「あの時はセカンドインパクトもあって」
「それも言ってくれましたね」
「そうだったわね。あれはね」
「あれは?」
「人に仕組まれたものだったのよ」 
 そのことをだ。今シンジに話すミサトだった。
「人に」
「ええ。そしてそれを起こした理由はね」
「どうしてだったんですか?」
「他の使徒が使徒が覚醒する前に」
「他の!?」
「そう、アダムを卵にまで還元することによって」
 そうしてだというのだ。
「被害を最小限に食い止める為だったのよ」
「使徒、アダム」
「私達人間もね」
 ミサトの言葉は続く。
「アダムと同じなのよ」
「アダムと?」
「そう、リリスと呼ばれる生命体から生まれたね」
「じゃあ。まさか」
「そうよ。使徒だったのよ」
 人はだ。そうだったと話すのである。
「十八番目のね」
「そうだったんですか」
「驚いたかしら」
「いえ、それは」
「そうなの。落ち着いてきたみたいね」
「少しは」
 こうミサトに答えるシンジだった。
「そうなりました」
「他の使徒達は別の可能性だったのよ」
 シンジが落ち着いたのを見てからだ。ミサトは話を再開させた。
「私達とは別の根」
「そういえば使徒のDNAは」
「人と同じだったでしょう?」
「そうでしたね。どの使徒も」
 今度はこの話になった。
「あれは人の形を捨てた人類の」
「僕達の」
「けれどね。同じ人間同士もね」
 ミサトの目に悲しいものが宿った。
「御互いを拒絶sるしかなかったけれどね」
「ATフィールドですね」
「それでね。そうするしかなかったのよ」
「じゃあ一体」
「一体?」
「可能性は」
 シンジがミサトに今問うのはこのことだった。
「それは何の可能性ですか?」
「滅亡から逃れる為の術よ」
 それだと話すミサトだった。
「それからなのよ」
「そうした意味での可能性だったんですね」
「この銀河の歴史は聞いたわよね」
「はい、あの人から」
「霊帝ルアフからね」
 他ならぬだ。彼の話したあの歴史がだ。今思い出されるのだった。
「聞いたわね」
「無数の危機に直面してきて」
「そしてそういったものから逃れる為に」
「ガンエデン、ライディーン、ゼントラーディ」
 そしてだった。
「補完計画ですね」
「そういうことよ」
 ミサトはシンジの言葉に応えてだ。そのうえでだ。
 彼にだ。こうも話すのだった。
「そして今はね」
「今は」
「あの時と同じよ」
 話はさらに遡った。
「あの。量産型と戦った時とね」
「そのままですよね」
「ええ、そのままよ」
 その通りだと話すミサトだった。
「あの量産型を全て消滅させるわ」
「全て」
「私達が生き残る手段はそれしかないわ」
 こうシンジに話すのだ。
「その為にはね」
「その為には」
「貴方も戦うのよ」
 シンジを見据えての言葉だった。
「わかったわね」
「僕が」
「自分の意志で。そうしてね」
「僕にできるでしょうか」
 だが、シンジはだ。
 弱いものを見せた。そのうえでの言葉だった。
「今の僕に」
「できないと思っているのね」
「だからさっきエヴァは」
「それは違うわ」
「違う?」
「シンジ君、そしてトウジ君もアスカも」
 二人もだというのだ。
「動揺したわね、レイのことね」
「はい、それは」
「その心の動揺が」
 何を及ぼしたかというのだ。
「エヴァとのシンクロ率を低下させたのよ」
「そうだったんですか」
「大丈夫よ」
 ミサトはシンジに対して告げた。
「だからもう」
「けれどそれでも」
 まだだ。弱いものを払拭できなくだ。シンジは言うのだった。
「同じです」
「そう思うの?」
「僕は結局エヴァにも見放されたんです」
 こう言うのである。
「父さんに騙され続けた様に」
「シンジ君・・・・・・」
「この長い戦いで」
 思えばだ。果てしない戦いになっていた。途方もないだ。
「僕は自分にも何かが出来ると思っていました」
「そうしてなのね」
「そう思って戦ってきました」
 そうだったというのだ。
「ロンド=ベルの皆と一緒に」
「実際によくやってくれたと思うわ」
「けれど僕は」
「碇司令の」
「はい、操り人形でした」
 彼が生きていることを確信してだ。そうしての言葉だった。
「それなのにいい気になってわかったような顔をして」
「そのうえで」
「戦って誰かを傷つけて」
 それもだ。今では悔恨になってしまっていた。
「バルマーの頃から」
「前の戦いからだというのね」
「カヲル君を殺して」
 彼の名前も出してしまった。
「今日まで綾波に騙され、動けなくて」
「・・・・・・・・・」
 ミサトは黙った。そのうえで彼の話を聞いていた。
「結局何も変わっていなかった、僕は僕でしかなかった」
「そう言うのね」
「だったら何もしない方がいいです」
 遂にはこう言うのだった。
「後はロンド=ベルの皆が何とかしてくれるし」
「けれどね」
「けれど?」
「私は貴方に戦って欲しいの」
 怒らなかった。こう告げるのが今のミサトだった。
「貴方達にね」
「そうやってミサトさんも」 
 だが、だ。まだシンジは言う。
「僕に戦いを押し付けて」
「そう考えてもらってもいいわ」
「エヴァに乗られるから」
「そうじゃないわ」
 ミサとはそれは否定した。
「あの量産型と戦うだけならね」
「それだけなら」
「他の機体でもいいわ」
 それでもだ。構わないとシンジに告げるのだ。
「モビルスーツでも何でもね」
「えっ、何でもって」
「そう、このままじゃ全てに負けたままなのよ」
 これがミサトの言葉だった。
「貴方も」
「僕も」
「そして。私もね」
「ミサトさんもって」
「騙され裏切られてきたのはね」
 ミサトはだ。シンジのその弱い光を放つ目を見ながら話していく。
「貴方だけじゃないわ」
「僕だけじゃない」
「そう、私もアスカも」
 そして。彼女の名前も出したのだった。
「きっと。レイもね」
「綾波も。じゃあ父さんに」
「それは確かめなさい」
「僕が」
「ええ、貴方がね」
 他ならない。シンジ自身でだというのだ。
「自分の足で立って」
「そうして」
「自分の目でね」
「そうしないといけないんですね」
「これまで。私達は数えきれない位の戦いを経てきたわね」
 バルマーの頃からの話だ。
「そして多くの生と死を見てきたわね」
「・・・・・・はい」
「私達のために生命を懸けてくれた人達もいたわ」
「そうした人達がいてくれたから」
「私達がいるのよ。そうした人達へのね」
 何かというとだった。
「誠意でもあるから」
「そしてその為にも」
「戦うんですね」
「ええ、そうしてくれたら嬉しいわ」
 こう言ったところでだ。アスカが来た。そしてミサトに言うのだった。
「ミサト!初号機のデータを書き換えて!」
「アスカ、どういうつもりなの?」
「あたしが乗るわ!」
 それでだというのだ。
「こいつが戦わないならあたしがやるわ!」
 そのだ。闘争心を露わにさせていた。
「あたしがあいつ等を叩き潰してやる!」
「だからなのね」
「そうよ。ここで負けたままならね!」
 激しい闘志をだ。見せて話すアスカだ。
「あたしの生きる意味がないからよ!」
「生きる意味・・・・・・」
「この馬鹿!皆戦ってるのよ!」
 アスカはシンジに対しても言った。
「それで一人グダグダってね!何やってんのよ!」
「僕は」
「シンを見なさい!」
 まず言うのは彼だった。
「ステラちゃん助け出す為に必死に戦ったじゃない!」
「彼が」
「そうよ。タケルさんだってね!」
 次は彼だった。
「マーグさんの為にどれだけ耐えたのよ!そして戦ったのよ!」
「そうだった、あの人も」
「一矢さん見て何も思わなかったの!」
 最後は彼だった。
「あれだけ一途に!エリカさんの為に戦って!」
「そうしてあの人達は」
「そうよ!掴み取ったじゃない!あの人達みたいにやってみせなさいよ!」
「僕も。あの人達みたいに」
「そりゃあんたあの人達みたいに立派じゃないわよ!」
 何気にだ。シンも認めているアスカだった。
「それでもよ!ここで逃げてどうするのよ!」
「逃げない。僕は」
「逃げるんならあたしが今ここで殺してあげるわ!」
 牙さえ出しかねない勢いだった。
「さあ、どうするのよ!」
「僕も。あの人達みたいに」
「もう一度言うわ」
 ミサトがまたシンジに話す。
「あの時の言葉をね」
「あの時の」
「ええ、今の自分が絶対じゃないわ」
 言う言葉はこれだった。
「後で間違いに気付き、後悔する」
「それがでしたね」
「ええ、私はそれの繰り返しだった」
 己のだ。人生も話すミサトだった。
「ぬか喜びと自己嫌悪を重ねるだけ」
「それでもでしたね」
「ええ、その度に前に進めた気がするわ」
 この言葉をだ。またシンジに話すのである。
「だからね。貴方は今は」
「僕は」
「もう一度エヴァに乗って」
 こう告げるのだった。
「そして終わらせてきて」
「今のこの戦いを」
「ケリをつけてきて」
 こうも話すのだった。
「エヴァに乗っていた自分に」
「その僕に」
「そして何の為にここにいるのか」
 そのことも話すミサトだった。
「今の自分の答えを見つけてきて。それでね」
「それで?」
「終わらせたら戻ってくるのよ」
 こうもだ。シンジに話すのだった。
「ここにね」
「ここに」
「そう、ここにね」
 ここでは微笑んで話すミサトだった。
「戻って来て」
「いいわね、馬鹿シンジ!」
 アスカがまた彼に言う。
「皆もう出るわよ!」
「そうだね、じゃあ」
「ええ、行くわよ」
「わかったよ。じゃあ」
 シンジはだ。話すのだった。
「全ての決着をつけに」
 遂にだ。シンジも決意したのだった。
「僕達とエヴァと父さん」
 こう話してだった。
「その全てをはっきりさせる為に」
「ええ、行ってらっしゃい」
 ミサトは微笑んでだ。そのシンジを見送ったのだった。一つの運命がだ。また終わろうとしていた。


第百十八話   完


                     2011・5・1
 

 

第百十九話 もう一つの補完計画

              第百十九話 もう一つの補完計画
 戦いがだ。再びはじまろうとしていた。
「やっぱりなあ」
「またいるな」
「ピンピンしてたがるよ」
 出撃したロンド=ベルの面々は口々に言う。
「あの連中は幾ら倒してもかよ」
「復活するってか」
「キリがないか?」
「それに」
 彼等は話していく。
「あの連中は何の為にだろうな」
「俺達と戦うんだろうな」
 こんな話もするのだった。
「それがわかららなくなってきたな」
「どうしてあそこまで一体」
「話は後よ」
 ミサトがここで彼等に言ってきた。
「とりあえずは戦いましょう」
「あっ、ミサトさん」
「結局それしかないんですね」
「今は」
「ええ、そうよ」
 その通りだと述べるミサトだった。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼が出撃したのだ。
「よし、シンジ!」
「やるな!」
「今は!」
「はい、やらせてもらいます」
 皆に応える彼だった。しかしだ。
 不意にだ。エヴァがだ。
「!?」
「えっ、どうしたの!?」
 ミサトもその異変に気付いた。急にだ。
 暴走をはじめたのだ。急にだ。
「なっ、エヴァが!」
「暴走!?そんな!」
「どうして急に!?」
 ミサトだけでなくリツコも驚きの声をあげる。
「一体何が」
「何が起こっているの!?」
「まさかこれが」
 加持が目を鋭くさせた。
「あの連中のか」
「遂に我等の願いがはじまる」
 あの場所でだ。彼等が言うのだった。
「我等人類に福音をもたらす真の姿に」
「等しき死と祈りを以て」
「人々を真の姿に」
「それは魂の安らぎでもある」
「では儀式をはじめよう」
「くそっ、はじまったか!」
「加持君、これは一体」
「ゼーレの奴等」
 加持が忌々しげに言った。
「初号機をヨリシロにするつもりか!」
「ヨリシロ!?」
「ああ、そうだ」
 こうミサト達に話すのだ。
「それにして」
「今こそ中心の樹の復活を」
「我等が僕」
 また彼等が言っていく。
「エヴァシリーズは皆」
「この時の為に」
「エヴァ初号機前に出ます!」
 マヤが叫ぶ。
「コントロール不能です!」
「それにです!」
 マコトも言う。
「次元測定値が反転!」
「何ですって!?」
「マイナスを示しています!」
「計測不能です!」
 ヒカリも言ってきた。
「数値化できません!」
「エヴァシリーズ!」
 シゲルもだった。
「S2機関を解放!」
「アンチATフィールドか」
 加持が報告を聞きながら呟く。
「それだな」
「全ての現象が似てるわ」
 リツコが今の状況を分析して話す。
「十五年前とね。酷似してるわ」
「じゃあ今のは」
「ええ、間違いないわ」 
 深刻な顔でミサトに話すリツコだった。
「サードインパクトの前兆ね」
「それなのね」
「悠久の時を示す」
「赤き土のミソギを以て」
「まずはジオフロントを真の姿に」
「そのうえで」
「あの、下からですけれど」
 ケンスケが青い顔で報告してきた。
「大規模な爆発が!」
「この光ね」
「多分は」
「今度は何だっていうの?」
「それよりもだ!」
 加持はいぶかしむミサトに言ってきた。
「彼だ!」
「そう、シンジ君よね」
「大丈夫なのか、今は!」
「おい、シンジ!」
 甲児が彼に声をかける。
「生きてるのかよ!」
「しっかりするんだ!」
 洸も声をかける。
「エヴァをそこから離脱させるんだ!」
「動け!動け!動け!」
 シンジも必死に操縦しようとする。しかしだ。
 全く動かない。その中で言うのだった。
「一体どうなってるんだ!」
「どうなっているのだ」 
 ハマーンも言葉がない。
「今は」
「一体何が起こるというの?」
 ミネバもグワダンの艦橋で呆然となっている。
「誰かわかる人は」
「申し訳ありません」
「これはです」
 ランスもニーも唖然となっている。
「我々もです」
「何が何なのか」
「しかしです」
 イリアはこう言うのだった。
「何かよからぬことが」
「ええ、それは私も感じるわ」
 ミネバは暗い顔でイリアに答えた。
「このプレッシャーは」
「恐ろしいものです」
「まさかな」
「これがな」
「世界の終焉だというのか」
 カットナル、ケルナグールに続いてだ。ブンドルも言う。
「バルマーと講和がなったが」
「よりによってこの星でとはな」
「この事態になるとはな」
 彼等も言葉がなかった。そしてだ。
 加持がだ。また言うのだった。
「人類の生命の源たるリリスの卵」
「リリス!?」
「ああ。黒き月」
 ミサトの言葉に応えて話す彼だった。
「今更その中に還るってのはな」
「お断りしたいものね」
「けれどそれはな」
 どうかというのだ。
「リリス次第だからな」
「そうなるのね」
「バルマー帝宮からです」
 シゲルが報告をあげてきた。
「正体不明のエネルギー体が休息接近!」
「ATフィールドも確認!」
 マコトも言う。
「それもです!」
「まさか」
 マヤがそれを聞いて言う。
「使徒!?」
「いや、違う!」
「じゃあ一体今度は」
「えっ!?」
 誰もがだ。その出て来たものを見て唖然となった。それはだ。
 何もかも白く。六つの、虫に似た波根を生やしたレイだった。目は紅い。
 だがその身体はとてつもなく巨大で。惑星から空まで上半身を出していた。そのレイだった。
「レイ!?」
「まさか!」
「あれがかよ!」
「嘘だろ、おい!」
 スティングが思わず叫ぶ。
「あれがレイかよ!」
「夢・・・・・・じゃねえか!」
 アウルは自分でそれを否定した。
「俺は起きてるからな!」
「おいおい、それはねえだろ」
 ロウもこう言うしかなかった。
「何処をどうやったらこうなるってんだよ」
「人、人間」
 ステラの言葉だ。
「けれどあれは」
「おいおいおい、幾ら何でもこれはねえだろ!」
 闘志也もいつもの威勢が弱まっている。
「どうなってんだ!」
「綾波、どうして」
 シンジもその彼女を見て唖然となっている。
「こんなことが」
「エヴァ初号機の欠けた自我を以て」
「そのうえで」
 また彼等が話していく。
「人類の補完を」
「三度の報いの時が今」
「今度はです!」
 ケイスケがまた言う。
「エヴァシリーズのATフィールドが共鳴しています!」
「それがさらに増幅しています!」
 ヒカリも報告する。
「これって一体」
「同化だな」
 加持が二人の報告を聞いて述べた。
「それだな」
「同化!?」
「といいますと」
「新鋭グラフシグナルダウン!」
 マコトが報告してきた。
「デストルドーもです!」
「形而化されていきます!」
 それはシゲルが言う。
「このままでは!」
「まずいな」
 加持は言った。
「これ以上はパイロットの自我が持たないぞ」
「それじゃあシンジ君は」
「ああ、今やな」
 加持はまたミサトに話した。
「生命の胎芽たる生命の樹へとな」
「それになのね」
「還元している」
 加持は話を続ける。
「この先にな」
「この先に?」
「サードインパクトの無からヒトを救う箱舟となるか」
「それとも?」
「人を滅ぼす悪魔となるか」
 こう話していくのだった。
「未来は彼と」
「シンジ君ね」
「ロンド=ベルに委ねられたな」
「つまり私達に」
「やるしかないんだろうな」
 これが彼の結論だった。
「ここはな」
「頼んだわよ」
 ミサトはそのシンジ達を見て呟く。
「シンジ君、皆もね」
「ああ。けれどな」
 ここでまた言う加持だった。
「また動くぞ」
「動く!?」
「見るんだ、あの連中を」
 エヴァのだ。量産型をだというのだ。するとだ。
 彼等はそれぞれ動きだ。立体的に何かの陣の如きものを築いた。
 そしてそれがだ。何かになった。それは。
「!?あれは」
「あの文字に紋章みたいなのは!?」
「一体」
「何だってんだ!?」
「カバラですね」
 シュウがここで言った。
「カバラの生命の樹です」
「そうね、それね」
 ミサトもだ。目を鋭くさせてシュウのその言葉に頷いた。
「あれはまさにそれね」
「カバラのか」
「あのユダヤ教の奥義」
「それがか」
「ここでか」
「今度は何が起こるんだ?」
 誰もがだ。これからのことを考えた。そこにだった。
 リュウセイがだ。声をあげたのだった。
「くっ!何だ!?」
「これは!」
 そしてだ。マイもだった。二人が最初に声をあげたのである。
「人の意志が!」
「心が吸い寄せられていく!」
「むっ、バルマーの星もだ」
「ええ、そうね」
 ライとアヤはバルマーの星を見た。するとだ。
 星の地表に無数の十字架が立ちだ。赤く染まっていた。それはこれまでのバルマーではなかった。
 それを見てだ。誰もが言うのだった。
「何だってんだよ」
「本当に一体何が起こるんだ?」
「今度は一体」
「何が」
「!?何!?」
「これは」
 そしてだ。今度はだ。プルとプルツーがそれぞれ両手で頭を押さえて言うのだった。
「この嫌な感覚!」
「不愉快なプレッシャーが!」
「これは」
「世界が」 
 フォウとファも言う。
「悲しみに満ちていく」
「孤独が人の心を」
「駄目だ!」
 洸もだ。ライディーンの中で叫ぶ。
「その扉を開いては駄目なんだ!」
「洸!」
「どうしたんだ!」
 マリと神宮寺がその洸に問う。
「一体何を」
「何を感じた!」
「ライディーンが言っている!」
 これが洸の言葉だ。
「答えを出すのは早過ぎると!」
「答えはまだ早い?」
「まさかこの補完計画が」
 今度は麗と猿丸が言うのだった。
「この動きは地球のものよりも進んでいるようですが」
「ではこのまま」
「人はまだ運命に抗う力を持っている筈だ!」
 洸はライディーンのその言葉を聞いて言うのだった。
「ライディーンはそう言っている!」
「一万二千年前の話だ」
「それはだ」
 不動がだ。加持の今の言葉に突っ込みを入れた。
「我々の世界の周期でもあるな」
「そうですね。偶然でしょうが」
「妙な話だな」
「全くです。そしてです」
 さらに話を続ける加持だった。
「その一万二千年前のことですが」
「アポカリュプシスだな」
「そう、そのアポカリュプシスにおいて」
 どうなのかをだ。加持は話すのだった
「それを予見しムー帝国はライディーンを造り上げた」
「この世界においてだな」
「はい、そうしたのです」
 さらに話す加持だった。
「宇宙怪獣や妖魔、巨人族、プロトデビルンと」
「あらゆる敵からだったのね」
「そうなる。我々を守る為にだ」
 ミサトにも話すのだった。
「造り上げたのだ」
「それがライディーンだったんですね」
 洸がここで尋ねた。
「そうだったんですか」
「そうだったんだよ」
 加持は洸にも話すのだった。
「ライディーンは。そうしたものだったんだよ」
「そして俺はそれに乗って」
「戦うのが運命だったんだろうな」
「そうだったのですね」
 彼にも話してだった。そのうえでだ。
 今度はだ。ゲッターがだ。
「おい、リョウ!」
「これは!」
「ああ、わかっている!」
 竜馬は隼人と弁慶に答えた。
「ゲッターが怒っている!」
「そうだな、この怒りは」
「あいつにだな」
「ブラックゲッターも同じだ!」
 武蔵も言うのだった。
「あのレイに対して」
「あいつに敵意を示している!」
 竜馬もそのことを認識した。
「今のレイに!」
「当然だな」
 ここでまた言う加持だった。
「ゲッター線は進化を促す力だ」
「だからですか」
「ああ。そしてそれは人の意志に反応するんだ」
 今度はミチルに話すのだった。
「やはりゲッター線は補完をヒトとしての進化の放棄と見たんだな」
「じゃあゲッターはか」
「俺達を」
「補完を進めるなら」
「そうだろうな」
 加持は竜馬達三人にも話した。
「銀河に不適格な生命体としてその未来を摘むかもな」
「恐竜帝国や百鬼帝国みたいになんだな」
「そしてだな」
 今言ったのがゴウだった。
「俺達が戦ったあの」
「昆虫人類みたいに」
「俺達もか」
 後の二人も言うのだった。今は真ドラゴンもだ。
 レイに敵意を見せていた。ゲッターもだった。
 そしてだ。ゴーショーグンもだった。
「ビムラーもみたいね」
「ああ、そうだな」
「予想通りだけれどな」
 レミーに真吾、キリーが言う。
「癇癪ってところかしら」
「敵を見てな」
「こりゃまたナーバスなことで」
「ビムラーも同じなんだな」
 加持はビムラーとゲッターを同じとして話す。
「補完で閉じた世界になるのならな」
「じゃああれじゃない」
「ケン太の旅立ちも」
「アポカリュプシスの可能性への提示も」
 ゴーショーグンの三人はそれぞれ話していく。
「全て無駄になるじゃない」
「それはちょっとな」
「勘弁して欲しいもんだけれどな」
「マジンガイザーもかよ!」
 今度は甲児だった。
「すげえ怒ってるぜ」
「アクエリオンもだ」
「ブレンも!」
「サイバスターもかよ!」
「何かあらゆるマシンが」
「今のレイに」
「敵意を」
 光はその中でだ。レイアースに問うた。
「レイアース、これは何なんだ!?」
「わからない。ただ」
「ただ!?」
「今のレイは危険だ」
 レイアースはこう光に話すのだ。
「得体の知れない力を感じる」
「得体の知れない力」
「それを」
「そうだ、感じる」
 また光に話した。
「危険だ。あまりにも」
「ブリット君、ここは」
「そうだな、クスハ」
 この二人も話すのだった。
「今は何としても」
「あの二人を止めないと」
「そうみたいね」
 セラーナも二人に同意して言う。
「このままじゃね」
「最悪の結果になるよな」
 トウマもだった。
「その人類補完計画ってのにな」
「全てが飲み込まれる」
 クォヴレーも言った。
「それだけは避けなければならない」
「四神も言っている!」
 ブリットが叫ぶ。
「そならだ!」
「超機人は古の文明が我々に託した」
 また言う加持だった。
「最後の希望だからな」
「それでなんですね」
「四神も」
「ああ。同じ過ちを繰り返させない為に」
 加持はクスハとブリットに話した。
「ここでだ」
「戦う」
「そうすると」
「ゲージがおかしい」
 ギジェはこの時イデのゲージを見ていた。
「パワーが下がっていく」
「えっ、どういうこと!?」
 カーシャがそのギジェに問うた。
「それって」
「わからん、イデは何を考えている」
 ギジェは目を大きく見開いて話す。
「それがわからない」
「イデか」
 加持はイデについても言及した。
「それは」
「器を捨ててよね」
「ああ、そうだ」
 またミサトに話すのである。
「一つになった意志」
「ということはね」
「補完計画と同じだったんだ」
 それを言う加持だった。
「つまりイデは」
「同じ結論に辿り着いたから」
「支持をするのかしら」
「それなら補完によって一つになった心は」
「イデとも融合する」
「そうなるのかもな」
「へっ、面白いぜ!」
 バサラがギターを手にした。
「これはな!」
「何が面白いのよ」
「聴かせ甲斐のある奴が出て来たぜ!」
 こうだ。ミレーヌにも言うのだ。
「こんな面白いことになるなんてな!」
「ちょっとバサラ!」
 ミレーヌはバサラの今の言葉にだ。
 びっくりしてだ。こう言い返した。
「今どういう状況下わかってるの!?」
「そんなの関係ねえぜ!」
 これがバサラの返事だった。
「俺は何時だってな!」
「どうだっていうのよ!」
「俺のハートを歌うだけだ!」
 やはりだ。バサラは今もバサラだった。
「それだけだぜ!」
「歌、そうだな」
 加持はその歌についても言った。
「歌はアポカリュプシスに立ち向かう力になるな」
「そうなのね」
「歌が」
「プロトデビルンの時と同じさ」
 こうミサトとリツコにも話す。
「けれどそれはな」
「それは?」
「それはというと?」
「俺達はそれをどう活かすか」
 こう言う彼だった。
「それがわからないままだったからな」
「そうね、ずっとね」
「ずっとそうだったわ」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 彼等はだ。言うのだった。
「それがわかったのはあの時」
「プロトデビルンの時、そして」
「バジュラの時もね」
「プロトカルチャー」
 こうそれぞれ話していく。彼等はわかってきたのだ。
 その中でだ。カトルがだ。シンジに問うていた。
「シンジ君!シンジ君!」
「大丈夫ですか!?」
 カトルだけでなくだ。ニコルも問う。
「大丈夫でしたら!」
「返事をして下さい!」
「駄目なのかよ」
 ディアッカが忌々しげに呟いた。
「返事がねえな」
「まさか、いやそんな筈がない!」
 イザークがそれを否定する。
「おあいつはまだ生きている!」
「それならここは」
 アムロが言った。
「まずはだ」
「まずは?」
「中佐、どうされるんですか?」
「エヴァシリーズを殲滅する」
 そうするというのである。
「そしてエヴァ初号機の動きを止めてだ」
「そうしてですか」
「そのうえで」
「そうだ、エヴァのコアでもある彼を」
 そのだ。シンジをだというのだ。
「救出するんだ」
「そうするんですね」
「ここは」
「そうしてシンジ君をですか」
「助け出すんですね」
「それしかないわね」
 ミサトもだ。腹を括った顔で言った。
「この事態を止めるにはエヴァシリーズを消滅させるしかないわ」
「はい、じゃあ」
「ここはですね」
「まずはエヴァを」
「量産型を」
 こう話してだ。彼等はだ。
 量産型に向かう。しかしだ。
 その中でだ。ミサトはまた言うのだった。
「世界とシンジ君ね」
「まさかと思うけれど」
「ええ、カルネアデスの方舟ね」
 それだとだ。リツコに話すのだった。
「どっちかをね」
「そう本気で思ってるの?」
「前の私だったらそう思っていたわ」
 ミサトの言葉は限定だった。
「けれど今の私はね」
「そういう考えにはならないわね」
「世界は絶対に救うわ」
 これは絶対だというのだ。
「けれどシンジ君もね」
「絶対によね」
「それができなくて何だっていうのよ」
 ミサトは強い声で言う。
「一人を救えなくて。世界は救えないわ」
「そういうことね。それじゃあ」
「ここは」
 こう話してだった。彼等はだ。
 戦いに向かう。そしてだった。ミサトはまた言った。
「最優先事項はね」
「はい、それは」
「何ですか?」
「各機はエヴァ初号機の動きを止めて」
 そうしてだというのだ。
「シンジ君を救出して!」
「任務了解」
 ヒイロが応える。
「答えはそれしかない」
「そうね。やれるわ」
 ミサトはだ。前を見据えていた。
「絶対に。何があってもね」
「随分と変わったな」
 加持がここでミサトに言った。
「前だったら片方だけを取っていたよな」
「そうね。世界をね」
「それがか。今は」
「両方よ。やってみせるわ、いえ」
「いえ?」
「絶対にできるわ」
 言葉をだ。こう言い換えたのである。
 そしてだ。また言う彼女だった。
「どっちもね」
「それならな!」
 ここで前に出たのはだ。アポロだった。
 シリウスとシルヴィアに声をかけてだ。言うのだった。
「いいな、わかってるな!」
「無論だ」
「このアクエリオンで!」
「あいつを救い出す!」
 こうだ。熱い声で言うのである。
「そうしてやる!」
「では考えはあるのだな」
「それ、どうなの?」
「そんなのはない!」
 これがアポロの返答だった。
「そんなものは必要ない!」
「言い切ったわね」
 シルヴィアはその言葉にまずはこう返した。
「じゃあこのまま。一撃で」
「ああ、アクエリオンでダメージを与えてだ」
「あの手で。やるのね」
「そうだな。あれが一番だ」
 シリウスは意外にもだった。
 アポロのその考えに賛同した。そのうえでだ。
 アポロに対してだ。こう言ったのである。
「ではだ。今からだな」
「ああ、一気に手を伸ばしてな」
 そしてだと。アポロは言うのだ。
「ATフィールドを打ち破ってだ」
「中にいるシンジをだ」
「助け出すのね」
「考えなんて必要ない!」
 まさにだ。アポロらしい言葉だった。
「一気に突き破る!それで終わらせる!」
「そうよね。相手は暴走してるし」
「考えの通じる相手ではない」
「それならね」
「こちらも下手な考えは捨ててだ」
「それにだ!」
 アポロがまた叫ぶ。
「俺達は三人だけじゃない」
「ええ、皆がいるわ」
「共にアクエリオンに乗る仲間達がだ」
 今は操縦から離れているだ。彼等がだというのだ。
 シリウスとシルヴィアは彼等に対して。こう問うた。
「いいだろうか、全員でだ」
「シンジ君を助け出そう」
「私達全員の願いならば」
「絶対に。できるから」
「ああ、わかった」
 最初に頷いたのはピエールだった。
「その話、乗ったぜ」
「そうだな。それがいい」
 次はグレンだった。
「三人で無理だとしてもだ」
「全員ならね」
 麗花も言う。
「絶対にできるわ」
「三人で駄目でも」
「皆がいれば」
 リーナとつぐみも話す。
「どんなことでもできるのは」
「これまでやってきたことだから」
「それなら」
「ここでも」
 ジュンとクルトも続く。
「三人でなく皆で」
「心を一つにして」
「そのうえでシンジ君を救い出す」
 最後はクロエだった。
「そうしましょう」
「話は決まった」
 シリウスがアポロに話す。
「そういうことだ」
「わかった。それならだ!」
「皆の心を一つにしてね!」
 アポロだけでなくシルヴィアも応えてだ。そのうえでだった。
 アクエリオンの両手が伸びる。そうして。
 ATフィールドを突き破りそれからエヴァの周りを何重にも囲みだ。それで縛ってだ。
 コクピットの中に入る。そのうえで。
「よし、これでいいな」
「後は!」
「シンジ!」
 アポロがシンジに対して言う。
「目を覚ませ!」
「!?」
「これで御前はまた俺達と一緒だ!」
 こうしてシンジを救い出そうとする。しかしだ。 
 この時だ。またしてもだ。何が起こった。それは。
 光が全てを包むその中で。
「な、何だ!?」
「今度は!」
「一体何だ!」
「これは!」
「ATフィールドが」
 マヤがその光の中で呟く。彼女達に起こっていたことは。
「皆のATフィールドが消えていくわ」
「そうね」
 リツコがマヤのその言葉に頷く。
「私もよ」
「これが答えなの?」
 マヤは光の中で自分自身に問うた。
「私が求めていた」
「はじまりと終わりは同じ世界にあるのだ」
 まただ。彼等が言うのだった。
「よい、全てはこれでよい」
「ミサトさん、これは」
 マリンがミサトに問う。
「何が起こっているのですか?」
「ATフィールドが消えていっているのよ」
 ミサトはマリンにこう答えた。
「皆のね」
「ATフィールドって確か」
「エヴァや使徒だけが持っているんじゃないの?」
「それがどうして」
「俺達まで」
「ATフィールドはね」
 ミサトはそのATフィールドについて話すのだった。
「誰もが持っている心の壁を」
「心の?」
「心の壁って」
「そうよ。言い換えればね」
 どういったものか。ミサトはそのことも話した。
「人を個としてのヒトたらしているものだ」
「それがか」
「ATフィールド」
「そうだったんだ」
「じゃあ」
「俺達も持っているんだ」
「ええ、そうよ」
 その通りだと話すミサトだった。
「それでそれがなくなれば」
「人がヒトの形を保っていられなく」
「そうして器をなくした心は」
「やがては」
「一つに」
「だからなの!?」
 アムがここで言った。
「あたし今プルちゃん達と同じみたいに感じてるけれど」
「そうよ」
 アムにも答えるミサトだった。
「そういうことなのよ」
「あたしがプルちゃんでプルツーちゃんで」
「あれっ、レトラーデさん?」
「美久、違う」
 そのプルとプルツーもそれぞれ言う。
「何、これって」
「どういうことなんだ」
「くっ、まずい!」
 サンドマンも事態を理解した。
「このままではだ」
「はい、誰もがです」
「一つになっていきます」
 メイド達も言う。
「このままですと」
「本当に全てが」
「まさか」
 レイヴンは下の十字架を見た。その十字架達を。
「あれは形を失いつつある人の魂」
「まるで墓場だな」
 エイジもだった。
「そう言う俺も何か」
「おい、ミサトさんよ!」
 忍がミサトに問う。
「どうにかならないのかよ!」
「時間がないわ」
 ミサトは一応は答えた。
「あと五分もあれば」
「五分」
「五分で」
「そうよ。人は完全に溶け合い」
 そしてだというのだ。
「一つになるわ」
「了解、五分か!」
「じゃあと五分でエヴァ初号機を止めれば」
「それで」
「ええ、あと五分よ」
 こう言うのだった。
「この世界は」
「助かる」
「そうなる」
「そうだな」
 ここで言ったのはコスモだった。
「それが助けっていうんならな」
「ちょっとコスモ!」
 すぐにだ。カーシャがその彼を問い詰める。
「人がヒトでなくなってもいいっていうの!?」
「そうすることでな」
 だが、だった。コスモは冷静に言うのだった。
「色々なことから逃げるやり方もあるだろ」
「逃げるって?」
「そうさ。第六文明人みたいにな」
「ってことは」
「コスモ、それって」
「ああ、そんなやり方は認めない」
 これがコスモの言いたいことだった。
「俺はそんなやり方はな」
「それじゃあコスモも」
「エヴァを」
「シンジは助け出してもまだあれは動いてるんだ」
 そうした意味でだ。完全に暴走だった。
「それならな!」
「そうね、あれを止めて」
「生き残るんだ!」
 カーシャだけでなくデクも言う。
「何があっても生きましょう!」
「絶対に!」
「残り五分か」
 ギジェもここで言った。
「短くはないな」
「ああ、俺達にとっちゃ充分過ぎる時間だ」
「その通りだ。それではだ」
 ギジェはコスモに対して告げる。
「イデオンも行くとしよう」
「言われなくてもな!」
 こうしてだった。イデオンもだった。
 エヴァに向かう。そうして戦うのだった。
「馬鹿シンジ!」
「おい、起きるんかい!」
 アスカとトウジが助け出されたシンジに対して叫ぶ。
「あんたも寝てないでね!」
「ちょっとは働かんかい!」
「しっかりしなさいよ!」
「あと五分で起きるんや!」
「シンジ君!」
 ミサトもだ。アクエリオンの腕の中の彼に叫ぶ。
「貴方が頑張らないと!」
「世界が終わるのよ!」
「だから起きるんや!」
「思い出すんだ!」
 万丈も言う。
「ジオフロントで戦うことを決意したあの時を!」
「そして御前は!」
 カミーユが続く。
「自分の足で歩く為に再びエヴァに乗ったんだろう!」
「あんたが何時までもうじうじしていたら!」
 やはりアスカだたt。
「皆一つになっちゃうのよ!」
「俺はアスカと一緒になんかなりたくないわ!」
「それはあたしの台詞よ!」
 そしてトウジと言い合いに入る。
「何であんたなんかとよ!」
「俺は宗介さんとかドモンさんとかイザーク限定や!」
「あたしはグリースさん限定よ!」
「似てる人としか一緒になりたくないわ!」
「そういうことよ!」
「僕は」
 彼等の言葉を聞いてだった。遂に。
 シンジはくゆっくりと。だが確かに目を開いた。
 そしてだ。まずはこう呟いたのだった。
「僕は」
「起きた!?」
「やっと!」
「シンジに自我が戻った!」
「遂に!」
「シンジ!」
 バサラがシンジに叫ぶ。
「歌え!」
「バサラさん!?」
「御前の歌を歌えーーーーーーーーーっ!」
「はい、じゃあ!」
 シンジもだ。バサラのその言葉に応えてだった。
 すぐにアクエリオンの腕の中からエヴァのコクピットに戻りそのうえで。
「僕の歌は、これです!」
「!?止まった!」
 洸が言った。
「ライディーンからの警告が」
「じゃあこれで」
「世界の危機は」
 去ったと思われた。だがこの時だ。
 シンジは闇の海の中にいた。その場にだ。彼は一糸まとわぬ姿でいた。
 その彼の前にだ。彼女がいた。やはり同じ姿だ。
「綾波・・・・・・?」
「・・・・・・・・・」
 レイは答えない。シンジはその彼女に問うた。
「ここは一体」
「ここはLCLの海」
「LCLの」
「そう、生命の源の海の中」
 そこだというのだ。
「ATフィールドを失った」
「僕達の心の壁を」
「自分の形を失った世界」
 まさにだ。その世界だというのだ。
「何処までが自分で何処から他人なのかわからない曖昧な世界」
「それがこの世界」
「そう、何処までも自分で」
 さらに話すレイだった。
「何処にも自分がいなくなっている」
「それがこの世界」
「脆弱な世界」
「それなら僕は」
 その世界の中にいると聞いてシンジはすぐにこう思った。
「死んだの?」
「そう思う?」
「うん、そうじゃないの?」
「それが違うわ」
「僕は死んでいないんだ」
「全てが一つになっているだけ」
 これがレイの説明だった。
「貴方の望んだ世界そのもの」
「そうなんだ。けれど」
「えkれど?」
「これは違う」 
 こう言うのだった。
「違うと思う」
「そう思うのね」
「僕の望んだ世界は。この世界じゃないと思う」
「それなら」
 シンジのその言葉を受けてだった。
 レイはだ。あらためて彼に告げた。
「貴方が他人の存在を今一度望めば」
「そうすれば?」
「また心の壁が全ての人々を引き離すわ」
 そうなるというのである。
「また他人による恐怖がはじまるのよ」
「他人による恐怖が」
「それがはじまる。それでも望むの?貴方は」
「うん」
 静かにだった。シンジは頷いた。
 そしてそのうえでだ。こうレイに話した。
「いいんだ」
「そうするのね」
「うん、あそこではいやなことしかなかった気がする」
 海の中で。華子を思い出しながら話した。
「だからきっと逃げ出してもよかったんだ」
「それでもなのね」
「逃げたところにもいいことはなかった」
 レイにだ。話していく。
「だって僕がいないのも」
「貴方がいないのも」
「誰もいないのと同じだから」
「それなら」
 今度はだ。彼だった。
「ATフィールドが再び」
「カヲル君・・・・・・」
「君や他人を傷つけてもいいのかい?」
「そう僕に問うんだね」
「その為にここに来たからね」
 カヲルは優しい微笑みでシンジに告げた。
「だからね」
「そうなんだね」
「そうだよ。それでなんだ」
「そうなんだね」
「それでシンジ君」
 優しい声でだ。シンジに問うのだった。
「君はそうしていいんだね」
「うん、考えたけれど」
「辛くて傷ついてもそれでもだね」
「そうしたいんだ。それにね」
「それに?」
「僕から問うよ」
 こうだ。カヲルとレイに問うのである。
「君達はどうして今僕の心の中にいるのかな」
「希望よ」
 レイが答える。
「それなのよ」
「希望」
「そう、ヒトは互いに分かり合えるかも知れない」
 レイはこうシンジに言う。
「ということのね」
「好きだという言葉と共にね」6
 カヲルも話してきた。
「その言葉と共にね」
「けれど」
 しかしだった。シンジはだ。
 諦める顔でだ。こう返した。
「それは見せかけなんだ」
「そう思っているんだね」
「自分勝手な思い込みなんだ」
 こう言うのである。
「祈りみたいなものなんだ」
「君は。本当にそう思っているのかい?」
「ずっと続く筈ないんだ」
 まだ言うシンジだった。
「何時かは裏切られるんだ。そして」
「そして?」
「僕を見捨てるんだ」
 しかしだった。シンジの言葉が変わった。
「けれど」
「そうだね」
「僕はもう一度会いたいと思った」
 こう言うのだった。
「その時の気持ちは本当だと思うから」
「それならだね」
「うん、僕は」
 そしてだった。彼は。
「行くよ」
「その皆の場所にだね」
「うん、行って来るから」
「行ってらっしゃい」
 レイがだ。微かに笑って告げてきた。
「そして、貴方の大切なものを」
「それをだね」
「その手にして」
 シンジに告げた言葉はこうしたものだった。そしてシンジは。再び彼の場所に戻るのだった。
 
第百十九話   完


                                  2011・5・6
    

 

第百七十話 世界の中心でアイを叫んだケモノ

              第百七十話 世界の中心でアイを叫んだケモノ
 シンジはだ。彼の前に来ていた。
「来たか」
「うん、父さん」
 こうだ。父に対して応えた。
「ここだったんだね」
「ここにいるとわかったのか」
「目が覚めたらここだったんだ」
 そのだ。今彼等がいるその場所について話した。
「この場所にね」
「そうか」
「父さんはバルマーに来ていたんだね」
「再び補完計画を進める為にな」
 その為だというのだ。
「地球とバルマーの関係は知っているな」
「うん」
 父の言葉にこくりと頷いて返す。
「もうね」
「我々は同じだったのだ」
 そのことも話すゲンドウだった。
「だからこそだ。この星においてだ」
「あの宰相の人に匿われていたんだね」
「結果としてそうなる」
 ゲンドウはそのことも認めた。
「シヴァー=ゴッツォにな」
「御互いに利用し合う為に」
「その通りだ」
「そうだね。それでだけれど」
 ここまで聞いてだった。
 シンジは聞くことを変えてきた。今度は。
「綾波は?」
「あれのことか」
「綾波は何処に」
「私にもわからんよ」
 これが彼の息子への返答だった。
「レイは私の下を去った」
「そうだったんだ」
「自分は人形じゃないと言ってな」
 そしてだ。今度はゲンドウがシンジに尋ねた。
「そしてだ。シンジ」
「僕のことだね」
「御前は何をしにここに来た」
 息子に問うのはこのことだった。
「御前は何の為にここに来た」
「僕は」
「御前を騙した私を倒すつもりか?」
 まずはこう問うたのだった。
「それもいいだろう。だが」
「だが?」
「エヴァはリリスの分身だ」
 この事実をだ。彼は今話した。
「初号機が存在していればだ」
「何度でもだね」
「再度の補完は可能だ」  
 そうだというのだ。
「私はその為に御前を初号機に乗せていたのだからな」
「父さん・・・・・・」
「さあ心の壁を解放しろ」
 こう我が子に告げる。
「御前と私の欠けた心を以てだ」
「それでというんだね」
「人々の補完を」
 彼が目指すもの、それをだというのだ。
「そしてガフの部屋を。世界のはじまりと終わりの扉を開くのだ」
「父さん!」
 だが、だった。シンジはだ。
 ここで言葉を強くしてだ。父に言うのだった。
「それは」
「母さんも待ってるぞ」
「僕はそんなの認めない」
「何っ!?」
「そんなのは逃げてるだけだよ!」
 こう父に言うのだった。
「自分の都合のいい世界に!」
「だがだ」
「だが?」
「この銀河はもうすぐ終局を迎える」
 ゲンドウは我が子にこの事実を話す。
「アポカリュプシスによって」
「だからって」
「だから。何だ」
「それに立ち向かわずに逃げた僕達を」
 シンジが言うのは彼自身だけではなかった。ゲンドウも見てだ。そうしてそのうえで彼に対して強く、彼が今まで出したことのない強さで言うのだった。
「母さんが迎えてくれるものか!」
「そう言うのか」
「何度でも言うよ!僕は嫌だ!」
「そうか」
 ここに至ってだ。ゲンドウは。
 手にしていたスイッチを押した。するとだった。
 初号機が急に出て来た。それを見て言うのだった。
「これは空の器だ」
「空の」
「最後まで魂の宿らなかった廃棄品の一つだ」
「僕の乗るエヴァの他の」
「そうだ。それでもだ」
「まさか。そのエヴァで」
「御前を従わせるだけの力はある」
 我が子に対しての言葉だ。
「だからだ。シンジよ」
「まだ言うんだね」
「私と来い」
 ゲンドウの言葉は変わらない。
「アポカリュプシスを回避するのは不可能だ」
「けれど」
「まだ言うのか」
「それがどんなに無謀な戦いでも」
 それでもだと。彼は言い切る」
「僕は逃げない」
「無駄なことだ」
「それでも」
 シンジはだ。父の言葉を退けた。
 そしてだ。こう、再び言い切ったのだった。
「僕の選んだ生き方だから」
「では御前は」
「僕はロンド=ベルのエヴァンゲリオン初号機パイロット」
 それこそがだった。
「碇シンジです!」
「シンジ・・・・・・」
「僕は最後まで戦う!」
 こう言うのだった。
「そのエヴァとも!」
 十字架にかけられ槍を刺されているアダム、下半身のないそれの前での言葉だった。彼は初号機に乗りだ。その初号機と戦うのだった。 
 その中でだ。彼も来たのだった。
「零号機!?」
「・・・・・・・・・」
 そしてそれに乗っているのは。
「綾波なの?」
「シンジ君、君は」
 その中からの言葉だった。
「やっぱりここに来たんだね」
「カヲル君!」
「これは彼女から借りているんだ」
 こうだ微笑みシンジに話すのだった。
「君を助ける為にね」
「今の君は」
 シンジはそのカヲルに問うた。
「僕があの時倒したカヲル君なの?」
「その質問は無意味だよ」
「無意味?」
「そうさ。何故なら」
 何故無意味なのか。カヲルはそのこともシンジに話した。
「死と新生は常に繰り返されるのだから」
「だから」
「そうだ。だからね」
 こうシンジに話すカヲルだった。
 ゲンドウはだ。そのカヲルに対して問うた。
「タブリスよ」
「何かな」
「何故調停者の一人である御前がシンジにつく」
「彼は好意に値するからね」
「コウイ?」
「好きだってことさ」
 微笑んでの言葉だった。
「そしてこの言葉だけで」
「どうだというのだ」
「貴方の計画は失敗したも同然だ」
「どういうことだ、それは」
「ヒトは。貴方が思っている程弱くはない」
 こう告げる。それと同時にだ。
 この場にだ。彼等が来たのだった。
「ここか!」
「色々と迷ったけれどな!」
「馬鹿シンジ!」
 アスカが言ってきた。他の皆もいる。
「勝手に飛び出して!」
「アスカ、生きていたんだ」
「あたしは不死身よ!」
 こう言い返すアスカだった。
「弐号機もね!」
「そうだったんだ」
「あのしぶとい量産型は全部やっつけたわよ」
 アスカはシンジにこのことも話した。
「相当てこずったけれどね」
「じゃあ」
「そうよ。ここで最後よ」 
 シンジにこのことも話した。
「バルマーでの戦いもね」
「来たか、ロンド=ベル」
 ゲンドウは彼等にも言った。
「まさかここまで来るとはな」
「御久しぶりです」
 ブライトがそのゲンドウに対して告げる。
「こうした形で御会いするとは」
「そうだな。お互いに複雑な心情になるな」
「司令、これは一体」
 ミサトはそのゲンドウに対して問うた。
「どういうことですか?」
「君も知っての通りだよ」
「私の。では」
「アポカリュプシスに対して人類が完全な滅亡を逃れるには」
 その為にはというのだ。
「一つしかない」
「だからなのですね」
「ヒトという形を捨て無限の力と一つになることだ」
「第六文明人みたいにだな!」
「そうだ」
 コスモに対しても答えた。
「そうなるのだ」
「誰がなるか!」
 コスモはこの言葉で返した。
「そんなものにな!」
「イデに触れながらイデを理解していないか」
「ああ、わかってたまるか!」
 これがコスモの返答だった。
「そんなものな!」
「そうして破滅から逃れられなくなるというのだな」
「破滅からは逃れてやるさ!」
 コスモはまた返答を告げた。
「俺達自身の力でな!」
「それは無理だ」
「ああ、あんたの中では無理だ!」
 しかしだというのだ。
「だが俺達はだ!」
「できるというか」
「ああ、絶対にだ!」
 こう言うのである。
「やってやる!」
「司令、いいですか?」
「加持か」
「話して欲しいんですがね」
 こうゲンドウに問うのだった。
「貴方が知るアポカリュプシスのことを」
「それを全てだな」
「ええ、貴方が知っている全てのことを」
 それをだというのだ。
「話して欲しいんですがね」
「知っていることは君達と変わらんよ」
「そうなんですか」
「そうだ。その宇宙が誕生した時から」
 その時からだというのだ。
「あらゆる場所で発生した死と新生がだ」
「その二つがですか」
「宇宙規模で起こるだけだ」
「それがアルマナ姫の言っていた」
「全てのはじまりと終わり」
「銀河の終焉」
「そういうことか」
「そうだ。そしてそれはだ」
 ゲンドウはさらに話す。
「アポカリュプシスの予兆は既にだ」
「遥か前からか」
「やっぱりあったんだな」
「そうだ。五十万年前にだ」
 その時点でだ。既にだというのだ。
「認められているのだ」
「それがですね」
 ミサトが言う。
「使徒の誕生の契機」
「如何にも」
「先代文明による最初の人類補完計画」
「その通りだ。だが」
「それでもですね」
「それは単なる予兆に過ぎず」 
 それでだというのだ。
「補完から逃れた人類も滅亡することはなかった」
「それでなのですが」
 加持はさらに問う。
「アポカリュプシスとは具体的には何か」
「今度はそのことか」
「誰が何の為に起こすものですか?」
「アポカリュプシスには段階がある」
 そうだと話すゲンドウだった。
「その第一段階はだ」
「それは一体」
「何だ?」
「知的生命体の抹殺にある」
「まさかそれが」
 その言葉でだ。ノリコが気付いた。
「あの私達が戦っている」
「その為に生み出されるのが宇宙怪獣だ」
「そうだったの」
「あの宇宙怪獣達はやはり」
「アポカリュプシスの一環だったのね」
 カズミとユングが顔を顰めさせて言う。
「怪しいとは思っていたけれど」
「そういうことだったのね」
「それ以外にも様々な脅威が銀河に発生する」
「プロトデビルンも」
「ソール十一遊星主のプログラム変調も」
「再生した使徒も」
「そしてだ」
 さらにだった。
「別銀河、別次元からの敵もだ」
「じゃあムゲもかよ!」
「俺達もだったのか」
 忍とフォルカが同時に言った。
「あの連中もか」
「アポカリュプシスだったのか」
「そういえば似ているな」
 ロジャーも言う。
「私達の世界とこの世界の破滅は」
「ロジャー=スミスだな」
「如何にも」
「そうだ。君達の世界がこちらの世界とつながったのもだ」
「その一環か」
「それにより互いに崩壊し合う筈だったのな」
「成程な。そうだったのか」
「じゃあ俺が急にここにいたのも」
 トカマクもここでようやくわかった。
「そのアポカリュプシスに巻き込まれてか」
「オーラロード自体がそうですね」
 シーラはそのことに気付いた。
「そしてドレイクのこちらへの侵略も」
「あたし達もだったのね」
「そうだね」
「あの人のお話によると」
 ティス、ラリアー、デスピニスも気付いた。
「それにエリスさん達も」
「同じになるね」
「私達は同じ存在だったのね」
「そうだな」
 エリス自身もそのことを認めて頷く。
「私達の介入にはそうした謎があったのか」
「カヲル君や使徒が新たに現れたのも」
「その通りだよ」
 シンジにはカヲルが話す。
「そういうことだったんだ」
「カヲル君、そうだったんだ」
「その通りだ。そして同時にだ」
 また話すゲンドウだった。
「銀河は生まれ変わる為に」
「その為に!?」
「その為にというと」
「その身をよじりはじめる」
「トカマクの一環はそういう一環か」
「そうよね」
 ショウとチャムが話す。まさにそうだった。
「時間の歪みも」
「それもか」
「俺がショウ=ザマと同じ場所にいるのもか」
 シオンである。
「それが原因だったのか」
「悠久の時を経て」
 それでだというのだ。
「死と再生を繰り返す銀河にとってはだ」
「時間のずれもか」
「かなりのものでも」
「微々たるもの」
「そうだったんだな」
「あるいはだ」
 ゲンドウはそのことについても話す。
「審判の材料を集める為に」
「その為に」
「時間の針は」
「その中で」
「少しだけ調整しただけだろう」
 ここまで話を聞いてだ。ミレーヌが言う。
「そこまでできるなんて」
「神様の天罰みてえだな」
 バサラも言う。
「そこまでとてつもねえとな」
「そうよね。まさにそのものよね」
「それは違う」
 ゲンドウは二人の話は否定した。
「これは無限の力だ」
「無限の力!?」
「それだと」
「そうだ。宇宙に定められた抗うことのできない」
 それだというのだ。
「絶対運命、アカシック=レコードによるものだ」
「絶対の運命」
「抗うことのできない力」
「それがか」
「アポカリュプシス」
「そうなのか」
「あらゆる手段を講じても動かないもの」
 ジェイが言う。
「それこそがだ」
「運命だね」
 ルネが忌々しげに返す。
「それだね」
「そうなる」
「成程」
 トモロはそれを聞いて述べた。
「確かに最大最強の力」
「イデ」
「ゲッター線」
「ビムラー」
「ザ=パワー」
 そうした力が述べられていく。
「その他の力も」
「未知なるエネルギーの多くは」
「それもまた」
「そうだ。無限の力がだ」
 ゲンドウはそのことについても話した。
「無限の力が形を変えてだ」
「その一端を見せている」
「それだけか」
「つまりは」
「その程度のものなのね」
「そういうことだ」
 まさにそうだというのだ。
「全てはだ」
「じゃああらゆることがか」
「俺達にとっては」
「そのアポカリュプシスの中にあるもの」
「絶対の運命によって」
「それによって」
 またゲンドウが話す。
「この宇宙はだ」
「今度は宇宙か」
「この宇宙のことか」
「話がどんどん大きくなるな」
「数ある可能性の中のだ」
 どうかというのだ。
「失敗作だったのだろう」
「失敗作!?」
「この宇宙が」
「そうだってのか!?」
「そう、失敗作だったのだ」
 こう言うのだった。
「この宇宙はだ」
「馬鹿な、そんな」
「じゃあ俺達もか」
「失敗作になる」
「そうなるんだな」
「如何にも」
 語るゲンドウの目は鋭い。
「その通りだ」
「今度は何が根拠なんだ」
「一体」
「何が」
「では聞こう」
 また言うゲンドウだった。
「ヒトの革新と呼ばれたニュータイプ」
「そのことか」
「そうだ。これまでに何をしてきた」
 こうアムロ達に問う。そのニュータイプ達にだ。
「これまでの戦いにおいてだ」
「これまでの戦いで」
「果てしなく続く戦いの環の中で」
 その中でだというのだ。
「君達ニュータイプは戦争の道具として利用されてきたな」
「それは」
「その一面もある」
「しかしそれだけじゃない」
「私達は」
「互いをわかり合えると言われているニュータイプがだ」
 ゲンドウは彼等の話を聞かずにさらに言う。
「傷つけあい憎しみ合う。それはだ」
「違うというのね」
「そうだ。人類の革新、進化ではない」
 こうクェスにも言う。
「ヒトが不完全な群体である以上はだ」
「それならばか」
「俺達ニュータイプは」
「強化人間も」
「そうだ、強化人間も同じだ」
 ゲンドウは強化人間も名指しした。
「ヒトの手による人工的な進化もその袋小路に入っている」
「俺達だな」
「そうだな」
 ディアッカとイザークが気付いた。
「コーディネイターもか」
「そうだというのか」
「コーディネイターは出生率が低下している」
「確かに」
 ニコルもそのことは認めるしかなかった。
「それがコーディネイターの問題にもなっています」
「メガノイドもそうだった」
「言ってくれるね」
 万丈はメガノイドに対して言った。
「彼等も出すんだね」
「先天後天に関わらずその結果はあまりにヒトであり過ぎる」
 そしてだった。
「今度は人が進化を促される立場に回ったのだ」
「一つ言っておこうか」
「どうした、破嵐万丈」
「人の姿と心を捨てたものは」
「何だというのだ」
「もうヒトとは言えないよ」
 こうゲンドウに言うのだった。
「メガノイドだと同じだよ」
「それにな!」
 今度は甲児だった。
「分かり合えるだの分かり合えねえだのな!」
「それがどうしたというのだ」
「人間ってのはぶつかり合って喧嘩してな!」
 こう言うのだ。
「それを乗り越えてお互いを認め合うものじゃねえか!」
「そうだ!」
 ケーンも言う。
「俺達はな!」
「完全に分かり合えなくてもな!」
「生死を共にする仲間がいれば!」
 タップとライトも続く。
「それで生きていけるんだよ!」
「御互いそれでな!」
「十分だと思うんだがね」
「あんたの補完計画はだ」
 鉄也はばっさりと切り捨てた。
「ただの馴れ合いだ」
「そんなものには!」
「一緒になれないよ!」
 勇とヒメも言う。
「それ位なら!」
「一人で生きる方がずっといい!」
「やはりな」
 あくまで人の話を聞かないゲンドウだった。その彼はだ。
 いつものあの考える目でだ。こう言うのだった。
「君達の心の壁」
「ATフィールド」
「それはか」
「強力過ぎる」
 こう言うのだった。
「補完の障害となるものは全て排除するまでだ」
「これは最後の警告です!」
 遂にミサトも言う。
「計画を即刻停止して下さい!」
「それは出来ない」
「あくまでそう仰るのですね」
「そうだ。私はあくまでこの計画を遂行する」
「父さん・・・・・・」
 シンジが思わず父と言った。その横からだ。カヲルが言うのだった。
「どうやら貴方は」
「何だ。タブリス」
「以前のシンジ君と同じだね」
「シンジとだというのか」
「そう、その魂を素直に表現できればもっと違った結果になったかもね」
「そう言うのか」
「言わせてもらうよ。そう」
 その次の言葉は。
「歌を歌う様に」
「そこでそう言うのね」
「歌なんですか」
 シェリルとランカがカヲルの言葉に顔を向けた。
「歌を」
「それを歌えば」
「リリンの生み出した文化の極み」
 それだとだ。ここでも話すカヲルだった。
「そこに答えはあるんだ」
「歌にか」
「そう、プロトカルチャーの中にもそう考えた人達がいたんだ」
「じゃあ渚カヲルは」
「まさか」
「カヲル君、君は」
「シンジ君」
 カヲルはシンジに優しい顔を向けながら彼に語り掛ける。
「もうすぐお別れの時が来る」
「うん・・・・・・」
「それまでだけれど」
「僕の歌をなんだね」
「そう、君の魂の歌を」
 まさにだ。それをだというのだ。
「聴かせてくれないかな」
「僕の歌は。それは」
「難しく考える必要はないんだ」
 カヲルは躊躇を見せたシンジにまた優しく語り掛けた。
「心を燃やせばね」
「それがそのまま」
「歌だから」
「じゃあ僕は」
「君も歌を聴かせてくれ」
 それこそがカヲルの願いだった。
「僕に」
「うん、わかったよ」
「それが君達の進む正しい道なのだから」
 こうシンジに告げる。それを受けてだ。
 シンジはダミープラグと対峙する。その彼にだ。
 ゲンドウは。あらためて問うた。
「来るか、シンジ」
「父さん、僕は」
「どうしたのだ」
「綾波を助け」
 まずはレイのことを父に話す。
「父さんと話をする為にここに来たんだ」
「だからだというのか」
「そう、そして僕は」 
 彼自身はだ。どうかというとだった。
「もう逃げないよ」
「決してか」
「自分の敵から、自分の居場所から」
 そしてであった。最後は。
「父さんの前から」
「決してか」
「そうするよ」
「ではあらためて告げよう」
 ゲンドウは顔にも声にも動揺を見せずに我が子に話した。
「ヒトはアポカリュプシスからは逃れられない」
「それが父さんの考えなんだね」
「その滅びの宿命からはだ」
 決してだというのだ。
「それはアカシックレコードに記された絶対の運命だからだ」
「そうだね」
「人類が戦いを挑むことは無駄なのだ」
 その考えはだ。どうしても変わらない彼だった。
「だからヒトが生きていた証を」
「それを」
「生命の源をどうして次の世界に残すのか」
 まさにだった。
「それこそが重要なのだ」
「そしてその為になんだね」
「ヒトは肉体を捨てて魂を一つにし」
 そしてだった。
「無限の力に融合しなければならない」
「・・・・・・・・・」
 誰も何も聞かない。彼の話を聞いているのだ。
「終焉を超え新しい銀河に転生するのだ」
「そしてそれがか」
「あんたの願いで」
「そうしてなんだな」
「永遠に繰り返される誕生、進化、死、新生の輪廻なのだ」
 ここまで話して。あらためてシンジに告げる。
「もう一度だけ言う」
「これが最後なんだね」
「さあ、来るのだシンジ」
 我が子にだ。語り掛けるのだった。
「母さんが、ユイが御前を待っている」
「答えは変わらないよ」
「そう言うのか」
「だって。同じだから」
「同じ?」
「そう、父さんは同じだよ」
 シンジは父をだ。今完全に理解したのだ。180
「昔の僕とね」
「昔の御前だというのか」
「自分の意志ではどうにもならないものの存在を知って」
 そうしてだというのだ。
「逃げようとしているだけじゃないか」
「それは」
「同じだよ」
 父の弁明を封じて。さらに言うのだった。
「そんな父さんに」
「私は」
「世界の終わりを告げる資格なんてないんだ」
「あんた、似てるな」
 ムウも言った。
「あいつにな」
「あいつ・・・・・・ラウ=ル=クルーゼか」
「誰にもな。世界を終わらせる資格なんてないんだよ」
「私はあの男でもあるのか」
「あいつはこの世を呪ってそれを目指そうとした」
 それがだ。似ているとというのだ。
「あんたもこの世が憎いんだな」
「いや、私は」
「わかるさ。隠さなくてもな」
「・・・・・・・・・」
「その言葉の中身もな」
「まさかそうした言葉が出て来るとはな」
 ゲンドウはもうこう言うしかできなかった。
「シンジ、御前の口からな」
「父さん・・・・・・」
「少しは成長を遂げた様だ」
 ここに至ってだ。父の言葉を出したのだった。遂にだ。
「よもやそうした言葉が出て来るとはな」
「僕は」
「ロンド=ベルに送り込んで正解だった」
 ゲンドウはこうも言った。
「まさにな」
「そう言ってくれるんだね」
「今それを思う」
「シンジは」
 アムロがゲンドウに言ってきた。
「俺達と共に戦い」
「そうしてだな」
「そうだ、見つけたんだ」
 これがアムロのゲンドウへの言葉だたt。
「守るべき存在と帰るべき場所を」
「その二つを」
「そういうことだ」
「そうなのか」
「そしてだ」
 今度はカミーユだった。
「貴方の言う通り人類はだ」
「それはわかるな」
「互いに完全にわかりあえないかも知れない」
「その通りだ」
「だが!」
 それでもだとだ。カミーユは己が言いたいその本題に入った。
「それぞれにある見えない壁によって生じる」
「それこそが問題なのだ」
「その様々な問題や苦難を乗り越える姿こそ」
 それこそがだった、
「人間本来の姿じゃないのか」
「その様に不安定な心を持つヒトがだ」
 ゲンドウは今も反論する。
「何をしてきた」
「何をか」
「それをか」
「同じ歴史、同じ過ちの繰り返しだ」
 彼の言うことはそのことだった。
「そしてその結果が閉じゆく世界だ」
「そう言うんだな」
「あんたはあくまで」
「だからこその補完計画」
「そうだと」
「そうだ」
 まさにその通りだった。
「ヒトの進化も行き詰まり」
「そしてか」
「後は」
「その到達点である死と滅亡を迎えるだけ」
 何処までもだ。彼は終末論だった。
「だが補完はだ」
「それはか」
「そうだ。ヒトをその先の世界に導くのだ」
「そうはならないでしょう」
 リリーナはゲンドウのその主張を一蹴する形になった。
「貴方のお考えには」
「何故そう言える」
「人は一人では生きられないからです」
「一つになっては駄目だ」
 ヒイロも言った。
「それでは何にもならない」
「その通りだ。傷つけ合おうとも」
 ミリアルドも話す。
「答えを探すものだ」
「俺達はそれを探す!」
 凱は言い切った。
「それは生きることそのものだ!」
「アポカリュプシスが何だ!」
 ゴウもだった。
「そんなのに屈するかよ!」
「生命が燃え尽きるその時までだ」
 大介の言葉だ。
「僕達は戦い抜く!」
「これ以上の問答は無意味だな」
「やはりそう仰るのですね」
 リツコもだ。居間はゲンドウと完全に対峙していた。
「貴方は」
「如何にも。それならばだ」
 こう言ってであった。
「君達の力を見せよう」
「いいかい、シンジ君」
「あんなのどうってことないでしょ!」 
 カヲルとアスカがシンジに告げる。
「あのダミープラグも今の君ならね」
「あっという間よね」
「うん、これで」
 出すのはだ。マゴロクだった。
「やってみるよ」
「うん、じゃあ」
「見せてもらうわよ」
「あの槍やなくてもな」
 トウジもいる。
「やれるな」
「あの槍はあえて使わないよ」
 シンジはこうトウジに返す。
「僕の。このエヴァの刀で」
「うん、じゃあ」
「決めなさい!」
「一撃でや!」
「僕には仲間がいるんだ」
 シンジはダミープラグに向かいながら言う。
「こんなに素晴しい仲間ができたんだ」
「その仲間達が何をしてくれる」
 ゲンドウはその我が子にまだ言う。
「結局ヒトは互いに傷つけ、傷つけられることの繰り返しだ」
「そうだろうね」
「互いの欠けた心」
 ゲンドウは言う。
「不安と恐怖を取り除き」
「一つになってだね」
「アポカリュプシスを乗り越えば人は滅亡する」
「今までだって色々な困難を乗り越えてきたんだ!」
 それがシンジの今までの戦いに他ならない。
「逃げちゃ駄目なんだ!」
「なら。やってみることだな」
「やってみる!これで!」
「今日はスペシャルだ!」
 バサラがそのシンジに叫ぶ。
「御前のステージだ!思う存分歌え!」
「はい!」
 シンジは構えてだ。そのうえで。
 一刀両断だった。ダミープラグに攻撃する隙さえ与えなかった。
 そしてだ。ダミープラグが斬られると。
 場が揺れだした。大きく。
「!?まさか補完計画が破綻して」
「もうこの場所が」
「崩れるというのか」
「そうなのか」
「あらかじめ用意しておいたのだ」
 ゲンドウはその揺れ動く場の中で話す。
「若しダミープラグが敗れればだ」
「人類補完計画が破綻したら」
「その時は」
「この場自体が」
「ダミープラグと連結させていた」
 こう話すのだった。
「部屋への爆破装置とな」
「そうか、そういうことか」
「ならもうこれで」
「この場所から」
「この時をひたすら待ち続けた」
 ゲンドウは言う。微笑みながら。
「ようやく会えたな、ユイ」
「!?父さん」
 シンジは確かに聞いた。父の今の言葉を。
「母さんの名前を」
「俺が傍にいるとシンジを傷つけるだけだ」
 今その本心を語るのだった。
「だから何もしない方がよかった」
「シンジ君が怖かったのね」
 不意にあの声がした。
「だからなのね」
「えっ、その声は」
 シンジがだ。その声に最初に問うた。
「綾波!?」
「だからシンジ君との接触を避けていた」
 レイだった。レイもこの場に姿を現し言うのだった。
「そうだったのね」
「自分が人から愛されるとは信じられない」 
 また本心を語るゲンドウだった。
「私にそんな資格はない」
「ただ逃げているだけなんだ」
 カヲルはそのゲンドウに言った。
「自分が傷つく前に世界を拒絶している」
「それが私だったのだな」
「人の間にある形もなく見えないものが怖くて」
 レイもゲンドウに話していく。
「そうして心を閉じるしかなかったのね」
「その報いが今か」
 ゲンドウは今自省に入っていた。
「この有様か」
「駄目だ、もう!」
「この場はもたない!」
「総員退避!」
「急げ!」
「父さん!」
 シンジは無意識のうちに父に声をかけた。しかしだ。
 ゲンドウはその場に立ったままだった。動こうとしない。
 そして我が子を見て微笑みだ。こう告げたのだった。
「すまなかったな、シンジ」
「父さん!逃げて!」
「いいのだ。私はこれでな」
「そんな、それじゃあ!」
「皆のところに帰りなさい」
 その微笑みと共に我が子にまた告げる。
「そして。生きなさい」
 場は崩れゲンドウはその中に消えた。そしてロンド=ベルは。
 バルマー上空に出ていた。そこでだった。
「ゼーレも一人残らず死んだ」
「遺体が確認されました」
 こうバランとルリアから話が来た。
「補完計画が収まり人は下の姿に戻った」
「全ては元通りです」
「そうですか」
 シンジがその話を聞いて頷く。
「全ては終わったんですね」
「残念だがお父上はだ」
「あの場で。遺体は確認できませんでした」
「はい、わかりました」
 死んだのはもうわかっていた。ああなっては生きても仕方がない。どちらにしても父は死んだ、シンジはそのことは誰よりもよくわかった。
「それでは」
 そしてだった。シンジは言うのだった。
「父さんは僕と同じだったかも知れない」
「シンジ君」
 ミサトがそのシンジの話を聴く。
「そう思うのね」
「はい、周りの世界から拒絶されるのが怖くて」
 それでだというのだ。
「先に自分から心を閉じた」
「そうなるわね」
「本当は父さんも」
 その彼がだというのだ。
「他人から傷つけられるのが怖くて」
「それでだったわね」
「なのに僕は父さんを」
「貴方のその選択がね」
 ミサトはそのシンジに話す。
「それを決めるのはね」
「僕なんですね」
「ええ、貴方よ」
 他ならぬだ。彼自身だというのだ。
「貴方以外の誰でもないわ」
「そうなんですね」
「そうよ。貴方が決めて」
「そうして」
「あの人はね」
 今度は万丈が話す。
「人類補完計画によってアポカリュプシスを超えて」
「そうしてですね」
「ヒトの魂を存在させようとした」
 それがだ。ゲンドウの願いだったのだ。万丈はそれは理解していた。
「けれど僕達は」
「はい」
「それを否定した」
 シンジにこのことも話したのである。
「そうですね。僕は」
「君自身としてだね」
「はい、僕として生きていくことを選びました」
 これがシンジの答えだった。
「それが例え辛くても悲しいことばかりだとしても」
「それでもだね」
「僕は僕ですから」
「そうだよな」
 シンが彼のその言葉に頷いた。そのうえでの言葉だった。
「俺達も同じなんだよな」
「そうだね」
 キラもシンに続く。
「僕達はやっぱり」
「けれど。あの人もこともね」
 海は俯いて述べた。
「考えていたこともわかるわ」
「そうですわね。人は目指すものは一つでも」
 風も言う。
「そのやり方の違いだけで戦うことができますから」
「だから僕は戦います」
 シンジは顔をあげた。
「父さんとは違うやり方で」
「それでなのね」
「はい、そのうえで」
 ミサトに応えながらの言葉だった。
「父さんの意志を継いで」
「そうしてそのうえで」
「父さんと母さんが僕に遺してくれた」
 そしてだ。シンジはここでだ。
 カヲルを見た。彼の前にいる彼をだ。
 そのうえでだ。彼にこう告げるのだった。
「あのエヴァで」
「そうするんだね。君は」
「それが僕の選んだ未来だよ」
 微笑んでだ。カヲルに話すのだった。
「僕がね」
「わかったよ」
 カヲルは微笑んで彼のその考えを受け入れた。
 そうして。彼にこう告げたのだ。
「僕もね」
「それでいいと言ってくれるんだね」
「僕はもうすぐ消えるけれど」
 それでもだというのだ。
「それでも。君と同じ立場なら」
「それならだね」
「うん、それしかないから」
 だからだというのだ。
「君が君である為にはね」
「僕は僕のままで」
「僕が君を好きな理由は」
 それは。何故かというのだ。
「君が優しさの中に別のものも持っているからだよ」
「それは」
「強さだよ」
 それだというのだ。
「そう、人としての強さをね」
「人としての」
「そう、人としてのね」 
 それがシンジの強さだというのだ。
「それが君にはあるから」
「だから」
「あの人はそれを否定しようとしていた」
 ゲンドウのことに他ならない。
「けれど君は違うからね」
「強さを否定しなかった」
「最初はなかったかも知れない」
 だが、それでもだというのだ。
「けれど君は最初から持っている優しさにそれを加えて」
「そして今に至るんだね」
「君は必死に努力してそれを手に入れた」
「強さを」
「その君を好きになったんだ」
 微笑んでだ。シンジに話すのだった。
「僕はね」
「カヲル君・・・・・・」
「さあ、最後の最後まで戦うんだ」
 こうもシンジに告げてだった。
「優しさの中に強さ、それを」
「それを持って」
「勇気をね」
「勇気?」
「優しさの中にある強さ」
 それこそがだというのだ。
「それが勇気なんだ」
「勇気。それが」
「君はもう勇気を手に入れたから」
「だからこれからも」
「戦えるよ。アポカリュプシスを止められるよ」
「そう言ってくれるんだね」
「そう確信しているから」
 カヲルはだ。シンジへの絶対の信頼も見せた。
「だからね」
「じゃあ僕はこれから皆と一緒に」
「ロンド=ベルの皆と一緒にね」
「戦うよ。それじゃあ」
「さようなら」
 カヲルはこれまで以上の微笑みを見せた。そのうえでの言葉だった。
「君の。君達の未来を信じているよ」
「有り難う、カヲル君。そして」
 シンジもだ。微笑んでだった。
 カヲルにだ。この言葉を贈った。
「さようなら」
 カヲルは霧の様に姿を消した。これで全てが終わった。
 シンジは少年でなくなった。その彼のところにだ。
「一つ終わったで」
「そうだね」 
 トウジとケンスケが出て来て言う。
「人類補完計画がな」
「まさかと思ったけれど」
「ああ、けれどこれでや」
「使徒も。ゼーレもなくなるから」
「そうよ。これでね」
 ヒカリも言う。
「また一つ。戦いが終わったのね」
「そうよ。まだ戦いはあるけれどね」
「それでも一つの戦いが終わったことは」
「確かだよな」
 マヤにマコト、ジゲルも話す。穏やかな顔になって。
「司令が死んだのは思うところがあるけれど」
「あの人も。やっぱり人間だったんだな」
「それも弱い」
「そうね。確かにね」
 ミサトも考える顔で述べる。
「あの人もやっぱり。そうだったのね」
「正直好きじゃなかったよ」
 マサトがこんなことを漏らした。
「冥王計画の時からね」
「そうだったのね」
「けれど。今思えば」
「あの人の心がわかったからなのね」
「うん、嫌いじゃなくなったよ」
 マサトはこう美久に答える。
「本当のことがわかったから」
「そうなのね」
「こうして今皆を見ると」
 マサトは今度は皆を見て述べた。
「無事でよかったよ」
「そうね。本当にね」
「レイも来たし」
「えっ!?」
 今のマサトの言葉にだ。
 シンジは思わず言葉を失いそうしてだ。周りを見た。するとだ。目の前にだった。
 彼女がいた。レイがだ。そのうえで彼に言ってきたのだ。
「碇君」
「綾波・・・・・・」
「帰って来たわ」
 こうだ。微かに笑って言うのである。
「皆の。碇君のところに」
「うん、お帰り」
 シンジもだ。笑顔でレイに応える。
「綾波」
「只今」
「さて、大団円ね」
 ミサトが満面の笑顔で言う。そのうえでだ。
 一同にだ。こう話すのだった。
「これから宇宙怪獣かバッフクランとの決戦になるけれど」
「それでもですね」
「今は」
「ええ。二つの戦いの結末のお祝いにね」
 バルマーとの戦い、そして補完計画のだ。
「派手にやるわよ」
「飲むのかしら」
「いえ、運動会よ」
 それだとだ。リツコに話すのだった。
「たまにはね。健康的にいきましょう」
「そうね。お弁当をたっぷり用意してね」
「楽しくやりましょう」
 こう一同に提案するのだった。それを聞いてだ。誰もがこう言うのだった。
「そうだよな。たまにはいいよな」
「いつも飲んで騒いでだけれどな」
「そうした健康的なのもな」
「いいよな」
「そうよね」
 皆賛成だった。そうしてだ。
 その中でだ。またしても言うシンだった。
「ミサトさんが運動会ねえ」
「そうよ。いいでしょ」
「いや、おばさんの体操服ってどうにもならないだろ」
 ミサト本人を前にしての言葉である。
「もうよ。胸も尻も垂れて腹も出てるんだろ?手もぶよぶよでな」
「シ、シン待てよ」
「御前それ以上言うなよ」
 慌ててだ。スティングとアウルが止めに入る。
 しかしだ。シンはいつも通り続けるのだった。
「それで無理して体操服にブルマか。見ただけで死ぬな」
「そう、死ぬのね」
「おばさんの体操服なんか戦略兵器だよ、戦略兵器」
 ここまで言うのだった。
「そんなの着てよ。正気なのかね」
「そうね。正気よ」
 ミサトは瘴気を身に纏いながら答えた。
「だからシン君いいかしら」
「んっ、何だ?」
「今から死になさい」
 こう言ってだ。漆黒の影になってだ。シンに襲い掛かってだ。
 シンを残骸にしてしまった。それを見て皆は言うのだった。
「こいつの頭は補完してもいいじゃなかったのか?」
「一体何度同じこと繰り返すんだよ」
「本当に馬鹿だよな」
「全く」
「何の進歩もないな」
 こう言って呆れるばかりだった。何はともあれだ。これでまた一つ戦いが終わったのだった。


第百二十話   完


                                        2011・5・11    

 

