インフィニット・ストラトス 復讐を誓った血継限界の転生者


 

プロローグ1 転生先の人生

「それでどう責任をとってくれるのかな神様?」

「いや~それはな」

俺は先ほど死んだ。この神様のせいで。数時間前、俺が友達に勧められたら『IS(インフィニット・ストラトス)』を1巻から8巻まで大人買いして家に帰る途中、ブレーキが壊れたトラックが俺に突っ込んでき、俺をひき殺した。(ISの本は俺の血肉でべっちょりと汚れていた)。しかし、それはこの神様ミスだった。

「ハッハッハッ、さっき見せてもらった俺の死体のミンチと同じ位になるまで殴るから気を楽にしろ」

「いやいや、落ち着け若僧。お詫びにお前をそのラノベの世界に送ってやるから。なんなら特典付きで」

神様のその言葉に俺は拳をおさめた。特典付きでISの世界に行けるのか、確かにまだ読んで無い本の中身は気になる。しかも、それをじかに体験できるんだ。それはいいな。けど……この神様一発殴りてぇ~。

「特典っていくつまでお願いできるんだ?」

「そうだな~最高で五つまでだな。五つ以内ならどんな願いでも叶えてやる」

「じゃあ、俺が愛読しているマンガのNARUTOの『うちは一族の写輪眼』と『千手一族の木遁の血継限界』をくれ!」

「ハイハイまずは2つ。後何がいい?」

「そうだな~……俺をNARUTOに出てくる六道仙人の直系の一族の子供ってことにしてくれ」

「ハイハイっと、後の2つは?」

う~ん。後何が必要かな?原作を読む前だったから何が必要か分からん。あ、そうだ。

「なら、前のお願いになると普通の機体がついてこれないかもしれないから、俺の能力を最大限に引き出せる機体をくれ。できれば、ISの世界に俺の機体を作ってくれる人が知り合いみたいな感じでいてくれればいい」

「よしこれで五つだな。ならあの扉を開いて中に入れ。きっとそこは天国だぞ」

神は自分の後ろの扉を開くと、そこには真っ暗な空間が出ていた。ここをくぐればいいのか?

「じゃあな神様。もうミスなんかすんなよ!」

俺はそう言って、次の世界えと旅立った。

      
       ー◇◇◇◇◇◇◇ー

あれから6年が経ち、俺は紅原燐(こうはら りん)として家族とも幸せな時間を過ごしていた。今は双子の弟の火月(ひづき)と一つ下の妹、焔(ほむら)と一緒に父親が知り合いから借りた道場で戦闘訓練の練習中である。

「燐、火月、焔。休憩にしようか」

「「「ハーイ!!!」」」

俺達は今やっている戦闘訓練を止めて、父さんの淹れた麦茶に飛びついた。俺達は『六道仙人の子孫たる者としての修行』をしていた。もちろん忍術も訓練する。

「ね、ね、お父さん。刀奈ちゃんや簪ちゃんの所にはまたいかないの?」

妹の焔は、前にあった父さんの友達の更識さんの娘さん達とすごく仲が良くなった。姉の方はともかく妹の方は俺も見るなりビクビクしていたな。

「そうだな。お父さんも仕事で引っ越すからしばらくは会えなくなるな」

「え~!!!そんなぁ~!!!」

「焔。ダメだよ父さんを困らせたら」

「火月の言うとおりだぞ焔。それなら俺に忍術で勝てたら、つれててやるよ」

「お兄ちゃんはクルマ動かせないでしょ一!」

「ハハッ相変わらず楽しいなお前たちは」

父さんは俺達を見ながら、高らかに笑った。そして、つられるように俺達も笑った。俺にとって一番幸せだったこの時間、この家族を食い潰すあの悲劇は近付いていたこの頃の俺達はまだ知るよしもなかった。











 

 

プロローグ2 『白騎士事件』

父さんの仕事で引っ越して三年が経ち、俺は8歳になった。新しい学校では織斑一夏と篠ノ乃箒って奴らと仲良くなり、今は家族で海水浴に来ていた。

「燐達~そろそろ帰るぞ~!」

「ハイハイっと、いくぞ、火月、焔」

「分かったよ。燐」

「ハ~イ!」

俺達は車に乗り込み、母さんの運転する車で家に帰ることになった。時間は午後2時、家に着くのは何時位だろう?

「あらあら、燐以外全員寝ちゃたわね。お父さんもよだれ垂らしながら寝ちゃてるわよ」

「いびきうるさく無いだけいいと思うよ母さん」

「フフっそれもそうね~…あら、何かしら?」

母さんが不思議そうに見ている先を見ると、車が渋滞になっており、人が何人もどこかに走っている。マラソンとかの走りかたじゃない。何からか逃げているみたいだ。

「燐、火月と焔を起こして。あなた起きて!」

「二人共起きろ!」

俺と母さんが三人を起こすと三人共異変に気ずき、父さんが車を降りて、走っている人に話を聞くと、車に戻ってきて俺達全員を車から降りるよう指示した。

「父さん何があったの?」

「なんでも世界中からこの辺りに沢山のミサイルが放たれたらしい。だからみんな車とか捨てて安全な所に避難するみたいだ。俺達もそこに避難するぞ」

父さんはそう言って、俺達は車を捨て、避難所まで走った。山の奥にある避難所の距離は遠く、なかなか着かない。とゆうかこれは迷ってないか?

「避難所が見当たらないな。……なんだあれは?」

周りを確認していた父さんが不思議そうに海の方を見ていた。俺達も写輪眼を使い海の方を見ると、そこには白い鎧のようなものに身を包んだ一人の騎士が空に浮いていた。あれがISか。

「分からないわ。パワード・スーツみたいだけど?」

「見ろ!ミサイルだ!ミサイルが飛んできたぞ!」

ISが見つめている先から、沢山のミサイルがこちらに向かって飛んできた。俺達は急いでその場から走って離れる。その間もISの方を見るとあのISはミサイルを次々と切り落としていっている。

「すごい」

俺はその姿を見ているとミサイルを一つ取りこぼした。まだあの機体のセンサーは完璧じゃないのか。あの様子だと操縦者も気付いてないな。……て、あのミサイルこっちに来てるし。

「マズい!伏せろ!」

父さんの大声の指示で伏せると、ミサイルはここから少し上の所に当たり、ドオォォォォ!!!と豪快な爆発音をあげ、爆発した。爆風により、火のついた木が倒れてき、俺達の前で伏せていた父さんと母さんがその下敷きになった。

「父さん!母さん!」

「お父さん!お母さん!」

「だ、だいじょうぶか…三人共?」

「俺達の心配の前に自分達の心配をしろよ!火月、焔この木をどうにかしてどかすぞ!」

「「うん!」」

「止めろ!そんなこと……するな。助けられた所でもう父さんは歩けない。下半身の感覚が無いんだ。それにどうやら母さんを今ので寝てしまったみたいだ」

父さんはもう動かなくなった母さんを見ながらそう言って、自分の口から出てる血を指につけ、印を結び始めた。

「“口寄せの術”」

父さんが血のついた手を地面につけると、ポンッ!と音と煙をあげながら一匹の大蛇が出てきた。

「おぉ、久しいな友よ!っていったいどうしたんじゃ!?」

「蛇六…頼む。息子達を安全な所まで逃がしてくれ」

「ちょっと待てよ父さん!なんでそうなるんだよ!俺達だけ助かってもその後どうするんだよ!?」

「そうだよ父さん!」

「一緒に帰ろうよお父さん!」

「いいから言うことを聞きなさい!」

父さんは叫び、俺達を黙らせた。

「燐。お前は頭がいいし、才能があるそれでいて周りに気配りが出来る優しい子だ。火月は燐に負けずと頑張り、実力を上げてきた努力家だ。その自分を大切にしなさい。それから焔。お前は将来絶対に美人になるから、悪い男に捕まるなよ…お前の結婚式のドレス姿見れなくて残念だよ」

俺達は涙を流しながら父さんの言葉を聞いていた。蛇六は目を瞑りながら静かに聞いていた。

「最後に一つ…親として言うことがある。かっこいいおじいちゃんとかわいいおばあちゃんになったらまた会おう。それまでは絶対に会いに来るなよ!」

木から火が父さんに移り、父さんは焼かれながらも、涙を流しながら笑って最後にそう言った。俺達は涙を拭きながら、蛇六について走っていた。俺はあのISを睨んだ。行き場のない憎悪と怒りが混み上がりながら。その瞳はいつもの勾玉模様では無く三枚の刃の手裏剣のような模様となり、いつもより赤くそして、鈍く光っていることにすら気づかず。












 
 

 
後書き
母親の出番少なすぎでした 

 

