FAIRY TAIL 魔の天才


 

プロローグ 天才の帰還

 
前書き
幾度となく断念してきましたが、今回は長く続くようにしたいです



。を付けるのは文の中で文節を分ける時です 

 
とある魔導士ギルドの前
一人の男と一匹の猫が話しながら歩いていた

「なあ、ヒール。3年ぶりだけどあんまり変わってないよな」
「まあ、そうだね。変わっているのは君の方だね、カイト」
「それは酷いね、あのギルドにいる人間はきっと変わった人間が多いんじゃないかな?」

すると紺色の猫・・・ヒールは困ったように短い右手で頭を掻いた

「それを言うと何も言えないね」

それを聞くとカイトはなにやら満足そうに頷き前方を見て呟いた

「やっと帰ってこられたな・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)に」
「そうだね」

彼は見るからに嬉しくてたまらない様子で門を潜った
そこには3年前とほとんど変わらない景色があった
ある一点を除いて・・・

「あのバカどもめ・・・」
「どうするよ、マスター」「エルザも向かってんだろ?」「なら、俺達じゃどうしようもねえだろ?」

(なんかあったみてェだな)

「よおォ、何か問題でも起きたか?」

するとマスターマカロフの近くに集まっていた魔導士たちはようやく彼の存在に気づき
代表してマスターマカロフが話しかける

「カイト!よく帰ってきた。仕事は?」
「おう!大成功だ!」

彼はピースを作り心底嬉しそうに笑った
その瞬間ギルドは歓声に包まれる

「あの仕事を成功させたのかよ!」「さすがだな、カイトは」などなど

その歓声の中カイトは核心に触れた

「んで、何があった?見たところナツやメイルがいないみたいだけど仕事にでも行ったのか?」

その瞬間ギルド内が静寂に包まれた
マスターマカロフが溜息を吐き再び口を開く

「あやつ等勝手にS級クエストに行きおって・・・」
「へぇ、ナツってS級試験合格したんだ」
「そんな訳あるか!」

マスターマカロフが否定するがそれすら予期していたかのようにまた笑った
マスターマカロフはさらに溜息を吐きカイトに頭を下げる

「カイトよ、疲れているのは十分わかっているが奴等を連れ戻してくれないか?
メンバーはナツ、グレイ、ハッピー、メイル、後は先日入ったばかりの新人じゃ
すでにエルザが向かっておる」

カイトはそれまでとは変わって真面目な顔つきとなり首を横に振った

「回りくどい話は嫌いだ
で、俺にどんな依頼をするんだ?マカロフ」

マスターマカロフはニヤッと笑い至って簡素に答えた

「奴等を全員無事に連れ帰ってきてくれ!」

カイトは笑いながら頷いた

「その依頼、承った。確実に全員を無事連れて帰ってこよう
行くぞ、ヒール!」
「りょうかーい」

カイトは門に向って歩き出した
その後をヒールがついて行く






       カイトがギルドを出た後ギルド内

「ねえ、マスター」

レビィがマスターマカロフに話し掛ける

「ん、どうしたのじゃレビィ?」

マスターマカロフはそう訊ねた
レビィは続ける

「彼は一体何者なんですか?
沢山の魔法を扱ってる・・・って皆言ってたけど」

マスターマカロフは、誰もいないギルドの入り口を見つめ呟くように答えた

「あ奴が何者かはワシにもよくわからんが、強き者は大きな物を背負っておるものじゃ
それが原因で奴が人と関わらないのなら・・・そっとしておいてくれんかのぉ。
いつか奴も皆を信じ、全てを明かすひがきっと来る」