第百二十一話 出航!銀河中心殴り込み艦隊

               第百二十一話 出航!銀河中心殴り込み艦隊
 運動会はミサトの提案通りエクセリヲンの中で行われた。しかしだ。
 ブルマはいなかった。それは誰もだった。
「皆半ズボンなんだね」
「当たり前でしょ、そんなの」
 アスカが怒った顔でシンジに言い返す。当然彼女もブルマではなく黒の半ズボンだ。その格好でだ。シンジに対して言い返すのである。
「今時ブルマなんてないから」
「そうだよね。もうなくなっちゃったんだね」
「そう、今は半ズボンよ」
 その半ズボン姿での言葉だ。
「動きやすいしね」
「だよね。動きやすいよね」
「それによ」
 さらに言うアスカだった。
「ほら、ブルマってあれじゃない」
「あれって?」
「下手したらはみ出るのよ」
 アスカは無意識のうちに無防備になって話すのだった。
「お尻とかショーツがね」
「ああ、アスカ今白だね」
「そうそう。白がね・・・・・・って」
 ここで自分で言ってしまったのだった。
「何言わせるのよあんた」
「自分で言ったじゃない」
「っていうか何で今日のあたしのショーツの色知ってるのよ」
「だって今朝ね」
「今朝って!?」
「皆で朝まで飲んで」
 やはり飲むことは忘れない彼等だった。それも祝いだったのだ。
「その時アスカ酔い潰れてたじゃない」
「ええと、ビール大ジョッキで十杯までは覚えてるけれど」
「それでスカートお臍のところまで捲り上げて寝ていて」
「そんなはしたない格好だったの!?」
「それからシャワーも浴びないで体操服に着替えただけだよね」
「それはそうだけれど」
「だからだよ」
 つまりだ。その時の下着のままだからだというのだ。
「それだと思ったけれどね」
「半ズボンから見えたわけじゃないのね」
「ああ、それはないから」
 それは否定するシンジだった。
「安心していいから」
「わかったわ。それにしてもあんた」
「何?今度は」
「あたしのショーツ見たのね」
 顔を顰めさせてだ。シンジに言うのだった。
「高いわよ。今晩ビール飲み放題ね」
「っていつも飲んでるじゃない」
「いいのよ、それでも」
「ううん、何かブルマーと話が変わってきてるし」
「そうそう。それよ」
 話は強引に戻った。戻ってしまった。
「それよ。ブルマーはね」
「ブルマーは?」
「お尻やショーツがはみ出る危険があるのよ」
 それを言うのだった。
「そういうこともあるから」
「だからブルマーは嫌なんだね」
「それよりもやっぱり半ズボンよ」
 笑顔で言うアスカだった。
「大体男はジャージで女の子がブルマーって何なのよ」
「そんなの僕に言われても」
「まあ脚でも見なさい」
 アスカはシンジに自分の足を誇らしげに見せてきた。
「ほらほら、見たい放題よ」
「別に今更そんなの見ても」
「何よ、嫌なの?」
「これまでいつも見てきたから」
 それでだ。今更だというのだ。
「別にさ」
「面白くないわね、それって」
「っていうかよ、アスカよ」
「御前脚どころかショーツだっていつもだしな」
「今更脚位じゃな」
 ケーンにタップ、ライトがそのアスカに突っ込みを入れる。
「誰も見てどうかって思わないよ」
「あとたまにノーブラでいるけれどな」
「それは止めた方がいいな」
「酒飲んで脱ぐの止めろよ」
「あと暴れるのはな」
「酒癖悪過ぎないか?」
「うっ、何かぼろくそに言われてるけれど」
 忽ちのうちにだ。劣勢になってしまうアスカだった。
 だがそれでもだ。彼女は逆襲に出るのであった。
「つまりあんた達あたしの脚やショーツいつも見てるのね」
「自分で見せてるんじゃねえのか?」
「色気も何もねえな」
「酒癖が悪いとそれだけで損をするんだな」
「お酒はドイツ人の永遠の友よ」
 強引にそう言ってしまうのだった。
「特にビールわね」
「けれどアスカさん、それって」
 ルカがそのアスカに突っ込みを入れた。今度は彼だった。
「病気になりますよ」
「病気なのね」
「はい、痛風になります」
 ビールといえばだ。やはりそれだった。
「あとビールってカロリーが」
「太るのね」
「それは気をつけて下さいね」
「そういえばドイツって」
 アスカはそのドイツ人についても話すのだった。
「結構以上に痛風と肥満が多いのよね」
「あれはかなり深刻ですね」
 ジョルジュはフランス人から見て述べた。
「それと髪の毛が」
「そうそう、ドイツってそっちも深刻なのよ」
「国が明るいって話じゃねえな」
 ジェリドも来た。
「それ言ったら絶対にぶん殴ってくるからな、連中」
「普通はそうなるぜ」
 ヤザンがジェリドに忠告した。
「ドイツ人に痛風と肥満と禿は禁句なんだよ」
「そういう御前も言ってるじゃねえかよ」
「それで喧嘩になったから言うんだよ」
 そういう事情だった。
「本当に怒るからな、奴等」
「俺もそれはわかる」
 カクリコンが出て来て話す。
「髪の毛のことは特にだ」
「何か話が深刻になってきているな」
 今度はマイヨだった。
「私はロシア人だがドイツは私から見てもな」
「ううん、痛風と肥満と禿ね」
 アスカも遂に自分でも言った。
「それってやばいのよね」
「だから運動するんじゃないかな」
 シンジは正論を述べた。
「そういうことを防ぐ為にも」
「そういえばそうね」
「そうそう。今日は汗を流して頑張ろう」
「何かあんたに言われるなんて癪だけれどね」
 とか言いながらもだった。アスカはだ。
 競技で活躍した。運動神経は見事だ。
 ロンド=ベルの面々は爽やかに汗を流していく。その中でだ。
 モトクロスバイクではだ。ショウがダントツだった。
「やったね、ショウ」
「ああ、バイクならな」
 ショウは笑顔でだ。チャムに応えて話すのだった。
「自信があるからな」
「昔やってたんだよね」
「バイストンウェルに来るまではな」
「それの選手だったの?」
「そうさ。それでなんだ」
 自信があるというのだ。
「あの時はこういうこととか空手しかすることがなかったしな」
「その頃のショウって寂しかったんだね」
「否定はしないさ」
 家庭を顧みなかった両親のことをだ。思い出しての言葉だった。
「そのこともな」
「そうなんだ」
「ああ。それでな」
「それで?」
「チャムはどの競技に出るんだ?」
 彼女に問うのはこのことだった。
「チャムも出るんだろう?何か」
「うん、一応は」
「じゃあ一体何の競技になんだい?」
「遠距離飛行よ」
 その競技だというのだ。
「長く飛んで。誰が一番速く着くのかをね」
「それを見る競技なんだな」
「そう、それなの」
 チャムが出る競技はだ。それだというのだ。
「それに出るから」
「ああ、じゃあ頑張れよ」
「うん、私頑張るから」
 笑顔で応えるチャムだった。そうしてだった。
 実際にその競技を頑張る彼女だった。競技は楽しく行われていく。
 その中でだ。サンドマンは。
 爽やかに半ズボン姿でだ。暴れ回っている。そのうえで言うのだった。
「ははは、汗を流すのは気持ちがいいな」
「何か。サンドマンさんが活躍すると」
「そうだな」
 マックスとバーンがそれぞれ言うのだった。
「僕達も嬉しいですけれど」
「微妙な感情を抱いてしまうな」
「僕自身がそうしているみたいな」
「そう思ってしまうな」
「全くですね」
「そう思ってしまうことを否定できない」
「それっていいことじゃないんですな」
 ルナがそんな二人に突っ込みを入れた。彼女も今は半ズボン姿だ。
「あたしなんて一人もいないんですよ」
「まあそれを言ったら」
 クスハがその彼女を慰めに来た。
「仕方ないから」
「わかってるけれどね」
「それよりもはい、これ」
 さりげなくだ。クスハはあるものを差し出してきた。それは。
 不気味な青い色をしてだ。ごぽごぽとなっているジュースだった。
 そのジュースを見てだ。ルナはその顔を青くさせて言うのであった。
「これってまさか」
「そう、私のジュースだけれど」
「遠慮するわ」
 即答だった。
「悪いけれどね」
「そうなの」
「あたしはこれがあるから」
 言いながら丁度傍にあった水道の水をごくごくと飲むルナだった。
「それじゃあね」
「ううん、お水でいいの」
「そうそう、お水が一番」
 ルナは強引にそういうことにしてしまう。
「コミネラルウォーターだからいいのよ」
「じゃあこのジュースは」
「うむ、貰おう」
 マラソンから帰って来たサンドマンがだ。爽やかな笑顔と共に出て来て言う。
「そのジュースをな」
「はい、どうぞ」
「それではだ」
 こうしてサンドマンはそのジュースを飲む。一気にだ。
 しかし彼はだ。全く平気だった。
「美味いな」
「有り難うございます」
「生き返った」
 平気そのものの顔である。
「さて。では次の競技に赴こう」
「頑張って下さいね」
 こうしてだった。彼は平気だった。そしてだ。
 アズラエルもだ。クスハのジュースを平気な顔で飲んで言うのであった。
「スポーツの後の美味しい飲み物は最高ですね」
「あんた、本当に何ともないんだな」
 シローが唖然としてその彼に言う。
「そんなものを飲んでも」
「はい、平気です」
 実際に何ともない彼だった。
「僕にとっては実に美味しいものです」
「コーディネイター以上だな」
 シローはそのアズラエルをこう評した。
「まさにな」
「まさに?」
「変態だな」
 ついだ。こう言ってしまうのだった。
「あんた、やっぱり変態だな」
「そうでしょうか」
「ああ、違うよ」
 こう言うのだった。
「常人とは思えねえ」
「昔から言われています」
「自覚はしてるんだな」
「個性です」
 平然とこう言うのだった。
「僕の個性ですから」
「それがか」
「超能力や念動力はないですが」
「あっても驚かないさ」
 シローは真顔で返した。
「あんたの場合はな」
「おやおや、買い被りではないですか?」
「だからあんた本当にまともな人間か?」
 そもそもそのこと自体が怪しいというのだ。
「サイボーグとかじゃねえよな、本当に」
「ですから普通の人間ですが」
「全然信じられねえ」
 こう言うしかないシローだった。
「一体何者なんだよ」
「まあまあそう仰らずに」
「少なくとも敵じゃなくてよかったぜ」
 そのことはいいというシローだった。
「あんたが敵だったらな」
「厄介だと仰るのですね」
「ああ、それは本当に思うな」
「俺もだな」
 凱も出て来て言う。
「アズラエルさんとは戦わなくてよかったよ」
「味方で本当によかったな」
「全くだよ」
 こんな話も為されるのだった。そうしてだ。
 そうしたやり取りをしながら運動会の楽しい時間を過ごした。それで一日終わった。
 その最後にだ。アルマナが笑顔でルリアに話す。二人も半ズボン姿だ。
「楽しかったですね」
「はい、これが運動会ですか」
「バルマーにはなかったですね」
「こうした催しはとても」
 なかったとだ。ルリアも言う。
「思いも寄らないものです」
「バルマーの文化ではとても」
「これもまた地球の文化なのですね」
「そうですね。いいものです」 
 その半ズボン姿での言葉だ。
 そしてだ。その半ズボンを見てだった。アルマナはまた言った。
「それにです」
「それに?」
「この体操服というものですが」
「かつてはブルマーもありましたね」
「ブルマーですか」
「はい、そうしたものもあったそうです」
 ルリアはアルマナに応えてそのブルマーの話もするのだった。
「今は殆んどないそうですが」
「ブルマーとは」
「何でも。下着の様なものだとか」
 こうアルマナに話すのだった。
「かつてはそれを穿いて運動をしていたとか」
「下着とは」
 それを聞いてだ。アルマナはだ。
 微妙な顔になってだ。こうルリアに話した。
「猥褻ではないですか?」
「そうですね。下着とは」
「下着については」
 アルマナはその微妙になった顔で話していく。
「私達の下着も同じですが」
「地球のものと」
「では。猥褻です」
 それがアルマナの見たところだった。
「ブルマーというものは」
「ですがかつてはそれを穿いて運動をしていました」
「わからないですね、地球の文化は」
「そうしたところはですね」
「本当に」
 そうした話をしてであった。二人も楽しんでいた。そしてだ。
 次の日だ。彼等のところにだ。まずはシュウが来て話すのだった。
「実は私は私だけで来たのではありません」
「何か持って来たな」
 マサキがすぐに察して言って来た。
「そうなんだな」
「その通りです。私が持って来たのはです」
「ああ、それで何だ?」
「爆弾です」
 まずはだ。それだというのだった。
「それを持って来ました」
「爆弾!?」
「爆弾っていうと」
「一体何の爆弾?」
「それじゃあ」
「はい、それはです」
 その爆弾がだ。何かというとだった。シュウも話すのだった。
「木星クラスの惑星を内臓しブラックホールにしたもので」
「木星をか」
「ブラックホールにした」
「そういう爆弾をか」
「持って来たって」
「その爆弾を宇宙怪獣の巣に撃ちこむのです」
 シュウはこう話した。
「それを持って来ました」
「それで宇宙怪獣を叩き潰すってことか」
「それでどうでしょうか」
 シュウはマサキに対して問うた。
「ただ戦っても埒が空かない相手ですし」
「そうだな」
 マサキはシュウのその言葉に頷いて返した。
「あの数だからな」
「ならば。答えはです」
「爆弾で一気に吹き飛ばす、だな」
「彼等の巣ごとです」
「なら作戦は決まりね」
 セニアが右目をウィンクさせて述べた。
「宇宙怪獣ね、最初に倒すのは」
「そうなるね。問題はその宇宙怪獣の巣だけれど」
 それが何処かとだ。セリウスは話す。
「何処にあるのかな、それで」
「それはわかっておる」
 ここでバランが出て来て話す。
「宇宙怪獣の巣は銀河の中心にあるのだ」
「銀河の中心にか」
「奴等はいるのか」
「そうだったのね」
「左様、かなりの数がおる」
 バランはその数についても話した。
「あまりに多く我等も迂闊に手出しはできなかったのだ」
「しかしだ」
 ここで言ったのはだ。ヒイロだった。
 彼は落ち着いてだ。こう話すのだった。
「今はやらなければならない」
「その通りだな。今宇宙怪獣を滅ぼさなくてはだ」
「破滅するのは私達」
 ロジャーとドロシーも話す。
「だからだ。宇宙怪獣がどれだけいても」
「戦うしかないわ」
「その通りだな」
 ブライトはロジャー達のその言葉を受け入れた。
 そうして頷いてからだ。彼も言うのだった。
「では。まずは宇宙怪獣だ」
「連中をか」
「連中を倒してそのうえでか」
「バッフ=クラン」
「連中とも戦う」
「そういうことか」
「そうだ。そうする」
 実際いその通りだと述べるブライトだった。
「バッフ=クランとはまだ話が可能だが」
「宇宙怪獣はできないですからね」
「連中はそもそも」
「それすらも」
「宇宙怪獣にあるものはだ」
 ブライトはそれが何かも話す。
「本能のみだ」
「知能はないですよね」
「戦闘力は高いですけれど原始的な存在」
「それですよね」
「それに脅威としてバッフ=クランよりさらに脅威だ」
 そうだとも話すブライトだった。
「だからこそだ」
「まずは宇宙怪獣ですか」
「連中を倒して」
「そのうえで、なのですね」
「そうするとしよう」
「では作戦は決まりだな」
 大河が言った。
「まずは銀河中央に向かいだ」
「宇宙怪獣ですね」
「連中を退ける」
「それですね」
「そうだ。では今よりだ」
 銀河中央への進撃を命じようとする。しかしだった。
「よお、久し振りだな」
「あれっ、あんたは確か」
 ロウが彼の顔を見てだ。すぐに声をあげた。それは。
 メキボスだった。急にモニターに出て来たのだ。
 そしてそのうえでだ。こうロンド=ベルの面々に話すのだった。
「いきなり何だ?」
「ああ、助っ人に来たんだ」
 それだというのだ。
「俺達ゾヴォークもな」
「ゾヴォークってことは」
「インスペクターだけじゃなくて」
「ゲストもか」
「あんた達全員でか」
「来てくれたのか」
「その通りだ」
 今度はロフが出て来て話す。
「我々は銀河の為に戦わせてもらおう」
「そういうことさ」
 メキボスがここでまた話す。
「俺達もな。だからここに来たんだよ」
「話はわかったよ」
 万丈がそのメキボスに応える。
「それで僕達と合流したいんだね」
「そういうことだ」
「ゲストもインスペクターも」
「ゾヴォーク自体がな」
「問題になる連中はもういないからな」
 イルムはこう言った。
「ウェンドロとかゼゼーナンはな」
「お蔭でこちらもまともになった」
 また話すメキボスだった。
「それでこうしてそっちに協力を願い出ることができるようになった」
「そういうことだな」
「ああ、それでだ」
 話は元に戻った。
「じゃあいいな」
「その申し出受けさせてもらいたい」
 大河がメキボスに応える。
「喜んでだ」
「ああ、それじゃあな」
「それにだ」
 今度はだ。ジュデッカ=ゴッツォだった。
 彼もだ。こうロンド=ベルの面々に言ってきた。
「我がバルマー軍もだ」
「あんた達もか」
「協力してくれるってのか」
「俺達の戦いに」
「貴殿等に救ってもらった」
 だからだと話すジュデッカ=ゴッツォだった。
「それならばだ」
「それでっていうのか」
「俺達と一緒に戦うのかよ」
「あんた達が」
「我等とて考えが変わった」
 ジュデッカ=ゴッツォは言うのだった。
「やはりだ。我等も銀河の一員だ」
「何か凄い変わったよな」
「そうだよね」
 ロンド=ベルの面々も驚きを隠せなかった。
「あのバルマーの人間がこんなこと言うなんてな」
「本当にな」
「しかしだ」
 ここでバランが言った。そのバルマー人のだ。
「それが正しいのだ」
「そうですね」
 アルマナもバランのその言葉に頷く。
「私達は今まで間違っていました」
「ガンエデンに頼るあまり」
「はい、自分達のことしか考えなくなっていました」
「それは誤りだった」
 バランは確かに言った。
「そうではなかったのだ」
「その通りです」
「だからこそです」
「我等もです」
「共にです」
 こうだ。ラオデキア達も出て来て言う。
「アポカリュプシスに向かいます」
「そして勝ちましょう」
「この銀河の脅威に対して」
「そういうことだ」
 あらためて話すジュデッカ=ゴッツォだった。
「我等もだ」
「凄いな、これはよ」
 リュウセイもだ。驚くしかなかった。
「まさかバルマーまで加わるなんてな」
「そうだな。しかしこれはだ」
「非常に大きいわ」
 ライとアヤがそのリュウセイに話す。
「バルマーの戦力は今も尚かなり大きい」
「その彼等が加わってくれるのだから」
「崩壊はしたがだ」
 ジュデッカ=ゴッツォはまた話してきた。
「五つの方面軍を集結させればかなりの規模になる」
「その軍を全て合流させる」
「それでいいだろうか」
 ラオデキア達も言ってくる。
「そのうえで諸君等と共に戦う」
「同じ銀河の者として」
「わかった」
 サンドマンが彼等の言葉に応える。
「それではだ。諸君等は今から我々の仲間だ」
「うむ、それではだ」
「共に戦おう」
 こうしてバルマー軍も加わった。それに加えてだ。
 今度はハイネルとリヒテルが来た。そのうえでだった。
「我々もだ」
「協力させてもらいたい」
「ハイネル兄さん」
「それにリヒテルも」
 健一と一矢が二人に応える。
「力を貸してくれるのか」
「俺達に」
「無論、我等もアポカリュプシスに向かおう」
「共に銀河に生きる者として」
 二人もだ。同じであった。
「この戦い、共にだ」
「戦わせてもらいたい」
「ボアザンにバームもか」
「俺達と一緒に戦ってくれる」
「そうしてくれるって」
「無茶苦茶凄いぜ」
 最早だ。誰もが唖然となっていた。
「何かもう敵はないか?」
「だよな」
「いえ、我々もです」
 キャンベルのだ。ゼウスだった。
「我等キャンベルもまた宜しければ」
「えっ、キャンベル星からも!?」
「何か凄いぞおい!」
「まさに銀河単位じゃないか!」
「ここまで来てくれるなんて!」
「我等も目的は同じです」
 デウスはだ。静かにこう話すのだった。
「この銀河の為に」
「キャンベルも変わったな」
 豹馬が驚きと共に言った。
「もう女帝ジャネラの時じゃないんだな」
「その通りです」
 デウスは豹馬のその言葉に答えた。
「最早あの時代は終わりました」
「じゃあ今のキャンベルは」
「あの時代の過ちを忘れず生まれ変わったのです」
 そのキャンベルだというのだ。
「それが今の我々です」
「そうか。それじゃあな」
「我等も共に戦って宜しいでしょうか」
「ああ、喜んでな!」
 豹馬は笑顔で応えた。
「頼りにしてるぜ!」
「有り難うございます。それでは」
「そしてだ」
 今度はだ。ブリタイだった。
「我等ゼントラーディとメルトランディもだ」
「なっ、何だ?」
「この数ってまさか」
「ゼントラーディとメルトランディの全軍!?」
「これだけいるって」
「まさか」
「そうだ、全軍だ」
 その通りだとだ。ブリタイは答えた。
「これが銀河にいる我等の全軍だ」
「ええと、どれだけいるんだ?」
「何か滅茶苦茶な数だけれど」
「こんなにいたんだ」
「すげえ・・・・・・」
「滅茶苦茶な数だよな」
「全くだよ」
 誰もが唖然となる程だった。しかもだ。
 ブリタイはだ。さらに驚くべきことを言った。
「我等は皆この戦いの後でだ」
「この戦いの後で?」
「っていうと?」
「戦いを捨てる」
 そうするというのだ。
「そしてプロトカルチャーの中に生きるのだ」
「それがあんた達の選択なんだな」
「そうだ」
 その通りだとだ。ブリタイはイサムに答えた。
「我々は全てだ。選んだのだ」
「凄い話だな」
 ガルドもだ。感情を完全に抑えられなくなっていた。言葉にそれが出ていた。
「まさかゼントラーディとメルトランディの全てがとはな」
「けれどこれは」
「ああ、大きい」
 フォッカーは輝に述べた。
「プロトカルチャーがそこまで広まったということだからな」
「そして人類はそれにより一つになろうとしている」
「音楽の力だ」
 それだとだ。フォッカーは言った。
「それが今こうして俺達をだ」
「一つにしているんですね」
「そうなる」
「音楽、アニマスピリチュア」
「コオオオオオオ!」
 シビルはゲペルニッチを観て声をあげた。
「ゲペル!来テクレタ!」
「我等も同じなのだ」
 そのゲペルニッチがだ。ロンド=ベルの面々に話す。
「銀河の為に。共に」
「歌ウ!戦ウ!」
「そうさせてもらおう」
「ああ、わかったぜ!」
 バサラが彼のその言葉に応える。
 そのうえでギターをかき鳴らしながら。ゲペルニッチに話す。
「その心、受け取ったからな!」
「熱気バサラ」
 ゲペルニッチは微笑んでそのバサラに言った。
「また共に歌おう」
「ああ、派手なコンサートだ!」
 まさにだ。バサラにとってはそれだった。
「最初から最後までクライマックスだぜ!」
「クライマックスは人が違うわよ」
 ミレーヌがそのバサラに突っ込みを入れる。
「だから何でそうなるのよ」
「まあな。ノリでな」
「ノリでって」
「気にするなよ。大したことじゃないからよ」
 バサラにとってはだ。そうでしかなかった。
「まあとにかくだ。ここまで揃ったらな」
「そうね。もう宇宙怪獣でもね」
「簡単には負けねえぜ。やれるぜ」
「そうだな。ここまでの面子が揃えばだ」
 タシロも言う。
「我等はだ。必ず勝てる」
「その通りですね。それで艦長」
 副長が彼に対して問う。
「この艦隊の名前はどうしますか」
「艦隊の名前か」
「はい、この大連合艦隊の名前は」
「一ついいものがある」
 こうだ。タシロは言った。
「それでいいだろうか」
「どういったものでしょうか」
「銀河中心殴り込み艦隊」
 タシロは言った。
「これでどうだろうか」
「銀河中心殴り込み艦隊ですか」
「そうだ、宇宙怪獣の巣に殴り込みだ」
 そうしてだというのだ。
「勝つ。その艦隊だ」
「成程、それではです」
「諸君等の意見を聞きたい」
 タシロは真剣な顔で話す。
「この名前でどうだろうか」
「異議なし」
「それでいいと思います」
「宇宙怪獣を倒すには」
「いい名前だよな」
「そうだよな」
 これがだ。彼等の返答だった。
「なら行くか」
「この銀河殴り込み艦隊で」
「宇宙怪獣を倒して」
「そしてアポカリュプシスも終わらせる」
「そうしようぜ」
 こうしてだった。彼等は集結した。
 そのうえでその銀河中心に向かう。その中でだ。
 ロンド=ベルはだ。一つ別任務があった。
「まずは先遣で、ですか」
「艦隊の先に向かって」
「そうしてそのうえで」
「切り込むんですね」
「その通りだ」
 タシロが彼等に話す。
「ワープで先に向かいだ」
「そのうえで宇宙怪獣を叩いて」
「そうするんですね」
「俺達は」
「そしてあわよくばだ」
 どうするかともいうのだ。
「あの爆弾を撃ち込む」
「宇宙怪獣の巣に」
「そこに」
「そうしてすぐに決める」
 短期決戦だというのだ。
「そうするぞ」
「わかりました」
「それでは俺達はまずですね」
「宇宙怪獣の巣に殴り込んで」
「それで勝負を決めましょう」
「本軍の出撃はまだ先だ」
 それはだ。まだ先だというのだ。
「我々は先遣なのだからだ」
「それで先にですか」
「先に出撃して」
「それで敵の本拠地を先に潰しておくんですね」
「その為にワープする」
 それもだ。するというのだ。
「いいな。そうするぞ」
「じゃあいきますか」
 笑顔で言ったのはだ。アラドだった。
「長い戦いがこれでまた一つ終わりますね」
「そうね。宇宙怪獣との戦いもね」
 ゼオラもだ。期待する目で話した。
「終わるのね」
「俺達が戦うのは戦いを終わらせる為だ」
 クォヴレーも話す。
「そういうことだな」
「その通りですね。では」
 最後のレフィーナが話す。そのうえでだった。
 彼等は出撃した。ワープを使ってだ。
 しかしだった。ワープを使い超空間に入るとだ。
 彼等の目の前に。思わぬ相手がいた。
「宇宙怪獣!?」
「まさか!?」
「どういうことだよ、これって!」
 何とだ。宇宙怪獣の大群がだ。超空間にいたのだ。
「俺達を待ち伏せしていた!?」
「ひょっとして」
「そうしてたってのか!?」
「どうやらそうみたいね」
 カズミが目を鋭くさせて述べた。
「これは」
「まさか。私達の動きを察して」
「ええ、それでね」
 カズミはこうユングにも話した。
「それで超空間で待っていたのよ」
「そんな、この連中にそんな知能があったの!?」
「知能があるかどうかはわからないけれど」
 それでもだというのだ。
「どうやら。本能的にね」
「本能ね」
「多分宇宙怪獣に知能はないわ」
 カズミもそう読んでいた。
「だから本能でね」
「私達の動きを察してそのうえで」
「ここにいたのだと思うわ」
「やるわね」
 ユングは歯噛みしてこう言った。
「相手もね」
「そうね。けれど」
 それでもだとだ。カズミは言うのだった。
「ここでまず戦わないといけないわね」
「ええ、それはね」
 ユングも苦い顔で応える。
「思わぬ展開だけれどね」
「そうするしかないわね」
「止むを得ん」
 タシロもここで決断を下した。
「諸君、まずはこの連中を倒そう」
「そうですね。全く」
「こんなところで戦うなんて」
「思わなかったけれど」
「それでも」
 歯噛みしながらもだ。ロンド=ベルの面々もだ。
 戦闘態勢に入る。しかしだった。
 ここでだ。シュウが仲間達に話した。
「いえ、皆さんここはです」
「手前が一人で戦うっていうんだな」
「はい、そうします」
 こうマサキに応えるのだった。
「皆さんは先に行って下さい」
「格好つけるって訳じゃねえな」
「私にとってはこの程度の相手は」
 そのだ。宇宙怪獣の大群を見ての言葉だった。
「どうということはありません」
「そのネオ=グランゾンにはだな」
「その通りです。皆さんは先にどうぞ」
 こう話してだった。早速だった。
 シュウのネオ=グランゾンは敵の大群の中に入った。その彼にだ。
 チカがだ。こう問うのだった。
「それじゃあ御主人様」
「はい、数はわかりますね」
「一千万ってところですかね」 
 チカはその数をあっさりと述べた。
「軽い相手ですか」
「ネオ=グランゾンの前には」
 所詮だ。その程度でしかないとだ。シュウも言う。
「宇宙怪獣一千万もです」
「ですね。じゃあ早速」
「はい。グラビトロンカノン発射!」
 いきなりだった。グラビトロンカノンを放った。するとだ。
 ネオ=グランゾンから重力波が放たれだ。そしてだった。
 宇宙怪獣達が次々と押し潰されそのうえで爆発していく。そして次には。
「さて、次はです」
「今度はあれですね」
「はい、ビッグバンウェーブです」
「わかりました。それじゃあ」
「発射!」
 今度はそれを放った。その攻撃でもだった。
 宇宙怪獣達を潰していく。その数を瞬く間に減らさせるのだった。
 そうして宇宙怪獣達を倒しながらだった。シュウは仲間達に言った。
「では皆さん今のうちに」
「ああ、先に行けってことだな」
「はい、どうぞ行って下さい」
 こうマサキにも話す。
「そうして下さい」
「わかったぜ。それじゃあな」
 こうしてだった。ロンド=ベルはだ。
 シュウに向かう宇宙怪獣達を通り抜けてだ。先に進むのだった。
 宇宙怪獣達はシュウに向かう間にだ。彼等の通過を許したのだった。彼等の目論見は失敗した。
 それを見届けてだ。シュウも。
「さて、私達もです」
「ロンド=ベルを追うんですね」
「はい、そうしましょう」
 今回も素っ気無く話すシュウだった。
「彼等を通過させることはできましたし」
「この連中は全滅させないんですね」
「相手をしていればきりがありません」
 だからだ。いいというのである。
「ですから」
「わかりました。それじゃあ」
「はい、それでは」 
 こう話してであった。シュウとチカもだった。
 彼等も撤退する。また瞬時に移動してだ。
 こうして超空間での戦いは終わった。しかしだった。
 ロンド=ベルに合流したシュウはだ。こんなことを言うのだった。
「戦いは済みましたが」
「何だ?」
「何かあるの?」
「はい、思わぬ影響が出るようです」
 こうヤンロンとリューネにも話した。
「申し訳ありませんが」
「思わぬ影響というと」
「ワープの出口が変わるとか?」
「はい、その通りです」 
 リューネの言う通りだとだ。シュウも答えた。
「宇宙怪獣の巣ではなくです」
「だとすると一体」
「何処なのでしょうか」
 ティアンとデメクサがそのことを問題にする。当然ながらだった。
「まさかと思うがな」
「バッフクラン軍の陣地の前とかはないですよね」
「いえ、どうやらその様です」
 今度はデメクサの予想が当たった。シュウがその通りだというのだ。
「バッフクラン軍の主力の場所に向かってますね」
「何ていうかねえ」
「御約束の展開ね」
 ベッキーもシモーヌもシュウの話に苦笑いになった。
「そうすんなりといけないってことね」
「宇宙怪獣との戦いも」
「まあそれはそれやったらや」
「バッフクランと戦うまで!」
 ロドニーとエリスはそこに話を持って行った。
「バッフクランと決着や!」
「そこに行くのならな」
「ふむ、確かにな」
「そうした方がいいわね」
 今度はジノとロザリーが話す。
「どちらにしろバッフクラン軍との話も終わらせなければならない」
「それなら。かえって好都合ね」
「時間が問題だが」
「それは」
 ファングとプレシアはそれを問題にする。
「宇宙怪獣との決戦には間に合うか」
「それはどうなんでしょう」
「御心配なく。すぐに終わらせれば済むことです」
 シュウはあえて簡潔に話した。
「それだけです」
「またあっさりと言うわね」
「バッフクラン軍もかなりの数なのよ」
 ミオとテュッティはそのシュウに言う。
「そこのところ一気にってのは面白いけれど」
「そう上手くいくかしら」
「はい、本軍が宇宙怪獣の巣まで向かうにはまだまだ時間があります」
 シュウは本軍のことを話した。
「ですからその間にです」
「バッフクラン軍を何とかする時間はある」
「そういうことか」
「まあね。少なくともバッフクラン軍と戦うのならね」
 それならばだとだ。セニアも言う。
「腹括って戦うしかないわね」
「そうだね。じゃあ気持ちを切り替えてね」
「御仕置きの相手を変えますわよ」
 テリウスとサフィーネはそれぞれ正反対の言葉だった。
「そうしようか」
「さて、バッフクランの悪い子犬ちゃん達を折檻ね」
「だからサフィーネ、それは」
「止めた方がいいわよ」
 遥とプレセアが彼女を止めに入った。
「誤解を招く言い方だから」
「なるべくなら」
「いいのでして。何故ならあたくしは金星」
 今度はこんなことを言うサフィーネだった。
「美とはそういうものなのでしてよ」
「話はわかるけれどね」
「私もね」
 遥とプレセアは一応頷きはした。
「私は水星になるし」
「私は木星で」
「なら私は火星か」
 エリスも出て来た。
「そうなるな」
「それであたしとね」
「わたしくが土星にならなかったりしないのですね」
 セニアとモニカもだった。
「ううん、何かこうして話すと」
「惑星も面白くなかったりしないという訳ではないですね」
「あの、モニカさんの言ってることってわかる人います?」
「残念だけれど」
 ダイアンがシンジに応える。
「海王星の力じゃ無理みたい」
「天王星でもですね」
 この二人はそれなのだった。そしてだ。
 ひかるはマリューに話した。
「艦長は月になりますよね」
「ひかるちゃんが冥王星よね」
「惑星じゃないことになりましたけれど」
「まあまあ。気にしない気にしない」
 マリューは笑いながらひかるに話す。そうした話をしているうちにだ。
 ワープから出た。するとそこは。
 宇宙空間だった。しかしそこは。
「宇宙怪獣の反応はありません」
「一匹もいません」
「彼等はです」
 こう報告があがった。
「やっぱり。ここは」
「バッフクランですね」
「彼等が近くにいますね」
「そうだろう」
 タシロもその言葉に頷く。
「宇宙怪獣達は我々に本能的に向かっているのだからな」
「それで今はここにはいないんですね」
「まあバッフクランも宇宙怪獣と戦ってるでしょうし」
「殲滅するでしょうし」
 その意味でだ。彼等とバッフクランは同じだった。宇宙怪獣を敵とする意味ではだ。
「じゃあ艦長」
「ここはバッフクラン軍を探して」
「そうしてですね」
「できることなら話し合いで終わらせたい」
 これはだ。タシロだけの願いではなかった。
「バッフクラン軍との戦いも無意味なのだからな」
「一つわかったことは」
 加持が話す。
「彼等は戦いが好きでも野蛮でもない」
「そうね」
 シェリルも加持のその言葉に頷く。
「カララやギジェを見てもわかることね」
「今我々と共にいる彼等だけでなくだ」
 クワトロも話す。
「敵である彼等もだ」
「どちらかというと理知的で」
「冷静だよな」
「しかも人間的で」
 つまりだ。結論としてはだ。
「俺達と同じだよな」
「同じ人間だよな」
「住んでいる場所が違うだけで」
「そうですね。何も変わりません」
 八雲もこう結論付ける。
「僕達と彼等は」
「それが些細なことからこうなってしまった」
 キムも言う。
「そういうことですね」
「なら話し合いで終わればいいわね」
 エルフィも言った。
「本当にね」
「まさかだ」
 ギジェも話す。
「地球の文化で白旗が話し合いを意味するとはな」
「それはだったんですか」
「思わなかったんですか」
「あくまで我々の文化で考えていた」
 そのだ。バッフクランのものでだというのだ。
「そんなことは想像もしなかった」
「私も。このことはです」
 カララも話す。
「本当に驚きましたから」
「あの時俺達は話し合いをするつもりだった」
 コスモもだ。あの時のことを思い出して話す。
「けれど。バッフクランで白旗が宣戦布告の宣言だったなんてな」
「全然思わなかったわよね」
「信じられなかった」
 カーシャとモエラもだった。
「そんな些細な違いで」
「彼等とここまで戦うなんてな」
「これがイデの意志なのだろうか」
 ベスは考える顔で言った。
「まさか」
「だとすればイデの真意は一体」
「何なんだ?」
「俺達をあえて戦わせて」
「どういうつもりなんだ」
 それがどうしてもわからないのだった。彼等はそうした話をしながらだ。バッフクラン軍の前に向かうのだった。彼等と決着をつける為に。


第百十一話   完


                                    2011・5・16
    

 

第百二十二話 終わりなき総力戦

               第百二十二話 終わりなき総力戦
 そのだ。バッフクラン軍においてもだ。情報が伝わっていた。
「それはまことか!?」
「そうだ」
 ドバがだ。ギンドロに話していた。彼等は今巨艦のブリッジにいる。
「バルマー軍が壊滅した」
「あの国がか」
「そしてロゴ=ダウの者達と講和したとのことだ」
 ドバはこのことも話した。
「彼等とな」
「あのバルマーがか」
「信じられないか」
「うむ、全くだ」
 こう答えるギンドロだった。
「我々でさえ攻めあぐねていたあの国をか」
「あの本星を守っていた守備隊と防衛システムが壊滅した結果だ」
「あの厄介な者達がか」
「当然あの巨神もいた」
 ドバはイデオンの話もした。
「そしてあの力を使ったらしい」
「巨神の力」
 ギンドロの表情が険しくなる。そのうえでの言葉だった。
「留まるところを知らんな」
「そうだな。そしてだ」
「巨神以外にもだな」
「あの部隊には無限力の使徒が集っている」
「そうだな。多いな」
 ギンドロはさらに言った。
「あの部隊、ロンド=ベルだったな」
「そうだ、それが彼等の名前だ」
「そこに多くの者達が集っているな。それにだ」
「それに。何だ」
「あの部隊にはだ」
 ドバを見てだ。そうしての言葉だった。
「カララ嬢ちゃんもいるな」
「・・・・・・言うな」
 ドバはだ。表情は変えていないが険しい声を返した。
「異星人の下へ走った女なぞだ」
「違うというのだな」
「そうだ。最早娘ではない」
 拳を握り締めだ。唇を噛み締めての言葉だった。
「その様な者はだ」
「そう言うのか」
「そしてだ」
 さらに話すドバだった。
「そのロンド=ベルだが」
「何か情報が入ったか」
「先程入ったばかりだ」
 まさにだ。今であった。
「我々のところに来ている」
「ほう、我々のところにか」
「ならばだ」
 ドバの決断はだ。迅速かつ果断だった。
「向こうに巨神があろうともだ」
「それでもか」
「そうだ。我々には数がある」
 バッフクラン軍最大の武器である。
「それで押し切ってみせよう」
「ハルル嬢ちゃん」
 また言うギンドロだった。
「いや、ハルル殿を向かわせてだな」
「ハルルならやってくれよう」 
 ドバの今度の言葉はだ。確信だった。
「あれは女として育ててはいない」
「厳しくしたのだな」
「そうだ。油断はできない」
 何故油断できないのか。ドバはそのことも話した。
「この銀河の勢力は彼等によって一つ一つ壊滅していっている」
「その通りだな」
「ボアザンを中心とした連合」
 まず挙げられるのは彼等だった。
「バジュラもだったな」
「あの奇妙な生命体もだったな」
「プロトデビルンもまた」
「あの遊星の機械の神達」
「そしてバルマーか」
「最後にはだ」
 その最後の存在についても話される。
「あのバケモノ達だな」
「宇宙怪獣か」
「そうだ、あれによってだ」
 ギンドロはその宇宙怪獣の話もした。
「我々は既に多くの戦力を失っている」
「しかもだな」
「そうだ、奴等はだ」
 そのだ。宇宙怪獣達はだというのだ。
「徐々に我々の艦隊に迫りつつある」
「その通りだ」
「放っておけばだ」
「来るな」
「我々の銀河までな」
 そのことをだ。彼等は真剣に危惧していた。それを話してだ。
 ギンドロはだ。ドバにあらためて問うた。
「手はあるのか」
「案ずることはない」
「あれか」
「そうだ、その為にだ」
 どうかというのだ。
「ガンド=ロワを用意してもらったのだからな」
「あれか」
「あれを使えばだ」
 どうなるかとだ。ドバはギンドロに話す。
「巨神もあのバケモノ達もだ」
「倒せるというのだな」
「そうだ。そしてその時こそだ」
 ドバは強い声で話す。
「我々の銀河は新たな時代を迎える」
「彼との対決だな」
「そうだ、彼とだ」
「バッフクランの支配者」
 ギンドロがその彼について話す。
「ズオウとだな」
「外部の敵を倒しそのうえでだ」
「あの大帝を」
「大帝ズオウ=ハビエル=ガンテを討つ」
 ドバは言った。
「その為にもだ」
「この戦いはだな」
「必ず勝たねばならん」
 まさにだ。彼等にとっては至上命題だった。
「何があろうともだ」
「わかっている」
 ギンドロもドバのその言葉にうなずいた。
「その為にもだ」
「協力してくれるのだな」
「我がオーメ財団の力」
 まさにだ。それをだというのだ。
「存分に使ってくれ」
「そうさせてもらう」
 こう話すのだった。そのうえでだ。
 彼等は戦場に向かう。それを選んだのである。
 バッフクランとの戦いを前にしてだ。ロンド=ベルの面々は。
 アルマナに対してだ。話を聞いていたのだった。
「じゃああの時にか」
「あいつの目的を聞いたんですね」
「シヴァー=ゴッツォの」
「はい」
 その通りだとだ。アルマナは答えた。
「彼は純粋にバルマーのことを考えていました」
「そうだったのか」
 その話を聞いてだ。バランは。
「あ奴、やはりわしにとって」
「よき友でしたね」
「はい、まさにです」
 確かな声でだ。バランもアルマナに答えた。
「あの男を友と持っていたことはです」
「そのことは」
「我が誇りです」
 まさにだ。それだというのだ。
「我が誇りです」
「そうだというのですね」
「わしはあの男を忘れません」
 こうまで言うバランだった。
「確かに許せぬこともしましたが」
「結局バルマーの民を救ったからな」
「それを考えたらな」
「やっぱりな」
 ロンド=ベルの面々も話していく。
「あいつにはあいつの考えがあったことはわかってたさ」
「道を間違えていても」
「それでも」
「ですから私は」
 ここでまた言うアルマナだった。
「私は彼の意志を継ぎます」
「そうされるのですね」
「はい、バルマーの民の為に」
 ルリアにも言った。
「この身を捧げるつもりです」
「わかりました」
 ルリアはそのアルマナに頭を垂れて述べた。
「では姫様のその決意」
「姫様の戦いをです」
 バランもだ。頭を垂れて話す。
「このルリアも共に」
「御供させてもらいます」
「有り難うございます」
 アルマナも二人に礼を言う。
「貴方達の力添えがあってこその私です」
「何を仰いますか」
 だが、だ。バランはそのアルマナに言うのだった。
「このバランも」
「私もです」
 ルリアも続く。
「今わかりました」
「といいますと?」
「シヴァーも姫様ならと考え」
 それでだと話すバランだった。
「後を託したのでしょう」
「私ならばですか」
「はい、ならばです」
 また言うバランだった。
「だからこそです」
「そうだというのですね」
「はい」
 まさにだ。そうだというのである。
 それを聞いてだ。アルマナもだった。
「私も何処までできるかはわかりませんが」
「それでもですか」
「はい、出来る限りのことをです」
 こう言うのである。
「それを精一杯したいと思います」
「そうされるのですか」
「それが教えられたことですから」
 だからだというのだ。
「大切な人達に」
「姫・・・・・・」
「ですから」
 こう話すのだった。そしてだ。
 グローバルがだ。そのアルマナに問うた、
「それでなのですが」
「はい、これからのことですね」
「それはどうされるのですか?」
「まずは貴方達と共に戦わせてもらいます」
 まずはだ。そうするというのだ。
「そしてそのうえで」
「それからですか」
「シヴァーによって避難させられた民達と合流し」
 そのうえでだというのだ。
「今後のことを検討したいと思います」
「ここで問題なのは」
「そうですね」
 今度はジェフリーとエキセドルが話す。
「バルマーの本星は最早」
「あの状況では」
「ですがそれでもです」
 それでもだというのだった。
「私達はもう一度頑張ってみます」
「そうされますか」
「もう一度」
「ですから」
 微笑みすら浮かべていた。それが今のアルマナだった。
「私は諦めません」
「そしてですね」
「そうして」
「はい、最後まで生きます」
 つまりだ。アポカリュプシスに向かうというのだ。
「そうします」
「そしてですか」
「そのうえで俺達と一緒に」
「戦うんですね」
「そうさせて下さい」
 頭を下げてだ。ロンド=ベルの面々に話した。
「私もまた」
「わしもまた」
「私もです」
 バランとルリアも話す。
「そうしていいだろうか」
「宜しければ」
「ああ、宜しく頼むぜ」 
 トウマがだ。陽気に笑って応えた。
「それも何かの縁だ。それじゃあな」
「うむ、かたじけない」
「それでは」
 こうしてだった。二人も正式に加わることになった。そうしてだ。
 その中でだ。ふとだった。ブリットが言うのだった。
「そういえば」
「そういえば?」
「そういえばって?」
「バルマーとの決戦の時はいつも」
 どうだったかとだ。ブリットは怪訝な顔で話すのだった。
「孫光龍と真龍王機がいなかった」
「そうね」
 クスハがその言葉に頷く。
「何故か一度も」
「それにどうやら」
 ここでだ。ブリットはさらに話した。
「一人しかいないと思う」
「一人?」
「一人っていうと?」
「アヤ大尉にトロニウムを持たせた人物」
 その人物もだ。どうかというのだ。
「やっぱりあの男じゃないかな」
「そうだね」
「言われてみればね」
 リョウトとリオが言った。
「エツィーラ=トーラーやシヴァー=ゴッツォの話を総合したら」
「あいつしかいないわね」
「じゃあ一体何なんだ?」
「あの男は何を考えてるの?」
 タスクとレオナもそのことを話す。
「あいつが何でそんなことするんだ?」
「私達の敵なのに」
「しかも完全にバルマーについてたし」
「奴等に加わったと思っていたが」 
 カーラとユウキも孫について考えていく。
「けれどそうじゃなかった?」
「ではどうなのだ」
「最初はバルマーの。しかも」
 ブリットも話す。
「ゴラー=ゴレムに与していたと思っていたけれど」
「違うのね」
 クスハも眉を顰めさせて話す。
「それが実は」
「そうみたいだ。ただ」
「ただ?」
「あの男がこのまま終わるとは思えない」
 こう言うのだった。
「俺達を放っておくとは」
「そうね。それはないわ」
 クスハもそのことは察した。
「だから余計にわからないけれど」
「あの男、一体」
「本当にどんな目的なのかしら」
 考えてもわからないことだった。そしてイルイについても話される。
「何かイルイもな」
「そうね」
 アイビスにツグミが話す。
「ずっと寝てばかりで」
「やっぱり疲れたんだな」
「無理もない」
 スレイも二人に話す。
「これだけ激戦が続いている。イルイも疲れるだろう」
「そうね。だからね」
「仕方ないわね」
 アイビスもツグミもスレイの言葉に頷く。イルイはバルマーとの決戦が終わってから眠ったままだ。それについても話されたのだ。
 そうした話をしているとだ。警報が鳴った。
「来たな」
「そうね」
「来るとは思ってたけれど」
「やっぱり来たか」
 誰もが驚いていなかった。そうしてだった。
 彼等はすぐに出撃に入るのだった。
「今度はバッフクランとだな」
「この話を終わらせるか」
「遂に」
「皆さん」
 アルマナが彼等に言う。
「私は、いえ私達は」
「バルマーの人達がですか」
「そうだというんですね」
「はい、そうです」
 まさにだ。そうだというのだ。
「貴方達の勝利を信じています」
「有り難うございます」
「そう言って頂けることが何より有り難いです」
 誰もが笑顔でアルマナに答える。
「それなら今から」
「行って来ます」
「貴方達の武運と無事をお祈りしています」
 アルマナは最後にこう告げた。こうしてだった。
 バッフクラン軍と対峙する。その中でだ。 
 今度はだ。ベスが言うのだった。
「対話できればいいんだがな」
「そうしたいな」
 ジョリバもベスの言葉に応える。
「本当にな」
「しかしな」
 ベスはそのバッフクラン軍を見た。彼等を見る限りはだった。
「向こうはどうもな」
「その気はないみたいだな」
「戦う気だな」
 ベスは言った。
「どうやらな」
「おそらくは」
 カララが話してきた。
「無限の力と図らずも」
「さらにだな」
「俺達もだ」
「はい、その使徒の力となった我々の力を恐れているのでしょう」
 カララはこう見ていた。
「何時かは自分達がそれに滅ぼされるのではないかと」
「冗談じゃないな」
 カララのその考えにだ。ジョリバはすぐに反論した。
「俺達は連中とは戦うつもりはない」
「そうですね。確かに」
「バッフクランが襲って来るからだ」
 それでだというのだ。
「そうしているが」
「しかしそれはだな」
「結果としてイデの」
「そしてアカシックレコードの」
「思う壺だ」
「そうだな」
 ハタリも皆の言葉に頷く。
「このままだと」
「折角ここまで来たんだからな」
 ここでモエラはこんなことを言った。
「もう。無意味な戦いは止めておきたい」
「何とか講和できるだろうか」
 ベスは確かにその可能性を探っていた。
「バッフクランとは」
「そうですね。例え困難でも」
 カララもベスのその意見に同意して言う。
「互いを滅ぼし合うよりはよい道だと思います」
「バッフクランも決して好戦的じゃないんだよね」
 デクもこのことはよくわかっていた。
「それなら」
「だが今はそうもいかないようだ」
 ギジェが言う。見るとだ。
 バッフクラン軍が動きだした。それを見てだ。 
 ロンド=ベルもだ。迎え撃つしかなかった。
「仕方ないな。こうなったらな」
「やるしかない」
「それなら」
「いえ、待って下さい」
 しかしだ。ここでだった。カララがまた言った。
「あの戦艦は」
「!?そういえばあの艦は」
「前にも見たな」
「というと」
「はい、ハルル姉さんです」
 カララは言った。
「私の姉の」
「姉さんか。そらなら」
「ひょっとしたら話し合いができるか?」
「これまではどうもそうはいかなかったけれど」
「今は」
「そうだな。やってみよう」
 ベスはカララの言葉を受け入れた。そのうえで、だった。
 バッフクラン軍にだ。通信を入れた。
「バッフクラン艦隊司令ハルル=アジバ殿」
 まさにだ。彼女に対してだ。
「応答を願う」
 こう通信を入れる。
「こちらロンド=ベルのジョーダン=ベス、貴官等に伝えたいことがある」 
 ここから話し合いをはじめるつもりだった。しかしだ。
 ハルルにだ。部下達が問うていた。
「司令、話し合いを求めている様ですが」
「どうされますか、ここは」
「話し合いの場を持たれますか?」
「そうされますか?」
「その必要はない」
 ハルルは彼等に一言で述べた。そうしてであった。こう命じたのだった。
「あの艦、ソロシップだったな」
「はい、そうです」
「あの艦艇の正式名称はそういいます」
「あの者達が言っています」
「あの艦艇を狙え」
 こう命じるのだった。
「遠慮は無用だ」
「了解です、それでは」
「そうします」
 こうしてだ。まさに問題無用でだ。
 ソロシップに攻撃を浴びせる。それを見てハタリとジョリバが言う。
「撃って来たぞ!」
「聞く耳持たずか!」
「くっ、その様だな」
 ベスも彼等のその言葉に歯噛みして応える。
「分からず屋が」
「姉さん・・・・・・」
「戦闘だ」
 こう話してだ。戦いをはじめようとする。だがここでだ。
 カララがだ。急に蹲るのだった。
「う・・・・・・」
「どうした、カララ」
 ベスがその彼女を気遣って声をかける。
「まさか今の攻撃で負傷を」
「いえ、大丈夫よ」
 カララはそれはないと言うのだった。己の腹を抑えて。
「ちょっと気分が悪いだけだから」
「ブリッジは危険だ」
 ベスは気付かないまま彼女に言う。
「居住区へ避難するんだ」
「わかったわ」
(ここは何としてもこの子を守らないといけないわ)
 この時カララは心の中で言っていた。
(ベスとの愛の結晶のこの子を)
「それじゃあね」
「ああ、ここは俺が引き受ける」
 彼は戦うつもりだった。こうしてだった。
 両軍の戦いがはじまる。その中でだ。
「ここは互いに滅ぼし合ったら駄目だ」
「そうね」
 カーシャがコスモの言葉に頷く。
「それがそのまま」
「イデの思う壺だ!」
「ではここはだ」
 ギジェがすぐに作戦を出した。
「敵の旗艦だ」
「そのカララさんの姉さんの旗艦をか」
「狙うのね」
「それしかない」
 いささか無念を滲ませながらだ。ギジェは二人に述べた。
「あれを撃沈すればバッフクランも諦める筈だ」
「毎度毎度だけれどな」
「凄いハードルだね」
 ビーチャとモンドはこう言いながらも慣れたものを見せている。
「仕方ない、やるか」
「それも迅速にね!」
「ここは五分だ」
 ジェフリーが皆に告げる。
「時間をかければ周囲のバッフクランがこの宙域に集結してくる」
「だから五分」
「その間にですね」
「そうだ」
 ジェフリーはエルとイーノにも述べた。
「わかったな」
「五分、これまたハードルが来たわね」
「そうだね。いつも通りだけれど」
「けれどな、やるしかないな!」
 ジュドーが割り切って言ってみせる。
「やってやるぜ!その五分でな!」
「そうね。まずはやってみる!」
 ルーも元気がある。
「いつも通りね!」
「周囲三千光年のバッフクラン軍が集結しつつあります」
 シュウが話す。
「五分で片付けなければです」
「三千光年って」
「何だ、その距離は」
 プルとプルツーはその距離に唖然とする。しかしだった。
 何はともあれ戦いに入った。ハルルの旗艦を狙って一直線に進む。
「左右の敵は無視しろ!」
「あの旗艦だけを狙え!」
「前に来る奴だけを潰せ!」
「振り向くな!」
 こう言い合いだ。彼等は突き進む。
 前にいる敵機や敵艦をだ。まさに一撃でだった。
「どけ!」
「邪魔だ!」
 ビームサーベルで両断しビームライフルで撃沈していく。火球が次々と起こる。
 それを潜り抜けだ。ハルルの旗艦に向かう。ハルルもそれを見てだ。
「旗艦の前方に戦力を集中させよ!」
「は、はい!」
「了解です!」
「予想以上の速さと強さだ」
 ハルルは言った。彼等はそこまでだというのだ。
「前に戦った時よりも強くなっているか」
「確かに。これはです」
「以前よりもです」
「強くなっています」
 部下達も彼等に話す。
「このままでは旗艦に迫られます」
「やはり今のうちに戦力を前方に集結させてです」
「彼等を防ぎましょう」
「あと四分だ」
 ハルルもこう言うのだった。
「四分だけ守れ」
「了解です」
「そして援軍と共にですね」
「彼等を包囲殲滅しましょう」
 これが彼等の作戦だった。その話をしてだ。
 彼等は時間を稼ごうとする。しかしだった。
 それはならなかった。ロンド=ベルは彼等を寄せ付けずだ。
 瞬く間にハルルの旗艦を射程に入れた。そして戦闘にいるだ。
 イデオンが突っ込みだ。その拳でだった。
 戦艦を何発も殴りつける。
「これでどうだ!」
「この攻撃なら!」
 攻撃を浴びせながらだ。コスモとカーシャが言う。
「この戦艦も!」
「もたない筈よ!」
「ここは止むを得ない」
 ギジェが攻撃を繰り出す中で言う。
「ハルル殿には悪いが」
「くっ、司令!」
「これではです!」
「この艦もです!」
 その破壊的な攻撃を受けてだ。艦もだ。
 瞬く間にあちこちから火を噴く。部下達はそれを見て言うのだった。
「もちません!」
「どうされますか!?」
「巨神達とロゴ=ダウの異星人達の力が増しているというのか」
 ハルルも驚きを顔に見せながら言う。
「まずい。この力はあまりにも危険だ」
 こう言ってだった。決断を下した。
「ここはだ」
「はい、ここは」
「どうされますか?」
「撤退だ」
 彼女が選んだ選択はこれだった。
「撤退する。いいな」
「わかりました。それではです」
「今すぐに」
「そうしましょう」
 こうしてだった。ハルルは旗艦を己の軍と共に撤退させた。ワープを使ってだ。
 戦闘が終わったと見てだ。ロンド=ベルもすぐに動いた。
「よし、じゃあ今のうちにだな」
「ああ、DSドライブに入ろう」
「ここにはバッフクランの大軍が集まっているんだ」
 だからだ。一刻の猶予もなかった。
「早く撤退を」
「今のうちに」
 こうしてだ。彼等もその場を去ろうとした。しかしだった。
 急にだった。ハタリがソロシップのゲージを見て言うのだった。
「待て。ソロシップのパワーが」
「な!?これは一体」
「上がっている!?」
「じゃあまたイデが」
「何かするっていうのか」
「ちっ、何だってんだよ!」
 ゴウがその中で舌打ちする。
「イデってのは何考えてるんだよ!」
「いけませんね。ここは各機帰還して下さい」
 エキセドルはその中で冷静に言った。
「さもなければ離れ離れになります」
「ちっ、仕方ない!」
「こうなったら!」
「ここは皆集まれ!」
「集結しろ!」
 こうしてだった。彼等は何とか集まってだ。そうしてだった。
 その強制的なワープの中に入った。そして辿り着いた先は。
「何だここは」
「今度は何処に出たんだ?」
「ええと、方位は?」
「どうなってる?」
 まずはそれを確めようとした。しかしだ。 
 彼等はだ。前に見たのであった。
「あれは」
「何だあの巨大な戦艦は」
「それに周りのマシンや戦艦は」 
 そういったものを見てだ。わかったのだった。
「バックフラン軍」
「それも奴等の本陣かよ」
「そうみたいだな」
「ってことはだ」
 宙も言う。
「あの巨大戦艦は奴等の旗艦なんだな」
「そうみたいね」
 美和も宙のその言葉に頷く。
「あの巨大さを見れば」
「そうだな。しかしな」
 宙はその巨大戦艦を見てだ。あらためて言った。
「とんでもないでかさだな」
「どれだけあるのかしら」
「優にヘルモーズよりでかいな」
「そうね。あれよりもまだね」
「バケモノだな」
 宙はこうも言った。
「あれだけ大きいとな」
「本当にね」
「イデの流れは」
 ハタリがここで話す。
「機関室に集中していた」
「では」
「今回もやはり」
 ジョリバとモエラがハタリのその言葉に応える。
「ここに飛ばされたのは」
「イデの仕業か」
「イデは今度は何を考えてるんだ」
 コスモにもわかりかけることだった。
「一体全体」
「冗談じゃないわよ」
 カーシャはたまりかねた様に話した。
「あたし達はイデの駒じゃないわよ」
「しかしだ」
「しかしっていうのね」
「イデの力はまだよくわからない」
 ギジェはこうそのカーシャに話す。
「その力は無限に近いだろう」
「だからなのね」
「そうだ。今はこうなっても仕方ない」
「ギジェはまさか」
 宗介が言う。
「俺達とバッフクランに殺し合いをさせるのか」
「若しそうなれば」
 テッサが宗介のその言葉に暗い顔で返す。
「私達はこのまま」
「ちょっと、それじゃあ同じじゃない」
 小鳥がたまりかねて言う。
「人類補完計画と」
「そうだね。このまま戦うと」
 マサトもこのことを話す。
「同じになると思う」
「けれどこれは」
「これは?」
 マックスはミリアの言葉を聞いた。
「何だっていうんだい?」
「考え方にとってはチャンスね」
 ミリアはこう言うのだった。
「話し合いをするにしても決着をするにしても」
「どちらにしても」
「相手の司令がいるから」
 だからだというのだ。
「この場は最良の時かも知れないわ」
「僥倖と見るべきか」
 そしてだ。そのドバもこう言うのだった。
「今目の前に巨神が出て来たのはな」
「これはイデの導きか」
 ギンドロも言う。
「まさかとは思うが」
「どちらにしてもだ」
 どうかとだ。ドバはさらに話す。
「またとない好機であるのは確かだ」
「それはだな」
「そうだ。全軍攻撃だ」
 これがドバの決断だった。
「戦うとしよう」
「わかった。それならだ」
 こうしてだ。バッフクラン軍は攻撃態勢に入る。それを見てだ。
 イーグルがだ。こう言うのだった。
「どうやら彼等は」
「ああ、そうだな」
「来るね」
 ジェオとザズがそのイーグルに応える。
「話し合いはしないっていうのか」
「残念っていえば残念だけれど」
「それならば仕方ないのう」
 アスカも彼等と同じ調子である。
「やるか」
「はい、それではです」
「こちらもですね」
 シャンアンとサンユンはアスカに応えた。
「我等もまた」
「攻撃態勢に」
「ほなやるか」
「そうね。避けたかったけれど」
 タータとタトラも仕方ないといった感じである。
「降りかかる火の粉はや」
「振り払うしかないから」
「しかしこの数は」
「それが問題です」
 ラファーガはクレフに応えた。
「これまでと比べてもです」
「遜色ないまでじゃな」
「何かガルラ帝国を思い出すね」
「そこまでおるで、これ」
 アスコットとカルディナも話す。
「ここまでいるとはね」
「残念な話やで」
「戦い方はやはり」
「それしかない」
 カティはアルシオーネに述べた。
「一点突破だ」
「そうするのね」
「あの艦への呼びかけは」
 決断の中でだ。ベスはハタリに問うた。
「どうなっている?」
「駄目だ」
 ハタリは首を横に振って答えた。
「完全に無視だ」
「こちらからの通信はか」
「そうだ、無視を決め込んでいる」
 まさにだ。そうしているというのだ。
「これではだ」
「迷ってる時間はないな」
「その通りだ」
 ギジェはコスモに述べた。
「ここは話し合うにしてもだ」
「向こうの旗艦に突っ込むしかないな」
「よし、そうだな」
 ベスもここで決めた。完全にだ。
「敵の旗艦に特攻する」
「特攻か」
「死ぬ為の特攻じゃない」
 こうハタリにも言うベスだった。
「生きる為の特攻だ」
「そうした特攻もあるか」
「なければ今俺が作り出す」
 ベスは何処までも腹をくくっていた。
「その生きる為の特攻を」
「わかった。それならだ」
 ハタリも頷いた。こうしてであった。
 彼等は一点突破に向かう。それを見てだ。
 ドバもだ。正式に指示を出した。
「イデの巨神達を使うあの者達をだ」
「ロゴ=ダウの異星人達」
「あの者達を」
「この銀河より殲滅する」
 こう言うのだ。
「そうするぞ」
「了解です。それでは」
「今より」
 こうしてであった。双方前に出た。運命の戦いがだ。またはじまるのだった。


第百二十二話   完


                                    2011・5・19
 

 

第百二十三話 父と娘

                第百二十三話 父と娘
 双方の戦いがはじまる中でだ。カララは。
 ソロシップの艦橋に出た。そしてそこで見るのだった。
「あの巨大な戦艦は」
「知っているのか、カララ」
「ええ、あれはバイラル=ジン」
 この名前をベスに話した。
「間違いないわ」
「バイラル=ジン!?」
「私の父トバ=アジバが指揮するバッフクランの旗艦」
 それだというのだ。
「それがあの巨大戦艦なのよ」
「カララの父親の艦」
「あれがか」
「そうなのか」
「はい、そうです」
 カララは他の面々にも話す。
「あの戦艦は」
「そうか、旗艦か」
「やっぱりな」
 皆それを聞いて頷く。
「この陣容じゃな」
「っていうかどれだけいるんだよ」
「バッフクランの主力だよな」
「間違いなくな」
「何ていうのかしら」
 シェリルも言う。
「イデの本心がわからなくなってきたわ」
「イデの本心が」
「ええ、これまで以上にね」
 こう話すシェリルだった。
「私達を試しているのかしら」
「試しているにしては悪質に思えてきたが」
 レイヴンはこう言った。
「私には」
「そうかも知れないわね」
 シェリルもレイブンのその言葉を否定しなかった。
「けれど一つ思い切ったことをすればわかるのかも」
「思い切ったこと!?」
「というと?」
「あっ、何でもないわ」
 ここからは言葉を止めたシェリルだった。
「気にしないで」
「そうか」
「そうなんですね」
「ええ。ただね」
 それでもだと話すシェリルだった。
「バッフクランとの戦いもわからなくなってきたわね」
「少なくともこの戦いはだ」
 ロジャーが言った。
「選択を間違えてはならない戦いなのだろう」
「選択をなの」
「そんな気がする」
 こうドロシーにも話すのだった。
「どうもな」
「そうでしょうね」
 シェリルはロジャーのその言葉にも頷いた。
「この戦いは」
「だからこそ大変なのね」
 ドロシーは言った。
「今度の戦いは」
「ええ。全く訳がわからないわ」
 また言うシェリルだった。
「とりわけね」
「イデか」
 ベスも言う。
「本当に考えがわからないな」
「しかしだ。イデの示した選択に違えばだ」
 ギジェはそのイエデについて話す。
「我々は」
「わかっている」
 ベスもギジェのその言葉に頷く。
「そうなれば我々は終わりだ」
「人類補完計画と同じになる」
「それだけは避けなければならないが」
「けれど本当に一歩間違えたらよ」
 カーシャはそのことを真剣に危惧して言う。
「私達終わりなのよ」
「おそらく戦うことは正しい選択肢ではない」
 また言うギジェだった。
「しかしこのままでは」
「仕方がないのだろうか」
 ハタリも首を捻るばかりだった。その中でだ。
 カララが艦橋から去ろうとする。また腹に痛みを感じてだ。
 それを見たシェリルがだ。彼女に声をかける。
「自分の部屋に戻るのね」
「ええ、ちょっとね」
「わかったわ。それならね」
 シェリルは親切から彼女に言った。
「私が送るわ」
「そうしてくれるのね」
「ええ、それじゃあ」
 このまま部屋に送ろうとした。しかしだった。
 不意にだ。カララが光に包まれたのだった。
「えっ!?今度は何だ!?」
「カララが光に包まれた!?」
「何なんだ、今度は一体」
「一体何が」
「カララ!」
 ジョリバが慌ててだ。カララの手を掴んだ。
 しかし彼もまたそれに包まれてだ。そうしてだった。
「ジョリバとカララが消えたぞ!」
「どういうことだこれは!」
「今度は二人がって」
「もう何が何だか」
「滅茶苦茶じゃないか」
「これもだというのね」
 シェリルはだ。呆然としながらも言った。
「これもイデなのよ」
「イデの力がか」
「こんなことを引き起こしているというのか」
「もう何が何だか」
「滅茶苦茶じゃないか」
「まさか」
 シェリルはだ。心から危惧する顔を浮かべて言うのだった。
「私達は全てイデの手の平にある」
「いや、それは早計だ」
 モエラはシェリルのその考えを消そうとする。
「そう言って全ての可能性を否定すればだ」
「同じだっていうのね」
「そうだ。だから止めるべきだ」
「私が考えを止めても」
 それでもだとだ。カララは言うのだ。
「必ず何かが起こるわよ」
「それならその都度それを何とかしていくんだ」
 これがモエラの考えだった。
「諦めたら。それで終わりじゃないか」
「諦めたら」
「そうだ。今のこの状況も」
 こう言ってだ。シェリルを何とか宥めるのだった。
 そのソロシップの騒ぎを見てだ。コスモが言う。
「ソロシップが騒がしいな」
「何をしているのかしら」
「おかしな感じだよね」
 コスモにカーシャとデクも続く。
「攻撃を受けてもいないのに」
「撃沈された様な感じだけれどね」
「待て」
 ここでだ。またギジェが言う。
「モニターに映像が」
「モニター!?なっ!?」
「な、何これ!」
「何処、ここ!」
「信じられん」
 ギジェもだ。そのモニターの映像を見て唖然となっていた。
「これはバイラル=ジンの艦内だ」
「あのデカブツのかよ!」
「そうだ、間違いない」
 ギジェはコスモに対して述べた。
「私も入ったことがある。だからわかるのだが」
「何でそんな映像が出て来るのよ」
 カーシャはそのことを言う。
「敵艦の中なんかが」
「イデだな」
 神宮寺が言った。
「イデの力がだ」
「イデがだっていうの!?」
「そうだ」
 神宮寺はこうマリにも答えた。
「それしか考えられない」
「!?光の中から」
「誰か出て来ます」
 麗と猿丸がモニターを見ながら話す。
「これは一体」
「あれは」
「カララさん!」
 洸が彼女の姿を見て声をあげた。
「まさか。敵艦の中に移動した!?」
「それも一瞬で!?」
 マリも驚きの声をあげる。
「若しこれがイデの力なら」
「イデは何を考えているんだ」
 最早誰にもわからなくなっていた。この状況にだ。
 不動もだ。腕を組んでこう言うしかなかった。
「最早こうなったらだ」
「どうするってんだよ、おっさん」
「見るしかない」
 こうアポロに述べる。
「我々には見守ることしかできない」
「俺達の手を離れてるってことかよ」
「少なくとも今はそうだ」
 アポロにまた話した。
「少なくとも我々はあの艦橋には行くことができないのだからな」
「その通りだ」
 サンドマンもその通りだと言う。
「今は手出しすることはできない」
「ちっ、どうだってんだよ!」
 エイジは歯噛みして言った。
「これじゃあイデの思うままじゃねえか!」
「いや、それは違う」
「思うままではない」
 不動とサンドマンはエイジのその言葉は否定した。
「むしろ我々は自由に動ける」
「それを見られているのだ」
「動けるのを見られているっていうのかよ」
「そうだ。だから今はだ」
「迂闊に動くべきではないのだ」
 こうエイジに言う二人だった。
「ここは彼女に任せよう」
「全ては」
 そしてカララを見守るのだった。その彼女をだ。
 見ればだ、カララとジョリバはだ。まずは艦橋の中を見回していた。
「ここは」
「わかりません」
 カララはジョリバに答えた。
「しかしここはです」
「ここは?」
「どうやら」
 前置きしてからの言葉だった。
「バッフクラン軍の艦のブリッジです」
「そうか、こうなっていたのか」
「はい、しかもです」
「しかも?」
「バイラル=ジン」
 カララもこの名前を話に出した。
「それです」
「バイラル=ジン!?」
「バッフクラン軍の旗艦です」
 それだとだ。カララはジョリバに説明した。
「その中です」
「何で急にここまで」
「それは」
 全くわからないとだ。カララはジョリバに答えようとする。しかしだった。
 ここでだ。カララはだ。彼等を見たのだった。
「えっ、そんな」
「御前はカララ」
「間違いない」
 ドバとギンドロがそれぞれ言う。
「何故ここに」
「嬢ちゃんだな。間違いなく」
「父上ですか」
 カララはだ。ドバの顔を見てだ。
 意を決した。そのうえで彼にあらためて言うのであった。
「お久し振りです」
「どうしてここに入った」
 ドバは冷静にカララ、己の娘に問うた。
「この艦まで」
「おそらくですが」
 カララは考えた。そしてその結論を父に話した。
「イデの導きによって」
「イデだと」
「はい」
 その通りだというのだ。
「その導きによって」
「何の為にだ」
 ドバは怪訝な顔になってカララに問い返した。
「それは何故だ。何の為にだ」
「おそらくは使者として」
「使者!?」
「はい、そうではないでしょうか」
 毅然として父に話す。
「それで私はここまで」
「イデの使者だというのか」
 ドバは娘の言葉からこう考えた。
「その立場でここに来たというのか」
「おそらくは」
「話は聞こう」
 ドバは冷静にだ。娘に返した。
「しかしだ」
「しかしですね」
「話の内容によってはだ」
 娘を見据えて。そのうえで告げる。
「宇宙に放り出す。いいな」
「おい、待て!」
 ジョリバがドバの今の言葉に抗議する」
「それが親の言葉か!」
「何だ貴様は」
 ドバはジョリバにも顔を向けた。
「見たところロゴ=ダウの者の様だが」
「ジョリバさん」
 ジョリバが言う前にだ。シェリルがだった。彼に対して言った。
「ここは私に」
「カララ、そうするのか」
「はい、お任せ下さい」
 こう言うのである。
「どうか」
「わかった」 
 ジョリバもだ。カララの言葉を受けた。
 そのうえで静かになってだ。こう彼女に言った。
「ならここは任せた」
「有り難うございます」
「では聞こう」
 また娘に言うドバだった。
「だが、だ」
「はい」
「娘一人のお陰で何千もの兵が死んでいるのだ」
 そのだ。現実を話すのだった。
「それで何の用なのだ」
「はい、それですが」
「それで。何だ」
「父上、いえ」
 カララはその言葉を訂正させて話す。
「ドバ総司令」
「その名で呼ぶか」
「はい、それでなのですが」
 こうして話すのだった。
「もう貴方にはわかっておられる筈です」
「何をだ」
「戦いがです」
 それがだというのだ。
「イデの力を増大させていることをです」
「イデがか」
「現にです」
 どうかとだ。カララはさらに話していく。
「バッフ星にも流星の落下が増えているのではないですか」
「・・・・・・・・・」
「あの銀河全体で」
「だとしたらどうする」
 ドバは暗にその言葉を認めた。
「そうだったなら」
「それではやはり」
「その流星もだ」
 ドバは娘のその言葉を拒んで話す。
「御前の乗る宇宙船がだ」
「あのソロシップが」
「そうだ。それにあの巨神もだ」
 イデオンもだというのだ。
「発生させているふしがある」
「ソロシップとイデオンが」
「ならばだ」
 それならばだというのだ。
「あの船と巨神は抹殺しなければならん」
「それは違う!」
 ジョリバが叫ぶ。
「イデは自分を守る力を備えはじめただけです!」
「そうです、それはです」
 カララも話す。
「私達のコントロールを拒否しはじめたのです」
「だからといってもだ」
 まだ言うドバだった。
「放ってはおけぬ」
「そうだというのですか」
「そうだ、異星人共がだ」 
 彼等が。彼から見て彼等がどうだというのだ。
「イデの力を以てだ」
「そんなことがあるものか!」
 ジョリバが叫ぶ。
「何度言ってもわからないのか!」
「我等の緑なる母星を襲わぬ!」
 だがドバは言う。
「それを誰が保証するか!」
「それは私が!」
 カララが言うのだった。
「私が保証します!」
「馬鹿なことを!」
 ドバは娘の言葉を一蹴した。
「裏切り者の命なぞだ」
「何だというのだ!」
「クズ同然だ!」
 それだと叫ぶのだった。
「何の保証になる!」
「ロゴ=ダウの異星人であろうともです!」
 しかしカララも引き下がらない。
「我々と同じです!」
「バッフクランとだというのか!」
「はい、全く同じです!」
 こう言って引かないのだった。
「必ず理解し合えます!」
「何を根拠に言う!」
「根拠ですか」
「そうだ。何が根拠だ!」
「私です」
 また言うカララだった。
「この私自身がです」
「またそう言うのなら」
「何故なら」
「何故なら。何だ」
「今私の中で」
 己の腹に手を当てての言葉だった。
「新しい命が育っているのです」
「何っ!?」
「まさか嬢ちゃんは」
 ギンドロも驚きを隠せなかった。
「子を身ごもったというのか」
「カララ、そんな」
「ええ、そうよ」
 カララは父の顔を見据えたままジョリバに答える。
「私は。ベスの子供を」
「そうだったのか」
「だからこそ私は」
 言えるというのだ。しかしだった。
 ドバはだ。怒りを露わにして言うのだった。
「おのれ!」
「総司令!」
「せめてもの親子の情けだ!」
 こう叫んでだった。銃を娘に向けて告げる。
「一思いに殺してやる!」
「何っ!?」
 ジョリバがそれを見てまた言う。
「まさか!」
「動くな!」
「何を考えている!」
 ジョリバはそのドバに対して言う。
「実の父親が子供を殺そうってのか!」
「アジバ家の名誉の為だ!」
「私もです!」
 カララも銃を抜きだ。そしてだ。
 父に銃を向けてだ。言うのだった。
「新しい命の為なら!」
「なっ、カララ!」
「嬢ちゃん!」
「父殺しの汚名も被りましょう!」
「馬鹿な、そんな」
「嬢ちゃんまで」
「カララ・・・・・・」
「この距離なら」
 カララは銃を向けたまま毅然として言う。
「私の持つ銃で間違いなく」
「そうだというのだな」
「はい」
 答えてからだった。
「父上の心臓を射抜くことができます」
「私を撃つのはいい」
 ドバはそれはいいとした。
 しかしだ。同時にこうも言うのだった。
「すぐに兵達に殺されるぞ」
「見るのだ、嬢ちゃん」
 ギンドロも彼女に告げる。既に彼等の周りにはだ。
 バッフクランの兵達が集っていた。そのうえでそれぞれ銃を抜いていた。
 彼等を横目で見ながらだ。ドバは娘に話すのだった。
「それでもいいのだな」
「はい」
 いいとだ。また答えるカララだった。
「お好きに」
「まだそう言うのか」
「しかしその代わりです」
「どうだというのだ?」
「イデの力は」
 そのイデがだ。どうかというのだ。
「私達をここに導いたイデの力はです」
「その巨神の力か」
「私達に何かあれば」
 その瞬間にはというのだ。
「何千もの仲間達、私達の仲間達をです」
「ロゴ=ダウの戦士達か」
「彼等をここに送り込んでくれます」
 そうなるというのだ。
「ここは既に見張られているのです」
「イデの力はコントロール出来ぬ」
 ドバもまた引かない。
「そう言ったのではないのか」
「はい、力を弱める為のです」
 カララはその父に反論する。
「それはできません」
「ならばか」
「より強い使い方なら」
 それならばだというのだ。
「できます」
「総司令」
 ここでギンドロがドバに言った。
「ここはだ」
「どうだというのだ」
「退くのも手だ」
 こう友に言うのだった。
「今はだ」
「何故だ、それは」
「嬢ちゃんが脅しを言っているとは思えん」
「では実際にか」
「目の前の連中がだ」
 そのだ。ロンド=ベルの軍がだというのだ。
「一気にここに来ればどうなる」
「むっ、それは」
「この艦といえどもだ」
「沈められるというのか」
「総攻撃を受ければな」
 そうなるとだ。ギンドロは言う。
「だからだ。今はだ」
「引き下がれというのか」
「そうだ。それも手だ」
「しかし軍はだ」
 それでもだというドバだった。
「退くことはできん」
「しかしあの二人はだ」
 カララとジョリバを指し示しての言葉だ。
「今実際にここにいるのだ」
「しかし私はだ」
「認めないというのか」
「何故話し合いなぞできる。異なる文明の者達と」
 二人の指揮官が言い合う中でだ。カララは。
 隙を見た。それでジョリバに告げた。
「ジョリバさん」
「そうだな」
 ジョリバもカララのその言葉に頷く。
「今だな」
「はい、それでは」
 そしてだった。カララの動きは速かった。
 指揮官達の言い合いに戸惑う兵達にだ。叫んだ。
「道を開けなさい!」
「!」
「な、何だ!」
「何だっていうんだ!」
「さもなければです!」
 どうかとだ。カララは毅然として言う。
「イデの力は発動されます!」
「こんな状況で発動したらそれこそ」
「そ、そうだな」
「どうしようもない」
「それならだ」
「もう」
 兵達も戸惑いながらだ。そうしてだった。
「ここはだ」
「道を開けるんだ」
「さもなければイデが発動されるぞ」
「そうなったらもう」
「どうしようもない」
 こうしてだった。彼等は慌ててだ。
「こうなっては」
「じゃあ仕方ないな」
「ああ、もうな」
「それにこのままじゃ総司令もな」
「撃たれる」
「それならもう」
「ここは」
 こう話してだった。彼等はだ。
 その道を開けたのだった。二人はそれを見てだ。
 カララがだ。ジョリバにすぐに声をかけた。
「今です!」
「ああ!」
 ジョリバもカララのその言葉に応える。
「この場所を出よう!」
「そうしましょう!」
「そして!」
 そのうえでだというのだ。さらにだ。
「帰ろう!」
「道を空けなさい!」
 カララは兵士達に叫ぶ。
「さもなければイデの力は発動します!」
「くっ!」
 ドバが歯噛みしてもどうしようもなかった。道は既に開いていた。
 そしてだった。
 二人は駆けていく。それを見てギンドロは言う。
「まさかな」
「カララ、よくも」
「あの嬢ちゃんがあそこまでのものを見せてくれるとは」
「逃がしはせんぞ!」
 ドバはだ。バッフクランの総司令官として以上にだ。父になっていた。
 その父としてだ。激昂して言うのであった。
「見つけ次第殺せ!」
「それでいいのだな」
「構わん!」
 ギンドロにも言ったのだった。
 そしてだ。二人はバイラル=ジンの格納庫に来てだ。カララはメカを一機前にしてジョリバに言った。
「ではこのメカで」
「脱出を」
「はい、そうしましょう」
「それはわかった。しかし」
「しかし?」
「操縦はできるのかい?」
 ジョリバが言うのはこのことだった。
「君はそれは」
「出来なくてもです」
 それでもだと返すカララだった。
「やるしかありません」
「そうか。そうだな」
「はいですから」
「強くなったな」
 ジョリバはだ。不意に微笑んでカララにこう言うのだった。
「貴女は」
「私が?」
「うん、しかし」
「しかし」
「まずったな」
 今度は苦笑いでの言葉だった。
「これだけの人なら」
「私がですか」
「うん、ベスより先に口説くべきだったよ」
 こう言うのだった。
「君をね」
「有り難う、ジョリバ」
 カララはジョリバのその言葉に微笑んで返した。
「では今は」
「うん、行こう」
「皆の場所に」
 この一連のやり取りはモニターからロンド=ベルの面々も見ていた。カララとジョリバが脱出するのを見てだ。ノインとヒルデが話す。
「今のは」
「ええ、どうやら」
「話し合いは無理か」
「そうみたいね」
 そのことはだ。自然に悟ることができた。
「残念だがな」
「それならまずは」
「あのマシンだ」
 バイラル=ジンから出たそのマシンをだ。ミリアルドは指差して言った。
「あのマシンに二人が乗っている」
「それならですね」
 カラスもその言葉を強くさせる。
「御二人を救い出しましょう」
「そうするべきなのですね」
「トビア君」
 カラスはそのトビアに穏やかに話す。
「私はいつも言っていますね」
「人は強くあるべきですね」
「御二人はそれを見せてくれました」
 その強さをだというのだ。
「それならばです」
「僕達も」
「はい、それに応えるべきです」
 こう教師として話すのだった。
「だからこそです」
「わかりました、それなら」
「どうやら一刻の猶予もなりません」
 二人の周りを見ての言葉だった。既にだ。
 バッフクランの大軍が二人を追っている。そして。
 ドバがだ。命じたのだ。
「逃がすな!撃て!」
「!!」
「来たか!」
 二人の乗るマシンが撃たれた、それでだった。
 撃破された。それを見てだ。
「撃たれたぞ!」
「二人は無事か!?」
「どうなんだ!?」
「まずいですね」
 カラスもだ。この事態には眉を曇らせて言う。
「こうなるとは」
「先生、これは」
「はい、いけません」
 トビアにも危惧する声で返す。
「御二人が無事であればいいのですが」
「ですがこれでは」
「あ、ああ!!」
 そしてだ。コスモはだ。
 完全に取り乱しだ。そして叫ぶのだった。
「うわああああああああああああっ!」
「!?コスモ!」
「どうしたんだ!」
「一体!」
「何故だ、何故殺す!」
 叫び続けるコスモだった。
「何故戦う!何故そっとしておけないんだ!」
「コスモ、落ち着いて!」
「まだ死んだと決まった訳ではない!」
 カーシャとギジェが彼に慌てて言う。
「だから今は」
「落ち着くのだ!」
 しかしコスモは止まらない。それでさらに叫ぶのだった。
「何故カララさんを殺した!?」
 バッフクランへの言葉だ。
「カララさんの理想主義がイデを抑える鍵だったかも知れない!」
「な、何だ!?」
 ドバもだ。驚きの声をあげた。
「ロゴ=ダウの異星人か!?」
「その様だな」
 ギンドロも聞いていた。
「これは」
「異星人の言葉が聞こえるのか!」
「イデの力が解放されたら!」
 コスモの絶叫が続く。
「どうなるか!それは!」
「イデ」
「あの巨神の力がか」
「誰もわかってないんだぞ!」
 こう叫ぶのだ。
「貴様達が責任を取ってくれるのか!貴様達が!」
「まさか」
 ベスはその中で比較的冷静だった。そうしてだった。
 一人だ。こう呟くのだった。
「本当に死んだのか」
「まずは探そう」
 ハタリも言う。
「それが先決だ」
「そうだな、今は」
 二人はこう判断した。しかしだった。
 ここでだ。急にであった。ルウが。
「だあだあ」
「えっ、ルウ!?」
 ロッタがその声を聞いた瞬間に。
「くっ!」
「サイコドライバーが!?」
「発動する!?」
 リュウセイにブリット、クスハが声をあげる。
「まさかここで」
「蔚デじゃない!」
「これは!」
「アヤ!」
 マイがアヤに言う。
「今は!」
「ええ、ティーリンクセンサーを集中して!」
 アヤは咄嗟に言った。
「この波動は」
「あの光は!」
「何だ!?」
 見るとだ。カララとジョリバの乗るマシンが撃墜された場所にだ。
 光が宿ってだ。そこから。
「あっ・・・・・・」
「俺達は」
「生きている!?」
「そうだ、生きているんだ」
「何だよあの光は」
 闘志也も呆然となっている。
「一体」
「イデの仕業か?」
 ジュリイはそれではないかと話す。
「また」
「それで二人を助けたのか?」
 謙作も続く。
「そうなのか?」
「そんなことはどうでもいい!」
 コスモは今度は別の言葉を出した。
「今は二人を!」
「うん、そうだね!」
 デクがすぐに応える。
「今は!」
「誰でもいい!」
 ベスも今は叫ぶ。
「頼む!」
「ああ、二人を!」
「今は!」
「カララとジョリバを救ってくれ!」
 こう叫ぶのだった。
「とにかく、今は!」
「おのれ!」
 ドバはだ。活気付くロンド=ベルとは正反対に激怒していた。
「これもイデの意志だというのか!」
「総司令!」
 その彼にだった。将校の一人が言ってきた。
「この付近に重力異常を察知!」
「何っ!?」
「何者かが来ます!」
「まさか」
 ドバが言うとだった。そこにだ。
 宇宙怪獣の大軍がだ。出て来たのだった。
「宇宙怪獣!?」
「こんなところにまで!?」
「出て来るなんて」
「まさか」
「何かが」
 ギンドロがまた言う。
「この銀河の何かがだ」
「どうだというのだ」
「起ころうとしているのか」
 こうドバにも話す。
「そうではないのか」
「まずいな」
 トッドはその宇宙怪獣の大軍を見て言う。
「あの合体する奴もいるぜ」
「合体型と呼ぶべきか」
 副長はその二つ上下に合わさる型をこう呼んだ。
「あれは」
「あれが最も手強い宇宙怪獣だな」
「そうなのよね」
 ニーとキーンも話す。
「バルマー戦役の頃から」
「てこずってきたけれど」
「けれど宇宙怪獣に対しては」
 リムルは意を決した声だった。
「戦うしかないから」
「その宇宙怪獣ですが」
 シーラはその彼等の動きを見て話す。
「バッフクラン軍を無視して」
「こちらに来ています」
 カワッセも彼等の動きを見ている。
「非常に危険な状況です」
「宇宙怪獣にとって、いえアポカリュプシスにとって」
 アレもだ。宇宙怪獣達を見ている。
「やはり最大の敵は」
「はい、我々でしょう」
 エイブが彼の姫に応える。
「だからこそ今こうして」
「彼等に知能はありませんが」
 シュウがここでその宇宙怪獣のことを話す。
「しかし本能的に察するのですね」
「そうね」
 ユングがシュウその言葉に頷いて答えた。
「だからこそ厄介なのだけれど」
「そしてそれと共に」
「今はですね」
「そうです。おわかりですね」
 シュウはカズミにも話した。
「今するべきことはです」
「カララさんとジョリバさんを何とか」
「では。そうしましょう」
「カララさん!今行きます!」
 ノリコがガンバスターを前に出す。
「ですから今はそこで」
「あんたを死なせはしない」
 コスモもだ。ガンバスターと共にイデオンを前に出した。
「あんたは死んじゃいけない人なんだ!」
「さて、どうする?」
 ギンドロはロンド=ベルと宇宙怪獣の戦いがはじまったのを見てだ。
 ドバにだ。あらためて問うた。
「ここは」
「宇宙怪獣か」
「考えようによっては巨神以上の脅威だが」
「わかっている」
 ドバは宇宙怪獣達を見据えながらギンドロに答えた、
「宇宙怪獣達を放っておくつもりはない」
「それではか」
「癪に触るが異星人達には攻撃は仕掛けない」
 それよりもだというのだ。
「宇宙怪獣だ。あの連中を倒すとしよう」
「ではこれより我が軍は」
「攻撃目標を変更する!」
 ドバは言った。
「宇宙怪獣だ!いいな」
「了解!」
「わかりました!」
 こうしてだった。彼等もだった。 
 宇宙怪獣に攻撃を仕掛ける。宇宙怪獣達はロンド=ベルとバッフクラン双方から攻撃を受けることになった。しかしそれでもだった。 
 その数はあまりにも多い。とりわけ合体型が多いことが問題だった。
 その挟む攻撃を何とか両手で止めて防ぎながらだ。デクはそのイデオンの中で言うのだった。
「コスモ、このままじゃ俺達」
「死ぬっていうのか?」
「うん、ひょっとしたら」
 こう言うのだった。しかしすぐにだった。 
 カーシャがだ。そのデクに言ってきた。
「そんなこと言わないの!」
「えっ!?」
「情けない!そんなんじゃね!」
 どうかというのだ。
「この連中の相手はできないわよ!」
「カーシャの言う通りだ!」
 そしてだった。コスモも言うのだった。
「怯えている暇はないんだ!」
「そうよ!そんな暇があったらね!」
「周りに一発でも多くミサイルを叩き込め!」
「今のこのデカブツも!」
 そのだ。イデオンが今戦っている合体型もだというのだ。
「さっさと叩き潰すのよ!」
「さもないと死ぬのは俺達だ!」
「それによ!」
「カララさんとジョリバさんを助けるんだ!」
 コスモはデクにもこのことを告げる。
「わかったら今は!」
「早くあの場所に!」
「そ、そうだね」
 ここでだ。ようやく頷くことができたデクだった。
 そのうえでだ。彼も戦いに目を向ける。そうして言うのだった。
「なら今はこの挟み撃ちしてくるのを」
「どうするのよ」
「イデオンソードは使える?」
 カーシャに答えながらコスモに問うた。
「それは」
「ああ、使える」
 コスモはすぐに答えた。
「ならそれでだな」
「うん、この挟み撃ちを斬ろう」
「よし、わかった!」
「不思議だ」
 ギジェはゲージを見ていた。
「今はかなり高い段階で安定している」
「高い段階で?」
「そうだ。それでいてコントロールが可能だ」
 ギジェはこうデクに話すのだった。
「こんなことは滅多にないことだ」
「そうだな。イデは不安定なのが常だからな」
 それはコスモが最もよくわかっていることだった。
「それで安定しているのは」
「珍しいことだ」
「そうよね。確かにね」
 これはカーシャもよくわかることだった。
「イデが。そんな」
「しかしだ」
 ここでギジェは言った。
「これは我々にとってはいいことだ」
「そうだね。考えてみればね」
「宇宙怪獣達を倒しカララ達を救い出そう」
 ギジェはデクに話した。
「そうしよう」
「そうだな。それならだ!」
 コスモはイデオンからイデオンソードを出した。それでだった。
 合体型と周りにいる宇宙怪獣達を切り裂いた。その両腕を振り回すだけでだ。
 宇宙怪獣達を殲滅してだ。カララ達のところに向かうのだった。
 そしてだ。ノリコもイデオンを追う。その中で宇宙怪獣達を拳と蹴りで粉砕しながらカズミに問う。
「ねえ、お姉様」
「どうしたの、ノリコ」
「まさかと思うけれど」
 先に進みながらの言葉だった。
「宇宙怪獣は待っていたのかしら」
「この時をなのね」
「ええ、私達とバッフクランが衝突するその時を」
 ノリコはいぶかしむ顔で言うのだった。
「まさかとは思うけれど」
「そうかも知れないわね」
「奴等にとっては」
「宇宙怪獣にとっては」
「私達も彼等も」
 バッフクランもだというのだ。
「敵であることには変わらないだから」
「そうだというのね」
「ええ。確かに奴等には知能はないわ」
 しかしそれでもなのだった。
「その本能で動いてね」
「生物としてのその本能で」
「動いてのことなのかもね」
「何かあるのかしら」
 ここでふとこんなことも言うノリコだった。
「奴等には」
「何かあるの?まだ」
「本能にしては妙に狡猾な感じがするわ」
 ノリコはこう察していた。
「邪悪な考えがあるというか」
「邪悪ね」
「そう。本能だけじゃなくて」
「けれど宇宙怪獣にはその邪悪を宿す知能自体が」
「そうよね。ではどうしてかしら」
 ノリコは戦いながら眉を顰めさせていた。
「宇宙怪獣にそれを感じるのは」
「何かあるのかしら」
「アカシックレコードが我々を標的としているのか」
 ジェイはこう言った。
「それでなのだろうか」
「アカシックレコード」
「その意志なのかしら」
 ノリコとカズミも考える。そうした話をしながらだ。
 ロンド=ベルは宇宙怪獣達を倒しだ。何とかだった。
 イデオンがだ。二人を助け出した。
「コスモがやってくれたぞ」
「そうか、あいつがか」
 ベスはハタリの言葉を聞いて言った。
「やってくれたんだな」
「ああ、カララとジョリバを回収した」
 それを達したというのだ。
「二人共無事だそうだ」
「そうか。それならだ」
 ベスは二人を救出できたと聞いて一つの判断を下した。
「ここは撤退だ」
「撤退だな」
「バッフクランも宇宙怪獣が現れたならだ」
「すぐには追撃できないな」
「そうだ、そうしよう」
「戦うことはしないのだな」
 ここでハタリはベスに問うた。
「それはしないんだな」
「ハタリ、まさかと思うが」
 こうハタリに返すベスだった。
「本気でそう言っているのか?」
「いや」
 ハタリもだ。それは否定した。
「それは止めておくべきだな」
「そうだ、それではだ」
 ここでバッフクランと戦うことはどういうことか。ベスは話した。
「我々はイデの策に乗るだけだ」
「まさにそうだな」
「俺達は人間なんだ」 
 ベスは言った。
「生命ある限りはだ」
「自分の意志でだな」
「道を切り開こう」
「辛い選択ね」
 シェリルは艦橋に戻って来ていた。そのうえで言うのだった。
「けれどね。それしかないわね」
「そういうことだ。だからだ」
「イデ、本当に何を考えているのかしら」
 シェリルは目を顰めさせていた。
「さらにわからなくなってきたけれど」
「少なくとも今戦ってはならない」
 ハタリがそのシェリルに話す。
「それは確かだ」
「そうね、それじゃあ」
「各機は後退してくれ」 
 ベスが指示を出す。
「それぞれの艦艇に戻りだ」
「そのうえで全艦もだな」
「そうだ、下がろう」
 こうしてだった。ロンド=ベルは今は撤退するのだった。宇宙怪獣達もだ。
「あの化け物達も行ったぞ」
「そうだな」
 ドバはギンドロの言葉に頷いていた。
「確かにな」
「ではどうするのだ」
「決まっている」
 すぐにギンドロに答えたのだった。
「追撃だ」
「追うというんだな」
「そうだ、そしてだ」
 カララの顔を思い出し。そのうえでの言葉だった。
「奴等を叩く」
「嬢ちゃんをか?」
「そうだ」
 憮然としてギンドロにも答える。
「バッフクランに弓引いた愚か者をだ」
「だといいのだがな」
「何を言いたい」
「別にない」
 あえて言わないギンドロだった。
「気にするな」
「ふん、ならいいがな」
「しかし。追うか」
「あの巨神をそのままにしてはおけぬ」 
 それが理由であった。
「ロゴ=ダウの異星人達、必ずだ」
「では全軍を集結させよう」
「そのうえでだ」
 こうしてだった。彼等はロンド=ベルを追うことにしたのだった。
 そしてロンド=ベルもだ。話し合っていた。
「宇宙怪獣も来たしな」
「洒落になってないな」
「ああ、バッフ=クランも来るだろうし」
「この状況は」
「それでだが」
 ここでタシロが全員に話す。
「殴り込み艦隊だが」
「もう出撃してますよね」
「主力も」
「そちらにはだ」
 そのだ。殴り込み艦隊の話をするのだった。
「朗報があった」
「朗報!?」
「っていいますと?」
「ゾヴォーク全軍が加わった」
 そうなったというのだ。
「星間連合、バルマーの全軍もだ」
「全ての軍がですか」
「集ってきてるんですか」
「あの艦隊に」
「そうだ。当然ゲストの三将軍もインスペクター四天王もだ」
 彼等もだというのだ。
「参加してくれている」
「それはいいことですね」
 万丈はその話を聞いて述べた。
「これであの艦隊はさらに強くなりました」
「そうだ。まさに銀河が一つになろうとしている」
 それはいいというタシロだった。
「しかしだ」
「僕達はですね」
「この状況だからな」
 今言ったのは京四郎だ。
「まさに前門の虎、後門の狼だ」
「今の宇宙怪獣は」
 レーツェルが顔を曇らせながら言う。
「おそらくはだが」
「そうだな。バルマー戦役の時よりも遥かに上だ」
 ライが言った。
「あの時以上に」
「じゃああの時の戦いは」
 リュウセイが言う。
「アポカリュプシスの予兆に過ぎなかったのかよ」
「そしてだ」
 タシロがまた言う。
「我々はこのままだとだ」
「殴り込み艦隊も含めて」
「あの宇宙怪獣にやられる」
「そうなりますね」
「そうだ、そうなる」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「この状況ではだ」
「問題はバッフクランだ」
 コスモが忌々しげに言った。
「あの分からず屋共はまだ」
「私達との共存を認めないっていうのね」
 カーシャも言う。
「そうだっていうのね」
「残念だが」
 今言ったのはギジェだった。
「今の流れはだ」
「イデの筋書き通りか」
「そう思う」
 こうベスにも話すギジェだった。
「これでは」
「しかし諦めてはならない」
 タシロは確かな声で彼等に話した。
「我々は最後の一人が倒れるまでだ」
「それまではですね」
「そうだ。その時までだ」
 どうするかというのだ。
「あがくことを止めてはならんのだ」
「その通りですね」
「例えそれがだ」
 タシロはその言葉を続ける。
「アカシックレコードの手の平で踊っていることであってもだ」
「それでもだよな」
「それじゃあ」
「ここはまずはどうするか」
「それですね」
「このまま双方と戦っても」
 その選択肢の結末は。わかっていた。
「イデの思い通り」
「そしてそれは最悪の結果をもたらす」
「それならどうするかっていうと」
「やっぱりバッフクランをどうするか」
「それだよな」
「思えばな」
 ここでベスは嘆息と共に話した。
「イデがソロ星に辿り着いた我々をサンプルに選んだ」
「そして我々もその星に来た」
 ギジェも話す。
「それが全てのはじまりなら」
「我々の手で終わらせることもできる筈」
「ですが」
 二人にだ。ラクスが言ってきた。
「ソロシップとイデオンだけで行っては駄目です」
「しかし」
「それでもです」
 ラクスはベスに言わせなかった。
「今は貴方達だけではないのですから」
「俺達だけじゃない」
「この宇宙に運命というものがあり」
 ラクスは己の言葉を続けていく。
「そしてそれが悲しみや憎しみ、怒り」
「そうしたマイナスの感情を」
「そういったものを引き起こすなら」
 どうかというのだ。
「人の生きる意味とはです」
「それにですね」
「はい、打ち勝つものだと思います」
 これがラクスの考えだった。
「私達が地球という小さな星で」
「そしてこの銀河で」
「宇宙の中の小さな銀河の中で」
「続けてきたことをですね」
「それを無駄にしない為にも」
 どうするか。そうした話だった。
「挑むべきです」
「俺達全てで」
「人の力で運命を越えることに」
「そういうことだ」
 バルトフェルドもベスに穏やかな声で話す。
「今更君達だけで行くとか。あまりにも水臭いじゃないか」
「どうせならもうとことんまで付き合うさ」
 シンも笑って言う。
「少なくとも俺とアズラエルさんとオルガ達は絶対に死なないからな」
「おや、僕もですか」
「何だよ、俺もかよ」
「絶対に死なないって?」
「俺達は不死身だったのか」
「じゃあ死ぬのかよ」
 シンはその四人に問い返した。
「こんなところで死ぬのかよ」
「そのつもりは全くありません」
「当たり前だろ。読んでない本まだ一杯あるんだからな」
「クリアしてないゲームを全部クリアしないと」
「音楽聴く」
「だったら死なないだろうが。まあとにかくだよ」
「皆付き合ってくれるのか」
 コスモはシン達の話から察して言った。
「済まないな」
「礼はいい」
 ブライトがベスに話す。
「我々は自分なりの意志で運命に挑むのだからな」
「ではだ」
 大文字も話す。
「今は全軍でだ」
「バッフクランと何とか決着をつける」」
「ここで」
「そうするとしよう」
 これが彼等の結論だった。
「それから殴り込み艦隊に合流する」
「短期決戦になるか」
 マーグが大文字の話を聞いて述べた。
「今回は」
「そうですね。それでは」
 ロゼも話す。
「彼等との決着をつけそして」
「最後の戦いだ」
 マーグはロゼにも話した。
「宇宙怪獣達とのだ」
「そうですね。遂に」
「バルマーも矛を捨てた」
 マーグはそのことを喜んでもいた。
「それなら次はだ」
「はい、バッフクランと」
「アポカリュプシスを終わらせるとしよう」
「父さんも見ているのかな」
 シンジはこの中でふと呟いた。
「今の僕達を」
「そうだ、見ているぞ」
「そんなの当たり前じゃないの」
 カガリとフレイがそのシンジに話す。
「今のシンジをな」
「ちゃんと見てるわよ」
「そうだね。それじゃあ」
「行こう、皆!」
 光の声はここでも明るい。
「運命を切り開きに!」
「そうだな。それじゃあ」
 洸も続く。
「そしてそのうえで」
「アカシックレコードが何だってんだ!」
 豹馬も強気だった。
「そんなの俺達が叩き潰してやるぜ!」
「そうだな、そんなの糞くらえだ!」
 忍もだった。
「俺達は俺達の手で運命を切り開いてやるぜ!」
「シンジ君もそう言ったしね」
 綾人はそのシンジに言った。
「僕も。そうだったし」
「そうでしたね。綾人さんも」
「ラーゼフォンに乗ったのは運命だったんだ」
 そしてそれからだったというのだ。
「僕は自分で自分の運命を」
「切り開かれましたね」
「僕にもできたんだ」
 それならばだというのだ。
「それなら皆も」
「じゃあバッフクランとの戦いも」
「終わらない筈がないよ」
 綾人は微笑んでシンジに話す。
「無事ね」
「そうですね。それじゃあ」
「希望を持って」
「行きましょう」
 こう話してだった。ロンド=ベルは和解の道を選んだのだった。そのうえでまた道を歩くのであった。


第百十三話   完


                        2011・5・25
   

 

