ZOIDS 紅の獅子


 

プロローグ

延々と続く砂漠の一角に、紅いライガータイプのゾイドが佇んでいた。

「あ~あ、いつになったら砂漠以外の景色が見られるのかしら?」

砂漠の枯れた風に、そう呟いた彼女の紅い髪が美しく靡く。

「さて、外の空気も入れたし早くハッチ閉めちゃお。」

彼女はライガータイプのゾイドのコクピットシートに座り、ハッチを閉める。

それと同時に、センサーから敵反応のアラームが鳴る。

「ん?こちらに近づくゾイドの反応・・・」

彼女はパネルを操作し近づくゾイドを特定する。

「モルガが二体にレッドホーン、帝国軍の識別はなし・・・盗賊か。」

『そこの紅いライガー!大人しく俺達にそのゾイドをよこせ!』

レッドホーンから男の声が発せられた
盗賊のリーダーなのだろう。

「いきなり現れて何あんたら?そう言われて相棒を渡すゾイド乗りがいるもんですか。」

『何だぁ?女が乗ってんのか?』

「女のゾイド乗りなんて珍しくないでしょ?」

『ちょうどいい、そのゾイドと一緒に俺達のところに来てもらうぞ。』

『かなりの上玉だぜ兄貴、ヘヘヘヘヘ。』

盗賊の3人組は舌なめずりをしヘラヘラを笑う
その光景に彼女は鳥肌が立ち震えた。

「うっわ盗賊って考えてる事みんな一緒なのね、そんなだから盗賊なんてチンケなことしかできないのよ。」

その発言は盗賊達の逆鱗に触れた

『ああっ!?このアマ舐めてんじゃねーぞ!!』

『人が大人しくしてれば付け上がりやがって・・・!野郎共!多少傷がついてもいい!あのゾイドをいただくぞ!』

モルガとレッドホーンは搭載されている火器を彼女のゾイドに向ける。

「典型的な盗賊の思考ね、そんなゾイドで私に勝てると思ってるの?」

『そういうテメェはろくに武器も積んでねぇじゃねーか!』

そう 彼女のゾイドは目立った武装がなく、丸腰だ。

それでも、彼女は余裕を崩さない。

「武器に頼ってるようじゃ強いゾイド乗りになれないわよ?三下盗賊さん達?」

『このアマァ!!構うこたぁねえ!やっちまえ!!』

盗賊のゾイドが一斉に砲撃を開始した。

弾丸が彼女のゾイドを襲う。

「さあ、あいつらに私達の力を見せてやりましょう。」

彼女に呼応する様に、ライガータイプのゾイドは咆哮する。

砲弾が着弾する前にジャンプで攻撃を回避した。

「な、速い!?」

盗賊達が怯んでいる隙に

「まず1匹!」

「うわああああ!?」

空中から1体のモルガに襲い掛かり、機体を薙ぎ倒した。

「な、何だこのゾイド馬鹿速ぇ!?」

「ひ、怯むな!!撃て撃て!!」

残った2体が砲撃を行うが
ライガータイプは巧みに回避し、もう1体のモルガに接近する。

「く、来るなぁ!!」

盗賊の悲鳴と共に、モルガのビーム砲が噛み千切られた。
その砲塔を捨てると、次はリーダーのレッドホーンへ視線を向けた。

「な、何だこの女・・・!ただのゾイド乗りじゃねえ・・・!」

「もう終わりかしら?こいつらのコンバットシステムはフリーズしてるわよ?」

余裕の彼女の前に、盗賊は冷や汗をかくばかり
それでもリーダーとしての示しがあるのか、強がる態度をとる。

「こ、こっちはレッドホーンだ。そう簡単にやられはしねぇぞ!」

「ふ~ん、私ダークホーンとかアイアンコングにも勝つ自信があるんだけど」

「へ、へへへ、ハッタリかますならもっとマシなもの考えるんだな」

「ハッタリかどうか・・・試してあげるわ!」

彼女のゾイドはレッドホーンに向け駆け出す。

その時、頭部側面にある鬣状のユニットが展開し輝きだす。
そして、両爪にもエネルギーが集中し輝きを増す。

「な、何する気だこいつ・・・来るな!来るんじゃねええええ!!」

盗賊のリーダーは悪あがきの如く砲撃を繰り返すが、射線がブレた攻撃では

あのゾイドは捉えられない。

「ストライク!レーザークロォォォォ!!」

レッドホーンに向かって飛び上がり、輝く爪を穿ち

レッドホーンを一撃で倒した。

コンバットシステムフリーズのエラー音がコクピットに響く中
盗賊のリーダーが呆気に取られるしかなかった。

「な、何だあのゾイド・・・武装なしで俺達を1分も掛からずに倒しちまうなんて・・・化け物か!?」

「これに懲りたら、盗賊なんて馬鹿な真似は二度としないようにね。」

彼女は相棒のゾイドを立ち去ろうとしたが

「待て!!」

盗賊のリーダーに呼び止められた。

「あんた・・・一体何者だ!?」

「私?私は・・・・・アオイ・リュウガ
私の相棒は、ライガーゼロ。覚えておきなさい。」

そう言い残し、アオイとその相棒、ライガーゼロは走り去っていった。

「あの盗賊達の座標はあの人に送ったとして・・・これからどうしようかな・・・?」

そう考え込み、しばらくして、アオイは微笑む。

「ねぇ、次は何処に行きたい?ゼロ・・・」

ゼロはそれに応えるかの様に咆哮し

砂漠の地平線の彼方へ消えていった。


そして、アオイは

後に伝説となるゾイド乗りの少年少女と出会う。

 
 

 
後書き
次回予告


初めまして!アオイ・リュウガよ!
宛のない旅をしていたらシールドライガーと一緒にいた男の子を見つけたの。
何であんな子供がシールドライガーなんてもってるのかしら・・・?
え、バン・フライハイトってまさか・・・!それに、あの銀色のゾイドはオーガノイド!?

次回 ZOIDS 第1話「ゾイド乗りの少年」

今度もめちゃくちゃ動いてやるわ!! 

