男はそこを狙え


 

第一章

                男はそこを狙え
 中谷亜美は空手五段合気道四段である、兎に角強いことで有名で会社でもそのことで何かと言われる。
 黒髪を後ろで束ね明るく気の強そうな顔立ちである。背は一六三センチ位であり今も毎日空手や合気道をしているので引き締まった体格をしている。
 その彼女にだ、同期の湯川恵美子はこんなことを言った。細面で大きな垂れ目であり泣き黒子がある。長い黒髪を波立たせていてスタイルはかなりいい。
「最近住んでいるところが心配なの」
「治安が?」
「そうなの」 
 一緒に会社の傍の食堂で昼食を食べつつ話した、二人共カレーライスを食べている。
「実は」
「引っ越したら?お金あったら」
 亜美は恵美子にまずはこう言った。
「やっぱり安全な場所にいることがね」
「一番ね」
「だからね、治安が悪そうなところからはね」
「出るのが一番ね」
「何かある前にね」
「そうなのね」
「だからね」 
 それでとだ、亜美はカレーを食べつつ言うのだった。
「お金があったら」
「実家会社に通える距離だけれど」
「だったらね」
 亜美はそれならと返した。
「お金なかったら」
「実家ね」
「ご両親に事情お話したら」
 今住んでいるその場所のというのだ。
「そうしたらいいわ」
「そうなのね」
「ご両親そうしたことわかる人?」
「ええ」
 恵美子はその通りだと答えた。
「ちゃんとね」
「だったらね」
「お父さんとお母さんに話して」
「実家に戻ったらいいわ」
「それじゃあね、ただあんた強いから」 
 恵美子は亜美が空手や合気道に長けていることを話した。
「それでね」
「そっちのアドバイスをなの」
「貰えると思ったけれど」
「いや、やっぱり危ない場所にいないことがよ」
 スプーンを動かしつつだ、亜美は答えた。
「一番だから」
「護身術じゃなくてなの」
「それを言ったのよ」
「そうなのね、ただ何か他に教えて欲しいけれど」
 恵美子は自分の考えを述べた。
「何かね」
「だったら警棒とか防犯ブザーとかスタンガンをね」
「そういうの持つことなの」
「襲って来る奴が武器持ってたらって思ったら」
 このことを想定したならというのだ。 

 

第二章

「その方がいいわよ」
「そうなの。他には」
「どうすればいいか」
「襲われたら」
「後は急所攻撃ね」
 亜美はこれだと言い切った。
「ほら、男の人のあの部分を」
「あそこね」
「いざとなったら蹴飛ばすなり叩くなり、もう何でも攻撃したらね」
 そうすればというのだ。
「いいのよ、相手が一人なら」
「それでいけるの」
「もうあそこを攻撃したら」
 そうすればというのだ。
「男の人ならイチコロでしょ」
「言われてみたら」
「だからね」
「いざとなったら」
「そこを一撃よ」
「凄いわね」
「凄くないわよ、もうこれが一番効くから」 
 だからだというのだ。
「やっちゃえばいいのよ」
「そうなの」
「いざとなったらね、いいわね」
「ええ。そうすればいいのね」
「そうよ、ただ安全第一だから」 
 またこう言う亜美だった。
「今のうちにね」
「ええ、今夜お父さんとお母さんに相談するわ」 
 恵美子はこう答えた、そしてすぐに実家に戻ってそこから通勤する様になった。だが後日亜美に行言った。
「言い寄って来る男がいてしつこいと引き千切るって言ったら」
「引いたの」
「逃げたわ。男の人ってやっぱり」
「そう、あそこはね」
「最大の弱点ね」
「だからいざとなったらよ」
「あそこを攻撃したらいいのね」
「そうよ、覚えておいてね」
「そうするわ」
「私は攻撃したことないけれど」
 実際にとだ、亜美は答えた。
「覚えておいてね」
「いざという時は」
「あそこを一撃よ」
 これで済むとだ、亜美はこの時も言った。そして恵美子と二人で恵美子が難を逃れたことを喜んだのだった。


男はそこを狙え   完


                   2024・2・15