第百二十四話 憎しみの環の中で

                   第百二十四話 憎しみの環の中で
 旗艦のハルルの部屋にだ。誰かが入って来た。
 その彼を見てだ。ハルルはこう言った。
「総司令」
「うむ、邪魔をする」
「何か」
「女らしいな」
 その部屋を見ての言葉だった。
「いい部屋だ」
「お戯れを」
「本当だ」
 ドバは真剣な顔でこう娘に話す。
「否定するつもりはない」
「左様ですか」
「傷はいいのか」
 ドバは娘にさらに問うた。
「それはもう」
「大したことはありません」
 ハルルは少し目を閉じて父に答えた。
「御気になされずに」
「そうか。ならいいが」
「父上」
 ハルルは思わず彼をこう呼んだ。そのうえでの言葉だった。
「御言葉ですが」
「何だ」
「弱気は禁物です」
 こう告げるのである。
「それは」
「馬鹿を言え」
 ドバは娘の言葉をこう言って否定した。
「あの者達が何処に逃げようともだ」
「我々はですね」
「そうだ。必ず追い詰める」
 ドバも引いてはいない。
「何としてもな」
「それはわかります」
「では何故言う」
「あのロゴ=ダウの艦への恐れを憎しみをです」
 その二つをだというのだ。
「それを忘れては勝てはしないかと」
「それは違うな」
「違いますか」
「私はバッフクランを守るという正義」
 ドバが言うのはこのことだった。
「我等に大義名分があるから戦っておる」
「それがあるからですか」
「そうだ」
「それではです」
 ハルルはドバの話を受けてだ。あらためて話すのだった。
「カララがです」
「あれがどうした」
「異星人の子を宿した」
 その言葉にはだ。ドバの眉がぴくりと動いた。
 だが感情は抑えてだ。娘の話をさらに聞くのだった。
「その時もでしょうか」
「では聞こう」
 感情を抑えながらハルルに問う。
「御前があの者達を追撃する指揮を執るのはだ」
「はい」
「あれがいるからか」
 こうハルルに問うのである。
「カララがいるからか」
「あの子はです」
 ハルルは妹をこう呼んで話すのだった。
「この事件、戦いの元凶であるにも関わらず」
「それでもだな」
「はい、異星人との間に子を宿しました」
 ハルルの目に赤い炎が宿っていた。鈍く燃える炎だ。
「アジバ家の血のつながりを持った女がです」
「異星人の男とつながってだな」
「子を産む。このことがです」
 ハルルはその鈍く燃え盛る炎を背に話す。
「許せることでしょうか」
「だからか」
「はい、だからです」
 まさにそれが理由だというのだ。
「私はあの娘を討ちます」
「そうするか」
「父上」
 父にだ。さらに話すのだった。
「私は妹を殺すのです」
「そうか」
 ドバは一旦瞑目してからだ。娘に話した。
「よく決心してくれた」
「有り難き御言葉」
「これでアジバ家の血を汚さずに済む」
「いいえ」
 だが、だった。ハルルはここでこう言うのだった。
「私はアジバ家の血統や名誉はです」
「そのことは考えていないのか」
「はい、それでカララを殺すのではありません」
 それとは違うというのだ。そしてだ。
 その理由をだ。燃え盛る炎と共に話すのだった。
「私は悔しいのです」
「悔しいというのか」
「そして憎いのです」
 炎はいよいよ燃え盛っていた。
「カララが」
「あれがか」
「あの娘は好きな男の子を宿せました」
 完全にだ。女としての言葉だった。
「しかし私はです」
「ダラムのことか」
「私はダラムの遺言さえ手に入れられませんでした」
 自分で話すのだった。
「同じ姉妹でありながら」
「そう言うのか」
「はい、しかしです」
「しかし?今度は何だ」
「誤解なさらないで下さい」
「何を誤解するというのだ?」
「私の復讐」
 それをだというのだ。
「ダラムの復讐ではなくです」
「我々のだな」
「はい、ロゴ=ダウの異星人全てへの復讐です」
 復讐をだ。それにあげての言葉だった。
「その為に軍の指揮を」
「執ってくれるか」
「そうさせて頂きたいのです」
「無論だ」  
 ドバも娘のその言葉を受けて言う。
「では執ってもらおう」
「そうして頂けますね」
「何度も言うがだ」
「はい」
「私は御前を女として育てた覚えはない」
 このことを今も告げるのだった。
「それではだ」
「はい、総司令閣下」
「吉報を待つ」
 傲然とさえして娘に告げる。
「是非共な」
「はっ、それでは」
 部屋を去るドバをバッフクランの敬礼で送る。それが終わってからだ。
 ハルルは弱い顔になってだ。彼の名を呟くのだった。
「ダラム・・・・・・」
 彼の名を。そしてだった。
「助けて・・・・・・」
 一人になると呟くのだった。そうしたのである。
 ソロシップの艦内ではだ。
 プルとプルツーがだ。ルウをあやしながら笑っていた。
「何かこうしているとね」
「そうだな」
 二人は笑顔で話していく。
「私達も何か」
「御姉さんみたいだな」
「そうだな」
 その二人にだ。ハマーンが微笑んで話してきた。
「思えば私もだ。ついこの前までだ」
「あっ、ミネバちゃんをよね」
「育ててきたのよね」
「そうだ。ミネバ様が赤子の頃からだ」
 育ててきたというのだ。
「思えば懐かしい話だ」
「そうなのか。ハマーンさんにもそういった時があったのだな」
 今度はナタルが来て話す。
「それは今もなのか」
「そう。今もだ」
 それを否定しないハマーンだった。
「私はまだ二十一だがな。それでももう母親なのかもな」
「それは羨ましいことだな」
 依衣子も来て話す。
「私も何時かこうした子供が欲しいものだな」
「何だ?クインシィがそう言うのか?」
 このことにだ。シラーが少し驚いて言う。
「どうにも意外だな」
「私もまた女なのだ」
 これが依衣子の言葉だった。
「それならだ」
「そういうことか」
「そうだ。それでだが」
 ここでまた言う依衣子だった。
「ルウはマイにもなついているな」
「そうだな」
 彼女のその言葉にだ。シラーも気付いた。
 見ればだ。実際にマイに笑顔を見せていた。
「だあだあ」
「私の方に来たのか」
「この子は」
「そうね」
 アヤとセシリーがそれを見て笑顔で話す。
「マイのことがね」
「好きみたいね」
「どうすればいいんだ」
 マイは戸惑いながら言った。
「こうした時は」
「ほら、おいでルウ」
 アヤはまずはルウに笑顔で言ってルウを導きだ。そしてだ。
 抱き寄せてだ。笑顔でこう言うのだった。
「よしよしい」
「だあだあ」
「こういう時はね」
 ここであらためてマイに話すのであった。
「優しく抱っこしてあげればいいのよ」
「抱っこ?」
「そうよ。クロやシロを抱っこするのと同じよ」
 シモーヌがマイにわかりやすく話した。
「あの時と同じよ」
「ああした感じでいいのか」
「それならできるわよね」
「うむ、できる」
 マイはこくりと頷いて答えた。
「ああした感じならな」
「それなら。やってみて」
 またアヤが妹に話す。
「今からね」
「私でもできるのだろうか」
「大丈夫よ」
 不安がる妹にまた話した。そしてだ。
 自分が抱いているルウを差し出してだ。こう言うのだった。
「ほら」
「う、うむ」
 マイも頷きだ。そうしてだった。
 ルウを抱き締めてみるのだった。
「私でもできるのだな」
「だってマイも女の子だから」
「それでなのか」
「そうよ。それでどう、ルウは」
「温かい」
 まずはこう言うのだった。
「赤ん坊というのは」
「そうでしょ。温かいでしょ」
「それにだ」
「それに?」
「こんなに小さいんだな」
 こうだ。しみじみとなっていた。
「そうなんだな」
「不思議かしら」
「ああ、とても」
 まさにその通りだと姉にも返す。
「こんなに小さいのに」
「けれどね」
 そのマイにだ。アヤは優しい声で話す。
「人は皆生まれた時はね」
「こうなのか」
「そうよ。赤ちゃんなのよ」
 話すのはこのことだった。
「そうなのよ」
「というと」
 それを聞いてだ。マイは思わずこんな話をしてしまった。
「リュウやライやアヤも」
「私もなのね」
「皆赤ちゃんだったのか」
「当たり前じゃない」 
 答えたのはアーシュラだった。
「それはね」
「ならゼンガー少佐や」
 いきなり濃くなった。
「バサラやドモン達もか」
「若しかすると」
「違うかもな」
 彼等についてはだ。プルもプルツーも断言できなかった。
「アズラエルや不動司令やサンドマンもなのだろうか」
「ひょっとしたら」
「あの人達は」
「人間かどうかすら怪しいし」
「ちょっと以上に」
「マスターアジアやシュバルツ=ブルーダーもか」
 より濃くなった。
「あの人達もか」
「そんな筈ないでしょ」
 アスカがそれを真っ向から否定した。
「あの人達は妖怪よ。変態なのよ」
「変態だからか」
「だから絶対に赤ちゃんじゃなかったのよ」
「じゃあどうして生まれたんだ?」
「自然発生なんでしょ」
 アスカはよりによってこんなことを言った。
「ボウフラみたいに湧いたのよ」
「そうなのか」
「そうよ。絶対に違うから」
「そうか。あの人達は違うのか」
「そうじゃないって言えないのがね」
 アヤもだ。彼等の出生については苦笑いだった。
「困ったわね」
「グン=ジェム大佐はまだ信じられない訳じゃないけれど」
 リンダが言う。
「けれどあの人達は」
「そうね。ちょっとね」
 アヤはまた言った。
「信じられないわね」
「あっ、ルウ今度は」
 その間にだった。ふとフレイが言った。
「カガリのところに来てるわね」
「わ、私か」
「そうみたいよ。この娘どうやらね」
「私のことが好きだというのか」
「こいつ将来が心配だな」
 シンがいきなり出て来た。
「女の趣味最悪になるな」
「おい待て」
 カガリはそのシンに即座に言った。
「私が最悪だっていうのか」
「当たり前だろ。金髪の猿じゃねえかよ」
「また言うか、私が猿だと」
「ああ、猿だよ」
 シンはいつも通り引かない。
「どっからどう見てもよ。エテ公じゃねえかよ」
「貴様、ルウの前とはいえだ」
「何だ!?やるってのか?」
「今日という今日はだ!容赦はしない!」
「ああ、やってやらあ!」
 まさにだ。売り言葉に買い言葉だった。二人は取っ組み合いの喧嘩に入った。
 その二人を箒で端にやってだ。皆そのルウを見ながら話す。
「何はともあれだ」
「あっ、今度はレーツェルさんですか」
「何か意外ですね」
「私とて人間だ」
 レーツェルは微笑んで答えた。
「子供は好きだ」
「・・・・・・・・・」
「少佐もいらしたんですね」
 アスランはゼンガーに対して言った。
「ここに」
「そうだ」
「まさか少佐も?」
「そうかもね」
 ルナマリアとメイリンはそのゼンガーを見ながら話す。
「ルウを」
「抱っこしたいのかしら」
「そうじゃないかな」
 アーサーがその二人に応える。
「何かそんな感じに見えるけれどね」
「本当に強い人は女の人や赤ちゃんに優しいっていうけれど」
「それかしら」
「少佐ならあるかも知れないな」
 タスクは二人のその言葉に頷いた。
「それも」
「そうだな。少佐は本当に強い人だ」
 それはユウキもわかっていた。
「それなら」
「ゼンガーはだ」
 レーツェルは話す。
「赤ん坊の笑顔を大切さを考えているのだろう」
「赤ん坊のですか」
「その笑顔をなんですか」
「そうだ。この世で最も弱き者」
 それこそが赤ん坊だというのだ。
「それを守る為に我々の戦いはだ」
「あるんですね」
「守る為に」
「そう考えているのだろう」
 こう話すレーツェルだった。
「今そのことをな」
「そうなのね」
「それで少佐は今は」
 それを聞いてだ。カーラとレオナも言った。
「少佐はそこまで考えて」
「ルウを見ているのね」
「少佐らしいね」
「そうね」
 リョウトとリオはそのゼンガーを見て話す。
「それじゃあ僕達も」
「そうした風に考えていかないといけないわね」
「そうね」
 クスハは彼等のその言葉に頷いて言う。
「その通りよね」
「クスハ」
 レーツェルは今度はクスハに声をかけた。
「君は子供が好きなのかい?」
「はい」
 こくりと頷いてからだ。クスハは話した。
「小さい頃はです」
「その頃からか」
「保母さんになりたいと思っていました」
 少し照れながら話すクスハだった。
「そう思っていた時もありました」
「そうだったのだな」
「実は」
「わかった。それでブリット」
 レーツェルは今度はブリットに話を振った。
「君はどうなのだろうか」
「俺ですか」
「そうだ、君はどうなのだ?」
「まあそれは」
 戸惑いながらだ。ブリットは応える。
「まだそういうことは」
「そういうことは?」
「考えていませんから」
「あれっ、ブリット君」
 クスハがそのブリットに声をかける。
「顔が真っ赤だけれど」
「えっ、そうなのか?」
「ええ、どうしたの?」
「その、それは」
「いいものだな」 
 その二人を見てだ。レーツェルは微笑んで言った。
「若さというものは」
「何はともあれだな」
「そうよね」
 ジェスとパットが話す。
「ルウが機嫌がいいのはな」
「いいことよね」
「心が少し晴れるよな」
「そうそう」
 ヘクトールとミーナも話す。
「洒落にならない状況が続いてるけれどな」
「それでもね」
「とりあえずは心が柔らぐ」
「それがいいですう」
 アーウィンとグレースだった。
「今は連続してDSドライブをかけているがな」
「その中でですけれど」
「こうして彼等を混乱させようとしているがだ」
 またレーツェルが話す。
「正気休めだな」
「今この銀河の半分近くにバッフクランがいるんだ」
 カミーユがこのことを話す。
「それじゃあ奴等の勢力圏から逃れるのは難しい」
「バッフクランをかわしても宇宙怪獣がいるわ」
 カーシャが話すのは彼等のことだった。
「だから結局は」
「僕達がこうして陽動になっている間は」
 万丈が話す。
「殴り込み艦隊には宇宙怪獣が来ないにしても」
「中々難しい話だ」
 マイヨが言った。
「それもな」
「イデの力は」
 竜馬が話す。
「カララさんを守った光を見ていると」
「具体性を帯びてきたな」
 隼人はこう結論を出した。
「よりな」
「つまりそれは」
「あれだってのかよ」
 武蔵と弁慶は隼人の言葉を受けて話した。
「イデの最終的な発動」
「アポカリュプシスが近いってのかよ」
「おそらくはな」
 その通りだと話す隼人だった。
「最近ゲッターも妙だしな」
「そうだな」
 ゴウも隼人のその言葉に頷いた。
「最近特にそうだしな、真ドラゴンもな」
「ゲッターはまだコントロールできているが」
「それでも」
「ゲッターだけじゃないしな」
 真吾だった。
「ビムラーもな」
「そうよね。私達の方もね」
「根本は同じだからな」
 レミーとキリーも言う。
「よくわからない力だし」
「妙にイデと似てるしな」
「そういえば」
 マリンも言う。
「バルディオスも。世界は違うけれど」
「似ていることは似ているよな」
「言われてみれば」
「全ては」
 万丈がここで話す。
「この銀河によりよき生命体を創る為の意志だと考えられるね」
「それじゃあどうしてなんだよ」
 デクがその万丈に問うた。
「イデだけがこんな風に俺達を滅ぼそうとするのさ」
「ゲッターもビムラーも」
「ライディーンにしても」
「ガオガイガーにしても」
 他のあらゆるマシンはだった。
「そんなことはないのに」
「それでイデだけが?」
「イデだけが人類を滅ぼそうとする」
「考えてみればな」
「おかしいよな」
「そうだよな」
「ひょっとしてだけれどな」
 豹馬が考えながら放す。
「人間にもいい奴がいて悪い奴がいて」
「それでかいな」
「無限力の中にでもでごわすな」
「ああ、色々な奴がいるんじゃないのか?」
 こう十三と大作にも話す。
「ひょっとしたらだけれどな」
「ちょっと豹馬」
 ちずるが眉を顰めさせて豹馬に言う。
「もっと真面目に考えなさいよ」
「いえ、着眼点は悪くないと思います」
 小介は豹馬のその言葉について話した。
「無限の力、即ちアカシックレコードはです」
「それだよな」
「はい、第一始祖民族の残留思念の集合体」
 小介はこう言う。
「そう考えられていますから」
「じゃあやっぱりか」
「はい、その意志は一つではなく」
 これが小介の考えだった。
「それぞれに別の役割や考えを持っていたならば」
「それでか」
「そうだな」
 カットナルとケルナグールは小介の話から頷いた。
「イデや宇宙怪獣はだな」
「人類に見切りをつけた」
「しかしゲッターやビムラーは違う」
「そういうことなのか」
「アカシックレコードは決めかねている」
 ブンドルも言った。
「この銀河の運命を」
「じゃあやっぱりここは」
 今言ったのはカツだった。
「戦うしかないのかな」
「単純に戦うだけではないわね」
 エマはカツのその言葉に言い加えた。
「おそらく。アカシックレコードは見ているから」
「僕達の戦いを」
「そう。だから簡単にはいかないわ」
「正直に言えばね」
 また万丈が話す。
「どうしたらいいか誰にもわからないだろうね」
「そうですね」
 シュウは万丈のその言葉に頷いた。
「正直私も全くわかりません」
「あんたがわからないとな」
 ムウはシュウのその言葉を聞いて言った。
「誰にもわからないな」
「僕達はそうした力で戦っているけれど」
 それでもだとだ。万丈は話すのだった。
「ゲッター線の意志に従っている訳じゃないからね」
「そうです。つまりはです」
 シュウも話す。
「私達が生きようとする意志です」
「それに対して」
「それでか」
「ゲッターにしても他の力も」
「ビムラーも」
「応えてくれているのか」
「そのことはそうだと考えています」
 シュウはそうだというのだ。
「断定はできていませんが」
「生きようとする意志か」
「それなら結局は」
 カミーユとファがそれを聞いて言う。
「今までと変わらないな」
「そうよね。これまでと」
「そうね。けれどそれしかないわね」
 フォウも二人の言葉に応えて話す。
「私達はそれしかできないのだから」
「念動力にしても超能力にしても」
「結局同じか」
「全部同じなんだな」
「そうなのね」
「どうすればいいかわからないまま戦うしかないのね」
 カーシャが眉を曇らせて言う。
「正直嫌な話ね」
「そうでもないな」
 一矢がカーシャのその言葉を否定した。
「俺達には希望がある」
「何だよ、希望って」
 コスモがその一矢に問う。
「気休めの励ましなら勘弁してくれよ」
「それは違う」
 一矢は気休めは否定した。
「けれどそれでもだ」
「それでも?」
「やっぱりな。希望を忘れたら駄目だな」
「若しかしたら」
 万丈は今度は考える顔で話した。
「いや、気付かないならいいか」
「気付かないなら?」
「気付かないならって?」
「このままの方がいいかも知れないな」
 こう言うのだった。
「下手に意識してしまうとバランスを崩してしまうかも知れない」
「何かそれって」
 ナナがその万丈に言う。
「思わせぶりでちょっと」
「まあそう言うな」
 京四郎がそのナナに話す。
「ナナみたいな単細胞がいるとな」
「単細胞って!?」
「万丈としても種明かしができないからな」
「すぐそうやって意地悪言うんだから」
 ナナは頬を膨らまさせてその京四郎に抗議する。
「そんなことばかり言ってるとね」
「おいおい、どう言うつもりだ」
「イデの前にあたしが怒っちゃうからね」
「それは勘弁してくれ」
 京四郎は困った顔になってそれはと返した。
「俺にとっちゃナナの癇癪の方がイデよりもたまらないぜ」
「ははは、そうだな」
 一矢も京四郎のその言葉に応えて言う。
「それは言えているな」
「もう、お兄ちゃんまで」
「これでいいんだ」
 万丈は騒ぎの中で一人呟いた。
「僕達は今までと同じ様に愛する者達を守る為に戦えばいいんだ」
 こう呟くのだった。
「それでも銀河が終焉を迎えるならその時はその時だ」
 こう話している間にだった。
「そろそろだな」
「そうね。DSドライブも終わりだし」
「それなら奴等もな」
「来るな」
「状況次第だけれどね」
 シェリルがふと言った。
「若しかしたら」
「若しかしたら?」
「若しかしたらって?」
「いえ、こっちの話よ」
 皆には今は答えないシェリルだった。
「気にしないで」
「そうですか。それじゃあ」
「今は」
「ちょっとルウをあやさせて」
 ここでこうも言うシェリルだった。
「少しね」
「?何かシェリルさんおかしい?」
「どうかしたんですか?」
「あやすにしても妙に考えてません?」
「何かあるんですか?」
 皆いぶかしむばかりだった。しかしだ。
 シェリルはだ。こう言うだけだった。
「ひょっとしたらね」
「ひょっとしたら?」
「っていうと?」
「ルウは皆を助けてくれるわ」
 こんなことを言うのだった。
「本当に若しかしたらだけれど」
「シェリルさん、まさか」
 万丈はそのシェリルを怪訝な顔で見て言った。
「けれどそれは」
「わかってるわ。けれどね」
 それでもだという口調だった。
「やってみたいのよ」
「貴女は・・・・・・」
 万丈はシェリルが何をしようとしているのか察した。しかし彼女を止めることはできなかった。それがどういったことかはわかっているつもりだったからだ。
 それでルウを抱いて何処かに行く彼女を見送るだけだった。そしてだった。
 予想通りだ。警報が鳴った。
「やっぱり来たか」
「バッフクラン軍、また」
「来るんだな」
「それなら!」
「迎撃用意だ!」 
 こうしてだった。彼等は出撃した。その前にはだ。
 バッフクラン軍の大軍がいた。その彼等が言っていた。
「攻撃開始だ」
「作戦通りに行くぞ」
 こう話していた。
「あの者達を追い込め」
「ロゴ=ダウの者達をだ」
「やっぱり出て来やがったな」
 モンシアが彼等を見て忌々しげに言った。
「予想通りでも全然嬉しかねえぜ」
「全くだな。けれどな」
「あの程度の数ならです」
 ヘイトとアデルも話す。
「どうとでもなるな」
「戦えますね」
「しかしだ」
 ここでバニングが言った。
「時間をかけてしまうとだ」
「敵の援軍ですよね」
 キースがその話をした。
「それこそいつも通り」
「そうだよな」
 コウもそのことについて言う。
「絶対に出て来るな」
「それならだ」
 アムロがここで言った。
「この戦いは速く終わらせる」
「そうですね、そうするべきですね」
「今は」
「そうしましょう」
 周りも彼のその言葉に頷く。こうしてだった。
 彼等も戦いに向かう。あくまで速く終わらせるつもりだった。
 その中でだ。コスモが呟いた。
「これしかないんだな」
「そうだ、今はだ」
 ギジェもここで言う。
「イデの思惑通りであろうとも」
「戦うしかないんだな」
「全ては生き残る為だ」
 ギジェはまた言った。
「私も。ここまで来ればだ」
「ギジェも変わったわね」  
 カーシャがここで話した。
「私達と一緒にこうして」
「それで思うのだ」
「思うって?」
「カララもそうだが」
 彼女を話に出してだった。
「きっと私達はわかり合えるのだ」
「地球とバッフクラン」
「二つの文明が」
「そうだ。わかり合える」
 ギジェはまた言った。
「私はそう思えてきた」
「何を今更って感じだな」
 ギジェにだ。トッドが言ってきた。
「俺達なんかこっちの世界とバイストンウェルを行き来してたからな」
「そうだな」
 バーンもトッドのその言葉に頷いた。
「私も。色々あったがな」
「こっちの世界をわかってきたな」
「こちらの世界の者達もだ」
 彼等もだというのだ。
「わかってきた」
「つまりはだ」
 ミリアも話す。メルトランディの彼女も。
「我々は同じなのだ」
「そうね。確かにね」
 同じメルトランディのミスティである。
「同じ人間なのね」
「おそらくはだ」
 ここでギジェが話した。
「我々の祖先は他の銀河に出た」
「俺達の祖先」
「それなのね」
「そう思う」
 これがギジェの説だった。
「だからこそこうして」
「そうだよな。きっとな」
「わかり合える筈なんだ」
「バッフクランとも」
「つまりはだ」
 ロジャーも話す。
「そのわかり合える平和はだ」
「掴み取るなのね」
「そうなる」
 こうドロシーにも話す。
「平和も友好も勝ち取るものなのだからな」
「よし、そういうことだよ!」
「それならな!」
「行くぜ!」
 こうしてだった。ロンド=ベルから攻撃を仕掛けるのだった。
 そうしてだ。敵を次々と撃破していく。戦い方は。
 正面から切り込み総攻撃を浴びせる。その中でだ。
 ふとだ。ラクスが言った。
「妙ですね」
「確かに」
 バルトフェルドが応える。
「ここまで派手に攻撃を浴びせていても」
「ではやはり」
「まあそうでしょうね」
 わかっているという口調のバルトフェルドだった。
「それがいつもですから」
「えっ、じゃあどうするべきかな」
 ユウナは急に弱気を見せた。
「やっぱりレーダーに注意をしてかな」
「あの、ユウナ様」
「それは当然ですが」
「う、うん。そうだね」
 一応トダカとキサカの言葉に頷きはした。
「ただね。あの巨大な戦艦が出てきそうでね」
「それは想定の範囲内では?」
「心配されることではないと思いますが」
「ううん、何故か急に弱気になったな」
 元々胆力のない彼だが急にそうなってしまったのだ。
「まあ来たら来たらで仕方ないんだけれどね」
「落ち着かれることですね」
 少なくともアズラエルは平然としていた。
「最早何が来ても驚かれないということで」
「腹を括るしかないですね」
「はい、その通りです」
「ならクサナギは正面に」
 ユウナは気を取り直して指示を出した。
「主砲一斉発射」
「了解です」
「それでは」
 トダカとキサカが応えてだった。そのうえで。
 クサナギの主砲がバッフクランの大軍を撃ち炎に変えていく。彼等も戦っていた。
 そうして戦っているとだった。レーダーに。
「来ました!」
「レーダーに反応です!」
 すぐにだ。報告があがった。
「敵、左右から!」
「それぞれ来ました!」
「おいおい、幾ら何でも左右からかよ!」
 ジュドーがそれを聞いて思わず声をあげた。するとだ。
 早速だ。そのバッフクランの大軍が出て来たのだった。
 その大軍を見てだ。今度はシーブックが言った。
「このまま数が来れば」
「まずいぜ」
 ビルギットがシーブックに話す。
「数で押されちまうからな」
「ハタリ」
 ベスはハタリに対して問うた。
「この宙域を脱出するルートを計算してくれるか」
「今度もだな」
「そうだ。やはりここは」
「無駄な戦いを避けるべきだな」
「それが一番いい」
 だからだというのだった。それでだった。
 ルートを判明させてだ。ハタリは皆に話した。
「今各機にデータを転送する」
「了解です」
「わかりました」
 そしてだ。ポイントを見てだった。彼等はそこに向かうのだった。
 その中でだ。ルリが言う。
「これが宇宙怪獣ならばです」
「戦うべきですね」
「彼等は別です」
 こうユリカにも話すのだ。
「出来る限り戦うべきですが」
「けれどバッフクランは」
「はい、彼等とは無駄な戦いを避けるべきです」
 彼女もこう考えているのだった。
「ですから」
「その通りですね。では今のうちに」
「それにしてもバッフクランも」
 ルリは撤退する中でぽつりと言った。
「強情ですね」
「っていうかね」
 ここで話したのはハルカだった。
「上の人達が石頭過ぎるわよ」
「そうですね。何かあれは」
 メグミも話す。
「極端な例えですけれど三輪長官みたいな」
「あんな感じよね」
「あそこまで滅茶苦茶なんですか?」
 ハリーが二人に尋ねた。
「バッフクランの上の人達って」
「カララのお父さんやお姉さんもね」
「かなりのものではないですか?」
「そうだよな。あれは酷いぜ」 
 サブロウタもそのことを話す。
「ちっとは話を聞いてもらいたいもんだね」
「全くだ。無益な戦いばかり続ける」
 ダイゴウジから見てもだった。
「それで何になるのだ」
「ったくよ、分からず屋ってのは何処にでもいるな」
「そうしたところも同じですよね」
「皆同じ」
 リョーコにヒカル、イズミも言う。
「人間なんだな、結局は」
「はい、いい意味でも悪い意味でも」
「皆皆生きているんだ」
 イズミは今回は駄洒落ではなかった。
「友達なんだ」
「・・・・・・あの、イズミさん」
 ジュンがそのイズミに突っ込みを入れる。
「そこは歌ってもらった方が」
「とにかく。ここは撤退した方がいい」
 アキトは殿軍を務めていた。そうしながらの言葉だった。
「さもないと結局はイデに飲み込まれてしまう」
「イデ」
 ルリは今度はそのイデについて話した。
「本当に不思議ですね。私にも全くわかりません」
「その考えがだな」
「はい」
 アポロに対しても答える。
「真意が何一つとしてです」
「私達を滅ぼそうとしている」
 シリウスが話す。
「その割には試している感じもする」
「そこがわからないのです」
 ルリはこうシリウスにも話した。
「滅ぼそうとしているようでそうしていますから」
「矛盾しているな」
 今言ったのはショウだった。
「何もかもが」
「やはり。意志を統一しかねているのかも知れません」
 ルリはまた言った。
「イデもまた」
「それではですね」
 ユリカはここでこう言った。
「イデにいい考えになってもらうしかないですね」
「そうなるのですが」
 そんな話をしながらだった。彼等は撤退していく。そしてだ。
 そのポイントに到達した。すぐにディアッカが言った。
「じゃあこれで終わりだな」
「だといいのだがな」
 イザークがそのディアッカに言う。
「何時また出て来るかな」
「じゃあ今のうちにか」
「迅速に離脱するべきだ」
 こんな話をするのだった。こうしてだった。
 彼等は離脱に入る。しかし。
 その離脱を見てだ。バッフクランの将兵は話すのだった。
「これでいいな」
「うむ、予定通りだ」
「奴等は我等の罠にかかった」
「後はだ」
 どうするかというのだ。
「DSアウトした先だな」
「そこが奴等の墓になる」
「それで終わりだ」
 こんな話をしているのだった。
「そのまま全滅だ」
「今度こそな」
 こうしてだ。彼等は追わなかった。そのドライブを見るだけだった。
 そしてだ。ドライブから出たロンド=ベルは。
 その下にだ。恐るべきものを見ていた。
「なっ、何!?」6
「隕石だと!?」
「大きいぞ!」
「しかもかなりの速さだ!」
 隕石がだ。彼等に迫ってきていたのだ。
「これは」
「これは?」
「カララさん、どうしたんですか?」
「ラビットスター現象です」
 それだとだ。カララは仲間達に話した。
「彗星の進路に出てしまったようです」
「では我々は」
 ダコスタがそれを聞いて言う。
「彼等にしてやられましたか」
「まさかこれは」
「ええ、そうよ」
 タリアがアーサーに話す。
「彼等はわざと私達をここに誘い込んだのよ」
「包囲網に隙を作ってですね」
「考えたものね」
 タリアは嘆息しながら言った。
「そしてここにね」
「まさか、彗星に加えて」
「その通りよ。来るわ」
「レーダーに反応です!」
 すぐにメイリンが叫んだ。
「四方からです!」
「そうか、来たか」
「ええ、本当にお約束ね」
 ヒューゴとアクアもそれぞれ言う。
「バッフクラン軍」
「本当にお約束ね」
「だがだ」
 アルベロが目を鋭くさせる。
「まさに絶対絶命だぞ」
「あんなのにぶつかったらな」
「全滅は確実ね」
 ラウルとフィオナが歯噛みしている。
「しかもここでバッフクラン軍かよ」
「連中まさか自分達も」
「あの旗艦は」
 ここでギジェが言う。
「間違いない、あれは」
「姉さん!」
 カララもその旗艦を見て言った。
「ではここで」
「巨神、そしてカララ!」
 そのハルルが言うのだった。
「ここで全てを終わらせる!」
「ハルル姉さん・・・・・・」
「私の声が聞こえるか!」
 姉が妹に対して問う。
「全ての元凶は御前なのだ!」
「姉さん、貴女は気付いておられる筈です!」
 カララも姉に言い返す。
「人々が憎しみ合わなければです」
「巨神がか」
「そうです。イデは目覚めなかったのです!」
 このことをだ。姉に訴えるのだった。
「決して!」
「その元はだ!」
 だがだ。ハルルは妹の話をあくまで聞こうとしない。
 そのうえでだ。今度はこう言うのだった。
「その元は御前が生んだのだ!」
「おわかりになりませんか!」
「まだ言うのか!」
「憎しみは滅びの道です!」
「それはだ!」
 どうするか。ハルルの考えはこうしたものだった。
「ロゴ=ダウの異星人を倒せば済むことだ!」
「あくまでそう仰るのですね」
 姉の頑なな心を見てだ。妹もだ。
 遂に覚悟を決めてだ。こう告げるのだった。
「それならばです」
「どうするつもりだ」
「私は姉さんを殺し」
 その覚悟をだ。ハルル自身に告げるのだった。
「そして赤ちゃんを産みます!」
「カララさん・・・・・・」
「貴女そこまで」
「覚悟したのかよ」
「何て強い覚悟なんだ」
 それはだ。強いだけではなかった。
「そして悲しい覚悟なんだ」
「しかしそれでもなんですね」
「あえてその覚悟を選ばれるんですね」
「そうだと」
「はい」
 仲間達にもだ。カララは毅然として答えた。そしてだった。
 再びだハルルに対して言うのだった。
「ロゴ=ダウの異星人ベス=ジョーダンの」
「その男の課」
「はい、その子を産みます!」
「やってみるがいい!」
 ハルルはまだ退かない。
「裏切り者の女とそれと通じる異星人なぞにやられるか!」
「はい、司令!」
「ならば我等もです!」
「ここで倒しましょう!」
「異星人達を!」
 バッフクラン軍の提督達も続く。戦いは避けられなかった。
 その中でだ。サンドマンはだ。
 レイヴンとメイド達にだ。こう問うのだった。
「彗星の衝突までどれ位だ」
「七分です」
「それまでです」
 メイド達がすぐに答える。
「七分以内に何とかしないと」
「私達は全員」
「わかった。それではだ」
 そこまで聞いてだ。サンドマンは言った。
「諸君、総員出撃だ!」
「了解!」
「七分だな!」
「そう、七分だ」
 サンドマンの言葉もだ。鋭く強いものになっている。
「七分以内に敵の包囲網を壊滅させだ」
「この宙域を離脱する」
「そうするんですね」
「そしてここで」
「カララさんのお姉さんも」
「業だ」
 レイヴンが言った。
「彼女は業に捉われてしまっている」
「ああなっては終わりだ」
 ハマーンも鋭い目で話す。
「あの女はその中に飲み込まれてします」
「そうなるしかないのか」
「これが憎しみの環ならば」
 カララはソロシップの艦橋に出てハルルの旗艦を見据えて呟く。
「ここでそれを断ち切ります!」
「来い、ロゴ=ダウの異星人達!」
 ハルルの目が憎しみで燃えている。
「そしてカララ!」
「姉さんのその憎しみを!」
「私の誇りに懸けて!」
「新しい命の為に!」
「貴様等をここで仕留める!」
「憎しみの環を断ち切ります!」
 二人はそれぞれ言い合いだった。戦いに入るのだった。
 ロンド=ベルは全軍が彗星が迫る中で出撃しバッフクラン軍が四方から迫る。ここでもまた、だった。運命の戦いがはじまるのだった。


第百二十四話   完


                                         2011・5・29
 

 

第百二十五話 シェリルの賭け

           第百二十五話 シェリルの賭け
 両軍の戦いがはじまる中でだ。
 シェリルはルウを抱いてだ。何処かに向かうのだった。
「いい子にして頂戴」
「だあ?」
 ルウはわからない。何もだ。
「今こそ貴方の力を示す時だかた」
「だあ?」 
 その何もわからないルウを抱いてだ。彼女は何かをしようとしていた。
 両軍はだ。遂に激突した。グラヴィオンの剣が唸る。 
 それで敵艦を一隻真っ二つにする。その爆発を見ながらエイジが言う。
「あと何分だ!?」
「六分だよ」
 斗牙が答える。
「それだけだよ」
「ちっ、やばいか?」
 さしものエイジもだ。今はだ。
 危ういものを感じていた。それで言うのだった。
「このままだとよ」
「何言ってんのよ、諦めたらそれで終わりよ」
「その通りです」 
 ルナとエイナがそのエイジに言ってきた。
「あと六分もあるじゃない」
「だから頑張りましょう」
「そう、あと六分」
「それだけあるのよ」
 リィルとミズキもこうエイジに話す。
「それだけあれば」
「どうとでもなるわ」
「そうか。そうだよな」
 言われてだ。エイジも頷いた。
「こんな状況。いつもだからな」
「その通りだ。諦めるな!」
 レイヴンもグラヴィゴラスからエイジに言う。
「最後の最後までだ!」
「ああ、わかったぜ!」
 エイジもだ。その言葉を受けた。そしてそのうえでだ。
 斗牙に対してだ。こう叫んだ。
「斗牙!どんどん叩き斬ってくれ!」
「うん、来る敵を次々にだね」
「敵は向こうから幾らでも来るからな!」
 まさにだ。そうした戦いになっていた。
「それならな!」
「何の遠慮もなくだね!」
「休んだら負けだ!戦いの後の牛乳はそれからだ!」
 こう叫んでだった。彼等もだ。 
 目の前に来る敵を次々に斬っていく。戦いは熾烈を極めている。
 激戦の中でだ。遂にバッフクランの数を二割程度まで減らした。しかしだった。
 カガリがだ。アサギ達に問うた。
「あと何分だ!」
「一分です!」
「あとそれだけです」
「残りは」
「辛いか?」
 流石にだ。カガリも言った。
「残り一分で敵を全滅させてか」
「そうですね。ぎりぎりどうなるか」
「そんな状況ですよね」
「今は」
 アサギにマユラ、ジュリも言う。
「この状況はちょっと」
「これは彗星を破壊するか」
「それしかないんじゃ」
「御主人様、どうします?」
 チカがシュウに尋ねる。
「ネオ=グランゾンの縮退砲ならいけるんじゃないですか?」
「確かに。いけますね」
「じゃあここはそれで一気にですね」
「そうしましょうか。それでは」
 シュウがだ。ネオ=グランゾンの縮退砲を出そうとした。だがだった。
 ソロシップの甲板でだ。異変が起こっていた。
「あれは」
「シェリルさん!?」
「どうして!?」
「何で戦闘中に甲板に」
 それを見て誰もが頷く。そしてだ。
 デクがだ。驚いて言うのだった。
「シェリルさんルウを連れてるよ」
「どうしてなんだ!?」
 これはだ、コスモにもわからなかった。
「どうしてシェリルさんがルウを」
「まさか」
 ゴウがそのシェリルを見て言う。
「あの人はルウを使って」
「イデよ、応えて欲しい!」
 シェリルはルウを手にして言う。
「今ここには純粋に守りしか思わぬ子が死を恐れている!」
「イデに呼び掛けている?」
「ああ、そうだな」
「あれは」
 皆それがわかった。
「まさか。本当に」
「イデに呼び掛けて」
「今のこの状況をどうにかしようとしているんだ」
「駄目だ!」
 ここで叫んだのはギジェだった。
「シェリルよ、それはしてはならない!」
「ギジェ、どうしたんだ!」
「今のシェリルは暴走している!」
 ギジェはコスモに対しても言う。
「このままではかえってだ!」
「イデよ!」
 そのシェリルがまたイデに呼び掛ける。
「さあ、今こそ!」
「いかん、ゲージが!」
 ギジェは今度はイデオンのゲージを見て叫んだ。
「上がっていく!」
「まさか」
「シェリルの呼び掛けに応えてイデが」
「それでなのか?」
「まさか」
「間違いなくそうだ」
 ギジェもそれはその通りだと言う。しかしだった。
 彼はだ。危惧する顔で言うのだった。
「このやり方はだ」
「そうだ、許されることじゃない」
 コスモもそのことを言う。
「赤ん坊を使うこんなやり方は!」
「くっ、目障りだ!」
 そしてハルルは。
 そのシェリルとムウを見てだ。忌々しげに命じた。
「あの戦艦に砲撃を集中させよ!」
「ロゴ=ダウの船に」
「あれにですね」
「そうだ。沈められないまでも」
 それでもだというのだ。
「あの甲板にいる奴等をだ」
「子供もいますが」
「赤子も」
「構わん!」
 感情のままだった。今のハルルは。
「所詮異星人だ。撃て!」
「で、ですが」
「それでも」
 流石に赤子を面と向かってはだった。彼等もだ。
 戸惑いを見せる。しかしその彼等にだ。
 ハルルはだ。厳しい声で告げた。
「撃たぬ者は私が撃つ!」
「司令がですか!」
「我々を!」
「命令に従えぬ者はいらぬ!」
 だからだと。理由をつけて言うのだった。
「だからだ。撃て!」
「は、はい!」
「わかりました!」
 実際に砲を向けられては従うしかなかった。こうしてだ。
 ソロシップに攻撃が集中される。辺りはしない。
 だがその攻撃を受けてだ。シェリルとルウが。
「ああっ!」
「あああん!」
「おい、危ないぞ!」
「シェリルさんとルウが!」
「このままじゃ!」
「コスモ!」
 ギジェがまたコスモに叫ぶ。
「ここはだ!」
「二人をだな!」
「そうだ、助けるべきだ!」
 こうコスモに言うのだった。
「さもなければ」
「わかってるさ、それならな!」
 コスモはイデオンを動かした。そうしてだった。
 そのイデオンでだ。二人を何とか受け止めた。攻撃を受けつつあった二人をだ。
「ギジェ!?」
「危ないところだったな」
「私は」
「馬鹿なことをするな」
 こうシェリルに言うギジェだった。
「このまま戦いを続けていても駄目だが」
「ルウを使うことも」
「それは駄目だ。イデも必ずだ」
「必ず?」
「善き発言に辿り着く筈だ」
 こう言うのだった。
「だからだ。軽挙は慎むのだ」
「ええ、それは」
「コスモ、これでいい」
 二人を助け。ソロシップの中に戻るのを見て言った。
「それではだ」
「いい加減にしろ!」
 一矢がハルルに叫ぶ。
「何故カララさんを見ないんだ!」
「あの憎むべき妹をか」
「あの人は星を越えて愛を育んだ!」
 このことをだ。ハルルに叫ぶのだった。
「それなのに姉のあんたは憎しみを広げるのか1」
「だからこそだ!」
「だからこそ!?」
「そうだ、カララを認めてしまってはだ」
 どうかというのだ。
「ダラムに申し訳が立たん!」
「あんた、まさか」
「話は聞いたよ」
 今度は万丈がハララに告げる。
「貴女の言葉はね」
「ではどうするというのだ」
「それでも僕は貴女を認めない」
 これが万丈のハルルへの言葉だった。
「貴女に大義はない」
「それは何故だというのだ」
「私的な憎しみで戦いを拡大させている」
 だからだ。大義はないというのだ。
「それではイデの思う壺だ」
「巨神を使う異星人が何を言う!」
 ハルルは万丈にも感情を露わにさせて言う。
「御前達が巨神を使わなければ!」
「彼は死ななかったんだね」
「そうだ、ダラムも死なずに済んだのだ!」
「もう戦いは無意味な筈だ!」
「そうよ、この分からず屋!」
 コスモとカーシャもだった。
「それで何故戦う!」
「何処までカララさんが憎いのよ!」
「私のダラムを殺して何を言うか!」
 あくまでだ。己の憎しみを露わにするハルルだった。
「怨みを晴らさねばダラムに済まぬ!」
「憎しみか!それならな!」
「何だというのだ!」
「俺も同じだ!」
 これがコスモの叫びだった。心からの。
「父も母も。隣人を殺された!」
「黙れ!異星人が!」
「それならいいのか!星が違うなら!」
「そうだ、何を言う!」
「誰がそうさせた!」
「最早。無駄だ」
 ギジェがそんなハルルを見てだ。無念の声で呟いた。
 そしてコスモにだ。こう告げた。
「コスモ、イデオンガンだ」
「あれが使えるだな」
「そうだ。それでバッフクラン軍を。そして」
「カララの姉さんも」
「最早彼女は憎しみから覚めることがない」
 それがわかっての言葉だった。
「だからだ。そうしてくれ」
「わかった。それじゃあな」
 コスモはギジェに言われるままイデオンガンを構えた。その前にはバッフクラン軍の残り全軍がいた。無論ハルルの旗艦も存在している。
 そこにだ。イデオンガンを放ったのだった。攻撃は一瞬で。全軍を破壊してしまった。
「姉さん、これで」
「ダラム・・・・・・」
 ハルルは沈みゆく旗艦の中で呟いていた。既に周囲は炎で燃え盛っている。
「私は貴女の仇を討つことができなかった」
「最後までダラムのことを」
「けれど」
 それでもだというのだ。
「これで貴方のところへ行ける」
 満足した笑みを浮かべてだ。そのうえで炎の中に消えた。
 爆発が起こりだ。そうして旗艦も沈んだのだった。
「姉さん、貴女は最後まで」
「カララ、今葉」
「ええ、姉さんは最後まで善き力を信じられなかった」
 こうベスに答えるカララだった。
「それがこの結果なのよ」
「一歩間違えれば俺達もか」
 ベスもカララの話を聞いて呟いた。
「同じなんだな」
「そうね。本当に」
 そしてだ。カララは。
 そのシェリルの死んだ場所を見てだ。涙を一筋流して言った。
「さようなら、姉さん」
「敵部隊の全滅を確認!」
「残っている機体及び艦艇はありません」
 サイとミリアリアが報告する。
「では今よりですね」
「私達は」
「ええ、まずは各機帰還して」
 マリューもすぐに指示を出す。
「すぐにこの宙域を脱出するわ」
「!?まさか」
「どうしたんだよ、カズイ」
 トールが不意に声を出したカズイに問う。
「何かあったのか?」
「彗星が速い」
 カズイの顔が見る見るうちに曇っていく。
「予想以上だ!」
「えっ、それじゃあ」
「俺達逃げられないのか!」
「まさか、折角敵を倒したのに!」
「こんなところで死ぬなんて!」
「それではです」
 シュウがだ。出ようとする。
「やはり私のネオ=グランゾンで」
「はい、やっちゃいましょう」
 チカもシュウに対して言う。
「それじゃあ御願いしますね」
「彗星のコアを破壊します」
 具体的にはどうするか。シュウは言った。
「思惑通りにはいかせません」
(無駄な真似を)
 そのシュウにだ。誰かが言った。
(するのか)
「遂に出て来られましたね」
「ああ、あいつですね」
 チカ、シュウと無意識下で同じである彼女だけが。シュウと同じくわかることだった。
「出て来たんですね」
「はい、今しがた」
「じゃあここは余計に」
「やらせてもらいます」
「各機集結だ!」
「俺達もな!」
「コスモ!」
 またギジェが彼に声をかける。
「ここはだ」
「イデオンもだよな」
「イデオンガンだ」
 またそれを使うというのだ。
「もう一度使おう」
「ああ、わかったぜ」
 コスモもギジェのその言葉に頷く。
「それじゃあ今からな」
「あれならいける筈だ」
 ギジェはイデオン、そしてイデオンガンに希望を見出していた。
「必ずな」
「ギジェ、ゲージはどうなの?」
「充分だ」
 ギジェはデクにも答える。
「何時でも撃てる」
「そう、それじゃあ」
「しかしイデオンだけでは駄目だ」
 ここでギジェはこう言うのだった。
「皆の力もだ」
「そうだ、その通りだ」
 ギジェのその言葉にベスが頷いた。
「今はだ。皆の力を合わせてだ」
「ならベス、今葉」
「ああ、そうだ」
 ベスはハタリにも答える。
「全員でだ」
「わかった、それならだ」
「総員攻撃準備!」
 ベスが指示を下した。
「皆の力を合わせてだ!」
「わかったぜ。それならな!」
「想いと力を一つにして!」
「今こそ!」
「コスモ、このパワーは!」
 ギジェがゲージを見てまた言う。
「これまでにない。しかも」
「ああ、これまでとは違う!」
「イデが!遂にか!」
「うおおおおおおおおおおおっ!」
 コスモはイドエンガンを放った。光が彼等を包んだのだった。
 戦いの成り行きはドバにも伝わった。彼はバイラル=ジンの艦橋において話す。
「そうか、ハルルもか」
「巨神の攻撃を受けてだ」
 ギンドロがこうドバに話していた。
「見事な最後だったとのことだ」
「散ったか」
「惜しいことをしたな」
 こう言うギンドロだった。
「あの娘はいずれはだ」
「軍人としてか」
「それ以外にもだ」
 つまりだ。政治家としてもだというのだ。
「貴殿の片腕として働いてもらう筈だっただろうに」
「そうだ」
 それはだ。その通りだと話すドバだった。
「そのつもりだった」
「やはりそうか」
「だがともかく終わった」
 戦いがだ。終わったというのだ。
「イデの巨神もあの船もだな」
「彗星の爆発の中に消えたか」
「後はだ」
 そしてだというのだ。
「最早ここに用はない」
「まずはあの化け物達を振り切るか」
「宇宙怪獣達と戦うつもりはない」
 これがドバの考えだった。
「この銀河のことはな」
「それでは戻るか」
「そうするか」
 こう言い合いだ。帰還について話す中でだ。
 将校の一人が血相を変えて艦橋に来てだ。二人に話すのだった。
「あの」
「?何だ?」
「どうしたのだ?」
「今報告があがったのですが」
 こうだ。将校は二人に話すのだった。
「バッフ星にも隕石雨が降り注ぎです」
「何っ、まさか」
「我等の銀河でもか」
「はい、それによってです」
 どうなったのか。将校は話した。
「我等の本星はです」
「消滅したというのか」
「まさか」
「これを御覧下さい」
 将校は蒼白になった顔でモニターをつけた。するとそこには。
 砕け散る惑星があった。その惑星こそは。
「これは」
「まさか」
「はい、我等の母星を監視するモニターからの映像です」
 それで撮られた映像だというのだ。
「そこから送られてきました」
「馬鹿な、これでは」
「我々は」
「全滅とのことです」
 将校はまた報告した。
「そして多くの星もです」
「では大帝は」
「大帝ズオウは」
「お亡くなりになられました」
 将校の無念の報告が続く。
「隕石雨の直撃を受けられ」
「それでだというのか」
「あの男も死んだのか」
「はい、そうです」
 それを聞いてだ。二人はだ。将校を下がらせそのうえで話すのだった。
「我々に帰る場所はなくなってしまった」
「完全にな」
「ではどうするかだ」
「そのことだが」
「こうなってはだ」
 ドバが言った。
「ここで生きるしかないな」
「この銀河でか」
「そうだ、まずはバケモノ達を倒す」
 宇宙怪獣達をだというのだ。
「そして生きるしかないのだ」
「そうか。それしかないのか」
「まさかと思うが」
 ここでドバはこうも言った。
「我々はイデの手の内で踊らされているのも知れぬな」
「イデのか」
「あまりにも出来過ぎている」
 彼等の母星が破壊されたこと、そのこともだというのだ。
「それではだ」
「そうだというのか。それではだ」
「全軍を動かす」
 ドバはこの状況でも迅速に決断を下した。
「そうするぞ」
「わかった。それではな」
「大変です!」
 また将校が来た。先程とは別の将校だ。
「総司令、大変なことが起こりました!」
「今度は何だ!?」
 ギンドロが思わずその将校に問うた。
「今度は何が起きた!」
「巨神とロゴ=ダウの異星人達がです!」
 ロンド=ベルのことだ。
「全員生き残っていました!」
「何っ、馬鹿な!」
「ではあの彗星をか!」
「はい、完全に破壊しました!」
 そうしたというのだ。
「そしてそのうえで」
「生き残ったというのか」
「何ということだ」
「そしてです」
 報告がさらに続く。
「宇宙怪獣の大群もです!」
「動いたか」
「またしても」
「はい、そうです」
「わかった」
 ドバはまずは彼の報告を受けた。そうして下がらせてからだ。
 ギンドロにだ。こう話すのだった。
「終焉は近いな」
「この宇宙のか」
「そうだ。イデはケリをつけたがっているのだろう」
 イデについての言葉だった。
「知的生命体を全て死に至らしめてだ」
「そうしてか」
「イデは次の時代を生もうとしている」
 イデについて考えて。そうして話すのだった。
「この銀河を中心に全ての宇宙でだ」
「馬鹿な、そこまでか」
「そうだ。考えてみるのだ」
 ギンドロにも思考を促す。
「イデの采配でなければこうはならん」
「ではここで戦うというのか」
「そうするしかあるまい」
「待て、我々の銀河にはまだ我々の同胞達がいる筈だ」
 ギンドロはそのことを足掛かりととしてドバに話した。
「それではだ」
「我々の銀河に戻るというのか」
「そうだ、異星人達もバケモノ達もいる」
「彼等との戦いを避けか」
「戻るべきではないか」
 こうドバに主張するのだ。
「ここは何としてもだ」
「遅いのだ」
「遅いだと?」
「わかった様な気がする」
 ドバの口調が変わった。
「知的生物がなければだ」
「どうだというのだ」
「イデは存在し得ないものだ」
 そのイデがだというのだ。
「しかし何故その知的生命体を殺し合わせる」
「それは」
「それがわかった様な気がするのだ」
 こうギンドロに話すのだった。
「知的生物にはあるものが不足している」
「あるものが?」
「己の業を越えられないのだ」
 それが足りないものだというのだ。
「乗り越えられないのだ」
「それでなのか」
「欲、憎しみ、知恵へのこだわり」
 ドバはその業を挙げていく。
「そんなものを引き摺った生命体が元ではか」
「イデはだというのか」
「そうだ。善き力を発動しないのだ」
「わからん。どういうことだ」
「自ら善き知的生物を創るしかないのだ」
「ではだ!」
 ギンドロがそのドバに反論する。
「貴殿はその為にも戦うというのか!」
「どのみち引けん」
「それは無駄な戦いだ!」
 こう言ってだ。ドバを糾弾する。
「そんな戦いをすればだ!」
「滅びてしまうというのだな」
「そうだ、自ら滅んでどうするのだ!」
 ギンドロの糾弾が続く。
「貴殿は己のその考えだけで全軍を死地に追いやるつもりか!」
「言うな!」
「うっ!」
 ドバは銃を抜きそれでギンドロを撃った。ギンドロは胸を貫かれ。
 そのうえで倒れ息絶えた。そのギンドロを見下ろして彼はまた言った。
「わかるか、友よ」
 ギンドロをこう呼んでの言葉だった。
「私はそれ程傲慢ではない」
 ギンドロの言葉をこう言って否定する。
「だからだ」
 そてによってだというのだ。
「私の恨みと怒りと悲しみ」
 この三つの感情だった。
「それをロゴ=ダウの異星人にぶつけさせてもらう」
 彼の本音だった。偽らざる。
「ハルルが男であれば」
 そうであれば。
「こう思った悔しみ」
 そして次は。
「カララがロゴ=ダウの男に寝取られた悔しみ」
 この二つであった。
「この父親の悔しみを誰がわかってくれるか」
 こう呟いてだった。彼は。
 すぐにだ。艦橋に部下達を呼び伝えた。
「よいか」
「はい」
「どうされますか」
「全軍を集結させる」
 バッフクランのだ。全軍をだというのだ。
「この銀河に展開している全軍をだ」
「そしてですか」
「そのうえで」
「ロゴ=ダウの者達と決戦だ」
 こう言うのだった。
「ガンド=ロワで全ての決着をつける」
「わかりました。それでは」
「今より」
「全てが終わる」
 ドバは強い声で言った。
「全てな。そうだ」
「?総司令、一体」
「今度は」
「ギンドロ氏だ」
 己が撃っただ。彼の亡骸を見て話すのだった。
「自決した」
「自決されたのですか」
「まさか」
「そうだ。本星の壊滅を見てだ」
 こういうことにするのだった。
「同胞の後を追い自決したのだ」
「そうされたのですか」
「本星と同胞に殉されたですか」
「そうだ。見事な最後だった」
 友の名誉を守っての言葉だった。
「丁重に弔ってくれ」
「はっ、それでは」
「その様に」
「さらばだ」
 運び出されるギンドロの亡骸を見てドバは最後に呟いた。そうしてそのうえでだ。彼もまた運命に赴くのだった。この銀河の運命に。


第百二十五話   完


                                    2011・6・1        
 

 

第百二十六話 父として

               第百二十六話 父として
 ギジェはソロシップの格納庫でシェリルに話していた。
「やはりそうなのか」
「間違っているとはわかっていたわ」
 シェリルは目を閉じてギジェに話した。
「それでも」
「イデはだ」
 ギジェはここでシェリルに話した。
「必ず善きものを持っている」
「善き力を」
「そうだ。それはどうして見ることができるか」
 それを話すのだった。
「ああしてではないのだ」
「では私は」
「間違っていた。若しもだ」
 どうなのかというのだ。
「あの時ルウが宇宙に放り出されていればだ」
「若しそうなっていれば」
「私も皆も」 
 ロンド=ベルの面々もだというのだ。
「貴女を絶対に許さなかっただろう」
「そうね、それはね」
「自分の非を認めるのだな」
「何を言われても仕方ないわ」
 やはり目を伏せて話すシェリルだった。
「私はそれだけのことをしたのだから」
「シェリル・・・・・・」
「どんな処罰も甘んじて受けるわ」
「変わったんだな」
 ここで言ったのはコスモだった。
「シェリルさんも」
「えっ・・・・・・」
「プライドの塊みたいだったあんたがな」
 シェリルに微笑んで話すコスモだった。
「こうして皆にな」
「皆に」
「頭を下げるなんてな」
「これはだ」
 ロジャーも言う。
「彼のお陰だな」
「そうね」
 ドロシーはその彼を見ていた。
「ギジェの」
「私もか」
「ええ、そうかも知れないわね」
 シェリル自身もそのことを認めて言った。
「私はギジェに出会って」
「それでか」
「変わったのか」
「生きる喜びを知ったわ」
「それだよ」
 コスモはシェリルのその感情こそがだというのだった。
「そう思うことが大事なんだよ」
「そうなのね」
「ああ。あんた今生きたいよな」
「ええ、生きたいわ」
 その通りだとだ。シェリル自身も言った。
「ギジェと一緒に。もっともっと」
「姉さん・・・・・・」
 リンはこう言う姉を見て呟いた。
「本当に変わったのね」
「そうやって罪を悔いた人間は」
 アムロがここで言った。
「処罰することはできないな」
「俺達はあれだからな」
 闘志也も微笑んでいた。
「頭の固い運命さんとは違うからな」
「だから他人の失敗にも寛容だ」
「そうだからな」
 ジュリイと謙作も微笑んでいる。
「まだシェリルさんの失敗はな」
「取り返しがついたからこそ」
「だからいいと思うわ」
 マリューも微笑んでいる。
「もうね」
「そう言ってくれるのね」
「シェリルさんは生きる運命を理解した」
 万丈はこのことを話した。
「それならだ」
「それならなのね」
「きっとイデの真理に触れることもできるさ」
「期待してます」
 キラが明るく彼女に言った。
「ギジェさんと二人でイデの何たるかを」
「俺達に見せて下さい」
 アスランもだった。
「楽しみにしていますから」
「若しイデの善き力があれば」
「そうだよね。ひょっとしたら」
「若しかして」
 ここでスティングとアウル、ステラが話す。
「アスランの額だってな」
「髪の毛が戻るかもな」
「そうなるかも」
「これは子供の頃からだ」
 アスランは己の額を両手で押さえながら必死に反論する。
「後退なんてしていない。一ミリもな」
「そこで否定するから疑われるんじゃないのか?」
 京四郎がそのアスランに突っ込みを入れる。
「人間来る時は来るぞ」
「そうよね。若い人は十代でね」
 ナナも言う。
「一気に来るから」
「怖い話だな、おい」
 マサキもその話には顔を青くさせる。
「一気にかよ」
「毛生え薬も発明していますが」
 シュウは流石だった。
「使われますか?」
「はい、御願いします」
 速攻で食いつくアスランだった。
「できれば。前から気になっていまして」
「やっぱり禿だよな」
「ああ、来てるよな」
「確実にな」
「蝿の呪いなじゃないのか?」
 ここでも蝿の話だった。
「カメレオンの胃の中にいて髪の毛溶けたんだろうな」
「多分な」
「だから何でまた蝿なんだ」
 アスランにとってもそれは不本意な話だった。
「結局そこに至るんだな」
「じゃあ覆面の参謀はどうだ?」
 ショウが言ってきた。
「俺はそちらの世界では緑のオクラって言われてるけれどな」
「緑のオクラ?」
「ああ、バサラの世界なんだ」
 ショウはこうチャムに話した。
「そちらの世界じゃそうなっているんだ」
「日輪の策謀家よね」
「よくわかったな」
「何となくだけれどね」
「では俺は猿なのか」
 今言ったのはライだ。
「そうなるか。アスランが覆面の参謀なら」
「俺は魔王なのか」
 アレンも言う。
「いいのか悪いのかわからないな」
「俺は主人公だな」
 ブレラが言うと何故かキラも頷く。
「あの世界も面白いものがあるがだ」
「だよな。海賊いたりするしな」
 ヘクトールも参戦した。
「あれはあれで面白い世界だよ」
「何かあちこちの世界が入り乱れてるんだな」
 アスランはあらためてこのことに気付いた。
「本当に」
「そうね。それで私は」
 許されたシェリルはあらためて言った。
「もう。間違えないわ」
「ええ、正しい道を歩んで下さい」
「是非」
「イデの善き力」
 ギジェが呟く。
「それを引き出せるのはやはり」
「それにしてもな」
「そうよね、カララさんもね」
「妊娠してるなんて」
「ベスさんの子供を」
「すいません」
 カララはだ。仲間達に謝罪の言葉を述べた。
「どうしても言えなくて」
「それはどうしてなんだ?」
 ベスがカララに問う。
「今まで教えてくれなかったのは」
「皆さんに嫌われたら」
 カララは暗い顔で述べた。
「そう思って」
「そんなことがあるものか」
 ベスはカララの今の言葉を否定した。
「誰が嫌うものか」
「そう言ってくれるのね」
「何度でも言うさ」
 こうまで言うのだった。
「本当に何度でもな」
「ベス・・・・・・」
「それにだ」
「それに?」
「君はあの時バッフクランの戦艦に入った」
 その時のことも話すのだった。
「ジョリバと共に」
「あの時のことね」
「そして助かった」
 奇跡的にだ。その話だった。
「それもやはりだ」
「私のこのお腹の中にいる」
「そう、俺達の子供のお陰なんだ」
 こう言うベスだった。
「おそらくはな」
「私達が助かったのは」
「そう思う」
「ということは?」
 カーシャはベスの話をここまで聞いて言った。
「イデがカララの赤ちゃんを中心に力を発動させてるってことよね」
「ただ守りだけの為なのか」
 コスモは考えながら話す。
「それともバッフクランを倒す為の力なのか」
「そこまではわからないわよね」
「ああ、全く」
 コスモはこうカーシャに話すのだった。
「けれどそれでもな」
「付け加えるなら」
 ロッタも行ってきた。
「ルウがいることも関係あるのよね」
「勿論さ」
「はい、私は」
 カララもここで話す。
「ルウとお腹の中の子供は」
「その二人は、か」
「そうなるよな」
「ええ。会いたがっているのよ」
「ルウとカララのお腹の中の子供」
「その二人がか」
「それでイデは?」
「ここはあえて」
 皆もこう考えはじめる。その中でだ。
 ロッタがだ。こう仲間達に話すのだった。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどって?」
「男の人って鈍感ね」
 言うのはこのことだった。
「言われるまでカララのことに気付かなかったの」
「済まない」
 ベスは父としてまずは謝罪の言葉を述べた。
「けれどそれでも」
「それでもって?」
「今は戦争中なんだ」
 それでだとも言うのだった。
「だから少し」
「無理だったっていうのね」
「気付くどころじゃなかった」
 まさにそうだというのだ。
「だから」
「あら?けれど」 
 しかしここでビューティが言った。
「万丈は気付いていたんじゃないの?」
「まさかと思ったけれどね」
 それでもだと話す万丈だった。
「けれどね」
「じゃあ万丈さんの言っていた切り札って」
「つまりは」
「ああkちゃんのことだったんだ」
「そうだよ」
 まさにそうだとだ。万丈も仲間達に話す。
「より純粋な防衛本能」
「それがか」
「つまりは」
「赤ちゃん」
「それなんですね」
「そう、本能のみで生きている」
 万丈はこう表現するのだった。
「その子供のことだったんだ」
「成程なあ。そうだったんだ」
「それで万丈さんはか」
「ああしたことを言ってたんだ」
「そうだったの」
「ただね」
 ここで万丈は言い加えた。
「逆に変に意識してね」
「それでなんですね」
「それを戦術に利用する」
「そういうのは万丈さんじゃないよな」
「確かにね」
「その通りさ」
 万丈自身もこう返す。
「そういうことは僕の性に合わないんだよね」
「何はともあれだ」
 ブライトはベスを見て声をかけた。
「おめでとう」
「ブライト艦長・・・・・・」
「父親になりわかることは多い」
 ベスに微笑んで話すのだった。
「君はその第一歩についたのだ」
「そうなんですか」
「そうだ。それもわかってくる」
 こう言うのだった。
「頑張ってくれ」
「わかりました」
「さて。それではだ」
 あらためてだグローバルが総員に話す。
「バッフクランのことだが」
「連中ですね」
「もう俺達のことはわかってますよね」
「彗星から脱出したことは」
「それは」
「わかっていない筈がない」
 グローバルはこのことは断言した。
「しかもだ」
「はい、片腕である姉を失いました」
 カララが真摯な顔で話す。
「ですから父、いえドバ総司令は」
「来るよな、全軍で」
「もうこうなったらな」
「いよいよ」
「バッフクランとの戦いもいよいよなんだな」
 コスモが顔を引き締めさせて言う。
「終わる時がくるか」
「ここで重要なことはだ」
 ギジェが話す。
「やはりおそらくだが」
「イデのことだよな」
「そうだ。イデが赤子、即ち」
 カララとルウを見ての言葉だった。
「彼等を守る為に働けば」
「当然アポカリュプシスも起きない」
「そういうことですね」
「そうなる」
「そうか、それならだ」
「私達にもわかるわ」
 オリファーとマーベットが話す。
「子供のことを考えるとな」
「それもね」
「ああ、確かにな」
「そうよね」
 ジャーダとガーネットもだった。
「子供の持つ力はな」
「そう考えていくとね」
「赤ん坊は銀河を救う救世主か」
 カズマはこう言った。
「まさにそうなんだな」
「確かこんな話を聞いた」
 フォルカの言葉だ。
「伝説に出て来る世紀末救世主」
「呼んだか?」
 何故か一矢が出て来た。
「呼ばれた気がしたんだけれどな」
「俺もだ」
「俺もだな」
「俺もです」
 竜馬にフォッカーに洸も出て来た。
「何故かはわからないが」
「そんな気がした」
「不思議ですね」
「俺もだしな」
 サンシローもだった。
「何故かこうなるんだよな」
「だからそういう話じゃなくてあれよ」
 カーシャが話を切って述べた。
「メシアよ」
「飯屋のおっさん?」
 今言ったのは豹馬だった。
「そんなの何処にでもいるだろ」
「いや、メシアだ」
 今言ったのはギジェだった。
「つまりベスとカララの子供のことだ」
「何だ、そうか」
「世紀末救世主の時点でおかしくなったよな」
「あれはちょっと禁句だからな」
「だよなあ」
「全く。どうなってるんだよ」
 今言ったのは宙だった。
「俺はどっかのチームのエース止まりだってのにな」
「聖闘士じゃなかったの?」
 美和がその宙に問うた。
「宙さんは」
「ああ、そっちもあったか」
「そうだったと思うけれど」
「最近赤とかレッドにもなってるんだよな」
 何故かこんなことも言う。
「世の中訳わからねえよな」
「確かに。俺も皇帝になったり王子になったりしたかと思えば」
 コウである。
「この前悪とか麿とかになった気がするんだよな」
「何気にそっちの世界とは縁があるわね、皆」
 カナンも出て来て言う。
「私もあの侍の世界については思うところがあるわ」
「俺は天使だな」
 カミーユもここで言う。
「そういえばジュドーも魔法使いと」
「そうそう、そうなんだよ」
 ジュドーも頷いて言う。
「あっちの世界も中々面白いけれどな」
「まあ何はともあれだ」
 グローバルがまた言った。
「我々はこれよりルウとメシアを中心としてだ」
「そうして防衛ラインを引いてですね」
「敵を迎え撃つんですね」
「そうする」
 まさにそうだというのだ。
「諸君、それで行こう」
「弱き者、大切なものを守ろうとする想い」
 ガビルが言った。
「それは確かな力になる。これこそ」
「ああ、何だ?」
「何なんだ?それで」
「勇敢美!」
 この美だった。
「それこそまことの勇気だ!」
「コオオオオオ!」
 シビルもその通りだと言う。
「では戦うとしよう。戦闘美!」
「ああ、イデが何者かは知らねえがな!」
 バサラにとっては大した問題ではない。
「それが善い力ならな!」
「それならなのね」
「ああ、その想いだ!」
 こうミレーヌにも言うのだった。
「それが大事なんだよ!」
「イデは純粋な防衛本能に」
 ここでまた話すカララだった。
「例えば大人よりも子供のそれにシンクロしますから」
「だからイデはコスモ達に力を貸していたか」
「そうだったんだな」
「それで」
「俺に操縦なんてできなかったさ」
 コスモ自身も言う。
「考えてみればな」
「じゃあ今からか」
「俺達の生きようとする意志を見せるか」
「例えイデが試練を与えても」
「それでも」
 こう決意してだった。
「生きようとする強い想い」
「それを見せて」
「アポカリュプシスに打ち勝つか」
「本当に」
「その通りです」
 シュウも言うのだった。
「それこそがイデ等に見せるものなのです」
「イデ等?」
 シモーヌはシュウのその言葉にふと気付いた。
「今イデ等って言ったわよね」
「はい、そうです」
「じゃあゲッターとかも」
「そうなります」
 シュウは微笑んでシモーヌに話した。
「その他の力もです」
「そうだね。あらゆる力がそうなるよね」
「その通りです。そしてです」
「そしてだね」
「運命に向かうのです」
「運命、ね」
 シモーヌはシュウのその言葉を聞いてだ。
 まずは頷いた。しかしこうも言うのだった。
「あんたが言うとどうもね」
「何かありますか?」
「含みがあるように思えるわね」
 こうだ。少し笑ってシュウに言うのである。
「そう。あんたは知っていることを全部話さないからね」
「さて。何のことでしょうか」
「まあいいさ。今のあんたが敵じゃないのはわかるしね」
 そのことはだ。シモーヌも本能的に察していた。
「だからいいさ」
「それでいいというのですね」
「そうさ。それよりもね」
「はい、これからですね」
「バッフクランとの戦い、絶対に終わらせないとね」
「そのことですが」
 またここでカララが言ってきた。
「私に考えがあります」
「カララさんそれは一体」
「どういう考えですか?」
「はい、それは」
 カララは己のその考えを仲間達に話した。そうしてそのうえで、であった。ロンド=ベルは全軍でバッフクラン軍に向かうのであった。
 バッフクラン軍の将校の一人が言った。
「重力異常を感知しました」
「そうか」
「はい、何者かが来ます」
 将校はこうドバに話す。
「この宙域にDSアウトしてきます」
「宇宙怪獣か。それとも」
 ドバが言った時だった。彼等が姿を現したのだった。
「巨神とロゴ=ダウの者達か」
「さて、カララ」
 ベスがカララに対して問うた。
「これでいいんだな」
「はい」
 カララもだ。それでいいというのだった。
「バッフクランの総司令ドバ=アジバが」
「彼が」
 ベスも今は彼をカララの父とは言わなかった。あえてだ。
「はい、彼が戦いを止めないのならです」
「最後の手段か」
「彼を討つことで」
 カララもだ。今は彼をあえて父と呼ばなかった。そのうえで話すのだった。
「戦いを止めるしか方法はないでしょう」
「けれどそれだとよ」
「そうだよな」
 エルとビーチャがここで言う。
「イデは大丈夫なのかしら」
「そこが心配になるよな」
「若しもイデが変に思ったら」
「その時は」
 モンドとイーノも話す。
「イデが発動して」
「僕達も」
「その危険はあるのよね」
 ルーも言う。
「零じゃないから」
「けれどな。無駄な血を流し続けるよりはな」
 ジュドーはそれよりはというのだ。
「ましだぜ」
「戦いを止める為の戦い」
 カミーユも言う。
「永遠に終わりのない泥沼かもな」
「へっ、因果なことだな」
「全くだな」
 ジェリドとヤザンはこう言った。
「ティターンズの時とはうって変わってだな」
「そんな哲学的な状況になっちまうなんてな」
「運命、ね。あの時は考えたこともなかったね」
「そうだったな」
 カクリコンはライラに言葉を返した。
「ただ戦うだけだった。楽だったよ」
「確かに毒ガスには嫌気がさしていたがな」
「思えばティターンズの思想は小さかったな」
「全くだ」
 ラムサスとダンケルもティターンズ時代のことを話す。
「地球でしかなかった」
「そこから出ることはなかった」
「それが今では宇宙を見て考えている」
「変われば変わるものですね」
 マウアーとサラもだ。その変換に戸惑いさえ感じていた。
「けれど。今の私達は」
「その運命に従えますね」
「正直あんた達も変わったよな」
 ジュドーはそのティターンズの面々にも話した。
「まあ声とかは前からどっかで聞いたとか思ってたたけれどな」
「おいおい、それを言ったらな」
 ジェリドが笑いながらそのジュドーに言い返す。
「御前さんの声はゲーツ=キャパにそっくりじゃないか」
「あっ、わかったか」
「あれだろ?俺の声は黄金とかヤンロンとかだっていうんだろ」
「前から似てるって思ってるんだけれどな」
「否定はしないさ」
 ジェリド自身もだ。それはしなかった。
「実際に似てるんだからな」
「っていうかそっくりだぜ」
「私も」
 ロザミアも言う。
「リンダさんと」
「そうよね。似てるわよね」
 リンダもそのロザミアに笑って返す。
「ケーンだってイーノ君とかダンケルさんに似てるし」
「何かそれ言われるのってな」
 そのケーンが言う。
「微妙な気持ちだな」
「そうだろ。声の問題ってのはな」
「言われるとそうなるな」
 タップとライトもだった。
「俺もだしな。ヤザンさんとかヂボデーとかな」
「俺はマシュマーさんだしな」
「私も最初は驚いたものだ」
 マシュマー本人が言う。
「何故私がもう一人いるのだとな」
「確かにそっくりね」
 リンダも驚くことだった。
「そういえばミンさんとフォウもね」
「ははは、似てるね」
「他人の気がしないわ」
 ミンとフォウが笑いながら言う。
「妹どこか分身って気がするよ」
「私がもう一人いるみたいな感じね」
「本当に同一人物じゃないの」
「そうよね」
 二人の話を聞いてシルヴィアとゼオラが言う。
「フェアリさんもそう思いますよね」
「似過ぎですよね」
「そうよね。意外とね」
 そのフェアリも言うのだった。
「似ているわね」
「これだけよく言えるなと思ったことはな」
「ないな」
 今言ったのはだ。ショウとトロワだった。
「しかし。本当に似ているからな」
「俺達も人のことは言えない」
「というか誰が誰かわからなくなってきたな」
 実はミリアルドも心当たりがかなりある。
「とにかくだ。戦いだな」
「メビウスの環ですね」
 リリーナの言葉だ。
「それを断ち切る戦いですね」
「その想いを胸に!」
「今ここで!」
「どうせな」
 コスモが少し忌々しげに言う。
「遅かれ速かれイデは俺達と敵の総大将をぶつけるように仕向けるさ」
「それならばだ」
「ああ、やってやるさ」
 ギジェにも応えるコスモだった。
「自分達の意志でな」
「戦いを終わらせるしかない」
「イデの意志に操られてたまるかよ」
 コスモの偽らざる本音だった。
「俺達の生き方は俺達が決めるさ」
「じゃあ行こうか」
「では行きましょう」
(それがそもそもの間違いだったのだ)
 シュウはまたあの声を聞いた。
(御前達はだ)
「さて、どうでしょうか」
 シュウは余裕の笑みを浮かべてその声に返した。
「私達とて捨てたものではありませんよ」
「どうしたのだ?」
 クォヴレーがそのシュウに問うた。
「誰かと話をしているのか」
「一人言ですよ」
 ここでもこう言うだけのシュウだった。
「御気になさらずに」
「そうなのか」
「さて、じゃあはじめましょう」
 セラーナはもうやる気だった。
「派手にいくわよ」
「各機突撃だ!」
 ブライトが指示を出す。
「狙うはバッフクラン旗艦」
「あのバイラル=ジン」
「そうですね」
「その一点だ」
 まさにだ。その旗艦をだというのだ。
「沈める。いいな!」
「了解!」
「それなら!」
「飛んで火に入る虫とはこのことだ!」
 ドバも言う。
「来い、巨神よ!」
「巨神も来ます!」
「全軍です!」
 部下達が報告する。
「一直線に!」
「今こうして!」
「それならばだ!」
 ドバも考えは決まっていた。既にだ。
「ガンド=ロワの発射準備だ!」
「あれをですか」
「遂に」
「そうだ。ここで全ての生命体の業を払い」
 そしてだとだ。ドバも決意していた。
 その決意のままだ。彼は言うのだった。
「巨神の力、止めてみせようぞ!」
「了解です!」
「ならば!」
「全軍迎撃せよ!」
 ドバはこうも命じた。
「よいな!」
「そうしてですね」
「ここで彼等との戦いを」
「全ては終わる」
 ドバもだ。これ以上の戦いは考えていなかった。
 それでだ。今言うのだった。
「その為にだ」
「わかりました」
 彼等も頷く。そうしてだった。
 両軍は戦闘をはじめる。いきなりだった。
 バッフクラン軍がロンド=ベルの前に殺到した。
「行かせはせん!」
「ここで止める!」
「貴様等との戦いも!」
「これで終わりだ!」
「それはこっちの台詞だぜ!」
 勝平がこう返す。
「この分からず屋共が!」
「そうよ、分からず屋はね!」
「貴様等にはわからん!」
 恵子にも言うドバだった。
「決してな」
「それはどうだろうか」
 ふと言い返したのはブライトだった。
「娘を持っているのならだ」
「何が言いたい」
「おおよそはわかるつもりだ」
「わかるというのか」
「おおよそだが」
 それでもだ。わかるというのだ。
「しかし貴殿のそれはだ」
「何だというのだ」
「我だ」
 それだとだ。ドバに対して言うブライトだった。
「それでしかない」
「ならそう思うがいい。全軍攻撃を浴びせ続けよ!」
 再び全軍に命じるドバだった。
「殲滅せよ!」
「はい!」
「それでは!」
 両軍の戦いも続く。ラー=カイラムもだった。
「前からです!」
「次々に来ます!」
「照準は合わせるな!」
 それだけ敵がいればだとだ。ブライトはサエグサとトーレスに告げる。
「撃て!一斉射撃を続けよ!」
「了解です!」
「それなら!」
 こうしてだ。ラー=カイラムは前に一斉射撃を続けてだ。
 バッフクラン軍を倒して前に進んでいく。そしてその中でだ。
 ドバのバイラル=ジンに接近した。するとだった。
「ベス!後方だ!」
「敵の援軍か!?」
「いや、違うようだ」
 ハタリはこうベスに告げる。
「この重力振の感じは」
「DSドライブではない!」
 ジョリバも言う。
「この感じはだ!」
「まさか」
「くっ、こんな時にか!」
 ベスに続いてモエラが言った。
「宇宙怪獣か」
「狙いすました様にか!」
 その宇宙怪獣が出て来た。それと共にだ。
 エルトリウムのモニターにだ。メキボスとゼブが出て来て言うのだった。
「悪いがこちらもな」
「今から出撃となった」
 二人が話すのは殴り込み艦隊のことだった。
「もう待てん」
「銀河中央に進ませてもらう」
「わかった」
 タシロも彼等に対して答える。
「それでは追いかけよう」
「仕方ないことだ」
 ダイテツもそれでいいとした。
「何、こちらの戦いもすぐに終わる」
「終わらせます」
 レフィーナはそうするというのだった。
「ですから。あちらで」
「合流するとしよう」
「ああ、楽しみにしてるぜ」
「合流の時をな」
 メキボスとゼフはそれぞれ彼等に告げた。
「こっちも早速宇宙怪獣と交戦中だがな」
「その数は尋常なものではない」
「こちらもだ」
 リーは彼等の後方の宇宙怪獣を見て言う。
「今までの比ではない」
「御互いにやばいみたいだな」
「そちらにも来たか」
 メキボスとゼブはリーの話を聞いてまた言った。
「アポカリュプシスがな」
「遅かったのか」
 ベスはふと言った。
「我々は」
「そんなことがあるもんか!」
 コスモがそのベスに反論する。
「俺達は生きてるんだ!」
「それなら生きている限りは!」
 タケルも言う。
「俺達は負けない!」
「最後の最後までだ」
 ロジャーも今はその言葉に熱を込めている。
「私達は戦うとしよう」
「あがき続けるのね」
「結果としてはそうなる」
 こうドロシーにも話すロジャーだった。
「いつもと同じだ」
「そうね。同じね」
「それだけだ」
 ロジャーは割り切っていた。こうだ。
 その話をしてからだった。彼等はそのまま突き進もうとする。
 その彼等を見てだ。ドバは呟いた。
「これもイデの采配か」
「イデの」
「それだと仰るのですか」
 ギジェとカララはドバのその呟きを聞いて言った。
「この戦いも」
「そしてアポカリュプシスも」
「新たな宇宙を生む為の浄化か」
 こうも考えるドバだった。
 そしてだ。彼はこうも言うのだった。
「そうだとしてもこの戦い」
「総司令、貴方は」
「どうしてもなのですね」
「最早止める訳にはいかん」
「まだ戦うってのかよ!」
 抗議したのは宇宙太だ。
「何処まで石頭なんだよ!」
「このまま戦ってもだ」
「何にもならないのにか!」
 兵左衛門も一太郎も呆れていた。
「この男、最早」
「業に」
「父上、その業」
 カララも無念の声で言う。
「どうしても捨てられませんか」
「後ろは宇宙怪獣だ」
 モエラがベスに話す。
「こうなってしまうと」
「そうだな。進むしかない」
「前に言った言葉だが」
 モエラはここではだ。以前の自分の言葉を思い出していた。
 そしてその言葉をだ。今また言うのだった。
「運命は自分で作るものだ」
「ああ、そうだ!俺達だってな!」 
 コスモがそのモエラの言葉に応えて言う。
「ルウやメシアと同じだ!」
「あの子達とな」
「そうだ、十分に生きちゃいない!」
 これがコスモの今の言葉だった。
「これからなんだ!」
「無駄だ、今こそだ!」
 遂にとだ。ドバが言うのだった。
「巨神!ロゴ=ダウの異星人よ!」
「!?何だ!?」
「何をするつもりなの!?」
「バケモノ共と共に銀河のチリと消えよ!」
 こう言ってだ。バイラル=ジンは一旦戦場から姿を消したのだった。
 それを見てだ。ロンド=ベルの面々は口々に言う。
「消えた!?」
「逃げた!?」
「持久戦に持ち込むつもりか!?」
「その数を利用して」
「いや、違う!」
 アムロがすぐに察して言った。
「これは」
「悪意だ」
 クワトロがそれを察していた。
「人のエゴだ」
「来るぞ!」
「コスモ!」
 デクがコスモに告げる。その時だった。
「撃て!ガンド=ロワ発射だ!」
「了解!」
「わかりました!」
 その光がだ。ロンド=ベルに向かって放たれたのだった。
 それを見てだ。コスモは。
「死ぬかよーーーーーーーーーーーーっ!!」
 イデオンを動かした。その力でだ。その攻撃を防ごうとするのだった。


第百二十六話   完


                                        2011・6・4
 

 

第百二十七話 発動

              第百二十七話 発動
 バイラル=ジンのブリッジでだ。
「これで終わるのだな」
「そうだ」
 ドバはだ。その声に返した。
「これでな」
「異星人達は全てか」
「ガンド=ロワの直撃を受けた」
 こう話すのだった。
「しかし我々もだ」
「そうだな、我々もな」
「戦力のかなりの部分を失ってしまった」
 そのこともだ。声に話すのだった。
「最早残っているのはだ」
「全軍の二割か」
「その程度だ。そしてだ」
 ここまで話してだ。あらためてだった。
 ドバはだ。その声に問うのだった。
「その声はギンドロだな」
「そうだ。友よ」
「いたのか、今も」
「死んでみてよくわかった」
 ギンドロが出て来た。精神として。
 ドバの前に現れてだ。それで話すのだった。
「貴殿の本音がな」
「私の本音をか」
「貴殿は本気でバッフクランのことを考えているな」
 わかったのはだ。このことだった。
「あの時は疑って悪かった」
「気にするな」
 ドバもだ。こう友に告げるのだった。
「だが、残留思念か」
「おそらくはだ」
「これもイデの業だというのか」
 こうも考えるドバだった。
「イデの真の発動がはじまっているのか」
「そうでなければこうならないだろう」
 ギンドロもドバに話す。
「とてもな」
「そうか。五分後だ」
 ドバはそのギンドロに時間のことを話した。
「ビームは消滅する」
「その時にだな」
「異星人の軍勢の消滅を確認する」
「無論巨神もだな」
「その通りだ」
 イデオンのこともだ。忘れていなかった。
「それを以てこの作戦を終了する」
「そしてか」
「そのうえで残っている全軍に祖国に関しての重大発表をする」
 ギンドロにこのことも話す。
「それからだ」
「そうか。それならばな」
「後は。私が全てやろう」
 彼等はこんな話をしていた。その時だ。
 ロンド=ベルは全軍イデオンの発動したDSドライブの中にいた。その中でだ。
「まずいぞ!」
「急に飛び込んだからか!」
「くそっ、空間が不安定だ!」
「皆いるか!?」
 見ればだ。何とか全員いた。その中でだ。
 イデオンの中でだ。コスモが言う。
「どうなんだ!」
「な、何とかね」
「無事だ」
「生きてるよ」
 カーシャにギジェ、デクが答える。
「皆もいるみたいだけれど」
「ではこれでは」
「イデはやっぱり」
「そうか、そうなんだな」
 ここでだ。コスモははっきりとした顔で言った。
「わかったぞ。完全に」
「じゃあコスモ、イデは」
「ムウやメシアを」
「イデは元々知的生命体の意志の集りだ」
 コスモが話すのはここからだった。
「だから俺達とかバッフクランを滅ぼしたら」
「それならもう」
「それで終りか」
「そうだ、生き続ける訳にはいかないんだ」
 こうカーシャとギジェに話すのだ。
「だから新しい生命を守り」
「そして新しい知的生命体の」
「その元をか」
「ああ、イデは手に入れようとしているんだ!」
「それが真の目的なのかな」
 デクも言う。
「アポカリュプシスも」
「その一面はあります」
 ここでシュウが彼等に話す。
「我々が乗り越えなければならないことです」
「それじゃあよ」
 カーシャがそのシュウに問うた。
「色々な星に流星をぶつけて滅ぼしているのはどうしてなの?」
「それはおそらく」
 コスモがそのことについて話す。
「悪しき心をなくす」
「悪しき心をなの」
「そうだ、イデは善き心によって発動する」
 コスモはこのことも話した。
「その伝説はそのことだったんだ!」
「だからルウやメシアの様ななのね」
「そうだな」
 ギジェはカーシャの言葉に頷いた。
「純粋な心を守りだ」
「育ててなのね」
「イデの残る力で」
 また話すコスモだった。
「善き知的生命体を復活させる」
「それじゃあどうしてなのよ!」
 カーシャは激昂した声になっている。
「あたし達はどうして生きてるのよ!」
「ああ、こんな甲斐のない生き方なんてな!」
 コスモもだ。利用される様な生き方はだというのだ。
「俺は認めない」
「そうよね」
「例えそれがイデの力であっても!」
「それが正解です」
 シュウもそれでよしと話す。
「ここは何があってもです」
「運命を切り開く」
「そうするべきです」
 シュウはギジェにも話した。
「何としてもです」
「そうだな。じゃあ」
「そろそろだよ」
 決意が固まったところでだ。デクがコスモに言う。
「DSアウトだよ」
「コスモ、いけるか?」
 ベスがコスモに問う。
「今は」
「わからない。しかしだ」
「しかしか」
「やれるのか、ベスは」
「わからん」
 ベスもこう言うしかなかった。
「だがDSアウトするのはだ」
「それは」
「そうだ、イデの意志だ」
 今は全てがだ。それに基くものだった。
「何もかもな」
「イデ、一体何故だ」
 コスモはそのイデの意志に対して問うた。
「何故教えてくれるんだ」
「間違いないよ」
 ここでもだ。デクが言った。
「出た先にはね」
「敵がいるな」
 ギジェが鋭い顔で返す。
「我々の」
「うん、本当の敵が」
「ワンポイント攻撃だ!」
 そうするとだ。コスモは言った。
「それでやるしかない!」
 こうしてだった。光がだった。
 彼等を包み込みそれが消えた前にいたのは。
「何だこりゃ」
「バッフクランの兵器か?」
「巨大な加粒子砲」
「これが」
「戦場を一気に壊滅させたのは」
「これなのか」
 そしてだ。考える彼等を見てだ。
 ドバがだ。驚愕の声をあげた。
「ガンド=ロワをかわしたというのか!?」
「全艦、全機生き残っています!」
「敵はです!」
 部下達がドバに報告する。
「それに対して我々はです」
「残るは二割です」
「この銀河に展開していた全軍の二割」
「それだけです」
「くっ、どういうことだ」
 ドバは唖然としながらまた言った。
「巨神もロゴ=ダウの者達も」
「いいな、コスモ」
「ああ」
 コスモはモエラの言葉に応えていた。
「ここはだ」
「ワンポイントしかないな」
「それでモエラ」
 カーシャはそのモエラに尋ねた。
「イデの教える敵は?」
「あそこだ!」
 モエラがソロシップの艦橋において作業をしてだ。
 あるポイントを指し示した。そこはだった。
「あそこか」
「あそこにいるんだな」
「俺達の今の本当の敵が」
「それが」
「あの向こうに」
「また私の前に出て来るか」
 ドバもだ。察せられたことを確認して言う。
「またか」
「いたぞ!見えた!」
「バッフクラン軍だ!」
「数はかなり減ったがな」
「あの旗艦もいるな」
「じゃあ」
 ロンド=ベルの面々は決戦を再び覚悟した。そしてだ。
 コスモがだ。ドバに言うのだった。
「おい!」
「何だ!」
「わかっている筈だ!」
 こうだ。ドバに言うのである。
「何故俺達が御前達の前に出て来るのか!」
「そのことがか!」
「そうだ、これはだ!」
「何だというのだ!」
「イデの導きだ!」
 まさにだ。それだというのだ。
「それがだ!俺達出来損ないの生物の」
「我等は出来損ないか」
「その憎しみの心を根絶やしにする為にだ!」
「イデはか」
「俺達を戦わせるんだ!」
 こう言うコスモにだ。ドバも言う。
「我等を戦わせていたのか」
「イデも生き延びたいからな」
「そうか、イデも」
「そしてです」
 シュウが冷静に言う。
「また出て来たましたよ」
 両軍の側面にだ。再びだった。
 宇宙怪獣の大群が出て来た。それを見て言うシュウだった。
「彼等は我々双方をです」
「滅ぼすつもりかよ!」
「何があっても!」
「ここはまた私が引き受けさせてもらいます」
 シュウはその宇宙怪獣達に向かう。
「このネオ=グランゾンの力で」
「ベス!バイラル=ジンを!」
 カララがベスに言う。
「そして」
「わかっている、それ以上は言うな」
「有り難う」
「それしかないからな」
「行くわよ、コスモ!」
「ああ!」
 コスモはカーシャの言葉に応える。
「これでだ!」
「終わらせるわ!今度こそ!」
「いいか、絶対にだ」
 ギジェがここでコスモに忠告する。
「憎しみで戦うな」
「憎しみで」
「それでは本当に我々は」
「だからか」
「そうだ」
 こう話しながらだ。イデオンとソロシップがバイラル=ジンに向かう。
 バッフクランの残存戦力は他の面々が引き受ける、その中でだ。
 デクがだ。コスモに言う。
「いい、コスモは」
「あの敵の旗艦にだな」
「うん、集中して」
 こう言うドバだった。
「他の方角は俺達が引き受けるから」
「ミサイルでね」
「弾幕を張る」
 カーシャとギジェも言う。
「敵は確かにまだ多いけれど」
「それで何とかなる」
「済まない。それに俺は」
 ドバの乗るバイラル=ジンを見ての言葉だ。
「認めない!このまま!」
「まだ言うのか」
「ああ、何度でも言ってやる!」
 ドバにも言い返す。
「甲斐のない生き方なんてな!」
「巨神がブリッジに向かっています!」
「速いです!」
 部下達もドバに言う。
「このままではです」
「ブリッジに」
「わかっている。ガンド=ロワだ!」
 それをだ。再び使うというのだ。
「また使ってでも仕留めろ!」
「は、はい!」
「それでは!」
「このままでは皆滅んでしまう」
 ベスは危惧を口に出した。
「その前にケリをつけるんだ!」
「撃て!それで今度こそ終わらせろ!」
 ドバはガンド=ロワを使う決断を下した。
「全てだ!」
「来るわコスモ!」
「ああ!」
「それでどうするの!?」
「イデオンソードだ!」
 それをだ。使うとカーシャに返した。
「あれで終わらせる!」
「わかったわ。それなら!」
「ゲージはもう充分だ!」
 ギジェはゲージのことをコスモに話す。
「イデオンソードもだ」
「いけるか、それなら!」
「やろう、コスモ」
 デクも言うのだった。
「イデオンソードで!」
「ああ、これで!」
 早速イデオンソードを出し。そしてだった。
 それでだ。バイラル=ジンを貫いた。艦橋は攻撃しなかったがだ。もうそれで充分だった。
「やったか!?」
「いや、機能は停止したが」
「まだ沈んでいない!」
 それでもだ。もう攻撃もできなくなっていた。
「あれだけの巨艦だ」
「そう簡単には爆発しないわね」
「けれどそれでも」
「これで終わりだな」
「ああ、終わったんだ」
「バッフクランとの戦いも」
 ロンド=ベルの戦士達は動けなくなったバイラル=ジンを見てそのことを確信していた。しかしだ。ドバだけはだ。まだこう言っていた。
「ガンド=ロワだ!」
「司令、最早です!」
「この艦はもちません!」
「一刻も早く脱出を!」
「さもなければ!」
「構わん!」
 だがだ。ドバは脱出を促す部下達にこう返した。
「発射だ!ガンド=ロワ!」
「そんなことをすれば我々も」
「この艦ごとです」
「全滅です!」
「全軍最早!」
「このままでは!」
「ならだ!」
 ドバは命を惜しむ彼等にまた告げた。
「潔く死んでくれ!」
「なっ、総司令」
「我々に死ねと」
「そう仰るのですか!」
「そうだ、サムライとしてだ!」
 こう言うのである。
「潔くだ。死んでくれ!」
「しかしです!」
「最早この有様では無駄死にです!」
「我等とて確かにサムライ!」
 その埃はだ。確かにあった。
 だがそれでもだとだ。彼等は言うのだ。
「この状況で命を落とすことはです!」
「無駄死にに他なりません!」
「それでもですか!」
「死ねと!」
「まともに戦って勝ち目のない相手だ」
 イデオンとソロシップ、そしてロンド=ベルを見ての言葉だ。
「だがあと一息で殲滅できる!」
「その前に我等が全滅です」
「我等全員がです!」
「それでもなのですか!」
「二人でも三人でもいい!」
 まだだった。ドバは言うのだった。
「生き残ればそれでいい!イデの力を我々に!」
「その我々はです!」
「イデなぞ欲しくはありません!」
「最早我々は破れました!」
「それならばです!」
 敗北した。それならばだというのだ。
「生き延びられれば!」
「今はです!」
「そうするしかありません!」
「見よ、その巨神はだ!」
 ドバは旗艦に向かって来ると。彼にはそう見えるイデオンを指差して叫ぶ。
「我々を生き延びさせてはくれん!」
「それは総司令の主観です!」
「巨神は最早動いていません!」
「彼等も戦いが終わったとわかっているのです!」
「おわかりになられていないのは貴方だけです!」
「総司令だけです!」
「その訳がわかるか!」
 イデオンが来ていると見ていてだ。彼の言葉は続く。
「その訳はだ!」
「では一体どうしてなのですか?」
「我々は動いていないと見えますが」
「それでも巨神が動いている理由は」
「どうしてだというのでしょうか」
 部下達は冷静さを取り戻しだ。ドバに問うた。
「あの、まさか総司令」
「最早貴方は」
「若しかして」
「バッフクランとしての業」
 ドバが言うのはこのことだった。
「それを持っているのは私は」
「ではイデは業に反応すると」
「そうだと仰るのですね」
「だからこそ巨神は総司令に向かって来られる」
「そう御考えですか」
「そうだ、その通りだ」
 まさにそうだとだ。ドバは答えた。
「だからこそ。私は!」
「・・・・・・では総司令」
「もうお言葉はありません」
「それならばです」
「御覚悟を」
 彼等は一斉に銃を取り出した。そうしてだ。
 そのうえでドバを撃とうとする。だがドバはその彼等にまだ言う。
「最早後戻りはできん!」
「それは貴方の主観です!」
「おわかりになられないのですか!」
「イデは発動した!」
 こう言って最後のガンド=ロワを放とうとする。しかしだ。
 それを見てだ。コスモは再びだった。
「くそっ、まだか!」
「あいつ、何処までわからないのよ!」
「総司令、貴方は・・・・・・!」
 カーシャとギジェも忌々しげに言う。
「もうこなったら!」
「やるしかないじゃない!」
「完全に断ち切る!」
 再びイデオンソードを出すコスモだった。
 それでだ。あの惑星を両断した時の様にだ。
 バイラル=ジンを断ち切った。ガンド=ロワもだ。
 それによってだ。遂にだった。
 ドバは炎に包まれだ。断末魔の叫びをあげた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「何処までわからなかったんだ!」
 コスモが爆発の中に消えていくドバに叫んでいた。
「だから!こんな!」
「!?いかん!」
 最初に異変に気付いたのはギジェだった。
 全てが光に包まれ。そしてだった。
 全てが光に包まれていく。その中でだ。
 彼等はだ。わかったのだった。
「イデの発動!?」
「じゃあ俺達は間違っていた!?」
「生きる為に戦ったことが」
「それが間違っていた」
「じゃあ私達は」
「結局」
 その光の中でだ。言っていくのだった。
「この宇宙の失敗作なの!?」
「やることが全て遅かったというのか」
「まさか、こんな」
「こんな結末なんて」
「俺達は死んだのか?」
 コスモが光の中で呟く。
「結局」
「まだだ」
 何者かが。彼に言ってきた。
「審判の時は続く」
「御前は」
「・・・・・・・・・」
 声は誰なのかは言わない。しかしだった。
 コスモは声が誰なのか本能的に考えだ。怒りの言葉をぶつけた。
「御前の為にだ!」
「そう言うのだな」
「そうだ、どれだけの生命が失われたんだ!」
 こうぶつけるのだった。
「全部御前が仕組んだことだ!」
「我は場を用意したに過ぎない」
 こう反論する声だった。
「それだけだ」
「そう言うのか!」
「そうだ、我は見たいのだ」
 声はまたコスモに言ってきた。
「御前達の生きる力」
「それをだっていうのかよ」
「善き力を」
 こう言うのだ。
「この宇宙を生き残る力をだ」
「それならだ」
 コスモは声の言葉にだ。すぐに問い返した。
「教えてくれ」
「我がか」
「そうだ、俺達はどうすればいいんだ」
 こう問うのだった。
「どうすれば生き残れるんだ!」
「我々は見たい」
 だが声は答えなかった。こう言うだけだった。
「我々の施した枷を越える者を」
「枷!?」
「運命を覆すものを」
 光の中での言葉だった。そして。
 光が消えた時。彼等がいたのは。
「ここは」
「俺達の銀河だ」
「あれは殴り込み艦隊」
 後方に見えた。つまりはだった。
「じゃあ戻ってきたのか」
「本当に」
「そして生きているんだな」
「あの中で」
「幻じゃないんだ」
「諸君、奇跡だ!」
 大河が言ってきた。
「皆無事だ!」
「皆生きていてここにいる」
「じゃあ俺達はまだ」
「運命に屈していないんだな」
「そうなんだな」
「コスモ」
 ベスがコスモに対して言ってきた。
「俺達はまだ、だ」
「ああ、そうだな」
 コスモもベスに対して言葉を返す。
「俺達はまだな」
「戦いは続くんだ」
「俺達が生きているからこそ」
「また一つの戦いが終わったことは間違いない」
 タシロの言葉だ。
「ならば諸君!」
「はい!」
「それならですね!」
「力は集った」
 こう言うのであった。
「我々の作戦はだ」
「最終段階ですね」
「いよいよ」
「そうだ、神壱号作戦はだ」
 その作戦がだ。遂にだというのだ。
「その時に来たのだ」
「遂に宇宙怪獣とも」
「奴等との戦いも終わるんだ」
「あのバケモノ達とも」
「本当に」
「最終段階に入る」
 タシロの声は重厚なものだった。
「いよいよだ」
「了解です」
「それじゃあ」
 こうしてだった。ロンド=ベルは殴り込み艦隊に復帰してだ。宇宙怪獣達との最後の戦いに挑むのだった。また一つだ。戦いが終わろうとしていた。