 

第1話 ゾイド乗りの少年

延々と続く砂漠を走るライガーゼロ

コクピットの中でアオイはイライラを募らせていた。

「あ~もうホントにいつになったら町が見えてくるのよ~!!」

彼女はコクピットの中で子供の様に手足をバタつかせる。

「スリーパーゾイドに襲われるわ、再三盗賊に襲われるわ、何なのこれ嫌がらせ?
あ、もしかして私の美貌のせい?ホント私って罪作りなオ・ン・ナ」

調子のいい事を口走るアオイに、ゼロは冷や汗をかく。

「な~んて冗談はさておき・・・ここって共和国軍の勢力圏内よね・・・。
私はともかく、ゼロを見られると厄介ね・・・」

そう呟き入り組んだ岩場が並ぶ地域に辿り着いた。

その彼女の目の前に

「ん?あれって・・・シールドライガー?」

青いシールドライガーと、傍の岩場に座っている少年と小型ゾイドの姿があった。

「何で共和国最速のシールドライガーをあんな子供が・・・それに近くにいる小さいゾイドは何?」

気になるところが山ほどあったが、とりあえず話をしてみようとシールドライガーの前でゼロを止めた。

「な、何だこの紅いライガー!?」

「ウオ?」

少年は驚き、小型ゾイドは不思議そうに首をかしげていた。

コクピットハッチを開き、アオイは彼らに接触する。

「あなた達、ここで何をしてるの?」

「お、女の人?」

「ここは共和国軍の勢力圏内よ。何処で手に入れたか知らないけどシールドライガーに乗ってたら盗賊と疑われるわよ?」

「そうだ!俺の仲間が共和国軍に捕まったんだ!」

「え!?」

「幸いジークが助けてくれて俺は逃げ出せたんだけど・・・」

「ジークって、この銀色の小さいゾイドのことね。」

アオイは銀色の小型ゾイドであるジークへ目線を移す

(ジークって名前のゾイド・・・共和国軍にいた様な記憶があるわね・・・それに、あのゾイド、話に聞いたオーガノイドかも・・・)

そう思考を巡らせていると

「おーい、どうした!?」

「え?あ、ごめんなんでもない。」

少年にそう尋ねられると思考をとりあえずやめた。

「早くしないとフィーネとムンベイが危ないんだ!」

「フィーネ・・・ムンベイ・・・名前からして女の子ってとこね。」

アオイは、少年の願いを聞き入れることにした。

「わかったわ、協力してあげる。」

「ホントか!?どっかの誰かさんと違って話が分かる!」

「誰の事かしら・・・私はアオイ・リュウガ、あなた名前は?」

「バン、バン・フライハイト」

「え!?」

アオイは、バンの名前を聞いて驚いていた。

(この子って、もしかして・・・!)

事情は後で聞くことにして

バンとジークの後ろからついてくる形で共和国軍の基地へ向かう。

(ここって、レッドリバーの近くよね・・・てことは、下手したら帝国軍とも・・・)

「や、やべ!?」

バンの悲鳴にアオイはゼロの足を止めた。

「どうしたの?」

「あれ」

バンの指を指す方を見ると

『この近くにいるはずだ。』

『全く面倒をかける』

共和国軍のゾイドが辺りをうろついていた。

「これ、きっとあなたを捜索するために派遣されたのね。」

「くそっ、ここを通らなきゃ基地に辿り着けないってのに・・・!」

悔しそうに顔をしかめるバン

アオイは一つの提案を出した。

「私がこのゾイド部隊を引き付けるわ。その隙にレッドリバー基地へ向かって。」

「それじゃあアオイは!?」

「大丈夫、ガイザックやゴドスに遅れをとる私じゃないわ。けど・・・」

アオイは、捜索している一体のゾイドを見た。

他のゾイドと形が違う 白い恐竜型ゾイドだ。

「共和国軍の新型かしら・・・強いて言うならゴドスの系統?」

「何だよあれ・・・さっきまであんなのいなかったのに・・・」

「考えてる暇はないわ。バンとジークは早く基地へ!」

アオイはゼロを走らせ、捜索部隊の前に躍り出た。

『な、何だ!?』

「お勤めご苦労様です。共和国軍の皆さん?」

『何だこの紅いライガーは!?』

『まさか帝国がもう攻め込んできたのか!?』

共和国軍が慌てている隙に

「行くぞジーク!アオイが作ってくれた隙を無駄にするわけにはいかない!」

「グオォォォ!!」

バンはジークの背にまたがり基地へ走っていった

(そう・・・行きなさい。手遅れにならない内に)