レビィもまたその話を聞き誰もいないギルドの入り口を見つめる




          ギルドを出たカイト

カイトとメイルはマスターマカロフに言われた通りガルナ島を目指して港へ向かっていた

「なあ、ヒール。エルザが向かったのに俺が行く意味あんのか?」
「まあ、マスターも心配なんでしょ?S級の中でも比較的若いし」

その言葉にカイトはマカロフのように溜息を吐いた

「若さならミラも似たようなものだけどな、俺も一応若いんだけどね?」
「何を言ってるんだか」

確かにな、とカイトは相槌を打ち、そういえば・・・と続ける

「3年ぶりにナツやメイルに会えるんだな」
「そうだね、少しでも答えに近づけるといいね」

ヒールの言葉にカイトはどこか悲しい目で遠くを見つめる・・・まるで重い過去を思い出すように・・
そして小さく首を横に振ると独り言のように呟いた

「やっとここまで近づいたんだ・・・。今度こそ答え(・・)を導き出してみせるよ・・・」

そこで言葉を区切り、空を見上げ言葉を続ける

「・・・師匠(・・)・・・」

今日も空は青く澄み切っていた 
 

 
後書き
どうも!プロローグということで張り切ってしまいました

この先は原作沿いに進め、戦争と楽園の塔の間にオリジナル、楽園の塔の後にオリジナル
時間的には過去の話で、戦争後を①、楽園の塔後を②としていくつかに分けて過去の話を書いていく予定です

感想、ご意見ありましたらお願いします 

 

悪魔の島に魔の天才が上陸!

「さて、船は・・・だしてもらえないね」


港町「ハルジオン」
妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士であるカイトとヒールは歩いていた

さて、船が出ない理由は簡単
彼らが向かおうとしている島は人々から・・・

「〝悪魔の島〟、ね・・・」

〝悪魔の島〟それが人々が呼ぶガルナ島の異名だ
そこに住む人は悪魔になる・・・という噂のせいで人々は、海賊でさえ近寄ろうとしない
カイトは首を横に振り半ば諦めたように呟いた

「これじゃあ、一人で勝手に行けって言われてるようなものだな・・・」
「実際に言われたけどね・・・」

ヒールもカイルも再び首を横に振る
そして、しばし沈黙が続き、カイトは決心してよし!と声を上げた

「いいや、やっぱり自分で行こう
その方が早いし」
「最初からそうすれば良かったね」

カイトは話しながら海の方へ歩いていく
漁師の男がカイトに気づいて声をかける

「おい!そこの兄ちゃん、ここの海は海水浴場じゃあねえぞー
サメ出るから気を付けろよー」
「あいよー」

カイトは男に対して手を挙げ返す
男は不思議そうに首を傾げ市場の方へ戻っていった

「さて、準備はいいかい?」
「大丈夫だよ」

カイトは了承をとると海に足から飛び込んだ
・・・しかし、水音は立たない
カイトは海水面から15CM ほどの位置に立っていた
そして海水面を蹴るようにして前に進む


ドッゴーン!!


海水が市場まで飛び、波が高くなる
しかし、そこにカイトとヒールの姿はなかった

「なんだ?!」
「巨大ザメでも出たか?!」

町の人たちが集まり話をする
その視線の先には・・・まるで海を割るように進む人の様な影だった




「あ~あ、やっぱ海水ってしょっぺーな」

カイトは呟くがいつもは返ってくるヒールの言葉がない
理由はカイトが持つリュックの中に納まっているからだ。そうでなくても時速100KMで進む中で
まともには喋れない
1分も経たないうちにガルナ島に着いた
・・・まあ、わかると思うがそんな急に止まれる訳もなく森に突っ込んでいった




            ガルナ島内 戦闘中のエルザ一行


「なに?!この魔力!」

近づく巨大な魔力に金髪(プロンドヘアー)の新人ルーシィが声を上げてエルザに問う
しかしエルザは青い顔をして魔力の元の方を向いていた

「カイト?!」
「カイト・・?」

エルザが発した言葉はどうやら人の名前で少なくともエルザが怯える様な人で・・・
白髪の少女、メイルが喜ぶような人だという事が分かった
そこで、何故かいろいろなことを知っている猫・・・ハッピーにルーシィは問い直す