第百二十七話   完


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第百二十八話 最後の戦いへ

               第百二十八話 最後の戦いへ
 全員だ。ブリーフィグルームに集っていた。
 その場でだ。まずはタシロが言う。
「では諸君」
「はい」
「それじゃあですね」
「そうだ。まずはバッフクランとの戦いも終わった」 
 タシロが最初に言うのはこのことだった。
「そのことをまずは喜ぼう」
「それで、ですよね」
「今から俺達は」
「いよいよですね」
「宇宙怪獣と」
「間も無く銀河中心部に到達する」
 そここそがだった。
「宇宙怪獣達の巣だ」
「それで艦長」
 ユングがタシロに問う。
「宇宙怪獣の動きは」
「現在は沈黙を保っている」 
 タシロはすぐに答えた。
「不気味なまでにな」
「嵐の前の静けさか」
「それだとな」
「ああ、間違いない」
「それはな」
「しかもだ」 
 今度は副長が話す。
「奴等はバスターマシン三号の存在にも気付いているだろう」
「そういえば連中は」
 タリアが怪訝な顔で話す。
「思考というものはあるのかしら」
「わかりませんな。ただ」
「ただ?」
「本能でしょうが」
 バルトフェルドはこう前置きしてからタリアに話した。
「自分達の敵は認識してますね」
「敵は」
「ええ。バッフクランとの戦いでもそうでしたし」
 その時の彼等の動きからだ。バルトフェルドは話すのだった。
「我々を狙ってきましたから」
「アポカリュプシス」
「銀河再生を前にしての全生命体の消去」
「アカシックレコードによって定められたもの」
「それが運命か」
「けれど我々は」
 それでもだった。彼等は既に答えを出していた。
「それに屈してはならないな」
「ああ、絶対に」
「イデの導きを戦い抜いてきたんだ」
「バッフクランとの戦いも」
 先の戦いのこともここで話される。
「それならな」
「何があってもな」
「俺達は生き残るんだ」
「絶対に」
「その通りだ」
 タシロも言うのだった。
「何者かの意志が我々を失敗作と決め付け」
「この宇宙から消去しようとするならですよね」
「それなら俺達は」
「その意志に対して」
「何があっても」
 こう話していく。彼等も。
「命賭けで戦う」
「例え相手が神でも」
「それでも!」
「人類、いや」
 ここでまた言うタシロだった。
「先史文明から続く歴史はだ」
「そうですね」
 副長もタシロのその言葉に応えて言う。
「明日という日の為にあったと言っても」
「過言ではない」
 そうだというのだ。
「だからだ」
「この銀河で俺達が」
「生きる権利を勝ち取る為の戦い」
「その闘いには」
「負ける訳にもいかないんだ」
「絶対に」
「では諸君」
 ここでまたこう言うタシロだった。
「明日決戦になる」
「わかりました」
「じゃあ今は」
「食べて飲んでくれ」
 それで英気を養えというのだ。
「寿司に西瓜だ」
「それと酒もある」
「勝利の女神は君達に微笑む」
「絶対にだ」
「いや、そんな小さなことは言わないでおきましょう」
 シュウがここで言った。
「微笑みではなくです」
「微笑みではなく」
「というと」
「大笑いさせましょう」
 こうだ。シュウは微笑んで言うのだった。
「勝利の女神を」
「言ったな。手前はそのつもりなんだな」
「その通りですよ、マサキ」
 シュウはその微笑みでマサキにも話した。
「少なくとも貴方のサイバスターと私のネオ=グランゾンがいますから」
「奴等に勝てるっていうのかよ」
「四機の魔装機神に十二の魔装機」
「そしてヴァルシオーネだな」
「これだけ揃っていてしかも銀河最強の戦士達が集っているのです」
「なら勝てるか」
「最強の戦士、それは」
 何かシュウは話した。
「それは自分の運命に勝つ者です」
「運命、か」
「私達はこれまで私達で自分達の運命を切り開いてきました」
「だからか。俺達は」
「はい、最強の戦士です」
 運命を切り開いてきたから。だからだというのだ。
「その私達ならばです」
「宇宙怪獣にも勝てるんだな」
「その先にあるものにも」
 シュウはふとこう言った。
「必ず」
「?先にあるもの?」
「何ニャ、それは」
 クロとシロが最初にその言葉に気付いた。
「戦いは宇宙怪獣で終わりニャ」
「何だよ、それじゃあ」
「いえ、何も」
 ここでも言わないシュウだった。
「それでは皆さん」
「ああ、寿司に西瓜だな」
「他にもありますので」
 見ればだ。様々な料理がもう用意されていた。酒もある。
 そうしたものをだ。ロンド=ベルの戦士達は食べはじめるのだった。その中でだ。
 リュウセイがだ。こうノリコに話していた。
「何ていうか色々あって」
「ここまで来たわね」
「俺最初はただの高校生だったんだよ」
 自分のことをだ。河童巻きを食べながら話す彼だった。
「それが今じゃな」
「銀河の運命を賭けた戦いにだからね」
「凄い話だよな」
「そうよね。私だってね」
 ノリコもだ。笑いながらトロを食べつつ話す。
「まさか。自分がこうなるなんて」
「運命ってわからないよな」
「そうね。本当にね」
「私は思ったわ」
 カズミは微笑んでノリコに話してきた。
「ノリコならきっとね」
「きっと、ですか」
「素晴しい戦士になれるって思ったわ」
「そうだったんですか」
「天才とは何かよ」
 こうノリコに話すのだった。
「九十九パーセントの努力と」
「一パーセントの閃きですね」
「ノリコには閃きがあったから」
 最初にだ。それがあったというのだ。
「後は九十九パーセントの努力だけだったのよ」
「努力だったんですね」
「そしてその努力をする才能」
 カズミはこの才能についても言及した。
「ノリコにはそれも備わっていたから」
「だから私は」
「ここまでなれたのよ」
「努力する才能ですか」
「そういえばノリコって明るいけれど」
 アヤがここでこんなことを言う。
「苦労されてる感じがするのよね」
「そうですか?」
「アイドルから転身したみたいな」
 そうした感じだというのだ。
「そこから這い上がってきた感じがします」
「そういえばカズミさんもだな」
 ライはカズミについて話した。
「何か。アイドルから復活した様な」
「あら、じゃあ私はノリコと同じなのね」
「というか境遇似てません?」
 リュウセイは真顔でカズミに尋ねた。
「それに前から思ってましたけれど」
「前からっていうと?」
「カズミさんってうちのお袋に雰囲気がそっくりで」
 まずはリュウセイの母からだった。
「クロにもニナさんにもマリーメイアにもそっくりだし」
「私にも似てるわね」
 ラーダも出て来て言う。
「それとタチアナやミスティにも」
「他には八卦衆のシ=アエンにもそっくりですよ」
 リュウセイは彼女の名前も出した。
「いや、俺もロックオンとかクルツとかナンガさんに似てるって言われますけれどね」
「ちょっと。多過ぎじゃないかしら」
 アヤも言う。
「ユングもそうだけれど」
「私もね。よく言われるわ」
 ユングは笑って応えた。
「クェスにチャムにリリスにレッシィにヒギンズにね」
「滅茶苦茶多いな」
 マイも驚くことだった。
「私もいるが」
「ああ、カトル君ね」
 ノリコがすぐに突っ込みを入れる。
「確かにそっくりなのよね」
「ひょっとしてカズミさんそういう人ばかりじゃないんですか?」
 リュウセイは真顔でカズミに問うた。
「この部隊だけでも」
「お陰で寂しいと思ったことはないわ」
 そのことをはっきりと認める発言だった。
「有り難いことよ」
「っていうかカズミさんって何か」
「貫禄もあるな」
 マイとアヤの言葉だ。
「ノリコもだけれど」
「妙な強さがある」
「アイドルは強いのよ」
「身体が資本だから」
 今度はこんなことを言う二人だった。
「風邪もひいていられないし」
「色気がなくてもやっていかないといけないし」
「色気、ね」
 クリスはノリコの今の言葉についつい笑ってこんなことを言う。
「そういえばノリコってタスク君が可愛くない色気がないって言葉言ったら怒るわよね」
「何か無意識のうちに」
 怒るというのだ。
「そうなるのよね」
「不思議だよな」
 リュウセイはそんなノリコに真顔で話した。
「ノリコって充分可愛いのにな」
「そんな、お世辞はいいわよ」
「お世辞じゃなくてさ。カズミさんは美人だしさ」
「あら、私もなの」
「まあノリコは可愛くないなんてことはないさ」
 それは否定するリュウセイだった。
「絶対にな」
「けれどそれで反応するのよね」
 アヤが首を捻りながら話す。
「不思議といえば不思議よね」
「何でなんだろうな」
 それがどうしてもわからないという感じのリュウセイだった。
「本当にな」
「そういうアヤ大尉は」
 ライはアヤを見ながら話した。
「大きくなったり小さくなったりしませんか?」
「ええと、先生になってよね」
「はい、あちらの世界では」
 そうではないかというのだ。
「違いますか」
「そうかも。心当たりがあるわ」
「というか心当たりだらけね」
 カズミが笑いながら話す。
「二分の一の世界にもね」
「私はその世界は知らないわね」
 ユングはその横で首を捻っていた。
「ノリコやカズミには縁があるようだけれど」
「ユングさんは五つ星だよな」
 リュウセイはそのユングにこんなことを話した。
「どっちかっていうと」
「そうね。そちらね」
「そういえばあの世界は」
 今度はマイが話す。
「ペンタゴナにも似ているわね」
「そうそう。そっくりなのよ」
 その通りだとだ。ユングもマイに話す。
「あれでね。かなりね」
「不思議な話ね。どうもね」
「考えてみればね」
 そうした話をしてであった。彼等は寿司に酒、西瓜等を食べていた。
 その中ではだ。相変わらずの面々もいた。
「御前俺の西瓜取ったろ!」
「これは私の西瓜だ!」
 シンとカガリは今度は西瓜を巡って喧嘩をしていた。既に取っ組み合いになっている。
 そのうえでだ。シンはこんなことを言うのだった。
「お姫様なんだから西瓜位何時でも食えるだろ!」
「それは御前もだろうが!」
「俺が何時でも西瓜を食えるってのか!」
「そうだ、食えるだろう西瓜は!」
「ああ、それが悪いか!」
 開き直るシンだった。
「西瓜位プラントでも何時でも食えるさ!」
「ならどうして西瓜にこだわる!」
「西瓜が大好物だからだ!」
 だからだというのだ。
「だから俺は!」
「それは私の西瓜だ!」
「いいた、俺のだ!」
 無益な戦いが続く。その中でだ。
 シンはだ。西瓜をカガリからひったくった。そうしてだ。
 そのまま貪る。それに負けじとだ。
 カガリも別の西瓜を強奪してだ。そうして彼女も喰らうのだった。
 互いに西瓜を喰らいながらだ。シンはカガリに言った。
「御前この戦いが終わったらな」
「何だ?」
「やっぱりあれだよな」
 こうカガリに言うのである。
「お姫様に戻るんだよな」
「オーブのだな」
「やっぱりそうだよな」
 またカガリに言う。
「オーブにな」
「そうだ。おそらく落ち着いたら即位する」
「何時までも国家元首不在じゃまずいからね」 
 ユウナが出て来た。
「今のところは代理だけれど。落ち着いたら本当にね」
「そうか。カガリがオーブの女王になるんだな」
「そして首相はこいつだ」
 ユウナを指差して言うカガリだった。
「それももう決まっている」
「というかもう首相なんだけれど」
 ユウナは自分でこう話した。
「軍じゃ国防相と参謀総長もやってね」
「そして首相、外相、内相、蔵相だったな」
「あと商務相もやってるよ」
「つまりオーブを一人で取り仕切ってるんだな」
 シンはカガリとユウナの話を聞いて述べた。
「何かえげつないな」
「まあ慣れたけれどね」
 その多忙にだというのだ。
「今じゃどうということはないよ」
「まあユウナさんがいたらカガリでもいけるな」
 シンは言いながらカガリを見た。
「こいつでもな」
「おい、それはどういう意味だ」
「言ったままだよ」
「言ったままか」
「そうだよ。まあ御前は動かない方がいいな」
 西瓜を食べながら話すシンだった。
「女王らしく王座に座っていればいいんだよ」
「政治は首相の僕がやるからね」
 また言うユウナだった。
「だからカガリはね」
「国家元首としてか」
「うん、安心して象徴として活躍して」
 そうしてくれというのだ。
「それでいいからね」
「象徴か」
「生活自体が仕事になります」
「その様になります」
 ここでトダカとキサカもカガリに話す。
「ですから。既に夫となられる方もです」
「決めていますのね」
「おい、それはまさか」
 話を聞いてだ。すぐに言うカガリだった。
「あれか。アスランか」
「後は本人を強制的にオーブに連れ込むだけだね」
 普段とはうって変わって物騒なことを言うユウナだった。
「さて、プラントとも話をしようか」
「随分酷いことするな」
「いやいや、もうこっちも必死なんだよ」
 ユウナは平然とシンに返す。
「国家元首の伴侶は国家に不可欠だからね」
「既に婚姻届も用意しております」
「後はアスランさんのサインだけです」
 また言うトダカとキサカだった。同意が必要とは一言も言っていない。
「サインされれば」
「そう、あらゆる手段を使っても」
「何ていうかね」
「オーブも必死ね」
 ルナマリアもメイリンもそんなオーブの面々を見て戦慄を覚えている。
「というか意地でもアスランをなのね」
「オーブに連れ込むのね」
「そうだよ。そのつもりだよ」
 実際にそうするというユウナであった。
「だから。国家元首の伴侶は不可欠だから」
「既に経済協力の約束は取り付けています」
「そちらは万全です」
 トダカとキサカは政治にも関わっているのだった。
「アズラエル財団、そしてドクーガの方々です」
「喜んで約束してくれました」
「そっちの方が重要なんじゃないの?」
「ひょっとして」
 また言うルナマリアとメイリンだった。
「そっちは簡単に話がついて」
「カガリの方はなのね」
「いやあ、こっちも困ってるんだよ」
 本気で困った顔で腕を組んで言うユウナだった。
「カガリだよ。そう簡単に来てくれる人いないからね」
「いつも思うが本人を前に滅茶苦茶言ってくれるな」
「頭が痛い話だよ」
 まだ言うユウナだった、
「まあそれでも。希望はあるからね」
「希望は掴み取るものです」
「何があろうとも」
 トダカとキサカの目は完全に座っている。
「では。この戦いの後は」
「早速動きましょう」
「作戦名は何にしようかな」
 ユウナはすっかり乗り気である。
「バルバロッサにしようかな」
「パグラチオンではどうでしょうか」
「それともオーバーロードで」
「こりゃアスランも大変だな」
 そんな彼等を見て呟くシンだった。
「そのうち頭がマジで禿げるな」
「真剣に育毛が必要かもね」
「そうかも」
 ルナマリアとメイリンもこんなことを話す。
「まだ十代なのに」
「それでも禿げるのね。アスランって」
「十代でも禿げる場合は禿げる」
 レイは恐ろしい現実を言葉に出した。
「二十六でもうきているケースもある」
「怖いな、そりゃ」
 話を聞いて本気で言うシンだった。
「髪の毛の話はな」
「しかしその話もね」
 ここでこんなことを言うユウナだった。
「生き残ってからだからね」
「そうだよな。じゃあまずは絶対に生き残るか」
 シンの目が鋭くなった。
「それで俺はステラとな」
「一緒になるんだな」
「ああ、そのつもりさ」
 笑顔でカガリにも話すシンだった。
「今から楽しみだぜ」
「では生き残るとしよう」
 レイがシンに言う。
「幸せの為にもな」
「幸せの為に生き残るんだな」
「幸せは生き残ってこそだ」
 こう話すレイだった。
「だからだ」
「そうか。それじゃあな」
「生き残ろう」
「ああ、わかったぜ」
 笑顔で応えるシンだった。彼もまた最後の戦いに赴く心構えをしていた。
 コンバトラーチームもだった。彼等も彼等で話をしていた。
「色々あったわ」
「そうたいな」
 大作が十三の言葉に頷いていた。
「生きるか死ぬかの戦いばかりだったたい」
「ほんま何度死ぬかって思うたか」
 こんな話をするのである。
「そんなんばっかりやったで」
「そうですね」
 小介も二人のその言葉に頷いて言う。
「これまで僕達が生き残れたのは」
「皆がいたからよね」
「はい、僕達だけだとです」
 こうちずるにも話すのだった。
「やはり。今頃はです」
「死んでたわよね」
「残念ですが」
 その通りだとだ。小介はまたちずるに話す。
「あれだけの激しい戦いが続いていましたから」
「そうだよな。コンバトラーだけだとな」
 豹馬もここで言う。
「無理だったな」
「敵があまりにも強過ぎました」
 それはどうしてか。小介がまた話す。
「しかも多かったですから」
「そうだな。それができたのはな」
「はい、皆さんがいてくれたからこそ」
「そして俺達が五人だったからだな」
「若し僕達が五人でなかったら」
「負けてたな」
「はい、死んでいました」
 小介の言葉はシビアだった。
「間違いなくです」
「それを思うとよかったわね」
 ちずるも言う。
「私達が五人で。それで皆がいてくれて」
「そうしてですね」
「私にとってはね」
 豹馬も見てだ。そのうえでの言葉だった。
「やっぱりね」
「何だ?どうしたんだよ」
「ううん、何ていうかね」
 言葉がだ。口ごもったものになっていた。
「あれなのよ」
「あれって何だよ」
「だから。ねえ豹馬」
 彼にだ。直接言うのだった。
「この戦いが終わったらね」
「この戦いが?」
「そうよ。あんたがよかったらだけれど」
 そんなちずるをだ。仲間達はだ。
 彼女の横から後ろからだ。必死に応援して言っていた。
「ちずるさん、そのままだ」
「もう一気にいっちゃって」
「そこでもう言えばね」
「ちずるさんの勝ちだから」
 だがちずるの耳には入らない。彼女は必死だった。
 その必死なままだ。豹馬にさらに言うのである。
「二人で」
「二人で?」
「テーマパークでも行かない?」
 必死の努力でだ。ここまで言った。
「テーマパークにね。どう?」
「ああ、テーマパークな」
「そうよ。どうかしら」
「それじゃあな」
 豹馬の返答はというとであった。
 静かにだ。こう返してきた。
「行くか」
「それ本当よね」
「あれ、俺と行きたいんだよな」
 全く気付いていない口調だがそれでも言った彼だった。
「そうだよな」
「そうよ。あんたさえよかったらだけれど」
「じゃあ行こうな。戦いの後でな」
「約束よ」
 ちずるは必死の顔で念押しをしてきた。
「絶対にだからね」
「わかってるって。けれどな」
「けれど。何よ」
「何かちずる今滅茶苦茶必死じゃないか?」
 怪訝になっている顔が何よりの証拠だった。
「何でそうなってるんだよ」
「そ、それは」
「何でか訳わからないけれどな」
 こう言うとだった。マサキも唖然だった。
「あれで気付かない奴いるのかよ」
「うわ、マサキまで言うのね」
「これは凄いわね」
 レトラーデもミスティも唖然である。
「豹馬って本当に」
「難攻不落なのね」
「けれど。まあこれでいいだろう」
 霧生はかなり妥協している。
「デート自体はいいって言ったんだからな」
「滅茶苦茶妥協していないか?」
 突込みを入れたのは柿崎だった。
「それって」
「しかし仕方がない」
 金竜も妥協している。
「相手が相手だ」
「何かちずるさんって可哀想よね」
 ミレーヌは完全にちずる寄りである。
「あんなに努力してるのに」
「ううん、要塞だよなあ」
「全くだな」
 フィジカとドッカーはこんなことを言った。
「豹馬の場合は」
「そう簡単に陥落はしないからな」
「それでもハッピーエンドよ」
 アスカもいつもの歯切れはない。
「ちずるさんにはよかったじゃない」
「アスカちゃん納得してます?」
「そう言われると」
 グレースにも弱い言葉で返す。
「してないけれど」
「やっぱりそうですよねえ」
「まあそれでもこれからだから」
 アスカもだ。やはり妥協であった。
「仕方ないってことでね」
「何か皆あれこれ話してるな」
 豹馬の方が先に気付いた。こうしたことには鋭い。
「一体どうしたんだ?」
「別に」
「何でもないから」
「気にしないで」
 こう返す彼等だった。
「とにかく。戦争が終わったらよ」
「二人共仲良くね」
「戦争の後にはね」
「ああ、わかってるさ」 
 わかっていなかった。
「これからもコンバトラーチームは楽しくやっていくからな」
「豹馬、その時やけれどな」
「よかとね?」
「お話したいことがあります」
 十三に大作、小介もちずるの援護に回った。そのうえでの豹馬への言葉だった。
「わい等は三人で楽しくやるわ」
「映画館に行かせてもらうたい」
「ですからお二人で」
「何だよ。つれないな」
 彼等の言葉にだ。豹馬は困った顔になる。
「こういうのは皆で行くのがいいんだろ?それでどうしてなんだよ」
「ええ加減殴った方がいいか?」
 京四郎は刀に手をかけている。
「柄で済ませるからな」
「っていうか何処まで鈍感なのよ」
 ナナもだ。完全に呆れている。
「十三さん達も気を利かせてくれてるのに」
「それがわからないんだな」
 一矢も困った顔になっている。
「本当に豹馬は豹馬だな」
「こりゃちずるさんこれからも大変だな」
 弾児も当然ちずる派だった。
「一体何時になるやら」
「全くだぜ」
 盾人も言う。
「先が思いやられるよな」
「ここまで鈍感だった奴は知らない」
 宇宙を駆け巡ったガストンですらだった。
「見たこともない」
「皆何で騒いでるかわからないけれどな」
 どこまでもわかっていない本人である。
「とにかくだよ。戦いが終わったらな」
「絶対に行けよ、遊園地」
「いいな、行けよ」
「約束したろ、今」
「約束は守れよ」
 皆豹馬に詰め寄らんばかりである。
「言ったからにはな」
「ちずるさんと二人でな」
「絶対に行くんだぞ」
「わかってるでしょうね」
「皆何で怒ってるかわからねえけれどな」
 豹馬は首を捻りながら話す。
「じゃあちずる、絶対に行こうな」
「ええ、それじゃあね」
 二人の話はこれで終わりだった。何はともあれちずるはデートまで話をこぎつけたのだった。そうしてだ。
「さて、いよいよだな」
「最後の戦いだな」
 ウーヒェイがデュオに話す。
「宇宙怪獣とのな」
「そうだな。本当に最後だよな」
「ここまでくれば生きるしかない」
「そうですね」
 カトルがトロワのその言葉に頷いて言う。
「何としても勝って」
「辛い戦いになるがな」
「それでもね」
 ノインとヒルデもここで話す。
「我々は生きなければならない」
「絶対に」
「我々への審判はだ」
 ミリアルドはアポカリュプシスを意識して話す。
「自分自身だけだ」
「だからだな」
「力の限り戦うんですね、僕達は」
 トロワとカトルはここでまた言う。
「俺達の力で」
「生き抜くんですね」
「そうなる。戦いはいよいよ最後だ」
 ミリアルドは腕を組み真剣な顔で話す。
「最後の正念場だ」
「いや、それはな」
「どうだろうか」
 デュオとウーヒェイはここでこう言うのだった。
「何だかんだで最後じゃないんじゃないのか?」
「戦いは」
「そうだな」
 ミリアルドもだ。彼等の言葉を受けてだ。
 その顔のままでだ。こう言うのであった。
「アポカリュプシスの決着がつこうともだな」
「確かにな。戦いはだ」
「消えませんね」
 トロワもカトルもだった。こう考えたのだった。
「人の歴史においてはだ」
「まだ続きますね」
「そういうことさ。結局人間はな」
「戦いからは離れられない」
 デュオとウーヒェイはここでもこう話した。
「だから最後じゃない」
「今の戦いにしてもだ」
「人間の欲望は消えない」
 ヒイロの言葉だ。
「それならばだ」
「因果なものですね」
 ここまで聞いてだ。ジョルジュが言った。
「それが人間ですか」
「そして時にはだ」
 ヒイロはさらに言う。
「俺達は人間だ」
「だからこそ迷い」
 アルゴが言ってきた。
「そして誤ることもあるな」
「その通りだ」
「何かそれじゃあ」
 アレンビーはそのヒイロに言った。
「同じことの繰り返しってこと?」
「そうだよね。ヒイロの話だと」
「そうなるよな」
 サイシーとヂボデーも言う。
「けれどそれでも違うって感じだし」
「どういうことなんだろうな」
「ワルツだ」
 ここでヒイロは言った。
「この世はワルツだからだ」
「ワルツ!?」
「ワルツっていうと」
「回りながらも先に進んでいく」
 それでだ。ワルツだというのだ。
「そういうものだからだ」
「少しずつ平和に近付いていく」
「そういうことか」
「エンドレスワルツだ」
 こんなことも言うヒイロだった。
「それが平和への道だ」
「少しずつ。迷いながらも」
「それでもだな」
「そうだ」
 こうデュオとウーヒェイにも話す。
「回りながら進んでいくものだ」
「そうだな」
 ヒイロのその言葉に頷いたのはミリアルドだった。
「それが人間の世界だな」
「俺はリリーナがいる限り」
 どうかとだ。ヒイロはさらに言うのだった。
「戦う」
「それではだ」
「僕達も」
 トロワとカトルが言う。
「戦おう」
「最後の最後まで」
 ミレーヌはバサラ達と共にいた。その場においてだった。
「あたしって気付いたらだったのよ」
「あれだったな」
「はい、捨て子で」
 こうガルドに話す。
「気付いたら僕の妹夫婦に拾われてたんです」
「そうなんですよね」
 マックスの言葉に続いて言う。
「奇妙なことに」
「それにしちゃあれなんじゃないのか?」
 イサムがミレーヌに言ってきた。
「ミリアに似過ぎてるだろ」
「似てます?」
「雰囲気がどっか似てるんだよ」  
 そうだというのである。
「妙にな」
「そうなんですか」
「まさかと思うが」
 レイがここでこんなことを言う。
「トカマクの様にだ」
「トカマクさんみたいに?」
「未来か何処かで生まれたマックスとミレーヌの娘の一人で」
「それで何かの弾みでっていうのね」
「この世界に来たのか」
 これがレイの仮説だった。
「そうではないのか」
「まさか。そんな」
「何ならDNAの鑑定をしてみましょうか」
 マックスは冗談半分でこんなことを言った。
「今なら一瞬でできますし」
「そうね。面白そうね」
 ミリアも冗談半分で乗った。
「それならね」
「やってみます?」
 ミレーヌも何だかんだで乗った。
「それじゃあ」
「よし、それではだ」
 レイも言ってだ。こうしてだった。
 その鑑定が行われた。その結果だった。驚くべきことにだ。
 ミレーヌはだ。二人の娘だった。この展開にだ。誰もが唖然となった。
「嘘・・・・・・」
「本当の親子だったって」
「じゃあやっぱりミレーヌは」
「未来から来た!?」
「そうなの?」
「若しくは他の並行世界から?」
「そうなの?」
 皆唖然としながら言う。
「ええと、どうなってるんだ?」
「何か話がさっぱりわからないけれど」
「未来にいる筈のミレーヌがここに?」
「ここにいるって」
「まさかこれも」
「次元の歪みの影響なんでしょうね」
 フィオナが言った。
「これもね」
「っていうかじゃあ未来のそのミレーヌがこっちにいるってことは」
 ラウルも首を捻りながら言う。
「向こうのミレーヌが消えてだよな」
「ええと、何がもう何だか」
「つまり未来のマックスさん達はミレーヌさんを失ってしまった」
「そうなるの?」
 ティス、ラリアー、デスピニスにも全くわからなかった。
「滅茶苦茶な状況だけれど」
「ううん、一体どういうことなんだ」
「幾ら歪みって言っても」
「難しい話だな」
 アクセルにも事情はわからない。
「何がどうなっているのか俺にもわからない」
「全くね。けれどよ」
「けれど?」
「親子なのはわかったわね」
 セニアはあえて簡単にこう話した。
「それはよかったじゃない」
「つまりあれね」
 ウェンディはわかりやすく話した。
「時空の歪みでミレーヌちゃんはそのままこっちに来たのよ」
「本来なら過去に」
「そう、それでお父さんとお母さんに早く出会えたのよ」
 こうミレーヌ本人に話すのである。
「そうなったのよ」
「じゃあ特に驚いたりすることは」
「ないわ。だって親子は親子だから」
「そうだな。それはもうわかった」
「ミレーヌは私達の娘なのね」
 マックスとミリアは微笑んでいた。
「ならミレーヌ」
「これからはあらためて」
「うん。パパ、ママ」
 満面の笑顔でだ。二人をはじめてこう呼びだ。
 抱き締め合うのだった。思わぬ、だが感動の出会いであった。
 そしてだ。バサラだった。派手にギターをかき鳴らし叫ぶのだった。
「よし!ミレーヌの親子の再会もあったしな!」
「それじゃあなんだな」
「ここでもやっぱりか」
「歌うんだな」
「ああ、歌うぜ!」
 まさにそうするとだ。バサラは言ってだ。
 そのうえでギターを鳴らす。そうして言う言葉は。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!」
「待って、私もよ!」
「参加させて下さい!」
 シェリルとランカも来た。
「これが最後の最後の戦いなら!」
「その前に!」
「宇宙怪獣が何だってんだ!」
 こうまで言うバサラだった。
「あんな連中歌の前には何ともねえぜ!」
「こう言い切れるのがなあ」
「バサラだからな」
「けれどこいつの力もあったから」
「ここまで来れたんだよな」
 皆これまでのバサラのことを思い出しながら話す。
「横紙破りでな」
「常識に全然捉われないしな」
「それでいつも突き破ってきて」
「そんな奴だから」
「これまでも」
「なら俺達もな」
「そうだな」
 誰もがここで一つになったのだった。そうしてであった。
 彼等は一つになってだ。歌うのだった。
「よし、俺達もだ!」
「歌うか!」
「飲んで食ってばかりじゃ何だしな!」
「それだったらな!」
「わしも歌おうか!」
 タシロも名乗り出た。
「では帝国海軍軍歌!同期の桜だ!」
「よし艦長!ジョイントだ!」
 バサラもそれに乗った。
「心ゆくまでな!」
「うむ、歌おう!」
 こうしてだった。彼等は英気を充分に養うのだった。その彼等の前にだ。
 翌日にはもうだった。宇宙怪獣の大群が迫ってきていた。その数は。
「五十億です」
「五十億か」
「はい、それが第一陣です」
 副長がこうタシロに話す。
「とりあえずはです」
「とりあえずで五十億か」 
 その数を聞いてだ。タシロはこう言うのだった。
「いきなりという感じだな」
「ですが」
「わかっている」
 腕を組んで毅然とした言葉だった。
「まずはその五十億をだ」
「退けてですね」
「このまま進む」
 まさにだ。そうするというのだ。
「わかったな。それではだ」
「はい、それでは」
「全軍戦闘用意!」
 こう命じるのであった。
「まずはこの戦いに勝つ!そしてだ!」
「最終的な勝利を!」
「銀河の為に!」
 全員すぐに各機に乗り込みだ。そうしてであった。
 彼等はその五十億の大群に向かおうとする。そこにだ。
 いきなりだ。その大群にだ。二つの彗星が炸裂した。
 彗星達は宇宙怪獣達を薙ぎ倒していきだ。やがて止まった。そしてこう言うのであった。
「ふはははははははははは!未熟、未熟!」
「宇宙怪獣といえどこの程度!」
 マスターアジアとシュバルツだった。彼等が戦場に出て来たのだ。
 彼等は宇宙空間においてだ。高らかにこう言うのであった。
「ロンド=ベルの戦士達よ!」
「助太刀させてもらおう!」
「師匠!兄さん!」
 ドモンがその彼等に対して叫ぶ。
「来てくれたのか!」
「うむ、ドモンよ!」
「我等も戦わせてもらおう!」
 こう返す彼等だった。
「我等もこの銀河の為!」
「今この命を賭けよう!」
「有り難い、それならだ!」
 ドモンはその彼等に応えて言う。
「俺も!二人と共に!」
「あのね、それはいいんだけれどね」
 アスカがここで言うのであった。
「毎回毎回ね」
「どうしたの、アスカ」
「あのね、見なさいよ」
 こうシンジにも言うのだった。
「ほら、あの人達」
「うん、生身で宇宙空間にいるよね」
「しかも素手で宇宙怪獣を倒したのよ!」
「今ので百万の宇宙怪獣が減ったわ」
 マヤが報告してきた。
「二人の蹴りでね」
「・・・・・・最後の最後でどんな怪奇現象起こしてるのよ」
 アスカが言うのも無理はなかった。
「あの変態爺さんと妖怪忍者は」
「まあ敵は倒してくれたからいいんじゃないの?」
 シンジは冷静なままである。
「味方になってくれるし」
「敵だったら洒落になってないわよ」
 こんなことも言うアスカだった。
「この状況であの変態二人も敵なんて」
「アスカって最後の最後まであの人達苦手なんだね」
「得意だって人いるの?」
「綾波がそうじゃない」
「ここで来られるなんて」
 レイは頬を赤らめさせてマスターアジアを見ていた。そのうえでの言葉だった。
「素敵にも程があるわ」
「ほら、ああ言ってるし」
「綾波の趣味はおかしいのよ」
 アスカは断言だった。
「絶対にね」
「そうか?」
 トウジがそのアスカに言う。
「俺はええと思うで」
「それはあんたがあれだからよ」
「あれって何や」
「ドモンさんにそっくりだからよ」
 それでだというのだ。
「だからよ。あんたはそう思えるのよ」
「ここでもそれかい」
「何度でも言うわよ。とにかく綾波の趣味はね」
「あかんねんな」
「もう何から何までおかしいわ」
 そうだというのである。
「全くね」
「けれど。あれだよ」
 ここでこう言うシンジだった。
「あの人達が来てくれたのは」
「それはわかってるわ」
 冷静に話すアスカだった。そのことはだった。
「もうね」
「そうだね。それじゃあ」
「ええ、共闘よ」
 アスカはまた言った。
「あの人達とね」
「うむ、誇り高き戦士達よ!」
「我等も共に戦おう!」
 マスターとシュバルツも言ってきた。
「今こそここでだ!」
「熱き魂を交えさせる!」
「さあ来るのだ我が盟友よ!」
「私の前に!」
 そして。何処からともなくだ。
 マスターガンダムとガンダムシュピーゲルが姿を現してだった。
 二人はそれに乗り込み。何処からか声がした。
「ガンダムファイト!!」
「レエエエエエエエデエエエエエエエイ!!」
「ゴオオオオオオオオッ!!」
 大爆発が起こり二人が身構えだ。二機のガンダムが戦場を舞う。
 彼等の戦いによりだ。宇宙怪獣の大群は。
 その数を次々に減らしていく。一秒ごとに無数の宇宙怪獣達が滅びる。
 それを見てだ。タシロが言う。
「諸君、今だ!」
「はい、今ですよね!」
「ここで!」
「全軍突撃だ!」
 そうするというのだった。
「いいな。今こそ勝機だ!」
「わかってます!」
「それなら!」
「ここから一歩も引いてはならない!」
 タシロは強い声でこうも告げた。
「いいな、我等は前に進むのみ!」
「了解!」
「それなら!」
「全砲門開け!」
 エクセリオンに指示を出した。
「前だ!とにかく前を狙え!」
「了解です!」
「では!」
 こうしてだ。エクセリオンも攻撃を仕掛けだ。ロンド=ベルは全軍を挙げて宇宙怪獣の中に飛び込んだ。
 四方八方敵しかいない。その中でだ。
「撃て!」
「狙いを定める必要はない!」
「とにかく撃て!」
「斬れ!」
「殴るんだ!」
 こうしてだ。手当たり次第に攻撃を浴びせる。その中には。
 ユングもいた。彼女もマシンを動かし叫ぶ。
「ジャコビニ流星アターーーーーーーック!」
 その攻撃でだ。宇宙怪獣達を炎に変えていく。戦いはあまりにも激しい。
 しかしロンド=ベルはだ。徐々にではあるが確実にだった。
 彼等を押していた。とりわけだ。
 マスターアジアとシュバルツがだ。縦横に暴れていた。
「この程度では!」
「銀河を破壊することなぞできん!」
 こう叫びながらだ。宇宙怪獣達を粉砕していく。
 そしてだ。マスターアジアは。
 その手に力を帯びさせ。そのうえで。
「ダークネスフィンガーーーーーーーーーーッ!」
「シュツルム!ウント!ドランクゥッ!」
 シュバルツもだ。嵐となりだ。
 それぞれ合体型を葬る。一撃でだった。
 大爆発を見てだ。ロンドべ=ベルの戦士達は言った。
「流石だな」
「前よりもずっと強くなってるよな」
「前も洒落にならない強さだったのに」
「今はもう」
「鬼神だな」
「ああ、尋常じゃない」
 こう言う彼等だった。
「味方でよかったぜ」
「あの人達が今敵だったらな」
「想像するだけでも怖いな」
「全くだぜ」
 彼等をしてだ。こう言わせるものだった。
 そのうえでだ。彼等もだ。
 宇宙怪獣達を倒していく。そうして遂にだった。
 五十億の大群をだ。一匹残らずだった。
「敵、反応なくなりました!」
「そうか、やったか」
 タシロは副長の話を聞いて言った。
「遂にだな」
「はい、やりました」
「最初の戦いは終わった」
 こう言うタシロだった。
「だが。あくまで最初だ」
「まだまだこれからですね」
「我々の勝利はあくまでだ」
 厳しい顔での言葉だった。
「敵を最後まで倒しだ」
「生き残ることですね」
「それまで勝利はない」
 これがタシロの言葉だった。
「わかったな。それではだ」
「それではですか」
「全軍補給を受けだ」
 そしてだというのだ。
「応急の整備を受けた後でだ」
「再びですね」
「全軍進む」
 こう言うのである。
「わかったな。それではだ」
「では今よりですね」
「補給と整備」
「それを行いましょう」
 こうしてだった。全軍補給と整備に取り掛かるのだった。
 その中でだ。アレンビーが言うのだった。
「有り難い話よね」
「全くだ」
 キメルが彼女の言葉に頷く。
「この方々が加わってくれたのはな」
「百人力ね」
「まさにその通りだ」
「そうですね。それにしても」
 レインは常識から話した。
「よくここまで来られましたね」
「ふふふ、我等にとっては造作もないこと」
「ここまで来ることもな」
 こう何でもないと返す二人だった。
「この銀河の危機ならばだ」
「戦いに加わるのは当然のこと」
「それでなんだ」
「来てくれたのか」
 サイシーとヂボデーがそこまで聞いて言う。
「確かにそれは有り難いね」
「何しろ相手が相手だからな」
「貴方達が来て頂いたからには」
「希望が見えてきた」
 ジョルジュとアルゴも言う。
「宜しく御願いします」
「これからもな」
「いや、希望というがだ」
「それは違う」
 二人は希望についてだ。どうかというのだった。
「希望は最初からあるのだ」
「それは君達だ」
 こう返す彼等だった。
「だからだ。希望が見えてきたのではなくだ」
「見えるようになったのだ」
「そうか。そうだな」
 ドモンが二人のその言葉に頷く。
「最初から希望はある。それならだ!」
「左様、後はその希望を掴み取るのみ!」
「その手にだ!」
 二人もドモンに続く。
「ではその希望に向かいだ!」
「進むのだ!」
「戦いも残り僅かだし」
 レインもだ。希望から話した。
「それならね」
「希望に突き進む!」
 ドモンもまた叫んだ。
「いいな、行くぞ!」
「うむ、行くぞドモン!」
「このままだ!」
 こうした話をしてだ。そのうえでだった。
 彼等はだ。さらに進むのだった。新たな戦士を加えだ。
 その中でだ。シュウはチカにこんなことを話していた。
「さて、新たな戦士達が加わりましたが」
「それでもですね」
「宇宙怪獣達との戦いは問題ではありません」
 こう言うのだった。
「問題はです」
「その後ですよね」
「はい、全ての世界を消そうとするあの彼とです」
「決着をつけますね」
「そうなります」
 シュウはチカに話すのだった。
「そちらの方が大きいのです」
「これだけの戦いが序章なんですね」
「最後の戦いの序章です」
 そうだとだ。シュウはチカに話すのである。
「それに過ぎないのです」
「あいつ、じゃあ宇宙怪獣達との戦いの後で」
「絶対に出て来ます」
「ですね。ここぞという時に」
「彼等も出て来ますよ」
 シュウはさらに話すのだった。
「あの彼等も」
「ああ、そういえばいましたね」
「思い出されましたね」
「あの女とあいつですか」
「彼等も。まだ役割は残っていますから」
「役割って。そんなのあったんですか」
「はい、あるのです」
 あるとだ。シュウはチカに話す。
「彼等にしてもです」
「嫌ですねえ」
 シュウの話を聞いてチカはこんなことを言った。
「さっさとどっかで隠棲してればいいのに」
「ですが彼等はそうは思いません」
「あくまでやるんですね」
「はい、そうします」
「それじゃああいつとの最後の戦いの前に」
「彼等との戦いになります」
 そうなるというのである。
「では。宜しいですね」
「ええ、わかってますから」
 こうシュウに答えるチカだった。
「あたしもこうなったらとことんまで付き合いますよ」
「そうしてくれますか」
「だってあたしはですよ」
「貴女は?」
「ファミリアですから」
 だからだというのだ。
「御主人様と何処までも一緒ですよ」
「有り難い。それでは」
「実際にですね」
 チカはシュウにこうも話した。
「あたし御主人様好きですよ」
「ファミリアとしてでなくですね」
「ええ、御主人様って人間が好きなですよ」
 そうだと話すのである。
「大好きですよ」
「大好きですか」
「はい、本当に」
「そうですね。私もです」
「御主人様もあたしをですか」
「嫌いではありません」
 こうチカに言うのである。
「決して」
「それは何よりですよ。両想いってことですから」
「そうですね。それではです」
「先に進みましょう」
 こうしてだった。彼等は再び戦いに向かう。宇宙怪獣達との最後の戦いはまだこれからだった。はじまりに過ぎなかったのである。


第百二十八話   完


                       2011・6・13 

 

第百二十九話 思わぬ和解

                 第百二十九話 思わぬ和解
 整備と補給を終え再び進撃するロンド=ベル。その彼等にだ。
「もう来るのか」
「敵の第二陣かよ」
「その数七十億です」
 メイシスが話す。
「それが第二陣です」
「第一陣より二十億も多いのね」
 リツコはそれを受けてこう言った。
「やっぱり敵もね」
「本気だということね」
「そうね。ところでメイシス」
 リツコはそのメイシスに話すのであった。
「貴女前から思ってたけれど」
「わかるわ。私も貴女も」
「同じね」
 微笑んで言うリツコだった。
「御互いにね」
「そうね。最初に会った時から思っていたわ」
 これも二人共だった。
「そうした相手がいるのはね」
「やっぱりいいわね」
「そうなんですよね」
 レフィーナも出て来て笑顔で話す。
「私も実は」
「はい、私ですね」
 サリーが笑顔で出て来る。レフィーナと同じ笑顔だ。
「そうですね」
「そうよ。私達は同じね」
「外見も生まれ育ちも違うのに」
 それでもなのである。
「それでも」
「私にもそうした相手がいるなんて」
「とても嬉しいです」
「しかし。そういう人間関係って多いな」
 首を傾げて言うのはアルトだ。
「俺はそういう相手がいないのがな」
「残念ですよね」
 慎悟も彼に同意する。
「僕も少し」
「そうよね。寂しい話ね」
 神代も二人と同じ意見だった。
「仕方ないけれど」
「とにかく話を戻すけれどね」
 リツコがあらためて話す。
「敵がまた来るわ」
「その七十億の敵がか」
「こっちに来るんだよな」
「ちょっとなあ。五十億の次は七十億」
「洒落にならないよな」
 彼等は真剣な顔で話していく。
「その七十億の敵にどう向かうか」
「問題はそれだけれど」
「さて、それじゃあ」
「頭を切り替えて」
「それでいくか」
「そうしよう」
「戦っているのは我々だけではない」
 タシロも皆に話す。
「誰もが同じだ」
「そうですね。殴り込み艦隊の皆が」
「宇宙怪獣と戦いながら進んでいますよね」
「銀河の中心に」
「最後の戦いに」
「だからだ。我々もだ」
 また言うタシロだった。
「一歩も引く訳にはいかないのだ」
「わかりました。いえ、あらためてわかりました」
「だから七十億でも百億でも」
「敵に向かいましょう」
「俺達が生き残る為に」
「そうしましょう」
 こうした話をしてだった。彼等は敵の第二陣にも向かうのだった。その彼等の前にだ。
 宇宙怪獣の大群が来た。その数は。
「七十億、間違いない」
「数はドンピシャか」
「少なかったらよかったんだがなあ」
「そうはいかないか」
「おそらくだが」
 副長が出撃するロンド=ベルの面々に話す。
「敵の本拠地はこんなものではない」
「数はもっと多いんですか」
「七十億以上ですか」
「っていうかこんなものじゃないんですね」
「もっと多いんですか」
「三百億はいる」
 それだけだというのである。
「いや、もっとなのかも知れない」
「三百億、多いな」
「ああ、多いな」
「ガルラ帝国並だよな」
「少なくとも質は宇宙怪獣の方が上だしな」
 宇宙怪獣の個々の強さもだ。かなりのものなのだ。
「それであれだけの数だからな」
「あの時より厳しい戦いになるな」
「数も宇宙怪獣の方が多い」
「それじゃあ」
「やっぱり」
「だがそれでもなんだよな」
 答えがまた出される。
「俺達は戦わないといけない」
「そう誓ったんだ」
「生き残る為」
「運命を切り開く為に」
 あらためて決意を固めてだ。そのうえでだ。
 その七十億の大群に向かう。戦いがはじまろうとしていた。しかしだ。
 その彼等の横からだ。急に彼等が出て来たのだった。
「えっ、あれは」
「バッフクラン軍!?」
「急に出て来たけれど」
「数は減ったな」
 彼等との最後の戦いの時と比べてもだ。
「けれどまだ結構いるな」
「あれだけの数が急にか」
「急に出て来たのか」
「くっ、こんなところで出会うとはな」
 そのバッフクラン軍の方からだ。舌打ちが聞こえてきた。
「運が悪い」
「ロゴ=ダウの者達と宇宙怪獣達か」
「どちらも忌むべき相手だ」
「その両方にここで会うか」
「忌々しいことだ」
「どうする?」
 彼等はそれぞれ彼等の中で話すのだった。
「やはりここは退くか」
「だが最早母星はない」
「我等の銀河も壊滅している」
 彼等もこのことを知ったのだ。ドバの死以降の混乱の中で。
「帰る場所はないのだぞ」
「その我等がどうして生きるのか」
「それすらもわかっていないというのに」
「ここでこの連中と遭遇するとは」
「どうすればいいのだ」
「戦うか」
 最初にこの選択肢が出された。
「ここはそうするべきか」
「今ここでか」
「奴等と戦うのか」
「そうだ、ロゴ=ダウの者達も宇宙怪獣達も倒す」
 この選択肢についてさらに話される。
「そうして生き残るか」
「戦わなければ生き残れない」
「そういうことか」
「生き残る為に戦う」
「それしかないのか」
「いや、戦ったとしてもだ」
 ここでだ。別の意見が出された。
「生き残る保障はないぞ」
「そうだ、むしろ全滅する可能性の方が高いぞ」
「ここで死んでも何にもならないではないか」
「それでも戦うのか」
「それが愚だぞ」
 戦いを否定する言葉にだ。同調する者達も出ていた。
「ここは撤退すべきだ」
「無謀な戦いは避けるべきだ」
「今はそうするべきだ」
「ましてや今の我々はだ」 
 彼等の現状についても話される。
「総司令もおられなければバイラル=ジンもない」
「戦力も二割を切っているのだぞ」
「それで今戦うのか」
「生き残ることはできないぞ」
「ではどうするというのだ」 
 あらためてだ。主戦派が主張する。
「ここで逃げて何になるのだ」
「そうだ、我等には最早生き残る道は少ないのだ」
「それでどうするのだ」
「逃げて何になるのだ」
「戦うべきだ」
 そしてだ。はっきりと主張が為された。
「さもなければ生き残れないのだ」
「ここは戦うべきだ」
「逃げても宇宙怪獣達に襲われるだけだ」
「しかもだ」
 尚且つとだ。意見が述べられる。
「ロゴ=ダウの者達に復讐戦を挑まないのか」
「敵討ちを取るのはもむのふとして当然のことだ」
「それをせずに敵に背を向けるのか」
「それがもむのふのすることか」
「臆病にも程がある」
「それで生き残ってどうするのだ」
 主戦派も引かない。こうしてだった。
 彼等はまず身内で紛糾する。しかしだ。
 その間にだ。宇宙怪獣達は。
 急に彼等のところにだ。新手が出て来たのである。
「くっ、来たか!」
「その数三十億!」
「相変わらず何という多さだ!」
「どうする!?」
 この状況でもだ。彼等は中で紛糾していた。
「戦うか!?それとも逃げるか!?」
「一体どうするのだ!」
「決断を急げ!」
「さもなければ無駄死にだぞ!」
 彼等は戦闘準備すら整えられなかった。その彼等にだ。
 宇宙怪獣達は容赦なく迫る。このままでは。
「いかん!まずいぞ!」
「全滅するぞ!」
「とにかくどうするのだ!」
「戦うのか?それとも」
「逃げるのか!」
 まだそのことを決められない彼等だった。だが。
 その彼等にだ。思わぬ援軍が来た。それは。
「うむ、これはだ!」
「見捨ててはおけぬ!」
 マスターアジアとシュバルツがだ。いきなりだ。
 その三十億の宇宙怪獣達に突進してだ。薙ぎ倒していくのだった。
「窮地にある者を救う!」
「それもまた我等の務め!」
 こう言ってである。
「例え過去に何があろうとも!」
「それは問題ではない!」
 楚の言葉を受けてであった。ロンド=ベルの仲間達もまた。
「そうだよな」
「確かに。前まで敵だったけれど」
「それでも。今は敵じゃない」
「それじゃあ」
「よし、全軍いいだろうか」
 タシロもだ。ここで言うのだった。
「ここはだ」
「はい、バッフクラン軍をですよね」
「助けに」
「そうだ、彼等を助ける」
 こうはっきりと言うのだった。
「そうする」
「ですが艦長」
 副長はそのタシロにあえて言った。
「ここはどうされるのですか」
「どうするかか」
「はい、どうされますか」
「まずは正面の敵を突破する」
 そうするというのである。
「そしてだ」
「そしてですか」
「さらにですね」
「バッフクラン軍まで合流する」
 つまりだ。敵軍を突破してだ。彼等のところに向かうというのだ。
「わかったな、それで行くぞ」
「敵中突破か」
「それでいくっていうのか」
「派手だな」
「っていうか無茶だよな」
「それはあるよな」
 こう話す彼等だった。しかしだ。
 その彼等もだ。意を決して言うのだった。
「まあそれはいつもだからな」
「それじゃあやるか」
「ここでもな」
「無茶をな!」
「そうだ、あえて無茶をやるのだ!」
 タシロもだ。無茶という言葉に我が意を得たのだった。
 そしてそのうえでだ。全軍に命じるのだった。
「では諸君、いいな!」
「はい、敵中突破!」
「今こそ!」
 こうしてだ。全軍でだった。
 そのまま敵中に突撃してだ。敵中に踊り込む。
 正面に攻撃を集中してだ。敵陣に穴を開けながら進む。それを見てバッフクラン軍の将兵達は驚きの声をあげた。
「な、何っ!?」
「我等を助けに来ているだと!?」
「馬鹿な、ロゴ=ダウの者達が!」
「我等を助けるなぞ!」
「敵だったのだぞ。この間まで!」
「それでもだというのか!?」
 驚く彼等にだ。シュバルツがだった。
「そんなことはどうでもいい!」
「な、何っ!?」
「どうでもいいだと!?」
「そうだというのか!」
「そうだ、どうでもいい!」
 また言う彼だった。
「窮地に陥っている者を救う!」
「それが人間なのだ!」
 マスターアジアも言う。
「だから救う!」
「それだけのことよ!」
「人間だというのか」
「困っている者を救うことか」
「それがか」
「人間だというのか」
「その通りだ!」
 シュバルツの声ははっきりとしている。
「わかったな、それではだ!」
「助太刀しよう!」
 言いながらだ。さらにであった。
 彼等はそのまま戦いだ。敵を倒していくのであった。
 そしてロンド=ベルの面々もだ。さらにだった。
 七十億の敵を突破してだ。三十億の敵もだった。
 その中を突破して。遂にだった。
「よし、合流したぜ!」
「これでな!」
「何とかなるな!」
「一体何を考えているのだ」
 バッフクラン軍の者達は驚きながら彼等に問うた。
「まさか。敵であった我々を助けるなぞ」
「しかも合わせて百億の敵を突破してだと?」
「正気とは思えん」
「何を考えているのだ」
「だから。さっきから言われてるだろ?」
 コスモがその彼等に話す。当然イデオンも出撃している。
「人間だからだよ」
「人間だからか」
「それでか」
「それでだというのか」
「そうだ、それでなんだよ」
 コスモもだ。シュバルツ達と言うことは同じだった。
「俺達はここにこうして来たんだよ」
「我等の前に」
「百億の敵を突破して」
「そうだというのか」
「そうだよ。わかったな」
 また言う彼だった。
「だからだよ。助けさせてもらうぜ」
「本当にいいのだな。我等を助けて」
「そうしてだ」
「いいというのだな」
「ああ、いいんだよ!」
 コスモの答える声が強くなる。
「わかったらな、さっさと逃げるか一緒に戦え!」
「う、うむ。わかった」
「それではな」
「我々も助けられてばかりではな」
「しめしがつかん」
 誇りがだ。いい意味で彼等を刺激したのだった。
 そしてだ。彼等もまただった。
 バッフクラン軍も本格的に戦う。彼等の力も得てだ。
 ロンド=ベルは百億の大群を退けていく。百億といってもだった。
「へっ、数だけだぜ!」
「そうだな!」
 イザークがディアッカの言葉に応える。
「例え二百億でも三百億でもだ!」
「負ける気がしねえ!」
 こう言ってだ。彼等は宇宙怪獣達にミーティアで攻撃を浴びせるのだった。
「このままな!」
「押し切る!」
「はい、少なくとも今はです」
 ニコルもだ。デスティニーガンダムから攻撃を浴びせるのだった。
「負ける気がしません」
「やはり突破したことでかなりの敵を倒せた」
 ミゲルはその突破に大きなものを見ていた。
「数も減らせたし陣も崩壊させられた」
「その通りだ。そうなってはだ」
 ハイネも言う。
「我々の敵ではなくなる」
「それではです」
「ここは押し切るわ!」
 フィリスとエルフィも攻撃を仕掛けている。
「そうしてこの戦いを凌いで」
「次の戦いに!」
「何だかんだでまだ先があるからな」
 ジャックは攻撃を浴びせながら話す。
「ここでやられたら話にならないからな」
「全軍このまま攻撃を続けろ!」
 シナプスが指示を出す。
「狙いは定めるな。このまま仕掛けていけ!」
「了解です!」
「それなら!」
 こう話してだ。彼等はそのまま百億の敵を倒していきだ。
 遂にだ。その百億の敵が。最後の合体型だけになった。
 その合体型を見ながら。ノリコはカズミに言った。
「お姉様、バットで」
「打つのね」
「ええ、それでいいわよね」
「ええ、あれで決めましょう」
 カズミもこう答える。
「あの一撃で」
「ええ、それなら!」
「一球入魂よ、ノリコ!」
 カズミはノリコに告げた。
「いいわね!」
「わかったわ。バスターホームラン!」
 こう叫んでだ。そのうえでだ。
 バットを出してそれでボールを打つ。そのボールが。
 一撃でだ。合体型を貫いた。そのうえでだった。
 宇宙怪獣は大爆発を起こしてだ。炎と化して消えたのだった。こうして百億の大群を相手にした戦いは何とか幕を閉じたのだった。
 そのうえでだ。会談となった。
 バッククラン軍の面々はタシロ達にだ。こう言うのだった。
「今も信じられん」
「我等を救うなぞ」
「まさか。敵であった彼等に」
「本当にそうするとは」
「夢の様な話だ」
「何度も言うけれどな」
 その彼等にだ。またコスモが話す。
「人間だからだよ」
「だからか」
「我等をか」
「そうなのだ」
「そうだよ。本当に何度も言わせるよな」
 コスモも苦笑いと共に言う。
「あんた達もしつこいよな」
「ううむ。それはわかった」
「だが。我等はだ」
「最早だ」
「何の価値もないのだ」
「価値か」
 ギジェがかつての同胞達の言葉に応えた。
「バッフクランの銀河も崩壊しているな」
「本星もだ」
「隕石雨によってそうなってしまった」
「最早あの銀河でも残っている者は僅かだ」
「バッフクランは崩壊した」
「我等の銀河と共にだ」
「それではだ」
 その彼等にだ。ギジェはあらためて問うた。
「貴殿等はこれからどうするのだ」
「それもわからん」
「ここにいる理由も最早ない」
「それを考えれば撤退すべきだが」
「それでもだ」
「帰ることすらおぼつかぬ」
「それが今の我等なのだ」
 その彼等にだ。シュウが声をかけた。
「宜しいでしょうか」
「むっ、貴殿は一体」
「ロゴ=ダウの者だな」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。シュウはまずは答えた。
「シュウ=シラカワといいます」
「それが貴殿の名か」
「そうです。それでなのですが」
「まさかと思うがその技術を持っているのか」
「我等が我等の銀河に戻るその技術」
「そして復興の技術を」
「ここに」
 こう言ってだ。すぐにだった。
 シュウはその手にパワーメモリーを持っていた。それをバッフクラン軍の将校の一人に差し出す。そのうえであらためて話すのだった。
「それの中にあります」
「地球のパワーメモリーか」
「この中にあるのか」
「我等の希望」
「その技術が」
「そうです。貴方達の事情はわかっています」
 そのだ。崩壊の事情がだというのだ。
「隕石雨による崩壊ですね」
「そうだ。この銀河と同じだ」
「全てはな」
「では。それで充分です」
 また答えるシュウだった。
「帰還も復興もできます」
「そうなのか。まことにか」
「我等は帰ることができるのか」
「そして復興できるのか」
「バッフクランを」
「その頃にはです」
 彼等が彼等の銀河に帰る。その頃にはというのだ。
「今の騒ぎも終わっています」
「アポカリュプシス」
「それもまた」
「私達の勝利によって」
 そうだとだ。微笑んで答えるシュウだった。
「そうなりますから」
「言うものだな。この破滅にか」
「勝利を収めるというのか」
「貴殿等が」
「その通りです。御安心下さい」
 まるで自分の家のベランダに出てそこから帰る様な。気軽な言葉だった。
「何の心配もいりません」
「言うものだな。しかしだ」
「まずはこのメモリーを確めさせてもらう」
 それからだというのだ。
「それから考えさせてもらう」
「具体的にな」
「?具体的にって?」
 カーシャは彼等の言葉からだ。こう彼等に言った。
「何よ、具体的にって」
「やがてわかることだ」
 そのカーシャにだ。ギジェが言った。
「今は見ていることだ」
「何よ、わかってるみたいな口調じゃない」
「おおよそだが」
 わかっているとだ。実際にこう述べるギジェだった。
「だからだ。今は見ていよう」
「何かわからないけれどわかったわ」
 カーシャは首を捻りながら述べた。
「そうさせてもらうわよ」
「うむ、今はな」
「では。今はだ」
 最後にタシロが言う。
「全軍再び整備と補給だ」
「ですね。敵の第二陣も突破しましたし」
「いよいよ敵の巣に殴り込みですし」
「だから余計に」
「今は」
「そうだ。いよいよ作戦の最後だ」
 タシロも顔を引き締めさせている。
「決めるとしよう」
「了解!」
「じゃあ整備と補給を受けて」
「それで!」
 こうしてであった。彼等は今最後の戦いに向けて整備と補給を受けてだ。そのうえでだ。英気を養いそのうえで思いを一つにしていたのだった。


第百二十九話   完


                        2011・6・15  

 

第百三十話 終わりのはじまり

             第百三十話 終わりのはじまり
 カーシャはその話を聞いてだ。まずはだ。
 大声でだ。こう言ったのだった。
「嘘よ、そんな!」
「ああ、やっぱりな」
「否定したか」
 コスモとギジェが彼女のその反応を見て言う。
「予想通りだな」
「叫んだ言葉もな」
「そんなの有り得ないじゃない」
 二人に言われてもだ。まだ言うカーシャだった。
「だってバッフランよ。奴等が私達と一緒に戦うなんて」
「だが本当のことだ」
「このことはな」
 こう話す二人だった。
「バッフクラン軍は俺達と一緒にだ」
「宇宙怪獣達と戦う」
「どういう心変わりなのよ」
 それがわからないといったカーシャの口調だった。
「一体全体」
「技術だ」
 ギジェがそれだというのだ。
「シュウが彼等に渡したその技術がチェックされたのだ」
「その隕石雨から復興する技術よね」
「あとは帰還する技術だ」
 それもだ。無事にである。
「その技術が。まことのものだとチェックされたのだ」
「それで本当だったのね」
「シュウは嘘を吐かないからな」
 コスモもシュウのそうした性格はわかってきていた。
「だからな」
「ううん、それでなのね」
「そうだ。これで納得したか?」
「話としてはね」
 わかったと答えるカーシャだった。
「けれど。感情ではまだ」
「それは仕方のないことだ」
 ギジェも感情についてはこう言う。
「しかし。彼等も我等と共に宇宙怪獣と戦うことになった」
「アポカリュプシスと」
「そうだ。そうなった」
 また話すギジェだった。
「新たな戦力が入ったのは事実だ」
「そのことは喜ばしいことだ」
 ベスもそうだと話す。
「とてもな」
「そうよね。いよいよ最後の戦いだし」
「戦力は少しでも多く必要だ」
 ベスはカーシャにこう話した。
「そうした状況なのだからな」
「ええ。納得はしてるから」
 それはだというカーシャだった。そうしてだ。
 ここでデクが来てだ。カーシャ達に言ってきた。
「ああ、皆ここにいたんだ」
「デク、どうしたんだ?」
「補給が整ったのか」
「うん、整備もね」
 そうしたことがだ。全てだというのだ。
「だから後は」
「出撃だな」
「いよいよ」
「うん、皆もいけるよね」
 出撃がだ。どうかというのだ。
「それも大丈夫だよね」
「ああ、大丈夫だ」
 コスモが答える。
「何時でもな」
「じゃあ行こうか」
「本当に。色々あったな」
 コスモはデクの言葉に応えながら述べた。
「これまでな」
「そうだな。私達もだ」
 ここではバッフクランの人間として話すギジェだった。
「白旗の意味を理解した」
「あれか」 
 ジョリバがギジェのその言葉に応えて言う。
「俺達の戦いのはじまりになった」
「文化の相違だ」
 それだと話すギジェだった。
「あれもまたイデの意志だったのだ」
「異なる文明の者達を戦わせる」
「その意志だった」
「そうだな。イデオンが掘り出されてから」
「全てはそうだったんだな」
「あの白旗も」
 コスモ達もだ。それぞれ話すのだった。
「そうだったんだな」
「その中でカララさんもギジェもロンド=ベルに加わって」
「俺達はイデの意志に気付いて」
「そのうえでバッフクラン軍との戦いを終えた」
「まだイデの意志に添っているかも知れないけれど」
「それでも」
「イデの真意はまだわからない」
 それはだとだ。コスモは言った。
「けれど。今は」
「そうだ。戦い生き残ることだ」
 ベスもまただ。言うのだった。
「それが俺達の今しなければならないことだ」
「なら。バッフクラン軍の申し出も受ける」
 コスモは言い切った。
「生き残る為に」
「では行こう」
「最後の戦いに」
 こうしてだった。ロンド=ベル全軍がだ。 
 戦闘配置についたうえで銀河中枢に向かう。そして彼等の周りにだ。
 宇宙怪獣の大群が現れた。その数は。
「ええと、千億を超えてます」
「四千億でしょうか」
「一兆いるかも知れません」
「尋常な数じゃないです」
 こうだ。報告が次々にあがる。
「殴り込み艦隊全体が囲まれてます」
「無論我々もです」
「バスターマシンごと」
「最初からこのつもりだったな」
 タシロは報告を聞きながら述べた。
「我々を待っていたのだ」
「それで、ですか」
「こうして全軍で取り囲んで」
「そのうえで」
「向こうも必死だ」
 そのだ。宇宙怪獣達もだというのだ。
「目的の為にな」
「銀河を滅ぼすですね」
「その目的の為に」
「だからですか」
「こうしてきましたか」
「その通りだ。そしてだ」
 タシロはモニターに映るその無数の宇宙怪獣達を見ながら話す。
「我々も必死だ」
「では今から」
「戦闘ですか」
「最後の」
「諸君、補給タンクは腐る程ある!」
 そのだ。補給はというのだ。
「エネルギー、弾薬が切れれば自動的に補給されるようになっている!」
「つまりか。撃墜されないだけ充分に戦える!」
「そうだな!」
「それなら!」
「思う存分戦うのだ!」
 最早だ。ここまで来れば戦術も戦略もなかった。
「いいな、総員健闘を祈る!」
「了解!」
「わかりました!」
「それで!」
「我等もだ!」
「ここが運命の分かれ目だ!」
 殴り込み艦隊からだ。ハイネルとリヒテルも言う。
「よいか!退くな!」
「退こうとも死があるのみだ!」
「生き残りたくばだ!」
「戦え!」
 そしてだ。ゾヴォークの面々もいた。
「さーーーて、そーーれじゃはーーじめますか」
「そうだな」
 メキボスがゼブの言葉に頷く。
「まさに正念場だな」
「じゃあーーー、俺も本気だーーすからね」
「その間延びした喋り方は結局変わらないのね」
 アキーハは彼の喋り方に突っ込みを入れる。
「もっとも。そうした喋り方じゃないとね」
「ゼブには思えないことは確かだな」
 当然ヴィガジもいる。
「シカログが無口なのと同じだ」
「・・・・・・・・・」
 やはり喋らないシカログだった。しかしだ。
 そのシカログを見てだ。ロフとセティは微笑んでこう言うのだった。
「やはりな」
「シカログは無口でないとね」
「これも個性なのかね」
 メキボスはいささか懐疑的であった。
「俺達もよく考えたらな」
「個性的ではあるな」
「ああ、じゃあゼブいいな」
 あらためてゼブに言うメキボスだった。
「はじめるぜ」
「最早何も考える必要はない」
 こう言うゼブだった。
「ただ戦うだけだ」
「いいか!皆聞け!」
 メキボスも全軍に指示を出す。
「とにかく撃て!撃ちまくれ!」
「そうしてですね」
「宇宙怪獣達を」
「そうだ。狙いを定める必要はないからな!」
 最早その必要はないというのだ。
「生き残れ!それだけだ!」
「了解!」
「それなら!」
 こうしてだった。彼等も戦いに入った。
 それはバルマーも同じでだ。ジュデッカ=ゴッツォが命じる。
「いいな」
「はい」
「これより」
「全軍を挙げて戦う」
 こうだ。ラオデキア達に言うのである。
「我々には切り札もある」
「ズフィルード」
「それを使うことも」
「念頭に入れておくことだ。それではな」
「全軍戦闘用意!」
「かかれ!」
「この戦いが全てを決める」
 ジュデッカ=ゴッツォも意を決した顔である。
「銀河を」
「いいか」
 ゼンラーディもメルトランディもいる。指揮官はブリタイだ。
「この戦いに勝ちだ」
「プロトカルチャーを守る」
「そうするのですね」
「そうだ。我等もまた人間だ」
 そのだ。プロトカルチャーを知るだ。
「人間として。戦うのだ」
「了解です」
「それでは」
「そう、歌だ」
 ここでだ。また誰かが来たそれは。
 ゲペルニッチだった。彼もまた来た。プロトデビルン達もだ。
「歌は何もかも変える」
「その通りだ。貴殿もそれがわかったのだな」
「そう、わかった」
 その通りだというのだ。
「それではだ」
「共に戦うとするか」
「銀河の為に」
 ブリタイと話してだ。そうしてであった。
 プロトデビルン達も加わりだ。全銀河を賭けた戦いがはじまった。
 一兆にも及ぶ宇宙怪獣の大群は殴り込み艦隊を襲う。当然先陣のロンド=ベルにもだ。
「こっちは五千億です!」
「それだけ来ました!」
 こう報告があがる。
「宇宙怪獣達の半分がです」
「こっちに来ました!」
「やはりな」
 タシロはそれを聞いて静かに頷いた。
「バスターマシンのことをわかっているな」
「はい、まさに」
 副長もタシロのその言葉に頷く。
「そして我々のことも」
「最大の脅威と認識しています」
「アポカリュプシスのな」
「なら艦長」
 副長はあらためてタシロに言う。
「ここはです」
「そうだ。数がどれだけいようともだ」
 タシロもだ。既に覚悟を決めていた。そのうえでの言葉だった、
「我々は戦う、そして勝つのだ」
「そうしなければ生きられませんから」
「全軍迎撃用意!」
 タシロもまた全軍に命じた。
「いいな、何としてもバスターマシン三号を守れ!」
「ええ!」
「わかってます!」
「そして皆生き残れ!」
 こうも命じる田代だった。
「いいな、何があってもだ!」
「はい!」
「それじゃあ!」
 こうしてだった。五千億の宇宙怪獣とだ。ロンド=ベルの戦いがはじまた。
 宇宙怪獣達が殺到する。その彼等にだった。
 ロンド=ベルは攻撃を浴びせる。接近した宇宙怪獣達にだ。
 ウーヒェイがだ。グレイブを振り回してだ。
 敵中に切り込み。グレイブを切り回し両断していく。
「幾らいようともだ!」
「ここまできたらどうってことないぜ!」
 デュオもだ。サイズを振り回して切っていく。
「接近した奴等は俺達は引き受ける!」
「遠い連中は頼んだぜ!」
「うむ」
「わかっている」
 ヒイロとトロワが応える。そしてだ。
 バスターライフルと一斉発射でだ。遠間の敵も薙ぎ倒す。カトルも。
「カトル様!」
「それじゃあですね!」
「ここで!」
「はい、一斉攻撃です!」
 周りにいるマグアナック隊にだ。こう命じるのだった。
「御願いします!」
「了解です!」
「わかりました!」
 彼等も攻撃を浴びせる。そしてだ。
 マイクもだ。兄弟達に言う。
「ヘイ、ブラザーーーー!」
「イエーーー!」
「わかってるぜ!」
 彼等も応えてだ。派手にギターを奏でる。
「今は最高のステージだっぜ!」
「全開で行くぜ!」
「その通り!こんな最高の舞台はないぜ!」
 マイクも言いだ。その音楽でだ。
 宇宙怪獣達を粉々にしていく。その戦闘中にだ。
 タシロがだ。全軍に言う。
「あと十分だ!」
「十分!?」
「十分っていうと」
「十分でバスターマシンが爆発する!」
 そうなるというのだ。
「それで宇宙怪獣達も奴等の巣を吹き飛ばす!」
「あと十分守れば」
「それで、ですね」
「この戦いは俺達の勝ち」
「そうなりますね」
「そうだ、あと十分だ」
 銀河の運命を決める十分だった。
「あと十分で勝てる」
「その間この連中を防げば」
「それで勝てる」
「じゃあ」
「防ぐのだ!補給は気にするな!」
 エネルギータンクは無数にある。そういうことだった。
「とにかく防げ!近寄せるな!」
「はい!バスターマシン!」
「何があっても!」
 こうしてだった。彼等はだ。
 五千億の大群を何とか防ぐ。だが彼等は。
「幾らでも来るな」
「もうどれだけ倒した!」
「その五千億倒してるよな」
「とっくの昔にな」
 宇宙怪獣達もだ。ありったけの力をぶつけてきていた。
「もう六千億倒してるぜ」
「まだ出て来るなんてな」
「どんだけの数がいるんだよ」
「よくもまあこれだけ」
「いるものだよな」
「全く」
「二兆は倒している筈だ」
 後方からだ。ブリタイが言ってきた。
「だが。それでもだ」
「まだいるってのかよ」
「宇宙怪獣ってのはどんだけでも涌いてくるな」
「蟲みたいな奴等だよ」
「そうだ。蟲だ」
 その通りだとだ。ブリタイも言う。
「宇宙を喰らう蟲だ」
「じゃあ蟲ならな!」
「どんだけでも倒してやる!」
「そうしてやる!」
 こうしてだった。彼等もだった。
 全軍で戦う。だが損害は。
「殴り込み艦隊の損害がかなりのものになっています」
「そうか」
 タシロはまた副長の言葉に頷く。そのエクセリオンもかなりのダメージを受けている。
「彼等もか」
「かろうじて戦闘力を維持している状況です」
「我々もな」
 そのだ。彼等もなのだった。
「今の状況はだ」
「何とか撃墜された機体も沈められた戦艦もないですが」
「限界に近付いている」
 それがだ。彼等の状況だった。
「あと五分戦えばだ」
「全滅ですね」
「だが。あとだ」
「はい、一分です」
 その十分が終わろうとしているのだ。
「一分だけです」
「その一分だ。守りきる」
 そうするとだ。言いきりだった。
 飽くなき攻撃を続ける宇宙怪獣達にだ。ありったけの魚雷を放つのだった。
「撃て!いいな!」
「了解!」
「あのでかいのを!」
「挟まれる前に沈めろ!」
 合体型を魚雷で沈める。また大爆発が起こる。
 だがその合体型も無数に来てだ。まだ攻撃を続けてくる。
 だが、だ。遂にだった。その時が来た。
「十分です」
「なったか」
「はい、なりました」
 副長は己の腕時計を見ながら告げる。
「では艦長」
「よし、はじめるぞ!」
「了解です!」
 ノリコが応える。
「今から遂に」
「そうですね」
 クスハもノリコに言う。
「これで私達は」
「まだわからないのか」
 また声がしてきた。
「無駄だということが」
「貴様か」
 クォヴレーもだ。その声を聞いていた。
「出て来たか」
「貴様も気付くか」
「気付かない筈がない」
 クスハと同じものを見ながら言うのだった。
「俺はだ」
「あの男でもあるからさ」
「わかってきた。あの男の役目が」
「それは我に対してだな」
「そうだ。貴様に対してだ」
 こうその何かに言うのである。
「監視、そしてだ」
「我を倒すつもりか」
「貴様が来るならばな」
「言うものだな。人が我を倒すというのか」
「どちらにしろ貴様が来るのならばだ」
「その時はか」
「貴様を倒す」
 クォヴレーは毅然とした声で何かに告げた。
「そうする」
「貴方は一体」
 今度はだ。クスハが何かに問う。
「何故以前から」
「何だ、こいつは」
「そうよね。何かしら」
 トウマとセレーナも気付いた。
「どうも前から俺達のことを見てたみたいだけれどな」
「何者よ、あんた」
「銀河の終焉はもうすぐ来る」
 何かは言うのだった。
「無限の力なぞなくともだ」
「誰かは知らないけれどな」
「はっきり言っておくわよ」
 トウマとセレーナが告げる。
「俺達がいる限りな!」
「そんなことさせないわよ!」
「そう言うのか」
 何かが言うとだ。シュウもだった。
 その何かにだ。こう言うのである。
「そろそろ痺れを切らしてきましたね」
「貴様か」
「気付いていましたよ、私は」 
 シュウは何かに対して告げる。
「以前から」
「何故我に気付いた」
「バルマー帝国の中枢ですら気付かなかった貴方をですね」
「あの男。ルアフでさえも」
「そしてシヴァー=ゴッツォも」
「誰も気付いてはいなかったというのに」
「どうでしょうか。あの御仁は気付いていましたよ」
 その御仁とは誰かも言うシュウだった。
「ユーゼス=ゴッツォは」
「あの男はか」
「はい、気付いていましたよ」
「だからこそあの男はだ」
「陰から手を回してですね」
「そうだ、消した」
 ユーゼスのことも話される。
「オリジナルのラオデキア=ジュデッカ=ゴッツォを送り込ませだ」
「霊帝に己の意志と信じ込ませたうえで」
「そのうえで消したが」
「私は彼よりも前に気付いていましたがね」
「だから何故気付いたのだ」
「このネオ=グランゾンはあらゆる次元を移動できます」
 シュウはそこに答えがあるというのだ。
「それによってです」
「あらゆる世界を巡ってか」
「どの世界も崩壊を迎えていました。そう」
「アル=イー=クイスか」
「彼女達は貴方が創りだしましたね」
「如何にも」
 そのことを認める返事だった。
「あの者達からもか」
「あれだけ見事な答えがあったのです」
「あらゆる次元の世界が滅亡しようとしている」
「あの世界とパラダイムシティはリンクいていました」
 その世界の崩壊のサイクルがだというのだ。
「そのアル=イー=クイスがイミテーションとするならば」
「それを創り出した者がいることに気付いたか」
「彼女達の口調もイミテーションのものでした」
 シュウはそのことも見抜いていたのだ。
「何しろ決まった周期で世界を崩壊させる。何の気まぐれもなく」
「気まぐれか」
「生物は時として気まぐれを起こすものです」
「感情はあの者達にも与えたが」
「しかしイミテーションです。イミテーションならばそうした感情は持ちません」
「まさかな。あそこから気付くとはな」
「その前に。様々な文献も読み」
 シュウはそこからも話す。
「何か。世界の陰にいるとは気付いていましたよ」
「我の存在に」
「はい、あらゆる世界の裏には誰かがいる」
「それが我だというのだな」
「気付いたのです。そして私はネオ=グランゾンを開発した」
 今彼が乗っているそのマシンをだというのだ。
「グランゾンにさらに力を注ぎ込み」
「我に対する為にか」
「もっとも。ヴォルクルスに操られたのは誤算でしたが」
「ヴォルクルスか」
「もっともあれはもう倒しました」
 ラ=ギアスの戦いにおいてだ。彼の己の因縁を全て終わらせているのだ。
「そして貴方です」
「我か」
「貴方もまた」
「どうやら解決しなければならないようだな」
 何かはこうシュウに言った。
「世界を終焉に導く前にだ」
「貴方が出来るのならね」
 シュウの言葉は挑発になっている。
「そうされるといいでしょう」
「その言葉忘れるな」
 何かは今は消えた。ここでだ。
 クスハ達は元の世界に意識を戻す。そのうえでシュウに問うのだった。
「シュウさん、今のは一体」
「何者なんですか?」
「何か。得体が知れませんけれど」
「すぐにわかりますよ」
 数はクスハとトウマ、セレーナにこう答えた。
「そう、すぐにね」
「すぐに、ですか」
「あの得体の知れない奴の正体が」
「そこで」
「貴方はもう御存知ですね」
 一人何も言わないクォヴレーにはこう問うシュウだった。
「やはり」
「イングラムが教えてくれた」
 こう答えるクォヴレーだった。
「だからだ」
「成程。彼によってですか」
「あいつがあらゆる世界をか」
「そうです。そして貴方は」
「因果律の監視者」
 己をそうだと言うクォヴレーだった。
「そうだな」
「その通りです。それではです」
「俺は戦う」
 クォヴレーは静かな声で言った。
「あいつと」
「そうして下さい。それではです」
「はい、じゃあ」
「いよいよだな」
 クスハとトウマが言う。そしてだ。
 イデオンのゲージを見て。ギジェが言う。
「コスモ、イデのゲージが!」
「どうなったんだ!?」
「一気にあがった!」
 そのゲージを見ながらの言葉だ。
「五段階目だ!」
「何っ、五段階だと!?」
「そうだ、これなら!」
「お姉様!」
 ノリコもカズミに言う。
「今は!」
「ええ、よくてよ!」
「私達一つ一つの力が!」
 こう叫ぶノリコだった。
「火が重なり!炎となる!」
「そしてその炎が集り!」
 カズミも続く。
「宇宙の未来を照らすかがり火になる!」
「皆!」
「行きましょう!」
 まだ迫る宇宙怪獣達を見ながらの言葉だった。
「この銀河全ての人達と一緒に!」
「その願いと共に!」
 そしてだ。繰り出す技は。
「スーパー」
「稲妻・・・・・・」
「キィーーーーーーーーーーーーーーーーーック!」
 その蹴りでだ。宇宙怪獣達をまとめて粉砕する。そのうえでだ。
 遂にだ。その時が来たのだった。
「シュバルツシルト半径到達まであと四十!」
「よし!」
 タシロは副長の言葉に頷く。
「敵は今のところ近付いていません!」
「遂にだよな」
「ああ、爆縮がはじまる」
「バスターマシンもあれだけダメージを受けたのに」
「まだ稼動している」
「これは」
「奇跡だわ!」
 ユングが喜びの声をあげる。
「やったわ!これで!」
「僕達はこれで」
「勝ったんだ!」
「イデにもアポカリュプシスにも!」
「本当に!」
「あと三十秒」
 副長の言葉は勝利へのカウントダウンだった。
「間も無くです」
「各機に告ぐ」
 タシロが言う。
「対電磁、対光波防御」
「了解です」
「わかりました」
「お姉様」
 ノリコも喜びの言葉をカズミに言う。
「いよいよですね」
「そうね。けれど」
「けれど?」
「気を抜いては駄目よ」
 流石だった。カズミはこうした状況だからこそ気を引き締めているのだ。
「決してね」
「そうですね。今は絶対に」
「例え何があっても」
 その気を引き締めた顔での言葉だ。
「私達は希望を捨てたら駄目よ」
「わかりました」
 ノリコも頷く。そしてだった。
「十秒前」
「あと九」
「八」
「七」
「六」
「五」
 カウントダウンが数えられていく。
「四」
「いよいよだな」
「ああ」
「あと三つ」
「あと三つで」
「俺達は」
 誰もが固唾を飲む。そしてだ。
 その三秒もだ。数えられるのだった。
「三」
「二」
「遂に」
「これで」
「本当に」
「一」
 終わりだった。その筈だった。
 しかしだ。ここでだった。
 何かが停まる音が聞こえた。タシロはその音を聞いてすぐに副長に問うた。
「どうした?」
「駄目です」
 副長は苦い顔で答えた。
「スレイブがです」
「それがどうしたのだ」
「完全に作動しません」
「何っ!?」
「九十八パーセントしかです」
 それだけだというのだ。
「百パーセントには」
「何っ、そんな馬鹿な!」
「質量不足です」
 副長の落胆しきった言葉は続く。
「こうなればです」
「こうなれば?」
「中心部で縮退連鎖を起こさない限りは」
「そうしないとか!」
「はい、爆縮ははじまりません」
 そうだというのだ。
「これは失敗です」
「何てこった・・・・・・」
 タシロもだ。がっくりと崩れ落ちた。
 そのうえでだ。こう言うのだった。
「銀河の全てを賭けた結果がか」
「はい・・・・・・」
「これとは・・・・・・」
 二人共崩れ落ちている。完全にだ。
「神も仏もいないのか」
「天がです」
 副長も言う。
「我々を見放したのでしょう」
「そうか」
「そうかと」
「奇跡は起きなかったか」
 タシロはこう言った。
「今敵はどうしている」
「その数一兆」
「まだそれだけいるのか」
「それに対して我々はです」
 彼等はだ。どうかというのだ。
「殴り込み艦隊全体が全滅状態です」
「そして我々もだな」
「エネルギータンクはもうありません」
「損傷も酷い」
「全ての機体が、今いるのが不思議な程です」
「完全に終わりか」
 タシロは呻いた。
「最早な」
「いいえ!」
 しかしだ。ここでだった。
 ノリコがだ。こう叫ぶのだった。
「奇跡は起きます!」
「奇跡!?」
「奇跡が」
「はい、起こしてみせます!」
「馬鹿な、タカヤ君」
「何をするつもりだ!?」
「バスターマシンにも大型縮退炉があります!」
 彼女が言うのはこのことだった。
「それを使って起爆させれば!」
「馬鹿な、危険だ!」
「それはできない!」
 二人もだ。それはすぐに断った。
「人が乗っているものをだ」
「点火線には使えない!」
 二人は人命をだ。ここでも尊重していた。
「無人船を送り込む!」
「だから今は!」
「いえ、それは無理です」
 ノリコも引かない。
「その前にです」
「その前に」
「どうというんだ!」
「敵の主力部隊が来て!」
 そのだ。一兆の宇宙怪獣達だ。
「破壊されてしまいます!」
「ではタカヤ君」
「君は」
「はい、行きます!」
 何としてもというのだった。そしてだ。
 共に乗るカズミにもだ。こう告げた。
「御姉様!」
「・・・・・・・・・」
 カズミは応えない。ここでは。
「バスターマシン二号機を!」
「分離させるのね」
「はい、私が行きます!」
 カズミにもこう言うのだった。
「ですから御姉様はエルトリウムへ!」
「いいえ」
 しかしだ。カズミはここでこう言うのだった。
「ノリコ、私も行くわ」
「えっ!?」
「聞こえなかったの?私も一緒よ」
 微笑んでだ。ノリコに言うのである。
「私達はいつも一緒よ」
「ですがそれは」
「ノリコ、私達は何時でも一緒って言ったわね」
「は、はい」
「だからよ。一緒よ」
 微笑みのまま。ノリコに言うのである。
「今もね」
「御姉様・・・・・・」
「いかん、アマノ君!」
 タシロはそのカズミに対しても叫ぶ。
「君まで!」
「二号機も一緒なら」
 しかしだ。カズミもタシロに言うのだった。
「縮退炉は二つになります」
「それはそうだが」
「一つ残っていればです」
 どうかというのだ。一つ残っていれば。
「地球に帰られます」
「御姉様、それじゃあ」
「そうよ、ノリコ」
 また微笑みノリコに話すカズミだった。
「二人で。地球に帰りましょう」
「はい!」
 ノリコも笑顔で応える。こうしてだった。
 二人で向かおうとする。その中でまた言うカズミだった。
「時間がないわ!」
「そうですね、もう」
「変形して突っ込むわ」
 意を決した顔でだ。ノリコに告げる。
「いいわね」
「わかりました。それじゃあ」
 こうしてだった。二人はそのバスターマシンの中に入るのだった。そこは。
「あれがですね」
「そうよ。バスターマシンの中心部」
 その中心部を見ながらだ。二人で話す。
「そうなのよ」
「大きさは」
「三万分の一よ」
「そこまで縮小されているんですね」
「表面温度千六百度」
 その熱も語られる。
「外圧一五六〇〇」
「ですか」
「大丈夫、まだもつわ」
「それじゃあ」
 二人はいよいよ取り掛かろうとする。しかしそこに。
 シズラーブラックが来てだ。二人に言ってきた。
「私も!」
「ユング!」
「どうして!」
「私もいるから」
 悲痛な声でだ。ユングは二人に言うのである。
「だから」
「駄目よ!」
「帰って!」
 二人はすぐにユングに言った。
「シズラーブラックじゃ!」
「この星の圧力には耐えられないわ!」
「実際に今も」
「そうやって」
 爆発が起こっている。だがユングはそれでも言うのだった。
「構わないわ」
「そんな」
「それじゃあ」
「ずっと一緒よ」
 声の悲痛さがさらに強くなる。
「そう言ったでしょ、だから」
「間違えないで」
 だがその彼女にだ。ノリコは穏やかな声で告げた。
 表情もそうなっている。それで告げるのだった。
「私達はね」
「死にに行くのではないの」
 カズミもだ。ノリコと同じ表情でユングに話す。
「これからね」
「生きる為に行くのよ」
「皆が」
「当然私達も」
「だからこれはね」
「自殺じゃないのよ」
「けれど、けれどよ!」
 ユングはだ。泣きじゃくりながらその二人に言う。
「こんなところにいたら!」
「ええ、そうね」
「若しかしたら」
「何十年、何百年先か!」
 こうだ。二人に泣きながら言うのだ。
「何時帰られるかわからないのよ!」
「・・・・・・・・・」
「もう同じ時は過ごせないのよ」
「わかってるわ」
 こくりとだ。ノリコは頷いて答えた。
「そのことも」
「だったらどうして!」
「それはね」
「それは!?」
「皆は」
 穢れのない微笑みでだ。ノリコは言うのである。
「同じ時を過ごせるわ」
「だからなの」
「そう、いいわねユング」
 カズミもだ。澄み切った顔で言うのだった。
「生きていればね」
「そうしていれば」
「明日が来るわ」
「だから」
「ええ、だから」
「さよならは言わないわ」
 これがカズミのユングへの言葉だった。
「行って来るわ」
「そうなのね」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ。やはり笑顔で答えるノリコだった。
「だからね」
「ええ、わかったわ」
 そしてだ。ユングも遂に笑顔になって。そして言ったのだった。
「行ってらっしゃい」
「行って来るわ」
「今からね」
 こうしてだった。ユングは去ったのだった。ガンバスターはさらに降下していく。
 その中でだ。カズミはノリコに言ってきた。
「ねえノリコ」
「はい、お姉様」
「二人きりね」
 こうだ。ノリコに微笑んで言ってきたのだ。
「そうね」
「そうですね。私達はずっと」
「二人よ。一人じゃないわ」
「そうですね」
「いや、違う!」
「そうだ、違うぞ!」
 ここでだ。彼等の声がした。
 そしてだ。ライディーンにガオガイガーが出て来た。ゲッターもだ。
「エネルギーチューブ接続!」
「これでな!」
「ロンド=ベル各機のジェネレーターは!」
「直結した!」
 こうだ。それぞれ言ってだ。ガンバスターの周りに来たのだった。
 そこに来てだ。彼等は二人に言うのだった。
「待たせたな!」
「そんな」
「これからだ!」
 凱が言いだ。竜馬もだった。
「俺達皆の手でだ!」
「皆で!?」
「皆の力をガンバスターに届ける!」
「み、皆・・・・・・」
「まさかですよ」
 洸がだ。微笑んで二人に言ってきた。
「俺達にまで帰れとは言わないですよね」
「で、でも!」
「そうよ!」
 ノリコだけでなくだ。カズミも洸に言う。
「これは」
「どうなるのかわからないあのに」
「それがどうしたっていうんだ!」
 凱は堂々と言い切った。
「これ位何ともないぜ!」
「凱さん!」
「君達だけを行かせはしない!」
 竜馬もだった。
「皆の力を合わせ」
「皆の力で」
「皆で地球に帰るんだ」
「竜馬さん・・・・・・」
「そして皆も」
「俺達なら大丈夫ですよ」
 洸は笑顔のまま話すのだった。
「カズミさん」
「え、ええ」
「一緒に帰りましょう」
「皆でなのね」
「はい、皆のところへ」
「地球に」
「帰りましょう」
「有り難う・・・・・・」
 カズミもだ。遂に言うのだった。涙と共に。
「洸君、皆・・・・・・」
「行くぞ!」
 凱が再び叫ぶ。
「俺達は自分達の力で未来を創る!」
「俺達の未来の為に!」
「今から!」
「は、はい!」
 ノリコもだ。涙を流していた。
「それなら!」
「よし、いいな!」
「やりましょう」
「皆の力で!」
 凱に洸と竜馬が応えてだった。
「本当の勇気の力!」
「ムートロンエネルギー全開放!」
「今から!」
 彼等がエネルギーを上昇させて。そして。
 ノリコもだ。カズミに言う。
「やるわ!」
「やるのね!」
「ええ、お姉様!」
 カズミを見て言うのだった。
「お姉様の命私に預けて」
「勿論よ、ノリコ!」
「お姉様!」
 ガンバスター、そしてノリコが己の左胸を掴み。そして。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 ガンバスターの力を全て開放させた。最後の最後の力まで。
「御免、御免ねガンバスター!」
 ガンバスターに謝りつつだ。全てを開放させた。
「電源オフ」
「ええ」
「一号炉全力運転」
 カズミがそのノリコに話す。ガンバスターの力を全て放った彼女に。
「縮退開始!」
「縮退、開始!」
「あと零」
 そして。
「二!」
「遂にね!」
「そうよ、臨界点突破!」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
 全ての力が放たれた。そうしてだった。
 全てが光に包まれてだ。今全てが終わりだ。はじまろうとしていた。