アオイは目線だけでバンを見送った後、共和国軍と戦闘準備をする。

「さあ一戦付き合ってもらえないかしら?三下盗賊の相手ばっかりしてたから腕が鈍りそうで困ってたところなの。」

「ただのゾイド乗りが何であんなものを・・・!?」

「どうしますか、ライト・フリューゲル少尉!?」

部下の問いかけに答えたのは、白い恐竜型の新型ゾイドのパイロットだ。

「うろたえるな!どの様なゾイドでもたかが1体、数で押し切る!」

ガイザックがゼロを取り囲み、尻尾のビーム砲を向けた。

「包囲殲滅・・・まぁ初歩的な戦法よね。でも、それが通じるのはレッドホーン位ね。」

「逃げ場がないのに随分と余裕だな。」

「そりゃあ伊達に場数は踏んでないからね。」

「(ライガータイプなら飛んで避けられるが、予備動作を考えれば・・・)攻撃開始!!」

ライトが命令を下した後、ガイザックが一斉に砲撃を仕掛けた。

「来た、予測どおり!」

ゼロはガイザックの砲撃を飛んで避けた。

「何!?」

ライトがうろたえてる間に互いの流れ弾でガイザックが被弾し戦闘不能になる。

「何処だ!?何処に行った!?」

「ベタだけど・・・上よ!」

慌てふためいているゴドスのパイロットめがけて突っ込み、機体を吹き飛ばす。

「うわあぁぁぁ!!」

「怯むな!攻撃しろ!」

ライトの命令で残ったゴドスがゼロに向け砲撃を仕掛ける。

さすがに訓練された兵士だけに、狙いが正確で足止めを食らう。

「さすがにただで勝てると思ってないけど・・・!」

しかし、すぐにゴドスの前へ走り

「私とゼロを舐めないことね!!」

前足でゴドスを横に弾き飛ばす。

次々と戦闘不能になる共和国のゾイド達

残ったのは、新型のゾイドだけだ。

「さあ、残ったのはあなただけみたいだけど?ライト・フリューゲル少尉?」

余裕な態度を見せたアオイだが、ライトも怯まずゼロへ立ち向かう。

「俺だって新型ゾイド、アロザウラーを任された身だ!ここで退くわけにはいかない!」

ライトはアロザウラーでゼロに格闘戦を挑むべく駆け出した。

「なかなかの機動力ね、さすが新型。でも、私とライガーゼロ相手じゃまだまだね!」

ゼロは咆哮し、アロザウラー向けて駆け出す。

「行けアロザウラー!!」

「さあ、とどめといくよ!ストライク」

『両者、そこまでだ!!』

2機の間の地面に砲撃が着弾し、2機は停止した。

『フリューゲル少尉、そのゾイド乗りへの攻撃は中止だ。』

二人の前に、ゴルドスが割って入ってきた。

その声を聞いてライトは声を荒げる

「ハ、ハーマン大尉!?」

「すまないことをしたな。彼らの知り合いだったとは」

「は?知り合いって、何のことよ?」

突然のことに、アオイは疑問に思うばかりだ。

「バンと言う少年とフィーネ、ムンベイは傭兵として我々共和国軍が雇った。」

「はぁ!?」

「そこで、お前にも協力してもらう。」

「ふざけないでよ!何で私が共和国に協力しなきゃいけないのよ!」

ハーマンは、咳払いをして話を続ける。

「君のおかげで、ただでさえ少ない我々の戦力が減ってしまったのでな。」

「あ・・・・・・・」

それにアオイは言い返せず口を紡いだ。

バンを捜索していたゾイドも、レッドリバーの数少ない戦力

それを全て戦闘不能にしてしまい、しばらく動かせなくしたのは事実だ。

「報酬は支払われるし、補給も受けられる。悪い話じゃないと思うが?」

ハーマンの提案に、アオイはため息をついた。

「はぁ・・・わかったわ。少ない戦力を使い物にならなくしたのは事実だし・・・」

「頼んだぞ。ライト少尉、彼女のエスコートを。」

「りょ、了解です!」

ハーマンは要件を伝え終わるとゴルドスを基地へ走らせた。

「では、こちらへ。」

「どうも。」

ライトはアオイをレッドリバー基地へゾイドを走らせる。

先ほどまでいがみ合っていたせいか、かなりギスギスな空気を漂わせていた。

(はあ・・・何でこんなことになったのかな・・・あのバンって子、あんまり関わり合いにならない方が良かったかも・・・)

そう心の中でバンに協力した自分を後悔していた。

しかし、これよりもっと面倒なことになることを

今のアオイに知る由はなかった。
 
 

 
後書き
次回予告

アオイ・リュウガよ。まったく面倒な事してくれたわねあの子・・・まさか私が共和国に協力するなんて・・・まあ、戦力潰しちゃったの私なのは事実だし・・・
レッドリバーで帝国軍の大部隊が待ち構えていた。
え・・・あのダークホーンに乗っているのって・・・!!
たとえあの人が相手でも手加減はしない!!

次回、ZOIDS 第2話「レッドリバー攻防戦」

今度もめちゃくちゃ、動きまくってやるわ!! 

 

第2話 レッドリバー攻防戦

ライトの案内でアオイはゼロをレッドリバー基地の格納庫へ入れた。

コクピットハッチを開き飛び降りた後、長い髪を整える。

「全く何で私がこんなこと・・・」

「君があのライガーの乗り手か」

そう尋ねてきたのは、先ほど対峙したアロザウラーのパイロット

ライト・フリューゲルだ

「手荒な真似をしてすまなかった。」

「ホントよ、私とあのバンって子とはついさっき顔見知りになったばっかりだってのに」

不貞腐れる態度をとるアオイに、ライトは苦笑いを見せた。

「でも驚いたよ、この惑星Ziにまだ俺達の知らないゾイドが「お~いアオイ!無事だったか!」

ライトの言葉を遮るように、バンが手を振りながらアオイの元に走り寄ってくる。

しかし、無言でバンの頭を引っ叩いた。

「痛っ!?」

「何が無事だったかよ、話が違うじゃない!あそこにいる子達ってここに捕らわれてたはずよね?何で雇われ兵になっちゃってんのよ!?」

アオイは怒りながらバンの後ろにいるフィーネ、ムンベイを指差す。

そのムンベイがアオイに話しかけてきた。

「すまないね、けどバンを許してやりなよ。」

「バン、あなたが共和国の兵士と戦ってるのを止めてくれって頼んでたの。」

「え、そうなの?」

フィーネにもそう言い含められたのでバンに怒るのをやめる。

その光景を見ていたライトは彼らに指示を出す。

「えーと君達、そろそろ作戦室に行ってくれ。ハーマン大尉から作戦指示がある。」

「了解っと。」

「行くぜジーク!」

「グウ!」

「はあ・・・」

成り行きで共和国に雇われたアオイも、彼らについていった。

共和国と敵対しているガイロス帝国が、ドラゴンヘッド要塞を根城に
共和国領内に侵攻しているそうだ。

ハーマンの部隊は中立地区で防衛網を敷き帝国軍の侵攻を阻む

その間に単独行動を取るフィーネとムンベイ、そして爆薬を積んだグスタフで
レッドリバーに続くファイヤーブリッジを爆破し帝国軍の増援を来れなくする
作戦を実行することになった。

そして

「作戦開始時刻だ!各機出撃!」

レッドリバー基地から続々とゾイド部隊が発進した。

そこにはムンベイのグスタフ、バンのシールドライガー

そして、アオイのライガーゼロも行動を共にしていた。

「おい女、お前の活躍によってこの戦闘の勝敗が決まる。失敗は許されんぞ」

「はいはい、わかってるって。」

「気をつけろよムンベイ、フィーネ」

「バンにジーク、あなた達もね。」

「おう!」

やる気を見せる彼らだったが、アオイはまだ項垂れていた。

「何でこんなことになったのかしら・・・」

「さっきからそればっかりだな、アオイ」

そう言ってきたのはゼロの横についたアロザウラーに乗ったライトだった。

「気持ちは分かるが、俺達は首都を護るために戦っている。隊の士気に関わるからあまりそういう態度は見せないでくれ。」

「・・・そうだったわね。あなた達共和国軍にとって一大事ですものね。ごめんなさい。」

「いいさ。君達の協力があれば帝国軍を退けられる、根拠はないがそう思ってる。」

ライトは、思い出したようにバンの話を切り出した。

「あのバンって少年だがな、シールドライガーでハーマン大尉達のプテラスを3機全て格闘戦で叩き落したんだ。」

「はぁ!?シールドライガーでそんなことができるの!?」

「俺は直接見てないんだが、何でも崖を使ってプテラスに飛び込んだそうだ。」

アオイは無言で感心していると、ハーマンから通信が入る。

『お前ら、私語はそこまでだ。もうすぐ防衛ラインだ、心してかかれ!」

「了解!」

「わかったわ」

共和国軍は隊列を組み、防衛ラインを敷いた。

アオイはバンのシールドライガーの傍に、ライトはハーマンのゴルドスの傍へ配置された。

「フン、まるで真昼の決闘だな。」

「決闘?戦争じゃないのか?」

「言葉のあやだよ、言葉のあや」

「どっちでもいいけど・・・」

バンは前方に展開する多数のモルガ部隊を見る。

「あいつら攻めてこないぞ?」

「当たり前でしょ。」

バンの疑問に応えたのはアオイだ。

「戦争は喧嘩と違って国際的な事情があるの。迂闊に攻めようものなら周辺国から非難を浴び、国は孤立し疲弊、戦う力を失う危険があるの。」

「へぇ、詳しいんだなアオイ。」

「まぁね。」

アオイは頬杖を付きモルガ部隊の奥にいるダークホーンを眺める。

(帝国軍か・・・まさかと思うけど・・・)