「ねえ、ハッピー。カイトって誰?」

ハッピーは何処からか出してきた学者帽をかぶり説明を始めた

「あい!カイトっていうのはオイラ達と同じ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だよ!
エルザと同じS級魔導士でエルザやナツが全く敵わないんだ!
皆が言ってる〝オヤジ〟って人と同等だって噂だよ。実際に戦ったことはないけど」
「うっそー?!」

ルーシィが驚いたのはナツはともかくあのエルザまで倒してしまうほどの魔導士だということにだ
しかし、そこで疑問が生まれたその疑問を問いかける前に目の前の木がなぎ倒され一人の男が現れた

「あー・・・疲れた・・・」

疲労十分という顔をした男性にルーシィは3つの点で驚いた

まず一つ目はその容姿
肩ほどまである青い髪。前髪から微かに見える目は紅くナツほどではないがややつり目
顔は小顔で誰が見ても美形だ
そして、黒のロングコートに身を包んでいるその姿はとても美しかった

二つ目は彼の状態だった
この島の植物にあれだけの速度で突っ込んできたなら傷がついているのが普通だ
しかし彼には傷どころか衣服に乱れはなく、草木は一切ついていない
さらにルーシィの目の前の木は彼の通ってきた場所を空ける様に左右に折れていた

三つめは彼の魔力だ
普通大きな魔力を持つ者の魔力は押しつぶすような圧力があるものだが、彼の魔力は押しつぶすような
圧力はなく、かといってふんわりとした優しい魔力でもない
それでいてナツやエルザよりも魔力量は圧倒的に多い

まとめるとルーシィはカイトに対してある感情を抱いた

(カイトさんって何者・・?)

ルーシィが考え事をしているとハッピーがカイトに話し掛けた

「ねえ、カイト。ヒールいる?」
「おお、ハッピー。大きくなったなー。ヒールならここにいるぞ」

カイトは自分の後ろを指さした
首を傾げながらルーシィは尋ねる

「ここ・・って何もいないですよね?って、うわ!」

最後のは、カイトの後ろから猫が顔を出したからだろう
しかしルーシィのことなど気にせずにハッピーとヒールは話を続けた

「ヒール。例の物は?」
「勿論ありまっせ」

どこかの映画の密売者の様な黒のスーツとサングラスをかけて遊んでいる猫二匹にカイトは呆れ半分に
問う

「君ら毎回どこから衣装取り出してるの?」

その問いに答えはなくカイトは溜息を吐く

ルーシィはある疑問を抱いた
エルザがカイトを恐れるのは彼の強さゆえだろう。だが、なぜメイルは喜ぶのか・・・そして、なぜハッピーは彼の事を恐れていないのか
訊こうとしたところでずっと大人しくしていたメイルが突然カイトに抱き付いた

「カーイト!」
「うわっ!」
「ええーーー!」

カイトは突然の事に驚き、ルーシィは驚きのあまり叫んだ
カイトはすぐに落ち着きを取り戻しメイルを背負う
ルーシィは先ほどから抱いていた質問を至極簡単に口にした

「カイトさんって()()なんですか?」
「「「!」」」

その言葉を口にしたルーシィにエルザ、ハッピー、メイルの二人と一匹は焦った顔をする
何の事かわからないルーシィにカイトはあくまで穏やかに声をかけた

「君がルーシィか・・。俺の事は呼び捨てで良いよ
さて・・・エルザ!」
「な、なんだ?」

エルザがやや焦ったように問う

「俺はマカロフからお前ら全員を無事連れて帰って来いと依頼を受けたからお前ら全員の身の安全は保障しようだが、ガルナ島での仕事に関しては手伝うつもりはないお前達で解決しろ」
「あ、ああ」

エルザは歯切れ悪く返す
なぜなら、エルザは彼に手伝ってもらえるなど考えていなかったからだ
カイトは頼まれたこと、すなわち依頼は絶対に放棄しない
どんなに小さくても、たとえそれで世界を敵にしても彼は依頼を絶対に放棄しない
その代り、彼は人の仕事に手は出さない。ヒントを出すことはあっても手を貸すことは決してない
カイトは穏やかな口調のまま背負ったメイルに声をかけた