第百三十話   完


                                     2011・6・19 

 

第百三十一話 エツィーラの真意

              第百三十一話 エツィーラの真意
「聞こえるか」
「その声は」
「またなのね」
 クォヴレーとセラーナが応える。
 彼等は今闇の中にいる。その中で声を聞いているのだった。
 その中でだ。クォヴレーがその声に問うた。
「御前だな」
「そうだ。汝等はだ」
 声はだ。彼等に言ってきた。
「使命を果たした」
「バルマーでの戦いからか」
 クォヴレーはその時期について指摘した。
「そうだな」
「確かその頃だったな」
「おい、俺達は生きているのか?」
 トウマが言った。
「今こうして」
「生きている」
 声はそうだと話してきた。
「それは確かだ」
「生きているのか」
「それなら銀河はどうなったのですか?」
 クスハがその声に問うた。
「宇宙怪獣達は」
「宇宙怪獣達は全滅した」
 声はこのことにも答えた。
「バスターマシンの縮退によりだ」
「そうですか。私達は生きていて」
「銀河も救われたのね」
 セラーナもこう判断した。
「そうなのね」
「汝等の戦いを褒め称えよう」
 声は祝福の言葉も贈ってきた。
「汝等こそはだ」
「俺達は」
「一体」
「真の剣なり」
 それだというのだ。
「その力を今こそ我に」
「力を?」
「それを」
「我は汝等の力を欲する」
 こう言うのである。
「汝等のその力を」
「あんた一体なんだ?」
 トウマがいぶかしむ顔で声に問うた。
「前から不思議に思っていたんだけれどな」
「まつろわぬ霊の王だ」
 クォヴレーが声に答えた。
「そしてあまねく世界の楔を解き放つ者だ」
「まつろわぬ霊?」
「あまねく世界の楔」
「それだっていうの?」
「そうだ、それだ」
 声はだ。それだと話すクォヴレーだった。
「この声はだ」
「全ての剣よ」
 その声がだ。また彼等に言ってきた。
「我の下に集え」
「!?この言い方」
 クスハが気付いた。
「あの娘と同じ言い方」
「かの者達の意思を」
 声はさらに言ってきた。
「その僕達をあまねく世界から」
「その世界を」
「どうするっていうの?」
「消し去らんが為に」
 こう言うのである。
「我が名は霊帝」
「おい、馬鹿を言え!」
「そうよ、そんな筈がないわ!」
 トウマとセラーナもここで叫んだ。
「あいつは死んだ筈だ!」
「あたし達が倒してシヴァーが止めを刺したじゃない!」
「我は霊帝」
 しかしまだ言うその声だった。
「全ての剣よ」
「また言うんですか」
 クスハも信じられなかった。声の自称にだ。
 しかし今はその言葉を聞くのだった。わからないこそだ。
「我の下に集え」
「霊帝・・・・・・」
「何故・・・・・・」
「はじまる」
 他の者達がわかっていなくともだ。クォヴレーは言った。
 そしてだ。闇から出てだ。
 彼等が出た先は。そこは。
「全艦ワープアウト!」
「ロンド=ベル各艦健在!」
「各機もです!」
「一機も欠けていません!」
 まずはだ。ロンド=ベルの者達がどうかというのだ。
「パイロット達もです!」
「皆います!」
「だが」
 しかしだ。その中でだ。タシロは二人を探していた。
「バスターマシン三号の中にいたタカヤ君とオオタ君は」
「まさか。あのまま」
「間に合わなかった!?」
「二人は」
 しかしだ。ここでだった。
 二人はいた。マシンと共に。
「あれは!」
「ガンバスター!ガンバスターだ!」
「じゃあノリコさん!」
「カズミさんも!」
「お姉様」
 ノリコもだ。カズミに言うのだった。
「見えます?」
「ええ、見えるわ」
 今も涙を流しながらだ。カズミはノリコに応えた。
「あれはエルトリムの灯よ」
「そして皆も」
「私達も」
「生き残ったのよ」
「そして銀河も」
 このことを確かめ合う。
「じゃあ本当に」
「終わったんだ」
「全てが」
「けれど」
 それもだとだ。ここでだ。
 彼等は周りを見てだ。こう話すのだった。
「ここは何処なんだ?」
「銀河系よね」
「何処かわからないけれど」
「一体ここって」
「何処なんだよ」
「少し待って下さい」
 ここでシュウが一同に言う。
「今分析しますので」
「ああ、頼むぜ」
 マサキがシュウのその言葉に応える。そして彼もだ。 
 サイバスターのコンピューターを使う。そうしながらだ。
 ふとだ。周りを見ながらクロとシロに言うのだった。
「ここって銀河か?」
「ううん、どうだろうニャ」
「何か違うかもな」
「そうだな。ひょっとしたらな」 
 どうかというのだ。
「銀河の外に出されたのかもな」
「だとしたら戻るのは」
「結構厄介だニャ」
「そうだな。まあこれまでの派手な旅を考えたらな」
「どうってことないニャ」
「そうだっていうのかよ」
「そう思うんだがな」
 彼等の話を聞いてだ。セニアも言うのだった。
「そうよね。もう何が起こってもね」
「別に不思議じゃねえだろ」
「ええ。例えここが」
「ここが?何だよ」
「過去か未来でもね」
 もう驚かないというセニアだった。
「びくともしないわよ」
「そうですね。ただ。銀河の外なら」
 ウェンディも落ち着いて話している。
「帰ることは充分可能ですし」
「落ち着いていけばいいわよね」
「宇宙怪獣は」
 モニカは宇宙怪獣について述べた。
「もう銀河に存在している筈がないとは言い切っていいのでしょうか」
「だから何が言いたいのかわからないよ姉さん」
 テリウスが苦笑いと共に突っ込みを入れる。
「つまり宇宙怪獣が滅んだっていうんだよね」
「ええ。それは」
「大丈夫だよ」
 微笑んでこう言うテリウスだった。
「もうそれはね」
「大丈夫と断言するに至る万全な根拠になり得るものは」
「だから。もう文体が訳わかんないから」
 セニアもたまりかねて言う。
「とにかくよ。あれだけの爆発が起こったから」
「はい、膨大なエネルギー反応は確認されています」
 ウェンディがエクセリオンのコンピューターを見て話す。
「破壊された数は約十兆です」
「つまりそれだけの宇宙怪獣がいたのかよ」
「まだそんなにいたの」
 誰もがその数に驚く。
「それで巣は?」
「奴等の巣は」
「同時に巨大なエネルギーの崩壊が確認されています」
 それもだというのだ。
「ですから。もう」
「そうか、それじゃあ」
「宇宙怪獣は本当に」
「滅んだんだな」
「俺達はアポカリュプシスを打ち破った」
「運命が下した審判を乗り越えた」
「遂に」
 誰もがこう言っていく。しかしだ。
 ここでだ。そのシュウが皆に話す。
「いえ、それは違います」
「違う?」
「違うっていうと?」
「だって。あれよ」
 ミサトもだ。きょとんとした顔でシュウに言う。
「神壱号作戦はこれで」
「うむ、現時刻を以てだ」
 タシロも話す。
「宇宙怪獣の殲滅を確認しだ」
「作戦終了となるけれど」
「今それを宣言しよう」
 実際にこう言うタシロだった。
「全ては終わった」
「そう、私達の銀河での戦いは終わりました」
 しかしだった。まだこう言うシュウだった。
「ハッピーエンドと言っていいでしょう」
「一体何が言いたいんだ?」
 マサキが鋭い顔になりシュウに問うた。
「ネオ=グランゾンのコンピューターには何て出てるんだ?」
「まず。ここはです」
「ここは?」
「この場所は」
「銀河から遥かに離れています」
 見ればだ。彼等から見て遥かにだ。
 銀河系があった。その中心に巨大な穴が空いている。
 それを見てだ。誰もが言う。
「あれが俺達の勝利の証か」
「そしてあそこが銀河」
「じゃあやっぱり私達って」
「銀河の外に」
「そうです。そしてあの銀河系はです」
 どうかとだ。シュウはさらに話すのだった。
「私達の時代から百万年後です」
「えっ、百万年後!?」
「っていうとあの爆発で皆」
「未来にタイムスリップした!?」
「そうだっていうのか」
「はい、そうです」
 まさにその通りだというシュウだった。
「そうなってしまったのです」
「じゃあどうやって帰ればいいんだ?」
 エイジが眉を顰めさせてシュウに問う。
「百万年後って。どうすればいいんだよ」
「遥か未来にまで来て」
「それで帰るって」
「どうすればいいのよ」
「御安心下さい。このネオ=グランゾンがあります」
 己のマシンを話に出すシュウだった。
「ネオ=グランゾンはあらゆる世界を自由に行き来できますが」
「時間でもそうだっていうんだな」
「その通りです。横の世界だけでなく縦の世界も行き来できるのです」
 つまりだ。時空を超えられるというのだ。
「過去や未来は変えるべきではないので滅多に使いませんが」
「極秘能力ってやつですよ」
 チカは誇らしげにこう話す。
「タイムマシンでもあるってことですから」
「そんな能力まであったんだな」 
 マサキもだ。そのことには驚きを隠せなかった。そのうえでの言葉だ。
「相変わらずとんでもねえマシンだな」
「そう仰いますか」
「言うさ。それでネオ=グランゾンの能力を使ってか」
「私達の元の時代の銀河に戻りましょう」
「じゃあ今から」
「戻るか」
「僕達の世界に」
「私達の時代に」
「そうです。今から戻ります」
 シュウもそのことは確かだと言う。しかしだ。
 ここでだ。彼はこうも言うのだった。
「ですがその前にです」
「その前に?」
「その前にっていうと」
「一体何が」
「何があるっていうんですか?」
「来ます」
 シュウが言うと同時にだった。彼等の前にだ。
 あのマシンが姿を現した。そのマシンを見て最初に言ったのはバランだった。
「馬鹿な、何故貴様がここに」
「あたしがいたらおかしいっていうのかい?」
「無論だ、今我等は百万年後の銀河の彼方にいるのだ」
「そうだね。とんでもない時間と場所だね」
「それで何故貴様がここにいる」
 ジュモーラを指差し言う。それに乗っているのは。
「エツィーラ=トーラー!」
「!?何だ?」
「この感触」
「悪寒が消えない」
「何だ、このプレッシャー」
「ゲッターの反応が」
 ゲッターチームの面々も気付いた。
「ビムラーも」
「イデもだ」
「何が起こるんだ?」
「一体」
「エツィーラ、答えよ!」
 バランはエツィーラに詰め寄った。
「貴様は何故ここにいる!」
「全てを知ったからさ」
「全てをだと!?」
「そう、まず言っておくけれどね」
 エツィーラはバラン達を明らかに見下す顔で言ってきた。
「アポカリュプシスは終わってはいないよ」
「馬鹿を言え!」
 リュウセイがすぐに言い返す。
「俺達が終わらせた!バスターマシンを爆発させてな!」
「そうよ、それは間違いないわ!」
 ノリコはガンバスターで銀河の穴を指し示してエツィーラに言う。
「あの銀河このが何よりの証拠よ!」
「また嘘を吐いてやがるのかよ!」
 トウマはこう見ていた。
「何処までも汚い女だ!」
「確かに宇宙怪獣は滅んださ」
 それは事実だとだ。エツィーラも言う。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと」
「何なんだよ」
「何があるのよ」
「それだけじゃないのさ」
 こう言うのだったロンド=ベルの面々を馬鹿にしきった顔で。
「残念だけれどね」
「宇宙怪獣だけじゃない」
「っていうと一体何があるんだ」
「今度は」
「まさか」
 バランはエツィーラを見据えて問うた。
「貴様が我等と戦うというのか」
「そうさ。アポカリュプシスとしてね」
 その為だというのだ。
「あんた達には滅んでもらうよ」
「笑止!」 
 バランは即座にこう言い切った。
「貴様にとっては残念だがそうはならん!」
「死ぬつもりはないんだね」
「無論!貴様が立ちはだかるというのならだ!」
 如何にもバランらしくだ。高らかに言う。
「貴様を倒しそのうえで戻るだけだ!」
「無駄だね」
 エツィーラはバランの今の言葉を一笑に伏した。
「そんなことはね」
「無駄だと!?」
「そう、無理だね」
 こう言うのだった。
「最早ね」
「技術的にはできますがね」
 シュウはここでこう言ってみせた。
「ネオ=グランゾンの力なら」
「そう、技術的にはね」
 エツィーラはそのことはいいというのだった。
「けれどそれでもね」
「できないと仰るのですね」
「ああ、そうさ」
 シュウにも傲然と返す。
「絶対に無理だね」
「それは何故だ!」
 バランは怒った声で彼女に問うた。
「言え!言わぬというのならだ!」
「相変わらず単純だね」
「単純で結構!」
 バランも負けてはいない。
「少なくとも貴様の様に堕ちたわけではないわ!」
「言うもんだね。あたしが堕落したってのかい」
「そうよ、どう見てもそうではないか」
「生憎だが違うよ」
「ではどう違うというのだ」
「真実を知ったのさ」
 それでだとだ。バランに話すのである。
「それだけだよ」
「真実だと!?」
「そうさ、真実をさ」
「あれか」
 バランは己の知識の中で察してだ。こう言うのだった。
「ルアフのことか」
「あの坊やのことかい」
「そしてガンエデンのことをか」
「あんなのは些細なことだよ」
「些細だと!?」
「そうさ。全くね」
 それを聞いてだ。バランは今度はこう言った。
「ではアポカリュプシスか」
「だと言えばどうするんだい?」
「それはもう終わった筈だ」
 あくまでだ。バランはこう考えているのだった。
「宇宙怪獣は消えた。そうなってはだ」
「それと隕石雨だな」
「どちらもなくなった。それで何故そう言うのだ」
「じゃあ聞くよ」 
 レツィーラはそのバランに問うた。
「宇宙怪獣は突然出て来たね」
「だからそれがだ」
「アポカリュプシスの意志によってだね」
「ひいては隕石雨もだ」
「アポカリュプシスは誰が決めたんだい?」
 レツィーラが問うのはこのことだった。
「そしてあたしがどうしてここにいるのは。今それがわかってるのは」
 ロンド=ベルの面々を見る。そこで見たのは。
 シュウ、そしてクォヴレーだった。二人だけだった。
 その二人を一瞥してからだ。レツィーラはまた言った。
「これだけいてもそれだけかい」
「むしろ驚いていますね」
 シュウはそんなレツィーラを見透かした様にして返した。
「私が知っていることに」
「どうやって知ったんだい?あたしだって今まで知らなかったことを」
「まあ貴女とは違う経緯で」
「違う経緯?」
「このネオ=グランゾンはあらゆる次元、あらゆる時空を行き来できます」
「その中でかい」
「はい。あらゆる並行世界が崩壊の危機に瀕している現状」
 そしてさらにだった。
「時空の乱れ」
「あっ、そういえば」
 ここではっとなったのはトカマクだった。
「俺も気付いたら助かってたしな」
「俺が急にこちらの世界に来たのもか」
 シオンもふと気付いた。シュウの今の言葉で。
「世界が崩壊していて」
「それぞれの断絶が曖昧になってきているのか」
「その通りです。ですから」
「私達もか」
「この世界に来たのか」
 エリスとフォルカも気付いた。
「ヴェンデルの力だけではなく」
「そうした理由もあってか」
「ううん、デュミナスは気付いてなかったみたいだけれど」
「僕達の世界も崩壊に瀕していた」
「そしてこの世界に来たのも」
 ティス、ラリアー、デスピニスもそれぞれ言う。
「そういう理由があったのね」
「考えてみれば僕達の知っているどの世界も滅亡しようとしている」
「ちょっと。有り得ないんじゃ」
「そうです。全ての並行世界、全ての時空が崩壊する」
 シュウはその現実を話す。
「そんなことは本来有り得ないのです」
「それで気付いたっていうんだね」
「そうです。それで気付いた次第です」
「けれどその前に察してはいたね」
「ネオ=グランゾンの開発前にですか」
「そうさ。気付いていたね」
「僅かですが」
 それでも気付いていたのはだ。流石にシュウと言えた。
「それでネオ=グランゾンにそうした能力を備え付けたのです」
「そうだったのか、ネオ=グランゾンって」
「その為だったのか」
「アポカリュプシスに立ち向かう為の」
「その為のマシンだったのかよ」
「実はそうだったのですよ」
 シュウは微笑んで仲間達に話す。
「その力となるのがブラックホールなのです」
「ブラックホールの別次元まで追いやる力を使ったってんだな」
「そうです。だからこそ備えられたのです」
 シュウはマサキにもこう答えた。
「そういうことだったのです」
「成程な。よくわかったぜ」
「どうも。さて」
 マサキに話してからだ。シュウはあらためてだ。
 レツィーラに顔を戻してだ。そうして答えるのだった。
「そういう次第だったのですよ」
「ネオ=グランゾン。前から怪しいとは思っていたけれどね」
「全てを知っていますので、今は」
「あんたのことはわかったさ。そして」
 あらためてだ。レツィーラはもう一人を見据えた。そしてだ。
 そのうえでだ。彼にも問うのだった。
「あんたが知ったのはどうしてだい?」
「教えられたのだ」
 そのせいだと答えるクォヴレーだった。
「俺自身にな」
「あのキャリコのオリジナルかい」
「イングラム=プリスケン」
 自分からこの名前を出した。
「あの男にな」
「そっちはそういう事情だったんだね」
「そうだ。俺は新しい番人になった」
「番人?」
「他ならぬ貴様等に対するだ。それになった」
 こうレツィーラに返す。今知っているのは二人だけだった。
 だがその他の面々はまだ知らず。特にバランはレツィーラにさらに詰め寄らんばかりに問う。
「ではだ!言ってもらおうか!」
「あたしがここにいることと」
「アポカリュプシスとは何だ!」
 問うのはこの二つだった。
「言え!言わねばだ!」
「倒すっていうんだね」
「無理にでも吐かせてやろう!」
 脅しではなかった。明らかに。
 怒りの声だった。レツィーラ自身に対する。それを見せつつ問うたのである。
「このわしの手でだ!」
「そうだね。じゃああたしを倒したらね」
「吐くというのだな!」
「如何にも。じゃあ来るんだね」
 バラン達にだ。挑発までしてだ。
「倒してみな」
「言われずともだ!」
「さあ、出て来るだよ!」
 レツィーラが杖を一閃させるとだ。それと共に。
 彼女の周りに無数のマシンが出て来た。それは。
「バルマー軍!?」
「そのマシンを」
「ここで」
「パイロットはいないみたいだけれど」
「ああ、そういうのはいないよ」
 それはいないというのだった。
「ただね。戦えることは戦えるよ」
「手前が操ってか」
「それでか」
「悪いけれど操ってるのはあたしじゃないよ」
 それは違うというのだった。
「別の方さ」
「!?この気配」
「ああ、これってまさか」
「あれか!?」
「あのムゲ帝国の時の」
「近いね」
 レツィーラはムゲ帝国のことにも言及した。
「あの悪霊達だね」
「ああ、そうさ」
 忍がレツィーラに言い返す。
「あの連中そっくりだぜ」
「まあそうだね。まつろわぬ存在だからね」
「それがだってのか」
「さて。それも知りたければね」
「ああ、やってやるぜ!」
 忍も闘志を全開にしている。
「手前みたいないけ好かない奴は叩きのめしてやるぜ!」
「全軍戦闘開始!」
「こうなっては止むを得ない!」
 指示も出た。こうしてだった。
 ロンド=ベル全軍が戦いに入る。こうしてだった。
 レツィーラと彼等の戦いがはじまった。その中でだ。
 バランはだ。鉄球を振り回しながら言うのだった。
「妙だな」
「妙!?」
「妙ってどうしたんですか?」
 その彼にトウマとミナキが問うた。
「一体よ」
「何かあったんですか?」
「うむ。あの女はかつては徳の高い神官長だった」
 このことをここでも話すのだった。
「民衆から篤い敬意を受けていたのだ」
「それがどうして」
「ああなってしまったのでしょうか」
「知ったからだというのが」
 彼女自身の言葉を反芻して述べる。
「それは何だ」
「何を知ったんだ?」
「アポカリュプシスのことの様ですけれど」
「それがわからん」
 バランもいぶかしむばかりだった。
「ルアフのことを知ったのはわかったが」
「それにどうやって知ったのか」
「そのことも気になりますね」
「少なくともあの徳の高い者がだ」
 どうしてかというのだ。
「あそこまでの下種になったかだ」
「元々ああじゃなかったんだな」
「それは違うんですね」
「信じられんと思うがそうだ」
 かつては違ったというのだ。
「そうだったのだ」
「やっぱり何かがあったんだな」
「物凄いことが」
「それを知ったか」
 また言うバランだった。
「では何をなのだ」
「それを知りたければね!」
 どうするか。レツィーラの声が荒れてきた。
「あたしを倒すんだね!」
「そうすれば教えるというのか!」
「そうさ!」
 こうバランに返す。
「できればね!」
「笑止!そう言うのならば!」
 バランがだ。その彼に返す。
「わしが貴様に聞いてやろう!」
「聞けるものならね!」
 二人は睨み合う。しかしだった。
 二人の間にバルマーのマシン達、その邪な何かに操られた者達がいた。彼等はバランの周りに群がりそのうえで、であった。
「くっ、多いか!」
「さあ、あたしと戦う前にそいつ等にやられちまいな!」
 こうだ。レツィーラは既に勝ち誇ってバランに告げる。
「精々惨めにね!」
「そうはいくか!」
 バランは鉄球を縦横に振り回しそのマシン達を蹴散らす。しかしだ。
 その数は多い。あまりにも多さだ。到底ペミドバン一機では倒せそうもない。
 だがそれでもだ。そこにだ。 
 トウマ達が来てだ。そのマシン達を蹴散らすのだった。
「トウマ!」
「おっさん!あんたはだ!」
「先に進めというのか」
「そうだ。あんたがあいつを倒せ!」
 そのだ。ジェモーラをだというのだ。
「いいな、因縁を終わらせるんだ!」
「済まぬ!」
 バランも礼を言いだ。そのうえでだ。
 トウマ達が作った穴を抜けてレツィーラの前に来た。
 レツィーラはだ。そのドバンに対して言った。
「ちっ、来たってのかい!」
「そうだ、そしてだ!」
「そんな旧式機であたしを倒せる筈がないだろ!」
「できる!」 
 バランは傲然として言い切った。
「戦はマシンでするものではない!」
「じゃあ何だっていうんだい!」
「心だ!」
 それによってだというのだ。
「心によってだ。戦うものだ!」
「言うねえ。本当にあんたは」
「どうだというのだ?」
「化石だよ。生きる化石だよ」
 ここでもだ。侮蔑しきった言葉をバランに言うのである。
「時代遅れのね。どうしようもない奴だよ」
「ふん、それではその生きる化石がだ」
「あたしをかい」
「倒す!そしてだ!」
「ああ、あたしを倒せたらね!」
「教えてもらおう!アポカリュプシスの真実を!」
 こう言い合いだ。両者は。
 互いに前に突き進み激突した。まずはレツィーラが。
「受けるんだよ!」
 杖から雷を出す。それでだった。 
 ドバンのペミドバンを撃とうとする。しかしだ。
 ドバンはだ。その雷を。
「小賢しい!」
「何っ!?」
 何とだ。気迫で打ち消した。そうしてみせたのだ。
「あたしの雷を。まさか」
「この程度の雷何だというのだ!」
 こう言ってのことだった。
「今のわしにはだ。聞かぬ!」
「ちっ、それならね!」
 今度は念を出そうとする。しかしそれはだ。 
 振り回す鉄球に打ち消され。さらにだ。
 鉄球は横からだ。ジェモーラを直撃した。
 それを受けたジェモーラは大きく吹き飛ばされ。そしてだった。
「おのれ、もう」
「動けぬな」
「まさか。あたしのジェモーラに勝つなんて」
「言った筈だ、戦は心だ!」
 ここでもこう言うバランだった。
「レツィーラ!貴様の今の心ではわしには絶対に勝てぬ!」
「くっ、言うねえ」
「では教えてもらおう」
 勝利を収めだ。そのうえでの言葉だった。
「まずは貴様のことだ」
「あたしのことかい」
「何故そうなった」
 彼女の堕落、それについて問うのだった。
「そこまで腐ったのだ」
「だからさ。知ったんだよ」
「ルアフのこと以外にもか」
「そうさ。真の神がいてね」
「やはり」
 シュウはレツィーラの今の言葉に呟いた。
「それですか」
「それがどうしようもない力を持ってるんだよ」
「それを知りこの世に思うことをなくしたか」
「まああたしがこうなったのはね」
 それはどうしてなのかも話すのだった。
「ルアフのことを知ったからだけれどね」
「そしてアポカリュプシスを避けられないこともか」
「そうさ。それでだよ」
「貴様は所詮その程度だったか」
 ここでまた言うバランだった。
「それで絶望するとはな」
「ふん、何とでも言うんだね」
 悪びれずだ。こう返すレツィーラだった。
「今のあたしには痛くも痒くもないよ」
「腐るのはその程度の者だったからだ」
 バランはこう言うだけだった。
「貴様程の高徳の者でもな」
「言うね。あたしに過去を思い出させるのかい」
「それで貴様がどうなるかとは思えんがな」
 こう言ってだ。そしてだ。
 バランはだ。レツィーラにまた問うた。それは。
「貴様が今言った真の神とは何だ」
「それかい」
「そうだ。それは何者だ」
「おそらくアポカリュプシスと関係がある」
 そうだとだ。ルリアが察しをつけてきた。
「そうだな」
「そうだね。言うならね」
「では聞こう」
 あらためて言うドバンだった。
「その真の神とペミドバンのことを」
「いいさ、それはね」
 レツィーラは姿勢を正して言おうとする。だが。
 そこにだ。闇の矢が来てだ。ジェモーラを貫いたのだった。
「うっ!?」
「レツィーラ!?」
 誰も反応できなかった。そうしてだ。
 ジェモーラは爆発に包まれだ。レツィーラも。
 死んだ。炎の中に完全に消えてしまった。堕ちた女もこれで終わった。
 だが、だ。その闇の矢を見てだ。バランは言うのだった。
「誰だ!」
「そうだ、今のは誰だ!」
 トウマもここで叫ぶ。
「誰が放った!」
「彼女は喋り過ぎたのですよ」
 こう言ってだ。出て来たのは。
 孫光龍だった。その彼が出て来て言うのだった。
「それで不興を被ったのですよ」
「不興!?」
「というとまさか」
「その」
「まあそのことは置いておきまして」
 ロンド=ベルの問いに答えずにだ。そのうえでだった。
 孫はだ。こう言うのだった。
「次は僕が相手になるよ」
「貴方がですか」
「そう、僕の出番が来たからね」
 こうクスハ達に言葉を返すのである。
「だからね」
「では貴方もまた私達と」
「そう。そして」
「そして?」
「今まで隠していたことを話そうか」
 こうだ。ロンド=ベルの面々に言うのである。
「僕のことをね」
「そういえば君の素性は一切が謎だったね」
 万丈もだ。こう孫に言うのだった。
「少なくとも普通の人間ではないね」
「そう、僕はガンエデンの力で不老不死になった存在」
 それだとだ。自分で言うのだった。
「そして真の名前は」
「それは?」
「一体」
「アヴォット=アクラヴ」
 こうだ。己の名前を今言った。
「そしてこのマシンもね」
「真龍王機じゃない!?」
「何か。あれよりもまだ大きくて禍々しい気配がするけれど」
「あれは一体」
「何だっていうの?」
「応龍機」
 そのマシンの名もだ。ここで言うのだった。
「このマシンの本当の力さ」
「それでその本当の力で」
「俺達と戦う」
「そういうことなのね」
「そうだよ。それじゃあ」
 それまでの飄々とした笑みが消えて酷薄なものになり。そしてだった。
「はじめようか。君達の最後の戦いをね」 
 再び無数のマシン達が姿を現しだ。そのうえで孫との戦いもはじまるのだった。運命の最後の戦いはまだ続く。


第百二十一話   完


                     2011・6・22
 

 

第百三十二話 孫光龍の正体

              第百三十二話 孫光龍の正体
 戦いがはじまる前にだ。孫はだ。
 こうだ。彼等に言うのだった。
「僕が中国人だと思っていた人はあまりいないようだね」
「そんな怪しい中国人がいるか!」
「御前金髪じゃねえか!」
 そこから突っ込みを入れる一同だった。
「御前はどっちかっていうとあれだろ」
「ヘブライだよな」
「その真の名前といい」
「そうだよな」
「そうさ。僕はガンエデンの僕だからね」
 それでだというのである。彼自身も。
「孫光龍というのは仮の名前の一つに過ぎないよ」
「日本の名前もありましたね」
 シュウがその孫に対して言ってきた。
「サブロー=スズキという」
「そうだよ。仮の名前は多い方がいいからね」
「気付いてはいました」
 シュウは再び孫に言う。
「貴方のことを」
「流石だね。君は何もかもわかっているんだね」
「知ったと言ってもらいましょう」
 そちらだというのだ。知ったとだ。
「貴方のことも。貴方が仕える存在のことも」
「いいねえ。話が早いよ」
「貴方は最初ナシム=ガンエデンに仕えていましたね」
「そうだよ」
 その通りだとだ。孫も答える。
「だが僕は」
「そう。遥か昔の戦いで傷を負い」
「長い間それを癒していたんだ」
「そして復活して」
「まさか君達がナシム=ガンエデンを倒すなんてね」
 このことは彼にとっても意外だったのだ。
「まあ僕としてはそれでもね」
「もう一つのガンエデンに従う道を選ばれた」
「当然さ。僕はガンエデンの使徒なのだから」
 それでだというのだ。
「そうしたんだよ」
「だからバルマーにいたのかよ」
「それでか」
「地球人なのに」
「ああ、地球ね」
 今度は地球にまつわる話だった。
「僕にとっては地球もね」
「大した意味はない」
「そう言うんだな」
「そうさ。僕はガンエデンの僕だから」
「地球に対する愛情もない」
「そういうことか」
「そうだよ。僕はそういう人間なのさ」
 自分でも言うのであった。
「そのことから話そうか」
「それではだ」
 ゼンガーが孫に問う。
「貴様の今の目的は何だ」
「これまでは真の力を取り戻す為だったけれどね」
「真の!?」
「というとそのマシンがか」
「手前の真の力だってのか」
「そうだっていうんだな」
「如何にも。この応龍機」
 誇らしげにだ。このマシンの名前を出す。
「これが僕の真の力なのさ。それに加えて」
「それに?」
「それにというと」
「このマシンは元々四霊獣以上の力があるけれど」
 それに加えてだというのだ。
「同じ階級にある他の三つの獣の魂も取り込んだのさ」
「何っ、それじゃあ」
「私達と同じ」
「その通りだよ」
 驚くブリットとクスハに対しても述べる。
「君達のマシンと同じさ。このマシンには今は四つの魂があるんだ」
「それじゃあその力は」
「これまで以上に」
「そうさ。君達のマシンもね」
 どうかというとだった。
「遥かに凌駕しているよ」
「その力を手に入れたというのか」
「貴方は」
「これも僕の主の助けさ」
「そのガンエデンのか」
「バルマーのあの」
「ははは、バルマーね」
 そのガンエデンについてだ。孫は嘲笑する様にして笑ってから述べるのだった。
「まさか僕がルアフに忠誠を誓っていると思うのかな」
「いや、それはないな」
「手前の発言や行動を見ていると」
「それは絶対にない」
「間違いない」
「そうさ、あの坊やに忠誠を誓ったことは一度もないよ」
 やはりだ。こう言うのだった。
「全くね」
「じゃあ一体」
「ルアフじゃないとすると」
「どのガンエデンなんだ?」
「それじゃあ」
「君達はそのことを知る必要はないよ」
 ここから先は言おうとしない孫だった。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼は。
「じゃあ。はじめようか」
「やっぱり手前もか」
「戦うってんだな」
「そうだよ。君達を倒し」
 そうしてだというのだ。
「僕の主の目的を果たさないといけないからね」
「その主もな!」
「何者かわからないけれど!」
「引き摺り出してやるぜ!」
「はい、彼を倒せばです」
 知っていると思われるシュウの言葉だ。
「それで全てがわかります」
「アポカリュプシスのことが」
「遂にか」
「わかるんですね」
「その通りです。我々の戦いの真の目的」
 それもだ。わかるというのだ。
「全てがわかります」
「そういうことなら」
「どっちみち向こうも戦うつもりだし」
「やるか」
「そうだな」
 こう話をしてだった。ロンド=ベルは孫との戦いにも入った。 
 その中でだ。彼等はだ。 
 またしても邪な何かに操られているバルマーのマシンと戦いながら。こう言うのだった。
「何ていうかな」
「バルマーの奴等とはまた違って」
「妙にドス黒いこの気配がな」
「嫌な感じだな」
 こう言いながらもだった。
 彼等はその敵を倒していってだ。そのうえでだ。
 孫の応龍機に近付く。そしてだ。
 クスハとブリットがだ。互いに言い合う。
「じゃあブリット君」
「ああ、クスハ」
「行こう。あの人との戦いを終わらせに」
「そうだな、ここで」
「これまでね」
 これまでのことも思い出しながら。クスハは話すのだった。
「あの人とも色々あったけれど」
「その正体はわからなかったな」
「それでも。正体がわかったけれど」
「俺達とは考える主観が違い過ぎる」
 わかったのはだ。このことだった。
「ガンエデンに仕える存在」
「これまで。ガンエデンを倒してきたけれど」
「その二つのガンエデンじゃない!?」
 ブリットはこう考え自分でも妙だと思った。
「だとしたらそれは一体」
「イルイちゃん、霊帝の他にもう一人のガンエデンがいるの?」
「シュウさんの話ではそのことは」
「この戦いの後でわかるっていうけれど」
「何者なんだ、いるとしたら」
「もう一人のガンエデンは」
 こう話しながらだ。彼等は孫の前に来た。そうしてだ。
 その孫にだ。あらためて言うのだった。
「孫光龍!ここで!」
「全ての決着をつけます!」
「そうだね。僕にしてもね」
 孫自身もだ。ここでどうかというのだ。
「終わらせたいと思っていたんだよ」
「俺達との戦いをか」
「ここで」
「そうだよ。君達とは前世の因縁だったけれど!?」
「前世!?」
「じゃあまさか」
「そのまさかか。僕は遥かな過去に君達のご先祖様から攻撃を受けてね」
 そうしてだというのだ。
「顔を中心に大きな傷を受けてそれを癒していたのさ」
「その傷つけたのが俺達の」
「前世だったのですか」
「その生まれ変わりの君達に出会えた」 
 にこやかに笑いながらの言葉だ。
「まさに天の配剤だよ、僕にとってはね」
「それじゃあ俺達は!」
「ここで再び!」
「今度は僕も負けないさ」
 孫も言うのだった。
「一切手加減はしないからそのつもりでね」
「ああ、ここで!」
「終わらせます!」
 こう言い合いだった。そのうえで。
 お互いに激突する。まずは。
 応龍機の無数の鱗がだった。
「さあ、行くんだ!」
「くっ、来たか!」
「最初は!」
「そうさ。これはかわせるかな」
 攻撃を繰り出してからの言葉だった。
「以前とは比べ物にならないけれどね」
「何の!」
「この程度!」
 真龍王機は如意金剛を出してだ。それで。
 己の周りに来る鱗達を叩き落してだ。あらためてだった。
「これならどうだ!」
「こんなものではもうやられません!」
「そうだね。こんなのはお遊戯さ」
「やはりか」
「ほんの小手調べだと」
「その通り。それなら次はね」
 龍の口が開いた。そこからだ。
 白い気が放たれだ。そうして。
 クスハとブリットを襲う。だがそれも。
「今だ!」
「こうして!」
 攻撃をだ。紙一重でかわしてみせたのだ。
 そしてそれからだ。今度はだ。
「クスハ!」
「ブリット君!」
 その如意金剛をだ。応龍機に向かって放ってだ。
 そのうえで撃とうとする。しかしそれは。
「ははは、惜しいね!」
「何っ、かわした!?」
「そんな!」
「見ての通りだよ」
 笑って返す孫だった。彼は相変わらず余裕を見せている。
「この程度じゃやられないね」
「くっ、巨体なのに!」
「何て速さなの!?」
「だから。このマシンの力を甘く見てもらっては困るよ
 まだこう言う孫だった。
「何しろ。最高位の獣の魂が集ってるんだよ」
「それでか」
「それでだというのですか」
「その通りだよ。さあ、どうして僕を倒すのか」
 絶対の自信と共の言葉だった。
「思う存分見せてもらおうか」
「まだだ!」
「そうです、まだです!」
 二人もだ。諦めていなかった。
 それでだ。まだ攻撃を放ちだ。戦い続ける。
 そんな彼等を見てだ。シュウが言う。
「これはです」
「二人共まずいですか?」
「確かに劣勢です」
 このことは認めるシュウだった。チカに話している。
「しかしです」
「しかしですか」
「二人なら大丈夫です」
「手助けすることはしないんですか」
「本当に駄目なら既に動いています」
 そうしているというのだ。
「しかし。大丈夫だからです」
「動かないんですね。御主人様も」
「はい。ですが」
「ですが?」
「問題はこの戦いの後です」
 真剣な顔になって。そのうえでの言葉だった。
「最後の戦いです」
「あいつですか」
「今。闇から出ようとしています」
 そのことをだ。確信しての言葉だった。
「ですからそれをです」
「防いで、ですね」
「倒しましょう」
「ですよね。それが御主人様の目的でしたから」
「そうです」
 こうチカにも話すのだった。
「その時が来ましたね」
「ですよねえ。それにしてもですよ」
「どうしたのですか?」
「前から思ってたんですけれどね」
 チカはシュウに対して言うのだった。
「あの孫ってのはね」
「好きになれませんか?」
「はい、どうも」
 こうシュウに話すのである。
「そうなんですよ」
「確かに。貴女とは合いそうもないですね」
「御主人様もですね」
 シュウもそうではないかというチカだった。
「ああいう奴は好きじゃないでしょ」
「確かに。私と彼とでは考えが違います」
「ですよね。何ていうかね」
「足場が定まっていませんね」
「結局あれなんでしょ」
 チカの孫への評が今述べられる。
「強い方につきたい奴なんでしょ」
「見方によってはそうですね」
「ですよね。ですからどうも」
「好きになれませんか」
「そういうことです。あれだけの力を持っていて」
「この場合力の強さは問題ではありません」
 そういうことではないというのだ。
「本人がどう思うかです」
「どう思うかなんですか」
「そうです。どう思いどう動くかです」
「そうしていってですか」
「その通りです。それではです」
「あいつをやっつけちゃいますか」
「その時ですね。ただ」
 ところがだった。シュウは積極的に前に出ようとはしなかった。
 そのうえでだ。またチカに話した。
「それは私達がすることではありません」
「あたし達でなくですか」
「はい、彼等です」
 言いながらだ。クスハとブリットを見るだった。
「彼等がどうするかですよ」
「あの子達ならどうにかできるでしょうか」
「できます。必ず」
「だといいんですがね」
「確かに彼は強いです」
 そのだ。孫はだというのだ。
「ですがそれでもです」
「勝てるっていうんですか」
「そうです。勝てます」
 また言うシュウだった。
「今の彼等はより強いからです」
「けれど今のあいつは四つの最高位の獣を全部手中に収めてますけれど」
「はい、それはその通りです」
「で、あれだけのマシンを操ってますけれど」
「マシンだけが力ではありません」
 シュウもだ。この考えを持っているのだった。
「他のあらゆる力もです」
「そういうことですか」
「ですから。ここはです」
「あの子達に任せてですか」
「はい、そうしましょう」
 こう話してだった。彼等は今はバルマーのマシンを倒すことに専念していた。
 バルマーのマシンは今のロンド=ベルの敵ではなかった。しかしだ。
 その中でだ。彼等は話すのだった。
「やっぱり次から次にだな」
「出て来やがるな」
「こうして数で攻めるってのか」
「この連中も」
 見ればだ。敵は次々と援軍を出して来る。そうして数を増やしていく。
 それを見てだ。彼等は話すのだった。
「せめてクスハ達に近付けたら駄目だな」
「ここはしっかりするか」
「あの戦いは邪魔させたらな」
「駄目だから」
「ははは、その心配は無用だよ」
 その孫、クスハ達と戦っている彼が言うのだった。
「僕はそんなことはしないよ」
「どういうことだよ、それは」
「この連中がクスハ達に向かわない!?」
「何を根拠に言ってるんだよ」
「そんな言葉信じられるかよ」
「別に信じなくてもいいよ」
 そのことは別に構わないというのである。
「ただね。それでもだよ」
「この連中にクスハ達は襲わない」
「そうだったいうのかよ」
「二人は僕の相手だよ」
 だからだという孫だった。
「それで悪霊に倒されるっていうのは」
「!?こいつ」
「まさか」
「面白くないじゃないか」
 あの凄みのある笑みで笑ってだ。そのうえでの言葉だった。
「そうだろ?ゆっくりと楽しまないとね」
「やっぱりな」
「こいつは相当なワルだな」
「そうだって思ってたけれど」
「そういう奴だったのかよ」
「何度も言うけれど」
 孫は嫌悪の目を見せる彼等にまた言う。
「僕は君達とは違う考えだからね」
「それでだっていうのかよ」
「クスハ達を嬲り殺しにするってのか」
「そういうんだな」
「まあ嬲り殺しかどうかは置いておいて」
 その辺りはあえてぼかして言う孫だった。
「少なくとも楽しませてはもらうよ」
「やっぱりこいつは」
「好きになれないな」
「どうしても。何か」
「邪なものを感じる」
「闇にあるみたいな」
「闇ね。若しも僕の今の主がね」
 そのだ。主がどうかというのだ。
「闇なのならそうかもね」
「そうですね。貴方の今の主はです」
 シュウもだ。ここでこう言う。
「そうした存在ですね」
「相変わらず鋭いねえ」
「知ってはいるつもりです」
 シュウは孫に慇懃に返す。
「貴方がどういった方なのか。そして貴方の主も」
「何故それをはっきりと言わないのかな」
「必ずわかるからです」
 それでだというのだ。
「ですから」
「成程ねえ。つまり僕は君達に敗れると」
「それは運命です」
「そうなればいいね」
 実に素っ気無い返答だった。
「是非ね」
「そうだ、御前は!」
「私達が!」
 ブリットとクスハが応える。だがその間にもだ。
 彼等は応龍機と戦う。だがそのマシンは。
 あまりにも強い。その強さ故にだ。
 二人も防戦一方だ。鱗とブレスにだ。押されていた。
「ははは、僕を倒せるかな」
「くっ、この強さ!」
「確かに今までよりも!」
 強くなっていると。こう言ってだった。
 隙を窺うがそれでもだった。二人は孫に近づけなかった。
 それでどうしようもない時にだ。ブリットがクスハに言う。
「クスハ、考えがある」
「何なの、ブリット君」
「ここは真龍王機だけでも真虎王機だけでも駄目だ」
 こう言うのである。
「とてもだ。駄目だ」
「そうね。一種類だけれど」
「かといっても俺達は分けられない」
「じゃあここはどうすれば」
「一度に攻めなくても」
「それでも?」
「一気に攻めればいいんだ」
 そうすればいいというのだ。
「ここは」
「ということは」
「まず俺が攻める」
 そのだ。ブリットがだというのだ。
「そして次は」
「私が」
「それしかない!」
 ブリットは断言して叫んだ。
「今はもう!」
「そうね、この人とあのマシンには」
「それで決める!」
「いいわ、けれど」
 クスハはだ。あえて言った。
「それはかなり」
「難しい。けれど」
「けれどなのね」
「今の俺達ならできる!」
 彼だけではない。そうした言葉だった。
「今の俺達なら必ず!」
「そうね。今の私達なら」
「できる!」
「やれるわ!」
 二人でだ。そのことを確かめ合いだ。
 一気に応龍機に向かい。そのうえで。
「行くぞ孫光龍!」
「これで終わらせます!」
「おやおや、特攻かい!」
 孫はその彼等を見ても悠然としている。
「それじゃあ僕も」
「!?一体」
「何をするというの!?」
「僕も応龍機と一体化するよ」
 こう言ってだ。その身体を光らせてだ。
 応龍機の中に入り。その口から言うのだった。
「こうしてね」
「マシンと一体化した!?」
「そうしたことまで」
「できるんだよ」
 龍の口からだ。孫の声がする。
「僕にはね」
「じゃあその分だけ」
「マシンの力が」
「そうだ。只でさえ最高位にある四匹の獣の力に加えて」
「御前の力も」
「加わって」
「そうだよ。もう君達の勝ち目は完全にない」
 こうだ。自信に満ちた声で言うのである。
「今の僕にはね」
「いや、違う!」
「私達は勝ちます!」
 まだ言う彼等だった。
 そしてそのうえでだ。彼等はさらに進みだ。
「今の俺達なら!」
「貴方を倒せます!」
「たった二人でかい?」
 こうだ。二人を侮る様にして返す孫だった。
「今の僕に勝てるのかい?」
「二人じゃない!」
「六人です!」
 ブリットもクスハもだ。果敢に言い返す。そうしながらさらに突き進む。
「今の俺達は!」
「六人です」
「四霊獣かい?」
 孫は何故六人かこう察した。
「それだっていうのかな」
「そうだ、彼等がいる!」
「それに対して貴方は!」
 孫はだ。どうかというのだ。
「一人だ!」
「それならば負けません!」
「ははは、よくわかったね」
 一人と言われてだ。孫は笑顔になって返した。
「確かに僕は一人だよ」
「そのことをか」
「認めるっていうんですね」
「別に嘘を吐いて困るようなことでもないしね」
「だからだ!俺達は!」
「負けません!」 
 こう二人で言い。そしてだった。
 まずはブリットがクスハに告げた。
「クスハ!まずは俺が!」
「ええ、ブリット君!」
「行くぞ真虎龍王!」
 真虎龍王にも声をかけ。その剣を抜いてであった。
「真虎龍王最大奥義!」
「あの技でいくのね!」
「この男にはこれしかない!」
 そのだ。孫に対してはというのだ。
「だから!」
「そうね、そして私も」
「これで!」
 剣を構え。そのうえで。
 剣に四つの力が宿っていく。その力こそ。
「虎王!斬神陸甲剣!」
 真虎龍王、そしてブリットの全身を黄金の気が纏った。その気を纏ったうえで。
 一気に突き進む。そして。
「うおおおおおおおおおおお!」
 剣を一閃させたのだった。それでまずは一撃だった。
 そして次は。クスハだった。
「私も!」
「頼んだぞクスハ!」
「ええ、ブリット君!」
 真龍虎王に変形し。そのうえで。
「な、何だ。二人共」
「いつもよりもさらに強いぞ!」
「気が違う」
「あの気は」
「はい、四神の気もです」
 入っているとだ。シュウが驚く彼等に話す。
「彼等と共にいるのです」
「だからか」
「あれだけの力が二人からか」
「放たれているっていうのか」
「その通りです。そしてその力で」
 まさにだ。その力でだった。
「二人はその因縁を終わらせます」
「行きます!」
 クスハが叫んだ。
「百邪を討つ為四神の力今ここに!」
「龍虎河車!雀武周天!」
「主観!兜串八卦炉!」
 その八卦が応龍機の下を覆い。
 八文字の言葉と共に八卦が柱となり刻まれ。
「真龍虎王奥義!四神真火八卦陣!」
 黄金に輝くクスハが力を放ち。
 その八卦にこれでもかと炎となった気を放出する。それが応龍機、そして孫光龍を襲い。
 最後に印を封じた。するとだった。
 二人の攻撃を集中的に受けた孫も。遂にだった。
「くっ、まさかこの僕がここで」
「孫光龍、勝負ありだ!」
「私達の勝ちです!」
「そうだね。その通りだよ」
 忌々しげであるがだ。彼も二人の勝利を認めるのだった。
「まさか今の僕に勝つなんてね」
「早く脱出しろ」
 ブリットがその孫に告げる。
「そして何処か他の場所で生きるんだ」
「貴方も。もうこれで」
「ははは、僕がこれからも生きるだって?」
 孫はだ。彼等にこう返したのだった。
「馬鹿を言っちゃいけないよ」
「何っ、それじゃあ」
「貴方はここで」
「そうさ。僕はここで倒れる」
 そのことを二人に言うのである。
「そのうえで主のところに行くのさ」
「死ぬというのか」
「この遥かな未来で」
「そうさ。それもまた一興」
 こう言ってだ。それをよしとしている孫だった。
「それならそうさせてもらうよ」
「そう言うのか」
「貴方は本当に」
「さて、僕を倒したからには教えてあげるよ」
 孫は死にゆく状況でロンド=ベルの面々に告げる。既に彼が率いていた軍も全滅し残っているのは彼だけだった。その孤独の中での言葉だった。
「僕の主」
「ああ、本当に誰なんだ?」
「その今の主ってのは」
「一体」
「まあ既に知ってる人達もいるけれど」
 ちらりと。シュウとクォヴレーの方を見ての言葉だった。
「言おうか」
「それで誰だ?」
「あんたのその今の主」
「何者なんだよ」
「何処の誰なのよ」
「霊帝さ」
 それだとだ。孫は答えた。
「真の霊帝さ」
「真の霊帝!?」
「何だそりゃ」
「ルアフならバルマーで倒しただろうに」
「それで何で霊帝なんだ?」
「話が通らないじゃない」
「そのルアフも宰相のシヴァー=ゴッツォも」
 だが孫の話は続く。
「自分達が神であり神であろうとしたけれど」
「はい、その真の霊帝の存在には気付いていませんでした」
 シュウがここで話した。
「バルマーの殆んどの者がです」
「気付いていたのはバルマーでも一人だった」
 クォヴレーも話す。
「それはだ」
「ユーゼス=ゴッツォただ一人でした」
「ユーゼス!?あいつがか」
「その真の霊帝の存在に気付いていたっていうの」
「あの男が」
「そうです。しかしあの男は謀反を企てていた咎で粛清されました」
 シュウもこのことは知っていた。現場にいたからだ。
「それで知っている者はいなくなったのです」
「バルマーにはな」
「何故ならね」
 孫はその己の主について。さらに話す。
「真の霊帝はこの世界にはいないからさ」
「この世界にはいない!?」
「じゃあまさか」
「別の世界にいて」
「そこから俺達を」
「そうさ。アル=イー=クイスも」
 今度語られるのはこの神々についてだった。
「僕の主の創り出したものだったんだよ」
「俺達の世界を監視し破壊する為の」
「その為に生み出された神々だった」
「そうだったっていうのか」
「そうさ。そういう存在だったんだ」
 こう彼女達のことも話す孫だった。
「言うなら創り出された神々だね」
「あんなとんでもない強さの連中もか」
「そいつに創り出されたに過ぎなかったの」
「アル=イー=クイス」
「あの連中まで」
「その神は因果律の中にいる」
 孫はまた因果律を話の中に出してみせた。
「そしてアポカリュプシスを引き起こしていたのさ」
「それでか。全ての世界がか」
「崩壊しようとしていたのか」
「その真の霊帝の手によって」
「あらゆる世界が」
「そういうことさ。アポカリュプシスはこの世界だけのことじゃなかったのさ」
 孫は死にゆく中でも飄々とした顔で話す。
「あらゆる世界が。終わりそして」
「はじまる」
「その真の霊帝の意志によって」
「まあそれで様々な世界の歪が出てね」
 そしてだと。今度話すことは。
「君達の。様々な世界の同じ魂を持つ存在の記憶も混ざったね」
「!?じゃあ今まで」
「俺達が常に感じていた別世界の似た存在の声は」
「別世界の俺達自身」
「そうだったっていうの」
「心当たりのある人は多いね。実際に僕もね」
 孫自身もだった。それは。
「ある世界では邪悪な青い天使だったしね」
「ああ、そうだったな」
 孫のその話にカミーユが応えて言う。
「俺も。そいつとは」
「そうだったね。まあそういうことだったんだよ」
 孫の口に遂に血が流れ出てきた。だが彼はまだ話す。
「全ては崩壊に向かう中でのことだったのさ」
「じゃあその真の霊帝を倒せば」
「俺達は」
「アポカリュプシスを本当に終わらせられる」
「そうだっていうのね」
「それはその通りだよ。そしてね」
 どうかと。孫はまた言った。
「その主はもうすぐここに来るよ」
「そうですね。この気」
 シュウの目が鋭くなる。
「間も無く。この世界に」
「真の神には勝てないよ。決してね」
 孫は最後の笑みを浮かべて告げた。
「まあ。先に行っているからね」
「これでお別れですね」
 シュウがその孫に声をかけた。応龍機も遂にあちこちから火を噴き孫自身もその炎の中に消えようとしている。その中での言葉だった。
「貴方とも」
「そうさ。じゃあロンド=ベルの諸君」
 最後まで飄々とした態度を崩さず。
「御機嫌よう」
 こう言って帽子を取って一礼してから。彼は炎の中に消えた。
 大爆発が起こり応龍機も消えた。ロンド=ベルは再び勝った。
 だがその彼等の前にだ。今度は。
「来たな」
「その真の霊帝が」
「この気配、間違いない」
「まとわりつくみたいな闇のプレッシャー」
「これこそが」
「では皆さんいいですね」
 シュウが全員に声をかけっる。
「いよいよ最後の戦いです」
「俺達の正真正銘の」
「最後の戦いね」
「そうです。さて」
「そうですね」
 チカがシュウに言う。
「本当にここで負けたら」
「全てが終わりです」
「何かそういう戦いばかりですけれど」
「ははは、そう考えると気が楽ですね」
 シュウはチカの今の言葉に笑って返した。
「いつもだと思うと」
「そうなりますか」
「深刻に考えてもはじまりません」
 シュウはあえてこう話す。
「ここはです」
「そうだよね。もうな」
「かなりの悪寒を感じるけれど」
「それでも」
「ここで逃げても」
「何にもなりません」
 シュウはこうも話すのだった。
「深刻に考えず、逃げず」
「そうしてだよな」
「恐怖に支配されかねないけれど」
「それでも」
 しかしだ。誰もがこうも感じたのだった。
「心の中に何かが入って来る!?」
「これって一体」
「ムゲと戦った時と同じ」
「あの嫌らしい気配がまた」
「ここで」
 こうしてだった。彼等をだ。
 その怪しい気配が覆おうとしていた。そしてだ。
 ここでだ。彼等は察したのだった。
「そうか、これこそ」
「そのケイサル=エフェスとやらの力」
「その源なんだ」
 そしてだ。それこそが。
「人間の悪の怨念の集合体」
「まさにそれなんだ」
「つまり!」
「悪霊だ!」
 それだとだ。ここで看破したのだった。
「それがか!」
「そいつの力!」
「ケイサル=エフェスの!」
「つまりこういうことだな」
 コスモがここで言った。
「イデやアカシックレコードが」
「そうしたものがか」
「そうだっていうのね」
「そうだ。人の意志の集合体としたら」
 それならばだというのだ。
「そこから外れた奴等」
「人の意志の集合体から外れた奴等」
「そこから見放された悪意」
「それを持った連中の魂」
「それこそが」
「そうだ、そうした奴等の意志!」
 まさにだ。その意志がだと話すコスモだった。
「それが力を持ったとしても!」
「おかしくないな」
「そうだっていうんだな」
「それじゃあ」
「そうだな。そしてだ」
 今度言うのは大文字だった。
「反イデとも言える意志は」
「それがアポカリュプシスによってですね」
「宇宙の死と再生が繰り返される度に」
「この宇宙に満ちていった」
「それがか」
「ケイサル=エフェスの力の源」
「アカシックレコードと対になる悪しき力」
 こう気付いていくのだった。
「俺達が最後に戦う奴か」
「ケイサル=エフェス」
「それで何処にいるんだ?」
 次に問題になることはこのことだった。
「そのケイサル=エフェスは」
「この百万年後の宇宙の何処に」
「何処に潜んでやがる」
「そして何時出て来るっていうんだ」
「間も無くです」
 またこう言うシュウだった。
「私達の前に出て来ますよ」
「じゃあそれは一体」
「何処から?」
「俺達の前に出て来るんだ?」
「気配はしても」
 それでもだった。実体はだった。
「まだ出て来ない」
「まさか焦らしている?」
「俺達を」
「そう、出て来る」
 クォヴレーが言うとだった。
「この銀河の闘争の歴史」
「あの偽の霊帝に統一させようとしていた」
「奴に気付かれないようにしてよね」
 アラドとゼオラがそのクォヴレーに話す。
「他にも色々あったけれど」
「そうした全部の戦いも」
「ガイゾックもだ」
 ブッチャーがいただ。それもだというのだ。
「ガイゾック星人に気付かれぬうちにだ」
「手を回してそれでか」
「争わせていたのね」
「言うなら銀河の闘争、全ての生と死が」
 フェアリも話す。
「あの男によって仕組まれていたのね」
「そうだ。その霊帝ケイサル=エフェス」
 また言うクォヴレーだった。
「その男が歪めていたのだ」
「それでだったのです」
 シュウがここでまた話す。
「因果律の研究をしていた彼はです」
「そのユーゼス=ゴッツォが気付いたのか」
「真の霊帝の存在に」
「その中でか」
「私もまたそうでした」
 シュウもそれはユーゼスと同じだったというのだ。
「そのことにです」
「じゃあ今からそれがか」
「出て来る」
「いよいよ」
 ここでだった。遂にだ。
 何かが出て来たのだった。それは。
「何だ、今度は」
「あの黒い卵みたいなのは」
「一体何だ?」
「まさかあれが」
「そうです。あれがです」
 まさにそうだと話すシュウだった。
「あの黒い球体こそがです」
「真の霊帝ケイサル=エフェス」
「それが出て来るってんだな」
「あの中から」
「そうだ」
 そしてその球体からだった。
 あの声が聞こえてきた。その声を聞いてだ。
 最初にだ。トウマが言った。
「その声は。ここに来る時に聞いた」
「如何にも」
 こう言うその声だった。
「我の声だ」
「やはりそうか!」
「でははじめるとしよう」
 闇の声は言う。
「今からだ」
「!?あれがか」
「あの黒く禍々しい奴がか!」
「真の霊帝!」
「遂に出て来たか!」
 そしてだった。出て来たそれは。
 銀色の髭の老人だった。それが言うのである。
「我こそがだ」
「ケイサル=エフェス!」
「それか!」
「手前が!」
「その通りだ」
 こう言ってきたのだった。ケイサル=エフェスは。
「そして今からだ」
「何だ?俺達を倒すってのかよ!」
「そしてか!」
「この世界も終わらせるってんだな!」
「アポカリュプシスを!」
「まさか宇宙怪獣達まで退けるとは思わなかった」
 それは彼にとってもだ。計算外だったというのだ。
 しかしそれでもだとだ。こうも言ってだった。
 闇からだ。無数の者達を出してきたのだった。
「へっ、またか」
「またバルマーのマシンか」
「それを出してきてかよ」
「また戦うってのか」
「全てはここで終わりはじまる」
 また言うのであった。
「銀河の。全ての世界の終焉が」
「総員戦闘用意!」
 グローバルが命じた。
「これが最後の戦いになる!」
「ですね。ここで!」
「終わらせましょう!」
「こいつを倒して!」
「それで!」
 全員すぐに戦闘陣形に入る。そしてだ。
 全軍にだ。最後のそれが配られた。
「エネルギータンクですか」
「これを使ってですね」
「そうして整備も補給も済ませて」
「そのうえで」
 まさに最後の、本当の意味での最後の戦いがはじまろうとしていた。


第百三十二話   完


                                        2011・6・26
 

 

第百三十三話 GONG

                  第百三十三話 GONG
 戦う陣形に戻るロンド=ベル。その中でだ。
 万丈がだ。ケイサル=エフェスに問うのだった。
「一ついいかな」
「何だ」
「あんたは最初のガンエデンだったんだね」
「如何にも」
 その通りだとだ。ケイサル=エフェスも答える。
「その通りだ」
「そしてそれが」
「アウグストス」
 ケイサル=エフェスはこの単語を出してきたのだった。
「それだったのだ」
「そしてそれが」
「そうだ。真の創世神」
「ズフィルード」 
 バルマーの創世神の名もだった。ここで重なった。
「そういうことだったんだね」
「バルマー帝国は我が築いた国家だ」
「あそこまでしたのはあんただったのか」
「遥かな過去に」
「じゃあやっぱりこいつは」
「人間!?」
「そうよね。孫光龍と同じで」
「そうなる?」
 ロンド=ベルの面々はここでこう考えたのだ。ガンエデンの話を踏まえてだ。彼もまたそうだと考えたのである。しかしそれはだった。
 彼自身がだ。こう言うのだった。
「だが」
「だが!?」
「だがっていうと?」
「今の我は違う」
 これがそのケイサル=エフェスの言葉だった。
「今の我はだ」
「へっ、やっぱりそう言うんだな!」
 エイジが彼のその言葉を聞いて言い返す。
「神様ってな!」
「如何にも」
「今まで何度もそういう奴に会ってきたんだよ!」
 エイジが言うのはこのことだった。
「今更な!そんなことを言われてもな!」
「そうだ、何とも思うかよ!」
「もうね!」
「一つ言っておく」
 ここでまた言うケイサル=エフェスだった。
「御前達がバルマーで倒したのはだ」
「あれか」
「ルアフの使っていた」
「あれのことか」
「そう、あれはだ」
 どうかというのだ。ルアフが乗っていたそれは。
「あれは抜け殻だ」
「抜け殻!?」
「抜け殻っていうと」
「アウグストス、我の魂が抜けただ」
 そのだ。抜け殻に過ぎないというのである。
「そうしたものに過ぎなかったのだ」
「そういえばアウグストスって」
「ええ、確かイルイも言っていた」
「つまりは」
「最初の強念者!?」
 それだとだ。彼等は気付いたのだった。
「オリジナルのサイコドライバー」
「それだっていうのか」
「それが」
「ナシム=ガンエデンの中に」
 ケイサル=エフェスはまた話す。
「地球のアウグストスの魂が宿っていたように」
「バルマーのガンエデンにも」
「あのゲペル=ガンエデンにも」
「そうだっていうのか!」
「そうだ。それが我だ」
 まさしくだ。彼自身だというのだ。
「我だったのだ」
「そしてです」
 今度はシュウが話す。
「そのアウグストス、ケイサル=エフェスはです」
「こいつは?」
「こいつは一体」
「どうしたっていうの?」
「五百年前に」
 この年数が話された。
「自分自身をガンエデンシステムから切り離したのです」
「五百年前っていうと」
「そうだよな」
「あいつが出て来た時」
「ルアフが」
「はい、そうです」
 その通りだと答えたのはルリアだった。
「その頃です。あの男がガンエデンとなったのは」
「ケイサル=エフェスの存在に気付かないうちに」
「そうなっていた」
「それでどうしてなのかな」
 万丈がここでまた問うた。
「何故あんたは自分の使命をルアフに渡したんだい?」
「そのことか」
「そう、バルマー防衛を」
 そのだ。彼の果たすべき責務をだというのだ。
「それはどうしてなんだい?」
「確かに。おかしいよな」
「バルマーの主がどうして」
「それを放棄して」
「我はまつろわぬ霊の王になったのだ」
「その因果律の中でか」
 クォヴレーがこう問い返した。
「そうなることを選んだというのか」
「そうだ。それによって得た力」
 それは何かというとだった。
「強念と対の力をだ」
「まさかそれが」
「この宇宙を無に返す力」
「それこそが」
「そうだ。人はだ」
 どうするべきか。ケイサル=エフェスは己の考えも語った。
「肉体という器を捨て」
「何っ!?」
「それじゃあそれは」
「人類補完計画!」
「全く同じじゃないか!」
「まさか父さんも」
 シンジは父ゲンドウがケイサル=エフェスに気付いていたのかと考えた。
「それで補完計画を」
「いえ、彼はこの存在のことには気付いていませんでした」
 それはシュウが話す。
「若し気付いていたとすればおそらく今ここにいるでしょうから」
「ケイサル=エフェスの方に」
「はい、そうされていた筈です」
「じゃあ父さんは気付かなかったからこそ」
「あれで済んだという一面もあります」
 こう話されるのだった。それがゲンドウにとって救いでもあったのだ。
 そしてだ。さらにであった。ケイサル=エフェスは話すのだった。
「ではだ」
「戦うってのか」
「遂に」
「我の力を見せよう」
 こう言うとだ。彼の周りにだ。
 無数のバルマーのマシンの他に。彼等も出て来たのだった。
「鳥と魚と獣!」
「クストースの三匹!?」
「ガンエデンだからか!」
「それで出したっていうのか!」
「如何にも」
 その通りだと。ケイサル=エフェスも話す。
「この力はルアフにはなかった筈だ」
「偽りの霊帝だからか」
「それでか」
「こうした存在は操れなかった」
「そういうことか」
「けれど」
 ここでだ。護が言う。
「何か色が違うよ」
「そうね。多分」
 命もその三匹を見て話す。
「彼等にも怨霊の意志が流れ込んでいるのよ」
「その奴等を操り!」
 凱も言う。
「あらゆる世界の生命を根絶やしにせんとする悪霊の王!」
「それこそが」
「そうだ、ケイサル=エフェスだ!」
 凱がこう叫ぶとだ。他の面々も口々に言う。
「そんな奴!」
「誰が放っておけるかってんdな!」
「この最後の戦いに勝って!」
「どの世界も過ごすんだ!」
「あらゆる世界はその一つ一つが一枚の葉です」
 シュウはここでこんなことを言った。
「そしてあらゆる世界が大樹の葉になっています」
「世界樹だな」
「そうです。その世界樹を守る為にも」
 シュウもだ。ケイサル=エフェスと対峙していた。
「私もまた戦いましょう」
「それは汝の為でもあるな」
「その通りです」
 シュウも微笑みそのことを否定しない。
「私はそうして強制的にどうこうされるのが嫌いですから」
「だからだな」
「その貴方を倒します」
「我はまつろわぬ霊の王にして」
 また言うのであった。
「あまねく世界の楔を解き放つ者なり」
「全部を破壊してか!」
「それでかよ!」
「そうだ。全ての肉なる者達よ」
 その言葉が続く。
「今こそ土塊の肉体を捨て」
「本当にそのままね」
「そうね」
 それはミサトとリツコが聞いてもだった。
「補完計画ね」
「こちらの方が大掛かりで遥かにドス黒いけれどね」
 こう話す二人だった。その間にもだ。
 ケイサル=エフェスはだ。こんなことを言うのだった。
「新生せよ。さすればだ」
「言うことはわかるよ」
 シンジも既に読んでいた。
「あらゆる苦しみから解放されるんだね」
「そうだ。そして我をだ」
「受け入れろっていうんだね」
「心を尽くし。魂を尽くし。力を尽くしてだ」
「それはできないよ」
 シンジは真剣な顔でそれを拒否した。
「それは逃げだし。それに」
「それにだというのか」
「僕達は貴方の様な邪な存在を受け入れられない」
 だからだというシンジだった。
「だから。それはね」
「そうよ!わかったらね!」
 アスカはケイサル=エフェスに対しても噛み付かんばかりである。
「やっつけてやるわよ!覚悟しなさい!」
「全軍攻撃用意!」
「攻撃目標ケイサル=エフェス!」
「これが最後の戦いだ!」
 こう口々に叫び戦闘に入るのだった。
 戦いに入ったところでだ。アムロが言う。
「これは・・・・・・!」
「そうだな」  
 クワトロがそのアムロの言葉に頷く。
「悪意がだ」
「奴を中心に集ってきている!」
「数億・・・・・・いや」
「違う!」
 二人はすぐに察した。
「これは数え切れないだけのだ」
「死者の悪意」
「それが集ってきている!」
「ムゲの比ではないか」
「我の下に集う魂、それは」
 それは何かというとだ。
「まつろわぬ霊のもの」
「だからか!」
「これだけの悪意が」
「全ての宇宙から集めた悪意」
 それだけにだ。かなりのものだった。
「肉なる者にそれを消し去ることは出来ぬ」
「いや、可能だ!」
 サンドマンがそのケイサル=エフェスに言い返す。
「必ずだ!」
「そう言うのか」
「そうだ。何度でも言おう」
 サンドマンも負けてはいない。
「この世に不可能なことはないのだか」
「言うものだ。では見せてもらおう」
「それではだ」
 サンドマンはグラヴィゴラスの艦橋からメイド達に命じる。
「諸君、いいな」
「了解です」
「それではですね」
「主砲、一斉発射だ」
 そうしろと言ってだった。
 グラヴィゴラスの主砲がケイサル=エフェスを撃つ。しかしそれだけではだ。
 神は微動だにしない。しかしだった。
「これで終わりではない」
「さらにですね」
「主砲を」
「これが最後だ。例え主砲が壊れようともだ」
 それでもだというのだ。
「撃つ。いいな」
「了解です」
「本当に最後ですから」
「それなら本当に」
「最後の最後まで」
 グラヴィゴラスの主砲が吠える。それは他の戦艦もだった。
 それはケイサル=エフェスだけでなく敵軍全体にだ。攻撃を浴びせていく。
 敵の数は次第に減っていく。しかしだった。
「くっ、こいつはか」
「何ともないな」
「これだけの攻撃を浴びせてるのに」
「まだ」
「この程度ではだ」
 ケイサル=エフェス自身も言う。
「我は倒せぬ」
「まだです!」
 クスハがだ。言葉を返す。
「貴方の思い通りになんてさせません!」
「無駄だ」 
 だがケイサル=エフェスはそのクスハにも言う。
「サイコドライバーの汝とてだ」
「どうだというのですか!」
「悪霊達の前では赤子も同然だ」
「くっ、こいつの発する悪意」
 ブリットはそれを感じてだった。
「一瞬でも気を抜くと」
「そうね。それだけで」
「身体の隅々まで入り込んで来る」
「これが真の霊帝の力」
「ルアフとは比べ物にならない」
「何て禍々しい」
「我はまつろわぬ神」
「人間じゃないってのかよ!」
 トウマがそのケイサル=エフェスに問い返す。
「そうだっていうのかよ!」
「数え切れない程の銀河の死と再生」
 こんなことも言ってきた。
「それが我に力を与えてくれた」
「今までの無限の世界の」
「その崩壊と再生がか」
「こいつの力の源」
「そうだっていうのね」
「無限力こそが」
 どうかというのだ。
「全ての諸悪の根源」
「輪廻というのか?」
 曲がりなりにも僧侶のティアンはふと気付いた。
「もしや」
「我はそれから逃れた者」
「ふむ」
「まつろわぬ神」
「そうした意味では御仏と同じか」
 ティアンは彼の言葉からこう考えた。
「しかし根本的に違うな」
「はい、確かに」
 ティアンの言葉にデメクサが真剣な顔で頷く。
「私は仏教には詳しくないですが」
「それでもわかるな」
「解脱ですね」
 デメクサはこの単語を出した。
「それですね」
「うむ。それになる」
「彼は逃れたといいますが」
「それは解脱ではない」
「解脱はより高みに至ることだと思いますが」
「あ奴は違う」
 はっきりとだ。ティアンは言い切った。
「より邪な存在になったのだ」
「そうだな。ティアン殿の言う通りだ」
 ジノもその言葉に頷く。
「あれは。闇の中に入ったのだ」
「輪廻から逃れるのにも様々だ」
 ティアンはまた言う。
「中にはあの様にして」
「闇となる者もいるのか」
 ファングもこのことについてわかったのだった。
「そしてその闇の中で」
「左様、ああした存在になるのだ」
「ではあいつは!」
 ロザリーも言う。
「最早!」
「人と神と悪魔を超え」
 その彼の言葉だ。
「この世界の過去と未来の全てを統べる者」
「神ですらも超えた神」
「それだってのかよ!」
「人間の意志なぞ無限の絶望の前には」
 また言うケイサル=エフェスだった。
「何の意味さえ持たない」
「震えている」
 ヒイロはふと気付いた。
「俺の手が」
「その様だな」
「奴の悪意の前に」
「個人の意志ではだ」
 ケイサル=エフェスはヒイロにも話す。
「まつろわぬ霊の集いし我を討つことはできぬ」
「悪魔じゃねえっていってもな」
 甲児もだった。
「この底知らねえ悪意は」
「恐怖」
「それを感じるね」
 鉄也と大介も言う。
「この俺も」
「こんな奴ははじめてだ」
「魔神といえども我の敵ではない」
 三人が操る魔神達もこの神の前には無力だった。
「この因果律の支配者の前にはだ」
「くそっ、けれどな!」
「それでもだ!」
「僕達は戦う!」
 マジンガーチームも向かう。死闘が続く。
 その中でだ。洸もだった。
「ライディーンが言っている」
「何て?」
「全ての歪みはこいつからはじまっている」
 こうマリに話すのだ。
「ありとあらゆる歪みが!」
「じゃあこいつは」
「まさに」
「あらゆる災いの元なんだ」
 マリだけでなく神宮寺にも話す。
「この恐ろしい力こそが」
「くっ、それなら!」
「俺達もだ!」
 神宮司達はブルーガーを駆り洸と共に向かう。しかしその戦いは。
 神の前にだ。ロンド=ベルの動きは完全に止まってしまっていた。
「だ、駄目だ!」
「恐ろしい体力だ」
「何て強さ」
「攻撃も尋常じゃないし」
「この悪意も」
 リュウセイもいる。
「何てドス黒さだ」
「このままではバンプレイオスもだ」
 ここでマイも言う。
「飲み込まれてしまうぞ」
「リュウセイ、今はだ!」
「ああ、戦うのもいいけれどっていうんだな!」
「己を見失うな!」
 ケイサル=エフェスの悪意にだ。
「いいな!」
「そうして時を待つのよ」
 アヤもそのリュウセイに話す、
「今はね」
「我と一つになれ」
 声が脳から直接リュウセイに語り掛けてくる。
「さすればだ」
「さすれば、何だってんだ!」
 リュウセイは怒鳴って彼に言い返す。
「何があるってんだ!」
「この世の理を操る力を汝に与えよう」
「らすぼすお得意の勧誘かよ!」
 リュウセイはこう喝破した。
「生憎だがな!」
「だが。何だ」
「俺はまだ生きてるんだ!」
 リョウ返すのである。
「死人の仲間入りなんかしてたまるかよ!」
「愚かな」
 その言葉を聞いてだ。
 ケイサル=エフェスのマシンの前が開き。そうして。
 そこから六本の腕を持つ漆黒の何かが出て来たのだった。
「命ある者よ」
「な、何だ!?」
「祭壇かありゃ」
 そこが開きだった。
「古の白き祭壇、今ここに」
「あいつ何だ!?」
 その六本腕がだ。前に曼荼羅を思わせるものを出しだ。
「天よ!地よ!」
「せ、世界が!?」
「世界が変わった!?」
 ロンド=ベル全員をだ。何かが襲って来たのである。
 漆黒になりその中でだ。
 無数の悪霊達が彼等を取り囲みだ。まとわりついてきたのだ。
「あ、悪霊達が!」
「来たってのかよ!」
「な、何だ!?」
「一体どうなるってんだ!」
「いかん、精神攻撃だ!」
 ここで大文字が気付いた。
「諸君、気を確かに持て!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「一瞬でも油断をすれば取り込まれる!」
 まさにその為であった。
 彼等は何とか耐えた。しかしだ。
 その今は収められた六本腕についてだ。こう言い合った。
「な、何だったんだ今のは」
「まさかあれが」
「あいつの正体!?」
「ケイサル=エフェスの」
「そうだっていうの!?」
「人間じゃない」
 そのことがわかったのだった。
「あの老人の姿は仮の姿」
「正体があれか」
「禍々しい神」
「悪霊の神」
「これでわかった筈だ」
 そのケイサル=エフェスも言う。
「我の力がだ」
「くっ、今のをもう一度受けたら」
「俺達はもう終わりだ」
「折角こいつ一人に追い詰めたってのに」
「これじゃあ」
「これだけではない」
 こう言ってだ。さらにだ。
 ある程度傷ついていた身体がだ。回復したのだった。
「こうしたこともできる」
「再生能力!?」
「まさか、そんな力まであるなんて」
「何処までバケモノなんだよ」
「あれが神の力」
「まつろわぬ神の」
「駄目だ」
「も、もう」
 諦める声まで出て来た。
「こんな奴にはもう」
「何をしても」
「ここで負けて」
「そして何もかもが」
「終わるのね」
「折角ここまで来たのに」
「それでも」
 こう言う声が出てしまう。しかしだ。
 彼等にだ。この声が告げるのだった。
「まだです」
「!?その声は」
「まさか」
「はい、私です」
 戦場にだ。あの彼女が出て来たのは。
「ガンエデン!」
「ということは」
「イルイちゃん!?」
「そうです。皆さん」
 そのイルイ、大人の姿の彼女が言うのだった。
「絶対に諦めてはいけません」
「じゃあ戦えっていうのね」
「絶対に諦めるずに」
「そのうえで」
「諦めたらそれで終わりです」
 だからだというのだ。
「皆さんは希望そのものなのですから」
「俺達が希望」
「そうだっていうの!?」
「あんなとんでもない奴相手なのに」
「それでも」
「神でも。無敵ではないのです」
 だからだというのだ。
「ですから。決してです」
「諦めるな」
「そして勝て」
「そういうことなのね」
「その通りです。私は貴方達と出会い変わりました」
 かつてのだ。バルマー戦役のことだ。
「そして今に至ります」
「あの時みたいにか」
「それで倒す」
「こいつも」
「そうしましょう。皆さん」
 また言うイルイだった。今度の言葉は。
「聞いて下さい、この声を」
「声!?」
「声っていうと」
「まさか。百万年後のこの時代に」
「そんな声なんて」
「声は。時代を超えます」
 そうだとだ。イルイが言うとだ。
 彼女の言葉通りそれが聞こえてきたのだ。その声が。
「!?聞こえる!」
「確かにだ!」
「皆の!」
「声が!」
「戦士達よ」
「ゲペルニッチか!」
 バサラが応える。
「まさかここに来たってのか!」
「それは違う」
 そうではないとだ。ゲペルニッチは言う。
「しかしだ」
「百万年前の世界からだな」
「そうだ。御前達を見ているのだ」
「私がです」
 イルイがだ。ここでまた言う。
「時空をつなげました」
「それでか」
「こうして話ができるのか」
「何か凄いな」
「力は。こうした時に使うものですから」
 だからだと言うイルイだった。
「ですから」
「イルイちゃん本当に凄く変わったな」
「ああ、そこまで考えるなんて」
「その為に力を使うなんて」
「そんなことまで考えるなんて」
「我等はだ」
 そのゲペルニッチがまた話す。
「御前達のスピリチアの輝きにだ」
「信じてくれるのね1」
「賭けよう」
 こうミレーヌにも言うのだ。
「我等の全てを」
「シンジ君」
 今度はだ。カヲルだった。
「絶望していないよね」
「カヲル君!?」
「僕は。魂だけになってるけれどね」
 それでもだとだ。カヲルはシンジに微笑んで言うのだ。
「それでも。君達を見ているよ」
「カヲル君・・・・・・」
「僕は君達を信じている」
 こうも言うカヲルだった。
「そして君の強さを」
「信じてくれるんだね」
「信じているからこそ言うんだ」
 だからだというのだ。
「今こうして」
「そうだね。それじゃあ」
「最後まで戦うのだ!」
「誇り高き戦士達よ!」
 ハイネルとリヒテルもいた。
「御前達のその強さにだ!」
「全ての未来がかかっているのだ!」
「ならば我々は喜んで賭けよう!」
「御前達の光に!」
「兄さん!」
「リヒテル!」
 健一と一矢が応える。
「そうだ。俺達は絶望することはないんだ!」
「今も!」
「戦士達よ」
 今度はフェイルロードだった。
「諸君等に。全てを託そう」
「殿下、そうしてくれるんだな!」
「私達に」
 フェイルに応えるのはマサキとシュウだった。
「なら、この戦いもな!」
「果たさせてもらいましょう」
「頼んだぞ」
「ザッシュ、最後まで頼む」
 カークスは我が子に告げた。
「この全てを賭けた戦いを」
「父さん・・・・・・」
「大きくなったな。御前が帰ってくればだ」
 どうするのか。カークスは微笑んで言う。
「私は安心して引退できるな」
「うん、僕は父さんの分まで頑張るからね」
「全てはこの戦いにある」
「我等は喜んで見守ろう」
 天使達だった。
「全ては。希望と愛の中にある」
「私の子供達」
 デュミナスも。その魂が現れた。
「全ては任せました」
「うん、デュミナス」
「僕達は楽しく生きているから」
「見守っていて下さい」
 ティス達が笑顔でデュミナスに告げた。
「僕達は御前と共にある」
「父さん!」
 今度は獅子王博士だった。
「バスターマシンがザ=パワーを取り込んだことで」
「それでなのか」
「ええ、そうよ」
 絆もだ。その姿を見せた。
「私達はいつもいるから」
「母さんまで・・・・・・」
「宙、卯月君」
「父さんか!」
 今度は司馬博士だった。宙が叫ぶ。
「来てくれたのか!」
「少し帰って来た」
「それでなのか」
「そうだ。御前もまた」
「わかっている!」
「戦え、宙!」
 我が子への最大限の励ましだった。
「その力の限り!」
「ああ、母さんやまゆみ、皆を守る為に!」
 まさにだ。その為にだった。
「俺はやる!やってやる!」
「戦士達を歌うだ!」
 デウスだ。
「その熱い想いは死の波動さえ打ち破る!」
「その通りだ」
 イゴールもいた。
「想いは力だ」
「あんたも来たか!」
「父さんも!」
 忍とアランがイゴールに応える。
「よし、何かな!」
「これまで以上の力がこみあげる」
「その怒りの炎で悪を焼き尽くせ」
「ああ、そうするさ!」
「俺達五人の力で」
「やってやるからね!」
 沙羅に亮、雅人も応える。
 そして洸もまた。
「感じる。ライディーンが」
「ああ、俺にもわかる」
「これまでにない凄まじい力が沸き起こっています」
 神宮寺と麗が言う。
「その力ならな」
「最早恐れるものはないでしょう」
「では洸君、ここは」
「やりましょう!」
 猿丸とマリもだった。
「及ばずながら僕達も」
「戦わせてもらうわ!」
「感じるな、マーズ」
「うん、兄さん」
 タケルとマーグはお互いを見合っている。
「我々の両親達がだ」
「見守ってくれているんだ」
「ならばだ。希望を捨てずにだ」
「戦おう」
「ララアか」
「来たのか」
 アムロとシャアは彼女を見ていた。
「この遥かな未来に」
「来てくれたというのか」
「言ったでしょ」
 ララアは二人に優しい声で語り掛ける。
「人は何時か時間さえ支配できるようになると」
「そして今俺達の前に」
「出てくれたのか」
「未来を手に入れて」
 これがララアの二人への言葉だった。
「ズン類の」
「ああ、わかった」
「なら。勝利を手に掴もう」
 シャアも変わっていた。人類の未来を信じるようになっていた。
 カガリはユウナに言っていた。
「わかるな」
「うん、いるね」
「父上が。あの中に」
「いやね、僕としてはカガリの補佐だけれどね」
「ここでもそう言うか?」
「いやあ、運命だからねえ」
 本当に相変わらずのユウナである。
「受け入れるよ」
「いつも思うが言ってくれるな」
「何しろそれが僕の仕事だから」
 だからだというのだ。
「なら。叔父上の御願いは聞かせてもらうよ」
「済まないな」
「じゃあ。やろうか」
「トレーズ、いるか」
 ミリアルドも感じていた。
「御前もまた」
「その通りだ」
 そしてだ。彼の声もだった。
「私もいる」
「やはりな」
「お父様も」
「ミリアルド、そしてマリーメイア」
 微笑んで二人に話すトレーズだった。
「道は正しい。このままだ」
「歩む」
「そうすれば」
「そうだ。やがて辿り着ける」
 こうだ。気品の笑顔で友と娘に話すのだ。
「私達の目指しているその場所にだ」
「そうだな。それではだ」
「ここは。何があろうとも」
「戦い。そして勝ってくれ」
 トレーズはまた彼等に告げた。
「私達の目指している約束の場所に辿り着く為に」
「わかった」 
 ミリアルドが頷きだった。トレーズの言葉を受け入れた。
 ケイサル=エフェスは。その光達を見つつだ。イルイに言った。
「ナシムよ」
「ゲペル、久し振りですね」
「茶番は止めろ」
 こう告げるのだった。
「アカシックレコードにへつらい」
「そうしてだというのですね」
「その無限力を味方につけたか」
「いえ」
「違うというのか」
「私は導いただけなのです」 
 それだけだとだ。イルイは返すのだった。
「ロンド=ベルを」
「この者達をか」
「彼等を愛する者達の言葉を」
 それをだというのだ。
「導いただけです」
「戯言を。それが」
「へつらっているというのですね」
「そうではないのか」
「いえ」
「また違うといのか」
「貴方という悪意を討つのは」
 ケイサル=エフェスを見据えて。そうしての言葉だった。
「人日との願いなのです」
「だからそれがだ」
「無限力にへつらっていると」
「そうだ。それ以外にどう言うのだ」
「目を覚ますのです」
 イルイの言うことがここで変わった。
「ゲペル、いえケイサル=エフェス」
「何が目を覚ますというのだ」
「人は自らの力でアポカリュプシスを乗り越えたのです」
「我をだというのか」
「はい、これからは」
 未来は。それは。
「これからの歴史は神でも悪魔でもなく」
「誰がどうするというのだ」
「人が」
 まずは誰かという言葉への答えだった。
「自らの手で築いていくものです」
「肉なるものに」
 だがだ。ケイサル=エフェスはわかろうとしない。
「我の怨念が理解できようか!」
「貴方はまだ」
「見るのだ、ナシムよ」
 イルイの名を呼びつつ。
 全身からエネルギーを放ちだ。派手な爆発を幾つも起こすのだった。
 それを見てだ。キリーが言った。
「たまんないぜ」
「ああ、悪意がな」
「物理的な力まで持っちゃってるわね」
 慎吾とレミーも言う。
「ああなったらな」
「ちょっとやそっとじゃな」
「こりゃ面白い戦いになりそうだな」
 キリーが軽口を叩くとだった。
 ケン太もいた。彼が話すのだった。
「無限力の発動にはね」
「それにはあれだな」
「生きている人間の力」
「それが鍵だったよな」
「うん、それと同じで」
 そのケン太の言葉だ。
「悪霊達もね」
「あいつによってか」
「ケイサル=エフェスってのを通じて」
「そのうえでだな」
「それで生み出しているんだ」
「それでケン太」
 慎吾が彼に問う。
「あいつの攻略法は?」
「もうわかってるよね」
 ケン太は微笑んで慎吾に返す。
「もうそれはね」
「ははは、そうだな」
「言われてみればね」
「そんなのはとっくにわかってることだったな」
 慎吾に続いてレミーとキリーも笑って話す。
「それならもう」
「私達の力で」
「やるとするか」
「うむ、そうだ!」
「我等の力でだ!」
 カットナルとケルナグールも叫ぶ。
「人間の力か」
「思えば頼もしいもよ」
「確かに」
 そしてブンドルもだった。
 グラスを掲げ。彼は優雅に言うのだった。
「悪霊達を前にしても果敢に戦う」
「それこそがだな」
「そう言うのだな」
「そうだ。それこそが」
 そしてだった。この言葉だ。
「美しい・・・・・・」
「よし、最後もな!」
「この言葉だ!」
「ああ、やってやるか」
 ジョナサンはだ。彼女を見ていた。
「あんたも来てくれたしな」
「ジョン、いつも見ていたわ」
「ああ、わかってたさ」
 ジョンは微笑んでアノーアに答える。
「いつも。見ていてくれたよな」
「私は。貴方の母親だから」
「俺はずっと気付かなかったんだ」
 残念な顔でだ。ジョナサンは言った。
「母親ってやつがどういったものかな」
「ジョン・・・・・・」
「だがもうわかった」
 今はだ。そうなったというのだ。
「俺はあんたの息子で」
「ええ」
「あんたは俺の母親だ。例え何があろうともな」
「じゃあジョナサン」
「御袋さんと一緒にだな」
「ああ、行くさ」
 笑ってだ。ヒメと勇にも応える。
「この最後の戦いにな」
「オルファンさん、見ていて!」
「俺達はやる!」
 ヒメと勇も言う。
「この戦いに勝って!」
「未来を手に入れる!」
「よし、俺もだ!」
 バサラが。叫ぶ。
「歌うか!」
「最後の最後でね!」
「ああ、とびっきりのライブだ!」
 ミレーヌにもこう返す。
「行くぜ、悪霊共!」
「ファイナルステージよ!」
「俺達の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!!」
「コノ歌!」
 シビルがその歌を聴いて言う。
「コノ歌ガ!」
「おお、今遂に」
「ガオオオオオオオン!」
「はじまるんだな!」
 ガビルにグラビル、ギギルも思わず声をあげる。
「ここに真の美が、魂の美が!」
「はじまるか!」
「何、この歌」
 ミレーヌはバサラのその歌を聴いて言った。
「今までにない曲だけれど」
「この曲はな」
 レイがそのミレーヌに話す。
「バサラが」
「私達に預けてくれた曲」
 ミンメイだ。何と彼女まで来た。
「それなのです」
「私達に!?」
「ええ、だから」
「ここはな」
「・・・・・・歌う」
 ミンメイに続いてレイ達も言う。
「演奏は任せろ」
「だからミレーヌさんは私と」
 ミンメイは微笑みミレーヌに話す。
「歌いましょう」
「ええ、あたし達も!」
「一緒に!」
 シェリルとランカは既にステージにいた。衣装を着て。
「その歌歌うわよ!」
「皆で!」
「行くぜゴングだ!」
 バサラが今ギターを手に高らかに叫ぶ。
「どいつもこいつも歌いやがれ!」
「わかりました!」
「了解だもんね!」
 ラクスとマイクも笑顔で応える。
「今ここで!」
「最高のクライマックスだもんね!」
「では私もこれから」
「ベリーグッド!すっごくいい歌だもんね!」
 彼等も加わりだ。他の面々も。
「歌うぞ!」
「ああ、この歌で奴を退ける!」
「ケイサル=エフェス!今の貴様には!」
「絶対に負けない!」
「スコアと歌詞を全機に転送!」
 ラクスが命じた。
「そして私も!」
「そうだな。歌うか」
「歌わずにいられません」
 微笑みだ。ヘンケンに答える。
「これだけの歌は」
「では。全員で」
「鳴らすぜ、今!」
 また叫ぶバサラだった。
「生命のゴングをな!」
「これが歌」
 カヲルは満足している笑みの中でシンジに言う。
「リリンの生み出した文化の極みだよ」
「カヲル君、僕も」
「歌うんだ、シンジ君」
 微笑みだ。シンジにも話す。
「君のその心と共に」
「うん、そうするよ」
「全ては。今はじまるんだ」 
 シンジに。こう話していく。
「君達の未来が」
「くっ、これは!」
 ケイサル=エフェスにだ。何かが起こった。
「まさか我の力が」
「どうやら」
 驚愕する彼にだ。シュウが言う。
「再生の力は封じられましたね」
「これは何故だ」
「貴方は悪意そのもの」
 こう神に言うのだった。
「ならばその対極にある力にはです」
「弱いというのか」
「はい」
 まさにそうだというのだ。
「その通りです」
「馬鹿な、そんなことが」
「いや、これは」
「この歌は」
「凄いぜおい!」
「聴けば聴く程!」
 ケイサル=エフェスは否定しようとする。しかしだ。
 それ以上にだ。ロンド=ベルの面々が言うのだった。
「皆で歌えば!」
「力が出て来るぜ!」
「溢れ出る感情」
 レイもだ。微笑んで言う。
「生きる力、生きる意志」
「おいレイ!」 
 バサラはそのレイにも言う。
「歌うぜ!」
「はい、この歌を」
「歌好きだな!」
「どうしてそのことを」
「俺にはわかるんだ!歌が好きな奴がな!」
 バサラは直感でだ。そういうこともわかるのだ。
「だからだよ!」
「だから」
「ああ、鳴らすぜ!」
「はい」
「生命のゴングを!」
「今ここで」
「ぬおおおおおおおおおおっ!」
 ケイサル=エフェスが叫んだ。そして。
「我の再生の力が」
「最早ありませんね」
「我に流れ込む悪意の波動は」
 それは。
「無限ではなかったのか」
「そんなものがな!」
「無限であってたまるか!」
 コスモとバサラが同時に返す。
「この世で無限のもの!」
「それは!」
 竜馬とマリンがそれを言う。
「正しき心!」
「それだけだ!」
「正しき心に想いと力が集まり」
「限りない奇跡を生む!」
「わかるか悪霊!」
 またコスモが彼に言う。
「死んじまった奴等にな!」
「あたし達の命!」
「奪われるつもりはない!」
 カーシャとギジェも言う。そうしてだった。 
 今ここにだ。全てが。
「ゲージがだ」
「上がっていっているんだな」
「そうだ。最高になった」
 ギジェがコスモに話す。
「今こそだ」
「ああ、今こそ!」
「この世界を守り!」
「未来を創る!」
「そうだ」 
 ここでだ。クォヴレーにだ。
 彼がだ。こう言ってきたのだった。
「御前の力で。俺の力で」
「そうだな。俺自身の力で」
「あの神を倒すのだ」
「イングラム=プリスケン」
 クォヴレーは彼の名を呼んだ。
「これで最後だな」
「そうだ。俺は並行世界を巡り歩き」 
 その中でだというのだ。
「遂にこの世界でだ」
「この。バルマー帝国のある世界で」
「因果律を歪める元凶を突き止めた」
「それがか」
「あのケイサル=エフェスだった」
「そして俺は奴を倒そうとした」
「そうだ。しかしだ」
 ここでイングラムは言うのだった。
「奴の意を。本人が気付かないままに受けた」
「ユーゼス=ゴッツォに」
「精神を奪われ操られた」
 バルマー戦役の話だ。
「そしてガンエデンとの戦いでだ」
「その肉体も」
「だからだ。御前の力を借りた」
 そのだ。クォヴレーのだ。
「そして御前は俺になった」
「俺は御前になった」
 人形だったクォヴレーがだ。イングラムになったのだ。
「御前には済まないことをした」
「いい」
 クォヴレーはイングラムのその謝罪はいいとした。
「気にするな」
「いいというのか」
「俺は人形だった」
 戦う為だけの。バルシェムだったのだ。
「しかし御前はその俺に心をくれた」
「そう言ってくれるのか」
「俺は御前になった」
 またこう言うクォヴレーだった。
「なら。それでいい」
「では。これからは」
「俺が因果律の番人になる」
 そうなるというのだった。
「安心してだ」
「旅立っていいか」
「後は任せるのだ」
 こう言ってだ。イングラムを安心させてだ。
 あらためてだ。ケイサル=エフェスを見て言う。
「俺が。因果律を守る」
「ではだ」
「さらばだイングラム=プリスケン」
 そして。
「俺自身」
 こう言ってだ。あらためて神と対峙するのだった。
 トウマもだ。ミナキに言っていた。
「それじゃあな」
「最後の戦いね」
「ああ、これで決める」
 大雷鳳からだ。ケイサル=エフェスを見ていた。
「賭ける。一気にな」
「ええ、じゃあ私は」
 ミナキはだ。どうするかというと。
「貴方と共に」
「来てくれるんだな」
「何処までも」
 そうするというのだ。
「だから」
「ああ、行くぞミナキ!」
 トウマの目が燃える。
「長い戦いもこれで終わる!」
「完全に!」
 彼等も言い合う。セレーナもまただった。
 アルマにだ。微笑んで言っていた。
「じゃあ。長い戦いもね」
「これで終わりですね」
「ええ、終わりよ」
 こう言うのである。
「私達の勝利でね」
「まだ決まってないですよ」
「これから決めることよ」
 そのだ。勝利でだというのだ。
「だからそれでいいのよ」
「いいんですか」
「その通りよ。じゃあ」
「はい、じゃあ」
「行きましょう。勝つわよ」
「わかりました」
「本当に長かったけれど」
 これまでの戦いを思い出しながら。セレーナは呟く。
「これで何もかもがね」
「終わりですね」
 アルマもこう考えていたのだった。
 クスハとブリットもだ。四神と共にいてだった。
 まずはクスハがブリットに話す。
「これで最後だけれど」
「色々とあったよな」
「本当に。多くの戦いを経て」
「多くの希望と絶望を見てきたな」
「それも遂に」
「終わるんだ」
 ブリットの声は強いものだった。
「完全に」
「では諸君!」
 ダイテツが指示を出す。
「これより最後の戦いをはじめる!」
「了解です!」
「そして!」
「それを終え我等の世界に戻る!」
 こうも言うダイテツだった。
「いいな、そうするぞ!」
「はい、それじゃあ」
「今から」
 こうしてだった。最後の戦いがはじまるのだった。
 ケイサル=エフェス。そのまつろわぬ神、因果律を歪める神との戦い。あらゆる世界を護る為の戦いも。最後を迎えようとしていた。