プロローグ3  復讐の誓い

父さんと母さんが死んでから3日が経ち、家には俺達三兄弟と黒いスーツ姿の強面の男2人だった。

「君達のご両親については残念だが、『白騎士事件』の死傷者は0と書かせてもらった。君達には悪いがこれも世界の為。ご両親には新しい世界の礎になってもらう」

黒スーツの男達はそれだけ言って帰っていった。答える気力の無い俺達は何も口に出さなかった。俺はふと、転生前に神が言った言葉を思い出した。

『きっとそこは天国だぞ』

「……なにが天国だ。俺達のいるこの世界は地獄だ…殺してやる…」

「お兄ちゃん?…」

「俺達を…俺達の家族をこんな風にした元凶の『白騎士事件』の関係者、父さんと母さんの死を隠蔽した政府の奴ら全員殺してやる。1人残らず殺してやる!」

俺はただ混みあがってきた、怒りをただ口にした。

「燐…僕も手伝うよ。家族を殺されて黙っている程、僕の沸点は高くない」

「ワタシもやる!お母さんやお父さんを殺した奴を絶対に許さない!」

「お前……ロクな人生を送れなくなるぞ。それでもいいのか?」

「「うん!」」

「そうか……分かった」

その日から、俺達の復讐劇は始まった。俺達は母方の叔母の家に引き取られることになった。それから俺達は武術の得意な師匠の下で武術の技術を上げ、忍術は父さんが昔、修行を行っていた、『龍地洞』で修行を行う日々を送り、もう六年が経った。


ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー

「火月、身体はだいじょうぶなのか?」

「だいじょうぶだよ。先生も不治の病だなんて大げさ言ってるけど、そんなたいしたことじゃないよ」

火月は『万華鏡写輪眼』の第三の瞳術、『須佐能乎』をリスクで細胞を痛めたせいで重たい病にかかって入院してしまった。

「それはそうと燐。白騎士事件について何か分かったことは?」

「あれが篠ノ乃束によるマッチポンプだってことくらいのしかな。それより俺達の専用機についてだが」

「今、僕達の専用機を作ってるんだっけ。優秀な科学者を誘拐して幻術に掛けて操って作らせている…あれがどうしたの?」

「誘拐したところは別に言わんでいい。それに、誘拐して来たのは俺だけど操ってるのはお前の瞳術だろ。まあいい、その専用機だが、実は完成してな今、焔が記念すべき第一回目を操縦している。お前もゆっくりでいいから、治せよその病気」

「ハイハイ」

「じゃ、俺帰るからなんか欲しい物があったらメールしろよ」

俺はそれだけ言って、『万華鏡写輪眼』の右目の瞳術『神威』で家に帰ることにした。火月がこちらを微笑みながら見ていたので手を降って、時空間移動をした。俺は父さん達の時のように思いもしていなかった。俺が帰った十分後に火月の容体が急に悪化して、死んでしまったことなんて。










 

 

プロローグ4 永遠の光

「お兄ちゃん、火月お兄ちゃんの具合どうだった?」

「案外元気だったぞ。早く退院出来ればいいんだけど」

俺は焔と一緒に晩飯を食いながら、火月の話をしていた。今はおばさん達は旅館の仕事をしていて、食卓にいない。俺は湯飲みを取ろうとすると距離が取れずに湯飲みが取れなかった。

「……お兄ちゃん、唐突に聞くけどコレ何本?」

焔はそう言いながら、指を立ててきた。

「カンタンな問題を出すなよ焔。答えは決まってる。6本だ!」

「コレ片手だよ。正解は2本。お兄ちゃんはいつも万華鏡写輪眼を使いすぎ!だから視力が悪くなるんだ!」

「しょうがないだろ。便利なんだから」

「しょうがなく無い!“神威”が便利だからってそんなに無駄使いしてると本当に見えなくなるよ!」

なんか妹にここまで正論を言われると、兄としての尊厳が無くなってしまう。だけど、左の“天照”はあまり使ってないんだぞ。

「燐君!焔ちゃん!」

「ど、どうしたんですか!?おばさん!そんなに急いで?」

いきなり扉を開いて入って来たのは、俺達の叔母の清洲景子。いつも落ち着いているおばさんがこんなに急いでいるなんて。

「ふ、2人共落ち着いて聞いて……今さっき火月君の病院から連絡があって…」

「火月がどうかしたんですかおばさん!?」

「さっき火月君の病気が急に悪化して…さっき息を引き取ったてお医者さんが…」

「嘘でしょおばさん…そんな、そんなことって…」

「あのバカ野郎!兄貴より先に死ぬんじゃねぇ…」

俺達は一晩中泣くことしか出来なかった。これじゃあ父さん達の時と同じじゃないか。

        ー◇◇◇◇◇◇◇◇ー

俺と焔とおばさんは火月の遺体を引き取りに病院に向かった。俺は正直行きたくなかった。冷たくなったアイツを見たくなかった。俺達は火月の担当医に連れられ、霊安室に入ると火月の遺体が寝ていた。

「お兄ちゃん、寝てないで起きてよ…元気になって帰ってくるって約束だったのにぃ…」

焔は火月の遺体を見るなり、また泣き出してしまった。俺も目から涙が出てきた。俺達はまたしばらく火月の遺体の泣いた。それからしばらくしてから火月の担当医から話があるみたいで俺とおばさんは話を聞くことになった。焔は部屋の外で待っている。

「火月君については申し訳ありませんでした」

「いえ…先生には弟がお世話になりました。ありがとうございます」

「…実は火月君にあるお願い事を頼まれたんです」

「お願い事?」

おばさんは不思議そうに先生に聞いた。確かに身内じゃなく担当医に頼むお願いとは、何かワケがあるのか。

「実は火月君が『もし自分が死んだ時は、自分の臓器を全部ドナー提供したい。そして自分の眼は兄に移植してほしい』と言っていたのです。未成年のドナー提供もですが、移植手術を行うには本人と保護者の許可が必要なのです」

「……ドナー提供はあの子がそう願ったのならいいですが、燐君の移植についてはちょっと…燐君はどうするの?」

「俺は…」

確かに俺は片目の視力がもうほとんど無い。火月の眼を移植すれば視力は戻るし、万華鏡写輪眼のリスクも無くなる。だけど、それじゃあ俺がアイツを利用してるみたいじゃないか。 

「実はお兄さんが迷った時に読むようにと預かった手紙があるんです。読んでください」

俺は先生から一枚の手紙を受け取り中を拝見した。

『燐、君がこれを読むってことは僕の眼を移植することに躊躇っているんだね。君の右目がほとんど見えなくなっていることには気づいてたよ。僕は君に復讐を遂げてほしい。焔を守ってほしい。焔と一緒に生きてほしい。そして、僕の眼で見えなくなった景色を見てほしいんだ。僕はそう想っているよ兄さん。追伸、ちなみに燐が大切にとっておいた大福を食べたのは僕です』

アイツは本当に……バカな弟だ。なんで遺書にそんなこと書くんだよ。別に良いわ大福くらい。だけど俺も覚悟を決めた。

「先生お願いします。弟の眼を移植してください」

「本当にいいのかい?」

「はい。弟の葬式の後にお願いします」

俺はそうして火月の眼を移植する事になった。葬式では身内と知り合いだけで行った。そして、それから2ヶ月が経ち、

「眼のほうはどうだい燐君?」

「だいじょうぶです。ちゃんと見えます」

俺は包帯を外し、鏡で自分の眼を見ると、俺の三枚刃の手裏剣の模様と、火月の車のギアのような模様が組み合わさっている。これが俺と火月の“『永遠の』万華鏡写輪眼”か。

「火月、俺は絶対に復讐を遂げてみせる。奪われる側じゃなくて奪う側になってやる。この眼を通して見ててくれ」

そうだ。もう被害者面はしない。俺はこれから加害者になるんだ。俺達から大事な物を奪った奴らから奪ってやる。そいつらの命を。










 
 

 
後書き
次からIS学園です 

 

IS学園入学

今日から俺はIS学園に入学する事になった。今はSHRが始まり、自己紹介の時間になっているが正直どうでもいい。それにしても一夏がいるのは分かっていたがまさか箒もいるとはな。

パアンッ!といきなり大きな音がなった。

「げえっ、関羽!?」

一夏はそう言うとまた、パアンッ!と叩かれた。確かあの人一夏の姉さんだな。教員だったのか。

「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」

織斑千冬。確か篠ノ乃束の無二の親友って聞いたな。なら、奴の居場所や白騎手のパイロットのことも知っているかも知れないな。俺がそんなことを考えているといきなり黄色い声援が教室内に響いた。

「キャー!千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

それは遠路はるばるご苦労様。

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させてるのか?」

確かにここがあの倍率一万超えもするIS学園のクラスだとは思えないな。てか、俺の頭の中のエリートのイメージとは実際違うのかもなエリートって。

「で?挨拶も満足にできんのか、お前は」

「いや、千冬姉、俺はー」

パアンッ!本日三度目か。

「織斑先生と呼べ」

「……はい、織斑先生」

「え……?織斑くんって、あの千冬様の弟……?」

「それじゃあ、男で『IS』を使えるっていうのも、それが関係して……」

「ああっ、いいなぁっ。代わってほしいなぁっ」

「じゃあ、もう一人のほうは一体……」

あーあ。くだらない視線を感じる。

「さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染みこませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくなっても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