「全軍、別命があるまでその場で待機!」

「少佐、危険です!」

ダークホーンから一人の青年が降りてきた。

その人物を見たアオイは目を見開く。

(そんな!?本当にあの人がここに・・・!!)

ハーマンも対抗し、ゴルドスから降りて帝国軍の青年の元へ歩み寄る。

「スゲーな向こうの大将・・・撃たれるかもしれないのにゾイドから降りてくるなんて、なぁアオイ・・・アオイ?おいどうした?」

「え!?」

「どうしたんだ?息も荒いし・・・大丈夫か?」

バンにそう言われ自分の手を見ると、操縦桿を握っていた掌が汗だらけになり

顔も目立つくらいの汗をかいていた。

「え、あ、ごめん・・・なんでもないわ。」

気丈を振舞うアオイだったが、まだ内心動揺している。

一旦気持ちを引き締めるために、格納してある水で顔を洗う。

(大丈夫、戦闘にならなければ・・・)

そして、帝国と共和国の睨み合いが延々と続き

日が暮れ始める。

さすがに待ちくたびれたバンはシールドライガーから降りて用を足していた。

「腹減ってきたな・・・いつまでこんなことやってんだろ。」

緊張感が足りてない彼と裏腹に、アオイは臨戦態勢に入っていた。

そして、この沈黙を破るように1機のプテラスが戦場に乱入する。

「プテラス!?」

アオイはすぐにライトへ通信を送る。

「ライト少尉、基地のプテラスは!?」

「え?プテラスはシールドライガーに全部壊されて誰も・・・」

「てことはあのプテラスは!?」

アオイが何かに確信を持つ前に、プテラスは帝国のモルガにバルカンで攻撃した。

モルガ部隊が迎撃するが、全て回避しドラゴンヘッドの方へ飛び去っていく。

「何なんだあのプテラス!?」

「馬鹿!帝国領内に飛び去ったのが見えなかったの!?あれは帝国が差し向けたプテラスよ!!」

「火種を作りやがったか・・・!!」

「砲門を開け!散開しつつも防衛網を緩めるな!!」

ハーマンから迎撃命令が下り、帝国が進軍を開始

戦闘が開始された。

「何だ何だ!?いきなり始まったぞ!」

「バン!開戦よ、急いで!」

「くそ、行くぞジーク!!」

「グオォォォォ!!」

ジークが咆えて背部からブースターを展開し飛び上がり、

シールドライガーと合体する。

「ゾイドと合体した・・・!?ジークは本当にオーガノイドだったのね・・・」

はじめて見るオーガノイドの光景に驚いていたアオイだったが

すぐに気持ちを切り替え帝国軍と戦闘に入る。

ライトのアロザウラーも前に出てモルガに砲撃を加える。

それよりも前にでてハーマンのゴルドスが帝国に攻撃する。

「ハーマン大尉、危険です!あなたが撃たれれば我が軍は!」

「たとえ負けると分かっていても戦わなきゃいけない時もある!それが男ってもんだ!!」

彼らの奮闘もあり、モルガの数を減らしていっているが

それでも帝国軍の物量に押され、ゴドスが次々に撃墜されていく。

ライガーゼロも格闘戦でモルガを捌いていくが、それでも一向に勝機は見えてこない。

「ええい!後から後から!」

「ムンベイとフィーネは!?ファイヤーブリッジを爆破しにいったんじゃなかったの!?」

爆破の指示を出してはいたらしいが、爆煙等が見えないところ

起爆せずに帝国に捕らわれたと思うのが妥当だろう。

(やっぱり、敵の大将を叩かない限りは・・・)

「渓谷のオーバーハングを利用すれば何とか飛び移れるはずだ!」

「無茶言うな300mはあるぞ!」

バンとハーマンが突然言い争いを始めていた。

「あの二人は何をしてるの?」

その疑問に答えたのはライトだった。

「大尉はバンにレッドリバーの渓谷を飛び越えさせてグスタフの援護をさせるそうだ。」

「無茶よシールドライガーで!ライガーゼロならできるわ!私が」

「ダメだ、貴様のゾイドはまともな武装が施されていない。」

「2連ショックカノンがあるわ!障害物除去用に威力は抑えてあるけど」

「それでは爆薬に引火せん!直接爆破しようものならファイヤーブリッジと共にライガーゼロはお陀仏だ!」

悔しかったが、ハーマンの言う通りでありアオイは顔をしかめた。

「大丈夫だアオイ、俺とジークがなんとかしてみせる!」

そう言い残しバンはレッドリバーへ進路を向け走っていった。

「バン!!」

「アオイ、今はバンを信じて待つしかない。」

「ライト少尉、悪いけど私、待つのは性に合わないの。」

アオイはゼロを敵陣へと突っ込ませる。

「何する気だ!?」

「敵の指揮官を叩く!」

「何だと!?」

「そうすれば敵部隊の士気が下がり烏合の衆となる!無理にファイヤーブリッジを爆破しなくても済む!」

「無茶だ!!」

ライトとハーマンの制止の声も届かず、ライガーゼロはモルガの群れを突っ切りダークホーンへ向かう。

『少佐!反乱軍のゾイドがそちらに向かってきます!!』

『何だこのスピードは!?シールドライガーやセイバータイガーの比じゃないぞ!』

「臆するな!奴の狙いは私だ!」

「あの人・・・シュバルツ少佐相手に時間は掛けられない・・・一撃で勝負に出る!!」

ライガーゼロは両前足の爪にエネルギーを集中させ、攻撃態勢にはいる。

「少佐、危険です!!」

「心配するなマルクス(かなり思い切りのいいゾイド乗りだ。この感じ、あいつに似ている・・・)」

シュバルツは何かに確信を抱き、向かってくるライガーゼロに立ち向かう。

「行くよ、ゼロ!!」

ライガーゼロが咆哮し、ダークホーンに向け飛び上がる。

「ストライクレーザークロー!!」

ゼロの爪が、ダークホーンへ向かう。

しかし

シュバルツはダークホーンの機体を最小限に動かし紙一重で回避する。

「なっ!?」

そのまま地面に着地し、再度ダークホーンの方へ向く。

(やっぱり少佐相手じゃ私の手は通じない・・・!)