第百三十三話   完


                                        2011・7・1
 

 

第百三十四話 今遥か遠い彼方

            第百三十四話 今遥か遠い彼方
 ケイサル=エフェスは忌々しげに言う。
「許さぬぞ、運命の戦士達」
「まだ言うのかよ」
「この状況で」
「汝等を葬り」
 実際にまだ言う神だった。
「無限力を」
「まだわかんねえのか!」
 マサキがその神に対して言う。
「無限力が何だってんだ!」
「俺達はアカシックレコードの僕じゃねえ!」
 カズマもく主張する。
「只の人間だ!」
「そしてな!」
「教えてあげるわよ!」
 ラウルとフィオナである。
「御前はその人間に負けるんだ!」
「あたし達にね!」
「この想いと力!」
「勇気!」
「怒り!」
 誰もが言う。
「人の心と光!」
「そして全てを現す!」
「歌に!」
「暗黒の世界に消えろ!」
 リュウセイも叫んだ。
「俺達の力でな!」
「では行きますよ」
 シュウもネオ=グランゾンから言う。
「貴方との戦いを終わらせます」
「おのれ、我は」
「総員集中攻撃!」
「了解!」
 攻撃がだ。早速はじまった。
 それが神を撃つ。それで受けた傷は。
「おのれ」
「どうだ、この攻撃!」
「効くだろ!」
「許さぬぞ」
 怒りの声がだ。その口から漏れた。
「運命の戦士達よ」
「ふん、まだな!」
「これで終わりじゃねえぜ!」
「俺達は勝つ!」
 だからだというのだ。
「これで終わりじゃねえ!」
「手前が倒れるまで!」
「やってやるぜ!」
「ケイサル=エフェス」
 またイルイが彼に言う。
「もう終わったのです」
「何がだというのだ」
「私達の為すべきことはです」
「馬鹿な、神に終わりがあるというのか」
「そうです。ですから」
「我に消えよというのか」
「そうです」
 まさにそうだというのだ。
「私と共に」
「消えるのは貴様だけだ」
「いえ、もう私達は」
「まだ言うのか」
「共に消えましょう」
 彼へのだ。最後の優しさだった。
「私達二人は」
「神は。神は消えぬ」
 しかし彼はだ。まだ言うのだった。
「この歌にも負けはしない」
「この歌を聴いてもわかりませんか」
「わかってたまるものか」
 意地での。それでの言葉だった。
「そうなってはだ」
「貴方が終わってしまうというのですね」
「我は神だ」
 まだこう言うのだった。
「まつろわぬ者達の王だ。その我が」
「ですがもう」
「黙れ!」
 意固地にだ。それを拒んだのだった。
「我は必ず。この世の全てを無に返し」
「そして新しい世界を」
「築く。だからこそ」
「ですからそれがです」
「できぬというのか」
「最初から。決まっていたのです」
 イルイはこうケイサル=エフェスに話した。
「そう、貴方も見ていましたね」
「あの。地球での戦いか」
「私はあの戦いで彼等に敗れました」
 封印の地、あの地においてだ。
「そしてその時にです」
「決まったというのか」
「決まっていたことがわかったのです」
 敗れて決まったのではないというのだ。敗れた時に見えたというのだ。
「そうなのです」
「ふん、では貴様は」
「私は。神であることを捨てます」
 彼女を彼女鱈しめているもの、それをだというのだ。
「ですから貴方もまた」
「何度も言わせるな。我が決して」
「決してですか」
「諦めはせぬ。何があろうともだ」
 こんな話をするのだった。そしてだ。
 その中でだ。クォヴレーが。
 ディスアストラナガンの腹部から。それを放ったのだった。
「これは貴様の為にあったものだ」
「ああ、クォヴレー!」
「決めるのよ!」
 アラドとゼオラがその彼に言う。
「御前がイングラム少佐なら」
「私達に見せてもらうわ」
「俺は」
 見ればだ。彼の髪の色が変わっていた。
 その青い髪でだ。彼はその光を放ったのだった。
「貴様を倒すにだ」
「その技を使うか」
「受けろ」
 相手を見据え。それが突き刺さる。
「デッドエンドシュート!」
「ぐっ・・・・・・」
 デッドエンドシュートが直撃した。しかしだった。
 まだ神は倒れない。ここでだ。
 トウマがだ。ミナキに叫んだ。
「これで最後だ!」
「終わらせるのねトウマ!」
「ああ、行くぞケイサル=エフェス!」
 こうだ。神に対しても叫ぶ。
「これで終わりだ!」
「いいわ、トウマ!」
 ミナキもだ。トウマに対して言う。
「大雷鳳も今!」
「ああ、感じる!」
「その全ての力を出して」
「俺と共にある!」
「この力なら!」
「やれる!」
 二人の心もだ。今合わさった。
「熱い・・・・・・。ここまでははじめて」
「俺もだ。こんなことはなかった」
「感じる、大雷鳳を通してトウマも」
「俺もだ。ミナキを感じる」
「ダイナミックライトニング!」
「オーバードライブ!」
「プラズマドライブ!」
「フルバースト!」
 二人同時に叫び。そして。
 今二人はだ。炎、いや光の鳥になった。
 その姿でだ。燃え上がりつつ神に突き進み。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「これで!」
「決める!」
 蹴りが炸裂し。そのうえで。
 ただひたすら突き進む。
「稼動効率百パーセント突破!」
「だが!」
「これならいけるわ!」
「俺と大雷鳳の限界を超えたこの一撃!」
「これなら!」
「終わりだケイサル=エフェス!」
 トウマが最後に叫んだ。
「命の全てを賭けた俺達の攻撃!」
「ぬううううううっ!!」
 吹き飛ばされた神は。遂に。
 動きを止め。そしてだった。
 全身を炎に包まれ。最後の蹴りを浴びたのだった。
「俺達の勝ちだ!」
「終わったわ!」
「馬鹿な、この様なことが」
「よし、終わったぜ!」
 バサラが今高らかに叫ぶ。
「俺達の戦いがな!」
「ええ。完全に」
「いや、待て」
 だがだ。ここでジェイが言う。
「安心するのはまだ早い」
「まさか。まだ」
「あいつ、立てるのか」
「戦えるっていうの?」
「想像を絶するバケモノだ」
 だからだと言うジェイだった。
「不用意には安心できない」
「じゃあまさか」
「あいつまだ」
「立てる?」
「ひょっとして」
「いや、終わった」
 だがここでサンドマンが言った。
「悪意を具現化する為の機体はだ」
「あの悪霊そのものの機体は」
「もうあれで」
「そうだ、機能を停止する」
 それはもう防げないというのだ。
「全ては終わるのだ」
「まだだ」
 だが、だ。ケイサル=エフェスはまだ諦めない。
 それでだ。こう言うのだった。
「我は零にして無だ」
「くっ、まだかよ」
「まだ戦うっていうの!?」
「何て執念なの」
「我を滅ぼすことなぞ」
 しかしその彼の前にだ。イルイが向かうのだった。
 そのイルイを見てだ。誰もが言った。
「イルイ、一体」
「何をする気なの?」
「ナシムか」
「ゲペル、もういいのです」
 これまで以上に優しい声でだ。彼に言うのだった。
「私達の使命は終わったのです」
「いや、それはまだだ」
「いずれ私も」
 自分もだ。どうなるかというのだ。
「この少女の中で朽ちていきます」
「それでいいのか」
「はい」
 そのことを受け入れて。それからだった。
「貴方一人を逝かせはしません」
「イルイちゃん、いや」
「そうね。あれはね」
「ガンエデンだ」
 アイビスにツグミ、スレイがそれぞれ話す。
「それが今だ」
「ああして話して」
「最後を迎えようとしているのか」
「ナシムとゲペル」
 ヴィレッタも話す。
「元々その祖を同じとするもの」
「あの二人は確か」
「そうだったわね」
 ライにアヤが応える。
「この宇宙に残された先史文明の」
「生き残りだったわね」
「だからなのか」
 リュウセイも言う。
「イルイはあいつを」
「説得するのか」
 マイもそのことがわかった。
「そうなのだな」
「それはおそらく」
 レーツェルも言ってきた。
「ナシムと同化したイルイの心の成せる業だ」
「そしてその業が」
「遂に全てを終わらせるのね」
「この長い戦いの全てを」
「今ここで」
 誰もがそう思った。しかしだ。
 ケイサル=エフェスはだ。まだ言うのだった。
「我は、滅びぬ」
「!?」
「イルイちゃん!」
「まさかあいつ!」
「イルイの力を!」
「汝のその力」
 闇そのものになりだ。イルイを取り込もうとしていた。
「我に」
「奴はまだ」
「その様だな」
 ゼンガーにレーツェルが応える。 
 その彼を見てだ。
「ケイサル=エフェス!」
「貴方には!」
「イルイは渡さない!」
「絶対に!」
 クスハとブリットが叫びだ。
 そして。
「俺は因果律の番人として」
「もうこれ以上ね!」
 クォヴレーとセレーナもだった。
「貴様を倒す」
「絶対にね!」
「ミナキ!」
 トウマもだった。
「俺は行く!」
「行くのねトウマ!」
「もう一度止めを刺す!」
 まさにその為だった。
「あいつを倒す!」
「わかったわトウマ!」
「これでだ!」
 四機のマシンが同時に攻撃を浴びせてであった。それで。
 神を止めた。しかし。
 今度はだ。その完全に止まった筈の身体からだった。
「何っ!?」
「今度は一体」
「どうなったんだ!?」
「黒い光!?」
「あれは!」
「最早こうなれば」
 神がだ。黒い光の中で言うのだ。
「ここで。滅び」
「イルイちゃんも俺達もか」
「巻き添えにしてか」
「滅びるつもりか!」
「そうだ。我は只では滅びぬ」
 まさにだ。死なば諸共だった。
「ここで汝等も」
「ゲペル、貴方は」
「ナシム、汝もだ」
 そのだ。イルイにもだというのだ。
「滅んでもらおう」
「くっ、そしてこの世界を」
「我が滅び。その力で」
「消し去るつもりですか」
「そうだ。全てを無にする」
 その為にだというのだ。
「我が滅び。そして」
「それなら・・・・・・」
 イルイはここで、だった。
 イデオンを見てだ。その力を放ったのだった。すると。
「!?コスモ!」
「な、何だ!?」
「これは!」
 イデオンのパイロット達が全員放り出されたのだった。
 そしてだ。操縦者のいなくなったイデオンは。
 神に突進してだ。その力で。
「なっ、クスハ達を救って!?」
「そして!?」
「まさか、あいつと」
「ケイサル=エフェスと!」
 そうしようとしていることがだ。誰にもわかった。
「相打ちになるつもりかよ」
「そうしてか」
「消えるんだな」
「そうなるんだな」
「いかん!」
 しかしだ。その力があまりにも強過ぎた。 
 イデオンと神の双方の力の激突を見てだ。大河が叫んだ。
「総員退避!」
「えっ、トウマ達は!」
「いいんですか!?」
「あのままですと!」
「助けられません!」
「彼等の力を信じるしかない!」
 そのだ。彼等をだというのだ。
「このままでは我々がだ!」
「あの爆発に巻き込まれて」
「それでだっていうんですね」
「ここで。終わってしまう」
「だからこそ」
「我々は生き残らなければならない!」
 まさにだ。その為にだった。
「だからだ。いいな!」
「りょ、了解!」
「わかりました!」
「それなら!」
 仕方がなかった。ここまで来てはだ。
 全員退避に入ろうとする。しかしここで。
 シュウはだ。そっとチカに囁くのだった。
「最後の最後の手段ですね」
「えっ、じゃあここは」
「はい。このネオ=グランゾンの力を使います」
 そしてだというのだ。
「彼等を救いそのうえで」
「皆をですね」
「元の世界に返しましょう」
「あたし達が。あの神を完全に消し去って」
「それと共にです」
「皆を元の世界に」
「このネオ=グランゾンの力を全て放出すれば」
 そうすればだった。
「可能です」
「ですね。けれどそれだけの力を放出したら」
「はい」
 すぐにだ。シュウは答えた。
「ネオ=グランゾンといえどもです」
「そしてあたし達も」
「消え去ります」
 まさにだ。そうなるというのだ。
 だがそれでもだ。シュウは言うのだった。
「しかしそれでもです」
「やらないといけませんね」
「このままでは誰も助かりません」
 シュウは何時になく険しい顔になっている。
「ですから。私達が」
「仕方ないですね」
 チカもだ。今は潔かった。
「それもまた」
「受け入れてくれますか」
「だって。そうしないと皆助からないんですよね」
「はい、そうです」
「あたし達が死んで皆が助かるんなら」
「答えは一つですね」
「そういうことですね」
 こう話してだった。彼等も決めたのだった。
 そしてだ。今まさにだった。
 ネオ=グランゾンが全ての力を放ちケイサル=エフェスに向かおうとする。しかしここで。
 イルイがだ。再びだった。
 光の球になりだ。ケイサル=エフェスに向かい。シュウに言うのだった。
「それには及びません」
「まさか貴方は」
「ここで」
「貴方はその力を使って」
 こうシュウに話す。
「皆さんを救われるおつもりですね」
「そんなところでしょうか」
「しかしそうすれば」
 どうなるか。イルイにもわかっていた。
「貴方達もまた」
「私達なら安いものでしょう」
「いえ、それは違います」
「違うというのですか」
「貴方もまた。元の世界に帰るべきなのです」
 シュウ達もだ。そうだというのだ。
「ですから。決して」
「だからですね」
「ここは私が」
 こう言ってだ。ガンエデンの最後の力を。ケイサル=エフェスにぶつけた。
 そのうえでだ。彼に言うのだった。
「これで。もう絶対に」
「ナシム、汝は」
「消えましょう。ゲペル」
 泣いていた。それと共の言葉だった。
「私達はもう」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「イルイ!」
「イルイちゃん!」
「皆、さようなら」
 イルイは微笑み、涙しながら言う。
「これでもう私達は」
「!?光が!」
「光が包み込む!」
「これは!」 
 ロンド=ベルを光が包み込み。そして。
 それが消えた時に彼等がいた場所は。
「ここは!?」
「ここは一体何処なんだ!?」
「銀河の中!?」
 銀河、あの百万年後の銀河はもう見えてはいなかった。
「じゃあまさか」
「あれは」
 そしてだ。彼等は見たのだった。あの星を。
「地球だ!」
「間違いない!」
「あの星だ!」
「俺達はじゃあ」
「帰って来た!?」
「時代は何時か」
 大河がそれを問うた。
「ここは何時の時代か」
「僕達の時代です」
 スワンがコンピューターで割り出してから答えた。
「僕達の。今の時代です」
「そうか、それではだ」
「はい、そうです」
「我々は戻って来たのだな」
 大河の言葉にも感慨が宿っていた。
「本当に」
「けれど」
「それでも」
「クスハ達は?」
「イルイちゃんは」
「一体何処に」
「姿が見えないけれど」
「ああ、いるぜ!」
 ここでだ。トウマの声がした。
「俺ならな!」
「俺もだ!」
「私もです!」
 ブリットとクスハだった。
「何とかな!」
「無事です!」
「俺もだ」
「私もね」
 クォヴレーとセレーナもだった。
「こうして戻って来られた」
「何とかね」
「けれどイルイは?」
「あの娘はどうなったの?」
 アラドとゼオラが二人のことを問う。
「姿が見えないけれどよ」
「まさか」
「いや、大丈夫だ」
 トウマがだ。二人に微笑んで答えた。
「イルイもいるぜ」
「えっ、何処に!?」
「何処にいるの!?」
「ここにいる」
 トウマが言うとだった。彼の腕の中に。
 彼女がいた。元の少女の姿に戻り安らかに眠っている。
 それを見てだ。誰もが言った。
「寝ているんだ」
「寝息まで立てて」
「それじゃあ」 
「皆、帰って来たんだな」
 イルイも含めての言葉だ。
「本当に。こうして」
「元の時代の地球に」
「この世界に」
「はい、その通りです」
 シュウもだ。今は微笑んでいる。
「最高の結末ですね」
「四神の魂も」
 ここでだ。クスハが言った。
「もう。これで」
「ああ、そうだな」
 ブリットは。これ以上はないまでに温かい顔でクスハのその言葉に応えた。
「皆、その役目を終えて」
「今、その魂を昇華させるのね」
 実際にだ。二人の乗る超機人は。
 そこから何かが消えようとしていた。それこそがだった。
「さようなら。皆」
「そして有り難う」
「雀王機」
「武王機」
 まずは彼等だった。
「貴方達がいてくれて」
「俺達は戦ってこれたんだ」
 そして。次は。
「虎王機」
 ブリットは彼に声をかけた。
「俺は御前がいたから今まで戦ってこれた」
「私も」
 クスハは龍王機にだった。
「ずっと一緒だったわね」
「だがこれでもう」
「御別れね。けれど」
 それでもだった。二人は。
「俺達は御前達を決して忘れない」
「後はゆっくりと休んでね」
 微笑みだ。彼等に声をかけたのだった。
 するとだ。彼等もまた。
 昇華していった。こうして彼等の戦いも終わった。
 そしてだ。あらためてだった。
「では諸君」
「はい」
「これで、ですね」
「そうだ。作戦終了だ」
 タシロが笑顔で全員に告げる。
「全ては守られたのだ」
「そして俺達は勝ったんだ」
「長い戦いがこれで」
「完全に終わったんだ」
 今がその時だった。彼等は遂にだ。その長い戦いを。完全に終えて今母なる地球に帰ってきたのである。


第百三十四話   完


                                      2011・7・4     

 

エピローグ1

                エピローグ1
 戦いが終わり。戦士達はそれぞれの場所に戻りだ。その新しい生活をはじめていた。

 機動戦士ガンダム
「そうか。政治家になるか」
「そうすることにした」
 シャアがアムロに話していた。
「そしてそのうえでだ」
「この宇宙を変えていくか」
「戦争の傷跡はある」
 だがそれでもだと。シャアはアムロにさらに話すのだ。
「しかしそれでもだ」
「希望はあるな」
「希望に満ちている」
 それでだというのだ。
「私は。この地球だけでなく銀河、そして宇宙全体を考えてだ」
「連邦政府の議員に立候補するか」
「そうする。そして君だが」 
 アムロに対してだ。シャアは問うた。
「どうするのだ。今後は」
「俺か。俺はこのままだ」
「軍に残るか」
「ああ。俺は政治家やそうしたものには興味がない」
 それならばだと。アムロも己の道を見て話す。
「それなら。軍に残ってな」
「それで人類の為に働くか」
「そう決めたさ」
「私もだ」
 そしてそれはだ。ブライトもだった。
「私も軍に残る」
「そうか。貴方もか」
「アムロと共にな。私のできることをしていく」
 彼もまた。軍に残ると決めた。
 そしてセイラは。どうするかというと。
「私は。そうね」
「セイラ、君はそれで」
「どうするのだ?」
「誘いを受けているの。学園の理事長にね」
 微笑んでだ。アムロとブライトに話す。
「それになるわ」
「教育者か」
「それになるのか」
「もう株で生きていくヤクザなことはしないわ」
 その生計はもう捨てるというのだ。
「私にできることをしていくわ」
「そうか。君もまた」
「己の道を見つけたか」
 セイラもそうだった。そして。
 カイはハヤトにだ。こう話していた。
「じゃあ俺はジャーナリストに戻るぜ」
「そうか。前の仕事に戻るんだな」
「そっちはそっちで楽しいからな」
 だからだとだ。ハヤトに笑顔で話すのだ。
 そのうえであらためてだ。彼はハヤトに尋ねた。
「御前はどうするんだ?」
「俺も元に戻るよ」
「カラバに戻るのかよ」
「いや、実は柔道の道場を開いているんだ」
「じゃあそっちでか」
「ああ。子供達を育てていくよ」
 彼はそうするというのだった。
「これからはな」
「わかったぜ。じゃあまた縁があればな」
「また会おうな」
 二人は再会を祝して別れた。リュウとスレッガーは。
 二人でだ。アムロとブライトに話すのだった。
「俺達はこのままだ」
「軍に残るな」
 二人は軍だった。
「それじゃあこれからも」
「頼むな」
「はい、わかりました」
「それならこれからも」
 四人はそれぞれの手を握り合う。一年戦争の絆はそのままだった。

 機動戦士Zガンダム
「ねえカミーユ」
「何だい、ファ」
 カミーユはファに応えていた。
「これからのことだよな」
「やっぱり一旦学校に戻って」
「ああ、それで技術者になる」
 それが彼の選んだ道だった。
「これからはな」
「そう。じゃあ私は」
「ファは看護士だよな」
「今からそれを目指して勉強中よ」
 こうだ。笑顔でカミーユに話すのである。
「そうしてるのよ」
「そうか。じゃあお互いにな」
「頑張りましょう」 
 二人でこう話すのだった。その二人にだ。
 エマがだ。こう声をかけた。
「私は同じよ」
「軍にですか」
「そのままですか」
「後進の指導ということで」
 それでだというのだ。
「士官学校のパイロットの教官になるのよ」
「そうですか。エマさんは軍にですね」
「そのまま残られるんですね」
「そうなったわ」
「俺達は月に行く」
「アナハイム社にスカウトされた」
 アポリーとロベルトはそうなった。
「これからはそこでな」
「働いていくからな」
「俺はだ」
 ヘンケンだ。
「当然軍に残る。そしてだ」
「エマさんとですね」
「遂に」
「ははは、大尉もそれでいいか?」
「ええ、中佐さえよければ」
 エマも彼に笑顔で応える。
「宜しく御願いします」
「こちらこそな」
 彼もまた己の道を歩むのだった。
 そして今度は。ティターンズの面々だった。
「とりあえず俺達もな」
「連邦軍に戻ることになった」
 ジェリドとカクリコンが話す。
「軍法会議を受けたことは受けたがな」
「それでも復帰が認められた」
「よくそうなったわね」
 エマがそのことに少し驚いて言う。
「毒ガスを使った作戦を指揮したことは」
「俺達は確かに現場の指揮にあたったがな」
「しかし。作戦を決定し実行していた人間は違っていた」
 バスクやジャマイカンが実際には責任者だった。尚ジェリド達は反対していた。
「だから。それでな」
「そのことは許された」
「そう。よかったわね」
「ただ。色々と懲罰は受けたがな」
「降格に減棒だ」
「まあそういうことがあったけれどね」
 ライラも話す。
「軍への復帰は認められたよ」
「俺達も軍で働く」
 ヤザンもそうだった。
「まあ宜しくな」
「ああ、こちらこそな」
 アストナージが彼等に笑顔で応える。
「あんた達のパイロットとしての腕には期待しているぜ」
「こちらこそな。貴官のメカニックの技量」
「また頼りにさせてもらう」 
 ラムサスとダンケルがアストナージに応える。
「我々も軍に残るからな」
「だからこれからもな」
「私も残ることになったわ」
 マウアーもだ。軍に残るというのだ。
「ティターンズはそのまま連邦軍に編入されるから」
「何か。不思議だな」
 彼等のそうした話を聞いてだ。カミーユはこう言った。
「こうしてこの人達の話を聞くなんてな」
「そうね」
 フォウがカミーユのその言葉に頷く。
「かつては。戦った間柄だったのにね」
「それが仲間になって」
 それからだった。
「今はこうしてこれからどうするかを聞くなんて」
「人生はわからないものね」
「うん。それでフォウ」
 カミーユはフォウにも尋ねた。
「君はこれからどうするんだい?」
「学校に入るわ」
 彼女はそうするというのだ。
「それでOLになるわ」
「戦いから去るんだね」
「ええ、そのつもりよ」
 彼女が選んだ道はそれだった。
 そしてファはロザミアに尋ねた。
「ロザミィはどうするの?」
「私?」
「ええ、貴女は」
「お兄ちゃんと一緒にいて」
 まずはカミーユだった。
「それで学校に通うの」
「そうするのね」
「色々あったけれど」
 それでもだというのだ。
「普通の生活に入りわ」
「そうね。それが一番ね」
「あと俺達は」
「同じだな」 
 トーレスとサエグサはというと。
「ブライト艦長と一緒にな」
「艦橋にいるからな」
「そうですか。同じなんですね」
 カミーユが彼等に応える。
「御二人は」
「艦長一人じゃな。大変だしな」
「俺達もな」 
 二人はそれが選んだ道だった。そして。
 ベルトーチカはというと。
「もう少しどうにかならないかしら」
「あれですか。チェーンさんとですね」
「アムロ中佐、いえ大佐と」
「相変わらずよ」
 そうだとだ。カミーユとファに話すのである。
「全く。どうしたものかしらね」
「頑張って下さいとしか言えないですけれど」
「御元気で」
「ええ、またね」
 それでも笑顔で別れる彼女達だった。
「縁があったら何処かでね」
「また楽しくやりましょう」
「その時は」
「ねえサラ」
 カツはサラに尋ねている。
「君はこれかあ」
「地球に行くわ」
「地球に?」
「そう。ハヤトさんのところにね」
「父さんのところに」
「そこで貴女と一緒にね」
「いてくれるんだ」
 二人はそうなるのだった。彼等も二人で道を歩くのだった。

機動戦士ガンダムZZ
 ジュドーとルーをだ。皆が見送っていた。
「じゃあな」
「元気でね」
「またメール送るよ」
 ビーチャにモンド、イーノが二人に声を送る。今彼等は木星に向かう港にいる。そこで集ってそれで全員で話をしているのである。
「また帰って来るよな」
「シャングリラに」
「待ってるよ」
「ああ、じゃあな」
 ジュドーも笑顔で彼等に返す。
「学生とジャンク屋両方頑張ってくれよ」
「それに加えてパイロットもやるようになったからな」
「お金の心配はなくなったね」
「そうだね」
 この戦争でそちらも身に着けた彼等だった。
「まあ。こっちはこっちでな」
「大金持ちになってみせるから」
「ジュドーはそっちでね」
「ああ、そうするよ」
「エルもね」
 ルーはエルに微笑んで声をかけた。
「また会おうね」
「ええ。あたしはこっちでビーチャ達と一緒だから」
 ジャンク屋とパイロットをやるというのだ。
「明るく楽しくやるわ」
「私もね」
「あたしもいるよ」
 プルとプルツーだった。
「皆で学校通ってジャンク屋やってパイロットやって」
「これから楽しみだね」
「御風呂も入ってね」
「そうだよな。あれもな」
「そういうことだから」
 リィナも笑顔で兄を送る。
「お兄ちゃん達も明るく楽しくね」
「そうしてね」
「期待してるわよ」
 エマリーとミリィもいる。
「私達は軍に入ることになったわ」
「正式にね」
「何か連邦軍も凄くなってきたね」
 キャラが楽しそうに言う。
「あたしも入るしね」
「あれ、キャラさんヘビメタ歌手になるんじゃないんですか?」
「それと一緒にだよ」
 軍もだとだ。キャラはゴットンに言葉を返す。
「軍にもいるんだよ」
「そうなんですな」
「私も同じだ」
 イリアもだった。
「キャラとデュエットを組んでそうする」
「何か濃い顔触れだなあ」
 ついついこう言ってしまうゴットンだった。
「連邦軍も確かに凄くなったよな。マシュマー様も入られるし」
「私が入って悪いのか」
 そのマシュマーである。
「こう言っては何だが私はパイロットとしては」
「いえ、人間が」
「私の性格が悪いというのか?」
「もっと言えば頭が」
「おい待て」
 流石にここまで言われてだ。マシュマーも不満を露わにさせる。
「私が馬鹿だというのか。私が」
「まあ何ていいますか」
「失礼なことを言うな。私とて士官だぞ」
「あたしもですけれど」
「それなりの分別はあるつもりだ」
 自分ではそう思っている。
「だから安心しろ」
「まあこれからも宜しく御願いします」
「ではな」
「それでハマーンさんはどうするんだ?」
 ジュドーはそのハマーンに声をかけた。ミネバも一緒だ。
「これからは」
「そうだな。セラーナは」
「はい」
 見ればセラーナもいる。姉の言葉にすぐに応える。
「私はそのまま連邦政府にいますので」
「私は。まずは店を開く」
「店を?」
「レストランだ。若しくは喫茶店だ」
 それをやるというのだ。
「ミネバ様とそこで二人で過ごす」
「そうするんだな」
「ミネバ様はそれで宜しいですね」
「ハマーンと一緒なら」
 笑顔でこう返すミネバだった。
「私は何処でも」
「わかりました。それでは」
「では我々はです」
「サイド3で警備員をすることになりましたので」
 ランスとニーのこれからはそれだった。
「また縁があれが」
「宜しく御願いします」
「うむ、また会おう」
 ハマーンは微笑んで彼等に返した。
「縁があればな」
「はい、また」
「御会いしましょう」
「じゃあ俺達もこれで」
「そろそろ船に乗るわ」
 ジュドーとルーが一同に告げた。
「じゃあまたな」
「会いましょうね」
 彼等もそれぞれの道を歩むのだった。ジュドーとルーは二人で。そこに旅立つのだった。


機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
 ケーラがチェーンに尋ねていた。
「じゃああんたは」
「アムロ大佐の秘書になりました」
 チェーンは満面の笑顔でケーラに話している。
「正式にです」
「じゃあ一歩近付いたんだね」
「そうですね。私も」
「けれどライバルは」
「それはまだ」
 いるのだった。ベルトーチカのことだ。
「ですがそれでも」
「いいことだね。大佐の秘書なんて」
「ブライト艦長も准将になられましたし」
 彼等も出世したのだ。
「忙しくなりますね」
「大佐っていってもあの人はね」
 そのアムロのことだ。
「実質将官待遇だからね」
「ブライト艦長と待遇は同じですね」
「だから秘書がついたんだね」
 大佐であってもだ。
「しかもあんたに」
「本当に幸運です」
「あたしもそう思うよ。それであたしは軍にいるから」
 彼女もだ。そちらを選んだのである。
「これからもしょっちゅう会うね」
「そうなりますね」
 二人が話すそのすぐ傍で、ギュネイとクェスが話していた。
「私はもう。これで」
「軍にも残らないんだな」
「ええ、そのつもりよ」
 こうギュネイに話すクェスだった。
「インドに戻ろうって考えてるんだけれど」
「インドか」
「そこで暮らそうかって思ってるけれど」
「そうだな。実は俺もな」
「ギュネイもって?」
「実はインドに配属になったんだよ」
 そうだというのだ。
「だから。そこでもな」
「一緒にいたいっていうのね、私と」
「駄目か?駄目ならいいけれどな」
「いいわよ。もうモビルスーツに乗るつもりはないけれど」
 それでもだとだ。笑顔で話すクェスだった。
「けれど同じインドならね」
「一緒に住むか」
「そうしましょう。折角だしね」
「ああ、それじゃあな」
「お父さんはお父さんで忙しいし」
 アデナウアーは相変わらずだった。
「私は私の道を歩くわ」
「俺とか」
「一緒に来てくれるんならね」
 二人も笑顔で言い合うのだった。

機動戦士ガンダムF91
 セシリーの選んだ道は。
「パン屋なんだ」
「貴方も来てくれるのかしら」
「ああ、勿論だよ」
 笑顔で即答するシーブックだった。
「それはさ」
「そう。よかったわ」
「学校に通いながら。それで卒業したら」
「その時は完全にね」
「二人でね」
 こうした話をするのだった。その二人にだ。
 ビルギットがだ。笑顔で彼女に話すのだった。
「俺もな」
「ビルギットさんはどうされるんですか?」
「これからは」
「俺は軍に残るさ」
 彼もそうするというのだ。
「そこで頑張るさ」
「そうですか。頑張って下さい」
「それでは」
「私はその中で」
 ザビーネも軍に残るという。だが彼は少し違っていた。
「モビルスーツの教官になることになった」
「それにですか」
「教官に」
「私も私のやれることをやろう」
 ザビーネもこの考えに至っていた。
「人類の未来の為にな」
「私も軍に残る」
 ドレルも二人と同じだった。
「もう貴族主義はない。これからはだ」
「人類全体の為に」
「皆が」
「何か。二人以外は軍に残るけれど」 
 アンナマリーの選んだ選択も軍だった。
「昔の連邦軍とは違うからね」
「そうですね。今では銀河の為の軍ですから」
「やりがいがありますね」
「そうだ。だからこそ軍で働かせてもらう」
 ドレルがシーブックとセシリーに話す。
「これからはな」
「わかりました。じゃあ頑張って下さい」
「私達もそうします」
 こうしてだった。彼等も彼等の道を歩むのだった。

機動戦士クロスボーンガンダム
「じゃあカラス先生は」
「はい、そうです」
 カラスは穏やかな笑顔でトビアに話していた。
「教師に戻ります」
「そうですか。頑張って下さいね」
「ではトビア君、君は」
「僕は学校に残ります」
 彼の選択肢はそれしかなかった。
「そこからまた勉強します」
「そう、勉強は大切です」
 カラスはもう教師の顔になっていた。そのうえでの言葉だった。
「それは学校の勉強だけではありませんよ」
「人生全てのですね」
「学校はそれを学ぶところです」
「わかりました。では」
「僕もだね」
 ギリもここで言った。
「学校で人間も勉強するよ」
「君もなんだ」
「そうさ。トビアと同じさ」
 こうだ。ギリは笑顔でトビアに話した。
「僕も。戦いが終わったからね」
「だからだね」
「うん、人間として学んでいくよ」
 学校でだ。そうするというのだ。
 そしてだ。彼と共にいたバーンズとローズマリーは。
「御前はどうするのだ?」
「あたしかい?そうだね」
 笑ってだ。ローズマリーはバーンズに話した。
「実はアナハイムからスカウトされててね」
「モビルスーツのテストパイロットだな」
「ああ、それになるよ」
「わかった。そうか」
「あんたはどうするんだい?」
 今度はローズマリーがバーンズに尋ねる。
「それで」
「俺は火星に行く」
「火星にかい」
「そこで開拓地で新しい人生を歩む」
 そうするというのだ。彼は。
「そうさせてもらおう」
「そうかい。新しい人生だね」
「それをはじめる」
 これが彼の選択だった。
 ハリソンはだ。こうウモンに話していた。
「俺は元々軍人だからな」
「では軍に残るのだな」
「そうする。あんたはどうするんだ?」
「わしはのう。ジャンク屋じゃな」
「ジュドー達と一緒か」
「うむ。あれをはじめる」
 彼はそれをはじめるというのだ。
「昔の海賊仲間とな」
「そうか。じゃあもうそういうのとは足を洗ってか」
「カタギになって生きるぞ」
「頑張ろうな、お互いにな」
「これからの人生にな」
 戦いが終わって彼等の人生はそれぞれ新しい人生がはじまっていた。晴れやかに。

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争
「バーニィは探偵になるんだ」
「ああ、そういうのは得意だからさ」
 笑顔でだ。彼はアルに話している。
「軍を辞めてな」
「そう。もう戦わないんだね」
「そうだよ。これからは探偵さ」
「クリスはどうするの?」
 アルはバーニィの話を聞いてからクリスにも尋ねた。
「軍に残るの?」
「私も同じよ」
 クリスも優しい笑顔でアルに話す。
「軍を辞めてね」
「探偵になるんだ」
「そうよ。バーニィと二人でね」
「俺達は一緒にやっていくんだ」
 バーニィはまたクリスに話した。
「これからもな」
「そう。頑張ってね」
「ああ、それじゃあな」
「これからも宜しくね」
 二人は探偵として第二の人生を歩むことにした。常に一緒に。

機動戦士ガンダム0083 スターダストメモリー
 コウはオーストラリアに戻った。するとすぐにニナに尋ねられた。
「また。テストパイロットをするのね」
「ああ、そうなったよ」
 こうニナに話すのだった。
「正式にね」
「そう。頑張ってね」
「何か顔触れは同じみたいだけれど」
「我々もだ」
「そうなりました」
 バニングとアデルも言う。彼等も元の役目に戻っていた。
「ここでだ。テストパイロットしてだ」
「軍に残ることになりました」
「まあ。平和になったしな」
「最前線に行くことは殆んどなくなったからな」
 モンシアとベイトも言う。
「だからこうしてな」
「ここの防衛とテストパイロットをやることになったんだよ」
「何か役目多くないですか?」
 キースがそれを聞いて言った。
「テストパイロットと防衛って」
「そうよね。ちょっとね」
 モーラもキースのその話に同意する。
「確かにオーストラリアも平和になったけれどさ」
「だからだ」
 シナプスは平和になったことが彼等の今のその役目の兼任の理由だというのだった。
「それができるようになったのだ」
「だからですか。平和だから」
「テストパイロット兼任で防衛もですね」
 パサロフとジャクリーンがシナプスの話を聞いて尋ねた。
「部隊を多く割く必要もない」
「それが理由ですか」
「そうだ。ただしだ」
 ここでまた言うシナプスだった。
「戦闘用のモビルスーツも置かれる」
「デンドロビウムもですね」
「いざという時はそれで戦う」
 そうするとだ。コウにも話すシナプスだった。
「だから安心していい」
「わかりました。じゃあ」
「さて、では早速テスト運用の開始だ」
 シナプスは一同を仕事に駆り出す。
「いいな」
「了解です」
「それじゃあ」
 こうしてだった。彼等はオーストラリアに戻り。元の仕事に戻った。尚コウは程なくしてニナと正式に結婚した。その後にキースとモーラが。

機動戦士ブイガンダム
 ウッソ達は戦いが終わり。
「じゃあ今日もだね」
「ああ、学校だ」
「では行こう」
 ウッソにだ。オデロとトマーシュが応える。こうしてだった。
 彼等は学校に向かう。しかしその前にだ。
 マーベットが背中に赤子を背負いながら彼等に言った。
「待って。車出すわ」
「車あるんですか」
「いいんですか?」
「ああ、遠慮するな」
 オリファーが彼等に笑顔で応える。三人は戦いの後でオリファーとマーベットに引き取られだ。養子の様に育てられているのだ。
 そしてだ。彼女も。
「シャクティ、貴女もね」
「早く用意しろ」
「は、はい」
 シャクティは慌てて出て来てだ。二人に応える。
「じゃあ今からですか」
「ああ。通勤の途中だからな」
 オリファーはこう笑顔で彼等に話す。
「乗ってけ。遠慮するな」
「すいません。それじゃあ」
「オリファー、それじゃあね」
「ああ、行って来るな」
 オリファーはサラリーマンになった。彼は戦いを終えてそれでウッソ達を養う道を選んだのだ。彼は今心の底から幸せを感じていた。
 ジュンコは。軍でシュラク隊の面々と共にいた。
「じゃああれだね」
「はい、カテジナ=ルースもです」
「実家に戻りました」
「そうなんだね」
 ジュンコは彼女達から話を聞いてだ。神妙な顔になっていた。
 そしてその顔でだ。こう言うのだった。
「それがいいだろうね」
「そうですね。戦いを忘れて」
「それで静かに過ごすのも」
「長い戦いだったしね」
 ジュンコはこれまでの戦いを思い出して言う。
「正直彼女はね」
「戦っては駄目だった」
「そうだったんですね」
「おかしな部分が出るからね」
 カテジナのだ。隠されていた狂気がというのだ。
「だからああして。実家でね」
「普通のお嬢さんとして生きる方がいいんですね」
「やっぱり」
「そう思うよ。あたしは軍に残ったけれど」
 そして今ではシュラク隊の隊長だ。オリファーの次の。
「向き不向きがあるからね」
「そうですね。じゃあ隊長」
「今日はデスクワークですよ」
「やれやれだね」
 デスクワークと聞いてだ。ジュンコは苦笑いになった。
 そしてその顔でだ。部下達に言うのだった。
「何かパイロットやってる方が気楽でよかったよ」
「まあそう言わずに」
「こっちも頑張りましょう」
 ジュンコは苦手なデスクワークをやっていた。しかしそれでもだ。戦いが終わり彼女もまた。幸せの中で過ごしているのだった。

機動武闘伝Gガンダム
 ヂボデーはトレーニングに励んでいた。
「またやるぜ」
「次のガンダムファイトでもね」
「勝つのね」
「ああ、勝つさ」
 ランニングをしながらギャルズに応える。
「ネオアメリカが優勝だ」
「そうよ、だからトレーニングね」
「頑張ってね」
「ああ!」
 彼は戦いの後で別の闘いに向かっていた。そしてそれは。
 サイシーも同じだった。寺において。
 激しい演舞を行っていた。それを見てだ。
 僧侶達がだ。口々に言うのだった。
「うむ、見事」
「また腕をあげたな」
「うん、まだまだこれからだから」
 こう言うサイシーだった。修業は喋る間も続けている。
「おいらはね」
「左様、頂点は果てしない」
「これからも励むのだ」
「わかってるよ。また皆と闘うんだ」
 そのことを楽しみにさえしていた。それが今の彼だった。。
 ジョルジュもだ。優雅に剣を振るい。
 そのうえでだ。マリアルイーゼに言うのだった。
「この剣捌きではです」
「まだだと仰るのですね」
「はい、あの方々は強いですから」
 シャッフルの仲間達を見ての言葉だ。
「だからですね」
「はい、私はこれからです」
「では」
 マリアルイーゼは微笑んでジョルジュに告げた。
「貴方はこれからも」
「闘い。そして」
 どうするかというと。
「果てを目指します」
「期待しています」
 彼の剣の輝きは曇りがなかった。まさに純粋な光だった。
 アルゴもだ。爆弾が外されてもだ。
 ただひらすら修行を続けていた。その彼にだ。
 ナターシャがだ。問うた。
「まだ闘うか」
「そうだ。俺はガンダムファイターだからな」
 それが理由だった。
「俺は闘う」
「そうか。では次はだ」
「次は?」
「トレーニングのメニューだ」
 それの話だというのだ。
「次は実戦トレーニングだ。いいな」
「わかった。やらせてもらう」
「私も共にいる」
 そのだ。彼女もだというのだ。
「何かあれば動く安心しろ」
「済まないな」
「気にするな。これが仕事だ」
 こうしてだった。アルゴもネオロシアの為に闘い続けるのだった。
 アレンビーはキラルと共にだ。修業に励んでいた。
「まあいいよね」
「何がだ?」
「別の国のガンダムファイター同士で修業してもね」
「構わないだろう。これもまた鍛錬だ」
「一人より二人ってことだよね」
「左様。しかしアレンビー殿」
 キラルはそのアレンビーに言う。
「貴殿、前よりさらに」
「さらに?」
「動きがよくなった」
 そうだというのだ。
「しかも一撃一撃が強くなった」
「あんたもね」
 互いに駆け攻撃を繰り出しながらの言葉だ。
「強くなっているよ」
「ふむ。これは」
「そうだね」
 お互いに笑い合い。そうして言うのだった。
「次のガンダムファイトはな」
「楽しめるね」
 二人は闘いの中で絆を見出していた。それもまた人である。
 ドモンはネオジャパンでレインと共にいた。そこでだ。
 修業の途中にだ。彼女に言うのだった。
「兄さんは」
「退院されたそうね」
「ああ。次のガンダムを造る」
「そう。じゃそのガンダムに乗るのは
「俺だ」
 そのだ。彼だというのだ。
「俺が乗りそしてだ」
「今度も優勝するのね」
「敵は強い。だが俺は負けはしない」
「何があってもね」
「そう。例え」
「ふははははははははははは!その意気よ!」
 何処からともなくだ。マスターアジアが出て来た。
 何とマスターガンダムの指の先に腕を組み立っている。そこから言うのだ。
「ドモン!ではわしもだ!」
「師匠もまた」
「左様!次の大会も出る!」
 アスカが聞けば即座に抗議することが確実な言葉だ。
「その時のことを楽しみにしておれ!」
「師匠!俺は必ず!」
「わしに勝つか!」
「そうする!」
「ではわしもだ!」
 マスターアジアもその言葉を受けてだった。
 高らかな笑いはそのままに。こう言うのだ。
「全力で貴様と闘おう!」
「そして!」
「勝つ!」
「全力で!」
「そうだドモン!」
 今度はシュバルツだった。彼もまた己のガンダムの指の先に堂々と立っている。
「ならば私もゲルマン忍術の粋を見せよう!」
「ああ、そして!」
「死力を尽くして!」
「闘う!」
「ドモン、次の闘いの後でね」
 どうするのか。レインは微笑んで話した。
「式を挙げましょう」
「ああ、そうしよう」
「その時はわしもだ!」
「私も!」
 ここでも叫ぶ彼等だった。
「祝おうぞ!」
「全力でだ!」
 式も全力だという彼等だった。ガンダムファイター達は健在だった。

新機動戦記ガンダムWエンドレスワルツ
「じゃあな」
「うむ」
 ウーヒェイはデュオの言葉に冷静に応えていた。
「縁があったらまたな」
「会おう」
「俺はアメリカにいるからな」
「俺は中国にだ」
 それぞれの国に入るというのだ。
「まあそこで牧師でもやってるさ」
「俺はガードマンをすることになった」
「へえ、ガードマンかい」
「そうだ。闘いの腕を買われた」
 それでだというのだ。
「これからはそれで生きる」
「そうかい。頑張りなよ」
「中国に来ればだ」
 どうなるか。ウーヒェイはデュオにこのことも話した。
「飲もう」
「ああ、思う存分な。アメリカに来てもな」
「楽しみにしている」
 二人は微笑みで別れた。仲間同士の微笑みで。
 カトルはトロワに尋ねていた。
「そう、戻るんだ」
「ピエロにな」
 トロワはそれに戻るというのだ。
「そうなる」
「じゃあ。会えなくなるね」
「いや、それは違う」
「会えるんだね」
「縁はそうしたものだ」
 それがあるからだ。また会えるというのだ。
「そしてその時はだ」
「その時は?」
「楽しくやろう」
 顔は笑っていないが声は違っていた。
「皆でな」
「そうだね。皆でね」
「そしてカトル」
 トロワはそのカトルに尋ねた。
「御前はこれからは」
「うん、家に戻ってね」
 彼のだ。その家にだというのだ。
「マグアナック隊の人達と一緒にね」
「そうか。幸せになるのだな」
「トロワもね」
 彼等もそうすると言い合いだ。今は別れるのだった。
 マリーメイアは微笑み。ノインとヒルデに話していた。
「私はもう」
「去られるのですね」
「政治から」
「そうします。それで」
 どうするかと。レディ=アンの顔を見て言う。
「また別のやり方で」
「はい、二人で」
 レディ=アンも応える。
「トレーズ様の想いを」
「果たします」
「そうですね。では私達も」
「そうします」
 トレーズの心を受け継ぐというのだ。
「それがどれだけ困難でも」
「果たします」
「あの戦いは終わりました」
 微笑んで言うマリーメイアだった。
「ですが。まだ戦いは続きますから」
「そうです。平和を手に入れるための戦いは」
 それがだというのだ。レディ=アンは言う。
「まだ続きます」
「ですから共に」
 こう話してだった。彼女達はトレーズの志を継ぐ決意を胸に定めたのだった。
 ミリアルドがヒイロに尋ねていた。
「では御前は」
「そうだ。これまで通りだ」
「リリーナを守るか」
「そうする」
 こう言うのである。
「それが俺の為すべきことだ」
「そうか。では私は」
「リリーナと同じだな」
「政治の場に移りだ」
 彼が選んだのは。政治家だった。そうした意味ではシャアと同じだった。
「平和を。トレーズが目指したものを手に入れる」
「そうするか」
「リリーナはおそらくは」
「財団としてだな」
「動く。政治家としても」
「では俺はそのリリーナをだ」
 守るというのだった。それが彼の決めたことだった。

機動戦士ガンダム第08MS小隊 
 テリーはノリスから話を聞いていた。
「じゃあ隊長は」
「そうです」 
 その通りだとだ。ノリスはテリーに話す。
「今は軍を退かれ」
「そこで二人でか」
「農家として暮らされています」
「そうか、それは何よりだな」
 テリーはそのことを聞いて笑顔で話した。
「幸せみたいだな」
「はい、それはもう」
 ノリスも太鼓判を押す感じである。
「御二人共」
「そう、それを聞いてね」
「安心したよ」
 カレンとミケルは二人の話を聞いてだ。笑顔で言った。
「二人共色々あったけれどね」
「幸せになれるんならね」
「そうだな」
 エレドアも微笑んで言う。
「敵味方に別れたりもしたしな」
「はい、バルマー戦役の頃は」
 その頃はシローはロンド=ベルにいなかった。
「その頃は大変でした」
「けれどそれも終わって」
「遂に」
「二人でなんだな」
「暮らせるんだな」
「それで皆さんは」
 ノリスは彼等のことを尋ねる。
「どうされますか?」
「ああ、俺達はな」
「一緒だよ」
「このまま軍に残ってね」
「働いていくさ」
「左様ですか」
 ノリスは彼等の話を聞いても笑みになる。そしてだ。
 自分はだ。これになったというのだ。
「私は軍を離れ」
「それでどうなるんだ?」
「ジオン共和国の政府に入ります」
 そこだというのだ。
「これからは文官です」
「そうか。じゃあそっちもな」
「はい、新しい道を歩みます」
 彼等もそれぞれの道を歩みはじめていた。そしてそのシローとアイナは。
 身重のアイナにだ。シローが声をかけていた。
「アイナ、無理はするなよ」
「ええ、大丈夫よ」
 微笑んでだ。シローに応えるアイナだった。
 二人は広い農園の中にいる。そこで、だった。
 農作業しながら。そのうえで話をしていた。
「まだね」
「けれどもうすぐだよな」
「八ヶ月よ」
 そのお腹をさすりながらの言葉だった。
「私達の赤ちゃんがね」
「生まれるんだな」
「あと少しだから」
「楽しみにしておくか」
「そうね。本当に楽しみだわ」
 二人は幸せの中にいた。戦士としての二人は終わったが。二人はこれからだった。

モビルスーツガンダム アドバンスドオペレーション
 セラーナにだ。官僚達が尋ねていた。
「ではもう軍には」
「戻られないのですか」
「はい」
 セラーナは微笑みだ。その通りだというのだった。
「そうします」
「左様ですか」
「ではこのまま」
「はい、仕事をさせてもらいます」
 連邦政府のだ。官僚としてだというのだ。
「このまま」
「それでなのですが」
「御昼ですが」
「少し。あの店に行きます」
 こう言ってだ。姉の経営するその喫茶店に行くのだった。そこで学校にも通っている姪とも会いだ。幸せな時間を過ごすのだった。

機動戦士ガンダムSEED
「いやあ、本当にね」
「色々あったよな」
 カズイにトールが話す。二人は今オーブにいる。
「俺一回船降りたしね」
「俺一回撃墜されたし」
 しかしそうしたことも。
「大昔みたいだよな」
「今はさ」
「そうだね。本当に今は」
 サイもだ。昔を懐かしむ目で話す。
「夢みたいだよ」
「そうよね。あれだけのことが一杯あったけれど」
 ミリアリアも言う。
「今じゃね」
「何か現実じゃないみたいだよ」
「どうもね」
「ええ。それでサイ」
 フレイはサイにだ。こう言うのだった。
「これからどうするの?」
「これからって?」
「何言ってるのよ。皆で遊びに行こうって言ってたじゃない」
 彼女が話すのは今のことだった。
「それよ。どうするの?」
「ああ、それじゃあ」
「何処に行くの?」
「テーマパークにしようか」
 彼が言うのはそこだった。
「そこに行こうか」
「そうね。いいわね」
 フレイはサイのその言葉に笑顔で応える。ただしだった。
 彼女はここでだ。こんなことも言った。
「ただ。シンとカガリは一緒にしないでおきましょう」
「あれっ、あの二人今」
「オーブにいるの?」
「確かいないわ」
 ミリアリアがカズイとトールに答える。
「シンはプラントに戻ったし」
「で、カガリは仕事で他の国か」
「そうなんだ」
「今カガリも忙しいわよ」
 フレイもこのことを話す。
「正式にオーブの国家元首になったしね」
「大丈夫かな」
 サイは少し苦笑いになってそのカガリのことを言った。
「カガリで」
「ううん、どうかしら」
 ミリアリアも少し苦笑いだった。
「カガリだからね」
「少し不安だよね」
「かなりね」
 少しどころではなかった。
「あの娘のことだから他の国の要人の人殴ったりとか」
「少なくともシンと会ったら」
「絶対に喧嘩するしな」
 これはもう確実だった。
「そんな奴だからな」
「大丈夫かな」
 こんなことを話しながらだ。彼等はテーマパークに向かう。絆はそのままだった。
 マリューはこの時飲んでいた。相手は。
「あの、艦長」
「幾ら非番とはいえ」
 ナタルとノイマンがだ。困惑する顔で彼女に言う。
「飲み過ぎではないですか?」
「ビールを大ジョッキで何杯もとは」
「いいのいいの」
 おっさんそのままの仕草で飲みながら。マリューは応える。
「人生とは何ぞや」
「いきなりそう言われましても」
「返答できませんが」
「酒よ」
 言い切った。
「酒こそが人生なのよ」
「あの、昨日まさか」
「フラガ少佐と何か」
「あのね、よりによって間違えたのよあいつ」
 もうあいつ呼ばわりになっていた。
「私とミサトをね」
「それは仕方ないのでは?」
「私もそう思います」
 二人は即答だった。
「声だけではとても」
「区別がつきません」
「普通間違えるかしら。自分の奥さんを」
 しかしだ。ミサトはまだ言う。
「幾ら似ていても」
「時々同じに聞こえますから」
「というよりかは常に」
「私は間違えないわよ」
 マリューは間違えないというのだ。
「シラカワ博士やガムリン君達とはね」
「では何とか殺す、とか仰ると」
「その場合は」
「ちょっと自信ないかも」
 ムウも色々な事情がある。
「あの夜叉の狼よね」
「はい、天空です」
「戦記の世界です」
「あっちの世界とも縁があったわね」
 ムウの縁もかなりのものがあるのだ。
「複雑なことよね」
「ですからそれは」
「仕方ないのでは」
「そういうものかしら」
「あの、ですからもう」
「飲まれるのは」
 声のことは納得してもだった。飲むことは止めないマリューだった。そこにコジローが来てだ。
「艦長、おつまみ持って来ましたよ」
「何かしら」
「はい、お好み焼きです」
 舌はロンド=ベルの時のままだった。
「それでいいですよね」
「ええ。じゃあアークエンジェルのクルーとしてまだまだ飲むわよ」
「全く。艦長にも」
「困ったものです」
 そう言うナタルとノイマンも楽しんでいる。そんな状況だった。
 カガリはだ。港でだ。アサギとマユラ、ジュリに話していた。
「それで御前達は」
「はい、引き続いてです」
「軍に残りました」
「カガリ様の警護担当として」
 それで残っているというのだ。
「キサカさんの下にいますので」
「何かあればキサカさんにお話して下さい」
「すぐに飛んで来ますから」
「そうか。それならだ」
 三人の言葉を聞いてだ。カガリは。
「シンをだ」
「あいつを?」
「あいつをどうするんですか?」
「すぐに連れて来い」
 こんなことを言うのだった。
「今すぐここにだ」
「またどうしてですか?」
「どうしてあいつをここになんですか?」
「それはどうしてでしょうか」
「決まっている。殴る」
 相変わらずだった。
「あいつこの前インタヴューで私のことを言っていたな」
「ええ、何か猿だとか」
「暴力女とか」
「あんなの女じゃないとか」
「許せん!徹底的に殴ってやる!」
 闘争心剥き出しの言葉だった。
「今度こそ地獄に落としてやる!」
「あの、カガリ様」
 そこに来たキサカがカガリに呆れた声で言う。
「それは幾ら何でも」
「駄目か」
「駄目に決まっています」
 その言葉は厳しい。
「そんなことは」
「何だ、駄目なのか」
「そうです。何を言われるかと思えば」
「ロンド=ベルではできたのだがな」
「今は違いますから」
 だからだというキサカだった。
「冗談にしておいて下さい」
「ううむ、わかっていたが国家元首というものは」
「窮屈だって仰るんですね」
「そうですよね」
「ああ、不自由だ」
 実際にそうだと言うカガリだった。
「どうにもな」
「やれやれだな」
 そこに来たムウがだ。呆れた声で言った。彼は連邦軍に残っている。今はエスコート役としてだ。カガリ達の前に来たのである。
 その彼がだ。呆れた口調で言うのだった。
「このお姫様は相変わらずだな」
「悪いか?」
「まあ国家元首としてはな」
 そこはだ。お世辞にはというのだ。
「けれどそれでもな」
「それでもか」
「姫さんらしいな」
 カガリらしくはあるというのだ。
「問題はあるけれど悪くないだろ」
「問題はあるか」
「はい、あります」
 ここでまた言うキサカだった。
「くれぐれも御自重を」
「全く。不自由な話だ」
 カガリ達はこんな調子だった。そして。
 もう一人の姫はだ。何とだ。
 声優のだ。ある人物とだ。ネットの会談の収録を行っていた。
 その声優を見てだ。護衛役の一人であるダコスタが言うのだった。
「これはちょっと」
「どっちがどっちかよね」
「ええ、わかりません」
 こうアイシャにも話すダコスタだった。尚アイシャも同じく護衛役である。
「ええと、髪の飾り以外は」
「声も似てるし」
「というかそっくりだね」
 やはり護衛役のバルトフェルドも言う。
「いや、あそこまでわかりにくいとね」
「困りますよね」
「話には聞いていたけれど」
「そうですよね」
 キラもだ。笑いながら言うのだった。
「僕もどっちがどっちかわからないです」
「おや、君もかい」
「声が同じに聞こえますから」
 だからだというのだ。キラも。
「ええと、ミーア=キャンベルさんですよね」
「そうさ。売り出し中の声優さんだよ」
「何か歌唱力が凄くて」
「それと演技もね」
「それでラクスそっくりとなると」
「売れない筈がないね」
「そうなりますよね」
 キラはバルトフェルドと話してここまで察しをつけた。
「やっぱり」
「そう。それでああしてね」
「そっくりさん同士ということで、ですね」
「二人で収録ってなってるけれど」
「混乱しますよ。絶対」
 こうまで言うキラだった。
「どちらがどちらかわからないですから」
「うん。まあ企画としてはね」
「面白いですか」
「それもかなりね。だからああしてるんだよ」
「成程」
「それでキラ君」
 バルトフェルドは今度はキラに問うた。
「君はオーブ軍に入ったんだね」
「はい、そうです」
「それで今回は」
「エスコート役として派遣されました」
「そうだったね。それでだったね」
「あと。ラクスから」
 にこやかに笑ってだ。キラが話す。
「そろそろと言われています」
「ははは、そうかそれはいいことだ」
「何かこういう話って進む時は急ですね」
「縁だからな」
「縁だからですか」
「そう。縁は進むものだよ」 
 そうだと話すバルトフェルドだった。
「急にね」
「そうして結ばせてくれるんですね」
「その通りさ。後はその縁に全てを任せることだ」
「わかりました」
 キラは澄んだ笑みで頷いたのだった。その目の前では。
 ラクスがだ。そのミーアとにこやかに笑って話していた。
「それではラクスさんは」
「はい」
「これからは歌手としてですね」
「活動していきたいと思っています」
 こうミーアに答えるのである。
「戦いから離れて」
「そして政治は」
「私は歌手です」
 だから政治はというのだ。
「歌でできるものをしていきたいと思っています」
「なら私は」
「ミーアさんは?」
「声のお仕事で」
 声優としてだ。彼女は言うのだった。
「できるものをしていきたいです」
「そうですね。それではですね」
「はい、二人で」
「そうしていきましょう」
「これからも」
 ミーアと心を交えさせてだ。話すラクスだった。彼女も新たな道を歩んでいた。
 アスランは。イザーク達と話していた。全員白服である。
 自分の白服を見てだ。アスランはいささか困惑した顔だった。
「どうもな」
「どうしました、アスラン」
「いや、白服は」
「佐官の服が何か」
「汚れが怖いな」
 それが心配だというのだ。
「赤はそれ程目立たないからな」
「そうですね。それは確かに」
 ニコルもだ。アスランのその言葉に頷いて言う。
「白服はそこがですね」
「どうしても気になるな」
「全くだぜ」
 ディアッカも苦笑いと共に話す。
「功績が認められての昇進は嬉しいんだけれどな」
「御前はよく昇進できたな」
 イザークがそのディアッカに言った。
「ロンド=ベルに入ったことは問われなかったのか」
「ああ、そっちはな」
「よかったのか」
「不問ってことにしてもらったよ」
 そうだとだ。イザークに話すのである。
「功績を認められてな」
「そうか。それはよかったな」
「ああ。しかしな」
 ここでまた言うディアッカだった。
「やっぱりこの服はな」
「汚れが気になるか」
「これからはそれを注意していくか」
「確かに。俺もだ」
 無論イザークも白服だ。その姿で言うのである。
「この色はな」
「かえって気になるだろ」
「赤服への愛着もあった」
 このことも言うのだった。
「あれはあれでば」
「あれはデザインもよかったしな」
「決して。白服のデザインが悪いという訳ではないが」
「やっぱり汚れがな」
「うむ。気になる」
 彼等がだ。こうした話をしていると。
 その前からだ。アズラエルが来たのだった。そのうえで彼等に言う。
「久し振りですね」
「あっ、アズラエルさん」
「来られたんですか」
「はい、ザフトとのお仕事のことで」
 それで来たというのだ。
「そうした次第です」
「そういえば今度あれだったよな」
「新しいプラントを建設するという話があったな」
「そうです。今度のプラントは」
 そのプラントがだ。どうかというと。
「BF団に襲われようともです」
「無事な」
「そうした頑丈なプラントをか」
「建設されるんですね」
「いや。彼等もいなくなって何よりです」
 まだ彼等を嫌っているアズラエルだった。
「あの妖怪仙人達がいなくなって」
「ああ。全くだぜ」
「常識を無視する奴なんて抹殺だよ抹殺」
「そう。いらない」
 オルガにクロト、シャニも出て来た。
「折角戦いが終わったんだからな」
「もうあんな連中出て来なくていいよ」
「全然構わない」
「そういう御前等はどうしているのだ?」
 イザークがその三人に問うた。
「今は」
「ああ、俺達か」
「連邦軍に残ったんだよ」
「テストパイロット」
 それで残ったというのだ。
「何でも頑丈だからってことでな」
「どんな無茶もやらせられるって言われて」
「それで残った」
「つまりあれかよ」
 ディアッカはここまで聞いて言った。
「実験担当ってことだよな」
「そうだな。どうやら」
「そうとしか思えないです」
 アスランとニコルもそう見た。
「頑丈だとな」
「そういうこともできるからな」
「何か当たり前みたいな流れですね」
「彼等は貴重な人材ですよ」
 アズラエルが言う。
「何しろ何をしても死にませんから」
「おうよ、簡単に死んでたまるかよ」
「首が飛んでも生きてみせるよ」
「俺達は不死身」
「本当に死なないんですか?」
 ニコルも半分そう思っていた。
「この人達って」
「おそらくはそうだろうな」
 ここでミゲルが来て言う。
「この連中はな」
「凄いことですね」
「まあ死なないのはいいことです」
 アズラエル自身もそうだがこう言うのだった。
「それだけ色々なことができますから」
「頭は考慮しているのか?」
「いえ、全く」
 こうミゲルに返す。
「そのことについては何一つです」
「ある意味大胆だな」
「何しろティターンズ相手に大暴れして死刑判決を受けていますから」
 そもそもが滅茶苦茶だったのだ。
「その彼等に頭を期待してもです」
「無駄か」
「そう判断してやっています。ですが」
 ここでだ。アズラエルはこうも言った。
「彼等を失うつもりはありません」
「その気はないのか」
「大切な仲間ですから」
 だからだというのだ。
「失う気は毛頭ありません」
「そこに計算はあるのか」
「ないと言えば嘘になります」
 この辺りは企業家らしい。
「しかしそれ以上にです」
「仲間としてか」
「彼等とはこれからも一緒ですよ」
 笑顔での言葉だった。アズラエルもロンド=ベルにいてだ。大きく変わったのだ。三人の頭の中身だけは全く変わりはしていないが。


エピローグ1   完


                        2011・7・11 

 

エピローグ2

                 エピローグ2
機動戦士ガンダムSEED ASTRAY
 ロウの新しい仕事はというと。
「まあこれがな」
「一番だというのか」
「俺にとっちゃな」
 彼はジャンク屋に戻っていた。イライジャも一緒である。
「こうして適当なものを見つけてな」
「売って暮らすか」
「それで壊れたマシンなりモビルスーツをな」
「修理してか」
「ああ、生きてくさ」
 こうイライジャに話すのである。
「で、御前もか」
「そうさせてもらう」
 イライジャもだ。同じだというのだ。
「軍に残るつもりはないからな」
「だからだな」
「平和になった。それならだ」
「この月でな」
「そうしていく」
 彼等は月でジャンク屋をすることになった。そこにだ。
 プロフェッサーと劾も来てだ。こう二人に言うのだった。
「あんた達はまたそっちね」
「ジャンク屋になるか」
「ああ、こうしてな」
「気楽にやらせてもらう」
 その通りだと返す二人だった。
「で、あんた達はどうするんだ?」
「これからは」
「とある大学の教授になったわ」
「軍に残る」
 これが二人の未来だった。
「まあ。安定した生活ね」
「そうなるな」
「じゃあ俺達は一攫千金を狙うな」
「そうする」
「じゃあ頑張ってね」
「あんた達はそっちでな」
 樹里とリーアムも出て来た。それで二人に言うのである。
「あたし達はプロフェッサーと一緒に大学に入ることになったから」
「助手としてな」
「へえ、樹里が大学ねえ」
「おかしい?」
「いや、別に」
 ロウは笑ってだ。それはそうではないと答える。
「じゃあこれからはな」
「ええ、大学で頑張るわ」
「そうさせてもらう」
 こうしてだった。彼等も新しい人生を歩むのだった。
 ミナはオーブでだ。シホと話をしている。シホも白服になっている。
 そのシホにだ。彼女は言うのである。
「私はオーブの外相になった」
「そうなのですか」
「そうだ。何時までもユウナばかり働く訳にもいかない」
 流石にそれには限度があるというのだ。
「私が外相と務めだ」
「オーブの外交を担われますか」
「そうだ。それで君は」
「はい、私はザフト軍にいます」
 その白服が何よりの証だった。
「プラントで。これからも生きていきます」
「では。またな」
「はい、また御会いしましょう」
 その二人のところにエドとモーガンが来た。シホが二人に尋ねる。
「御二人はこれからは」
「ああ、俺は南米に戻って農家になる」
「俺はオーブ軍に入る」
 二人はそうするとだ。それぞれ話す。
「ジャガイモやス唐辛子を栽培して生きるさ」
「誘われたからな。ここに入る」
「そうされますか」
「ああ、これからはな」
「平和に生きる」
 二人はその道を選んだのだ。
 連邦軍の宇宙基地でだ。ジェーンがジャンとミハイルに尋ねていた。
「私は軍に残ってるけれど」
「俺達か」
「どうするか、だな」
「ええ、これからどうするのかしら」
 このことだった。尋ねるのは。
「軍に残るのかしら」
「いや、俺達はネオジャパンでな」
「そこでサラリーマンをする」
 これが二人の選択だった。
「保険会社で働く」
「俺は貿易会社だ」
「何か。軍とは全然違う道ね」
「そうだな。けれどな」
「縁があってまた会えば」
 その時はどうするかというのだ。
「飲もうな」
「これからもな」
「ええ、その時はね」
 ジェーンも笑顔で応える。
 ホバリーはジョージの話を聞いていた。
「おいおい、ネオホンコンに行くのか」
「あの人に誘われたから」
「マスターアジアにか」
「マスターガンダムの整備を担当して欲しいって言われて」
「それでか」
「それでバリーは?」
「俺は地球の欧州に入ってな」
 それでだ。どうなるかというのだ。
「そこで郵便局員になる」
「選んだ仕事はそれなんだ」
「黄色いポストが仕事の相手さ」
 つまりだ。ドイツに入るというのだ。
「それはそれで楽しみさ」
「そう。じゃあこれからも」
「楽しんで生きるな」
 彼等の道も決まった。バリーは戦いから離れグレンは闘いを助けることを選んだ。
 
機動戦士ガンダムSEED エックス ASTRAY
 プレアがカナードに話していた。
「もう戦いは終わったから」
「これからどうするんだ?」
「学校で勉強するよ」
「学校か」
「うん、明日からもうね」
 そのだ。学園生活をはじめるというのだ。
「そうさせてもらうよ」
「そうか。じゃあ僕は」
「カナードはどうするの?」
「プレアと共にいたい」
 そのだ。彼とだというのだ。
「戦いを離れてこれからは」
「これからは?」
「一人の人間として幸せに生きたいからね」
「だからだね」
「うん、だから」
 微笑み。そしてプレアに話す。
「一緒にいよう」
「うん、僕達は友達だから」
「二人で」
 二人は手を握り合う。そうして深い絆と共に生きることを選んだのだった。

機動戦士ガンダムSEED DESTINY
 トダカはユウナの悲鳴を聞いていた。
「ど、どうしたのこれ!」
「また何かあったのですか?」
「赤字だよ赤字!」
 それが理由でだ。叫んでいるユウナだった。
「いきなり五十パーセントも増えてるよ!」
「またえらく増えましたな」
「原因を知りたいんだけれど」
「おそらくですが」
「復興費かな」
「はい、それです」
 何故赤字になるか。その元は容易にわかった。
「何しろ我がオーブはまだまだ復興の中にありますから」
「ううん、インフラへの投資が凄いことになってるからね」
「はい。それでどうされますか?」
「これからのことだね」
「はい、その赤字は」
「仕方ないね。足りない部分は」
 どうするかというとだった。
「借金だね」
「やはりそれですか」
「仕方ないよ。それじゃあね」
「わかりました。では」 
 彼等は多忙だった。ユウナは特にだ。しかし希望は見えていた。
 アウルはだ。ぼやきながらスティングに言っていた。
「で、ステラは?」
「だからあいつザフトだよ」
「へっ、じゃあシンとかよ」
「そうだよ。一緒だよ」
 そこにいるというのだ。
「まあ機会があれば会えるからな」
「そうか。で、俺達はこれからどうなるんだ?」
「ああ、俺達か」
「そうだよ。どうなるんだよ」
「連邦軍に残るだろ」
 何故知らないかといった口調だった。
「ずっと言われてるだろ」
「そうだったのか」
「そうだよ。だからな」
「就職は決まってるからか」
「これからもやっていこうな」
「そうするか」
 そんな話をしてだった。二人も生きていくのだった。
 アーサーは相変わらずタリアにぼやいていた。
「暇になったのはいいですけれど」
「それが嬉しいのではなくて?」
「何かですね」
 それがだ。どうかというのだ。
「最近またあの九一三の奴に狙われてて」
「ああ、あのサイドカーに乗ってる仮面の戦士ね」
「ずっと天敵になってるんですよ」
「困った話ね」
「ええ。それで艦長は」
「私は?」
「議会に入るお話は」
 タリアにはそうした話が来ていたのだ。
「それは」
「断ったわ」
「えっ、そうされたんですか」
「ええ。軍に残るわ」
 それを選んだというのだ。
「このままね」
「それはまた勿体無い」
「いいのよ」
 微笑んでだ。タリアはこうアーサーに話す。
「私は政治家なんて柄じゃないから」
「だからいいんですか」
「ええ。軍人のままでいいわ」
 こう言うのである。
「ずっとね」
「じゃあミネルバの艦長は」
「ああ、それね」
「はい、どうされますか?」
 その話になる。
「昇進されるんですよね」
「将官にね」
「だったらもう艦長はできないですよね」
「ええ、そうよ」
 それはその通りだというのだ。
「司令官になるから」
「艦隊のですね」
「ええ。それでね」
 タリアはここでアーサーの顔を見た。
 そのうえでだ。にこりと笑って彼に告げた。
「これからは任せたわ」
「えっ、任せたって」
「だから。次の艦長は君よ」
「私がですか」
「少し頼りないけれど」
 このことも言いはしたがだった。
「任せたわよ」
「はい、それじゃあ」
「ううん、アーサーさんが艦長って」
「かなり不安です」
 ここでメイリンとアビーが言う。
「けれど。それでも
「宜しく御願いしますね」
「うん、こちらこそ」
 こうしてだった。ミネルバの新しい艦長にはアーサーが就任することになった。タリアは司令官としてだ。引き続き軍に残るのだった。
 ハイネはルナマリアとレイに話していた。
「御互いにだな」
「そうよね。白服にね」
「それになったな」
「白服になりか」
 ハイネはルナマリアを見た。彼女は今はズボンだった。
 そのズボンを見てだ。彼女に言うのである。
「もうスカートは穿かないのか」
「何か白服ってこっちの方がいいから」
「ズボンの方がだな」
「ええ。だからもうこれにするわ」
「少なくとも動きやすい」
 レイはこう言って納得していた。
「いいことだ」
「そうだな。ところでだ」
「シンか」
「あいつよね」
「姿が見えないがどうしている」
「デートよ」
 それだとだ。ルナマリアがくすりと笑って答える。
「あの娘とね」
「ステラとか」
「ええ、そうよ」
 それでだ。今ここにはいないというのだ。
「丁度非番だしね」
「そうか。あいつもか」
「楽しくやってるわ」
「いいことだ」
 ハイネはその話を聞いてだ。笑顔で言った。
「それはな」
「いいことか」
「戦うばかりでは何にもならない」
 それでだ。いいよいうのだ。レイにも話す。
「それでは。俺達もだ」
「これから仕事だけれど」
「楽しむのか、それも
「ああ。何でも楽しむべきだ」
 こう言ってだ。二人を連れてだ。彼は楽しく軍の仕事をするのだった。
 そしてシンは。白服のままでだ。
 ステラと共にいた。彼女は白いワンピースだ。
 白と白でだ。それで二人並んでだ。
 シンはにこりと笑ってだ。ステラに言う。
「なあステラ」
「何?」
「本当にいいんだよな」
 こうステラに尋ねるのである。
「俺の家に来て」
「うん」
 こくりと頷いてだ。それでいいと返すステラだった。
「行きたい」
「それでいいんだな」
「そう。それでステラ」
「ステラは?」
「シンのお父さんやお母さん」
 まずは彼の両親だった。
「それとシンの妹」
「マユにもなんだな」
「うん、会いたい」
 そうしたいというのだ。
「是非共」
「ああわかった。それじゃあな」
「それで」
「それで?」
「仲良く暮らしていきたい」
 こうも言うのだ。
「二人で」
「そうだよな。二人でな」
「ステラシンのこと好き」
 ステラはまた言った。
「だから一緒に」
「それじゃあ今から行こうか」
「うん、それじゃあ」
 こう話す二人のところにだった。
 マユが来てだ。そうしてだった。
 そのうえでだ。シン達に言ってきた。
「お兄ちゃん、そっちの人が?」
「ああ、ステラだよ」
 こうだ。笑顔で妹に応えるシンだった。
「宜しくな」
「はじめまして、ステラさん」
 マユは頭を深々と垂れてステラに挨拶した。
「宜しく御願いします」
「うん」
 ステラも微笑んで返してだ。彼女の挨拶に応える。ステラはシンの家族に紹介されてだ。そのうえで新しい人生を歩んでいくのだった。

機動戦士ガンダムSEED 流離う翼達 
 キースはアルフレッドに話していた。
「じゃあ俺はこれで」
「軍を辞めてだな」
「ええ、探検家はじめますんで」
「また随分面白い仕事に就くな」
「ははは、結構大変ですよ」
 笑顔で応えて言うキースだった。
「スポンサーはアズラエル財団ですけれどね」
「あそこか」
「はい。アズラエルさんはケチですから」
 それも有名でもある彼なのだ。
「お金中々出してくれませんから」
「厄介だな」
「それで仕事は多いですし」
「例えば何処に行くんだ?」
「マスターアジアの修業の場とか」
 いきなり滅茶苦茶な探検先だった。
「そういう場所ばかりですから」
「マスターアジアの」
「はい、そうなんです」
「俺だったら絶対にお断りだな」
 きっぱりと言うキースだった。
「もうな」
「お断りか」
「ああ、金は出さないけれど口は出すのか」
「生活費とかは保障してくれますよ」
「けれどな。危険な場所にばかり行かされるんだよな」
「どっかの半島の北半分とか」
「最悪の秘境だな」
 キースの第二の人生はそうしたところに行かされることだった。そしてアルフレッドは。
「まあ俺はな」
「軍に残るんですよね」
「ボーマンとオルセンもな」
 この二人もだというのだ。
「残るからな」
「はい、私達もです」
「軍に残ります」
 その二人が出て来てキースに話す。
「これからも何か縁があれば」
「宜しく御願いします」
 こうした話をしてだ。二人もなのだった。
 軍に残るというのだ。二人もそれぞれの人生を歩んでいた。
 ジャックは白服でだ。同じく白服のエルフィ、フィリスに話していた。
「何かアスラン達とは」
「はい、これまで通りです」
「一緒よ」
 そうだとだ。二人もジャックに話す。
「あとはシンもです」
「同じく軍に残っているから」
「シンなあ。あいつ結局な」
「何も変わっていませんね」
「今に至るまで」
「あいつは本当に変わらないよな」
 そのだ。シンも同じだというジャックだった。
「何があってもな」
「まあシンはシンですから」
「そういう人だから」
 何の問題もないというのだ。
「だからです」
「これまで通りということだから」
「じゃあいいか」
 それでいいとだ。ジャックも頷くのだった。 
 それでだ。彼等も新しい人生を歩んでいた。
 グリアノスとユーレクは。どうしているかというと。
 プラントにおいてだ。ある会社をはじめていた。
「さて、と」
「それではな」
 二人でそれぞれ言ってからだ。
 仕事をはじめていた。その仕事は。
 清掃業だ。ビルを掃除している。そうしながらだ。
 グリアノスはユーレクに話した。
「ところでだ」
「どうした?」
「この仕事でいいな」
 こう彼に問うのである。
「満足しているな」
「ああ、している」
 こう答えるユーレクだった。
「十分な」
「ならいいがな」
「もう戦いは終わった」
 それならばだと。ユーレクは話す。
「それならだ」
「こうしたことをして生きることでか」
「それでいい」
 また言うユーレクだった。
「これでな」
「そう言ってくれて何よりだ」
「そうだな。それではな」
「真面目に働くとしよう」
 床にワックスをかけながらの言葉だった。
「これからもな」
「そうしてだな」
「生きよう」
「うむ」
 二人もささやかな幸せを見つけていた。
 かつての超人的な戦士達もだ。今は平和に生きていた。

機動戦士ガンダムOO
 留美は紅龍に尋ねていた。彼等は元の世界に戻っていた。シュウのネオ=グランゾンの力でだ。彼等の世界に戻っていたのだ。
 その留美がだ。こう尋ねるのだった。
「それでお兄様」
「何かな、留美」
「今の我がグループですけれど」
「うん、事業は順調だね」
 こう答える彼だった。
「軌道に戻ってきたよ」
「それは何よりですね」
「うん。ただ」
「ただ?」
「こっちの世界は思ったよりは」
 どうかとだ。紅龍は難しい顔で話す。
「進展していないね」
「復興がですね」
「もっと進んでいると思ってたけれど」
「仕方ないですわね」
「仕方ないかな」
「私達がこの世界からあちらの世界に行っていた時は思ったより短いですから」 
 だからだというのだ。
「それ程進んでいないのも」
「そんなものかな」
「ええ。それに」
「それに?」
「軍の方も」 
 話が軍に移る。
「まだ確かな状況にはなっていませんね」
「そうだね。あちらもね」
「じっくりと進めていきましょう」
 留美は微笑んで話した。
「とりあえずは」
「わかったよ。それじゃあ」
「ええ、確実に」
 彼等は復興を順調に進めていくことにした。そうしたのだ。
 ティエリアはビリーと話していた。
「では今は」
「うん、大丈夫だ」
 こうだ。ビリーは落ち着いた声で彼に話す。
「軍も軌道に乗ったよ」
「そう。それは何よりだよ」
「それでティエリア」
 ビリーはここで彼に尋ねた。
「君はこれからも」
「軍で働かせてもらっていいだろうか」
「是非共」
 それで頼むとだ。ビリーも言葉を返す。
「今はね」
「僕の力が必要だから」
「そう。今の軍には君が必要だ」
 また話すビリーだった。
「だから」
「うん、それじゃあ」
「これでだな」
 ここでグラハムが出て来て言う。
「軍にとってはかけがえのない人物が残ってくれることになった」
「それは君もだ」
 ビリーはそのグラハムにも告げた。
「君も軍には必要なのだ」
「私もか」
「そうだ、、必要だ」
 こう彼に告げるのである。
「是非共だ」
「私はそれは」
「いえ、その通りです」
「そのおとはです」
 ハワードとダリルもそうだというのだった。
「ですから隊長もです」
「軍に残って下さい」
「さもないとな」
 ジョシュアもややシニカルな笑みだが彼に言った。
「こちらとしても張り合いがないからな」
「張り合いか」
「そうさ、それがなくなるからな」
 だからだというのだ。
「軍に残りな」
「そこまで言ってくてれるのなら」
 残るとだ。彼も頷くのだった。軍には人材が戻ってきていた。
 パトリックは晴れてだ。カティとの結婚式を迎えていた。その晴れやかな場にだ。
 セルゲイとアンドレイも来ていた。そのうえでだ。
 笑顔でだ。こう話をするのだった。
「戦いが終わればだ」
「その後は」
「もう二度と戦争をしたくなくなる」
 セルゲイはこう我が子に話す。
「だがそれでもだ」
「戦いはまた起こる」
「そうだ。しかし」
「それでもだね」
「人はこうしたことも育んでいく」
「幸せをだね」
「だから御前も」
 そのだ。我が子を見ての言葉だった。
「やがてはああして」
「ははは、そうだね」
 アンドレイも屈託のない顔で父に応える。
「幸せになるよ」
「それを見てからだ」
 セルゲイは優しい笑みになっていた。その笑みでの言葉だった。
「私も軍を退こう」
「軍を?」
「老人の役目は終わった」
 だからだというのだ。
「それならばな」
「そうなのか。父さんは」
「あくまで御前が幸せになったその後だ」
 その後でだと。また言う彼だった。
「早くいい相手を見つけるのだな」
「そうさせてもらうよ」
 そんな話をしながらパトリック達を見ていた。その彼等は。
 パトリックがだ。カティを両手で抱きかかえてだ。こう言うのだった。
「じゃあ閣下、これからは」
「待てパトリック」
 ウェディング姿の彼女は恥ずかしそうに彼に言う。
「いきなりこんな抱き方はないだろう」
「あれっ、駄目ですか?」
「駄目ではないが」
 顔を赤らめさせてだ。それは否定した。
「しかしだ」
「しかし?」
「御前は大胆過ぎる」
 こう言って彼を止めるのだった。
「もう少しだ」
「落ち着いてですか」
「そうだ。節度を保て」
 こう言うのである。
「いきなりこんなことをされては私も」
「どうなんでしょうか」
「陥落するではないか」
「陥落ですか」
「全く。私は御前の上官であり年上だしだ」
「姉さん女房ですよね」
「そうだ。それでこれでは」
 しめしがつかないというのだ。何気に意地も見せていた。
「全く。困った奴だ」
「じゃあ止めますか?」
「いや」
 しかしだ。それでもだというのだ。
「止めろとは言っていない」
「それじゃあ」
「このまま続けてくれ。それでだ」
「はい。それで?」
「さっきの言葉の続きだが」
「ああ、これからはですよね」
「そうだ。これからどうするのだ?」
 そのことをだ。パトリックに問うのだった。
 そしてだ。パトリックはこう答えるのだった。
「これから二人で、ですね」
「二人でか」
「幸せになりましょう」
 カティにこう笑顔で告げる。
「そうなりましょう」
「そうだな」
 カティは顔をまた赤らめさせてだ。パトリックの言葉に頷いた。不死身のパトリックは長い戦いの後で意中の相手を手にしたのである。
 アレルヤは二人でいた。ソーマ、つまりマリーと共にだ。
 そのマリーがだ。彼に言うのだ。
「ねえ。これからは」
「うん、戦いも終わったし」
 二人でだ。地球を旅しながら話をしていた。二人が今いるのは荒地だ。 
 その荒地を進みながら。彼女に話すのだ。
「これからはね」
「二人で、よね」
「うん、二人で場所を見つけて」
「そこで」
「二人で生きよう」
 こう話すのだった。
「静かに。平和に」
「そうね。これからはね」
「僕達はずっと一緒だよ」
 こうも言うアレルヤだった。
「もう離れることはないよ」
「私も」
 マリーも言う。
「アレルヤと離れたくない」
「そう言ってくれるんだね」
「私達もこれからずっと一緒だから」
「そう。だからね」
「一緒にね」
「暮らそう。その場所を見つけて」
 二人はやがて大平原に家を建てそこで牧場を開き暮らすようになった。彼等もまた彼等の幸せの中に落ち着くことができたのだ。
 沙慈はルイスと二人で学校に通っていた。その中でだ。
 ルイスにだ。こう言ったのである。
「ねえ」
「どうしたの?」
「また。宇宙に行かない?」
「宇宙に?」
「そう。宇宙を旅しよう」
 こうルイスに提案する。
「これからはね」
「そうね」
 ルイスも微笑んでだ。彼のその言葉ニ応えて言う。
「それじゃあ」
「星達を見よう」
 だからだ。旅をするというのだ。
「平和になったこの銀河をね」
「ええ。そうしましょう」
 こう応えてだ。そのうえでだった。
 ルイスは沙慈にこんなことを言ってきた。
「私ね」
「ルイスは?」
「あの時、ガンダムに襲われた時」
 ネリーのだ。理不尽な襲来を受けた時のことだ。
「許せなかった。憎んだわ」
「そうだよね。君のその手は」
「ええ、なくなってしまって」
 それ故にだ。憎んだというのだ。
「家族も何もかもを失って」
「けれどそれでもだったね」
「こうして。また沙慈と一緒にいられて」
「僕と」
「よかったわ」
 こう言うのであった。
「だから。これからは」
「うん、二人で」
「生きていきたいの」
 彼を観て。そのうえでの言葉だった。
「それでいいかしら」
「僕も」
 そしてそれはだった。
「僕もそうしていきたいよ」
「沙慈も?」
「だから。これからはね」
「ええ。二人で」
「生きていきましょう」
 こんなことを話してだ。彼等もだった。
 二人で未来を見ていた。明るい未来を。
 刹那はロックオンと共にいた。その彼に言うのだった。
「戦いは終わったな」
「この世界でもな」
「ああ。しかしな」
「まだだ」
 刹那は無表情のまま応えた。
「俺達はまだだ」
「戦わないとならないか」
「いや、見るのだ」
「見る?」
「確かに戦いは終わった」
 刹那もこのことは認める。
「しかし。この戦いが終わっただけでだ」
「別の戦いはか」
「また起こる。その時にだ」
「俺達が必要か」
「戦う必要がある」
 それでだというのだ。
「俺達はこうしてだ」
「ガンダムマイスターであり続けなければならないか」
「そういうことだ」
「わかった」
 ここまで聞いてだ。ロックオンもだ。
 静かに頷き。そうしてだった。
「じゃあな」
「行くぞ」
「わかった」
 こうしてだった。二人は次の戦いを見ているのだった。
 スメラギはだ。その彼等が乗る舟の中でだ。
 フェルトにラッセ、イアンにミレイナに話すのだった。
「さて、連邦軍に入ることになったけれどね」
「それでもですよね」
「結局のところやることはですね」
「同じですよね」
「そういうことですよね」
「そうよ。ガンダムマイスターと一緒にね」
 戦うというのだ。
「そうするわよ」
「戦いがなくとも任務を続けるですね」
「それが平和を守る為にすること」
「だからですよね」
「それで」
「そういうことよ。じゃあ出航よ」
 スメラギは笑顔で告げた。
「偵察エリアにね」
「了解」
「わかりました」
 こんな話をしてだ。彼等も任務に向かうのだった。平和を守る為に。