暴君かこの人。一夏も大変だな、こんな姉を持って。

       ◇

「なあ、お前って燐だよな?」

「なんだ。久しぶりに会った知り合いに対して失礼だなお前」

「ヤッパリ燐か。なあ、一時間目の授業難しくなかったか?」

「お前……相変わらずバカなんだな。一年の一学期、しかも最初の授業の感想がそれか。どこが難しいんだこれの?」

基本中の基本なので難しいところがどこにあるのかが分からん。むしろ、俺はこの女子達の視線をどうにかしたい。

「……ちょっといいか?」

「え?」

そこにやってきたのは箒だった。

「……箒?」

「…………」

「久しぶりだな箒。なんだ一夏に話でもあるのか?」

「あ、ああ。できれば燐も一緒に」

「俺はいい。“二人っきりで”話してこいよ」

「そ、そうか。分かった」

そういって箒は一夏を連れて教室から出ていった。まだ好きなのかあいつ。

「ちょっと、よろしくて?」

俺は唐突にかけられた声のほうを見るとそこにはロールがかった髪の金髪女子が立っていた。同じクラスの確か名前は、

「イギリス代表候補のセシリア・オルコットだったけ。なんかようか?」

「あら、よくご存知で」

「長ったらしく自己紹介してたろ、さすがに覚える。で、用件は?」

「あら、それが女性に対する態度かしら。極東の男は礼儀がなってませんわね。親の顔が見てみたいですわ」

「生憎、両親とももう死んでる」

「え、あ、ああ、そうでしたか!」

オルコットは地雷を踏んでしまったといわんばかりの顔をしている。自分から喧嘩を売っといてこれとは、イギリス人てくだらないんだな。

キーンコーンカーンコーン

「二時間目が始まるぞ。さっさと席についたほうがいいぞ」

「わ、分かってますわよ!」

オルコットは自分の席に戻っていった。ふ~うるさい奴がやっといなくなったな。そういえば一夏の奴二時間目の授業大丈夫なのか?



 

 

決闘宣言

二時間目の授業まぁすごいのなんの。一夏の奴、まさか参考書を古い電話帳と間違えて捨てるって、ある意味天才だわ。どう見たら間違えるんだ。そんな二時間目も終わり、三時間目の授業どうやらクラス代表を決めるらしいがどうでもいいな。

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「私もそれが良いと思います!」

「では候補者は織斑一夏……他にいないか?自薦他薦は問わないぞ」

「お、俺!?」

良かった俺の名前は出てきてないな。出来るだけ俺の機体は他人に見せたくないしな。一夏には悪いが隠れ蓑になってもらうか。

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にいないのか?いないなら無投票当選だぞ」

「な、なら紅原を推薦します!」

「一夏…お前後で覚えてろ」

俺が不機嫌そうに一夏を睨むと、突然オルコット甲高い声が叫んだ。

「待ってください!納得が行きませんわ!」

まあ、確かに典型的『女尊男卑』の奴はこんなの認めるわけないか。

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

あ~あこれはエンジンかかってきたな。このテの相手は自分の気が済むまで言い続けるからうるさいんだよな。

「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿達にこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

プライド高い貴族によくいるタイプだなコイツは。一夏はともかく俺も猿か。俺、猿より蛇か猛禽類のほうが好きなんだけどな。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと
自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でー」

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」

「なっ……!?」

お、一夏も言うか。てか、イギリスの料理って世界一まずいのか、初めて知ったな。

「あっ、あっ、あなたねえ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?決闘ですわ!」

「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」

「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使いーいえ、奴隷にしますわよ」

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

「そう?何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」

「ハンデはどのくらいつける?」

「あら、早速お願いかしら?」

「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいかなーと」

あ、バカやったよコイツ。ほらみろ、クラスの奴らドッと爆笑し始めたよ。

「お、織斑くん、それ本気で言ってるの?」

「男が女より強かったのっと、大昔の話だよ?」

「織斑くんは、確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」

あ~あ言われてるよ。

「……じゃあ、ハンデはいい」

「ええ、そうでしょう。むしろ、わたくしがハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ。ふふっ、男が女より強いだなんて、日本の男子はジョークセンスがあるのね。それであなたはどうします?」

「ん、俺か。いいよ、ハンデなんて」

「あら、あなたは潔く負けるのがお好きなようですわね」

「ちげーよ。ハンデ付けてやったのに負けたなんてお前も恥ずかしいだろ?なんなら、俺がハンデをくれてやるよ」

「あなたは理知的な方だと思いましたが、そうでもないみたいですわね。さっきの話を聞いていなかったのかしら?」

「…オルコット。悪いことは言わん。ハンデを付けてもらえ」

さっきから黙ってた織斑先生がいきなり口を開いた。

「お、織斑先生。いきなりなにを!?」

「紅原は入試の試験官を本気を出さないで一分もしない内に倒すほどの実力だぞ」

この人余計なこと言うな。クラスの奴らなんか信じられない顔でこっち見てるよ。

「織斑先生。さすがに本気を出してましたよ」

「ほお。なら、戦闘中に時刻確認、あくび、鼻歌、さらには教員にアドバイスなどしている奴をどうやって本気を出していたと言えるのだ?教えてほしいものだな」

「ハハッ、生徒に答えを求める教師なんて格好悪いですよ織斑先生」

「ふん。減らず口を……それでどうするオルコット。ハンデを付けてもらうか?」

「いりませんわ!そんなもの!」

「そうか。さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う。織斑と紅原、オルコットはそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」

なんか面倒くさいことになったな。まあ、やるからにはちょっとやるか。








 

 

更識簪

学校を終わり、俺が自販機でジュースを買って飲もうとすると山田先生がやってきた。

「紅原君、ちょっといいですか?」

「はい何でしょうか?」

「寮の部屋が決まったのでお知らせに来たんです」

そう言って部屋番号の書かれた紙とキーを渡してきた。

「そうですか、わざわざありがとうございます。けど、俺ホテルに荷物があるので一度ホテルに帰って荷物を取ってきてもいいですか?」

「はい、いいですよ。あ、その前に一度寮の部屋に行って、同室の子に挨拶をしてください」

「同室の子って織斑ですか?」

「いえ、ちょっと待ってください…」

ちょっと待って、俺が織斑って言って『いえ』ってことは同室の子は女子ってことじゃん。いいのかな~年頃の男女を同じ部屋にして、教育的にまずいだろ。

「え~と、紅原君の同室の子は4組の更識簪さんですね」

更識簪……確か父さんの親友の更識さんの娘さんだな。ここに入学してたのか。まあ、知らない女子よりかはマシか。

「そうですか、分かりました。じゃあ俺行きますね」

「はい。私もこれから会議なので」

そう言って俺と山田先生はわかれ、俺は自室となる部屋に向かった。

        ◇

「ここか」

俺は自室の前に立ち、ドアをコンコンっと叩いた。先に部屋にいるかもしれないの一応してみると、

「…はい」

と、小動物を思わせるような声で返事をして、ドアを開けたのは、メガネを掛けた青髪の少女、更識簪が出てきた。

「えっと……たぶん先生から聞いてると思うけど、これから同室になる紅原燐だ。よろしく?」

あ~なんか初対面の相手みたいに挨拶しちゃったけど大丈夫かな。いや、たぶんそんなこと考えてるのが大丈夫じゃないな。分からないけど。

「燐君…だよね。焔ちゃんのお兄ちゃんの…」

「え、ああ、そうだけど」

「ひさしぶり…とにかく、部屋に…入って。廊下だと注目になるから」

「あ、ああ」

俺は更識に言われそのまま部屋に入った。どうやら、先生がちょっと俺のこと伝えていてくれたみたいだな。

「えっと、悪いな更識。俺が同室になって、何かと不便かもしれないけど…」

「大丈夫…私こそ、一緒の部屋になると…何かと不便かもしれないから…気にしないで。あと…」

「あと?」

「更識じゃなくて…簪でいい」

「え、あ、ああ。分かったよ簪。なら俺も燐でいい。それより…熱でもあるのか?顔が赤いぞ」

さっきから、簪の顔は妙に赤い。体調が悪いのかもしれないな。

「だ、大丈夫」

「そうか。なら良いんだが…もうこんな時間か。俺、一度ホテルに戻って自分の荷物を取ってくるから」

「…わ、分かった」

俺は部屋から出て、学園の外にあるモノレールに乗り、駅の近くのホテルに戻った。一応、焔に連絡を入れることにし、ケータイの連絡先から焔の電話番号を押すと、ワンコールで出てきた。

『あ、お兄ちゃん。どうだったIS学園は?』

「そうだな…篠ノ乃束の居場所と白騎士の正体を探るために入ってみたが、つまんない場所だ。入らなければ良かったかもな」

『そっか~女の園、IS学園での1日でそんな感想か~お兄ちゃん彼女作る気ないの?』

「…復讐なんて馬鹿げたことをする奴が、そんな当たり前の幸せ作りをしていいわけないだろ」

『…それに私が入ること忘れてない?』

「これは俺の勝手な考えだ。お前が自分で自分をその枠に入れることはない。それに俺はお前のウェディングドレス姿と未来の義弟を見るって野望もあるんだ。だから、お前には幸せになってもらわないと困る」

『……ありがとう。お兄ちゃん』

「そう言えば俺の寮の同室の相手が簪だった」

『え、簪って、更識簪ちゃん』

「ああ、お前と昔仲が良かった簪だ。俺昔、怖がられてたからあんましゃべったことないんだよな」  

火月と焔とはしゃべってたからな。焔はともかく、火月は俺と顔一緒なのに怖がってなかったな。俺、昔なんかしたっけ。

『怖がられてたって、お兄ちゃんそれ本気で言ってるの?』

「ああそうだが」

『はぁ、簪ちゃんも可哀想に…まあ、夜な夜な襲わないように!いいね!?じゃお休み!』

焔はそう言って、電話を切ってしまった。なんだったんだあいつ。まあいっか。俺は荷物を回収して、学園の自室に戻る途中、ある一つの部屋のドアにたくさんの穴があった。なんだこのドア?