「行くぞ、メイル」
「うん!」

メイルは元気よく返事をする
カイトの足元の砂が少し舞い上がり、ルーシィが瞬きをして目を開けた時にはカイトとメイルは
そこにいなかった

「あ~あ、置いていかれちゃったか」

緊張感のないヒールが呟く
しばらくしてルーシィはエルザとハッピーそして彼が置いて行ったヒールに訊いた

「わたし何かまずいこと訊いた・・・?」

エルザとハッピーが答えずらいことが分かっていたヒールは答えた

「詳しいことは君達にはまだ教えられないけど彼に何者か訊くのはやめてあげてくれないかな
・・・自分が何者なのか、その"答え"を一番欲しているのはカイト自身だから」

ルーシィはヒールが何を言っているのか解らなかった
だが、その質問が彼を不愉快にしてしまっていることは解った
ただ、とヒールは続ける

「解らなかったんだから仕方ないよ
カイトもそのことは十分分かってるはず。でも、いくら分かっていても全ての感情を殺すことなんて
人間にはできないよ
どうかカイトを嫌いにならないでほしい」

ヒールは頭を下げる
ルーシィは

「うん!」

元気に答えた



時は少し遡りルーシィの目の前から消えたカイトとメイル


「こんな風に一緒に飛ぶのも三年ぶりだね、カイト!」

本当に楽しそうに話し掛ける

「ああ、そうだな」

一見不愛想に聞こえるがその顔は笑っている

「三年ぶりなんだからもっとゆっくり会って話がしたかったな
何より休みたい」

メイルは絶賛苦笑い中だ
自分のせいで休む機会を潰してしまった事に対する申し訳なさと自分達の為に疲れた体で駆けつけてくれたことへの感謝をどう口にしていいか解らずカイトの首に回した己の腕に力を籠めた

「どうした?」

苦しくはなかったが突然の事にさすがのカイトも驚く

「ううん、何でもない」

メイルは答える

「カイト・・大好き」

その誰にも聞かれていないと思っていたメイルの呟きはカイトの耳にしっかり届いた
そして、本当に小さな声でカイトも呟く

「・・・俺もだよ」


これは自分が何者なのか探す魔導士(カイト)と彼を支えたいと思う魔導士(メイル)の物語・・・ 
 

 
後書き
雪が降りました!
交通機関が一部麻痺しているようですが徒歩の私には関係ありません!


さて、今回カイトが求める答えの問が明らかになりました
オチは大体考えていますが、まだ纏まりません。彼がマカロフを呼び捨てにするのには理由があります
そして、今作のメインヒロインである、メイル!
彼女にもある秘密があります。
過去話①ではカイトとメイルの出会いを書いてみたいものです


追記2015年3月7日手直し

最後の奴はハッチャケました。許してください
 

 

師匠の愛・弟子の夢

 
前書き
ここ一年、部活やら勉強やらで全く開けてませんでした

すみませんでした 

 
なんやかんやあってメイルと上空を飛行し、遺跡へ向かうカイト

「で、結局何が起こってるの?」

手伝わないと言っても少しは気になってしまうカイトはメイルに仕事の内容を問う

「あ、ええとね・・・」

手伝わない宣言をしても事情を聴いてくるカイトに特に驚くことなくメイルは簡単に事情を説明する



「なるほど
まあ、事情はわかった。そのリオンだっけか?
そいつには説教をしたいところだな・・・」

その後少しカイトは一人でブツブツ出てきた単語を並べていたが「月の雫(ムーンドリップ)」と呟き納得したように顔を上げた

「なるほどな
メイル、お前にだけ答えを教えてやるよ」

カイトのセリフにメイルは驚く

「ホント!?
でも、よく今の説明で答えまでたどり着いたね」

驚き三割感心一割呆れ五割でメイルは言う
明らかに呆れていることはわかったがメイルの意見にカイトは答えた

「この程度のクエストなら、エルザ・・・はまだ若いが、ラクサスやオレ、ギルダーツなら
簡単にわかることだ
じゃあ、本題だが・・・問題なのは村人達が悪魔になった時期(・・)だ。恐らくだが・・・リオン達が月の雫(ムーンドリップ)を始めた時期と被るはずだ
紫の月は、月の雫(ムーンドリップ)によって作られた塵の様なものが膜になっているんだ
その膜は悪魔(・・)の記憶を阻害する。つまり・・・」

