満員電車の女子高生


 

第一章

        満員電車の女子高生
 津山由衣は高校に入ってから電車通勤である、黒々とした光沢のある髪を伸ばし編んで左肩に垂らしている。
 大きな垂れ目で赤い色気のある感じの唇で一五七位の背で胸が大きく脚が奇麗である。青いブレザーとグレーのミニスカートと赤いネクタイに白いブレザーの制服である。中学までは歩いて学校に通っていたが。
「いや、電車通勤ってね」
「疲れる?」
「そうなの?」
「私学校まで乗り換えもあって」 
 クラスメイト達にクラスの中で話した。
「新宿が途中にあるし」
「ああ、あそこね」
「新宿の朝って凄いらしいわね」
「もう滅茶苦茶人が多いのよね」
「ラッシュ時は特にね、そしてそのラッシュ時にね」
 まさにその時にというのだ。
「私は通勤してるから」
「それは大変ね」
「私バス通勤だしね」
「私は自転車だしね」
「そこまでしないからね」
「行きたい高校に行けて」
 由衣はそれでと言った。
「学校生活も楽しいけれど」
「問題は登校の時ね」
「どうしても」
「そうなるのね」
「何かいい方法ないかしら」
 由衣はぼやく様に言った、彼女にとってはじめての電車通勤は何かと大変なものだった。それを入学の時から味わっていたが。
 そんな中でだ、クラスメイトの落合円切れ長の狐目で細長い眉に細面ですっきりした顎と小さな赤い唇で黒髪をロングしたすらりとした長身の彼女に誘いをかけられた。
「夏にコミケ行かない?」
「コミケってあの」
「そう、同人誌売ってるね」
 円は由衣に笑顔で話した。
「それにね」
「行くのね」
「どう?」
「ええ、実は一度ね」
 由衣は円の申し出に笑顔で応えた。
「コミケ行ってみたかったの」
「色々な同人誌あるから」
「人気のアニメや漫画の」
「これがいいのよ、まあエロいのもね」
「あるわね」
「そこは好き嫌いが別れるけれど」
 それでもというのだ。
「面白い本が多いし」
「行っていいのね」
「そう、だからね」
「コミケになのね」
「誘いかけたけれど」
「それじゃあね」 
 由衣は漫画好きの円に誘いをかけられ笑顔でその誘いを受けた、そうして夏にコミケに行ってみると。 

 

第二章

 普通に平気で中に入り会場の中を行き来していた、円はそんな彼女を見て少し驚いて彼女に言った。
「コミケはじめてよね」
「そうよ」
 由衣はあっさりとした口調で答えた。
「今回がね」
「いや、コミケって人多いから」
 実際に会場の中は文字通りの人ゴミの中にある。
「だからね」
「人ゴミの中を進んで」
「しかも熱いのに」 
 人が多いだけに熱気が凄いのだ。
「それでもなのね」
「平気だっていうの」
「だからはじめてには見えないけれど」
「これ位朝の新宿駅じゃ普通だから」 
 あっさりとした口調でだ、由衣は答えた。
「だからね」
「慣れてるの」
「毎朝よ」
 由衣は円にうんざりとした顔になって言った。
「こんなのよ」
「人ゴミの中なのね」
「その中を進んでね」
 そうしてというのだ。
「登校してるから」
「慣れてるのね」
「そうなの」
 まさにというのだ。
「私はね」
「ううん、新宿駅ってそんなに凄いのね」
「昭和の頃はもっと凄かったって聞いてるけれどね」
 その頃はというのだ。
「今のお年寄りの人達が現役だったから」
「それでなのね」
「そう、だから」
 それでというのだ。
「コミケもね」
「普通なのね」
「そう、しかしあんな地獄もね」
 由衣はここではジト目になって述べた。
「役に立つのね」
「地獄なのね」
「そうよ、ただ帰りはふらりと新宿降りられるし」
 賑やかなその場所にというのだ。
「定期あるからあちこち行けるし」
「悪いことばかりじゃないのね」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「不平不満ばかり持つばかりじゃないわね」
「コミケも楽だし」
「そうなってるし、じゃあこれはっていう同人誌をね」
「買いましょう」
「一緒にね」 
 円に笑顔で応えた、そうしてだった。
 二人でコミケを巡った、そのうえでこれはという同人誌を買っていった。そしてその本達を家で楽しく読んだのだった。
 この時からも由衣は電車通勤を続けた、クラスメイト達と楽しく遊び部活にも励んだ。そうして卒業してからもずっと素晴らしい高校時代だと言うのだった。


満員電車の女子高生   完


                    2024・3・24