 

 

専用機

簪と同室になり、1日が経ったがまあなんとか慣れた。簪も昔から知っているだけあってすぐに仲良くなった。授業のほうは、一夏が二時間目でグロッキーな状態だったな。なんか、今は女子と話してるけど。

「千冬お姉様って自宅ではどんな感じなの!?」

「え。案外だらしなー」

パアンッ!

「休み時間は終わりだ。散れ」

いいタイミングで出てくるなこの人。毎回痛そうだな、あれ

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間がかかる」

「へ?」

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

「???」

織斑先生の言葉により、バカの一夏は意味が分からないって顔をし、クラスの女子たちもざわめきはじめた。

「一夏お前って本当にバカだな。教科書の六ページに書いてるぞ」

「紅原の言う通りだ。教科書六ページを音読しろ」

「え、えっと……」

一夏はそのままあの長ったらしい文を読み始めた。コイツは常識知らずにもほどがあるな。

「本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意されることになった。理解できたか?」

「な、なんとなく……じゃあ、燐にも専用機が?」

「いや、紅原はすでに専用機を持っている。入試試験には使わなかったがな」

「すごーい」

「どんな機体なんだろ~?」

俺の専用機『倶梨伽羅(くりから)』はすごいぞ。なんてってたって、色んな国から盗んだ技術で作り出した機体だからな。しかも、機体ごしで俺の忍術が使えるし。

「あの、先生。篠ノ乃さんって、もしかして篠ノ乃博士の関係者なんでしょうか……?」

「そうだ。篠ノ乃はあいつの妹だ」

「ええええーっ!す、すごい!このクラス有名人の身内がふたりもいる!」

「ねえねえっ、篠ノ乃博士ってどんな人!?やっぱり天才なの!?」

「篠ノ乃さんも天才だったりする!?今度ISの操縦おしえてよっ」

いるよな~身内がすごければ、そいつもすごいって考えの奴。こいつらはどうせ、篠ノ乃束に尊敬の念でも抱いているんだろうな。俺は復讐心しか沸いてこないのに。

「あの人は関係ない!」

クラスの女子は箒の大きな声で騒ぎを止められてしまった。

「……大声を出してすまない。だが、私はあの人じゃない。教えられることは何もない」

「さて、授業をはじめるぞ。山田先生、号令」

「は、はいっ!」

山田先生も箒が気になる様子だったが、そこはやっぱりプロの教師だな。ちゃんと授業を始めた。しかし、あの様子だと箒は篠ノ乃束の居場所を知らないかもな。それでは困るな。織斑先生に聞くのは不信に思われるからな、織斑先生は最終手段にしている。

「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」

さっそく出たな。こいつは寂しがり屋なんじゃないのか。

「まあ?一応勝負は見えてますけど?さすがにフェアではありませんものね」

「?なんで?」

「さぁな?俺、一緒に昼飯を食う約束があるから、そろそろ行くは。それとオルコット、こいつはバカだから理論的なこと言っても通じないぞ」

「知ってますわ。そんなこと!」

「だれがバカだ!」

「参考書を電話帳と間違えて捨てるような奴だからなお前は」

俺はそれだけ言って、食堂に行くと簪が待っていてくれた。

「悪いな簪、遅れた」

「大丈夫…そんなに時間…たってないから」

「そうか。それなら良かった。じゃあ並ぶか」

「…うん」

俺と簪は列に並び、注文した食い物を受け取り空いてた席に座って食べ始めた。



 
 

 
後書き
次回は初のIS戦闘です。作者の用事で3日近くは投稿できませんが楽しみにお待ちしてください。 

 

燐VSセシリア

クラス代表決定戦、一夏とオルコットが試合をしている中俺は控え室で簪と待っている。試合がどうなっているのか知りたいがここにはモニターがない。

「…燐。相手はイギリスの代表候補生だけど…大丈夫?」

「大丈夫。心配してくれてありがとう」

そう言うと簪は、照れているのか顔を赤く染めいる。すると、スピーカーから山田先生の声が聞こえてきた。

『紅原君。五分後に試合が始まるのでこちらに来てください』

「わかりましたすぐ行きます。じゃあ簪、俺行くから」

「う、うん…がんばって…応援する…から」

「ああ」

俺は簪と分かれ、アリーナのカタパルトに向かった。

      ー◇◇◇◇◇◇◇ー

「お、燐。次頑張れよ!」

カタパルトに向かうと、一夏に箒。それから山田先生に織斑先生がいた。

「ああ。ところで一夏、お前勝ったのか?」 

「………負けた」

「………あんだけ大口叩いて負けたのかお前。ダサいな」

「まったくだ」

箒も続け、一夏に非情な言葉をかけてきた。どうせ、勢いよく突っ込んでエネルギー切れでも起こしたんだろ。

「紅原、早くISを展開して行け。オルコットが待っている」

「わかりました。来い『倶梨伽羅』」

俺が倶梨伽羅を展開すると光の粒子が集まり、俺の体に集まり形を作り始めた。

「これが燐のIS」

一夏は物珍しい顔をしながら俺の機体を見ている。倶梨伽羅の背中には先端部が鎌のようになっている大きな翼状の武装があり、俺の顔の半分はバイザーで隠されいる。これは写輪眼などの瞳術を隠すために使っている。

「じゃあ、行ってくる」

俺はアリーナに向かい飛ぶとそこには顔を赤くして、呆然としているオルコットがいた。

      ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー

「織斑…一夏」

またか、一夏の奴。どうやったら戦闘中に女の心を奪えるんだ、いつか後ろから刺されるぞあいつ。

「おい、オルコット!やる気がないならさっさと帰れ。俺だってこんなのしたくないんだ」

「な、なんでありませんわ!さ、さっさと始めますわよ!」

いや、それこっちのセリフ。試合開始のブザーがなり、試合が始まった。

「さあ、わたくしセシリア・オルコットが奏でる輪舞曲で!」

オルコットはそう叫びながら、ビームライフルを撃ってきた。俺は印を結びながら、それを避けている。

「“水遁・水弾の術”」

倶梨伽羅は通常、口から出す忍術は両手に付いている穴や機体の色んな場所から出すことが出来る。

「な、水ですて!?」

オルコットは水を避けると、武装のミサイルを2つ放ってきた。

「ただの水では、わたくしが駆るブルー・ティアーズは落とせなくてよ!」

「あいにく、ただの水じゃないんだよ」

倶梨伽羅の水を放出しているほうの腕がカチッ!と音を立てると放出している水が細くなっていき、腕を振って水をミサイルに当てるとミサイルは2つとも切れ爆発し、そのままオルコットの非固定ユニットを切り裂いた。

「な、“ただの水”じゃないだろ?“水遁・霧隠れの術”」

霧隠れの術を発動すると機体から霧が発生し、アリーナにすぐ充満した。しかも、これはただの霧隠れの術じゃない霧と同時にセンサージャマーを出すことができる。オルコットは俺の居場所が掴めず、周りをキョロキョロしている。

「“火遁・豪龍火の術”」

倶梨伽羅の左手から放たれた火龍はオルコットに直撃し、爆発してオルコットは壁に叩きつけられて気絶してしまった。

『勝者! 紅原燐!!」

試合終了のアナンスがアリーナの中に鳴り響いた。

    ー◇◇◇◇◇◇ー

「織斑先生、あの機体はいったい…」

「さあな。紅原はあの機体の情報を提供していない。それにあのような技術に攻撃方法は聞いたことが無い…紅原とは一度話をしなければならないな」












 

 

質問

「イギリス代表候補生か……あの程度実力でなれるなんて、イギリスは随分と人手不足なんだな」

俺はカタパルトに戻り更衣室に行こうと思うと扉が開き、織斑先生が1人カタパルトに入ってきた。

「先程の試合ご苦労だったな。晴れてお前がクラス代表だ。これから手続きを…」

「そのこと何ですが織斑先生、辞退したいと思っています」

「…何故だ?」

「自分は元々他薦で候補にあがりました。クラス代表をやる気なんて微塵もありません。ですから、自薦のオルコットにクラス代表を任せたいと思っています」

「そうか分かった……それとお前には聞きたいことがある。お前の機体はなんだ?」

「なんだと言われても、『倶梨伽羅』はただのISです……機体に関することについては情報提供の義務は無いはずですよね?」

「そうだ。だから聞いている」

横暴だなこの人。本当に一夏の姉さんか?