カイトは一瞬間を作り、

「彼らは元々悪魔だった。それが答えだ」

メイルはずっと話を聞いていたが最後を聞いた瞬間に真っ青になった

「あ・・悪魔・・?」

カイトは少し悪戯な顔を作り

「そう、悪魔だよ・・・っといつの間にか目的地だな。
お?月の雫(ムーンドリップ)が発動してる・・?」

カイトの言う通り二人は遺跡の真上にいた
そして、紫色の光の柱もまた遺跡を、正確には遺跡の地下を照らしていた

「「!?」」

突然周辺に大きな音が鳴り響き遺跡の上にいる二人は驚いた

「デリオラかな?」
「カイトが笑ってる・・・」

メイルが呟く
確かにカイトは今笑っている。それもとても楽しそうに
しかし、それを指摘するメイルもまた笑っている

「じゃあ、行ってみるか、メイル!」
「うん!」

月の雫(ムーンドリップ)の光のわきを降りていくカイトとメイル
地面に着くと月の雫(ムーンドリップ)の光は消えデリオラを覆っていた氷は完全に消えた

「おい、グレイ!今はアイツを倒すぞ!」

ナツが叫ぶがグレイは絶対氷結(アイスドシェル)を発動しようして・・・ナツの言葉で思いとどまったようだ

「ナツ、俺にやらせてくれない?
そんな強そうな奴とやれるなんて、この先いつあるかわからねぇーし」

戦おうとしていたナツはその声を聞いて、動きを止めて後ろを向く
次いでカイトの顔を見て、文句を言うのをやめた
笑って(・・・)いたのだ。ただ、楽しそうに
しかし、ナツ達は経験上この満面の笑みのカイトには逆らってはいけないと知っていたため何も言わず、ナツはただ頷いた

「あ、ああ」

まあ、若干不満そうではあるが
それを知ってか知らずかカイトはメイルを降ろし軽いストレッチをしていた

「ありがとー」

カイトは礼を言いながら腰を下げる
突進の準備が整っているということだ
そして、長く息を吐くと抑えていた魔力を解放した

「きゃあああー!!」

ルーシィの悲鳴が響く
周囲は砂が飛び、岩が砕け、大気が震える
ルーシィはカイトを驚きながらもしっかりと目で捉えていた、・・・その場にしゃがみ込んで
カイトの笑みは頂点に達し、足に力を籠め地を蹴った

「デリオラーーー!」

叫びながらデリオラの顔に向かって突っ込んでいく
デリオラも何もしないわけではなくその大きな拳でカイトを殴ろうとした
しかし、カイトは何の反応も見せずただ突っ込んでいく

「あ、危ない!」

ルーシィは反応を見せないカイトに叫ぶ
だが、カイトを始め周りの魔導士も何もしない

「・・・ふっとべ」

カイトと拳が接触する瞬間、彼が誰にも聞こえないような声で呟くと
デリオラの腕が後方に弾け、デリオラは態勢を崩す
その瞬間をカイトが見逃すわけもなくさらに空を蹴り(・・)デリオラに近づく
カイトはデリオラの目の前に移動しその目を見て驚いた

「・・・そうか、そういう事か・・」

一つ顔を蹴り、カイトは地に降りた

「なにしたの・・・?」

ルーシィはその行動の意味が解らず呟き周りを見るが他の皆もその意味がわかっていなかった
デリオラは態勢を整えカイトを殴るために拳を振るう
今回もカイトはなにもしない
カイトの目の前に来たその拳はカイトに届くことはなかった