マジンガーZ
 甲児は学校でだ。
 さやかとボス達にだ。こんな話をしていた。
「平和だとなあ」
「平和だと?」
「何かあるだわさ?」
「身体がなまるよな」
 言うのはこのことだった。
「どうもな」
「それがいいんじゃない」
 さやかはその甲児にこう言った。
「戦っていないってことだから」
「それもそうか」
「そうよ。それに身体がなまるんだったら」
「喧嘩?」
「それでやんすか?」
 ヌケとムチャがここで言う。
「兜にそんなこと言ったらそれこそ」
「大変でやんすよ」
「その通りだわさ。こいつはすぐ暴れたがるだわさ」
 ボスもそのことを指摘する。
「だから喧嘩はボスが相手するだわさ」
「駄目よ、そんなの」
 さやかがそのボス達をすぐに止める。
「だから。スポーツでね」
「スポーツなあ。じゃあ今から陸上でもするか?」
「マラソンでもしたら?身体がなまるんなら」
「ああ、そうするか」
 甲羅児もこう応える。そんな話をしてからだ。
 研究所に戻るとだ。シローが兄に言ってきた。
「お帰り、博士達がさ」
「んっ、どうしたんだ?」
「新しい発明考えたんだって」
 そうなったというのだ。
「弓博士と一緒にね」
「パパが?」
「そうだ。実はだ」
 その弓博士が出て来た。後ろには三人の博士達もいる。
「画期的なものができたのだ」
「空気から水を作る機械じゃよ」
「それの改良版がな、今日な」
「完成したのじゃよ」
 せわし、もりもり、のっそりの三人の博士達が笑顔で話す。
「それから真空から大気を造る技術もじゃ」
「これでコロニーも随分と楽になるぞ」
「どうじゃ、凄いじゃろう」
「ああ、確かにな」
 甲児もだ。その話を聞いてだ。
 笑顔でだ。こう返すのだった。
「何か凄い話だよな」
「そうだわさ。もうこれからはだわさ」
「コロニーは今まで以上に楽になるでやんすよ」
「何よりですよね」
 ボス達も笑顔で話す。
「いや、平和になってだわさ」
「そんな凄い発明が出て来るでやんすな」
「これからは」
「そうだ。平和になって終わりではない」
 それは弓博士もわかっていた。
「これからだ」
「ああ、じゃあ俺もな」
「私達もね」
 甲児もさやかも笑顔で話す。
「これからもな」
「平和の為に頑張るわ」
 マジンガー達を見ての言葉だ。魔神達は今度はだ。平和の為にその力が使われるのだった。

グレートマジンガー
 鉄也はジュンに話していた。
「さて、俺はこれからはな」
「どうするの?」
「甲児君や大介さん達と同じだな」
「平和の為にね」
「ああ、働いていく」
 そうすると決めたのだった。
「具体的にはグレートマジンガーで」
「あれを使って?」
「作業をしていきたい」
「戦いに使ったあの力で」
「今度は平和や発展の為に築いていきたい」
 そうした建築物をだというのだ。様々な。
「美術館や博物館もな」
「そうね。私達はこれまで戦いしか見ていなかったけれど」
「これからは違うのね」
「平和と。その他のものを見て」
「生きましょう」
「そうしよう」
 これが二人の選択だった。彼等も平和の道を歩んでいた。

UFOロボグレンダイザー
 大介は牧場でひかるとマリアに話していた。
「僕はここにいて」
「牧場で働きながら」
「それでなのね」
「皆と一緒に働くんだ」
 彼もまたこう言うのだった。
「グレンダイザーの力で」
「平和の為に」
「そうするのよね」
「平和になって終わりではないからね」
 だからだというのだ。
「災害もあるだろうし」
「そうね。ダイザーの力で災害に向かえば」
「それだけで多くの人が救われるわ」
「戦う相手は戦争だけじゃない」
 その他のものもあるというのだ。それこそがだった。
「災害もまた」
「そうよね。だから私も」
「あたしもね」
 ひかるとマリアも笑顔で応えてだった。
「大介さんと一緒にね」
「また戦うわ」
「これからの相手は軍でも宇宙怪獣でもない」
 それならば。何かというと。
「災害やそうしたものだ」
「ではその災害に対しても」
「勝つわよ」
 彼等も希望を見ていた。見上げる空に曇りはない。何処までも奇麗な青い空だった。

ゲッターロボ
 竜馬は隼人と武蔵に話していた。
「じゃあ今からはだ」
「ああ、ゲッターをな」
「本来の目的に使おうぜ」
「ゲッターは本来惑星開発用のロボットだった」
 言うのはこのことだった。
「それならな」
「わかっている。これからはな」
「その為に働こうぜ」
「そうだ。その通りだ」
 早乙女博士もその彼等に話す。
「我々の仕事はこれからだ」
「そうよね。本当にね」
 ミチルもここで言う。
「戦いが終わってからが」
「本番なのだ」
「ええ、博士わかってます」
「だからこそ俺達は」
「これからも」
「皆で力を合わせてだ」
 博士から両手を差し出した。
「共に戦おう」
「はい、じゃあ」
「これからは」
 彼等も手を重ね合わせる。そうして誓い合うのだった。

ゲッターロボG
 弁慶はジャック、そしてメリーと話していた。
「俺もな」
「そう、一緒デスね」
「リョウ達と一緒に」
「四人でやってくことになったからな」
 こうだ。彼等とバットを振りながら言うのだった。
「これからもずっとな」
「ミーも一緒デーーーース」
「及ばずながら私も」
「ああ、頼んだぜ」
 笑顔で彼等に返す弁慶だった。
「これからもな」
「戦いは終わりマシタ」
 それはジャックも言う。
「けれどそれでも」
「そうよね。私達がやることはね」
「はじまったばかりだよな」
「その通りデーーース!」
 これがジャックの言いたいことだった。
「だから油断は禁物デーース」
「兄さんもそう言ってるし」
「ああ、余計にな」
「気を引き締めてね」
 そのうえでだと。メリーも弁慶に話す。
「やっていきましょう」
「この野球だってな」
 弁慶は野球の話もした。
「油断したら怪我するしな」
「そうね。じゃあ」
「さて、油断せずに楽しむデス」
 ジャックはまた言った。
「皆で!」
「ああ、それじゃあな」
「皆で。楽しみましょう」
 戦いが終わり彼等も本来の目的に向かっていた。そうした意味でだ。彼等はあらたな戦いを見てそれに向かっているのである。

真!!ゲッターロボ 世界最後の日
 ゴウ達三人も元の世界に戻っていた。その世界でだ。
 ゴウがだ。ケイとガイに対して言っていた。
「向こうの世界もこっちの世界もな」
「ええ、そうね」
「平和にはなったな」
「真ドラゴンもまた眠りに入ったしな」
 それでだ。どうかというのだ。
「これで俺達も一旦休憩だな」
「けれどゴウ」
 ここでケイがそのゴウに言う。
「また戦いがあるかも知れないわ」
「そうだな」
 ガイもケイのその言葉に頷く。
「火種はどうしても出て来るものだからな」
「だから。私達の戦いは」
「ああ、それはわかってるさ」
 ゴウもだ。それは承知しているというのだ。そのうえでの言葉だった。
「けれど。それでもな」
「今は、ね」
「とりあえずはか」
「ああ、少し休もうぜ」
 微笑んでだ。仲間達に話した。
「次の戦いまではな」
「ええ、そうね」
「少しの間でもな」
 ケイもガイも彼のその言葉ニ頷く。こうして彼等は今は束の間の休息に入るのだった。

勇者ライディーン
 洸がライディーンの石像を見ながら言う。
「これでまた一つ」
「そうだ。戦いが終わった」
「そうよね」
 神宮寺とマリが彼のその言葉に応えて言う。
「一つの大きな戦いがな」
「銀河を巻き込んだ戦いがね」
「宇宙怪獣もいなくなったんだ」
 洸は満足している顔だった。
「これでライディーンも」
「はい、また長い眠りにつきますね」
「戦いが終わりましたから」
 麗と猿丸もいる。二人も微笑んで言うのだった。
「たた。私達はまだ」
「やることが一杯ありますよ」
「そうだな。復興の為にな」
「学校にも行かないといけないし」
 神宮寺もマリもそれはわかっていた。
「俺達はまだこれからだ」
「やることが一杯あるから」
「そうだよな。俺達は休めないよな」
 洸は笑顔で言った。
「まだまだこれからなんだ」
「ああ。じゃあ今はライディーンと少し別れてな」
「それで。私達のすることをしましょう」
「そうしよう」
 神宮寺とマリの言葉に頷いてだ。洸は再び歩きはじめるのだった。

超電磁ロボコンバトラーブイ
 四ッ谷博士がロペットに言っていた。
「コンバトラーはこれからな」
「災害や復興支援や救護活動に使うんですね」
「それと惑星開発じゃ」
「戦い以外の目的にですよね」
「戦いが終わってそれでお役御免ではない」
 博士は楽しそうに話す。
「むしろじゃ」
「これからですか」
「あの連中の働きもこれからじゃ」
「コンバトラーチームも休めませんね」
「いやいや、今は安んでもらう」
 このことはしっかりと言う博士だった。
「しかし。それでもじゃ」
「まだまだ働いてもらうんですか」
「勿論御前もじゃ」
 ロペットにも言うのだった。
「これからじゃ」
「働くんですね、私も」
「嫌か?」
 ロペットの声の調子からだ。何となく察して問うたのである。
「嫌なら別にいいが」
「いえ、私がいないとコンバトラーは合体できないじゃないですか」
「ならばじゃな」
「はい、私も一緒です」
 こう言うロペットだった。
「皆さんと」
「うむ、それでこそれじゃ。それでじゃ」
「それで?」
「飲むか?」
 言いながらだ。酒と杯を出してきた。
「美味いぞ、これは」
「私ロボットだから飲めませんよ」
「ははは、そうじゃったな」
「そうですよ」
 こんな話をしてだった。彼等もこれからを見ていた。
 そしてコンバトラーチームは。今海辺にいた。
 そこで制服姿で並んで立ってだ。それぞれ言うのだった。
「戦い終わったなあ」
「そうですたい」 
 大作が十三の言葉に応える。
「けれど問題は山積みですたい」
「そや。だからわい等まだまだ働らかんとあかん」
「そうです。だからですね」
 小介もここで話す。
「また。僕達は」
「コンバトラーと一緒にやな」
「働くことになりますばい」
「そういうことです」
「じゃあ豹馬」
 ちずるはその豹馬に対して言った。
「これからもね」
「ああ、一緒にな」
「ずっと一緒よ」
 ここでだ。ちずるは強く出た。
「私達ずっと一緒だからね」
「わかってるよ。俺だってな」
「豹馬も?」
「ずっと一緒にいたいからな」
 こうだ。ちずるに対して言うのである。
「ちずるとな」
「えっ、それって」
「いいよな、それで」
 豹馬はその顔を少し赤くさせてちずるに言った。
「俺と。一緒にいてくれて」
「うっ、うん」
 ちずるの顔は真っ赤になっていた。その真っ赤になった顔で。
 豹馬のその言葉に頷いて。それからだった。
「ずっとね」
「ああ、いような」
 二人もやっとだった。お互いに言えたのだ。未来を見ながら。

超電磁マシーンボルテスファイブ
 ハイネルがだ。健一達に言っていた。
「では余はだ」
「これからボアザンで」
「皇帝を継ぐんでごわすな」
「兄さんはそれを選んだんだね」
「そうだ」
 その通りだとだ。健一と大次郎、日吉に話すのである。
「余が皇帝となりそうしてだ」
「ボアザンを建て直して」
「そのうえで真の意味で誇り高い国にする」
「そうするんだよね」
「その通りだ。ボアザンの真の誇りを取り戻す」
 その決意を今言うハイネルだった。
「例え何があろうともだ」
「だからか。その角を」
「片方切ったのね」
 一平とめぐみはそのもうない左の角を見ながら言った。
「あんたの決意の表れとして」
「そのうえで」
「そうだ。ボアザンの貴族と平民」
 その二つがあってだというのだ。
「貴族の誇りと平民の力。余はこの二つを以てだ」
「ボアザンを正しい国にする」
「そうしてくれるでごわすか」
「今から」
「そうだ。そして健一」 
 弟を見ての言葉だ。
「御前達地球の者達ともだ」
「そう、俺達もまた」
「共に歩もう。過去の過ちを忘れずに」
「そう、今私達は未来の前にいる」
「後は。その道に足を踏み入れて」
 健太郎と光代も言う。
「後は。共に進むのだ」
「地球とボアザンだ」
「そう、我等は一つなのだ」
 ハイネルにもわかったことである。
「ならばだ。共に歩もう」
「兄さん、じゃあ」
「うむ。またボアザンに来るのだ」
 微笑んでだ。ハイネルは弟達に告げた。
「余もまた地球に来よう」
「そしてそのうえで」
「共に明るい未来を歩もう」
 ハイネルが皇帝になりだ。ボアザンは確かに歩みはじめていた。地球と共に。真の誇りと共に。

闘将ダイモス
 メルビが話していた。
「こうしてだ。我々はだ」
「そうだな。念願の共存共栄に再び立てた」
「長くかかったけれど」
 京四郎とナナがメルビに応えて言う。
「一連の戦いが終わったからな」
「もうこれでね」
「そう。そしてだ」
 ここでだ。メルビは一矢とエリカを見た。そのうえでまた言うのだった。
「君達もだ」
「ああ、俺達もな」
「これで」
「幸せになることだ」
 こうだ。微笑んで告げたのである。
「それが地球とバームの未来を築いていくことだ」
「愛が未来を築く」
「そうなんですね」
「その通りだ」
「そうだな。それでだが」 
 ここで和泉博士が言う。
「リヒテル提督は。姿が見えないが」
「ああ、リヒテルはな」
「どうしたんだ、それで」
「兄さんは」
「あらためてバームの国家元首になることになった」
 それもまた決まったというのだ。
「選挙で選ばれてな」
「そうか。リヒテルもか」
「未来を築く為に」
「そうだ」
 ここでだ。そのリヒテルの声がした。そしてだ。
 モニターに彼の姿が出て来た。そのうえで彼等に言うのである。
「竜崎一矢、そしてエリカよ」
「リヒテル、御前もまた」
「歩まれるのですね」
「そうだ。御前達は御前達の道を歩み」
 そのだ愛によって築かれる未来をだというのだ。
「余もまた進もう」
「バームと地球の未来にだな」
「そうだ。そうする」
 こうメルビにも答えるのだった。
「それが余の出した答えだ」
「そうだ。君はそうするべき男だ」
「バルマーと地球の為にだな」
「歩むことだ。では私もだ」
 そのだ。ハレックもだというのだ。
「共に歩もう」
「ではお嬢様」
 マルガレーテがエリカに言う。
「これからも」
「はい、そうしましょう」
「一矢さんとお二人で」
「歩いていきます」
「じゃあエリカ」
 一矢もだ。晴れやかな笑顔で彼女に言う。
「俺達はこれからも」
「例え何があろうとも」
「一緒だ」
「はい、永遠に」
 二人で言い合いだ。笑みを浮かべ合うのであった。地球とバームの未来もこれからだった。幸せな、本当の意味でのそれがはじまるのは。


エピローグ2   完


                                         2011・7・16
  

 

エピローグ3

                       エピローグ3
未来ロボダルタニアス
 彼等も元の世界に戻っていた。
 剣人がガスコンに尋ねていた。
「じゃあこれからは」
「この星に残る」
 地球にだ。残るというのだ。
「そしてそのうえでだ」
「俺達と一緒にか」
「働かせてもらう」
 こう剣人と弾児に話すのだ。
「それでいいだろうか」
「ああ、頼むぜ」
「是非な」
 二人もこう彼に応えた。
「これからも色々とやることがあるからな」
「だからな」
「確かに戦争は終わりだ」
 ガスコンはここではこう言った。
「世界も救われた。だがだ」
「問題山積みだからな」
「むしろ大変なのはだ」
「これからだ。だからだ」
「ああ、じゃあな」
「これからもな」
「ガオオオオオオオオン!」 
 最後に獅子も鳴きだ。そうしてであった。彼等もはじまろうとしていた。

無敵超人ザンボット3
 神ファミリーも今戻って来た。彼等の場所にだ。
「よお、戻って来たな」
「待ってたわよ」
「ずっとね」
 香月にアキ、ミチがだ。戻って来た彼等に声をかける。
「御前等のお陰でな」
「宇宙も救われたのよね」
「その為に戦ってくれてたのね」
「それなのにな」
 ここでだ。香月はその顔に悔恨を見せて言った。
「俺はあんなことを言っちまった」
「あたしも。ガイゾックに爆弾を埋め込まれて」
「そんな相手と戦っていたのに」
「いや。君達も同じだ」
 兵左衛門がこう彼等に言う。
「君達も君達でガイゾックやバルマーと戦っていたな」
「ゲリラみたいなことしかしてねえぜ」
「それも。ちょっとした嫌がらせみたいなことしか」
「してないけれど」
「そして連邦軍にも協力してくれた」
 だが兵左衛門はまた言った。
「それで充分だ」
「そう言ってくれるんですか」
「私達のことを」
「そうですよ」
 梅江がアキとミチに笑顔で話す。
「貴方達も戦ってくれましたよ」
「だから私達もだ」
「こうして生きて帰れたのよ」
 源五郎と花江も笑顔で話す。
「皆が手伝ってくれたから」
「そのお陰で」
「生きて帰られるなんて思っていなかった」
 一太郎は死ぬことも覚悟していたのだ。
「けれどこうして今地球に戻って来られたんだ」
「ああ、御前等だって信じてくれたじゃないか」
 勝平も香月達に話す。
「それで人間爆弾のことを教えてくれたよな」
「ああ、あのことか」
「あの時、若し御前が来てくれなかったらな」
 そのだ。香月がだというのだ。
「アキも死んでたしな」
「そうね。あの時に香月がロンド=ベルに来てくれなかったら」
 アキ自身もだ。その時のことを思い出して言う。
「あたし、あの時で」
「タケルさんやガイキングチームの人もいてくれてな」
「何とかなったけれど」
 宇宙太と恵子もこのことについて話す。
「まず香月達が教えてくれなかったら」
「取り返しのつかないことになってたわ」
「皆がいてくれたからなんだよ」
 勝平はまた言った。
「俺達がこうして帰って来られたのはな」
「だからな。これからもな」
「皆で力を合わせてな」
「ああ、わかった」
 香月は明るい顔になってザンボットチームに応えた。
「宜しくな」
「こちらこそな」
「ワン!」
 勝平と香月が笑顔で握手したところでだ。千代錦が鳴いた。これが幸せの合図だった。
 
無敵鋼人ダイターン3
 万丈は今自分の屋敷で書類の山に囲まれながらぼやいていた。
「全くねえ」
「御仕事がですか」
「うん、多いね」
 苦笑いと共に傍らにいるギャリソンに言う。
「どうにもね」
「確かに。しかしです」
「これも仕方がないことだね」
「人類全体の復興に私達もです」
「力を尽くしているからこそだね」
「それだけの仕事になっています」
「そういうことだね。じゃあ」
 万丈は気を取り直して。そうしてだった。
 サインを次々としていく。その横では。
 ビューティとレイカ、それにトッポがだった。
 今は庭にあるダイターンを見ながら。こんな話をしていた。
「もうダイターンもね」
「戦うことはないのね」
「そしてその代わりにだね」
「うん、そうだよ」
 その通りだとだ。万丈が応える。
「これからは。戦い以外のことでね」
「その力が使われるのね」
「ダイターンの力ら」
「人類を救った力が」
「力は何の為にあるのかだね」
 万丈はサインを続けながら話す。
「まあ。暴力とかはね」
「そうです。何にもなりません」
 ギャリソンも応えて言う。
「それよりもです」
「そう、人の為になる力」
「それが必要なのです」
 こう話す彼等だった。戦いが終わった破嵐財閥は平和になっていた。しかしそれと共にだ。万丈は楽しい多忙の中に身を置いていた。

聖戦士ダンバイン
 ショウ達はバイストンウェルに戻っていた。そのショウにだ。
 トッドがだ。こう声をかけた。
「御前さんはそのままかよ」
「ああ、戻らない」
 こうだ。ショウはトッドに答えた。
「ここでもまだやることはあるからな」
「ドレイクの旦那が死んでもな」
「また悪意が起こるかも知れない。それにだ」
「色々いるからな、この世界にも」
「怪獣やそうした存在から人達を護る」
 ショウの声が強くなる。
「その為にも俺はここに残る」
「まあ俺もな」
 トッド自身もだ。どうするかというのだ。
「こっちに残るけれどな」
「そうするんだな」
「あっちに戻ってもやることは同じだしな」
「そうよね。聖騎士だったら」
 どうなるのか。チャムが話す。
「皆を護って戦わないとね」
「そういうことさ。だから俺もな」
「ここに残ってだな」
「御前さんと一緒にやらせてもらうぜ」
「そうね。それが一番ね」 
 マーベルもここで言った。
「皆で。そうしていきましょう」
「俺もだよな」
 トカマクもいた。彼も生き残ったのだ。
「色々と大変だけれどやっていくか」
「そうだな。皆でな」
「頑張っていこうね」
 ショウとチャムが笑顔で言ってだ。そのうえでこの世界のことを考える彼等だった。
 ニーはシーラ、そしてエレと会っていた。その場でだ。
「では。これからこの世界は」
「そうです。それぞれの国から代表を出し」
「連合して統治することになりました」
 そうなったとだ。二人の女王は話すのだった。
「各国の王から代表を順番で選び」
「そのうえで」
「そうですか。つまり連合王国ですね」
 リムルがそれを聞いて言った。
「これからの私達は」
「そうだな。地球にもあったな」
「そうした国になっていく」
 エイブとカワッセもそうだと話す
「これからのバイストンウェルはだ」
「最早群雄割拠ではなくなる」
「ドレイクが出たこと」
 ニーはこのことから言う。
「そのことを忘れずに」
「そうよね。より平和な世界にする為に」
 キーンもここで言った。
「世界を作り変えていくのね」
「それがいいね」
 ガラリアはその考えに賛同を見せた。
「折角平和を掴み取ったんだから」
「私もそう思う」
 バーンも同じ意見だった。
「最早だ。無益な戦いはだ」
「避けなければならない」
 ニーはまた言った。
「その為にだ」
「そうした国にしていくことが必要だな」
「そうだな。そしてバーン」
 ニーは今度はバーンに問うた。
「御前はもういいのか」
「ショウ=ザマのことか」
「今更だったか。この問いは」
「そうだな。そうなるな」
 微笑みだ。バーンもそうだと返す。
「今の私にとってはな」
「ではこれからは」
「一人の騎士として生きる」
 これがバーンの選んだ選択だった。
「そしてこの世界の為にだ」
「働いてくれるんだな」
「及ばずながらそうさせてもらう」
「有り難いよね、黒騎士も協力してくれるなんて」
「そうだよね」
 ベルとアールがこう話す。
「敵だったらおっかなかったけれど」
「味方だと心強いから」
「思えば因果なものだ」
 ここで自嘲めいたものも見せるバーンだった。
「かつてショウ=ザマを憎悪していた私が奴と協力するとはな」
「ですがそのことをです」
「今の貴方は」
「はい、受け入れました」
 その通りだとだ。バーンはシーラとエレにも答えた。
「それが私の選んだ道です」
「あの戦いの中で」
「その道を決められましたね」
「何にしろいいことさ」
 ガラリアもいた。
「憎んでも何にもならないからね」
「ああ、それはな」
「本当にその通りだな」
 アレンとフェイもだ。彼等の選んだ道は。
「俺達もこっちの世界で働くと決めたからにはな」
「やっぱり清々しくやりたいからな」
「あいつみたいになったらな」
「どうしようもないからな」
 ここでジェリルのことも思い出した。
「憎しみってのはやっぱりやばいんだよ」
「自分自身を滅ぼしちまう」
「そうだな」
 ニーは彼等の言葉にも頷いた。
「これからは。その憎しみ自体を」
「そうね」
 リムルがニーのその言葉に応える。
「もう二度と。お父様やお母様の様なことは」
「はい、そして貴方は」
「彼と」
「共にいます」
 リムルもまたシーラとエレに応える。
「私達は二人で」
「共にこの世界の平和を築き守っていきます」
 バイストンウェルでも平和が戻ろうとしていた。この世界も本来の姿に戻ろうとしていた。

聖戦士ダンバイン(OVA版)
 シオンはシルキーと共に彼等の時代のバイストンウェルに戻ってきていた。そこは。
「全く違うな」
「そうね」
 彼等のいた戦乱に覆われたバイストンウェルではなかった。そこは。
 争いがなく誰もが平和に暮らしている。そうした世界だった。
 その世界を見てだ。シオンは言う。
「ショウ達が築いてくれたか」
「そうね。あの人達がね」
 築いた。それでだというのだ。
 そしてここでだ。シルキーはシオンに対して問うた。
「それでだけれど」
「俺があの世界に行ったことか」
「あれはどうしてだったのかしら」
「やはり。世界が歪んでいて」
 そのせいだというのだ。
「俺もまたあの世界に迷い込んでしまった」
「バイストンウェルも崩壊に瀕していたのね」
「そうだった。そしてそれは」
「偶然じゃなかったのね」
「アカシックレコードに導かれていた」
 そうだったというのだ。
「それで俺もまた」
「そうだったのね」
「だがそれも終わった」
 彼等のだ。その戦いもだというのだ。
「後はここで」
「ええ、そうね」
 二人で話してだった。彼等はこの世界でこのまま生きるのだった。戻って来たこの世界で。

重戦機エルガイム
 ギャブレーがマクトミンに尋ねていた。
「では貴殿は」
「その通り。この新生ペンタゴナにおいて」
「軍に残るのか」
「そのうえで戦おう」
「そうするのだな」
「私には軍が最も合っている」
 だからだというのだ。
「そうさせてもらう」
「成程な。そういうことか」
「そしてだ」
 今度はだ。マクトミンからだった。
 ギャブレーに対してだ。こう尋ねたのである。
「貴殿はどうするのだ?」
「私か」
「そうだ。貴殿はどうするのだ」
「私も決まっている」
 ギャブレーはマクトミンの問いに静かに答えた。
「やはり軍にだ」
「そのまま残るのだな」
「復帰と言うべきか」
 この辺りはやや複雑だった。
「軍で。このままだ」
「働くのだな」
「私も軍が性に合っている」
 彼もまたそのことがわかったのである。
「軍でだ」
「この世を正していくか」
「そうさせてもらう」
「そうですね。あっしも」
 ハッシャもここにいた。
「お頭と共に」
「待てハッシャ」
 ギャブレーは真面目な顔でハッシャに言い返した。
「私はもうお頭ではない」
「じゃあこれからは」
「大佐と呼ぶのだ」
 それが彼の今の階級だというのだ。
「いいな」
「大佐ですか」
「そうだ、大佐になったのだ」
 何時の間にか決まっていることだった。
「これからはそう呼ぶのだ」
「わかりやした。それじゃあ」
「うむ。それではな」
 彼等は軍に残りだ。平和の為に働くのだった。そしてネイは。
 アントンとヘッケラーにだ。こう話していた。
「軍から話が来たよ」
「そうですか」
「来たのですか」
「そうさ。戻って欲しいってね」
 そう言われたというのである。
「それであたしはね」
「どうされますか、それで」
「戻られますか、それとも」
「ああ、戻るよ」
 笑みを浮かべてだ。こう二人に答えたのだった。
「あたしは戦うしかできないからね」
「そうですか。そうされますか」
「軍に戻られますか」
「それであんた達はどうするんだい?」
 ネイは二人に対してだ。どうするのか尋ねた。
「これからは」
「御供させてもらいます」
「ネイ様に」
 これが彼等の選択だった。
「我々は常に共にいます」
「ネイ様と共に」
「そうかい。悪いね」
 彼等のその言葉を受けてだ。ネイは。
 満足した笑みを浮かべた。三人もまただ。その道を選んだのだった。
 アムとレッシィはダバ達と会っていた。まずはダバが二人に尋ねた。
「じゃあ二人は」
「ええ、山賊じゃなくなったし」
「私も軍には戻らない」
 こう答える二人だった。
「仕事はじめるから」
「私もだ」
「仕事って?」
「何をするの?」
 キャオとリリスもいる。その彼等が二人に尋ねた。
「仕事っていっても色々だけれどよ」
「具体的にはどんなお仕事をするの?」
「私は歌手になるの」
「私はアマンダラ商会をそのまま引き継いだ」
 何時の間にか。二人はその道を選んでいた。
「芸能プロダクションも立ち上げてね」
「あの商会をそのまま置いておくのは勿体ないしな」
「へえ、それはまた」
「二人共大胆ね」
 これにはだ。キャオもリリスも驚きを隠せなかった。
「俺なんてさすらいのメカニックをしながらな」
「私と一緒にね」
「リリスの仲間を探す旅に出るのに」
「そういうことしか考えてないのに」
「そう。あんた達はそうするのね」
「ペンタゴナも平和になったから」
 それを聞いてだ。今度はアムとレッシィが驚きの顔を見せた。
「前から言ってたけれど」
「それを本当にやるの」
「ああ、色々考えたからな」
「そうするの」
 また答える二人だった。
「じゃあな。また縁があればな」
「会いましょう」
 こうしてだ。二人もだった。
 旅に出ることを決めた。そして最後には。
 ダバにだ。彼等が尋ねた。
「それでダバはな」
「どうするの?」
「ペンタゴナの大統領に推薦されていたけれど」
「それを受けるのか?」
「いや、俺は政治家にはならないよ」
 その提案を聞いてだ。ダバは。
 そのことを断りだ。こう言うのだった。
「俺は故郷に戻って」
「オリビーとなのね」
「一緒に暮らすのね」
「オリビーもようやく落ち着いてきたから」
 彼のその横にだ。当のクワサンがいた。
 そしてその彼女がだ。こう言うのだった。
「有り難う」
「元々こうすると決めていたから」
 だからだとだ。こう言ってだった。
 ダバは微笑みだ。仲間達に話した。
「ペンタゴナの人達の期待は嬉しいけれどね」
「それでもなのね」
「そうするか」
「そうさせてもらうよ。俺以上に大統領に相応しい人もいるし」
 その彼に未来を託してだ。彼は自分の未来を選んだのだった。
 そのダバにだ。フル=フラットが声をかけた。
「ではな」
「貴女はこれからは」
「何処かで静かに余生を暮らす」
 そうするというのだ。
「このままな」
「そうするんですか」
「私の役目は終わった」
 また言うフラットだった。
「後は。そうするだけだ」
「そうですか」
「では。機会があれば会おう」
 ダバだけでなくだ。多くの者に話した。
「その時には楽しく飲もう」
「はい、ではその時は」
「一緒に」
 こうしてだった。ダバは仲間達を別れてだ。クワサンと共に暮らすのだった。他の者達もだ。それぞれの新しい人生を歩みはじめていた。
 
機甲戦記ドラグナー
 グン=ジェムは四天王の面々に言っていた。
「今度はだ」
「へい、あそこですね」
「あのピラミッドに入って」
「ああ、お宝を手に入れるぞ」
 こうだ。ガナンとジンに応える。
「そうするからな」
「わかりました。それじゃあ」
「今度は」
「か、金は貰った」
 ゴルはここでこう言った。
「また送ってくれた」
「有り難いね。スポンサーは」
 ミンはゴルのその話に笑顔で述べた。
「まあテレビやネットでの中継つきだけれどね」
「ははは、生活の心配をしなくて何よりだ」
 それがいいというグン=ジェムだった。
「しかもお宝の取り分もちゃんと貰えるからな」
「結構いい話だしな」
「それじゃあなまたな」
「が、頑張ってお宝手に入れる」
「そうしようね」
 こんな話をしてだった。彼等はトレジャーハンターを続けるのだった。
 ダグラスは今非常に複雑な顔をしていた。何とだ。
 目の前でだ。ベンがだ。
 ダイアンと結婚式を挙げていた。その中でだ。
 浮かない顔で酒を飲みながらだ。ケーン達に尋ねた。
「どう思う?」
「どう思うって?」
「何がですか?」
 ケーンとリンダが彼の言葉に応えた。
「だからだ」
「あの、だからって」
「何がですか?」
「この結婚だ」
 彼が言うのはこのことだった。
「曹長、いや遂に少尉になったな」
「それでダグラスさんも中佐じゃないですか」
「そうですよね」
「そうだな。中佐になった」
 それは認めた。
 しかしだ。ダグラスは同時にこうも言った。
「しかし結婚はだ」
「ああ、独身だったんですか」
「そうだったんですか」
「それで少尉は結婚か」
 そのベン、幸せそうな彼を見て言うのだった。
「私も何時かな」
「まあまあそんなことを言わないで」
「楽しみましょうよ」
 その彼にタップとローズが笑顔で声をかける。
「折角の結婚式ですよ」
「御二人の幸せを祈って」
「それに中佐もです」
 今度はライトだった。
「今度は」
「私がか」
「幸せになれるかも知れないじゃないですか」
「それは違う」
 しかしだった。ここでだ。
 ダグラスはこう彼等に言った。
「まずは御前等だ」
「俺達?」
「私達ですか」
「そうだ。ワカバ中尉にオセアノ中尉」
 まずはこの二人だった。
「それにニューマン中尉」
「俺達が、ですか」
「幸せにですか」
「なるというのですね」
「そうだ。それぞれ幸せになれ」
 こう彼等に告げるのだった。
「いいな。私が幸せになるのはこれからだ」
「ああ、そういうことですか」
 ここで話を理解したライトだった。
「彼女を見つけてそれでなんですね」
「そういうことだ。いいな」
「じゃあ俺はもう」
「そうよね」
 タップとローズが笑顔で話す。
「今度はな」
「私達が式を挙げましょう」
「それで俺達もか」
「そうなるわね」
 ケーンとリンダも話をする。
「戦いも終わったしそれじゃあな」
「幸せになりましょう」
「そうしろ。いいな」
 ダグラスは飲みながら彼等に告げた。満面の笑顔のベンを苦い、それでいておめでとうという言葉を含んだそうした笑みで見ながら。
 その中でだ。ダグラスはまた三人に問うた。
「それで御前等だが」
「ええ、結婚ですよね」
「まあそれは近々」
「俺は相手を見つけてから」
「違う」
 そうではないというのだ。
「これからどうするつもりだ」
「ああ、これからですか」
「俺達の将来ですか」
「それですよね」
「それはどうするのだ」
 今彼等に問うことはこのことだった。
「やはり軍に残るのか」
「まあ。学校も卒業して」
「それからですね」
「軍に正式に入ります」
「そうか。わかった」
 その話を聞いてだ。ダグラスは。
 納得した顔になってだ。こう三人に告げた。
「ではこれからもしごくぞ」
「げっ、ずっと中佐と一緒ですか」
「何かそれは勘弁して欲しいですね」
「やっとお別れだと思ったのに」
「五月蝿い、これも仕事だ」
 ダグラスとてこう言うのだった。
「だからだ。これからもな」
「何かついてないよなあ」
「俺達って最後の最後までな」
「全くだよ」
「そうかしら。中佐も皆も」
 リンダはここで言った。
「楽しそうだけれど」
 そう見ていた。そしてそれはその通りだった。彼等も楽しい未来に向かっていた。
 カール、ウェルナー、ダンの三人は。
 今飛び立とうというマイヨにだ。こう告げていた。
「では少佐は」
「今日もですね」
「行かれるのですね」
「そうだ。また海賊が出て来た」
 宇宙海賊がだ。
「その征伐に向かう」
「そうですか。わかりました」
「それではです」
「ご武運を」
 三人は敬礼してマイヨに告げた。
「私達もまたです」
「今の任務が終われば」
「少佐殿と合流しますので」
「楽しみにしている」
 こう返すマイヨだった。
「ではだ。まただ」
「はい」
「ではまた」
「御会いしましょう」
 マイヨは出撃してだ。港を出るのだった。青い鷹もプラクティーズも軍に残りだ。そうして戦っていた。

戦国魔神ゴーショーグン
 キリーはホットドッグ屋をやっていた。その彼にだ。
 向かい側の巨大なフライドチキンの店からだ。ケルナグールが物凄い美人と出て彼に声をかけてきた。
「おお、元気そうだな」
「あんたは相変わらずみたいだな」
「うむ。商売は上々」
 そしてなのだった。さらに。
「しかもかみさんともだ」
「あんたの奥さんなあ」
「どうじゃ。美人じゃろう」
 その美人を誇らしげに見せての言葉だった。
「わしは幸せ者じゃ」
「そうだな。俺なんてな」
「しかしホットドッグも売れておるだろう」
「そこそこな」
 売れているとは言う。
「来年には車じゃなくて店でやれそうだな」
「そうか。では頑張れよ」
「ああ。しかしあんたはな」
「うむ、わしか」
「本当に幸せそうだな」
「ははは、妬けるか」
「正直なところな」
 こう返すのだった。そしてそのキリーの携帯にだ。彼女からのメールが鳴った。
 レミーは今アフリカにいた。そのサバンナでだ。 
 野生動物達を監視していた。その彼女にだ。
 誰かが声をかけてきた。それは。
「話は聞いていたが」
「あら、会いに来てくれたのかしら」
「そうだ」
 その通りだとだ。ブンドルは優雅に笑って応える。
「その為にここに来たのだ」
「あんたそういえば今は」
「仕事はしている」
「それは何なの?」
「美学者だ」
 学者になったというのだ。
「それをしている」
「ふうん、そうなの」
「それの論文を書き別の名前で講義をし」
「大学にもね」
「教授も勤めている」
「本名は?」
「それはあえて隠している」
 不敵な笑みでだ。こうレミーに告げる。
 そしてだ。そのうえでだ。
 また薔薇を掲げてだ。こう言った。
「そしてそれこそが」
「それでなのね」
「美しい・・・・・・」
 この言葉をだ。ここでも出したのである。
「実にな」
「あんたも変わらないわね」
「私は普遍だ」 
 そうだというのだ。
「この美はな」
「まあ。元気でね」
「また会おう」
 ブンドルは自然の美を見てからだ。そこから去ったのだった。
 慎吾は怪我をした。だがそれから復帰してだ。今は。
 病院で清掃員をしていた。その彼にだ。
 カットナルがだ。こう声をかけた。
「何だ、奇遇だな」
「ああ、あんたか」
「うむ。知人の見舞いに来たのだが」
「それでここに来たんだな」
「そうだ。しかし貴様がいるとはな」
 それはわからなかったというのだ。
「またそれは」
「そういえばあんたは」
「うむ、今はな」
「大統領になったんだったな」
 そしてその国とは。
「ガメリアだったか?」
「そうだ。今は国家の為に貢献している」
「頑張ってるんだな、あんたも」
「そうしている。しかしだ」
「しかし?」
「貴様はどうなのだ」
 こうだ。慎吾のことを尋ねたのだ。
「やはりこのまま」
「ああ、真面目に働くさ」
 そうするとだ。慎吾は笑顔で話した。
「これからもな」
「そうか。ではお互いにな」
「頑張ろうか」
「そうするとしよう」
「オバもな」
「ハイデス」
 そのオバもだ。慎吾と行動を共にしていた。
「私モコノ病院ニイマス」
「調理をしているのだな」
「ソウデス」
 その通りだというのだ。
「マタ宜シクオ願イシマス」
「うむ、こちらこそな」
 慎吾とカットナルは握手をした。そして。
「また会おう」
「そうして楽しくやろうな」
「御互いにな」
 こう話してであった。彼等も笑顔で生きるのだった。

新世紀エヴァンゲリオン
 シンジがレイに言っていた。場所は学校だ。彼等は第二東京市に戻っていたのだ。
 そこで彼が言うことは。
「戻って来たね」
「そうね」
「何か。凄く久し振りに感じるよ」
 ここに戻って来たことがだというのだ。
「本当にね」
「実際にかなり空けてたじゃない」
 ここでアスカが言ってきた。
「使徒がまた出て来た時からだから」
「ああ、そういえばそうだよね」
「全く。しっかりしなさいよ」
 そのシンジにこう言うアスカだった。
「人生まだまだこれからなんだから」
「そやな。まだ俺等な」
「中学生だしね」
 トウジとケンスケもこう言う。
「何か色々あったけれど」
「あっという間だったし」
「そうね。今思うとね」
 ヒカリは少し遠い目になっている。
「短かったわよね」
「そうだね。久し振りだけれど」
 それでもだと。また言うシンジだった。
「やっぱりあっという間だったね」
「それでだけれど」
 レイが皆に言ってきた。
「今日の放課後は」
「ええと、特に予定はないけれど」
「修業。はじめたの」
 レイはそれをはじめたというのだ。
「あの東方不敗さんの拳法の」
「えっ、綾波まさか」
「ガンダムファイターになるの!?」
 シンジとヒカリが少し驚いて問い返した。
「あの、あれはちょっと」
「止めた方がいいんじゃないかしら」
「健康にいいから」
 それどころではないがそうだというのだ。
「だからはじめたの」
「何か綾波が何時か」
「ああした人になるのかしら」
「まあ精々変態にはらないことね」
 アスカの拒絶反応は健在だった。
「あたしの国も一人凄い変態がいるしね」
「ああ、シュバルツさんな」
「元気らしいよ」
「殺しても死ぬ変態じゃないわよ」
 アスカはトウジとケンスケにもこんな調子だった。
「全く。最初見た時は驚いたわよ」
「結局その認識は変わらなかったね」
 そのアスカにこう言って。今シンジ達は。
「じゃあ。今から」
「次の授業の準備しようか」
「そうしましょう」
 普通の中学生に戻っていた。その日常に。
 ミサトはリツコと共にだ。軍にいた。そこでだ。
「ううん、確かに戦いは終わったけれど」
「仕事が減らないっていうのね」
「どうしたものかしら」
 実際にこうぼやいていた。
「何か一つ片付けたらね」
「もう一つって感じで」
「書類が減らないのよ」
「それは私もよ」
「リツコも?」
「私も軍医になったから」
 それでだというのだ。
「そっちの仕事がね」
「多忙なのね」
「全く。結婚する余裕もないわ」
「早く相手を見つけることね」
「頑張ってるけれどね」
 笑いながらそんな話をするのだった。
 マヤはネルフの司令室で。マコトにシゲルに言っていた。
「ここはこのままなのね」
「ああ。連邦軍の基地としてね」
「使うらしいぜ」
「そう。だから私達も」
「引き続き軍に残って」
「ここにいるってことさ」
「家に帰った気分ね」
 今の心境をこう話すマヤだった。
「長い旅から帰って」
「そうだよな。長い戦いだったよ」
「本当にな」
「けれど。皆とはお別れじゃないから」
 このことを話してだ。マヤは微笑んだ。
 そしてだ。こうも言うのだった。
「また。機会を見てね」
「会いに行かないとな」
「そうして楽しくやるか、また」
 彼等も戻っていたのだった。そしてそのネルフの司令室でだ。
 加持がだ。冬月に話していた。
「まあ色々ありましたが」
「全ては無事に終わったな」
「ええ。私にしても」
 その加持はどうかとだ。彼は温かい笑顔で言った。
「本来なら死ぬ筈が」
「こうして生きていてくれているな」
「おかしなことですね。死ぬ筈の人間が生き残っていて」
「今こうしてここにいることはか」
「ええ、不思議ですよ」
 こう言うのだ。
「本当に」
「だが。それを奇貨として」
「そうですね。これからも」
「この世界の為に働かないとな」
「そうですね」
 こんな話をするのだった。彼等もまた生きて未来を見ていた。

伝説巨神イデオン
 コスモがカーシャとデクに話していた。
「じゃあ今からだな」
「そうよ。またね」
「新たな開拓地にね」
「またはじめるんだな」
 コスモは感慨を感じながら言った。
「人間の未来を切り開く旅を」
「そうよね。確かに色々あったけれど」
「まただね」
「巨神もいなくなって」
 そうしてだった。
「もう一度俺達は」
「行きましょう。仕切りなおしよ」
「俺達の家を見つけ出しに」 
 イデオンから下りた彼等は普通の人間としてだ。また宇宙への旅に出るのだった。
 ベスはソロシップの艦橋でだ。カララ達に話していた。
「では今からだ」
「出航ね」
「そうだ。それでシェリル」
「ふふふ、そうね」
「君は居住区にいてくれ」
 こうだ。彼女の大きくなった腹を見ながら言うのだった。
「何かあったら大変だからな」
「お腹の赤ちゃんの為にもなのね」
「そう。だから」
 ベスは優しい笑みでカララに告げる。
「そこにいてくれ、暫くは」
「わかったわ。そうさせてもらうわ」
 こうした話をしてだ。カララはその場を後にした。その彼女が退室してから。
 ジョリバにハタリ、そしてモエラがだ。こう話した。
「ではベス」
「今から行こうか」
「俺達の新たな星に」
「そうだ、行こう」
 ベスもだ。彼等に微笑みを見せたうえで答えた。
「俺達の未来へ」
「この銀河を越えて」
「その場所に向かおう」
「今からな」
 コスモ達も乗せたソロシップが出航しようとしていた。未来を手に入れるために。
 そのソロシップの中でだ。ルウがシェリル、そしてギジェと話をしていた。
 ギジェは過去を懐かしむ顔でだ。こう言ったのだった。
「過去を見るのもいいが」
「そうね。未来を見るのもね」
「決して悪いことではないわね」
「そう。、だからだ」
 ギジェガここでまた言った。
「いいことだと思う」
「ギジェ、貴方も何か」
「変わったか」
「ええ、変わったわ」
 微笑んでだ。ギジェに答えたのだった。
「いい意味でね」
「それは有り難いことだな」
「だからこれかもね」
「わかっている。これからは」
「皆で」
「手を握り合っていよう」
 こうしてだった。ギジェも新たな道を歩むのだった。地球の者達と共に。

トップを狙え!
 ノリコはだ。宇宙にいた。エクセリオンの中にだ。
 そしてその中の自室でコタツに入りながらカズミ、ユングと話をしていた。
「やっぱりこたつってね」
「いいわよね」
「こうして中に入って」
 にこにことして話すのだった。
「蜜柑を食べるのがね」
「最高の幸せよね」
「それに漫画とゲームね」
 ユングもにこにことして話す。
「この組み合わせがね」
「やっぱり最高よね」
「私達は元の任務戻ったけれど」
 太陽系の防衛にだ。それにだった。
「それでも。こうしてね」
「そうですよね。休みの時にはこたつに入って」
「英気を養っておかないと」
「そうね。大きな戦いは終わったけれど」
 それでもだと話すカズミだった。
「私達のお仕事はね」
「まだまだこれからですから」
「頑張っていかないとね」
 こんな話をしながら今はくつろぐ彼女達だった。
 そこにはタシロと副長もいた。エクセリオンの艦橋に。
 そこでモニターを眺めつつ。タシロは言った。
「今日もだな」
「はい、平和ですね」
「このまま平和が続いてくれることを願う」
 こう言うのだった。
「ずっとな」
「私もです」
「ささやかな願いだがな」
「確かな願いですね」
「そうだな。そんな願いだ」
 彼等は今優しい顔で願っていた。未来の幸せのことを。

大空魔竜ガイキング
 サンシローはピート、リー、ブンタ、そしてヤマガタケ等と飲んでいた。
 その中でだ。彼はこう言った。
「今年はこれでな」
「二十勝だったな」
「やりますね」
 リーとブンタが彼のその言葉に応えて言う。
「肩は大丈夫か」
「もう」
「ああ、肩も腰もな」
 絶好調だというのだ。
「膝も肘も万全だぜ」
「だが無茶はするな」
 ピートは彼にそのことは注意した。
「それはな」
「ああ、わかってるさ」
 サンシローもピートのその言葉に頷く。
「また無茶をしたらな」
「同じだからな」
「俺は野球選手として生きる」
 サンシローは言い切った。
「これからはな」
「なら余計にな」
「そうだ。怪我はな」
「御互いに禁物ですね」
 リーとブンタも言う。
「俺もキックボクサーに復帰したしな」
「僕も飛び込み選手に」
「俺プロレスラーになったからな」
 ヤマガタケはそれになっていた。
「いきなりメインイベンターになったぜ」
「そうか。俺はだ」
 ピートが何になったかというと。
「民間のパイロットになった」
「それにか」
「なったんですね」
「ああ。お互いに楽しくやっていこう」
 ガイキングチーム同士として。楽しく話してだった。
「じゃあこれからも為に」
「ああ、そうだな」
「これからもな」
「僕達は仲間です」
「戦いは終わってもな」
 こうした話をしながらだった。彼等は乾杯したのだった。
 ミドリは大文字と話をしていた。
「では私は」
「あらためてだな」
「はい、学校に入ります」
 学生になるというのだ。
「そして医者を目指します」
「そうか。頑張ってくれ」
「はい。それで博士は」
「私はサコン君と共に」
 そのサコンを見て。そのうえでの話だった。
「研究所を開いてだ」
「そうしてそこで、ですね」
「ガイキング達を保存し超能力の研究を進めていく」
 そうするというのだ。
「これからは」
「はい、博士」
 ここでそのサコンが出て来て話す。
「超能力にはまだ不明の事柄が多いので」
「それを全て解明すれば」
「人類にとって必ず大きな力になります」
「これからの発展の為にな」
「そうですか。わかりました」
 ミドリはその二人の言葉に笑顔になる。そうしてだった。
 今は二人と別れそのうえで、だ。彼女の道を歩むのだった。

蒼き流星SPTレイズナー
 エイジはデビット達と話していた。
「そうか。これからは」
「その為に働くんだね」
「うん、そうしたいと思っているんだ」
 こうだ。エイジはデビットとロアンに対して話していた。
「地球とグラドスの為に」
「いいことね。けれど」
 ここでだ。シモーヌが言った。
「それはかなり難しいわよ」
「そうだな。地球とグラドス、いやグラドス人と他の人達の間にはな」
「因縁があまりにも多いからね」
「それはよくわかっているよ」
 エイジはだ。そのことを誰よりもよくわかっていた。
「本当にね」
「ああ、グラドスがこれから生きるには」
「相当な困難が伴うだろうね」
「そうだね。とてもね」
 また言うエイジだった。
「けれどそれでも」
「やるんだな」
「そうするんだね」
「これからは」
「うん、やるよ」
 エイジは微笑んで答えた。
「絶対にね」
「そうか。それならな」
「僕達もエイジと一緒に」
「働かせてもらうわ」
「有り難う・・・・・・」
 エイジは一人ではなかった。仲間達もいた。地球とグラドスのあらたな関係ははじまったばかりだった。
 ゲイルはジュリアに話していた。グラドスの新たな星において。
「これから。はじまる」
「そうね。グラドスの新しい歴史が」
「困難なはじまりになる」
 それは間違いないとだ。ゲイルは言った。
「私達はあまりにも罪を重ね過ぎた」
「銀河でグラドスを怨んでいる者は多い」
「そう。あまりにも多い」
 そのことはだ。拭えないものだった。
「だからこそ。苦難のはじまりになる」
「けれどそれも」
「受け入れないとならない」
 こう話すゲイルだった。
「けれど私達はそれでもだ」
「ええ、はじめましょう」
「今から」
 こうした話をしてだ。彼等ははじめるのだった。
「グラドスの。これまでの歪んだ過去を忘れずに」
「新たな未来を歩む為に」
 その為に動くことを誓い合ってだった。グラドス人は偏見を捨ててあらたに歩きはじめていた。

六神合体ゴッドマーズ
「ではな、マーズよ」
「兄さんはこれで」
「そうだ。ギシン星に戻る」
 そうするとだ。マーグは微笑んでタケルに話していた。
「そしてそのうえでだ」
「ギシン星を復興させるんだね」
「戦いは終わった。そしてギシン星を支配していたズールも倒れた」
 それならばというのだ。
「そして彼等は私を待ってくれている」
「兄さんを。国家元首に迎えて」
「だからこそだ。私は彼等の期待に応えたい」
 それでだというのだ。
「だからだ。今は」
「お別れだね」
「また。地球に来る」
 マーグは弟にこんなことも話した。
「その時にまた会おう」
「そうだね。それじゃあ」
「司令、いえマーグ様」
 ロゼはマーグを見て彼に声をかけた。
「私も」
「ロゼも一緒に来てくれるのか」
「はい」
 そうだと。ロゼはこくりと頷いてマーグの問いに答えた。
「それは駄目でしょうか」
「頼む」
「では」
「そうだ。共に来てくれ」
 微笑みだ。マーグはロゼに言った。
「私と共に」
「わかりました。それなら」
「二人でギシン星を立て直そう」
 マーグは一人ではなかった。タケルもいてそうしてだった。生涯の伴侶もいた。彼は幸せだった。
 そしてタケルも。彼には。
 ケンジがだ。笑顔で声をかけてきた。
「ではタケル」
「はい、これからは」
「大塚長官のところに戻る」
 そうするというのだ。その大塚もいてだった。
 こうだ。彼に対して言ってきたのだった。
「ではこれからも頼むぞ」
「はい」
 タケルは微笑みマーグに答えた。
「そうさせてもらいます」
「これからは戦いはメインじゃないですよね」
「ああ、そうみたいだな」
 ナオトがアキラに答える。
「木星とか土製の開発がな」
「主になるんだったね」
「それはそれで忙しいわね」
 それならばだとだ。ミカも言う。
「やることは多いわね」
「そうだね」
 それはナミダも言った。
「おいら達もこれからだよね」
「そう、本当にこれからだ」
 大塚は彼等に対してもこう話した。
「だからだ。これからもだ」
「はい、わかりました」
「やらせてもらいます」
 こう答える彼等だった。彼等も休んでいる時間はなかった。


エピローグ3   完


                   2011・7・20
       

 

エピローグ4

              エピローグ4
超時空要塞マクロス
 グローバルはマクロスの艦橋にいた。
「ここにいるのもな」
「はい、後もう残り僅かです」
「あと数日です」
 未沙とクローディアが彼に話す。
「マクロスは再び記念艦に戻り」
「人々を見守ります」
「それがマクロスに相応しい仕事だな」
 グローバルは二人の話を聞きながら目を細めさせて言った。
「まさにな」
「そうですね。戦いは終わりましたし」
「後は。そのことを忘れない為にも」
「マクロスを記念艦にして」
 ヴァネッサにキム、シャミーもこう話す。
「私達もマクロスを降りて」
「別のマクロス型で再び」
「銀河に向かいますね」
「そうなるな。私もだ」
 グローバルもだ。自分のことをここで話す。
「マクロスから降りだ」
「ゼントラーディとですね」
「そしてメルトランディと」
「そうだ。彼等と話をして」
 そうしてだというのだ。
「私達の世界の新しい世界を築いていきたい」
「はい、それでは」
「私達も」
 マクロスはその役割を終えた。しかしそれでもだった。
 彼等はまた歩むのだった。彼等の新たな夢の為に。それを選んだのだった。
 フォッカーは練習中にだ。こんなことを話した。彼は軍に残ったのだ。
「さて、この訓練が終わったらな」
「飲みに行くんですね」
「そうするんですね」
「ああ、あのバーに行くか」
 こうマックスと柿崎に話すのだった。
「今日もな」
「いいですね。あそこはやすくてお酒も料理も美味しいですし」
「それならあそこで決まりですね」
「では私も」
 ミリアもだ。ここフォッカーもバルキリーに通信を入れてきた。
「一緒に」
「ははは、紅一点だな」
 フォッカーはそのミリアを見て言った。
「まさにな」
「そうですね。この中では」
「一人ですね」
 マックスと柿崎も笑って話す。
「それは」
「それでもいいか?」
「ええ、構いません」
 いいと返すミリアだった。そしてこう言うのだった。
「マックスと一緒ですから」
「ああ、だからか」
 フォッカーもそれを聞いて納得した。
「だからいいんだな」
「マックスと一緒なら何処でも」
「いいね、じゃあ俺も」
 柿崎も笑ってこう言った。
「彼女呼ぼうか」
「おお、御前も遂にか」
 フォッカーは今度は柿崎に明るい声をかけた。
「できたのか、彼女が」
「ええ、まあ」
「そりゃいい。じゃあ俺もクローディアを呼んでだ」
「カップル同士で、ですね」
「ああ、楽しむか」
 こんな話をしてだ。訓練の後のことを陽気に考える彼等だった。
 輝はミンメメイと話をしていた。
「また行くんだね」
「ええ、銀河にね」
 こう話す彼女だった。
「そこでまた」
「歌う」
「そうするわ」
「じゃあ俺は」
 輝はそのミンメイの顔を見て話した。
「そのミンメイと一緒に」
「一緒に!?」
「銀河に行っていいかな」
 こうだ。ミンメイに優しい笑顔を向けての言葉だった。
「今度は」
「来てくれるの?長い旅になるけれど」
「構わないさ。銀河は広いっていうけれど」
「狭いわね」
「そう。ほんの少しの距離だけれど一緒に」
「来てくれるのね」
「それでいいかな」
 こうミンメイに尋ねた。
「俺も」
「ええ、来て」
 これがミンメイの返答だった。
「それならね」
「うん、一緒に」
 こう話してだった。二人は今旅立つのだった。ほんの少しの旅に。

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
 ブリタイはエキセドルに話していた。
 今彼等はマクロス7の艦橋にいる。とはいってもまだ出航していない。
 そしてブリタイも己の身体を小さくさせている。そのうえでエキセドルに話すのだった。
「ではこれからはだ」
「司令もそのお姿で、ですね」
「生きていきたい。是非な」
「わかりました。それではです」
 エキセドルも彼の決意に応えて話す。
「これからは共に」
「行くか」
「ああ、ここにいたのか」
 カムジンも来た。そのうえで言うことだった。
「新任艦長と副長はここだったんだな」
「むっ、カムジンか」
「何かあったのですか?」
「着任の挨拶がまだだろ。皆待ってるぜ」
「そうだったな。それがあったな」
「忘れていました」
 二人もカムジンの言葉で思い出した。そうしてだった。
 すぐに艦橋を後にしてだ。そのうえで挨拶に向かうのだった。

マクロスプラス
 イサムとガルドは共にいた。二人のいる場所は。
「何か腐れ縁だな」
「全くだ」
 まずはこのやり取りからだった。
 そうして二人は次に周りを見る。見えるものは。
 星ばかりだ。その中でイサムはガルドに尋ねた。
「太陽系に残ってよかったのか?」
「言うのはそのことか」
「ああ、俺は別にいいけれどな」
「構いはしない」
 こう返すガルドだった。
「俺も地球に残りたくて残った」
「だからかよ」
「宇宙に旅立つのもよかったが」
「あえて残ったんだな」
「地球を守りたい。だからだ」
「わかっらぜ。それじゃあな」
「この腐れ縁を」
 今度はガルドからこのことを話した。
「続けていこう」
「ああ、ずっとな」
 二人はそれぞれが乗っているバルキリーを上昇させた。そうして星の中に消えたのだった。そしてまた星の中から出て来る彼等だった。

超時空要塞マクロス 永遠のラブソング
 霧生はレトラーデの話を聞いていた、
「これがか」
「うん、そうよ」
「ミスティが料理をか」
「意外?」
「ちょっとな」
 素直な返答だった。
「そんなイメージじゃなかったんだがな」
「けれど。凄いでしょ」
「ああ。フルコースじゃねえか」
 見ればだ。テーブルの上に多くの料理が並べられている。それを見てだ。
 霧生は感心してだ。こう言ったのである。
「食いきれるか?俺が」
「あんたなら大丈夫でしょ」
「随分と適当な言い方だな」
「別にそうは思わないけれどね
「じゃあ霧生」
 あらためて言うレトラーデだった。
「皆で食べよう」
「そうだな。けれどな」
「けれど?」
「何かあったの?」
「三人共軍に残るなんてな」
 彼が今言うのはこのことだった。
「それも縁だな」
「そうね。確かにね」
「縁に他ならないわね」
 二人もそのことを認める。
「これからも。色々とあるでしょうけれど」
「何時までもね」
「ああ、一緒にやっていこうな」
 楽しく言う霧生だった。そのうえで乾杯してミスティの手料理を食べる彼等だった。

超時空要塞マクロス2 -LOVERS AGAIN-
 ヒビキもだ。軍に残った。
 そして同じく軍に残ることにしたシルビーとネックスに話した。
「軍には残ってもな」
「そうね。新しい配属先はね」
「全然違うな」
「俺は日本になった」
 ヒビキは祖国への配置になったのだ。
「横須賀にいるからな」
「そう、あの街にいるのね」
「これからは」
 二人も彼の話を聞いた。そして次は。
 シルビーがだ。こう二人に話した。
「私は月よ」
「俺は火星だ」
 同時にネックスも話した。
「御互い離れるけれど」
「縁があればな」
「ああ、また会おうぜ」
 ヒビキは笑顔で二人に告げた。
「絶対にまた会えるからな」
「そうね。もう月も火星もね」
「どうってことはない距離になったからな」
「銀河も狭くなったわ」
「それでそのせいでな」
 星が違っていても会えるようになった。そういうことだった。
 そうした話をしてだった。彼等は今は笑顔で別れたのだった。

マクロス7
 レイはビヒーダに話していた。
「明日だな」
「そう、明日」
 こう返すビヒーダだった。
「明日にまたマクロス7に乗って」
「それで出航だ」
「銀河の何処かを目指して」
「新しい地球を求めてな」
「じゃあ行こう」
「ああ、今からな」
 こんな話をするのだった。そして。
 金竜はドッカーにフィジカ、それにガムリンと共に格納庫にいた。そこで彼等のバルキリーを見ながら。その中でこんな話をしていた。
「またこうして一緒になったんだ」
「それならですね」
「これからは」
「そうだ。四人で銀河に出るぞ」
 笑顔で彼等に話す金竜だった。
「マクロス7でな」
「そうですね。これからも四人で」
「楽しくやってですね」
「そのうえで」
「新しい地球を見つける」
 金竜は微笑んで言った。
「そしてそこで楽しくやるとしよう」
「わかりました。しかしあれですね」
 ガムリンがここで言う。
「宇宙移民も前より遥かに楽になりましたね」
「そうだな。それはな」
 その通りだとだ。金竜も答える。
「バルマー帝国やその他の支援も受けられるしな」
「だからですね。本当に」
「ああ、いいことだ」
 金竜は笑ってこうも言った。
「やはり戦乱よりもな」
「平和がいいですね」
 このことを話してだ。彼等は新天地に向かうのだった。 
 美保はマクロス7のシティでショッピングをしながらサリーに尋ねていた。
「ねえ」
「どうしたの?」
「このスカートどう?」
 スカートの一着を見せての言葉だった。膝までの赤いタイトだ。
「私に似合うかな」
「ううん、どうかしら」
「似合わないの?」
「美保はもっとひらひらした感じの方が」
 いいのではというのだ。
「そう思うけれど」
「ううん、じゃあ」
「他の方がいいわね」
 はっきりと言うサリーだった。
「そうしたスカートはいつもね」
「仕事中に着てるしね」
「私もだけれどね。だから」
 軍にいる時にだ。そうした服はいつも着ているからだと話してだった。
 サリーはそのひらひらとした短い白いスカートを出してだ。美保に見せた。
「これなんかいいんじゃない?」
「あっ、可愛いわね」
「どう、これ」
 またサリーに問うた。
「一回試着してみたらどう?」
「そうね。それじゃあ」
「私も買いたい服見つけたし」
 もうそれはゲットしているサリーだった。黒いズボンと白のブラウスを手にしている。
 そてを見ながらだ。美保に話すのだった。
「それじゃあね」
「うん、今からね」
「試着してみましょう」
 幸せはここにもあった。
 ギギルはマクロス7の外で。シビルと話していた。
 彼はシビルにだ。こう尋ねていた。
「そうか、ここにいればか」
「ソウ、幸セ」
 こう言ってだ。笑顔を見せるシビルだった。
「シビル幸セ」
「歌が聴けるからだな」
「バサラノ歌凄クイイ」
「ああ、そうだな」
 このことはギギルも認めることだった。
「聴いていると。何もかもが違ってくるな」
「ゾクゾク。コレガ来ル」
「ああ、そのぞくぞくこそがな」
「シビルタマラナイ。ダカラコレカラモ」
「ここにいてだな」
「バサラノ歌、音楽聴ク」
 そうすると。ギギルに笑顔で話す。
「ギギルモソウスル」
「ああ、そうするさ」
 そしてそれがギギルも同じだった。こう答えるのだった。
「一緒にな。聴いていこうな」
「音楽、アニマスピリチュア」
 シビルはさらに言う。
「ゾクゾクスル。とてもいい」
「そう、それこそが美だ」
 ガビルもいた。当然グラビルもだ。
 そのガビルもだ。満足した顔で言うのだった。
「音楽美。この美が我等を変えてしまった」
「音楽を聴いていればな」
「我等は生きていられる。音楽こそが最高のファーム」
「ガオオオオオン!」
 その通りだと言うようにだ。グラビルも叫ぶ。
「グラビル、御前もそう思うか」
「ガオオオオオン!」
 今度はガビルに応えてだ。また叫ぶ彼だった。
 ガビルもだ。彼のその叫びを満足した顔で聞いてだ。また言うのだった。
「音楽美。これからも楽しみたい」
「そうだな」
「ああ、そこにいたんですか」
 彼等にだ。ドクター千葉がシャトルで傍まで来て声をかけてきた。
「あの、今からですね」
「CDをかけてくれるんだな」
「バサラか。それとも誰のをだ」
「まずはバサラさんで」
 彼の音楽だけではないというのだ。
「それとシェリルさんのとランカさんのデュエットも」
「ふむ。重唱美だな」
 ガビルはこの美も見て言う。
「いい美だ。それではだ」
「はい、聴かれますね」
「そうさせてもらう」
「ガオオオオオオオン!」
 ここでも叫ぶグラビルだった。彼等は今は音楽を楽しむ人であった。
 ゲペルニッチは銀河の彼方でだ。
 バルゴ達にだ。音楽を聴かせていた。
 それはオルゴールから聴こえてくる。その音楽を聴きながらだ。
 彼は満足した声で彼等に言った。
「いいものだな」
「はい、確かに」
「このオルゴールの音楽もまた」
「いいものです」
 バルゴだけでなくゾムドとゴラムも答える。
「音楽といっても様々」
「そして次々と生み出される」
「幾ら聴いてもまだ足りません」
「そうだ。音楽は永遠のものだ」
 ゲペルニッチは今そのことがわかったのだ。
 そしてだ。こう彼等に言うのだった。
「では我等はこの永遠のファームをだ」
「はい、これからもですね」
「聴きそのうえで」
「楽しんでいきましょう」
「音楽は全てを生み出す」
 ゲペルニッチはこうも言った。
「全ての素晴しいものを」
 最早彼等はプロトデビルンではなかった。人であった。音楽を楽しむ。 
 バサラはミレーヌと共にいた。場所は楽器店だ。
 そこでギターを見ながらだ。彼は言うのだった。
「さて、これからな」
「これからって?」
「とびきりの曲を作るか」
 こんなことを言うのだった。
「部屋に帰ってからな」
「ああ、あんたも部屋あったのね」
 ミレーヌも今気付いたことだった。
「そういえば生活してたのよね」
「何だよ。今までどう思ってたんだよ」
「いや、あまりにも破天荒だから」
 バサラをバサラたらしめているそれ故にだというのだ。
「あまり考えなかったのよ」
「俺も生活があるってか」
「ちょっとね」
「俺だってちゃんと飲み食いして風呂に入ってるぜ」
「そうよね、やっぱり」
「そうだよ。まあそれでな」
 その日常の中でだというのだ。バサラも。
「ビールでも飲んでそれからな」
「作曲するのね」
「ああ、凄い曲を作るからな」
 いつもの暴れる様な笑顔での言葉だった。
「宇宙をしびれさせるようなな」
「そこは本当に変わらないわね」
「いや、俺は常に変わるつもりだぜ」
「全然何も変わってないじゃない」
「もっと凄くなってやるぜ」
 変わるというベクトルはそちらに向いていたのだ。バサラの場合は。
「そして銀河にな」
「歌声を聴かせるっていうのね」
「ああ、そうしてやるさ」
 笑ってだ。いつも通りの言葉だった。
 そしてその彼にだ。あの花束の少女が来てだ。
 微笑み花束を手渡し。そのうえで何処かに立ち去っていった。

マクロスF
 ボビーはマクロスクォーターの艦橋で。ミーナ達に話していた。
「前から思ってたけれどモニカの声はね」
「ラクスさんにですよね」
「そう、やっと言えたわ」
 言うのはこのことだった。
「あとミーナだけれど」
「私は別にそうした人は」
「駄目よ、女の子いじめたら」
 何故かこんなことをだ。ミーナには言うのだった。
「銅の力で」
「あの、そういう話は」 
 何故かその話になるとだ。困った顔になるミーナだった。
 そしてボビーはラムにも言った。
「あんたはタバスコに気をつけなさい」
「一週間で一本は使い過ぎですか?」
「かなりね。さて、お話はこれ位にして」
 それでだというのだ。
「艦長が来られたらね」
「はい、そうですね」
「いよいよまたですね」
「出航ですね」
 その時が迫ろうとしていた。あのフロンティアにだ。彼等は戻ろうとしていたのだ。
 そのジェフリーは今カナリアと話していた。
「それではだ」
「今からですね」
「そうだ。あの星に行く」
 微笑みだ。こうカナリアに話した。
「もう一度な」
「わかりました。では」
 カナリアも彼の言葉に冷静に応える。
「そしてそこで」
「新たな星の歴史がはじまる」
 こう話してだ。艦橋に向かうのだった。未来を見ながら。
 クランはネネにララミアにだ。こんなことを言われていた。
「じゃあ今日はですか」
「もうすぐ勤務終わりなんですね」
「うむ、そうだ」
 小さい姿で答えるクランだった。
「だからだ。これから学校に行きだ」
「ミシェルのところにですね」
「行かれてですね」
「少しあいつに言うことがある」
 憮然とした顔を作ってだ。そのうえでの言葉だった。
「だからだ」
「で、その言うことですけれど」
「何なんですか?」
「それは秘密だ」
 同道とだ。こう言い切ってしまった。
「また言う
「そうですか」
「今はですか」
「ああ、クラン中尉」
 だがここでだ。ヘンリーが傍を通ってだった。クランに言った。
「ミシェルが校門のところで待ってるってな。言ってたぜ」
「そうか」
「ああ、そうですか」
「そういうことですか」
 クランは無意識のうちに応えたが二人はちゃんと聞いてしまった。それでだ。
 二人で彼女を横目で見て笑ってだ。こう言うのだった。
「中尉もこれで」
「隅に置けないですね」
「くっ、しまった」
 言ってから気付いた。しかしもう遅かった。
 テムジンはゼントラーディのエリアでだ。ブレラの話を聞いていた。
「軍に残るのは同じだな」
「そうだな」
「クラン達とな」
 もっと言えばヘンリーもだ。テムジンはさらに言う。
「それでか。これからはか」
「あいつは任せた」
 こう答えるブレラだった。
「あの男にだ」
「それであんたはあれだな」
「ランカからは離れる」
 そしてその理由も話した。
「あいつはにはあの男しかいないからだ」
「そうか。身を引くか」
「そうする。そして俺はだ」
「あんたは?」
「軍に残る。地球に行く」
 そうするというのだ。
「そしてそこで地球を守りながらランカの幸せを祈ろう」
「そうか。じゃあそうしなよ」
「ああ。ではな」
「ああ、またな」
 戦友同士としてだ。別れる二人だった。ブレラも今確かにそうしたのだった。
 ナナセはエリエラ、そしてエイジスと喫茶店で会っていた。彼等はこうナナセに話す。
「私達は軍に残るわ」
「そのうえであの星に向かうからな」
「そうですか。あの星に行くのは」
 そのことがどうかとだ。ナナセは明るい顔で言った。
「私と同じですね」
「そうね。それはね」
「その通りだな」
 二人もナナセの言葉にその通りだと頷いた。
 そしてだ。二人で彼女に言った。
「じゃあ今は」
「ルカも読んでな」
「あっ、実はもう読んでまして」
 何とか既にだというのだ。
「もうここに来ます」
「あら、そうなの」
「早いな」
 これには二人も驚いた。そして実際に。
 ルカもだ。この場に来てだった。 
 ナナセにだ。笑顔で言うのだった。
「ええと、デートですよね」
「はい、今から」
「エリエラさん達とですね」
「ダブルデートどうでしょうか」
「いいですね」
 笑顔で言う彼だった。
「なら今から」
「はい、それでは」
「ああ、二人共」
「もうそこまで」
 これにはエリエラもエイジスも驚きを隠せなかった。
 しかもだ。そこにだ。
 ミシェルも来てだ。笑顔で話すのだった。
「ああ、奇遇だな」
「そうですね。ところでミシェルも」
「ああ、今デート中だよ」
 そうだとだ。笑顔でルカに応える。
 そのうえでだ。こう話すのだった。
「クランは今アイスを買いに行ってるんだよ」
「なら僕達と合流できますね」
「そうだな。じゃあそうするか」
「そうしましょう」
 ナナセも笑顔で応えてだった。彼等も合流するのだった。
 オズマはキャスリンと話していた。
「それでだけれど」
「あのことだな」
「もう場所は取ったわ」
 キャスリンは微笑んでオズマに話す。
「式場はね」
「早いな。それはまた」
「こういうのは早いうちによ」
「決めてか」
「そう。それで式のことだけれど」
 具体的な式はどうするかというとだ。
「和式でどうかしら」
「日本か」
「ええ。それでどうかしら」
「いや、それは」
 オズマは驚いた顔でキャスリンに返す。
「そうするんだな」
「面白いと思って。どうかしら」
「俺は」
 実は。彼は。
「軍に戻ったからな。それでだ」
「軍服で出ようと思っていたのね」
「礼装でだ。御前も」
「それだと味気ないじゃない」
 キャスリンは微笑んでこう返した。
「だからよ。そう思ってね」
「和式は」
「そう。私は金襴緞子で」
「そして俺は」
「そうよ。羽織袴よ」
「袴を穿くのは」
 どうかというのだ。それは。
「はじめてだ」
「あら、そうだったの」
「そうだ。そうか、袴か」
「嫌?ひょっとして」
「いや、それでいい」
 オズマは意を決した顔で答えた。
「それならだ」
「ええ、それならね」
「和式でいこう」
 オズマは今確かに言った。
「それでね」
「楽しみね。今から」
「まあな」
 オズマの笑みもだった。未来にだ。光を見ている笑みだった。
 アルトはシェリル、それにランカと共にいた。
 三人でだ。ベンチに座っている。アルトを挟んで右にシェリル、左にランカだ。
 シェリルがだ。先に言ってきた。
「この前のコンサートね」
「凄かったらしいな」
「これまでよりずっと凄かったわ」
 コンサートは大成功だったというのだ。
「あんなコンサートはじめてよ」
「そうでしたね。あのコンサートは凄かったですよね」
「何か私達二人だと」
「そうですよね」
 ランカは笑顔でシェリルに話していた。
「二つじゃなくて」
「十にも二十にもなった感じで」
「何か余計に凄くなって」
「こっちもエキサイトしました」
「そうか。コンサートか」
 コンサートと聞いてだ。アルトもだった。
 少し上を見上げてだ。こう言うのだった。
「俺もパイロットをやりながらでも」
「どうするの?それで」
「アルトさんは」
「舞台に戻ろうか」
 こうも考えだしていた。
「言われているしな」
「そうね。それもね」
「いいかも知れませんね」
「そうだよな」
 アルトの心にも余裕が生じていた。彼も大きく成長していた。そしてこれからもだ。大きくなっていくのだった。それがアルトだった。

機動戦艦ナデシコ
 ダイゴウジがナデシコの艦橋で吠えていた。
「今日も何もなしか!」
「はい、そうです」
 ルリが彼に答える。
「出航はありません」
「じゃあ訓練だ」
「モニターで御願いします」
 ルリの返答は素っ気無い。
「それかゲームでも」
「ゲーム!?ゲキガンガーか」
「好きなものをされて下さい」
「くっ、戦争が終わったら暇だ」
 ダイゴウジにとってはだ。
「書類仕事なぞしたくもないからな」
「旦那、それはまずいだろ」
 その彼にサブロウタが突っ込みを入れる。
「士官なんだから仮にもな」
「だが俺は」
「そう思ってヤマダさんの書類仕事は回していません」
 ここでまた言うルリだった。
「トレーニングなり何なりして下さい」
「俺はダイゴウジ=ガイだ!」
「はい、ヤマダさん」
 こんな調子である。そんな彼等を見てだ。
 ホウメイは微笑んでプロスペクターに話した。
「ああいうのも」
「はい、いいですね」
「平和で」
「とてもいいです」
 そのことを喜んでだ。ルリ達を見ているのだった。
 メグミはふとだ。ハルカに言った。
「ナデシコに残るんですね」
「貴女と同じよ」
 微笑んでこう返すハルカだった。
「それはね」
「そうなんですか。じゃあ」
「これからも御願いします」
 ジュンも出て来て話す。
「僕はナデシコ四番艦の艦長になりました」
「あっ、そうなんですか」
「おめでとう」
「これからは艦長に専念して頑張ります」
 そうするというのだ。
「それじゃあ今は」
「今は?」
「メグミさんとそっくりな人が出ているゲームでもやって」
「ああ、あれですね」
 メグミはジュンの今の話に苦笑いになった。
「あの内臓が一杯の」
「あの女の子メグミさんにそっくりだと思いません」
「そうそう。それで相手役がヒイロ君や霧生君にそっくりで」
 ハルカも話に乗る。
「あれには笑ったわ」
「はい、そっくりですよね」
 こんな話もする彼等だった。彼等の間にも平和が戻っていた。
 その彼等をナガレは遠くから見て呟いた。
「これからも。一緒にやっていくか」
 社長職に専念することになった。だがそれでもだ。彼もまたナデシコの一員だったのだ。
 リョーコはヒカル、そしてイズミと一緒にいた。見れば居酒屋だ。
 そこで大ジョッキを片手にだ。リョーコは言うのだった。
「何か寂しいな」
「そうですか?」
「こうして会えている。どうして寂しい」
「だからよ。ヒカルは漫画家でな」
「はい、今大人気ですよ」
「イズミはバーの経営で」
「売り上げは上々」
「あたしは教官でよ。離れ離れでよ」
 それでどうかというのだ。
「それが寂しくてな」
「まあまあ。こうして機械があれば一緒に飲みますから」
「それでいいとしよう」
「そう言うのか?じゃあな」
 それならと。リョーコも乗ってだった。
 そのうえでだ。こう言った。
「あたし達はこれからもずっと親友同士だ。いいな」
「勿論ですよ。それは」
「仲間。なっかまユキエはサダコ」
「・・・・・・イズミ、結局ずっとネタに無理があるままだったな」
 それは変わらなかった。だが三人の友情もだ。不変のものだった。
 アキトはユリカとだ。新婚旅行だった。その中でだ。
「そう。ラーメン屋にね」
「ああ。専念するよ」
 微笑んでだ。アキトはユリカに話していた。
「これからは」
「そう。なら私は」
「ユリカは?」
「ラーメン屋さんの奥さんね」
 にこりと笑ってこう言うのだった。
「これからはね」
「それでいいんだ」
「だって。アキトと一緒だから」
 それでいいというのである。
「何だっていいわ。それにね」
「それに?」
「私ラーメン大好きだから」
 それもあるというのだ。
「だからアキトとずっとね」
「そうしてくれるんだね」
「ずっとね」
 そのことを強調してだ。温かい笑みでアキトを見る。アキトもだ。同じ笑みでユリカを見て。そのうえでお互いに手も握り合っていた。

劇場版 機動戦艦ナデシコ
 ハーリーはこう話していた。
「僕はこのままです」
「ナデシコに残るんだね」
「はい、そうします」
 こうだ。ナデシコ、軍から離れるクルーに話していた。
「そうしてルリさんと一緒にいます」
「そうか。じゃあお別れになるけれどな」
「また御会いしましょう」
「頑張れよ」
 そのクルーも笑顔で応える。
「そしてまたな」
「はい、また」
 会おうと。再び言ってだ。手を振るハーリーだった。

勇者王ガオガイガー
 大河が麗雄に言っていた。
「GGG団ですが」
「これからの役割は」
「はい、宇宙進出です」
 それになったというのだ。
「私達は多くのものを見てきました。そして」
「そのうえでだね」
「その見てきたものを活かしてです」
「宇宙に出てそのうえで」
「銀河の人達と。全ての人達と」
「友達にだね」
「なりましょう」
 こうした話をする彼等だった。
 そしてスタッフ達も。
「色々あったけれどね」
「そうデスね」
「これからです」
 猿頭寺の言葉にだ。スワンとスタリオンが応える。
 そのうえでだ。スタリオンが話した。
「戦いは終わりましたけれど」
「終わりじゃないね」
「そうデス」
 スワンが猿頭寺に話す。
「全てのはじまりデス」
「人類はこれから銀河に本格的に出て」
 どうするのか。スタリオンは話す。
「銀河の同胞達と協力して」
「発展してそうして」
「はい、平和な銀河を築いていきます」
 そうなると話すスタリオンだった。
「それがはじまるのです」
「夢があるね」
「デスね」
 また言う猿頭寺とスワンだった。
「物凄く。希望に満ちた」
「そうした夢デス」
「ああ、俺も楽しみだぜ」
 火麻もいた。彼も笑って言う。
「これからのことがな」
「皆もいますし」
 猿頭寺はこう火麻に言った。
「本当にこれからですね」
「おい、戦うだけが能じゃねえ」
 いささか火麻らしくない言葉だがまさにその通りだった。
「これからは平和と繁栄の為にな」
「はい、皆で」
「力を合わせていきマス」
 スタリオンとスワンが笑顔で応えてだった。彼等も働き続けるのだった。
 そして桜も。
「私も」
 彼女もだった。そうしていくのだった。
 氷竜と炎竜は。風龍、雷龍、それにマイクと話をしていた。
「では私達も」
「これからも」
「そうだな。戦いは終わった」
「けれどやることはまだ多い」
「その通りだもんね」
 こう話す彼等だった。
「それならだ。これからもな」
「僕達は力を合わせて」
「人類の。皆の発展の為に」
「皆にできないことをして」
「やっていくんだもんね」
 マイクの言葉に応えてだ。彼の兄弟達も言うのだった。
「そう、ブラザーも!」
「兄弟皆で力を合わせて!」
「この世界を楽しくしていこう!」
「これからは!」
 彼等も夢を見つけていた。それは実現できしかも。このうえなく美しい夢だった。
 ボルフォッグはゴルディマーグと共にいた。そうして。
 彼にだ。こう話していた。
「これからですが」
「戦いは終わってもな」
「はい。やるべき仕事は多いですね」
 こうゴルディマーグに話すのである。
「何かと」
「そうだよな。それはな」
「それでもですね」
「結構楽しみじゃねえか?」
 ゴルディマーグの声は笑っていた。
「何か戦い以外のことで頑張るのもな」
「確かに」
 ボルフォッグの声もだ。笑っていた。 
 それでだ。二人同時に言うのだった。
「なら。私達は」
「ああ、平和をな」
「護っていきましょう」
「これからはな」
 こう言い合い誓い合うのだった。今の彼等は。 
 ジェイはトモロと話していた。
「ではだ」
「銀河に旅立つか」
「そうする。それでだが」
「そうだな。彼女達も共に」
「我等は孤独ではなくなった」
 このことを喜んでもいた。
「あの少年達もいるしな」
「そう。だからこそ」
「心強い」
 ジェイの声は微笑んでいた。
「何かとな」
「そうだな。頼りになる仲間達だ」
 トモロも同意見だった。彼等は銀河に旅立つのだった。
 レイコは末男、鷹泰、それに華と話していた。
「ようやくお家の会社も復活したし」
「ああ、そういえはレイコの会社って」
「そうだったね」
「倒産していたんだったな」
「それがなんだ」
「そう。復活したのよ」
 こう笑顔で言うレイコだった。
「だからこれからはもっと元気を出してね」
「そうだね。頑張っていこう」
 華は笑顔でレイコに話した。
「元気があれば何でもできるよ」
「そうだよな。まずは元気がないとな」
「何にもならないね」
 末男に鷹泰もその言葉に頷く。そうしてだった。
 彼等も未来を見ていた。子供達がこれから切り開くべきその未来を。
 凱は命とだ。星空を見ながら話していた。
「奇麗だな」
「そうね」
 まずはその星達を見てそれについて言う。
「この星達の中をな」
「私達は旅していたのね」
「長い旅だった。それに」
「長い戦いだったわね」
「ああ、本当にな」
 凱は微笑み命の言葉に頷く。
「けれどこれからは」
「戦いではなく」
「平和と繁栄の為に」
「あの星達を旅することになるのね」
「今からそれがはじまるんだ」
 凱はその声も笑みになっていた。
「俺達はそのことを勝ち取ったんだ」
「そうね。そして護君も」
「護もあの中にいる」
 そのだ。銀河の中にだ。
「ケン太、そして」
「戒道と一緒に」
「護はやる」
 このことをだ。凱は確信していた。
「素晴しいものを築いてくれるさ」
「そうね。そしてそれは」
「それは?」
「凱、貴方もよ」
 凱を見てだ。笑顔で言う命だった。
「必ずそうしてくれるわ」
「俺もか」
「ええ。だから」
 それでだという命だった。
「私はこれからも凱と一緒に」
「いてくれるんだな」
「そうさせてもらうわ」
 笑顔で話す二人だった。二人も今暖かい世界の中にいた。
 護は銀河の中で戒道と共にいた。そしてだ。 
 彼にだ。こう話すのだった。
「僕達はこうしてね」
「そう。銀河を旅して」
「何時か。僕達の辿り着くべき場所に辿り着いて」
「そこで皆と会うんだ」
「そう、凱兄ちゃんと」
「ロンド=ベルの皆と」
 そのことを見て。期待しての言葉だった。
「また一緒に遊ぶんだね」
「そうなるんだ。だから護」
「うん、戒道」
 お互いの名前を呼び合い。そして。
「それまでは僕達はこうして」
「ずっと一緒にね」
「いよう」
「そうしようね」
 銀河の大海の中を進みながら。二人は素晴しい未来を見ているのだった。

勇者王ガオガイガーFINAL
 ルネはソルダートの中でだ。光竜と闇竜に尋ねていた。
「本当にいいんだね」
「うん、いいよ」
「決めましたから」
 だからいいとだ。彼女達は答えるのだった。
「ルネ姉ちゃんと一緒にね」
「旅立たせてもらいます」
「暫くは皆に会えない」
 ルネは二人にこのことも言う。
「それでもなんだね」
「お別れは少しの間だから」
「やがて再会できますから」
 だからだという彼女達だった。
「だからね。今はね」
「お姉様達と共に」
「そうかい。旅に付き合ってくれるんだね」
 そのことを確めてだ。ルネは。
 微笑みそうしてだ。あらためて二人に言ったのだった。
「じゃあ行くよ」
「銀河への旅に」
「今から」
 彼女達も旅立つのだった。ジェイ、そしてトモロと共に。素晴しい旅に。


エピソード4   完


                                   2011・7・24  

 

エピローグ5

                    エピローグ5

鋼鉄ジーグ
 宙は家族にだ。こう話していた。
「俺はもう戦わない」
「じゃあ私達と一緒に」
「このお家で一緒なんだね」
「ああ、そうだ」
 微笑んでだ。母と妹に話すのだ。
「社長として。頑張っていくさ」
「そうね。じゃあ私達も」
「この会社大きくしていきましょう」
「ははは、本当に小さな会社だけれどな」
 それでもだとだ。宙は笑って応えた。
 そしてその彼にだ。美和が言う。
「宙さん、よかったら私も」
「ああ、ミッチーもな」
「手伝わせてくれるから」
「そうしてくれないか?正直人手不足なんだな」
「ええ、それじゃあ」
 宙は最強のサイボーグとして日常の日々に戻った。彼の新しい人生は家族、そしてパートナーと共にだ。今幕を開けたのであった。

ブレンパワード
 カナンはラッセ、ナンガに話していた。
「もうブレンもね」
「そうだな。終わったからな」
「後は眠らせるだけだな」
 二人もカナンのその言葉に応えて言う。
 カナンも二人の言葉に頷きそのうえでだ。ラッセに対して言うのだった。
「ラッセは」
「ああ、少し療養する」
 身体の話だった。彼の。
「幸い完治しそうだ」
「そうなのね」
「病状の進行は思ったより遅かった」
 まことに幸いなことにだ。
「だからだ。これからな」
「ええ。それで退院したら」
「何をするんだ?」
「二人で何処かに行きましょう」
 こうラッセに言うカナンだった。
「その時はね」
「二人でか」
「そう、二人で」
 ヒギンズはまた言った。
「貴方が嫌ならいいけれど」
「いや、いい」
 いいとだ。ラッセは答えた。
「喜んでな」
「そうしてくれるのね」
「ああ、そうさせてもらう」
 ラッセもだ。微笑んで答えるのだった、
 カントとナッキィはこの時。ヒギンズと共にいた。シラーもいる。
 ヒギンズがだ。そのシラーに問うた。
「これでいいのね」
「ああ。これが私の選んだ道だ」
 こう答えてだ。彼女が向かう場所は。
 保育園だった。そこに向かいながら言うのである。
「これからは子供達の相手をしてだ」
「生きていくのね」
「そういえばシラーさんって」
「そうだったよな」
 ここでカントとナッキィも言う。
「子供好きだったんですね」
「ずっとな」
「意外か?」
 その二人にこう問い返すシラーだった。
「私が子供好きで」
「いえ、ただそれがです」
「あんたの選んだ道なんだって思ってな」
「夢の一つだった」
 ふと遠い目になりだ。シラーは話す。
「子供達の相手をして生きるのは」
「それでなのね」
「そうだ。だから私は保母になった」
 それでだというのだ。
「そしてこれからはだ」
「一人の保母として」
「生きる」
 こうだヒギンズに対しても話すのである。
「そうする」
「わかったわ。では私は」
 ヒギンズはだ。どうするかというと。
「貴女と同じ様に」
「学校の先生としてか」
「生きるわ。これからは」
「わかった、では仕事は違うが」
「同じものを見る者同士として」
「これからもな」
「宜しくね」
 二人は微笑んで言葉を交えさせてだ。それぞれの場所に赴く。
 カントとナッキィもだ。お互いにだった。
「では僕達もです」
「ああ、今からな」
「僕達の学校に」
「行こうか」
 彼等もだった。彼等の場所に向かうのだった。
 クインシィはジョナサンの話を聞いていた。
「それでいいのだな」
「考えたがな」
 こうだ。ジョナサンはクマゾー達を前にして話すのだった。
「そうすることにしたさ」
「そうなのね」
「俺はこの子達と一緒にいる」
「仕事は?」
「動物園で働くことになった」
 彼の仕事はそれだった。
「この子達が動物が好きだからな」
「それでその仕事なのね」
「ああ、それを選んだ」
 こうクインシィに話すのである。
「それであんたはどうするんだい?」
「まず家族のところに戻る」
 そうするとだ。彼女は答えた。
「それから科学の研究に専念する」
「ブレンとかを研究してか」
「そうだ。軍に在籍する形になるが」
 そのうえでだというのだ。
「平和に役立ててみせる。ブレンをな」
「頑張るんだな。じゃあ俺はな」
「そうしてだな」
「ああ、一緒に生きるさ」
「うん、ジョナサン」
「これからはね」
「ずっと一緒だも」
 クマゾーだけでなくアカリとユキオも応える。ジョナサンはもう一人ではなかった。
 伊佐未夫婦は銀河を見ながら話していた。
「あの子達が戻ったら」
「そうだな。まずはな」
「パーティーをしましょう。皆で」
「家族が戻ってきて一つになったお祝いに」
「私達で」
「そうしようか」
 子供達の帰りを待っているのだった。期待に満ちた中で。
 勇はヒメの話を聞いていた。
「私勇と一緒にいる」
「そうしてくれるんだな」
「うん。それで勇はこれからどうするの?」
「ブレンのパイロットとして」
 その立場でだというのだ。
「軍にテストパイロットとして残ることになったよ」
「そう。軍人さんなの」
「姉さん達と一緒にね」
 家族とだ。彼も一緒になるというのだ。
「そうなったから」
「そう。皆と一緒なの」
「ヒメともな」
 そのヒメの顔を見てだ。笑顔で言う勇だった。
「アノーア艦長も死んで。色々あったけれど」
「うん、オルファンさんはオルファンさんだったし」
「そして銀河もな」
「救われたから」
「前を見ていこうか」
「そうだよ。人間前を向かないとね」
 どうなるか。ヒメは勇に明るい顔で話す。
「歩いていけないから」
「前にはな」
「だから。前を向いていこう」
 ヒメはまたこう言った。
「一緒に」
「ああ、ずっとな」
 一緒にいようとだ。二人で言ってだった。二人もまた未来を見ているのだった。

THEビッグオー  THEビッグオー2nd Season
 ロジャーはパラダイムシティに帰って来た。ドロシーも一緒だ。
 その彼をノーマンが出迎えだ。まずはこう言ってきた。
「御疲れ様でした」
「留守の間何もなかったか」
「私達のいない間は」
「何もありませんでした」
 こう二人に答えるノーマンだった。
「では。帰られたのでまずは」
「まずは」
「というと」
「ご夕食をお楽しみ下さい」
 彼が今二人に勧めるのはそれだった。
「そしてそのうえで、です」
「皆来るか」
「そうなのね」
「そうだ」
「久し振りね。二人共」
 ダストンとエンジェルが来てだ。二人に笑顔で挨拶をしてきた。
「長い間いなかったが」
「元気そうで何よりだわ」
「この街を永遠に存続するようにしてきた」
 それが為にだとだ。ロジャーは話す。
「それでだ」
「この町をか」
「何か色々あったみたいね」
「話せば長くなる」
 今度はこう言うロジャーだった。
「だが今はだ」
「そうだな。久し振りだしな」
「飲んで。そうして」
 そのうえでだと。ダストンに続いてエンジェルが言ってだ。
 彼等は楽しく飲むのだった。落ち着いているがそれでもだ。華やかな宴になった。