(やはり、動きの癖が似過ぎている・・・だが風来坊の彼女が何故共和国に味方している?)

アオイは牽制で2連ショックカノンをダークホーン向けて放つが

照準とあらぬ所へ着弾する。

「くっ・・・だから射撃武器は嫌いなのよ!」

「敵対するのであれば容赦はしない!」

ダークホーンのガトリングガンが回転し、弾丸がゼロを襲う。

「ダメだ・・・今の私じゃ少佐には・・・!」

啖呵を切りシュバルツに挑んだが、予想以上に手強い相手にアオイは動揺する。


しかし 奇跡は起こった


レッドリバーから爆煙が立ち込めた。ファイヤーブリッジの爆破に成功したのだ

「あれは・・・」

「ファイヤーブリッジが破壊されたか・・・」

『はい、敵の破壊工作員の仕業と思われます!』

「そうか、では撤退しよう。」

シュバルツの命令にマルクスが反論をする。

「何故です!?今は我々の方が優勢です!攻め続ければ共和国内部まで攻め込むことができるのですよ!?」

「その前に共和国軍の増援が来る。その時になってから撤退しても遅いのだ。」

彼らの通信中、アオイは早く撤退しろと心の中で連呼し続ける。

その願いが叶ったのか、ダークホーンはドラゴンヘッドの方へ走り出す。

それに続いてモルガの大軍も撤退を始めた。

「撤退・・・してくれたの・・・?」

目の前で起こった事にアオイは安堵する。

モニターにシュバルツから暗号メッセージが届けられた。

アオイは暗号を解読すると

先ほど抜けた緊張が再び身体全身に走り身体を強張らせる。

「おーいアオイ!!」

「大丈夫だった!?」

アオイの目の前にシールドライガーとグスタフが走ってきた。

「バン・・・ファイヤーブリッジの破壊に成功したようね。」

「ああ、アーバインが協力・・・協力って言えるのか?とにかく、レッドリバーを飛び越えてフィーネ達を助けることに成功したんだ。」

「待たせて悪かったねアオイ、あんたの報酬も上乗せするよう交渉してあげるからさ。」

「え、ええ・・・」

アオイの返事が上の空であり、3人は不思議そうに首を傾げる。

「とにかく基地に帰ろうぜ!腹へってしかたないぜ!」

「帰ったらたんまりご馳走食べさせてあげるわよ!」

「いやっほぅい!!」

「アオイは何がいい?」

フィーネに尋ねられたが、アオイはずっと基地に着くまで黙りこんだままだった。


 
 

 
後書き
次回予告

誰にだって知られたくない過去がある。思い出したくない過去がある。
だけど、今だけは向き合わなくちゃ・・・
少佐は私なんかの為に、気を使ってくれた。だから、少しだけ
ほんの少しだけ、過去を思い出してみようと思う

次回 ZOIDS 第3話「アオイの過去」 

 

第3話 アオイの過去

「え、アオイが出てった?」

レッドリバーの戦いが終わり、バン達は途中で合流したアーバインと食事を取っている最中

ハーマンが、アオイが基地から出て行ったことを伝えにきていた。

それにはムンベイも驚く

「何でさ、あいつまだ報酬も受け取ってないのに」

「報酬はいらんそうだ。代わりに貴様らに払ってくれと頼まれた。」

「何で私達のところに?」

フィーネは首をかしげる。

「あいつ完全にタダ働きじゃねえか。」

「いいじゃねーか、アオイってのはそういうやつだ。」

「知ってるのかアーバイン?」

「何度かあいつのライガーゼロをいただくためにやりあったこともあってな。」

アーバインの口振りに、バンは呆れる。

「お前、傍から見たら盗賊と一緒だぞ?」

「ほっとけ。一度村を焼き払った盗賊団の討伐依頼を引き受けた時なんだがな。このことを偶然聞いたあいつは、盗賊団のアジトを襲撃、奴等が泣き喚いても攻撃の手を緩めなかった。」