・・・その腕に突然ヒビが入り崩れた

「どうなったんだ・・?」

ナツとハッピーが思わずつぶやく
そんな中気を失ったはずのリオンが独り言のように呟く

「ウルの氷の中で徐々に命を削られ、俺たちはその最後を見ているというのか・・?」

カイトは一人空を見上げて語る

絶対零度(アイスドシェル)を使った時ウルは”氷の中で生きている”と言ったんだろ?
この魔法は魔法の中に”意思”を閉じ込める魔法だ。彼女の意思の力がよほど強かったんだろう」

皆の視線がグレイに集中する
グレイはその手で目を抑え呟いた

「ありがとうございます・・・師匠・・」 
 

 
後書き
これから頑張りたいと思います 

 

その背中が示すもの

「これで、S級クエスト完了だな!」
「もしかして、これで私達二階(・・)に行けちゃったりして!」

ナツとルーシィは喜びを隠せない様だ

(んなわけねぇー)

カイトはその二人をやけに微笑ましく思いながら右を見た
グレイが涙を見せてから五分ほどしただろうか
すっかり泣き止みその後を隠そうともしないグレイに感心した後あることに気が付きエルザに指摘する

「さっき、メイルから大体の事は聞いたがこの仕事まだ終わってないんじゃないか?」

カイトの指摘にエルザは多少驚きながら頷く

「あ、ああ
確かにこのクエストはまだ終わっていない
・・珍しいな、カイト。お前がここまで助言するなんて」
「・・・俺ってそんなに薄情に見えるかな」

このやり取りを聞いてナツとルーシィ、メイルは驚きの声を上げる

「え!?
でも、デリオラも倒したし、これで・・」
「村人の皆を元に戻すことが今回の仕事だろ?
彼らが悪魔の姿になったのは、デリオラが原因じゃない」

ルーシィの言葉に被せる様にカイトは告げた
しかし、真相を知っているメイルの反応は少し違った

「カイト~、元に戻す・・って無理じゃない?」

メイルは小声で言ったので、他の皆には聞こえてない
・・・メイルがどこにいるかって?さっきからずっとカイトの背中にくっついてる

「そこから先は仕事を引き受けた奴の仕事だ
ほら、仕事を済ませてこい。俺は港で待ってるからな」
「ああ。すぐ済ませてくる」

エルザが言った後すぐ歩き始めたのでナツ達はついて行く
ふと、何かを思ったのがグレイが振り返りリオンに告げる

「お前もどっかのギルドに入れよ
仲間がいて・・きっと楽しいぞ」
「うっ、うるさい。早く行け」

弟弟子に言われて少し恥ずかしそうに顔をそらすリオン
グレイはそれ以上何も告げずナツ達を追いかける
リオンがその場を離れようと腰を浮かし、一歩目を踏み出したその瞬間にカイトが呟く

「これは独り言だから聞き流せよ
・・・俺は全てを見たわけじゃない。だが、今回のお前のやり方は少し(・・)間違っていたと思う。師を超えたいと思うのはあたりまえだが、その亡霊にいつまでも囚われるな
本当の力・・・大切な人を守る力や、何人にも負けることのない絶対の力や、師を超えたいという思いの力。それを本当に手に入れたいならここに行け。悪いが妖精の尻尾(うち)には呼べんが、知り合いのギルドだ。
此処に行き、この手紙を見せたのちジュラという男を訪ねろ
きっと何かわかるだろう」

カイトはリオンに一枚の便箋を渡し、その肩を二回叩くとあえてリオンの前を歩いて行った


その背中はまるで、語っているようだった






――――――俺に追いついてみろ、と 
 

 
後書き
今回は急いで書き上げてみました
楽しんでいただけましたかね?
リオン君がラミアに入るきっかけを与えた人は誰なんだろう?
という疑問から広げた妄想です。

評価、感想、質問お待ちしております!

それでは、次回お会いしましょう。