冥王計画ゼオライマー
 マサトは詰襟姿で登校しながら。共にいる美久に言った。彼女はセーラー服である。
 その彼女にだ。こう問うたのである。
「そう、美久も」
「はい、こうして学校に行かせてもらいます」
 こうだ。マサトに対して話すのである。
「これからは学生として」
「日常に入って」
「そうします。ところでマサト君」
 今度は美久が彼に問うた。
「八卦衆の方々ですけれど」
「彼等だね」
「生きているのはわかりました」
 それもだ。全員である。
「けれど。あの人達は一体何処に」
「旅に出たんだろうね」
「旅に?」
「うん、旅にね」
 微笑んでだ。こう美久に話すのである。
「彼等をそれぞれ見つける為の旅にね」
「あの八卦衆が滅んだ時から」
「そうしていると思うよ。そして彼等も」
 そのだ。八卦衆の面々もだというのだ。
「やがて見つけるよ」
「あの人達に相応しいものを」
「必ずね。できるよ」
「マサト君の子供達だからですね」
 美久はここで微笑みこう話した。
「だからですね」
「そうだろうね。それじゃあな」
「はい、私達も今から」
「学校に行こう」
 美久に屈託のない笑みで告げた。
「僕達の学校にね」
「はい、皆がいる学校に」
「甲児君達もいるね」
 彼等は同じ学校なのだった。そしてその学校にだ。
 彼等は向かうのだった。戦いを終えた彼等は。

ラーゼフォン ラーゼフォン多元変奏曲
 八雲はキムに話していた。
「色々あったけれどね」
「そうですね。こうしてですね」
「元の世界に戻れたんだ」
 彼がまず言うのはこのことだった。
「こうしてね」
「多くの世界を巡って」
「そうして全ての戦いを終わらせて」
 そのうえだった。
「何か。夢みたいだよ」
「まだあの世界にいるような」
「そんな気がするね」
「けれどこうして戻って来たのは」
「ッィ実だね」
「はい、本当に」
「そうだ。私達はだ」
「戻って来たのね」 
 ここで九鬼と三輪も言う。
「こちらの世界もやることが多い」
「復興しないといけないから」
「そうですね。多くの戦いがありましたし」
「ですから」
 八雲もキムも頷き。そうしてだった。
 元の世界に戻った彼等も。再び働くのだった。
 エルフィ達は本来の仕事に戻っていた。
 四機で空を飛びながらだ。エルフィは三人に言っていた。
「調子はどうだい?」
「ええ、機体も俺達も」
「好調です」
 ドニーとジャンが答える。
「この新型機かなりいいですね」
「動きが全然違いますよ」
「本当に」 
 キャシーも言う。
「しかもこれで宇宙にも出られるなんて」
「ああ、かなりのものだね」
 エルフィもだ。その機体を操りながら言う。
「これからが楽しみだよ」
「ええ。平和を護る為にも」
「これからはですね」
「この機体で」
 こう話してだ。彼等は今新型機の訓練にあたっていた。
 鳥飼は浩子と共にいた。それでだ。
 彼女にだ。こう言うのだった。
「綾人な」
「もうすぐなのね」
「ああ、戻って来るってさ」
 このことをだ。笑顔で話すのである。
「だからその時はな」
「そうね。皆でね」
「歓迎のパーティーしようぜ」
 鳥飼は屈託のない顔で浩子に話す。
「そうしような」
「ええ、そうね」
「そうしましょう」
 玲香と恵もだ。彼のその言葉に頷いた。
 そうしてだ。二人でこう言うのだった。
「折角戦いも終わったし」
「戻って来るんだし」
「ああ。青い血とかな」
 今になってだ。と理解もわかった。
 それでだ。遠くを見つつ言うのだった。
「そんなのどうでもいいことなんだよ」
「そうね。大事なことは」
 それは何か。浩子もわかっていた。
「人間っていうことね」
「ああ。それだよ」
 そのことがわかってだ。彼等は綾人を待っていた。 
 その綾人は今遥と共にいた。二人は車の中にいる。
 綾人は助手席にいて遥が運転している。運転しながらだ。
 遥は綾人にこう尋ねた。
「あのね」
「はい。何ですか?」
「本当にいいのかしら」
 少し気恥ずかしげに綾人に問う。
「私で」
「遥さんと僕が」
「その。私達って」
 どうなのか。遥はそのことも言った。
「歳が離れてるから」
「全然離れてないじゃないですか」
「十三も離れてるじゃない」
 彼女は肉体的な差を話した。
「それでどうして」
「だって。僕にとっては」
「綾人君にとっては?」
「遥さんはあの時の遥さんですから」
「同級生だった頃の」
「はい、あの遥さんですから」
 だからだというのだ。
「ですから」
「一緒になって」
「いいですよね。僕と
「・・・・・・ええ」
 俯いて。遥は答えた。
「じゃあ御願いね」
「はい。それと」
「それと?」
「俯いてたら危ないですよ」
 綾人が今言うのはこのことだった。
「前を向いてないよ」
「あっ、そうね」
 言われて気付いた遥だった。
「さもないとね」
「事故になってからじゃ遅いですから」
 こうした話をしながらだ。二人は戻るべき場所に戻っていた。二人で。

電脳戦機バーチャロンマーズ 電脳戦機バーチャロン オラトリオ=タングラム
 バーチャロン達もそれぞれの世界に戻っていた。
 その世界でだ。ハッターは言った。
「やっぱりこの世界だ!」
「いいというのだな」
「ああ、落ち着く」
 こうチーフにも言う。
「ブラザーはそう思わないのか?」
「思うことは思う」
 これがチーフの返答だった。
「しかしだ」
「しかし?どうしたんだ?」
「御前の様に騒ぐことはしない」
 それはしないというのだ。
「特にな」
「何だ、つれないな」
「ハッターはまた騒ぎ過ぎる」
「そうだ」
 その彼にクリアリアとギルが話す。
「こちらの世界でもあちらの世界でもだ」
「そうしないと気が済まないのか」
「俺はいつもこのテンションだ」
 だからいいとだ。ハッターは開き直った様に返す。
「そうでなくてどうする」
「やれやれだな」
「やはりそう言うか」
「ハッターらしいといえばらしいにしろ」
 今度はレドンがハッターに言う。
「騒がしいことだ」
「ノープロブレム!」
 やはりそうしたことは意に介さないハッターだった。
 それでだ。こう叫んでからだった。
「俺はこれからも俺だ。楽しくやっていく!」
「しかしだ」
 その彼にだ。チーフから言ってきた。
「死ぬな」
「ああ、わかってるさ」
 こうだ。彼等はこの世界でも彼等だった。
 三姉妹もだ。戻って来ていた。
「久し振りよね」
「そうね。あちらの世界も楽しかったけれど」
「やっぱりこの世界はね」
 どうかというのだ。彼女達の本来の世界は。
「落ち着くわね」
「家に帰った感じで」
「いいわ」
 これが彼女達の感想だった。
 そしてその彼女達にだ。フェイが話す。
「じゃあ落ち着くこの世界でね」
「そうね。やりましょう」
「また戦いね」
「敵味方になったりするけれど」
「そうそう。楽しく戦う」
 フェイは今度はこんなことを言う。
「それがあたし達なんだし」
「じゃあ。少しゆっくりしてからね」
「あらためて」
「はじめましょう」
 バーチャロン達の世界も元に戻っていた。そしてその元に戻った世界でだ。彼等は楽しむのだった。

フルメタル=パニック! フルメタル=パニック! The Second Raid
 ベルファルガンがテッサ達に話していた。
「では私はだ」
「これで、ですね」
「軍を離れ」
「そうして」
「そうだ。第二の人生を歩む」
 そうするとだ。テッサだけでなくリチャードとアンドレイにも話すのだった。
「既に仕事は決まっている」
「といいますと」
 テッサはその言葉に問い返した。
「何でしょうか」
「テレビの修理工場で働く」
 そうするというのだ。
「これからはな」
「テレビのですか」
「戦いでは破壊するだけだった」
 だがこれからはというのだ。
「しかし。第二の人生ではか」
「なおされるのですね」
「そうしたい。だからだ」
「わかりました」
 テッサはその彼の言葉を笑顔で受けた。そうしてだった。
 あらためてだ。こう声をかけた。
「その第二の人生の門出を」
「祝ってくれるか」
「そうさせてもらいます」
「我々はこのままです」
「軍に残ります」
 リチャードとアンドレイが話す。
「そうして生きていきます」
「平和を護りながら」
「健闘を祈る」 
 その彼等にだ。ベルファルガンは話した。
「これからもな」
「はい、それでは」 
 テッサが笑顔で応えてだった。
 彼等も新しい人生をそれぞれ歩みはじめようとしていたのだった。
 かなめは学校でだ。宗介に尋ねていた。そこには何故かクルツとメリッサもいる。
 その二人のことをだ。彼女は尋ねるのだった。
「あのね」
「二人のことか」
「あんたはまだわかるわ」
 宗介のことはだ。まだだというのだ。
「けれどクルツさんとメリッサさんは」
「学校の用務員になった」
「英語の教師だ」
 そうした名目でだ。いるというのだ。
「これからはだ」
「こちらでも宜しく頼む」
「確か皆軍に残ってるのよね」
 かなめはいぶかしみながらこのことを確めた。
「そうよね」
「そうだ」
 その通りだとだ。宗介が答える。
「それは知っているな」
「それでも学校にって」
「やはりここにいるのが都合がいい」
 これが宗介の返答だった。
「作戦行動がない間の日常に潜伏している間はだ」
「だからこの学校に皆いて」
「いざという時は動く」
「話はわかったけれど」
 それでもだとだ。かなめは言ってだ。
 そうしてだ。三人にあらためて告げた。
「まあ。納得しにくいけれど」
「これからもな」
「宜しくな」
「頼む」
 彼等の付き合いは続くのだった。戦いが終わってからもだ。

フルメタル=パニック? ふもっふ
 科学者達は彼等も見て話していた。
「整備も順調」
「あとはまた何かあれば」
「彼等にな」
「働いてもらおう」
 こうだ。ボン太君達を見て話していた。
「その時はな」
「そうですね。一見何だと思いますけれど」
「でかいぬいぐるみにしか見えませんからね」
「よくあんなの動きますね」
「全く」
 こんな言葉も出た。
「まあとにかく」
「いざという時に備えて」
「整備はしておきましょう」
「常に」
 こんな話をする彼等だった。そしてだ。
 量産型も含めて彼等はというと。
「ふもっ!」
「ふもっ!?」
「ふもーーーーーーーっ!」
 何かよくわからない、彼等だけの言葉で話しているのだった。研究所の中で。

百獣王ゴライオン
 五人は今草原に寝そべってだ。そうしてだった。
 お互いにだ。こう話していた。
「終わったな」
「はい」
 ファーラが黄金の言葉に頷く。
「長い戦いでしたね」
「ああ。けれどこれで終わった」
 黄金は満足している顔で言った。
「俺達の戦いもな」
「それでだ。問題は」
「これからのことだ」
 黒鋼と青銅が話す。
「戦いが終わって平和になった」
「じゃあこれからどうする?」
「そうだよね」
 錫石も言う。
「それで終わりじゃないから」
「ゆっくり考えればいいさ」
 彼等にだ。黄金はこう言った。
「ゆっくりとな」
「ゆっくりとですか」
「ああ、考える時間はあるんだ」
 だからだと。ファーラにも答える。
「焦ることはないさ。とりあえずはな」
「とりあえず!?」
「とりあえずというと」
「どうするのさ」
「今はこうして寝ていよう」
 これが黄金の提案だった。
「気持ちよくな」
「そうですね」
 ファーラがだ。黄金の言葉に最初に応えた。
「戦いが終わったからこそ」
「休むのも大事さ」
「だからですね」
「少し寝るか」
 黄金はこんなことも言った。
「目が覚めたらまたな」
「ああ、その時にだな」
「考えはじめて」
「決めればいいね」
「行く先は風が教えてくれるさ」
 黄金は風が起こったのを見て言った。
「だから今はな」
「休みましょう」
 ファーラがまた頷いてだった。五人は今はゆっくりと休むのだった。

超重神グラヴィオン
 ミヅキが話していた。
 場所はグラヴィゴラスだ。城に戻ったその中で。
「終わったね」
「そうね」
 ルナが笑顔で彼女の言葉に応えて言う。
「二人の結婚式が」
「はい、サンドマンさんとアヤカさんの」
 エィナもここでにこりと笑って言う。
「御二人はこれで、ですね」
「幸せになれたのね」
 リィルもいる。
「ようやく」
「そう。何かずっとい見てたら」
 どうかとだ。ミヅキはこんなことも言った。
「あの二人が主役みたいだったね」
「おい、じゃあ俺はどうなるんだよ」
「ひょっとして僕もかな」
 ここで言ったのはエイジと斗牙だった。
「俺達主役じゃなかったのかよ」
「違ったの?それは」
「影の主役はあの人ってことじゃないの?」
 ルナはその二人にこう話した。
「つまりはね」
「じゃああれですね」
 エィナはエィナでこんなことを言う。
「本当の主役とヒロインはあのお二人ってことで」
「まあ。何か俺達ってな」
「負けてる感じだったけれど」
 エイジも斗牙もこのことは認めた。認めるしかなかった。
「それでも俺達もなあ」
「幸せは」
「はいはい、エイジはね」
 ルナがここで仕方ないといった感じでエイジに言ってきた。
「あたしよね」
「何か引っ掛かる言い方だな、おい」
「じゃああんたリィルと一緒になる?斗牙も」
「じゃあ完全にシンじゃねえか」
「僕もルカ君になるよ」
「斗牙さんは斗牙さんでシンルーさんがおられますよね」
 エィナは何気にこのことを指摘した。
「だから幸せにはなれますよ」
「ま、まあそうだな」
「それはね」
 二人もこのことは認めたのだった。
 そしてだ。メイド達はというと。
「さてと、式も終わったり」
「それならですね」
「今から」
 テセラもチュイルもマリニアもだった。
 彼女達総出でだ。式の後片付けに追われていた。
「けれどよかったよね」
「そうよね」
「とてもね」
 ブリギッタにアーニャ、セシルはとても満足していた。
「やっぱり見ていてね」
「よかったよね」
「御二人共とても幸せそうで」
「そう。全ては幸せに終わるべきだ」
 何故か片付けの場にだ。フィッツジェラルドもいる。
 それでだ。片付けの中で言うのだった。
「まさに最高の結末だな」
「そうですね。じゃあ大統領も」
「一緒に」
「後片付けお願いできますか?」
「うん、そうだな」
 何とだ。彼はメイド達のその言葉に頷きだ。
 そのうえで後片付けに参加するのだった。幸せな顔で。

超重神グラヴィオンツヴァイ
 アレックスは仲間達と共にいた。その場でだ。
 隊長のフェイにだ。こう尋ねるのだった。
「あの、それで隊長」
「何だ?」
「やっぱり。あれなんですか?」
 こうフェイに問う。
「あいつと」
「あいつ!?斗牙とはだ」
 ついついだ。言ってしまったフェイだった。
「何もないぞ」
「あの、隊長」
「もうですね」
「言ってますよ」
 ハンス、イワン、ジョゼがすぐに突っ込みを入れる。
「やっぱりそうだったんですか」
「相手は幼馴染み」
「そうなったんですね」
「そ、それはだ」
 顔を真っ赤にさせてだ。フェイは反撃を試みた。
「何というか。気のせいでだ」
「気のせい!?」
「気のせいといいますと」
「斗牙が。自然に、いや私も仕方なくだ」
「それでなんですか」
「一緒になんですね」
 反撃にはなっていなかった。それでだ。
 アレックス達にだ。さらに言われる羽目になってしまった。
「まあ隊長も恋する乙女ってことで」
「軍人ですがそれでも」
「女の子なんですね」
「やっぱり」
「あ、あいつはそもそも民間人になるからだ」
 最早言い訳にもなっていない。
「上官でも部下でもないし。いいではないか」
「じゃあ式の時はですね」
「俺達もまた」
「呼んで下さいね」
「楽しみに待ってますから」
 こうしてだった。一方的にやられる彼女だった。
 大島に高須はハンバーガーショップでユミ、カオリと話をしていた。
「エイジだけでなくて斗牙もか」
「学校に来るんだ」
「ええ、そうみたい」
「ルナにエィナもね」
 彼女達もだというのだ。
「ミヅキさんは大学らしいけれど」
「皆学校に来てね」
「それで俺達とか」
「一緒になんだね」
「はい、そうです」
「だからですね」
 ここでクッキーとトリヤが出て来た。
「私達も学生になりますから」
「宜しく御願いします」
 ディカとローザもだった。メイド達も学生になるというのだった。 
 サンドマンは城のバルコニーから夜空を見てだ。共にいるアヤカに話していた。
「奇麗な星空だな」
「はい、本当に」
「一人で見てはいけないものだ」
 こんなことも言う彼だった。
「やはり。星空は」
「二人で、ですね」
「見るべきものだ」
 こう言うのである。
「私の閉ざされていた心は開かれ」
「そのうえで」
「そのことがわかった」
 長い戦いの中でだ。それがだというのだ。
 そうしてだ。さらにだった。
「だからだ。これからは」
「はい、二人で」
「この星空を見ていこう」
 こう言ってだった。星空を見続ける二人だった。

宇宙大帝ゴッドシグマ
 テラルは闘志也に話していた。
「戻ってそうして」
「ああ、これからはな」
「ゴッドシグマを平和の為に使って」
「そうして働いていくさ」
 こう話す彼だった。
「仲間達と一緒にな」
「色々考えたけれどな」
「答えはそれしかなかった」
 ジュリイと謙作も言う。
「だからな。戦いが終わっても」
「俺達は一緒にいるんだ」
「そうなのね」
 ここまで聞いてだ。テラルも頷いた。
 それでだ。三人に対して言ったのだった。
「ではこれからも」
「ああ、三人でな」
「これからもな」
「やっていく」
 三人も笑顔で応える。そしてだ。
 理恵とミナコも言うのだった。
「私達もね」
「一緒よ」
 三人への言葉だ。
「だから。皆でね」
「力を合わせて」
「残念なこともあったな」
 ジュリイはふと風見博士のことも口にした。
「ああしたこともな」
「そうだな」
 謙作もだ。そのことを言う。
「しかし。それでもだ」
「ああ、これからのことを考えてな」
 闘志也も気を取り直した顔で言ってだった。そうして。
 彼等もだ。今歩きはじめていた。

超獣機神ダンクーガ 超獣機神ダンクーガ 白熱の終章
 葉月がだ。五人に言っていた。
「では君達はこれからはな」
「俺はブラックウィング隊を率いてだ」
 まずはアランが言う。
「軍に残る」
「そうか。君はか」
「そうさせてもらう」
 こう言うのである。
「俺の居場所はそこだ」
「で、俺達はな」
「これからはね」
 まずは忍と沙羅が言う。
「俺はレーサーをやってな」
「あたしはデザイナーでね」
「俺は親父の会社を継ぐんだ」
「俺は拳法の道場を開く」
 雅人と亮はそちらだった。
「今以上に大きくしろって言われてるよ」
「拳法で子供達の心を鍛錬し大きくさせたい」
「それと一緒にな」
 ここでまた言う忍だった。
「バンド、四人でやるからな」
「よかったら博士も来てよ」 
 沙羅は葉月をそのコンサートに誘った。
「博士なら特等席で無料だよ」
「そうだな。考えておこう」
 沙羅の言葉にだ。葉月も微笑んで応えた。
 そのうえでだ。彼はこんなことも言った。
「軍の基地司令も兼ねている。忙しいだろうがな」
「えっ、博士それもやるんだ」
「兵器の研究だけでなく」
「そうなっている。軍属という形でだ」
 それでだとだ。雅人と亮にも話した。
「時間があればな」
「ああ、楽しみにしてるぜ」
 笑顔で応える忍だった。彼等もそんな話をしてだ。未来に向かっていた。

創聖のアクエリオン
 ピエールが麗花とジュンに話していた。
「学校に戻ったけれどな」
「やることはね」
「変わらないね」
「ああ、そうだな」
 その通りだとだ。ピエールも言う。
「学生生活だからな」
「けれどね」
 ここでつぐみが言う。
「もうアクエリオンには乗らないわね」
「そうよね」
 リーナがつぐみのその言葉にうなずく。
「それはね」
「なら普通の学生生活か」
「そうなるよ」
「これからね」
 グレンにクロエとクルトが話す。
「だから皆で」
「楽しく過ごそう」
 彼等は学生に戻っていた。そのうえで楽しく過ごす道を選んでいた。
 不動にだ。ジャンとソフィアが尋ねていた。
「では司令はですか」
「これからは」
「そうだ。この学園の理事長になる」
 そうなるというのだ。
「戦いは終わった。これからは教育者になる」
「で、私は副校長で」
「私は教頭なのですね」
「頼んだぞ」
 それを二人にも言うのだった。
「ではな」
「はい、わかりました」
「それでは」
 何だかんだでだ。頷く二人だった。彼等は今度は教育者になるのだった。
 天使達もだ。花畑の中でだった。
 静かに時間を過ごしながら話していた。
「これでいいのだ」
「そうだ。こうあるべきなのだ」
 まずは智使達が言う。
「奪うより育てる」
「そうあるべきなのだ」
「そうね。思えばね」
「これが最もよい」
 音使と夜使も彼等の言葉に頷く。
「様々なことがあったがな」
「やはりこれが最もいいか」
 両使と練使も言う。
「花を育てその糧を貰い生きる」
「これが」
「そうだね。花は枯れないで僕達といてくれて」
 双使も花畑の中に笑顔でいう。
「力を与えてくれるから」
「最早何かを破壊することはない」
 頭使もいる。
「このまま永遠に過ごそう」
「そう。そうしよう」
「我等は」
 また智使達が言ってだった。彼等は永遠の中をだ。花達と共に生きることを選んでいた、
 シルヴィアはアポロに尋ねていた。
「アポロ残るのね」
「ああ、この学校にな」
 そうするとだ。彼はシルヴィアに答えた。
「行く場所もないしな」
「そうするのね」
「とりあえず飯はあるか?」
 話の後はそれだった。
「何かあればくれよ」
「まだ我慢しろ」
 その彼にシリウスが言ってきた。
「もう少しで昼食の時間だ」
「それが我慢できるか」
「それでも我慢しろ」
 アポロとシリウスの話は平行線だった。
「いいな」
「ちっ、仕方ねえな」 
 何だかんだで頷くアポロだった。彼等も平和の中にいた。

宇宙戦士バルディオス
 ジェミーは三人に尋ねていた。
「これからもな」
「そう、これからも」
「バルディオスもあるしな」
「それなら」 
 マリンとジャック、雷太が応えてだった。
「これからは宇宙開発にバルディオスの力を使おう」
「折角戦いが終わったんだ」
「それならその力はな」
「そうね。あれだけの力を宇宙開発に使えば」
 どうなるか。ジェミーもそのことを言う。
「きっとね」
「凄いことになる」
 マリンは微笑んで言った。
「俺達の世界の宇宙にとって」
「よし、じゃあ今からな」
「早速はじめるか」
 ジャックと雷太が笑顔で応えてだった。バルディオスの力はこれからは平和に使われることになった。

魔法騎士レイアース
 クレフはレイアース達に言っていた。
「御苦労だったな」
「何、大したことではない」
「全ては必要なことだった」
「それを果たしただけだ」
 レイアースもセレスもウィンダムもだった。こうクレフに返す。
「あの娘達もよい娘達だ」
「あの娘達なら必ずだ」
「これからも」
「うむ、そうだな」
 光達のことはクレフも同意だった。
「あの三人ならなば」
「これからもだ」
「正しい道を歩むだろう」
「必ず」
「では御主達はそれを見守りつつだな」
 こうレイアース達に言った。
「眠るか」
「そうさせてもらう」
「そしてまた時が来れば」
「その時にだ」
「うむ、また頼むぞ」
 クレフは微笑んで応えたのだった。今精霊達は眠りについた。次の時に備えて。
 プレセアがフェリオと共に飲んでいた。そこには。
 外のセフィーロの面々もいてだ。それでだった。
「ほな。戦いが終わったお祝いにや」
「そうだね。どんどん飲もうよ」
 カルディナとアスコットがまず言う。
「こういう時にこそ飲まんとな」
「お酒って美味しくないんだよね」
「ええ、確かに」
「その通りだ」
 アルシオーネとラファーガも二人に同意する、
「では今日は」
「何処までも飲むか」
「そうだな。じゃあ俺もだ」
「飲まれるのですね」
「ああ、そうする」
 笑顔でだ。フェリオはプレセアに答えた。
 そしてだ。彼女にこうも言った。
「だからプレセアも今はな」
「そうですね。私もまた」
「今日は何処までも飲もう」
「そうします」
 彼等は戦いが終わり酒を楽しんでいた。そうしていたのだ。
 NSXの艦橋でだ。ジェオとザズはイーグルに尋ねていた。
「何かな」
「久し振りだよね、セフィーロに来るのも」
「そうですね。オートザムもようやく落ち着きましたが」
 イーグルがその二人に応えて言う。
「セフィーロはですね」
「ああ。あいつ等どうしてるかな」
「楽しみだよね」
「はい、本当に」
 イーグルも笑顔で応えてだった。NSXをセフィーロに向かわせていた。互いの友好の使節として。そして彼等の友人として向かっていた。
 アスカもだ。童夢の艦橋からだ。
 チャンアンとサンユンに尋ねていた。
「間も無くじゃな」
「はい、セフィーロまではです」
「あと僅かです」
「うむ、左様か」
 二人の報告を聞いてだ。アスカは満足した顔になり言った。
「久しいのう。あの者達と会うのも」
「左様ですな。戦いが終わり」
「世界も救われて」
「あれからのう。ファーレンは政に多忙じゃった」
 こんなことも言うアスカだった。
「それがようやく一段落つきじゃ」
「はい、それで友好の使節としてです」
「あの国にですから」
「よいことじゃ」
 笑顔で言うアスカだった。
「攻めるよりもずっとな」
「左様です。奪うことはです」
 どうかとだ。チャンアンが話す。
「それだけで罪です」
「そうじゃな。まことにな」
「それよりも作りましょう」
 サンユンがアスカに進めるのはこちらだった。
「皆で」
「うむ、そうしようぞ」
 アスカも笑顔で応えるのだった。
 タータとタトラもだ。セフィーロに向かっていた。
 その中でだ。タータが言うのだった。
「なあ姉様」
「どうしたの、タータ」
「今セフィーロ凄いことになってるらしいな」
「そうみたいね」
 姉はおっとりとした口調で妹に返す。
「世界が元に戻って」
「それでやったな」
「もう見違える位にね」
 そのだ。崩壊直前よりもだというのだ。
「変わっているらしいわ」
「チゼータもな」
 そのだ。彼女達の国はどうかというのだ。
「あのとんがったところにも住めるようになって」
「随分変わったわね」
「あそこなあ」
 そのチゼータの尖った部分がだ。どうかというのだ。
「今までどうにもならん思うてやけどな」
「実際はね」
「ええとこやん。土地は肥えてて資源はあって」
 まさにだ。いいこと尽くしだった。
「これでチゼータも安泰や」
「私達も幸せになれて」
「セフィーロもやな」
「ええ、そうね」
「ほな行こか」
 また言うタータだった。
「今からな」
「ええ、そうしましょう」
 彼等もこんな話をしてだった。
 セフィーロに向かうのだった。
 プリメーラはむっとした顔でモコナと話していた。
「ねえ。あんたってね」
「ぷう?」
「私と全然似てないのに」
 これはだ。誰にも否定できないことだった。
 しかしだ。それでも言うのだった。
「それでも何かが似てるのよね」
「ぷう」
「しかもよ」
 それに加えてだった。
「何言ってるのかもわかるし」
「ぷうう」
 その通りだという感じだった。
 そんな話をしている時にだ。
 ランティスが来てだ。彼女に言うのだった。
「そこにいたのか」
「あっ、ランティス」
「少し。外に出るか」
 こうプリメーラに言うのである。
「そうするか」
「お外に?」
「別に旅に出たりはしない」
 それは否定するのだった。
「だがだ。少しだ」
「少し?」
「馬に乗りたい」
「そう。じゃあ一緒にね」
「ぷうっ」
 プリメーラが笑顔になるとだ。モコナもだった。
 ランティスのところに来てだ。飛び跳ねる。それを見てだ。
 ランティスはまた言った。
「ではモコナもな」
「そうね。まあこの子ならいいわ」
 プリメーラはモコナには寛容だった。
「他人の気がしないし」
「だからいいのだな」
「ランティスは恋人で」
 プリメーラは笑顔でこんなことも言った。
「モコナは友達よ」
「ぷうっ」
 こんなやり取りをしてだ。楽しく凄く彼等だった。
 光達もだ。今は。
 東京タワーにいてだ。それで三人で話をしていた。
「色々あったけれど」
「そうね。本当にね」
「それでもですわね」
 三人で外を眺めながら。笑顔で話すのである。
「今こうして一緒にいて」
「またセフィーロに行って」
「楽しく過ごせますわね」
「うちの家だ」
 ここで光が言う。
「父様が帰って来た」
「あのお父さんよね」
「修業に出られているという」
「そうだ。帰って来たんだ」
 こうだ。海と風に笑顔で話すのである。
「とても嬉しいんだ、今は」
「そうね。やっぱり家族が揃ってるとね」
「違いますわ」
「これからはずっと一緒だ」
 光は満面の笑顔でさらに話す。
「父様に母様、兄様達と」
「確か光って」
 不意にだ。光の後ろからだ。
 声がしてだ。こう言ってきたのだ。
「御兄さん三人いたのよね」
「ノヴァ?」
「そう、私」
 今は黒い、クランプ学園の制服を着てだ。
 ノヴァが来てだ。それで話をするのだった。
「遊びに来たわよ」
「そうか、来てくれたのか」
「光の顔を見たくなって」
 それで遊びに来たというのだ。
「そうさせてもらったわ」
「そうなのか。じゃあ今は」
「四人でね」
「楽しみましょう」
 海と風もそのノヴァに笑顔で言う。
「ここから見る景色は最高よ」
「ですから」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 笑顔でだ。ノヴァは二人にも応えたのだった。
 そのうえで四人になって景色を見てだ。楽しむのだった。

機動大戦ギガンティック=フォーミュラ
 華都美と力が話していた。
「色々あったわね」
「ええ、本当に」
「けれどそれが終わって」
「今は」
 どうかというのだ。彼等の世界に戻って。
 そして彼等が移住した新たな星において言うのだった。
「これはこれでね」
「忙しい」
「そうですよね」
 卯兎美もそれを言う。
「軍属は変わりませんから」
「そうよね。だから兎美ちゃん」
「はい」
「これからも宜しくね」
「任せて下さい」
 笑顔で華都美に応えてだ。ギガンティック達の状況をパソコンから確認している彼女だった。
 雲儀と走影はだ。
 自分達の機体を見ながらこんなことを話していた。
「新たな星に辿り着いたが」
「それでもね」
「まだやることはある」
「戦いは終わったけれど」
 それでもだというのだ。走影は言う。
「それでもね」
「また何が来るかわからない」
「ええ、だから」
「それだからこそね」
「常に。警戒を怠らずいこう」
「ええ、軍人としてね」
 彼等は軍人としてだ。働き続けるのだった。その走影はだ。
 自分の腹部を撫でていとおしげな顔も見せていた。雲儀もそれを見て微笑んでいる。
 ムハマドとハサンはだ。クリスティにだった。
 それぞれ言うのだった。
「まだな」
「いいだろうか」
「ええ」
 クリスティもだ。微笑んでだ。
 二人にだ。こう言う。
「私もね」
「最後はだ」
「どちらかを選んでくれ」
「そして今はだ」
「俺達は軍に残り」
 そしてだというのだ。彼等は。
「ギガンティックでこの星を守る」
「そうしていく」
「ええ、だから私も」
 そしてだ。クリスティ自身もだった。
「二人のうちどちらかを」
 選ぶというのだった。三人の話はまだ続いていた。
 マリアムはマルコに話していた。
「私と一緒にいていいのね」
「何が?」
「だから私とこれからも」
 申し訳なさそうにだ。マルコに言うのだ。
「いいのかしら」
「いいよ」
 笑顔でだ。マルコは答えた。
「それでね」
「そうなの」
「だって。マリアムは僕のことを思ってくれているから」
 それでだ。いいというのだ。
「だからね」
「私がマルコのことを」
「そう。だからこれからも一緒にいたいんだ」
 こうだ。自分達のギガンティックを前に話すのである。
「マリアムさえよかったら」
「私さえよかったら」
「それでどうかな」
 あらためてマリアムに問うのである。
「マリアムは」
「ええ、それじゃあ」
 マリアムもだ。そのマルコの問いに答える。
「御願いするわ」
「うん、それじゃあね」
 こう話してだった。二人は共にいることを選んだのだった。
 イーサーとマリアムは。
 二人でだ。こんなことを話していた。
「これからもな」
「ええ、これからも」
「戦いはあるだろう」
 こう言うイーサーだった。
「銀河は救われてもだ」
「因果なことね」
「この星にしても」
 彼等は今いるだ。その新天地にしてもだというのだ。
「また何かが来るかもしれない」
「けれどその時は」
「戦うしかない」
 こう言うのだった。
「何があってもな」
「わかっているわ。それではね」
「やっていこう、これからも」
 こう話してだ。決意する彼等だった。
 シンシアはダニエルと話していた。
「じゃあこれからは」
「まずは学校に通い」
「そうね。そうしてね」
「日常の生活を送りながら」
 そのうえでだと・ダニエルは話すのである。
「ギガンティックに必要とあらば」
「ええ、乗るわ」
 そのことを話してだった。シンシアはその自分達のギガンティックを見ていた。今も。
 オリヴィエはミラボーに言っていた。
「これからはね」
「どうするの?これからは」
「この星で楽しく過ごしたい」
 こうだ。彼の願いを言うのだ。
「そしてその為にも」
「何かあれば」
「戦いたい。だから」
「ええ、わかってるわ」
 ミラボーもだ。オリヴィエの言葉に頷いてだ。
 彼のところに来て。そうして言うのだった。
「これからも」
「一緒に」
 彼等もその絆を確かめ合いながら。未来に向かっていた。
 セルゲイはタチアナの話を聞いていた。
「軍に残って」
「そうよ。そうしてね」
「一緒にいてくれるんだ」
「色々考えたけれど」
 それでもだというのだ。
「そうすることにしたわ」
「そう。それなら」
「このユーノはとても癖が強いけれど」
 ギガンティックの中でも特にだ。
 だがそれでもだとだ。タチアナは言うのだ。
「二人なら」
「そうだね。これまで通りね」
「人を護る為に動かせるから」
 だから二人でいるとだ。タチアナは選んだのだった。
 そしてセルゲイもだ。そのタチアナと共にいることを決めたのだった。
 レオーネはルクレツィアと一緒に店でパスタを食べていた。
 その中でだ。ルクレツィアの話を聞いていた。
「今日はこのお店にしたけれど」
「次は?」
「明日は私が作るわ」
 そのだ。パスタをだというのだ。
「そうしていいかしら」
「ええ、それじゃあ」
 そしてだ。レオーネもだった。
  微笑んで彼女の言葉に頷きだ。こう言うのだった。
「これからもずっとね」
「そうさせてもらうわ」
 二人もまただった。二人でいるのだった。
 エレオノールはミハイルと一緒にいてだ。
 パソコンを見てだ。話をしていた。
「そうね。そこでなのね」
「そう。ここはこうして」
 ミハイルがエレオノールに話す。
「こうすればいいから」
「わかったわ。それじゃあ」
「わからないことがあったら」
 その場合はとだ。ミハイルは話す。
「何時でも僕に言ってくれていいから」
「教えてくれるの?」
「うん、わかる限りのことはずっとね」
 そうするとだ。ミハイルはまた話す。
「そうさせてもらうよ」
「有り難う。それじゃあ」
「宜しくね、これからも」
 こんな話をしながらパソコンで検索をしている二人だった。
 ザリオンはレイとランニングをしながらだ。
 娘にだ。こう尋ねた。
「いいのだな」
「軍に残ること?」
「ああ、そうしてだ」
「決めたから」
 こう答えるレイだった。
「それは」
「そうか。決めたからか」
「ギガンティックはこの星を護るのに必要だから」
「そのギガンティックを動かしてだな」
「皆を護る為に」
 まさにその為にだというのだ。
「そうするわ」
「そうか。ではこれからもだ」
「ええ、これからも」
「トレーニングを続けるぞ」
「これからの為に」
 こう話してだ。二人は基地の中で走りトレーニングを行っていた。親娘で。
 エヴィータは母であるアマリアに話していた。
「母娘で一緒のマシンに乗るのも」
「滅多にないわね」
「ええ。けれどね」
 それでもだとだ。エヴィータはこうも言った。
「悪い気はしないわ」
「ではこれからも」
「一緒にいていいかしら」
 こう母に問うのだった。
「これからも」
「ええ、私としてもね」
「母娘でね」
「やっていきましょう」
「じゃあ。その言葉にね」
 どうするか。エヴィータはこうしたことも言った。
「乗らせてもらうわ」
「そうするのね」
「是非ね」
 今二人は屈託なく話せる様になっていた。本来の関係にだ。もう戻っていた。
 リリィはラヴィーナと二人でだ。
 酒屋に入りだ。そこで酒を飲みつつだ。ラヴィーナと話していた。
「一人で飲むよりもね」
「二人ね」
「その方がずっといいわ」
 こうラヴィーナに話すのである。
「やっぱりね」
「そうね。一人で飲んでもね」
「あまり美味しくはないわ」
「けれど二人で飲めば」
 まさにだ。そうなれば。
「ずっと美味しくなるわね」
「ええ、本当に」
「それならよ」
 今度はだ。ラヴィーナがリリィに話す。
「明日も。これからも」
「これからも」
「二人で飲みましょう。何かあればね」
「その時にはね」
「それでいいかしら」
「ええ」
 そしてだ。リリィもだった。
 微笑んでだ。彼女のその言葉に頷くのだった。
 慎悟は真名と共にいた。
 そしてその前にだ。彼等もいた、
「眞人、神名」
「これから何処に行くの?」
「二人で」
「ええ、実はね」
 何処に行くかだ、真名が二人に話す。
「デートなの」
「あの、真名さん」
 慎悟が彼女の言葉に顔を赤くさせて言う。
「そんなこと言ったら」
「いいのよ。実際にそうじゃない」
「それは」
「隠しても仕方ないわ」
 こうだ。真名は微笑んで慎悟に言う。
「だからいいのよ」
「そうですか。じゃあ」
「実はね」
「私達もなの」
 そしてだった。眞人と神名もそうだというのだ。
 そしてだ。二人でだ。慎悟達に言った。
「じゃあ。君達もね」
「デート、楽しんできてね」
「は、はい」
「わかったわ。それじゃあ」
 慎悟は少し緊張しながら、真名はリラックスしてだ。二人の言葉に応える。
 そうしてお互い擦れ違う。妹も姉も。互いの想い人の手と自分の手を絡め合わせながら。

装甲騎兵ボトムズ
 兵士達がキリコに尋ねていた。
「それではですか」
「キリコさんもですね」
「この星に残ってくれる」
「そうなんですね」
「考えた」
 まずはこう言うキリコだった。
 そしてそのえうでだ。こうも言うのだった。
「戦いは終わった」
「はい、銀河は救われました」
「ようやく」
「だが。危機はまた来るものだ」
 だからだというのだ。
「俺はこの星に残り人を護る」
「そうされるんですか」
「これからは」
「そうすると決めた。それではだ」
「はい、それでは」
「これからもですね」
「宜しく頼む」
 表情は変わらないがそれでもだ。彼は彼の選択を決めていた。


エピローグ5   完


                          2011・7・30    

 

エピローグ6

                     エピローグ6
魔装機神サイバスター THE ROAD OF ELEMENTAL
 フェイルにだ。
 セニアが話をしていた。
「モニカとテリウスはね」
「そうか。クリストフと共にか」
「そうするって言ってね」
 それでだというのだ。
「戻らないって」
「わかった」
 フェイルもだ。それを聞いてだ。
 妹にだ。こう言うのだった。
「なら二人の道を歩んでもらいたい」
「それでいいのね」
「そうだ。それが二人の道ならだ」
 それでいいというのだ。
「私は私の道を歩もう」
「そういえば兄さんは」
「暫くしたら正式にだ」
 どうするかというのだ。
「即位する」
「そう。王位をね」
「継ぐ。そして軍の国防大臣だが」
「カークス将軍よね」
「あっ、はい」
 ここでそのカークスが出て来た。それでセニアに挨拶して言うのだった。
「私はまあ。軍を辞めて議員になっています」
「そうなの」
「どうも軍にいると」
 どうかというのだ。
「妙なものを抱きそうで」
「それで軍を辞めて?」
「政治家になることを選びました」
「ううん、よくわからないけれど」
 腕を組んでだ。話すセニアだった。
「まあそれでいいのならね」
「よいというのですね」
「ええ、あんたにとってよかったらね」
 こうカークスに話すのである。
「まあとにかくね」
「そうだな。戦いが終わりだ」
 フェイルが妹のその話に応えて話す。
「これからはラングランの復興だ」
「あたしのすることは?」
「勿論山程ある」
 妹にすぐにこう言ったフェイルだった。
「錬金術師としてな」
「ああ、アカデミーの復興とかね」
「宜しく頼むぞ」
「ええ、あたしそうした仕事は嫌いだけれど」
 そうしたことは言っていられる状況ではなかった。それでだ。
 セニアもだ。頷いて言うのだった。
「やらせてもらうわ」
「では私も」
 そしてカークスもだった。
「働かせてもらいます」
「頼んだぞ」
 フェイルは彼にも笑顔を向けてだ。そうしてだった。
 ラングランのこれからの為に動きはじめたのだった。
 メキボス達四天王はだ。彼等の星でだ。
 それぞれだ。こんなことを話していた。
「俺達インスペクターとゲストもな」
「そうだな。統一されたな」
「何か不思議だけれどね」
 ヴィガジとアギーハが彼のその言葉に応えて言う。
「あそこまでいがみ合ってきた我等が」
「こうして統一されるなんてね」
「そうだな。しかしそれはな」
 どうかとだ。メキボスは微笑み言う。
「銀河全体がだからな」
「そうだな。地球ともバルマーともな」
「その他の連中ともね」
「これからは友好的に交流を進めていく」
「そうなっていくね」
「その通りだ。俺達も未来に向かう」
 そうなるとだ。また話すメキボスだった。
「対立から友好だ」
「・・・・・・・・・」
「シカログもそれでいいな」
「・・・・・・・・・」
 無言で頷く。喋らないのは変わらない。
 だが彼も確かに頷いた。彼等も未来を見ているのだ。
 ファングはザッシュ、そしてロザリーと共にいてだ。剣を振っている。
 そうしながらだ。二人に問うのだった。
「平和になったとはいえな」
「そうですね。鍛錬はですね」
「忘れたらいけないわね」
「戦いは色々とある」
 そうだと言うファングだった。
「中には災害や。デモンゴーレムもだ」
「彼等も敵ですからね」
「なら余計にね」
「油断をしてはならない」 
 ファングらしくだ。生真面目な言葉だった。
「決してだ」
「はい、それでは僕達は」
「こうして修行を続けないといけないのね」
「その通りだ。武芸というものは」
 今度はジノが出て来た。そのうえで彼等に話す。
「日々の鍛錬が培うものだ」
「だからこそだな」
「そう。鍛錬を怠ってはならない」
 ジノは武芸十八般を究めんとする立場から話す。
「一日たりとも怠ってはならない」
「厳しいですね」
「そうだ。確かに厳しい」
 ジノもそのことは認める。
「しかしだ。そうしてこそだ」
「究められるのね」
「そういうことだ。では私も」
 ロザリーにも応えながらだ。ジノもだった。
 剣を抜きだ。そのうえで彼も素振りをはじめるのだった。
 デメクサはティアン、それにシモーヌ、ベッキー、そしてアハマド達とだ。
 釣りをしながらだ。のどかに言った。
「いいものですよね」
「ううむ、拙僧は釣りは」
「合わないというのだな」
「そうだ、どうもだ」
 ティアンは難しい顔でアハマドに話す。
「どうしてもだ」
「そうですか?まあそう思ったらですね」
 そのティアンにだ。デメクサはやはりのどかに話す。
「暫く昼寝なんかが」
「よいというのだな」
「はい」
「ではだ」
 デメクサの話を受けてだ。ティアンは実際にだった。
 ごろりとその場に寝転がり昼寝をはじめた。忽ちいびきをかく。
 その彼を見てだ。シモーヌとベッキーが呆れた様に言う。
「何ていうかね」
「これで元々はお坊さんだっていうからね」
「それがわからないのよね」
「破戒僧にしてもかなり酷いわね」
「全く。イスラムに聖職者はいないが」 
 アハマドも言う。
「少しな。これはな」
「いえ、ティアンさんは戦われ人を守ることで」
 それでだとだ。デメクサは呆れる三人に話す。
「信仰を守っておられますよ」
「そうなるのかしら」
「どうなのかしら」
 そう言われてもだ。シモーヌもベッキーもだ。
 首を捻りだ。あまり信じられないのだった。
 そんな話をしてだった。
 彼等は今は釣りを楽しみだ。休息の時を過ごしていた。
 ロドニーとエリスはラングランに留まっていた。そこで話すのだった。
「シュテドニアスも変わったみたいですね」
「そやな。あの大統領も後ろ盾もな」
「シュテドニアスの軍産複合体ですが」
「解散したんやって?」
「はい、あちらから自主的にです」
 そうしたと。エリスは話す。
「採算が取れないですから」
「そや。実際に軍隊はな」
「設備や技術への投資は膨大ですが」
「あまり儲からんからなあ」
「それより他のものを売った方がいいので」
 それでなのだ。軍事産業は実入りが少ないのだ。
 その結果だった。シュテドニアスでもだ。
「解散となりました」
「後は大した軍事産業もなくやな」
「そしてラングランとも正式に講和しました」
「シュテドニアスにしてもや」
 ロドニーは先のラングランとの戦争についても話す。
「あれもな。反対派の方が多かったしな」
「議会は特にですね」
「そやから正常に戻ったんや」
 ロドニーはこう言った。
「ええことや」
「全くです。では私達は」
「仕事や」
 それだとだ。エリスに話すロドニーだった。
「国境のパトロール続けよか」
「はい、このまま」
 二人がこうしたことを話しているとだ。その彼等のところにだ。
 一機のシュテドニアスの魔装機が来てだ。それでだった。
 ジョグが出て来てだ。それでだった。
 二人にこんなことを話してきた。
「これも縁か」
「ああ、生きとったんかいな」
「それにしても何故ここに?」
「国境警備隊に赴任した」
 そうなったとだ。ジョグは二人に話す。
「それでパトロールをしていたのだがな」
「そやったんかいな」
「それでここに」
「そういうことだ。しかし無事で何よりだ」
 ジョグは二人のその無事をここで言った。
「御互いもう戦争も終わったしな」
「まあしがらみはあるけどな」
「平和にいきましょう」
「ああ、またな」
 ジョグは二人にこう挨拶してから彼等の前から去った。その後姿を見届けてからだ。
 二人もだ。笑顔でこう話すのだった。
「ほなわい等もな」
「このままですね」
「そや。パトロールに行こうな」
「はい」
 こう話してだ。仕事を続ける彼等だった。
 テュッティはプレシアと共にいた。
 そしてそこでだ。プレシアに言うのである。
「何か貴女の作るお菓子って」
「甘くないですか?」
「足りない気がするわ」
 甘さがだというのだ。
「どうもね」
「あの。それはテュッティさんがですね」
「私が?」
「はい、甘党過ぎます」
 それでだというのだ。プレシアは。
「今もですし」
「私は別に」
「凄過ぎます」
 見ればだ。その紅茶にだ。
 テュッティは角砂糖を次々と入れてかき混ぜてだ。言うのだった。
「私は別に」
「十個入れてますけれど。それにクリームも」
「それが普通じゃないの?」
「そうですね。私もです」
「普通だと思いますが」
 フレキとゲリは主にこう言う。
「砂糖を十個で、です」
「ようやく美味しさも出るというものです」
「そうよね。確かにね」 
 その通りだとだ。テュッティはファミリア達の話に言う。
「私もそう思うけれど」
「だからそれは違います」
 あくまでこう言うプレシアだった。
「けれどそれで太らないんですか」
「ええ、別に」
 本当にそうだとだ。プレシアに答える。
「特にね」
「サウナのせいかしら」
「御主人様も修業してますから」
「それでなのです」
「だったらいいんですけれど」
 とはいってもまだテュッティのスタイルを不思議に思うプレシアだった。
 ミオはだ。ゲンナジーと共にいてだ。
 ハリセンを出してだ。こんなことを話していた。
「いい?これでね」
「ハリセンだな」
「そう、あたしがぼけたら」
 どうするかというのだ。
「ゲンちゃんがこれであたしの頭を叩いてね」
「何でやねんか」
「そう言ってくれたらいいから」
「突っ込みだな」
「それ御願いね」
「わかった」
 ゲンナジーは一言で答えた。
「それならだ」
「普通はあたしが突っ込みって見るけれど」
 そこをだというのだ。
「あえてゲンちゃんがね」
「突っ込んだ方がいいのだな、俺が」
「そうよ。そう思ってよ」
 ミオはその戦略をゲンナジーに話していく。
「そうしたのよ」
「そこが師匠ですな」
「いや、全く」
「そうでんな」
 ジュンにチョーサク、シィージがだった。
 それぞれだ。ミオのその戦略に言ったのだった。
「あえて自分がボケに回る」
「その方が笑が取れるから」
「それで、でんな」
 その戦略がわかってだ。彼等は主を褒め称えるのだった。
 そしてだ。さらにだった。こんなことも言うのだった。
「平和になっても芸の道は同じ」
「永遠に続くもんなんですな」
「終わりはない道やな」
「そうよ。漫才道は修羅の道よ」
 こうまで言うミオだった。
「あたし達は今昇りはじめたばかりなのよ」
「俺もだな」
「勿論ゲンちゃんもね」 
 そうだと話してだった。二人でだった。
「この果てしない漫才坂をな」
「未完だな」
 ゲンナジーもわかった。このことは。
「では最後の最後までな」
「昇るとしよう」
 こう話してだった。ミオ達はその坂を昇ろうとしだしていた。
 ヤンロンはリューネと共にいた。そうしてだ。
 彼はリューネに尋ねたのだった。
「ではラ=ギアスに残ってか」
「ええ。ここで生きていくわ」
 こう不敵に笑って答えるリューネだった。
「ずっとね」
「そうか。僕達と同じようにか」
「そうそう、あんた達と一緒よね」
「左様ですか」
 ここでだ。ランシャオもリューネに言ってきた。
「では宜しく御願いします」
「こちらこそね。さて、と」
「ではパトロールに行こう」
 ヤンロンはリューネをそれに誘う。
「今からな」
「マサキは?」
「ああ、二人共そこにいたの」
 ここでウェンディが来てだった。
 そうしてだ。二人に声をかけてきたのだ。
「マサキ知らない?」
「今探そうとしてたんだけれど」
「パトロールの時間だからな」
 二人もそのウェンディに答える。
「ひょっとしてまた?」
「道に迷ってるのか」
「そうよ。実はもうサイバスターで出たけれど」
 パトロールにだというのだ。
「それでもね」
「やれやれ、またね」
「困ったことだな」
「もう帰ったと思ったけれど」
 それでもなのだった。マサキはだ。
 そのまま戻らずにだ。今は。
 王都の中をあれこれ動き回っていた。その彼にだ。
 シロとクロがだ。呆れながら言ってきた。
「全くいつもながらニャ」
「無茶苦茶ニャぞ」
 こうだ。マサキに対して言うのだった。
「どうやったらここまで迷うニャ」
「降りてそれで皆のところに行くだけだったニャ」
「それがどうしてニャ」
「王都の繁華街にいるニャ」
「何でだろうな」
 自分でもわからないといった顔のマサキだった。
「俺もわからないんだけれどな」
「方向音痴にも程があるニャ」
「今回もそう思ったニャ」
「ったくよ、どうやって戻ればいいんだよ」
 マサキ自身も困っているとだった。
 ここでだ。彼の前にだ。テリウスが出て来て声をかけてきた。
「あれっ、何でこんなところにいるの?」
「んっ、テリウスかよ」
「うん。実はお忍びでね」
 見ればサングラスをかけて変装している。その姿で言うのである。
「それでここに来てるんだけれどね」
「そうだったのかよ」
「姉さん達も一緒だよ」
 テリウスがこう言うとだった。
 そのモニカも出て来た。サフィーネもだ。
「あっ、マサキもここにおられた訳なのですね。幸いで何よりもないです」
「おい、何言ってるんだ?」
「姉さん、もう文法も何もかも滅茶苦茶だから」
「そんな筈があるようなないようなですけれど」
「何か前より酷くなってるな」
 マサキも首を傾げる状況だった。しかしだ。
 ここでだ。今度はサフィーネが話した。
「とりあえずもうあんた達ともね」
「戦うことはないな」
「ヴォルクルスも倒したし」
 それが大きかった。
「私達も戦う理由はなくなったわ」
「それじゃあこれからどうするんだ?」
 マサキはこのことをだ。サフィーネに尋ねた。
「御前等もな」
「それはこれから探します」
 シュウも出て来てだ。マサキに話す。
「今の私達はです」
「つまり何も決まってないんだな」
「そうですね。しかしです」
「しかし?何だよ」
「目指すものは決まっています」
 それはだというのだ。
「既にです」
「目指すものっていうと何だよ」
「自由です」
 シュウは微笑んでマサキに話す。
「私はそれを目指します」
「そうか。それでなんだな」
「暫くは仲間達と旅を続けますので」
「何か風来坊みたいだな」
「ははは、風来坊ですか」
「そんな感じだよな」
 マサキはシュウの話を聞いて実際にそう思ったのだ。それで言ったのである。
「今の御前は」
「そうですね。ところでマサキ」
「何だよ」
「貴方はまたなのですか」
「そうニャ、またニャ」
「道に迷ってるニャ」
 シロとクロがシュウのその問いに答える。
「全く。パトロールから帰ってただ自分の部屋に戻るだけだったニャ」
「それでこんなことになるニャ」
「ああ、それでしたら」
 どうしたらいいか。シュウは話した。
「ここに止まっていればいいですよ」
「何だよ、それだけかよ」
「今ウェンディに連絡を入れます」
 こうしてだ。携帯を出してウェンディに連絡を入れてだ。シュウがこの騒動を終わらせたのだった。

バンプレストオリジナル
 イルムがリンと共にいてだ。彼女に尋ねていた。
「何か凄いことになったな」
「別の世界にも行き来できるようになったことか」
「ああ、それだよ」
 まさにだ。そのことだった。
「それでジェス達もだな」
「そうだ。ここにいる」
「そうなのよ」
 ジェスとパットがここで出て来て話す。
「そしてこちらの世界にもだ」
「よかったら来てね」
「知り合ったのも何かの縁だしな」
「そうそう」
 ヘクトールとミーナも話す。
「だからこれからもな」
「宜しくね」
「これは長い付き合いになるな」
「そうですよね」
 アーウィンとグレースもいる。
「それならお互いにだ」
「楽しくやりましょう」
「本当に賑やかになるな」
 ここでまた言うイルムだった。
「まあ賑やかな方がいいしな」
「そうですね。それでは」
 そうした話をしてだった。彼等は二つの世界を行き来してだ。楽しみそれぞれの世界を守るのだった。それが彼等の選択だった。
 ギリアムはだ。リュウセイ達と共にいた。
 それでだ。こう彼等に尋ねていた。
「そのままチームとしてか」
「はい、そうです」
「このままやっていきます」
 アヤとライが彼に話す。
「SRXチームとして」
「五人で」
「そうか。それは何よりだ」
 二人の話を聞いてだ。ギリアムも微笑む。そしてその彼にだ。
 ヴィレッタがだ。尋ねてきた。
「それで貴官はどうするのだ」
「俺も同じだ」
「では軍に残ってか」
「そうして働いていく」
 そうするというのだ。
「これからもだ」
「わかった。それならだ」
 ヴィレッタはギリアムの話を聞いてだった。
 そうしてだ。今度はだ。
 リュウセイとマイを見てだ。こう話すのだった。
「これからもな」
「ああ、イングラム隊長の意志をついでな」
「やっていこう」
「そうだ。私達は一人ではない」
 二人にまた言うヴィレッタだった。
「だからな」
「はい、それじゃあ」
「これからも」
 こう話してだった。彼等は今絆を確め合ってだった。イングラムの意志と共に仲間達と共にいるのだった。
 ゼブにセティ、ロフはだ。三人でいてだ。
 そうしてだ。まずロフが話した。
「今まではな」
「そーーーだよな。へーーんに意地張ってな」
 どうかとだ。ゼブも言う。
「おーーかしなことになーーってたな」
「我々ゾヴォーク自体がな」
「そうね。地球の言葉でゲストとインスペクターに別れて」
 そのうえでだった。彼等は。
「長い間無意味な対立を続けてきたわね」
「だがそれも終わりだ」
 ロフはセティにも話した。
「これからは我々も統一されてだ」
「門閥なーーんてのもなくなってな」
「本当の意味での銀河の平和の為にね」
「働いていこう」
「そーーーそーーー、へーーいわの為に」
「私達のことだけを考えずに」
 その考えにだ。彼等も至ってだった。
 そのうえでだ。未来を見ているのだった。
 戦いが終わりクスハとブリットは二人でいてだ。
 あの四霊のことを話していた。
「色々あったわね」
「最初は敵だったよな」
「ええ、けれど私達を認めてくれて」
 そしてだ。それからだったのだ。
「一緒にずっと戦ってくれて」
「最後の最後までな」
「私忘れないわ」
 クスハは笑顔で言った。
「超機人のこと」
「俺もだよ」
「これから私達お医者さんになるけれど」
 それが二人の選んだ道だった。
「それでもね」
「ああ、ずっとな」
「忘れないでいましょう」
 こう話してだ。彼等のことを忘れないのだった。
 その二人のところにだ。彼等が来た。
「ああ、二人共そこにいたんだ」
「探したわよ」
 まずはリョウトとリオが声をかける。
「何処に行ったのかって思ったけれど」
「ここだったのね」
「ああ、ちょっとな」
「少し思い出していたの」
「これまでのことだよな」
「そうよね。やっぱり」
 今度はタスクとレオナが問う。
「色々あったからな」
「本当にね」
「まあ今はそういうことは忘れてね」
「お茶にしないか」
 カーラとユウキもいる。
「今ユウキが淹れるから」
「皆で楽しもう」
「そうだな。それじゃあな」
「皆でな」
 ブリットもクスハもそれに乗る。こうしてだ。
 八人で紅茶を飲みながらだ。リョウトが言った。
「僕も進路が決まったよ」
「私達結婚するのよ」
 リョウトとリオが明るい顔で話す。
「僕はパイロットを続けるんだ」
「私も。民間の会社で」
「二人同じ会社でね」
「働くことになったの」
「それで俺はな」
 今度はタスクだった。
「ギャンブラーになるからな」
「ギャンブラーって」
「俺の夢だったんだよ」
 こう驚くクスハに話す彼だった。
「で、ギャンブラーだけれどな」
「そうじゃないでしょ」 
 タスクにはレオナがすぐに突っ込みを入れた。
「タスクは私と一緒に軍に残るじゃない」
「ギャンブラーの方が格好いいだろ」
「何処がよ。素直に軍に残るって言えばいいのに」
「だから格好いいからよ」
「ギャンブルは破滅の元よ」
 生真面目なレオナらしい言葉だった。
「だから絶対に駄目よ」
「ちぇっ、厳しいなあ」
 二人がそんな話をしてだ。今度はだ。
 カーラとユウキもだ。自分達のことを話す。
「アナハイム社でね」
「技術者、そしてテストパイロットになった」
「だからこれからはね」
「そこで会おう」
「そうか。皆もな」
「それぞれの道を歩きはじめてるのね」
 ブリットとクスハは仲間達の話を聞いて述べた。
「じゃあこれからもな」
「集る時があったら」
「こうしてだ」
 ユウキが二人に応えて言う。
「紅茶を飲もう」
「そうしようね」
 最後にカーラが笑顔で言ってだった。それぞれの道を確かめ合うのだった。
 ロバートはカークと話していた。
「これまでの技術はだな」
「そうだ。随時平和利用に転換していくことになった」
 カークはこうロバートに話す。
「そう決まった」
「そうか。それはいいことだ」
「早速だ」
 ケンゾウもここで二人に話す。
「SRX、そしてバンプレイオスの技術もだ」
「合体やトロニウムの技術が」
「それがですね」
「そして少しの超能力があればだ」
 ケンゾウはこのことも話す。
「動かせる高性能のマシンもだ」
「それもですか」
「開発するのですか」
「これからは戦争よりもだ」
 ケンゾウはさらに言う。
「そうした技術が必要になってくるからな」
「確かに。それでは」
「これからは」
 二人もケンゾウの言葉に頷きだ。そうしてだった。
 戦争に使われた技術をだ。平和利用に転換していくのだった。
 キョウスケとエクセレンは。今は。
 アルフィミィにだ。こう話していた。
「俺達はこのままだ」
「軍に残るわ」
「そう決めた」
「というか軍にしか居場所がないからね」
 こうだ。アルフィミィに話すのである。
 そしてだ。アルフィミィも言うのだった。
「わかりました。では私は」
「これからどうするんだ?」
「私達と一緒にいてくれるのかしら」
「はい」
 アルフィミィはエクセレンの言葉にこくりと頷いた。
 そしてだ。こう言うのだった。
「そうさせてもらいます」
「そうか。ではこれからもな」
「宜しくね」
 二人も笑顔で彼女を迎え入れる。
 そのうえでだ。こう言ったのだった。
「では今日はだ」
「テーマパークに行きましょう」
「遊びに行くのですか」
「ああ、一緒にな」
「楽しむわよ」
「わかりました」
 アルフィミィも笑顔になった。そのうえで彼等は親子になって楽しむのだった。
 ラミアとアクセルがゼンガー、そしてレーツェルと話していた。
「私達はこれからは」
「元の世界に戻る」
 そうするというのだ。彼等は。
「そして私達の世界で生きる」
「既に立場も決まっている」
「立場。それは」
「君達は元の世界ではどうなるの?」
 ゼンガーとレーツェルはすぐに二人に問うた。
「郡に戻るのか」
「シラカワ博士があちらの世界でそう手配したようだが」
「そうだ。あちらの世界では軍人としてだ」
「生きていく」
 実際にそうだと答える二人だった。
「では。あちらの世界に来た時は」
「宜しくな」
「それはこちらも同じこと」
「それではだ」
 二人もだ。笑顔になって言うのだった。
「我等はDCにおいてだ」
「ビアン総帥の真の意志を継いで宇宙に出る」
「そして宇宙の悪を倒していく」
「あくまで地球を拠点としているがな」
「そう。それでは」
「そちらもな」
「頑張らせてもらう」
「これからもな」
 ゼンガーもレーツェルも微笑みだった。
 互いに握手をしてだ。今は別れるのだった。

バンプレストオリジナル
 ラウルとフィオナはだ。こんな話をしていた。
「中っていうと金がなかったけれどな」
「そうよね。ロンド=ベルに入るまでは」
「けれどそれが一変してな」
「今はこんなのだから」
「収入も増えたしな」
「家もできたし」
 見れば二人は中々の家に住んでいる。そしてだ。 
 一緒にいるラージとミズホが笑顔で言うのだった。
「連邦軍の待遇も変わりましたし」
「前に比べてずっとよくなりましたね」
「ああ、それにな」
「家族も増えたしね」
 ここで二人は彼等を見た。
 ティス、ラリアー、デスピニスはだ。それぞれ言うのだった。
「まさか地球でも学校に通うなんてね」
「マクロスのシティだけじゃなかったんだ」
「地球にも学校が」
「当然だろ。人間がいるんだからな」
「学校はあるわよ」
 三人にだ。ラウルとフィオナはこう話す。
「学費はちゃんと出るからな」
「それは安心してね」
「学費って言われてもわからないけれど」
「とにかく僕達は」
「ここでも学校に通うんですね」
「ああ、だからな」
「お勉強に励んでね」
 こう言ってだ。笑顔でだ。
 二人は三人とラージ達と一緒に学校に送りだ。それからだ。
「じゃあ俺達もな」
「仕事に行きましょう」
「はい、それでは今から」
「一緒に」
 四人もだ。笑顔で軍に向かうのだった。彼等は家族になっていた。
 ダイテツはクロガネの艦橋でだ。
 テツヤ、そしてエイタに尋ねていた。
「今日もか」
「はい、出撃はありません」
「宇宙も平和になっています」
「そうか。それは何よりだ」
 それを聞いてだ。ダイテツはまずはよしとした。
 そのうえでだ。二人にこんなことを言った。
「では勤務時間までは配置につきだ」
「それが終わればですね」
「いつも通りですね」
「当直を残して全員帰宅だ」
 そうしていいというのである。
「わかったな。それではだ」
「はい、わかりました」
「では今は」
「軍人が暇なのはいいことだ」
 ダイテツはこんなことも言った。
「至ってな」
「そうですね。平和が一番です」
「本当に」
 二人もそう応えてだ。今はだった。
 クロガネの艦橋で平和に過ごしだ。日々を過ごしていた。
 リーもだ。ハガネの艦橋においてだ。
 部下達からだ。こう報告を受けていた。
「今日もです」
「予定はありません」
「ではだ」
 その話を聞いてだ。リーは言った。
「三日後の訓練の為の出航以外はだな」
「急な災害でもない限りは」
「出航はありません」
「わかった」 
 そこまで聞いて頷いたリーだった。そしてだ。
 今度はだ。部下達にこう話したのだった。
「では三日後の訓練から帰ればだ」
「艦長は休暇でしたね」
「それを取られていましたね」
「妹の結婚式だ」
 微かにだ。唇を綻ばせての言葉だった。
「それに出なくてはならない」
「北京に戻られ」
「そしてですね」
「暫く指揮は副長に任せる」
 仕事の引継ぎは忘れない。
「ではその間はだ」
「はい、それではです」
「その間はお任せ下さい」
「そうさせてもらう。それではだ」
 こうしたことを話してだ。そのうえでだ。
 部下達にだ。こんなことも話した。
「やはり軍人はだ」
「軍人は?」
「といいますと」
「仕事がないことが最高だな」
 こう言うのだった。
「やはりな」
「あの、それはどうも」
「艦長のお言葉に聞こえませんが」
 これまでの生真面目な軍人気質のリーを知っている者はだ。驚くしかない言葉だった。
 それで言ったのだがそれに対してだ。リーはこう返した。
「私とて変わる」
「変わる、ですか」
「だからですか」
「そうだ。今の私はそう考えている」
 また微かに笑って言うのだった。
「それだけ平和ということだからな」
「ではその平和を守ってですね」
「これからは」
「そうするべきだな」
 こうした話をしながらだ。リーは今は穏やかにだ。勤務に就いていた。
 レフィーナも軍に残っていた。そしてだ。
 共にいるショーンとユンとお茶を飲みながら話をしていた。
「戦いが終わって」
「本当に穏やかになりましたね」
 まずはショーンとユンが笑顔で言う。
「こうしてお茶を飲むのもです」
「前よりもずっと気持ちが楽です」
「そうですね。戦争中はやはり」
 どういった飲み方になるのか。レフィーナは言うのだった。
「穏やかに飲めませんから」
「どうしても戦闘中の息抜きになります」
「こうして心から穏やかにという訳にはいきませんから」
「そうですね。ですが」
 今は違っていた。それでだ。
 レフィーナもだ。心から穏やかな顔になってだ。
 紅茶を飲みだ。平和な時間を過ごしていた。
 その中でだ。ふとユンに尋ねたのだった。
「それでユンちゃんは」
「私ですか?」
「最近麻雀に凝ってるそうね」
「他にも多くの方が興味を持たれてまして」
「確かマリュー艦長も?」
「はい、そうです」
 笑顔で応えるユンだった。
「他にも私の知り合いの娘が一杯出ています」
「何か面白そうね」
「ミリアリアちゃんもはじめましたし」
「あら、それは豪華ね」
「全部で七十人位います。凄いですよ」
 何故か麻雀の話もしてだ。穏やかな時間を過ごしているのだった。
 ジャーダとガーネットは結婚した。そしてだ。
 カチーナからだ。自宅でこんなことを言われていた。
「いきなり双子かよ」
「ああ、そうだよ」
「男の子と女の子ね」
 二人も笑顔でカチーナの言葉に応えて言う。
「もうな。いきなりな」
「幸せが二倍よ」
「何か凄いですね」
 ラッセルも笑顔で言う。
「戦いが終わってすぐにですし」
「何ていうかな。俺達もな」
「幸せが回ってきた幹事かしら」
「そうですね」
 ラーダもいた。彼女は皆にカレーを出している。
 そうしながらだ。こう言うのだった。
「これからはです。平和になり」
「多くの人がですね」
「幸せになるべきです」
 ラッセルに対しても言うラーダだった。
「そしてこの平和が」
「ああ、ずっとな」
「続くようにね」
 そのジャーダとガーネットが応える。
「俺達はこれからもな」
「軍にいるわ」
「あたしもだよ」
「僕もです」
 軍に残るのはカチーナとラッセルもだった。
「まあガーネットも正式に復帰したらね」
「また一緒にやりましょう」
「勿論私もです」
 ラーダも微笑んで言う。
「軍に残りますので」
「そうか。それで隊長は」
「誰なんだい?」
 ジャーダとガーネットは微笑んで指揮官は誰かを尋ねた。
「やっぱりカチーナかい?」
「じゃあその時は宜しくね」
「いや、あたしじゃないさ指揮官は」
 そのカチーナがそのことを否定する。
 そしてだ。そこにカイが来て言う。
「俺が指揮官を務めることになった」
「へえ、大尉じゃなかったもう少佐か」
「少佐が指揮官なんだね」
「そうだ。ではこれからもな」
「ああ、こちらこそな」
「宜しくね」
 彼等はカイの下でだ。軍人として未来の為に働くことになったのだった。
 シャインはアラドとゼオラに尋ねていた。
「では皆さんは」
「ああ、まあ軍には残るけれどな」
「それでもね」 
 そのアラドとゼオラがシャインに話す。
「スクールの皆を探すよ」
「それでまた一緒に暮らせたらいいと思ってるわ」
「私も」
 ラトゥーニもだった。
「二人と一緒に」
「私達だけが生き残っている筈がないから」
 オウカもいた。
「だからね。皆を探すわ」
「そうですか。では及ばずながら」
 シャインはここで四人に対して言った。
「私も協力させて下さい。その探す旅に」
「えっ、いいのかよ」
「シャインもなの!?」
「はい、私達は友達ですね」
 シャインは微笑んで驚くアラドとゼオラに話す。
「ですから」
「そうしてくれるのなら有り難いけれどな」
「けれど。見つかるかどうかわからないのに」
「いえ、希望は必ずあります」
 シャインは微笑みのまま再び言う。
「ですから私も」
「そう、それなら」
「御願いするわ」
 ラトゥーニとオウカはシャインのその気持ちを汲み取ってだった。
 その言葉と心を受け入れた。そうしてだった。
「私達五人で」
「他の皆を探しましょう」
 二人がこう言うとだった。アラドとゼオラもだった。
「じゃあシャインも」
「御願いするわね」 
 こうしてだ。彼等は五人になった。その中でだ。
 アラドはだ。ふと言った。
「ただ。クォヴレーがな」
「あの戦いの後行方が知れないけれど」
「まさかな。イングラム少佐みたいに」
「番人になったのかしら」
 ふとだ。彼のことも思うのだった。彼のことは忘れていなかった。
 アイビスは今スレイ達と共にいた。そうしてだ。
 今まさにだ。銀河に旅立とうとしていたのだった。
「じゃあ行こうか」
「ええ、私達の願いの」
「銀河への旅にだ」
「いよいよはじまるんだね」
 アイビスは微笑みツグミとスレイに言った。
「あたし達の夢がね」
「そうよ。長かったけれど」
「いよいよだ」
「では三人共」
 フィリオが管制室から三人に言う。
「長いお別れになるが」
「ああ、それじゃあね」
「今から」
「行って来ます」
「また会おう」
 フィリオは妹達にこう告げた。そうしてだ。三人の旅立ちを見送るのだった。


エピローグ6   完


                                     2011・8・3
 

 

エピローグ7

                  エピローグ7
バンプレストオリジナル
 ククルは地底に戻って来た。そこには。
 誰もいなかった。しかしだった。
 ゼンガーが来てだ。彼女に言った。
「ここにいるのか」
「そうする」
 ククルは彼に静かに答えた。
「ここが私の国なのだからな」
「そうか。しかしだ」
「わかっている。だが僅かな生き残りがいればだ」
 どうするかというのだ。その時こそ。
「彼等を集めそのうえでだ」
「あらたな国を築くか」
「地上と戦うのではなく融和していく国を築く」
 これが今のククルの願いだった。
「無益な戦いではなくな」
「そうか。それならばだ」
「それなら。どうだというのだ」
「俺も力を貸そう」
「私もです」
 ゼンガーだけでなくイルイも出て来て言う。
「三人ならばだ」
「一人よりも。誰かを探すのにいい筈です」
「いいのか。私は」
「友だ」
 ゼンガーは躊躇いを見せるククルに告げた。
「友だからだ」
「いいというのか」
「そうだ。それではだ」
「三人で見つけ。そして」
「再び築こう。地底に国を」
 こう言ってだった。ククルは誓うのだった。地底において。
 修羅の国にだ。彼等は帰って来た。
 フォルカは仲間達に言った。
「もうだ」
「そうだな。戦いはな」
「もうしない」
 フェルナンドとアルティスが応える。
「修羅王も倒れ摂理が変わった」
「我等は戦いを捨てて生きよう」
「難しいことだろう」
 アリオンはこのことをあえて言った。
「だが。それでもだ」
「そうですね。あらゆる世界での戦いは終わりました」
 メイシスはアリオンのその言葉に応えて言う。
「そしてこの世界でも」
「戦いは終わった。そしてだ」
 また言うフォルカだった。
「その無益さもわかった」
「戦いは何も生み出しません」
 メイシスはフォルカにも話した。
「ですから」
「俺達は最早修羅ではない」
 フォルカは言った。
「人だ。人として生きよう」
「ではだ」
「これからはだ」
「我等は」
 アルティスにフェルナンド、アリオンが続いてだった。
「人として」
「この拳を封印し」
「生きよう」
 そのことを誓い合ってだった。修羅達は修羅であることを捨て人になったのだった。
 ヒューゴはアクアにだ。基地で話していた。
「俺は軍に残る」
「私もよ」
 アクアは微笑んでヒューゴのその言葉に答えた。
「それでね」
「それで。何だ」
「一緒に何時までもいるから」
 こうだ。ヒューゴに対して言うのだった。
「それでいいわよね」
「一緒か」
「そう。パートナーなのは仕事のことだけじゃなくて」
 少し赤くなってだ。アクアは話すのだった。
「これからはそれ以外のことでも」
「いいのか、俺で」
 ヒューゴは表情を変えずアクアに問い返した。
「俺は無愛想で人付き合いも悪いが」
「いいのよ、ヒューゴは他にもいいところが一杯あるから」
「だからか」
「そうよ。だからよ」
 こうヒューゴに言うのである。
「そうしたいのよ」
「俺もだ」
 そしてだ。ヒューゴも言うのだった。
「そうしたい」
「ならそれで決まりね」
「そうなるな」
 そう話す二人のところにだ。アルベロが来た。
 そしてだ。こう二人に言うのだった。
「おい、そろそろ訓練をはじめるぞ」
「わかりました」
「じゃあ今から行きます」
「そうだ、早くしろ」
 彼等もまた。新しい道を歩もうとしていた。二人で。
 男秋水が妹に尋ねていた。
「本当に色々あったがな」
「こうして顕在だしね。二人共」
「ああ、だからな」
「これからはどうするかだけれど」
「それはもう決まってるわ」
 フェアリが兄妹に対して言うのだった。
「二人共グループの後継者としてね」
「勉強かよ」
「それなのね」
「そうよ。やることは一杯あるから」
 フェアリは微笑んで二人に話す。
「退屈はしないわよ」
「嬉しいのか嬉しくないのか」
「わからないわよね」
「全くだぜ」
 少しぼやいて言う二人だった。その二人のところにだ。
 ジークとサリーが来てだ。こう言ってきた。
「俺達はあんた達のグループの企業にな」
「就職することになったわ」
「えっ、そうなのかよ」
「うちのグループに」
「ああ、テストパイロットとしてな」
「それになるから」
 こう話す二人だった。
「だからこれからもな」
「宜しくね」
「一緒にいるのはいいけれどよ」
「一体何時の間に決まったのよ」
「親父かお袋が決めたのか?」
「まさか」
「私が総帥と副総帥にお話しておいたわ」
 フェアリが言う。つまり二人の両親にだ。
「だからそう決まったのよ」
「ああ、それでか」
「そういうことなのね」
「そうさ。だから今度はパイロットとしてな」
「宜しくね」
 笑顔で話すジークとサリーだった。彼等にも未来があった。
 トウマはミナキと一緒にいた。そこは研究所だった。
 そこにだ。今はバランとルリアもいた。そうしてだ。
 四人で話をしていた。その場でだ。
 バランがバルマーから持って来た酒を豪快に飲みながらトウマに問うた。
「それで御主はもうフリーターでないのか」
「ああ、軍属だったりこの研究所の所長だったりパイロットだったり職員だったりするけれどな」
「一応パイロットになります」
 トウマだけでなくミナキも笑顔で話す。
「定職に就けたぜ」
「私もこの研究所の科学者です」
「そうか。それは何よりだ」
「いいことですね」
 バランだけでなくルリアも笑顔で述べる。
「そちらの世界では仕事が大事だそうだからな」
「おめでとうございます」
「有り難うな。それでな」
「むっ、それでか」
「一体何でしょうか」
「あんた達は今どうしてるんだ?」
 トウマが二人に対して尋ねる。
「バルマーの復興にあたってるのはわかるんだがな」
「うむ、その通りだ」
「こうして外交の使者として地球に来るだけではなくです」
「本星でも多忙ぞ」
「やることは多いです」
「そうか。そっちも忙しいだな」
「そうみたいね」
 トウマとミナキは二人のその話を聞いて頷いてだ。
 そうしてだ。こう言うのだった。
「アルマナさんもそうみたいだしな」
「今は」
「うむ、今は摂政としてだ」
「バルマーの為に働いておられます」
「姫様は女性なのでバルマーの霊帝にはなれぬが」
「次の霊帝が決まるまでの間です」
 そのだ。摂政になっているというのだ。
「その役目を務めておられる」
「懸命に」
「そうか。だから会えないんだな」
「残念ですが仕方ありませんね」
「そうでもありませんよ」
 しかしここで、だった。不意にだ。
 アルマナの声がしてだ。彼女がホノグラフで宙に出て来た。 
 そのうえでだ。一同に話すのだった。
「私は楽しくやっていますよ」
「あれっ、ちゃんと機械で」
「お話できるのね」
 二人はこのことにまずは驚いた。
 しかしそれをすぐに抑えてだ。そのホノグラフのアルマナに尋ねるのだった。
「そっちは大丈夫なのか?」
「本当に」
「ええl、何とかね」
 アルマナは微笑んで二人に答える。
「無事よ」
「そうか。それだったらいいんだけれどな」
「私も」
「ただ。残念なのは」
「ここにいないことか」
「そのことね」
「地球に行けたら」
 こう言うとだった。
 すぐにだ。彼女の傍にジュデッカ=ゴッツォが出て来た。
 そのうえでだ。アルマナに厳しい顔で言うのである。
「摂政、その様なことは」
「わかっています。冗談です」
「そういうことにしておいて下さい」
 見れば視線も厳しい。
「まことに」
「摂政というものは不便ですね」
 苦笑いと共に言うアルマナだった。
「全く」
「まあまた時が来ればな」
「会いましょう」
「その時を楽しみにしています」
 笑顔で応えるアルマナだった。何だかんだで彼女も幸せだった。
 セレーナは今はだ。
 エルマにだ。町を歩きながら話していた。
「どう。天職でしょ」
「まあそうですね」
 エルマはとりあえずは否定しなかった。
「セレーナさんには合っています」
「だからこの職に天職したのよ」
「探偵にですね」
「そうよ。向いてるからね」
「確かに向いてはいます」
 アルマもこのことは認める。
「しかしです」
「けれどなの」
「セレーナさんは考えるよりになんですね」
「そうよ。まず動くのよ」
 このことは探偵になっても同じだった。
「動いて事件を解決するのよ」
「本当にそうした感じですね」
「探偵は足よ」
 今度はこんなことを言う。
「足で事件を解決するのよ」
「そしてピンチの時は」
「拳に銃よ」
 次はこれだった。
「そして鞭よ」
「何かまんまハードボイルドですね」
「だからあたしに合うのよ。クールかつ純情に」
 何気に言葉を付け加えている。
「それがあたしの探偵術よ」
「純情ですか」
「そう。ハニー=ウェストみたいにね」
「実はクールでもないのに」
「何よ。何か言いたいの?」
「いえ、別に」
 そこから先はだ。エルマは打ち消して話した。
「とにかく。早く子猫を見つけて」
「ええ。事件を解決させましょう」
「探偵としてですね」
「そうするわ。じゃあね」
「子猫を探すのもですね」
 エルマはここでこんなことを言う。
「中々大変ですよね」
「そうよね。けれどコツがあるのよ」
「子猫を探すコツですか」
「勘よ」
 にこりと笑って言うのだった。
「それが大事なのよ」
「勘って」
「戦場で培った勘、女の勘がね」
 そういったものでだ。探すというのだ。探偵としてだ。セレーナは生きていた。 
 コウタとショウコは学生に戻っていた。しかしだ。
 その彼等にだ。ロアとエミィが精神から声をかけてきていた。
「どうだ、今の生活は」
「楽しいかしら」
「ああ、凄くな」
「毎日楽しいわよ」
 笑顔で答える二人だった。
「やっぱり平和がな」
「一番よ」
 笑顔で言う二人だった。
「だからな」
「この生活に満足しているわ」
「そうか。なら俺達もだ」
「その貴方達を見てね」
 どうするかというのだ。
「そうして楽しもう」
「そうさせてもらうわ」
「幸せを見れば幸せになる」
「そういうことなのね」
「そうだ。だからだ」
「そうさせてもらうわ」
 笑顔で言う二人だった。二人が選んだ道はそれだった。
 セツコはだ。軍に残ってだった。
 デンゼルとトビにだ。こんなことを話していた。
「今日は何もなしですか」
「ああ、訓練もなしだ」
「デスクワークだけだってな」 
 二人は笑顔でセツコに話す。
「だから今はだ」
「ゆっくり休もうな」
「そうですか。何か戦争が終わり」
 どうかとだ。セツコは言うのだった。
「暇になりましたね」
「軍人は暇に限る」
「忙しいってことはそれだけ世の中が大変だということだからな」
「そうですね。確かに」
 セツコもそれはわかった。それでだった。
 今は頷くだ。それでデスクワークに専念することにしたのだった。
 デンセルがだ。トビーに言っていた。
「じゃあ今日はな」
「また掘り出しものを探しに言ってよね」
「ああ、儲けるぞ」
 ジャンク屋としてだ。言っているのだった。
「またいいものを見つけるぞ」
「モビルスーツとか見つかるといいね」
「ああ、旧ザクとかな」 
 デンゼルは笑ってこのモビルスーツの話を出した。
「あれは売れるからな」
「そうだよね。普通のザクも売れるけれど」
「旧ザクは別格だからな」
「レアものだしね」
「片手だけでもいいんだ」
 それだけでも価値があるというのだ。
「絶対に見つけるぞ」
「少なくとも儲けないとね」
 彼等も彼等でだ。逞しく生きているのだった。
 メールもだ。そこに来て来てだった。
 二人にだ。こう言った。
「相変わらずかな」
「ああ、一緒に来るか?」
「大儲けしようよ」 
 二人はそのメールも誘ってだ。今を充実して生きていた。
 ジョシュアとリリアーナは。
 ウェントス、そしてグラキエースと共にパトロールをしながら話していた。
「この辺りも平和になったな」
「そうね。もう宇宙海賊も出ないし」
 リリアーナがジョシュアの言葉に応える。
「戦争が終わって」
「どんどん落ち着いてきてるな」
「そうだな。もう当分大きな戦いもない」
「それならね」
 ウェントスとグラキエースも話す。
「こっちも暇でいられるな」
「そうなるわね」
「色々あったけれどな」
 先の戦いのことをだ。ジョシュアは言う。
「それが終わったらね」
「ええ、念願の平和を手に入れて」
「後はこの平和を守る」
「それが大事ね」
 そうしたことを話しながらだ。彼等は穏やかにパトロールを続けていた。
 統夜はだ。カルヴィナに尋ねていた。
「カルヴィナさんはやっぱり」
「ええ、軍に残るわ」
 彼女はそうするというのだ。
「元々そこにいたからね」
「そうですね」
「君はどうするの?」
 統夜に尋ねるカルヴィナだった。
「それで」
「僕ですか」
「やっぱり学生に戻るのね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「家族は増えました」
 こう言うとだった。ここでだ。
 フェスティアにカティア、そしてメルアが出て来た。
 三人でだ。それぞれ言うのである。
「これからは」
「三人で」
「御願いね」
「こうなったんです」
 笑顔でだ。統夜はカルヴィナに話す。
「妹が三人できました」
「そう。賑やかになるわね」
「この娘達も学校に入学することになりました」
「はい、ですから」
「同じ学園、同じお家で」
「暮らすことになったの」
「余計に賑やかね」
 カルヴィナはその四人にだ。笑顔で話すのだった。
 カズマはミヒロと共にだ。パトロールにあたっていた。
 その中でだ。彼はこう妹に言った。
「まさかな」
「軍に残ることは考えてなかったのね」
「ああ、元の海賊に戻ると思ってた」
 そうだったというのだ。
「それがな。軍に残るなんてな」
「まあね。元々前科者になるし私達」
 海賊行為自体がだというのだ。
「それを考えたらね」
「逃げられないか」
「軍に残るなら前科は問わないって言ってくれるし」
 そうだというのだ。
「だから残ったんだしね」
「あの親父がそれでいいって言ったな」
「まあ色々とあったからね、お父さんも」
 具体的にはだ。どうかというとだ。
「リーさんとしょっちゅう衝突して」
「あの二人本当に仲いいよな」
「リーさんがいるから軍に残るみたいだしね」
「それもあってなんだな」
「そうみたいよ」
「そうか」
 話を聞いてだ。とりあえずだった。
 カズマも納得した。そのうえでパトロールをするのだった。
 そしてだ。他のブレスフィールド一家は。
 ハガネの艦橋にいた。今はリーはいない。 
 ブレスフィールドがだ。こう言った。
「暇だな」
「暇ですか?」
「今は」
「うむ、暇だな」
 こうだ。シホミとアカネに言うのである。
「どうもな」
「そうですね。ですが」
「御給料は入るから」
「はい、軍人でいるだけでですよ」
 それをホリスも言う。
「これっていいことですよ」
「わしは一攫千金の方が肌に合ってるが」
 それでもだとだ。ブレスフィールドは笑って言った。
「まあいい。このまま軍人として生きるか」
「そうしますか」
「あの堅物艦長と一緒に」
「あの艦長をからかうのが今の一番の楽しみだ」
 堂々と言う彼だった。
「では今日もな。艦橋に来ればな」
「やれやれ、本当に仲がいいですね」
 ホリスもそんな彼に苦笑いだった。
 元の世界に戻って。アークライト達は。
 それぞれのマシンを前にしてだ。こう話していた。
「終わったな」
「そうね」
 エルリッヒがアークライトの言葉に頷く。
「長い戦いだったけれど」
「それが終わった」
「しかしだ」
 リッシュが言う。
「また何かあればな」
「そうね。その時はね」
 リッシュの言葉にセレインが応える。
「また、ね」
「この機体に乗ることになる」
 こう言うリッシュだった。
「その時はまた来るだろう」
「しかしだ」
 今度はブラッドが言う。
「次の戦いも一人ではない」
「そうだな」
 カーツがブラッドのその言葉に頷く。
「俺達がいて様々な世界の仲間達がいる」
「だからだ」
 それでだとだ。ブラッドはまた言った。
「今は一人じゃない」
「そうね。だからね」
「絶望なんてしないで」
 マナミとアイシャも言う。
「若し戦いが起こっても」
「最後の最後に勝てばいいわね」
「では今はだ」
 アークライトがその仲間達に言う。
「戦いが終わったことを祝ってだ」
「そうだな。それではだ」
「今から」
「飲むか」
「そうしよう」
 こう話してだ。彼等は今は宴に入るのだった。
 ミストはアンジェリカとシェルディアに話していた。
「二人共残ったのか」
「色々考えたけれど」
「そうしたよ」
 二人は笑顔でミストに答える。
「軍にね」
「残ることにしたのよ」
「そうなのか」
 ミストは二人の話を聞いてだ。こう言ったのだった。
「俺だけかって思ったんだけれどな」
「そうね。実は私も」
「ミストは残らないって思ってたけれど」
 お互いにだ。そう思いあっていたのだった。
「違ったわね」
「どうしてなの?」
「最初はさ」
 ミスト自身もだ。どうだったかというと。
「残らないつもりだったよ」
「そうだったの」
「ミスト自身も」
「また気ままに生きるつもりだったさ」
「それがどうして?」
「軍に残ったの?」
「皆を見てると」 
 これまで戦った仲間達を見てだというのだ。
「気持ちが変わったんだよ」
「どういう風に?」
「それで」
「ああ、しっかりと地に足をつけて」
 そうしてだというのだ。
「皆の為に生きていこうってな」
「そう決めてなのね」
「それで軍に残って」
「ああ。平和を守ろうって思ったんだよ」
 微笑んでだ。二人に話したのだった。
「そうしたんだよ」
「成程ね。そういうことね」
「だからだったんだ」
「俺はこれから軍に残ってな」
 それから。どうするかというとだ。
「平和を守ってやっていくよ」
「そうね。私達と同じね」
「そうね。じゃあ」
「これからも三人で」
「そうしていこう」
 笑顔で応える二人だった。三人も新しい道に足を踏み入れていた。

オリジナル
 タダナオとオザワはそのまま軍に残った。今彼等は。
 日本の呉の基地にいる。そこでだ。
 二人でいてだ。ぼやきながら話をしていた。
「なあ、俺達ってな」
「うん、そうだね」
 オザワがタダナオの言葉に頷いて応える。
「気付いたらさ」
「ロンド=ベルの中で全然目立たないようになって」
「ラ=ギアスから百万年先の銀河にまで行ったのに」
「全然目立たなかったよな」
「本当にね」
「実はあれらしいぜ」
 ここでタダナオはぼやきながら言う。
「俺達この作品の主役になる予定だったんだよ」
「最初はそうだったみたいだね」
「それで出したけれどな」
「セニア王女との絡みも入れて」
「けれどな」
 だが、それがだというのだ。
「皆次から次に出て来ただろ」
「そもそもこの作品ここまで大きくするつもりなかったらしいね」
「ああ、話が進むにつれて登場作品も増えて」
 そしてだった。
「登場人物も増えてな」
「特にロンド=ベルに入る人間が」
「色々あったらしいんだよ。SEEDだってな」
 この作品の話にもなる。
「最初はガオガイガーと一緒で出す予定じゃなかったけれどな」
「出て来て。シリーズと一緒に」
「それでキラとシンが主役になってな」
「元々の主人公達だったし」
「アレンさんやフェイさん、ティターンズの面々、グン=ジェム隊も仲間になって」
 当初から登場予定作品の登場人物達もだった。
「増えていってな」
「そうしていって」
「バンプレストオリジナルキャラも出して」
 その彼等に。
「あとZからも出してな」
「それで彼等がどんどん出て来て」
「俺達が忘れられたんだよ」
「いつも話が進んでから気付いて」
「で、すぐ忘れられてな」
「僕達の出番なくなったんだね」
「致命的なのはあれだよ」
 あれとは何か。それは。
「トウマ達出て来たよな」
「それで彼等が物語の主軸の一つになって」
「俺達は完全に忘れ去られたんだよ」
「まだ封印戦争の最初の頃は出ていたのにね」
「そうだったよな。もう銀河に出てからはな」
「出番。完全に消えたし」
「ギガンティックとかマクロス出して完全に忘れられたんだよ」
 彼等の方の比重が大きいせいでだ。そうなってしまい。
「で、俺達今ここにいるんだよ」
「長い戦いだったし」
「皆それなりに見せ場もあったのにな」
「僕達はずっと忘れられて」
「そのまま終わったな」
「そうだね。まあそれでも」
 オザワはぼやきながらも言った。
「最後の最後にこうして出られて」
「いいか?生き残ったしな」
「そうだね。じゃあ皆さん」
 こちらをだ。二人同時に向いてだった。
「これまで読んでくれて有り難うございます」
「スーポーロボット大戦パーフェクトはこれで」
 オザワだけでなくタダナオも言う。
「終わりです」
「俺達の長い戦いはこれで終わりました」
「また何時か会う時が来たら宜しく御願いします」
「俺達今度はもっと目立ちますんで」
「それは無理かも知れないけれど」
 自嘲も入る。
「けれどそれでも」
「頑張りますから」
「本当に最後までお付き合いしてくれて」
「有り難うございました」
 二人同時にこう言ってだ。頭を下げたのだった。
 青い空が無限に広がっていた。今その青い空を誰もが見上げて。平和の訪れを心から喜ぶのだった。 
 だがここでだ。二人のところにクォヴレーが突然出て来て言ってきた。
「俺もいる」
「ああ、クォヴレーじゃないか」
「行方知れずになってたけれどいたんだ」
「俺は因果律の番人になった」
 イングラムの跡を継いでだというのだ。
「これから。果てしない仕事をしていく」
「そうか。じゃあ御前もな」
「頑張ってくれよ」
「そうする。しかし今度また何処かで会えば」
「ああ、その時はな」
「皆で再会を祝して」
「楽しくやろう」
 最後に。最初は考えられなかった微笑みを浮かべて。クォヴレーは言ったのだった。


スーパーロボット大戦パーフェクト完結篇   完

スーパーロボット大戦パーフェクトシリーズ   完


                                2011・8・6