その時の光景が容易に想像でき、

「や、やめれくれぇぇぇぇ!!」

「あんたらが泣き喚いても攻撃をやめない!!」

バンとジークは震え上がる。

「おっかね~」

「オッグァグェ」

「村人からそりゃ大層に感謝されてたが、報酬も何ももらわずに去っていったんだ。」

「私にゃ考えられないね。もらえるもんはもらっとかないと。」

報酬がどうのこうのの話で何かを思い出したムンベイは、ハーマンの元に身体を向ける。

「ところで・・・ファイヤーブリッジのど真ん中で散々待たせといた分、報酬を上乗せしてもらいたいんだけど?」

「アオイの報酬分がある。上乗せは許可できん。」

「何さケチ!」

「諦めろムンベイ」


そして、アオイは爆破されたファイヤーブリッジへ赴いていた。

「少佐が指示した場所はここ・・・のはずよね。」

あの時の暗号メッセージは

今夜、ファイヤーブリッジへ来てくれ 大事な話がある

というものだった。

正直なところ、シュバルツとは会いたくなかったが

彼女は、ここへ来てしまった。

そして、アオイの目の前にダークホーンが歩み寄ってきた。

レッドリバーでアオイが交戦したダークホーン・・・シュバルツのものだ。

ライガーゼロと眼と鼻の先まで近づいたダークホーンのコクピットハッチが開いた。

「私はガイロス帝国軍、カール・リヒテン・シュバルツ少佐だ。」

ダークホーンから飛び降りたシュバルツはそう名乗り、さらに続ける。

「戦闘中に送った暗号文を解読してここに来たということは、君は元帝国軍人であり私の部下だった・・・アオイ・リュウガ准尉で間違いない。」

アオイは、ただ黙ってゼロのコクピット内で息を呑む。

「私はあれ以来、君の安否を確認したく色々手を回してきた。君が生きていてくれて本当に良かったと思う。ゾイドから降りてきてくれないか?話がしたい」

シュバルツは微笑みながらアオイに語りかける。

それに応えるかの様に、ライガーゼロのコクピットハッチが開いた。

「・・・お久しぶりです、シュバルツ少佐。」

アオイは敬礼しながら、重い口を開いた。

「畏まらないでくれ、君はもう帝国軍人ではないのだから。」

「は、はい・・・」

「このゾイドは?」

「はい、私の・・・新しい相棒です」

シュバルツは、ライガーゼロを眺め感心する。

「ううん・・・なかなかいいゾイドじゃないか。アオイに相応しい。」

「い、いえ・・・」

「どうした?先ほどから震えているようだが」

シュバルツでなくても、アオイの身体が震えているのが分かる。

「私は・・・帝国から逃げ出した身です・・・機密情報もある程度は・・・」

「プロイツェンを恐れているのか?心配するな、私は奴とは関わっていない。」

「それだけではありません・・・私は少佐・・・殿下やあの方達の期待を裏切った・・・」

「裏切り・・・?何を言っている、少なくとも私は感謝している。君のお陰で救われた帝国軍兵士が大勢いる。」

励ますシュバルツだったが、それでもアオイの表情が暗い。

「まさか・・・あの事故の事をまだ?」

シュバルツにそう言われた後、表情の暗さが更に増した。

「・・・そうか。だがあれは不慮の事故だ。君が責任を感じることも、気に病む事もない。責任は・・・管理を怠った私にある。」

「それでも・・・私は・・・」

「君が早く逃げれば相棒は死なずに済んだ・・・ずっと、そう言ってたな。」

アオイは過去の事を思い出してか、眼から涙がこぼれる。

「そうよ・・・私が早く逃げていれば、セイバーは死なずに済んだ・・・それなのに私は・・・!」

「たとえ事故でも、相棒のゾイドを死なせてしまった自分が許せない・・・そういうことだな。」

「はい・・・!」

「セイバーの事を忘れろとは言わない、だがいつまでも過去を引きずっていては、足元をすくわれ自分の身を滅ぼすことに「それでも!!」

シュバルツの言葉半ばで、アオイが叫んで遮る。

「それでも私は・・・セイバーを死なせてしまった自分が許せないんです!!」

アオイの必死の叫びに、シュバルツは黙ることしかできなかった。

「もういいですか・・・私はもう自由の身なんです、何をして生きようが死のうが勝手でしょ!」

「待て、最後に一つ聞かせてくれ。」

立ち去ろうとコクピットハッチを閉めようとしたが、シュバルツに呼び止められ手を止めた。

「何故、君が共和国軍に協力していたのだ?君は何処にも加担しないことは私がよく知っている。何か理由があるのだろう?」

「シールドライガーのパイロットの少年が、共和国軍に関わったとばっちりを受けただけです。私の意志ではありません。」

「なるほど、シールドライガーの・・・あの少年はいずれ強いゾイド乗りになる。君も見極めるといい。」

「・・・機会があれば」

そう言い残し、アオイはライガーゼロのコクピットハッチを閉め、走り去った。

その後姿を、シュバルツは敬礼し見送る。

(アオイ・・・君が過去を乗り越えることができるよう、祈っているよ)

シュバルツはダークホーンに乗り込み、その場を立ち去る。



「まさか、リュウガ准尉が・・・閣下に報告せねば・・・」



レッドリバーを後にしたアオイは、岩山の一角でライガーゼロを止めていた。

「今夜は野宿かぁ・・・まあ慣れてるからいいんだけど」

ゼロのコクピットで、アオイは目を瞑り眠る。






「突然暴走したのか!?」

「は、はい!試作兵器を積んだレッドホーンが突然・・・!」

「最終調整も済ませて問題はなくなったはずなのに・・・!」

「バカモノ!問題がなければこんなことにはならん!!」

シュバルツが帝国の研究員にそう怒鳴った後

腰を抜かして倒れている一人の少女の下に走る。

「准尉!大丈夫かリュウガ准尉!?」

「あ・・・ああ・・・!!」

眼を見開く彼女の前には

石化して、動かなくなったセイバータイガーがいた。

「セイバー・・・私をかばって・・・!!」

「独りでに動いたというのか・・・准尉を護るために・・・」

「セイバー・・・いや・・・イヤァァァァァァァ!!!」

少女は悲鳴を上げる・・・石化した相棒の死を受け入れられずに

「セイバー・・・嫌だよ・・・!私なんかかばって・・・!!」

(そうさ、君のせいさ)

「え!?」

突然、セイバータイガーが喋りだし彼女は顔を上げる。

(君が腰なんて抜かさなければ、こいつは死なずに済んだ)

少年の声で喋るセイバータイガーは、石化しておらず紅いボディを見せていた。

(大丈夫さ、君の相棒は・・・僕が有効に利用してあげるよ)

そう言い終わった後

セイバータイガーの爪が、アオイに襲い掛かる

「いや・・・やめてぇぇぇぇぇ!!!」






「!!!」

セイバータイガーの爪が、アオイに当たる直前

彼女は眼を覚まし飛び起きた。

汗まみれになり、息も荒いが徐々に落ち着きを取り戻す。

「ゆ、夢・・・?」

アオイは、時々当時の事故を悪夢で思い出すように見ていた。

「何だったの・・・最後のあれは・・・」

しかし、決まって相棒を失って悲鳴を上げるところで悪夢は終わるのだが

今回は、死んだセイバータイガーが生き返り

少年の声で喋り、自分に襲い掛かってきた。

「今までこんなことはなかったのに・・・何かの暗示・・・?」

一体、何故最後の部分が継ぎ足されたのか

考えていたが、何も思い当たることはなかった。

「少佐と話していたからああなったのかな・・・?考えにくいけど、そうだと思ってないとやってられないわね。」

そう自分の中で納得させていると、日が昇り夜が明ける

「さっさと出発するか・・・レアヘルツの谷を迂回して、帝国軍の包囲網を抜け出さないといけないし。」

一度だけでも共和国軍に協力してしまったため帝国に追われる身となったのだ。

一つの場所に長居はできない

だから、帝国が活動を再開しない内に帝国の勢力圏内を脱出しようというのだ。

「行こう、ゼロ。」

アオイがそう語りかけると、ライガーゼロは咆え荒野を駆け出した。

その先で待っているのは、悪夢かそれとも・・・
 
 

 
後書き
次回予告

アオイ・リュウガよ。待ちに待った人里!久しぶりにパパオの実が食べられるわ!
・・・なんて呑気には構えられないわね、スリーパーゾイドの大群を1体のゾイドが全滅させたって共和国軍は大騒ぎ
その犯人はバンと同じくらいの男の子と黒いオーガノイド、そして・・・・・

次回 ZOIDS 第4話「最悪の再会」

なんで・・・なんであなたがここにいるの!? 