「なら、俺の質問に答えられたら教えてあげましょう」

「なんだ?」

「白騎士の正体は誰です?篠ノ乃束の無二の親友のあなたなら知っているんじゃないんですか?」

「……知ってどうする?」

「そこまで教えるつもりはありません。もしかしたら、白騎士からサインをもらうのが目的かもしれませんし。あるいは、殺すつもりかもしれませんよ」

俺はふざけて言ってみるが、織斑先生は真剣な目でこちらを睨んでいる。

「……すまないがその質問には答えてやることはできない。私自身、白騎士の操縦者ことは知らないんだ」

「それは本当ですか?」

「ああ、本当だ」

「…………そうですかそれは残念。なら『倶梨伽羅』の情報を教えるわけにはいきませんね。俺はもう疲れたので帰ります」

「そうか。明日の授業には遅れるなよ」

「分かってますよ」

俺はカタパルトから出て、しばらく歩いていると簪が待っていてくれた。

「おつかれさま……試合見てたよ…強いんだね」

「俺は強くないよ。ただ相手が連戦でバテてたんだよ」

まあ、実際はバテてようがなかろうが俺の敵じゃなかった。俺の敵はまだ先の場所にいる。それに織斑先生の答えで白騎士の正体は段々掴めてきたな。

「なぁ簪。第1回モンド・グロッソの織斑先生の試合を見たいんだけど、見るためのサイト知らないか?」

「…知ってるけど…どうして?」

「いや、ほら、担任の現役時代の実力が知りたくてさ」

「…そう…燐は…織斑先生みたいな…大人な女の人が…好みのタイプなの…?」

簪は下を見ながら、急に俺の好みのタイプを聞いてきた。

「そうだな~確かに俺は織斑先生みたいな静かな女の人は好みの人だけど……どっちかって言うと簪みたいな女子が好みのタイプだな」

「ほ、本当に!?」

「うんまぁなっと、悪い簪。山田先生に急用を頼まれたんだ。俺ちょっと行ってくるわ!」

「え…う、うん…分かった。また、後で…」

俺は簪と分かれ人気の無いところまで向かった。本当は山田先生に急用なんて頼まれていない。本当の目的はさっきから俺をつけている奴にある。

「さっさと出てこいよ。せっかく人気の無い所に来てやったんだ。2人で話をしようじゃないか……更識刀奈先輩」

「あら、気づいていたのね…ひさしぶりね、紅原燐君」

俺をつけていたのは、簪の姉、更識刀奈だった。












 

 

楯無と簪

「本当にひさしぶりですね刀奈さん」

俺がそう返すと刀奈さんは扇子を開き、そこには『残念』と書いていた。

「今は家を継いで名前は楯無になってるの。だから、私のことは楯無って呼んでね」

刀奈さんもとい、楯無さんはそう言いながらウィンクをしてきた。

「で、俺をつけてた目的はなんです?まさか用もないにつけてた分けじゃないでしょ?」

「そうね。あなたにはお願いしたいことがあるの。私の大切な妹の簪ちゃんの同室のあなたに!」

楯無さんは真剣な目でこちらを見ながら言ってきた。そしてやけに簪のところを強くいってきたなこの人。

「お願いですか?出来る範囲内だったら聞きますよ」

「ありがとう燐君。実はあなたには簪ちゃんの機体作りの手伝いをお願いしたいの」

「簪の?確か専用機は企業が作る筈ですよね」

「そうなんだけど、実は簪ちゃんのISを作る筈の『倉持技研』が織斑君の専用機に人員をまわしてね。まだ完成してないの」

また、一夏か。あいつどんだけ人に迷惑かけるんだよ。

「別に俺はいいですよ。けど、二年生には整備科があるって聞いたんですけど。楯無さんの知り合いに頼んだほうがいいんじゃないんですか?」

「実は簪ちゃん。一人で作る気なの。私がそうしたように」

「なるほど、大好きな姉みたいにやりたいってわけですね。てか、1人で作ったんですか自分の専用機?」

「70%位のところからだし、知り合いにアドバイスを貰ったりしたけどね……それに簪ちゃんは、私のこと大好きじゃないわ多分…」

あ~、これはなんかあったな。昔はあんなに仲のいい姉妹だったのに。

「分かりました。できる限り頑張りますよ」

「そうありがとう。簪ちゃんのことよろしくお願いね」

楯無さんは俺の答えに安心した顔をして帰っていった。俺の後ろに隠れてるもう一つの気配に気づかないくらい不安になってたのかよ、あの人。

「さて、そろそろ出てきたらどうだ。簪」

俺がそう言うとさっきの楯無さんみたいに物陰から簪が出てきた。

「どこから聞いてたんだ?」

「最初から…燐と別れてすぐ…山田先生に会って…追いかけてきたの」  

「そっか…ごめんな。嘘ついて」

「大丈夫…けど、もう嘘はつかないで」

「分かった」

俺達はそれから無言で部屋まで戻ることになり、しばらくしてから俺が簪にしゃべりかけた。

「それでどうする。簪の専用機作りに楯無さんの指示で手伝うように言われた俺を使うか?」

「………燐自身は…どうなの?…本当は…嫌じゃないの?」

「嫌なわけがない。むしろ俺にできることがあるなら手伝いたいしな」

「ありがとう、燐。けど…私は…少しでも……姉さんに近づきたいの」

「…お前達何かあったのか?」

俺はココアを入れ、簪に渡しながら聞いてみた。あんまりこうゆうのには首を突っ込みたくないが、あんなに仲が良かった姉妹がこんなになるくらいだ。何かあったに違いない。

「…私…姉さん…お姉ちゃんといっしょにいると自分が惨めに思えてくるの…」

「なんで…」

「お姉ちゃんは……なんでもできるし…やさしくって…誰とも仲良くなれるのにそれに比べて私は…」

「だからISを自分一人の力で作って楯無さんを超えようと思たんだな」

「うん…でも本当は自己満足…なの。私が自分の専用機を自分で作ればお姉ちゃんを追い越せる…近づける気がして…ずるいよね…こんなの」

「それをわざわざ人に言うのが一番ずるいと思うぞ、俺は」

俺は自分のココアを飲みながらそう答えた。熱いなこのココア。

「なんだかそれで誰かに許して貰おうとしてるみたいだ。楯無さんより上を目指そうっていうのは正しい選択だ。だからもっと胸を張って堂々としてればいいと思うぞ」

「…そうだね。ありがとう…燐…なんだか少し楽になった…みたい」

「そうか。それは良かった」

「燐…手伝いの話…だけど…手伝いってもらってもいい…?」

「ああ、いいよ」

「ありがとう燐」

簪は微笑みながら、俺に感謝の言葉を述べた。その簪の顔に俺は自分の顔が赤くなっていることに気づいていたかった。








 

 

キャラ紹介

紅原燐 (こうはらりん)
性別:男
イメージCV:宮野真守
専用機:倶梨伽羅 (くりから) 〔第三世代型〕
年齢:15
誕生日:8月17日
チャクラ性質 火 水 土
血継限界 『永遠の』万華鏡写輪眼 木遁の血継限界
万華鏡写輪眼の瞳術 右:神威 左:天照
容姿は髪の色は艶のある黒色で、和風系な顔立ちの美男子。
備考
ISの世界に様々な特典を貰って転生してきた転生者。家族で幸せに過ごしていたところに白騎士事件が起こり、両親が死んでしまい、双子の弟の火月、一つ下の妹の焔と一緒に復讐を誓った。中学校時代は影分身に学校に行かせ、自分はその間修行などをしていた。
 性格は至ってクールの一言だが、知り合いが困っていると力を貸すなど優しいところもある。一度キレるとしばらくは怒りっぽくなる。


紅原火月 (こうはらひづき)
性別:男
イメージCV:鈴木達央
専用機:???
年齢:14 〔没年齢〕
誕生日:8月17日
チャクラ性質 火 水 土
血継限界 万華鏡写輪眼 木遁の血継限界
万華鏡写輪眼の瞳術 右:月読 左:別天神
容姿は燐と瓜二つ(燐とは一卵性双生児)
備考
燐の双子の弟の少年。燐と焔に比べれば、戦闘能力は低かったが幻術の腕は兄弟一であったが、不治の病に倒れてしまった。火月の瞳は燐に移植するよう、医者にお願いしていた。 
 

紅原焔 (こうはらほむら)
性別:女
イメージCV:種田梨沙  
専用機:???
年齢:14  
誕生日:7月8日
チャクラ性質 火 水 雷
血継限界 万華鏡写輪眼
万華鏡写輪眼の瞳術 右:加具土命 左:天照
容姿はセミロングの和風系美少女
備考
燐と火月の妹で、かなりのブラコン。紅原家では珍しく火遁系の術より雷遁系の術のほうが得意としている。現在は叔母が女将をしている旅館で手伝いをしながら、地元の中学校に通っている。(本当は燐と同じように学校には影分身を使っている)
  
 

 
後書き
キャラ紹介をしてみましたがなんか変な感じがします 

 

IS実習にて

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、紅原、オルコット。試しに飛んでみせろ」

四月下旬、ISを使う授業も始まった。最初は俺達専用機持ちが飛行操縦をするらしい。それにしても、あんだけクラス代表とかなんとか言っていたオルコットが一夏にクラス代表を明け渡すとは、末恐ろしいな一夏の女心を落とす技術。