 

第4話 最悪の再会

「やったー!やっと村に着いたー!!」

ライガーゼロを走らせたアオイは、念願の人里に辿り着いていた。

「レッドリバー基地ではあんなだったけど、やっとシャワー浴びれる!やっとまともなご飯食べれる!やっとパパオが食べれるー!!」

まるで子供の様にはしゃぐアオイに、ゼロは青筋を立てる。

すぐに村の前にゼロを止め、市場へ足を運んだ。

市場と言っても、普通に人が通れる位に空いていた

「おじさん!パパオの実ある?」

「おおあるよ。」

八百屋の親父はパパオが入った袋をアオイに渡す。

「はいよ、美人さんには1個おまけだ。」

「どうも!」

ふと、店の品揃えを見ると

ところどころに空きがあり品数が少なかった

「おじさん、繁盛してるみたいね。」

「ハハハ、そうならどれだけいいことか」

「何かあったの?」

「もうすぐここは戦場になるんだ。」

「そうなの?」

八百屋の親父から共和国軍がここで塹壕を掘っていると聞き、様子を見に行くことにした。

「やってるわね・・・いずれ避難勧告が出るかもしれないわね・・・」

そう呟き、パパオの実をかじる。

アオイの目の前に、せっせと塹壕を掘っている共和国軍の兵士達がいた。

指揮していた一人が、アオイの方へ来た。

「貴様、何の用だ?」

「別に、塹壕掘ってるって村の人に聞いたから見物に」

「見せ物じゃないんだ、さっさと行け。」

「はいはい。」

アオイが立ち去ろうとしたら

「待て」

すぐに呼び止められた。

「何よ?」

「身元を証明できるものは?念のためだ、帝国のスパイがいるかもしれんからな。」

「私は帝国軍じゃないけど?」

「念のためと言った。」

融通が利かない共和国兵士に、アオイは呆れたように懐から紙を取り出す。

「身元証明ってわけじゃないけど」

「何だ?紹介状?」

兵士がその紙を見ると

少し息を呑み驚く

「貴様、ハーマン大尉の知り合いだったのか。」

「あら、結構有名なのね。」

「そりゃそうだ」

「まあ分けは聞かないけど。」

アオイは共和国の兵士が、必要以上にピリピリしている事に気付く。

「なんかみんなすごい顔つきだけど?」

「ああ、2日前に1個中隊のスリーパーが全滅したんだ。」

「帝国も本腰をあげたってことね。」

「いや、たった1体のゾイドに全滅させられたんだ。」

「は!?」

1個中隊をたった1体のゾイドが全滅させた。

その事実にアオイは驚きを隠せなかった。

「1個中隊ってゾイド30機を一人で倒したってことよね!?」

「ああ、詳しいな。」

「私だってゾイド乗りだから」

「そうか。あの先にガイザックの墓場がある。興味があれば見てくるといい。」

兵士が指差した方へ、アオイはライガーゼロを走らせる。

そこで見た光景は

「ひ・・・ひどい・・・!」

見るも無残に破壊されたガイザックの姿があった

「何でこんなことができるの・・・同じゾイド乗りとは思えない・・・!」

破壊されたガイザックは全てスリーパーゾイドだったが

これが、人間が搭乗しているゾイドだと思うとアオイは胸を締め付けられる。

「許せない・・・」

もしそのゾイド乗りと出会ったのならば、徹底的に叩き潰そうと誓うアオイだった。

とりあえず村に戻ると、何やら騒がしく兵士が動いていた。

「何?何の騒ぎ?」

不思議そうに共和国兵士を見ていると、指揮していた兵士がこちらに来る

「ここにオーガノイドを連れた少年を見なかったか!?」

「いいえ、それが何か?」

「そいつらがガイザックの墓場を作った犯人だ!」

アオイはすぐにバンの事だと思い驚く。

「ええ!?嘘でしょ、あの子がそんなことするわけないと思うけど」

「知り合いなのか?」

「ええ、銀色のオーガノイドでしょ?」

「いや違う。黒いオーガノイドだ。」

「はぁ??」

黒いオーガノイドだと言われアオイは困惑する

「ちょっと待ってよ、黒いオーガノイドって・・・ジーク以外にもオーガノイドっているの?」

「俺が知るか。先ほどその少年の捜索に出た、貴様も協力してくれ」

普通なら断っているところではあるが、墓場を作った犯人は放ってはおけなかった。

「わかったわ。私が先に見つけてやるんだから。」

意気込むアオイの前に

「おーい、アオイ!」

彼女を呼ぶ声が、黒いコマンドウルフから聞こえてきた。

「ああ!アンタまさかアーバイン!?」

「ちょうどよかった、バンの捜索に協力してくれ。」

「バン達も来てるの?」

「ああ、しかもガイザックの墓場を作った犯人と行動しているらしい。」

「ええ!?」

「バンが危ない、お前も探してくれ!」

アーバインの指示なのは少しシャクだったが、バンの身が危ないためすぐにライガーゼロを走らせた。

「ゼロ、オーガノイドの気配を察知して・・・って、出来るわけないわよねいくらなんでも・・・」

ない物ねだりをしても仕方なく、地道にバンを探す

「ん?あれってアーバインのコマンドウルフ?」

コマンドウルフの止まっている先の岩山に

バンとフィーネ、その奥に少年が立っているのが見えた。

「バン!それにあいつは・・・!」

あの少年が、ガイザックの墓場を作り出した犯人

そう確信し、ライガーゼロを岩山の傍まで走らせる

「バン!フィーネ!」

「アオイ!?アオイも来てたのか!?」

「そんな事より、そいつが例の少年なのよね?」

「そうだ!こいつがガイザックの墓場を作った張本人だ!」

「あの人・・・ゾイドが嫌いだって・・・」

フィーネがそう言い、アオイは少年を睨みつける。

「ふうん、珍しいゾイドに乗ってるんだね。」

その少年がライガーゼロを後ろ眼で見て呟く

「ゾイド嫌いのアンタに言われる筋合いはないわ。同じゾイド乗りとして、アンタの悪事を見過ごすわけにはいかないの!」

少年は鼻で笑い、地平線に指を差す。

その先には、ゴドスの大部隊が接近してきていた。

少年を捕まえるために派遣された部隊だ。

「どうやらここにも作らなくちゃいけないみたいだ。ゾイドの墓場を」

「何!?お前・・・」

「シャドォォォォ!!」

少年が叫ぶと

一つ上の岩場から、黒いオーガノイドが姿を見せた。

「ジーク!?いや違う・・・こいつは・・・!?」

「本当にいたのね・・・黒いオーガノイドが・・・!」

バンとアオイが驚いていると

少年は岩山から飛び降りた。

「待てレイヴン!!」

地響きが起こり、バンとフィーネが岩山からコマンドウルフの上に落ちた。

「いっててて・・・」

「バン、大丈夫?」

「バン!奴が出てくるぞ!!」

岩山の影から、少年・・・レイヴンのゾイドである紅いセイバータイガーが現れた。

「!!!」

アオイは、そのセイバータイガーを見て全身に緊張が走る。

「ウソ・・・なんで・・・」

「アオイ?おいどうしたアオイ!?」

「あのセイバータイガーを知ってるのかアオイ!?どうしたんだよアオイ!!」

アーバインとバンの声はアオイに届かず

「いるはずない・・・なんで・・・どうして・・・」

うわ言の様に発していた呟きは

セイバータイガーがゴドスに攻撃を仕掛けたと同時に止まった。

上空から飛び込みゴドスを薙ぎ倒したが

追い討ちのようにゴドスの首を踏みつけ、頭部が切り落とされる。

その後も、ゴドスに攻撃を仕掛けるレイヴン

それは、全て普通に戦闘するには必要のないものが多い

腕を噛み千切り、脚を捥ぎ取り、ビーム砲で頭部を撃ち抜き

「うわああああ!?」

倒れた相手を弄ぶかのように踏みつけ苦しめている

その光景を目の当たりにし、バン達は言葉を失い

アオイの眼から涙がこぼれる。

その間も残虐な行為が繰り返され、ゴドスの部隊が目に見えるように減っていく。

「やめろぉぉぉぉ!!何でそんなことができるんだ!!」

「イカレてるぜあいつ!!」

「ダメ・・・やめて・・・」

負傷し逃げようとするゴドスの前に回りこみ

「ヒィィ!!」

「フッ」

止めを刺そうと右前足を振り上げる

「やめてぇぇぇぇぇ!!!」

アオイの悲鳴と共にライガーゼロが駆け出し

セイバータイガーに体当たりをしゴドスを助けた。

「くっ!?」

「早く逃げて!!」

「き、貴様はあの時の・・・」

ゴドスのパイロットは、村で出会った共和国の兵士だった。

「早く!!」

「す、すまない!」

ゴドスは負傷した足を引きずり、その場から撤退した。

「チッ、逃がすか」

レイヴンが追撃しようとしたが、アオイが前に出て妨害する。

「邪魔しないでもらえるかな?せっかく楽しんでたところなのに」

「セイバー・・・セイバーよね!?あなたセイバーなのよね!?」

アオイの問いかけに、レイヴンは首をかしげる。

「何を言ってるんだ?」

「何でこんなひどいことするの!?あなた私といた時はこんなことしなかったのに!!」

「アオイの奴、何言ってやがんだ・・・!?」

アーバインも状況が飲み込めず戸惑っていた。

「一体何を言ってるんだ、あんたは?」

「私を助けるために死んだはずなのに・・・何でゾイドを苦しめるの!?何で平然とゾイドを傷付けたりしてるの!!」

アオイの悲痛な叫びが辺りに響く

レイヴンは、聞いていく内に何かに感づく

「なるほど・・・お前がプロイツェンが話していた、このセイバータイガーのパイロットだった奴か」

「あなたがこんな事をさせてるのね・・・でも、それでもセイバーは無闇にゾイドを傷付けなかった!一体どうしたのセイバー!」

「うるさいよ!」

痺れを切らし、セイバータイガーはライガーゼロに向けビーム砲を放つ

「馬鹿野郎!!何で避けねぇ!!」

アオイは固まり、回避動作を一切しなかった。

その動きのなさにアーバインが叫ぶ

直撃する直前、ライガーゼロは飛び上がり攻撃を避けた。

「何!?あのタイミングで・・・!」

それにはレイヴンも驚きを隠せなかった。

「ゼロ、あなた・・・!」

ライガーゼロは、アオイの代わりに動き攻撃を回避したのだ。

「フン、そのゾイドに助けられたみたいだね。」

レイヴンはすぐに調子を取り戻す。

「セイバー!もうやめて!私がわからないの!?」

「さっきからうるさいよ・・・!僕はゾイドの言ってる事は分からないけど、代弁してやるよ。」

レイヴンは、セイバータイガーをライガーゼロに向け飛び上がる

「お前なんか・・・知らないってな!!」

攻撃しようとしないアオイに代わり、ゼロは身構える

「ダメ、ゼロ!!」

アオイの悲鳴に、ゼロは動きを止めてしまう

当然の如く、セイバータイガーの攻撃をもろに受けてしまった。

「きゃあああああ!!」

ライガーゼロは吹き飛ばされ、アオイは頭を打ち意識が朦朧とする。

「こいつはシャドーの力で復活したと同時に、メモリーバンク・・・ゾイドの記憶を掻き消した・・・僕のゾイドにお前の様な感情は必要ないからな。」

「セイ・・・バー・・・」

「まともにゾイドを扱えてないお前より、僕の下にいた方がこいつも幸せだろう?ハハハハハ!」

嘲笑うレイヴンの声を聞き、アオイは意識を手放した。

そして

「プロイツェンから抹殺の指示が出てるんだ。悪く思わないでくれ」

セイバータイガーの前足が振り上げられる。

「以前の相棒に殺される・・・泣けるシチュエーションじゃないか・・・死ね!!」

そして、セイバータイガーの爪がライガーゼロのコクピットめがけて接近する。

「やめろぉぉぉぉ!!」

寸でのところでバンのシールドライガーがセイバータイガーを撃ち、攻撃を阻止した。

「これ以上ゾイドを傷付けるって言うのなら・・・」

「どうだと言うんだ!」

「お前を倒す!!」

バンとレイヴン、乱入したアーバインも戦闘に加わる。

しかし、彼らはレイヴンの撤退という形で勝利を収めた。

アオイは、村の診療所に運ばれた。
 
 

 
後書き
次回予告

アオイ・リュウガよ。まさかセイバーが生き返ってたなんて・・・あの悪夢が正夢になっちゃったわね・・・
セイバーは人にもゾイドにも優しかった。それをあの子・・・レイヴンが無理やり歪めた
あのままにしておくわけにはいかない・・・セイバーは・・・私が止める!!

次回 ZOIDS 第5話「ゼロの真価」

今度もめちゃくちゃ、動きまくってやるわ!!