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

せかすな織斑先生。俺やオルコットはともかく一夏はまだ日が浅いからそれなりに時間がかかるだろうに。一夏が展開し終わると、織斑先生は次の指示を出した。

「よし、飛べ」

言われて俺とオルコットは飛び、一夏は少し遅れて飛び始めた。飛んでいる最中も一夏は俺達も上昇速度がかなり遅い。

「何をやっている。スペック上の出力では白式の方が上だぞ」

織斑先生辛辣だな。もうちょっと弟にやさしくしてやれよ。

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

「そうだぞ一夏。経験を積んで空を飛ぶ感覚をつかんだ方がいいと思うぞ」

「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてんだこれ」

それこの間授業で習ったぞ一夏君よ。

「説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力力翼と流動干渉の話になりますもの」

「わかった。説明はしてくれなくていい」

「そう、残念ですわ。ふふっ」

「多分教えても無駄だぞオルコット」

それにしても、いつまで飛んでいればいいんだ。

「一夏さん、よろしければまた放課後に指導してさしあげますわ。そのときはふたりきりでー」

「一夏っ!いつまでそんなところにいる!早く降りてこい!」

いきなり通信回路から箒の怒鳴り声が響いた。てか箒よ、山田先生からインカムを奪うなよ。山田先生めっちゃ困ってるし。

「織斑、紅原、オルコット、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

「了解です。では一夏さん、紅原さん、お先に」

そう言ってオルコットは地上に向かった。一夏はその姿を感心しながら眺めていた。

「うまいもんだなぁ」

「そうだな…先行って良いぞ」

「あ、ああ。じゃあお先に」

一夏は先に地上に向かった。すると、

      ズドォォンッ!!!

地上に勢いよく墜落した。何がしたかったんだアイツは?俺もすぐ地上に戻ると織斑先生が一夏に何かしゃべっていた。

「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」

「……すいません」

一夏はとりあえず姿勢制御をして上昇し、地面から離れた。それにしてもどうするんだろうこの大穴。

「情けないぞ、一夏。昨日教えやっただろう」

教えてもらってできないのはダメだが、一夏から教えてもらった箒の擬音で教える練習方法。あれで教えられたら無理もないな。俺でも分からん。

「大体だな一夏、お前というやつは昔からー」

「大丈夫ですか、一夏さん?お怪我はなくて?」

「あ、ああ。大丈夫だけど……」

「そう。それは何よりですわ」

オルコットは微笑みながらそう言った。

「……ISを装備していて怪我などするわけがないだろう……」

「あら、篠ノ乃さん。他人を気遣うのは当然のこと。それがISを装備していても、ですわ。常識でしてよ?」

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

「鬼の皮をかぶっているよりマシですわ」

お~こんなところで修羅場か、ようやるはこいつら。

「おい、馬鹿者ども。邪魔だ。端っこでやっていろ」

箒とオルコットの頭を押しのけて、織斑先生は一夏の前にたった。

「織斑、武装を展開しろ。それくらいは自在にできるようになっただろう」

「は、はあ」

「返事は『はい』だ」

「は、はいっ」

「よし。でははじめろ」

そう言われて一夏は六秒で武器を展開した。

「遅い。0.五秒で出せるようになれ」

確かに六秒は遅いがそれは早いだろ。

「オルコット、武装を展開しろ」

「はい」

左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出す。そして、一瞬であのスナイパーライフルを展開した。しかし、そのポーズの意味は?

「さすがだな、代表候補生。ーただし、そのポーズはやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要なー」

「直せ。いいな」

「……はい」

「オルコット、近接用の武装を展開しろ」

「えっ。あ、はっ、はいっ」

オルコットは展開しようとするが,光の粒子はなかなか形どらなかった。

「くっ……」

「まだか?」

「す、すぐです。ーああ、もうっ!『インターセプター』!」

武器の名前を叫ぶと火の粒子は武器に変わった。けど、この方法確か初心者がやるやつだよな。オルコットにとっては屈辱的に違いない。

「……何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入られません!ですから、問題ありませんわ!」

「ほう、織斑との対戦で初心者に簡単に懐を許していたようにみえたが?」

「あ、あれは、その……」

「次は紅原。武装を展開してみろ」

「分かりました」

俺は返事をして、右手に漆黒の刀型武装『黒鷲』を展開した。

「よし。ほかの武装も出してみろ」

「あ、織斑先生。今この機体、武装はこの『黒鷲』と背中に付いているヤツと手にある砲塔しかないんです。他はまだ送られて来てないんです」

「そうか」

実際は嘘である。本当はまだ武装はあるが、ここでこの人に一気に見せるのはマズい。白騎士のこの人には。





 
 

 
後書き
ゴッドイーター2をやっていて投稿するのが遅れました。 

 

約束と嘘

今日もすごいことになったな。二組のクラス代表が中国の代表候補生の転校生に変わって、その転校生が一夏の幼なじみだなんてな。世界は広いようで狭いって事だな。放課後になると、その転校生は俺の前に現れた。

「あんたが二人目の男性パイロットね。私と戦いなさいよ!」

「いきなり人の前に現れて何言ってんだお前。悪いが先約があるんだ、今お前の相手をしているヒマは無い」

「相手をする気も無いが」と付け加えて、簪の待っている整備室に向かおうとするが、転校生は退こうとしない。

「なら、その先約の相手の名前を言いなさいよ。私が先に変わってもらうから」

「……さすがは武に関して歴史と文化が豊富な中国様だな。狙った獲物を仕留める為なら、恥じや礼儀を捨てるのか。ご立派だな」

「な、なんですて!!」

「言葉通りの意味だ。お前そんなことして恥ずかしく無いのか?まぁやってる時点で恥ずかしく無いんだろうが、そんなことやってるヒマがあるなら、一夏に差し入れでも持っていてやればどうだ。きっと喜ぶぞ」

俺がそう言うと、転校生は顔を赤めながら考え出してしまった。俺はそのうちに整備室に向かった。


      ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー

「悪いな簪。遅れた」

「何かあったの?…いつ時間通り来るのに」

「中国人の不良に絡まれた」

「それって…二組に転校してきた人?」

「え、ああそうだよ。ツインテールで猫みたいなヤツだった」

俺は作業に取りかかる準備を始めると、しばらく黙ってから簪は口を開いた。

「その人って、強いのかな…?」

「さぁどうだろうな。多分ISは第三世代型だろうし、そこそこ強いんじゃないのか?」

「もし、その人と燐が戦うことになったら…どっちが勝つと思うの?」

「多分、俺じゃないかな?やってみなきゃ分からないけど」

そう言うと簪は、クスクスと笑いながら作業をしていた。俺達はその話題を済ませて作業に集中した。


      ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー

そして今日の作業も終わり、俺達は『打鉄二式』の完成具合のデータを見ながら寮の廊下を歩いている。

「完成具合は、30%くらいか。このままじゃクラス対抗戦に間に合わないな。簪も出るんだろクラス対抗戦」

「うん…その時は『打鉄』を使うから大丈夫」

「そうか。けど、まだいくつか専用機持ちだけの行事があるだろうし、あと何人位か人手がほしいな」

「うん。けど……その…」

なんか歯切れが悪いな簪の奴。なんか他の奴が来たらマズいことでもあるのか?

「私は…燐と…ふた」

「最っっっ低!女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けないヤツ!犬に噛まれて死ね!」

簪が何か言おうとした瞬間、横の扉の中から大きな怒鳴り声が鳴り響いた。その部屋の番号は1025室。一夏と箒の部屋だ。その部屋からあの転校生が出てきて、不機嫌そうな顔をしながら、ズカズカとどこかに行ってしまった。

「また一夏か。悪い簪、先に帰っていてくれ。俺ちょっとこの部屋に何があったのか聞いてから行くから」

「う、うん分かった…早く帰ってきてね」

「あいよ」

そして、簪と別れ一夏の部屋に入ると箒と一夏が何かしゃべっていた。

「一夏、また何か揉め事か?代表候補生とは二回目か。何してたんだ」

「いや、俺は鈴との約束を覚えてたんだけど、何でかアイツがいきなり怒りだしてな。あ、鈴ってお前のほうじゃなくて二組に転校して来た、凰鈴音のほうな」

「お前がちゃんと女子との約束を覚えていないのが一夏。男として恥を知れ!」

「箒まで怒りだして、『馬に蹴られて死ね』て言うんだ」

さっき『犬に噛まれて死ね!』とも言われたけどなお前。ちなみに俺の母方のじいちゃんは生前、馬に顎を蹴られて三途の川を見たらしい。ただの旅館経営者に何でそんな経験があったのかは知らないが。

「そんな事より、その約束の内容は何なんだ?」

「確か、『鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を奢ってくれる』って約束なのに意味が違うっていうんだ」

「一夏!お前はまだそのようなことを言っているのか!」

毎日酢豚を奢ってくれる、か。あの凰は一夏のことが好き。それで料理の腕が上がったら毎日酢豚を食わせる。毎日、食わせる……これ『自分の料理の腕が上がったら毎日みそ汁を食べてくれるか?』って言う、逆プロポーズじゃん。

「……一夏。男として男の端くれにも置けないお前に言っておきたいことがある」

「なんだよ?改まって」

「牛にみぞおち蹴られて死ね」

「燐までいきなりなんだよ!」

「一夏、俺は今聞いただけですぐに気づいたぞ。なのに昔聞いて、さらに凰や箒に違うって言ってのにお前はまだ気づいていない……救いようがないなお前は」

「じゃあ教えてくれよ!」

「さすがにこればっかしはな。もう俺帰るわ」

俺はそう言って、一夏に答えを教えることなく自室に帰った。

    ー◇◇◇◇◇◇◇◇◇ー

「ただいま」

「おかえりなさい。どうだったの…」

「ああ、くだらないことだったよ。簪は何見てるんだ?」

簪がケータイで見ている物が気になって聞いみた。何の動画だろう。

「ヒーローアニメ…」

「へー。お、このアニメ俺よく見てたよ。懐かしいな」

俺は簪の顔の横から覗いて見ると、昔よく見ていたヒーローアニメであった。

「……燐もアニメ見るんだね…ちょっと意外」

「そうか?まあけど、男は一度位ヒーローに憧れるもんだよ」

「じゃあ今も憧れること……あるの?」

「いや、もう無いよ。第一俺、ヒーローってガラじゃなしな」

「そんなことない!」

簪はいきなり大きな声で否定してきた。

「燐はやさしいしくて強くて、ヒーローみたいだから……」

ハッと簪は自分が無意識に大きな声でしゃべっていたことに気づいて、言葉を顔を赤くしながら止めた。

「ありがとう簪。そう言ってもらって嬉しいよ」

俺は簪の頭を撫でながら言うと簪は顔をさっき以上に赤くしながら、俯いてしまった。その時、俺のケータイが鳴り始めた。

「おっとメールだ。……簪、俺明日から2日、3日、所属の企業に行かないといけなくなったんだ。手伝いが出来なくなるんだ」

「だ、大丈夫だよ」

「そうか、悪いな」

そのあとすぐ、簪はバスルームに入って、シャワーを浴びている最中に俺はもう一度、届いたメールを見ながら簪の言葉を思い出していた。

「ヒーローか……俺はそのヒーローにやられる敵キャラだよ、簪」

本当はそのメールは俺達、紅原三兄妹が作った組織、『暁』として動くためのメールだった。










 

 

共同契約

「それで焔、本当に『奴ら』は此処に来るのか?」

俺達は今、焔と一緒に港のコンテナ置き場に二人でいる。こんな夜中に子供二人で何をやってるんだと、見ず知らずの人は言うかもしれないが幸いにも人はいない。

「もちろん。今日此処で会合しようって言ってきたのはあっちだよ」

「罠の可能性は無いのか?」

「さぁ。確かに私達みたいにあんまり活動してない組織の話にわざわざ乗るほうもおかしいしね」

「おめぇらか?『暁』とか言うヤツらは?」

俺達が話てる最中にコンテナの物陰から出てきたのは、スーツ姿の女性二人だった。1人はさっき俺達に問い掛けてきた口の悪い奴。そしてもう一人はブロンドヘアーの女性だ。

「オータム、そう喧嘩腰にならないの。あなた達が『暁』ね。私は…あら、あなたは」

金髪の女性は俺を見るなり、言葉を止めた。

「初めましてだな。知ってると思うが、俺の名前は紅原燐。暁の隊長だ。今日はあんた達と話があると聞いてここに来た」

「これはビックリね。まさか二人目の男性IS操縦者が暁の隊長だったなんて…私はスコール・ミュ一ゼルよ」

そう言ってスコールは手をこちらに出し、握手を求めて来たので俺も手を出し握手をした。

「それであなた達の目的は何かしら?なぜ、私達『亡国機業』と組みたいのかしら?」

「我々は人数が少ない組織だ。だからどうしても人材が欲しくてな。あんた達には人材の情報提供をお願いしたいと思っている」

「それで、私達にはどんなメリットのあることをしてくれるのかしら?まさか私達が無料であなた達のような正体不明の組織に協力するとは思ってないでしょ」

「当たりまえだ、こちらからは労働力を提供しよう。今あんた達が各国でISの強奪を計画しているのは知っている。だから俺達はその協力をしよう」

「意外と耳が早いのね」

「学生だからな。いろんなことを知っておかなきゃ損だろ?」

実際こんなこと知ってる高校生のほうが損しているのかも知れないけど。

「あなた面白いわね。そっちの女の子はあなたの妹かしら?」

スコールは焔のほうを見ながら訪ねてきた。

「ああそうだが?」

「あんまりこっちに気を取られていると、人質に取られるわよ」

「なに?…」

「きゃ!」

後ろにいた焔が急に叫ぶので後ろを見ると焔がヤツらの仲間に捕まって、首もとにはナイフを突きつけられていた。

「……何のまねだ、スコール・ミュ一ゼル?」

「あら、妹が人質に取られたのに最初に出す言葉かしら。冷たいお兄さんね」

「家族を人質に取って俺達、暁を手駒にしようって算段か…」

「そうよ。イマイチあなた達が信用出来ないから、こうゆう手段に出させてもらったわ。そうすればあなたも…」

「焔、いつまで遊ぶつもりだ?」

「なんだと?」

焔を捕らえていた女が不可解そうに焔を見ると、焔は捕まっているのに笑っていた。

「だってお兄ちゃん、この人いい香りがするんだもん!」

「おっさんかお前は……さっさと拘束を解いてこっちに来い」

「ハーイ!」

焔は元気よく返事した途端にポンッ!!と煙になって消えてしまった。

「なに!消えただと!?」

「残念!後ろでした~」

拘束していた奴の後ろからいきなり現れた焔はそいつを地面に叩きつけたあと、自身のISの右手を展開して、首もとにナイフ型の近接武装に突きつけた。

「ハイこれで形成逆転ね!」

「だ、そうだ。これ以上やるなら俺を戦うが…どうする?」

「合格よ、紅原燐君。あなた達、暁を信用しましょう」

「試していたのか、俺達のこと?」

「ええ、もしあの程度の拘束を解けないような組織と組んでもこちらが危険になるだけだもの。ならいっそ、こちらの手駒にしたほうがいいもの。けど、あの煙みたいに消えたのは驚きだったわ」

「手品だと思ってくれてもかまわない…あんたの答え、今度は信じていいんだな?」

「もちろん」

俺がたずねると、スコールは微笑みながら答えた。俺は焔の拘束を外させ女の拘束を解かせてやった。そのあとにスコールに連絡するための通信機を受け取った。

「そう言えば、あなた達に頼まれた人材の情報提供だけど、欲しい人材の絞り込みはあるかしら?」

「別に無い。死人だろうが生きてようが関係ないから気にするな」

「……そう、分かったわ」

そう言ってスコール達はどこかに行ってしまった。

「けど、何で通信機なんか渡すんだろう?別にメールとかでも言いような気がするけど…」

「メールとかは、一度ケータイ会社のメールセンターってとこに集められる。俺達みたいに政府から監視されてるヤツのメールセンターに秘密結社からのメールが届いたらまずいだろ」

「あ、そっか」

「そうだ、じゃあ帰るか」

俺は神威を発動して、焔を送り届けたあと俺達の機体を作った『槙原技研』に戻って眠りついた。









 

 

お土産

『亡国企業』の取引から一夜明け、俺はIS学園の帰路の途中ショッピング街に来ている。簪やクラスの奴らのお土産は何がいいのであろうか?

「と、まぁそんな感じでお前からアドバイスを貰いたいと思ってるんだ」

『お兄ちゃん、そんな事でわざわざ連絡してきたの?私今学校だよ』

「影分身がだろ。お前はこうゆうの詳しいだろうって思ってたんだけど。それに手伝ってくれたらお前が欲しいヌイグルミを一つ買ってやるつもりだったのに…」

焔は無類の人形・ヌイグルミとか、可愛い物が大好きだ。毎月のお小遣いやバイト代をヌイグルミが入ったUEOキャッチャーに全部使ってしまうくらい。だからこの条件を出したら必ず食いつく。

『本当に!?ヤッター!!どのヌイグルミ買って貰おうかなぁ。任せといて手伝ってあげるから!』

ほら釣れた。簡単に食いついてくれて助かる。

『で、お兄ちゃん今どんなお店にいるの?』

「まずはクラスの奴らの土産として、お菓子を買おうと思っているんだけど俺のクラス外人が多くてな、何がいいのかがわからん」

実際クラスの半分が外人だ。和菓子がいいのか、洋菓子がいいのかまったく分からない。

『ナルホドナルヘソ。確かに女子ってお菓子に関しては口うるさいしね。ちなみにお兄ちゃんはどんなお店にいるの?』

「デパートの菓子売り場だ。目の前には羊羹が置いてあるな。その横には鹿児島名物『かすたどん』がある」

『それだと高いから貰う方も遠慮すると思うし、クッキーとかチョコがいいと思うよ。和菓子とかと比べるとそっちのほうが安いし』

「クッキーやチョコか、確かにそっちがいいな。じゃあクッキーにするか」

俺は焔の助言に感謝しながら、クッキーが36個入った箱を買うことにした。クラスの土産を買い終えると次は簪の土産だな。

「簪の土産は何がいいと思う?お前仲いいんだし、なんか無いか?」

『う~ん簪ちゃんとは良く電話でおしゃべりする仲だけどなー……お兄ちゃんは簪ちゃんの好きな物とか知らないの?欲しい物とか?』

「そうだなぁ、アニメのグッズとか欲しいかも知れないな」

『…………お兄ちゃんサイテー』

「何でそうなる。どこがおかしいんだよ」

『普通、女の子にあげる物でアニメのグッズは無いよ。お兄ちゃんこのままじゃあ一夏君のことバカにできないよさ』

「それはマジで困るから何かアイデアをくれ!!女子が男から貰って嬉しい物って何がある!?」

俺が必死に頼むと焔は電話の向こうで何かを考えている。

『お兄ちゃん良く聞いてよ。女子にプレゼントをする時はね、何か形に残る物がいいの。カバンとかね」

「俺は別にプレゼントをあげるつもりじゃなくて、土産をあげるつもりなんだが…」

「甘い!甘いよお兄ちゃん!女の子にとって男子から貰った物は何であれプレゼントなんだよ!」

「そ…そうなのか……。で、俺はどんなプレゼントを簪にあげればいいんだ?」

『フッ、私に任せなさい』

何故だろう、怪しい雰囲気なのに焔が今まで一番頼りになりそうな予感がしてきた。


           ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

焔の協力を得て簪とクラスの土産を買った俺は無事IS学園に帰ってきた。今は自室近くにある自販機でジュースを飲んでいる。

「燐か。帰っていたのか」

横から声をかけてきたのは箒だった。

「おお箒。さっき帰ってきたとこだ。一夏と一緒じゃないのか?」

「い、いつも一緒にいるワケでは無い!」

「ハハッそれもそうだな。じゃあそろそろ俺は部屋に戻って休むとするか」

「そうか。では、燐また明日」

「ああ、また明日」

俺は箒と分かれ、自分の部屋に戻った。

      ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「ただいま。簪いるかー?」

「おかえりなさい燐」

部屋に入ると元気良く簪が出てきた。よく見ると簪はメガネを外しているし、紙が若干濡れている。

「俺がいない間、機体制作のほうは進んだか?」

「うん…少しずつだけど順調に」

「そっか。そうそう簪に土産があるんだよ」

「本当に!?」

「食い付きがいいなー」

俺が笑いながら言うと、簪も恥ずかしく顔を赤らめてしまった。

「さて、土産その前に髪をちゃんと乾かさないとな。簪、髪を乾かしてきてくれ」

「わ、わかった」

簪はシャワールームに入って、髪を乾かしてくると期待に胸を膨らましているといった状態だ。土産気に入ってくれるといいんだけど。

「じゃあ目を瞑って俺が渡すから」

「う、うん」

指示通り目を瞑った簪の頭に俺は今日買った土産を被せてやった。

「おーヤッパリ似合うな。目開けて頭に被せたもの見てみ」

「何……あ…ボウシ」

簪は頭に被せてあるボウシを取って見てみた。そのボウシは花の飾りが付いている可愛らしいボウシだ。焔がさんざんダメ出しして時間をかけて選んだものである。

「最初は簪の好きなアニメのグッズをお土産にしようと思ってたんだけど、それを電話で焔に言ったらさんざん怒られてな。相手にアドバイスを貰って買ったんだ」

「そうなんだ…けどこれ高かったんじゃ……」

「いや、そんなに高くはなかったぞ。もしかして気に入ってもらえなかったか?」

「そんな事無い……すごく嬉しい」

「そうか。俺もそう言ってもらえて嬉しいよ」

実際なかなか似合っていて焔が見たら叫びそうなくらい可愛かった。

「じゃあお茶でも飲むか。簪はお茶とココア、どっちがいい?」

「ココアがいい」

「ハイよ」

俺はお湯を沸かそうとすると簪が微笑みながらお礼を言った。

「燐…ありがとう」

「あ、ああ」

簪の笑顔を見るとなんかドキドキするな。俺の態度を見るなり、簪は首を傾げている。俺は簪と一緒にココアを飲むとすぐ布団に入って眠ろうとするが簪の笑顔が頭から離れず、なかなか眠れなかった。次の日クラスでは土産のお菓子が大好評だった。












 
 

 
後書き
次はバトルを入れます 

 

襲撃者

クラス代表戦当日、一夏はあの二組の転校生が相手らしいが大丈夫なのであろうか。俺はそんな心にも無いことを考えながら中庭を歩いていた。クラス代表戦期間中は学生は自由なのは助かる。その時俺の目の前に楯無さんが現れた。

「ヤッホー久しぶりね。燐君」

「久しぶりですね楯無さん。いいんですか行事の最中に生徒会長がこんな所にいて大丈夫なんですか?」

「だいじょうぶだいじょうぶ。それよりちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」

「何ですか?簪の機体のことなら順調ですよ」

「それとは別に聞きたいことがあるの」

簪の機体のこと以外とは何が聞きたいんだろうか。

「あなたの本当の目的は何なの燐君?」

楯無さんは今までに無い真剣な顔をしている。

「本当の目的と言うと?」

「簪ちゃんのことを頼んだ後、あなたのこと少し調べたの。おじさんとおばさんの死因、火月君のことを…」

「人の家庭事情を勝手に調べるのは感心しませんね」

「そうね…けどこれは聞かなきゃいけないの。更識家の当主として」

「更識家…昔、父さんが言ってたな『大和達更識の人は日本の平和を陰ながら守っている』って。つまり、俺はこの国にとって危険な存在ってワケですか」

確かに俺はこの国が嫌いだ。だから更識家が動いてもおかしくわない。だが、まだ俺達が何をするかに付いて誰も知らない。だから楯無さんは俺の意志を聞いてきたと言うワケか。

「そうじゃないわ。私が聞きたいのはあなた達が…」

ドオォォォォォォン!!

楯無さんが話っている最中に第二アリーナの方から爆発音が響き渡った。すると楯無さんの上空から高出力のビームがはなたれてきた。俺は急いで楯無を掴んでビームをよけた。

「楯無さん大丈夫ですか?」

「あ、ありがとう」

楯無さんの無事を確かめると上空から一機のISが降りてきた。明らかにこの学園の所属の機体じゃないな。

「おいおい先輩この学園警備ザルじゃないんですか?」

「そうね。今度から警備システムの見直しが必要ね」

しかし見たことの無い型だな。どこの国の所属かも分からない。多分さっきの爆発音からして一夏達の方にも同じのが来てるな。

「楯無さん、この所属不明機は俺がやります。楯無さんは他の生徒達の避難誘導をお願いします」

「分かったわ。終わったらすぐに駆けつけるから、それまでは絶対に無茶しないでね!」

楯無さんは自分の機体を展開して生徒の避難誘導に向かった。俺も倶梨伽羅を展開して所属不明機に切りかかった。

            ◇ 

「“火遁・豪火球”!」

倶梨伽羅から放った豪火球を所属不明機はビームを当てて防いだ

「なかなかやるなコイツは…」

所属不明機との戦いを始めてから五分が経つがさっき防戦一方だ。しょうがないあれをやるか。倶梨伽羅の背中の翼状の武装は大きく動き、俺の肩の上に乗り、先端が所属不明機の方を向いた。鎌状の先端は大きく開き、その中には砲塔が隠されていた。

「コレでもくらえ。神蛇光弾!」

砲塔から放った大量の細いビームが所属不明機に向かって弧を描きながら直撃したいった。俺は神蛇光弾が放たれているその間に印を結んでいる。

「“水遁・水断波”」

両腕から勢いよく出てきた、直線状の高圧の水のカッターが所属不明機の両腕を切り裂いた。切り裂いた部分からは一滴も血が出ていない。

「こいつ…無人機って事は黒幕は篠ノ乃束か!」

俺は『瞬間加速』で無人機の懐に入り、神威を使って無人機の中に手を突っ込んだ。そして、目的の物を見つけ出したのでそれを掴んで引っこ抜いた。神威の力ですんなり抜くこともできるがそれだと目的の物が取り出せないので強引に引き抜いた。俺の手には黒い輝きをしているISコアがあった。俺はそれを握り潰すと無人機も完全に動きを止めた。

「燐君!大丈夫!?」

すると楯無さんが駆けつけてくれたが、もうちょっと来るのが遅かったな。

「大丈夫ですよ、楯無さん。なんとか勝ちました」

「良かった。もしアナタに何かあったら私、簪ちゃんに殺されかもしれなかったわ」

何でそこで簪が出てくるのかは分からないがしかし、しまったな。篠ノ乃束は無人機越しに俺を見てたはず、つまり俺の動きや武装を知ってしまった。俺が奴を殺す時に対策を考えて対処してくるだろうな。

「この機体、無人機ね」

「え、ああそうです。コイツのコアは俺が破壊しました」

「そう…燐君、このことは」

「他言無用ですよね。分かってます」

俺の答えに楯無は安心して顔になった。

「そういえばさっき助けてもらったわね。ありがとう」

「どういたしまして」

さすがに疲れたな。そういえば、一夏達の方は終わったのだろうか。ちょっと気になるな。


















 
 

 
後書き
久々の戦闘シーン、ひさびさ過ぎて変になったかもしれません。
残りの二作品を集中したいと思っているのでこの作品は休みします。